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1986-10-17 第107回国会 参議院 決算委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十月十七日(金曜日)    午前十時二十一分開会     ─────────────  委員氏名     委員長         菅野 久光君     理 事         石井 道子君     理 事         大島 友治君     理 事         鈴木 省吾君     理 事         松尾 官平君     理 事         梶原 敬義君     理 事         服部 信吾君                 井上 吉夫君                 井上  孝君                 河本嘉久蔵君                 沓掛 哲男君                 斎藤栄三郎君                 杉山 令肇君                 寺内 弘子君                 中曽根弘文君                 永野 茂門君                 福田 幸弘君                 真鍋 賢二君                 宮崎 秀樹君                 守住 有信君                 久保田真苗君                 佐藤 三吾君                 山本 正和君                 及川 順郎君                 刈田 貞子君                 田代富士男君                 沓脱タケ子君                 佐藤 昭夫君                 関  嘉彦君                 抜山 映子君     ─────────────    委員異動  九月十一日     辞任         補欠選任      沓脱タケ子君     板垣  正君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         菅野 久光君     理 事                 石井 道子君                 大島 友治君                 松尾 官平君                 梶原 敬義君                 服部 信吾君     委 員                 井上 吉夫君                 井上  孝君                 板垣  正君                 斎藤栄三郎君                 杉山 令肇君                 寺内 弘子君                 中曽根弘文君                 永野 茂門君                 福田 幸弘君                 真鍋 賢二君                 宮崎 秀樹君                 守住 有信君                 久保田真苗君                 佐藤 三吾君                 山本 正和君                 及川 順郎君                 刈田 貞子君                 佐藤 昭夫君                 関  嘉彦君                 抜山 映子君    国務大臣        労 働 大 臣  平井 卓志君         ─────        会計検査院長   大久保 孟君         ─────    政府委員        法務省刑事局長  岡村 泰孝君        外務省経済協力        局長       英  正道君        厚生省社会局長  小林 功典君        労働大臣官房長  岡部 晃三君        労働大臣官房審        議官       齋藤 邦彦君        労働大臣官房審        議官       佐藤 仁彦君        労働省労働基準        局長       平賀 俊行君        労働省婦人局長  佐藤ギン子君        労働省職業安定        局長       白井晋太郎君        労働省職業能力        開発局長     野見山眞之君    事務局側        常任委員会専門        員        小島 和夫君    説明員        警察庁刑事局捜        査第二課長    古川 定昭君        環境庁大気保全        局大気規制課長  浜田 康敬君        法務省入国管理        局入国審査課長  大久保 基君        外務省国際連合        局社会協力課長  金子 義和君        文部省初等中等        教育局高等学校        課長       小西  亘君        会計検査院事務        総局次長     秋本 勝彦君        会計検査院事務        総局第一局長   三原 英孝君        会計検査院事務        総局第二局長   天野 基巳君        会計検査院事務        総局第三局長   大沼 嘉章君        会計検査院事務        総局第四局長   吉田 知徳君        会計検査院事務        総局第五局長   小川 一哉君        日本国有鉄道情        報システム部次        長        浅賀 英雄君     ─────────────   本日の会議に付した案件国政調査に関する件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和五十九年度一般会計歳入歳出決算昭和五十九年度特別会計歳入歳出決算昭和五十九年度国税収納金整理資金受払計算書昭和五十九年度政府関係機関決算書(第百四回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十九年度国有財産増減及び現在額総計算書(第百四回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和五十九年度国有財産無償貸付状況計算書(第百四回国会内閣提出)(継続案件)     ─────────────
  2. 菅野久光

    委員長菅野久光君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本委員会委員の各会派割り当て数の変更に伴い、去る九月十一日、日本共産党の沓脱タケ子君が委員を辞任され、その補欠として自由民主党の板垣正君が選任されました。     ─────────────
  3. 菅野久光

    委員長菅野久光君) 次に、国政調査に関する件についてお諮りいたします。  本委員会は、今期国会におきましても、国家財政経理及び国有財産管理に関する調査を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 菅野久光

    委員長菅野久光君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 菅野久光

    委員長菅野久光君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和五十九年度決算外二件の審査並びに国家財政経理及び国有財産管理に関する調査のため、必要に応じ、政府関係機関等役職員参考人として出席を求めることとし、日時及び人選等につきましては、これをあらかじめ委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 菅野久光

    委員長菅野久光君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  7. 菅野久光

    委員長菅野久光君) 昭和五十九年度決算外二件を議題とし、会計検査院決算について審査を行います。     ─────────────
  8. 菅野久光

    委員長菅野久光君) この際お諮りいたします。  議事の都合により、決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 菅野久光

    委員長菅野久光君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ─────────────
  10. 菅野久光

    委員長菅野久光君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  11. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 きょうは検査院に対する異例の集中審議と、こういうようになっておるようでございますので、若干細かい問題等もございますけれども、ひとつお聞きしておきたいというふうに思います。  まず、十四日だったと思うんですが、青森大挙立ち入り検査をなさっておるようでございますが、この検査事案概要はどういうことですか。
  12. 秋本勝彦

    説明員秋本勝彦君) お答えいたします。  青森の石の検査でございますけれども先生承知のように、十四日から私ども関係課調査官が調査に入っておりまして、資料の石の採取等をしております。これは採取してからいろいろ資料検査等も行わなければならないし、またそれの構造物に対する影響といったようなものも十分検討していかなければならないということで、現在そういう採取検査を実施しているところでございます。
  13. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 報道によりますと、結果的にはその採取した石が事実粗悪品で、その工事関係で約六十億ですか、これが大きな損害を与えたんじゃないかというところで県議会で問題になったようでございまして、こういうことがなぜ今まで検査院検査を通じて発見できなかったのか。 その辺はいかがですか。
  14. 秋本勝彦

    説明員秋本勝彦君) もちろん検査すべき工事の中身でございますけれども、何分にも海の中にまあ捨てられると申しますか、外見からはなかなか検査しにくいといったような点もございまして、当然県の工事における検収等も十分行われているであろうというふうに私ども考えていましたわけでございまして、今回そういう点不十分で、県の検収検査が不十分であったようなことも聞いておりまして、今後の検査においては、十分こういうことは参考にして、私どもも厳重な検査をやっていかなければいけないのかなというふうに考えております。
  15. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 この山というのは海に面して、非常に搬送がしやすい条件にございますわね。ところが、これはもう既にある業者がその採石をして、この石は工業試験場でだめだと、使いものにならないという認定を受けておった山であって、青森県内ではこれは周知の事実の問題です。それを採石しておるということ自体が問題があるわけでありまして、そこがそういう意味では私は、まあ海の中に入っておったという言いわけが立つのかどうか知りませんが、やはりこういうことのないように厳重なひとつ今度は検査をして、きちっとした検査報告をいただきたい。これだけ一つつけ加えておきたいと思います。よろしいですか。  そこで、本題に入りますが、検査院長ね、九月の九日だったですか、私がここで後藤田長官を呼んで院法改正の問題で質疑をやったんですが、あの議事録を見てもどうもあなたの言うことが鮮明になってこないんで、この問題についてちょっとひとつ質問繰り返しになるようですけれどもお聞きしておきたいと思うんです。  まず、藤森通達が出されて、検査院肩越し検査要請に対して事実上協力を得られなかったと、こういう例があるのかないのか。輸銀のこの検査の結果を見ると五十六年から六十年は一回も行っていないわけでございますけれども、それと関連して、どういうふうになっておるのか。いかがです。
  16. 大久保孟

    会計検査院長大久保孟君) 輸銀検査の実態につきましては後ほど担当局長から申しますが、我々といたしましては、輸銀に対しましても肩越し検査をするという建前と姿勢で臨んでいるわけでございまして、現在までそれはなかったと。しかし最近におきましてその事案が一件出ておりますので、後ほど局長の方から説明さしていただきます。  その点を踏まえまして、先般、佐藤委員からも院法改正についてはどうなんだというお話がございました。この点はちょっと繰り返すようで恐縮でございますが、この院法改正の問題につきましては、御承知のとおり、両院におきましてたび重なる両院での御議論、また御決議の趣旨から申しましても、また我々検査院といたしましては、検査を十分に行いたいという立場から申しましても、院法改正をしたいという立場は、改正案要綱内閣に送りました当時と現在変わっておりませんということを申し添えておきます。
  17. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 簡単にひとつお願いします。
  18. 小川一哉

    説明員小川一哉君) はい。  日本輸出入銀行に対する会計検査でございますけれども、その後の状況でございますけれども、本年の検査におきまして、製品輸入関係貸付先二件につきまして、輸出入銀行貸付先協力を得まして現品の確認を行いました。その際、一つ貸し付け先につきましては会社の資料による実地調査もしてございます。以上でございます。
  19. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 それでは別の角度から聞きますが、検査院肩越し検査では十分満足しておるものではない、これは六十一年三月二十日の決算答弁をしていますね、十分満足してないと。具体的にどのような点が満足できないんですか。
  20. 秋本勝彦

    説明員秋本勝彦君) 満足していないと申しますのは、やはり法律によって権限が付与されていないという点に満足していないということでございまして、現状検査執務執行上において格別支障のあるような具体的な事態というものは別段出ているわけではないのでございます。
  21. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 藤森通達では、検査院協力を求めた場合「当該機関は、これに応ずるものとする。」と、こういう表現になっていますね。応じなければならないとは書いてない。したがって、これは拒否する場合もありますよという意味にもとれる。この点についてはどういう理解ですか。
  22. 秋本勝彦

    説明員秋本勝彦君) 先生から御指摘ございますように、協力するものとするということでございまして、向こうが協力しない場合はどうするのかということでございますが、現実の運用といたしましては藤森通達に当てはまるような、つまり犯罪が発生して関係者犯罪の当事者であるとか、あるいは目的外使用といったようなことが具体的にある程度はっきり情報がつかめているというようなさなかにおいて、私どもがそういう融資先検査をするということになった場合に、まずもって合理的な理由がございませんので、拒否されるというようなことはないのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  23. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 ないのではないかというのは、ある意味じゃ善意の解釈でしょうがね。  そうしますと、そういう理解ならもう一つ聞いておきたいんですが、院法改正要綱藤森通達内容、これの実質的な相違点はどういうふうに理解しておるんですか。
  24. 秋本勝彦

    説明員秋本勝彦君) 前にもお答えしておると思いますが、融資先検査を行うという要請につきましては基本的には同じでございます。ただ、違いと申しますれば、法律による権限の行使という形ではなくして、藤森通達による検査の場合はあくまでも相手方の協力による検査である、その点が異なっているというふうに理解しております。
  25. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 であるならば、検査院長予算委員会答弁で七〇、八〇%はできるがという表現になっていますが、残りの分はどういうことなんですか。
  26. 秋本勝彦

    説明員秋本勝彦君) それは、つまり法律によって権限を付与されている検査が行える場合を  一〇〇%とした場合に、協力による検査というものの度合い、質的な割合というのはどの程度かなあということを七、八分は満足させてもらっていますという表現で当時お答えしたものであります。
  27. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 何かあなたたちの話を聞いておると、法律的に改正要綱のようにきちんとあればそれは言うことはないけれども、実質的には余り、さっきの表現では基本的に同じというような言い方になるんですが、そこら辺がどうもやっぱり僕は納得しないんですね。そういう、あなたの答弁にありますように、藤森通達が出てから、例えばこの院法を出した最大の要因は、ダグラス・グラマン事件ロッキード事件、そこに出ておる融資先全日空日商岩井、ここをきちっと調査するためには院法改正がなきゃならぬということで院法改正が出てきたわけですがね、再発防止という意味で。それがなぜ藤森通達が出されて直ちに日商岩井なり全日空というものを検査してないのか。そこら辺とも関連して私は疑問が吹っ切れぬのですがね。いかがですか、この点は。
  28. 秋本勝彦

    説明員秋本勝彦君) 当時の経緯から申し上げまして、当時大問題であったわけでございまして、検査院としても調査に入りたいということで希望しておったわけでございますけれども、当時はやはり藤森通達といったようなものもない時代でございまして、協力を拒否されたということであったわけでございます。しかし、現状もしそのようなことがあった場合に、この通達がある限りにおいては我々の調査協力していただけるものと考えているわけでございます。
  29. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そこが私は解せぬのですよ。この藤森通達では「当該機関は、これに応ずるものとする。」という表現になっておる。しなければならないと、応じなければならないとは書いてない。それが一つ。  もう一つの問題は、であるからあなたたちはやはり、再三答弁のように、改正案提出して八年になりますけれども、この改正案についてはあくまで提出時と同じ決意ですと、何とかしてこれを通してもらいたいと、これは変えておりませんと、終始そういう繰り返しをしておるわけです。しかし、先般私が決算委員長の際に中曽根総理とやりとりした中でも、総理は、藤森通達検査院検査状況を見て、そこに問題があるとすれば決断をしたいと、それまでは様子を見たいと、こういう答弁になっておるわけですから。検査院としては、やっぱりこれでは万一の場合には保障できないという確信があるなら、私は、院法改正を早急にひとつ国会で成立してもらいたいと、こういった積極的な動きがあっていいんじゃないかと思うんですが、いかがですか、そこら辺について。
  30. 大久保孟

    会計検査院長大久保孟君) たびたび佐藤委員からの御質問でございますが、我々は改正案要綱を出したときと立場は変わっておりません。ただ、現実には藤森通達等が出まして、その範囲で我々が検査を実行しておる際に、今までのところ特別な支障がないと。しかしながら、あくまで法律上の権限とそれから協力とは違います、先生のおっしゃるとおり。将来万一そういうことが拒否されるというような事態が起こればその時点で我々も考えていきたいと、こういうように考えております。
  31. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 先般のここの決算だったと思うんですが、竹下大蔵大臣、今自民党幹事長ですが、こういう答弁をしていますね。決算委員会決議がないということは大変ありがたいことで、したがって今後とも院法改正についてはないと考えておる、こういう答弁をしていますね。これに対して院長としてはどういうふうに対処しておるんですか。
  32. 大久保孟

    会計検査院長大久保孟君) 当時大蔵大臣がそう申されたと思いますが、我々としては先ほど申しましたとおり、藤森通達が出てからはさっきお話ししたとおりの実情でございますが、会計検査院といたしましては将来にわたって協力を得られるのではないかというふうには存じておりますが、万一協力が得られない場合にはその時点で我々は考えていきたいと。その点では大蔵大臣とは意見が違うかもわかりませんが、私はそう考えております。
  33. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 わかりました。  やっぱりこれは委員長にもお願いしておきたいと思うんですが、竹下大蔵大臣議事録を読むと、本院の決算委員会決議がなくなったから院法改正は今後ないと思います。こういう表現答弁をしておるわけですね。これは私は決算委員会に対する極めて挑戦的な言辞だと思うんで、そのためにはやはり今検査院長がああおっしゃっておるわけですから、私はやっぱり院法改正決議をこの委員会でもきちっとしていただいて、そしてこの藤森通達等によってみてもそこには限界があるわけですから、その点はひとつよろしく理事会の中で議論していただきたいと思いますが、いかがですか。
  34. 菅野久光

    委員長菅野久光君) 理事会においてこの問題について取り扱わさせていただきたいと思います。
  35. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 いいですね。  そこで若干内容が変わりますが、撚糸工連事件で一言お聞きしておきたいと思うんですが、昨日政治家被告に対する公判が始まったようです。検査院は、二月の決算委員会廃棄事業について年度末または新年度で厳重な検査を約束していますね。この結果はどうなりましたか。
  36. 小川一哉

    説明員小川一哉君) 中小企業事業団の設備共同廃棄事業に対する貸し付け検査につきましては、本年度検査におきまして各県に所在する産地組合傘下買い上げ企業先検査をいたしまして、その事業が適切に実施されているか、制度自体に問題はないのか、そういうふうな点につきまして九府県に所在します百二十一買い上げ先につきまして検査をいたしまして、その結果につきましては現在内部で鋭意検討中でございます。
  37. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 いつごろ発表できますか。
  38. 小川一哉

    説明員小川一哉君) 現在検査報告の作成中でございますので、検査報告に掲記するというふうな事態がございましたら、検査報告のその公表と同時に発表させていただくことになるかと思います。
  39. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 それを見て、ひとつまた質問させていただきます。  そこで、通産省がこのほどこの事件後に見直しを含めて改革案をまとめて関係法令を今度の国会に出したいと、こう言っておるんですが、検査院から見てこの改革案にどういう御見解を持っていますか。
  40. 小川一哉

    説明員小川一哉君) 現在通産省改革案につきまして、本年の検査の結果を踏まえましてその改革案を検討して対応してまいりたいと考えております。
  41. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 それでは、ちょっときょうそこら辺を具体的に聞きたかったんだけれども、まあいいでしょう、検査結果がまだまとまっていないようですから。  岡村さん久しぶりに会いましたね。  お二人がきのうの公判では起訴事実を全面否認なさっておる。なかなかしかし冒頭陳述を読むと生々しく具体的である。何か御見解がございますか。
  42. 岡村泰孝

    政府委員岡村泰孝君) 検察当局といたしましては、捜査の結果収集いたしました証拠に基づきまして、これを公判において十分立証するものと思っております。
  43. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 ひとつよく見守ってまいりましょう。  そこで、もう一つあなたにお聞きしておきたいんですが、平和相互銀行強制捜査、これはたしか同日選挙投票日だったですね。あれは当初は参議院選挙告示前にやる予定じゃなかったんですか。何かそこに圧力があったのかわかりませんが、結果を見ますと政治家には手が届かなかった、こういう結果に終わっておるようですが、これは三百四議席というのに関係がございますか。
  44. 岡村泰孝

    政府委員岡村泰孝君) 検察当局といたしましては、それまでの捜査の経過に照らしまして、いつ強制捜査に着手するのが相当であるかと、そういう立場から強制捜査の着手の時期を選択したわけでございますし、また、強制捜査に着手いたしました後、どういう処理を行うかということにつきましては、これまた捜査の結果収集いたしました証拠に基づいての判断でございまして、他からの影響によるものではなく、検察独自の立場での捜査の結果に基づきます判断処理でございます。
  45. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 いや私は、公式じゃございませんが、非公式に私が得た情報では、参議院選告示までに強制捜査が入るというふうに私は聞いておったものですから、そこでどうだろうと、何かあったんじゃないかという気がしましたから尋ねたんですが、政治家に行かなかった理由はどういうことですか。
  46. 岡村泰孝

    政府委員岡村泰孝君) 検察当局といたしましては、証拠に基づいて判断するわけでございまして、証拠のある限りにおいては違法行為が認められれば捜査を行い、また訴追相当と認められるものにつきましては起訴する、こういうことでやっておるわけでございまして、ただいま御質問の点につきましては、やはりそういう証拠がなかったと、こういうふうに言わざるを得ないものと思っております。
  47. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 まあいいでしょう、きょうは時間がありませんからまたひとつやらしていただきましょう。  次に、警察庁見えていますか。  マルコス疑惑でいろいろ議論があったわけですが、それを象徴するようにJICAの腐敗がだんだん拡大しておりますね。これは捜査の順序、手順、いろいろあるんでしょうけれども現状はいかがですか。
  48. 古川定昭

    説明員(古川定昭君) お尋ねの件につきまして御説明申し上げます。  その件につきましては警視庁におきまして、これまでに国際協力事業団職員二名と会社役員二名を贈収賄容疑で逮捕して現在捜査中でございますが、概要について申し上げますと、まず本年八月の十三日に国際協力事業団が発注しましたモロッコ王国ウジュダ州地下水・農村開発計画実施調査の指名業者選定等に関して便宜を図ってもらったことの謝礼として、当該実施調査を請け負った会社から現金を受け取ったという贈収賄容疑で、同事業団の幹部職員一名と請負会社の専務一名の計二名を逮捕したわけでございます。続きまして九月の五日になりまして、同事業団が発注したパキスタン国バルチスタン州地下水かんがい開発計画にかかる実施調査の指名業者選定等に関しまして、同様の趣旨で現金を受け取ったという贈収賄容疑で、さきに逮捕しました同事業団幹部職員を再逮捕するとともに、当該実施調査を請け負った会社の営業副本部長兼運行部長一名を逮捕したものでございます。さらに十月二日になりまして、同事業団が発注したフィリピン共和国リオチバ鉱山関連インフラ調査にかかる実施調査業務に関しまして、プロポーザル、これは技術提案書というそうですが、これの企画、作成について便宜を図ってもらったことの謝礼としまして、当該実施調査を請け負った会社等から現金を受け取ったという贈収賄容疑で同事業団の幹部職員一名を逮捕するとともに、さきに逮捕しました請負会社の専務一名を再逮捕し、捜査の上検察庁に送致いたしまして、事案につきましてはなお引き続き捜査中でございます。  以上でございます。
  49. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 これは岡村さん、法務省も起訴に踏み切ったようですね。で、美谷島、木下という名前が挙がっておりますが、これは何ですか課長代理というのですかねそのポストは。まあこういう、この援助の仕組みからいって、また決済ルールから見て課長代理どころだけで済むような問題じゃないように私は思うんですがね。もっと上層部に関連が出てくるんじゃないかというような感じもしておるんですがこれはいかがですか。
  50. 古川定昭

    説明員(古川定昭君) ただいま御質問がありました件につきましては、警視庁において鋭意捜査をいたしまして、その結果ただいま申し上げましたような事案について検察庁に送致したということでございまして、なおいわゆるこのJICA汚職といいますか、この件につきましては、現在事案については捜査中ということでございます。
  51. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 まあ捜査中でそれ以上なかなか言えないのじゃないかということだと思うんですが。  それでは別の問題でちょっとお伺いしておきたいんですかね。このJICAの監督の立場にある外務省経済協力局元課長の大手コンサルタント会社B社から過剰接待を受けて、裏づけがとれただけでも約二十回、百十数万円と、こういう新聞報道があるわけですが、これはいかがですか。
  52. 古川定昭

    説明員(古川定昭君) 今先生が申されたその件についての報道があったということは承知いたしておりますが、この事案全体につきまして捜査中という段階でございますので、個々のことについての内容捜査にかかわることでございますので答弁を差し控えさしていただきたいと、こう思う次第でございます。
  53. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 このB社というのは、パシフィック・コンサルタンツ・インターナショナル社のことですか。
  54. 古川定昭

    説明員(古川定昭君) 先ほど申し上げましたような状況で、その点につきましても送致しました事案は、先ほど申し上げましたこと以上については御答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  55. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 会社の名前も言えませんか、B社で。いかがですか。違うんですか。違うなら違うと言ってください。
  56. 古川定昭

    説明員(古川定昭君) やはりまことに恐縮ですが、差し控えさせていただきたいと思います。
  57. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 しかし、これは本人の方はちゃんと認めておるじゃないですか。国際協力課長時代に業者から接待を受けるのは、これは私だけでなくて同僚も皆やっておることでごく自然なものである。その課がJICAの主管課、補助国からの援助要求を大使館を通じて受け取り、援助プロジェクトの案件判断してJICAに指示、業務の監査をする。これは外務省、そういう役割でしょう。どうなんですか。
  58. 英正道

    政府委員(英正道君) 報道におきましては、実名は出ておりませんけれども、ほぼ特定できますので、早速本人に連絡をとって事情聴取をしたことがございます。新聞報道のことでございますけれども、本人から聴取したところでは業者と飲食をともにしたことはあるけれども、その交際は公務員としての良識の範囲内のことであって、何らやましいことはないと、こう述べていた次第でございます。我々としてもそれを信じたいと、こういうふうに思っております。
  59. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 いや、経済協力課というのは私が言ったような内容の課でしょう。いかがですか、JICAに対しては。
  60. 英正道

    政府委員(英正道君) 開発調査におきましては、今委員の仰せられたようにJICAと連絡をとりながらやっていく課でございます。
  61. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そうすれば警察庁、何か新聞報道によりますと職務権限があいまいな点があるとかという、そこで慎重に捜査しておると。こういうような書き方になっていますわね。しかしこれは今英局長の説明どおり聞きますと、これはJICAに対して主管課で、そして事実上プロジェクトの案件判断してJICAに指示、業務の監督をするという立場にある課長のときに起こった事件でありますから、職務権限は極めてあいまいじゃないじゃないですか。どうですか。
  62. 英正道

    政府委員(英正道君) 舌足らずかとも存じますので、もう少し正確に御答弁させていただきたいと思いますが、外務省は開発途上国からの外交ルートを通じた要請を受けまして、関係の省庁とJICAとの意見を聞きながら当該要請案件の相手国経済社会開発計画に占める意義、調査実施に伴う技術移転効果、調査後の事業実施の可能性などの観点から検討を行って、さらに外交上の配慮をも加えて政府ベースの協力として当該調査を実施すべきか否かについて総合的に判断をする。そういうことで開発調査案件の選定を行っているわけでございます。  JICAは政府ベースの技術協力の実施機関といたしまして外務省が選定した開発調査案件を実施するために、所要の手続により民間コンサルタントなどを選定し調査業務を委託すると、調査の成果品たる報告書はJICAの責任と名のもとに相手国政府に提出されると、こういうことになっております。
  63. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 警察の方は。
  64. 古川定昭

    説明員(古川定昭君) お尋ねのことにつきましては、具体的な捜査内容にわたる事項と判断されますので、この場でお答えすることは差し控えさせていただきたい、こう考えております。
  65. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 それでは、具体的な点になると捜査捜査ということですが、裏づけ調査をやった結果、二十件、百数十万円の供応を受けていることは警察庁では把握して、そして、そのことについて本人には確認をしたのですか、してないんですか、いかがですか。
  66. 古川定昭

    説明員(古川定昭君) 恐らく先生の御質問は新聞の内容であろうかと思いますが、そのような点については私どもとしては警視庁から正式な報告、具体的にしかも正式に報告を受けておりませんので、どのような経過でそのような記事が書かれたかということはちょっと承知しておりませんので、ちょっとお答えしがたいところでございます。まことに恐縮でございます。
  67. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 ちょっとそれなら矛先を変えましょうかね。  検査院にお聞きしますが、JICAの何というんですか、検査、こういう点についてはどの程度の検査をやられておるんですか。
  68. 三原英孝

    説明員(三原英孝君) 会計検査院といたしましては、毎年JICAの本部に参りまして、その際、ただいまのコンサルタントに関する契約につきましても、摘出になりますが、検査を実施いたしてございます。
  69. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 こういう事件が起こっておるわけですから、僕はもっと綿密にやっぱり検査をしていくべきじゃないかと思うんです。特に、今の厳しい財政難の折にもかかわらず経済協力関係というのは聖域みたいに飛躍的に伸びておる。もう一兆円を超えておる。僕はそういう意味では、援助そのものについては僕たちもやっぱり賛成なんですけれども、しかしこういう不正が起こってくると、僕はやっぱり国民の皆さんから見て拒否反応が起こってくると思う。そういう意味で、ここら辺の検査については検査院としてもっと腰を入れて徹底的にやるべきだ。いかがですか。
  70. 三原英孝

    説明員(三原英孝君) 先生御指摘の趣旨を踏まえまして、今後とも厳正にこの種の検査をやってまいりたいと考えております。
  71. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そこで外務省にお聞きしますが、さっき警察は捜査中で名前を言わなかったわけですが、パシフィック・コンサルタンツ・インターナショナルというのを調べてみますと、インドネシア、フィリピン、マレー、北イエメン、サウジアラビア、それからケニア、セネガル、ソウル、バンコク、ドミニカ、オーマン、イラク、タイ、シンガポール、こういった国々に対して広範にわたって事業を取得してやっていますね。それだけに、経済援助の仕組みを見ると、プロジェクトについては外務省の方で建前としてはその国の援助国の要請に基づいてやるという仕組みになっていますけれども、実態は、マルコス疑惑の中にも出てきたように、言いかえれば、日本の業者が積極的にプロジェクトの必要性を強調して、そうしてその国に日本に対する援助要請をさせて、それを今度は日本の国で確定して、言うなら、日本の援助の仕組みを見ると、プロジェクトの仕組みを見ると、ほとんど日本の企業のひとり回しというんですかね、それに形でセクションつけておるというだけであって、事実上はこういう事例というものが当然起こってくる要素を持っておるわけですね。やはり、この経済協力課なりJICAなり、そこら辺の承認、連携がなければできない仕組みになっている。こういったことで起こっておるとすれば、私は、氷山の一角のように、警察庁が今二つの事例を挙げておるんですけれども、ほとんどにわたってこういうことがやられておるんじゃないかという疑惑を持たざるを得ない。そういう意味で、この問題についてどういう認識をなさっておるのか。どういうふうな対応をしようとしておるのか。一説聞きますと、マルコス疑惑の追及のときには、名前、企業名の公表も渋った外務省が、公表すべきだとか、いろいろこう出ておりますかね。ここら辺に対する外務省の対応の措置について、もし用意があればお答えお願いしておきたいと思うんですが、いかがですか。
  72. 英正道

