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1986-10-22 第107回国会 衆議院 法務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和六十一年九月十一日)(木曜 日)(午前零時現在)における本委員は、次のと おりである。    委員長 大塚 雄司君    理事 今枝 敬雄君 理事 太田 誠一君    理事 川田 正則君 理事 熊川 次男君    理事 保岡 興治君 理事 稲葉 誠一君    理事 中村  巖君 理事 安倍 基雄君       逢沢 一郎君    赤城 宗徳君       新井 将敬君    井出 正一君       稻葉  修君    上村千一郎君       江藤 隆美君    加藤 紘一君       木部 佳昭君    佐藤 一郎君       佐藤 敬夫君    塩崎  潤君       丹羽 兵助君    宮里 松正君       小澤 克介君    坂上 富男君       武藤 山治君    山花 貞夫君       橋本 文彦君    冬柴 鉄三君       安藤  巖君 ────────────────────── 昭和六十一年十月二十二日(水曜日)     午前十時十分開議  出席委員    委員長 大塚 雄司君    理事 今枝 敬雄君 理事 太田 誠一君    理事 川田 正則君 理事 熊川 次男君    理事 保岡 興治君 理事 稲葉 誠一君    理事 中村  巖君 理事 安倍 基雄君       逢沢 一郎君    赤城 宗徳君       井出 正一君    上村千一郎君       佐藤 敬夫君    小澤 克介君       坂上 富男君    山花 貞夫君       冬柴 鉄三君    吉井 光照君       安藤  巖君  出席国務大臣         法 務 大 臣 遠藤  要君  出席政府委員         内閣官房長官 渡辺 秀央君         内閣法制局長官 味村  治君         法務大臣官房長 根來 泰周君         法務大臣官房司         法法制調査部長 清水  湛君         法務省民事局長 千種 秀夫君         法務省刑事局長 岡村 泰孝君         法務省矯正局長 敷田  稔君         法務省人権擁護         局長      野崎 幸雄君         法務省入国管理         局長      小林 俊二君         外務大臣官房審         議官      斉藤 邦彦君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部経済調査官 緒方 右武君         警察庁警備局警         備課長     半田 嘉弘君         外務大臣官房審         議官      林  貞行君         大蔵大臣官房企         画官      窪野 鎮治君         文化庁文化部文         化普及課長   大谷 利治君         厚生省援護局庶         務課長     大西 孝夫君         厚生省援護局業         務第一課長   水本 鉄二君         最高裁判所事務         総局総務局長  山口  繁君         最高裁判所事務         総局民事局長         兼最高裁判所事         務総局行政局長 上谷  清君         最高裁判所事務         総局家庭局長  猪瀬愼一郎君         法務委員会調査         室長      末永 秀夫君     ───────────── 委員の異動 九月十一日  辞任         補欠選任   橋本 文彦君     吉井 光照君 同月十二日  辞任         補欠選任   武藤 山治君     伊藤  茂君 同月二十五日  辞任         補欠選任   新井 将敬君     湯川  宏君 同月二十六日  委員湯川宏君が死去された。 十月九日             補欠選任              大矢 卓史君 同月十四日  辞任         補欠選任   大矢 卓史君     塚本 三郎君 同月二十一日  辞任         補欠選任   小澤 克介君     上坂  昇君   坂上 富男君     串原 義直君 同日  辞任         補欠選任   串原 義直君     坂上 富男君   上坂  昇君     小澤 克介君     ───────────── 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  裁判所司法行政法務行政検察行政及び人権擁護に関する件      ────◇─────
  2. 大塚雄司

    大塚委員長 これより会議を開きます。  国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  裁判所司法行政法務行政及び検察行政等の適正を期するため、本会期中  裁判所司法行政に関する事項  法務行政及び検察行政に関する事項 並びに  国内治安及び人権擁護に関する事項 について、小委員会の設置、関係各方面からの説明聴取及び資料要求等方法により、国政調査を行うため、議長に対し、承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大塚雄司

    大塚委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ────◇─────
  4. 大塚雄司

    大塚委員長 お諮りいたします。  本日、最高裁判所山口総務局長上谷民事局長行政局長猪瀬家庭局長から出席説明要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 大塚雄司

    大塚委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ────◇─────
  6. 大塚雄司

    大塚委員長 裁判所司法行政法務行政検察行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井出正一君。
  7. 井出正一

    井出委員 自由民主党の井出正一であります。この機会に、最近社会的に問題になっております幾つかの点について質問させていただきます。  まず最初に、抵当証券に関する問題について若干お伺いいたします。  最近の低金利時代を反映してか、一般投資家の間で抵当証券人気を集めているようです。人気理由は、まず抵当証券自由金利商品で、ほかの金融商品より高利回りであること、さらに、その利息雑所得扱い節税商品としても有利なことにあるようですが、他方で抵当証券会社を規制する法律はなく、第三者による監査制度もないため、抵当証券に絡む悪徳商法のおそれが以前から指摘されていたところ、去る十月十五日、静岡市の抵当証券会社不正事件として初めて摘発されたことが報道されました。  いまだ捜査の途中でしょうが、この事件の概要と、今まで警察窓口各種行政相談窓口に寄せられた抵当証券に関する情報相談状況、及び生活経済警察としての対処について警察庁にお答えいただきたいと思います。
  8. 緒方右武

    緒方説明員 お答えいたします。  まず第一点に、抵当証券に関する相談状況でございますけれども昭和五十九年二月から六十一年九月末までの、抵当証券に関して警察に寄せられた相談や把握した情報件数でございますけれども合計二百四十一件となっております。相談内容としましては、会社信用性安全性を心配するものが全体の約六割を占めております。また、解約したいと考えているものが全体の約二割を占めております。  第二点で、静岡県で現在捜査中でございますけれども事件につきましては、静岡警察静岡所在日証抵当証券株式会社代表取締役らが、債権債務が存在しないにもかかわらず架空の債権債務抵当権を設定し、これに基づき抵当証券発行せしめ、さらにこの抵当証券抵当権の裏づけのある正規のものであるように装って、その販売名下に客から百数十万円をだましたなどの公正証書原本不実記載詐欺等被疑事実で、十月十五日、日証抵当証券会社及び代表取締役社長宅など数カ所を捜索しております。  それ以外にも広島県警察におきまして、岡山市所在中国抵当証券株式会社代表取締役が、抵当証券発行申請すらしていないにもかかわらず、抵当証券発行を受けたように装って抵当証券の預かり証を作成し、これを使用して抵当証券販売名下に数名の客から合計数十万円をだましたという詐欺罪被疑事実により、十月十八日、代表取締役を逮捕しております。  警察としましては、抵当証券問題につきまして、従来から消費者保護弱者保護立場悪質商法のかかわる事案に対し厳しい取り締まりを行ってきたところであります。  お尋ねの抵当証券商法の問題につきましても、一般投資家悪質業者犠牲になることを防止するため、強い関心を持っているところであり、悪質業者に対しては、現に捜査中の事例もあるように、各種法令を多角的に適用して、厳しい姿勢で取り締まっていく所存であります。また、一方で被害の未然防止拡大防止のために広く一般消費者に対して悪質業者手口等についての広報、啓発活動を進めているところであり、今後もこうした活動を強力に推進していきたいと思っております。
  9. 井出正一

    井出委員 次に、法務省に対してお尋ねいたします。  抵当証券法が制定されたのは昭和六年、銀行が不動産を担保に貸し付けた金が不況で回収困難になり、取りつけ騒ぎの原因にもなったため、いわゆる債権資金化する救済策としてスタートしたと聞いております。その意味で、抵当証券を小口に分割して売り出すこと、またその際、もとの抵当証券を渡さずに預かり証、いわゆるモーゲージ証書を交付することも理解できるのですが、その場合、なぜ空売りや二重売りのチェックができないのですか。私は専門家ではないからどうもよくわからないのですが、それは技術的に不可能なのでしょうか。照合する仕組みの導入とかあるいは預かり証それぞれに法務局とかあるいは登記所認証印みたいなものを押せたらどうかなんて考えるのですが、いかがでしょうか。  それから、ついでに抵当証券会社の数及び証券発行申請件数並びに券面額のここしばらくの間の推移を教えていただけたらと思います。
  10. 千種秀夫

    千種政府委員 まず、現在の抵当証券の問題につきまして、問題になっておりますモーゲージ証書による取引ということの仕組みをお話し申し上げたいと思います。  御質問にもございましたように、抵当証券法というものがございまして、抵当権を設定いたしました場合に法務局に申請しまして有価証券としての抵当証券というものを発行しております。この法律がそもそも考えましたことは、抵当証券一般有価証券のように裏書きして譲渡して転々流通させる、それによって枯渇した資金を流動化する、こういうことを考えたのだろうと思われます。  そのためであるのか、従来余り抵当証券というものは発行されておりませんし、流通もされていなかったのでございますが、ここ二、三年になりまして急にその発行が急増してまいりました。その急増した理由というのは、やはり資金需要その他の経済事情によると思いますが、その販売といいますか、流通の仕方が少し変わってきたからでございます。  どういうふうに変わってきたかといいますと、抵当証券そのものを転々流通させるのではなくて、それを発行してもらった業者がそれは手元に置いておきまして、それを小口に分けて一般投資家に売る、あるいは売るというよりはその権利を与えるということで資金を調達する、こういう販売方法と申しますか商売といいますか、そういうものがほかの金の取引でありますとかほかの取引、そういうものの取引の形をまねしてできてきたということがございます。  そこで、御指摘モーゲージ証書というものの仕組みでございますが、これは実は業者によってその約款が必ずしも同じではないように聞いておりますが、原型的に考えますと、証券一般投資家に売る、そのかわりに株券のように保護預かりをして預かる、預かるについては預かり証書を出す。その売るについての約款というものがございまして、これは売るけれども幾らで売って利息は少し高く払うとか、あるいはそのもとの抵当権債務弁済期以前に買い戻すとか、そういう顧客といいますか一般投資家に対するサービスも含めた約款が含まれているわけでございます。そこの利ざやというものが商売の利益になるというようなこともございまして、そういうことで非常に普及を始めた。そのために、これはいい商売であるということでございましょうか、抵当証券申請事件が急にふえてきた、こういう関係になっております。  そこで、なぜ不正が起こるかといいますと、抵当証券をちゃんと顧客に渡してしまいますとこれを二重売りするということはできませんけれども手元に置いておきますために、悪徳商法でございますとこれを二重、三重に売るということが考えられる。さらに、その証券を売るのではなくて、例えば百万円の一枚の証券がございますと、これを買いやすいように十万単位という小口にしましてその権利を譲渡するような形にする。そうしますと、これを十で割れば十万円ですが、二十に割って十万円ずつで売ると水増しということになる。そういうところに不正が介在する余地が出てきたわけでございます。これをどうやるか……
  11. 井出正一

    井出委員 済みません。説明中に失礼ですが、その点はわかるのです。時間がないものですから、どうしてチェックできないかというところをちょっと……。
  12. 千種秀夫

    千種政府委員 チェックということになりますと、法務省あるいは法務局発行の手続だけやっておるものでございますから、その先の取引についてはちょっと私どものところではチェックできない。それで、チェックする方法としてはいろいろ考えられると思いますが、それは流通の問題として別途考えなければいけないと思います。
  13. 井出正一

    井出委員 となりますと、ことしから来年にかけてきっと満期を迎えるような証券が多く出てきて大きな社会問題になるのじゃないかなと思うわけですが、業界の一部においては、販売するモーゲージ証書が信頼できるものであることをお客に示す具体的な方法、いわゆる自主ルールが設定されたとの報道もありますし、また規制については、新聞論調を見ますと賛否両論あるようですが、一般投資家保護観点から行政または立法サイドにおいて立ちおくれがあってはならないと考えるわけですが、本問題について、現在雑所得に分類されている抵当証券利息を預貯金の利息並み利子所得に分類がえする必要があるかどうかというようなことを含めて、そういう税制面とあわせて所管である大蔵省のお考えをお伺いできたらと思います。
  14. 窪野鎮治

    窪野説明員 お答えいたします。  御案内のように抵当証券抵当証券法に基づいて発行される有価証券でございますが、大蔵省といたしましても、その販売一般投資家の方を対象としたものでありますこと、それから資金需給という観点から申しましても長期の資金調達手段としての機能を果たしている、こういう観点から抵当証券取引一般につきまして関心を持って注視しているところでございます。  そこで、抵当証券の取り扱いの問題につきましては、投資家の方の保護を図る、こういう観点から大蔵省といたしましても現在いろいろと検討を行っているところでございまして、今後は法制の整備が必要かどうか、こういう点をも含めまして法務省ともよく御相談をいたしましてさらに検討を進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  15. 井出正一

    井出委員 それでは続いて、外国人登録証をめぐる問題についてお伺いいたします。  外国人登録法による指紋押捺制度については、ここ数年来、在日韓国朝鮮人中心反対運動が行われてきたところでありますが、先月二十一日、中曽根総理は訪韓された折、ソウルにおいて全斗煥大統領に対し、指紋押捺は一回限りとし、永住者外国人登録証はカード化するなどを内容とする外国人登録法改正案次期通常国会に提出する方針を表明されたとお聞きしております。また、遠藤法務大臣も御就任早々、この制度の改善に強い意欲を示されているとの報道をお聞きしております。  まず、法務大臣の本問題に対する御所見をお伺いいたしたいと思います。
  16. 遠藤要

    遠藤国務大臣 ただいま御指摘の面についてお答え申し上げますが、この指紋押捺という問題は先生方も御承知のとおり、一昨年韓国大統領が訪日された際に日本国との話し合いがされ、共同声明にまで織り込まれたという点から考えまして、この問題は国と国とのお約束でもございますので早期的な解決を図っていかなければならぬということで、私が法務大臣就任直後、総理ともお話を申し上げ、総理も非常に関心を持っておられましたので検討し、各省庁とも話し合いをさせているという点でございまして、できるならば次期国会皆さん方の御協力をいただいて成立させたい、このような気持ちであるということを御理解願いたいと思います。
  17. 井出正一

    井出委員 次に、外国人登録法改正内容及び提出時期――時期は今、大臣からお伺いしましたから結構です。並びに現在までの指紋押捺拒否及び留保状況、それから改正案についての在日韓国人民団系皆さんあるいは在日朝鮮人、総連合系皆さん、そしてまたそういう皆さん以外の在日外国人反応、さらにこれらに対する法務省としての対応など外国人登録法をめぐる最近の状況についてお伺いできたらと思います。
  18. 小林俊二

    小林(俊)政府委員 法改正につきましては、ただいま大臣から御説明されましたとおり、次期通常国会に法案を提出するということで鋭意作業を進めております。また、関係省庁との協議、調整も続けておるところでございます。  その柱は、先ほどの先生言及されました二点でございまして、第一が、指紋押捺を特に必要がある場合を除いては、一人については重ねて求めないということでございます。第二点は、携帯の便に資するために登録証明書をカード化するということでございまして、この対象としては、現在とりあえず永住外国人ということを念頭に置いて作業を進めておるところでございます。  御質問拒否状況留保状況につきましては、これは昨年、三十七万人の大量切りかえがあったわけでございますが、これをめぐりましてかなりの数に上っておりました。しかしながら、その後民団留保運動を終止するというようなこともございまして徐々に鎮静化に向かいまして、現在のところ拒否者につきましては千三百人内外、それから留保につきましては二百数十名ということに終息いたしております。この動きは現在のところ少なくとも拡大するという傾向はございません。さらに鎮静化が進むものと私どもは期待いたしております。その方向に今回の法改正努力というものも役立つ、貢献するのではないかという期待を持っておるわけでございます。特に、この拒否という問題が終息するということが法改正を促進するという観点からも有用であるというふうに私ども関係者の理解を求めるべく努力をいたしておるところでございます。  また、関係者反応でございますけれども民団中心といたします外国人関係団体あるいは個々の関係者一般的な反応は、これを前進として評価するということであるというふうに私どもは理解しておりますし、なお、それらの方々団体の意見も徴して作業を慎重に進めておるという状況でございます。
  19. 井出正一

    井出委員 それではちょっと急ぎますけれども、第三番目に中国残留日本人孤児問題についてお尋ねします。  現在、第十三次訪日調査団の一行がまぶたに見た肉親との対面を期待して来日しています。本日の朝刊でも、きのう六人の方が肉親にお目にかかれたというふうに心温まる記事が出ておりましたが、昭和五十六年の第一次以来の訪日人員身元判明者数帰国者数、今後の予定等、簡単で結構ですから教えてください。
  20. 水本鉄二

    水本説明員 中国残留孤児肉親捜しのための訪日調査につきましては、中国政府の積極的な協力を得ながら五十六年三月から本年九月までの間に十二回にわたりまして計千二百四十二人の方々が訪日されてこの調査に参加しております。  このうち身元がわからなかった者七百六十七名ということでございまして、また逆に、訪日調査以外によりましても身元がわかっているという方もございますので、その方々の数を申し上げますと、千六十八人ということになっております。  それから、先生先ほどおっしゃいましたように、現在第十三次の訪日調査を行っておりますが、これは十一月一日までにかけまして百人という方々をお招きしているわけでございまして、今後はまだあと二百人の調査が残っている、六十一年度中にこれを概了したいというふうに考えております。
  21. 井出正一

    井出委員 そもそも残留孤児の大部分は、昭和十一年の帝国議会承認のもとに推し進められた満州開拓という国策の犠牲者でありますし、昭和二十年の敗戦の犠牲者でもある。かつまた、いかなる事情があったにせよ、戦後四十年、国家によって異国に放置され続けてきた犠牲者であること、したがって、その責任国家としての日本にあることを忘れてはならないと思うわけでございます。政府責任、極めて重いと言わざるを得ません。  本委員会でも過去幾たびか審議されていることを聞き及んでおりますが、わけても第百四回国会の本年四月二十三日の会議録、ここに持ってまいりましたが、山本政弘先生の御質問を私は感銘を持って読ませていただきました。きょうは時間がありませんので、それにつながる一点だけに絞ってお伺いしたく思います。  去る十月十三日、東京家裁は、身元がわからない中国残留孤児日本戸籍を新しくつくるための就籍申し立てを却下しました。十月十七日付の朝日の一部をちょっと読んでみます。   日本人になれず涙の孤児 東京家裁就籍申し立て却下   申し立てを却下されたのは、東京都葛飾区奥戸五丁目、李鳳琴さん(推定四一)。五十八年二月、第三次訪日調査団の一員として来日したが、身元はわからなかった。夫と子供三人で永住帰国する直前の今年五月、東京家裁に対し、自分で考えた「金元房子」の日本名戸籍を作ることを認めるよう、訴えていた。同家裁は十三日、「余りにも状況証拠に乏しく、認容することはできない」との審判を下した。   李さんは昭和二十年秋、旧満州・新京(現・長春)市で捨て子になっているところを拾われ、養父母に預けられた。この時、日本式の衣服を着ていたのが、唯一の手がかり。李さんはこのほか、養父母供述書などを添えて申し立てた。   審判はこれに対し、①李さんの父母がまったく不明で、出生により日本国籍を取得したと認める資料がない②拾われた当時の着衣の特徴も具体的に明らかでなく事実として認めるには足りない、などとして、李さんの願いを認めなかった。   李さんは厚生省孤児名簿に登録され、肉親捜しの調査団で来日するなど、行政ベースでは,「日本人」と扱われている。これに対し、今回の審判司法立場で、真っ向から矛盾する判断を下したことになる。 ちょっと飛びまして、   会見に夫の房徳俊さん(四三)とともに同席した李さんは、「私は日本人。どうして戸籍を作ることが認められないのか」と、声をつまらせていた。 と、こうでございます。  四月二十三日のこの委員会山本先生が心配なさっていた事態がまさに生じたと思うわけです。中国政府発行した孤児証明書があり、厚生省のいわゆる孤児名簿にも登載されているという意味で、両国政府が認めたにもかかわらず、司法行政の不一致というこの事実をどう考えたらよいのか、ちょっと大臣にお伺いしたいわけでございます。
  22. 遠藤要

    遠藤国務大臣 中国残留孤児、また残留御婦人の肉親捜しが一日も早く期待されるような方向へ行くことを私も強く望んでいる一人でございますが、これらの方々戸籍については、諸般の事情を考慮しながら実情に即した方法で円滑に処理されている、こういうふうな報告を実は聞いておったわけですが、ただいまのような御指摘がございましたが、今即答は何とも申しかねるのでございますが、今の先生気持ちというのを十分反映せしめたいというようなことで御了解願いたいと思います。
  23. 井出正一

    井出委員 私は、この裁判の是非について意見を申し述べるつもりはありません。しかし、これから未判明者孤児就籍申し立ては、大量帰国に伴って六百件から千件とも予想されておるそうであります。李さん以上に手がかりの薄い人も多くなるでありましょう。身元がわからないまま永住帰国した場合、その手がかり、証拠資料を取り寄せることの困難も容易に考えられます。したがって、自分が日本人であることを立証できる可能性はいよいよ小さくなるわけです。  自分が日本人であることを信じて疑わずに来日したのに、その就籍申し立てが却下される。当人のショック、面目のなさ、家族を伴って永住帰国している場合、その精神的、経済的影響ははかり知れないものがあります。帰化という方法があるなどというのはこの際もってのほかだと考えます。  さらに心配なのは、中国政府日本人として認定しているのに、日本側が司法行政といういわば国内問題で日本人と認めがたいとした場合の中国政府の受けとめ方であります。もし万一そのことによって両国関係が悪化して孤児問題に影響を及ぼすようなことが生じたならば、もうこの孤児問題は時間的余裕もないわけですから、この点の見通しはいかがでしょうか。
  24. 千種秀夫

    千種政府委員 御指摘のとおり大変難しい問題でございまして、私どもも心を痛めておるわけでございますが、それは、ただいま御指摘にございました裁判所審判ということもございますし、我々のやっております戸籍行政ということもございますが、さらにそれを超えた問題でもあるかのように思われます。そういうことで、私ども関係のところにおきましては、ただいま御指摘のような我々の国民の気持ちを生かすという制度をどのようにしたらいいかということを横断的に相談をして検討していかなければならないと心得ております。
  25. 井出正一

    井出委員 私は、この李さんの審判書を読んでみました。その一部にこう書いてあります。「ちなみに、申立人」、これは李さんのことです。「が保護された当時、新京市付近では、日本の敗戦に伴い混乱していたことは公知の事実といつてよく、このため日本人難民などによる捨子があつたであろうことは十分推測し得るところであるから、これと上記認定事実から認め得る事実とを併せ考えると、申立人が日本人の子である可能性があることはこれを否定することはできない。」こう述べてもいらっしゃるわけです。  中国残留孤児の国籍取得を支援する会の河合弘之弁護士によれば、同会はこれまで約三百五十名の身元未判明孤児から依頼を受けて、そのうち百五名について就籍許可を得ているそうですが、却下されたのは今度が初めてだそうです。裁判官にしても恐らく心情的には許可したかったのではないかと推測されるわけですが、三権分立の日本の現在の体制、現行法規のもとでこのような問題が果たして解決できるのかな、こう私は心配になるわけでございます。  とするならば、先刻申し上げたように、もとは国策で生じた問題であります。国で解決する以外ないのではないでしょうか。ボランティア団体の全国組織である中国残留孤児問題全国協議会とか東京弁護士会などが要望、提起している立法措置、それは戸籍法とか国籍法にも及ぶのでしょうが、どうもそちらの方は素人の私にはよくわかりませんが、これを講ずることによって、両国政府調査日本人として認定された人々については日本国籍を認定して戸籍を調製することは考えられないでありましょうか、いかがでしょう。
  26. 千種秀夫

    千種政府委員 私ども承知しておりますところによりますと、就籍申し立て事件でも却下された例というのはほとんどないように聞いておるわけでございます。たまたまそういう問題がいろいろな問題を提起したわけでございますが、大部分が就籍の手続で無事にいけば問題は別にないわけでございまして、さらに何か特別なことをする必要があるのかどうか、その辺のところは、これは一つは審判でございますから、裁判所の個々の裁判官がお考えいただくことでもございますが、それが問題ではなかろうかと考えております。
  27. 井出正一

    井出委員 そうだと思うのですが、ただ孤児のいわゆる証拠物件がいよいよ少なくなっていってしまうことがこれからどんどん強まるだけだと思います。  残留孤児問題は、大きく分けて肉親捜し、帰国、定着の三つの課題、さらにそれに伴うところの養父母の扶養費問題がありましょうが、従来の肉親捜しがことしいっぱいである程度一段落するとしますれば、帰国とその後の自立定着の援護へと局面は変わり始めているようですが、いずれにせよ解決せねばならない問題は山積しております。しかも急を要する問題なのであります。孤児問題は間もなく孤老問題になると言う人もいます。このような大問題を厚生省の援護局だけに負わせて解決できるでありましょうか。厚生省さんは大変御苦労してくださっていることはよくわかりますが、どうでしょうか、可能でしょうか。
  28. 水本鉄二

    水本説明員 厚生省といたしましては、この就籍問題が円滑に進められるよう裁判所に対して調査関係資料の提供の協力を行ってまいるとともに、裁判所の御理解もいただいていきたい、かように考えております。
  29. 井出正一

    井出委員 私、明確なこのポリシーに立脚しつつ、政府一体となって取り組むべき課題だと思うわけですが、大臣、ひとつ閣議で取り上げていただけないでしょうか。お願いします。
  30. 遠藤要

    遠藤国務大臣 国としても、重大な問題でございますので、検討させていただきます。
  31. 井出正一

    井出委員 時間がなくなりましたので最後に一つ。  来年度の予算の件について、法務省関係の概算要求は、昨年に比してどうなったでしょうか。総額で結構です。
  32. 根來泰周

    根來政府委員 経費関係でございますが、一般会計で前年度に比しまして百十四億六千三百万円の増、四千十六億九千万円、特別会計で昨年度に比しまして六十四億二千八百万円の増、総額にいたしまして九百四十八億三百万円の要求をいたしております。
  33. 井出正一

    井出委員 私、地方に帰りまして、法務関係の出先の機関の皆さんにお会いする機会が多いわけですが、緊縮予算で随分苦労なさっているということをお聞きします。ほかの役所の場合、業界をバックに持ったり、それに関係する先生方もおいでるものですから、応援団がついているわけですが、その点法務省は孤立無援というか、どうかひとつ大臣を筆頭に頑張っていただきたいと思います。  以上で質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  34. 大塚雄司

