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1986-11-05 第107回国会 衆議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十一月五日(水曜日)     午後一時開議  出席委員    委員長 砂田 重民君    理事 今井  勇君 理事 野田  毅君    理事 浜田 幸一君 理事 林  義郎君    理事 吹田  愰君 理事 上田  哲君    理事 川俣健二郎君 理事 近江巳記夫君    理事 吉田 之久君       相沢 英之君    愛野興一郎君       粟屋 敏信君    石渡 照久君      上村千一郎君    小此木彦三郎君       小渕 恵三君    越智 通雄君       大島 理森君    奥野 誠亮君       片岡 清一君    亀井 善之君       木村 義雄君    北村 直人君       小坂徳三郎君    鴻池 祥肇君       左藤  恵君    志賀  節君       田中 龍夫君    武村 正義君       西岡 武夫君    鳩山由紀夫君       福島 譲二君    細田 吉藏君       三原 朝彦君    村上誠一郎君       森  喜朗君    谷津 義男君       井上 一成君    井上 普方君       稲葉 誠一君    川崎 寛治君       菅  直人君    嶋崎  譲君       細谷 治嘉君    長田 武士君       正木 良明君    渡部 一郎君       木下敬之助君    楢崎弥之助君       寺前  巖君    正森 成二君       山原健二郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         国 務 大 臣 金丸  信君         法 務 大 臣 遠藤  要君         外 務 大 臣 倉成  正君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         文 部 大 臣 塩川正十郎君         厚 生 大 臣 斎藤 十朗君         農林水産大臣  加藤 六月君         通商産業大臣  田村  元君         運 輸 大 臣 橋本龍太郎君         郵 政 大 臣 唐沢俊二郎君         労 働 大 臣 平井 卓志君         建 設 大 臣 天野 光晴君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     葉梨 信行君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 玉置 和郎君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)         (国土庁長官) 綿貫 民輔君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 栗原 祐幸君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      近藤 鉄雄君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)     三ツ林弥太郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 稲村 利幸君  出席政府委員         内閣官房長官 渡辺 秀央君         内閣審議官   遠山 仁人君         内閣法制局長官 味村  治君         内閣法制局第一         部長      関   守君         人事院総裁   内海  倫君         人事院事務総局         給与局長    鹿兒島重治君         警察庁刑事局長 仁平 圀雄君         総務庁長官官房         審議官     百崎  英君         総務庁長官官房         審議官     稲橋 一正君         総務庁行政監察         局長      山本 貞雄君         総務庁北方対策         本部審議官   舩津 好明君         防衛庁参事官  瀬木 博基君         防衛庁参事官  筒井 良三君         防衛庁長官官房         長       友藤 一隆君         防衛庁防衛局長 西廣 整輝君         防衛庁教育訓練         局長      依田 智治君         防衛庁人事局長 松本 宗和君         防衛庁経理局長 池田 久克君         防衛庁装備局長 鎌田 吉郎君         防衛施設庁長官 宍倉 宗夫君         防衛施設庁総務         部長      平   晃君         防衛施設庁施設         部長      岩見 秀男君         防衛施設庁建設         部長      大原 舜世君         経済企画庁調整         局長      川崎  弘君         科学技術庁研究         開発局長    長柄喜一郎君         科学技術庁原子         力局長     松井  隆君         環境庁企画調整         局環境保健部長 目黒 克己君         環境庁大気保全         局長      長谷川慧重君         国土庁土地局長 田村 嘉朗君         法務省刑事局長 岡村 泰孝君         外務省北米局長 藤井 宏昭君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省経済局長 渡辺 幸治君         外務省経済協力         局長      英  正道君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      中平  立君         大蔵大臣官房総         務審議官    足立 和基君         大蔵省主計局長 西垣  昭君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省関税局長 大橋 宗夫君         大蔵省理財局長 窪田  弘君         大蔵省国際金融         局長      内海  孚君         国税庁次長   冨尾 一郎君         国税庁税部長 門田  實君         文部省初等中等         教育局長    西崎 清久君         厚生省生活衛生         局長      北川 定謙君         厚生省年金局長 水田  努君         農林水産大臣官         房長      甕   滋君         農林水産大臣官         房総務審議官  吉國  隆君         農林水産省経済         局長      眞木 秀郎君         農林水産省構造         改善局長    鴻巣 健治君         農林水産省農蚕         園芸局長    浜口 義曠君         林野庁次長   松田  堯君         通商産業大臣官         房長      棚橋 祐治君         通商産業省通商         政策局長    村岡 茂生君         通商産業省通商         政策局次長   吉田 文毅君         通商産業省貿易         局長      畠山  襄君         通商産業省産業         政策局長    杉山  弘君         通商産業省立地         公害局長    加藤 昭六君         通商産業省基礎         産業局長    鈴木 直道君         通商産業省機械         情報産業局長  児玉 幸治君         通商産業省生活         産業局長    浜岡 平一君         資源エネルギー         庁長官     野々内 隆君         運輸大臣官房国         有鉄道再建総括         審議官     林  淳司君         運輸省国際運輸         ・観光局長   塩田 澄夫君         運輸省海上技術         安全局長    間野  忠君         運輸省海上技術         安全局船員部長 増田 信雄君         郵政省通信政策         局長      塩谷  稔君         郵政省放送行政         局長      森島 展一君         労働省労政局長 小粥 義朗君         労働省労働基準         局長      平賀 俊行君         労働省職業安定         局長      白井晋太郎君         建設省建設経済         局長      牧野  徹君         建設省都市局長 北村廣太郎君         建設省河川局長 廣瀬 利雄君         自治大臣官房審         議官      森  繁一君         自治省行政局選         挙部長     小笠原臣也君         自治省財政局長 矢野浩一郎君  委員外出席者         会計検査院長  大久保 孟君         日本国有鉄道総         裁       杉浦 喬也君         参  考  人         (税制調査会会         長)      小倉 武一君         参  考  人         (国際協力事業         団総裁)    有田 圭輔君         参  考  人         (海外経済協力         基金総裁)  青木 慎三君         参  考  人         (日本銀行副総         裁)      三重野 康君         予算委員会調査         室長      右田健次郎君     ───────────── 委員の異動 十一月五日  辞任         補欠選任   伊藤宗一郎君     村上誠一郎君   宇野 宗佑君     石渡 照久君  小此木彦三郎君     亀井 善之君   海部 俊樹君     鴻池 祥肇君   田中 龍夫君     谷津 義男君   原田  憲君     三原 朝彦君   松野 幸泰君     粟屋 敏信君   武藤 嘉文君     片岡 清一君   村田敬次郎君     武村 正義君   村山 達雄君     木村 義雄君   山下 元利君     鳩山由紀夫君   正森 成二君     柴田 睦夫君   山原健二郎君     安藤  巖君 同日  辞任         補欠選任   粟屋 敏信君     松野 幸泰君   石渡 照久君     宇野 宗佑君   片岡 清一君     武藤 嘉文君  亀井 善之君     小此木彦三郎君   木村 義雄君     村山 達雄君   鴻池 祥肇君     海部 俊樹君   武村 正義君     村田敬次郎君   鳩山由紀夫君     北村 直人君   三原 朝彦君     原田  憲君   村上誠一郎君     大島 理森君   谷津 義男君     田中 龍夫君 同日  辞任         補欠選任   大島 理森君     伊藤宗一郎君   北村 直人君     山下 元利君     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和六十一年度一般会計補正予算(第1号)  昭和六十一年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和六十一年度政府関係機関補正予算(機第1号)      ────◇─────
  2. 砂田重民

    砂田委員長 これより会議を開きます。  昭和六十一年度一般会計補正予算(第1号)、昭和六十一年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和六十一年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  各案審査のため、本日、参考人として税制調査会会長小倉武一君、国際協力事業団総裁有田圭輔君海外経済協力基金総裁青木慎三君及び日本銀行総裁三重野康君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 砂田重民

    砂田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────
  4. 砂田重民

    砂田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉田之久君。
  5. 吉田之久

    吉田委員 私は、民社党民主連合を代表いたしまして、質問をいたしたいと思います。  あらかじめ予告いたしておりました質問以外に、特に緊急のお尋ねをいたしたいと思うわけでございます。それは、先ほどのニュースでも報ぜられておりますとおり、米国の中間選挙の模様でございます。  予想どおり民主党がかなり善戦をいたしておるようでございまして、ただいま現在入っております情報では、上院において民主党が四十九議席共和党は四十二議席、残る議席が九議席でありまして、そのうち八議席共和党がとるということは普通の常識ではかなり難しいことなのではないかというふうに思われます。このようになってまいりますと、アメリカ上院、下院とも民主党が優位に立つ、あと任期二年を残すレーガン大統領、いろいろとやりづらい点も多く出てくるのではないかと予測されるわけでございますが、この際、レーガン大統領と特別の関係にあると言われております中曽根総理が、このアメリカ一つの変化に対してどのような感想をお持ちになるか、あるいは特に国民にとりまして大変心配なことは、そうした共和党の敗北によってまたまたドル安が一層激しくなるのではないだろうかという懸念等もございます。お答えをいただきたいと思います。
  6. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 選挙の投票の開票はまだ最終確定に至っておりませんので、途中においてまだ情報は十分ないという状況で、コメントすることは差し控えたいと思っております。
  7. 吉田之久

    吉田委員 いずれもうすぐにもわかることでありますので、それだけに大事なこれからの日米外交の進め方、特に総理としていろいろ最大の配慮をなさるべき時期が来たように思うわけでございます。  次に、同日選挙のことについて申し上げたいと思います。  既に同日選挙が行われましてから約四カ月がたとうとしておるのでありまして、何を今さらとお考えになるかもしれませんけれども、私たち民社党は、あの同日選挙はやはりどう考えても我が国憲政史上好ましくない一つ選挙であったということを考えざるを得ないわけであります。これは決して私ども感情論で申し上げておるのではございませんで、あくまでも日本議会制民主主義二院制によって成り立つ我が国国政を今後とも未来永劫に発展させていきますためには、やはり同日選挙は断じて回避されなければならないものである。もしもこれからも三年置きにこのような状態が繰り返されるとするならば、やがて我が国二院制は形骸化し、参議院無用論が台頭してくることを私どもは懸念するわけでございますが、総理はそのことについて今日の時点でどのような御心境でいらっしゃいますか。
  8. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この問題は憲法論政治論、いろいろな面から御議論があるだろうと思います。憲法論から見ましては、もちろん憲法違反ではない。同時選挙の場合でも参議院の半分は残っておる。参議院を開くという場合には三分の一の出席で議事をやればいいということですから、半分の方々は残っており、参議院議員としての資格をお持ちであるという状態でありますから、これは違憲でもないし、また国政執行上差し支えない、そういうように思います。  それから先般の同時選挙という問題は、吉田さんも御存じのように昨年の秋から、昨年の臨時国会からいわゆる六増・六減というようなことで象徴されますように、衆議院定数是正違憲状態脱却ということが政治至上命題でございまして、それを至急直すために各党とも御苦心をしていただきました。また、議長もお出ましになって合意を形成しまして、そして次の通常国会にできるだけ速やかに案をつくる、そういうことで案をつくる努力各党ともしていただいて、五月に至って最終的に案がまとまって、それが成立したのは最終日のたしか五月二十二日であったと思います。  一たん成立しました以上は、この違憲状態脱却させるということが政治にとって至上命令であったわけでありまして、その選挙法改正ができる前とできない前では状況はがらっと変わったと思うのです。ですから、一たんできた以上は、もうできるだけ速やかにこの違憲状態を克服する措置を政府議会もとるべき立場にあったと思います。そういう観点から、たまたま参議院選挙がございまして、至急行うという情勢から見ましてたまたまそれが重なったというのがこの間の選挙状態である、一番の急務違憲状態脱却ということが急務であった、そういうことで行われたと思います。  将来の問題は、そのときの諸般の政治情勢から判断さるべきもので、あらかじめいろいろ拘束をつくっておくべきものではない。それは憲法第七条による解散というようなことは条件が別についておるわけではございません。そういう意味におきまして、政治弾力性あるいはその機に応ずる大事な処理という面から、自由を保障しておくことが必要ではないかと思う次第でございます。
  9. 吉田之久

    吉田委員 定数是正が行われた段階で一刻も早く違憲状態を脱したいという考え方のもとにあの時期を選ばれた、また同時選挙は法的に理論的に決してそのまま違憲になるというものではないとおっしゃること、それはそれなりにわからないではないのでありますけれども、いかにも参議院選挙をおくらせ、かつ円高是正のための臨時国会という名で召集しながら解散をされた、確かに不自然な点が幾つか残るわけであります。  また、参議院緊急集会、確かに半数は現職でありますし、形式的には参議院の場合には全員現職でありますが、しかし三分の一の成立といえども、なかなかに実際問題としては、同時選挙をやっている中で国に重大な問題が起こったときにその召集は困難であると思います。今、総理のお言葉の中にいろいろと今後に対する若干の御反省もあるやに私どもは感じますので、これ以上申し上げませんけれども、どうか国の二院制の建前を堅持し、そしてお互いにこの国の議会政治の円満なる発展を図るために一層よろしく御配慮をお願い申し上げたいと思う次第でございます。  次に、今総理からもお話がありましたが、衆議院定数是正、問題の国勢調査確定値が今月十日ないし十日前後に出ると聞いております。我々は今日までの国会の経緯あるいはお互いの総意に基づきまして、この確定値が出たならば、直ちに本格的な、抜本的な是正に取り組まなければならないと考えております。恐らく総理もそうお考えであろうと思います。だとするならば、その際我我民社党といたしましては、現在大変変則的な形で二名区が創設され、また札幌では六名区が暫定的に実施されたわけでありますが、この抜本改正の中では二名区、六名区、これは解消すべきであるということを強く申し上げておきたいと思います。  何よりもまず五百十二名になりました定数、これを速やかに大きく削減されなければならないと思います。また格差は三倍ぎりぎりのところで一応緊急避難したのでありますけれども格差は二倍以内とすべきであると考えます。また、今後国勢調査ごとに自動的に是正できるようにある種の第三者機関をこの際設けるべきではないか。さらにまた、参議院格差も既に速報値で計算いたしましても一対六・〇三倍になっておるわけでございまして、どのような常識から考えましても、これはこのままではおかしいと思うわけでございます。これらの諸点にわたって積極的に取り組み、忠実に抜本改正を行わなければならないと思うのでございますが、総理として、あるいは自民党の総裁として所信を伺っておきたいと思います。
  10. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 六十年国勢調査確定値が出ましたならば、かねて各党間の合意に基づきまして、至急抜本的改正の作業に各党協力して入りたいと思う次第でございます。そのときにどういう水準でこの改革を進めるのが適当であるか等等、すべてこれは政党政治グラウンドルールをつくることでございますから、各党間でいろいろ折衝して、みんなの大多数の合意を形成していくことが望ましい、そういう努力を我が党も各党と一緒に協力して努力してまいりたいと思う次第でございます。
  11. 吉田之久

    吉田委員 では次に、年内減税実施についてお尋ねを申し上げたいと思います。  既にこの点につきましてはきのうも各党の代表からるる述べられたところではありますけれども、我が党といたしましても去る三月四日、書記長幹事長会談によって公党間で約束がされました所得減税政策減税、これは当然年内実施されなければならないと思うわけでございます。また近くは十月十六日に、与野党国対委員長会談でもこのことは改めて確認されているところでございます。そして現在まで五回にわたりまして与野党政調政審会長会議で詰めてきておるわけではございますけれども、具体的には政策減税だけしか依然として俎上に上っていないという現状であると聞いております。財政的に苦しい事情はお互いにわかっておりますけれども、しかし、何よりも大事なことは公党間で交わされた信義であって、この信義は断じて守られなければ国政発展、運営は成り立たないと思うわけでございます。総裁としても、総理としても、この約束所得減税を必ず年内に行うということをこの際明言していただかなければならないと思います。いかがでございますか。
  12. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 十月十六日の各党合意がございまして、そのための実施につきまして専門家会議が行われておりますが、私も意欲を持ちまして、これらの合意成立して、その結果を我々が実行する、そういう考えを持っております。合意成立を見守っておるという状態でございます。
  13. 吉田之久

    吉田委員 ただ見守るだけではなしに、責任者である総理としてその促進のためにさらに一層具体的な御努力をお願いしなければならないと思います。  我々は、今度のこの補正予算を見て一番がっかりいたしておりますことは、どこにも今申しました減税が盛り込まれていないということであります。国際公約として四%の経済成長を見通している以上、ここで思い切った減税を行い、消費を拡大し、住宅建設推進等を図らない限り、円高不況で失速した日本経済というものを立ち直らせることはできないと思うわけなのでございます。  政府は金がないと言われるでありましょうけれども、現在、その気になれば減税に充て得る財源はあると私ども考えております。天皇在位六十年記念金貨等によりまして国でもうけた額は千八百億ないし二千億であると想定されますし、またNTTの株の売却によりましての収入増も一兆五千億円前後だと推測できるわけでございます。予備費もこの際、二千億円程度取り崩すことはできるはずであります。特に私どもが心配いたしておりますのは、発行される金貨がそのままたんすにしまわれてしまう場合、それだけ個人消費を減らす可能性が生じてくると思うわけでございます。そうなれば、内需拡大どころか、経済的にはマイナス効果を及ぼすおそれがあると思うわけでございまして、いろいろな点から考えましても、この際思い切った減税実施されることが、我が国経済を活性化する唯一の道であると考える次第でございますが、いかがでございますか。
  14. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今回の補正予算でもごらんいただいておりますとおり、租税収入だけでも一兆一千億に及びます歳入欠陥を生んでおりまして、ただいまいろいろな要素をお挙げになりましたが、実はそれらを全部計上いたしまして、なお、ごらんのような、公共事業をやりますためには建設国債を発行しなければならなかったような財政の実情でございます。したがいまして、長期的にはやはり我が国の税制というものは根本的に改める必要があると考えまして、ただいま税制の抜本的改正について検討をいたしておるときでもございます。この際しばらくの間その成果をお待ちをいただきたいというのが、実は私どもの気持ちでこざいます。
  15. 吉田之久

    吉田委員 そうすると、大蔵大臣にお伺いいたしますが、減税はしたいけれどもなお苦しい点が幾つかあるので、しばらくなお経過を見てほしい、そうおっしゃることと、先ほど総理にもお尋ねいたしましたけれども年内減税公党約束としてなさなければならない、この一方にはこたえ、しかも全体的にはこたえにくい、この辺の矛盾をどうなさいますか。
  16. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この点は昨日も私からは申し上げたことでございますが、そのように大蔵大臣としては考えておりますが、なお、各党間におかれまして合意が生まれましたときには、それは私ども誠実にそれを執行いたさなければならないということはもとより考えております。
  17. 吉田之久

    吉田委員 それでは、次に税制改革の問題について質問いたしたいと思います。  十月二十八日に政府税調の答申が行われました。しかし、その中に、私どもにとりましては、いかにもおかしい点が見出されるわけでございます。  それは、この答申の中に「将来の財政上の要請に応じて弾力的な対応も可能になる」このように書かれていることでございます。これは暗々裏に将来の増税を認めた答申なのではないかという疑いが当然生じてまいります。それでは第二臨調の答申であります「増税なき財政再建」の大原則から著しく踏み外す結果になると思うのでございます。また、総理の一貫した方針であり、公約でもあります「増税なき財政再建」これが鉄則である以上、「増税なき」ということ、それは一体どういうことであるかということを、この際もう一度お互いに確認しておかなければならないと思うのでございます。  「増税なき」とは、全体として租税負担率を断じて上げないということでなければなりません。六十一年度予算ベースで見まして租税負担率は二五・一%、社会保険料等を含む国民負担率といたしましても三六・一%が現状であります。総理は断じて租税負担率の上昇を伴うような税制改革はいたさないということをまずここで明言していただかなければならない時期に参ったと思うわけでございますが、いかがでございますか。
  18. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど御引用になりました税調答申の部分でございますが、私はこのように解釈をいたしております。つまり、法人税、個人所得税等々を御承知のような形で軽減をいたしてまいりますが、しかしそのための財源措置等々を考えますと、いわゆる歳入中立的な税制改正、しかもそれは一体として包括的にとらえていかなければならない抜本的な税制改正というものが考えられている。その結果として所得税、直接税関係の軽減が行われますために、勤労意欲、企業意欲等々にそれは必ずプラスの影響を及ぼして、やがて我が国経済が持っている潜在力が活力となって顕在をする、そういう状況になれば、いわゆる経済成長もかつてのような高いものでございませんでも、現在のような状況でなく活力に満ちたものになるでございましょうし、その結果として財政もまたそこから恩恵を受けることができる、裨益することができるという、そういう考え方を弾力的と述べたものと考えております。  なお、最後に仰せになりましたことについてでございますが、租税負担率と言われます場合に、税率が上昇いたしませんでも、つまりいわゆる増税によりませんでも、所得税の累進構造がございますために自然増の形で租税負担率がふえるということは、これは間々ございますことでございます。過去、高度成長のときにはしばしばございました。今後も、あのようなほどのことはないかと存じます、なるべく累進構造は緩やかにいたしますけれども、しかし自然増の形での結果としての租税負担率の上昇ということはあり得ることであって、それはいわゆる増税という意味とは区別して考えてよろしいのではないかと存じます。
  19. 吉田之久

    吉田委員 だんだん経済成長の中で国民の所得も伸びてくる、そのことによって当然自然増収が出てくる。しかし、その場合には双方が並行して上がってくるわけでございますから、租税負担率や国民負担率は上昇することにならないと思うのです。今大臣がおっしゃいましたとおり、この累進制度の採用のいかんによって自然増がふえ、それが租税負担率を高めることになる、この御説明は私どもにはわかりません。そういうことになるならば、その税の率等を修正して全体として租税負担率を上げないという努力をしなければ、総理の公約とは反してくるわけでございませんか。その辺のところをもう少し国民に納得できるように御説明いただかないと、この答申はやはり問題を残しておる、その問題を残したものをそのまま政府は受けようとしているのか、これは重大な問題であります。
  20. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 具体的に申し上げますならば、過去におきまして我が国のいわゆる租税弾性値は幾つであるかということはしばしば議論をされたところでございます。非常に高いときもございます、二に近いときもございましたし、最近十年ぐらいでございますと、一・一とか一・二とか、それでもやはり一以上でございます。マイナスのときもあったかと存じますけれども、租税弾性値というものは経済成長に対して一以上であったことはもうしばしばございました。また、それは成長の姿としては私は望ましいことである。どうもここのところ経済成長が非常に弱まっておりますから、租税弾性値という議論が余りございませんけれども、一プラス幾つということは、もうむしろ従来からいえば平均値であったわけでございます。それには一つはやはり累進が関係をいたしておりまして、これからの累進は従来ほどきつくあってはならないと思いますけれども、それでも幾つかの刻みがあるわけでございますから、少なくともそこからだけでもやはり弾性値というものはプラスになる可能性が相当にあるのではないかと私は思います。
  21. 吉田之久

    吉田委員 今まで経済が順調に発展いたしております中では、私どもも租税弾性値というものを許容いたしてまいりました。そしてそれが国民生活にさしたる影響を与えてこなかった。しかし、こういうふうに非常にデフレ傾向がちな経済が続いていくとするならば、やはり弾性値による負担増といえども厳しくそれを抑え込んでいくということにしませんと、いつか長い時間をかければやはりヨーロッパ並みの国民負担率に近づいていくということになると思うわけでございまして、その辺の理解はお互いにまだ若干あいまいな点が残ると思いますけれども、今後、時に触れて論議を詰めていくべき問題ではないかというふうに考えるわけでございます。  そこで私は、きのう大蔵大臣の御答弁の中で、新しい間接税を導入する考え方のあることを示唆されたと思いますし、現にきょうの新聞等はそのことを報じているわけでございます。大臣がおっしゃいますのには、国民所得が高く、平準化してきた今日、直接税と間接税の七対三の比率はもっと差を縮めた方がよいと思うという見解を述べられたわけでございますが、私は、果たしてそれでいいのだろうかと考えざるを得ない重大な問題点が残っていると思うわけなんでございます。それは何かと申しますと、現行税制が果たして完全に執行されておるかどうか、これが問題でございます。  今、国税労働組合全国会議という組織がありまして、私どもといろいろお互いに協力、提携をいたしておる組織でございますけれども、この労働組合の報告によりますと、五十九年度現在で源泉徴収義務者は我が国に約三百二十万いる、それ以外の申告所得者は約七百十三万人いる、さらに法人数は百九十八万件であると聞いております。そうでありますけれども、この源泉徴収されるサラリーマンは文句なしに給料の際に天引きされておるわけでございますから、一〇〇%税を納めておりますし、また税務署員との平素の接触は不必要であります。しかし、残る個人の場合、法人の場合、どの程度税務署員がいわゆる実地調査、これを実調と呼んでおるようでございますけれども、どの程度実調が可能であるかという点を聞きましたところ、個人の場合には四%、法人といえども一〇%しか実調できない、こういう現状でございます。  なぜそうなんだろうかと思うのでございますけれども、最近、御承知のとおり取引規模が年々大型化いたしております。また多様化いたしております。さらに国際取引が拡大してくる中で、限られた人員ではとてもこれ以上対処できるものではないということは私どもも十分察せられるところでございます。だといたしましたならば、二十五年に一回しか税務署の実調はない。法人の場合といえども十年に一回しかない。一度この間実調を受ければ、自分が責任者であるこの会社の経営のその期間においてはまずもう一度とはないのではないだろうか。個人の場合といいましても、二十五年といえば、ほとんどその個人の活動の一つの生涯に匹敵するぐらいの長い時間でございます。一生の間に、あるいは自分の責任ある間にまあ一回実調があるかないかだ、こういう状態の中で果たして完全な税の把握、徴収ができるであろうかという点を私は基本的に疑っておるわけなんでございます。大臣はいかがお考えでございますか。
  22. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いわゆる実調率が最近どのぐらいでございますか、私もこのところ存じておりませんが、ただいま仰せになりましたように、そうしばしば実調というものはあるものではございません。それは現実に持っております税務職員の数からいいましても容易に理解できることでございますが、ただ最近は資料の収集、交換ということがかなり昔よりも上手になりまして、この資料に基づいて、実調するところあるいは実調のやり方等相当効率的になっておることは事実でございましょうと思います。いろいろ税務官吏もその点では苦労もし、また技術的にも進歩をしてまいったと思います。  しかし、それにいたしましても、源泉所得者のようにいわゆる源泉徴収をされる者に比べて、そうでない事業所得者等々は殊に所得の把握を受ける度合いが低い。クロヨンという言葉を私はそのまま信用しているわけではございませんけれども、その辺から税についての不公平感が殊に給与所得者について生じておりますことは残念ながら事実であると思います。
  23. 吉田之久