    政府委員(英正道君) 佐藤委員の御質問の範囲が非常に広範でございまして、ちょっと私の、要点と思う点だけに当面絞ってお答えさしていただこうと思いますが、確かに仰せられるように、日本の経済協力の仕組みというものは、援助案件の発掘という点につきましては、民間のやはり活力と申しますか、そういう活動というものをある意味では前提としているという面がございます。援助要請のなされる前の段階に、相手国の政府には、相手国の政府が援助要請をするに当たっていろいろな方面からの意見を聞きながら行っているということはあろうかと思います、国際機関でありますとか、いろいろあると思いますが。  仕組みといたしましては、そういう要請を受けた後、間違いが起こらないという形の仕組みで対応してきておりますので、確かに今回の事件の結果そういう仕組みについても問題があるのではないかという心配、及び、経済協力一般について、今委員は氷山の一角と言われましたけれども、そういう信頼感が揺らぐというような結果になっているということは確かに非常に大変なことであるというふうに受けとめております。二十数年、三十年にわたる経済協力をやってきているわけでございまして、今回のようなことはもちろん初めてでございますけれども、それなりに仕組みというものを考えて、間違いがないようにということで、適正、効果的な実施ということに図ってきております。しかし、さらに改善する余地がある場合には改善したいということで、いろいろ今検討をしております。特にJICAの今回の不祥事が起きましてから、倉成大臣の強い御指示もございまして、事業団法に基づく改善策の検討命令というのも出して、今改善策の検討をしているところでございます。そういうことで、仕組みについても、できる限り一層の改善を図るということで今鋭意やっておりますので、ひとつ御理解を賜わりたいと思います。
  73. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 捜査中の案件ですから、これ以上私はきょうは追及するのはやめますが、これはひとつ検査院長にお願いしておきたいと思うんですがね。  玉置総務長官は、この事件を踏まえて、開発援助の行政監察を年度内に実施するということを表明なさっておる。今、検査院のこの問題に対する、こういう経済援助に関する状況を聞いてみると、余り熱心ではない、余りやられてない、こういう感じを受けましたが、私は、むしろ検査院こそこういった問題について積極的にやっていくことが、こういう不正を司法の場にさらすことなくきちんとした援助体制をつくっていく唯一の問題だと思うんですね。撚糸工連でもそうでございますが、私は、そういう専門的な検査立場から見て、やはりもう一つは、今度は再発防止を含めた仕組み、そういったところまで踏み込んで、意見書なりそういうものを関係省庁に出していく、こういうこともあっていいんじゃないかと思うんですね。そういう意味検査院長の御決意というか見解をお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。
  74. 大久保孟

    会計検査院長大久保孟君) お答えいたします。  海外援助に関しましては毎年多額の資金が提供されておりまして、我々も非常に深い関心を持っております。特に今年度いろいろ問題が生じました点にかんがみまして、現在、四局並びに五局で担当しております部門を強化しまして、官房から人を出して強化してプロジェクトチームをつくって、現在検社に当たっております。佐藤先生のおっしゃいますように、この点についてはさらに一層充実さしていきたい、検査してまいりたい、こういうように考えておるものでございます。
  75. 及川順郎

    及川順郎君 私は、検査院の活動につきましてはかねてから国民のとうとい税金をむだなく効率よく使っていくという視点から、その活動にかねがね敬意を表しておりまして、これからの質問もその意味におきましては、この検査院活動を充実させるという視点から何点か質問さしていただきたいと思っておりますので、率直にお答えいただきたいと思います。  まず、ただいまも出ておりましたけれども院法改正に関しまして、これまでの論議の中で出ておりますように、藤森通達によって、肩越し検査が行われて何ら支障はない、一方ではそういう言い方をしている。それではもう検査院として、院法改正は必要ないんではないかという、こういう意見もこれは考えられる。しかし、そういう視点からのことにつきましては、その必要性についてはこれはいささかも変わっていない。この辺の対応の仕方が若干ニュアンスとして検査院のこの本当の気持ちがどの辺にあるのかというところに疑問を抱かざるを得ないという状況が出てくるんじゃないか。先ほど、この決算委員会として、理事会扱いとして院法改正に対する決議をというようなことで、まだ今後論点を残しておるものですから、この辺の考え方について院長にまず、本音のところを御確認をしておきたいと思います。
  76. 大久保孟

    会計検査院長大久保孟君) お答えいたします。  この点につきましては、先ほど佐藤先生からの御質問に対して、私としては割にはっきりした考え方を申し上げたつもりでおります。現実藤森通達が出ましてから、政府関係の融資機関が非常に協力的になったということも事実でございまして、現実に今非常に困るという事態にはなっておりません。しかし、我々といたしましては、あくまで法律上の権限協力とは違いますものですから、我々が改正案内閣に送りました当時と現在と、院法改正についての考え方は変わっていない、これが本音でございます。
  77. 及川順郎

    及川順郎君 今の考え方わかりました。  それで、逆に今度は院法改正に反対する理由ですけれども、今までずっと出てきている論点の中を整理してみますと、結局、自由な企業活動に対する公権力の過剰介入になるおそれがあるんじゃないか、こういうことが非常に視点として述べられているわけですね。ただし、国民の税金とか零細な預貯金が、これが原資となっているそのお金が安い低利で貸し出しをされるわけですから、少なくとも資金の借り入れが受け入れられるという、こういう状況を考えますと、やはり多少の制約があってもこれは甘受しなければならないんではないか、それは当然ではないか。何でも使ってくださいという性質のお金でない限り、きちんとした目的をこれをチェックする公的機関というこの機能というのは非常に大事であり、当然のこれは義務じゃないかという、こういう感じがするわけですね。  そういう観点から考えますと、今度は逆に融資をする側と融資を受ける側の論理、こういう両方から導き出される考え方としまして、両論、両方の言い分があると思いますけれども会計検査院として、この政策金融が有効に機能しなくなるという、こういう視点に対する主張に対しての所見をまず承っておきたいと思うんです。
  78. 秋本勝彦

    説明員秋本勝彦君) お答えいたします。  政策金融が有効に機能しなくなるんではないかと、検査院検査権限化されることによって、そういうおそれがあるんだというふうに私ども言われてきているわけでございますけれども会計検査院としては、改正案の要綱におきまして、政府出資法人に対しまして実地検査をする場合につきましては、これをしなければ検査の目的が達せられないという場合に限ってそういう検査はやるんだと、それからまた、じかに私どもだけが民間の企業あるいは融資先に赴きまして検査をするということではなくして、当然融資機関の人に必ず立ち会ってもらう、そういう検査をするんだとか、あるいはどこの融資先を実際に調査するかというような場合も、調査官の判断にゆだねるというのではなくして、やはり検査会議で議決をいただいて、それならばこの先を見たらいいではないかというような歯どめを考えたりいたしまして、いずれにしても権限化された場合には、政策金融が有効に機能しなくなるようなことのないように、十分慎重に対応するように配慮して法案要綱なども考えているわけでございますので、この点については、私どもとしては、私どものようなやり方でやらせていただく限りにおいては、政策金融が有効に機能しなくなるとか、あるいは公権力の過剰な民間に対する介入であるというような点は防げるのではないかという所見を持っております。
  79. 及川順郎

    及川順郎君 質問を前へ進めさせていただきます。  前の翁通達の時代では、北海道東北開発公庫それから日本開発銀行、日本輸出入銀行において検査院貸付先検査まで必要と考えて協力を求めたと。しかし、この三機関については肩越し検査協力は余り見られなかった。今度の藤森通達でどれだけの実効が上げられたかという、これが一つのポイントになるわけですけれども、ちょっと数字が違っておりましたら訂正をしていただきたいと思いますけれども、六十年度中を見てみますと、北東公庫が七件、開銀が三件、輸銀はゼロという、こういう状況ですね。輸銀につきましては、インボイスの確認が可能で、また輸出については融資先検査は特別の場合以外は原則としてやっていない、本店の検査で一応済んでいる、こういうことなんですね。とりようによりますと、これは輸銀については融資先まで調べる必要がまるでないように聞こえるわけです。やはり輸銀融資先会計検査院が直接検査する、そういう検査院の手によってそれをチェックしていくことによって、かつて起きたようなロッキード事件等も解明できるというような、こういうものでなければいけないんじゃないかと思うんですけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  80. 小川一哉

    説明員小川一哉君) 日本輸出入銀行融資先につきましても、他の政府系の金融機関の融資先と同様に、いわゆる肩越し検査の方法により検査をすることができまして、それからまたそういうふうな気持ちで検査をしております。  ただしかし、従来、昨年までは本店、支店の検査の結果その必要がなかったというようなことでございまして、現に本年の検査におきましては、製品輸入関係の金融につきまして、先ほど佐藤先生の御質問にもお答えをしましたが、輸出入銀行貸付先協力を得まして、二件の実地調査、現品の確認をしております。そして、そのうち一件につきましては、会社資料調査をしております。  以上でございます。
  81. 及川順郎

    及川順郎君 次に、会計検査院活動に関する質問に移りたいと思いますけれども院法の第二十三条の任意的検査事項には内閣の請求があるとき検査するとされているが、これまで内閣から請求のあったことがございますか。
  82. 秋本勝彦

    説明員秋本勝彦君) 内閣から請求のあったことはございません。
  83. 及川順郎

    及川順郎君 それからもう一点。第二十七条によりますと、会計経理に関し、会計に関係がある犯罪が発覚したとき等は、本属長官等は直ちにその旨を会計検査院に通告しなければならない、このようになっておりますけれども、これまでこのような通告があったでしょうか、最近のもので結構でございますけれども
  84. 秋本勝彦

    説明員秋本勝彦君) 会計経理関係の事故につきまして、本院に対する報告としてはどういうものがあるかということでございますが、先生お尋ねの院法二十七条のほかに、会計法的四十二条、あるいは予算執行職員等の責任に関する法律第四条第四項、あるいは物品管理法第三十二条によるもの、こういうもので多数の事故報告が検査院現実に出てきておりまして、一括してこれらをお答えいたしますと、昨年十一月から今月までの間に受理いたしました件数は一方二千四百八十五件であります。そして、もっともこの中には、郵便局の窓口で切手等が損傷したというような報告、これが約八千二百件ほど含まれているというようなこともちょっとお断りしておくわけでございますが、つまりそのように多数の報告、件数があるわけでございます。  また、しからば主な事例でございますが、主なものといたしましては、例えば現金のケースとしては、東京郵政局管内京橋郵便局で出納員何々が定額郵便貯金の払戻金等を五千七百五十七万余円領得した事態とか、あるいは国有財産につきましては、海上自衛隊におきまして、訓練中の航空機一機二十一億円余りが墜落、海没した事態とか、あるいは物品につきましては、海上自衛隊におきまして、高速標的機一機一億一千八百七十万が性能試験実施中に墜落、海没したと、そういうような報告が来ているわけでございます。
  85. 及川順郎

    及川順郎君 国内活動を通じましてそれを充実させていくと、こういうためにはやっぱり会計検査院のこの今の機構を経理的にもあるいは人員的にも強化していかなければならぬ、こういう観点になってくるわけでございますけれども、費用対効果の問題等については、それに比例していくという状況にはならないわけですけれども検査院としてこの点について現状のスタッフの状況でどういう認識を持っておられるか。また、人員、検査旅費等以外に、国内的に検査活動を行う上での制約というものがほかにもあるのかという点、あわせてお伺いしておきたいと思います。
  86. 秋本勝彦

    説明員秋本勝彦君) 会計検査院の機能の充実のためには、日ごろ限られた人員、予算の中でいろいろと努力しているわけでございます。人員等につきましても、厳しい行革下ではございますが、毎年一ないし二名といったような増員も認めていただいておりましたり、あるいは検査を効率化するというような見地から、コンピューターなどを導入いたしまして検査資料管理あるいはその利用の効率化といったようなことに心がけたり、あるいは職員の資質の向上というようなことを考えまして、高度の研修を実施しているというようなことで補ってきているわけでございます。また、現在国内における検査の中で人員、予算面といったようなもののほかに何か支障のことはあるかと申す御質問でございましたが、格別そのようなことはございません。
  87. 及川順郎

    及川順郎君 続いて海外援助の関係質問をしたいと思います。  例えばフィリピンに対する海外援助で検査院のこれまでの国会内での質疑、やりとりを見ておりますと、五十三年と五十五年に海外調査を実施したと、現地では相手国所在の我が国関係機関から説明を受けるなどして援助の効果が発揮されているかどうか、計画どおり完成しているかどうか、有効に使われているかどうかを調査してきたと。しかし、問題を指摘するまでに至らなかったと、こういうぐあいに言っております。これは額面どおりそのまますっと読みますと、これは一生懸命海外についても調査をし、内容を見てきていると、こういうぐあいにとれるわけですね。ところが、一方の委員会答弁を見ておりますと、現実に向こうの現地へ入って検査することはできませんと。私ども資金の流れにつきましては、現在のところ見る手だてがないと。ちょっと見ますと正反対な回答をなさっているように受けとめるわけです。ただし、よく注意深く見てみますと、調査という考え方と、検査というものの考え方ですね、これを的確に使い分けておられるようにも見えるわけですけれども、この点についての、院長、考え方いかがでしょうか。
  88. 秋本勝彦

    説明員秋本勝彦君) 私ども意識して使っておりますのは、検査というのは、権限があってやる方を検査と申しておりまして、それから海外調査で現地の事業の実施状況などを見るときは、これは相手方の事業実施機関、外国の機関でございますから、これに対して私ども検査権限がないわけでございますので、現地においては帳簿等ももちろん拝見するわけにもいかないわけでございます。こういう場合は現地の調査というようなことで、調査という言葉を使っておるわけでございます。
  89. 及川順郎

    及川順郎君 主権が及ばないというこの考え方ですけれども、確かに現行法からいえばそういう回答になろうかと思うんですけれども、やはりこれだけ対外援助に対して疑惑が出てから国民の関心が集まっておりますし、また会計検査院の活動に対しての期待があるわけですから、むしろ検査院としてはこの国民の期待にこたえるために、例えば援助のための交換公文やそういうものを協定の中に盛り込んで検査できるようにしてほしいということを、これは内閣なり行政府に要請をして積極的な姿勢を示していくべきではないか、こういうことを強く私は要望を申し上げたいんですけれどもいかがでしょうか。
  90. 大久保孟

    会計検査院長大久保孟君) お答えいたします。  果たして条約といいますか交換公文というあれですか、そういった両国間の合意の中に日本の国の検査院権限が外国にも及ぶと、そういうものを盛り込むかどうかということは一つの国の外交政策上の問題と考えますので、その点については我々としてはコメントを差し控えたい、こういうふうに考えております。
  91. 及川順郎

    及川順郎君 現状ではやむを得ないと思いますね。  それでは次に移りたいと思います。  指摘事項の事後効果に関する問題ですけれども会計検査院法の二十条二項には会計検査院の職務として「常時会計検査を行い、会計経理を監督し、その適正を期し、且つ、是正を図る。」と定めておりますね。その最後の「是正を図る。」という意味をどのように認識しておられるか、この点をまず最初に伺っておきたいと思います。
  92. 秋本勝彦

    説明員秋本勝彦君) 検査の結果発見された会計経理の被疑事項につきましては、まずその原状が回復されなければならないということでございます。それからまた、二度と将来そういう問題が繰り返されないという改善の方途、これは発生原因等を調べることによって実現していかなければならない。そういう二度と被疑が生じないような改善の方途を講ずるというような意味合いかと存じますが。
  93. 及川順郎

    及川順郎君 私も二度とそのような事態が繰り返されないということに非常に大事なポイントがあるというぐあいに思うわけですけれども、過去の事例を見ますとある省に対して会計検査院が指摘したという事例が、必ずしもその後に生かされていないという例がこれまで見受けるわけです。一つの考え方ですけれども一つの事例を検査報告の中で指摘をする、それを他の省庁では参考にして自分のところにも同じような指摘がないかどうか自発的に点検してほしいという考え方がベースにあると思うんですけれども、実態はそこまでですと、それ以後の努力はやっぱり行政府の自助努力に任せるという感じになってくると思うんですね。行政側としましても各省庁の経理職員の研修等によって周知徹底を図っていくという姿勢を示しておるわけですけれども、まあ具体的な数字等は時間の関係で割愛いたしますけれども、過去に契約電力の事例やあるいは道路工事の指摘のように、一省庁等で指摘されたことが翌年あるいはまたその翌年に続いて同じようなことが指摘されているという事例が現実にあるわけですよ。  そうしますと、行政側の自発的是正、自助努力に任せるということで済まされない部分が出てくるんではないか。具体的にもございます。例えば首部高速道路公団の工事において不経済などの指摘があった。同じような道路工事をやっている建設省直轄工事や日本道路公団、阪神高速道路公団等に同じ事態がありはしないか。こういう普通常識からいうとそういうことがすっと意識として働く。その場合に例えば通知を出して、同じようなそういう部門ですから点検を促すというようなことができないものかどうなのか。こういう形で現状よりも一歩進めた形の会計検査院の活動というものが考えられないだろうか。このように思うんですけれども、この点の考え方についてはいかがでしょうか。
  94. 秋本勝彦

    説明員秋本勝彦君) 先生の御指摘、まことにごもっともでございまして、私どもといたしましてもかねがね検査報告を活用していただくように各省庁に働きかけているところでございます。たとえ自分の省庁の指摘がなくても、自分の省庁の同じような守備範囲のところに同じような事態がないか、もって他山の石とせよというまさにそういうところでございまして、そのようにぜひとも検査報告が活用されるということを期待しておりまして、そのためには私どもといたしましても具体的に、場合によっては都道府県あるいは市町村などにも赴きまして、検査報告というものが一体どのくらい読まれているかというような調査もいたしましたり、その節ぜひ読んでくださいというようなこともお願いしてまいりましたりいたしまして、検査報告の活用ということにまず努めております。  そのほかにやはり先生おっしゃいましたように、都道府県の事務職員の研修とかあるいは国の内部監査機関の職員等を集めた研修とかいうことで、そういう機会をかりまして大いに検査報件を普及するように努力したり、あるいは私どもが逆に講師として赴きまして先様の方の講習会でそういうこともやっているというようなことでございまして、あらゆる機会をとらえましてこれからもそういうふうに実現させていただきたいというふうに思っています。
  95. 及川順郎

    及川順郎君 行政サイドに対する考え方はわかりましたけれども、一番大事なことは納税者である国民に対してどのように是正改善措置についての周知徹底をしていくかということが大事な要素になろうかと思うんですけれども、この辺に対する考え力をこの点について確認をしておきたいと思います。
  96. 秋本勝彦

    説明員秋本勝彦君) この点につきましても全く私どもは同感でございまして、非常に難しい、わかりにくいという評判のある検査報告でございますが、これを少しでもわかりやすくするという形で「会計検査のあらまし」といったようなものもこしらえまして、広く市町村等にまでお配りするように努めたりいたしまして、それからその際には当該年度検査の指摘事項のみならず検査院の仕事あるいは検査院の機構あるいは検査院の活動状況といったようなものもあわせてお知りいただくように、広報ということには大いに現在意を注いでおるところでございまして、広報室あるいは広報室長といったようなものも設置していかなければならないというようにこの方面に力を入れているところでございます。
  97. 及川順郎

    及川順郎君 各自治体で広報を出しておりますね。こういうところにもそういうものを載せるというような、そういうものを載せる方向で指導していくというような、あるいはお願いをしていくというような考え方ございますか。
  98. 秋本勝彦

    説明員秋本勝彦君) 機会があればそういうものも使いたいと思いますし、それから現在でもやっていただいているのは「フォト」という雑誌がございますけれども、グラビア誌がございますけれども、あれなどにも再三私ども検査活動の記事を載せていただいているというようなこともやっております。
  99. 及川順郎

    及川順郎君 施行規則に関して若干質問をさせていただきたいと思うんですが、施行規則の第四章第十五条にこの内容的な問題が載せられておりますけれども、その中に、条文の最後のくだりのところに、「その他必要と認める事項」についてという、こういうくだりがございますね。この条文の「その他必要と認める事項」というものに対してどのような認識をお持ちでいらっしゃるか。あるいはまた、これまでの具体例を織りまぜてちょっと所見を伺いたいと思うんですけれども
  100. 秋本勝彦

    説明員秋本勝彦君) 検査報告には不当事項等四種類の指摘事項があるわけでございます。その中で、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項、いわゆる処置済み事項と私ども申しております。その事項と、それから特に掲記を要すると認めた事項、これはいわゆる特記事項と申しておりますが、この二つが今先生おっしゃいました施行規則第十五条に言うところの「その他必要と認める事項」として掲記している事項でございます。  それから、具体的な事例というお話でございますが、例えば五十九年度検査報告での処置済み事項としては、一例でございますが、首都高速道路公団の補償の算定方法が取引慣行等の実態に即していないことから、補償額が過大になっているので改善させた件、こういうものなど十八件がございます。また特記事項としては、一例を申し上げますと、建設省の都市施設等の整備事業は休止するなどして、多額の事業賞の投資効果が発現していない件、こういうものなど二件を掲記している次第でございます。
  101. 及川順郎

    及川順郎君 その趣旨の中で、現行法から見ますと、その趣旨というのは、不正、不当、違法などという、いわばいけない面を指摘してきているというのが特徴なんです。  ここで発想を少し変えまして、いい面を少し指摘するという、これは実際できる相談じゃないかもしれませんけれども、専門家が調査活動をしていく中において、見ている中で、その中で出たものの中にでも、各省庁にこれを敷衍して、国民のとうとい税金を節約し効率よく使うというようなそういう視点があるんではないか。この特記事項の中に、「その他必要と認める事項」というものが、その中には指摘すべき事項ということがありますけれども、いい面をこの中に考えてはいけないという内容はないわけでございまして、この点に対する所見はいかがでございましょう。
  102. 秋本勝彦

    説明員秋本勝彦君) 検査報告院法の二十九条によって作成しなければならないということでございまして、そこに記載事項も列記されているわけでございます。そして片一方で、施行規則で「その他必要と認める事項」ということで書いている事項が、ただいま申し上げました特記事項等でございます。でございますので、先生おっしゃるようなよい面を二十九条で作成する、検査報告の中に掲記するというのは、やはりちょっとなじまないというふうに考えられます。ただ検査院は、先ほどお話もございましたように、検査報告以外にも一種の業務報告として検査のあらましといったようなものも発行しておりますので、そういうものの中であるいは触れられる機会もあろうかとは思います。  ただ、しかし、よい点と申しましても、よいというためにはそれなりに私ども十分に何がどういうふうによいのかというような調査もしなければならないのかなという感じもございますと、そうなりますと肝心の方の業務の方が侵されはしないかというようなことで、お話はよくわかるんでございますが、それだけのちょっと余裕がないというような感じでございます。
  103. 及川順郎

    及川順郎君 もう一点、その中に出ておりました、五十年度検査報告から、会計検査院で出しております指摘事項の範囲に入らないもので、予算執行の効果が上がっていなかったり、あるいはまた事業の経営や事務の運営に問題があったりする事態につきまして特に記載を、掲記を必要とすると認めた事項という表題でこれが始まっているわけですけれども、既に十年を経過いたしまして、当初よりは、年次別に見てみますと、この事項が少なくなってきているやに見受けるわけですけれども、今までの活動を通じまして会計検査院自身のこの点に対する所見はいかがでしょうか。
  104. 秋本勝彦

    説明員秋本勝彦君) 特に掲記を要すると認めた事項でございますけれども、これは、今先生お話にございましたように、予算執行の効果発現が遅延していたり、あるいは事業運営が非常に悪化しているなど、そういう事態でございます。そして、その原因は当局者の責任追及ということでは済まないのであって、地元住民の反対といったような社会的なあるいは政治的な要因が介在している、このために不当事項あるいは処置要求というものとしてはなじまない、そういうものについて事業効果あるいは事業運営の見地からその事実を検査報告に掲記いたしまして、問題を広く提起いたしまして、国会を初めあるいは国民各層の御論議をいただいて、問題解決の道を探っていただこうという趣旨で、昭和五十年度検査報告から掲記しておりまして、今までに掲記いたしましたものは四十四件の多きに上っておるわけでございます。そして最近は少ないではないかということでございますが、ある意味ではそういった根深い問題を掘り起こしてきているために、そういう問題が減少しているということもあろうかと思います。  それから、このやり方についての所見はいかがかということでございますが、なかなか事態の進展、解決が難しい問題でありましても、私ども検査報告に掲記したことをきっかけといたしまして、それなりにかなり改善の跡が著しいものも多数見受けられますので、このような指摘は今後とも続けていかなければならない、重点を置いていかなければならないというふうに考えております。
  105. 及川順郎

    及川順郎君 今までの特記事項の事例を見ておりますと、かなり複雑な要素が絡み合って、なかなかこれは短期的には解決ができないものも種類によってはあると思うんですね。今まで、代表的な政策的な絡みの中という、こういう点から考えますと、「むつ」につきましては、五十年度、五十七年度二度にわたって指摘をされている。こういう観点からいたしますと、日本鉄道建設公団が行っている青函トンネル、これは、非常に極論的に言いますと、むしろ将来を考えた場合今埋めてしまった方が赤字が出ないで済むんじゃないかというような、そんな暴論まで出ている、あるいは極論まで出ているという、こういう状況がある。あるいは本四架橋の状況等につきまして見てみますと、既に時代背景の推移の中で片一方の鳴門大橋の方は、これは新幹線建設、これを前提として立てられている。ところが解除になりまして、工事が今進んでおります明石海峡大橋、これは新幹線建設を中止している。淡路島の四国寄りの方は新幹線の部分をちゃんと入れて建設をしている。こっちの兵庫から行く方は新幹線の部分が入ってない。確かにこれは、五十七年度のこの価格で比較いたしますと一千三百四十億ぐらい少なくなるという、こういうことで、この新幹線並軌というものはこれは工事の中で削られたわけですけれども、これなんかは結果的に見てみますと大変なこれはむだ遣いじゃないか。これこそ私は会計検査院の特記事項に当たるんじゃないかというぐあいに思うわけですけれども、経済自体が、日本の先行き非常に厳しい状況であるだけに、かつてのどんどん開発していくという上り坂のときの大型プロジェクトが見直されるという、こういう事態になっているときに、この点に対する会計検査院の活動、姿勢というものが今後非常に大事になってくるんではないか、このように考えるわけでございまして、この点をお伺いいたしまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  106. 大久保孟

    会計検査院長大久保孟君) お答えいたします。  大型プロジェクトにつきましては、高度成長時代から始まったものもございますし、その後政府の政策として決めたものもございます。我々としましては非常に重大な関心を持ちましてそのプロジェクトを見詰めておりますが、その中で、特に投資効果が数年にわたって発現してないとか、あるいはせっかくつくったのがそのまま放置される、そういう点を常時検査でフォローしておりまして、その点について意見がまとまりましたならば特記事項として掲記している、そういう状態で現在まで進んでおります。今後も、特に大型プロジェクトにつきましては関心を持って進めておりますので、今後特記事項として出す場合もあり得る、そういうように考えておる次第でございます。
  107. 抜山映子

    抜山映子君 最近、税金のむだ遣いとかお役所仕事の非能率性の批判が非常に高まっております。そういう意味会計検査の財政監督機能というものは強化することが望ましいと思いますが、単に会計検査の財政監督機能が幾ら強化されても、これが会計検査の結果が予算に反映されなくては私は無意味であると思うんです。予算があってその次に予算の執行がある、そして決算が来る。その決算の結果は今度また次の予算に反映させられなくちゃいけない、こう思うんですけれども、現在、会計検査の結果を予算に反映するべく努力がどのようにとられているか、それを御質問いたします。
  108. 秋本勝彦

