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1986-11-04 第107回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十一月四日(火曜日)     午前九時一分開議  出席委員    委員長 砂田 重民君    理事 今井  勇君 理事 野田  毅君    理事 浜田 幸一君 理事 林  義郎君    理事 吹田  愰君 理事 上田  哲君    理事 川俣健二郎君 理事 近江巳記夫君    理事 吉田 之久君       相沢 英之君    愛野興一郎君       甘利  明君    井出 正一君       伊藤宗一郎君    石渡 照久君       上村千一郎君    遠藤 武彦君       小渕 恵三君    越智 通雄君       奥野 誠亮君    海部 俊樹君       小坂徳三郎君    左藤  恵君       志賀  節君    田中 龍夫君       武村 正義君    虎島 和夫君       西岡 武夫君    原田  憲君       福島 譲二君    細田 吉藏君       松野 幸泰君    武藤 嘉文君       森  喜朗君    山下 元利君       井上 一成君    井上 普方君       伊藤  茂君    稲葉 誠一君       川崎 寛治君    菅  直人君       嶋崎  譲君    細谷 治嘉君       長田 武士君    坂口  力君       正木 良明君    矢追 秀彦君       渡部 一郎君    木下敬之助君       楢崎弥之助君    寺前  巖君       正森 成二君    山原健二郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         国 務 大 臣 金丸  信君         法 務 大 臣 遠藤  要君         外 務 大 臣 倉成  正君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         文 部 大 臣 塩川正十郎君         厚 生 大 臣 斎藤 十朗君         農林水産大臣  加藤 六月君         通商産業大臣  田村  元君         運 輸 大 臣 橋本龍太郎君         郵 政 大 臣 唐沢俊二郎君         労 働 大 臣 平井 卓志君         建 設 大 臣 天野 光晴君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     葉梨 信行君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 玉置 和郎君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)         (国土庁長官) 綿貫 民輔君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 栗原 祐幸君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      近藤 鉄雄君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)     三ツ林弥太郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 稲村 利幸君  出席政府委員         内閣官房長官 渡辺 秀央君         内閣法制局長官 味村  治君         内閣法制局第一         部長      関   守君         総務庁長官官房         審議官         兼内閣審議官  勝又 博明君         総務庁人事局次         長         兼内閣審議官  田中  史君         総務庁行政管理         局長      佐々木晴夫君         総務庁行政監察         局長      山本 貞雄君         防衛庁参事官  筒井 良三君         防衛庁長官官房         長       友藤 一隆君         防衛庁防衛局長 西廣 整輝君         防衛庁人事局長 松本 宗和君         防衛庁経理局長 池田 久克君         防衛庁装備局長 鎌田 吉郎君         防衛施設庁総務         部長      平   晃君         防衛施設庁施設         部長      岩見 秀男君         防衛施設庁建設         部長      大原 舜世君         防衛施設庁労務         部長      西村 宣昭君         経済企画庁調整         局長      川崎  弘君         経済企画庁総合         計画局長    及川 昭伍君         経済企画庁調査         局長      勝村 坦郎君         科学技術庁長官         官房長     矢橋 有彦君         科学技術庁研究         開発局長    長柄喜一郎君         科学技術庁原子         力局長     松井  隆君         環境庁自然保護         局長      古賀 章介君         環境庁水質保全         局長      渡辺  武君         国土庁土地局長 田村 嘉朗君         国土庁大都市圏         整備局長    柳   晃君         法務省入国管理         局長      小林 俊二君         外務大臣官房外         務報道官    波多野敬雄君         外務省アジア局         長       藤田 公郎君         外務省北米局長 藤井 宏昭君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      中平  立君         大蔵大臣官房総         務審議官    足立 和基君         大蔵省主計局長 西垣  昭君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省関税局長 大橋 宗夫君         大蔵省理財局長 窪田  弘君         大蔵省理財局た         ばこ塩事業審議         官       頼松 祥典君         大蔵省国際金融         局長      内海  孚君         国税庁間税部長 十枝 壯伍君         文部省初等中等         教育局長    西崎 清久君         文部省教育助成         局長      加戸 守行君         文化庁次長   久保庭信一君         厚生大臣官房審         議官      川崎 幸雄君         厚生省健康政策         局長      竹中 浩治君         厚生省生活衛生         局長      北川 定謙君         厚生省薬務局長 森  幸男君         厚生省社会局長 小林 功典君         厚生省年金局長 水田  努君         農林水産大臣官         房長      甕   滋君         農林水産省経済         局長      眞木 秀郎君         農林水産省構造         改善局長    鴻巣 健治君         農林水産省畜産         局長      京谷 昭夫君         食糧庁長官   後藤 康夫君         林野庁次長   松田  堯君         通商産業省貿易         局長      畠山  襄君         通商産業省産業         政策局長    杉山  弘君         通商産業省立地         公害局長    加藤 昭六君         通商産業省機械         情報産業局長  児玉 幸治君         中小企業庁長官 岩崎 八男君         運輸省航空局長 山田 隆英君         郵政大臣官房経         理部長     山口 武雄君         郵政省貯金局長 中村 泰三君         郵政省簡易保険         局長      相良 兼助君         郵政省通信政策         局長      塩谷  稔君         郵政省放送行政         局長      森島 展一君         労働大臣官房審         議官      佐藤 仁彦君         労働省職業安定         局長      白井晋太郎君         建設省建設経済         局長      牧野  徹君         建設省都市局長 北村廣太郎君         建設省河川局長 廣瀬 利雄君         建設省住宅局長 片山 正夫君         自治省財政局長 矢野浩一郎君         自治省税務局長 津田  正君  委員外出席者         参  考  人         (税制調査会会         長)      小倉 武一君         参  考  人         (日本銀行副総         裁)      三重野 康君         予算委員会調査         室長      右田健次郎君     ───────────── 委員の異動 十一月四日  辞任         補欠選任   宇野 宗佑君     遠藤 武彦君  小此木彦三郎君     甘利  明君   海部 俊樹君     井出 正一君   細田 吉藏君     虎島 和夫君   松野 幸泰君     石渡 照久君   村田敬次郎君     武村 正義君   井上 普方君     伊藤  茂君   正木 良明君     矢追 秀彦君   矢野 絢也君     坂口  力君   金子 満広君     正森 成二君   不破 哲三君     山原健二郎君 同日  辞任         補欠選任  甘利  明君     小此木彦三郎君   井出 正一君     海部 俊樹君   石渡 照久君     松野 幸泰君   遠藤 武彦君     宇野 宗佑君   武村 正義君     村田敬次郎君   虎島 和夫君     細田 吉藏君   伊藤  茂君     井上 普方君   坂口  力君     矢野 絢也君   矢追 秀彦君     正木 良明君     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和六十一年度一般会計補正予算(第1号)  昭和六十一年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和六十一年度政府関係機関補正予算(機第1号)      ────◇─────
  2. 砂田重民

    砂田委員長 これより会議を開きます。  昭和六十一年度一般会計補正予算(第1号)、昭和六十一年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和六十一年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  各案審査のため、本日、参考人として税制調査会会長小倉武一君及び日本銀行総裁三重野康君の出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 砂田重民

    砂田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────
  4. 砂田重民

    砂田委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤茂君。
  5. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 補正予算中心にいたしまして、当面する幾つかのことについて質問をさせていただきたいと思います。  この国会も半ばを過ぎているわけでありますが、議論を聞きながらしみじみ思います。経済の問題も円高一年余り、そして非常に難しい状況に置かれております。何か当面の対応と同時に、これから中期にどうするのかということを考えなければならない非常に重要な節目であろうというふうな気もいたします。また、きょうは経済、税制問題を中心にさせていただきますが、外交状況を見ましても、米ソ首脳会談経過あるいはSDI問題等日本の進路はいろいろな意味で大きな転換期に置かれておることを痛感をするわけであります。そういう気持ちを持ちながら、日本社会党護憲共同を代表いたしまして、総理並びに各大臣質問をさせていただきたいと思います。  中曽根総理も最後の続投一年という期間に入られたわけであります。私ども社会党土井執行部でちょうど二カ月になりまして、新しい出発を合い言葉にいろいろ真剣な模索や勉強をしているところでありますが、ぜひ率直な御答弁をいただきたいと思います。  まず、税制問題について御質問をしたいと思います。これはすべての国民にとってまさに関心の焦点であります。しかも、シャウプ以来三十五年ぶりの抜本的な改革というわけでございますから、多くの国民の皆様に政府の真意を明らかにしていただきたいと思いますし、私どももいろいろと大きな問題点を感ずるわけでありまして、率直に申し上げ、議論をさせていただきたいと思います。  その抜本改革の前に、総理にぜひ御見解を伺いたい。それは六十一年、本年の減税の問題であります。これは私の方から詳しく申し上げる必要もないと思いますが、今実務者という会談話し合い与野党でやっております。それぞれ真剣に議論を行っているところでありますが、なかなか展望が開けてまいりません。非常に与野党の差が隔たっているというのが現状であります。合意では実務者で詰めるということになっておりますから、実務者レベルでのことを申し上げられませんが、政審、政調会長レベルで話をしている私も実務者の一人でございまして、当事者でございますが、そういう話をしている立場から総理の御意見を伺いたいというふうに実は思っているわけであります。  御承知のとおりに、本年通常国会の最大の与野党合意事項でありますが、三月四日に五項目の書記長幹事長レベルでの合意がなされました。第一項は所得減税の問題、第二項は住宅教育、パートなどの政策減税の問題ということであります。それに基づきましてさまざま今国会での議論がございまして、十月十六日に与野党国会対策委員長レベルで、三月四日の与野党書記長幹事長合意を踏まえて所得税減税及び政策減税を六十一年中に実施することとし、その規模、方法については実務者で詰める、ということに御承知のとおりなっているわけであります。  私ども、今まで五回やってまいりました。そういう上に立って、ぜひこれは実務者立場からも総理の御意見を、また見解を伺いたいというわけなんですが、私どもは、今出されている補正予算、これには減税措置が含まれておりません。これは非常に不満であります。この合意内容からするならば、本年度の重要な補正でございますから、この補正予算の中に合意に基づいた内容が含まれてくるということになるのが筋ではないだろうかというふうに思うわけであります。  私ども、四野党で強くそのことを与党政調会長にもお話をし、また要求をいたしまして、補正予算閣議決定の前に見解を明らかにしてもらいたい、そうして補正予算を決める閣議も、二十四日から二十八日に延期をするというふうな措置があり、その間にもさまざまの話があったと思います。しかし今日、今ここに提出をされました補正予算には、そのような現実措置が含まれておりません。私どもは非常に不満なんですが、この点について総理立場からどうお考えになりますか。  確かに実務者で詰める問題でありますが、こういう内容が詰まらないのが現状。しかもそういうことになりますれば、二回にわたる公党間のこの議会における合意が実行されない。これは国民の目から見ても非常に大きな問題であろうというふうに思うわけでありまして、今までの総理の御答弁は、話し合いを見詰めております、注目しておりますというふうなことでございました。注目、見詰めるだけでは困るので、与党総裁として、また政府トップリーダーとして、このような合意をどう具体化していったらいいのか、現局面に当たっての総理の御見解を伺いたいと思います。
  6. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 十月十六日の各党会談におきまして実務者で詰める、そういうことに合意ができておるものでございますから、また実務者の会合も行われておるわけでございまして、これらの詰めがどういうふうになっていくか、今それを見詰めているという状態でございます。もちろんそれが、合意が形成されれば、それを尊重して実行すべきものであると考えております。
  7. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 今まで言われた繰り返しを総理は述べられているわけでありますが、もう一歩具体的にそれでは伺いたいのであります。  十月十六日の合意の中にも、一つには「所得税減税および政策減税」というふうに書いてございます。総理は、補正予算には減税措置を盛り込まなかったというわけでありますが、その二つについて年内に実施をするということが公党間の約束でありますから、与党総裁としても、総理としても、これが実行されるようになさるべきである、また実行されるようにしていきたいというふうにお考えですか。
  8. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 幹事長書記長の間でああいう合意が形成されたのは、自民党としても意欲を持っておるからそういう文章になっておるわけでございまして、その成果を今見詰めて待っておる、そういうことでございます。
  9. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 もう一つお伺いをしたいと思います。  私は思うのですが、私どもがこの与野党合意内容をどう具体化をするのかという協議をいたしておりますが、私は、国民に対する議会責任という立場から見て、与野党合意重みというものを強く実は認識をするわけであります。これは政府立場でも当然だと思いますが、一人の議会人としてもそう思います。やはり私ども国民に対して、国民の皆さんに大きな責任を担っているわけでありますから、国会与野党合意をする、これは大きな、異例の出来事であります。こういうことがきちんと実施をされないとなりますと、これはまさに議会としての重みに関する問題であろうというふうに思います。約束したことは守る、そして守れないようなことは約束しない、そういうきちんとした態度を持ってやっていかなければならぬと私は思います。約束したことは必ず守っていく。これはさきの予算委員会での我が党の川俣委員からも何回も実は申し上げたようなことになるわけであります。  したがいまして、もう一度総理にお伺いしたいのでありますが、与党責任者としての中曽根さんにお伺いしたいのですが、所得税減税が第一にあります。政策減税が第二にあります。私どもは、この概念を持って押しくらまんじゅうをしてきたわけではありません。さまざまの具体的な経験を含めまして実は各党間の話し合いをしてきたわけであります。  例えばなぜ所得税減税ができませんか。何か政府の方では苦しい財政状況の中で補正予算を組まなければならない、そういう中で財源がないというお話もございました。そうではないでしょう。四千億円余りの六十年度の剰余金もあります。この剰余金歳入構造経過から見るならば、御承知のとおりに源泉所得税所得税源泉部分、言うならばサラリーマンからの税金の取り過ぎの部分が年々急増いたしております。そういう歳入構造の結果として六十年度の四千億円余り剰余金も存在をしているというようなことだろうと思います。サラリーマンから取り過ぎなんですからこの剰余金の分はお返しをする、減税財源に回すというのが当然であろうということも繰り返し私どもの方から主張をいたしました。  また、例えばでありますが、別の財源として天皇陛下の御在位六十年記念硬貨があります。大蔵委員会で先般審議をいたしまして、私ども賛成して成立をさしてきましたが、これも金、銀、銅合わせまして三千七百億円の国の収入、そのほかにさらに超過の収入が約二千億円あるというわけであります。こういうことも六十年のお祝いをともにする意味でも減税財源に回すのが適当ではないだろうか。ちなみに申しますが、私どもは御在位六十年自体に反対したわけではございませんで、中曽根総理がこの時期にこのようなというやり方の面で反対をしたわけでありまして、この記念硬貨についてもお祝い気持ちも含めて実は賛成をしたわけでありますが、二千億円、過剰の剰余金があります。  さらにまた五百万枚の追加発行をするというふうな計画にもなっているわけであります。一枚について金貨で言うならば約五万四千円の利益が上がるわけでありますから、三千億円近い二千七、八百億円の剰余金が生まれるというようなことになるわけでありますし、天皇陛下の御在位六十年の記念はただいまのことでありまして、来年の春以降ではちょっと長過ぎる。早くこういうものを実行したらどうだろうかというふうなさまざまの具体的な見解を申し上げたという経過になっているわけであります。そういう上に立って今非常に与野党の隔たりがあります。  私どもは、この補正予算については非常に不信感を持っております。そしてまた総理がおっしゃったように、与党総裁としてただ見詰めるというだけでは、私どもは一体これからどのようにこの交渉に構えたらいいのかということを実は非常に考えざるを得ないというふうな状態になっているわけでありまして、そういうことになりますと、後ほど申し上げる本格的な税制改革の問題があるわけでありますが、それらの内容についても、このような姿勢に対し私どもは厳しく構えてこれから審議していかなければならない。何もこの国会だけではありません、税制国会と言われるであろう来国会にわたりましても私どもはそういう気持ちを持ちながら対応せざるを得ないというふうな気がするわけであります。ですから、単に見詰めるというだけでは困るわけでありまして、与党総裁としていかがかと思うわけであります。  しかも、見詰めるというふうにおっしゃいましたが、見詰められているそういう話の中からの私ども気持ちとして、実感として私は申し上げているというふうなわけであります。少なくとも総理の方で、与野党合意の線に沿ってその内容が具体的に早く実現されるように総理立場からも促進をする、あるいはまたこの内容の趣旨に沿うように努力をしていくというぐらいの表示があるのが当然ではないだろうかと私は思うわけでございますが、いかがでございましょうか。
  10. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 公党間の約束は守りますし、ただいま申し上げましたように意欲は持っておると申し上げたとおりで、努力してまいりたいと思いますし、また成果が出れば実行いたしたいと思います
  11. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 押し問答はやめておきましょう。  ただ総理に申し上げておきますが、やはり三月四日の合意あるいはまた十月十六日の合意、こういうものは今年の議会におけるところの非常に大きな出来事だろうというふうに私は思います。最大限に努力をして誠意のある解決を見なければならない。それに対しては私どもも無責任要求をしているわけではありません。ことしの春には二兆三千億円の減税要求をいたしました。その結果として三月四日の合意がございました。そして今日に至っているというわけであります。しかし、今その全額をと言っているわけではありませんで、今の時点で可能な具体的な現実的な案をどうするのかということを申し上げているわけでありまして、ぜひ総理の方でも実務者あるいは政調会長任せではない対応をなさるように、これは与党総裁としての大きな責任ではないだろうかというふうに思うわけであります。  続きまして、抜本改革の問題につきまして質問をさせていただきたいと思います。  政府税調から、税制の抜本的見直しについての答申が先般なされました。この中には非常に大きな問題が含まれているというふうに思うわけであります。そういう中で、この国会で今まで述べられてまいりました総理のさまざまの御発言がございます。また先般の六月、七月の選挙中に総理が公約をされた問題があるわけであります。それらに照らしてどうお考えになるのかを伺いたいわけでありますが、その前に前提条件と申しましょうか、取り扱いについてと申しましょうか、総理の御見解を伺いたいのですが、選挙中に、党員や国民が反対する大型間接税と称するものはやらないということを総理は言われました。これは六月十四日でしたか言われまして、その後も繰り返しそのことは確認をなさっているわけであります。そういう考え方が今具体的に出されたものに対してどのように反映をされるのかということになるわけであります。  それでお伺いしたいのですが、党員が反対するものとかあるいは国民が反対しないものとか、そういう党員、国民の意思表示というものはどのように御確認なさるのでしょうか。党の方はこれは総裁、党議が決定することですから何ですが、私が見ておりますと、こういう気がしております。先般の選挙中に多くの皆様が大型間接税には反対しますという御署名をなさいました。私もいろいろ名簿も調べてみましたが、大変な数であります。もちろん三けたの数でありまして、候補者の半数以上になるかもしれません。大変な数の皆さんであります。これらの方々は、国民の皆様にあるいは支持者、有権者の皆様に、私は大型間接税には反対でありますというふうな見解を持ちましてそれぞれ選挙をやり当選をなさったということであります。  ところが、驚いたのですが、先般、十月二十三日でしたか、新聞を見ましたら、与党の方で通達を出しまして、各議員に署名禁止の通達を出した、税制改革について党内で行われている一切の署名に参加しないようにということを出されたというふうに実は報道で伺いました。ちょっとこれはフェアな態度ではないと私は思います。あくまでも選挙でお約束なさったことに忠実に議員もあるいは党としても民主的な議論対応をなさるというのが筋であろう。ところが、こういう措置をとられながら党員が反対するようなものはやらないとおっしゃいましても、ちょっとこれは与党でございますから大きな責任を持っておりますので疑義を感ずるわけであります。  もう一つは、国民が反対するような大型間接税はやらないというわけでありますが、国民が反対するかしないかの確認はどうなさいますか。形式論理で言えば議会とかあるいは世論調査とか、当然ですが信を国民に問う、このテーマでもって総選挙で国民意見を聞いてその上で合意が得られるならばやる、理論的に言うならばそういう筋合いのものになるでありましょう。私は今の議会でというのはちょっとおかしい、例えばそういうお考えがあればおかしいと思います。さっき申し上げたような公約をなさって、そして多くの国民の皆様はその公約を信じて皆様に投票なさったというわけでありますから、そういう上で票をとり多数の力を今とられまして、そしてまたその公約とはえらく違うことをおやりになるというならばこれは大きな問題というふうに思うわけでありますが、党員や国民が反対する云々、その判断の基準はどのようにお考えになりますか。
  12. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今度の税調の答申でも、国民の皆さんやあるいは政党が選択する余裕を非常に持たせた答申になっております。私も、今度の税制改革はシャウプ以来の抜本的改革をやろうとしておって、その主なねらいは税の増収をもくろむものではない、シャウプ以来の三十年に及ぶひずみあるいはよじり、ねじり、そういうようなものや不公平感あるいは重税感というものを直して正常化しよう、そういう意味でこれは行うのであります、そういうことを申し上げまして税制調査会に諮問いたしました。  諮問の結果、この四月には中間答申が行われ、先般最終答申が行われまして、その最終答申の中身も、自分の方でこれがいいと決めつける要素は非常に少なくて、いろいろなものを並べて、そしてこれは政党なり国民の選択に任せる、そういう姿勢が中心であるように思います。それをいただきまして、この政府税調に諮問しました趣旨にのっとりまして今自由民主党の税制調査会において審議を開始しておる、こういう状況でございます。  いよいよ最終的にどういう形の具体的税を選ぶか、いろいろな形が出てきまして、ああでもないこうでもない、これはいいこれは悪い、これは公約に反するといろいろ議論が出てきまして、その議論の終局的なおさまりがどういうふうになるか、また、そのおさまると考えられる税というものは、国民の皆さん、議員の皆さんとかあるいは学識経験者とかあるいは新聞やそのほかの世論、論説委員の皆さんやあるいは解説者の皆さんの意見はどうであるかとか、国民全般やいろいろな国民各層の意見がどういうふうに反応するか、そういうものを具体的に見まして、やはり具体的な税の形が現実的に出てこないと、抽象的に大型間接税といっても、抽象的なものではまだ見当がつかないわけであります。そういう意味において、具体的なものが出てきた場合に、ああでもないこうでもない、これならいいこれなら悪いと議論が出まして、そしていろいろな世論が出る、その世論の帰趨を見て判断をすべきである、そういう意味で私は申し上げておるのであります。
  13. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 それでは具体的にお伺いいたしましょう。  総理は今まで何遍も、この委員会で大型間接税の是非などについて言われました。多段階、包括的、網羅的、普遍的で大規模な消費税は中曽根内閣ではやらない、まことに一息では言いにくいような複雑な表現になっているわけでありますが、言われてまいりました。これが総理の言われました今までの大きな意思表示であります。  政府税調の答申が出されてまいりました。小倉会長もおられますが、大型間接税と政府はおっしゃるかどうかは別にいたしまして、間接税については八案出されておりますね。いろいろな組み合わせが実は出されているわけでありますが、しかし基本になるのは、A案、製造業者売上税、これは製造業者が納税義務者となるというわけであります。B案、これは事業者間免税の売上税。C案、日本型付加価値税。そしてC案の日本型付加価値税が理論的には最もすぐれている、これを導入することが最も望ましいというふうにこの答申の中には書かれております。私どもは、A案、B案、C案あるいはその変形、組み合わせを含めまして、これは税のカテゴリーといたしまして、私も十年間大蔵委員会で税の担当をしてまいりましたが、当然大型間接税と判断をするものだというふうに実は思うわけでありますが、例えばここに出されたC案、日本型付加価値税、これはサービスも含んで取引の各段階について、しかも多段階分割納税となっておりますが、幅広く例外なく負担を求めるということになるわけであります。  具体的に率直にお伺いしたいのですが、多段階、包括的、網羅的、普遍的で大規模な消費税で投網にかけるようなやり方はしないというふうに総理は申されてまいりました。今ここで出されているC案、日本型付加価値税、まさに多段階であります。各段階で税金を取るということになるわけでありますし、また、「原則として幅広く例外なく負担を求めうる」この報告書にちゃんと書いてあります。六十八ページに書いてありますが、「原則として幅広く例外なく負担を求めうる」まさにこれは網羅的、普遍的、包括的であります。しかも、そういう内容でございますから、投網にかける――投網にかけるというよりももうこれは大投網でありまして、一億二千万全国民を揺りかごから墓場まで全部投網で囲んでしまうというふうなことに実はなってしまうというわけでありまして、答申の表現の内容、性格づけその他を見ますと、そのように考えるのが当然というわけであります。総理が今までの言明で否定なさってきました、採用しないと言ってこられましたものが、まさに今ここに具体的に出てきたということだと思います。どうぞ今までのこの場における、あるいは国民に向かってのお約束に照らして、明確に、こういうものは採用しないと御明言を願いたいと思うのです。
  14. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それもやはりでき方によると思うのであります。私が議会でも注意深くお答えしましたとおり、多段階、包括的、普遍的、網羅的で、そしていわゆる大型の消費税というものを投網をかけるように、そういうことを申し上げたのは、別の機会に議会でも答弁しましたが、縦の段階で、これは各段階、それから横の広がり、つまり十文字にやっていく、それを包括的、普遍的というので全部ひっくるめて取ってしまう、それは投網式だ、そういう意味で申し上げておるのです。そういうようなものにならない、相当な限定性を持ったものは、それはどうであろうかという余地が残っておるわけであります。そういう意味におきまして注意深く申し上げておるのでありまして、出てきたものはどういうようなものであるかという現物を見て我々は判定しなければならぬ、そう思うのです。
  15. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 総理、どうぞフランクに、また国民の皆さんに素直にわかるように態度表明をお願いしたいというふうに思います。  この経過の中では首相の発言、さまざまございました。先ほど来御紹介をしている多段階、包括的云々、投網にかけるようなということも繰り返し申されましたし、また、国民や党員が反対するようなことはやらないということも言われました。税調の答申があっても採用しないということも、これは選挙中の大きな公約として御発言になりました。さらに加えて、こういうことも言っておられますね。「大型間接税の問題では、かまびすしい議論になっているが、六月で四谷怪談の季節だからお化けが出たのかも知れない」十九日、熊本市の記者会見で言われているわけであります。お化けの季節が過ぎてもう寒くなろうという時期の話でありますけれども国民の皆様は今度の選挙の中での総理の最大の公約としてこれを受け取ったと思います。  十月三日、もう一月前のこの場で言われたことをお忘れではないと思います。私ども質問に対して、A案、B案、C案というものが当時部会報告の形で出されていた段階でございましたが、そのときに、あれはまだ中間報告ですということを総理は述べられまして、そうして、「税調でも最終的にどういうものが出てくるか、それをよく見詰めていきたいと思っておるのです。」また「税調から最後にどういうものが出てくるか、最終案を待って正確に私たちは判定をしなければならない、そう思っております。」ということもお答えになりました。最終案はまさにここに出されたのですね。いろいろあるからまだはっきりしない、もっとさまざま詰めてみなくちゃならぬということを言われています。もっとフランクにお答えを願いたいと思います。  幾つかの案が出されています。A案、B案、C案、書かれております。私は全部について、これは何点です、これは何点です、これはいいか悪いかと、今までの総理の公約に照らして言われるのが政治家として当然の国民に向かってのフランクな態度であろうと思うわけでありまして、それだけ全部を聞くのは時間がございませんので、象徴的であろうと思う日本型付加価値税、これについては総理の言明と相矛盾するということが明らかだと思いますが、いかがでしょうか。総理は具体的にお答えになる責任をお持ちだろうと思うのです。一月前のこの予算委員会で言われたことからしても責任をお持ちだろうと私は思います。言を左右にされるのはおかしいと思うわけでありまして、明確に否定してください。
  16. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ただいま申し上げましたように、私は、議会答弁しました内容について、多段階あるいは包括的、網羅的、普遍的あるいは大型消費税あるいは投網をかける、そういうことに関する私の解釈を申し上げましたが、そういうような考えに立って自民党においても選択をしてもらう、あるいは税を形成、つくるというときには混合型もあり得ますし、いろいろな選択が今後もあると思うのです。そういう意味におきまして、私の公約に反しないように注意深く政府税調において検討されんことを願っておりますし、そのようにもお願いをしておるところなのであります。失礼しました。党税調でございます。
  17. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 私は総理に、この税制問題が起こって以来の経過で私が感じている気持ちをひとつ申し上げたいと思います。  御承知のとおりに並行的にアメリカでも税制の大改革の作業が行われております。ほぼ終了という段階まで迎えました。アメリカでのさまざまの税制の議論、特にあなたと親しい関係にあるレーガン大統領の発言というものをずっと拾ってみました。そしてまた、中曽根首相、あなたが今まで言われてきた言葉もずっと拾ってきてみました。実は非常に大きな違いを感ずるわけであります。私は、これは当然のことでありますが、税制、税金、この民主化ということは近代国家、民主国家の最も重大な基礎であろうと思います。私が申し上げるまでもなく、ヨーロッパでもさまざまの近代国家の形成というものは、理不尽に税金や負担を取られないという意味での経過の中から議会が生まれ、民主国家が形成されてきたというふうなわけでありまして、税制が本当に国民に信頼されるものになっているかどうかということと日本が本当に近代国家、民主国家であるかということは今イコールの問題ではないか、したがいまして、タックス・アンド・デモクラシーということが非常に大事だと思います。事税制については、やはり最もフェアにフランクに対応されなければならないというふうなことであろうと思います。  アメリカの税制改正のスタートになりました八五年二月のレーガン大統領の一般教書がございます。この中での税制の部分を見てみますと、「公平と成長をもたらすための歴史的な税制簡素化に、ともに取り組もうではないか。」「税制改革であり得べからざることの一つは、それが姿を変えた増税であってはならないということである。」「個人税率は、税制優遇措置の多くを取り除くことにより、可能な限り引き下げたい。」「貧困ラインの近くにある個人に対する連邦所得税の全面免除を提案したい。各家庭が再び公平な扱いを受けるよう扶養控除を大幅に引き上げることを提案したい。」「われわれはともに本年、公平と簡素と成長を目指す税制法案を成立させ、わが国経済をわれわれの夢の原動力とするとともに、」云々と書かれております。  そして、大統領の指示によって行われた財務省税制改正案要綱、これもずっと読んでみましたが、極めて率直に述べられております。現在の米国の税制は、緊急に簡素化と改正を必要としている。現状は複雑であり過ぎるし、不公平である。現在の累進税制のもとでは、数多い税の特例優遇措置・例外規定、かつ比較的少数の納税者が利用する税金逃れによって、すべての納税者は、歳入が減るのを補うために高い限界税率が適用されるという事態が起こっている。現行制度は余りにも複雑であり、一般大衆の犠牲のもとに特定の利益集団を優遇しているとするアメリカ国民の幅広い政治的コンセンサスを反映して財務省の勧告を行うと書かれております。非常に率直であります。私は、アメリカの状態よりも日本現状はもっと矛盾が多いのではないだろうか、ゆがみ、ひずみなどの矛盾が大きいのではないだろうかと思いますが、率直に述べられているわけであります。  私は、改めて申し上げません、中曽根さんが言われてまいりましたことは多段階、包括的、網羅的、普遍的云々、普通の人が聞いて、あ、これをやるんですか、やらないんですかとちょっとわからない、まあ煙に巻いて言うわけではない、そんな悪意はないと思いますが、そのような言葉遣いであります。そしてまた大型間接税につきましても巧みに、党員や国民が反対するようなというふうな頭文字を、まくら言葉をくっつけて言われている。プロの世界からしたらいろいろ駆け引きの表現だなと思うわけでありますが、多くの国民の皆さん、納税者の皆さんにはわかりにくい内容であろうと思います。  そして、政府税調がこのようなものを答申をしても採用しないと言われました。その後、政府税調には聖域を置かず自由濶達に議論を保証している、自由にやりなさいということも言われました。これはどう結びつくのでしょうか。そして先ほどの四谷怪談の話まであって、最終的には最終答申を見て判断しますということを言われたわけであります。先般の予算委員会を初め、知的水準ですか知識水準ですか、というふうな議論も随分なされましたが、最も大事な税制について、ややこしく難しく言われるかあるいは非常にフランクに言われるか、日米知識水準の差というのはこういうことかなというふうな気も実はしないでもありません。  私はそういうことを考えますと、やはりフランクに高い次元で全体像を明確に言う、しかも具体的にその手順が明らかになっているという形でアメリカの場合も進められたわけでありますが、それと比べますとただいまの総理答弁というのは余りにもアメリカの場合と対象的にあいまい不明確ということではないだろうかと思うわけでありまして、もう一度申し上げます。率直に日本型付加価値税は今までの言明と違いますというふうに申されるべきではないかと思います。いかがでしょう。
  18. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 アメリカはアメリカ、日本には日本の風土があります。言葉のニュアンスもその国によってみんな違うだろうと私は思います。先ほど来申し上げましたように、今度の政府税調の答申はまだかなり抽象的な段階にとどまっておりまして、私が国会で申し上げましたようなそういういろいろな要素から見まして、今度出てくる具体的案がどういう性格のものであるかよく分析して採否を決定すべきものである。また私は、選挙中の公約については、党税調の幹部にもこの間お会いいたしまして、守ってくれるように、党の幹部も守ります、そういうことで会見したということは新聞に報ぜられているとおりでございます。
  19. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 こんな堂々めぐりの議論をしているのは本当は嫌なんですね。事の経過からしても当然であろうというふうに私は思うわけでありまして、あなたがもう一月前この場でお答えになったことは、税調で最終的にどういうものが出てくるのかそれを見て判断をしたい、税調から最後にどういうものが出てくるのか最終案を待ってそして判断をしたいというふうに言われたわけであります。現物がここに出てきました。なぜそれを言われないのかと、これは本当に多くの国民が素直に思うところでありましょう。また、大きく報道されておりますから、これを見て多くの国民の皆さんは、総理のお約束が選挙であった、だけれどもどうなんだろうなと思われているのが、これは多くの国民の素直な気持ちでありましょう。その素直な気持ちになぜおこたえにならないのか、とても納得いきません。もう一度はっきりおっしゃっていただきたいと思います。
  20. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 税調の答申はまだ抽象的な段階が多うございまして、そしていろいろな選択を要請している点もあり、またこれの組み合わせも考えられるとも言われております。そういう面から見まして、どういう税にするかということは、税調の答申を参考にしまして党の方でいよいよ作業に入っておるところでございます。作業に入るに当たりましては、私が国会で申し上げましたあるいは選挙の際に申し上げましたいろいろな点について、それを守っていただくようにお願いもしそういう方向で検討が進められていく、最終的にどういう目鼻だちになり、どういう手足になり、足腰がどうなるか、そういう面を見た上で具体的な判定というものが行われると考えております。
  21. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 それでは、総理は今まで公約をされてきた大型間接税に関連してまいりましたさまざまな言明というものをきちんと守るということは当然ですね。  それからもう一つは、それではいつ、どのような段階で総理の御見解を、決断を、今まで述べられてきましたことに照らして御判断をし、国民の前に明らかにされるということですか。
  22. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 党税調でいろいろ議員の皆さんに議論していただいて、その最終的な案がまとまったときに判断をする、恐らく最終的な案も私のお願いを受け入れてやっていただけるものと確信しております。
  23. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 それでは何のことはない。総理はさまざまなことを言われたが、何か最終もこれというふうな段階で初めてゴーサインを出すというふうなことでしょう。私は国民の見る目はそうじゃないと思うのです。今まで国民注目の大きな問題についてさまざま言われてまいりました。それらについてそれぞれの時点で明確なフランクな意思表示をなさり、そして指導性を発揮なさるというのが総理としてのお立場ではないだろうかと思います。時間を随分とりましたけれども、今までの御答弁につきましてはとても私は納得ができません。いかがでしょう。
  24. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 自民党は民主的な政党でありまして、いろいろなお考えを持っている方々が集まっているわけであります。特に税のような問題になりますと、皆さんみんな見識をお持ちでありまして、それらの見識がぶつかり合って党の考え方というものが次第に練られ、まとめられていくものであります。私は独裁者じゃありませんから、特に税のような難しい、国民の各層の関心を持っておる問題については、党の議論が十分熟するのを見て最終的にどういう目鼻だちのものになるかということを注目して考えてまいりたいと思っておるわけです。
  25. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 当予算委員会の権威の問題としても、議会の権威の問題としても、これでいいんでしょうか。十月三日ですから一月前のこの国会であります。我が同僚のさまざまの議員の質問がございました。先ほど御紹介しましたような答弁を、何人かの野党の質問に繰り返し総理はお述べになったわけであります。そして最終答申が出るのを待つ、最終答申を見て判断したいと言われました。最終答申が出されました。また先に延ばす別の発言を今総理は言われております。国民が注目しているこの予算委員会議論として、果たしてこれでいいんでしょうか。委員長、いかがでしょう。
  26. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大体審議会の答申というものは、その設置法にもよりますが、これを尊重すべし、そういうふうに書いているのが多うございます。この審議会の答申につきましてはそれをいただいて、それを政府あるいは党としていつも検討して、そして党独自の見解に基づいて党の案をつくっているわけであります。今回政府税調から答申されました内容についても、我々は原則としてこれを尊重するという立場に立ってこれを検討する。しかし具体的な、どういう案をどういう税にするかということになりますと、これは実際国民の皆さんに振りかかってくる税の体系というものは法定主義でございますから、厳格にいろいろな条件がつけられたり、疑惑のないような法体系にしていかなければならぬわけです。そういう際に、その作業をこれから党並びに政府でやっていくわけでございますが、そういうものの具体的なでき上がりというものを見ないと判定はできません。しかし、そういうものをつくっていくという点については党でも作業をする、そういうことでございますから、目下形成中という意味もございます。審議中であり形成中である、そういう意味があると思います。
  27. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 大分時間をとってしまいましたが、私どもは今までの総理の御発言については非常に不満であります。やはり議会は、国民の前にフェアにフランクに率直に語って政策を述べ、国民の皆さんに御理解いただく、またさまざまの与野党の論争についても率直にフェアに語りながら国民の皆さんの御判断をいただくというのが議会であろう、それが国民の代表であろうというふうに思うわけでありまして、今までのような御答弁でございますと、私どもは特に税制に関する今後の審議あるいは今後の取り扱いについてはやはり厳しい姿勢で対応せざるを得ないというふうな気持ちがいたしますので、そのことは申し上げておきたいと思います。  税調答申の具体的な内容について幾つか作成責任者小倉税調会長にお伺いしたいというふうに思います。詳細なさまざまの論点はたくさんございますけれども、限られた時間でありますから幾つかのポイントをお伺いしたいというふうに思います。  税調会長に伺いたいのですが、全体を読んで非常に疑問に感じたことがまず一つあります。大蔵省の方から「税制改革の家計の負担に及ぼす影響に関する仮定試算」というものが出されました。これは税調会長と大蔵省と両方に伺いたいのでありますけれども、大蔵省の方は合計四兆八千億という増減税の試算を出されております。その説明を見てみますと、法人税減税の個人への帰着については、法人課税の二分の一は株主たる個人に、残りの二分の一は消費者たる個人に帰着するものと仮定して計算をしたと書かれております。言うならば、一兆八千億と試算をされておりますが、この法人税減税の全額がやがては全国民、個人に還元をされるというふうな発想に基づいているわけであります。何たる暴論だろうかというふうに思いました。説明をちょっと事務方に聞きましたら、有力な学説だというわけであります。有力な学説がそこにあるのかどこにあるのか私も余りよく存じませんけれども、こんな現実はないと思います。株式の配当も利益の一割程度であります。そしてまた今日の株式所有の株主構造、これも言うまでもありませんが、個人株主は三〇%ぐらい、七〇%ぐらいは法人所有というのが異常な日本の株式所有の現実であります。個人にはほぼ縁のない話であります。会社のもうけ、会社の利益が個人に還元されると申しますが、もうかっている会社でも賃金には反映しない、また製品価格や物価には反映しない。これは春闘とか、最近の円高差益が十分に還元されない経過を見ても明らかだろうというふうに私は思うわけであります。  正直言いまして、こういうことを申されるのでしたら、二兆七千億、所得税、地方税の減税だというふうに言いますが、マル優廃止で一兆円ぐらいがなくなります。そしてまた、大蔵省の計算の三兆五千億の間接税、消費者負担であります。ごく大まかな感じ方、考え方からしますと、一兆八千億は法人税減税だというが、これは多くの消費者、タックスペイヤーにとっては増税になるというふうなことになるのではないか、私はそう考えざるを得ないというわけであります。  この数字の方は大蔵省が計算しました。答申の方は政府税調が答申をしています。こういう法人税の個人への還元なんという暴論を、暴論だと思いますが、こういうことを政府税調としてはどうお考えになっているのか、計算をした大蔵省はどう説明されるのか、お伺いをしたい。
  28. 水野勝

