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1986-11-26 第107回国会 参議院 科学技術特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十一月二十六日(水曜日)    午後二時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         伏見 康治君     理 事                 岡部 三郎君                 出口 廣光君                 稲村 稔夫君                 塩出 啓典君     委 員                 岡野  裕君                 木宮 和彦君                 後藤 正夫君                 成相 善十君                 長谷川 信君                 前島英三郎君                 最上  進君                 高杉 廸忠君                 松前 達郎君                 佐藤 昭夫君                 小西 博行君    国務大臣        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)      三ツ林弥太郎君    政府委員        科学技術政務次        官        志村 哲良君        科学技術庁長官        官房長      矢橋 有彦君        科学技術庁科学        技術政策局長   中村 守孝君        科学技術庁科学        技術振興局長   藤咲 浩二君        科学技術庁研究        開発局長     長柄喜一郎君        科学技術庁原子        力局長      松井  隆君        科学技術庁原子        力安全局長    佐々木壽康君    事務局側        第三特別調査室        長        高橋 利彰君    説明員        資源エネルギー        庁石炭部炭業課        長        鈴木 英夫君        資源エネルギー        庁公益事業部原        子力発電安全管        理課長      神田  淳君        気象庁地震火山        部地震火山業務        課長       鈴置 哲朗君    参考人        動力炉核燃料        開発事業団理事        長        林  政義君        動力炉核燃料        開発事業団理事  植松 邦彦君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○科学技術振興対策樹立に関する調査  (三原山噴火に関する件)  (ソ連邦チェルノブイル原子力発電所事故に関する件)  (科学技術振興方策に関する件)  (研究交流促進に関する件)  (宇宙開発に関する件)  (動力炉・核燃料開発事業団プルトニウム汚染事故に関する件)  (幌延町の動力炉・核燃料開発事業団貯蔵工学センター誘致に関する件)  (原子炉解体に関する件)  (石炭政策に関する件)     ─────────────
  2. 伏見康治

    委員長伏見康治君) ただいまから科学技術特別委員会を開会いたします。  科学技術振興対策樹立に関する調査を議題といたします。     ─────────────
  3. 伏見康治

    委員長伏見康治君) まず、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  本調査のため、本日、動力炉・核燃料開発事業団理事長林政義君及び同事業団理事植松邦彦君を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 伏見康治

    委員長伏見康治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 伏見康治

    委員長伏見康治君) これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 出口廣光

    出口廣光君 私は、自由民主党を代表して、大臣政府委員我が国が当面しております科学技術振興に関してお尋ねをいたしたいわけでありますが、その前に、このたびの三原山噴火並びに地震について緊急質問をさせていただきたいと存じます。  まず、三原山噴火地震によって大変大きな被害をお受けになり、今日なお不安と不便な毎日を送っておられます大島の住民の皆様に対しまして衷心よりお見舞いを申し上げるものであります。特に私自身が三年前の日本海中部地震被害を受けた体験がございますので、心から御同情を申し上げ、一日も早く平常の生活に戻られることを祈ってやまないところであります。  さて、今回三原山が二百年ぶりに大噴火を起こしたのでありますが、火山噴火地震予知ということが、一朝事ある場合に国民の生命、財産の保護でありますとか、また被害軽減に極めて大事な役割を果たすものでありますが、科学技術庁並び気象庁最初にお伺いいたしますが、我が国における火山噴火でありますとか地震についての予知体制がどうなっているのか、また、今回の三原山噴火にかんがみまして、今後の御方針もあわせてお伺いしたいと思います。
  7. 長柄喜一郎

    政府委員長柄喜一郎君) 火山噴火の方は、主として気象庁の方で担当されておりますので、まず地震予知の方の体制ないし今後の取り組みについてお答え申し上げたいと思います。  我が国地震予知観測研究につきましては、科学技術庁長官本部長といたします地震予知推進本部というのがございまして、ここで関係省庁研究機関あるいは大学等活動を総合的に調整しその推進を図っているところでございます。  具体的には、測地学審議会建議いたしました第五次地震予知計画、それから内閣総理大臣が定めております防災に関する研究開発基本計画、こういうものに沿って研究開発を進めているところでございます。  それで、火山噴火予知につきましては、これは別途気象庁の方からお答えがあろうかと思いますけれども、「第三次火山噴火予知計画推進について」という測地学審議会建議がございますが、これに沿いまして関係機関が協力して推進しているところでございます。この中で、科学技術庁といたしましては、国立防災科学技術センター硫黄島、伊豆大島等におきまして火山噴火予知に関する研究推進しているところでございます。  もう少し具体的に申し上げますと、硫黄島にお きましては地震地殻活動、噴気、温度等観測を行っておりますし、伊豆大島におきましても傾斜計、あるいは地震計等を設置いたしまして噴火予知研究を行っております。また、国立防災科学技術センターでは地震観測体制を利用いたしまして、伊豆大島、八丈島、三宅島、神津島、新島、富士山における地震活動観測を行っているところでございます。かかる地震予知ないし火山噴火予知研究につきましては今後とも一層推進してまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。
  8. 鈴置哲朗

    説明員鈴置哲朗君) 気象庁におきます火山噴火予知体制について御説明申し上げます。  ただいまお話がございましたように、測地学審議会建議、第三次火山噴火予知計画というのがございます。この建議を踏まえまして、関係機関と協力いたしまして噴火観測体制及び予知体制整備しているところでございます。  具体的に申し上げますと、気象庁におきましては、観測種目で申し上げますと、地震観測、これは火山の場合は震動観測と申しておりますが、震動観測傾斜観測、地磁気の観測、それから現地観測と申しまして実際にいろいろ火山表面現象観測を行っております。  日本にはおよそ七十ほどの火山がございますが、そのうち十七の火山に関しましては何らかの形で常時監視体制、二十四時間監視体制をしいております。今回噴火をいたしました伊豆大島に関しましては、震動観測装置五点を設置しております。これはほかに桜島、阿蘇、浅間、それにこの伊豆大島四つ火山に関しては重点的に観測強化しているわけでございます。それから他の十三火山でございますが、これは地震計を一台設置しております。申し忘れましたが、先ほど申し上げました伊豆大島を含む四つ火山につきましては傾斜計を設置しております。ただ、伊豆大島に関しては計画中でございます。そのような状態で観測を続けてきており、観測体制をしいているわけでございます。  もう一つ、測地学審議会建議を踏まえまして火山噴火予知連絡会というのが気象庁長官私的諮問機関として設置されておりまして、日本全国火山状況等に関する研究観測経過の意見の交換情報交換等を行っておりまして、問題のある火山につきましては、十分に審議の結果、問題ありとした場合には会長コメントあるいは統一見解などを発表して対応しているところでございます。  以上でございます。
  9. 出口廣光

    出口廣光君 去る十九日に参考人をお招きしまして、当委員会におきまして地震関係の勉強をいたしたわけでございますが、その際に、予知のためには観測点整備が極めてこれから大事であるというような参考人お話がございました。ただいまのお話によりましても観測点整備の緊急かつ重要性というものに触れられておりますけれども、気象庁として今後観測点整備についてどういう御所見をお持ちなのか、お伺いいたします。
  10. 鈴置哲朗

    説明員鈴置哲朗君) 先ほど御説明いたしましたように、測地学審議会建議に基づく第三次火山噴火予知計画がございます。この予知計画にのっとりまして逐次整備を図っていきたいと思っております。  以上でございます。
  11. 出口廣光

    出口廣光君 冒頭申し上げましたように、災害防止並びに発生時の被害軽減についての予知体制整備重要性ということは論をまたないところでございますが、こういう今後の予知体制についての整備政府として御努力をいただきたいと思うわけでございますが、大臣の御所見をお伺いしたいと存じます。
  12. 三ツ林弥太郎

    国務大臣三ツ林弥太郎君) 政府委員の方からもお話がございましたけれども、火山噴火は、このたびの伊豆大島に見るまでもなく、一たび災害発生に至れば社会的にも経済的にも多大の影響が生ずるものであり、火山噴火予知研究重要性十分認識をいたしております。  このたびの三原山噴火におきましても、特にこれを機会に新聞であるとか識者の関係等におきましても、予知研究重要性というのが指摘をされておるところでございます。  そういうふうなところでございますけれども、科学技術庁といたしましては、厳しい財政事情の折ではありますけれども、他省庁また関係機関大学等と緊密な連携を保ちながら噴火予知に関する研究充実強化に特に努力してまいりたい、こういうふうなつもりでございます。
  13. 出口廣光

    出口廣光君 次に、ソ連チェルノブイル原発事故に関して質問をしたいと思います。  私は、日本エネルギー資源に乏しい国でありますので、安全の確保ということに十分留意しながら、将来に向かって原子力開発利用を着実に進めていかなければならない、このような見地に立つものであることを申し上げます。  さて、ことしの四月のソ連チェルノブイル原子力発電所発生した事故は、日本だけではなく世界じゅうの国々に強い衝撃を与えたわけでありますが、事故発生後、本院におきましても五月九日の本会議において、政府からソ連に対して事故状況原因等に関する情報の速やかな公開を働きかけるよう決議をいたしております。また、国際原子力機関中心とした国際協力のもとに、原因の究明、情報分析等に努めて、日本国内における安全の確保なり安全規制の面に十分に反映させることを政府に求めたところでありますが、八月の中旬になりまして、御承知のようにソ連政府国際原子力機関に対して報告書を提出し、これを受けて各国専門家が解析、評価を行ったと聞いております。  日本でも、原子力安全委員会が第一次の報告書をまとめられたのでありますが、一体今回の事故について、この原子力発電所運転中に数々の規則違反があったし、また安全への配慮を怠った実験を強行したことが原因だと伝えられておりますが、日本では万が一にもそういうことはないと思いますが、そういういわば人為的なミス防止に対してどのような対策を国において講じておられるのか、まずお伺いしたいと思います。
  14. 佐々木壽康

    政府委員佐々木壽康君) お答えいたします。  我が国におきましては、米国のスリーマイルアイランドの事故、これを主として契機といたしまして、事故故障等の経験をこういういろいろな安全関係に反映させるということでございまして、御指摘人為ミスに関しましては、人為ミス防止のために設備改善、例えば制御盤配置等でございますが、そういうもの、あるいは運転員の教育、訓練の充実、それから運転手順書の見直し、それから運転管理体制強化といったようなことをやっております。それから、さらに施設的には誤操作が安全性に大きな影響を与えるような部分につきましては、インターロックシステムというようなこと、あるいはフェールセーフシステムということで、人為ミスによって大きな事故に拡大しないというような対策を講じているところでございます。  しかし、今回のソ連事故、ああいう異常に大きな事故ということがございますので、私どもも原子力安全委員会調査のための委員会では、さらにこの詳細についていろいろ分析をしておりまして、その結果からいろいろさらに改善すべき点があれば改善していきたいというふうに考えております。
  15. 出口廣光

    出口廣光君 今度のような事故は二度と再び繰り返してはなりませんし、原子力開発利用に当たって安全の確保ということは至上命題としなければならないものと思いますが、今後の原子力利用安全確保について科学技術庁長官である大臣の御決意のほどをお伺いしたいと思います。
  16. 三ツ林弥太郎

    国務大臣三ツ林弥太郎君) 今回の事故につきましては、多数の死者を出した点、また原子炉等に損傷が生じた点及び大量の放射能の放出により他国にまで汚染を及ぼした点等において原子力開発史上かつてない重大な事故と受けとめております。原子力安全委員会特別委員会がまとめた第一次報告書でも指摘されておりますように、今回の事故については、安全設計上の問題点を背景と して規則違反運転管理上の問題が引き金となって生じたものであり、我が国では考えられがたい事故であったことがほぼ明らかとなっております。  我が国としては、今回の事故を謙虚に受けとめ、原子力安全委員会において引き続き詳細な検討を進め、今回の事故から学ぶべき点があれば、これを教訓といたしまして一層の安全確保対策充実に努めてまいる所存でございます。
  17. 出口廣光

    出口廣光君 次に、科学技術振興方策についてお伺いをいたします。  日本はこれまで欧米諸国技術を導入しまして、これに改良改善の手を加えて科学技術水準向上に努めてきました。今や技術先進国になったといっても決して言い過ぎではないと思うわけでございますが、資源エネルギーに乏しい我が国のことでございますから、これからも、というよりもこれまで以上に科学技術振興して、いわば科学技術立国を目指していかなければならないと思います。  ところで、科学技術に関する投資という面でありますが、各国政府負担割合がどうなっているのか。一昨年のデータによりますと、どうも米、英、西独、フランスに比べましてかなり見劣りがするように思われます。そこで、政府として科学技術振興ということを国政の中でどのように今後位置づけていくお考えなのか、基本的な考え方というものをまず最初にお伺いしたいと思います。
  18. 三ツ林弥太郎

    国務大臣三ツ林弥太郎君) お説のように、資源に乏しい我が国が豊かで安定した社会経済を維持していくためには、人間知的創造力にその生活基盤を求めていくことが必要であります。したがって、二十一世紀に向けての発展には、諸外国以上に科学技術振興に期待するところが大きいわけでありまして、これは今後の我が国の重要な政策課題認識をいたしております。このような状況にかんがみまして、政府は総合的な科学技術展開を図るため科学技術政策大綱を本年三月に閣議決定したところであります。この大綱におきましては次の三点を基本方針といたしております。  一番目に、次の時代の技術をはぐくむ基礎的研究強化中心として、創造性豊かな科学技術振興を図る。  次に、人間及び社会のための科学技術という原点に立ち、人間及び社会と調和した科学技術発展を図る。  三番目に、国際社会における我が国の果たすべき役割の増大に対応し、科学技術面での国際的貢献が重要であるとの認識のもとに、国際性を重視しつつ科学技術展開を図ってまいります。  今後、この大綱基本といたしまして、長期的観点から総合的、機動的な科学技術政策展開を図ってまいりたい所存でございます。その際、その大綱にあるように、研究開発投資充実と運用の効率化にも努めてまいりたい、このように考えておりますが、研究開発投資予算等関係につきましては、政府委員の方からお答えさせます。
  19. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) お答えいたします。  研究開発投資につきましては、先生指摘のように欧米先進諸国におきましては全体の研究投資に占める政府投資割合が、例えば米国でございますと四六・六%とか、西ドイツでございますと四二・三%ということで四〇%を上回る投資をしているのに対しまして、我が国の場合は八四年度で二一%程度の割合になっております。ただし、国全体としての投資を見ますと、民間の最近におきます研究投資の盛んな動向が影響しまして、国際的な水準でございます三%にほぼ近い数字の研究投資が行われておるわけでございます。  ただ、民間研究投資は御案内のように企業活動のためのものでございますので、公共部門に対する研究投資、いわゆる基礎的な分野における研究投資というものはどうしても政府投資に依存するところが多いわけでございますので、政府研究投資につきましては、今後とも拡充に努めていかなければならない、そういうことでございまして、何分にも財政事情厳しい折ではございますが、各省ともそれぞれ毎年努力をいたしまして研究投資増額に努めているところでございまして、今後ともその増額に努めてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  20. 出口廣光

    出口廣光君 ただいまの大臣並びに局長お答えの中にもございましたが、従来から我が国は創造的、基礎的な研究の面で欧米に比較して弱いということが指摘されております。  申し上げるまでもなく、基礎的な研究というものはすぐに実用化されたり利益を生むというようなものでありませんから、どうも民間に期待することは難しいと私は思います。ある程度採算ということとは関係なく、こういった点については国が中心になって研究を行うべきものと考えるものであります。基礎的な研究部門における国の取り組みをもっと強化しなければならない、こう思うわけでございますが、科学技術庁の基礎的、独創的な研究というものについてのお考えを承りたいと思います。
  21. 中村守孝

    政府委員中村守孝君) お答えいたします。  先生指摘のように、基礎的研究につきましては国の果たす役割が非常に大きいわけでございまして、国立試験研究機関大学等においてこういった基礎的研究充実していくということが必要であるわけでございまして、基礎研究と申しますとかなりな部分大学に依存する面があるわけでございますが、そういう意味でも大学での研究充実ということにも年々努めてまいっております。  科学技術庁は、こうした大学研究業務には関与するわけにはまいりませんのですが、それ以外の面におきまして、この基礎研究充実するために国立試験研究機関試験研究費充実ということはもちろんでございますが、そのほかにも最近に新しい制度を設けましてその充実を図っております。  例えば、新技術開発事業団という科学技術庁の所掌する特殊法人がございますが、ここで、過去において非常に優秀な研究の実績を積まれ、研究リーダーとして適切な方に研究のプログラムの推進をお任せする、それで新しい科学技術の芽を出そうと、そういうものといたしまして創造科学技術推進事業というものを既に数年前から始めておりますし、それから、昨年度から科学技術振興調整費の中に重点基礎研究制度という新しい研究費の費目を設けまして、これで国立研究機関におきます基礎研究充実を図っております。  さらに本年からは、理化学研究所という科学技術庁の所掌する特殊法人研究所がございますが、ここにおきましてフロンティア研究という制度を設けて、外国の優秀な研究者もお招きして我が国研究者ともども基礎的な研究推進する、こういう制度も本年から発足したわけでございまして、今後とも産学官有機的連携を図りながら独創的な基礎的研究強化を図ってまいりたいと思っておるわけでございます。  こうした実際の研究の実施を円滑に進めるためには、その側面からいろいろな支えをする必要がございます。こういった面では科学技術情報の流通を図り、これを充実させると。さらには研究に使われますいろいろな素材でございます遺伝子とかあるいは細胞といった生物資源の収集、保存、提供、こういったことの充実にも努めておるところでございます。今後とも科学技術政策大綱に沿って施策充実を図ってまいりたいと考えておる次第でございます。
  22. 出口廣光

