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1986-10-08 第107回国会 参議院 外交・総合安全保障に関する調査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十月八日(水曜日)    午前十時十分開会     ─────────────   委員氏名     会 長         加藤 武徳君     理 事         中西 一郎君     理 事         堀江 正夫君     理 事         志苫  裕君     理 事         和田 教美君     理 事         上田耕一郎君     理 事         関  嘉彦君                 石井 一二君                 植木 光教君                 大木  浩君                 坂元 親男君                 下稲葉耕吉君                 杉元 恒雄君                 鈴木 貞敏君                 永野 茂門君                 鳩山威一郎君                 林 健太郎君                 林田悠紀夫君                 真鍋 賢二君                 松浦 孝治君                 山内 一郎君                 赤桐  操君                 大木 正吾君                 村沢  牧君                 山口 哲夫君                 黒柳  明君                 中西 珠子君                 吉岡 吉典君                 田  英夫君                 青島 幸男君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         加藤 武徳君     理 事                 杉元 恒雄君                 中西 一郎君                 堀江 正夫君                 志苫  裕君                 和田 教美君                 上田耕一郎君                 関  嘉彦君     委 員                 石井 一二君                 植木 光教君                 大木  浩君                 坂元 親男君                 下稲葉耕吉君                 鈴木 貞敏君                 永野 茂門君                 鳩山威一郎君                 林 健太郎君                 林田悠紀夫君                 真鍋 賢二君                 松浦 孝治君                 山内 一郎君                 赤桐  操君                 大木 正吾君                 村沢  牧君                 山口 哲夫君                 黒柳  明君                 中西 珠子君                 吉岡 吉典君                 田  英夫君                 青島 幸男君    政府委員        防衛庁参事官   瀬木 博基君        外務大臣官房審        議官       斉藤 邦彦君        外務省経済局次        長        池田 廸彦君        外務省情報調査        局長       新井 弘一君        大蔵省国際金融        局次長      畠中 杉夫君        通商産業省通商        政策局次長    吉田 文毅君    事務局側        第一特別調査室        長        荻本 雄三君    説明員        経済企画庁調整        局審議官     宮本 邦男君        経済企画庁調整        局審議官     菅野  剛君        外務省アジア局        審議官      福田  博君        外務省アジア局        外務参事官    柳井 俊二君        外務省北米局安        全保障課長    岡本 行夫君        外務省経済協力        局外務参事官   川上 隆朗君        外務省国際連合        局外務参事官   村田 光平君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○外交総合安全保障に関する調査  (国際情勢認識に関する件)     ─────────────
  2. 加藤武徳

    会長加藤武徳君) ただいまから外交総合安全保障に関する調査会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る七月二十四日、海江田鶴造君が委員を辞任され、その補欠として堀内俊夫君が選任されました。  また、九月十日、堀内俊夫君が委員を辞任され、その補欠として永野茂門君が選任されました。     ─────────────
  3. 加藤武徳

    会長加藤武徳君) 次に、理事選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、会長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 加藤武徳

    会長加藤武徳君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事杉元恒雄君を指名いたします。     ─────────────
  5. 加藤武徳

    会長加藤武徳君) 皆様承知のとおり、本調査会は、先国会に本院独自の新しい機関として、国政の基本的事項のうち、外交総合安全保障に関し長期的かつ統合的な調査を行うため設置され、次の通常選挙までの三年間存続するものとなっております。  この三年間の調査テーマといたしましては、理事懇談会で協議いたしておりますが、この協議の内容につきましては、後刻プリントいたしまして配付いたす予定でございますけれども、「一、国際情勢認識、二、外交、三、軍縮、四、わが国防衛体制現状問題点、五、国際経済、六、国際社会、」の六項目について調査を進めていくこととなっております。  なお、三カ年の間に国際情勢が大きく変化した場合、テーマについて検討することもあり得ましょうが、原則的にはこのテーマで行う、かようなことに理事懇談会で決定いたしております。  本日は、このうちまず、国際情勢認識について、今後の本調査会審議に資するため、政治軍事経済の三分野にわたり、我が国外交の実施の衝に当たっている外務省を初め、各省庁担当者から午前中説明をいただき、午後は各委員からの質疑を行う予定になっておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。  それでは、外交総合安全保省に関する調査のうち国際情勢認識に関する件を議題とし、順次各省庁からの説明を聴取いたします。  まず、国際政治軍事情勢について外務省及び防衛庁から説明を聴取いたします。  次に、国際経済情勢について、引き続いて外務省大蔵省、通産省及び経済企画庁から説明を願うことにいたしております。  それではまず、外務省新井情報調査局長
  6. 新井弘一

    政府委員新井弘一君) 外務省情報調査局新井でございます。本日はお求めに応じまして国際情勢について御説明いたします。  説明の骨子をお手元にお配りしてございますが、説明の便宜上、2の「軍備管理軍縮及びSDI」、これは1の「米、中、ソの外交政策」の中で言及をさせていただきたいと思います。  まず最初に米ソ会談から入りたいと思います。  御承知のとおり今月の十一日及び十二日、アイスランドのレイキャビク米ソ首脳会合が開催されます。これはソ連提案し、米側がこれを受けて立った、そういうことでございます。この会談の性格はゴルバチョフ訪米準備の一環として行われるというものでございます。  その背景について考えますと、これは御承知のとおり、昨年レーガン大統領ゴルバチョフ書記長ジュネーブ会談いたしました。その際、一九八六年においてはゴルバチョフ訪米して米ソの二回目の首脳会談を行うという合意が達成されました。その後いろいろ米ソ間でこの開催の期日等をめぐって接触が行われていたわけでございますが、この四月にはレバノン襲撃事件レバノン事件等が起こりまして、いろいろその間準備のための外相会談が開催されなかったというようなことで、紆余曲折はございましたけれども、八月からは九月国連総会の場で米ソ外相会談を行うということで一応の合意ができまして、それ以来、八月及び九月、米ソの間で六つの作業部会というものを持ちまして、いろいろ軍備管理軍縮交渉等を続けていたわけでございます。  ところが、これまた御承知のとおり、八月の末になりまして例のダニロフ逮捕事件が発生いたしまして、非常にアメリカ態度が硬化した。しかし、九月の十九日から開かれました米ソ外相会談におきましていろいろ交渉した結果、ダニロフ逮捕事件解決をいたしまして、それと同時にこの十月十日及び十一日米ソ首脳会合を開くということで合意が達成されたということでございます。  そこで、ソ連のねらいというのはどういうことかと考えますと、従来ともゴルバチョフ書記長は自分が訪米して首脳会談を行う、そのためには一ないし二の具体的な成果が必要であるということを申しておりました。こういう観点から見ますと、米ソ間でいろいろ交渉が持たれていて、なおかつ若干の進展はあったけれども、しかし大きな進展はまだ達成されていない。そういうことから、レーガン大統領と直接さしで会って、一連の諸問題について前進、問題の打開を図る、そういう意図であったろうと思います。  これに対しましてアメリカ側の思惑というものを考えてみますと、そもそもレーガン対ソ政策というのはあくまでも強いアメリカ再建する、そして抑止力を向上させ、その抑止力の力をもってソ連軍備管理軍縮交渉の場に引っ張り出す、これが基本戦略であったわけでございます。  その結果といたしまして、昨年の十一月にはジュネーブ米ソ首脳会談が開かれた。そしてさらに本年ゴルバチョフ訪米するというその約束が、段取りが合意されたということは、このレーガン大統領対ソ政策のねらいというものがともかく成功しつつあるということを示すものだと思います。  さらに、ソ連という国はすぐれてトップダウンの国である、いろいろな問題を交渉解決する、そのためにはトップに働きかけなければならないという認識がございます。したがいまして、ゴルバチョフ提案を受けて立って異存はないということでこの合意が成立したというふうに理解しております。  そこで、このお二人が会って何を話すかということでございます。恐らく多岐の問題について話し合いが行われるであろう。軍備管理交渉あるいは地域間の問題、これは当然のことながらアフガンを含みます、あるいは二国間の問題。その中でなかんずく軍縮軍備管理交渉中心議題になるであろう。  この軍縮軍備管理交渉につきましてはいろいろ問題がございますけれども一つ戦略核SDIの取り扱いの問題でございます。ソ連最大のねらいというのはSDIの阻止でございます。そこでソ連主張というのは、そのABM条約を遵守する、守ると、これをレーガンに確約させる、そしてそのSDIの開発をできるだけおくらかせる、その見返りにソ連としてはアメリカが求める一定戦略核削減に応ずる、これが基本的な態度であろうというふうに思います。いずれにしろSDI戦略核兵器削減というものをリンクさせるというのがソ連基本的な考え方でございます。  それから、二番目はINF交渉でございます。  ソ連は、一九七七年以来SS20の配備を始めまして、現在四百四十一基に達している。そのうち三分の一以上がアジア地域に配備されております。西側主張は、アジアとそれから欧州部分、この間でリスクの均衡化が配慮されなければならないということから、同時かつ比例的な削減主張しております。これに対してソ連は、ヨーロッパ部においては削減に同意する用意がある、ただしアジア部門については凍結であるというのが現在までのソ連の対応でございます。  それから、三番目は核実験停止協定の問題でございます。  ソ連は、昨年の夏以来モラトリアムを引きまして、これは来年の一月一日まで核実験を停止しております。これに対してアメリカは、安全保障上の考慮、要するにソ連の強力な通常兵力に対抗して核の抑止力というものを改善する必要がある、そういうことから簡単には応じられない。さらに、かつて一九五九年から六一年の間米ソモラトリアムを持った時期がございますが、ソ連が一方的にこれを破棄いたしまして、その二カ月の間に四十回核実験を行ったという苦い経験、これもアメリカとしては忘れられないということで、この点についても主張が対立している。  そういうことで、この米ソの間で過般来かなり交渉の結果、立場が接近しつつあるということは事実だと思います。しかしよく検討いたしますと、まだまだ越えなければならないハードルが多いということでございます。その結果として、先ほど申し上げましたように、首脳同士が集まってこの問題について話し合う、そして何とか打開糸口を見つけ出すというのが今回のレイキャビク首脳会合最大目的だろうというふうに思います。そしてこの結果としてゴルバチョフの年内の訪米が実現するかどうかということ、これがこの会談の結果にかかっているということでございます。  さて、そのゴルバチョフ外交政策でございますけれども、このゴルバチョフ最大課題というのは何といってもソ連国内体制の立て直しでございます。と同時に、そのためにソ連にとって安定的な国際環境を求めるということがその外交課題になっております。なかんずく、アフガン 侵入以来非常に悪化しました米ソ関係を何とか再構築したいというのが本音だろうというふうに思います。この一年半のゴルバチョフ外交政策を見てみますと、一つ特徴はスタイルに変化があるということかと思います。アプローチもなかなかソフトになっております。同時に、世界的な規模で多角的な外交を展開している。日本もその重要な目標になっております。  私どもの関心というのは、このソ連のいわばニュールック、これが単なるPRなのか、あるいは実体的な内容を含むものか、国際関係改善のためにソ連として一定のコストを払う用意があるのか、これでございます。この意味で、このレイキャビク米ソ首脳会合というのはゴルバチョフ外交の本質を占うという意味でも重要なテストケースになるというふうに考えております。  さて、中国がこの首脳会合をどう見ているかということでございますが、中国はこれに基本的に歓迎の意を表しております。しかし同時に、こういうこともつけ加えております。この会合があるいは一時的な米ソ間の緊張緩和を生むかもしれない、しかし、一時的な緊張緩和であっても緊張の継続よりはましであろうということも言っております。  この中国でございますけれども、これは皆様承知のとおり、経済再建、これが最大課題である、この点はゴルバチョフと一緒でございます。そのために過般来非常に積極的な近代化政策というものを推進している。本年は特に第七次五カ年計画の第一年目であるということで大変重要な年でございます。  それで、その外交至上命令というのはそのための環境づくりにあるということから、日本を含む西側諸国あるいは第三世界に対し非常に活発かつ現実的な外交政策を展開している。米ソに対しては基本的には等距離外交、さらに個々の問題につきましては是々非々外交をとっているというふうに見受けられます。米中関係につきましてもかなりハイレベルの対話、交流というものが継続しておりまして、全般的に順調に推移している。貿易量も逐次増大いたしまして、昨年は約七十億ドル。ちなみにこの数字は中ソ貿易の約三倍以上でございます。  それから、先般は米国艦船中国寄港ということにつきましても解決したという報道がございます。そして昨日からはワインバーガー国防長官北京に着いております。  そこで、次は中ソ関係に入りたいと思います。  中ソ関係につきましては、これは御承知のとおり、ゴルバチョフが七月二十八日、ウラジオストクでかなり注目を浴びた演説を行っております。このウラジオ演説一つの大きなねらいというのは、ソ連アジア太平洋政策を極めて包括的な形で表明したわけでございますけれども、その中で特に注目されたのは中国に対する呼びかけでございます。  中ソ関係というのは二十年以上にわたって非常に冷たい関係が最近まで継続していた。その後一九八二年、ブレジネフが対中改善を呼びかけた。それ以来双方の間で対話というものが始まったわけでございます。ただ、中国は、この中ソ関係改善するためには三つ条件がある、一つソ連が中ソ国境及びモンゴリアから兵隊を引き揚げることである、第二番目はアフガニスタンからの撤退、第三番目はベトナム軍のカンボジアからの撤退、要するにベトナムを支援しないことだ、こういう条件を出していたわけでございます。これに対して、ソ連は初めてこの三つのうちの二つにかなり実質的な意味を含むジェスチャーをこのウラジオ演説で行ったわけでございます。  すなわち、アフガンからは六個連隊を近く撤去する、それから、モンゴルからはかなりの兵隊をこれまた削減すべく現在モンゴル政府話し合いを持っているということを言っております。ただ、ベトナムにつきましては、ソ連は、これは中国ベトナムが話し合ってくれと、そういうことにとどまっております。これに対して中国は、この発言を重視し、歓迎する、ただ、ソ連ジェスチャーは小幅に過ぎる、幅が小さいというコメントを発表しております。事実、中国にとっても国内建設を最優先課題とするという意味で、北の国境が静かであるということは望むところだろうと思います。そういう意味におきましても、この中ソの正常化というのはこれからも進んでいくであろう。しかし同時に、中国にとって同じく近代化推進目的、そのためには、日本とかアメリカ西側諸国との太いパイプを持つということも重要である。加えまして、中ソの間には積年の不信感があるということを見ますと、その改善の度合いにはおのずから限度があるだろうというような認識を私どもは持っております。  以上、米、中、ソ各国及びそれぞれの関係につきまして簡単に御説明させていただきました。  続いて、アジア情勢について簡単に触れさせていただきたいと思います。  まず、朝鮮半島情勢でございます。  基本的に韓国北鮮の間には冷たい関係というものが固定化したまま現在に至っている、これが大まかなつかみ方でございます。例の南北対話、これも本年初めのチームスピリット、軍事演習の後中断いたしまして、わずかにスポーツ会談のみが保たれているという状況にございます。北鮮側は、軍事当事者、その三者会談あるいは朝鮮半島非核地帯提案、こういうことで平和攻勢をやる一方、何とか米国を参加させるという意図のもとに、従来から言っております三者会談提案のラインに沿った動きを行っております。これに対して韓国は、南北対話の再開が先決であるという立場を維持しているということでございます。  最近の北鮮につきまして若干注目される現象といたしましては、ソ連との間に軍事関係中心にかなり密接な関係というものが持たれつつあるということでございます。  他方韓国につきましては、御承知のとおり先般アジア大会が盛大にかつ成功裏に開催されたわけでございますが、このことは八八年のソウルオリンピックに向かって非常に大きなステップになると同時に、このアジア大会中国が全面的に参加したということは、今後の中国韓国関係を占う意味一つの明るい材料ではないかというふうに考えております。  次に、東南アジア情勢でございます。  ASEAN状況でございますけれども、一九七〇年代それから八〇年代の初めにかけまして非常に目覚ましい発展を遂げたASEAN諸国、これが最近は世界経済の低迷あるいは一次産品価格の下落というようなことで経済成長が押しなべて鈍化している。一部の国、例えばシンガポールあるいはフィリピンではマイナス成長を記録している。特にフィリピンにつきましては、対外債務累積というものが非常に深刻な状況を呈している。そういうわけで再びASEAN諸国成長の軌道にみずからを持っていく、そのためには経済構造の改革等大幅な変革を迫られているという意味で現在一つの転換期にあるのではなかろうかというふうに考えます。ASEAN諸国は、そのためもあって、一方では輸出の増大あるいは経済構造高度化を目指した自助努力、さらに先進国に対しては投資あるいは技術移転の促進、市場アクセス改善等の要請を強めているというのが現状でございます。  問題のフィリピン情勢でございますけれども、この二月にアキノ政権が成立いたしました。現在、フィリピン経済再建、それから反政府勢力との交渉等困難な課題に直面しておりますが、フィリピン国民の圧倒的な支持のもとにこういった問題に精力的に取り組んでいる。新憲法制定準備も現在行われている段階でございます。ただし、経済につきましては、先ほど触れましたけれども、そういった困難な要因に加えまして内政問題というものもあるということで、現状はまだまだ厳しい状況が続いている。この間にあって、先般アキノ大統領訪米いたしまして、改めてフィリピンアメリカとの友好関係を確認した、これは明るいニュースだろうと思います。近く同大統領は訪日が予定されている状況でございます。  次に、インドシナ情勢でございますが、七八年十二月にベトナム武力介入が始まりまして、自来カンボジア問題というものは依然として未解決状況が今日まで続いている。ベトナムはその既成事実化の追求に余念がなく、この問題の解決糸口は遺憾ながら見出せないという状況でございます。  軍事情勢につきましても、昨年ベトナム民主三派の軍事的な拠点を制圧いたしましたけれども民主三派側も作戦を変えましてゲリラ戦に転換し、依然として抵抗を継続している。  政治面では、ベトナムは、ポル・ポトの排除及びヘン・サムリン政権存続支持、これが基本でございます。  他方ASEAN側は、当事者対話推進、さらに民主三派側はことし北京で八項目提案を行いました。そのポイントは、一つベトナム軍段階的な二段階撤退、もう一つ連合政権の確立、かなり柔軟な態度を示したわけでございますけれども、これに対しましてベトナムは依然として非妥協的な態度を崩さない。そういうことから、解決の展望というのは現在持ち得ない状況でございます。  問題のベトナムにつきましては、先般レ・ズアン書記長が死んだということで、指導者の交代という問題がある。さらには、あの国も極めて経済が悪い。本年の末には党大会が開かれます。これがどうなるか注目されるところでございますけれども、まずは急激な政策変化はなかろうというのが遺憾ながら我々の見通しでございます。  最後に、テロ問題について一言申し述べます。  この国際テロ、八〇年代に入って増加の一途をたどっております。特に昨年以降、中東及び西ヨーロッパで大規模国際テロが発生した。特に最近の特徴は、その手口が無差別的になってきている、一般人を対象にしている、この傾向が顕著でございます。そういうことから、本年東京で開かれましたサミット会議におきましてもこの国際テロ対策というのが最大関心事の一つとして取り上げられたが、この経緯は御承知のとおりでございます。  このときの声明におきまして、先進七カ国は、この国際テロに対して断固として闘う、そのために相互協力というものを推進するという意思を表明したわけでございます。  その後、その効果もあってか、一時テロ活動は鎮静化の趣を呈していたわけでございますけれども、この九月に入りましてから、カラチのパンナム機のハイジャック、あるいはフランスにおけるテロ事件の続発、最近では金浦空港の事件というものが発生したわけでございます。  我が国としましては、さらに情報交換を初めサミット諸国あるいは国際機関を通じましてこのテロの防止のための国際協力を一層促進するという考えでございます。  なお、赤軍につきましては、昭和五十二年のダッカ事件以来表面的には事件を起こしていない。ただ、ことし五月のジャカルタ市の例の手製弾事件でございますが、これに関連してどうも赤軍が関与しているのではなかろうかという疑いもありまして、引き続きこの赤軍の動向というものについては警戒を要するというのが我々の認識でございます。  以上、国際情勢中心に御説明を申し上げました。
  7. 加藤武徳