    説明員秋本勝彦君) お答えいたします。  会計検査院といたしましては、常々、検査の結果が予算編成に反映されることを望んでおりまして、このためにいろいろな努力をしております。  その一つは、検査報告の早期内閣送付ということに心がけておりまして、私ども検査の成果が国会における決算審議や予算審議等の参考資料として有効に活用されることを期待しているわけでございます。  それから、その二といたしましては、会計検査院の権能の一つといたしまして、その年度検査の終了を待つことなく、必要の都度意見の表示または改善の処置の要求ということが行える仕組みになっております。こういうものを活用いたしまして、適時に検査結果を検査対象機関に対して発するということによって、これがまた予算編成のための資料として使われることを期待しております。  それからその三番目として、検査の過程におきまして、予算編成当局であります大蔵省の主計局などと私ども昭和四十年以降定期的に情報交換を行うこととしているわけでございます。主計局との打ち合わせにつきましては、毎年三月、八月二回連絡会議を開催しておりまして、相互に意見交換を行っております。特に八月の分におきましては、私どもがそれまでに検査いたしました検査結果から見まして、予算編成上参考になる事項というものを選びましてお打ち合わせさせていただいている。それから、主計局だけではなくして理財局との打ち合わせもやっておりまして、これも検査の結果を見まして財政資金運用上の参考になると思われる事項を説明しているというふうなわけで、おおむね今申し上げましたような三点において予算編成上反映するように努力させていただいているということでございます。
  109. 抜山映子

    抜山映子君 ただいまの御発言の中に、処置要求を個別に問題省庁にしているように承りましたけれども、それは何月ごろに何件ぐらいやっていらっしゃるんですか。
  110. 秋本勝彦

    説明員秋本勝彦君) 具体的に申し上げますと、できれば早いうちにお出ししたいわけでございますけれども、やはり何分にも取りまとめに時間がかかっておりまして、例えば最近の例で申し上げますと、五十七年度検査報告でございますが五十八年の十日二十一日に出している、それからもっと古いもので恐縮でございますけれども、五十三年度あたりは五十四年の七日三十一日に出しているといったようなものもあるわけでございますが、何分にもただいま申し上げましたように取りまとめに相当な時間を要するために、おおむね検査報告をお出しする時期に大体近くなってしまうというのが現状でございます。
  111. 抜山映子

    抜山映子君 検査報告書は、例えばこの五十九年度決算検査報告は十二月の十二日に出ているわけですね。それの近くに出ているというんでは、予算の内示の時期はもう十二月の末ですから、余り意味がないんじゃないですか。もっと処置要求は、もうちょっと早い時期にやらなくちゃいけないんじゃないでしょうか。
  112. 秋本勝彦

    説明員秋本勝彦君) 先生おっしゃるとおりだと思いますが、私ども検査の実情を申し上げますというと、大体お正月明けから検査に入りまして、そしてサイクルから言いますというと、八月いっぱいで地方の検査などを終わる。九月は大体本省本社機関の取りまとめの時期に入るというようなサイクルがございまして、処置要求をするというような案でございますというと、それなりに多くの人員を使って各所に展開して資料が集まってまいりますので、どうしても取りまとめに時間を要するというようなことで、まことに残念ではございますけれども現状では十二月に入ってそういった要求を出すというケースが圧倒的に多いわけでございます。しかし、これは検査のサイクルを工夫することによりまして、あるいは二カ年にわたる検査を試みるとかというようなことをやることによりまして、御要望にも沿えるのではないかというふうに、その点大いに私どもも工夫をしなければならないと思っておりますし、また工夫をしているところでございます。
  113. 抜山映子

    抜山映子君 今、予算単年度主義をとっているわけで、長期的な展望、あるいは中期的な展望に立って国家のいろんな政策を立てることが非常に難しいということを言われております。ですから、今のような処置要求がうんと遅くなりますと、せっかく会計検査の結果が出ても、それを予算に反映させることができないということになると、予算単年度主義の弊がもうもろに出てくる。そういう意味で私はもし処置要求がそんなに早くできないなら、もっとスタッフの充実ということも考えなくちゃいけないと思いますけど、その点はいかがですか。
  114. 秋本勝彦

    説明員秋本勝彦君) 定員の増とかあるいは予算の増とかいうことを私ども常々必要性を痛感しているわけでございますが、なかなか行財政改革の中におきまして私どもばかり突出してそういうお願いを申し上げるとか、またそれが実現するという現状ではないことを御理解いただきたいと思うわけでございます。  それから、十二月に集中してしまうということを私申し上げまして、それは甚だ残念だとこう申し上げたわけでございますけれども、それを救う便法といたしまして、先ほど主計局との打ち合わせを八月にやらせていただいているということでございます。これはまだ相手方省庁、機関に対して処置要求とか意見表示とかということをしている段階ではございませんけれども、もう既にその段階ではそういうものをしなければならないという個々の事態は私ども把握しておるわけでございますから、その時点において私どもとしてはこれは予算に反映させていただきたいというようなものであると、これは主計局の担当の主計官にもその時点で申し上げているわけでございますから、何とかその点で救われているのではないかというふうに思います。
  115. 抜山映子

    抜山映子君 今政策の問題については特記事項について指摘していらっしゃいまして、これは政策について改正を要するのか、それともそのままでいくのかという判断国会にゆだねておるわけでございまして、これは評価すべきだと思うんです。この特記事項をもっと利用して、もっと小さい予算でできたんではないか、あるいはもっと大きい効果を生むことができたんではないか。要するに効率性とか有効性とかそういうものに力点を置いた検査が今後もっと必要になってくるんではないかと、このように思うんですが、その点はいかがですか。
  116. 大久保孟

    会計検査院長大久保孟君) お答えいたします。  会計検査院といたしましては、決算の基礎となっております個々の収入支出が予算や法令に従って適正に処理されているかどうか、そういう合規制の観点からの検査があくまで基礎でございまして、これをなおざりにするわけにはまいらないということを十分御理解いただきたいと思います。  しかしながら、委員御指摘のように、私どもといたしましてもそれで満足しているわけではございません。事業が経済的、効率的に実施されているかどうかという経済性、効率性の観点、さらには事業が所期の目的を達成し、効果を上げているかという有効性の観点からの検査にも努力を払ってまいっております。このような面からの指摘や問題提起を数多くしてまいっているわけでございますが、今後とも経済性、効率性等の検査にますます力を注ぎまして、行財政改革や予算編成の重要な参考になる検査をやっていきたいと、こういうように考えておる次第でございます。
  117. 抜山映子

    抜山映子君 検査箇所とか検査分野の選択なんですが、やはり問題提起というものを持って重点的に検査すべきじゃないかと私思うんです。年度末の道路の掘り起こしや、四半期の予算消化のために不要不急の物品を購入するとか大変多いわけですね。ですから、そういう重点的な検査をテーマを持って行うべきと思いますが、その点いかがでしょう。
  118. 秋本勝彦

    説明員秋本勝彦君) 私どもといたしましても、当然検査上の重要テーマというものを毎年検査が本格化する前に、十二月から一月の時点において翌年度の重要な検査テーマというものを選びまして、検査会議にもお諮りいたしまして、それぞれ検査課におきましてそういうテーマに重点を置いて検査をしていくという体制はできておるわけでございます。  それから、今御指摘のような検査の観点と申しますか、こういうようなものも私ども常々心がけている検査一つの観点でございまして、年度末における予算執行については今御指摘になったような事態がありはしないかというようなことは、かねがね配意しながら検査しているわけでございます。
  119. 抜山映子

    抜山映子君 会計検査院は国民にとって比較的影が薄い存在だと思うんです。というのは、本庁、東京にしかございませんで、各地方には支局もないわけですね。そういうわけで案外国民からは縁遠い存在になっている。そういう意味で大いに会計検査の結果なんかを国民にPRする。そして、会計検査院に持ち込まなくちゃいけないような実情が地方であるならば、持ち込めるんだというようなことも、もっともっと私はPRしなくちゃいけないと思うんです。  先ほど「会計検査のあらまし」という小冊子をつくっているとか、あるいは広報課をつくる所存であるというようなことを言われましたけれども、それじゃその広報課はいつできるのか、そしてPRの方法としてそれ以外にやっていらっしゃるのか、ちょっとこの点をお聞きいたします。
  120. 秋本勝彦

    説明員秋本勝彦君) 国民へのPRということでございますが、私どもでやっておりますことを具体的に申し述べてみますと、私ども一年間の検査結果の集大成でございますところの決算検査報告、これをまず広くお読みいただく、そして指摘事項等同種のような事態再発防止に役立てていただきたいというようなことを考えまして、先ほどもちょっと申し上げたんでございますが、国庫補助によって事業や事務を執行しております都道府県や市町村にまでも一応出かけて行って、検査報告の活用を呼びかけるといったようなこともやっております。  それから、この検査報告内容をより広くわかりやすく国民の皆様にまで普及させるという目的で、平易で、そして読みやすい記述に改めました「会計検査のあらまし」、これを年一回発行しておりまして、国会先生方を初め、各省庁、都道府県、図書館、各方面に配付しております。  それから、さらにまた一般向けのパンフレットもこしらえてございまして、これには本院の組織や機能や活動等、これも平易に紹介したものを作成してありまして、その中で検査院の仕事の御理解を賜り、検査院にまた有効な情報等をちょうだいできたらばということも考えているわけでございます。  それから、これも先ほどちょっと触れましたが、総理府の広報室の予算によります政府広報の媒体、例えば「フォト」でございますが、こういうものもたびたび利用させていただいております。これも中には院長対談なども載せておりまして、本院の活動についてアピールしている。  このような刊行物によりますPRのほかに、検査対象機関とか、あるいは都道府県の監査事務局などで行っている研修会には積極的に本院から講師を派遣いたしまして、検査報告掲記の事項を御説明したり、本院の機能、活動状況のPRに努めているわけでございます。  それから、今後ともさらにいろんな都道府県等の広報の媒体なども幅広く利用させてもらいまして、積極的な周知活動に努めていきたい。  それから、体制面でございますが、渉外あるいは広報室を設置するべく準備を進めておりまして、これはいつできるかということでございますが、現在その卵と申しますか、核となるものは既に総務課の中に渉外広報係というのがございます。これをさらに強化するということでございまして、予算の関係もございますけれども、早い機会に広報室というように格上げして、大いに広報に努めていきたいというふうに考えております。
  121. 抜山映子

    抜山映子君 海外援助の検査ですけれども、私がいただいた資料によりますと、出張期間は六月から八月の間で、検査従業員は二名である。その二名で五、六カ国を回る、こういうように聞いておるんですけれども、これでは今膨大になった海外援助、これの調査にはもう本当にお粗末きわまると思うんですね。これの充実を図らなくちゃいけないと思いますが、この点についてはどういう御意見をお持ちですか。
  122. 秋本勝彦

    説明員秋本勝彦君) 今年度は、いわゆる対フィリピン援助をめぐりましていろいろな問題が生じました。私ども検査体制といたしましては、これに対しまして五局編成の中の一局に、外務省、経済企画庁、JICAといったようなものを分担させておりました。それから、五局の方で海外経済協力基金を担当させておったというようなことで、今回のような問題を処理する場合に、やはり一元的に体制を整備する必要がございまして、そのために両局の調査官を出し合い、あるいは官房から経験豊富な調査官を応援させるというようなことで、特別なチームをつくってそういう問題に対処したというようなこともございまして、これはただ単にことしだけの問題として私ども考えているわけではございませんで、明年以降、通常においてもこれらのものを一本化するなどをした体制というものが必要ではないかということを検討をしております。  それから、外国検査のことでございますけれども、まことにまだ検査旅費が不十分でございまして、先生御指摘のように、到底十分な調査が行えているというようには考えておりませんので、これにつきましても、旅費の増額要求、外国旅費の大幅な増額要求といったようなことも今お願いしているところでございます。以上のようなことを通じまして、体制を整備してODAの検査というものに当たっていきたいという所在でございます。
  123. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 先ほど来、各同僚委員もお触れになっております、私も百四国会で多々議論になりましたこのマルコス疑惑、この問題をいかに真相を究明をしていくか、会計検査院としてどういう役割を果たすべきかという問題について質問をいたしたいと思うわけでありますが、当然のこと、書面やODAの実施機関本部を通しての検査、こういうものは、いわゆる国内検査としてやられているということだけれども、重要なのはこの海外の検査、海外の現地調査、これが重要だということを今も言われておるとおりであります。  そこで、百四国会であれだけ議論になって、六十一年度の海外調査は、どこの国へ行くかというのは今検討中ということなんですね。まだ決まってない、やってないんですね、六十一年度は。
  124. 小川一哉

    説明員小川一哉君) 海外での現地調査は、先ほど先生が御指摘のとおり、国内での外務省それから海外経済協力機関、そういうふうなところで実施いたしました検査結果を十分検討した上で実施したいと考えております。時期につきましては、現在、先ほど申し上げました国内での検査結果の取りまとめの最中でもございますので、準備ができた段階で実施したいと考えております。
  125. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 そうしますと、さっき抜山委員からもありましたとおり、例年は大体六月から八月ぐらいの時期にかけて海外調査をやっていると。ことしは百四国会でも多々ああいう議論になったということで、いろいろな今資料整理の段階で、いつどこの国を対象に海外調査をやっていくかということは目下検討中だということで、なぜそんなに時間がかかるのかという、ここはちょっと私よく合点がいきません。いきませんけれども、問題はあれだけフィリピンの円借款をめぐるマルコス疑惑等々ですね。あれだけ議論になり、国民的にも関心と疑問が集中をしているという、この問題であるから、当然フィリピンが調査国、調査をする国の重要な検討対象の一つにはなると。これがならぬのなら、それこそ国民は何だということになるわけですから、当然重要な検討対象の一つにはなるというふうに理解してよろしいですね。
  126. 秋本勝彦

    説明員秋本勝彦君) そのように理解していただいて結構でございます。
  127. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 とにかく五十三年と五十五年フィリピンをやって以降、フィリピンの調査はやってないんですから、検査院として。ですから、ぜひ急いで、そうして本当に大いに力を集中して、国民の疑惑の解明にひとつ検査院としての役目を果たしていくということでやってもらう必要があると思います。  そこで、それを進めていく上で検査体制の強化というのが必要になってくるということで、先ほど来、一つ検査院の組織体制を、そういう海外経済協力問題について従来以上にひとつ検査が強化できるような体制、仕組みをつくっていこうということのお話がありました。予算の面ではそういう活動強化のためにどういう要求を今しているんですか。旅費のこともあるでしょう。それから検査活動費のこともあるでしょう。もう少し御説明してください。
  128. 秋本勝彦

    説明員秋本勝彦君) 先ほどもちょっと触れましたが、何分にも外国旅費が非常に乏しいものでございますから、この外国旅費を大幅に増額するということをまず、ODAの検査ではそれが不可欠であるという観点からお願いしているところでございます。  それから定員の増というようなことにつきましては、毎年度ども少しずつではございますけれども、定員もふやしてもらっております。そうしてまたことしも実質二名ばかりの増員が行われるよう要求しているところでございます。  それから検査体制を強化するためには、一つ調査官のレベルアップということも非常に大切なことでございます。いわゆるJICAとかあるいはOECFとかに出てまいります書類というものは、みんな横文字の書類で膨大なものが出てきておりますので、そのようなものも相当なスピードで読みこなせるというような語学力もまた必要であろうかというようなことで、こういうことについても、院内でございますけれども研修の強化というようなこともやっているわけでございます。
  129. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 定員二名増を要求しているということですけれども、二名増程度でいいんでしょうか、国民が期待をしておる検査院の役割を果たしていく上で。院長、本当のところは何人ぐらい増員せぬといかぬのですか。
  130. 大久保孟

    会計検査院長大久保孟君) お答えいたします。  現在の体制でやっておりますが、確かに調査官というのは数が多ければ多いなりの実効があると思います。ただ、現在の厳しい財政状況のもとにおいて定員を純増でふやすということは非常に難しい点でございます。率直に申しまして何名ということは申しかねますが、現実には毎年各省庁ではむしろ減員されておるのを、検査院におきましては毎年一名ないし二名の増員ということでこの十年間まいっておりますので、今後ともその線は我々としてはぜひ進めていきたい、このように考えている次第でございます。
  131. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 政府、大蔵省の行政改革に基づくシーリングに大変遠慮をした言い方をされているんですけれども、本来言えば会計検査院というのは独立機関でしょう。しかも検査院の本当に機能と役割が強化されることを通して、むだを省いて本当の意味の行政改革に役立てていくという、こういう意味なんだから、もっと胸を張って要求すべきものは堂々と主張するということで院長としてはやっていただきたいですね。ということを院長にお願いをしておきたいというそういう基本的立場。  そこで、この機会に職員の皆さんの労働強化改善の問題で一言触れておきたいんですが、さっきもありました量質ともに仕事が大変強度化してきている、しかし思うように予算もつかない、定員もふえないということでそのしわ寄せが職員に来るということで、組合の方に聞きました。そうすると、調査官の一年の平均出張八十二日、そうすると調査官の人なんかは一年間の大体三分の一外へ出張しておる。それから、繁忙期になると残業は五十時間以上という人が過半数あるということで、大部分の人が健康の問題に不安を持っているということでありますが、そういう状況で、出張が一年の四分の一というんですけれども、出張する場合の宿泊費が七年間据え置きだ。三級以下の乙地、一泊二食五千九百円。最近ビジネスホテルでも要するに素泊まりで五千円でしょう。それで二食、五千九百円でどう食えというのかという、これが七年間据え置きになっている。ですから若い人は朝飯抜いたり、あるいは最近のほかほか弁当で晩を済ましたり、パンを食ってそれで晩飯を済ましたりという、こういう人が多々あるということを聞きました。  それから年来の要求、給与法十条に基づく調整額、そういう特別の技能、技術を必要とするそういう人についての賃金に調整額を支給するというこの制度があるわけですけれども、これもいまだに実現をしていないということで、さっき言いました独立機関だと。対して本当に検査院の機能を果たすために要求すべきものは堂々と要求をする。単に職員の待遇問題というふうに矮小化して考えないで、これが検査院の本当に機能役割にゆゆしい問題だというとらえ方で、院長は大蔵省等々そういう機関を相手にひとつ先頭に立って頑張ってもらいたいということを要望して終わっておきます。
  132. 大久保孟

    会計検査院長大久保孟君) お答えいたします。  職員の待遇問題でございますが、これはあくまで職員の待遇が十分でなければ十分な実地検査などはできません。その点は私も初めから考えております。  そういう意味におきまして、ただいま御指摘になりました旅費の問題は、一般公務員と同じレベルのものですからなかなか難しい点がございますが、調整額の問題につきましても前向きに努力してまいりたいと、こういうように考えております。  それから、先ほどの御質問に対してちょっと補足させていただきますが、我々は決して独立機関として政府に遠慮しているわけではございません。ただ行政改革といいますのは、これはどの役所でもしなきゃならないことで、我々もみずからの判断で、例えば検査活動に大事な人が欲しいという場合には、むしろ事務系統から回してそういうふうにやっていく、そういう努力もしているということでございます。
  133. 菅野久光

    委員長菅野久光君) 他に御発言もないようですから、会計検査院決算についての審査はこの程度といたします。  午後一時二十分まで休憩いたします。    午後零時二十七分休憩      ─────・─────    午後一時二十一分開会
  134. 菅野久光

    委員長菅野久光君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  昭和五十九年度決算外二件を議題とし、労働省の次第について審査を行います。     ─────────────
  135. 菅野久光

    委員長菅野久光君) この際、お諮りいたします。  議事の都合により、決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  136. 菅野久光

    委員長菅野久光君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ─────────────
  137. 菅野久光

    委員長菅野久光君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  138. 山本正和

    山本正和君 参議院から大臣が出ておられる労働省でございまして、若干こう身内のような気がいたしますけれども、いろいろと御質問申し上げますのでよろしくお願いします。  五十九年度決算検査報告を見ますと、労働省に対するいろいろな指摘事項がございます。その中で、特に雇用保険の失業給付についての指摘がされております。また、新聞紙上等にもこのことがいろいろと報道されまして、本当にこれが適正に行われているのかどうかというふうな疑問を国民の多くの皆さんが抱えておるわけでありますけれども、このことにつきまして、まず見解をお伺いしたいと思います。
  139. 岡部晃三

    政府委員(岡部晃三君) 労働省所管の予算の執行につきましては、従来から適正執行に十分留意をしているわけでございますが、しかしながら、先生御指摘のように、昭和五十九年度決算検査報告におきまして、労働省所管事項の中で、労働保険の保険料の徴収に当たりまして、不足徴収額六億一千二百万円、過大徴収額一億二千九百万円、それから失業給付金の支給が適正でなかったもの一億八千八百万円、それから各種助成金の支給が適切でなかったというふうな御指摘、さらには職員の不正行為による損害といたしまして二千六百万円等々の指摘があることは事実でございます。まことに労働省といたしましては遺憾に存じている次第でございます。  今後は、このような御指摘の趣旨を十分に認識をいたしまして、このような事態が発生しないようにより一層関係部局等を指導してまいりたいと存じております。特に本年四月からは大臣官房に会計監査室を創設をしたところでございます。 一層心構えを引き締めてまいりたいと存じております。
  140. 山本正和

    山本正和君 失業の中にさらされている人たちのことでございますから、厳正にやっていただくことは結構でございますけれども、ひとつ親心を持ってお取り組みいただきますよう申し上げておきます。  それから次に、円高に伴いまして大変あちらこちらに、特に中小企業にはかなり大きなあらしが吹きすさんでまいっておりまして、例えば私ども三重県で言いましても、万古焼あるいは金網業者、大阪等での針金業者、大変もう次から次にあえいでいるということが言われているわけでありますけれども、そういうふうな状況につきまして、労働省としてどういうふうに把握してお見えになるか、その辺ひとつお伺いいたします。
  141. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  今、先生御指摘のように、最近の雇用失業情勢は、円高の進展などを背景といたしまして、製造業を中心に求人が減少を続けますとともに、離職者の方も増加しているということで、このため有効求人倍率が八月には〇・六一倍に低下しており、また、完全失業率も二・九%ということで、高水準で推移いたしております。これも先生の御指摘ございましたが、特に輸出産地、労働省の調査では四十一地域につきまして調査いたしておりますが、二十二地域で昨年十月以降八月までに合計約二千七百人の解雇者が出ているというような状況等、そのほか造船、非鉄金属など構造不況業種での解雇を含めます幅広い雇用調整等が進展しておりまして、今後これらの業種、地域を中心とする雇用失業情勢の悪化を懸念しているところでございます。
  142. 山本正和

    山本正和君 新聞等でもいろいろたくさんこの問題が出ております。あと若干細かいことをお聞きしたいわけでありますけれども、その前に労働大臣として、こういう状況についてひとつ御決意のほどをお聞かせいただきたいと思います。
  143. 平井卓志

    ○国務大臣(平井卓志君) 委員御指摘のように、当面の日本経済の最大の課題というのは、私はもう雇用問題一本に絞っても誤りではないという理解をいたしております。  基本的に雇用対策どうかということになりますると、これはもう御案内のように、国の総合対策をもってどうしても思い切った内需の喚起策をとらなければならぬ。そういう中で総需要をふやしまして雇用の増加を図ってまいる。これが基本にありませんと、その後の対策は功を奏さないというふうに考えております。労働省としてどうかということに相なりますると、最近非常に厳しくなりつつあるわけでございますんで、各地の業種、地域別に間断なくヒアリング等を行いまして、この雇用情勢の実態をひとつ的確に早く把握するということが一番でございます。その後は、従来いろいろ制度がございまして、雇用調整助成金制度、これは非常に立派な制度でございますけれども、要は活用にかかっておりますんで、ひとつこれはもう弾力的、機動的に十分に活用をして失業の予防を図らねばならぬと考えております。さらに、不況業種、不況地域対策の推進、こういうことで雇用対策を積極的に推進してまいるわけであります。  御案内のように、先般、これは九月でございますが、総合経済対策が決定されまして、この雇用調整助成金制度の指定基準も緩和しようと、さらには助成制度も助成率も上げていこうというふうなことで、この制度の拡充ということを図りまして、さらには失業前の状態でございますが、出向等を利用いたしまして企業間、産業間の労働移動というものを円滑にやっていきたい。こういうものに対するそれなりの援助、補助をしてまいろうと。いずれにいたしましても、今後さらに重要なことは、特定の地域で非常に雇用の悪化が懸念されるわけでございまして、言うなれば、雇用機会の増大と申しましょうか、雇用の促進制度と申しましょうか、こういうふうな対策を総合的に急がねばならぬというので、ただいま具体的に検討を急がせておるところであります。
  144. 山本正和

    山本正和君 今の大臣のお話の中にありました総合経済対策の中にも確かに盛り込まれておるわけでありますが、もう少しこれは具体的に御説明をいただきたいし、またこれに伴う予算措置は一体どういうふうになっているのか、ひとつ御説明をいただきたいと思います。
  145. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  今、大臣が申し上げましたように、九月に総合経済対策が決定されまして、その中で雇用に関する施策が盛られているわけでございますが、具体的には今大臣が述べられたことでございますけれども、早速に十月二十日から、雇用調整助成金制度につきます改善の中身につきまして実施してまいりたいということで予定いたしております。  まず、失業の予防を図るための雇用調整助成金につきまして、一年間の時限措置としまして休業に係る助成率を引き上げる。現在、休業手当の二分の一、中小企業の場合は三分の二でございますが、を助成することにいたしておりますけれども、これを三分の二、中小企業におきましては四分の三の助成率に引き上げる。それから、出向の助成対象期間が、出向期間一年について助成いたしておりましたが、これを二年に延長するという措置をとっております。それから、高齢者や不況業種、不況地域等の離職者が再就職をするために、その促進を図ることの求人開拓を行いますとともに、特定求職者一雇用開発助成金というのがございますが、これはそういう今申し上げましたような人々を雇い入れた場合に、その事業主に対して助成するものでございますけれども、助成率を現在賃金の四分の一、中小企業は三分の一でございますが、これを三分の一、中小企業は二分の一に引き上げてまいりたいというような措置をとっております。それからさらに、大臣が最後におっしゃいました、過剰人員を抱えている業種についての出向等の活用による企業間、産業間の移動を促進することといたしておりまして、それらのシステムについて検討するということにいたしております。  これらの施策に要します財源は、いち早く労働省としましてはこの二十日から実施するわけでございますが、六十一年度後半、この施行によりまして新たに必要とするものが三十億円程度であろうというふうに計算いたしております。これらの財源につきましては、この雇用調整助成金制度は雇用安定資金制度というのを持っておりまして、その資金の中で運用できるというふうに我々としては考えております。
  146. 山本正和

    山本正和君 今の御説明の中の一番しまいのところが恐らくかなり機会が多いんじゃないかと思いますので、これもひとつ弾力的に運用できるように、よろしくお願いしたいと思います。  それから、次にお伺いしたいのは、まだ大きな企業等は余剰人員が生まれましても仕事の転換あるいは訓練、再訓練等によって何とか切り抜けようということができるわけでありますが、民間の中小企業の場合には大変それをしようにもお金がないし、また訓練するための場所等もなかなかないということで大変苦しんでいるということが言われておるわけであります。こういう民間の中小企業の中での雇用調整も含めた職種の転換等について、また中小企業そのものが事業転換をしていくというふうなことも絡んでまいりますが、そういうことについて、実は大変企業をやっておられる方々はどうにも、指導をしていただきたいけれども、なかなかそれをどこへ持っていったらいいかよくわからない、あるいはそういうことをしようとしても、国から何らかの援助をしてもらえないだろうか、こういうことがたくさん出てまいります。いろいろ国でも施策があるんですけれども、知らないことのためにそれが利用されていないというような面もございます。この際ひとつ、今どういうふうにそれがなっているのか、そして、今後次から次にこういう中小企業の問題が出てまいりますけれども、これについて一体政府としてはどういうふうに対応しようとしておみえになるのか、そういうことをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  147. 平井卓志