  35. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 今、外国人登録法の改正について大臣から答弁があったわけですが、私どもは、これが提案された段階というか、むしろその前の段階で本委員会等を中心として、委員会だけではなくて、十分問題を深めていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  今、大臣の話をお聞きいたしておりますと、日韓の共同宣言に出ているから何か改正するようになったというふうに聞こえるんですよね。日韓の共同宣言にはそういうことは出ていなくて、法的地位の改善とかということだけのように私は記憶しているのですが、それを含んでいるのかもわかりませんが、ただ、そういうのに出たからやるというだけじゃなくて、もっと問題を掘り下げていただきたい、こう私は思います。  そこで、今省庁間で協議をしているという話、まあ協議をするのですか、しているのですか、そういう話がございましたが、その協議というのはどことどこが協議するのですか、しているのですか。
  36. 小林俊二

    小林(俊)政府委員 外国人登録法問題につきましては、従来から警察庁、自治省、外務省及び法務省において協議を進めてまいった経緯がございます。
  37. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 大臣、どうしてその中で警察が協議に入るのですか。
  38. 小林俊二

    小林(俊)政府委員 外国人登録法につきましては、これは刑罰法規でございます。入国管理法と並んで出入国管理、在留管理上の主要な柱となっております。したがって、その執行を確保するという面から警察官が関与する面は極めて多いわけでございます。例えば密入国者が発見された、あるいは不法残留者が稼働しておるというような情報がございますと、これは警察に通報されて警察官がその摘発に当たるということは極めて広く行われておるわけでございまして、もちろん入国警備官がこれに関与することも多々ございますけれども警察官が、これは人数の点におきましても入国警備官をはるかに上回る体制を持っているわけでございまして、それに依存する度合いは極めて多いということでございます。
  39. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 大臣、今の答弁をお聞きになったと思うのですが、この法案の改正を今後やっていく中で、今大臣が言われた改正がいいというのじゃないんですよ、私どもはそれでも反対なんですよ。ですけれども、これは一番反対するのは警察ですよ。今まで全部警察が反対してきたわけですよね。それでできなかったわけですよ。そうでしょう。どうなの。
  40. 小林俊二

    小林(俊)政府委員 外国人登録法は現在まで数次にわたって、過去三十年間において改正を実現してまいってきております。その都度、以上四省庁で協議をしながら改正が行われてきたのでございまして、やみくもに反対を続けておったという印象がもしおありとすれば、そういうことではないと私どもは了解いたしております。
  41. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 なかなか答弁がうまいな。指紋の押捺を一回にするというのでしょう。それに対して強硬に反対していたのは警察ですよ、だから今までやろうと思ったってやれなかったわけですから。この前の法務委員長が議員立法か何かでやろうとしたわけですよ。そのときだって、警察なりなんなりが猛烈に反対してできなかった。ということは、これがいかに警察関係の、処罰というかそういう関係から外国人というものが現実に見られているかということの大きな証拠だと私は思うのですが、そこで私どもは、指紋採取を一回にするという――指紋は永久不変だというのでしょう。それならば一回という理論は出てくるかもわからないですね。それを、今まではそうでなかったのです。これは筋がおかしいのですが、指紋を何もとらなくても幾らでもほかに方法があるのだ、こういうふうに考えられるんですね。方法はいろいろ、写真でもいいし、サインでもいい、いろいろあるでしょう。そういう方法でやるということは考えないのですか。
  42. 遠藤要

    遠藤国務大臣 一つは、警察庁が云々ということは、私は承知しておらなかったわけで、先ほど先生からもお話がございましたが、もろもろ改善策が、国会内においても御意見があり、それぞれの団体等からも要請があったということも承知をしており、たまたま韓国大統領がおいでになったときもその問題に触れられた。そして、日本国としても、政府としても、結構でしょうという姿勢を出した。そういうようなことから、国と国の約束もあることでございますので、私としては、ぜひこれを改善したい、こういうふうな気持ちで閣議において御相談を申し上げ、各省庁の御理解をちょうだいいたしたというわけでございますので、警察庁がどうだったかということは、私は承知をしておらなかったということで御理解を願い、それから今先生の指紋の問題、サインでもいいじゃないかというような、自分なりにも法務省内部でもいろいろ検討させた結果ですが、まだ日本としてはサインや何かにはなじまないというような点もございますので、左手の人さし指一本一回ということがやはりこの正確さを保持させるというには、持っている御本人も一番いいじゃないかというような考えで、その方向で進めさせたということで御理解をちょうだいいたしたいと思います。いろいろ議論が、サインだけでいいんじゃないか、署名すればいいじゃないかとかいろいろの検討も加えたのでございますけれども、内部的には、一回の指紋の押捺で御理解を願えればなというような考えで今検討させておるというところでございます。
  43. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これは取り締まり法規として、警察側もどうしても指紋を残してくれと頑張っているのですよ、これ。よく聞いてごらんなさいよ。今ここで聞いたってあれだけれども、ゆっくり聞いてごらんなさい、それはそのとおりですから。  それから問題は、カードにするというのでしょう。これは不携帯のあれが、今法律は現行犯逮捕できますね。できるでしょう。これをなくさなければいかぬのじゃないですか。これがまた警察の取り締まりの対象にされているわけですよ。ここに問題があるのですよ。そういうわけでしょう。不携帯、現行犯逮捕できるでしょう。そこに問題があるのですよ。だから、見せろといって、持ってなければ逮捕しちゃうわけですよ。外国人取り締まりのためにそこが使われているので、だからこの不携帯を現行犯逮捕できないようにしなければだめですよ。それが一番大事なんですよ、この法案は。その点どういうふうに考えますか。――いや、ちょっと待ってください。ノーの答えならもういいよ、要らないよ、前から何回も聞いているんだから。そこら辺のところ前向きに、大臣大臣の良識にあれして――失礼だけれどもそこまで詳しいお話はあれかと思います。そこが一番大事なところなんですよ。そこら辺のところを十分お考えをお願いをいたしたいというふうに考えます。法案が出てからでいいです。  それから問題は、「必要な場合」ということですよ。必要な場合の幅とか解釈、そこら辺によって問題は全部変わってくるのですよ。ここのところをどう理解するか、どういうふうにするかということが大きな問題であるわけですね。それから、永住権者に限るとかなんとか限定しているでしょう、まだ案が出てこないわけだけれども。そこら辺もまた一つの問題になってくるのですよ。  こういうもの全体を含めて、法案ができるまでにいろいろな角度からこれを検討をしていただきたいということを大臣に要望をいたしておきますが、それに対するお答えをいただいて、次の質問に移りたいと思います。
  44. 遠藤要

    遠藤国務大臣 ただいまの御意見に対して十分内部的に検討してみたい、こう思っております。きのう民団の団長からもそのような要請がございました。十分検討さしていただきます。
  45. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 さっきの大臣の答えは、次の通常国会に出す予定だというような話に聞こえたのですよ。そうしたら、入管局長の答えは、出すということをはっきり言われたように私は聞いたのですがね。それは来年のことは予定だといえばみんな予定かもわからぬけれども
  46. 遠藤要

    遠藤国務大臣 まだ正式に手続をとっておりませんので、私としては予定だと、こう申し上げておるわけでございますので、御了解願います。
  47. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 今、それに関連するというか、外国人の問題として人種差別禁止の条約がありますね。あらゆる形態の人種差別撤廃に関する国際条約、これは百二十四の国が批准しておる。それで、アメリカは署名しているけれども批准してない、日本は署名も批准もしてない、こういう段階ですよね。  昭和六十一年二月十七日の予算委員会安倍外務大臣はこのことに関連をして、大原委員質問ですが、「現在政府としてはこの点も含めて」、ということは処罰義務の関係ですね。四条関係中心だと思いますが、「含めて検討作業を鋭意進めておるところでございます。こうした国内調整が終わり次第締結をし、そして批准に持っていかなければならないと考えております。」こういうふうに答えておるわけですね。  そこで刑事局長にお聞きをするのですが、今度の予算委員会、十月三日にありました。十月二日の日に外務省の国連局長とあなたが総理大臣のところに呼ばれて総理のところに行っておられますね。そこでどういう話が出たか、恐らくこれは四条の問題だと思うのですよね。二条の問題もあるかもわからないけれども、まあ四条の問題でしょう。そうすると、今言った外務大臣が言っておる「国内調整」というのは、どういう点が「国内調整」なんですか。必要とするのですか。
  48. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 既に御存じのことと思いますが、人種差別撤廃条約の第四条によりますと、「人種的優越又は憎悪に基づく思想のあらゆる流布、」こういったことを法律によって処罰すべき犯罪行為とすること、また、人種差別を助長し扇動する宣伝活動等を違法と宣言して禁止すること、さらに、人種差別を助長し扇動する団体への参加それ自体についても法律によって処罰すべき犯罪行為とすること、こういったことを求めているところであります。  こういった行為を処罰するということになりますと、これは、憲法で保障されておりますところの思想、良心の自由あるいは集会、結社、表現の自由、こういったものとの関係でいろいろ困難な問題があるわけでございまして、こういった点につきましていろいろな角度からの検討が必要である、こういうふうに考えておるところでございます。
  49. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 外務大臣は、「国内調整が終わり次第締結をし、そして批准に持っていかなければならないと考えております。」こう言っているのですよね。「ならないか」とは言ってないのですよ。「か」というインテロゲーションマークをつけて言っているのではなくて、「ならないと考えております。」とはっきり言っておるのですよ。外務大臣は、国内調整して批准に持っていくのだと言っているのですから。議事録ありますか。そうすると、それに沿ってやらなければいけないので、疑問がある、疑問があるじゃ問題の解決にならないのじゃないですか。そこをどういうふうにしていくのですか。この外務大臣の答弁とあなた方法務省の態度とはどういうことなんですか。それを総理から聞かれて総理説明したでしょう、二日の日に官邸に行って。どういうことが問題になっているの。どういうふうにしたいのですか。これが一点。  これに伴って、批准している国の中で、これはネオナチズムに関連して出てきた条約だというふうに聞いておるのですが、これに関連して、その後、イギリス、フランス、ドイツで立法しているわけですね。イタリアでもしている。イタリアの場合はちょっと違うのでしょう、立法の形式が。イタリアの場合は予防的な形を中心にしてやっているのですかね。  そういう国の立法等を参考にしたときに、一体日本としては、これは甚だ疑問がある、憲法二十一条、十九条との関係で疑問がある、疑問があるということだけでは問題の解決にならないのじゃないですか。外務大臣の答弁を見ると、やると言っているんだもの。批准すると言っているんだもの。「批准に持っていかなければならないと考えております。」と言っているんだもの。これは本当は予算委員会でやるのですけれども、やるので、そこで総理はあなたやなんかを呼ばれていると思うのですが、これ、どうなんですかね。
  50. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 国内法の整備の問題といたしましては、ただいま申し上げましたような行為を処罰することが憲法上どういう問題があるのかと、確かにこれは問題がないわけではございませんので、大きな問題があるわけでございまして、そういった問題を検討しているところでありまして、その中では諸外国でどのような立法をしておるか、こういったこともいろいろ調査し、また検討を加えながら慎重に今検討しておる、こういうところでございます。
  51. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これはアメリカは署名しているのですね、批准してないけれども日本は署名も批准もしてないわけですね。何か特別な事情があるのですか。これは外務省に聞くのかな。
  52. 林貞行

    ○林説明員 お答え申し上げます。  政府といたしましては本条約の趣旨及び目的を十分理解しておりまして、できるだけ早期に締結すべきという態度は変わっておりません。  この条約に日本政府としてまだ署名及び批准をしておりませんが、それは先ほどから法務省もお答えになっておりますように、本条約の中には人種差別の思想の流布、人種差別団体への参加等に関する処罰立法を求めている規定がございまして、これを憲法上の要請とどういうふうに調和させるかという非常に難しい問題がございますので、現段階では署名も差し控えているという状態でございます。
  53. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それではいつまでたっても調和しないのじゃないですか。どういうふうにやったら調和するのですか。どっちかを、この条約の解釈を変えるかあるいは憲法の解釈を拡大するか柔軟にするか、いろいろやり方があるでしょうけれども、あなた方のお話を聞くといつまでたったってこれは調和しっこないんだから、結局いつまでたったって批准もしないということになるのですか。安倍さんの言っているのと違うじゃないですか。どうなんですか、これは。どこに問題があるかはわかった。じゃ、問題をいつごろまでにどういうふうにしようということなんですか。そこをどういうふうに考えたらいいんですか。
  54. 林貞行

    ○林説明員 ただいま御説明申し上げましたように、この問題は憲法の問題にもかかわる重大な問題でございまして慎重な配慮を要するわけでございまして、具体的批准の見通しについては現段階ではっきり申し上げる段階にはございません。
  55. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 安倍さんの言っているのは「この点も含めて検討作業を鋭意進めておるところでございます。こうした国内調整が終わり次第締結をし、そして批准に持っていかなければならないと考えております。」とこう言っているんですよね。これはもちろん答弁は逃げ道はありますよ、いつまでにやるとも言わないし、調整が終わらなければやらないと言っているんですから。いつまでに調整をやるとも言ってないですね。「調整が終わり次第」というんだから幾らでも逃げ道はあるかもわからぬけれども、全体のトーンとしては前向きに検討して早くやろうという意見のようにとれるんですよね。そうなると、じゃどことどことが集まって憲法との関係を研究したり調整したりしているんですか。今やっているんですか、やってないんですか。どうなんですか。
  56. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 憲法との関係の問題等につきましては、現在も引き続き検討はいたしておるところでございます。
  57. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 だから、どこが検討しているんですか、それは。
  58. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 刑事局も検討いたしておりますし、外務省ともいろいろ協議をしているところでございます。
  59. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 その検討というのは共同してやっているんですか、単独でやっているんですか。いつごろからやっているんですか、それは。
  60. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 いつごろかと申されますと私も正確に申し上げかねるのでございますが、引き続き検討作業をしておるところでございます。
  61. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 外務大臣が今私が読み上げたように答えちゃっているんですよ。これは今私が言ったように逃げ道ある答弁です。ですけれどもこういうふうに答えているんですからね、これは前向きに皆が集まって検討を進めていかないといけないというふうに私は理解をしておりますが、ここで余りあれする直接のあれじゃなくて、外務委員会なり予算委員会などでやるべき筋だと思うのです。  これまた今言った四条に関連をして、ちょっと私は疑問に思うのは、これは非常に答弁は難しい答弁になると思うのですが、こういうような条文であるのに、イギリスやフランスやドイツというのはみんな批准しちゃって国内法をつくっているんですか。どんな国内法をつくって、それがどういうふうに作用しているんですかね。イタリアの場合はちょっと聞いたんですが、今でなくていいです、これは別の機会でいいです。で、これは非常に波及するところが多い条約といいますか、あれだとこう思うのですが、別の機会というか、これは恐らく予算委員会総理や何か、みんなのところで各省にお聞きした方がいいことだとこういうふうに考えております。  お聞きしたいのは、明年以降の法案関係について民事局長、刑事局長、それから調査部長ですか、にお聞きしたいわけですが、その前に一つお聞きしたいのはこのことなんです。不動産登記法の改正の問題が現在どういうふうに進んでおるかということ、それと、私の聞いているのでは、来月十何日ですか、全国の首席登記官を集めて会同をやりますね。そこまでたたき台がもう相当煮詰まっているわけですね。まあまだ煮詰まっているところまでいきませんか。どういう点が問題であって、それが法務局の仕事にどういう影響をして、そしてその結果として法務局の人員増との関係はどうなるのか、こういう点をまずお聞かせ願いたいと思うのです。
  62. 千種秀夫

    千種政府委員 まず不動産登記法改正の経過でございますが、これは実はいろいろな関係がございまして、民事行政審議会の意見も聞くということになっておりまして、これと並行して作業を進めているということが一つございます。もう一つ、これはコンピューターの技術的な問題がございます。いわゆるシステム開発と申しますが、どのようにコンピューターの中に入れて作動させるかという設計の問題がございまして、この作業もかなり時間を要する問題でございます。そのほかに、今パイロットシステムというのを板橋出張所でやっておりますが、この成果を評価してそれも参考にするということもございます。こういうものがすべて並行しながら相互に関連して案をつくりつつあるので、なかなか思うように進行していない。  御指摘のように、来月でございますか首席登記官会同がございますために、その資料を先日各地に配付したところでございますが、それは大体民事行政審議会にかけて討議していただいた項目を並べてあるという段階でございまして、これは集まって討議してみませんとまだ意見も固まらないし、こちらとしての方針も示しているわけではございません。  例えばどういうことかと申しますと、様式からいいますと、今縦書き三段になっております登記簿の記載を横書きにする、その場合どういう形にしたらいいかということもございますし、それから、謄抄本をとる場合に各登記所でとっておりますけれども、コンピューターでつなぎますとどこからでもとれる。しかし東京から大阪あるいは北海道のものをとろうとしますと大きな組織を使わなければならないためにコストもかかる。そこで乙号の管轄をどうするかとか、閲覧は目で見ますが、これをブラウン管で見るべきかあるいは紙に出して見るべきかというような問題もございますし、そのほか、今ある登記簿の記載を全部ファイルに入れてしまうのがいいのか、例えば共同担保の場合の目録のようなものまで入れるとかなりコストがかかりますけれども、そんなに必要ではないのじゃないかというようなこともございまして、コンピューターに入れる範囲をどうするかとか、その他もろもろのことがたくさんございまして、それについての方針というのは、固めつつありますが固まっていないというのが現状でございます。  それから一つ、それに関して増員の問題でございますけれども、まずこのコンピューターに移行するということを考えます場合においても、具体的には予算その他の関係がございまして、極めて短期間にするわけにはいかないと思います。今の予定では十年以上を計画しているわけでございますから、その間にはむしろ移行作業と並行作業とが重なるために忙しくなるということさえ考えられるわけでございまして、私どもは、当分の間人員について減員の必要は起こらないだろう、むしろ忙しくなるだろうというふうに考えております。
  63. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 大臣聞いていていただきたいのですが、国鉄関係の土地の処理で既に運輸省からか国鉄からか、ことし百五十万筆のものを法務局でやってほしいという要求があって、あなたの方ではとてもそれは無理だと言ったのかあるいは向こうでどういうふうに言ったのか、百万筆に減らして持ってきて、六月末まででどのくらい既に終わっていますか。それでそれが、法案が通らない段階でこういうことを聞くのはちょっとまずいので困るのですが、具体的にどうなるというふうに見ているんですか、国鉄関係の土地の登記が現状どうなっているというふうにあなたの方で把握していてそれをどういうふうにしていくのか、どういうふうになっていくのかということは。
  64. 千種秀夫

    千種政府委員 私ども国鉄当局から伺っておるところによりますと、国鉄関係の不動産の登記の筆個数ですか、四百万件ぐらいあるということを聞いております。それを分割などしますと全部移転登記というようなことが起こってまいります。その場合に、そのままではなくてあるいは分割をするとか、あるいは既に国鉄の名義になっておるものはよろしいのでございますが、なっていないものもあるやに聞いております。そういうことをあれこれしまして全部完了するまでにはその倍あるいはそれ以上、ですから八百万件から一千万件に達するような件数になるというふうに聞いております。これは国鉄当局としましても、事務的に一遍にできることではございませんし、私どもも一遍に受けられる数ではございませんので、大体七年くらいに分けて行われるのではないかという予想を聞いております。  目下のところ、おっしゃるように百万件くらいの件数というものが考えられるわけで、既に出ておりますのが四十五万件くらいは出ており、かなりのものが済んでいるというふうに聞いておりますが、当面、この国鉄法案が審議中に出てくるものというのは国鉄の名義になっていないもの、これを国鉄の名義にするという登記でございます。ですから、目下やっておりますのは、法案に関係のない登記が出ているという状況でございます。
  65. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 法案に関係ない質問としてお聞き願いたいのですが、そうすると、それをやっていくのに人員の問題などはどうなのですか、それが一つありますね。これは大臣に聞いておいていただきたいのですが、今東京近辺、土地が物すごく上がって取引が非常にふえているわけでしょう。同時に、この前聞きましたら、土地に抵当権をつけて銀行やなんかから金を借りるでしょう。法務局へ持っていくでしょう。そうすると、すぐその日にできるとお思いですか。どのくらいかかるというふうに思われます、大臣。いや私は素朴な感覚を大臣に聞いているのです。
  66. 遠藤要

    遠藤国務大臣 実は先般法務局視察をさせてもらいました。それで早速次の日、十七日閣議がございましたので、そこで私から、東京法務局なり板橋なり見せてもらった、ちょうど金貨の予約券を銀行が配布する日であるので、その行列かなと思ってずっと入っていったら自分の視察する法務局であった、こういうふうな話を閣議で申し上げたわけでありました。中に行って、そういうふうな点で登記を進める人また受け付けする職員、精神的、肉体的な心労は大変だ、そういうような点をぜひ皆さん方に御理解願って、増員はもちろん近代化の予算措置をぜひお願いしたいというようなお話を閣議で申し上げたわけでありまして、これに対して、官房長官総理も珍しくうなずいて全くだというような感じをさせていただいたので、私どもとして今先生の御心配になっている増員問題について積極的な姿勢で人員の獲得をしたい、こういうふうなことでございますので、御理解願いたいと思います。
  67. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これは法務委員会法務大臣に言うだけでは問題解決しないのですよね。これが一番ネックになっているのは、ネックという言葉は悪いかもわからぬけれども大蔵省と総務庁長官でしょう。長官と言っては悪いから、総務庁か。だから、ここら辺のところ全体を含めて、これは与党の皆さんも野党も一緒になって問題の前進に当たらなければいけないというふうに考えているわけです。聞きましたら、抵当権をつけて金借りるでしょう。それを調査するのに三日かかるというのです。それから記入するのに三日かかる。一週間かかってしまうわけです。これは短い方だというのですよ。これはこれから年末にかけて金借りるのに大変な騒ぎになりますよ。借りられなくなってしまう、銀行に間に合わなくなってしまうからどうにもしようがないということになりますね。ここら辺のところの実態をよく調べていただいて善処をしなければいけない、こう私は思うのです。そこら辺のところは十分御配慮願いたい。これは委員長なり与党の理事皆さんともよく御相談をして、みんなでやらなければいけないことだと私は考えております。  法務省というのは率直に言うと予算をとることが下手なところなのです。御案内かと思いますが、秦野さんが法務大臣になったときに、秦野さんと話したら、こんなに下手な役所だと思わなかったなんて言ってましたけれども、官房長しっかり頑張ってくださいよ。そんならあなたやってくれないかと秦野さんに言ったことがあるのですが、大臣、先頭に立ってぜひやっていただきたい、こう思うのです。  そこで、今の問題を含めて民事局関係それから刑事局関係、その他の明年度の通常国会における予定として考えられている法案について概略説明をお願いしたいと思います。余り詳しくなくてもいいですけれども
  68. 根來泰周

    根來政府委員 検討中のものを件名だけ申し上げます。既に御承知のように法案提出についてはいろいろ手続がございますが、これはまだ手続は全く終わっておりません。したがいまして、当省の腹づもりあるいは検討課題ということで御聴取いただければありがたいと思います。  まず、毎年お願いしているのは裁判所職員定員法の一部を改正する法律案でございます。これは毎年お願いしているので来国会もお願いすることになろうかと思います。それから、ただいま独立簡裁の統廃合ということが問題になっております。これにつきまして下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案ということでございます。あとはお尋ねがあればまた各局から御説明すると思いますが、民法等の一部を改正する法律案、仮称でございますけれども、これは特別養子関係と聞いております。それから電子情報処理組織による登記手続に関する法律案、これも仮称でございますが、民事局関係検討しております。  それから刑事局関係では、刑法及び人質による強要行為等の処罰に関する法律の一部を改正する法律案、これも仮称でございます。それから、これも仮称でございますが刑事確定訴訟記録法案、これは刑事訴訟記録を何年間保存するかというような問題でございます。それから、毎国会いろいろ御心労を煩わせております刑事施設法案関係でございます。これも検討中でございます。  それから、先ほど来お尋ねがあります外国人登録法の一部を改正する法律案、こういうものを現在検討中あるいは提出して御審議をお願いするかということを考えております。
  69. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 今法案の名前の出たところの関係の各局長さんからもう少し詳しくお話を願えませんか。
  70. 千種秀夫

    千種政府委員 民事局関係で申し上げますと二本ございますが、その一つは、先ほど申し上げました、私どもが不動産登記法の改正と言っている法律でございます。もう一つは、民法の一部改正と言われましたが、これは特別養子に関する立法でございます。  前者につきましては、先ほど申し上げましたようなわけでいろいろな内容を今検討中でございまして、これは時間のかかる作業でございますから提出に至るまでにはなかなか厳しい情勢でございます。  もう一つの特別養子の方は、法制審議会の身分法小委員会において今日までずっと検討を重ねてまいりまして、もう二、三回作業を詰めれば答申までいけるのではないかという見込みでございますので、私ども関係のところといろいろと協議をいたしましてその作業を煮詰めているところでございます。これは一番最短距離にございますので、恐らく提出できるのではないかと今考えております。
  71. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 それでは、刑事局関係について御説明いたします。  まず第一は、刑事確定訴訟記録の保管、閲覧等に関します法律でございます。刑訴法の五十三条で「訴訟記録の保管及びその閲覧の手数料については、別に法律でこれを定める。」と規定しているのでありまして、これを受けまして、事件が終結いたしました後の刑事訴訟記録の保管につきまして、どこが保管するのかあるいは保管の期間をどうするか、その閲覧についてはどうするか、こういったことを内容といたします法案を現在いろいろ検討作業を進めておる段階でございまして、刑事局といたしましては次期通常国会に提出いたしたいという考えで鋭意作業を進めておる段階でございます。  次に、人質防止条約等の関係の立法でございます。これは最近の国際的なテロ活動を反映いたしまして、我が国といたしましても人質防止条約及び国家代表等保護条約を締結することが国際的にも強く要請されるに至っているのでありまして、これらの二条約を締結するためには刑事法上の立法措置が必要でございますので、これにつきまして現在作業を進め、法制審議会で御審議を願っているところでございます。法制審議会で答申が出ますれば、その後できるだけ早く法案化のために努力いたしたいと思っております。  それから、その次にコンピューター関連犯罪立法でございます。これは、最近のコンピューターの著しい発展に伴いましていろいろな反社会的行為というものが発生いたしておりますし、また今後発生することが予想されるわけでございます。これらの反社会的行為に適切に対処するために現行の刑罰法令を見直して必要な整備をするということでございまして、これも現在法制審議会で御審議を願っているところでありまして、答申が出ますればできるだけ早く法案化いたしたい、かように考えておるところでございます。
  72. 敷田稔

