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1986-11-06 第107回国会 衆議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十一月六日(木曜日)     午前九時開議  出席委員    委員長 砂田 重民君    理事 今井  勇君 理事 野田  毅君    理事 浜田 幸一君 理事 林  義郎君    理事 吹田  愰君 理事 上田  哲君    理事 川俣健二郎君 理事 近江巳記夫君    理事 吉田 之久君       相沢 英之君    愛野興一郎君       井出 正一君    伊藤宗一郎君       上村千一郎君    江口 一雄君      小此木彦三郎君    小渕 恵三君       越智 通雄君    大野 功統君       海部 俊樹君    小坂徳三郎君       左藤  恵君    志賀  節君       田中 龍夫君    武村 正義君       渡海紀三朗君    中村正三郎君       西岡 武夫君    原田  憲君       福島 譲二君    細田 吉藏君       前田 武志君    宮里 松正君       武藤 嘉文君    村山 達雄君       森  喜朗君    山下 元利君       井上 一成君    井上 普方君       稲葉 誠一君    川崎 寛治君       菅  直人君    嶋崎  譲君       細谷 治嘉君    長田 武士君       冬柴 鉄三君    正木 良明君       渡部 一郎君    木下敬之助君       楢崎弥之助君    安藤  巖君       石井 郁子君    岩佐 恵美君       柴田 睦夫君    寺前  巖君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         国 務 大 臣 金丸  信君         法 務 大 臣 遠藤  要君         外 務 大 臣 倉成  正君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         文 部 大 臣 塩川正十郎君         厚 生 大 臣 斎藤 十朗君         農林水産大臣  加藤 六月君         通商産業大臣  田村  元君         運 輸 大 臣 橋本龍太郎君         郵 政 大 臣 唐沢俊二郎君         労 働 大 臣 平井 卓志君         建 設 大 臣 天野 光晴君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     葉梨 信行君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 玉置 和郎君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)         (国土庁長官) 綿貫 民輔君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 栗原 祐幸君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      近藤 鉄雄君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)     三ツ林弥太郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 稲村 利幸君  出席政府委員         内閣法制局長官 味村  治君         内閣法制局第一         部長      関   守君         内閣総理大臣官         房審議官    本多 秀司君         警察庁刑事局長 仁平 圀雄君         総務庁人事局次         長         兼内閣審議官  田中  史君         総務庁行政管理         局長      佐々木晴夫君         総務庁行政監察         局長      山本 貞雄君         防衛庁参事官  瀬木 博基君         防衛庁参事官  古川 武温君         防衛庁参事官  千秋  健君         防衛庁参事官  筒井 良三君         防衛庁長官官房         長       友藤 一隆君         防衛庁防衛局長 西廣 整輝君         防衛庁教育訓練         局長      依田 智治君         防衛庁人事局長 松本 宗和君         防衛庁経理局長 池田 久克君         防衛庁装備局長 鎌田 吉郎君         防衛施設庁長官 宍倉 宗夫君         防衛施設庁総務         部長      平   晃君         防衛施設庁施設         部長      岩見 秀男君         防衛施設庁建設         部長      大原 舜世君         防衛施設庁労務         部長      西村 宣昭君         経済企画庁調整         局長      川崎  弘君         経済企画庁物価         局長      海野 恒男君         経済企画庁総合         計画局長    及川 昭伍君         科学技術庁科学         技術政策局長  中村 守孝君         科学技術庁研究         開発局長    長柄喜一郎君         科学技術庁原子         力局長     松井  隆君         科学技術庁原子         力安全局長   佐々木壽康君         環境庁長官官房         長       山内 豊徳君         環境庁企画調整         局長      加藤 陸美君         環境庁企画調整         局環境保健部長 目黒 克己君         国土庁計画・調         整局長     星野 進保君         国土庁大都市圏         整備局長    柳   晃君         国土庁地方振興         局長      澤田 秀男君         法務省刑事局長 岡村 泰孝君         外務大臣官房長 北村  汎君         外務省アジア局         長       藤田 公郎君         外務省北米局長 藤井 宏昭君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省経済局長 渡辺 幸治君         外務省経済協力         局長      英  正道君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      中平  立君         外務省情報調査         局長      新井 弘一君         大蔵省主計局長 西垣  昭君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省関税局長 大橋 宗夫君         大蔵省理財局長 窪田  弘君         大蔵省証券局長 北村 恭二君         大蔵省銀行局長 平澤 貞昭君         大蔵省国際金融         局長      内海  孚君         国税庁次長   冨尾 一郎君         国税庁調査査察         部長      日向  隆君         文部省初等中等         教育局長    西崎 清久君         文部省教育助成         局長      加戸 守行君         文部省学術国際         局長      植木  浩君         文部省体育局長 國分 正明君         厚生省健康政策         局長      竹中 浩治君         厚生省保健医療         局長      仲村 英一君         厚生省生活衛生         局長      北川 定謙君         厚生省薬務局長 森  幸男君         農林水産大臣官         房長      甕   滋君         農林水産省経済         局長      眞木 秀郎君         農林水産省構造         改善局長    鴻巣 健治君         農林水産省畜産         局長      京谷 昭夫君         農林水産省食品         流通局長    谷野  陽君         食糧庁長官   後藤 康夫君         林野庁次長   松田  堯君         水産庁長官   佐竹 五六君         通商産業大臣官         房審議官    末木凰太郎君         通商産業省貿易         局長      畠山  襄君         通商産業省産業         政策局長    杉山  弘君         通商産業省機械         情報産業局長  児玉 幸治君         工業技術院長  飯塚 幸三君         資源エネルギー         庁長官     野々内 隆君         中小企業庁長官 岩崎 八男君         運輸省運輸政策         局長      棚橋  泰君         運輸省国際運         輸・観光局長  塩田 澄夫君         運輸省航空局長 山田 隆英君         郵政省郵務局長 富田 徹郎君         郵政省通信政策         局長      塩谷  稔君         郵政省電気通信         局長      奥山 雄材君         郵政省放送行政         局長      森島 展一君         労働省労働基準         局長      平賀 俊行君         労働省婦人局長 佐藤ギン子君         労働省職業安定         局長      白井晋太郎君         建設大臣官房長 高橋  進君         建設省建設経済         局長      牧野  徹君         建設省河川局長 廣瀬 利雄君         建設省道路局長 萩原  浩君         自治省行政局長 大林 勝臣君         自治省財政局長 矢野浩一郎君         自治省税務局長 津田  正君  委員外出席者         会計検査院長  大久保 孟君         参  考  人         (国際協力事業         団総裁)    有田 圭輔君         参  考  人         (海外経済協力         基金総裁)  青木 慎三君         予算委員会調査         室長      右田健次郎君     ───────────── 委員の異動 十一月六日  辞任         補欠選任   宇野 宗佑君     大野 功統君   奥野 誠亮君     武村 正義君   海部 俊樹君     井出 正一君   松野 幸泰君     前田 武志君   村田敬次郎君     江口 一雄君   森  喜朗君     中村正三郎君   矢野 絢也君     冬柴 鉄三君   安藤  巖君     石井 郁子君   柴田 睦夫君     岩佐 恵美君 同日  辞任         補欠選任   井出 正一君     海部 俊樹君   江口 一雄君     渡海紀三朗君   大野 功統君     宇野 宗佑君   武村 正義君     奥野 誠亮君   中村正三郎君     森  喜朗君   前田 武志君     松野 幸泰君   冬柴 鉄三君     矢野 絢也君   石井 郁子君     不破 哲三君   岩佐 恵美君     金子 満広君 同日  辞任         補欠選任   渡海紀三朗君     宮里 松正君 同日  辞任         補欠選任   宮里 松正君     村田敬次郎君     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和六十一年度一般会計補正予算(第1号)  昭和六十一年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和六十一年度政府関係機関補正予算(機第1号)      ────◇─────
  2. 砂田重民

    砂田委員長 これより会議を開きます。  昭和六十一年度一般会計補正予算(第1号)、昭和六十一年度特別会計補正予算(特第1号)及び昭和六十一年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  各案審査のため、本日、参考人として国際協力事業団総裁有田圭輔君及び海外経済協力基金総裁青木慎三君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 砂田重民

    砂田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────
  4. 砂田重民

    砂田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。近江巳記夫君。
  5. 近江巳記夫

    近江委員 まず初めに、私は、当面いたします外交、防衛対外経済、こうした問題につきまして御質問をしたいと思います。  まず、アメリカ中間選挙の結果が出たわけでございますが、総理はこの結果についてどのような見解、感想をお持ちか、お伺いしたいと思います。
  6. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 結果的には、上院において民主党が非常に進出をした、それから下院においても民主党はふえましたが、いわゆる中間選挙の大体の傾向を示した結果である。それから、知事選においては共和党が八人知事をふやして、全国的にはほとんど半分半分ぐらいの情勢になった。こういう情勢で、一般的に新聞テレビが報ずるように、民主党が優勢である、そういう印象はぬぐえないであろうと思いますが、知事選共和党が八人もふやしたということは、これはやはり地域的にかなり変化を、将来影響を与える要素はあるだろうと思います。  それで、世界じゅうがアメリカの今後の動きを注目していると思いますが、日本も同じように重大な関心を持って、アメリカ議会がどういうふうに編成されていくか注目してまいりたいと思います。アメリカの場合は、割合委員会中心主義であり、かつ委員長政策が非常な影響力を持つという特色を持っております。したがって、日本貿易関係安全保障関係にとっても重要な意味を持つ軍事委員会であるとかあるいは財政委員会であるとか、そういうような関係委員会委員長にどなたがおなりになるか、そういう点について我々は非常に関心を持っております。しかし、アメリカの場合には割合上下両院とも交錯投票が多いわけでございます。そういう面から、政党的縛りの強い日本のような場合とは状況もまた違ってまいります。ですから、政策政策ごとにいろいろな変化対応が出てくる、そう言えると思います。  それから、今度の選挙の結果自体は、一般に言われますように、割合に地域的な問題に関心が強くてこういう結果も出たと言われております。しかし、恐らく八八年の大統領選挙を目指して両党とも体制を整備し、政策を国民にアピールするためにスタートする、そういうことに政治的には流れていくのではないかと思います。最大の関心事はもう次の大統領選挙に移っている。そういう面からアメリカ世界政策あるいは対日政策というものがどういう影響を受けるか、そういう点についても私たちは注目してまいりたいと思っております。  しかし、一般的に言いまして、やはり国家間の関係というものには基本線があるのであって、日本アメリカの間にある日米安全保障条約を基調とする両国安全保障の提携、それから太平洋を挟む経済、文化の大きな交流関係を基礎とする日本アメリカとの揺るぎない友好協力関係、こういう基本線は微動だにもしないと考えております。私は、日本政府立場も変更はない、そう考えております。今後とも、この基本線を両方で大事にし合いながら、時々刻々起こる問題についても適切に対処して、協調と協議を進めて、世界の平和や安定、繁栄のために協力してまいりたいと考えております。
  7. 近江巳記夫

    近江委員 日米関係というものは基本線で今までのそうした友好協力関係は揺るぎのないものである、しかし今後出てくるいろいろな問題については真剣に取り組みたい、こういうお話でございます。  特に貿易黒字の問題でございますが、我が国黒字の中では特にアメリカ黒字というものが非常に大きいと思うのですね。そういう点で、民主党上下両院を制したという中で今後やはり対日圧力というものは非常に強くなると思います。そして特にこの貿易摩擦の問題が非常に大きな問題だと思うのですが、このままで推移しますと、六十一年度どのくらいの対米黒字になるか、経企庁長官通産大臣、ちょっとお伺いしておきます。
  8. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 お答えいたします。  今年度の貿易収支見通しでございますが、先生御案内のように、円高によりまして輸入は数量的には前年同期から二割以上ふえているわけでございますけれども、輸出は、いわゆるJカーブ効果がございまして、これも前年同期に比較いたしますと、ドルで申しますと二割くらいふえているわけでございます。そういうことで、六十一年度上半期収支を見てまいりますと五百億ドルに近い数字になっておりますので、下半期がどうなるかまだわかりませんが、相当の貿易収支黒字になる予想でございます。
  9. 近江巳記夫

    近江委員 今御報告ございましたように、上半期で約五百億ドル、このままで推移いたしますと、強い場合は一千億ドル、あるいは九百億ドル台はいくのではないかと観測されるわけでございますが、そうなってまいりますと、議会圧力というものが、今まで貿易法案等が上程されたこともあるわけでございますけれども、相当強くなってくる。そうなってきますと、我が国としても当然真剣な対応をしなければならぬと思うわけでございますが、特に貿易摩擦という点につきまして、今後総理はどういう腹構えで進まれるか、お伺いしたいと思います。
  10. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やはり経済構造調整政策、私が本部長推進本部で今実行しつつあるこの政策、それから前から実行しておるアクションプログラムの遂行、これを我々の大きな太い政策としてうまずたゆまず前進させていく必要がありますし、それから内需喚起、このための税制の改正、こういうような問題についても精力的に努力してまいりたいと思っております。
  11. 近江巳記夫

    近江委員 政策としては、一つは輸出を抑えるという方法もあります。しかし、これは実際できるかどうか、大変難しい問題でございます。そうすると今度は輸入の増大。輸入ということになってきますと日本は原材料の輸入はどんどんやっておりますけれども、製品輸入が非常に少ないわけでございますね。そういう点で、今後は製品輸入等をどうしていくか。内需喚起、これは当然やっていかなければならない大事な問題でございます。昨年おとりになったアクションプログラム、これも本当にまだまだ効果もそう出ておらないようでございますし、いろいろあらゆる対策をとって真剣にやっていく必要があろうかと思います。総理も今、特に内需喚起に力を入れたいとおっしゃっておるわけでございますし、今この補正予算も審議しておるわけでございます。後ほどまた補正予算の中身もやりたいと思いますけれども、実際の成長率、プッシュしていく力としては、補正予算中心とした政府緊急対策としても非常に弱いと思います。したがって、総理がおっしゃった内需喚起という点におきましても、もう一段の力を入れていかなければいけないのではないか、このように思うわけでございます。  それで、今回の民主党の躍進でレーガン大統領としても相当苦境に立つのではないかと思うのですけれども、これについてはどのように思われますか、非常に仲のいい総理でございますので。
  12. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 新聞テレビの報ずるように、民主党が勝って共和党が少し後退した、そう言われておりますが、もしそうであるということになれば、議会関係においてホワイトハウスは今までよりも多少困難が増してくると考えざるを得ません。ただしかし、先ほど申し上げましたようにアメリカ議会は政党的な縛りが弱いものでございますから、やはり委員会委員政策、特に委員長政策というものが非常に影響してくるので、その顔ぶれによりましてはそう変化がないということもありますし、あるいは個々の政策によっていろいろな対応が変わってくる、そういう問題があり得ますので、今その顔ぶれがどういうふうになるか注目しておるところでございます。  一般的に言いまして、私は、国際関係というものについては、多数党になった場合には今まで以上に責任が出てくるものでございますから、アメリカは今世界をリードしている最強国でありますから、そういう意味において世界をリードしている最強国としての立場を忘れないで上下両院とも政策が形成されるであろうと思いますし、それを強く期待をしているし、日本のみならず全世界がそれを期待している、特に自由世界圏においてはそれを期待しているのではないかと思うのです。アメリカ議会がこの世界期待にこたえてくれるように要望しておる次第であります。
  13. 近江巳記夫

    近江委員 今後、対日圧力といいますか、そういうものが強くなることはあっても弱くなることはないわけでございますし、そういう点では一段と日米間のそうした問題解決に向かって努力をしていただきたいと思うのです。  今、貿易摩擦という点で私はこれを特に申し上げたわけでございますが、その他日米間で特に総理として今御心配になっておられる問題が何かありますか。
  14. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 米ソ首脳会談がどういうふうに今後展開されるか、その場合にSS20等がアジアにおいてどういうふうな処置がとられるか、これが米ソ首脳会談等の中における我々が最も関心を持っている問題で、かねてから我々はレーガン大統領に要望を出して、レーガン大統領にもこれを採用してもらっておりますが、こういう問題が一つあると思います。  それから、両国間及び世界的意味における日本黒字処理の問題、この問題も引き続いて精力的に努力をして、そして一面においては我々みずからすべきことはどんどん遂行すると同時に、アメリカやヨーロッパそのほかにおいて日本の実情について誤解があるという場合には積極的にその誤解を解くように努力していく必要がある、そのように考えております。  いずれにせよ、この大きな貿易黒字というものは現存する問題でありますから、理屈を超えてこれが処理対応に我々は全力を尽くさなければならぬと考えております。
  15. 近江巳記夫

    近江委員 今総理は、その他の問題として特に米ソ間の首脳会談、その結果もたらされる極東のそうした軍縮の問題を非常に心配しておるというお話ございました。  そこで、続いて日ソ問題についてお伺いしたいと思いますけれども、ゴルバチョフ書記長が来年早々来られるというようなニュースも伝えられておるわけでございますが、このゴルバチョフ書記長の訪日の意義と見通しにつきましてどのようにお考えでございますか。
  16. 倉成正

    倉成国務大臣 お答えいたします。  ゴルバチョフ書記長来日の問題については、御案内のとおり当方からゴルバチョフ書記長来日を、年内もしくは来年の一月までに来られるようにという要請をいたしました。なお、私はニューヨークにおいて先方シェワルナゼ外相との会談においていろいろと懇談をいたしましたけれども、先方は、米ソ会談のこともこれあり、ことしじゅうはいずれにしても無理だ、来年なるべく早い時期に来たいという返答でございました。その後カピッツァ次官日本に参りまして、なるだけ日本に早く来たいという希望は申しましたけれども、その時期は申しませんでした。  我が方といたしましては、しばしばこの委員会でもあらゆる委員会でも申し上げておりますように、国会におきまして、また委員会において議決をいただきました北方領土の問題、すなわち我が国の悲願としております平和条約の締結のためには、北方領土問題の解決なくしてはゴルバチョフ書記長来日が本当に友好かつ意義あるものにならないということをしばしば申し上げまして、政経不可分の立場であるということを申しまして、これを強く我が方の立場を相手に伝えておるわけでございます。しかし、先方はいずれにしてもこちらに来たいという希望を申しております。したがって、ボールは先方の方にあるわけでございますから、これについては時期をいつであるかということを私の方が今云々する立場にはないと思うわけでございます。  なお、ゴルバチョフが来日された場合にどのようなことが議題となるべきかという問題は、御承知のとおり先ほどから申し上げましたように、やはり平和条約の基本となるべき北方領土の問題、これは当然大きな議題の一つになると思います。同時に、国際情勢あるいはその他の諸問題について、広範な問題について、隣国であるソビエトとの関係において中曽根・ゴルバチョフ両首脳の間において会談が行われることは当然のことだと思うわけでございまして、そのー々がどのような内容のものであるかということは、先方の考え方もございましょうし我が方の立場もございましょうから、ゴルバチョフ書記長来日の時期を確定した段階におきましては、十分事務当局においてその議題については詰めてみたい。また同時に、議題はそのようにいたしましても、なお首脳同士が会談されることでありますから、もろもろの問題がそれ以外に出てくることも予想されると思う次第でございます。
  17. 近江巳記夫

    近江委員 総理は、このゴルバチョフ書記長来日というものを強く期待されておられるのか、あるいは一部報道によりますと、これは自民党の七夕会というのですか、この席におきましては、必ずしもそうじゃないのだというような、そういう突っぱねたような発言もされたというようなことも報道されておるわけでございますが、総理としての御心境はいかがなものでしょう。
  18. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 我々の方からは招待は出してありまして、今先方がいつ来るかということを選択する段階にあって、先方の意思にかかっているということであります。おいでになれば歓迎いたしたい。そして、世界の諸情勢及び日ソ間の重大案件あるいは今後のいろいろな日ソ間の問題等についてもいろいろ懇談をし、話し合いをして、先方の意見も聞きたいし我々の考え方も述べたい、そう考えております。
  19. 近江巳記夫

    近江委員 私たちも、特に北方領土の問題につきましてはしばしば私も本委員会におきましてもお伺いしておるところでございますが、これは何回確認しても重大な問題だと思っておりますし、あくまでも四島返還、これは変わらないわけですね。
  20. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 きのうもこの席で御答弁申し上げましたが、先般、日ソ復交三十年に当たりまして、衆議院及び参議院においてこのことはまさに満場一致で北方四島返還の決議をしたところであり、これが国民の悲願であります。政府は、これを体しまして全力を振るっていくということでございます。
  21. 近江巳記夫

    近江委員 四島ということでございますから、私も当然のことだと思います。  これは確認だけしておきたいのですけれども、日ソ共同宣言におきましては歯舞、色丹、これは平和条約の締結の後に日本側に引き渡される、このように述べておるわけですが、この二島というものは共同宣言によって外交的に決着済みということになっておるのかどうか、この点いかがですか。確認でございます。
  22. 小和田恒

    ○小和田政府委員 従来からたびたび申し上げておりますように、日ソ共同宣言は日本とソ連との間で厳粛に締結された重要な国際約束でございます。したがって、この第九項に述べられておりますこと、すなわちソ連が日本に対して歯舞及び色丹を日本に引き渡すというのは、ソ連が国際法上日本に対して負っている義務でございます。
  23. 近江巳記夫

    近江委員 それから一九七三年の田中・ブレジネフのいわゆる共同声明、この際におきまして、いわゆる領土問題、これを含むということで、しかしソ連側としてはそれを後になりまして違うとか、いろいろなことで必ずしも見解が一致しておらないわけなんです。これは口頭了解ということで来ておるようでございますけれども、その間にありますメモであるとか、そういうような根拠というものはないのですか、ありましたらひとつお答えいただきたいのですけれども。
  24. 西山健彦

    ○西山政府委員 お答え申し上げます。  その間の経緯につきましては、これはそのときの会議出席しておりました当事者の間の口頭了解ということでございまして、口頭了解という限りにおいてはいささかも疑いのないことでございます。
  25. 近江巳記夫

    近江委員 これは以前にも質問したが、同じ答弁でございます。では、次に進みたいと思います。  そこで、先ほど日米間のことをお聞きしましたときに、総理は極東の、日本の安全という点を非常に懸念しておる、これを米ソでよく話し合ってもらいたいというお話がございましたけれども、ゴルバチョフ書記長が去る十月二十四日、金日成主席との会談の際に、米日韓の軍事ブロックは東のNATOでありソ連の真の脅威である、このように述べておるのですね。さきのレイキャビクの米ソ首脳会談の際も、御承知のようにSS20の極東配備は削減するということだけでございまして、欧州のINFというのは廃絶する、こういう提案もあったということも聞いておるわけでございます。最近のこういう北方領土の軍事力の増強などもあわせまして、ソ連がこのようにアジアに対しまして非常に不信を持っておると思うのでございますけれども、この東のNATOであるというゴルバチョフ発言というものを総理はどのように受けとめておられますか。
  26. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本は個別的自衛権の範囲にとどまっており、憲法上もそういうことと言われております。集団的自衛権には入らない。そういう点からも、韓国との間において同盟があるということは全く存在しない。したがって、米日韓の関係を極東のNATOであるという考えは認識が間違っている、よく日本の実態を見てもらいたい、そう思います。
  27. 近江巳記夫

    近江委員 米ソ首脳の今後の平和への取り組みに強く期待する、総理のそういうお話がございますが、それだけにゆだねるというわけにもいかないわけでございますし、特に総理といたしまして、今後アジアでのそういう核兵器の撤去を含めましてそうした軍縮、そういう管理というものをどのように今後進めていけばいいとお考えでございましょうか。
  28. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国際緊張を緩和していくということ、それから軍縮を推進するということは我が国政策でございまして、そのためにも今まで努力しておるところでございます。アジアの場合では、朝鮮半島における緊張緩和及びベトナム、カンボジア問題の解決あるいはアフガニスタン問題、こういういろいろな問題がございまして、これらが緊張を呼んでおる一つの原因でもありました。これらの問題が緊張緩和の方向に強く前進されるように、我々は今後とも努力してまいりたいと思っております。  日本防衛に関しては、憲法の精神に従いまして、また我々が今まで言ってきておる非核三原則あるいは専守防衛あるいは外国に対して脅威を与えない、そういう考え方に立った限定的小規模による本土防衛、そういう防衛というものを貫いて節度のある防衛政策を実行していく、効率のある防衛政策を実行していく、こういう考えで進んでおりますし、そのことも世界じゅうによく理解してもらうように努力してまいりたいと思います。
  29. 近江巳記夫

    近江委員 次に、総理は八日、九日訪中されるわけでございます。これは日中青年交流センターの定礎式に出席されるわけでございますけれども、当然中国首脳と会談をされるわけでございますが、今、こういうアメリカ中間選挙もあり、いろいろと世界も非常に大きな一つの変化といいますかそういうものもあるわけでございますし、どういうような問題を中国首脳と話し合われようとしておるのか、それにつきましてお伺いしたいと思います。
  30. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今回は、私と胡耀邦総書記の間で話しました日中青年交流センターの定礎式に招待が参りまして出席させていただく、そういうことになりましたが、この機会に日中の友好協力を増進していく、そういう見地に立ちまして世界的な諸問題あるいは両国間の諸問題等について隔意なき懇談を先方の指導者としてまいりたい。ちょうど二年ぶりの訪中になりますが、その後いろいろな変化もございましたから、よく話し合ってみたいと考えておる次第でございます。
  31. 近江巳記夫

    近江委員 この朝鮮半島の情勢に関連しまして、中韓関係改善のこういう橋渡しといいますか、そういうようなことも考えておられるのかどうか、この点についてはいかがですか。
  32. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 第三国に関することは発言を差し控える方が適当であると考えております。
  33. 近江巳記夫

    近江委員 経済問題でございますが、対中貿易というものにつきましては六十億ドル程度黒字の状況が出ておるわけでございまして、これは不均衡という点におきまして特に我が国に対するそうした要求というものは非常に強いわけでございますけれども、今後そういう問題につきまして当然話し合われると思うのですけれども、具体的なそういう対案を持っていかれるわけですか。
  34. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 経済問題に関する具体的対案というようなものを持っていくという考えは今のところはございません。しかし、経済協力の諸問題についてはいろいろ隔意なき懇談はしたいと考えております。
  35. 近江巳記夫

    近江委員 中国側は特に問題にしないと言っておるようでございますけれども、藤尾前文部大臣の問題とか靖国神社の公式参拝の問題だとか、いろいろなそういう問題が今まであったと思うのですけれども、こういう点につきましては総理はどういう姿勢で臨まれるのですか。
  36. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 過去は教訓としつつ未来に向かってより強い提携、友好を促進するという考えで進む方が賢明であると思っております。
  37. 近江巳記夫

    近江委員 次に、防衛費の問題をちょっとお伺いしたいと思います。  宮澤大蔵大臣は鈴木内閣の官房長官当時、防衛費の対GNP一%枠につきまして、一時的にも一%を超えるべきではない、このようにお述べになっていらっしゃるわけですね。これは五十七年七月八日の内閣委員会で、我が党の鈴切議員に対しまして明確にこのようにおっしゃっているわけです。この考え方は、大蔵大臣として現在一層重要な立場にいらっしゃるわけでございますが、予算編成におきましてもいわゆるこの基本的な考え方というものは不変なんですね、その点をひとつお伺いしたいと思います。
  38. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、総理大臣御自身もしばしば言っておられますとおり、守っていきたい目標であるというふうに考えております。
  39. 近江巳記夫

    近江委員 栗原防衛庁長官はあらゆるところで、意図的におっしゃっているのかなと思うぐらい「防衛計画の大綱」というもの、これの優先論、定性的な歯どめであるというような発言をされておるわけですね。しかし、昭和五十一年の三木内閣当時の一%枠というものがいわゆる定量的な歯どめといたしまして非常に大きな役割を今日まで果たしてきておることはもう明らかでございます。これは国民の理解と支持を得ておるわけでございます。栗原さんのそういう一連の発言を見ておりますと、五十一年の閣議決定を撤廃しようとしておられるのじゃないかというようにも思うわけでございますが、この三木内閣当時の閣議決定というものを守るつもりがあるかどうか、それをお伺いしたいと思います。
  40. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 私の一連の発言を一%を突破するためのいろいろの意図的な発言のようにお思いになっておられるようでございますが、そういうことはございません。ただ、私が就任して以来、一%の問題と「防衛計画の大綱」とをどちらを優先するんだ、あるいは一%を超えれば軍事大国になるんだ、あるいは一%以内ならいいんだとか、そういう議論が随分ございます。したがって、この一%問題につきましては、国民各界の階層の方々がこの機会に大いに一%というものはどういう意味があるんだ、そういうことを御議論いただくことが必要ではないかという意味で申し述べているのでございまして、三木内閣の閣議決定の防衛費の一%を守っていきたいということは変わっておりません。
  41. 近江巳記夫

    近江委員 閣議決定を守る、そういう御発言でございましたが、しばしば突破するんじゃないかというような、国民に余り不安を与えるような、誤解するような発言が多いものでございますので、しっかりとひとつ守っていただきたいと思います。  日本防衛費の増加につきましてはアジア諸国も非常に警戒をするわけでございます。そういう点におきまして、最近の前閣僚の不穏当発言、その他の議員のそういうような不穏当発言というものは、アジア諸国を非常に刺激しておることも事実でございます。そこで、安倍前外相は、日本防衛費の対GNP一%枠が我が国の平和外交の指針となってきた、そういうことを常々答弁されてきたわけです。こうした時期にもし仮に防衛費のGNP一%粋突破ということになりますると、アジア諸国の不信、不安というもの、平和外交へのそうした懸念、そういうものが非常に生まれるわけでございます。  そこで、外務大臣はこの一%を守るという三木内閣の閣議決定というものにつきましてどういう見解をお持ちでございますか。
  42. 倉成正

    倉成国務大臣 三木内閣の一%枠を守るという基本ラインは、御承知のとおり我が国が軍事大国にならないという平和憲法の精神と同時に.近隣諸国に対する軍事的な脅威を与えない、そういう意味を持ってこの一%が設定されたと心得ております。したがいまして、そういう意味において私は、三木内閣の精神、この閣議決定は守っていくべきものであると考えておる次第でございます。
  43. 近江巳記夫

    近江委員 今年度の成長率四%というものはしばしばここでも論議されているわけでございまして、恐らくいかないだろう、政府努力が足らない、そういう強い指摘もされておるわけでございます。そうしますと、来年も非常に厳しい状況というものが一応考えられるわけでございまして、そういうことで下手をすると来年あたり突破というような懸念が今非常に高まってきているのです。だから私はあえてこれを今お聞きしているわけでございます。  総理に私はこの一%問題で最後にお聞きしたいと思いますけれども、五十一年の閣議決定を撤廃する考えはないということをはっきりと明言されるわけですね。その点ひとつ確認したいと思います。
  44. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、三木内閣のいわゆる一%に関する閣議決定を守っていきたいと考えております。
  45. 近江巳記夫

    近江委員 次に、SDIの問題につきましてお伺いしたいと思います。  中間選挙の結果、SDIの問題につきましてもレーガンさんはやはり相当厳しい状況になるんじゃないか、そういう観測も行われておるようなわけでございます。それはSDIということにつきまして、アメリカにおきましても非常に強い心配があるというあらわれではないか、このように思うわけでございます。  私は、九月十二日、政府に対しまして、SDIの研究に日本が参加する問題に対して質問主意書を提出をいたしました。九月三十日に回答が来たのですけれども、納得ができない中身でございまして非常に残念に思っております。九月九日に官房長官の談話で、政府が米国のSDIの研究に参加することを決定した、そうして研究参加の具体的な枠組みを決める協定づくりのために政府の代表団が訪米して米側と協議を行った、これは今経過のことを言っておるのですけれども。  そこでこの協定がどういうようなものになるのか、非常に注目されるわけでございます。既に現在結ばれておりますアメリカとイギリス、西ドイツ、イスラエル、イタリア等のそういう協定は内容が秘密となっておるわけですね。そうしますと、日本政府としてすべてを公開する、これが今までの日本政府の基本方針じゃないかと思うのです。そういう意味におきまして、このSDI研究のための秘密協定というものは一切結ばないという方針を約束できるかどうか、この点をお伺いしたいと思うのです。
  46. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいま御説のとおり、各国とアメリカ政府と結んだSDIに関する協定については不公表となっております。我が国アメリカと結ぶ協定については、できるだけ民間企業等がSDIの研究参加に際して円滑に参加できるような協定について取り決めを結ぼうと思っておる次第でございます。したがいまして、公表できるものはできるだけ公表したいと思いますけれども、しかし、いずれにしましても、SDIの研究そのものが国家の非常に重要な問題に関する内容を含む問題でありますから、公表できない部分があることは考えられるわけでございます。
  47. 近江巳記夫

    近江委員 そういうところがやはり問題なんですね。国民がこれだけ重大な関心を持っているわけですから、そこに秘密が存在するということになってきますと、これは非常にゆゆしい問題だと思うのですね。だから私は、このSDIに関することにつきましてはすべて公開してもらうということが非常に大事だと思うのですね。その点は政府部内としてはそういう方針でいくのですか。これでは国民としては承知しませんよ、そういう秘密主義でいくならば。
  48. 倉成正

    倉成国務大臣 できるだけ公表できるものは公表いたしますけれども、公表できない部分もあるということを申し上げておる次第でございます。
  49. 近江巳記夫

    近江委員 これは非常に私は重大な問題だと思います。政府としては、原則公開ということをおっしゃっておると思うのですね。だけれども、できないものはできないんだ、それでは違うのですよ。すべてを公開するというそういう姿勢が一番大事でございます。これはもう重大問題でございまして、これを提起しておきます。  そうしますと、ここで法制局長官に私はお聞きしますが、我が国のそういう法体系から見まして、この種の協定あるいは取り決めをそういう秘密にするということはできないと私は思うのですけれども、これは法制局長官としてはどういう見解をお持ちですか。
  50. 味村治

    ○味村政府委員 二国間の取り決めあるいは多国間の条約、これらの条約につきましては、条約の締結はこれは行政府である内閣の権限に属するということにされております。しかし、条約を締結いたしました場合には事前にあるいは事宜によりましては事後に国会の御承認をいただかなければならないということになっているわけでございます。  ただ、その場合に、国会の御承認をいただかなければならない条約と申しますのには、これは二国間なり多国間なりの取り決めすべてではございませんで、例えば国民に対して義務を課するものであるとかあるいはそれについて予算を要するものであるとかそういうふうに限定をされておることは、これは従前から政府が御答弁申し上げているものでございます。そういったもの以外の二国間の取り決めにつきましては、行政府限りで処理ができるわけでございます。その場合に、先ほど外務大臣が申されましたように、公表するということが当然の原則でございますが、場合によりましては外国との関係もこれあり、秘密という場合もあろうかと存じます。
  51. 近江巳記夫

    近江委員 公開されないというようなことになってきますと、現行の我が国の国内法あるいは日米間の取り決めの枠組みの中で処理する、そういう方針が貫かれたかどうかということがわからないことになると思うのですね、そういう点でこれは非常に心配な、重要な問題でございますし、私はすべて公開してもらいたいということを特に申し上げておきます。これは後に残る問題であります。  次に、SDIの研究に日本が参加するということになってまいりますると、米国と個別の取り決めによって各企業がSDIという兵器体系の研究に参加するわけであります。部門といいましても、これはSDIという兵器体系の研究に携わることになるわけであります。現在はともかくといたしまして、将来、これは参加国、すなわち日米、NATO諸国との兵器の共同開発ということにつながるおそれがあるのではないか、こういう心配をするわけでございます。我が国昭和五十八年一月、武器輸出三原則の枠外として米国に対する武器技術供与の道を開いたわけでございます。しかし、武器そのものの供与は禁じられているはずでございますし、共同開発はできないのではないか、このように思うわけでございます。  そこで、次の点につきまして、確認の意味を含めまして政府の見解を伺っておきたいと思います。  第一には、日本から米国へ供与される武器技術は、第三国への移転は日本の同意がなければ認められないことになっているわけでございますが、米国側から移転の要請があった場合は、原則として認めないという姿勢であるべきでございますが、政府はどのように対処されようとしておるか。まず一点ずつ聞いていきたいと思います。この点につきまして。
  52. 小和田恒

    ○小和田政府委員 ただいま委員が御指摘になりましたように、先般、我が国と米国との間で締結をされました武器技術の供与に関する取り決めでございますが、その中で、第三国に対する移転ということについては承認がなければやれない、こういうことになっておるわけでございます。  そこで、その問題の処理につきましては、従来からお答えをしておりますように、我が国のよって立っております平和国家としての理念、それから武器輸出三原則がよって立っておる考え方というものを基本に置きまして、慎重に対処をするということでございます。
  53. 近江巳記夫

    近江委員 次に、米国以外の第三国、例えばNATO諸国との武器の共同開発、こういうものは可能か不可能か、その根拠は何か、また政府の施策としてどういう方針で望まれるか、その点をお伺いしたいと思います。
  54. 小和田恒

    ○小和田政府委員 先ほども申し上げましたように対米武器技術移転、供与の関係でこういう規定が置かれておりますのは、一般に武器輸出三原則の範囲の問題といたしまして、武器技術の供与というものも一般的には行わない、あるいは慎むということが政府の方針として既に決定しているわけでございます。したがいまして、米国との関係におきましては、この武器技術供与の取り決めによりまして供与をする道を開いたわけでございますけれども、その他の国との関係におきましては、武器輸出三原則において政府が述べておる政策が妥当する。したがって、武器技術に相当するようなものについては一般的に武器輸出三原則に述べている政府の方針が妥当をする、こういうことでございます。
  55. 近江巳記夫