    出口廣光君 ただいまの局長お答えの中で触れられました産学官研究交流に関連してお伺いしたいと思いますが、独創的、革新的な科学技術というものを生み出していきますためには、私は産学官がそれぞれの組織の壁というものを超えまして英知を結集し、持てる力を最大限に発揮していくことが極めて必要だと信じておるのでありますが、いわゆる産学官研究交流促進について政府基本的な認識というものについて御説明をいただきたいと思います。
  23. 三ツ林弥太郎

    国務大臣三ツ林弥太郎君) 出口委員の言われ ているとおりでございまして、今日我が国において必要とされる創造的な研究を効率的に推進するためには、産学官及び外国との研究交流積極的推進が重要と認識をいたしております。このような研究交流促進を図るためには、産学官研究組織の枠を超えた共同研究等促進、異なった分野機関研究者交流、国際的に開かれた研究組織の実現、施設設備及び研究情報相互利用等方策が必要であり、このための各種施策充実を図ってまいる所存であります。  特に、研究交流促進のための法制上の隘路となっていた事項の改善を図るため、本年五月に研究交流促進法が成立いたしまして、政府としても同法の円滑な施行等を図り、研究交流促進に努めてまいる所存でございます。
  24. 出口廣光

    出口廣光君 それでは、去る百四国会で成立しました研究交流促進法がその後どうなったのかということをお伺いしたいと思いますが、まず、この促進法は今月の十九日から施行されたと承っておりますが、この法律施行によって我が国研究交流というものがどのような形で促進されていくことになるのか。また、促進法を有効に活用していく上で何が重要とお考えなのか。この二点についてお答えをいただきたいと思います。
  25. 藤咲浩二

    政府委員藤咲浩二君) 研究交流促進法は、ただいま御指摘のように、今月の十九日付で施行のための政令を制定いたしまして施行されたわけでございます。  研究交流法内容は、御承知のように産学官及び外国との交流を活発化するために、従来そのための法制上の隘路となっていた点を改善したという内容でございまして、具体的には、例えば研究公務員が学会に出席する等の場合に職務専念義務を免除するというようなこととか、あるいは民間との共同研究促進するために研究公務員研究組合あるいは民間企業等研究に休職によって従事させる場合の退職手当上の不利益をなくすとか、そういったことを決めておるわけでございます。  したがいまして、この法律施行されることによりまして、例えば国立試験研究機関研究者研究集会へ参加するというようなことが従来以上に活発になるであろうと期待されますし、あるいは民間との共同研究も休職による民間出向が比較的やりやすくなるということで、より活発になるであろう。それから国際的な共同研究につきましても、現在既に大きな流れとしては年々活発化しておりますが、それが一層活発化するであろうというふうに期待しておるわけでございます。  ただ、いずれにいたしましても、この法律自体は産学官交流あるいは国際交流をする際の法制上の隘路を取り除いたということでございまして、現実に産学官交流を活発化するためにはこれだけではもちろん不十分でございまして、この環境が整備されたのを活用して、より一層活発化するためにはいろいろな施策を講じていくことが必要であろうというふうに考えております。  そのため、先ほど基礎研究の拡充ということに関連して御説明いたしましたようなフロンティア研究推進、これは理研に国際フロンティア研究システムというシステムをことし十月から新たに設けたわけでございますが、これは産学官及び外国から研究者を集めてまいりまして、基礎的な研究に従事していただくという制度でございます。  こういった制度、あるいは五十六年度から発足しております新技術開発事業団の創造科学技術推進制度、これもプロジェクトリーダーのもとに産学官あるいは外国からすぐれた研究者を集めて研究を進めるというシステムでございまして、これも研究交流という側面から見ても非常に有意義な制度だと思います。これらの制度を今後とも拡充していくということが必要ではないかというふうに考えております。
  26. 出口廣光

    出口廣光君 ただいままでのお話によりますと、当面、国と民間との研究交流を目的としておられるように受けとめられますが、私は、もちろんそれも大事でありますけれども、同時に国の機関相互の研究交流というものも大事なことであると思いますが、その点についての御所見をお伺いしたいと思います。
  27. 藤咲浩二

    政府委員藤咲浩二君) 御指摘のとおり、当然国の機関同士の研究交流というものも非常に重要であることは論をまたないというふうに考えております。研究交流促進法は、国と国以外の者との間の研究交流に当たっての法制上の隘路を除くということでございますが、国同士の間にはそのような意味での法制上の問題はございませんので法律上は対象にしておらないわけでございます。  国の機関相互の研究者交流につきましては、既に外から国の研究機関研究者を迎える制度として客員研究制度とか、あるいは自分の研究所の研究者を他の研究所に派遣する流動研究制度というようなものが、各省庁それぞれ制度ができておりまして、そういったものを活用して研究交流が行われている面がございます。  さらには、例えば筑波地区に国研が非常にたくさん集まっておるわけですが、筑波地区の研究者相互の交流促進するために私どもそこに筑波研究交流センターという施設を持っておりますが、そこで各種の研究会のお世話をする事務局の役割を果たすというような形で筑波地区の研究者交流の活発化を図るというようなこともやっておるわけでございます。  それからまた、御承知のように科学技術振興調整費がございますが、これによる各種プロジェクトの推進に当たりましては、各省庁にまたがる複数の研究機関の間の研究協力を大いに促進しているというようなことを進めておるわけでございまして、これらの施策を今後とも充実していきたいというふうに考えておるわけでございます。
  28. 出口廣光

    出口廣光君 本日私が一番お伺いをしたい、そしてまた、平素日本科学技術振興を図るという見地から現状に不満を持っておりますことは、ただいまもお話がございましたように、研究交流促進ということについて産学官、また外国との交流というお話が出ておりますけれども、私は地方公共団体の試験研究機関との連携というものは極めて不十分である、こういうふうに現状を認識しておるわけでございます。  御承知のように、最近は中央だけでなく地方自治体におきましても、四十七都道府県にはすべて試験研究の施設、機関というものがございます。そして、全国津々浦々で創造的技術開発の活動が活発に行われていくことがこれからの日本科学技術振興に不可欠の要件であると思うわけでございます。  例えて申しますと、私の出身地であります秋田県におきましては、四年前に県立の工業技術センターというものが開設されました。最近、私もよく理解できないのでありますが、多彩色画像処理による検査システムというものの開発に成功しまして、電子機器部品の不良品のチェックが驚異的なスピードと精度で行われる、そしてまた、これによって今不況にあえいでおります中小企業等が著しいコストダウンを図ることができるということで、国の内外から熱いまなざしで見詰められておるわけでございます。  また一方に、私どもの県が長い間県民病とされておりました脳卒中、高血圧というものを克服しようということで、全くの県単独の施設といたしまして脳血管研究センターというものを十数年前に開設いたしております。また、衛生科学研究所というものもその以前から開設しておるわけでございますが、特に脳血管研究センターにつきましては、国内ではもちろんでございますが、むしろ海外において非常に高い評価を受けておりまして、今日では欧米各国から一流のドクターが長期間本県に研修に来ておられるという現状でございます。  こういう地方の試験研究機関が地道な研究を続けてまいります上で一番悩んでおりますのは、率直に申し上げまして、国の研究機関というもののガードが非常にかたくてなかなかノーハウというものを地方に開放してくれないというところにあるわけでございます。そのために地方の試験研究機関は開設当初は、例えて申しますと階段の一段 から上り始めなければならないということで、当初において他の試験研究機関の成果というものを借りてその上に立ってということができませんので、非常に開設当初に経費と労力のむだが多いわけでございます。しかし、ある段階に来て実績ができてまいりますと、今度はむしろ実験の面で国よりも研究のチャンスあるいは研究環境というものにおいて恵まれておる点もあるわけでございます。  例えば、サンプルの入手などもむしろ国の研究機関よりも地方の方が入手が容易であるというようなこと等もありまして、ある程度になりますと今度は逆に国あるいは大学の方からいろいろ研究の成果の開放を頼まれたり、あるいはまた研究の委託を受けるということが多くなるというのが今日の全国的な実情でございます。  そのような次第で、私は、よく言われておりますところの産学官に加うるに地方公共団体の公も加えまして産学官公の四者の研究交流促進という着想が現状からして極めて大事であると平素考えておる次第でございます。例えば、大変うまくいっているケースもあるわけでございます。例えて申しますと、厚生省の国立公衆衛生院と各都道府県の衛生研究所のように、同じテーマについて緊密な連携のもとに好ましい相乗効果を上げている例もあるわけでございますが、工業あるいは農業の面では現状では余り国と地方との交流がうまくいっておりません。  何とか科学技術庁におかれまして、こういった点についての中央と地方と申しますか、国と学、産、公共団体、この四者の試験研究の総合調整というものに乗り出していただくわけにまいらないだろうか、こういうことを期待しておるものでございますが、御所見を承れれば幸いに存じます。
  29. 藤咲浩二

    政府委員藤咲浩二君) 御指摘のように、国と公設の試験研究機関との交流をもっと活発化すべきではないかという点につきましては御趣旨のとおりだというふうに考えるわけでございます。特に地方においても最近非常に先端的な研究にも取り組むというようなケースもふえているようでございますので、私どもとしてはできるだけそういった方向へ進むように努めてまいりたいと考えておる次第でございます。  今までのところ、私どもそういった見地から幾つかの努力はしておるわけでございまして、例えば、これは大分歴史が古いわけでございますが、昭和三十八年度からの事業といたしまして地方科学技術振興会議というのを開催しております。これは全国を八ブロックに分けまして、そのブロック単位で毎年二、三回でございますが、中央からも出向きますが、同時にその地域の産学官科学技術関係者にお集まりいただきまして、その地域においてどうやったら円滑に科学技術振興が図れるだろうかというようなことで意見交換をし、あるいはその交流のムードを盛り上げるというような努力をしてきておるわけでございます。  それからまた、これは最近でございますが、一昨年から全国研究機関交流推進会議というのを、中央といいますか、筑波の交流センターの場所を使いまして開催しております。ここにも国研のほか多数の公設試験研究機関から研究者の方に参加していただいておりまして、そこで全国的に地方を含めまして研究交流を活発にするためにはどうしたらいいかというようなことで意見交換をすると同時に、やはり研究交流重要性に関する意識を高めるということに努めてまいっておるわけでございます。  それから、さらに別の側面で科学技術振興調整費による研究推進する際におきましても、これまでのところ、例えばリモートセンシングの実施調査というようなテーマにつきましては、県の試験研究機関の参加を得まして研究推進しているというような努力はしておるわけでございます。ただ、おっしゃるように今後こういった努力をますます強化していかなければならないというふうに考えておりまして、今後とも引き続き努力をしたいというふうに考えております。
  30. 出口廣光

    出口廣光君 次に、宇宙開発推進に対する政府取り組みについてお伺いしたいと思うわけでございます。これは私のお国自慢のようになって恐縮でございますが、三十年も前に国産のロケットの第一号が飛んだ県でございますし、そしてまた、日本でこれからも使用されてまいりますロケット燃料の燃焼実験を実施しておる県ということで、宇宙開発については、私ども秋田県民というものは極めて身近な問題として大きな関心を持っておるわけでございますのでお伺いしたいと思うわけでございます。  私は、宇宙空間というものは人類の未来の活動領域であって、大変大きな可能性を秘めておると思います。宇宙空間の開発を進めていきますことは、また科学技術の進歩という点でも最も重要な課題であるとも認識しておるところでございます。去る八月に我が国初の液体酸素・液体水素エンジンを採用したH1ロケットの打ち上げに成功しまして、各国から高い評価を得ているところでありますので、その意味では実りの多い年であったということが言えると思うのであります。  しかし一方、世界に目を向けますと、一月の米国のスペースシャトルの事故を初めとしまして、各種ロケットの打ち上げの失敗が相次いだ年でもあったと思うのであります。特に、日本は近い将来アメリカのスペースシャトルを利用して我が国初の宇宙飛行士を誕生させようと努力しておるわけでありますが、スペースシャトル事故以降、アメリカの宇宙開発に関する政策が変わったのかどうか、また日米間の協力プロジェクトについてどのような影響を受けているのか、この点について御説明を承りたいと思います。
  31. 長柄喜一郎

    政府委員長柄喜一郎君) この一月末のスペースシャトル「チャレンジャー」の事故でございますが、大変不幸な出来事でございました。本件は、アメリカのみならず世界各国に大変な衝撃を与えたわけでございます。レーガン大統領はこの事故の直後に声明を出しておりますが、それは、今回の「チャレンジャー」の事故にもかかわらず、アメリカは世界のリーダーとして宇宙のフロンティアを切り開いていくんだというふうな声明を出しております。それと同時に、大統領の事故調査委員会を設けまして、事故原因、その対策、こういうことについて検討を行い、その報告がこの六月に出ております。そのような報告をもとにいろんな新しい政策ないし改善策を打ち出しておるわけでございます。  第一は、スペースシャトルの安全性の向上でございまして、そのために、スペースシャトルの再設計、安全・信頼性・品質保証局の設置、またスペースシャトルの飛行頻度を、従来非常に過密であったということで、頻度を落とすというふうなことによりまして安全の確保に努めるということにしております。  第二には、「チャレンジャー」にかわるべき代替機の建造でございまして、従来アメリカはシャトルを四機持っておりましたが、一機失ったわけでございまして、五番目の代替機を直ちに建造するということを決定しております。  それから三番目でございますけれども、従来スペースシャトルによりまして商業用の衛星、通信衛星とか気象衛星というふうな商業用の衛星もスペースシャトルで打ち上げていたわけでございますけれども、こういう商業用の衛星につきましては、今後は在来型のロケットによって打ち上げる。しかも、それをNASAみずからが行うのではなくて、民営といいますか、商業ベースでこれを打ち上げるということでございます。スペースシャトルでは、スペースシャトルでなければできないような特殊な実験、研究、こういうものを中心にその利用を図るということにしております。  それで、我が国との協力に対する影響でございますが、このようなことでスペースシャトルの運転再開は約二年ほどおくれてまいります。我が国との関係では主なものが二つございまして、一つは、我が国初の宇宙飛行士が乗り込みまして行います第一次材料実験、我々FMPTと言っておりますが、この実験が一つと、もう一つは、アメリカ、ヨーロッパ、日本、カナダが協力いたしまし て計画しております宇宙ステーション計画、この二つがどういう影響を受けるかということかと思いますが、最初の方の第一次材料実験の方でございますが、当初予定は一九八八年でございましたけれども、約三年間ほどおくれて一九九一年五月にはこれの実験ができるということになっております。  もう一方の宇宙ステーション計画でございますが、これは当初の予定どおり一九九三年の第一・四半期からこの打ち上げを開始するということになっておりまして、この宇宙ステーション計画については変更ないということに確定しております。  このような状況でございますので、大変不幸な事故があったのでございますけれども、我が国米国との間の協力計画につきましては、基本的にはそんなに大きな影響はなしに、従来の予定を若干おくれる程度で進めることができるということで、我々としては若干ほっとしているという状況でございます。
  32. 出口廣光

    出口廣光君 次に、地球観測衛星についてお伺いしたいと思います。  我が国宇宙開発計画によりますと、来年早々に日本最初のリモートセンシング衛星でありますところの海洋観測衛星一号が打ち上げられると聞いております。軍事目的云々というようなうがった議論もありまして、いろんなこの衛星についての評価もなされておることは承知をいたしておりますが、私はリモートセンシングというものは、農林水産業、環境保全、あるいはまた資源の探索、こういった点で活用できる極めて有用な技術であるという認識、理解をしておるわけでございます。こういう認識に立って、そしてまた国際間の協力を進めていき得る分野でもあると考えておるものでございます。  そこで、政府としてはどのような方向でリモートセンシング衛星の開発と利用を図ることを基本方針としておられるのか、この点について御説明をお願いしたいと思います。
  33. 長柄喜一郎

    政府委員長柄喜一郎君) ただいま出口先生がおっしゃいましたように、このリモートセンシングという技術は、農業、それから環境の保全、地球観測資源の探査、その他いろいろのところで大変多く使われる非常に有望な技術であるというふうに考えておりまして、科学技術庁中心となりまして、いろんな省庁、いろんな研究機関と協力しつつ、この研究推進しているところでございます。  従来、我が国はこのリモートセンシングにつきましては、米国のデータをもらってきて、それを解析して利用してきたわけでございますけれども、昭和五十四年に宇宙開発事業団が埼玉県の鳩山町におきましてそのデータを直接受信できるということになりました。それ以降非常にこの研究が進んでおります。  ただいまも出口先生がおっしゃいましたように、明年の春には海洋観測衛星一号を打ち上げるということで、ただいま準備を進めていますし、昭和六十五年には地球資源衛星一号というものを我が国がまた打ち上げるということで準備を進めておりまして、そうなれば日本もヨーロッパ、アメリカに並んでこのリモートセンシングの技術、非常に高い技術が持てるものというふうに考えております。この日本のつくります海洋観測衛星ないし地球観測衛星につきましては世界各国が非常に注目しておりまして、欧米諸国を初めASEAN諸国、こういうところの関心も非常に高くなっております。そして、タイ、オーストラリア、ヨーロッパ、こういうところに日本の衛星の受信局がつくられるという見通しでございます。  さらに、宇宙基地、宇宙ステーション計画の一環といたしまして、さらに極軌道プラットフォームというふうな国際的な共同計画の構想も今ヨーロッパ、日本、アメリカで検討しておりまして、そういうことによりまして我々としてはこのリモートセンシング技術を使って先進国のみならずASEAN諸国等との協力を大いに進めてまいりたい、こう考えているところでございます。
  34. 出口廣光