    ○敷田政府委員 矯正局関係について申し上げます。  監獄法の全面改正でございますが、刑事施設法につきましては昭和五十七年に提出いたしまして実質審議に至らないまま昭和五十八年に廃案となりまして、先国会諸般の事情によりまして提出に至らなかったという事情先生御高承のとおりでございますが、その後刑事施設法関係につきましては鋭意さらに検討を深めまして、関係機関との協議もさらに実質的なものといたしまして、いつでも提出できる状態にございます。他方、同時提出を期すべき留置施設法案につきましては、担当庁は諸関係機関と実質的な協議を進めているやに聞いておりますので、予定どおり次期国会に提出されるものと確信いたしております。  監獄法の全面改正を期したいといいますのは矯正局の年来の念願でございまして、その念願にはいささかも変更ございませんので、提出の暁にはひとつよろしく御審議を賜りたいと思っております。以上でございます。
  73. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 矯正局長さん、今同時提出すべきとかなんとかという話がありましたけれども、何も同時提出しなくたっていいんじゃないですか。そこまであなたの方で気を使う必要はないのじゃないかとも思うのですがね。  変な話で申しわけないんだけれども、僕は民事局長と刑事局長司法法制部長は来てくれと言ったけれども、あなたの方から進んで来られたのですか。
  74. 敷田稔

    ○敷田政府委員 矯正局もお呼びいただいていると思って喜んで参ったわけでございますが。  刑事施設法自体で絶対に立法化できないのかということをお尋ねでございますと、法制上絶対に不可能かと言われれば必ずしも不可能ではないのではないかと思われますが、しかし刑事施設法の中に留置施設法の条文を引いた案文もございますし、また実質的には留置施設法において留置する被逮捕者と被勾留者の処遇の均衡をとる問題でございますとか、あるいはその他の事務分配の問題などがございまして、やはり同時に解決されることが最も円満な最も望ましいものであろうと思いますので、ぜひひとつ同時に御審議を賜りたいと思います。
  75. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それが同時提出されるとせっかくの監獄法がだめになっちゃうのですよ。そこが一番大事なところなんで、あなたは理論的には切れると言うのだから、切れないことはないと言うのだから、これは切ったらいいんですよ。そう難しいことでもないように思うのですよね。事態の推移を見なきゃならぬことだと思いますけれども。日弁連とそっちの方の話は進んでいるのですか。そこはどういうふうになっているのですか。
  76. 敷田稔

    ○敷田政府委員 私どもの理解いたしております限りでは相当の進展を見せていると承っております。
  77. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで、常々疑問に思っていることを二つとの関連で聞くわけですが、今の四十八時間ですね、逮捕からの時間が。それで、二十四時間であれして十日間の勾留ということになるのでしょう。その四十八時間というのは一体どこで、どういう理由から決まったんですか。合理的な理由はどこにあるのですか。私はいつもわからないのですけれども捜査の基本問題ですわね、これは。どういうふうに理解したらいいんでしょうかね。どこから出てきたんですか、これは。
  78. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 これは、戦後刑事訴訟法ができました際どういう論議があったかということでございますが、その辺、私、今正確に記憶いたしておりませんが、いずれにいたしましても、逮捕いたしました後、身柄の拘束を継続するためには再度裁判官の審査を受けるということであろうかと思います。
  79. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 急に聞きましたから十分な準備ができてないのだと思うのですが、よくわからないのだ。私の頭の中にあるのは、捜査というのは今の訴訟法の形態の申で一体だれが主体になってやるべきものなのか、四十八時間は別ですよ、それ以後だれが主体となってやるべきかということが、これが抜け切れないのですよ。今一番の大きな問題は検事と警察官との関係でしょう。これが一体どういうふうな形になっているかということが各国でも一番大きな問題になっているんじゃないか、こう思うのです。国々によってやり方が全く違うわけですよ、これは。だから一概にそうは言えないのですけれども。だから、例えばアメリカでどういうふうになっているかということで、この前ある検事が向こうへ四カ月間行って勉強してきましたね。それは検事と警察官との関係について勉強しているわけでしょう。イギリスなんかでもそういう制度が変わったとか変わらないとか、いろいろな話があるのですが、それがやはり全面的にかかわってくるわけですからね。そこら辺のところはゆっくり研究しておいてもらいたい、こう思います。これは基本問題なんですよね。だから、私は、そこまでいかないといかぬのじゃないか、こう考えてはおるのですが、まあ別として……。  もう一つ通告してありますのは少年事件の手続に関連してなんですが、これは、率直に言いますと私自身がジレンマなんです。ということは、これは少年手続のことをずっと聞いていきますというと問題がいろいろな方面へ行っちゃって、そして雑な言葉で言えばあなた方のあれに入っちゃうということも考えられるので、ここら辺のところを注意しなきゃいけないと思っているものですから、これはなかなか質問の仕方も難しいし、歯切れが悪いのですよ。難しいところなんです、これは。  ですが、少年事件、例えばみどりちゃんの事件だとか、それから今度草加の女子中学生の事件とかありましたね。そこで、「自由と正義」に出ています論文といいますか、それなどを読んでみますというといろいろな問題が出ている。事実関係は別ですよ。事実関係をここで聞いたって始まりませんというか、あれですから、聞くべきじゃありませんから、証拠判断を聞くわけでもありませんから。例えば少年の場合に警察官が家裁送致する。そうでしょう。そうすると今度は、鑑別所に入れておくのが十四日間ですね、原則として。この十四日間というのは、これまた収容期間が十四日間でしょう。十四日間以内に少年の事件というのは処理しなきゃいけないということになるのですか。実際は十四日、十四日で二十八日間にしてますけれども。それは収容期間だけの規定であって、どこから出てきているのか、そのことが。その期間内に処理をしなければいけないとなると、これは実際問題としてとても難しいですね、事件が。どういうことからこういうのが出てきたかということになってくると、その基本がこういう考え方だというのですね。いわゆる国親思想というのですか、その考え方だというのですが、私はそれがよくわからないのですよ。だから、この国親思想というのは一体どういうものであって、それで少年法ができたときどういう経過をたどってこれができたのか、そこら辺のところをちょっと御説明をお願いしたい、こう思うのです。
  80. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 少年法の精神は要するに保護主義と申しますか、成人の刑事手続とは違いまして少年の保護、更生のためにいろいろな角度から配慮する、こういう保護主義の思想で少年法が規定されておるというところでございます。
  81. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 保護主義の思想によってできているのはわかるのですけれども、ではそのことが近代の刑事訴訟法、近代と言っちゃあれかもわかりません、今日本で行われている刑事訴訟とどういう点が違ってどういうふうに絡んでくるのか、国親思想というのはよくわからないのですね。だれが言い出した言葉かよくわからぬけれども、どういうことなんですかね。保護思想だから、保護主義だからどうだというのですか。そこは刑事訴訟との絡みはどういうふうになるのですか。
  82. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 成人の刑事手続と対比いたしました場合、例えば証拠調べの関係につきましても、伝聞証拠の排斥といったような厳格な証拠調べ手続が成人の場合は規定されておるわけでございますが、それも少年の場合には規定されておらないわけでございます。また、いわゆるその対審構造あるいは裁判の公開ということが成人の刑事手続では行われておるわけでございますが、少年につきましてはそういう手続ではなしに審判は非公開で行う、こういうことになっておるわけでございまして、そういったことが少年の保護主義の思想のあらわれ、こういうことになると思います。
  83. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 では私の聞いた十四日というのはどこから出てくるのですか。十四日以内に何をしろということになるのですか。何をしなければいけないということになるのですか。
  84. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 これは家庭裁判所審判を行うために少年鑑別所での資質の鑑別といいますか、こういったことを行うための期間と申しますか、そういうことで規定されておるわけでございまして、やはり少年の場合はできるだけ早くそういった資質の鑑別等も終えて最終的な保護処分を行う、こういう思想のあらわれであろうと思います。
  85. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 確かにそういう保護主義のあれはいいのですよ、私はそれを是とするものですから、これ以上余り聞いていくとまたかえってこっちが変な道へ入っちゃうから聞きませんけれども、そうすると、家裁へ送る場合には事件のあらゆる記録を全部送らなければならないわけですね。そうすると、この浦和の場合なんか何か重要なものを送らなかった、こういうようなことが書かれているのですけれども、これは事実関係としてどうなんですか。
  86. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 検察官が捜査を遂げまして家庭裁判所事件を送致いたすに当たりましては、それまでに収集いたしました証拠を家庭裁判所に送ることになるわけでございます。ただ、現実の問題といたしまして、例えば死体の解剖を行って死因の鑑定を鑑定人に依頼した場合に、鑑定人が鑑定書を作成するにつきましてはそれ相応の時間が必要になるわけでございます。その他いろいろな鑑定を依頼いたしたといたしますれば、これまたそういったものの鑑定にそれ相応の日時を要するわけでございます。そういう意味で、事件が発生いたしまして間もなく犯人が逮捕され、しかも二十日以内の勾留期間内に家庭裁判所事件を送致する、こういうようなことになりますと、鑑定書自体がまだ作成されておらない、こういう問題が一般論としてあるわけでございます。そういう場合は、事件を家庭裁判所に送致いたします段階で物理的にそういったものを家庭裁判所に送ることはできませんので、それが作成されまして検察官の手元に参りますれば速やかに家庭裁判所に追送する、こういうことになるわけでございまして、決して検察官が一部の証拠を殊さら検察官の手元に残しておく、こういうようなことはいたしておらないのであります。
  87. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 少年の手続の問題については、これはいろいろな問題を含んでいて非常に難しいと私は思うのです。やはり保護主義というのはきちんと貫かなければいけないけれども、かといってそれがあいまいな証拠の中で認定されて確定をしないうちにこれは執行されてしまうわけですから、こういう問題を含んでおるし、それから事実関係の認定は必ずしも厳格な証拠によらないで認定されてしまうということが保護主義という名のもとに一体許されていいのかどうかという基本的な問題もあるのじゃないかと思うのですが、その保護主義というものと刑事訴訟との絡み合いが、私には率直に言うとまだわからない点といいますか疑問になる点がありまして、考えがまとまっておりませんので、これ以上のことはお聞きをしないことにいたします。いずれゆっくり研究させていただきたい、こういうふうに思っております。  そこで、全体として大臣から、私実は今度の国会のときに大臣から所信表明があるのだと思っていたのです。そうしたら、臨時国会では所信表明はないんだというから、そうかと思って、そこで今後の問題の中で、さっき出てまいりました法務局の人員増、予算の獲得――法務局だけじゃありませんけれども、全体を含めて大臣としてはどういう決意で進まれていくのか、こういうことだけをお聞きをして、私の質問を終わりたいと思います。
  88. 遠藤要

    遠藤国務大臣 今後どういうふうにして進んでいくかというお尋ねでございますけれども、私としては何としても法の秩序ということに対して全力投球をして、また人権の維持という面等に力を注いでいきたいと思いますが、いろいろ行政の中において予算と人員の問題に関係が深いわけでございますから、行革のさなかでもございますけれども、どうもよその役所と法務省とがややともすると財政当局や何かから同一視される、ここは事業を持たない役所でございまして、私、大臣に就任して予算なり人員なりを見てあれっというふうな感じさえ持ったわけでございまして、事業を持っている建設省や農林省と一緒になってやっておったのではとても将来の日本ということに対して大きな暗影を投ずるんじゃないか、そういうふうな点を考えました。どうしても法の秩序、人権擁護という立場を考えると、人員の確保とそれにならう予算措置だけはがっちり組んで、そして法務省全体が活力を持って頑張っていってもらいたいというような考えで進ませていただきたいと思います。
  89. 大塚雄司

  90. 小澤克介

    小澤(克)委員 まず最初に、徳島新聞社の件についてお尋ねをしたいと思います。  百一国会でしたか、当委員会におきまして当委員が、全国で唯一、徳島新聞社が商業新聞社であるにもかかわらず民法上の公益法人になっている、そのため税法上も大変な特典を得ておりますし、また逆に言論機関であるにもかかわらず主務官庁の監督下に服するといったことから、非常に問題ではないかということを指摘いたしましたところ、実は主務官庁が不明であるということになりまして、最終的には文部省の文化庁が主務官庁ということに新たに決まったいきさつがあったわけでございます。  そこで、その後の文化庁当局としての徳島新聞社に対する指導の経緯をまずお答え願いたいと思います。
  91. 大谷利治

    ○大谷説明員 先生お話しのように、社団法人徳島新聞社につきましては、昨年文部省の所管ということで、その仕事、直接的には私ども文化庁文化普及課の方で具体的には担当していくということになったわけでございます。  それで、今御指摘がありました、新聞発行事業が社団法人で行われているわけでございますが、そのことにつきましては、公益法人全体につきましての昨年九月の総務庁の勧告を受けて各省が相寄り、その公益法人の運営に関する指導監督基準というものが制定され、この十月にそのものを各都道府県に通知をしておるわけでございますが、その線に沿いまして、私どもの方で徳島県教育委員会等においでいただいたりしながら、いろいろ相談をしながらお話を申し上げているというところでございます。
  92. 小澤克介

    小澤(克)委員 県教委とも相談しながらお話を申し上げているということでしたが、どういった方針で指導をしておられるのでしょうか。
  93. 大谷利治

    ○大谷説明員 その公益法人の場合に、営利企業が行う事業と類似した法人というものである場合には、これは当然これが公益法人として認可されました場合には、まさにその時代にあって公益法人ということで認可されたわけでございますが、その後の社会情勢の変化などによって営利企業による経営が普及してきたというようなこと等から、それと競合するといいましょうか、類似の事業を行うという結果となってきたものについては、公益法人としてふさわしい事業内容へ改善していく、あるいはそういうことが無理であるといったような場合には、例えば指導監督基準には具体的に規定してございませんけれども、株式会社等へ移行するということも含めて検討をしてもらうようにということでお話を申し上げているという段階でございます。
  94. 小澤克介

    小澤(克)委員 検討してもらうようにといいますと、その検討というのは文化庁での検討ではないのでしょうか。どちらで検討しているということでしょうか。
  95. 大谷利治

    ○大谷説明員 公益法人の場合、まず第一にその法人の自主性、自律性というものを尊重をしなければならないわけでございますし、それから、それの直接の監督の都道府県教育委員会の考え方というものも当然尊重しながら考えていかなければならない事柄と、大前提はそう思いますけれども、この公益法人で企業と競合するようになったものをどういうふうに考えていくかということは、あえて申しますと、今例えば社団法人徳島新聞社につきましてそういうものを考えるということになりますと、本邦初といいましょうか、パイロットケースのようなものにもなろうかというふうな考え方もございます。  それから、公益法人から営利企業に転換をしていくということにつきましては、その具体的な方法等については、先ほど申しました、指導監督基準を策定しました中央官庁が相寄って協議しているわけでございますが、そこで引き続き検討するという形にもなっております。そういうところとも相談をしながら、私どもの方自身もそれなりの検討をしていく、一方的に法人だけというような性質の事柄ではないというふうに理解はいたしておるわけでございます。  例えば、勧告等で直接例示的に営利企業による事業というふうに挙げられておりますのが、ゴルフ場、自動車教習所といったようなものは、その後営利企業と競合するようになってきたというようなものでございまして、そういうものにつきましても公益法人としてふさわしい事業にするように、あるいは株式会社等に移行するようにということでもございます。そうしたゴルフ場、自動車教習所と共通する面もございます。そういう点につきましては、国の方、指導する方自身としても具体的に検討をしなければいけない。端的に申し上げますと、やはりお互いに一方的に指導、指示をしていくという事柄ではなくて、両方相寄りながらいい方法を考えていくということであろうかというふうに考えております。
  96. 小澤克介

    小澤(克)委員 質問は、どこでどういう検討をしているかということだったのですが、どうなんですか、文化庁として内部で当然一定の検討をなさっているでしょうし、それから当該のこの法人の方でも、先ほど自主的というお言葉がありましたけれども、自主的に何らかの検討あるいは方針を打ち出そうという姿勢があるのかと思いますが、あるいは県教委にもそれなりのお考えがあろうと思いますが、どこでどういう検討が具体的に持たれているのか、あるいはその相互間の交渉がどのように持たれているのか、その辺もうちょっと具体的にこの間の作業を、どういう作業が進められていったのかを教えていただきたいのです。  それともう一つ、本質的には自主性にまつというお話がありましたけれども、あるいは県教委の検討にまつというお話がありましたが、これは機関委任事務でございましょう。ですから、本来的にはその委任者である文化庁の方で方針を出すべき事柄ではなかろうかと思うわけでありますが、そこら辺を含めまして、具体的にどういう作業がこれまでなされてきたのか、どういう会議がどこで一体いつ行われてきたのか、その辺、少し具体的に言ってください。
  97. 大谷利治

    ○大谷説明員 法人の方におきまして検討がなされました、まあドラフト的な案をいただいておりますが、これはまだ全くそういう検討の過程でございますので、その中身を申し上げるのは御寛恕をいただきたいと存ずる次第でございますが、それはそれといたしましても、まず私ども普及課内で検討をしているという段階でございます。  なお、それなりの案が出ましたら、それは文部省内で、それから先ほど申し上げました国全体での協議会というところで順次煮詰めていって、こちらの方の考え方あるいは例示的な形のもの等を県を通じて法人の方に指示していければというふうに考えておる段階でございます。
  98. 小澤克介

    小澤(克)委員 これは文化庁の所管ということに決まったのがいつでしたかね。六十年六月五日の私の質問のときには既に決まっていたわけですから、たっぷり一年以上はたっていると思うのですが、決まったのはいつですか。
  99. 大谷利治

    ○大谷説明員 昨年四月二十六日に関係省庁で確認をいたしまして、文部省ということにいたしております。
  100. 小澤克介

    小澤(克)委員 一年半たっているわけでございますが、内部からの検討が若干あるけれどもまだ発表の段階ではない、それから文化庁自身としては寄り寄り検討しているというようなことのようでございますが、総務庁の基準が出たのがことしということですか。――そんなこともあるようですが、これは問題点はもうわかっているわけですからね。前から指摘しておりますように、他の商業紙と全く同様の新聞事業を行っているものが一つだけ公益法人になっている。したがって、税法上特典を受けておりますし、また最初に指摘したとおり、逆に主務官庁により言論機関が監督を受けるということが果たして妥当なのかどうかということでございますから、問題点はわかっているわけですからもう少し進捗しているかと思ったのですが、大変残念だと思います。  それで、方向としては、業務内容を公益法人にふさわしいものにするという方向と、あるいはこの際組織を変更するという方向、それらを含めて検討中であるということでございましたが、新聞社の業務内容を今さら変更するといったってちょっと難しいのではないかという気がするわけです。また、公益法人にふさわしい記事を発行しろなどと言って主務官庁が監督するということは、まさに言論機関としてはまずいのではないかという気がするわけでございますので、おのずから方向性はわかっているのではないかという気がするわけです。  そこで、一年半たっているわけですけれども、今後のタイムテーブル、どの辺を目途に結論を出すのか、どういうお考えなのか、そこをお答え願います。
  101. 大谷利治

    ○大谷説明員 先ほど御回答申し上げましたように、これを営利企業の方に転換する、株式会社としていくということにいたしますと恐らく初めてのケースで、そのゴルフ場あるいは自動車教習所等々の事例と同じ法理という形で法的に処理をしていく必要があろうかと思います。そうした点等がございますので、私どもの方の成案、それからほかの横並び、各省庁全体としての方針ということである必要があろうかと思いますので、今どういうタイムテーブルでというところはちょっと申し上げかねるところでございますが、よろしくお願いいたします。
  102. 小澤克介

    小澤(克)委員 税法上の特典というのは、毎年毎年所得税で大変な特典を受けているわけですよ。めども言えないというのはちょっと納得できませんね。問題点はわかっているわけですから、調査あるいは考え方をまとめるのにそんなに時間がかかるということにはならぬのではないかと思うのですが、そういうお役所仕事ということでは困るわけです。およそいつごろまで、そのぐらい言ってくださいよ。
  103. 大谷利治

    ○大谷説明員 例えば一つの事柄といたしまして、社団法人が株式会社に物を出資する、それを社団法人が株として取得することが可能かどうか、それを処分をした場合どういう方法があるか。前例といたしまして、例えば東京新聞というのは社員で資産を提供してその対価として合った株を社員が退職金というような形で分配したというようなことがございますが、こうしたものが法的に十分可能なことかどうか。そうしたことを一つ一つ具体的に詰めていく必要があろうかと思いますので、できるだけ急いでまいりたいとは思いますけれども、いついつまでにというところは、大変申しわけございませんが、今申し上げかねるところでございます。
  104. 小澤克介

    小澤(克)委員 納得できませんね。今おっしゃったようなことは、商法ですか、会社法に多少詳しい人、それから現物出資あるいは税法も絡むのかもしれません、それから新聞社については特別の法規がたしかあると思いましたが、株式の譲渡制限ですか、その程度のことだったらちょっと法律に詳しい者が一晩詰めれば詰まる問題だろうと思うのです。何年もかかるという性質のものではないと思いますので、年内あるいは年度内ぐらいには何か方針ぐらい出すべきではないかと思いますが、具体的な組織変更云々というのは多少手間暇かかるでしょうが、方針は年内ぐらいには出せませんか。
  105. 大谷利治

    ○大谷説明員 できるだけ早く検討をさせていただきたいと思っております。
  106. 小澤克介

    小澤(克)委員 では、そういうことでお願いいたします。  次に、きょうは裁判所の方に来ていただいておりますので、若干伺っていきたいと思います。  裁判所で一定の結論が出まして、判決なりあるいは仮処分の決定なりが出ましていざ執行という段階になりますと、裁判所による執行というものもあるようですが、執行官による執行というのがなされるわけです。それで、この執行官というものの地位についてまずイロハからちょっと教えていただきたいのです。裁判所法によりますと、執行官というのは裁判所に置かれる機関のようですが、どういうことになるのでしょうか。官署としての裁判所に帰属する一つの機関、裁判所を構成する機関というように考えてよろしいのでしょうか。
  107. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 執行官は、今委員が御指摘になりましたとおり、裁判所法それから執行官法に規定されておりますとおり、裁判所の職員として勤務する者でございます。その職務の内容につきましては執行官法で規定されておりますが、御承知のとおり、民事の関係行政執行等の実施が中心的な職務でございます。そのように申し上げてよいかと存じます。  性格としては、執行官一人がそれぞれ国の機関として行動するということになりますので、裁判官等と同じような独任制の官庁ということになろうかと思います。
  108. 小澤克介

    小澤(克)委員 官署としての裁判所に帰属する機関であるが、職務は独任制の官庁であるというやや特殊な地位にあるのだろうと思うのですけれども、これは執行官に対する監督というのはどういう構造になるのでしょうかね。司法行政上の監督権の所在と、それから、ちょっと私よくわからないのですが、恐らく訴訟上も判決や決定の執行をやるわけですから、その範囲内では、判決あるいは決定、その債務名義をつくったところの裁判所の判断に何らか拘束、監督されるのじゃないかという二つの面があるのじゃないかと思うのですが、その辺どういうふうな構造になるのか、ちょっと教えてください。
  109. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 執行官が現実に執行行為を行う場合は、もちろん債務名義、裁判の内容に記載されたところに従って行うわけでございます。  ただ、執行官が職務を行います場合に,独立して、今申しましたような判決その他の債務名義の執行を行う場合と、それから執行裁判所が例えば強制競売を行うような場合に、執行裁判所の補助として例えば不動産の現況の調査を行う、そういうふうな職務、二種類ございますので、執行官が独立の執行機関として仕事を行います場合には、まさに独立の判断で職務を行うということになります。それにつきまして、当事者から何らかの異議があります場合には、御案内のとおり、執行異議等の申し立てによりまして裁判所の判断を仰ぐ、そういうことになります。  それから、先ほど申しましたような不動産の現況調査等でございますと、これは現実に執行裁判所を補助する立場で仕事をいたしますので、執行裁判所からいろいろ指示を受けて仕事をするという面もございます。  それから、今申しましたのは職務の執行に関してでございますが、それとはまた別に、地方裁判所に所属する裁判所職員でございますので、当然地方裁判所一般的な監督に服するということはあるわけでございます。例えば具体的に申しますと、地方裁判所に執行官を監督するための監督官あるいは監督補佐官というふうなものが置かれておりますし、そういうようなものから一定の機会に査察を受けるというふうなこともございます。
  110. 小澤克介

    小澤(克)委員 今の司法行政上の監督、これは官署としての裁判所、それを設置しているところの地方裁判所の監督を直接には受けるということだろうと思いますし、それから、訴訟上の監督というのは、例えば執行方法についていろいろな特殊な許可を一々受けてやりますね、援助許可であるとか、早朝、夜間、祝日、休日の執行の許可を受けるとか。この辺はそうするとどこの許可を受けてやるということになるのですか。
  111. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 今御指摘なさいましたような点につきましては、個々的に法律に定めがございまして、それぞれ執行裁判所の許可を受けるということになっております。
  112. 小澤克介