    会長加藤武徳君) ありがとうございました。  それでは次に、防衛庁の瀬木参事官にお願いします。
  8. 瀬木博基

    政府委員(瀬木博基君) 防衛庁の国際担当参事官を務めております瀬木でございます。  防衛庁に与えられましたテーマは、国際軍事情勢現状問題点というものであります。順次お手元に配布いたしました資料に即しまして、項目を追って御説明申し上げたいと存じます。  第一は、米、ソ、中三カ国の軍事政策について申し上げます。  まず、米国軍事政策についてであります。  米国は、自由と民主主義等の諸価値を守るという立場から自由主義諸国を防衛し、世界の平和と安定の維持に寄与しようとしております。このため、米国は抑止戦略を一貫してとっており、核戦力から通常戦力に至る多様な戦力を保持することにより、いかなる侵略であれこれを未然に防止し、紛争が生起した場合にはこれに有効に対処し得る態勢の確保に努めております。  さらに、米国の国防政策の核心を構成する抑止は、次の四つの基本政策を通じて実施されてきております。  すなわち、第一に、十分な戦力バランス、能力を維持しなければならないということであります。第二に、民主主義的価値観を共有する欧州、アジア及び米州の諸国との間における同盟は、米国の戦略の極めて重要な要素であるということであります。第三に、米国の前方展開兵力は、共同防衛に対する米国のコミットメントを明示するとともに、共同防衛能力を向上させるものであるということであります。第四に、あらゆる形態の脅威に対応するため柔軟性を持つということであります。  米国はこのように一貫して抑止を国防政策基本としておりますが、特に一九七九年末のソ連によるアフガニスタンへの軍事介入を一つの契機として、米国自身の国防努力の一層の強化に乗り出すとともに、同盟諸国に対しても、自由主義諸国の一員として応分の努力をするよう強く期待しております。  一九八一年に登場したレーガン政権は、他の同盟国と同様困難な財政状況のもと、議会と協議しつつ、核戦力及び通常戦力の全般的な整備、近代化を進めてきております。他方レーガン政権は、このような国防努力を背景として、より低いレベルでの軍事力の均衡を求めて、ソ連との間で実質的かつ公正で検証可能な軍備管理軍縮の達成に努めております。  核戦力の分野では、米国は、いかなる規模態様の核攻撃に対してもこれに対応し得る能力と意志を明確に示すことによりすべての核攻撃の発生を抑止することを核戦略の基本としております。  また通常戦力の分野では、米国は、ソ連がグローバルな規模の通常戦力の増強により既に複数の正面で同時に作戦を行い得るに至ったとして、通常戦力の増強が以前にも増して重要になっていると認識し、幾つかの重要な正面で長期にわたって同時に対処し得る態勢の整備に努めております。  このほか、米国は、非核の防衛的手段により弾道ミサイルを無力化し、究極的には核兵器の廃絶を目指すものとしてSDI研究計画を進めております。  次に、ソ連の国防政策について申し上げます。  ソ連は、軍事力の増強を国策の最優先課題一つとしてきております。第二次大戦後、ソ連は、自国を防衛し、東欧圏を維持しつつ、勢力伸長を図ってきましたが、特にキューバ危機において、とりわけ核戦力及び海上戦力の劣勢によって後退を余儀なくされた苦い経験を一つの大きな契機として大幅な軍事力の増強を開始しました。また、ソ連は、一九五六年のハンガリー動乱、一九六八年のチェコスロバキアへの軍事介入に見られるようにソ連圏の内部結束を強めていきました。そしていわゆるデタントが最高潮に達し、またベトナム戦争やその影響等により、米国の国防努力が抑制されていた一九七〇年代前半においても中断することなく軍事力増強を継続してきました。その蓄積効果には近年特に顕著なものがあり、その結果、ソ連は核戦力及び通常戦力のいずれの分野においても米国に十分対抗し得る戦力を築き上げるに至りました。  今日、ソ連は、強力な戦略核、中距離核等の核戦力を保持するとともに、ヨーロッパから極東に至る自国領土、東欧諸国等に膨大な地上戦力及び航空戦力を配置しているほか、自国周辺の海域はもとより、アメリカ近海、太平洋、大西洋、インド洋、南シナ海、地中海などの遠隔地にまで海上戦力を展開させております。ソ連は、最近の構造的な経済困難にもかかわらず、依然として軍事力増強を継続しております。  ソ連は、グローバルな規模な通常戦力の増強により、既に複数の正面で同時に作戦を行い得るに至ったものと見られており、一九七〇年代後半以降、極東、欧州及び南部地帯に数個の軍管区等を統括する戦域司令部を設置し、それぞれの方面において即応性を高めるとともに独立して作戦し得る態勢を整備しております。  また、ソ連は、このような軍事力をその対外政策遂行の不可欠の手段としており、巨大な軍事力を背景に政治的影響力の増大に努めております。  次に、中国の国防政策について申し上げます。  中国は、現在、四つの近代化政策推進により国力の充実強化を図ってきておりますが、その一つに国防の近代化が挙げられております。  中国は、依然ソ連最大軍事的脅威と認識していると見られ、圧倒的な火力、機動力を有するソ連軍と対抗するため、広大な国土と膨大な人口を利用する人民戦争に依拠しつつも、従来のゲリラ戦主体の戦略から、各軍、各兵種の共同運用による統合作戦能力と即応能力を重視する戦略に移行しつつあります。  中国は、こうしたことから装備の近代化に努めておりますが、当面、経済建設が最優先課題とされており、国防支出には制約があり、早急な近代化は困難な状況にあります。このため、大幅な人員削減及び組織、機構の簡素化を進めることにより、編成、運用の効率化を図るとともに、装備の研究開発により多くの予算を振り向けようとしております。なお、装備の近代化については、自力更生を基本としつつも、自由主義諸国を含む外国からの技術導入も図っております。  さらに、軍の組織性、規律性を強化するため、近く階級制度の復活を予定しているほか、予備役師団を設立し大学等の学生に軍事訓練義務を課すなど、有事における動員体制の確立も進めております。  中国は、抑止と国威発揚という観点から、一九五〇年代半ばから独自の核戦力の開発努力を続け、現在ではソ連及び米国を射程におさめるICBMを保有しているほか、SLBMの開発も進めております。また、このSLBMを搭載すると見られる原子力潜水艦については、既に一隻が進水しております。さらに、戦術核の保有も伝えられるなど、核戦力の充実及び多様化に努めております。  第二に、米国及びソ連軍事バランスについて御説明申し上げます。  まず、ソ連軍事力増強について申し上げます。  戦略核戦力については、ソ連はこれまで、特にICBM及びSLBMを重視してその増強に努めた結果、一九六〇年代末にはICBMの、また一九七〇年代前半にはSLBMの発射基数において米国を上回るに至りました。近年に至って、ソ連は、戦略核戦力の量的優位に加え、ICBMの命中精度の大幅な向上、多目標弾頭化及びSLBMの射程の伸長、MIRV化等、質的改善の面でも顕著な向上を見せております。この結果、ソ連は、理論的にはSS18及びSS19の弾頭の一部による先制攻撃によっても米国の大部分の現有ICBMのサイロを破壊し得る能力を有するに至っており、米国のICBMの脆弱化が問題となっております。ソ連は、最近においてもSS25、SSN20等の新型ミサイルの配備を進めております。  このほか、ソ連は従来から弾道ミサイル防御、衛星攻撃の分野において活発な研究開発を行っております。弾道ミサイル防御兵器については、モスクワ周辺に世界で唯一のABMシステムを配備しているほか、衛星攻撃能力も保有し、引き続きこれらの分野の研究開発を進めていると言われております。  非戦略核戦力については、ソ連は、一九七〇年代後半にSS20及びTU22Mいわゆるバックファイアの配備を開始して以来、着々とその増強を進め、ソ連各地にこれらを分散配備しております。  地上戦力については、ソ連は多数の国と国境を接する大陸国家として、伝統的に大規模な地上軍を擁しており、現在では、自国領土、東独、ポーランド、チェコスロバキア、ハンガリー、モンゴル、アフガニスタン等に総計二百一個師団、約百九十四万人、戦車約五万七千両を配備しております。近年では、量的な増強に加え、戦車、装甲歩兵戦闘車、自走砲等による火力、機動力の向上及び地対空ミサイル等による戦場防空能力の向上等、質的な向上にも著しいものがあります。  ソ連の航空戦力は、作戦機約九千六十機から成り、大規模かつ多様であります。航空機の増強は、質的側面において顕著であり、航続能力、機動性、低高度高速侵攻能力、搭載能力及び電子戦能力にすぐれたミグ31フォックスハウンド、ミグ23及び27フロッガー、SU24フェンサー、SU25フロッグフット、TU22Mバックファイア等の戦闘機及び爆撃機の増強により、航空優勢獲得能力及び対地・対艦攻撃能力等が著しく向上しております。また、ミグ29フルクラム、SU27フランカーといったルックダウン、シュートダウンという能力に特にすぐれた新鋭戦闘機の配備を推進しております。  海軍勢力については、過去二十年間における一貫した増強の結果、沿岸防衛型の海軍から外洋型の海軍へと成長を遂げ、その勢力は、艦艇約二千九百十隻、六百八十一万トンに達しております。ソ連は、近く四隻目のキエフ級空母を就役させるものと見られているほか、黒海沿岸のニコラエフ造船所では、多数の航空機を搭載可能な大型のソ連初の原子力空母を建造中であり、一九八〇年代末には海上試験を開始すると見られております。さらに、ソ連初の原子力推進戦闘艦であるキーロフ級ミサイル巡洋艦等の水上艦艇、オスカー級原子力潜水艦等の新鋭艦の建造が相次ぎ、水上艦艇の近代化と潜水艦戦力の増強を図っております。  このほか、ソ連海軍は、約一万六千名に達する海軍歩兵部隊を保有しております。  次に、米国の対応努力について申し上げます。  レーガン政権は、戦略核戦力の三本柱であるICBM、SLBM及び戦略爆撃機戦力の近代化と、これらを支える指揮、統制、通信、情報能力の向上を内容とする戦略核戦力の近代化を推進しております。  ICBM戦力では、ピースキーパーの開発配備と小型ICBMの開発計画が進められております。  SLBM戦力としては、オハイオ級原子力潜水艦の建造と、将来これに搭載予定のトライデントII型のSLBMの開発が継続中であり、戦略爆撃機戦力の近代化としては、B1B爆撃機の生産配備、B52への空中発射巡航ミサイルの搭載計画が推進されております。  非戦略核戦力の分野では、ソ連のSS20の脅威に対抗し、抑止力の信頼性を維持強化するため、一九八三年末から西欧へのパーシングII中距離ミサイル及び地上発射巡航ミサイルの配備を行っております。また、一部艦艇においては対地用核弾頭搭載トマホーク巡航ミサイルが運用可能となっております。  次に、通常戦力について御説明いたします。  米国は、ソ連がグローバルな規模の通常戦力の増強により、既に複数の正面で同時に作戦を行い得るに至ったとして、通常戦力の増強が以前にも増して重要になっていると認識しております。このような認識に立ってレーガン政権は、即応能力継戦能力の向上及び装備の近代化により、幾つかの重要な正面で長期にわたって同時に対処し得る能力の整備に努めております。  特に、海上戦力については、十五個空母戦闘グループ及び四個戦艦戦闘グループを基幹とする六百隻海軍の建造計画を一九八〇年代末を目途に推進するとともに、海上戦力の展開に一層の柔軟性を与えるため、柔軟運用計画を実施しております。  地上戦力については、現在十八個師団、約七十八万人を有しており、特にNATO正面に展開している部隊を中心に対機甲能力と戦場機動能力の強化を重視して戦闘力の向上を図っております。  航空戦力については、作戦機約四千七百七十機を保有し、航空優勢が空中、海上及び地上の戦闘の重要な要素であるという認識から、この分野での質的優位を維持するために、F15、F16など高性能戦闘機の展開を推進しております。  このほか、米国の前方展開戦略を支える不可欠な手段として海空輸送能力の強化が図られており、さらにこれを補完するものとして、紛争が予想される地域に重装備等を事前に集積する措置もとられております。  このように、米国抑止力の維持強化を図るため、戦力の全般的な近代化と能力の強化に努めており、その効果も徐々にあらわれております。  米ソのグローバルな軍事力バランスは、兵力の量及び質のみならず、戦略、任務、展開、同盟国の軍事力、海外拠点等を総合的に勘案して評価すべきであり、一概に述べることは困難であります。  しかしながら、以上述べましたところを概括的に申し上げるならば、双方の兵力の量及び質を概観すれば次のとおりであります。  戦略核戦力については、一九六〇年代以降におけるソ連の大幅な増強に対し、米国もその近代化に努めており、米国抑止力は維持されていると考えられます。  陸上戦力については、大陸国家であるソ連の方が従来から数的には大幅に上回っておりますが、近年、ソ連は機動力及び火力の増大等質的にも顕著な向上を図っております。  米陸軍は、装備資機材の海外事前備蓄等により、緊急展開能力の向上に努めるとともに、すぐれた機動力と各種戦術核兵機の保有等により、数的劣勢のカバーを図っております。  海上戦力については、ソ連海軍は潜水舵、航空部隊を中心としておりますが、近年の質量両面における増強ぶりには目覚ましいものがあります。米海軍は、質的向上を重視し、艦艇の隻数、トン数とも低下傾向にありましたが、最近は質量両面の増強を図りつつあり、空母機動部隊等による打撃力、対潜能力、即応能力においては依然としてすぐれているものと見られます。  航空戦力については、ソ連は航空機の機数において米国を上回っており、質的にも顕著な向上を図っております。米国は、搭載兵器、運動性能、電子戦能力、ペイロード等、性能的にすぐれた航空機を保有しておりますが、その質的格差は縮小していると見られます。  以上、概観したように、ソ連の過去二十年における質量両面にわたる増強の蓄積効果は近年顕著になってきておりますが、米国も、ソ連によるアフガニスタンへの軍事介入を一つの契機として国防努力の一層の強化に乗り出した効果も徐々にあらわれており、核戦力から通常戦力にわたる米国の全般的な抑止力は維持されていると考えられます。  第三に、アジア・太平洋地域軍事環境について御説明申し上げます。  まず、我が国周辺の地域について申し上げます。  我が国周辺地域は、ソ連の大陸部、中国大陸部、カムチャッカ半島、朝鮮半島、我が国を含む大小多数の島々、これらに囲まれた日本海、オホーツク海等の海域及びこれらの海域から太平洋に通ずる海峡等さまざまな地形が交錯しております。  この地形においては、米ソ両国の対峙の関係に加え、広大な国土と十億以上の人口を背景とした大兵力と独自の核戦力を有する中国が存在し、米、ソ、中の三カ国が複雑な対立と協調の関係をつくり出しております。また、朝鮮半島においては、依然として大規模な地上軍が非武装地帯を挟んで対峙しており、軍事緊張が続いております。  この地域にあっては、極東ソ連軍の増強には著しいものがあります。ソ連は、ヨーロッパ正面とともに一貫して極東正面を重視しておりますが、特に一九六〇年代中期から極東地帯に所在するすべての軍種の顕著な増強、近代化に着手し、今日ではソ連全体の四分の一から三分の一に相当する軍事力をこの地帯に配備し、引き続き質量両面にわたる増強を行っております。例えばこの地域では、現在、ソ連が就役させている三隻の空母のうち二隻が配備され、また最近、原子力ミサイル巡洋艦フルンゼ等の大型新鋭艦が次々に配備されるなど、ソ連海軍最大の太平洋艦隊はその能力を一層向上させております。  さらに、地上兵力及び航空兵力の増強、近代化も着々と進められているほか、中距離弾道ミサイルSS20及びバックファイア爆撃機もここ数年急速に増強されております。  また、ソ連は、一九七八年以降、我が国固有の領土である北方領土に地上軍部隊を再配備し、現在では師団規模と推定される地上軍部隊や約四十機のミグ23戦闘機を配備しております。  ソ連は、このような軍事力増強に伴い、我が国周辺における艦艇及び航空機の行動を活発化させており、このような事実はこの地域軍事情勢を厳しくしており、我が国に対する潜在的脅威を増大させることにもなっております。  米国は、従来から我が国を初めとするアジア・太平洋地域の平和と安全の維持のため大きな努力を払っておりますが、近年米国とこの地域との関係が多くの面で緊密度を加えていることもあって、この地域の動静に大きな関心を払っております。  米国は、ハワイに司令部を置く太平洋軍隷下の海空軍を主体とする戦力の一部を西太平洋、インド洋に前方展開させ、アジア・太平洋地域の同盟諸国との間の安全保障取り決めのもとに、この地域における紛争を抑止し、米国及び同盟諸国の利益を守る政策をとってきております。さらに、必要に応じ所要の兵力をハワイ及び米本土から増援する態勢をとってきております。西太平洋地域における米軍の展開状況は、地上兵力は二個師団、約五万八千名、海上兵力は約七十隻、約七十万トン、航空兵力は作戦機約六百二十機となっております。  米国は、特に最近の極東ソ連軍の増強とその行動の活発化に対応し、兵力の増強と近代化及び兵力の柔軟な運用を通じ、この地域における軍事バランスを維持し、抑止力の維持強化を図っております。  中国軍事力は、核戦力のほか、陸、海、空軍から成る人民解放軍と人民武装警察部隊、各種民兵から成っております。  核戦力につきましては先ほど御説明申し上げましたが、陸軍は、総兵力は約二百九十七万名と規模的には世界最大であり、改編や再編成が行われておりますが、総じて火力、機動力が不足しております。海軍は、基本的には沿岸防衛型海軍でありますが、護衛艦の建造が伝えられるなど艦艇の近代化や外洋での活動も見られます。空軍は、作戦機の主力はソ連の第二世代の航空機をモデルにしたものでありますが、最近では新型機の開発も行われております。  中国軍の重要正面は中ソ国境、次いで中越国境であります。中ソ間では、国家関係改善に向けての動きが継続しており、また最近ゴルバチョフ書記長がウラジオストクにおいて中ソ関係改善に対する強い意欲を表明する演説を行ったところであります。しかしながら、中ソ国境付近にはソ連軍五十三個師団、約四十七万人に対し、中国軍は六十八個師団、百五十万人以上を配備しており、中ソ両国の軍事的対峙には変化は見られません。一方、米中間では米国による中国の軍近代化に対する協力に関する話し合い、人的交流等の軍事関係の分野でも交流が進展しております。  朝鮮半島においては、依然として百二十万人を超える地上軍が非武装地帯を挟んで対峙しており、軍事緊張が続いております。  北朝鮮の軍事力増強は、四大軍事路線に基づき、特に一九七〇年代以降顕著なものがあり、既に外国の支援を受けることなく単独で一定期間戦争を遂行し得る能力を獲得するに至ったと見られております。北朝鮮は、さらに陸上兵力の機甲化、機械化と前方配備を進めるなど、軍事力の増強、近代化を図っております。また、ソ連との間では、軍事交流、ミグ23の供与、ソ連軍用機による領空通過など、軍事面での協力関係の強化が注目されます。  これに対し韓国は、北朝鮮の軍事力増強を深刻な脅威と受けとめ、一九八二年から第二次戦力増強五カ年計画を実施しており、また米国も米韓相互防衛条約に基づき、現在兵力約四万三千名及び作戦機百機を韓国に配備し、その装備の近代化に努めているところであります。このような在韓米軍の存在と米国の確固たる韓国防衛意欲が韓国自身の国防努力と相まって、朝鮮半島における大規模な武力紛争を抑止しているところであります。  東南アジア地域は、太平洋とインド洋を結ぶ交通の要衝を占めております。この地域においてはソ連に支援されたベトナムが、国連等におけるカンボジアからの撤退要求にもかかわらず、カンボジアに約十八万名の兵力を駐留させております。  また、中越国境には中国軍約二十個師団基幹約三十万人と、ベトナム軍約三十個師団基幹約三十万名が対峙しており、一九七九年の二月から三月にかけての軍事衝突以来、小規模な武力衝突が続いております。  ソ連は、ベトナムのカムラン湾を海外における重要な拠点として利用し、TU95、142ベア等の航空機により、南シナ海を中心に東シナ海、シャム湾を含む海域で偵察、哨戒活動を実施するとともに、南シナ海に約二十隻の艦艇のプレゼンスを維持しております。  このような状況にあってASEAN諸国は、それぞれ自国の国防努力を継続し、域内の防衛協力を進めるとともに、経済協力等を通じて域内の結束強化、先進民主主義諸国との協力関係の増進に努めております。  また米国は、ベトナム撤退以降、フィリピンを除きこの地域に兵力を駐留させておらず、ASEAN諸国との協力、友好関係を深め、軍事援助、経済援助等により地域的安定の維持に努めるとともに、フィリピンにおける海空軍基地の維持、西太平洋及びインド洋における空母戦闘グループのプレゼンス等によりこの地域の安定を図っております。  フィリピンにおいては、本年二月アキノ政権が誕生し、政治改革、経済問題への対処等に取り組んでいるところであります。  同国は、太平洋から中東に至る石油等の重要物資の海上輸送路を扼する地理的位置にあり、米国の海空軍基地の存在、南シナ海を隔てて対面するベトナムのカムラン湾に拠点を置くソ連軍事力のプレゼンスの強化にもかんがみ、今後の情勢アジア全般の平和と安定に影響を及ぼすものと見られております。  以上をもって、説明を終わらしていただきます。
  9. 加藤武徳

    会長加藤武徳君) ありがとうございました。  それでは次に、国際経済情勢についての説明聴取に入ります。まず、外務省経済局池田次長。
  10. 池田廸彦

    政府委員(池田廸彦君) 外務省の池田でございます。  債務累積問題及び貿易摩擦問題につきまして総論を申し述べさせていただきます。  すぐに本題に入りますが、債務累積の現状は、IMFの数字によりますと、一九八五年末、昨年末で九千百五十八億ドル、これが本年末には九千六百七十三億ドルに達すると予測されております。膨大な数字でございます。債務国自身にとりましても非常に重い負担となっておりまして、例えば、平均いたしまして輸出所得の約四分の一、これを元利返済に充当せねばならないという事態になっております。また、国内経済運営も当然のことながら厳しい引き締め政策が押しなべてとられておりまして、このために失業の増大も見られますし、場合によっては社会不安にも通じかねないという事態に立ち至っております。債権国側といたしましてもこういう状況は放置いたしますと、国際金融システムの健全な運営に障害が生ずる、こういう観点からこの問題への適切な取り組みが喫緊の課題となっているわけであります。これまでのところ債権国側あるいは債務国側の経済調整努力、これらが相まちましてどうやら危機的な状況というものは回避されております。  しかしながら、現在の経済情勢を見ますと、明暗こもごも、むしろ暗い情勢の方が強いという状況でございます。明るい面といたしましては、金利の低下、これは非常に勇気づけられる動きでございます。また、石油価格の低落をこれに加えてもいいかとも思います。かなりの債務国はエネルギー輸入国でございますから、その意味では負担が軽くなっておりますが、しかし同時に、石油輸出国、例えばインドネシアでございますが、石油輸出国にとりましては石油価格の低落はむしろ暗い要素になる。さらに暗い要素といたしましては、アメリカを初めとしましてヨーロッパもそれから我が国も、ここに来て成長率の伸び悩み傾向がございます。しょせんは債務は、輸出を伸ばすことによってこれで返済していく。しかしながら、先進国経済状況に照らしまして、どしどし途上国からの輸入を吸収していくという状況には残念ながらない。それからさらに、債務累積国の多くは一次産品輸出国でございます。この一次産品、天然ゴムにしましても綿花にしましても銅にしましても、押しなべてこれも価格が下がってきております。そういうことで、全体として債務の累積国を取り巻く経済環境は暗いものがあると申し上げざるを得ないと思います。  したがって、債権国側といたしましても、いま一段の政策的努力が必要になるわけであります。この動きは昨年秋に一つ大きな動きが出ております。お手元の紙にもございますが、アメリカのベーカー財務長官が打ち出しましたいわゆるベーカー構想、ベーカープランというものでございます。この中身に立ち入ることは差し控えますけれども、この眼目は、これまでの債務累積国に対する政策というものはやはり経済の緊縮的な運営をお願いするという姿勢だった。これではどうしても先行きに不安があって、俗な言葉になりますが、元気が出ない。そこでベーカーさんの新しい考え方というのは、この紙にもございますが、大債務国における成長の展望を改善し、希望を与える、要するに、債務国にもこれから先は経済成長政策をとってもらう、その中で返済もしていってもらう。このことは裏返せば、債権国側においてもインフレなき持続的成長を確保し、公的、民間両面での資金フローをふやし、それから市場へのアクセスを改善して、よってもって債務国の輸出増大の機会を与える。全体として拡大均衡、成長の枠の中で問題を解決していくべきであるという考え方に立った構想でございます。この認識は、先般の東京サミットにおきましても首脳レベルで確認され、各国の協調強化が打ち出されたことは御記憶のとおりでございます。我が国も当然のことながらこの方向で努力しているわけでございます。  以上、債務累積問題でございます。  次に、貿易分野に目を向けますと、対米、対EC、対近隣の途上国、いずれに対しましても我が国の黒字は増大を続けており、摩擦は鎮静の様相を見せておりません。  対米を見ますと、ことしの一月から八月までで我が国の対米黒字は三百八十九億ドル、前年同期に比べ二一・三%の増でございます。もちろんアメリカ日本だけでなくほとんどすべての国との関係で入超になっておりまして、同じ期間、アメリカの赤字は全体として千百五十三億ドル、したがいまして、日本の赤字は、その中の約三分の一、三三・八%になります。  日本との関係で見ました場合、問題は三つございます。  第一は、先ほども申し上げましたが、ここに来ましてアメリカ経済成長鈍化の傾向がございます。昨年二・七%、本年一月から三月、第一・四半期は三・八%そこそこの成長でございましたが、四月から六月を見ますとこれが〇・六%に落ちておる。このアメリカ成長の減速の要因といたしまして、やはり輸出が振るわない、輸出不振というのが重要な要素になっておる、こういう意識が強まっております。加えまして、本年の特殊事情といたしまして、中間選挙の年でございます。この貿易赤字問題、アメリカ成長問題に対するアメリカ朝野の意識はますます強くなってきているわけでございます。これが第一の問題点。  第二の問題点は、先ほど申し上げましたが、対日赤字が全体の約三分の一ということで突出しておる。第一位でございます。どうしても目立つ。したがって標的にされやすいという面がございます。  それから第三に、対日赤字は、円高は定着しておりますが、目下のところ、いわゆるJカーブ効果というものが働いておりますし、また一次産品の値下がりの影響もありまして、ドルベースで見ます限り当面ふえ続けざるを得ない。したがいまして、これをアメリカの方から見ました場合には、どうも一向に改善の実が上がらないではないか、こういうふうに見える。これもまた、やむを得ないところではありますが、アメリカから見ました場合の問題点でございます。  既に、こういう情勢を背景にしまして、アメリカ議会の下院では、保護主義的な色彩を濃厚に有します包括貿易法案というものを可決しております。アメリカの議会、恐らく一両日中、今週中ぐらいには閉会になると思われますので、上院も経まして法案が成立するという可能性は少ないと私どもは見ております。しかしながら、これから選挙に入り、特に不況産業を抱えている地域、あるいは農業を抱えている地域でどのような要求が各候補者の方に突きつけられるか、私どもとしては非常に心配しておるところでございます。  幸いにアメリカの行政府は、レーガン大統領以下保護主義には絶対反対という態度を堅持しております。半面、対談会対策もございまして、我が国を初めとします諸外国の一部の貿易慣行は、これは不公正なものであるという姿勢を出してその是正を強く迫ってくる。この姿勢は今後とも続くんではなかろうかと思っております。  ヨーロッパでございますが、失業は依然として二けた台で深刻でございますが、全体としては、ヨーロッパの経済は緩やかな拡大が続き、本年は二・七%ぐらいの成長になると見込まれておりますし、貿易収支も全体としましては黒字に転じます。昨年までは赤字でございましたが、恐らく黒字、それも五百億ドルを超える黒字になるだろうと予想されておりますが、この中で、日本との関係では、欧州の対日赤字が拡大しております。再び八六年一―八月を見ますと、日本の対欧出超は百十四億ドルでございます。ちなみに八五年、昨年を通年いたしまして百十一億ドル、本年は八月までで既に昨年の一年分を超えておるという状況でございます。ヨーロッパ側から見ますと、これは構造的な赤字だということに言えるわけでございます。  また、円高は確かにあるけれども、主としてドルに対する切り上げ幅が大きいんであって、炊州通貨ではそれほど切り上がっていない。したがって、欧州の目から見ました場合にはこの不均衡是正のめどが立たぬではないか、こういうことを申しております。また、それを反映いたしまして、最近の日本の貿易ビヘービアというものはアメリカ市場から欧州に転換しているんじゃないかということを申してきておるわけでございます。  時間の都合で近隣途上国については簡単にはしょりますが、韓国、台湾、香港、シンガポール、このあたりは、全体としまして従来から毎年百億ドル程度の出超になっておりますが、これがまた本年になって拡大しておる。中国につきましても、従来は入超でございましたものが、昨年六十億ドルの出超に転換し、ことしもまたさらに大幅な出超になるだろう。したがって、こういう情勢を背景に、これらの諸国からの不均衡是正要求というのは強まっているわけでございます。  最後に、我が国の取り組みでございますが、大きく類型別にいたしますと三つになるだろうと思います。  第一は、世界の一割国家として、また大幅黒字国としてなすべきことをなすということではないかと思います。この中を分解いたしますと、第一は、広い意味での日本市場への参入、アクセスの条件改善する。アクションプログラムの誠実な実施でございますとか、アメリカとの間の一連のMOSS協議の実施でございますとか、それからECとの間のウイスキー、ワインに関する話し合いとかがこのカテゴリーに入ります。  諸外国から見ました場合、日本市場はどうしても入りにくいという認識を持っているようでございます。かなり私どもの方から見ましても身勝手、努力不足の面はあると思いますが、しかし、にらみ合っていたのではますます事態は悪くなるばかりでございます。特に、アメリカ議会が万が一保護主義的な法案を通すということになれば、本当に今度は自由貿易体制自体が動揺しかねない、こういう状況にかんがみまして、やはりさらにアクセスの面で一段の努力が要るだろうと思います。  それから、二番目は内需の振興でございます。これは御案内のことで、詳しくは申し上げませんが、三兆六千億の事業規模の新しい総合経済対策を打ち出したわけでございます。これによって円高のメリットが経済の全般にまで浸透するようにし、全体として日本経済の活気をつける。  それから三番目に、中長期の課題といたしましては経済構造調整を推進していく。これによって輸出主導型から内需主導型経済に変えていく。  以上が第一のカテゴリーでなすべきことをなすということでございますが、二番目のカテゴリーとして、相手方に対し改善を求めるべきことはこれは率直に指摘していく。これによって日本と貿易相手国双方の双務的な努力、協調的な努力を実現させるための基盤を固めていくということではないかと思います。今月末に日米構造対話予定されておりまして、この際には、日本に黒字体質というものがあるというのならば、それならばアメリカにも赤字体質というものがあるのじゃないか、こういうたぐいの議論をしてみたいと思っております。また、ECに対しましても、労働慣行等制度的な硬直性、これをできるだけ早く改善していくことが重要だということは従前から申し述べているところでございます。ただ、この第二カテゴリーの問題は、内政と微妙、複雑に絡む佃題でございます。双方とも慎重な態度とある程度の節度が要請されると思っております。  三番目のカテゴリーとしましては、ガット新ラウンドの積極的な推進でございます。長い間産みの苦しみをやっておりましたが、ようやく今般新ラウンド発足にこぎつけ、今後四年間、物の貿易、サービスの貿易両面を網羅し、ガットレール、ガット機構を強化するための交渉が行われます。この中で、我が国は積極的に貢献していくことによって自由貿易体制の枠組みを不動のものとして固める。  以上、要しまするになすべきことはなす、しかも、外国からの要請に応じてするということではなしに、自分のためにするということ、それから、主張するべきは主張し、主要国との間の二国間の対話関係というものを固める、それから三番目に、自由貿易原則に立脚した多国間の枠組みを強化する、こういう重層的な対応が要るのではないかと思っております。問題の根源はかなり深いものがありますので、やはりいずれか一つの対策ということではなしに、こういう各種の施策を網羅した総合的な対策で取り組む、こういう対策を打ち出すことによりまして、世界全体の繁栄の中で日本みずからの一層の発展を目指す、これが基本的な姿勢ではないかと思っております。  総論でございますので、かなり細部の微妙なニュアンスは切り落としましたが、その点は後の発言で補われるものと思います。ありがとうございました。
  11. 加藤武徳