    ○国務大臣(平井卓志君) ただいま御指摘になりました、一口に申し上げて職業訓練等の問題でございますが、これからの雇用対策というものを考えました場合、景気の抜本的な浮揚と同時に、この職業訓練というのは一つの非常に大きい重要な柱ではないかというふうに考えております。ただいま御指摘の、中小企業の事業転換等に伴う職業訓練は一体どうなっておるかという御質問でございますけれども、やはり中小企業等の事業転換が円滑に行われませんと、なかなか雇用の確保というものが難しくなるということで、それを円滑にするためにどうしても職種の転換訓練が特に必要になってくるということでございます。したがって、国としてどういうことをやっておるかということになりますると、一つには従来からやっております雇用調整助成金制度による教育訓練期間中の賃金に対する助成、また、公共職業訓練施設における施設の貸与、さらには職業訓練指導員の派遣、いま一つは、中小企業事業主からの委託を受けて教育訓練の実施等の援助を行っておるわけでございます。今後とも非常にこれはもう重要な施策でございますので、機動的に実施されるようきめの細かい指導、援助をやってまいりたいと、こういうふうに考えております。
  148. 山本正和

    山本正和君 まだそういういろんな制度といいましょうか、国としてこういう用意がしてありますよということがわかっていない企業もかなりありますので、ひとつぜひとも周知徹底方をよろしくお願いしたいと思います。  それからその次に、どうしてもこういう雇用情勢が厳しくなってまいりますと、だんだん弱いところへしわ寄せがいくわけでありますが、従来、金の卵というふうなことを言っておった高卒にまたいろんなしわ寄せがきております。高等学校を、特に実業高校等の卒業に当たって、学校では就職あっせんを随分やるんでありますけれども、ことしは大変各学校の就職担当の教員たちが苦労しているというふうに私ども聞いております。こういう高卒者に対しては一体どういうふうな対応をとっておみえになるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  149. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  今御指摘のように、労働省の調査によりまして、毎年学卒の採用計画をとっているわけでございますが、それによりますと、来春の新規高卒者を対象とする企業の採用計画では、急激な円高の影響等もあろうかと思いますが、製造業を中心に前年同期に比べまして三・五%の減少に転じております。職種別に見ますと、販売、サービス系の職種においては七・〇%の増でございますが、技能系職種が六・二%、それから事務系職種が一〇・一%の減少というふうな傾向になっております。新規高卒者を対象とします実際の求人につきましては、七月一日から公共職業安定所で受け付けを開始しているところでございますけれども、八月末の状況では前年同期の求人数に比べましてやはり一三・五%の減少となっているというのが現状でございます。  労働省としましては、学校と十分な連携のもとに求人開拓の強化、それから、適性や能力に配慮しながらの希望職種、希望地域の拡大を含めた職業指導の強化、それから、未充足求人と未就職者を対象とする合同選考会の実施、それから地域間の求人情報提供の拡充強化等を図りながら、早期に新規高卒者の円滑な就職が確保できるように努力しているところでございます。
  150. 山本正和

    山本正和君 ぜひともひとつ、学校で苦労している就職担当の教員等にもこういう格好で取り組んでおりますからということを御連絡いただきたいと思います。  それから、実はきょう私、特にこの問題で、労働省ばかりじゃないんですけれども、政府、特に日本の国が国際的にどう位置づけられるかというような問題とかかわりますのでお伺いしたいんでありますが、いわゆる障害者、ちょうど障害者年がことしは中間年に達していると思うんでありますけれども、その障害者の雇用問題がこの円高不況ということも絡みまして大変また厳しくなってまいっております。そこでちょっと調べてみますと、日本の国の基準といいましょうか、企業の中で障害者がひとつ何とかこういう程度はぜひ働く場所を確保してほしい、こういう基準、各国ごとにそれぞれあるようでございますけれども、ひとついわゆる先進諸国での法定雇用率、我が国を含めましてどういうふうになっているのか、まずお伺いしたいと思います。
  151. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  先進諸国の雇用率制度につきましてはその中身がいろいろでございますが、まず一般的に申し上げますと、障害者の雇用率制度としましてこれを採用している国で、例えばイギリスにおきましては二十人以上の雇用の民間企業に対して三%、フランスにおいては十人以上の雇用の民間企業及び公的機関に対して一〇%、西ドイツでは十六人以上雇用の民間企業及び公的機関に対しまして六%というふうになっておりまして、アメリカでは法定雇用率あるいはこれに類似した制度は設けられておりません。日本におきましては、これはもう先生御存じのことだと存じますが、身体障害者雇用促進法に基づきまして民間企業一・五%、特殊法人一・八%、官公庁一・九%、ただし現業機関は一・八%でございますが、一・九%の法定雇用率を設けております。この法定雇用率の数値を単純に比較するのは、先ほど申し上げましたように、各国の障害者の数、それからそれに数え入れます対象が必ずしも一致しておりませんので一律に言うことはできませんが、現在のような雇用率制度を日本ではとっているということでございます。
  152. 山本正和

    山本正和君 政府機関を含めまして公務員の中でもいろいろ難しい問題があるようでございますが、政府みずからがこれについては範を示していただきたいと思いますし、あわせて、私どもの方で調べますと大企業ほど、どうも障害者に対する理解といいましょうか、職場を与えるということをしていないように数字が出てまいります。これをひとつ何とか強力な御指導をぜひやっていただきたいと思いますが、ひとつ何か新しい取り組みといいましょうか、決意のほどをお伺いしたいと思うんですが。
  153. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  身体障害者の雇用状況を見ますと、今先生御指摘のように、企業規模が大きくなるに従いまして実雇用率が低い、また未達成企業の割合が高いという傾向は確かにございます。この雇用率制度ができまして身体障害者の雇用がかなり進んでまいったと我々は思っているわけでございますけれども、現在は全体で見ますと横ばいの状況になってきているということで、結局は、最近の状況はいろいろ景気の動向その他もございますが、身体障害者の今就職させなければならない人々が非常に重度化してきている、また精薄者等の就職問題も抱えているというようなことで、非常に手のかかる身体障害者の就職問題になってきているという点に問題があるというふうに思っております。しかし、最近、千人以上の大規模の企業におきましては雇用の改善が進みつつございますし、雇用率未達成企業に対しましては今後とも雇い入れ計画の作成命令を行いまして、当該計画に沿った身体障害者の雇い入れを行うよう指導を進めてまいりたい。特に先月が障害者雇用促進月間でございましたが、そういう啓発活動を進めさしていただいたわけでございます。
  154. 山本正和

    山本正和君 確かにいろいろ取り組まなければいけない課題があるんでありますけれども、実は身体障害者の方々が働こうにもまず働く前の準備といいましょうか、教育といいましょうか、訓練といいましょうか、それがどうしても場を与えられないことにはなかなか働けないというふうな状況になっております。都道府県等では第三セクター方式等でそんなものをつくったり、またそこからいろいろ企業への就職あっせん等もするというようなことをやっているわけでありますけれども、国としてこの種の問題については今後どういうふうなお考えであるのか、まずその辺をお聞きしたいと思います。
  155. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  先ほども申し上げましたように、現状では直ちに一般雇用につくことが困難な重度障害者の雇用の場の確保としましては、確かに今先生おっしゃいますように第三セクター方式その他が重要でございます。労働省といたしましては、五十八年度から民間企業と地方公共団体との共同出資によりますいわゆる第三セクター方式による重度障害者雇用企業の育成事業を実施してきているところでございます。国はこの事業に対しまして、まず第三セクター企業の施設、設備の設置に要する費用を一億円を限度として助成することといたしております。それから二番目には、第三セクター企業が障害者を雇い入れる場合、その賃金の一部を三年間にわたって助成いたしております。それから三番目としましては、財政投融資資金を原資とする日本開発銀行による長期低利の資金の貸し付け等を行っているところでございます。これらの措置によりまして、現在のところ第三セクター方式による重度障害者雇用企業の育成事業を実施している県が十一都府県ございますが、その育成事業によりまして設立された企業は現在、東京都のデータシステムズ、それから希望の里ホンダ、それから阪神友愛食品株式会社等が設立されているところでございます。
  156. 山本正和

    山本正和君 今の件につきましても各部道府県に対する指導、紹介等をぜひ進めていただきたいと思います。  それから次に、実は私も最近まで教職員のお世話をする仕事をしておった関係から、学校現場、特に障害児学校の諸君からいろいろと状況報告をもらっております。三重県の障害児学校の先生たちから実はもう困っているんだという格好で出てまいっておりますのは、これはもともと小学校、中学校、高等学校と進んでいく段階でも教育の場面で非常に苦労をするわけですけれども、さてその子たちが卒業して今から世の中でどうやって生きていくかというときに、やっぱり一番大きな問題が働く場の確保でございます。そういう中で特に、障害児といいましても例えば盲聾学校もありますし重度もありますし精神薄弱ということからくる障害もたくさんございます。その中で特に困っているのが身体不自由児に対する、どういうふうに一体就職あっせんをしていくかということでの苦労がいろいろと訴えられてきているわけであります。一体、今現在全国的に見てこういう養護学校の卒業者、就職状況は一体どうなっているのか、そしてまた本来から言いますと、こういう問題については何とか国の段階でもいろいろ御検討を願って、例えば特別の求人等の場所がないのか、さらにはいろんな訓練についてもいろんな方法がないのか、こういうことを国としても御検討いただいていると思うのでありますけれども、そういう状況についてお伺いしたいと思います。
  157. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  まず全体的な統計を申し上げますと、文部省の学校基本調査によりますと、昭和六十一年三月に養護学校の中学部を卒業した者の進路状況につきましては、卒業者数七千八百八十五人のうち就職者が一・三%、進学者が六三・三%、それから教育訓練機関等への入学者が一・二%という数字になっております。  それから、さらに高等部を卒業した者の進路状況につきましては、卒業者が六千四百六人となっておりますが、就職者が三〇・一%、進学者は一・一%、それから教育訓練機関等への入学者は八・二%ということになっております。  なかなか就職状況等は、今先生御指摘のように、非常に難しい状況になってきておりますが、これは一つは、先ほど先生おっしゃいましたけれども、養護学校の義務化と申しますか、養護学校に非常に重度な方も入っていらっしゃるというようなことでなかなかすぐに就職に結びつくということが困難な点もあるかと思います。しかしながら、労働省としましてはこれら新規学校卒業予定の障害者につきまして、各公共職業安定所におきまして求職登録を行い、学校と密接な連携のもとにきめ細かな職業相談、職業指導を実施して的確な職業紹介に努めているところではございますが、さらに事業主と障害者とが集団見合い方式で就職のための情報交換を行います雇用促進会の開催、それから職業訓練の充実等によりまして、今後とも一層の就職促進を図ってまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  158. 山本正和

    山本正和君 ひとつ労働省でイニシアをとっていただきまして、厚生省あるいは文部省にもぜひ一遍働きかけていただいて、何とかもう少し総合的にこれからの対応が考えられないかというふうな話し合いでも始めていただきたいと思いますので、これは私の意見として申し上げておきます。  特に学校関係が一番困りますのは、職業安定所等へ行っていろいろ相談しても、なかなか縦の文部省の問題、厚生省の問題、労働省の問題と、いろいろ分かれてなかなか話が進まないというようなことが言われておりますので、その辺ひとつ各省間の御連絡をいただきたいと、こういうふうに思っております。  それから次にお尋ねしたいのは、どうやら体の不自由な方ということについてはある程度できるわけでありますが、精神薄弱者の場合非常に難しい問題がたくさんございます。そして、その精神薄弱者の場合は、先ほどもちょっと触れておったわけでありますけれども、いわゆる就職前生活訓練、こういうものをやっていかなければどうにもなかなか、雇用以前の問題になってしまうということが言われているわけであります。ところが、この精神薄弱者のそういう就職前の生活訓練をするについてもなかなか施設や設備等がない状況でございます。 これについて、先ほど各都道府県でやったような格好で、精神薄弱者についてもそういうふうなことは考えられないのか、また労働省としてもそういうことについての御検討がされているのか、お伺いしたいと思います。
  159. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  まず先ほどの文部省、厚生省等の関係でございますが、十分連絡をとってやってまいりたいと思っておりますけれども、私の経験等で申しますと、飯田橋の公共職業安定所管内にやっぱり養護学校があるわけでございますが、実際には、先ほど申しましたように、養護学校と安定所と緊密な連絡をとってやっているようでございまして、私の具体的な経験では、やっぱり第一義的には学校の方のリードということで、安定所はそれを見守りながら、連絡をとりながら、それでさらに就職できない人に対して就職を進めているというような状況でございますけれども、今後とも連絡をとって緊密にやっていかしていただきたいと思います。  それから、精神薄弱者の問題でございますが、まず就職前の生活訓練等でございますけれども、今御指摘のとおり非常に重要だと思います。精神薄弱者につきましては、職業生活に必要な職場の基本的なルールまたは労働習慣が未熟でございますので、その結果、作業能力は潜在的にあっても就職は非常に困難であるということでございます。さらに、生活上のいろいろなしつけその他も必要であるということで、昭和六十年度から六十一年度におきまして、職業生活に必要な労働習慣の確立等を目的としまして精神薄弱者等職業準備事業というのを東京と大阪の心身障害者職業センターで試行的に労働省としては実施してまいりました。かなりの成果が上がるという結果を得られましたので、来年度からは本準備事業につきまして本格的実施に向けまして計画的に充実強化を図ってまいりたいというふうに考えております。  それからもう一つ御指摘の精神薄弱者にも第三セクター方式を活用すべきと思うがどうかという御意見でございましたが、先ほどの重度障害者に対すると同じような国の援助措置をもちまして、各部道府県と一緒になりまして、精神薄弱につきましても昭和五十八年度から育成事業を実施いたしております。現在のところ神奈川、兵庫、長崎の三県においてそれぞれ法人が設立されまして、来年度には能力開発事業を開始する予定となっております。今後とも重度障害者同様第三セクター方式も進めてまいりたいというふうに思っております。
  160. 山本正和

    山本正和君 これで障害者に関する質疑を終わるわけでありますが、我が国が国際的に見てどうも特異な存在というようなことを言われたりする原因の一つに、やっぱりこういう恵まれない人々に対する国の施策がどうなっているかということがよく指摘されると思うのでございますからぜひともひとつこれにつきましては、我が国は決して先進諸国に負けない、障害者に対しても働く機会を与えるために今後もいろいろと施策を講じていきますと、こういう形でお取り組みをいただきたいと思います。  それから次に、労働時間の問題がこれも大変厳しく国際的に批判を受けております。なぜあれだけ大きな経済力を持っている国なのに労働者の労働時間が長いんだと。円高というのも、そういうことから当然受けても仕方がないじゃないかというふうな声がアメリカの労働組合あたりから盛んに言われております。なぜ日本の国はこういうふうに労働時間の短縮が進まないんだろうかと、こういうことにつきまして労働省としてはどういうふうにお考えになっているのかお聞かせいただきたいと思います。
  161. 平賀俊行

    政府委員(平賀俊行君) 我が国の労働時間につきましては、昭和三十五年ごろをピークにして、その後経済の高度成長の三十五年の後半から四十年代を通じて相当大幅に実は減少いたしました。  ところが、石油ショックの後、昭和五十年ぐらいを境にして、御指摘のように労働時間の短縮が進んでおりません。  その原因として、第一には、高度成長期には全体として経済の伸びが高かった。したがって、各企業においても生産性の向上がございまして、それによってかなりの賃上げもできましたし、その生産性向上の成果の配分として労働時間の短縮も進んだということが一つ挙げられます。  それから、高度成長期には、よく言われますように労働力の不足、特に若年労働力の不足が言われまして、求人条件として、大企業はもとより中小企業におきましても週休二日制その他をやらなければ人が集まらない、そういう条件がございましたけれども、やはり五十年以降になりますとそういう労働市場の状況が変わって、どちらかというと需給関係が緩和しているという、こういう原因も挙げられると思います。  それから第三点といたしまして、高度成長期に大体大企業で労働時間の短縮が進み、中小企業でも一部そういう短縮が進んだわけですが、残された中小企業として、経済的な基盤が弱いほかに、やはり周囲の条件を見なきゃいかぬとか、取引先の関係を見なきゃいかぬとか、そういうことで、やはりどちらかというと、残された中小企業について時間の短縮が進んでいないということが挙げられると思います。  それから最後ですが、やはりこの時期になりますと非常に大企業でも雇用関係を大事にする、解雇をしないで雇用調整をするとなると、やはり所定外の労働時間で雇用の調節機能を果たさなきゃいけない、多少注文がふえても残業でカバーする、そういうことで所定外の時間が余り減っていない。  以上四点が主として労働時間の短縮が進んでいない原因と考えております。
  162. 山本正和

    山本正和君 労働分配率を見ていきますと、日本の国の企業がどういうふうな状況になっているか、ちょっと私も細かい数字は知っておりませんけれども、不況とか、いろいろ昭和五十年以降の状況を見ていくと、たしか三%ぐらい労働分配率が下がっているというようなことを聞くわけですね。企業の方は収益率がどんどん高くなってきている。ですから、本当に不況で、いわゆる利潤が上がらないから労働時間をふやしてやっていかざるを得ないんだという側面はないとは私は言いませんけれども、マクロに見た場合いろんな佃題がもっともっとあるように私は思うんです。ですから、四十八時間制にしたときにも、随分大きな抵抗があったのを、やっぱり法律で明確にすることによってその当時の企業はこれに耐えて四十八時間制が維持されたという経過がございます。  そういうことも含めて考えていくと、やっぱり労働省としてかなり決意を持ってこの時間短縮の問題は取り組みをしていただかなければ、今のおっしゃったような四つの理由あるいはその他にも理由はいろいろあろうかと思うんですけれども、なかなかできないんじゃないか。 現状はこうだからということですと。  そうしますと、今、大阪あたりの業者でも、中小企業がどんどん韓国や台湾へ安い労働力を求めて工場を移していく、あるいは優良企業と言われる自動車工場なんかもどんどんと外国に行ってしまう。そういうふうな中でだんだん逆に雇用の場が減ってきているわけですから、それを確保するためにはどうしたらいいかということになれば、どうしてもこれは、労働省が働く者の立場に立って雇用確保その他を言おうとすると、時間短縮のところへ持っていかざるを得ないんじゃないか、こう私は思うんです。  そういうことから、今、四つほど理由を言っていただいたわけでありますけれども、一体積極的にもっと進めていく、国際化ということが盛んに言われるわけでありますけれども、そういう中で、ひとつこれについてはもっと具体的な対応がないのか、先ほどの御説明に加えて重ねてお尋ねします。
  163. 平賀俊行

    政府委員(平賀俊行君) 確かに、日本の経済的な立場あるいは国際的に見た競争力はマクロで見ると相当上がっております。したがって、そういう日本の立場にふさわしい労働条件という意味での労働時間の短縮あるいはもちろん労働時間は非常に重要な労働条件でございますし、労働者自身の生活条件の向上、あるいはそれに基づく企業の活力の増大、いろいろな意味で労働時間の短縮を積極的に進めなければならないと思っております。  したがいまして、私ども労働省ばかりでなくて、政府全体として重要な施策、最重点の施策の一つとして労働時間の短縮についての普及、指導、国民的合意の形成を進めておりますし、特に先ほど申し上げました中小企業などの問題については全体として労働時間短縮の環境を整備しなければいけない。そういう意味関係各省の御協力をも得ながら、例えば金融機関の土曜の閉店制を過去月一回でございましたのをことしの八月から月二回にするとか、そういう観点で外側からも労働時間の短縮を促進する、そういった措置も講じてできるだけの努力をいたしたい、こう考えております。
  164. 山本正和

    山本正和君 今の御答弁でお取り組みの姿勢はわかるんですけれども、なかなかそれだけではどうしても進まないんじゃないか。やっぱり企業から言いますと安いコストで労働力があった方がいいわけですから。だけどそれを日本の国内的な事由だけでそのままでいいというもう時代じゃない。まさに地球社会の中における日本の経済力の今の状況から言いますと、日本の国としても責任を持たなきゃいけない、また当然日本の企業としても国際的な視野に立ってやっていかなきゃいけないんじゃないかと思うんです。そうなりますと、どうしてもここは労働者を保護するという立場の労働省が、かなり強い決意を持ってお取り組みいただかなければならないんじゃないか。例えば、公務員にいたしましても今の金融機関にいたしましても、これはもっと強力に指導をして時間短縮をまずみずからがやっていくということをせぬことには、民間のを待っておってというようなことではなかなかできないんじゃないかというふうに私は思います。そういうことも含めまして何とかひとつ、これはもう労基法の改正までしなきゃいけないような感じも私はするんです。やっぱり国民の前にこれはどうしても労働時間というものはこうなんですよということで、きちっとした姿勢を政府として示すということをしていかなければ、なかなか問題は解決しないように思います。  そういう観点からひとつ、参議院というのは良識の府とかなんとか言われておるわけでありますけれども、その参議院から久しぶりに労働大臣が出られたわけでございますので、ひとつその労働大臣から今の時間短縮等の問題についての御決意をお聞かせいただきたい、こう思います。
  165. 平井卓志

    ○国務大臣(平井卓志君) ただいま基準局長から過去の経過、現状等について御答弁申し上げたわけでございますが、もう委員も非常によく御承知でございますのであえてくどくどしいことは申し上げませんが、今日的に申し上げればもはや時代の要請ではなかろうかということでございます。この労働法準法の改正につきまして、昨年十二月に労働基準法研究会から御報告をいただいておりまして、やっぱり法定労働時間の短縮、弾力化、さらには年次有給休暇の最低付与日数を引き上げる等々の御報告をいただいております。それを受けまして、本年三月以来、中央労働基準審議会におきまして鋭意審議を行っているところでございまして、労働省とすればどうするかということになりますと、この審議会に対し、本年じゅうに、できるだけ早目に審議結果の報告をいただくようにお願いをしてございまして、この結果を踏まえまして労働基準法の改正に何とか積極的に検討を加えて、成案を得ましたら次期通常国会に御提案を申し上げたい。ただ、非常に企業間にいろいろ格差もございまするので、当然のことながら零細中小企業等に対する配慮も考えながらこの問題に積極的に踏み切ってまいりたい、このように考えております。
  166. 山本正和

    山本正和君 次期通常国会という言葉までお聞かせいただきましたので安心をいたしました。ぜひともひとつ、今の大臣の御決意のもとにお取り組みをいただきますよう要望いたしまして、私の質疑をこれで終わります。
  167. 服部信吾

    服部信吾君 まず初めに労働大臣にお伺いいたしますけれども、最近の円高不況、こういうような対策として政府は、十九日の日に総合経済対策、公共投資の拡大あるいは中小企業の金融の緩和とか、いろいろ出されておるわけでありますけれども、大変今後こういう不況を踏まえて雇用対策、これはもう非常に早急に考えなくちゃならない、対応しなくちゃならない、このように思いますけれども、大臣はこの総合経済対策を踏まえて雇用対策、どのように推進していかれようとするのか、この点についてお伺いしておきます。
  168. 平井卓志

    ○国務大臣(平井卓志君) お答えいたします。  先ほど来も申し上げてございますように、雇用対策は当面の政策の最重要課題でございまして、労働省としましては、今御指摘の、先般決定されました総合経済対策の中に労働省なりに強力に施策を盛り込んだわけでございます。  やっぱりその柱と申しますと、これは何と申しましても現行制度の中で雇用調整助成金、休業等にかかわる助成率を引き上げるというふうなことで、さらにはこれの、執行の助成対象期間を延長する。さらには高齢者、また不況業種、不況地域離職者等の再就職の促進を図るための求人開拓、これ等を実施する。さらには特定求職者雇用開発助成金の、これも助成率を引き上げていく。いまひとつは、過剰人員を抱えておる業種につきまして、失業以前の状態として出向等を利用して企業間、産業間の労働移動を促進する。これは当然民間主導でございますけれども、できるだけ多くの産業に参加していただいて、運営費等について労働省としてはそれなりの補助をしてまいるということであります。 非常に厳しい雇用情勢でございますので、とにかく急がなければならぬということを考えまして、この助成金制度の改善につきましては今月二十日から実施したいと考えております。  当面これらの施策を積極的に推進して、できるだけ雇用の安定に努めてまいるということであります。
  169. 服部信吾

    服部信吾君 今、大臣の御答弁の中にもあったんですけれども、特に今回の不況の中で地域の雇用問題、これが非常に深刻化しているんじゃないか、このように思うわけであります。例えば輸出産地のほかに造船、それから漁業、あるいはきょうのニュースでも言っておりましたけれども、いすゞ、これは自動車関係で初めてですけれども六百人削減すると、こういうようなことも言われているわけでありますけれども、ひとつ地域の雇用問題の深刻化が予想される中で地域雇用対策を充実し強化すべきである、こう思いますけれども、この点についてお伺いしておきます。
  170. 平井卓志

    ○国務大臣(平井卓志君) もうこれはまさしく御指摘のとおりでございまして、急激な為替の切り上げ等ございまして、さらには産業構造の転換などに伴って今後地域における雇用情勢というのは非常に悪化が懸念されておるわけでございます。したがって、労働省としましては特定の不況地域対策等を機動的に実施をいたしておるわけではございますが、今後特に地域における雇用対策の充実がどうしてもこれは必要であるという考え方に立ちまして、現在中央職業安定審議会等の意見も聞きながら、雇用機会の増大を図ることを中心としました総合的な地域雇用対策、地域の雇用促進対策と申しましょうか、検討をただいま具体的に急いでおるところでございます。今後とも、地域の実情に応じた施策を講ずることによって雇用の安定に全力を挙げてまいりたいと考えております。
  171. 服部信吾

    服部信吾君 そこで、ちょっと大臣に今後の雇用の現状ですね、最近大変失業率等もかなりふえておる、二・九%。特に男子の場合は三・一%、こういうように非常に高くなってきておるわけでありますけれども、今後この失業率がどの程度まで上がっていくのか、どのように予想されておるのか、今後の見通しについて大臣にお伺いしておきます。
  172. 平井卓志

    ○国務大臣(平井卓志君) 先ほど来御答弁申し上げておりますように、最近の雇用、失業情勢というのは、円高の先行きはまた極めて不透明でございまして、的確な判断がなかなか難しいわけでございますが、このような状態を背景に、これはもう想像以上の悪化が懸念されて、したがって御指摘のように失業率は高水準で推移しておる、七月、八月ともに二・九%ということでございまして、今後さらに年末を控えて悪化が懸念されておるわけでございます。特に、輸出産地、造船、非鉄金属、このような構造不況業種、これらでは解雇を含む幅広い雇用調整がもう進展しておりまして、こうしたことから失業を増加させる要因にさらに拍車がかかりはしないかということがまた懸念を増加させるところでございます。このために、これはやはり基本的には内需を思い切って喚起しなければならぬという基本政策を、強力に推し進めるということがどうしてもこれ不可欠でございます。  同時に、雇用対策におきましては、雇用調整助成金等の改善、その機動的活用、不況業種、不況地域対策の推進等の施策、これらを総合して万全を期していかなければならぬ、このように考えております。
  173. 服部信吾