    近江委員 国会決議との関係でございますけれども、今回の研究参加の問題につきまして官房長官の談話で、宇宙の開発及び利用に関する国会決議に抵触するものではないと考えている、こういう旨を述べておられるわけでございます。本会議での答弁では、国会決議は我が国が行う開発利用に関したものであり、他国が行う計画の特定の一局面への参加は同列に論じられないと判断しておる、このように中曽根総理はお述べになっていらっしゃるわけでございます。官房長官談話でも言っておりますように、国会決議の有権的解釈は国会で行わるべきことは当然である、こういうようにおっしゃっているわけですね。  政府が、昭和四十四年の宇宙の開発利用は平和の目的に限るという内容及び精神につきまして、このSDIの参加が抵触しないと言うことはおかしいのじゃないか、このように私も思うわけでございますけれども、これにつきまして総理の見解をお伺いしたいと思います。
  56. 倉成正

    倉成国務大臣 委員お話しのように、国会決議の有権的解釈はもとより国会でなさるべきものであると理解しております。  政府といたしましては、我が国における宇宙の開発及び利用の基本に関する国会決議については、同決議は我が国における開発及び利用を対象としたものであって、他国の開発及び利用に対する我が国の関与は、我が国みずからが行う開発及び利用と同列に論じらるべきものではないと考えておる次第でございます。  SDI研究計画の場合は、あくまでも米国が策定し推進している計画であって、我が国の参加の態様は、このような計画の個々の具体的なプロジェクトの特定の局面への参加にとどまるものでございます。本件決議がこのような参加までも対象としているとは考えておりません。  なお、SDI研究計画は非核の防御的手段によって弾道弾を無力化し、究極的には核廃絶を目指すものであると言われております。これは平和国家としての我が国立場にも合致するものであるのみならず、かかる研究計画への我が国の参加は、日米安保体制、日米信頼関係の維持強化にも貢献することにもかんがみまして、本件決議がこのような参加までも禁じておるとは考えておらないのが私どもの考えでございます。
  57. 近江巳記夫

    近江委員 武器技術供与のときもそうでしたし、今回のそういう宇宙平和利用に関する決議、これも一方的に政府がそのように解釈をしている。これは国会が決めた決議なんですね、ですから有権的な解釈というものは国会にある、これはもう当然のことでございまして、その手続といたしまして、やはりこれだけの国会決議が厳然として存在するわけでございますから、こういう国会を無視した政府のそういう判断だけで一方的にいくということは非常に私はおかしいと思います。民主主義のルールとして、こういう姿勢は私は絶対におかしいと思います。  総理にお聞きしたいと思うのですけれども、総理はこういう国会の了解を求めるという手続をなぜしなかったのですか、その国会決議というものをどのようにお考えですか、まず基本的にお伺いしたいと思います。
  58. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国会決議の有権的解釈は国会がおやりになるものであると前から申し上げておるとおりでございます。しかし、条約を執行するのは政府の考え、方針、政策でもございます。そういうような関係、外交関係処理するという面、そういういろいろな面におきまして政府は憲法の許す範囲内において行為できるものであると考え、そういう判断に立って行っておるものでございます。  この国会決議に対する問題につきましては、官房長官から議会内の議運等におきまして政府側の見解も申し述べたとおりでございます。
  59. 近江巳記夫

    近江委員 官房長官から議運かそこに報告をした、そういう儀礼的なことはなさったかもしれませんけれども、それでは国会に手続をとったということは言えないと思うのですね。国会が決めた決議でございますから、国会はどういう判断をされるのですかと、当然そういう手続をきちっと踏んですることが民主主義のルールですし、そういうことをやらないということ自体が、これは非常に軽視しておると思うのです。官房長官どう思いますか、あなた。
  60. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 政府がこの国会決議を尊重しなければならぬという基本的な立場、これは私どもとしても重々心得てやっておるつもりでございます。そして御案内のこの決議は、有権解釈は当然のことながら国会がお決めになる、こういうことでございますが、一方、現在の我が国の建前上、外交案件の処理はこれは内閣に属する、こういうことになっておるわけでございますから、そういった枠組みの中でこういった問題についても、私どもとしては国会決議を尊重しながら、政府政府として国会の決議を頭に置きながら、違反をしておるとは考えない、こういうことで処理をさしていただいておるわけでございます。  しかし、その政府がそう考えておることが果たして違反になるのかならぬのかは、最終は、ちょうど今あなたがここで御質問なさっていらっしゃるように国会の中でお決めをいただきたい。政府としては、今回の決議に対しては政府の措置は違反をしておらぬ、こういう見解でございます。
  61. 近江巳記夫

    近江委員 どうもおかしいんですね。先に政府が突っ走っておいて、問題があるかないかは今ここで論議しているじゃないか、そうじゃなくして、政府が判断してお決めになる前に、例えば議長なら議長に、国会で下された決議でございますから私どもはこのように考えております、御判断いただきたい、それを出してきて、国会で我々がこの国会決議に沿ってそれを検討する、それから政府がスタートする、これだけの重要なことじゃないですか。先に走っておいて、それであなた方が勝手に判断すればいいじゃないか、これはおかしいですよ。総理どう思いますか、この辺の、微妙な手続論もこれは入るんですけれども。
  62. 倉成正

    倉成国務大臣 今、官房長官からもお話がございましたけれども、今般の政府の方針は、SDI参加問題については我が国の国内法及び日米間の取り決めの範囲内で処理していくという問題でありまして、従来の防衛分野における米国との技術交流と同様に取り扱う、そして我が国の同計画の参加を円滑なものにするため米国政府と協議するというものであって、政府の責任で行ってしかるべきものであると考えておる次第でございます。
  63. 近江巳記夫

    近江委員 この国会決議というものはこれからもいろいろ行われるでありましょうし、今までもございますし、この問題はこれからの問題ですからあらゆる点でさらに厳しく見ていきたいと思っておりますけれども、今後そういう国会決議というものに対しまして行政府から議長に、例えば政府が何かお考えになるときに、私どもはこう考えております、それを判断いただきたいという、そういうルールといいますか慣行というものが大事じゃないかと私は思うのですけれども、これにつきましては総理はどのようにお考えですか。
  64. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やはり憲法に従いましていろいろな法律あるいは行政というものが進行することが正しいと思うのでございます。憲法の解釈につきましては、これはいろいろな手続がまたそれぞれございます。最終的には最高裁の判断という問題も保障されておるわけでございます。日常の行政行為あるいは外交関係処理というものは内閣に認められておるもので、その権限の範囲内において行うということでやらしていただいておる。やはり憲法の条章に従って行うということは、いろいろな国政の秩序を正していく上に大事であると思うのです。しかし、今のような場合におきましては国会の決議が存在するわけでございますから、政府としてはこういう考えに立ってこれを進めてまいりますというごあいさつは、官房長官から議運に参りまして、また議運を通じて議長さんにも申し上げているわけでありまして、そういう見解を申し上げてやっておるわけでございます。
  65. 近江巳記夫

    近江委員 それは非常に儀礼的に行政府から国会に対するあいさつという感じなんですね。そうじゃなくして、やはり私はきちっと判断をしてもらいたいという、そういう精神で、今後はひとつ国会と行政府の間というものにつきまして、有権的なそういう解釈というもの、それをきちっと求めていく、そこにお互いの信頼関係が生まれると思うのですね。その点今後の重要な課題といたしましてボールを投げておきますので、十分ひとつ反省の上に立たれてよくお考えになっていただきたい、このように思います。  次に私は、ユネスコ問題、国連問題というものにつきまして非常にずっと関心を持って見てきておるわけでございまして、特にこのユネスコの問題でございますが、アメリカ、イギリス等の脱退、非効率な管理体制、放漫財政等々いろいろ今日まで指摘されてきたわけでございます。我が国といたしましては、今やユネスコ最大の経費の負担国でございます。今日まで内部に残って改革を推進するということで努力されてこられたわけでございますが、まず改革の成果が上がったのかどうか、これが第一点です。第二点は、そういう状況も変わってきたとするならば、米英に復帰を呼びかけるつもりはあるかどうか。この二点についてお伺いしたいと思います。
  66. 中平立

    ○中平政府委員 委員御存じのように、昨年の秋のソフィアのユネスコの総会におきまして、改革の努力が緒についたということが言えるのではないかと思います。すなわち、実質ゼロ成長予算の採択とか一部事業の改善とか、それから監視のための特別委員会の設置とか、そういうのが合意されたわけでございますが、今申し上げましたように、改革の努力が緒についたというところでございまして、その後イギリスが御存じのように脱退したということでございます。我が国といたしましては、志を同じくする諸国と今後協調しながら残された改革に一層努力してまいりたい、こう考えておるわけでございまして、その努力といいますのは、事務局の改革とかそれから事業内容の一層の改善とか、そういうものがあるわけでございます。  そういう状況でございますので、米国及び英国がユネスコに帰ってくるというような状態にはまだなっておらないというのが現状でございます。しかしながら、先ほど申し上げましたように、今後とも我が国といたしましては努力してまいりたい。努力の実が上がるならば、アメリカやイギリスがユネスコに帰ってくるような情勢が来るのではないか、こう思っておるわけでございます。
  67. 近江巳記夫

    近江委員 ムボウ事務局長が立候補を断念するというようなことも伝えられておるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、我が国としては経費の最大の負担をいたしておるわけでございます。そういう点におきまして、我が国としても立候補するぐらいの、本当に責任を持って今後やっていくというような、そういう姿勢があってもいいんじゃないかと思うのですけれども、この辺につきましてはどのように政府としてはお考えでございますか。
  68. 中平立

    ○中平政府委員 今委員御指摘のとおり、先般ムボウ事務局長が自分としては三選を求めないという発言をしたわけでございます。その後、この発言をきっかけといたしまして若干の国が立候補の動きをしているわけでございます。我が国といたしましても、これらの諸国の動きを十分踏まえながら、今後とも我が国の立候補問題については慎重に検討してまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  69. 近江巳記夫

    近江委員 慎重に検討してまいりたいということは、前向きで検討するのですか。それはどうなんですか。何事も、どんな問題だって慎重にやらなければいけませんよ。どうなんですか。
  70. 中平立

    ○中平政府委員 委員御存じのように、この選挙は来年の秋の総会のときに行われるわけでございまして、まだ一年先でございます。このような選挙と申しますのは、最初から手を挙げていくのが得策であるのかということは必ずしも即断しがたいという側面もございますので、我々としては十分慎重に検討していきたい、そういう趣旨でございます。     〔委員長退席、今井委員長代理着席〕
  71. 近江巳記夫

    近江委員 次に、在日米軍駐留経費の日本側負担の問題でございますが、これは年々ふえ続けておりまして、六十一年度におきましては八百十七億五千万、これは提供施設の整備だけではなく、労務費の一部、給与の一部まで負担するというような状況になっております。これは地位協定の第二十四条に基づくものでございますが、しかし、年々こういう協定の拡大解釈というのですか、予算もどんどんふえてきておるわけでございまして、この地位協定上どこまでが許容される範囲なのか、これ以上できないというめどを持っていらっしゃるのか、その辺が非常にあいまいなんですね。それは在日米軍労務者の立場もございますし、十分承知しておりますけれども、やはり法治国家として、そういうただいたずらにずるずると拡大解釈ばかりということは、国民としてはおかしいんじゃないかという見方をしております。  そこで、まず法制局長官はこの件につきましてはどういうように考えていらっしゃるか、それから後、閣僚からお伺いしたいと思います。
  72. 味村治

    ○味村政府委員 いわゆる地位協定の二十四条に「日本国に合衆国軍隊を維持することに伴うすべての経費は、2に規定するところにより日本国が負担すべきものを除くほか、この協定の存続期間中日本国に負担をかけないで合衆国が負担することが合意される。」とございまして、その二に、「日本国は、第二条及び第三条に定めるすべての施設及び区域並びに路線権をこの協定の存続期間中合衆国に負担をかけないで提供し、かつ、相当の場合には、施設及び区域並びに路線権の所有者及び提供者に補償を行なうことが合意される。」こうなっておりますので、施設、区域並びに路線権の提供のための経費等二十四条二項に定めます経費以外のものは合衆国が費用を負担するということに相なっているわけでございます。これを基本として先ほど先生の言われました費用負担の問題は解釈すべきものである、このように存じます。  ただ、地位協定上この「合衆国軍隊を維持することに伴うすべての経費」という中に労務費がどの程度含まれるかということは、これは合理的な解釈の問題になろうかと存じます。
  73. 近江巳記夫

    近江委員 今後、この点につきましては政府としてはどういうようになさるのですか。ただこのままずるずると拡大という形でいくのですか。やはり国民のきちっとした理解と協力を得られるような筋というものが大事じゃないでしょうかね。どのようにお考えですか。
  74. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 労務費につきましては、ただいま法制局長官が御指摘になりましたように、二十四条の解釈の範囲内で昭和五十三年、五十四年に福利厚生費等一部の経費につきまして、米軍が直接負担すべき経費以外のものとして日本政府としてはこれを負担してきておるわけでございます。最近、特に近年円高等の事情によりまして米軍の駐留経費が逼迫しておるという事情もございます。これが日本人の従業員、労働者の雇用の不安定にもつながるという事態がございます。この点について十分な検討を今後ともしていく必要があるということは一方にあるわけでございますけれども、他方、従来政府が累次答弁申し上げておりますように、労務費につきまして現行の地位協定二十四条一項の解釈、これにつきましては、これ以上日本政府がこの二十四条一項のもとにおきましてさらに労務費を見ていくということには限界があるということは累次政府が答弁しておるとおりでございます。     〔今井委員長代理退席、委員長着席〕
  75. 近江巳記夫

    近江委員 これは働いておられる米軍労務者の立場もあるわけでございますし、こういう人たちに対しても十分それは対策を考えなければならぬ問題です。ただ、二十四条に基づいたということで非常に拡大解釈といいますか、どんどん枠がそれだけで広がっていく。そこに何らかの政府のきちっとした説明というか、そういうものが必要じゃないか、こう言っておるわけです。これは防衛庁長官
  76. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 地位協定に基づきまして、我が国の自主的判断で対処すべきものだと考えております。
  77. 近江巳記夫

    近江委員 いや、それはそういうことで今やっておられるわけですね。そうすると拡大解釈ということは、今皆そういう目で見ているわけなんですね。そのままの姿勢でこれからもずっといくわけですか。それじゃ私の言っている問いの答弁になってないです。
  78. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 今、北米局長から言ったことを踏まえての話であります。
  79. 近江巳記夫

    近江委員 もう一つ今の答弁では納得できないのですけれども。要するに、このままのそういう拡大解釈でこれからもますますアメリカは要請してくるでしょうし、どんどん膨らますだけのそういう姿勢でいいかということを言っているのです。だから、そこに何らかの補足的なことであるとか、何らかの国民が納得する説明といいますか、そういうことが必要じゃないかと言っているのです。これについて研究するのですか。
  80. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 具体的にまだどういうふうにするというふうなことを考えておりませんので、この段階でどうこう申し上げられませんが、国民の皆さんにわかるようにやることは、これは当然であります。
  81. 近江巳記夫

    近江委員 じゃ、時間の関係で次に行きます。  次に、私は海外経済協力問題に入りたいと思います。  御承知のように、今我が国の援助というものにつきましては非常に大きな額になっておりまして、厳しい財政状況の中でございますけれども我々としては努力をしよう、そういう点は国民の皆さんも厳しいながらも理解をして協力しておるわけでございます。政府開発援助につきましても、一九八五年におきまして九千五十七億、こういうことでございまして、大変膨大な援助というものが行われておるわけでございます。今回、御承知のようにマルコス疑惑の問題を初めといたしまして、JICAの問題等々そういう問題が出てまいりまして、非常に残念なことでございます。  そこで、きょうは総裁も来ておられるわけですし、今回の汚職事件についてどういう反省をしておられるか、まず心情をお聞きしたいと思います。
  82. 有田圭輔

    有田参考人 お答えいたします。  今回の事件は、政府ベースの国際協力を実施いたしております国際協力事業団といたしましては起こしてはならない不祥事件でありまして、まことに遺憾に存じております。このことにより国際協力一般に対する著しいイメージダウン等を引き起こしまして、関係方面に多大の御迷惑をおかけいたしまして、まことに申しわけなく、深くおわびする次第でございます。  この今回の事件の直後、直ちに所管大臣から厳重なる指示、御命令がございまして、それにおこたえいたしまして、内部におきましてそれぞれ委員会を設け、綱紀の粛正並びに事件の再発防止のための改善措置というものを検討いたしまして、先月末、その結果につきまして所管大臣に御報告いたしました次第でございます。
  83. 近江巳記夫

    近江委員 今回のこの事件を見ましても、これはただ一人の不祥事ということじゃなくして、それは構造から出てくる問題である、国民の皆さんもそのように感じておると思うのですね。そういう点で今、総裁からも非常に反省の心情が吐露されたわけでございますけれども、私もこの海外経済協力というものにつきましては、商工委員会等におきましてもかつていろいろと事件を指摘してきたこともございます。そういうことで、随分と調査もしたいということでやりました。ところが、なかなか資料が出てこないのですね。やっと私もこの一冊、これは「昭和五十四年度コンサルタント契約実績調書」という非常に古いものです。これは昭和五十五年十一月ですね。こういうことで大体一年間のことを調べました。そうしますと、今六十一年でございますから大分年数もたっているわけですけれども、しかし、大体のそういう傾向というものはわかるわけでございます。  そういうことで、お手元にもそういう資料も私お配りしておるわけでございますけれども、ここでJICAと特殊法人との癒着の問題だとかいろいろな問題があるわけでございますが、一つは、提出しましたこの資料ですね、JICAへの各省庁別出向職員というものが出ておるわけでございます。本庁には百二十八名いるんですが、四十八名が出向してきておる、こういう状況でございます。それからまた役員といたしましても、十六名のうち十三名が天下りなんですね。そういう中にいろいろな事件を発生さす原因があったんじゃないか、このようにも思うわけでございます。  それから二枚目の資料は、これは特殊法人受注実績、非常に偏っておるということを、昭和五十四年のことですから、こういうことだということをごらんになっていただければいいです。  それから三枚目のADCA会員の農水省の出身者。これは七十一社あるんですね、ADCA会員というのは。私が調べましたのは、十二社で既に百二十三名も天下りしているわけですね。言うならば受け皿のようなことになっておる、こういう実態でございます。これは名前も全部わかっていますけれども、七十一社のうちの十二社でもこういう状況なんです。  それから四枚目は、中央開発の実施したJICA開発調査プロジェクトにどういうものがあるか、これは私が調べた範囲でございます。  そういう中で、一つは、契約方法もいわゆるプロポーザル方式、特命随意契約、こういうものがいろいろあるわけでございますけれども、データのとり方によって非常にプロポーザルが多い、むしろ特命の随意契約の方が少ないというような話もありますけれども、いずれにしましても契約自体が公平に公正に行われておるかという点につきまして、そういう点も非常に問題があるわけでございます。  そこで、この問題を起こしました木村さんの「農業部門のプロファイ」、これは「国際開発ジャーナル」十一月号でございますけれども、これにもいろいろ問題を指摘しておるわけです。どういうことを言っておるかといいますと、   農業案件に取り組んでいく場合は、賛助会員でもいいからコンサルタントの場合は、できるだけアディカの正会員になっていた方がいいんじゃないか、と思うわけです。農業案件については、必ず農林省と協議を行い、そうなるとアディカのメンバーかどうかということが問題になってくる可能性がある、ここをひとつ頭に入れておく必要がある。 まず会員になることである、その会員会社に農林省からもたくさんの天下りの人が入ってきておる。そこからも推察できると思うのですね。それからまた、実際の調査等につきましても、   あそこの国へ行って、あそこのホテルへ泊まって小便してきましたと、これだって、やってきましたと、りっぱに協会に出せるわけですね。   それから日本のプロファイの最も悪い例なんですが、首都に行って、大使館に行ったり、JICAならJICAに行って、そこで聞きとって、現場に行かない。それでレポートには何とかプロジェクト、ずうっと書いてある。しかもその国にいるのが三日ぐらいです。それから書いたプロジェクトは、数一〇〇キロも離れているわけです。これ全然行けるはずないわけで、上がってきたプロジェクトを全部集めて、やりましたなんて、これつばつけプロジェクトなんです。これだって、いかないよりはましだし、こんなプロファイもあるにはあるんです。これはプロファイの精神にもとるんですが、あるということは事実です。   それから、何をねらうかということですが、これもさっき言ったように、F/S(フィージビリティ・スタディ)だけでもいい、とにかく相手のほうの経済状態なんて何でもいい、とにかく要請案件を挙げてくれ、挙げてくれってわけで、FSだけやっておきなさいよと。もっとよく言えば、いまは経済状態が悪いけど、いずれよくなるだろうから、そのときを踏まえて、プロファイだけやっておきなさいというわけで説得する。相手側もそういう話で出してくるというやつ。これで実績をかせいでいく。 出せ出せと仕掛けて、そして出させて、そこで仕事を生み出させて、そしていいかげんな調査をしておる。  それは、まじめにやっている人がもうほとんどだと私は思いますよ。しかし、これに近いようなことは推測できるのです。あるとかないとかは私は言いませんよ。だけれども、現実にこういうことを堂々と書いておるのですから。だから、こういうようなことで国民の血税というものが海外援助ということにおきまして、またそれにつながる実際の仕事になるわけでしょう。これは政府だけでも九千億の金を出しておるわけですよ。来年度の予算編成におきまして、いつも文部省で問題になるのですけれども、教科書の無償配付の問題、これだって四百五十億でしょう。この四百五十億をやめるかやめないかいつも大騒動して、最終は良識ある我々の意見が通り、存続ということになるわけですね。それから見ても、これは九千億ですよ。要するに調査事項というものがこういうずさんだということは、それにつながる仕事にしたって何にしたって、実際に何が行われているかわかりませんよ。現実には、そういうきちっとした調査をすれば、後につながる仕事は五%から一〇%ぐらいリベートが出るんじゃないかというようなことも書かれてあるのですよ、ここに。そういう推測もあるのです。  そういうような点からいきまして、少なくとも国民の血税がこれだけ行使されているわけですから、真剣な、やはり襟を正した取り組みをしてもらわなければ困ると私は思うのですよ。これは大臣どう思いますか。今総裁から反省のお話があったのですけれども、大臣はどのように反省しているのですか。
  84. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいま近江委員から御指摘ございましたけれども、国民の血税を使い、しかも今日の財政事情が大変苦しい中において、我が国が平和国家として世界に貢献する、唯一と言っては言い過ぎでございますけれども、最大の課題であるいわゆるこの国際協力の仕事、この事業団においてこのような不祥事を起こしたことにつきましては、監督官庁としてまことに残念に思っている次第でございます。この点は、国民の皆さんに深くおわびを申し上げたいと思う次第でございます。  同時に私は、この機会に、基本的な考え方として次のようなことを考えております。  まず第一に、JICA、国際協力事業団に従事する者は、使命感に徹する、モラルを高めるということがやはり一番大切なことであると思います。どんな機構をつくっても、どんなことをやりましても、使命感とそしてモラルというものがその基本であろうかと思います。  第二に、機構あるいは人事、こういうものについて適切な改革が行われるべきであろうかと思います。  第三は、この仕事が効果的に行われたかどうかということを十分判定していくための手段を考えなければならないと思います。  第四といたしましては、このような不祥事件が起こったことはまことに遺憾でございますけれども、全体、まじめに働いておる海外協力の青年隊あるいはカメルーンにおきましてもあるいはエルサルバドルの地震に対しましても、直ちに現地に飛んでいきまして、専門家とともに身を挺してこの苦難に当たりました諸君、JICAの諸君がこの中に入っておりますが、現地で今日でも一生懸命頑張っている諸君があるということを考えてまいりますと、そういう人たちの士気を阻喪しないようにしなければならない、この四点が私の基本的な考え方でございます。  その中で、ただいま有田総裁が申しましたように、この事件が発生いたしまして、直ちに私は外務省に有田総裁を招致いたしまして、厳重にJICAに対する綱紀粛正とこの問題に対する調査を命じました。また、これに対しまして、JICA体制の改善、検討を命じた次第でございます。さらに、大臣命令をもってJICAに対するいろいろな報告等を求めたわけでございまして、JICAから、人員の適正配置、内部監査体制の強化、コンサルタントの選定、契約、管理、処分厳正等を含むJICAの改革方針について報告を受けた次第でございます。有田総裁に対しましては、この報告を受け入れるとともに、さらに今日のJICAの置かれている立場を考え、また国民の血税を利用する今日の状況の中において、総裁としてひとつしっかりこの問題を踏まえてこれらの問題に対処していただきたいということを強く私から総裁に指示をいたしたところでございます。  また、民間の有識者の方からも、外から見ると我々が幾ら一生懸命やっておりましてもいろいろお気づきのことがあろうかと思いますから、率直な御意見を聞いて謙虚に改めるべき点があれば改めようということで、それぞれの有識者の意見も伺っておる次第でございまして、国会におきましても、いろいろ諸先生方のお気づきの点を御指摘いただけば謙虚に皆様方のお考えをちょうだいいたしまして、取り入れるべきものは取り入れてまいってJICA本来の使命を達していくようにいたしたいと思う次第でございます。
  85. 近江巳記夫

    近江委員 今、大臣からも反省とそして今後の取り組みにつきましてお話があったわけでございます。  総務庁長官、こういう公社公団を初めといたしまして政府が補助金を出してしておるというようなものは本当に無数にあるわけですね。これを一つとしてやはり全体の綱紀粛正といいますか、みんなが襟を正さなければいけない問題だと思うのです。今回の事件に関しましてどういう感想をお持ちであり、また今後総務庁長官としてどのように取り組んでいかれるかお伺いしたいと思います。
  86. 玉置和郎

    ○玉置国務大臣 JICAのこの汚職事件が起こったから総務庁が直ちに動いたというわけではないのです。もともとこのODAの予算というものは非常に大事だということ、そのために年々大きくなっていっておる。また、それに伴うところの定員についても、これは総務庁の所管でございますが、よそと比べてふやしていっておる。そういう中で、いろいろと私が就任する前から政府開発援助についてとかくの話を聞く。しかもそれが何か知らぬが聖域のように語られておる。しかしおかしいなという疑問がありました。これは農協と同じです。そこで、たまたま就任しまして起こったのがJICAなんです。だから、JICAの汚職が起こったから総務庁が監察、調査を入れるというものではありません。このことは前もってお断りしておきます。  監察は、監察なきを期すを理想とするという考えで私はおります。やはり監察なんかはない方がいい、所を得てみんな本当に真剣にやって相手国も日本の国民も喜んでおる、そして世界の中の日本の地位がこれによって高まっていくということはいいことだ、こう考えておりましたが、なかなかそうはいかない。今御指摘のあったように、マルコス汚職というものが、疑惑というものが国会でも取り上げられましたが、今はどうなっておるかわからぬ。そこへアキノ大統領がお越しになる。非常に結構なことだと思います。結構なことは結構なんですが、新聞報道によりますと、二千六百億という総額の要求がある。それはそれなりの根拠があるのでしょう。しかし、今、日本の置かれておる状況、このODAの問題についてそれだけの要求にこたえられるのか。そういった問題について、いきなり新聞に出てくる前にフィリピンの大使、あのあたりがフィリピン政府とよく相談をなさって、今、日本においてこうですよ、ああですよ、その中で二千六百億というような巨額な金を出すことがいかがなものかと思うというのは、私の手元にもう既にそういう国民からの苦情というよりも意見具申という形で来ております。  それだけにそうした問題についても、やはり在外公館は在外公館で外務省は外務省で、いきなりそういう数字を出してきて、それでそれが入れられなかったという、そのときの感情が残る。そういうものについて、もう少し整合性のある開発援助というものができないものだろうかということでありまして、私たちはそういう観点を踏まえて、準備期間として今やっておりますが、これからも、いよいよ六十二年一月からは無償援助の監察調査、それから有償につきましては六十三年に入りましてやっていくという方針でやっていきたいと思います。
  87. 近江巳記夫

    近江委員 会計検査院長も来ていただいておるわけでございますが、こうした人員とかいろいろな点ですべてに手を入れるということは非常に難しいとは思いますけれども、今後会計検査院としてはどういう取り組みをされるかお伺いしたいと思います。
  88. 大久保孟

    ○大久保会計検査院長 お答えいたします。  先生の御質問でございますが、海外援助に対する検査の体制といたしましては、もう既に御承知かと思いますが、これまで第一局におきまして外務省、経済企画庁、国際協力事業団を分担させ、また第五局におきましては海外経済協力基金を担当させて検査をしてまいりました。今般、対フィリピン援助を初め、種々の海外援助にかかわる指摘がございまして、このような問題を処理する場合、やはり一元的に体制を整備する必要があるのではないかと存じまして、そのために両局の調査官を出し合って、あるいは官房から経験豊富な調査官を応援させるというようなことで、特別なチームをつくりまして問題に対処してきたところでございます。これは、ただ単に今年度だけの問題として考えているわけではなく、今後明年以降におきましてもこれらのものを一体化するなどした体制というものが必要ではないかと存じまして、検討してまいっておる次第でございます。  以上でございます。
  89. 近江巳記夫

    近江委員 もう時間も非常に少なくなってまいりました。  最後に有田総裁、初めは非常に反省のお言葉を聞いたわけでございますが、今後どういうように改善を進めていかれるか、具体論で、あと補足することがありましたらお答えいただきたいと思うのです。
  90. 有田圭輔

    有田参考人 お答えいたします。  先ほど外務大臣からいろいろお話がありました。大筋においてはそういうことではございますが、今後も外務大臣その他所管大臣の御指示、御指導を受けて、逐次改善を行っていきたいと思います。  その第一は、何といっても綱紀粛正並びにモラルの高揚であります。これにつきましては、職員の配置をより適正にする、あるいは使命感を含めて職員の研修を充実していくということ。それからさらには事業団の内部の職員も大変優秀な者がだんだん育ってきております。こういう関係で、内部登用の道をより大きくするということも考えてまいりたいと思います。  それから、もちろん服務規律につきましては人事部長を補佐して服務規律の担当の調査役を設けて、これは単に一度訓示をする、一度通達をするということではなくて、この趣旨を反復徹底させて、職員すべてに使命感あるいはけじめというものを徹底させていきたい、このように考えております。  さらに、よく縦割りの弊害と言われますけれども、これをなくしていきたい。従来もやってまいりましたが、今後もこれを強力にやっていきたい。その関連もあり、私の直属で特別の監査室を設ける、その中で業務の監査をやり、内部の経理監査を徹底し、あるいは外部に委託する業務についてのチェックということをやってまいりたい、このように考えている次第でございます。  そのほか、情報につきましては、従来も広報に力を入れてまいりましたが、今後はさらにこれに力を入れる、さらに情報の公開ということをやってまいりたいと思います。これはJICAにもう既に専門家の報告書その他二万点、三万点のものが所蔵されております。これも一般の人にお読みいただくようになっておりますが、幸い国際協力総合研修所というものが数年前つくられまして、この新しい建物も市谷にできますので、ただいま本部にあるその図書室をここに移して、これを非常に強化して情報を一般に公開し、専門家の利用にも供していくということで、名実ともに国民の御期待に添い、それから途上国から喜ばれる効率的な援助というものを実施するように一層努力いたしたい、このように思っております。
  91. 近江巳記夫

    近江委員 もう時間がありませんので、今の件は一応終わります。  年内減税の問題ですが、昨日も与野党の政調・政審会長会談等でも精力的な煮詰めが行われておるわけでございます。そこにおきましてはパートの方々の激変緩和措置を具体化するとともに、それと関連して配偶者特別控除について協議をする、あるいはまた住宅減税もその実現に向かいつつある、こういうようなことを聞いておるわけでございます。  しかし、今日までの経過を見てまいりますと、あの三月四日の合意あるいはまた十月十六日の与野党合意、こういうこともずっとございまして、総理は、見守るということで今日まで来ておるわけでございますが、自民党の総裁として、これだけの数をお持ちの与党でございますから、誠意を持ってこういうことを実現してもらわなければ困る。内閣総理大臣、自民党の総裁でございますから、やはり総裁のそういう熱意というものが大きく動かすわけでございます。そういうことで、これは最後の大詰めに来ておるわけでございますが、総理として今後どういう努力をされるかひとつお伺いしたいと思います。
  92. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 各方面の機構あるいは機能等を点検いたしまして、誠意を持って引き続いて努力してまいりたいと思います。
  93. 近江巳記夫

    近江委員 大蔵大臣はいろいろと政調会長からも御報告を聞いておられると思いますが、現在のこの状況につきましてどういう感想をお持ちであり、また、今後責任を持って実行していくためにどういう努力をされるか、ひとつお伺いしたいと思います。
  94. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 大蔵大臣といたしましては、ただいまの財政の事情、このたびの補正予算で税収の減額補正をお願いをいたしているといったような状況でございますので、国庫の状況を非常に心配をしておるのが私の立場でございます。しかし、各党の合意ができますれば、これは誠実に執行いたさなければならないと考えております。
  95. 近江巳記夫

    近江委員 もう大分時間もなくなりました。  金丸さんも副総理また閣僚として、当初の、もともとの三月四日のあのときのスタートはおたくでございますから、ひとつ責任を持って今年度中の実施を大黒柱の金丸さんとしてやっていただきたいと思います。御答弁願います。
  96. 金丸信

    ○金丸国務大臣 ことしの三月、幹事長・書記長会談におきましてお約束をいたしたことは間違いありません。また、約束というものはたがえてはいけない、いわゆる信頼の上に政治はあるべきだ、こういうことも私は思っておるわけでありますが、いろいろの都合で、いわゆる実務者の話し合いが結論がつかなかった。今回、国対委員長会談、実務者との話し合いの中に、今おっしゃられたような話が進んできておるやに聞いておるわけでありますが、私も責任も感じておるものですから、野党のその筋の関係の人にもお話をして、何しろまとまらぬような話をお互いに実務者でしておってもだめだ、まとまる話を小さくてもいいから順次詰めていったらどうだ、こういう話もしておるという私の心境も御理解いただきたいと思います。
  97. 近江巳記夫

    近江委員 時間が来ましたので終わりたいと思いますが、いずれにしましても政府は責任を持って、今熱心に与野党の政調会長がやっておるわけでございますから、年内実施をひとつやっていただきたい、重ねて強く要望をいたしまして、私の質問を終わります。
  98. 砂田重民

    砂田委員長 これにて近江君の質疑は終了いたしました。  次に、細谷治嘉君。
  99. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私は、主として地方財政のサイドといいますか、地方財政充実という観点から、今度の補正予算について幾つかの質問をいたしたいと思います。  まず最初に、補正予算を見ての私の印象あるいは予算委員会における大蔵大臣の答弁からいきますと、どうも大蔵省は一定の観点から国と地方との間を取り扱っておらぬ、その場しのぎをやっている、こういう印象がしてならないのでありますが、大蔵大臣そう思いませんか。
  100. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その場しのぎとおっしゃいますと、非常にきついおしかりでございますが、国の財政の事情が非常につらい現状で、地方財政には大変にいろいろ御無理をお願いしたり御協力をお願いしたりいたしまして、ようやくこうやって補正予算を組んでおるということは事実でございまして、そういう意味で地方に対していろいろ御協力をいただいてありがたいことでもあり、また大変に御迷惑なことでもあるということは、私はよく感じております。
  101. 細谷治嘉

    ○細谷委員 五十九年度の予算編成をする際に、財源不足がありますと特別会計に借り入れよう、そしてその借入金については、一番最初は利子は全額負担、こういうことでありましたけれども、その利子はいつの間にか全額地方の方に転嫁いたしました。そして五十九年度に、その財源不足による借入金というのが十一兆円の巨額に達した段階で、五十九年度の段階で、もう今後は特別会計の借り入れはしないようにしよう、そういうことでおおよそその十一兆円という借金を国が半分、地方が半分に分けたわけですよ。そうでしょう。  ところで、昨年はやはり交付税の落ち込みがありました。その落ち込みについてはそういうことなので、特別会計の借り入れはやらぬということなので、その千五百億円に近い金というのは赤字国債、特例国債を発行して、そして六十二年度以降その返済については考えていこうや、こういう約束で五十九年度の覚書を守りました。ところが今度は、それをまた特例中の特例ということでその覚書を改めましたね。これはどういうことなんですか。そのときどきによって変わるということじゃないんですか、いかがですか。
  102. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 五十九年度にそのような両省間の約束がありましたことは私も聞いております。六十年度はそれに従いまして処理をいたしましたが、今年度、ただいま御審議中の補正予算を組みますときに、その五十九年のいわば両省の約束にもかかわらず、地方に再度借入金をしてもらうことになったわけでございまして、これは先ほど申しましたように国の財政の現状について地方から御理解をいただいて、自治大臣からも御理解をいただいてあえてお願いをしたということでございまして、五十九年度にあのような約束をしていながら今回またそういうことになりましたことは、それによりまして実は特例公債を増発しないということで予算の編成ができたわけでございますが、地方には御協力をいただいて大変に感謝もいたしますし、しかし同時に、まことにどうも御迷惑をかけておるというのが私の偽らざる気持ちでございます。
  103. 細谷治嘉

    ○細谷委員 自治大臣にお尋ねいたします。  五十九年に大蔵大臣と自治大臣の間で覚書が交換されている中身は御存じだろうと思うのですよ。それに了解を与えた、五十九年に約束した、それに基づいて六十年度の措置はした。ところが六十一年度になりますと、六十年度の不足額というのは千五百億円程度、今度は減額が四千五百二億円、これは補正予算で減額しておりますね。その約束は、去年は守ったけれども、五十九年度の約束はもう守らぬでいい、何かめどがあって大蔵省の要請に応じたのですか。
  104. 葉梨信行