    出口廣光君 最後になりますが、私は、日本我が国自身の未来を切り開くとともに、国際社会に貢献するという観点から、宇宙開発を今後積極的に進めなければならないと考えるものでございます。先ほど申し上げましたように、私の県におきましては、ずっと前に国産のロケットも飛んだわけでありますし、今日、広範な宇宙技術のうちの一部門にすぎないわけでございますけれども、ロケット燃料の実験を全国でただ一カ所お引き受けしているというようなこともございますので、私どもの秋田県がこの宇宙開発に今後御協力、対応できるということをこいねがいつつ、我が国の長期的な宇宙開発基本政策というものについて大臣の御所見をお伺い申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  35. 三ツ林弥太郎

    国務大臣三ツ林弥太郎君) 我が国宇宙開発につきましては、宇宙開発委員会の策定いたしました宇宙開発政策大綱に従って人工衛星、ロケットの開発を鋭意推進してきているところでございます。特に、近年宇宙ステーション計画等に伴い、無重力など宇宙空間の特殊な環境を利用した新しい活動の活発化、民間による宇宙の利用の拡大が進んでいくものと予想されます。また、アメリカにおいては本年一月のスペースシャトルの不幸な事故はありましたが、なお宇宙開発を強力に進めるべく、本年五月に新たな長期的宇宙開発計画の提言が行われ、また、ヨーロッパ各国宇宙開発に相当の力を注ごうといたしております。  このような内外ともに宇宙開発が著しい進展を遂げつつある中で、我が国としても二十一世紀を目指して、長期的観点に立った我が国宇宙開発政策にどのように取り組んでいくかということについて十分検討していくことが必要であります。現在、宇宙開発委員会におきましては長期政策懇談会を設け、精力的に調査審議を進めているところであります。  宇宙は人類にとって無限の可能性を秘めた新天地であり、特に科学技術立国を目指す我が国が二十一世紀に向かって一層発展していくためには、宇宙開発は最も重要な分野の一つと考えております。このため、自主技術開発を基本として国際的動向も十分に踏まえて、今後とも宇宙開発に積極的に取り組んでまいる所存であります。
  36. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 私も、今御質問になりました出口委員と同じように、まず最初に今回の三原山噴火予知観測体制ということについてお伺いをしたいというふうに思います。それこそ大島住民の皆さんは大変つらい思いを今しておられることだと思います。避難をしておられる皆さん方に心からお見舞いを申し上げますとともに、また、現地でさらに観測を続け、あるいはその他の作業に従事をしておられる皆さん方の御苦労に敬意を表しながら、今回の噴火が今後の問題としても非常に重要な課題を持っていると思いますので、順次お伺いをしていきたいというふうに思います。  そこで最初に、観測体制について極めて不備だったのではないかということを含めまして、予知体制の弱さということがいろいろと今議論をされているわけであります。特に二回目の噴火といいますか、あの大噴火が起きましたときの経過から、なぜ的確な予知ができなかったのかというような非常に厳しい世論というものもあるわけであります。  そこで、気象庁にお伺いしたいのでありますけれども、観測体制というのは今の体制で万全だったんだろうか、いろいろとやっておられた中で反省をしておられる点というのが多分いろいろとあるのではないだろうかというふうにも思いますが、反省点等ございましたらお聞かせをいただきたい、このように思います。
  37. 鈴置哲朗

    説明員鈴置哲朗君) お答え申し上げます。  まず観測体制でございますが、気象庁四つの精密観測火山の一つとして伊豆大島三原山震動観測装置五点を設置いたしまして火山活動の監視を行っております。また、定期的に現地観測及び遠望観測、これは噴煙等の観測でございますが、そういった観測を実施いたしまして火山活動の常時観測を行ってまいりました。これは今後も続け てまいることでございますが、これらの監視、観測によりまして火山活動に異常あるいは異常らしきものが見つかった場合には従来、直ちに火山情報気象庁は発表して火山災害防止に努めてきたところでございます。今回も私どもといたしましては、七月に十二年ぶりの火山性微動というものが出現しまして以来、適宜臨時火山情報を発表してまいりまして、火山の状態に十分関心を持って注意をしていただくように情報を提供してまいりました。  観測体制でございますが、今後さらに震動計測装置、これは五点の震動観測の一種のデータ処理装置でございますが、そういうものを導入する予定でございますし、さらには地殻変動、地殻の傾き等を測定するための傾斜計、そういうものを整備して——地殻変動でございます。特に傾き等をはかるための測定器でございますが、そういったものを整備するとか、今後とも関係機関と一層密接な連携をとらせていただきながら火山活動の把握に努めてまいりたいと思っております。  以上でございます。
  38. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 反省点ということも伺っているんですが、現在の観測体制の中でどんなことが足りなかったか。そして、今お話がありましたような例えば地殻変動の測定ですか、そういうものを強化していくということによって今後は体制としては十分だというふうになるのかどうか、その辺のところが心配になるわけですがね。
  39. 鈴置哲朗

    説明員鈴置哲朗君) お答えいたします。  反省点と申しますか、火山噴火予知に対します現状での問題点と申しますか、そういったことがございます。  火山噴火予知をするためには、今申し上げました地震でありますとか、これも震動の一種でございますが、微動でありますとか、地盤の傾斜でありますとか、そういったようなもの、いわゆる地球物理学的な現象を観測してどれかから前兆をつかまなければならない、そういう必要があるわけでございますが、残念ながら近代的な火山観測というものが始まってまだ間もないわけでございます。  火山現象は大変複雑でございまして、一つ一つの火山についても非常に個性がございますし、一つの火山につきましても噴火の様相はかなり多様な様相を呈するわけでございます。そういった意味で、現段階で観測データの中から前兆現象を判定して噴火予知するということは、我々のやらねばならない、志向するところでございますけれども、現在の技術的レベルでは極めて困難であります。その技術的な開発をするというのは、今回の噴火で改めて我々が踏まえた技術開発の重要性という点でございまして、測定技術はさりながら、そういった問題、経験を蓄積して今後とも観測データを十分蓄積し、噴火予知技術の開発に当たりたい、その辺が我々の今回の噴火によるいろいろ反省点でございます。
  40. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 今回いろいろとマスコミでもこの問題は重視をして扱っておられます。そういうものの中に、例えば観測も航空機による観測体制があったならばとか、特に赤外線によるチェックなどというものが行われたらマグマの動きなどもある程度の推測くらいのことができたのではないだろうかとか、いろいろと指摘をされているものがあるわけですね。それらのことからいくと、私は、本当に今までの観測体制、そして今あなたが言われたような程度のことの体制で、それでもういいということなんだろうか。むしろ、非常に長い間のものがあるときに集中して出てくる形になるわけですが、噴火というものは。おっしゃるように、観測機器が設置をされた近代的な新しい体制というのはまだ歴史が浅い、短いからデータの蓄積が少ない、データの蓄積が少ないからよくわからぬと。極端に言ってしまえばそういうことになってしまう。だが、その中で最善を尽くすということで、これで果たしてよかったんだろうか、もっと体制としては充実をしなければならないものがあったのではないだろうか、そう思うので伺っているんですよ。例えば航空機の観測というものは今気象庁でできるのですか。
  41. 鈴置哲朗

    説明員鈴置哲朗君) お答えします。  航空機の観測に関しましては、関係省庁の御協力をいただいて実際にこの噴火にかかわらずとっております。
  42. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 そうすると、例えば航空機による赤外線を利用した調査など、赤外線監視というようなことは具体的に行っておられるわけですか。事前にですよ、これは。今予知ということに関連をして聞いておりますので。
  43. 鈴置哲朗

    説明員鈴置哲朗君) 予知のためといいますか、その予知のための監視を我々は行っておるわけですが、その監視の体制の一環として航空写真等を利用させていただいております。
  44. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 航空写真ですか。
  45. 鈴置哲朗

    説明員鈴置哲朗君) はい、そうです。
  46. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 私は今、赤外線等もということを申し上げたんですが、それは普通の航空写真なんですか、それともそういう体制というのがいわゆる常時観測体制というものの中に入っているのかどうかということです。
  47. 鈴置哲朗

    説明員鈴置哲朗君) 常時監視体制で行っておる航空機からのリモートセンシングは、普通写真、全景の写真と、一部赤外線による写真でございます。  それから、今回三原山噴火が始まりまして活動が始まりましてからも、何回か依頼をいたしましてそういった資料を提供いただいております。
  48. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 常時の監視体制の中に航空写真、普通の写真と、それから一部というふうに言われましたが、その辺の一部というのもさらに伺いたいような気もいたしますが、いずれにいたしましても、七月に多分これは要警戒だというお気持ちで出されたんだと思いますけれども、火山の臨時の情報を出されたということですが、そうすると、それから先の体制というのはかなり強化をした観測体制というものになっていなければならないということになると思うわけなんです。  そういう中で、気象庁独自のそうした空からの監視というのも非常に大事な問題だと思いますけれども、常時そういうことで気象庁自身が観測をやれるような体制になっているのですか、空からの体制は。
  49. 鈴置哲朗

    説明員鈴置哲朗君) これは関係省庁の御協力をいただいて実施しております。防衛庁あるいは海上保安庁その他でございます。
  50. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 動き始めるといろいろ早く動くことになるわけですが、それはしょっちゅうやっていたんですか。
  51. 鈴置哲朗

    説明員鈴置哲朗君) ちょっと今御質問を聞きそびれました。
  52. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 火山活動というのは動き始めるといろいろと変化が早いですね。変化が起こるまでの間は物すごく長いけれども、動き出したときは非常に早い場合がありますね、今回の形はその象徴みたいなものですが。だから、こういう異常だと思われたときから、今他省庁の協力をというお話でしたから、それでもってかなり頻繁にそれをやっているんですかと、こういうことを伺っている、空からの観測というのは。
  53. 鈴置哲朗

    説明員鈴置哲朗君) 特に活動が活発になりましてこの三原山噴火しました後、特に綿密にやらせていただいております。
  54. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 これで随分時間かかってしまっても申しわけありませんから、私の希望を申し上げれば、観測体制というのはむしろ、気象庁が窓口でやっておられるのであれば、それだけに気象庁としての観測体制強化という観点の中から、あらゆる角度からの観測というのが必要でしょうと、だから他省庁にという体制では、これは三原山だけじゃないですから、まだほかにも少なくとも四つはあるわけでしょう、今細かい観測をしなきゃならないところ。そうすれば、むしろ気象庁自身がそういうものを持たなきゃならないんじゃないか、こういうことも含めて私は伺っております。予算の関係などと言っていられない問題があるのではないか、国全体として考えていただかなきゃならない問題があるのではないか、こんなふうに 思うから伺っているわけです。  次に、ちょっと気になりますのは、そうした中で避難命令が出てから気象庁観測が一時空白になったんじゃないかというようなことが報道などにありますけれども、これは事実ですか。
  55. 鈴置哲朗

    説明員鈴置哲朗君) お答えいたします。  大島測候所には、これは直接火山観測の目的ではございませんが、ひずみ観測装置が設置してございます。これは埋設型のものでございます。このデータは気象庁本庁に常時テレメーターされております。すなわち、これによる常時監視が行われております。それから南関東地域には気象庁地震ネットワークがございまして、これらはすべてテレメーターされて気象庁に送られております。特に伊豆半島鎌田、伊東の近くにございますが、鎌田には微小地震観測のための地震計がございます。これらが周辺から大島地震観測をしておりまして震源決定等を行っております。また、大学等関係機関の協力を得まして各種観測データも気象庁本庁にファックス等で送られております。今回の噴火に伴う避難によりまして、一時的にしろ大島観測空白地域になったということはございません。  以上でございます。
  56. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 先ほどのあれの中でも何か五種類の観測をしておられるんですか、その五種類の観測、すべてきちっと無人になっても全部観測が続けられていた、こういうふうに理解していいのですか。
  57. 鈴置哲朗

    説明員鈴置哲朗君) 現地に設置されました五種の地震計は現地の測候所にテレメーターされておりまして、本庁にはテレメーターされておりませんが、私が今申し上げたネットワークによる観測というのはバックアップシステムでございます。  以上であります。
  58. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 私は、その辺のところは非常に難しい問題だと思いますけれども、しかし、五つなら五つの観測体制であれば、それは大きな噴火になることだってあるわけですから、そのことを予想すれば必ず無人になることもあります。無人になるときにその観測体制というものがそれでもずっと継続できるということになっていなければ、なかなか住民の皆さんが納得しないだろうと思うのですね。不安も残ると思いますね。そういう意味では、避難命令とのかかわりというのもありますけれども、その辺非常に難しい問題あろうと思いますが、少なくとも空白などということが起こらないように今後の体制の中では、今のお話を伺うと現地での地震計のことは、これは離れると仕方がないことになるのでしょうが、その辺のところも何か工夫をいろいろとしていただきたいというふうに思います。  それで、もう時間がなくなってきましたので、この問題で予定よりもかかっておりますので、もう一つの問題を伺ってこの関係は終わりにしたいと思っています。  阿蘇とか桜島、それから千島列島の噴火というようなことが最近起こっておりますし、浅間山も何か地震が頻繁にという話でありますし、八月のころでしたか、北海道の十勝岳の熱で、あれは泥水ですか、の噴出があったとかというようなことがあり、さらに三原山のときに千島の外れの方でまた噴火が起こっておるというようなことが報ぜられたわけでありますけれども、このことは一連の異常ということで、これに対する対応というものがされなければいけないのではないだろうか、こういう不安をみんな持つわけなんですけれども、これは気象庁、それから地震とのかかわりも密接にあると思いますので科学技術庁と、両方に伺いたいと思います。
  59. 鈴置哲朗

    説明員鈴置哲朗君) 今お話しのとおり、我が国火山を含めまして一連の火山活動が活発やに見えるわけでございますが、世界の活火山のおよそ九割は太平洋を取り巻くところにございます。確率から申しますと年に十火山あるいはそれ以上の火山活動しても、平均的には、統計的にはさして異常とは思われません。  ただいま名前が挙がりました桜島、浅間山、十勝あるいは今度噴火をいたしました伊豆大島、それから阿蘇、そういった火山気象庁では現在常時監視を行っている火山でございまして、先ほどから申し上げておりますように地震あるいは噴煙等の連続観測をしておりますし、定期的には現地観測をしておりますし、必要に応じて臨時観測等をしております。それらのデータを解析しまして、噴煙の高度であるとか地震の回数であるとかあるいは震源の推移であるとか、そういったものを把握しております。  例えば、地震との関係でございますが、今回の伊豆大島の件を例に挙げますと、先ほど申し上げました埋め込み式体積ひずみ計というものが、これは地震観測のために入れてあるわけでございますが、今回の火山活動で異常な変化をいたしました。同時に、伊豆半島相模湾沿岸あたりに展開しております同様のひずみ計がございますが、非常に微小ではありますが、わずかな変化をいたしました。これは地震によるものではなく、伊豆大島火山活動による地下の大きな変化、それが検出されたものだというふうに解釈されております。したがいまして、現在のところでは巨大地震とは関係ないというふうに考えられております。  なお、この点に関しましては、当該地域を担当しております地震予知連絡会の部会でも種々検討されていると聞いております。  以上でございます。
  60. 長柄喜一郎

    政府委員長柄喜一郎君) 火山噴火予知研究でございますけれども、これは測地学審議会建議によりまして、それぞれの研究機関、各省庁、また大学、これがそれぞれ分担して観測ないし研究に当たっているわけでございます。  先生が名前に挙げられました桜島、千島列島等につきましては、科学技術庁観測研究等は行っておりません。科学技術庁では、国立防災科学技術センター硫黄島、大島等この伊豆……
  61. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 ちょっと違っているんだ、聞いていることと今の答弁は。  じゃ、もう一度。今挙げたのは、具体的には観測体制については気象庁がやられるでしょう。しかし、こういうふうなこれが一連の動きと見て、地震との関連というものを考えないでもいいですか、何かの異常というふうに見ないでいいですか、そういうことについてどのようにとらえておられますか、これを科技庁から聞きたいんです。
  62. 長柄喜一郎

    政府委員長柄喜一郎君) 今回の三原山噴火が直ちに大地震に結びつくものではないというふうに地震予知連の先生方は判断されているようでございます。科学技術庁といたしましても、地震予知推進本部の立場から関係省庁といろいろ協力してこの問題に当たっていきたい、こう考えているところでございます。
  63. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 伊豆大島のことだけ聞いているわけじゃないんですよ。こういう一連の噴火がずっと起こってきていることが日本列島の何かの異常というものの前兆になっているんではないか、これは私は一般的な心配だと思うんです。そういう報道がいろいろとありますからね。  それに対して私も、今の予知連の方でそれは直ちに大地震に結びつくものではあるまいという判断をされたという記事も見ております。しかし同時に、同じ判断をしておられる方の中にも、大洋側からの圧力がかかってきているからそういう形の中で各地に噴火が起こっているということになるのではないかという見方の方もおられます。それからまた、学者の中ではさらにこうした一連の噴火が起こってきたらその数年後に大きな地震が起こっているというふうに過去のことも理解をすべきだという見方の方も、具体的な名前を挙げれば、新聞等に出ているので言えば琉球大学の方などですね。そういう意見などもあります。  それだけにやはり大変不気味なわけでありまして、心配になるわけなんでありまして、そういうことについて何らかの警戒体制なり何なりというようなものをとっているかどうかということを、やっぱり気になりますのでもう一度念を押して聞かせていただきたいと思います。
  64. 鈴置哲朗

    説明員鈴置哲朗君) 今お話にありましたいろいろの先生方のお話は、これは学説でございますので、我々としては貴重な学説として承っておるわけでございます。  監視の面から申しますと、火山活動を含めましてそれとの周辺の地震活動、あるいは日本全体の地震活動、そういったものとのかかわりにつきましては、私は地震の方を直接担当しているわけではありませんが、地震予知連絡会を中心に十分にその辺のところは検討されており、現在の段階では直接のかかわりはないというふうに伺っております。
  65. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 私は、こういうことは後でしまったというようなことがあってはいけない、それは三原山の場合も、しまったまでいってないかもしれないけれども、それに近いものだという感じがするんですよ。ですから、そういう意味では、私は疑わしいというものがあるときにはそれなりの対応というのをいろいろと考えるべきであるというふうに思うのです。  そこで、気象庁に伺いますが、四カ所の山は、細かく五種類ですか、の観測というのをやっているんですか。あと幾つが一つだけですか、全部で十七と言いましたけれども、それで観測をしておられるのは。
  66. 鈴置哲朗