    吉田委員 一国の大蔵大臣が残念ながら事実であると認めざるを得ない今日のこの税の不公正、これをこのまま、問題をそのまま残して次なる間接税の導入に踏み切られることが私は正しいやり方であろうかどうか。大体この間の日米野球でも、基本に忠実なアメリカチームと随分たたえられておったのでございますが、やはり物事というのはまず基本に忠実でなければならないと思うのです。  今現に大蔵大臣が、認めたくないけれどもクロヨンという事実を認めていらっしゃるような御発言でございます。直間比率をフィフティー・フィフティーにすることによって直接税に係るそのばらつきは少しは縮められると思います。しかし、クロヨンが六対三対二ぐらいに圧縮するといたしましても、このままの手法でいくならば厳然として不公平税制は残るわけなんでございます。国家として、そういうものを残して次なる間接税を考えていいのであろうかどうか。言うならば、この国ではまことに正直者だけがばかを見て、およそ知恵のある人はその税をいかにうまく工夫するかということによって利益を得る。およそ経済活動の最終段階というのが私は税金だと思うのです。だから、国民あるいは企業の場合も、最大の関心を持っておりますのは、幾ら税を最終的に払わなければならないかという問題であります。この重要な最終段階で、ごまかせるとは言いませんけれども、極めてきちんと情け容赦なく取られておる階層と、いわば自由裁量のような形で税を納めている人たちとが混在したままでいいのかどうか。私は断じてこの問題はきちんとしなければならないと思います。  一体どうすればいいのか。これはこの国税に携わる働く人たちがみずから申しておるのでございますけれども、どうしてもこの際、行政改革の折からではありますけれども、一番大事な税を徴収するというこの仕事に従事する国家公務員、これだけはさらに増員していただきたい。できれば一万人定員をふやしてほしい。六十二年度にせめて二千人だけふやしてもらえないだろうか。今、一人の勤勉な税務署員は平均一年間に約五千万円の税を集めてくると言われております。この数字は、政府の方に、役所の方に聞きましても、ほぼ間違いがないようでございます。このような重要な問題を残して次なる間接税を考えるということは私は断じて許せないと思うわけなんでございますが、この辺は総理大臣、いかがお考えでございましょうか。
  24. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 現に所得の捕捉に不均衡があるところへ一つ飛んで間接税にいくのはどうかという仰せであったわけでございますけれども、実は、飛びます前に幾つかのことがやはり考えられておりまして、執行の面では青色申告であるとかあるいは白色申告についての指導等々がございますが、それは執行の面で、制度の面でもこの際税制改正で御考慮をいただきたいというふうに政府でも考えておりますのは、例えば給与所得についての各種の控除の問題あるいはみなし法人の家族従業者が現在与えられている諸控除の問題、その辺のところを調整ができないかという問題が一つございます。  それからまた、全体の累進構造、税率の刻み等等でいわゆる中堅の給与所得者のところの負担を何とか軽減するばかりでなく累進を緩めておきたいというような考え方も、結果といたしましては給与所得者と事業所得者との間の不均衡感を何とかして制度の面でも和らげたい、こういうふうに考えておりますことはお聞き及びのとおりでございまして、この点はぜひそういう形で御提案を申し上げて、やがて御審議をいただきたいと考えておるところでございます。これは現実にそのような不均衡感があるという、それに立ちまして制度の上でそれをどの程度改善できるかという工夫でございまして、それを飛ばしましていきなり間接税のことをお願いしようとしているわけではございません。この点は御理解をいただきたいと思います。  なお、後段に言われましたことは、税務職員が非常に苦労をしておりますことはそのとおりでございますが、このような行財政改革のもとでその点は従来も相応に定員等について考慮をしてもらっておることも事実でございます。今後もできるだけ最善の効率を上げるようにいたしまして、なおその上で万やむを得ないといったようなことにつきましては政府全体としても考慮を願いたいと思っておりますが、与えられました人員でまず最善の効率を上げるということにさらに努めてまいらなければならないと思っております。
  25. 吉田之久

    吉田委員 大蔵大臣として与えられた人員で最大の効果を発揮していきたいとおっしゃることは当然でございますし、その姿勢は正しいと思います。しかし、物には限度があると思うのです。しかも、一番大事な税を把握し、かつ徴収する、この辺を行政改革の折からと言っていいかげんにしたままでは、私は国家の将来というものがおかしくなるのではないかというふうに言わざるを得ないわけでございます。  およそ税務署と納税者の間に常に一定の緊張感というものがあって初めてきちんと納税はなされるものだと私は思うわけでございまして、したがって、何かこの間からの御答弁を聞いておりましたら、総理もよく簡素、選択とかおっしゃるわけでございますが、なるべく税制を簡素化しよう、そして多くの税務署員が要らなくても税が集まるようにしよう、こういう考え方が一方にあるようでございます。それをすべて否定するわけではございませんが、税務署員が減ること、それはなかなか容易なことではないと思います。減らしていいのか悪いのか、今大臣の御答弁でも、せっかくの努力をしてなおやむを得ざる場合にはいろいろとその対策を講じたいという御意見をしかと聞いておくところでございます。  それから、間接税の導入についてでありますが、私どもは断じて、今申しましたように、直接税がいいかげんになされておるままで間接税を導入するということは許せないと思うわけでございますが、しかし大臣がきのういみじくも答弁なさっておりますとおり、だんだん政府側としてはこの間接税をどんな形で導入すればいいだろうかとお考えになる時期に入ってきておることは否定できないと思います。ただ、総理は、自民党員が考えておることや国民が考えていらっしゃるようなそういう希望にたがうような税制改正はしない、間接税の導入はしないとおっしゃいますけれども、最後は総理みずからが、これならば自民党員も国民も納得するだろうと自分で御判断なさってお決めになるのだろうと思います。  それでは大変国民は迷惑をこうむるわけでございますし、ただ単に重税感を一層募らせるだけではなしに、そういう間接税の導入というものは、我が国のこの経済の仕組みの中で、特に小売、末端の零細なお店があって、それが消費者に物を届けておる、そういう状況の中にあって、そういう末端でかつ間接税を取るということは我が国経済活動に重大な支障を来すことになると思うのでございますけれども、この辺について政府が検討をなさっていることはございますか。
  26. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この点はただいま私ども政府と与党の間でいろいろ検討をしている問題でございますし、そもそも税調の答申自身がいろいろな選択肢を与えたままでなされておりますので、御指摘になられましたような問題はまだまだかなり時間をかけませんとお答えを申し上げられませんが、基本的な考え方といたしまして、いわゆる非課税事業者あるいは非課税取引というものは、かなり広範に考えましても、やりようによってはそんなに税収に関係をしないといったような研究もございまして、その辺はいろいろ私は工夫のしようがあるのではないだろうか。抽象的にしか申し上げることができませんけれども、そういうことは、今おっしゃいましたような国民が受ける非常な煩瑣な、何と申しますか迷惑と申しますか、そういうことを考えますと十分に検討する価値がある問題ではないかと思っております。
  27. 吉田之久

    吉田委員 十分に検討する価値が何によって生ずるのか、その辺がちょっとあいまいでございますが、私が申し上げたいのは、ヨーロッパ社会と日本社会とはその成り立ちがかなり違うと思うのでございます。日本の末端の小売店、それはほとんど主婦や元気なお年寄によって支えられております。このところに今申されました大変煩瑣な手続を強いる間接税が及んできた場合に、一体それに対応できるのであろうかどうかという点が一つでございます。それから、日本人独特の気質として、そういう難しい計算や税金はともかくとして、要するに全体で幾らなんだとかあるいはもう少しまけてくれないかとか、こういうところが一般化いたしておりますし、結構それで我が国の商売というものが成り立っている面を見逃してはならないと思うのです。  私どもがヨーロッパに参りましていろいろ買い物をいたしますときに、言葉の通ずる通じないの不便もありますけれども、いろいろとややこしい手続を説明されて、その上に税をオンして、かつそれの事細かな明細書をいただいて、ただしあなた方は外国人だから飛行機に乗るときにこれをこちらへ出してください、いずれあなたの手元に返るでありましょう。忘れかけたころに戻ってくるわけでございますが、あの買い物をいたしておりますときに、本当は三つ買いたかったけれども、ややこしいから一つにしてしまおうということが、率直に言ってこれはあり得ると思うのでございますね。そういう面倒な商売というものが我が国の末端にまで導入された場合に一体どういう影響を与えるであろうか、これは真剣に考えていただかなければならない問題であると思います。この辺の検討は今後どうなされますか。
  28. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 最終的にどういう形の間接税をお願いするかということを決めます前には、まさにただいま仰せられましたようなことが非常に重要な要素になってまいると思います。先ほど申し上げましたように、非課税事業者をどの範囲にするか、非課税取引をどのようなものにするか、あるいはまたインボイス云々の問題でありますとか、それから納税そのものが、一つ一つについてと申しますよりは、ある一定期間まとめていたすとかいったような、そういう国民に煩瑣な手続をできるだけお願いしないような方法で、しかもある程度の税収が確保できる、そのようなことをどういうふうに考えればいいかというようなことが、まさしく現実には非常に大事な問題になってまいると思っております。  先日来、今度の間接税の問題につきまして、総理大臣が選挙中あるいは国会においていろいろ言明をされましたことと背馳しないように立案をしなければいけないということは御指摘のとおりであり、私どももそう思っておりまして、その際にそのような問題が私は大変に大事になってくると考えております。
  29. 吉田之久

    吉田委員 間接税は苦痛を伴わない税金だというような言葉も時々答弁の中であらわれてきておったわけでございますが、しかし、間接税は一歩誤れば国民全体の経済を極めて救いがたい状態に落とし込むということは特に警戒されなければならないと思います。また、税率は初め小さくとも、徐々にこれが広がり上乗せされてまいりますのがヨーロッパの例でありました。小さく生んで大きく育てよう、それは育児の道では可能であっても、この間接税では断じて許されないことであります。  ともあれ、国民は大変敏感でありまして、もはやこの円高不況の中で、また昨今の日本経済の中で今後給料は余り大きく一挙に上がることはないであろう、しかし間接税が導入されることによって必ず物価は上がるであろう。物価を上げない間接税の導入はないと思うのですね。そうすると、収入はほとんどふえず、支出だけがふえていく。これは必ず苦しくなる。国民生活を苦しめるものだ。間接税には断固反対という声が広がってきておりますので、総理も当然選挙の公約の中でそういうことを十分聞いて今日に至っておられると思うわけでございますが、一層慎重に配慮されなければならないと思いますが、総理、いかがでございますか。
  30. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 税の選択の問題につきましては、御説のとおり、あくまで公約を守りまして慎重にやっていきたいと思います。
  31. 吉田之久

    吉田委員 次に、少し関連がある質問といたしまして、伝えられるところによりますと、公定歩合の引き下げに伴って資金運用部の預託金利を引き下げるべきである、こういうことが経企庁からも要請されているように聞きます。これに対して総理はどうなさろうとするのか。これには法改正が必要でありますが、いつごろどんな形でやられるのであるか。  それから、不況対策としては公定歩合の引き下げは必要でありますけれども、別の面から見れば大きな問題が出てまいります。年金財政への影響、これはゆるがせにできないと思うわけであります。預託金利を仮に一%引き下げた場合に年金財政はどういう影響を受けるであろうか。また保険料引き上げという結果を招いてはこれは大変でありまして、この点、厚生大臣はどう考えられるか。預託金利を下げるのであれば、年金積立金の自主運営を認めて高利運用の道を開くべきではないかというふうに我々は考えますけれども、この一連のお答えを賜りたいと思います。
  32. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 先生の御指摘にもございますが、公定歩合が今般下がったわけでございますが、これに引き続きまして預貯金の金利の引き下げも当然なされるわけでございますし、また、これに応じまして長期、短期プライムレートの切り下げということも当然考えるわけでございます。そういたしますと、現在資金運用部から貸し出しされております金利が資金運用部資金法に基づきまして六%最低ということになっておりますので、その長期プライムレートがどれぐらい下がるかということでございますが、現在六・四でございますから、実質実は今六・〇五で貸し出しておりますのでその差〇・三五しかございませんから、この長期プライムレートの下げようでは逆ざやになる可能性もあるわけでございます。そうしますと、一般市中金利よりも公的な金利の資金コストの方が高くなって、それを使いまして、他の中小企業金融だとか住宅金融公庫だとか開銀、輸銀等々あるわけでございますが、民間金利よりも高い資金コストで運営するとなると、これは形としてもおかしい形になるというふうに私は考えるわけでございます。  問題は、公定歩合の引き下げもそういう形で現在の円高不況対策の一環として考えているわけでございますが、やはり現在のように景気がよくない、そして片っ方では、いわゆる過剰貯蓄の状況においては、金利を下げることでそれをてこにして経済が自動的に今度は反転していくということが当然経済政策の一つの大きな方向であると思うわけでございますが、そういう中で一般の市中金利が下がっても公定金利は法定されておりますから下がらないということではどうもおかしいので、あえて申しますと、資金運用部資金ができましたのは昭和二十六年でございますが、当時お金が足りない、貯金の足りないときにできた法律を、現在のような国際的にも資金が日本は過剰貯蓄と言われている状況の中で、もう一回いろいろな角度から検討してみる必要がある、こういうことだと思うわけであります。  ただ、先生御指摘ございましたように、これは預貯金の金利との関係もございますし、その他預託者のいろいろ資金の運用という問題とも当然密接に関係をしてまいりますので、いろいろな角度から慎重に検討しなければならない問題であると私は考えておりますが、しかし、その公的金融、公的な金利が一般の金利の自由な動きに対して多少妨げになるような体制というのは現在の金融自由化、金利自由化の中ではやはり再考を要することでございますので、関係の省庁とも十分に意見を聞きながら、これは政府としてしかるべく措置を考えていかなければならないのではないか、かように考える次第でございます。
  33. 斎藤十朗

    ○斎藤国務大臣 資金運用部資金の預託金利の引き下げと年金財政の関係についてのお尋ねでございますが、この預託金利の引き下げが年金の保険料等にどう影響するかというお話でございますが、これにつきましては、保険料、年金財政を考えますときに、死亡率とか、また賃金の上昇率とか、いろいろなもろもろの要素を取り入れて財政再計算期に総合的に判断をしなければならないものでありまして、一概には申し上げられませんが、単純にまたマクロに計算をいたしますと、六十年度の国民年金、厚生年金の積立金残高は約五十三兆円でございますので、そのうちの一%ということになりますと約五千億円ということに相なります。そしてまた、六十年度の保険料収入総額がおおよそ九兆円でございますから、そのうちの五千億円でございますので、保険料の約五%というようなことになろうかと思うわけでございます。  そして、預託金利の引き下げと年金財政との関連でございますが、私どもは先刻、年金の抜本改正をお願いをいたしまして、将来にわたって年金の給付水準とそしてまた負担との関係におきまして国民の一定の合意をいただいたと考えておるわけであります。そういう中で貴重な年金積立金の運用というものを長期的に安定したものにしていくことが、年金を将来にわたって安定し、そして維持していくことである、そのためにはできるだけ安全かつ有利な運用をいたしてまいらなければならないと考えておりますが、たび重なります預託金利の引き下げにつきまして私どもも大変憂慮いたしており、私どもといたしましては、かねてから積立金のうちの一部について自主運用をさせていただきたいというお願いをいたしておるところでございます。このたび、なおまた預託金利の引き下げというようなことになるとしますならば、来年度からの自主運用についてぜひともこれを実現をいたしてまいりたいという強い決意を持っておるところでございます。     〔委員長退席、今井委員長代理着席〕
  34. 吉田之久

    吉田委員 今御説明がありましたけれども、大変大事な国民の財産でありますし、かつ大変巨額のものでありまして、一%の動きで五千億円違うのでございますから、どうか今後の運用につきましては政府部内で極めて慎重に丁寧に協議を続けられますことを特に強く要請いたしておきます。  次に、土地問題について質問いたしたいと思うのでございます。  まず初めに農林水産大臣にお伺いいたしますが、我が国の国土面積は三千七百七十万ヘクタール、耕地総面積は、いろいろな統計がありまして、五百三十八万ヘクタールという数字も出ておりますし、農業センサス等では四百五十八万ヘクタールとも出ておりますが、まあまあ五百万ヘクタール程度存在することだけは事実であります。  さて一方、市街化区域は百三十五万ヘクタール、市街化調整区域は三百七十万ヘクタール、こういうことになっておるわけなんでございますが、今その中で休耕転作が続いております。私どもの調べました数字では、純粋な休耕地、それは十四万ヘクタールに上ると聞いております。この十四万ヘクタールというものは、市街化面積に比べれば一一%に相当する面積であります。調整区域に比べましても四%に相当する面積であります。この休耕地が今国際的な情勢の中でこれ以上活用できない状況に追い込まれていくとするならば、この際それに見合う分だけ市街化区域に調整区域の一部を編入することによって日本の農業に与える根本的な影響は生じないと私は思うわけなんでございますが、農林水産大臣はいかがお考えでございます。
  35. 加藤六月

    加藤国務大臣 市街化区域における農地の転用問題、四十四年の都市計画法改正のときに農地法の改正もやりまして、都道府県知事の許可になっておりましたのを農業委員会への届け出でやればよろしいということにいたしてございます。そして四十八年に、今吉田委員おっしゃいましたが、二十七万ヘクタールありました市街化農地の面積は現在十九万へクタールと約七〇%になっております。  そこで、市街化区域内の農地についての御意見と承ったわけでございますが、私たちがポスト三期をやりますのは、米の安定供給というのと第三次過剰、これを絶対起こさないという問題でやってきておるわけでございますが、そういう中で都市農業というものと都市計画における線引きの政策というものとの整合性、ここら辺を考えていかなくてはならない。私も、農政審議会を初め各界各方面の御意見を承りまして近々そういう問題についてはっきりした線を出し、また決定をいたしたいと考えておるところでございます。
  36. 吉田之久

    吉田委員 余り農政問題に立ち入って質問するつもりはないのでございますが、この際農林水産大臣の御記憶にとどめておいていただきたいと思います問題は、十月二十九日の新聞を拝見いたしましても、またまた米の豊作が続いて、したがって今後一層の減反を進めていかなければならない、現に減反面積は六十万ヘクタールでありますが、これが七十三万ヘクタールにもなるのではないかというように言われておるわけなんでございます。一方、これに見合う二千三百二十四億円という莫大な転作奨励金も一般会計から支出されている現状でございます。私は、このような現状の中で、もちろん農業、国民の基本にかかわる食糧の問題は極めて重要でありますけれども、ほぼここ当面この程度でいいという面積はおのずから推定されてきている時期にあると思うのです。  そういう中で、一方宅地が大変欠乏いたしておりまして高騰しているわけなんでございます。したがって、市街化区域の中の農地が宅地化されることが一番望ましいのでありますけれども、なかなかそれぞれの思惑等があってそうはいかない。だとするならば、それを促進させる意味でも調整区域の中に市街化区域の予備軍と申しますかそういうものをつくることによって宅地供給を一層推進していき、かつすべてにわたる問題を解決していく方法が出てくると思うわけなんでございます。  私はこの際に、この間実は自民党の長老会議でも線引きの見直しのお話が出たようでございますけれども、我々はもっと前からそれを考えておったわけでございますが、今民間活力推進担当の副総理は、昭和四十四年当時建設委員長をなさっておりまして、この都市計画法の改正のときに大変御苦労をいただいた方でございました。そういうお立場におられる副総理が、今日宅地が非常に払底いたしております中で、国民の要請にこたえるためには今申しましたような線引きの見直しという手段に国が出ざるを得ないのではないかと私ども考えるわけでございますが、副総理はどのようにお考えでございましょうか。
  37. 金丸信

    ○金丸国務大臣 線引き制度という問題でございますが、線引き制度は、当時都市に無秩序に人口、産業が集まった、それを防止したという点については非常に功績があったと思うのですが、しかし、経済状態も変わっておる現今、十数年たっていることですから、これに対して人口の全然ふえないというような地方都市等については、これは線引きは見直しをすべきだ。今この問題について建設省の都市局ではプロジェクトをつくってこの線引きの見直しを検討し、近いうちにそれを通達に出したいという考え方がある。いま一つ、この問題につきまして、それじゃ全部取っ払ったらどうだ、こういう御意見もありますが、それは、公共投資の二重投資というものを防ぐためにもこれは取っ払うわけにはいかない、こう私も考えております。
  38. 吉田之久

    吉田委員 建設大臣にもお伺いしたいと思うのでございますが、今お話しのとおり、国として農村として育ってきたものを急に市街化に育てる、いわゆる二重投資の問題が出てまいりますので、いろいろ悩み深い問題ではあると思います。しかし、市街化区域周辺の国民、特に農業に従事しているほぼ農村地帯と都市地帯との中間的な地帯がいっぱいあるわけでございまして、この辺はそろそろ市街化区域に編入されたいという希望をかなり持っておるようでございます。しかし、それを市街化区域に編入してしまえば市町村は社会資本を思い切ってその地域にも投下しなければならない、特に下水道完備の要請は強いわけであります。そういう自己負担の増大を恐れる余り、線引きの見直しをしたいけれども実は抑えているというような傾向がいっぱいあると思うわけでございますが、建設大臣、自治大臣はこの辺のことについてどのような御認識をお持ちでございますか。
  39. 天野光晴

    ○天野国務大臣 お答えします。  新都市計画法決定のときには吉田先生も建設委員会の理事であったと思いますが、現在の段階において非常に矛盾の点も多く出てきております。先ほど農林大臣が答弁されましたように、農地との関連性が一番大きくなっておりますが、今まで農地を保護してきた建前から一度にこれを切り崩すことは非常に問題ではありますが、先ほどお話のあったように、農地の方は減反政策をとっていく、減反政策をとるには膨大な金を出していく、そして田んぼは荒らしておくということでありますから、その点の調節はつけなければいけないと思っております。そういう点で十二分に新都市計画法の改正考えるべき段階ではないかと思いますものですから、その点は十二分に考慮したいと思っております。
  40. 葉梨信行

    ○葉梨国務大臣 九月に発表されました総合経済対策におきましても線引きの見直しを促進すべきだとされておりますが、自治省といたしましても、宅地化を促進する見地から線引きの見直しを進めるべきであろうと考えているところでございます。  市街化区域を拡大するにつきましては、将来の財政負担を考えて地域の実情に応じて行わなければならないのではないかと考えているところでございます。また、線引きの見直しが行われますと宅地化が促進されるであろう、そのために必要な公共施設の整備も行わなければならなくなりますので、必要な公共投資につきまして起債とか補助金等の財源措置もしっかり講じてまいりたいと考えているところでございます。
  41. 吉田之久

    吉田委員 建設大臣も自治大臣も大変日本の現状をよく御理解いただいておるそんな御答弁でありまして、大いに期待をいたしたいと思います。  特に、副総理からもお話がありましたが、当時はスプロール化が大変心配されたわけでありますけれども、その後今日の電力もガスもかなり強固なものになってきておりますし、また内需拡大の折からも下水道の普及等は当然急がなければならない時期に来ていると思うわけでございます。住宅を供給することによって農地はそれだけきちんと整備され、また休耕地がなくなって勤労意欲が一層伸びてまいりますし、また住宅関連産業も勢いづいてくると思うわけであります。まさに一石五鳥くらいの効果のあるのは今や線引きを見直すことだと思うわけなんでございますが、今自治大臣もお話がありましたとおり、それに付随する地方負担、これが大変だと思うのでございます。しかも権限は今知事が握っているわけでございますから、どの府県でも地域住民はかなりこのことを期待しながら実現しないという情勢にあります。地方の財政の苦しさは十二分に私どももわかるところでございますので、ここから先は政府が各省あらゆる力と知恵を集められまして、この問題にどう対処していくか。少なくとも世界でウサギ小屋と言われているような日本のこの貧しい住宅事情というものからどう脱却していくかということにつきましては、ひとつ総理も真剣にお考えをいただきたいと思う次第でございます。  時間がだんだんなくなってまいりましたので、円高不況の問題について申し上げたいと思います。  いろいろと今一番心配なのは、企業が海外に進出し始める傾向が生じていることでございます。このことは必ず日本の産業の空洞化を招くと思うわけでございます。現にアメリカがドル高のためにアメリカ特有の多国籍企業を駆使いたしまして海外に進出した、それが今日のアメリカの産業の空洞化を招いていると言われております。日本はここに来てアメリカの轍を踏もうとするのではないか。かつそのような空洞化が起これば、一番惨たんたる被害を受けるのは労働者であります。雇用問題は日々深刻なおそれを増してきていると思うわけでございます。この際、通産大臣とされましては、企業の海外進出についてどのような見解を持っておられるか、まずお答えいただきたいと思います。
  42. 田村嘉朗

    田村国務大臣 確かに海外投資ということになりますと、空洞化現象が起こることは考えられるわけであります。ただ、我が国の高い経済力の蓄積というものはやはり生かしていかなければならぬ。海外直接投資等を通じて産業の国際的な展開を進めることは、我が国に与えられた一つの使命ともいうべきものである、また産業構造改善という意味においても一つの柱であろうかと思っております。同時にまた、国内におきましては内需主導型の高目の経済成長、これを図っていかなければなりませんし、また、新たな技術革新、情報化の成果を生かすこと等によりまして産業の新たな発展分野の開拓を図る、また、多様な雇用機会の創出を図っていくということが必要と認識しております。つまり新しい産業、新しい技術、そういう分野を開拓することによって空洞化を吸収していく、これが基本的な考え方になりましょうし、また、内需の拡大によって経済の活性化を図る、産業の構造改善によってバランスのとれたよい姿の日本の産業構造に持っていく、こういういろいろな対策を講じていかなければならないだろうと思っております。
  43. 吉田之久

    吉田委員 通産大臣はかなりこの問題を楽観していらっしゃるように聞きます。出ていくものは大いに出ていって、また新しい事業を創設すればいい、それはまさにそのとおりでありますけれども、なかなかここから先の雇用状況というもの、産業の空洞化は容易ならぬものがあると思うのでございますが、ちょっと具体的に質問を続けてまいりたいと思います。  まず、繊維産業の場合、我が国は米国以外の対日輸出国との繊維協定を結んでおりません。しかしMFA、多国間繊維協定を発動して、この際、パキスタンとか中国とか韓国などと繊維協定を締結する協議に入った方がいいのではないかというふうに考えますことが一つ。  それから、日米繊維協定は昨年十二月で期限切れになっておりまして、目下交渉中であると聞きますけれども、米国の方は非常に規制を強化しようとする姿勢が露骨であります。断じて日本の事情を説明しながら的確に取り組んでいかれなければならないと思います。この点につきましては外務省からもお答えいただければありがたいと思います。
  44. 田村嘉朗

    田村国務大臣 この繊維協定といいますのは、御承知のようにガットの特則でございます繊維製品の国際貿易に関する取極に基づく輸入数量を制限する協定でございます。でございますから、日本が自由貿易の原則を貫いていく、保護主義を排するということから申せば、でき得る限り日本が輸入する立場に立ったときにはこういう協定は排して、そして相手に交渉によって理解を求めて、日本に対する輸入の御配慮を願うということが正しい日本の歩むべき道であろう、このように思っております。そういうふうにして開放市場下での構造改善の推進が我が国の繊維産業政策の基本的立場であるというふうに言うことができると思うのでございます。今後ともこの基本的立場のもとで関係国への協力要請を続けてまいる所存でございます。  それから、日米繊維協定でございますけれども、これは一方的に日本が売る立場でございますから、アメリカの保護主義を排して繊維協定ということになったわけでございますけれども、昨年末に確かに期限切れになったわけでございますが、取り決めの改定交渉につきましては、一部の品目、例えばポリエステル長繊維、薄地織物など一部の品目をめぐっての最終合意が達せられておりませんけれども、一連の協議を通じて双方の主張はかなり近寄ったというふうに報告を受けております。
  45. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えいたします。  通産大臣から既にお答えしたとおりでございますが、現在のところ、対象繊維製品の数量の枠などの実態問題を中心に交渉を行っておりまして、歩み寄りの得られた品目もありますけれども、まだ交渉の余地が残っている問題がございます。したがいまして、全品目について合意が得られた段階で、実態問題について結論が得られたその段階で取り決め案文の交渉を行ってまいりたいと考えておる次第でございます。
  46. 吉田之久