    会長加藤武徳君) ありがとうございました。  それでは次に、外務省経済協力局川上参事官にお願いします。
  12. 川上隆朗

    説明員(川上隆朗君) 外務省経済協力局参事官をやっております川上でございます。  お手元に配布さしていただきました資料の三つ項目、すなわち「第三次中期目標」、「開発途上国の経済困難、多様化するニーズへの対応」及び「適正かつ効果的・効率的援助の実施」という三つ項目中心といたしまして、経済協力分野における最近の情勢につきまして御説明させていただきたいと思います。  昨年の九月十八日に我が国は政府開発援助、すなわちODAの第三次中期目標を設定いたしまして、我が国のODA拡充に対する積極的な姿勢を内外に宣明いたしました。この目標は本年がつまり最初の年になるわけでございますが、本年から七年間の実績総額を四百億ドル以上とすることを目指しまして、このため無償資金協力及び技術協力の拡充、国際金融機関を通ずる援助の強化、円借款の執行率改善等を図りつつ九二年のODA実績を八五年実績の倍とするよう努めるとともに、質の面でも可能な限り改善を図るというものでございます。  多くの開発途上国が、先ほどからのお話にも既に出てまいりましたが、一次産品価格の低迷、累積債務の増大等の困難に直面しておるわけでございますが、これら開発途上国への資金の流れ、とりわけODAによる資金の流れを確保することは南北間の相互依存、経済秩序を維持する観点からも極めて重要な国際的課題でございまして、我が国が第一次、第二次の目標に続いて第三次中期目標を設定してODAを拡充しようとしている姿勢は、国際的にも大きな評価を得ているものと思っております。  このような基本的な姿勢に立ちまして、六十二年度ODA一般会計の概算要求は、政府全体で六千七百三億円ということで、前年度比七・八%の増としております。この七・八%という伸び率は、名目的には従来のものより下回っているわけでございますが、最近の円高という情勢を考慮いたしますれば、ドルベースでは実質的には前年同様二けたの伸びを確保し得るというふうに考えている次第でございます。  次に、開発途上国の経済困難、多様化するニーズへの対応という点でございますが、現下の経済困難、先ほども申し述べました経済困難に直面する開発途上国よりの要請というものは近年多様化してまいっておりまして、こうした要請にいかに対応していくか、こたえていくかということは大きな課題となっております。  去る六月のASEAN拡大外相会議におきまして我が国は、対ASEAN経済協力に関し円借款、内貨融資の弾力的な供与、プロジェクト中心の従来の援助形態に加えて援助形態を多様化していくということ、輸出振興に資する技術協力等技術協力の多様化という政策を打ち出したわけでございますが、さらに先般の総合経済対策におきましても、円借款における内貨融資の弾力化、既応案件の活性化、援助形態の多様化というものを宣明したわけでございます。  開発途上国のニーズは、アフリカの飢餓救済から中進国の資金ニーズ等、近年ますます多様化の傾向にあるわけですが、また先進国との間では援助が貿易を歪曲しているのではないかというような議論も行われております。我が国としては、こうした援助に関する多局面に適切に対応し得るよう対処することが今求められているわけでございます。今後中期目標に沿って援助を拡大していく上においても、こういう問題を十分念頭に置いて適切な援助が確保されるよう、実施体制の面でも一層の効率化に努め、その充実を図る必要があるというふうに考えておる次第でございます。  最後に、適正かつ効果的、効率的援助の実施という問題でございます。  厳しい財政状況のもとでこのようにODAを拡充していくというためには、ODAが適正に使用され、また効果的、効率的な執行が確保されるべき必要があることはもとよりでございます。このため、従来より被援助国側の真の開発ニーズ把握のための政策対話、優良案件発掘選定のための事前調査の拡充、被援助国に対する適正使用の義務づけ、援助評価の強化等に努めているところでございますが、先般のいわゆるマルコス疑惑や、今般のJICA職員逮捕事件等もございまして、政府としては適正かつ効果的、効率的援助の実施に従来より一層努め、経済協力の実施につき、広く国民の支持と御理解を得るために改善すべき点につき鋭意検討をただいま進めているところでございます。  JICA職員の逮捕事件につきましては、極めて残念なことであって、我々として深刻に受けとめております。JICAにおきましては、調査、規律の両委員会を設けまして、服務規律とその周知徹底、規律管理体制の改善強化、懲戒委員会の設置、コンサルタントの選定管理、処分の厳正化、人事配置、内部会計監査の強化を含む執行体制のための措置につき現在検討をしているところでございますが、倉成大臣よりも、政府の行政改革に関する基本方針を踏まえて、JICAの業務が一層適正かつ効果的に、効率的に実施されることを確保するために、人事政策、業務実施体制の改善、民間コンサルタントの適正な活用等に関し、とるべき具体的な措置、改善の方向について速やかに報告するよう強く指示した経緯がございます。また、これと並行しまして、外務大臣のもとにJICAのあり方に関する懇談会というものも開きまして、今後のJICAのあり方について有識者の意見を参考にさせていただきながら外務省の中でも検討を加えているわけでございまして、我々といたしましてはこうした一連の作業を踏まえてJICAの改革を図っていく所存でございます。  以上、簡単でございますが、三点について御説明を申し上げました。
  13. 加藤武徳

    会長加藤武徳君) ありがとうございました。  それでは次に、大蔵省国際金融局畠中次長にお願いします。
  14. 畠中杉夫

    政府委員(畠中杉夫君) 大蔵省国際金融局次長の畠中でございます。  本日は累積債務問題及び先般ワシントンで開催されましたIMF・世銀総会の概要につき御説明させていただきます。  累積債務問題につきましては、先ほど外務省の方より概括的な御説明がありましたので、私はそれを若干敷衍させていただきながら御説明いたしたいと思います。累積債務の現状、それからそれに対応するベーカー提案についてお手元に資料をお配りしてございます。  途上国をめぐります環境でございますが、一九八二年、昭和五十七年にメキシコと南米を中心に累積債務問題が表面化して以来、債務国が経済調整努力を行いますとともに、債権国民間銀行及び国際金融開発機関が一体となって協調し、対応してまいったわけでございます。このような努力と一九八四年における先進国経済の好転によりまして途上国の国際収支も改善を見、債務問題も一時好転したわけでございます。しかしながら、八五年に入りまして一次産品価格が低迷してまいりました。一次産品価格をあらわす指数といたしましてロイター指数というのがございますが、これが一九八四年末には一九三〇というような数値でございましたものが八五年末には一八一九まで低下し、さらに最近では一五〇〇というような数値まで低下をしておるわけでございます。また、八五年には先進国経済成長も鈍化いたしまして、途上国の輸出は減少したわけでございます。これに加えまして本年に入りましてから原油価格が低落いたしました。これに伴ってメキシコ、インドネシアあるいはベネズエラといった産油国である債務国の状況が悪化したわけでございます。  このように債務国をめぐります環境は確かに厳しいものがあるわけでございますが、私どもとしては、やはり明るい材料も今後期待されるところから、債務問題について対応を誤らなければ破局は避け得るというふうに信じておるわけでございます。  明るい材料といたしましては、先ほども外務省の方で御指摘のありました金利の低下がございます。途上国が借りております債務の約半分がいわゆる変動金利ということになっておりまして、市場金利が下がりますと支払い金利が下がる仕組みになっております。この表にもございますように途上国の債務約九千億ドル、やがて一兆ドルに達しようということでございますけれども、その半分が変動金利だといたしますと、金利が一ポイント下がりますと五十億ドル程度の負担の減少になるわけでございます。最近アメリカの金利は非常に下がっておりまして、八四年の半ばにはドル金利、これはユーロダラーの金利を普通使いますけれども一二%程度でございましたのが、最近は六%ぐらいに下がっておる、実に半減しておるわけでございまして、これが丸々金利の低下ということになりますと、先ほども申しましたように一ポイントについて五十億ドルでございますから、五ポイント下がれば二百五十億ドルの支払い減、これは非常に明るい材料でございまして、今後とも先進国としては金利の低水準を維持することが必要であるというふうに考えられるわけでございます。  次に、もう一つの明るい材料は世界経済の先行きでございまして、これにつきましては不確定要因もあるわけでございますが、少なくともことしの成長率は落ちておるわけですけれども、先行きを見ますと、下期から来年にかけましては成長率が再び上昇していくというのが大方の見方でございまして、これに伴いまして途上国の輸出も伸びを回復していくというふうに考えられるわけでございます。  それから、原油価格の低下はやはり特定の債務国にとりましてはマイナスでございますけれども、大多数の国にとりましてこれはプラスでございます。したがいましてメキシコを中心とします産油累積債務国、この問題を精力的に片づけていくことが何よりも緊急の課題でございまして、それはそれなりに成功しておるだろうというふうに考えておるわけでございます。  このような累積債務問題に対する対応でございますが、これも先ほど御説明がございましたように、昨年のIMF・世銀総会でいわゆるベーカー提案というものがなされたわけでございます。これにつきましても先ほど御説明がありましたけれども、ポイントはそれまでの債務問題に対する債務国の対応がどちらかというと後ろ向きのものであった、つまり経済成長を抑え、輸入を削減することによって国際収支の黒字を確保するというやり方がとられておったわけでございますが、これではやはり中長期的に問題の解決はできないということで戦略を転換いたしまして、成長に向けて途上国も努力し、これを国際金融機関、民間銀行が支援する、こういう形をとろうというのがベーカー提案のポイントでございます。そして、このベーカー提案の考え方はその後東京サミットでも支持されておりますし、先ほどのIMF・世銀総会におきましても、このベーカープランに沿って着実に対策を立てていくということで意見が一致したわけでございます。  また、メキシコ問題につきまして、これもいろいろ報道がなされておりますように、包括的な救済案がほぼまとまりかけております。すなわち、メキシコ自身がまず調整計画を立てておりまして、これについてIMFと合意をいたしております。これは七月の二十二日でございますが、これに基づいてIMFはメキシコに対して十四億SDRの融資をしよう。ただ、前提条件としまして、国際金融支援のパッケージができるということが前提になるわけでございますが、その前提となる民間銀行の新規融資及び既存債務のリスケにつきまして先月末に一応まとまり、今細部の詰めを行っておりますが、一応まとまりまして、それによってIMFの方も融資ができるという状態になっております。したがいまして、現下の最大の焦点でございますメキシコ問題につきましては何とか解決のめどがついたという状況でございます。  次に、先ほど行われましたIMF・世銀総会の結果について概要御報告申し上げます。  IMF・世銀総会は、去る九月三十日から十月三日までワシントンにおいて行われたわけでございますが、この総会に先立ちまして七カ国蔵相会議、それから十カ国蔵相会議、暫定委員会、合同開発委員会といった各種の会議が開かれまして、その過程で幾つかの合意がなされたわけでございます。特に重要なものは七カ国蔵相会議、これは先進七カ国サミット加入国の蔵相会議でございますが、それとIMFの常務会に当たります暫定委員会、これは先進国と途上国両方が集まりまして二十二カ国で行う会議でございますが、この二つで大事なことが合意されたということでございます。  そこで、議論されましたことの概要でございますが、四つのことが主として議論されたわけでございます。  一つ世界経済の見通しでございます。世界経済につきましては、先進国成長率が本年初めの予想を下回っておりまして、これが世界貿易の伸びの鈍化の一因となっており、また失業が多くの国において高水準にあることが懸念されたわけでございますが、他方インフレ率が低下しておる、また金利も低下しておりまして、いずれその成果が顕在してまいりまして、一九八六年、すなわち本年の下期及び明年には実質民間支出が増大し、成長率も高まるであろうという点で大方の意見が一致したわけでございます。  ただ、問題は経常収支の不均衡でございまして、これはアメリカの赤字、日本の黒字、西独の黒字がかなり大きいということで、これを是正するために赤字国におきましては財政赤字の削減、経常収支黒字国におきましては内需の伸びの維持が必要であるということが合意されたわけでございます。  さらに、そのような政策が為替レートの安定に寄与するということが認識され、また今後も相当程度の為替レートの調整なしに不均衡是正するように努力するということで合意がなされたわけでございます。これは為替レートの安定の重要性について各国の意見が一致したということだと思います。こういうことは市場でも好感を持って迎えられておりまして、総会後にも為替相場は安定した推移をたどっておるわけでございます。  そのほか先ほど申しました債務問題について議論が行われ、さらにIMFの貸付政策等について合意が見られたわけでございます。
  15. 加藤武徳

    会長加藤武徳君) ありがとうございました。  各省庁おいでいただいておりますので、内容に若干重複の点がありますが、それは重複を避けて御発言をお願いいたします。  次に、通商産業省通商政策局吉田次長にお願いします。
  16. 吉田文毅

    政府委員(吉田文毅君) お手元に「最近の国際経済情勢について」というペーパーを御配付さしていただいておりますので、本ペーパーに沿いまして御説明申し上げたいと思います。  本ペーパーは、「1、世界経済動向」、「2、我国の貿易動向」以下七項目から構成さしていただいております。  まず、世界経済動向でございますが、世界経済は、IMFの報告によりますと、八三年におきましては二・六%、八四年四・四%、八五年二・九%という成長を記録しております。  八四年につきましては、世界経済米国経済成長が支えたというふうに考えてよろしいかと思いますが、データといたしましては、1の①の「米国経済の停滞」と題します欄をごらんいただきますと、八三年の米国経済成長率は入れておりませんが三・六%、八四年六・四%、以下となっております。  石油価格の云々以下重複いたしますので省略さしていただきたいと思いますが、本年に入りましてからの米国経済は、石油価格等の条件の整備ということが行われてはおり、また景気は緩やかな拡大が見込まれておりますが、その効果が実体経済にあらわれるには至っておりません。景気上昇のおくれが懸念されるところであります。  欧州経済につきましては、触れられましたので省略さしていただきます。  なお、②の「石油、一次産品価格の下落」につきまして、まずロイター指数でごらんいただきますと、八〇年を一〇〇とする指数につきまして、八六年の一―三では七六ポイントまで下がっておりますし、さらにその後下落の傾向が続きまして、最近時点におきましては五〇ポイント台まで価格指数が低下をしているというふうに報告をされております。  原油価格につきましては、よく御承知のとおりだろうと思いますので、省略をさしていただきたいと思います。  なお、ドル高の是正を中心といたします為替レート調整の進展先進国の金利の引き下げ、これも既に触れられたところでもございますが、念のためにそこに数字をお示ししておきました。  二番目に、我が国の貿易動向でございます。  昨年九月以来の円高の進行が見られたわけでございますが、この結果、輸出数量は三月以来対前年比で六カ月連続のマイナスを記録しております。また、円ベースの輸出額も一―八月累計で一六・一%と減少をしております。しかし、ドルベースの輸出額はJカーブ効果で増加をしておりまして、ドルベースで見る限りインバランスが目立って縮小することは短期的には期待が余り持てないということだろうと思います。輸出通関額につきましては第一ページの一番下にお示しをしておりますが、一―八月で二〇・七%ドルベースで増加をしております。  二ページに入りまして輸入面でございますが、製品輸入の増加が見られますが、原油価格等の下落によりましてドルベースでは微減をしておりまして、一―八月で前年同期比一・二%減少しております。  以上の輸出入の結果、⑤でございますが、貿易収支全体では黒字幅が拡大をしてまいっておりまして、IMF方式で計算をいたしますと、一―八月の間五百五十一億ドル、前年同湖比二百二十一億ドルの増を記録しております。  三番目に、日米貿易関係でございます。  米国経済の停滞と対日貿易赤字の急増につきまして、経済につきましては先ほど触れさせていただきましたが、まず、日米貿易赤字をその表によりまして読み取っていただければと思います。八四年、アメリカ側の商務省統計でございますが、三百六十八億ドルの赤を記録していたわけでございますが、本年一―八月で既に三百八十九億ドルの赤を米側で記録をしております。Jカーブ効果、一次産品市況の低迷等いろいろ理由はあるわけでございますが、依然ドルベースで見る限り拡大基調であるということを感じざるを得ないという状態でございます。なお、日米貿易、八五年は往復で九百五十億ドルでございまして、米国の対世界貿易の一七%を占めるに至っております。  また、失業率についてごらんいただきますと、八一年の七・六%から八五年七・二、八六年の八月では六・八となっておりますが、これは巷間ほぼ完全雇用に近い状態であるというふうに言われております。  また、日米経済関係、これが現在多面化をしているというふうに私ども考えております。②にお示ししておりますように、従来は個別の通商問題、例えば日勤車、鉄鋼、繊維などという個別問題が議論されていたわけでございますが、最近はそれに加えまして為替レート、国際収支、あるいはマクロの経済運営、経済構造というようなサブジェクトが議論の対象となっているということでございます。  米国議会の動向につきましては、先ほど説明がありましたのであえて触れませんが、現在下院を通った保護貿易法案、中身を見ますと、対米貿易黒字国に対する黒字の削減措置を協定でやれというような話でございますとか、あるいは日本の対米鉄鋼輸出と日本アメリカからの原料炭の輸入につきまして、これを相互主義のもとに行うというような内容も入っておりまして、大変私ども心配をしていたわけでございますが、来年に向けまして引き続きこのような保護主義的な法案が通るかどうかにつきましては予断を許さないというふうに感じております。  なお、米国行政府の態度でございますが、いわゆる不公正貿易慣行の是正に向けまして個々の問題を着実に解決することによりまして保護主義に対抗するという姿勢をとっております。  さらに、米国政府との間で現在議論になっております個別の問題、そこに④としてお示ししておりますが、工作機械あるいは自動車部品にかかわるニューMOSS協議等々ございます。日本といたしましては、貿易インバランスの是正につきましては内需拡大に努めるとともに、中長期的な構造調整により対応をする。また、当面の個別の懸案事項につきましては適時適切に対応することが重要ではなかろうかというふうに考えております。  三ページに入りまして日・EC関係でございます。  これも数字につきましては先ほど説明がありました。失業率について(注)の二番目でございますが、ごらんいただきますと、八六年EC委員会の見通し数字では一〇・八%というふうに依然二けたの数字を見通しております。  成長率につきましては、八四年、八五年の二・二%に対しましてやや高目の二・八%という数字を見通しております。  国別に眺めますと、イギリス、西独を中心に緩やかな拡大基調というものが見られるわけでございますが、この失業率の問題につきましては依然高水準で推移しており、構造的な問題を抱えているのではないかというふうに見ております。  なお、ECの対日貿易問題の取り上げ方でございます。  二点お示ししておりますが、ECは一方におきましてプンタ・デル・エステで盛んに議論されましたようないわゆる日本問題、具体的には日本の貿易黒字と市場の閉鎖性への批判ということを行うと同時に、一方におきまして日本との産業協力の推進ということを向こうでも議論をしておりまして、具体的には投資交流、技術交流、第三国市場での協力というふうな内容を考えております。なお、このような考え方に基づきまして、現在政府では日EC産業協力センターの設立につきまして、EC委員会と協力して推進するという施策を講じているところでございます。  発展途上国関係につきましては、ほぼ御説明ございましたので飛ばさしていただきます。  最後に、ガットのニューラウンドでございますが、ウルグアイ・ラウンドの開始宣言が今回のガット閣僚特別総会において行われたということを大変私どもは歓迎しております。  内容的には、十月の末までに第一回の貿易交渉委員会を開きまして、四年以内に交渉を終えるということになっておりますが、このような国際的な動きが世界的に高まりつつあります保護主義に対抗いたしまして、自由貿易体制の維持強化を図る上で大変大きな意味合いがあるというふうに感じております。我が国としても当然ながら具体的な交渉に参加をいたしまして積極的に貢献をなすべきであろうというふうに考えております。  最後に、今後の政策の方向でございます。  先ほど外務省の池田次長から三点にまとめられて話がございました。ほぼ内容は共通でございます。やや具体的にブレークダウンして並べますと、以下7でお示ししております①から⑥までのような内容になるのではなかろうかと感じております。若干食い違っている問題もございます。表現の違う問題もございますが、内容的には共通だと思いますので省略をさしていただきます。どうもありがとうございました。
  17. 加藤武徳

    会長加藤武徳君) ありがとうございました。  それでは、経済企画庁調整局の宮本審議官にお願いします。
  18. 宮本邦男

    説明員(宮本邦男君) 私からは、我が国が貿易摩擦に対応してとっております市場開放政策の中でアクションプログラムとOTOについて御説明をさせていただきます。資料といたしましては、お手元にOTOについての資料を配付いたしておると思います。  まず、アクションプログラムでございますけれども、これは先生方もう既に御承知かと思いますが、昨年の七月三十日に三カ年にわたる市場開放政策として決定されたわけでございます。原則自由、例外制限という基本的視点に立ちまして諸外国からの要請等も踏まえながら六つの分野にわたって決定いたしたわけでございます。すなわち第一が関税、第二が輸入制限、第三が基準・認証、輸入プロセス、第四が政府調達、第五が金融・資本市場、第六がサービス及び輸入促進でございます。  このアクションプログラムの実施につきましては、政府と与党が構成いたします対外経済対策推進本部、これは総理大臣が本部長でございますけれども、ここにアクションプログラム実行推進委員会というものを設置いたしまして、これは官房長官をヘッドといたします各省の事務次官から成る委員会でございますが、強力かつ着実に実行いたしてまいったわけでございます。  それで、一年たちました先ほど七月三十一日でございますけれども、一年にわたる計画実施状況のフォローアップというものを行いました。そこでも着実な実施がなされているということが判明いたしてございます。例えば関税の分野におきましては、既に千八百五十三品目の関税の撤廃または引き下げが実施されてございます。大部分はことしの一月一日から、それからワイン等四品目につきましては四月一日からでございます。  輸入制限の分野におきましては、皮革、革靴について輸入制限、数量制限を撤廃しておりますし、農産物十二品目につきましてはアメリカとの円滑な解決を目指して努力中であるわけでございます。  それから、一つの目玉でございました基準・認証の分野におきましても、七月までに決定事項八十八項目中の六十三項目が実施されてございます。今後とも私どもといたしましては関係省庁と協力しながら、所期の目標を完全に実施に移すべく努力してまいる所存でございます。  次に、OTOでございますが、これは英語の名前で恐縮でございますけれども、その資料をごらんいただきますと、市場開放問題苦情処理推進本部とちょっと長い名前になってございます。英語で申しますと、オフィス・オブ・トレード、それからインベストメントという投資も入りますが、オンブズマンという英語がございますけれども、そのオンブズマンのオフィスということでOTOという名前、英語になっているわけでございます。これは、輸入の検査手続等にかかわります市場開放問題に関する苦情を迅速かつ的確に処理するために、昭和五十七年の一月三十日の経済対策閣僚会議の決定に基づきまして発足した制度でございます。  本制度の機構図が次のページに書いてございますが、内閣官房副長官を本部長といたしまして、市場開放問題苦情処理推進本部、これの事務局を私ども経済企画庁調整局が務めているわけでございますが、そのもとにそこに書いてございますような関係十五省庁が一体となって苦情の処理を行う機関でございます。  一ページにお戻りいただきまして、OTOが発足いたしましてから現在、これは九月三日現在でございますが、それまでの苦情受け付け、処理状況がそこに書いてございますけれども、一番左上のところの合計という欄にございますように、全体で二百四十八件の苦情を受け付けまして、その下の「処理状況」をごらんいただきますと、「処理済」というところにございますが、二百四十二件処理を終了いたしてございます。  「申立者別」、上の②でございますけれども、ごらんいただきますと、国内の業者から百二十九件、外国業者から百十九件とほぼ半々でございます。外国の業者をさらに分けますと、アメリカが五十五、ECが三十三ということでございます。  「輸入先別」、これは国内の業者が扱っている苦情につきましてもアメリカからの輸入ということであれば米国からの輸入というところに分類されるわけでございますが、アメリカがやはり八十八件と一番多くなってございます。その次に西独を中心としたECが六十件というのがこれに次いでいるわけでございます。  処理済み二百四十二件のうち、これは右下の「処理済のものについて」の「処理分類」というのがございますけれども改善措置を講じましたものが八十件、それから事実関係等についての誤解を解きまして、これによって輸入促進的な効果を生じたものが六十九件ということで、それを合わせますと六割以上の事例について輸入促進的な処理を行ってきたということになろうかと存じます。  このOTOにおいて取りまとめました苦情の受け付け、処理状況は、その都度公表いたしますと同時に、在京の各国の大使館への説明会を開催いたしますとか、それから在外公館やジェトロの海外事務所にこれをPRしていただくということで、OTOの活動状況について積極的に説明することに努めているわけでございます。  それからもう一つ、OTOの活動を強化するという観点から、これはページ数で申しますと三ページ、四枚目になりますけれども、五十八年一月十三日の経済対策閣僚会議の決定によりまして、学識経験者から成る第三者機関といたしましてOTOの諮問会議の開催を決定いたしました。ここではOTOの運営方針や重要な個別の苦情案件、特に再度苦情申し立てのあった案件等に対する事項を審議し、御意見をいただいているところでございます。  なお、OTOは発足以来累次にわたりまして機能の強化を図ってきたところでございますけれども、さらにことしの五月一日の経済対策閣僚会議で決定されました経済構造調整推進要綱、これは前川リポートを踏まえまして、政府として経済構造調整を推進するための計画をつくったわけでございますが、その中において市場開放問題苦情処理推進本部の機能強化について本年中を目途に検討を進めるという決定になってございまして、それを受けましてさらにOTOの機能強化を現在鋭意検討を進めているところでございます。  以上でございます。
  19. 加藤武徳

    会長加藤武徳君) ありがとうございました。  それでは最後に、経企庁の菅野審議官からお願いいたします。
  20. 菅野剛

    説明員(菅野剛君) 調整局審議官の菅野でございます。  私からは経済協力について御説明いたします。ただし、経済協力全般につきましては先ほど外務省の川上参事官から御説明がございましたので省略さしていただきます。私からは政府開発援助のほぼ半ばを占める円借款について、その実施機関を監督いたしております立場から簡潔に御説明いたしたいと思います。  円借款につきましては、これは政府開発援助全体の、予算ベースで見ますと約五割を占めるということで重要な役割を果たしておるところでございます。それで、これまでの円借款の供与の状況を見てまいりますと、まずその地域的な分布でございますけれども、円借款の供与実績総額の中でアジアが約八割を占めている、さらにASEANが全体の四割ということでございまして、地域的な配分は日本の地理的、経済関係の強さというものを反映したものになっているということでございます。  また次に、どういう部門に円借款が供与されているかというその使途別に見ますと、電力、ガス、運輸、通信が約五割強を占めております。インフラストラクチャーの整備を中心とした供与になっておるところでございます。ただ、近年では教育施設、上下水道の整備といった社会的サービスの供与等の割合も漸次増大してきておるというところでございます。  以上がこれまでの実績でございますけれども、今後円借款を進めるに当たって重要であるという点をごくかいつまんで二、三申し上げたいと思います。  一つは、我が国の円借款はこれまでどちらかというとプロジェクト借款が中心という形で進められてきておりますけれども、現在の開発途上国の経済の困難ということを考えますと、多様化、弾力化を図っていくことが必要であろうと考えておるところでございます。国際収支の悪化には国際収支の悪化をサポート、支援していくという形の援助形態も必要でございましょうし、国内の開発事業が国内資金の不足によって進まない場合には内貨融資を弾力的に行っていくというようなことを通じましてその多様化、弾力化を図るということが重要であろうということでございます。  それから第二点は、国際開発金融機関でございます世界銀行との協調融資というものを重視していく必要があるということでございます。世界銀行との協調融資を通じまして、これまで実績の少なかったアフリカの後発途上国への供与ということが進むことになると思うわけでございます。  それから第三点は、これは先ほど外務省の川上参事官からもございましたけれども、円借款の実施の適正、効果的な実施ということに一層努めてまいるということが必要であると考えております。このため非供与国との政策対話の充実、優良案件の発掘活動の強化、案件の中間管理、事後評価の充実ということを図っていくことが必要であると考えているところでございます。また、この実施方法につきまして、改善すべき点については目下関係省庁の間で検討を進めておるところでございます。  以上でございます。
  21. 加藤武徳

    会長加藤武徳君) ありがとうございました。  以上で各省庁説明聴取は終了いたしました。  ただいまの説明に対する質疑は午後から行うわけでございますが、午後一時十分再開することとし、休憩いたします。    午後零時二十一分休憩      ─────・─────    午後一時十一分開会
  22. 加藤武徳

    会長加藤武徳君) ただいまから外交総合安全保障に関する調査会を再開いたします。  午前に引き続き、外交総合安全保障に関する調査のうち、国際情勢認識に関する件を議題といたします。  午前中、各省庁から説明を聴取いたしましたので、これより質疑を行います。  質疑のおありの方は順次御発言願います。
  23. 杉元恒雄

    杉元恒雄君 政府は、ゴルバチョフ来日を来年の一月に実現させるために外交ルートでの調整に努力しておられます。またソ連の方も、これに、時期はともかく、それなりの対応を見せているように認識しておりますが、この作業はどんなぐあいに進んでおりまして、見通しはどういうぐあいであるのか、御答弁いただきたいと思います。
  24. 新井弘一

    政府委員新井弘一君) ゴルバチョフの訪日に関しましては、御承知のとおり、日本側から八月の初旬に在京ソ連大使館を通じまして、十二月または一月に訪日を歓迎するというその招待を出してございます。これに対しまして九月二十四日、倉成外務大臣が国連総会御出席の機会にシェワルナゼ外務大臣と会談した際、この訪日日程についてのこちらからの質問に対しシェワルナゼは、現在米ソ関係にまだ懸案が残っている、その他国内の日程これあり年内の訪日は困難である、いずれ追って、一定の時期を置いて日本側に通報する、そういう回答をしたわけでございます。したがいまして、ソ連としてはゴルバチョフ書記長の訪日については原則的に決定している、ただし、諸般の国際状況、なかんずく米ソ関係ということで今の時点では決めあぐねているという状況かと理解しております。
  25. 杉元恒雄