    ○葉梨国務大臣 昭和五十九年度の地方財政対策の改革におきましては、交付税特別会計の新規借入金措置を原則として廃止し、今後の地方財源措置としての地方交付税総額の確保は、地方交付税法附則第三条の特例措置により行うことといたしたところでございます。先生がおっしゃったとおりでございます。しかし、この昭和六十一年度におきましては、年度途中におきまして所得税及び法人税について約一兆四千億円以上もの大幅な減収が見込まれるという予期し得ない状況が起きまして、地方財政の円滑な運営を維持するためのやむを得ざる緊急避難的な措置といたしまして、交付税特別会計の借入金により所要の交付税総額を確保することといたした次第でございまして、御理解をいただきたいと思います。  なお、今回の借入金の利子につきましては全額国が負担することとしておりまして、地方交付税法附則第三条の特例措置または昨年、昭和六十年度のように特例法によりまして補てんした場合と地方財政の実質的な負担は変わらないところでございます。
  105. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私が指摘したい点は、利子は国が全部持つ、だから実質的な被害はない、こうおっしゃいました。ところが先ほども言ったように、かつて交付税を減額した場合の利子については国が全額持ちますよ、特別会計の借り入れの利子は全額持ちますよ、こう言ってきたのにかかわらず、もう五十八年ぐらいから、利子は半分持てや、その翌年になったら全額持てや、こういうことになってしまったわけです。ですから今度の利子だって当てになりませんよ。大したものじゃありませんけれども、当てになりません。どうしますか、大蔵省で持てと言われたら。今までの例から私は心配して言っているのです。どうするんですか。金額は小さいということばかりじゃないですよ。
  106. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 今回、借入金による措置をとったいきさつにつきましては、先ほど大臣からお答え申し上げたとおりであります。  なお、その際自治省といたしましては、昨年の落ち込みによる補てんあるいは現在の交付税法附則三条による特例措置との関係から見て、利子というものが、これが将来の地方財政の負担になるというようなことでは、これは実質的に地方財政として将来に負担を残すということに相なりますので、その点については大蔵省側と覚書を交わしまして、利子については国が全額負担をし、今後発生年度においていわゆる特例加算という形によりこの利子負担分を交付税特別会計に入れる、このような約束を交わしているところでございまして、この約束は今後この借入金の償還が終わるまでかたく守られるものと確信をいたしておるところでございます。
  107. 細谷治嘉

    ○細谷委員 これは確実に守るものと確信すると言っても、今までの例がだめなんですよ。かつて大平さんが大蔵大臣をしているときにこういう事態が起こりました。そして、三税が減ったために、正確じゃありませんけれども、五百数十億の交付税の減額をやりました。三税が入らない以上は、精算をするわけですから、これは減額することは当たり前であります。これはやむを得ません。けれども、減額した、税収の見積もりを誤った責任は大蔵省にもあります、こういうことで、その翌年、減額した分は、減額したけれども翌年の予算で同額をちゃんと特例加算しているのですよ。そういう例がありますけれども、だんだん崩れてきて、利子は半分持てや、今度は全額持てや、そして五十九年に約束したものも踏みにじって今度の補正予算をつくった。確かに大蔵大臣の諮問機関である財政審議会では極力特例国債は発行しないで予算編成をしろということを言っておりますから、これは非常に重要な原則でありますが、その原則を守るためにこちらの方は原則だけれども原則は守らぬでもいいという方法はないでしょう。はっきりしてください。
  108. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そうおっしゃいますと非常につらいところでございまして、まことにおっしゃるようなことになっておるので、私としては申しわけないとも思いますし、よくまあ理解をしていただいたと感謝もしておりますが、ただ先ほどおっしゃいました約束そのものは、これは守ってまいります。利子でございますが、決してほごにするようなことはいたしません。
  109. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私は、編成の苦しさ、財政の苦しさというのは理解している立場で物を言っているわけです。けれども、国と地方との間は信頼関係でもたなければいかぬ。一つの境界線というものがある。それをときどきの思いで、こっちの方が苦しいから、あるいは新聞等に書いてありましたように、去年は千五百億円ぐらいだったからまあいいけれども、今度は四千五百億という巨額の金になって予算編成できないから、今度はもうカットして、あとは約束を破っちゃうんだ、特例中の特例でございますということでは、これは信頼関係が保てませんよ。ですから私は、今後決めたことは、両大臣が覚書で交わしたことは守っていただきたい、こう思います。いいですね、これは。時間がありませんから、いいですねという確認に――詰めた方がいいですよという心配を与党の理事の方から言っておりますが、事ほどさように皆さん心配しているのです。  その次に、六十一年度の予算編成に当たりまして大蔵大臣と自治大臣との間で覚書が交わされております。これは二つであります。一兆一千七百億円の国の補助負担金の削減に当たって、これは三年間の措置ですよ、となっています。その次に、第二項にこの「暫定措置の期間内においては、国・地方間の財政関係を基本的に変更するような措置は講じないものとする。」これが両大臣の約束であります。両大臣はかわっておるのですよ。かわっておりますけれども、かわったからといって、それは許せないですよね、知らぬと。  ところが、この問題について、せんだって私どもの伊藤委員の質問に対して、大蔵大臣の答弁は前の大蔵大臣の答弁とちょっと違うのじゃないか。ちょっとその分を読んでみますと、「三年間と申しますのは、国の財政と地方財政との間の基本的な問題については三年間云々という、そういうことがございます。が、国庫の補助金の問題について見直しを禁ずるという趣旨のものではないと思っておりますけれども、いずれにしても、ただいまの問題はまだ時期的にも時間がございますので、関係各省の間でよく相談をしてまいりたいと思っております。」時間があるといっても、もう間もないでしょう、予算編成は。そして、あれに書いた、対象になった補助削減以外はいつでも自由自在にやれるというように大蔵大臣は理解しているのですか。あれに項目は挙がっておりますよ。地方財政法も改正する。それについてあなたは、あれに書いてない、あの表に書いてある以外のことは「見直しを禁ずるという趣旨のものではない」だからあれに書いてある以外のことは三年間のうちでもやれるということですか。いかがですか。
  110. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 どうもいろいろ気の重い話がだんだん出てまいりますが、ただいまのお話の覚書は「暫定措置の期間内においては、国・地方間の財政関係を基本的に変更するような措置は講じないものとする。」ということでございます。昨年の十二月二十一日に両大臣の間でそういう覚書ができております。これは尊重してまいらなければならないのはもとよりでございます。  そこで、基本的に変更するようなことでないものは何でも勝手にやれるように思っておるかとおっしゃいますと、決してそのようにはもとより思っておりません。この覚書の許す範囲内でまたいろいろ御協議をしたりお願いをしたりすることはあるいはあり得るかと思いますけれども、何事も勝手にやれるというようなことはもちろん考えておりません。
  111. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私は、この春の予算委員会でこの点、「基本的に変更する」ということはどういうことなのかという点を中心に当時の大蔵大臣、そして今の中曽根総理にもお聞きいたしました。その議事録を持ってきておりますが、それによりますと、「いわゆる基本的に変更しないということは、この三年間は補助率の引き下げ等によって国と地方の負担を変えない、そういう意味であると解釈いたしております。」言ってみますと、きちんとしてあれに書いてある、表示してある以外のところでも自由勝手に触れるということではありませんで、国と地方との関係については基本的に変えない、こういうふうに答えております。そして、さらに引き続いて当時の竹下大蔵大臣は、「税制の抜本改革が、仮に答申が出る、そしてそれが今私が申し述べましたようないわゆる地方税、地方譲与税、機能分担、費用負担にかかわるような大改正であった場合、」その場合はそのときに考えます、こう言っておるのですよ。この考えを大蔵大臣確認できるのですか。
  112. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この問題につきましては本年の三月中曽根首相が答弁をしておられまして、その答弁は、この期間内においては国、地方間の財政関係を基本的に変更するような補助率の変更は考えていませんが、補助金等の整理合理化を推進するため、既存の補助金のあり方について点検し、見直しは行っていく考えであります。せんだって伊藤委員に私がお答え申し上げましたのも、この総理大臣の答弁の趣旨に基づきまして申し上げたものであります。
  113. 細谷治嘉

    ○細谷委員 あれ以外のことは勝手にできるなんという考えは、かりそめにも持たないようにしていただきたいと思います。  時間が十分ございませんので、企画庁長官にちょっとお尋ねしたいのですが、今度の三兆六千億円といういわゆる総合経済対策、これによって目標どおりGNP実質四%の伸びは間違いありませんか。期待できますか。いかがですか。
  114. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 お答えをいたします。  昨年九月のいわゆるG5以降の円高によりまして、輸出産業を中心といたしまして確かに経済の一部では低迷、停滞の現象が見られるわけでございますが、ただ最近の統計を見てみましても、国民の消費は依然として堅調でございますし、また特に住宅投資などは、昨年百二十万戸台だったものが九月は年率百四十万台を超えているわけでございます。したがいまして基本的に消費は堅調であると私どもは考えておりますが、問題は円高による輸出入が今後どういうふうに推移するかということでございますけれども、最近の公定歩合の引き下げ等で円高現象が多少修正の状況になってございますし、いずれにいたしましても、そうした対外経済関係のマイナスの面を国内的な需要の拡大によってカバーしたいというのが先生御指摘の三兆六千億円余の総合経済対策でございますし、その中核が一兆四千億の政府関係する公共事業でございます。  したがいまして、この補正予算の早期成立と総合経済対策の早期着工、そして年度内実行が行われますれば相当程度の回復は可能である、かように私ども考えている次第でございます。
  115. 細谷治嘉

    ○細谷委員 詳しくこれについて議論する時間はございませんけれども、企画庁としては円高問題、もうアメリカの方の政権もちょっときのうの中間選挙で変わりましたので、必ずしも望ましい方向に円高問題というのは動いておらないんじゃないか。かなり厳しくなるだろうと思うのです。企画庁の計算によりますと、そういう円高を是正していくと、国際収支の問題を対米関係を充実していくという形においてはかなり、GNPの〇・五%以上あるいは〇・六%ぐらいの影響がある、こういうふうに言われておりまして、先般、内需を大きくふやしていかなければいかぬ、こういうことを企画庁は発表いたしております。  いずれにいたしましても今度の補正予算では力不足、こう言ってよろしいかと思いますが、企画庁長官、どう理解していますか。
  116. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 問題は対外経済関係でどれぐらい日本のGNPが落ち込むか、こういうことでございますが、三兆六千億という需要量は名目GNPの対比では一・一%強でございますから、この年度内にこれがどれだけ具体的に実行できるかという問題との関係でございます。  ただ、私どもは国の政策としてすることはもちろんいたしますが、問題はGNPを構成している大きな要素が民間設備投資五十五兆円であり、民間消費が百九十兆円でございますから、国の果たすGNPを押し上げる効果にプラスして民間の投資と消費がどれくらいこれに随伴をしてくれるか、こういうことでございますが、先般の公定歩合の引き下げによる円高傾向の多少の、微調整ではございますが調整が企業心理に与える影響は相当あるし、また公定歩合の引き下げを中心として国内金利が下がってまいれば、この際は借り得だというような気分がこれから漸次民間の企業家の方々のマインドに影響してくれば、国の施策プラス民間設備投資そして消費、もう一つだけ申しますと、これは大蔵大臣もおっしゃっておりますけれども、問題は、今度の補正予算に続いて来年度の予算に政府は取りかかるわけでございますが、来年度予算がまたどれだけのプラスの効果を持つか、そういうことを考えていきますと、国と民間の総合的な力で先ほど申し上げましたようにGNPの落ち込みの相当の回復が可能である、私はかように考えている次第でございます。
  117. 細谷治嘉

    ○細谷委員 ここでも議論されておりましたけれども、実質四%というのは難しいのじゃないか、二%の前半というのに若干のプラスがされるのでありますけれども、到達が難しいだろう、こういうふうに民間の予測もされておりますけれども、私もそう思っておるのですよ。しかし、これ以上申し上げません。  そこで自治大臣にお尋ねするのですけれども、その三兆六千億円という景気浮揚を目的とした今度の補正予算の中に、八千億円という地方の単独事業というのが含まれております。国の方では一兆二千億円程度の税の減収が起こっておりますけれども、地方の方では五千五百億円程度の減収が起こっておるわけですね。大きな減収が起こっているのに八千億円という単独事業は可能ですか、いかがですか。
  118. 葉梨信行

    ○葉梨国務大臣 このたびの総合経済対策におきまして、公共事業の追加とともに地方単独事業につきましても追加が要請されているところでございます。  地方団体におきましても、地方の振興あるいは雇用の安定という観点に立ちまして、この地方単独事業の効果的な実施を図っていただきたいということを自治省としても希望しているところでございます。一応八千億円という額を計上しておりますが、これは地方の意向をいろいろと伺った上で計上した額でございまして、この総合経済対策の意義を十分に理解されて地方団体が積極的に対応していただくならば、消化も可能であろうと自治省としては見込んでいるところでございます。
  119. 細谷治嘉

    ○細谷委員 積極的にというお言葉を使って、八千億円は可能だということであります。あなたの方の資料で、この九月等に地方財政計画を踏まえて地方団体が単独事業として計上したものは、六十年度は八千五十億円、六十一年度は八千百十億円、こういうことであります。去年とことしは同額ですよ。積極的、特別なところがどこにありますか。
  120. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 御承知のように、地方財政は大変苦しい状況にございます。国税の減収に伴う交付税の減収もございます。これに対しては、しかし先ほど大臣からもお答え申し上げましたとおり、借入金の措置によりまして当初の額を確保するようにいたしております。また地方税の減収も御指摘のように法人関係税におきまして五千五百七十一億円と見込まれておりますが、これにつきましては減収補てん債で地方団体の財政の状況に応じまして措置をしてまいりたい。そういうような前提のもとに地方団体としても、大変苦しい状況の中ではございますけれども、こういった内需拡大の目的、総合経済対策の趣旨に沿うべく種々努力を重ねておるところでございます。  昨年度昭和六十年度におきましても総合経済対策で八千億円これを見込んだところでございますが、昨年度は九月補正以降におきまして実質的には八千億円を上回る金額が追加をせられた、このように記憶いたしております。本年度の場合には、いろいろ先ほど大臣からもお答え申し上げましたように、地方団体の意向、動向等をも把握した上で、災害復旧事業の単独をも含めまして八千億円強という見込みを立て、これに基づいて八千億という数字を立てたところでございます。昨年に比べて少ないではないかというお話でございますが、地方団体におきましては、六十一年度当初におきましては実はかなり頑張って単独事業を計上し、地方財政計画の伸びを上回るものを計上いたしておるところでございます。今回この八千億円が追加されるならば、昨年をさらに上回る単独事業費の規模ということになるものと考えております。そういう意味で、地方団体の積極的な姿勢というものも苦しい中で私どもは十分感じ取れる、このように思っておるところでございます。
  121. 細谷治嘉

    ○細谷委員 今の自治省財政局長お話を聞きますと、いやもう積極的にやった、去年とほぼ同様のものが八千百億円程度組まれた、大丈夫だ、こういうことでございますけれども、私の手元にあります地方財政計画と決算の額とを比較いたしますと、こういうことになっております。  建設事業のうち普通建設単独――災害の方は余り変わってないのですよ、去年と。普通建設単独というのを見ますと、六十年度はまだ出ておりませんけれども、五十九年度の場合には当初の地方財政計画が八兆二千三百四十六億であります。これが年度途中で修正されまして、六兆三千百七十一億と大幅に削り込まれております。それでは五十九年度がそうかといいますと、私の手元にはずっと五十一年から五十九年までの各年度の地方財政計画、年度途中で修正した計画額、これが大幅にへっこんでいるのですよ。大体において二兆円から二兆五千億円ぐらいへっこんでおります。そういう当初の計画をつくるところに問題がありますけれども、そういうようにへっこんでいっております。そして最終的に当初の地方財政計画と比べますと、五十九年度は二三・三%へっこんでおるのですよ。五十八年度はどうかといいますと二七・九%へっこんでおるのですよ。これだけ計画と決算との間に乖離があるわけです。プラスの方の乖離じゃないのですよ。補助事業の方はどうかといいますと、五十九年度は五・七%上回っております、計画を。ずっと上回っておりますけれども、単独事業はすべての年度について二割から三割近い額がへっこんでおります。この数字は本当でしょうか。
  122. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 地方財政計画上の単独事業の計上額と決算であらわれてまいりました単独事業費の額との間について乖離のあることは御指摘のとおりでございますが、ただ、この乖離の原因につきましては私どもの方もいろいろ分析をいたしておりまして、御承知のように公共事業の継ぎ足し単独的な事業として行われるものなどもございます。したがいまして、決算の分析というものをどういう格好でやるかということは実はなかなか難しい問題があるわけでございますが、しかしそういう要素を除いて考えてみても、ある程度の乖離、すなわち実績の方が計画よりも下回っておるということは否定できない、このように考えております。
  123. 細谷治嘉

    ○細谷委員 ほかの項目はほとんど実績を上回る、そういうことになっているのに、ここだけが奇妙に落ち込む。二割五分前後落ち込んでいる。その原因は何でしょうか。地方団体は単独事業を余り好まないというように結果は出ておりますけれども、どうなんですか、自治大臣、どう理解しているのですか。簡単に答えてください。
  124. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 乖離の原因につきましては、先ほど申し上げましたような決算の処理上の食い違いによるものもあろうかと思います。したがって、そういう点では説明のできる部分もございますが、一方では、私ども連年にわたってこのような姿を示しているわけでございますが、特にこれは五十年代に入りましてからそのような乖離が大きくなってきておるという事実がございます。その原因としては、かつて昭和五十年度におきまして税収の大幅落ち込みがございました。このときに特に大きく影響を受けましたのが東京あるいは大阪、こういったような大きな府県、すなわち税収の多いところでございますが、そういったところの単独事業というものがその時点で大きく落ち込んで、その後回復が十分にできていない。むしろそういった大都市を含む府県以外のところでは単独事業をかなり積極的に思い切ってやっておる。ただマクロとして見ますとそういう数字がやはり出てくる、乖離が生ずる、こういうようなところにも原因があろうか、このように認識をいたしております。
  125. 細谷治嘉

    ○細谷委員 これを少しやりたいと思うのですけれども、時間がありませんから……。  そこで、文部大臣いらっしゃいますから、大蔵大臣の前で少し物を申しておきたい。  補助率をカットいたしました。それが地方にはどういうふうにはね返っておるかといいますと、カットしますから補助金、負担金というのは減っていきます。そうしますと、常識的にはその分だけ事業が減るんでしょう。ところが、事業を減らしたら地方の要望がひどいので、例えば学校プールを例にとりますと、普通、標準は四百平米ですよ。四百平米のプールをつくることになっている。補助率を一割カットしたものですから、補助対象というのを四百平米から三百六十平米、一割落とした。プールの個数は変わらぬでしょう。そんなようなしわ寄せが地方に現実に起こってきておりますが、これはどうなさいますか。
  126. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 プールを取り上げられまして、今補助対象事業のいわゆる足切り問題というのが出てまいりましたけれども、しかし地方団体としては、何としてもプールの建設をいたしたいということで、いろいろと建設事業の中のやりくりをいたしまして、その補助事業にのせてプールの建設をいたしておるところでございます。  今御質問いただきました点は、確かにそういうことが事実としてあることもございますが、しかし地方団体としてはそれをやはり自分の学校の運営上どうしても建設いたしたい、やりくりをし、建設費の中でそれを操作して建設には支障ないようにやっておるという状況でございます。
  127. 細谷治嘉

    ○細谷委員 文部大臣、地方団体としては、前の年の学校につくったプールは四百平米です、ことしは大蔵省がカットしてきたから補助金がないから、箇所を減らすわけにいかぬから、あなたの方三百六十平米で勘忍してくれやというわけにはいかないわけですよ。Aの学校に四百平米つくって、翌年度は三百六十平米のプールをつくるわけにいきません、これは。そんなことをやったら、地方団体の長は吹き上げちゃいますよ。そういう被害が、大変な問題が地方の末端に起こってきておる。こういうことをひとつ大蔵大臣よく覚えておいてください。簡単じゃないです、これ。いいですか。  そこで、この間も質問がありましたけれども、去年の予算編成の際に、義務教育費国庫負担法に基づく事務職員それから栄養関係の職員、こういう人たちは義務教育費国庫負担法の対象で、五割の国庫の負担があるわけですけれども、それを減らして、一千億円ばかりカットして、そして予算を編成したいというのが去年起こりました。いろいろ、義務教育は守らなきゃいかぬ、国庫負担法は守らなければいかぬということで、私に言わせると適切じゃありませんけれども、最後に逃げたところはどこかというと、義務教育の学校の先生方の共済年金をカットしたわけですよ。八百四十二億円カットしました。ほぼ一千億。また最近の新聞によりますと、このカットというのは、あるいはこの前の約束で自由自在だということを大蔵大臣は言っておりましたが、それはできないということで、今度はいっそのことその事務職員とかなんとかは国庫負担法から外して、地方団体で全額持つような地方団体の仕事にしちゃおうじやないか、こういう動きが出ております。新聞には、そういう義務教育費国庫負担法の約一千億円を節約する、その負担法をやめる、中止する、こう書いてある。知っていますか。この間あなたは、知らぬと、そういうことがあっても断固それは反対する、こう言っておりましたが、確認できますか。
  128. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 これは、むしろ大蔵大臣からしかと答えていただく方が一番いいと思うのでございますが、我々といたしましては、学校事務職員並びに栄養士、これはやはり教育、学校運営の基幹職員だと思うております。であるとするならば、国と地方とのかかわり合い、委任関係の中で一番大きいのは学校行政に関する補助関係だと思うております。したがって、先ほどいみじくも細谷さんがおっしゃっておられましたように、昨年の十二月二十一日の覚書、これは我々もしかと受けとめておりますし、また地方制度調査会の答申もございますし、これによりますと、地方財政の運営については安定性を確保することが必要だということがぴしっとうたってございます。さらにまた、補助金検討会ですか、ここでも報告が出ておりますし、そういうことを総合いたしましたならば、この覚書を確実に大蔵省が守っていかれることだと私は信じております。それがために我々も、この覚書どおり、抜本的な制度の見直しに通じるようなことは我々としては許すわけにはいかない、こういう気持ちで頑張ってまいりたいと思うております。
  129. 細谷治嘉

    ○細谷委員 この間自治大臣は、そんな話は知りませんと、知っているのかもしれないが、知らぬとこう答えました。知らないということになると、大蔵省がたくらんでいるかもしれないいわゆる事務職員とそれから栄養職員の国庫負担の半分、一千億円というのは、削られますと地方の財政の純然たる一〇〇%の負担になるのですよ。そこで、自治大臣は言いません。私は総理とか大蔵大臣に答えてくれと言ったけれども、下々の声をよく聞かなければいかぬわけですよ。ですから、大蔵大臣の圧力を受けて各省従っておる。大変だ。  そこで、大蔵大臣。あれに書いてないのは一〇〇%地方に持たせる、地方の仕事にしちゃえということで、旅費とかそれから教材費はおととしやりましたね。そして去年は、それはふえませんでしたけれども、国庫負担の方にやろうと、まあ適切じゃありませんけれどもたくらんだ。これはおやめになったらいかがですか。これはよくないですよ。今文部大臣は、これは基幹的なものだ、こういうことを言っているでしょう。私もそう思うのですよ。いかがですか。来年の予算編成、まだ時間があると言うけれども、もう作業しているでしょう。
  130. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 十月二十八日の一部にそういう報道がございました。「赤旗」でありますけれども、これはしかし、私どものところで今そういうことを結論を出すというようなことはもとよりございません。予算編成に入りました過程でいろいろ御相談することはあろうかと思いますけれども、ただいまそういう結論を出しておるということはございません。
  131. 細谷治嘉

    ○細谷委員 大蔵大臣はそう答えていますけれども、大体私ども知っている範囲、新聞はうそを書いてないですよ。大体、新聞に出たことは半月後か一カ月後には間違いなく事実になってあらわれてきている。去年もそうでした。今度もそうなることを心配するので、あえて、来年度予算編成の作業が始まっている段階でありますから申し上げておるわけです。総理に締めくくってもらいたいと思いましたけれども、大蔵大臣、ひとつ篤と、やはり国と地方との間には信頼関係を保持することが重要だ、そのときになってみなければわからぬ、こういうことはおやりいただかないように申し上げておきたいと思います。  そこで、税の問題、いろいろ議論が出てまいりましたが、私も若干これについて質問をいたしたいと思うのです。  これは大蔵大臣、新聞等によりますと、自民党税調の中でも議論しておるようでありますけれども、大体、アメリカの場合は減税十九兆円、そしてその減税財源というのは法人税で十九兆円ですね。ですから、言ってみますと税の中、所得税の問題として対応しております。日本のやり方はどうかといいますと、所得税の減税、法人税の減税。アメリカは、法人税の増税ですよ。もちろん法人税率が違うということは私は考えて申し上げておるわけですけれども、そうしてやっている。同額だ、レベニユー・ニュートラルだと言いますけれども、私はそう思いませんがね。アメリカのレーガンさんのところでやった減税の方がかなり国民的な視野に立って税制が扱われておると私は思いますが、いかがですか。
  132. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私もそう詳しいことを知っておるわけではございませんけれども、今度、アメリカの法人税の改正はまことに結果として税率を下げながら増収になるということなのでございますが、結局アメリカの法人税には御承知のように非常にたくさんの特例がもう次々と積み重なりまして、いわゆるタックスシェルターというのでございますか、それがもう、ちょっと収拾がつかなくなったと申しますか、そういう現況にあったように私は見ております。そこで、それらを整理するかわりに税率を緩和する、それでも増収になる、すぐにではございませんけれども時間をかけますと、こういうことになっておるように見受けておりまして、我が国とかなりその辺の事情が違うのではないかと私は理解をしております。
  133. 細谷治嘉

    ○細谷委員 まあ、ここで議論できませんけれども、総理にお尋ねしたい。  増減税イコール、こういうことでありますけれども、減税という場合に国税ばかりじゃなくて地方税も減るのですね。四兆八千億円ぐらいの国税の減税が行われますと、地方税もその半分近い減収が起こってくるわけです。そうしますと、地方の財政の場合でも、いわゆるよく言われるような出る方と入る方は同額という原則を守っておるのか、原則でいくつもりなのか、お尋ねいたします。
  134. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは今、党でいろいろ御議論願っておるところでございますから、その結論を待っておるわけでありますが、政府税調の答申の中でも国税の減税、それから地方税の減税、それから国税が減少した場合にまた今までのような三税の関係でまいると、地方税も地方収入も減ってくる、そういう場合の措置、これは当然考えておくべき問題で、ですから、包括的税制改革、そういうふうに申しておるのだろうと考えております。
  135. 細谷治嘉

    ○細谷委員 私の印象では、総理はかなり税制調査会の答申というか税制調査会の権威ということに着目しておりますけれども、最近は主導権は党税調にあるようでありますね。ですから、税制調査会の答申は出たけれども、何が出てくるかわからぬ。しかも、今回の場合は極めて重要なところに具体性がないわけですよ。ですから、地方税の方が二兆数千億円の減収になってくる、その減収というのは法人税のかぶりあるいは所得税のかぶり、それから住民税そのものの問題、それから交付税のかぶり、こういう形になってきておりまして、その辺で五十三年ぐらいの税制調査会の基本答申を見ますと、その辺がかなりきちんと書かれておりますけれども、今度はその辺は非常にぼかされております。  総理は、そういうことがもちろん基本的な態度としてやられるだろうということでありますけれども、これはひとつ総理立場としても、減税、税制改革というのは国も地方にも両方に起こってくるのだ、こういう点をきちんと踏まえて善処していただきたいと思いますが、いかがですか。
  136. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 公平、公正ということも言っておるのでございます。ですから、中央、地方ともに手を相携えて、同甘共苦の包括的税制改正を行う、こういう考えがいいと思います。
  137. 細谷治嘉

    ○細谷委員 大分美辞麗句が並んだようでありますけれども、まあひとつきちんとしていただきたい、こう思います。  やはり税制というのは不公平というのが一番問題で、公平、公正と総理おっしゃいますが、そのとおりだ、私は公平というのがすべての出発点だ、こう思います。  ところで、税制調査会でも毎年、この税は取るべきだと去年まではきちんと名を挙げて書いた税金というのが、最後の段階において切れていってしまうんですよ。それは何かといいますと、昭和二十八年以来一切の税金がかかっておらなかった医師の社会保険診療報酬ですよ。今度の税制の中にも、これは取るべきだと税調は書いておりますよ。去年は大変厳しい、こんな言葉、表現でいいだろうかと思われるくらいの強い意思で書いてありますけれども、それが流れました。  御承知と思いますけれども、事業税の中で二十八年以来取られておらなかった税金というのはマスコミ関係の事業税ですよ。ところが、マスコミ関係の人も、なるほどこの段階においてはやはりもう税を納めなければならぬだろうというわけで納めたわけです。六十一年度から納めました。  残っているのはこれだけなんですよ。どういたしますか。これはやはり総理の決断以外ないですよ。しかも特別、医師についての所得税関係は経過措置で五十何年かにやったでしょう、七二%というのは五二%からずっと段階を設けて。それだけもやらなければいかぬと思うのですが、それもやってない。どうしますか。聖域ですか。
  138. 葉梨信行

    ○葉梨国務大臣 社会保険診療報酬について申し上げます。  先生が今おっしゃいましたように、現在所得税及び法人税が課税されておりますが、事業税につきましては特例措置が設けられ、課税されていないわけでございます。この特例措置は社会保険制度の普及を図るとともに社会保険医の一定の所得水準の維持を図るために昭和二十七年に創設されたものでございます。  この特例措置は、創設されましてから長期間経過いたしまして、この間に医業等をめぐる社会的、経済的環境が著しく変化し、また税制調査会の答申におきましても数次にわたりその撤廃が指摘されているところでございまして、先生がおっしゃるとおりでございます。  したがいまして、この問題につきましては、他の事業に見られない医業の特殊性を考慮すべきである等の意見も承っておりますけれども、税負担の公平を図る見地から、できるだけ早く撤廃するように引き続き努力してまいりたいと考えているところでございます。
  139. 細谷治嘉

    ○細谷委員 しかし、そうはいっても自治大臣、あなたの手の届かないところにあるんじゃないの。引き続き努力するというその言葉はいいけれども、そこに加藤さん、去年の責任者がおるんだけれども、届かないよ。  大蔵大臣、いかがですか。だから私は総理大臣にと言ったのですよ。もう二十八年、いろいろな事情で今日まで手を触れないできたのが、不規則発言で聖域だ、今だに聖域だと言うけれども、もはやおかしいです、これは。いかがですか、総理、これは断固たる指導をしていただきたい。
  140. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 具体的な税目をどうするかという問題は、ともかく先ほど申し上げたとおり、党の税調でいろいろ御審議を願っておるので、私が口を差し挟むことはこの際避けた方がいいと思っています。
  141. 細谷治嘉

    ○細谷委員 具体的に言わぬでも、不公平の最たるものだ、こう言われているわけですよ。これはやはり対応すべきだと思います。  もう一つ大蔵大臣にお聞きしますけれども、所得のあるところ所得税を納めるということは当たり前でしょうが、所得があって国税には取っているけれども地方で取れない、そういうものがあるということも御承知でしょう。これはいかがしますか。
  142. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そう思いますが、どういう意味でございましょう、お尋ねの意味は。
  143. 細谷治嘉

    ○細谷委員 大蔵大臣は、そう思いますがと言ってよくわかってないようですけれども、ちょっと答えてください。
  144. 津田正

    ○津田政府委員 現在、所得税におきます利子配当の源泉分離課税を選択した場合、これは所得税が取られておるわけでございますが、個人住民税におきましては取れておらない、こういうような状況でございます。  取れない原因には納税者側の手間、あるいは金融機関の手間、いろいろな問題があるわけでございますが、現状におきまして源泉分離課税におきまして所得税で課税され、個人住民税は課税されない、こういう事態が起こっております。
  145. 細谷治嘉

    ○細谷委員 利子所得の課税問題というのは今度の税調でも大変な議論になっておりますから、それはもう少し結論をまつことにいたします。  既に国税で取っているものについて地方には取らせない、こういうことになっておって、しかもずばり言いますと、国が取っておるから地方は取らんでくれ、そのかわりそれ相当分というのは地方交付税の特例として加算していく、こういうことを約束しておったのですよ。それでやってきました。三、四年やりましたら、あなたの方は懐ぐあいが悪くなったからやめた。本来なら二千億円ぐらい住民税として入るはずですけれども、五百億円に値切った、今ではゼロ。これもまた先ほど冒頭申し上げたような態度なんですよ。困ったらもう人のこと構っておらぬというのが大蔵省の態度じゃないでしょうか。そういうことですから、これは今の利子課税を原則課税にするのか非課税にするのかという問題がありますけれども、この問題はちょっと違うのですよ。源泉分離、どうしますか。
  146. 津田正

    ○津田政府委員 三五%の分離課税の問題も含め、利子配当について住民税の課税の問題につきましては、先日の政府税調の答申におきましても議論がされまして、やはり住民税としての公平を図るというような見地から何らかの負担を求めるべきではないか、こういうような意見が出されておりまして、具体的な方法といたしましても、いわゆる三五%以外のものも含めて所得税の課税方式に対応した方式あるいは一律分離課税方式あるいは譲与税方式、こういうようなタイプが具体的に議論されたわけでございます。  最終的にはまだ結論が出ておりませんで、いずれにしましても先ほどもございましたように貯蓄者、金融機関及び税務当局の事務負担等を配慮しながら今後も検討を進めてまいりたい、かように存じております。
  147. 細谷治嘉

    ○細谷委員 ぜひ総理が言うように、公平、公正と言うからにはすべてにわたってやはり公平、公正で貫くようにやっていただきたい、こう思います。  時間がございませんので、次に移らせていただきます。  通産大臣にお尋ねしたいのですが、今エネルギー政策、それと同時に地域政策として石炭政策、これは大変重要な問題になっておると思います。九月ぐらいに第八次政策の答申が出るだろうと言われながらまだ出ておりません。なかなか難航しておるようでありまして、その間通産大臣、御苦労いただいているようでありますが、現状はどうなっていくのか。新聞等に出ておりますけれども、通産大臣の言葉として簡潔にお答えいただきたい。
  148. 田村元

    ○田村国務大臣 今審議会がえらいところでございます。もう胸突き八丁といいますか、私どももいろいろと可能な限りのお手伝いをして、本当にこの問題は苦しきことのみ多かりきという感じなんです。でございますが、審議会で石炭政策の基本あるいは地域問題等真剣に御審議賜っておることでもございますし、もう答申が目前に迫っておるというような状況であると承っておりますが、その答申を受けまして我々全力を挙げて取り組んでまいる所存でございます。地域対策なしの石炭政策はあり得ません。
  149. 細谷治嘉

    ○細谷委員 いずれにいたしましても、新聞等の報道される方向を見ますと、いわゆる二千万トン体制から辛うじて九百万トン体制かあるいは一千万トン体制になるのではないか。そうして八次政策の終わるこれからの五年ぐらいの間に、日本の炭鉱というのは恐らく三つか四つしか残らないんじゃないか、こういうふうにも言われております。大変重要な段階に来ておると思うのであります。私が一番心配しているのは、地域政策という点からいってもまたエネルギー政策からいっても、あるいは労働問題、雇用問題という点からいっても、これは雪崩閉山ということが一番悪い、こう思っておりますけれども、その雪崩閉山の懸念が極めて濃厚になってきている、こう思うのでありますが、いかがですか。
  150. 田村元

    ○田村国務大臣 今二千万トンとおっしゃいましたが、千六百四十五万トンでございますけれども、それが何百万トンになるのか何千万トンになるのか今ここで私が申し上げるわけにはまいりませんが、我々は、雪崩閉山という現象が起こったらそれこそ大変なことでございまして、何とかなだらかな姿で今後推移してもらいたいというふうに思っております。でございますから、雇用問題につきましても先般私は労働省へ担当者を連れて赴きまして、そして石炭、鉄鋼等々――鉄鋼も気の毒な話で、苦しい中を国内炭の高いのを買ってくれることになるわけですから、これは本当に申しわけない話ですが、そういうような業種を中心に今後の産業構造改善等をめぐって両省が力を合わせて取り組むということで、事務次官を長として、おとといあたり第一回の会合を開いたと思っておりますが、いろいろとお互いが資料の出し合いをした、これから真剣にこれと取り組んでいこう、こういうことで目下全力を挙げてその直接の対応と予防的な考え方も織りまぜてやっておる、こういうことでございます。
  151. 細谷治嘉

    ○細谷委員 雪崩閉山という可能性がかなり濃厚になってきた。その混乱を防ぐ道というのを今苦労されておって、雇用対策をどうするのかという問題、地域の崩壊をどうするのかという問題があるわけであります。その崩壊を防ぐというかあるいは緩和する重要な問題点として、出てきた貯炭をどうやって管理していくか、これは重要だと思うのです。  例えば三百万トンとかそういうものが出てきた場合に、これは生産会社に金は一文も入らぬ。しかも生産会社には、値段を引くというわけですから大変な事態ですから、これを管理していくあるいは買い取っていく、そういう貯炭管理機構、機関、こういうものがぜひとも必要だと思うのですが、どうお考えになっているのですか。これは金が要りますがね。
  152. 田村元