    吉田委員 次に、造船問題についてでございます。この辺は、総理も昔海にいらっしゃったので、よく聞いておいていただきたいと思うのです。  きのう我が党の塚本委員長が広島に入りまして、特に造船不況に深刻な現地の事情をいろいろ視察したわけでございます。ほとんど造船不況にかかわる各市長さんらが全部いらっしゃった、なかなかの熱心な会合、しかも聞くも涙、語るも涙、塚本委員長も二回にわたって泣いたそうであります。  またこの間、九段の会館におきまして海員組合と造船関係の労働者が危機突破決起集会を開きました。私もこれに参加したわけでございますが、席上、海員の主婦の人たちが訴えておりました。戦争中は商船も乗組員も真っ先に軍に徴用された、そして一番危険なところで戦いに参加し、かつ船は沈み、私どもは親を失った。平和になった今日、貿易摩擦と円高で真っ先に犠牲になり、そして滅ぼされなければならないのは我々船乗りであるのであろうかという嘆きでございます。大変四面環海の我が国にありまして、しかも今造船はほとんど倒産、縮小の状況にありますし、海員の乗組員もどんどん削減されておる状況にあります。これでは将来、世界第二位の経済大国を誇る我が国への大動脈である海上輸送というものはほとんど諸外国の船あるいは外国の乗組員に頼らなければならないという重大な事態が生じてくると思うのでございます。  そこで、まず具体的にお聞きいたしますけれども、新造船受注量が減少し、建造設備過剰だけが残っておるこの現状の中で、さらに韓国等の激しい追い上げにさらされている我が国の造船業界を今後どのように守ろうとするのか。まさにこの業界では今度の出されました補正予算、それがきっとこの業界を助けてくれるものであろうと一日千秋の思いで待っておるようでございますが、私どもはこの中身を拝見いたしまして大変寂しいものを感じますが、一体どうなさろうとするのか。それから、円高不況対策として公共事業の追加が強調されておりますが、船がだんだん山に上ると申しますか、この造船産業もいろいろ歩道橋の塗装とか、ごみ処理とか、し尿処理とか、そういうことに仕事を転換していかなければならない。陸上のプラント類等がこれからの主たる持ち場になってくると思うのでございますが、この辺の転換を的確になさる御用意はあるか。  さらに、石油公団を中心として備蓄計画が進められておりますが、九州上五島洋上と白島基地計画、六十一年度中に残り一隻の計画があるにもかかわらず、今日まだそのめどさえ立っていない。涙ぐましい造船業界の需要創出にこたえて、国はもっと積極的な努力をされなければならないと思うのでございます。  いろいろ関連いたします労働問題等の将来につきましては労働大臣から後でまとめて御答弁をいただければありがたいと思います。
  47. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 大変幅の広い御質問でありますので、順次お答えを申し上げたいと思います。  まず第一に御指摘を受けました、今回の御審議をいただいております補正予算、これは確かに既存の中小企業特別調整対策の拡充、延長、また特定地域中小企業対策、雇用対策を講ずるための所要経費を計上するということでありまして、造船業、海運業につきましてもこれらの措置が活用できるように関係省庁と連携をとりつつ対応してまいるつもりであります。しかし、海運、造船両業を含めまして、構造的対策というものにつきましては六十二年度予算において要求をいたしておりまして、これは基本的な問題として六十二年度予算のときに全力を尽くしたいと考えております。  また、外航、内航海運業の船員雇用対策としての船員離職者職業転換等給付金、この追加は計上をいたしております。  そこで、今後の造船ということでありますが、これは委員がみずから御指摘をいただきましたように、海上輸送の伸び悩み、そして構造的な需要の減少という中で、六十二年度におきましても二〇%程度の過剰設備の削減、集約化等による産業体制の整備を中心とする対策を考えるということを私どもは今考えておるところであります。  また、実は今陸上部門転換、造船業の方で御主張になりましたが、実はこれは船員の場合でも同じ問題があるわけでありまして、我々は外国船への雇用を含めて、できるだけ海上における雇用を進めていきたいと思います。しかし、それが世界的に船の動きの少ない中で図れないとすれば、これらの方々の持つ技能を生かしながら、陸上での転換というものも労働省の協力を得て進めてまいらなければなりませんし、またまいるつもりであります。  また上五島、白島における石油備蓄計画につきましてのお話をいただきましたが、上五島の石油備蓄計画につきましては完成予定を六十三年九月としておりまして、既に第四船目までは発注済みであります。そして、もう第一船は現地に据え置きを完了いたしましたし、第二船は十一月の中旬に進水予定と聞いております。第三、第四船は現在ブロック工事中でありますし、第五船も近々発注される見込みであります。また白島の石油備蓄基地につきましては、まだ現在基地の護岸工事中でありまして、タンク船の発注は来年度からの見込みになっております。  いずれにしても、この両業界の不況対策というものは我々としても深刻な問題として受けとめておりまして、全力を尽くすつもりであります。
  48. 平井卓志

    ○平井国務大臣 お答えいたします。  最近言われております経済構造の調整というのはもうそのまま雇用調整ではなかろうか、私はかように思っております。したがって、たびたび今まで御答弁申し上げましたように、基本的には内需の思い切った拡大策がございませんと円滑に産業の構造転換は至難のわざであろう、私はかように考えております。そういう中で、雇用不安がかなり大型になってまいりますと、従来の枠組みである労働政策、御案内のような雇用調整金の拡充、さらには特定不況業種、不況地域に対する指定等の枠を広げましてもなかなかこれだけでもって吸収し切れない面があろうか。したがって、各般の産業政策につきまして今後とも綿密な連絡をとって、各事業官庁にも雇用を優先して特段の配慮をお願いするという施策をとりませんとなかなか万全を期しがたい。  そういう意味で、既に新聞等で発表もございましたが、通産省とも十分に協議をいたしまして、既に経済構造調整関連のお話し合いを今後続けていくということで協議会等も設置いたしたわけでございます。そういうふうな総合政策を持って、今後きめ細かい対策を講じまして強力に雇用の推進のために万全を期してまいりたい、かように考えております。     〔今井委員長代理退席、委員長着席〕
  49. 吉田之久

    吉田委員 運輸大臣、いろいろ備蓄計画についても造船産業を助けるために御配慮いただいておりますことを感謝いたします。  ただ、護岸工事中で、なお、それが終了すればさらに一隻ということのようでございますが、船は別のところでつくれるわけでございますから、そのことによって空白をつくるのではなしに、むしろ前倒しをしてすぐに発注をさせる、そのぐらいの配慮がないとよくないのではないか。  きのうも広島へ参りました我が党の岡田委員から今メモをもらったわけでございますが、六十一年度広島県が造船不況対策費として二十三億五千万円を支出いたしております。ところで、このことに関しまして国庫補助は幾らついたか。何と驚くなかれ一%の二千三百九十万円なのでございます。これでは、国も不況対策を講じているとは言えないと思います。とても地方、都道府県や市町村はついていけないと思うのでございまして、どうか本気でこの問題に対処していただきたいと思います。  さらに、鉄鋼産業の場合、巨大な設備を持って苦しんでおります。この減価償却の期間の短縮などは他国との競争力の維持のためにも大変重要だと思います。  合板産業の場合にも、関税引き下げが今後ますます続いてまいります。こういう中で木材需要拡大の緊急対策を講じられなければならないと思うわけでございます。  非鉄金属産業の場合も同様でありまして、いろいろと新鉱床探査費の確保あるいは補助率の引き上げをしてほしい。  石炭産業の場合も大変深刻であります。特に石炭産業の場合に、第八次の石炭政策の最終年度、六十六年度の生産体制のめどをどこに置かれようとするのか。あるいは貯炭が増加いたしております。現在量は二百八十万トンでありますが、これは国が買い取らざるを得なくなるのではないかと思うわけでございますが、これらの問題につきまして御答弁をいただきたいと思います。後、木下君が質問いたしますので簡潔な答弁で結構でございます。  それから、特にいわゆる水源税が再び問題になってきておりますが、山や河川を守ることは非常に大事でありますが、そういう目的税で便宜的な解決を迫ろうとすることは間違いであると思うわけでございまして、この点につきましては大蔵大臣から一言お答えをいただければありがたいと思います。
  50. 田村嘉朗

    田村国務大臣 石炭の問題は、今八次審が大詰めでございます。もうそう遠くない、極めて近いうちに答申があるんじゃないかと心待ちにいたしております。その答申を受けて対応したい、このように考えております。  私は、この前も申し上げたのでありますが、治山治水の重要性というものは何人もこれは認めるところであります。実際に治山治水の担当者の立場を思いますと、財源を求めるという気持ちは痛いほどよくわかります。しかしながら、全国民の生命財産を守るその治山治水の財源というものを、果たして苦し紛れで水源に、しかもその利用するのが農業用水が六六%で、工業用水が一八%、上水が一六%、その農業用水の六六%を抜いて三四%、これを特定財源として、そしてこれに対象としてかけて、その四分の一を地方に回して、あとを四対三で分ける。これは、私はこれじゃ余りにも治山治水の担当者はかわいそうだと思うのですよ。でございますから、もっと堂々と、財政当局が考えを新たにして治山治水の重要性を認識してもらって、正攻法で一般会計から出すべきもの、かように考えております。
  51. 吉田之久

    吉田委員 今の通産大臣の答弁、私どもの思いと全く同様でございます。心から敬意を表する次第でございます。  残りの時間を木下君に質問していただきます。ありがとうございました。
  52. 砂田重民

    砂田委員長 この際、木下敬之助君より関連質疑の申し出があります。吉田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。木下敬之助君。
  53. 木下敬之助

    ○木下委員 総理大臣、早速お伺いいたします。  総理は、二年前にこのSDIという言葉が初めて我が国国会で取り上げられましたときに、非核の防衛兵器で核廃絶を目指すものと言われました。これはレーガン大統領がそう言ったので理解を示した、こう説明されました。あれから一年半、たびたびアメリカへ調査団も派遣されて中身について検討してこられて、その結果を踏まえて、九月には研究に参加するという政府の方針を閣議決定されました。私はこの際、原点に返って幾つかの点をお伺いいたしたいと思います。  総理は、SDIに対して理解すると言われました、そして、支持するという言葉との違いについて、支持するという言葉は奨励的なにおいが出るが、理解するという言葉には留保が非常に強い、このように二つの言葉のニュアンスの違いを強調されて、イエスとかノーとかはっきりそうすぐ言えるものじゃありません、そういうことで一般的に日本が最終態度を決めることを留保した、このように言っておられます。  こういった発言の経過から見ますと、今回研究参加を決定したということは、理解するという段階から一歩進んで支持するという決定をしたことになると考えますが、どうでしょうか、総理の御意見をお伺いいたします。
  54. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 支持するという表現が適当であるかどうか、まだはっきり決めたわけではありませんが、理解が進んで、そして研究参加について交渉に入ることを認めた、そういうことでありますから、今までのような単に理解するというだけではなく、積極的意欲が出てきている、こういうふうに解釈願って差し支えないと思います。
  55. 木下敬之助

    ○木下委員 最初に言われたときは、支持にはそういう積極的な奨励的な意図があるから支持だと言われて、今言葉を少しあいまいにされましたけれども、確認したいのですが、要するにまだ最終態度を留保したままであるということですか、それとも参加をもう決定したということですか。
  56. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 参加を前提として交渉をする、交渉の結果によっては留保ももちろんあるということであります。
  57. 木下敬之助

    ○木下委員 これから総理は中国に行かれたり、また機会があればゴルバチョフ・ソ連書記長ともお話しになると思います。その際SDIについても出ますが、中国に行って日本の態度を聞かれたら、まだそういうことで、交渉はしているけれどもその結果次第では参加するかしないかわからない、こういうことで言われるわけですか。
  58. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 研究に対する参加なんですね、初めから申し上げているように。それで、その研究参加の条件についてアメリカ政府と交渉しています。したがって交渉の結果、いろいろ内容はございますが、例えばその利益の帰属の問題等もあります。そういうような問題について合意成立することを希望しておりますが、もし合意成立しないという場合には、我々としてはそれを突き進むということについて留保がまだ存在している、そういうことであります。しかし、交渉しているということはやはり研究参加を前提として交渉している、こういうことでございます。
  59. 木下敬之助

    ○木下委員 できるだけわかりにくくない姿勢でやっていただきたいと思います。  次に移ります。  確認したい点でございますが、SDIは本当に非核兵器であるのかという点を確認いたしたいと思います。最近のアメリカの核実験のかなりの部分はSDI関係のエックス線レーザーのための実験である、こういった指摘もされておりますが、総理は、仮にSDIに核爆発をエネルギー源とするようなエックス線レーザーが使用されることになっても、SDIは非核兵器であると考えられますかどうか、お伺いいたします。
  60. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 お答え申し上げます。  レーガン大統領は、SDI計画を発表しました当初から、非核の防御兵器体制をもちまして核を究極的には廃絶していきたいということを言っておるわけでございまして、最近でもレイキャビクの首脳会談後に、SDIは非核の防御体系であるということを強調しております。したがいまして、全体といたしましてSDIが非核であるという、それを目指しているということは間違いないところでございます。  ただ、その一部に核爆発をエネルギーとして使用するエックス線レーザーの研究が行われているということも事実でございますけれども、エックス線レーザーなるものは、必ずしも核爆発によるエネルギーのみではなく、通常の高性能爆弾によっても可能でございますし、アメリカ政府は、この研究はあくまでもソ連が行っている研究に関連してそれに対抗する意味で、ソ連の研究がSDIシステムをどのように攻撃してくるかということに関連しての研究であるというふうに述べておりまして、この部分が存在しているということによりまして全体が非核であるということをいささかも変えるものではないというふうに了解しております。
  61. 木下敬之助

    ○木下委員 今日までのいろんな質疑の中でも、総理はやはりそういったことを言われておると思います。SDIが非核であるという考え方を二段構えで言っているように感じるのですね。その一つは、とにかくエックス線レーザーを使ったその兵器そのものが核ではない、こういうふうな言い方をされるときと、仮にそれが核であったとしても全体の一部であるなら全体は核兵器とは言えない、こういう二段構えで聞こえておりますので、一つずつ確認させていただきたいと思います。  その第一点の非核の定義ということでございます。我が国で非核といえば、これは非核三原則の対象となる核ではない、このことを意味すると思いますが、政府は核兵器の定義を「原子核の分裂又は核融合反応により生ずる放射エネルギーを破壊力又は殺傷力として使用する兵器をいう。」こう答弁されております。私は、何も総理がこういった答弁にこだわって専門的に考える必要はないのではないか。我が国が核であるか非核であるかということは、唯一の被爆国として核は平和利用に限る、こういう国民の合意があると思うのです。だから核を軍事利用しているものはやはり非核三原則の対象である、このように言われるのが妥当ではなかろうかと思いますが、どうですか。――総理、御答弁をお願いします。
  62. 小和田恒

    ○小和田政府委員 非核三原則につきましては、委員御承知のように、唯一の被爆国である我が国が、その国民感情、それから我が国独自の平和憲法というものを踏まえて、我が国自身の主体的意思として、日本は核兵器を持たず、つくらず、また持ち込ませない、こういう方針を政策意思の表明として宣明してきた、こういう背景があるわけでございます。  したがって、そこで言っております非核三原則というのは、端的に申しますと、我が国が主体的意思に基づいて我が国の領域内において核兵器の存在を許さない、こういう内容の政策でございますから、そこで核兵器とは何かということが出てくるわけでございまして、政府が統一見解で申し上げておりますような先ほど委員がお読みになった核兵器というものがその対象になる、こういう立場をとっているわけでございます。
  63. 木下敬之助

    ○木下委員 総理が国民に向かって非核であると言われれば、国民は非核であるととるのです。それは今言われたような原則のもとで非核であるかないかなんてとらないと思うのですよ。非核である、防御的であると言ったら、ああそうか、核は平和利用しかなくて核の軍事利用はしてないのか、こうとるのが当たり前だと思いますので、総理にはぜひ国民に向かって率直に真心で答えていただきたいと思います。  私、一つ確認をいたしておきます。エックス線レーザーを発生する仕組みとかは知りませんけれども、とにかく核爆弾を地下のドームのようなところで爆発させる、その爆発したエネルギーを何らかの方法で取り出してレーザーにして発射する、それで直接弾道弾を撃ち落とすこともあれば、宇宙の反射鏡のようなものでまた地上に向かって撃ち落とすこともある、こういった形であると思いますので、そこに核爆発能力を持った核爆弾そのものが使われておることは確かだと思うのです。ですからこの点を、その先がレーザーで使われておるから核兵器じゃないなんというようなことを言うと、今後核軍縮とか核廃絶とかいう言葉、これがおかしくなると思うのです。現実に、もし軍縮をし、もし核廃絶をしたということを検証しようとしたときに、核廃絶はしてしまったけれども、その兵器の一部に核爆弾が使われておる、これで廃絶したとは絶対言えないと思うのです。だから、そういった点はもっと本当に国民に理解のできる形で言ってもらいたいと思います。  それからもう一点です。先ほども言われましたが、この非核であるということは、とにかくレーガン大統領が非核と言われたから非核なんだ、総理も最初にそう言われました。そしてあるときは、非核の定義を聞きますと、国によって違うかもしれないというようなことも言われました。私はこの点をずっと考えてきたのでありますが、確かに言われたとおり、核の定義というのは国で大きく変わり得ると思いました。それはなぜかといいますと、核という言葉を聞いたときに、とにかく核といえば核爆弾であり核弾頭を意味する、それが常識である国と、核と言われれば、非核と言われれば非核三原則の平和利用というものがぴんとくる国とでは、非核という言葉の意味が違うと思うのです。ですから、これは私の推測というか、推測にも当たりませんけれども、仮にアメリカで非核といえばそれは非核弾頭であるということを意味するのだとすれば、これは大変大きな違いだと思います。  この際、レーガン大統領は一遍非核と言われて、それは本当に非核ですかと聞くのなら失礼でしょうが、レーガン大統領の言われる非核というのはどういう意味なんですかともう一度聞いていただきたいのですが、もし既に問い合わせておるのなら今お答えください。
  64. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 ただいまの御質問の点でございますけれども、非核と申しますことは、この考え方はそもそも、レーガン大統領が、今日の平和を維持しております核兵器の相互の確証破壊というものに対する疑問、それを高度のテクノロジーで何とか核兵器からの脱却ということができないかという発想から出てきたものでございます。したがいまして、ここで申しております非核というのはあくまで我々と同じように核でないものということでございまして、それで、核でないテクノロジーによりまして核兵器を廃絶していくということがその目的でごさいまして、その点は何回も、最初の声明から最近の声明に至るまで一貫して申し述べているところでございます。  さらに、エックス線レーザーについてでございますけれども、この点につきましては、先ほど申し述べましたように、ソ連がこの類似の兵器を開発しておるということによりましてそれとの関連で研究を進めておるということでございまして、この研究が存在することは事実でございますけれども、この兵器が存在するわけではございません。その研究というものは全体のSDIの研究の中のほんの一部でございまして、それは、そういうSDIシステムが攻撃された場合にそれをどのように守っていくかという観点からの研究が主体であるというふうに承知しておるわけでございます。
  65. 木下敬之助

    ○木下委員 レーガン大統領がSDIという構想を考える、そのときに、今までのような形で相互確証破壊という、全滅するなら先制して使うことはないだろうというそういう概念のもとで今平和がある、抑止されておると考えるよりは、現実に飛んできても現実に撃ち落とすことが可能なようにしたい、こう考えたという気持ちはわかるのですよ。それまでもし撃ち落とそうとすると、ABMにあるようなとにかく核弾頭を使って破壊しなければ撃ち落とせない、だから非核で考えよう、こういう流れを追ってくると、核弾頭じゃないものでやろうということでも、これは理解できなくはないと思うのです。ですから、ぜひともこの際確認していただきたいと私は思います。確認するかどうか、御答弁をお願いいたします。
  66. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 非核の点につきましては、レーガン大統領が何回もそれを標榜しておるところでございまして、その点につきましては明確であると思います。すなわち、SDIシステム全体として非核を目指しているという点につきましては極めて明確でございます。
  67. 木下敬之助

    ○木下委員 全体のことと部分的なものを私は分けて質問しておるわけですから、分けてどのようにアメリカの大統領が考えるかを聞いてください。  これは先ほど申しましたように、核を日本に持ち込むか持ち込まないか、今のシステムで言うと、アメリカが自分のところで判断して持ち込むか持ち込まないかを決めています。そのアメリカが決める判断と、日本が受け入れてこれは困ると言っておる判断が違っている。それを放置したままで非核三原則は成り立たない、今のやり方なら。これは絶対に確認してください。総理は御答弁いただかないので非常に私は不満でございますけれども、時間がないので、またどなたか詰めてください。きょうあと私は十分ちょっとしかないので、言いたいことを言わしてください。  総理、二点目でございます。一部に核兵器が使われていてもだからといって全体は核兵器とは言えない、全体としてのSDIは核兵器とは言えない。このような組み立て方も総理はなされておりますが、これはやはり独特の論法だと思います。これは、先ほど言われたレーザーのようなどちらかわからない兵器がという仮定ではなくて、明確に、SDIの一部に明確な核兵器、例えば核弾頭が使われていたとしてもそれが一部であったらSDIは非核兵器である、このように言われるのですか、お伺いいたします。
  68. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まず、核兵器であるか核兵器でないかはアメリカ大統領に聞いてみろとおっしゃいますが、私は見識がない話だと思うのです。核兵器であるかないかということは自分で決めて、我が国の諸原則、我が国の政策で決めるべきものである。それを判断する基準は何であるかといえば、どういう兵器としてそれができてきたか、あるいはできつつあるか、あるいはつくろうとしているか、そういうあらゆる段階における情勢をすべて把握した上で自分で判断をすべきものである、そういう意味で私はお答えしなかったのであります。  それから、次に核兵器という問題でありますが、きのうも菅さんにいろいろ御答弁申し上げましたが、今まで我々が定義してきた核兵器というのは、先ほど局長が答弁しましたが、これを直接の爆発力、殺傷力として、直接的に破壊したり殺傷したりして使う場合を核兵器と言ってきた。したがって、原子力推進による潜水艦に使われるという場合は、日本の場合でも原子力推進というものが普遍化されて商船でも使われるようになれば原子力潜水艦をつくってもいいのだ、そういうことも申し上げておるわけですね。つまり直接的でない、そういう場合には兵器とは言えない、要するに核爆発で直接殺傷しているのではないという意味における兵器ではない、それは核兵器でない、そういう定義、日本流の定義をしてきたわけです。ですから、SDIの場合におきましても、核兵器という定義が出てくる場合には、どういう態様でその兵器が出現してくるか、そういうことを判定した上で、核兵器であるか核兵器でないかということは判定すべきであると、前から申し上げております。
  69. 木下敬之助

    ○木下委員 総理言われましたから、一点。  最初に、レーガン大統領に私は、本当に非核かと聞いてこいと言っているのじゃないのです。非核か非核じゃないかを聞いてこいと言ったのじゃないです。レーガン大統領が非核と言うのはどういう意味で言われておるのかを聞けと言っておるので、これが何で見識がないことですか。当然のことで、聞かなくてそのまま受け入れることの方が、日本総理としてはよっぽど見識がないと私は思います。総理、失礼な言葉は許してください、私も若いですからつい言葉が出る。  それから、平和利用と私は申し上げました。核爆発をさせたエネルギーをレーザーで使って撃ち落とす、これは平和利用とは言えない。私は、平和利用でなければ非核三原則の対象である、こう明快に申し上げた。しかし、今総理が言われる原子力の問題でいうと、誤解を招くといけないので言います。原子力の場合は、それを利用していろいろな使い方があるし、蒸気にして電力にすることもございます。しかし、今言われておるこのレーザー光線を何か平和目的で利用して、それがもうかなり顕在化されて、汎用された中でそのエネルギーを一部兵器に使ったという場合なら、これは私は平和利用の延長であると言えるかもしれぬ。今現在、そのエックス線をそのまま兵器に使おうと思ってつくっておるものが何で平和利用と言えるか。当然こんなことはもう私が言わなくても、素直に判断すればできることだと思います。  それから、先ほど申しました、一部に使われたとしてもそれは全体としてはそうではない。私、このこともいろいろ考えてみたのですけれども、何か昔、本で読んだような気もしますが、白い馬が馬じゃないという話があったのです。ここに馬の群れがいて、これは非白馬の群れであります、こう言われた。中を見てみたら一匹、二匹白い馬がいるので、どうしたのだと言うと、一匹、二匹いたって全部が白馬じゃないからこれは白馬の群れじゃない、非白馬の群れだ。これはやはりおかしな論理であり、当然歴史に残る詭弁であると思います。  それで、お聞きしたいことがまだたくさんございます。何点かお伺いしますが、次に、総理は、防衛兵器であるということもかなり強調しておられます。このSDIというのはやはり本当に防衛だけの兵器体系と言えるのでしょうか。先ほど申しましたように、レーザーを反射させたりすれば宇宙からのレーザーによって相手国の地上にあるものを先制的に破壊することも可能であると思いますが、この点はどう判断なされておられますか。
  70. 筒井良三

    ○筒井政府委員 SDIで一応考えております兵器といいますものは大きく言って二つありまして、一つが運動エネルギー兵器、一つが指向性エネルギー兵器、そういうグループになっております。  仮に、そういった兵器を地上に向けて発射、攻撃したというときにどういうことになるかといいますと、運動エネルギー兵器関係といいますと、簡単に言いますとミサイルのようなものでございます。全部大気圏外の真空の中を飛ぶことを前提として考えているものでございますから、これは大気圏に突入したと同時に消滅してしまいます。  しからば指向性エネルギーの方はどうかということになりますと、例えば中性粒子ビームのような兵器でありますと、これはもう大気圏を通すことは全くできません。それから、レーザー兵器もほとんどが大気圏で吸収されてしまいます。  したがいまして、また地上へ向けて照準してある一点をねらうというような機能はSDIにはございませんので、仮にただやみくもに下の方を向けてそういった光線を照らしたところでも、大気圏でほとんど吸収されて、ビルの屋上を焦がすか破壊するか、それぐらいができるかどうかというぐらいのものだと思っております。
  71. 木下敬之助

    ○木下委員 この点に関しましては、ソ連のゴルバチョフ書記長も、攻撃兵器となる可能性みたいなことを言われております。いずれ、総理がまたゴルバチョフ書記長とお話しになるようなときにも、このSDIは話題となってくると思います。そういったときに明確な根拠が示せないお話をなさるようなことのないようにというふうに思いますし、今お聞きした範囲でお話し合いになられるというのはやはり何かよくないのではないかな、そういうふうに思います。  時間がありませんので、もう少しお伺いしますけれども、今のようなSDⅠで、SDIが非核の体系という認識に立ったときに、将来もし必要があってターミナル段階の地上発射基を我が国に設置する、こういうことは理論的に可能であるかどうか、お伺いいたします。
  72. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 お答えいたします。  ただいま日本政府が決定いたしましたのはSDI研究計画に関連する参加の問題でございまして、この配備につきましては、官房長官談話にありますように、配備については配備の段階になるということになりますれば同盟国と協議するということでございまして、配備の段階というのは先の話でございますし、その時点での問題というものを現在検討しているわけではございません。
  73. 木下敬之助

    ○木下委員 それでは最後に、SDIのメリットという観点からお伺いしたいと思います。  研究に参加した我が国企業がつくり上げた技術は、原則として我が国企業も自由に使えるのでしょうか。アメリカ側にそれを保証する何らかの制度があるのかどうか。そして、我が国企業がつくり上げた技術がアメリカ側の軍事秘密に当たるような場合には、その使用についてどのような制限がかかると考えておられますか。そして政府は、SDIの技術に関する秘密保護はMDA協定、相互防衛援助協定、これに伴う秘密保護法によって行うとしておられますが、アメリカ側もそれで納得しておられるのか。アメリカ側は、これに不満があればこの法律で守られる範囲での技術しか日本側の使用を認めない、こういうことになるのかどうか、お伺いをいたします。
  74. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 秘密に指定されました情報につきまして、それの使用については当然一定の制限があるかと思います。それが一体どのような制限があるかということ等につきまして、現在まさに交渉中でございまして、先週も四日ほどその交渉をしたところでございます。今後さらにこの交渉を続けていきまして、アメリカ側と納得のいく話し合いを行っていきたいということでございます。  さらにその結果でございますけれども、これがどういうことになるかということにつきましては、現段階では判然といたしません。いずれにしましても、これは累次政府が表明しておりますように、既存の法律、それから既存の国際取り決め、この枠内でアメリカと交渉に入る、交渉を行うということでございまして、この原則は貫いていくということでございます。
  75. 木下敬之助

    ○木下委員 最後に外交問題で一点お伺いして、質問を終わりたいと思います。  ソ連のゴルバチョフ書記長の来日が実現するのかどうかということが日ソ外交の焦点となっておりますが、もし日ソ首脳会談が実現すれば、当然領土問題が議題になると思います。北方四島一括返還は我が日本国民の悲願とも言えるものでございますが、このところ二島返還という観点に立った記事や論文をいろいろと見かけます。きのうの世界日報にも載っておりましたし、九月九日の世界週報にも「歯舞、色丹の二島返還はあり得る」こういった推測記事が掲載されておりました。この記事を書いた方は外務省の動きをかなりよく知って書かれたのかなとも思いますが、どういうことでございましょうか。外務省、そして総理の御見解をお伺いして質問を終わります。
  76. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この間も、衆参両院におきまして万場一致で四島返還の御決議をいただいて、これが国民的合意であり、悲願であります。政府はそれを体してやるのでありまして、二島返還というものを考えてはやらない、四島返還というものをばっちり考えておるということを申し上げます。
  77. 砂田重民