    杉元恒雄君 大変恐縮ですが、時間がないものですから、なるべく簡明にひとつお願いをいたしたいと思います。  もしゴルバチョフ訪日が実現しますと、これは聞くところによりますと、帝政ロシアそれからソ連を通じてソ連の最高首脳が日本を訪れるというのは初めてのことだそうであります。そういうことでありますから、これはもう画期的なことでありますし、また意義の深いことでありますから、日本は国民挙げて歓迎するだろうと思うわけです。しかしそれと同時に、国民は、この機会に年来の悲願である北方領土の返還実現に向かって一歩でも二歩でも前進するということを祈るような気持ちで期待しておると思いますが、こういうことについての御認識はいかがでございますか。
  26. 新井弘一

    政府委員新井弘一君) 御説のとおり、ゴルバチョフ書記長の来日を歓迎いたします。それと同時に、この機会を利用してこの訪日が日ソ関係を安定的な基礎に置く、そのための大きな前進になるという結果をもたらすよう我々は期待しております。なかんずく北方領土問題ということが日ソ関係ののどに刺さった骨でございます。
  27. 杉元恒雄

    杉元恒雄君 さて、ゴルバチョフ書記長は去る七月二十八日、ウラジオストク市で演説をいたしました。その中で、日本との合弁企業の設立を希望しておる、またさらに、従来は非難し続けてきた環太平洋構想について経済面で参加したいという意思を表明しておるわけであります。これはソ連がシベリア沿岸地方の経済開発を日本の資本、技術面での協力によって進め、さらにその地域での産物の市場を太平洋諸国へ拡大していきたい、これについても日本の協力を期待していると思いますけれども、政府の御見解はいかがでございますか。
  28. 新井弘一

    政府委員新井弘一君) ただいま先生が言及なさいましたゴルバチョフウラジオ演説の中で彼は、日本には経済外交なるものがある、この経済外交を日ソ関係に適用したらどうかということを言っております。したがいまして、そのゴルバチョフの考え方はただいま先生がいみじくもおっしゃった点に尽きるかと思います。私どもは、経済経済としてできるだけ相互互恵という条件がかなえられるということであればこれは民間レベルで推進する、これは結構なことだと思いますが、政府レベル、政府の考え方としては、同時に領土問題という問題がございますので政経は不可分という態度を堅持しております。
  29. 杉元恒雄

    杉元恒雄君 私は、日ソ首脳会談ではこの経済問題がソ連側から問題として出てくる、こういうように思います。そこで日本側が経済問題について何らかの協力を約束して、しかも北方領土問題については去る一月の安倍・シェワルナゼ外相会談の程度を出ないというようなことであるとすれば、国民の落胆は非常に大きなものがあって、ひいては日ソの友好にも影響しかねない、こういうぐあいに考えますが、政府の御見解をお願いします。
  30. 新井弘一

    政府委員新井弘一君) 先ほどの答弁を繰り返しますけれども、我が方としてはあくまで政経不可分という原則のもとに対処したいというふうに考えております。したがいまして、日ソ関係の全般的な関係基本的な領土問題を解決して平和条約を締結するという問題を抜きに、他の問題がより先行するという状況は私ども望ましくないと考えております。
  31. 杉元恒雄

    杉元恒雄君 そのことについては言葉は悪いですけれども食い逃げされないように、国民の悲願を少しでも前進してこたえる、こういうぐあいに御努力をお願いいたしたいと思います。  ソ連は太平洋諸国に対して、最近、入漁料等の経済問題を絡めて接近を図っているようであります。また、ゴルバチョフ書記長演説の中では、パプアニューギニア、西サモア、トンガ王国、フィジー、キリバス共和国、ナウル共和国、ツバル、バスアツ共和国等の名前をこれは珍しいことに一々挙げて、ソ連がそれらの国々に接近したその実績を誇示しているような演説をしているわけであります。言ってみますれば、ソ連はそれらの国々に非常なアプローチをしておる。一方米国はその間において配慮が足りなかったのか、最近耳にするところでは、これらの国々が西側から離れてソ連に接近しつつあるというようなことさえ私どもの耳に入りますが、もしそういう事実があるとすると、またそういう傾向がこれ以上進行していくというと、将来これらの国々にソ連軍事的な橋頭堡をつくるということも考えられないわけじゃありません。そういうことになりますと、アジア・太平洋における米ソ軍事バランスに影響してまいりまして、日米の抑止力そのものに影響する、これを減殺するようになりかねないと思いますけれども、いかがでございますか。
  32. 新井弘一

    政府委員新井弘一君) おっしゃいますとおり、最近ソ連の南太平洋地域に対する漁業協定を通ずる活躍というのが顕著な趣を呈しております。ただ実際問題といたしまして、この南太平洋地域には一九七〇年代からフィジーとの例えば外交関係の開設等を通じまして、着々手は打ちつつあったという状況でございます。ところが最近は特に二、三の国に対して、先生おっしゃったようなそういう態度に出てきたということで、私どもも注目をしております。ゴルバチョフウラジオ演説を見ましても、かなりソ連意図というのは政治的な色彩が強いということで、西側としてもガードを下げないような対応が必要かと思っております。
  33. 杉元恒雄

    杉元恒雄君 最近ある新聞で読みましたが、ソ連の有力な政策ブレーンの一人であるアルバトフ米国・カナダ研究所所長が東西の共存共栄を主張するというような記事を読みました。耳にするところによりますと、共存共栄というような雰囲気を出す傾向がソ連側に出てきたのだということでありますが、私どもはかつてのデタント期、七〇年代の経験を持っております。さて、ソ連のこのような動きは今までの経験に照らして考えると、西側を安心さしておいて、そして自分の方の勢力を伸ばそうという、いわばそのまま信頼できないようなものでございましたが、今度の動き、近年の動きについて政府はどのように考えておられるか、お話しを願いたいのです。
  34. 新井弘一

    政府委員新井弘一君) 午前中、私の冒頭説明でも申し上げましたけれども、確かにゴルバチョフ政権登場以来ソ連のスタイルの変化というものが認められる。一つは非常にソフトな物の言い方をしている。もう一つ外交のアプローチが非常に多面的である。ただ私どもも一九七〇年代のデタント期における苦い経験、これはしっかりと胸に受けとめております。そういう観点からこのゴルバチョフの発言が、あるいはやっていることが単なるPRなのかどうか、あるいは本当に関係改善のためにソ連としてコストを払う用意があるのか、これを慎重に見きわめる必要があるというふうに感じております。
  35. 杉元恒雄

    杉元恒雄君 過般のウルグアイのプンタデルエステにおけるガット閣僚会議について関連してお尋ねいたしますが、これは先ほども話がありましたように、国際的に高まりつつある保護主義に対抗して自由貿易体制を維持強化しようとする、そのためには大きな成果だと言えると思います。  そして、これは昭和五十八年十一月九日、レーガン大統領が来日した際に中曽根総理が準備の開始を提唱して、レーガンさんがこれに同意をしたということがきっかけだというように承知しております。したがって、我が国はそれ以来この旗振りとしてその準備のために努力をしてきた経過があるわけであります。今度の閣僚会議なども、各国間の利害の調整に外務大臣初め外務省の皆さん御努力をされまして、そして全会一致で開始宣言ができるというところまでまいりました。皆さんの御努力に敬意を表したい、こう思っております。  そこで、これから日本は、この経過からして日本の国際的責任が大きくなってくるわけでありますが、そういうことは、それだけ国民に協力させるというか、国民に苦労を忍ばせるという性質を持ったものです。ところが、一般の国民はガットとか新ラウンドというようなものが余りに広範の分野にわたっている、仕組みも複雑だというようなことでなじみがなく、理解も十分ではないと思うわけです。国際的にはそういう責任がある、国民に苦労させる、その国民が余りよく知っていない、こういうようなことからお聞きしたいと思うんですが、時間がありませんからごく簡単にお聞きします。簡単にひとつお願いします。  まず、第一番目はサービス貿易についてでありますが、これは日本のような先進国の方がむしろ影響が大きいんだ。アメリカだとかイギリスとか、そういう銀行、証券の部分ですぐれているところが日本にこれからどんどん押し寄せてくる。これに対応するのに日本の国内ではいろいろな問題が出てくるんじゃないか。それでも日本推進役であった責任から、これはもう我慢して自由化に踏み切っていかなきゃいけないという状態にある。  また、利益の均衡の日本プロブレムの問題ですが、結論から申し上げますと、これは合意ができたわけではございませんで、解決したわけじゃない。両方の意見を議長が宣言の中に入れないで説明のときに併記したということである。  私の言いたいのは、これは問題は解決したんではない。これから議論になる種が残っておるんです。この問題はこれから日本は今後もこういうふうに受け身の姿でやっていく状態です。これが第二点です。  農業問題については、宣言の中で農産物貿易の一層の自由化がうたわれております。今後、新ラウンドの具体的交渉の場で我が国の輸入制限の問題が議論の対象になると思われますが、この際政府の対応について。  三点申し上げましたが、ごく短くお願いできればありがたいと思います。
  36. 池田廸彦

    政府委員(池田廸彦君) お答え申し上げます。  まず、サービスでございますが、これはどのような分野を取り上げるかということは実はこれから交渉することで今決まっております。ですから、例えば金融なら金融のものを取り上げることになったということが決まっているわけではございません。  それから二番目に、必ずしも日本が弱くてアメリカが強いという関係でもございませんので、例えば金融につきましては、フランスならフランスはそれなりの問題がございます。したがって、そういうそれぞれ各国強弱を持ったものを多国間の場で話し合うことによって全体としてのバランスのとれたものが国際合意として成立していく。その意味では多国間交渉の利益というものはあるんだと思います。二国間でもろもろの圧力のもとでのみにくいものをのまされるという事態は回避されるだろう、かように思っております。  それから二番目、利益の均衡、御指摘のように問題は本質的に解決いたしておりません。これに対しましては、恐らくはまず第一に、例えば具体的にはECの日本に提起しております個別の案件、これは対して粘り強く交渉をして譲れるものは譲ってあげる。それからもう一つ、中長期の対策としましては、やはり日本の構造改善というものを進めていく、こちらが本当の解決の筋道だろうと思います。交渉につきましてはあくまでも、全体としての利益の均衡でございませんで、相互主義を貫徹してまいりたい、かように考えております。  それから農業につきましては、ただいま御指摘のような文言が含まれておりますが、実は非常に工夫した文言でございます。その中にはもう一つ、農業の特別な性格に留意して、という言葉が入っております。農業につきましては日本だけではございませんで、例えばスイス、例えば北欧等輸入国として、それからまた、もろもろの理由で農業保護を持っている国が多数ございます。こういう国と輸出国とがやはり一堂に会して、お互いに納得のできる農業貿易の枠組みをつくる。ここでもサービスと同じで、それぞれの国情を反映して、国際的な、みんなが納得するルールができるという意味でやはり多国間の交渉の有意性というものがあると思っています。  もちろん、最初に御指摘のように、これらにつきましては関係皆様方にこれからよく御説明申し上げて、国内的な合意を形成した上で交渉に臨む、これが全体に通ずる基本的な姿勢でございます。
  37. 杉元恒雄

    杉元恒雄君 この新ラウンドは、今までの経過からして、国民全体の課題として国民の理解と協力を得られなければやっていけない、こういう問題であります。  そこで私は、国民に問題の所在を、問題点を明らかにしてPRをしっかりやる。もう一つは、外務大臣は新ラウンド懇談会を設けて民間の意見を広く求めていらっしゃるということを聞いておりますが、それだけでなく、一般の国民に向けて新ラウンドに対するPRが徹底するようにすると同時に、今度民意を吸収するというような制度を考えたらどうかという提案なんですが、制度を考えて、そのPRと民意の吸収ができるようなぐあいにお努めになってはいかがか、こう思いますが、いかがでございますか。
  38. 池田廸彦

    政府委員(池田廸彦君) まことに時宜に通した御指摘だと思います。まず、国民の皆様の前に、例えば本調査会委員の方々のところにもお許しをいただければ、私どもどしどし参上さしていただきまして御説明申し上げたいと思います。  それから二番目に、これは外務省だけでできる仕事ではございません。関係の各省庁がしっかりスクラムを組みまして政府としての考え方をまとめ、その過程でそれぞれ国民の皆様方、各業種の皆様方の御意見を伺うという形で進めてまいりたいと思います。  御提案につきましては研究させていただきたいと思います。
  39. 杉元恒雄

    杉元恒雄君 最後になると思いますが、ウルグアイ・ラウンドにつきまして、ソ連中国が参加の意思表明をしていたと聞いておりますが、その後どうなりましたのか、そしてそれはどういうわけでどうなったのか、こういう御説明をいただきたいと思います。
  40. 池田廸彦

    政府委員(池田廸彦君) 中国につきましては、ほぼ確実に新ラウンド交渉に参加することになると思われます。それからソ連につきましては、ウルグアイの宣言ではソ連参加の道は閉ざされております。  この差は、ここ数年来中国は、例えば関税制度を大幅に改正するとか、それから通関の手続などをガットのルールにのっとったものに変えるとか、ガットの事務局の職員を年に三、四人ぐらいの割合で呼びまして、非常に、言葉は適当かどうか知りませんが、勉強して、制度を合わせておるという事実がございます。片やソ連につきましては、少なくとも今までのところそういう動きはございません。やはり交渉でございますから、交渉は密室の中でやるわけで、当たり前でございますけれども、相当本音の情報をお互いに交換するわけでございます。これは、ガットのメンバーになるという意思がはっきりしているものでないと簡単には入れるわけにはいかないという事情がございますので、その間に差が出ているわけでございます。
  41. 杉元恒雄

    杉元恒雄君 いろいろ御丁寧にありがとうございました。  最後にひとつ重ねてお願いしておきますが、四島一括返還、政経不可分、この方針で今度の一迎の問題に取りかかっていただくようにお願いを申し上げまして質問を終わります。どうもありがとうございました。
  42. 永野茂門

    永野茂門君 防衛庁の瀬木参事官が手をこまぬいていらっしゃるようでございますので、最初に防衛庁の方に質問をいたします。  先ほどの説明で、米国はいかなる規模態様の核攻撃に対しても対応し得る能力、そしてまた意志を明確に示して抑止することが核戦略の基本である、こういうふうに述べられ、また、全般的には抑止力が十分維持されておる、こういうふうな御説明でありました。御承知のように、また説明の中でも触れられましたように、米国ソ連の第一撃に対するサバイバビリティー、生存性については必ずしも十分にはなおなっていないと評価されます。したがいまして、いわゆる脆弱性の窓というものについては今大体改善の終わりの段階であるだろうと思いますけれども改善されつつある状況にある、それらを含んで全体として抑止力が十分作用しておる、こういうふうに評価されておると聞いたわけでございますが、そういうふうに理解してよろしゅうございましょうか。
  43. 瀬木博基

    政府委員(瀬木博基君) ただいま先生のおっしゃられたとおりだと思います。レーガン政権が発足した当時、先生も引用されましたように脆弱性の窓というものの存在がある、これを何とか改善していかないと抑止力に問題があるということが米国の問題意識であったと思います。その問題意識のもとに、いわゆる核戦力の三本柱と言われております中の特に戦略爆撃機についての改善、すなわちB52に巡航ミサイルを積むことであるとか、B1Bという戦略爆撃機を開発する、またSLBMというものを積んだ潜水艦を新しい形、オハイオ型を就役させるというような形で改善を進めておるわけでございます。さらに今後の課題として、小型のICBM、ミゼットマンと俗称されておりますけれども、こういうものを開発するというようなことで脆弱性を逐次改善しつつあるというのが現状であると思います。
  44. 永野茂門

    永野茂門君 そもそも抑止力というものは総合的なものであり、核抑止力においての信憑性は常にあいまいさを含んでおる、こういうものであろうと思います。したがって、ここにこそ通常戦力のバランスが重要であり、また、最近米国SDIという防衛システムを開発するといいますか研究することによって核抑止力を補完しよう、それで最終的には核の無力化を図ろうとしておる意義があると思うのでありますが、通常戦力の核時代における価値あるいはSDIの価値の一つについてそういうふうに理解してよろしいでしょうか。
  45. 瀬木博基

    政府委員(瀬木博基君) 先生も御案内のとおり、核戦争というものは戦うことのできない、また戦うべきでない戦争であります。核はいわゆる最終兵器と言われているわけでございまして、核というものが相互ににらみ合っているということで最終的な抑止はとられているものの、こういう形で果たして世界の抑止が保たれることが道徳的にも許されるであろうかという、そういう発想からSDI、すなわちMADと言われる相互確実破壊から相互確実保障というものに移ろうとしているのがSDIの根本的な思想であると思います。こういう中にありまして、将来はSDI構想に移るといたしましても、現状においては核の均衡というものによって最終的な均衡が保たれているというのが現状でございますが、その中にあってやはりますます通常兵力の均衡状態というか抑止の力というものの役割が高まっている、これはまさに先生の御指摘のとおりであると存じております。
  46. 永野茂門

    永野茂門君 次は中国のことでございますが、中国は国防の近代化を進め、そして統合作戦能力と即応能力重視の戦略に移行しつつある、つまり近代戦遂行能力を保有しようとして努力を始めておるというふうに説明されましたけれども日本を含む西側立場から見ますと、対ソ牽制力あるいは拘束力として中国の戦力というものが有効に作用することが有利であるというふうに考えられます。それは戦争を抑止するという立場からそういうふうに考えられますけれども中国の戦力はそういうような拘束力、抑止力としておおむね十分な状態になりつつあるというふうに見られますか、それにはなお時間がかかると観察されますか。
  47. 瀬木博基

    政府委員(瀬木博基君) 先ほど御説明申し上げましたとおり、中ソの国境付近におきましては依然としてソ連及び中国の大師団が対峙しておるという状態は変わっておりません。この両方の勢力を見ますと、数の上ではこれは中国の陸上勢力というものは世界一の数でございます。したがいまして、ソ連の陸軍というものを大きく数の上でしのいでいることは間違いございません。他方、機動力、火力のいずれの面をとりましてもソ連の比ではない、中国はやはりとてもそれは対抗できる力を持っているというわけでないことは、これは否定できないだろうと思います。しかしながら、御存じのとおり中国というのは広大な国土を持っておる。また膨大な人口を持っておるわけでございまして、この持つ、言ってみれば消極的ではあるけれども大きな力というものは無視できないものがあるんだろうと思います。  それに加えまして、中国は独自の核戦力を持っております。この核戦力が中国という、開放はされつつあるものの、その国情からして核戦力を隠すという力は非常に大きいわけでございまして、隠ぺい性というものを伴った核の力はかなりのものがある。  さらに加えて、先ほども説明いたしましたSLBMの独自の開発も進めておるということでございますので、こういうものがいろいろ相まちますとソ連にとりましてもとても無視することのできないものであるという意味において、対ソ牽制力が非常に大きいと見られるのではないかと思います。
  48. 永野茂門

    永野茂門君 現在、米国中国軍の近代化について大変な支援を行いつつあります。本日ただいまも国防長官が中国にあっていろいろと調整をしておると見られます。本件は、ただいま申し上げましたような趣旨から申しまして当分の間極めて重要で、日本にとってもまたアジアの平和にとっても大事なことであると思いますけれども、また中国の強大化というのは一方では遠い将来を考えますと両刃の剣であっていろいろ問題点を生ずると思います。また、先ほどの新井局長の御説明の中にも、中国米ソ等距離外交をとりつつあるという御説明でございましたが、中国の国際に対する態度というものはそういうものであろうと思います。  そういう関係で、米国の対中軍事近代化支援については日米は十分な調整を行わなければならないと思いますけれども、これについてはどういうふうな調整が行われておりますでしょうか、もし御答弁できるならばしていただきたいと思います。どちらでも結構です、外務省でも……。
  49. 瀬木博基

    政府委員(瀬木博基君) 米国は、近代化を進め、安定的であり、かつ開放的な中国というものを望んでおります。この点につきましては日本も同様でございます。そういうような認識のもとに、米国は防衛的な中国中国人民解放軍の近代化というものを支援するという方針で進めておると承知いたしております。そういう形で、日本アメリカとの間で特に協議をするという問題ではございませんけれども、そういう基本的な方針で米国中国に対する軍事協力を進めていくという基本方針は我々も承知しているところでございます。
  50. 永野茂門

    永野茂門君 次は北鮮の問題でありますが、北鮮ソ連との間の軍事面での協力が強化されておるという御説明がありましたが、具体的にはどういうことであり、それはまた日本でありますとか、韓国でありますとか、こういうところの防衛にとって、あるいはまた極東、北東アジアの安定にとってどういう影響をもたらすと評価されますか。
  51. 瀬木博基

    政府委員(瀬木博基君) 先ほどの午前中の説明でも概要を申し上げたつもりでございますけれども、具体的には次のような軍事的な交流ないしは協力があると承知いたしております。  まず第一は、最近の目立った現象といたしまして、ソ連軍用機の北鮮領空の通過でございます。この通過によりましてソ連の軍用機は、従来日本海を伝わって南下していたものでありますが、それに加えて南下の新しいルートを獲得したということでございます。  もう一つの現象として見られることは、ソ連から北朝鮮に対する新型の兵器、すなわちミグ23というような最新の戦闘機及びSA3というような地対空ミサイルの供与があるということでございます。  第三番目の現象といたしましては、いろいろな面での軍事交流が行われている。すなわち代表団の相互訪問あるいは空軍部隊、海軍艦艇の相互訪問というものでございます。この海軍艦艇の訪問、なかんずくソ連の北朝鮮海軍訪問というものについては種々の情報がございまして、東側の港の元山というもののみならず、西にも行っているんではないかというような報道がございますけれども、この点は我々確認いたしておりません。
  52. 永野茂門

    永野茂門君 防衛庁に対する質問を終わります。  次は、外務省にお願いいたします。  最初に、テロ問題でありますけれども、核兵器の時代であり、そしてまた、通常兵器が極めて強大になった段階においては、戦争手段はかなり制約されてきております。特に国力の小さい国、軍事力の小さい国が国策の遂行手段としてテロを使用しようとすることは当然の流れであるかもしれません。そしてまた、それだけではなくて、大国におきましても、例えばソ連のスペッナッツでありますとか北鮮の特殊部隊でありますとか、あるいはこれらに対する防御あるいは防衛を考えるという面を含みます米国のスペシャルフォースでありますとか、こういうふうに大国においてもテロを訓練し、あるいはテロと連絡をしながら非正規戦を行うという手段を極めて重要視して、このごろ整備をしてきております。したがいまして、これは単なる治安対象的なものではなくて、国策遂行手段、つまり戦争手段として我々は認識しなきゃいけないのではないか、こういうふうに観察いたします。  そこで、国際テロと称せられるテロの集団といいますかテロ軍団は、訓練基地として、新聞によりますとシリアでありますとかリビアでありますとか、あるいはイランでありますとか北鮮でありますとか、あるいはキューバでありますとか、そういうところに訓練基地を持ち、また兵器補給基地を持ち、資金源を持ち、いろいろな連帯があるやに新聞には書かれておりますが、現在こういうところにおいてなお活発な訓練が行われておるのであろうかということ、あるいはさらに日本赤軍というものはこういうところとの関連において現在どういう活動をやっておるのであろうかということを御説明いただきたいと思います。もしまた、スペツナッツ等との関連が御説明できれば、御説明できなければ結構でございます、御説明をお願いいたします。
  53. 新井弘一

    政府委員新井弘一君) ただいま先生からも既に十分御説明がありましたように、国際テロ組織、多方面で、多地域でそれぞれ連携をとって種種の画策あるいは爆破事件等を起こしているといった点、我々も極めて強い関心を持って注視し、その対策を関係諸国との協議を通じまして実施しているという状況でございます。ただ、具体的にどういう国際テロ組織があって、それが具体的にはどういうような連携活動をやっているかということにつきましては、対策自体との関連がございますので詳しい御報告ができない、大変残念でございます。  ただ、二番目に先生から日本赤軍の動向について言及がございましたので、これについて若干の我々が承知している情報を御披露いたしますと、御承知のとおり昭和五十七年にパレスチナのゲリラが西ベイルートを撤退した。その結果、日本赤軍はレバノンのべッカー高原に現在も所在しているということは確実かと思います。現に重信房子等もこのべッカー高原の郊外において日本の報道関係者と会見したという報道もございます。さらに、例のイスラエルのテルアビブ空港事件でございましたか、あのときの岡本公三、彼も昨年釈放されて現在べッカー高原にいる。そして、日本赤軍は釈放のときの声明におきましても引き続き武力闘争の方針を堅持するという声明を発表しております。さらに、これはまたけさの御説明で若干触れましたけれども、先日のジャカルタの手製弾事件に関連いたしまして、赤軍のメンバーがこれに関与しているという疑いがございます。我々はこの点いろいろ情報等を収集し、その警戒を高めていくという状況でございます。
  54. 永野茂門

    永野茂門君 次は、軍備管理問題あるいは首脳会談問題について御質問申し上げます。  世界の平和を保つために、あるいは安定を保つために軍事力のバランスを維持するということが一方で極めて重要であると同様に、その軍事均衡レベルが低いことは極めて好ましいことであることは皆さん百も承知のとおりでありますが、特に日本のように軍事力の弱い国においては、近隣諸国との関係において低いレベルにおけるバランスをとるということは極めて重要であると思います。ところが、従来行われてきました米ソ首脳会談でありますとか米ソの外相会議でありますとか、あるいはジュネーブにふける軍縮会議等において取り上げられます内容は戦略兵器であり、そしてまたせいぜい西域のINFであり、あるいは化学兵器であり、そしてまた最近のごとくこれらと関連するSDI問題であって、それぞれのローカルにおける、例えば日本のような地域における、日本周辺におけるような軍事バランスをどういうふうに低くするかということについては言及がなされません、討議がなされませんし、したがってその協定が行われません。  米ソ首脳会談において最近は、極東におけるSS20の削減ないしは撤廃問題について若干の話し合いが行われるような機運にはあるわけでありますけれども、これも新聞等によりますと、今度の米ソ首脳会談においてはあるいは変な妥協が行われるかもしれないというような推測記事が書かれるほどでありますし、とにかく極東地域というのはどうやら大国間のそういう平和維持努力の一つの穴になる可能性、おそれを持っておるというふうに観察するものであります。  幸いにといいますか、ソ連はヘルシンキ会議のアジア版でありますとか、あるいは太平洋における海軍の演習の制限でありますとか、あるいは信頼醸成措置でありますとか、その他の兵力引き離し的なそういうことについて米国との協定を提案するというようなことを八月ごろからカピッツァなどが行っておりますし、ヘルシンキ会議でありますとかアジア安保等についてはゴルバチョフも、先ほどから話がありましたようにずっと提唱をしております。これらにおいて日本が、例えば北方四島からの撤兵でありますとか、オホーツク海における演習の制限、相互監視、あるいは日本の防衛に非常に難しい問題を投げかけておりますところのソ連が保有しておる短距離両用SSMの兵力引き離しというようなこと、これは単に思いつきの問題でございますけれども、そういうことを問題に取り上げて米国を通じて折衝するなりするというようなことは、外務省においてはあるいはまた防衛庁においては御検討なさっておるでしょうか、一口でお答えを願います。
  55. 新井弘一

    政府委員新井弘一君) 例えばSS20の問題をとりましても、これについての米ソ交渉に際しましては十分アジア安全保障を適切に考慮して行うよう米側にも強く再三にわたって申し入れてあり、米側もよくこれを承知していると思います。それからソ連太平洋政策、例えばアジア安保、ヘルシンキ型の太平洋会議構想等につきましては、私どもはまずソ連が言葉より行動で示すことである、それには北方領土から兵隊を引き揚げるということが先決だということで、再々その点強く主張しております。
  56. 永野茂門

