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1986-10-31 第107回国会 衆議院 本会議 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十月三十一日(金曜日)     ─────────────  議事日程 第六号   昭和六十一年十月三十一日     正午開議  一 国務大臣演説     ───────────── ○本日の会議に付した案件  宮澤大蔵大臣財政についての演説及びこれに対する質疑  地方公共団体議会議員及び長の選挙期日等臨時特例に関する法律案内閣提出)     午後零時三分開議
  2. 原健三郎

    議長原健三郎君) これより会議を開きます。      ────◇─────  国務大臣演説
  3. 原健三郎

    議長原健三郎君) 大蔵大臣から、財政について発言を求められております。これを許します。大蔵大臣宮澤喜一君。     〔国務大臣宮澤喜一登壇
  4. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ここに、昭和六十一年度補正予算の御審議をお願いするに当たり、当面の財政金融政策の基本的な考え方について所信を申し述べますとともに、補正予算の大綱を御説明いたしたいと存じます。  戦後四十年余り我が国国際環境に恵まれる中で、国民の勤勉と創意により、今や世界経済の約一割を占めるまで成長を遂げ、国民生活もまた向上いたしました。こうした中で、我が国は、国際社会からその国力にふさわしい貢献を求められるようになっております。  私は先般、IMF世銀総会等一連会議に出席し、各国大蔵大臣及び中央銀行総裁意見交換を行ってまいりましたが、どの会議におきましても諸外国の我が国に対する強い関心と期待が表明されました。  石油価格金利低下等により、世界経済は全体としては好影響を受けるものと見られますが、他方米国財政赤字各国の大幅な対外均衡、依然として厳しい西欧諸国雇用情勢等課題を抱えており、それらを背景として、欧米諸国中心保護主義の高まりが懸念されております。  こうした中で、我が国は大幅な経常収支黒字を続けておりますが、このような対外均衡是正について、各国に対しその改善努力を求めると同時に、我が国としても国際的な地位に応じた責務を自覚し、調和ある対外経済関係を形成するため、市場開放内需拡大経済構造調整等に努めていく必要があります。  昨年来のドル高修正は、やがて大幅な対外均衡是正に寄与していくと期待されます。しかしながら、当面、我が国経済を見ますと、円レートの急速な上昇の中で、製造業中心企業業況判断には停滞感が広がっております。また、雇用情勢も弱含みで推移しております。  このような今日の経済情勢の中で、政府は、円レートの動向とその国内経済に及ぼす影響に周到な注意を払いつつ、適切な経済運営に努めてまいりましたが、とりわけ内需中心とした景気の着実な拡大を図り、雇用の安定を確保することが緊要の課題となってきております。  他方高齢化進展等今後の社会経済情勢変化に弾力的に対応し、我が国経済社会活力を今後においても維持していくため、財政対応力の回復を図る重要性はますます高まっております。  昭和六十一年度末の公債残高は百四十兆円を超え、国債費歳出予算の二割を占めるなど、国の財政事情は極めて厳しく、引き続き財政改革を強力に推進することは喫緊の国民的課題であります。  行財政改革を進めていくに当たっては、種々の困難が伴うものと思われますが、それに憶することなく、さらに一層の努力を払い着実にその歩を進めていく所存であります。昭和六十二年度予算編成に当たりましても、制度の徹底的な見直し優先順位の厳しい選択を行い、一層の経費節減合理化に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。  以上申し上げましたような状況を踏まえ、政府は、行財政改革路線を堅持するという基本方針のもとで、内外経済情勢に適切に対処するため最大限努力を行うこととし、去る九月、事業規模約三兆六千億円に及ぶ総合経済対策を決定いたしました。  本対策においては、まず、事業費三兆円の公共投資等追加を行うこととしております。  具体的には、公共事業で一兆四千億円の追加を行うこととし、災害復旧事業五千五百億円、一般公共事業八千五百億円を確保するほか、日本道路公団等事業費一千億円、地方単独事業追加要請八千億円、住宅金融公庫の融資制度拡充等による事業規模追加七千億円を確保することとしております。  また、都市再開発、公共的施設整備等民間活力の一層の活用を図るため、規制緩和、インセンティブの付与等をさらに進めます。  さらに、産業構造国際化の流れの中で、円高などの厳しい環境変化に直面している中小企業等がこれに積極的に対応し得るよう、これまでの対策拡充に加え、地域中小企業に対する総合的な支援策を講じてまいります。  その他、雇用対策円高等による差益還元等対策に盛り込んでおります。  政府は、今回の総合経済対策の着実な実行を図ることにより内外要請にこたえていきたいと考えておりますが、ここに本対策施策実現をも図るため、昭和六十一年度補正予算国会に提出いたしました。  税制につきましては、税制調査会において、昨年九月以来の一年余にわたる精力的な御審議を経て、去る十月二十八日、「税制抜本的見直しについての答申」が取りまとめられたところであります。  答申におきましては、中堅サラリーマン負担軽減中心とした所得課税軽減合理化法人課税見直しについて検討の具体的方向が明らかにされる一方、間接税資産税、あるいは利子配当課税等のあり方について基本的な考え方が示されるなど、税制全般にわたる包括的、一体的指針が示されております。  税制は国、地方を通じ財政根幹をなすものであり、また国民生活と密接に関連するものであります。この際、現行税制のゆがみ、ひずみ、重圧感を除去し、国民理解信頼に裏づけられた税制を確立し、安定的な歳入構造を確保することは、ぜひともなし遂げなければならない重要な課題であると考えます。  政府といたしましては、答申において示された基本的方向に沿って抜本的な税制改革案をできるだけ早期に一体的に取りまとめ、国会の御審議を経て、その実現を図るべく、かたい決意で取り組んでまいる所存であります。  経済全般にわたる国際化進展等対応して、金融自由化及び円の国際化を進めていくことは、我が国経済効率化発展に資するものであると同時に、我が国世界経済発展に貢献していく上で有意義なものであると考えております。このため、スケジュールを示しつつ、金利自由化短期金融市場整備資本市場国際化ユーロ円市場発展のための措置等を逐次実施してまいりました。  現在、十一月の証券投資顧問業法の施行、十二月のオフショア市場の発足に向けて準備を進めているところであります。さらに、来年春までに一億円以上の大口定期預金金利自由化及びMMCの条件緩和を行うこととするなど、今後とも、適切な環境整備を図りつつ、金融自由化及び円の国際化を積極的に進めてまいりたいと考えております。  次に、今国会に提出いたしました昭和六十一年度補正予算大要について御説明申し上げます。  さきに御説明いたしました総合経済対策実施するため、公共事業関係費追加として、災害復旧等事業費四千百六十億円のほか、臨時緊急の措置として一般公共事業関係費一千三百三十億円を計上するとともに、一般公共事業に係る所要国庫債務負担行為追加を行い、事業費一兆四千億円を確保することとし、また、民間活力活用推進対策費及び中小企業等特別対策費として二百八十五億円を計上することといたしております。そのほか、給与改善費北洋漁業救済対策費義務的経費追加国民健康保険特別交付金等、当初予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となったやむを得ない事項について措置を講ずることといたしております。  他方歳入面におきましては、税収につきまして、最近までの収入実績等を勘案すると、一兆一千二百億円の減収が避けられない見通しとなり、また、税外収入も一千三百三十三億円の減収が見込まれることとなりました。  このような状況におきまして、行財政改革路線を堅持するため、特例公債増発を回避するよう歳入歳出両面にわたり最大限努力を払ったところであります。  まず、可能な限り既定経費節減に努めるとともに、予備費の減額を行い、さらに、国債整理基金状況にかんがみ、普通国債償還財源予算繰り入れ四千百億円を行わないこととするほか、所得税及び法人税収入見込み額が減少することに伴い地方交付税交付金を四千五百二億円減額することといたしました。しかし、なお財源が不足することから、前年度の決算上の純剰余金四千四百五億円について、臨時異例措置ではありますが、特例公債増発を回避するためやむを得ずその全額を不足財源に充当するとともに、公共事業追加相当額については建設公債五千四百九十億円を発行することといたしました。なお、この剩余金の措置につきましては、別途昭和六十年度歳入歳出決算上の剰余金の処理の特例に関する法律案を提出し、御審議をお願いすることといたしております。  これらの結果、昭和六十一年度一般会計補正予算総額は、歳入歳出とも当初予算に対し二千六百三十八億円減少して、五十三兆八千二百四十八億円となっております。  地方財政につきましては、一般会計からの地方交付税交付金が四千五百二億円減額されますが、地方団体の円滑な財政運営を確保するため、交付税及び譲与税配付金特別会計において資金運用部から同額の借り入れを行うことにより、当初予算額どおり地方交付税総額を確保することといたしております。  以上の一般会計予算補正等関連して、特別会計予算及び政府関係機関予算につきましても、所要補正を行うことといたしております。  財政投融資計画につきましては、総合経済対策を推進するため、既に弾力条項を発動して、日本道路公団等事業費追加に要する資金につき機動的に対処してまいりましたが、今回の予算補正においても、空港整備特別会計等について、所要追加を行うことといたしております。  以上、昭和六十一年度の補正予算大要を御説明申し上げました。何とぞ御審議の上御賛同くださいますようお願い申し上げます。  なお、既に国会に提出しております国鉄改革関連法案及び老人保健法改正法案につきましては、いずれも予算編成と極めて密接な関連を持つ重要な法案でございますので、速やかに成立いたしますようお願いを申し上げます。  今や、国際社会における我が国役割が高まる中で、財政状況は厳しく、我が国経済内外とも難しい局面を迎えております。来るべき新たな世紀に向け、これらの諸課題を解決するため国民各位の一層の御理解と御協力をお願いいたします。(拍手)      ────◇─────  国務大臣演説に対する質疑
  5. 原健三郎

