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1986-11-25 第107回国会 参議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十一月二十五日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  十一月二十五日     辞任         補欠選任      大鷹 淑子君     大塚清次郎君      後藤 正夫君     下稲葉耕吉君      藤井 孝男君     添田増太郎君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         宮澤  弘君     理 事                 最上  進君                 森山 眞弓君                 松前 達郎君                 小西 博行君     委 員                 大塚清次郎君                 下稲葉耕吉君                 添田増太郎君                 鳩山威一郎君                 林 健太郎君                 林田悠紀夫君                 原 文兵衛君                 中村  哲君                 矢田部 理君                 黒柳  明君                 広中和歌子君                 立木  洋君                 田  英夫君    国務大臣        外 務 大 臣  倉成  正君    政府委員        外務大臣官房審        議官       渡辺  允君        外務大臣官房審        議官       斉藤 邦彦君        外務省アジア局        長        藤田 公郎君        外務省欧亜局長  西山 健彦君        外務省中近東ア        フリカ局長    三宅 和助君        外務省経済協力        局長       英  正道君        外務省条約局長  小和田 恒君        外務省国際連合        局長       中平  立君    事務局側        常任委員会専門        員        小杉 照夫君    説明員        北海道開発庁計        画官       大道 英彰君        外務省経済局審        議官       赤尾 信敏君        外務省経済協力        局審議官     川上 隆朗君        会計検査院事務        総局第一局審議        官        疋田 周朗君    参考人        国際協力事業団        総裁       有田 圭輔君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○千九百八十六年の国際小麦協定締結について承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  この際、参考人出席要求についてお諮りいたします。  千九百八十六年の国際小麦協定締結について承認を求めるの件の審査のため、本日、国際協力事業団総裁有田圭輔君出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 千九百八十六年の国際小麦協定締結について承認を求めるの件を議題とし、まず政府から趣旨説明を聴取いたします。倉成外務大臣
  5. 倉成正

    国務大臣倉成正君) ただいま議題となりました千九百八十六年の国際小麦協定締結について承認を求めるの件について、提案理由を御説明いたします。  昭和四十六年に作成されました千九百七十一年の国際小麦協定は、小麦貿易規約食糧援助規約とから成っておりますが、両規約昭和六十一年六月三十日に失効することとなっておりました。昨年来新協定作成作業が行われておりましたところ、本年三月にロンドンで開催された国際小麦理事会会議において、小麦その他の穀物に関する情報交換等について定める小麦貿易規約が採択され、また、同じく三月にロンドンで開催された食糧援助委員会特別会議において、開発途上国に対する食糧援助について定める食糧援助規約が採択されました。千九百八十六年の国際小麦協定は、これら二つ規約により構成されるものであります。  この協定締結することは、小麦その他の穀物貿易に関する国際協力の促進が期待されること、開発途上国食糧問題の解決に貢献することとなること等の見地から、我が国にとり有益であると考えられます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  6. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  7. 松前達郎

    松前達郎君 最初国際小麦協定に関して、さらに食糧援助規約、これらについて二、三の質問をさせていただきたいと思います。  まず最初、これは三十七年前に一番最初協定ができているわけですけれども、大分時間も経過をしております。恐らく小麦生産あるいは供給状況もいろいろと変わってきているんじゃないかと思うのですが、我が国として小麦そのもの生産というのはこれはもう問題にならないわけなんですけれども、この協定の精神からいいまして我が国小麦そのものを拠出するんじゃなくてお金によって援助等も行っている、こういう状況でありますけれども、我が国小麦生産とこの協定趣旨との関係ですね、これについてどういうふうにお考えになっておられますか。
  8. 斉藤邦彦

    政府委員斉藤邦彦君) この協定趣旨といたしましては、国際間におきます小麦の取引が円滑にいきまして世界におきます小麦需給関係というものがスムーズに運ばれるようにということが一つでございます。もう一つは、食糧援助関係でございます。  ただいまの御質問でございますが、この協定趣旨我が国小麦生産がどういう関係にあるかという点でございますけれども、この協定はその各国がどれだけ小麦生産すればいいというようなことはこの協定の目的としているところではございませんで、それは各国それぞれの事情政策に任されているところでございます。したがいま して、この協定に入っているか入っていないかということによりまして我が国自分自身小麦生産に対する政策態度、これがどう変わるべきかという点につきましては特段関係がないというふうに考えております。
  9. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと我々の、日本の場合恐らく非常に大きな関連を持つとすれば海外に対する援助食糧援助の問題というのが非常に大きく関連してくるし、もう一つはいわゆる安定供給ですね。食糧不足を解消するといいますか、これも慢性的な食糧不足の場合はそうはいかないかもしれませんが、そうじゃない突然起こる食糧不足、これは毎年食糧生産というのは天候その他で変わってくるわけですからそういった面、その二つの面が大体主眼じゃないかというふうな気もするわけですが、そこで国際備蓄制度ですね。これについては前にも提案をされ、現在どうなっているんでしょうか。これについての協議その他は進行しているんでしょうか。
  10. 斉藤邦彦

    政府委員斉藤邦彦君) 小麦備蓄につきましては数年前に国際的に話をされたというふうに承知しておりますけれども、その後それが実現しないまま特段進展がございません。
  11. 松前達郎

    松前達郎君 我が国としてこの備蓄制度に対しては積極的に推進するという態度で今後臨んでいくのかどうか、その辺をお伺いしたいんですが。
  12. 赤尾信敏

    説明員赤尾信敏君) その後まだ協議進展をしておりませんが、今後各国動き等も留意しながら検討していきたいというふうに思っています。
  13. 松前達郎

    松前達郎君 これは通告しなかったのですけれども、対象が当然小麦協定ですから外務省の皆さん十分御承知検討されたというのでわざわざ通告をしなかったわけなんですが、あと幾つ質問をさせていただきたいのですが、食糧援助規約の方ですね。これに関して対象国選定をするわけですね。しかもその量に関しても取り決めをしていかなきゃならない。これはどういう形式で選定をし、量もどういうふうにして決めていくのか、その辺を教えていただきたいと思います。
  14. 斉藤邦彦

    政府委員斉藤邦彦君) ただいま対象国選定とおっしゃられました趣旨は、援助する側がどの国に対して援助する、それをどう選択するかという趣旨かと存じますけれども、これはこの協定上基本的に援助する側が自由に選択していいということになっております。
  15. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと我が国現金贈与をすると、こういうことと伺っているのですが、被贈与国ですね、これは現金贈与された場合それをもとにして小麦を買い付けるあるいはその他の食糧品を買い付けるわけですね、関連の。これについてはうっかりすると小麦がだぶついているとすればだぶついている国が働きかけて自分の国の小麦を買ってもらうというそういうふうなことになりはしないかと、ちょっとその辺の危惧を持つんですがその辺いかがでしょうか。
  16. 川上隆朗

    説明員川上隆朗君) 委員御指摘の点に関しましては食糧援助供与品目及びその調達先国の問題かと存じますけれども、我が国食糧援助規約に基づく食糧援助実施に当たりましては被援助国のもちろん具体的な要請があるということが必要なわけでございますが、そのほかに食糧援助規約関連規定、ここには穀物の買い入れに当たっては開発途上国産穀物の使用が一般的目標とされております。そういう点をもちろん勘案するということ、それから穀物調達国の方からの要請というものも当然なければならない。こういうものを総合的に勘案の上調達先国を決める、その決めた後に右品目を購入するための必要な資金を供与するという形をとっておる次第でございます。
  17. 松前達郎

    松前達郎君 その辺の問題、これはODAの問題等いろいろ問題があるわけですね。その選択の仕方とか、あるいはそれに対してお金を出した方の国がそれに口を挟めないとか、いろんな問題があったわけです。例えば小麦輸出国が主体としてこれによって利益をこうむると、これによってですね。そういうことがないようにしなきゃいけないと思うんですね。ですから、その辺の買い付け先選択等もある程度会議とかそういうふうなもので明確に規定していかなきゃならぬじゃないか、こう思うんですけれどもいかがでしょうか。
  18. 川上隆朗

    説明員川上隆朗君) 今小麦調達お話が出ましたが、先ほど申しましたように、調達先国というものは基本的にはやはり開発途上国であるべきであるという一般的な目標がございます。我が国の場合には、主として米をタイ、ビルマ、パキスタンといったような国から買って被援助国に供与するという方式をとっておりまして、小麦につきましてはアメリカ小麦をここ数年来使ってやっておる。それから、最近の新しいシステムでございますが、ジンバブエのメーズというものをアフリカの域内で被援助国にあげるというような新しい方式も生み出しておりまして、その辺バランスをとりながら食糧援助をやっているという状況でございます。
  19. 松前達郎

    松前達郎君 わかりました。  それでは小麦協定に関してはそれだけにしまして、その次に、これは通告を差し上げてあったと思いますが日ソ関係ですね、これについてお伺いをしていきたいと思うんです。  まず最初ゴルバチョフ書記長訪日問題。これはもう新聞にいろんな情報が出ております。訪日が遠ざかったんじゃないかとか、一月に政府としては希望するけれども、なかなかそれがうまく具体的な方向へ進むかどうかわからないとかいろんなことが報道されておるわけですが、これはレイキャビク会談における米ソ間の合意が文書の形とか最終的な形でもって成立をしなかったわけなんで、これが原因であろうというふうに考える人もいるかもしれない。だけど私はそうじゃなくて、どうもウラジオストク演説というのが最も重要なソ連の新しい姿勢であるというふうに考えるわけなんです。ですから、そのウラジオストク演説関連した内容訪日の際に提案をし、何らかの見通しといいますか、解決見通しといいますか、こういう前進が見られない以上、恐らくゴルバチョフ書記長来日というのは考えられないんじゃないか、こういうふうに思うんです。  ことしの十月十五日にソ連のアリエフ第一副首相に実は会ったんですけれども、そのときの第一副首相ゴルバチョフ日本訪問に関する発言も、非常に語気を強くして言っていましたが、儀礼的なものじゃないんだということを盛んに言うわけですね。ですから、やはり軽く、ただお互いに相互訪問し合おうじゃないかという、これはもう国際通念上そうなんですが、そういうことではなくてやはり何らかの提案がその中にあるだろう、日本側としての提案も彼らとしては期待しているだろう。そして、これがある程度の成果を生み出さなければ、その見通しがなければ恐らく訪日しないんじゃないかと、こういうふうに私自身は個人的な判断ですが判断をしているわけですね。  それからもう一つは、好ましい雰囲気が醸成されるというふうなことをソ連側が言っているんですね、訪日に関して。じゃあ好ましくない雰囲気というのは一体何かと、こういう質問をしてみましたら、率直に言えば日本国内政治的雰囲気のことである。これは非常に解釈しにくいんですけれども、そういう返事が返ってまいりました。もっと詰めてみますと、日本の世論の改善であると、こういうふうなことも言われましたし、さらにSDI参加ですね、研究参加の問題も取り上げていたようであります。ですけれども、これはしかし非常に漠然たる話ですから、これがすべて訪日を左右する問題ではないと思います。  この訪日問題ですね、実はさっきも電話したんですが、今回日ソ円卓会議に来る代表団の相当重要な、これはヤゴジンという大臣ですけれども、この人の訪日が土曜日に延期になりました。これはどういうことかといいますと、中央委員会がどうも相当長引くだろうと。これは外務省さんがビザを出さないとかそういうことじゃなくて、向こう側都合で来れなくなるということだそうであります。どうも中央委員会相当議論が行われているんじゃなかろうかと、これは推察なんですが、しておるわけです。やはりその辺との関連が 恐らく訪日問題ではあるんじゃないかと思うんですね。  ですから我々として、日本側としては訪日してもらいたい、しかし政府都合といいますか、国会都合等もあって、できれば一月というふうにお考えになっておられたでありましょうけれども、もしか訪日をするとなれば一月にこだわらない、いつでも受けて立つという言葉がいいかどうか知りませんが、そういうふうなことをお考えでしょうか。
  20. 倉成正

    国務大臣倉成正君) ただいま松前委員お話のとおり、ゴルバチョフ書記長日本においでになるということになれば、これは画期的なことでございますから、お話のとおり儀礼的なものではなくして実りのあるものにしたいというお考え、私も全くそういう考え方でおるわけでございます。  日本政府立場は明らかでございます。ただ、その際私はシェワルナゼ外相とも会談をいたしました際に、我が方の立場ははっきり伝えておるわけでございます。やはり我が方は両院でも御決議いただいたような領土問題、平和条約の基本的な条件一つである領土問題、この問題について前進のあることを強く期待するということをはっきり先方にお伝えをしました。その上でなおかつ先方日本に来たいという希望を表明されました。ただ、米ソ関係等々もありということでございまして、その後御承知のとおりの経過をたどっておるわけでございます。  ソ連内部事情については私からコメントすべき立場ではございませんが、ただいま委員お話のように、年内か明年一月末までというふうに我が方が申しましたのは、これは一つの目安と申しますか、我が方にとって昨年の八月の段階で駐日ソ連大使に私の方から申し入れたわけでございますので、なお早期来日ということについては我々の方の考えは変わっておりませんけれども、一月ということにこだわっているわけではございません。でき得ればそれが望ましいということを申し上げておるわけでございます。したがって、その枠内でなきゃならないと考えておりません。  ただ、一つ言い得ることは、シェワルナゼ外相と私との会談で、まず時期を早く決めてください、その上でひとつ議題をしっかり煮詰めましょう、双方の外交ルートを通じてお互い立場でそれぞれの問題を煮詰めましょうと言っておりますから、やはりある程度の準備期間が要ることは事実でございますから、その準備期間が何日かということになるとこれはなかなか難しい問題ですが、少なくとも一週間や十日でできるはずはございませんから、やはりある程度の準備期間を持って御来日の日にちを提示していただくということを希望しておるわけでございます。  先方は、なおゴルバチョフ書記長日本に来たいという希望をしばしばあらゆる機会に伝えてきておるわけでございまして、今お話の好ましい雰囲気云々という問題についてはどういう意味か私の方では理解に苦しむわけでございまして、我が方は我が方の、日本の国としての立場があるわけでございますから、この辺についてのコメントは差し控えさしていただきたいと思います。
  21. 松前達郎

    松前達郎君 好ましい雰囲気というのは私は余り気にしないでいいんじゃないかと思うんですね、先ほど申し上げたとおり。来日されることになれば当然今大臣がおっしゃったようなある程度中身がなければいけない。中身についてはここでは私の方からお聞きいたしませんけれども、ソ連側の方は恐らくこの検討というのは大分時間がかかるんじゃないかという気がするんですね。ですから、一月というのは非常に困難になってきたのは事実じゃないか。しかも、さっき申し上げた中央委員会が延びていくというならなおさらのことですね。こういうふうに私判断をしたいと思うんです。  領土問題ですが、これについても日本政府としての立場は、前からお伺いしているのは北方領土返還を実現してから日ソ平和条約締結へと進んでいくという基本的姿勢があるというふうに伺っておるわけなんです。ですから、恐らくそういうふうになれば領土問題が必ず出てくるわけですね。  それと同時にもう一つ考えとしては、領土問題はもちろんそうやって解決方向に一生懸命努力する。それと同時にほかの問題についても、例えば貿易の問題ですとか、あるいは学術交流文化交流、これは文化交流協定ができましたから後ほどお伺いしますけれども、そういった経済関係、いわゆる政経分離だと政府はおっしゃっていますが、余りはっきりそれを分離するといってもソ連の方は恐らく経済的な国内事情があって経済発展をしたいという願望があると思いますね。ですけれども、それに西側の方はそう簡単にはいかないぞと。経済制裁という言葉を使っていいかどうかわかりませんが、そういうような状況で今まで続いてきているわけなんですけれども、ローカルに例えばシベリア関係とか、ソ連側は北極海の航路開発なんというものまで言っているわけですね。これは軍事的なことと関連あるかもしれませんけれども、しかしそういったことについての提案があるいはあるかもしれないし、それに対して日本側としてもある程度詰めておかなければならないんじゃないか、こういうふうに私感じ取ってきたわけなんですね。  そこで領土問題なんですが、これもかつてこの委員会で申し上げたように、領土の返還という言葉じゃなくて国境線の画定という言葉を使えば、結果は同じになるとしても多少ニュアンスが変わってくる。しかも例えば、北方四島に関しての日本の主権を認めるとか、ただしそれに関して日本の場合は安保条約を結んでいますからアメリカの軍隊が駐留しているわけなんですけれども、それと同じような条件をその島に限って日本が認めるとか、これはちょっと私の勝手なことですからお答えにならなくてもいいと思いますが、何かそういったような新たな提案なども可能性としてはなきにしもあらず。そういったようなことを今後検討しながらやっていくというので、ちょっと一週間やそこらではとても提案に対する検討というのはできないんじゃないかと思うので、やはり慎重に内容等の詰めを行っていただければというふうに思っておるわけです。  いずれにしても、ソ連の新しい外交政策展開としてはもうウラジオストク演説に尽きるんじゃないか。というのは、ウラジオストクを開放しようというんですから、開放すれば観光客だけじゃなくて国際会議とかスポーツとかなんとか、いろいろ挙げていますね。こういうことで開放するということでしょう。恐らく環太平洋構想の中に頭を突っ込んできた、これは明瞭なことですね。いろいろと接触する中でも環太平洋に関するいろいろな問題というのは真っ先に飛びついてくるといっちゃおかしいんですが、真っ先回答がイエスという回答になってくるんですから、そういう意味からいってもやはりソ連の新しい外交展開というものが出てきているんじゃないかと思います。そういう点も踏まえて内容を十分検討するということになろうと思います。ウラジオストク戦略的価値はほとんどなくなりつつありますし、日本が三海峡封鎖なんと言っていますが、これも恐らく遠からずこの意味も余りなくなってくるだろう。そうすると、北方領土というものが一体どういう重要な意味を持つかということも全然転換しなきゃならぬ、考え方を変えていかなきゃならない時期も来ているんじゃないか、こう思うものですから今質問さしていただいたわけでございます。  それから今度は文化交流協定なんですが、日ソ文化交流に関する協定がこの前調印されたわけですね。これについて私どもまだ内容を細かく知らないんです。この内容というのは一体どういう内容締結、調印されたのか。それからさらに、今後この協定の範囲で具体的に交流活動が展開されていくと思いますが、外務省としてどういう内容をまず期待する、あるいはどういう内容計画を持っておられるか、その点ございましたらお教えいただきたいと思います。
  22. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 御案内のとおり日ソ文化 協定は昨年六月から交渉を開始しまして、本年五月にモスコーにおいて安倍前外相シェワルナゼ外相との間で署名されました。この本協定の意義についてはもうちょうちょう申す必要はございませんが、相互主義に基づき拡大均衡の原則で発展さしていくための枠組みを設定ということでございまして、次期の通常国会において御承認をお願いし、その後ソ連側批准書を交換する予定にいたしておるわけでございます。この日ソ文化協定が発効後、同協定に基づき設置されます日ソ文化交流委員会というのがこの協定の中にございますが、この協定実施に関する計画を定期的に交流委員会で作成することになっておるわけでございます。したがって、この計画協定に規定される交流全般対象とするものでありますが、具体的な内容日ソ文化交流委員会の場で検討する。したがって、日本側ソ連側それぞれの意見を率直に出し合って決めるべきものと心得ておる次第でございます。
  23. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、とにかくドアをあけたということになりますね。これから先どういう分野で具体的に進めるか、今の交流委員会でお決めになっていかれるということに理解いたしました。  もう一つ、今度はソ連じゃなくて、あちこち飛んで申しわけないんですが日中間の問題、これは通告してなかったかもしれません。  実は、数日前に国家経済委員会の要人と会談をしたんです。お会いして話したときに、やはり日中間経済協力の中で合弁の問題ですね、これがどうもいつも問題になってきてしまうわけなんです。どうして合弁が積極的に取り組めないのか、これは政府の問題より民間の問題ですね。そういったことをいろいろ話し合ってみると、どうも日本側の企業としては資金を投入してもいつどうなるかわからぬ、こういうふうな恐らく懸念があるという非常に不安定な状況の中では投入できないというふうなことだろうと私は言っておいたんですけれども、この点どうお考えになりますか。
  24. 倉成正

