○木下敬之助君 私は、民社党・民主連合を代表して、ただいまの
大蔵大臣の
財政演説並びに六十一年度
補正予算案に関し、
総理並びに関係諸
大臣に
質問いたします。
今、
我が国は深刻な
円高不況に突入しており、
企業倒産の多発、
失業率の上昇、地域
経済の不振など、
国民生活が大きく圧迫されている現状にあります。
円高不況を克服することこそ政治に課せられた重大な
課題であります。しかるに、中曽根
総理は、
円高国会を六月二日に召集しながら、当日衆議院解散を強行し、
円高不況の深刻化を放置した事は、極めて無責任な政治姿勢と言わざるを得ません。政治空白を招き、
政府の無策により
円高倒産が増大し、
雇用不安が
拡大した責任をどのように
考えておられるか、お伺いいたします。(
拍手)
我が国の
産業は、昨年九月からの急激かつ大幅な
円高により危機的
状況にあります。一年間に五割もの急激な調整であり、その調整によって致命的な打撃をこうむった
産業に対するきめ細かな
対策が皆無であったことは、
政策の整合性、適合性に欠けたものと断ぜざるを得ません。
政府の出された前川レポートは、単に
不況産業の切り捨てを打ち出したものにすぎないのであります。速やかに各
産業ごとのビジョンを示すとともに、需要創出策、新技術開発策、事業転換
対策等を積極的に推進すべきだと
考えますが、通産
大臣の御所見をお伺いいたします。
このような異常な
円高が継続するならば、
我が国の
産業、
経済は壊滅的な打撃を受け、
企業倒産が多発し、
失業者が増大することは避けられません。とりわけ、繊維、造船、海運、
鉄鋼、石油化学、
石炭、資源等々の主要
産業は、構造的要因に加え、今回の
円高により存亡の危機に直面しております。例えば、明治以来
我が国の
経済発展を支えてきた
鉄鋼産業においても、八三年には六十五基あった高炉を現在五十四基に縮小し、しかも、そのうち十六基が休止中であります。その上、今後まだ数基は休止をせざるを得ない状態にあり、ついに大手五社で約七千人の一時帰休の
実施に踏み切るに及んでおります。まさに危機的
状況が到来していると言っても過言ではありません。
このように、急激な
円高は
雇用の面にも深刻な
影響を与えております。賃金コストの上昇と
海外現地生産による
資本コストの大幅な低下は、
製造業の
海外直接
投資を
拡大させる結果をもたらしており、当面四百社が新規に進出を
計画中で、今後さらに急増の傾向と言われております。このまま推移すれば、
我が国において、西暦二〇〇〇年までに約九十七万人の
雇用機会が失われるという予測も行われております。第一勧業銀行のレポートによれば、一兆円の
海外直接
投資により
国内では十八万人もの
雇用機会が失われると言われております。仮に六十年度の経常
海外余剰分の十二兆円がすべて
海外生産に向かえば、二百十八万人もの
雇用機会がなくなり、
失業率が三・七%も上昇するのであります。こうした
製造業の
空洞化の
雇用への
影響を
政府はどう認識し、どう
対応していこうとされておられるのか、御所見をお伺いいたします。
私は、以上のごとく、
円高不況に対処するための
産業政策、
雇用対策の必要性、緊急性を指摘してまいりました。しかし、これらの
施策の充実を図っても、現在の異常な
円高が
是正されない限り、
我が国の
産業の救済の方途はあり得ません。
政府は、昨年の九月、強引過ぎるほどのやり方で
円高に誘導したではありませんか。したがって、速やかに対ドル百八十円程度で安定的に推移させるようターゲットを定め、弾力的、機動的に介入を
実施することも可能であります。中曽根
総理及び
大蔵大臣の決断のほどをお伺いいたします。(
拍手)
以上申し述べてまいりました深刻な
円高不況を克服するには、今回の
補正予算は全く力不足と言わざるを得ません。大幅な所得
減税を盛り込んでいない、大型の建設国債の発行の見送りなど、
内需拡大の重要な柱となるべきものが欠如していることでも明らかであります。
政府は、本年度実質四%
成長を国
内外に公約しておりますが、本年四月から六月期の二・二%の
成長率が如実に示しているごとく、四%
成長達成はこの程度の
補正予算では不可能と言わざるを得ません。
総理は、いかなる根拠に基づき今、なお四%
成長が
達成されると確信されておられるのか、具体的にお示しください。
次に、
財政再建問題について
総理の
見解をお伺いいたします。
中曽根内閣は、鈴木前内閣の後を受け、その政治
目標を
財政再建に置き、六十五年度に赤字国債発行をゼロにする
財政再建に取り組んでこられました。しかし、六十五年度赤字国債脱却は到底不可能と言わざるを得ません。五十九年度の赤字国債の減額
目標は一兆円でありましたが、実際は五千二百五十億円にすぎず、同じく六十年度は一兆八千億円の
目標に対し七千二百五十億円、六十一年度は一兆一千五百億円に対し四千八百四十億円しか削減できていないのであります。