    服部信吾君 これから大分、かなりの不況、また失業率が増大するんじゃないか、こう思いますけれども、ちょっと具体的にお伺いしたいと思うんですけれども、ここに第一部上場の製造業六百四十三社の余剰人員全調査があるわけであります。これによれば、三十五万三千人、六百四十三社、従業員の五人に一人が余剰人員、このように指摘されているわけですけれども、この調査も指摘しておりますけれども、その中でも現在日本の海運、造船業界、これは特にひどいと。過去においては海運王国、こういうようなことで大変花形産業であったわけでありますけれども、今回非常に厳しい状況に追い込まれておると。雇用の不安も増しているんじゃないのか、このように思うわけでありますけれども、そこで、例えば経営難に陥っている山下新日本汽船、九月十七日、大幅な人員合理化と三和銀行など主力四行の金融支援を骨子とする経営再建策をまとめておると。それによると、従業員の三六%約七百人程度の希望退職を募っておると。また、石川島播磨重工業、これは船舶の造船拠点である相生第一工場の全面閉鎖あるいは呉第一工場の船台一基休止、従業員七千人の削減、非常に厳しい合理化対策を出しているわけでありますけれども、この海運、造船業界、これらの不況は円高が続く限り非常に私はなかなか解決しないんじゃないのか。これら余剰人員の雇用対策、これをどのように把握しておるのかお伺いしておきます。
  174. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  海運業界、それから造船業界、今、先生御指摘のように、最近の円高傾向も加わりまして非常に厳しい雇用情勢になっているということでございます。  まず、海運業界につきましては、今御指摘の山下汽船以下その船腹の過剰状況等に陥っておりまして、船腹処理に伴いまして相当数の離職者が生ずるという厳しい状況で、労働省としましては従来から特定不況業種に指定して近海海運業、内航海運業に対策を講じているわけでございますが、七月にはさらにタンカーにかかる外航海運業を新たに指定いたしまして、この制度に基づきます各般の手厚い措置を講じながら、失業の予防や離職者の再就職の促進を図っているところでございます。この業種からの船員離職者は、従来は離職しましても船員になろうとする場合が多いわけでございますが、その場合には船員の雇用の促進に関する特別措置法に基づきまして特定不況業種にかかるものと同様の措置が講じられているところでございます。まあしかし、いよいよ新たな船を見つけるということはなかなか困難になってきて、恐らく離職者は陸に上がってくるであろうということでございまして、船員職業安定所と公共職業安定所が緊密な連携をとるようにということで、現在その連携協力につきまして協議を行って一層の協力を図っていくということにいたしているわけでございます。これらの制度を使いながら、関係省、省に運輸省と十分な連携を図って関係労働者の雇用の安定を図ってまいりたいというふうに思っております。造船業につきましては、これももう従来からの特定不況業種対策を実施しているわけでございますが、特に二〇%の船台の廃棄というようなことから、さらに離職者も予想されるところでございますので、これらに対しましても関係省庁と十分な連絡をとりながら施策を続けてとってまいるということで現在進めている次第でございます。
  175. 服部信吾

    服部信吾君 今、国会で国鉄の民営化と、いろいろ進められておるわけでありますけれども、余剰人員と、こういうことでありますけれども、この後は何か余剰船員という、余りかんばしくないんですが、必ずこちらの海運不況の方へ来るんじゃないか。要するに余剰船員、こういうのが問題にされてくるんじゃないか、こういうふうに言われているわけであります。日本船主協会は既に離職者船員の職場確保、外国船などをあっせん、しかも受け皿会社を設立した、こういういろいろ具体的なこともやっているようでありますけれども、今御答弁あったように、なかなかはかどらない、これが現状だと思うのですね。  そこで、一つお伺いしますけれども、かつてはいわゆる海上労働は陸上労働と全く違うんだと、異質なんだと、例えば離家庭性などという奇妙な言葉に異質性が象徴的に示されていたと。この結果、労働行政は労働省と運輸省に、保険行政は労働省と厚生省に、それぞれ二元化している、こういうこともあるわけでありますけれども、こうした行政の実態がこの余剰船員の問題を考えていて大きな障害に、ネックになるんじゃないか、こう思いますけれども、この辺のところはどのようにお考えですか。
  176. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  今先生御指摘のように、漁船等の一部、ごく小さな船の漁業者等を除きましては、船員につきましては運輸省が所管している、これは個別的、また団体の労働関係におきまして所管しているということでございます。  それから、保険につきましては船員保険ということで厚生省が所管しているということで従来からまいりました。先般の臨調におきましてもいろいろと議論されたところでございますが、従来の経緯それから船員、そのときの労働組合、その他も従来の立場を進めていきたいというようなことがございまして、現在に至っているわけでございますが、今、先生おっしゃいますように、こういうふうに非常に業界が現在のような状態になってまいりますと、これはやはり全体の中に入っていた方がよかったのかなということも考えられるわけでございますが、先ほど申しましたように、運輸省と十分連絡をとりながら施策につきましては、労働省の立場で陸上部門に上がってくる方々についての就職あっせんその他については強力に進めてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  177. 服部信吾

    服部信吾君 今、局長答弁あったとおり、これからますますこの海運不況、造船不況、いろいろ来ると思いますので、大変雇用問題、と同時にこの人たちに対する対応というのは大変難しくなると思いますので、できる限り一本化というような方向で進めていただければと思います。  次に、最近国際化、国際化といろいろ言われているわけでありますけれども、労働市場の国際化、こういうことについて若干お伺いしたいと思うんですけれども、四月の七日に発表された国際協調のための経済構造調整研究会、いわゆる前川レポート、国際的に開かれた日本に向けてということで、総理もよく言っておりますけれども、原則自由、例外制限、こういう観点に立っていろいろとこれから国際化に対応しなくちゃならぬ、こういうことでありますけれども、それでは果たして我が国の国際化を迎えて外国人の労働者に対する施策が十分であるかどうか、こういうことも非常に懸念されるわけでありますけれども、大臣、現在の日本は開かれたいわゆる国際的労働市場であるかどうか、この点について大臣の御見解をお伺いしておきます。
  178. 平井卓志

    ○国務大臣(平井卓志君) 現在日本での就労を目的として入国しようとする外国人、どういうことになっておるかと申しますと、一つには長期商用者、商用で長期に来られる方、さらには日本人では代替できない技術技能を生かして就職しようとする者、それから三つ目には熟練労働者、これらにつきまして入国、在留を許可しておるわけでございます。また、単純労働力については原則としてこれを受け入れないという方針をとっております。これはイギリス、フランス等の欧州諸国における現在の取り扱いと基本的には考えを同じくするものであると承知をいたしております。今後外国人労働者の受け入れの問題につきましては、長期的には経済社会面における国際化の進展を初めとした環境の変化を十分踏まえた上で対処すべきであるというふうには考えておりますが、当面は現行の取り扱いによりまして対応できるものと理解しております。  なお、現在の円高の影響等によりまして雇用情勢が非常に深刻な状況にございまするし、今後も特に厳しい状況が見込まれるわけでございますから、単純労働力につきましてはこれを受け入れないという従来からの方針を堅持することが当面何としても必要である、こういうふうに考えております。
  179. 服部信吾

    服部信吾君 我が国の労働市場への外国人の参入、これは今大臣が述べられた。特に、法的には出入国管理及び難民認定法、こういうことで規制をされておる、こういうことで決められているわけでありますけれども、外国人労働者、熟練だとかあるいは高度の技術を持った人、これはいろいろいいでしょう。しかし一般的な労働者、これは一般的な労働者というのは原則からいえば自由にすべきだ。なおかつそういう高度の技術者あるいは熟練した、こういう人たちは若干認めておると、こういうことでありますけれどもね。この点について、やっぱり一般的、原則的に今後の問題として、これなんかもやはり自由にすべきじゃないかと思うんですけれども、どうですか。
  180. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  今ちょっと私、聞き間違えたのかもしれませんが、大臣、先ほど答弁されましたのは、未熟練労働者については原則入れないということを申し上げたわけでございます。
  181. 服部信吾

    服部信吾君 いわゆる未熟練労働者というよりもね、この出入国管理及び難民認定法によっては、外国人労働者を一般的な労働者としては雇用しないと、これはもうはっきりしているわけです。なおかつ、ある程度技術を持っている方、そういう方についてはそれぞれのケース・バイ・ケースによって入れていくんだと、こういうことですのでね。これは、今こういうような問題は起きてないとは思いますけれども、こういうこともやはり今後経済摩擦の一因になっていくんじゃないかと、こういうようなおそれもあるわけでありますけれども、この点についてどうですか。
  182. 平井卓志

    ○国務大臣(平井卓志君) 先ほど御答弁申し上げましたように、本当の意味の国際化と申しましょうか、今後の全般の推移と申しましょうか、当然ながら単純労働者等についても受け入れていいじゃないかということでございましょうが、現在のところを考えますると、これは基本的には先ほど申し上げましたように、イギリス、フランス等と基本的に考え方が変わっておりませんで、ただ、現在のところ非常に経済情勢も厳しいわけでございまして、今後の雇用情勢も特に深刻になろうかということで、未来永劫考えるべきでないとは私申し上げてないので、当面は現状の単純労働力についてはこれを受け入れるわけにはまいらないと。ただ、今後のさらなる国際化等々環境の変化については、そういうふうな情勢を踏まえながらそれなりの対応の措置を今後さらに考える必要もあろうかと、こういうふうに考えております。
  183. 服部信吾

    服部信吾君 大臣の御答弁でわかりますけれども、法務省、出入国管理及び難民認定法第四条第一項の十二号に言う産業上の高度なまたは特殊な技術または技能とは具体的にどういうものか、さらに、十三号に言う熟練労働とは具体的にどうなのか。また、この五カ年間でどのぐらいの方たちが我が国にこられて、そして就業しておるのか、この辺の実績についてお伺いしておきます。
  184. 大久保基

    説明員大久保基君) お答えいたします。  先ほど先生から出入国管理及び難民認定法によって単純労働を禁じているという御発言があったかに伺いましたが、この出入国管理及び難民認定法においてはそのような規定はございません。ただいま先生御指摘になりました例えば四条十二また十三というようなカテゴリーに属する者については入国が認められているわけでございます。  具体的にこの二つのものについてどういうものがあるかということでございますが、それからまた数字でございますが、十二につきましては、過去五年間の数字はちょっと私手元にございませんので、後ほどお見せいたしたいと思いますが、とりあえず私の手元にございますのは今年度の前半でございますが、十二につきまして、これは技術提供ということでございまして、全部で新規入国者につきましては十二件ございます。それから十三の方につきましては、熟練労働ということでございまして、これは主としてコック、中国とかフランス料理の料理人でございますね、このような者が中心でございますが、今年度上半期では二百十七名の新規入国を認めております。
  185. 服部信吾

    服部信吾君 今言ったのは単純労働者は認めてないでしょうって言ったんです。あと高度とか技術を持った方はいいと、こういうことじゃないですか。
  186. 大久保基

    説明員大久保基君) お答えいたします。  先ほど私が冒頭に申しましたことは、法律でそういうものを認めていないということでございませんで、その法律の運用の方針といたしまして単純労働は認めてないということでございます。
  187. 服部信吾

    服部信吾君 もう一つ法務省に伺いますけれども、この問題に対して法務省部内において今後こういう国際化を迎えて何かプロジェクトチームをつくられて、そうしてこういう時代に対応すべく検討しておる、こう聞いておりますけれども、そのプロジェクトチームの内容とか、どういうことを研究されておるのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  188. 大久保基

    説明員大久保基君) お答えいたします。  この外国人労働者の問題は、先生がまさに御指摘のとおり、我が国の国際化という観点から最近非常に関心が高まってまいりまして、これは私どもだけでなく、他省におきましても検討されておられると承知しておりますが、私ども入管、法務省といたしましてもこの問題に取り組む必要があるということを認識いたしまして検討しているところでございます。  この問題に対します私ども立場を簡単に御説明させていただきますと、就職等により稼働を目的とする外国人の受け入れにつきましては、各方面におけるニーズを念頭に置きつつ、それがもたらす社会的問題、それから先ほど来御説明がありました我が国の労働市場の影響等を含む諸般の事情を考慮して対応してきているわけでございますが、経済の国際化の進展とともに、そのニーズも拡大、多様化しており、その面から稼働目的の入国を許可される外国人は今後長期的に見ますと、さらに増加、多様化していくものと思われます。
  189. 服部信吾

    服部信吾君 その中で、例えば労働省の調査の技能労働者需給状況調査結果報告、こういうものを発表されているわけでありますけれども、この過去十年間見てみますと、五十万から八十万人前後が不足しておるんだと、こういうデータも出ておりまして、六十年度においては五十七万人、こういうデータが出ているわけですね。そういう中で、これから高度情報化社会、こういうふうな時代に入ってまいりましてコンピューター化、こういうことを思いますと、例えばマイクロエレクトロニクス、こういうものを中心とした技術革新の進展、こういうものの技術労働者の不足、こういうものも非常に統計には出ているわけでありますけれども、現在例えばこういう人たちをこちらへ来て雇用するという場合に雇用できますか。
  190. 大久保基

    説明員大久保基君) お答えいたします。  具体的なケースにつきまして検討させていただくことになると思いますが、先ほど御説明ありましたとおり、我が国にとってないような技術を持っているとか、それからそういう場合にはその技能、技術等の内容とか、それからまた国内における需要等を勘案いたしまして個々に検討することになると思います。
  191. 服部信吾

    服部信吾君 だから、今の皆さんの出されたこれには入ってないわけですよね。先般、航空機製造とかそういうものに対して入れたよというようなことも聞いておりますけれども、今どのくらいの方をとっているかと、こう見ますと、大体例えばコックさんですな、こういう方は非常に多く入っているわけですけれども、実際にじゃ高度技術者、こういうものを見ますと、本当にそれこそ五十名とかそんなものなんですね。そういう面からいえば非常に開かれてないといってはおかしいんでしょうけれども、またそういう技術者というのは自分の国内においても必要だと、こういう面もあろうかと思いますけれども、今後のこの国際化ということを思ったときにやはり、例えば我が国が非常に不況だと。これからわかりませんけれども、じゃ例えば東南アジアあるいはそういうところの一般の単純労働者の方たちが日本に来て技術を学びたい、こういうふうに言っても、これは単純労働者ですから入れないわけですね。これは閣議決定で決められているということであるようでありますけれども。ですから、やはりこれからはそういう技術者だけ、そういう方たちはいいでしょう、しかし、一般の人たちも入れてあげて、これから東南アジアそういうところから日本に来て最高三年ですか、ぐらいは技術を勉強してまた帰るという、日本の国から出ていって教えるのもいいでしょうけれども、やはりこちらへ来てもらって、そしてまたその会社に入って国際化、また従業員と従業員との触れ合いとか、こういうこともあるわけですから、私はある面から言うともう少し枠を広げていけば本来の意味での国際化、こういうものになっていくんじゃないか。それで、あと例えば今言ったコンピューター等は、これはケース・バイ・ケースで運用の問題でやっていくんだ、こういうことですね。
  192. 大久保基

    説明員大久保基君) 今、先生から我が国を取り巻く発展途上国からの技術習得を希望する方たちの扱いということで御質問ございましたので、ちょっと答弁させていただきます。  実は、昭和五十七年の出入国管理及び難民認定法の改正のときに、四条の一項六号の二というのを新しく加えまして、これはまさに先生が御指摘になりました技術研修でございます。実績を申しますと、五十八年は、このカテゴリーで入っておりますのは一万二千六百十二名、それから五十九年一万四千二百六十八、六十年一万四千八百九という形で、少しずつではございますが、ふえております。
  193. 服部信吾

    服部信吾君 そういうことで、いろいろと、それもわかっておりますけれども、やはり原則的に一般労働者はいかぬのだ、こういうことですから、やっぱりこれからはそういうことも少し検討していただきたい、このように要望しておきます。  最後に、文部省にお伺いしたいんですけれども、来年度からですか、アメリカ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、英国等から先生、約千人ぐらいを招いて、一年契約で都道府県あるいは教育委員会、こういうところに配属をして、そのための予算をいろいろつけておる。これは非常に結構なことだと思うわけです。今までずっと統計をとってみますと、非常に少なくて、今度は思い切ってこれだけの方を招いて、そして本当の意味での国際化、また英語の授業を進めていくんだ、こういうことだと思いますけれども、やはり心配することは、せっかく先生方がたくさん来ても、その受け入れ態勢だとか待遇の問題だとか、やはり日本に来てよかったというような、いろいろ留学生の問題もあるようでありますけれども、そういうことを十分考慮していただいていると思いますけれども、今後この事業、これはもう大いに進めていくべきだと思いますけれども、今後の未来展望、こういうものがありましたらお伺いいたしまして質問を終わります。
  194. 小西亘

    説明員(小西亘君) 今先生のお言葉にございましたように、文部省では来年度から自治省、外務省の協力を得まして、地方交付税で財源を措置しまして語学指導等を行う外国青年招致事業というのを実施することにしております。十月八日付で文部、自治、外務の三省事務次官通知を出したところでございます。この事業は県の地方単独事業なんでございますが、従来文部省がやっておりました英国人英語指導教員、あるいはまた米国人英語担当指導主事助手の招致事業、これを発展的に受け継ぐものでございまして、来年からはイギリス、アメリカに次ぎましてオーストラリアとかニュージーランドの外国青年も加えまして、そして中学校、高等学校等における外国語教育に従事させる、このようなことで、地方レベルの国際化の推進を図ろうと、こういう事業を今計画しているところでございます。この運用に際しましては、先生今御指摘ございましたような趣旨も十分体しながら対応していきたいというように考えておるところでございます。
  195. 刈田貞子

    刈田貞子君 ことしは、男女雇用機会均等法が施行されて初めて迎える年でありまして、やがてそれが半年になろうとしておりますが、この間労働省はことし六月に、男女雇用機会均等法月間というのを設けて、均等法の周知徹底に当たるということで努力をされております。  私どもも大変喜ばしく思っておりますが、そこで、その効果のあらわれ方のぐあいについてお伺いをするわけでございますけれども、職場における男女の差別の解消、あるいは女性の地位の向上といったものにどのようにこれが寄与したのか。それからまた、もう一つはことしは早まりまして八月の二十日から来春の大卒採用の会社訪問等解禁になったわけでございますけれども、均等法施行後初めての採用というようなこともありまして、マスコミ紙上等では均等法元年に当たることしは、企業の中に女子を前向きに採用しているところがふえているというような効果のうたい上げをいたしておるのでございますけれども、この施行後まだ半年といえば半年ですが、均等法の効果というものを労働省はどのように把握をしておられますか、お伺いをいたします。  まず大臣から先に伺っておきましょう。
  196. 平井卓志

    ○国務大臣(平井卓志君) 委員ただいま御指摘のように、成立をいたしましてから半年でございまして、現在決して施行した法律が十分に成熟いたしておるとは私考えておりません。しかし、この半年の経過の中で各種民間の調査等によりますと、現実出てきておる姿と申しますのは、募集、採用初め雇用を法律要請に沿ったものに改善をいたしておる企業が多数見受けられる。また、各新聞社が実施いたしております来年度の新規学卒採用計画の調査結果を見ますると、昨年までは男子のみの求人が多かった四年制大卒につきましても、本年は男子のみの求人が相当減少しておりまして、言うなれば法の趣旨に沿った求人が行われるようになってきておるという一応の評価はできるのではないかと考えております。  労働省といたしましては、現在あらゆる機会をとらえて均等法の周知徹底、啓発に努めまして、その円滑な施行に全力を挙げておるところでございます。  今後さらに募集、採用初め雇用の分野での男女均等取り扱いが緩やかながらも着実に実現されていくような法律の適切な運用に十分努めてまいりたいと考えております。
  197. 刈田貞子

    刈田貞子君 この均等法を実効あるものにするために職場での配置、昇進、あるいは教育訓練、福利厚生の問題等、あるいは定年退職、解雇といったようなことについて常々会社の中である苦情等を処理していくことの問題、これが均等法をつくるに当たってかなりみんな苦労された部分なんでありますが、その問題の処理方法といいますか解決法ということで、この均等法では三つの道があげられておるということで、一つには企業内における自主的解決でございますが、これがなかなか企業内における自主的解決というのは難しいものがあろうかというふうに思います。  二番目に、その場で解決できないものについては、婦人少年室の援助を求めるということが二番目の解決の道でありますけれども、この均等法施行後、婦人少年室への訴え等何か変化が生じてきておるか。そして、その中身によってこの均等法がこのような効果が出てきているという読みもできるわけでございますが、その後の少年室への訴えの状況等御説明いただければと思います。
  198. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 先生おっしゃいましたように、三つの解決の方法がございまして、企業の中で自主的に解決していただく、これも企業の中で女性が円満な解決をされ、楽しく仕事をしていくという上で大変重要なわけでございますけれども、室での解決のための援助ということも大いに期待されておりまして、法律が施行されます前から室には企業からもたくさん御相談、御質問が来ておりますが、女子の方たちからも御自分たちのケースについての御相談、質問等たくさん来ております。そういうものに対しましては、室でも十分お話を伺い、企業の方にもいろいろ間に立って指導もいたしまして、多くのものが解決に結びついているという形になっております。今後も、私ども、企業に対する指導、周知徹底とあわせまして、女子のそういう個別ケースの解決にも十分力を尽くしていきたいと考えております。
  199. 刈田貞子

    刈田貞子君 そのもう一つ上の段階の解決の場でございますこの調停委員会の機能でございますが、これには何らかの変化がありますでしょうか。
  200. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 調停にかけますということはなかなか企業にとっても大変なことでございますが、女子にとってもなかなかエネルギーの要ることでございまして、そこまでいかないうちに解決する方が女子のためにはよろしいというふうに私ども思っておりまして、御相談がありますと、事実上は調停に近いような感じになる場合もございますけれども、かなり立ち入った指導等を企業にいたしておりまして、そういう形でこれまでもほとんどのものが解決しておりますために、調停というところまできておるものは今のところは、また半年しか先ほど大臣も申し上げましたようにたっておりませんが、今のところはまだ調停までかけてくれというほどこじれているものはございません。
  201. 刈田貞子

    刈田貞子君 それから先ほどの苦情の中で、先ほど来ずっとお話が繰り返されております今日の円高による不況下で特に女性の職場に対してしわ寄せが多くあると、そのことの苦情と申しましょうか、あるいはそのようなことをあらわす現象というようなものを把握しておられますか。実は私は幾つかの資料を見ましたんでございますけれども、例えば採用状況の減とか、あるいはその増減数等、月別に見てもそれは男女別で出ておりませんで、採用等あるいはその数字はマイナスになっておるけれども、それが女性の割合がどんなにあるかということがつかめないで実は苦労しているんですが、個々には、やはりパート等、短時間労働等にかかわっている女子が多い関係上、個々別には今ちょっと休んでくれと言われておるというような種類のことは耳にするわけでございますが、いかがでしょう。
  202. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 先ほど室にはいろいろ個別ケースの御相談があるということを申し上げたわけでございますが、そのほとんどが均等法に照らして、女子であることを理由として差別されているかどうかという関係の御質問、御相談でございまして、円高で自分たちが解雇された、あるいはやめてくれと言っている、これは女子に対する差別であるということでお持ちいただいているケースというのは、今のところはまだ報告が来ておらないわけでございます。確かに数字等で、円高の影響で解雇された方々の数というのは男女別には出ておりません。私どもとしては、全体的な姿を見ます場合は、総務庁でやっております労働力調査を見ておりますけれども、月別の最近の状況を見ますと、女子の場合はかなり堅調に雇用は増加いたしておりまして、特にサービス業等三次産業ではふえておりまして、製造業ではやや減少しておるわけでございますが、男子についてもやはり製造業につきましては、これは円高だけではなくて長期的な問題もあろうと思いますけれども、減っておるということでございます。
  203. 刈田貞子

    刈田貞子君 就職戦線のことでございますけれども、ことしは均等法が始まって初めての就職戦線ということで、大なり小なりこの影響が出てくるであろうということでマスコミ等もかなり論じておるわけですけれども一つ私伺いたいのは、企業が採用方式の形として、これまでは男女別求人方法というのがございましたけれども、それは今回やってはならぬことになったわけですね。それで結局、そのかわりの募集の仕方というふうに私どもは考えられるのですが、幹部を目指すためのいわゆる総合職、それと、またいわゆる事務中心の一般職といいましょうか、事務職といいましょうか、こんなふうな分け方の採用の仕方が目についてまいりました。結局、全国規模の転勤があり、将来は幹部候補生になっていくというようないわゆる総合職というものと、転勤もしない、そして事務だと、だけれどもそれで満足なんだと。これは転勤がないというようなことの問題ですけれども、あえてうがってこのことを私考えますと、これも何か暗にていのいい差別の新たな方法ではないのか、結果的にです、こう考えるんですけれども、これ御意見いかがです。
  204. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) おっしゃいますとおり、ことしの新卒の募集状況を見ますと、確かに男子のみというのは大きく減ってまいりまして余り見られないようになりましたが、募集のときに条件を細かく示しまして、地方転勤がある、その他の条件を示しまして、そういうものでよければ総合職へと、それができない方は一般職ということがあるわけでございますが、今までの女子に対する募集、採用というのは、どちらかといいますと、そういうことは示しておりませんけれども、事実上は、あなたたちは転勤もできないでしょう、長時間労働もできないでしょうと、そのかわり単純な仕事の方に行っていただきますと、事実上はそういう状況だったと思うんです。それで、男子と同じように働くから男子と同じように扱ってほしい、幹部にもなりたいという人への道は全くなかった、一本しかコースがなかったということだと存じます。これからはその両方のコースがありまして、どちらにも自由に選択できると。事実上は女性の場合には地方転勤等は望まないという方も結構あるわけでございますから、こういう二つのコースがあり、どちらにも女子が進む道が開かれておれば均等法違反ということはないのではないかというふうに私どもは感じております。
  205. 刈田貞子

    刈田貞子君 まあ、考え方だと思います。そして、そういう一歩前進的な考え方としてこの種の採用方法を受けとめてみたいというふうに思います。また男性にとっても、転勤はいやだと、地域に徹してそれでマイホームに尽くすんだということであれば、管理職、総合職という方を望まないで一般事務職の方に採用されるような形をとるという男性の選択の道もまた開かれたということになるんでしょうから、そういうふうに理解をすればこれは差別ではないなというふうに思ったりいたしますけれども、この推移も、今後結果を見ていかなければわからないというふうに思っておりまして、一つ疑問を持っている点でございます。  それから次に、女子再雇用促進給付金のことでございますが、今度これは新たに創設された大変私どもにとっても好ましい制度で、大いにこれが活用されていかなければならないというふうに思うわけでございますけれども、これ中身を見ますと、結構いろいろな条件等も明記してあるんでございますね。    〔委員長退席、理事梶原敬義君着席〕 ただし、条件があろうといわゆる雇用主はこのことをよく研究して、そして再雇用者の職業を十分確保してやれるというような条件をやはりつくってもらわなければならないので、これについてやはりPRをしていただきたいというふうに私どもは思っておりますんですが、これことし、六十一年度予算は九千三百万円程度で大変少額のものですが、今後この制度が機会均等にどんなふうに意味を持っていくとお思いになるか、そして今の現状はどんな状況であるかちょっとお知らせください。
  206. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 先生おっしゃいましたように、女子再雇用制度といいますのは大変女子にとっては重要な制度になりつつあるわけでございます。といいますのは、女子の場合には働き方も多様でございまして、子供が生まれたら家に入って子供をちゃんと育てたい、そして子供がある程度大きくなったらまた職場に出てきたいという女性が多いわけでございますが、なかなか中途採用というのは難しい現状がございますので、企業がそういう女子を再雇用してくれるということは大変に朗報であるというふうに私ども考えておりまして、そのために均等法ではこういう制度を導入することを使用者に努力義務として義務づけているわけでございまして、予算措置もいたしたわけでございます。額が少ないのじゃないかという御指摘ございましたが、とりあえずことしは第一年度でございます。再雇用制度というのは一度やめまして戻ってきてからということでございますから、この制度が導入されてから実際に戻ってきてその使用者に給付が行われるまでにはかなりの時間がかかるわけでございますからタイムラグもあります。ですから、初年度状況を見ながら非常にお客さんが多いということであれば予算の増額の要求ということは私どもとしては考えていきたいと思いますが、とりあえず先生のお話もございましたように、十分使用者に周知をいたすということで今そちらの方に力を入れているところでございます。
  207. 刈田貞子

    刈田貞子君 会計検査院さん見えていると思うんでございますけれども、時間がなくなっちゃったの。それでおたくが御指摘なさいました雇用保険にかかわる給付の問題についての御指摘の問題をちょっとお伺いしようと思ったんですが、時間がなくなりましたのでこれ落としますものですから御退場いただいて結構でございます。大変ありがとうございました。申しわけありません。  それから佐藤局長、婦人の問題これで終わらせますのでありがとうございました。よろしくお願いいたします。  次に、私は先ほど来お話が出ております雇用調整助成金について少しだけお伺いをしておきます。  これもずっと話を聞いておりまして中身も大体わかってきたので問題点を絞って伺いたいと思いますが、この二十日から実施をするということで、十五日は労働省その趣旨なるものを発表なさいまして細かい中身を読ませていただきました。雇用調整助成金制度及び特定求職者雇用開発助成金制度の改正についての問題で助成金制度の方についてだけ伺います。  その1の雇用調整助成金制度の改正の(1)に、業種指定基準の弾力化の問題が出てまいりましたですね。この問題についてでございますけれども、これまで労働省、業種指定についてずっと数を伸ばしてみえられました。不況の状況に合わせてずっと伸ばしてこられたわけで、その数字、推移もよく調べさせていただいてわかっております。十月末現在百二十業種と聞いておりますが、よろしゅうございますね。  それでその弾力化をうたっている最後のところで、今後も、したがって事と次第によってはこの業種指定をさらに進めていくんだと、こういう弾力化をお持ちになるわけですけれども、その基準として、最近一カ月間の実績を含む三カ月の見込み数値によって指定を行っていくというふうに書いてあるんですね。このことについて伺いたいんですけれども、三カ月程度の実績を踏まえて業種指定をするという意味ですね。この三カ月という期間の考え方について教えてください。
  208. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  従来の基準では生産、雇用の状況の実績を三カ月とらえまして、それで落ち込み状況その他を見て、この業種につきましては生産、雇用面において落ち込んできていると、したがってこの雇用調整金の対象にすべきであるということを見ていたわけでございますが、急激な円高によりまして三カ月の実績を待っていては対応ができないということがいろいろございまして、したがって一カ月の実績と二カ月後の生産見込み等を見て、その一カ月を含んだ三カ月で見ていくようにしていこうと、そこが弾力化したという趣旨でございます。
  209. 刈田貞子