    ○水野政府委員 税制調査会で具体的に御検討をいただく手がかりといたしまして、それぞれの税目につきましてある程度大まかな試算はさせていただいているわけでございますが、これはあくまで現段階での仮置きの数字でございます。ただ審議を深めていただくための素材として仮に出された数字が先生御指摘の数字でございます。また、法人税につきましては、御指摘のようにいろいろ御議論のあるところは承知をいたしておるわけでございます。したがいまして、私どもが税制調査会に御提出申し上げました資料におきましても、所得税と間接税だけを対比いたしました分析を第一部としてお出しし、それに法人税、利子等々を含めましたものもまたあわせて御提出申し上げ、多方面からの御議論をお願いしたところでございます。  法人税につきましては御指摘のようないろいろ御意見がございますことは承知はいたしてございますけれども、長期的な観点からすれば、法人税といえどもいろいろな経過をたどって租税を負担いたしますのは結局個人でございますというのが、先生御承知のとおり財政学のいわば一つの定説でございますので、いろいろな経緯、時間、そういったものは捨象して考えれば、中期的な税制改正の一つの指針としては、いろいろな学説に従いまして分析をしてみるというのが審議を深めていただきます際の手がかりになるのではないか、こんなあたりから両様の分析をし、その中の一つとして法人税も含めさせていただいた分析も御提出申し上げたということでございます。
  29. 小倉武一

    小倉参考人 御満足のいくようなお答えはできかねるのですけれども、家計に及ぼす影響として大蔵省が出しましたのは、先ほど局長が申し上げましたように仮の計算といいますか仮定を置いての計算でございます。ただ、仮定と申しましても、法人税というものがどういうふうに転嫁されるのかされないのかということにつきましては学者の間にもいろいろ議論があるようでございますが、長期的に見ればどうもやはり転嫁されるのだ。その転嫁されるのは、労働者に転嫁されるのかあるいは消費者に転嫁されるのかいろいろございましょうけれども、転嫁されるという考え方に立って、仮に株主と消費者が半々ぐらいというようなことが設例として設定できる、そういうのを税制調査会としても参考としてお聞きした、こういうことでございます。
  30. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 政府の大蔵省が出しましたこの仮定試算、目がちらちらするほどたくさんの表が並んでおります。それぞれ所得階層別にどのような減税効果があるのか――減税効果がない部分も随分ありますが、表が並んでおります。そうして、その中には、さっき私が質問しましたように、法人税の減税は半分は株主に、半分は消費者たる個人に全額が還元をされるのだという前提のもとで述べられております。主税局長は今の答弁の中では、長期的にというのか究極的にといいましょうか、そういう言葉遣いで、やがてはそうなるでありましょうというふうな話であります。また政府税調会長も、満足できるような御答弁は難しいと思いますがという話であります。私は今この答申に基づき、そしてまた大蔵省が計算をし、国民に御判断を求める。満足できるような説明がしにくいというふうに税調の会長もおっしゃる、そうしてまた主税局長も、究極的には、長期的にはそういうことになりますと言われている。今現実、来年これやったらどうなるのかということで実は国民の皆様は判断をするわけであります。  私は、そういう意味からいったら、長期の問題でありますから今現実はそういうことは無理でありますということをはっきり述べられるべきであろう。その計算の前提が違うわけでありますから、当面は、こういう還元されると一兆八千億という膨大な額ですから、これが個人課税にどう影響するかということでありますから、こういうことが当面はありませんという前提で試算をされるのが筋であろうというふうに思いますが、計算をした大蔵省、いかがですか。
  31. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この問題は、私はこういうふうに考えております。  伊藤委員も御存じのように、従来からこの法人課税と個人課税をどういうふうに調整するかというのは非常に厄介な面倒な問題でございまして、何十年間、各国の間で議論も分かれ、また実際の税法も各国により違っておりますことは御承知のとおりでございます。そのことは、税法上法人が実在するかどうかといったような法人実在説というようなものをめぐっての論争から出ておりますことも御存じのとおりでございます。  今回、仮定計算ということで、この法人税の減税分を半分は消費者に、半分は株主に、やがてはということは、かなり実は学問的な立場から問題を仮定しているという感じを私自身も持っております。それは、逆に申しますと、法人にこれだけ減税をしたら、それは全く個人にも株主にも消費者にも関係ないかということになれば、関係ないというわけにはまいらない、それはゼロだとは申せませんから。  そこで、いわゆる法人課税、個人課税との調整という長い間の問題からいいまして、理屈の上ではやはり株主にも消費者にもこれは関係があると申さざるを得ない。そうしますと、計算いたしますとこうなる。そこで、それはタイムラグに関係があるだろう、私はございますと思います。ございますと思いますが、何にも関係がないという答えは出せませんので、したがって、仮定計算としてはこのように考えられる、こういうふうに税調に申し上げたのだと、私はそう理解をしております。
  32. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 私は、先ほどの総理との問答もそうでありますが、今のお話を聞きましても、納税者に真剣に税に対する合意を求める姿勢があるんだろうかというふうな疑問を感じてなりません。今一兆八千億円の法人税の帰着は何かということについてタイムラグという話もありましたし、あるいは長期的、究極的にはというお話もございましたし、また理論的にはなかなか説明も大変な話だがという話もございました。理論的にはあるかもしれません。ただ、今求められているのは、現実、政府が、税調は最終答申を出しました、与党の方でこれから議論します、もう年末ですから間もなく最終案が出されてまいります。そういう中で、具体的に企業にとってもあるいは一人一人のタックスペイヤーにとっても、私の家計ではどうなるんでしょう、家計簿の中の税金と申しましょうか、みんなの懐勘定にどう響くんだろうかということを実はだれも考えるわけであります。そういうことに正直にこたえる提案でなくちゃならぬと思います。  この間に政府の案についてさまざまの団体から試算が出されております。政策構想フォーラムからもあるいは百貨店協会からも、この決起集会に私も行ってまいりましたが、あるいはまたさまざまの新聞でも計算が出されております。それらで一致をしているのは、今、法人税減税が個人に回らないとすれば、これは年収六百万以下の方々は全部増税になる、恐らくサラリーマンの八割ぐらいがそうなるだろうというふうな計算も出されております。皆様で反論があるかもしれません。  それじゃ、どうですか。出された大蔵省、タイムラグとおっしゃいましたが、究極的か長期というのは、これは十年後なのか二十年後なのか知りませんが、それが反映しない今はこうなります、将来はこうとかというようなことをきちんと出されるのがフェアな態度ではないでしょうか。究極的の数字をここに出すというのでは余りにもアンフェアであるというふうに思いますが、いかがですか。
  33. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 実はこの政策フォーラムの仮計算に私どもまたいろいろ反論の余地がございまして、殊に間接税についてどういう想定をとられたのかが明確でございません。ですからそれについて余り両方を比較した議論ができにくうございますが、いずれにいたしましても、先ほどの法人税の問題は、法人税まで入れて考えたところと入れないで考えたところと、いろいろな計算例を税調にお示ししたということでございます。
  34. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 宮澤さん、申し上げているのはそういう説明ではなくて、こういう究極的にこうという数字をあたかも今のごとく並べるというのではなくて、もっと今具体的にどうなのか、どうなるのですかというふうな視点からこういうものが出されるべきじゃないですか。うそを言っちゃだめです、正直に言いなさいという意味なんですが。
  35. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そうおっしゃいますと、どうもうそを報告をしたということではございませんで、わざわざ仮定計算というふうに断りまして、そうしてしかもまだ税法の内容が具体的に決まっていないわけでございますから、この場合はこう、あの場合はこうということを仮に税調が御検討を進められる上での仮定計算として申し上げた。それがすぐに納税者についての現実の負担の問題として受け取られたといたしますと、それは提出いたしました仮定計算の目的がややそれとは異なっておるということは、うそ本当ということでなく御理解をいただきたいと思います。
  36. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 さまざまの団体の試算あるいは大蔵省の担当者の意見ども私も今まで聞いてまいりました。しかし幾ら考えてみても、やはり年収五百五十万あるいは六百万以下の方々はかえって増税になるのではないか、標準家庭で見てですね、というふうな気がしてなりません。また一兆八千億円の法人税の解釈、こういうものから見ますと、もっとそのボーダーラインは上回るのではないかという心配もいたします。さらにこれらのことについては、具体的な論議を私どももしてまいりたいというふうに考えております。  ちょっと大蔵大臣に伺いたいのですが、あなたのところで政府税調に提出をされました試算表ですね、増減税の組み合わせ、いろいろなタイプがありますけれども、組み合わせといたしまして、所得税、住民税の減税二兆七千億円、法人税で一兆八千億円の減税、またその財源措置としてマル優の廃止あるいは新型間接税、新型間接税は三兆五千億円というものが述べられております。どうなんでしょうか。これからまだ作業もあなたのところであるでしょうから断定的にはちょっと言いにくいかもしれませんが、増減税合計額四兆八千億という数字が出されております。大体この程度のことを念頭に置いてさまざまの仮定試算をなさっているんでしょうか。今まで増減税の額が合計四兆八千億とか、そうしてまた住民税、所得税減税は二兆七千億でありますというふうな大見出しが新聞を覆っておりますけれども、これは総理の方からもまた大蔵大臣の方からもこういう額については一遍も述べられたことはありません。こういう試算を出されたからには大体そういうことを念頭においてお考えになっているんでしょうか、もっとぐっと少ないのでしょうか、どうなんでしょうか。
  37. 水野勝

    ○水野政府委員 数字のことでございますので、事務的にまず御答弁をさしていただければと思うわけでございます。  一兆八千億という御指摘でございますが、これは中間報告にもございました。法人税の国税、地方税を含めましたところの実効税率は五割を下回るようにする、そういうところから機械的に算出いたしますとそういう数字になるということでございます。しかし一方、税制調査会の答申にも御指摘いただいておりますように、税率の引き下げを行う一方、課税ベースにつきましてはさまざまな観点からこれを見直して一定の収入の確保も図るべきことが示唆されておるわけでございますから、一兆八千億と申しますのも、全く最大限ぎりぎりの仮置きの中でも大きなものをとればこういうことになるということでございます。したがいまして、課税ベースのとり方、そういったものによりましてこれからどういうふうに変化するのか、これは今後の各方面での御検討をお待ちしての具体化の中でそれがどういった数字になってくるのか、まだそういう性格のものでございます。したがいまして、先ほどもろもろの家計への影響をお示しする際にも、これはないものとして法人税を抜きにした分析もお示しをしたということは先ほど申し上げたとおりでございます。  また、所得税につきましては、これも中間報告等でございました一般のサラリーマンと申しますか普通のサラリーマンの方々が就職してから退職されるまで余り限界税率が変わらないようにする、そうしたものを想定した税率構造というものを考えますと、下の方をある程度引き上げるとか、そういったことを行いますればまた別でございますが、そういったことが余り現実的でないとすれば、下の方を据え置きつつ税率を平準化する、そういったところから仕組んでまいりますとこういったものが一応考えられる、そういった性格のものでございまして、あくまで仮置きと申しますか、暫定的な想定値と申しますか、幾らかイメージ濃く御分析をいただくためのデータとして御提出を申し上げた、これが政府部内なりあるいは全体としてこういったものが確定されたものとして分析が行われたというものではないということをお断り申し上げたいと思うわけです。
  38. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 そんなことを聞いているのじゃないのです。四兆五千億円とか四兆八千億円とか大きな数字が出ています。あなたはこうなるでしょうというふうないろいろな試算もマスコミなどで出されています。そういう状態の中で、これは総理の方からもまた大蔵大臣の方からも、大体どの程度のめどという、そういう今までの御発言は一つもありません。ですから、随分仮定試算も出ている、数字も並んでいるが、実際に、この半分ぐらいなんですか、もっと少ないのですか、どうなんですかとかいうようなことは一遍もないのですよ。しかし、そうかといって正確に、いやそれは三年とか年次を置くわけですから最終で結構なんですが、四兆五千億ではありません、二兆円でありますとか、大体のめどを一遍も出されないままこの数字が踊っているのでは大変無責任だろうと思うのです。そういうことで、念頭に置いているお考えはどうかということを政治家である大臣にお伺いをしたのです。
  39. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 確かにその問題につきましては、政府から正式にこのぐらいな歳入減になる、このぐらいの規模の減税であるということを申し上げたことがございません。それは、一つには、今度の税制改正は抜本的なものでございますけれども、全体として歳入中立的にしたいということを、これは何度も申し上げておるわけでございます。そういたしますと、仮に所得税で申しますと、ただいま四つのタイプをお示しして、中堅所得層のライフステージで余り負担が変わらないようにということを税調は目標にしておられる、法人税については実効税率が五〇%以下だということを目標にしておられるということが政府税調の作業の目標ではあるが、さて、それだけの仮に税収減になります財源をどこかから持ってこなければならないということは当然あるわけでございまして、そういたしますと、それは何であるかということも税調としては当然お考えにならなければなりません。  両方考えますと、したがいまして、その所得税、法人税の作業目標は一応持っておられて、今主税局長が申し上げましたように、それは今のような諸元をやってまいりますと、これぐらいなオーダーになろうとは思われますということはめどとして税調にもお示しをいたしましても、最終的にそれを財源で賄うことはどうすればいいかということは答えを出しませんと、全体としての総合的、一体的な税制改正というものの案ができませんので、そういう意味政府といたしまして所得税、法人税の減税の規模はこのくらいにいたしたいと思いますということをまだ申し上げ得ない状況にただいまあるわけでございます。
  40. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 大蔵大臣、そう言われました。中曽根さん、総理、いかがでございましょうか。  今大蔵大臣は、担当者として今言える段階ではないと言われました。現実に数字はこういう数字がマスコミで大きく報道されています。期待あるいは注目してその数字を多くの国民の皆様はお考えになっているでありましょう。またこの数字をベースにして二兆七千億の減税があった場合にどうなるのかというふうな形でさまざまの解説もなされているというふうな状態であります。今大蔵省の立場ではこのようになるのかならないのか、それは、減税の額その他についてはめどを申し上げる段階ではないと言われましたが、最高責任者である総理の方はいかがですか。
  41. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大蔵大臣と同じであります。大蔵省の主税局が示したものはやはり仮定の試算であると思います。
  42. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 全くこれは仮定の試算である。実際に三年、四年かかりますか一定の段階的措置を経るそうですが、どのような金額の減税をするのかしないのか、今のところはこれは全く仮定の数字しかないというふうに受けとめておきたいと思います。  それから、税制に関連をしてあと一、二だけお伺いしておきたいと思いますが、一つは税調会長にお伺いいたします。マル優問題であります。  四案出されまして、またそのうち一律分離課税についての意見が多かった。「一律分離課税方式が適当であるとする意見が多くの委員から述べられた。」というふうに書いてございます。私は、これは税調会長とも委員会で何遍も議論してまいりましたから基本的な考え方は御承知のことだと思います。私どもは、一部に現在の少額貯蓄非課税制度の悪用があります、その悪用を封ずる、そしてフェアな総合課税方式に持っていくというためにグリーンカード制が大事であると言ってまいりました。共産党を除く与野党で一致してこれが成立をいたしました。しかし、その法律が一遍も実行されないうちに延期になり、またこれが廃案になるといいますか廃止になるというふうな経過をたどって今日に至っております。ですから、この政府の朝令暮改と申しましょうか、この経過については私どもは非常に不満であり不信感を持っているわけであります。今でも私どもはこのマル優については、一部のさまざまな悪用については、今日の科学技術の発展の時代でありますから限度管理あるいは本人確認を含めてきちんとできる、その方法はちょっと工夫をすればあるであろうというふうに思っております。  そういうことをしないでおいて多くの庶民の皆様からマル優を廃止をして税金を取るというのはこれはおかしいと思いますし、郵貯にも関連をいたします。現在四十道府県でマル優廃止に反対をする意見書が出されているということも聞いております。これは、全国四十七都道府県の中で四十もの県で、こういう少額貯蓄非課税制度を守ってほしいというふうな意見書が出されるというのも珍しいといいますか大変な経過だろうというふうにも私は思うわけであります。そのようなことをお考えもなく、小倉さん、こういう答申をおつくりになったんですか。  それからもう一つは、一律分離課税が多数であったというふうに言っておりますが、これはだれが考えても明らかなことなんで、この方式について言えば、現在の普通の預貯金には一律に課税をされます、限度管理が不要になる、そうしてマル優を使い切って三五%の源泉分離課税を受けている人のメリットは非常に大きい、非常にこれはアンバランスになる、金持ち優遇だ、これはだれが考えても当然の話でありますが、その辺はどのように税調の議論ではなさったのでしょうか。
  43. 小倉武一

    小倉参考人 マル優の廃止の問題といいますかあるいは存続の問題、大変難しい問題であることは私どももよく承知いたしております。今お尋ねの中にありましたようなグリーンカードといったような制度の制定それから廃止というようなことにもそれはあらわれておるわけであります。その後税制調査会では、御指摘のように低率分離課税をするというような案に固まったこともございますが、これも政府では採用されなかったというような経緯がございまして、なかなか難しい問題であるということは重々承知しているわけであります。  ただし他面、今お話にございましたように、程度はよくわかりませんけれども、相当の乱用があるというようなこともございまするし、またそのために限度管理を強化をしていくということであればどうも相当の費用がかかる。国費としてもかかりますし、また金融機関等においても費用がかかる。税金を免除をするためにまた税金を使わなければならぬというようなことになりかねない。それも微々たるものではないということになりますと、この制度の存続自体が問題であるということになるかと思います。それに今回は、とにかく所得税等の減税ということもありましてその財源ということの必要性も考えなくてはならぬというようなことで、無論税制調査会におきましてはいろいろ審議の結果、若干の方々の異論はございましたけれども、存続論はございましたけれども、大方は廃止もやむを得ないというような結論になったわけであります。  そこで、廃止した後の始末でありますが、どういうふうにそれじゃ税金をいただくのかということになりますと幾つか考え方がありまして、そのうちの一つに今お話しの一律分離課税というような案がございますが、これもまたお話のように、高額所得者に限って優遇するというような結果になりはしないかという議論もございまして、必ずしもこれは税制調査会でそういう案がいいというふうに多数になったわけではございません。どうするかということについては四つ併記したままで、多少のニュアンスの相違はございますけれども、今後の検討課題ということになっておる次第であります。
  44. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 徹底的にこれから国会でも議論をされるでありましょうし、していきたいと思います。  税調会長にもう一つだけ伺っておきたいのですが、この答申には表現をされておりませんが、税制についての有力な意見として、これは与党内にもあるわけでありますし、世間にもあるわけでありますが、一つは、間接税とか新税とかいう場合に福祉目的税の財源というふうに考えるという考え方があります。それから今度の税調答申の中でも、私は、これからの時代ですから、抜本的にもっと分権型あるいは国と地方との税源のあり方も考えるということが大事な時期であろうというふうに思いますが、これは今後の財政措置の問題というふうな取り扱いになっております。一つ意見として、例えば地方財源に三分の一、国税三税と同じように地方財源に回していくということが適切であろうというふうな意見もありますが、論議の経過はいかがだったのでしょうか。また今会長としては、私見でも結構ですが、これらについてはどうお考えでありますか。
  45. 小倉武一

    小倉参考人 御質問意味を少しとりかねたところがございましたけれども、ちょっと当てずっぽうになって――ちょっと遠いものですから。  一つは地方財源の問題、それから福祉目的税というようなことについてのお尋ねでございましたが、福祉税につきましては、一般消費税という国会で否定されました福祉税のときにも、あれは福祉税ということにしてはどうだろうかという意見もございました。福祉税というのは、今でも仮称ということになっていますが、もともと仮称ということでスタートして、新しい税制とすれば何か固有名詞をつくるべきだというふうに考えられておったのですが、最後まで一般消費税ということで終わったのでありますけれども、その際に福祉税にしてはどうかという意見があったことは事実であります。しかし、これについてはやはり若干の難点がありまして、目的税というものをだんだんそんなに多くしていくということは財政の硬直化になるというような正論と申しますか、そういう考え方がありまして、そうはならなかったわけでございます。  今回の新型間接税につきましても、福祉税ということが全く問題にならなかったわけではありませんけれども、何しろ社会保障というものの財政負担が今後相当に伸びていくというようなことが展望されますので、それの目的税ということがいかなる意味があるのかということについて疑念が生じてまいると思います。ほどほどのもので済むということであればあるいは福祉税ということも考えられると思いますけれども、ちょっと間尺に合わないのじゃないかというふうに感じられるわけであります。税率をどうするかということに関連しますが、福祉税という意見余り税調の中ではございませんでした。  地方財源の話でありますが、地方財源につきましては、今度の新型の間接税につきましてその一部は地方の固有の税としまして、名前を何といいますか、地方何とかということになるかと思いますが、府県の固有の税として考えてみたらどうかということになっております。その際、地方事業税につきましては、従来外形標準化の問題がありましたけれども、外形標準化は考えないで地方事業税はそのままに置いて、今お話しのように三分の一とするのか何分の一にするかということはこれからの問題だと思いますが、一部を地方財源にするというような趣旨に答申はなっております。
  46. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 私どもが反対している大型間接税ですから、それを前提にしたような話はやめておきましょう。ただ、いろんな議論があって、総理、何か新聞の報道によりますと総理が一番信頼して任せている、私ども大変な専門家だと思いますが、自民党の税調会長がそういう意見をお持ちだという報道がなされておりまして注目しておりましたので、ちょっとお伺いしたところであります。  話題を変えまして、文部大臣も御都合があるようですから文化、教育のことについて伺いたいと思います。  時あたかも文化の秋であります。昨日は文化の日であります。さまざまの行事を持たれたわけでありますが、総理見解をお伺いしたいのですが、文化の日ということもありまして、文化予算、日本の文化政策というのを見てみますと非常に貧困な状態であります。この間、演劇人、芸能人、文化人の皆様がお集まりになりまして、これには私も大好きなんですが、俳優の森繁久弥さんとかピアニストの安川加寿子さんとかバレリーナの谷桃子さんとかがお集まりになりまして、触れ合い大作戦になっております。これはどことの触れ合いかと申しますと、文化に対する政治家の認識を深めてもらいたいというわけであります。その方々が述べられている内容にもあるのですが、この数年間で予算額が実額減ったというのはほとんどないのですが、文化予算は特徴的に減少しているという状態でありまして、また金額が余りにも少ない。  比べてみますと、予算に比較をいたしまして、フランスが〇・五一%、社会党のミッテラン大統領になりまして〇・七五%に急増させたというわけでありますが、イギリスでも〇・二%、日本の場合には六十一年度予算で〇・〇六七%、虫眼鏡予算と呼ばれているわけであります。金額でいきますと、フランスの場合には国民一人当たり千九百五十円、イギリスの場合には千二十円、フランスの場合にはもうそういうことで一人当たり二千円になっているわけでありますが、日本の場合には三百数十円ということのようであります。  総理は前にたくましき文化国家とかいうようなことを言われましたが、これでは、軍事費のことは申しませんが、たくましい方ばかりになって、文化の方はおよそ欠けた国になるんじゃないかというふうに思います。これから予算の編成も進んでいくわけでありますが、文化庁の概算要求もまことにつつましいような話に聞いておるわけであります。これからの日本の進路としてやはり国際的にも誇れる日本の文化、あるいはまた豊かな気持ちを持った、豊かな心の暮らしということがこれから非常に大事な社会になってまいるわけでありまして、総理はどうお考えになりますか、この現状をどういたされますか。
  47. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 総理の前にちょっとお答えいたしますが、御指摘のように、最近の厳しい財政状況でございますので、文化に関する予算というものは伸び率が停滞しておることは事実でございますが、しかし、六十一年度におきまして約三百六十数億円予算計上いたしております。これを外国と比べるというのは外国の制度とかあるいは行政の仕組み、こういうようなものが違いますので、単純に私は比較することができないと思うておりますが、しかし、御承知のように戦後日本が文化国家の看板を掲げまして、それを一つの目標にやってまいりまして、今まで全くおくれておった諸施設はだんだんと整備されてきたと思うております。  つきましては、これから文化活動、特に薫り高い芸術を普及していくという意味におきましてその内容を詰めなければならぬのでございますが、これには単に国の予算だけではなくして国民全般の協力もやはり必要だと思うております。さりとて我々文部省といたしましては、あるいは文化庁といたしましては、この厳しい予算の中にはございますけれども、今後そういうソフトの面に関する予算というものを十分に確保するように努力してまいりたいと思うております。
  48. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 今の文部大臣お話を伺っておりましても、ぜひこれは総理に伺いたいのですが、文部省予算でも年々厳しい状況になって、しかもそれが教育現場に及んでいるというふうな状態でありまして、大部分が人件費というような構造になっている、何か積極的な新しい対応を組むのは今の大蔵省のシーリングでは非常に難しいというふうな状態もあると思います。やはりこれは、総理とかあるいは政治の力でそういう状態をどうしていくのかということを考えなくちゃならぬというふうなことであろうと思います。  いずれにいたしましても、数字だけで表現できることではないかもしれませんが、文化予算が〇・〇六七%、軍事費と比較をすればまことにこれは変な話でありまして余りにも大きな偏りでありまして、こういう状態はいいとは言えないと思います。総理の御見解を伺いたいのと、それから私はこう思っているのですね。  さまざまのこれは文化、芸術のジャンルがあります。そういう中でそれぞれ大事な活動でありますけれども、私は、日本の文化をもっと大切にする、こういう分野があっていいんじゃないだろうかと思います。私の大学の友人がこの間、本を出しまして、「歌を忘れた日本人」という本を出版をしました。日本には例えばさまざまの古典芸能、踊り、民謡、いろいろなものがある、お年寄りが亡くなるに従ってそれも消えていく。しかし、そういうものを何とか早いうちに全部収録をして、できたら資料館ぐらいはつくりたい、そういうものをベースにしながら、私は、非常に芸術水準の高いそういう物語とメロディーをベースにしたオペラができると思うのですね、ドラマができるとか、世界にも誇りを持って、しかもそういうものが、中曽根さんの日本のアイデンティティーという印象よりも、国際人として民衆のレベルで交流がなされるというようなことが非常に大事なんではないだろうかと思うわけでありますが、総理の御見解、いかがでございましょう。
  49. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 文化予算は大事であると思っております。行革をやっておりますので、各省ともマイナスシーリングというような情勢で、文部省もそういう面では非常に苦労されておりますが、今後とも文化的な予算については有効に使われるいい予算をつくるように努力していきたいと思います。  ただ最近は、地方では美術館をつくるとか音楽ホールをつくるとか、そういう美術あるいは文化的な面に非常に前進が行われておりまして、政府としてもそれに対する補助金やその他でかなり積極的にもやっておるわけであります。倉敷が独特の都市をつくりましたが、倉敷に負けないような都市を各地において自分の個性と伝統を持ってやろう、そういうような空気が非常に出てきております。私は、これが一番大事なところで、地方の、そして民活による自分たちの自主的な文化施設なり文化活動というものを積極的に広げていくようにしたい。政府としては、また一面において国際交流、非常に大事でございますから、日本の歌舞伎をパリでやるとかあるいはそのほかの点についても積極的に努力しておりますし、外国のいいものも日本に持ってくるように今後とも積極的に努力してまいりたいと思っております。
  50. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 文化の分野における地方とかあるいは民活とか言われましたが、それにしてもやはり政府対応が大事なわけでありまして、難しいことは言いません、一言だけ伺いたいのですが、文化予算の推移を見てみますと、本年度予算では〇・〇六七、虫眼鏡予算、その前は〇・〇七一、八四年その前が〇・〇七五、その前が〇・〇七九、その前が〇・〇八〇、非常に少ないと同時に中曽根さんの内閣のうちに毎年減っているのです。来年はふやされますか、もっとふやしたいと思われますか。
  51. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 来年も我々は増額を要求いたしております。  そこで、実は伊藤さんに御理解をいただきたいと思うのでございますが、先ほどの総理答弁にもございましたように、地方の文化も同時に振興しなければならぬ、まさに伊藤さんがおっしゃったように、日本の固有の文化を大事にしろということと地方の文化の振興ということと相呼応して、今回、初めて国民文化祭というのを文部省が主催でやることになりました。第一回がこの十一月の二十二日から始まるわけでございまして、ぜひ御支援をいただきたい。これには地方の各県並びに教育委員会等が相当なやはり協力をいたしてきております。  そこで、文化活動全体をとってみます場合に、国の予算は確かに窮屈になっておりますけれども、各地方の県あるいは教育委員会等におきましては、この認識を非常に強めてまいりました。これはやはり文部省のリードであったと思うておりますが、それに対する協力を得ましておいおいにしてその振興をより厚いものにしていきたい。そのためには、本省といたしましても予算の獲得に全力を挙げて努力いたす覚悟でございます。
  52. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 文部大臣にあと二つ関連をして伺っておきますが、一つは、今の予算の厳しい話がありましたが、義務教育費国庫負担に関係する問題であります。私も大蔵委員会で本年、昨年と二回、この一括削減法案という難しい議論をこの国会でいたしましたが、今までも教育に関連をいたしまして幾つかの削減がなされた、教材費とか旅費とか、そのときの御説明の中では、これは国の責任から自治体に移す、自治体に対する手当てはいたしますというふうなルールでありますが、現実には実態としては非常に難しい状態が現場では起こっているというふうな状態であります。  私の理解では、昨年の暮れでしたか、自治大臣と大蔵大臣の覚書がございまして、この春の国会で成立をした補助金法案は六十一年から六十三年、三年間にわたるということでありまして、この三年間はいじらないというたしか確認か覚書になっているはずであります。今、来年度予算に関連をいたしまして、大蔵省の方から事務職員、栄養職員を外す動きというのが出ております。私も実態をいろいろ聞いてみますと、各学校に八割以上配置をされて、事務職員の方も、そしてまた教員の皆様も一体となって教育現場を支えているというふうな現実でありまして、経過からいいましても、実態からいいましても、こういうことはあってはならぬというふうに思っておるわけでありますが、これは文部大臣、それから関係をしますが自治大臣、いかがでございましょうか。
  53. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 学校の事務職員は約三万二千人以上おりますし、また栄養職員七千六百人おります。これらの人たちは学校運営の基幹的職員ともなっております。したがいまして、こういう制度の基本を変更することはあってはならぬと私は思うておりまして、そのためにはこの両職員に対する補助対象としての制度を堅持してまいりたいと思うて、今鋭意大蔵省と折衝いたしておるところでございます。
  54. 葉梨信行