    説明員鈴置哲朗君) 日本にはほぼ七十ほどの火山がございますが、気象庁が常時監視をしておりますのは十七火山でございます。そのうちの四つが先ほどから申し上げております、我々が精密観測火山と称している地震計を五台展開している火山ということでございます。地震計及び傾斜計でございます。他の火山地震計を一台展開しております。その他の火山につきましては機動観測、私ども機動観測班というのを持っておりますので、定期的にそれらが巡回いたしまして状況を監視しております。
  67. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 この間私どもが勉強会をやりましたときに、地震予知連の浅田さんからいろいろとお話をいただきました。その中でも特に、先ほど出口委員の方からもありましたが、センサーに当たるそういう調査をするものというのは数が多くなければいけない、ある程度。そういうことは常識的なことだと思うのですね、現実の問題として。  そういう中で、私は果たして五種類の観測でいいのかどうかということも一つ、その四カ所について、それもあります。そして、またさらにこの四カ所でいいんですかと。あとほかのところ、今地震計というお話がありましたが、常時観測全体で十七、そうすると四カ所除くとあとの十三ですか、それは地震計ということで、一つの種類の機械から出るデータしかとっておられない、こういうことでいいのでしょうか。  要するに、今我々はいろいろ不安が出ているという状況の中にあって、この観測、こういう体制でもっていいんですか。大変これが不安なんですよ。それで今確めているんですが、この辺は私は日本科学技術と学問の英知を集めて、しかもそこへかなりの予算もつぎ込んで体制をつくっていかなきゃならない問題だというふうに思うのですが、長官のひとつ御見解をお聞かせいただきたい。
  68. 三ツ林弥太郎

    国務大臣三ツ林弥太郎君) 先生特に御指摘予知研究予知体制、重要なことでありまして、私も先生同様十分重要性認識しております。  このたびの三原山噴火につきまして、予知研究体制等がなかなか重要であるというような御指摘を実は新聞等識者の間で言われておりまして、しかし、具体的にはなかなか重要な問題でありますけれども、政府といたしまして目下全力を尽くしてそういうふうな具体的な、後からの話になっておるわけでありますけれども、予知研究だとかそういうふうなことにつきましては、私ども科学技術庁といたしましても他省庁関係機関、また大学等と緊密な連携を保ちつつ、知恵を絞って噴火予知に関する研究充実強化に努めてまいりたい、かように考えておる次第であります。
  69. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 長官がお読み上げになったのに不満を申し上げてまことに申しわけないのですけれども、最後の方に英知を集めてということを言われた、そのことに私は大いに期待をしたいんです。  そして、英知を集めるということはやっぱり金が伴うんです。予算がやっぱりついて回っていくんですよ。ですから、私は科学技術庁という役割の中からいっても、地震だけではなく今の噴火の問題も、気象庁でやっている今の体制体制としてそれは進めていかれるとしても、学問と予知技術の進歩というためにあらゆる頭脳と技術とそして機材を動員していけるような体制をつくっていただかなきゃならない、そう思うので、その辺のところは今後の長官の御努力を期待したいのですけれども、お金のことを含めてということですが、いかがですか。
  70. 三ツ林弥太郎

    国務大臣三ツ林弥太郎君) 厳しい財政事情の中でございますけれども、御指摘のとおり、充実強化ということになりますと、予算等につきましても一生懸命お願いをして努力いたしたいと思っております。
  71. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 もっと私は今後将来の問題も伺いたいことがあったのでありますけれども、時間の関係もありますので三原山関係については以上で終わらせていただきたいと思います。  次に、チェルノブイリ原発事故関係についてお伺いをしたいというふうに思います。  九月九日に原子力安全委員会から、ソ連原子力発電所事故調査特別委員会の第一次報告というのが出されましたが、この内容は、いろいろとソ連から出された報告の紹介等をかなりの分を割いてされて、そして問題点として今考えられる点というのが幾つか述べられている、こんなふうに思います。  しかし、第一次報告を出された以降にさらにIAEAの特別総会などが開催をされているわけであります。ここでまたいろいろな審議が行われて勧告なども出されているわけでありますから、これ以降我が国としてこの報告につけ加えるべきことというのはどんなものがございますでしょうか。
  72. 佐々木壽康

    政府委員佐々木壽康君) お答えいたします。  先生が今おっしゃいましたように、この原子力安全委員会が出しました第一次の報告書では、ソ連が発表いたしました報告書に主として基づいておりまして、これに若干の考察を加えたというものでございまして、まだいわゆる事故に関連して完全な報告書ではございません。  今後、国際原子力機関を通じてまだ情報が入ってくる分も私ども期待しておりますし、それから原子力安全委員会委員会自身がこのソ連から出されました報告書につきましていろいろ定量的な分析を行っております。そういう定量的な分析の結果、こういうものを踏まえまして、その後のいろんな国際原子力機関の会合で出てきた一種の勧告とかいったようなものがいろいろございますが、そういうものも参考にいたしまして、最終的な報告書というものを今作成するための作業を続けております。この年度末ぐらいにはそういうものが出せるんじゃないかというようなことになっております。
  73. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 そうすると、これに追加をされて具体的な、さらにIAEAの勧告等を踏まえたそういった第二次の報告というものが大体年末くらいまでには出るということになりますか。
  74. 佐々木壽康

    政府委員佐々木壽康君) 年度末ぐらいでございます。
  75. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 そこで、このIAEAの勧告の中で何かすべての原発を対象に過酷事故対策を求めているというようなふうにも伝え聞いておりますけれども、過酷事故というのは一体どういうことを指しているのであろうか、どういうことを言うのであろうか、それが一つ。  それから、そういう過酷事故というものを我が国の安全指針というもの、原子炉の設計等の安全指針はこういう過酷事故というものを考慮したものに現在なっているのかどうか。このことについてお答えください。
  76. 佐々木壽康

    政府委員佐々木壽康君) 過酷事故について何らかの非常にはっきりとした定義があるというわけではございませんけれども、学問的といいますか、そういう点では、過酷事故といいますのはいわゆる設計で考えておりますようなそういう事故を超えて、例えばスリーマイルアイランドの事故のようなもの、あるいは最終的にはさらに、いわゆる俗称チャイナ・シンドロームと言っておりますが、その辺までが考え得るといいますか、ストーリーとして考えればそういうことにもなるかというようなことで、そこまでが対象になりますけれども、我が国の安全審査の場合には、我が国原子力発電所の設計はそういうシビアアクシデントにまで至るというような、そういう原子炉をもともと安全であるというふうに認めないという立場でございますので、それは審査の指針の中には入ってございません。  しかし、原子力安全委員会では安全研究計画というものを立てておりますが、その中ではシビアアクシデントについてもやはり研究を行う必要があるということで原子力研究所で研究を若干行っておりますが、その趣旨は安全審査において必要な資料を整備しようというものではございませんで、我が国の施設はいろいろな多重防護ということで最終的には格納容器で放射性物質の放出を抑えるということになっておりますが、そういう原子力施設全体の多重防護について、シビアアクシデントを考えてどれくらいの余裕があるものかどうかということを一応見ておこうと、そういう趣旨で原子力安全委員会の方は研究計画の中に入れております。
  77. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 言葉というのは難しくて私もなかなか理解が難しいんですが、何か、シビアアクシデントと言われると日本語に訳したらどうなるのかな、そうすると過酷事故内容というのはどういうのかなと、こんなことで、わからなくて、本当にそれこそ初歩的なことばかり伺わざるを得ないんでありますけれども。  そうすると、設計の段階では、その設計で考えた安全の範囲を超えるようなもの、これを過酷事故と、こう言うという意味なんでしょうか。そして、そういうものが起こる場合も想定して余裕のある設計をするというのが今の安全チェックということになると、こういうことなんでしょうか。
  78. 佐々木壽康

    政府委員佐々木壽康君) 例えば、スリーマイルアイランドの事故の場合ですと、燃料が損傷いたしまして、いわゆるデブリといいますか、そういう破壊状態になっているわけでございますが、そういう状態でもなおかつ冷却が可能でございまして、さらにそれが炉心が溶融してしまうというようなところまで至らなかったわけでございますが、私どもは、こういったものはもともと原子炉の安全審査を行う際にはそういう事故まで想定しなきゃいけないようなものというのを対象として考えておりませんので、これはもう設計の範囲を超えた事故と、こういうことになっております。
  79. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 そこの辺のところがどうも私はまだよくわからないんですが、設計の範囲を超えた事故と、設計の範囲を超えることはないと、こういう想定を常にしていていいんだろうか。人間のつくっていくものにはどこかに予測せざることが起こることが往々にしてあるわけですから、それだけに何かその辺のところが気になるのです。  だが、そこの専門的なところは僕はよくわからないということでちょっとわきへ置きましょう。それで、いずれにしてもチェルノブイリでは、理由は人為的なことが主たるものであったと言われるにしても、とにかくあんな大事故が起きたわけですね。こういう反応度事故だとか言われるものやその火災防止、そして消火、放射能の除去作業、こういったものの具体的な事実というものは、これは前にいただいた英語に直したソ連報告書の中には余り具体的には見えなかったのですが、それは何か別に報告があるんでしょうか。
  80. 佐々木壽康

    政府委員佐々木壽康君) ちょっと御質問の趣旨がはっきりとれなかったのですが、今回のチェルノブイリの事故についてそういう解析がなされているかということでございましょうか。
  81. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 ええ。
  82. 佐々木壽康

    政府委員佐々木壽康君) ソ連の方では非常に困難を伴ったようでございますが、制御室からいろいろな測定結果を回収いたしておりまして、それには例えば原子炉の反応度がどのように高まっていったかとか、温度がどのように変化したとか、そういったものを、最終的に爆発するところまではとっておりませんが、回収いたしております。それをベースにいたしまして、ソ連はそれを延長いたしまして定量的な解析といったものを行っております。
  83. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 済みません、私の聞き方が悪いのかもしれません。そうしますと、またちょっと違う角度で伺いますが、この事故が起こったときに、大勢の人たちが後始末のために動員されています。それから、住民が避難をしていますね。いろいろな人間の働いた中で、例えば消防士の人たちが多く、何人か殉職をしているとか、いろんなあれがありますけれども、こうした事故が起こったときに、火災を消すために、あるいは放射能除去をするために、こういう作業に従事した人たちというものにこの事故の実態というものがどの程度のみ込まされていたのだろうかというようなことも大変気になることです。  私がこういうことを聞いております理由は、要するに安全設計上は起こり得ないと、こう一応思っていても起こることがあり得る。起こったときに今の何といいますか、ハードなものとしての例えば原子炉のさらに安全設計の見直しだとか、いろんなそういう問題とはもう一つ別の、ソフトまでということも当たらないかもしれませんけれども、いろいろ起こった被害というのが我々にいろんな教訓を今与えてくれているんじゃないだろうか、その辺の具体的ないろいろな情報というのはソ連の側から出ているのでしょうか。
  84. 佐々木壽康

    政府委員佐々木壽康君) ちゃんとしたお答えになるかどうかわかりませんが、今回非常に被害を受けましたのは消防の方々でございまして、これは最近ソ連の方に行かれた医学の専門の方から聞いた話でございますが、亡くなった方のほとんどがいわゆるやけどでございます。火によるやけどと、それからあとは放射線による皮膚のやけど、こういうもので亡くなっておられるようでございますが、報告書自身にはどういう原因でなぜ亡くなったかとかというようなことは余り書いてございません。余りというか、書いてございません。  ただ、一つうかがえることは、例えば医学の専門家の方が言っておられるわけですが、消防士が着ている衣服がどうも余り適切でなかったのではないか。といいますのは、体が放射能汚染によって表面に付着した放射能でやけどをしている、これはそういうエアタイプといいますか、そういう体が放射能で汚染されないようなものを当然こういう作業では着なきゃいけないのではないかというようなことを言っておられました。そういうことで、ソ連報告書では余り細かく状況説明してございませんので詳細わかりません。すべて推測の域を出ないわけでございます。
  85. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 私がこんなことを時間を気にしながらくどくどと伺っております理由は、過酷事故というのがもしありとすれば、そういう周辺の環境問題やそれに対応する、対処する人間の問題だとか、それは装備のことも含めてみんなそうですということですが、そういうことも科学としてきちっと整理して対応というのを考えなければならない問題ではないだろうか。原子炉というハードについてのことだけではなくて、もっとそういう総合的な物の考え方をしなきゃいかぬのではないだろうか、こういう感覚がありますので伺いました。  しかし、情報が十分にないというのでありますから、これはもう要望でありますけれども、最大限情報を収集して、そういう人間にかかわる問題の情報というものを収集していただいて我が国の今後の対策の指針にしていっていただきたい、こんなふうに思うわけです。  そこで、チェルノブイリの前に起こったわけで ありますが、大きな事故として、先ほどもちょっと出ましたスリーマイル島の原発事故の問題があります。これは本委員会で私も伺ったことがございまして、そのときは、詳細についてはまだアメリカ側の発表がないということと、それから、こちらからの派遣委員が帰ってきての報告の集約などもまだしていない、こういう段階だったわけでありますが、それは本委員会で報告を私はいただけるものというふうに思っておりましたが、スリーマイル島原発事故調査の結果というのはその後どうなっているのか、これはまだ委員会で正式に聞いておりませんので、はっきりとさせていただきたいと思います。
  86. 佐々木壽康

    政府委員佐々木壽康君) お答えいたします。  アメリカにおきまして、復旧作業に引き続きまして、DOEを中心といたしましてスリーマイルアイランドの発電所の運転者、それから米国の電力中央研究所、EPRI、それからNRC、こういうものが参加いたしまして炉内検査とか除染技術の開発、それからプラントの維持、また復旧作業、こういうものを目的としまして大規模な調査活動が進められております。この活動は八八年まで続けられるということになっておりまして、この二号炉では一応の除染が現在のところ終わっておりまして、圧力容器のふたが取り外されまして、六十年の十一月から損傷燃料の取り出しの作業が始まっております。  ことしの七月からはアイダホの国立研究所の方へ一部の取り出した燃料の輸送が始まっておりまして、サンプルの分析のまだ現在準備の段階にございます。私どもは、その分析が終わりますと貴重なデータが得られるということを期待しております。  DOEは、逐次今回のこの計画につきまして報告書の形でいろいろ公表をしてきております。まだ最終的に全部が発表されておるわけではございませんが、私どもとしては、今回の計画、この一連の御説明しました計画に参加するということが今後の私どもの、我が国原子力発電所安全性の向上のために有益であるという観点から、電気事業者、それからメーカー等十七機関研究者の派遣とか資金負担も含めて参加しているわけでございますが、大いにその結果を期待しているところでございまして、まだ最終的に全体がこういうふうにまとまりましたということを御報告できる段階ではございません。
  87. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 それは中間的な取りまとめというようなものもまだないわけですか。
  88. 佐々木壽康

    政府委員佐々木壽康君) 関連の報告書が幾つか出されているということで、我が国にもそれは入手されておりますが、実はきょう私ここで先生にその部分について御説明できる状態にございません。
  89. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 それは後でまた私の方も資料請求をさせていただきたい、出せるものは出していただきたいというふうに思います。  そこで、スリーマイルの事故にいたしましてもチェルノブイリの事故にいたしましても、私は人為的なミスというのが最大の問題点なんではないだろうか、こんなふうに思います。私は本委員会でも、人間の犯すミスというものについてもっと科学的にきちんと分析をし、対応策を立てていかなければならないという観点で何回か申し上げてきております。  そこで、こうした大事故を起こしたそのことを他山の石として十分に対応していただかなきゃならないんでありますが、そのためには、まずとりあえず原子力施設で働いている人々、そういう人々に対して、こうした教訓を踏まえた教育とか訓練とかというものをやっているでしょうかということを、これは科学技術庁とそれから通産省、両方からお聞きしたいと思います。
  90. 佐々木壽康

    政府委員佐々木壽康君) 科学技術庁が規制を担当しております研究炉並びに研究開発段階の動力炉について御説明申し上げます、それからあと核燃料関係の施設もございますけれども。  私どもの施設では、従業員に対しまして、施設の保安とか放射線防護にかかわる総合的な教育を年一回以上計画的に行うというふうに保安規定に定めておりまして、それを実施しております。  その内容といたしましては、関係法令であるとか保安規定それからマニュアル類、こういうものを教える、再確認する。それから施設の構造、放射線防護、異常時の措置、その他施設にかかわるいろんな保安に関して必要な知識とか技能を再教育する。それから、こういう一般的な再訓練に加えまして、年一回以上実地の保安訓練を行うということも保安規定に定めておりまして、これらによって従業員の教育、訓練に万全を期しているというふうに思っているわけでございます。
  91. 神田淳

