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1986-10-23 第107回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十月二十三日(木曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 河上 民雄君    理事 青木 正久君 理事 伊吹 文明君    理事 二階 俊博君 理事 牧野 隆守君    理事 小野 信一君 理事 伏屋 修治君    理事 塚田 延充君       川崎 二郎君    熊谷  弘君       熊川 次男君    小杉  隆君       高村 正彦君    渡海紀三朗君       穂積 良行君    松本 十郎君       谷津 義男君    奥野 一雄君       草川 昭三君    森田 景一君       北橋 健治君    岩佐 恵美君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      近藤 鉄雄君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局取引部長 柴田 章平君         公正取引委員会         事務局審査部長 樋口 嘉重君         経済企画庁調整         局長      川崎  弘君         経済企画庁国民         生活局長    横溝 雅夫君         経済企画庁物価         局長      海野 恒男君         経済企画庁総合         計画局長    及川 昭伍君         経済企画庁総合         計画局審議官  冨金原俊二君         経済企画庁調査         局長      勝村 坦郎君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部生活経済課         長       上野 治男君         総務庁統計局統         計調査部消費統         計課長     伊藤 彰彦君         国土庁土地局土         地政策課長   原  隆之君         国土庁土地局地         価調査課長   森   悠君         法務省民事局第         三課長     田中 康久君         大蔵大臣官房企         画官      杉井  孝君         通商産業省産業         政策局調査課長 江崎  格君         通商産業省産業         政策局商政課長 柴崎 和典君         資源エネルギー         庁石油部計画課         長       黒田 直樹君         資源エネルギー         庁石油部流通課         長       鴇田 勝彦君         資源エネルギー         庁石炭部計画課         長       西川 禎一君         運輸省航空局航         空事業課長   平野 直樹君         労働省職業安定         局雇用政策課長 廣見 和夫君         特別委員会第二         調査室長    岩田  脩君     ───────────── 委員の異動 十月二十三日  辞任         補欠選任   斉藤  節君     草川 昭三君 同日  辞任         補欠選任   草川 昭三君     斉藤  節君 同日  理事阿部喜男君同日理事辞任につき、その補  欠として小野信一君が理事に当選した。     ───────────── 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  物価問題等に関する件      ────◇─────
  2. 河上民雄

    河上委員長 これより会議を開きます。  まず、理事辞任の件についてお諮りいたします。  理事阿部喜男君から、理事辞任申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 河上民雄

    河上委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  ただいまの理事辞任に伴う補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議がありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 河上民雄

    河上委員長 御異議なしと認めます。よって、理事小野信一君を指名いたします。      ────◇─────
  5. 河上民雄

    河上委員長 物価問題等に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。牧野隆守君。
  6. 牧野隆守