    国務大臣倉成正君) これは一般的に申しますと、やはり投資をした側が安心して相互利益のためにその投資が十分効果を発揮するということじゃないかと思うわけでございまして、先般深センの市長さんが私のところにおいでになりまして三十分ぐらい御懇談しました。その際も率直にやはり深センに対する外資というものを大変求めておられるが、やはり投資環境を整備されることが必要でしょうということで申し上げておきました。深セン市長さんは他のところは税金は一五%だけれども、深センは一〇%だというようなお話等々ございましたが、いずれにしましても安心して投資できる、そして長期的な安定性を持つということが民間の投資する側にとっては非常に大事なことじゃないかと思いますから、そういうことについて率直に意見を交換し合いながら進めていくことが必要じゃないか。あるいは労働者の定着性の問題とか、いろいろな問題が具体的にはあろうかと思いますので、これは民間レベルでそういう問題があります場合には、政府としてはアドバイスと申しますか、助言をして、有効にそういう投資が進むようにいたしてまいりたいと思っております。
  25. 松前達郎

    松前達郎君 日中両国間でこれらの投資に関しての保証といいますか、国家レベルでの話し合いの中での保証というか、その時期はまだ早いかもしれませんが、将来ある程度いろんな話が煮詰まってきたときにそういった協定を結ぶというのも一つの方法じゃないか。これはほかの国とはありますね。何かそういったような形である程度保証しませんとなかなかみんな安心して投資しないような感じを持ったものですから、今すぐでなくても結構なんですが、ある程度その話が詰まってきたときにそういった協定というものをお考えになったらいかがかと思いますが、いかがでしょうか。
  26. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) これは委員承知のとおり、日中間の投資保証協定の交渉を行っておりまして、現在交渉が中断をしているような状況にございます。  確かに、投資保証協定が存在をする、締結をされることが日中間の、日本からの中国に対する投資の促進にプラスになるということは事実かと思いますけれども、日本の中国に対する投資が必ずしも中国側の期待どおりに進んでいないというのは、この保証協定がないからということではなくて、むしろ大臣が先ほど御説明申し上げましたライン及び委員が御指摘になりましたように、基本的に日本側の投資家の中国市場に対する何と申しますか信頼性の問題と、それからもう一つは、日本の企業家が中国に投資されます場合にはやはり十億という大きな市場を常に念頭に置いておられる。ところが、中国の期待している投資というのは輸出である。国内にはできるだけ売らないでもらいたいという双方の考え方の相違というのがやはり基本的にいろんな措置に、日本側の要望する措置と中国側の準備している措置との間のギャップということになってあらわれているんじゃないかと思われます。したがいまして、私どもとしましても投資保証協定の交渉自体には積極的に取り組んでまいりたいと思いますけれども、現在のところ双方の主張の懸隔から見ましてすぐに交渉が妥結するというふうな状況にはございません。
  27. 松前達郎

    松前達郎君 中国の場合、非常にローカルに話が進んで、それが横の連絡がないんですね、ですから大変難しいかもしれませんけれども。そういう経済システムができ上がればある程度この話も固まってくるんじゃないかと思います。これはその時点でひとつお考えいただければと思うんです。  また話が飛ぶんですが、今度はSDIなんですが、SDI研究参加の問題で、研究参加というものが一体具体的にどういう内容を持っておるのかということを調査するために調査団をまた御派遣になりましたですね、あれは民間でしたか。その結果を聞いておられるかどうか、また聞いておられるとすれば、それに対して一体どういうお考えを持つのか、その辺お願いいたしたいと思います。
  28. 渡辺允

    政府委員(渡辺允君) SDIの我が国の参加問題につきまして若干経緯を含めて御説明を申し上げますが、九月の九日に官房長官談話を発表いたしまして我が国のSDI研究計画参加問題についての政府としての方針を発表したわけでございます。  その官房長官談話の中に、今後我が国の企業等が実際に参加を進めてまいりますに当たって、その参加をできる限り円滑にするようにするために日米両国政府間で所要の措置について協議をすることにするというところがございますが、それに従いまして実はアメリカ政府との協議を始めましたのが十月の末にワシントンに代表団と申しますか、関係省庁の代表を派遣した趣旨でございます。  それで政府間で協議をいたしますのは、実際の参加は我が国の企業等が自主的な判断に基づいてするわけでございますが、その場合にそれが円滑にまいりますように、例えばいろいろな関連情報の伝達のメカニズムの問題でございますとか、それからいわゆる研究成果の利用の問題、それから秘密保護の問題等について話し合いをするということでございます。
  29. 松前達郎

    松前達郎君 じゃ、進行中であってまだその詰めは行われていないということに解釈してよろしゅうございますか。
  30. 渡辺允

    政府委員(渡辺允君) そのとおりでございまして、十月の二十八日から三十一日まで四日間まず協議をいたしましたけれども、今後もそれを続けていくという段階でございます。
  31. 矢田部理

    ○矢田部理君 小麦協定関連してでありますが、ここ一両年の国際的に見た場合の小麦の需給状況、それから中長期的に見て穀物生産なり需給状況はどういう見通しに立っておられるか、まず説明をいただきたいと思います。
  32. 赤尾信敏

    説明員赤尾信敏君) ただいま穀物の需給見通しにつき御質問があったかと思われますが、中長期的な需給見通しにつきましてはこれまでFAOとかアメリカあるいは国際小麦理事会等で見通し されて発表してきております。  八三年に国際小麦理事会の発表しました穀物の長期見通しというのが比較的新しい統計でございますけれども、それによりますと世界の穀物生産は、八〇年の十四億五千万トンから二〇〇〇年におきましては約二十一億七千万トンに達するだろうというふうに予測しております。  このうち小麦につきましては、四億四千万トンから六億八千万トンに達するということでございます。消費につきましてはほぼ生産と均衡するであろうという見通しでございます。  ただ問題は地域別な問題がございまして、先進国におきましてはどちらかといえば生産過剰、開発途上国におきましては非常に生産が不足しているというのが一番大きな問題です。途上国におきましても先進国の援助等もありまして生産は徐々に伸びておりますけれども、それ以上に人口がふえているということ等もありまして需給の不均衡があるという問題がございます。ちなみに穀物開発途上国の輸入は、一九八〇年の六千八百万トンから二〇〇〇年には一億三千七百万トンの輸入が必要になるだろうというふうに予想されております。  今後の問題点といたしましては、穀物生産増加は、耕地面積の拡大ということよりは単収の増加によって行う必要があるだろうということが第一点でございます。  第二点に、開発途上国の人口増加が非常に大きいものですから、生産の増加はありましても一人当たりの消費量はなかなか伸びない、ふやすことができないというのが二つ目の問題でございます。  それと三つ目に、途上国の生産をさらに促進するためにはいろいろと技術的な問題とか資金が非常に必要であるということで、その面から先進諸国としては大いに協力する必要があるという点が第三点として指摘できようかと思います。
  33. 矢田部理

    ○矢田部理君 アメリカを初めとする先進諸国では一定の生産が確保され、かつ供給が可能なわけでありますが、同時に開発途上国等では依然として飢餓が広がっており、問題の根本的な解決はなされていないという状況下で、食糧援助問題がODAの一つとして重要視されるわけでありますが、この食糧援助をする場合の我が国方式援助の基準、優先順位などはどんなふうに考えておられますか。
  34. 川上隆朗

    説明員川上隆朗君) まず、食糧援助方式に関する御質問でございますが、二国間援助の場合、具体的には我が国と被援助国政府との間で署名される交換公文に従いまして、被援助国政府と本邦商社が穀物供給契約を締結する方式をとっております。この契約に基づきまして商社は穀物調達、輸送等を行いまして、これによって被援助国政府が負う債務は我が国から供与される資金で弁済されるという方法によって食糧援助実施いたしております。これは現金による援助という方式でございます。  それから第二点の御質問でございますが、食糧援助を供与する際の基準の御質問かと存じますけれども、我が国は、一方では食糧援助規約の第七条二項という規定がございまして、食糧援助を供与するに当たって加盟国が基本的に従うものとされておる食糧援助のための指針及び基準というものがございます。これは幾つかの項目になっておりますが、かいつまんで申し上げますと、受益国の開発目的に合致したものであること、長期的かつ計画的に実施されるべきものであること、それから所得の低い食糧不足国への供与を優先すべきであるということ、それから特にLLDC諸国に対しては無償で供与されるべきというようなこと、それから開発途上食糧生産国からの買い付けに配慮すべきというような一般的な基準がございます。  こういう一般的な基準に従うとともに、他方におきまして、我が国としましては外交ルートを通じてなされます援助要請に基づきまして、随時開発途上国食糧不足状況、経済社会情勢、我が国との二国間関係等諸般の事情を総合的に勘案いたしまして、当然のことでございますが、我が国先方政府との間に十分な協議を行って援助を決定するというような仕組みを持っております。  以上でございます。
  35. 矢田部理

    ○矢田部理君 欧米全般の援助姿勢とも絡むわけでありますが、どうも最近援助のあり方が人道的立場よりも戦略的な観点が強く打ち出されておるという傾向が見られるわけでありますが、この食糧援助について、そういう視点が相当程度入ってきているという指摘も一部なされておりますが、そういう嫌いはありませんか。
  36. 川上隆朗

    説明員川上隆朗君) 我が国援助を行う際の基準につきましてはただいま申し上げましたけれども、基本的にはアフリカ、アジア、中南米等々開発途上国から来る援助要請に基づきまして、先ほど申しましたような点を考慮いたしまして援助を決定しているということでございます。  ちなみに、委員御指摘の点に関しましては、例えばアフリカ援助に関しまして一九八四年度の数字で見ますと、全援助量の六〇%がアフリカに対する援助でございまして、これは基本的にはアフリカにはLLDCが多いということ、それから食糧不足国が多いという当然のことではございますが、例えば対アフリカ援助のシェア、食糧援助のシェアというのはここ数年年々上昇してきているというのが現状でございます。
  37. 矢田部理

    ○矢田部理君 アフリカの飢餓の状況ですが、その後雨などもある程度あって、従前よりは幾分改善されたかに言われておりますが、本質的な解決には至っていないし構造的な要因が強いわけでありますから、もっとアフリカに対する飢餓の援助はふやしてしかるべきではないかというふうに考えておるのでありますが、その点いかがでしょうか。大臣から、どうでしょうか。
  38. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 今政府委員からるる御説明いたしましたように、この援助については、一つ食糧援助政策計画委員会において合意された基準に基づいてやるわけでございますが、一言にして言えばベーシック・ヒューマン・ニーズと申しますか、そういう考え方に基づいて食糧援助をするということですが、御案内のとおり、人口問題との関連もこれあり、また天候に左右されるということもある。またインフラが整備されておるかどうかということによって、末端まで本当にその食糧が届くかどうかというもろもろの問題がやはりあると思います。したがって、そういう問題を勘案しつつ、この援助計画というのは進めていくべきだと思いますけれども、同時に、できれば技術移転というか、その現地で生産が可能なことができれば、そういう技術を移転することによって生産を向上させるということも一つの方策ではなかろうかと思っておる次第でございます。
  39. 矢田部理

    ○矢田部理君 食糧援助等については、やはり人道的な視点が基本に置かれなければならないし、特に他の援助よりもその要請は強いと思われますので、どうもやっぱり日本援助について、日米諮問委員会などでも既にもう日本援助は戦略的観点で評価をされるというようなことにもなっていて、今の外務省の説明とは少しく違った傾向が強まっておるだけに警告を申し上げておきたいというふうに考えています。  もう一点、この飢餓の問題に関連いたしまして、フィリピンのネグロス島でありますが、ここはもともとサトウキビの生産で生活を立ててきたところでありますが、砂糖の暴落や供給過剰等の問題がありまして、数十万の人々が失業と飢餓で大変な事態をここ一両年迎えているわけでありますが、そのために外務省でも異例の援助を去年、ことしやっていただいたんであります。これは極めて少額でありまして、依然としてその後の状況も変わっていないというようなことも伝えられておるのでありますが、ネグロス島の状況についてはどんな認識でしょうか。
  40. 英正道

    政府委員(英正道君) ネグロス島の状況につきましては、国連の機関でありますユニセフ等からの状況を聴取しておりまして、委員御指摘のように非常に砂糖の価格の下落等に伴いまして、現地の児童のやはり飢餓状態というのが非常に深刻で あるというふうに承知しております。
  41. 矢田部理

    ○矢田部理君 そのサトウキビの農園の経営者が経営を放棄してしまって、飢餓だけではなくて失業という、あるいは失業とあわせて飢餓という両面で問題が深刻に進行しているわけでありますが、どうもその後抜本的な改善策が、フィリピン経済も容易でないということもあるのでしょうか、必ずしもアキノ政権になってもなされていないという状況下でありますから、援助は相手国政府要請なしに日本政府が初めてやった異例の援助ということで、私はそういう方向を出したことだけでもひとつ評価はするのでありますが、この中身が余りにも乏しいし少ないということで、援助をさらに大きくして継続をすべきではないかというふうに考えているのでありますが、この点いかがでしょうか。
  42. 英正道

    政府委員(英正道君) 確かに地方における活動でございますので、やはりもろもろの制約がございます。そこで私どもとしてはユニセフを通ずる緊急援助に協力をするということで、先般も地方自治体等の御協力を得まして三十万食の乾パンを供与する、それからことしの三月には十万ドルの緊急援助に引き続きまして、先般九月には五十万ドルをユニセフに拠出したということでございます。  今後も援助要請がございますれば、関係当局とも十分に協議しつつ検討してまいりたいと存じますけれども、先般供与しましたこの乾パンにつきましては、例えば三千七百五十名の児童に約三カ月間配布するという計画というふうに承知しております。
  43. 矢田部理

    ○矢田部理君 これは土地問題等も絡んでおり、なかなか現地の人たちが飢餓を克服するためにみずからの生産にかかわろうと思っても実際上できないでいるという状況等もあるわけでありますから、フィリピン政府の努力にもまたなければならないところが多々あろうかと思うのでありますが、しかし、これだけ深刻な状況、飢餓がすぐそこまで来ているという状況に照らして考えれば、相手国政府要請もさることながら、もう一度やっぱり外務省としても考えていただきたいということを特に申し上げておきたいと思います。  それから、関連してフィリピン問題に入っていきたいと思うのでありますが、先般アキノ大統領が来日いたしました。それで、経済協力といいますか、いろんな援助をする方向日本政府としても打ち出したのでありますが、最近のこのフィリピン情勢についてどんな認識に立っておられるか。エンリレ国防相のクーデター説などが流れる中で、閣僚の全員辞任、国防相の更迭というような問題がございましたし、また過般、オラリア人民党議長の暗殺とか、日本の商社の支店長の誘拐というようなさまざまな問題が出てきておるのでありますが、このフィリピン情勢についてどんなふうに把握をし、認識をされておるか。
  44. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 我が国にとってフィリピンは重要な隣国でございます。委員御指摘のとおり、政府としてもフィリピンの国内情勢について重大な関心を持っておるところでございますが、現在は御案内のとおり、アキノ大統領のリーダーシップのもとで新憲法の制定、それから経済の再建、反政府武装勢力との交渉等の課題に精力的に取り組みながら新しい国づくりを進めていると承知しておるわけでございます。  御案内のとおり、今般内閣の改造が行われアキノ政権は新しいスタートを切ると承知しておりますが、現在のところ国防大臣の更迭ということであとの閣僚の選任はまだ決まっておりませんが、早期に残りの閣僚の任命が行われましてアキノ大統領の率いる新内閣がフィリピンの政治的な安定を確保して一層の国づくりを進めていくことを期待いたしておる次第でございます。
  45. 矢田部理

    ○矢田部理君 フィリピンは御承知のようにいろんな不安定要素を抱えております。同時に、経済的な危機も極めて深刻だというふうに私も見ておるわけでありますが、そういう中で対比援助について先般アキノ大統領が来られるに当たって特別円借四百四億円ですかを行ったわけですが、これはどういう位置づけになるでしょうか。
  46. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 先般十一月十日に、御案内のとおり、日比首脳会談が行われまして、中曽根・アキノ会談が行われたわけですが、フィリピンが経済再建を行っているという過程においてこのフィリピンの努力に対してやっぱり一層の支援が必要である、そういう観点からフィリピンの経済再建のために我が国が従来にも増した協力を行う方針は総理の方から先方に伝えた次第でございます。特に右の会談で、今後フィリピンの電力需要が増大する、将来予想される深刻な電力供給不足、これに対処するためにカラカの石炭火力発電所の第二号機設置計画に対して四百四億円の円借款を供与する用意がある旨を中曽根総理から先方に表明した次第でございます。
  47. 矢田部理

    ○矢田部理君 円借については既に十三次まで来ているわけですね。これから十四次の交渉に入ろうかというところに来ているわけでありますが、この十四次の円借款についてはどんな考え、どんな構想をお持ちでしょうか。
  48. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 委員お話しのように、十四次を事務的に詰めておることになるわけでございますから確定的なことを今申し上げるわけにはまいりませんけれども、フィリピン経済の現状にかんがみましてできるだけの配慮を、先方事情先方希望等々できるだけの配慮を考えていきたい、そう考えておる次第でございます。内容についてはまだいろいろと相談をしているところでございます。
  49. 矢田部理