    ○葉梨国務大臣 ただいま先生がおっしゃいましたような措置につきましては、具体的に文部省からお話を伺っておりません。
  55. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 大蔵大臣。文部大臣の話がありましたが、大蔵大臣は竹下さんのときで違いますが、大蔵大臣とたしか自治大臣で、補助金の扱いは三年間は動かさない、いじらないということになっているはずであります。そう思ってよろしいですね。
  56. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 三年間と申しますのは、国の財政と地方財政との間の基本的な問題については三年間云々という、そういうことがございます。が、国庫の補助金の問題について見直しを禁ずるという趣旨のものではないと思っておりますけれども、いずれにしても、ただいまの問題はまだ時期的にも時間がございますので、関係各省の間でよく相談をしてまいりたいと思っております。
  57. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 宮澤さん、申し上げておきますが、私も補助金法案は二年にわたって参加、さまざまな議論をいたしてまいりました。さまざまな御答弁もいただいております。何か今度は三年間の期間でこれが始まっているわけですね。その期間にも次から次へと問題が出るというふうな今までの御答弁や理解ではないというふうに私考えておりますので、その点はきちんと対応していただくようにお願いをしたいと思います。私どもそういう姿勢で主張してまいりますので、うなずいておりますから、それ以上論議はやめておきます。  もう一つは、文部大臣にこれは伺いたいのですが、さまざまの教育荒廃、さまざまの教育問題が、父兄にとりましても頭の痛い問題でありますし、多くの社会問題になっているわけであります。また、そういう中で中曽根首相は、偏差値教育ではだめだ、もっと豊かな人間を育てるんだというようなことを御主張になっておりますし、何かポスターでもそういうことを拝見したことがあります。  ところが、こういう現実があるわけでありますね。僕もびっくりしたのですが、道徳問題です。道徳教育か道徳問題について、総理が批判をされている偏差値で点数をつける、そういう現実があるのですね、私も驚きました。何種類かあるのですが、道徳検査、診断、それから道徳性診断検査、さまざまの種類のペーパーテストですね、いろいろな種類のものがあります。  そこで私は、さまざまの科目についてペーパーテストがたくさんあるのも事実ですし、その是非の議論もさまざまございます。ただ道徳ということについて、こういう点数をつけて偏差値の一覧表があるわけですね、偏差値をつける。  例えばですが、日の丸の旗を見ました、「あなたは、どのひととおなじようにおもいますか。」「国のおいわいの日に日の丸のはたをたてました。」どう思いますか。一、「日の丸は、にほんのはただ。みんなでたいせつにしよう。」二、「ほかのくにのはたにも、きれいなものがたくさんある。」三、「日の丸は、きれいなはただな。」これは小学校一、二年ですから、一番わかりやすい方の例を申し上げますが、そうして解答の点数を見ますと、一が二点なんですね。二が三点で、三番目が一点なんです。どうしてこんなことになるのか私わかりませんが、しかし、さまざまなこういう例が述べられています。  私は思いますが、特に道徳、それから倫理性というものは偏差値ではかれるものではないと思います。そうしてまた、人間をどう育てていくのかという、まさに人間を育てる機能にかかわる分野でありまして、小中学校でこういうペーパーテストが行われて偏差値がつけられているようなことが現実に行われていることは非常に問題でありまして、むしろ、こういうことについてのお考え総理からお伺いしたいと思いますが、これは私もびっくりした話です。
  58. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国旗を大事にし、国歌を必要なときに歌うということは私は当然のことであると思います。ただ、今のような教育の中で具体的にどういうやり方がいいかという問題は、これはいろいろな面から検討する必要がある。特に今のような国旗あるいは道徳的価値基準とか、そういうような問題に関するものは偏差値には余りなじまない要素がある。やはり人間と人間との対で決めていくという、そういう大事な要素があるので、数字や何かには必ずしもなじまない面があるだろう、そう思っております。  詳細は文部大臣答弁をいたします。
  59. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 道徳教育は非常に国民的関心が強くなってまいりました。そういうことを背景にして、要するにテスト屋という業者がそういうテストをつくっておるんだろうと思うのでございますが、しかし文部省としては、学習指導要領の中にございますように、道徳教育はその実態を把握することに努めろということに重点を置いておるのでございまして、総理答弁されましたように、偏差値になじむものではないし、またそういうことはすべきものではない。したがいまして、道徳教育の中で、例えば態度を観察するとか、あるいは質問肢による検定をするとか、あるいはまた作文をさすとかいう、そういういろいろな手段を講じまして道徳教育の実を上げていくのが本旨でございまして、評定をして、それによって指導していくということは文部省としてはとっておりません。したがって、これは偏差値になじむものでも何でもございません。  ただ、先ほど冒頭に申しましたように、一部の業者が、何でもテストをやったらいいだろうというので、こういうことがありますよということで進めておるということは聞いておりますが、文部省としても重大な関心を持ってこれから見はかっていきたいと思うております。
  60. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 まだ経済や財政のことでいろいろお伺いしたいことがございますが、ちょっとまとめてやりたいと思いますから。  もう一つ、これは主として総理に御見解をお伺いしておきたいと思います。  それは、いわゆる民族差別、知的水準とかマスコミで言われていることに関連をした中で、総理の御答弁の中で少数民族の存在あるいはアイヌというお話がございまして、何か本会議の、先般の二十一日でしたか、総理の御答弁の中では、私もまゆなんか濃いし、ひげも濃いし、アイヌの血が相当入っておると思うというふうなお話まで本会議の御答弁でございましたが、頭もひげも顔も黒々としていればなおさらそういう印象があるのかもしれませんが、ちょっとまじめに考えなければならない問題じゃないかなというふうな思いがいたします。単一民族だから非常に優秀である、総理もそうお考えでないと思いますが、という考え方は間違いだと私は思います。日本の場合でも、南から北からいろいろな民族の経過があって今日の日本人社会が形成をされている、これは歴史の事実であります。  その経過の中で、さまざまの抑圧とか迫害があった時期もあったでありましょう。あるいはまたさまざまのロマンや物語も文化もあったと思います。そういう上に今、日本の社会がつくられている。そしてさらにそういうものを差別や何かでなくて、どのようによりよい日本の社会をつくっていこうか。私はそういう意味では国際的にいいましても、国際国家という表現よりも国際社会の日本というイメージの方がこれから大事な時代ではないかなというふうな気がいたしますが、そういう中でアイヌ民族の存在、またウタリ協会の皆さんとか、いろいろ議論が起きているわけであります。  なるべく簡潔にお伺いしたいのですが、総理はアイヌ民族の存在をお認めになるでありましょうか。今、アイヌに適用されている北海道旧土人法、ひどい名前ですね、やはり明治の時代こういうことだったのだと思いますが、明々白々の少数民族の対策法だというふうに言われておりますが、アイヌの存在を認める、そして北海道旧土人法の定義、対象はそれらが対象となっているということだと思いますが、今までのさまざまの御答弁をきちんとする意味でもお伺いしたい。
  61. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、十月三日に不破議員に対して次のように答弁しておるものであります。「私は、やはり日本民族は同質性を持っている、ほかの国家も同質性を持っている国もありますけれども日本はそういう面では同質性の強い民族の一つである、これはやはり客観的事実であろうと思っております。だからといって日本民族が優秀だという意味ではありません。これは多人種によってできている複合国家の場合でも、アメリカのように実にたくましい立派な国家もございます。」そういうことを言っておるのであります。  それで、官房長官も談話で私の真意を申し上げたことがあると思いますが、日本民族は、日本列島に先住していた民族が長い歴史の中で、南方系、北方系あるいは大陸系の諸民族と混合一体化して形成されたもので、アイヌ民族もまたその中の一つであったと考えられるが、その子孫の方々が現存していることは事実であります。そういう人をいわゆる少数民族と呼ぶか否かについてはいろいろの見解があり得ると思いますが、しかし、これらの人々も含めて日本国民は憲法のもとで法的、制度的にすべて平等に権利を保障されておりまして、国連人権規約第二十七条に言う権利を否定され制限された少数民族というものは我が国に存在しない、こういうふうに申し上げて、最初の答弁のときも国連的規約の関係における日本国籍を持っておる人たちで、今の国連規約との関係においていわゆる少数民族と言われるようなものは日本にはありません、そういう報告を国連に出しております、そういうことを私は答弁しました。それは今言ったのが私の趣旨でございます。
  62. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 今の意味合いは、アイヌ民族というものもたくさんの日本の歴史の中で現在も存在をしている。しかし、差別を受けている存在が現実にはないというふうな意味合いかと思いますが、アイヌ民族の存在というのは、数の大小はあっても、これは否定することのできない事実であろうと思います。  また私は、いろいろ調べ、また聞いてみますと、大変な差別が存在してきた、今もあるという。北海道旧土人保護法の制定の経過、中身を見ますと、これはアイヌ人が北海道で生活していた土地を取り上げて、それを開拓農民に分けたり官有地にしていった、それで抑圧された方々を救済するためにこの法律がつくられた、しかもその表現の中では無知蒙昧の人種にて云々というふうなことが書いてございます。まさに大変な差別か抑圧かというふうな状態でスタートをしたことがしのばれる、想像できるわけであります。現在でも聞いてみますと、この保護が続いていて、アイヌ人が土地を売買、譲渡するには北海道知事の認可が必要である。昨年度も売買価格のチェックを受けて四十八件の許可があった。また、この法律を利用して国有地を下付するように知事にお願いしたけれども、それは中央と相談をしてだめだったとかというふうな状態。憲法十四条による法のもとの平等に反する事態が起こっているというふうに把握をいたしているわけであります。  その認識の問題がございますが、私は二つここで具体的に提起をしたいと思います。  一つは、この法律の扱いの問題であります。ずっと前のことを調べておりましたら、我が党のおやめになった岡田春夫さんが予算委員会の分科会で取り上げられたことがございまして、そのときに、斎藤厚生大臣、それから江崎北海道開発庁長官という時代でありましたが、そのときの問答の結果は、このような法律などはやはり廃止をすべきである、同時に、さまざま今必要な態様が現実に存在する、したがって、それらを相談するためにアイヌ問題審議会というふうなものを厚生大臣の諮問機関としてつくることにいたしましょう、そこで具体的な今後の対応を相談をする、さまざま必要な予算措置はとってまいりましょうというふうな経過がこの国会で実はあったわけであります。これは昭和四十八年の三月五日の衆議院予算委員会分科会ということでありますが、私はその方向でやるのが一番素直だろうと思います。  まことに、名称からしてもべっ視あるいは差別を含んだわけでありますから、今の日本の社会でこんな名前の法律があること自体ちょっと恥ずかしいことだと思います。これらは廃止をする、同時に、今必要なさまざまな措置、これは北海道知事の諮問機関としてもウタリ問題懇話会というのであるそうでありまして、それらと連携をとりながら中央の自治省庁ですか御相談すればいいというふうなことだと思いますが、御相談をいただいて、必要な新法の制定をどうするのかということをきちんとしていくことが必要ではないだろうかと思うわけでありますが、それが一つであります。  もう一つは、まとめて恐縮ですが、外務大臣にお伺いしたいのです。  国連人権規約に基づきまして国連への報告書提出というのが今のマイノリティーあるいは少数民族というものに関連してありますが、これらにつきまして、私も国際人権規約につきましてのその内容の公式のさまざまの解釈などについての文章も読ましていただきました。少数者、マイノリティーズということの意味は、種族的、宗教的または言語的な少数者であるということが採択をされて、公式な見解であるというふうになっているようであります。それらからいたしますと、国連への報告書について、今申し上げている立場からきちんとした報告書を出していくことが必要であろうというふうに思うわけでございますが、その二つの側面につきまして御見解を伺いたいと思います。
  63. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まず土人法の問題でございますが、この法律をつくった最初の動機は、アイヌの皆さんが悪い人にだまかされて土地や何かを売らされたりあるいはごまかされたりするのを防ごう、そういう善意で、その土地の処分について許認可というようにかかわらしめて、悪いものを防ごうという趣旨があったように聞いております。しかし現在のこれだけの時代になりまして、あの法律は時代にそぐわない面が非常に多いと思います。したがいまして、政府としてはこれが廃止も含めまして再検討を開始したというところで、私は、これは変えた方がいい、そう思っております。  それから国連規約の問題でございますが、これは市民的及び政治的権利に関する国際規約というので第二十七条に、「種族的、宗教的又は言語的少数民族が存在する国において、当該少数民族に属する者は、その集団の他の構成員とともに自己の文化を享有し、自己の宗教を信仰しかつ実践し又は自己の言語を使用する権利を否定されない。」そういうことで、要するに権利を守ろう、守らなければいけない、そういう趣旨であるわけであります。  そういう趣旨からいたしますと、日本政府考え方は、ただいま申し上げましたように、日本列島には北から大陸からあるいは南から大勢の人たちが入ってきて、そして融合して今の日本民族というものはできてきておる。その一つの要素の中にアイヌの皆さんもおった。先祖はそういう人たちであり、今はその子孫も現に残っておる。そういう認識は今申し上げたとおりでございます。しかし憲法に規定している法的、制度的における平等の権利というものは保障されておって、国連人権規約二十七条によって、権利を否定されたり制限されている少数民族というものは我が国にいない。つまり国連的規約に関する意味において申し上げておる、そのことをまず御理解願いたいと思うのでございます。  そこで、この報告をまたいずれ国連に出さなければなりませんので、この前の報告どおりでいいか悪いか。これは、例えば民族という定義にいたしましても国際的に非常に難しい要素があるわけです。何をもって民族とするか、人種だけで民族というものは決まるものではないのであります。言語も文化もさまざまな要素があります。意識の問題もございます。そういう意味において、民族という定義一つ考えるだけでも相当難しい要素があるものですから、国連に第二回報告を出すについては専門家によってもっとよく検討させよう、そういうことで検討させたい。既に政府内における専門家では検討しておりますが、部外の学者やその他いろいろ大勢の方があります。  私はこの前梅原さんの学説を引用しまして、日本民族は非常に融合しておるんだ、日本語の祖語でもアイヌ語というものは相当入っている、あの人の説であります。その融合しているという学説を紹介申し上げたのが私の真意であっただけでございます。そういうことで、今専門家による検討を開始する、そういうことであるというように御認識願いたいと思うのであります。
  64. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 今までアイヌ民族の存在やまた文化が否定されるような印象でとられていた向きが多かったと思いますが、それらの存在を認めてどうしていくのかという趣旨のお話がございました。  どうでしょうか、こういう経過などありますし、またアイヌの皆さんのさまざまの歴史、文化、北海道だけではなくて多くの人が知っているところであります。それらについての政府対応が国際的にも国内的にもフェアに対応なさっているという意味合いでも、ウタリ協会というのがございまして、その理事長さんなどもいろいろ御発言なさっております。総理、一度お会いになったらいかがですか。厚生大臣も当然だと思いますが、そのお気持ちはございませんか。
  65. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私はまだよく勉強しておりませんが、例えば金田一京助さんのアイヌ語の研究というものもありますし、あるいはまたユーカラという偉大な叙事詩も存在をする。そういういろいろな面でやはり独特の文化あるいは言語というものを持っておられるということは事実であると私は思います。しかし、それは我々の先祖の中に融合していることもまた事実だと思うのであります。  そういう意味において、いろいろ御議論のある点もありますが、ともかく専門家によってこれはよく研究してもらおう、そういう代表の方々等に関してもよく検討してみたいと思います。
  66. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 残余の時間、経済問題に移らせていただきたいと思います。  この二、三日の大きな問題でございますが、宮澤大蔵大臣とアメリカのベーカー財務長官の共同新聞発表がなされました。大変大きな出来事であろうというふうに私ども思っております。  その中で、特に私ども注目していましたのは、プラザ合意以来「今や、現在の基礎的諸条件と概ね合致するものであるとの相互理解を表明し、」云々という表現が、これは円ドルレートの問題ですね、共同新聞発表の中にございます。これはどう考えたらいいのでしょうか、大蔵大臣。  最近の円相場、百六十円ぐらいの水準で相当の期間にわたって安定をする、これは続くという意味なんでしょうか。  それから、もし一層の円高、場合によっては逆に急激な円安になる場合もあるかもしれませんが、この場合には効果的な協調介入をすることで合意した、この文面からいたしますとね。要するに、現在の百六十円ぐらいのレベル、レートで相当の期間にわたって安定をするという意思表示がある、またそれが変化する場合には効果的な双方の協調介入というものが行われるというふうな理解でいいのでしょうか、どうでしょう。
  67. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 昨年の九月二十二日のいわゆるプラザ合意でございますが、これは御承知のとおりドルがいわば非常に高過ぎる、ドルの価値がいわゆるファンダメンタルズと言われるものから離れておる。したがって、これをみんなで是正しようではないかというのがプラザ合意の本体であったと考えます。  その後一年くらいの間にドルの価値は非常に低落をいたしまして最近に及んだわけでございますが、先般私とベーカー長官合意いたしましたことは、今や円との関連においてはドルの価値はいわゆるファンダメンタルズを反映するに至ったものである、したがいまして、従来やってまいりました介入ということはいわばその目的を達したと申しますか、ここに来ましてこれ以上円が高くなることは必要のないことであるし、また我が国の経済成長からいえばむしろ望ましくないことである、こういうのが合意の本体でございます。  そういたしますと、円ドルの関係がファンダメンタルズを反映するに至りました以上は、今後の相場というものは、フロートでございますから市場によって決定されるのが本体であろう。市場にはいろいろな要素が出てまいると思いますけれども、例えばそれは、アメリカの国際収支の問題であるとか我が国の資本流出の問題であるとかいろいろございましょうと思いますが、ファンダメンタルズを反映するに至りました以上は、今後は市場の動きによって相場というものは決まるべきものであって、それが乱高下というようなことでなく円滑に動いております限りは、政府が本来介入をするということにはフロートの精神からいいましておのずから限度があるし、またそれは必要のないものである、こういう考え方であろうと思います。  そこで、第二段のお尋ねでございますいわゆる介入の問題でありますが、ただいま申し上げたことからおのずからお答えになっておるかと思いますけれども、もともと市場が非常に乱高下いたしますときに介入をするということはプラザ合意でもございますし、また東京サミットでも一般に認められておることでございます。ただ、介入ということは性質上事前に提議をしたり言ったりするということには本来なじまないものでございますし、いわんや、ただいまのお尋ねの場合他国が介入をするかどうかということでございますと、これは私は申し上げることを差し控えるのが適当ではないかと思います。ただその場合、このたびの共同声明の中に市場の諸問題について協力をするという文言がございます。「エクスチェンジ マーケット イシューズ」というふうに、わざわざ市場ということを申しておりますので、この点は御留意をいただいてもよろしい点ではないかと思います。
  68. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 この共同新聞発表の内容を見て私は思うのですが、昨年の九月二十七日以来の経過考えますと、変動相場制が正常に機能しているという状態ではないんじゃないか。確かにファンダメンタルズにはさまざまの要素がございます。さまざまのエレメントがありますけれども、また日米間では貿易収支で非常に大きな赤字、黒字が存在するということも事実であります。しかし、昨年九月二十七日以来の経過を見ますと、これは日銀の方でも、また当時竹下さんが大蔵大臣円高大臣と言われたそうでございますけれども、やはりあるときには大体二百円ターゲットというようなさまざまな御発言をなさいました。元財務官の大場さんも、何か最近新聞にそんなことを書かれておりました。二百円ぐらいが目標だったんだ、ちょっと大きくなり過ぎたというような意味のことが書いてございました。またあるときには百八十円というふうな、さまざまのサゼストもございました。私は、現在の日本経済のファンダメンタルズからして今の水準というのは果たして妥当なんだろうか、余りにも急激、大幅に来たというのがだれが見ても今日の状態ではないだろうか、購買力平価からすれば二百円前後とかいろいろな試算もありますけれども、もっとそういう点を御判断なさるべきではないだろうか、したがって現在のこのレートがファンダメンタルズとおおむね合致するという判断は日本からしたら違うんじゃないだろうかと思うのですが、どうでしょうか。
  69. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その点につきましては先ほども途中まで申し上げましたが、現在のレートがプラザで考えておりましたファンダメンタルズに合致するに至ったと申しますことは、これで為替をマーケットに任せてよい、こういう意味合いにお考えいただいたらいかがかと思います。その場合、例えばいわゆるJカーブと言われておりましたものもおのずから長さの限度がございます。したがいまして、米国の貿易収支が改善をする、あるいはまた、我が国の長期資本取引は月に今や百億ドルに近い大きさの流出をしておるといったようないろいろな状況が自由市場で起こっておるわけでございますから、それらがいわゆるフロートの本来の姿に返って市場を動かしていくということがこれからの姿であろう、こういうふうにお考えいただけばよろしいのじゃないかと思います。
  70. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 今後の経済論争の中でも大事なテーマだろうと思います。また、余りにも急激、大幅というのがこの一年間の共通の印象ですね、経済界でも。特に中小企業の皆さんにとっては非常に深刻な状態になっているというふうなことだと思います。そしてまた、失業、雇用問題についても重大な局面にあるというふうなわけでありまして、これはまた論議をしてまいりましょう。  一つ、大蔵大臣、共同新聞発表に関連をして私が疑問に思いますのは、この中で朝から議論してまいりました、しかもまた総理はこれから考えてまいります、まだ判断する段階ではありません、さまざまの作業の途中でありますと言われておりましたが、税制問題ですね。そういう段階にあることを総理も言われており、私の質問にも今明確に答えられないということですね。タイプ別にどうこう言えませんというふうな段階にあるわけですが、その税制改革の実行をこの共同新聞発表の中でアメリカに約束をしているわけであります。しかもその中には具体的に法人税率、実効税率を五〇%以下に、所得税についても、あるいはこれは意味がわからぬですが、財政再建を引き続き継続するための財源を確保しながらと、税制に関連してありますね。今こういう段階、こういう税制議論の段階にあるというのを、なぜあなたはベーカー財務長官との間に共同の意思表示として織り込まれたということなんですか。これは対外的にも公約として責任を持つという段階では今税制の議論自体がない。しかもあなたはこれから税制の改革、執行について閣内で担当責任大臣というふうなことになるわけでありまして、私は、今の段階であなたがアメリカと約束をなさって、ベーカー財務長官と共同で新聞発表なさったというのは非常に問題だと思いますが、どうでしょう。
  71. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この点には若干の経緯があるわけでございます。米国側がこの二カ月ぐらいの過去におきまして大きな税制改正ができるかできないかという非常に大きな問題についての政治的な決断をいたしましたことは御承知のとおりでございますが、そのような話が九月のころからベーカー長官と私との間で議論になっておりまして、日本の税制改正についてはどうなっておるのかというような話もいたしたわけでございます。  その段階におきまして、我が国では政府の税調が既に中間報告をしておられまして、その中では所得税、法人税について、ここに書いてありますような方向を既に出しておられました。この点は、その方向に関します限り、すなわち二つの直接税について軽減措置をとろうということは、私どもの党の中でも既にそれ以前にコンセンサスのあったことでございますし、税調としてもそういうことを言っておられますから、その具体的な姿はなお今後の問題といたしましても、国会の御承認があるならばそういう税制改正をいたしたいということは、これは政府の意思として私は申し上げても間違いのないことである。ただその場合に、先ほど言われましたようにアメリカと違いまして、これは歳入中立的である、財政再建中でございますから。このことを言い忘れるわけにはいかないというのが歳入中立云々という部分でございます。  そういったような意味で、所得税及び法人税が軽減されますことは、かねて総理が言っておられますいわば事業活動に対する、あるいは経済活動に対するいい意味での刺激を与えることはもう明らかでございますし、また国民にそういう選択の幅も与える、こういう意味で私は、これは日本のこれからの経済成長全般に寄与していくというふうに判断をいたしておりまして、それを述べたわけでございます。
  72. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 大蔵大臣答弁がございましたが、きょうの私の質問の中でも、何か税制改革の方途についての具体像を、また中曽根首相のお考えになっている具体像をもっと明確にしていただきたいということを大分時間をとって申し上げたのですが、確たる御返答がございませんでした、アイ・エヌ・ジーのような話でありまして。にもかかわらず大蔵大臣の日米共同新聞発表ではこのような内容を出されている、やはり非常に内容の把握としておかしいというふうに私は思うわけでありますが、時間もなんですから次に入りたいと思います。  日銀からお見えになっておりまして、お待たせしておりまして恐縮でございます。もっといろんなお話を伺いたかったのですが、時間も迫ってまいりますので、四次の公定歩合引き下げに関連をしてお伺いいたします。  今までこの話題はずっとあったわけでありますが、日本銀行としては、中央銀行としては消極的な態度をずっととられてまいりました。金融は十分緩んでいるし、これ以上緩和いたしますと、さまざま過剰流動性の危険に近い状態が生まれてくるというふうな御見解総裁も副総裁もなさっていたわけであります。今回の経過の中では、先ほど議論いたしました日米大蔵大臣共同新聞発表あるいは補正予算の提出、日本銀行の公定歩合の引き下げ、同日にセットして行われるというふうなシナリオになっていたようでありますが、何かこういうことを考えますと、国内的側面よりもアメリカに押しまくられてこうなったんじゃないかというふうな評論もございます、そんな気がしてなりません。今までの消極的な態度、その心配がなくなったのか、どう変更されたのかという中央銀行としての判断を伺いたいと思います。  それからもう一つ、今まで中央銀行として言われてきたさまざまの心配がなおさら大きくなるだろうというのは事実だと思います。何か土地の暴騰と申しましょうか、こういうものに対して節度ある融資を各金融機関に要請をしたというふうなお話があったようでありますが、不動産取引を金融機関に自粛をしてもらう、節度ある融資をしなさいと言う程度で、今対応がきちんといくだろうかと思いますと、そんな段階では、またそういう状況ではないだろうというふうな気がいたします。言うならば、昭和四十七、八年の過剰流動性の時代ですね、大変な時代でしたが、あれに近いような似た状態が起こっているのではないかということもさまざまなところから言われているわけであります。これら今まで心配したことがこれによってなおさら大きくなるかもしれません。中央銀行としてどうなさいますか。  その二点お伺いいたします。
  73. 三重野康

    三重野参考人 先生御指摘のとおり、先月三十一日に公定歩合三・五%から三%に引き下げまして、その翌十一月一日から実施いたしましたわけでございますが、これは一つは、やはり国内の景気がいま一つぱっとしない、もちろん私どもが今まで申し上げてきたとおり、個人の消費需要、住宅投資それから非製造業の設備投資、これは案外に底がたいものが続いておりまして、景気全体の下支えはしておりますけれども、ただ円高によるデフレショックというのが主として輸出関連企業に色濃く影を落としておりまして、雇用もじりじり悪くなる、それから全体の景況感も停滞の度が加わってきた、こういう現況にかんがみまして、政府が総合経済対策に基づく補正予算国会に提出した機をとらえまして、公定歩合を下げたわけであります。  もちろん、先生が御指摘のとおり、同日発表されました日米共同宣言によりまして、為替レート安定に関する合意が得られた。このことは、為替がとにかく安定することは企業がこういった業況に対応しやすくなるということを私どもも大いに評価した次第でございます。  ただ、これまた先生が御指摘のとおり、いわゆるマネーサプライが高目に推移しておりまして、それを背景にしていわゆる金余り現象、株だとか土地だとかあるいはゴルフの会員権その他とか、こういった金余り現象は、その心配はいまだ解消いたしておりません。ただ、マネーサプライがここにきて加速度を加えて過剰流動性になるという心配はございませんけれども、引き続き厳にやはり注目していかなければならないというふうに考えております。もちろん、土地とかそういうものは金融政策のみによって片づく問題ではございませんけれども、先生が御指摘のように、公定歩合引き下げの日に総裁より、金融機関の各業態の代表者に今後の節度のある融資をお願いした次第でございます。  結局、今回の私どもの公定歩合の引き下げは、景気と為替の安定に、より優先度を置いた決定、そういうふうに理解をしていただきたいと思います。
  74. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 私は今のお話を伺って思いますが、時間がありませんから申しません、これ以上この問題で時間をとりませんが、やはりこの総合的な対応をどうするのかということを真剣に考えなくちゃならぬ時期ではないだろうかというふうな気がいたします。  例えば、今副総裁言われましたような公定歩合引き下げについての判断がありました。さまざまの副作用が起こってまいります。どうするのか。これは中央銀行、日銀としての規制範囲では限界もあると思います。総合的なさまざまの手配をとらなければならないというふうなことであろうと思いまして、機敏な対応を総合的にとっていただくように強く要望をしたいと思います。  同僚議員とかわりますので最後に一つだけ財政問題についてお伺いしたいのですが、今度の補正予算を見ましても、私はやはり非常に無理があると思います。今度の効果が、四%成長成るのか成らないのか。これは民間の各機関を見ましても、とても四%はいかないということでありますし、何か通産省も経企庁もそういう試算をなさっているようであります。いずれもう近い時期にそれが予算編成の前提としても明らかにされなければならないというふうなことになるわけでありますが、四%成長は不可能だという現実はもう明らかだと思いますので、それは別にいたしましても、今度の補正予算の編成の中で大量の国債発行もございました。朝申し上げましたが、私どもは、六十年度の剰余金は当然やはり、些少ですけれどもサラリーマンへの取り過ぎの分ですから減税財源に回されるべきであろうというふうに思ってまいりましたし、実務者レベルでも話をしてまいりましたが、それを拒否をして今度の案が組まれました。また、地方財政のことにつきましても四千五百億円でしたか、この額を交付税からカットをする。たしか五十九年の自治大臣とのお約束からすればこういうことがあってはならぬはずでありますし、資金運用部から借りるわけでありますから利息もつきますから、自治体も、あとの交付税特会をどうするのか、大変な問題であります。そういうこともいろいろと無理に無理を重ねて今日にきている。それは補正予算だけではない、この六十一年度予算についても、六十年度の予算編成のときにも私どもは、非常にゆがんだ、無理を重ねてやってきているということを強調したわけであります。  私どもの主張は、いずれにしても、六十五年度赤字公債脱却というのはもう不可能です、だれが考えてもできません。毎年毎年の赤字公債の年度内の、あの六十五年度ゼロにするための減らし方を見ても、目標どおり毎年いってないわけですね。そういう実態を見て難しいので、今、新しい方程式にいく必要があるんじゃないか。新しい方程式を、若干期間を長くしても経済と財政と税制とを含めた確実なプランを組んでそれを確実に実行していく、そういうことをやるべき時期であろうというふうに私どもは主張してまいったわけでありますし、それは経済界、マスコミ界を見ましても、架空の六十五年目標ではなくて確とした方向づけを出してもらいたいというのがみんなの気持ちであろうというふうに実は思うわけであります。  その点、今度の補正を見ましても非常に大事なことでありますし、またこの補正から六十二年度の予算編成をどうするのかということと兼ね合っても大事な問題であると思いますが、まず六十五年脱却という関連をした大事な問題、しかも総理の公約でございますから、この辺、現実に合わせながら、見ながらどうお考えになりますか。
  75. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ことしの補正予算については、大蔵省も非常に努力していただきまして、行政改革一つの念願である赤字公債をこのために出さなかった、そういう一つの線を守ってもらったのであります。そのかわりといいますか、剰余金四千余億円は、税収が約一兆一千億円くらい景気の停滞のために不足してきておりますので、そういうものの補てん等も含めて総合的に使わしていただいた、そういうことでございます。  それから、六十五年赤字公債依存体質脱却というこの旗はおろさないと前から申し上げておりますが、ともかくあらゆる努力をしてやっていきたい。予算編成のときに節約をしていくというのもそうですし、あるいは景気の弾力的な、機動的な金融政策をやっていくというのもそうですし、あるいは電電以下の国有財産の売却ということによって税外収入を得るというのもそうでございますし、ともかくあらゆる努力をしてやっていきたい、そう念じておる次第でございます。  一たん緩めるというと、これは相当行政需要の要求が出てまいりまして、なかなか、今までのやってきたことが水泡に帰するという心配もないことはないのであります。
  76. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 総理から、今までと同じ筋の意思表示がございました。  大蔵大臣、いかがでしょうか。これから予算編成になりますね。今度の補正でもいろいろと無理もあり、また大変だったと思います。来年度予算編成を、これはもう厳しいマイナスシーリングに今あるわけですから、これを経済実態に合わして、しかも補正予算の三兆六千億円の総合経済対策という大きなものをバックにした補正予算をどうつなげて来年度の予算に行くのですか。非常に難しい問題ですね。私は、どうしてもやはり発想の転換だろうと思うのですね。ニューリーダーの、また政策通の宮澤さんという意味じゃありませんけれども、やはりそういう何か転換が求められている。確かに総理大臣のおっしゃったような目標設定、目標としてはこうしたいというのはあるでしょう。しかし、その目標は現実に不可能だというふうにみんなから言われています。それならば、緩まるのが心配だと言いますが、そういう御心配ならば、やはり不可能な目標で言うよりも、手がたく、かた目に、こうなりますというプランをつくった方がまた国民に信頼をされる再建プランになるのではないか、またそういう方が大事ではないか。今のままだと無理に無理な理屈ですね。来年の通常国会で六十二年度予算の審議をするわけでありますが、非常に無理な説明をしなければならぬというふうなことになってしまうのではないか。やはり財政再建の将来について、私どももいろいろ積極的な意見を持っておりますから、お考えになる時期にもう来たんじゃないかというふうに思いますが、担当の大蔵大臣としてはどうお考えでしょうか。
  77. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いわゆる国債費が一般会計の中で二割を超えるに至りまして、この点はなかなかこれからも改善をいたさない見通しの中でございますから、しかもそういう中で税収は一兆一千億円余りも減った、そういう状況の中でなお内外の必要から内需振興をしなければならないということでございますから、今私どもやっておりますことは、確かにいろんな観点からごらんになりましてももう一つ十分でない、いろんな観点から、どこから見ても十分でないということをやっておるだろうとおっしゃいますことは、私は真実、本当であると思います。今の財政には実際それぐらいの力しかない。しかし、だからといってほっておくわけにはいかないというのが今我が国が内外に置かれました立場であろうと思いまして、その間できるだけのことを一生懸命やっておるというのが、正直を申しましてこのたびの補正予算の姿でございます。  それで、しかし六十五年度特例公債依存の体質から脱却することはもう無理ではないかとおっしゃれば、それは私も容易ならぬことだということはよく存じております。が、しかし、さりとて、一般会計の国債費がこれだけふえていくということを考えますと、やはりそういう一つの目標は持っておりませんと、どうしても予算の節減ということはやりにくいという現実の問題がございまして、来年度もそうやらしていただきたいと考えておるわけでございます。  ただ、そこで、少し先の問題としてでございましたら、もし幸いにして、こうやっていわゆる円高といったようなことにも終止符が打たれる、あるいはアメリカの貿易収支等々にも改善の見込みがやがてあるといったようなこと、それから我が国も税制改正等々もお願いをいたしまして、いわばいろいろな意味での状況が将来いい方に向かっていく段階におきまして、この六十五年度云々ということはもう一度考えるべきときが来るかもしれない。ただいまこれを、この看板を仮におろせとおっしゃいましたときに、それならかわりに何を置くかということになりますと、なかなかそれについては合意が得がたいと申しますか、見通しのつきにくい今でございますので、それがもう少しはっきりいたしました段階で、ただいま言われますことは考えるべきことかと思っております。
  78. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 交代いたします。
  79. 砂田重民

    砂田委員長 この際、川崎寛治君より関連質疑の申し出があります。伊藤君の持ち時間の範囲内でこれを許します。川崎寛治君。
  80. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 大変大事な伊藤質問の時間にあえて関連をさせてもらいましたが、一九一〇年、明治四十三年の日韓併合条約に関する藤尾発言というものにつきましては、総理あるいは外務大臣がそれぞれこれまで御答弁になっておりますけれども、あいまいなままになっておりますために、第二の藤尾発言あるいは亀井発言、こういうことで相次いでおります。  そこで、私はきょうは端的にお尋ねをいたしますので、イエスかノーか、こういうことで総理はお答えいただきたいのであります。  一九六五年、昭和四十年の十一月五日、日韓特別委員会で社会党の前委員長石橋政嗣さんが、当時の佐藤栄作総理に、この条約の問題について質問をいたしております。  石橋「併合に関する条約、これは対等の立場で自主的に締結されたものであるというふうにお考えになっておられるかどうか、この点についてお答えを願います。」質問ですね。それに対しまして、佐藤内閣総理大臣「対等の立場で、また自由意思でこの条約が締結された、かように思っております。」こういう答弁であります。中曽根総理はこの佐藤答弁をどうお考えになりますか。イエスかノーかですよ。
  81. 倉成正

    ○倉成国務大臣 御指摘の日韓基本条約第二条は、日韓併合条約及び――しかし、経過をやはり説明しないとわかりませんから。  御指摘の条約第二条は、日韓併合条約及びそれ以前のすべてのいわゆるIH条約が、基本関係条約締結の時点においてはもはや無効となっているとの客観的事実を表明したものでございます。  なお、今お話しの日韓併合条約が当時有効であったかとの点については、昭和四十年の日韓条約国会審議の際、かつては有効であった旨、政府側より答弁しているところでありますが、右立場については現在も変わりございません。  いずれにせよ、同条約は基本関係条約によりもはや無効であることが確認されており、その評価については日韓間の問題としては決着済みであると心得ております。
  82. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 日韓併合条約の成立過程について佐藤総理はお答えになっているわけです。ところが、今外務大臣がお答えになっておるのは、日韓基本条約に基づいて、一九四八年八月十五日、いわゆる大韓民国が独立をしたそのときに無効になったという、併合条約の効力そのものについての扱いでありまして、つまり併合条約の成立過程という問題ではないのです。だから、私が今お尋ねしているのは、併合条約の成立過程について佐藤総理がお答えになっておるのでありますから、そのことをどうお考えになるか、併合条約の成立過程を聞いておるのです。全然違うことです。あなたは国際法の基礎知識が全然ないじゃないですか。そういういいかげんな答弁でごまかしちゃいかぬ。外務委員会も全部それであなたはしておるわけです。だからここをはっきりしなさい。  それならば、藤尾前文部大臣は、おれの説が正しいんだ、こう言っている。それは佐藤さんの説に立っておるからですよ。だから、それがどうかということを私は総理に聞いているのですから、佐藤さんのお答えになったことをあなたはどうお考えになるか、それをはっきりしていただきたい。
  83. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 当時の状況については専門家の御意見をよく承らなければわかりませんが、私の歴史的知識等で見ますというと、形式的には合意として成立しております。しかし、実質的にあのときの歴史的事情というものが背景にありまして、その背景のもとにそういう合意が成立したということは否定できないと思います。
  84. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでは、佐藤総理のお答えになったことはお認めになるのですか、それともそうではないと。つまり藤尾さんが言っておられる言い方は、この成立の過程において相手側にも責任がある、つまりフィフティー・フィフティーという責任じゃない。だから八〇対二〇、そういう責任が相手側にもあるというふうにお考えになるのか、いやそうじゃないというふうにお考えになるのか。  つまり、川俣委員の先般の予算委員会における質問についても、あなたは、部分的に不都合な点がある、非は非として認めなければならない、こう言っておられるのです。それなら、部分的に不都合な点があるということ、あるいは非は非として認めなければならないということ、それはこの併合条約の成立過程についての藤尾発言、そのことについての評価の問題でございますから、そこを明らかにしていただきたいのです。
  85. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ですから、条約として成立しているという合意は行われておる、これは事実であります。しかし、その合意が行われる背景というものを見るとやはりそのときのいろいろな歴史的事情がある、それは否定できないと申し上げておるとおりであります。
  86. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それならば、藤尾さんを罷免をされた――つまり相手側にも責任があるのだ、歴史的ないろんなあれもある、しかしその過程があるのだ、こういうことになりますと、藤尾さんを罷免されたその理由というのは出てこないわけなんですね。何ですか。
  87. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国務大臣として不適切な発言であったと思ったから、やめてもらった次第であります。
  88. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 だからあなたは、条約の成立過程についての藤尾発言を不適切だ、こう言われるわけですか。
  89. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 あの当時の状況というものに対して、日本側のあり方について、自己批判すべき点も私はあったと思うのです。そういう自己批判すべき点について目をふさぐというような性格が強いというような発言ではなかったかと私は思います。そういう意味におきまして、相手側の国民感情を傷つけた。日韓関係は大事な関係であります。そういう意味において国務大臣としての発言では適切でない。これが学者が言うとか、評論家が言うとか、個人が言うというならこれは話は別でありますが、国務大臣として大きな責任を持っている場合には不適切である、こう考えたわけです。
  90. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 国会で佐藤総理が、日韓基本条約の論議の際に、審議の際に答えているわけなんですね。  では、外務省に聞きますけれども、この佐藤総理の日韓併合条約に関する答弁、これは有権解釈と外務省は認めておるわけですか。
  91. 小和田恒

    ○小和田政府委員 先ほど外務大臣からお答えいたしましたように、昭和四十年の日韓諸条約の国会における御審議の際に、政府を代表する立場でお答えをしたわけでございます。ここで言っております「対等の立場で、また自由意思でこの条約が締結された、」ということの内容は、先ほどから総理大臣がお答えになりましたように、法的な問題として、法的には有効に締結され実施された条約であったという事実を述べたものでございまして、その問題と、その当時の政治的その他の背景とは別な問題であるということでございます。
  92. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 だから有効、こういうことで、佐藤総理の「対等の立場で、また自由意思でこの条約が締結された、かように思っております。」こういう当時の佐藤総理答弁を有権解釈として認められたわけです。だからそうなりますと、これは端的なんですよ、藤尾さんの罷免の問題については、不適当だ、非は非として認めなければならない、こう言っているのですね、国務大臣としてと。こう言っておられるわけでありますが、問題は、この併合条約の成立過程についての藤尾さんの発言、それが適当でない、こうなるのですから、それならば、この併合条約の成立過程についての佐藤答弁というものをどう判断をするかということによって分かれてくるわけです。だからそうであるならば、なぜ藤尾さんの罷免、こういうことになったのですかと。これが有効だ、対等の立場で、自由意思でこの条約が締結されたんだ、こういうことになりますならば、藤尾罷免ということの理由が明らかじゃないのです。――だから、言わない方がいい場合があるというその議論もいろいろ言っておりますけれども、これはしかしきちっとしておかなければ、第二の藤尾発言になるし、また亀井発言と、次々に発展をしていくわけなんです。  日韓条約が締結されて二十年でございますけれども、今やはり日本は非常に大事なところにある。大事なところにあるだけに、これはきちっとしておかなければいかぬ。だから、ではこれが有効だという立場であるならば藤尾罷免は理由が成り立たないじゃないですか。改めて伺います、重ねて伺います。
  93. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今申し上げましたように形式的には合意として成立しておる、そしてそれが存在してきたことも事実であります。しかしそれが、形式的合意が行われる背景、歴史的事情という面を見るというと、あのときのいろいろな国際関係やら日本側の考えというものもあり、歴史的事情もあって、そういう点から見まして、相手の国民感情を傷つけるような発言内容であったと私は感じたのであります。だから日本がやったことがみんな正しいとは私は思っておりません。間違いもあったし非な点もあったと思っておるのです。そういうような面について目をふさぐということは必ずしもよくない、しかし条約としては形式的には一応は合意として成立している、これは事実であります。しかし、そういういろいろな過去の点も含めまして日韓基本条約をつくるときにあのような表現になった、そういうふうに考えております。
  94. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 そうしましたら、今のあなたのお答えは、これは藤尾さんと同じ答えなんですよ、同じ答弁なんですよ。「形式的にも事実の上でも、両国の合意の上に成立しているわけです。」藤尾さんはこう言っているのです。そして「韓国側にもやはり幾らかの責任なり、考えるべき点はあると思うんです。」そして藤尾さんも、「合意を認めさせるための日本側の圧力はあったかもしれない。」ちゃんと触れているのですよ。そうしたらどこが悪いのですか。だから、日韓併合条約の成立過程についての佐藤答弁というものをきちっとしなければ、これは続くのです。そうでしょう。だから、今のあなたのお答えと、藤尾さんの「形式的にも事実の上でも、両国の合意の上に成立している」「韓国側にもやはり幾らかの責任なり、考えるべき点はあると思うんです。」こう言っているのと、どこが違うのですか。
  95. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 あの文章全体読んでみまして、私が重視しているのは、そういう部分もあります。それから、もし日本がやらなかったらほかの国にやられているだろうという部分がありますね。私はこの言葉を非常に遺憾に思っておるのであります。こんな失礼な言葉はない、そう私は思っておりました。
  96. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 しかし、肝心なことは、ここでは日韓の併合条約のことなんです。だから藤尾さんは相次いで、今、おれの説は正しいのだ、こう言って主張して歩いているのでしょう。それならやはりこれをけじめをつけなければいかぬのですよ。だから、この併合条約の成立過程についてのこの藤尾発言のどこが悪いのか、どこが間違っているのか。これは併合条約が根本なんですよ、基本なんだから。伺います。
  97. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 併合条約の問題については先ほど申し上げたとおりです。しかし、私は日本人として、自分で自分の良心にかんがみてみまして、悪いところは悪いとやはり感じなければならぬし、言わなきゃならぬと思うのです。それがやはり国際信用を得るもとだと思っておる。私は、自分で感じた一つのポイントは、先ほど申し上げたように、もし日本がやらなかったらほかの国がやっただろうというその部分で、人がそれを重視しようがしまいが、私自体は、これは非常に失礼な発言である、遺憾である、そう思っておるのであります。
  98. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それでありますならば、やはり佐藤発言、これは肯定をする、こういうことでよろしいのですね。
  99. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、形式的には合意として成立しておる。しかし、内容や背景から見れば問題はあったと申し上げておるわけです。
  100. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 これは、当時石橋氏が佐藤総理との間でやりとりをしていました中に、外務省編さんの日本外交文書第三十八巻の細かな経過というのを言っておるわけですね。これは合意とかそういうものじゃないのです。そして、これは藤尾さんの発言の間違いでもありますけれども伊藤博文氏はその条約調印の前にはハルビンの駅頭で暗殺されておるわけでありますし、また高宗もこれは退位をさせられておるわけであります。そういう歴史上の事実の違いもございます。しかし、そういうことはこれは教科書の問題にもなりますし、また日本が今大国になって経済大国として世界に臨んでいく、先ほど伊藤君の質問にもございましたけれども、国際人としてこれから日本が生きてまいります場合に、アジアの諸国というのは日本の今の動きというものを極めて注目しておるわけなんです。でありますから、私は大事な歴史の問題というのは振り返ることが大事でありまして、歴史に関しては過去に犯したみずからの過ちというものを直視しなければいけない、こう思うのです。そしてそこから出発をしていくということがなければ再び繰り返していく、こういうことになります。  ワイツゼッカー大統領の問題については、土井委員長も本会議で指摘をされました。つまり西ドイツにおいては、ナチスの問題について繰り返し繰り返し執拗にこれは追及をし、みずからは過ちを犯さないということを誓っているわけです。でありますから、日本の朝鮮半島や中国に対するそういう過ちというものをきちっとしますためには、この併合条約についてのその評価の問題はきちっと成立過程というものをしておくということが、私は日韓の関係を、日本と朝鮮半島との問題を進めていきます上においても大変大事だと思うし、そういう教育が、歴史教育がきちっとなされなければならない。  でありますから、私は今の中曽根首相のお答えを見ますならば、佐藤総理の答えておられます点を一歩も出ていない、そう思わざるを得ないのです。でありますから、佐藤総理の「対等の立場で、また自由意思でこの条約が締結された、かように思っております。」という点については、表現にいささかのニュアンスの違いはあるにしましても本質は変わらない、こう思うのです。でありますから、この点を改めて重ねてお尋ねします。
  101. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今申し上げたとおりでありまして、聞いている方はよく判断していただけるだろうと思います。
  102. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それじゃ、藤尾さんを罷免したというのは、この藤尾さんの発言の「清国が日本に負け、替って日本が進出しようとしたところへ三国干渉でしょう。日本は屈従を強いられ、その後にノコノコと出てきたのがロシアですね。」このことであなたは藤尾さんを罷免されたのですか。
  103. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 たしか日韓基本条約の内容でありましたか、あのとき締結するときに、日本は反省すると書いてあったと記憶しています。それから中国との関係においてもやはり反省する、あのときの共同宣言あるいは平和回復の条約において。教訓とし反省するというのは、あのころ言われた言葉です。しかし文章になっているのは、たしか日本は反省するという言葉があったと自分の頭にあります。つまり日本は、あの両国と国交を回復するときには、自分の過去の行為を反省するということをやはり言っておるのですよ。反省すべきものもあったと私は思うのです。それを私は率直に申し上げておるのです。佐藤さんも腹の中にはそういう気持ちがあったでしょう。しかし、あの場合に言ったのは、形式的な合意、そういうものあるいは合法性というものを一国の首相として言っておるのであります。私は全般を見て、そして両国の将来のためも考え国民感情も考えて今のような発言をしている、このことを御認識願いたいと思います。
  104. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それならば、あの藤尾さんの発言がなぜ出てきたのですか。あなたはこれは深刻にお考えになられたと思うけれども、日韓併合条約に関する成立過程について藤尾さんの発言が出てきたわけなんです。これはこれからまた繰り返されるのですよ。だから、なぜ出てきたとお考えになりますか。
  105. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは藤尾君に聞いてください。私は反省力が国務大臣として足りないと思っておる。
  106. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 藤尾さんは今でも、自分の発言は正しい、こう言っておる。だから、これはずっと出てくるのですよ。そうするとこれは間違っているんですか、それとも日韓併合――今藤尾さんが言っているのは、このロシア云々ということじゃなくて、日韓併合条約に関する成立過程の考え方を、おれの方が正しいんだ、こう言っておられるわけですから、その点は藤尾さんと同じだ、こう受け取ってよろしいんですね。
  107. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私が藤尾君と同じだったら罷免するはずないじゃないですか。
  108. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 だから、今の日韓併合条約の成立過程についての藤尾発言、つまりロシア、清国云々と、三国干渉云々というところを先ほどあなたは言われた。しかしこれを除いて、日韓併合条約の成立過程についての藤尾発言というのは正しいのですか、間違いないのですか、間違っているのですか。
  109. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国務大臣として、相手の大事な国民に対するおもんばかりを欠いた不適切な発言であると思っております。
  110. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 それは、この条約の成立過程についての発言が不適切だ、こういうことですか。
  111. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 あの対談全部読んでみて、そういう部分がかなりあった、今の点も一つの点です。
  112. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 私は、この条約の成立過程については、日韓基本条約のときにもいろいろ議論ございます、しかし、これは教科書の面においてもそうだし、歴史教育の上においてもそうですし、やはりきちっとしておかなければならないポイントだ、こう思うのです。だから、この佐藤総理の発言に基づいております日本政府考え方、それが依然として残っておる、残っておるというかその上に立っておる、有権解釈として進めておるということについては大変問題がある、私はこう思うのです。  文部大臣、この点についての歴史教育上の文部大臣考え方を伺いたいと思います。――それじゃ中曽根総理、文部大臣いませんから、歴史教育の上においてこの日韓の問題というのは非常に次々に出てくるわけですから、やはり正しい教育というものを、過去をきちっと見る、そこから次の新しい日本の方向というのを出してこないといかぬわけですね。この歴史教育についての中曽根首相の見解を伺いたいと思います。
  113. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本のいいところはいいところ、悪いところは悪いところ、やはり率直に国民に教える必要があると私は思います。しかし、民族とか国家という、日本のような場合は特に長い二千年以上の歴史を持っておる、自然的な文化的な共同体的性格を持っておるので、契約国家ではないです。そういう意味においては、みんながやはり一つの運命共同体的意思を持って長い間続けてきた国であると思っており、したがって、勝ったときだけが国家じゃない、負けたときも国家だ、栄辱をともにしながらさらによい国へ、さらに世界から尊敬される国へしていこうと思って精進努力するのが国家だ、私はそう思っております。
  114. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 勝っても国家、負けても国家、栄辱云々というのはあなたの好きな言葉ですけれども、しかし、特に日韓のこの不幸な歴史、これについてはやはり厳しく自己批判をするということが大事だと私は思います。でありますから、この併合条約の問題については正しくしなければいけない。  例えば、触れておきますと、伊藤博文が、これは統監であったわけでありますが、報告をしておる中で言っておりますことは、「一般人民の意向を察する云々のごさたに至っては奇怪千万と存ず。……人民の意向云々とあるは、これ人民を扇動し、日本の提案に反抗を試みんとのおぼしめしと推せらる。」おぼしめしというのは、相手の高宗、王のことですね。「これ容易ならざる責任を陛下みずからとらせらるるに至らんことをおそる。何となれば貴国の人民の幼稚なる、もとより外交のことに暗く、世界の大勢を知る道理なし。」これは本当にもう私は、本来ここで触れるべきことじゃないかもしれません。しかし、そういうことでこの日韓併合条約というのは押しつけてきているわけなんです。  でありますから、その過程においてこれを対等の立場、自由意思、相手に責任あり、これはもう大きな間違いだ、私はこう思うのです。ここのところは根本的に反省をし、そこをけじめをつけるということが、日本と韓国との問題、日本と朝鮮半島との問題、あるいはアジアとの問題においても大変大事な点だ、こういうふうに思います。でありますから、もう一度中曽根首相のお考えを伺います。
  115. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日韓基本条約をつくるときに、日本は反省すると言って、過去の行為を反省するとやはりはっきり言っておるのでありまして、そういう点についてはその言葉で私はけりがついていると思っております。しかし、問題は、反省の実効が続いていかなければならぬということなので、そういう意味で私は今回の罷免も行われたとお考え願いたいと思うのです。
  116. 川崎寛治