    牧野委員 いよいよ本日から物価対策特別委員会におきまして国政の重要事項について審議を開かせていただく次第でございますが、近藤長官には、このたび国務大臣として入閣されまして、この大変な時期に公私両面にわたりまして御活躍になっておられるさまを拝見いたしまして、非常に私ども喜んでおり、また大きな期待を持っている次第でございます。  大臣承知のとおり、今の情勢、大変な状況にございまして、関係国民皆さんが、将来どうなるのかということで、実は先行き不安の状態でございまして、特に最近は、それぞれのお立場の方が、自分の身近な具体的な問題になっておりまして、どのように考えたらいいか非常に迷っておるところでございます。こういう時期に際しまして、経済企画庁長官といたしまして我が国経済かじ取りについて最高責任者であられるわけでございまして、その長官の御決定になるこれからのいろんな重要政策につきまして大きな期待が持たされておるところでございます。  御承知のとおり、現在の情勢を見ますと、石炭産業が完全にばたばたの状態になっております。非鉄鉱山が閉山の憂き目に遭っております。造船関係、いわゆる城下町産業ですが、あのような状況にございまして、それに関連する中小企業皆さんは、これも大変な苦労のどん底にあるわけです。そのほか繊維、合板等大変な状況にございまして、実は私ども関係皆さんから、特に中小企業皆さんからは、どうしてこんなになったんだ、自分らは一つも悪いことをしてないが、為替レートの変更というのはひどいじゃないか、もうちょっとおとなしいやり方があるのではないか。私ども、いや、G5で決まったことだ、こう説明しますが、みんなよくわからなくて、G5、何だ。これはもう返事のしようがないので、私はげんこつ五つだと言っておるのですよ。だれが大きなげんこつをたたいたんだ。いや、日本にも仲間がいるよ、それは大蔵大臣日銀総裁だ。ああいう取り決めをして急激な円高になったわけでございまして、我々は悪いことをしてないのに政府の方では当然の対策考えているのだろうか。  例えば繊維について申しますと、この十月以降ほとんど契約なしという状況になっています。ほとんどの人が、中小企業従業員十人のところは、じゃ三人やめてもらおうか。大きいところは、いずれこれは従業員の削減をしなければいけないな。非常に感心だなと思ったのは、職業安定所、あなたのところはいつも従業員頼む頼むということで頼みにきておって、一生懸命やったら今度は首切りか、この次に増員するといっても絶対そういうことには相談に乗りませんよ、こういうことで関係皆さん自分はどうなるのかということで非常に苦労しておられるわけでございます。  片方、電子関係を見ますと、最近は新規採用を余りしない。それから残業がなくなってきた。下請の手取りは極めて厳しくなってきた。どうなるんだろうか。東京サイドでは産業空洞化というような一言の言葉で処理いたしておりますが、実はそれぞれの工場においては、またその下請関係では、我々はどうなるのかと大変な心配をいたしている次第でございます。  じゃ他方円高で少しは楽になったのかなというと、原材料、特に公共料金電力ガス料金について、やはり安くしてほしい。公共事業はなぜ我々と一緒に苦労してくれないのか。銀行からは借金の返済を要求されておりますし、政府金融機関はありがたいことにある程度我慢してくれるのですが、民間金融機関は一刻の余裕も与えません。何とか返さなければいけない。電力料金、もう少し安くならないか。こういう円高差益の問題。  他方皆さんは非常に苦労しておりまして、一生懸命貯金をするわけです。私の福井で申しますと、銀行貯金をする、あるいは農協に貯金をする、あるいは生保、損保という形で掛金を掛ける、これらの金は全部東京に来てしまいまして、何か東京では随分土地が高くなったんだな、株の取引がすごいな、一生懸命貯蓄をしている地方には全くそういうお金が戻ってこない、東京というのはすごいところだな、我々のところはどうなるのかというのが実は地方の偽らざる実感でございます。  有識者に聞いてみますと、この構造調整問題はそう簡単に解決がつかないぞ、三年ないし四年かかるんじゃないか。他方政府はそれじゃどんな措置をとっているか。当面の景気対策、これも公共事業中心で、確かに公共事業関係者の方はいいですが、一般産業関係にはそれはどこを吹いている風かな、相変わらず苦しい状態にある。大変な情勢にございまして、これらの具体的な問題につきまして政府関係御当局の御意向を賜りたいと思います。  最初に、この大転換期に際しまして、過日長官から御所信の表明をお伺いいたしましたが、さらに具体的に我が国経済かじ取りについて長官としてどのように考え、どのように決断しようとしていらっしゃるか、まず最初長官の御意向をぜひ賜りたい。御意向を賜りまして、具体的な質問に入らせていただきたいと思います。
  7. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 ただいま牧野先生からいろいろお話を承りまして、非常に私も激励を受けた気持ちでございますけれども、私が経済企画庁長官に任命されましたのが七月二十二日でございまして、もう三カ月たってしまったわけでございますが、総理からもお話がございましたことは、経済企画庁長官として、まず最初お話がございました昨年のG5以来日本経済が非常に混乱を見ている面もあるので、こうした低迷をして、停滞をして、混乱をしている状況に対して、内需中心とした景気対策に即刻に取り組んでほしい、これが一点でございます。それから第二点として、これとも密接に関係をいたしますが、日本経済が国際的な環境の中で調和を保ちながら発展をしていくための産業構造調整の問題について、これも全力を挙げて取り組んでほしい。この二つがさしあたって経済企画庁長官として取り組むべき課題である、こういう御下命があったわけでございますので、七月以来いろいろ経企庁で検討してまいりましたし、当然関係各省ともいろいろ話を進めてまいったわけでございます。  このG5以来のいわゆる円高不況というものについてどう対応をするか、こういうことでありますが、私たちいろいろ経済的な指標をずっと分析をしておるわけでありますが、確かに輸出産業中心として、特に関連の中小企業中心として、非常な深刻な業態また深刻な地域もございます。ただ、マクロで見てまいりますと消費は依然として堅調でございますし、特に住宅投資は現在年率で百三十五、六万戸の建築が進んでいる状況でありますので、消費需要とそれから住宅建設需要については堅調である、こういう判断をしておりますが、民間設備投資については、これはまさに輸出中心とした業種低迷状況がある。ただ、輸出関係ない非製造業分野ではむしろ積極的な投資意欲もございますが、差し引き民間設備投資については私たち考えておったよりも停滞の面が強いのかな、こういう判断でございます。  ただ、ことしの四月、五月と総合経済対策そして当面の経済対策ということで公共事業前倒しを進めてまいった関係で、政府部門から来る景気要素というのはこれは当初私たち考えておったよりも進んでまいっておりますので、全体としては内需は私たちの当初予想したよりもそんなに悪い状況ではないな。ただ、まさに円高措置というのは国際的な経済関係に対して日本の貿易の収支幅を減らそうという努力でございますので、輸入がふえて輸出が減る、こういう状況から海外要素需要に対して確かにマイナス効果を示してきているわけでありますので、こうした海外要因から来るマイナス効果について内需でカバーをしてまいりたいというのが九月の十九日に発表した総合経済対策である、こういうふうに御理解いただきたいと思うわけであります。  一方、経済構造調整の問題につきましては、総理からの御指示もございまして、それを受けて経済審議会の中に経済構造調整特別部会をつくりまして、いわゆる前川レポートをまとめられました前の日銀総裁前川さんを部会長お願いいたしまして、今この経済審議会経済構造調整特別部会で鋭意検討をしておりまして、ことしじゅうには中間報告を出し、また来年の春には最終報告をまとめて出して、これを中心として長期的な展望に基づいて経済構造調整政策を進めてまいりたいと私ども考えておる次第でございます。
  8. 牧野隆守