    ○矢田部理君 伝えられるところによりますと十四次の円借は、十三次は四百九十五億でありますがこれを上回る規模というふうにも言われているのでありますが、考え方としてはそういうことで受けとめてよろしいのでしょうか。
  50. 英正道

    政府委員(英正道君) 先方からの要請がアキノ大統領が訪日される直前にまいりました。現在、検討しているところでございます。まだ金額等につきましても、検討の結果、フィージビリティー等を見た上で検討するということでございますが、基本的な考え方としてはただいま大臣から御説明申し上げましたように、今後従来に増した協力をするということで臨んでいきたいというふうに考えております。
  51. 矢田部理

    ○矢田部理君 従来に増した協力ということでありますから上回る規模というふうに伺うわけでありますが、それらを含めて、先ほどの特別円借もあるわけでありますが、大体一千億規模とか一千億を上回るという情報等も流れておるわけでありますが、そういうふうな受けとめ方でよろしいんでしょうか。
  52. 英正道

    政府委員(英正道君) 御案内のように、第十三次の円借款は四百九十五億円でございます。そのほかに無償協力ということで毎年八十億円ぐらい、さらに技術協力で五十億円ぐらいという金額が供与されております。これらの要請に基づきまして個々の案件を検討した上で供与されるわけでございますが、先ほど大臣から申し上げましたカラカの火力発電所に対する特別借款を足しますとたとえ従来と同じレベルであったとしても一千億を超えるという計算はあるわけでございます。そういうことを念頭に置いて、先方の大蔵大臣が東京での記者会見においてそういうような心証を持ったということを言われたというふうに承知しております。
  53. 矢田部理

    ○矢田部理君 私どもとしましても、ODAの量的拡大については基本的に賛成の立場に立つわけでありますが、同時にもう一つの視点として質的な問題が、先ほどの食糧援助でもそうでありますが、問われなければならないというふうに実は考えているわけであります。特にフィリピンの場合には、マルコス疑惑を生んだりJICAの汚職の話題にのったりして、援助のあり方、ありようについてかなり議論が交わされてきたところでありますが、どうも最近の援助のやり方を見ておりましても、援助のシステムそのものがほとんど基本的には変わっていないのではないか、マルコスからアキノ大統額に馬を乗りかえるだけというような印象が実は強いのでありまして、この辺どんな ふうに考えておられるのか。例えばアキノ大統領御自身も先般私どもの土井委員長に対して、民衆に届くような使い方をしたい、あるいは実施過程を民間のモニターにゆだねることも考えたいというような向きの話も考え方としては出ておるわけでありますが、これからの援助に当たってこの辺がどういう形で具体化されようとしているのか、どうもいま一つ私どもとしてはわかりにくいのでありますが、日本側としてODAの対象選定あるいは実施過程のモニタリング、さらには実施後の評価と資料の公開などについてどのような改善策を考えておられるのか、まとめてひとつ説明をいただきたいと思います。
  54. 英正道

    政府委員(英正道君) 先般のいわゆるマルコス問題の際にも御説明申し上げましたように、日本経済協力の仕組みというのは二十五年なりの経験に基づいてそれなりに一生懸命やってきているわけでございまして、制度としてはいろいろな段階でチェックということを行う仕組みになっているわけでございます。しかし、最近のいろいろな御議論を踏まえまして、加えてやはり日本のODAがバイ、マルチ合わせて一兆円を超すという巨額に上っているということで、その資金が適正に使用されているということをやはりはっきりすべきであるという御議論が国会その他国民の間にも非常に強いということを伺いました。私どもとしてはそういういろいろなチェックシステムをすべての段階においてできる限りさらにきめ細かくやっていくということが基本でございます。  評価の点からちょっと申し上げますと、フィリピンに対する援助というものについてはいろいろな意見があったわけで、それを踏まえまして本年四チーム、日本が特に重点を置きました農業でありますとか通信でありますとか保健でありますとか、そういう部門に民間の有識者の方を団長にいただいて評価を行いました。その結果を踏まえましてフィリピン側とも話し合いをしまして、フィリピン側も日本の従来の援助がフィリピンの発展に貢献していったということはよく理解をいただいたと思いますし、今回の共同新聞発表にもその旨が両首脳の一致した意見ということで出ているわけでございます。  しかし、今後のやり方につきましては、もちろん供与された資金をどういうふうに使うかということは私ども言うまでもなくフィリピン側の問題でございますので、アキノ大統領の発言等今後一層適切にやっていきたいということは私どもとしても評価しているわけでございます。私どもといたしましても、やはり今後、先ほど申し上げましたようにいろんな段階できめ細かくやっていきたいということで、基本はやはり日本側でそういう考えで適正、効果的、効率的な実施というものを実現するということに従来に増して強い関心を持っているということを相手国が理解するということは必要でございますので、これは二国間の協議の際にも先方によく説明をいたしておりますし、または一般論として、これはフィリピンだけではなくて、広く日本援助が向けられているすべての国に理解いただかなければならないことでございますので、マニラにおけるASEANの拡大外相会議の折でございますとか先般の国連総会の折等に、前安倍外相並びに倉成現外務大臣から公的な場でそういうことを発言して、日本としてははっきり理解してもらうということをしております。  それから、相手国のニーズに乗った援助ということがやはり一番重要でございますので、そういう意味では、今度フィリピン政府が決定いたしました開発計画、やはりこのラインに沿った協力をするということが必要でございますので、まずそういう計画の御説明を先方からいただき、また私どもの協力のあり方について探るということで、総合的なミッションを派遣するということも検討中でございます。
  55. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 大体今政府委員から答えたことで尽きますけれども、基本的には先方の国の自助努力、これに対して可能な限りの協力を行う、したがって、よく相手国と話し合う、そしてまた事前調査をよくやるし、またこれが実際効果的であったかどうかという評価をしっかりやるということを考えていきたいということでございまして、これからフィリピン側が農業開発とかあるいは輸出振興、経済が非常に困難であるし、農業関係も先ほどネグロス島のお話がございましたけれども、そういうことの協力にも配慮していきたい、そういうふうに考えておる次第でございます。
  56. 矢田部理

    ○矢田部理君 私どもも昨年フィリピンをいろんな面で調査をして幾つかの提案、提言等もしておるわけでありますから、ぜひ参考にしていただきたいと思いますし、またその立場から少しくこれからの改善策を見守っていきたい、またいろいろ意見も申し上げていきたいと思いますが、時間の関係でその点は省略いたしますが、一つマルコス疑惑の際にもしばしば問題になってきましたのは、全体の援助中身、方法それから過程等についてガラス張りでない、ずっと秘密で事が進行してきた。確かに相手国政府の主権の問題等もございますから単純ではないと思いますが、もっとやっぱり明らかにすべきはすべきだというふうに私どもは考えているのでありまして、その点で例えば問題になりました円借款で行う事業の落札企業名、契約金額高等の公表というようなことが俎上に上ってきていたのでありますが、その点外務省は具体的な検討方向づけはしておるでしょうか。
  57. 英正道

    政府委員(英正道君) 基本的には日本から供与した資金を先方政府が自助努力の一環で最善と思われる方法で使用するということでございますので、かつ手続といたしましては、そういう供与を受けた資金を対象先方が民間企業と契約をするというやり方でございますので、いわば第三者である立場にある者がそういう内容を公表することにはやはり基本的な限界があるという点は前々から御指摘申し上げておるとおりでございますけれども、他方、先ほど申し上げましたようにODAが一兆円を超す、バイ、マルチ含めてでございますけれども、そういう中において今後ともODAを拡充していくということが政府の方針でございますので、そういう意味ではやはり国民の御理解、国会の御支援ということが必要である、そういう意味援助についてもっとよく政府としてはこういうことをやっているんだということをわかっていただく努力をすべきではないだろうか、こういう反省もございます。その一環として相手国の関係もございますので、そういうものを踏まえつつ何ができるかということを現在検討しているという段階でございます。
  58. 矢田部理

    ○矢田部理君 検討中というのは少しく時間がかかり過ぎると思うんですね。特にフィリピンの場合には、体制も変わり新しい援助を行おうということでありますから、これを機会にやっぱり根本的な改善策を追求すべきなのであって、少なくともその一つに大変問題になりました、できるだけ公開をしていくということがポイントの一つにもなってきただけに、これから行うさまざまな事業、特に落札企業名とか、こんなことは秘密でも何でももともとないのでありまして、それから仕事の過程とかあるいはさらには契約高とかというようなことは進んで公表してしかるべきだと。これは国民の税金をその方に振り向ける立場から見れば当然過ぎるほどの要求だと思うのですが、それすらまだ結論が出ていないのでしょうか。
  59. 英正道

    政府委員(英正道君) フィリピンについて申し上げますと、フィリピン政府もそういう点については多大な関心を持っているようでございまして、先般、今後外国から供与を受ける援助については公開をできる限りやっていくということで具体的なガイドラインのようなものを決めておられるようでございます。これは、フィリピン側、一般論として援助を受ける方がどこまでなさるかという問題についてはそれはそれとして受けとめるわけでございますが、今申し上げておりますのは、日本政府としていわば直接当事者でない契約等について発表するということになりますと、これはフィリピン一国でなく非常に多数の被援助国 との関係、外交上の問題がございますので、慎重に検討さしていただいているということでございます。
  60. 矢田部理

    ○矢田部理君 少しくくどいようですが、秘密なんでしょうかね。例えば電力の開発の事業を行う、これに対して日本お金を貸し付ける、その事業を請け負う会社の名前というのは秘密なものでしょうかね。何も軍事機密でもなければ外交上の秘密でもない。その程度のことは発表して当たり前の話ではないでしょうか、かねてから私は思っているんでありますが。それは日本国民だけでなくて、例えば相手国の民衆の人々にも、日本はこんな援助をしているんですよ、この事業はこういう日本お金でやっているんですよと知らせることがまたお金の効果的な使い方から見てもよりよろしいのではないかと私は思っているんですが、どうしてそこが発表できないんでしょうか。だからこそ何か卑しいことややましいことがありはせぬのかといういろんなせんさくを受ける対象にもなるんじゃないでしょうか。
  61. 英正道

    政府委員(英正道君) 矢田部委員の御意見は大変大事な御指摘だと思いまして、拝聴さしていただきます。
  62. 矢田部理

    ○矢田部理君 拝聴だけでは困るんでありまして、早期に結論を出して、やっぱり企業名だけではありませんで、援助全体をできるだけガラス張りにして、国民の税金の行方をはっきりさせる意味でも、それから本当の適切かつ効率的な援助を行う意味でも、そのことを強く私は求めておきたいというふうに思います。  それからJICAの総裁が見えておりますが、総裁からお聞きをしたいと思いますが、モロッコ問題について、あるいはフィリピンの鉱山開発調査などをめぐっての汚職が摘発をされました。この種の問題が出ますと、JICAのとった最初態度もそうなんでありますが、個人の資質の問題とか道義の問題ということで問題を小さく扱うあるいは対応するという癖がしばしばあるのでありますが、どうもやっぱり制度や仕組み上の問題が大きく横たわっているのではないかという印象が強いのであります。この点は既に時間もたちましたのでいろんなところで議論をされていようかと思うのでありますが、総裁としてはいかが受けとめておられますか。
  63. 有田圭輔

    参考人有田圭輔君) 初めに、我々国際協力事業団としては起こしてはならない不祥事を起こしたと、そういうことで関係方面に多大な御迷惑をかけ、かつまたこの国際協力一般についてイメージダウンを招いたということについてはまことに遺憾であり、この機会に深くおわび申し上げるわけであります。  この事件が起きまして、早速外務大臣から厳重に注意を受け、また事業団法による命令を受けまして、これに対しまして十月の下旬に改善計画というものを提出いたしました。これに基づきまして今後いろいろ改善してまいるということになると思います。  この中には、JICA限りで行えることとまた関係所管大臣の御指示を得て行うことと、二つに分かれると思います。しかし、まず第一点は、やはり人が絡む問題でありまするから、綱紀の粛正ということをこれを徹底するということで、人事部長を補佐する特別の調査役を設けるというようなことで、一般の研修を含めて、けじめといいますか綱紀について十分徹底して、また反復繰り返しこれを徹底するということがまず第一であります。  そのほか、やはり組織に関することでありまするから、私の直属の業務監査室というものを設けて、従来も総務部中心でやっていた業務監査ということを徹底し、また内部の経理監査も行うし、さらには外部に委託する諸般の事業についてこれを評価し監督するということを徹底したい。それで、その中の人事政策としてはやはり配置の適正化と、それから、事業団も十三年目を迎えまして内部にも相当いろいろ人材が育ってきております。こういう人材の内部登用の道を広げるということ、やる気を起こさせるということが一つと、それからもう一つは、やはり事業団の内部の組織を見ますと縦割り傾向が非常に多いということで、これをできればもう少し横断的にファンクショナルな組織に改めていくということが、これは事業団の内部のやはり合理化、効率化、または適正化につながる問題ではなかろうか、こういう点にも視点を向けたい。また、単に組織のみならず、内部の仕事の流れにおいてもできるだけ縦割りというような弊害の起こらないように運用してまいりたい、このように考えているわけでございます。
  64. 矢田部理

    ○矢田部理君 十月末に外務大臣の改善命令に対する報告が出されておりますが、その中に再発防止のための改善措置等など何項目かにわたってJICAとしての改善策を出しておられるわけでありますが、これで十全だというふうにお考えですか。
  65. 有田圭輔

    参考人有田圭輔君) 十全と申しますか、その点は我々としては従来からも内部の合理化運動その他進めてまいりましたが、今度の事件を契機にしていろんな視点から見直しをしてできるだけのことをここに書きましたわけであります。これもすぐにできることとできないこととございますが、少しく時間をかしていただいてこれを実行すれば相当の改善政策になると確信しております。
  66. 矢田部理

    ○矢田部理君 外務省に伺いますが、外務省としては次官が長になって経済協力検討委員会というのを発足させた、さしあたりこのJICA改革の本格的な検討に入ったというような話も聞くのでありますが、この改善命令だけでは不十分だという認識でしょうか、またこの検討委員会は何をいつごろまでにどうするつもりなのか、その点も含めてお答えをいただきたい。
  67. 英正道

    政府委員(英正道君) 大臣からJICAに国際協力事業団法第三十八条に基づいて改善の命令をした点は三点でございまして、人事政策、それから実施体制の改善並びにコンサルタントの適正な活用という点でございました。それを受けまして報告があったわけでございますが、このうちJICAのみで実施できるものにつきましては倉成外務大臣からどしどし進めてほしいということで進めておるわけでございます。しかしながら日本経済協力は、関係各省それから民間の協力を得つつ進めているという面がございまして、やはり外務省だけで、JICAだけで実施できないという点があります。そこで、その中で幾つかの点に焦点を当てて今後さらに改善の努力をしていきたいというふうに考えております。  その中で、先ほど御指摘のございました経済協力検討委員会という組織で検討をしておりまして、先ほど有田事業団総裁からの答弁もございましたけれども、やはり組織は、人がやる気を起こし連結性を維持して業務を行ってもらいませんと、重要な業務であります経済協力が十全の力を発揮できないということでございますので、やはり私どもとしてはそういう育ってきた人材を活用するために、現在相当の数がおられますけれども、JICAに人がまだ育っていないということで関係省庁からいわば出向の形でお助けいただいていたわけですが、JICAの人が育つにつれて、そういうJICA自身の職員に道を開いていくということが大事であろうかということ。それから、組織として十三年目に入りました。業務量が非常にふえていて大きくなっている部もございますし、また、仕事はふえているけれどもほかの部に比べればそれほど能率で伸びていないということで、やはり組織のストリームラインと申しますか、そういう改変ということをする必要があるだろうと。この二つの問題が関係しているわけでございまして、当面、こういう点について外務省としての考えをまとめて関係省庁に御協力をお願いする、やっていきたいというふうに考えております。
  68. 矢田部理

    ○矢田部理君 それは、時期的にはいつごろまでに結論を出すんですか。
  69. 英正道

    政府委員(英正道君) 外務省考えというものについて、今の点については大体の考えをまとめまして関係省庁には提示をしておるわけでござい ますが、いつまでにという点についてはそういう計画は何年かにわたるものでございますので、ちょっといつまでにどうということでありませんが、可及的速やかに具体的な計画については合意していただきたいというふうに考えております。
  70. 矢田部理

    ○矢田部理君 外務省に対しても、またJICAに対しても申し上げたいのでありますが、やはり海外経済協力日本以外の外側で行われる、あるいは仕事がなされるということから遠目で見えないということもあるわけですが、全体として秘密主義というようなことが流れておって、そのことがこの種の悪を生む温床にもなっているわけでありまして、やはりここでも公開ということをひとつ基本にした問題の立て方をお願いしたいし、それからさらに、幾つかのなるほど提案があるわけでありますが、個人の問題もひとつ大事ではありますが、制度や仕組みの問題が相当この種の問題にはかかわるのでありまして、やっぱりその制度の改善を急いでいただきたい。提案だけでなしに、これは実行に移していただきたいということと、ほかに幾つか具体的な指摘があるわけでありますが、時間がありませんのでまたいずれの機会にしたいと思いますが、私はJICAとしての功績を認めないわけではないんですが、この種の問題が出ますと、少しうんでいるという印象が強いものですから、総裁としてもやっぱりこのうみを出し、本格的な改善策をさらに一層努力していただきたいということを特にお願いしたいんですが、一言お答えをいただいて総裁結構です。
  71. 有田圭輔

    参考人有田圭輔君) 御指摘の点、確かにそのとおりでありまして、今後もこれを機会に自粛、自戒して、国際協力に対するイメージをさらに上げて、大方の国民の御期待に沿うように努力したいと思います。  また、情報公開につきましては私どもの本部の三井ビルの九階に図書室がありますが、いずれ一両年の間に国際協力総合研修所という建物が市谷にできます。そこに図書資料室を移して総合的な資料提供の場にしたい。そこで、もう既に数万点の報告書等も集まっております。こういうものも、一部は若干の時間、取扱注意のような格好になっておりますけれども、できるだけこれを公開して、専門家の方々を含めて一般に御利用いただきたい、非常に調査団の数も多いわけですから、報告書も多い、また持ち帰りの資料も多々あるということで、これをぜひ一般の方に御利用できるような体制に持っていきたい、このように考えております。
  72. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 今、有田総裁からお話がございましたが、私も比較的外地をよく歩いておりますので、JICAの職員の方々が現地で非常によく献身的にやっておられる状況もかなりよく承知をしております。それから、先般JICAの本部に参りまして、やはりそこにも東南アジアの若い諸君がおりまして、JICAの職員も一生懸命やっているという状況を見てまいりましたし、いろんな資料等も、もう少しこれを国民にみんな見せたらいいじゃないかというような貴重な資料がたくさんあるような感じがいたしました。しかし、やはり何か機会がないと改革というのはでき得ないわけでございますから、総裁お話しのように、縦割り行政というのがやはり一つの大きな問題であろうかと思いますから、思い切ってこの機会にひとつ機構、人の活用ということについてメスを入れて、そしてJICAが本来の目的に合うようにしていくべきである。それには、もちろん関係各省庁の協力ということが必要でもございますし、そういう点もひとつぜひ我々もお願いしたい。  それからまた、外務省を初めJICA——関係者が一生懸命やっているつもりでありましても、外から見るとまだいろいろこういう点で考えたらいいじゃないかとお気づきになる点があるんじゃないかと思いますので、これは民間の方のみならず、国会の先生方、それぞれお気づきの点があれば、率直にひとつ御注意を賜れば、謙虚にいろいろな点を承りまして、この機会にJICA本来の目的、これから日本として大きく伸ばしていかなきゃならないODAの問題を国民の中に認識をしていただかなきゃいけないと思っておる次第でございますので、真剣にこれはもう大臣以下全省一丸となって取り組んでおるところでございます。
  73. 矢田部理