    説明員(神田淳君) 運転員の訓練でございますけれども、社内におきまして、オン・ザ・ジョブ・トレーニングのほか社内研修等をやっております。それから日本原子力研究所の研修等へも派遣しておりますが、一番重要なのは、いわゆる運転員の訓練センターに派遣しております。訓練センターは、BWRの訓練センターBTCというのと、それからPWRの訓練センターNTCと二つございまして、ここで運転員を定期的に訓練しています。原子炉の運転に必要な基礎原理、それから技術についての講義、このほか制御盤を模擬したこの訓練センターにはシミュレーターがございます。そこのシミュレーターで現実のプラントと同じような、コンピューターで同じ感覚で運転訓練できる、シミュレーターでございますが、そういうふうな訓練をしている。このシミュレーターの中に、異常時とか緊急事態を想定した訓練がございまして、そういった訓練、緊急時の訓練も含めてこういうことでやってきております。運転員の補助制御員になるコースとか、それから制御員になった後の再訓練コース、あるいは直員連携コースとか、いろんなコースがございまして、事故を模擬いたしました操作訓練、こういったものをやっております。
  92. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 今、運転員お話がありましたが、商用原発で働く人たちすべてに対しての教育とか訓練とかというのはしないんですか。特に下請関係の作業員が相当入っているわけですけれども、そういう人たちに対する教育、訓練はどうなっていますか。
  93. 神田淳

    説明員(神田淳君) 訓練は、大きく分けまして、今申し上げた運転員の訓練のほか、いわゆる下請の作業員の人は保修訓練、保修でございます。保修の作業をやっています。その保修訓練は、サイトの中に保修訓練センターがございまして、その発電所のサイトの中で定期的に保修訓練をやっております。
  94. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 これを聞いている意味がおわかりだと思うのですけれども、先ほど私は、過酷事故ということも考えて対応をしろという勧告があるというふうにも聞いておりましたので、特にそうした従業者の教育、訓練というのがどうなっているのかということを大変気にして伺いました。特に今サイトの中で教育というふうにお話がありましたけれども、残念ながら私の知っている事実の中では、余り大した訓練、教育を受けていない人もおりますがね。それだけに下請関係の教育、訓練関係というのはよほど心してきちっとしていただかないと、例えばソ連の消防士の例だとかということもありますだけに大変心配になります。その辺のところの対策を今後十分にしていただきたいと思いますが、どうですか。
  95. 神田淳

    説明員(神田淳君) 下請を管理する電力会社に、我々電力会社の監督官庁でございますが、常々言っております。保修というのが定期検査等のいわゆる予防保全、原子炉の、原子力発電の事故、故障を未然に防ぐ、予防保全上極めて重要なものであると、それに保修というのが非常に大きな影響を与えているということを常々電力会社にも言っておりまして、電力会社も相当下請の作業者をいろいろ入念に指導してきているというふうに理解しております。先生の御指摘をまた踏まえましてもっと充実させていきたいというふうに思っております。
  96. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 この点ももっと聞きたいと思ったことがあるんですが、特に最近起こっている事 故、あるいは定期点検等の間の異常発見等について伺いたいと思ったことがありますけれども、時間も経過するのできょうは省略をいたします。  ただ、一つだけ通産省に伺っておきたいのは、定期点検期間を短縮してもらいたい、そういう声などもちらほらあるというふうに聞いておりますけれども、もしあるとすればそれに対してどういうふうに考えておられるか。
  97. 神田淳

    説明員(神田淳君) 定期検査、国の検査に加えて、その期間に電気事業者がみずから自主点検すると、いわゆる事故の予防保全上非常に重要な検査であるというふうに考えております。現在のところ、従来から運転実績等を見つつ安全性確保を大前提にしてできるだけ効率的にはやってきているという状況でございます。現在計画的な保修工事等を実施しているものを除きまして大体三カ月程度で終わっております。  御質問の定期検査期間の短縮の件でございますけれども、これは定期検査そのものが信頼性の確保というのに非常に大きく寄与しているというのを考えますと、安全確保というのを第一にして、これについては非常に慎重にやる必要があるというふうに考えております。しかし、技術の進歩というのがございまして、いろいろな機器が、機器に新しいさらに効率のよい機器が出てくる、あるいは過去、実績、経験等たくさん技術が、情報が蓄積されてきている。それから作業手順をさらに合理的にやっていく、こういった工夫はできるだけいたしまして効率的にはやっていきたい。しかし、一番大事な安全、信頼性というのをさらに充実させていく、そういうふうな考えでおります。
  98. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 私は、かなりその点については心配もあるわけではありますが、くれぐれも安全チェックに手抜きなどが起こらないようにということだけは、もう言わないでもいいことでしょうけれども、これはくどいくらい繰り返して言っていいことだと思いますので、強く要望をしておきたいと思います。  そこで次に、せっかく動燃事業団においでをいただいて、ずっと後の方になって恐縮でございました。動燃事業団の方に御質問を申し上げたいと思います。  ちょっと前の話で恐縮でありますけれども、六月二十三日にプルトニウム漏れ事故というのがあったということでありますが、このプルトニウム漏れ事故というのはどうしてこんなことになったのか。特に事前の点検体制というのが厳密にやられていなければならないはずだと思うのでありますけれども、なぜ起こったのか。この辺をまずお聞かせいただきたい。
  99. 植松邦彦

    参考人植松邦彦君) お答え申し上げます。  今、先生指摘のように、昭和六十一年の六月二十三日午前十一時三十分ごろ、動燃の東海事業所プルトニウム燃料第二開発室のプルトニウム・ウラン貯蔵庫で査察を行っておりましたときに、たまたま汚染発生をいたしました。  汚染原因につきましては、その後、動燃で鋭意調査をいたしました結果、プルトニウム貯蔵容器を密封いたしておりますビニールバッグに亀裂が生じまして、そこから非常に細かい粉末状になったプルトニウムが漏れ出したということが汚染原因であるというふうに考えております。また、汚染が拡大いたしましたのは、別途貯蔵庫の扉をあけたまま査察の作業を行っておったということがありましたので、その作業に伴う人の動きで汚染が広がっていったということが広がった原因であるというふうに考えております。また、残念なことに、空気の流れにつきまして、廊下から休憩室に向かって空気が流れておりましたので汚染が広がりましたが、その原因は休憩室に対する負圧検出器のふぐあいによるものであるということが判明いたしております。  こういった問題についての常日ごろの管理につきましては、十分な日常検査と管理を行ってきておったというふうに考えております。
  100. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 今のビニールの袋が破れたというお話についても、何かそれはもうビニールが劣化をしていたということのようです。一定の期限の切れたものだったというお話ですが、それもなぜそんなことになったんですか。本来は、きちんとやっていさえすればそんなことは起こらなかったんじゃないですか、こういうことも申し上げたいし、それからさらに、今の扉をあけたままというお話もありましたが、その辺の細心さというのですか、そういうものについても、私は逆になれというのがあったのかもしれないと思いますけれども、チェックを今十分にやっておりますとおっしゃられたけれども、これは私は必ずしも十分だったんじゃないのじゃないか、むしろそう思うのです。  さらにその報告が、新聞の報道によりますと、科学技術庁への報告をするまでに約七時間くらいかかっている、こういうことなんですけれども、なぜこんなに時間がかかるんでしょうか。
  101. 植松邦彦

    参考人植松邦彦君) 今、先生指摘のように、通報連絡が非常におくれた、七時間おくれたという御指摘がございましたけれども、先ほど申し上げましたように事故発生いたしましたのは十一時三十分ごろでございまして、動燃といたしましてはできるだけ速やかに通報を行う必要があると考えまして、午後一時半ごろには東海事業所から当該県には御連絡を申し上げてございます。  しかしながら、汚染発生につきましては、それに関連いたしました当事者の除染、それから被曝の検査及び応急処置など安全確保を第一に考えておりましたし、また、状況の正確な把握等汚染の度合いの確認などを行っておりましたので、多少時間がかかりました。国の方に御報告申し上げたのは午後の四時半ぐらいでございますので、七時間という時間には当たらなかったかと思っております。しかしながら、新聞その他、プレスに御報告いたしましたのは六時ごろでございましたので、多少時間がかかっておったかというふうに考えております。
  102. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 それにしても七時間というのは、今の新聞とのかかわりであったという、ちょっと違うということであったとしても、それにしても随分時間がかかっているじゃないですか。私は、物事というのは、今いろいろと言われたけれども、発生したことの事実くらいは直ちに報告するのが当たり前じゃないかと思うのですけれども、科学技術庁、これでいいんですか、こういう体制で。
  103. 佐々木壽康

    政府委員佐々木壽康君) もちろん事故発生の通報は早い方がいいわけでございますが、今回の報告につきましては、その報告を動燃事業団がする前に状況の正確な把握とか、それから汚染や被曝の確認とか、それからこの被曝者の応急の措置といったようなことに時間がかかったというふうに聞いております。  しかし、五時間のおくれが本当に妥当であったかどうかということについては、私ども現場でその作業を見ていたわけでございませんのではっきりいたしませんが、いずれにしましても、私どもはそういう現場でのいろいろな対応をまずやっていただきたい。その後に通報していただくということで、今回は特に動燃については非常に問題があったというふうには考えておりませんけれども、いずれにしましても通報が早い方がいいということで、動燃事業団には今後とも速やかに通報するようにというように今指導しております。
  104. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 私は、今の局長の御答弁ではちょっと納得できないんですよ。というのは、いろいろと緊急に対応しなきゃならないことがあるのは、それはわかります。それはそれできちっとやっていただかなきゃなりません。内容が細かくどうだということについては、後できちんとした報告をしていただくというのは、当然そうでなきゃならぬと思うのですよ。  しかし、放射能漏れというのは大変重大なことなんですから、事故が起こったらその事故が起こったという事実くらいは直ちに報告をされなければならない問題じゃないか、私はそういう観点で伺っているんです。その内容が妥当であったかどうかということよりも、事故発生についての私は報告、その問題が、もっと大きな事故だったら どうするんですかということにもなるわけなんでありまして、とにかく事実を早く知って対応というのを的確にできるようにというのが監督官庁としての科学技術庁の私は義務じゃないかと思うのですけれども、その辺はいかがですか。
  105. 佐々木壽康

    政府委員佐々木壽康君) 周辺に漏えいが起こるとか、そういう事態に対しましてはもちろん緊急にこれに対応しなきゃいけません。そういうことは全く議論の余地のないところでございますが、その他の、内部にとどまる、外部に出ていきそうにない、そういった事故につきましてはやはりきちっとした状況の把握、それに基づいて私どもにも報告をいただきたい。いずれにしましても、ささいな事故であれ、できる限り早く通報をしていただくということはもちろん原則でございます。
  106. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 私はそこのところは、異常が発生をしたら直ちに報告をする、とりあえず発生をしたということを報告する、後の、それから先の判断、いろいろとしなきゃならない問題は対応すべきことをして、そしてそこできちんとした報告をしていただく、こういう形が必要だと思うのです。これは当事者である動燃の方はどのようにお考えになりますか。
  107. 林政義

    参考人(林政義君) 今回東海事業所におきましてプルトニウム汚染を伴うトラブルが発生をいたしまして、各方面に御心配をおかけしましてまことに遺憾に存じておる次第でございます。  当事業団といたしましては、このトラブルの原因の究明、安全対策をすべての業務に優先をさせまして処置をいたしたわけでございます。幸い汚染は施設内管理区域のごく一部にとどめられまして、また被曝線量も許容被曝線量を十分に下回るものでございました。しかしながら、これを機会に私を初め動燃事業団の職員一人一人が改めて周辺環境はもとより作業者並びに施設の安全とトラブル再発防止に決意を新たにいたしまして、日常業務遂行に当たつて安全確保を最優先に進めてまいる所存でございます。
  108. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 ちょっとおわびを申し上げておきたいのは、私がきょうお願いをしておりました消防庁、それから通産省の方にもこれから後聞きたいと思っていたことがございます、通告していたことがございますけれども、今の問題で時間が随分経過をしてまいりましたので、呼んでおいてまことに申しわけありませんけれども、そちらの方の質問は割愛をさせていただいて、私は動燃事業団にもう一つ伺っておきたいと思うわけであります。  私は、そういう動燃事業団のやはり姿勢が周囲に与えている影響というものがいろいろあると思うんですよ。だから今回、北海道の幌延の高レベル廃棄物貯蔵工学センター設置への調査の問題にいたしましても、本来であれば地元の同意というものを、そこの部分的な町村、自治体ということでない、やはり周囲、道、そういうものがきちんと対応するということが大事なんだと思うんです。そことのちゃんとしたコミュニケーションがあって、そして、そこでちゃんとお互いの同意があってやられるというのが本来だと思うのですけれどもね。  ところが、今度はボーリングの資材搬入、それで何かボーリングをされたようでありますけれども、そういうことでかなり周辺町村からも強い非難の声が上がっています。北海道の知事を初めとして強くこれに対して批判をしておる。こういう非難がますます強くなるじゃないですか。不信感が起こるような、そういうことが重なれば重なるほどますますできなくなりますよ、こういうことにもなるわけであります。  私は、今回の北海道でのボーリングの強行ということについても極めて遺憾だと思うのです。地元の同意ということ、これは本委員会でも地元との関係というのが立地の場合に非常に大事だということは何回も大臣かわるたびに、そのことは常に大臣の立場からも言ってきておられることです。地元をどう理解するかという問題だけではないと思のんですね。地元といったらやはりその地域全体を含めて考えなきゃならないんです。そうしなければ結局自動車も通れない、ヘリコプターで持っていかなきゃならぬというようなことが起こるんです。私はこんな事業団の態勢というものに対しては極めて遺憾だと思います。  そのことが、先ほどプルトニウムのことで申し上げましたけれども、事業団自身に何か全体の流れの中で緩みがあるんではないだろうか。そして、そうした地元との同意、対話ということについてもある程度たかをくくったところがある。非常に言葉がきつくて申しわけありませんが、そういうところがあるんじゃないだろうか、その辺を大変懸念をいたします。今後このようなことがあるということになると、それこそ北海道の中で全道各地域で大きな反対運動が高まると私は思います。この辺のところは動燃事業団からきちんと対応を改めていただきたい、こう思いますし、それからまた大臣からは、こうした原子力施設の設置というときには地元との関係というのを本当によく考えていただかなきゃならぬ、そう思うわけでありまして、このことは歴代の大臣に伺ってきていることでありますが、地元とのかかわり、関係ということを現大臣はどのようにお考えになっておられるか。そのことを一度確認させていただきたいと思います。それで私の質問を終わりたいと思います。
  109. 林政義

    参考人(林政義君) 貯蔵工学センターにかかわる調査の実施につきましては、私どもの申し入れに対しまして、知事は、地元のコンセンサスが得られていない等の理由で調査を受け入れる状況にないという御判断でございました。一方、直接の地元でございます幌延町及び町議会は、貯蔵工学センターを誘致されております。また、北海道議会におきましても調査促進の決議をされておるところでございます。一方、地元では、地盤に関しましていろいろな疑問あるいは不安が提起されてございます。こういう状況の中での調査は、こういう疑問や不安に具体的なデータに基づいてお答えをして、地元の御理解を深めていただくためにも必要であるというふうに判断をいたしまして、調査に直接関係する幌延町及び地権者の御理解をいただきまして、昨年の十一月に着手をさせていただいたわけでございますが、降雪で一部一時現地調査は中断をいたしたわけでありますが、分見調査は継続をいたしたところでございます。  この間、地元の御理解を深めていただくために、幌延の連絡所並びに札幌連絡事務所を中心にいたしまして、地元に根づいた広報活動をしてまいったわけでありますが、本年八月に幌延町に最も隣接をいたしております天塩町と豊富町の両議会において調査促進の決定がなされたわけでございます。    〔委員長退席、理事岡部三郎君着席〕  このように地元の理解は進んでおりまして、さらにボーリング調査を通じまして地元の不安や疑問に具体的なデータをもとにしてお答えすることができ、これらの総合的な調査結果をお示しすることで多くの方々の御理解が得られるという考えのもとに、本年八月三十日に現地調査を再開いたしたわけでございます。今後とも御理解が得られるように最善の努力をいたしていく所存でございます。
  110. 三ツ林弥太郎

    国務大臣三ツ林弥太郎君) 貯蔵工学センターにつきましては、我が国が放射性廃棄物対策を進めていく上での重要なプロジェクトと認識をいたしております。私といたしましては、安全の確保を大前提に地元の理解と協力を得つつ本計画の着実な推進を図ってまいる所存でございます。  幌延の関係でございますが、立地に先立つ調査については、地元の疑問や不安に具体的なデータで答えることにより地元の理解を深めてもらうためにも必要であることから、調査に直接関係する地元関係者の理解の得られる範囲内で実施主体である動燃の責任と判断で実施をさせておることでございます。
  111. 伏見康治

    伏見康治君 委員長質問できないのかと思っておりましたら、かわればいいんだということで、質問させていただきたいと思います。  まず、チェルノブイリに関連した質問を二、三いたしたいと思いますが、チェルノブイリの事件というのは大変不幸なことで、お悔やみを申さなければならないことなんですけれども、しかし科学技術者の立場から申しますというと、これはやろうと思ってもできない一大実験をしたということに該当すると思うのです。それで、この事故からできるだけ多くの科学技術的な教訓、それ以外の教訓ももちろんございますが、科学技術的な教訓をできるだけくみ取るということがむしろチェルノブイリ事件の正しい考え方であろうと思うのです。  それで、非常にたくさんの方々が放射能をお浴びになった。放射線を浴びた上に、放射性物質を吸入されたり皮膚の上につけたりして、いろいろな症状を呈されたわけですが、そういう放射線の影響人間にどういう影響を及ぼすかということは、我々日本人にとっては広島、長崎以来おなじみではございますけれども、広島、長崎のデータというものは戦争中のことでもございますし、我々被害者の方が原子爆弾だということをすぐ知ったわけでもございませんし、いろんなデータが極めて不十分である。したがって、広島にABCC、ただいまは放射線影響研究所となっておりますが、そういう施設があって、長い間追跡調査をしておったのですけれども、何といってもその基礎のデータが非常に貧弱であり、あいまいなものですから、的確なことが言えないというもどかしさがあったわけです。  今回は、放射能に対する一般的な水準が高くなっており、また放射線の測定器もそろっているという時代においてこういう事故が起きたということは、放射能を浴びた方々の状態がどうなるかということを追跡するのに非常にいいチャンスであるとも言えるわけでございます。このことに対して、まず私たちは学ばなければならぬと思うのですが、九月末にIAEA、国際原子力機関の臨時総会がありましたときに志村次官が御出席になって、その点について何か御発言があったとか伺っておりますので、その辺の総会御出席の感想などをまず伺いたいと思います。
  112. 志村哲良