    牧野委員 ただいま長官から、内需振興国際経済との構造調整の問題、これを基本とされまして、他方、一応の消費需要というのはある、そこで、住宅投資あるいは公共事業前倒し等々の措置をとって当面の対策をお考えのような御返事がございましたが、今政府考えておられるそれらの措置が、これから今国会において補正予算等審議、また関係法案の整備が行われまして一応の対策が打たれるわけでございますが、これらが十二分に行われるという前提において、それでは、今低迷している日本経済成長の度合い、どのようにどこまで大体成長するのか、その辺の見通し等についてのお考えをお伺いいたしたいと思います。
  9. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 過日発表いたしました総合経済対策は、いろいろ数字を積み上げますと三兆六千三百六十億になるわけでございますが、内訳を申しますと、一兆四千億は政府が直接関与いたします公共事業でございます。そして地方自治体お願いをするいわゆる単独事業が八千億でございまして、それに加えまして、道路公団とか本四架橋公団とか、そうした道路交通関係公団にいわゆる財投で融資をいたしましてそれで仕事お願いするのが一千億でございます。合わせますと二兆三千億になるわけでございますが、これに、住宅金融公庫の融資の条件を緩和いたしまして促進をして、戸数で言うと三万戸、金額で言うと七千億を予定しております。これを合わせますと約三兆円になるわけでございますが、それに、電力会社に今年度の設備投資を一千百億上積みをしてもらう。来年度の設備投資前倒しで二千億全部契約をして上積みをしていただく。また、各地にございますいわゆる民活プロジェクト、幕張メッセだとかみなとみらい横浜だとかいろいろございますが、こうした事業助成金を出して仕事を進めていただくというので千百六十億とか、中小企業設備投資中小企業金融公庫を通じて促進をするということで一千億とか、等々集めて六千三百六十億、合計で三兆六千三百六十億でございます。  これが全部実際に実行していただけるということですと、六十年度の名目GNPが三百二十兆円一でございますから、単純に率を計算いたしますと一・一%強、こういうことになるわけでございますし、御指摘のございました、これでどれだけGNP上積になるんだということは、どれぐらいの期間にこれだけの仕事が消化されてそれがいわゆる乗数効果を生んで所得増をもたらすかということでございまして、それとの関係でどうなるかが決まってくるわけでございますが、経済企画庁として、これは一年間というもので効果考えると、過去のデータで乗数を出して計算すると四兆九千億になって対GNP一・五%アップだ、こういうことでございます。  問題は、しからば年度内にどうかということになりますと、これは私どもできるだけ年度内にこれらの仕事を消化するように関係各省お願いして所期の目的を何としても達成いたしたい、こういうことで関係者に御協力を仰ぐように今努力をしているというのが現状でございます。
  10. 牧野隆守