    砂田委員長 これにて吉田君、木下君の質疑は終了いたしました。  次に正森成二君。
  78. 正森成二

    ○正森委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、総理並びに関係閣僚に質問をさせていただきたいと思います。  まず最初に、レイキャビク米ソ首脳会談の問題について質問いたします。  核兵器廃絶と核戦争阻止は全世界の国民、なかんずく世界最初の被爆国である日本国民すべての願いであり、米ソ首脳会談が核兵器廃絶と平和に向かうことを国民が希望するのは当然であります。それだけではありません。果てしない核軍拡競争は世界と国民の資源と富を浪費し、人民の生活向上と福祉、教育、文化の充実に真っ向から対立するものであります。仮に米国がSDI開発・配備に進むことは、多くの報道によれば実に一兆ドル、すなわち約百六十兆円、日本の年予算の三倍を宇宙における核軍拡に費やすことであり、現在の日米貿易摩擦の米国が原因の一つである財政赤字をますます大きくすることは必然であります。また、この軍拡競争は、現在の安保体制のもとでは当然日本にも影響し、軍備の増強をもたらします。我が党が補正予算についての政府申し入れの第一に、核廃絶、特にSDI参加反対を挙げたのもこの見地からであります。したがって、私は、このような意味で、国民が関心を持たざるを得ない核兵器廃絶、核戦争阻止の問題に絞って若干御質問したいと思います。  まず、総理に伺います。レイキャビク米ソ首脳会談についての総理の評価について伺いたいと思います。
  79. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 両首脳部ともよく努力をされて、核兵器廃絶へ向かっていろいろ樽俎折衝されたと思います。しかし、遺憾ながら合意には達しない点がございましたが、これはシュルツ長官も言っていますように、ポテンシャルアグリーメントはできた、潜在的合意はできたと、こう言っておる。またゴルバチョフ書記長も、あのスタートラインからスタートしたいという意向を示されておると思うのです。そういう意味においてはある程度の折衝のかいはあった、そういう面において私は評価するものであります。こいねがわくは、ウィーンにおいて外相会談が行われるようですが、その辺を解きほぐして、そして一歩一歩前進される契機をつくられれば結構だと考えております。
  80. 正森成二

    ○正森委員 総理の総括的な御意見は承ったのですが、しかし、十月十四日、読売国際経済懇話会で総理が講演されたということで新聞にも載っております。この報道によりますと、「レイキャビク会談が行われた最も大きなテコは、やはりSDIだ。SDIはある意味で、軍縮を促進するテコになっている。」という意味の発言をされております。けれども、首脳会談の真実は、レーガン大統領がSDIに固執したことこそが戦略核兵器の全廃を含む核軍縮、核廃絶への道を当面閉ざしたことを示しているのではないでしょうか。したがって、SDIがかぎであるという御見解はそのままいただけないような気がするが、いかがでしょうか。
  81. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 多くの評論家あるいは専門家の意見を私は総合して申し上げておるのでありますが、それらの方々の御意見によりますれば、ソ連側としてはSDIをぜひやめさせたい、したがってSDIをやられては困る、そういう意味において交渉を開始するという意味でジュネーブ会議が開かれた、こう言われておりますね。昨年一月でしたか、ジュネーブ会議が開かれた。今度のレイキャビク会談というものもやはりSDIをやめさせたい、そういう考えがソ連側にあって、それで急遽あれが開かれた。つまり、SDIというものは、両方が接近して話し合いを始める一つのてこになっているというのが専門家の意見のようですね。私もそれを採択して申し上げておるわけであります。
  82. 正森成二

    ○正森委員 専門家の意見にはいろいろあり、今総理が言われた意見と異なる意見もございますが、仮に総理のその前提をごもっともだといたしましても、まさにそのSDIの問題が広範な問題についての核廃絶の最終的な合意に至らしめなかった主な原因であるということは、これまたほとんどすべての識者が認めているところであります。  ソ連が十年以内の戦略核兵器廃絶とABM条約から十年間は脱退しない合意、これに伴ってSDIの研究、実験を研究室内に限り、宇宙で行わない保証を求めたのに対して、レーガン大統領は十月十三日のテレビ演説で、「私はゴルバチョフ書記長に、弾道ミサイルが全廃されても、条約違反や自力で核兵器を製造しようという精神異常者への対策のためにもSDI防衛網が必要だと説明した。」こう述べております。あるいはシュルツ国務長官はレイキャビクでの直後の記者会見で、米国と同盟国が自由な安全を損なう道をきっぱりと拒否し、自由を擁護するため設けられた盾を放棄することはしなかったと言明しております。アメリカ側はSDIの研究室以外での、すなわち宇宙での研究開発、実験にあくまで固執したわけであります。だが、核兵器廃絶を求める首脳会談で初めから条約違反、ましてや精神異常者への対策を理由に合意を破壊するのは世界の良識を到底納得させないものであると私は思いますが、いかがですか。
  83. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 あの前後の消息を総合的に判断してみますと、レーガン大統領は、仮にSDIができたという場合においては、やはりこれを持っているということが核兵器をつくらせない、存在せしめない一つの保険になる、そういう趣旨のことを言っておりますですね。しかし、それを保険として使うについては、ソ連側といろいろ話し合いをしてどういうような使い方をするのかという形になるのでしょう、協議すると言っておるわけですから。ですから、願いは地球上から核兵器をなくすことである、それが第一である、それに徹底しているというふうに自分は考えます。
  84. 正森成二

    ○正森委員 今の議論は到底納得することができませんが、後ほど申し上げたいと思います。  総理は同じ読売での講演で、「レーガン大統領がやりやすいように協力する」とか「結束を強めて大統領を支持していく。」等、いわば無条件に、SDⅠに固執するレーガン大統領に、言葉はよろしくございませんかもしれませんが追随する発言をしておられます。  ところが総理は、本年十月三日の予算委員会における我が党の不破委員長質問に対して、核兵器廃絶は人類の願い、日本国民の願い、自民党の願いという趣旨の答弁をしておられます。それならば、日本国民と自民党の願い実現のために総理は具体的に何をなさるのでしょうか。結局、米国の意見と同じで、SDIの研究開発に参加してレーガンのSDI開発に協力することだけが総理の言う核兵器廃絶、つまり国民の願い、自民党の願いにこたえる道なんでしょうか。それでは唯一の被爆国の国民としては到底納得できないものであると思いますが、いかがですか。
  85. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 レーガン大統領の願いは、地球上から核兵器を抹殺し消滅させる、これは一貫して強く言っておるところで、強烈なものである、ある意味においては信念や信仰に近いぐらいの悲願を彼は持っている、私はそう思っております。したがって、そういう意味における彼の理想主義というものを私は支持しておる、これは最初に、理解したと言ったときから、あなたもお聞きになっているとおり申し上げているとおりであります。  そこで、私が読売の懇話会で話しましたのは、レーガンのそのような悲願というものは支持しているし、それからやはり安全保障の問題というものは、政治的に全世界的なスケールで物が考えられなければ安全保障はできない時代になった。それはウィリアムズバーグ・サミットや東京サミットにおいても、我々は安全保障は世界的に不可分である、そういうことを言ってきておる。そういう意味におきましても我々はレーガン大統領に対して、ソ連と交渉する場合にはSS20の極東配備については我々の要望をぜひ聞いてもらいたい、先方も、日本の御意見をぜひ承ってそれを取り入れたいから御意見があったら言ってください、そういう話で彼我の間に応答があって、それでヨーロッパ部でSS20をなくすときにはアジアにおいてもなくすように、それを強く申し入れしてきた。  そこでレーガン大統領が最終的に向こうと話し合ったのは、ヨーロッパはゼロにする、しかしアジア部においても約七〇%は削減する、それは五年以内に、次の段階では全部ゼロにする、そういう中間的措置というもので話し合いがある段階まで進んだということを私は聞いておる。これはやはり日本の立場に最大限考慮して今のような形になった。ソ連は、アジアには手を触れないでそのままそっくり全部残そうとしておったわけです。それはいかぬと我々が強く言ってきたのをレーガン大統領は取り入れて、そういう交渉までやってくれたわけです。そういう意味において、アジアにおける我々の安全確保という面からも、この点においては共同作業をしてもらっているわけです。したがって、ますますそれを強めて、日本の要望を聞いてもらって、核兵器を少なくともアジア部においてゼロにするという目的を達するためにもレーガン大統領を支持している、日本の国益に合致する、こう考えておるわけでございます。
  86. 正森成二

    ○正森委員 今アジアの問題について言われましたが、その問題も含めて戦略核兵器を最初の五年間で二分の一削減し、十年以内に全廃する。先ほど言われたのはSS20など中距離核兵器でありますが、それについても大幅に歩み寄って最終的にはゼロにする寸前までいった、それだからレーガン大統領を支持すると言われますが、そういう合意寸前までいったものをできなくしたのがSDIの実験場外での研究、実験に固執する態度じゃないですか。  総理はかつてこの予算委員会で何回も、私は科学的廃絶主義者だということを言われました。議事録をよく読んでみますと、総理の言われる科学的廃絶には二つあるようであります。一つは検証が行われなきゃならぬということと、お互いの安全保障を考慮しながら合理的に削減しなきゃならない、こういうことのようであります。  ところが、レイキャビクの行われました後の双方の記者会見や演説を詳細に私も全文読みましたが、検証の問題については双方が現地査察も含めて完全に合意しているんですね。そうして合理的な削減で言えば双方同じテンポで下げるということになっておりますから、これは総理の言う科学的な核廃絶という方向に大きく進んだんじゃないのですか。それが、アメリカの学者でさえ、いつできるかもわからぬ、九八%はアメリカの安全には役立たない、そう言っていることをこれから無理やりやるということによって現実の核廃絶がつぶれたということになれば、結局これは非科学的な廃絶論であって、総理がこれまで主張されてきた科学的廃絶論ではないんじゃないですか。幻想的なあるいは実現不可能のことのために現実の核廃絶を台なしにする、これがアメリカのレーガンの今度とった態度であり、それを総理は全面的に支持すると言われておるとすれば、これは被爆国日本の国民として到底了承できないことである。我々は、段階的でなしに即時核兵器を廃絶することが本当に諸国民の願いにこたえる道である、こういうぐあいに考えておりますが、総理のレイキャビク会談についての御態度についてさらに私どもは検討を求めたいと思います。いかがでしょうか。
  87. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 あなたのお考えを聞いて、やはりあなたの方はまだ幻想的廃絶主義者だ、そう思っておる。なぜかというと、何ら保証なしにやめろやめろと言ったって、不安でやめられるものじゃないのです。その点を私は共産党に前から言っておるのです。それは演説でやまるものではありませんよと前から申し上げておる。じゃどうしてやめるかといえば、お互いが現場へ行って査察して、なるほどもうなくなったなと安心できるような措置ができて初めてそれがやめられる、これを科学的と言っているわけですね。  SDIというものもそれをやめさせるための一つの保険である、そう言っておりますね。しかし、SDIというものはそれほどおっかないものだから、ソ連の方はやめさせてもらいたい、そいつもやめてしまえ、そう言っているのでしょう、恐らく。これは想像ですけれども。  そういうような面を考えると、やはりこれはやめさせるための一つのかぎになっているわけですね。それがいい悪いはまた別ですよ。ともかくそれがかぎになっていることは事実だ。現にレーガン大統領は、それはやめさせるための保険です、そういうようにも言っておる。しかし、これが現にできて両方が核兵器をやめるという段階になれば、次の段階では協議する、両方の国々が。それから、その次の段階には恐らく国際管理とかいろいろな話にそれは進んでいくだろう。私、人間の良識から見て、今までの経緯から考えて進んでいくと思いますよ。それで、査察を入れておいてもう地上になくなってしまえば、SDIも要らなくなったという時代が来るかもしれませんね、二十一世紀には。もう現にないのですから、ばい菌がないんだから、もう薬も要らなくなる、そういう時代になるかもしれぬ。私もそれを望んでおるのです。ですから、過渡期にはいろいろな様相があるが、過渡期に現実に具体的に核廃絶を推進するだけの準備とか道具を持っていなければだめだ、それを私申し上げているのです。共産党はそういうものを持っていないじゃないですか。
  88. 正森成二

    ○正森委員 御自分の独断に基づいていろいろ総理言われても、それは人を納得させないですね。何か今の総理の話を聞いていると、検証というのはなくなって後からの検証で、なくす過程では検証が働かないような印象を受けましたが、そんなものじゃないんですよ。  総理はもちろん御存じでしょう。今査察衛星が飛んでいて、これは近地点で百五十キロぐらいのところを飛んでいるのです。六百センチの焦点レンズの望遠レンズがついているのです。それで写真を写しますと地上の十五センチのものまで解析できるのです。これは総理に対して釈迦に説法ですが。  だから、ICBM基地の足跡をどういうぐあいに消すかということが双方で問題になっており、学者の本を読みますと、双方のICBMの基地のサイロがあいているのをお互いに見つけて、おまえのところのサイロは何であいているんだと言うて注意をするぐらい査察衛星は発達しているのです。その上に今度の首脳会談では現地での査察も認めて、お互いになくしていこうではないか、こう言っているのですから、総理の言う科学的廃絶の検証については言うところがないんですね。  しかも、精神異常者だとかなんとかがまたつくったらいかぬと言いますけれども、そういうので調べているのですからね。スーツケース爆弾じゃないんですよ。そんな、戦略核兵器がそういうぐあいに隠れてつくれるというような保証は全くと言ってないのです。ところが、そういう点について保険が必要だというようなことを言われるとすれば、保険必要説に立てば、気違いがいつつくるかわからぬからいつまでもこの保険を持っていることが必要だということになって、核兵器廃絶を無限のかなたに追いやるものにほかならないというように私どもは思います。  しかし、この点については見解が違うようですから、次に、円高差益の問題についてお尋ねしたいと思います。  今度の補正予算というのは、もともとは六月、七月に、円高で非常に大変だから、円高の不況をどういうぐあいに直すかということで臨時国会が召集されて、本来そこでやるべきことを解散になったので数ヵ月おくれてやる、こういう性質のものであります。したがって、我々は、円高不況克服のためにどういうことが行われるかというように関心を持っておりましたが、国民が一番望んでいる、我が党が主張しているような二兆五千億円の減税というのは行われない、そして数兆円に上るような円高差益の還元、これも内需の本当の拡大に極めて有効でありますが、それが実施されないということで、ほかに細々したことは行われているかもしれませんけれども、国民の期待にこたえるには非常に遠いものであるというように思わなければなりません。  そこで通産大臣に伺いますが、通産省の資料を見ますと、現行の電気料金の基準は、一ドルが二百四十二円で、そして原油がバレル当たり三十二ドルということで一応決めております。そして通産省の資料では、円高差益というものは、仮に原油価格が一バレル二十九ドル、こういうときには、為替レートが一円円高になれば百二十億円の差益が出る。それから原油の値下がり差益については、為替レートが二百四十五円とすれば、バレル当たり一ドル値下がりをした場合は年に一千億円円高差益あるいは原油値下がり差益が出る、こういうことであります。もちろん数字は異なりますから、それは比例してあるいは多くなり、あるいは小さくなるというように言われております。  そこで、お手元に差し上げました資料を見ていただきますと、そこに書いてございますように、仮に六十一年十月から六十二年九月までの為替レートを一ドル百六十円前後、原油価格をバレル当たり十五ドル、LNGはバレル当たり二十三ドル、これは最近数ヵ月の平均をとってやや高目に見ているわけでありますが、それを見ますと、円高差益が既に発生しているもの、昨年のG5の十月からことし三月までで二千四百九十一億円、ことしの四月から九月まで、これも既に発生しているものが二千七百四十三億円、そして十月から来年の九月まで約一年間に六千四百四十七億円、したがって、昨年から来年までの間で一兆一千六百八十一億円。原油値下がりについては、同様にして一兆九千八百二十七億円、合計三兆一千五百八億円が還元できる額になります。そのうち、現在実施中の差益還元額が一年で九千七百十四億円であります。ですから、この差額の二兆一千七百九十四億円が還元できるはずであります。  政府は先行き不透明であるというようなことを言われますが、今まで既に実現している円高差益だけでも、この計算によりますと、書いてございますように一兆三千九百五十九億円あり、これを政府決定の還元額の半年分、九月までですから、四千八百五十七億円と比較しても、なおかつ九千百二億円が現在までだけでも還元できることになります。さらに、十月以降来年の九月までを入れますと、私が先ほど申しましたように莫大な額が還元できることになります。これを仮に半分を家庭に還元し、残りの七割を中小企業に還元するとなりますと、これは家庭では約三〇%の値下げ、中小企業でも電気代が約一七%値下げになります。  田村通産大臣、あなたはこれまでの答弁あるいはきのうの当予算委員会の答弁でも、私は委員として聞いておりましたが、あなたの答弁は判で押したように、為替レートがどうなるか、原油がどうなるか先行き不透明でございます、なおしばらく事態の推移を見守りたいと思います、現在は白紙でございますというのが通産大臣の御答弁であります。私がかわってもできるような答弁をずっと繰り返しておられるわけです。  しかしながら、例えば宮澤大蔵大臣が宮澤・ベーカー共同声明というところでも言われましたように、円レートはほぼ現在の状態で、ファンダメンタルズを反映して、そしてマーケットに任せてもいい状態になっておるという意味の答弁がございました。  そういたしますと、十月三十日まではあるいは田村通産大臣の答弁でよろしかったといたしましても、宮澤・ベーカー会談があり、既にもう原油差益が現実に発生しており、十月以降についてもほぼ現状を推移する可能性が非常に大きくなったという段階では、円高不況をなくすために通産大臣がさらに一歩進んで、白紙の状態から円高差益を電力についてもガスについても、この二つが一番大もとですから還元する方向に検討し直さるべきであると思いますが、いかがですか。それが国民の願いであり、中小企業の願いであるということを私は強く主張したいと思います。御答弁をお願いします。
  89. 田村嘉朗

    田村国務大臣 判で押したような答弁を繰り返しておるとおっしゃいましたが、その判こがちょっと最近変わりまして、例えば、新しい要素としては今の共同声明、あれは百六十円を割るというか、もうこれ以上高くなったら望ましくない状態だ、つまり日本にとってもよろしくない状態ということをコンファームしたものだ、こういうふうに思うのですよ。そうしますと話が逆で、それより円高はもう考えられないということなんですね、協調介入も大蔵大臣が示唆したわけですから。そういうこともございます。  それから、OPECの生産調整継続の影響というものがどうなりますか。特に大きな問題として私どもが注目をしておりますのは、ヤマニ石油相の解任でございます。ヤマニという人は元来、サウジアラビアでシェアの防衛主義をとっておった人なんです。ところが最近、どうも価格最優先主義に逆戻りするんじゃないかというような説が流れております。しかも、十七、八ドルがどうのとか二十ドルがどうのとかというようなことが言われておるわけでございます。そうなりますと、それに一ドルぐらい上積みしなければ日本に着かぬでしょうから。ということでまだ不透明な要素が非常に多い、こういうことでございまして、やはりしばらく経過を見なければならぬのじゃないか。  それは政党として、あるいは私も一個の代議士としては何とでも言えますけれども、やはり行政というものは憶病なぐらいに時には慎重でなければならぬ場合もあるし、時には積極果敢でなければならぬ場合もあり得る、私のような向こう意気の強い男はやはり慎重にならざるを得ない、こういうふうに考える次第でございます。
  90. 正森成二

    ○正森委員 やはり変わらない慎重な答弁で、部分的にはかえって悪くなっている答弁ですね。  しかし、私が言いましたように、ことしの九月までもう動かない状況でも九千億円以上の差益が発生しておる。それからまた、何か宮澤・ベーカー共同声明について田村通産大臣の解釈は、これ以上円高にならないということになったんだというように言われますが、逆にアメリカ側から見ると、これ以上ドル安にはしないという趣旨もあるわけで、だから、円高にだけはならないがドル安にだけは幾らでもなってもいいんだというような、そういう共同声明ではないんですね。今の通産大臣のお言葉を聞いておりますと、これ以上は円高にならないで後は専ら円が安くなる、一路円安というような印象を国民に与えておりますが、それはそうではなかろうということを私は申し上げざるを得ないわけであります。そういうようにいたしますと、なお慎重でなければならないという結局の御答弁になったわけですけれども、それは、既に政府の今までの還元分以外にも一兆円前後の円高差益が発生しており、これからも発生することを知っている中小企業や家庭の主婦には到底納得することのできない議論であるということを私は指摘しておきたいと思います。  次に、時間の関係で税制改革の問題に進ませていただきたいと思います。  総理選挙中に、国民や党員の反対するような大型間接税は導入する考えはない、仮に政府税調から答申があっても採用しないというように言われました。そして十月二十八日に政府税調の答申があったわけでございますけれども、これらは国民の観点からいえばどれを採用しても大型間接税であり、しかも額からいいましても、大蔵省の試算によれば三兆五千億円にもなるというものであれば、これは大型間接税と言うより仕方がないと私どもは思います。これについてはきのう以来御答弁がございました。一定の制限をしたそういうものは大型間接税の部類に入らないということでありますが、しかし、一般消費税といい、大型間接税といい、今度政府税調の言うような新しいタイプの間接税といいましても、名前が違うだけでその本質は同じではないでしょうか。三つがそれぞれ名前が違うのは、それぞれ一般消費税と言えないのは、大平内閣のときに国会の決議がありまして一般消費税(仮称)は使わないということでございましたし、大型間接税については今度の選挙での総理の発言がございましたし、そういうことで、これは演歌ではございませんが、昔の名前で出られないという理由があるから新しいタイプの間接税ということになったのではないかというのが国民の声であります。総理の御見解を承りたいと思います。
  91. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほども申し上げたことでございますけれども、あそこに三つの例が示されておりまして、私は、そのいずれも、どういうふうな形でこれを行うかということによりまして答えが違ってくるのであろうと思います。何度もここで御議論になっております仮にいわゆるC型にいたしましても、非課税事業者をどういうふうにするか、非課税取引をどういうふうにするか、あるいはインボイスを使うか使わないか、納税はその都度であるか、ある程度まとめてであるか等々のやり方によりまして、どれだけの国民が直接にこの煩瑣な仕事から免れるか免れないかということは大変に違ってまいりますので、そういう意味で、総理選挙中あるいはその後に国会で言われましたことと背馳しないで実現ができる可能性がある。それは具体的にただいま申し上げましたような問題をどのように定めていくかによって私は大変に違ってくるだろうと思います。
  92. 正森成二

    ○正森委員 竹下幹事長は、党である種の決定がなされればそれは党が反対しているという範疇には入らない、総裁は党の決定にゆだねるのではないか、こう述べておられます。このある種の決定というのは、恐らく党税調が結論を出すことを意味しているのではないかと思われます。そうしますと、党税調が結論を出せば自民党は反対しない、したがって大型間接税を導入する条件がそろっているんだというようにお考えなのでありましょうか。
  93. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 選挙中私が申し上げましたのは、国民も反対し、また党も反対するような大型間接税と称するものは私はやりません、やりたくない。それは政府税調にも、こういう公約をしたので考えておいてくださいと言い、政府税調もわかりました、小倉さんもその趣旨に沿った答申をいたしました、そういうことを私は聞いております。また党の幹部にも、特に党税調の幹部にもこの間特にお呼びして相談をして、こういう公約を守ってくれ、わかりました、そういう話で話は済んでおるわけであります。しかし、党で決めていくという場合でも、国民世諭をやはり見ていると思うのです。国民世論を見つつ党は決めていく、そういうことにならなければ政党政治は成り立たない、そう思いますね。
  94. 正森成二

    ○正森委員 そうすると、国民世論を見ながら党が決めれば、国民や自民党が反対するような大型間接税と称するものはやらないという自分の公約に反しないのだと聞ける今の御答弁であります。しかしそれは、国民から見ればすこぶる納得のできないものではないかと思うのです。  日本経済新聞というのがあります。この新聞が六月に、この間の選挙で国民が最も関心の高いものというのをアンケートで調査いたしました。そうしますと、三〇%を超えて一番関心が高かったのは税の問題であります。つまり、国民は税の問題について、税制改革について各議員、候補者がどういう公約をし、どういう態度をとるかというのを一番重視したということであります。  そこで、非常に失礼でありますが、ここに選挙公報を持ってまいりました。唐沢俊二郎郵政大臣、あなたは長野四区ですね。あなたの選挙公報を見ると、「私の信条 政治家として常に清潔であり、国民の信頼をかちうる政治を行うことが、政治家の使命と信じます。」こういうぐあいに言った後で「所得税、住民税の減税を柱とする税制改革を実現します。もちろん、いわゆる大型間接税導入に反対し少額貯蓄優遇制度を維持します。」こう書いてあるのです。これは郵政大臣になることをそのときから予感しておったような公約でありますが、「もちろん」こう言うて、「いわゆる大型間接税導入に反対」こう言っているのです。これは間違いないですか。
  95. 唐沢俊二郎

    ○唐沢国務大臣 私の公約は今先生読まれたとおりでございます。しかし、私はそのとき、「いわゆる大型間接税」と書いてあります。当時、私は忠実なる内閣官房長官でございまして、私の申します「いわゆる大型間接税」とは、総理の申されました国民の多くと党の反対するような大型間接税を指すものでございまして、そのようなものには今後とも断固として反対してまいります。
  96. 正森成二

    ○正森委員 「いわゆる」というのを入れていたからというエクスキューズでありますが、それでは倉成外務大臣、あなたは長崎県一区のようでありますが、ここにあなたの選挙公報があります。「あなたの一票をふるさとの復興をめざし新たな挑戦を決意した倉成正におまかせ下さい」こういうぐあいに書いてあって、そして「汗して働く者が損をしないような減税を断行し、大型間接税など排除します。」あなたの場合は「いわゆる」もついておりませんね。大型間接税を排除されるわけですか。長崎一区はそれを信用してあなたに投票したのですよ。
  97. 倉成正

    ○倉成国務大臣 お答えいたします。  私も自民党員でございますし、総理がしばしば国会で答弁しておりますいわゆる間接税、これには反対するということでございます。
  98. 正森成二

    ○正森委員 ところが、残念ながら選挙公報には「いわゆる」なんて一言も入っていないのです。  天野建設大臣、あなたは福島一区ですね。あなたの選挙公報にも「大型間接税には反対」ということが真ん中の一番目立つところに、しかも大きな活字で書いてあります。あなたにも「いわゆる」というようなそういう限定はないのです。おみ足がちょっと今お悪いようですから出てきていただかなくても結構でございますが、選挙公報でございますから間違いがないと思います。こういうようにいろいろ集めますと大変ですから選挙公報は三つにしておきます。  しかし、これでおれは大丈夫だと思ってもらっては困るのです。閣僚の中でも栗原防衛庁長官、それから近藤鉄雄経企庁長官、いずれもこれは大型間接税反対中小企業連絡会というところから言われまして、「大型間接税の導入に反対します。」こう言っているのです。栗原防衛庁長官などは初めはそうでなかったとみえて、今後私の政治生活で反対しますというように、「今後」なんという言葉まで入れている人がおられるのですね。こういうようにまだ挙げれば切りがありませんが、この中で注目すべきことは、自民党の政策の責任を持つ伊東正義政調会長、それから竹下登幹事長、このいずれもが「大型間接税に反対します」ということを答えているわけなんです。いろいろ挙げませんけれども、私が調べてみたら、自民党の当選された方のうち、当選されなかった方は除きまして百五十数名が、自民党の中のほぼ過半数が大型間接税に反対します。総理はその中には入れておりません。総理は特別に演説されましたから入れておりませんが、入れなくてそういう状況なんです。  そうすると、国民は税の問題を最も重視し、そして閣僚を含む、そのときには閣僚になっておられなかった方もありますが、例えば竹下登現幹事長は当時大蔵大臣でありました。そういう人が大型間接税には反対だ、こう言っているのを信用して票を入れてみて、自民党が三百七議席もとったら、あに図らんや党の税調が世論を考慮して決めたものを採用するならば、これは国民も自民党も反対するような大型間接税にならない、そういう論理がまかり通るのであれば、これは世論をある意味では欺くものではないですか。そして、国民が自民党に託した信頼というものを裏切ることにはならないのですか。私はそうならざるを得ないと思います。いかがです。
  99. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 たしか選挙中NHKの討論会がありまして、藤尾君が政調会長で出て、そして間接税云々という発言があって、それが新聞、テレビですぐ報道されまして、自民党は大型間接税賛成というような報道が流れました。私はそれを聞きまして、これは私が議会で今まで皆さんに御答弁して申し上げた点と誤解を受けるおそれがある、そういうことを感じまして、すぐ党本部に電話をかけて、全国の公認候補者へすぐ伝達せよ、私は今こういう演説をした、すなわち、党員も反対し国民も反対するような大型間接税というものは賛成しない、そういう演説をした、それを公認候補者にすぐ連絡させまして、公認候補者はそれを演説で採用したわけです。  そういう事実があって今の選挙公報にもなっておる。党員が大型間接税という場合は、総裁が演説している大型間接税、これが常識でありまして、私はみんなの連隊旗として戦っているわけでありますから、ですから今までいろいろ選挙公報をお挙げになりました、また今の御発言がありましたけれども、そういういきさつで私が言っておる趣旨のとおりである、そのようにお考え願いたいと思うのです。
  100. 正森成二