    政府委員(志村哲良君) IAEAの特別総会には私が日本政府の代表として出席をさせていただてまいりました。本会合は九月二十四日から三日間ウィーンにおいて開催をされたものであります。日本を初め九十一カ国の閣僚レベルの出席を得まして開催されましたが、国際的な原子力安全確保の新たな枠組みに向けまして極めて真剣な討議が続けられまして、大きな成果が得られたと私は考えております。この会合におきましては、化石燃料が有限であるという事実にかんがみまして、今後ともに安全の確保を第一義といたしながら原子力の平和利用を推進すべきであるという点におきまして、洋の東西あるいは南北を問わず、各国代表の意見が一致したという印象を私は受けてまいりましたし、その中で極めて深い感慨、感激をも覚えた次第でございます。  今回の会合の具体的な成果といたしましては、早期通報及び相互支援の二つの条約が採択されましたほか、今回の事故を踏まえましても、今後とも原子力は継続して社会的、経済的発展のために重要なエネルギー源であるということ、あるいは原子力安全確保に対する各国の責任を再協議する必要性があること、あるいは原子力安全に関する国際協力強化が必要であるということなどを内容とする決議文が採択されたわけであります。  放射線障害の疫学的研究に関しましては、平素私は伏見先生からいろいろ御教授を賜り、また御要望をもいただいておりましたので、私の行いました代表演説の中におきましても、我が国といたしましては、世界で唯一の被爆国の立場から、これらの研究調査に対しては特に関心を有しており、これに関する調査研究が広く公開され、各国原子力関係者の共通の財産として有効に活用されることを期待する旨の発言をいたしてまいりました。また本会合においても、IAEAの事務局長の諮問機関でございますINSAGの勧告に基づきまして、本件に関しましては今後疫学調査の方法に関する検討を行うことを理事会に要望もいたしたところでございます。  以上が出席させていただきましたIAEAに関する私の概略の感想と、疫学的研究に関する御報告でございます。
  113. 伏見康治

    伏見康治君 どうもありがとうございました。放射線影響研究所の重松所長とか、あるいは原子力安全委員の田島英三さんとかいう方々はこの問題について特に関心が深いので、今後ともそういう先生方と御相談の上、疫学研究の方でひとつ働いていただきたいという希望を述べておきたいと思います。  たくさんのことがチェルノブイリの事件から学び得ると思うのですが、例えば、チェルノブイリの第四号炉、壊れたものの上にヘリコプターで五千トンからの砂か何かを落としたりして、大量の放射性物質、何億キュリーという量だと思うのですが、そういうキュリー数の放射性物質を小山のようなもので埋めてしまっているわけですね。それから、その原子炉の下の方には突貫工事で深いところにコンクリートの何か板を流し込んで、それで地下水の方に漏れていくのを防ぐ工事をしたとかいうようなお話が伝わっております。  しかし、もしそういうことで放射性物質が安全にしまっておけるものならば余り地層処分なんて難しいことを言わずに済んでしまうのではないかという話も考えられないわけではないと思うんですが、そういう処置の仕方は応急な処置としてやむを得ないことだと思うんですが、それがその後無事であるかどうか。そういうものを常時監視している必要があると思うんですが、そういう点について原子力安全局の方には何か情報は入っているのでしょうか。
  114. 佐々木壽康

    政府委員佐々木壽康君) 現在のところ私どもがソ連から得ております情報は、チェルノブイリの発電所をコンクリートの壁で周りを覆いまして、その中を何か埋めてしまうというようなことしか聞いておりません。先生指摘のように、その程度のことで廃炉というものがもしできるとすれば非常に簡単なことじゃないかと、私ども、これは私の私見でございますが、思います。
  115. 伏見康治

    伏見康治君 原子炉の中にはとにかく熱を出すものが入っておりますので、冷やさなくちゃなりませんし、それから放射性のガスもございますので、じわじわと五千トンの砂の間を縫って放射性物質が出てくることだけは確かだと思うのですね。そのほか、地下水が汚染して、プリピアチという川があって、やがてその川の中に流れ込んで、それがやがてはキエフ大都市の水源にまで流れ込むおそれといったようなものがあって、恐らくソビエトの科学技術者はそういう水道汚染ということを極力恐れていろんなことをしているはずだと思うのですが、そういうことについての情報を得るような手だてを今後もぜひ考えていただきたいと思います。  しかし、チェルノブイリの教訓の中で、何といっても原子炉の安全性に関する教訓というものが一番大きいと思いますので、その方について二、三お尋ねしてみたいと思うのですが、この事件で、まず私たちは原子炉の中に何億キュリーといったような非常にたくさんのキュリー数の放射性物質が含まれていること、それが放出された場合には広島型原爆の一発や二発といったようなものよりもはるかに多くの放射性物質を実はまき散らすものであることを教えられたという意味において、非常に教訓が重要だと思うのです。  それから、TMIの事故に比べまして、格納容器があるかないかということが空気中に放射性物質をまき散らすかまき散らさないかという最後の瀬戸際的な違いを呼び起こすわけでございまして、そういう意味でTMI事故の場合の格納容器の存在を、今さらながらその重要性を感ずるわけですが、同時にしかし、チェルノブイリの場合のような爆発的なことが起こった場合に、普通我々が考えているような格納容器で果たして耐えられるものであるかどうかといったような疑問も出てくるわけです。そういう意味の、原子炉工学的な意味の反省材料というものは非常に出てくると思 うのであります。  しかし、一番大きなのは結局人間が操作上のミスを行ったというところにあると思うのですが、設計上の問題でなくて操作する人間ミスに持っていくということは、実は余りおもしろくないということを申し上げてみたいと思うわけです。  フールプルーフという言葉がございますが、つまり、全然物を知らない人が入っていって何か動かしたときにえらいことにならないようにフールプルーフに装置をつくっておくということが大事ですが、今度の事件を見ますというと、原子炉を実験していたわけですから決して素人が入っていったわけではない。いわばエキスパートが運転していてやり損なったということになるわけですから、私はフールプルーフという言葉よりも、今後はエキスパートプルーフと、そういう観点で物事を考えていかなくちゃいけないのではないか。エキスパートプルーフというのは一週間ほど前に近藤次郎さんに教えてもらった言葉ですが、そういう観点も出てくるんではないかと思うのです。  とにかく、そういう人間の要素がいたずらをしたということが、スリーマイルの場合でもそうでございますが、人間をできるだけ排除して、しかも安全性を保つということが極めて大事になっていく。つまり本質的に安全である、あるいは手を加えなくても安全である。例えば現在の原子炉にはECCSというのが加わっておりまして、要するに、いざというときに水をかけて冷やしてやるという装置が必ずくっついているわけですが、そういういわば後からくっつけた機械的な安全装置といったようなものは、その安全装置はもしチェルノブイリの場合のようにスイッチを切ってしまってあるという場合には役に立たないわけですね。  つまり、そういう後からつけ加えた工学的安全装置というものをむしろやめてしまって、それがなくても安全なようにする、英語でインヒアレントリーセーフというと思いますが、そういう本質的に安全なものを考えるという時期が私は来ているというふうに思うわけです。  そこで、そういう安全な原子炉をつくるというようなことをお考えになるかどうかということを伺ってみたいのですが、私のボスに当たる菊池正士先生原子力委員をなさった方ですが、その菊池先生は晩年になりまして原子炉の安全性ということを非常に心配されまして、菊池先生が最後に発表された論文は原子炉の安全性に関する論文でございました。とにかく非常にまじめに考えますと、何億キュリーという放射性物質が内蔵されている。それを放出させないための手段は今のような状態でいいのだろうかということを少し気遣い始めますといろいろ心配が出てくるわけです。菊池先生がお亡くなりになる直前まで非常にそのことを心配して考えておられたことを私は思い出すわけです。  偉い先生方はアメリカの方でも似たような感じをお持ちになるものとみえまして、例えばオークリッジ研究所の所長をやっておられたワインバーグさんも、もっと安全な原子炉というものを設計すべきではないかという考え方を持っておられたようであります。それからもう一人、初代のアメリカの原子力委員長をなさったリリエンソールはTMIの事故の後で、もっと安全な原子炉を考えるべきではないかということを言って、書いておられます。  今いろいろなことが、今までの原子炉の科学技術発展について、歴史的にはそうなってしまったけれども、それで果たしてよかったのだろうかと思われる点がなきにしもあらずですね。例えば原子力と申しますと、私のような物理屋、物理畑の人間か、あるいは電力ですから電力系統の方、物理屋と電気屋とが集まって原子炉をつくり上げたと言って差し支えないと思うんですが、今になって考えてみますというと、もっと本質的に化学屋さんが参加しておるべきではなかったかという感じを受けるわけです。木村健二郎先生のような化学者も前から原子力研究所には入っておられましたけれども、木村先生はいわゆる放射能化学の先生で、いわゆる化学工学的なセンスを必ずしも持っておられる先生じゃないわけです。そういう方面の先生をもっと主体にした原子炉設計というものであるべきであったと今になって思うわけです。  例えば、水を使う原子炉、軽水炉といったようなものをなぜ思いついたかというと、物を冷やすのに水で冷やすというのが一番なれていて、これは非常に、とっさに何か物をつくろうとするときに一番使いやすい物質であるという意味で水が使われたんだと思います。それが高速炉の場合のように、ナトリウムのような液体金属で冷やそうといたしますと、ナトリウムで物を冷やすという実際上の経験がありませんために、それを実際やってみますというと大変な開発研究が必要なわけです。そのために実際ナトリウムを使わなければならない増殖炉というものは非常に技術発展がおくれているわけです、水を使ったから手早くできたという面は確かにあるんですが。しかし水を使いましたために水金属反応、化学反応というものが必然的に起こる可能性が残されてしまったわけです。  つまり、いささか高温になりますと、水の中に金属を漬けておきますと、水の中の酸素が金属の方に取られまして水素が発生してまいります。その水素ガスが大量に発生するということが、その次に爆発を起こすのではないかという恐怖心がございまして、これはTMIの事故の場合も、それからチェルノブイリの場合にも実際に問題になり、あるいはそれが起こりはしないかということのためにいろんな操作を誤っているという面が非常にたくさんございます。  そういうようなことを考えますと、私は現在の日本で使われている原子炉というものは非常に安全だと思いますが、その安全性は先ほど申しました人間が加わって安全にしているわけです。人間が加わって安全なのは、現在の日本のような信頼できる技術者がたくさんいる国は大変結構だと思うのですけれども、一たび日本の原子炉を例えば東南アジアに輸出するといったような場合を考えますと、その辺の方々は科学技術的には日本の方ほど信頼できないと思いますね。日本の原子炉がそういうところへ輸出されて、そこの方のやり損ないで何か事故を起こしたときには、これは結果において日本の責任になってしまうと思うのです。  そういうこともあわせ考えてみますと、私は、そろそろ次世代の原子炉として、今進行している原子炉はあくまでもそれを安全に運転するということでよろしいんですが、その次のゼネレーションの原子炉のためにはもっと安全な原子炉をちゃんと用意しておくべきだと、今からそういう研究を開始すべきだと思うのでございます。  アメリカにはそれに相当する原子炉が既にほとんど完成していると伺っております。DOEがスポンサーになりましてGAという会社でつくっておりますMHTG Rというのがございます。モジュラー・ハイ・テンプラチャー・ガス・リアクターというのがございまして、ほとんどグラファイトの塊のようなもので、その中に燃料というのはごく少量の小さな仁丹の粒のようなものなんですが、ウランの周りをグラファイトの層で覆ったようなものでございます。そういうものをつくって、そして冷却材としてはヘリウムを使っている。これはどう考えても水金属反応といったようなものが起こり得ない非常に安全な原子炉であると思います。  こういうものに対して、今から原子力行政としては次世代の原子炉としてそういうものに力を入れて研究なさるべきだと、この二つの大きな事故を見てつくづくと考えるわけであります。  幸いにして、原子力研究所では高温ガス炉というものの研究をされております。そして、それをいよいよそろそろ原子炉に仕立て上げるという段階に来ていると思いますので、私は、その高温ガス炉というのはもともとの発想は非常に高温のガスを鉄の精錬のようなものに使う、高温を使うということを目的にして研究されたものであります けれども、それは同時に極めて安全なものである、インヒアレントリーセーフなものであるという点から大いに推進されるべきである、こう思うのです。  どうも私のレクチャーが長過ぎました。原子力局御関係の皆様方のその方面の御見解を伺いたいと思います。
  116. 松井隆

    政府委員(松井隆君) 先生お話の、次世代の炉で高温ガス炉を考えたらどうかという御指摘でございますけれども、現在、いわゆる軽水炉につきましては、日本におきましてはかなりいろいろと着実な安全実績を積み重ねております。そういう意味ではこの炉をさらにもっと改良改善を加えるということは当然必要と思っておりますけれども、そういった形でやるべきであろうというふうに考えております。  ただ現在、先生のおっしゃったようないわゆるインヒアレントセーフティーの原子炉ということにつきましても、やはり長期的な課題という格好での検討は考えなくちゃいけないというふうに考えております。  具体的に高温ガス炉でございますけれども、先生指摘のとおり、もともとこれは日本原子力研究所におきまして、その出てくる高温の熱を製鉄に利用とか、あるいは化学利用とかということを考えていたわけでございますけれども、おっしゃるとおり、この高温ガス炉というのは、いろんな構造上の特徴によりましてより高い固有の安全性があるというふうに言われておる次第でございます。  そういうわけで、実はこの問題について今後どういうふうにするかということを原子力委員会でもよく御検討していただきまして、ことし専門部会でもいろいろと今後どうするかということで評価、検討していただきました。そこで、これにつきましては、今後の問題を考えた場合に、やはりその技術の基盤を確立しておく、それからその技術をさらに高度化を図るということが将来にとって重要ではないだろうかということで、来年度ぐらいからそろそろその具体的な建設に向けてのステップを着手したらどうかという形で検討しているわけでございます。  私どもとしては、そういった原子力委員会考え方に沿いまして、具体的にこれから予算要求もしておりますし、着実に進めてまいるというふうに考えておる次第でございます。
  117. 伏見康治

    伏見康治君 予算をとる際に、この原子炉は非常に安全であるという宣伝をしていただいたらよろしいんじゃないかと思うのですが、せっかく長官がおられますので、長官に原子力をますます安全にするということに熱意を持ってやっていただくという御見解をいただけると大変幸せでございます。
  118. 三ツ林弥太郎

    国務大臣三ツ林弥太郎君) ソビエトの報告書に基づき、IAEA特別総会の結果につきましては、先ほど政務次官から御説明がございましたが、今回のソビエトの事故につきましては、多数の死者を出した点とか、原子炉等に損傷が生じた点であるとか、大量の放射能の放出により他国にまで汚染を及ぼした点等原子力開発史上かつてない重大な事故と受けとめておるわけでございます。  原子力安全委員会特別委員会がまとめた第一次報告書でも指摘されているように、今回の事故については安全設計上の問題点を背景として、規則違反等、運転管理上の問題が引き金となって生じたものであり、我が国では考えられがたい事故であったことがほぼ明らかとなっております。しかしながら、我が国としては、今回の事故を謙虚に受けとめまして、原子力安全委員会において引き続き詳細な検討を進め、今回の事故、これを教訓として一層の安全確保対策充実に努めてまいる所存でございます。特に、きょうは伏見先生から、原子炉等、また原子力安全の確保についての御高説を拝聴いたしまして、まことにありがとうございました。
  119. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 チェルノブイリの事故につきまして、原子力安全委員会のこういうレポートを見ますと、大体、設計上の問題点がある、それと常識を逸する規則違反等、運転管理上の問題があると、言うならば設計ミス、また運転ミス指摘しておるわけでありますが、そこで、この炉は黒鉛をいわゆる減速材に使っている炉でございますか。    〔理事岡部三郎君退席、委員長着席〕 科学技術庁として、設計ミスの一番大きな点はどこですか、余りたくさんあると思うのですけれども、一番大きな点はどこなんでしょうか。
  120. 佐々木壽康

    政府委員佐々木壽康君) 設計ミスというのは、なかなか端的にこれがミスであったということを申し上げにくいのでございますが、要するに、設計ミスといろんな非常識な、何といいますか、運転操作とが相まって今回の事故が起きたということでございます。  例えば、原子炉の反応がふえますといわゆる炉心部で蒸気が発生するということになるわけでございますが、その蒸気が発生いたしますと、この原子炉では非常に出力がますます上がってますます蒸気がふえるというようなことになるわけでございます。しかし、この原子炉自身は今回、当初計画しておりました出力レベルで実験をいたしますと、このような蒸気の発生量に伴って出力がふえるという現象は、逆に今度は燃料の方の温度が上がることによって反応度が落ちるという方で相殺されまして、全体としては出力がふえないということになるわけでございますが、今回、非常に低い出力のところで実験したために、全体として出力がふえるとさらに出力がふえてしまうというような領域で実験をしてしまったということが一つ問題でございます。  それから、またもう一つ、本来その規定どおりに制御棒の位置を保っておけば緊急停止は可能であっただろうと思われますけれども、制御棒を引き抜き過ぎまして、制御棒を入れる操作をしたにもかかわらず制御棒が効く位置に入ってくるまでに相当時間がかかったということでございまして、いわゆる設計と、それから運転上のいろんな規則の違反と両方マッチしたものと受けとめております。
  121. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 常軌を逸する規則違反があったと、具体的には六つの操作ミス、いろいろ、ECCSをストップして運転をしたとか。日本ではそういうことは考えられないかもしれませんが、もし日本の軽水炉の運転においてソ連運転員が犯したような常軌を逸する規則違反をした場合には事故は起こりますか、日本では。
  122. 佐々木壽康