このことからしても、六十五年度赤字国債脱却は不可能であり、その
目標に固執すれば、
財政の持つ
景気調整機能、資源の再配分機能などを麻痺させ、ひいては
国民生活を大きく圧迫することになることは明らかであります。したがって、この際、赤字国債脱却年次については、六十五年度を延期して、
財政の機能を生かすべきであり、新しい
経済情勢に
対応し得る総合的
長期展望に立った
財政再建を行うべきであると
考えますが、
総理の
見解をお伺いいたします。(
拍手)
次に、
税制改革について
質問いたします。
去る十月二十八日
政府税調より
答申が出ましたが、まず第一にお伺いいたしたいことは、
政府はこれまで、第二次臨調の
答申に沿って「増税なき
財政再建」を進めるとしています。その臨調の定義する「増税なき」とは、「全体としての租税負担率の上昇をもたらすような
税制上の新たな
措置を基本的にはとらない」ということであります。しかしながら、この
答申では、基本的理念の中で、「将来の
財政上の
要請に応じて弾力的な
対応も可能になる」と明記されております。この
答申は明らかに、臨調がとってはならないとした増税を認めた
答申となっています。私は、今回の
税制改革においても、当然のことながら、この臨調の掲げる「増税なき
財政再建」にのっとって行うべきものであると
考えますが、
総理の御所見をお伺いいたします。(
拍手)
すなわち、「租税負担率の上昇をもたらすような
税制上の新たな
措置を基本的にはとらない」、この理念のもとに
税制改革を進めることを明言していただきたいと思います。また、この際、増税かどうかの判断の基準となります租税負担率のめどとなる数値をどのようにお
考えになっておられるか、
総理並びに
大蔵大臣の御
見解をお伺いいたします。
次に、
大型間接税について
質問いたします。
中曽根
総理は、
大型間接税は導入しないと公約されているのであります。にもかかわらず、今回の
答申に
大型間接税導入が盛り込まれたことは、明らかなる公約違反であります。私は、
大型間接税導入に断固反対いたしますが、
総理は
大型間接税導入を撤回する決意をお持ちか、明快なる御答弁をいただきたいと存じます。
次に、非課税貯蓄
制度廃止についてお尋ねいたします。
答申では
マル優廃止が打ち出されましたが、本来、まず限度額管理強化が行われるべきで、即廃止が打ち出されることは納得できないのであります。私は、
マル優廃止に強く反対いたしますが、
総理は
マル優廃止を取り消す決意をお持ちか、
見解をただしたいのであります。
次に、
所得税改正についてお尋ねいたします。
特に生活苦にあえぐ中堅所得者層に重点を置くべきなのに、税調
答申案は高額所得者を優遇するものになっていると
考えますが、
総理はこれを
是正する決意をお持ちか、お伺いいたします。また、不公平
税制是正については、
答申には脱税防止、納税環境の
整備、キャピタルゲイン課税強化など、不公平
税制是正に必要な
措置がとられていないことは極めて遺憾であります。
政府の不公平
税制是正への取り組みについて、
総理の御所見を明らかにしていただきたいのであります。特に、キャピタルゲイン課税、富裕税の創設など、資産課税の強化について
総理の取り組みをお伺いいたします。
以上申し上げましたように、今回の税調
答申は極めて問題の多い内容となっております。
国民の真の期待にこたえられる
税制の抜本
改革のためには、せっかちに
実現を目指すのではなく、十分に
国民の声を聞き、与野党の
審議を尽くすべきであることを強く申し上げておきます。
最後に、森林・河川緊急
整備税(仮称)について
質問いたします。
今、森林
整備は大きくおくれており、機能の低下した保安林九十万ヘクタール、間伐等手入れの必要な森林五百四十三万ヘクタール、山地災害危険地区十三万一千カ所と、このままでは森林の水源涵養機能が低下し、将来の水供給に対し懸念せざるを得ません。また、林業の現況については、この五年間に木材価格は約三割値下がりし、外材の輸入増、山村の過疎化、労賃の値上がりと極めて厳しい状態にあり、とても間伐ができるような経営状態にありません。
このような中にあって、水源地帯の荒廃、森林を
整備する
財源として、十年間の時限立法で水源税に相当するものの導入を
政府は検討しているようでありますが、林業や森林
整備の
重要性を
考えれば、当然
一般会計により
予算を計上すべきものであります。
政府のお
考えになっている目的税たる水源税を導入すれば、税秩序の乱れを呼び起こすことは必至であります。特に森林の公益性の重大さを考慮すれば、当然
補正予算に盛り込むなり、六十二年度
一般会計に組み入れるという方向で検討すべき性質のものであって、安易に水資源のための目的税を導入するべきではありません。私は水源税の導入に明確に反対し、
総理の御答弁を求めて、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣中曽根康弘君
登壇〕