    川崎(寛)委員 終わろうと思いましたけれども、今反省の実効が上がらにゃいかぬ、反省の実効が上がらにゃいかぬという、それが内閣の文部大臣が反省なしにやった、これはもう大変な問題ですね。今後またさらに追及いたしてまいりたいと思います。  終わります。
  117. 砂田重民

    砂田委員長 これにて伊藤君、川崎君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五分休憩      ────◇─────     午後一時二分開議
  118. 砂田重民

    砂田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。吹田愰君。
  119. 吹田愰

    ○吹田委員 私は、今回の予算の補正が提出されておりますことから、景気対策等を中心にしましてもろもろの問題につきまして御質問するわけでありますが、実は一時間の時間をいただいておるのでありますけれども、お願いし、聞きたいことが極めて多い、こういうことで、御答弁の方はひとつできるだけ簡略にお願いを申し上げておきたいと思うわけであります。  質問の第一は、景気対策と予算の執行についてであります。  緊急かつ重要課題でありますこの景気対策につきましては、簡単に御質問いたしますが、我が国は近時、世界の第二位の経済大国になったというふうに伝えられておるわけであります。しかしながら、ここに参りまして日本の国内の景気が非常に悪化しつつある、こういうふうに私どもは見ておるわけでありますが、特に、昨月の九月の五カ国蔵相会議以来急速に円高が進行いたしまして、円高不況、さらにデフレ傾向というような形になってまいりました。そういったことから、多くの国民の皆さん方も現在のデフレ傾向というものに大変困っているわけでありますが、一方では輸出の大幅な黒字という問題が出ております。そのために、やはり貿易摩擦というようなことから、生産調整あるいは雇用の調整まで進む業種が表面化してまいりました。  こういった状況の中において、政府とされまして種々の対策というものが今日立てられております。本月の一日におきましても、財政金融対策としまして第四次の公定歩合の引き下げが行われました。さらにまた、宮澤大蔵大臣とベーカー財務長官の日米間の共同声明もまことに意義深く伺ったわけであります。円とドルとの為替相場の安定にその主眼が置かれ、日本経済の安定成長の維持促進のために全力投球されておりますことは、私は大変高く評価しておるわけであります。  しかしながら、今回提出されました補正予算というものを見ますと、まことに不満であります。不服であります。いかに考えてみましても、この程度のことでは、今日の日本経済の景気対策には十分対応できるかどうかということについては疑問が残っております。しかしながら、ないそでは振れないというのが大蔵大臣の心境だろうと思うのでありますが、そのないそでを振られました涙ぐましい結晶というのが今回のこの予算であろうかな、こう思っておるのでありまして、その辺につきまして、まず大蔵大臣といたしましてのこの対策と心情というものをお聞かせいただけたらと思います。
  120. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 簡潔にお答えせよという御注文でございますので、その御趣旨で申し上げますが、冒頭にお述べになりました日本経済現状についての認識は、私もほぼ同様に考えております。  それにつきまして、実はその財政再建の問題でございますが、一般会計の中で国債費が既に二割を占めるに至りました。これは今後大きくなる可能性が高いわけでございますので、いかにも財政の弾力性がございません。ございませんので、今回のようなときに十分なことができないということにもなりますので、やはり財政の再建というのは放てきするわけにはいかないという気持ちがございました。その両方のいわば相反するような状況の中で、このたびの予算を組ませていただきました。  この時期に補正をお願いいたしましたのも何年ぶりでございますし、また、一般の公共事業に建設国債を出すことにいたしましたのも八年ぶりでございましょうか、その点は意のあるところをお酌み取りいただきたいのでございますが、しかし他方で、何とか特例公債だけは出さないでおきたい、増発しないでおきたいという気持ちがございまして剰余金を使わせていただきました。そんなことで予算を組ませていただきまして、おのおのの御観点から十分でないということは私も感じておりますが、いろいろな観点から最大限の努力をいたしたつもりでございます。  なお、一片の補正予算でこの景気が回復する、改善されるとは思っておりませんので、いろいろな工夫を来年度にわたりましてもしていかなければならないと思っております。
  121. 吹田愰

    ○吹田委員 ただいま大蔵大臣から、非常に苦しい予算の中で工夫して、これが最大限のものであるということをお話しいただきましたが、私もそうであろうと思います。ただ、こうした苦しい財源をもって、予算をもって日本列島すべてに少しでも景気対策へということに向けるとすれば、それは効果的に使わなければならない、こう思うわけであります。そうなりますと、第一に私は、現在の我が国の会計年度の制度についてひとつ提言してみたいと思うわけであります。  日本列島は、御承知のように、北から南まで約二千八百キロに及ぶ長い国家であります。したがいまして、その間に非常に大きな土地条件の問題あるいは気象条件の違いもあります。こういう状況の中で、四月一日に始まりまして三月三十一日に終わるということは、これは効果的な執行ができるのであろうかどうであろうかということについて、私は従来から持論として疑問を持っておるわけであります。この四月一日に始まりというのは、調べてみますと、明治十九年に始まっているわけであります。しかも、この九十年間一貫して四月一日から三月三十一日へと会計年度が行われておるのでありますが、この基礎は何であったかということにつきまして調べてみたのですけれども、十分な文献はありません。ただ、地租の納期の関係ではなかろうか、こう言われているわけであります。  かつて、明治二年には十月一日の会計年度を持っております。さらに、明治六年には一月一日という暦年制度もとっております。あるいはまた、明治八年には七月一日から始まっております。しかし、明治十九年に現在の制度が設けられたわけでありますが、その前年に、我が長州の歴史的大先輩である伊藤公が第一次の内閣総理大臣であります。その伊藤公の時代にこれが決まったことだけは事実であります。私も同じ山口県に生をうける者として、この変更について提言するということにはじくじたるものがあります。ありますが、現在のようなこの日本列島の長い間におきまして、こうした景気問題を効果的に一つの方法として取り上げていこうということになりますと、この問題もひとつ研究の余地があるのではないか。非常に寒いとき、外に出ましても豪雪でどうにもならない、そういうときに役所がいろいろと審議をし、あるいは設計し工事の発注の準備をするということからすれば、暦年制度を採用する方が効果が上がるのではないか、こう思うわけであります。  そういった意味から、特にニュー行革審に入ろうとしておりますときでありますだけに、内閣総理大臣とされて、ひとつこの問題をニュー行革審にかけてでも検討するというような御意思があるかどうか。私は、これだけのわずかな予算を組んででもなおかつやらなければならぬということは、いかに財政が逼迫しておるかということでありますから、そういう意味から効果的な予算の執行ということを考えますと、これから百年も二百年も日本国というものが続く限りこの会計年度というものはあるわけでありますから、ここで御一考願うということも必要なことではないかと思うのでありますが、御答弁をいただきたいと思います。
  122. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 最近のことを調べてみますと、昭和五十二年にもこのような御指摘がございまして、当時の福田総理大臣がお答えになっておられますが、今となりますともう百年の歴史でございます。なかなか利害得失いろいろあるのではないかと考えておりまして、当時福田総理大臣がお答えになりましたのと実は余り違ったようなその後の変化もないように思っておりますが、しかし、十分慎重に検討させていただきます。  なお、確かに積雪寒冷地等々の問題がございますので、単年度予算になるべく拘束されないような形での国庫債務負担行為あるいは繰り越し等の制度の活用は、それにいたしましてもぜひ払ってまいらなければならないと思います。
  123. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 会計年度の問題は国政上の重大案件であるだろうと思います。会計年度が四月ということから学校も四月ということにもなりますし、日本の全般の制度はそれに準じて動いておるわけであります。確かに、公共事業という面だけ考えますともっと繰り上げてやった方がいい、そういう面もなきにしもあらずでありますが、それはそれでまた何か便法を考えるなり制度の改革考えるなりして、今急に四月というものを一月に変えるというそれほどの緊急性があるであろうかという気がいたしまして、これは大蔵省においてひとつ検討してもらいたい、そう思っております。
  124. 吹田愰

    ○吹田委員 今の御答弁はわからないわけではありませんが、新行革審というものも進むわけでありますから、一応の研究はしていただいていいのではなかろうか。もちろん、学校の問題もその他のことも全部影響することは承知の上で私は申し上げておるわけでありまして、ただ、百年の大計でありますから、ここで多少の厄介な問題が山積しておるとはいいながらやはりこの点もお考えいただくべきではなかろうか、これは申し上げておきます。  次に、地域間の経済問題における格差の問題でありますが、これは大都市圏とそうして地方圏とではかなり状況が違うわけでございます。民間活力の導入が社会資本充実のために役立つ、それを引き出せる地域とそうでない地域とがあるわけであります。そういった意味から、今日の我が国の地域的な格差というものはかなりの大きな問題があるわけであります。そういった意味で、これからの公共事業を執行する上に、今回の補正予算の割り当てにいたしましても分配にいたしましても、私は傾斜配分というものをここに大幅に取り入れる必要があるのではないか、このように思っておるわけであります。  さらに、産業間の格差も大変大きなものがあろうと思うのであります。今回の円高の不況によりまして、輸出関連の製造業を中心にその影響が非常に強くあらわれておりますことは先ほどちょっと申し上げたとおりでありますが、こうした業種の多い地域では停滞感が強まっております。とりわけ、構造不況業種の造船あるいは石炭鉱業あるいは製鉄などは、円高の影響も加わりまして一層厳しい状況に実は追い込まれている、御承知のとおりであります。これらの業種に依存しております多くの地域につきましては、いわゆる企業城下町と言われておりますが、そのような地域におきましては、雇用の情勢が悪化するなど地域経済全体が打撃をこうむっている。  一方、大都市圏におきましては、最近は不動産の投資の活発化等、いわゆる第三次産業、サービス業でありますが、こういったものが非常に活発になっております。そういったところにおきましては、景気をそういった業者が、第三次産業をやっております方々がリードしていくものですから、景気はある程度補われているという現況にあると思うのであります。そういう地域とその第三次産業を多くの力として持たない地域、そういうような地域との格差というものも認めながらこの際景気のバランスをとっていく、こういう点に御配慮願いたいと思うのでありますが、こういった点につきまして、大蔵大臣あるいは通産大臣なり経済企画庁長官からお答えをいただきたいと思います。
  125. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 便宜私からお答え申し上げますが、例えば北海道のようにもう恒常的な不況の地域、それからただいま御指摘のように造船、鉄鋼あるいは輸出関連での企業城下町等々の不況地域、それらに対して公共事業を重点的に傾斜配分をすべきであるということは言われるとおりだと思います。閣議におきましてもそういう議論が何度かございまして、所管大臣におかれましてそのように施策をお進めになっていらっしゃるというふうに了解をいたしております。
  126. 田村嘉朗

    田村国務大臣 今の大蔵大臣答弁で大体尽きておると思いますが、おっしゃるとおり、特に輸出関連の中でも中小企業が大変疲弊いたしております。この景況感は極めて悪化しておると言わなければなりません。でございますから、私どもとしては、こういう問題に対して今二つの法案を商工委員会に提案しておりますが、いろいろと地域的な対策、業種的な対策も講じておりますが、それはとにかくとして、今の御質問、もう既に私から建設大臣に直接お願いをいたしまして、特に不況色の強い地域に対して公共事業の傾斜配分をぜひしていただくように、それに対して大変快くお引き受けをいただいておるというような次第でございます。
  127. 天野光晴

    ○天野国務大臣 傾斜配分をすべきでないかという考え方をいたしました。それは、御承知のように石炭、鉄鋼、造船、そして円高不況により輸出業の中小企業が非常にやられております。そういう観点からその地域に対して、できれば、なかなか難しいのでありますが、事務的に整理をしまして、そして北海道の方はほとんど雪寒地帯ですから、そういう地域でもできる仕事ということを選びまして、十二分手配をできる構えを今準備させております。
  128. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 既に各大臣からお話がございましたが、先生おっしゃったように、輸出依存の高い地域、構造問題を抱える地域では円高の影響が重なり、地域間の生産、雇用等厳しい状況が出ております。例えば木材、石炭、鉄鋼を抱えた北海道や非鉄、織物の東北、また合繊の北陸、造船の中国、縫製の四国、造船、鉄鋼、石炭の九州、こういったところでございますが、ただ、こうした影響は必ずしも地方圏のみでなしに関東、東海、近畿等の大都市でも生じておりますが、大都市圏では非製造業等が相対的に堅調で、不況の吸収力があることは事実でございます。ただ、今年度前半では、住宅建設、公共事業、消費需要等は大都市圏のみならず地方圏においても比較的底がたさを示しておりますが、いずれにいたしましても、今後景気対策においては地域的なことを十分に配慮して、しかもできるだけ早期、年度内に所定の手続きをとって仕事の実行ができるように、関係閣僚にお願いしておる次第でございます。
  129. 吹田愰

    ○吹田委員 さらに、景気対策問題で一つ提言し、お願いしなければならぬと思うのでありますが、実は民間活力を引き出すということについて簡保・年金資金というようなものを第三セクターに活用する、運用するというようなことはこの際考えられないものであろうかどうであろうか、こう思うわけであります。  今政府は、民間活力の利用によって内需を拡大しようということについては、まさに鳴り物入りで推進をやっているというふうに表現しても余り言い過ぎではないと思うのでありますが、そういう状況でありますだけに、政府はやはりみずから持っておる力というものを全力投球で出し切っていく、こういうことも必要であろうと思うわけであります。そういった点から考えますと、最近、各地域で第三セクター方式によっての仕事をやっていこうという動きが強いわけであります。そういうことを考えてまいりますと、その事業に必要欠くべからざるものは何であるかということになりますと、良質で長期の安定的な資金の供給ということが最も大きな要素を占めると私は思うわけであります。そうなりますと、今日、簡保・年金資金は三十兆円に達するわけであります。この資金をこれらの第三セクターに出融資する道が開かれれば日本経済の活性化にも大変なインパクトを与えるものである、私はこのように思うわけであります。  例えばどういうものがあるのかということになりますが、第三セクターの中には、私が特に通信部会長でやっております郵政省に関係のあるテレトピアの指定地域、これは全国の主要都市は全部指定いたしましたが、そういうところのテレトピア推進の法人というものもできました。あるいはこれからテレコムプラザというものができますが、これに対する法人、さらにせんだってから運輸省で大変な御苦労をなすった、政府挙げて、国を挙げて問題になりました国鉄の民営・分割の問題、これに伴う地方におけるローカル線というものを廃止するのか、それとも第三セクターでこれを管理し維持し利用していくかという問題があるわけですね。こういう問題につきまして、そういう地域にもこの第三セクターとして存在するとすれば、これが利用できるわけであります。ですから持てる力というものを全力投球でやる、このことから民間活力のお願いもできる、こうなるわけであろうかと思うのであります。  その点につきましての御説明を願いたい、お考えを聞かしていただきたい、こう思うわけでありますが、大蔵大臣あるいは郵政大臣からもひとつお願いしたいと思うのです。
  130. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは私の方から先にお答えをというお名指しでございますが、確かに第三セクター、これから大変にたくさん問題があると思います。そのために国民の貯蓄をいろいろな形で使わせていただいて、両方連携の上で、いわゆる民活の形というのはこれから大変に大きくなってまいると私は思っておりますので、御指摘の問題の意識は私にもよくわかっております。私どもとしましては、従来開銀がそういう役割を果たし、また、開銀の業務方法も時代のそのような変化とともに改善を加えておるわけでございまして、開銀等を使います方がリスクを回避する上でも、また審査能力からもいいのではないかと私としては考えておるわけでございます。
  131. 唐沢俊二郎

    ○唐沢国務大臣 簡保・年金資金は、全国の加入者から払い込まれました掛金、保険料の集積であると同時に、加入者すべての支払いのための共同準備財産でありますから、これはまず第一に重要なことはできるだけ有利に運用すること、次はできるだけ地方に還元をして、地域の活性化とか地域住民の福祉の向上にお役に立てるべきだと考えております。したがいまして、先生が今お挙げになりました幾つかの第三セクターは、いずれも地域に密着し、かつ公共性の高いものでございますから、当該資金の出資、融資先としては極めて適当だと思っております。先生からすばらしい御提言をいただきましたので、そういう第三セクターに出資、融資できるように、関係諸法令の改正に前向きに検討させていただきたいと考えております。
  132. 吹田愰

    ○吹田委員 ありがとうございました。今、郵政大臣から大変心強いお言葉をいただきましたが、これはひとつ大蔵大臣、今の郵政大臣のお言葉がやはり日本列島すべての国民の願いであると私は思いますので、この際ひとつ御協議をされまして、改正方に、前進に向かって取り組んでいただきたい、これをお願いしておきます。  そこで、国際放送に入ります。  国際放送問題についてでありますが、去る九月十二日に中曽根内閣総理大臣の所信表明演説がございました。その際の結びにこういう言葉がございます。ちょっと読み上げさせていただきますが、「世界の中の日本から、世界とともにある日本、さらに世界に貢献する日本として、世界の平和と繁栄に責任を持つ日本を築いていくことこそ、国際国家日本の実現の真の意味であります。  このためにも、我々がまず日本自体を正確に知り、その正確な日本を外国に知らせる必要があります。また、近年の日本の発展は世界の注目するところであり、各国は、日本からの文化の発信を強く待望しております。」以上のように述べられておるわけであります。  この総理の言われております国際国家日本に必要欠くべからざるものの一つに、国際放送の強化があると私は思うのであります。  国際放送の意義につきましては今さら私がここで申し上げることもないと思いますが、一、二点要約して申し上げてみますと、直接外国に電波で届けるということ、この対外的な情報伝達手段であるということが一つあります。さらに、諸外国との相互の理解増進という問題があります。また、最も大きな問題は、海外に在留邦人がたくさんおります。今四十八万と言われておりますが、この在留邦人に対しましての情報提供という問題があります。  実は、内戦等で大変困った事態が起きたこともあります。例えば、六十一年の一月十三日に南イエメンにおきまして発生した内乱、三十八人の邦人が通信の途絶をしたという事態から、ガボンから出しておりますところの我が国の国際放送を傍受しまして、これによって彼らはその危機を免れた、そして助かったということから、特に外務省の関係からいたしまして、外務大臣からNHKが表彰を受けた、感謝状をもらったという事実もありますけれども、とにかくこういった邦人に対する情報提供問題あるいは最近の貿易摩擦等によりますいろいろな問題がございますが、やはり理解と協力を求めるという意味からもこの情報提供は必要な問題であります。  そういったことから、私はちょっとこれからパネルでひとつ皆さん方にわかりやすく、資料も配らせていただいておりますが、御説明をいたしたいと思うわけであります。  これがその一つでありますが、これは皆さん方の一枚目のものでありますけれども、これは十月一日以前の問題であります。十月一日以前であります。なぜ十月一日かというのは後から申しますが、その状態は、現在、この図面に示しておりますように八俣の送信所、これは茨城県にありますが、非常に古い施設でありますが、今百キロワットが八台、五十キロワットが一台であります。この送信でもってただ一カ所海外に、ガボンというところで中継しているわけでありますが、今これが約七時間半、この四月から送っております。したがいまして、ヨーロッパ全域と中近東はこれでカバーされているわけであります。これが十月一日以前のものであります。  それから二枚目の、これが十月一日以後でありますが、これはどのように変わったかと申しますと、九月の終わりにカナダのサックビル中継局を借用いたしまして、NHKがRCIと提携いたしまして、契約を結びまして、ここに一年間これからこの中継所を利用させていただく、こういうことになったわけであります。ですから、このサックビルでこれから一年間、一時間ですから、朝六時半から七時半までの放送であります。この間を利用しましてアメリカ大陸の北側、東はこれで完全にカバーをしたわけでございます。しかしながら、この状態ではまだまだ黄色い部分と白い部分が非常に多い、オレンジ色は非常に少ないということであります。  テレビの方にもちょっとこれを見せておく。国民の皆さんにもひとつ知らせておく。  そこで、我々としましては、最終的にせめてこの程度までは持っていかなければならぬというのがこの三枚目であります。八俣の送信所が、この三枚目では三百キロワットが四、百キロワットが四というふうになっております。これは昭和六十三年の四月にはこの状態になるわけです。出力が大きくなってくるわけであります。こういうことになりまして、しかも先ほど申し上げました北アメリカにおけるサックビルからの送信は一年間の契約でありますから、暫定契約であります。どうしてもアメリカの中部に中継所を一カ所設置する、これが必要であります。それから南西アジアが、二番目の図面で皆さんにおわかりいただけるようにまだまだ白い部分あるいは黄色い部分でありますが、このようにすべてミカン色で塗ろうとしますとアジア中継局というものが必要になってまいります。  こういったことを行えば、まずまずこの程度までの状態にはなる。しかし、まだこれではソ連やあるいは北米の一部には聞こえないという部分がありますが、しかしソ連の方につきましてはなかなかの電波障害その他もありまして、遺憾ながら十分に届きません。彼らの方からの送信は随分と、我が国も東北地方では必要としないほど入ってくる、こういうことであるようでありますが、我々の方はその点はなかなか問題であります。  そういった状況で、こういう姿にまで追い込もうとしますと、これには相当な予算をこれから考えていかなければならぬ。しかし、予算額そのものは小さいのであります。予算額は小さいんですよ。しかし、現在の郵政省の予算からしますと大変なことであるということは後ほど申し上げますが、今申し上げましたことについて、総理としましてこの国際放送というものにつきましてのお考えをまずお示しをいただきたいと思っておるわけであります。
  133. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 吹田君が国際放送の拡充に非常に御尽力になっておりますことに非常に敬意を表します。あなたや皆さんの御努力でカナダのサックビルの放送は開始されまして、ともかくアメリカ東海岸をカバーするに至りましたことは慶賀の至りでありますが、おっしゃいますように日本からの発信というものは非常に重要であり、また待たれている状態にまでなってきておりますので、できる限り早い時期に全世界をカバーできるように努力してまいりたいと思っております。
  134. 吹田愰

    ○吹田委員 総理の心強いお言葉をいただきまして、私もこれから大蔵大臣なりあるいは郵政大臣にお願いするわけでありますが、先ほどから申し上げますように八俣の送信所は非常に古い施設であります。これを五十九年から改造するということで今盛んに工事を行っておりますが、この予算が百四十三億であります。この百四十三億のうちで政府が負担する予算というのは、一体その施設にどれだけしているかということになりますと、政府は毎年わずか二億五千万しか出していないのですよ。あとだれが出しているのだ、これはNHKであります。NHKということになりますと、NHKは国内放送のために聴視料を国民からいただいておりますから、この聴視料からその負担分を年々出していかなければならぬというのが現状であります。私は、NHKといたしましても、いかに合理的な運営をやるにいたしましても、いかに経費節減でやっていきましても、これだけの大きな負担と、さらにこれからの改善を加えていく調査費等あるいは建設費を加えますと、これはとてもNHKで持てる話ではないと思うのであります。限界があります。そういった意味から、この際政府がこれに大幅な力を入れなければならないのではないか、こう思うわけであります。  今、総理もその点については非常に心強いお言葉をいただきましたが、特に外務大臣とされまして、これは大事な外務省の所管事項も入っているわけでありますから、私は海外の建設こそ、発展途上国に向けてその中継所を建設するということであればODAの金が使えないことはないと思うのであります。その金を使って建設さえすれば、後の維持管理費というのは大したことないのですから、それは大したことありませんから、ぜひ南西アジアとそして南北のアメリカをカバーする二カ所、中継所をODAでつくるというようなことについての配慮をしていただかなければ、幾らここでそれは結構なことだし大事なことだと言いましても、まさにこの絵が本当に絵にかいたもちになるのであります。ですから、ぜひともそういうことにならないように、国際国家日本の実を上げる、こういうことでありますから、この際ぜひとも思い切ったそういう配慮を願いたい。これにつきまして外務大臣やあるいは大蔵大臣、さらに郵政大臣からも御答弁をいただきたいのでありますが、お願いします。
  135. 倉成正

    ○倉成国務大臣 ただいま吹田委員が専門的な立場から国際放送の重要性について御激励いただきまして、まことに感謝にたえません。外務省といたしましては、従来より、国際放送は海外広報、在留邦人対策上有効な手段であると考えておりまして、同放送の充実強化のため、調査団の派遣等を通じ種々努力をしてきたところでございます。今後とも、郵政省、NHKとも連絡をとりつつ努力をしてまいる所存でございます。  なお、当省より調査団派遣等を通じ、カナダの中継施設を利用して、北米向けに中継放送が本年十月一日より開始された、先ほど総理からお話がございましたが、この間の経緯については、吹田議員にも御尽力いただきましてありがとうございました。この機会にお礼を申し上げたいと思います。  なお、海外中継局の確保のためのODA予算計上の問題でございますが、ODAが開発途上国の経済開発及び民生の向上を目的とすることを踏まえての検討が必要だと思うわけでございます。いずれにしましても、これらの問題につきましては関係方面と十分連絡をいたしまして、今後とも国際放送の拡充強化のために努力してまいる所存でございます。
  136. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 たまたま旅行者としての経験から、以前から私はこの問題を非常に強く感じております。軍事大国になることをやめました我が国としては、まさにこういうことをこそすべきではないかというふうに思いますので、あらゆるネックを処理いたしまして一日も早く実現をしなければいけないことだと思っております。
  137. 唐沢俊二郎

    ○唐沢国務大臣 今、先生初め総理からお話がありましたこの重要な国際放送、遅々として進まなかったわけでありますが、先生のおかげで発展的にここまで充実してまいりました。今後も段階的に発展をさせまして、将来はやはりラジオだけではなくて映像送信による国際放送も考えていかなければならないということで、今関係各省とも御協議をし、放送行政局を中心にいたしまして検討を進めておるところでございます。  この機をおかりいたしまして、内幕を申し上げるようで大変恐縮でございますが、郵政省の本年度の予算は二百四十二億でございまして、うち人件費百八十億と義務的経費四十億を除きますと、国際放送十二億、その他の政策経費わずかに九億でございます。したがいまして、二十一世紀に向かって先導的役割を果たさなければならない電気通信放送関係の経費がわずかにそれだけということは、将来を先取りする経費を徒手空拳をもってせよということになって、もし国家百年の計を誤ったら大変なことだと思っております。幸い関係閣僚の御理解をいただいておりますし、大蔵大臣は、ときとしては少々意見を異にすることもございますが、国際放送に関しましては全面的な御賛意をいただいております。どうぞこの問題だけは、特に党派を超え、省を超えて格別の御高配を賜りますようにお願いをいたします。
  138. 吹田愰

    ○吹田委員 ただいまそれぞれ各大臣から非常に積極的な姿勢を示していただきまして感謝にたえません。ただ、今最後に郵政大臣が言われましたように、郵政省というものが、このマイナスシーリングの予算編成方式でまいりますと、これは他省庁にも関係ありますが、例えば通産省にしろ法務省にしろ、非常に小さな予算をもって運営しておる省庁におきましては、このマイナスシーリング制度というのは新しい制度に向かって出ていく、新機軸を開こうというのには大変な障害になるわけですね。そういう意味から、この国際放送の予算の組み方の問題について大変苦労するわけであります。ですから、もう身を削るところのない郵政省に対して大蔵省、ひとつよろしく大臣にここでお願いを申し上げておきまして、次に進みます。  次は、中曽根総理にまずお伺いをしておかなければならないと思っております。  国民から信頼され、安心される、そういう政治が政治の姿勢としては基本であると思います。国民から信頼もない、安心もできないという政治、そういう国家というものは極めて不幸であります。そういう意味から、私は、政治の姿勢というものは国民の信頼というものをまずかち取らなければならぬ。信頼をかち取るということになりますと、少なくとも政治の志向としては、常に中長期展望に立って国民が迷わないようにしていくということも、これは必要なことだと思います。そういった意味から、朝令暮改と申しますか、猫の目のごとくくるくる変わるような政策というものはとるべきでない、こう考えるのでありますが、総理はいかがお考えでありますか。
  139. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 同感です。
  140. 吹田愰

    ○吹田委員 総理のそのお言葉をいただきまして、次に税制問題でひとつお伺いするわけであります。  このたびの税制改正は、まず減税ありきということでこの改正に取り組もうとしているわけであります。減税に対する財源の見通しがつかないままこれを強行するというようなことになりますとこれは大変な問題になるのではないかというふうに思いますが、もし財源の見通しが立たないという場合には減税を見送るというのか、あるいは減税規模によっては大幅な改正でなく小規模な手直し程度にとどめるというのか、その辺も定かでありませんが、さらに税制改正は増減税プラス・マイナス・ゼロとされているわけであります。これは中長期を通してプラス・マイナス・ゼロとおっしゃっておるのか、単年度ごとにプラス・マイナス・ゼロという考え方をお示しになっておるのか、その辺、この改革年次に当たりまして大蔵大臣からひとつお考えを聞かせていただきたいと思います。
  141. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 このたび税制の抜本改正が図られておるわけでございますが、その動因になりましたのは、やはり所得税、法人税等々の負担が非常に重いと感じられていること、制度に改正の要があるということから問題は起こったわけでございますが、同時にまた、直間比率でありますとか、間接税につきましてもひずみとかいろんなものがございますので、財源対策をあわせまして全体の問題に発展をしてまいりましたことは御存じのとおりでございます。  それで、それらのことが最終的にどういう案を具しまして国会の御審議をお願い申し上げるかということにつきましては、私どもの党内でも議論をいたしておりますので、まだしばらく時間が必要でございますが、考え方といたしましては歳入中立的、すなわち減税の分はそれだけの財源を税の中で調達をするというふうに考えてまいらなければならないと思いますのは、御承知のように財政の事情がこういうことでございますので、どうしてもそうならざるを得ないかと思います。さように考えてまいりますと、どのような税法改正になりますかにもよりますが、基本としましては、おのおのの時点において歳入中立的でございませんと、それだけの財源をほかからどうやって調達をするか、例えば特例公債というようなことになることは決して好ましいことでないと思いますので、原則といたしましてはやはりそう考えるべきであろうと思います。
  142. 吹田愰

    ○吹田委員 次に、そういったいわゆる全般的な問題として見直すということでありますから、私はここで特にマル優制度についての問題を取り上げて申し上げてみたいと思うのであります。  このマル優制度の問題につきましては、五十九年十二月に実はその取り扱いにつきまして政府と我が自由民主党は、政府与党はこれを存続すると決定しておるわけであります。もちろんそれにつきましては限度額管理というものを厳正にやるという前提に立ってのことであります。そういった決定がなされておりますが、これに反しますと、先刻、朝令暮改政治はやらないという前提でありますから、この辺に私は非常に国民に対する信頼を裏切ることになりはしないかなということを思うわけであります。今、各種の世論調査をやっておりますが、その状況を見ますと、国民の約七〇%というものはこの存続を支持するわけでありまして、これをなくするということに対しましては反対、こう言っておるのであります。全国の都道府県も九八・二%がこの制度を存続すべきであるという決議をしておるわけでありまして、ぜひともこういった声というものはこの際お聞き取り願うべきではなかろうか、こう思うわけであります。  特に私は、郵便貯金の利子の非課税制度について申し上げますと、これは大正九年に創設をされたわけであります。そうして今日、郵政省の貯金業務の中心的な存在として長年にわたって国民の健全な資産形成を支援し、郵便貯金制度の根幹としてやってきたわけであります。欧米におきましても、多くの国々がこの制度をとっておるわけであります。いわゆる貯蓄の優遇税制というものは持っておるわけであります。この十一月一日から公定歩合が〇・五%引き下げられ、預貯金の金利も一層超低水準に今なろうとしておるわけでありますが、こうした面から、利用者に対しましてこれを廃止するということはまさにダブルパンチになってくる、かように私は思うわけであります。しかも、仮にこの制度が廃止になるということになりますと、郵便貯金の主要な役割というものは、御承知のように財政投融資の資金の問題であります、原資でありますから、これが大幅なシフトをして予測せざる問題が発生するのではなかろうかと思っておるわけであります。  中曽根総理は本年六月十四日、自民党本部におきまして、マル優を悪用する者は征伐しなければならぬ、こうおっしゃったのであります。不正者に対しましては厳重な処罰でやるというお声であります。これは当然なことであります。私も大賛成であります。この一部の利用者にそうした不正があるからという理由でこの制度を廃止するというというようなことになれば、それは大多数の善良な受益者の存在というものを忘れた本末転倒の議論ではなかろうかと私は思うわけであります。角を矯めて牛を殺すという言葉がありますが、そういうことになったのでは、これは国家的な立場から極めて憂慮せざるを得ません。  こういう意味で、このマル優制度というものは私は存続すべきである。そしていよいよ郵政省もあるいは大蔵省と協議の上で、来年の三月までにはきちっと厳正な、不正者に対する問題についての限度管理をやる、それには生年月日までコンピューターに、名寄せに取り入れよう、こういう姿勢と聞いております。そういったことから、このマル優制度につきまして、何としましても直接関係があります郵政大臣からこの問題をお答え願いたいと思います。
  143. 唐沢俊二郎

    ○唐沢国務大臣 ただいま限度管理を徹底した上で郵便貯金の利子非課税制度は堅持すべきであるという観点からいろいろ先生述べられたわけでございますが、私は、この問題は結局は貯蓄奨励、貯蓄優遇の歴史的使命が終わったのかどうか、あるいは貯蓄の重要性に変化が生じたのかどうかという問題だろうと思います。確かに日本もよくなったとは言われますけれども、社会資本はそれほど充実しているわけではない。欧米の主要国に比べますと下水道普及率は二分の一から三分の一、都市公園の一人当たりの面積は十分の一から二十分の一、まだまだ私は経済活性化のためにも貯蓄を有効に活用して資本蓄積をしていくべきではないかと考えております。また、国民一人一人にとりましてはいろいろ貯蓄の動機もありますけれども、特に長寿社会を迎えて自助努力による貯蓄の重要性は年々増している。その結果が今言われましたような世論調査の結果として出てくるのではないかと思っております。  この問題についてはいろいろな御意見があるのを存じておりますけれども承知はいたしておりますが、私は郵政大臣といたしまして、十月十六日に出されました郵政審議会の答申を踏まえ、郵便貯金の利子非課税制度の存続のため今後とも努力をさしていただく所存でございます。
  144. 吹田愰

    ○吹田委員 大変心強い郵政大臣のお言葉をいただきましたので、これからいよいよ我が与党におきましてもこの問題は山中税調を中心に論議が行われるわけでありますから、この御意思を踏まえて私どもは頑張っていかなければならぬ、こう思うわけであります。  ところで、農業問題に入ります。  農は国のもとと言っておりますことは御承知のとおりであります。私は従来からの持論で、それだけではない、農業、農村こそ我が日本民族の純血を守っておるところの唯一のものではなかろうかというぐらいに思っておるわけであります。まさに日本民族の活力もここにあるんだ、こう考えるわけでありますが、その農業が、今や国民に対しまして食糧の安定的な供給、健全な地域社会の形成あるいは国土の自然環境の保全など重要な役割を果たしておるにもかかわらず、一方では食糧の消費の伸び悩みという問題があります。あるいは担い手の高齢化という問題があります。こういう非常に厳しい問題が起きてきたわけであります。  とりわけ主食でありますお米につきましては、需給ギャップが依然として拡大傾向にあり、さらに三年越しの豊作であります。ことしも今一〇五%というふうな作況を示しておりますが、こうしたことでありますので、転作面積の拡大が必要となりかねないという状態であります。ポスト三期対策の検討が求められておるというのもそこにあるわけであります。さらにまた他方からは、全米精米業者協会から米の輸入制限の撤廃を求める動きがありました。国の内外において米の問題を中心に農業、農政のあり方というものが厳しく問われておる今日だろうと思うのであります。このように、今後の農業の将来というものにつきまして非常に憂慮しておるわけでありますが、この時期に当たりまして、加藤農林水産大臣から、我が国の農業の将来をどのように見通されておるのか、どのような施策を講じようとしておられるのか、そういった点についてまずお伺いしておきます。
  145. 加藤六月

    加藤国務大臣 ただいま吹田先生が御指摘のとおりの厳しい農業事情、農政事情に我が日本は今当面いたしております。それに対しまして私たちも日本国全体に対し、また農政に対し、二十一世紀を展望したものをはっきり国民皆さんにお示しするようにしなくてはならないということでございます。ただいま農政審議会でそういった問題についての作業を急いでいただき、今月中にそれもいただくようにいたしておりますが、要は今日農林水産物は世界最大の輸入国に我が日本がなっておる、そしてまた先進国家の中で穀物の自給度が最低であるというのが我が日本であるということを考えまして、国民皆さんに夢と希望を持ってもらい、足腰の強い国際的抵抗力のある農政を育てていかなくてはならぬと考えております。
  146. 吹田愰

    ○吹田委員 大臣の心強いお答えをいただきましたが、そういったお気持ちでさらにこれから農業の問題を合理的に運営しようとすれば、ここに生産条件の整備という問題が非常に大きな問題になります。農業基盤の整備であります。これを推進しなければ、到底これからの農業というものは進めていくことができません。この農業基盤整備事業は地域に及ぼす影響もまた大であります。特に現在の景気対策からいきましても、用地費が非常に少なくて済む、用地買収費というのが要りませんから。そういう比率というものが少ない、あるいは地域経済活動の活性化に直接影響を持っているということ、あるいは内需振興にもかなり役立つ等の問題があるわけでありますから、そういう非常に有利な面をこの際考え合わして、この予算というものがいわゆる景気対策予算であるとすれば、この際、この農林関係におきましての特に基盤整備事業というものに力を入れて組むべきではなかろうか、こう思うわけであります。  ちなみに申し上げますと、今いろいろと土地基盤整備事業が行われていますが、大体予定は一カ所七カ年間でこれを完成するという予定でありますが、現実は十二年かかっている。約倍近くかかっている。これでは、最初にかかったところの農家と同じ地区内で後に行われる農家とは大きな問題ができ、今農家間の一つの争議問題にまで発展しておるというのが実情であります。こういう点につきましても、特に農林水産大臣もこれに対しまして特別な配慮をしていただけるかどうか、この予算の増額問題について、もう一度お答え願いたいと思います。
  147. 加藤六月

    加藤国務大臣 農業基盤整備事業につきましては、財投資金の活用等でその事業の拡大、確保に骨を折っておるところでございまして、ただいま吹田先生御指摘になりました事業間隔、完成が延びておるということにつきましてもいろいろな方法を講じて今後その解消に努力していきたいと考えておるところでございます。
  148. 吹田愰

    ○吹田委員 時間が実はもうなくなりまして、まだ私は外交問題やその他を少々お願いしなければならぬと思っておったのでありますが、これを読み上げまして総理に一言だけ伺っておきたいと思うのであります。  アイスランドにおいて米ソ首脳会議が行われましたが、核抑止を中心とする広範な分野にわたって討議がなされたことは御承知のとおりであります。ところが、この問題につきましては、一部の報道におきましては、SDIをめぐる米ソ間の対立によって米ソ軍縮交渉が暗礁に乗り上げた、あたかもSDIが米ソ軍縮交渉の唯一の阻害要因である、それは米国のSDIをあきらめてもらうことにほかならないのだというようなことで批判を行っているわけであります。かかる批判は、私は事実認識としては全く当を得ていないと思うのでありますが、この点外務大臣からお答え願い、またSDIについて、私は、日本がこれに参加するということが示されております限り、この際総理大臣から、この吹田愰代議士というものを通して、このテレビ国民の皆さんに、SDIとは何ぞやということについて極めてわかりやすく御説明をされておく必要があるのではないかと思うわけであります。
  149. 倉成正