    刈田貞子君 そうすると、実績は一カ月の実績を見てという意味ですね。わかりました。そこのところがちょっと表現で読み切れなかったものだから、三カ月なら前とどこも変わっていないじゃないかというふうに思ったのでお聞きをいたしたところでございます。わかりました。  それから二番目に、助成率も大変に改善をしていただいておりまして、今日の不況下にとっては大変に結構な措置をとっていただいたと思っております。  問題は、この調整助成金が有効に機能してやはり雇用確保を図るということ、失業を予防するということにつながっていかなければならないわけでありますが、訓練費が七百三十円から千五百円に引き上げられたこと、これも結構です。それでこの離職前の訓練費というのがあるでしょう。 これなんですが、離職前の訓練費をもらって離職する前にいろいろ訓練を受けた者が、その離職した後その訓練が生きているかどうかというような問題、それともう一つは五番目、再就職あっせんにかかわる助成率の改善もしていらっしゃいます。四分の一から三分の一に新たに受け入れる事業主にお払いになる、これもいいんです。結構です。ただ、これが本当にそうなっているか、なっていないかということを、私ども公明党の中西珠子先生も前にたしかこの質問をされたはずでございますが、つまりこういうふうにして規則があって、そして受け入れる事業主ももらって、それでそれを使って新たに業種転換してきた人を受け入れていくんだということなんですが、それがそうなっていないのではないかという個々別事実を聞いておりますと、この種のものをこうした後に後追いの問題はどうなっていますかということを御質問させていただいたはずなんです。それについて労働省は、そうした問題については今後調査をしてまいりますと、こういうことをおっしゃっておられたわけですが、今日この不況下においてこの調整助成金の機能は実に私は大きな意味を持っていると思います。したがいまして有効に機能していかなければ困るわけで、この辺のところの御配慮なさいましたか、お伺いします。
  210. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  この制度を有効、適切に活用していくためには今先生御指摘のように弾力化、効率化を図っていかなければなりませんが、それが一方悪用されるというようなこと、また悪用までいかなくても適切に措置されていないというようなことは避けていかなければならないわけでございまして、その点につきましては先ほどのお話の中に会計検査院等の指摘等も従来ないわけでございませんで、結果としてはあるわけでございますけれども、厳正な処理審査、さらにはその後の実績その他について十分調査を進めているところでございますけれども、何しろ現在は非常に件数がふえてきてまいっておりまして、今支出段階に入っていると申すところでございますので、一〇〇%いっているかどうかということになればかなり問題があるんじゃないかというふうに思っておりますけれども、御指摘のとおり厳重に調査その他を進めてまいりたいというふうに思っております。
  211. 刈田貞子

    刈田貞子君 それから補助率も上げて、そして指定業種もふやすということになりますとお金が必要になってくるわけでございますので、今度その資金の問題について伺いますが、この助成金の支給実績、これもずっと数字五十八年から拾ってきてみましていろいろ言いたいこともあるんですが、六十一年度予算でこれについて二百四十一億計上してありまして、これは前年度六十年度の二百六十七億よりも少なく計上しているんですね。今日のこの円高不況というものを全く予想しないで二百四十一億というような額を計上なさっておるのかどうなのか、これは五十八年度以来いろいろそのときの景気、不景気によってこの出方が違いますから、これは非常に微妙な問題ではあるんでございますけれども、昨年のG5以降我が国の経済は下向きになってきておることはようわかっておるところで、六十一年度二百四十一億と前年度よりも少ないものが計上してあるということ、これについての御見解及び今後の支出の見通しはどうなりますか。
  212. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答え申し上げます。  先生既に資料をお手元にお持ちでございますので、ごらんになっていただいたらわかるかと思いますが、この雇用安定事業、いわゆる雇用調整助成金を中心としました雇用安定事業を進めてこの制度を設けましたのは、これももう釈迦に説法かと思いますが、失業者が出て、その後失業給付で再就職を図っていくという従来の高度成長期におきます失業対策、失業保険のあり方を、安定成長期におきましては、失業が予防されて、失業するとなかなか就職困難な面もあるというようなことで、その予防を図って雇用の安定を図っていこうというために設けられたものでございます。 したがって、五十年にできたときには実績で五百五十二億という大幅な数字が出たのでございますが、その後、今申し上げましたような制度の性質からいきまして、景気の波によりまして非常に波動性があるというようなことで、五十八年では百六十一億、それから五十九年では六十三億、六十年では四十七億、こういうような経過を実績としては進んでまいっております。これはやっぱり五十八年、五十九年、六十年の雇用失業情勢では一応安定していたと見られると思います。しかし、六十年の後半以降六十一年に入りまして、非常に円高その他によりまして雇用失業情勢、悪化してきているわけでございますけれども、予算のあり方としましては、六十年の実績が四十七億でございますし、その前の五十八年からの実績を見ましても百六十一億というのが最高でございますので、六十一年につきましてはそれらの推移を見ながら二百四十一億という予算を組ましていただいたわけでございます。現在のところ、先ほど先生いろいろ御指摘いただきました新しい雇用調整助成金の制度の中身の率その他の改善によりまして、六十一年度じゅうに新たに生ずる予算のための額は約三十億程度だと我々は計算いたしております。一般の給付は、これも先生資料お手元にあるようでございますが、月別にはこう上がってきておりますけれども、現在のところ、我々としましてはこの予算額の範囲内、あるいは予算額を超えましても予備費を持っておりますので、それで十分対応できるというふうに考えております。
  213. 刈田貞子

    刈田貞子君 予備費があるから十分対応できるということなんだと思うんですが、それはあれでしょうか、雇用安定資金のことを言っておられるんですか、お尋ねします。
  214. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) 雇用安定資金も最後に控えておりまして、雇用安定資金制度は、またこれも細かいことになりますが、いわゆる補正を組まなくてもこの安定資金で活用できるということでございまして、予備費にさらに雇用安定資金を持っているということでございます。
  215. 刈田貞子

    刈田貞子君 雇用安定資金のことでついでに申し上げておきますけれども、ここにもこの四事業で余剰してきたものをプールしてあるわけですが、たまっているんですね。十月末で五千九十七億円あるというふうに私は理解しておるわけでございますけれども、これもかなりフルに十分この調整助成金の方に引き出してきて使えるということになるわけですね。
  216. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) 予算が足らなくなれば使えるということになります。しかし、一回で終わるものではございませんで、長期的な観点から予算の執行も考えていかなければならないというふうに思っております。
  217. 刈田貞子

    刈田貞子君 大変に時間がない中で、実は今の不況下の中で大事な機能を果たすこの調整金の問題についてもうちょっと私伺いたかったんですけれども、今度新しく二十日から行っていきます状況も見ながら、また機会を得させていただいていろいろ伺わさせていただきたいと思います。  次に、アスベスト問題についてお伺いをするわけでございますが、十月一日から一週間でございますか、労働衛生週間というようなことで大変いろいろな行事が組まれ、その前二週間ですか、準備期間等もありまして、大きな労働環境問題についていろいろ論議が出ており、また、一昨日からシンポジウム等もいろいろあっちこっちで開かれているようでございまして、大変結構だと思います。  それで、私は、前々から関心を持っておりましたこのアスベストの問題についてちょっと労働省の御見解を伺っておきたいわけでございます。  環境庁がまず見えていると思うんでございますけれども、環境庁は昨年の六十年六月二十日にこのアスベストにかかわる環境状況についての見解を御発表になっておりますね。私、大変不足があるんでございますけれども、まず、時間がないので一言。  今、アスベストはそんなに一般社会に対して害は持っていないというふうな御見解なんだと思うんだけれども、根拠を二つぐらい簡単におっしゃってください。
  218. 浜田康敬

    説明員(浜田康敬君) 先生今御指摘のとおりでございまして、環境庁におきましては、五十六年から一般大気環境中のアスベストというものに着目をいたしまして、専門家に依願をいたしまして種々の調査、検討を行ってきたわけでございますが、その結果を昨年、つまり六十年の二月に公表いたしております。  その結果によりますと、一般の環境中のアスベスト濃度というものは、大体、これは単位は繊維数、一リットル当たりの繊維数ということになりますが、〇・一から一〇というぐらいの範囲でございまして、これがどうかという評価でございますけれども、この点につきましては、一般の環境の基準というのは世界的にもございませんで、私ども検討会の中でも、日本産業衛生学会が勧告しておられます作業環境の暴露限界として繊維数一CCあたり二個という基準がございます。つまり、私どもの単位に直しますと二千という数字になるわけでございますが、これに比較いたしまして二けたないし四けた先ほど申し上げた数字は低いということから、直ちに一般の環境として健康に問題になる状況にはないという判断をいたしたわけでございます。  ただ、その検討の過程で課題として指摘されましたのが、一つは、アスベストが環境蓄積性が高いということがございますものですから、今後、場合によりましては環境濃度が増加していくことも懸念されるということでありまして、そういう点から私どもとしましては、六十年度以降、長期的なモニタリングということを一般環境中で実施をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  219. 刈田貞子

    刈田貞子君 私は、環境庁のその発表を見ましたとき、問題に思ったのが二点。  一点は、労働衛生安全基準を基準にして物を考えておられる。つまり、一CC中今二本と言った、立方でいうと二千ですよね。それは一日八時間、一週間五日働いた場合のいわゆる労働安全基準を基準にして物を言っておられること。私がお尋ねしているのは、一般環境として考えられるアスベストの基準をやはり既に考えなきゃならないということの意味合いがあってお伺いしているわけです。それが一点。    〔理事梶原敬義君退席、委員長着席〕 だから、安全だというふうに果たして言えるかどうかということです。しかも、安全であるというその労働省関係の基準は、アスベスト肺という特殊な病気が発生するのを一%以下に抑えるという基準なんですよ。それ間違えたらいけません。  それからもう一つの問題点は、このアスベスト肺が出るまでには既にかなりのものがありまして、その前にやはり肺がんとかあるいは悪性中皮腫、こういう種類のものをやはり考えていかなければならない。そのための基準も私は考えていってほしいというふうに思うんでございます。  アスベストはギリシャ、ローマ、昔の時代から天然界に存在する物質ではあるけれども、最近とみに私ども生活環境の中に多く取り入れてきたということで、人間は今その中に埋まった生活をしているということを考えた場合に、これは環境庁としてもひとつ大きな課題であろうというふうに思いますので、一日二十四時間その中で暮らしている人の基準を考えなければいけないというふうに思います。  急ぎますので、労働省の方の分をお伺いをいたしますけれども、労働省の方では、今言いましたように、労働安全衛生法に基づく特定化学物質等障害予防規則、これにのっとって、それから安全衛生規則でいろいろ締めができておる。そして年に二回ですか、関連作業所は健康診断を行い、環境整備をしていくということになっているのね。ところが、これに対する各企業からの報告をとっていないのではありませんかということが一つです。  時間がないので重ねて言ってしまいますけれども、二番目の問題は、ことし九月に作業所における作業のあり方の一つの指導をなさいましたね。あの問題についてお伺いをするわけでございますけれども、この周知徹底についてどんなふうに考えておられるのかということです。この二点についてです。
  220. 平賀俊行

    政府委員(平賀俊行君) まず御質問の第一点でございますけれども、特殊健康診断の結果についてはまとめて報告を徴しております。報告をとっております。  それから、九月の六日付の通達でございますが、通達内容になっていることについては、先ほど先生御指摘の規則によっておおむね義務づけられている内容でございます。  ただ、この通達を今回いたしましたのは、一つはことしのILO総会でアスベストに関する条約の採択がなされ、その中に解体工事についての条項がございます。それと、最近解体を行っております建造物でちょうど昭和三十年以降ぐらいの建造物にかなりアスベストの断熱材が使われておる、こういう関係もございましたので、特に関係業界等に周知徹底を図るということで、一つは直接に解体をやっております団体にこの通達を流しておりますのと、それから建設業の災害防止協会を通じて、その支部であります各県の建設業物会に流す。もちろん通達でございますから、私どもの都道府県の労働基準局から監督署へ流す。おおむねその三つのルートで周知徹底を図ることにいたしております。
  221. 刈田貞子

    刈田貞子君 さっきの報告は受けておりますというふうにおっしゃったけれども、義務づけには恐らくなっていないと思うんですけれども。それは義務づけにしていくべきであるというふうに思います。  それから、その通達関係がどのぐらい浸透しているのかということで私も業界に電話で尋ねてみました。そして、いわゆる建物解体業協会でしょうか、協会に所属しているところの方々に聞いてみました。そしたら、解体の前に全建物に水を散布するとか、それから全部の建物を解体するに当たって周りにシートを張るとかいうふうな指導はあっても、具体的にそれが解体費のコストにかかってくるというようなことになればいかがなものだろうか、これは一体だれが負担するのですかというようなことで、聞いてはおりました、聞いておりますけれども、さて実行となるとどうなのかというのが現状なんです。私はこのことについて大変やっぱり憂慮をいたしております。  それで、今私申し上げましたいわゆる特化則の中の三十八条の八のただし書きですね。この中に、石綿等を湿らせてそれでやらなければならないということが書いてありながら、ただしそういう状況が著しく困難なときはその限りではないというふうにただし書きがつくってあるわけです。だから、これが生きてくれば解体物全部に水を散布して、そして今たくさん使われているアスベスト、これが使われている建造物の解体に当たってこの種のことは一切しなくてもよくなるわけなんです。それで私は、このただし書きは取るべきではないかなというふうに思うんでございます。  そして、あわせて今諸外国ではこのアスベスト、石綿に対して大変脅威を抱いております。新たな公害という問題で既にアメリカ等でも規制を厳しくし、そして代替製品について大いに考えておるという時期でございまして、さっきILOの話が出ましたが、もし百六十二号の条約の問題だとすれば、この百六十二号条約の問題のようなものについては既に日本でも吹きつけは禁止、そして作業所の環境基準は決めなさいということになっておりますから、このILO条約はクリアしていることになるわけなんですね。  したがいまして、このアスベストに係る労働条件、その衛生機関の問題、こういう問題についてもっと真剣に取り組んでいただきたいことを労働者にかわってお願いをするわけでございますが、この点の御答弁いかがでしょうか。
  222. 平賀俊行

    政府委員(平賀俊行君) 最初に、報告についての義務づけがあるかどうかということでございますが、これは義務づけをすべきではないかという御質問で、これはもう既に義務づけられております。  それから、アスベストの問題が非常に国際的に重要視されていることは私どももよく承知をしております。そして、我が国のアスベストに対する危害の防止に関する各規定の諸基準は、先ほどILO条約についてお引きになりまして、最近制定されましたILOの条約の基準をほぼ満たしておる、こう考えております。したがって国際的に見て一応遜色のない基準でやっておるということでございます。  先ほどの三十八条の八のただし書きの問題ですが、ただし書きは著しく困難な場合、それはアスベストを使うことについて、ぬらすとアスベストが使えなくなるような場合など非常に限定された場合で、解体工事の場合にはまず原則としてそういうただし書きの適用はないというふうに理解をしております。
  223. 刈田貞子

    刈田貞子君 だけれども、不況下の話でその費用負担はだれがするのかというのが結局は現場の声なんですね。だから、そういうふうなことを十分踏まえられてやはり指導をお進めになる必要があろうかというふうに私は思います。  それで大臣、最後にこれとても大事な問題なんです。マスコミでもそろそろ取り上げてきておりますけれども、今建築物に使われている例のアスベストの問題だけについても話をしましたけれども、私どもの周辺では甘く見ても大体三千種ぐらいのものに使われていると言っているわけね。医療品、食料品などの製造過程あるいは家庭用品、今言いました建築資材、それから電気製品、自動車、飛行機、宇宙船に至るまで。そして私どもなんかが日常使うパウダーなんかも全部。それから子供たちが使う粘土、こんなふうな身近なものまで全部使っているのがこのアスベストなんです。それらのすべてがみんな害になるとは申しません。しかし、それらのものをつくっている工場があり、そしてそこで働いている労働者があるということを考えた場合に、やはり私は、アスベスト粉じん公害というような事柄についてもう少し真剣に日本の国でも取り組みをしていくべきではないかということで御提言をするわけでございますが、大臣の御決意を伺いまして質問を終わります。
  224. 平井卓志

    ○国務大臣(平井卓志君) やや現場の専門的にわたることでございますけれども、労働衛生上の管理が必要だという物質として法令によって規制をされておるわけでございますから、やはり今後御指摘のような点を十分踏まえて、実態から予防すべて実効が上がるような方向に十分なる検討を重ねていかなければいかぬというふうに考えております。
  225. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 先ほど来山本委員及び服部委員から国際化の問題について質問がございました。私もその問題をまず最初に重複を避けて取り上げたいと思っております。  中曽根内閣は国際国家であるとか国際化ということを重要な施策の一つの柱にしているわけですが、その内閣の一員として労働大臣は労働行政の面において、どういう面について力点を置いていわゆる国際化を図っていかれるつもりであるか、そのことをまず最初にお伺いしたいと思います。
  226. 平井卓志

    ○国務大臣(平井卓志君) 近年各国間の総互依存と申しましょうか、こういう関係の深まりの中で、我が国の国際的地位の向上に伴って、労働の分野におきましても積極的な対外政策を展開していく必要が非常に出てまいっておるわけでございます。そういう中で、国際機関活動への積極的参加と申しましょうか、これを協力してまいりたい。またその諸外国との相互理解の促進のための労働関係者の国際交流の推進、さらには開発途上国における労働分野での技術協力の展開等を通じまして積極的な労働外交を展開いたしておるところであります。特に、今後は我が国と各国との間の労働問題、労使関係に関する誤解の解消と申しましょうか、こういうことも図っていかなければならぬ。さらに、積極的に一歩踏み込めば、十分な意見交換を行うため政労使の労働関係者による国際交流を従来にも増して推進すべきであるというふうに考えております。  いま一つは、発展途上国の経済社会開発を支える人づくり協力、この要請が非常に高くなっておりまして、そういう高まりにこたえて、広範な労働分野における技術協力を積極的に進めてまいるというふうに理解をいたしております。
  227. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 国際交流並びに発展途上国に対する技術指導、それに対する予算、いただぎました五十九年度、六十年度、六十一年度、これは為替相場が変動しておりますのでこのまま比較するのもどうかと思いますが、確かにその伸び率はかなり伸びているように思いますが、ただ絶対額がいかんせん非常に少ない。これは今後また伸ばすようにしていただきたいと思いますけれども、今、大臣触れられなかった問題で、やはり労働条件あるいは雇用条件なんかを国際的な水準に近づけていくということも、日本が国際比をしていく上において重要なことではないかと思うんであります。この場合国際化と申しましても、何も発展途上国と同じにするという意味じゃなしに、やはり日本と同じような先進工業国で採用していると同じような基準を採用していくということが必要ではないか。  その点から言いますと、ILO条約、日本はまだ未批准の条約がかなりあると思うんですけれども、大臣、この日本の現状をどのように認識しておられますか。OECD加盟国の中で日本が批准してない条約なんかかなりあるように思うんですけれども、どのようなふうに日本の現状を認識しておられるか、それをお伺いしたいと思います。
  228. 岡部晃三

    政府委員(岡部晃三君) ILOとの絡みで、我が国の国際化の進展、さらに推進すべきではないかというお尋ねでございます。これは具体的にま、ILO条約をさらにより多く批准すべきであり、またその内容を忠実に実行すべきではないか、こういうお尋ねであろうかと理解されるのでございます。  ILO条約の状況は、現在まで百六十二条約数があるわけでございますが、一カ国当たりの平均の批准数は世界的に見て三十五が平均値でございます。我が国の批准数と申しますというと、既に三十九条約を批准をいたしておりまして、平均以上ではあるわけでございます。  我が国のこのILO条約の批准のやり方というのは、先生承知のとおり、非常に厳密に国内法制と照らし合わせまして、完璧にすり合わせができ上がったところで批准をするというのが従来の閣議決定で定められた線でございまして、ほかの国のように批准してから国内法制をそれに合わせるというようなやり方をとっていないというような状況でございますので、そのほかの例えば西ドイツが六十六、イギリスが七十九というふうな数に比較いたしまして我が国は若干少ないという御印象をお持ちかもしれませんが、それは我が国のそのような、従来ILOを一たん批准したならば優等生としてこれを守っていくというような条約に対する態度によるのではないかと思うのでございます。しかしながら、先生の御指摘のように我が国はますます国際化いたしますので、ILO条約もできるだけ批准でるきように、一つ一つ検討を加えましてできるだけの批准を重ねていきたいと、このように考えております。
  229. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 ただいまILO条約を批准している数は世界の平均で三十五、日本は三十九と言われましたね。その世界の平均というのは途上国なんかを含んでいるわけですか。OECDに加盟している国の平均と比較して日本はどうですか。
  230. 岡部晃三

    政府委員(岡部晃三君) OECDということで特に今数字手元にございませんが、主要国を申し上げますというと、批准数がフランス百十、イタリア百一、イギリス七十九、西独六十六、ソ連、これはOECDじゃございませんが四十三、インド三十四、中国十四、アメリカ七、こういうふうな状況でございます。非常に国によって差がございます。
  231. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 アメリカの場合は州の法律がいろいろ分かれているのでちょっと同じ基準で比較するのは正当ではないと思うんですけれども、OECD諸国内で比較しますと三十九という数は決して多くはないということは認められますね。  それで、一つ一つの条約について取り上げていきたいと思うんですけれども、とてもそんな時間ございませんので、私が今最も関心を持っております百十一号、百三十五号、百四十四号条約、これを次々に取り上げていきたいと思うんです。  まず最初に百十一号条約ですね。これは雇用及び職業についての差別待遇に関する条約百十一号、つまり人種とか皮膚の色とかその他性、宗教、政治的見解や何かによって雇用または職業における機会あるいは待遇について差別をしないことという趣旨の条約だと思うのですが、これはまだ日本は批准しておりませんですね。百十一号条約に関して言う限りにおいては、OECD加盟国二十三カ国のうちで批准していないのは四カ国ですね。これは決して名誉なことじゃない。やはり、こういうふうな条約をいつまでも批准しないということは何か日本が特殊な国ではないのか、労働条件においてあるいは雇用条件において日本は何か特殊な国じゃないかというふうに思われることは、日本の国際化にとって非常に不利なことではないかと思うんですが、この百十一号条約を批准していない理由はどこにございますか。
  232. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  百十一号条約の問題につきましては非常に長い期間かけて検討いたしておりますが、例えば男女雇用機会均等法等の成立を見まして、法律の整備等を図っているわけでございますけれども、先ほど官房長の方からお答え申し上げましたように、我が国の場合は批准に際しまして条約と国内法制との整合性を十分検討して、その完璧を期して整備を行うということになっておりまして、本条約につきましては、第一条のところにございます対象としている雇用、職業の差別の範囲が広範にわたっておりまして、条約の趣旨が現在の国内整備法で十分できているのかどうかという要否の検討がまだ進められているというところでございまして、この問題につきましては労働省だけで解決するものではございませんが、各省との連絡を十分とりながら今後検討を進めてまいりたいというふうに思っております。
  233. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 今の問題についての外務省の見解、いかがでございますか。
  234. 金子義和

    説明員(金子義和君) お答えいたします。  先ほど説明がありましたとおり、我が国は批准した条約についてはこれを誠実に遵守することとしておりまして、批准前に条約と国内法制との整合性を十分検討し、必要があれば国内法制の整備を行うということになっておりまして、この条約につきましては対象としている差別の範囲が広いということや、法令の制定、廃止を行うべきことが規定されていること等から、十分な検討を行うために相当な時間が今はかかっているということでございます。
  235. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 私、ことしの六月まで外務委員をしておりましたけれども、この六月にILOの百二十二号条約を批准いたしましたですね。その条約というのは生産的な完全雇用を促進することを雇用政策の重要な目的として宣言する条約ですけれども、こういうのはなぜ今まで批准ができなかったのかということをそのとき非常に不思議に思ったんですが、これはもう批准したからいいと思いますけれども、どうもそのときに受けた印象では、何かできるだけ先送りして解決しないままの状態に置いていこうというのが日本の政府の態度ではないか、そういう印象を受けました。  この百十一号条約も、これも採択されましたのは一九五八年六月、もう既に今日まで随分時間がかかっているんですけれども、国内の法律との整合性、そういうことについてどれだけ努力を今までしてこられましたか、国内の法律なんかでそれに抵触するものがもしあるとすればそれを訂正する、そういう努力をどの程度やってこられましたか。
  236. 岡部晃三

    政府委員(岡部晃三君) 私どもILOに加盟をいたしまして、その中でも常任理事国たる地位を今まで占めてきておりまして、非常に責任のある地位というふうに理解をしておるわけでございます。その中で各条約を一つ一つつくります際に十分にこれが世界各国受け入れられるようにという配慮をしてきたわけでございますが、また一方、日本の国という立場からもその条約が日本国内法制に適合できるようにというような観点から、条約がよりよいものになるようにILOの場において主張をする。また既にでき上がった条約につきましては本当にこれは批准できないかどうかということは、これは本当に先生、毎年私ども検討委員会を設けまして真摯に検討を続けているところでございます。しかしながら、先ほど申し上げましたように、完璧に国内法とすり合わせをしてから批准をするという、こういう方針でございますので、若干の問題点がありますというと批准にはもう少し検討を続けよう、こういうことになるわけでございまして、その辺は一たん批准しますというとこれは完璧に実施をしていくということでございますので、そのような努力をひとつ御了承をいただきたいというふうに考えるわけでございます。
  237. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 大臣、今お聞きのように、国内法制をもう条約と矛盾しないように完璧にしてから批准するのが、今日本の政府の方針だというふうに答えられましたけれども、完璧にそれができるまで遅延することによって日本が受けるところのいろんな、特殊な国ではないかというふうなマイナスの面と、多少あいまいな点が残っていても早く批准することによるプラスの面と比較しまして、批准しないことによって起こるところのマイナス面と、あるいは言いかえますと、完全に国内法制が一致するまで待つことによって起こるところのマイナス、私はそれを比較してみますと、完全に一致するまで待っていることによって起こるところのいろんなマイナス、日本は特殊な国じゃないか、大部分の国が批准している条約さえまだ批准してないんじゃないか、どうも日本というのはおかしな国じゃないか、そういう受けるマイナスと、それから多少あいまいな点が残って後で問題が起こるかもしれないけれども、そういうことで生じてくるところのマイナスと比較して、私は早く批准した方がマイナスが少ないんではないかと思うんですけれども、大臣の御見解いかがですか。
  238. 平井卓志