    政府委員佐々木壽康君) これは六つの規則違反それぞれについて御説明しなきゃいけないんじゃないかと思いますが、一つは、先ほど申し上げましたような制御棒をたくさん引き抜き過ぎてしまったということでございますが、日本の原子炉の場合には安全のために制御棒を余り引き抜いてはいけないとか、そういうことはございません。といいますのは、もう制御棒の挿入速度が非常に速うございますので、そういったものは必要ないということで、日本の原子炉の場合にはこういう違反というものはもともと関係のないことでございます。  それから、出力が非常に低いところで実験のために必要なためポンプをたくさん回してしまったということでございますが、こういうような状況では日本のBWRの場合はインターロックがかかってそういうポンプが稼働しない、そういう危ない状態になるような状態では稼働しないようになっております。  それから、例えば主蒸気隔離弁のところで実験に当たりましてこれを閉じたわけでございますが、こういうものにつきましても、日本の場合ですと閉じた場合には自動的に原子炉が停止されるようなスクランブル信号が入りますが、この場合にはそういうものを非常に簡単にバイパスできるようなことになっております。そういう点も日本の原子炉の場合はできないということになっております。  それから、ECCSを運転中に切ってしまったという話、これは今回の事故には直接余り影響の なかったことのようでございますが、こういうことはもちろん運転中にはできない、日本の場合はできないということになっております。  その他いろんな違反につきまして、我が国の場合には運転員が制御室で簡単にあちこちの安全系を切ってしまうというようなことはできないという設計になっております。
  123. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 だから、私が聞きたかったのは、例えばECCSを切って運転をしたと、けれどもECCSを切ってしまえばもう炉は動かないというか、私は、伏見先生が今言われた炉の安全性というのは、そういう安全操作をちゃんとやっておかないともう炉は動かないんだと、とまる方に結局炉はいってしまう、こういうようなシステムであれば、少々運転員が間違えた場合炉が動かない、正しくやらないと炉は動かない、そういうようなシステムの炉をつくっていかなければいけないんじゃないかと思うのです。  そういう点で、私はソ連の炉というのは非常に設計上にミスがあるんじゃないか。それに比べて日本の炉は、ソ連運転員のような規則違反をやっても安全であると、その場合はとまる方に安全であるということがはっきり言えるんでしょうか、その点どうなんでしょうか。まだそこまで行っていなければそう努力するということでいいと思うのですけれども。
  124. 佐々木壽康

    政府委員佐々木壽康君) 先ほどいろんなソ連の今回の運転規則違反の操作について、日本ではそういう操作がもともとできないとか、あるいはもともとそういう操作を必要としないというようなことを御説明したわけでございます。そういうことでございますので、私どもは、今回のこういうような操作というものは、もともと我が国ではできない操作でございますので、我が国原子力発電所の安全ということに関しましては、今回のような事故というものが起こるということはないというふうに考えております。
  125. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 ソ連は黒鉛を減速材に使う炉がかなり多いようですが、その炉のタイプについては日本にはないわけですけれども、特にこの炉は非常に欠陥の炉であるとか、そういうような意見は別にないと、炉の型は。そのお考えはどうなんでしょうか。
  126. 佐々木壽康

    政府委員佐々木壽康君) これは、先ほども伏見先生からフールプルーフとかいろんなお話がございましたけれども、ソ連の今回のこの型の原子炉につきましても、本来規定どおりの出力レベルで実験をするとか、あるいは正常な状態で運転をしておれば何ら問題はなかったのだろうと思います。要するに、安全上非常に問題となる領域を特に選んでしまって、そこで無理やりなことをやったということに問題があるわけでございまして、ソ連の原子炉自身がそれではすべて非常に危険なものであるということには必ずしも直ちに結論づけられないのではないかと思います。
  127. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから次に、今後原子炉を廃棄する場合の解体ということが非常に問題になってくると思うのですが、先般、原研ではJRR3の移設を行ったようでありますが、近く今度JPDR試験炉の解体をやろうとしておるわけであります。世界では米国においてエルク・リバー炉のみそういう発電炉の解体が行われたようで、日本は第二番目のようにこの資料には書いておるわけですけれども、科学技術庁としても五十六年以来廃炉に対していろいろな研究をされてきておるようであります。いろいろなたくさんの開発項目があるわけで、きょうはもう時間がございませんので詳しくはお尋ねいたしませんが、こういう解体に関する技術開発において一番問題点はどこなのか。いろいろな中でもうクリアできた問題もたくさんあると思うのですけれども、科学技術庁としてはこれが非常に問題だというのはどこなんでしょうか。
  128. 松井隆

    政府委員(松井隆君) 御案内のとおり、現在、つい先ほどでございますけれども、JRR3につきましては丸ごと持ち上げて動かしたと、それで捨てたと、こういうことがございます。それから、ことしの十二月からはJPDR、日本最初原子力発電に成功した炉でございますけれども、その解体、これはまさに解体でございまして、そういう意味で問題は解体の方にいろいろとあるのかと思っております。  現在、先生御案内のとおり、昭和五十六年から原子炉解体技術開発と称しまして、このJPDRを対象にいたしまして約十年計画で進めてきておるわけでございます。現在までは要素技術開発ということをやってきておりまして、各般の要素技術開発を行ってきたわけでございます。  この要素技術開発の目標も、まずやはり安全性確保と申しますか、そういう意味では実際解体の作業をする従事者の安全性、周辺環境も当然でございますけれども、まず従事者の被曝を少なくするとか、そういった意味合いでやってきておるわけでございます。それで、現在要素技術開発を五年かけてやってきておりまして、各般の技術の開発もなされておりまして、今それで大体うまくいくというふうに判断しておるわけでございます。  もちろん、具体的に何が難しいかということにつきましては、これから、十二月から具体的に炉を解体するわけでございまして、そういう過程において、こういうところが問題であるとか、実際やってみて初めてわかってくる問題もあろうかというふうに思っております。
  129. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 終わります。
  130. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 私も最初三原山噴火の問題で少し質問をいたします。気象庁。  今回の噴火予知できなかったことや、そして今後の見通しがいま一つはっきりしないということなどをめぐって火山観測体制の不備が指摘をされています。ようやく気象庁としても、空中からの赤外線観測を他省庁の借り物じゃなくて独自に実施するとのことでありますから、それは置くとして、観測機器の点検、保守や異常の確認に出かける際必要な緊急用携帯無線機器、この数が少ないので、今後新たな噴火などで電話線が切れたときには大変だということを関係者の人からも聞くわけでありますが、その対策は大丈夫ですか。
  131. 鈴置哲朗

    説明員鈴置哲朗君) 御指摘のとおり、携帯用無線機等は大変重要だと考えております。現在、緊急に現地で配置してございますが、今後の経過を見て整備を進めていきたいと思っております。
  132. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 どうも何か頼りない答弁ですけれども、島民の皆さん方の不安をなくすためにもぜひしっかり力を入れて、今後の見通しがどうなるかということもはっきりさせるということで頑張ってやってもらいたいと思うのです。  そのようにして、大島島民の方々は突然の噴火で家財道具をほうり出したまま避難をしたというので、一度島に帰りたいという希望が強く表明をされています。しかし一昨日のあの予知連の統一見解を見ましても、安全の見通しがはっきりしない、保障ができないということで当分帰れない、現在の状態が長期化をするという見通しでありますが、そこで重要になってくるのは町民の方々の生活対策であります。  そこで大臣、例えば現在、体育館などに大人数が詰め込みになっている。特に女性なんかの場合には着がえをしようと思っても大変な気苦労があるという状態。せめて家族単位の住宅を確保してもらいたいということとか、子供の教育保障の問題とか、長期化をしますとどうしても収入を得るための仕事のあっせん、こういう問題が緊急に求められていること、大臣もお聞き及びのことと思います。そこで大臣、ぜひ閣僚の一人として関係省庁大臣ともよく御相談を願って、政府として最大限の救済策を講ずるように御努力をいただきたいというふうに思いますが、大臣どうでしょう。
  133. 三ツ林弥太郎

    国務大臣三ツ林弥太郎君) まず、今回の噴火に伴い避難されております伊豆大島島民の皆様方には心からお見舞いを申し上げたいと存じます。  政府といたしましては、国土庁長官を本部長とする昭和六十一年伊豆大島噴火対策本部を設置いたしまして、島民の安全及び生活救助を最優先として今回の噴火に伴う種々の問題に対処している ところでございます。私としても、閣僚の一員としてこの本部の活動が円滑にいくよう積極的に取り組むとともに、噴火予知研究等、科学技術庁として対応し得る問題につきましては全力を傾注してまいる所存でございます。今後、大島三原山噴火につきまして、その安全が確認され、できるだけ早く島民の皆様方が帰島できることを私としても念願いたしております。
  134. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 大臣、もう一つお尋ねをします。  三原山に続いて桜島でも噴火が起こっていますように、火山噴火についてはまだまだよくわからない点が多い現在、科学技術庁としても六十年度からの課題として火山防災対策室の設置、こうした方向を打ち出してきたのでありますが、昨年は予算査定で実らなかったんですけれども、六十二年度の火山対策予算の増額のために大臣としても大いに頑張ってもらいたいというふうに思いますが、どうですか。
  135. 三ツ林弥太郎

    国務大臣三ツ林弥太郎君) 桜島等火山国でございますので、前にも御質問がありましたように、噴火予知研究、また予知体制がなかなか重要な課題でございます。私ども科学技術庁といたしましても、これらにかんがみまして昭和六十二年予算におきまして、ただいまお話しのような研究につきましても予算を要求中でございますので、懸命に努力してまいりたいと思っております。
  136. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 それでは、次は原子力安全の問題で質問をいたします。  まず原子力諸施設の安全対策、これは我が国原子力行政にとって欠かせない重要な問題でありまして、いわば日々新たな努力をすべき課題だと思うのでありますが、新大臣としてのこの点についての御見解はどうでしょう。
  137. 三ツ林弥太郎

    国務大臣三ツ林弥太郎君) 原子力安全確保は最重点といたしておりまして、極めて重要なことでございますので、私ども科学技術庁は、もちろんこの原子力開発を進める上におきまして安全確保が一番重要で、大前提でございますので、そういう決意で進めたいと思っております。
  138. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 原子力の安全対策は最重点、大前提だというふうにおっしゃいますが、しかし、新大臣のもとでつくられました原子力関係の来年度の概算要求、私ちょっと見たんですけれども、宣伝広報費は十二億六千八百万円でことしの一・四倍。安全防災対策費は二億六百万円でことしと同額、物価上昇を勘案したら実質減じゃないかという形になっておるんでありますが、こうしたことと関連して、実は先ほど稲村委員も取り上げておられた動燃事業団東海事業所でのプルトニウム被曝事故ということと私は深い関係があるんじゃないかというふうに思わざるを得ない。  もう議論ありましたように、六月二十二日にIAEAの査察中に査察官を含む職員、作業員合計十二名がプルトニウムで被曝するという大変な事故であったんですけれども。そこで、今回の事故の第一の原因説明によりますと、プルトニウム・ウラン混合酸化物の粉末が入ったステンレス缶、これを密封していたビニールバッグが貯蔵期間中にプルトニウムから放出される熱や放射線によって劣化が進んで亀裂が生じたためだというんです。  動燃に聞きます。  第一に、ビニールバッグがプルトニウムの熱や放射線でどのような影響を受けるのか、その耐久性についてきちんとしたテストを行っていたんですか。
  139. 植松邦彦

    参考人植松邦彦君) ビニールにつきましては、受け入れの際のいろいろな試験が、データがとられておりますし、保管中におきましてもビニールそのものについての管理検査を行ってきております。  しかしながら、先ほど申し上げましたように、熱及び放射線によるビニールの変化というものについての定量的な十分なデータがなかったということは事実でございます。
  140. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 管理中に検査をやってきたという、あんまり紛らわしいことをおっしゃらないように。私の部屋に動燃も御一緒に科技庁と一緒に来ていただいて、テストをやっていたんですかと聞いたら、テストはやっていませんというんですから。これは会議録に残りますから、テストをやっていたかのごとき、管理中に検査していましたというそういうことをおっしゃってはだめなんです。とにかくそういう形で性能のきちんとしたテストも行わないまま年一回の定期検査で著しく変色していると取りかえる、こういう極めてずさんというか原始的というか、こういう管理の体制にあったということなんです。  次の問題です。プルトニウム汚染が貯蔵室からさらに拡大した原因は、貯蔵室の扉があいていたために人の動きに伴って汚染が広がったと、こう説明されているんですけれども、しかし本来、扉があいていたとしても、貯蔵室と廊下は負圧管理をされて、空気の流れは廊下から貯蔵室の方に向かう、貯蔵室から廊下の方へ流れ出す、そういうことにはなってないということになっているはずなんです。ですから、それが人の動きでそういう貯蔵室から廊下に広がるということはあり得ないこと。そんなことが起こったら、そもそも負圧管理自身が機能を果たしていないということになるからです。  現にその事故の直後、東海村を通して我が党の県会議員、村会議員が調査に入りましたところ、査察作業は貯蔵室じゃなくて廊下で行っていたという事実が明らかになってきているわけなんです。動燃に確かめますけれども、実際はこのプルトニウムの査察作業というのは廊下でやっていたんじゃないか。だから廊下を通った人まで被曝したということなんじゃないですか、事の真相は。
  141. 植松邦彦

    参考人植松邦彦君) お答え申し上げます。  査察の作業自体は貯蔵庫の中で行っておりました。ただし、貯蔵庫の扉が開いたまま作業を行っておったということは事実でございます。作業員の一人が扉の外にいたということも事実でございますが、作業自体は貯蔵庫の中で行っておりました。
  142. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そういうふうに言い張られると、そうしたら負圧管理というのはてんでおかしな状態だった、機能を果たしていなかったということになるわけですね。  さらにもう一つ、貯蔵室から廊下に広がったプルトニウム汚染がトイレや休憩室にまで広がっていったという、これは保安規定と作業マニュアル、それに反して休憩室の負圧が廊下よりも低くなっていた、だから空気の流れが逆転して廊下から休憩室に向かったんだというんですが、こういう負圧管理の乱れ、それは負圧検出用のチューブのふぐあいのためだったということが先ほども説明された。しかし、こういうことは後からの説明で合理化できるものじゃなくて、そもそも日常的に保安規定、作業マニュアル、こういうものをどのように心得ているのか。明らかにこの姿というのは保安規定に違反する重大事ではないかと思うのですが、この点は監督官庁の科技庁の見解を聞いておきましょう。
  143. 佐々木壽康

    政府委員佐々木壽康君) 保安規定はもちろん私どもが認可したわけでございますが、その保安規定におきましては、所定の貯蔵方法によって核燃料物質を貯蔵するということ、それから管理区域内の負圧を所定の区分に保持できるように吸排気設備を正常に管理する、そういうようなことが規定されております。さらに、管理の詳細面につきましては、先ほどのビニールシートのビニールの袋の交換の問題とか、そういった詳細につきましては、所内の規程で定められておりまして、その点については、私どもはそこまではチェックしてないわけでございます。そういうことでございます。
  144. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 科学技術庁として、本来こういう姿になっているべきだということで確認をしておられるはずの負圧管理ですね。すなわち、今の例で言えば、廊下と休憩室との関係について言えば休憩室まで汚染が広がっていくというような、そういう空気の流れが起きるはずがないという圧力管理になっていた。ところが、休憩室まで広がっ たというのですから、そもそもその圧力管理、これが怪しいというふうに言わざるを得ないわけですね。  時間がありませんから長々やっている余裕がありませんけれども、ビニールバッグの管理の問題、それから負圧管理をめぐる二つの問題指摘をしましたが、こういう二重、三重にずさんなプルトニウム管理、これを容認してきた科学技術庁の責任も私は大きいと思います。今動燃と科技庁との間で再発防止対策として、ビニールバッグの健全性の点検基準、あるいは負圧管理を徹底する機器の整備、いろいろなメーターなんかもずっと整備するということなど若干の改善を進めている模様でありますが、問題はそれが保安規定や作業マニュアルに本当にきちっと明文化されているかどうかという問題であります。  この点について私は何回となく、一遍保安規定や作業マニュアルをこういうふうに変えましたというので、その条文の実物を見せてくれということを何回言うても、いや、そういう技術的ノーハウは企業秘密だから公開するわけにはまいりませんと口では説明しますけれども、実物見せるわけにはまいりませんという、この一点張りなんです。しかしこれでは、口だけで言われても、本当に保安規定、作業マニュアルにきちっと書き込まれて、もうそういうことは二度と起こさないということが、そういう条文上も規定上もきちっと整備をされてきたのかどうかということを確認しようがないわけですね。確認しようがないわけですから、またいつか事故が起こったときに、いや、この点がちょっと抜けていましたということを言われたって、それは後の祭りと。  もちろん、核物質防護といいますか、いわゆるPP対策、これは幾つかの秘密にする点があるから、その点で見せるわけにいかぬというならば、その点は伏せてもよろしいというふうに私は言っている。しかし、いわゆる保安に関する技術というのは大いに公開をして、各事業体が競い合って、そこで働く職員の安全のために、また周辺環境に対する安全のために最高技術を各事業体がお互いにノーハウをむしろ競い合って取り入れ合っていくということが私はむしろ好ましいことじゃないかというふうに思うのです。  一体、何が非公開に、それは見せられないという、PP対策、それもそうでしょう。それからそこの原子力事業体のすべての規定を見せよと言っているのじゃないんです。安全問題に極めて深い直接の関係を持つ保安規定、そのマニュアル、これくらいは国会としてきちっと本当に今後大丈夫だということが確かめられるようなそういう公開がされてしかるべきじゃないか。むしろこれは監督官庁としてそういう積極的指導をやってもらう必要があるのじゃないかというので、ここで大臣に御決断を求めたいのでありますが、なるほど私もずっと今まで科学技術庁なり通産省なりあるいはいろんな事業体がそういう言い方をしてきたということを知らぬわけじゃないのです。ですけれども、本当にそういうところに、事業体に働く職員あるいは周辺の住民の安全のためにせめて保安規定というものは公開をするという方向で科学技術庁として新大臣の仕事としてひとつ積極的に乗り出してほしい、検討を始めてほしいというふうに思いますが、どうですか。
  145. 佐々木壽康

