○北橋健治君 私は、民社党・
民主連合を代表して、ただいま
議題となっております
昭和六十一
年度補正予算三案に対し、
反対討論を行うものであります。
昨年来の急激かつ大幅な
円高により、
我が国経済は極めて深刻な
円高不況に見舞われております。異常ともいうべきこの
円高に伴い、企業の
円高倒産件数は、
円高の始まった昨年十月以来一年間で過去最高水準の四百二十九件にも達し、また、大幅な減益を余儀なくされた企業は、
製造業全体の八割にも及んでいます。とりわけ、造船業界などでは、大幅な血のにじむような人員合理化、設備廃棄を迫られ、また、鉄鋼業界では、かつてない労働者の臨時休業あるいは高炉の一部休止計画の検討というように、かつてない深刻な経営不振に陥っております。また、これらの不況業種の立地する
地域では、関連
中小企業群を含めた極度の経営不振による
雇用不安が日増しに強まっているのが現実であります。
雇用情勢も悪化の一途をたどっており、本年九月の失業率は二・八%と高水準を記録し、構造失業時代に突入したと言われるほど、
雇用問題は一段と深刻の度を加速しているのであります。またさらに、今後海外直接
生産が増大しますと、
国内雇用の縮小、
産業の
空洞化が進み、
事態が重大化することを
国民はひとしく危惧しているところであります。
昨年来の
政府による
円高誘導策は、このように
国民経済の存立基盤を大きく揺るがし、
産業の地盤沈下を加速しただけではありません。
我が国の
貿易黒字は依然として増大を続けており、
対外経済摩擦は一向に解消に向かっていないのが現実であります。通貨調整によりJカーブ
効果が当初は働くため、貿易収支の
是正に一定のタイムラグが必要なことは私も十分承知しております。しかしながら、今
年度の経常黒字が過去最高の八百億ドルにも達すると見込まれる現状では、
中曽根内閣の為替レート一本やりの
対外経済調整は、明らかに
政策的整合性を失ったものと断ぜざるを得ません。(
拍手)
私は、今日の深刻な
円高不況は、
対外不
均衡是正のためと称して現下の行き過ぎた
円高を放置し、
内需拡大の強力な展開を軽視してきた
政府の
経済財政運営に最大の原因があると言わざるを得ません。これまで
中曽根内閣の
経済運営は、財源が乏しいから思い切った手を打たない、手を打たないからなお一層の財源不足に陥るという悪循環を繰り返してきており、この
政策路線を今後とも踏襲する限り、
貿易摩擦の解消も「増税なき
財政再建」も、そして四%台の
経済成長もすべて達成できないという、八方ふさがりに行き着くことは明白であります。(
拍手)本
年度一兆三千億円という巨額な
歳入欠陥が発生したことを見ても、
政府の消極的なこれまでの
経済財政運営の失敗が、事実として
国民の前に明らかになっているのであります。
今回の
補正予算の編成に際し、我が党が上述の認識にかんがみ
政府に強く
要求したことは、急激かつ異常な
円高によって未曾有の
経済危機に陥っている
地域並びに各
産業を救済するとともに、勤労者の
生活を守り、同時に、
内需拡大に最も
効果的な大幅な
減税を実現することでありました。このため、我が党は、大幅な
所得税減税、法人税
減税の実現、
建設国債の
発行による
公共投資の
拡大などを柱とした積極的な
経済財政運営を断行することにより、
内需主導の実質五%程度の成長が十分達成でき、同時に、税の自然増収が確保され、今日課題となっている
貿易摩擦の解消、「増税なき
財政再建」が可能になることを強調し、具体的な提言を行ってきたところであります。
とりわけ、我々は、二兆三千億円の
所得税減税の断行が
個人消費の
拡大に不可欠との立場から、その実現を強く
要求してきたところであります。しかるに
中曽根内閣は、私どもの
減税要求を拒否し続けており、我々はこれに対して強い憤りを禁じ得ないのであります。大幅な
所得税減税を見送り、
公共投資拡大のための
建設国債も小幅にとどめた今回の
補正予算案では、到底
政府の国際
公約である実質四%成長は達成不可能であり、
円高不況、
雇用不安も一段と高まり、
貿易摩擦の激化も避けられないものと言わざるを得ないのであります。にもかかわらず、総理が今なお四%
経済成長達成に自信を示され、
国内景気もいずれは回復に向かうと楽観的な
見通しを公言されていることは、
円高不況に苦悩する勤労大衆には到底納得できないのであります。
私は、今回の
補正予算の
内容では、仮に不況
地域への
予算の傾斜配分を行ったとしても、
景気の
浮揚効果はほとんど期待できず、
国民に明るい展望を保証できないものと言わざるを得ません。むしろ、年末を間近に控え、資金繰りで走り回る
中小企業者や再就職先を求め会社回りをする労働者、また、いつ希望退職者として肩をたたかれるかという不安を持つ勤労者など、苦痛に満ちた
国民の皆様の顔が目に浮かぶのであります。政治は、そのような勤労大衆に温かい手を差し伸べることに原点があると信じます。それゆえに、かつてない厳しい
環境に置かれた不況
地域、不況
産業に働く勤労者に明るい展望を切り開くことが到底期待できない今回の
補正予算には賛同することができません。
同時に、この際私は、
政府が現下の
円高不況を乗り切り、
雇用の安定を図るため、これまでの消極的な、そして民間任せの
姿勢を改め、万全の
措置を強力に講ずるよう強く求めるものであります。
ある県を例にとりますと、造船不況
対策として、県全体の
予算として乏しい財源の中から二十三億円余を計上しました。しかし、
政府がそれに対して助成した
予算は、何とそのうちわずか一%にすぎない、その実例を私は聞いております。これは
政府の
円高不況に取り組む消極的な
姿勢を端的に示すものであり、私はまことに残念でなりません。
円高の直撃を受けている
産業、
地域の
雇用を守るため、
公共投資の思い切った重点配分、成長
産業の積極的誘致による
雇用機会の創出に向けて、
政府は、今こそ自治体と一体となって、強力な
産業、
雇用政策を推進することを要請いたします。
また、現下の行き過ぎた
円高の
是正も急務であります。
対外経済摩擦を解決するいわば切り札として、
中曽根内閣が昨年秋、
円高誘導に踏み切って以来、ちょうど一年余が経過しました。その結果、
国内経済は危機に瀕し、
貿易摩擦はさらに激化しております。
政府は、一体いつまで為替レート一本やりの
対外経済調整を続けるのでしょうか。一ドル百五十円台という異常な
円高の水準は、
我が国輸出
産業には到底耐えがたいものであり、企業内の労使による苦渋に満ちた合理化
努力では対応し切れないのが事実であります。今日の急激かつ大幅な
円高は、
対外経済調整
対策として
政府が誘導してきたものであり、その
是正は
政府みずから
責任を持って行うべきであります。
このため我が党が提案したターゲットゾーンの設定構想などに
政府が消極的な
姿勢を示し、通貨調整に今なお積極的に取り組まないことは極めて遺憾であります。
国内産業の存立を危うくする現下の行き過ぎた
円高を
是正するため、
中曽根内閣の今後の英断を強く要請するものであります。政治家は、常に
国民にあすへの希望にあふれたビジョンを示し、その実現に邁進せねばなりません。このたびの
補正予算三案が、
景気回復という緊要の
国民的課題について何ら
国民に明確な展望を示していないことを最後に指摘しまして、私の
反対討論を終わります。(
拍手)