    永野茂門君 以上をもって質問を終わりますけれども、最近のデタントムード、特にソ連からのいろいろな働きかけというものは、日米だけではなくて自由陣営における諸国の分断を図るねらいも含まれておるように思われますし、また従来の状況から見まして、例えば首脳会談の終わった直後にいろいろな事件が起きておるということは我我は想起しなければならないと思います。デタントの中においてソ連が勢力を拡張したとか、あるいは軍事力を継続して増強したというようなことは、先ほども質問の中にあるいは十分に入っておったと思いますので繰り返しませんけれども、キューバクライシスも首脳会談の翌年でありましたし、アフガニスタンに侵入したのも米ソ首脳会談の翌年でありましたし、あるいはまた、サイゴン陥落も米ソ首脳会談の翌年であったということは我々は忘れてはならないと思います。したがいまして、一方でゴルバチョフソ連の呼びかけには慎重に漸進的に対処しながら、かつ今申し上げたようなことを十分考慮しながら対応していただきたいと思います。  北方四島につきましては、二島分離論等が出ておりますけれども、これには全く惑わされることなく、しっかりとやっていただきたいと思います。  以上をもって私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
  57. 志苫裕

    志苫裕君 きょうは国際情勢認識ということで、政治軍事経済について政府の認識を伺ったわけでありますが、率直に言ってこの程度の認識かなという感じがしないわけでもないので、若干私の感想から申し上げて中身に入ろうと思うんです。  なお、経済問題は私の方では大木委員が質問しますので御了承をいただきたいと思うんです。  外務省防衛庁からまず政治軍事について伺ったのですが、スタンスというんですか、特に軍事情勢の報告を伺う限り、原則的なスタンスが、西側の一員というスタンスがありますから、世の中を西と東に大まかに分けてしまって、向こうとこっちという考え方で物をとらえる。向こうの方はこれだけのことをやっておるが、こっちはこの程度だという、何かそういう物のつかまえ方をしておられることに私はいささかがっかりしました。もちろんそういう局面もありますけれども世界に打数十カ国があって、大なり小なりそれぞれみんな主権を持った国家であって、それぞれのポジションを得ていると思うんですが、どうして外交の場合でも軍事の場合でも西と東というふうに分けてしまって、向こうでなければこっちだ、こっちでなければ向こうだと。むしろ世界はそれぞれさまざまな多様な主権国家の集まりであるというとらえ方から国際情勢認識するという立場には立たないものなんでしょうか、その点まず伺います。
  58. 新井弘一

    政府委員新井弘一君) おっしゃるとおり、東と西というような形で世界が対峙しないで、相互にそれぞれ主権国家としての立場で交流、協力、拡大を追求する、これはまさに我々が意図していることでございます。そういう状況国際社会にあらわれるということが我々は最も待望していることでございます。ただ遺憾ながら、これはもう先生に御説明する必要もございませんけれども、戦後四十年の歴史、そもそもの戦後の世界情勢というものを見ますと、遺憾ながら鉄のカーテンから事態が始まったという現実がございます。この客観的な事実は無視することはできないわけでございます。
  59. 志苫裕

    志苫裕君 ちょっと今のついでに聞きますが、例えばこれは少し総論で申しわけない、認識の仕方の問題ですから。外務省がお出しになっている外交青書、外交白書ですね、今あなたがお答えになったような論調で別に戦後ずっとやってきたわけでもないわけで、例えば、俗に言う防衛白書のスタンスと似たような記述になりました自由主義諸国の一員としての外交という外交スタンスを入れ始めたのは、前にもそれに近い表現がございましたけれども、そういう表題でくくって外交スタンスをあらわしたのは五十七、八年ごろでしたね。何か急激に変化をしなければならぬような世界状況並びに認識の仕方なりというものは変わったんですか。
  60. 新井弘一

    政府委員新井弘一君) 戦後の事実を一つ簡単に日本との関係で指摘しますと、日本は平和条約の調印によって独立を回復した、ソ連はこの平和条約の調印を拒否したという事態がございます。日本としてはその時点から西側との関係、これに事実上その中のメンバーとして政治経済その他の活動ということをやってきた。七〇年代の終わりになりましてソ連のアフガニスタン侵略が始まった。同時に、それに前後しましてソ連世界規模における極めて不都合な状況の醸成というものがあった。そういうことから、そういう客観的な国際情勢というものを反映して、なおかつその時点では日本もGNPにおいて世界の最も高い国になったということで国際政治で責任を持つ、そういう二つの要素が加わりまして西側の一員、これは当然のことながら既にそういう客観的な事実はあったわけでございますけれども日本として貢献するという立場から標語をより明確に打ち出した、そういう経緯があるのではないかというふうに理解しております。
  61. 志苫裕

    志苫裕君 そうすると、これからの見方もあるが、多分に国際情勢変化でうたい上げ方も違うと思うんですが、三木内閣のときには恐らく等距離外交といったんじゃないかと思うんです。それから福田内閣になりますと全方位外交、それから大平内閣は西側基軸という表現を使ったかもしれませんね。そして鈴木内閣になって西側の一員、こうですな、中曽根内閣でしたかね。こういう変遷をたどっておるんです。したがって、そういうスタンスの取り方でやっぱり題材の取り上げ方も分析の仕方も処理の仕方も変わっていくことはこれはやむを得ないことだと思うんですが、どうも基本的には七九年末のソ連アフガン進出、あるいは侵略というんですが、それで我々も物の見方や考え方やスタンスを変えたというふうに受けとめればいいんですか、今の脈絡でいうと。
  62. 新井弘一

    政府委員新井弘一君) 日本のスタンスとの関係で、国際的な客観情勢変化というものが一つの重要な関係を持つ。私はその例示としてアフガニスタンへのソ連の侵攻を挙げたわけでございますけれども、もちろんその基調としては、日本が自由陣営の一員であるというそのことのよって来る最大のポイントは、言うまでもなく、日本が自由民主主義という価値観を西側諸国と共有するということがそもそもの出発点でございます。それが源でございます。
  63. 志苫裕

    志苫裕君 それでも外交青書を拝見したり、また外務省の先ほどのお話を聞きますと、軍事情勢を述べた防衛庁とはちょっとはニュアンスは違いがある。極端なのはどうも軍事報告だなという感じがいたしました。  まず、全般的な国際軍事情勢を述べるのに、どうしてソビエトには軍事力と言い、アメリカには防衛力と言うんですか。
  64. 瀬木博基

    政府委員(瀬木博基君) 軍事力、防衛力という言葉については、特に大きな差異を防衛庁としてつけておるというつもりはございません。
  65. 志苫裕

    志苫裕君 あなたはそう言うけれども、防衛白書をごらんなさい。軍事というのを双方に使っておるときは軍事バランスというときだけです。あとは全部ソビエトは軍事力、それには強力なとか膨大なとかそういうものが必ず前につくわけです。これに対するアメリカの方は、強大とか膨大とかそういう前飾りは全然なくて、防衛力に努力している、あるいは同盟諸国に期待をしておる、そういうニュアンス。  これは例をちょっと拾ってみたんですが、例えば防衛白書の三ページ、ソ連軍事力の増強に努めておる、米国は国防力の強化に努めておる。一方は軍事力、一方は国防力。一方は増強、一方は強化。それから四ページにいきますと、ソ連は強力な核戦力を保持、そのほか膨大な地上戦力、遠隔地にまでの展開。米国の方は強力はないわけですね。核戦力を保持し、遠隔地と言わないで主要な海域と言うわけです。同じように、一方、軍事同盟、集団防衛体制のことでいきますと、米国は集団安全保障体制を構築し、ソビエトはその軍事体制固めを行っていると、こうなるわけです。また、八ページにいきますと、ソ連の一貫した軍備増強と勢力拡張、米国は、国防力の増強による抑止力の信頼性の維持、向上。同じことについて、こういうふうに軍事問題をとらえるのにどうして差があるんだろうか。客観的にいろいろな情勢を分析をして、誤りのない国際社会における判断を我々はしなきゃならぬわけですが、政府の先ほどの報告もそうだし刊行物もそうなんですが、何か世の中を二つに分けて、向こうは悪いやつでこっちはいいやつでと言うのです。  ですから、軍事力のバランスの先ほどのお話も、ソビエト側を説明するときには、ソビエトの軍事力の増強面を随分長い言葉を使っている。いわばソビエトの強い面、対するにアメリカの弱い面。逆にソビエトの弱い面、アメリカの強い面というのは全然触れていません。こういう軍事情勢認識の仕方では、我々も率直に言って判断に迷うわけです。特に軍事問題などになりますと、我我が全く情報社会といいながら情報に疎いのでして、さまざまな刊行物、政府の公式な発表あるいはマスコミというようなものに頼る分野が多いのであって、大事な部分はもう全部ブラックボックスに入ってしまって出てこない。都合のいいことだけ聞かされるという情報操作が十分に行われるわけであって、それだけに、例えば皆さんが出しておる刊行物なり公式のレポートでも、私が今指摘したような非常に正確でない情勢認識の仕方をしておるのではないかという点が気になるので、ちょっと今私が幾つか指摘した点について述べてくれますか。
  66. 瀬木博基

    政府委員(瀬木博基君) ただいま先生が御指摘になりました点は、軍事力あるいは国防力というような一つ一つの言葉というものの問題ではないのではないかと思います。私ども認識では、米国というものは自由と民主主義というような諸価値を共有しておりますところの国を含めて自国並びにその国々の防衛を進める、そしてもって世界の平和と安定の維持に尽くしているというふうに認識いたしております。  また、米国基本的な国防政策は抑止であるというふうに認識いたしておるわけであります。  他方ソ連につきましては、遺憾ながら極東における軍備の拡張というものは我が国にとって潜在的な脅威になっているということは認めざるを得ないところであると思います。しかしながら、潜在的脅威があるということと我が国がソ連を敵対視するというようなこととは全く別のことであります。ソ連は我が国にとっても重要な隣国でありますから、この間に対話を進める、相互理解を進める、これは当然のことであり、これは日本政府挙げて共通の認識を持っていると思います。
  67. 志苫裕

    志苫裕君 これは情勢認識の仕方の問題で、ちょっといかがなものかなと日ごろ感じておったんですが、前に私も予算委員会でそういう情勢認識の仕方はソビエトをやたらと怖いものに仕立て上げて対ソ脅威論をあおって、防衛庁の予算を幾らかでもふやそうという程度のことには役立つかもしらぬが、しかし、本当の意味でそれが安全を確保し得る冷静な物の見方ではないということを前にも申し上げたことがあるんですが、きょうの報告でもやっぱりそのことは強く感じました。  時間ではかつては悪いが、あなたが東側のくだりを説明したのと西側のくだりを説明したのじゃ随分時間差もあったのじゃないかなという感じもしたので、ちょっと申し上げました。  例えば数字のトリックだってないわけじゃないんで、ソ連の全地上兵力二百一個師団の約百九十四万人のうち、極東、バイカル以東には四十一個師団三十七万人。これは単純に勘定すれば五分の一だ。だけれども、そこは戦力という形で表現をしておりますから、戦力といったらその他の要因が入りますから、戦力は三分の一だ、極東の方へ向いているのは。という言い方しますと、数字を見れば五分の一。五分の一なら大したことないな、三分の一、これはすごいなと、こう思うわけで、そういう作法というようなものをあちこちに用いているのは率直に言ってよくないです。それは我々の認識も誤ります。  ちょっと軍事力のバランスのことで関連して聞きますが、例えば、先ほどあなたはソビエトの海軍勢力のことについていろいろ話されました。例えば西側諸国のシーレーンの妨害であるとか、そのほか相手の潜水艦のあれであるとか、随分いろいろなことを言っていましたが、ことし出ましたアメリカの国防省の「ソ連軍事力」によると、「海軍作戦概念」というくだりでは、一口に言えばソビエトの戦時作戦概念というものは防衛的なものだというふうに言っているんじゃないんですか。この辺の認識の仕方はどうなっていますか。まだソビエトの海軍は大したものじゃなくて、そしてそれは、これによりますと、「ソ連の戦略弾道弾潜水艦を保護する、」、あるいは「敵の海洋基地戦略戦力と対抗する、」、「ソ連ならびにワルシャワ条約加盟国への海上交通路を確保する、」以下云々、大陸の作戦地域での「地上作戦を支援する、」、「ソ連の海上通商路を保護する、」等々、むしろディフェンスのような位置づけをして、バランスは問題にならないというのがアメリカ国防省のソ連軍事力に関するレポートだけれども、その点は先ほどのあなたの報告のニュアンスとは少し違うんじゃないかな。
  68. 瀬木博基

    政府委員(瀬木博基君) ソ連の海軍力の機能につきましてはいろいろな面があると思います。  一つは、ただいま先生が御指摘になりました沿岸防御的なものもあれば、また防御的という意味においては、ソ連のミサイル潜水艦を防御するというそういう意味での防御、一面で見れば攻撃的とも言えるかもしれませんが、そういうミサイル潜水艦を防御するという意味での防御というものもあると思います。  他方、攻撃的なものとしては、当然のことながらアメリカソ連から見て脅威であるところのアメリカの艦隊に対する攻撃力を持つということも目標としておりますし、また相手国、西側諸国の海上交通路に対する攻撃を目的とした力を持っているということで、海軍力の力というものから性能というものはいろいろ多目的に持っているということでございまして、この点については日本アメリカも全く認識は同じであると思います。
  69. 志苫裕

    志苫裕君 以下、若干情報として伺いたいんですが、一九八七アメリカの国防報告で「戦力概念の再評価」というワインバーガー長官のレポートのところでは、「一九九〇年代以降の国防政策の柱」というのが特に項を起こして念入りに記述をされておるんですが、もちろんその中心は戦略防衛構想。本政府の最も大胆な戦略上の新発展は、相互破壊の脅しへの依存をきっぱり拒否することだ、いわゆる限定戦争についての従来の考え方も同様に拒否する、こういうことを中心にいろいろと新しい展開をなさっておるんですが、今まで我我は国会でもたびたび皆さんとの間でやりとりをしておりますと、抑止均衡論、相互破壊による抑止戦略というようなものを骨組みにして日本説明をしてくれておったわけでありますが、さて、これが崩れるということになりますと、日本の防衛の基本構想のようなものは崩れてくるんですか。また、アメリカのそういう新戦略についての防衛庁サイドのコメントがあればしてほしいと思うんですが。
  70. 瀬木博基

    政府委員(瀬木博基君) ただいま先生がおっしゃられましたように、相互確実破壊と申しますか、MADというものからMAS、相互確実保障というものに移ろうというのがレーガン大統領の大きな希望であり、これがSDIを研究するということの基礎になっているわけでございます。しかしながら、このSDIというものは、御存じのようにいまだ研究の過程にあるわけでございまして、これが果たして開発可能であるのか、また配備することが適当であるのかというものは将来の課題として将来の大統領の判断に任せるということになっておるわけでございます。その間にありまして、やはり核の抑止力というものが世界の最終的な抑止均衡を保っているということはアメリカ基本的な考え方でございます。先ほどもお答え申し上げましたように、そういう考えから新しい抑止的な核勢力を近代化していくという努力は現在もアメリカは続けておるわけでございます。我が国は核の抑止については日米安全保障体制のもとで米国に依存するということでございまして、これにつきましては今後とも変わることはないだろうと思います。
  71. 志苫裕

    志苫裕君 私、きょうはSDI、戦略防衛構想そのものについて今ちょっと細かく論議をするつもりはないんですが、そうすると、今まで私、国防報告はできるだけ読ませてもらうようにしておるんですが、ことし「戦力概念の再評価――一九九〇年代以降の国防政策の柱」というものを特別に項を起こして、今までのことはずっと、すなわち核抑止、拡大抑止、エスカレーション制御、戦略安定、攻撃支配、柔軟反応、対反乱、限定戦争、エスカレーションの段階、こういう今までの概念はきっぱり縁を切るんだ、こう華々しくやっておるでしょう。そうすると大分いろいろな物の考え方や対応が変わっていくのかな、日本はどうするのかというようなことを聞きたかったんですが、今の程度なら日本は今までと変わりがないということでいいわけですか。
  72. 瀬木博基

    政府委員(瀬木博基君) アメリカにつきましてもSDIというものが直ちにできるというふうな観念は持っておりません。したがいまして、このSDIに頼った形、すなわちSDIによって核の廃絶につながるというようなことは理想として掲げなから、しかし現実には核の抑止力によって世界の安定を保っていこうというのは、現在においても、また当分の間のアメリカ基本的な政策であると思っております。
  73. 志苫裕

    志苫裕君 それから、いわゆる最近言われ始めておりますアメリカによる極東第二戦線論というものについてちょっと伺いたいわけですが、もちろん防衛白書も、皆さん、あなたの報告もその辺をちゃんと予防線を張りまして、ソビエトは西側正面というものを重視はするが極東の正面も最近は重きを置くようになったということを、あたかも極東が二極構造であるかのような話がございました。一面で外務省の報告もあるんですが、極東は米、中、ソという三極構造だと。皆さんのところの五十六年だか五年だかの白書によりますと、極東は三極構造はなっておるだけに事態が複雑でそんなに欧州正面のように危なくはない、危なくはないという表現はどういう表現でしたか……。したがって欧州のような二極構造に比べると極東が三極構造のために対立が決定的に進行しにくい面もあるというニュアンスできたんですが、最近に至って、欧州で戦端が開かれれば極東も戦端が開かれるというような声がささやかれてきました。  週刊誌の引用で失礼ですが、リチャード・ソロモン米国務省政策企画局長演説、六月十七日、海軍大学校での要旨が週刊朝日ジャーナルに載りましたが、これでは明らかに「我々はアジアで第二の戦線を開く準備を怠ってはならない。」ということになりまして、「この地域軍事バランスについて行われたどの評価を見ても、アジア状況は、いまなお米国にやや優位」という結論になるだろうと。そして「最近、わが国はこの地域に戦力を増強した――」。あなたは一部の艦船にトマホークを配備したという程度の軽い扱いにしておきましたけれども、ここでは「艦船に搭載した巡航ミサイル・トマホークの配備とF16の日本への配備決定――が、」、こう述べまして、「かくてソ連は、戦端がなかんずくヨーロッパで開かれた場合には、我々が極東で第二の戦線を開く力を有していること、」をソビエトは知るであろうというのがこのソロモン企画局長演説になっておるわけです。  そうなってまいりますと、これはおよそ日本とは関係のない出来事なんですが、米ソがいろいろなことがあってどっちが手を出す、出さぬは別にしまして、欧州で戦端が開かれると極東で第二戦線を開く、第二戦線を開くと言うておるのは、ソビエトの方じゃないんでありまして、ソビエトの方がヨーロッパ正面で事があれば我々はけつの方の極東で第二戦線を開くというんだから、こちらから攻めていくという意味です。それは日本のいわばあなた方が言っておる日本の特有の地形、配備されておる基地、トマホーク、F16の配備等々でそういうものはでき上がったと、こう言っているわけでしょう。この点についての見方はいかがなもんですか。
  74. 瀬木博基

    政府委員(瀬木博基君) ただいま先生御指摘になりましたソロモン講演並びにそのソロモン講演が引用しておりますところのワトキンズ論文、このいずれのものをごらんになりましても、アメリカ政策基本は抑止であるということを強調いたしております。この点はアメリカの国防報告その他に盛られている基本的な思想と同じであると認識しております。そもそも抑止の概念というものは、侵略者が侵略を思い立ったときは、その侵略によって得ることが期待されるようなものに対して、それに対するコストというものが必ずコストの方が上回るということがあらかじめ明らかであれば、侵略は行われないであろうということがこれが抑止論の原則であります。  またさらに、抑止論のもう一つのその応用の問題としては、侵略者が自分の好むところ好むときに侵略を行うことを阻止するということがあらかじめわかっていれば侵略が行われないであろうというものであります。ソロモン論文、またその基本になっておりますところのワトキンズ論文というものは、まさにそういうものを基本にした考え方をあらわしたものであると思っております。
  75. 志苫裕

    志苫裕君 いやいや、今、抑止論の講釈を聞いたんじゃないんで、極東第二戦線を開く、それは既に一言に言えばその態勢は完結した、こう日本もちゃんと位直づけをしながら今アメリカの偉い人が言うておるということになりますと、そういう国際情勢認識する、軍事バランスなり軍事情勢認識しなきゃならぬこの場としては、そんな問題については情勢なりバランスの物すごく大きい変化を及ぼすようなものに対しては全然述べてもおらぬ。ただあっちで軍艦二隻つくった、飛行機一機余計つくったというような話ばかり幾ら聞いたって、これは情勢認識にもならぬという意味でそれをどう見ていますか、どのように把握していますか、日本のこれからにどのような変化が出ますかということを聞いているんですが、その点はどうですか。
  76. 瀬木博基

    政府委員(瀬木博基君) 私の申し上げたいところはただいま申し上げたところに尽きるわけでございますが、ソロモン局長の申しているところもまさに、ソ連が重視しているところのヨーロッパ正面においてソ連が思うような侵略を仮に行うようなことがあっても、それは引き合わないようなコストを伴うものだぞということを論文の形で明らかにする、この論文自体が抑止効果を持っているということであると思っておるわけであります。
  77. 志苫裕

    志苫裕君 ですから抑止力というのは、やったらやって返すぞ、ひどい目に遭うぞというので、これはどうも余り人間的じゃないなどと言って、もともと核兵器を持っていて人間的でないくせにその相互確証破壊戦略は余り人間的でないなんという論説もあるようですが、ともあれ、なるほどあなたがおっしゃるようにソビエトというのは昔から極東の方、広い国土の東側の方というのは脆弱なんだ、一遍に両方手が出ないんだという国なんだから、そこで我々は第二戦線を開くぞというおどしをかけておる、そして御丁寧にそのためにトマホークも配備したし、F16も置いたし、日本の地形もよくできておるしというようなことを言われて、まことに結構だとも言うておれぬので、物騒な話ですよね。しかもこれは第二戦線を開くというのは攻め込むということですから、そういう点についての分析はないんですかということを聞いているんですが、どうもあなたはそれ以上ないようだからいずれの機会に譲りましょう。  軍事バランスでもうちょっと聞きたいのは朝鮮半島です。いろいろと平和あるいは統一への努力が進んでいることは大筋としてそのようなんですが、しかし、なお厳しい軍事対決もあるというこれも事実なんです。ちょっと済みませんが、ここのバランスを、皆さんは南北軍事バランスは大まかに言って抑止力の維持、安定の状況は続いておるというようなことを全般として言いましたが、南北朝鮮でずばり聞きますが、南の方の在韓米軍は核を、あれは持っていると言わないんだな。核配備があると見ていいですね。その上で軍事バランスをどう見ているんですか。
  78. 瀬木博基

    政府委員(瀬木博基君) 我々は在韓米軍が核を持っているということは存じておりません。しかしそれとは別に、現在、北の持っておる軍事力と韓国軍事力並びに韓国を助けるところの在韓米軍というものの双方の軍事的な力を見てみれば、抑止力は十分に働いているというふうに見ております。
  79. 志苫裕

    志苫裕君 済みません、あとまだ経済問題がありますので、ちょっと私はまとめにしますが、できればこの次からいろいろとまたお話しいただくときに、例えば軍事バランスを、戦力をおっしゃってもなかなかわからない。例えば船が百隻あります、大砲が十門ありますと言っても、それがすぐ動くのはどれだけあるのか。例えば即応戦力とかそういうものを抜きにしたんじゃだめでしょう。極東の例えばソ連兵力といったって、道もついているか、何が行っているかわからないような田舎に展開をしているものと、すぐ軒下まで空母や何か来ているのとでは全然即応戦力は違ってくるでしょう。そういう意味では、そういうものを抜きにした軍事バランスというのは余り意味がない。だからあなたも軍事バランスのところではさまざまな状況を見ないと簡単にいいの悪いのと言えないというお話をしましたが、我々もそういう分析をしたいわけなので、できればそういう論及もお願いしたいと思います。  最後に、アメリカが自分の国の外へ兵力を展開しているのは幾らですか。ソビエトが自分の国の外へ兵力を展開しておるのは幾らでしょう。
  80. 瀬木博基

    政府委員(瀬木博基君) 数は今すぐちょっと出しかねますが、国の地域でよろしければ、アメリカについて言えば、大きな海外に前方展開をいたしております兵力はヨーロッパのNATO、それからアジアにおいては韓国、それから日本フィリピンということであると思っております。  それで、ソ連につきましては、東欧の諸国、それからアフガニスタン、モンゴルベトナム、それからニカラグアとキューバというようなところであろうと思います。  数については後刻またお届けしたいと思います。
  81. 志苫裕

    志苫裕君 結構です。  ちょっと外務省に。防衛庁はいずれまたやりますが、フィリピンの政局について外務省はどのような見方をしてますか。いろいろな論評があります。私らもフィリピンはそう縁なき衆生じゃないので関心を持っているんですが、アキノ政権とは言いながらも、どちらかというとさまざまな勢力の連合ででき上がっておる政権でもありますし、外側には新人民軍やその他のさまざまな要素も抱えておって、フィリピンの政局の展望について支障のない程度で語ってください。
  82. 新井弘一

    政府委員新井弘一君) 担当局の参事官が来ておりますので、より正確にお答えいたします。
  83. 柳井俊二

    説明員(柳井俊二君) お答え申し上げます。  先生御承知のとおり、ことしの二月に大変希有な形の政権交代というのがございまして、二十年続きましたマルコス政権が終わりまして、国民の大きな広い支持を得てアキノ新政権が成立したわけでございます。また、ただいま御指摘のとおり、新しい政椎の中にはいろいろな傾向の方々もおられるわけでございます。また、新政椎に課せられた課題というものも大変に難しいものがございます。  一つは、これも先ほど御指摘ございましたけれども、国内における反体制勢力には大別いたしまして、いわゆる新人民軍、武装共産勢力でございますが、これとミンダナオの回教徒の勢力と、この二つの大きなものがございますが、これに対する対策をどうするか、現在、いろいろ話し合いをしているところでございます。  また、いま一つの大きな課題は、長年のマルコス政権の後を受けましてフィリピン経済が大変疲弊しております。この経済の立て直しをどうするか、この大きな二つの課題があるわけでございます。  相互にこの二つの問題は関連しているわけでございますが、現在、アキノ新政権はこの二つの大きな課題に取り組んでいるところでございまして、また政治体制につきましても、現在、暫定憲法のもとで政治が行われておりますけれども、憲法起草委員会の作業が大体終わりに近づいているというふうに承知しております。これが完成いたしますと、大統領に新憲法の案が提出されまして、これがいずれ国民投票に付されて採択される、その上で国会の総選挙あるいは地方選挙と進んでいくというふうに展望される次第でございます。  いろいろ難しい問題は抱えておりますけれども、国民の広い支持を基盤といたしまして、現在、新政権がそのような方向で努力しているというふうに見ておる次第でございます。
  84. 志苫裕