    牧野委員 ただいま大臣からおおよその見通しについてお話がございましたが、実は私非常に心配しておりますのは、地域により、業種により大変なばらつきがあるということでございます。今のお話は、トータルとしてこうだというお話でございました。詳しいことは知りませんが、この間新聞に出ておりました一つの内容として、建設大臣が、特に北海道は大変なんだから北海道に重点的にやりたい、こういうお話がございました。今回のこの景気の問題は、財政上の理由から政府がそんなにお金を出せないよということのほかに、円高に伴う為替調整に伴う一つ産業とか地域が非常に大きなダメージを受けているということで、そういう点を経済企画庁としては十二分に御勘案になりまして、トータルとしてこうだということのほかに――今おっしゃられたような諸施策というのは全体まんべんなくの状況でございまして、影響を受けている地域にとっては実は余り関係がないわけなのですね。こういうところは徹底的に落ち込んで、平均として日本経済全体としてGNP成長率は一・何%なら何%、二%なら二%ということでございます。特に為替問題はG5によって決定されたわけでございまして、政府責任というのは非常に大きいわけでございまして、経済運営最高機関調整機関としての長官として、そういう地域問題についてどういうようにお考えになっておられるか。また、そういうことを閣議その他で長官の方からどんどん声を出していただいてリーダーシップをとっていただきたいというのが私の気持ちでございまして、その辺の地域、また産業との調整問題について、これは非常に難しい、特に産業それ自身になりますと大変な問題でございますが、例えば造船城下町中小企業も大変な苦労をしているわけで、ここに何らかの仕事をいわゆる誘導と申しますか、そういう点で経済企画庁は何か考えておられるのか、あるいは長官としてどういうようにお考えになるのか、お考えをいただきたいと思います。
  11. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 牧野先生から大変大事な点について御指摘がございまして、まさに地域の問題と産業の問題ですね。これはマクロ一般的な対策の枠組みの中できめの細かい措置をとらなければだめだ、こういう御指摘であると思うのでございますが、北海道もそうでございますが、私山形県の代議士でございますので、そろそろ雪が降ってまいりますと、公共事業をどうするといっても、仕事ができないのでございます。ただ、総合対策の中の八千億円の地方単独事業は、これは九月の県会地方自治体において予算措置が大体できているものと私どもは理解をしておりますので、まず地方単独事業について特に積雪寒冷地帯においては早目にどんどん消化をしてもらいたい、こういう話を自治大臣ともしているわけであります。  一方、補正予算で一兆四千億の公共事業、この全部が国の予算になるわけでないので、地方の分と国の分とございますから、早く国の予算を決めて、地方もそれぞれ早急に県会等を開いていただいてこの裏づけの地方分担分も早く予算化してもらいたいと思っておるわけでございますが、そういう点で補正予算国会皆さんの御協力を得てできるだけ早い機会に通していただいてすぐにその事業着工の態勢を組ませていただきたい、こういうことでございます。  なお、円高で打撃を受けられた地域業種、特に中小企業に対してはかねてからいろいろ対策を講じてございますし、今度の総合経済対策の中でも中小企業対策については十分配慮してございますが、これに対しては関係局長から御説明をさせていただきたいと思います。
  12. 牧野隆守