    小澤(克)委員 そこで、執行官というのがどういう立場にあるのかというのは何となくわかったような気がするのですが、これは、裁判官のように特に独立性について憲法上の規定があるとかいうような、そういった機関ではないようでございますので、そうしますと、どういったことになるのですかね。裁判所の判決あるいは仮処分等の決定に基づいて独任制の機関として執行するわけですから、その範囲内で一定の裁量権があるのは当然でしょうが、その裁量の逸脱等については一々上級の裁判所等によってのみ批判されるということではなくて、直接監督を受けるということにはなるのでしょうね。どうなんでしょうか。
  113. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 具体的な執行事件を行うにつきましては、もちろん執行官は、先ほど申しました債務名義の内容のほか、法律、規則、命令等に従わなければいけないことは当然でございます。  ただ、そのような仕事を具体的に行うことにつきましては、先ほど申し上げたとおり、例えば、具体的に執行裁判所の許可を要するとかいうふうな場合にはもちろんその許可を得るわけでございますし、それから、執行官の行為が違法であるということでございますれば、例えば当事者の申し立てによって執行裁判所からその判断を経て異議申し立てについての裁判が出ますので、もちろんそれに従うということになります。ただ、一つ一つの具体的な事件の執行について官署としての地方裁判所がああしろこうしろというふうな指揮はできないわけでございます。  これは、例えば今おっしゃったような、憲法の規定に執行官のことが特別に書いてあるというわけではございませんが、民事執行法あるいは執行官法の規定をごらんいただきますとおわかりのとおり、個々の事件について、例えば上司の指揮を受けるとか、あるいは官署としての地方裁判所の指揮を受けるという構造には全くなっておりませんでして、執行官の判断によって独立して職務を行うという構造になっております。  先ほど申しました地方裁判所司法行政上の監督と申しますのは、これはやはり一般的な監督でございまして、例えば、日ごろ執行事務の処理が遅滞するというようなことがありますと、もう少し迅速にやるようにということもございますし、あるいはまた、一般的に当事者に対するいろいろな批判等を受けるようなことがあると、そのようなことはないように十分に心得なさいというようなことがございます。具体的に一つ一つの事件で、このように執行行為をしなさい、こういうふうにしなさいというのは、先ほど申しましたとおり、具体的な執行裁判所の許可の規定がある場合の執行裁判所の指示、あるいはまた当事者から執行異議申し立てがあった場合に対する裁判で指示される、そういうことになりまして、一々上司が指揮監督するという性質のものではございません。
  114. 小澤克介

    小澤(克)委員 なるほど、独任制の官庁であるということから多分そういう帰結になるのだろうと思うのです。  そこで、具体的な執行行為に当たって執行補助者を使うということが実際に行われているようなのですが、この選任というのは、これはどうなのですか、執行官の全くの裁量ということになるのでしょうか。
  115. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 執行官が、いわゆる補助者とおっしゃいましたが、を使うという場合は、執行官規則の第十二条にこういう規定がございます。「執行官は、民事執行法その他の法令において執行官が取り扱うべきものとされている事務を行うについて必要があるときは、技術者又は労務者を使用することができる。」このことを指しておられるのであろうと思います。  一般的に、私どももいわゆる補助者を使うというふうな言い方をすることがございます。この点につきましては、今申しましたように、執行官規則の第十二条に「使用することができる。」という規定があるだけでございまして、そのほか、その使用する際にどういうふうな選任手続をとるかというふうなことについてまで、法律あるいは規則に特別の定めがあるわけではございません。  これは、例えば差し押さえ等で大量のものを押さえなければならないあるいは差し押さえたものをどこかへ運搬しなければならないというふうな場合に、労務者を使わなければいけない場合もございますし、あるいは運送業者を使わなければいけない場合もある。そういうふうなためにこういう規定が置かれております。  あるいはまた、明け渡し、引き渡し等の強制執行で大量のものを運び出さなければならない、建物を収去しなければならないということになりますと、建物収去作業自体は執行官ができるわけではございませんので、現実にそういう作業の専門の人に解体作業等をやってもらわなければならない。そういうことになります際にこういう者を使うことができるということになっておりまして、具体的な選任の手続については、適宜な方法によって行うということで執行官に任されているということになろうと思います。  具体的に申しますと、そういうふうな専門の業者、例えば運送業者でございますとか請負業者、建築業やあるいは解体等の請負業者がございますので、そういう方と契約を結んでといいますか、対価を定めまして作業の補助をしていただく、そういうことになろうかと思います。
  116. 小澤克介

    小澤(克)委員 恐縮なのですが、後に問題にしようとしている件は、実は民事執行法の以前だったものですから、執行官手続規則、これは最高裁規則ですか、それにのっとったのだろうと思うのですけれども、これでは「執行官は、執行行為をするにつき必要があるときは、適当と認める者を使用することができる。」旨の規定があったということで、恐らく現在も基本的には変わらないだろうと思うのですけれども、この「適当と認める者を使用することができる。」というのは、これはどうなんですかね、おのずから裁量に内在する、おのずからの制約というのは当然あるでしょうし、それを逸脱すれば先ほどおっしゃった一般的な司法行政上の監督に服するということになろうかと思うのですが、そのように理解していいでしょうか。
  117. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 具体的な一つ一つの選任行為について、この人を差しかえなさい、こういうことはできないわけでございますが、例えばたまたま選任したそういうふうな補助者に適当でない者があったということになりますと、今後選任について十分注意するようにということを指導する、監督者の立場として指導するということは、これはもちろんあろうかと思います。
  118. 小澤克介

    小澤(克)委員 大体の道筋はわかったのですが、そうしますと、この執行補助者にこれはどう考えても裁判所の機関である執行官による執行にふさわしくない人物、例えば具体的にはいわゆる暴力団と称されているような反社会的な暴力組織団の構成員が含まれているということがもしあれば、これはいかがですか。相当でないだろうと当然に思いますが、裁判所としてはどういう御見解でしょうか。
  119. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 それが事前にはっきりしているという場合であれば、もちろん執行官としてはそういう者を補助者に使うのは相当でないというふうに思われますし、現実にもそういうようなことはやってないと思います。私どもも、あるいは各地方裁判所も、そういうようなことがないようにということは十分指導していると思います。
  120. 小澤克介

    小澤(克)委員 もしそういう事実があれば、これは当然相当でないということで司法行政上の監督権を用いて将来について是正すべきでしょうし、過去においてもそういうことがあったとすれば、それについては何らかの事実調査とそれに対する――事実があったとすれば、何らかの司法行政上の処分というのはあってしかるべきだろうと思いますが、そのとおりでしょうか。
  121. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 そういうふうな事実がはっきりしている場合に、初めて具体的な指導ということができるわけだと思います。そこがはっきりしない場合であれば、そういうふうなことも言われておるので十分注意するようにというふうな程度ではなかろうかと思います。それがはっきりしましたときには、その状況に応じまして将来十分注意するようにというふうな指導もいたしますし――ただ、過去で既に過ぎましたことについては、これは執行行為として適法であるかどうかは別個に、争いになれば別ですが、例えばそれを是正してこういうふうにやり直しをさせるというのは、先ほど申しましたとおり、執行官の行為、具体的な執行行為でございますので、監督権を発動して具体的に是正行為をさせるという問題ではないであろうと思います。
  122. 小澤克介

    小澤(克)委員 過去のケースについて訴訟法上の効果を覆すというようなことはそれはできぬだろうというのは恐らくそのとおりだと思いますが、司法行政上の指導あるいは処分の前提としては、これは過去のことであろうときちんと調査すべきであろうと思いますが、そうじゃありませんか。
  123. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 問題があるということになれば、いろいろ調査をすることになろうかと思います。
  124. 小澤克介

    小澤(克)委員 そこでぜひ調査をしていただきたいケースがあるのですが、ちょっと、やや旧聞に属するのですが、事態がはっきりしてきたのが比較的最近なものですから、現時点でこうやってお願いすることになったわけです。やむを得ないと思うのですが。  破産事件がございまして、破産者田中機械株式会社、ここの管財人が仮処分の申請をして、その執行を行ったというケースでございまして、仮処分は何か書類等の引き渡しの仮処分と聞いておりますが、その執行が行われたのが昭和五十四年の六月二十二日なんです。大阪地方裁判所の所属の執行官によってこの仮処分の執行が行われたわけですけれども、その際に、明らかに暴力団員である者が執行補助者として執行補助者の腕章をつけて多数動員されているという事態があるんです。これは事実であるとすれば、裁判所によって行われる執行に暴力団員が日当をもらって参加したなどということは、これは大変なことで、ゆゆしきことだと思いますので、これはぜひお調べ願いたいと思うのですが、現在までに若干でも何か判明したことがあればお答え願いたいのですが。
  125. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 今御指摘事件につきましては、大阪地方裁判所にかなりの事件が係属しておりますので、そういうふうな事件を通じましてそういう主張がなされているということは私どもも存じております。  ただ、今申し上げましたとおり多数の事件でいろいろな観点から当事者間で訴訟として争われておることでございますし、いろいろ当事者の主張も違うようでございます。私どもとしては、今のところ裁判が係属しておることでもございますので、その裁判の成り行き等を見守っているわけでございます。
  126. 小澤克介

    小澤(克)委員 これについても何か訴訟があるということは私も承知しておりますが、全然次元が違うのですよ。司法行政上の監督権の発動として、もしこういう事実がある、少なくともあるのではないかという端緒を得ていれば、これは裁判所として当然民事の事件云々とは別建てに調査をして、事実であればしかるべき司法行政上の監督権を発動するというのが当然じゃないかと思うのですがね。訴訟が起こっているからそれを見守るということは、これは全く筋が違うと思いますが、いかがでしょうか。
  127. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 今申しましたとおり、訴訟においてもいろいろ争いがあるようでございます。私どもとしても、そういう訴訟が起こされており、今仰せになったような主張がなされているということはもちろん大阪地方裁判所で知っておりますし、それなりの対応はとっておるわけでございますが、現在のところ、今申しましたとおり訴訟でいろいろ争われておるわけでございます。大阪地方裁判所なりの認識もございますし、私どもの方もその点の報告を受けてないわけじゃございませんが、その中身につきまして申し上げることは、具体的な訴訟が起こされておることでもございますし、私ども事務当局としては差し控えさせていただきたい、そういうことでございます。
  128. 小澤克介

    小澤(克)委員 そうですかね。民事訴訟が行われているということと、先ほども言ったように全然次元が違うのですよ。そうでしょう。あらゆる世の中の事象は一方で民事上の問題も生じますし、一方で例えば刑事上の問題も生じますし、その関与者が例えば公務員であれば、そういう行政上といいますか、問題が生じますね。ですから、それは別々にきちんとそれぞれの立場観点から調査が行われ、何らかの結論を得るべきであって、民事訴訟が係属しているから司法行政上の発動の前提たる調査が行えないということにはどうしてもなりませんし、それからまた、その調査結果を公表することができないということにもならぬと思いますよ。民事事件が係属していれば刑事裁判ができないということはないでしょう。それは全然理由にならぬと思いますが、いかがでしょうか。
  129. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 民事訴訟が係属しているから私どもとして関心を持たない、あるいは調査をしないと申し上げているわけではございません。こういうケースがあることは大阪地方裁判所もよく知っておるわけでございますから、こういう事柄について適正に対処すべくそれだけの措置は尽くしているわけでございますし、その結果についても私どもは報告は受けておるわけですが、その中身につきましては、一定の認識はございますが、具体的な紛争が行われている場合に、今裁判所の事務当局として申し上げるのは適当でないと考えて、差し控えさせていただく、こういうふうに申し上げておるわけでございまして、決して無関心でほうり出しているというわけではございません。そこはひとつ御理解をいただきたいと思います。
  130. 小澤克介

    小澤(克)委員 おかしいと思いますよ。民事訴訟が片っ方で行われていようといまいと、司法行政上の問題としてこのような当委員会で議論をし、そこで一定の事実が公表されたとしても、全く別の事柄ですから、それは理由になりませんよ。そうでしょう。  それから、現時点までにわかっていることはぜひ教えていただかなければなりません、当委員会の性格上、司法行政上の問題に限定してということにもちろんなりますけれども。  それともう一つ、今それなりの調査を行っているということですが、それでは、まあ内容は言えないということでしたら、一体これまでどんな調査を行ったのか、それは全く差し支えないはずですから、それは今言っていただけますか。
  131. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 大阪地方裁判所の方でこの訴訟が起こっていることは十分わかっておるわけでございますから、執行官を監督する立場にある者として必要な事情調査したということでございます。  具体的に中身をどうこうという点につきましては、先ほどから申し上げておりますとおり、訴訟で両当事者の主張あるいは立証等でいろいろ争われているわけでございます。そういうときに私ども最高裁判所の事務当局として具体的な内容を申し上げるということは、具体的な裁判の運営に影響を及ぼすことがあってはならないということで差し控えたい、こういうふうに申し上げておるわけでございます。そこはひとつぜひとも御理解をいただきたいと存じます。
  132. 小澤克介

    小澤(克)委員 理解できませんけれども、では、その点はともかくといたしまして、これまでにどんな調査を行ったのか、外形的な事実、これは言えますでしょう。
  133. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 個々の具体的な大阪地裁の調査内容についてまでは報告は受けておりません。
  134. 小澤克介

    小澤(克)委員 今言いましたように、執行官の執行という公権力の行使ですよね。しかも、裁判所の決定、命令等に基づいて行われる。これに組織暴力団関係者、構成員が補助者として関与して日当をもらっていたということは容易ならざる事態だと思うのですよ。その辺の認識がちょっと甘いんじゃないかという気がします。もし事実であればです。事実でなければいいのです、それは何の問題もありません。具体的な調査内容といいますか、どういう調査をしたのかの報告も受けてない。どうなんですか、今までは受けてないということであれば、今後きちんと報告を受け、最高裁として調査をする御意思がありますか。
  135. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 何度も先ほどから申し上げておりますとおり、この事件につきましては、その点をめぐって両当事者の主張が鋭く対立しているわけでございます。そのような中で大阪地方裁判所は監督者として必要な事情調査は行っているわけでございますが、その結果、先ほど申しましたとおり、裁判の結果を見守るということになっているわけでございまして、決して無関心でほうっているわけではございません。  これ以上申し上げますと、調査の結果、大阪地方裁判所としてどのような意向を持っておるか、私どもとして、どのような考えを持っているかということに立ち入ることになりまして、そうなってまいりますと、まさに、訴訟で争われている争点にもろに触れてくるわけでございます。裁判所の事務当局の立場としてその点を申し上げるのが、具体的に訴訟になっていることを考えますと妥当でないということで申し上げておりますので、以上のことでお酌み取りいただきたいと思います。
  136. 小澤克介

    小澤(克)委員 いや、おかしいですよ。内容が公表されれば訴訟に影響を与えるというのは、それは事実としてそうでしょう。仮にそうだとしても、これは全然別の問題だと思うのですけれども。そうじゃなくて、どんな調査をしたのか、外形的な事実を明らかにしてくれとお願いしているのですし、それから今後どういう調査を行うおつもりがあるのかないのかですよ、内容じゃなくて。関係者から事情聴取するとかですね。  要するに事柄は簡単なんですよ、執行補助者の中に暴力団構成員がいたかいないかということなんですから。これはわかるわけですよ。そういうことについて今後調査をするおつもりがあるのかないのか、あるとすればどういう調査をお考えなのか、それをぜひ明らかにしてほしいですね。
  137. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 余り具体的な事件内容に触れることは差し控えさせていただきたいと存じますが、当該事件をめぐりましては、先ほどから申しましたとおり、主張だけではなくて立証をめぐって非常に両当事者間で争いがあるわけでございます。どういう範囲のものを調べるかということにつきましても、裁判所事件の審理を通じていろいろ争われているようでございます。そういうような点も含めまして、非常にその点が裁判で争われていることでもございますので、私どもの事務当局の方からその点について、何らかの一定の考え方を持って、一定の結論を得ているということを申し上げることが適当でないということで差し控えると申し上げておるわけでございまして、何度も繰り返すようでございますが、必要に応じて大阪地方裁判所としては、監督者の立場として、本当にそういう事実があったかどうかということについては関心を払っているわけでございますが、先ほど冒頭に申しましたとおり、今後なお裁判の推移を見届ける必要があるというふうに考えているということで御理解いただきたいと思います。
  138. 小澤克介

    小澤(克)委員 全く理解できないのですよ。司法行政上の監督権の発動として、その前提として何らかの調査をするというのは当然のことだと思いますよ。現に民事訴訟で争われているから云々なんということは全然無関係ですよ、次元が違いますよ。民事訴訟になっていることを口実に何もやらないということだったら、これは怠慢そのものじゃないですか。全く納得できません。そんな答弁ではだめです。
  139. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 何度も申し上げておりますとおり、訴訟になっておるから調査をしないとかなんとかいうことを申し上げているわけではございません。もちろん、訴訟になっているといないとにかかわらず、司法行政上の監督権の行使の必要があればそれなりの措置をするのは当然でございます。  ただ、私が先ほどから何度も繰り返して申し上げておりますのは、そういうことで大阪地方裁判所が監督者としての対策は十分とっておるわけでございますが、どのような範囲のものをどういうふうに調べ、どのようなことを考えているということを今申し上げるのが、訴訟が係属している以上適切でない、これを申し上げておるわけでございまして、決して放置しているわけではないということを繰り返して申し上げておきたいと思います。
  140. 小澤克介

    小澤(克)委員 どうしてですか。関係者から事情聴取をするなりこの程度の調査を進めたいと、あるいはそういうつもりはないならないで結構ですが、それを言ったからといって何の問題もないでしょう。具体的な民事訴訟と何の関係もないですよ。全然納得できないですよ。委員長、もうちょっときちんと答弁するように御指導願えませんか。
  141. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 繰り返すようでございますけれども、私ども調査をしないとかなんとか言っていることは全くございません。必要であれば必要に応じて大阪地方裁判所は監督者の立場として事情調査する、また既に必要なものはしているということでございますし、私どもも結果についてはもちろん報告は受けているわけではございますが、その具体的な内容についてお答えすることが今争われている事件に関連することであり、最高裁判所の事務当局として申し上げるのが適当でない、こういうことを申し上げているわけでございまして、私どもの結論を申し上げることが現在の訴訟が係属している段階で適当でないということを申し上げているわけでございます。  繰り返すようでございますが、したがいまして、これ以上調査をしないとか、あるいは監督権の発動をしないとかするとかいうことも、何も一切しないと言っているわけではございません。必要に応じて、さらに必要があれば監督者としての大阪地方裁判所は措置をおとりになるであろうと思いますし、私どもも必要であればその点についての報告を受けることになろうと思います。ただ、結論といたしましては、先ほど申しましたとおり、現在裁判の進行の成り行きを見守っているということで申し上げておるわけでございます。
  142. 小澤克介

    小澤(克)委員 調査はすると確かに今おっしゃいましたので、調査するのだろうとそこは期待いたしますけれども、どういう調査をするかという外形的な事実が言えないということはどうしても納得できぬですよ。調査内容を言えと言っているんじゃないんですよ。僕はそれを言ったって構わないと思うんですけれどもね。それは現に係属している民事訴訟に影響があるから言いたくないというのなら、それはまあ言わぬものを無理に言わすわけにはいきませんけれども、どんな調査を考えているか、それが言えないということには全くなりませんよ。そうでしょう。  もう時間がむだですので、それではしようがないから、きょうは警察の方にも来ていだいておりますので、実はこの執行官が、執行補助者のリストを大阪の南警察に提出してある、こういうことをはっきりおっしゃっているのです。そこで、そういう事実があるのかないのか、あるいはあれば、警察の方でどういう方が執行補助者として関与していたか掌握しておられるのかどうか。もしあればお答えいただきたいのです。
  143. 半田嘉弘

    ○半田説明員 調べましたが、資料、要請文がもう既にございませんので、補助者の名簿がついておったかどうかという点についてもわからない実情でございます。
  144. 小澤克介

    小澤(克)委員 まあ古い話ですから、警察としては応援の要請を受けて行っただけでしょうからそういうことになるだろうと思うのですけれども、この執行官がリストを警察に事前に提出した、事前に警察と何度も打ち合わせをやっていること自体はもう執行の記録から明らかなんです。そうすると、警察でもわからないということのようですから、これはますます裁判所に調べていただくしかないのですけれどもね。  それで、せっかく警察の方に来ていただいたので、もう一つ教えていただきたいのですが、この執行官がこういうことを言っているのです。事前に警察にリストを提出した、警察の方でそれを異議なくオーケーしている、だからもし暴力団構成員などがいたら当然警察の方でチェックしているはずである、警察から特にクレームもなかったから問題ないのだ、こういうやや責任転嫁と思えるようなことを言っておるのです。どうなんですか。警察として、仮に応援要請があって、こうこうこういう執行補助者を使うのだというようなことがあったら、警察の方でそこまでチェックをされるのですか、そういう機構になっているのでしょうか。
  145. 半田嘉弘

    ○半田説明員 結論から申し上げますと、そういうことにはなってございません。執行官が決定された内容の執行をされるについて、妨害等があればこれを排除するというのが警察の職務でございまして、それ以上のことは特にございませんので、チェックをするとかそういうことにはなってございません。
  146. 小澤克介

    小澤(克)委員 わかりました。警察で提出したかどうかはもう古いことでわからないし、仮にあったとしても、警察としてはその中に暴力団員がいるかいないか一々チェックする立場にはない、こういうことだそうでございます。それはそうだろうと私も思います。そうなりますと、これはもう裁判所に調べていただくしかないのですよ。どうなんですか。裁判所の方でもうちょっとちゃんと調べるというお約束をいただけませんか。先ほどから言っておりますように、これは容易ならざる事態だと思うのです。そうでしょう。裁判所の行う公権力の行使に暴力団員が日当をもらって参加していたなんて、もし本当だったとしたらゆゆしき問題ですよ。どうですか、ちゃんと調べるということを言ってくださいよ。
  147. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 先ほどから何度もお答えしているわけでございますが、調べていないというわけでは決してございません。もちろんそういうふうな主張がなされた訴訟が係属していることは大阪地方裁判所もわかっておりますし、著名な事件でございますので、そういう事件があったことは私どもももちろん報告を受けているわけでございます。したがいまして、そういうふうなことが本当にあったのかどうか、もしあったとすればゆゆしき問題であるというのは確かに御指摘のとおりであろうと思います。したがいまして、その点について監督者の立場である大阪地方裁判所としては必要な調査はしているわけでございます。もちろん私どもとしても、その結果どういうふうに考えているかということは報告は受けているわけでございますが、先ほど申し上げたとおり、今のところこの問題については裁判所の判断の結果を待つということで、ゆだねるということでございまして、先ほどもお話がございましたとおり、古いことでもございますので、それ以上具体的な調査をする、しないということは、必要があればさらに調査をすることもあるであろうという以上には申し上げるわけにはいかないわけでございます。私どもが全く調査をしないでほったらかしてあるというわけでは決してございません。大阪地方裁判所として必要な調査はし、その上で、先ほど申しましたようにこの問題については裁判所で争われていることでもあり、その結果を待った上で必要な対応をとるべき問題だというふうに考えているわけでございます。最初に申し上げたとおりでございます。
  148. 小澤克介

    小澤(克)委員 大阪地裁でそれなりの調査をしているであろうし、その報告を受けるということでは、私はそれでは満足できないし、それは不十分だと思います。最高裁として、これは司法行政上の問題ですから何も問題ないわけですから、裁判官の独立等の問題はないわけですから、大阪地裁に対してきちんと調査をして報告するようにという指示をすべきだと思いますよ。どうなんですか。  それで、そのことをお答えいただくと同時に、時間もなくなりましたので、こういうことを言っておるのですよ。この執行官は、自分もその補助者のリストを執行の申し立てをした側からもらって、そしてそれを先ほどちょっと触れたように南警察署に提出した。自分も持っていた。しかし、後にいろいろ問題が起こって補助者に迷惑がかかるかもしれないという口実でわざわざ破棄しておるのです。執行官が、自分が保管していた名簿を破棄したと自分で言っているのですよ。これはどう考えても不明朗なんですね。問題があるから破棄したに違いないのです。  それで、その執行の申し立てをした側からリストの提供を受け、実質的な執行補助者の選任もそちらのイニシアチブで行われているわけなんですよね。ですから調査としては申し立て側に対して、どういう経緯で、どういう人に頼んだのか、調査すればおのずから補助者がだれであったかを特定することは、それは多少時間がたっているからといって、技術的に可能なことだと思うのですよ。難しいことじゃないと思うのですね。裁判所の権威の問題ですよ。これはぜひそういう御認識のもとにちゃんと調査をしていただきたい。最高裁として大阪地裁にそういう指示をしてくださることを今ここで約束していただきたいです。  時間がありませんから、ついでに言いますと、先ほども言いましたように、この執行補助者の選任が全く申し立て側のイニシアチブで行われていまして、執行官が自分の手足として、公権力の行使として行うにもかかわらず、その辺をあいまいなままに向こうから提出されたリストでそのまま自分の執行補助者として選任しているわけですよ。しかも日当が執行官から払われていないのですよ。申し立て側から直接払われているのですよ、その暴力団員に。こんなことはあってはならぬことでしょう。その辺も含めて、ちょうど時間が来ましたので、調査すると、させるということを今約束してください。そうでなければ時間が来ても質問を終われませんよ。
  149. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 今おっしゃったような、例えば証言の内容等細かいことについては私ども逐一報告を受けているわけではございません。ただ、今お話しになりましたような点をめぐってまさに訴訟として争われているというふうに私ども存じております。したがいまして、今委員の御意見としておっしゃったことは、もちろん委員の御意見として十分拝聴いたしましたが、そのことを前提に大阪地方裁判所がいろいろ判断をしているわけではございません。一定の判断を持っており、私どもも報告を受けておりますが、そこがまさに裁判で最も争われておることでございまして、今委員のおっしゃったのは、委員の御意見として十分わかりますけれども、そこのところが裁判で一番の争いになっておりますので、大阪地方裁判所として監督者としての一定の考えを持ち、私どももその報告は受けておるとしても、それをこの場で裁判所の事務当局として申し上げるのが裁判との関係でいかがなものかということで差し控えさせていただきたいということを繰り返して申し上げているわけでございます。  なお、今後私どももあるいは大阪地方裁判所も、一切調査をしないとかいうことを言っているわけではございません。必要であれば調査をすることもありましょうし、私どもも必要とあればそういう指示をすることもあろうかと思いますが、いずれにしましても、現在のところ裁判所の判断を見守っているということで、最初から申し上げているわけでございます。
  150. 小澤克介

    小澤(克)委員 時間が来ましたからきょうはこれで終わりますけれども、今のお答え全く納得できません。御意見として伺うというそんな、失礼な話ですよ。私は調査してくれと要求しているのですよ。大阪地裁に調査の指示をしなさいと言っているのですよ。これは司法行政上の問題です。裁判所だからといって逃れることはできません。だめですよ。  この問題、引き続きやることを申し伝えまして、とりあえずこれで終わらせていただきます。
  151. 大塚雄司

    大塚委員長 午後一時四十分再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十三分休憩      ────◇─────     午後一時四十二分開議
  152. 大塚雄司