    ○田村国務大臣 審議会で真剣に御討議願っておると思います。先ほど申し上げたように、審議会がいよいよ大詰めのようでございますから、その答申を待って積極的に対応したい。  それから、先ほどちょっと申し忘れましたが、私、建設大臣にもお願いをしまして、いわゆる傾斜配分という点も十分にお願いして非常に快くお引き受けを願っておりますので、その点効果は上がるものと思います。
  153. 細谷治嘉

    ○細谷委員 公共投資について建設大臣にも言ってあるというので、建設大臣にもいろいろ申し上げたいのですけれども、時間がないものですから……。  そこで総理大臣、これは雪崩閉山になると大変なことになりますので、ぜひひとつ、出てきた貯炭についてこれを管理していく、そういう機構が必要だろうと思うのですよ。どうしてもやはり六百億円ぐらいから一千億円ぐらいの資金を動かすことのできるような、そういう機関が必要ではないかというふうに専門家は言っております。こういう点について、緩和する意味において手だてを具体的に講ずる用意がありますか、いかがですか。
  154. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 審議会の答申を待ちまして、よく検討したいと思っております。
  155. 細谷治嘉

    ○細谷委員 審議会の答申待ちということでは、まあそうでしょうが、いずれにしても事態はかなりもう全貌が出てきているわけですから、お願いしたいと思うのです。  通産大臣の言葉にもありましたように、そういう措置を講ずると同時に、離職していく、これもかなり多いようですね。そういう人に対してどうやっていくのか、こういうことについて対応しなければいかぬ。そのうちの重要な問題は雇用問題だ、これから労働省と一生懸命やっていく、新聞等にもそう報道されておりますけれども、ずばり言ってやはり遅きに失したという感がぬぐえません。労働省もかなり熱が入ってきたと言われておるわけでありますけれども、積極的に対応をしていただきたい、こう思います。いかがですか。
  156. 田村元

    ○田村国務大臣 今おっしゃったような懸念も、それは考えられますから。たまたま私は御縁がありまして、労働省は大臣も政務次官も務めた。労働省の役割というものを知っておりますし、また労働省が従来ややともすれば我々の時代はそういうしりぬぐいのような対策をさせられたことに対する私自身の不満もございました。でございますから、今度はむしろもう妙な縄張り根性なんか出すなと官僚に言っておりますが、私があえて平井労働大臣をお訪ねして、そして両手をついた、こういうわけでございます。私や平井君のこれに傾けておる思い詰めというか情熱というものはお酌み取りをいただきたいと思います。
  157. 細谷治嘉

    ○細谷委員 自治大臣あるいは通産大臣もあるいは御承知かと思います。これはある新聞に十月三十一日付で、「どうする九億円炭住 町支出で今年三月完成」三月に九億円かけて町で炭住を改良したというのですよ。ところが入り手がなくなっちゃうというわけですよ。ずばり言うと高島です。そういう問題が出てきておるわけですね。これは、ほかの人を住まわせたらいいじゃないかというが、炭住というのは人間がいなくなっちゃうわけですから。こういう事態が起こってきております。  産炭地の財政というのは、高島は恐らく財政力指数というのは〇・二八か〇・二九ぐらいだと思うのでありますが、そういう事態が起こってきた場合に、高島町に金を返せ、責任を持てと言っても、実体がないんだからどういたしますか。深刻な問題なんですよ、いかがですか。
  158. 葉梨信行

    ○葉梨国務大臣 ただいまのお話は初めて伺いましたが、高島炭鉱初め九州、特に北海道において炭鉱閉山が行われ、あるいは予想されているところでございまして、地方財政に与える影響はまことに厳しいものがあると認識しております。自治省といたしましては、関係自治体自身による行財政の見直し、財政立て直しのための努力をまず見守りながら、道、県とも十分に協議をいたしまして対処していきたいと考えているところでございます。
  159. 細谷治嘉

    ○細谷委員 そういう後始末の問題と同時に、残った人たちも生きていかなければいかぬ、こういうことでありまして、貧弱ながら産炭地についての財政、石炭プロパーの問題じゃなくて、ソフトの部分についても対応していかなければならぬと思うのです。  そういう問題に関連して、通産大臣、いろいろとスクラップ・アンド・ビルドを進めたときに産炭地振興政策というのを進められておりました。進められてまいりましたけれども、労働問題は別にして、なかなか効果があらわれない、こういうことであります。そういうことを踏まえて、今度二度目ですから、どうするのかということについては、効果あるような産炭地域振興を積極的に講じていただきたい、こう思います。  同時に、通産省の管轄ばかりじゃなくて、自治省においても交付税措置、特別交付税措置あるいは普通交付税の中に措置を続けられておりますけれども、そのうちには大体ことしで切れちゃうものがある。切れないにしても、来年度からは漸減方式の経過期間に入っていくものがあるわけですよ。こういうものについて十分考えていただけるかどうか、いかがですか。
  160. 田村元

    ○田村国務大臣 そういう問題について、これはおっしゃるように通産省だけでできることじゃありません。関係省庁と十分対策を打ち合わせして頑張りたいと思っております。  なお、先ほどの高島の問題でございますけれども、親会社であります三菱鉱業セメントあるいは三菱石炭鉱業等に対して雇用その他いろいろな面で、もうこれは全面的に炭鉱に頼っておる町でございますから十分の対応をするように指導いたしておりますが、これもそれだけでは能事終われりとするものではない。県当局あるいは関係町、それからまた関係省庁、いろいろと打ち合わせをしてまいりたいと思っております。
  161. 矢野浩一郎

    矢野政府委員 閉山に伴う各種の財政問題につきまして、いろいろな手当てをしていく必要がある。これはその地方自治体自身の行財政の見直しの努力を見守りながら自治省としても考えていきたいということは、先ほど大臣からお答え申し上げたとおりでございますが、ただいまの御質問でいわゆる普通交付税における産炭地補正の問題について御指摘がございました。これは細谷委員つとによく御承知のとおりでございまして、昭和五十一年以来の大変長いいきさつがございまして、現在の制度は、昭和六十一年度までは横ばいで参りますが、昭和六十二年度以降から漸減方策をとる、これは関係地方自治体もよく承知をしておるところでございまして、こういった経緯にかんがみまして、普通交付税上の一種のつなぎ措置、本格的な政策が行われるまでの間のつなぎ措置というような意味で行われたものでございますので、この交付税上の措置につきましては、やはり現在の制度に決められておるような漸減措置というものを、これを見直すということは私どもとしては考えていないところでございまして、この趣旨といきさつをよく御理解を賜りたいと存じます。
  162. 細谷治嘉

    ○細谷委員 財政局長の答弁は不満であり、実態を御存じないのじゃないか、こう言わざるを得ないのです。  時間が来ましたから、最後に玉置長官、御病気中で大変恐縮でございましたが、御迷惑かけました。  あなたが半島振興法について自民党の代表として努力されました。私もあなたに引きずられて、この問題の検討をいたしました。その際に、現行法、議員立法でありますけれども、成立した現行法については財政措置というのが全くないのですよ。ほかの地域立法でありますときちんと具体的に書いてありますけれども、現行法の半島振興法では、国は財政上について協力するというか努力する、こういう訓示規定ぐらいしかないのですよ。これではどうにもならない。他の地域立法も、そういう立法をしてから一年ないし二年すると必ずそれが具体的に進み得るような財政措置を講ずる法律がつくられておったわけです。  これは今は玉置総務長官の権限じゃなくて国土庁長官の領分でありますから、国土庁長官ではそれを受けてそういう準備が進められておるのか、その中身はどういうことなのか、できたらひとつお示しいただきたい、こう思います。
  163. 綿貫民輔

    ○綿貫国務大臣 半島振興法が制定されました経緯等もある程度承知いたしておるわけでございますが、ただいま三月三十一日に十九地区が指定されまして、関係の県におきまして目下振興計画を策定中でございます。やはりこの振興計画の内容を見ませんと、事業をやるにいたしましても、県が主体なのか自治体が主体なのかあるいは第三セクターか単独事業か、それらの事情を見ていろいろまた今後考えていきたい、こう考えておるわけであります。
  164. 細谷治嘉

    ○細谷委員 考えていくということはやるということでしょう。やらなければいかぬわけですからね。財政措置は計画に基づいてやると。  残念ながら時間が来ました。私は、総理もかなり関心を持っておる四全総問題、これについて議論をしておきたかったわけですけれども、大変残念でございますが、きょうは終わっておきたいと思います。
  165. 砂田重民

    砂田委員長 これにて細谷君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十四分休憩      ────◇─────     午後一時開議
  166. 砂田重民

    砂田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。渡部一郎君。
  167. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 昨夜よりアメリカ中間選挙の結果が報道されておりまして、先ほども同僚議員から二、三これに関して政府の見解を問われたところでございますが、この時点になってだんだんわかってまいりましたことは、世界じゅうのこの問題に対する批評が何となく聞こえてきているわけであります。  その一つは、今回の中間選挙において共和党が多く票をロスしたところというものはそう見当たらないけれども、ルイジアナとかカリフォルニアとか農業地帯における票のロスが非常に高い。特に農業問題に対する不信というものが極めて重厚だというふうな報道が一つ行われております。  もう一つは、ロンドンあたりから出ている話でありますが、レーガンはSDIにこだわり過ぎて地元の利害というものに対して十分のキャンペーンができなかったのではないか。自分自身としてはSDIの交渉の成果を誇って各地域に必死の選挙運動を続けられて、むしろアメリカは非常に頑張ったというニュアンスを各地域で自分みずから訴えたという選挙運動に終始したけれども、それは国民にとってはむしろ、その事情を知った者に対してはレーガンの大きな人気というものに支えられてSDI支持になったけれども、SDIそれ自体に対する漠然たる不安感、軍備競争に対する不安感というものが票を減らしたのではないか。言ってみれば二つの大きな批評があったと私は感じたわけであります。  もう一つは、日本新聞に共通することでありますが、国際摩擦というものがこの際増大するのではないか。確かに何人かの方々のお話しになっているものを見ますと、そういうニュアンスが非常に濃く出ているわけであります。この辺の批評についてどういうふうに受けとめておられるか、またその対応をどうしなければならないと今お考えになっておられるか、承りたいと思います。総理、よろしくお願いします。
  168. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 けさほどもお答えいたしましたが、アメリカ選挙の結果について、一国の首相が他国の内政の問題についていろいろ論評することは余り適当ではないので、言葉を差し控えたいと申し上げているところでございます。  ただ、日米関係の問題につきましては、私は、上院の財政委員会とか、そういう日米関係関係する委員会顔ぶれを見ないとまだ即断はできない。アメリカは大体外交については超党派的な姿勢をいつも持ってきて、重大なイシューになればなるほど超党派的姿勢を持ってきております。そういうような面からいたしまして、民主党は上院における責任政党となってくる場合にはおのずからまた今まで少数派であったときと立場も違うであろうと思いますし、委員長になる人の政策によって非常に大きく影響を受けるものでもございますから、そういう要素をもう少し分析してみないといけない、そのように思います。  ただ、農業問題というものが影響したであろうということが指摘されておりますが、あるいはそういうことがあったのかもしれない。というのは、共和党側の落選された上院の顔ぶれ等を見ますと、そういう分析があるいは成り立つのかもしれない、そういうことは言えると思います。     〔委員長退席、吹田委員長代理着席〕
  169. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そこで、農業問題で議員が落選されたということに対しては私は非常に憂慮の念を持つ一人でございますが、これはアメリカの農業政策それ自体の取り組みをここで議論する必要は確かにないのではございますけれども、その日米間の問題で日本の農業のあり方が非常に大きく取り扱われておりまして、アメリカ農業の主としてお米のような産品についての日本に対する輸出が妨害されているという形での紛争を生じているわけでございます。そうすると、共和党を落としたのは日本の農林省であるというふうに突然とばっちりがいく可能性はないではないと私は思っているわけでありまして、加藤農林大臣は民主党員かというようなとばっちりが突然まいりましたときを考慮いたしまして、日本の農業というもののあり方をこの際ちゃんと議論しておく必要があるのではないか。  自民党内であるいは各党内で農業問題については非常に多くの議論が提出されておりますけれども、最近に至りますと、安倍総務会長が米聖域論というものに対して一定の限界があるというふうに発言され、今まで外務大臣時代はアメリカ側から聖域として暗黙の了解を得ていたのに、最近は対日圧力も強くなってきたことである、こうしたことを考えるとそろそろ考えなければいけないのではないかというようなお話も行われているようであります。  この米の問題の扱いというものは、したがって、日本国内だけの扱いではなく、対外的に見た今後の重大な交渉案件であろうかと思われるわけでございますが、この辺は、まず一括して総理、どういうふうに受けとめておられますか。
  170. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 農業問題は、東京サミットにおきましてもあるいはプンタデルエステのガットの会議におきましても大論争になった問題で、これはECの補助政策あるいはアメリカの補助金、あるいはオーストラリア、アルゼンチン、そういう農業生産国、それに日本と、三つどもえ、四つどもえになってこれは大きくイシューとして上がった問題であります。ですから、何も日本だけがそういう原因であるとは限らない。むしろ、アメリカ側は一番憤っておったのは、ECの補助政策について憤っておった点もあります。しかし、この問題が燃えてこないとは断定できない。そういう点において我々としても注意深くいろいろ勉強もしておかなければならぬ、そう思っております。
  171. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 全米精米業協会、RMAが七四年米通商法三〇一条、すなわち不公正取引慣行への対抗措置について日本米市場の開放を求めていた提訴について、USTR、米通商代表部は結局先日却下されました。このとき、これを発表されたヤイター通商代表は、日本の米輸入制限について、米国としてはガットの国家貿易条項には該当しないこと、すなわちガット違反であるとの判断を示し、来春からの新ラウンドでの交渉議題として市場開放を求めていく意向を明らかにされておられます。  このような意向について、外務大臣あるいは農林大臣、どちらでも結構ですが、どういうふうにお考えになっておられるか、まず伺います。
  172. 加藤六月

    加藤国務大臣 先般のヤイター代表の三〇一条に対する決定に対しまして、私は六十一年十月二十四日付で農林水産大臣談話を発表いたしました。その中に今のもろもろの問題は含めておるわけでございますけれども、「このたび、米国政府が、その提訴を却下する決定を下したことは、一応の評価ができるものであるが、同時に、我が国の米の問題をガット新ラウンドの場において取り上げる意向を表明したことは今後に大きな問題を残すものであると考えている。」そして二番目に、米の重要性からいろいろのことを申しまして、三番目に、「我が国の米の問題をガット新ラウンドの場においてとり上げることについて、日本側からは何らの言質も与えてはいないことをこの際明らかにしておきたい。」ということ。そして五番目におきまして、「我が国自身の問題として、今後規模拡大等による生産性の向上とコスト引下げに最大限の努力を払うとともに、食管制度についても、制度の基本は維持しつつ、広く国民各界各層の理解と協力が得られるよう、適切な運用改善を図っていきたいと考えている。」こういう談話を発表いたしたわけでございます。  なお、これを英文に直しまして、サブキャビネットが先般開かれたわけでございますが、この談話の英文をアメリカ側にも幅広く配付しておくように指示し、配付しておきました。  そして、つけ加えさせていただきますと、我が国は米については国内自給を基本方針としております。御存じの韓国米に絡む問題で与野党一致で国会決議をされております。それは、国内自給で、外国から米は一粒たりとも入れてはならない、あるいは食管制度の根幹を維持しろという国会決議があるわけでございますが、こういう国内自給を基本方針として、米の貿易制度はガット上容認された国家貿易制度であるという一つの大きな前提、そして我が国の米の問題をヤイター代表がガット新ラウンドの場において取り上げたいとの米国側の意向につきましては、我が国としては、ガット新ラウンドの交渉の具体的内容については今後多数国間で決定していく問題であると考えております。
  173. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 政府側の御見解はわかったわけでございますが、ガットでは国が独占的に監視している品目については例外的に貿易制限を認めているわけでございまして、政府が米について国際的に認められているとする根拠もそこにあるわけでございますけれども、ガットの席上でこれについては一〇〇%合法的かと言いかねるような大論争がずっと長い間継続しているわけでございますね。だから、日本側の立場も一つの意見である、一つの見識であると言うことはできるんでしょうけれども、このアメリカの雰囲気から見ると、この点強圧されるおそれがあろうというように見えるわけであります。  特に、ガットの精神としておおむね議論されていることでは、貿易量を制限する品目でもその制限をだんだん減らしていくというのがガットの精神だと思われているし、またやむを得ず制限する国においては、措置をとらないときと同じような、余りかけ離れないような輸入をやはりちゃんとやるということがガットでは公式に議論されておりまして、私が申し上げるまでもないと思いますので、ちょっと後ろめたいところがあるなと私は思うわけであります。  しかし、日本側がちょっと黙っておりますけれども、ガットにおける制限品目を見ていると、アメリカ側の制限品目は日本側の制限品目をはるかに超えるものであって、それを徹底的に攻撃するだけの腹がおありにならないと、どっちもどっちという議論になりかねないと私は思うわけでございます。特に、ガット創立の当初、各国がこの仕掛けに注目をしない当時に、制限品目として特別に割り当てた品目をアメリカ側は大量に持っているわけでございまして、それは決して日本としてその制度全体を容認していいものではなかろうと思うわけでございまして、言われるだけではなく、ちゃんと物を言ったらどうなのか。その辺は私は妙だなと。日本の政治について非常に大事なことは、激変緩和をしなければならないことだと思うわけでありまして、制度的に正しい要求であったとして、達成しなきゃならない目標も、徐々にそれに近づけることによって、大多数の国民の大きな悲劇というものを食いとめるようにしなければならぬと私はかねて信念的にそう思っているわけでございますが、言うことをもうちょっとはっきりガットの席上でも言うというふうにひとつお願いできないものかなと思っているわけでございますが、この辺のところは御見識いかがですか。
  174. 加藤六月

    加藤国務大臣 ガット問題、外交問題に精通しておられます渡部委員の言われるとおりでございまして、我々政府としましては、アメリカとの折衝のたびに、アメリカがウェーバーにかけている十三品目あるいはこの仕分けいかんによっては二十一品目になるわけでありますが、この問題をアメリカ自身が正すべきであって、そしてそれを自分が正しておいて他国に要請すべきであるということは、あらゆる会議の冒頭におきまして我が方からアメリカ側にいつも問題を投げかけてきておるところでございます。
  175. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 九月のウルグアイにおける閣僚会議では、保護主義を巻き返すロールバックの合意を盛り込んだ閣僚宣言というものが採用されたそうでございますが、その中で、貿易制限措置のすべてを段階的に撤廃するかガットに適合するように改めようという合意と、農業貿易の障壁を小さくして一層の自由化を図ることというのがもう堂々と合意されているわけですね。ですから、我が国立場としても、このように今新しく国際的な場裏で一つずつ決められていくことの流れというものも、主張すべきことは主張するとしても、やはり考えていかなければならない。そして、それは非常に難しいやり方ではあるけれども、対応策を練っていかなければいけないと思っているわけであります。  中曽根総理が過日の国会答弁において、こういう議論はあるけれども、米の国際価格と国内価格の落差は大き過ぎる、食管制度について何らか欠陥があるのではないかと画期的な御発言をなさいましたけれども、この議論は議論として、国際価格と国内価格の消費、生産両方にわたっての落差というものについても、これは国内政策として消化していかなければならぬテーマではなかろうかと思っているわけであります。こうした点について、外務大臣と農林大臣にその御見解を承りたい。
  176. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいま渡部委員の御質問に対して農林大臣からお答えしたとおりでございますが、我が国の米の食管制度はガットの根拠のある国家貿易制度であり、これはガット十七条に基づいてガットと整合性があると思っておるわけでございますけれども、先ほどお話しのように、十一条ないし二十条においてそれぞれ異論を唱えようとすれば唱えることのできる制度でございます。しかし、今までガットの中で我が国の米について問題のあったことはないという歴史的な事実はあるわけでございます。新ラウンドにおいてこれからどう取り扱っていくか。三〇一条の提訴については、これは政治的な意味から申しまして、いたずらな不安を国民に与えることは適当でないと私ども思った次第でございまして、それぞれの関係者にもそう伝えたわけでございますけれども、しかし、ウルグアイ・ラウンド、新ラウンドにおいて、貿易の障害となるべき問題について、農産物を含めて考えていかなければならないという点は合意を見たわけでございます。  したがって、米は我が国の食糧の基幹作物でありますし、先ほど農林大臣が申されたとおり、私どもといたしましてはこれを食糧の自給という面からしっかり守っていかなければならないと思いますけれども、同時に生産性の向上と申しますか、国際価格と余りにかけ離れた問題であるということが貿易障害になるという理論に対しては、やはり我が国自身としても努力をしていかなければいけない。明治以来の農業の生産を考えてまいりますと、米の生産も、今までの技術の水準から申しますとそれほど大きなものではございません、二倍から三倍に至る程度の生産性の向上でございますけれども、これからバイオテクノロジーその他いろいろありましょうから、また土地改良その他いろいろな画期的な施策を用いて生産性の向上に努めていくという努力を同時にしていくことが必要であろうかと思います。
  177. 加藤六月

    加藤国務大臣 米の生産者価格の国際比較におきましては、世上言われておるようにタイ米あるいはカリフォルニア米と対比しましてあるいは十対一あるいは六対一とありますが、消費者米価におきましては、アメリカの消費者米価というものと日本の消費者米価というものは一・四ないし一・八ぐらいしか差がございません。そして、ある面ではアメリカの米に対する保護政策あるいは助成政策、いろいろな問題があるわけでございまして、そういう問題と、それから国民の主食である米ということ等を考えながら、私たちも今後十分なる対応をしていかなくてはならない。生産者価格の違いということと、それがすぐ消費者価格の違い――アメリカの場合においては生産者価格と消費者価格は三倍以上の開きがあります。この問題等は我が国では全然議論されておりません。そこら辺の問題等も今後十分に加味しながら適切なる対応をやっていく。もちろん国内政策におきましては何といいましても生産性の向上を行い、米価を国民に理解と納得をしていただけるように下げていくという考え、あるいは内外価格差の問題を念頭に置きながら是正していくという血の出るような努力も怠ってはならないと考えております。
  178. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は、この問題を解決する場合に日本国内の大多数の消費者の中に高まりつつある反感というものに対して十分配慮していただいて、今血の出るような努力を続けてとおっしゃいましたけれども、さらにその点一歩前進させていただきたいと強く希望いたします。  それから、もう一つつけ加えておきますが、米の輸入自由化の問題のところで、三〇一条の報復を受けるために日本が発展途上国、開発途上国に向けての援助米をタイから買わないでアメリカから買うというような安易なやり方をするようなことがもしありますと、せっかく営々として積み上げてきた東南アジアにおける信用というのは一挙に失墜するおそれがあると私は思います。これは、言うべきことは言った方がいい。特に三〇一条を行使することによってアメリカが行った成果というものは、対外的にアメリカ自身の信用を失墜せしめるもとになった。高圧的な相手の事情を考えない言い方というのはよくないよ、三〇一条行使というのはアメリカ外交として失点だよというだけのことを日本は言うべきではないのかという感じがこの間からしてならないわけであります。  どうもその辺のところをはっきり言っている形跡が感じられない。もちろんマスコミに全部の交渉案件が出ているとは思われないからあれでありますが、今後その辺は十分含んで頑張っていただきたいと思っておるわけであります。ごく簡単に御決意を一言言ってください。どなたでも結構です。
  179. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 米の問題につきましては、歴代の外務大臣あるいは私からアメリカ側に対しても、米の問題は日本においては非常にセンシティブな問題であるから、この扱いについては慎重に配慮してほしい、そういうことを強く言っておりまして、アメリカ側もその点については配慮してきておるところでございます。今回の三〇一条棄却という処理も、我々のそういうような努力に対してこたえてくれた措置であると私は考えております。  しかし、引き続いてこの問題につきましては我々も努力してまいりたいと思いますが、日本側としてもやるべき農政の改革が必要なのでありまして、これはアメリカから、どこから言われるからとかそういう問題じゃなくて、日本の国内の問題としてもみずからの意思において改革すべきものは改革していく、そして社会的調和を生み出していかなければならぬ、そう考えております。
  180. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それでは、今度は円ドル為替レートの問題について承りたいと思っております。  先日行われました宮澤大蔵大臣とベーカー財務長官とのお打ち合わせとその結果につきまして、私は高く評価している一人であります。なぜかと申しますならば、言うまでもなくこの十四カ月前に始まった、G5から始まった円高誘導政策というのは、我々の望むレベルをはるかに突破いたしまして恐ろしいことになってしまった。四〇%も円が一遍で切り上がってしまう。日本の主要産業という主要産業は採算点をはるかに下回ってしまった。留保してあるところの資金量というのはぐんぐん目減りをする。いつになったらこれがとまるのか、とまる見込みもない。そしてそれに対して財政当局は時々介入をされているようだけれども、効き目はない。もちろん一日二千億ドルも動く為替市場の中で日本側がたとえ十億ドル介入したって、もうほとんど焼け石に水である。あのときに前大蔵大臣がG5でお約束なすったことがきっかけなんだから、早くG5をやって食いとめてもらいたいという怨嗟の声が経済界の中にびまんしておったと私は思うわけであります。どうしてそういう政治的な手を打たないか、この為替相場というのは経済相場でない、政治相場である、G5相場であると町で怨嗟の声が起こっていたわけであけます。  それに対して、申しわけないけれども効果的な手が、これは後からの結果論ですから何とでも言えるわけでありますけれども、何かいい手が打たれてないなというときに、ひとり正義の味方として立ち上がられた宮澤大蔵大臣が、月光仮面のごとく躍り出てベーカーさんとの間で打ち合わせをされてぴしゃりおとめになった。もうそれこそ臣象のばく進するのを正面からとめたような晴れがましきお姿であった。私は今、褒めているわけであります、せいぜい一生懸命。  ところが、これがまた恐ろしいのでありまして、本当に力があっておとめになったらともかくとして、いろいろな理由があってとまったのはよくわかっているわけでありますから、さてさて今度これから先どうなるものかな。そしてこれが本当に底なら、またもうこの辺が、百五十円の声を聞いたところがあれならともかくとして、何とかならないかな、一体どのぐらいのところにいくんだよという日本経済界すべての注目が集まっているわけであります。  そこで、大蔵大臣にその御見識を承りたいと思うのです。もちろん相手のあることですし、世界の目が注目しておられる大蔵大臣ですから下手なことはお話しになるわけにもいかないでしょうけれども、今後これをどういうふうに推移させようとなさっておられるのか、この問題についての扱いの基本的姿勢など承ることができればよろしいかと思います。お願いいたします。
  181. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御承知のように昨年の九月二十二日のプラザ合意におきまして、ドルの価値がいわゆるファンダメンタルズをはるかに離れて高過ぎる、したがって関係各国がこれを正常と申しますかドルを下げていこうという合意のもとに介入をいたしたわけでございます。その後一年いたしまして、確かにドルは非常に大きく下落をいたしました。ただ、円の関係について申しますならば、ただいま御指摘のように、いかにも円が短期間の間に非常に急速な上昇をいたしまして、我が国経済がこれに短い期間の間に十分対応できないということからただいまのような、御指摘のような事態になったわけでございます。  そこで、私とベーカー長官が話しましたことは、もうこれ以上円が上昇することは必要がない、またそれは望ましいことでもないということで意見の一致をいたしました。と申しますのは、本来アメリカは財政赤字の縮小を求められている、といたしますとそれだけの需要はどこかの国が造出しなければならない、それは我が国とか西ドイツのような黒字国でなければならぬわけでございます。また、アメリカ貿易収支を改善しようとすれば輸出をふやさなければなりませんが、それはどこかの国が輸入をしなければならない、それも我が国のような国であるわけでございますから。そういたしますと、アメリカがそういう政策をとっていくためには我が国経済が順調に成長しなければならないはずでございますが、円がこれだけ急速に高くなりましたことは我が国経済にとってはむしろ成長阻害要因になっておるということについて、ベーカー長官もまさしくその事態を理解をいたしたわけでございます。円がこれ以上上がることは好ましくないという部分は、そういうことの反映でございます。  そこで、そういう基本的な合意がございまして、さらにアメリカとしては財政赤字縮小への努力あるいは税法改正、保護主義への抵抗といったようなことがあり、我が国もまた総合経済対策、税法改正への努力、それから日本銀行が公定歩合の引き下げをいたしました等々のいわゆる政策協調をお互いに評価をいたしまして、共同声明を出したわけでございます。  共同声明の申しますことは、これ以上の円高は必要ない、また好ましくない、今や円とドルの関係両国のファンダメンタルズを反映するに至った、こういう認識が第一でございます。その認識の上に立ちますと、今や両方の通貨はファンダメンタルズを反映するようになったわけでございますから、これからの動きというものは市場に任せていい、市場に任せまして、いわば介入といったようなことは、これは乱高下等々の場合はもちろん別でございますけれども、市場の自然のき動に任せて大体いいところに来たということでございます。  それから、共同声明の中に「今や」とかあるいは「ナウ」とかいう表現がございますのは、御承知のように特定のターゲットゾーンを置いたわけでございませんので、ここいらのところというふうな、ごくごく常識的な意味の受け取り方でよろしいかと思いますが、たまたま何かそれが特定の範囲を意味するような観測が、外電でけさほどかございましたそうでございますが、そういうことはございませんで、ここまで参りましたら後は自然の市場に任せてもいいというふうに合意をいたした、そのような背景でございます。
  182. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 経済企画庁は、ことしの六月、製造業の採算ラインは一ドル二百七円前後であるというふうに発表されました。「円高貿易摩擦の中の企業行動」調査にあるところでございます。繊維は二百十二円、自動車は二百七円、鉄鋼は二百十六円、造船は二百二十六円、精密は百九十五円、弱電は二百二円、こうなっておりまして、正確かどうかちょっとわかりませんけれども、新聞紙上から引用した数字でございます。  私が心配いたしておりますのは、宮澤大臣が猛然ととめて交渉をされましたが、先ほどのお言葉によりますと、特定のターゲットゾーンを設けたのではなく為替レートはここいらのところとおっしゃっておられまして、今百六十三、四円でございますか、ここいらのところじゃ、ちょっとこの数字を見る限り全部ここいらでは飛び出してしまう。繊維も飛び出せば自動車も飛び出す、造船も飛び出す、鉄鋼も飛び出す、精密から弱電まで飛び出してしまう。  経企庁長官閣下は昨日の委員会で、何とこの人はコンサルタント大臣などと同僚大臣からやじられておられましたけれども、コンサルタントというのは非常に大事でありまして、批評することに意味があると私は思うので、この百六十何円あたり、これで日本はやっていけるのかどうなのか、ここのところをどうお考えになっておられるか、一言御見識を承りたいと思います。
  183. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ちょっと恐れ入りますが、企画庁長官がお答えになります前に。  渡部委員は当然御存じのことでいらっしゃいますので申し上げませんでしたが、これから後は市場の動きに任せればいいと申し上げましたことの中で、私自身が期待しておりますのは、昨年の九月以来もうかなりの時間がたっておりますから、したがいましてこの為替関係というものは当然アメリカ貿易収支の改善となってあらわれるはずであるし、またアメリカ自身のいろいろ予算削減の努力もそれなりの実を結ぶはずである、そういう考え方をいたしておりますし、またそれが一般期待されていることでございますので、今の相場の水準で我が国としてはこれがいわば理想的な状態なんだというようなことを申しておるわけではございませんで、後は市場の動きに従って動く、こういうことを思いながら申し上げたことでございます。
  184. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ただいまの宮澤大臣の御発言を含んでちょっと御答弁くださいますように。
  185. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 為替レートがどういう要素で決まるかということはなかなか難しいことでございまして、先生のお話ございましたようないろいろの計算の結果もございますし、いわゆる購買力平価ということで比較をしてのレートの決め方もあるわけでございます。ただ、実際のレートはいわゆる経常収支の資金の流れと資本収支の資金の流れとの相互影響、バランスで決まるわけでございますので、そのときどきの経済情勢から金融情勢、金利も含めてのいろんなことが影響するわけでございます。大蔵大臣から話もございましたが、いわゆるG5以降、本来ですと為替調整や国際収支日米間のバランスが当然進んで結構なわけでありますけれども、現実には、最近の統計などを見ましても、我が国の経常収支は速報値によりましても半年間で貿易収支黒字が五百億を超えるような状況でございます。したがいまして、宮澤・ベーカーの話し合いで今のような円ドルレートになっているわけでございますし、私どもはこれをさらに前のように円高に戻すということは好ましくないとは思いつつも、片っ方でこれだけの経常収支黒字がさらに進むような状況であると、なかなか円を下げることも一面では難しいではないか。したがいまして、これも大蔵大臣の話もあったわけでありますが、問題は、為替レートが安定いたしますといわゆるJカーブ効果というのがこれで消えるわけでございますね、上がっていく段階でJカーブ効果が出てくるわけでありますから、安定すればそれがなくなる。安定した段階で積極的な内需拡大による貿易収支の改善がこれから具体的になされることが、円レートが適正な形で推移するための基本的な条件である、かように考えておる次第でございます。     〔吹田委員長代理退席、委員長着席〕
  186. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 非常にたくさんひねりをつけておっしゃいましたので庶民にはちょっとわかりがたい。まあ、きょうのところはこの辺で勘弁します。もう聞けば聞くほど大変でしょうから。  ただ総理、私はこれ簡単に申しますけれども、この間商工中金が二十六日に輸出関連中小企業六百二十一社を調査をいたしましたら、採算ラインは何ぼか、もうあっさりした話なんですが、百八十二円五十銭、この中小企業の輸出業者というのは大変なんですね、本当を言うと。本当に日本で一番大変なところだ。これは商工中金を通して聞いているわけですからそう間違ったことではない、私は重大に思っております。三菱銀行が、これはかなり前ですが、主要輸出産業の耐久度を調べまして、輸出産業の大手六種類について一ドル百七十一円六十銭というのをはじいている。いずれも今よりもかなりの円安レートなんですね。その辺のところにある。  そうすると、これを救済するには為替レートをさわり続けて、あるいはダーティーフロートでやるとしても、それはちょっと限界を超えておる。ほかのいろいろな整合性のある政策でやらなければいけないのではないか、こう思っておるわけであります。この辺、円ドル為替レートにおける被害を、明らかに弱者の立場に立たれた中小企業に対して十分な配慮をしていただきたいな、こう思っておるわけでありまして、今直ちにどうこうしろと言うわけにもいかぬのですけれども、これまでの一年間、その辺に目をつぶって為替レートを円高に誘導することによって対米関係も、あるいは世界的な一つのある種のよい効果もねらってきたいきさつもございますから、そう簡単ではないと思いますけれども、主としてこの中小輸出企業のこうした問題についてしかるべき措置をおとりいただきたいと思うのですけれども、いかがでございましょうか、どなたでも。
  187. 田村元