    ○矢田部理君 コンサルタント選定委員会の民主化の問題あるいはまた調達部の組織改正の課題、さらにはプロパーの職員の養成などいろんな課題があるわけでありますが、幾つか出された提案も大事でありますが、今、大臣の指摘された点も含めて本格的な改善策をひとつぜひ早期に実現をしていただきたいというふうに要望しておきたいと思います。  そこで、会計検査院にもおいでをいただいておるわけでありますが、会計検査院は、どちらかというと国内の検査に忙しかったりして、今までなかなか外に手が伸びなかった。主権の壁などもあって、いかがするかという方法論の問題もあったわけでありますが、今回マルコス疑惑とかJICAの汚職などに関連して、検査院としても本格的な調査に乗り出しているという話を伺っているのでありますが、どのような国のどのようなプロジェクトを対象にして検査を進めておられるのか、その検査の到達段階、これからの結論をどんな方向でいつごろ出されようとしているのか、かいつまんで御説明をいただきたいと思います。
  74. 疋田周朗

    説明員(疋田周朗君) お答えいたします。  会計検査院では、海外経済援助事業に対します検査は、従来第一局が外務省、経済企画庁、国際協力事業団などを担当いたしまして、また第五局が海外経済協力基金を担当する、こういうことで行ってまいったわけでございますが、対フィリピン援助をめぐりましていろいろ問題が生じましたことから、一元的に検査体制を整備する必要がある、こういうことで本年四月以降両局の調査官を出し合いましたり、あるいは官房から海外経験豊富な調査官を応援させるというようなことで、特別のチームをつくりまして対処してまいりました。明年以降、通常におきましてもこれらのものを一本化するなどいたしまして、体制を充実させる必要があるということで現在検討しておるところでございます。  それから、フィリピンに対する直接借款につきましては、ことしの六月と九月の二回にわたりまして海外経済協力基金の本部の会計実地検査を実施いたしました際に、国会で取り上げられました事業を中心といたしまして検査いたしました。検査に当たりましては、基金の見直し作業は妥当であったかどうか、審査は適切に行われているか、契約の承認は適切に行われているか、あるいは事業は計画どおり実施されているか、また所期の目的を達成して効果を上げているか、こういったところに観点を置きまして実施いたしました。現在、その検査の結果につきましては鋭意取りまとめているところでございます。  なお、海外に赴きまして行う調査につきましては、これまでの国内におきます海外経済協力実施機関に対します検査の結果を踏まえますとともに、援助実施機関の評価報告書、こういったものの検討を十分に行いました上で準備が整い次第できるだけ早い時期に実施することにいたしております。
  75. 矢田部理

    ○矢田部理君 そのまとめというのは年内に出るわけでしょうか。いつごろまでを時期的にはめどにしておられましょうか。
  76. 疋田周朗

    説明員(疋田周朗君) 現在、私ども会計検査院では、ことし行いました検査を院を挙げて取りまとめ作業を実施しているところでございまして、通常国会が始まります際に検査報告を提出いたすという、そういうことになっておりまして、現在それに合わせまして作業を進めている段階でございます。
  77. 矢田部理

    ○矢田部理君 そうすると年内かあるいは来春早々ということになるわけでしょうか。  そういうことが一つと、それから最終的な結論はまだそこにまつといたしまして、これまでの調査、検査の過程の中で少なくともこんな点は注意すべきだとか、こんな点に問題ありという問題点の指摘だけでも今の段階でできないでしょうか。
  78. 疋田周朗

    説明員(疋田周朗君) 現在、いろいろな問題点はそれぞれ私ども内部で検討している段階でございまして、今の時点でお答え申し上げるのは御容赦いただきたいと存じます。
  79. 矢田部理

    ○矢田部理君 それから最後になりますが、今のところ各部とか局に分かれている者をいわば特別チームを編成してやっておられるということでありますが、これは機構を改正して外務検査課みたいなものをつくって、これから組織的に、あるいはまた一体となって対応するというような構想は検査院としてはお持ちですか。
  80. 疋田周朗

    説明員(疋田周朗君) そのような点も含めまして組織の整備を図るべく現在検討を続けているところでございます。
  81. 矢田部理

    ○矢田部理君 結構です。総裁も結構です。ありがとうございました。  外務大臣経済協力の最後のところで申し上げたいのでありますが、我々としてもODAの量的な拡大をもっとやっぱりすべきであると。外務省自身も努力をされておられまして、従前から比べれば大分伸びてはきているわけでありますが、この量的拡大とあわせて質的な問題、それから基本的な援助の視点の問題、これを十分に押さえておきませんと、いろんな癒着や黒いうわさや利権や汚職というようなことまで出かねまじき状況も、これはフィリピンやJICAだけでなしに各国に実はあるわけでありますので、この点ひとつ外務大臣としてもこの機に特に大臣としての仕事の重要な一つとして、ぜひそういう立場をもう一回見つめ直してほしい、何らかのやっぱり足跡を残していただきたいということを特に外務大臣には要望しておきたいと思います。  それから、次に南アフリカの問題に移りたいと思いますが、この六月に南アフリカでは全土に対して戒厳令を出し、数百名のアパルトヘイトに反対する人々の逮捕をするというような大弾圧が行われているのでありますが、この南アフリカのさまざまな状況や動きに対してどんなふうに外務省はつかまえておられますか。
  82. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) 戒厳令の実施、それからその後のいろいろな暴動、それに対する弾圧というようなことで、実際問題としては南アの情勢が刻々と悪くなっております。特に昨年の秋以来その情勢が悪くなっております。まあ今現在若干平穏になっておりますが、長期的にはやはり悪化の方向をたどっているということを残念ながら言わざるを得ないと思います。
  83. 矢田部理

    ○矢田部理君 私も共通の認識なのでありますが、そこで、各国経済制裁のあり方とか意味とかということについて今いろんな議論があるわけでありますが、どうも日本政府の対応を見ておりますと、九月の半ばに追加的な措置はとりましたけれども、少しく及び腰である。アメリカやイギリスなどがどんなふうに動くであろうかという模様を眺めながら、極めて主体性のない対応をしているというふうに見られるのでありますが、どうも外務省自身この経済制裁の効果についていま一つ認識が不足をしているのではないか。なるほど一説にはこの経済制裁で国内問題の改革ができた例はないとか少ないとかという向きなどもあるわけでありますが、経済制裁の位置づけについてどんなふうにお考えでしょうか。
  84. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) 経済制裁につきましては、そのことの効果がどの程度あるかということにつきましては種々御議論があると思いますが、少なくとも日本政府がやっております経済制裁というのは、相手国政府に対しまして日本がいかにアパルトヘイト政策に対して反対であるかということを明確に伝える手段としてアパルトヘイト反対のための経済政策各国、すなわち欧米諸国とも十分協議した上で行っているということでございます。
  85. 矢田部理

    ○矢田部理君 アメリカでは先般、議会として南ア制裁法を成立させました。ここで幾つかの措置がとられたのでありますが、日本の場合にはこのアメリカのとった措置の水準よりも低いというふうに言い得るわけでありまして、その点でさらにこの追加的措置は考えていないなどという情報も流れておるのでありますが、少なくともアメリカの水準、できればそれを超える本格的なやっぱり制裁措置、経済的措置を講ずるべきだというふうに考えますが、大臣いかがでしょうか。
  86. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 御案内のとおり、日本と南アの関係につきましてはまず第一に、従来外交関係はございません。領事関係にとどめております。そしてまた投融資の規制、それからスポーツ・文化・教育交流制限、南ア産の金貨輸入自粛など厳しい措置をとってきたわけでございますけれども、九月十九日以後、後藤田官房長官談話で御承知のとおり次の制裁措置を決定したわけでございます。追加措置を決定したわけでございます。それの一つが銑鉄、鋼材の輸入禁止、二番目が南アの国民に対する観光査証発行の停止及び我が国国民の南ア観光自粛要請……
  87. 矢田部理

    ○矢田部理君 それは知っておりますから。
  88. 倉成正

    国務大臣倉成正君) それからもう一つは、航空機の相互乗り入れの停止の確認、国家公務員の南ア航空機国際線使用禁止と、先生御承知のことでございますが、全般として見ますと、日本がとった措置全体、それからアメリカ、西欧がとった措置ということを考えるとそれぞれ若干違う点がありますけれども、全般として私はバランスのとれた措置ではないだろうかということを考えておるわけでございまして、現下の深刻な南ア情勢にかんがみまして南ア政府に対しても、先般南アの外相が参りましたときにも強い警告を発しまして、とにかく根本的な改革ということについて諸外国と協調するように、また武力行使等は絶対に行ってはならないというような点についても我が国立場を伝えているところでございます。  私は総合的にいろいろ御意見があろうかと思いますけれども、追加措置を含めて南ア措置というものは全体として厳しいものと考えておる次第でございます。
  89. 矢田部理

    ○矢田部理君 アメリカの議会は、先般の制裁法でウランとか石炭の輸入を禁止しました。日本はこれを禁止していないんですね。ウランについては全体の一一ぐらいを南アフリカから買い付けている。それから石炭もあんな遠いところから、日本の石炭は国内事情、いろいろ問題があるわけでありますが、買い付けている。砂糖や羊毛まで向こうから買っている。砂糖はフィリピンから輸入したっていいじゃないかと、こう私なんかは思うわけであります。そういう点でこれらを含めて、少なくともやっぱり全面的な禁輸措置をとるべきだというふうに私は思いますが、いかがですか大臣
  90. 倉成正

    国務大臣倉成正君) いろいろ矢田部委員の御意見があろうかと思いますけれども、ヨーロッパ諸国等の措置、それからアメリカにつきましても融資について、日本の場合にはこれは全然とめておるわけですけれども、若干残っておる面もある、また観光振興についての若干の措置が残っておるという点もございますから、私はあらゆる観点から慎重に検討の上決定したものでございまして、日本立場からはこれ以上の措置は当面考えていないというのが実情でございます。
  91. 矢田部理

    ○矢田部理君 そこが少し弱腰なんですね。アメリカの制裁法が成立したときに、少なくともそれに日本とかヨーロッパあるいはイギリス等が同調するかどうかが一つの大きなポイントだと言われてきた。ところが、業界に自粛は要望したが禁輸措置はとらない、自動車部品などは大量に輸出をしている、去年のごときは従来にも増して金塊を大量にまた日本では輸入をしている。こういう緩い対応、これが実は南アの政策について外務省が極めて弱いと、そのことが開発途上国やアフリカの人々から日本国際的評価が大変悪いということにもなっているのでありまして、今の外務大臣の説明では私は納得しません。ひとつ緊急に、さらに検討を求めたいというふうに考えております。  そこで最後になりますが、もう一点どうもやっぱり気になる問題がありますので伺っておきたいと思いますが、朝鮮にかかわる問題でありまして、稲葉裕君という日本人の韓国留学生でござい ますが、八〇年から延世大学に留学していた人でありますが、八五年の九月に北のスパイだということで逮捕をされ、その後裁判にかけられて、最終的には実刑七年の判決を受けました。この内容は御承知だと思いますが、そこで私は起訴状を取り寄せて、全体的に検討をしてみますと、どうもやっぱり北のスパイだなどというのは少しく中身が違うというだけではなしに、起訴状の主要な内容にかかわる事実について、日本の大使館あるいは大使館員そのものがかかわっているということを指摘せざるを得ないんです。  例えば、稲葉君はもともとは延世大学に行って朝鮮の歴史を勉強しようということで行っておられたわけでありますから、そこでこの朝鮮の歴史を勉強をするためには南だけでなしに北の方、共和国の勉強もしたいということで、日本から共和国関係の歴史の本を送りました。これも世情韓国はいろいろ問題があるので、自分で持ち込むと何かとがめられちゃいかぬと思ったのでしょうか、起訴状にも出てまいりますが、大使館の藤井新君、大使館気付で書記官あてに送って、その藤井君からこの本を受け取っているんですね。そのことが実は国家保安法違反で起訴をされた。  さらにはもう一人の大使館員であります井野誠一という方でありますが、実はこの藤井君とか井野君というのは向こうで知り合った友達みたいなもので、いろいろ食事をしたりおしゃべりをしたりした間柄であったようでありますが、このもう一人の大使館員である井野誠一君から頼まれて延世大学のいろんな学生のまくビラなどをひとつあったら持ってきてほしいとか、あるいは内部の状況を知らせてほしいというようなことを頼まれて、学生運動でまくビラを集めて井野という大使館員に渡したり、それから学園内部の状況についていろいろ報告というか、連絡をしたりというようなことをしていた経緯があるようでありますが、そのことが北のスパイというようにすりかえられてどうも起訴をされたというふうに思えてならないんでありますが、この点外務省としてどんなふうに状況を把握しているでしょうか。  それからもう一つ、これだけ外務省の大使館員などが事実——私は本を送ったりなんかすることについて、それは悪意だったとは思わないのでありますが、かかわっていたのであります。少なくとも裁判になったり長期の勾留をされている場合には、その人の人権の立場から見ても救出にもっともっと努力をしてよかったのではないかというふうにも思っているのですが、その辺も含めてひとつ答弁をいただきたいと思います。
  92. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) ただいま委員御指摘の外務省の研修員が稲葉裕氏との間で留学生同士ということでおつき合いがありまして、書籍の受け渡しがあったということは私どもも承知をいたしております。その後も詳細の調査は行いましたけれども、稲葉裕氏の活動、問題になりました活動を手助けをしたということはないというふうに私どもは承知をいたしております。  それから第二番目の、外務省として稲葉裕氏の勾留と申しますか、裁判に関連しましてどのような活動をしたかということでございますけれども、当然のことながら在留邦人の保護という観点から、韓国側に対しまして大使館員との面会、それから親族、これは御本人のお母さんですけれども、面会の実現、それから弁護士の紹介等の措置をとりまして、もう委員も御承知かと思いますけれども、合計で八回にわたりましてこの裁判終了までの期間面会を行っていろいろ御援助をしたということでございます。
  93. 矢田部理

    ○矢田部理君 随分違っていますな。起訴状自身に、その稲葉君が、左翼的な朝鮮全史一巻から五巻、近代朝鮮歴史一冊など十七冊を今名前の出ました藤井新君あてに小包で郵送した。当時日本の大使館、韓国ソウルの大使館に藤井新君がいたわけでありますが、そこに送ったわけですよ。そして、その書物を藤井新君の下宿で同人から稲葉君が受け取り、もって反国家団体である北傀を利する目的で表現物を取得、所持したことが公訴事実の内容になっている。どうして関係ないんです、どうしてかかわっていないんですか。文章をよく読んでごらんなさい。
  94. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) 私どもが承知しておりますところでは、ただいま委員の御指摘になりました問題となりました書籍を搬入する手段と申しますか、仲介として用いました者は日本人の友人福田宏ということになっておりまして、これは仮名ということかと思いますけれども、この福田宏なる者の協力を受けて、問題となりました朝鮮全史及び近代朝鮮歴史等を持ち込んだというふうに承知をいたしております。  この福田宏という者が仮名であるということは私どもも承知をいたしておりますけれども、この福田宏なる者が、福田宏というこの仮名で出ております人が、藤井研修員、外務省の藤井研修員であるかどうかということについては、私どもとしては確認することができません。
  95. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 矢田部君、時間が参りました。
  96. 矢田部理

    ○矢田部理君 わかりました。  この一点だけ。藤井新という人は外務省の職員でしょうか。それから、起訴状自身は藤井新というふうに私は見ているんですが、そうでないと言うんですか。
  97. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) 第一点の、藤井新と申しますのは外務省の職員でございます。それから、私どもの承知しておりますところの起訴状では、外部に発表されたものでございますけれども、ここにおきましては福田宏という、私が今申し上げた仮名で発表されているというふうに承知いたしております。
  98. 矢田部理

    ○矢田部理君 時間がありませんので質問は終わりますが、問題を余りすりかえられては困るし、それから、日本人の人権が外務省の職員も絡んで起きた事実について侵害されたときの外務省の対応としては、いかにも私は逃げ回っているという印象を持たざるを得ないのでありまして、この点は別の機会にいたしますが、もう少し事実関係を調査して、次回に報告をいただきたいというふうに思いますので外務大臣、よろしゅうございますか。
  99. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 委員の御指摘の点十分調査いたします。
  100. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時再開することとし、休憩いたします。    午前十一時五十五分休憩      ─────・─────    午後一時一分開会
  101. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、千九百八十六年の国際小麦協定締結について承認を求めるの件を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  102. 黒柳明

    ○黒柳明君 まず、国際問題ちょっとお伺いさせていただきます。  先ほどもSDIの問題が出ましたけれども、渡辺さんはまた第二次で来月行かれるというような報道がありましたが、先ほど一応の概括をお聞かせいただきまして、ちょっと内容をお聞かせいただきたいんですけれども、十月の下旬に行きまして話し合いしたその結論、テーマは先ほど秘密保護法みたいなもの、あるいは研究利用を企業はどうできるか、こんなことだったけれども、その内容はどこら辺まで第一回に詰められたんですか。
  103. 渡辺允

    政府委員(渡辺允君) 十月二十八日から三十一日までワシントンでアメリカ協議をいたしましたことは先ほど申し上げたとおりでございます。九月九日の官房長官談話以降アメリカ内容について協議をいたしましたのは先回が初めてでございまして、一般的に申し上げれば、考えられる先ほど申し上げたようなテーマについてそれぞれ意見交換を始めたというような段階でございまして、まだ結論等を得るという段階には至っていないわけでございます。
  104. 黒柳明