    大塚委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。冬柴鉄三君。
  153. 冬柴鐵三

    冬柴委員 私はこのたびの選挙で初当選した者でございますが、このような機会を与えていただきましたので、最近マスコミ等で問題とされている抵当証券取引にのみ焦点を絞って、一般投資家保護観点から質問をさせていただきたいと思います。  それは、一部の悪徳抵当証券取引業者が存在するおそれがあるからでございまして、被害が豊田商事事件の二の舞になることを恐れるからでございます。御承知のように、豊田商事破産事件債権届けをした二万七千八百名の債権者のうち、実に六割以上の人が六十歳以上の御高齢の方でありました。それに主婦あるいは障害者のような社会的な弱者と目される方々、これは全体の八割以上にも達し、集中しているのでございます。また平均被害額は四百万円以上にも達しておりまして、被害者の多くは生活資金を根こそぎ奪われているというような悲惨な事件でございました。抵当証券ではそのようなことにならないことを祈りますけれども、一刻もその対策を遷延する、あるいは逡巡することは許されないのではないか、このような観点から質問させていただく次第でございます。  先ほどの井出議員もお尋ねでございましたが、最近の金融緩和あるいは低金利時代を反映してか、高利回りで節税型と言われる抵当証券一般投資家の間で大変なブームを巻き起こしております。しかし、抵当証券法が制定されたのが昭和六年、このような法律であるだけに時代背景に大きな乖離がありまして、今日の抵当証券取引の実態はこの法の律するところをはるかに超えた仕組みをもって行われているようであります。  その一つが、いわゆる抵当証券取扱業者というものの存在でございます。これは、先ほど申しましたように非常に信用の高い業者とそうでない業者とがいわば玉石混交の状態であるようでございます。  また二つ目は、抵当証券、これは有価証券でございますが、そのものを流通に置くのではなく抵当証券取扱会社、いわゆる所持者が任意にモーゲージ証書、訳しますと抵当権証書ということにならざるを得ないと思うのですが、そのようなものを発行して、これを不特定かつ多数の一般投資家販売するという取引形態がとられております。これは抵当証券法の予定するところでは全くなかったと思われます。  今月の十五日付の夕刊各紙は、静岡県警による同県下の日証抵当証券会社に対する強制捜査を報じておりますけれども、その容疑事実は、新聞紙上によりますと、有効な抵当証券なきにかかわらず一億三千万円にも達するモーゲージ証書発行の上約五十名の一般投資家に空売りをした、このような容疑のようでございます。また、この日証抵当証券会社は、資本金一千万円の株式会社、元海外先物取引専門だった会社の商号、目的を変更して抵当証券販売に乗り出したというもので、いわゆる業者団体にも加入をしてなかった。今月十四日に二度目の不渡りを出して事実上倒産をしたという資本の脆弱な、かつ悪質な会社だったと報ぜられております。このような事件が今後も続発することが予測され、憂慮されるところでございます。  そこで順次お尋ねしたいと思いますが、抵当証券取扱会社の数は現時点でどれぐらいあると把握していらっしゃるのか、お答えいただきたいと思います。
  154. 千種秀夫

    千種政府委員 私ども実はすべてを掌握していないのでございますが、私ども民事局の四課が所管しております公益法人に日本抵当証券協会というのがございまして、この加入者は三十九社ございます。ほかに、これは法人かどうかは私存じませんが、抵当証券業懇話会というものがございまして、それに加入している会社も数十社あると聞き及んでおります。
  155. 冬柴鐵三

    冬柴委員 この内訳でございますが、資本関係あるいは人的関係におきまして銀行あるいは生命保険会社あるいは証券会社等と密接な関係を有すると認められる会社の内訳を知らしていただきたい。
  156. 窪野鎮治

    窪野説明員 お答えいたします。  私ども大蔵省におきましては、銀行、証券、保険等の金融機関、このような公共的役割を持っておりましてそれの公共性の役割の確保あるいは他業へいろいろ影響を及ぼさない、そんな観点から先生がおっしゃいましたような金融機関と緊密な関係を有する会社をいわゆる関連会社と称しておりまして、その実態をある程度把握しているところでございますが、まず銀行等の関連会社抵当証券を取り扱っている会社、これが四十社ございます。それから生命保険会社の関連会社、これが六社ございます。それから証券会社関係会社で同様に抵当証券を取り扱っている会社が十一社ございます。こういう形で私どもが把握しているものは以上でございます。
  157. 冬柴鐵三

    冬柴委員 その五十七社は、先ほど千種民事局長がお答えになったいわば業者団体といいますか、そういうところに加入をしていられる内訳とか、そういうものはおわかりですか。
  158. 窪野鎮治

    窪野説明員 お答えいたします。  私どもでは大手の抵当証券取扱会社、これを中心とした自主的な団体でございます抵当証券業懇話会、こういうものが存在することを承知しておりまして、その加入会社は現在六十四社であると聞いております。そして先ほど申し上げました銀行等の関連会社であります抵当証券取扱会社、これの相当数はこの懇話会にも加入しているというふうに承知をしております。
  159. 冬柴鐵三

    冬柴委員 おわかりであればで結構ですが、いわゆる抵当証券発行については法務局で申請を受け付けているわけですが、その申請人の数はどれぐらいに上っているのでしょうか。
  160. 千種秀夫

    千種政府委員 これは毎年出てくるものでございますから、とりあえず私ども過去十年くらいのところで見たのでございますが、昭和四十九年から本年の六月までに抵当証券の交付を受けた者は個人三名を含めまして百十四あるようでございます。
  161. 冬柴鐵三

    冬柴委員 そうしますと、これが抵当証券取扱会社の数と一致するかどうかは別としまして、いわゆる百十四社ぐらいがやっている、そのうち約半数強の方が業者団体にも加入をしておられて、残余の方が独立系と申しますか、そのような状態である、このように感じるわけでございますが、要するにその独立系の方に対する国の指導と申しますか、何らかの形での接触があるのかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
  162. 千種秀夫

    千種政府委員 法務省民事局といたしましてはそういう接触は特にございません。
  163. 冬柴鐵三

    冬柴委員 銀行局の方はいかがでしょうか。
  164. 窪野鎮治

    窪野説明員 お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、銀行等の関連会社であれば銀行等の影響力のチェック、こういう観点から私ども行政の守備範囲に入っておりますし、あるいは先ほど申し上げました大手業者中心とする抵当証券業懇話会、こことは大蔵省として大蔵省関心ということもあり、従来から意見交換を行っているというようなことからある程度聞いているところでございますが、それ以外の部分については私どもも承知をしておりません。
  165. 冬柴鐵三

    冬柴委員 それでは、懇話会等に入っていない数十社の会社に対しては、国は現在までのところ行政指導等はする機会がない、このように伺っていいでしょうか。結論だけで結構です。
  166. 窪野鎮治

    窪野説明員 大蔵省といたしましてはそのとおりでございます。
  167. 冬柴鐵三

    冬柴委員 それでは次の問題に移らせていただきます。  抵当証券の譲渡、その件につきましていわゆる抵当証券法の定めるところをお聞きしたいと思います。  まず、抵当証券発行された場合には、その抵当証券の表章する抵当権債権、このようなものの移転はどのような方法によってなすというふうに法は規定しているのですか。
  168. 千種秀夫

    千種政府委員 抵当証券の裏書譲渡によってその表章された権利が移転するということになっております。
  169. 冬柴鐵三

    冬柴委員 そうすると、裏書譲渡ということはその抵当権証券上に一定の方式に従って裏書人が裏書をして、そして被裏書人にそれを交付する、こういうふうに理解をしているのですが、それでよろしいですか。
  170. 千種秀夫

    千種政府委員 そのとおりでございます。
  171. 冬柴鐵三

    冬柴委員 抵当証券の譲渡に関しましては手形法の準用がその四十条で定められていますが、まず裏書の方式でございますけれども、手形法とは相当違っているように理解しておりますが、こちらから申しますと、抵当証券またはこれと結合した紙片、補箋、それに裏書人が署名する、これは手形法十三条一項でございます。そして裏書には被裏書人の氏名または商号、被裏書人ですから譲り受け人、それを書かなければならない、それから裏書人の住所とそれから署名または記名押印でもいいですが、それをすること、それから裏書の年月日を書くこと、このように定められていると思いますが、それでよろしゅうございますか。
  172. 千種秀夫

    千種政府委員 そのとおりであります。
  173. 冬柴鐵三

    冬柴委員 被裏書人の氏名または商号を抵当証券上に書かなければならないという立法理由はどういうところにあるのですか。
  174. 千種秀夫

    千種政府委員 抵当券というものは抵当権者がだれであるかということが通常は登記の上でわかっておりますが、これを証券にいたしましてもその機能は同じことでございますから、抵当権をまた実行しようとするときにだれが権利者であるかということがわからなければなりませんし、恐らくそういう趣旨からそれを明示するようにという規定になっていると考えております。
  175. 冬柴鐵三

    冬柴委員 それに加えて、いわゆる抵当証券の所持人が裏書人に一定期間内に通知をしなければならないあるいは償還を請求する場合がある、また全裏書人の同意を得て競売の申し立てを伸長することができる、このような規定が抵当証券法にはありますが、このような権利を実効あらしめるためには被裏書人の氏名が証券上明確にされないとその機能を果たせないと思うのですが、そういうものも立法理由になっていると理解しているのですが、それでよろしいでしょうか。
  176. 千種秀夫

    千種政府委員 恐らくそういう理由もあろうかと存じます。
  177. 冬柴鐵三

    冬柴委員 次に、裏書の年月日についてお尋ねいたしますが、この裏書の年月日の記載ということを法が求めたのは、裏書人の裏書き当時の能力、そのようなものが問題にされる、あるいはまた抵当権、これは物権行為ですから、いつ、だれからだれに移転したかということが証券上一目瞭然にされる、このような必要からこのような規定がなされたと思うのですが、そう理解してよろしいですか。
  178. 千種秀夫

    千種政府委員 そのように理解してよろしいと存じます。
  179. 冬柴鐵三

    冬柴委員 次に、手形法では十三条二項でいわゆる白地式裏書、被裏書人の氏名を記載せずに裏書だけで流通に置く、このようなことを認める規定がありますが、抵当証券法はこれを準用していない。先ほど、被裏書人の氏名または商号を記載する立法理由も尋ねましたが、記載しないには実質的な理由があると理解してよろしゅうございましょうか。
  180. 千種秀夫

    千種政府委員 ただいまの御質問、白地式裏書を認められるかという御趣旨かと存じますが、その規定の趣旨からいたしまして、またその白地式裏書に関する手形法の規定を準用していない現状の規定の建前からしましてそういうことは考えられていない、許されないというふうに考えておるわけでございます。  ただ、この点は、有価証券一般の理論がどこまでかぶるかという一般論もございますので、最終的には裁判所が判断することになろうかと思います。
  181. 冬柴鐵三

    冬柴委員 ついでに、質入裏書というものが手形法十九条で規定されておりますが、また民法三百六十六条にも「証書ニ質権ノ設定ヲ裏書スルニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス」、このような規定もあるようでございますけれども、この抵当証券に質入裏書は可能でしょうか。
  182. 千種秀夫

    千種政府委員 これも抵当証券法の四十条が手形の場合の質入裏書に関する手形法十九条の規定を準用しておりませんので、抵当証券につきましては質入裏書は認められないと考えております。この理由は、規定の上からもそうでございますが、抵当権に質権を設定することができないという実質的な理由もあろうかと存じます。
  183. 冬柴鐵三

    冬柴委員 次に、抵当権が設定されて抵当証券発行の特約がなされた場合には抵当証券の申請に基づいて抵当証券法務局から発行されるわけですけれども、これを分割する、例えば一億円の抵当権について百万円の抵当証券を百口に分けて出してもらう、このような方法法律上許されておりますか。
  184. 千種秀夫

    千種政府委員 そういう発行の仕方も可能でございます。
  185. 冬柴鐵三

    冬柴委員 まず抵当権を付記登記によって百万円百口に分ける、それに基づいて百万円の抵当証券を百枚交付を受ける、このようなことになると思います。その場合、非常に細かいことで申しわけありませんが、登録免許税と申しますか、法務局に納める費用は幾らぐらい要るものでしょうか。一億円を百万円百口に分けて発行した場合の手数料は幾らになりましょうか。
  186. 千種秀夫

    千種政府委員 ただいま登録免許税という御質問があったかと存じますが、登録免許税の方は抵当権を設定する場合の税金でございまして、ただいまの御質問の趣旨はあるいは抵当証券発行する場合の手数料の趣旨かとも存じます。この場合は一通について手数料は今たしか二千五百円かと存じますが、その倍数になると思います。
  187. 冬柴鐵三

    冬柴委員 二十五万円ということになると思いますが、そうすると、そのような方法をとれば抵当証券そのもの流通というのも可能である、このように理解できるわけでございます。  ところが、最近行われている抵当証券取引は、いわゆるモーゲージ証書というものによって行われているようでございます。モーゲージ証書の書式とかあるいはこれに添付される詳細な約款会社によって異なるようではありますけれども、おおむね共通点が認められると思います。ところが、モーゲージ証書の中に書かれている抵当証券のいわゆる原券と申しますか、ここに法律上書かなければならない事項がほとんど書いていない。ただ、原券を特定するに足る記載はある。例えば登記所の表示あるいは証券番号、このようなものは記載されているようですけれども、それ以外の、抵当証券法第十二条に定める記載事項については今言った以外はおおむね書かれてない、こういう実情があるようです。そのように理解してよろしゅうございますか。
  188. 千種秀夫

    千種政府委員 私ども承知しておりますところでは、ただいまおっしゃったとおりでございます。
  189. 冬柴鐵三

    冬柴委員 そうしますと、結論を急いで申しわけないのですけれども、このモーゲージ証書そのものが抵当証券上の権利を表章しているとは言えないと理解していますが、それでよろしいですか。
  190. 千種秀夫

    千種政府委員 やや法律的になりますが、モーゲージ証書そのものの権利を化体しているというふうには言いにくいのではないかと思います。
  191. 冬柴鐵三

    冬柴委員 ちょっと今不正確だったと思います。
  192. 千種秀夫

    千種政府委員 失礼いたしました。モーゲージ証書と言いましたけれども抵当証券の化体している権利をそのモーゲージ証書が化体しているというふうには言えないと訂正いたします。
  193. 冬柴鐵三

    冬柴委員 したがいまして、言うまでもなくモーゲージ証書有価証券ではない、このように理解してよろしいですか。
  194. 千種秀夫

    千種政府委員 私どもはそう考えております。法律論でございますので、いろいろな意見があるかもしれないと存じます。
  195. 冬柴鐵三

    冬柴委員 このモーゲージ証書の添付されている取扱約款の中には「(抵当証券売買約定および保護預り証書)」というふうに括弧書きがついていまして、モーゲージ証書説明だと思われるのですが、このように書かれているのです。この抵当証券売買、売買契約ですからこれは諾成契約でいいわけですけれども、この契約に抵当権債権、いわゆる抵当権という物権、こういうようなものの移転の効果があるかどうか、その点についてはいかがでしょうか。
  196. 千種秀夫

    千種政府委員 モーゲージ証書と一概に申しましても、どうも私どもが理解しておりますところではすべて一様ではないようでございまして、ただいまの御質問では、ある百万なら百万の抵当証券を売買し、それを預かる、こういうような記載のあるものもあるようでございますが、そうでなくて、抵当証券の一定金額をさらに譲渡するようなものもあるようでございます。そういうものはその証書の持ち分を譲渡したということになるのかもしれませんが、そういうことで、証書の引き渡しが実際に行われるような状況にないということになりますと、どうも証書の譲渡が行われたようなふうには理解しにくいわけでございます。特に、一つの証券の一定割合の金額を譲渡したというようなことになりますと、一層それが不明確であろうと思います。
  197. 冬柴鐵三

    冬柴委員 先ほど、抵当証券の譲渡の方法を私聞きましたが、抵当証券発行された以降は、抵当証券法第十四条には「抵当証券発行アリタルトキハ抵当権債権ノ処分ハ抵当証券ヲ以テスルニ非ザレバ之ヲ為スコトヲ得ズ」このように書かれていますので、抵当証券に裏書をし渡す、占有改定という方法もあるでしょうけれども、渡す、ここまでが裏書ですから、そのような行為がなくてモーゲージ証書だけを渡しておる、このような実態がもしあるとすれば、この抵当権債権は買い主には移転していない、このように私は徹底的に理解しているのですが、いかがでしょうか。
  198. 千種秀夫

    千種政府委員 そういう場合は、仰せのとおりと存じます。
  199. 冬柴鐵三

    冬柴委員 先ほど、白地式裏書についてお尋ねをいたしました。モーゲージ証書の内部を子細に読んでみますと、売った抵当証券をもう一度抵当証券取扱会社が預かる、いわゆる受寄する、寄託を受ける、そして、これをまた銀行等の信用の置ける会社保護預けをする、このような約款があるようでございます。  そこで、売ったときに抵当証券にどのような裏書がなされているのか、なされようとするのか、そこのところがモーゲージ証書の上からは明らかでないのでありますが、若干無理な質問かもわかりませんけれども、もし銀行局の方で、一体売った抵当証券にはどの程度の裏書をした上でもう一度預かっていることになっているのか、そこら辺、いろいろありましょうけれども、大ざっぱに理解していられるところをお答え願いたいと思います。
  200. 窪野鎮治

    窪野説明員 お答えいたします。  私どもが承知している限りでは、現状では裏書がなされていないものが多い、こういうふうに承知しております。  ただ私どもの考え方、この点につきましてはいろいろな御議論があることは承知しておりますが、それをあえて申し上げますと、もちろんモーゲージ証書抵当証券上の権利をそのまま表章しているものとは言えませんが、抵当証券の売買の事実を明らかにする、とともに売買の対象となった抵当証券を、その抵当証券取扱会社保護預かりをしている、こういう事実を明らかにした性格を持つものであり、モーゲージ証書の交付というような形をとりましたものが抵当証券の売買と見る、そういう考え方もあり得るのではないか、こんなふうには考えております。
  201. 冬柴鐵三

    冬柴委員 これは法務大臣にも理解してほしいのですけれども、ただいま銀行局からお答えをいただいたのは相当信用のある、恐らく事故の起こらない会社が行っていらっしゃる方法でありまして、これは実質的理由があるからそのようなことが、法には定めはないけれども便法としてとられていると思いますが、これが非常に危険なのでありまして、この抵当証券の範囲内で再分割されているのかどうか、それを超えているのかどうかというところをチェックする手段がございません。豊田商事の場合には、大手の金融会社が金を売って預かるということをやりませんでした。けれども今回のは、先ほど言いました石に例えて怒られるかもわかりませんけれども、玉石混交と言われておりまして、非常に信用のある会社が非常に危険なことをやっていらっしゃる。それで今度余り信用のない会社がそれをまねてやっても、一般投資家には全然わからないという特徴がございます。その点について何らかの形でこのモーゲージ証書というものが、昭和六年とは違いまして今日必要であるとするならば、それをもっと安全な方法で必要性を満たすような法制度をこの際早急に考えて、被害を未然に防ぐ立法措置というものをおとりいただく用意はないものかどうか、法務大臣にお伺いしたいと思います。
  202. 遠藤要

    遠藤国務大臣 お答えいたします。  今社会的に大変問題になっている案件でございますが、この点は法務省として、法務局は御承知のとおりただ証券発行するというだけで、後はどこに行こうと法務局の関知するところじゃないという現実でございます。その点を考えると、一体一般投資家保護ということがどうなるかということでございますので、今先生のお話しのとおり関係省庁と十分検討して何とか処置を講じなければならぬということをひしひしと感じておるということで御理解を願いたいと思います。
  203. 冬柴鐵三

    冬柴委員 ぜひ検討期間を短くしていただいて、ただいまこういうふうにして審議をしている間も六十歳以上の御老人がそのように被害に遭いつつあるということがあるかもわかりませんので、法務大臣に特にお願いしたいと思います。  しつこいようですが、そのモーゲージ証書が今のような形であってその実質である抵当証券そのものが優良な企業においてすら裏書がされてないのが大部分のようである、大部分のようであるというふうに言われたと思いますが、一部存在する、そういうふうに前提にいたしますと、民事局長いかがでしょうか。抵当証券は裏書はしてないのですが、モーゲージ証書を渡しただけで抵当権債権、いわゆる抵当証券が表章する権利というものは買い主に移転しているのでしょうか、移転していないのでしょうか。その点どうでしょうか。
  204. 千種秀夫

    千種政府委員 難しい法律論でございまして、いろいろ考えられるかと思いますが、一般有価証券のことを考えますと、移転していないのではないかと考えたいわけでございます。
  205. 冬柴鐵三

    冬柴委員 非常に明快な回答をいただきまして、私もそのように信じて疑わないわけでございますが、そのように考えてまいりますと、実質のない、実質は移転していないのに、恐らく消費者は、私は、法務局発行した抵当証券を買ったんだと思っていると思いますが、その実は、買ったものは諾成契約だけでありまして、物権、抵当権は移転していないというおそれがある、濃厚であり、こういう取引でございます。そうしますと、抵当証券取引に藉口した一つの金融取引ではないか、私はこのように考えます。  私も大阪で弁護士をやっていましたので、豊田商事の被害者の事件も何件か扱いました。そのときも、私は考えますのは、金に見せかけた金融取引である、不特定多数の投資家から、返還を約束をして金銭を受け入れている、これは出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律違反である、このように考えていたのですが、この事例につきましても、本件のモーゲージ証書につきましても、いわゆる悪徳と申しますか、そういう人たちに対してはこの法律捜査をすることはできないのでしょうか。刑事局長の方からお答えいただきたいと思います。
  206. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 ただいま御指摘の出資の受け入れに関します法律は、一条の「出資金の受入の制限」ということにつきましては、法務省所管でございます。これにつきましては、不特定かつ多数の者から一定の条件で出資金の受け入れをしてはならない、こういう規定になっているのでございまして、出資金とはいかなるものかと申しますと、共同の事業のために出捐される金銭であって、その目的とする事業の成功を図るために用いられるものというのが一般的な解釈でございまして、直ちにこれに当たるのかということにつきましては何ともお答えいたしかねるのでございますが、一般論として申し上げますならば、その実態においてただいま申し上げましたような出資金の受け入れに当たるならば違反が成立するということになろうかと思います。
  207. 窪野鎮治

    窪野説明員 出資法の二条の関係についてお答えさせていただきたいと思います。  出資法二条第一項は「業として預り金をするにつき他の法律に特別の規定のある者を除く外、何人も業として預り金をしてはならない。」こういうふうに規定しております。  モーゲージ証書による取り扱いについてでございますが、先ほども申し上げましたように、不動産抵当債権と申しましょうか、債権抵当権が化体されたものである抵当証券、これを販売いたしまして、その見合いといたしましてモーゲージ証書を交付している、そういう形でございますので、そこにいろいろな御議論があることは承知しておりますが、私どもといたしましては、抵当証券の譲渡の対価として金銭を受け取っているものでございまして、その点におきまして、出資法に規定しております預かり金とは経済的な性質を異にするのではないかというふうに考えている次第でございます。
  208. 冬柴鐵三

    冬柴委員 その点については私は納得ができないわけでございまして、抵当証券は移転してない、このような議論で、抵当証券の対価として金銭を受け入れたとは思えないのでございます。その点につきましてここでいろいろ議論をしても前進はないわけでありまして、私も、このような一部のいわゆる問題企業、こういうようなものの存在をもって健全ないわゆる抵当証券取引そのものの育成を阻む、もう一兆円規模に成長しているようでございまして、社会的にも有用な役割を果たしていると思われるわけでございまして、この育成を阻むというような短絡的な行政指導あるいは立法措置を求めるものでは決してございません。しかしながら、少なくともこの間の新聞報道のような事件抵当証券はあの事件では六千万円しか発行されてない、しかもそれは両者共謀してなされたものであって、抵当権の被担保債務というものは存在しなかったと新聞では報じられていますが、そのような六千万。しかもその抵当権が抹消された後において、先ほど申しましたように一億三千万円にも達する空のモーゲージ証書が売られた、こういう事案でございました。これはいろいろ議論をしている問題ではない。やはりそういうような悪質な業者から一般投資家、先ほど申しましたように、この被害者というのは複雑な抵当証券仕組みとかあるいはモーゲージ証書意味するところを理解するのには若干無理じゃないかと思われる人たちが被害にいつも遭うわけでございまして、これを見過ごすわけにはいかないと思います。  そこで、私は、それは短絡的な立法措置は講ずべきではないとは思うものの、このように大きな金銭を不特定かつ多数の人から結果的には受け入れる、そういうような業務をするわけでございますから、財務基盤が一定の基準に達しているかどうか、そしてそれを少なくとも登録をさせて開業を認める等の業法の制定も悪徳業者を締め出す一つの方法ではないか、私自身このように考えるわけでございますが、そのような業法を決めることはどうだろうか、前向きに検討していただけるのかどうか、その点について法務大臣あるいは大蔵省の方からお答えいただきたいと思います。
  209. 窪野鎮治

    窪野説明員 お答えいたします。  抵当証券が、先生指摘のように一般投資家の方を対象として販売されていること、こういう点から、大蔵省といたしましても、担当証券の問題につきましては、投資家の方の保護、こういう観点から現在いろいろ検討しているところでございまして、現時点では法制の整備が必要なのかどうか、その点につきまして具体的な考えを持っておりませんが、今後法制の整備が必要かどうか、こういう点を含めまして法務省ともよく御相談をいたしまして、さらに検討、研究を進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  210. 冬柴鐵三

    冬柴委員 済みません、法務大臣はいかがでしょうか、今の考え方。
  211. 遠藤要

    遠藤国務大臣 ただいま大蔵省でお話しのとおりでございます。
  212. 冬柴鐵三

    冬柴委員 そうしますと、現時点において国が、このようないわば正体のわからぬ業者といいますか、そういう人たちが発行しているモーゲージ証書、現にこれは出回っているわけでございまして、これに対してどのような処置をおとりになっているのか、また近い将来おとりになるつもりなのか、その点をお伺いして、私の質問は終わりたいと思いますが、その点はいかがでしょうか。
  213. 窪野鎮治

    窪野説明員 お答えいたします。  先ほど先生の御指摘の中にもございましたように、大手の抵当証券取扱業者中心といたしました自主的な団体であります抵当証券業懇話会におきまして、先般、抵当証券購入者の保護それから抵当証券事業に対する信頼性の確保という観点から、業務運営上の自主基準を決定したところでございます。大蔵省といたしましては、目下のところこのような業界の努力に対してできる限り相談に乗るとともに、先ほど申し上げましたように、投資家保護という観点から果たして法整備が必要なのかどうか、こういう点も含めて検討しているところということでございます。
  214. 冬柴鐵三