    ○正森委員 今るる御説明を承りましたが、しかし総理が藤尾政調会長の、あのままでいったら大平内閣の二の舞になる、えらいことだというわけで急遽演説をされたのは、明白に藤尾発言を打ち消すためのものであります。ですから、国民や自民党員の反対するような大型間接税と称するものはやらないといえば、国民の大部分は、よほどひねくれた人は別ですが、なるほど総理が言うから大丈夫だ、大型間接税は導入しないんだなあと、こういうことで投票しているのです。それが今になって、党税調が世論も考慮しつつ導入を決めるということになれば、これは国民や自民党員が反対するような大型間接税ではないんだというような論を立てられても、それは国民は決して納得しない。総理と私の間ではあるいは水かけ論になるかもしれませんけれども、国民はそれを判断するであろうというように私は申し上げておきたいと思います。  そこで、税調会長来ておられますね。お伺いいたしますが、あなたがお出しになった十月二十八日の答申によりますと、第一の「基本的考え方」の部分で、「今後の財政需要の増大にかんがみ、税負担率等の上昇を展望しつつ、望ましい税制改革案の構築に取り組むべき」という意見があったとか、これは全体の意見ではありませんが一部の意見です。「経済情勢の変化に弾力的に対応し、」「財政の対応力の回復を図ることは緊急の政策課題である。」とか、あるいは次の部分はこれは政府税調全体の意見になっておりますが、「安定的な租税構造を構築することを眼目としており、」「将来の財政上の要請に応じて弾力的な対応も可能になるという面もあろう。」こういうぐあいに言うておられます。  これは私が率直に読んだのは、政府税調は当面税収中立ということで増減税同額と言っておるが、マル優を原則的に、老人及び母子家庭などを除いて廃止し、そしてA案になるのかC案になるのかあるいはその混合型になるのかわからないが、新しいタイプの間接税と称するものを導入すれば、これは「将来の財政上の要請に応じて弾力的な対応も可能になるという面もあろう。」ということになれば、将来は財政需要に応じて税収増ということもできるんだということを示唆したものにほかならない。新聞もそういうぐあいに報道しているものもあります。私もじっくりと読んだらそういうぐあいに判断せざるを得ないと思いますが、政府の税調会長としてはどういうつもりでこれを書いたのですか。
  101. 小倉武一

    小倉参考人 ただいまお尋ね政府税調の答申について、安定的な税制構造というものを構築するというのは望ましいという趣旨は、確かにそういうふうに出ております。その意味は、直接税に余りに偏った税制構造になっておりますので、年年そういうふうになってきておりますので、それでは景気のいいときには税収は上がりますけれども、景気の悪いときにはうんと税収が下がってしまう。非常に不安定な租税構造になっているわけでございますので、昨日の大蔵大臣のお話にもございましたところと多少似ておりますけれども、そういったような不安定な税収になるようなそういう税制の構造を改めるという趣旨であります。したがいまして、当然にそれが増税に結びつくということでは必ずしもないと思います。  また今お読みになりました、指摘されました答申の前のところにございますように、少なくとも今回の答申による税制改革という全体の中では、増減税合わせました税収が中立であるという趣旨をうたっておりまして、したがって増税というようなことは考えていないということをうたっております。ただし先行きにつきましては、またお話にございましたように見解の分かれているところであります。したがって、安定的な税収構造といいますか租税構造というものを構築しますけれども、それに基づいて、今度の税制改革が一応一年かかるか二年かかるかわかりませんが、それがなし遂げられた後にどうするかということは、それはその後の政治の問題ということでありまして、税調としてはそこは結論を出していない、こういうふうにひとつ御了承願いたいと思います。
  102. 正森成二

    ○正森委員 小倉政府税調会長が御了承願いたいという意味のことを言われましたが、私は了承できないんですね。恐らく小倉税調会長の言われるところでは、仮にC型などという日本型付加価値税を導入すれば仕組みをつくるのにも時間がかかるし、実際の税収を上げるには国民にも説明しなければならないし、税務体制も整えなければならないし、直ちに六十二年からというわけにはいかない、六十三年度あるいは六十四年度になるかもしれない。だから、当面は中立性で増減税同額ということでいくかもしれないけれども、それから先のことまでは政治が決めることだという意味のことを言われましたね。それから先がどうだということがあの「考え方」の一番最後に書いてあるんじゃないですか。「将来の財政上の要請に応じて弾力的な対応も可能になるという面もあろう。」つまり、将来の財政の需要に応じて弾力的に税収を膨らませることも可能になるであろうということを政府税調が今から予言しているのじゃないですか。あなたの答申すべき本来の範囲をある程度超えて、今は税収中立だけれども、将来は弾力的にふやせるんですよ、増税できるんですよということを書いておるものにほかならないというように私は見ざるを得ないと思うのですね。そのことの否定のできないような答弁であったと思います。  そこで、政府税調自身がそういうことを言っているということを踏まえて総理にお伺いいたします。  総理は、十月十八日の午後、自民党税調の三役と通常言われる方々にお会いになりました。特にその中では山中党税調会長、非常に税制に詳しいお方でありますが、三人の党税調の方が来られたのですが山中税調会長とだけは二人だけで一時間ぐらいお話をされたと新聞では報道されております。一体この微妙なときに何のお話をされたかというのは非常に国民が関心を持っておるところであります。恐らくこの予算委員の同僚諸君も関心を持っているというように思わざるを得ません。  その前後の新聞を見てみますと、山中党税調会長は、本来なら増減税同額、レベニューニュートラルという言葉もございますが、歳入中立性では財政再建はできない、税制改革をやる以上は、これは増収ができる、あるいは増収するということでなけれほ財政再建はできないんだというのがあの方の持論であります。そこで、そういうあの方の御意見をひっ提げて、党と政府の間で微妙な食い違いがあったらいかぬから総理と山中税調会長のお二人だけの、俗に言えばさしの会談が行われた。もちろん総理の方はそれについてお話しになっておられません。けれども政府の要職にはない、党の方の要職である山中党税調会長はあちらやこちらでいろいろ言うておられるのですね。  どう言うておられるかと言えば、一番おもしろいのは、中曽根首相との話の内容は棺おけの中まで持っていく、こう言っているのですね。つまり生きている間は言わないということが第一点であります。第二点はどう言っておられるかというと、国会内の廊下で会った安倍総務会長に、君らニューリーダーに迷惑をかけまいと思っていたがそうもいかなくなった、こう言うておられるのです。これはどういうことかと言えば、持論である増収ができるような税制改革をやって、国民に多少不人気なことは中曽根内閣の時分にやってしまう、ニューリーダーは三人おられるとか聞いておりますが、ニューリーダーには迷惑をかけない、そのつもりだったがそうはいかないようだ。つまり、中曽根総理の公約もあり当面は増減税同額でいかざるを得ない、そうするとニューリーダーの時代に税率をアップして増税をやらなければいけない、迷惑をかけざるを得ないようになったということを言われたのではないか。ところが、こういうことを総理と話し合ったということになればぶち壊しになってしまうから、墓場まで何を話したかということは言えない、こういうぐあいに絵解きをすればぴったり当たるのですね。総理、一体墓場の中まで言えないというどんな話をされたのか。もし違うと言うなら国民の前で明らかにしてください。――委員長、不規則発言を取り締まってください。
  103. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今の推理小説は全く当て外れです。それはあのころの新聞を読んでみればわかるので、それは山中君や村山君や税調の幹部三人と食事をして、ほかの二人のいる場所で私は四つの点を話をして、これでやってくれと言っておったのです。(発言する者あり)私の後輩だ、私の高等学校の後輩です。  まず第一は、十二月の予算編成に間に合わせてくれ。第二番目は、私が選挙中やった公約を守ってくれ。第三番目はレべニューニュートラル、つまり増収減税同じ額にして、そうして均衡の合うような形にしてくれ。この三つは四人で食事をしたときにちゃんと頼んで、それはたしか翌日の新聞にも載りましたね。だから何も棺おけに持っていく必要ないのです。それ以外のことは、二人で会ったときはよもやま話をした。貿易黒字の問題もあればアメリカ中間選挙の問題もあれば、久しぶりに茶飲み友達が来たから、よもやま話をしたということです。
  104. 正森成二

    ○正森委員 総理が予算委員会でそう御答弁なさるのですから、私はそう承りたいと思います。けれども、これは総理の責任には属しないかもしれませんが、山中党税調会長が新聞が非常に関心を持ってお書きになるようなそういうことを言うておられますから、政治家としてその絵解きをすれば、こういうように解釈するのが一番当たらずといえども遠からずということになるのではないかということを失礼ながら私が申し上げたわけで、私が心でそう思ったということは、国民の相当数もそういうように思ったのではないかというように思わざるを得ないわけですね。私は、これが事実として歴史によって検証されなければ国民にとって幸せだということを申し上げておきたいと思います。  そこで、次の問題に移らしていただきたいと思います。  まず第一に、今度の増減税同額といいますか税制改革、それに伴って政府税調の答申も出ておりますし、大蔵省は、きのうの大蔵大臣の答弁を聞いておりますと、仮にということで、政府税調に参考にするために試算を出したのだということで仮にという言葉を使われましたが、試算を出しておられます。それを見ますと、私たちが疑念を覚えざるを得ない点があります。それは大蔵省の試算の「税制改革の家計の負担に及ぼす影響に関する仮定試算」という部分であります。  これのうちの(8)とナンバーを打ってある「年間収入五分位階級別負担(勤労者標準世帯)」というのがございます。これは四人家族であります。これを見ますと、新型間接税というものの増税部分、これを全部合わせてみますと、五分位全体で三十万九千円になります。五分位でございますから、これを五で割りますと、一世帯平均は六万一千八百円になります。五分位というのは、世帯数が同じになるように五つに割ったらどういうぐあいになるかということになっているわけですから、足して五で割れば一世帯平均が出てくるわけですね。  この六万一千八百円。四人家族ということになっておりますから四で割りますと、一人当たりが一万五千四百五十円であります。日本の総人口は一億二千百五万人ですから、これを掛けますと、家計にあらわれてくる大型間接税の負担は一兆八千七百億円にしかなりません。ところが、大蔵省の試算では三兆五千億ということになっておるのですから、約半分近い一兆七千億円はどこかに消えてしまうことになるわけですが、一体なぜ家計の負担する大型間接税の負担がかくも小さくあらわれているのですか。
  105. 水野勝

    ○水野政府委員 その点につきましては、この資料等にも御説明が若干つけられておるかと思いますけれども、あくまでこれは家計調査を基準にして算出、試算をいたしておりますので、家計調査にあらわれてこないもろもろの消費支出項目、これが積算に出てこない、そういう結果になるということでございます。  例えば間接税で申しますと、Aタイプの庫出税方式でございますと、サービス業を営む企業が購入される物品、こういったものにつきましての課税分は入ってこないというケースでございますとか、あるいはC型と申しますかEC型、あるいは小売売上税的なB型、こういったものにつきましては非課税となる業種、そうした業者が購入される課税物品、そういったものについての負担も直接にはあらわれてこない、こういった点もあるわけでございます。  さらに、これは家計消費支出でございますから、国民経済計算の中には個人消費支出のほかに公共部門の支出もございますし、またもろもろの非課税法人でございますとかそういった団体もございます。そうした企業単位と申しますか、消費単位と申しますか、そういったところの購入される消費支出項目、こういったものも入ってこない。これは若干説明には付してある点でございますが、そういった点からいたしまして全体としての金額はマクロとしてのものにはなかなか到達しない、こういう制約があるという点につきましては付言して御説明がされているところでございます。
  106. 正森成二

    ○正森委員 今の答弁は、私が指摘しました家計部門を積み上げたら三兆五千億と言うておるが、そのうちの約半分の一兆八千七百億円しか家計の負担にはならないような数字に出ているということは否定されませんでした。そのかわりに、三つか四つかその理由というものを挙げられましたが、まず第一に、例えばA型のタイプのものであればサービス関係のものは出てこないと言われましたが、これは主税局長としてはあるまじき答弁ですね。私はタイプ(8)というのを示しているのですが、このタイプ(8)というのは新型間接税のB、C案、こういうようになっております。B案とC案というのはサービス業も入るのですね。ですから、最初の答弁のあなたが大きなよりどころにされたことは、まず答弁ミスであるということは何人でも認めざるを得ないところであります。  次に申しますと、これは公共部門購入の部分はあらわれない。これはある意味では当然でありまして、大蔵省の担当官を私の部屋に呼びましたら、その部分は大型間接税全体の一割ないし一割五分と見ておりますというように答えておりました。これは結局、増税いたしましても政府購入の財貨もその大型間接税の部分だけは上昇いたしますから、増税の効果は減殺されるということになってあらわれてくることを別の言葉で表現しているわけであります。しかし、それは、大蔵省の担当官が私の部屋へ参りまして説明したところでは一割ないし一割五分ですから、三兆五千億円からいいますと三千五百億円からせいぜい五千億円であって、一兆七千億円ほどのものがどこかへ消えてしまうという理由にはならないわけであります。したがって、第二番目もまた理由にはなりません。  そうすると、残るところの一つで有力なのは、これは非課税の部分について、一般消費税と同じように非課税商品をつくると言うておりますから、例えば食料品であるとか、保健医療であるとかあるいは学校教育とか、三つほどございますね、こういうものについては非課税なので、その部分があらわれてこないのは当然であるということだけが多少反論らしい反論としては残るわけであります。  けれども、それについて見ますなら、主税局長、例えば米をとりますと、米については全部非課税ということで、大型間接税がかからないという計算でこれはできております。ところが、農水省の資料によりましても、毎年の米価のときに私たちはいただくわけですけれども、米価の中には大体五割から六割の物財費が含まれているわけであります。物財費とは、例えば肥料代であり、農機具代であり、農薬代でありあるいは動力費であります。これが全部政府の一般消費税と非課税物品について同じだとすれば大型間接税がかかってくるわけであります。そうしますと、政府が非課税物品について全部、これは大型間接税の範囲外だということで消費性向を調べてやった場合に抜いておりますのが極めて不公正である。少なくとも非課税物品だとされている食料品やあるいは健康を守るための医者に払った費用とか、そういうものを全部除くというのは不公正であって、ほぼその半分はやはり課税されるとして計算しなければなりません。これが極めて大きな、大蔵省の試算の中で三兆五千億円のうち半分の一兆八千七百億円しか家計に反映されないと見ている根拠であります。  そうしますと、これは極めて国民を錯誤に陥れるものではないですか。大型間接税の増税部分を、理の当然である論理的必然性によって家計にかぶされるものをかぶされないということで、増税部分を非常に低くあらわすということを、この仮定計算はやっているものにほかならないと私は言わざるを得ないと思います。主税局長でも大蔵大臣でもいいから、これに対して答弁をしてください。
  107. 水野勝

    ○水野政府委員 ただいまの御指摘はおっしゃるとおりの点もあるわけでございます。その点につきましては、試算に注記をさせていただいているわけでこざいます。  ただ、ここでお配りをいただきました御試算によりますと、これはそういった食料費、保健医療分については二分の一とされているようでございますが、二分の一というのは少し大きいのではないか。いろいろなインプットされた税につきましての試算、なかなか正確なものは見当たらないのでございますが、私ども感じておるところでは二割ぐらいではないか、その二割と五割の差がここにあらわれていることはないだろうかという、これはまだここで拝見した数字でございますので正確にはどうも御答弁できないわけでございますが、そんな感じが第一点でございます。  それから、先ほどの計算でございますと、これを人口で伸ばされておられるわけでございますが、これは四人世帯の分でございますので四人世帯の一人当たりと、それから全国に多数ございます小人数世帯、それの消費金額、こういったものとは一人当たりにいたしますとまた差もあるわけでございますので、そこらの計算の結果もここらにあらわれているのではないか。ただ、ここで拝見したばかりの数字でございますので当たっているかどうかは必ずしも自信はございませんが、こんな感じがいたすわけでございます。
  108. 正森成二

    ○正森委員 今の答弁は論理に合っている部分が多いと思うのですね。しかし、今はしなくも言いましたが、五割は多いから二割だ、私はそうは思いません。例えば米でもそうですし、あるいは保健医療に使う薬代、注射代その他もそうですけれども、少なくも二割はあると認めているものを政府の仮定計算ではゼロにしているのは、これはいただけないのじゃないですか。だから、そういうように答弁の中自体に自分たちの仮定計算が誤りであるということを認めざるを得ないようなものを麗々しく参考資料に出して、国民に増税よりも減税の方が多いのですよというような資料を作成するのは、これは天下の秀才が集まる大蔵省の官僚のやるべきことではないということを申し上げておきたいと思うのです。  それからまた、四人家族についてお出しになっておりますが、独身もあるのだと言われましたが、それは違うので、四人家族で小さな子供やらもう余りいろいろなものを使わないおばあちゃんのおられるようなそんな家庭よりは、独身家庭の方がずっと消費性向も高いし、大型間接税はたくさんかかるのですよ。だから、低くあらわれることはあっても高くあらわれるということはないのです。ですから、そういう点を考えますと、私どもは非常に不公正だと思わざるを得ません。  次に、非課税貯蓄の点について言います。  マル優を廃止すれば一兆円増税だというのはどういう計算根拠に基づくのですか。政府税調やら大蔵省の資料によれば、非課税貯蓄は二百八十七兆円もあるのです。そして、昭和五十九年ですけれども、その非課税貯蓄の利息というのは十三兆五千億円もあるのですよ。十三兆五千億円、これに、ある新聞などは二〇%の税率だと言うておられますが、私どもは控え目に一五%として計算しますと、二兆二百五十億円もあるのですよ。その二兆二百五十億円がどうして半分の一兆円に減ってしまうのですか。  あなた方は、それは母子家庭は除くのだ、あるいは老人世帯は除くのだと言われるかもしれませんが、政府税調、大蔵省が出しておる人数があるのですね。高齢者というのは、六十五歳以上というのを多目にとっても大体千二百万人ぐらいですね。母子家庭というのは大体三百万人ぐらいですね。そのほかに、政府は言っておられないが、身体障害者とかそういう方にも広げるとしても、せいぜい二千万人なのです。そうすると、人口は一億二千万余りでございますから、二割に達しないじゃないですか。そうすると、二兆円から二割を引いてもあと一兆六千億円以上が残るのじゃないですか。この六千億円は一体どこへ逃げたのですか。
  109. 水野勝

    ○水野政府委員 この点は法人税の問題等のケースでも申し述べましたが、とにかく分析、御審議をかなりイメージの高いものにしていただくためにもろもろの仮定を置かしていただいた、その仮置きのまさに一環でございます。  御指摘のように、非課税利子は五十九年度で十三兆円ございますが、老人、母子世帯、こういった世帯につきましては現行制度を維持するというのが税制調査会の基本的な方向となっておりますので、そうした方々の部分は差し引くということでございます。御老人の世帯につきましては、収入階層、収入金額に比べまして貯蓄水準はかなり高いわけでございますので、老人の、今のお話のような六十五歳なのか七十歳なのか、そこらの決め方もまたあるわけでございますが、かなり大きな部分が対象となるのではないかというのが一つ推察されるわけでございます。  それから、課税方式につきましては、総合課税方式、一律分離、低率分離、申告不要等ございます。総合課税でございますとか申告不要でございますと、御承知のように、下の方々につきましては還付ができる。そうすると、ネットの収入としてどのくらいが確保できるかといったことは、まことにそこらはかなり大ざっぱな推計とならざるを得ない面があるわけでございます。その他、低率分離、一律分離にいたしましても、その税率水準をどの程度にするか、これは全く今後の問題でございます。そういったもろもろの要素を含めまして、ここは仮置き一兆とさせていただいておるわけでございます。  なお、非課税貯蓄制度につきましての減収額、これは毎年国会に租税特別措置によりますところの減収額の一環としてお出しいたしておりますのが五千億程度でございまして、これは郵便貯金を含んでございませんので、そういった点も含めまして一応一兆円と仮置きをさせていただいておるということでございます。
  110. 正森成二

    ○正森委員 主税局長の答弁を聞いていると、一応一兆円と仮置きさせていただきましたということで、結局どんぶり勘定で何だかわからないけれどもともかく一兆円、初めに一兆円ありきというような答弁ですね。これは、いやしくも国民に対して、増減税同額でございます、今度の税制改革では大部分の国民が減税になりますなんて、そんなものに使う代物ではないということを責任者の主税局長が認めたものにほかならない、こういうように言わなければならないのです。  本当は、今あなたはここで説明できなかったけれども政府税調では、タイプ四つのうち一番導入すべきだという意見が多かったのは一律分離課税だ、こう言うておるのですね。そこで、現在では、高額所得者の場合には三五%の分離課税を選択することができるのです。総合課税になれば五〇%、六〇%と税率が上がるから、三五%。  大蔵省、三五%の分離課税を選択されている利子というのはどれだけありますか。もう時間の関係で言いますが、六千二百億円でしょう。
  111. 水野勝

    ○水野政府委員 割引債等の低率分離の分もございます。そういったものを含めますと一兆数千億ございますが、三五%の部分は一兆円を切るだろうと思われます。  したがいまして、恐らく御指摘は、その分がマイナスになるということをどう扱うかという御示唆ではなかろうかと思うわけでございますが、この点につきましても、その一律分離の税率水準をどの程度に置くか、これによりましてまた変わりますし、また、二〇%の差でございましても千億、二千億ということでございますので、極めてラフな仮置き、御指摘のように確かにラフではございますけれども、まだそれぞれの中身が確定しておるものの分析ではございませんので、どうしてもラフな点は出てまいります。その一環として一兆として置かせていただいておるということでございます。
  112. 正森成二

    ○正森委員 主税局長が三五%の分離課税を選択しているものは一兆円だなんて言いましたが、そんなことはないのですよ。あなたは、あるいは昭和六十二年とか六十三年とか先を考えてそういう数字をひねくり出したのかもしれませんけれども、そういうことをおっしゃるかもしらぬと思って、昭和五十九年の「利子・配当所得の源泉所得税の課税状況」というあなた方が出しているものを持ってきた。それを見ると、源泉分離課税選択の課税分は六千二百十六億円と書いてあるじゃないですか。私が六千二百億円と言うたのは、宙で言うたから十六億円違ったけれども、どんぴしゃり合っているじゃないですか。私は確実な根拠に基づいて言うておるのです。  そうするとどうなるかと言えば、一律分離課税をやれば、今まで三五%だったものが仮に、仮置きという言葉が好きなようですけれども一五%の税率と仮置きすれば、三十五分の十五ですから三十五分の二十の分は減税になるのですよ、約六割強。そうすると、それだけでたちまち四千億円余りがばんと減税になるのです。そういうものだから十三兆五千億円の非課税貯蓄、母子家庭やら老人をのけても一兆五千億から六千億あるのに、それを一兆円というように仮置きせざるを得ない、こういう状況が起こっているのです。  それを言えば、今までの三五%の分離課税で、総合課税なら五〇%、六〇%課税にのるべきものが三五%でまけてもらっている。これは不公平な税制だと我々は主張してきた。ところが、それをさらに一五%に下げる。そして、下げる分の財源はどうするかと言えば、今までマル優で税金がかからなかった庶民から取り上げる、そういうことじゃないか。それが説明できないから、一兆円と仮置きしましたとか、いいかげんなことを言っているのでしょう。しかし、あなた方はそういうことでごまかそうと思っても、理の当然で、一々分析していけばそうならざるを得ないのです。いいですか、こういうのはまさに庶民にとっては耐えがたい税制改革であると言わなければなりません。  時間の関係で法人税に行きますが、法人税については、これは全部、半分は株主、半分は消費者に転嫁される、こういう前提でつくられたということはきのうの質問で伺いました。  宮澤大蔵大臣、あなたの答弁を私はそこで熱心に聞いておりましたが、あなたの答弁は非常にお上手で、法人税の減税が全く消費者や株主に還元されないと考えるのもいかがだろうかという答弁をされました。今うなずいておられますから、時間の関係で次へ進みますが、しかし宮澤大蔵大臣、全く関係がないとは言い切れないのではないかということと、一〇〇%直ちに還元されるということは天地の差があるのですよ。  仮にあなたや私がもう三十年、四十年若くなったと見て、一郎さんと花子さんはお互いに嫌いだとは言い切れないから結婚させる、結婚したら桃太郎のように力の強い、いい男の子と、かぐや姫のようなきれいな女の子が生まれるから、この結婚は非常に祝福さるべきだ、こんな議論ができますか。あなたの議論はそれと同じですよ。関係がないと言い切れないから一〇〇%還元される、こんな乱暴な議論がありますか。あなたが答弁なされば、皆そうかなと思って一々感心するけれども、よくよく考えてみれば、これはとんでもないすりかえだなというように思わざるを得ないのです。そういうぐあいじゃないですか、事の真相は。
  113. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 きのう申し上げましたのは、直ちにということはあの資料に言っておりません。タイムラグがあるでありましょうが、半分は消費者に、半分は株主にといいますことは、結局、法人というものが実在するかしないかという長い間の議論もございますから、やはり理屈としてはそうなるのだろうということを申し上げたのでありまして、反論を申し上げるわけではありませんが、正森委員がきょう下さいました資料によりますと、「実態にあわない法人税分は除外。」と書いてございます。これもいかがなものでございましょうか、ここまでいきますと。あれだけの減税をするわけでございますから。ですから、その中途ぐらいのところでいかがでございますか。
  114. 正森成二

    ○正森委員 珍しく宮澤大蔵大臣が足して二で割る妥協を申し入れられましたが、そのことは、やはり大蔵官僚がつくりました全額がしかも短期間に反映されるというのが誤りであるということを、大蔵大臣みずからがお認めにならざるを得なかったということであります。  大蔵省は有力な学説だと言っているのです。そこで有力な学説というのは何かといいますと、これはマスグレイブという人がおるのです。その人がそういうことを言うておりますが、この人も、よくよく読んでみますと時代によって説が変わって、どれぐらい転嫁されるかということについては必ずしも決まっていないのです。このマスグレイブ氏に反対の学説がリチャード・グードであります。リチャード・グードは、短期間にそういうものは還元されない、こういうぐあいに言うているのです。  これは外国の話だということになれば、税制調査会が昭和四十六年と昭和五十五年に報告を出しているのです。小倉税調会長、今もまだおられるようですが、ありがとうございます。この中では、あなた方は、いろいろ調べても定説はないんだ、こう言っているじゃないですか。読みませんよ、これは。しかしそこではこう言っている。  その定説がないと言っておきながら、なぜ突如として、短期間に一〇〇%国民個人に反映される、だから法人税の減税は個人に対する減税だというような乱暴な議論にしておるのですか。もしそういう議論ができるなら、これまでの法人税の増税は全部個人に対する増税だ。法人税というのはある意味では最悪の売上税であり賃金税であるという前提をとらなければ、そういう乱暴な議論はできないじゃないですか。外国のリチャード・グードなどを引用するまでもなく、我が国の税制調査会が今まではそう言っていたじやないですか。どうですか。なぜそんな乱暴な前提を置いたのですか。
  115. 水野勝

    ○水野政府委員 まさにそういったいろいろな御指摘があるということを踏まえまして、税制調査会にお出しいたしております仮置き試算も、法人税、利子課税を抜いた所得税と間接税だけの比較対照の数値もお出しし、両方ごらんいただいているということでございます。  なお、リチャード・グードは、私ども若いころ翻訳したこともございますが、短期的にはおっしゃるとおりでございます。また長期の分析もあるようでございまして、いろいろな考え方があるということではないかと思います。
  116. 正森成二

    ○正森委員 このグードの著書は、塩崎潤先生が監修されまして、大蔵省の俊秀五人ぐらいが一生懸命勉強して翻訳したと書いてありますから、私もその点は承知しております。しかし、グードは明らかに、あなた方がつくったような仮定計算、これには立っていないということだけはだれよりもあなた方がよく御存じのはずであります。  そこで、差し上げました資料を見ますと、これは今私がるる御説明しましたような前提に基づいて計算いたしますと、第一分位から第四分位までは明らかに増税になります。第五分位だけが減税になりますが、第五分位をさらに第九と第十に分けますと、第九分位までは増税になるということがわかっております。つまり、国民の九割が増税になるというのが今度の政府が出そうとしている増減税同額という税制改革の内容であると言わなければなりません。  総理、これは国民の願いに全く反するものではないでしょうか。私どもはこういう税制改革、特にその中心である大型間接税とマル優廃止に対して断固として撤回を求めて、新しくやり直されることを希望したいと思います。
  117. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 あなたと見解を異にいたしまして、我々はまず減税考え、それに見合うこれに対する調整措置を考える、そういうことで税調にもお願いをし、税調もその筋に沿って答申が出てきておる。それを今党で検討しておる。やはり減税及び調整措置というものを同額にしたい、そう考えております。
  118. 正森成二