    議長原健三郎君) これより国務大臣演説に対する質疑に入ります。川崎寛治君。     〔川崎寛治登壇
  6. 川崎寛治

    川崎寛治君 私は、日本社会党護憲共同を代表して、ただいまの宮澤大蔵大臣財政演説に対し、中曽根首相初め関係閣僚質問いたします。  今日の急激な円高不況は、決して経済の自然な摂理で起こった現象ではありません。日米間の貿易均衡是正するという名目で、人為的に誘導されたものであります。日本政府円高誘導を受け入れることで不況を招来し、輸出企業に大打撃を与え、新日鉄や川崎製鉄なども一時休業に追い込まれたのでありますから、まさに円高不況は人災と言わざるを得ないのであります。  昨年のG5当時、竹下大蔵大臣とともに交渉に当たった大蔵省の大場財務官は、為替調整目標は一ドル二百円だったと言っております。しかし、二百円を超す段階においても、中曽根首相竹下大蔵大臣澄田日銀総裁らは円高を歓迎し、適時適切な対策を立てなかった責任は極めて大きいと言わざるを得ないのであります。(拍手中曽根首相の楽観的な円高景気のシナリオは、どこに消え去ったのでありましょうか。ただロンさんについていけばよいというお考えだったのでしょうか。明快なお答えをいただきたいのであります。大蔵大臣にも答弁を求めます。  当然、アメリカ側貿易赤字財政赤字を減らす約束であったはずですが、減るどころか、一九八六年度の財政赤字史上最高の二千二百億ドルを超してしまいました。先般の宮澤ベーカー会談一連国際会議でどのように話し合われたかを明らかにしていただきたいのであります。つい先般の衆参予算委員会においては、澄田、三重野の日銀正副総裁は、金余り現象の今日、公定歩合を動かすべきではないと答弁したのでありますが、あすから公定歩合を下げることになりました。今日、金融緩和による景気対策には限界があると思うのでありますが、大蔵大臣はいかがお考えになりますか。  財政演説では、緊急避難宮澤色として強調しておられますが、この補正予算案では、年内執行にも限界があり、大きな波及効果は期待できないのであります。近藤経企庁長官は、去る二十三日の衆議院物価対策特別委員会で二・七%成長と述べ、また、民間機関見通しも、総合対策を織り込んでなおかつ二・五%前後の見通しであります。宮澤大蔵大臣は九月のIMF世銀総会で四%成長を公約しましたが、その達成はますます困難な情勢であります。あなたが述べておられる円高不況対策のための十八カ月予算の構想を明らかにしていただきたいのであります。  完全失業者百七十万は、日本の歴史上初めてのことであります。急激な円高生産活動が落ち込み、求人の減少、失業者の増加が見られ、輸出比率の高い産地や石炭鉄鋼、造船、非鉄金属、海運などの構造不況業種中心に、雇用情勢の悪化は深刻になっております。北海道室蘭等においては求人倍率〇・一という状況であります。地域的には北海道、東北、九州の落ち込みが激しいのであります。中曽根内閣の抜本的な雇用失業対策を求めますとともに、補正予算執行に当たっては、これらの特定地域産業に対する施策を重点的に行うよう総理大蔵大臣に強く要望いたします。  総理は、海外直接投資を促進してまいりました。ハイテク産業海外進出に伴い部品工場も進出しますが、生産性の高い中小企業が進出し、二次、三次の残らざるを得なかった下請零細企業は廃業に追い込まれております。アメリカ同様、産業空洞化はゆゆしき問題となってまいっておりますが、中曽根首相見解を伺いたいのであります。  円高不況による倒産、失業の増大を防ぐためには、内需拡大を目指す積極的な経済政策が不可欠であります。特に重要なのは財政面積極政策ですが、今回の補正予算案のような緊急避難的な一時しのぎの対応では効果に疑問があり、将来に禍根を残すことは火を見るよりも明らかであります。一〇〇%実現不可能な六十五年度赤字公債発行ゼロのにしきの御旗、いや、今ではぼろぼろのござののぼりに縛られて、財政は機能を失い、経済はゆがめられております。この機会に行政改革財政再建の取り組み方を根本的に再検討し、経済政策の転換を図るべきであります。中曽根首相見解を伺います。  次に、税制改革についてお尋ねをいたします。  当初予算で野党が一致して要求しておりました二兆三千四百億円の所得税減税実施をしておりましたならば、今日のような不況に追い込まれることはなかったでありましょう。減税について与野党の政策担当者努力が続けられておりますが、議会制度信頼根幹の問題であります。中曽根首相は、与党総裁として誠実に実行することを求めます。  政府税調答申大型間接税の導入を提起しております。中曽根首相は、大型間接税は導入しないことを選挙で公約されました。自民党税調審議に入ったようでありますが、どのような結論が出ようが、男子の一言金鉄よりもかたし、あなたは、この本会議場から国民の皆さんに向かって、大型間接税は導入しないことを弁明なしに約束していただきたいのであります。(拍手答申では不公平は解消されませんし、マル優廃止はマイナスが大きいと言わざるを得ません。(発言する者あり)シャウプ税制以来三十五年に一度の大改革と言われております。小倉税制調査会長は「国民政府与党がどういう考え方なのか全くわからない。我々は無視されている。まだ国民の声を十分聞いていないので、選択肢のある成案を一応出した」と記者会見で述べておられます。  政府は、税制改革の具体的な青写真とスケジュールを示すべきであります。その上で、中曽根首相国会を解散をして国民の信を問うべきであります。多数横暴は絶対に許されません。フランス、ドイツ、イギリス等では、付加価値税を導入するのに数十年の歳月をかけているのであります。  今回の補正予算編成に伴って、地方財政は重大な圧迫を受けております。  第一には、総合経済対策三兆六千億円の中でその二割は地方単独事業として押しつけられていますが、地方財政の実態からして消化は無理と思われます。これは年度当初の計画を超えての単独事業であるだけに、別途の対応を具体的に示すべきであります。  第二には、地方交付税が四千五百二億円減額され、その穴埋めに交付税特会借り入れをすることになりました。交付税特会借り入れは五十七年以降やらないことになっております。今回申し合わせを破ったのはなぜか、異例措置はやるべきでないことを強く要求いたします。  第三には、今年度当初予算で、地方団体への補助金負担金一兆一千七百億円のカットに際し、三年間の暫定措置として、この間は国、地方財政上の重要な変更は行わない旨の大蔵、自治両大臣覚書が交わされております。しかるに……
  7. 原健三郎

    議長原健三郎君) 川崎君、不規則発言に対して発言をしないでください。
  8. 川崎寛治

    川崎寛治君(続) 義務教育費国庫負担からの一千億円カットについて、財政当局動きが報道されておりますが、極めて遺憾なことであります。覚書はあくまでも守り通すべきであります。
  9. 原健三郎

    議長原健三郎君) 静粛に願います。
  10. 川崎寛治

    川崎寛治君(続) あいまいさを残さないよう、この際明確にしていただきたいと思います。  中曽根首相は、四月のレーガン大統領との会談において日本輸入大国になることを約束しました。また、衆参同日選挙自民党が三百七議席を確保してからは、何でも通るはずだとアメリカの諸要求が途端に強まりました。特に農産物において顕著であります。全米精米業者協会日本米市場開放要求については、ヤイター米通商代表ガット提訴を却下したものの、来春から始まるガットにおける新ラウンドでの交渉議題にすることを明らかにしております。  米は食糧管理法に基づく国家貿易品目としてガットでも認められております。なお、アメリカ自身対ソ輸出の小麦には補助金を出しておるのであります。また、農産物制限十二品目はそれぞれ日本地域農業の柱でありますが、ガットにおけるパネル交渉に入ることになりました。さらに牛肉、オレンジの輸入枠問題は、来年春期限が参ります。農産物など第一次産品価格工業製品価格との乖離は、世界経済の上でも、また国内においても極めて深刻な問題であります。それだけに、食糧安全保障体制の確立は緊急の課題であります。加藤農林水産大臣から、それぞれについての基本方針を明確にしていただきたいと思います。  最後に、南北問題についてお尋ねします。  日本世界最大債権国になり、日米貿易摩擦解消は深刻な問題でありますが、内需拡大だけでは大幅黒字解消は困難であります。日本貿易黒字をいかに世界経済発展に役立たせるかは長期課題であります。今日、中曽根内閣にはその国家目標が極めて不明確であります。それどころか、中曽根首相知的水準発言や藤尾、亀井らの諸君の大国主義的発言は、世界、特にアジアの諸国民に大きな日本への不信を抱かせております。今、南北間の格差はますます広がっております。それだけに、日本は南北問題にもっと真剣に取り組むべきであります。本日は時間がありませんので私の考えを述べる時間はありませんが、中曽根首相基本的姿勢を伺いたいのであります。  十一月八日、あなたは訪中されます。日中経済協力は南北問題の大きな柱でもあります。新しいアジア太平洋時代を迎えつつあります。中国に対し長期展望に立った資本と技術の提供を行い、日中経済協力を強化すべきだと私は考えます。総理見解を伺って、質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣中曽根康弘登壇
  11. 中曽根康弘