    冬柴委員 もう一点。私は、大蔵省からいろいろ御指導を受けていられる業者については心配していないのです。それ以外の人にどうするのか、どういうふうな手を打つようにしていられるのか、それを伺っているわけで、重ねてその点についてお答えをいただきたいと思います。
  215. 窪野鎮治

    窪野説明員 お答えいたします。  現在のところ、大蔵省等の行政的な組織におきましては、今まで申し上げたところ以外の業者につきまして具体的に指導するとか、そういう権限あるいは手段を持ち合わせていないわけでございますが、先ほど来申し上げていますように、抵当証券に関します投資家保護という観点から今後どんなことが可能なのか、法務省ともよく御相談して検討してまいりたい、こういうふうに思います。
  216. 冬柴鐵三

    冬柴委員 早急にそれをお願いして、終わります。どうもありがとうございました。
  217. 大塚雄司

    大塚委員長 中村巖君。
  218. 中村巖

    中村(巖)委員 きょうは、中国残留孤児あるいは残留婦人の問題について少しまとめてお伺いをしてまいりたいと思っております。  最初に、中国残留孤児あるいは残留婦人、こういうふうに言われる方々のことでありますけれども、こういう方々で現在まで日本に永住するために戻られた、あるいは身元が判明した、いろいろあるわけでありますけれども、終戦時、今次大戦が終わった時点でそういう中国残留孤児というのは大体数にしてどのくらい総体でいたものだろうか、こういうことをお伺いしたいわけです。人によっては千五百人くらいじゃないかとか、あるいは二千人だというようなお話もあるわけでありますけれども厚生省としては大体その数をどういうふうに把握しておられるのか、その数を把握するについてどういう資料あるいは調査方法でもって把握されておられるのか、それをお伺いいたします。
  219. 大西孝夫

    ○大西説明員 お答えをいたします。  まず、お尋ねのうち残留孤児についてでございますが、これまで私ども日本政府中国政府とで孤児であるとして確認できている数は二千百三十五名でございます。このほかに、現在中国政府においてなお調査中と言われる者、あるいは我が方に直接身元調査を依頼している方がそれぞれ数十名オーダーでおりますので、なお百名前後の方々がこれに加わってくるというふうに見込んでおります。  終戦時において全体でどれくらいあったかということは、その二千百三十五に幾らさらに加えられるかということでありますが、私どもも現時点ではまだ明確にお答えできる状態にはなっておりませんが、少なくとも二千百三十五名よりさらにかなりの数が上積みされるということにはなろうかと思っておるわけでございます。  それから、残留邦人のうちの残留婦人でございますが、この方々につきましては、現地の方々と結婚されて、一応向こうの社会で生活されておるということもございまして、正直のところ把握が難しいわけでございます。これはごくごく大ざっぱでございますが、現在約三千五百名の残留婦人の方が中国におられるのではないかというふうに私どもは推計をいたしております。一つの証左としましては、向こうに永住することになられた方々がせめて一度故国を見ておきたいという御希望がありまして、実は昭和五十年から一時帰国という制度を設けておりますが、その制度を利用して帰られた方が二千七百名ほどおられます。そういったことを考えまして、大体三千五百名くらいではないかというふうに推計しております。
  220. 中村巖

    中村(巖)委員 残留孤児残留婦人それぞれについて、残留孤児の方は推定というよりもかなり明確な数字を出されている、二千百三十五という数字を挙げられたわけでありますけれども、これらについては厚生省はどういう方法でお調べになっておられるのか。二千百三十五名全員について名簿ができているのだろうか。それから中国サイドはどうやって調べているのだろうか。これをちょっとお聞かせいただきたい。
  221. 大西孝夫

    ○大西説明員 お答え申し上げます。  二千百三十五名につきましては名簿ができております。ただし、これから調査を行うことになるのが、今年度七百名予定しておりまして、これまでに四百名済み、現在行っている調査を含めて三百名でありますが、この余の分について最終的な名簿という形でまだ中国政府からいただいておりませんので、全部できておると申し上げるのはちょっと時期尚早かもしれませんが、一応でき得る態勢でございます。  それから、これをどう調査したか、特に中国側でどうだったかという点でございますが、中国に公安部というのがございまして、本政府の公安部並びに各省政府におきます公安部が一人一人について養父母を訪ねまして、山奥まで追っかけていって事実関係を洗って調べておるというふうに中国から聞いておりますし、かなり人手をかけて厳密に調査していただいていると私どもは考えております。
  222. 中村巖

    中村(巖)委員 そういう数の残留孤児の方あるいは残留婦人の方がおられるわけですが、それらの方々の中で、日本に住みたいということで日本に帰ってこられた方、そうでない方、それぞれおられると思いますが、その数はどういうふうになっておりますか。
  223. 大西孝夫

    ○大西説明員 お答えを申し上げます。  残留孤児残留婦人というふうに明確に区分できないでお帰りになっている方もありますが、孤児につきましては、これまで私ども調査をして、その上で判明して帰られた方々というふうに限定つきでございますが、この方々はこの九月末までに三百二十三名の孤児がお帰りでございます。  それから、今後どれぐらいお帰りになるかについては、これは予測の問題でございますが、私どもはおおむね六〇%ないし六五%の方々がお帰りになるであろうということで、今後大体千世帯が孤児世帯としてはお帰りになるのではないかというふうに見込んでおります。  それから残留婦人につきましては、これまでお帰りになった方々残留婦人であったかそれ以外の形態の方であったかというのは、必ずしも一人一人当たっておりませんのでわかりませんが、これも私どもの推計でございますが、おおむね千名が従来残留婦人という形で中国に残られた上帰国された方というふうに見込んでおります。現在向こう側に残っておられる方々が、先ほど申しましたように大体三千五百ぐらいではないか、こういうふうに私どもは見ておるわけでございます。
  224. 中村巖

    中村(巖)委員 今、訪日されての公開調査ということで昭和五十六年からやられているわけですけれども、今度が十三次ですか、これらの日本に来られている方々は、孤児のすべてではないと思うのですね。訪日調査に参加をされない、あるいは参加をしたくてもできない事情にある、そういう孤児の方もおられると思いますが、訪日公開調査日本に来られる方々というのは、それは日本側がやっているのじゃないのでしょうけれども、どうやって募集しているということになるのですか。
  225. 大西孝夫

    ○大西説明員 先生指摘のように、いわゆる孤児という状態にあった方々でなお御自身が日本人孤児であることを知らないままに現在に至っている方もあろうかと思いますし、あるいはわかっていても自分は中国人としてこのまま暮らそうということで名のり出ない方もあろうと思います。二千百三十五名という形で把握しております数字は、帰国するかどうかは別として、御本人も自分の身元が知りたいということで肉親調査依頼を当方ないし中国政府に対して申請をした方々であるということでございまして、先ほど申しましたように、調査を希望しないで隠れた存在としておられる孤児方々もそれ以外におられるであろうと私ども思っております。
  226. 中村巖

    中村(巖)委員 ちょっと今お尋ねの仕方が悪かったのかもわかりませんが、訪日公開調査で現在まで日本に来られた方あるいは今年度末まであと二百人ぐらいですか来られるということですが、その総トータルというのは幾らぐらいになるのでございますか。
  227. 大西孝夫

    ○大西説明員 お答え申し上げます。  いわゆる訪日調査は、五十六年三月に第一次を始めまして、ことしの九月までで十二回行っておりますが、これまでに来られた孤児の総数は千二百四十二名でございます。これに現在実施中の十三次の分百名ございますので、これまで訪日調査で訪れられた孤児の数は千三百四十二名、こういうことに相なります。
  228. 中村巖

    中村(巖)委員 そうしますと、その人数で当面日本を訪れて肉親捜しをしたいという希望者は大体終わるということになるわけでしょうか。その後そういう人がさらに出てくるというようなことはあり得ないわけでしょうか。
  229. 大西孝夫

    ○大西説明員 先ほど少し申し上げましたように、現在身元調査をしてほしいということで申し出をされて、それについての調査をしておる最中のものというのが、中国政府あてに出されておるそういう申し出が私どもの聞いておるところで数十件あるというふうに聞いておりますし、厚生省に直接身元調査をしてほしいという依頼が来ておるものもやはり数十名というオーダーでございます。これは両国政府で突き合わせをしておりませんので、まだ最終的にわかりませんが、ダブっておるものもあろうかと思いますし、そういう方々でざっと調査の上まず孤児に間違いないというふうに中国政府も認め、また我が方もそういう状況等から孤児であると認めた場合にはこれを今後の訪日調査対象にしようと思っておるわけでございますが、正確な数は、今後どれだけ上積みになってくるかということは私どもわかりませんが、少なくともまず百名はそういう方々がこれまでの数字に加わるであろう、こう見ておりまして、六十二年度百名分の訪日調査のための経費を要求しております。それでまたおしまいというふうにも思っておりません。その後もなお、数は申し上げられませんが可能性としては出てくる可能性があろうと思いますし、厚生省としましては最後の一人まで調査は実施したいと思っております。
  230. 中村巖

    中村(巖)委員 中国残留孤児あるいは残留婦人の問題ですけれども、基本的に厚生省はどういうふうに今考えておられるのか、こういうことです。つまり厚生省としてはこういう人たちの身元を調べること、これについてはできる限りのことをするんだ、こういうことだろうと思いますけれども、この人たちを日本に受け入れて帰国をさせることを努力をするのか、どうしても帰国をしたいという人はやむを得ないから何とか受け入れようかという考え方なのかどうか、その辺のことはどうなんですか。
  231. 大西孝夫

    ○大西説明員 厚生省といたしましては、孤児につきましても、残留婦人につきましても、基本的にはその御本人の意思というものを第一義的に考えております。先ほど申しましたように、今後恐らく孤児の場合、千名近い方がお帰りになりたいということになろうかという見込みを立てておりますが、しかし、あくまでこれは私どもの予測でございまして、孤児方々がいろいろな事情でとどまることになるというケースもありましょうし、どうしても帰国したいということでお帰りになろうという方もあろうと思いますが、私どもの施策の上で重点は、これまではとりあえずまず身元を捜してあげるということを重点に置いてまいりましたが、ことし一応七百名の調査を終えてひとまず概了という状況になりますし、今後の重点は、お帰りになりたいという方々を一日も早くお帰りいただけるような体制づくりということが今後の施策の重点になろうというふうに認識しております。  それから残留婦人につきましては、正直なところを申しますと、既に四十七年に国交回復後、先ほど申しましたようにおおむね千名の方が帰られておりますし、この方々孤児の方と違いまして日本語も話せるわけでございますし、日本の生活習慣も十分御存じでございますので、お帰りになる場合はそのまま実社会に溶け込んでいただける、あとは身元を引き受けていただく方をどう配慮していくかという問題になりますので、孤児とは若干違う面がございます。現在残留婦人として残られておる方の多くは中国永住を決意されている方々ということであろうと思いますが、この方々もお帰りになりたいということであれば、孤児同様に帰国に当たってのいろいろな援護措置を講じてまいりたいと思っておりますので、基本的には孤児残留婦人も、お帰りになりたいという方々についてはその御希望に沿えるように国内の受け入れ態勢をつくるという方向で私どもは対処してまいりたい考えでございます。
  232. 中村巖

    中村(巖)委員 今後残留孤児の方でお帰りになりたい方が千世帯ぐらいあるであろう、こういうお話でありますけれども、しかし私が今聞いているところでは、お帰りになりたい、きょう帰りたいという意思を表明したからといってすぐ帰れるような状況ではない。それはやはり日本の国内に受け入れ態勢がないから、受け入れ態勢に沿ってそれまで待っていただく、こういう状況になっているということでありますけれども、その関係は、何か一カ月何人であるとか一年に何人であるとかそういう数があって、順次申し込み順か何か知らないけれども、そういうことで受け入れている、こういうことなんでしょうか。
  233. 大西孝夫

    ○大西説明員 お答え申し上げます。  私ども、実は帰国孤児の場合には日本語がしゃべれない方がほとんどである、日本での生活習慣を全く知らないということがございまして、基本的には日本にお帰りいただいた段階で、研修をした上で各地に行って定着していただく、こういう方式をとる必要があるということで所沢に定着センターを設けておるわけでございますが、これが収容数が極めて限られておるということでことしの予算でこれを倍増することにいたしたわけでありますが、それでも来年度からフル稼働で年間百八十世帯、こういうことでありまして、先ほど申しましたように、一千世帯の方がもしお帰りになるとしますと六年も七年もかかる、それでは余りにもひどいではないかということで、来年度の予算におきましては全国五カ所にサブセンターを、民間の施設を活用させていただきましてそういうサブセンターを設けて、そのサブセンターでトータル年間百五十世帯の受け入れができる、そういう態勢をつくりたいという予算要求をしておりまして、もしこれが実現しますと所沢と合わせまして年間三百三十世帯受け入れられるということで、三年でおおむね受け入れが可能、こういう方針で予算要求をしておるわけでございます。  私どもは、そういう順番待ちというか、時間を待っていただかなければならぬ状態にしておる理由の一つは、羽田に着けば後は御自由というわけにまいらない、帰ってこられた方々日本語なり生活習慣をオリエンテーションという形で十分お教えをして、実際に自分で生活する段階になって不自由のないように訓練、研修の期間を与えてあげる必要があるということからセンターをつくり、そこへ入るために、しかし定員が足りないために順番待ち、こういう状態なものでございますから、その順番待ちの状態を少しでも短くする意味でサブセンターをつくって受け入れ態勢の拡充に努める、こういうことが今課せられた使命というふうに私ども受けとめているわけでございます。
  234. 中村巖

    中村(巖)委員 厚生省に対する最後の質問ですけれども日本にお帰りになりたいという方については援護のいろいろ財政的な措置、旅費であるとかあるいはそのほかの援助というか、そういうものをやっておられるようですけれども、どういう援助がされるのか。それと同時に、そういう援助を受けるためには、仄聞するところによると日本戸籍を持ってないと援助ができないのだ、何かこういうことを聞くわけですけれども、そういうような事実があるのかどうかお伺いをいたします。
  235. 大西孝夫

    ○大西説明員 お答えを申し上げます。  終戦後海外に残られた方々日本に帰っていただくためにいろいろな援護措置があるわけでございますが、これに対応するための方策としまして二十七年に閣議決定がございまして、その閣議決定に基づいていわゆる引き揚げ援護施策を講じておりますが、一方で未帰還者留守家族等援護法というのがございます。これは、国内に留守家族がいる未帰還者について、その留守家族についていろいろ御援助申し上げる、こういう法律がございます。どちらも基本的には日本国籍を有する者というのを前提に置いております。法律の場合は条文に明言してございますし、閣議決定の場合も引き揚げという言葉自体に日本に国籍のある者が帰る、こういう意味合いがございますので、いずれも国籍要件を基本的に置いておるわけでありますが、孤児につきまして、特に未判明孤児の場合はそもそもそういうことを言いますと国籍がどこにもない、こういうことになりますので、孤児につきましては中国政府日本人孤児と認め、我が方も日本人孤児と認めた者については潜在的に国籍を有しておるという理解に立ちまして、その国籍要件を言うならば緩和して運用させていただいておりますが、基本的にはその国籍があるということがこの引き揚げ援護の基本的な前提であると思っております。そのために戸籍というものが国籍のあることを証明するものとしてどうしても必要になってまいるということでございまして、ケース・バイ・ケースで、孤児の場合のように国籍がない人についても予算措置によるそういう援護措置を講じておるわけでございますけれども、基本原則はやはり国籍を前提に置き、その証明手段として戸籍を問うておるという形は一応ある、こういうことでございます。
  236. 中村巖

    中村(巖)委員 今ちょっと私が伺ったことの中でお答えがなかったのですけれども、どういうような援護というものがなされているのかということはどうですか。
  237. 大西孝夫

    ○大西説明員 先ほど申しました閣議決定に基づく引き揚げ援護の体系の中では、基本的には外国から日本に帰る旅費、それから国内に着きましたときの帰還手当というものが中心でございました。孤児につきましてはそういうことに加えまして、さらに現地に居ついた場合にいろいろ生活の指導をして差し上げる必要があるということで、生活指導員の派遣をする、あるいは日本語の学習に必要な教材を与える、それから住宅の手配として例えば公営住宅の優先入居という措置を各自治体に講じていただいている、あるいは身元引受人をあっせんして差し上げるというように、いろいろ孤児については従来の終戦後間まもなくのころの引き揚げ援護に比べますとさらに援護内容は多様化いたしております。  それから未帰還者留守家族等援護法におきましては、基本的には留守家族への援護ということで、例えば葬祭料でありますとか手当、こういうものが中心でありますが、未帰還者御本人については、日本に着いた後定住地に向かうための国内旅費を援護しておる。本人に対する援護はそれ一点でございまして、残りは留守家族に対する援護でございます。  以上でございます。
  238. 中村巖

    中村(巖)委員 時間がなくなりましたので、厚生省これで結構です。  今度は最高裁判所の方へちょっとお伺いをしておくのですが、中国残留日本人孤児日本人、それは出生のときに日本人から生まれれば日本人であるわけでございますけれども、実際問題としては国籍というものは、戸籍がないとこれは国籍があるということにならないわけで、そこで日本人であるということを確認をするためには、また日本人として生活をしていくためには戸籍を獲得をしなければならない、こういうことになるわけであります。従前その残留孤児方々の生まれた時点での戸籍はどうなっていたかによっていろいろありましょうけれども、実際に出生届等々が日本でなされてないということになれば後は戸籍がないわけですから、就籍ということにならざるを得ないわけでありまして、就籍については家庭裁判所の許可というものが必要なわけですけれども、この許可について、大分最近、この就籍許可の申し立てというものが多いように聞いておりますけれども、数的にはほぼどのくらいあるのかということを把握をされておりますでしょうか。
  239. 猪瀬愼一郎

    ○猪瀬最高裁判所長官代理者 中国残留孤児について身元が未判明の孤児から申し立てられます就籍許可の申し立て事件は、私どもの方に報告がございますのは昭和五十七年からでございますが、昭和六十一年六月三十日現在まで、合わせまして百九十七件ございまして、そのうち既済となっておりますのは百十四件、その内訳は認容が九十九件、却下が四件、これは手続の不備等があって却下になっているというものでございます。それから取り下げが十一件、これは戸籍が、戸籍というか身元が判明したというようなことで取り下げたということで、既済が合計百十四件、未済が八十三件、こういう状況でございます。
  240. 中村巖

    中村(巖)委員 却下されたものは手続が不備であったということで却下をされたということですが、午前中もありましたように、許可がされなかったという、こういうケースも最近出てきておるようで、そういうものは新聞に報道された最近の事例以外にもあるんでしょうか。
  241. 猪瀬愼一郎

    ○猪瀬最高裁判所長官代理者 ただいま申し上げましたように、ことしの六月三十日現在ではそういうものはございませんでしたが、ごく最近、新聞でも報道されましたように、日本国籍が認められない、つまり日本国籍の要件、法律上要件となっている事実関係が認められないということから却下になった事例が一件最近出ております。
  242. 中村巖

    中村(巖)委員 そこで、認容されるか不許可になるか、こういうことは資料によって裁判官が判定をする、こういうことになるんだろうと思います。裁判官の判定でありますし、法定証拠主義ではないわけですから、そのケースによっていろいろな場合があるんだろうというように思いますけれども、概略言えば、どの程度のどういう資料があれば認容になり得るのかという、この点はいかがでしょうか。
  243. 猪瀬愼一郎

    ○猪瀬最高裁判所長官代理者 申立人が日本国籍を有するということの要件は、先ほど委員指摘のように、中国残留孤児出生当時の国籍法によりますと、申立人の出生時、その父が日本人であるか、または父が知れないときには母が日本人であるということでございますが、その認定のために家庭裁判所はできるだけ証拠資料の収集に努めておりますが、これまで就籍許可をしました審判例を見てみますと、中国の公的機関が発給している孤児証明書厚生省保管の孤児関係資料、これには孤児名簿やその他の孤児調査票がございますが、そのほかに申立人や養父母その他参考人の供述書であるとか、申立人や参考人に対する家庭裁判所調査官の面接調査の結果、または家事審判官による審問の結果というものを総合して認定している事例が非常に多いわけでございます。その認定に当たっては、申立人が養父母に引き取られたいきさつであるとか、その引き取られた当時の申立人または実父母の言葉あるいは服装、身体的な特徴、そのほか父母が日本人であることを推知させる何らかの事情というものとか、さらに養父母に引き取られた後に近所の人たちあるいは学校、職場等で日本人として扱われてきたかどうかというような、そういった事情などが状況証拠として用いられておるというのが一般的でございます。
  244. 中村巖

    中村(巖)委員 時間がなくなりましたので、今のことでちょっと一点だけ伺って、それで終わりにしますけれども、その許可をするについては、これは資料の収集ということは専ら当事者、申立人当事者がやるのか、それとも職権探知ということで家裁の側でも資料をお集めになる、こういうことになるのか、どちらでしょう。
  245. 猪瀬愼一郎

    ○猪瀬最高裁判所長官代理者 家事審判の性格からしまして、職権探知ということで職権で極力資料収集に努めておりますが、ただ、その職権行使についても限界がございまして、やはり当事者の協力がなければなかなか資料が集まらないという点がございます。そこで、代理人のついているような事例につきましては、代理人を通じて養父母その他参考人等に対して照会などをしまして、先ほども申し上げましたような事情に関する証拠の収集等に努める。それから、家庭裁判所としましては、申立人その他参考人に対して家裁調査官による面接調査あるいは家事審判官による審問、そういうことをしまして、できるだけ証拠を収集しておる、こういう状況でございます。
  246. 中村巖

    中村(巖)委員 終わります。
  247. 大塚雄司

  248. 安倍基雄

    安倍(基)委員 冒頭に、私、こういった討論はあらかじめ質問を通告するのはおかしいという考えを持っておりますけれども、今回は特に詳しく質問することにします。と申しますのは、事が官房副長官だけでは答えられない問題が随分あるのじゃないか。要件としまして答えられないものがあれば官房長官に聞き、場合によっては総理に聞いた上で御出席を願いたいということを念を押してございますけれども、その点は結構でございますね。――そういうぐあいの了解が得られたと私は考えております。  今、国民が非常に関心を持っているのは中国に対する首相の訪問でございますね。これは外務委の問題じゃないかという話にもなりますけれども、これは非常に国際関係、国際法関係と国内法関係との接点でございまして、法務委員会たるものはやはり法的にいろいろ詰めた議論をすべきではないかと思うので、この問題を取り上げたわけでございます。  一番最初にお伺いしますけれども、中国へ行かれたときに、藤尾問題がございますね、これは韓国では全大統領に対して陳謝したわけです。今度、藤尾発言の中に南京事件の問題とかいろいろあるわけですね、総理が向こうに行かれて、いわばこの藤尾発言問題が出てきたときに、どういう態度をおとりになるのか、陳謝されるのかどうかという、非常に強い関心を持っているわけです。その点につきまして、私は総理に確かめられたと思いますけれども、その結果をお答え願いたい。
  249. 渡辺秀央

    ○渡辺(秀)政府委員 安倍先生の事前の御連絡をちょうだいいたしまして、今ほどのお話ではございますが、これは実際に向こうに行ってからの問題でありまして、これから中国にお伺いをして、日中友好親善のための話し合いをするに当たりまして、事前にこういう話が出た場合にはどうだろうというようなことがお答えできるという状態には御本人もないのではないか。これはまあ憶測で御答弁することもいかがかと思いますし、中国に行って実際にいろいろなお話し合いをしてみなければ、今ここで今の御質問にお答えするという材料を持ち合わしていないということでございまして、どうぞひとつ御理解願いたいと思うのです。
  250. 安倍基雄

    安倍(基)委員 この話が出るか出ないか、出なかったら、出ないかもしれないから答えられないというのはおかしいので、大体当初そういった全大統領にきちっと謝ったという事実があるわけですから、出るか出ないかわからないから答えられないとおっしゃいますけれども、その一環とすれば、当然陳謝するという格好になるのじゃないかと私は予想していますが、これはあくまで、出ないかもしれないからと言うんじゃおかしいので、出た場合どうするのかと私は聞いているのです。
  251. 渡辺秀央

    ○渡辺(秀)政府委員 これは御案内のとおり、既に両国政府の間では大使館、外交ルートを通じてお話し合いは大体了解をお互いしているという立場にあるわけですね、政府の真意等を踏まえて。ですから、改めて出るか出ないかということは、これはわからぬということではないかな、こう思います。
  252. 安倍基雄

    安倍(基)委員 そうすると、あらかじめ話がつけてあるから出るはずがないという話ですか、どうもはっきりわからないのですけれども。  つまり、私が聞いているのは、ともかく出る可能性がある、十分ある、五〇%以上ある、そのときにどういう態度をとるか、まだ考えてないのかどうか。これは大事な話ですよ。これはごまかさないでください、はっきり言ってください、どっちですか。
  253. 渡辺秀央

    ○渡辺(秀)政府委員 何回も申し上げるように、出るということは、それは先生の方の断定であって、我が方は――出たらと言っても、それは仮定には答えられません、今は。出る場合の話の雰囲気もあるし、話のトーンもあるでしょうし、いろいろあると思うのですね。それはそのときの問題であって、今ここでお話が出ることを前提とした答弁というのはいかがかというふうに私は申し上げておるわけです。
  254. 安倍基雄

    安倍(基)委員 じゃ、改めて外務委員会なり予算委員会なりで総理にお聞きすることにしましょう。私は総理にもう既にこの話は聞いておられる結果と思っておりましたけれども総理にこの点は問い詰められておるのですかないのですか、はっきりお答えください。総理にですよ、このことをきちっと聞いて総理の答弁を得ているのか得てないのか、私はこれはきちっと総理にあらかじめ聞いておいてくれと言ってあるわけです。聞いてないのですか。
  255. 渡辺秀央

    ○渡辺(秀)政府委員 これは官房長官に出てこい、出席するようにというお話でありましたね。官房長官に御出席要請があって、そして官房長官の御要請の時間が折り合わないので、いかがでしょうかというお話の中で、私でよろしければということでお伺いしたわけで、これは官房長官とはそういう意味でお話し合いをさしていただいております。
  256. 安倍基雄