    ○倉成国務大臣 SDIが今回のレイキャビクの決裂の原因であったというようなことが言われておりますけれども、私は今回のSDIがレイキャビクの会談において重要な議題であったことは間違いないと思います。そして最終的にこの問題が米ソ両国において意見が一致を見なかったということは事実でございます。  しかし、SDIの研究は御承知のとおり一九八五年から既にアメリカ国防省において行われていることでございまして、このことを踏まえて米ソの両首脳が二日間にわたって真剣に協議を行い、そして相当程度の軍備管理・軍縮についての発展が見られた。そしてこの会談は決着を見なかったけれども、なお米ソ両国の外相会談が行われて、さらにこれからまたやっていこうというような雰囲気があることも事実でございます。また、ジュネーブ交渉が進んだ理由の一つにSDIがあったということも言われておるわけでございまして、SDIについての評価は私はそういうふうに心得ております。  なお、SDIをわかりやすくと、これは総理の方が御説明がうまいと思いますが、私が担当でございますから申し上げます。  SDIは、自由民主の諸国の国民が、自分たちの安全が、ソ連の攻撃を抑止するための即時報復、すなわちICBMがずっと飛んでまいります、その飛んでくるのを一撃、飛んできたら今度は反対に撃ち返す。そういう戦略弾道ミサイルを、アメリカあるいはその同盟国の領土に到達する前に、飛んでくる間に撃ち落とす、どんどん撃ち落とす。ブースト段階、それから次のポストブースト段階、ミッドコース段階、最終の大気圏に入ってくる段階、こういう段階で撃ち落としてやろうということ、それができれば安心して生活できるわけです。これをレーガン大統領が問題提起をしたわけでございます。  しかし、これはやはり近代科学の技術が発展したということを踏まえてこのことが提起されておる研究計画でございます。例えば従来の兵器と根本的に異なるのは、相手国の国民や国土に大きな殺傷、破壊をもたらすことを目的とするものではない。敵国から飛来しつつあり、黙ってほっておけば自国の国民や国土に甚大な被害を及ぼすミサイルを個別に捕捉して、自国に到達する前に無力化するという点で我々は理解を示しておるわけでございまして、先般の決定は、このような考え方のもとに行われるSDIの研究は平和国家としての我が国の基本的な立場に合致するとの認識があるわけでございます。  また、このSDIの研究の中において、コンピューターあるいはレーダー、センサー、高出力のレーザーあるいはいろいろな光学装置、こういうものの基礎研究において非常に寄与するところがあろうかと思うわけでございます。そういう意味において、我が国の企業、研究機関等が希望する場合には個々のプロジェクトに参加する道を開こうということでございまして、その参加を円滑にするための米政府との協議を行うことが目的でございます。  以上でございます。
  150. 吹田愰

    ○吹田委員 ありがとうございました。  いろいろとお願いしておりましたが、時間の関係でこれで終わります。
  151. 砂田重民

    砂田委員長 これにて吹田君の質疑は終了いたしました。  次に、坂口力君。
  152. 坂口力

    坂口委員 公明党・国民会議を代表いたしまして、昭和六十一年度補正予算につきましての議論を進めたいと思います。  財政につきましては後ほど矢追議員の方から補足をしていただくことにいたしまして、私からは税制問題を中心にしましてお聞きをしたいと思います。  まず最初に、昭和六十一年中の減税についてでございます。  きょうの午前中にも議論がございましたが、ことしの三月四日に与野党幹事長書記長会談におきまして合意されたことでございます。そしてまた、去る十月十六日にこれが再確認をされて、現在、実務者でこれが議論を重ねられているところでございます。  公明党は、社公民ともに、住民税を含めまして二兆円を超えますところの減税要求をしてまいりました。しかし、円高によりますところの最近の経済状態その他を勘案をいたしまして、二兆円規模の減税は必要ではありますけれども、今すぐそれを実現することにはいろいろの問題もあろう、そうした観点から、前年度の四千四百億円に上ります剰余金中心にいたしまして、これを減税財源に使ってはどうかという提案をいたしました。しかしながら、我々の意見が取り入れられませんで、本日のこの補正予算になりましたことを大変我々は残念に思うわけでございます。  ことしの三月からこの実務者会議をずっと実は続けてまいりました。私もその中の一人といたしまして与野党減税に対します実務者会議に臨んでまいったわけでございますが、なかなか話がまとまらないわけでございます。減税合意をされました背景には、自然増収によりますところの税金を国民の皆さん方にお返しをする、そういうこともございますが、あわせまして、G5以降の景気の停滞、そうしたことも考えまして、この景気の後退に歯どめをかける、そういう大きな意味も実は含まれていたわけでございます。したがいまして、将来の税収をふやすためにはこれも一つの方法である、あるいはこれしか方法がない、そういう議論を重ねて今日を迎えたわけでございます。  しかし、政府の方は財源がないからやらないという態度をこれまで明確にしてまいりましたし、与野党の論議の中におきましても財源問題が中心になりまして今日までなかなか話が進んでこなかったわけでございます。しかし、財源のことを言っておりましたら、ことしの暮れになりましても来年の三月になりましてもこれはなかなか実現をしないわけでありますので、我々はこの際に、将来の景気対策も含めましてぜひ今年中の減税を実現したい、こういうふうに考えているわけでございますが、まず総理からこの今年中の減税に対する御決意をお聞きしたいと思います。
  153. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 十月十六日の与野党合意を踏まえまして実務者でいろいろ協議することになっておりますが、現在進んでおるこの協議の進行を見守っておりまして、合意成立した結果についてはこれを実行するように努力してまいりたいと考えております。
  154. 坂口力

    坂口委員 先ほども申しましたとおり、ことしの三月以来実務者会談を続けてまいりましたが、それがなかなか前進いたしません。実務者の皆さん方は非常に熱心におやりになるわけでございますが、しかし、党内にこれを持ち帰りましていろいろ協議をされるということになりますと、これが前進をしないということになるわけであります。  ですから、総理大臣、大蔵大臣あるいはまた三月の時点のときに中心になりましてこれをまとめられました金丸副総理、そうしたところが、よし、それじゃこの減税をやろうというかけ声をかけてもらえばこれは前進をするわけでありますが、どうもその辺がはっきりしない。はっきりしないというよりはむしろ総理大臣や大蔵大臣はこれに水を差すような発言をしているのではないだろうかといううわさも実は飛んでいるような昨今でございます。ですから、これは総理なり大蔵大臣が、実務者でこれを詰めるなら我々もひとつバックアップしよう、そういう気持ちがなければまとまらない話でございます。  総理並びに大蔵大臣、できましたら金丸副総理もひとつお気持ちをお聞かせいただきたいと思います。
  155. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 大蔵大臣だけの立場から申し上げますと、このたびの補正予算でも、ごらんいただいておりますような歳入欠陥の状況でございますので、国庫の情勢はなかなか容易でないということを大蔵大臣立場としては申し上げざるを得ないのでございますけれども、しかし、各党合意ができました際には、それは誠実に実行してまいらなければならないと考えております。
  156. 金丸信

    ○金丸国務大臣 これは私の幹事長のときに、一つの願望で、私はできるだけしてやりたいというような考え方の中であのような合意をいたしておるわけでありまして、六十一年中に合意ができるならば、ここにいろいろ今ネックの問題があるだろう、また、この間国対委員長会談でいろいろお約束したということでございますから、私の責任はもうそれで逃れた、こう私は思っております。
  157. 坂口力

    坂口委員 責任は逃れておりません。これは政府全体の責任として解決をしていただかなければならない問題でございます。あの当時は幹事長でございましたけれども、現在は副総理として就任をしておみえになるわけでございますから、責任は逃れたことは決してございませんで、あのときよりもさらに現在の方が責任は重いと思うわけでございます。したがいまして、この与野党におきますところの実務者会談、これに温かい目を向ける、これに対して皆さん方が積極的に御支援をいただくということであるならば実務者会談は実りますけれども、しかし、皆さん方が冷たい目でこの実務者会談を見られます以上、この問題は、この実務者会談は成功しないわけでございます。  したがいまして、総理にもう一度お伺いを申し上げますが、どうかひとつこの実務者会談に心から支援をするという発言をいただきたいと思います。
  158. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほど来私は、政党間の合意は正直に守りますと申し上げ、また意欲的であるとも申し上げたとおりでございまして、実務者会談合意が成立するようにこいねがっておる次第でございます。
  159. 坂口力

    坂口委員 金丸副総理、先ほど、私の責任は逃れた、こう言われましたが、これは先ほど申しましたとおり、中曽根内閣の一人として、そしてまた重要な地位についておみえになるわけでございますから、責任はさらに重大であるというふうに思いますので、もう一度御答弁をお願いいたします。
  160. 金丸信

    ○金丸国務大臣 先般の国対委員長会談お話が決まったということは私も聞いておりますし、一応新たな合意ができ上がった。しかし、ただいまおっしゃるように、重大な責任があるということだけは肝に銘じております。
  161. 坂口力

    坂口委員 後者の方が副総理の本当のお気持ちである、こういうふうに理解をさせていただきますので、お願いをいたします。  それでは、今回の政府税調から答申の出ました税制問題に移らせていただきたいと思います。  アメリカにおきましても、日本に先立ちまして税制改革が進みまして、そして先日合意に達したというふうに聞いております。その後を追うようにして日本税制改革がこれから始まろうとしているわけでございます。  一昨年の十一月でございましたか、財務省からレポートが出まして、八百ページに及びます膨大なレポートが出ました。その中で、概観あるいは一般的な説明、そしてまた付加価値税といった項目を設けまして詳細にアメリカの考え方をまとめております。  その中でアメリカの税制改革に取り組みますところの中心理念というものを挙げておりますが、その中心理念は、長い間各種の優遇措置というものが生まれてきた、この優遇措置が非常に多くなったために不公平が生じた、この不公平が経済活動をゆがめ成長を停滞させた、そこでこの各種優遇措置を廃止することによって簡素化をし、公平を図り、そして成長を促進し、活力を取り戻そう、こういうことがアメリカの税制改革の基本理念になっておりまして、読みますと非常によくわかるわけでございます。  それに対しまして、日本税調から出ましたところの答申を拝見いたしますと、この中心になっておりますところの基本は一体何か、それが非常にわかりにくい形で書かれているわけであります。よく読ませていただきますと、それは、社会経済情勢の著しい変化に対処し切れなくなったために、現在の日本の税制にゆがみ、ひずみが生じている、だから国民不満が起こっているのだ、こういう書き方をされておりまして、そしてその中には、負担感、重圧感、不均衡感あるいは不公平感、こういう言葉が使われておりますけれども、不公平であるとか不均衡であるという言葉はただ一つとして使われていないわけでございます。  そこで、私はまず大蔵大臣にお聞きをしたいと思いますが、今回の税制改革に当たり、日本の今までの税制には不公平があるとお考えになっているのか、それとも政府税調の文言のように、ただこれは不公平感、不均衡感があるだけであって、本当はないのだという立場なのか、大蔵大臣のお考えをひとつお聞きをしたいと思います。
  162. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 税法を現実に税法の執行とあわせて申し上げますならば、納税者の側から見ていろいろ不公平感、不均衡感というものが確かに感じられておると私は思います。
  163. 坂口力

    坂口委員 不公平感あるいは重圧感というものが感じられる、だけれども不公平があるというふうには思われない、そういうことでございますか。
  164. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そこは税法自身と申しますよりは、税の執行まであわせて例えば申し上げますならば、俗にクロヨンという言葉がございます。私はそのことをそのまま肯定いたしませんけれども、税法の建前いかんにかかわらず、所得の間に把握される度合いが違うというふうに納税者が考えていることにはある程度実態がある、こういうふうに例えば思います。
  165. 坂口力

    坂口委員 後ほどまた議論をいたしますが、ここに日米の大きな違いがあるわけですね。アメリカの方は、いろいろの優遇措置をつくった、それによって不公平が生まれたということを明確に認めておりますし、日本政府の案は、これから出るわけですからまだ何とも申せませんが、少なくとも税調の答申を見せていただきますと、その中には不公平があるとは書いてなくて、不公平感が存在するというふうに書いてあるだけであります。  これからこれは議論をするといたしまして、総理、今回の政府税調に対しまして自民党の山中税調会長は、政府税調の答申は無視はしないが原案ではないということをおっしゃったというふうに新聞は報じております。諮問されました総理といたしまして、今回の政府税調の答申をどのようにお受け取りになっているか、お伺いをしたいと思います。     〔委員長退席、野田委員長代理着席〕
  166. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 約一年にわたりまして精力的に御論議、御審議願いまして、その労を大いに多とするものでございます。  その結果を見ましても、いろんな面に目を見張りまして、私からお願いいたしました公平、公正、簡素、選択、民間活力、こういうような面に非常に注意をしつつ税法の体系をつくり上げようと努力された跡がよく見られます。  それから、最終的には政治家が選択すべき問題であり、国民が選択すべき問題である、そういう意味でメニューを大分お並べになった、おはしをとるのは国民であり政党である、そういうような余裕を残して答申されたという点は非常にありがたいと思いまして、非常に評価するものでございます。
  167. 坂口力

    坂口委員 社会経済情勢の変化ということをこの答申は述べている、こういうことを先ほど申しましたが、この社会経済情勢の変化というのは一体どういうことなのか。詳しく抜本的見直しの答申をよく読ませていただきました。そういたしますと、この社会経済情勢の変化ということは、これは所得格差の縮小である、以前に比べて所得格差が非常に縮小をした、第一分位と第五分位との間の差は縮小している、だから現在の税制との間にゆがみ、ひずみがあり、そして税制の累進構造を緩和しなければならない、こう述べているわけであります。  累進構造の緩和につきましては、約一千万以下のサラリーマンにつきましては、国際的に比較をいたしましても、サラリーマンの税額というのは他の諸国に比べて日本は非常に低いんだけれども、ここにはその重圧感、不均衡感、そういう感じが存在する。これを取らなければならない。しかし、二、三千万以上、とりわけ五千万以上の収入の皆さんは、国際的に見ても非常に税率が高い。だからここは何とかしなければならない、こういうことを所得税につきましては述べているわけであります。  すなわち、収入によりましてだんだんと税率が高くなるのをできるだけ緩やかにしよう、こういうふうに言っているわけですね。そして税率区分は、サラリーマンのところはもう少し少なくいたしましょう。最高税率は、これは住民税も含めてですけれども八八%、所得税だけで申しますと七〇%、これを六割台に下げよう、こういうことをこの答申はうたっているわけでございます。  しかし、よく内容を我々の方で検討してみますと、例えば五千万以上の収入あるいはまた課税所得が五千万以上の人、こういう人たちが本当にたくさんの税金を払っているかというと、必ずしも実はそうではないのですね。  ひとつお配りいただきたいと思います。  今コピーをお配りいたしましたが、これは高額所得者の税額負担につきまして昭和五十九年度の国税庁の統計年報からとったものでございます。これは収入ではございません。課税所得平均額で出しておりますけれども、これをごらんいただきますとわかりますように、課税所得が二千万から三千万の人、すなわち収入の中からいろいろのものを引きまして、そしていわゆる税金をかける額、これが二千万から三千万の方、この人たちの平均は二千二百六十九万円でございます。この階級に対します税率は、いわゆる限界部分に適用されます最高税率というのは五五%でございます。この二千二百六十九万、この平均額で見ますと、平均税率の理論値は三七・七%でございますが、実際に払っておみえになります額を平均値で出してみますと三一・六%でございます。  同じように三千万から五千万、これは課税所得の平均額でございますが、ここで見ますと、理論値で見ますと四五%でこざいますが、実際に払っておみえになります方は三四・五%の率で税金を納めておみえになる、こういうことでございます。  それからもう一つふえまして、五千万超の皆さん方の課税所得平均額は八千四百五十万円でございますが、この皆さん方は、理論値で申しますと五五・九%でございますけれども、実際は三七・一%納めておみえになるにすぎない、こういう結果でございます。  なぜこんなに低くなってきているのか。これは言うまでもなく、所得の中には、純然たる給与所得の人だけではなくて、そのほか利子配当の方もございましょうし、キャピタルゲインの人もございましょうし、いろいろの方が入っている。だからこういう結果になってきているわけであります。  こういう状態でございますから、この表から言えますことは、一つは、いわゆる水平的と申しますか、横並びの公平というものが現在確保されていない。横並びの、同じ五千万なら五千万、三千万なら三千万の収入のある人でも、収入の得方によってその税金にかなり差があります。だから、本当に給与だけの方でありましたらこの理論値にもっと近づくはずでありますけれども、こういう低い値が出ておるというのは、この値よりももっと低い税金を納めている方がおみえになるという、その横並びが不公平でありますからこういう三一、三四、三七というような低い値になっているわけでございます。したがいまして、累進構造にメスを入れていくということになりますと、この横並びの問題を解決することなしにただ累進構造だけを緩和をして、できるだけこのカーブを緩やかにするということをいたしましたならば、これはもっとフラットになると申しますか、横一線のような形になりまして、いわゆるたくさんお金を取っている人、少ない人、縦の関係、垂直の関係で申しますとさらに不公平が生じる可能性がある、そのことをこの表は物語っていると私は思うわけでございます。したがいまして、累進構造の緩和を行います前にはどうしても横並びの公平というものをまず図らなければならないということをこの表は物語っているというふうに私は思いますが、大蔵大臣、その辺ひとつ御意見をお伺いしたいと思います。
  168. 水野勝

    ○水野政府委員 数字の点につきましてでございますので、若干私の方から先に御説明をさせていただければと思うわけでございます。  ただいまお配りいただきましたこの数字は統計年報書からの数字で、そのようになるわけでございますが、この現象の裏には、ただいま委員から御指摘がまさにございましたようにキャピタルゲインの問題が非常に大きいわけでございます。例えば五千万超のクラスの所得者でございますと、そこには二兆一千四百億の所得がございますが、そのうちの一兆二千億はキャピタルゲイン、土地の長期分離譲渡所得でございますキャピタルゲインでございまして、この部分につきましては半分が課税になるということでございます。したがいまして、税率といたしましては七〇%になっておりましても、半分に課税ということでございますからその部分は三五%で課税をされるということに相なるわけでございまして、二兆一千億の中で一兆二千億、大体半分から六割くらいがこの半分しか課税されない所得で構成されております。しかも、この分離譲渡所得、土地の所得は高額所得者に非常に多い。また土地の譲渡所得がありますために高額所得者になっておるという現象が非常に顕著でございますので、どうしても算出税額と負担率からいたしますとこのような差が出てまいるわけでございます。  こうした点をどう考えるかという点につきましても税制調査会の答申の中で触れられておるところでございますが、この点につきましてはまさに土地の譲渡所得をどう考えるか、アメリカの税制改革におきましても、従来は四割課税でございましたが、税率が二八%に引き下げられることと相まちまして今度は全額課税になるということでございますが、そこらを税率との絡みで今後どう考えるかという問題点もそこに、まさに御指摘のような今後の税制のあり方につきましての方向も示唆されている資料ではないか、数字ではないかと考えておるわけでございます。
  169. 坂口力

    坂口委員 今主税局長からお話がございましたように、あの表に間違いないわけでございます。それで今度の答申を拝見いたしますと、累進構造の是正、そのことが実は非常に前面に出てきておりますが、その横並びの税制の改革ということにつきましては非常にあいまいもことしたところが多いわけでありまして、これからの税制改革につきましてはこの辺に十分注意をしながら、公平な税制が図られるように格段の努力が必要であると思うわけでありまして、その辺に対する大蔵大臣の決意を承っておきたいと思います。
  170. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ここのところは非常に難しいところだと思いますのは、一円の所得に対してはその所得がどのような所得であろうとも一定の税率で課税せられるべきであるというのが基本的な税のスタートであると思いますけれども、そこにいろいろ社会政策的な、あるいは政策的な考慮が入ってまいります。例えば土地の問題について言えば、我が国のような土地が比較的少ない国において、眠っておる土地はなるべく社会に出してもらった方がいいといったような問題がございますと、キャピタルゲインに対してある程度の政策的な配慮をするというようなこともあり得ることでございましょうし、あるいは一般的な利子配当の資産所得についても別の観点からまたいろいろな考慮があるといったようなことがございます。  アメリカの場合、冒頭に坂口委員がおっしゃいました、今度のアメリカの税制改正はタックスシェルターというものをうんと整理するということにあったことは確かでございますけれども、アメリカの場合はいかにもそれが、どう申しますか、個々の企業の利益と言っては言い過ぎかもしれませんけれども、それが長年蓄積したような感がございまして、そこへいきますと、我が国が租税特別措置法等々で考えておりますいわゆる政策減税というものは、今までも決してアメリカのような性格のものではなかったというふうに考えております。ただ、そうは申しましても、税率あるいは構造を簡素化いたしまして、しかも税収が余り減らないようにと考えますと、そういうものをかなり整理していかなければならないことは事実でございますし、このたびの税制改正、税調答申でもそのように言われておるところだと思います。
  171. 坂口力

    坂口委員 私が申し上げたいのは、その横並びにおきますところの税の公平というものも図りつつ累進というものを考えていかなければ、横のことを度外視して累進構造だけを変化せしめていったらかえって不公平が生じてくる、こういうことを私は申し上げたいわけでございます。  アメリカの場合には所得税を全体としまして六%ぐらい減税をする、その財源は各種のそういう優遇措置をとりました法人税の方に出してもらうと申しますか、その財源は求めている、これが大枠の姿でございます。それに対しまして、それなら日本は一体どうなるのか。日本も今回の答申の中では、いろいろの計算方法がございますからこれはわからないと思いますが、一応二兆七千億所得税及び住民税の減税をし、あるいはまた法人税におきましても一兆八千億をし、あるいは相続税で三千億、こういうふうにして全体で四兆八千億の減税をここにやりたい、こういう一つの案が示されておるわけであります。しかし、この所得税減税をします分はそれじゃ何によって埋めるのかといいますと、先ほどから議論になっておりますように一つはマル優制度、少額貯蓄の問題、この改革を行う、マル優制度の廃止の方向の問題が一つある。それからもう一つは大型間接税の問題がここに出ている。大型間接税はいろいろの案が示されておりましてどれを採用するかはわからないけれども、とにかくそこの間接税の中から財源を求めようとする一つの方向性が示されている。  大型間接税を見ますと、その大型間接税の形がどんなものであれ、例えばいわゆる庫出税と言われております税制にいたしましても、税金を納めますのは、納税義務者はなるほど企業でございますけれども、いわゆる担税者、税金を負担するのは消費者でございます。ですから、マル優制度におきましてもあるいは間接税にいたしましても、税を負担いたしますそこは国民の側に全部、とりわけ個人の側にこれはかかわる問題でございますね。ですから、所得税減税をするその財源は、この答申を大まかに見させていただきます限り、どうもこれはそのまま我々国民の側に、消費者の側にはね返ってくる。そして法人税の方が、減税分に対しましてどれだけ増税されるのか明らかでございませんが、ひょっとしたら法人税の分につきましても国民の側のその増税の分が回るのではないだろうか、そういう懸念も含まれているわけでございます。  そこで、細かなお話を申し上げますと現在まだ自民税調で審議中でございますのでと言うてお逃げになりますので、大枠の話を私は申し上げているわけです。ですから、大蔵大臣あるいは総理大臣として、日本の今回のこの税制において、国民の所得に対する減税と法人に対する減税と、その財源は一体どういうふうにすべきだという大枠のお考えをお持ちになっているか、これをひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  172. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 本来の発想が、所得税につきましては御承知のような中堅給与所得者を中心とする減税、法人税につきましては実効税率を五〇%以下にやがて下げたい、そういったような考え方、しかも我が国は、先ほどもお話しになられましたように、アメリカほどたくさんの、いわゆる租税特別措置法のようなタックスシェルターを持っておりませんから、それらによって税率引き下げが賄われるというわけにはまいらない。したがいまして、それらの減税分は新たに財源を求めなければならないということになりまして、その財源は、やはり我が国の場合直間比率が御承知のようなことでもございますし、間接税そのものが既にそれ自身ひずみもゆがみも持っておることもございまして、そういうことも再検討しながら財源を求めるというふうにやはり全体としては動いておるのではないかと思います。
  173. 坂口力

    坂口委員 大蔵大臣、私がお聞きをいたしておりますのは、そういうことなんですが、しかし大蔵大臣としてはその方向でいいというふうにお考えになっているのかどうかということをお聞きをしておるわけです。
  174. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 政府が最終的にどのような法案につきまして御審議をお願いいたしますかまだ決定しておりませんが、私としてどう思うかというお尋ねでございましたから、私自身は、我が国は国民所得の水準がかなり高くなりましたし、しかも一般的に平準化をいたしております。まあまあ生活の水準はかなり高くなっておること等も考えますと、現在のような七対三、それより少し直接税が勝っておりますが、七対三といったような直間比率は、これはやはり間接税の方におもしを傾けていくことが適当ではないか、私自身はさように考えております。
  175. 坂口力

    坂口委員 そういたしますと、国民の側の減税分は国民の側で賄う、そして法人の方の減税の分は国民の側の増税分で賄う、こういうことですね。そういうことになりますね。ですから、そこのところを私はこれから大いに議論をしてもらいたい。そして、これから固めていかなければならない段階でございますが、ここを、法人の方の減税財源国民の側にそれを覆いかぶせてくる、それをすべて求めるということのないようにひとつ頑張ってもらわなければならない、こういうふうに私は思っているわけでございます。  我々は、もちろん減税をいたしましたらその財源が必要なこともよくわかっております。しかしながら、所得に対する減税国民の側で賄い、そして、それだけではなくて、そこの余分な分を今度は法人税の方まで持っていかなければならない、それでは国民の側は減税ではなくて増税になるではないか、こう私は申し上げたいわけでございます。その点につきましてもう一度お話を伺って、次に進みたいと思います。     〔野田委員長代理退席、委員長着席〕
  176. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまのお話は、法人税の税率等を軽減する場合に、その財源のかなりなものを法人税自身の中から出していくべきではないかという御指摘というふうに伺いますと、例えば引当金というものはそれ自身がタックスシェルターとは申しにくいかもしれませんけれども、退職引当金にしましても貸倒引当金にいたしましても、ある程度の余裕を持って定められておることも事実でございましょうから、そういったようなこと、あるいはその他幾らかまだ租税特別措置法に残っておりますか、そういったようなものも、つまり税源のあるものはそれを見つけながら、法人税の問題はある程度は法人税の中で考えてみろ、こうおっしゃる意味でございましたら、それは十分にそういう努力をいたすべきだと思います。
  177. 坂口力

    坂口委員 そうしませんと、所得税の方でも特に累進の高い、すなわち五千万超のようなそういう高額のところは下げますよと言っているわけですね。そして法人税の側は法人税で賄い切れませんから、どこかから回してもらわなければなりませんよ、こう言っているわけです。そうしますと、減税をします分の、非常にたくさん所得を得る人の減税になった分、そして法人の減税になった分はどこから賄うかと言えば、これは所得の非常に少ない層の皆さん方のところ、ここを増税にして賄う以外に方法がないわけですね。そうなりませんか。ですから、私はそれでは困るということを申し上げているわけでありまして、そこのところに大蔵大臣としての格段の配慮があるべきだ、この答申を読んではそこまでがわからない、わからないところであるから、今私は大蔵大臣にぜひこの点を明確にしてもらいたいということを申し上げているわけでございます。
  178. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御主張の御趣旨はよくわかりました。
  179. 坂口力

    坂口委員 時間が大分たってまいりましたので次に進ませていただきますが、もう一つ、アメリカが大型間接税、EC型付加価値税につきましていろいろの研究をいたしました。その結果としてアメリカは大型間接税を導入をしませんでした。ことしの九月にアメリカに参りまして、メッツ補佐官に、日本の主税局長さんだと思いますが、お伺いをいたしましたら、一にかかりまして、大型間接税を導入をしなかったのはレーガン大統領の税制に対する哲学によるところが多い、こういう答弁でございました。レーガン大統領がどのように考えられたかということをお伺いをいたしましたら、それは、現在アメリカは行政改革の真っただ中にある、その行政改革の真っただ中にあるにもかかわらず、今安易に税金を集めやすいEC型付加価値税というものを導入をしたならば、行政改革は多分中途半端になってしまうだろう、だから、そういう安易に税収を得ることのできるような大型間接税は今導入すべきでない、そういうものを導入すれば安易な方向へ安易な方向へと流れていく可能性が強い、だから、ここはひとつ歯を食いしばってEC型付加価値税なるものは導入をせずに頑張ろう、そして、行政改革をさらに着実に前進をさせようというのがいわゆるレーガン哲学であるということを聞かされました。  これは、どういう形の税制を導入するとか、どういう大型間接税を導入するとかあるいはしないとか、その問題の以前にどうしても議論をしなければならない問題でありまして、このアメリカの物の考え方は高く評価をしていいのではないか、私はこう考える一人であります。このことに対する総理の御意見を求めたいわけでございます。  総理は、アメリカはアメリカだ、日本日本だ、こういうふうにけさおっしゃいましたけれども、しかし、このアメリカの立派な物の考え方に対しましてはやはり耳を傾けなければならない。このアメリカの、レーガン大統領の物の考え方をどう思うかということと、あわせてもう一つは、今回のこの税制改革というのが、これは二十一世紀に至りますまでの一つの過渡的な税制改革だというふうにとらえておみえになるのか、それとも二十一世紀に及ぶところの、これはもう踏み込んだその時点までの税制改革であるというふうにお考えになっているのか、この二つをお聞きしたいと思います。
  180. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 二十一世紀に向かっての目標を決めた税制改革であると私、理解しております。  それで、じゃ日本の場合どうかという質問でございますが、やはりアメリカの今度の改革で一番よくやったと思いますのは、簡素化、単純化ということで、できるだけ税務署の役人も手が要らぬようにしたい、そういうような要素がかなりあるのではないか。わかりやすい、簡素化、単純化。  それからもう一つ日本の場合と比較して考えてみますと、アメリカも非常に豊穣な社会になってきております。日本もシャウプ税制のころとは格段に違うように、富の分布が違ってきておる。そこで、シャウプ税制のころは貧富の差はまだかなりあったわけですから、ですから直接税中心主義で、それで調整措置を講じた。貧富の落差を埋めるという、財政が機能する余地を認めた。今の日本になってきますと、みんなかなり水準が上がって、相当預金を国民の皆さんもお持ちです。もちろん借金もありますけれども、水準は非常に上がってきている。みんな高校を卒業するぐらいにもなってきている。そういう意味においては直接税による所得の調整措置というものが昔ほど要らなくなったのではないか。そうすると、間接税に頼る、ある程度選択性を持って、つかんだ人が、好んだ人がそれに値する税を払う、そういうような、日本の富の上昇といろいろな水準の上昇化というものに合うような考え方をとったらどうかというのが税制調査会、政府税調の考えの底にあるのではないか、この二つが私の目にとまったところであります。
  181. 坂口力

    坂口委員 私がお聞きをしましたことと御答弁の方向とが若干違うわけでございますが、最初に私がお伺いをいたしましたのは、アメリカが行政改革というものをこれからさらに突き進めていくのに、現在その時点においてこの大型間接税というものを導入をすることは、これは安易な方向に流れるというふうに判断をした、その判断の仕方に対して中曽根総理はどのようにお考えになるかということを一つはお聞きをしたわけでございます。  あわせまして、日本も現在まだ行政改革の途上だというふうに私は認識をいたしておりますが、中にはもう中曽根内閣は国鉄改革をもって行政改革を終わりとするのではないかというような意見もございますけれども、私は違うだろうと思っております。これから行政改革をどういうふうに進めようとされるのか、その時点においてこの税制をどう考えられるのか、あわせてもう一度御答弁をいただきたいと思います。
  182. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 行政改革は前から申し上げたように三代十年の仕事であって、中曽根内閣で終わるものではない、私はそう思っておりますし、息の長い行政改革を次々に実行していくべき余地があるし、臨調答申、行革審の答申にはそういうものがまだ大分残っていると考えております。  それからアメリカの税制に対する評価でございますが、いわゆる付加価値税的な間接税というものをアメリカがとらなかったという背景にどういう理由があるか、私はまだ勉強が不十分で、ここで的確な御答弁を申し上げるような勉強はまだ足りませんから、それは政府委員をして答弁させたい、そう思います。
  183. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 確かに間接税、殊に消費税のようなものは痛みを伴わない税金であるために自然にそれが行政を肥大化させるということはしばしば言われるところであります。またレーガン大統領がそういう哲学を持っておられる人であるということも私は言われるとおりだと思いますが、ただ現実の問題としてアメリカが一般消費税のようなものを今度考えませんでしたのは、連邦政府はともかくとして、州政府が御承知のようにかなりあっちこっちで小売課税、セールスタックスを持っておりますので、それとの関連が非常に難しかったということが一つ大きな理由であったのではないかと思います。  しかし、それはそれといたしまして、間接税というものはとかく行政を肥大化する、苦痛を伴わない税であるということはよく言われますので、したがいましてそういう点は十分に考えながら、殊に我が国の場合でございますと税率は、これは国会のお許しを得なければ変更することはできないわけでございますし、またこの間接税をイギリスなどで上げますときには必ず所得税減税、増税との引きかえのような形になっておりますから、そういうところから見ますと、いたずらに行政を肥大化させるということにならないで済んでいけるのではないかというふうにも考えています。
  184. 坂口力

    坂口委員 先ほど中曽根総理に私がお伺いをいたしましたときに、二十一世紀に至る税制改革、もう二十一世紀に踏み込んだ税制改革までも考えている、それは二つに分けるのではなくて一本の税制改革だという意味のことを御答弁になったと思うわけでありますが、今回のこの税制改革でもし仮に間接税というものの比率を高めて、そして直接税の比率を下げるということになりますと、どういたしましても直接税とそして間接税との間ではいわゆる租税弾性値が違います。したがいまして、自然増収というものにつきましては、どうしても間接税の比重が高まれば今までのような自然増収というものは見込めないということになってくる。そうすると、これをどうするかということになれば、どうしても一番手のつけやすい間接税のパーセントを、間接税の税率を上げるということにせざるを得ないような状態になる、これがヨーロッパ諸国の歩んできた道でございます。  もし仮に日本の税制を二十一世紀まで踏まえた税制改革をしていくのだということであるならば、これは今後、先ほどの御質問にもありましたように途中で何回となく改革をしていかないことにはこの税制というものはもたなくなってくる、そういうふうに思いますが、大蔵大臣、いかがでございますか。
  185. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 実はまさに租税弾性値というところがいわば累進がきくというところでございまして、我が国のようにかなり長いこと毎年高いベースアップが過去にはございました。それが租税弾性値を高くしている。納税者にしてみますとその圧迫感が非常に大きいということであったのだと思います。したがって、今回はそこのところの所得層の幅を広くしてなるべく単一の税率でカバーしようとしていきますと、おっしゃいますように重税感はなくなる、逆に言えば弾性値が小さくなるということ、そうであろうかと思われます。  そこで、それは間接税の税率を上げたがる状況政府としてはなるのだとおっしゃいますが、しかしそこは国会が、やはり先ほども申しましたように、仮に間接税の税率を上げるのならばそれは所得税減税ということでなければ認めないぞというのが西欧諸国で起こっていることでありまして、我が国においてはどうでございましょうか。恐らくやはりその点は同じようになっていきまして、決して政府が安易に間接税の税率を上げられるという状況には今の国会の御審議の様子から申しましてならないのではないか、また政府としてもそういうことは十分に規律を守ってまいらなければならないことだと思います。
  186. 坂口力

    坂口委員 その圧迫感は減税によって調整をすべきだということを我々は申し上げているわけであります。  先ほど中曽根総理は、レーガン大統領の税制に対する考え方、そうしたものを十分に勉強していないので、これからまた勉強したいというお話でございましたが、ぜひその辺のところを十分ひとつ勉強をしていただいて、そして日本の新しい税制に対する新しいお考え方というものをもう一度再構築をしていただきたいと思うわけであります。我々公明党といたしましては、この大型間接税のこの時期におきます導入は絶対に認めることができ得ないということを一言申し上げて、次の問題に移らせていただきたいと思います。  もう一つ、公定歩合が三%に引き下げられまして、そうして資金運用部資金の預託金利の引き下げの問題が出ております。これは再三私がこの予算委員会で取り上げてまいったことでございますが、先ほど皆さん方のお手元に配りましたプリントをごらんをいただきましてもわかりますとおり、一九九五年ぐらいから社会保障に対します負担が急激にふえてくるわけであります。十年後にはそういう急激にふえる時期を迎えているわけでございますが、そのときに、年金あるいはまた国民の皆さん方が少しずつおためになりました郵便貯金、そうしたものが今後利息がどういうふうになっていくかとか、あるいはまた、どのように国がこれを扱っていくかということは、最大の関心事にならざるを得ないわけであります。  ところが、この公定歩合の引き下げに連動いたしまして資金運用部資金法の改正を行って、そして預託金利というものを六・○五%からさらに下げよう、こういうお話が今出ておるわけでありますが、そこからお借りをする側の気持ちになりますと、これは下がった方がいいということでございますけれども、しかし、その原資を預けた側、すなわち国民の側の年金を預けた側から見ますと、余りここを下げられてしまいますと、だんだん将来の年金というものは下がっていく、年金がふえるということにはならない、非常に先細りの感にならざるを得ないわけであります。私は、この年金を将来立派なものにしてそして国民の皆さん方に安心をしていただくためには、ここを余り下げ過ぎるということには非常に抵抗を持つ一人であります。これは厚生省も多分同じような意見をお持ちでないかと思いますが、厚生大臣、御意見がございましたら先に伺っておきたいと思います。
  187. 斎藤十朗

    ○斎藤国務大臣 これから迎えます長寿社会に向かって、その所得を保障してまいります年金は非常に重要な問題でありまして、昨年、年金の抜本的改正をいただき、将来にわたっての給付とまた負担という面において、国民的なおおむねの合意がなされたと思っておるわけであります。そういう中で、その年金の積立金をいかに有利に運用し、そして将来に向かって安定的な年金制度を維持していくかということは非常に大事なことでありまして、この積立金の運用については最大の努力を私どもはいたしてまいらなければならないというふうに考えております。
  188. 坂口力

    坂口委員 この年金資金の運用につきましては、これはできる限り国民の皆さん方の御要望にこたえる方向に持っていかなければならない。それに対しまして多分大蔵大臣は別の考え方を述べられるのであろうと思いますが、そこのところに何か工夫ができないだろうか。それは年金財源の自主運用なんです。共済年金におきましても既に自主運用がされている。だから、厚生年金、国民年金の資金にいたしましても、自主運用をして、もう少し高い金利でこれを預けることができ得ないか、それが現在まで私が主張してきたところでございますが、なかなか最近のように全体の金利が下がっておりますとそうはうまくいかない面もございます。また、国が預けるわけでありますから、そうどこということなしにこれを預けるというわけにもいかないだろうというふうには思いますけれども、しかし、もう少しはいい金利で預けることもでき得るわけでありまして、ですから、どうしてもまた預託金利をもう一つ下げますぞというのであれば、やはりそれをどこかでカバーをしないと、この年金を納めた国民の方は浮かばれないということになるわけであります。そこに対するお考えをひとつお聞かせをいただきたい。
  189. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 結論として申し上げますと、今のこの預託金利の問題をどうするかということは、関係省庁でこれからよく相談をしてまいりたいと思っておりまして、私はいまだ予断を持っておりません。と申しますのは、とりもなおさず今坂口委員が仰せられましたようないろいろな非常に複雑な問題がございますからでありますが、一般的になぜ預託金利の引き下げが問題になっておるかと申せば、恐らくは金利水準が下がりますならば例えば預貯金利子も下がるわけでございますから、運用水準だってそういう意味では一般論としては下がるはずである、そうであるとすれば、とにかく資金運用部から借りる人たちは、これはなるべく金利が安い方がいいわけでございましょうから、下げる余地があるではないか、一般論としてはそういうことがあるであろうと思います。それは、運用者からいえば高ければ高い方がよろしゅうございますけれども、金利水準が一般に下がれば運用水準もその程度下がることはやむを得ないということは一般論としては言える。しかし、仰せられましたようにいろいろな衝突する利害がこの問題にはございますので、ひとつよく研究をさせていただきたいと思います。
  190. 坂口力