    牧野委員 長官お願いいたしたい私の本旨は、公共事業民活あるいは住宅投資ということで国のベースで全体としての計画を立てておられる。この中における民活の問題ですが、流布されているのは、大きいプロジェクトについてあれをどうする、これをどうすると言われておるのですが、私がお願いしたいのは、大きな被害を受けておる例えば造船だとか繊維だとか産地産業として持っている自治体に、あなたのところでは具体的にどういうことをしたら地域経済活性化ができるか、何を政府に求めるかということを、これは業種ごとに、繊維に対しては通産省こうしろと言うと繊維全体として見る、あるいは造船というと運輸省だけが見る、公共事業というと建設省が見る、各省各省それぞれ一生懸命やっておられる状況はよくわかるわけですが、トータルとして、日本全体としてどうするか、経済企画庁長官としてそういうところをごらんになっていただいて、こういうところが非常に困っている、それじゃここを民活であるいは自治体としてどういうことをやればその地域がよくなるかと言ってこいよ、それに対して政府は、自治体起債等を含めまして、あるいは繊維についてはこういうことをやりますよ、あるいはそれにプラスアルファとして地方自治体としては何ができるか、そして、地域のアンバランス、要するに為替レートでそれだけ大きな影響を受けているわけですから、そういうきめの細かいことも含めて全体の調整、全体のリーダーシップをとっていただきたい。道路公共事業なら公共事業、それは最終的には建設省がおやりになるかもしれませんが、経済運営一つ方針というものはぜひ長官としてリーダーシップをとっていただきたい。そうすれば、地方自治体としては、ああ、国がこうしてくれるんだな、じゃ、わしのところはこうしようか、これについて政府は具体的にどういう助成をしてくれるか、どのように考えてくれるか、あるいは具体的にどういう相談に応じてくれるか、こういうようにしていただきませんと、幾らトータルとしてこうなってGNPが伸びますといっても、関係のところはすとっと落ちて余り関係のないところが伸びる。適正な運営が行われなければ、金が東京に集まって、先ほど申しましたように株だとか土地の価格という形で乱舞するという状況で、その辺の長官気持ちをお伺いしたい。特にそれは今後具体的に主張していただきたいというのが私の先ほどの長官に対する御質問の趣旨でございました。
  13. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 牧野先生お話は私もよく理解できるものでございます。この八月に経済企画庁で、全国九カ所について地域景気懇談会というのをいたしました。そして、私も長崎市と秋田市にみずから参り、政務次官は札幌市に行かせまして、あとは幹部が手分けをいたしまして、それぞれ県庁、商工会議所、商工会その他地元の各業界団体の方にお集まりいただきまして、つぶさに現状を聞いてまいりました。そういう状況の中で、経済企画庁として対策考えて、中小企業対策であれば中小企業庁だとか、漁業対策であれば水産庁の方にもお願いをするとか、いろいろやってまいったつもりでございます。  おっしゃるように、それぞれ具体的な地域業界は、現実の問題としてはマクロで見たのと個別の問題との差が相当ある面もございますので、そういうものを考えながら、マクロだけでなく地域実情に即してそれぞれ対策を立てて関係各省の御協力を仰ぐことでさらにこれからも努力をしてまいりたいと考えております。
  14. 牧野隆守