    ○国務大臣(平井卓志君) ただいまとにかく批准するのが先でないか、ないしは十分な整合性を考えてから批准するのとどちらの方が意義が将来の展望に対して開けるのかと、非常に難しい選択の御質問でございますけれども、やはり従来から、条約につきましては当該条約と国内法制との整合性を一応優先して十分検討してその整備を行うという方針で今日まで参っておりますので、私もこの条約の細部にわたりまして国内法制との問題をすべて承知いたしておるわけでございませんけれども、一応現在までの経過として整合性を十分検討するという立場に立っておりますので、御理解をいただきたいと思います。
  239. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 それでは、この百十一号条約について私自身読んで、言葉の定義ではっきりしない点があるなということを感じた点はあります。例えば人種、皮膚の色というのもこれもなかなか定義のしにくい言葉ですけれども、そういったふうな点がどうも日本では余り経験がないものだからその解釈がはっきりしない、あるいはそれに関連した法制なんかもつくってないということが一つの障害になっているんじゃないかと思うんです。  私、何も最近の中曽根発言、失言に関連して質問するわけではないんですけれども、こういったやはり人種による差別待遇を廃止する、こういうふうな条約を批准してないことが、ああいった中曽根発言なんかが非常に大きな反響を生み出す一つの素地をなしているんじゃないか。これは人種、皮膚の色その他というのは確かに定義としてはっきりしないですけれども、それはほかの国についても同じように当てはまることなんで、ほかの国はそれをクリアしてやっているわけですから、私は日本だけが、日本が単一民族国家であるかどうかというのはこれも非常に難しい問題で、必ずしも私は単一民族国家ではないんじゃないかと思うんですけれども、一応その問題は離れまして、こういう今私が申し上げたようなことが障壁になっている、それを越えられないハードルになっているというふうに理解してよろしゅうございますか、この百十一号条約について。
  240. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) 先生非常にお詳しいわけでございますが、確かに今の雇用、職業におきます人種、皮膚の色、宗教等に基づく差別に対してどのように措置を講ずべきかということが一つの問題になっております。そのほか雇い入れの際の差別に対しどのような措置を講ずべきか等の問題もございます。なかなかこの条約の場合ははっきりしない点がございまして、それを直接批准した後にどういう問題が起こってくるかということが検討の主要な中身になっているわけでございます。
  241. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 この問題にこだわっていると時間がなくなりますけれども、しかしこれはやっぱり非常に重要な問題だと思うのであえて繰り返し質問いたしますが、先ほど申しましたように、もうこの条約が採択されてから三十年近くたっているわけですね。そうすると、各国においてもしこういう人種とか皮膚の色とかという言葉の定義がはっきりしない点があったにしても、何かそれによってほかの国で問題が生じたかどうか、そういったふうなことを調査して、こちらの方に積極的に批准しようという意思があれば、そういうことを調査してやれば私はこれは決して越えられないハードルではないんじゃないかと思う。どうも余り積極性が足りないんではないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。大臣にも後で御見解をお伺いしたいと思います。
  242. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  確かにそういう調査その他の方法もあるかと思いますが、またそれをやらなければならないと思いますけれども、先ほど冒頭にお答え申し上げましたように、やっぱり日本の批准の仕方と各国の批准の仕方と違うという点は、日本の国内の何といいますか条約と法律に対する考え方というものが、一つの日本国の考え方というものがあるわけでございまして、それがコンセンサスのようになっておりまして、それは労働側、使用者側、いろいろな立場での考え方というものがあるわけで、これはちょっと発言には問題あるかと思いますが、条約をただ批准してあとは時間をかけて国内法を整備していけばいいんだというふうには、とても日本の場合はいかないんではないかというふうに思っております。それぞれの各国の事情があるのではないかと我々は理解しております。
  243. 平井卓志

    ○国務大臣(平井卓志君) 国内法制との整合性の問題がひっかかってくるわけでございますが、過去の経過の中でそのような形で検討してまいったということ、さらには雇用あるいは職業に関する極めて広範な問題でございますので、この条約批准のための国内法の整備が必要かどうかといったようなものまで含めて十分なる検討をしなければならぬ、かように考えております。
  244. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 それでは、あと何年ぐらい待てば批准されますか。国内法制との調整その他どの程度時間をとるというふうにお考えですか。
  245. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) 先ほど申し上げましたように、労働省だけの問題ではございませんので、何年後に必ずできるというふうにお答え申し上げるわけにはまいりません。
  246. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 それでは、できるだけ早く批准されることを希望して、次のやはり同じILO条約百三十五号、企業における労働者代表に与えられる保護及び便宜に関する条約。つまり企業内における労働者代表が組合活動への参加を理由としてとられる解雇等のそれらの者にとって不利益な措置に対する効果的な保護を享有し得るようにするとか、あるいは労働者代表がその任務を迅速かつ能率的に遂行することができるように、企業における適切な便宜が労働者代表に与えられるようにする、そういったふうな条項を含んだ条約ですけれども、これが批准されていない理由は、批准を今日まで待っておられる理由はどういうところにございますか。
  247. 齋藤邦彦

    政府委員(齋藤邦彦君) お答え申し上げます。  百三十五号条約、先生御指摘のように、二点について規定をいたしております。すなわち一つは、企業におきます労働者代表が不利益な措置から保護されるという点が第一点でございます。それから第二点目が、労働者代表に対しまして適切な便宜が与えられるということが必要だという点が第二点でございます。この条約の内容自身につきましては、我が国法制おおむね妥当なところではないかというふうに思っておるわけでございます。  すなわち、第一点の労働者側代表の不利益な措置から保護されるという点につきましては、我が国の労組法で不当労働行為制度がございますので、これでカバーできるだろうというふうに思っておるわけでございますが、ただ問題は、本条約この解釈がまだ細部にわたって明確になっておらないということがございまして、国内法制と整合性、解釈上の問題点というようなことにつきましてまだ不明確なところがあるということで、今後慎重に対応していかなければならないんではないかというふうに思っておる次第でございます。  例えばこの条約によりますと、企業における適切な便宜が労働者に与えられる、こういうふうに規定しておるわけでございますが、労働者代表に対しまして与えられる便宜の内容とか程度等が明らかになっておりません。したがって、どの程度のことをすればこの条約を満たすことになるのかということが定かでないわけでございます。  と申しますのは、御承知のように、現在の我が国の労働組合法七条におきます不当労働行為の中に、使用者が労働組合に対しまして経理上の援助を与えることを不当労働行為として禁止をいたしておるわけでございます。この禁止規定との関係におきましてこの条約をどのように理解していけばいいのかということが、もう少しこの条約の運用の実態が明らかになってきませんと判断がつきかねる、こういうこともございまして慎重に検討をしておるというところでございます。
  248. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 つまり、今おっしゃったのは、第二条の「企業における適切な便宜が労働者代表に与えられる。」、その「適切な便宜」、その解釈ですね。全体のこの条約の趣旨は、今まで企業の方が労働者代表に対して不十分な便宜しか与えていない。これは、特にヨーロッパあたりではショップスチュワードなんかの問題があって、不十分な待遇といいますか、不十分な便宜しか与えていない。それをもっと緩和しよう、もっと便宜をより多くしようという趣旨だと思うんです。確かに、余り便宜を与え過ぎて組合を御用組合化するとか、そういったふうになることを警戒しないといけませんけれども、今の日本の現状から言いまして、私は日本はこれは決して諸外国に比べて劣っているとは言えないのではないかというふうに思う。であれば、もちろん外国の事情なんか十分調べる必要がありますけれども、これなんかも早く批准しても差し支えない条約ではないかというふうに考えるんですけれども、どうですか。
  249. 齋藤邦彦

    政府委員(齋藤邦彦君) 若干細かい議論になりまして恐縮でございますが、確かにこの条約、採択のとき我が国は賛成をいたしておりますし、この条約自身につきましてとかくの異論があるわけではございませんが、先ほど申し上げましたことと関連いたしましてさらに詳細に申し上げますと、同時に採択をされました労働者代表勧告という百四十三号勧告がございます。この勧告の中に、労働者代表に供与される便宜の望ましい例というのがいろいろと列挙してございまして、非常に詳細な便宜供与の例が書いてございます。  例えば、労働者代表が職務を遂行するための有給休暇を付与しなければならないとか、あるいは代表職務の遂行に必要な組合大会へ参加するための休暇の付与ですとか、あるいは企業内での組合文書等の掲示ですとか、いろいろなことが書いてございます。こういうようなことすべてを使用者は労働者代表に与えなければこの条約に反することになるのかどうかということもございまして、もう少し詳細な検討をしていかなければならないのではないかというふうに思っておる次第でございます。
  250. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 それでは次に移りましょう。  百四十四号条約、これは国際労働基準の実施を促進するための三者協議、政労使ですね、三者協議に関する条約。これはつまり三者協議が、政府、使用者及び労働者の代表者の間で効果的な協議が行われるように確保することを趣旨とした条約だと思うんですが、これもOECD加盟国のうちでまだ批准していないのは六カ国、日本を入れますと七カ国になりますか、これは比較的新しい十年前に採択された条約ですけれども、これなんかもどういうところに隘路があって批准ができないのか。これ殊に採択のときのあれを見ますと、労使は賛成しているんですね。政府が棄権しているわけね。なぜこれあのときに棄権されたのか。そのときのことはいいとして、なぜ現在これを批准してはいけないのか。どういうところに難点があるのですか。
  251. 岡部晃三

    政府委員(岡部晃三君) この条約は、ILO条約の批准及び実効性の確保を図るために政府と代表的な労使団体の間で効果的な協議を実施しなさいという趣旨の条約でございます。このことにつきましては、この条約の精神そのものにつきましては我が国としては賛同をしたわけでございますが、しかしながら、その各条文上の解釈上の問題点がいろいろとございまして、我が国政府から多くの修正案を出しましたところが、それが否決されるというふうな経緯をたどってできた条約でございます。  例えば、この条約の第二条の「効果的な協議を行うことを確保する手続」というのを定めなければならないということでございますが、どの程度のものを要求するのか条約上明確ではございません。それから五条におきまして、ILOにおいて主張することを政労使であらかじめ協議すべしというふうな条項がありますが、どの程度のこれは協議ということを意味するのか、甚だまだ内容が詰まっていない、私どもからしてまだ明確になっていないと思われる点があるわけでございます。条約の精神そのものは賛同ではございますが、しかし内容におきまして細部においてまだ不明確なところがあるということで政府は棄権をいたし、そしてまた現在まだ批准に至っていない、こういう状況でございます。
  252. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 法律とか条約の条文には、「適切な措置」であるとか、あるいは「効果的な措置」であるとか、「効果的な協議」であるとか、そういった必ずしも明白でない言葉をどうしても使わざるを得ないので、それを例示的に一々これが適切でありこれが適切でないなんというふうなことはとても書けるものじゃないわけで、したがって何が効果的であるいは適切であるかということは、既に批准している国における慣行を調べて、それと日本が違わなければ一向差し支えないわけでしょう。その点について日本が特に劣っているというふうにも私は思えないんですけれども、その点で日本は特に劣っている点があって、それで批准できないんですか。
  253. 岡部晃三

    政府委員(岡部晃三君) この条約の解釈につきましては、毎年行われます条約勧告適用専門家委員会における審査、これは各国別の審査でございます。それからまた、条約勧告適用委員会が行うところの、これは毎年とは限りませんが、ゼネラルサーベー等の際に解釈が次第に明らかになっていく、これがILO条約の解釈を明らかにする手だてでございます。もちろん、最初の審議の際の審議経過も重要な参考文書でございますが、そのようなことを精査いたしまして、批准できるかどうか、批准して過ちがないかどうかを私ども諮っていくわけでございます。  先生御存じのように、従来我が国におきましてま、ILO条約を批准をいたしまして、その批准した条約が国内法制と矛盾があるということで底会あるいはまた裁判所において多く争われた、まあ言うなれば不幸な過去がございます。その点からILO条約アレルギーと申しますか、完璧にこれを整合性を確保してから批准をする、こういうふうな実は癖がついておりまして、その結果かとも思うのでございますが、私どもしかしながらILO条約の批准につきましては、労働省として前向きの姿勢を今後とも堅持をいたしたいというふうに考えております。
  254. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 ぜひ前向きの姿勢でやってもらいたいと思う。これは慎重を期していたら、それは毛のすき間もないぐらいの完璧なものを求めようと思ったら、何十年かかり何世紀かかっても批准はできないのではないかと思う。やはり、先ほど一番最初に申しましたように、多少のあいまいさが残っていても、ほかの日本と同じような地位にある国と比較してそれほど日本が劣ってない状態にあるようなものであるならば、私はこれは批准した方がプラスの方が大きいと思うんですが、そのことを大臣及び労働省の人たちにお願いしておきまして、まだあと時間短縮その他の問題についていろいろ質問事項は出しておきましたけれども、また次の機会に譲らしていただきたいと思います。
  255. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 先ほども刈田委員質問があったところでありますが、私も建築労働者のアスベスト、石綿障害の問題について質問をいたします。  ちょうど一カ月前ですが、九月の十七日、NHKテレビがかなりの時間を割いて放映をしておったところですけれども、ともかくアスベストは発がん物質でもあり、潜伏期間が二十五年から四十年と長く、極めて有害なものだ。したがって、労働省としても既に昭和五十一年にアスベストを有害物質と指定し、障害予防対策の実施とその新たな使用禁止、代替措置の促進などについての通達を出しているところであります。この通達の意義は評価するにやぶさかではありませんが、問題はその実効性であります。通達が出されて既に十年たっているんですが、事態はほとんど前進をしていないのじゃないか。もともとこの五十一年通達は主にアスベスト製造加工業などを想定したものですが、障害はそれにとどまらないということで、ようやく本年の九月の六日、建築物の解体または改修工事における石綿粉じん障害防止等に関する通達というものが出された。しかしこれでもまだ問題のとらえ方が狭いと言わざるを得ないのであります。建築物の解体、改修にとどまらず、新築工事や増改築の際、いわゆる大工さんが建築資材を電動工具などで細工をするときに大量のアスベストを吸入をするということが、NHKでも紹介をされました例えば名古屋大学の久永直見さんを初めとして、学会でも研究報告が次々と出ているわけであります。この久永さんの調査研究によりますと、現行の規制濃度、すなわち先ほど来出ております一CC当たりファイバー二本、繊維が二本というこの規制濃度の実に四百倍に近いという石綿粉じんが検出をされているというので、驚くべきことであります。  そこで、まず労働大臣に質問をいたしますが、この建築労働者のアスベスト障害防止策について、九月通達に言う解体、改修工事、これに限定をすることなく、今私言いました大工さんなどの新築や増改築工事の際の障害防止、この問題についても同様の角度から考慮すべき問題だというふうに私は思うのでありますが、そこの基本精神というか基本態度、どうでしょうか。
  256. 平賀俊行

    政府委員(平賀俊行君) 御質問のアスベストの危害の防止については労働省としても非常に重視をしておりまして、御指摘の、五十一年の通達とおっしゃいましたけれども実は五十年に規則を改正をして、アスベストに関する各般の業務について危害の防止についての義務づけをやっております。  大工さんなどにつきましては、単に解体、破砕等の作業ではなくて、石綿等のものを使用するといいますか、そういう事業について石綿等を塗布し、注入しということで、大工さん等で石綿にさらされる危険性のあるものについては対象にして、いろいろな危害の防止策の義務づけを行っているところでございます。
  257. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 そこで、九月のこの通達で定めております散水設備や防じんマスクなど、こういうものをきちっと備えるようにということでありますが、これらについては、先ほどもありましたように一定の費用を伴う。これが今の末端の大工さんはなかなか仕事難、こういう時期に、その費用がどうだこうだという、ここを余りせんさくをすると仕事がもらえない。結果としては末端の大工などに押しつけられるんじゃないかという不安があるわけでありますが、本来こういう労働安全経費というものは元請業者の責任であって、こうした経費も含めて元請と下請との間で契約がなされるのがしかるべきであるという、機関としてはそういう指導的見地に立つべきだと思うのでありますが、確認を求めます。
  258. 平賀俊行

    政府委員(平賀俊行君) 先ほどの御質問の中でも、アスベストその他労働安全、特に散水等の経費についてはどうか、あるいは保護具等の経費についてはどうかという御質問どもございましたが、一般的にそういう危害防止対策については事業者についての義務づけを行っております。特に建設業関係につきましては、確かにいろいろな元請と下請等の関係もございますし、全体的な危害の防止あるいは安全衛生対策について元方に責任を負わせ、それで元方が全体を把握して下請を指導し、また適切な対策を請ずるような措置を講ずることになっておりますし、また私どももそういう点について特に元方の責任を励行するように指導をいたしております。
  259. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 次に、労働安全衛生法では有害物質の表示義務、これを定めておりますけれども、実際はアスベストを含むそういうものが使われながら表示のないもの、表示はあっても内容があいまいなもの、こういうものがあるということは当局もよく御存じと思いますけれども、この表示義務の徹底をどうするのかという、この問題についてどういう指導をしているんでしょうか。
  260. 平賀俊行

    政府委員(平賀俊行君) 規則によりまして、事業者は、石綿及び石綿を含有する製品を製造しまたは取り扱う作業場には関係者以外の者が立ち入ることを禁止し、かつその旨を見やすい場所に表示しなければならない、御質問の表示義務について明確な規定がございます。したがって、その他の危害防止義務と同様に、表示義務についても徹底を期するように監督指導をいたしております。
  261. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 ところで、やはり重要な問題は規制濃度を厳しくするという問題であります。アメリカでは、最近規制を十倍に厳しくする、すなわち日本の基準との対比で言いますと一CC当たりファイバー〇・二本、こういう基準を打ち出してきているわけですけれども、こういう国際的趨勢に沿ってイギリスでもそういう方向を検討しているというふうに聞くんですが、そういう国際的趨勢に沿って日本でも一CC当たり二本というこの規制濃度、規制基準、この見直しを始めるべきじゃないかというふうに思いますが、大臣、どうでしょう。
  262. 平井卓志

    ○国務大臣(平井卓志君) 労働安全の衛生上、法令で決められておるわけでございまして、これは大いなる関心を持っておるわけでございますが、この石綿につきましては各国でいろいろな対策がとられておるところでございますし、今後の国際的な動向も十分に注目しておるところでございます。  ただ、今御指摘のこの濃度のレベルという点でございますけれども、そういう点から見ますると、フランスなど今なお多くの国において一CC当たりツーファイバーというレベルでございまして、当面は現行の基準の徹底を図りまして実効あらしめるような方向で努力をしてまいりたい。ただ、今後とも国際的な動向を踏まえながら、今後それなりの対処を真剣に考えたいと考えております。
  263. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 繰り返すようでありますが、お話ありましたこの本年六月の第七十二回のILO総会で採択をされた石綿の利用における安全に関する条約ですね、百六十二号条約、これには日本政府も賛成をしたわけであります。ILOは言うまでもなく三者構成で、政労使三者が日本から出席しておるわけですけれども、三者そろって賛成したと聞いております。そうなると、ここで採択をされたこの方向、しかも条文を見ますと、第三条の第一項で、国内法令はそういう石綿への暴露による健康に対する危険の防止及び抑制並びにこの危険からの労働者の保護のためにとるべきそういう国際措置を定めるというのが第一項。それで、第二項に、その一項に従って策定された国内法令は、技術の進歩及び科学的知識の向上を考慮して定期的に見直しを行うと。すなわち、これらの基準を相当厳しくしないと危険だという研究や知見がどんどん出てきていると、こういう趨勢ですね。ですから、こういうことも踏まえて国内法令、国内措置、こういうものについて定期的に見直しをすべきだというこの条約に日本政府も賛成をしてきたと、こういうことでありますから、本当に労働者、そういう建築労働者というか、国民の健康を守るために、ひとつ綿密、慎重な検討をやると、こういうことで、まあいろんな国の動向も研究されたら結構ですけれども、ひとつ念には念を入れた検討をやるということで、大臣、重ねてお願いをしておきたいと思います。
  264. 平井卓志

    ○国務大臣(平井卓志君) ただいま申し上げましたように、基本的には働く人たちの健康の問題でございますので、ただいま御答弁申し上げましたように、国際的な動向を踏まえつつ十分に検討を重ねてまいりたいと考えております。
  265. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 それからもう一つ、この問題に関係をしての労働省への質問でありますが、いわゆる特殊健康診断への助成の問題であります。  言うまでもなく、この職業性疾病の予防、これは職場環境の整備と早期健診、これが必要であります。早期発見、早期健診のために、石綿関係業務従事者のために事業主責任で特殊健康診断が義務づけられている。そして中小企業に対しては財政的な援助も必要だという見地から、中小企業共同安全衛生改善事業助成制度というものが実施が始まっているわけであります。しかし、これではいわゆる一人親方というか、建築現場で働く大工さんなどにはこの適用が難しいということになっているんですけれども、この法の究極的な目的、すなわちこの危険有害な業務から労働者、従事者を守るというこの基本目的に立って考えてみて、この従来型の健康管理制度、これだけでは対応できない実態、すなわち、大工さんなどにまでこの石綿暴露の被害が明らかになってきた今日では、新たな対応の研究が必要じゃないかというふうに思うわけであります。こうした点で、大工さんたちにもこの特殊健康診断制度の助成が及ぶように関係労働組合、労働団体、そういうところともよく相談をして、何とか助成対象の道が考えられないものかどうか、研究をひとつ労働省としてしてもらいたいというふうに思いますが、どうでしょうか。
  266. 平賀俊行

    政府委員(平賀俊行君) 御質問は非常に労働保護法制の実は基本的部分にかかわるものがございます。労働基準法は、中小企業を含めて、人を一人でも使う事業主に対していろいろな義務づけを行っている。また、それと関連をします安全衛生法についてもいろいろな保護措置について、使っている労働者に対しての保護策の徹底を事業主に義務づけている。それに関連をして、中小企業で集団でいろいろな衛生関係事業をやる場合に補助対象にしているということでございます。確かに、一人親方の大工さんなどについてどうするのか。この方々はその法の適用になりますと、どちらかというと事業主の側に当たるということで、法律の適用関係について、現在の法の解釈ではどちらかというと事業主側というふうに解釈されるということになります。しかし、確かに今の、現在の日本の事業場あるいは産業の就労の形態などについて、こういったものについてどういうような考え方をするかというのは実は大きな宿題であるわけです。私どもとしても、そういう法の適用問題についての研究、検討等は続けてまいりたいと思っております。
  267. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 このアスベスト問題で労働省、労働大臣にいろいろお尋ねをしてきたんであります、が、実は建設省にも一言言いたいことがあったんです。この五十一年通達が出てから十年。 しかし、実際に建設業界が、建築業界がアスベストを使っておる使用量というのは、あの五十一年通達でできるだけ新たな使用は控えるようにと。こう十年たっているんですが、どう見たってずっと減ってきているという姿にはなってきていない。それから、代替物質の開発、こういうことも打ち出しているんですけれども、これも民間会社任せで、国が責任を持ってそのことのひとつ研究、開発をやろうということになっていないという点で、労働省を別に褒めるわけじゃありませんけれども、建設省は建設省の独自努力がないじゃないかということで質問をしたかったんですけれども、時間がありませんので、そのことだけ申しておきます。  そこで最後に、別の問題で労働省に注意をしておきたいことがあるんです。  昨年の秋でありますが、労働省のPR誌、「労働時報」という、これが臨時増刊号が出ているんですけれども、臨時増刊を発行すること自体が異例で、お聞きしても近年には例がない、この号だけだと。それで、紙も普通のあれよりも極めて上質の、上等の紙で全ページ色刷り。そして労働外交特集ということで臨時に発行したというんでありますけれども、中身を見ますと当時の山口労働大臣、元労働大臣賛歌といいますかね、とにかく写真が全部で六十五枚この中に収録されておるんですけれども、ずっと数を数えてみたら、山口元大臣のものが六十五枚のうち四十四枚なんです。まあ恥ずかしくもなくよくこんなものをつくったなと思うくらいひどいものですね。だれが見てもこれは山口賛歌パンフレットだというふうに言わざるを得ない。発行部数も通常発行数の四倍これ出ているんです。それで、どうもいろんなところに配ったらしいですけれども。こういう異様な姿ですね。地位利用としか、そういう疑いを持たざるを得ないようなこういう異常な臨時増刊といいますか労働省のPR誌発行、こういうことはひとつ新大臣としては今後は断じてしない、こういう疑いを持たれるようなことはやめるということで、ぜひ新大臣、対処をしてもらいたいというふうに思いますが、所見はどうでしょうか。
  268. 平井卓志

    ○国務大臣(平井卓志君) 御指摘の臨時増刊号、つい最近拝見いたしたわけでございますが、近年における労働外交の重要性の高まりに加えまして、昨年は特に政労使三者構成のミッションによる欧米訪問、さらにはILOとの連携、MEと労働に関する国際シンポジウム等非常に盛りたくさんな内容でございまして、労働行政の分野において非常に多様な国際交流や国際協力が展開されたこともございまして、広く一般の理解の増進に資するために企画、発刊されたものと承知はいたしております。  しかしながら、ただいま御指摘の点で御疑念を抱かせたとするならば、大変残念なことではございますが、ひとつ今後とも「労働時報」は労働行政施策のPRを初め労働問題を多角的に取り上げまして、労働行政関係者のみならず、働く人のための施策と情報の総合誌としてその充実に努めてまいりたい、かように考えております。
  269. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 ちょっと大事な点お答え願います。地位利用と疑いを持たれるようなことは今後はしないということをはっきりしてほしいと思います。
  270. 平井卓志

    ○国務大臣(平井卓志君) いささかも考えておりません。
  271. 久保田真苗

    久保田真苗君 私、大臣が参議院から労働大臣という要職におつきになって期待しておるんでございますけれども、どうも先ほどのILO条約に関するいろいろな御答弁、非常に私遺憾に思うんですね。なぜかといいますと、日本がこれだけ国力をつけて他国の脅威になっているような状態の中で、何といいますか、条約の批准を本当に後ろ向きにしか考えていらっしゃらない。私はこの質問は出しておりませんけれども、一言やはり大臣が労働大臣として長くおやりになるのであれば、ここのところは根本的に考え直していただきたいということをまず要望しておきます。  そこで、私の質問の第一は、先ほど来多分御答弁になったことだと思うんですが、私はあいにく所用のため外しておりまして、恐縮ですけれども、円高不況下のもとで今後の雇用の見通しは非常に重大な深刻な状態にあるのではないかという世上の観測がございます。これについて労働大臣がどのようにお考えになっていらっしゃるか、まずその所見をお聞かせください。
  272. 平井卓志

    ○国務大臣(平井卓志君) 雇用問題については委員御指摘のとおりでございまして、七月、八月ともに完全失業率は二・九%、非常に高水準でございます。同時に、七月、八月、有効求人倍率も〇・六一、非常に低位に推移しております。さらに、そのうちに業種、地域、非常にばらつきがございまして、今後為替の安定というのは非常に先行きがまた不透明でございまして、さらに地域別に非常に雇用が悪化されることを懸念しておる次第でございます。  したがって、その対策どうかということになりますると、かなり広範にわたる今後の問題も勘案いたしましたときに、単なる労働省所管の雇用対策のみならず、やはり基本的には緊急の場合でございますので思い切った内需拡大策というのをとりまして、いずれにしても総需要の拡大を図りませんと結果的に雇用の増加は望めない、これが抜本的な雇用対策の基本であろうかと考えております。  しからば労働省はそれに対してどうか。これは先ほど来私答弁してまいったわけでございますが、やはり現在の情勢をヒアリング等で的確に把握いたしまして、地域別に現在の雇調金制度その他現行の制度をフルに活用いたしまして、そういう意味の失業の予防等について全力を上げていかなければならぬというふうに考えております。
  273. 久保田真苗

    久保田真苗君 最近のエコノミストに元労働官僚であった田中博秀さんという方が書いておられます。その中に、非常に過去一年余りの間に円が四割以上も切り上げになっている。その調整が大変なことで、特に輸出産業については失業保険の受給がウナギ登りだ、こういうことなんですね。そういたしますと、これから先やはりこの百五十円がらみの円の水準で推移していくと見たとしましても、この春の雇用の調整期に恐らく二百万を超える失業が出るであろう、軽く三%に乗せていくであろうという見通しですが、労働省の方ではこの点どういうふうにごらんになっていらっしゃいますか。
  274. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  田中博秀さんの文章も読ませていただいたわけでございますが、先ほど大臣申し上げましたように、雇用失業情勢、現在も円高の進展を背景といたしまして非常に厳しい情勢にあるわけでございます。さらに輸出の産地、それから造船、非鉄金属を初めとしまして、いわゆる構造不況業種で、新聞報道等でもございますように、今後失業者が出てくる。石炭もございますし、漁業、繊維、いろいろ失業者が山てくる様相を控えております。  このような雇用失業情勢全体を考えるならば、今後暮れから来年にかけまして非常に厳しい情勢になるのではないかというふうに我々としても考えているところでございます。  全体としましては、先ほど大臣申し上げましたように、景気の浮揚を図っていかなければならないわけでございますけれども、景気の浮揚が図られたとしましても雇用の状況というものはタイムラグがございまして、半年程度のタイムラグを追っていくわけでございますから、それらを考えましてもやはり厳しい情勢にあるというふうに判断いたしております。
  275. 久保田真苗