    内閣総理大臣中曽根康弘君) 川崎議員の御質問お答えをいたします。  まず円高の問題でございますが、昨年九月のG5以降ドル高是正進展をいたしまして、これが一面においては米国内の保護主義動きを鎮静させる役割を果たしております。が、一面におきましては、為替相場動き余りにもちょっと急激でありました。そういう意味におきまして、いわゆる円高不況あるいは景気停滞感というものが輸出産業中心に出てきていることは事実でございまして、政府は、それらの情勢にかんがみまして総合経済対策を策定し、その着実な実施を行わんとして今回の補正予算を提出しておるところでございます。  為替相場変動自体は、自由経済下におきまして、自律的な変動というものを我々は適当なものであり、それが長期的安定に資すると考えておりますが、しかし、余りいわゆる乱高下というようなことが行われるという場合にはやはり適当な調整措置を講ずる必要がある。そういう意味においていわゆるマネージド・フロートシステムと申しますか、管理変動相場制というものが適当であり、今後もそういう考えに立って進めていく考え方でおります。  次に、景気停滞の問題でございますが、我が国景気を見ますと消費個人消費あるいは住宅あるいは非製造業投資、この点はまだかなり底がたいものがありまして、景気を支えている大きな力になっておりますが、やはり急激な円高による輸出関係等から景気停滞感が広がっていることも事実でございます。現在においては内需と外需、製造業と非製造業の間に景気の二面性がかなり強く出てきております。そこで、「昭和六十一年度の経済見通し経済運営基本的態度」、九月十九日の総合経済対策の決定にのっとりまして、調和ある対外経済関係の形成に一面努めると同時に、内需中心とした景気の着実な拡大を図り、雇用の安定を確保することが肝要であると思ってこの政策を推進しているところでございます。この対策実効あらしむるためにも補正予算早期成立を期するとともに、その対策を着実に前進せしめていきたいと考えておるところでございます。  次に、四%成長の問題でございますが、六十一年度の成長率見通しにつきましては、まだ第一・四半期の実績が出たのみでありまして、現段階で確たることを申し上げることは困難でございます。いずれにせよ、「六十一年度の経済見通し経済運営基本的態度」の考え方にのっとりまして、今後とも内需中心とした景気の着実な拡大を図り、また、いわゆる円高差益還元を徹底いたしまして、そして景気に対する好条件を整えてまいりたいと考えておるわけでございます。そのためにも補正予算早期成立を期するとともに、今回御提案申し上げている法律案等につきましても、できるだけ早期成立を希望してやまないところでございます。  六十五年度特例公債依存体質脱却の問題でございますが、この努力目標達成は容易ならざる課題ではありますが、ぜひともこれはなし遂げなければならないと考えております。予算編成あるいは国有財産の売却あるいは機動的な金融政策弾力的運営、こういうような諸般の政策を総合させまして実現してまいりたいと考えております。  構造不況失業に対する対策でございますが、石炭鉄鋼非鉄金属等を初めといたしました我が国産業業況、一部のこれらの産業については厳しい状況にありまして、雇用面への影響も我々は看過できないところであります。こういう情勢にかんがみまして今回の政策を決定いたしまして、できる限り四%成長に近づけるべく内需中心にして努力をしておるところでございます。  次に、経済空洞化の問題でございますが、我が国の高い経済力の蓄積を生かしまして、海外直接投資等を通じて国際分業体制の構築を図ることは、国際的に調和のとれた経済構造実現世界経済の活性化と拡大均衡に貢献するものと一面考えております。しかしまた、一面におきましては、内需主導型の経済成長国内的に図りまして、技術開発、情報化の推進等を通じて産業発展基盤を保持すると同時に、新しい産業分野を開拓して雇用機会を創出する、中小企業に対してもこれを徹底して図っていく、そのことが大事であると考えまして、これらにつきましても、いわゆる空洞化現象というものがどういうような日本経済に対する影響を及ぼすか等も十分検討の上、ただいま申し上げましたような政策を強化してまいるつもりでおります。  減税の問題につきましては、いわゆる所得減税政策減税の問題については、去る十月十六日の与野党国対委員長会談における合意を踏まえ、与野党の実務者会談の協議を見守っておるところでございます。  いわゆる新型間接税と公約の問題でございますが、税制調査会は、選挙中の私の発言等を十分念頭に置きつつ、幅広い観点から議論を行い、その報告を取りまとめてきていると思います。どのような形の新しい間接税を選択するかという問題については、私の公約を守り、今後与党ともよく相談をし、世論の動向も見きわめながら検討してまいりたいと考えております。  税制改革の手順につきましては、答申におきましては、現行税制のゆがみ、ひずみ、重圧感を除去して、国民理解信頼に裏づけられた税制の確立を行うという見地からその基本的方向を示したものでありますが、具体的内容については、「国民世論の方向を見極めるべき点もあるところから、ある程度選択の幅をもった形でとりまとめること」と税調の答申でもしておるところであります。政府といたしましても、このような答申の趣旨を踏まえ、国民の選択の方向を十分に酌み取りつつ改革案をまとめて、六十二年度税制改正において国会の御審議を得るように努力してまいりたいと考えております。  アジア・太平洋地域の協力の問題でありますが、大幅な貿易黒字問題への対処は目下の重要な我々の課題であると思っております。そのためにも、市場アクセスの改善内需拡大経済構造調整等に積極的に取り組んでおるところであります。また、開発途上国の経済社会開発への支援を通じ南北問題の解決に資することは、自由世界第二位の経済力を有する我が国の国際的責務であると考えておりまして、特に我々もその一員であるアジア・太平洋地域につきましては、重点地域といたしておりまして、その経済社会開発のために、我が国二国間政府開発援助の約七割をこの地帯に投入しておるわけです。さらに、貿易投資及び技術移転の分野においても、各国のニーズを踏まえまして、今後とも適切な協力を行ってまいりたいと思います。  訪中につきましては、中国の近代化は、中国のみならずアジア、ひいては世界発展にとっても重要なものであると考えております。かかる認識のもとに、従来より経済、技術面での協力を行ってきておりますが、今後とも可能な限りこのような協力を行ってまいりたいと考えております。  残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)    〔国務大臣宮澤喜一登壇
  12. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昨年九月のニューヨークにおけるG5の決定を今日の段階でどう考えておるかというお尋ねでございました。  決定そのものは、御承知のように、殊にアメリカのドルを中心といたしました各国の為替関係が経済の基調、いわゆるファンダメンタルズから非常に外れておる、したがって、そのドルを、高過ぎますドルを調整をしなければならないというのが合意であったわけでございます。その結果として確かに、ドル高の是正はかなり急激に進展をいたしまして、その結果アメリカ国内保護主義動きというのはある程度鎮静することに貢献したであろうと私は思います。ただしかしながら、それがアメリカ貿易収支に余り顕著に今日までのところ影響を及ぼしておらないのも事実でございます。この八月、九月になりましてアメリカ貿易赤字が少しずつ減っておることは確かでございますが、今後これがさらに進みますことを期待をいたしておるわけでございまして、いわゆるJカーブ等がございますゆえか、今日までのところ思ったほど顕著な影響を及ぼしておらないのは事実でございます。  さて、そこで、我が国にとってこれは何であったかというお尋ねでございましたが、自分の国の通貨が価値が上がりますことは、長い目で見れば決して悪いことではございませんし、殊に原料、燃料を輸入しております我が国といたしましては、それが安く入手できるというようなことは、ただいまの卸売物価が一〇%以上下落しておりますことでもおわかりいただけるわけでございますが、ただしかし、我が国の場合にはこの円高余りに大幅に急激に起こりましたために、国民経済がこれに対処することに非常に苦しんでいるということは事実でございます。殊に、製造業中心企業業況判断が非常に停滞感を深くしておりますし、雇用情勢も心配な状況になってまいっております。そのゆえに、このたび総合経済対策を決定し、補正予算の御審議をお願いいたしておりますことは、ただいま総理大臣が述べられたとおりでございます。  次に、この間にあって、私とアメリカのベーカー財務長官がどういう話をしておったかというお尋ねでございました。  最初に九月の初旬、次に九月の下旬から十月にかけまして、最初はサンフランシスコ、次にワシントンで両国間の経済問題、世界経済世界金融等の話をいたしました。そして、協力の方途を相談をいたしたわけでございますが、ちょうどIMF総会の際に行われました七ヵ国蔵相会議の決定が私どもの相談の内容をある程度あらわしておると思います。すなわち、七ヵ国蔵相会議におきまして、各国政策協調によって為替レートの安定に寄与し、レートの大幅な調整なしに各国間の国際的不均衡是正するように努力をしようというのが両者の一つの合意でございます。  次に、日本銀行の公定歩合の引き下げにつきましてお尋ねがございました。  ただいまの段階ではいまだに決定が行われておりませんので、未決定の問題として申し上げざるを得ませんが、先般の総合経済対策におきまして、金融も適切、機動的に運営をするという決定をいたしております。それに基づきまして、日本銀行総裁としては、景気情勢あるいは為替の安定等を頭に置かれてそのような決定をお考えになっていらっしゃるのではないかと想像をいたしております。そうといたしますと、それは総合経済対策の有効な推進に資することであると思っております。  次に、このたびの補正予算との関連で、いわゆる十八カ月予算ということをおまえはどう考えておるかというお尋ねでございました。  ただいまの我が国経済状況はかなり深刻でございますので、一度の補正予算をもってそれが手直しができるというふうには考えておりません。したがいまして、これは一遍の対策で済むとは思っておりませんが、御承知のように、行財政改革路線の中でのことでございますので、おのずから来年度の予算編成にも厳しい態度で臨まなければならない、ただ、その中で公共事業につきましては、何とか事業量、事業費は確保をいたしたい、いろいろ工夫をいたさなければならないと思っておるところでございます。  それから、公共事業の重点配分について御指摘がございまして、それは御指摘のとおりと思います。既に北海道につきましては、重点配分の方針を決定いたしておりますし、東北、九州等の地域につきましても、雇用情勢等を配慮しつつ、主管大臣におかれましてそのような配分作業を行っておられると承知をいたしております。(発言する者あり)北海道は、もちろんそういう方針を既に決定をいたしております。  それから、交付税特別会計の借り入れについて御指摘がございました。  この点は、おっしゃいますように、昭和五十九年度の地方財政対策改革の原則を決めましたときに、新規借入金の措置は原則としてやめるということを実は申し合わせておるわけでございます。そういうところから申しますと、今回借入金をいたすことになりましたのは、いわば緊急避難と申しますか、極めて例外的な措置だと申し上げざるを得ません。どうもまことに遺憾なことでございますが、こういう方法によらざるを得なかったということでございまして、その点は何とぞ御理解をお願いいたしたいと思います。  最後に、事務職員の給与等の問題についてお話がございました。  確かに、三年間の暫定措置として、国、地方間の財政関係は、基本的にこれ以上変更するような措置は講じないということは合意をいたしておるわけでございますけれども、一般的に、行財政改革の中での補助金見直しというものはさらに進めていく必要があるというふうに考えておりまして、御指摘の問題は、これから予算編成をいたします過程を通じまして各省庁ともよく協議をいたし、検討いたしたいと考えております。  以上でございます。(拍手)     〔国務大臣葉梨信行君登壇
  13. 葉梨信行

    国務大臣(葉梨信行君) 地方単独事業費につきましてお答え申し上げます。  今回の総合経済対策におきまして、公共事業追加等とあわせて地方単独事業追加八千億円を地方団体要請することとしたところでございます。追加事業費につきましては、地方団体の意向をもある程度把握した上で見込みを立てたものでございますので、総合経済対策の趣旨に沿って各地方団体で積極的な対応をしていただければ、八千億円程度の追加補正は可能であると考えているところでございます。  次に、交付税特別会計の借入金についてお答え申し上げます。  ただいま大蔵大臣からも御答弁ございましたが、昭和六十一年度におきましては、円高の急速な進展等により、年度中途におきまして所得税及び法人税について一兆四千億円以上もの大幅な減収が見込まれるという予期しない状況となりまして、地方財政の円滑な運営を確保するためには、五十九年度の見直しに対します例外的ないし緊急避難措置としまして、交付税特別会計の借入金により所要交付税総額を確保せざるを得なかったものでございまして、御理解願いたいと存ずる次第でございます。なお、今回の借入金の利子につきましては、全額国が負担するところといたしまして、後年度の地方財政への影響につきましても配慮しているところでございます。  義務教育費国庫負担金に係る御質問についてお答え申し上げます。  義務教育費国庫負担制度は、義務教育の妥当な規模と内容とを保障するために、教職員給与費等につきまして、都道府県の支出額の二分の一を国が負担することとされているものでありまして、教育の機会均等と水準の維持のため、現行の負担制度は今後とも堅持されるべきものと考えているところでございます。(拍手)     〔国務大臣加藤六月君登壇
  14. 加藤六月

    国務大臣(加藤六月君) 米、農産物十二品目、牛肉についてのお答えでございます。  まず、米でありますが、我が国の米の貿易制度は、ガット上容認された国家貿易制度であります。ガット新ラウンドの交渉の具体的内容等につきましては、今後多数国間で決定していく問題であります。我が国といたしましては、米は日本農業の根幹をなす最も重要な農産物であることから、今後とも米の国内自給という基本方針のもとに、米国側の理解をさらに深めるよう全力を傾注するとともに、今後の対処について誤りなきを期してまいる所存であります。(拍手)  次に、農産物十二品目につきましては、去る十月二十七日のガット理事会において米国からパネル設置の要請が行われ、最終的にパネル設置を受け入れることとした次第であります。今後のパネルでの審査におきましては、できる限り現実的かつ公平な解決策が導かれるよう努めてまいる所存であります。また、今後においても二国間協調を通じた解決の道が閉ざされるものではありません。パネルと並行して、二国間協議による現実的な解決を目指して、最大限努力を行ってまいりたいと考えております。  三番目の牛肉につきましては、一昨年四月の決着以降、平穏裏に合意を実施中であります。一九八八年度以降の取り扱いにつきましては、一九八七年度、来年度の都合のよい時期に協議をする予定となっております。牛肉は我が国農業の基幹的作目であることから、その実情等について十分説明し、米国側の理解を求めていく考えであります。(拍手)     ─────────────
  15. 原健三郎