    ○田村国務大臣 宮澤・ベーカー共同声明というものは特定のレベルを示したものではない、あるいは求めたものではない。要するに、これ以上円が高くなることは望ましいことではないということで、言うなれば円高の歯どめをしてもらったということにおいて大変我々は歓迎いたしております。けれども、それはそれとして、この中小企業対策というのは、法律案がきのう二本通ったのでございますが、今、内需の拡大やいろいろな面で極力努力をしていかなければならぬ問題でございます。  詳しいことはまた担当局長から。
  188. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 要するに、この問題について私が言おうとしていることは、この強烈な、四〇%という為替相場の落差、一年間にわたる滝をおっこちるみたいなすごさに対してようやく歯どめがかかったなと我が国民から見ると感じるわけであります。そして、それは歯どめがかかっただけでなくて、少し見通しが出てこなければいけない、ある種の見通しが必要である、それから中小企業に対しては特別の施策が必要である、それをひとつ何とかしていただかなければならぬというのが私の論点であります。総理、ひとつその辺をよろしくお願いします。
  189. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 中小企業の輸出の採算点がどの程度であるかという今の御指摘は、私のところへ来ているいろいろな情報やらあるいは人の、実務者の話を聞くと、大体その辺がぎりぎりの線である、物によっては百九十円とか二百円とかあるでしょうけれども、ぎりぎりの線は今おっしゃったような線のようであると私も認識しております。そういうことになりますと、今大蔵大臣が言われましたように、日本の景気の低迷というものは円高から来ている、こう言われておりますが、その円高の要素の中には円の急激なる増高といいますか、円高がばっときき過ぎた。そういう意味で、そのこと自体が今度は景気を下降させる大きなファクターになってきておる。そのこと自体がアメリカ期待に沿い得なくなってきている。  したがって、日本内需を促進して日本の景気が上昇に向かうためには、この円高情勢にストップをかけてそしてこの問題を打開しないと、我々がいかに金利を安くしたって、それだけではきくものではない、あるいは内需振興で補正予算をつくってもそれほど十分きくわけではない、こういう円ドル関係と金利の関係内需の予算と三つが一緒になって出動した場合にこれは有効にきく、そういう認識が我々にありまして、大蔵大臣にその点で努力していただいて、そしてこの間のような結果になった。  そういういきさつから見ますと、これから景気を回復するとか内需を振興するという面から見ますと、この円ドルの関係というものについては我々はやはり重大な関心を持っておらなければならぬ。だといって、政府が幾らにするとかなんとかという具体的目標をつくるということは自由経済に反しますから、これは市場の成り行きというものを見るということでありますけれども、しかしそういう課題を持って我々は今後のいろいろな政策を推進していくということは言い得る。内需を振興して、そして成長力を四%に最大限近づけるという努力は引き続いてやらなければならぬものですから、今の三つのポイントについても我々は大きな関心を持って政策を進めているということはここで申し上げられると思うのであります。
  190. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 まあ、いきなり言ったのですから、これは余り詳しい話も無理でしょうし、頑張ってください。私はきょうはにこにこしながら言っていますけれども、中小企業の苦しみはただごとではありません。今選挙をやったら自民党惨敗ですよ。本当にひどいものだ。その涙の出る中小企業の思いというのをどうか酌み取っていただかなければならぬと私は思います。これは心を込めて申し上げておきたいと思います。  さて、私は総理を今度ほめたいと思うのです。総理は本当に物事を表現したり複雑な政治行路を走るのはお上手だなと思っていることがあります。  それは一つの例ですが、前川レポートの話なんです。ことしの春のころ日米関係がちょっと面倒なところへ差しかかっておりました。そのときにワシントンの郊外のキャンプ・デービットで総理大臣はレーガン大統領と御相談になりました。日本側は余りいい種がなかったと私どもは見ておりました。そのときに何と前川レポートを中曽根さんは持参なさいまして、アメリカにぽんとお渡しになりました。そのときに、そこのお隣に座っている現大蔵大臣は、当時大蔵大臣じゃございませんでしたけれども、ろくろく御相談がなかったとみえて新聞紙上でかなりお怒りの御意向の表明があったようですから。居並ぶ大臣どもをゴボウ抜きにしまして、いきなり前川レポートをぽんと渡しまして、今後中長期的には、近い将来と中ほどの将来はこれでいく、まさに革命的な日本経済構造に対しての変革を述べられました。まさに歴史的ステップであるというようなことをレーガン大統領はお述べになりまして、高く評価されました。それが四月の十三日であります。  ところが、四月の十六日、お帰りになった途端に政府・与党連絡会議で攻撃されまして、これはァメリカ側に紹介しただけですと総理は陳弁これ努められました。見せただけなのよ、こういうわけなんでしょう、きっと。見せただけどころじゃなくて、これは対米公約ではないか、私は当時追及した覚えがございます。ところが、その後、四月の二十二日、根回しが完了しました。閣議で政府は、首相は私的研究機関の提言で、経構研報告は国民的政策目標に格上げし、その実行計画づくりの機関として経済構造調整推進会議を設置すると、後ろで笑っておられる後藤田長官がお述べになりました。で、あの方が座長におなりになりました。あの方もきっとその仕掛けを御存じだったのでしょう。そして四月十六日になりますと、自民党内で日米首脳会談の評価と経構研レポートの取り扱いをめぐり論議が始まりました。これはかなり詳しい報告は皆さん聞いておられたと見えて、中堅層の幹部たちが中曽根首相の独断を攻撃されました。そして四月二十二日になりますと衆議院の本会議で今度は野党に対して説明をされました。経構研報告は対米公約でないと中曽根さんはまた言われました。そして五月一日になりますと、政府・自民党は経済構造調整推進要綱を今度は発表されました。  右に左に右に左に寄りながら、この経構研報告が次第次第に政策になっていくわけであります。何と言うのか、スキーで言うぐるぐるひねっておりていくあれみたいに見える。そしてとうとう経済構造調整推進本部というのができ上がり、本部長総理みずからが御着任になり、十月二十八日、経済構造調整推進の実施計画を決定、中期的な対応、当面の措置を決定する、こうなりました。私は見出しだけを拾ってみただけです。言いたいことが山ほどおありになるでしょうが言わせません。何を言われるかわかりませんから言わせません。  総理、これはお見事です。私は、見事に一つの政策を押し込んで、日本の一つの非常に問題が多く異議の多いテーマについて政策課題に仕立てようとしたその実力に敬意を表します。  ただ、私は、ここの中で何ポイントかどうしてもはっきりしていただかなければならぬなと思うところがあります。これは、したがってこの前川レポートというのはただの前川レポートではない、今や中曽根レポートです。そして中曽根レポートという私的なものではなく今度は政府のレポートになった。しかも、これは事実上対米公約になっていて、向こうの大統領が評価している状況だと私は見ているわけです。対米公約であり政府の方針になったと見ているわけでございますが、いかがでございますか。
  191. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは、前から申し上げているように対米公約というものではありません。キャンプ・デービッドで話しましたときも、前川リポートというものは前川委員会というものがつくったので、前川委員会というのは八条機関による正規の審議会ではないわけです。ですから、これは前から国会からいろいろ御注文やら御批判を承って、こういう私的諮問機関の扱いについては非常に注意しておったわけです。そういう意味で、前川リポートというものを正面に持ち出すということは差し控えまして、その内容については極めてこれを高く評価すると受け取ったときの声明に出しまして、そしてこれを我々は自主的に検討して自分の政策をつくり上げて実行する、しかしこの内容は非常に貴重なものがある、あれはそういう認識を出したわけです。そこでそのことをレーガン大統領に言ったわけで、我々は前川リポートをそのまま実行するとは言ってないのです。これは、私的委員会の報告が出た、我々はこれを参考にして自主的につくり上げてこれを実行していく、そういうメカニズムをつくっていくという話もした、こういう経過であります。  だから、その辺の誤解やら何かがたくさんあったんだろうと思いますが、それを正規の政府政策として練り上げていく過程において今のようなプロセスがあったわけで、そして私が本部長になって、中身については自主的につくり上げたものを今推進している。この間も本部の会議を開きまして工程管理表を大体大まかにつくりました。その工程管理表に基づく具体的な項目についても今つくらしておるところでございます。その中の例えば石炭の問題も、先ほど田村通産大臣に御質問があってお答えしたようなことでもあり、そのほかの問題についても一つ一つ前進していきたいと思っているわけでございます。
  192. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 この期に及んでという感じでありますから、ちょっとおかしくなってしまったわけでございますが、要するに前川レポートについて対米公約でないという立場を堅持されるんですね。そして今は、その前川レポートには大変いいところがあったので政府として推進しよう、その精神のいいところはみんなとって推進しようというお立場なんですね。それはひいては対米関係もよくするすばらしい政策になることを期待しておられる、こういうわけですね。言葉のレトリックではそうですね。  だから、このレトリックを我が輩流に申し上げますと、実質的な対米公約というものを自民党員にも相談しない、国会にも相談しないで先に言っておいて、後からちゃんと壁塗りをしたり、柱を立てたり、ふすまを入れたりして、何とかでっち上げて今日に至った、こういうことになるわけでしょう。私の表現は非常に下品な言い方でずばずば申し上げたのですけれども、ともかく総理とおつき合いするときに私は何回この言葉のレトリックにひっかかって、あるときは喜び、あるときは悲しみ、だまされたかわからない。減税なんか物の見事にやっつけられた。これは私はいまだに減税の問題は決着がついてないと思います。  総理、私はそういう政治手法についてどうこう言っていませんが、おやりになるには深い御配慮もあったし、苦しいお立場もあったろうということは私は理解しておりますが、やはり国民全体に思っていただかなければならぬことについてはもうちょっと正直にすぱっとおっしゃった方が、この前川レポートとか減税の問題とか、国民の支持は翕然として集まるし、安定した手法になるのではないか。だまし抜いた総理大臣なんというイメージを持って御退任になりますと老後がよくないと私は思っておるわけです。そしてそれは日本の将来にもよくないのじゃないかな、私は勝手に心配しておるんです。これは友情のあらわれなんです。この時期大変な総理であったということは認めます。大変な総理のお役職であったことは認めますが、どうも気に入らぬ手法で始まったなと思っているわけです。  そこで数日前、ここで郵政大臣に対して自民党の議員が立ち上がられて、マル優を堅持せよと大演説をしておられ、郵政大臣はうれしそうに首を振っておられた。あの方なんかまさにひっかかった組で、まだひっかかっている。というのは、この構造調整推進本部の中に、「マル優など貯蓄優遇税制の廃止を含めた抜本的見直しを検討する」と、ばちっと書いてあって、前川レポートの方にもマル優廃止は――マル優という言葉こそありませんけれども、実質的にそれのようなやり方というものが既に行われていて、政府税調には、既に大蔵省が九月三十日にマル優廃止後の課税については四案あるということを述べられて新聞紙上にまで発表されていますね。要するにマル優廃止は決まっておるのです。昔でしたら、総理大臣の言っていることと郵政大臣の言っていることがとんちんかんではないかと詰めるところです。詰めても仕方がないほど内閣の中の一閣僚までがもう手もなくひねられておるということを示したにすぎない。郵政大臣はあほ扱いきれているんだと私は言いたい。  私は、ここのところで自民党の議員がこれほどの質問をし、それに対して郵政大臣が答えられ、そろっているほかの大臣たちがみんな黙って言葉も述べずにそれを聞いている。これほどシニカルな冷笑的な内閣はないなと私は思うんです。ここの辺、見ておりますと率直に言って国民から見るとわからない。したがって、マル優どうするんですか、私は単純にお聞きしたいと思うんです。  まず大蔵大臣からお聞きします。それから総理にお聞きします。よろしゅうございますか。こういう構造が中曽根内閣の一つの構造であり、すぐれた点であるかもしれません。しかし、国民に政治というのをすごくわかりにくくしたものでもあるということを私は国民にはっきりさせた方がいいと思うからです。どうですか。
  193. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 過般の政府税調報告におきましては、この問題につきまして、非常に多くの利子所得が課税ベースから外れている、所得の種類いかんによってあるものは課税され、あるものは課税されないということは好ましいことではないので、公正の見地からこの問題は検討する必要がある、ただし母子家庭であるとかあるいは老人であるとかいう人々に対する配慮は非常に必要であるという趣旨のことが述べられております。  そこで、この報告はただいま私ども政府・与党の協議の場でいろいろに検討されておりますので、私としてはその結論を待ちまして政府としての方針を決めていただきたい。ただいまそういう段階でございます。
  194. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今の渡部さんのお話を聞いて、私はいささか心外なところがあるのです。それは、何かからくりにひっかかっているような表現のお言葉がありましたが、そういうことはないのです。マル優の問題にいたしましてもあるいは大型間接税の問題にいたしましても、まだ政府としては白紙の状態にあるのであって、党の税調で党員全体があらゆる論議をやってもらう、そういう場所にあるわけであります。今のお言葉は、自民党の党税調の権威をないがしろにするお言葉でありまして、そういうような事実はございません。現にみんな自分たちの問題を抱えて、真剣に税調の総会やらあるいは分科会、役員会に来てやっておるところであります。自民党は、そういういろいろな議論をうんとやった上で、まあ大体この辺で行かなければまとまらないじゃないかというところにいったときにまとまるという、非常に成熟した政党であります。そういうような党風といいますか党の性格をよく御認識願いたいと思うのです。  今のお言葉はちょっとそのまま聞き逃すことができないようなお言葉であり、自民党の党税調に対してもいささかどうかという御発言でありましたから、私は念のために反論をして、申し上げておく次第であります。
  195. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は自民党税調を批判しておりません。中曽根内閣を今批判したのでございまして、あなたは御自分の二重人格を発揮されまして、今は党の総裁としてお答えになりました。私は、国会討論会でありませんから、自民党のやり方どうこうという前に、中曽根内閣の行政手腕のやり方を論じたのです。いつの間にか、みんなに相談しないうちに何となく国の方針が決まってくる、そして自民党総裁としては何となく国民に大減税するようなニュアンスでいて、増税しないようなニュアンスでいて、いつの間にか大増税の執行にかかってくる。この印象が大事なんですね。この印象が問題なんです。そうしないと中曽根内閣の末期というのはよくないと私は申し上げているだけなんです。  次の問題に移ります。  さて、ちょっと時間がなくなってきてしまいまして、私はきょうは甚だすばらしい話をたくさんこれからもするつもりなんですが、通産大臣あるいは農林水産大臣あるいは大蔵大臣等にぜひともお願いをしておきたいことがございます。これは究極のところ総理にお願いしなければならぬテーマでございますが、実を言いますと、現在の日本輸出の問題についていろいろ調べておりました途中で日本の素材産業に対する打撃というのが非常にひどかった理由の一つというものが、日本の素材産業がアメリカと違いまして国際的な商品先物取引の慣行になれていないため、棒下げ状態になって下げていく商品相場の中で、実際の商品相場の中で対抗措置をとることができなかったという実情がだんだんわかってまいりました。  アメリカの商品先物と日本の商品先物は、一九七四年まではほとんど同じ量の取引高であったわけでございますが、一九七四年にアメリカでは商品取引法が大改正されまして、商品先物取引委員会法、CFTC法というのが制定されました。この法律に基づきまして、実に大統領の直轄機関といたしまして商品先物取引委員会が設置され、商品、金融商品、証券などがその管轄下に置かれたわけであります。これを大統領の管轄下に置いたところがみそでありまして、これがもし置かれなかったとしたら、この相互の関係というものは混乱を続けて、今日のアメリカの金融市場の育成はあり得なかったと言われているわけでございます。  私は、先年これを調査して、現場ものぞいてまいりましたけれども、CFTC法の持つ比重の大きさを痛感いたしました。現在では、商品取引に限定して言いますならば、一九七四年当時と日本の取引高はほぼ同じであります、それに対しまして、一九七四年から一九八五年までの間にアメリカの方は実に六倍ないし七倍のレベルに到達しているわけであります。したがって、商品市況が一方的に落ちたり一方的に上がったりするときは安全な措置をとることができるということが明らかでございます。  しかも日本は単品の品物を大量に買う国でございまして、鉄鉱石も大量に買う、石油も大量に買う、それから麦も大量に買う、こういう素材あるいは食糧に関して大量に、圧倒的に大きなマーケットシェアで買うというコンディションにありますので、特に国際的な商品先物取引ができるように誘導することは、我が国の将来にとって非常に大切なんではないか。特に最近の石油、銅などのリスクヘッジというものは大問題でございまして、こうした点を考えますと、現在までにありますような各地域に点在する絹の市場であるとかあるいは小豆の市場であるとか、小さい市場が日本では各地域に点在しているわけでありますが、農林水産省あるいは通産省、ある部分は大蔵省の御指導のもとにやっておられるのですが、田舎の方の市場は全部つぶれてきた。そうしておいて、この巨大なリスクヘッジをカバーすることができないというような状況になっている。この辺をひとつ何とか御改良をいただけないものか。  今日全然その努力が行われてないと言っているわけではありません。随分いろいろなことで、工業品取引なんかにおいては成果が上がっていることは認めた上で申し上げているわけでございますが、この辺をひとつ何とかしていただけないものか。また、商品取引所の顧客を集客するためにも、証券の場合にのみ有価証券の売買益の一定限内非課税措置がついておりますけれども、こうしたことも含めて一緒に御検討の余地があるのではないか、御研究いただいて何とか一歩前進させていただけぬかなと、実に巨大な質問なのですけれども、一言にまとめて申し上げました。ぜひ御関係の方に御答弁をお願いしたいと思います。
  196. 田村元

    ○田村国務大臣 先ほどは質問を取り違えまして、どうも失礼いたしました。  今御質問の件でありますが、確かに一次産品の生産、流通業に携わるいわゆる当業者のリスクヘッジのニーズというものは重視しなければなりません。当然のことでございます。また、我が国の国際経済社会における地位にかんがみましても、我が国に国際的な商品先物市場を育成していくことが必要であると思っております。  御指摘のとおり、我が国商品先物取引市場の健全な整備拡大を図るためには、この先進国であるアメリカの実情を把握することが重要である、それはもうおっしゃるとおり、申すまでもありません。この観点から、通産省では本年夏にアメリカの実情調査を行ったところでございます。この実情調査の結果を踏まえまして、委託者層の健全な拡大を図ることなどによりまして、商品先物取引市場の育成を図ってまいる所存でございます。具体的にいろいろと御指摘の点がございましたが、まだこの夏に調査をしてまいったばかりでございますので、これから調査結果を整理してまいりたい、このように思っております。
  197. 加藤六月

    加藤国務大臣 我が国における商品先物取引はリスクヘッジ機能等重要な機能を果たしております。なお改善を要する点があることも事実であります。商品取引所の規模、上場商品等についての検討は重要な課題であると考えていますが、各商品取引所には歴史的な成立の経緯、関係物資の流通実態などそれぞれの事情もあるので、これらを踏まえ今後十分検討してまいりたいと考えております。  なお、先生御指摘のCFTCのように、商品取引、金融先物取引、オプション取引等々全部を一緒にやるのが果たしていいかどうかという問題も含めて検討いたしたいと考えます。
  198. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この問題は、ただいま御答弁されました両大臣の御所管に属することでございますけれども、確かに言われますように、国際化の時代になりますと大変これは必要でありまして、主として米国がやはり中心でございますけれども、そういうことをよく調査いたしまして、我が国としても体制を整える必要があると思います。
  199. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 総理、ひとつこれに対して御見解を承りたいと思います。  これは明らかに大きな仕事でして、大変な仕事でございますから、そう短兵急にいくというふうには私、思われませんが、日本としてもうどうしてもここのところを突破しませんと、国際的な金融市場の中に一つの雄として日本が今後歩いていくためにどうしても大事な問題だと思いますので、ぜひとも御処理よろしくお願いしたいと思います。
  200. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やはり、日本アメリカとを見ますと、株式市場などは肩を並べるぐらいにだんだん出てきていますが、商品市場というものは日本は非常に貧弱であります。それで、国民の受ける考え方もまだ未熟な点がありまして、資本主義が発達すればするだけやはりヘッジという概念が非常に出てきて、必ずヘッジという形で生産者が保障しておるわけです。日本の場合はごく特殊の方々がそういう思想を持っているだけで、商品市場というと、何か小豆や何かが頭へ出て、すぐ相場とかスペキュレーションが頭に出る。そういう考えが間違いなんであって、商品取引市場というのはもっと資本主義の原動力になる公の場である、そういう大きな意味を持っておるという機能をもう少し我々が正視して、これが正常に育成されるように我々としては積極策をとるべき対象である、そう考えて一つ一つ努力してまいりたいと思います。
  201. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 大変御理解のあるお言葉をいただいてひとつ安堵の胸をなでおろしたのでございますが、今度は、時間が余りなくなりましたのですが、固めまして、外交能力の強化のために幾つかの提案を一遍に申し上げたいと思います。まことに恐縮でございますが、箇条書きに申し上げますので、適宜御答弁をいただきたいと思います。  まず外務省の電信システムから申し上げますが、外務省の電信システムは我が国の目であり耳であります。しかるに、昭和四十五年から六十年に至りまして、情報通信量はいただいたデータから見ますと十九万九千通から百五万九千通と五倍に上昇しております。この五倍に上昇しているのに対しまして人員の方は九十人から百人、予算の方は五十一年から六十年までの大体十年間で三十億円と横に一直線になっておる。しかも在外公館が百七十ある。百七十の公館をどうして百人の電信官でカバーできるかというのは奇跡ですけれども、そして専用回線もどうやら全部には敷設されていないという状況にある。これではもう情報を送ってくるな、これ以上来たら困るよと言わんばかりに、情報はますます大量化し、質が高まっておるという状況にございます。  外交案件文書がこういう状況でございますが、今度は送られてきた情報についていいとか悪いとか、このアナリシスの段階が重要なのですけれども、その解析する前に収集し、貯蓄し、そしてそれを検索し、引き出すやつですね、検索し、そして解析し、そして今度は利用し、最後にチェックし、検討し、この言葉の言い方は専門家によって何種類かに分ける言い方ですから違いますけれども、ここのところもちゃんとしなければまずいんではないか。  我が国は今平和国家として外交機能をうんと増強しなければならぬ時期でございますし、各省ともその外交機能を増強しなければならぬ時期でございますが、この外務省の電信を通じての電信のルートというものはもういかにも悲惨な状況になっておる。  総理、まことに言いにくいのでございますが、私の聞き得た、外務省が今こういう状況ですと言わせるに忍びませんから私が言いますと、某大使と某大使が打ち合わせするのに、外務省の中の電話を使って打ち合わせすることがいかない場合さえある。公衆電話でやっているケースすらある。  それから、ファックスをやっているわけですけれども、暗号秘匿をかけないでファックスが使われている。もちろん低レベルの暗号通信なんというのはそのまま生ファックスでいいんですけれども、日本新聞を送るなんというのはそれで十分ですけれども、それにしても生ファックスで送ってしまうというような状況にある。  おまけに、情報保安という言葉が今アメリカであるのですけれども、情報を扱う人を保安する、つまりガードするシステムというのが日本側にない。だから、電信室のかぎがかぎである。このかぎであるなんて言っては申しわけないんですけれども、かぎですから、かぎを本人がポケットに入れておくのか壁にかけるのかしかと申し上げるわけにいきませんが、ともかくお粗末なところにかぎが置いてある。だれでも入れる。ひどい場合には掃除のおばさんまで入ってくるというような電信室もないわけではない。どうにもこうにももうどうしようもない状況にある。  これも、どこから申し上げていいのかわかりませんけれども、ちょっと何とかしないと、これは電信官が不眠不休どころじゃなくて、もうオーバーワークで倒れかかっておりますし、そこの上に持ってきて解析する能力のシステムがないというのはこれは問題ですから、今の外務省の情報調査局の分析課と電信課はちゃんとくっつけて、それで情報集積、解析の機能もあわせ持って、そして流れてくる情報を評価してあげる必要があるのではないか。そして、それが総理や外務大臣のところへちゃんと届くようにせぬといかぬと思っているわけであります。そうすると、予算が毎年一並べ三十億じゃとっても無理なんですね。  そしてもう一つ、質疑応答の時間がありませんから一気に言いますが、総理、通信機材で今コンピューターを使っているんですが、外務省のコンピューターの容量が少なくてもう入りません。二台ワンセットにしているんですが、それも小さい。直す場合には、コンクリートの建屋から直さなければいけない。下のパイプがもう通らない。そうすると四年なり五年なりかかる。建屋をつくるだけでも四十億とか五十億とか百億とかというレベルがかかる。  総理、これは今市販されているあれですが、スクランブルと申しまして、こんな簡単な機械なんですけれども、せいぜい五十万ぐらいのものです。ところが、これは発信された通信をスクランブルといってごちゃまぜに切り刻んで向こうへ伝える、そしてそのスクランブルされた情報をそのまま受けとめ、そしてそのスクランブルをもとへ戻す機材です。これは市販されている分です。自衛隊は似たものを一部自己開発で使っておられます。ところが、このスクランブルのやつを見ますと、市販されているんですけれども、かぎが十の十九乗ないし十の三十八乗以上という、これは十の三十八乗以上の秘匿性があります。我が方のこれに類するものは、もう申し上げるわけにはまいりません、ちょっとレベルが低過ぎて何ともかんとも言いかねる。日本の電機製品会社はこうしたものについてやる能力を持っておりますが、自己開発の能力も持っておりますけれども、御注文がないのでしないという状況の中にとどまっております。  それからもう一つ、外務省には資料が毎年毎年たまってきます。どのくらいの量でたまるかは、伺いましたけれどもここで申し上げません。膨大な資料がたまってきます。したがって、この間のように日韓合併のときの条約について議論が始まったりすると、資料を取り出すことができない。取り出し不能である、取り出すと壊れてしまう。それを電子ファイルの中に入れておいて、電子ファイルに入れますと、今のレベルでは厚さがレコード盤の厚さで大体二十五メートル分の資料がその一枚に入る。索引することは即時可能であるというのがもうできております。安いのは四百万、高いのは千五百万くらいで、外務大臣はよく御存じです。こういう機材を買って外務省の資料なんかは全部電子ファイルの中に入れてから索引にかからないと索引能力がない、だから国会議員の発言ですら取り出せないという状況になっておる。非帯に膨大な手続を経て、労力をかけて苦しいことになっておられる。  この電子ファイル化あるいは情報の通信のコンピューターの入れ直し、建屋の改良、人員の適正化、情報調査局の分析課と電信課の見直し、そして情報システム全部の見直し、こうしたものを全部ひっくるめて今一発で申し上げましたが、こういうことをちょっと何とかやっていただけないでしょうか。いかにも外務省職員が気の毒、かつ、一生懸命働いている役人の皆様方の国際的な交渉能力を下げていると私は見えて仕方がないのであります。少なくともあと五年たったらもうむちゃくちゃになってしまう。この間に早急な手続をお願いしたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  202. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今お話を承っておりますと、一々ごもっとものように思います。ひとついろいろ研究してみたいと思います。
  203. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいま専門的なお話がございました。私も外務大臣に就任してすぐ直後、電信課の模様をつぶさに見まして、これからどうやったら一番能率的であるかということについてグランドデザインをもう既につくっておりますし、できることから一つ一つやっていこうということでございまして、大蔵大臣には特に来年度の予算でお願いしようとしております。  なお、いろいろな資料等についてフロッピーディスクに入れて、いろいろ議員の発言録とか記録とかというのはもうできておりますので、これからさらにレーザーディスク等を使いましてもっと高度のものにしたいということで、最も進んだそういう情報システムをつくり上げたいということで今鋭意研究いたしておるところでございます。
  204. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 時間が参りましたから、たくさん申し上げることのうちほんの一部で終わるわけです。  あと、外務大臣がここへ来て答弁をされる、外交官と乾杯される、外国へ行って交渉される、あるいは国際経済問題について交渉する、非常に面倒なお立場であります。一時的にテストされました、経済問題について交渉される大臣ポストを設けられたことがありますが、今やそういうことがまともに必要になった時期なのではないかと考えます。  イギリスでは閣外大臣が三名おられまして、合計四名になっております。アメリカでは実質的な国務長官の横に大臣格の方が三名おられて交渉に当たられたのは御存じのとおりであります。フランスにおきましてはこれが二名おられます。こういうように、先進諸国においては外交担当大臣職の方が何名か多くなっておられるという状況がございまして、これは行政改革に逆行するかのように一見見えますけれども、こうした問題についても御検討いただいたらどうなのかと私は思っております。  また、最近の米ソ交渉を見ておりますと、軍縮の面について非常に大きな発言が行われておりまして、我が方に軍縮の担当者がいないと見られる可能性がしばしばございます。これは軍縮課であるためでございまして、軍縮担当のポストを引き上げ、軍縮局あるいは軍縮庁のようなポストをつくられてはいかがかなと思っております。  また、そろそろ日本としても、世界の国連の立場を堅持するとともに、国連加盟国としての責任を果たすためにも、監視衛星を打ち上げ、地球上の保安体制のため、災害を監視するため、我が国の地表監視能力というものを実質的に拡大し国連に貢献するという立場で、そうしたことも考えられていいのではないか。  外交能力を高めるために幾つかの問題がございますが、機材的な立場からあるいはシステムの立場から、こうした点幾つか御提案させていただきました。  以上、まことに恐縮でございますが、総理、これらの件御検討いただきまして、外交体制を立て直していただきたい、システム的な立て直しを図っていただきたいとお願いする次第でございます。
  205. 砂田重民

    砂田委員長 これにて渡部君の質疑は終了いたしました。  次に、井上一成君。
  206. 井上一成

    井上(一)委員 まず最初に総理に伺いたいのですが、アメリカ中間選挙の結果、アメリカ議会我が国との関係がより厳しい状況になるのではないか、そういう想定に立つわけでありますが、総理としての認識を聞いておきたいと思います。
  207. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 アメリカ中間選挙の結果の影響についてはこの席上でもいろいろ申し上げましたが、確かに上院において民主党が躍進をいたしました、そういう影響はいずれ出てくるであろうと思います。  しかし、前から申し上げておりますように、アメリカ議会、特に上院等においては委員会及び委員長の個性というものが非常に大きな要素をなしておりまして、また交錯投票も行われている国でもございます。そういう面から、委員会がどのように構成されるか、だれが委員長になるか、あるいは院内総務にだれが御就任になるか、そういうような点をよく見きわめた上で、その顔ぶれを見て、どういう傾向に流れていくであろうかという予測が初めて的確に行われるので、一般論的な話はまだ危険であると思っております。  しかし、民主党が上院で勝ったことは事実でありますから、民主党選挙で訴えた方向に物事は自然に、時間の経過を経ても流れていくであろうことは当然予想されることでありまして、それらについては我々としても深く勉強もし、対応もしていかなければならない、そう思っております。  先ほど、アメリカからシグール国務次官補が参りまして会いましたけれども、ともかくレーガン政権のやっておる自由化の問題、貿易の自由化、保護主義反対、これについては我々も全面的に支持してきておるわけであり、日本の国益上からも保護主義に反対する力がアメリカに強いことは望むところでありますから、今までのレーガンさん、保護主義反対については大いに頑張ってください、そういうこともお伝えしたところであります。
  208. 井上一成

    井上(一)委員 今回の補正予算編成に当たって大蔵大臣は、前年度の剰余金も繰り入れをして非常に景気刺激対策として対応なされた、六十五年の赤字国債脱却については次の新たなる目標というものを明示しながら検討を加えたい、こういうふうに御答弁をなされたと私は受けとめるのですが、それでよろしいでしょうか。
  209. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 もう少し申し上げさせていただきますと、六十五年に赤字国債依存の体質を脱却するという目標は、この看板は今おろすわけにはまいらない、やはり財政の再建のために必要でございますということを申し上げました上で、これがなかなかしかし容易なこととは考えておりません。  そこで、せんだって御質問がありまして、これはもう現実的でないので次の目標を考えたらどうかというお尋ねがございましたので、それはやはり、我が国を取り巻くいろいろな情勢が好転をいたしまして、我が国経済がもう少し順調な動きを見せましたり、あるいは税制も改められましたり、その他いろいろな国の内外の状況がいろいろ変わってまいりましたときに、あるいは新しい目標を検討することがあるかもしれない、しかし、ただいまのところこの看板をおろしたらかわりにどうということが実は考えられませんので、この看板、この目標は掲げてまいらなければならない、こう申し上げたわけでございます。
  210. 井上一成

    井上(一)委員 総理は毅然と、その看板はおろせないということを明言されていたわけなんです。大蔵大臣は、今もお答えのように若干ニュアンスが違うわけなんですね。景気回復を待って、税収の伸び等いろいろな情勢の中でそれは考えていかなきゃいけないというふうに、若干の違いがあると私は受けとめているのです。そういう受けとめ方でよろしいでしょうか。
  211. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私は現実に仕事をいたしておりますものですから、例えば、ただいまから毎年一兆三千億円ぐらいになろうと思いますけれども、それだけずっと国債を落としていきませんと六十五年にはゼロにならない、こういうことを自分で勘定をいたしますものですから、それはなかなか簡単なことではないなということを一方で思いつつ、しかし、こういう目標がございませんと財政、歳出削減のめどが立たない、そういうことを実は申し上げておるわけでございます。
  212. 井上一成

    井上(一)委員 大変だと思いますし、私はやはり景気刺激策としての建設国債発行についても、やむを得ないという立場に立ちます。しかし、その歳出が効果ある結果を生み出すかどうか。公共事業一つをとらえても、今日的な補正予算の中ですべてが消化し切れるのかどうか。これは担当の建設大臣からも御意見を聞きたいのです。そして、それまでに大蔵大臣として、そういうことが消化でき得るという判断のもとで補正予算を組まれたのかどうか、その点が一点。  さらに、為替レートの問題で剰余金を――私はこれは当初予算でも申し上げたのですが、支出官レートを二百九円で勘定しているわけなんですね。今回の補正で若干の修正はされているわけなんですが、支出官レートの見直しで歳入にどれだけ繰り入れられたか、そしてすべて繰り入れをしたのか、防衛予算についてはどういう対応をしたのか、そういう点についてもやはり大蔵大臣にここで聞いておきたい、こう思うのです。
  213. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 公共事業を消化し得るかどうかということにつきましては、たしか昭和五十二年のときにこういう問題がございまして、当時設計能力であるとか型工が、型工と申しますか労務者でございますけれども、特殊の人たちがいなくなったとかいうことがございましたものですから、今度そういうことを私どもなりに確かめまして、もとより建設大臣におかれてはそういうことを十分に御検討でございますし、自治大臣もそうでいらっしゃいますが、まず消化し得るという自信のもとに補正予算を編成いたしました。  なお、支出官レートの問題につきましては、恐縮でございますが、政府委員から申し上げます。
  214. 天野光晴

    ○天野国務大臣 人手不足、技術工が足りないというような状態というのはまだありません。
  215. 西垣昭

    ○西垣政府委員 外貨関連支出の中で、支出官レートが適用されているものとそうでないものとがございます。支出官レートと申しますのは、外国におります債権者に対しまして外貨建てで送金をする、そういう支出でございまして、これは、為替レートが年度を通じまして変動いたしますが、その送金事務を安定的に行うということで、六十一年度の場合には二百九円で固定いたしまして、これは年間を通じて二百九円で小切手を日本銀行に支出する、日本銀行は、それが高過ぎた場合にはそれを税外収入として国に納付をする、また不足した場合には日本銀行が立てかえまして、足りない分は国庫から日本銀行に支払う、こういうシステムでございまして、その分については一年を通じて制度として固定しているわけでございまして、その分から余剰が生ずるということは制度としてないわけでございます。その他のものにつきましては、極力円高による不用額は洗い出しましてその分は不用に立てている、そういうことでございます。
  216. 井上一成

    井上(一)委員 大蔵大臣、具体的に当初予算では、前年度の平均水準というのでしょうか二百九円、これが当初予算で組み込まれて、今度の補正では百五十九円に修正減額されているのです。それが幾らか。私の調べでは三百七十億円が減額修正されていると思うのです。そのうち、減額修正で防衛予算の中で出ているのがたしか百八億円だったと思うのです。  ところが、FMS関係は何ら削減をしていない、こういうことなんです。これはもう執行済みなのか、あるいはこの予算については二百九円で見通しているのか。私は、これはやはり議論の対象にすべきだと思うのです。だから、項目を歳入面と歳出面とに分けて、歳入面で明確にし歳出面で不明確であるとか、あるいはその逆であるというのはおかしいんですよ。そういう予算の組み方それ自身が間違いであると思うのです。だから、基本的な問題としてこれはやはり明確にしないと、私はこの予算というものは編成それ自身がおかしいのではないか、こう言っているのです。額の問題ではない。その辺はFMSにかかわる経費、もっと極端なことを言えば、その分だけは二百九円そのままのレートでまだ予算上は成り立っている、それ以外は百五十九円のレートに減額修正をされている、それはまことにもっておかしな予算である、こういうことを言っているわけです。
  217. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 FMSの輸入につきましては、支出官レートによりまして日銀を通じて支払いが行われておりますので、そこで歳入面で不用が生じるということはないというふうに聞いておるのでございますが、なお主計局長から申し上げます。
  218. 西垣昭

    ○西垣政府委員 今御指摘になりましたFMS関連経費につきましては、これは支出官レートでございまして、先ほど申し上げましたように二百九円で払い過ぎの分につきましては、日銀納付金として補正予算の歳入に計上しているところでございます。
  219. 井上一成

    井上(一)委員 それは最終、年度末にはそういうことになるわけなんです。けれども、この補正を組んだ時点でそのことが明らかでないのかどうか。明らかであるのか、明らかでないのか。
  220. 西垣昭

    ○西垣政府委員 支出官レート以外のものにつきましては、円ドルレートを百五十九円として洗い直しをいたしております。で、支出官レートの適用を受ける外貨建て送金分につきましては、制度の趣旨からいいまして二百九円そのまま置いてございます。他方、歳入の方に、払い過ぎになる分、これは実績と今後の執行の推計分がございますが、これを計上いたしまして、先ほども申し上げましたように税外収入として計上しているわけでございます。
  221. 井上一成

    井上(一)委員 防衛本庁の予算の仕組みの中で、いわゆる装備品の内容を変えて、変わることにおいて減額をするのか、あるいは装備品の内容は変わらないけれども為替レートによって減額が生じたんだ、こういう二つのとらえ方があると思うのですよ。それでは、これはどちらに理解をしていいのですか。
  222. 西垣昭

    ○西垣政府委員 少し細かくなりますが、防衛関係費の中の外貨関連経費の中には大きく分けて三つのものがございます。第一が今おっしゃいましたFMS輸入でございます。第二が一般輸入、要するに外国から輸入したものを国内で調達するというようなものでございます。第三が国産品の中に組み込まれる輸入の部品等、この三種類ございます。それで、最初に申し上げましたFMS輸入につきましては、先ほど申し上げましたように支出官レートによりまして日銀に支払いが行われますので、歳出面で不用が生ずるということはないわけでございます。それから第三の、国産品の中に組み込まれた輸入の部品等につきましては、なかなか見積もりができないということもございまして、これは最後に精算のときに判明してくる、こういうものでございまして、円高による不用が出るというのは第二の範疇の一般輸入品等でございまして、これは一切合財洗い直している、こういうことでございます。
  223. 井上一成

    井上(一)委員 それでは具体的に、ペトリオットは実勢レートでやっているのでしょう。しかし今回の補正では、これは何ら修正も減額もされていないじゃないですか。では、これはもう既に執行済みだ、二百九円そのままで執行済みだと理解していいのですか。
  224. 池田久克

    ○池田(久)政府委員 ペトリオットにつきましては、御承知のように長期にわたる契約になっておりまして、これから契約するものでございます。したがいまして、先ほど御説明がございましたように、契約を今後やりましてその段階で精算して余剰金を出す、こういう仕組みになっております。それで、今の六十一年度分につきましては精算して出す分になっています。ですから、これから年度末まで精算をしていく、そういうものでございます。
  225. 井上一成