    政府委員佐々木壽康君) 先生、今御指摘の問題でございますが、私どもは、この保安規定そのものにはいろいろ内部の管理、運営上の事項等を含んでおりまして、これをすべて公開するというのは適当ではないというふうに考えております。  それで、先生から以前にもいろいろ資料を提出するようにという御要求がございまして、可能な範囲で、例えば放射線の管理とか施設の運転とか、そういったことで国民が安全上の懸念をされるということがあれば、もうそれに関連したような部分については先生の方にもいろいろ御説明申し上げたと、それから、こういうことをやっているということをまとめた資料もお渡ししているというふうに私は理解しています。
  146. 伏見康治

    委員長伏見康治君) 佐藤さん、時間が来ましたから。
  147. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 大臣
  148. 三ツ林弥太郎

    国務大臣三ツ林弥太郎君) 今回の事故につきましては、被曝線量が法令値以下であるとはいえ被曝が十二名にも及んでおり、まことに遺憾に思っております。  先ほどもいろいろ議論等がございまして、早期報告がなされてないんじゃないかというような御指摘等もございますので、そういうふうな事柄につきましても、既に動燃に対しましては早期報告をするよう指導をいたしたところでございます。事故に関する直接的な対応は既に動燃事業団においてとられているところでございますが、今回とられた対応策については、他の原子力事業者に通知するなど、今回の事故を教訓として広く再発防止に努めているところでございます。  先生指摘の点につきましても、私といたしましても受けとめてまいりたいというふうに考えております。今後とも事故発生防止につきましては万全を期してまいる所存でございます。
  149. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 一言。答弁が逆になって、局長が先に言うて大臣が今言うから、ちょっとどう理解をしたらいいのか私わかりにくいんですよ。大臣は私の提起を積極的に受けとめて、何というか、努力したいかのごときニュアンスの最後の答弁でした。それで、局長はそんなもの公開できませんと、こう言うてますからね。ですから、大臣答弁を私は確認しておきたいと思うんでありますけれども、委員長にもお願いをしたいと思います。もうるる申し上げたことで繰り返しませんけれども、事保安規定にかかわる問題、非常にそういう安全上の重要問題でありますから、どうしてもここは伏せなくちゃならぬという点があったらそれは伏せてもいいと思います。私のところへは説明文はもらいました。しかし、規定の第何条、第何項にこういうふうに書き込んでいますというのは絶体に見せないんですよ。それでは信用ができませんということですので、一遍理事会でもこの問題はひとつ他にも関係しますので扱いを御協議いただきたい。
  150. 伏見康治

    委員長伏見康治君) どこまで公表できるものか、よく相談してみます。
  151. 小西博行

    ○小西博行君 それでは、最後でありますが、民社党の小西の方から質問させていただきます。  きょうは科学技術のいろんな問題についてお尋ねしようと思っておりましたら、二十分という非常に短い時間でありますので、石炭政策の問題について、主に通産省の方に御質問を申し上げたいと思います。  その前に、三原山の問題が先ほどから同僚の委員の方からいろいろございました。つい先日この委員会におきまして、参考人の諸先生方に来ていただいて勉強をさせていただいたわけであります。その感じから申し上げまして、まず、この予知の問題というのは非常に私は不十分ではないかという感じを実は持っております。天気予報なんかですとかなり最近ではお金をかけて割合正確に当たるような状態になっておるわけですが、事地震ということになりますと、なかなかそうはいかないというのがこの間の先生方の御意見でございましたので、これはもう一度抜本的に考えていただきたい、そのようにまず一点お願いしたいと思うのです。  それから、心配しておりました火山噴火発生のときの住民のパニック状態、これがどういうような状態になるのかということで、むしろ地震専門家以外に社会科学の専門家であるとか、そういう分野の方々とも一緒になってこれは考えなければいけないと。この間の問題につきましては、ほとんど大きな事故もなしに無事に避難ということがとられたようでありますから、そういうような貴重な経験を生かして今後のために徹底的にひとつシステムを組んでいただきたい、そのことは要望ということでまず申し上げておきたいと思います。  さて、石炭の問題でありますけれども、これはもう石炭だけではなくて、最近は造船、鉄鋼あるいは資源産業、その中の石炭というようなこと で、非常に日本全体のこういう業界の方々は大変な状態を迎えております。十二日でしたか、第八次石炭政策の答申案が出されております。それによりますと、五年間で原料炭はゼロの方向に持っていく、そして一般炭については一千万トン体制に持っていくんだ、そういうようなことが言われておりますが、これはいろんな事情を勘案してこのような状態になったのではないかと思います。もちろん、その報告書は私も読ませていただいておるわけでありますが、どうしてその一千万トンに持っていくか、五年後に一千万トンということだと思いますが、それが一つ。  それからもう一つは、そこまで持っていく場合の手順。これはいろんな石炭の会社があるわけでありますから、当然集約化の方向にいくということだと思うのですが、その場合のそこで働いている労働者の問題とか地域社会の問題とか、たくさんの問題を私は解決しなければいけない、そのように思いますので、この二点についてまずお伺いしたいと思います。
  152. 鈴木英夫

    説明員(鈴木英夫君) 先生指摘のように、第八次の石炭政策でございますけれども、昨年九月に石炭鉱業審議会に対しまして通産大臣から諮問をいたしまして以降、一年有余にわたりまして審議会の先生方に御検討をいただいておったわけでございますけれども、去る十二日に石鉱審の政策部会に対しまして、この検討小委員会の検討結果といいますか、八次策の答申の原案というものが提示されたわけでございます。  それで、これはもちろん最終的な答申でございませんで、まだ検討が続いておるということを前提にした上で御説明させていただきたいと思いますけれども、その中で、ただいま先生指摘のありましたように、第八次石炭政策においては電力用一般炭を中心に石炭の需要の確保を期待することといたしまして、中長期的な需要業界の動向それから国内炭の役割、そういうものを考慮しますと、生産を段階的に縮小いたしまして、最終的にはおおむね一千万トンの供給規模とすることが適当というふうに書かれておるわけでございます。  それで、これの前提といたしまして、国内炭生産のあり方につきましては、内外炭の価格差が非常に拡大しております。それから、エネルギー需給環境も変化しております。かつ国内炭の引き取りを行っております需要業界の状況、そういうものも踏まえますと、生産規模を段階的に縮小することはやむを得ないというような表現もございまして、したがいまして、今後閉山、規模縮小といった対応を石炭業界として行わざるを得ない、需要業界においては円滑な集約化にできる限りの協力をする、また政府においてもそのための所要の支援を行うというようなことで関係者がぎりぎりの努力をする、そういうことを前提にいたしましておおむね一千万トンという水準が示されたものと、このように理解しております。  それから、第二点でございますけれども、これも同じく答申の中に、段階的縮小についてはやむを得ないわけでございますけれども、我が国が生産規模を段階的に縮小していきます場合に、一時に閉山が集中したり、大量に失業が発生するような事態を回避することを基本といたしまして、地域の経済、雇用に及ぼす影響をできる限り緩和する、それで生産体制の集約化を円滑に行うということが「基本的な考え方」のところに述べられておりまして、こういう手順をもって今後進めていくことになろうかと考えております。
  153. 小西博行

    ○小西博行君 石炭は本当に資源の少ない日本にとりましては貴重な資源ですから、何とかしてこれを開発して続けてもらいたいという願いはあるわけでありますが、何さま自然条件が非常に悪い、したがってコスト高というのがもう決定的な欠陥になっているように思うわけです。それからもう一つは、事故が非常に発生しやすい、そのたびに供給が非常に不安定になる、こういう二つの大きな問題点がありまして、今度は下方修正されまして一千万トン、こういう形になってきたような気がするわけです。  しかし、どうしても生産技術と保安技術というものを抜本的な、革新的な方法を考えないと、残りの一千万トン体制といっても今後の大きなこれが問題になってくるのではないか、そのように私は思います。そういった意味では国の助成というものも大変必要になってくるのじゃないか。  ところで、公害資源研究所というのがございますね、あるいはこれは民間だと思いますが、石炭技術研究所、こういうような分野ではどういうような研究を一体やられているのか、まずお聞きしたいと思います。
  154. 鈴木英夫

    説明員(鈴木英夫君) 公害資源研究所におきましては、石炭の採掘技術等につきまして極めて基礎的な研究をやっておるわけでございますけれども、特に、先生指摘のように今後、石炭の生産を維持していくために能率の向上を図らなければいけない、坑内の機械化を図らなければいけない、あるいは自動化等も図っていかなければいけない、そういうような石炭の採掘の実態に即しました研究につきましては、主として財団法人の石炭技術研究所というところに、生産技術につきましては技術振興費補助金というのを交付いたしまして推進をしておりますし、また保安技術開発、保安面での技術開発につきましては鉱山保安技術調査委託費というものを交付して積極的に進めているところでございます。
  155. 小西博行

    ○小西博行君 そこでお聞きしたいのですが、石炭に対する政府の援助というのは結構金額的には大きいわけであります。その中でも特に石炭の利用技術、こういう面では大体三百億円から四百億円ぐらいお金が出ているわけなんですね。ところが、現実に生産技術の開発とかあるいは坑内の保安技術の開発というものに対する投入のいわゆる予算、これは六十一年度で二十四億円、六十二年度の予算編成では十六億円というふうに少しまた減っているわけです。いかにもそういう生産技術とか保安というような面では金額が少ないんですね。その辺に実は私は大きな問題があるんじゃないか、このように考えるわけですが、これはどうしてなんでしょうか。
  156. 鈴木英夫

    説明員(鈴木英夫君) 先生ただいま御指摘がございましたように、石炭関連技術開発予算の中で六十一年度を例にとってみますと、利用技術技術開発費が約三百五十億円でございまして、生産技術が二十四億円という結果になっております。大部分先生指摘のように利用技術関係の予算でございますけれども、利用技術の開発につきましては、例えば石炭の液化であるとか、ガス化であるというようなことでプラント開発を必要とするものがございまして、そういう意味で金額的にどうしても高くなるという側面がございます。  一方、石炭の生産技術あるいは保安技術の開発につきましては、主として機械装置の開発等が多うございまして、そういう意味では資金規模が小さくても十分なものがやれるというような総体的な問題があろうかと存じます。
  157. 小西博行

    ○小西博行君 いや、そこに実は私は大きな問題があるんじゃないかと思うのですね。当然石炭の液化問題その他というのは私自身もいろいろ勉強させてもらっておりますけれども、いわゆる生産の方、これは余り国会でも審議の対象になっていないんです。とにかく山そのものの経営状態が悪いんだからしようがないじゃないか、もちろん会社そのものもそういうものに金をかけて研究するという余裕すらもほとんどないような状態がある。今度の答申の中でも言葉では言っているんですが、具体的な生産技術の革新、技術を何か新しいもので事故が起きないように、しかも人数を少なくできるような、そういうような生産技術と言った方がいいと思いますが、そういうものの開発というのはほとんどやってないんですよ。  私は、少なくともこれから先一千万トン体制がどう動くかというのはわかりませんけれども、いずれにしてもそれをやらないと同じように事故発生してくるんじゃないか、あるいはコスト高というのがますますまた高くなってどうにもならない、そういう問題になってしまいはしないかというような観点で、私はぜひともこの生産技術という面でもう少し真剣に、これは保安もそうですが、 国の方の援助で具体的にできないのか、そのように思うのですが、どうですか。
  158. 鈴木英夫

    説明員(鈴木英夫君) これまで、先ほど申し上げましたような石炭技研を通じます石炭の生産技術の開発によりましていろんな面での技術革新というのが行われてまいったというふうに理解をしておりまして、例えば炭鉱の生産能率を見てみますと、御承知のように炭鉱の生産能率は常用労務者能率ということで、一人一月当たり何トン掘るのかということで生産性をあらわすのですけれども、三十五年におきましては十八トンでありましたものが六十年には九十四トンということで、非常に生産性が上がってきております。これは一面におきまして技術開発の成果が相当上がって、機械化率も上がってきたというようなことによるというふうに考えております。  また災害率の方も同じように三十五年、百万人当たりの災害率で六百七十六から六十年度には七十二ということで十分の一近く災害が減ってきておりまして、こういうものも機械化によりまして危険にさらされる機会が少なくなったというようなことで、炭鉱の機械化の成果というのがこういう面であらわれてきていると思います。  なお、先生指摘のように、生産技術あるいは保安技術、非常に重要でございますので、このための技術開発につきましては引き続き必要な措置を講じてまいりたいというふうに考えております。
  159. 小西博行

    ○小西博行君 いや、今のお話を聞きますと、随分合理化されて立派な条件がもう設置されているというような感じになるわけですが、そうじゃないと思うのですね。  私自身も製鉄会社で長くおりましたから、現実は、あの現場へ行ってみますと、いろんな現場のガスの問題、これは全部計器盤にありますけれども、本当にちゃちな設備だと思います。私は三菱の高島も行きましたし、三井・三池も行きまして、相当いい状態で管理されている山だと言われているところでもこれは本当にびっくりするぐらいの私は状況だと思うんですよ。課長さんも恐らく山へ行ってみられたことがあるんじゃないかと思うのですが、一般の産業なんかと比べてみましたら、それはもう雲泥の差だと思います。それがなかなかできないという私は経営的な問題があるんではないか、そう思いますので、何かあきらめてしまって、いずれにしてもそれはだめなんだという概念がちょっと皆さんにあり過ぎるんじゃないか。  私は、最近ではハイテク時代ですからコンピューターも十分使いますし、ロボットもあることですし、いろんな方策で、全力でそれぞれの分野でやるべきじゃないか、そういう感じが特にしておるんです。コスト的にもいろんな分析をもう当然やられておると思うんですが、やっぱり人件費がもう圧倒的でしょう。五、六〇%はもう人件費だと言われているでしょう。しかも、その人件費の中でも、直接工と間接工とに分析すると、間接工というのがその半分ぐらい、あるいはそれ以上占めているでしょう。ですから私は、そういう意味ではもう少し人間を減して、具体的な、安全に操業できる体制というのが、とれないというのじゃなくてとるべきじゃないか。  そういう意味で私は、もう少し本気でそっちの分野へ予算化してもらって、そして、すばらしい技術開発ということになりますと科学技術の方の研究もいろいろ動員してもらってやっていく分野ではないか。ちょっと私遅いような感じもするんですけれども、ぜひやっていただきたい、そのように思うのですが、もう一度決意をひとつ聞かせていただきたいと思います。
  160. 鈴木英夫

    説明員(鈴木英夫君) 先生指摘のように、今後、生産能率を向上させ、あるいは著しく災害率の低減を図っていくためには特に坑内の自動化とか、あるいはロボット化というような研究開発が不可欠であるということは私どもも十分認識しておりまして、積極的に取り組みたいというふうに考えております。ただ、なかなか坑内のロボット化は、これはもうよく言われることでございますけれども、人為的に動作条件を認定できる工場の生産ラインの場合と若干異なっておりまして、盤圧があるとか炭じんが発生するとか、あるいは坑内の石炭の状況が絶えず変化する、その間に岩石も入ってくるというようなことで、識別要素が極めて多岐にわたっておるわけでございます。加えまして、坑内には可燃性のメタンガスというようなものもございまして、どうしても電気のリレーといったようなものを裸では使えませんで、防爆機構を備えなければいけない。そういう問題点がございますものですから、なかなか短期間に完全な実現を図っていくということが難しい状態にございます。  しかしながら、従来から私どもといたしましても、特にドラムカッター、石炭を大量に掘る掘削機でございますけれども、それとか自走枠、こういうものにつきましてロボット化の研究をしてまいりまして、採炭作業場の中にほとんど人が入らなくても外からリモートコントロールができるというような機器の開発もほぼ実用化しつつあるというような状態になっております。  さらに、保安面におきましても、例えばボーリング作業というのは、ある意味では非常にガスの多いところでやることが多いわけですけれども、そういうものの自動化の技術だとか、あるいは坑内のいろんな危険の発生を事前に予知するための高度の坑内異常監視システムの開発というようなものにただいま積極的な取り組みを行っているところでございまして、今後ともなおそういう面での研究開発促進してまいりたいというふうに考えております。
  161. 小西博行

    ○小西博行君 いずれにしても、コスト的に考えると海外炭が二倍とか三倍安い、三分の一、二分の一というのですかね。だから私はこれから先非常に厳しいのじゃないか、そう思いますので、特に通産大臣によく報告していただいて、何が何でもやっていただく。そして長官にも、エネルギーの全体の計画というのはもうちゃんと出ておりまして、それを見ますと原子力と石炭というのはふえる傾向なんですよ。もちろん海外炭の方が現在安いということですけれども、将来のいろんな価格を調整する場合でも、やはり国内炭というのはある意味では非常に大きな力が私はあるのではないか、そのように思いますから、山そのものはぐっと減ってくるとは思うのですが、そっちの方をもう一度考えていただきたいのです。生産技術、それから保安、こういう面で徹底して研究していただきたいということを大臣にぜひ伝えていただきたい。そういうことを申し上げまして、終わります。
  162. 伏見康治

    委員長伏見康治君) 本調査に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十四分散会