    ○正森委員 残念ながら見解が異なることを私も申し上げておきます。  次に、時間の関係で公害の問題に移らせていただきます。  十月三十日の中公審総会で、全国四十一の公害指定地域を全面的に解除する答申が出され、公害患者切り捨ての血も涙もない非人道的な仕打ちである、こう言って、公害被害者あるいはまた自治体など各界から大きな批判が上がっているところであります。私どもは、こういう措置というものは実情を全く無視したものであり、患者を切り捨て、公害行政を二十年前に逆行させるものである、こういうように考えております。したがって、この撤回と再諮問を要求する、こういう立場から、極めて短い時間でございますが質問をさせていただきたい、こう思います。  環境庁に伺います。これは公害の被害者に対して極めて重大な関係を持つものでありますが、我我が調べましたら、その中心をなしました環境保健部会というのを見てみますと、これは被害者の代表は一人も入っていないのですね。ところが、それに対して、例えば経済団体連合会環境安全委員委員長、あるいは第二臨調の第三部会長をやられた方、あるいは日本鉄鋼連盟立地公害委員委員長日本商工会議所公害対策委員委員長というように、まさに公害を発生させた発生源の代表、これが堂々とこの委員に入っておられるわけであります。これは極めて片手落ちではありませんか。これは極めて不公平なことではありませんか。  私どもは、こういう方が排除され、そして被害者も入らないで学識経験者と称される方だけだというならまだわかる。しかし、本当は、正しい行政を行おうとすれば被害者の声を聞かなければなりません。ところが、被害者は入れないけれども、公害の発生源、それの関係者は三人も四人も入っているなどということは、公正な答申が出せないような仕組みになっているのではないですか。
  119. 稲村利幸

    ○稲村国務大臣 中公審のメンバーは八十人おりまして、公害対策、公害問題の学識経験者、なかんずく医師あるいはジャーナリストも入っておりますので、公害患者から十分意見を聞ける、またその意見を反映できると確信をしております。
  120. 正森成二

    ○正森委員 今の答弁は、十分に意見が聞けると思います、こう言われましたが、自分の出身母体、利益団体の要望から離れて行動するということはなかなか難しいんです。そして、今は環境保健部会のことを申しましたが、全体の中では今私が言いましたよりももっと多い公害の発生源の代表が入っているんです。ここに持っておりますが、一々名前は挙げません。私はこういう中公審のあり方というのは極めて遺憾である、是正さるべきであるということを申し上げたいと思います。  第二番目は、これは今非常に問題になっております大気汚染が未解決、特に窒素酸化物、それから浮遊性の粒子というようなものが未解決であるにもかかわらず、この点を何ら顧慮していないということであります。  例えば専門委員会の責任者である鈴木武夫委員が作業小委員会の報告に異論を唱えたことは皆さんが御承知のとおりであります。そこで鈴木さんはどう言っているかというと、最近の大気汚染は窒素酸化物、浮遊粒子状物質が特に注目されるとして、窒素酸化物の影響を指摘しているのに、これを無視して引用していない。第二、また局地的汚染のひどい自動車道沿道地域を簡単に除外しているが、これは窒素酸化物汚染を無視しているとしか思えない。三番目、さらに、大気汚染に対して感受性の高い人口集団として児童、老齢者、呼吸器疾患罹患者は当然のこととしてというように、社会的弱者として取り扱うのは常識だと指摘しているのにこれを勝手に除外するなど、専門委員会報告の留意事項をことごとく考慮の対象から外してしまっている。こういうふうに批判を展開されているわけであります。  これは明らかに異常なことではないですか。専門委員会の責任者が自分の報告を受けて行った作業小委員会の結論に異議を唱えてこういうことを言われるなどというのは非常にまれなことであると言わなければなりません。ところが、それを全く無視している。これが今度の中公審の答申であると言わなければなりません。環境庁はどう思われますか。
  121. 稲村利幸

    ○稲村国務大臣 この小委員会は医学者から成りまして、八十名の中で、公害問題の権威者でございます。そして、今おっしゃる窒素酸化物あるいは浮遊粒子状物質を含めて大気汚染の健康に影響する部分の科学的評価ということで、学識経験者も含めて大方の賛成を得た、この辺で後追い的なものでなく予防的なものに切りかえていこう、環境保全。そういう点を重視していただきたいと思います。
  122. 正森成二

    ○正森委員 私は今の答弁には到底納得できません。  まだあります。あなた方は日ごろ審議会重視を主張しておられます。総理は特にそうであります。ところが、今回の事態は審議会無視という点でも際立っております。すなわち中公審に諮問し、審議をお願いしておきながら、まだ答申も出ていないのに、環境庁の幹部が勝手に経団連や自工会に出向いて、指定地域全面解除をするかわりに五百億円の基金を拠出させる案をひそかに打診しております。そして指定地域全面解除と基金創設とを財界との間で決めてしまってから、この方向に合うように答申案も書かせているのではありませんか。これでは中公審などは不必要ではありませんか。あなた方の言う審議会重視とは、政府の方で先に結論を決めておいて、そのとおりの答申を作文をさせることなんですか。これは「週刊 エネルギーと環境」こういうのにちゃんと書いてありますよ。五月ごろからそういう作業をしておるということが書いてあります。これはもってのほかのことじゃないですか。
  123. 稲村利幸

    ○稲村国務大臣 この答申は、制度の見直しは、まず大気の汚染の状況を踏まえて御審議いただいたものでありまして、これは関係各方面から御意見を聴取することはごく当たり前の作業で、また意向を打診することも患者を含めてやっていることでございますから、環境庁がいわゆる財界と事前に協議をするということはあり得ませんでした。
  124. 正森成二

    ○正森委員 そういうことはありません。五月ごろから根回しして、特に七月ごろからは五百億円を出させることによって指定地域解除後のいろいろの事業をやるということでほぼ同意を取りつけて、それから答申に対していろいろあなた方が工作をしたということは天下周知の事実じゃないですか。我々は、こういうやり方というのに断じて納得できませんし、最初に申しましたように、公害行政を二十年前に逆戻りさせるものであり、そして国民の健康というものを全く配慮しないやり方であるというように言わざるを得ないということを指摘しておきたいと思います。  時間の関係で次の問題に移らしていただきます。  総理は、税制改革でも好んで公正、公平を言われますが、憲法十四条の法のもとの平等、信条による差別禁止はもちろん尊重されましょうね。
  125. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 もちろん尊重いたしております。
  126. 正森成二

    ○正森委員 国家公務員法の百八条の七には、「職員は、職員団体の構成員であること、」「又はその職員団体における正当な行為をしたことのために不利益な取扱いを受けない。」とされております。また、人事院規則八-一二第二条では、「いかなる場合においても、」「法第百八条の七の規定に違反して職員の任免を行つてはならない。」こう定められております。これは憲法上の要請でもあり、遵守されなければならないと思いますが、人事院総裁はどのような御見解ですか。
  127. 内海倫

    内海(倫)政府委員 憲法にも定められておるところでありますし、ただいまおっしゃいましたように、国家公務員法におきましても厳正公平な人事管理が行われるべきであるということは明確に規定されておるわけでございますから、私どもは、そしてまた任命権者は的確にその規定を遵守すべきもの、こういうふうに考えております。
  128. 正森成二

    ○正森委員 大蔵大臣、いかがですか。
  129. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま人事院総裁の言われたとおりでございます。
  130. 正森成二

    ○正森委員 大蔵省にこれから聞いてまいりたいと思いますが、この憲法の規定や精神に全く合致しない差別が行われている疑いがあります。  関税局に伺いますが、六十一年の三月十九日に総務部長会議が開かれましたか。また六十一年の四月十日と十一日に人事課長会議が開かれましたか。
  131. 大橋宗夫

    ○大橋政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘の六十一年三月十九日の総務部長会議、六十一年四月十日の人事課長会議は、それぞれ開催されております。
  132. 正森成二

    ○正森委員 私は、この問題を質問いたしますために、同僚の予算委員の皆さんやあるいは関係閣僚、政府局長などに資料を配付いたしまして、その資料に基づいて、よくおわかりいただけるように質問しようと考えておりました。ところが残念ながら、本日のお昼の予算委員会の理事会におきまして、人事に絡むことであるということで配付を認めないということになりました。これは、事の真実を明らかにする上で極めて遺憾なことであります。けれども憲法第五十一条によりますと、議員は国会の中において演説その他無答責の権利が定められております。これは、国会議員が、いやしくも真実であり無礼にわたらない限り、国民の利益を守って国会質問し得るという権利を定めたものであります。そこで私は、資料の配付がされていないのは極めて遺憾でありますが、私自身は資料を持っておりますから、それに基づいて以下質問をいたしたいと思います。  この六十一年の四月十日、十一日、この人事課長会議では、人事課長会議の開催及び議題についてと題する書面があります。皆さん方に資料を配付しておりませんので、それを見せながらできないのが極めて遺憾であります。  その議題四のところに、特定職員の上席官昇任及び七級昇格についてが出ております。この特定職員が何を指すのか、私がこう聞きますと、恐らく、資料を入手しておりませんのでお答えできませんという答弁が返るでしょう。そういう答弁になるように、結局資料が配付できなかったわけであります。しかし、特定職員が全税関の労働組合加入職員を指すことは、内容から明白であります。  それは、七級職昇格は六人である。この六人が昇格すると全部で九人になるという規定がこれらの文書にありますが、六人昇格して全部で九人になったという職員のグループは、全税関労働組合以外にはないからであります。そして、この職員に対して、文書を読んでみますと、一番優秀な者でも他の職員の三選抜以下にすることが決められております。一番優秀な者でも全税関労働組合以外の者の三選抜でなければ上げられない、ほかは最終選抜に重ねる。こう書いてあります。  総理、大蔵大臣、あるいは軍隊のことを御存じかどうかわかりませんが、総理は海軍の御経験がございますから御存じでございましょうが、例えば同期が十人おりますと、そのうち最も優秀な二人が昇進、昇級する、これを一選抜といいます。次に優秀な者は三カ月なり六カ月おくれて昇格、昇進します。これを二選抜といいます。以下、三選抜、四選抜、こうなるわけであります。この文書を見ると、全税関労働組合に属する者は、他の職員と同じでも、どんなに優秀な者でも、最後の他のグループの者が上がるときと同じときでなければ上がれない、一番優秀な者でも第三選抜に合わせるんだということが書かれているわけであります。  私どもは、それに基づいて東京税関と横浜税関で全部の人事を調べてみました。絵にかいたようにぴしゃりとそれが当たっているわけであります。  あるいはまた、右の資料によりますと特定職員という言葉を使っておりますが、特定職員に対する上席官への昇任については、前年度基準五十五歳かつ在級六年のままで運用することについてはどうかという規定があります。あるいはまた、二十六年次を中心とする年齢構成層については、上席官昇任にあたって縛りをかけ選考すべきであるとする考え方があった旨の規定があります。  我々が調べましたら、大蔵大臣、一般の職員の六十一年度の上席官への昇任基準は、年齢は四十二歳から四十五歳、入関年次は三十六年から三十八年であります。そうすると、これらの人事課長会議で特定職員とされた全税関労働組合員は、一般職員よりも年齢、入関年次とも実に十年以上差をつけるということがこの会議で討議されているわけであります。これが差別でなくて何でありましょうか。しかも、この文書を詳細に読みますと、これでは職場で説明がつかない、どうするかということまで書いてあるわけであります。とんでもないことではありませんか。  そして、これが、たまたま私が入手した昭和六十一年四月の会議だけでやられているというのではなしに、ここには昭和五十九年の関税局総務課が出しました総務部長会議資料というのがあります。また、こちらには五十九年二月の関税局管理課がつくりました税関長会議の資料があります。これを見ますと、資料では、お配りするつもりだったのですが、ここで出されている議題が昭和六十一年度の議題とほぼ同じで、言葉遣いまで、例えば他関交流とかあるいは国税局併任発令とか、全部一緒であります。これは当時の局長である垂水公正さんのサインまでついております。人事極秘と書いてあります。  それだけではありません。五十八年の資料も手に入りましたが、その中では――後で言います。税関長のあいさつの原稿があります。そのあいさつの原稿では、人事が非常に困難だということの中で、特定職員に対する対応ということまで書いてあります。さすが気がとがめたと見えて、垂水局長は特定職員というところを鉛筆で消して、職員組合と書き直しておる。それまで出ております。それも皆さんに配付するつもりでありました。こういう動かすことのできない資料に、そういうことをやっている。  なぜこの人事極秘とある、サインのついているものまで私の手に入ったかといえば、大蔵省の関税局で、ある理由から大量の文書を廃棄処分にしたんです。そして地下の倉庫に山のようにほうり上げたら、その中に、ふるい分け不十分だと見えてこういうものがたまたま残っていて、いいですか、本当の話です、それが回り回って正森議員御参考になったらということで私のところへ持ってこられたからたまたま私の手に入って、こういうことをやっているということがわかったのです。  大蔵大臣、ことわざに「天網恢々疎にして漏らさず」ということがありますが、悪いことというのはできないものですね。  こういう点を見ると、私どもは憤激にたえません。正当に評価されて、能力がないから昇進できない昇級できないというならまだ我慢ができる。この文書を見れば、七百人余りの全税関の労働組合を特定職員といって、どれだけ優秀であっても他の職員の最終選抜に重ねる、さらに優秀な者でも三選抜に重ねる、こんなばかなことがありますか。憲法の原則はどこへいったんです。今、行政改革で職員に最大限の能率を発揮させなければならないときにこういう差別をやっておいて、いやしくも誇りのある職員、自尊心のある職員が心から働けると思いますか。  人事院総裁、この予算委員会では資料の提出が理事会の討議によってできなかったけれども、この人事極秘の書類を含めて全部私のところに現物があります。人事院はこういうのを詳細に検討して、こういう人事差別が行われないように措置をとるべきではありませんか。  また、関税当局はみずから襟を正して、こういう不正を即刻改めるべきではありませんか。そのことを私は切に要求したいと思います。  答弁を求めます。
  133. 大橋宗夫

    ○大橋政府委員 お答え申し上げます。  人事は、公正に、勤務成績、能力、適性その他の問題を考慮いたしまして総合的に勘案して行っているつもりでございます。ただいま御指摘のようなことにつきましては、私どものところで起こったものとは信じられません。
  134. 内海倫

    内海(倫)政府委員 今関税局長が御答弁あったようですが、私どもは極めて客観的な立場に立っておりますから、もしそういうことが仮に事実であれば、それぞれ措置要求を職員がしてくるでしょうから、その場合においてまた具体的に考える必要があれば法規に照らして考えていきます。
  135. 正森成二

    ○正森委員 職員は必ずや憤激して措置要求をし、当局に抗議することは間違いありません。  私は、たまたま大蔵省が廃棄処分をしたその中からこういう資料を入手しましたので、いつでも人事院その他に、あるいは場合によったら関税局長にも提供する用意があります。私どもはこういうことが断じて行われずに憲法の原則が守られることを心から要望したいと思います。  ほかにも私は、国鉄の不当な人事について質問をする予定でございましたし、JICA等についても質問する予定でございましたが、残念ながら時間が参りましたので、またの機会にさしていただきます。ありがとうございました。
  136. 砂田重民

    砂田委員長 これにて正森君の質疑は終了いたしました。  次に、上田哲君。
  137. 上田哲

    ○上田(哲)委員 ただいまこの時間で手元に入りました情報によりますと、アメリカ中間選挙が百議席のうち九十七議席判明したようでありまして、残り三議席でありますけれども、既に民主党が五十三議席で、レーガン大統領共和党の敗北が確定したようであります。総理、御感想はいかがでありますか。
  138. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 他国の選挙についてとかくコメントすることは差し控えたいと思います。
  139. 上田哲

    ○上田(哲)委員 日米関係というものが非常に強いきずなの上にある。とりわけロン・ヤス関係と言われている上に我が国の外交が大きく展開されているというこれまでの感覚の中では、盟友レーガン大統領率いる共和党の敗北、これが日米外交あるいは貿易問題等についてどのような影響があるのか、これは他国の選挙を個人的に云々すべきか否かという問題を超えると思います。特にそうした立場での御見解をいただきたいと思います。
  140. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほど申し上げたとおりでございます。
  141. 上田哲

    ○上田(哲)委員 日米貿易関係にはどのような影響があるでありましょうか。
  142. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ともかく選挙の結果の分析をもう少し見まして、それから一体上院でだれが外交委員長になるか、あるいは財政委員長になるか、そういうような点までよく見ないと、アメリカ議会は交錯投票でも動いておりますから断定はできない、やはり院の構成というものをもう少し見る必要があるだろうと思います。
  143. 上田哲

    ○上田(哲)委員 総理としてはお力落としではありませんか。
  144. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 冷静に受けとめております。
  145. 上田哲

    ○上田(哲)委員 それでは、報道されているところによりますと、総理は十月二十八日の夜、自民党のいわゆる一年生議員との会合で憲法改正の問題について、戦後の憲法によってもたらされた自由を国民は謳歌し定着した、昭和生まれが大半となり、特に戦後生まれがふえている中でノスタルジアで改憲と言ったところで反発を買うだけだ、こういうふうに発言されたと報道されております。御真意を承りたいと思います。
  146. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そういう趣旨のことは、たしか昭和三十八年の憲法調査会の終わりの締めくくりの演説、所信表明の中に私は既に言っておるのです。つまり、戦後市民社会の岩盤は厳然としてできてきた、一たん獲得し自由というものに対しては、今の市民たちはこれはどんなことがあっても守り抜こうという気持ちがある、我々自民党は実は憲法問題についてはいろいろ考えて、そして行動してきたけれども、しかし、憲法改正という問題はなかなか難しくなっているというのは、やはりこの自由というものを彼らは放すまいという気持ちがあるんだ、しかし、我々自民党は自由をはがそうなんという気持ちは毛頭ない、むしろ自由を謳歌し、この繁栄を持続させたい、民主主義をさらに成熟したものにさせたいという善意を我々は持っておるけれども、それが誤解をされて、そして今のような憲法問題に対して我々の考え方が前進しないという点は、やはりそういうある意味における人間の壁ができたのではないんだろうか、そういう戦後社会の新しい構造というものについて深い理解がなければ憲法改正は前進しない、新しいアプローチが必要である、そういうことを私は昭和三十六年か七年の憲法調査会の終わりの総括の私の所信の中で言っておるので、それ以来同じようなことを言っておるのです。そのことをまた言っているだけであって、格別新しいことではない。ただ、ジャーナリズムが、私がその前にいろいろ言ったようなことがまだ頭に残っているとみえて、その三十六、七年の憲法調査会の所信を読んでおられないかあるいは無視されておるので、間違った判断や誤解をしているのではないかと私は思っております。
  147. 上田哲

    ○上田(哲)委員 総理は個人的には改憲主義者だというふうに一般に理解をされております。しかし、総理としては改憲を行うことはない、こういうふうに今まで理解していたのでありますが、この報道されているところが誤りがないとするならば、私どもの認識は、総理は公私ともにといいましょうか、個人的にも、また総理大臣あるいは総裁とされても、もはや憲法改正の意図を持たないようになられた、こういうように理解したわけですが、今のお話を聞くと、憲法改正はやはりおやりになりたい気持ちを個人としては持っておられるということは今回も変わらないのだよということですか。
  148. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、中曽根内閣の間は憲法改正政治日程に上せない、そういうことを言っているので、それは変わっておりません。  ただ、昭和三十六、七年ごろから言っていることは、昔へのノスタルジア、戦前回帰、そういうノスタルジアの味があっては、そういう考えが残っていてはなかなか市民の納得を得ることはできない。やはり今の憲法の構造やらあるいはいきさつやら、あるいはよりよき憲法がどういう憲法であろうか、文章においてもその他においても、そういう現物を見せなければ、国民はどっちがいいということを選択できないだろう。  私は前から民主主義、自由主義、基本的人権の尊重、国際主義、こういうものは非常に大事な価値であって、こういうものを変えようとかいう考えは毛頭ない、あくまでこれは護持すべきである、そういうことを言っておる。しかし、文章という面を見た場合に、果たして今の憲法が立派な日本文であろうかということを前に言っておるわけです。そういう意味において、やはり一つはアプローチの問題、政治姿勢の問題、そういうようなやり方の問題というものを我々保守陣営もよく検討しなければいかぬ、そういうことを申し上げたのです。総理大臣としての立場はさっき申し上げたとおりであります。
  149. 上田哲

    ○上田(哲)委員 ちょっと私は意外な御答弁だったのですがね。つまり、総理は、総理大臣としてはもちろんやらないけれども、個人としてはやはり改憲の志向はいささかも衰えない。悪いのは、ノスタルジアだけでやってはいかぬのだ、この部分だけですか。
  150. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、総理大臣としても、制度、社会の仕組み、そういうようなものは完全なものというのはないんだから、何回も何回も見直し見直し、よりよきものへ前進する、法律であろうが憲法であろうが社会制度であろうが全部そういうものであって、そういう意味においては民主主義を前進せしめるためには見直しが必要である、そういうことを、これは一貫して申し上げているとおりです。
  151. 上田哲

    ○上田(哲)委員 一般論としては、あらゆるものが万古不易ではありません。しかし、総理自身が言われているように、まさに定着をした、若い世代、戦後生まれに定着をしたという御認識であるならば、一般論ではなくて、現憲法はもはや改定する必要が今ないではないか、個人的にもそう思われませんか。
  152. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 以上申し上げたことで私の答弁は尽きると思います。
  153. 上田哲

    ○上田(哲)委員 少し変わったんじゃないかと思ったのですが、変わらないですね。ますますその気だというので、これはちょっと話が変わってまいりました。  話を進めます。  この補正予算でありますが、この補正予算は「臨時緊急」という言葉に象徴されているようであります。大蔵大臣、「臨時緊急」というのは何でありますか。
  154. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いわゆる行財政改革が長いこと実施をされてまいっておるわけでございますけれども、財政改革についてはまだ前途ほど遠い現状でありまして、この努力を長く続けてまいらなければなりません。しかし、そういう状況の一方におきまして、最近の経済情勢、殊に昨年の九月以降為替調整が行われましてから後の今日の我が国経済情勢は御承知のようなことになり、また我が国が国際的に寄せられている期待も御承知のようなことでございますので、この財政再建という大きな原則を外れない範囲で、それに対して臨時緊急に処置をしなければならないということにつきましては、行革審においてもそういう認識を持っておられるところでありますが、そういう立場から今度補正予算の編成をいたしました。そういう意味合いでございます。
  155. 上田哲

    ○上田(哲)委員 具体的には、十月三十一日にこの場で大蔵大臣が読み上げられた提案理由趣旨説明の中では、「臨時緊急の措置として一般公共事業関係費一千三百三十億円を計上する」つまり広義に言えば、今お話しのようなことであり、狭義に言えば、そこにひとつポイントがあるというふうに理解していいわけですね。一般公共事業費に建設国債千三百三十億円は。
  156. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのうち特にどのポイントかとおっしゃれば、その点などはその一つでございますが、前年度剰余金を全額使わしていただくなどということも、やはり同じような考え方でございます。
  157. 上田哲

    ○上田(哲)委員 前年度剰余金などのさまざまなやりくりにもかかわらず、言うなればここのところに集約をされたというふうに考えてよろしいですね。
  158. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのような要素がございます。
  159. 上田哲

    ○上田(哲)委員 そこで、私はここにひとつ注目をして議論を進めたい。  きのう以来のさまざまな御議論の中で少し整理をしたいのでありますけれども、これは長いこと、具体的には五十三年度以来足かけ八年間にわたって、災害復旧等の建設国債は支出しますけれども、一般公共事業については建設国債を出さないできた。これをまさにそれ以来初めてついにやった。これは額の問題でいろいろ評価の仕方はありましょうけれども、質の問題として言うと、今まで抑えてきたことがひとつここで顔を出した。大蔵大臣は、赤字国債はついに出さなかったよ、こういうことを再三おっしゃっておられるのですが、やはりこれはかなり注目しておかなければならないことであろう。  その問題は、財政再建の大きな柱には赤字国債体質からの脱却ということは言うまでもなくあるけれども、公債依存度そのものを低めなければならぬということも同じようにある。あるいはその上にある、かぶさって全体としてあるというふうに考えなければならない。その観点からすると、これはやはり後退でありましょうか、あるいは原理の若干の変更ということにならざるを得ないんじゃないかというふうに考えるのですが……。
  160. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 特例公債も建設公債も借金であることに変わりはございませんし、それが利子負担になってまいりますことも変わりのないところでございます。ただ、そもそも財政法におきまして建設国債というものは本来的に認めておる、存在を予定しておるものでございますのに対しまして、特例国債はそうでございませんので毎年お許しを得て特例という名前を出しておるわけでございますし、そういう意味で、意味合いにおいては違ったところがある。  それから、今いわゆる財政再建の一番の目標は、六十五年度までに特例国債依存の体質から脱却したいということでございますから、その点については特例国債をゼロにすることに優先度を置いて考えております。もとより公債全体からなるべく依存をしたくないということは言われるとおりでありますし、それが負担になることもおっしゃるとおりでございますが、まず特例公債をというふうに考えておるわけでございます。
  161. 上田哲

    ○上田(哲)委員 はっきりしておかなければならぬのですが、私たちは三兆六千億なんというのは少ないし、遅いし、もっと大きくやらなければならない。そしてまた、財源として建設国債に社会党としてもまあやむを得ないだろうという見解も持っているということはあります。それはあるのですから、基本的にこれはとんでもないことをしてくれたというような言い方をするつもりはない。ないけれども、今の財政責任者としての大蔵大臣の御見解には緻密さが足りない。二つあったんだけれども、今のところはどっちかといえばまあまあこっちの方はいい方なんだから、赤字国債の方にはなるべく早く手をつけることが優先度であるというお言葉を使われた。そういう優先度という言葉が出てくると原理の問題としてはおかしくなるのではないか。  つまり、これまで長いこと、五十四年度予算から補正予算では災害復旧だけに抑えて全く出してこなかったところについに手をつけるわけですから、これは私は胸が痛まなきゃおかしいと思うし、そういう意味では、まあ言葉をつくって言えば、今のお話をそのまま言えば、大蔵省はいよいよ今年度から、この補正予算から、いい国債、悪い国債というふうに色分けを始めたということになっていくのではないか。私は、基本的にはいい国債、悪い国債はないんだというところに戻ってもらわないと、これはやっぱり原理の変更になると思うのですが、いかがですか。
  162. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いい国債、悪い国債があるとは思っておりませんで、財政を預かる者として、借金をしなければならないということはいずれにしても残念なことでございます。
  163. 上田哲

    ○上田(哲)委員 歯切れが余りよくないのですが、非常にすっきりした今までの考え方からすれば、例えばいろいろありましょう、昭和五十五年度の予算編成方針ではっきり「公債発行額をできる限り圧縮して財政再建の第一歩を踏み出す」云云。財政再建元年と言われたようなああいう背景からしたら、札に色はないのですから、赤字国債はちょっと悪いけれども建設国債なら少しいいなんというのは、そういう感じでやっておられる財政当局では私は残念であります。そういう点では千三百億だからいいだろう、赤字を出さなかったらいいだろう、来年度もいろいろな言いわけがあると思うのですけれども、これはこれでそんなにまずいことではないんだと言われるよりも、やはりその分だけ旗をおろしたと言われはしないか。その問題として私は質的にとらえておかれるということが財政論としては原理的であると思うのですが、すっきりお答えをいただきたい。
  164. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いいものと悪いものとあるという意味ではありません。目的が違うということであります。
  165. 上田哲

    ○上田(哲)委員 残念なわけでしょう。千三百三十億円、それは景気刺激のためにも必要だ、この際はやらなければならないということが優先することはわかるけれども、その優先順位と、建設国債だからといって、これまで長いこと出さずに来たところへ出したというところは、原理の変更と言うのがきつ過ぎたら、棚上げしちゃったと言うのもまたそれはきついかもしれないけれども、残念でしょう。
  166. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは一国の財政を預かる者として、借金をするということは気の進まないことでございます。
  167. 上田哲