    坂口委員 例えば、県や市町村が道路をつくりましたりとか、あるいは建物をつくったりということにこの年金の財源が使われる、そういう借りる側からすれば、今おっしゃるようにそれは安い方がいいことは私もよくわかっているのです。だからといってこれを下げ続けていけば、年金の資金として預けた国民の側に立ったらこれはどうなるのですか、私はこう言っているわけでありまして、そこのところに対する配慮がなければならないということを申し上げている。後ろの方から大分手をたたいていただいておりますが、そういう御意見は非常に多いわけでございまして、ぜひひとつこの辺に対しましては特段の配慮をしていただきたいと思うわけでございます。  さらに、ついででございますので年金課税についてももう一つお伺いしておきたいと思いますけれども、今回のこの答申の内容を見せていただきますと、老後を迎えられました方々の年金に対する税金が一体どうなるのか。中を読ませていただきますと、このままいくようにも書いてありますし、あるいはさらに税金を高くするようにも読める。本当に難解な文章でございまして非常にわかりづらい内容になっておりますので、あえて一言お聞きをしておきたいわけでございます。  これから年金で生活をされる方というのはたくさんふえてくるわけでございます。その皆さん方はなかなか物価の上昇分に見合った年金の上昇というものもこれからは見込めない、そういうことになってまいりますと、このとらの子の年金というものに対して税金がどうなるのであろうかということを最大の関心を持って見守っておみえになるわけでございます。したがいまして、私は、この年金に対する税金というのは極力抑制をすべきであると今まで主張してまいりましたが、今回のこの答申の内容を見ますと、何となく上げるかもしれないというにおいが感じられないわけではないわけでございます。とりわけ六十五歳までと六十五歳以上と違うわけですね。今までも控除率というのは違っております。とりわけ六十五歳未満の人というのは、もう働く場所はなくなりました、しかし、年金の方はまだ十分に入ってまいりません。そういうふうな皆さん方に対する課税というものが非常に強化をされるということになりますと、これは非常に大きな問題になるわけであります。六十五歳末満の単身の方でございますと九十万円、これが課税最低限でございます。御夫婦でございますと百二十三万円が課税最低限でございます。ここに対する課税について、これも厚生大臣はどういうふうに御要望をお持ちかということを聞きつつ、大蔵大臣のこれに対する強い御決意をひとつ伺いたいと思うわけであります。
  191. 斎藤十朗

    ○斎藤国務大臣 先ほど申し上げましたように、年金制度の抜本的な改正によりまして将来にわたっての国民合意ができたわけでございますが、そういう中で将来の年金が実額として保障されるように、また、現在老後生活を送っておられる方々に不安のないように、現行の控除水準を維持し、そして社会保障水準の低下にならないように努めてまいりたい、これからの税制改革の中で各方面に御理解をいただいてまいりたいというふうに考えております。また一方、六十四歳から六十歳までの方々につきましては先生御指摘のような点もございますので、この点の改善についても関係方面に御理解をいただき、改善方を要求してまいりたいと考えております。
  192. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 答申が出たばかりでございますけれども、答申の言っておりますことの一つは、公的年金についてこれが給与所得の控除の適用を受ける、それはいかにもどういうことであろうかということは前から議論になっておるところでございますし、さらに老年者については老年者年金特別控除が設けられております。そこで、この答申の言っております中心部分は、これから年金が所得の源泉であるケースが老齢者社会になりますと多くなりますからひとつ制度を整備しておきたい、そういう意味では、公的年金を受給する老年者に対し基本的には現行制度の控除水準を維持する、こう言っておりますので、いわゆる増税を図ろうというわけではない、ただ、給与所得控除や老年者年金特別控除にかえて新たな控除を考える方が制度として合理的ではないか、こう言っておりますと私どもは理解をいたしております。この趣旨に沿いまして考えてまいりたいと思います。
  193. 坂口力

    坂口委員 控除の様式が変わってもそれはやむを得ないと私は思いますし、また変えなければならないこともあろうかと思います。しかし、結論から申しまして、控除の様式を変える、そのついでに税率が上がってはぐあいが悪いということを申し上げているわけで、ここでひとつ、今以上に税率が上がらないように努力をいたしますとの大蔵大臣の御意見国民の皆さん方に御披露をいただきたいと思います。
  194. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この点は一概に申し上げることができませんので、税調答申の趣旨をよく各省庁とも検討しながら進めてまいりたいと思います。
  195. 坂口力

    坂口委員 最後に一、二だけお聞きをしておきたいと思います。  一つは、中央公害対策審議会の答申が出まして、水質の総量規制の強化の問題が出てまいりました。これは最近の環境行政の中では非常に注目すべきことでございますが、環境庁長官としましてはこの問題にどのように取り組んでいかれるか。  あわせて、これはどうしましても下水道の建設でございますとかそうした問題にかかわってくることでございますし、建設省の方、あるいはまた通産大臣の方とも関係することかもしれません。ぜひそうしたことも踏まえてひとつ答弁をしていただきたいと思います。
  196. 稲村利幸

    ○稲村国務大臣 坂口先生の、先般の水質総量規制の答申のことでございますが、東京湾、伊勢湾、瀬戸内海、大変水が汚くて、国民からこれを何とかしなければという声が大変強い。そこで、環境庁としては十一月中に水質規制基準の範囲内についての告示の手続をします。そして十二月中に総理大臣が総量削減基本方針を定めて、環境庁としては、他の省庁と連絡をとって、特に今御指摘の下水道整備に力を入れてもらいたい。過去五年間普及率が毎年約一%しか伸びておりませんので、内需喚起の声高い中で下水道整備が進められたらと思っております。
  197. 坂口力

    坂口委員 環境庁の方がこの答申を中心にしてこれから進められるといたしましても、どういたしましても問題になりますのは、地方におきますところの下水道施設等に対する財源でございます。ここでいつも行き詰まるわけでございますが、とりわけ今回東京湾、伊勢湾、瀬戸内海を中心にいたしました総量規制、これを指摘されたわけでございますので、ここを実現をしていきますために、建設省あるいは通産省そして環境庁、ぜひひとつ協議をし、そして進めていただく場をつくっていただくことができればというふうに思うわけであります。お願いをしてございませんが、田村通商産業大臣、もしも御意見ございましたらお聞かせください。
  198. 田村嘉朗

    田村国務大臣 水質保全の問題は今おっしゃったように当然我々も含めて協議の場を持たなくてはならぬ問題でございます。通産省の場合は当然除害施設の問題もございましょう。また環境庁の場合は監督あるいは測定その他いろいろな問題もございましょうから、私もぜひこれをやりたいと思っておりましたやさきでありました。ありがとうございました。早速検討したいと思います。
  199. 天野光晴

    ○天野国務大臣 中央公害対策審議会の答申によれば、生活系の汚濁負荷量の割合はふえており、この対策として下水道の整備が最も重要な施策であると認識をしております。  建設省といたしましても、従来より総量削減計画対応すべく鋭意下水道の整備に努めてまいったところであるが、今後とも、答申に基づいて作成される新しい総量削減計画対応すべく下水道の整備に全力を尽くして投入していきたいと思っております。
  200. 坂口力

    坂口委員 ぜひひとつ各省庁協議を重ねていただきまして、そして地方に大きな負担がかかるという形ではなくて、この問題を進めていただきたいと思うわけでございます。  最後になりましたが、これも厚生省関係のことでございますけれども、近年驚異的な進歩を遂げております分野にバイオテクノロジーの分野がございます。日本におきましてもこの国民の健康の問題は非常に重大な時期を迎えているわけでございますが、とりわけ健康増進のために、がん、脳卒中、心臓病などの成人病対策もこれから進めていかなければなりませんし、あるいはまた、その他の老人性痴呆の問題等につきましても、これからさらに研究を進めていかなければならないところでございます。  最近までこの医薬の研究につきましてはいろいろ進歩してきたところでございますが、とりわけ最近はバイオテクノロジー、この方面の研究が進んでまいりました。国におきましても、通産省の方あるいは農林省の方におきましてはバイオテクノロジーの問題は既にもう手がけられておるわけでございますが、肝心の人間の体にかかわりますところの分野につきましては、まだ厚生省も本格的な取り組みに至っていない現状でございます。ぜひひとつこれは早急に取り上げていただきまして、そしてこのバイオテクノロジーによるところの薬の開発等にひとつもっと真剣に国自身が取り組んでもらわなければならないだろうと思います。なぜなら、非常にリスクの多い分野でございまして、一般の製薬会社等にだけ任せておいたのではなかなか進まない面もあるわけでございますので、この点につきましてひとつ厚生大臣に一言お聞きをして、そして総理大臣からも大事な問題でございますので一言御決意をお伺いをして、私の質問を終わりたいと思います。
  201. 斎藤十朗

    ○斎藤国務大臣 これから到来いたします長寿社会が本当にみんなが健康で健やかな生活を送れるようにいたしてまいらなければなりません。そういう観点から、対がん十カ年総合戦略とか、また長寿社会対策大綱というような形の中で、その長寿社会に対応すべくあらゆる政策に全力を挙げておるところでございます。  今御指摘のように、バイオテクノロジーを応用した先端的な技術の開発によりまして、将来、がんとかまた成人病、また老人性痴呆症等に対して非常に有効な医薬品が開発されることも期待されるわけでございます。そういう意味で、医薬品等の健康科学分野における技術研究開発というものに対して、厚生省としても大きく力を入れてまいらなければならないと考えております。  特に御指摘いただきましたような点について、私どもといたしましては来年度産業投資特別会計に要求をいたしまして、民間におけるそういったバイオテクノロジーを中心とした先駆的また基盤的な技術開発の研究体制を支援、援助する、そして具体的には出融資制度を行っていくという、そういう新しい制度をつくってみたいものであるということで概算要求をいたしておるところでございます。
  202. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 バイオテクノロジーの分野はこれから広大な分野が開けてくると期待もし、我々は努力していきたいと思います。医薬、医学あるいは植物学、あらゆる面で応用分野が広まっております。  ただ、ここで大事なことは、人間の尊厳を害しないという非常に大事な制約のもとにこれは行わなければならない、そういう考えに立ちまして積極的に開拓するように努力していきたいと思います。
  203. 坂口力

    坂口委員 ありがとうございました。
  204. 砂田重民

    砂田委員長 この際、矢追秀彦君から関連質疑の申し出があります。坂口君の持ち時間の範囲内でこれを許します。矢追秀彦君。
  205. 矢追秀彦

    矢追委員 最初に、先ほど来ずっと議論がされてまいりました税制改革について、質問通告はしておりませんでしたが、総理にお伺いをしたいと思います。  税調の基本的な理念は、総理がしばしば言ってこられた公平、公正、簡素、選択、活力、こういうことが基本であり、しかもひずみ、ゆがみ、さらに重圧感を除去していく、こういうことが言われておるわけでございますが、どうもきょうの総理答弁からうかがいますと、この五つの基本的な理念の中で今国民が一番願いとしておるのは公平と公正であると思います。そういった点から考えますと、どうも総理はそちらの方の強調は余りされないような気がしてならないわけであります。この五つを完全に同じ調子で税制改正をやるということはなかなか難しいかと思います。  例えば活力という面をとらまえましても、法人税を下げていく、これは活力に大きなプラスになろうかと思います。しかし一方、言われております大型間接税、税調では日本型付加価値税が一番賛同が多かったと承っておりますが、この日本型付加価値税の導入によっては、この税率がたとえ最初〇・五%でありましても、付加価値税というのは税率が年々上がり、ヨーロッパ諸国に見られるように十年もたてば大変な税率に上がっておる、こういう状況下にあります。したがいまして、付加価値税というものは景気の足を引っ張る可能性も十分出てまいります。そうしますと、活力ということだけをきちんとやろうとすればそういったものは導入できない、こういう形になるわけでして、なかなかこの五つのことを同じような程度に網羅することは私も決して簡単ではないと思いますが、どうも総理はあとの三つの簡素とか活力とか選択というのを大変強調されているように思われてなりません。私は、国民の願いはあくまでも公平、公正にある、こう基本的には思います。したがって、そういった意味において、この税制改革においてどの点を一番総理は重要視されて臨もうとされておるのか、私はその点をまずお伺いしたいと思います。
  206. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 税制改正の一番の基本はどこにあるかという私の申し上げました中で、ゆがみあるいは重税感の解放、ひずみを直す、ゆがみ、ひずみ、重税感の解放ということを言っておるのでありまして、そういう意味におきましては、公平、公正ということがやはり基本であるということを申し上げて差し支えないと思うのです。ただし、ほかのものをじゃ無視してよいかと言えば、そういうものではない。やはり税制というものはバランスのとれたものであることが必要である。しかし、いよいよその体系をつくるという場合になると、簡素ということも非常に重要であります。やはりわかりやすくて簡単だ、これが国民が非常に求めておるものであると思います。そういう意味におきまして、いずれを無視していいというものではないと思うのです。
  207. 矢追秀彦

    矢追委員 私は無視をしておるとかしていないとかいうことを言っているのじゃなくて、今国民が願っているのは公正、公平が一番基本にあるのじゃないか。今簡素を言われました。確かに簡素は国民も願っておると思います。しかし、簡素にすることによって、例えば税率の段階を簡単にすることによって何が出てくるかというと、今回の税調でもやはり一番所得の高い人が優遇されてくる。もちろん中間層が重税感にあえいでいることも事実です。だからそれをある程度軽減しなければならぬと思いますが、この簡素化ということによってまた逆に不公平という面も出てくるわけです。  だから、そういう簡素、選択そして活力というのはなかなか難しい。もちろんそれをやることを私は否定するわけではありませんが、まず一番今国民の願っている公正、公平にきちんと焦点を合わせた上でやっていかないと、結局根本的な税制改革というものにならないのではないか、私はこう思う次第でございますので、総理の重ねての答弁と、大蔵大臣、お願いします。
  208. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 一言で言えといえば公平ということでしょうね。しかし、それだけでほかは無視していいというものではない。やはりあとの四つも大事であるとつけ加えながら、公平ということが国民が一番求めておるものではないかと思います。
  209. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私もやはり公平ということだと思います。それが今回所得税中心にああいう累進構造、税率の刻みにしよう、それによって一番不公平感を持っております給与所得者のそういう不公平感を除きたい、それが一番大きなねらいではないかと思います。
  210. 矢追秀彦

    矢追委員 次に、経済見通しについてお伺いをいたしますが、六十一年度の政府経済見通しは、現時点では実現不可能と私は考えております。すなわち、名目五・一、実質四・〇%の経済見通しは大変厳しい状況にある。しかも、民間ではほとんどが下方修正をしてきております。主な一番大きいところで三・四であります。それから一番小さいところが一・八、こういった各民間のデータが出ております。しかし、政府はあくまでも四・〇%の成長率はそのまま下方修正をされないできておるわけですが、その点について経企庁長官にお伺いしたいと思います。
  211. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 先生のお話のように、確かに輸出を中心といたしまして、製造業分野では景気の停滞が見られるわけでございますが、ただ、最近の統計を見ましても、例えば現金給与総額が九月で前年より三・四でございます。七月は三・九、八月が一・六、九月で三・四でございますし、全国百貨店売上販売額も、これも八月が七・七、九月になって五・三、消費が順調に伸びておるわけでございますし、また新設住宅着工戸数も、昨年が百二十万戸台であったわけでありますが、最近は七月百三十六、八月百三十六で、九月は百四十九万戸でございますから、前年対比二割も伸びているわけでございます。したがいまして、確かに輸出を中心とした製造業分野では弱含みがございますけれども、しかし、内需全体として依然として好調でございます。  ただ、円高によりまして、いわゆる経常海外余剰分ではマイナスでございますから、これを何とかこれからの新しい内需の創出によってカバーしていきたいというのが九月十九日に発表いたしました総合経済対策でございますし、その柱が今御審議いただいております一兆四千億の公共事業でございますので、これらを年度内にできるだけ早く着工をし、実行いたしますと、外需の落ち込み分を相当カバーできるのではないか、こういうことで考えておる次第でございます。
  212. 矢追秀彦

    矢追委員 要するに経企庁長官は、四%達成はできる、こういうことですか。
  213. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 これは外需の動きがどうなるかということが一つの決め手でございますし、設備投資の動向についてどう見るかでございますが、この三兆六千億余の新たな需要創出というものがどの程度年度内に消化できるかということが一つと、それから、国の具体的な施策にもプラスして民間の設備投資なり民間の消費が今後どういうふうにふえてくるか。この間公定歩合の引き下げもございましたし、こうしたものが為替を通じ一般の企業の心理にプラスの影響を与えると私ども考えておりますので、そうしたものが総合してまいりますと相当なところにいくのではないか、かように考えておる次第でございます。
  214. 矢追秀彦

    矢追委員 相当なところというのはどこら辺ですか、経企庁長官
  215. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 これは経済のことでございますので、できないと言ってしまうと全くできなくなるわけでございますので、やはりそうした成長期待を国民の皆さんに持っていただく、その大きな柱が今回の総合経済対策であると御理解いただきたいのであります。
  216. 矢追秀彦

    矢追委員 四%の成長が達成できると信じておるのは政府だけなんです。――今の不規則発言で経企庁長官一人というのがございましたが、絞ればそういうことになろうかと思いますが、私はやはり総理責任があると思います。というのは、これだけの補正予算を組んだわけですから、閣僚全部責任があると思いますから、経企庁長官だけが信じているのではなくて、全部が四%成長は承認されたものと思います。  そこで、ちょっと長官、あなたは今いろいろな条件をおっしゃいましたけれども、具体的に数字を挙げて申し上げますと、この四%を達成するためには、相当これから後やらなければならぬのです。まず一%、要するに、今度の総合経済対策は三兆六千億ですね、これがGNPの大体一%に当たりますから、だから一%ぐらい上げられるのではないか、こういうふうなことだったと思うのですが、実際は、この民間研究機関でいきますと、〇・五ぐらいしか上げないと言っているのです。だから政府の見通しというのは過大期待であった。特に、四月から六月の国民所得統計の前期比伸び率は〇・九%、そして政府の成長率実現のためには、この七月から九月期以降の毎四半期ごとに一・七%の成長をしないと四%にいかないわけですね。これを年率に直しますと七%成長になるわけです。だから、ことしの当初、四%成長を政府は言われた、そして今日まで経済財政運営をやってこられた、しかし私は、これはもうそこまでいかないと思いますが、この四%達成のためには今から、年率にすると七%、それだけの瞬間風速を持ったかなりの成長をしなければならぬわけです。一・七なんてできるわけはないのです。この〇・九だって多いわけです、その前と比べますと。  しかも、今経企庁長官は――確かに住宅はある程度伸びているでしょう。消費もある程度堅調ということは私は認めます。しかし、それ以上に今、円高中心としたいわゆる日本の基幹産業と言われている鉄鋼やあるいは造船やその他の製造業を中心として不況は深刻になっておるわけでございますから、私はここでもう一回聞きたいのです。長官が四%はできると言われるなら、これから後の四半期ごとに一・七%の成長が可能、では、それに対する対策は具体的にこうなんだ、だから、数字の上で年率七%成長ぐらいの勢いの成長はできるんだ、こう答えてください。
  217. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 現在私どもが正式につかんでおりますGNPは、先生がおっしゃっているように四-六月期の四半期、国民所得速報値でございますが、確かに前期比〇・九%ふえている。でございますから、これで四%の成長を達成するとすれば、おっしゃるように一・七%ずつ上げなければならない。これは機械的に計算するとそうでございます。  ただ、民間の調査機関が〇・五と言っておりますのを私も存じておりますが、これは、三兆六千億の総合経済対策の実際年度内に実行できるものが一兆五千億程度という計算でやっておりますので、三百兆円のGNP対比でまさに〇・五にしかならない、こういうことであるわけでございます。  ですから、先ほど申しましたように、三兆六千億がどれくらい年度内に実行できるかということでございまして、閣議等を通じまして関係閣僚にお願いいたしまして、それぞれの所掌の関係者にお願いをして、何とかできるだけ年度内消化を図っていただきたい、こういうことでございます。  そこで、先生、細かい数字で恐縮でございますけれども、確かに、いわゆる円高で、円ベースで申しますと、毎月毎月の輸出受取金は、前年同期に比較いたしまして、八月二〇・九、九月一六・六%減でございますが、しかし、同じ円ベースで輸入代金の支払い減を見てまいりますと、八月で四一・二でございますし、それから九月で三五・八なんですね。ですから、確かに輸出の受取代金は二割ぐらい減っておりますけれども、逆に輸入の支払い代金が三五%、四〇%も減っているわけでありますから、これだけの円ベースのプラスが経済にある程度の前向きの効果を与えないはずがないと私ども考えているわけであります。  ただ、いわゆる輸出代金の受け取り減は、デフレ効果でありますが、いわば非常に影響の大きい、すぐに影響を与えるものでございますし、今度輸入代金の支払い減は緩やかな影響を与えているわけであります。経済企画庁が計算をいたしますと大体十兆円を超える円高のメリットが発生をしているわけでありますので、これがことしの暮れから来年にかけて、アイドルバランスで眠ってしまうか、それともアクティブバランスとして具体的な消費、投資の促進に影響するかということは、まさに経済の見通しを民間の方々がどういうふうにごらんになるかということであって、非常にネガティブな形でごらんになるとアイドルバランスで眠ってしまうわけです。だけれども、積極的に政府が三兆六千億の総合経済対策をして前向きにいくのだということを民間の皆さんが御信任いただければ、私は十兆円を超えるアイドルバランスが漸次積極的な投資、消費の促進に力を出してくれるだろう、こう考えておりますので、そういうことを考えてまいりますと、このたびの公定歩合の引き下げも非常に前向きな効果を経済に与えるものと考えているわけであります。
  218. 矢追秀彦

    矢追委員 経企庁長官、いろいろ言われましたけれども、民間の計算が今言ったようなことで違うんだというふうなお話ですけれども、民間は、例えば今私が一番高い三・四を申し上げましたが、この三・四の場合は当初が三・九なんですね。これはかなり高く見積もっているわけです。一番高く見積もっている、これは大和証券です。大和証券で、三・九に見積もったのが三・四、これだけ落としている。これが一番高いわけです。一番政府の見通しに近い。そこでも〇・五落としているわけです。一番低いところは三菱総研の二・一。当初は二・一、政府の半分の見通ししか立てていなかったわけです。それが一・八という〇・三%の下方修正、こういうことになっておるわけです。  とにかく政府は最初立てた見通しというものを変えない。それは、目標としてそれを変えれば大変な政治責任になるから、それが怖いということでやられないのかもしれませんが、私は六十年度の補正予算審議でも、六十年度で出たいわゆる財政赤字といいますか歳入欠陥に対してこの成長率の問題を質問いたしましたら、当時の経企庁長官は、基準年次が変わったのだ、だからだということで逃げられたわけです。しかし、ことしはそうじゃありません。当初から四%を言っておられたわけでして、今のお話だととにかくできる、こういうことですから、私は見守りたいとは思いますが、ただ私はさっきの答弁には不満なんです。今言った四半期ごとの一・七%の成長が、さっき長官が言われたいろいろな手だてがきいてくるとは思いません。これからますます、まだ悪い方がきいてくるわけですね。例えばこの年末のボーナスがどうなるのかを一つ取り上げましても、減俸、減ってくる。量も減る、あるいは率も減る、そういうことでありますし、そのほかいろいろ大変な状況にあります。円高メリットが十兆円あるからそれが消費に回るんだと。現実に、確かに円高によって少しは物価の安定にも寄与し、ある程度物は下がっておりますが、一番よく下がっているものでもウイスキーぐらいでして、あとなかなか輸入品だって下がっていないのが現状です。これは国民不満もあるわけですから、そういった点で私は、決して今の答弁だけで四%が達成できるということを認めるわけにはいかないわけですが、これは総理、いかがですか。
  219. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 なかなか苦しい現況であるとは思っております。しかし、内需はかなり旺盛で、外需が落ちてきている。その落ちてきている分を内需でカバーしようというので補正予算も組んで、また公定歩合も下げたということで、今一生懸命の努力をしておるところでありますから、しばらく見守ってほしいと思います。
  220. 矢追秀彦

    矢追委員 総理、見守ってほしいとおっしゃいますけれども、これから後まだ質問で続けていきますけれども、今度の補正予算というのは大変な問題の補正予算なんですよね。作成そのものは非常に苦心をされたものですけれども、こういう予算を組まなければならなかったこと自体に私は大変な問題がある、政治責任があると後から指摘をしていきますが、総理は四%に限りなく近づける、こういう答弁を本会議でされましたが、この限りなく近づけるということは数字であらわすと大体、アバウトどれぐらいですか。
  221. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは努力の質を言っておるので、量を言っておるものではないので……。
  222. 矢追秀彦

    矢追委員 そう言われると私も思っておりましたが、私は、この後税収の問題でこの問題をもう一回蒸し返したいと思いますから、ここではっきり申し上げておきます。四%達成は不可能である。その結果は次の予算委員会、六十二年度予算の審議の際にこれはまた明らかになってくるわけでございますから、そのときにまた質疑をさせていただきたいと思います。  それでは次に、税収見積もりの誤りについて伺います。  税収が当初見込み額を一兆一千二百億円も下回ることになりました。この減額、いわゆる税収が減になった、この修正の根拠及び税目別の見込み違い、これをお聞きしたいと思います。
  223. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 まず、税目ごとの内訳を申し上げますと、源泉所得税五千七十億円のマイナスでございます。これはボーナス等を含めました給与の伸びが予想どおりでありませんで、その源泉所得税が減った分でございます。次に法人税九千八百十億円、これは先般、九月期決算、それから三月期決算のものは中間決算を見まして、企業収益の低迷からこのぐらいな減収は避けられないと考えたわけでございます。それから石油税二千五十億円、これは原油価格そのものが下がっておりますことと円高と両方でございます。関税七百五十億円、これは一般的に円高と申し上げることができると思います。  以上が減りました項目でございまして、ふえましたもので申しますと、申告所得税八百十億円、これは土地関係の譲渡所得と思います。相続税二千百九十億円、課税財産価額がふえておる。恐らくその中にはやはり土地が入っておると思われます。最後に有価証券取引税三千四百八十億円、これは株式市況等の好況によるもので、大体ただいま原因別に申し上げましたので、なぜということがおわかりいただけたと思いますけれども、これらはおのおのの税目につきまして、いわば当初いたしました積み上げ計算を見直しまして減額補正をいたしたものであります。
  224. 矢追秀彦

    矢追委員 この税収減、今言われたように、主に歳入欠陥が生じたのは法人税の九千八百十億円、それから所得税の四千二百六十億円という、要するにやはりこれは景気が悪くなった結果、こう判断ぜざるを得ないと私は思います。これは先ほどの質問と関連してくるわけですが、政府は初め成長率を高目にしておられた。本当は官邸筋の圧力で四%になって、経企庁は最初三%を考えておった。そういうふうなことも聞いておるわけですが、まず最初にその点はいかがですか、経企庁長官
  225. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 先生のお話の民間の投資、調査機関の見込みというのは、実は見込みと政府見通しの違いは……
  226. 矢追秀彦

    矢追委員 そんなことを聞いているんじゃない。最初経企庁は三%を考えておったが、官邸との話し合いで四%にしたのかということだ。
  227. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 問題は民間の設備投資をどう見るかでございますけれども、私どもは当初七%に見て計算をしてございますので、官邸筋どうこうということは、私は当時おりませんでしたが、そんなことないと思います。
  228. 矢追秀彦

    矢追委員 大蔵大臣、その税収減は、景気が悪くなったということはお認めになりますか。
  229. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 はい。ただいま申し上げましたようなことでございますから、例えば製造業における法人の経済活動が非常に悪いとかあるいは給与、ボーナス等々の支払いが予想を下回ったとか、そのようなことは一般的な景気状況の反映であることはそのとおりだと思います。
  230. 矢追秀彦

    矢追委員 だから当初の四%というものも高目過ぎたし、さらにその後の経済運営、いろいろやってこられましたが、なかなか成功しなくて、結局円高不況が余りにも強過ぎた。また、円高のメリットというのをかなり政府は、先ほども経企庁長官、これからまだ円高のメリットがきくんだというふうなことを言っておられますけれども、現実には円高メリットというものはそう効果を発揮しないまま今日まで来て、結局一兆一千二百億円という歳入欠陥ということになってしまったわけです。だから我々も当初、昭和六十一年度予算の最初に当たりまして、この予算委員会審議においても高過ぎるということは主張してきたはずです。それを、耳をかさないで今日まで来た。しかもまだ下方修正すらしないで、まだ四%頑張っておられる。こういうふうな政府経済見通しの甘さといいますか、見誤りといいますか、そういった点が一つ。  それからもう一つは、今ここに至ってもまだ何か旗だけを掲げていて、おろしちゃまずいからということで、しがみついておられる。それが次の六十二年度予算編成にも大きく響いてくるわけです。来年の経済見通しも大変なことになるわけです。だから素直に、だめならだめ、じゃ余裕はこの辺見てください、こういうことを私はやらなきゃならぬと思うのです。そうしないと、結局困るのはだれかといったら国民です。景気がよくなるんだと思って一生懸命頑張ってきた。設備投資もやった。じゃ物は売れない、何だ、四%は成長すると言ったはずじゃないか、それなのに給料も来ないじゃないか、こういうことになるわけです。  だから総理、この経済見通し、経済運営のあり方、もっともっとシビアにしていただかなきゃ困ると思うのですが、いかがですか。
  231. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 先生、総合経済対策は三兆六千億でございますから、これが全部消化されて一・一%強GNPをアップするわけでありますが、この三兆六千億、全部年度内消化できないじゃないか、こういう御指摘はわからないじゃないわけでございます。  ただ、結局GNPの構成要素を見てまいりますと、国は六兆円の公共事業をいたしますが、そのGNPの構成要素の中で民間住宅投資が十五兆円ございます。民間設備投資は五十五兆円ございます。そして、民間消費支出が百九十兆円ございますから、もしも民間の設備投資がたった一%ふえれば、これで五千五百億、二%ふえれば一兆円になっちゃうわけでございます。民間の消費が一%ふえれば一兆九千億です。二%ふえれば三兆八千億になるんです。  ですから、政府はやることはやりますけれども問題は、五十五兆円の民間設備投資がどれだけ政府の施策によって触発されるか。そして奥さん方が我々の政策、円高還元、いろんなことをやっておりますから、これに好意を示されて、あと一%伸びれば一兆九千億で、二%で三兆八千億ですよ。だから私どもは、国はやることはやります。だけれども、それがどういうふうに民間の設備投資なり民間の消費に影響するか。これがむしろGNPの大株主でございますから、この動きでどうにでもなるんですね、GNPの成長率が。ですから、ここではなかなか断言できない。ただ要は、私どもの政策に対して国民の皆さんの信任があれば、私はこれからぐっと経済成長がもとへ戻る、かように考えておりますし、先ほど申しましたように、公定歩合の〇・五%引き下げもそういう意味では非常に前向きに経済に機能するもの、かように考えている次第であります。
  232. 矢追秀彦

    矢追委員 大変いいお話ばかりされておりますが、ここでお伺いしたいのですが、それじゃ今回税収が一兆円以上落ち込みましたね、これは補正予算で減額の修正をされた。ところが、片や成長率の方は下方修正されない。今、経企庁長官はいろいろおっしゃいますよ、これからできるんだと。それこそ私の言っている一・七%の、これから後の四半期ごとの一・七%成長、年率七%以上の成長なんというのは今考えられないでしょう。今、消費がちょっと――奥様が買ってくださいとか言われますけれども、現実にかつて三種の神器と言われたようないわゆる家庭における生活必需品、ルームクーラーであるとかカラーテレビであるとかあるいは自動車であるとかあるいはまた冷蔵庫、電気洗濯機、そういったものですね、そういうふうな爆発的に売れるものがあれば別ですよ。なかなかそういうのはないわけですよ。  今、私ちょっとウイスキーの話をやりましたが、ウイスキーは一番円高差益の還元には、下がっている値段の率は高いわけです。逆にハンドバッグなんて上がっておるんですよ、今輸入品が。これはいろんなデザイン等の問題があるかもしれませんけれども、逆に上がっているわけです。だから下がったら、じゃあウイスキー下がったからといって、ウイスキー二本飲むかというのですよ。長官、飲まぬでしょう、下がった分だけ。そういうもので、下がったからといってなかなかそう今買わない状況。それはなぜかというと、まず減税がない。今度の補正予算減税は全然やられなかった。非常に残念ですけれども、できなかった。さらにボーナスはカットされてくる、またレイオフはある、残業はない、そういうことで、だんだん家計はやはり締めつけられつつあるわけですよ。それを今、長官言われるような、そんなバラ色の未来に本当になるのなら、これは結構ですよ。結構ですが、現実はそういう甘いものではない、こう言いたいのです。  ここで質問として、今申し上げた成長率は下方修正しない、税収の方は下方修正した、この整合性がないことをどう考えますか、大蔵大臣
  233. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは先ほど申し上げたつもりでございましたけれども、このたびのは、税目ごとに積み上げ計算を前回いたしましたものをもう一遍見直しておりますので、そういうことで減額補正をいたしました。成長率とは直接に関係なく計算をいたしております。  なお、先ほど近藤長官が言われましたように、GNPの半分ちょっと上が消費でございますので、この動向いかんで成長率はかなり左右されますことは御存じのとおりでございますから、それは税収そのものとは直接に関連するところが少ない部分だと思います。
  234. 矢追秀彦

    矢追委員 関連する部分が少ないとおっしゃいますが、私は余りにも整合性に欠ける点があると思いますので、今後の問題として、成長率は絶対いじらない、しかし、こっちが落ち込んできている、こういうことがないようにお願いしたいと思います。  で、この税収減の問題ですけれども、私は今のままでおさまれば大変結構だと思いますが、現実はもう少し年度末になるとふえるんじゃないか、大変悲観論ばかり言って申しわけありませんけれども、私自身が計算したところによりますと、先ほど積み上げ方式とおっしゃいましたが、それでいきますと一兆四千六百七十一億円という試算をしました。約一兆五千億が税収、いわゆる歳入欠陥になるわけです。累計、前年比三・三%で推計をいたしますと一兆一千六億円。それから、最近五年間平均の租税弾性値〇・九八%として計算をいたしますと、一兆一千二百五十九億円。だから、今回の見積もりは、私の計算、この三つの方法の計算でいきますと、一番下の部分なんです。  ところが、さっき大臣は積み上げ方式を加味してと言われましたので、その方式に近い形をとりますと、私の計算だと一兆四千六百七十一億、一兆五千億になるわけでして、これ以上に、今の政府の見積もり以上に大きく歳入欠陥が出る、こういうふうなことになったわけでございますが、その点はいかがですか。
  235. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この点は、ただいまの段階で先を見通しまして、でき得る限りの計算をいたした。先々まだこれ以上あるだろうというようなことを今回隠しておくというようなことはもちろん一切いたしておりません。ただいまわかりましたものは全部出して御審議を願っておるわけでございます。
  236. 矢追秀彦

    矢追委員 そこで、これだけ税収も見積もりが狂ってきた。さっき成長率の問題ではもうちょっと見てくれということですから、仮に百歩譲って見ることにして、私は絶対当たらぬと思いますけれども。  次に、こういうふうになってきたのは結局経済運営の大きな失敗にある、私はこう思うわけでありますし、また、日本経済そのものに対してまだまだ政府の認識というものがそう深刻でないのじゃないか。これは本年の二月にも私はこの席で総理にも申し上げました。そのとき総理はこういう答弁をされております。「そういう意味におきまして、必ずしも絶望ではない。まだ心臓はかなり強いし、脳波もぴんぴんしております。機械を外すなんという段階じゃない。自活力がどんどん出てくる可能性もありますし、カンフルも効いてくる場合もあり得る。そういう意味において、ひとつ頑張っていきたいと思っております。」まあ心臓がとまったら大変ですし、脳波、これは脳死の問題も議論されておるところでありまして、問題ですけれども、どうも総理のこの答弁からいうと、私は、まだまだ認識が甘い、こういったことが今度の税収のこれだけの落ち込み、見通しの誤り、また経済成長の鈍化、こういうことを来したと指摘をせざるを得ないわけでございますけれども、その点について、この六十一年度後半から六十二年度にかけて日本経済、さっき近藤長官はバラ色のようなことを言われましたが、総理も同じですか。
  237. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 来年度にかけてはもう少しいろいろなデータが出ませんと判断できないだろうと思います。いずれ来年度予算編成のときに、十二月の時点でいろいろ検討して判定していきたいと思っております。
  238. 矢追秀彦

    矢追委員 景気には拡大と後退の二局面をあらわすのが私は普通であると思います。この局面の変化時を景気転換点と、こう言ってきたわけでありますが、今回の景気転換点というのはいつだったと判断をしておられますか。これは経企庁長官
  239. 勝村坦郎

    ○勝村政府委員 お答えを申し上げます。  現在まで、これは主に景気動向指数という統計上の資料をもとにいたしまして従来判定をいたしておりますが、現在までのところ、五十八年春に前回の景気の底があって、それ以来景気は拡大をしているというところまで判定をいたしておりまして、今度の、現在の景気が果たしてその拡大局面を反転したのかどうかということにつきましては、まだ結論を出しておりません。
  240. 矢追秀彦

    矢追委員 ということは、長官、まだ拡大基調にあるという判断ですか。
  241. 勝村坦郎

    ○勝村政府委員 ことしの七月まで、「月例経済報告」では、緩やかながら景気は拡大という表現を用いておりました。しかしながら、その後の情勢を見ますと、一つは先行きをより警戒的に見なければならない状況がいろいろ出てきた。それから、やはり幾ら緩やかとは申しましても、拡大と定義づけるのは無理な状況ではないだろうかという判断で、拡大という言葉は落としてございます。  ただ、御指摘のように、拡大でなければ翌月から後退になるかというふうにいいますと、私どもは、景気の実際の見方といたしましては、失礼ですが、そういう機械的な見方は必ずしもいたしておりません。それで現在、昨年秋からの円高ということで、いろいろ製造業等を中心にいたしまして調整的な局面が出ているということはそのとおりだと思いますが、現在の景気の動きを後退局面というふうには私どもは見ておらないわけでございます。
  242. 矢追秀彦

    矢追委員 今、拡大という文字を八月から削られた、だから、すなわちそれが転換点ではないというふうなお話でございます。ここでお伺いをしたいのですが、昨年十一月の時点で、まあこれは新聞報道でございますが、十一月二十七日の新聞に出ておりましたが景気基準日付検討会議、こういったものが最初は考えられたけれども、うやむやになってしまったやに報道されておったと記憶をしておりますが、これはどうなったのですか。
  243. 勝村坦郎

    ○勝村政府委員 お答えを申し上げます。  あの新聞の報道は必ずしも正確でない面もございますけれども、私ども経済企画庁の中で、景気動向指数につきましての検討会並びに、これはまだ開いておりませんが基準日付の検討会、これは恒常的な委員会としては存在しているわけであります。  それで、ただ一つ大きな問題がございまして、これはたびたび指摘されるところでありますけれども、この円高ということは、単に景気がどうなるかというだけの問題ではなくて、非常に大きな構造変化を日本経済にもたらすわけであります。それは、第一に内需と外需の構造変化、それが産業構造の変化、さらに雇用構造の変化という形で順次波及をいたすわけであります。従来用いておりました景気動向指数と申しますのは製造業が中心でありまして、具体的に申しますと一致指数という一番中心的な部分でありますが、この十一本の指数のうち七本が製造業であります。したがいまして、現在のような経済の局面では、その製造業を中心といたしまして非常に指数が悪い数値を示すということはそのとおりなんでありますが、こういう大きな構造変化の中で、製造業を中心にした指数だけで景気全体を判断するというのが非常に困難になっていることも否定できないわけでございます。そういう意味から現在、学識経験者を集めまして専門的な検討をいただいておりまして、景気全体としての指数の見方というものをどういうふうにしていくかということを今鋭意検討を進めている段階であります。     〔委員長退席、野田委員長代理着席〕
  244. 矢追秀彦

    矢追委員 これは長官、大体いつごろまでに結論を出して、新たな方向といいますか、やられるのですか。
  245. 勝村坦郎

    ○勝村政府委員 はっきりしたいつまでということを申し上げるのはやや困難な面もございますが、できましたら年度内には結論に近いものを出したいというふうに考えております。
  246. 矢追秀彦

    矢追委員 長官、それでいいですか、年度内で。  それでは、今の景気転換点の問題ですけれども、その拡大の二字を削られた。すなわち、だからすぐもうこれは不景気なんだと私もそこまで短絡的には申し上げませんけれども、少なくも明確に景気がどういうふうになってきているかという点については、そういう文章的な表現だけではなくて、やはり数字というものもあるわけですから、こういった業種はどうなんだ、こういった生産活動、在庫、全部出ているわけですから、これはきちんと言ってこなければ、その次の対策がまず講じられないんじゃないですか。それと、長官、私また蒸し返すようで悪いですけれども、今の局長答弁の景気の動きから見ると、さっきの長官の四%成長の旗にしがみついているバラ色のその話と大分矛盾するように思うのですが、いかがですか。
  247. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 先ほども申しましたように、輸出を見ますと、輸出の手取り代金が前年より二割減っているわけでありますから、これはもう大変な強烈なデフレ効果でございますが、しかし輸入の方は、実は輸入数量は前年同期よりも二割量がふえておって、しかし支払い代金は三割五分から四割、もうそれだけ余計なものを取り込みながら非常に少ない代金で間に合っているわけでありますから、これは明らかにプラスで、この関係者は相当な利益があるわけであります。したがって、一概に景気全体として転換点とか何かと言える状況じゃない。もうまさに日本経済全体を巻き込んだ構造的な大激動のときでございますから、単純に今の景気がどうだこうだということは言いにくい状況だということも、ぜひひとつ御理解いただきたいのであります。
  248. 矢追秀彦