    議長原健三郎君) 草野威君。     〔草野威君登壇
  16. 草野威

    ○草野威君 私は、公明党・国民会議を代表して、昭和六十一年度補正予算案中心に、政府経済財政運営について、総理並びに関係大臣質問を行うものであります。  我が国経済は、今、国内的にも対外的にも内需拡大が至上課題となっております。すなわち、対外経済摩擦の拡大が懸念され、また、国内的には著しい円高影響産業全般へ広がり、円高不況の様相が強くなっております。中小企業円高倒産は増加の一途をたどり、失業率も次第に上昇しつつあるのが実情であります。  我々は、本年の通常国会以来、再三にわたって景気の後退を指摘し、円高不況を防ぎ、経済摩擦の緩和を図るために、内需拡大を柱とした景気対策政府に迫ってまいりました。しかし総理は、景気後退の実態を認めず、円高メリットを強調するのみで、事態をますます悪化させてしまったのであります。今回の補正予算によって法人税収を中心に一兆七千億円もの税収の減額修正を余儀なくされたのも、政府が実効ある内需拡大策を怠った結果にほかならないのであります。  まず私は、総理に、円高影響を軽視し、景気対策をここまでおくらせ、円高不況を深刻化させた責任をどのように認識されているのか、お伺いをするものであります。(拍手我が国が国の内外から強く要請されている内需拡大に取り組むためには、言うまでもなく、今回の補正予算がかつてないほど重い役割を担っております。ところが、その内容については多くの問題点を指摘せざるを得ないのであります。  最初に、共産党を除く与野党間で合意されている所得税減税及び政策減税が今回の補正予算案に盛り込まれていないことについて、政府自民党に強く抗議をするものであります。議会政治のもとにあっては、公党間の約束は極めて重く、これを踏みにじることは絶対に許されるものではないのであります。現在、なお与野党間で年内実施に向けて努力が行われておりますが、所得税減税及び政策減税実施は、国民生活を守り、さらには内需拡大を図る上からも必要不可欠であると言わなければなりません。自民党総裁でもある総理は、所得税及び政策減税の年内実施に関する与野党合意の重みをどのように受けとめておられるのか、さらに、自民党総裁として、この与野党合意を守るためどのような努力をなされようとしているのか、しかとお答えをいただきたいのであります。  さて、今回の補正予算は、去る九月十九日に発表された総合経済対策の具体化であります。私は、今回の補正予算の中身を見て、改めて今回の景気対策効果に疑問を持つものであります。  景気浮揚を図る上で重要な一般公共事業関係費追加は、本補正予算案ではわずかに一千三百三十億円にとどめられ、一般公共事業の大半は六十二年度予算の先食いである国庫債務負担行為とされているのであります。財政投融資や地方単独事業追加を織り込んではいるものの、この程度の一般公共事業追加では景気浮揚効果はほとんどないと言わざるを得ないのであります。民間金融機関等では、今回の補正予算による実質GNPの押し上げ効果はわずかに〇・四%にすぎないと試算し、本年度の実質経済成長率は二%台と予測しているほどであります。総理に対し、今回の補正予算案による経済効果は、本年度中に実質GNPにどの程度なのか、さらに、本年度の実質成長率の当初見通し四%が達成できるのかどうか、明確な答弁を求めるものであります。  現在、我が国は、欧米先進国から見て著しく社会資本整備がおくれていることは御存じのとおりであります。私は、長期的展望に立って、特に住宅、住環境の整備に積極的に取り組むべきであり、この方向に沿って、本補正予算案においても、建設国債を財源として大幅に社会資本整備のための一般公共事業費を追加すべきであると思うのであります。高齢化社会への移行を間近に控えて、現在の高い貯蓄率を活用して将来に備えることは、整備がおくれればおくれるほど財政負担がかさむことを考えると、決して財政再建に逆行するものではないはずであります。こうした考え方について総理見解をお尋ねするものであります。  さらに、今回の補正予算における一般公共事業費の追加は、景気浮揚のための臨時異例措置であるという政府の姿勢は納得できないのであります。政府の消極的な経済財政運営が著しい円高不況を招き、対外経済摩擦の引き金となったことは明らかであり、この反省の上に立って、この際、思い切った積極財政に転換すべきであります。この意味で、少なくとも補正予算で六十一年度予算規模を減額するようなことは避け、建設国債を財源一般公共事業費をさらに上積みし、政策の転換を明確にする必要があるのであります。そして、六十二年度予算へと連動させていくことが内需拡大のためのあるべき政策運営の姿勢であります。総理に対し、積極財政への転換の姿勢を明確にするよう要求するものであります。あわせて、六十二年度の予算編成方針において思い切った景気対策をとる用意があるかどうか、お尋ねをするものであります。  関連して、現在大きな問題になっている地価の高騰は、公共事業を遂行する上で障害となっているのであります。総理は、この問題にどのような具体策を持って対処されようとしているのか、お伺いをするものであります。  私は、特に、国土利用計画法を改正し、市街化区域における土地取引の届け出面積の引き下げや、国公有地についても国土利用計画法の適用とすべきであると考えるものであります。その用意があるかどうか、答弁をいただきたいのであります。  次に、私は、積極的な内需拡大策の実施とあわせ、円高不況によって苦境に立たされている中小企業や、雇用不安に対する強力な対策を求めるものであります。(拍手)  今回の補正予算では、不況地域の中小企業対策や信用補完制度の充実が図られておりますが、中小企業の多くがこれから年末にかけてさらに厳しい状況に追い込まれることは必至であり、まだまだ十分な内容と言えるものではありません。中小企業円高不況から守るためには、既往債務の一層の金利の引き下げ、下請代金支払遅延等防止法の運用強化、中小企業向け官公需の拡大等を図るべきであります。総理見解を伺うものであります。(拍手)  また、失業雇用対策では、特に中高年齢者に対するきめ細かな配慮が必要であります。総理は、失業雇用対策にどのように取り組まれようとされているのか、具体策をお示しいただきたいのであります。  この際、今回の補正予算によって十二月一日に施行を予定している老人保健法改正案についてお伺いをいたします。  老人保健法制定以来、三年が経過しようとしておりますが、健康の増進、疾病の予防という同法の目的は十分に成果を上げているとはいえない実情であります。この段階で、老人医療費の一部負担を大幅に引き上げ、また、国保財政の赤字を他の保険者にしわ寄せしようとすることは、到底納得できるものではありません。(拍手)まず、健診事業、健康相談事業等の充実を図るべきであり、私は、老人保健法改正案は撤回するよう要求するものでありますが、総理のお考えをお尋ねするものであります。(拍手)  さて、さきに発表された税制の抜本改革についての政府税調の最終答申は、国民のための税制改革というにはほど遠く、さまざまな問題を含んでおります。具体的な議論はこれからの予算委員会等で行うとして、まず、総理に基本的な問題について、幾つか御所見を伺うものであります。  総理は、まず減税から出発し、それに見合う財源は何かという段取りで進めてほしいと自民党税調要請し、減税先行の税制改革を意図されておられますが、本来的な税制改革は、まず財源を明らかにし、その規模に見合った減税を行うのが筋ではないでしょうか。減税を先行させて、後から財源を探す方法は、国民に選択の幅を与えず、マル優廃止大型間接税導入しか財源考えられないとして、増税を国民に押しつけるものにほかなりません。減税先行論に対する総理の基本的な考え方を伺うものであります。  次に、問題なのは、政府税調日本付加価値税など新型間接税の導入を提起している点であります。総理は、さきの同日選挙の際、国民自民党員が反対する大型間接税と称するものは導入しない、仮にそういう答申が出たとしても採用はしないと公約として確認をされました。新型間接税は、いずれも課税ベースが広く、最終的に消費者に転嫁されるものであり、大型間接税と言わざるを得ません。特に、日本付加価値税は一般消費税と同じものであり、国会決議にも反するものであります。政府税調答申した新型間接税について、採用はしないと公約どおり明言されるのか否か、総理にしかと伺いたいのであります。(拍手)  さらに、答申では老人、母子家庭を除いて非課税貯蓄制度の全面見直しを提言しています。しかし、非課税貯蓄制度は、老後、病気の備えや住宅費、教育費に充てるために、国民の生活防衛の手段として既に定着している制度であります。不正利用者をなくすために同制度を廃止するやり方は短絡的であり、断じて容認できません。限度額管理の徹底によって現行の非課税貯蓄制度は存続すべきであると考えますが、総理見解を伺うものであります。  また、これから高齢化社会を迎えるに当たり、ますます重要となる年金に対して課税を強化するという考え方は、時代の流れに逆行するものと言わざるを得ません。総理の御見解を伺いたいのであります。  以上、重点項目に絞って質問をいたしましたが、総理並びに関係大臣の明確なる答弁を要求し、質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣中曽根康弘登壇
  17. 中曽根康弘