    安倍(基)委員 私は文書で、「官房長官が出席できない場合は副長官が下記質問について官房長官に確かめ、及び官房長官にて確かめられない場合は総理に確かめたうえで回答する事。」ということを要求しているのです。委員部はそのことを伝えてあるのですか。――委員長、答弁してください。
  257. 大塚雄司

    大塚委員長 委員部ではそのとおりの文書を提出してあるそうです。
  258. 安倍基雄

    安倍(基)委員 これは時間がかかりますから、一応その点で私は、この問題について外務委員会あるいは予算委員会において、同僚議員がいろいろいますから、私がすぐ出ていくのも問題でございますから。  次に、紙上伝えられるところによりますと、たしかこれは藤尾さんが言ったと思いますけれども、香山さんという人を中国に派遣して、何かこの問題を取り上げてくれるなという話をしたとか、あるいは毎日新聞によりますと、四元さんですか、この方は血盟団の生き残りとして、私も直接面識はないけれども、なかなか命を張った方だと聞いておりますけれども、こういった方に合祀問題とか藤尾問題を取り上げないでくれということを言づてしたというぐあいに報じられておりますけれども、これは事実でございますか、それとも全く事実無根でございますか。
  259. 渡辺秀央

    ○渡辺(秀)政府委員 安倍議員がおっしゃっているのは香山健一先生のことだろうと思うのですが、政府としては全く承知いたしておりません。  それから四元さんの場合も、これも新聞で報じられたことは私もかいま見ましたが、例えば総理が特別に何かお願いをしたということも伺っておりません、これは新聞に出たことでありますので。それから、かつての同僚議員も御一緒に行ったということでありましたので確かめました。全くそういう事実はないということであります。
  260. 安倍基雄

    安倍(基)委員 私は、この事実を総理に確かめて出てきてくれと言っているのですよ、はっきり言って。だから、政府は関知しないと言っても、総理がしていれば、この事実があったかどうかを総理にきちっと聞いた上で出てきてくれと言っているわけですよ。
  261. 渡辺秀央

    ○渡辺(秀)政府委員 いやいや、だから私が後段申し上げたでしょう。後段申し上げているように、これは確かめましたと申し上げておる。
  262. 安倍基雄

    安倍(基)委員 じゃ、香山さんの件も行ってないのですか、これは行っていないのですね。香山さんが中国に行って、そういう話を持っていってないんですね。
  263. 渡辺秀央

    ○渡辺(秀)政府委員 中国に行ったかどうかということは、中国に行ったらしいということは伺っておりますが、行くについて、今先生がおっしゃっているのは、総理がそこに何かを託したとか事前にお願いをしたということのようでありましたが、全くそういう事実はありませんということを申し上げているのです。
  264. 安倍基雄

    安倍(基)委員 それは藤尾さんの発言の中にたしかあるはずですな、今度の文芸春秋の中に。じゃ、藤尾さんはうそを言っているのですかな。この点を私は総理を目の前にして総理に聞きたいけれども、法務委員会だからちょっと遠慮をした、この点を確かめてきてくれと言っているのですよ。  じゃ、副長官が知らなければ、どこかの時点で総理に確かめる必要がありますな。いや、本当にこれは時間のむだなんだが、確かめてきてくださいときちっと言ってあるわけですよ。
  265. 渡辺秀央

    ○渡辺(秀)政府委員 何回も申し上げておりますように、これは確かめてまいりました。確かめてまいりましたと申し上げているのです。その上で否定をさしていただいておる、こういうことです。
  266. 安倍基雄

    安倍(基)委員 じゃ、そういった事実はないと言うのですな。総理はそうおっしゃっていたわけね。これは全く誤報ですな。それから、もう片っ方の方の場合も全く事実じゃない、そうすると、これは毎日新聞が間違ったことを報道したわけですな。そう言っていいんですね。
  267. 渡辺秀央

    ○渡辺(秀)政府委員 それは私はわかりません。
  268. 安倍基雄

    安倍(基)委員 それじゃ毎日新聞の方、これは事実かどうかよく調べておいていただきたい。  それから、今中国側が、A級戦犯がいるから参拝するのはけしからぬよ。つい最近も何か新聞で、中国外務省筋の話として、これは日本が過去の戦争をどう思っているかということについてのいわば試金石だと言っておりますけれども、そうすると引き続き、何と申しますか、首相がA級戦犯が合祀されているうちは参拝しないよ、中国側のその要請をそのまま引き継いで考えていますよということなんですか。――ちょっとはっきりわからなかったかな。要するに、A級戦犯が祭られている間は中国側が難色を示しているから公式参拝はしないよという方針をそのまま続けられるわけですな。その辺、ちょっとお聞きしたいと思います。
  269. 渡辺秀央

    ○渡辺(秀)政府委員 お参りというお話ですけれども、いわゆる公式参拝の意味を申しておられるのではないかと思うのですが、公式参拝というのは、安倍議員も御案内のとおり、制度化したものではないわけですね。ですから、ことしは諸般の事情にかんがみて公式参拝を取りやめた、こういうことを官房長官談話で申し上げておるわけでして、今議員がおっしゃるような問題の中でこうことを考えて処置をしたということではないわけです。
  270. 安倍基雄

    安倍(基)委員 私は、実は副長官はお読みになったのかどうかわかりませんけれども、文芸春秋の十一月号に書いたのがございますが、お読みになったですか。中曽根さんがもともと政教分離の立場からずっと参拝に反対するということなら私は話はわかる。一度参拝しておいて、中国からちょっと言われたからといってたちまち翻す。そのような国際的な風見鶏では大変だ。また中国に行って謝ってくるのか、国民全部が注目しておるところなんですよ。しかし、見ると、どうもその前にだれか人をやって、この問題を要するに取り上げてくれるなというようなことを言われたかのごとく報道されている。私は、いわば毎日新聞社の方々皆さん方とどっちが本当なのか、内閣とひとついろいろあれしていただきたいと思いますけれども、いずれにいたしましても、こちらのこの二つの訪問について、事実無根であるとおっしゃることは総理に確かめられたわけですな。よろしいですな。――わかりました。では、毎日新聞の誤報であるというわけですな、この点につきましては。いかがでございますか。
  271. 渡辺秀央

    ○渡辺(秀)政府委員 誤報かどうかということは私が評価する問題じゃないので、その事実はないということを申し上げているのです。
  272. 安倍基雄

    安倍(基)委員 事実はないと言うのだったら、それはどっちかが間違っているわけですから、毎日新聞の方、よく調べてください、これは本当に大事な話ですから。  その次、最近靖国神社の合祀問題について、宮司がこれは国の指示によったと言っております。新聞報道、これも毎日新聞かな。毎日新聞いろいろそういうところに関心を持っておられるようですけれども。ところが、総理は靖国神社がやったんだよと言っておりますけれども、この辺の実情はどうなんでしょうか。あるいは厚生省からの御説明も必要かと思いますし、いわば内閣の態度、恐らく厚生省のレクチャーを受けて内閣が決めると思いますけれども、その辺の御説明をしていただきたいと思います。
  273. 大西孝夫

    ○大西説明員 お答えを申し上げます。  御案内のように、厚生省は遺族援護という立場から靖国神社からの調査依頼に応じまして、一般的な調査資料提供の一環ということで遺族年金、弔慰金等の裁定状況等について調査、回答いたしてきたところでございまして、戦犯の遺族に関する遺族年金、弔慰金等の裁定状況等につきましても同様に調査、回答しておるところでございます。しかしながら、戦犯も含めだれを合祀するかということにつきましてはあくまで靖国神社の判断でございまして、厚生省からの調査、回答を受けて靖国神社がどのような経緯で戦犯を合祀されたかということは必ずしも明らかでございません。  ただ、御参考までに、A級戦犯の合祀に関しましては、昭和五十四年四月十九日付の朝日新聞朝刊及びサンケイ新聞朝刊にこのA級戦犯合祀に至る経緯が報道されておりまして、その中で参考になろうと思われるところを申し上げたいと思います。靖国神社に藤田勝重という権宮司がおられますが、その方のお話しになられた内容ということで新聞に載っておるところを、これは朝日新聞の方の記事でございますが、ちょっと読ましていただきますと、   これまでA級戦犯の取り扱いについては国民感情の面から延び延びになっていたが、戦後三十三年も経過していることや、明治以来の伝統から靖国へまつることが適当である、と神社内で判断した。A級戦犯とはいえ、それぞれ国のために尽くした人であるのは間違いなく、遺族の心情も思い、いつまでも放置しておくわけにもいかなかった。なお、不満の人もあることから、いちいち遺族の承諾を求めるものではないと判断し、案内も出さなかった。もちろん、われわれだけの判断ではなく、神社の崇敬者総代の全員の合意も得た。関係者にあらぬ刺激を与えたくなかったが、無理にかくす気持ちもなかった。あくまで、まつられるべき時期にきたと思っている。 こういうように述べられておるのがコメントとして載っておることでございまして、サンケイ新聞の方もおおむね同趣旨の記事が載っております。  このことから申しましても、この戦犯の、特にA級戦犯の合祀は神社側の判断によってなされたということが明確だろうと思います。
  274. 安倍基雄

    安倍(基)委員 ちょっと話が飛びますけれども、そうすると、B、C級の戦犯について、山下さんとか本間さんとかいうのはフィリピンの関係でこられたわけですけれども、今まで中国からいわばA級だけを言ってきておるわけですよ。B、Cについても当然クレームが起こってくる可能性はあるわけですね。例えばA級の松井大将なんというのは、これは全然戦争開始に関係ないわけです、御年配の方は御存じですけれどもね。私はこの前の文芸春秋で、ウエッブ裁判長と会った話をしまして、そのときにウエッブ裁判長が、死刑になったのは最終的には人道に対する罪でなっているということを言っているわけです。そう言われてみると確かにそうなんで、松井さんなんというのは全然戦争開始に関係ない人です。南京事件責任をとらされて死刑になっておるわけです。木村兵太郎さんもビルマの関係で死刑になっておるわけです。特に南京事件あたりを中国が非常に問題にしておるわけでございますけれども、広田さんが殺されたのも、文官でありながら当時の外務大臣であったという要素が南京事件に絡まって死刑になっておりますね。こう考えますと、いわゆるB、C級についても外せという話も出てくる。そうしたらどうなるんだということなんですね。この辺はちょっとお聞かせ願いたい。
  275. 渡辺秀央

    ○渡辺(秀)政府委員 今B、C級の問題が提示されて国際的というか、日本と諸外国との関係の中で問題になっているということではないわけですね、御案内のとおり。安倍議員はそれをなるであろうという前提で今質問されておられますけれども、これはちょっと答えられない、大変恐縮でありますが。また、答えるべきではないというふうに思います。
  276. 安倍基雄

    安倍(基)委員 では基本的にお聞きしますけれども、A級は外したいという意向はあるのですね、政府として。いかがでございますか。
  277. 渡辺秀央

    ○渡辺(秀)政府委員 これは神社側の問題でありますから、政府としてそんな意向を今までだれかが申されたという事実は私は承知いたしておりません。
  278. 安倍基雄

    安倍(基)委員 では、もう一遍逆に聞きますけれども、A級が祭られているうちは公式参拝を控えるということでございますね。
  279. 渡辺秀央

    ○渡辺(秀)政府委員 先ほど来申し上げておりますように、公式参拝ということを否定して今度参拝をしなかったというわけではないわけですから、A級戦犯と今度のことだけをとらえた御質問に答えるのにどうも私としても非常に当惑するわけでございます。これは、賢明な安倍議員はそこのところをおわかりだと思うのですが、A級戦犯を合祀されているのは、今も答弁にありましたように神社側の問題でありまして、それに対してこれから政府がどういうふうに対応して、あるいは諸外国、アジア諸国を初めとして御理解をいただいて、そしてこの日本の平和を念願している国民の声を理解してもらうかということは今後の問題でありますから、そこは同一にお考えにならずにひとつ御理解をいただきたいところでございます。
  280. 安倍基雄

    安倍(基)委員 どうも中曽根さんのまな弟子だけあってなかなか口でうまくすり抜けるのがお上手ですね。しかし、本当にそれはおかしいのですよ。ともかく、今度公式参拝をやめたのは中国からの抗議でもってやめていることは明らかなんです。私はあくまでA級戦犯を擁護するのじゃないですよ。我々民社党は、庶民感情から見ればあれはけしからぬという気持ちはあるわけです。ただ、論理の筋を通したときに、ともかく今の中曽根さんのやり方は、何かあると向こうの責任にしてしまうわけですね。だから、まず公式参拝をやめる、中国が言ってきた、騒がしくなると今度は靖国神社がやった、みんなそうやってすり抜けているだけで、まことに私はおかしいと思う。  そこで私がお聞きしたいのは、靖国神社が合祀をするときの前提として、結局A、B、C全部公務死になっているわけです。公務で死んだことになっているわけです。全然区別してないのです。しかも、よく調べてみますと、二十八年でしたか遺族年金の方が改正になって、これは議員立法で、議員修正でもって、かわいそうだからやろうじゃないか、やろうじゃないかというのはまた言い方が悪いですね、B、C級なんか含めると本当に皆さん困っていらっしゃるから援護いたしましょうというぐあいに法律は決まったのです。その次は恩給を差し上げましょうという話になったのです。恩給となりますと、かわいそうだったからというだけじゃないわけです。要するに、かつての勤務に対してそれを罪としてないわけです。だから、考えてみますと、例えばドイツのヒトラーとかゲーリングとか、あんな連中に対して果たしてドイツ連邦政府は遺族に恩給をやったか、ムソリーニの場合には逆さづりしたじゃないか、両方とも。私はあのころまだ中学二、三年くらいで、逆さづりかなんかの写真を見たことがあります。ところが、日本の場合には国内法において恩給を上げているわけです、公務死にしているわけです。でありますから、神社側の判断だなんてことを言うのは、そもそももともとがおかしいのですよ、国が全く同一に扱っているわけですから。そうじゃないですか。そうなりますと、国が同一に扱っているから、あれは神社が勝手にやったんだ、A級も一緒に入れたんだと言うのはおかしいのです。国内法と国際法という関係で法務委員会で取り上げるべきだということは、いわば国内法においては免責しているわけです。免責しているどころかそれこそ恩給を与えているという形になっているわけです。繰り返すようですけれども、ドイツあたりだったらそういうことをやったか、そうではないのだ。となりますと、あれは神社側が勝手にやったんだと言う政府がそれこそ責任逃れをやっているわけですね、簡単に言えば。  それではお聞きしますけれども、国は靖国神社に対して、A級戦犯を外してくれとは、一応今のお答えは向こうの判断だから向こうの勝手だというわけですね。だけれども、祭られているうちは私は公式参拝しませんよと今まで言っているわけです。この間の本会議でも、A級とほかの人とは違う、その方向でもって考えましょう、中曽根さんはっきり言っているわけですよ。その後そこをつつかれてくると、ではB、C級とどう違うのだ、そうすると今度は靖国神社が勝手にやったということで、彼は直しさえすれば何もかもうまくいくのだということを言っていますが、そうすると、靖国神社への合祀をA級はやめてくれと言うのならば恩給法の改正が必要なのじゃないか。私は恩給法を今改正しようとまで言っていませんけれども、その辺の判断がどうか。これは法制局そして官房長官、あなたは副だけれども、官房長官とみなしていますから、あるいは顔を見ると毛をちょっと薄くすれば中曽根さんに似てくるのではないかと私は思っていますから、ひとつ官房長官総理になったつもりで、今の問題を法制局と内閣にお聞きしたいと思います。いかがですか。
  281. 渡辺秀央

    ○渡辺(秀)政府委員 せっかくのお言葉ですけれども、副長官として、私の今の感じではやはり恩給法の改正まで考える段階と必要性が今あるとは実は思えないのです。時間もあれですから、先生のお考えはお考えとしてお聞き取りさせておいていただきますが、政府として今の段階この問題をとらまえて恩給法の改正まで考えろということは、今検討している段階にはないということを申し上げて、あともし事務的にもう少し詳しくということなら事務当局に説明をさせたいというふうに思います。
  282. 味村治

    ○味村政府委員 恩給法の規定によりまして、戦犯としての拘禁中に死亡した方々に対しては恩給を支給しているということは恩給法の観点から行っていることでございます。片一方、靖国神社がA級戦犯を合祀しているということは靖国神社の判断によりまして行っていることでございまして、この間に特段の関係があるというふうには考えておりません。
  283. 安倍基雄

    安倍(基)委員 誤解されたら困るので、A級戦犯の恩給をやめろやめろとわあわあ言ったわけではないのですよ。私も下手をしたら首を切られたかもしれないのですから。そういう意味で、A級戦犯の恩給を停止しろという話ではもちろんないのだけれども、ただ国がフィロソフィーとして東京裁判を、この前たしか後藤田官房長官は、東京裁判は要するにそれをやることについて受諾したのだから、それを受けるのは当然だというような話をされました。私が今聞いたのは、東京裁判に対する政府のスタンスなのです。いいですか。本当に受け入れるのだったら、恩給関係も国内法で要するに罪になった者は恩給やらないということになるわけですよ。受け入れてないからこそ我々は――私は受け入れろと言っているのではないですよ。実際のところあんな裁判なんかけしからぬと思っているわけです。特にB、C級なんというのは全く理不尽そのものである。A級だって例えば戦争開始の責任といったらむしろルーズベルトとかチャーチルの方が大きいわけです。私はこれははっきり言っておきます。私は本を一冊書いていますから、読んでいただきたいと思いますけれども、そういうことでこの東京裁判についてどう考えているのか、その基本的なスタンスがないから、中国から南京事件と言われればごめんなさいと言うし、何でもごめんなさいと言っておるわけですよ。私は、一遍中曽根さんの発言問題をとらえてもう一遍書いてやろうと思っているのですが、まだ出すかどうかわからないのだけれども、ひとついろいろ議論しようと思います。ということは、恩給法で国内的には免責しているのだというのだ。罪人と認めてない形になっているわけですよ。ですから、今法制局長官が恩給法で見る見方と靖国神社に合祀するのは全く無関係だとおっしゃるけれども、我が国内法上一つも罪にしていないからこそ靖国神社はちゃんと合祀をするわけですよ。私は罪にしろと言っているのではないのです。私は恩給法の改正のときに我々はいわゆる東京裁判というものを国内法的には否定したのだ、私はそう見ているわけです。となれば、それでもって靖国神社が勝手に合祀したから、向こうの判断によるよ、向こうが要するに合祀を外さないうちはおれは参拝しないよというのはまさに論理的じゃないのですよ。繰り返すようですけれども、私は何もA級戦犯ばかり擁護しているわけじゃない。だけれども、国内法と東京裁判に対するスタンスがびしっとしてないから、あっちをつかれるとはあ、こういうことになるわけですよ。どう考えているのですか。  今法制局長官がおっしゃったように、恩給法の立場と靖国神社のは全く無関係、無関係と言えば無関係かもしれませんけれども、国内法で、恩給法でもってきちっと東京裁判の言うことを聞いてないわけだから、靖国神社が合祀するのは当たり前ですよ。そうじゃないですか。そこがちょっとおかしいと思うのだな。全然関係ございませんよ――私のこういった議論は大変誤解を受けるのですよ。特に私は民社党ですから大変誤解を受けるので、あれなのですけれども、法務委員会というのはこの国会における法律のコンサルタントであるべきなのですよね。そこできちっと議論をしておいてもらわないと困るのだ。  したがいまして、私はさっきの香山さんが行ったか、だれが行ったかということはあるとして、ともかくいずれにせよ中曽根さんのやり方はいろいろな面でこそくなのですから、そう言っては悪いけれども。そこで本当に東京裁判が今の恩給法の改正から見て否定されていると見るのか、肯定されていると見るのか、これはちょっともう一度内閣と法制局の意見を聞きたいと思います。
  284. 味村治

    ○味村政府委員 平和条約の十一条によりまして、我が国は極東軍事裁判所の裁判、これを受諾するということになっているわけでございます。それで他方、恩給法上は恩給法の九条によりまして、九条の一項の二号で「死刑又ハ無期若ハ三年ヲ超ユル懲役若ハ禁錮ノ刑ニ処セラレタルトキ」、これは恩給の欠格事由、こういうことになっております。さらに同法の二項によりまして「在職中ノ職務ニ関スル犯罪(過失犯ヲ除ク)ニ困り禁錮以上ノ刑ニ処セラレタルトキハ其ノ権利消滅ス」、ただし書きがついておりますが、そういうようなことでいずれもその欠格事由、一定以上の懲役なり禁錮を受けますと欠格事由ということに相なっております。  ただ、これは我が国の刑事裁判所におきまして裁判を受けた結果こういう刑に処せられたものだというのが確定した解釈になっておりまして、極東軍事裁判所の裁判は、これは我が国の裁判ではございませんから、したがって、恩給法上の欠格事由にはもともと該当しないということでございます。該当しないことが先ほど申し上げました平和条約の十一条に違反するのかと申しますと、それはそういうことはない、このように考えております。
  285. 安倍基雄

    安倍(基)委員 わざわざ立法してちゃんと差し込んだわけですよ、要するに恩給を上げましょうというぐあいに。そうですね、この戦犯については。わざわざそうやってA、B、Cともに恩給を差し上げましょうという改正をしたわけですよ。私はそのことを言っているわけです。ということは、極東軍事裁判で決まった、それじゃともかく今の問題はあいまいになる、だからきちっと恩給を差し上げることにしましょうよということを既にしているわけです。そのことを言っているのです。ちょっと長官の答えは私は納得できないですね。  もう時間もあとちょっとしかないらしいから、官房副長官の御答弁をお聞きしたいと思います。
  286. 渡辺秀央

    ○渡辺(秀)政府委員 非常に専門的な議論でありますから、私がお答えをするよりも、より専門家が確実に正確にお伝えをした方がいいと思いますから、事務当局から答弁させます。
  287. 味村治

    ○味村政府委員 先生おっしゃいました戦犯として拘禁中に死亡したという人に対して恩給を支給するという恩給法の改正は昭和二十九年に行われているわけでございます。これは議員修正でございまして、その提案理由を拝見いたしますと、要するに遺族の方々の生活を幾分でも緩和したい、要するに遺族救済という観点であったように思われる次第でございます。そういうような観点から恩給法の改正をして、ただいま申し上げましたような戦犯の遺族の方々に恩給を支給するということになったわけでございまして、そのために、そのことと先ほど申し上げました平和条約の十一条との関係は特段の問題はないというように考えております。
  288. 安倍基雄

    安倍(基)委員 もう時間もございませんから、最後にもう一遍念を押したいのですけれども、そうすると、いろいろ諸般の事情を勘案した場合に、政府は靖国神社に対してA級戦犯の合祀を外してもらいたいという要請はするつもりがあるのですか、ないのですか。
  289. 渡辺秀央

    ○渡辺(秀)政府委員 先ほどから申し上げておりますようにいわゆる政教分離でありますから、政府の方からある特定の神社仏閣にいかような形でも憲法に抵触するような中で差し出がましいことを申し上げるつもりはないということでございます。
  290. 安倍基雄

    安倍(基)委員 じゃ、現状においては、現状が続く限りちょっと中曽根さんは公式参拝しないと理解していいですね。そうですか。
  291. 渡辺秀央

    ○渡辺(秀)政府委員 これは、前提が先生のはそういうふうにお考えを置かれておられますし、それから内閣官房長官談話で出されている今回の公式参拝見送りのいわゆる意味というのは、あそこに十二分に盛られているわけでありますから、御案内のようにそのときのいわゆる公式参拝を完全に否定したものでなくて、国際情勢あるいはまたいろいろ諸般の情勢を踏まえてこれからも検討を続けていくというふうに国会でも総理は答弁をしておられますし、また記録にも残っていることでありますから、そう安倍議員のおっしゃるように結論を急がずに、少しいろいろな事態の推移やそういうものもまた見詰めていただきたいというのが今私がお答えできる範囲でございます。
  292. 安倍基雄

    安倍(基)委員 もう時間もございませんから最後に。  ともかく国民は、中曽根さんが中国に行ってどうするのだろうと非常に注目しておりますよ。私も文春で書いたように、大体韓国に行っては謝り、また、アメリカには早速何かああいうアポロジーなんという文書を大使館を通じてばらまいて、また中国へ行って謝るとか、これはいささか国際的風見鶏もいいところだと私は思います。その点よく、私、おたくの回答で必ずしも十分満足しているわけじゃないのです。特にさっきの、事前にいろいろ人をやったかやらないかとかいう話なんかも全く事実無根とおっしゃるし、新聞社の方は、ちゃんとそうしている、行っていると言うし、それはまたもうちょっと究明する必要があると思います。これは本当に勝手にそういったことをやってもいいのかどうか。それから靖国神社問題について、別にA級を外す、外さないというような話は雑談の中にはあらわれても、通常の方針にはなっていないのですね。ちょっとその辺は私も、時間がないから最後に、繰り返すようですけれども、私はあくまで理屈から言っているので、A級から恩給をとれとか、あるいは外せとか外さないとか、そういうことを言っているのじゃないものですから、この点は皆さん誤解のないように。もうそろそろ終わりのようでございますから、また蒸し返すかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。
  293. 大塚雄司

    大塚委員長 安藤巖君。
  294. 安藤巖

    安藤委員 まず最初に、法務省にお尋ねをしたいと思うのですが、法務省は、人権擁護立場から、法律的あるいは社会的あるいは社会生活の中でいろいろな差別というようなことは起こらないように啓発活動その他をしておられると思うのですが、どういうようなことをやっておられるのか、まずお伺いします。
  295. 野崎幸雄

    ○野崎政府委員 法務省人権擁護機関は、人権思想の普及高揚を図る啓発機関として昭和二十三年に創設されたものでございます。私どもは、その創設の原理にさかのぼりまして、以来ずっと人権思想が国民一般により高く、より広く普及するように啓発をいたしております。と同時に、具体的な人権侵害という問題が起きましたときには、その事件につきまして調査を行い、それに対しましてまた個別的な啓発を行うという職責を果たしてまいっておる機関でございます。
  296. 安藤巖

    安藤委員 そこで、そういうような人権侵害の中の差別という問題についてお尋ねしておるのですけれども、そういう差別の中にはどういうようなものがあるのですか。よく人種的な差別とか民族的な差別とかいうようなことが言われておるのですが、そういうものも入っておるのですか。
  297. 野崎幸雄