    井上(一)委員 あなた、何を言っているのですか。さっきの説明では、FMS関連については剰余金が出れば年度末と、そして今私が指摘したのはいわゆる三段階の最後の段階なんです。ほかは実勢レートでやっているわけなんですよ。だから、そんなまだ購入していないのに――金額はそう大した額ではない、私はこう思うのですけれども、やはり予算編成そのものについてのとらえ方が誤っている、こういうことを私は指摘しているのです。  では、このFMSにかかわる経費の中に今私が指摘したペトリオットは入るのですか。入らないでしょう。ペトリオットは少なくとも実勢レートでやるということの範疇に入るわけなんです。そういうことになると、これはやはり減額修正をしなければいけないし、もし既に執行済みであれば、その点については幾らかの――大蔵大臣が剰余金までも繰り出して財源に苦労したんだと言われるから私はこのことを申し上げたわけで、そういうことについてはやはりきっちりしなければいけない。だらしがないと思いますよ、そういう点で。
  226. 池田久克

    ○池田(久)政府委員 ただいまのお話のペトリオットでございますけれども、これは国産品中の輸入にかかわる事項でございまして、先ほど申し上げましたように契約が進行しておりまして、それの中途確定を今後やりまして、それにつきましても年度末には精算してまいります。先生篤と御承知と存じますが、防衛庁の外貨建てのものは大変数の多いものでございますけれども、これはすべて事実問題として特約条項が明確についてございまして、差益が出たらこれを返納するということが明確になっております。問題はそのタイミングでありまして、ペトリオットにつきましてはこれから中確をやります。中確と申しますのは、契約の最終年度の半年前くらいに数ヵ月の期間かかって膨大な資料、証憑書類を突き合わせまして外貨を精算して出すわけで、そういう性質のものでございます。
  227. 井上一成

    井上(一)委員 年度末に精算するのは当然なんですよ。しかし、補正を編成するに当たって、やはりそれくらいの気配りというか配慮をきちっとして編成をしなければいけないということを私は指摘したかったし、それだけ目を向けて防衛予算についてはしっかりと、それでなくてもGNP一%云々という議論がありますから、特にそういうことは配慮していくべきである、こういうことを申し上げておきたいのです。  もう一点。円高により、いろいろな我が国の産業が停滞しているわけです。鉄鋼はもとより造船、電機、さらには非鉄金属、そういう意味で、いままでにいろいろと議論がありましたから漏れていたということではないのでしょうけれども、たしか九月十九日でしたか、閣議決定がなされたその中にも入っているわけなんですけれども、金属鉱業経営安定のための施策というものを通産は具体的にどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか、そのことをお尋ねしておきたい、こう思います。
  228. 田村元

    ○田村国務大臣 円高の一層の進展等によりまして銅、亜鉛等の金属鉱業が苦境に陥っておる、これは十分承知しております。二月二十日の井上委員の御質問も速記録で拝見しました。このため、これまで、金属鉱業の経営安定化融資の融資時期の繰り上げ、対象業種の拡大等を実施してきたところでございます。さらに、鉱業審議会の建議を踏まえまして、今おっしゃった九月十九日に、総合経済対策の中で金属鉱業経営安定化融資の貸付枠の拡充等を行うことを決定しましたが、これの中身をちょっと申しますと、当初予算で百億円、上期の実績が八十七億円、補正で下期の追加が百四十五億円、計で年間二百三十二億円になります。これを決定しまして、この補正予算案に所要の予算額を計上しているところでございます。今後とも金属鉱業を取り巻く情勢を注視しながら、適時適切な施策を講じてまいる所存でございます。
  229. 井上一成

    井上(一)委員 それでは外務大臣に伺っていきたいと思います。  我が国の海外経済援助についてはかねがね問題点を指摘してきたわけであります。とりわけフィリピンの前政権のマルコス政権時代の疑惑、さらにはごく最近ではJICAの汚職事件等一連の不祥事件、こういうことを考えても、対外援助のあり方というものについて見直すべきではないか、しっかりとした見通しを持たないと、国民の血税を使ってのせっかくの経済援助が国民のコンセンサスを得ることができないと私は思うのです。  きょうは、特に基本的な認識について伺いたいのですが、とりわけ外交上の位置づけについて、海外経済援助をどう位置づけていらっしゃるのか、このことについてお聞きをしておきたいと思います。
  230. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいま先生お話しのように、日本は平和国家であり、資源小国、しかも防衛弱国、そういう特色を持った、平和憲法を持った国でございます。しかも、経済的には御案内のとおり世界の一割国家にまで成長いたしてきたわけでございまして、この経済力を持った日本世界の平和と繁栄にどのようにして貢献していくか、そういう意味から申しまして、世界の国々に対して、特に開発途上国に対してこれらの援助、技術協力、そういうものをいたすことによって、あるいは技術移転を行うことによって、その経済の安定、繁栄、ひいては政治の安定に資していく、世界の平和と繁栄に資していくというのが経済協力の基本的な考え方であろうと思います。
  231. 井上一成

    井上(一)委員 きょうは参考人に事業団の総裁もお見えをいただいているわけでありますが、総裁はどういう御認識を持っていらっしゃるでしょうか。
  232. 有田圭輔

    有田参考人 お答え申し上げます。  ただいま外務大臣もおっしゃいましたように、平和国家としての我が国が国際社会に貢献し得る大変大切な分野であるということであります。特に現在のような国際環境、また日本経済大国と言われるまでになったこの時期においては、このODAというものを大幅に伸ばしていく必要があるということであります。したがいまして、私は、政府の方で三年倍増計画、五年倍増計画、またことし始まります七年倍増計画というものがつくられて、その国際協力を大いにやって、そして国際的な義務を果たそうとしているのではなかろうかと思います。  ただ、その場合に、やはり先生おっしゃいましたように、これは大変貴重な税金を使って実施しているものでありまするから、相手国に満足感を与え、相手国から喜ばれると同時に、国民一般期待にこたえ、国民が納得するような格好でこれが実施されなければならない。したがいまして、私どもの方は技術協力、無償資金協力の実施機関ではありますが、最近大変な不祥事を起こしまして、国際協力一般に対するイメージダウンをしたということを申しわけなく思っておりますが、同時に、これから戒心して、ぜひそのような方針でこの実施に当たっていきたい、このように考えております。
  233. 井上一成

    井上(一)委員 外務大臣に重ねてお聞きしますが、すべて公開というかガラス張りというか、何らそこに疑念を抱かせるようなことがないように心がけなければいけない、こういうふうに私は思うのです。ガラス張りという言葉がそれに当てはまるのではないかと思うのですが、そういうことであるべきだと思いますが、重ねてお聞きします。いかがですか。
  234. 倉成正

    倉成国務大臣 御案内のとおり、円借款の問題と、それからODAの問題と分けて考える必要があろうかと思います。  円借款の問題につきましては、御案内のとおり、相手方の要求に応じて我が国がその案件を審査し、そして相手方と協力しながらこの問題を取り扱っていくという立場にもございます。そういうことになってまいりますと、相手国のそれぞれの事情がございますから、できるだけこれが公表できる部分は公表すべきでございますけれども、全部相手方の政府がやることについて明らかにするというわけにはいかない場合もあろうかと思いますから、この点は御理解いただきたいと思います。  また、ODAの問題については、これを隠すべき点があるのかどうかという問題でございますけれども、私は、ODAの問題についてはできるだけ表に出せるものは出していくというのが基本的な姿勢であろうかと思いますが、余り細かい技術的な問題であるとかあるいはいろいろな点についてやはり公表するのが適当でないような問題が若干あろうかと思いますので、そういう技術的な問題についてはまた専門家からお答えしたいと思います。
  235. 井上一成

    井上(一)委員 総裁、ここに私は国際協力事業団が出したフィリピンの小冊子を持っているのです。この中には「本誌が関係各位の業務の一助になることを願って止みません。」と書いてあるのですが、これは部外秘なんですか、出さないのですか。  さらに、あなたがさっきいろいろと答弁なさいましたが、私の聞きたいのは、援助それ自体は当然相手国の民生安定、いろいろその理念、目的というのははっきりしているわけなんです。外交上どうあるべきか。もう時間がありませんが、念のために、「フィリピンに対するJICA協力の概要と実績」という中で、「同国周辺海域がわが国海上交通上の要路であること、東南アジア地域の平和と安定の確保に重要な役割を果たしていることなど、わが国にとって大きな重要性を有している。」そのことが援助の一つの大きな概要の概念として事業団が列記されているわけなんです。だから私は、外交上どういう御認識なんですかとお尋ねをしているわけなんですよ。これはあなたの方が出されたやつなんですよ。部外秘だ、三年間出せないんだと言っているんだよ。そして書いていることは、皆さんに協力してください、参考にしてくださいと書いているのですよ。一体どういうことなんですか。そういう姿勢がいろいろな問題をつくり出しているのです。
  236. 有田圭輔

    有田参考人 お答えします。  私は事業団に参りましてから、これはいろいろ援助をする場合にどういう援助をしたらいいか、例えばフィリピンにもこれは世銀その他国際機関が援助をしている、あるいはアメリカ初め日本以外の国がいろいろと援助をしている。そういう援助の展開を見て、そしてその中で日本が何をやるべきか、日本の特定のプロジェクトがどういう位置づけがあるか、そういうことを認識するために、執務参考用としてその技術協力地図といったようなものをつくってはどうかということを提唱したわけです。これは一に部内執務用ということで数字を集めてみたらというものが発展したものがこれでございまして、今四十数ヵ国のものができております。これはただ、世銀の統計にいたしましても発表までは数年かかる、数字が古くなる。こういう冊子をつくるよりも、今お話がありましたような光ディスクにこれを収録して、時々刻々にこれが参考に出てくるような組織にしたい、一般にも使用させたいという趣旨でつくりましたものです。これは一応そういう部内資料ということでCRにはなっておりますが、これからは、そういう趣旨でございまするから、全部一般に公開するような形に組みかえてまいりたいと思っております。御了承願いたいと思います。
  237. 井上一成

    井上(一)委員 さらに、私が聞いた外交上の問題としての位置づけにJICAはそういう認識を持っていらっしゃるのは間違いございませんかと、こう聞いているのですよ。
  238. 有田圭輔

    有田参考人 国際協力事業団は一つの実施機関でありまして、政策決定機関ではございません。ただ、それぞれの国の国情とかあるいは周辺事情というものは周辺事情として勉強するという建前でありまして、それ以外に他意はございませんので、お許し願いたいと思います。
  239. 井上一成

    井上(一)委員 報道によると、フィリピン側から一時期、二千六百億円の援助を要請しているというような報道もなされているわけなんです。これはその内容あるいは日本政府側としての対応がどうなのか。もう既に我が国の一定の援助額が明示されているように聞き及ぶのです。  それで、十日にアキノ大統領がいらっしゃるし、私たちは心から歓迎をしたい、こういうふうに思っているのですが、フィリピン側の受け入れの体制がマルコス時代から変わったのかどうなのか、変わったという認識に立つのかどうなのか、あるいは今後疑惑を生むような構造には決してならないように我が国としては具体的に何らかの努力をしている、そういうことがお答えいただけるのかどうか、そういう点について外務大臣から聞いておきたいと思います。
  240. 倉成正

    倉成国務大臣 いわゆるマルコス疑惑に関しまして世上いろいろ言われていることは井上委員御指摘のとおりでございます。アキノ新政権が誕生いたしまして、これからフィリピンの将来を担っていくわけでございますが、そのアキノ大統領が今回日本においでになるわけでございまして、アキノ大統領と中曽根総理との間の会談もまた行われるわけでございまして、いろいろこういう援助の問題等につきましても、民生の安定というような点から考えまして、またこういう疑惑がないようなことについてもちろんいろいろお話があろうかと思いますし、我々外務当局としましても、そういう方面については最大の努力を払いたいと存ずる次第でございます。
  241. 井上一成

    井上(一)委員 検査院に聞きたいのですが、フィリピン援助の見直し検査で、中央開発に絡むプロジェクトが入っていたのかどうか、その点についてまず聞いておきたいと思います。
  242. 大久保孟

    ○大久保会計検査院長 お答えいたします。  フィリピンに対する借款にかかわる疑惑につきましては、六月と九月に海外経済協力基金本部の会計実地検査を実施いたしました。その中には、ただいま御指摘の中央開発に絡むプロジェクトは入っていないと承知しております。
  243. 井上一成

    井上(一)委員 中央開発が今回問題を起こしたコンサルタントでありますけれども、入っていない、こういうことでありますが、今後検査の対象に加えていくという、検討をしていくという用意があるのかどうか、この点について聞いておきたいと思います。
  244. 大久保孟

    ○大久保会計検査院長 今後のことについてお尋ねでございますが、海外経済協力基金及び国際協力事業団、JICAの検査を行う際に検査いたしたいと存じております。
  245. 井上一成

    井上(一)委員 外務大臣に。外務省の職員が、一部報道で報じられたわけでありますが、接待を受けてその癒着が指摘されているわけなんですけれども、この職員に対する処分というのでしょうか戒めというのでしょうか、その対応はどうなんでしょうか。そして、それはそれぐらいの処分で妥当だとお考えなのかどうか。
  246. 英正道

    ○英政府委員 報道においては実名は出ておりませんけれども、ほぼ特定できますので、本人に連絡をとりまして事情を聴取いたしました。本人は、業者と飲食をともにしたことはあるけれども、その交際は公務員としての良識の範囲内のことであって何らやましいことはないと述べていた次第でございます。私ども、それを信じたいと思っております。そういうことで、良識の範囲内のことでございますので処分は考えておりません。しかし、本人には今後外部の誤解を招くことのないように厳重に注意をしたところでございますし、本人も誤解を招いたことは大変遺憾としております。
  247. 井上一成

    井上(一)委員 外務大臣、私は非常に対応が甘いと思うのですよ、本人からの事情聴取で。私は決して人を責めるということには賛成ではないですよ。しかし、本当にこういうことを再び起こさないためにどうあるべきかというのは、やはりもっと厳しい戒めがあってしかるべきだ、こういうふうに思うのです。そうでないと、これは外務省全体がこのような体質だと勘違いをされますよ。念のために私は強くそのことは申し上げておきたい。  それでは次に基金の方ですが、OECFの方で中央開発が関与したプロジェクトはどことどことでしょうか。
  248. 青木慎三

    青木参考人 中央開発が関与しましたプロジェクトと申しますのは、私どもが借款を提供しております国、政府との契約でございますので、具体的な案件名ないしは国名は御勘弁願いたいと思います。
  249. 井上一成

    井上(一)委員 件数は言えるでしょうか。
  250. 青木慎三

    青木参考人 件数は、今までのところ中央開発が単独の場合もございますし、ほかのコンサルタントと組んだ場合もございますが、関与した件数は全部で七件でございます。
  251. 井上一成

    井上(一)委員 OECFの職員が民間企業に出向するということはあり得ることでしょうか。
  252. 青木慎三

    青木参考人 私どもの方の知識経験を民間会社の方で活用したいという場合に、私どもの方としては出向を認める場合がございます。
  253. 井上一成

    井上(一)委員 その場合、本人に対する身分はどのような形で出向をさせますか。
  254. 青木慎三

    青木参考人 いろいろな形態がございますが、一応は私どもの方の身分を休職にしまして、向こうの企業で働くということになるのが通常でございます。
  255. 井上一成

    井上(一)委員 全くもってだらしがないと思うのですよ。だらしがない。  それでは、中央開発の関与した案件にOECFの職員が出向したという事実はありますか。
  256. 青木慎三

    青木参考人 中央開発の会社に出向した例はございません。
  257. 井上一成

    井上(一)委員 中央開発が関与した案件に……。
  258. 青木慎三

    青木参考人 中央開発が単独でやる場合ではなくて、ほかのコンサルタント会社と組んだ場合に、そのコンサルタント会社に出向した例はございます。
  259. 井上一成

    井上(一)委員 具体的にその会社はどこでございましょう。
  260. 青木慎三

    青木参考人 オーバーシーズ・プロジェクト・マネジング・コシサルタントという会社でございます。
  261. 井上一成

    井上(一)委員 通称OPMACというんですね。その企業は何を仕事にしているんでしょうか。
  262. 青木慎三

    青木参考人 コンサルタント会社は通常技術的知識を持った会社が非常に多いわけでございますが、マネジメントに関しては必ずしもスタッフを抱えていない場合がございますので、技術面は普通のコンサルタント会社、それからマネジメントに対する助言はOPMACがやるというケースが大部分でございます。
  263. 井上一成

    井上(一)委員 そのコンサルタント会社からプロポーザル、いわゆる技術提案書あるいは企画書、それが上がってくるわけなんです。OECFはそこでどんな役割をする機関なんですか。
  264. 青木慎三

    青木参考人 企画案は私どもの方に提出されるのではなくて、相手方の政府ないし政府機関の事業を実施するところに企画書を出しまして、それを相手方の政府なり政府機関が審査をして取り上げるということになっております。
  265. 井上一成

    井上(一)委員 相手側政府が取り上げて、もちろんそれは資金供与、OECFから出るのだからOECFに審査のはね返りがあるわけなんです。OECFからコンサルタントの会社に出向させて、そこで提起されたものが相手国を通ってOECFにまた戻るわけなんです。こんなもの当然、なれ合いというか癒着というか、そこが落とすに決まっているじゃないですか。みんな一緒の器の中で仕事をやっている、結果はそういうことになるのと違うのですか。
  266. 青木慎三

    青木参考人 私どもは、その相手方の政府の決定につきまして、それが所要の手続に従って行われているか、あるいはその事業の審査をいたしましたときの事業の範囲に適合しているかどうかを審査するわけでございまして、どういうコンサルタントが一番適切であるかという点につきましては、相手方の政府の意向を尊重するということになっております。
  267. 井上一成

    井上(一)委員 建前論は相手側政府の意見を尊重する。しかし、金を出す側はOECFなんです。そして、OECFからコンサルタントに出向させている。そして、そこが相手側政府と話をしてOECFにまた戻ってくる。これは私は非常に不明朗というのでしょうか、全くもってばかげた話だと思っているのですよ、そういうところへ出向さすこと自身が。それだけ人が余っているのか。今行革、いろいろと国民がこれだけ厳しい状況にある中で基金だけがどっぷりとぬるま湯につかっているという、JICAだけがどっぷりとぬるま湯につかっているという一つの証左だと思っておるのですよ。そうでしょう。本当はもっと具体的にこの問題について私は資料を提出してほしいと思うのですよ。本人の名誉がありますから個人名を出すことは避けたい。しかし、今本人はOECFにおるのですか。
  268. 青木慎三

    青木参考人 具体的な名前を出すことは困りますので、だれのことかが余りはっきりしないわけでございますが、私が想像いたしますに、一時OPMACに出向していた職員は現在、私どもの方に一遍戻りまして世界銀行の方に出向している職員だと思います。
  269. 井上一成

    井上(一)委員 いや答弁は苦しいと思いますよ。しかし、やはりこういうことを明らかにしていくことがすべてをガラス張りにしていくことであり、今後の経済援助のあり方というものがきっちりと確立されていくと私は思うのですよ。それだからあえて私も――本当は嫌なんですよ、こんなことを指摘するのは。  そのプロジェクトは今日までどれだけの資金を支払っていますか。
  270. 青木慎三

    青木参考人 ちょっと今手元に数字がございませんので調べさせていただきます。
  271. 井上一成

    井上(一)委員 時間がかかるようであれば私の方は次の質問をしますが、すぐに出るようでしたら。いかがですか。――では総理、ちょっとお疲れのところ恐れ入ります。  大変総理に申し上げにくいのですが、いわゆるアメリカ国家に対する総理発言で一番困った、しまったと思っていらっしゃるのは私は中曽根総理だと思うのですよ。そして、いろいろな総理なりの努力を払われたことは私も認めたい。一定の効果もそれなりに行き届いているというふうに理解をする部分と、これですべて終えたと思われにくい面があるわけなんです。そういう点で、せっかく国際社会日本の中曽根総理としての今までの世界における功績を考えていく場合、これからの取り組みということもやはり考えてもらわなければいけないんではないだろうか。終わったという認識なのか、そうじゃない、これからがより大事だとお考えになられるのか、その点ちょっと聞いておきたいと思うのです。
  272. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 終わったとは思っておりません。これからがなお非常に大事である、そういう意味で非常にいい勉強もさせてもらいましたから。例えば通産省を通じまして、あるいはジェトロを使い、あるいは業界等も使って、黒人の新聞であるとかあるいは新聞に広告を出すとか、日本の商社は敬遠して出さなかったようですね。あるいはディーラーに白人ばかりを選ぶとか、そういうようないろいろな面について具体的に検討するように今進めさせておるところでございます。
  273. 井上一成

    井上(一)委員 これはきょうは質問する予定ではなかったのですが、例えば人種差別撤廃条約という国際条約があるんですよ。これにはアメリカはもう署名をしているのですけれども、我が国はまだ署名をしていないわけなんです。署名は行政レベルでの問題だというとらえ方と、即そのことによって発効していくという二通りのなにがありますけれども、その議論を積み上げた上で、そういうことに対する取り組みも、世界に対しての中曽根総理の、けさほど任期一年だと言われていますけれども、そういうことにかかわらず、やはり総理対応としてぜひ検討していただきたい、こういうふうに思うのです。
  274. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 あの条約について私も質問を受けまして研究してみましたし、役所の意見も聞きましたが、この条約の内容に、いろんな人権を守るためのこうやってはいけないというその中に、あおってはいけないということが、幾つかのそういうことがございまして、それが日本の刑法の上から引っかかるところが出てくる。つまり扇動とかあおりとかということをやる、そうすると表現の自由とか、あるいは団体行動や学問とか、そういういろんな日本の自由権に引っかかってくる場所がある。そうすると、そういうような法律をつくりますと憲法違反になるおそれがある。そういう点で法務省は非常に苦悶しておりまして、何とか打開する方法はないのかといって今検討させておるというところであります。
  275. 井上一成

    井上(一)委員 この問題についてはまた。  答弁ができるようですから、どうぞ。
  276. 青木慎三

    青木参考人 ただいままで先生との間ではプロジェクトの名前を出しておりませんでしたが、私どもの方からプロジェクトの名前を申し上げるわけにいきませんので、ひとつプロジェクトを特定していただければ数字を申し上げます。
  277. 井上一成

    井上(一)委員 あなたの方が七件言われたんでしょう。では、単独は何件ですか。
  278. 青木慎三

    青木参考人 単独が二件で、あとは全部ジョイントでございます。
  279. 井上一成

    井上(一)委員 単独の案件をおっしゃってください。
  280. 青木慎三

    青木参考人 単独の案件の名前を申し上げますことは、相手方政府とコンサルタント会社の契約でございますので、相手方政府の了承なしに名前を言うことは御勘弁願いたいと思います。
  281. 井上一成

    井上(一)委員 委員長、審議の中でこんな形でなく、もう少しちゃんとした答弁がないと、これは質疑にならないと思いますよ。私の方から指定しなければ答えられないなんというそんなことはおかしいと思うのですよ。何らそれを発表しても相手国の主権を侵害するわけでもないわけなんです。これは私はちょっと、私の方からって、なぜ私から言わなければいけないのですか。なぜ私が言わなければいけないのか、逆じゃないか。
  282. 青木慎三

    青木参考人 コンサルタント会社と相手方政府との契約につきまして、私どもの方からどこでだれがその政府と契約したかということを申し上げるのは、相手方政府の契約の内容の一部を申し上げることになりますので、相手方政府の了解なしにはやらないということに私どもの方としてはなっておるわけでございます。御了承願いたいと思います。
  283. 井上一成

    井上(一)委員 私は、やはり私から申し上げるということは筋違いではないか、こう思うのです。だから、案件名も言えない、あるいは相手国に迷惑がかかる、なぜ迷惑がかかるのか。全部今までは出しているわけなんですよ。だから、そういう意味では、当局がしっかりと答えていただかない限り次には入れません。
  284. 砂田重民

    砂田委員長 青木参考人、いま一度御答弁ください。
  285. 青木慎三

    青木参考人 相手方政府とコンサルタント会社の契約でございますので、相手方政府の了承なしに私どもの方から案件の名前ないしは国名を申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  286. 砂田重民

    砂田委員長 申し上げます。  十五分間休憩をいたします。     午後三時三十三分休憩      ────◇─────     午後四時六分開議
  287. 砂田重民

    砂田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  井上君に申し上げます。  相手国政府と民間コンサルタント会社の間の契約でありますので、外交慣例として政府側より答弁しかねます。今後、委員長として政府側と検討を続けます。  井上君。
  288. 井上一成

    井上(一)委員 大変残念なことですが、私はやはりそういうことは明らかにしていくことが、海外経済援助に対する国民のコンセンサスというものが得られる、こういうふうに思うのです。私自身、大変不満足であります。しかし、委員長が今後御努力をいただくということでありますから、きょうはこの問題についてはこれ以上の質問は留保したい、こう思います。  最後に、私は景気刺激対策として建設大臣にお聞きをしたいのですが、先ほども少し申し上げましたように、今回の補正予算が実際に内需拡大、国民の景気刺激にどれだけ効果を出すかということにいささか疑問を持っている者の一人なんです。予算編成に当たって大蔵大臣が御苦労されたということは、それはそれなりにわかるのですけれども、時期遅き感の、そういうことも含めて、建設大臣、こんなことで本当にいいのだろうか、あるいはそれぞれの関連する地方自治体なりあるいは関係者も本当に心からこの今回の補正を満足の形で受け入れられるのかどうか、大変私は案ずるところでありますので、その点についても質問をさしていただきたい、こういうふうに思います。
  289. 天野光晴

    ○天野国務大臣 せっかくの予算、完全に執行できるかできないかという問題でございますし、中曽根内閣それ自体が四%に限りなく近づける努力をする、そのために出した補正予算であります。私の方が執行責任の大体七〇%近くを持っておるわけでございますが、非常に難しい問題が二、三点あります。  一つは、何といっても時期的に非常にまずかったのではないか。少なくとも、どうせこの臨時国会にやるのならもうちょっと早目にできなかったか。これは我が国の大体半分近くが寒冷地帯になりますから、そういう点で地方議会の議決を待ってこれをやるとすれば何ぼ早くても十二月初めでございます。これは非帯に遺憾なことでございます。  それに予算の内容についても、御承知のように一兆四千億のうち七千億が債務負担行為でございます。特にそのうちの四千億がまあ一応使える形になりましたが、残りの三千億がゼロ国債と称するものでございますから、そういう点で非常に執行上問題がございますので、どうしても大蔵省当局が理解がなければこれはこの予算から外してもらうほかはない、私はそう思ったのでありますが、せっかく出した予算、使えるようにしてもらう方が一番いいんじゃないかというので、事務的に折衝を重ねてきました。これは来年度でないと金が出ないのですから、そういう意味で、今年度中に幾らかでも使わせるとするならば契約と一緒に金を業者に預けなくちゃいけません。そういう点で、契約を受けた者が単独でこれを金融機関から金を借ります、その保証も大蔵省が面倒を見る、政府が面倒を見る、そしてその金利も面倒を見るというような格好で、この三千億も曲がりなりにも今年度中に使えるようになりました。  そこで、私たちの方では全力を挙げて今事務的に扱いをしているわけでありますが、十二月いっぱいで契約は完了します。どんなことがあっても完了しなくちゃいけないというのでやっておるのですが、最悪のものが起きれば、これはちょっと容易ではないと思います。殊に雪寒地帯、北海道、東北、北陸といったような地域に対しては、冬でもできる仕事、要するに端的に言えばトンネルをやるとかあるいは橋をやるとか、河川工事はできますから、そういうのに手配りをしまして配慮をしたつもりであります。通産大臣との連携もとりまして、今の非常に経済的に容易でない業種が数多く出てきました。先ほどお述べになられましたように、炭鉱がだめ、造船会社がだめ、そして鉄鋼会社がだめというようなことでもあり、北海道は特に漁業で非常に容易でないという考え方のものですから、その点について十二分配慮ある傾斜配分をして、できるだけ執行に全力を挙げてやりたいと思っております。  以上です。
  290. 井上一成

    井上(一)委員 大蔵大臣、お聞きをしておって、これはむしろ第二次補正をもう今にも検討していかなきゃいけないんじゃないか、これぐらいの取り組みをやはり考えなけりゃいけないんではないかというぐらいに僕は受けとめたんです。いかがですか、大蔵大臣。
  291. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 このたびの御審議いただいております補正予算を一日も早く成立をさせていただきまして、全力を挙げて執行をいたしたいと思います。
  292. 井上一成

    井上(一)委員 それでは、私の質問はこれで終わります。
  293. 砂田重民

    砂田委員長 これにて井上君の質疑は終了いたしました。  次に、楢崎弥之助君。
  294. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、おととい菅直人委員、昨日は木下敬之助委員が、SDIと非核問題について、もし核爆発を利用してエックス線レーザーをSDIに使用するときにはこれは非核と言えないのではないか、そういう質問をされたと思います。これに対して総理は、まず核兵器の定義について、核爆発を利用して直接破壊し殺傷する力を持つものを核兵器と言う、ところが言うところの核爆発を利用したエックス線レーザーは核爆発を間接的に利用しているからこれは核兵器の範疇に入らないのではないか、そういう答弁をされたと思います。これは今度だけじゃないのですね。昭和六十年二月十九日の予算委員会で、総理は同じような答弁をされています。  外務大臣、外務大臣も総理のあの御答弁と同じ見解ですか。
  295. 倉成正

    倉成国務大臣 エックス線レーザーという兵器はまだ存在しない兵器でございまして、これからどういう形になるものかということは予想つかないわけでございます。存在しない兵器について、これについて私が論評を加えるわけにはまいらないと思います。
  296. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それじゃ、核兵器の定義については総理と同じ見解ですか。どうです、外務大臣。
  297. 倉成正

    倉成国務大臣 核兵器については総理と同じ考えでございます。
  298. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 防衛庁長官はどうですか、核兵器の定義については同じですか。
  299. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 同じであります。
  300. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この答弁は実はちょっと古いですが、昭和三十三年四月十五日、参議院、田畑金光委員の要求に対して政府が提出した資料があります。読んでみます   核兵器及び通常兵器については、今日、国際的に定説と称すべきものは見出しがたいが、一般的に次のように用いられているようである。  ア 核兵器とは、原子核の分裂又は核融合反応より生ずる放射エネルギーを破壊力又は殺傷力として使用する兵器をいう。 これはそのとおりの政府見解です。だから、総理の答弁はおおむねこれに沿っていると思うのですよ、随分古い話ですけれども。ところが、このとき「国際的に定説と称すべきものは見出しがたい」だからこうだと言っているのですね。  それでは総理にお伺いしますが、核兵器の定義について国際的に定説と称すべきものが出てきたら、それにお従いになりますか。
  301. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは、原子力基本法を制定しました、あれは議員立法でやったものであります。そのときに、社会党からは松前先生、それから志村先生、それから昔は自由党がありましたけれども前田先生、我々でいろいろ相談しまして、そのときに核兵器とは何ぞやということで相談をして、今のように我が国における核兵器の定義、原子力基本法における核兵器の定義、そういう意味でそういうふうに決めて、それを私は委員長として答弁したわけなのであります。我が国の定義はそういうものであると考えておけます。
  302. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私がお伺いしているのは、今まではそれでよかったと思うのですよ、もう既に昭和三十三年にそういう見解を出されておるから。しかし、この昭和三十三年の見解に言われているように、今国際的な定説がないからというあれがついているのですね。だから、国際的な定説が出てくればその定説にお従いになりますかということを私は聞いているのです。原子力基本法の当時のことを聞いているのじゃないのです。
  303. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 我が国が原子力法体系をあのときにつくりましたときの核兵器の定義というのはそういうもので決めてきたのですから、その定義でずっといくべきものであると考えております。
  304. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 外務大臣、国際的に定説はありませんか、核兵器の定義について。
  305. 小和田恒

    ○小和田政府委員 先ほど楢崎委員から御指摘のありました政府見解では、御指摘があったような見解を述べております。その後、楢崎委員御自身から、昭和四十九年の年末であったかと思いますが質問主意書が提出されまして、昭和五十年一月十日にそれに対する答弁書で核兵器についての定義を述べております。その中で、基本的には昭和三十三年の政府見解と同様な定義、すなわち「非核三原則にいう「核」とは核兵器を指し、核兵器とは、原子核の分裂又は核融合反応より生ずる放射エネルギーを破壊力又は殺傷力として使用する兵器」である、こういうことを述べております。そこで、昭和五十年の答弁は、今私が御説明したことからもおわかりのとおり、国際的な定説があるかないかということには触れずに、政府としてはこういう考え方であるという定義を申し上げているわけでございます。  他方、その後の国際条約その他におきまして種々の定義あるいは規定が置かれておりますけれども、基本的に核兵器の定義についての考え方に国際的にそう大きい差異はない。もちろん、条約その他の目的に従いましていろいろな形の定義というものは用いられておりますけれども、大筋におきましては、先ほど来申し上げております政府見解に沿っているラインであるというふうに考えております。
  306. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 国際的な定説あるいは国際条約に核兵器の定義がありますかと聞いているのですよ。あるならあると言ってください。では、どういう条約がありますか。
  307. 小和田恒

    ○小和田政府委員 先ほども申し上げましたように、条約は、その条約の目的に従っていろいろな定義を置くわけでございますけれども、例えば核不拡散条約あるいはトラテロルコ条約その他いろいろな条約にそれぞれの定義は置いておりますが、その基本的な概念をなしているところは、先ほど来申し上げているところであろうというふうに理解しております。
  308. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 基本的な概念を聞いているのじゃないのですよ。国際的な条約で核兵器の定義をぴしゃっとしたものがありますかと聞いているのです。あるならあるとおっしゃればいい。  一番国際的な定説になり得る条約は、あなたがくしくも今言いましたよ、トラテロルコ条約ですね、ラ米条約ともいう。これは中南米非核武装地帯条約です。これがつくられたのは一九六七年二月十四日ですね。そして、核を持っておる核保有国は全部これを批准しているのですよ、いいですか。そうすると、核兵器を持っている国が全部批准している国際条約ですから、その中に核兵器の定義というものがあれば、日本が何と言ったってそれが国際的な定説になるんじゃありませんか。そうでしょう。あなたは世界の中の日本ということをよくおっしゃいますから、私はそうだと思いますよ。  どう書いてありますか。第五条にぴしゃっと書いてある。「(核兵器の定義) この条約の適用上、「核兵器」とは、核エネルギーを制御されない方法で放出することができる装置であつて、戦争目的に使用することに適した一群の性質を有するもの」そして、ある兵器なら兵器、その中に入っておって分離できないもの、これは全部核兵器だ、こうなっているのです。これが定説じゃないのですか。核兵器を持っている国がこれを批准しているのですから、アメリカも、レーガン大統領が非核と言っても、調印しているのですよ。ここのどこに直ちに殺傷力とか破壊力がこの条件になっていますか。この条件は、きのう木下委員が言ったとおり、まことにわかりやすいことを言っておる。平和利用か戦争利用か、そのとおりなんです。ここでは「戦争目的に使用することに適した一群の性質を有するもの」もうそれだけで足りているのですよ。  だから、政府はこの見解に統一するかどうか、まず聞かしてください、中曽根さん。これは国際的な定説ですよ、くどいようですが。核兵器を持っている国が全部これを批准しているのですから、核兵器を持っていない我が国が言うよりもこれは権威がありますよ。どうでしょうか。
  309. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それはその条約における核兵器の定義であって、我が国における定義は我が国がちゃんと原子力基本法というものをつくって、そのときに決めた定義が我が国の定義であります。
  310. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 総理は、たしかアメリカだとかレーガンさんが非核だと言うから非核だとおっしゃっていたのではないのですか。そうでしょう。だが、アメリカはこれを批准しているのだ。だから、アメリカから見れば、もし核爆発を利用するものをエックス線レーザーに使ったらこれは核兵器ということになるのですね、この国際条約の定義からいえば。  それから、外務大臣は何ですか幻の兵器みたいなことをおっしゃっていますけれども、これは幻ではないのです。いいですか。これは内容についてはアメリカ国防総省は秘密事項にしております。だから若干の沿革だけしか発表しておりませんよ。わずかに核融合による爆発、すなわち水爆を使うんだ、この構造が既に紹介されております。そして、現在までにネバダの地下核実験で実施されたエックス線レーザーの実験があるのですね。一九八一年一月に議会に秘密報告が出されております。八六年八月現在で既に六回以上の実験が行われておるのですよ。それから、これまでカリフォルニア州のローレンス・リバモア研究所でエクスキャリバー計画という名で既に開発が続けられておった。そして、最近の報道によりますと、一九八五年三月二十三日に新しい大型の装置のスーパーエクスキャリバー、それを使用して実用化に一歩近づいている、そういう報道が既になされておるのだから、これは幻の兵器ではないということを私はここではっきり言っておきますよ。  そうしますと、我が国ではなんてそんなことは通りませんよ。何回も言うようですけれども、アメリカが言いあるいはレーガンさんが言っているからということを理屈にしているのだから。核兵器の定義はアメリカはこうですよ。そうすると、それからいくと、核爆発を利用するそのエックス線レーザーは何としても核兵器なんです。これは水かけ論になれば時間がもったいないから私はあれしませんけれども、これが国際的な定説というものです。あなたが見習っていらっしゃるレーガンさんの国が調印している国際的な条約上の核兵器の定義と明確になっておりますから、それを私ははっきりしておきたいと思います。  それから、SDIについてもう一つちょっと聞いておきますが、研究参加しますけれども、将来経費の負担ということが起こる可能性はありませんか、どうでしょうか。
  311. 倉成正

    倉成国務大臣 研究計画についての経費の負担ということは考えておりません。
  312. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 可能性は全くないですか。
  313. 倉成正