    志苫裕君 かわります。
  85. 大木正吾

    大木正吾君 実は、この席に外交・安保調査特別委員会でありましたときの委員長、植木先生がいらっしゃるんですが、今度調査会と名称が変わりまして、結果的には相当長期にわたって調査していくわけです。先ほど、ずっと並んだ審議官局長さん方等の話を聞いていましても、重複をしたり、いろいろな角度から違ったった省庁が申し上げているわけですが、端的に申し上げて、この委員会を受けた中で調査会に変わって、さらに参議院の権威を高めていこう、こういった長期の審議をするわけですね。皆さん、これを読んだ方はおられますか、どうでしょうか、いたら手を挙げてみてもらいたい。これは本年の五月の国会でもってできた参議院の三年間の労作なんです。おられますか、どうですか。いませんか。――この状態ですから、調査会発足に当たりまして会長にお願いいたしたいんですが、ぜひ各省庁とも、法律を通すときとか予算の取り合いをするときとかメンバーをとるときとかは必死になってやるけれども、こういったものについては極めて軽く扱うということはこれはどうしたってまずい。その点私はぜひ会長に、各省庁に対しましての御忠告なり御警告を発していただきたいということをまず冒頭にお願い申し上げておきます。  さて、問題は、そこで今フィリピンのことが志苫さんから出ましたから伺いますが、外務省、先ほどのお話の中でODAの問題について若干今後のあり方についての話がありました。国内における事業団の不正問題は別の問題としまして、私はむしろ、例えば今フィリピンの話が出ましたが、マルコス疑惑問題について両院で特別委員会をつくった経過等もございまして、この報告書の九十三ページにありますけれども、相当きめ細かく今後のODAの扱いについての問題点の指摘をしてございます。ですから、こういった問題について、例えば「十分な事前調査に基づいて実施された援助ほど高い効果を上げていることにかんがみ、」とか、あるいは「事前調査の拡充」をすべきとか、大分これはきめ細かく実は書いてでき上がっているわけです。こういったものについて尊重される意思があるかどうか、その点どうでしょうか。
  86. 川上隆朗

    説明員(川上隆朗君) お答え申し上げます。  けさほども説明申し上げましたが、政府としましては、マルコス疑惑をめぐりまして我が国の経済協力の実施ぶりの適正さに関しまして国民の間に懸念が生まれたことを非常に残念に考えておりまして、適正かつ効果的、効率的援助の実施に一層努めたいということとともに、経済協力の実施につきましても国民の支持と理解を得るために改善すべき点は改善してまいる。現在その改善すべき点について検討をしておるところでございます。  具体的には先生御指摘になられた点にも関係するかと思いますが、効果的、効率的実施のために援助の流れ、つまり案件の発掘の段階から事後の評価の段階に至るまでより一層きめの細かな配慮をするという考え方に基づきまして、事前調査の拡充等の具体的措置を現在部内で検討しているところでございます。
  87. 大木正吾

    大木正吾君 ぜひこれはそういった案を検討中でございましたら、こういった一般的な文書を少し整理をしていただきまして、そしてもう少し明確なものにしていただいてこの委員会に配ってもらいたい、このことを私の方から要求いたしておきますから、会長理事会等でもってその問題について今後ともに継続的に図っていただきたい、このことをお願い申し上げておきます。  時間がありませんから、たった一点についてだけ御質問いたしますが、東京サミット以後の日本経済動向と貿易摩擦問題を中心といたしますが、G5問題について外務省はどのような評価をされていますか、それを伺いたいんですが。
  88. 池田廸彦

    政府委員(池田廸彦君) やはり戦後の国際経済の動きの中でG5というのは一つのエポックを画したものだと思っております。その後、主要通貨の対ドル相場もそれぞれ上昇いたしておりますし、これまでのところまだはっきりした収支改善効果というのは特に日本との関係では出ておりませんけれども、これは御案内のJカーブ効果の影響であるし、またそのほかに石油、一次産品の値下がりという問題も働いている。いずれ今年の暮れから来年にかけては是正効果が出てくるだろう、かように考えております。
  89. 大木正吾

    大木正吾君 大蔵委員会、予算委員会等で去年伺ったときには、一年ぐらいだからちょうど今ごろ効果が出るだろう、こういう答えがたしか竹下さんから返ってきたと私は記憶しているんですが、しかし実際問題、状況は別にいたしまして、こういうふうに聞いたらどうでしょうか。五百十億ドルぐらいで済むだろうということしの経常黒字ですか、その問題についてはその範囲でもって今年度はおさまるという見通しですか。これは企画庁ですか。
  90. 宮本邦男

    説明員(宮本邦男君) 先生御指摘のとおり、今年度の経済当初見通しにおきます経常収支の見通しは五百十億ドルということでございました。しかし、この見通しをつくりましたときの前提は、円とドルのレートが二百四円、それから石油価格も二十七ドル強ということでございました。それから円レートは御存じのとおり現在百五十円台でございますし、石油価格も非常な低下を見ているわけでございます。そういった予想外のことがございまして、池田次長からも申し上げましたように、Jカーブ、石油価格低下の影響等から現在かなり黒字幅が拡大しておりますけれども、しかし、円レートの上昇というものが年末から来年にかけて効いてまいりまして、これから先は黒字幅は拡大がとどまりまして、縮小の方向に向かうものと期待いたしております。
  91. 大木正吾

    大木正吾君 何か話がよくわからないんだけれども、二百四円で計算したときに五百十億ドルだったとおっしゃいましたね。そして現在百五十三、四円台を行ったり来たりしている。むしろ私らの物の見方からすると、こういった五〇%前後も円高になっている中でこういう状況が生まれているということは、むしろJカーブの問題のこともありましょうけれども、逆の意味で、ことしの場合なんかは七百億ドルぐらいはやっぱり経常収支の黒字がいってしまうという感じも持ちます。それから同時に、言えばそれが二年、三年後になって果たしてアメリカが納得するような状態にいくのかどうなのかについては極めて疑問です。そういった問題についてはどう考えますか。
  92. 宮本邦男

    説明員(宮本邦男君) 確かに現在の経常収支が非常に大幅化しているということにつきましては私どもとしても憂慮いたしておりまして、そのため短期的には市場開放努力を進める、さらには円高の定着を図りつつ内需の拡大に努力していく、さらに中長期的にも構造改善に努力するということで、我が国として経常収支を国際経済に調和した水準に減らすために、内需中心経済構造への変革努力をしていくという努力を中長期的にもやろうとしているわけでございます。
  93. 大木正吾

    大木正吾君 アメリカの輸出が伸びるかどうかということをねらったんじゃないんですか、この円高問題は。ドル安・円高問題のねらいの中心は、アメリカの貿易輸出がふえるということをねらってこれはやったんじゃなかったんですか、違いますか。
  94. 宮本邦男

    説明員(宮本邦男君) もちろんドルと円のレートの転換ということは、日本側で輸出数量が抑えられ、輸入数量がふえるということとあわせまして、アメリカではそれと逆の効果が出てくるということをねらったものであることは言うまでもないと思います。  しかしながら、残念なことにアメリカ側から見ますと、対円のドルのレートは下がったわけでございますけれども、そのほかの大きな貿易相手国でございますカナダとか韓国、台湾等々への円のレートが下がってございませんで、効果が余り出ていないということは先生御指摘のとおりかと思います。
  95. 大木正吾

    大木正吾君 これは構造的なこともございますし、前川レポートもありますけれども、結局いずれにいたしましても、要するにデメリットの方が多過ぎてたまったものじゃないんです。ですから、政府も三兆六千億円の今度の景気対策なりあるいは増減税をやるという話もあるわけです。ただ、例えば例を挙げますが、減税問題を取り上げてみたって、年収五百万円以下の層の場合には、自民党税調で盛んに税金の論議を始められていますけれども、結果的にはやっぱり独身なりあるいは三十前後の層の方の消費が拡大することがねらいですから、その方に余り減税効果がないとすれば、中年の方々に私は減税をしてもそんなに大きな消費購買力は出ないと見るんです。そうすると今度の景気問題については余り期待できない。  同時に、構造改善の問題について考えていきますと、どんどんと結果的には外国に工場が出ていきまして、あるいは資本が出ていきまして、そして国内が空洞化して失業者がどんどんふえているでしょう、倒産もふえているでしょう。そういった問題等を含めて、私はどうも日本という国は、意見を交えて言いますけれども、資源がない国ですから、アメリカみたいに赤字があっても結果的には資源も豊富、国土も広い、そういったことが違うから日本の場合はどうしても貿易立国でいかざるを得ない。そうすると、こんなべらぼうな六百億ドル、七百億ドルということがずっと続いていき、しかも世界最高の金持ち国になってしまったんでは日本人の行き口がないということじゃないですか。アメリカの傘へぶら下がっているとかなんとか言っているけれども、もしアメリカと貿易戦争になってしまって、完全にこれが保護貿易になってしまったら一体どうするのか、それをちょっと答えてください。
  96. 池田廸彦

    政府委員(池田廸彦君) まことに御指摘のとおりでございまして、日米間で完全に貿易戦争の事態が起こった場合には、それ自体我が国にとって致命的と言ってもいいような事態であると思われますし、加えましてそのときには恐らくは自由貿易体制そのものの基盤自体が揺らいでくるだろう。これは本当に我が国にとっては何としてでも避けなければならない事態だと思います。したがいまして、けさ御報告申し上げましたように、一連の施策を講じてぜひその危機を避けようというふうに考えているわけでございます。
  97. 大木正吾

    大木正吾君 時間がありませんから私の意見だけ言って終わりますが、私はこう見ているんです。十年計画、二十年計画、三十年計画でいいですから、アメリカとの関係ということも大事だし、ECとの関係も大事たけれども中国をどう見るかという問題です。去年行ったんだ私自身が。行って二週間ほどおりまして、通信関係の問題について話をして、副総理とやってきたんだけれども、結局あの国に対する日本との貿易拡大という問題について真剣に考えるべき時期じゃないのか。そういったことの方が大事だし、同時に円借款問題についても、政府にも金の限界がありましょうから、民活問題を含めて、もうちょっとこの辺については外務省の姿勢と同時に、さっき志苫君も言っておったけれども中国が危ないという質問もありました。  私はしかし、経済問題を考えた場合には今のようなこの調子でやっておったら絶対だめです。これは完全孤立です。一部じゃありません。とすれば、結果的には中国というものに対しまして円借款をだっと小松さんの社長さんみたいにどんどんやっていきながらどっちかに流し方を変えていかなければならぬでしょう。同時にバランスを、長期的にはもう少し百億ドル前後に黒字がおさまるぐらいにまで持っていくことも必要でしょう。そういったことを考えた中での問題を私はどうしても考えてもらいたい。時間がありません、やめますけれども、この調査会でもって小委員会を作る際には具体的に検討して問題を一つ提起いたします。そのことを会長に申し上げて終わらしていただきます。
  98. 和田教美

    和田教美君 まず最初に、新井情報調査局長にお尋ねします。  先ほど十一日、十二日に開かれますレイキャビク会談レーガンゴルバチョフ会談のことについてのお話が最初にございましたけれども、これの最大の焦点は、やっぱり軍縮軍備管理問題だということはあなたのおっしゃったとおりだろうと思うんです。そこで、今までも軍縮軍備管理交渉についてはいろいろな準備的な折衝が包括的軍縮交渉中心に行われておるわけです。そこで戦略核については、例えば三〇%削減というふうなところをベースにやっておるとか、あるいは特に中距離核については相当交渉進展している、そして、例えばシュルツ国務長官が記者会見したところによると、このレイキャビク会談であるいは暫定合意が中距離核についてはできるかもしれぬというふうな情報もございます。しかし、SDIについてはなかなか開きが狭まっていないというふうな情報が断片的にあるわけですけれども軍縮軍備管理交渉はこの会談を控えて一体どういうところまで進んでおるのか、その辺のところを外務省の情報をなるべくざっくばらんに聞かしていただきたいと思います。
  99. 新井弘一

    政府委員新井弘一君) おっしゃるとおり、軍備管理交渉が来る米ソ首脳会合の重要な議題になるということは米ソ双方が申しております。そこで、その御質問の中身でございます。現在、九月十八日から第六ラウンド交渉中でございます。ただ、戦略核につきましてはSDIの絡みがある、ソ連が絡めている。それとの兼ね合いであるいは五〇%削減、三〇%削減、そのときどきの交渉のテーブルではいろんな数字が出てきますけれども、この絡みがあるということから、なおかなりのハードルがあるというのが現状だと理解しております。  それからINF交渉につきましては、この点ソ連のシェワルナゼ外相もニューヨークで最も可能性のある分野であるということを明らかにしております。ただ、これにつきましてもいろいろ問題がまだ残されている。なかんずく、日本にとって関心のあるアジアに配備されたSS20をどうするか。けさの説明でもちょっと触れましたけれども現状ではソ連ヨーロッパ部に配備されているSS20については削減用意あり、ただしアジアについては凍結であるという態度を崩していない。したがいましてこれらのハードル、これはまだ高いものがございますので、これを米ソの両首脳がどういうふうに処理するのか注目をして見ているということでございます。
  100. 和田教美

    和田教美君 そこで、まだなかなか流動的な要素が多いから断定的なことは言えないと思いますけれども、先ほど局長の話で、レイキャビク会談で仮に一つないし二つの暫定合意でもできれば、次の段階としてワシントン、アメリカにおける本会談に発展していくということのようでしたけれども、その可能性が強いと見ているんですか、その点がどうかということ。  仮に、ある程度の軍縮軍備管理交渉について合意が二つの会談が行われるとしてできた場合に、国際情勢といいますか、米ソ関係というのは新しいデタントというか、新しい緊張緩和状況に入っていくのか。それとも、先ほどあなたが触れられたように、アメリカ側が力の政策によって押したからソ連は譲歩したんだ、だからその力の政策を緩めちゃいかぬというふうな政策アメリカは継続するというふうに見るのか。その辺の基本的な判断はどういうことでございましょうか。
  101. 新井弘一

    政府委員新井弘一君) まず第一点の、米ソ首脳会談で果たして実体的な合意ができて年内のゴルバチョフ訪米に結びつくかどうかということにつきましては、今の時点でいささか断定はできない、断定は差し控えさしていただきたいという状況でございます。かなりデリケートなことだろうと思います。  仮にその後米ソ首脳会談がワシントンで開催される、そういう事態に交渉の結果として結びつく、その後の米ソがどうなるか。これはまさに今の時点では仮定の問題でございますけれども、これは確かに国際緊張の緩和に向けての一つの大きな進展に結びつくということは当然のことながら予想されることだろうと思います。  ただ、にもかかわらず西側には七〇年代のデタントの記憶が鮮明でございます。その限りにおいては西側としては、要するに無原則なデタントをソ連との間には追求しないという構えは崩さないはずだろうと思います。
  102. 和田教美

    和田教美君 次に、防衛庁参事官の瀬木さんにお尋ねをしたいんですけれども、先ほどの報告に基づいて、特にアジア・太平洋地域軍事環境という問題についてお尋ねをしたいんです。  極東ソ連軍の軍事力の増強があって我が国に対する潜在的脅威を増大させることにもなっているということを言っておられるわけです。そしてその一つの例として空母が二隻来ているとか、それから原子力巡洋艦のフルンゼだとかいうような例を挙げられたわけです。全体としてアジアにおける軍事バランスというものは、ソ連軍事力の増強というのは表面的に見れば確かにあるわけですけれども、全体として一体米ソ軍事バランスというのはどうなっているのか。  それから、瀬木さんの報告の中には日本というのは一回も出てこないですね。しかし、これだけ日本の防衛力というのも強化されてきたわけですから日本一つのパートナーとして軍事バランスの構成要素として出てくるはずです。そういうものを考えると日本プラスアメリカというものを加えた形でソ連との軍事バランスというようなものも考えていかなきゃいかぬと思うんですが、そういう観点から一体どうなのか。私の私見から言うと、空母二隻というものも軽空母であって、それからさらにフルンゼの問題についてもいろいろ例えば問題点がある。空母についても、一時はウラジオストクに入ったままでなかなか出てこないというようなことで、欠陥空母じゃないかなんという説も山たぐらいで、それほどとにかく強力なものでないという判断をしているわけで、むしろ海軍力については少なくともアメリカの第七艦隊、その第七艦隊の後ろには第三艦隊もおるわけですから、アメリカが優勢であると見るのが素直ではないかというふうに思うんですけれども、その辺のところをどう判断しておられるのですか。
  103. 瀬木博基

    政府委員(瀬木博基君) 先生御案内のとおり、戦力というものを一般的に比較するのはこれは量の観念だけで比較するということは非常に難しいことは当然でございます。その比較に当たっては、後方の支援の問題であるとか部隊の練度の問題、士気の問題、それから同盟国との協力の関係その他いろいろな問題を考える必要があると思います。  米ソ二つをとらえて極東地域について見ますならば、先ほどの御説明の重複を避けるため非常に簡単に申し上げれば、ソ連というものは量において非常に拡充されている、質も向上されているということだろうと思います。これに対してアメリカは量ではソ連にはかなわないというのはこれは偽らざるところだと思います。これは一つはやむを得ないところでございまして、何といってもソ連は極東に位置している国でありますに加えて、アメリカは太平洋を隔てている国でありますから、極東という地域をとればそれはソ連の方が数が多いのは当然でございますし、また米ソ全体の軍事力の量を見てみれば、これもまたソ連が多いわけでございますから、それは量がアメリカソ連に劣るというのはやむを得ないところでございます。これを補っておるのがアメリカの質の力で、質というものはもちろん陸空にもございますけれども、海軍力、それから輸送力の二つだろうと私は思います。今、先生御指摘のように、やはりアメリカの海軍力というものは、空母の力にいたしましても、また潜水艦の力にいたしてもまだまだ大きな力を持っている。これはソ連にまさることはまず間違いないだろうと思います。  他方日本の自衛力でございますが、これはソ連アメリカというものと同等に論ずることはいかがかと思います。やはり日本の自衛隊というものの役割は日本の自衛に限られるというものであり、憲法の制約下、また国力、国情というところからこの二つの超軍事大国といいましょうか、米ソ二つの中へかみ合わせるということは難しい、計算上それをどちらにどういうふうに計算できるかということはちょっとできないのではないか。役割が違うということで、その二つに日本の役割を加えたらどうかということはちょっとお答えしかねるところでございます。
  104. 和田教美

    和田教美君 次に、防衛計画の大綱の問題でございますけれどもソ連の潜在的脅威が増大しているという認識、この地域軍事情勢は非常に厳しくなっているということも書いておられるわけです。ところが政府は、建前としては防衛計画の大綱というのは今の中期防衛力整備計画の基礎になるものであって、これはやっぱり生きているんだ、そしてこの計画大綱の別表を達成するのが今の防衛政策の根本的な考え方だということを一貫して答弁されておる。つまり防衛計画の大綱というのは政府の基本的な政策として今厳然と生きておるということをおっしゃっておる。  ところが、防衛計画の大綱というのは私の認識では少なくとも三つぐらいの前提に基づく情勢判断によってつくられておると思うんです。米ソは戦わないということ、それから日米安保体制は有効に働くということ、それから朝鮮半島はおおむね現状維持を続けるであろう、こういう前提のもとに、したがって、そういう国際情勢に大きな変化がない限り大規模準備をして日本を攻めてくる国はないだろう、だから特定の脅威に対処するということを想定しないで、もしあるとすれば、例えば北海道などに日米安保の網の目をくぐって既定事実をつくる、それをさせないために小規模、限定的な侵略に対処する力、つまり基盤的防衛力を整備するんだ、こういう考え方に基づいておると思うんです、これは前の防衛庁長官がこの調査会の前の特別委員会の席上でも同じような趣旨のことを述べられておったわけで別に変わってないと思うんです。  そしてまた、この防衛計画の大綱の中には、「大規模な武力紛争が生起する可能性は少ない。」ということも書いておられるわけです。そうすると、潜在的脅威は増大しておる、しかし、それは十分抑止されておるから大規模な紛争は起こらないというふうに続けて読めばいいのか、防衛計画の大綱がつくられた十年前の状況よりも情勢判断は変わっておるというふうに防衛庁は考えておられるのか、変わっておるとすればどこが変わっておるというふうにお考えなのか、その辺のところをお答え願いたい。
  105. 瀬木博基

    政府委員(瀬木博基君) ただいま御指摘のとおり、防衛計画の大綱の中では国際情勢の分析というのは非常に大切な項目になっております。この大綱作成以来国際情勢というものは極めて厳しくなっているということは我々の認識であり、我が国に対する潜在的脅威が増大しているというふうに受け取っております。この意味において我々はやはりこの厳しさというものを冷厳に見つめる必要があるだろうと思います。しかしながら、それでは防衛計画の大綱が前提としておりますところの国際情勢の枠組みというものが変わっておるかというと、それは枠組みは幸いにして変わっていないというふうに認識しておるわけでございます。枠組みというのは先ほど先生がおっしゃられたところでございますけれども、グローバルな東西関係というものが均衡及び国際的な安定の努力ということによって全面的な衝突が防止されているということ、並びに地域的に見るならば我が国の周辺においてまた大国間の均衡が保たれておる、日米安保条約が有効に機能しておるということでございまして、この全世界的な枠組みにおいても地域的な枠組みにおいても、幸いにして枠組みは崩されていないというふうに考えている次第でございます。
  106. 和田教美

    和田教美君 次に、SDIの問題についてちょっとお尋ねしたいんですけれども、これは外務省でございますか。きょうは別にSDIそのものについての論争をやろうという気持ちはありません。  近く政府はSDI代表団をアメリカに送るということが報じられております。それで、日米交渉の焦点は日本の企業が開発した技術の帰属権及び秘密情報の取り扱いの二点だ、政府としては、成果の帰属が日本企業の参加に直接影響する問題だけに、極力日本で白田に利用できるようアメリカ側に求めていく、また、政府間協定についても秘密協定でなく公開協定にしたいということを考えておるということが書いてあるわけなんです。  そこで問題は、民間もSDI参加に踏み切ったときに、民間の中にも、先端技術を駆使するSDIというのは大計画だから、ともかく先端技術におくれをとらないためにバスに乗りおくれちゃいかぬというふうな考え方から参加に傾いたという傾向が私は強いと思うんです。しかし、今新聞の切り抜きを読みましたけれども、そういうふうにうまくいくのかどうか。つまり、SDIに参加して実際に民間がいろいろと研究に参加して、そしてその得た技術の情報とかそういうものは当然アメリカ軍事秘密として縛ってくる。結局日本のとらの子の先端技術というものだけをSDIに吸収されて、そして日本の方にはなかなか情報が入ってこないという結果になるおそれがないかどうか。  それからもう一つ、オープンな協定にするということも西ドイツの例などから見てこれまたなかなか簡単にいかないのではないかということを私は想像するんですけれども、その二点についてどういう見方をしておられますか。
  107. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) まず、一般的に成果の利用と言われている問題でございますけれども、これは私どもとしてはSDI研究計画に適切な形で入ってその成果を利用することとなれば、日本の関連技術水準への影響が大きくなる可能性があると考えておりまして、これからアメリカと協議を始めるわけでございますけれども、できる限り幅広い利用が米との間で満足のいくような形で合意できるように努めてまいりたいと思います。  実際上、成果の利用がいかなる形になるかと申しますのは、これは個々の契約の段階で規定される場合が多うございますので、一般的な形でどの程度のものをアメリカとの間で合意するのか、これは相手のあることでもございますので、まだ私どもとしては確たる見通しを持つに至っていないわけでございます。
  108. 和田教美

    和田教美君 まだどの程度のものになるかわからないというふうな結局お話でございましたが、その辺をやっぱりよく注意してやってもらわなきゃ困るという感じを私は持っておるということを付言しておきます。  次に、ODAの問題。開発途上国への政府開発援助の問題については、先ほどJICAの職員の汚職事件という問題について大変遺憾だというふうな表明がございました。このODAの問題についてはこの前の国会でマルコス疑惑に関する特別委員会というものも設置されて、私も委員の一人としてそういう問題をいろいろと取り上げてきたわけでございますけれども、今度の汚職事件というのも、単に二人の職員が捕まったというものだけではなくてもっと、氷山の一角じゃないかという感じがするわけです。要するに構造的な問題でODAのいろいろの援助のシステムというものについて根本的に考え直していくというか洗い直していく必要があるんではないか。政府の中でも例えば総務庁ですか、玉置さんのところで何か年内に監査をやるとか何とか言っていますけれども、監査というよりも、それも必要でしょうけれども、システムそのもの、例えば四省庁体制というふうな非常に責任のあり方がはっきりしないような体制をどうするか、そういう問題も含めて検討していかなきゃならない問題ではないかと思うんですが、その点をまずどういうふうにお考えかお答え願いたい。
  109. 川上隆朗

    説明員(川上隆朗君) お答え申し上げます。  先ほどもちょっと触れさせていただきましたが、やはり今のマルコス疑惑、まず前通常国会のマルコス疑惑の際にいろいろな御議論をいただいた次第でございますが、今回JICA職員の逮捕事件ということ、これは先ほども申しましたように我々として極めて深刻に受けとめている次第でございます。このような事件もございまして、我我としましては従来にも増しまして適正かつ効果的、効率的に経済協力というものをやっていかなきゃいかぬという意識でございまして、改善すべき点について現在鋭意検討している次第でございます。  JICAにつきましては、事件後早速JICAの内部におきましても規律委員会、調査委員会等を設けまして服務規律の周知徹底、規律管理体制の強化等々、人事配置、内部監査等の問題も含めまして現在検討しているところでございますし、監督官庁といたしまして外務省におきましても、政府の行政改革に関する基本方針を踏まえまして、JICAの業務が一層適正かつ効率的に実施されるような措置をいろいろ考えているところではございます。そのために、内部における検討のみならず、JICAに関する懇談会というようなものも大臣のもとに設けまして、外部の有識者の方の御意見もしんしゃくいたしまして、十分踏まえましてこれからいろいろ考えてまいりたい、このように思っております。  四省庁体制という点に先生お触れになりましたが、有償資金協力、特に円借款に関しましては、御指摘のとおり、四省庁というものがそれぞれの立場からいろいろ関係省庁で議論をして一定の結論に至るというような我々は体制をとっておりまして、その体制は我々といたしましては全体としてうまく機能しているんではないかというふうに考えておる次第でございます。しかしながら、そういう点も含めまして改善すべき点があるかどうかという点を十分考えてまいりたい、このように思っている次第でございます。
  110. 和田教美

    和田教美君 それに関連してもう一つ。我々はこの前の特別委員会のときから、ODAの予算というのは事業規模は一兆二、三千億になっておるわけで、もう大変な事業をやっておるわけです。ところが、それを規制するはっきりした根本法みたいなものはないわけです。ですから、この際海外援助基本法というものをひとつつくったらどうか、そして我が国の対外援助の基本理念を明確にするとともに経済援助が不正や汚職の温床にならない歯どめをきっちりする、またガラス張りの援助をなるべく図るための情報公開制度を明確化する、そういうことが必要ではないかということを主張してきたわけでございます。ところが、外務省は一貫してそういう援助基本法というようなものをつくるのに非常に消極的で、今度経済協力局長になった英さんも最近のたしか新聞のインタビューかなんかで、そんなものは要らぬのだというふうなことを述べておられる。なぜ外務省はそういう援助基本法というようなものを毛嫌いされるのか我々にはよくわからない。これは外交特権だというふうな考え方で、聖域を荒らされたくないという考え方からそういう考え方を持っておられるのか。その辺はいかがですか。これだけ問題がいろいろ出てきておるのに考え方を変えられることが必要ではないかと思うんですけれども、その点をお答え願いたいと思います。
  111. 川上隆朗

    説明員(川上隆朗君) 援助が有効に使われるためにいろいろな公開の原則だとか基本的理念をつくるべきだとかというような基本的な考え方については我々も同様でございますが、先ほど申しましたとおり、我が国の経済協力の実施体制というものは現在でも全体として順調に機能しているという考えでございまして、今後とも運用面での種種の改善強化を通じまして一層効果的に、効率的にやってまいりたいという立場でございます。このために、現在の関係省庁の設置法、援助実施機関にかかわる法令の枠内での運用で必要な措置がとれるという立場でございまして、したがって援助基本法等の制定は必要ないのではないかというふうに考えておる次第でございます。  また、現在法令以上の規定を法律で定めるということにつきましては、これは既にさきの国会でも御議論いただいている点でございまして、中曽根総理からも御答弁がございましたが、援助実施に必要な弾力性というものが失われるデメリットもあるのではないかというふうに我々は考えている次第でございます。
  112. 和田教美