    内閣総理大臣中曽根康弘君) 草野議員お答えをいたします。  まず、円高不況の原因でございますが、最近の景気状況を見ますと、内需と外需、製造業と非製造業の間に景気の二面性が出てまいっております。この原因はどういうところにあるかと言いますれば、基本的には、日本の輸出が膨大に上りまして、黒字の数字もかなり世界的に見ても大きなものになってまいりました。そういうような輸出超過というものが経済の基本条件にありまして、円が強くなってきたということであります。昨年の九月二十二日のG5によりまして、アメリカのドルが余りにも高過ぎる、そういう点で世界的な調整が行われまして、マルクあるいは円が経済の基礎条件に合うような方向で再調整を行ったところでございます。  しかし、やはり為替相場という問題は自律的に流動していくべきものでありまして、その流動の結果、今日のような事態になったわけでございますが、我々に言わしめれば、余りにも急激に、しかも変動の幅が大き過ぎたという感を禁じ得なかったところでございます。そういう意味におきまして、経済の基礎条件を反映する適正な安定帯、安定相場というものに移行するように念願しておりました。そういうような考えに立ちまして、関係各方面とも協議もし努力もしてきておるというのが現状でありますが、先ほど申し上げましたように管理されたフロートシステム、そういうようなシステムでいくことがやはり賢明であり、長期的には経済の基礎条件に合致する方向で動いていくものと確信しておる次第でございます。  次に、減税実施の問題でございますが、十月十六日の与野党国対委員長会談における合意を踏まえまして、実務者会談が行われておりますが、この会談の推移を自民党総裁としても注意深く見守り、その結果は守ってまいりたいと考えておるところでございます。  次に、補正予算による経済効果でございますが、今回は、景気の着実な拡大を図り、そのためにも、公共投資拡大等を中心とする総合経済対策を決定して、事業規模三兆六千億に上る補正予算を決定いたしました。これによりまして相当量の事業量も出てまいりまして、景気を支え、拡大させていく機能を果たすものであると考えております。そのためにも、補正予算早期成立を念願してやまないところであります。  四%成長の問題でございますが、六十一年度の成長率については、まだ第一・四半期の実績が出たのみでありまして、現段階で確たることを申し上げることは極めて困難でございます。いずれにせよ、この補正予算実施し、そのほかの金融政策を弾力的に運用する等も加えまして、四%にできる限り近づけるべく努力をし、四%の旗はおろさない考えでおります。  次に、一般公共事業追加の問題でございますが、今回の補正予算におきましては、六十一年度歳出千三百三十億円を追加するということによりまして、公共事業等についても配慮を示したところであり、事業費八千五百億円を確保し、災害復旧まで入れますと一兆四千億円を確保しておるところであり、これらの着実な実施によりまして景気を支え、拡大していくつもりでございます。  積極財政への転換の御質問でございますが、やはり臨調路線を誠実に守ることは当面必要であると思っております。しかし、行革審の答申におきましても、臨時緊急の措置はこれを認めておるところでございまして、今後の予算編成等も通じまして景気の実態をよく見詰めつつ、着実な予算編成実現してまいりたいと考えております。いずれにせよ、六十二年度の予算編成は今後行うべきことでございますが、事業量というものにつきましてはある程度確保しなければならない、こう考えております。  地価対策でございますが、全国的には安定しております。しかし、東京都心部等で著しく上昇しているところがあります。それらにつきましては目下検討しておるところでございますが、やはり土地の供給促進を促すこと、土地取引の条件規制を強化すること等々を検討する必要があると考えております。国土利用計画法の改正についてはいろいろ問題もありまして、なお関係各省庁で検討しておる最中でございます。  既往債務の金利の引き下げの問題については、本年六月、円高内外経済事情の急激な変化によって影響を受けている中小企業者に対して、政府中小企業金融機関からの既往借入金の返済負担を軽減するため、元利返済資金の融資等に係る新たな制度を創設したところであります。去る九月の総合経済対策において、本制度の趣旨の徹底等を含む融資弾力化対策を決定いたしました。今後とも本制度の着実な実施を図って、中小企業金融の円滑化に努めるところであります。  下請取引、官公需の問題につきましては、親企業によりまして下請中小企業に対する円高影響等が不当に転嫁されないように、下請代金支払遅延等防止法の厳正な運用を図るとともに、親企業に対する指導を強化してまいりたいと思います。中小企業に対する官公需の確保については、去る七月に、官公需の契約の目標を過去最高の三九・八%としたところでありまして、鋭意これが実施について努力しておるところであります。今後とも努力してまいるつもりであります。  雇用対策につきましては、最近の景気動向、産業動向にかんがみまして、私らも心配をしておるところでございます。一週間前に労働大臣を呼びまして、各方面にどの程度の、また各地域別にどの程度の雇用問題が発生するか至急検討し、それに対する対策をあらかじめ講じておくように指示しておきました。昨日、通産大臣と労働大臣の間におきまして、ハイレベルにおけるこの雇用対策に対する協議機関をつくったところでございます。政府全体といたしましても、今後懸命に努力してまいるつもりでおります。  老人保健法の問題につきましては、老人保健制度の中の保健事業については、健康手帳とかあるいは健康教育とか健康相談とか健康診断とか機能訓練とか、さまざまなことも行っておるところであり、今後とも努力してまいりたいと思っておるところであります。昭和六十二年度を初年度とする第二次五ヵ年計画を策定して、一層の推進を図ります。また、老人保健制度の改正は、人口の高齢化が急速に進む中で、長寿社会にふさわしい高齢者の保健医療制度を確立するためにぜひ必要なものでありまして、撤回する考えはありません。  次に、減税先行論の問題でございますが、今回の税調答申では、昨年九月の私の諮問にこたえまして答申をいただいたわけであります。政府としては、この答申の趣旨を踏まえて、国民の選択の方向を十分酌み取り、政府与党相談をして適切に対処していくつもりでありますが、いわゆる税収中立性の原則というものは、これは維持していく必要があると考えております。  新型間接税については、私が選挙中申し上げた公約はこれを守る、そういう考えに立ちまして、党においていろいろ検討していただくというところでございます。  次に、非課税貯蓄制度見直しの問題等につきましても、多額の利子が課税ベースから外れて、いわゆる所得種類間の税負担の不公平をもたらしている現状にかんがみ、一部、老人、母子家庭等に対してはマル優や郵便貯金の非課税制度を維持しつつ、課税を行う方向で見直すことを先般の政府税調答申してきております。この提言につきましては、慎重に検討してまいりたいと思います。  年金課税の問題につきましては、公的年金を受給する老年者に対して、基本的には、現行程度の控除の水準を維持しつつ、税制度の整備合理化を図ることを提言しておりますが、この答申の趣旨を踏まえまして対処してまいりたいと考えております。  残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)     〔国務大臣宮澤喜一登壇
  18. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ほとんど総理大臣お答えになられましたが、現在のような経済状況の中で最大限努力をいたしましたのがこのたびの補正予算でございます。一般公共事業につきましても八千五百億円、かなりの額を確保いたしたつもりでございますが、それによりまして、お話しのように社会資本の充実、整備にもある程度寄与できると考えておるわけでございます。  そこで、こういう補正予算臨時異例なものだと考え考え方に問題があるという御指摘であったわけでございますが、何分にも財政再建というものが非常に大切な課題で、財政がやはりいろいろな事態に対して弾力性を持つということが大事でございますので、早くそれを回復したいということは大事な課題だと思いますので、その中で最大限何ができるかという努力をいたしておるわけでございます。したがいまして、現在の経済状況は一遍の補正予算で済むとは思っておりませんので、来年度におきましても、公共事業の事業量、事業費の確保には最大限努力をいたさなければならないと思っております。  それからもう一点、総理お答えを補足いたしますと、年金課税でございますが、政府税調答申しておりますのは、現在の控除の水準を下げようと言っておるわけではないように承知をいたしております。基本的にはこれは維持しなければならないが、いわゆる給与所得控除のようなことではなく、新しい負担調整のためにどういう控除を設けたらいいか、だんだん所得の中で年金の占める部分が、老齢化してまいりますと大きくなりますので、そういう事態に備えて本格的な控除の調整を考えたい、こういう趣旨と承知をいたしております。答申に沿いまして、政府としても適切に対処してまいりたいと考えております。  以上でございます。(拍手)     ─────────────
  19. 原健三郎

    議長原健三郎君) 木下敬之助君。     〔議長退席、副議長着席〕     〔木下敬之助君登壇
  20. 木下敬之助

    ○木下敬之助君 私は、民社党・民主連合を代表して、ただいまの大蔵大臣財政演説並びに六十一年度補正予算案に関し、総理並びに関係諸大臣質問いたします。  今、我が国は深刻な円高不況に突入しており、企業倒産の多発、失業率の上昇、地域経済の不振など、国民生活が大きく圧迫されている現状にあります。円高不況を克服することこそ政治に課せられた重大な課題であります。しかるに、中曽根総理は、円高国会を六月二日に召集しながら、当日衆議院解散を強行し、円高不況の深刻化を放置した事は、極めて無責任な政治姿勢と言わざるを得ません。政治空白を招き、政府の無策により円高倒産が増大し、雇用不安が拡大した責任をどのように考えておられるか、お伺いいたします。(拍手)  我が国産業は、昨年九月からの急激かつ大幅な円高により危機的状況にあります。一年間に五割もの急激な調整であり、その調整によって致命的な打撃をこうむった産業に対するきめ細かな対策が皆無であったことは、政策の整合性、適合性に欠けたものと断ぜざるを得ません。政府の出された前川レポートは、単に不況産業の切り捨てを打ち出したものにすぎないのであります。速やかに各産業ごとのビジョンを示すとともに、需要創出策、新技術開発策、事業転換対策等を積極的に推進すべきだと考えますが、通産大臣の御所見をお伺いいたします。  このような異常な円高が継続するならば、我が国産業経済は壊滅的な打撃を受け、企業倒産が多発し、失業者が増大することは避けられません。とりわけ、繊維、造船、海運、鉄鋼、石油化学、石炭、資源等々の主要産業は、構造的要因に加え、今回の円高により存亡の危機に直面しております。例えば、明治以来我が国経済発展を支えてきた鉄鋼産業においても、八三年には六十五基あった高炉を現在五十四基に縮小し、しかも、そのうち十六基が休止中であります。その上、今後まだ数基は休止をせざるを得ない状態にあり、ついに大手五社で約七千人の一時帰休の実施に踏み切るに及んでおります。まさに危機的状況が到来していると言っても過言ではありません。  このように、急激な円高雇用の面にも深刻な影響を与えております。賃金コストの上昇と海外現地生産による資本コストの大幅な低下は、製造業海外直接投資拡大させる結果をもたらしており、当面四百社が新規に進出を計画中で、今後さらに急増の傾向と言われております。このまま推移すれば、我が国において、西暦二〇〇〇年までに約九十七万人の雇用機会が失われるという予測も行われております。第一勧業銀行のレポートによれば、一兆円の海外直接投資により国内では十八万人もの雇用機会が失われると言われております。仮に六十年度の経常海外余剰分の十二兆円がすべて海外生産に向かえば、二百十八万人もの雇用機会がなくなり、失業率が三・七%も上昇するのであります。こうした製造業空洞化雇用への影響政府はどう認識し、どう対応していこうとされておられるのか、御所見をお伺いいたします。  私は、以上のごとく、円高不況に対処するための産業政策雇用対策の必要性、緊急性を指摘してまいりました。しかし、これらの施策の充実を図っても、現在の異常な円高是正されない限り、我が国産業の救済の方途はあり得ません。政府は、昨年の九月、強引過ぎるほどのやり方で円高に誘導したではありませんか。したがって、速やかに対ドル百八十円程度で安定的に推移させるようターゲットを定め、弾力的、機動的に介入を実施することも可能であります。中曽根総理及び大蔵大臣の決断のほどをお伺いいたします。(拍手)  以上申し述べてまいりました深刻な円高不況を克服するには、今回の補正予算は全く力不足と言わざるを得ません。大幅な所得減税を盛り込んでいない、大型の建設国債の発行の見送りなど、内需拡大の重要な柱となるべきものが欠如していることでも明らかであります。政府は、本年度実質四%成長を国内外に公約しておりますが、本年四月から六月期の二・二%の成長率が如実に示しているごとく、四%成長達成はこの程度の補正予算では不可能と言わざるを得ません。総理は、いかなる根拠に基づき今、なお四%成長達成されると確信されておられるのか、具体的にお示しください。  次に、財政再建問題について総理見解をお伺いいたします。  中曽根内閣は、鈴木前内閣の後を受け、その政治目標財政再建に置き、六十五年度に赤字国債発行をゼロにする財政再建に取り組んでこられました。しかし、六十五年度赤字国債脱却は到底不可能と言わざるを得ません。五十九年度の赤字国債の減額目標は一兆円でありましたが、実際は五千二百五十億円にすぎず、同じく六十年度は一兆八千億円の目標に対し七千二百五十億円、六十一年度は一兆一千五百億円に対し四千八百四十億円しか削減できていないのであります。  このことからしても、六十五年度赤字国債脱却は不可能であり、その目標に固執すれば、財政の持つ景気調整機能、資源の再配分機能などを麻痺させ、ひいては国民生活を大きく圧迫することになることは明らかであります。したがって、この際、赤字国債脱却年次については、六十五年度を延期して、財政の機能を生かすべきであり、新しい経済情勢対応し得る総合的長期展望に立った財政再建を行うべきであると考えますが、総理見解をお伺いいたします。(拍手)  次に、税制改革について質問いたします。  去る十月二十八日政府税調より答申が出ましたが、まず第一にお伺いいたしたいことは、政府はこれまで、第二次臨調の答申に沿って「増税なき財政再建」を進めるとしています。その臨調の定義する「増税なき」とは、「全体としての租税負担率の上昇をもたらすような税制上の新たな措置を基本的にはとらない」ということであります。しかしながら、この答申では、基本的理念の中で、「将来の財政上の要請に応じて弾力的な対応も可能になる」と明記されております。この答申は明らかに、臨調がとってはならないとした増税を認めた答申となっています。私は、今回の税制改革においても、当然のことながら、この臨調の掲げる「増税なき財政再建」にのっとって行うべきものであると考えますが、総理の御所見をお伺いいたします。(拍手)  すなわち、「租税負担率の上昇をもたらすような税制上の新たな措置を基本的にはとらない」、この理念のもとに税制改革を進めることを明言していただきたいと思います。また、この際、増税かどうかの判断の基準となります租税負担率のめどとなる数値をどのようにお考えになっておられるか、総理並びに大蔵大臣の御見解をお伺いいたします。  次に、大型間接税について質問いたします。  中曽根総理は、大型間接税は導入しないと公約されているのであります。にもかかわらず、今回の答申大型間接税導入が盛り込まれたことは、明らかなる公約違反であります。私は、大型間接税導入に断固反対いたしますが、総理大型間接税導入を撤回する決意をお持ちか、明快なる御答弁をいただきたいと存じます。  次に、非課税貯蓄制度廃止についてお尋ねいたします。  答申ではマル優廃止が打ち出されましたが、本来、まず限度額管理強化が行われるべきで、即廃止が打ち出されることは納得できないのであります。私は、マル優廃止に強く反対いたしますが、総理マル優廃止を取り消す決意をお持ちか、見解をただしたいのであります。  次に、所得税改正についてお尋ねいたします。  特に生活苦にあえぐ中堅所得者層に重点を置くべきなのに、税調答申案は高額所得者を優遇するものになっていると考えますが、総理はこれを是正する決意をお持ちか、お伺いいたします。また、不公平税制是正については、答申には脱税防止、納税環境の整備、キャピタルゲイン課税強化など、不公平税制是正に必要な措置がとられていないことは極めて遺憾であります。政府の不公平税制是正への取り組みについて、総理の御所見を明らかにしていただきたいのであります。特に、キャピタルゲイン課税、富裕税の創設など、資産課税の強化について総理の取り組みをお伺いいたします。  以上申し上げましたように、今回の税調答申は極めて問題の多い内容となっております。国民の真の期待にこたえられる税制の抜本改革のためには、せっかちに実現を目指すのではなく、十分に国民の声を聞き、与野党の審議を尽くすべきであることを強く申し上げておきます。  最後に、森林・河川緊急整備税(仮称)について質問いたします。  今、森林整備は大きくおくれており、機能の低下した保安林九十万ヘクタール、間伐等手入れの必要な森林五百四十三万ヘクタール、山地災害危険地区十三万一千カ所と、このままでは森林の水源涵養機能が低下し、将来の水供給に対し懸念せざるを得ません。また、林業の現況については、この五年間に木材価格は約三割値下がりし、外材の輸入増、山村の過疎化、労賃の値上がりと極めて厳しい状態にあり、とても間伐ができるような経営状態にありません。  このような中にあって、水源地帯の荒廃、森林を整備する財源として、十年間の時限立法で水源税に相当するものの導入を政府は検討しているようでありますが、林業や森林整備重要性考えれば、当然一般会計により予算を計上すべきものであります。政府のお考えになっている目的税たる水源税を導入すれば、税秩序の乱れを呼び起こすことは必至であります。特に森林の公益性の重大さを考慮すれば、当然補正予算に盛り込むなり、六十二年度一般会計に組み入れるという方向で検討すべき性質のものであって、安易に水資源のための目的税を導入するべきではありません。私は水源税の導入に明確に反対し、総理の御答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣中曽根康弘登壇
  21. 中曽根康弘