    倉成国務大臣 研究計画そのものについての日本政府の負担、予算というものは考えておりません。
  314. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 しかと承っておきます。  実は、次にJICA汚職とマルコス疑惑問題について質問する用意をいたしておりました。ところが、先ほどの井上委員のあの論法でいきますと恐らく同じことになるのではなかろうか、ケースは違いますけれども。だから、これはうちの会派の理事を通じて委員長のもとに調査をお願いしたい。というのは、与野党の国対委員長会談の中で、このマルコス疑惑なりJICA汚職についての特別委員会の要請を野党が一致して要求しましたときに、藤波国対委員長は、それは政府で調査をしているからそれを見守りたい、こうおっしゃっていますから、どの程度調査が進んでおるか。私はマルコス疑惑とこのJICAの汚職が交差した例を一つだけ挙げてその調査をお願いしようと思っておりましたけれども、同じ結果になろうと思いますから、具体的な名前を言わなくちゃいけぬようになりますので、理事会にうちの理事を通じて報告をしますから、委員長の善処をお願いをしておきます。どうでしょうか。
  315. 砂田重民

    砂田委員長 承っておきます。
  316. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 承っておきますって、聞いておくだけですか。さっき、あなたは善処すると言ったでしょう。井上君と同じ、井上君のあの問題は、委員長において、しかと話し合って善処すると言ったのじゃないのですか。私の場合はどうして承っておきますになるのですか。
  317. 砂田重民

    砂田委員長 承っておくべき御発言だと心得ました、ただいまのあなたの御発言は。
  318. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 何とおっしゃったのですか。私は大変紳士的にやっておるつもりですけれども。総理もうなずいていらっしゃるでしょう。私の言っていることの方が筋が通っておる。同じような種類のことなのです。じゃ同じ取り扱いをしてもらえますね。
  319. 砂田重民

    砂田委員長 はい。
  320. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それじゃ、速記録には載りませんが、記者会見で言うかもしれません。  総理、今からは国防会議の議長としてお伺いします。――もうないのですか。それじゃ安全保障何とかですか。ちょっと二年半、留守しておりましたから済みません。まあしかし、中身はしっかりしておりますからね。  総理にお伺いしますが、じゃ総理でも結構ですよ。SIOP、そういう言葉をお聞きになったことはありますか。それだけでいいです。
  321. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今御発言なすった範囲ではちょっと聞いたことがないように思いますね。
  322. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ちょっとこれも私も勉強してわかったんです。別に威張るわけじゃ決してありません。これは、シングル・インテグレーテッド・オペレーショナル・プラン、つまり単一統合作戦計画。これはなぜ単一かといいますと、アメリカの全三軍の核兵器を使用する唯一の戦争計画なんですね。それで、なぜ統合かというと、「同計画が太平洋、大西洋、そしてヨーロッパにおける米軍部隊、さらにアメリカに最も親密であり、本当の意味で唯一の核保有同盟国であるイギリスの戦力をも組み込んだあらゆる核戦争計画を包括しているからである。」だから、今度のリムパック86にもイギリスが参加しましたね、初めて。それで、これはいわゆる核作戦なわけですけれども、このSIOPの中で、戦略的な核攻撃のターゲット、目標をカテゴリーとして四つ挙げています。これは一九八〇年の三月に、アメリカの上院軍事委員会にこの四つのカテゴリーにおける戦略的核攻撃標的の例を挙げております。  どういうふうになっておるかといいますと、第一番目がソ連の核部隊ですね。例えばICBM、IRBM、その発射設備あるいはその発射指揮センター、核兵器貯蔵サイト、二番目のカテゴリーが通常軍隊、三番目のカテゴリーが軍事的、政治的指導部、四番目のカテゴリーが経済及び産業設備を標的にする。この四番目の経済及び産業施設の標的の中に原発が含まれている。これは核戦争なりあるいは核に関係する問題で、非常に私はその本を読んで驚愕しました。日本にも二十二原発があります。それで、私はこの説明を読んでびっくりしたのですけれども、ちょっと説明をしてみたいと思うのです。これは私は政府を追及する立場ではありません。大変な問題だからみんなで一緒に考えたいという立場からこれをちょっと注意を喚起したい、そういう意味です。  それで「戦略的核攻撃標的」となっていますね。「標的となる原発」説明がしてある。それで、「最近ではカーター政権における戦略的核攻撃標的(PD-五九)やレーガン政権における一九八四年から一九八八会計年度の防衛大綱においても、原発は経済的、産業的攻撃標的の一つに含まれている。他の核保有国においても同様の計画を持っておるだろう。  一九八五年には三百九十八の原子炉が二十八カ国で稼働しておる。また十カ国で建設中かあるいは計画があった。」はしょって要点のところだけ読ましていただきますと、「一九八一年六月にイスラエルがイラクの核研究原子炉を破壊した。」  私がなぜこれを言うかというと、必ずしも核爆弾を使わなくても、普通弾頭を使っても原発を攻撃すれば核爆弾と同じ被害が出るから私はこれを言っておるのです。既にその例があります。  イスラエルがイラクの原発を攻撃をした。そして「これらの事例のいずれにおいても放射能の放出は破壊による避け得ない副産物であり、同時に第一の対象となり得る。他の事象においても莫大な地域が汚染されることがあり、そしてそれは核兵器そのもの及び長期間の残留により引き起こされる汚染以上のことがある。」  つまり、核兵器の攻撃によるよりも損害がひどいことがありますよ、被害が。どういうふうな状態になるかというと、「原子力発電所は、直接攻撃ばかりでなく、発電所から一定距離を置いた攻撃によっても破壊され得るであろう。」つまり「優先的に原子炉を標的にすることの判断基準は、原子力発電を標的にすることが増加することで核兵器によるよりも損害が著しく増加するであろう。」それでどういうふうな状態かというと、「原子炉の上空六千八百フィートで百キロトンの核兵器が、あるいは六マイル上空で十メガトンの核兵器をもって爆発した場合でも、核設備、つまり原発の冷却系を転倒させるに十分な過圧が得られる。」それから「電磁パルス(EMP)の放出によって核兵器の高度爆発が、」高いところで爆発すれば「爆発から数百マイル離れた原発の電気系統が粉砕される可能性がある。そういうことにアメリカの原子力監視委員会は非常に注目をし出した。」  これには例がありまして、今からずっと前の話ですけれども、一九六二年にジョンストン島で水爆の一・四メガトンの実験をやったんですね、アメリカが。そのときに、千三百キロ離れておるハワイの電気が一遍に消えたんです。それで、なぜだろうか、これがいうところの高高度における核爆発、四百キロぐらいの上空であったと思うのです。ちょっと今、捜していますけれども。  それで、これはサイエンス誌の八一年五月二十九日号に載っております。「米国の中央部のネブラスカ州の上空三百二十キロで、ソ連の一メガトン水爆が一個爆発したとする。これによって全米の無防護の通信網や電力制御網が全滅する可能性がある」二十年前、すなわち一九六二年七月八日に、今言ったとおりジョンストン島の上空で超高空の核爆発の実験を行いました。一・四メガトンの水爆を爆発させた。それで、これがどうしてかというとEMP、つまり電磁波です、これの影響によったということが後でわかったのです。  それで、これが大変になって、今米国の猛烈な関心事になっているんですね。光ファイバーなんかはこのEMPに強いから、それでペンタゴンは日本の光ファイバーを軍事用として購入したことがある。通産大臣、そういう事実はないですか。
  323. 田村元

    ○田村国務大臣 調べさせましたが、そういう事実がちょっと見当たりません。
  324. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あるんですね。これは日本電気がペンタゴンに納入しています。そしてその後、富士通が同じようなことで向こうに売ろうとしたら、そのときには向こうは買わない、アメリカが。そしてEA社にやってしまった、制能は富士通がいいのに。だから富士通が抗議を申し込んでおります。日本電気のときには買うとるじゃないか、何でなんだ、そういう事実があるのです。通産省、もう少し調べたらどうですか。  おわかりにならないのならちょっとお教えしますけれども。一九八四年の秋にコロラドスプリングスにある北米防空司令部NORADとピーターソン空軍基地との間約二十九キロを結ぶ軍事用の光通信装置を日本電気が納入したケースがある。それで、これはどうしてかというと、EMPの対策としてこの光通信装置をあれしたんですね。私が言いたいのは、アメリカは既にそんなふうにEMP対策をやっておる、日本からそういうものを買ってまで。それを私は言いたいだけ。だから、それは調べられたらわかりますから、何もそれで追及するあれはありません。ただ、このときはたしかまだ軍事技術は輸出できなかったのじゃなかろうかと思いますけれども、それはいいです。  それで、自衛隊の方ではこのEMP対策というものを考えておられますか、防衛庁長官
  325. 西廣整輝

    西廣政府委員 高空で原子爆弾が爆発した場合に非常に高い電磁波が出る、そしてそれが電子機器等に障害を及ぼすということは承知をいたしております。しかしながら、それがどういうものであるかということについて、私ども、当然のことながら原発の実験をしたわけではございませんのでわからない点が多いわけでございますが、いずれにしましても、各種の電波の雑音が入ってくる、あるいは電波干渉が行われる、そういったものに対する対策、例えばシールドを強くするとかいろいろな対策があろうかと思いますが、そういったものと共通するのではないかということはございますけれども、現在特段に私ども十分な知識があるわけでもないし、その対策を特にとっておるということではございません。
  326. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなたが御存じないだけなんじゃないでしょうか。海上自衛隊の第二術科学校で使われております応急教科書(CBR戦防御)これの第十二号、昭和五十五年二月十八日に出されておる。それを資料として出してみてください、今すぐ出せとは言いませんから。その中に既に対策として書いてあるのです。防衛局長がそういうことを知らぬじゃ困りますね。これほど重大な問題になっているのです。  私が言いたいのは、あなたはきのうですか、上田委員に対して、巡航ミサイルができた、だからレーダーをやられる可能性があるから、いろいろ武器技術が発達しているから、いろいろおっしゃっていますけれども、どんなに正面装備をいろいろやってみたって、例えばあなたが巡航ミサイルをあれしたから言いますけれども、巡航ミサイルがレーダーをやるのもあるでしょう。今言ったように原発をやったらどうなるのです。どんな被害が起こるか私が資料で出しております。だから私は、これは相当真剣に取り組む必要があろうと思うのです。  それで、このEMPと、核の場合はN、ニュークリアをつけてNEMPと言います。これは、大は、今言った核爆発の際に起こるやつ、これが一番ひどいやつ。小は、本当にいろいろな電磁波が出ることは御承知のとおりです。だから、こういう力の小さいやつは不要電波とか電子スモッグとか言われています。  それで、今NEMPの方の、もし一メガトンがこのぐらいのところから落ちたらどうなるかというのを私はお渡ししている資料2に想定を書いております。例えば「ケース一」の場合、ウラジオストク上空八十キロ、そこで爆発が起こったら半径一千キロメートル、だからハバロフスク、ハルビン、大連、朝鮮半島全域、我が福岡、大阪、仙台、網走、全部このEMPの影響を受けます。この討議資料の2のところに出しております。  それから、3のところに、今度は今言いましたように、電磁波がいろいろな電子機器の装置の中から出される。力の弱いものは不要電波とか電子スモッグとか言いますけれども、それでその発生源、どうしてそういうあれが出るかというと、自動車、航空機などの内燃機関の火花放電、送電線、オゾン発生器など、それから蛍光灯、ネオンサインなど、電車、電気バリカンなどいろいろあります。  それで、これは関係省庁から、どういう小の方の電磁波の被害が出ているかという資料をいただきました。ここに出しておりますけれども、これは郵政省の電気通信局監視監理課調べ電磁波の障害実例。テレビゲーム機による電車無線の交信障害。一九八四年十二月、一九八六年三月、発生場所、大阪府堺市。以下、どういうあれが出ているか。あるいはクレーンの電気火花によるロボット旋盤の誤動作。これが世間を騒がせましたロボット殺人。これは裏に書いております。これも労働省の資料でありますけれども、六件殺人が起こった。ロボットが電磁波によって狂って、だから挟まれて、そしてロボット化されていますから人間が一人ぐらいしかついてないもので、その人が殺されたらなぜかというのがなかなかわかりにくいわけですけれども、こういう報告が出ておるわけですね。それで、各関係の省庁にわたっていろいろな問題が出てくる、それを4のところに私は挙げておるわけです。  そこで、各省にわたってどういう問題が起こるか。これをここに例を想定をしておりますけれども、まずカテゴリーを幾つかに分けて各関係省庁のあれを出してみております。  科学技術庁関係では、先ほど申しました原子力発電所の問題。これがNEMPでどう破壊が想定されるか。先ほど言いましたとおり二十二基の原発がありますから、それがもし破壊を受けるとするならば、すなわち二十二個の核攻撃を受けたことと同じになるのですよ。  それから運輸省関係でも、例えば航空管制をやっています。これが狂えば飛行機がぶつかってしまいますね。橋本さん、新幹線もそうですよ。あくびしているけれども、電磁波が起こって。知っているでしょう、あなた、電話のNTTとの関係はもうあなた専門家だから。  それで大蔵省。これは大蔵大臣、今はオンライン化しておりますから、これが影響受けると、もうパアになりますね。これは非常に社会不安を爆発させる、そういう危険があると私は思うのです。  自治省も、自治体には今コンピューターが入っていますね、何かちょっと住民票もらいに行くときでも何でも。これが全部狂っちゃう。  だから私は、今後アメリカに負けないように、この点はEMP対策を十分しないと、先ほど申し上げたとおり、どんなに兵器を入れても本当の防衛になるだろうか。そういう意味では私は、きょうは核兵器、原発の問題、それからEMPの問題、これは新しい問題として注意を喚起したい。それで、核軍縮というものが新しい観点からもう一遍見直されなければ大変なことになると思うのです。私は、要するに一番最後に書いておりますとおり、わずか一発のEMP核攻撃によって我が国は壊滅をしてしまいます。特に喚起したいのは、我が国への直接攻撃ではなくても、極東地域へのEMP攻撃で予測しがたい非常事態が出現することであります、さっき地図を三つ私は書いておりますけれども。だから核廃絶に向けた努力は何よりも優先しなければいけない。  それで、今度の米ソ会談がああいうふうになって、私は中曽根総理と不思議に評価が一致したのは、きのうの中曽根総理の、レイキャビクの米ソ決裂に対してどう思うかという正森委員のあれに対して、決裂して残念だけれども、しかし非常に核軍縮について潜在的合意が進んでいる、ある程度煮詰まるところまで行っているんだ、これは後返りできないんじゃないか、そうだと思っているのじゃないかという評価です。私もその点は全く不思議に、今まで一致したことなかったのですけれども、一致しました。私はそう思うんです。だから、そういう意味では、この核軍縮はどうしても成功させなくてはいけないと思うわけです。  それで、これはちょっと酷な言い方かもしれませんけれども、注意を喚起するには言い過ぎた方がいいと思いますから。このEMP攻撃に対して、我が国自衛隊が誇る正面装備は全くと言っていいほど機能しないことがはっきりしておりますね。今装備局長がおっしゃったですね、何にもやってないと。だから、もしこういうことじゃ、どんなに防衛計画大綱をいじろうと、これはむなしいことになる。壮大なむだ遣いになる。私は、これは二十一世紀に向けての防衛というもののあり方についてここでまじめに真剣に考えなくてはいけぬのではないか、これが我々の後世に対する一つの責任ではないか、本当にそう思うのです。それで、こういう点について、これはさっき言ったとおり、大は防衛庁のNEMPから、各省庁にわたっています。これはひとついわゆる民活と申しますか、そういう英知を集めて、どうすべきかということを考える時期に来ておるのではなかろうか。私に言わせれば、金丸副総理は無任所で民活に力を入れておられるから、そういうものをつくるような御意思がないだろうか、アメリカにおくれないように。そういうことを私は真剣に心配しておるのです。この点は総理、ひとつまじめに考えてみていただけませんか。どうでしょうか。
  327. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いわゆる電磁パルスの問題については私も前に聞いたことがありまして、個人的には多少勉強もしてみたこともあります。ただ、その可能性について楢崎さんがおっしゃるようなことが全部出てくるかどうか、その辺は研究課題でもあると思います。  それから、原子炉のような問題の場合には、電磁波が出る場合あるいは出ない場合、いろいろな面についての緊急冷却装置の設備だけは日本はしてありますし、いざというときには手動に切りかえるということも設備にはしてあると思います。これは、水戸の射爆場のそばへ東海村の原子炉をつくるときに、あそこで模擬爆弾の投下練習をやっておりました、それがもし当たった場合にどうなるだろうか、あるいは飛行機が墜落した場合にどうなるだろうか、そういう仮説もつくっていろいろシミュレーションでやらしたことがあるのです。そういうような面から見ましても、いざという場合に手動に切りかえるという用意も実は緊急冷却装置についてはさしてあるのです。  そういういろいろな問題もありまして、今おっしゃったことは一つの課題を投げかけられたとして、私勉強してみたいと思っております。
  328. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この影響は短時間、短時日じゃないのです。だから、これは手動に切りかえていつまでもあれするような問題じゃございません。病院に電気が切れたときに自家発電してメスを動かすような設備がありますけれども、これは短時間の問題じゃないのです。だから、もう少し真剣に受けとめていただきたいと要望をいたしておきます。  ゴルバチョフの来日がいつになるかわかりませんが、もし来られたときには、当然SDI日本研究参加の問題が論議の対象になるのではないか。外務省はどう思われていますか。
  329. 倉成正

    倉成国務大臣 日本政府は、SDI研究参加をもう既に決定いたしております。それについていろいろ御意見が交わされるかもしれません。何とも私の方で今予測することができないことでございます。
  330. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いや、向こうが問題にしなくても、問題はあると思うのです。用意されておった方がいいと思いますよ。どうしてかというと、ABM条約の第九条及び附属合意書G項、これの解釈について外務省は用意しておかぬといけませんよ。これは第三国にいろいろな技術をあれしてはいかぬというあれです。特にG項は、ABM条約九条は、米ソ両国が他の諸国に対してABM体系もしくはその構成要素の技術的内容や責写真を提供してはならない義務を課していることを双方は了解しておる。だから日本にはやれないのです。アメリカは、このG項があるのを承知しながらどの程度の研究参加を望んでいるんですか。  この点は、昨年の四月十九日、井上委員が質問している。それから三日後、四月二十二日にアメリカの専門チームが来ているのです。このときの答弁はこうなっている。「今回アメリカの専門家が来ました場合に、こういう条約の規定、それからその合意声明の中身に照らして、一体何が米ソの間で第三国との関係において許容されていることであり、何が許容されていないものであるかということについては、十分確認をしたい」とこのとき答えている。三日後に来ている。だから確認しているはずでしょう、こう答弁しているから。わかりませんじゃ済まされませんね。どこまで、どの程度まで日本は研究に参加するんですか。どうアメリカは説明しましたか、専門家は。
  331. 小和田恒

    ○小和田政府委員 楢崎委員が御指摘のABM条約の第九条、それから合意声明のG項の関係でございますが、御承知のように、我が国米ソ間の条約でありますABM条約について有権的な解釈は行い得ない立場にあることは御了承いただきたいと思います。ただ、アメリカ側が行っております説明によりますと、SDIは研究の段階にあって、研究は当然禁止の対象から除外されているということ。それから、第九条及び合意声明G項によって移譲が禁じられておりますのは、この条約によって制限された対弾道ミサイルシステムまたはその構成部分を移譲することでございますが、そういうものに至らないものは研究段階にあるものを含めて特に禁止されていない。つまり、ABMシステム及びその構成部分、その構成部品と申しますのは、ここにありますこの条約で言っておりますような制限の対象になっている対弾道ミサイルシステム、それからその構成部分ということであって、現在アメリカがやろうとしております研究に参加することはそのこととは直接関係はない、こういうのがアメリカの説明でございます。いずれにいたしましても、米国は、従来から政府が申し上げておりますように、ABM条約上の義務は誠実に履行をする、その範囲内においてやるんだ、こういうことを言っているわけでございます。
  332. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そのぐらいで納得されたんですか、そのぐらいの説明で。私どもだってもう少し突っ込んで聞きますよ。例えば本体の部分がある。そしてその追尾の部分がある。じゃ本体への研究参加はこの条約に触れるのか。追尾の部分だけだったらいいのか。あるいは識別の問題もありましょう。それぐらい私だって聞きますよ。どうしてあなた方もっと詳しく聞かないのです。そういうことで通ると思っていらっしゃるのですか。今度の予算委員会で皆さんがSDIに関するいろいろな疑問点を出した。ほとんどわかってないんですよ。そして、その研究参加が先にありきで、私どもですら疑問がある。どうなんですか。これはあなた、ゴルバチョフ書記長が来たとき当然問題になると私は思いますね、この九条、G項との関係は。もう少し明確に答えてください、わかるように。
  333. 小和田恒

    ○小和田政府委員 先ほどお答えしたところでございますけれども、この条約は米ソ間の条約でございますので、日本はこの条約について有権的な解釈を申し上げる立場にはない、こういうことを御了承いただきたいと思います。  アメリカ側の説明と申しますのは、さっき申しましたように、この条約で制限の対象になっている対弾道ミサイルシステムあるいはその構成部分ということでございまして、それは条約で申しますと第二条に定義があるわけでございます。そういうものを他国に移譲したりあるいは自国の領土の外に展開しないということが九条の対象になっているわけでございます。その意味で、そういうものに当たるような、それを特に製造するために作成された技術的記述あるいは責写真を提供しないというのが義務であって、研究計画における協力については、この第九条及び合意声明のG項に言っているような禁止義務に違反するようなことはやらない、こういうのがアメリカの説明だということでございます。
  334. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 わかりましたか皆さん、今の。どこまでがこの九条に違反しないのですか、どこまでの参加だったら。日本が参加し得る許容範囲はどこですか。日本は第三国ですから、この条約の九条の。わかるように説明してください。あなた、わかっているんですか。本人がわからぬことを人に言ったって、わかるわけないでしょう。
  335. 小和田恒

    ○小和田政府委員 ABM条約第二条は、この条約の目的とする対弾道ミサイルシステムとはいかなるものであるか、あるいはその構成部分としてはどういうものであるかということを定義しているわけでございます。そういうものを製造するために作成された技術的記述または青写真を提供しないというのがこの条約上の義務である、現在アメリカがSDI計画においてやろうとしていることはその範囲の外のことについて協力をするということである、したがって、米国としてはABM条約に反しない範囲内においてそういうことをやるんだ、これがアメリカ側の立場であるということを申し上げているわけでございます。
  336. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 もうこれでやめます。全然わかりませんね。  じゃ最後に一つだけ答えてください。  本体の方への研究参加は無理だ、九条とG項によって。だから、さっきおっしゃったその他の部分、追尾部分とかあるいは識別部分への研究参加は許容範囲だ、そう考えていいですか。お答えください。
  337. 小和田恒

    ○小和田政府委員 たびたび繰り返しで恐縮でございますが、本体であるかどうかという区別ではございませんで、ABM条約で禁止の対象になっているものというのは二条に定義があるわけでございます。その定義されているもの、つまりここに書いてあるようなものを特に製造するために作成されたもの、技術的記述あるいは青写真というものが禁止をされているということでございまして、現在アメリカがSDI研究計画という中で非常に広範な研究計画を持っておりますけれども、その研究計画はここの第二条に規定しているようなものではないもの、そういうものについて協力を求めているんだ、こういう趣旨であると思います。
  338. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 全然答えになっていませんね。それだけ言って、また次の機会にいたしたいと存じます。ありがとうございました。
  339. 砂田重民

    砂田委員長 これにて楢崎君の質疑は終了いたしました。  次に、寺前巖君。
  340. 寺前巖

    ○寺前委員 限られた時間でございますので、予定しておりました米問題、日米統合実動演習、円高不況対策、教科書問題、全部やれないかもしれません。御準備いただいている方にはまことに恐縮ですが、その節にはよろしくお願いします。  最初に、米問題から質問をさせていただきます。  アメリカの精米業者協会の日本の米自由化を求める提訴、これを契機として米食管制度に対する批判が集中してきております。その内容を見ますと、日本の米づくりは食管制度のもとで保護され過ぎている、過保護だ。その結果、消費者は八倍も十倍も高い米を食べさせられている。これが主要な論調となって広がっているように思います。  農水大臣は先ほどの答弁の中で、それはちょっと数字の上において比較の仕方に問題がある、そういう趣旨のお話がございました。私もそう思うのです。まず、八倍とか十倍とかいろいろ言われているのですが、何といっても消費者価格でこの話が出ている話ではないということです。  一九八五年、総務庁の統計局が出した国際統計要覧を見ますと、一九八四年の数字で、白米一キログラム、日本は一・四四ドル、アメリカは一・〇六ドル、日本の方が一・四倍、ちょっと高い、そういう数字が出ています。この間米ソ首脳会談が開かれたアイスランドなんかを見ますと、ここなんかは一・四八ドルというふうに、日本よりちょっと高い数字も出てきます。国際的にはいろいろ出ています。  要するに、消費者価格での八倍とか十倍の話ではないのだ。これは先ほどの農水大臣の答弁で明らかにされた点であろうと思うのです。私はそれに限らないと思うのです。この比較されている話のタイ米の状況は一体何なのだろうかという問題について考える必要があると思うのです。タイの米の生産者価格ですが、一九八〇年にはもみに換算してトン二百七十三ドルでした。ところが、ことしの一月-十月の平均を見ますと、何とそれが百三十七ドルと約半値に落ちてきている。国際的な米の市況が急落しているのです。  なぜそういうことになるのか。それはアメリカがマーケティングローンと呼ばれる補助金つきの輸出をやり始めたから。ところが、国際価格が競争の中で下げられてきているのだ。だから、これは一時的な姿のものであって、それを固定的に極端に日本との間に差があるがごとく、一つは消費者価絡の問題を見ないで発言したり、また生産者価格においてもこのような実情を無視したような内容の宣伝をもしも私たちが許しておるとするならば、日本の国民に正しく現状を見させないことになると思うのです。  そこで、それでは日本の方の生産者米価は一体どうなっているんだろうか。一九八〇年のもみトン当たり二十二万八千円、八六年はそれが二十三万九千円と、六年間にわずかに四・八%の上昇です。ところが、これをドル換算にすると話は変わってくるのです。八〇年が九百九十一ドルです。八六年になると千三百八十四ドル。それは円高・ドル安という問題が出てきたからべらぼうになってくるのです。  この千三百八十四ドルと、タイの生産者米価のあの国際市場の問題、タイの事情のもとにおける値段とをこう見ると、確かに十倍という数字は出てくるでしょう。だけれども、ここには円高という特殊な事情から生まれてきた問題、もう一つは、タイの飢餓線上の生産状況にあるという問題と、そして国際市場における低落、こういう問題が絡んでいる問題だけに、農林大臣、八倍も十倍も高い米を食わされているんだという表現というのは適切な表現ではないと私は思うのですが、あなたはどう思われますか。
  341. 加藤六月

    加藤国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたが、生産者米価というものと消費者米価というものを冷静に見て、我々はあくまでも消費者米価ということで議論をするといたしますならば、寺前委員がおっしゃるとおりの数字になってくると思います。
  342. 寺前巖

    ○寺前委員 後半の部分についてはお触れにならなかったけれども、生産者米価における円高の問題の影響と、それから国際的な市場価格の急落という問題について、あなたは否定されますか。
  343. 加藤六月

    加藤国務大臣 円高問題による問題は、単に米だけではなしに日本産業全体を覆っておる問題であり、その中に米の価格という問題も入っておる、このように解釈いたしております。
  344. 寺前巖

    ○寺前委員 それでは、私は総理にお聞きをしたいのです。  今農水大臣も、消費者価格で話をするならば、これが現実に高い米を食わされているかどうかという問題として見なければならないというお話が一つありました。それから、円高で異常な段階になっているということについても、米もそうですということで認められた。しかも、アメリカとタイとの輸出市場におけるところの価格、これが異常に下がっているという問題も事実です。  こういうことを考えてきたら、あなたが参議院の予算委員会で、タイ米よりも十一倍、これは十倍の間違いでしょうが、日本の方が高い、これだけ格差が開いてくるのは何らかの欠陥があるのではないか、こういう問題提起というのはちょっとお粗末なんではないだろうか。むしろ私は、そのことをそういうふうにとらえるのは正しくないんだということを指摘すべきだと思うのですが、いかがでしょう。  さらに、何らかの意図を持って、例えば米の輸入の自由化という意図をお持ちになってこれを言われたのだろうか。さらに、何かほかの意図があって言われたのだろうか、お聞かせをいただきたいと思うのです。     〔委員長退席、野田委員長代理着席〕
  345. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、やはり日本の農村の将来、米の将来というものを考えてみて、一つでは食管制度の基本は維持すると言っておりますし、衆議院、参議院本会議における米の自給確保に関する決議、これも守ります、そういうことは言っておる。しかし、生産性の格差が余りにもひど過ぎるということになると、いつまでも維持できない世論というものが出てくる。したがって、国際価格にできるだけ近づけるように真剣にお互い努力していこう、そういう意味で、消費者価格も大事ではありますけれども、問題は生産者価格、生産者の面における生産性を向上させて、国際価格を両方で接近させる努力をしていきたい。そのためには農協あるいは農村の内部から農政改革に関する案を出してもらって、農林省、政府一体になってそれを実現するように協力してやるようにしようじゃないか、そういうことを申し上げておるのであります。     〔野田委員長代理退席、委員長着席〕
  346. 寺前巖

    ○寺前委員 米の輸入の自由化ということは、毛頭念頭にはございませんのですか。
  347. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 我々はガットにおきましても、米は国家管理されておる、輸出入についても同様であって、したがってガットの対象品目ではないという主張をしてきたものであります。
  348. 寺前巖

    ○寺前委員 私は総理の発言には、一つは十一倍とかいう数字を使っておられることが気になるのです。今も、実生活で高い米を食っているという話をするならば、それは消費者価格の話で物を見なければだめじゃないかということを農林大臣も言っている。生産者価格で言うならば、円高問題でドル換算をすると日本の米が異常に上がっているのだ。それからタイ自身はというと、それは日本の十二分の一の国民所得だ。そういう実情との関連を踏んまえて国際価格という問題についても見なければならないのに、単に何倍論だけをお出しになるのは少し軽率ではないのだろうかということを私は先ほどから言っている。  ところで、総理がよく研修会などでお使いになるところの竹村健一さん、九月二十八日のフジテレビを見ておりますと、「世相を斬る」というところでこういうことを言っておられます。テレビで、カリフォルニア米は日本の八分の一、輸入すれば米代は八分の一で済むのだ、そういうような話をやっておられるのです。それは結局、生産者米価の話を、また異常な輸出金つきのアメリカとの関係の話をやって、安いのが食えるではないかということを盛んにやっておられました。ところが、このテレビの中で、この竹村氏に対して総理から、一生懸命おやりになっていることに対してありがたいと思うと激励の手紙を受けているんだという話まで出てきている。こういう比較論争をやっておられる竹村さんに一体何を激励しておられるのだろうか。比較をされるんだったら、私が先ほどから言うように、高いものというのはそれは違いますよという話をむしろしてあげなければいけないんじゃないだろうか。これは事実かどうか。テレビでそういうふうにおっしゃっているのですから、総理から直接お話を聞きたいと思うのです。
  349. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 竹村さんのテレビはよく見ておりますし、また、著書をいただいた。そのときに礼状を書いた。それで、御健闘を祈ります、そういうふうに書いた記憶があります。
  350. 寺前巖

    ○寺前委員 まあ御健闘で何をおっしゃったのかよくわかりませんけれども、米の問題を論じておられるときに、輸入化の道を論じておられる人に対してそれを注意してあげるというのが総理として大切なんじゃないだろうかということを私は感ずるわけですが、それではさらに聞きます。  十月二十八日に、自民党の衆議院当選一回議員七夕会の席上で総理は、これは報道されている内容ですから直接総理にお伺いしたいのですが、外圧を利用して米の自由化や農業改革は進めるべきとの趣旨の発言をされたというのが出てきている。これは本当なんだろうか。竹村さんがおっしゃる話といい、この話といい、あの数字の並べ方といい、何かこれは外圧を利用して輸入を促進されるような、私はそういう感じがしてしようがないのだけれども、この内容についてお聞きしたいと思います。
  351. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 あのときの話は、オフレコで話した話でありますが、せっかく御質問がありましたから、その点については明確に申し上げますが、あの一部の新聞に出た記事は大変な誤報が入っております。私の言ったことと違うことが大分書かれておりました。米の問題についてもそうです。私が申し上げたのは、今ここで申し上げた米はこうあるべきである、そういうことを申し上げたのです。  それで、今や内外の世論というものもかなり強くなってきている。これは無視できない。そこで、変化に対する柔軟対応というものが必要だ。余り蛇が棒をのんだような硬直的な態度をとっておるというと、これは例はいいか悪いかわかりませんが、国鉄の労働組合みたいにいざというときにひどい目に遭うことになる。やはりその場その場で時代に合うように改革が行われていかなければいかぬのじゃないか。米の問題についても、内外の世論のこういう激しいときにやはり変化に対する柔軟対応をやっていく必要がある。そういうことを言って、改革案は農協の方から出してもらうのがよろしい。政府や自民党が出すと強制的に見えるから、内部の農協の皆さんから改革案を出してもらって農林省及び政府がこれに協力する、そういう形で農政の改革を一緒になって進めたらいい、そう思う、そういうことを申し上げたのであります。
  352. 寺前巖

    ○寺前委員 新聞は一斉に、外圧を利用するという問題として報道された。それは一切そういう立場に立っておっしゃっておりませんか。
  353. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 米に対する内外の世論の圧力というのは最近相当高まっておる、そういうことは申し上げた。今ややはり自己改革を農協内部からやってもらって、やらなければならぬときに来ていると思う、それには農林省も政府・自民党も協力して一緒になって改革を進めるようにしたらいい、そういうことを申し上げたのです。
  354. 寺前巖

    ○寺前委員 外国からのいろいろなものがかかってきているからこの際に内部からやっていったらいいんだというのだったら、結局また外圧によってやれということに通ずるじゃありませんか。もっと自主性を持ってやらなければいかぬと私は思うのですが、それにしても国鉄の例というのは一体何です。国鉄の労働者の責任ですか、赤字になっているという話は。そうじゃないでしょう。すべての責任は政府にあるんじゃないですか。赤字をつくっていくのは、経営を担当した側にあるわけでしょうが。そんなものを労働者の責任に転嫁するというのは、為政者として無責任な態度だと思う。私は撤回してほしい。これはまたの機会に譲りますけれども、それが本旨ではございませんので。  そこで、あなたは日本の内部からも改革してほしい、こうおっしゃるけれども、米の場合に、生産性向上について五十年と六十年を比較してみると、米づくりで労働時間は本当に三割少なくなってきているのです。働いている人は本当に苦労しているのですよ。この十年間に上がっているのは何かといったら、農機具が二・四倍になり、光熱動力費が二・〇倍になり、農薬費が一・八倍になり、全体として物財費が一・九倍なんです。そして、労働賃金の方は下がっていっているというのが農村の実態じゃありませんか。ですから、農水省の資料を見ましても、五十年の場合には米価が、生産費をカバーできるのは八割あったものが、六十年では二四%と減ってきている。これが農民の実態だと思う。だから、生産力を上げるために一生懸命働いている。問題は、物財費を下げてくれ、そうなるとこれはむしろ政府の指導責任の側の方が大きいのではないか。内部から考えろと言ったって、内部から考える以前にその問題をもっと考えなかったらいかぬのじゃないですか。農水大臣、いかがなものです。
  355. 加藤六月

    加藤国務大臣 農協あるいは全中の方におきましては、中央会を中心として系統組織では農協農政運動の新しい方向を検討すべく、昨年七月に農政運動検討委員会を設置しまして、数次にわたる検討を重ねた結果、去る十月十三日に検討委員会の報告を取りまとめ、近々全中理事会において正式決定するようになっております。その基調は、「これからの農協の農政運動は、価格、米対策に偏することなく、コスト低減等に力点を置いて進める」というようになっておりまして、先ほど総理からも申されましたように、自分自身の問題として内部から積極的に今積み重ねをやっていき、コスト低減に一生懸命努力しておるというように私は認識いたしております。
  356. 寺前巖

    ○寺前委員 私の提起している、物財費こそ今指導の責任を持って改革しなければならないんじゃないかという問題に対する責任を少しもとろうとしない、そして農民にだけ責任を転嫁する、そして外国からもこういう批判があるんだ、批判を組織して、政府みずからがやらなければならない農民の困っている実情に対応しない態度というのは私は無責任な態度だということを指摘して、次の質問に移りたいと思います。  十月二十七日から三十一日までの五日間、日米共同統合実動演習というのが北海道と周辺海空域において行われました。これは日米合わせて一万三千人、航空機約百機、艦艇二十隻と過去最大の演習で行われているわけですが、日米韓三国間の軍事統一運用ということで見逃すことのできない極めて重大な第一歩に踏み入ったと私は見ているわけです。  ところで、この演習の統裁官は、日本側は統幕議長であり、米軍側はティシエ在日米軍司令官ということになっておったけれども、在日米軍司令官は本国へ帰られたようです。ちょうどこの行われた二十七日には世界的規模での指揮所演習、パワースウィープというのがやられているものですから、その一環としてこの演習がなされたのではないだろうかということで私は非常に疑問に思うわけです。ヨーロッパで米ソ戦が起きたときに極東で第二戦線を開くという米海洋戦略の具体化としてやられたんじゃないだろうか、いろいろ心配することが多うございます。  時間の都合もありますので、日米統合実動演習の全面的な問題については別の場に譲るとしまして、陸上部分の演習について聞きたいと思うのです。  まず第一に、五十八年のヤマト83、その演習のときに公開したところの展示した装備品と今回の演習で展示した装備品に違いがあると私は思うのですが、御説明いただけますか。
  357. 依田智治