    牧野委員 今、長官長崎秋田とおっしゃいましたが、前の長官選挙区にお見えになりました。いろいろ懇談会をなさったわけでございますが、実は私の選挙区については一応聞き及ぶだけでございまして、皆さん期待しておったわけですが、依然として、予算その他の関係ございますが、具体化いたしておりませんし、また地域産業関係者としては、これからでございますが、まだちょっと落胆しているというのが実情でございまして、ぜひとも長官にはそういうイニシアチブを具体的にとっていただきたい。閣議等々できちっと方針を決めていただきたい。各省に、これは問題だからやれよ、うちはやるよと言うだけじゃなくて、閣議でその調整問題について一般論ではなくてもう少し具体的にそういう配慮がなされるように、ぜひ長官お願いをいたしたいと思います。  では、先ほど一番最初長官の御意向を賜るときにるる申し上げさしていただいた次第でございますが、中小企業関係について質問をいたしたいと思います。  先ほど申し上げましたとおり、造船にしろ繊維にしろ大変な状況でございまして、後ほど失業問題との関連で労働省にもお伺いしたいと思いますが、最近中小企業でやめてくれということで仕事を離れた人は、まだ国鉄はいいね、こう言っておるわけですよ。国鉄再建というのは大変な現内閣の一番大きな仕事でございますが、みんなちゃんと仕事の次のところを政府総理以下全力を挙げて面倒を見てもらえる、私どもには何にもない、そういう状況でございまして、私自身としては、会社がつぶれてしまう、会社が小さくなって従業員にやめてもらっていくということは、これは大変なことでございまして、円高調整ということでこれは大変な問題でございます。特に中小企業対策。大手企業は親会社があれするとか関連会社へ出すとかいう形でおおよその調整問題はできるわけですが、それに関連している中小企業は実は大変な状況にあるわけでございまして、こういう実情については中小企業庁はよく御承知のとおりであると思います。  問題は、具体的にどういう対策をとろうとしているか、党の商工部会等でもいろいろ協議はいたしておりますが、まだ最終的な結論が出てきておりません。また、いつ出るか、いずれ近いうちに出るものと思いますが、中小企業庁、円高対策としての中小企業対策、具体的にどういうことを考え、またいつごろをめどにこれはできるかということをひとつお答えいただきたいと思います。
  15. 川崎弘

    川崎(弘)政府委員 お答え申し上げます。  中小企業庁、きょう見えておりませんので、調整局長でございますが、私から総合経済対策の中に盛り込まれました中小企業対策についてお答えいたしたいと思います。  先ほどから先生るる御指摘のとおりの情勢は、今回の経済対策でも十分と申しますか一生懸命考慮したということでございまして、今回の中小企業対策はほぼ三つの柱からできております。  一つは、先ほど御指摘輸出型の中小企業産地あるいは構造不況の企業城下町、そういったところで非常に深刻な影響を受けております中小企業に対しまして、そういった地域を特に指定いたしまして、特定地域中小企業対策臨時措置法というのを今国会に提出して御審議をいただくということで、その中の内容といたしまして、特別の融資制度、超低利で三・九五%の金利の特別融資制度、それから特別の信用補完、これは従来の信用保険の別枠といたしまして、普通保険七千万円、無担保保険一千万円、それから特別、小口、零細企業向けには三百万円、こういったものを内容といたします信用補完制度、それから第三番目には、そうは申しましても、そういった地域は非常に落ち込むわけでございます。地域ぐるみの活性化考えるという地域活性化対策、例えば技術開発、需要開拓あるいはその地域に対しての企業誘致、そういったものを支援するような地域活性化対策、こういったものを含めまして、先ほど申しました臨時措置法の制定に基づいてやっていきたいというのが第一点でございます。この点につきましては補正予算でそのための費用も提出をさせていただくということになっております。  それから第二は、御承知の新転換法、これは既存の中小企業特別調整対策でございますが、これの拡充、延長を図りたいということでございます。国際経済調整対策等特別貸し付け、これを拡充、延長いたしまして、六十二年の九月末まで延長いたしますとともに、貸付規模を二千五百億円追加いたします。それから国際経済関連保証も拡充、延長するということで、保証規模も一千億ふやしたい。取り扱い期間も先ほどと同じように来年の九月三十日まで延長いたしたい。あと無担保保険の限度額の引き上げでございます。国際経済関連保証、倒産関連保証にかかわりますものについては一千方円から二千万円に上げる。そのほか、政府中小企業金融機関の融資の弾力化、先ほどお話がございましたような既往貸付金の返済の猶予であるとか返済負担の軽減であるとか担保の徴求の弾力化といったような措置も講じたい。それから、特にマル経資金につきましては金利を引き下げまして、六・三%から五・八%にしたいということでございます。  それから第三番目は、先ほど御指摘ございました非鉄金属につきまして、最近の非鉄金属というのは中小企業中心でございますが、金属鉱業経営安定化融資これの貸付枠の拡充を図るということで、本年度下期は百四十億円の貸付枠を前倒し融資するということが対策に盛り込まれております。  それ以外に、中小企業関係はきめ細かく配慮をいたしておるということでございます。  それからもう一つの点でございますが、先ほど公共投資等についてもっと地域実情に配慮しろというお話がございました。実は今回の総合経済対策の中には、公共投資の配分については地域経済実情に配慮するということと、円高等不況対策を要するような地域について重点的に配慮しろというのも明記してございまして、建設省初め公共投資担当官庁にはそういった見地から今後のこの総合経済対策に基づきます公共投資の追加の配分に当たっては考えていただく、そういうふうになっております。
  16. 牧野隆守