    内閣総理大臣中曽根康弘君) 木下議員お答えをいたします。  まず、円高の問題でございますが、この原因はどこにあるかと言われますれば、先ほど来申し上げましたように、日本の膨大な黒字の累積、この経済の強さというものが基礎にありまして、そこに変動相場制を採用しておるものでございますから、昨年のG5以降、円ドルの調整が行われたというところでございます。しかし、今後の問題等につきましても、経済構造調整等も今我々は懸命に努力もいたし、また、膨大な黒字をできるだけ減らすように努力もいたしておりまして、この状況変化に応じて為替相場もまた変わっていくものである、そう考えておりまして、去年来行われましたこの急激な乱高下というものについては、我々はこれに対する適切な調整政策も将来考えていかなければならぬ、そう考えておるところでございます。  次に、空洞化への対応の問題でございますが、海外直接投資の問題については、内需中心とした景気の着実な拡大、これを通じて雇用機会及び景気の着実な伸展というものを拡大してまいりたいと考えております。自由経済下貿易自由化のもとにおきましては、やはり資本あるいは産業等の流動性というものは当然考えられるところでございますが、しかし、これが過度に行われるという場合には、必然的にいわゆる空洞化であるとか雇用問題が出てまいります。そういう点につきましては、深甚の注意を払って対策考えてまいるべきであると考えております。  次に、円レートの問題でございますが、いわゆるターゲットゾーンという考え方につきましては、どの程度に為替相場の水準を決めるかという点にまず問題がありますし、それを維持していくという問題につきましても、現在、膨大な投機筋の資金量が言われておるという状況のもとで、なかなか難しい問題があるわけであります。したがいまして、大事なことは、各国間の政策協調が重要である。そして、乱高下が行われると判断した場合には適切に介入する、こういうことでいくことが適当であると考え、東京サミットにおきましてもその線を確認したところであります。  次に、四%成長の問題でございますが、最近の経済情勢にかんがみまして今回の総合経済対策を行い、約三兆六千億円の補正予算を組ましていただいたわけでございます。これらの仕事によりまして四%にできるだけ近づける努力をいたしておりますし、金融の弾力化というものによりましてもそれを達成するように努力してまいりたいと思っておるところでございます。  六十五年度特例公債依存体質脱却、これはあくまで臨調、臨行審の線に沿いまして努力してまいりたいと思っておるところでございます。  次に、税制改革国民負担率の問題でございます。  今回の税調答申は、財政改革につきまず徹底した経費節減合理化を訴え、次いで税制抜本的見直し答申はうたっておるところで、そして、税収中立性の原則というものは堅持すべきである、こう言っております。私は、臨調答申あるいは行革審の答申を今後も守っていくと申し上げているところでございますが、いわゆる「増税なき財政再建」という考え方も守っていく、そういう考え方に立っており、今やっておる一連の仕事は、やはり臨調答申の中に含まれていることを実行しているというふうに御理解願いたいと思うのでございます。  次に、税調答申間接税との関係でありますが、選挙中の私の発言等も十分念頭に置いて今回の税制調査会答申は行われていると考えております。これを受け取りまして、どのような税制を選択するかということにつきましては、私の公約を守ってもらい、与党ともよく相談をして、世論の動向も見据えながら、いよいよこれから選択し、我々は採択していきたいと考えておるところでございます。  非課税貯蓄制度の問題につきましては、多額の利子が課税ベースから外れて所得種類間の税負担の不公平をもたらしているという現状にかんがみまして、一部、老人、母子家庭等に対してはマル優や郵便貯金の非課税制度を維持しつつ課税を行う、こういう方針で見直すことを今回の税調答申は提言しております。これらにつきましては、慎重に検討してまいりたいと考えております。  森林・河川緊急整備税の問題につきましては、御指摘の点も多々考慮に入れ、また、関係省庁間で調整を今行っている最中でありまして、また、党内のさまざまな御議論もよく見きわめた上で判断をしていきたいと考えております。  残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)     〔国務大臣宮澤喜一登壇
  22. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 為替相場についてターゲットゾーンというようなものを考えておくべきではないかという御指摘でございました。  この点は、もう申し上げるまでもない、御存じのことでございますけれども、そういう考え方はしばしば学者はもとより実務家からも出されておるわけでございますが、現実にどういう水準にそれを設けるかというところで具体的な話が行き詰まる場合が多うございまして、昨年のいわゆるG5のプラザ合意の際にも、ドルが高過ぎる、したがって、これは下げていこうというところまでは明確でございましたけれども、いわゆるターゲットというようなことは結局設けないままで、各国が協調してやってまいったというのが事実でございましたので、結局、帰するところは、どうも現実の問題としては各国がやはり政策協調をして、そうして、為替をなるべく安定をさせるということにどうも帰着するのではないか。  それは、九月の終わりのいわゆる先進七ヵ国の蔵相会議の際に、政策協調によって為替レートの安定に寄与しよう、そうして、為替レートの大きな変動なしに各国間の不均衡を除いていこう、そのための政策協調というような結論になっておりますところからも、それが今といたしましては、現実的なとり得る策ではないかと私は考えますし、我が国もまたそういう努力に参画をいたしておるわけでございます。  それから、租税負担率についてのお尋ねがございました。  租税負担率、社会保障の負担も含めまして、我が国は現在、多分三六ぐらいになっておるかと思います。結局、それがどのぐらいが適正かということは、国にもよりますし、給付いかんにもよることだと私は思いますけれども、我が国の場合、よく言われますことは、欧米のような水準まで行くということは恐らく行き過ぎではないだろうか、それよりかなり低くなければならないのではないかということが、これは政府が正式に申したことはないわけでございますが、しばしば議論になっているように承知をしております。その場合に、一般に欧米の水準と言われておりますのはほぼ五〇ということでございますので、それよりかなり低いことが我が国の場合いいのではないかというふうにしばしば言われておるように存じますが、政府として正式に決定をしたことはないように承知をしております。(拍手)     〔国務大臣田村元君登壇
  23. 田村元

    国務大臣(田村元君) 我が国経済は、円高の急速な進展等によりまして内需と外需、製造業と非製造業、こういうふうに景気の二面性がより明瞭になっております。このような経済情勢にかんがみまして、通産省といたしましても四%成長を目指して総合経済対策の着実な実施に努め、景気の浮揚を図っておるところでございます。  また、今後我が国経済の中長期発展基盤を整備していくためには、第一に、内需中心の高目の経済成長実現に努めますとともに、技術開発施策や情報化施策等の一層の充実強化によって産業の新たな分野、すなわち、俗に言われますニューフロンティアの拡大を図ること。第二に、中小企業施策の充実強化による活力ある中小企業の育成を図ること。第三に、経済環境の変化対応して、主要業種についての将来展望をビジョン等の形で明らかにするとともに、産業構造の転換が円滑に進むための環境整備を図ることが重要と、さように心得ております。(拍手)     〔国務大臣平井卓志君登壇
  24. 平井卓志

    国務大臣(平井卓志君) お答えいたします。  最近の雇用失業情勢は、円高進展等を背景にいたしまして、失業者が増加するなど悪化の傾向が見られております。今後、特に輸出関連産地や造船等不況業種を中心雇用情勢は厳しさを増していくことが懸念をされております。このために、先般決定されました総合経済対策に基づき、雇用対策の充実強化を図ることといたしまして、雇用調整助成金の拡充等について十月二十日より既に実施に移したところであります。また、不況業種、不況地域を中心として離職者の増加が見込まれることから、今回の補正予算におきまして約七百九十三億円の失業給付費を計上しているところであります。  さらに、今後、産業構造の転換などに伴い、特定の地域において雇用の悪化が懸念されるため、雇用機会の増大を図ることを中心とした総合的な地域雇用対策の検討を進めておるところであります。また、先ほど総理から御答弁ございましたが、増加の著しい海外直接投資に伴う雇用問題につきましては、雇用面における重要な問題であると認識をいたしております。このために、労使を初め各界の代表者から成る雇用問題政策会議におきまして検討をいただいておるところでございまして、こうした専門的な検討を通じて、対応のあり方についてコンセンサスの形成を図ってまいりたいと考えております。  以上であります。(拍手)     ─────────────
  25. 多賀谷真稔