    ○黒柳明君 企業の研究資料の利用方法とか、こ れはこれからの話し合いになると思うんですけれども、このSDIの問題が出てから相当時間がたちまして、いわゆる国内的な秘密保護法みたいなのが必要じゃないかというのが一部ありましたけれども、こういう問題についてはどうなんでしょうか。アメリカ側からそういうものは必要ないというようなニュアンスでも出てきているんでしょうか。
  105. 渡辺允

    政府委員(渡辺允君) アメリカとの協議対象となります問題の一つに、今先生御指摘の秘密保護の問題がございます。この問題をどういうふうに扱っていくかということにつきましては、九月九日の官房長官談話で我が方として、現行の我が国国内法及び日米間の取り決めの枠組みの中で対処するという方針をはっきり打ち出しておるわけでございます。その方針に従って協議をいたしております。
  106. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、アメリカ側も日本側の方針に沿ってそういうものはもう必要ないんだ、こういうふうにはっきり向こうも明言しているんですか。
  107. 渡辺允

    政府委員(渡辺允君) 協議は先ほど申し上げたように明確な結論が出たという段階ではございませんけれども、ただいま申し上げた我が国の基本的な考え方について米国側としても異存はないというふうに考えております。
  108. 黒柳明

    ○黒柳明君 現行法でできる、こういうふうに日本は明言している。アメリカの方もそれで異存はない、こうは一応言っているけれども、第一回の政府間の交渉の中ではそれほど明確にそうだよというものは結論的には出ていなかった、こういう理解でいいですか。
  109. 渡辺允

    政府委員(渡辺允君) まだ明確な結論が出たという段階ではございませんが、先ほど申し上げた我が方の考え方に乗ってこちらはやっておりますし、向こう側もそれに乗って話をしているという段階というふうにお考えいただいてよろしいと思います。
  110. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうするともうこの結論は第二回目あたりで、まずこちらも向こうも意見は一致しているわけですから、そういう秘密保護的なものはつくる必要はないということで完全に一致する、そういう方向に行くであろう、こういう見方でほぼ間違いないですか。
  111. 渡辺允

    政府委員(渡辺允君) アメリカとの協議中身はこの問題だけではございませんので、全体に話を進めていくということになると思います。結論を得られるものはなるべく早く得たいとは思っておりますけれども。
  112. 黒柳明

    ○黒柳明君 それから研究資料の利用法、これは一番企業で関心があるところだと思うんですけれども、これについてはどの辺まで話は第一回行われたんでしょうか。
  113. 渡辺允

    政府委員(渡辺允君) 先生今御指摘の問題は、研究成果のいわゆる利用の問題と言われているものであろうかと存じますが、この問題につきましてはやはり米国に種々の関連法令がございますし、それからまたそれを運用するに当たってのいろいろな方針等もございます。そういう意味で、この問題については特に我が方としても研究をし、検討をする事項が非常に多うございますので、そういう意味でまだ非常に取っかかりのところということかと存じます。
  114. 黒柳明

    ○黒柳明君 ドイツ以下四カ国ですか、SDIの民間レベルでの研究タイアップしているのは。それは何件ぐらいタイアップして研究の準備というのか、もう進んでいるわけですか。十何件とか言っていましたね、何件ぐらい進んでいるんですか。
  115. 渡辺允

    政府委員(渡辺允君) まず政府政府の話といたしますと、米国政府との間である種の取り決めを結んでおりますのが英国、西ドイツ、イタリー、それからイスラエルがございます。外国からの具体的な参加の契約ができました件数がこれまで十六件というふうに承知いたしております。
  116. 黒柳明

    ○黒柳明君 アメリカ国内では何件ぐらい民間企業との契約があるんですか。
  117. 渡辺允

    政府委員(渡辺允君) これは実は正確な数字は把握いたしておりませんが、たしか一千に近い数であったかと思います。
  118. 黒柳明

    ○黒柳明君 千五百件、私のところへ国防省から来ているのが千五百件。千五百件とおっしゃいましたね、そのとおりです。千五百件です。  そうすると今度は日本の企業が、いろいろまだ政府間の話し合いですから日本の企業はこれから出ていく、当然企業が独自で情報を入手していると思うんですけれども、これからの日本の企業がこのSDIの研究に参加していく段取りというのか順序というのはどういうふうな過程を経ていくわけでしょうか。これから第二回の話は政府間で始まるわけですね。そうすると、まずその見通しはいつごろになってまとまりますか。各国の例から見て、西ドイツなんかの例から見て、三月、四月ぐらいかかった。そうすると、日本もどうだろう、どのぐらいにまず政府間の話し合いの結論が出ますか、これからの期間は。
  119. 渡辺允

    政府委員(渡辺允君) 政府間の協議の結論をいつごろ出すかという御質問でございますが、一つには協議をまだ実は始めたばかりでございますし、それからこの種の協議の例から見ましてもこの段階でいつまでに結論を出すということをはっきり申し上げるという段階ではないと思います。これまで協議をし、何らかの取り決めを結んでおります各国の例を見ましても、国によってそれぞれ異なりますけれども、いずれも何カ月というような期間を要しておるようでございます。
  120. 黒柳明

    ○黒柳明君 今おっしゃった四つの国は大体どのぐらいかかっていますか。
  121. 渡辺允

    政府委員(渡辺允君) 一番はっきりしておりますのは西ドイツの場合でございますが、これは大体十二月に話し合いを始めまして四月に結論を得ております。それから、イギリスの場合は西ドイツよりも先行をいたしておりましたが、それより若干長い時間がかかっておったかと思います。
  122. 黒柳明

    ○黒柳明君 大体四、五カ月というふうに私も聞いておりますが、これは日本日本で、特別にいつまでやらなきゃならないというあれはないんですが、もう常識的なあれがあると思うんですが、十月から始まって今回来月十二月が二回目、そうすると、三月、四月、各国の例と比較してみれば大体春ごろまでには政府間の話はまとまるかな、こういうふうな感じはするんですが、それは感じは間違っていますか。
  123. 渡辺允

    政府委員(渡辺允君) 私どもとにもかくにも日米双方できる限り満足の得る結果を得たいということで協議を進めたいと思っておりますので、いつまでにということは必ずしも第一義的な考慮の対象にはいたしておりません。
  124. 黒柳明

    ○黒柳明君 大体です。私の感じ間違っていますか。だってそうでしょう、西ドイツでも四カ月ぐらい、大体四、五カ月ですよ。まあこれは各国状況は違いますからね。日本もそれに合わせる必要もないし、今おっしゃったようにそんなこと考慮していない、それはわかりますけれども、余り長引くというわけにもいかないんじゃないですか、そのために団長でいらっしゃっているんですから。審議官どまりというわけにいきません、これからどんどん偉くなっていくんですからね。ですから、ここでひとつやっぱり実績を上げなきゃならないわけでしょう。そうなると一応のこれはめどというか……  結構です。  それから今度は民間企業の参加ですけれども、公開入札というのはどういうことになるんですか。アメリカといろんな公開入札で日本の企業もタイアップして研究参加とかやっていますけれども、SDIの場合には特殊な方法がとられるんですか、企業が参加すときには。あるいは向こうの契約相手というのはやっぱりSDIOなんですか。あるいはSDIOのほかの下請のコントラクターとか、そういうことになるんでしょうか。
  125. 渡辺允

    政府委員(渡辺允君) 我が国の企業等が参加をすることになりました場合にどういう形をとるかということは個々のケースによって違うと思いますけれども、一般的に申し上げれば、一つは国防総省と直接契約をする場合がございますし、それ からもう一つには、国防総省と契約をしております米国なら米国の企業との間のチーミングと申しますか、契約で参加をするという形態もあり得るということでございます。ただ、これは理論的にそういうようなケースがあり得るということでございます。
  126. 黒柳明

    ○黒柳明君 大臣、三月でしたか、訪米しまして、SDIOの局長さんが一時間半ぐらいいろいろと説明してくれまして、私たちも余り洗脳されるとうまくないのでほどほどにして帰ってきたんですけれども、それからレターでいろいろ往復していまして、質問があったらどうぞ、こちらも答えられる限り答えますということであれして、非常にやっぱり関心ありまして、その中で今審議官がおっしゃった、民間の研究、その資料の使い方、これはまだこれからの話し合いだ、こういうことなんですが、大臣は六日の予算委員会でしたっけ、うちの近江にたしか答えられて、公表できないものもある、こうおっしゃったんですが、これは何かお考えでもあったんでしょうか、研究結果を公表できないものが。
  127. 倉成正

    国務大臣倉成正君) これは御承知のとおりこれから協議をいろいろアメリカ側とやっていくわけですけれども、もちろんその中で公表できるものはできるだけ御説明申し上げるというのが建前ですけれども、その契約の中身によっては秘密を要するものがあるいは出てくるかもしれない、そういうものについてはやはり公表できない場合があるということを申し上げたわけでございます。
  128. 黒柳明

    ○黒柳明君 ちょっと私は頭が悪いのでわからないんですけれども、秘密保護的なものは日本の現行法でできる、それからアメリカ側もそのとおりでよかろうと、こうおっしゃった。その中においては秘密的なものはないというように私受けとめているんです。  それから今度企業の契約、これは私企業、政府のことじゃないですね、企業とSDIOなりあるいはSDIOのコントラクターとの契約ですね、そういうものは公表できないものも……。これはそうすると、企業で契約したものは各国でも公開されていませんね。そういう意味大臣はおっしゃったんでしょうか。企業がこれから参加するわけでしょう。それとSDIOないしはそのSDIOの下のコントラクターと契約を結ぶ、これはケース・バイ・ケースであると。そうすると、大臣が公表できないものもあると言ったのは、それが、コントラクトの内容は公表できない、こうおっしゃったんですか。
  129. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 御承知のとおり、我が国アメリカ政府との間で協議を今している最中でございますけれども、何らかの文書をつくる場合もあろうし、あるいはどういう形になるか鋭意今審議官申すとおりの形でやっているわけです。その場合に、協議の結果文書が仮に作成されたという場合に、できるだけ公表できるものは公表するということでございますけれども、一般的に言って防衛とか安全保障上配慮を要すると考えることも想像されるわけでございまして、またSDIに関して西欧諸国と米国との文書の不公表のものがあることも委員承知のとおりでございますからそういうものがあるかもしれないと、そういう場合には公表は差し控えさしていただきたいと、そういう説明でございます。
  130. 黒柳明

    ○黒柳明君 何か私は頭が悪いのでちょっと……。  審議官、そうすると今大臣がおっしゃったのは、政府政府協議をやっていくわけですね、第二回目を。その中において公表できないものがあり得ると。もしかしたらですよ、それはわかりませんね、これからの話は。そういう意味のことをおっしゃったという解釈でいいわけですか。
  131. 渡辺允

    政府委員(渡辺允君) ただいまの黒柳先生の御質問の中に二つの問題があると存じますが、一つは、例えば英国と米国の間で取り交わされておりますような政府間の何らかの文書をつくった場合にそれがどういうことになるかという問題と、それから実際に我が国の企業等が参加をいたした場合にその契約が公表されるものになるのかどうかという二つの御質問であろうかと思います。  まず政府間の問題につきましては、現在まだ協議を始めたところでございますので、その結果として実際文書をつくるかどうか、それからつくるとした場合どういう文書をつくるのかということについて確たる見通しがあるわけではございませんけれども、何らかの文書をつくるというようなことになりました場合については、これは公表し得るものは公表することが望ましいという考え方で我が方は今アメリカとの協議に臨んでおるということでございます。ただ、その結果が今申し上げたような形で確たることが申し上げられませんので、場合によって一部技術的な問題等について公表できないものがあるかもしれないという非常に一般論を大臣はお答えになったということでございます。  それから、別途個々の企業が参加いたしました場合の契約が公表されるものになるかどうかというのは、それぞれの企業の立場等もございますのでこれはまた別個の問題でございます。
  132. 黒柳明

    ○黒柳明君 まあまた違う場でじっくりやらなきゃいけないと。  もう一つわからないのが研究と開発と、それから実験と配置。まあ配置は何となくわかるんですよ。ですけれども、研究と開発と実験というのはどこで区切りをつけるんですか。
  133. 渡辺允

    政府委員(渡辺允君) 実はその研究、開発、配備、それぞれの用語がどういう意味を持つのかということにつきましては、例えばABM条約との関係の場合、あるいは日本国内でその用語が使われております場合、あるいは米国政府がそれを使っております場合、いろいろな場合についていろいろ異なる考え方があり得るのだろうと思います。ただ、このSDI研究計画につきましては、米国としては将来戦略防衛システムの開発、配備という段階に至る、その決定をするために必要な技術的な知識を提供するための研究ということで限って全体の研究計画を進めていく、そういうことでございます。
  134. 黒柳明

    ○黒柳明君 今研究とおっしゃった中には、日本語で言う開発、実験相並行して当然やっていますね。十六件の外国企業、千五百件に上る国内企業とタイアップして、それでSDIの研究をおのおの各州でやっているわけです。実験場つくったり、既成のものを使っていろんな開発をしているわけですね。ですから、それは研究と日本語で言う、開発もやっているし、確かにSDIの配備というのは余りやっていませんね、これからですから、研究と一緒になって開発も実験もいろんなところでやっているんですね。それを含めて研究と今用語で言っているんですか。研究段階においてということは、研究という言葉は今非常に意味があるんですね。  この前も、総理が予算委員会でおっしゃったように、研究段階が終わった段階において、また、核の間接云々と、この次また外務大臣にお聞きするんですけれども、今度はややこしくありません、簡単なことですからお聞きしたいんですけれども、研究段階が終わったときに、またそれを検討するというんですよ。そうすると、研究段階が終わったというのはいつの段階なのか。核爆発の間接、直接、この次お聞きしたいんですけれども、研究というのはいつ終わるのか、段階。アメリカがどういうふうに出ているんでしょうか。
  135. 渡辺允

    政府委員(渡辺允君) ただいま先生がお使いになりました言葉の中に実験というのがございましたけれども、これはちょっと別にいたしまして、研究と開発の区切りと申しますのは、一つは現在既にSDI研究計画というものが米国政府によって策定をされておりまして、これは五つの大きな分野に分かれ、さらにその下に、具体的にこういうプロジェクトをやるという研究計画がございます。これは米国政府から米国議会に提出されております報告書の中などにも具体的に書かれておるわけでございます。でございますから、そこに言っております研究計画、その具体的な研究計画の集大成されたものがまさにSDI研究計画中身ということになるわけでございます。  それから言葉で申し上げると、研究を進めま して、その研究の成果をいわば実用化する要素が入ってくる段階が開発というふうなことになるのかと思いますけれども、言葉で申し上げるのは非常に難しゅうございまして、むしろ先ほど申し上げたように実際、現在計画が具体的に決められておって進められておる計画そのものの全体が研究ということにお考えいただいたらと思います。
  136. 黒柳明

    ○黒柳明君 それは初期の研究というのは何年ごろ終わる予定になっておりますか。
  137. 渡辺允

    政府委員(渡辺允君) これまでの米国政府の方針で申しますと、一九九〇年代の前半に、その時点での米国の大統領、それから米国議会がこのような戦略防衛システムの開発、配備の段階に移るかどうかを決める、そのときの材料を提供するためと申しておりますので、一九九〇年代前半までというのが現在の米国政府目標というふうになろうかと思います。
  138. 黒柳明

    ○黒柳明君 これは第一段階ですね。そうすると、第二段階はどういうふうに、第二段階。
  139. 渡辺允

    政府委員(渡辺允君) 第二段階とおっしゃるのはその開発以降の段階のことかと思いますが、その問題については、まさに一九九〇年代の前半にその段階に移行するかどうかを決めるということでございますので、現在はまだ全くそこは何も決まっておらないわけでございます。
  140. 黒柳明

    ○黒柳明君 いや、決まっている。第二、第三、第四と決まっているんじゃないですか。言葉も第二段階にはこういうふうな言葉と出ているじゃないですか。私に教えて、そちらは教えないということはないでしょう、向こうはまさか。私の方にそんな文書を流すなんて。第二段階の言葉は決まっておりますよ。第二段階はこういうシステム化をやる、第三段階が若干の移行段階で、第四段階はこういうことだ、四つに分けている。今の第一段階はそのとおりですね。第二段階も決まっていますよ、年度じゃなくて。どういうシステム化されたときにということで決まっておりますよ。用語ありますよ。それから、第三段階が第四に移る一つの過渡期的なものである、それで第四に、実際配備する。今、だから、審議官がおっしゃったのはそのとおりなんですよ。第二段階まで決まっていますけれども、またこれ後でゆっくりあれしますので。  それから、大臣、総理大臣が、これは四日の日でしたか、核のエネルギーは間接的なものであると。確かにFELというんですか、それからエックス線レーザー。核兵器に対する定義は昭和三十三年の四月ですか、政府の見解が、核の分裂、融合で起こった放射エネルギーによる殺傷力、破壊力、これが核兵器と。ですから今から二十八年前に定義された核兵器なんですね。そのときは当然もう直接ということしかなかったわけですね、間接なんか。ところが、今現実に要するにSDIにエックス線レーザーが使われるかどうかわかりません。FELの方が可能性強いだろうと。ただし、そのSDIの予算の中でエックス線レーザーが研究されていることも、審議官、これは間違いないですな。
  141. 渡辺允

    政府委員(渡辺允君) そのとおりでございます。
  142. 黒柳明

    ○黒柳明君 ということなんです。  だから、全く使われないということもないわけですね。使われる可能性を含めてエックス線レーザーの開発もしている。だけれども、専門家の意見によると自由電子レーザーの方が使われる可能性が強いんじゃなかろうか、こういうふうに言われている。これはわかりませんよ、私専門家でないから、素人なものですからね。ですけれども、現実に核エネルギーを間接的に爆発させるエックス線レーザーもSDIに使おうかなという研究はしていることは間違いない。これは使われるかどうかわからない、可能性は薄いと専門家は言っている。こういうことですね。ですから、二十八年前の核兵器の定義、これは二十八年たちますと、これから未知数です。大臣が盛んにおっしゃっているように、これはもうそのときになってどういう兵器が開発されるかわからないから、だから、間接的に使われるものはどうであるかというのは、それはそのときになってからだとたびたび発言されておりますが、そのとおりなんです。  であるならば、逆に言いますと、要するに二十八年前のその核兵器の定義というものは、やっぱり今間接的な核爆発によって新しい兵器が、兵器になるのかならないのか、使われるかどうかわかりませんけれども、ただし、明らかに予算をかけてそれを開発していることは間違いないわけです。新しい段階を迎えているわけですよ。そうすると、核兵器の定義も新しい定義というものが必要になってくるんじゃなかろうか。まずそういうふうに私は思うんですが、その点いかがでしょうか。
  143. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 委員御専門ですからよく御承知のことと思うんですけれども、エックス線レーザーについては原理的な研究が行われている段階と。それで、エックス線レーザーについてはまだ存在しない兵器でございますね。  それで、恐らく今核励起のエックス線レーザーについて念頭においての御発言ではないかと思うんですが、これが具体的にどういうものになるかということを予断することは困難でございますので、全く仮定の問題として、核励起のエックス線レーザー、エックス線レーザーを核励起によって起こすという場合、従来の核兵器の定義に該当する兵器になるようなことがあるかどうかということは、何というかこれから検討すべき問題ではないかと思っておる次第でございます。
  144. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうですね。だから、逆に言うと、総理が四日の日におっしゃったのは、直接の核エネルギーで、破壊力、殺傷力核兵器と言った、SDIは間接であると、こうおっしゃった。その間接であるということは、だから間接的ならば核兵器じゃないんだというふうなニュアンスにあのとき受け取ったわけですが、その点外務大臣どうでしょうか。
  145. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 総理がお話しになったのは、全く仮定の問題として仮に核励起のエックス線レーザー兵器が従来の核兵器の定義に該当するような兵器になることがあれば、累次御答弁しておるとおり、非核三原則を有し、またNPT加盟国である我が国は核兵器の製造技術をそもそも持っておりません。そのような従来の核兵器の定義に該当する兵器の製造に我が国は協力する余地もないと、もともとないと、そういう趣旨を述べられたものと思います。
  146. 黒柳明