    ○上田(哲)委員 気が進まないという程度のことだと私は思わないのですよ。もうちょっとシビアに考えていただきたい。  これは大蔵省が出しているのがありますね。さっきみたいな機密文書でも何でもない、ちゃんとそこにある普通の文書でありまして、これで皆さんがお困りになるなんという意味で言っているのではないのです。ないのですが、皆さん自身がお書きになっているこの資料を見ても、「建設国債の増発は、利払費の増及び他の経費の増加を通じて、結局は特例公債の増発につながる。」結局は、建設国債だからいいんだとおっしゃっても、最終的には赤字国債に行くより仕方がないんだという数字が出ていますよ。「たとえ一年限りでも、建設国債一兆円の増発は直ちに、以後毎年度八百億円ずつの国債費の増=特例国債の増となる。」と書いてあって、一兆円で横ばいだったら五年目に四千億円、これは特例国債以外はないんだ。景気を落とすために建国を減らすわけにいきませんからね。そういう性質を持っているわけですから、これはぐあいが悪いじゃないかということが書いてありますね。だから、それを出すということは財政当局とすればやはり残念であった。気の進まないことだというぐらいじゃなくて、もうちょっとすっきりした反省といいましょうか、お言葉はないものでしょうか。
  168. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 建設国債にいたしましても特例公債にいたしましても、将来の負担になり、利払いをしなければならないという点では全く同じことでございます。ただ、先ほど目的が違うと申しましたのは、建設国債というのは、それによっていわゆる建設的な効果を生むはずでございますから、それが将来の我が国経済、財政にプラスの要素を及ぼす、そういう性格を持っている、その点では特例公債と目的が違う、こういうことがあるだけでございまして、負担になるという点では同じでございます。
  169. 上田哲

    ○上田(哲)委員 私が言いたいのは、赤字国債は悪いけれども、まあ建設国債なら仕方がないじゃないかということでいってはならぬだろうという歯どめをしっかりしたいということです。  同じように、この中には、例えば一兆円の増発による税収増は三年間、累計でも四千億円にとどまるけれども、建設国債は六十年だから元利償還三兆七千億円の後年度負担になるなんという数字も、おたくの出した資料に出ていますね。非常に好ましくないものだということははっきりしていると思うのですよ。  きつい言葉をもう一遍申し上げたいのだが、誤解しないでくださいよ。さっき私はわざわざ前提を振ったように、景気刺激のためにもっとたくさん出さなきゃならないのだし、その政策も必要だし、建設国債を出さなければならなくなってきたという経緯というものを我々の党として全面的に否定するものではない。けれども、長期にわたる財政再建という立場からすれば、今度ここでこういうふうに芽が出てきたということは、非常に真剣に考えておかなければならない出発点だということを言ってほしいと私は思っているわけですよ。  現実問題として、これを積み上げていけば、一兆円出したら一兆円ほっといても八百億いくのですから、毎年毎年累増していったら四千億円ちゃんといくじゃないか、あるいは税収からいったって大きくはないんだということがこれだけ出ていることであると、私はこれだけ我慢してきたのに、ついにことしの補正予算の中で千三百三十億円出しちゃったということは、大きく言ったら、厳し過ぎるかもしれないけれども、これまでの財政再建論の挫折じゃないのか、棚上げじゃないのかということをもう一遍伺っておきます。
  170. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 企業と国家を一緒にするわけにはまいりませんけれども、国の支出の中には、いわゆる経常的支出に当たる部分と資本的支出に当たる部分がありますことは御存じのとおりでございます。そこで、そういう意味での経済主体としての国が資本的支出のために借金をする、企業は借入金をするという、そういう意味では似ておるところがないわけではない。そういう意味で、経常支出のための借金と資本的支出のための借金とは目的及び将来に及ぼす影響が違うということは、これは申し上げるまでもなく御存じのことでございますが、そういう区別はある。  ただ、それをしも実は借金によらないでやれるような財政体質が望ましいのでございますから、そういう意味ではこれがベストの道であると考えておるわけではございませんし、また両方とも将来に向かって負担を生じるという意味では同じことでございますから、そういう意味で、財政を預かる者として決して建設国債といえども気が進んで出しておるわけではないということは申し上げてよろしいことであります。
  171. 上田哲

    ○上田(哲)委員 私は不満です。それは入り口の議論では、資本的支出云々という言葉はありますよ。今百四十三兆もあるところで、これは量が質を変えるところまで来ているじゃないか。そして財政固定の中でどうにもならなくなって、とうとう今まで守ってきたところまで芽を出すようになったことはもう少しシビアに考えていただかないと困るだろう。これはまるで経済学入門みたいな話をされて、おわかりでしょうなんて言われて、そうですかと言うわけには相ならぬ。  そういう意味で、もう一歩先に進みますけれども、こういうふうになってきている成り行きの中では、この緊急臨時の措置というものが、今回ぽっきりではいかないだろうというところに問題があるということを私は言いたいのです。緊急臨時というのは、災害復旧なら話がつくかもしれないが、こういう一般公共事業費の形になって景気刺激の中に手を入れることになってくると、これは緊急臨時では済まないだろう。ずっと後へ尾を引くだろう。次の当初予算にもいくだろう。  これは前もって先回りして言っておきますけれども、当初予算では、事業量はふやすけれども国費はふやさぬよと言うに違いない。そんなことはわかっているから、時間を省いて言っておきますけれども、地方に振り向けるとかいろいろなことをおやりになる。さまざまいろいろなことをやらなければやりくりがどうにもならないところに来ておる。国債残高百四十三兆円。利払いが十一兆三千億円もある。国債費が一般歳出の中で二〇%を利払いが超えるというような予算の中では、こうして出した一般公共事業への建設国債の芽というのは非常に注意して考えておかなければならないだろう。経済原論の入り口論じゃなくて、やはり私はぜひ反省を言っていただきたいと思いますが、水かけ論にならないように先に行きましょう。  私は、来年度尾を引くだろう、これはだれが見てもそうだと思うのですが、公共事業に重点を置いていくとすれば、そうするといわゆるシーリングの前年比マイナス五%というのは守るのですか守らないのですか。
  172. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはもう既に内閣で決定をいたしておるところでございまして、それに従ってやってまいります。
  173. 上田哲

    ○上田(哲)委員 見直さないのですか、そのままでいきますか、これをひとつ。
  174. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 既定方針どおりまいります。
  175. 上田哲

    ○上田(哲)委員 ちょっと総理にその点、伺っておきたいのです。  私は、やはりそこのところは非常に無理がくるだろうと思うのですよ。非常に無理がくると思う。いろいろなやりくりで頭を知恵を使うだろうけれども、無理がくると思うので、これはここで言うことは綸言汗のごとしですが、何か悪いことを勧めているような気分もしながら、しかししっかり聞いておきたいと思うのですが、見直しはしませんか、総理
  176. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今までの議論を私お聞きして非常に疑問に思うのは、上田さん、社会党は建設公債を出せ出せと非常にお勧めになっておるのが、建設公債を出したら、それを反省しろ、そうおっしゃるのはどうしてもわけがわからぬです。出せ出せと言っておられて、じゃ出しますと言って出したら、反省しろと。どうしてそういう論理につながるんだろうか、どうしてもわからないんですが、教えていただけばありがたいと思うのです。それは、出すなと言っていてそれで出したら、これはけしからぬ、そういうのが論理じゃないんでしょうかね。出せ出せと言っていて、わかりましたと言って出したら怒られるというのは、何だか理屈が合わぬですね。自民党員になったら、それはそういう理論があると思う、自民党員と同じように考えて。  それから来年の話でありますが、これは建設公債といわゆる赤字公債というのは、年によって違いますけれども、半々ぐらいずつ出してきておるのです。十一兆の場合には五兆、五兆とか、大体それぐらいで、そのときそのときの景気の情勢やら予算の編成の都合等でいろいろ調整を加えながら出してきておる。ですから、来年度どうするかということは、予算編成全般を見ながら、公共事業費の関係とかそのほかを見つつ来年度予算編成のときに決める、そういうことであります。
  177. 上田哲

    ○上田(哲)委員 総理はどうもレーガンさんのことをお考えになって、少しいら立っておられるのでしょうけれども、まじめにやりましょう。  私は、さっきからそれを二回繰り返して前提を置いているのです。三兆円では足りないからもっと出せと社会党は言っておる。建設公債も仕方がないだろうと言っておるのです。その上だけれども、これ以上借金がかさむということになっては、みんなで心配しなければならぬだろう。財政当局にやはりその辺のところのけじめや方針というものを聞いてみたいなと思うわけで、自民党に入るとは何事ですか。かわってくれれば幾らでもやりますよ。  そこで、具体的に聞きましょう。これでおわかりにならなければしようがないですね。あと一年ではだめでしょうか。  大蔵大臣に伺っておきますが、六十二年度、全額借りかえをやるということはどうなりますか。やりますか、やりませんか。
  178. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは、片方で特例公債を出しておる限りにおいて、全額借りかえということはどういう意味を持つかという問題意識を私は長く持っておりますし、また、大蔵大臣に就任いたしましてからも、この問題については事務当局に検討を続けてもらっておるわけでございます。  ところで、新たに発生いたしました事情といたしましては、電電株の放出が予想よりも非常に高い値で可能になりそうな状況がございまして、これは法律によりましてかなりのものが国債整理基金特別会計に帰属をいたしております。そういう新しい事情もございます。結局のところ、したがいまして、六十二年度の予算を編成いたします過程で、歳入歳出を見ながら、全額借りかえをしなくてもいい、従来どおりの六十年ルールというものは守れるということでございますか、あるいはそうでありませんのか。本来からいえば六十年ルールを守ることが望ましい、これは減債制度の基本といたしまして私は疑いないところだと思いますから、何も好んでそれを金額借りかえにしろと申しておるわけではないのでありまして、財政の全体の事情から見てそれがどうしても可能でないときにはどう考えるかという問題として検討を事務当局にしてもらっておる、そういう情勢でございます。
  179. 上田哲

    ○上田(哲)委員 言いにくいのでしょうけれども、そうすると、やらない、やらずに済みそうだというふうに考えていいのですか。
  180. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 もともと好きこのんでやることではないと考えておるわけでございます。そうでございますから、歳入歳出全体の事情を見まして、それで決めればいいことだと思っておるのです。
  181. 上田哲

    ○上田(哲)委員 いつお決めになりますか。
  182. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは年末、予算編成までには決定をいたさなければなりません。
  183. 上田哲

    ○上田(哲)委員 そうですか。  NTTの場合も特例措置をお考えになるのじゃないですか。法律改正などを行って、繰り入れの問題ですね。
  184. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 さあ、これは国債整理基金にあれだけの部分を属させて国債の償還に充てるという考え方は、私はやはり厳格に守っていく必要があるのではないかと思っております。
  185. 上田哲

    ○上田(哲)委員 それはわかりました。これはかなりはっきり言われたと思います。  実は総理に大変挑発をされましたけれども、私が申し上げたいのは、たまたま今回の問題が、ちょうど五十四年から一般公共事業には建設国債を出さずにやってきたという、その前の五十三年が大変なことになりましたね。御存じのように、例の公債発行の比率が五十三年の三二%、五十四年で三九・六%、こういう大変なところから反省をして、ぜひ何とかしようじゃないかということになってきた経過。五十三年がやはり同じような形であった。貿易黒字で円高で、それで内需拡大、公債発行による公共事業への要求が非常に強かった。そこでやむを得ず十三カ月予算、来年度の五月分までの取り込みを行って形をつけた。これがやはり当時の長岡主計局長の反省なんかも随分出ているわけですね。こういうものとぴったり似ている。  そしてあのとき、あのときは国債発行しなかったけれども、それを税収取り込みでやったということのために例の一般消費税が出てきて、ああいう事態にもなった。自民党も向こうとそっちがかわるかもしれないという御心配をなされるほどの世論の反撃を受けた。しかし、とにかくそれがそれ以後懸命に財政再建論ということで、その一つはさっきから申し上げている一般公共事業の建設国債支出をしないということにあらわれていた。これは間違いないことだと思うのですね。  それがここでまたこうなっていくということは、私は同じことが始まっていく、結論を先に急いでしまえば、今度の税制改革と称する、今度は一般消費税じゃなくて大型間接税ということになっていくんだ、EC型付加価値税に、ちょろっときのうも言われたような形になっていくんだと思うから、そういう反省をやはり持っていかなくてはいけないのじゃないかということを私はぜひ言いたかったわけなんであります。  大蔵大臣、うなずいておられるのですが、いかがでしょうか。
  186. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、昭和五十年度でございますか、三兆九千億かの税収減が出まして、そこから特例公債が発行されるようになり、その後、五十一、二年が非常な不況でございました。反面には、日本が機関車になれ、七%成長というようなことがあって公債発行が非常にふえていきました。その経験は私ども決して忘れてはならない経験だと思っております。
  187. 上田哲

    ○上田(哲)委員 そこで、ちょっと飛びますけれども、今度の公定歩合の引き下げで共同声明も出された。そこで、大蔵委員会なんかでもきょう午前中いろんな議論があったそうですから、重複しないでぽんぽんと聞きますけれども、大蔵大臣は天井感がなければならぬということをしきりに言われた。天井感がなければならぬということを言われたやに我々は新聞で読みましたけれども――そう、円です。だから、となると今までの天井は百五十二円だった、そういう感じですか。
  188. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、昨日申し上げたことを繰り返しまして恐縮でございますけれども、昨年の九月にG5が決めましたことは、ドルの価格というものがいかにもファンダメンタルズを離れている、したがって、みんなが介入をして、それをファンダメンタルズにまで引き戻そうではないかという一年近い努力がありました。そこでこの間、私とベーカーが申しましたことは、今や円とドルとの関係はファンダメンタルズを反映するに至ったので、これ以上人為的に円を上げることは好ましくもないし、また必要でもないということ、それが認識であるわけでございます。これ以上という、これというのは何かとおっしゃいますれば、ターゲットということで考えておりませんから、まあまあこの一ヵ月あたりのここらのところという程度にお考えをいただくことがいいのであろう、これから後は、ファンダメンタルズに戻ったわけでございますから、市場が自然に決めていけばいい、こういう認識でございます。
  189. 上田哲

    ○上田(哲)委員 ということは、百六十円台という、それが合致するところということですか。
  190. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そこのところをあえてきちんといたしてございません。この話をベーカーと始めましたのが九月の初旬でございますし、最後に取り決めましたのが十月の三十一日でございましたので、まあその間のあたりというぐらいに申し上げておくことの方がかえって正確ではないかと私は思います。
  191. 上田哲

    ○上田(哲)委員 それはよくわかりました。  日銀の澄田総裁は百六十円ぐらいということを言われたというのでありますが、副総裁、そういうことでしょうか。
  192. 三重野康

    三重野参考人 私の知る限りでは、総裁は具体的な数字は挙げていないと思います。
  193. 上田哲

    ○上田(哲)委員 感じはそんなものですか。
  194. 三重野康

    三重野参考人 今大臣がおっしゃったような感じで私どもも受けとめております。
  195. 上田哲

    ○上田(哲)委員 わかりました。  そこで、私は先ほど来申し上げておるのは、歴史は繰り返すと言ってしまっては少し単純になり過ぎるけれども、同じことが、五十三年のときと同じような形がぴったり来た。だからここに、そうなると健全財政をどうするんだということになれば、増税しかないじゃないかという大蔵省の枠にはまってしまうのですが、そっちの方も警戒しながら物を言わなければならぬのだが、結局そういうふうに考えていくと、大蔵省の論理というのは、また、私たちが生まじめに健全財政、財政再建ということを唱えていくとすると、それは増税以外にないのだという話に落ち込んでしまうことになる。これは困る。     〔委員長退席、今井委員長代理着席〕 しかし、それをよく考えてみると、また挑戦されては困りますよ、皮肉られては困りますけれども、結局これは今の減税、増税の問題が、まず、減税をするんだからその財源としては何が必要か、つくらなければならぬかではなくて、減税増税同額だなんという話じゃなくて、しょせんこうした基本的な長い流れの財政再建の破綻と言いましょうか、そう言ったら言葉はきついでしょうけれども、そう言わなければならない状態に来ている、赤字国債の六十五年度までのプログラムを変えなければならぬじゃないかという声がきのうも出たのですから。  私は、変えなければならないのは、赤字国債だけじゃなくて、建設国債を含めた全体をやはりここで見直していくということを国民にわかりやすく出してもらわなければならないし、そういうことからすると、このままほうっておくと、そのためには、それ見たことか、大増税しかないじゃないか。これは減税財源ではなくて、実は大きな財政再建政策の破綻の穴埋めということになっていくことになるんじゃないかということを申し上げておきたい。  そうではないんだということのためには、これは結論にしますから、そのためにはもっとわかりやすい、六十五年赤字国債依存体質脱却を見直すというだけではなくて、大蔵省の、これまでの政府の方針というのは赤字国債だけじゃなくて公債依存率全体の問題だったんだから、これ全体をわかるように再建していくというプログラムも考えてみるべきときではないかということを、大蔵大臣、ひとつぜひお聞きしたいのであります。
  196. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私の考え方は少し今仰せられたのと違っていまして、やはり先ほどおっしゃいましたように、昭和五十年あたりからの国債の発行ということは、四十八年から起こりました石油危機というものに日本経済が対応していく過程で、その役割を財政がずっと引き受けてきたということではなかったかと思います。決してむだに国債を発行したわけではないと思います。  と申しますのは、石油危機を乗り切りまして、日本経済は今世界でも一、二と言われるところまで参りましたし、またそれはハイテクノロジーについてもそうでございますから、決して日本経済はこの乗り切りに失敗したわけではないと思います。その負担を財政が背負ってきたということではあるまいか。殊にこの一年というのはまたプラザ合意ということで、これもまことに異常なことでございましたが、どうやらここまで来て、かなり財政は減収等々で苦労しておりますけれども、どうやら何とか対応して国際的な役割も果たしてきた。  そういう財政が背負いました役割というものの結果として日本経済はここまで来ておりますから、したがって、日本経済の運営がもう少し正常な事態に戻りますと、昔のような成長でなくとも、もう少しは潜在力を持っておる。それが活力になって成長ができるはずであるし、また財政はその成果を成長から得ることができるはずであって、それが財政再建につながっていく、そういうふうな経済運営ができるし、やらなければならないというふうに私は考えております。
  197. 上田哲

    ○上田(哲)委員 もう一遍御見解を承りたいのですが、きのうは六十五年度までの再建策というものを少し考え直してみてもいいじゃないかと言われた。私は、それだけではないだろうということをしきりにきょう申し上げておる。全体としての公債の脱却論ということを少し展望すべきではないか、これをやってみるべきじゃないかと私は申し上げているんだが、その必要はない、こういうことですか。何かやってみるということになりますか。     〔今井委員長代理退席、委員長着席〕
  198. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今のところ六十五年という看板は、これは外すわけにはまいらない、財政を締めてまいらなければなりませんから、ということを第一に申し上げました。しかし、第二に、もしこれを、看板をかけかえることがあるとすれば、それでは今度はいつまでに文字どおり赤字国債をやめられるかということをきちんとしておかなければなりませんが、そのためには幾つかの事情が好転をしていかなければならない。幸いにしていろんな事情が好転をいたしまして、日本経済の成長がもう少し高まり、財政の力ももう少しついてくるということであれば、今度はそこで新たに赤字国債から脱却する、看板を改めることができるかもしれない、そういうことは検討するに値する時期が来るかもわかりません。来ると申したわけではありませんし、検討を必ずすると申したわけでもございませんけれども、そういうときがやはり来るようにしていかなければならないだろう、それまではこの看板は外すわけにまいらない、こういう意味合いで申し上げたわけでございます。
  199. 上田哲

    ○上田(哲)委員 私が申し上げたのは、それはそうなんですが、だから赤字国債だけのことを言っているわけにいかぬだろう、建設国債を含めた公債依存率を低めていくという全体計画を考えていく必要があるんではないかということを申し上げておる。検討してみようという言葉があってほしいなと思っているのです。
  200. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 冒頭に申し上げましたように、両方とも財政負担でございますから、片っ方は全く困るが、片っ方は全くいいというようなわけではございません。が、意味合いが違いますので、どちらかといえば特例国債をまずなくすことが恐らく先決であろうとは考えております。
  201. 上田哲

    ○上田(哲)委員 総理、大蔵大臣は六十五年までの計画をひとつ考え直してみよう、総理はそうではないと発言されておるというふうに我々は聞いているんですが、そこはいかがですか。
  202. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 六十五年赤字公債依存体質から脱却するように努力する、この旗はおろしませんと申し上げているとおりであります。
  203. 上田哲

    ○上田(哲)委員 新たにこれを再検討してみる、時間を延ばしても、ということはないということですか。
  204. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そのとおりです。
  205. 上田哲

    ○上田(哲)委員 わかりました。  次の問題に移ります。SDIですが、これは知ったかぶりをして議論すると危ない話ですから、私はわかりません。一生懸命勉強してきましたけれども、とてもこれはわかりませんから、非常に素朴に今大枠の話だけをぜひ総理としておきたいと思います。  核とは何か、非核とは何かというようなことを言っても、これはもうそれだけでも大変なことですから、その前に、きのうも同僚議員からひとつ具体的に言ってみろというお話があったので、総理にお願いしたい。私たちはどうしてもSDIがわからない、人に説明がしにくいものだから、これは核兵器を終局的になくすものだとかなんとかという能書きの部分じゃなくて、四段階というふうに言われていますけれども、発射してから向こうを飛んで大気圏に入ってくるまでのいろんなことを言っています、いろんなことを言っているんですが、そういう専門用語も要らないから、一番わかりやすい言い方で、SDIというのは何だろう、Sが何でIが何だろうというように思っている人たちにわかるように、総理がこういうふうに言っているんだということを総理の言葉で説明をしてください。完全無欠である必要はありません、こう言えば一番わかるという形で。我々には御相談なく九月九日に参加の方向をお決めになったんだから、それをどういうふうに説明するのかということを、向こうから今核ミサイルが飛び出しました、米本土に向けて、もしソビエトから飛んだのなら三十分内外であります、それが飛んだというときに、これがどういうふうにしてどうなるのかということを、総理のお言葉でちょっとわかりやすく説明していただきたい。
  206. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは一言じゃとても説明できない難しい問題なのです。ですから防衛庁の専門家に説明させます。
  207. 上田哲

    ○上田(哲)委員 いや、それならいいんです。総理もやはり説明できないということになってしまいますよ。総理も説明できないということじゃ、私は国民の皆さんにわかれというのは無理だろうから――いや、私程度と言うならやってくださいよ。そこがおかしいじゃないかとは言いませんよ、私は。言いませんから、あなたがおやりになったとおりのことで結構で、わかりましたと言いますから。説明できませんじゃ、国会でこんな大きな問題を総理はついに説明する方法はありませんでしたと言ってましたということでは私は残念だから、ちょっとそこを説明してください。わかりやすく、簡単でいいです。
  208. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 要するに、例えば大陸間弾道弾と言われるICBMあるいは片っ方から飛んでくるものを、新しい科学兵器を発明することによって途中で落としちゃおう、そのためにもう大陸間弾道弾を持っていても意味がない、そうして両方もうやめさせちまおう。片っ方がやめればおれの方もやめる、そういうことでやめさせちまおう。そういう新しい防御兵器をSDIと称して今一生懸命研究を始めよう、また研究にかかっている。ある程度の見通しはできてきておるんだろうと思います。
  209. 上田哲

    ○上田(哲)委員 約束ですから、これはもう追及しません。今総理が言われたところを多分ビデオかなんかに撮って、総理はこういうふうに言っておられる。これをみんな賛成か反対かということを、これからやろうと思いますから。そこで、これも私はけたぐりをやろうと思ってませんから、ひっかけられないつもりで楽に答えてくださいよ。  非核であるか核であるかということを定義するようなところから始めたりすれば、にわか博士ではどうにもなりませんから、総理が言っておられることは、核ではないと言っておられる、攻撃用ではないと言っておられる。これははっきりしておるわけですね。それでは大枠をかけてください。核であるか非核であるかの定義云々なんということは今言いませんから、大変大ざっはなところで、もしこの先、核であることがわかったり攻撃用であることがわかったらやらない、これは約束してください。
  210. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それはもう初めから非核防御兵器である、そしてICBMの効用をなくす兵器である、そういうことですから、そうでないものであったら、これは研究をやめるとか、そういう形にならざるを得ぬでしょうね。
  211. 上田哲

    ○上田(哲)委員 これは単純なことですけれども、初めて伺ったんですよ。これは非常に大事なことですから、この中で、じゃ核とは何かというようなことを一生懸命勉強していきましょう。  もう一つ、これは総理の今のことに、私は決して論議をするんじゃありませんが、ある人の言い方では、核兵器が、核ミサイルが飛んでくる、それをアメリカ本土に大きなカーテンをかけているようなものだ、こういう説明があるのですね。このカーテンはアメリカ本土にかかるのですか、日本にもかかるのですか、こういう表現で言うとすれば。
  212. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 カーテンという言葉が適当かどうかわかりませんけれども、SDIによる防衛システムが目指しておるところは、アメリカのみならず同盟国の防衛についても目指しているということを当初から言っておりますし、現に研究の過程でもそういう姿勢で研究をしているというふうに承知しております。
  213. 上田哲

    ○上田(哲)委員 日本もですか。どうぞ。
  214. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 同盟国の中には日本は当然入るわけでございます。
  215. 上田哲

    ○上田(哲)委員 そうしますと、日本が入らないということになると、これは集団自衛権にかかわりますね。
  216. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 SDIは一つの研究計画でございまして、具体的にそれはどういうものができてくるのか、それから具体的にどういうふうに配備されるかどうか、そもそも配備されるのかどうか、配備し得るのかどうかということを研究する計画でございます。したがいまして、集団的自衛権云々ということには関連がないと思います。
  217. 上田哲

    ○上田(哲)委員 後にしようと思ったのですが、先にします。  そうすると、もう一つ総理にお約束をいただきたいのは、今、研究参加である、配備とは違うんだ、したがって研究参加であるというのであれば、研究が終わって配備するかどうかというような状況になる前には、一遍相談をしてくれますか、国民に訴えてくれますか。
  218. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 米国はもちろん協議する、日米協議すると。で、新しい展開に対してどういう対応をするか政府としては考える、そういうことになると思います。
  219. 上田哲

    ○上田(哲)委員 ぜひこれは国民に相談をしてもらいたいと思うのですが、そこは水かけ論になりましょうから、一遍そこでたんまをかけるということを約束をしたということがございます。  そこで、今のは研究段階だと言われたが、配備することになったら、これが日本を含んでないことになったら、集団自衛権にかかわるということになりますね。
  220. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 先ほどから申し述べておりますように、SDI研究計画は何を研究するかと申しますと、SDIというようなものが技術的に可能であるかということ、それからそれが経済的等の面で可能であるかということを検討するわけでございまして、その検討に関して日本が参加するかどうかということでございますので、将来の配備等を前提といたしまして、それが集団的自衛権云々ということを議論することは、現段階においては困難かと思います。
  221. 上田哲

    ○上田(哲)委員 そんなばかばかしい議論はありませんよ。これじゃ全然議論する必要はなくなっちゃうので、議論を逃げるんだから、これは議論に入れません。入れませんが、集団的自衛権にかかわるだろうということと、それから実戦配備の問題それから研究成果の問題等々は後に残します。私は、三つの約束総理がしていただいたことを大切にして、その中身を埋めていくという議論をこれから励まなきゃならぬなということで、きょうは先に送ります。三つのお約束ができました。これを何やら三原則と将来ちゃんと言ってもらって守っていただけるようになりたいものだということを述べておきます。  次に、きょうは、くしくも「防衛計画の大綱」に伴う一%枠というのが決まったちょうど十年目なんです。十年目に風前のともしびの一%を議論するのは本当に残念でありますし、これもまた水かけ論になりましょうから、そこのところはきょうは強く一%を守るべきだ、国民合意だということを申し上げることにとどめて、具体的な内容に少し入ります。  大事なことは、「防衛計画の大綱」の別表の変更ということが議論をされております。これはもうやるんだということで進めておられますから、私たちは別表の書きかえということはいけないんだというふうに議論をしてまいりましたが、水かけ論の部分は省きます。具体的にひとつ、今私は防衛庁が非常に重大なところにおられるという認識を持っておりますからそういう意味でお伺いをいたしますが、まず総理に。  総理もこれまでのたくさんな御答弁の中で、中期防、五カ年計画の策定に当たって、いたずらに重装備化を追求するだけじゃなくて発想の転換を図れという趣旨の発言をいろいろなすっておられます。これは指示であったというふうにも聞きますし、まあ非公式であったとも聞きます。それはそれで一つの御見識だろうと思っています。これはやはり、しきりにその別表書きかえの理由とされる外部の技術の変化、兵器技術の変化それから兵器体系の変化等々に応じなければならぬのだということになるんだと思うのですが、そういう立場からすると総理は、例えば重装備をいたずらに追求するのではないということにかわる別な兵器体系というようなことを発想されているんでしょうか。
  222. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 「防衛計画の大綱」自体に科学技術の変化に対応する措置を認めておるので、そういう意味においては別表の中の装備の変更というものはあり得る、それは大綱自体の範囲に入る仕事である、そういう解釈でやっておる。そういう意味におきまして、今後いろんな環境の情勢あるいは科学技術、防衛兵器の進歩等に対応する変化がどう出てくるか、そういうような観点で我々もよく勉強もし、また我が国の対応も研究していくべきである。ただし、前から申し上げているように日本の本土防衛というものに限定した限定的そういう云々という前提は当然守らなければならぬ、そう思います。
  223. 上田哲