    ○副議長(多賀谷真稔君) 寺前巖君。     〔寺前巖君登壇
  26. 寺前巖

    ○寺前巖君 私は、日本共産党・革新共同を代表し、財政演説に関して質問します。  まず、政府提出の六十一年度補正予算は、異常突出した軍事費の大幅削減要求を拒否し、内需拡大というかけ声にもかかわらず、所得税減税の見送りなど、円高不況に苦しむ国民の願いを真っ向から踏みにじるものであります。しかも、今日の財政破綻をつくり出した建設国債の増発という、前回円高時の誤りを繰り返すものであることをまず指摘せざるを得ません。(拍手)  日本共産党は、政府がこのような方向をやめ、軍縮への転換、円高危機の克服、国民生活防衛と真の内需拡大を目指す立場から、当面の補正予算編成を行うよう強く要求してきたところであります。  この点で、第一に政府見解をただす必要があるのは、過日アイスランドのレイキャビクで行われた米ソ首脳会談についてであります。  この会談が物別れに終わった直接の原因は、レーガン大統領がSDIに固執したためであります。核兵器廃絶のためなどと称しているSDI開発は、相手側の核攻撃力を無力化し、核攻撃戦略でアメリカが絶対的優位に立とうとするものであります。これは、アメリカのワインバーガー国防長官がSDIの目的について、米国が唯一の核兵器保有国だった状況に戻ることにあると議会で証言していることからも明らかであります。  レーガン大統領がこのSDIを推進し、また、中曽根内閣がSDIへの日本参加を決定したことは重大なことであります。核兵器が廃絶されれば、核兵器を無力にするためというSDIの研究開発など必要ないことは自明ではありませんか。(拍手)数兆ドルもそれにかける必要は何らないはずであります。今や、核兵器の廃絶を真に願うならば、それを緊急最重要課題として、その実現のために奮闘することこそレイキャビク会談が残した教訓であります。  唯一の被爆国の総理大臣であるあなたは、平和、軍縮を口にし、みずからを核兵器廃絶論者だと公言してきましたが、それならば、まず日本のSDI参加決定をきっぱりと撤回すべきであります。また、今開かれている国連総会で核兵器全面禁止協定の締結を提案すべきであります。補正予算においても、F15、P3Cなどの新規発注を中止し、二兆円に近い本年度軍事予算の未執行額を大幅に削減してこそ、平和や軍縮を口にする資格があるのではありませんか。(拍手)  以上、答弁を求めます。  第二に、補正予算の重要な柱である内需拡大について聞きます。  内需拡大の決め手は、内需の六割を占める個人消費を盛り上げることにあります。ところが、政府がやろうとしているのは全く逆であります。所得税減税は見送る、お年寄りの医療費は大幅に値上げする、しかも、深刻な円高不況のもとで国鉄を解体し大量の労働者を解雇するという、政府みずからが失業を増大させる先頭を切っているのであります。これでは内需拡大には絶対つながりません。私は、改めて老人保健法の改悪、国鉄分割・民営化の中止を要求するものです。  ところで、やるべきことは明白です。我が党の補正予算に対する要求どおり、第一に、所得税、住民税合計で二兆五千億、つまり四人家族で年十万円の減税を年内に実施すること、同時に、住宅費・教育費減税、パート・内職・家族専従者減税などきめ細かな対策をとることです。第二に、電力、ガスなど五兆円を超える円高差益の完全還元です。少なく見ても、一般家庭で電気、ガス料金だけで月三千八百円も還元が可能であります。第三に、社会保障制度の改悪をやめ、住宅や福祉、教育施設など国民生活に密着した公共投資拡大することです。財源は、軍事費の大幅削減や大手総合商社が法人税ゼロなどという不公平税制是正、特に外国税額控除の抜本的見直しなどで十分可能であります。総理並びに関係大臣の答弁を求めます。(拍手)  次に、大型間接税導入とマル優廃止についてであります。  総理は、同時選挙のとき、国民や党員が反対するような大型間接税は導入しないと公約され、国会でも繰り返し公約は守ると明言しています。ところが総理、あなたの諮問機関である政府税制調査会は、A案、B案、C案というだれが見ても紛れもない大型間接税の案をつくり、しかも、C案、日本付加価値税が望ましいとの答申をまとめました。総理に伺います。政府税調答申の中に国民が反対しない大型間接税がありますか。あれば、具体的にどの案か示していただきたい。(拍手)  自民党の竹下幹事長は記者会見で、党が決定すれば公約違反にはならないとの趣旨の発言をしました。これが事実だとすれば、自民党が決定する新型間接税は何を導入しても公約違反にならないということになるではありませんか。こんなごまかしは許されないと思いますが、どうですか。総理、公約を守ることは政治家の最低限の責務です。うそやごまかしでなく、大型間接税の導入や国民の零細な貯蓄をねらい撃ちするマル優廃止の二つの大増税の作業はきっぱりと中止すべきです。(拍手)  以上、総理並びに関係大臣の明確な答弁を求めます。  次に、円高不況について伺います。  失業率は統計開始以来最悪の水準を続け、今や三%を超えようとしていますが、円高倒産や大企業の人減らし合理化は依然としてふえ続けております。中小企業庁の調査でも、一ドル百五十円、百六十円という異常円高が続けば、ほとんどの産地中小企業は壊滅的な打撃を受けることが明らかにされております。製造業に従事する労働者のうち四分の三が中小企業で働いていることから見ても、せめて一ドル二百円にという中小企業者の切実な願いにこたえ、円高是正の具体的措置をとることは緊急の課題であります。総理は、円ドル関係を合理的な水準に長期的に安定していくと言っておられますが、合理的水準とはどの程度を想定しておられるのか、少なくとも中小企業がやっていける水準を考えているのか、明確にお答えください。(拍手)  我が党議員団は八つの班の円高不況の調査団を編成し、各地の実態を調査してまいりました。私も、大量の安い絹織物輸入で次々に廃業に追い込まれている丹後地方や、円高がそのまま建て値に反映し、掘れば掘るほど赤字という閉山相次ぐ秋田県の銅、鉛などの非鉄鉱山の実情をつぶさに見てまいりました。そこには既に大量の失業者が出ており、政府は伝統産業である絹織物も、貴重な地下資源である鉱山もつぶすつもりかと、悲痛な声に満ち満ちておりました。総理、この国民の苦しみは、政府がつくり出した異常円高によるいわば政治災害であります。それだけに、中小企業者や労働者の営業と暮らしを守るため、手厚い救済対策をとることは当然ではありませんか。  そこで、まず中小企業の救済策について聞きます。  第一に、政府が今国会提出予定の特定中小企業地域対策臨時措置法の対象地域を円高不況で深刻なすべての産地、地域とすること、また、円高融資の金利を三%以下に引き下げること、赤字企業にも無担保・無保証人融資を適用することであります。第二に、休業補償制度の創設について、総理は、我が党の金子書記局長の質問に、小規模企業共済制度の充実に努力すると答えられました。いつまでに、いかなる内容で具体化されるのですか。また、掛金に対する国の援助の導入も検討すべきではないですか。第三に、大企業に対し、円高を口実とした下請への単価切り下げや発注削減をやめさせるよう実効ある措置をとること。  以上、総理並びに関係大臣の答弁を求めます。  次に、雇用問題について伺います。  今、自動車、電機などの大企業は、円高対策として部品輸入の拡大、生産拠点の海外移転を急いでおります。このため、国内における雇用は著しく減っており、ある民間の調査機関では、今後五年間に九十万人の職場が消えるとし、国滅んで企業が栄えると警鐘を鳴らしているほどであります。まさに我が国産業空洞化が急速に進んでおります。総理空洞化を防ぎ、雇用国民生活を守るため、当面、円高を口実とした解雇、人減らしにつながる海外直接投資を規制する措置をとるべきであります。答弁を求めます。  最後に、総理みずからが本部長となって推進している前川リポートに基づく産業調整について伺います。  食糧やエネルギーは一国の経済の自立の基礎であります。ところが、我が国においては食糧も石炭世界最大の輸入国で、穀物自給率三二%、エネルギー自給率八・三%と、他の先進国に例のない異常な低さになっております。それにもかかわらず前川リポートは、さらに輸入を拡大するため、我が国の農業、石炭を切り捨てる方向を打ち出しています。  そこで、具体的に、当面緊急の問題として米の問題について聞きます。  アメリカのヤイター通商部代表は、国民の主食であり、日本農業の大黒柱である米まで自由化要求し、新ラウンドの議題とすると、不当な圧力を加えてきています。総理国民の基本的な食糧の安定供給を図ることは国の責務です。そのために、貿易を含めて国が管理するのは当然であり、ガット上も認められた国際的な原則ではありませんか。とすれば、アメリカ要求は極めて不当であり、新ラウンドの議題とすることに毅然と反対すべきであります。総理並びに関係大臣の明快な答弁を求めます。(拍手)  さらに、三菱石炭鉱業を初め、前川リポートに基づく炭鉱つぶしについて伺います。  閉山強行は、労働者、家族、さらに地域経済に取り返しのつかない事態をもたらします。また、民族的に貴重なエネルギー資源をなくす重大な誤りであります。私は、国と石炭資本及び関係企業の責任で閉山を中止させるとともに、石炭割り当て制の拡充強化、さらに緊急助成などを講じて、国内炭の再生産が可能となる措置をとるよう強く求めるものです。総理並びに関係大臣の答弁を求めます。  総理日本民族の将来に責任を負うなら、今こそ食糧、そしてエネルギー自給率向上の方向に政策を転換すべきであります。  以上、私は、国民の立場に立った政策の転換を求め、質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣中曽根康弘登壇
  27. 中曽根康弘