    和田教美君 日米経済摩擦の問題についていろいろ各省から報告がさっきございました。一つ問題点は、とにかくG5から一年以上もたっているのに、G5合意一つのねらいであった日米の貿易インバランス、不均衡というものが一向に改まらない。先ほどから、Jカーブのまだ効果があるからそういう状況になっているんだという説明がございましたけれども、現実にとにかく貿易不均衡というものは改まらないということだと思うんです。これでは日米の貿易摩擦というものは一向に下火にならないというのは私は当たり前だろうと思うんです。  特に私感じますことは、例えばごく最近のたばこの交渉です。関税を結局ゼロにするということで妥結をしたわけです。それから先ほども話が出ておりました全米精米業界協会、RMAの米通商代表部への提訴なんかにも見られるように、アメリカ側が通商法の三百一条を盾にとって、要するに不公正な取引がわかりたら報復措置をとるぞというおどしをかけながら日本に迫ってくる。そしてそれが非常に効果を発揮して、例えばたばこの交渉でも日本は関税をゼロにするということを認めざるを得なかった。  米の問題についても、農水省あたりには楽観論もあるようで、アメリカ政府はこの提訴を取り上げないだろうという見方もあるようですけれども、私の得た情報ではそんな甘いものではない。アメリカの中間選挙を控えて、アメリカの政府としてもこの提訴をいきなり断ることはできないので、結局提訴を受け入れて一年間にわたって調査をすることになるのではないかという情報もあるわけでございます。私もその可能性は非常に多いと思うので、そうなるとお米の問題、食管制度の問題というのも今や非常に大きな外圧にさらされるということになるわけですけれども基本的にこういう交渉が日米間の個別の問題の交渉という形ではなくて、三百一条という一つのだんびらを振りかざして交渉してくるという最近の状況について外務省は一体どういうふうにこれを判断しておるのか。非常に好ましいと思っているのか、そうでないと思っているのか、その点の判断を聞かしていただきたい。
  113. 池田廸彦

    政府委員(池田廸彦君) お答え申し上げます。  三百一条というものを振りかざして、かなり強圧的な姿勢で我が方の譲歩を迫るという姿勢自体、私どもとしては決して好ましいものとは思っておりません。ただ、しかしながら、まず第一にアメリカが三百一条の発動をちらつかせながら交渉しておるというのは我が国だけではございません。対韓国でもその例はございますし、対ブラジルでもございます。この場合、我が国の置かれた地位は、けさ御報告申し上げましたようにやはり大幅な黒字が突出しておる。それで、我が国として容認できる範囲内においては極力アクセスの条件改善していかなければならないという状況に置かれているものと考えております。したがいまして、交渉スタイルの問題についてはアメリカに対して随時注意を喚起いたしておりますし、それからまた、こういう条項の今後の取り扱い方というものにつきましては、例えば新ラウンドの中でガットの紛争処理をどう考えていくか、そういうものとの関係で問題提起をしてまいりたいと思っております。  要は、三百一条が日本に対して一たん発動という事態が生じますと、これは歯どめがなくなります。確かに高い譲歩を迫られておるということは認めざるを得ませんが、ともかくこれまでのところ実際の発動は食いとめておる。このあたりの苦しいところをぜひ御理解願いたいと思います。
  114. 和田教美

    和田教美君 非常に保護主義的な色彩の強い包括的貿易法案というものは、下院では通ったわけです。今、上院で審議をしている。今議会の会期中には恐らく審議は終わらないだろうから、次の議会に持ち越しということになるんだろうと思うんです。そこで外務省ども、十一月の中間選挙の結果、アメリカの上院が果たして共和党多数というものがどうなるかということを非常に注目されておるわけで、もし民主党多数というようなことになると、一層保護主義的な色彩が強くなってくるということな懸念されておるんだろうと思うんです。私もそのとおりだと思うんですけれども、しかし仮に共和党の多数が維持されるとしても、米議会の保護主義的な傾向というのはそれほど弱まるとも思えないわけで、特に来年の一月、二月ぐらいになると本年の貿易の不均衡という数字が具体的に出てきます。日米の貿易の赤字というか黒字というか、アメリカからいえば赤字が具体的に出てきます。そうすると、それがまた刺激材料になって一層国内的に保護主義的な空気が強くなるという危険性があると思うんですけれども、その辺のところをどういうふうに対応し乗り切っていこうとするのか、決意のほどを聞かしていただきたい。
  115. 池田廸彦

    政府委員(池田廸彦君) まことに御指摘のとおりでございまして、ことしの秋、来年にかけての動きというものは警戒を要します。あえて一点つけ加えさしていただければ、来年になりますと、アメリカの行政府といたしましても新ラウンド交渉に臨むための授権を議会から得なければなりません。この関連で保護主義的なライダーと普通申しておりますが、それにくっつけていろいろな法案を出してくるシステムがアメリカにあるわけでございますが、それをきっかけに保護主義的な動きが表面化してくるのではないか、こういう懸念を抱いております。  これに対する取り組み姿勢といいますのは、けさほども申し上げましたけれども一つ一つの個別品目についてまずできるだけの対応を図っていくということ、それから二番目に内需の振興をできるだけ早く効果を上げていくこと、それから三番目に構造問題、一方において国内の構造調整を進め、アメリカとの関係では構造対話、これを早く軌道に乗せて日米両方でお互いに協力して努力する、こういう関係を早くつくり上げたいと思っております。ちなみに、構造対話は今月の下旬に行われることになっております。
  116. 和田教美

    和田教美君 あともう二分になりましたから、最後の質問になりますけれども、円高差益の還元という問題について、中曽根総理なども政府を叱咜激励して、円高差益の還元をもっとやらなければいかぬと督励をしておるわけで、私も全くそのとおり、電力、ガスも含めてもっと円高差益の還元をやるべきだと思います。  ただ問題は、一番とにかく円高差益の還元がおくれているのは、実は政府が関与している輸入品が一番遅々として進まないという事実だというふうに思うわけで、政府がやらない。政府の関与している例えば主として食管関係ですけれども、そういうものが行われないということになると、なかなか民間も政府の顔を見て円高差益の還元をやらないということにもなるわけでございます。  そこで、食管の問題ですけれども、具体的に言えば牛肉の問題です。牛肉は基本的には非自由化品目であって、一定の割り当てで入ってくる。そして、畜産振興事業団が一元的に輸入をして外国から安いものを買って、国内で高く売って、そしてそのさやは国内の高い牛肉の穴埋めにするというシステムになっておるわけですけれども、私が聞いたところでは、円高差益だけでも六十年度で四十億円、六十一年度で二百億円ぐらい見込まれる、あるいはもうちょっとあるんじゃないかという見方がございます。それ以外に本来の差益というものもあるわけで、それを上積みするとさらに大きな額になるんだろうと思うんです。ところが、確かにその指定店制度、全国二千店ぐらいで牛肉デーをやったり、指定店の数をふやすということも行われておるようだけれども、何しろ非常にその効果が限定されておるということであって、もっととにかく安い牛肉を、本当に輸入のメリット、円高メリットというものを国民が肌で感じられるような政策をとる必要があるんではないかと思うんです。  それから麦ですね、小麦その他についても、これは一つのパン、一つのうどんにすると非常にごくわずかの差益にしかならない、だからそんなものは還元できないんだということを農水省なんかも言っておられるようですけれども、そういう発想でいいのかどうか、その辺のところを、きょうは関係の農水省の方がいらっしゃらないので適切な答えが出ないかもしれませんけれども経済総括官庁の経企庁の方がいらっしゃるから、経企庁からひとつお答えを願って、私の質問を終わりたいと思います。
  117. 宮本邦男

    説明員(宮本邦男君) 先生御指摘のとおり、円高の差益をできるだけ最終消費者あるいは最終の需要家に還元するということが、円高のデフレ効果をできるだけ穴埋めしまして、円高のメリットを生かしながら内需を拡大していくということのために非常に大事な対策であるということはおっしゃるとおりでございます。そのため、私どもといたしましても、この四月の八日に打ち出しました総合経済対策の中で、円高差益還元というものを非常に大きな柱として、これは電力、ガスの料金引き下げというのが中心だったわけですが、打ち出しましたほか、今回の九月十九日に決めました総合対策におきましても、さらに国際航空運賃の引き下げ等、追加的な円高対策、差益還元対策を打ち出したところでございます。  御指摘の食管制度とか牛肉関係等々農畜産物でございますが、これにつきましてはそれぞれに畜産の振興ですとか食糧の安定的な確保等々重要な政策目標がございまして、なかなかそれをやめてまで完全に自由化するということができない性格のものでございまして、そういった制度上の制約の中で、先ほど先生も御指摘になりましたような牛肉の小売価格の引き下げ、肉売りデー等々工夫を凝らしながら、できるだけ円高の差益が最終消費者に均てんいたしますよう努力いたしておるところでございます。
  118. 和田教美

    和田教美君 終わります。
  119. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 私、日本外交安全保障を考える場合、特別に外交政策を展開していく場合に、日本世界各国と友好な関係、良好な関係を打ち立てることが非常に重要だと思います。その点で、最近、藤尾前文部大臣の発言あるいは中曽根首相の発言等、これらが厳しい国際的な批判を受けたことは非常にそういう点からいっても重大な問題であったと思います。私は、外交当局者はそういう点どのようにお考えになっているか、まずお伺いしたいと思います。
  120. 新井弘一

    政府委員新井弘一君) 外務省といたしましては、ことしの青書でも明らかにいたしましたように、日本のこれからの外交の役割として、国際国家日本としての立場から、世界の平和と安定、繁栄に寄与していくという決意を新たにし、またこれを国民の皆様にもアピールしたということでございます。同時に、日本というものは今や最も大きな存在になった。それに伴う責任、これも大きいし、それから日本を見る外国の目もより鋭くなった。そういうことから、我々が外交推進するに当たっては、一方においてできるだけの貢献をすると同時に、立ち居振る舞いにおいて謙虚であらねばならないというふうに自覚しております。
  121. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 外国の藤尾前文部大臣や中曽根首相の発言をめぐっての批判、これの根底には、日本経済的な成功でいい気になっているではないかというのがあります。それからもう一つ、我々が重視しなくちゃならないと思いますのは、日本はその結果、過去の他民族への侵略や、またあの太平洋戦争を開始したその責任も忘れ去り、それを合理化する、そういう状況が生まれているではないかという批判が高まっています。したがって我々は、今日日本外交を進めていく場合にも、また世界の中で大きく力をつけた日本が正しい関係のもとに生きていく上でもこれらの疑問を解消しなければならない。少なくとも他国から、侵略や侵略戦争を開始したことを合理化している、忘れてしまっているというような批判が出るような状況はなくさなければならないと思います。その点、外務省はどのようにお考えになりますか。
  122. 新井弘一

    政府委員新井弘一君) 全く先生御説のとおりでございます。
  123. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 その点で、私はさきの参議院の本会議の代表質問でも強調しましたが、東京裁判という問題に対して我々が明確な見解を示していくことが非常に大事だと思います。私は最近、こういう一連の発言が表面化したことに関連して、一体今日の西ドイツで、ニュルンベルク裁判に対する批判、あるいはあれが間違っているというふうな議論があるのだろうかということに関心を持ちまして、在日西ドイツの多くの人々に意見を聞いてみました。その一致した意見というのは、ニュルンベルク裁判の判決の見直しを主張したり、あるいはその意義を否認したりすることは、連邦議会に議席を持つ政党の中では全く考えられないことだ、また、ニュルンベルク裁判は戦勝国が敗戦国に一方的に押しつけたものという見方もない、だれがだれに押しつけたというのではなく、人類に対する犯罪がそこでは問題になったのだ、等々たくさんの意見がありますけれども、私はニュルンベルク裁判を批判する意見というのは一つも聞きませんでした。  ところが、日本ではこれまでの国会の論戦でも問題になってきましたように、藤尾さんの発言あるいは中曽根首相自身が、東京裁判というのはまだその評価が定まっていないものだ、こういうふうな発言がありました。私はそういう点、これが日本が過去の戦争についての認識を今変えつつある、あの太平洋戦争を開始したことへの責任を忘れようとしていることだ、そういう目で見られる当然の原因になると思います。  国会で論戦になっているこういう発言自体が非常に重大な発言だと思いますけれども、私は最近、ここに持ってきておりますが、日本戦略研究センターというところから出版された「どう守る、日本の安全」という本の中にこれらの問題について非常に重大な記述がある。これは確かに民間の団体の出版物です。しかし、ここの中心的な人々は元統幕議長とかそういう非常に重要な地位にあった人々、しかも所長は金丸副総理。この本は金丸副総理の副総理という肩書はありませんが、監修というそういう本です。  この中で東京裁判についてこういうふうに書かれています。それはあの勝利者、第二次世界大戦で勝利した彼らが、「日本を一方的な侵略者として断罪するために、茶番劇である「勝者の裁き」を裁判の衣を纏(まと)って行なったのである。」、こういうふうに書かれている。端的に言えば、東京裁判は茶番劇だという評価ですね。これをお書きになったのは元行管庁事務次官の小田村四郎さんという人ですけれども、こういう内容のものが前自民党の幹事長であり、現副総理の監修ということで堂々と発表されておる。しかも、これは研究成果の第三弾として世に問うものだ、こういうふうに金丸さん自身がお書きになっている。こういうことになると、日本はあの戦争についてやはり全く反省がないなということを天下に問うということにしかならないと思います。  このような議論が日本に広がるということは、これは国際政治の場でいろいろな問題が起こると思います。こういう議論が今日の国際政治の場で通る議論なのかどうなのか、新井局長にお伺いしたいと思います。
  124. 加藤武徳

    会長加藤武徳君) ちょっと速記をとめてください。    〔速記中止〕
  125. 加藤武徳

    会長加藤武徳君) 速記を起こしてください。
  126. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 極東軍事裁判につきましては、我が国の中におきましてもあるいは外国におきましてもいろいろな議論がございますけれども、国と国との関係におきましては我が国はサンフランシスコ平和条約第十一条におきましてこの極東軍事裁判所の裁判を受諾している次第でございます。
  127. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 受諾したかしないかではなくて、こういう議論が国際政治の場で通るかというのが私の質問ですけれども、それはさておきます。  もう一つ、私は非常に驚いた。これは、その次のところでこういうふうにも書かれています。勝利した連合国が、日本を非軍事化すれば世界が平和になると、そういう「夢想と、戦勝によって世界に優越的支配的地位を獲得し、その特権的地位を恒久化しようとする大国の野心とが結合して生み出されたものが、新しい国際機構すなわち国際連合である。」、こう書かれております。これによりますと、国際連合というのは、第二次世界大戦で勝利した連合国の世界支配の道具だ、そう言わんばかりの叙述です。国際連合について、外務省はどのように規定しておられるのか、お伺いしたいと思います。
  128. 村田光平

    説明員(村田光平君) お答え申し上げます。  国連は一九四五年の創設以来、世界の平和と安全の維持及び諸国民の福祉の向上のために国際協力の促進を図る普遍的国際機構、既に百六十カ国に及ぶわけでございますが、着実な発展を遂げてきております。  今日、その活動分野は平和と安全の維持、軍縮、援助と貿易、社会、人権、環境、科学技術等極めて多岐にわたっておりまして、これらの分野におきまして国際社会が直面している諸問題の解決のための国際協力の場としてますます重要な役割を果たしつつあるわけでございます。  もとより、国連は国際情勢の現実を反映しまして、それに即応した形で発展を遂げてきているわけでございまして、最近は平和維持活動と南北問題及び機構運営の効率性の問題などに加盟国の関心が集中しているわけでございますが、我が国としましては、かかる国連の活動に対しまして今後とも積極的に参加、協力していく考えであります。
  129. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 国連が連合国の世界支配の機関だというふうな考え方が全く成り立たないものだという答弁だと思います。  今、日本世界経済大国になった。その結果非常に厳しい目で注目されている。そういうときにこういう議論が出ているということは、日本世界的な不信、警戒心を持たれるだけであり、私どもはこういう問題について政府、外務省等は今後とも明確な態度をとり続けていくことが必要だということを要望しておきたいと思います。  次に、簡単に基地の問題について一、二お伺いしたいと思います。  戦後四十年以上たった日本に今なお米軍基地がある。この問題は日本国内でさまざまな問題を生み出しておりますし、これは国際問題でもあります。この日本の米軍基地の出発点になったのはサンフランシスコ平和条約の後、それまでの占領軍が継続していた基地を旧安保条約、行政協定に基づいて提供したことにありますが、その際日米間でいろいろな方針の合意が行われたという記録があります。その記録の一つとして、原則として陸空軍は都市地域外に駐留すること、こういう合意があったというふうにありますが、これはそのように確認してよろしいですか。
  130. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) 昭和二十七年二月二十八日にできました日米合同予備作業班、これが行政協定が発効するまでのアメリカ軍に対します施設、区域の提供について予備的な作業を行ったわけでございます。そして、その作業班のいわば業務上の指針といたしまして昭和二十七年三月十日、今御指摘の点も含めました合意が日米間でできております。
  131. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 その考え方というのは、当時のものでもう過去のものだということなのか、今日もその考え方というのは当然尊重されるべきものとお考えなのか。
  132. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) ただいま御答弁申し上げましたのは、日米合同予備作業班の指針でございます。したがいましてこの日米合同予備作業班が昭和二十七年四月二十八日、行政協定の発効とともにその任務を終了いたしました際にその存在意義を失ったものと理解しております。  いずれにいたしましても、現在の地位協定の規定に従いまして行政協定が終了いたしましたときに、米軍が使用しておりました施設、区域は地位協定の二条一項(b)に従いまして新たに現在の地位協定のもとで提供されている施設、区域とみなされております。
  133. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 私は条約的なことを聞いたのではなく、この精神はというふうに言いました。少なくともサンフランシスコ平和条約の後、米軍基地を存続する場合には空と陸の基地、施設と言ってもいいですが、これは都市地域以外に置くということが確認されていた。これは少なくとも独立した後の外国の軍事基地について当時そう考えなければならなかったもので、当然今日もその精神は受け継ぐべきものだと思いますが、その点での論争はここでは行いません。  もう一つ基地に関連してお伺いしたのは、そのとき日米間でどの施設を継続使用するかということが協議され、最終的には当時のラスク・岡崎交換公文で日米間で合意を見なかった施設もアメリカが必要とするものは継続使用するということが確認された、この事実はお認めになりますね。
  134. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) おおむねそのとおりでございます。
  135. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 施設庁の人がかつて書いた本によりますと、そのときに合意をしないまま継続された施設が五十件あった、五十という施設が日米間の合意のないまま占領の継続として米軍の使用を継続された、こういうふうに書かれております。この五十件の施設のリストをいただきたいと思います。
  136. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) 御指摘の五十件の施設名でございますが、これは二十七年七月二十六日の官報に告示されております。
  137. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 基地の問題はその程度において、次に安保にかかわる問題ですが、私は、先ほどの議論の中でも述べられましたが、防衛庁説明を聞いて驚きました。防衛庁軍事認識、これは先ほどの論議でも指摘がありましたが、まずソ連軍事力がある、それにアメリカがどう対応するか、日本がどう対応するかという発想です。私どもは今日の世界において軍拡競争の悪循環、とりわけ核軍拡競争の悪循環が進んでいる、続いている、このことについては深く憂慮しております。その場合に日本がとるべき態度は、この悪循環の一方に加わるのではなく悪循環を打ち破る、そして軍縮、とりわけ核兵器の廃絶を実現することだと思っております。ここで防衛庁と議論をしようとは思いませんから、私はそのことだけをここでは指摘しておいて、この安全保障の問題とも関連する今日の世界政治の焦点と私どもが考えている核兵器の廃絶の問題について少しお伺いしたいと思います。  まず、国連総会の第一号決議、これは外務省等がお出しになっているパンフレット、文献等でも、原子力兵器と当時言っていますが、原子力兵器を廃棄する、これを原子力委員会に求める決議であった。原子力委員会はその後解体されましたけれども、今日も我々の目指すべき戦後政治の原点とも言うべきものを示したものだと私は思いますが、外務省はどのようにお考えになりますか。
  138. 村田光平

    説明員(村田光平君) 御指摘のように、国連決議第一号は原子力委員会の設置に関するものでありまして、その付託事項の一つとしまして、国家の軍備からの核兵器及びその他のすべての主要大量破壊兵器の除去を定めているわけでございまして、我が国としましてもその趣旨につきましては究極的目標として理解しております。ただし、各国の安全を念頭に置きまして、力の均衡を崩すことなく実効ある具体的軍縮措置を実現していくことが重要だと考えているわけでございます。  この原子力委員会はその後一九五二年に軍縮委員会に改組されまして、さらに今度は軍縮委員会が名称は最終的には一九八四年に軍縮会議となったわけでございまして、この場におきまして現在核廃絶の問題が取り上げられているわけでございます。我が国は一昨年安倍大臣が出席されましてステップ・バイ・ステップという方式を提案されまして、そして現在そのフォローアップをこの場におきまして続けておりまして、今年十二月からは地震波の検索データの交換ということを行うところまで立ち至っているわけでございます。
  139. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 この国連の第一号決議の内容、精神からいって、また日本の国会でも、この参議院でも何回も決議されている核兵器の廃絶を求める決議、こういうことからいって、日本外務省もその見通しあるいは方法等についてはいろいろな意見があるにしろ、私は核兵器廃絶を促進するということは日本外交の重要な目標の一つに位置づけられるべきものだと思いますが、どうなっておりますか。
  140. 村田光平

    説明員(村田光平君) 先ほど御説明申し上げましたように、究極的目標としまして核廃絶を重要な施策の一環として進めております。
  141. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 そういう目標を持っている限り、日本国内で核兵器廃絶の世論が高まることは大いに歓迎されるべきことだと外務省もお考えになりますか。
  142. 村田光平

    説明員(村田光平君) そのような核廃絶への関心の高まりは歓迎されるわけでございます。しかしながらあくまでも厳しい国際情勢を十分認識して、そして現実的なアプローチをすべきだという認識が必要だと考えます。
  143. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 そういう目標に立つ限り、その目標を持っている限り、常に外務省は国際舞台においてその目標、核兵器廃絶を主張すべきだと思いますが、どういう努力をやっておりますか。
  144. 村田光平

    説明員(村田光平君) 具体的な施策としましては、先ほど申し上げました核実験禁止へのステップ・バイ・ステップ方式でございまして、これは検証可能な敷居を設けまして、その敷居を超えるものは禁止していこうという試みでございます。
  145. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 八月二十一日にジュネーブ軍縮会議で日本の今井大使の発言が行われております。これは外務省の方針に全面的に沿ったものですか。
  146. 村田光平

    説明員(村田光平君) そのとおりでございます。
  147. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 まことに驚いた答弁です。この今井大使の演説の中では、核兵器の膨大な増加にもかかわらず、あるいはそうした増加があったからこそ世界は過去四十年間核の破局を何とか回避することができた、こうなっております。核兵器の膨大な増大にもかかわらず、過去四十年間核戦争が起こらなかった、これは事実ですが、しかし、それが核の増加があったからこそ平和であったというのが外務省の方針に沿った演説だとすれば、外務省の核兵器廃絶を求める目標との関係はどのようになりますか。
  148. 村田光平

    説明員(村田光平君) 御指摘の今井大使の演説の趣旨でございますが、過去四十年間の世界の平和と安定が核戦力と通常戦力の総和から成る抑止力によって維持されてきたという客観的な現実に基づきまして、核の存在を評価している見方もあるということを紹介したわけでございます。ただ、こういった状態が理想からほど遠いということもはっきりと指摘されております。
  149. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 外務省抑止力論、バランス論をとっておられますから、核のバランスによってというのなら外務省立場を表明したものだということにもなると思いますが、核が増加したから平和が保たれたという議論は今の答弁とも食い違う議論であり、このような演説を完全に外務省が是認されるということは、外務省立場が核兵器廃絶を目指すものではない、そう断定せざるを得ません。  時間がありませんから次のテーマに進みます。  経済の問題について一、二お伺いします。  まず、対米黒字の問題です。日本側からの黒字です。既に八月までで五百五十一億ドル、去年よりもはるかにふえている。民間の見通しでは九百億ドルにもなるんではないかという発表もあります。どのようにこの見通しをお考えになっているか、幾らぐらいになるという見通しを持っておられるか、お伺いします。
  150. 宮本邦男

    説明員(宮本邦男君) お答え申し上げます。  私ども国際収支の見通しをつくる場合に、国別の見通しというのは作成いたしておりません。それは先生御高承のとおり、国際収支を議論する場合に、そもそも二国間のバランスを議論するのは不適切でございまして、国際収支はあくまで全体としてとらえなければいけないということでございます。先ほども御答弁いたしましたように、今年度の当初の見通しでは全体の経常収支五百十億ドルということでございましたが、一層の円高とか石油価格の低下ということで、現在までのところそれを上回る水準で推移いたしておりますが、今後は国際収支は縮小の方向に向かうものと期待しております。
  151. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 最後にもう一問お伺いします。  池田経済席次長は、さっき日米経済摩擦問題に関連して、相手にも言うべきことは言う、その際、アメリカの赤字体質についても述べていくとおっしゃいました。アメリカの赤字体質、内容はどのようにお考えになっているか。我々は軍拡が最大の要因だというふうに考えていますけれども、それも念頭に置いてお答え願いたいと思います。
  152. 池田廸彦

    政府委員(池田廸彦君) これはあくまでも経済分野の問題として発生して、またその限りにおいて取り組んでいる問題でございます。赤字体質という場合には、例えばアメリカの財政赤字の縮小の問題、それからさらにはアメリカの中の生産設備投資の増大の必要性、こういったような点を指摘しようかと思っております。
  153. 吉岡吉典