    ○野崎政府委員 私どもはあらゆる差別は許されないという立場からこの差別問題に取り組んでおるわけでありまして、例えば同和問題でございますとか、また、いじめなどにつきましても新たな差別に関係する問題だという観点から取り組んでまいっておるわけであります。このほか老人問題、障害者問題等につきましてもただいま申し上げたような観点からずっと取り組んでまいっておるということでございます。
  298. 安藤巖

    安藤委員 いろいろな差別があるようなことでございますけれども、人種差別あるいは民族的な差別というようなことについてお尋ねをしておるのですけれども、この中には、あれは何々人だとか、よう言われるのは朝鮮人だとか韓国人だとか、あるいは例えばウタリだとかアイヌだとか、北海道の方に行きますとあるようですが、そういうようなのもそういうことで差別をしてはいかぬよというような啓発活動、あるいはもしそういう事例があった場合は調査をして、そういうのがないようにということもやっておられるわけですね。
  299. 野崎幸雄

    ○野崎政府委員 これまでも在日朝鮮人韓国人に対する差別の問題やウタリ出身者に対する差別の問題、いずれも人権侵犯事件として取り扱ってまいっております。
  300. 安藤巖

    安藤委員 そうしますと、例えば今ウタリというお話も出たのですが、最近アイヌ系住民の人たちのことをウタリと、あの人たちも自分自身でウ夕リと言っているようですが、そういう人たちに対する差別の事例というのがやはりあるのですか。
  301. 野崎幸雄

    ○野崎政府委員 これまで人権擁護機関でウタリ出身者に対する差別問題を取り扱ったことはございます。
  302. 安藤巖

    安藤委員 私が聞くところによると、例えば就職の問題とかあるいは結婚の問題とかで、あれはウタリの人だからいかぬとかいうようなことで人権擁護局がタッチをされて、いろいろ調査をされた結果、そういうようなことをしないようにというような指導あるいは勧告をなさったことがあるというふうに聞いているのですが、そんなことないですか。
  303. 野崎幸雄

    ○野崎政府委員 ございます。  二、三申し上げますと、ここ数年の間に人権擁護機関が扱った事件といたしましては、昭和五十五年に、北海道のある高等学校の先生がアイヌと間違って結婚するようなことがあったら大変だといったようなことを講義で言われたということで人権問題として取り上げられ、法務局調査をいたしまして、その事実が確定されましたので、その先生に対して説示処分を行いますとともに、道の教育委員会に対して再発防止を申し入れた事実がございます。  また、昭和六十年の初めごろ、ウタリ出身者が息子の結婚問題に関しまして相手方家族に結婚の承諾を求めましたところ、相手方の方でウタリ出身者との結婚は認めないということがございました。これにつきましても、法務局の方で調査をし、事実を確定した上、口頭説示をいたした事例がございます。後にこのお二人は結婚されたというふうに伺っております。
  304. 安藤巖

    安藤委員 今、先生のお話しそれから結婚のお話しがありましたけれども、どういうようなことを理由にして結婚してはいかぬとかいうようなことになるのですか。その中身は一体どういうようなことなんですか。
  305. 野崎幸雄

    ○野崎政府委員 恐らくウタリ出身者に対する差別意識というものがありまして、それが結婚、就職等の差し支えになっておるということが言われておるわけでございますが、先ほど申し上げましたような事例は、いずれもそういう差別意識というものがあらわれた結果であろう、かように考えております。
  306. 安藤巖

    安藤委員 そうしますと、ただそういうような差別意識というものが先行してというようなお話ですが、具体的に、これは私が聞いた話ですけれども、例えば臭いとか、何か毛深いとか、こういうようなことで差別をされているというような事例を聞いたことがあるのですが、そういうようなことはないんでしょうか。
  307. 野崎幸雄

    ○野崎政府委員 今委員がおっしゃられたようなこと、あるいはまた生活レベルが低いといったようなもろもろの事情が差別に結びついておるというふうに承知いたしております。
  308. 安藤巖

    安藤委員 そこで大臣にお尋ねしたいのですが、来たかというふうに待っておられるのですが、アイヌ系の住民の人たちに対して、今聞いておられたように、少数ではあるようですが、やはり差別が行われておる。是正もされておるようですがね。その中身については私の方からも申し上げましたし、人権擁護局長の方からもおっしゃったのですが、そうなりますと、アイヌ系の住民、これは少数民族だと思うのですよ。その少数民族に対して差別が行われているわけですよ。となると、総理は衆議院の本会議でも日本は単一民族だ、それからきのうの我が党の児玉健次議員の質問に対しても、差別をされている少数民族はないというふうにおっしゃった。事実に反するわけですよ。だから、人権擁護立場から法務大臣としても、それは不穏当だ、不見識だ、間違っておるということをやはり、閣議の席でもほかの機会でもいいですが、はっきり物を言ってもらいたいと思うのです。それから、私の方からも臭いとか毛深いとかということを申し上げた。そういうことも含めてとおっしゃったのですが、きのうは中曽根総理みずからが、私もまゆ毛が濃いし毛深いしというようなことをおっしゃって、私もアイスの血がまじっているのではないかということをおっしゃったのです。今の話からおわかりいただけますように、これはまさに差別の中身の一つなんですよ。それをそういうような場でとにかく総理が発言をされたということは、これまた不見識、不穏当きわまりないと思うのですが、その点についての御感想と、そしてそういうようなことは不見識だ、間違っておるよということを総理人権擁護立場から法務大臣としてはっきり言ってもらいたい、この要請、二つに対してお答えいただきたいと思います。
  309. 遠藤要

    遠藤国務大臣 ウタリ出身の方々に対しての差別が残っているということは非常に残念なことだと思います。私どもとしても今後啓発して、どうしても同等の立場に、地位に向上せしめなければならぬ、こういうふうに感じております。  それから、総理の発言の問題でございますけれども、私自身まだ御承知のとおり早々でもございますので、ウタリ出身者が同一民族かどうかということについては私自身まだ検討しているさなかでもございます。そういうような点もございますけれども総理に対して差別的な言動は十分御遠慮願いたいということは、先生の御意思を閣議において要請しておきたい、こういうようなことをお答え申し上げておきたいと思います。
  310. 安藤巖

    安藤委員 せいぜい御努力をお願いしたいと思います。  次に、簡易裁判所の問題についてお尋ねをしたいと思います。  簡易裁判所は御案内のように一九四七年、昭和二十二年、今の日本国憲法の施行と同時に誕生したということは申し上げるまでもないと思うのです。問題はその理念だと思うのですが、この理念は、設立過程における司法法制審議会あるいは臨時法制審議会でいろいろな議論をされたその論議、あるいは当時の第九十二回帝国議会の本会議裁判所法案委員会での当時の木村篤太郎司法大臣の答弁などにはっきり出ておるわけです。民衆的な色彩に重点を置く、従前の地裁とも、区裁、区裁判所とも全く性質の異なった、庶民の身近な裁判所として少額、軽微な紛争を簡易、迅速、低廉、結局手軽に速く安く解決する裁判所として発足したわけですね。いわゆる民衆裁判所あるいは駆け込み裁判所というふうに言われておったのですが、これが簡易裁判所の理念であると考えておるのですが、この点について最高裁判所は異存はないと思いますが、いかがですか。
  311. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 簡易裁判所の設立経緯につきましては、ただいま安藤委員指摘のとおりの経過をたどったわけでございます。一言で申しますと、簡易裁判所は比較的少額、軽微な事件を簡易な手続で迅速に処理する、国民に身近な調停事件であるとかあるいは督促事件、こういうものを処理する身近な裁判所であるというようには考えております。  それから、簡易裁判所が発足いたしましたときに、民間の有識者を司法委員としてお迎えをして和解の立ち会いとかあるいは訴訟にも立ち会っていただく、こういうような制度も取り入れておりますので、そういう意味では司法の民主化に貢献するという目的も持っていたというように理解はいたしております。
  312. 安藤巖

    安藤委員 ところで、九月十九日に法制審議会が簡易裁判所の適正配置の問題について答申を出しました。この答申に基づいて、最高裁は簡易裁判所の統廃合を今考えておられると聞いております。  この答申によると、事件数が少ないとか、特に独立簡易裁判所、独簡と言われていますね、これをすぐ隣の裁判所に統合して、そのときに統合される独立簡易裁判所所在する市町村の中心点から統合する簡易裁判所までの公共交通機関を使っての距離、その所要時間、こういうのをもとにしていろいろ相関表をつくって答申案が出ておって、それに基づいていろいろ準備を進めておられると聞いておるのですが、最初に申し上げたいのは、先ほどお尋ねをして御答弁をいただきましたように、民衆裁判所、身近な裁判所司法の民主化、こういうことを理念として発足した簡易裁判所という位置づけからすると、事件数が少なくなった、統合されたところから今度のところまでそう距離は遠くないというような形式的な基準でもって統合する、廃止をする、こういうようなことはその理念に反する、この理念を踏みにじるものだというふうに私どもは考えておるのです。  まず最初にそれを申し上げて、そこで事件数の関係ですが、特に独立簡易裁判所事件数が減っているということを理由にしておられるようですが、この比較が、昭和三十年の事件数と昭和五十五年から五十九年までの間の事件数、これを比較して少ないんだ、こういうふうに言っておられるようですが、どういうわけで昭和三十年をその比較の対象に入れたのか、これをお伺いしたいと思います。
  313. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 御承知のとおり、昭和二十年代と申しますのは戦後まだほど遠くない時期でございまして、社会経済上もいろいろ変動いたしておりました。昭和三十年に入りますと、独立もいたしましたし、社会経済も安定期にだんだん近づいてきているわけでございます。それからいま一つはいささか技術的な理由でございまして、現在私どもがとっております司法統計の関係で時系列的にさかのぼります場合、昭和三十年までは連続性を持ってさかのぼるわけでございますが、昭和二十九年、二十八年、二十七年となりますと統計のとり方が若干違っておりましたものですから、で、先ほど申しましたように戦後十年ほど経て安定した時期ということで昭和三十年、それから最近の五年間の比較ということで考えたわけでございます。
  314. 安藤巖

    安藤委員 私も弁護士出身でございます、今も弁護士ですが、あちこちの弁護士会等々でお話を伺ってきたのです。三十年というのは、その前年の昭和二十九年に簡易裁判所の事物管轄が拡張されて一万円から三万円にはね上がった、だから事件数がばっとふえた年だというのですね。そして、それ以後ずっと安定化するわけだからならされてくるわけですけれども、その事件数がぐんとふえたのを基準にして、それから少ないじゃないかという言い方はおかしい、こういうような意見もあるんですね。それで私もちょっと調べてみたら全くそのとおりで、これはまことにけしからぬというふうに今思っておるんですが、これは後からまた議論するときがあると思うのですが、そのことをまず申し上げておきます。  ところで、事件数が減っている、減っているというようなことを言っておられるようですけれども、私はこの前富山へ行きまして、富山は独立簡裁が六つあって、それが全部廃止の対象にされているというふうに聞いたものですから行ってきたんですが、富山の氷見、朝日、この裁判所へ行って、それからその近くのいろいろな人とも会ってきたのです。  これは富山地方裁判所でつくられた資料なんですが、これもやはり昭和三十年から書いてあるんです。そして、例えば氷見の簡易裁判所ですと、昭和三十年を一として、昭和五十五年から五十九年までの五年間の年平均の事件数と比べてみると〇・三八になる、あるいは朝日の場合で言うと〇・九七になる、こういう計算ですよ。だから減っているんだ、こういうことですが、これもやはり氷見簡易裁判所からある資料をいただいたんです。これによると、賢明なことに昭和二十七年から書いてあるんです。これでいくと、昭和二十七年に民訴の事件は十五件、ところが昭和六十年は三十件。昭和三十年は八十件にふえておるんですが、昭和六十年に三十件、ちっともこれは減ってないですよ、二十七年と比較すれば。だからここに疑念があるわけなんです。こういうような事態。  それから、これは朝日の簡易裁判所、先ほど申し上げましたように〇・九七、こういうふうになっておるんですが、やはりこれも昭和二十七年からなんです。裁判所が二十七年からもうつくっておられるんですよ。先ほど三十年が一つの基準になる合理的なような理由をおっしゃったのですけれども裁判所がおつくりになった二十七年からのがちゃんとあるんです。これを見ますと、調停の事件でも昭和二十七年は三十五、それから三十年は二十二に減っておりますけれども昭和六十年は五十件あるんです。だから、事件が別に減っているというわけでもないと思うのですね。  それから、例えばこれは名古屋の弁護士会がつくった資料ですけれども、これは大都市の簡裁統廃合の問題とも関連するんですけれども、愛知中村簡裁それから昭和簡裁というのが対象になっているようですが、昭和二十七年と六十年の新受件数を比較すると、愛知中村簡裁においては六六三%になっておる、昭和簡裁においては六五七%である。ふえています、しっかりね。だから、事件数が少ないからどうのこうのという理由は成り立たないんではないかというふうに思うんですが、この点はどういうふうに考えておられるんですか。
  315. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 法制審の答申内容につきましては安藤委員先刻御承知のことと存じますけれども、簡易裁判所が設立されましてから四十年間における裁判所を取り巻く社会事情の大きな変化によりまして、小規模独立簡裁におきましては、先ほど御指摘がございましたけれども、長期的傾向で見ます限りにおきましては事件数が減っているわけでございます。そういう利用度の少ない簡易裁判所におきましては、今日の非常に発達した交通事情、これは昭和二十二年当時とは全然比較にならないと思いますけれども、そういう交通事情の改善の点を考慮して相当数を統合するように、こういう御指摘でございます。その際に基準として幾つかの尺度を設ける必要がございます。簡易裁判所の利用度合いを考えます場合には、何と申しましても民訴、刑訴、調停といった当事者が裁判所に出向かなければならない、しかも裁判所において主要な大きな事件、この三種の事件の平均をとって簡易裁判所の利用度合いを考えていくべし、こういうお考えでございます。  今御指摘がございましたけれども、例えば三十五年当時の件数と比較していただきますと、最近になりますと氷見の簡易裁判所におきましても事件数が少なくなっている面がございます。そういう事の次第でございまして、事件数の少なさというものは簡易裁判所の利用度合いを示すものといたしましてやはり基準として考えなければならないというように私どもは考えております。  一方、先ほど御指摘のございました名古屋の市内における昭和簡裁、これは御指摘のとおり事件は非常にふえております。大都市簡裁の統合の場合は、小規模独立簡裁の統合とは若干視点を異にいたしておりまして、今後将来伸びていくであろう名古屋市民のニーズにこたえるためには、名古屋市内にある三つの簡易裁判所を統合して専門部処理体制をとるとか、あるいはOA化を図るとかをして対応していかなければならない。そういう観点から名古屋市内の三つの簡裁の統合もできる限り考える、こういうことでございます。
  316. 安藤巖

    安藤委員 大都市の問題は後で時間があったらと思っておりますので……。  先ほども具体的に氷見、朝日簡裁の問題を、事件数のことを示したのですが、長期的に見ると減っていると言ったって、先ほど私がお示ししたようにちっとも減っとりはせぬのですよ。この指数のとり方がおかしい、計算の仕方がおかしいのですよ。  それから、まだ減っている、減っているとおっしゃるのですが、国民の困りごと相談とか法律相談とか、こういうニーズというのは非常に高く、強いのですよね。だから、これも氷見の市役所で私はもらってきたんですけれども、巡回法律相談あるいは無料法律相談を市役所でやります。そうすると、これは十月十六日に行われたんだそうですが、十四、五件の相談があったのです。  それから、これは「統計ひみ」というものです。これは五十五年から五十九年度までのものですが、市民相談受理件数は、民事問題がこの五年間に二十件、相続問題が六十八件、それから離婚問題が八十六件、割と多いのですね。  それからもう一つさらに言いますと、警察庁の出した警察白書を見ますと、昭和六十年の「困りごと相談内容」というのがある。結婚、離婚問題、それから金銭貸借問題、土地、家屋問題、物品取引問題、その他、だから家庭問題、民事問題を合わせてみますと五万九千。  こういうのを見ますと、こういうような法律相談、家事相談、相続相談、土地の相談、離婚の問題を簡易裁判所が、最初に申し上げ、御答弁をいただいた簡易裁判所の理念からすると、まさに裁判所が門戸を開放して、敷居を低くして、こういうことを裁判所はやっておりますよ、どんどん相談に来てくださいよというようなこともしっかりやってきておったんだろうか。裁判所がやるべきことを警察や公共団体がやってみえるのですよ。裁判所は行きにくい、こんなのは行きやすい、こうだというのですね。となると、やはり裁判所がそういうような努力をしてこなかったので、それで訪れる人が少なく、事件も少なくというようなことになっておる。だから、事件が少ないから統合するんだというのはまさに本末転倒ではないかというふうに思うのですよ。この点もしっかり考えていただきたいと思うのですが、そういう啓蒙活動、宣伝と言うとあれですが、門戸を開放する、敷居を低くする、そういうようなことはやってこられたのか、あるいはこれからそれはしっかりやっていくのかやっていかないのか、どっちですか。
  317. 上谷清

    上谷最高裁判所長官代理者 まず、簡易裁判所のPRということになりますと、どちらかといえば民事関係中心になろうかと思いますので私の方からお答えさせていただきますが、簡易裁判所につきましてのPRとして裁判所が行っているものには、最高裁判所が行っておりますものと各地の裁判所が行っているものとがございます。  最高裁判所が行っているものといたしましては、例えばパンフレットあるいはリーフレットを作成いたしまして、その中でそのときの話題に関連した事柄を取り上げ、あるいはまた広報テーマ等を掲載した「司法の窓」というふうな広報誌を発行する、そういうようなものを例えば全国の裁判所あるいは弁護士会、地方自治体等に送りまして、裁判所がPR活動をすると同時に、それぞれの機関でもPR活動をしていただいておるわけでございます。それからさらに、調停の申し立てを希望する者が非帯に多うございます。そういう方々対象にいたしまして、最高裁判所では調停手続のあらましをわかりやすく説明しましたリーフレットでございます「調停のしおり」、パンフレットとしましては「調停の手引き」、そういうものを作成いたしまして、全国の裁判所に配っております。それを各簡易裁判所窓口に備えておきまして、あるいは各市町村さらには警察署等にも配付いたしまして一般国民の手にも渡りやすいようにしているわけでございます。そのほか最高裁判所におきまして、そのときどきの簡裁の事件につきまして国民の理解を深めるために、そのときの話題を取り上げて広報テーマを作成いたしまして、「裁判所時報」に掲載するほか市町村にも配付いたしております。各市町村等でのPRにも利用していただく、そういうようなことで、簡易裁判所について広く国民に理解してもらう努力をしてまいったわけでございます。この点については、今後ともさらにそういうふうな簡易裁判所への理解を広げていくための努力を続けていきたいと考えているわけでございます。以上が、最高裁判所中心として行っておりますPR活動でございます。  次に、各地の裁判所が行っているPR活動がございます。これには、先ほど申しました裁判所のPR雑誌でございます「司法の窓」あるいは広報テーマ等を利用いたしまして庁内の掲示を行うとか、あるいは各市町村等の広報紙への掲載を依頼するという形で広報活動を続けておるわけでございます。さらにまた、これは簡易裁判所窓口におきまして、受け付けあるいは受け付け相談等の際に、口頭受理の手続でございますとか、あるいは簡易裁判所の訴訟、調停、督促等の手続を相談においでになった方にお教えするという方法によりましても個々的にPRを行っておりますし、その際に、例えば最高裁判所から各裁判所にお送りしております、あるいはまた各裁判所でつくっております定型的な訴状、素人の方がそこに書き込めばよいというような訴状あるいは調停の申立書等を窓口に備えておき、あるいは記載要領をお示しするという形で、利用しやすい裁判所ということでいろいろ努力をいたしておるわけでございます。  そのほかにも、特に最近は調停関係には力を置いておりまして、財団法人日本調停協会連合会にお願いいたしまして、広報活動の一環として全国的に調停相談をやっていただく、そういうふうな活動をいたしております。これらは、例えば、各地で人のよく集まりますデパート等で実施いたしまして、一般国民から調停に関する手続の相談を受けまして、その機会に調停制度普及宣伝を図ろうというものでございまして、いろいろこういう努力をいたしまして、かなりの効果を上げているところでございます。現に最近は、特に調停を中心といたしましてかなり国民の皆様方に利用していただいているという状況でございます。これもやはり大都市の大規模の簡易裁判所中心でございますが、全国的に見ますと、最近非常に利用されているということでございます。  それから、先ほど法律相談というお話がございました。この点につきましては、私どもの考えといたしましては、例えば簡易裁判所窓口相談を受け付けると申しましても、これは裁判所の性格から申しまして、事件の中身に立ち入っていろいろ相談に乗るというわけにはいかないわけでございます。これはやはり公正中立の立場にある裁判所といたしましては、当事者からどのような制度があるかということをお尋ねになりました場合に、例えば訴訟、督促、調停等の手続がある旨、その手続をするときにはどのような申立書を出せばよいか、あるいはまた口頭でおっしゃっていただければ裁判所でそれを受理しますということを御説明するわけでございまして、現実に紛争の中身に立ち入りまして、これはどうすればいい、こうすればいいと言うことは裁判所としては立場上いたしかねるわけでございます。  先ほどちょっと各地方公共団体あるいはまた警察署の困りごと相談所等に法律相談が非常にふえているというお話がございました。確かにそういう状況はあろうかと思いますが、そういうふうなものが、例えば裁判所の受付で扱いまするいわゆる手続の相談ということでございますと、裁判所にお越しいただきますと親切に御相談に乗っているはずでございますが、法律紛争の中身の解決ということになりますと、市町村あるいは警察署等で例えば弁護士さんを御紹介いただくとかそういうふうな形で処理せざるを得ない。裁判所へおいでいただきましても、その中身について相談に乗るというのはなかなかやりにくいということはぜひとも御理解いただきたいと存じます。
  318. 安藤巖

    安藤委員 長々と答弁いただいて時間がなくなってしまったのですが、相談内容の問題については技術的に考えればいいと思うのですよ。別に相談日を設けるとか弁護士さんに来てもらうとか、それを裁判所でやるとか、いろいろ創意工夫を凝らしてやるべきだと思うのです。今おっしゃったのは、例えば簡易裁判所の玄関のところに調停の案内とかそういうのをちゃんと置いておく、私も何度か行きましたけれども、せいぜいその程度ですよね。もっと門戸を開いて――私は、理念の原点に基づいてやってこなかったのじゃないかということを申し上げておるのです。  そこで、まだ幾つかあるのですけれども、これは、こういうような法制審の答申に基づいて統廃合をするということはいけない、もっと理念に基づいて考え直してほしいということで申し上げるのですが、例えば愛知県に西尾簡易裁判所というのがあります。そこに二人弁護士がおるのですが、そこへ行って仮処分の申請をしようとした。そこはいわゆる不在庁です。裁判官が常駐していないところです。だから、間に合わないというので岡崎の裁判所へ持っていくということになるのです。裁判官不在庁、こんなのは裁判所じゃないですよね、一週間に一遍来るだけですから。それから二人庁、三人庁、職員が二人とか三人しかいない。もともと四人庁ということで出発して、それが原則になっているのですが、そういうようなことで手が足りない。だから、これは一層充実をしなければ、かえって事件が減る、ほかのところへ持っていくというんですからね。  それから、距離の問題もいろいろと言っておられるのですが、例えばこの法制審の答申の中で――時間がないから、幾つもの例は申し上げられませんけれども、例えば先ほど申し上げた氷見の場合でいくと、公共交通機関を使って六十分で次のところへ行けるんだと言うのですね。ところが、これも裁判所でつくっていただいているのですが、これを見ますと、氷見の簡易裁判所の管轄区域の遠いところに平というところがあるのですが、ここから氷見簡易裁判所までの所要時間はバスで約一時間四十分、これだけかかる。それから乗用車を利用すると約四十分であったのが、今度は高岡簡裁までだと、高岡へ統合するという話ですが、バスと国鉄を利用して約二時間。何が六十分で行けるんですか。これはてんでおかしいですよ。だからその辺のところも、これは実情を無視しておるということを強調しておきたい。  時間がなくなりましたから、最後に法務省にお尋ねをしたいんです。人員の問題ですが、特に法務局登記所関係です。  昭和六十二年度の登記関係の人員増の概算要求は何人で、それから定員法に基づく計画削減というのがあってそれが何人で、純増何人かということ。それから実際問題として、その登記関係で人員が何人不足しているんだということ。そして、その概算要求で出しておるけれども、これまたいろいろ折衝があって、それも最低限の最低だと思うのですが、これはどうしても頑張ってもらわなければいかぬということを要望するのですが、それについてしっかりやっていただけるのかどうか。まとめて質問しますが、お願いします。
  319. 千種秀夫

    千種政府委員 法務局にとりまして増員が一番の課題でございます。来年度の予算要求として、法務局としましてはいろいろな事情を勘案して二百名の増員要求を出しております。削減は、いろいろな計画の結果百三十二名ということでございます。私どもといたしましては、増員はなるたけ多く、削減はなるたけ少なく希望しておりまして、大臣にも一生懸命やっていただいております。
  320. 安藤巖

    安藤委員 大臣、頑張ってもらわなければいかぬですから、ひとつ。
  321. 遠藤要

    遠藤国務大臣 先ほどもお答え申し上げたんですけれども、十七日の閣議においてこの問題について私から要請をいたしております。御承知のとおり東京法務局や何かはバーゲンか何かのように列をなしている。その中で職員が躍起となって処理しているということでございますが、やはり登記事務に携わっているのは人権擁護の面から見ても大変なことだな、ひしひしと私なりに感じております。そのような点で、行政改革のさなかではございます、こういうふうな経済が変動しているさなかでもございますが、やはり登記事務の増員と機械化に対する予算措置というような点で解消していきたいというような考えでございます。  それからいま一つ安藤先生にお願いしておきたいのは、今の簡裁の問題でございますけれども、この問題は、自分のことを申し上げてどうかと思いますけれども、宮城県も選挙区で四つ廃止される提案で、そういうふうな点もございます。答申を受けた裁判所としては、やはり安藤先生のようなお考えや何かも自治体はそれぞれ持っておると思います。そういうような点で今躍起となって意見を聞いているというようなことでございますので、しばらく裁判所の方に成り行きを静かに見守っていただいて、そしてまとまったならばよろしくお願い申し上げたいということを申し上げておきたいと思います。
  322. 安藤巖

    安藤委員 時間が来ましたので、終わります。
  323. 大塚雄司

    大塚委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十五分散会