    ○上田(哲)委員 六十年二月十八日の予算委員会の御答弁で「軍事技術の進歩等を勘案して、採用すべき装備体系に変更が生ずる余地を残して」いる云々とあるのですね。まあ、これはおっしゃることだと思うのです。だから、これは装備体系を変えるということも当然含むというふうにおっしゃっているわけですね。
  224. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 たしかそう申し上げた記憶がございます。
  225. 上田哲

    ○上田(哲)委員 そうしますと、これは防衛庁長官でしょうか、そういう装備体系の変更を考えていく、それを考えさせるような外部条件といいますかそういう与件、どんなふうに今把握しておられますか。
  226. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 御案内のとおり、いわゆる技術というものが非常に変わってまいりますね、進んでまいりますね。それに基づいて戦術、戦略も変わってくる、そういうことから装備体系というものも変わってくる、これはまあ必然的だと思うのです。例えば、よく言われることですけれども、今の装備体系、今の大綱の別表ですね、現実的には。いわゆる艦艇を中心とした対潜装備体系、それから今は航空機を中心とした装備体系に変わっておる、これは御案内のとおりですね。今後それじゃそれがどのように変わり得るだろうか、これは可能性の問題として考えるということ。それは航空機にしましても非常に性能がよくなってきた、速くなった、しかも航続距離も延びてきた。それから、俗に言うクルージングミサイル、巡航ミサイル、この射程も数百キロを超える、こういうようになってきた。こういうふうになりますと、それに対応してどういう装備体系をつくり、どのような防衛をやるかということになろうかと思うのです、これはもう頭の中で。そうなりますと、今防衛庁では洋上防空体制研究会、また陸上防衛態勢研究会、こういうのをつくってどうだろうかと。これは大綱別表を変えるということを前提でないのですよ。問題としてそういうものをフリーに、効率化、能率化、そういうものを研究してみようというので今それを始めてますからね。そういう意味合いでは将来の装備体系とこれらは関連をしてくると思います。  ただ、お断りしておきますが、どこまでもこれは研究でございまして、いわゆる別表を修正しよう、そういう意図ではございませんので、そういう意味合いに御理解をいただきたい、こう思います。――修正するということを前提としてやっているんじゃない。今、その考え方はありません。
  227. 上田哲

    ○上田(哲)委員 私は、非常に重要だと思うのですが、今巡航ミサイルが非常に大事な意味を持ってきたというふうなお話でした。巡航ミサイルというのは非常にこうした問題を考える核、ポイントですか。
  228. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 やはりこれからの一つの大きなポイントだろうと思いますね。
  229. 上田哲

    ○上田(哲)委員 私も、実はささやかな調査の中で、経験の中で申し上げるのですが、今変えられようとしている装備体系そのものが、検討の対象になっている十年前にできた大綱の別表は、昭和四十年ごろ、ここに当時松野頼三防衛庁長官などがしきりに答えておられる議事録があるのですが、このときは原潜ですよ。原潜の出現というものが大変な戦略論を変えた、あるいは装備体系を変えた。潜水艦というものは、海の上を走っている軍艦よりはのろい、それから、いつかは顔を出す、こういう認識が原潜の出現によって完全に変わった。戦いは海の上じゃなくて中に入った。こういうところから、原潜というのは、この四十年ごろの議論を見ていると、何というか実にかわいらしい感じがするぐらいのものですね。  そういうものが、それまでの戦略体系、装備体系を変えて、それででき上がったのがこの大綱の別表ですよ。まあ原潜は、変えたというと少し生生しい言い方になりますけれども、そういうことがありますよ。また十年たちまして、ここでやはり当時の原潜と同じような意味が巡航ミサイルの出現ということになってきているんじゃないか。総理も、いたずらに重装備を云々と言われたようですけれども、海空重視、陸軍は軽視とは言いませんけれども、そういうふうな傾向が出てきたということの一つにも、そういう大きな兵器体系、まあ私たちは、必ずしも好ましい表現ではありませんが、外からの脅威の分析の仕方が巡航ミサイルによって変わってきた、そういう立場で今検討を始めているんだというふうに理解していいわけですか。
  230. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 いや、そういう立場で検討していると言うが、一つ例を例えれば、巡航ミサイルなどというものは原潜ができる前は考えられなかったことですよね。今は随分変わってきているでしょう。ですから、そういうことも頭に入れながらいろいろと検討する、そのこと自体は決して悪いことじゃない、こういう意味で言っているのです。
  231. 上田哲

    ○上田(哲)委員 私はぜひ専門家に伺いたいのだが、巡航ミサイルに対応する立場でいいますと、ずばり言いますけれども、防衛庁の今の発想としては、今の装備体系じゃ役に立たぬ、対抗できないというふうに思っているだろうし、その上で装備体系の変更をいよいよ図るべきときに来ている、私はこういうふうに見ているんですよ。どうですか、これは。違いますか。専門家、出てください。
  232. 西廣整輝

    西廣政府委員 巡航ミサイルは、先生御承知のように一九七〇年ごろが最初の例でございまして、スティックスミサイルをエジプトが使ってイスラエルの駆逐艦がやられたということで非常に大きな衝撃を与えたわけでございますが、要は、非常に射程が長い、さらに命中精度が非常によろしいということで、その後どんどん研究が進みまして最近に至っておるわけでございます。そういったことで、いわゆる核を積んだ戦略的目的に使うもの以外であっても、非核であっても、例えば洋上にある艦艇をはるかかなた、数百キロのかなたから非常に命中精度よくそれを撃沈することができる、あるいは陸上のピンポイントを攻撃することができるということで、かなり離れた地域から、スタンドオフ攻撃と申しますか、遠隔地からの攻撃が可能になったという点で、現在我が国が持っております防衛力に与える影響は今後ますます大きくなるのではないかというように考えておるわけであります。  例えて申しますと、ただいま私ども洋上防空研究というのを始めておりますけれども、その要因は、先ほど防衛庁長官がお答え申し上げたように、一つはハイスピードの長距離爆撃機が出現したということもありますけれども、それらの爆撃機が対艦ミサイルを積んでおる、その射程が五百キロあるいは八百キロといったような非常に遠距離まで届く、しかも命中精度のいいものを持っておるということで、従来のように、艦艇に対航空機用のミサイルなりあるいは高射砲といったような対空火器を積んでおったのでは、攻撃してくる巡航ミサイルを撃墜できない、あるいは巡航ミサイルだけ撃墜しておっても、いつまでたってもその発射母機である爆撃機を撃破することができない、そういった問題を抱えておりますので、それをいかに克服するかというのが大きな課題になっておるわけでございます。
  233. 上田哲

    ○上田(哲)委員 例えて言いますと、今まではレーダーサイトですよ。レーダーサイトによる防衛論をとっていたわけですよ。これが巡航ミサイルのこうした出現によって、そういうものでは済まなくなったと考えているのでしょう。そこをずばり聞きたいのです。
  234. 西廣整輝

    西廣政府委員 御指摘のとおり、従来日本の全般防空の兵器体系としましては、例えば航空機がF86から始まって104、F4、さらにはF15というように新しい世代物に変わってきましたけれども、これは私ども考えておりますところ、装備体系の変更というまでには至らないのだろうと思うのです。個々の装備が変わってきたということだと思いますが、いずれにしましても、F86の時代から現在のF15の時代になっても、防空の基本はやはりレーダーサイトに私どもは置いておる。まず、レーダーサイトで敵の来襲を察知をし、来襲してくる敵に対して航空機をレーダーサイトで誘導するということで、日本の防空兵器体系の基本はレーダーサイトに置いてあるわけであります。  それに対して、先ほど申したように、非常に離れたところからクルージングミサイル等を用いてレーダーサイトが正確に攻撃をされるということになりますと、レーダーサイトに基本を置いておる現在の防空兵器体系というものについてさらに検討を加える余地がある。それはいろいろな考え方があると思います。  例えば、レーダーサイトをより頑丈といいますか生き残れる形のものにする。それは、サイトをハード化することもあると思いますし、レーダーサイトを現在の早期警戒機のように空に上げてしまって動かすようにするというようなこともあろうかと思いますし、さらには、クルージングミサイルを発射する航空機そのものを撃破できるように、現在は陸上に、日本の領土上空に来る時点ぐらいに会敵をするということで防空を考えておりますけれども、それをもう少し沖合いに出して、クルージングミサイルが発射されない、あるいはレーダーサイトが攻撃される以前に敵機に会合してこれを撃破できるような態勢を組むとか、いろいろな方法はあろうと思いますが、これらはまだいずれも今後の問題でございまして、私どもとしてはまだまだ研究しなくちゃいけない点であって、これからの検討の結果によろうかと思います。
  235. 上田哲

    ○上田(哲)委員 具体的に伺いますけれども、研究だとおっしゃるけれども、例えばSSMはもう実験段階は終わりましたね。これは中期防中に配備になるでしょう。こういうものは実際に配備されるのですよ。だから研究段階じゃないのです。そして恐らく、これまでどうしても踏み切らなかった空中給油機であるとか早期警戒機であるとか、つまりそれを全部並べたCAP態勢、こういう態勢にいよいよ入るということに行くのでしょう。これはもう当然、それがないままおもちゃのような話をしているはずがない。研究であることはわかるけれども、中期防という五年計画の中で言えば、もう具体的な手順に入っていくのではないか、私はそういうふうに具体的に思いますから、その構想論だけではなくて具体論として、洋上あるいは海、陸を含めてどういうふうに兵器体系が変わっていこうとしているのかということをもう少し説明してください。
  236. 西廣整輝

    西廣政府委員 御承知のように、昨年政府で決定されました防衛力整備五カ年計画によりまして、洋上防空についてこれを検討し、必要な措置をとるということになっております。この中で我我研究いたしております点、これも御承知と思いますけれども、先ほど申したように、クルージングミサイル等を用いてスタンドオフ攻撃をされるのに対してどう対応するかということで、一つは広域の哨戒能力をやはり持つ必要があるだろう、そのためにOTHレーダーといったものの採用は有用ではなかろうかという研究を一つ始めております。そういった形で、非常に広い範域の相手の行動というものが把握できれば、敵の来襲に対して我が艦艇がこれを回避するということがまず可能でありますし、回避できないまでも、こちらから敵の爆撃機に対して要撃するユニットというものを出撃させることも可能になろうかと思うわけであります。その際に、要撃ユニットというものを考えますれば、先生今おっしゃいました早期警戒機のほかに空中給油機であるとかそういったものとの組み合わせによるユニットということも検討の対象に当然なっていくというように思います。それらはいずれもこの五カ年計画で一応決められております検討の対象であり、かつこれが最もいい組み合わせの兵器体系であるということであれば、その一部について整備に着手するということが決められておるわけであります。  さらに、防空関係で申しますと、これは特にまだ、五カ年計画で具体的な検討としては、空中給油機についての研究をするということだけが政府決定として決められております。これも今先生が御指摘されたように、やはり来襲する敵航空機と会敵地点をできるだけ日本の領土上空から離れた地域で早目にそれを可能にするというようなことを考えますと、CAPといいますか、上空に常に戦闘機を上げておくとかといったようなことも考える必要が出てくるかもしれません。その際には当然空中給油機というものの必要性も出てまいるわけでございますので、そういったことも含めて、空中給油機がどのような使い方が可能であるか、どういう点で有用であるかというような研究だけをするように五カ年計画では決められておるわけであります。  最後に、陸上防衛についてでございますが、先生から今SSMの話が出ましたが、確かにSSMというものの現在開発中でありまして、もう最終段階に来ておりますが、これを量産し、かつ一部部隊を設置をするということが五カ年計画では決められております。ちなみに、SSMは我が方の持ついわばクルージングミサイルみたいなものでありますけれども、これが陸上防衛に及ぼす影響としましては、かねがね私どもは、できれば国土内で戦いたくない、民間にも非常に被害の及ぶ国土戦、陸上の戦闘をしたくないということを我々は前から考えておりまして、でき得れは波打ち際までで敵を撃退したいということはねらいとしては持っておったわけでございますが、残念なことに、そうはいっても、やはり相手方が航空優勢を確保しているような地域、そういった地域で陸上に上がらせないということはなかなか困難でございます。先生もつとに御承知のように、陸上自衛隊等の師団でいいますと、その守れる幅というのはせいぜい十キロ前後であります。とすると、北海道だけでも上陸適地と従来からよく言われております船が着きやすいような場所というのは二千数百キロの海岸線の何分の一といったものである。そうしますと、そのためだけでも何十個師団も要るということになりまして、波打ち際で撃退するということは、従来の兵器体系、装備体系をもってしてはなかなか難しかった。ところが、クルージングミサイルといいますか、SSMのように百キロあるいは二百キロという射程を持ったミサイルで上陸のための艦艇等を撃破できるとすれば、かなりの広い範囲について守り得るということで、そういう意味ではクルージングミサイル等の出現というのは、我々長年念願としておった水際までの間に敵を撃破するという陸上防衛の目標というものに対して、一筋の光が差してきたということだろうと思うのです。ただ、一つの装備ができただけですぐそういうことが可能ということは考えられませんので、今後さらにそういった新しい装備の研究もし、それらの重層的な組み合わせによって、場合によっては我々もともと念願としておった洋上撃破あるいは水際撃破というものが可能になる装備体系というものもあるいは将来生まれてくるのではないかというように考えております。
  237. 上田哲

    ○上田(哲)委員 これは大変なことですよ。端的に言えば、もう水際撃破というのではない、出ていってやるんだという。そのためにはSSMもそうだし、これは既に実戦配備直前にある。そしてCAP態勢あるいは空中給油機、これはもう私自身が七〇年代にさんざん議論をして到底これは専守防衛の立場からはあり得ないという議論になっているのですが、それをしも超えて、今これは大変な配備になるわけですね。これは私は、明らかにそうした戦略構想の変更を根底に置いた兵器装備体系への変更そのものが今語られた、大変分厚い話だと思って、防衛局長の言葉では一筋の光が差したと言うが、我々の方はこれは大変なことになるというふうに理解せざるを得ないです。  そこで、それを込めて一言でもう一遍伺うんだけれども、つまりそういうものは、今おっしゃったような兵器体系や防衛構想なるものは、これまでの、つまり具体的に言えば、今持っている大綱の別表の体系では処理できない、そこから大きく次元の上で飛躍しなければならない、このままじゃだめだという認識を当局は持っているということでしょう。これははっきりしてください。
  238. 西廣整輝

    西廣政府委員 これまた昨年のたしか臨時国会だったと思いますが、上田先生にお答えしたことがあると思いますけれども、大綱別表で目標とする防衛力の能力の一つの典型として、我々は限定的な小規模事態に独力で対応できるものということをかねがね申し上げておりますが、この限定的な小規模事態というものそのものが、兵器の進歩あるいは各国の軍備の動向、そういったものによって時代が経るに従ってそれ自身動いてくるものだということもお話し申し上げ、ある程度お認めいただいていると思っております。  それに対応しようということになりますと、仮に一つの例を挙げまして、小規模・限定事態で日本に来襲し得る陸上兵力ということで考えると、量的あるいは質的に増大してくる、それに現兵器体系で対応しようと思うと、非常に多くのものを量的にふやさなくちゃいけないということもあり得るのではないか。しかし、我々としては、そういった形で古い装備体系の中で量を追求してそれに対抗していくということはできればとりたくない、でき得る限り質的な向上によってそういうものに対応していこうというのが大綱の本旨でもありますので、そういう点で有効な兵器体系というものがあればそれに移っていくというのは歴史の必然ではないかというように考えておるわけでありますので、御理解いただきたいと思います。
  239. 上田哲

    ○上田(哲)委員 だから、歴史の必然という言葉で言うにしては、今大変大きな段階を迎えているということを私は警告せざるを得ないのであります。まさに十年目の一%決定の日に、これで一%じゃとても賄えるわけがない。今お話しになっているのは、まさに中期防、今の五カ年計画の中で進めていくということなんです。  そこで、もう一遍具体的にはっきり、もう半分言われたような気がするけれども、これは素直にはっきり言ってもらわないと我々も議論がしにくいんだが、今の兵器体系、別表の姿の中では賄えない、変えていかなきゃならぬというだけの踏ん切りをしているんだな。それと、それをいつまでやるんだ、研究研究と言いながら具体的な実践配備の直前まで来ているんだから、いつまでやるんだということをしっかり答えてください。
  240. 西廣整輝

    西廣政府委員 この点につきましては、先ほど大臣からお答え申し上げたとおり、まさに勉強中でありまして、現状においてこのような装備体系というものが必要なんだという確信を持ってお答えできる状況にない、あくまでこれから相当な時間をかけて勉強しなければいかぬ問題だろうと思いますし、また、そういった兵器体系に仮に移行していくということになりましても、それはそれなりに、やはり十年、十五年という時間がかかるのではなかろうかというふうに考えております。
  241. 上田哲

    ○上田(哲)委員 十年、十五年をかけても、これまでやってきたと同じぐらいの重みといいますか、落差のある大きな転換期にあるという認識を持っているわけでしょう。そこのところを私ははっきりしておいてもらいたいと思う。私たちは根本的に反対ですよ。反対ですが、象徴的に言うなら、かつて四十年前後に原潜の出現によって根本的な兵器体系や装備体系を日本自衛隊が変えたように、今、巡航ミサイルという象徴的なものだけでは言えないけれども、そういう形で、水際の撃破という小規模・限定の防衛構想から出ていかなければならない上にもCAPをしなければならない、そういうところへ変わっていこうとする。裏返せば、今のままじゃだめだと思っておる。そして新しいものに飛び込んでいこうとする。こういうところに来ているんだ、その研究をしているんだということは、専門家ひとつはっきり言ってください。これは大変な時期に来ているのだということだけははっきり聞いておかないと、きょう一%の十周年記念日に議論にならないですよ。
  242. 西廣整輝

    西廣政府委員 まずお断り申し上げておきたいのは、これは当然のことでございますけれども我が国が整備しようとしておる防衛力というものは、その基本というものはあくまで専守防衛という考え方に立っておる、しかもそれは大綱という、小規模・限定事態には少なくとも独力で対応できるようにしたいという大綱という枠組みの中で考えておることでございまして、周辺諸国の軍備の動向なり、あるいは軍事技術、科学技術の変化に伴う状況に対応していくというのは、あくまで大綱の枠組みの中で対応していくということでございますので、先生御指摘のような御懸念はまずないということはお考えいただきたいと思います。  同時に、我々といたしましては、常に相当先というものを眺めながら研究をし、それに対応していくことに対しては十分な配慮を払っていかないと、防衛力というものが一朝一夕にできないということ、非常に金もかかるものであるということも含めてお考えいただきますと、やはり先の先を考えて研究をするということはまず重要なことではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  243. 上田哲

    ○上田(哲)委員 ちょっと一言だけ。これは基幹的な、今大網の範囲でやるということは言葉としては受け取っておきましょう。しかし、装備体系としては基幹的な転換になる、この認識をしっかり言ってください。
  244. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほど来、大臣、私がお答え申し上げているように、まだこの装備の出現が兵器体系を基本的に変えるという確信を持って申し上げておるわけではございませんが、例えば巡航ミサイルのようなものが、現在我が国が持っておる防衛力というものについて、この体質改善といいますか、次の世代に有効であるためにどうするかということに対して大きな影響を与える要素であるということは間違いないし、そういったものについて現在十分考えなければいけない時期に来ているということは申し上げられるのではないかと思います。――装備体系上そういうことになろうかと考えております。
  245. 上田哲

    ○上田(哲)委員 出ましたよ。装備体系上大変な転換が行われるのです。私は、これが一%にはまろうなんてことじゃない非常に大きなところへ来ている、この議論をぜひしっかりやらせていただきたい。この大きな転換が行われても、別表の改定が行われても、これはここを通らないのです。国会の中での議論は我々が乗り込むことはできても、この決定権は安全保障会議、閣議というところで終わってしまう。これは私は、ぜひシビリアンコントロールの機能をここに出していただいて、もう大きな戦後の兵器体系の、何といいましょうか、第三段階への今入り口に入っている、現実に入っているということを、一%枠どころでないところを目指して進んでいる姿をしっかり指摘して、そのことを精いっぱい議論を私たちにも開陳をさせてもらいたいということだけ最後に……。
  246. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 先ほど来申し上げたとおり、いわゆる情勢の変化に即応できなければ、これは我が国の防衛はできないわけですから、そういう情勢の変化に対応していろいろ研究しようということですから、研究の過程において御議論をいただくことは大変ありがたいと思います。  なお、いわゆる中期防との関連で、これではとてもやっていけないじゃないかというお話がございましたが、中期の計画は、御案内のとおり六十年ベースで十八兆四千億ということでございまして、これはGNP比でいくと一・〇三八ですか、そういうこともある。SSMの問題もその中に含まれるということでございます。
  247. 上田哲

    ○上田(哲)委員 簡単に次の問題に移っておきます。  三宅島です。総理、ひとつぜひ目を大きくあいて答えていただきたい。あなたの一挙手一投足を、全国民も当然ですけれども、三宅島の四千人余りの島民が非常に今注目をしているわけであります。何回もこれは確認していることですが、口を酸っぱくして確認させていただきたいが、去る日、防衛庁長官が訪米された折にも、ブッシュ副大統領に会われて、聞くところによると、最初の言葉が三宅島だったみたいな話もあります。これは伝えられる話ですからどうでもいいが、アメリカ側の最優先的な課題であるなどという風評の中では、四千三百人の小さな島が、周囲三十六キロの島が本当に何か力ずくで押しつぶされてしまうのではないかという心配を持っています。  念のために、念のために確認をしておきますけれども総理、島民の意思を尊重する、島民との話し合いが前提であって、この納得がない限り力ずくの強行はしないということは御確認をいただきたい。
  248. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 三宅島の皆様方にぜひ御理解をいただいて、そうして話し合いの中にこのことを進めていきたいと念願いたしております。
  249. 上田哲

    ○上田(哲)委員 そういうためには、来年度概算要求で聖域である防衛費の中で三億五千万円の調査費が出されている。三億五千万円の中身が地質や環境、地形の調査。これはくいを打つのですよ。打たないというふうに言い逃れるかもしれないけれども、これは予備調査といいながら実質的な完全な調査です。話し合いがついていないにもかかわらず、村議会が全員反対だというところで民意が十分、一〇〇%に表現されているにもかかわらずこういうものが出ていくということは、総理のお約束にもかかわらず、実行行為としてその約束を踏みにじっていくことになる。これはやはり一つには予算の先取りであり、そして民主主義のルールのじゅうりんである。私は、こういうものを大蔵省も含めて取り上げるべきではない、今出すのは間違いだというふうに思いますが、いかがですか。
  250. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 今先生お話がございましたように、六十二年度、来年度の予算要求といたしまして私どもの方から大蔵省に今予算要求をいたしております三億五千万円余の話でございますが、この経費につきましては、先日もお話し申し上げましたように、現地の連絡事務所におきます事務経費のほかに、三億円でございますが、地形測量でございますとか、地質調査でございますとか、環境の予備調査の経費が入っております。  そのことにつきまして、今先生は、これは早いのではないか、あるいは先取りではないかというお話があったわけでございますけれども、通常、飛行場の調査につきましては――ちょっと待ってください。私、御答弁申し上げておりますからお待ちくださいませ。空港の建設につきましては順序というものがありまして、基本調査までは調査でやるというのが通常のことでございますから、その段階で行います調査費の要求につきましては、先取りというような御批判は当たらない、こういうふうに思うわけでございます。  くいを打つかということでございますが、くいを打つということはどういう意味か私も定かではございません。今おっしゃいますくいを打つという意味は、恐らくその飛行場の地域につきましてここからここまでの区域は飛行場にするんだというようなことでくいを打つという意味かと存じますが、そういう意味でございますれば、くいは打ちません。
  251. 上田哲

    ○上田(哲)委員 時間がありませんから、ぜひともひとつ三宅島の小さな心を踏みにじらないように、このことを繰り返し繰り返し強調しておきます。  最後に、文部省にお願いしておいたことでありますが――何を言っているんだ。不規則発言けしからぬですな。これはヒューマニズムの話だから、しっかり聞いてください。前厚生大臣じゃないか。  兄妹とも筋ジストロフィーという秋田市の清水大輔君八歳とさとこちゃん六歳の両親が、短い命をどのように充実できるかと思い悩んで、近所にできる限り多くの友達をつくってやれないかと考えて、そこで教育委員会の指定する養護学校に同意しないで、地元の普通校に就学したいと日新小学校というところに毎日通っているのですが、校舎の中に入ることを拒否されています。既に初雪も降っているという秋田でありまして、この事態は教育的にも人道的にも放置できないというふうに思いますが、文部省の御見解を承りたい。
  252. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 お尋ねのようにそういう事実がございまして、それにつきましては鋭意教育委員会とそれから父兄との間で話し合いをしていただいておることでございまして、できるだけ不就学状態がないように努めてまいりたいと思っております。
  253. 上田哲

    ○上田(哲)委員 このような事態を防止するために当面必要な事項について、あらかじめ文部省に二点検討をお願いしてあります。  一つは、養護学校への就学に向けて、教育委員会が保護者の理解と同意を得る努力をしたにもかかわらず、その同意が得られず、その結果事実上の未就学状態となるケース、このような場合に保護者の同意を得るまでの間未就学状態を回避するためのとりあえずの措置を検討する必要があるではないか。  それから、教育委員会が保護者と話し合う場合、保護者の指定する代理人を認めないことがあるけれども、これを適当と考えるかどうか。また、県議、市議の立ち会いを拒否する例があるのだけれども、これについてもトラブルが起きないように処理をしていただきたい。  この二点をあらかじめ文部省に検討をお願いしてありますので、心ある御回答をいただきたいと思います。
  254. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 時間がございませんので、我々協議してまいりましたことをきちっとまとめてまいりましたので、読み上げます。  各教育委員会において、心身障害児については、子供の可能性を最大限に伸ばす教育を行うことが重要であるという観点に立ち、医師等の専門家から成る就学指導委員会の意見を踏んまえつつ学校の指定を行うこととしておりますが、この指定に対して保護者の理解を十分得るよう努力しながら行っていきたいと思っております。  このように、就学すべき学校の指定については、都道府県及び市町村の教育委員会の権限と責任において行っておるのでございますが、個々のケースでも問題が生じておる、そういう場合につきましては、文部省としても各県教育委員会から報告を徴しつつ、保護者の理解を得るよう一層の指導をしてまいりたいと思っております。  それからなお、お尋ねの点でございました代理人のお話でございましたのですが、これにつきましては、子供の就学義務はやはり父兄、保護者にあるという観点に立ちまして、教育委員会は当事者は父兄である、保護者であるという観点に立って交渉をいたしております。したがいまして、訴訟であるとかあるいは審判事件であるとかいう場合には代理人を認めることもございますけれども、この場合はあくまでも教育委員会と学校そして保護者との間で話をさせていただきたい。したがいまして、代理人という制度は認めておらない。けれども、保護者の方がいろいろな方から助言を受けられるということについては、これは私は当然のことだろうと思っておりますが、代理人ということにはならない、こういうことでございます。
  255. 上田哲

    ○上田(哲)委員 温かく、よろしくお願いします。  終わります。
  256. 砂田重民

    砂田委員長 これにて上田君の質疑は終了いたしました。  次回は、明六日午前九時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十六分散会