    吉岡吉典君 赤字体質ということじゃなくてその状況ということだと思いますけれども、私の質問は以上で終わります。
  154. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 まず最初に、私の質問をよく理解していただくために、私の質問の基本的なスタンスを明らかにしておきたいと思います。  私は、戦後の日本の新憲法の精髄は、自由と民主主義を守っていくということにあると思うんですけれども、その自由と民主主義を守っていくためには、やはりアメリカを初めとする自由民主主義陣営との団結が不可欠ではないかというふうに思っております。確かにソ連も自由あるいは民主主義ということを言っておりますけれども、その言葉の意味は、内容は我々が理解しているのとはかなり違うんです。そういったソ連が、しかも強大な軍事力を持って日本の隣にいるということについては、やはり我々日本人として心配せざるを得ない。  その観点から、主としてソ連及びその同盟国、あるいは協力国の軍事力について、殊にアジアにおけるソ連について質問する予定でおりましたけれども、既に自民党のほかの委員の方から質問されましたので、同じ質問は時間の浪費でありますから避けます。政府委員の方の先ほどの説明を聞いていますと、前に言った説明と同じようなことを繰り返された説明がございましたけれども、これはやはり時間の浪費でありますから、あらかじめ打ち合わせてこられるなり、あるいは打ち合わせができなかったときには、前に出された説明については繰り返しなさらないように、少しでも早く終えた方がいいわけですから十分注文しておきます。  その観点から、まず新井局長に対して一、二質問したいと思うんですけれどもゴルバチョフになってから、それ以前のブレジネフ時代あるいはグロムイコ外交と言った方がいいかもしれませんけれども、確かにスタイルが違ってきている。しかし実質が違っているかどうかこれは本当に知りたいところですけれども、なかなかよくわからない。先ほど局長は、今度の米ソのアイスランドにおける会談なんか一つのそれを解くかぎになるんじゃないかというふうに言われました。私もそう思います。  ソ連が、ゴルバチョフの訪日をあらかじめ来年の一月ぐらいというふうに言っていたように思うんですけれども、それがやはり米ソ間の問題があるのでまだ日にちを決めるわけにはいかないということは、まず米ソ話し合いが終わった後で日本を訪問するということだろうと思うんです。としますならば、ソ連外交基本目的は変わらないにしても、アメリカとの交渉の前に、レーガンとの会談の前はもし日本に先に来たとしますならば、かなりその手法は変わってきたというふうに見ていいんではないかと思うんです。その点から言いますと、まずアメリカとの話し合い解決が先決で、それが終わればあとの問題は非常に簡単に解決されるんだというふうな考え方をしているんじゃないかと思うんですけれども、その点いかがでしょうか、それが第一点。  もう一つ、私はやはりゴルバチョフが国内の経済難局を打開するために何とかアメリカと話しをつけたい、軍備管理交渉を進めたいということは、合理的に考えればそのように考えざるを得ない。ただし、どこの国でもそういった国際派に対して国内派といいますか、タカ派と申しますか、そういうグループがいるわけで、足を引っ張られたんではゴルバチョフも十分活躍できないわけです。したがってまず、ソ連の国内においてゴルバチョフの政権基盤が大体安定したと見るかどうか、あるいは依然として内部において権力闘争が続いていると見るべきであるかどうか。  それとの関連において、ソ連と東欧との関係。私は、東欧がソ連軍事力によって抑えられてはいるけれども、先般の東独首相が西独を訪問すると言って取り消しになったことなんかありますけれども、どうもソ連と東欧諸国との関係は何かぎくしゃくしてきたものがこの数年あらわれてきているんじゃないか。これはある意味からいうと東欧圏の人たちには気の毒なことなんですけれどもソ連と東欧との関係がしっかりしていることの方がゴルバチョフレーガンと話し合う場合に思い切ったことができるんじゃないかと思うんです。そこがやはりぐらぐらしていたのではどうもゴルバチョフは思い切ったことができないんじゃないかという気がするので、ソ連と東欧との関係をどういうふうに認識しておられるか、それをお伺いしたいと思います。
  155. 新井弘一

    政府委員新井弘一君) まず、第一点のゴルバチョフ訪日の問題でございますけれども、先日、日本のある新聞の報道によりますと、当地のソ連大使が、ソ連としては米ソ米ソ、日ソは日ソというそういう視点から、角度から外交を続けるというふうに演説した由でございます。ただ、ただいま先生おっしゃいましたように、今回シェワルナゼが倉成大臣に対して米ソ関係を理由にして訪日の日程が決まらないと述べたということから判断いたしますと、ソ連としてはやはり日ソ関係というのを全体の東西関係の枠の中でとらえているという感じを強くいたします。  それから、第二点でございますゴルバチョフの権力基盤の問題。御承知のとおりゴルバチョフの経歴を見ますと、若いときから共産党の細胞に入って今日の地位を得てきた。そして現在書記長に就任している。それでこの一年半の間最も顕著なことは人事の刷新、非常に中堅幹部の首をかなりの数切ってきた。これ自体はゴルバチョフの政権基盤の安定度をはかる重要な要素かと思いますが、他方、最近数々の演説、これはゴルバチョフが行った演説でございますけれども、いろいろゴルバチョフの国内経済の改革措置に対して抵抗があるということは本人自身が認めていることでございます。いずれにしろ、まだ一年六カ月ということで今後の動向を見守りたいと思っております。  それから第三点、東欧との関係でございますけれども、まさにソ連と東欧との関係には二つの要素が作用している。一つは求心作用、もう一つは遠心作用。遠心作用は言うまでもなく東欧諸国の自主性主張の動きでございます。これはソ連としては等閑視できない。なかんずく東西関係がこういう流動的になるという以上は、やはり東欧というものを何とかしっかりたがを締める。その手段はワルソー条約機構とコメコン機構でございます。それで最近、このコメコン機構及びワルソー条約機構を通ずるソ連と東欧との統合強化という点が先般の第二十七回のソ連共産党大会におけるゴルバチョフ演説の中でも強く強調されております。  以上でございますが、これでよろしゅうございましょうか。
  156. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 まだそのほか聞きたい質問がありますけれども、時間が既に半分以上経過しました。瀬木参事官にも質問したいことがあったんですけれども、前のほかの方のされた質問とダブりますから省略いたします。できるだけ各省せっかく来ておられるので質問の材料はつくっているんですけれども、まず最初に簡単なやつからいきましょう。  経済企画庁、先ほどOTOについて説明がございました。オフィス オブ トレード アンド インベストメント オンブズマンの省略ですね。それに対する不平、苦情受け付けは年によって多くなったり少なくなったりしていますけれども、去年は先ほどいただいた資料を見ますと十七件に減っています。その前は六十八件。これは今そういった非関税障壁なんかの問題が片づいたから苦情が少なくなったというふうに見ておられるのか、あるいは日本のお役所に幾ら言っても同じことだからもうあきらめたと言って提訴しないのか、どういうふうに解釈しておられますか。
  157. 宮本邦男

    説明員(宮本邦男君) お配りしました表でごらんいただきますように、去年六十年の一月から十二月のところが六十八件となっておりまして、それからことしに入ってから、これは四半期ごとに書いてございますが、御指摘のとおり十七件ということで、確かに波がございます。もっと前をごらんいただきますと、OTOができました五十七年は八十八件ですが、五十件、二十五件と逓減いたしまして去年六十八件ということでございます。  実はこの去年の六十八件というのは、去年は先ほど御説明いたしましたように私ども市場開放問題が非常に重要であるという認識をいたしまして、夏にかけてアクションプログラムをつくっておりました。それが非常にいわばPR効果と申しますか、こういう努力をしているんだということを内外に明らかにしたということもございまして私どものOTOへの案件もふえたのだと思います。また逆に、アクションプログラムで先ほど御説明しました基準・認証の改善というのを八十八項目決めたわけですが、そのアイデアも私どもに寄せられたOTOの苦情案件からかなりのものが出ているわけでございます。そういったことで去年は非常にふえたわけですが、ことしに入りましてやや一段落というか、そういう形になっております。決してOTOに持っていっても解決しないということであきらめられたということではございませんで、先ほども説明いたしましたように、六割強にわたって改善の方向が打ち出されているわけでございます。
  158. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 横文字でオンブズマンという名前がついていると、外国の人はスウェーデンなんかのオンブズマンを連想すると思うんです、非常に強い権限を持っている。ところが実際には、日本の企画庁のオンブズマンというのは法的な裏づけもないし、調整機能ですね。今度総務庁の方でオンブズマン研究会というのが報告を出して、日本においてもオンブズマン制度をつくってこれは法的な裏づけを与えなければだめだというふうな趣旨の研究会の報告が出ております。企画庁としてもやはりそういった法的な裏づけがあった方が仕事がしやすいんじゃないかと思うんですけれども、どうですか。殊にほかの官庁との間の調整なんかやっていく場合に、やはり相当の権限がなくてはだめじゃないかと思う。どうですか。
  159. 宮本邦男

    説明員(宮本邦男君) 確かに先生おっしゃるとおりオンブズマンという名前がついてございますけれども、現在のシステムは関係省庁を糾合いたしました調整連絡のシステムでございます。そういった観点から先ほども説明いたしましたように、機能強化ということを今までもやってまいりましたけれども、さらに経済構造調整推進要綱の中で機能強化が定められておりまして、その観点から現在、苦情の受け付け機能、処理機能、広報機能等各般にわたって機能強化を内部的に検討いたしているわけでございます。法制化がよろしいのか、それともより弾力的なシステムのままで強化を図るのがよろしいのか、そういった点も含めて現在いろいろ検討をしているところでございます。
  160. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 もう時間がありませんので答弁はよろしいです。希望だけ言っておきます。  一つ経済援助。先ほど和田委員からも質問がございましたが、経済援助の基本法をつくるかどうかということはこの調査会で十分検討してみたいと思っておりますけれども、どうも日本のODAというのはグラントエレメントが低くして、輸出奨励金じゃないかというふうなことを言う外国の人もいるんですけれども、そういう不必要な誤解を避けるためにもやはり援助の理念というものをはっきりさせておく必要がある。外務省が出されている「経済協力の理念」というパンフレットこは、これは日本が生きていくためのコストであるということが書かれておりますけれども日本が犠牲、身銭を切って助けるんだ、犠牲を払うんだという考え方がどうも足りないんじゃないか。それがまたいろいろな汚職なんかを生む原因ではないかと思うので、その精神をはっきりさせる。そのためにはあるいは基本法が必要であるかもしれない。そのことを外務省としても検討していただきたい。そのことが第一点。  それから大蔵省には、東京サミットで合意しました相互監視、十ほどのインデックスが挙げてありますけれども、あれを見ますと、確かに経済の指標というのは相互に因果関係がありますけれども、現在において目的とすべきものと、それを達成する手段とすべきものとが同じように並列して十ぐらい並べてある。こういうことでは私は本当の国際協力というものはできないんじゃないかと思う。今度G7がありましたけれども、どうもその結果が我々にははっきりわからないんです。それはあの東京サミットの掲げた内容をもう少し詰めていって、一体どれが今一番大事な問題なのか、それを達成するための手段はどういう順序があるのか、それをはっきりさせることが必要ではないか、このことを大蔵省に希望しておきます。  これで質問を終わります。
  161. 田英夫

    ○田英夫君 大変時間が短いので残念ですが、まず第一に、きょうのこの調査会は、国際情勢認識についての行政府の認識について総合的に伺うということでありますが、実際にはしかし私が期待したよりも個々の問題についての御見解に終始をしまして、さっき志苫さんからも指摘がありましたが、もっと基本的な情勢への認識ということを実は伺いたかった。  例えば第一次、第二次世界大戦、これは先進資本主義国と後発の資本主義国の植民地争奪戦であるという歴史的な見方が一般的でありましょうけれども、確かに第二次世界大戦後の世界というのは、アメリカ中心とする自由陣営とソ連中心とする社会主義陣営の二つに別れて対立をした。したがって東西対立であり、日本新井さんの御指摘になったとおりサンフランシスコ条約によって西側の一員になったんだ、そこまでは私もそのとおりだと思います。  確かに、その当時、吉田総理に一人の新聞記者としてお話を聞いたことがあります。単独講和か全面講和かという話があった、私は、この時点で世界は二つに別れているから、その一方を選択するしかない、自分は自由陣営を選んだんだ、これに対して全面講和と言った人たちは非常にずるい、あの当時に東西に対立している全部の世界と講和を結ぶなどということはあり得なかったんだ、という話を聞いたことがある。そのとおりだと思うんです。東西対立というイデオロギーによる対立の図式というものが世界基本であって、そういうつまり国際情勢認識。  それでは今どうなのかということを聞きたかったんです。新井さんのお話では、どうやら志苫さんとのやりとりの中で、依然として東西対立という御認識ではないかと判断をしたのでありますが、それでは一体、今世界で大体百六十カ国ある中で、非同盟諸国会議に入っている国はおよそ八十カ国あるでしょう。世界の国の半分がむしろ東でも西でもない、非同盟諸国会議に入っている。北朝鮮が第一入っている、非同盟諸国会議に。あるいは中国の考え方はどうなのか。中国をどう見るか。東側陣営ではない。もちろん西側陣営ではない。それでは中国というこの大国、大きな力を持っている国をどう見るのか。東西対立という図式では、認識ではこれは答えが出てこないはずです。しかも中国は、周恩来首相以来現在の鄧小平体制に至るまで、いわゆる第三世界三つ世界という国際情勢認識を変えていない。この中国の考え方をどう見るかという、そういう問題についてこの調査会は議論をすべきではないか、したいと私は実は考えているわけで、調査会長にぜひこの機会に、今後そういうことが議論できる場をおつくりいただきたいということをお願いしておきたいと思います。  もう既に五分たってしまったんでありますが、具体的に若干、一つ、二つ伺っておきたいと思います。  きょうの新井さんのお話の中に朝鮮半島の問題も出てきましたので、この朝鮮半島状況は確かにイデオロギーによって南北に分断をしている。この限り、米ソが現在対立していることも事実で、米ソ朝鮮半島を見る限り東西対立なんですね。この朝鮮半島状況をどう判断するか、どう見るか。この対立状態というのは、チームスピリットによって会談が中絶をしている。非常に状況はよくないといいますか、緊張状態にあるということで認識をしておられるのかどうか、簡単にひとつ答えてください。
  162. 新井弘一

    政府委員新井弘一君) 私はけさの説明はおきまして、北朝鮮と韓国の間には基本的に冷たい関係が固定化したまま現在に及んでいる、その冷たい関係の最たるものは政治的な対立であり、同時にそのあらわれとしての軍事的な対峙であるというふうに理解しております。
  163. 田英夫

    ○田英夫君 防衛庁では南北軍事力の現状を、簡単に言えばどっちが大きいかという意味でどう認識しておられますか。
  164. 瀬木博基

    政府委員(瀬木博基君) 先ほどもお答え申し上げましたけれども、現在において北朝鮮と韓国というものをとってみれば、北朝鮮の方が軍事力では大きいと思っております。韓国が八一年から八六年まで軍備の第二次の計画を立てておりますが、この計画を立てる際に韓国は一対二というふうに踏んでおります。この計画ができたときには七対十ということにしたいというのが韓国の計画であります。他方韓国には米国との間で協定がございまして、この条約によりまして在韓米軍が駐留している。これによって北と南との間の均衡が保たれているというように認識いたしております。
  165. 田英夫

    ○田英夫君 そこに大分問題があると思うんですが、きょうは時間がありませんから議論は避けますけれども、私も先日、アジア大会の機会に、ビザが要らないということを利用してソウルへ行きました。いろいろな人と会いました。政府側の人とも今のような問題について激論をしてきたんですが、あなた方と全く同じことを言われました。しかし、北の人から見れば、韓国軍事力プラスアメリカ軍事力、こういうものを総合してみたときに極めて脅威に感ずるのが当たり前じゃないかというようなことで議論をしたんですが、きょうはそれ以上のことは触れません。  アメリカの新しく駐韓大使になったリリーさん、リリー駐韓大使が赴任に当たってアメリカの上院で証言をしているのを見ますと、いろいろなことを言っておりますが、その一つに、アメリカ政府としては金大中氏、キム・デジュン氏の復権を韓国政府に対して建議、つまり提案しているということを言っております。これはもちろん事実と思います。日本政府はこれに対して、このことを述議しないまでも、賛成なのか触れないのか、これは新井さんどうですか。アジア局長かもしれませんが。
  166. 福田博

    説明員(福田博君) お答えいたします。  ただいま韓国におきまして最大の内政上の順題になっておりますのは、いわゆる大統領の選出方式をめぐる憲法をどういうふうにしていくかということでございまして、これにつきまして政府・与党と野党との間で大きな隔たりがあり、それについてまだ意見の一致を見ておらない。他方、野党の間にあっても今おっしゃいました金泳三さんと金大中氏の間には必ずしも一枚岩でない関係もあるように承知しております。  いずれにいたしましても、ほかの国の内政がどういうふうに発展していくか「私ども隣国でございますから大変関心を持って、それが平和巽に民主的に行われていくということは強く期待はしておりますが、注意深く見守るという態度で終始しております。
  167. 田英夫

    ○田英夫君 今のお話の中にもちょっと出てきましたけれども、二人の金さんの間で必ずしも意見が一致してないという、これは微妙なお答えですから余り追及はしませんけれども、この間行きましたときに金泳三氏とは長時間二人だけで話す機会がありました。しかし、韓国政府側は極めて非公式な言い方ですが、金大中さんとは絶対に会わないでほしいということを言っておりました。私の印象としては、今のような二人の金さんの間にという考え方に余り深入りをしない方がいいと思います。それは韓国の政府側が望んでいることでありまして、その辺のところは日本の政府は客観的に対応していただきたい。  もう一つこの機会に外務省にお願いをしておきたいんですが、皇太子御夫妻の訪韓が中止になりました。このこと自体、背景その他いろいろお聞きしたいことがありますけれども、実際には三月、ちょうどここで予算委員会をやっていたときですから三月の半ばごろと思いますが、たまたま二人の金さんに電話をする機会があって数回やりとりをやりました中で、二人とも皇太子御夫妻の訪韓は絶対にやめた方がいいという意見を言っておりまして、当時の安倍外務大臣にそのことはお話をしたんでありますが、結果的にそのとおりになってしまったんですね。  外務省が今度、金泳三氏の秘書室長である金徳龍、キム・ドクヨンと言うんですか、この人を招待されて、今日本を勉強して歩いております。おととい彼と会いましたけれども、彼も非常に喜んでおりますし、外務省がそういうことをやられたこと自体、私は大いに評価をしたいと思うんです。今まで余りにも現在の体制に反対をする、民主化を推進しようとしておられる側との接触がなさ過ぎたと思います。そっちの側の情報がほとんど外務省に入ってきていなかったんじゃないかという気さえするんでありまして、隣国のことだから見守っているということですが、見守るなら十分あらゆる情報を手に入れながら分析をして見守っていただきたい。  ひょっとすると御存じないかもしれませんが、あの金浦空港のテロ事件、あれは韓国軍の内部の者のしわざだという情報すらあります。これは外務省は御存じかもしれませんが、その情報によると日本の政府も知っている、ただしそういう情報があるということを知っているですよ。これは真偽のほどはだれもわかりません、そういうふうに書いておりますけれども。これは国軍保安司令部、CICの中のタカ派グループだという情報なんですね、これは私もそんなに簡単に信ずるわけじゃありませんけれども。あらゆる情報を手に入れながら判断をしないと、北との関係においてはなおさらです。北の方の情報は入りにくいことは事実なんでありますから、そのことをきょうはお願いするにとどめます。  終わります。
  168. 青島幸男

    青島幸男君 私は、まず日米貿易のインバランスの問題からお尋ねをしたいと思うんですけれども、赤字体質がアメリカにあって我が国は黒字体質になっている、これが恒常的に何年も我が国に黒字をもたらしておる、なかなか抜きがたい状態になっておるというようなお話もありました。確かに、アメリカの生産設備は古くなっているとか、あるいは今度のアジア大会でも痛感したんですけれども、民族も老いるという感じがするんです。  かつて我が国でオリンピックが行われたころのあれに対する情熱というのは多少失われておりまして、今や韓国の青少年たち、スポーツマンが大変な情熱を持ってあのことに当たっている。我が国も敗戦後、産業界の復興のために猛烈に、それこそ「モーレツ」というのがブームの言葉になったくらいに、「モーレツ社員」というように頑張った時期がありました。そういう意味合いからしますと、何となくアメリカ経済というのは多少老いていきつつあるんじゃないか、そんな感じもないではないんですけれども、しかし、これだけ長いことインバランスが続いていますと、もうある種、理屈ではないというところまで来ているような気がするんです。お互いの国の風俗、習慣の違いから、言葉の違い、宗教の違い、国の生い立ちの違いなどさかのぼりますと、さまざまな誤解が生まれたり不信が生まれたりするのは当然のことかもしれない。それを克服するために、外務省も通産省もそれぞれの方々が実態を知ってもらおうと、我が国はあえて閉鎖的な市場を続けて保持しようとしているんではないということを理解を求めるようにさんざん努力してきています。  特に最近の風潮を見ますと、報道の中で、理屈や実証ではなくて、感情的な確執から異様にヒステリックになっている一部の方々もおいでになって、とにかく日本の貿易は不正である、やり方が汚い、フェアでないと。感情的に凝り固まった認識で物を見るとなおゆがんで見える、そこからまたゆがんだ議論が出るというような格好で、お互い人間ですから感情なしに全くクールに物を見るということはむしろ不可能で、感情があるからこそ人間なんでしょうけれども、その感情が余りに高ぶって感情的になり過ぎるために実態を見失うということもあるような気がするんです。その割合がかなり大きなもののように私は思うんですけれども外務省、通産省あるいは経企庁の方々はこの貿易問題の根底にある感情問題というのをどの程度御認識になっているか、その点をまずお聞かせいただきたいと思います。
  169. 池田廸彦

    政府委員(池田廸彦君) お答え申し上げます。  けさほどの御説明のときに、日米間で例えば構造対話というものをやっていかなければいけない、ただしこの問題はいずれも両国の内政の問題にも絡み、したがって両当事者とも慎重な扱いと、それから、たしかあのときは節度が必要だということを申し上げたはずでございます。まさに先生御指摘のとおりでございまして、この構造の問題やいわゆるその不正云々という問題を余りに強調し過ぎますと、先生御指摘のような方向への議論の発展というのが恐れられるわけでございます。したがいまして、これは経済の問題なんであるという、その基盤はあくまでも見失わずに、その上に立った議論、その枠内の議論というものを冷静に進めていくということが必要だろうと思います。  それから、蛇足でございますが、結論だけ申し上げますと、私はアメリカ経済の活性化は必ず近い将来あると思います。
  170. 吉田文毅

    政府委員(吉田文毅君) 御指摘のとおり、いろいろ感情的な動きもございまして、保護貿易法案というものを拝見いたしますと、ちょっといかがかと思うような内容も見受けられるのは事実でございます。また、その動きが本年から来年にかけまして中間選挙を経ましてどのような形になってあらわれてくるかという点につきましても、大変心配はしているところでございます。もちろん、私どもといたしましてはあらゆるレベルでのPR、日本のポジションの正しい理解を求めるというようなことを努力はしております。また、米国自身につきましても国際収支が単に為替等の極めて限られた要因に基づく結果であるということではなく、マクロ的な政策、あるいはアメリカ自身の輸出拡大努力、あるいは貯蓄投資バランスの回復というようないろいろな施策にもかかわっているということを構造対話等を通じて説得をしていくということを行っている次第でございます。
  171. 宮本邦男

    説明員(宮本邦男君) 先生御指摘のとおり、最近とみに問題が感情化していることは事実でございますが、問題をその感情に流れさせてお互いのためになるわけではないわけでございまして、私どもはできるだけ冷静な分析と冷静な考え方に基づいて、どうしたら問題が解決するかということをお互いに議論していきたいと思っております。
  172. 青島幸男

    青島幸男君 今までもそういう誤解を解くための努力は積み重ねられてきたことが歴史的にあります。そのことは私も大変評価しています。国情の違い、特によくわからないのは、食管制度についてなんかはアメリカはなかなか理解が行き届かないと思うんです。そういうことを努力を積み重ねて理解をしてもらえるようにしてきている。  一番貿易の収支で我々の目にわかりやすく言えば、自動車の輸出入なんかを見ますと、我が国では向こうの交通法規などまで綿密に調べて、それにのっとった車をわざわざ生産して、向こうの法規に合うようにという配慮までしていますね。アメリカからの自動車はずうたいばかり大きくてガソリン食うのがこっちへ輸入されてきて、しかも右ハンドルにしないで左ハンドルのまま我が国の国情も考えずにさあ買ってくれと言って持ってこられても、ホイールベースの長さとか、車幅とか、あるいはエンジンの容量によって税金の支払いだのランクが違うんだということぐらいはせめて調べて輸出してもらいたいという気持ちはあります。しかし、それをまた言いますと感情論にますます拍車がかかってしまうわけです。  しかし、感情論を極力抑えて冷静に話し合っていかなきゃこの問題は解決しないんだというためにさんざんの努力を重ねてきておる折に、我が国の代表者と言うべき中曽根さんが人種差別というような、どなたにとっても不愉快なああいう発言をなすって、そのことは今までお互いに努力してきたその努力に水を差すといいますか、逆なでするというような結果になっておりはしないかと思います。あえて保護貿易主義だとか、あるいは我が国のあり方について批判的だった人たちに勢いを得させましたし、これはもうぬぐいがたい大きな障害を中曽根発言というのは与えたと私は思っています。  あの方が陳謝をなすって、表面陳謝をされたことは受け入れたと言ってこれで一件落着というふうな報道もありますけれども、もう一方の報道では、アメリカの中ではなかなかどうしてそんなふうに簡単に割り切ってはいないんだ、タクシーに乗るのでさえ運転手さんの人種を見てから乗らなきゃ乗れないというようなところまでしこりが高まっている、今まで積み重ねてきた努力が何のための努力だったんだと。しかも、そのことを率先おっしゃっている方が、不用意なんですか腹の中かは知りませんけれども、ああいう発言をなさったということは、御本人がおいでにならないところで私はとやかく言うつもりはありませんけれども、腹の底から大変に残念だったと思っています。ますます皆さん方の御努力があって少なくとも日米貿易が好転するように私も祈るものの一人ですけれども、大変に残念に思っているということだけはここで明確にしておきたいと思います。  それからもう一点、これで終わりますけれども、ODAの問題です。  外務省は、海外援助に対する基本法みたいなものを設けて少なくとも理念を明確にし、方策についてもそう細かい枠をはめて身動きがとれないほどにするまでもないにしても、一応の目安として基本法を設けたらどうだろうかという再三の委員の質問に対して、現行法の運用で何とかなると考えておりますという御答弁をいただいていますけれども、そういう態度でおいでになれば、もしその運用面できちんとできていればマルコス疑惑も今度のJICAの疑惑も起こらなかったと思うんです。起こり得べき体質があったし、起こるべき構造があったから起こったというところにもう少し反省の目を向けていただいて、少なくとも開発途上国の援助ですから、みずからどこにどういうプロジェクトを設けてどういう手当てをして、どこをどういうふうにすればいいかという高度な計算なり計画を立てる技術者がいないという実情の国に援助するわけですから、結局そこまで面倒を見なければならないわけでしょう。  そうすると、そのプロジェクトの発端からでき上がりまで全部ある意味では任されるみたいな格好になるところもあります。そうなるとその順位について、あるいは場所について、時の権力者で影響力のある人のところへ間へ入った業者がにじり寄っていくというのは構造的に当然の流れです、水が高きから低きに流れるように。だから、運用面で見張っていけば必ず間違いは起きませんというかたくなな考え方はやっぱり私は適切じゃないと思います。計画から資材の調達から運搬からでき上がり、あとそのでき上がった効果というものまでが全部含めてかかわり合った業者の名前から金額から場所から、外交青書を見ますと大ざっぱには出ていますけれども、少なくとも白書というような格好で、どこにどういう計画がいつ起こって、どういう業者が入ってどういう方法で入札をしてどういうふうに行われたということが、一応国民の目に明らかになるような手だてを講ずるぐらいの誠意はあってしかるべきだと私は思うんですけれども、その点についていかがなものでしょう。
  173. 川上隆朗

    説明員(川上隆朗君) 先ほど来の御質問に対しまして若干御説明させていただきましたが、先生御指摘の点につきましては基本的には経済協力の運用の問題でございまして、その面におきまして多々やはり考えるべき点がある、改善すべき点があるという認識に立っております。従来とももちろん適正、効果的、効率的援助ということでいろいろシステムの中で努力してまいったわけでございますが、このようないろいろなマルコス疑惑とかJICAの汚職事件とかいうようなものを踏まえまして、また御議論もいただきまして、改善すべき点があるという認識に基づいて現在鋭意検討しているということでございます。その方向に沿って今おっしゃいました国民に援助の実態をよりよく理解していただくという点、これは非常に重要な点だというふうに私どもも先ほども申しましたように思っておりまして、その点も踏まえまして十分今後検討して、早く結論を出してまいりたいというふうに思っております。
  174. 青島幸男

    青島幸男君 その点の御努力を要望しまして、質問を終わります。ありがとうございました。
  175. 加藤武徳

    会長加藤武徳君) 速記をとめてください。    〔速記中止〕
  176. 加藤武徳

    会長加藤武徳君) 速記を起こしてください。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時散会