    ○黒柳明君 それは参議院の野田先生に対するお答えで、私が言っているのは、四日の衆議院の予算委員会で言われた総理の答弁、これを言っているんですけれども、いわゆる直接核エネルギー、放射エネルギーで破壊力、殺傷力を持つものを核兵器と、だけれども、SDIの研究といったってこれは間接じゃないか——だから間接は核兵器じゃないという言葉はなかったけれども総理はそこまでおっしゃったんです、間接だからと。だけれども、それを間接だからということは、間接ならいいんだ、それは核兵器じゃないんだと、こうマスコミの皆さんも私たちも受け取ったわけですよ。  それで、今大臣がおっしゃったことは参議院の予算委員会の最後におっしゃったもの。これがもし核兵器みたいになったらそれはもう手を引くよと、こうおっしゃった。私が言っているのは四日の日のことです。それをよく教えておかなきゃだめよ、大臣には。四日と間違っているんだから。私は衆議院のことを言っているわけです。そして今大臣がおっしゃったのは参議院の方なんです。衆議院の四日の、総理の間接的という発言のことについて私今言っているわけですよ。だから、間接的なものならば核兵器じゃない、こう受け取ったニュアンスはこれは間違いですか。総理はそんなことを言っていないわけですか、そういう意図を。こういうふうに受け取っていいでしょうか。
  147. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 何回も申し上げるようでございますけれども、仮に核励起のエックス線レーザー兵器が従来の核兵器の定義に該当するような兵器になるようなことがあれば、そもそも核兵器たるかかる兵器の製造には我が国は協力する余 地はないという趣旨を述べたものであって、エックス線レーザー兵器そのものがいかなるものかについては予断を許すことが困難でございますから、仮定の問題についてコメントすることは差し控えさしていただきたいと思っておるわけでございます。
  148. 黒柳明

    ○黒柳明君 それはおっしゃるとおりです。そのとおりだと思いますね。仮定の問題で、まだこれからできるかできないかわかりませんし、しかも利用される可能性は、専門家はさっきから言うように少ないと、こう言われていますからね、仮定の問題です。  ただ、仮定の問題ですけれども、先ほど言った、検討の余地があると言った二十八年前の核兵器の定義については、こういうものが現実的に研究されている段階であるということになりますと、これは日本というのはやっぱり特殊な核に対する政治的な見解を持っている国ですから、これは特殊な姿勢を持ってきたのはもう当たり前ですけれども、そういうものについても、やっぱりそういう核の開発について世界の情勢が変わってくれば当然検討しなきゃならない時期も来るんじゃなかろうか、こういうふうに私は思うんですけれども、その点もう一回ひとつ確認のため。
  149. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 核兵器の定義の関係についてちょっと申し上げたいと思いますが、御指摘のように、昭和三十三年の政府答弁でそういう定義が出されておったということは事実でございますが、その考え方というのは昭和四十九年の十二月に楢崎委員からの御質問に対する答弁でも同じように繰り返されているわけでございます。それから、予算委員会での答弁でも申し上げたと思いますが、例えば核兵器不拡散条約における考え方の場合も、核兵器というのはやっぱり核爆弾的なものを念頭において考え方が基本的に成り立っておるということでございますので、従来核兵器ということを申しますときには、そういう原子核の核分裂あるいは核融合等の結果放出されるエネルギーで爆発を生じさせる兵器、破壊力、殺傷力として使用する兵器ということが通常の一般的な理解として存在しているということは事実であると思います。  他方、核励起のエックス線レーザー兵器については、先ほど来大臣がお答え申し上げておりますように、まだ現実に存在しておりませんし、原理的にはそういうことがあり得るということは考えられておりますけれども、それをどういう形でどういうふうに動かすのかというような具体的な仕組みであるとか、仮に兵器になるような場合にそれがどういう形で兵器として利用されるのかというようなことがはっきりしない段階において、今御指摘のような定義の問題との絡みでどうこうというのは、ちょっと私どもとしては差し控えることが適当ではないかというふうに考えているわけでございます。
  150. 黒柳明

    ○黒柳明君 ただ問題は、未知数の要素が多過ぎるんですけれども、直接的な破壊力、殺傷力から間接的なものも研究段階に入った、この現実だけはこれは否定できないと思うんですね。その現実を踏まえた上で、どういう過程を通るかわかりませんけれども、総理が先走ったのかどうかわかりませんけれども、間接的なものは核兵器じゃないのかあるのかという定義もやがてはやっぱり、やがてというよりSDIというのはもう九〇年代の初期にこれを開発、配置するかどうか決めるわけですから、今八六年ですから、そうするともう長くても十年ですね。そのときにはもう条約局長いらっしゃらない、どこかの理事長かなんかになっていらっしゃるでしょうけれども。もうそんなに遠い、二十八年前の話からまた三十年後ということでもないわけですよ。ですから、もうここで変えると私言っているんじゃないのです。もう意識構造の中に直接放射エネルギーによって破壊力、殺傷力を持ったものは核兵器だというものじゃないものもこれから出てくるなというのは、やっぱり意識の中に当然入ってこなきゃならない。しかも、それの研究開発に日本が参加する、しかもそれがあと長くても十年たつと実用化するかしないかという時期も迎える、こういう時期であることは客観的に否定はできない、こういうことじゃないでしょうか。
  151. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 私から御答弁申し上げるのは適当であるかどうかちょっとよくわかりませんが、従来から政府側が御答弁申し上げておりますように、エックス線レーザーの研究ということがアメリカのSDI研究計画の一部に存在していることは事実でございますけれども、これはアメリカ側の説明は、エックス線レーザー兵器をつくろうということで研究をしているということではなくて、ソ連がエックス線レーザー関係の研究をいろいろやっておるというようなことを背景にいたしまして、仮にSDI研究計画を進めていく上でエックス線レーザーの効用というようなものが、そういうSDI研究計画を米国が進めるに当たってどういう障害あるいはどういうふうな影響というものを及ぼし得るであろうかという点から、アメリカとしてそういうことについて技術的なことを知っておく必要がある、そういうことに主眼を置いてエックス線レーザーの研究をやっているんだと、こういうのがアメリカの説明であるわけです。したがって、そういう前提で考えますと、核励起のエックス線レーザー兵器というものが単に現実に存在していないだけではなくて、そういうものをつくるべく目指してアメリカが今一生懸命努力をしておる、こういうことではないというふうに私どもは理解をしているわけです。ですから、そういう前提に立ちますと、エックス線レーザーというものが仮に兵器に使われたときにそれが核兵器であるのかないのかというのは、どういう態様のどういうメカニズムを使ってどういうふうな兵器というものが具体的に出てくるのかということを具体的に見きわめませんと、それが従来から私どもが考えておりますような核兵器というものの一般的な概念の枠内におさまるものなのかおさまらないものなのかというようなことを言うことは、非常に困難であろうということを申し上げているわけでございます。  他方、黒柳委員御指摘になりますように、そういう問題が問題としてあり得るということを頭の中で考えておくべきではないかという点につきましては、私ども今後とも具体的にそういうものがどういうふうに発展していくのかということとあわせて、それはそれで考えていかなければならない問題というものが、将来出てくるかもしれないということを頭の隅に置いておくということは必要かと思います。
  152. 黒柳明

    ○黒柳明君 渡辺さん、このSDIのエックス線レーザーの開発の予算、それから研究はどこでやられていますか。
  153. 渡辺允

    政府委員(渡辺允君) SDI研究計画全体の中でエックス線レーザーと言われるものの研究を主管しておりますのは連邦エネルギー省でございます。
  154. 黒柳明

    ○黒柳明君 予算。どのぐらいの予算を使っているか。
  155. 渡辺允

    政府委員(渡辺允君) 申しわけございません言……
  156. 黒柳明

    ○黒柳明君 いいですよ、別にあれですから。もうゆっくりひとつお調べいただいて、すぐわかることですから。  それで条約局長、確かに議会の報告ではソ連の云々と書いてあるんです。物理的というような言葉も書いてあって、物理的というのはどういう意味なのか、物理的に研究しなきゃならないというのはどういう意味かなとちょっとわからない点もあるんです、また後で審議官に聞きたいと思うんですけれども。ただ、今条約局長おっしゃった、これはもう全く使わないんだと、こういうことですか。審議官、これから第二回目のあれへ行くんですけれどもね。今、エネルギー省で予算を使って研究している。これはSDIには絶対このエックス線エネルギーは使わないんですと、こういう前提でやられていますか。だから審議官もおっしゃった、私も言ったように、未知数でわかりません、だけれども、使われる可能性もあるということを前提で言ってきたんですけれども、今条約局長は絶対使われないんだと、こうおっしゃったけ れども、そういう前提で研究開発していますか、アメリカは。
  157. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 私の発言との関連でのお尋ねでございますのでちょっとはっきりさせておきたいと思いますが、私はエックス線レーザー兵器というものを絶対にアメリカが使わないとか使うとかということを申し上げたつもりもございませんし、また私はそこまで申し上げるほど事実を知っているわけではございません。ただ、私が申し上げておりますのは、米側の説明は、エックス線レーザーについてアメリカが現在行っている研究というのは、SDI研究の中の極めて限られた一部にすぎないということと、それは仮にソ連が現在研究中と言われているエックス線レーザー兵器を保有する場合に、それがSDIにどういう影響、脅威を与えるかを見きわめるという観点から行われているものだという説明をアメリカが行っているということを申し上げたわけでございます。
  158. 黒柳明

    ○黒柳明君 まあ了承しましょうね。そうしておきましょう。ここは外務委員会ですから、非常に紳士的な委員会ですから。そのとおり、おっしゃったとおり、そうしておいた方がいいですわな。また幾らでも場所はありますからね。結構です。  ですから、研究開発、また予算もそんな多くじゃないですね、全体の予算から見れば。そうして決してこれは使われないんだ、使わないんだ、ただ、ソ連がやるからそれに対して研究だなんということじゃない。  そこで大臣、もう時間が、ほかのところを聞きたいんで、今条約局長が頭の隅にと、こうおっしゃったんですが、頭の隅といってもいろいろ隅っこのあれがありまして、ということは、国会でもその間接的ということについて非常に問題になっているわけですよ。ですから、決してその新しくできる可能性がある兵器体系、全く未知数だ、できてみなきゃわからない、必ずしもそういうことだけで済まされていい問題じゃない。特に我が国は先ほど言ったように核に対する特殊な政治感覚、国民感情を持っているわけで。それから、核に対して三十三年の四月の十五日、それを踏まえて四十九年の政府見解を持っているわけですから、そうなりますと、だからそういうことがあるから総理も要するに直接的に核兵器になったら手を引くよと、こういう発言もしているわけですね。これこそ私は全く将来将来で、何だか漠としたわからない答弁だ、こう思うんです。外務大臣の方が実利的というか非常に現実的な答弁をされています。その点はやっぱりさすが外務大臣だなと思って、総理大臣はちょっととんちんかんだなと思っているんですけれども、総理の前へ行くとまた逆のことを言う可能性ありますけれどもね。そんなことでひとつ現実的に、何回も言うようにアメリカは間接的な核爆発で、レーザー光線の研究、それがもうSDIに使われるかどうか未知数だけれども、使う方途として研究しているわけです。となった場合に、特殊な政治感覚、特殊な国民感情を持ち、政府見解をきちっと出している日本はそれを頭の隅っこに置いておけばいいと。どういうものができるかできないかという問題とは違うんですよ、いいですか。どこかで、地球の片隅でちょこっとでも核の問題が起きたら素早く対応しなきゃならない国だと思うんですよ。どうでしょうか外務大臣。そういうことを踏まえると、私は未来できるかできないかわからない、だから、こんなものはできてみなきゃわからないんだなんていうこと、それはそのとおりです、できてみなきゃわかりません。ただし、政府見解というものはそんなものを予想しないでつくったんですから、三十年前に。そうなると、今SDIに使われるかどうかわからない、できてみなきゃわからない。そんななまぬるいことを考えていて我が国はいいんですか。もっとシビアに対応しなきゃ——じゃどう対応するのかは、私外務大臣じゃありませんからこう対応するなんてこと言えませんけれども、対応しなきゃいけないんじゃないでしょうか。かといって、私は何もSDIにけちつけたり民間企業の参加にけちつけたり渡辺さんの談にけちつけたりするわけじゃありません。やっぱり正式な認識というか、認識がなきゃ評価ができません。だから私たち一生懸命教えを請いながら、渡辺さんに教わったり直接アメリカから教わったりしてまず認識を深めているわけなんです。それでそれに対して私なりの評価をしつつあるんですが、違った評価をする場合もありますけれどもね、そういうふうに現時点では思うんですよ。ちょっと抽象的でややこしくなりましたですかな、どうでしょう外務大臣
  159. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 今黒柳先生お話しのように、エックス線レーザー兵器というのが原理的には考えられるし、またいろいろな文献というほどのものじゃないかもしれませんが、いろいろなものがあることも私も承知しております。ただ、御承知のとおり、総理の答弁というのは先ほども繰り返しましたように、仮に核兵器、核励起のエックス線レーザー、エックス線レーザーのエネルギー源として核以外のものもあり得るということも御承知のとおりでございますが、核励起のエックス線レーザー兵器が従来の核兵器の定義に該当するような兵器になるようなことがあれば、そもそも核兵器たる兵器の製造には我が国は協力する余地はないということを、従来のいろいろな核兵器の定義に照らしてお話しになったと心得ておるわけでございまして、先生がいろいろ御懸念になっておりますように、核兵器の定義、認識をめぐって日米政府間に認識の相違がないように、これからやはり十分検討していかなきゃいけないと思っておる次第でございます。
  160. 黒柳明

    ○黒柳明君 済みません、また予算の場かなんかで、私たちもまだ認識が甘いし、ゆっくりお話をお聞きできないんで、もっともっと勉強してまた違う場でやろうと思うんですけれども。  直接的な核破壊力、殺傷力、そういう段階から間接的な時代にもう入ったという認識は外務大臣もそれはございますですか、入りつつある、これから将来そういうことが起こってくると。
  161. 倉成正

    国務大臣倉成正君) これはもう全く仮定の問題でございますし、また簡単にお答えし得るような問題じゃないと思いますので、またいろいろ御意見があればひとつお話しいただきたいと思います。
  162. 黒柳明

    ○黒柳明君 いやいや、私はもう聞く方ですから、聞き役ですから。簡単じゃないと思います。ただ、私はちょっとまた勉強して御質問さしていただきたいと思いますけれども、ちょっとやっぱりそういう認識じゃないんじゃないかなというような感じがしますのでまた改めて場を変えて。  それで、ちょっと大きな問題になって恐縮です。午前中も別の問題ですけれども話がありまして、新聞でゴルバチョフ訪日についてはいろんなあれが出ましてね、来るだ、来ないだ、いろんな話が出ました。外務大臣の感じとしては一月訪日はもう絶対ない、こう断定的な認識をお持ちですか。
  163. 倉成正

    国務大臣倉成正君) ボールは依然としてソ連側にあるわけでございまして、私といたしましてはソ連側に対して我が国立場を主張しつつ先方のお答えを待っているという立場でございますから、そしてまた、御来日される時期を決めたらひとつこれを意義あるものにしたい、歴史的なものにしたいということを先方に申し上げておりますから、まあ一定の準備期間が要ることは事実でございます。したがってそう短期間で準備ができないわけでございます。ただし、一月末までということを八月の段階で私の方から申し上げておりますので、この一月末というのは一つの目安としてこれにこだわるものではございません。しかし、絶対にもうそうだというようなことは私の方から云々すべき立場ではないわけでございまして、これはやはり静かにボールの返ってくるのをお待ちしている。現にいろいろな、梁井審議官等が高級事務レベル会議でモスクワに参りましても、倉成外務大臣によろしくということと、それからなおかつ、ゴルバチョフ書記長来日希望を有する、そういうお話シェワルナゼ外相からも承っておるわけでございますから、私の方から断定的 にこれは一月中はだめだとかいうようなことを申し上げる筋道ではなかろうと思っておる次第でございます。
  164. 黒柳明

    ○黒柳明君 倉成外務大臣よろしく、中曽根さんよろしくというのは結構だと思うんですけれども、外務省首脳とかなんか、マスコミの活字になりまして、それで一月中は不可能だとかなんとかよく最近も出ていますので、何か確かに準備段階がありますから、十一月も終わって十二月になりますからもう不可能であるかな、こういうふうに思いつつも大臣のお考えをと、こう思うんですけれども、非常に慎重で、まだ一月に来る可能性は消えていないぞと、こういうニュアンスで感じているわけですが、ただ局面の違いというのは、もう言うまでもなくレイキャビクのあの米ソ会談が不調和に終わったと、あのあたりから急速に何かそのあおりを日本も受けたと言うとまた大臣におしかりを受けるのか、何かそんなところから急に方向転換したか、その前あたりは非常にソロビヨフ大使も一生懸命になって、もう時期は決まっているんだ、来たいと言っているんだというようなことから方向が変わったような感じがするんですけれども、そこらあたりも当然アメリカとも接触してニュアンスをつかんでいると思うんですけれども、どうなんでしょうか、このレイキャビクあたりからの大幅な方向転換、それから今度はもう一つは、中曽根さんとは話しないなんて一部の話も伝わって、もう死に体の総理と話してもしようがないと、こんなあれもうわさ的に伝わってきてもおりますけれども、そこらあたり、よって来る原因は何だったんでしょうか、急速に方向が変わっちゃったのは。
  165. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 私とシェワルナゼ外相との会談におきましては、書記長はぜひ日本に来たいと、そして現在もまたしばしば外交ルートを通じての段階において書記長の来日希望を伝えてきております。ただ、私との会談のときには、米ソ関係もこれあり、日程を詰めるに至らないという話でございました。それから後レイキャビクあるいはウィーンの会議等ございましたから、これもまた来日に影響がなしとはいたしませんけれども、それからある程度の準備期間が要るということも先生御指摘のとおり、私からも申し上げたとおりでございます。したがって、一月末にはこだわらない。まあとにかく先方の御都合をいずれにしても早くお知らせいただくことが実りのある会談のゆえんのものであるというのが我が方の立場でございます。静かにボールを待っておると。したがって、世上いろいろ言われておりますけれども、少なくとも私は、国内においては日本の駐日大使、また相手に対しましてはシェワルナゼ外相をカウンターパートとしてあれいたしておりますから、その方から正式にいろいろなことを言ってきておりません。したがって、静かにお待ちをしているということでございます。
  166. 黒柳明