    久保田真苗君 大臣、私雇用の問題というのは、労働省は当然のことながらその使命として完全雇用を守っていくというお立場なんだと思うんですね。ところが、何か後追いに追われて後始末に回るというようなことになったんでは、これは首になった人たち、解雇された人たちというのは取り返しがつかないわけですね。そういう意味で、もっと経済政策の上に積極的に完全雇用、雇用を守れという、そういう発言をぜひしていっていただきたいんです。こんな状態で一年も推移してしまって、とめようと思ってももうとまらないというような状態は本当に困ったことなんですね。そういう意味で積極的な雇用を守るという発言を閣内でもお願いしたいんですが、その辺いかがでしょうか。
  276. 平井卓志

    ○国務大臣(平井卓志君) まさに御指摘のとおりでございまして、現在の労働省の雇用対策、決して私は一〇〇%十分だとは申し上げませんが、やはり予算措置その他の中で限界がございます。  しかしながら、労働省の現行制度を利用した対策は後追いで限界があるじゃないかということもおっしゃるとおりでございまして、私も今まで総合対策等において特に産業政策、さらには大型予算を実施する事業官庁につきまして、その政策の実施に当たっては特に雇用問題に御配慮を願うということを逐次申し上げてまいったわけでございます。今後も委員おっしゃるように、私の立場としましてはさらに一歩踏み越えて、今後行われるべき産業政策についても雇用を重点にした労働省の立場を今後引き続いて強力に主張してまいりたい、またそこまでやりませんと今後の大きい雇用不安には対処できない。言葉をかえれば当面の日本経済の最大の課題は雇用問題であるというふうに理解をいたしております。
  277. 久保田真苗

    久保田真苗君 その御理解でもってひとつ一歩を踏み越えるどころか、雇用を守るというその経済政策の最優先課題であるということから一歩も引かないという姿勢でぜひお願いいたします。  ところで、国鉄の雇用問題が非常に深刻な状態です。全くこういうことは今まで長い間なかった、もう未曾有のことが起ころうとしている。これが今の雇用情勢の上にもう一つ大きな失業時代の引き金になるんじゃないかというふうなおそれがあるわけですが、この点大臣はどういうふうにごらんになりますか。国鉄の雇用問題ですね、その影響です。
  278. 平井卓志

    ○国務大臣(平井卓志君) 国鉄の問題でございますけれども、これももう御指摘をいただくまでもなく、現在の国鉄大改革の課題、その焦点はまさしく雇用問題でございまして、これはもう単に運輸省、労働省だけのことでございませんで、国を挙げて、全省庁を挙げて総合力を持って雇用不安のないように、完全なる雇用の確保ということがこの改革案一つの非常に大きい決め手であろうというふうに考えております。  国鉄問題は、もう先生御案内のような形でただいまちょうど審議をされておりまして、とにかくここで一番のキーポイントとして私は雇用問題、雇用の確保ということが最大の決め手である。片や、周囲を取り巻く状況はどうかと申しますると、先ほど来御答弁申し上げておりますように、非常に業種別、地域別にばらつきがございますけれども、円高の進行、為替の切り上げ、その推移、決してただいまとまっておるわけでございませんので、今後非常に深刻化してくる中で、御案内のように先月政府も総合経済対策というものを決定いたしまして、一日も早く当面の景気浮揚策をとり、その中できめ細かな対策をさらに強力に推進していかなければならぬと考えております。
  279. 久保田真苗

    久保田真苗君 労働省の中にも国鉄の雇用問題に対応する、そういう何というんですかね、チームというんでしょうか、そういうものが設けられたと伺うんですが、その規模とその役割を教えていただきたいんです。
  280. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  本年四月から国鉄雇用対策担当参事官を設置いたしまして、この参事官を中心にチームをつくっております。たしか参事官以下六人のチームでございます。ここで労働省の特に雇用問題におきます対各省との折衝、それからいろんな連絡を窓口としてやっているわけでございます。それからさらに都道府県、地方の職業安定機関その他の問題につきましては、都道府県ごとに再就職促進連絡会議等を設けて関係経済団体等に対します協力要請やそれから一般産業界におきます雇用の確保等図っているわけでございますが、それらについての指導、連絡、さらに退職希望者に対します安定所の取り組み方等について連絡、指導等を行っているわけでございます。
  281. 久保田真苗

    久保田真苗君 具体的に言いますと何をどうなさるということなんでしょうか。その人数とかそれからどういう人をどういうところにはめ込むというのか、そういうことをお聞かせいただきたいんです。
  282. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答え申し上げます。  国鉄職員の就職問題につきましては、これもう先生御存じのように、現在国鉄職員として働いている人々の中の余剰人員問題として現在まで進められているわけでございまして、それらの問題につきまして国鉄当局と連絡をとりながら、先ほど申しました各地方での一般産業界における雇用の確保等について連絡調整を行っているというところでございます。  そのほか国鉄の職員の問題につきましては、いわゆる国または国に関連の事業団その他の機関、それから地方公共団体関係、それから国鉄の関連企業関係、これらがあるわけでございまして、これらは直接ではございませんが、間接的にそれらに対します国全体の雇用対策本部というのがあるわけでございますので、そこと連絡をとりながら問題を進めている、そういうことでございます。
  283. 久保田真苗

    久保田真苗君 労働省がそういうことで確保しなければならないというのは、計画では約一万人だということですね。そういたしますと、それはちゃんとやれると、そういう見通しがもう立っているということですか。
  284. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答え申し上げます。  これも先生御存じのとおりでございますが、いろいろな数字がございますけれども、監理委員会の数字の中で六万一千人の余剰人員が出てくるということで、そのうちの二万人を来年の四月までに希望退職者として就職さしていく、あと四万一千が清算事業団に残っていくという形をとるわけでございますが、その中の、先ほど先生がおっしゃいました国または都道府県、地方公共団体等の各割り振りを除きますと一万人を一般産業界にお願いするということでございます。現在まで一般産業界からは約一万九千七百人の採用の申し出等を受けているわけでございまして、数字としては対応していけるところにあると思いますけれども、これは就職の問題は求人の条件と就職者のそれぞれの能力その他によるわけでございまして、それらの間の就職あっせん、再就職の促進等をどういうふうに図っていくかということが今後の重要な問題だというふうに考えております。
  285. 久保田真苗

    久保田真苗君 労働省は国鉄で問題になっている雇用問題に対して、労働省の立場としては限られたものでなくやっぱり全般的に責任をお持ちなんでしょう。そうですよね。
  286. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  全般的に責任を持つということがどういう意味でおっしゃっているのかはよくわからない点もございますが、雇用問題全体についてはもちろん労働省が全般的に責任を持っているということでございます。ただこの国鉄問題につきましては、ずっと今までの経緯で進められておりますように、国鉄の職員として働きながらそこからいろんな希望をとって余剰人員となる者についてそれぞれの就職をしていくということでございまして、従来、こういう問題としては石炭からの離職者問題等ございましたが、石炭企業等の場合には、そこで企業からすぐ離職者として出ていくという形をとるわけでございまして、すぐ労働市場にあらわれてきた、そういう人々に対しましては直ちに失業給付を受けながら公共職業安定所を経過していくということになるわけでございますけれども、今回の国鉄職員の雇用問題につきましては、そういう経過の面におきましては従来の問題とは違う。したがって、そこでは運輸省、国鉄を初めとしまして、関係機関のいろんな問題もございますし、さらに政府におきましては内閣に雇用対策の特別の本部がつくられている。そこで全体の振り分けを行っているというのが現在の国鉄に対する雇用問題の取り扱い方でございます。
  287. 久保田真苗

    久保田真苗君 今までいろいろなことがありましたけれども、ともかく労使とも雇用を守るという一点においては非常に頑張ってきたのですね。ところが今回は過員だとかいうことで、国鉄が赤字であるということがまるでこういう方たちをどんな扱いでもしていい。当然のことのように過員扱いにしておられるということは全く今までになかったことだと思うんですね。私はこのことを非常に残念に思うんですけれども、このことは現場に非常に不安と動揺を与えている、これはもう私が申し上げるまでもないことなんです。  私は、自分のところに来ましたいろいろな訴えや情報、その他自分の調べたことについて、少し女子の問題も申し上げたいんですけれども、国鉄の女子の電話交換手の問題が起こっているんですね。国鉄の方にお伺いした方がいいのかもしれませんが。全体的に見ますと平均五割強が過員になる、こういうことなんですね。その中でもひどいところは、今まで従来十五人でやっていた電話交換の職場が十二人に減らされた。そしてその十二人のうち三人が既に人活センターに入れられた。そして現在は九人だと。しかしそれは三人にまで減らしてしまうんだという、こういうショッキングな数字なんですよ。しかもその職場がもう人数も少なくなることだから閉鎖する、こういうことなんです。そしてしかも今まで電話交換のために深夜勤を二十四時間勤務でやっていた人たちをここから外しまして、女子を、そして電信をやっている男子に電話を兼務させる、こういうことなんですね。私は非常に現場の方たちが動揺しておられるのは、余剰人員整理で真っ先に女子が安直にねらわれている、そういう状態になっては非常に困ると思うんです。やっぱりここのところはぜひ差別のない対応をしていただかなければならないと思うわけです。  国鉄の方に伺いますけれども、この点はどういう状況になっておりますでしょうか。
  288. 浅賀英雄

    説明員(浅賀英雄君) お答え申し上げます。  国鉄では全社的に業務運営の効率を図ってきておりますが、その中でも電話関係の業務につきましても、やはり全体的な業務量の実態に応じまして要員の見直しを行ってきております。電話関係の業務量につきましては年々減ってきておりまして、それに対応した要員の体制をつくろうということでやってきておるわけでございます。特に深夜の関係の電話交換業務につきましては、その取扱量が極めて少量になっておりまして、これを専門の職員の配置をしていくということで非常に非効率になりますので、これを廃止いたしまして他の業務、情報通信を扱っております、そこで同時にやっております職員でございますが、この職員にこれをあわせて行うように進めているわけでございます。  先ほどお話し申し上げましたように、業務の運営効率化ということにつきましては、業務量の見直し等によりまして実施しているものでありまして、その対象となる職場につきまして、男性の職場ですとか、あるいは女性の職場ですとか、こういうことは区別して考えておりません。
  289. 久保田真苗

    久保田真苗君 それでは、人活センターに入れられて何をしているかというと、シール張り、袋張り、草刈り、こういうことをやっているんですが、こういう方たちは長く通信業務に従事してきた方なんです。国鉄は非常に大きな通信部門という、情報部門という資産をお持ちなんですね。そういうところに適応できるようなそういう訓練をなぜ新しくやっていただけないのか。この方たちが電信の訓練を受けたいと言っても、わずか一カ月の訓練を拒否されたというお話なんですが、そのことはどうなんでしょうか。
  290. 浅賀英雄

    説明員(浅賀英雄君) 電信業務につきましては、電信だけではございません。先ほど私情報通信業務と申し上げました。情報通信業務というものにつきましては、これはいわゆる電信の業務、それからそのほかにいわゆるコンピューターのオペレーション、こういうものが全体として仕事の構成をしております。そのためにこれを習熟してやるのには、やはりそれなりの教育が必要でございます。それが実際に行われて職員が活用できるまでにその教育が必要なわけでございまして、それが今お話しにございました教育の問題でございます。それにつきましては、私どもといたしましては今電信業務、情報通信全般にかかわる業務に従事している職員自体も、全体として過員となっている状況の中で、そういう施策というもの自体現実的な対策であるとは考えられないということで、そういう具体的な策がとられなかったということであろうかと思います。  それから今お話しにございました本人の方からのお申し出、それにつきまして具体的に私どもとして拒否したというお話は私自身はまだ聞いておりません。
  291. 久保田真苗

    久保田真苗君 先に希望の持てるような教育訓練をしていただきたいという意味なんですね。やっぱりこれ非常に大きい情報通信業務のプールなんですから、国鉄は。そういう中で配置がえ、あるいは場合によっては再雇用、そういうことに貸していくためにも、やっぱり袋張りをさせるよりはもう少しましな、今後発展していくそういう通信業務の関係の訓練等をよくやって希望の持てるような毎日にしていただけないか、こういうことなんですが、どうなんでしょうか。
  292. 浅賀英雄

    説明員(浅賀英雄君) お答え申し上げます。  ただいまお話にございましたように、現在確かに人材活用センターに入っている職員につきまして、そういう作業に従事しているということは存じております。ただ私どもといたしましては、今お話が出ているのは多分釧路の局のお話かと思いますが、全体としてパソコンその他新しい業務に適応できるための施策というものは、局としては行っております。したがいまして、そういうものを受けるという強い意志あるいはそれをされるということであれば、これは当然やれる状態に私どもとしてはなっているというふうに思っております。  それから雇用その他につきましてでございますが、これにつきましては基本的には他の男子職員と同様に、現在の国鉄が全社的に進めている再雇用の施策がございます。その枠組みの中で取り組んでいきたいというふうに思っております。
  293. 久保田真苗

    久保田真苗君 こういうふうになったにつきましては、やはり根本的に言えば国鉄の理事者側の責任ということが大きいと思うんですよ。ですからやっぱり自分の中で消化する、配置がえをする、あるいは再雇用になる場合も有利な条件でやっていく、希望を持ってやれる、そういうことで本腰を入れてぜひお取り組みいただきたいということを希望して、私は育児休業の問題をやらなければなりません。  育児休業について少しはしょりますけれども、まずこの育児休業制度と女子の再雇用制度についてどっちを重く見ていらっしゃるのか、この点についてずばっとお答えいただきたいと思います。
  294. 平井卓志

    ○国務大臣(平井卓志君) ただいまの御質問でございますけれども、この女子労働者の働き方を見ておりますと、結婚、出産まで働く若年期就業型と申しましょうか、また出産、育児期にも働き続ける継続就業型、子育て期間が終了した段階で再び職業生活に復帰する再就職型と、非常に多様化が進んでおるわけでございます。  育児休業制度は、子供が一歳になるくらいまでの期間休業して子育てに専念することを希望する、継続就業型の女子労働者のための施策として位置づけられておるのに対しまして、女子のこの再雇用制度は比較的長期間子育てに専念するために一度退職する、再就職型の女子に対する施策として位置づけられておるというふうに理解をいたしております。そうなりますと、この両施策とも女子労働者それぞれのニーズに当たった一つの選択と申しましょうか、重要な施策として均等法に併記されているところでございまして、労働省としては両制度の普及に努めるというふうに考えております。
  295. 久保田真苗

    久保田真苗君 どちらも重く見るという意味ですか。
  296. 平井卓志

    ○国務大臣(平井卓志君) そのとおりであります。
  297. 久保田真苗

    久保田真苗君 ところで私が申し上げなければならないのは、育児休業の普及のために行われている奨励制度、この内容を見ますと今おっしゃった女子の再雇用制度の給付金よりも非常に冷遇をされている。そして他のいわゆる高齢者雇用の助成、これと比べたらもう天地の差ほどの差別を受けているんですね。大臣、このことを御存じですか。
  298. 平井卓志

    ○国務大臣(平井卓志君) ただいまのところ詳細にわたってはまだ承知いたしておりません。
  299. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 育児休業制度の奨励金と高齢者雇用の奨励金につきましては、先生おっしゃいますようにシステムがちょっと違っておりまして、育児休業制度につきましてはそれを導入した企業に対して奨励金を支給するという形になっております。ただ私どもといたしましては、この育児休業制度がさらに普及が進むようにということで、この均等法でも国の援助措置というものを定めましたのに伴いまして大幅な増額をいたしているわけでございますので、こういう制度を活用いたしましてさらに普及が進んでいくように努力をいたしたいと考えております。
  300. 久保田真苗

    久保田真苗君 局長、私は局長のためにもこれ言いたいんですね。育児休業制度の普及というのはこれは容易じゃないんですよ。容易でないのはなぜか。そういたしますと、大幅増額とおっしゃるけれども、中小企業については一時金ぽっきりで、制度を導入したとややこしいことをいろんな就業規則やなんかに書き込んで、それでいろんな手続をしていただくのが制度導入一件に対して、一件にというのはつまりそれで永久なものですけれども六十万円、二年度に四十万円、計百万円です、この制度を導入したという事実に対して。そして、しかも該当者があらわれたということに対して。そして、その後何十人出ようがこれに対しては何の後ろ盾もないわけですわね。大企業に至っては四十五万円と三十五万円、計八十万円。これが本当にインセンティブになるんでしょうかね。それに引きかえまして女子の再雇用制度の方は給付金ですよ。これは再雇用者一人当たり中小企業三十万円、大企業二十万円ですよね。そういたしますとその人数分に応じたものが支給されるわけです。一人頭に対して、その女子労働者に対して支給されるわけですよ。ここのところでまず再雇用制度の方を重く見ていらっしゃるとしか思えない。育児休業制度の方は、今まで長年普及に努めてきたけれども、これがなかなか普及できないからとあきらめてこっちに乗りかえたんじゃなかろうか。そうしますと施策としては非常に後退なんです。特に専門職についているような人が、今非常にバラエティーの専門職があります、そういう人たちがどんどんふえているのに、なぜ均等法を施行した今またこんな非常にどうにもならない奨励金で満足していらっしゃるのか、私にはよくわからないんですけれども
  301. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 育児休業の奨励金とそれから女子の再雇用制度の場合の奨励金はちょっと趣旨も違うわけでございまして、女子の再雇用制度の場合には、ある企業をやめましてしばらく働いていなかった方がもう一度再雇用されるということで、その再雇用されて働きましたら賃金が要るわけでございますが、そういうものに対して支給がされるわけでございますが、育児休業は、休業している間は労働はいたしておらないわけでございますので、ちょっと育児休業についての奨励と女子の再雇用の場合の一人一人が再雇用されましたときの奨励金とは趣旨が違っておる面もあるわけでございまして、決して私ども育児休業制度が普及しないのであきらめて女子再雇用制度の方へ乗りかえたということではないわけでございまして、育児休業につきましては一人一人の奨励がないからということよりも、企業でどうして育児休業を導入しないのかということを尋ねますと、一番多く挙がってまいりますのが代替要員の問題ですとか、非常に多くの理由が挙げられるわけでございます。  いずれにしましても私どもとしては、大臣もさっき申し上げましたように、両方が、育児休業の方は継続型の女性にとって、それから女子の再雇用制度の方は一度やめてまた戻ってくる人にとって大事なもの、それぞれに重みは同じというふうに考えておりますので、さらにこれから普及に努めてまいりたいと存じます。
  302. 久保田真苗

    久保田真苗君 こういうイロハみたいな問答をしていてもしようがないですね。局長よくわかっていらっしゃるんですよ。私は、なぜかというと、育児休業の場合でも、教員と看護婦と保母さん、こういう御三家に対しては非常に少額ではあるけれども一人一カ月当たり五千七百円というお金が出るわけですね。これは社会保険料の充当で、社会保険が継続できるというお金なんですよ。だけれども、ほかにもこれに比すべき専門職は今たくさんあるのに、なぜその手当てができないのかということなんですよ。専門職だけじゃございませんよね。こういう雇用情勢になってきますと、一たん職を離れて家に帰った場合、まともな仕事は日本じゃ得られないんです、そうでしょう。アメリカとは違うんですよ。アメリカみたいに資格と技能、そして本人の何といいますか、持っている実力、それによってそれなりの再雇用ができるというようなところじゃないんです、ここは終身雇用、そして年功序列制ですからね。そういう中で、育児休業に対する奨励金というのは、これは余りにも冷遇されている。  大臣、ちょっとお聞きいただきたいんですね。今申し上げましたように、育児休業については、本当にこの制度、一時金でぽっきりで百万と八十万です。それだけしかないんですよ。だけれども、高年齢者の雇用について言いますと、例えば定年退職者等雇用促進助成金というのは、六十歳から六十五歳を対象としまして、対象労働者一人につき今度四十五万円と六十万円でしょう、一人頭。それから雇用の延長をした場合ですよね。六十一歳以上まで定年延長をさせて事実上働かせた場合、一人当たり年額四十五万円、一人当たり年額六十万円なんです。つまり毎年毎年その労働者に対してお金が支給されるわけですよ。そういたしますと、なぜ、たった一年ですよ。しかも産休の期間を除けば十カ月、たったそれだけの期間のものがなぜ面倒が見られないんでしょうか、女子労働者のために。そのために結局自分の専門とか資格とかというものを失ってやめていく人が多いわけですよね。これは私は非常にもったいないことだと思うし、第一非常に不公平だと思うんですね。それというのが、結局女性が継続型の雇用をしていく、その一年の面倒を見ていただけるという、そのことに対して、つまり非常に低い評価しか与えてないんじゃないですか。大臣どうなんでしょう。十カ月休んでまた職場に戻ってくるということは、そんなに悪いことなんでしょうか。
  303. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 先生おっしゃること、よくわかるわけでございますが、ただ育児休業の場合には、労働の提供をその期間はしないということでございます。高齢者の場合には職を失って、働かなければならない。明日から働かなければならない、ところが仕事がないということでございますから、そういう場合に雇用の場を提供する人に奨励的なものとして、事実上賃金の一部の補てんになるようなものを出すという形になるわけでございますが、育児休業の場合には、さっき申し上げましたように、その期間は休んでおって労働の提供がないということでございますから、私どもとしては、一番重要なことは、休んでいる間雇用契約が継続している、労働できるようになったらまた戻ってきて働けるということが一番重要なことだというふうに思っておりますので、とりあえずは奨励金という形でやっておるわけでございます。  それから、さっき申し上げましたように、なかなか育児休業制度の導入が進まないことにつきましては、奨励措置の問題だけではなくて、いろいろ事業主の方には事情があるようでございますので、私どもとしてもそうしたネックが解消されるような方法、これはなかなか難しい点があるわけでございますけれども、いろいろ考えましてPRにも努め、先生も御存じのとおりでございますけれども、婦人少年室にも育児休業指導員を置いておりますし、それから育児休業のための旬間も設けましてPRに努めておりますので、さらに普及には努めていきたいというふうに思っております。
  304. 久保田真苗

    久保田真苗君 大臣ね、確かにその間、労務は提供していない。していないけれども、それに対して例えば高年者の、定年以降の者に対して六十万円年額として出てくる。これを、この金額を当人に払えと言っているわけじゃないんですよ。年額わずか六万円ですよ。年額わずか六万円で、その大事な一年間きちんと身分保障、社会保険の保障ができると。なぜ十分の一にしかならない。しかも、一年以上超えることのないこの手当てができないんでしょうね。私にはとってもわからない。どうしてこのままで推移してきたのかもわからない。一度決めたことはなかなか変えられない。でも大臣、私はこれぜひ検討していただきたいんです。
  305. 平井卓志

    ○国務大臣(平井卓志君) 私も育児休業制度についてはいささか不勉強な点もございますが、先生の御指摘の点も踏まえまして、担当局長に一度よく検討させます。
  306. 久保田真苗

    久保田真苗君 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いいたします。  次に、たくさんはしょりまして、一つだけ、これ二年越しの案件について伺います。  今、労働省は時短のために、その一つの大柱として年次有給休暇を消化させるという、そういう運動をしていらっしゃいますね。それは大変結構なんですけれども質問に出しておきました年次有給休暇の取得に対する不利益扱いについての労働省通達、これは一つ昭和三十年十一月三十日、基収四七一八号というのです。もう一つは五十三年六月二十三日、基発三五五号というのですね。これについては昨年、私が当時の山口労働大臣に質問いたしまして、それについてはその指摘の点を十分勉強して、答弁をしかるべくさしていただくという答えがあります。それから、ことしの予算委員会で、林労働大臣に対して、我が党の安恒委員が同じことを質問したのに対して、御指摘の通達について「御趣旨を体しまして前向きに検討してまいりたいと存じます。」と、こういうお返事があるんですね。ところが、その後、どういうふうに検討して、どういうふうに直していただいたのか。余りにもこれが労働省の今の施策と相反する通達なので、そこのところをしっかり伺いたいんです。
  307. 平賀俊行

    政府委員(平賀俊行君) 御質問の中にありました過去の委員会等における質疑の経過等を、私、最近基準局長に就任いたしましたけれども、勉強させていただいております。  確かに、年次有給休暇の取り扱いについて昔の通達と、それから五十三年の通達とは随分変わっておりますし、最近、年次有給休暇の取り扱いをどうするかということについて私どもも、御質問にありますように、できるだけ取得するように指導をしております。それから、世の中の考え方もだんだん変わってきているように承知をしております。ただ、この通達の背景にあります労働基準法の解釈について、賃金等の取り扱いについて年次有給休暇を取得した日数を算定をして、それによってどうこうしたことについて法律違反にするかどうかという問題について、通達では法律違反にはできないと、それからその後、実は最近、労働基準法研究会でこの問題について慎重な御検討をいただいた結果、やはり法律違反として罰則を科することは今の基準法の規定の中ではできないと、こういうような結論が出ております。  しかし、この問題はその通達などではなくて、やはり年次有給休暇を取得することを促進するため私どもも指導監督いたしますし、また、事業所の側でもそういう状態を促進するという考え方がだんだん出てきております。したがって、通達がだんだん変わっている。研究会の報告は報告として、それは今までの通達による新しい指導方針といいますか、そういうものを徹底すればだんだん進んでいくと、こういう考えのもとに研究会は結論を出したものと思いますし、また、現に研究会の結論に基づきまして中央労働基準審議会において労働基準法全体について全般的な検討を進めております。その中で、年次有給休暇、単にその解釈ばかりではなくて、年次有給休暇制度全体のあり方についてまた検討を進めておりますので、その結果等をまちまして、私どもとしても適切な対処をいたしたいと思っております。
  308. 久保田真苗

    久保田真苗君 この通達は、結局賞与において年休をとった人に差がついても仕方がないというのが一つで、もう一つのは精皆勤手当、これについて差をつけることは望ましくなくて、そして民法の公序良俗に、無効とされる場合があると。労働基準法がいかに自分で自分の始末をできない法律かという、非常に恥さらしのこれは解釈になっていると思うんです。こういうことが長く支配してきたということは非常に残念なんですけれども、今度の基準法改正の中でこの問題は解決されると、こういうふうに伺ってよろしいわけですか。
  309. 平賀俊行

    政府委員(平賀俊行君) 研究会の報告では、その問題については従来の指導でいけということになっております。したがって、研究会としてその点に関して法律上の措置をするかどうかということについては、私としては今どうこう言える立場ではございませんけれども、必ずしも積極的な考え方を持っておりません。
  310. 久保田真苗

    久保田真苗君 これは本当におかしいですね。それじゃ、何で年次有給休暇をたくさんとりなさい、それで時短をしなさいと、その政策自体が成り立たないじゃありませんか、こういう差別的な取り扱いを労働省が容認しているということでは。それなら、年次有給休暇で時短をやるなんてことはおっしゃらない方がよろしいんですよ。
  311. 平賀俊行

    政府委員(平賀俊行君) 罰則を適用して処罰をするということだけが、労働基準法の趣旨を生かすゆえんであるとは考えておりません。
  312. 久保田真苗

    久保田真苗君 ともかく、こういう矛盾したものが生きているということについては、非常に私、労働基準法の整合性からいって問題だと思うんです。こういう穴がある法律、それはできぐあいによって仕方がないけれども、改めるという態度が必要なんですよ。何も罰則の適用とかなんとかということよりは、こういう通達をもうちょっと法律そのものに反映させて、これが解決されるような、そういう方法をとるべきだと思うんです。研究会にどうかということを労働省から問題提起をしていくべきだと思うんですね。そうじゃなかったら、一体何のために労働省が時短をなさるのか全然わからないことになりますよ。よろしくお願いします。
  313. 平賀俊行

    政府委員(平賀俊行君) 先生の御質問の趣旨はよく承知をしておりますし、私どもの行政の取り扱いの中でこういう問題について前進をさせていきたいと存じております。
  314. 菅野久光

    委員長菅野久光君) 他に御発言もないようですから、労働省の決算についての審査はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十五分散会