    矢追委員 だから、私は二面性あるいは二極性と言っておるでしょう。いいものもあるし、悪いものもある。それを両方判断をした場合、どっちが強く引っ張っているか、これはだれでもわかることなんですよ。それをわかりにくいなどと言うと困りますよね。一番経済の動向を国民のために明らかにする長官がそういうことでは、もう国民は一体どうしたらいいかわからなくなる。  私は、景気後退が始まったのは去年の秋ごろと見ております。ようやくことしの八月になって拡大という文字を削られましたが、去年の秋ごろから陰りは生じ始めておる。いわゆる二面性の悪い方の引っ張りの方が強くなりつつある、こう指摘をしたいわけであります。  なぜ私がこういうことを言うかというと、さっきもちょっと申し上げましたが、こういうことをきちんとしていかないと対策が講じられなくなる。ただ批判だけしているのじゃありません。そういうことをきちんと認識した上で、それに対する対策をやっていかなきゃならぬわけであります。  そこで、後退の方向に向かっている指標それから拡大の方向に向かっている指標、こういった面を先ほど少し述べられましたので、指標という形では結構ですけれども、少し述べていただけませんか。
  249. 勝村坦郎

    ○勝村政府委員 突然のお尋ねでございますので、ちょっと不十分なお答えしかできないかと思いますが、拡大ということで申しますと、先ほど大臣のお答えにもございましたように、まず国内需要の消費、それから住宅投資、それからいま一つ非製造業の設備投資というようなものがございます。それから悪い方で申しますと、これは製造業を中心といたしました生産活動が御承知のようにやや停滞の形を強めております。  それから雇用でございますが、これがまた非常に二面性がありまして、例えば雇用者数全体といたしましては、ここ二四半期ほど基調として大体前年同期に比べまして一・七%ぐらいふえております。これは六十年度の伸び一・一%に比べましてもむしろ雇用者の伸びとしては強い。ただ、非常に構造的な摩擦によります雇用調整の問題が出ておりまして、そのために、労働市場の状況を見ますと、失業率でありますとかあるいは求人倍率というようなものが逆に弱い状況になっているというようなことかと思います。  それから、企業収益あるいは企業の売り上げの先行き、これは中小企業等をとってみてもそうでありますけれども、内需関連の企業と輸出関連の企業、これを見ますと歴然たる差が出ておりまして、企業収益なんかでも、内需関連の企業だけをとってみますと最近の中小企業関係の金融機関の調査によりましても依然利益率はプラスで推移をいたしておりますが、輸出関連の部門をとりますとややマイナスの方向が強まっている。  こういうように至るところ、生産、雇用あるいは需要面あるいは企業収益面、いろいろなところでこういうような強い面と弱い面の差が一層広がっているというのが現状ではないだろうかと思います。
  250. 矢追秀彦

    矢追委員 今言われたように、こういった二極分化というのがだんだんひどくなってきて、そして格差が大きくなってくる、これはもう言われているとおりでありまして、極端に言いますと、政府は今までどこまでこれをちゃんとするためにしてこられたのかということについて、私は非常に不満があるわけです。  そこで、お伺いをしたいのですが、やはり一番問題は、心配なのは、今まで鉄は国家なりと言われてきましたが、いわゆる鉄鋼も陰りが出てきた。また、そのほかの、日本で得意であった造船、そういったいわゆる二次産業というものが今軒並み非常に厳しい状況に、苦境に立たされておるわけでして、これはゆゆしきことなんですね。さっきの税収面を考えましても、税収を実際支え、日本経済を支えてきたのは、もちろん一次産業もある程度かつてはあったでしょうが、最近ではまさしく二次産業がこれを支えてきたわけです。それが今このようになってくるということは大変なことであるわけでございまして、これを今後どう持っていくのか。  特にこれは通産大臣にお伺いをしたいのですが、要するに二次産業の将来はどうなっていくのか。また例えば今の鉄鋼をどう救っていくのか。ただ単に安いお金を貸すとかそんなことだけではなかなかいかない。公共事業をふやすといいましても、じゃ日本でつくられた鉄がどれだけ買われていくのか、その点も問題がありますし、だんだんいわゆる長厚重大から短薄軽小なんて言われている時代ですし、そういう点から、この第二次産業の将来を通産大臣はどういうふうに考えておられますか。
  251. 田村嘉朗

    田村国務大臣 第二次産業のみならず、今の日本の産業全体をとらえて考えてもいいかと思いますが、日本経済、特にいわゆる産業のあり方というものを考えますと、やはり戦後の輸出振興の時代、そしてただ働け働けで製造部門が非常に伸びていった、それがいわゆる経済拡大の政策で一層のはずみをつけた、そういうことで今度は逆にオイルショックの被害を一番受けたということが言えるのでありましょうが、これを中長期的な面と現実的な面、そういう両方の目で見ていかなければならないと思うのです。  中長期的な面では、やはり日本の産業構造というものを国際協調的な姿に徐々に変えていく、そしてやや高目の経済成長を目指し、そしてまた国際的な直接投資も促進していく、そういうふうにして産業構造を輸出、輸入のバランスのとれた姿に持っていくということにして、この日本の今の不況というのは単純な不況ではなしに今おっしゃった二面性があるわけですが、特に製造部門における不況というのは急激な非常にドラスチックな円高から来たわけでありますから、そういう点もとらまえて、円高対応できる、まあ円高が続いては困るのですけれども円高対応できるというような体質にしていかなければならない、それはバランスのとれた国際協調型である、しかも日本の貿易インバランスの解消もしていかなければならぬ、これはもう当然のことでございます。そういうことでございますから、我々は中長期的にはこういう問題と真剣に今取り組んでおる次第でございます。  その際の基本的な対応の方向でございますけれども、じゃ、この構造改善に伴う偏りあるいは空洞化、そういういろいろな問題が出るわけでございますけれども、それを、創造的な技術開発等による新規事業分野、つまり未来産業の振興ということを図って産業の活力の保持をしていかなければなるまい、その方向への誘導もしていかなければなるまいというふうに思っております。  また外に対しましては、先ほど申し上げた当然直接投資活動の円滑化、国内においては産業調整の推進ということでございますが、そのようにして国際分業体制を構築していく。産業の転換に伴って発生する痛みというものもございます。雇用問題あるいは地域問題、関連中小企業等への影響と、もういろいろな痛みがございます。この痛みを我々は埋めていかなきゃならぬ、同時に予防もしていかなきゃならぬ。そういう面で、単に通産省という役所だけの仕事としてとらまえるべきではなく、いわゆる日本政府の名においてやっていかなきゃならぬ。  私は、先般も建設大臣にお願いを申し上げて、傾斜配分をお願いした。また労働省へ伺いまして、労働大臣初め皆さんにお目にかかって、いろいろと御協力を願いたいとお願いをして、たしかきょうのはずですが、正午から通産、労働両省の事務次官を中心としたハイレベルの第一回目の協議が行われておるはずでございます。  そういうことでございまして、我々は、産業構造転換の円滑化に向けての環境整備を図るため、この昭和六十二年度から税制や金融面等を中心とした施策を総合的に講ずることにいたしております。今、法律案を二つ出しておりますし、そして特に三・九五%なんという超低利資金なんかをつくってみたりして必死になっておる。私どもは、先ほど企画庁長官が申しましたが、四%という成長率、これをまだ捨てておりません。限りなく四%に近づける努力をするというこの決意はまだ変わっておりません。企画庁は言うならばコンサルタントみたいなもので、私たちは仕事師でございますから、この四%という目標を失わないで、これからも非常にきめ細かい対策を講じていきたい、特に中小企業においてをや、こういうことでございます。
  252. 矢追秀彦

    矢追委員 二次産業を今と全く同じ形でそのまま進めるということも私はなかなか難しいと思います。将来この二次産業に何をどう付加価値の高いものをつくっていくか、あるいはソフト面をどうくっつけていくか、いろんな知恵があろうかと思いますが、今大臣いろいろおっしゃいましたが、二次産業に一番たくさん人もおるわけでして、また一番経済を支えてきた根本ですから、ひとつ誤りなきように将来の方向、いわゆる産業構造の転換をきちんとしていただきたいと思います。  次、労働大臣にお伺いいたしますが、今申し上げたように、二次産業の衰退、極端に言いますと日本的経営の空洞化といいますか、そういう中で相当多くの失業が出てきておりまして、この七月で初めて男性で三%に失業率がなった、こういうふうなデータも見たわけでございますが、この失業の問題に対してどう対処されるのか。  特に、私、これから先の問題として、これはあるデータでございますが、昭和六十年から六十五年にかけてこの数年間で約九十万人の失業者が、失業者といいますか今まで勤めていたその人が就業しなくなる。一番多いのが金属製品関係の十八万三千三百六十一人、それからその次に一般機械が十三万三千九百六十六人、自動車産業が十五万六千三百一、こういうふうな計算が出ておりまして、合わせて五年間で九十万人、一年間に直しますと十八万人、こういう大変な数字が出ておるわけです。これをいわゆるほかの第三次産業で吸収ができればよろしいんですけれども、そう簡単には私はできないと思いますし、また、それをやることすらなかなか、今までの技術屋さんが全然違うことをやらなきゃなりません。今回の国鉄の問題でもなかなか大変な状況でございますので、こういったことを考えると、本当に問題がたくさんあるわけでございまして、当面の雇用対策、それから長期にわたるこういった産業構造の大きな変化に対する雇用対策、これについて労働大臣からお伺いしたいと思います。
  253. 平井卓志

    ○平井国務大臣 お答えいたします。  当面の雇用対策、大変これは重要な課題でございまして、まず、先ほど通産大臣からも述べられましたように、非常に多岐にわたるわけでございます。基本的には雇用対策の根幹は、あくまでも内需を中心とした思い切った景気浮揚策によって総需要をふやす、そこで雇用の増加を図るというのが基本政策でなければ、なかなか大型の雇用不安に対して吸収し切れない、こういうふうに考えております。  その中で、総合経済対策の中にも盛り込んでございますように、労働省としましては、雇用調整金の思い切った拡充ということは既に十月二十日に実施をいたしております。さらに、失業前の出向等を利用いたしました産業雇用センターの設立も十二月発足をめどに急がせておるわけでございます。     〔野田委員長代理退席、委員長着席〕 さらにいま一つ、地域、業種による雇用不安が非常に深刻化してくるおそれがございますので、今後の主要な対策としてはやはり地域対策を徹底してやってまいるということで、ただいま検討を急がせておるわけでございます。言いかえれば、地域の雇用対策、雇用開発促進策でございます。  長期的に申しますると、ただいま委員御指摘になりましたような産業の空洞化と申しましょうか、日本的空洞化と申しましょうか、一つには海外企業進出の問題もございまするし、ただ、海外進出に伴う雇用の喪失という問題は、ただいまのところ海外における日本の生産は大体私の承知いたしておりますところでは全体の二、三%でございまして、そのことにおいて大きい雇用不安が出たとは承知をいたしておりません。しかしながら、今後の非常に大きい雇用問題の中心になろうかと考えておりまして、ただいまそういう中で雇用問題の政策会議において御議論をいただいております。  ただ、一つだけ御理解をいただきたいのは、本来的にこの貿易摩擦面その他を十分に考えますると、海外資本投資、さらには企業の進出というのは決して批判さるべき企業の活動でございません。そういう意味では積極的にやらなければなりませんが、そこにおける雇用の喪失という問題に対してどういうふうに対応するかということが最も肝要でございまして、現在まで日本の企業が海外に出ていきました場合の相当大きな理由が、対日輸入制限回避という形において出てまいった過去の経緯もございまするし、さらに、典型的に言われておりますのは、カラーテレビ等の後で雇用喪失は起こらなかった。なぜか。絶えざる技術革新においてVTR製作に踏み切ったということもございますので、やはり技術革新等も、これは是が非でも二十一世紀の展望につながるような革新技術をやはり日本が手にしなければなりません。そういう意味で、今後の空洞化に対する対策というのは、関係者の御議論をまちまして最も有効に対処してまいりたい、かように考えております。
  254. 矢追秀彦

    矢追委員 総理、最後ですから、起きてくださいよ。訪中を前に勉強がお忙しいのか、また予算委員会答弁の勉強がお忙しいのか、お疲れと思いますが、もうあと五分少々で終わりでございますから。  今、産業構造の問題にちょっと触れましたが、総理は、これからの日本の産業、要するに特に二次をどうされるのか、三次ばかりでいいのか、私は三次ばかりに余り偏り過ぎても問題があると思います。まあ新たな二次産業といいますか、どういうふうな方向を考えておられますか、一言簡単に。
  255. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 産業の空洞化論というのが叫ばれておりますが、私は、二次、三次みんなバランスがとれていくことが必要だ、製造業というものの価値をそう見失うことは正しくない、やはり鉄であるとかあるいはその他、エレクトロニクスにしても自動車にしても、そういう製造業というものの底力というものがあって初めてエレクトロニクスやそのほかの第三次産業も成長し得る、存在し得るのであって、それなくして第三次産業だけが存在し得ると思ったら間違いであると考えております。
  256. 矢追秀彦

    矢追委員 最後に、時間が余りなくなりましたが、簡単に財政再建問題についてお伺いをしたいと思います。  今回税収がこのように落ち込んだわけでありまして、当初六十一年度税収は四十兆五千六百億円、それが落ち込みまして三十九兆四千四百億円、こういうようになるわけでして、中期展望で使いました対前年度税収伸び率六・三%で計算をいたしますと四十一兆九千二百四十七億円、こうなるわけです。それで、中期展望の六十二年度税収は四十三兆千二百億円。これを比較いたしますと一兆二千億円の減収になるわけです。ということは、昭和六十二年度、この六・三%という中期展望の伸び率で、今回減った分でいきますと、当初の中期展望から比べると、また来年も一兆二千億は、このままいって減収になる、こういうことになるわけです。そういった税収が大変確保できないということ。さらにもう一つは、六十三年度、六十四年度は七・二%の伸び率ですね、税収が。これは中期展望で言われているわけです。そうなると、ことし一兆一千二百億円税収が減になって、そこからスタートするわけですから、六・三、また来年一兆二千億ほど足りない。さらにその次は七・二%の伸び率ですから、この中期展望自身も大変狂ってくる計算になるわけです。  それからもう一つ、いわゆる特例公債、赤字国債の減額、これは毎年一兆円ずつ減らすと言ってこられましたが、現実にはそう減っていないわけでして、これからいわゆる財政再建、昭和六十五年までに赤字国債から脱却をするという政府方針、この旗は絶対、これもさっきの四%成長と同じように、政府は幾ら我々が言ってもこの旗をおろそうとされません。しかし現実には今言った税収の方からもこれはなかなか厳しい。それから今言った赤字国債の減額すらこれはできていない状況になります。詳しい数字をやっておると時間がありませんので省略いたしますが、これから相当やらなければできないわけです。  そういう点で、この二つの面から私は財政再建が非常に厳しくなっておる、こう言いたいわけですが、この点について総理と大蔵大臣の御所見を伺って終わりたいと思います。
  257. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 中期展望では一種の仮定計算といたしまして、名目の成長を六・五、そして租税弾性値を一・一と考えましたから、矢追委員の言われますように七・二といったような税収の伸びがあることに、これは全くの仮定計算でありますけれども、計算上はそうなっていまして、そのことは今の状況では六十二年度に恐らくなかなか期待し得ない状況であると思います。他方で特例公債の減額も一生懸命やってはおりますものの、思うように任せておりません。予定どおり毎年毎年のいわばノルマをそのとおりは消化し切れていない、そのとおりでございます。  両方から考えて、六十五年度に特例国債依存の体質から脱却するということはなかなか難しいではないかと言われますことは、私もそれは容易ならぬことだということはさように思っております。思っておりますが、実はこれがありまして一般歳出をここまで抑えてくることができたわけでございまして、毎年毎年一般会計における国債費の割合が大きくなってまいりますことを考えますと、どうしてもこういう歳出削減の努力を放棄するわけにはまいらないということがございます。  それで、仮に六十五年度の目標を、看板をおろした場合に、かわりにどういう看板をかけるかということについても、これもなかなか簡単に結論を得られることではございませんので、私どもとしてはやはり歳出削減の努力を続けていくという意味で、六十五年度には赤字国債依存の体質から脱却をしたいということはなおそういう目標として掲げておきたいというふうに私は考えておるわけでございます。
  258. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 財政状況というものは非常に厳しいものであるということはもうよく承知しております。しかし、その中にあって臨調路線、臨調の皆さんが我々の軌道として設定くだすった臨調路線というものはやはり相当国民合意の上に成立されておるのであって、この路線を守ることはまだ私は正しい、そう思っておるのです。この路線を外すということは非常に安易になれることで、ややもすればその誘惑に乗りたいところでもあります。しかし、やはりこの際は我慢してもこの路線を守っていくということは必ず国のためになる、私はそう考えておりまして、苦しいけれどもやっていきたいと思っております。
  259. 矢追秀彦

    矢追委員 終わります。
  260. 砂田重民

    砂田委員長 これにて坂口君、矢追君の質疑は終了いたしました。  次に、菅直人君。
  261. 菅直人

    ○菅委員 きょうは私にとっては予算委員会での初めての質問ということで、総理初め閣僚の皆さんにいろいろと質問をしたいのですが、この七月の選挙が終わって、総理は八月中長い間軽井沢で静養されていたようですけれども、私は八月、九月と全国のいろいろな問題のありそうなところに出かけまして、三宅島ですとかあるいは北海道ですとか、あるいはきょうちょっと取り上げますこの石垣島にも二度目の訪問をいたしました。以前、総理には党首会談の席でこの石垣島の第二飛行場の問題について若干意見を求めたことがありますけれども、この問題について二、三、環境庁長官や運輸大臣含めて御意見をお聞かせをいただきたいと思います。  実はこれが、私もこの夏行ってきまして、石垣島の白保というところの海のサンゴ礁の一部なんです。これはエダサンゴというサンゴのようですけれども、アオサンゴなんというサンゴもありまして、非常にサンゴが足の踏み場もないほど、ある海域に群生をしているところです。私も沖縄本島のいろいろな関係の皆さんに聞いたり、あるいはその前後、専門家の皆さんに聞いても、今もう日本ではこれほどのサンゴの群生をしている地域はほとんどない、世界的に見てもこれほどのいろいろな種類のサンゴが群生している地域はないということでありました。  今、環境庁長官は北海道の知床の原生林の問題で大変頑張っておられることを私も非常に高く評価をしている一人ですけれども長官にぜひ、この北海道の問題と同時に、我が国のある意味では一番南の島の一つであります石垣島のこの地域のサンゴ礁を守るということについてもその力をぜひ発揮していただきたいと思うわけですけれども大臣の御意見を伺わせてください。
  262. 稲村利幸

    ○稲村国務大臣 現在、事業者である沖縄県が環境アセスメントを実施中と承知しておるわけでございますが、このアセスメントの実施に関しまして学者や専門家が今そのサンゴ礁について調査をして、当然報告が来るわけですが、その段階において埋め立て等に十分慎重に配慮して、そのサンゴ礁がずっと生存できるような配慮をしたい、こう考えております。
  263. 菅直人

    ○菅委員 今、県でいろいろな会議をやったりしてそういうことの一部が進んでおることは私も承知しておりますけれども、もう一言大臣に、必要があれば北海道の場合と同じようにぜひ石垣の方に、現地を見学に出かけていただきたい。あの島は、私が二月に出かけたときでさえ水温がかなり高くて水に入れましたから、多分一年どの時期に行かれても水に潜ることは可能だと思いますので、必要なときにはぜひ行っていただけることをお約束いただけませんか。
  264. 稲村利幸

    ○稲村国務大臣 今沖縄県が調査中でございますので、すぐそれを環境庁が出ていって視察するというのは、今の時点では適当でないと思います。
  265. 菅直人

    ○菅委員 まあきょうは余り細かい議論は差し控えますが、実は沖縄県の調査の内容そのものに対しても非常に問題点がたくさんありますし、また現地の漁業者、漁民の漁業権放棄の問題などにおいても非常に問題を抱えておるということは、関係各省の皆さんには直接にいろいろな機会にお伝えをしておるので、その点もぜひあわせて考慮をされた上で、必要なときにはお出かけをいただきたい。一応きょうは要請にとどめさせていただきたいと思います。  それから、一言運輸大臣に。例年運輸省は大蔵省へ予算を要求して、三億六千万とか五億円の予算がこの飛行場にはついてきているわけですが、実際には実質上執行できないで、この数年繰り延べになっているわけです。そういった中でぜひ運輸大臣にも、一たん決めたんだからもう後はどうなろうともやるんだというようなことではなくて、第一の飛行場も十分ジェット機がとまっているわけですから、十分そうした現地の意向や、あるいはさらには世界的なあるいは日本的な見地から慎重に取り扱いをいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  266. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 菅さん、現地をごらんになったのであれば大体の様子は御承知でありましょうけれども、二月ですか、おいでになったのは。そのころでも随分たくさんの観光客が現地にはおられたはずであります。実は石垣、ちょうど昭和五十年には乗降客数が三十四万でした。ところが、昨年は既に七十一万九千名を数えておりまして、到底現在の空港でたえられる状況ではなくなっております。申し上げたい第一点はこの点です。  そして、私が聞いたところでは、たしか数ヵ所の候補地を地元は検討された結果この場所を選ばれたようでありますが、漁業権補償契約は既に済んでおるはずであります。そして航空法上の手続は五十七年三月に終了しており、県議会あるいは地元の市議会においても建設促進の決議が行われておることも御承知のとおりであります。ただ、私どもは環境問題として天然の自然保護の観点から、無理強いをしてどうこうというつもりはありません。しかし、少なくとも空港が必要になっておる地域であることは御認識をいただきたい。また同時に、現空港をと言われましたが、千五百メートルの滑走路で相当無理な使い方をしておることも事実であります。しかも何か古墳ですか貝塚ですか、そうしたものがありまして、現空港の拡張というものにも問題があるようであります。  これは、今委員自身がお話しになりましたように、県当局により新石垣空港問題懇話会という第三者機関が設定をされ、幅広く意見交換が行われ、その提言に基づいて環境アセスメントの手続が行われているわけであります。第一義的にはこれは県当局がお決めになることでありますけれども、運輸省の立場からまいりますならば、この場を使って少しでも早くコンセンサスを地元として得ていただきたい。そして新空港が早期にでき上がることを航空旅客の安全という視点からは待ち望んでいるということは事実であります。
  267. 菅直人

    ○菅委員 今大臣の方から言われた中で漁業権放棄といいましょうか、それの手続は既に終わっているというふうな認識が示されましたけれども、実はこれは非常に問題が残っておりまして、今一部裁判にもなっておりますけれども、実際にそこで漁業をしている人に補償金は一円たりとも渡っていない。あるいはこれは農林水産省の所管になると思いますが、本来ならば、例えば漁協が代行してお金を受け取る場合には代理権を、いわゆる委任状を受け取る、あるいはどうしてもだめな場合にはお金を受け取ったものを供託するといったようなやり方をやっている例が多いわけですが、この石垣の場合は全くそういうことをやらないで、漁協の全体の管理者という立場で勝手に受け取ったというようなことがあって、実は非常にそのこと自身の法律的な効果も今問われているわけであります。そういう点もありますので、大臣には、無理強いはしないということをおっしゃいましたので、ぜひ無理強いをしないようにやっていただきたいと一応申し上げておきます。  もう一点、総理大臣はせんだっての韓国で行われたアジア大会のときに訪韓をされて、懸案でありました指紋押捺について、これまでの五年に一度という押捺の制度を全体で一回でいいという形の改善を約束されたわけですけれども、この点について、その後の実際上の法的措置がどういう段取りで進められようとしているのか、また同時に、指紋押捺拒否を理由にして滞在許可の延長などが認められていない人の具体的な取り扱いについてどうなっているのか、これは法務大臣だと思いますが、お尋ねをします。
  268. 遠藤要

    遠藤国務大臣 お答えいたします。  指紋押捺の問題は総理からも御指示がございまして、指紋押捺は原則的には一回限りということで進めさせていただいており、かつまた外人登録については携帯に便利を供するためにカード式にやっていこうということで今事務的に検討を進めさせておりますけれども、できるならば臨時国会ではなく次期の通常国会に提出したい、このような考えでございますけれども、まだ内容的には詳細は結論は得ておりません。  また、今お話しの指紋押捺を拒否されている方に対する問題については、この点は先生も御承知のとおり、法は厳正公平でなければならぬという趣旨からかんがみまして、法の改正と現行法の違反の問題とは全く異なる問題でございまして、私どもとしては、今先生からのせっかくのお尋ねでございますけれども、やはりその厳正の趣旨からかんがみまして、しかも公然と意図的に指紋の押捺を拒否されているというような姿勢に対しては、法務省としては引き続き厳しい評価をいたしております。
  269. 菅直人

    ○菅委員 これはぜひ総理大臣に今の点お聞かせをいただきたいのですが、法務省として、法の改正と現行法の解釈というか適用というものが厳正であるべきだというのは、いわば法理論としては一つの筋論だとは思います。  しかし、現実にその問題が大きな政治問題となって、あるいは国際問題となって、わざわざ総理大臣みずからこの問題に触れて一つの国際的なレベルで改善を約束された。そうなった場合に、それがもう次の通常国会に出されるという時点まで進んでいる中で、いやしかしそれを拒否した人に対しては国外退去を命ずるんだというのでは、これは政治的に考えて、あるいは道義的に考えて、それは仕方がありませんというわけにはいかない。やはり当然の政治的な配慮といいましょうか、人道的な配慮があってしかるべきだと思いますが、その点についての総理大臣の直接の見解を伺いたいと思います。
  270. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本は法治国家ですから、やはり法を無視する人が出てきたら秩序は崩れてしまうし、法を守っている人は損をする、そういうようなことでは国家は成り立たなくなるわけです。我々はいろいろ状況考えて、警察側においてはかなり反対もあったのを、相当我々プッシュいたしましてそういうところまで持っていったので、こっちもそれだけ誠意を尽くして努力をしておるわけですから、押捺拒否者におかれても我々の善意を酌み取って法に服していただきたい、このように強く要望しておるものであります。
  271. 菅直人

    ○菅委員 つまり、押捺拒否者にといっても、滞在許可の延長を認めてないのは法務省であって、押捺拒否という問題は、押捺の制度がどういう変わり方をするかによりますけれども、少なくとも一度は押捺をしているわけですから、もう対応は終わっているわけですね。あとは滞在許可の延長を一方的にといいましょうか、法務省が許可をしていないという事実だけが残っているわけです。この点についてもう一度、どうすればいいのですか。
  272. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まず、法を守ってくれることが先だと思います。
  273. 菅直人

    ○菅委員 法を守るという言い方は、そうすると法律改正前にもう一度押捺を強制するということですか。
  274. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 法律に従って行為をしていただくということです。
  275. 菅直人

    ○菅委員 この点は、私は今の総理大臣の主張には全く納得ができないわけです。現実にこれから通常国会に至るまでの間にどういう事態が推移をするかについて私も注意深く見守っておきたいと思いますけれども、現実のそういった状況に対してもう少し配慮ある態度があっていいんじゃないか。中曽根総理は国際国家だとかいろんなことを言われておりますけれども、そういうことに対して何かかたくなな、この問題についてだけかたくなになっているという気がしてならないわけでありまして、大変残念だということを申し上げて、次のSDIの問題に移りたいと思います。  中曽根総理は、一九八三年三月のいわゆるレーガン大統領のスターウオーズ演説からそれに対する理解発言というものを繰り返されて、九月にSDIへの研究開発の閣議決定を強行する。またSDI問題というのは、せんだってのレイキャビクの米ソ首脳会談でも最終的な合意ができない、いわば決裂に至った最大の争点であったということはもう周知の事実なわけであります。しかし一方、例えばこれだけ税制などにおいては自民党の中でもいろいろな議論がある中で、SDI問題になると与党内部の議論もほとんど聞こえてこない。国会での議論は今から始まろうとしているわけですけれども、では諮問機関の二つや三つつくって検討するかといえば、それもない。ごく一部、訪米団を出して簡単な報告書を出し、あるいは官房長官談話を出してどんどん事が進められていく。国民は、果たしてSDIというものが一体何を、どういうものを内容としていて、それが研究開発、さらには配備に進んだときに本当にどうなるかということはほとんど理解できない。あるいはここにいる我々ですら、私にとっては少なくとも中曽根総理の発言を細かく聞いてみても十分に理解はできない。これが今の一般的な状況であろうと思うわけです。  そこで、中曽根総理に確認の意味も含めて、SDIというものについて、まずどのような内容というふうに理解をされているのか、お尋ねをします。
  276. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まず、SDIという発想それ自体について、私は前進した一つの発想であると思っています。つまり今の戦略理論においては、MADと言われる相互確証破壊、破壊という、そういうような関係の戦略体系から、そういう事態を起こさせない、防衛戦略体系によって核兵器を廃絶する、特に長距離弾道弾等の核兵器を廃絶する、そういう目的で、相互確証破壊という同時に死を意味するような、そういうような戦略理論、それによって恐怖の均衡が成立して戦争が起きないというような考え方から、そういうものを無用にしてしまう、そういう防御兵器の体系へ兵器体系を移していく、攻撃兵器による恐怖の均衡から防御兵器の完成によって攻撃兵器を必要なからしむるという兵器体系に前進していこう、そういうようなまず動機の問題、これは私は前進であろうと思います。  第二に、それができるかできないかという問題、これは科学的に分析してみないとなかなかわかりません。できるとも言えるし、できないとも言える。しかし、大体私が今まで勉強し聞いた範囲内におきましては、これはチャレンジするに値するものである、少なくともそう考えます。そういう意味において、兵器体系というものを攻撃的なものから防御体系に変えるという歴史的意味等も考えてみると、それが十年かかろうが二十年かかろうが、挑戦するに値するものである、そう考えて理解も示したということでもあります。
  277. 菅直人

    ○菅委員 今の中で一、二抜けていると思うのですが、中曽根総理は、今言われた防衛的な兵器だ、あるいは核を無力化するものだ、核廃絶につながるものだということに加えて、これは非核の兵器であるということを言われてきていますが、そういう理解ですか。
  278. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 アメリカ側からそういう説明も私は受けております。
  279. 菅直人

    ○菅委員 いや、説明を受けているのではなくて、中曽根総理として、国民の代表としてそういう理解をしているのかどうかということです。その根拠が、それは説明を受けたのか自分で見たのか、御本人としての理解を聞いているのです。
  280. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 少なくとも先方はそういうことを目標にして開発を、研究を行おう、そういうことのように私は理解している。
  281. 菅直人

    ○菅委員 それではまず、このあたりから少し内容に入っていきたいと思いますが、これは防衛庁に聞いた方がいいのか、科学技術庁に聞いた方がいいのか。  今アメリカが開発をしようとしているこのSDIの主要な要素としてレーザーを使うということを言っております。私は学生時代にレーザーの実験などをやったこともありますから大体の原理はわかるのですけれども、その中で、普通のレーザーは私もわかるのですが、核励起エックス線レーザーというものが今一番注目をされているというふうにいろいろな場面で出ておりますけれども、これについて防衛庁の認識を聞きたいと思います。
  282. 筒井良三

    ○筒井政府委員 SDIにおきますところの兵器体系は、今大きく二つに分けてやっておりますけれども、その一つのカイネティック・エナジー・ウエポンと、もう一つのディレクテッド・エナジー・ウエポンと彼らは称しております指向性エネルギー兵器、それの中でレーザー兵器というものの研究を行っております。そこの中で、すべて非核で行っておりますけれども、たった一つ核エネルギーをエネルギー源として使用するという前提にしまして研究を行っているものにエックス線レーザーというものがございます。これは、米側の説明によりますと、ソ連がエックス線レーザーという研究を行っておりますので、米側としましても技術上その知識を得ておく必要があるという研究だと聞いております。  私も調査団の技術担当として行ってまいりましたけれども、このニュークリアドリブン、核を起動力としますエックス線レーザーを使うという計画は全く聞いておりません。また、エックス線レーザーということについてはまだ現存する兵器でも何でもございませんので、単なる架空の研究段階のものでございますので、その内容について私どもも了知しておりません。  以上でございます。
  283. 菅直人

    ○菅委員 架空であるかないかは今後の議論の中で出すとしまして、まず総理大臣にこの点をよく確認したいのです。総理大臣は非核というふうにSDIを認識されている。この非核の意味には、今防衛庁の説明があった、いわゆる核爆発のエネルギーをレーザーの励起に使う、この核励起エックス線レーザーというものは非核の範疇から外れていると認識しておられるのか、それともそうでないのか、この点についてはっきりした認識をお聞かせください。でなければ非核という言葉が国民はわかりませんから。
  284. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いわゆるエックス線レーザーというものの構造、それから目的あるいは機能、そういうものをもう少し確かめてみないと私らはまだ判断できないと思っております。できたものを見なければ、我々は容易に判定はできない。  ただ、日本の原子力基本法の解釈の場合で核兵器とは何ぞやということをやったときに、私、基本法を皆さんと一緒に制定してその説明をした、議会答弁に当たった者でありますが、そのときに、例えば原子力潜水艦というものはどうなるか。要するに核兵器という場合には、その核の爆発力等が直接物や人を殺傷する、直接的効果を持つ、そういう場合に当たる、これが核兵器である。したがって、原子力推進の潜水艦というようなものは、直接それが人を殺傷するというものではない、推進力として使われている。したがって、もし原子力商船というものがある程度一般化したような場合には、それは日本で原子力潜水艦をつくったとしても、基本法に違反するものでない、そういう合意を持って説明してきた記憶があります。
  285. 菅直人

    ○菅委員 いいですか、もう一度もとへ戻って聞きますけれども、非核という表現なんです、総理が言っているのは。核兵器でないという表現と非核という表現が今の話だとまた少し微妙なんですね。確かにこのエックス線レーザーの場合に、核ですよ、核励起エックス線レーザーですから、これは見てみなければわからないなんという行き方じゃなくて、今の防衛庁の説明もあったように、核爆発のエネルギーをエックス線の励起に使っているわけですよ。そういうレーザーが存在するということは防衛庁も認めているわけですよ。それを使ったものが中曽根総理の言うSDIに関する非核という概念に当たるのか当たらないのか。これは原子力推進の場合とはかなり違います。原子力推進の場合には原子炉です。エックス線レーザーの場合は核爆発を起こすのです。核爆発を直接、熱やあるいは物でロケットを撃ち落とすのでないことは確かです。しかし、核爆発を宇宙で起こしてそのエネルギーでレーザー光線を、あるいはエックス線を発生させるわけです。  もう一度お伺いします。こういう核励起エックス線レーザーというのは存在しないわけじゃないのですよ。これをもし存在しないなどと言うんだったら、今の防衛庁の人は何を言っているかわかりやしない。核励起エックス線レーザーというのは、今実際にネバダでも実験をされているし、いろいろなところで実験されていることは証言もたくさんあります。その核励起エックス線レーザーを使ったものを想定したときに、それが中曽根総理の言う非核に入るのか入らないのか、もう一度答えてください。
  286. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 非核という言葉をどう定義するかということでありますが、我々が核兵器と言う場合、兵器体系の中に入って使われるという場合には、やはりそれが爆発力として使われる、直接破壊や殺傷に使われる、そういうような考え方を私は今までは考えてきたわけです。
  287. 菅直人

    ○菅委員 そうすると、この核励起エックス線レーザーについては、中曽根総理の言う非核に当たらないということですか、非核に当たるということですか。
  288. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ですから、その辺はもう少しよく、どういうふうにこれが開発あるいは研究が進むものかよく見きわめた上で判定すべきであろうと思っておりますが、今まで爆発とか核兵器とかいう場合に対する考え方は、以上申し上げたような考え方で来たわけです。
  289. 菅直人

    ○菅委員 いいですか。これは大変重要な問題ですよ。非核ということを本会議であろうがいろいろな席で総理は公式に発言されている。核励起エックス線レーザーは、先ほどどちらかから声がありましたけれども、原子炉とは全然違うのですよ。原子炉というのは、核分裂をゆっくりやらせるわけですよ。核爆発ではないわけですよ、核分裂の反応は起きるけれども。――小さな核爆発、それはいろいろな表現はあるでしょう。しかし、実際には核爆発とは言わないのですよ。そういう意味では、この核励起エックス線レーザーというのは、宇宙で核爆発を起こすことは間違いないのですよ。  だから、例えば石っころがある。それをダイナマイト、爆弾でぼんと爆発させて石っころを飛ばした。飛んでいくのはダイナマイトじゃないですよ、石っころですよ。しかし、それを撃ち出したのはTNT火薬かもしれない。ここは単に研究開発を待って決めるなんということではないのですよ。今まさに研究開発に参加をするかしないかを決める、少なくともそれを閣議決定された後の最初の質疑を今行っているときですよ。もう一回はっきり答えてください。これがはっきりしなければ何のことか議論ができないじゃないですか。核励起エックス線レーザーが非核に当たるのか当たらないのか、はっきり答えてください。
  290. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 ただいま総理がお答えになっておりますとおりでございまして、それは、このエックス線レーザーという研究されておるものが果たして核兵器であるのかどうかということにつきまして、これはまだ存在してないわけでございますから、わからないということでございます。  ただ、SDI全体としてそれが非核であるかどうかということは極めて明瞭でございまして、総理も何回もおっしゃっているとおりでございまして、それは非核であるということでございます。  これは、例えばレーガン大統領がレイキャビクから帰りまして、十月十三日でございますけれども、全国民にテレビで演説いたしました。そのときに非常に明確にこういうことを言っております。それは、明確にしたいけれどもSDIというものは非核の防御であるというワンセンテンスを言っておるわけでございます。これはアメリカが常に言っておることでございまして、その目的、その主体は非核であるということでございます。その中に、先ほど委員御指摘のようにエックス線レーザーの兵器というものの研究が行われているということでございますが、なぜその研究が行われているかということにつきまして、これはアメリカが累次説明しておるところでございますけれども、そもそもSDI研究計画と申しますのは、SDIというものが、そういうようなものが可能であるかという技術的な研究でございますけれども、その可能であるかという中には、相手の攻撃に耐え得るかという面がございます。それでアメリカが言っておりますことは、ソ連がかねてから核励起のレーザーあるいはエックス線レーザーというようなものを研究してきておる、このためにそれに対して研究をしておるんだということでございまして、これが必ずしも兵器に使われるのかどうかという点はわからないわけでございます。
  291. 菅直人

    ○菅委員 こんなばかげた議論がありますか。つまり、中身はわからないけれども非核であることは確実だ、それはなぜか、レーガン大統領がそう言っているからだ、エックス線レーザーは使うかどうかわからないと。しかし、いろいろなものが出ています。  ここに「SDIゲーム」という本が出て、向こうで実際に二十代の科学者が一番やっているのはエックス線レーザーなんです。なぜエックス線レーザーか。これは技術的なことになりますけれども、普通のレーザーですとエネルギーの量が非常に少ない。どうしても一瞬にして破壊するためには、エネルギーの量を多くするためには非常に波長の短いものでなければだめだ。非常に波長の短いものになってくるとこれはエックス線だ。そういう中で、ある意味では指向性兵器の必然性として、エネルギーの非常に大量のものをそれに乗っけようと思えばだんだんエックス線になっていくというのは一つの必然性なんです、その技術体系からいえば。その一番中心になってきつつあるものを、それはわからない、わからないけれども非核であることは確実だ、こんな議論ができるのですか。
  292. 倉成正

    ○倉成国務大臣 少し問題を整理するために私から申し上げたいと思います。  防衛庁からもお話がございましたけれども、エックス線レーザーを発振させるためのエネルギー源にも種々のオプションがあることは専門家の菅先生御承知のとおりです。特にエックス線には紫外線よりも波長の短い不可視の領域の電磁波を利用するということで浸透性が強い。医療のエックス線というのは出力が非常に弱いから、拡散するからという問題があるわけです。したがって御案内のとおり、核融合とか核爆発とか、そういうものを利用すれば大きなエネルギーができてくるということは、それは常識的に考えられるわけですけれども、今エックス線レーザーをどういうもので発振させるかということについては種々の研究が行われているということは事実でございます。したがって、エックス線レーザーを、核のものである、発振させるものは核であると断定するのはいかがなものかと思います。――ちょっと待ってください。整理してお話をしています。  なお、仮にエックス線レーザーについて核の爆発力を利用するという場合であっても、このSDI構想全体の研究計画の中には、先ほど防衛庁からお話がありましたように、カイネティック・エネルギー・ウエポン、KEW、あるいは指向性エネルギー、そういうものがあって、その指向性エネルギーの中の一つがエックス線レーザーである、全体の大きな計画の中の一つであるからこのSDIというものは非核の防衛システムである、そういう説明をレーガン大統領はいたしておりまして、総理はそのことを申し上げておると思うのでございます。
  293. 菅直人