    内閣総理大臣中曽根康弘君) 寺前議員お答えをいたします。  まず、SDIの問題でございますが、これは、非核の防御手段によって弾道弾を無力化して、究極的には核兵器を廃絶しようという新しい防御的、戦略的兵器体系へ行こうとするという考えでありまして、我が方の考えを変えることは考えておりません。  次に、核禁止協定の問題でございますが、国連におきましても我々は核廃絶について今後とも引き続いて努力してまいります。  次に、軍事費の執行額の問題でございますが、今回の補正予算編成に当たりましては、各省庁に既定経費の削減を求めまして、各省庁とも切実な費用を削って協力していただきました。防衛庁も同様でございます。  次に、減税の問題でございますが、十月十六日の与野党国対委員長会談の合意を踏まえて、今実務者会談が行われておりますが、これを注意深く見守っております。  次に、差益還元の問題でございますが、四月、五月、九月と三次にわたり決定されました円高差益還元策、これを実効あるように進めておりますし、今後につきましてもさらに機会あるごとに努力してまいります。  老健法につきましては、ぜひこれは必要な法律でございまして、撤回する考えはありません。  公共投資拡大の問題につきましては、六十一年度歳出予算においても今回千三百三十億円を追加する等によりまして、厳しい財政の中でも公共事業の確保を行っており、今後も努力してまいります。来年度予算につきましても、事業量をぜひ確保したいと考えております。  次に、内需拡大と軍事費の問題でございますが、防衛費は、他の諸施策との調和を図りながら、必要最小限にとどめております。  不公平税制の問題につきましては、税制調査会答申においても、外国税額控除制度について「制度本来の趣旨に沿って所要見直し」が必要とされているほか、いわゆる政策税制についても「基本的に整理合理化の方向で徹底した見直しを行う必要がある。」と指摘されておりますが、この趣旨を踏まえまして適切に検討してまいります。  いわゆる間接税の問題については、選挙中の公約を守ります。  次に、マル優制度の問題についてでございますが、これらもいずれも今税調から答申がありまして、党におきまして慎重に検討をお願いしておるところでございます。  円相場の合理的水準等については、これは相場は相場に聞け、そう言われておるのでありまして、今のようないわゆる調整された変動相場制のもとにおいて数字を決めることは難しいのであります。  企業の休業補償の問題につきましては、休業という事態がとめどなく発生する危険性がありまして、共済金の支払い増に対処するためには、共済掛金を著しく高水準とする必要が出てまいります。したがって、共済制度は成り立ちにくくなる危険もあります。現在の状態におきましては、小規模企業者の経営の安定を図るために、小規模企業共済制度においても、円高により転廃業を余儀なくされた小規模企業者に対して共済金を給付するなど最大限活用を図っておりまして、今後とも一層その加入促進を図る等、これらの制度活用を図ってまいります。  海外進出雇用問題でございますが、いわゆる空洞化の問題につきましては、我々も慎重に考えなければならぬ部分があると思っております。やはり内需主導型の経済成長を図りまして、新たな技術革新、情報化の成果等を生かすことによって産業の新たな分野を拡大していくということによって、雇用をさらに確保してまいりたいと考えております。  米の問題につきましては、我が国の米貿易制度ガット上容認された国家貿易制度でございます。我々は、米の国内自給という基本方針のもとに、今後の対処について誤りなきを期してまいりたいと思います。  高島炭鉱の問題につきましては、できるだけこの事態が雇用やあるいは地元の市町村に対する生活的影響を及ぼさないように、各府県とも連絡をとり、各省相ともに提携しつつ、支援体制を講じたいと考えております。  食糧の自給率向上の問題については、国会の食糧自給力強化に関する決議案の趣旨を踏まえて、努力してまいるつもりでおります。  エネルギーの自給率向上につきましても、従来から石油備蓄、石油開発の推進等の石油政策、エネルギー源の多様化、供給国の分散化といった施策を強化しておりますが、今後ともこれらの政策を強化し、総合的にバランスのとれたエネルギーの安定供給に努めてまいりたいと思います。  残余の答弁は関係大臣がいたします。(拍手)     〔国務大臣宮澤喜一登壇
  28. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 寺前議員お答え申し上げます前に、お許しをいただきまして、先ほど木下議員に対しまして答弁漏れがございましたので、お答えを申し上げます。  このたびの税調における答申が全体として高額所得者優遇ではないかという趣旨のお尋ねでございました。  私の読みますところでは、むしろこのたびの答申中心は給与所得者、それも中堅層に近い給与所得者にできるだけ負担を軽くしようというふうに重点を置いておるように考えておりまして、それは例えて申しますと、配偶者の特別控除を提案しておりますし、また、給与所得者についてもいわゆる実額控除の道を開こうといたしております。そのほかにも、累進構造等は四つ案を出しておりますけれども、その中心になりますのは、やはり累進構造を緩和をして、税率の刻みもいわば八百万円、九百万円というあたりのところを中心に緩和しようとしておりますので、考え方としては、むしろ高額所得者優遇ということではないように私は考えておりますが、もちろんこの最高税率を引き下げるということは申しております。これは、しかし、やはりおのずから最高税率にも限度がございますので、勤労意欲、事業意欲等を考え、あるいは各国との比較をいたしますと、そういうことがありましたからといって、高額所得者優遇ということには全体として見ますとならないのではないかというように考えております。  それから、寺前議員からのお尋ねでございましたが、いわゆる所得減税の中で、住宅減税あるいはパートタイムの減税等々につきましては、与野党間においていろいろ御協議が行われております。その御協議の推移を注意深く私ども見守りたいと思っておるところでございます。  それから、間接税につきましては総理大臣から御答弁がございました。  非課税貯蓄につきましては、やはりかなり多額の利子が現状では課税ベースから外れておりますし、したがって、所得種類間の税負担が不公平になっておるということは事実でございます。そこで、老人とか母子家庭についてはこれは非課税制度を維持するが、全体としてはやはり考えるべきではないかということが答申の趣旨でございます。答申の趣旨を考えながら、適切に対処してまいりたいと思っております。(拍手)     〔国務大臣田村元君登壇
  29. 田村元

    国務大臣(田村元君) 先ほどのお尋ねでございますが、四問ほどございます。  まず一点、九月十九日の経済対策閣僚会議の決定に基づきまして、円高等の深刻かつ集中的な影響を受けているいわゆる企業城下町、また、輸出型産地等特定の地域の中小企業に対しまして、特定地域中小企業対策臨時措置法を骨格とする総合的な地域中小企業対策を講ずることといたしております。対策の対象となる地域につきましては、慎重な検討を行った上で、本法案成立後、政令で定めたいと思っております。この場合、円高進展、北洋漁業規制の強化等によりまして、特に深刻な影響を受けている地域に絞り、手厚い助成措置を講じてまいりたいと存じております。  また、円高によりまして影響を受けている中小企業者に対しましては、現在、年四・八五%またはは五・〇%の低利融資を実施しているところでございます。さらに、去る九月の総合経済対策におきまして、円高等によって疲弊の著しい特定地域中小企業者に対しまして、別途三・九五%の超低利融資制度を創設するとともに、中小企業の信用力を補完するため、不況業種に属する中小企業者に対する無担保保険の特例措置等を講ずることとしたところでございます。  また次は、下請の問題でございます。  下請取引の適正化を確実なものとするために、従来から下請代金支払遅延等防止法に基づく調査、検査を行い、下請単価の不当な切り下げ等の違反行為が認められた親事業者に対しましては、是正指導を行い、事態の改善に努めているところでございます。また、九月十九日の総合経済対策においても、下請代金支払遅延等防止法の厳正な運用などが改めて決定されておりまして、十月中旬に親企業等に対し、下請取引適正化のための指導通達を出したところでございます。今後とも引き続き下請取引の実態の把握に努め、下請中小企業対策に万全を期してまいる所存でございます。  それから次は、円高差益の問題でございます。  電力、ガスの差益対応策につきましては、早期実施要請にこたえて、去る六月から電力、ガス両業界合わせて約一兆一千二百億円の料金の暫定引き下げ措置実施しているところであります。  原油価格については、御承知のごとくOPECの生産調整の影響、今後需要期に入ることなどから先行きは極めて不透明でございます。また、為替レート等につきましても、今いささかのフロートがございますが、まことに先行き不透明でございます。  今後の電力、ガス料金につきましては、暫定引き下げ実施後まだ五カ月しかたっておりません。引き続き今後の為替レートや原油価格の動向等事態の推移を見守ることが必要でございまして、目下のところ白紙の状態でございます。  それから高島炭鉱のことでございますが、先ほど総理から詳しくお話がございました。もうあの答弁で尽きるわけでございますが、高島炭鉱の閉山問題の雇用とかあるいは地域に及ぼす影響等にかんがみまして、今回の閉山提案を我々は重く受けとめております。しかしいずれにいたしましても、個々の炭鉱の閉山につきましては、基本的には各企業が自主的に経営判断すべきものと考えており、事態の推移を注意深く見守ってまいりたいと存じております。  以上でございます。(拍手)     〔国務大臣加藤六月君登壇
  30. 加藤六月

    国務大臣(加藤六月君) 先ほど総理より大部分既にお答えがありましたが、米は日本国民の主食であり、我が国農業全体の基幹をなすものであります。また、水田稲作は国土、自然環境の保全や伝統的文化の形成とも深くかかわっております。このようなことから、我が国は米について国内自給を基本方針としており、また、米の貿易制度ガット上容認された国家貿易制度であると考えております。  我が国の米の問題をガット新ラウンドの場において取り上げたいとの米国側の意向につきましては、我が国としては、ガット新ラウンドにおいて農業貿易に関する新たなルールづくり等に積極的に参加していく考えではありますが、交渉の具体的内容などについては、今後多数国間で決定していく問題であると考えております。  最後に、我が国としては、米は日本農業の根幹をなす最も重要な農産物であることから、今後とも米の国内自給という基本方針のもとに、米国側の理解をさらに深めるよう全力を傾注するとともに、今後の対処について誤りなきを期してまいる所存であります。(拍手
  31. 多賀谷真稔

    ○副議長(多賀谷真稔君) これにて国務大臣演説に対する質疑は終了いたしました。      ────◇─────
  32. 谷垣禎一

    ○谷垣禎一君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。  内閣提出地方公共団体議会議員及び長の選挙期日等臨時特例に関する法律案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。
  33. 多賀谷真稔

    ○副議長(多賀谷真稔君) 谷垣禎一君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  34. 多賀谷真稔

    ○副議長(多賀谷真稔君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。     ─────────────  地方公共団体議会議員及び長の選挙期日等臨時特例に関する法律案内閣提出
  35. 多賀谷真稔

    ○副議長(多賀谷真稔君) 地方公共団体議会議員及び長の選挙期日等臨時特例に関する法律案を議題といたします。  委員長の報告を求めます。公職選挙法改正に関する調査特別委員長友納武人君。     ─────────────  地方公共団体議会議員及び長の選挙期日等臨時特例に関する法律案及び同報告書     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────     〔友納武人君登壇
  36. 友納武人

    ○友納武人君 ただいま議題となりました地方公共団体議会議員及び長の選挙期日等臨時特例に関する法律案につきまして、公職選挙法改正に関する調査特別委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。  本案は、全国多数の地方公共団体議会議員または長の任期が昭和六十二年三月から五月までに満了することになりますので、前例にかんがみ、これらの選挙の期日を統一し、選挙の円滑な執行と経費節減を図るとともに、国民地方選挙に対する関心を高めようとするものであります。  統一選挙の期日は、都道府県及び指定都市の選挙については四月十二日、指定都市以外の市、特別区及び町村の選挙については四月二十六日といたしておるほか、同時選挙の手続、重複立候補の禁止及び後援団体に関する寄附等の禁止などにつきまして、所要の規定を設けようとするものであります。  本案は、去る十月二十八日本特別委員会に付託され、本日葉梨自治大臣から提案理由の説明を聴取し、直ちに採決を行った結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     ─────────────
  37. 多賀谷真稔

    ○副議長(多賀谷真稔君) 採決いたします。  本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  38. 多賀谷真稔

    ○副議長(多賀谷真稔君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。      ────◇─────
  39. 多賀谷真稔

    ○副議長(多賀谷真稔君) 本日は、これにて散会いたします。     午後二時二十八分散会