    ○黒柳明君 ソ連日本関係のある意味での首脳が、これはもう新聞紙上ですからあれですけれども、決して安保が障害になっているわけじゃない、かつてみたいにと。あの日米の合同演習とかあるいは三沢のF16の配置とか、そういうものを、現実的に反ソ的な行動を起こしてそれでゴルバチョフ訪日なんということはおかしいなんということもつい最近出ておりましたけれども、そこらあたり、ゴルバチョフ訪日自体が姿勢が変わったのかな、体制が変わったと同時に対日姿勢も変わったのかなと、こう言われてきましたが、最近はそういうような発言も出てきましたけれども、そこらあたりはどういうふうにお感じになりますか。
  167. 倉成正

    国務大臣倉成正君) いろいろな情報、いろいろなことが言われておりますけれども、外務大臣といたしましては、やはり外交ルートを通じて正式に交渉しているわけでございますから、やはり外交ルートを通じて先方から御返事がない限りそれを静かにお待ちをするというのが外務省のとるべき立場ではなかろうかと思っておるわけでございます。しかし、注意深くいろいろな情報は収集いたしておる次第でございます。
  168. 黒柳明

    ○黒柳明君 総理の一月の訪米はなくなったと総理自体おっしゃったけれども、外務大臣の訪欧はどうなんでしょうか。
  169. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 私自身の日程は十二月にヨーロッパ、ECの閣僚会議がございますから、これだけはひとつぜひ参りたいということで日程を進めさしていただいておりますけれども、それ以外はまだ決めておりません。
  170. 黒柳明

    ○黒柳明君 時間がありませんので……。  朝鮮半島の金日成のうわさ、何か最近外務省関係はこういう線に固まったなんというようなことをこの間も活字で読みましたけれども、韓国の謀略説、北鮮の謀略説、北鮮内部の混乱説なんて三つに分けられる、そのうち外務省はこういう方に固まったとかなんとか、あれについて大臣は、その三つについてじゃなくて、そういう意見も活字になって専門家から出ておりますけれども、あの背景というものは外務省はどの程度おつかみになってどういうふうな判断をされていますか。
  171. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 今先生お話しのようにもろもろの説が飛び交っておりまして、そのいずれが正しいかということについては最終的な判断をまだいたすに至っていない、しかしあらゆる手段を尽くして情報の収集をいたしておるというのが現段階でございます。
  172. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、今言った北の謀略説、南の謀略説、北の混乱説か、いずれもまだ今の時点においてはくみしないということですか。
  173. 倉成正

    国務大臣倉成正君) おっしゃるとおりでございます。
  174. 黒柳明

    ○黒柳明君 フィリピンの問題もまだ捜査中ですね。だけれども、こういう問題は余り遅くなると外務省情報が何かこう価値がなくなっちゃうですよ。なるたけ早いうちに、間違った情報じゃうまくないけれども、韓国だってあんな間違った情報をばあっと出しちゃうわけですから、あそこまでやるとちょっと国際信用を失墜しますけれども、余り慎重に、やっているかやっていないかわからないというような情報活動というのも何かどうかなというような感じもなきにしもあらずですけれども、どうですかね、大臣、なるたけ可及的速やかに、外務省の知り得た情報ではこういうことでこういう感じだったぐらいは早く出した方がいいんじゃないでしょうか。
  175. 倉成正

    国務大臣倉成正君) これは他国に関する、しかも外交上の重要な問題でございますから軽々に、おしかりを受けるかもしれませんけれども判断をこの国会の場で申し上げるところまではいっていないということを正直に申し上げておる次第でございます。
  176. 黒柳明

    ○黒柳明君 最後に国連の問題、加盟して三十周年ですか、それで賢人会議日本が国連行革、あれがいつなんですか、もうそろそろタイムリミットが来て、何か先進国も開発国もいろいろな意味で反対があるというのは聞いているのですが、どういう状態か大臣答えてください。
  177. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 私からやります。  国連の重要性というのについてはもう万人認めているわけですけれども、御案内のとおり非常に組織が肥大化したり効率化を失っているということで、賢人会議で結論を出してかなり思い切った改革案を出しているわけでございます。しかし、この中でもいろいろ議論がございますけれども、本会議で今審議中でございますが、一番問題の中心というのは、やっぱり予算決定の手続、これについてまあコンセンサス方式の導入について難航している、右方式の導入についてはアフリカ諸国等が実質的な拒否権の導入である、コンセンサスと言うけれども先進国の拒否権だということで反対している、ここが一番ネックになっていると、そういうふうに報告を受けております。
  178. 黒柳明

    ○黒柳明君 そんなところは、もう一番の友好国ですから事前の根回しなんかうまくできなかったんですか。
  179. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 私も国連に出席いたしました間、デクエヤル事務総長と二回ほど会談し、また関係の国々、またシュルツ国務長官等とやはりいろいろな問題について、とにかく国連は大切 だからひとつ大切にしていきましょうということで御懇談をしましたし、また各国ともお話しをしておりますし、また現地の菊地大使も本省の意を受けて一生懸命やっておるわけでございますが、何分国連というところは百五十数カ国の方たちが集まっていろいろな議論をしておるところでございますからなかなかこれをまとめていくということは困難な状況である、しかし最善を尽くしてコンセンサスを得るように日本は橋渡しをしたい、そういう考えでございます。
  180. 黒柳明

    ○黒柳明君 あれですか。アメリカやなんかは予算のことで、アフリカ諸国、開発国から今度は人員の削減の問題が出ているんですか、クレームが。
  181. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 予算の決定方式について。
  182. 黒柳明

    ○黒柳明君 それから開発国からは人員の削減の問題か何か……。
  183. 中平立

    政府委員(中平立君) 一番の焦点は、今大臣が御説明したとおりでございますが、実はもうちょっと御説明しますと、賢人会議の報告というのは七十一項目にわたっているわけでございますけれども、その中で一番対立しているものが今申し上げた点でございます。それ以外に、例えば国連の職員を一五%三年間で削るとか、そういうもろもろの勧告がございます。そちらにつきましては、一応十八人の賢人が大体意見が一致して勧告したという事実がございます。  ところが、今の予算決定手続につきましては、アフリカを中心とする開発途上国と西側とが全く対立して一致して勧告できなかった部分でございまして、その難しい部分をまず総会で審議しようではないかということで現在審議しているわけでございまして、残りの部分の、職員を削減するとか旅費を節約するとか、そういう部分につきましてはこの難しい問題を解決した後で討議しよう、こういう段取りで現在やっておるわけでございまして、まだその点については、アフリカが具体的にどういう対応をしてくるかということは判明しておりません。
  184. 黒柳明

    ○黒柳明君 タイムリミットがもう近づいているんでしょう。
  185. 中平立

    政府委員(中平立君) おっしゃるとおりあと三週間ぐらいしかございませんが、実は、国連総会自体も経費節約の観点から、例年十二月の半ばごろまで続くのを二、三週間短縮してはどうか、こういう意見もあったわけでございますが、実は最近は、賢人会議の報告の審議のために、短くしようと思っているものがやっぱり短くできないというようなことが言われているようでございます。いずれにいたしましても、ぎりぎりになれば何らかの妥協案が見出せるのではないか、こういうふうに考えておるわけでございますけれども、この問題は、委員御存じのように、国連は一国一票主義ということで、いかなる小さな国でも大国の横暴を許さないというふうに非常に重大な決意をしておるわけでございまして、先ほど大臣が御説明したように、コンセンサス方式の導入ということになりますと、やはり大国による拒否権ということを認めることに通ずるのではないかという危惧の念がアフリカ諸国には強くありまして、そういうことから非常に強く反対しているわけでございます。  そこで、その辺のところは何とかお互いに受諾できるようなうまい方法はないかということで、現在非常に知恵を絞っている段階でございます。
  186. 黒柳明

    ○黒柳明君 我が国が提唱した行革ですし、あと三週間で、これはメンツにかかわるということじゃないでしょうけれども、実際にこれが通過しないと、せっかく提唱した、言い出しっぺの我が国の主張が通らないということになると、国連における我が国立場というか、先般の非常任理事国で思わぬ票しか集まらなかったあんなことから見ると、何となく外で見ていても何だか心配だなというような感じがするわけですけれども、今局長がおっしゃったように、時期になれば何とか妥協案もと、こうなってくればいいかなと思いますけれども、その可能性は強いんですね、大丈夫なんですね。
  187. 中平立

    政府委員(中平立君) 一〇〇%自信を持ってこうなるんだということは申し上げられる立場にはございませんけれども、やはり究極的には、この十八人の賢人による勧告というものは、賢人会議をつくるのは日本がイニシアチブをとりましたけれども、その十八人が知恵を絞ったものというものを現在討議しているわけでありまして、したがいまして、日本とか心ある国はできるだけそれをそのままの形で通していこう、こういうことを考えておるわけであります。しかし他方、やはり必ずしも大局的に考えない国もないことはないというのが遺憾ながら現実でございまして、その辺のところを今後どういうふうに根回ししてまとめていくかというのが我々の今後の重大な課題ではないか、こう考えております。
  188. 黒柳明

    ○黒柳明君 私ども、各党と同じように、非常に国連の活動、活躍というのは興味を持っているし、行動も起こしていますし、いろんな面において野党なりにバックアップをしてきたわけなんで非常に関心があるわけなんですけれども、やっぱり何としてでもこれは、必ずしも楽観は許せないということなんで、大臣あとリミットが三週間ですから、これは初ということはありませんけれども、イニシアをとってやってきた日本の事業ですから、これはやっぱり日本の相当の権威をかけて、何とか各国を説得して妥協案をつくる、こういうふうにしなきゃならないかと思うんですけれども、いかがですか。
  189. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 今、委員お話しのとおり、国連の改革はやらなきゃいけない。やはりこれだけ機構が肥大化したり効率化が失われている。しかし、非常に国連は難民救助とかあるいはその他、UNCTADその他随分立派な仕事をたくさんやっておられるわけです。したがって、国連の使命は果たさなきゃいけないけれども、安全保障その他の問題については、米ソの二大国の対立というようなこともこれあり、いろいろな形で十分な機能を果たしていないという面もあることも事実でございます。したがって、私は国連についてはやはり日本が賢人会議の提唱者の一人として、この賢人会議の結論を何とかひとつ国連で解決をいたしまして、そしてその上で、国連の本来の使命に向かってみんなで協力していこうということを訴えたわけでございますが、なお引き続いて、日本におきましてもまた現地の菊地大使に訓令を出しまして、最善の努力をするようにいたしておるところでございます。
  190. 立木洋

    ○立木洋君 最初に、国際小麦協定内容についてお尋ねをしたいと思います。  これまでも何回か問題になってきているんですが、一九七一年の国際小麦協定ですね、これまでもいろいろな議論が繰り返されながらも、経済条項がどうしても挿入されないということで毎回問題になっているんですが、この間を振り返ってみて、主要な困難が一体どこにあるのか、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  191. 赤尾信敏

    説明員赤尾信敏君) お答えいたします。  経済条項の問題につきましては、特にその是非をめぐりまして、一九七八年から七九年に開催されました国連小麦会議において非常に熱心に検討されました。その後も、国際小麦理事会の場などを通じて検討されましたけれども、結局まとまりませんでした。  その一番大きな理由としましては、特に主要輸出国を中心にしまして、食糧安定供給、これは輸出国、輸入国もお互いに同じような認識を持っているわけなんですけれども、輸出国としましては、安定供給というのはどちらかといえば自由貿易体制の維持によって達成されるべきであるというのが第一にあります。  同じように備蓄につきましても、輸出国も輸入国も各国が独自に適切な在庫を保有すべきであるという考えがありまして、そういう点をめぐって妥協が成立しなかったという背景があります。  実はこの問題は、今御審議いただいております八六年の小麦貿易規約の作成に当たっても作業部会を設置して検討が行われたわけですけれども、 特に輸出国を中心にした主要国の立場は、基本的には七八年当時と変わっていないということで、経済条項につきましては結論に至りませんでした。特に、それに加えて、八〇年以降世界における小麦の需給事情も緩和してきたということもありまして、若干今熱意が薄れてきているという背景があります。したがって、今のところはそういう状況にないということです。
  192. 立木洋

    ○立木洋君 一九八〇年の末でしたか、パロット事務局長が出した提案国際小麦理事会でほぼ合意に達するという状況があったわけですね。パロット事務局長自身もここに一九八〇年末には代替案が技術的に実現可能であると合意していたと、彼自身の報告書の中にも書いてあるんですがね。これがどうして最終的な合意に至らなかったのか、そこはどうでしょう。
  193. 赤尾信敏

    説明員赤尾信敏君) やはり、七八年、七九年の国連の小麦会議が失敗に終わった後事務局長も一生懸命まとめられないかと思って仲介努力をやったわけなんですけれども、基本的には輸出国立場は変わらなかったということがあるわけです。
  194. 立木洋

    ○立木洋君 輸出国立場は変わらなかったと言いますけれども、最大の輸出国アメリカなんですが、七八年、七九年の交渉開始までは新協定締結に対して常に積極的なリーダーシップをとっていた。しかし、一九八〇年になってからですか、八一年ですか、世界の食糧会議アメリカ各国備蓄政策の確立によって食糧安定保障の確立をやるべきであるという方向を提起してから、こういう合意が御破算になるという、そういう経過があったんじゃないですか。それはどういうねらいからでしょうか。
  195. 赤尾信敏

    説明員赤尾信敏君) アメリカは、もともと既に七四年の世界食糧会議のときのキッシンジャー国務長官が、第一次石油ショックの直後に行われた世界食糧会議で六千万トンの備蓄を設けるべきだというようなことを提案いたしまして、六千万トンというのは非常に規模が大き過ぎるというのでその後三千万トンの備蓄制度をやるかどうかということで非常に議論があったわけなんですけれども、その備蓄制度を設ける場合に、備蓄の数量、規模がどうかと。これは三千万トンがいいのか、あるいは多過ぎるか、あるいは三千万トンなら三千万トンで備蓄制度を設ける場合に、その費用をだれが負担するか、あるいは先進国だけが主として負担するか、あるいは途上国にもある程度の負担をしてもらうか。途上国の方はできるだけ先進国から援助をもらってやるというのが途上国の立場でございますが、そういうこともあって、結局交渉は不調に終わったということなんです。実は、基本的には備蓄制度はいいというような意見がありましても、じゃ具体的にだれが負担するか、どういう規模でやるか、あるいはアメリカにとりましては特に輸出国、輸入国双方の在庫の公平な負担ということを言っておりまして、そういうような点などをめぐってやはり対策がとれなかったという事情があるそうです。
  196. 立木洋

    ○立木洋君 この調査室からもらったものの内容によりますと、ここではパロット案が結局は輸出・輸入国間の合意が得られなかった。これ以降経済条項を盛り込んだ新協定作成は当分望み得ないという考え方がなされるようになってきていると。さっきのお話では需給が緩和している状況の中で、そういう状況、機運がまた新たに出始めてきているというお話ですけれども、その見通し等はどういうふうになるでしょうか。
  197. 赤尾信敏

    説明員赤尾信敏君) 七八年、九年、それと今のこの新しい八六年の協定をつくる過程でいろいろと議論はされてきておりますけれども、一番関心があるのは、七八年、九年の国連小麦会議あるいはその直後に関心が高まったわけなんですけれども、先ほど申しましたように、八〇年代に入りまして需給が非常に緩和してきた、小麦生産がふえてきたこともあって今需給が緩和しているというのが一つあります。  それと、アメリカは基本的には、これは政権によって政策が変わるわけなんですが、先ほど申しましたように、キッシンジャー国務長官の時代はやはり備蓄制度の充実による安定供給の確保というようなことを非常に重視していたわけなんですけれども、最近やはり自由貿易体制の維持を通じての安定供給という面が非常に強く出てきております。ですから、最近におきましては非常に熱意が薄れてきているということで、それほど真剣な検討は行われていないというのが実情のようでございます。
  198. 立木洋

    ○立木洋君 これまでも再々商品協定として、いわゆるこういう価格にしても、あるいは供給にしても、経済状況を明確に規定していない、こういう協定というのは欠陥があるんじゃないかと、事実上これが本当に安定供給や価格の安定維持に役立つというふうにはやっぱりなり得ない。そのときそのときの思惑によって左右されるというふうな欠陥があるのではないかということが再々指摘されてきたわけですけれども、政府としては商品協定が本質的にないこういう協定についてどういうふうな認識を持っておられるんですかね。
  199. 赤尾信敏

    説明員赤尾信敏君) 国際商品協定につきましては、小麦協定以外にも、例えばすずですとか砂糖とかココアとか天然ゴムとかいろんな商品協定があるわけなんです。特に最近はこういう価格の安定的な維持を目的にした商品協定が非常に困難に直面しております。その一番典型的な例は一年前に破産しました国際すず協定があるわけなんです。  今、実は天然ゴムをめぐりまして生産国と消費国と非常に折衝が過去数カ月にわたって続いてきておりますが、やはり一番重要な課題が価格の安定をどうするかということで、いわゆる経済条項というのは非常に難しい側面をいろいろと含んでおります。  しかし、経済条項がない国際商品協定がもうだめだというわけではありませんで、実はこの国際小麦協定あるいは小麦貿易規約の場合も、小麦その他の穀物生産貿易、価格、それと運賃等の状況、あるいは需給関係見通し、それから各国穀物政策の変更等につきまして絶えず新しい情報を交換するということで、生産国も消費国もお互いにそういう最新の情報が入手できるというメリットがございます。そういう新しい情報に基づいて各国が合理的に行動を行う、それが商品市況を安定させる上で非常に有益であるという認識が一致して持たれておりまして、その意味で経済条項がなくてもこの協定のメリットはあるというふうに私たちは判断しております。
  200. 立木洋