    ○依田政府委員 今回の六十一年のFTXにおきましては、十月二十日にそれぞれ装備品を展示しております。私どもが把握しておるところでは、防護マスクとか化学防護衣、それから車両用の除染器とか、それから化学検知器、こういうものがあったというように承知しております。  それから、先生、五十八年と言われました。五十八年には化学防護品は特になかったというように報告されております。
  358. 寺前巖

    ○寺前委員 米軍は何を展示しましたか。
  359. 依田智治

    ○依田政府委員 ちょっとその古い資料を現在持ち合わせておりませんので……。
  360. 寺前巖

    ○寺前委員 私はあなたの方から聞きました。五十八年の演習のときには米軍は防護マスクなどであった。今回は除染器、化学検知器、防護マスク、放射能測定器、線量計、そういうものを持った、これが展示された。私もまた事実写真で確認もいたしております。  そこでお聞きしますけれども、この五十八年と六十一年の展示した内容が変わってきているわけです。変わってきているというのは、今も話があったように、五十八年のときには防護マスク程度のものであった。それが今回は化学防護衣なり線量計なりガス検知器なり化学加熱器、そういうものを陸上自衛隊が持っているし、米軍も除染器、化学検知器、防護マスク、放射能測定器、線量計、随分いろんなものを持ち出した。これは一体どういうためにこういう装備が要るのですか。この装備は一体何の戦いのための装備なんですか、御説明いただきたい。
  361. 依田智治

    ○依田政府委員 米軍も自衛隊の場合におきましても、部隊等が移動する場合には個人装備品、部隊装備品等は大体帯同しておるわけでございます。しかし、これを帯同しているからといつて、それがすぐその訓練なり何なりに使えるというものではございません。それぞれ、現在の自衛隊の場合には防御という面から化学学校とか必要に応じて訓練しておりますが、アメリカの場合にどういう用い方をするかということは私は承知しておりません。  なお、今回の実動演習におきましてはこういう化学戦、核戦争等を想定した訓練というものは一切行っておりません。参考に展示したということでございます。
  362. 寺前巖

    ○寺前委員 何も想定していないと、私は聞いてもいないのだけれどもいみじくもおっしゃったわけです。  これらの装備というのは、これは化学戦か核戦争用のときに必要な装備ではありませんか。そうすると、こういうものを持って参加していると、五十八年のときには、化学防護品は自衛隊は持っていない、米軍は防護マスクだけだった。それが今回になると異常に、線量計だとかあるいはガス検知器だとかあるいは化学防護衣とか化学加熱器だとか、いろいろなものを自衛隊も持つし、米軍もまた放射能測定器などを持ってきておる。明らかにそういうものを持っているということは、そういうものを持つところの演習に変わってきている。核戦争やあるいは化学戦争ということを想定する段階になってきているのではないだろうか、私はそう断定せざるを得ない。  ところで、マスコミに公開した演習の席上で、指揮官がガスだと叫んで自衛隊がガスマスクを着用した演習が公然となされたではありませんか。これはマスコミの諸君たちが報道で流しているから事実です。米軍はラディアックメーターという、つまり放射線の測定器を持ってきて横にちゃんとおるんだ。そうなってくると、これは日本で核戦場としての想定演習が始まった、新しい段階が来たな、私は率直にそう感ぜざるを得ないのですけれども、そういう想定を持ってこの演習をやらしているのですか、防衛庁長官
  363. 西廣整輝

    西廣政府委員 これは前々からお答えしておるところでありますけれども、自衛隊はかねがね万々一核なり化学戦が行われたときの防御方法の訓練をやることになっておりまして、そのための最小限の個人装具なり部隊装具は自衛隊発足以来持っておるということでありまして、最近になってその種のものを装備し核戦争を考えておるというようなことでは全くございませんので、その点は御認識を改めていただきたいと思います。
  364. 寺前巖

    ○寺前委員 総理は、自衛隊法によっても、自衛隊の最高の指揮監督の権能、権限を持っております。私は今の装備の状況といい、現にガスだという演習の状況から考えて、事は少し違うようになってきているのじゃないだろうか。核戦争というものを想定する演習をやらしてもいいんだ、やらすんだ、そういう事態になっているんだというふうに想定してこの問題を見ておられますか。核戦場を想定するところの演習を是とされますか、お聞きしたいと思います。
  365. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今の政府委員の答弁のとおりです。
  366. 寺前巖

    ○寺前委員 総理はどういうふうにお考えになります。核戦争を想定した演習をやらしていいと考えられますか。
  367. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政府委員の答弁のとおりです。
  368. 寺前巖

    ○寺前委員 何で率直に総理自身がおっしゃることができないのでしょう。最高の指揮監督者が日本を核戦場にすることが想定される演習をやらしていいと思うのか、あるいはやらしてはいけないとおっしゃるのか。これは国民にとって一番関心を持っているところなのです。非核三原則を国是としている日本でしょう。政府の手によって戦争の惨禍を二度とつくってはならないと憲法上もなっている。ですから、政府自身が、内閣総理大臣自身が日本の姿を、核戦場を想定するようなことを演習としてやらしておってもいいんだというふうにお思いになっているのだろうかどうだろうかということを国民が心配しているから、総理の生の話を聞きたいわけなんだ。よろしいのでしょうか、いけないのでしょうか。
  369. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政府委員の答弁のとおりです。
  370. 寺前巖

    ○寺前委員 政府委員の答弁どおりって、あなた、政府委員に使われているわけじゃないんだから、あなたが指揮監督しておられるんだから。あなたの信念は一体どうなんだということを聞いているのです。政府委員に使われているのであったら、これはえらいことになります。逆だ。あなたはどういうふうにとらえて行おうとするんだ、世界に明らかにされることは非常に大事なことじゃありませんか、日本の国民に対しても。どうです。
  371. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政府委員の答弁のとおりです。
  372. 寺前巖

    ○寺前委員 ちょっとお粗末過ぎるんじゃないでしょうか、それでは。何で答えられないんです。政府委員に使われているのですか、あなたは。違うでしょう。同じだというのと違うと思うんですよ。あなたが指揮して、政府委員の見解は間違っているとか、私はこういうふうに言わせて政府委員にああいう答弁をさせたとか、あなたの方が最高の指揮監督権を持っておられる方なんだ、最高だから。だからそういうふうにきちんとされるべきじゃないでしょうか。  ダイク在日米陸軍司令官は、先月末に行われたこの初の日米統合実動演習視察のために北海道へ行かれました。そのときの記者の質問に答えてインタビューで、日本だけの有事というより、世界のどこかの紛争が波及して発生する可能性が強いんだということを記者の質問に対して答えられているのですけれども、総理はこの見解に対してどういうふうにお思いですか。
  373. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 状況によっていろいろ変化があり、状況、その場その場によって考えがまたあると思います。
  374. 寺前巖

    ○寺前委員 何で率直にこういう問題に対して答えることができないのです。今世界的に問題になっている話なんですよ。  第二戦線論という、米国務省のソロモン政策企画局長は米海軍大学の演説で、欧州でソ連との戦争が発生した場合、米国は極東で第二戦線を開き同盟軍とともにソ連に反撃するとの米太平洋戦略を明らかにした。この米新戦略、海洋戦略は日米安保体制のもとで日本アメリカの行う戦争に巻き込まれる危険性を一層強める内容であって、ダイク在日米軍司令官が言った内容というのはそういう一連の流れの中にある話だ。そういう流れの中で先ほどのような装備に変わってきている。そうして目の前で演習も行われた。そういう事態のときに総理は、日本を核戦場にさせないように、そのためには演習そのものについて核戦争を想定する演習などというのはやるべきではない、それよりも私は核兵器廃絶に向かって国連で政府をやらしますのや、こう言うたら、そうか被爆国の総理大臣だなと、こうなると思う。ところが、政府委員のおっしゃるとおりです、どっちがあなた、指揮監督権を持っているのかわからないじゃないですか、それでは。それは、私は無責任な総理の態度だ。日本を核戦場にするような想定のそういう演習はやるべきでないとあなたは思われるのですか、思われないんですか。改めてもう一度聞いておきます。
  375. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は一貫して日本を戦場にしない、日本を戦争に巻き込ませないようにすることが政治家の任務である、そう言っておる。
  376. 寺前巖

    ○寺前委員 私が質問しているのは演習の話です。核戦場になる、そういう想定の演習をやらす、やってよろしいとおっしゃるのかどうか、演習の話として聞いている。そこのところはどうなんですか。それは言えないんですか。
  377. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その点は政府委員が申し上げたとおり。
  378. 寺前巖

    ○寺前委員 はっきり言えないということは私はまことに遺憾だということを指摘して、引き続きまた行います。  次に、私は教科書問題について聞きたいと思うのです。  日本国憲法の改正を目指す日本を守る国民会議作成の教科書「新編日本史」について質問をいたします。  文部大臣、お持ちですか。この教科書は文部省が最終審査を終了した後、中国や韓国から批判が出ました。侵略戦争を美化した復古調の教科書だ、そういうようなことが言われました。合格後に異例の修正までした教科書です。私は時間の都合で全面にわたって教科書を論ずることは避けますけれども、ちょっとこの教科書を見てこれはお粗末だなという感じを幾つか受けるわけです。  まず本の表紙をあけますと、その裏に日本の古代の行政区画がかいてある。この行政区画の中に、畿内のところ、下の欄のところにあるのですが、京都、奈良、兵庫、大阪という今の区分のところに、兵庫と大阪にまたがって河内の国が書いてあります。文部大臣は河内のお方だと思うのですが、河内は兵庫県にもあるのでしょうか。またがっているんでしょうか。私は、これはちょっとお粗末過ぎるんじゃないかと思うのですがね。  それから六十二ページを開きますと、鎌倉の要図が出ているのです。この鎌倉の要図を見ると、お寺のマークが気になるマークになっている。気になりませんか、大臣。寺のマークがハーケンクロイツになっている。これはちょっと私はいただけないなというように思うのです。  七十八ページを開いてみますと、そこにやはり南北朝時代の畿内の要図が書いてあるのですが、そこでもまたハーケンクロイツが出てくる。そして琵琶湖が川になってしまって、なくなっているのですね、これは絵のかき方の問題かどうか知りませんけれども。  百五十二ページを開きますと、本文の中には百五十四ページのところに書いてあるのですが、「樺太は雑居地とすることに決定した」こう書いてある。ところが、百五十三ページの上の「日本にせまる欧米勢力」の地図を見ると、南樺太が日本の領地になっている。本文に書かれていることと地図になっていることの違いが出てくる。  それから二百二ページを見ますと、「ヴェルサイユ条約後の日本の版図」これを見ると北樺太、これが日露戦争後の領有地になっている。これもちょっとお粗末だなというふうに思うのです。  さらに、たくさんあるんですよ。これは僕、今ちょっと部分だけを言っているだけですけれども、もう時間の都合がありますからやめますけれども、一番最後に著作者の名前が書いてあるところの下、そこには朝比奈さんを初めとして四名の名前が書いて「ほか九名」ですから、これは十三名になりますから、上の側の五十音順の著作者の数九名と比べると、これは数字の上において「ほか九名」じゃなくして五名ということになるはずなんですね。お粗末です。  しかも、最後の裏表紙をめくった一つ前、そこに「わが国のおもな史跡」がずっと書いてあるのですが、ここに隠岐島がある。この隠岐島が、島がないで字だけが書いてある。どうもお粗末だな。  これは、私はちょっと文部大臣に聞きたいのですが、検定というのはそういうのは直さないのですか。これは通ってきているのだけれども、これはちょっとお粗末過ぎると思いませんか。いっぱいあるんですよ。これを私ちょっと調べたら、四十点にわたって問題があると見ているのです。もっともっとあるでしょう。どうです、文部大臣。検定でやらないのですか。
  379. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 随分御指摘がございましたけれども、私は河内の出身でございますから念のために申しますと、こっちの大きい方はちゃんと出ていますからね。ですから、これはこちらが正確にちゃんと記述されておりますし、この境界線は少しは北へ出ておりますけれども、大体これは間違っておりません。大体この地域です。ですから、これは線の、印刷のかげんじゃないかなと思ったりもしますが、しかしおおよそにおいては大して間違いはないと思っております。  御指摘いただいたこの教科書でございますが、教科書の基本方針というのは、文部省といたしましても、公正でそして教育的効果のあること、そして客観性をとうとぶということを基本にしてやっております。でございますから、この教科書が提出されまして検定申請が出ましてから、数次にわたりまして十分に検討し、修正をさせあるいは改善をさせてきた、こういう経過がございまして、我々文部省としては、手続をきちっと踏んで正式に決めたものでございまして、教科書としては合格したものであるということでございます。
  380. 寺前巖

    ○寺前委員 ハーケンクロイツが入ったままで通ってきているというのは、私は不思議でかなわない。こんなものが何でこういうところに残ってくるのだろう。そういうことこそきちっとしなければいかぬのじゃないだろうかな、私はそう思うのです。  ところで、このお粗末な話に見逃すことのできない話もまたあるわけです。特にこれが改憲運動を目指すところの国民会議の進めてきた本であるだけに、その本の二百三十四ページ「日本国憲法の制定」というところがあります。二百三十五ページのところにその内容が書いてある。日本国憲法について「この憲法は、象徴(しょうちょう)天皇・主権在民・平和主義・戦争放棄などの特色をもっている。天皇は国民統合の象徴とされ、公選議員よりなる衆議院・参議員で構成される国会が、」これは「員」が間違っているな、「国権の最高機関とされた。また、第九条には戦争放棄・軍備撤廃が明記された。」云々と書いてあるのだけれども、私が気になるのは、基本的人権という言葉がなぜ出てこないのだろうか。  これは、高等学校学習指導要領を見ますと、「社会」のところには「日本国憲法の基本的原則と国民生活」を指導するのにはこれが要るというようにちゃんと書いてある。「基本的人権の保障と法の支配、平和主義と我が国の安全、国民主権と議会制民主主義など」さあ、ちゃんと「基本的人権の保障」が一番に出てくるのに、何でここになってくると日本国憲法の中に、教える中に基本的人権という問題が出てこないのか。憲法、これは一番基本問題ですよ、日本の法律の。そこを教えるときに基本的人権が出てこないというような教科書をやっておっていいのだろうか、私は気になる点です。文部大臣、どうです。
  381. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 憲法で基本的人権をうたっておるのは国民すべてが知っておることでございまして、当然のことでございます。
  382. 寺前巖

    ○寺前委員 すべての国民が知っているそのことを何であえてそこに指摘をすることができないのか。私は、改憲運動をやっている部隊が提起する問題はそういうことになるのだろうか、お粗末の上にも、こういうことになっておったらえらいことだなと思うのです。  ところで総理総理はこの本をつくるに当たって随分いろいろお読みになったようです。それは、この七月二十二日、日本工業倶楽部で開かれた「「新編日本史」の集ひ」で、日本を守る国民会議の運営委員長の黛敏郎さんが、同会の加瀬議長さんは中曽根総理と何回も電話で話した、その電話の中で、自分は今度の教科書は全部初めから終わりまでよく読んだ、あの教科書は大変いい教科書だ云々ということを紹介されている。中曽根総理はこの本について何回も読まれたというのだったら、私は、日本国憲法の一番中心問題、そこのところが抜けているということ、あるいは今私が言ったように、ちょっと見たときにハーケンクロイツに変わっているお寺のマーク、気になるマークだけれども、そういうことにお気づきにならなかったのか、総理の見解を問いたいと思うのです。
  383. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その教科書は関心を持っておりましたから、一晩かかって全部読みました。しかし、この本がいいとか悪いとか論評することは公の場所では総理大臣として差し控えた方がいいと思います。
  384. 寺前巖

    ○寺前委員 あなた、これは検定が通ってしまっているのに、今私が並べたような事実はお粗末でしょう。特に、基本的人権の問題が抜けているという問題について、待てよというふうにお感じにならなかったのだろうか。これは今度の、戦前の憲法と戦後の憲法の非常に重要な違いの点でもあるのでしょう。公共の福祉の名において基本的人権を侵した、これは問題だったというところ、これが非常に重要な位置を占めた。もうみんなが知っているんだと文部大臣は言った。それほど重要な国民的な問題が、改憲運動をしている諸君たちの手による教科書にはそれが出てこないということに対して、あなた自身が何回も読んで、激励までして、そして考えてくれということまで言ったということが紹介されているのに、この点の御指摘がなかったということは、私は非常に残念な思いをするのですが、総理大臣として、それはそれで一体よかったのだろうか、反省されるべきことではないのだろうか。基本的人権問題というのはもっともっと尊重しなければいかぬ。それが抜けておった。私は率直に国民の前に――総理大臣の名前が出てきたから、私は気になってお聞きをしているのですよ。どうです。
  385. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 基本的人権の尊重ということは、きのうも憲法の問題でここで質問を受けまして、私ははっきり、今の憲法の中のいいところは、民主主義、平和主義、基本的人権の尊重、国際協調主義、こういう点は実にいい点で、我々はこれを守っていかなければならぬと強調しておるところであります。  しかし、今の教科書の問題についてこういう公の場所でいいとか悪いとか論評することはやはり総理大臣としては差し控えた方がいい、そう思っております。
  386. 寺前巖

    ○寺前委員 公の席上で憲法問題についてはやはり発言をきちっとしておくというのは大切な態度だというふうに言わざるを得ないと私は思うのです。  時間の都合もありますので、私は今の円高不況の問題について一言、民間活力活用と称するところの三十三億の今度の予算がついていることについて聞きたいのです。  通産大臣、ことしの春に通った予算で、この民間活力活用の認定の申請というのはあったのですか。
  387. 杉山弘

    ○杉山政府委員 お答えをいたします。  この三十三億円の予算でございますが、これにつきましては、折からの内需拡大の要請にこたえるためにことしの五月に成立いたしました民活法によります六つの対象施設の着工を早期にやっていただく。既に法律は成立いたしておりますが、つい最近に至りましてその第一号の施設の整備計画の承認申請があったところでございまして、私どもは今各府県を通じまして、この事業を予定しておりますところに対しまして、できるだけこの補助金の使用ができます六十一年度及び六十二年度に対象民活施設の早期着工をしていただくよう督励をしているところでございます。
  388. 砂田重民

    砂田委員長 寺前君、あなたの時間は終わりました。最後の一問……。
  389. 寺前巖

    ○寺前委員 時間が終わりましたので残念ですけれども、私は、通産省と大蔵省の間においても、この草の根民活問題について法律が成立したばかりなのに助成をするのはいかがなものかという論争まであったということを聞いております。三十三億も異例な補正予算を組んでまで今度対処される。ところが、この民活と言えば大手の諸君たちがこれからやろうという話ですけれども、一般の中小企業の諸君たちは本当に今困っているわけです。その困っている諸君たちに三%に利子が何とかならないものだろうかということをみんな言っているときです。この当初予算で組まれた金額を見ると、その利子補給に十一億ですか組まれておるが、三十三億も大手の企業、そこにだけ使われる。それだけのお金があったら、三%に利子補給でできるじゃないか。本当にみんな心からその予算のあり方について頭をひねらざるを得ない要素を持っているのです。  私はこの問題について聞きたかったわけですが、時間の都合でこれで終わらしていただきます。どうもありがとうございました。
  390. 砂田重民

    砂田委員長 これにて寺前君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、昭和六十一年度補正予算三案に対する質疑はすべて終了いたしました。     ─────────────
  391. 砂田重民

    砂田委員長 これより討論に入ります。  討論の通告がありますので、順次これを許します。今井勇君。
  392. 今井勇

    ○今井委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となっております昭和六十一年度補正予算三案に対し賛成の討論を行います。  今日、自由主義諸国の中で第二の経済大国となった我が国にとって、今や世界経済の動向は国内経済と表裏一体をなす極めて重要なものとなっております。  先進諸国においては、米国の財政赤字、各国の大幅な対外不均衡、西欧諸国の厳しい雇用情勢等問題が山積しております。他方、国内においては、諸外国から内需の拡大による早急なる対外不均衡の是正を求められており、同時に、昨年後半から始まった急激な円高は、製造業を初め中小企業に大きな影響を与え、一刻も放置できない状況となっております。  このような経済情勢の中で、内需中心とした景気の浮揚を図り、雇用の安定を確保し、あわせて対外収支の均衡を図るには、九月十九日に政府が決定した公共投資を柱とする事業規模総額三兆六千億円余の総合経済対策を着実に実施することが何よりも緊要であると考えるものであります。  今回の補正予算は、この総合経済対策を実施するために公共事業費等を追加するほか、人事院勧告の実施に伴う給与費の追加など、予算成立後に生じたやむを得ざる事由に基づき特に緊要となった事項等について所要の措置を講じようとするものであります。  以下、本補正予算に賛成する理由を申し上げます。  その第一は、災害復旧事業費及び一般公共事業費の追加であります。  災害復旧事業につきましては、本年も台風十号を初めとして多くの自然災害が発生いたしましたが、これらの対策として初年度の復旧進度を昨年度と同様に従来より速めるなど万全を期することとし、四千百六十億円を計上いたしております。  また、これとは別に、一般公共事業費として千三百三十億円を計上するほか、国庫債務負担行為及び地方自治体分を加えた一般公共事業の事業規模は八千五百億円となり、災害復旧費をも加えた公共事業の追加総事業規模は一兆四千億円に達するものであります。これら公共事業費の追加措置は、公定歩合の引き下げ等の金融緩和措置による効果と相まって、内需の拡大、景気の持続的拡大等に大きく寄与するものとして高く評価いたすものでありますが、これら措置の効果を最大限に引き出し確かなものとするためには、早急な実施とともに、執行に当たっては円高不況地域等に重点的に配分するなど、きめ細かな配慮を払うことが肝要であります。  理由の第二は、中小企業対策費の追加であります。  昨年来よりの円高等内外の経済環境の急激な変化による影響は中小企業、とりわけ輸出関連企業に集中し、売り上げ減少の拡大、在庫の積み増し等影響の度合いが高まっており、こうした状況を反映して、一部では雇用調整の動きも見られる事態となってきております。  本補正予算においては、影響の度合いの大きい地域に対する特別融資制度の創設等中小企業に対する事業資金融通の円滑化を図り、中小企業の構造転換等の支援体制を拡充強化するための措置がとられており、これらきめ細かな諸施策が適切に実施されることを期待するものであります。  理由の第三は、財政再建路線の堅持についてであります。  本補正予算においては、税収及び税外収入が当初見通しより一兆二千五百億円余減額するなどかなりの財源不足が生じましたが、歳出面において可能な限り既定経費の節減に努めるとともに、予備費の減額、国債費の減額を行い、また、歳入面においては、臨時異例の措置として前年度剰余金の充当を行うなど、歳入歳出両面にわたり最大限の努力を行うことにより、特例公債の増発を回避し、財政再建路線を堅持したこの政府の姿勢は高く評価されるところであります。  以上、三点にわたり補正予算に対する賛成の理由を申し述べましたが、膨大な貿易黒字を減らし、内需振興を図りながら内外需の均衡ある経済体制を整えるためには、なお多くの時間を要することは言うまでもありません。  国際社会の中で経済大国として生きていくためには、輸出志向型の経済構造を転換し、産業の高度化、生産の国際分業化を図りながら、諸外国との信頼を基調とした政策が不可欠であり、また、このような産業構造の転換を基調とした我が国経済政策に対し諸外国の期待関心が強いことは、さきの東京サミットあるいはその後の七カ国蔵相・中央銀行総裁会議等一連の国際会議を見ても明らかであります。  政府におかれましても、かかる見地に立って、中長期的な政策を推進せられ、我が国経済がさらに発展できるよう、この際、特に注意を喚起して、賛成の討論といたします。(拍手)
  393. 砂田重民

    砂田委員長 菅直人君。
  394. 菅直人

    ○菅委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、ただいま議題となっております昭和六十一年度補正予算三案に対して、反対の立場から討論を行うものであります。  今回の補正予算は、対外経済摩擦の激化、そして昨年来の急激な円高による景気の後退に対処するため、政府が九月十九日に決定した総合経済対策に基づいて提案されたものであると受けとめております。  我々も、今日の経済状況において緊急に内需拡大につながる財政措置が必要だとする認識においては共通の考えを持っています。しかし、今回の補正予算とその裏づけとなる総合経済対策は余りにも時期を失したものであり、かつその内容も不十分、不適切であって、残念ながら賛成はできないものであります。  すなわち、昭和六十一年度当初予算の審議のときから、社会、公明、民社、社民連の野党四党は、内需の大幅拡大を柱とする修正要求を行ってきました。中曽根政府は、財政再建を理由に我々の要求に耳をかさず、緊縮型の予算を強行しました。そのため、貿易摩擦が激化する一方、急激な円高ショックが我が国を襲ってきました。こうした状況の中で、我々は円高対策の必要性を強く訴えてきたのであります。これに対し、中曽根内閣は、一たんは円高対策を理由として六月二日臨時国会を召集したにもかかわらず、その冒頭に解散に打って出るという暴挙を行い、そのために本格的円高対策は今日まで行われず、政策転換の決定的おくれを招いたものであります。  この間さらに進行した円高は、輸出関連の中小零細企業は言うに及ばず、製造業の基幹的部門である鉄鋼、造船、非鉄金属、炭鉱などにおいても極めて深刻な状況を招いています。さらに、比較的対応力を持つとされる電機、自動車関連企業も、円高の是正が進まない状況の中で次々と工場の海外移転を計画、実施に移し始めています。まさに産業の空洞化が急激に進行しています。  私は、産業構造の転換が長期的には避けられないとしても、このような急激な産業空洞化の進行は雇用状況の悪化を招くことになり、社会不安さえ起こしかねず、何としても避けねばならないと考えています。  今回の補正予算は、おくればせながら我々が主張してきた内需拡大の方向に政府が方針転換をしようとしていると見ることもできます。  しかし、その中身は以下の点で全く不十分であります。  その第一は、我々が内需拡大の最大の柱として主張してきた所得税減税、政策減税が全く盛り込まれていないことにあります。  その第二は、公共投資を内需拡大につなげるための土地政策が全く抜け落ちているということであります。  最近の首都圏を中心とする地価の高騰は、公共事業においても、また個人の住宅取得においても大半の費用が土地代に消えるという結果になっており、内需に対する波及効果を著しく小さなものとしてしまっています。  中曽根総理は無責任に民活を叫び、都心の地価高騰をもたらし、その買いかえ需要が郊外の地価を急激に押し上げています。公共事業や住宅投資を効果内需拡大につなげる上でも、抜本的地価政策を欠いた今回の総合経済政策とそれに基づく補正予算は全く不十分で賛成できません。  その第三は、昭和六十五年度特例国債依存からの脱却という、今では全く不可能な目標が足かせとなって、無理に無理を重ねた結果、非常にゆがんだ財政運営が続けられ、矛盾が拡大しているということであります。  内需拡大を目指したはずの補正予算が、収入減によって結局二千六百億円余りの減額補正になってしまっているのは政策的失敗と言わざるを得ません。  以上、本補正予算に反対する主な理由を述べまして、私の反対の討論を終わります。(拍手)
  395. 砂田重民

    砂田委員長 長田武士君。
  396. 長田武士

    ○長田委員 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました昭和六十一年度補正予算三案について反対の討論を行うものであります。  本補正予算案に反対する第一の理由は、本補正予算案に所得税及び政策減税が盛り込まれていないことであります。  公明党は、本年度当初予算の審議に当たって、円高不況を防ぐとともに、経済摩擦の緩和を図るために所得税、住民税の大幅減税、住宅、パートなどの政策減税を強く主張し、予算案の修正を迫ったのであります。  社会、公明、民社、社民連四野党の粘り強い要求の結果、三月四日の与野党幹事長・書記長会談において六十一年中の所得税減税、政策減税の実施が確約され、第百四通常国会中に成案を得ることが合意されたのであります。ところが、政府・自民党は、六十二年度の税制の抜本改正を理由に与野党間の合意を踏みにじり続けたのであります。  政府・自民党が十月十六日に改めて確約された与野党間の合意を尊重するというのであれば、少なくとも本補正予算案に所得税減税及び政策減税が盛り込まれるのが筋であったのであります。議会制民主主義のもとにあっては公党間の約束はあくまでも尊重されるべきであり、政府・自民党の態度は極めて遺憾であると言わざるを得ません。  反対する理由の第二は、円高不況を防ぐために思い切った内需拡大策が必要であるにもかかわらず、本補正予算案では極めて中途半端な対策しか講じられていないことであります。  本補正予算案では、景気浮揚を図る上で重要な一般公共事業関係費の追加はわずかに一千三百三十億円にとどめられ、一般公共事業の大半は六十二年度予算の先食いである国庫債務負担行為とされているのであります。財政投融資や地方単独事業の追加措置を織り込んではいるものの、景気対策が著しくおくれ、事態が深刻化している現段階においては、この程度の一般公共事業費の追加では、さきに述べた所得税減税及び政策減税の見送りとあわせて、景気浮揚効果はほとんどないと言わざるを得ないのであります。  民間金融機関では、今回の補正予算による実質GNPの押し上げ効果はわずかに〇・四%にすぎないと試算しているほどであります。  結局、本年度の実質経済成長率は二%台に落ち込むことは必至と見なければならず、内需の拡大がかけ声倒れに終わるならば、対外経済摩擦の緩和も困難であると言わなければなりません。  反対する第三の理由は、円高不況の様相が徐々に広まりつつある中で、苦境に立たされている中小企業や雇用不安に対する強力な対策が欠けていることであります。  負債総額一千万円以上の円高倒産は昨年の十一月以来既に四百三十件を超え、倒産企業の従業員は一万二千三百人を超えるに至っており、この傾向はますます増加の度合いを強めております。中小企業を円高不況から守るために、本補正予算でとられている不況地域の中小企業対策や信用補完制度の充実はもとより、既往債務の金利の一層の引き下げや償還期限の延長、中小企業向けの官公需の拡大、下請代金支払遅延等防止法等の強化が必要であります。  また、失業、雇用不安に対処するために、特に不況業種、不況地域の失業の予防、雇用の確保、離職者対策の充実が急務であります。その中でも、とりわけ中高年齢者に対するきめ細かな配慮が重要であります。  反対する理由の第四は、本補正予算案において、老人医療費の一部負担を大幅に引き上げる老人保健法改正案の施行を十二月一日と決定づけている点であります。  今日の段階では、健康の維持増進、疾病の予防という老人保健法の目的が十分に成果を上げているとは言いがたい実情にあります。こうした中で老人医療費の一部負担を大幅に引き上げ、また国保財政の赤字を他の保険者にしわ寄せしようとすることは到底納得できるものではありません。  以上、補正予算三案に反対する主な理由を申し上げ、討論を終わります。(拍手)
  397. 砂田重民

  398. 木下敬之助

    ○木下委員 私は、民社党・民主連合を代表して、ただいま議題となっております昭和六十一年度補正予算三案に反対の討論を行うものであります。  我が国経済は、昨年末以来五〇%という急激かつ大幅な円高により、極めて深刻な円高不況が日本列島全体を覆っているのが現実であります。円高倒産は昨年十月以来の一年間の累計で四百二十九件に達し、円高で製造業の八割が減益を余儀なくされております。とりわけ鉄鋼業界では一時休業や高炉休止計画に追い込まれ、造船各社も設備廃棄をせざるを得なくなるなど、今日我が国経済の発展を支えてきた産業がまさに構造的な不況を強いられているのであります。  これほどの円高不況が惹起しているにもかかわらず輸出は増大を続けており、貿易摩擦は一向に解決していないのが現実であります。  私は、今日の大不況は、内需拡大を図るための経済財政運営への転換を怠った中曽根内閣に責任があることを声を大にして主張するものであります。中曽根内閣の経済財政運営は、財源がないから何もしない、何もしないからなお一層の財源不足に陥るという悪循環を繰り返す縮小均衡型経済財政運営に終始しております。この路線では四%台の実質成長も「増税なき財政再建」も、いわんや貿易摩擦の解消も到底できない、八方ふさがりの路線にほかなりません。  我が党は、大幅な所得減税、法人税減税の実現、建設国債の発行による公共投資の拡大などを柱とした積極的な経済財政運営を断行することにより、内需主導の実質五%程度の成長が達成でき、税の自然増収が確保され、今日課題となっている貿易摩擦解消、「増税なき財政再建」が可能になることを強調し、具体的な提言を行ってきたのであります。  大幅な所得減税を見送り、公共投資拡大のための建設国債も小幅にとどめた今回の補正予算案では、到底政府の国際公約である実質四%成長は達成不可能であり、円高不況、雇用不安も一段と高まり、貿易摩擦の激化も避けられないものと断ぜざるを得ないのであります。  にもかかわらず、あくまで四%成長達成が可能であり、景気も回復していくとの総理の発言は全く無責任な姿勢と言わざるを得ないのであります。  中曽根政治は、補正予算において内需拡大のための施策を見送るとともに、この異常な円高是正にも何ら有効な対策を講じておりません。一ドル百五十円という円高輸出産業には耐えられない水準であります。今日の急激かつ大幅な円高は、中曽根内閣の為替外交の失策によって生じたものであり、その是正は政府みずからが責任を持って行うべきでありますが、私どもが提案したターゲットゾーン設定構想に極めて消極的であるなど無為無策に終始していることは極めて遺憾と言わざるを得ません。  政治家は、常に国民にあしたの希望にあふれたビジョンを示し、その実現を目指さねばなりませんが、景気にしろ円高にしろ何ら国民に指針を示さず、国民に不透明感を強めるだけの今回の補正予算三案に強く反対し、私の討論を終わります。(拍手)
  399. 砂田重民

    砂田委員長 寺前巖君。
  400. 寺前巖

    ○寺前委員 私は、日本共産党・革新共同を代表し、政府提出の昭和六十一年度補正予算に対する反対討論を行います。  反対理由の第一は、レーガン政権の核戦略を補完する歯どめなき大軍拡を推し進め、国民生活に犠牲を強要していることであります。  本補正予算案は、一兆二千五百億円を超える歳入欠陥のため四千五百二十億円の経費削減を余儀なくされ、軍事費も減額修正しておりますが、金額はわずか三百五十三億円であります。しかも、これは円高と原油値下がりによる差益のほんの一部にすぎず、戦闘機や軍艦のボルト一本、油一滴すら削減するものではなく、当初予算の大軍拡推進の性格を貫いているのであります。  他方、当初予算で大幅に削減された福祉、教育、農業予算は、健康保険本人一割負担の押しつけなどによって浮かした社会保険国庫負担の六百四億円の削減、私学助成費十二億円の削減など、一層刈り込まれたのであります。  反対理由の第二は、異常円高を当然視し、それを是正する対策を何ら持っていないばかりか、アメリカの言いなりになって、円高をてこに中小企業、農業、石炭産業を切り捨てようとしていることであります。  政府の調査でも一ドル百五十円、百六十円という異常円高が続けば中小企業は壊滅的打撃を受けることがはっきりしているのにもかかわらず、補正予算は、円高融資の金利をせめて三%に引き下げてくれという中小企業の切実な要求にすらこたえておりません。そればかりか、せめて一ドル二百円にという願いを無視して、政府アメリカの要求を受け入れ、今の異常円高を維持することに合意しました。これは円高是正とは逆に円高をてこに中小企業切り捨てを図るものであり、断じて許すことはできません。  アメリカの言いなりになっていたのでは、国民の被害は増大するばかりであります。経済構造調整と称して農業、石炭産業の切り捨てを盛り込んだ前川リポートの実施を対米公約とした中曽根内閣の姿勢はその典型であります。食糧、エネルギーを輸入に依存することは、我が国経済の自立の基礎を崩壊させるものであります。  反対理由の第三は、内需拡大を唱えながら、大企業奉仕を拡大し実際は内需をますます冷え込ませるものとなっていることであります。  国民の購買力向上に直結する円高差益の還元や所得減税は全く盛り込まれておりません。それどころか政府は税調答申に基づき公約違反の大型間接税の導入、マル優廃止をもくろみ、大増税路線を突き進もうとしております。失業率は三%を超えようとしている重大な事態にもかかわらず、雇用対策は盛り込まず、逆に、政府は国鉄解体による失業増大の先頭を切り、円高対策を口実とした大企業の人減らし合理化を放置しております。これでは内需の拡大は望むべくもありません。  他方、大企業への新たな補助、三十三億円の民活推進対策費が追加されました。内需拡大に名をかりたこのような大企業奉仕は断じて許すことはできません。  なお、公共事業費追加を大義名分としてなされる国債の五千四百九十億円の増発は、前回の円高のときにアメリカと財界の圧力に屈して国債を大量に発行し、今日の財政破綻のもとをつくった過ちを繰り返すものであることを指摘して、反対討論を終わります。(拍手)
  401. 砂田重民

    砂田委員長 これにて討論は終局いたしました。     ─────────────
  402. 砂田重民

    砂田委員長 これより採決に入ります。  昭和六十一年度一般会計補正予算(第1号)、昭和六十一年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和六十一年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  403. 砂田重民

    砂田委員長 起立多数。よって、三案は、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました昭和六十一年度補正予算三案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  404. 砂田重民

    砂田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  405. 砂田重民

    砂田委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十九分散会