    ○菅委員 整理をされたらますますわからないというのが本当のところだと思いますけれども、私が申し上げたのは、エックス線レーザーが核だと言ったわけじゃないです。核励起エックス線レーザーが核だということを言っておるわけです。エックス線レーザーにいろいろな、なかなかほかのものでは難しいですけれども、ほかのやり方があることはよく知っています。しかし、核励起エックス線レーザーが今一番注目をされておるということを言っておるのです。  じゃ問い方を変えますけれども、もし核励起エックス線レーザー、つまり核を宇宙で爆発させてそのエネルギーでエックス線を発すると、そのことがSDIの研究開発のかなり主要なものになってきた場合には、この研究開発参加については見直すのですか。つまり、非核ということがはっきりしないという以上は、その中身のことがはっきりして、これは入るんだ、あるいは入らないんだということがはっきりするならともかく、入らないと言いながら、入ってしまったら見直すのが当然でしょう。どうですか、総理
  294. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 全体の体系の中でどういう機能を、どういう意味を持っておるか、それからまた、そのもの自体の機能というものが本当に核兵器として考えられるものであるかどうか、そういう点をよく見る必要があるので、今まで申し上げたとおりです。
  295. 菅直人

    ○菅委員 何か私には全然意味がわからなかったですけれどもね。では、もう一つ別の言い方で聞きましょうか。  宇宙に核爆発の物質を打ち上げることは、これは宇宙条約に違反するのですか、あるいは日本の宇宙開発の考え方に反するのですか、どうですか。
  296. 小和田恒

    ○小和田政府委員 宇宙条約で禁止しておりますのは、第四条に規定がありますように、「核兵器及び他の種類の大量破壊兵器を運ぶ物体を地球を回る軌道に乗せないこと、これらの兵器を天体に設置しないこと」それから「他のいかなる方法によつてもこれらの兵器を宇宙空間に配置しないこと」以上でございます。
  297. 菅直人

    ○菅委員 ですから、核を爆発させてそのエネルギーを使うこの場合、これがこの条約に違反するかどうかという見解を聞いているのです。
  298. 小和田恒

    ○小和田政府委員 条約の解釈の問題として申し上げますならば、先ほど来申し上げておりますように、そもそもエックス線レーザー兵器というものがまだ現実にないわけでございますから、それがどういう兵器になるかということによってこの宇宙条約に合致するかどうかということを決めることになるだろうと思います。
  299. 菅直人

    ○菅委員 エックス線レーザーが存在しないというのは、核励起エックス線レーザーを実戦の配備をしていないということであって、研究開発は進んでいますよ。現実にネバダでやっていますよ。そんなことがわかっていないのですか。さっき言ったじゃないですか。向こうに各団体が行って、何を聞いてきたんですか。  私が聞いているのは、決して架空の話をしているんじゃないのですよ。エックス線レーザーがこの世の中に存在しないのじゃない、現実に存在する。核励起の実験がやられていないんじゃない、核励起エックス線レーザーの実験がやられている。そうなると、核励起エックス線レーザーをSDIに積むということがアメリカで既に議論をされている。日本だって、自衛隊の先輩でもあると思いますけれども、江村さんという経団連防衛生産委員会の審議委員の元陸将補が、いろんなところ、兵器工業会の本の中にも核励起エックス線レーザーのことを書いていますよ。そういうものがかなり主流になるかもしれないという可能性を書いているわけです。だから聞いているのです。  そうすると、エックス線レーザーで、いわゆるブースター段階からいろんな段階でミサイルに当てようと思えば、宇宙に飛ばすしかなくなるのですよ。だから、宇宙に飛ばすことになった場合にこの条約に違反をしますかと聞いているのですよ。実戦兵器が存在していますか、していませんかと聞いているのではなくて、現実にそういう研究開発が既に進んでいる。それを配備したらそうならざるを得ない。それが違反するかどうかという見解をまず聞いているのですよ。見解を答えてください。
  300. 筒井良三

    ○筒井政府委員 エックス線レーザーの研究がどんどん進んでいるというぐあいに先生御案内でございますけれども、今指向エネルギー兵器関係で最も進んでおります、というよりか本命とされておりますものは、フリー・エレクトロン・レーザー、自由電子レーザーでございます。  それから先生が、エックス線レーザーが技術的必然性であって、武器としてはそれを使わざるを得ないだろうというぐあいにおっしゃっておられましたけれども、現在の技術的趨勢といたしましては、これを破壊いたしますのにも、例えば化学レーザーでも十分ICBMを破壊できるという実験を、昨年の九月にニューメキシコのホワイトサンズというミサイルの射場でICBMの爆破を化学レーザー、この場合には弗化水素を使っておりますけれども、レーザーでちゃんとやっております。ただ、大気中の減衰とかいろいろの問題がありますので、波長を自由に選べますところの自由電子レーザーというものが本命視されている。そしてエックス線レーザーといいますものは、国防省ではなくて、エネルギー省の一部の予算をもちまして、ソ連がこういうことをやっている以上、技術的対処のための、技術的知識を得るために必要とするというだけでありまして、全体のアーキテクチャーといいますか基本設計といいますか、その中にエックス線レーザーを使うという話は一つも私どもは聞いておりません。つまり、技術的な趨勢はエックス線レーザーではなく、自由電子レーザーであるとか他の非核手段によりますところの武器に移っているということを申し上げたかったわけでございます。
  301. 菅直人

    ○菅委員 それじゃ、それを一〇〇%そのとおりだとして、仮定してですよ、核励起エックス線レーザーの開発がSDIの中心になった場合には研究開発参加は見直すのですか、それならば。答えてください。
  302. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私が最初に申し上げましたように、まず核兵器とは何ぞや、そういう定義を申し上げました。これは繰り返しません。  それから、SDI全体の体系の中において、もし万一仮に核爆発がレーザーを引き起こす一つのモメンタムに使われる、そういう場合においても、その機能が果たしてどういうような機能として存在してくるか、まず全体の体系の中における位置と意味と、それから今度はそのもの自体がどういう機能を持つであろうか、そういうようないろんな問題についてもう少し分析し、研究を詰める必要がある。しかし、核爆発、核兵器という場合の私の考え方は、今までは原子力基本法の解釈においてこういうことであったと申し上げたとおりです。
  303. 菅直人

    ○菅委員 だからぐるぐる回りなんですよ。原子力基本法の場合に総理大臣が例に挙げられたのは、原子力推進の潜水艦です。原子力推進の潜水艦というのは原子炉を積んでいるのですよ。別に原爆を爆発させながら推進するわけじゃないのです。平和的に原爆を爆発させるということが考えられているのは、例えば運河を掘るときにそういうやり方をやろうじゃないかというのが一部、一時ありました。実行されたという話は私は聞いていませんけれども、一部ありました。しかし、今の場合、推進力と違うのですよ、原子炉と違うのですよ。  ですから、このSDIの議論を進めていく上で、非核、防御兵器だという二大看板が、非核であるかないかと何回聞いてみても、今まで言っている核兵器の範疇に入るかどうかわからないと言っているだけで、入らないと言っているのですか、入ると言っているのですか。わからないままこれ以上議論を進めろというのですか。それが第一点。  それから、先ほどの宇宙の条約にしても、現実に存在し得るものですよ。それが宇宙を回る可能性があるんですよ。もうそんな絵がそこらじゅうに出ているじゃないですか、SDIの絵を見たら。そういうものが条約に違反するのかどうかと聞いても、それには何も答えない。こんな一番根本的なことに答えないで、これでSDIの議論を進めろというのですか。ちゃんと非核であるのかないのか、どうなったらどうなるのか、もう一回答えてくださいよ。
  304. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私はよく答えていると思うのですが、核爆発というものは、直接ものを殺傷したり壊したりするというような場合に核兵器と言われる、そういうことを前から言ってきた。原子力推進というような場合には間接的なものであるから、それは直接殺傷するものではない。エックス線レーザーが使われるという場合には、レーザーを起こして発振させる一つのエネルギー源として核爆発というものが使われる、そういう可能性はなきにしもあらずである。しかし、その場合は間接的ですね。直接それがものを殺傷したりなにかするというのじゃなくて、レーザーを起こして発振させる、そういう力は持つ、その場合とどうであろうか、一つの研究課題であるとは思います。しかし、間接的であるという点はやはり否定できないのではないかと思います。
  305. 菅直人

    ○菅委員 ということは、宇宙空間で核を爆発させてレーザーを起こす場合も、総理の言う非核の範疇だということですか、核の範疇じゃないということですか、今の見解は。
  306. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ですから、全体の体系の中で、あなたは今自分で宇宙空間ということをおっしゃっているけれども、一体、果たして宇宙空間になるのかならぬのか、地上から発射してやるのか、いろいろなものがあり得るでしょう。ですから、全体のSDIという体系の中で、それがどういう意味を持って、そして位置づけられるか。しかも今度は、そのもの自体の機能がどういう性格のものであるか、そういう点をやはり研究の成果が出てきたときに見定めてから判定しないとこれは間違える、そう思っておるわけです。
  307. 菅直人

    ○菅委員 こんな議論国民が納得できるんですか。つまり、今研究開発に参加しようとしているんですよ。いいですか、現実にあるものを配備するかしないかじゃないんですよ。研究開発に参加しようとしておるときに、その研究開発するものが、非核だ、非核だと説明されていたら、いや、研究開発してみなければ非核かどうかわかりませんなんて、こんな論理がありますか。どうですか。
  308. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 これは累次お答えしておるところでございますけれども、アメリカは何度も、レーガンも含めまして、これは非核ということを追求するということを言っております、SDIは非核である、全体としては非核であると。その中に、極めて限られた一部でございますけれども、そこにエックス線レーザーという研究がございまして、そのエックス線レーザーの研究というものが核に関連しているということでございまして、その研究は、先ほどから申し述べておりますように、必ずしもそれはいわゆる攻撃と申しますか、無力化するために使うとは限りませんで、アメリカが説明しておりますのは、何よりもまずソ連がそういうものを研究しておる、その研究に対して、その研究の結果、SDIシステムがもし仮にできるとするとそれが攻撃を受ける、そのために研究しておく必要があるということでやっておるということを何度も明確に言っておるわけでございます。したがいまして、SDI全体が非核であるということ、これはレーガンも何度も言っておるところでございますけれども、その基本的な性格は変わらない、こういうことでございます。
  309. 菅直人

    ○菅委員 何回聞いても、私の理解力が悪いのか表現力が悪いのか、では、それはそうだというのだったら、説明してみてくださいよ。いいですか、もう一回聞きますよ。二つだけもう一回聞きます。  いいですか。少なくとも、もう一度同じことの繰り返しになりますけれども、私も、確かに核励起エックス線レーザーというものは、今までの、例えばABMのように直接に、向こうから来たロケットを近くで核爆発を起こさして、それでその爆発力でもって落とすというのと若干違うことは、技術的にといいましょうか、違うことはそれはわかります、技術的には。しかし、推進力に使うというのともまた全然違うことも、これは総理もおわかりだと思うのです。推進力に使うのはゆっくり、簡単に言えば、蒸気タービンを石油で燃やすかわりに、原子炉で熱を取って単に蒸気タービンを回しているだけです、最終的には。爆発じゃないのです。それに対して、この核励起エックス線レーザーというのは爆発なんですよ。その爆発したエネルギーを使って励起するのですよ。だから、これが非核であるかないかということは、いや全体の体系の中でごく一部であってソ連がどうのこうのということを幾ら言ってみたって、少なくとも私が理解している限りでは、自由電子云々とかいろいろ言われましたけれども、一番波長が短くて一番エネルギーが乗るのはエックス線レーザーです、今調べられた限りでは。そういう方向になるかどうか、それはわかりません。それが全部一〇〇%その方向になるかどうかわかりません。しかし、非常に注目されているということは、これは専門家ならわかるはずです。その核を使うことが中曽根総理の言われてきた非核に当たるのか当たらないのかが一点。  それを宇宙に打ち上げることが宇宙条約に違反するのかどうかということが一点。総理は、宇宙に打ち上げるかどうかわからないと言われた。よく地上からひゅっとやって鏡ではね返すというのがありますけれども、エックス線というのは鏡ではね返らないのですよ、残念ながら。だから、直接上からやるしかないんですよ。つまり、宇宙に兵器を持っていくしかないんですよ。その二点をもう一回答えてください。
  310. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 先ほどからお答え申し上げておりますように、これが非核であるということは、ただアメリカが言っておる、そういうことではございませんで、この構想はそもそもレーガン大統領の構想でございまして、それをレーガン大統領やアメリカ政府が推進しておるわけでございますが、この構想を最初に唱えたときから、要するに核の世界、この世界から脱却するためにどういう方法があるだろうか。それでハイテクは使えないかという発想でございまして、最初から非核の防御手段で核を征伐できないかということを言っておるわけでございます。それは先ほど申し述べましたように、レイキャビクから帰りまして全国民にテレビでレーガン大統領が演説をしましたときも、これが非核の防御兵器であるということを明確にしておきたいということを述べておるわけでございます。  したがいまして、それはこのSDIという構想の基本でございます。その中に、いろいろある中に、確かにこれは前から言われていることでございますけれども、エックス線レーザーというものがあるけれども、それは極めて限られた一部であり、それから我々の専門家によりますと、アメリカの説明でもございますが、これが主流にはなっていかない、自由電子レーザーが主流になっていくということでございます。それも、その研究の目的は、ソ連がやっておるから、SDIシステムを攻撃するということがあり得るのでそれに対する備えとして検討していこうということでございまして、その検討の段階におきましてこれが核兵器であるのかどうかということは、現時点では存在しない兵器でございますから判然としない、こういうふうに申し上げているわけでございます。
  311. 菅直人

    ○菅委員 私は、この問題はぜひ理事会で検討してもらいたいと思うのですよ。判然としないと言ったってそれは当たり前ですよ、SDIなんてできてないんだから。そういう言い方をすればSDIなんというのは、できた体系で、こういう原爆ができました、配備しますか、SS20、トマホークを配備しますかというものと全然性格が違うのですよ。まさに構想なんですよ。だから、どういうものになっていくかわからないわけですよ。レーガン大統領が幾ら非核だ非核だと言ったって、そのレーガン大統領の表現している非核という意味が、従来のソ連がモスクワに配備しているようなABMのように核兵器が来たら核を打ち出して落とすというような兵器ではないという意味で言っているのか、あるいは核励起エックス線レーザーまで含めてそういうものは使わないと言っているのか、それは確認したことがあるんですか。
  312. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 その点につきましてはアメリカは極めて明確でございまして、エックス線レーザーを含んで言っておることでございます。  例えば、一例を挙げますと、エーブラハムソンというのがSDIの担当の局長でございますけれども、本年の三月七日に次のように述べております。  レーガン大統領が追求しているものは極めて明確である、それは我々がSDIの実現のための非核の手段を追求することである、しかし我々はSDIの有効性に及ぼし得る脅威を把握することもまた必要であると言いまして、これはその前にエックス線レーザーについて述べているわけでございます。その前に述べておりますことは、現在ソビエトにおいてある種の核の要素といったものが研究されるということは我々皆が関心を持っていることである云々ということでソ連の研究について述べておりまして、その後に私が今申し述べたくだりがあるわけでございます。
  313. 菅直人

    ○菅委員 幾ら今のを聞いたからって、レーガンが言っていることに核励起エックス線レーザーが入ってないなんて何も書いてないじゃないですか、何も言ってないじゃないですか。第一、アメリカの立場からすれば、日本とは若干状況が違いますから、エックス線レーザーで、それがよければ、ネバダで実験するということは十分あり得ることでしょう。もともと日本と違って核兵器を持っているんだから、もともと核の研究をしているんだから。アメリカがそのことをわざわざ避けるということを逆に言えば考える方が不自然であって、そういう意味で言えば、今のレーガン大統領のあれは核励起エックス線レーザーを考慮してないということになるなんというのは、どうやったって思えないじゃないですか。  この問題はちゃんとした内容を答えてもらわなければこれ以上質問できませんよ。非核であるかないか、その範囲はわかりません。宇宙条約に違反するのか、それは何とも言えません。どうなんですか。
  314. 倉成正

    ○倉成国務大臣 ただいまの菅委員のおっしゃることを聞いておりますと、核エックス線レーザーがSDI計画の重要部分であり、すべてとは申されませんけれども、そういうような印象を受けるわけでございますけれども、そうではございません。エックス線レーザーを発振させるためのエネルギー源としては種々のオプションがあるということは専門家の先生よく御承知のとおりです。いずれにせよ、アメリカ政府は、SDIの目標とするところはあくまでも非核の技術による戦略防衛システムの研究であり、エックス線レーザーにつき米国が行っている研究は、ソ連が現在研究中と言われるエックス線レーザー兵器を仮に保有することになった場合、それがいかなる影響、脅威かを見きわめるという観点から行われているものであるということでございます。右研究はSDI研究の中で極めて限られた一部にすぎない旨明らかにしております。  また、実験のことをいろいろお話しになりましたけれども、特定の実験について、それがどのような意味で、どのような目的のために実験したということは明らかにしないのが米国政府立場であることも、専門家の先生は御承知のとおりでございます。  なお、十月十三日のワシントンにおけるレーガン大統領の演説におきましても、SDIは防御面で非核の防御である旨を明確に申し上げておるわけでございまして、この中で我々は研究に参加するという立場をとっておるわけでございます。また、エックス線レーザーという兵器は現実に存在しない兵器である、コストパフォーマンス、すなわち費用効果の面等の問題もございますし、ただいま宇宙というお話がございましたけれども、地上から打ち上げる場合だってあるわけでしょう。ですから、いろいろな場合があるわけですから、専門家の先生が御承知の上で御質問いただいておることと思うわけでございますが、全体の構想の中でいろいろなことが研究されるということをもってこのSDI構想について云々される、先生の御発言を聞いていると、何かエックス線レーザー、それはエックス線レーザーがまさに核エックス線レーザーであるという断定のもとですべてのことを議論されているようでこざいますが、私どもはそのような立場を是認するわけにはまいらないと考えるわけでございます。
  315. 菅直人

    ○菅委員 それではもう一つだけ質問をしてちゃんと答えてもらわないとこれは本当に困るのですよ。本当にわかっているのですか。核励起エックス線レーザーが非核であるかないかということについて答えてもらえばいいわけですよ。それが今から研究の中心であるかないかなんということを答えてくれと言っているのじゃないですよ。――では一生懸命丁寧にしますよ。丁寧に何度やったって、丁寧にもう十回ぐらいやったじゃないですか。  ではもう一度言います。  宇宙にこの核励起エックス線レーザーというものを打ち上げた場合に宇宙条約に違反をするのですかどうですか、その見解をもう一回イエスかノーで答えてもらえませんか。
  316. 小和田恒

    ○小和田政府委員 イエスかノーかということで答えるという御注文でありますけれども、イエスかノーかということでお答えすることは非常に困難でございます。  宇宙条約第四条は、先ほども申し上げましたように、核兵器及び他の種類の大量破壊兵器というものについて、それを地球を回る軌道に乗せない、それから天体に設置しない、それから他のいかなる方法によってもこれらの兵器を宇宙空間に配置しない、こういうことを義務づけているわけでございます。  そこで、核兵器ないしはその他の大量破壊兵器というのは何であるかということを申しますと、これは一つの例でございますけれども、一九四八年に国連が採択した決議の中で、大量破壊兵器というのは、「原子爆発兵器、放射性物質兵器、致死性化学・生物兵器、並びに破壊効果において原子爆弾、ないしその他上述の兵器に匹敵する特徴を有する」ようなもの、こういう定義を置いているわけでございます。したがって、ここで考えられております核兵器でありますとか大量破壊兵器でありますとかいうようなものは、在来型の大量に人々をその破壊力、殺傷力によって殺傷するという兵器を前提にいたしまして、そういう核兵器、大量破壊兵器というものを宇宙に配備したりすることを条約で禁止しているわけでございます。  そこで、先ほど来委員がお尋ねになっております核励起によるエックス線レーザー兵器というものは、先ほど来政府側がたびたび申しておりますように、これは現に配備をされていない兵器であるだけではなくて、兵器として現在存在していないものであるというふうに私ども理解しております。したがって、それがどういう兵器であるのかということが明確になって、兵器として現実に存在して、それがどういう兵器であるかということがわかった段階で、それが先ほど申し上げておりますような基準から考えて宇宙条約第四条に規定するようなものに当たるかどうかということが判定ができる、こういう関係になるわけでございます。
  317. 菅直人

    ○菅委員 私は、このSDIの議論というのは、本当に国会の場はもちろんですけれども与党あるいは政府部内でももっと議論があっていいと思うのですよ。アメリカでは現にマクナマラ以前の国防長官からシュレジンジャー長官から、ありとあらゆる人がいろいろな議論を出しているわけです。日本では中曽根総理が何かぽっぽっぽっとレーガン大統領がこうおっしゃいましたと言ったら、だれも疑問を挟まないで中身も検討しないですいすいすいすいここまで来ている。そういうことがきょうの私の質問に対しても、非核であるという言葉の最初からして議論になってないわけです。ですから、この問題は全く納得できませんが、次の、中曽根総理がみずから言われたMADについて総理考え方を聞きたいと思うのです。  中曽根総理は今、このSDI構想が相互確証破壊という考え方よりも進んだものだという理解を示されましたね。しかし、矛盾した理論であるということについてはどうですか。つまり、簡単に言えばSDIを進めるということは相互確証破壊じゃなくなるわけですよ。アメリカがSDIをもし完成したとすれば、当然ながらソ連のミサイルがアメリカを破壊しなくなる。つまり、相互確証破壊という考え方はなくなるわけですね。つまり核の抑止、いわゆる相互確証破壊による抑止力というものは少なくともその点でなくなるわけです。つまり、相互確証破壊、MADとSDI構想というものは決して前と後ろじゃなくて、相矛盾したものだという、それについてどうですか。
  318. 倉成正

    ○倉成国務大臣 総理の発言の前に。  国内で一つ議論しないでぽっぽ決めたと委員おっしゃいましたけれども、そういうことはございません。まず昭和六十一年四月二十三日にSDIの官民合同調査団が、これは御案内のとおり各方面の専門家がアメリカに参りまして、SDI研究計画についてそれぞれ調査をいたしまして、調査の報告をいたしております。  なお、この問題に関しまして、技術面、戦略面あるいは国会決議、あらゆる面について、閣僚の懇談会を開きまして官房長官主宰のもとで慎重に検討した上でSDI参加ということを決めたわけでございまして、決していいかげんにただぽっぽ決めたわけでなくて、慎重に一生懸命勉強し専門家の知恵を集めた上でのものであるわけでございますから、ただいまの委員お話は私どもとしては理解することができないわけでございます。
  319. 菅直人

    ○菅委員 本当はこの話に戻りたくなかったのですが、このSDI研究計画の官民合同調査団報告というのがあります。今外務大臣が言われたのはこのことだと思います。これをめぐる三回の調査でしょう。最初に何が書いてあるか。「米国の戦略防衛構想(SDI)の目指すところは、非核の防御的手段により弾道弾を無力化し、究極的に核兵器の保有を無意味にすることを通じた核兵器の廃絶であるとされている。」と書いてあるのですよ。いいですか。あると書いてあるのじゃないのですよ、「あるとされている。」結局、研究団は行って、後にごちょごちょ技術的なことは書いてありますよ。結局、レーガン大統領が、アメリカがこのようにおっしゃいましたというのが報告書に出ているだけで、自分の目で見て本当に非核の防御兵器であるのか、あるいは本当にこれが核兵器を無にすることになるのかということを自分で判断しているのじゃないのですよ。「あるとされている。」という報告書ですよ。こんなことで、これで十分な議論とは言えない。  あるいはここに官房長官の談話があります。これだけの、SDIというまさに米ソの、世界じゅうの戦略体系が全部これによって変わるか変わらないかとしているこの官房長官談話の中で、結局何が言いたいか。結局は今のうちに、乗りおくれると技術の方でおくれるかもしれないから、その点では何とかやりましょうということを言っているだけであって、世界に対してSDIがどういう影響が出るかというようなことは、これまた抽象的にアメリカが言っているようなことをちょっちょっと言っているだけで、日本立場としてこれがどういうふうな意味を持っているかということは入ってない。これは大変恐縮な言い方ですけれども、大変に何といいましょうか一国の閣議決定の背景となる論理づけにしては極めてレベルが低いと言わざるを得ないのです、この中身は。
  320. 倉成正

    ○倉成国務大臣 せっかくのお話でございますけれども、この官民合同調査団はその道のそれぞれの専門家が行ってその結果を報告しておるわけでございますから、言葉じりをとらえて「されている。」と書いてあるからいいかげんなものではないということはひとつ御認識いただきたいと思います。このことだけで御判断いただくのはいかがかと思うわけでございます。  なお、御承知のとおりボン・サミットにおいて中曽根五原則、これは米側がしばしば申しておることを確認したものでございまして、五つのことをはっきりと総理大臣は申しております。まず第一に、SDIはソ連に対する米国の一方的優位を追求するものではない、第二、西側全体の抑止力の一部としてその維持・強化に資するものである、三、攻撃核兵器の大幅削減を目指す、四、ABM条約に違反しない、五、開発・配備については同盟国との協議、ソ連との交渉が先行すべきである、はっきり日本立場を明らかにいたしておるわけでございます。したがって、私は先生のおっしゃっていることは当たらないと思います。
  321. 菅直人

    ○菅委員 わざわざ外務大臣が五原則のことを言われましたから、この中のことと先ほどのことが関連をしておりますので……。いいですか総理、一方的優位を求めない、つまりこの考え方は、私が理解するところでは、一種のMADの考え方だ。つまり、総理大臣が得意な抑止と均衡、均衡しながら下げていくんだ、今こちらが多いから、ちょっとアメリカも頑張ってこうやっているんだというような説明を大分私も聞かされました。こうなっている。SDIによってそのバランスは崩さないんだ、一方的優位は求めないんだというふうにこの五原則の第一番目、今の外相の言われたのは聞こえますけれども、しかし、どうしてそうなるのですか。SDIを開発するということは盾でしょう、まさに中曽根総理がみずから言われるように。盾がパーフェクトに機能したら、盾を持たない側と盾と矛を持っている側で言えば、一方的に優位になるじゃないですか。つまりMAD、相互確証破壊、この理論は崩れるじゃないですか。この二つが矛盾しているということは認められますか。
  322. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それはICBMやあるいはINFのそういう弾道弾、恐るべき原子核爆発の殺りく兵器が意味がなくなるということになれば、これはもう両方捨てざるを得ない。それが核兵器を廃絶するというところへ通じていく。その保障のためにSDIというものを持っていたい。しかし、それで両方が廃絶するという段階になれば、相談をしてどうするか、次の段階が出てくるわけです。
  323. 菅直人

    ○菅委員 だから一方的に優位な状況というのが生まれないですか、アメリカが開発したときに。
  324. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 核兵器がなくなるという効果が出てくるので、そしてそのためにはソ連と相談をすると言っているわけです。それで、そういう事態が出てきた場合にはSDIをどうするか、次の段階で相談が行われるということです。
  325. 菅直人

    ○菅委員 私が聞いていることに答えてくださいよ。相談は結構ですよ。しかし、それまでに一方的に優位な状態が生まれませんかというのですよ。――いや、総理大臣に聞いているのですよ、これは総理大臣の理論なんだから。
  326. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは片っ方がなくて片っ方があるという、そういう状態では、片っ方の方が核兵器をみんな落としてしまうから、そういう点においては優位性が出てくるでしょうね。優位性が出てくるということは、核兵器をなくすための、廃絶するための一つの過程にそういう段階はあり得るでしょう。しかし、それがために自分たちが優位を持って傍若無人なことをやるという意味ではない、核兵器を廃絶するための相談をしましょう、そういうことなんですよ。
  327. 菅直人

    ○菅委員 いいですか。こういう議論が本当に国際社会の中で通用するかどうかというのは、この間のレイキャビクでもわかるわけですよ。アメリカはかつて単独で核兵器を持っていたわけです。そのときに、アメリカが単独で核兵器を持っているから世界の戦争は全部なくなるのかと思ったら、当然ソ連もそれに負けずにつくっていくわけです。核拡大になったわけです。つまり、一方的優位を求めないと言いながら、今まさに総理みずから、いや、それは一方ができたときは一方的優位が生まれるでしょう。五原則なんて全く初めから崩れているじゃないですか。それは確かにアメリカにとってあるいは西側にとって、その点だけで言えば優位なんだから大丈夫、より安全になるのじゃないかという議論もあるかもしれない。しかし、それは窮鼠猫をかむという議論だってある。MADの議論はそうじゃない。つまりバランスをすることで抑止が働いているのだというのが、中曽根総理みずからが何年間も言い続けられてきた議論ですよ。一方的優位が生まれるということ、つまりMADと矛盾するということを認めるわけですね。
  328. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 つまり、今のようなMADから次の段階へ前進する、そういうような未来的な兵器である、前から申し上げているとおりです。
  329. 菅直人

    ○菅委員 ですから、それをアメリカ側が先に達成した場合はMADという状況は崩れるわけですね。
  330. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そして核兵器を廃絶する、そういう効果が出てくるわけであります。そのための相談がまた行われるということです。
  331. 菅直人

    ○菅委員 これも聞いている方はわかってもらえると思うのですけれども、明らかにMADという考え方と相矛盾した構想なわけですよ。それはアメリカができたときに相談をして、ソ連にどうぞ持っていってください。レイキャビクでそういうことを言ったか言わないかという話がありますけれども、ゴルバチョフ書記長は、そちらでつくったものがそっくりもらえるなんということは信用できないと言って、言下に拒否したと言われています。一生懸命秘密にしてつくって、膨大な金を使って、自分の方で全部盾ができたからあなたもどうぞ、そういうことになるという想定なんですか、総理
  332. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 両方で核兵器を廃絶する大事な動機にそれを使うということでしょう。
  333. 菅直人

    ○菅委員 中曽根総理の動機になるかどうかは別として、私が言っているのは、見通しとして、つまりアメリカだけが持ったときに一方的優位が生まれる、その一方的優位をわざわざ崩すために向こうに譲る、そういうことが起きるという見通しを持って言われているのかということです。中曽根総理が希望的観測として言われていることを聞いているのじゃない、見通しを聞いているのです。
  334. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 このSDIを何のためにつくっているかというその目的をまずよくもう一回考えていただきたい。これは核兵器を廃絶する、やめるためにやるんだ、そのための非核兵器防御体系に移るんだ、そういうことを繰り返し言っているので、もう一回よくその辺お考え願いたいと思います。
  335. 菅直人

    ○菅委員 これもあらゆる人がこれまでそういう議論をしたのですよ。人類始まって以来あらゆる人が、兵器を持って安全にするのだ、核兵器をつくって平和にするのだと言ってきたわけですよ。その目的、観念的目的はそのとおりかもしれません、中曽根総理の頭の中は。しかし、それがそういう効果が出るかどうかというのがまさに中曽根総理がよく言われる現実的な見通しの問題であって、単に観念的に主観的に、そう思うからそうなるんだというのだったら、これは簡単な話ですよ。  もう一つ言います。中曽根総理は、このレーガン演説というのはいろいろな段階があって、いわゆるスターウオーズIという段階、スターウオーズIIという段階があるというふうに言われているわけです。つまり簡単に言えば、一○○%の弾道を防げるということを前提として議論をしている時期と、最近のレーガン大統領がつくった小冊子なんか見ますと、一〇〇%まではいかなくてもある程度撃ち落とせればそれは抑止力の強化につながるのだ。実はこの議論は多少の差のようで、今のMADの問題も含めて言えば、論理的には戦略理論としては全く違ってくるわけです。パーフェクトに防げるということになれば、あるいはそれを双方が持つということになれば、中曽根総理の言われるように、むだなものを持っても仕方ないからなくそうかという議論があるかもしれない。しかし、命中率が九〇%だ、あるいは九五%だとなれば、逆に数の方を五十倍、百倍にすれば、九五%だったら二十倍にすれば、同じ数だけはそのシールドを超えるわけです。中曽根総理の理解しているSDIについて、究極的な形というのを一〇〇%可能だと見ておられるのか、あるいは最近のレーガン大統領の小冊子なんかのニュアンスは、部分的に抑止力を強化するのだというニュアンスが強くなっておりますが、そう見ておられるのか、どちらですか。
  336. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 一〇〇%有効であるかどうか、それは技術の進歩がどの程度になるかということを見きわめないとわかりません。
  337. 菅直人

    ○菅委員 そうすると、一〇〇%でない状況を想定した場合に、逆にその量が足らない、いわゆるSDIに対してSDIの開発がおくれた側はそのおくれをカバーするためにさらにたくさんの核兵器をつくる、そういうことになる可能性はどうですか。
  338. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その辺は確率論の問題、兵器の効果の問題、それでケーススタディーを必要とするような問題で、もう少し非常に高度の勉強をやる必要がある。それらはこれからの課題ですね。
  339. 菅直人

    ○菅委員 いいですか、今の総理の発言というのは大変重要ですよ。今の発言は、一〇〇%になるかどうかは技術的な問題だから一概にわからない、あるいはそうならなかった場合に核拡大になるかどうか、それも難しい問題だから十分検討しなければいけない。今まで言っていたこととどうですか。SDIは核廃絶につながります、だからやりましょうと言ってきたじゃないですか。今の話を聞けば、SDIは核廃絶につながるかもしれないけれども、技術的に難しくて核拡大につながるかもしれません、大変難しい問題だから今から大いに勉強しなければいけません。それなら、ちゃんと初めからそう言わなければ国民は間違うじゃないですか。
  340. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 SDIは核をなくすために、その目的のためにやろうとしておるのであって、一〇〇%を目指して営々と努力していくべきものでしょう。あなたはその途中の話を持ってきたから、途中の話は途中で、こういうものだ、そういうふうに申し上げているだけです。
  341. 菅直人

    ○菅委員 それは途中の話ですよ、SDIというのは今だって途中なんだから。今から完全にパーフェクトにできるというのは、技術的にパーフェクトというのは大変難しいと私は思います。大部分のアメリカの専門家も、パーフェクトというのは少なくとも無理だと言っています。そういう意味で、パーフェクトでない状況の方が可能性としてはより高い。そうなると、いわゆるスターウオーズIIの場合は、逆に今までのABMとかの強化というニュアンス、そういう性格を持ってくる。そうすると、なぜABM条約ができて、なぜ相互がABMというものの配備を抑制しているか。つまり、逆にまたMADに戻るわけですよ。そういう不安定な状況よりは逆に、道徳的、論理的には私もMADをそのまま一〇〇%認めるわけではありませんけれども、しかし、少なくともこのSDIによってあるいはABMによって不安定な状況をつくるよりは、まだ信頼感、安心感があるというのがこれまでの、まさに中曽根総理を含めて、抑止と均衡ということを口を酸っぱくして言われてきた論拠じゃないですか。それをみずから仮定の問題だ。それはそうですよ。技術の開発なんというのは仮定の問題だし、パーフェクトに一たんなったとしたって、翌日にはまた新しくそれをかいくぐる技術ができる。十分あるわけです。  もう時間がなくなりつつありますので、もう一つだけ通産省に。この研究開発に参加をしたときに、そのSDI研究の技術的成果日本に持って帰って利用することができるというふうに考えているのか。それを民需に転換をしたりあるいはそれを輸出のものに使うことができると考えているのか、通産省、通産大臣
  342. 児玉幸治

    ○児玉政府委員 先ほどからお話の出ております中に、この三月の終わりから四月にアメリカに行きました調査団の話が出ているわけでございます。技術的な立場の人たちも連れて向こうに行ったわけでございまして、それについての結論といたしまして、我が国が当該研究計画に参加する場合には、それが適切な形で成果を利用することになれば我が国の関連技術水準の向上に大きな影響を及ぼす可能性があると考えられるという結論になっているわけでございます。九月九日の閣議決定以来、最近になりましてアメリカとSDI参加を円滑にするための交渉に入っているわけでございますけれども、私どもといたしましては、この点につきまして、日米双方に満足のいくような解決ができますように交渉をいたしているところでございます。
  343. 菅直人

    ○菅委員 いいですか。適切な形での利用ということは確かに入っています。しかし現実に西ドイツはアメリカとの秘密協定で、アメリカ国防省がオーケーしない技術はだめだという協定が結ばれたと報道されています。今の交渉経過はどうなっていますか。
  344. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 第一回の交渉が先週四日間ほどワシントンで行われまして、関係各省が参りまして話をいたしました。この会合では、第一回でございますので、おのおのの基本的な考え方を述べております。その中で成果の帰属とか秘密保護の取り扱い、情報の伝達等々について話し合っております。ただ、その交渉の内容につきましては、交渉中でございますので、詳しい内容をこういう場で御説明することを御勘弁いただきたいと思います。
  345. 菅直人

    ○菅委員 科技庁にちょっと聞きたいのですけれども、たしか人工衛星の打ち上げなんかでアメリカに大分頼んでいるケースがあると思うのですが、その人工衛星の打ち上げに伴ういろいろな技術、これが日本に提供されているのか、かなり提供されていないケースがあるのか、その点についてどうですか。
  346. 長柄喜一郎

    ○長柄政府委員 我が国は昭和四十四年にアメリカと日本との間で宇宙に関する技術の供与についての取り決めを結んでおりまして、ロケットの技術それから衛星の技術につきまして、その技術を米国より供与を受けております。
  347. 菅直人

    ○菅委員 しかし、しょっちゅう軍事機密を理由に提供されないから国産化率を高めよう、そういうふうに言っているんじゃないですか。長官、どうです。
  348. 長柄喜一郎

    ○長柄政府委員 ロケットについて申し上げますと、従来日本で打ち上げてまいりましたNIロケット、NIIロケットは米国のライセンスをいただきまして日本で生産したものでございますけれども、この八月に打ち上げましたHIロケットの二段目といいますのは、これは日本の技術で打ち上げたものでございまして、徐々に日本の自主技術に切りかえていこうという努力を進めているところでございます。
  349. 菅直人

    ○菅委員 きょうはこの問題、本命じゃありませんから適当にしますけれども、つまり人工衛星の開発なんかでもなかなか軍事機密に関連するものは簡単には教えてくれないというのが、私が知る限り、科学技術庁の担当者もよく御存じでしょうが、そういう状況ですよ。ある意味では、軍事機密という言い方で言えば、それはアメリカの立場からすれば当然かもしれない。それを今適切な形で成果が利用できるように頑張る、それは頑張られるのは大いに結構かもしれないけれども、見通しとして私は、日本の技術というものは民生を中心にこの四十年間伸びてきた技術ですよ。それをわざわざアメリカに持っていってSDIでメッキをする。メッキをしたらうちへ持って帰ろうと思ったら、それはだめですよ。持って帰れない。じゃ、この研究開発はどのぐらいかかるのですか。一年、二年で終わりっこない。十年、十五年あるいは二十年かかるかもしれない。極端に言えば、全部の技術開発そのものがこのSDIという一つのレーガン流の大義名分のもとに全部網の目の中に取り込まれていく、こういうことが想定できませんか、総理大臣
  350. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そこは大事なポイントでもあります。けれども、全部それが取り込まれるなんということは日本の国益上許すはずがないし、またそのためにも政府間で交渉して、日本の国益守るべきところは守るし、日本の技術守るべきところは守る。そのためにやっておるわけです。
  351. 菅直人

    ○菅委員 私は、大変そういう心配があるということを、これは本当によく考えていただきたい。そして同時に、今自民党では国家機密法のことがいろいろと議論されています。多くの国民は、この問題と実はSDIの研究開発参加ということが関連しているんじゃないか、私もそういうことを非常に強く懸念しています。内閣総理大臣であると同時に自民党総裁中曽根総理に、今自民党が考えている国家機密法とこの関連について全くないと言い切れるのかどうか、返答いただきたいと思います。
  352. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 全くないです。SDI自体も既存の諸協定、取り組み、そういうものの枠組みの中でやろうというので、新しい機密保護法とか機密関係の法律や規則をつくってやろうというものではない。このことは明確にしておくものであります。
  353. 砂田重民

    砂田委員長 菅君、時間が参りました。
  354. 菅直人

    ○菅委員 はい。きょうは本来ならば、建設省や国土庁、自治省にも来ていただいていまして、国内政策の大変な問題である土地政策についてもっと見解を問いたかったのですが、SDIについて政府の返答が全く満足がいかないものでしたので、おいでいただいた役所の担当者の皆さんには大変申しわけないと思いますが、今後の機会に回したいと思います。  以上で質問を終わります。
  355. 砂田重民

    砂田委員長 これにて菅君の質疑は終了いたしました。  次回は、明五日午後一時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時八分散会