    ○立木洋君 大臣ね、今、食糧問題というのは非常に重視されなければならないし、これからの未来を考えた場合に食糧の人類に対する完全に供給できるような事態の保証ということは非常に重要なわけですよね。ですから、食糧問題というのは、いろいろな国が言われている、例えば一つの戦略的な物資として戦略手段に扱うというふうなことはやっぱり許されてはならない。これは全人類のためにきちっと食糧供給されるような、価格の安定も保ってやらなければならないということは、私はこれは道理だろうと思うんですよ。いろいろ一九七一年当時を見てみますと、あのときにはいわゆる過剰で最低価格がなかなか決まらないだとか、それから七七年、八年ですか、あのときの緊張した状態ではなかなか協定つくってもどうなるかというふうなことがあって繰り返されてきているわけですね。  だから私は、食糧問題というのは、例えば一国の戦略的な物資等々で扱われるんではなくて、やはり全人類的な視野に立ってこの問題きちっと安定した供給価格の保証ができるような状態をつくり上げるために私は努力すべきだと思うんですよ。だから、そういう意味で私は政府に特にその対策を要求したいんですけれども、この点についての今後の見通し政府としてのあり方等について大臣のお考えを出していただきたいんですが。
  201. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 基本的な考え方を申し上げると、私は、今先生お話しのように、食糧というのは一番人間の生活にとって大事なものであるということでございますが、御案内のとおり、過 剰な生産のところと非常に飢えに悩んでいるところがあるというわけでございます。しかし、その流れをどうやってうまくつけていくかということになると、ここにやはり経済問題あるいは援助の問題というのが絡んでくるということも事実でございます。  それから、もう一つ食糧問題で非常に難しいのはやっぱり天候に非常に支配されるということでございますね、凶作であるか豊作であるかという。  それからまた、途上国の問題は人口問題と食糧ということで、ある国においてはやはりいろいろ人口調整政策をとっている国もあるわけでございます。その中で、また今度は食糧を仮に送っても、末端までこれが届くかどうかということになると、インフラが完備しているかどうかという問題もあろうかと思います。したがって、いろいろなそういう総合的な見地でこの問題は考えなきゃいけないと思いますが、やはり長期の将来を考えてまいりますと、技術移転をして現地で食糧自分たちでつくれるような形を、できるだけ充実していくということが一つのやはり柱じゃなかろうかと思います。バイオ技術を活用して砂漠で米をつくるというような夢も全然不可能ではないでしょう、将来は。ですから、いろいろなそういう長期的な目標を立てつつ、当面の問題についてどういうふうに対応していくかということを現実的に、具体的に考えていくべきだと思うわけでございますが、基本的には先生のお考えに賛成でございます。
  202. 立木洋

    ○立木洋君 これ以上申し上げませんけれども、私としては最大の輸出国であるアメリカですね、それで事実上商品協定としてのいわゆる価格、供給この経済条項がつくられていないということは、やはり戦略物資としてそれを利用するということと私は結びついているんじゃないかと。だから、そういう意味では私は世界の食糧供給あるいは価格の安定を図るという経済条項をきちっと決めて、こういうものは戦略物資として使われるべきではないという態度をはっきりさせる必要があるということを強調しておきたいと思うんです。  次に、アイヌの問題についてお伺いしますが、これは新聞で見たんですが、外務省は国連への人権状況の報告を延期しているということですが、これは事実でしょうか。
  203. 中平立

    政府委員(中平立君) 事実でございます。  実はこの十月の末が提出期限であったわけでございますが、これは日本側がサボって出さなかったとかそういう特別な理由があったわけでございませんで、現在諸外国から報告書が人権委員会に提出されておるわけですけれども、それが非常にたまっていまして、あと一年ぐらいはとにかくそれを審議するのにまだかかる、だから今出してもらってもまた上乗せされる、こういうような状況であると、こういう連絡が国連事務局からございまして、そういうことであるならば、やはり最新の情報を報告書に盛って出す方がより有意義ではないか、こういう判断をいたしまして、その提出する時期につきましては国連事務局と協議しながら決定していきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  204. 立木洋

    ○立木洋君 この提出の時期について問い合わせたのは外務省の側から問い合わせたわけでしょう。国連の方からおくらせてもよろしいと言ってきたんじゃないんでしょう。
  205. 中平立

    政府委員(中平立君) 日本側から状況を聞いたわけであります。
  206. 立木洋

    ○立木洋君 それでその報告は大体いつごろ提出される予定ですか。
  207. 中平立

    政府委員(中平立君) これは国連の事務局側からの非公式の連絡によりますと、現在の滞貨が一掃するのは早くとも来年の秋までだと、こういう話でございますので、やはり余り早く出しても仕方がないということは先ほど申し上げましたとおりでございますので、来年の前半ぐらいまでには国連事務局と協議しながらでございますけれども、出す方向考えていきたい、こう考えておるわけでございます。
  208. 立木洋

    ○立木洋君 これは、アイヌの少数民族の問題ということが国会で議論されていることと関係があるんじゃないですか、延期されたということは。
  209. 中平立

    政府委員(中平立君) それは全く関係はございません。
  210. 立木洋

    ○立木洋君 六年前に外務省が人権状況の報告を出したときに、いわゆる少数民族は存在しないという報告書を出しましたが、これの根拠はどういうところにあったんでしょうか。
  211. 中平立

    政府委員(中平立君) 委員御指摘のとおり六年前、昭和五十五年に国連に提出したわけでございますが、政府といたしましては同視約二十七条全体の趣旨に照らしまして、同条約に規定されておりまする権利を否定された少数民族は我が国にはいない、こういう趣旨の報告を出したことは事実でございます。この報告は外務省が独自で調査したわけではございませんで、関係省庁と慎重な協議をした結果、これに基づきまして報告したものでございます。
  212. 立木洋

    ○立木洋君 どこどこの省庁と協議しましたか。
  213. 中平立

    政府委員(中平立君) これは北海道ウタリ対策関係省庁でございます。
  214. 立木洋

    ○立木洋君 そことだけですか。
  215. 中平立

    政府委員(中平立君) はい、そうでございます。
  216. 立木洋

    ○立木洋君 いつそれは協議して、協議の記録等ありますか。
  217. 中平立

    政府委員(中平立君) 報告書提出の直前の記録はございませんが、この規約を批准するに当たりまして関係省庁と協議いたしまして、そのときの協議を踏まえまして提出したわけでございます。
  218. 立木洋

    ○立木洋君 北海道開発庁の方来られていますか。  どういう調査をなさったんでしょうか。どういう調査に基づいて協議をされたんでしょうか、調査された項目がありましたら調査項目を挙げていただきたいんですが。
  219. 大道英彰

    説明員(大道英彰君) 先生お尋ねのアイヌに関する調査の件でございますが、私どもウタリと申しておりますが、ウタリにつきましては北海道庁が四十九年度以来ウタリの福祉対策を進めておりますが、その前提といたしまして四十七年度から北海道がウタリの実態調査というような形で実施いたしておりますが、その概況につきましてはウタリの人口、就業構造あるいは……
  220. 立木洋

    ○立木洋君 ちょっと済みません、もう少し大きい声で。
  221. 大道英彰

    説明員(大道英彰君) ウタリの生活実態調査という形で四十七年以降計画を策定するための基礎調査ということでこれまで四十七年、五十四年、それから六十一年、三回にわたって調査をいたしておりますが、その概況につきましては、例えばウタリの人口の状況がどうとか、それから就業状況がどうとか、教育・生活状況、住宅の状況がどうとか、農林漁業の構造上の問題がどうとか、そういうようなウタリの福祉対策を検討するための必要な基礎資料について調査をいたしているというようなことでございまして、国としては特別の調査はいたしておりませんが、この道庁で調査をした内容について聴取をして承知しているということでございます。
  222. 立木洋

    ○立木洋君 局長、民族性の有無についての調査というのは今のはないじゃないですか。生活実態調査じゃないですか。どうして少数民族でないという根拠がありますか。
  223. 中平立

    政府委員(中平立君) 実態につきましては今御説明があったとおりでございますが、そのときに、昭和五十五年でございますね、報告書におきましてB規約第二十七条に言う少数民族というものがございます。これは「種族的、宗教的又は言語的少数民族」と、こういう書き方になっておるわけでございますが、この種族、宗教または言語を異にして、また歴史的、社会的、文化的観点から他と明確に区別し得る集団を言うものというふうに解釈したわけでございまして、この解釈に基づきましてこのような少数民族は我が国には存在しないというふうに判断したわけでございます。
  224. 立木洋

    ○立木洋君 だけれども実態の調査というのは、 いわゆるアイヌの文化がどういう形で存在しているのか、言語がどういうふうになっているのか、それが日常的にどういう使用のされ方をしているのか、宗教がどうなっているのか、こういう調査はありますか。何もないんじゃないですか。
  225. 中平立

    政府委員(中平立君) 外務省としては直接そういう調査はしておりません。
  226. 立木洋

    ○立木洋君 そういう調査がなかったら、ただ単なる生活実態の調査だけで民族性の有無の結論を出すというのは極めて遺憾な措置じゃないですかね。もしかそれで調べてわからなかったらその時点でいわゆる民族性の有無をきちっと調べる、そしてそれが普遍的に存在するのかどうかということも検討する、やっぱり重要な場合には重要な調査を経て私はやるべきだと思うんですよ。どうでしょう。
  227. 中平立

    政府委員(中平立君) 五十五年に報告を出しましたときは、今御説明いたしましたように、歴史的、社会的、文化的観点、これは二十七条には出ていない表現でございますけれども、そういう観点から他と明確に区別し得る少数集団というものである、こういう解釈をとったわけでございますが、これは人権規約を作成するに当たりまして「種族的、宗教的又は言語的少数民族が存在する国において」という意味の解釈に関連いたしまして、その国の領域内において明確に区別される長期にわたって確立された別個または独自の集団のみを対象とするということで合意されたという点を踏まえて、そういう解釈をしたというふうな記録がございます。
  228. 立木洋

    ○立木洋君 いや、私はそういうふうに判断したという根拠がないじゃないかと言っているんですよ。だから、調べたのならば、アイヌの文化がどうなっているのか、宗教的にはどうなっているのか、言語の使用状況はどうなっているのか、民族を形成するかどうかという問題ですね、この問題についてよく調査された上でそしてなるほどこれはそういうことではないというふうに判断されたのか。  そもそも、特に人権委員会の下部機関である差別防止・少数者保護小委員会の特別報告官の報告がありますね。その中にはちゃんと、  先住民族が存在する国内において、これらの民族は一般的に明確に、特別な措置の恩恵を受けるべき独自の集団を構成するものとして認識される。これは、なかんずくラテンアメリカアメリカ合衆国、カナダ及びガイアナにおけるインディアン、フィンランド、ノルウェイ及びスウェーデンのラップ、オーストラリア、マレーシア、ニュージーランドのアボリジニー、そして日本のアイヌの場合である。例えば合衆国政府は法的にインディアンを、彼等との協定署名により、また連邦法における彼らの法的地位の確定により分離した集団として、認識している。 わざわざ五十二年の場合出ているわけですね。総務庁の少数民族としての懸念があるという形か何か知りませんけれども、これは報告書として報告官が出されているわけですから、特にやはり外務省の場合にはそういう国連に報告する場合に、前回出されている報告官の内容と違うものを提起したわけですから、そういう場合にはより厳密な調査をやった上で私はやるべきだと。調査がなされていないで国際的に後どういうふうに訂正されるのか、これはいろいろまた国会でも議論されるし、外務省もきちっとやっぱり調査をどこかの機関でやってもらって、その根拠に基づいて私は報告がなされるべきだと思うんですよ。  大臣、どういうふうにこの議論お聞きでしょうか。
  229. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 今政府委員からお答えした点は、御承知のとおり国際人権規約のB規約で国連にこれは五十五年に出したわけですが、この中には基本的な人権に関するいろいろな項目がございまして、その中の一つに二十七条の問題があるわけでございまして、そしてその二十七条の中で、いわゆるもろもろの権利が否定されない「自己の文化を享有し、自己の宗教を信仰しかつ実践し又は自己の言語を使用する権利を否定されない。」という条項が二十七条にございます。これに該当するものがないということで、B規約の四十条に基づいて、報告の義務に基づいて報告をしたわけでございます。この規約についての報告は私は間違っていない、そういう感じがするわけですけれども、しかし御指摘のようにもっと深く掘り下げていろいろな問題について検討するのが妥当ではないかという御意見は私もよくわかります。したがって、第二回の報告をする際においていろいろな関係省庁が寄って、この第二回の報告をするに当たっては十分いろいろな問題を勉強するということで今協議中だと聞いておるわけでございます。
  230. 立木洋

    ○立木洋君 大臣は、間違っていないと感じるというふうにおっしゃいましたけれども、だけど私は、やっぱり根拠がないと思うんですよ。ここに述べられているB規約二十七条では「種族的、宗教的又は言語的少数民族が存在する国において、」少数民族は「自己の文化を享有し、自己の宗教を信仰しかつ実践し又は自己の言語を使用する権利を否定されない。」こう言っているわけですね。だから、この少数民族が宗教はどういう状態になっているのか、文化がどうなっているのか、あるいは言語がどのように日常的に使われているのか、こういうことをやっぱり実態をきちっと調べた上で出された報告ならば、私はそれは根拠のある報告だということになるけれども、これは旧土人保護法というのは所管は厚生省ですね、厚生省の保護課がやっている。これで何か実態調査があるのかというと厚生省でも自分のところではよくわからない。だから北海道開発庁の方に聞いてみたら、私たちは開発の方で、そんな少数民族関係ありませんよと。外務省は、外務省自分で調査したんではありませんからほかのところで調査したのを根拠にしてやったんですというような、こういうことでは、一体どこの省庁が責任を持つんだ。実態が全然調査されないで、そして外務省は外国に報告するだけだと。単純な話を聞いて生活実態調査だけで、もうほとんど融和してしまっているから問題ないだろうというぐらいの形で単純にやるやり方は、私はやっぱり正しくないと思うんですよ。だから、そういう意味でも今度きちっと調査をして、私は報告をし直すならし直す、その時点でもしか少数民族というふうに明確に規定できる根拠があるならば、そういうふうにしてちゃんと報告し直すべきだと思うんですよ。この見解について私は別の見解を持っていますけれども、きちっとした見解を持っていますけれども、私はきょう、政府姿勢を正してほしいという点だけに限って質問したわけですが、大臣、そういうふうなことが実態が明確になれば、勇気を持ってやっぱり訂正した報告をなし得る、なすこともあり得るということも確認してよろしいでしょうね。
  231. 中平立

    政府委員(中平立君) 大臣がお答えされる前に一点、今の委員の御発言に関連してちょっと発言したいと思いますが、今御指摘のように、少数民族がいる国においては、少数民族は「自己の文化を享有し、自己の宗教を信仰しかつ実践し又は自己の言語を使用する権利を否定されない。」ということでございまして、私たちが提出しました報告の趣旨も、そういう権利は否定されておらないというところにポイントがあるわけでございまして、確かに先生御指摘のように、本当に微に入り細に入った調査をしたかどうかということについては私ども直接やっておりませんので確言はできませんが、関係省庁との協議の過程におきましてそういう権利というものは否定されておらないということでございますので、私どもはそれに従って報告を過去においてはしたということでございます。
  232. 立木洋

    ○立木洋君 じゃあ、ちょっと大臣お待ちください。  局長ね、あなたがそう言い出すと私は別の議論に発展させなければならなくなるんですよ。私はきちっと調査をして報告をしなさいということを要求している。差別がある、ないということの問 題については、いわゆる旧土人保護法は死文でなかったというふうな証拠だってあるわけですね。あれだって、あなた、無知蒙昧のやからなんというような大変なことが書かれているわけでしょう、あの趣旨説明の中で、帝国議会での。そして、アイヌの人々が差別を感じているというのが北海道の調査でもちゃんと出ているんですよ、新聞でも既に報道されている。  だから、そういう問題はちゃんと言う前にきちっと調査をして、これこれ調査した根拠はこうでございます、だからこれは少数民族ではありません、差別がありませんと言って明確に出されるならば、それは私たちも納得しますよ。だけれども、調査がないと、私は調査をしていないと言っているのについてあなたは認めたわけですから、生活実態調査しかやっていない、民族性の有無については調査をしていないんだから。だから調査をしなさいと言ったら、わかりました、そこで調査をしてみますというふうにお答えになれば、それ以上議論は発展しないんです。差別云々なんて言い出すと、私はまた別の議論をしなければならない。  だからそういうことではなくて、いわゆる一に戻ってもう一遍きちっと調査をするというふうにして、明確な報告を、いわゆる国際舞台でも恥ずかしい思いをしなくても済むような、外交的にもきちっとしたやっぱり対応をとるべきだと思うんですよ。だから、この差別の問題云々については、今局長が余分なことを述べられたから私は一言口をはさんだわけですが、どうですか、調査を十分にして報告をしていただく、その場合には前回のこういう内容は変えることもあり得るかもしれないと。これは中曽根首相の答弁も、もうそれは初めのころからだんだん変わりましたね、少しずつニュアンスが変わっていく。やっぱり根拠がないというのは一番弱いんですよ。きちっと調査をしてやれば、どこの前に出ても恥ずかしくない、堂々と根拠を示すことができるんです。それを調査がされてないから、省庁にあちこち聞いたってみんな省庁たらい回しですよ。どこで調査したんですかと言うと、どこも知らぬ。そして、外務省はちょこちょこっと打ち合わせしたか、ちょこちょこかたくさん打ち合わせしたかわかりませんけれども、そしてこういう重要な問題でそういうふうな十分な調査を持たないで結論を出してしまうということになるといけないので、そういう点は改めるべきだということを重ねて要求しておきたいと思うんですが、大臣、最後に答弁いただきたいんですが。
  233. 倉成正

    国務大臣倉成正君) 前回の報告はそれなりの理由があったと思いますけれども、委員の御指摘の点もよくわかります。北海道の旧土人保護法というような適切でない名前の法律があるというようなことですね、そういうことも踏まえまして、さらに検討してまいりたいと思います。     ─────────────
  234. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 委員の異動について御報告いたします。  本日、大鷹淑子君、後藤正夫君及び藤井孝男君が委員を辞任され、その補欠として大塚清次郎君、下稲葉耕吉君及び添田増太郎君が選任されました。     ─────────────
  235. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 他に御発言もないようですから、本件に対する質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  千九百八十六年の国際小麦協定締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  236. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  237. 宮澤弘

    委員長宮澤弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時四十四分散会