    牧野委員 中小企業の問題について質問する前に、今、調整局長、最後に地域配分の問題について言及されたのですが、それは観念的に言っていらっしゃるのですか。それとも、この地域、この地域は例えば過去五年なら五年こういうような状況になっている、ここが非常に落ち込んでいるからここはこういう形で、特別に地域等をずっと列挙等をしながら、特に重点的にやれというように企画庁としてはおっしゃっておるのかどうなのか。
  17. 川崎弘

    川崎(弘)政府委員 ここに総合経済対策に盛り込まれております表現を読ましていただきますと、「公共事業については、災害復旧事業の速やかな実施に努めるほか、各地域経済情勢に配慮しつつ引き続き施行の促進を図るとともに、円高による影響の著しい地域及び地方の民間活力の活性化に寄与する事業に重点的に配慮して、国庫債務負担行為を活用しつつ事業費の追加を行うこととし、事業費一四、〇〇〇億円を確保する。」こういう形になっております。確かに個別にどこの地域ということはここには書いてございませんが、実施官庁においてその辺は十分配慮していただきたいというのが我々の立場でございます。
  18. 牧野隆守

    牧野委員 非常にくどいようで申しわけないのですが、特に長官に気をつけていただきたいのは、やはり経済企画庁として日本全体の経済情勢の動きを的確に把握されて、お経ではなくて具体的にやっていただきたい。場合によっては各都道府県知事から意見を聴取してそこの情勢をも聞いた上でリードしていただきたい、これを重ねてお願いをさせていただきたいと思います。  ただいま質問いたしました中小企業の問題、例えば三・九五なりあるいは五%の特定地域に対する低利融資の問題、あるいは信用保証協会を通ずる保証の強化の問題等々について御説明ございましたが、実はもう皆さんそういう困っておるところは借金をいっぱいして、たくさんは借りられないのですよ。借りようとすると、おまえのところは担保がないということで、政府でそういう措置が決まっても、具体的な融資ということになりますと、銀行の窓口で、あなたのところは悪いですね、見込みはないですねということで、実はお断りを受けているのが実情でございます。  特に気をつけていただきたいのは、例えば掛け目の問題。私のところの土地は今相場で五千万円の価値があります。大体それくらいで取引されております。その担保というのは大体、一つの例ですよ、今五千万円のものは三千万円でしか見てもらえないのです。これには掛け目というのがあって、大体市中金融機関は六割、三、六、十八で一千八百万円、政府金融機関が、七割まではいっておりませんが、大体六割五分くらいで、三千万か、それなら大体二千万円くらいというのが実情でございます。一番欲しいのは、その掛け目でなくて、現在の時価で評価をしていただきたい。これは幾ら言ってもしてもらえないのです。地価は下がっていないのですから、どんどん上がっているわけですから、なぜそういう行政指導が行われないのか。今確かにこういう措置が講ぜられておりまして、ここで大臣または局長お願いしても、これは商工委員会等でお願いすべきことかもしれませんが、長官としてはやはりその辺を十二分に心得ていただいて、経済運営のかなめでございますから、その辺をきちっとしていただきたい。  そして、保証協会の保証の別枠追加の問題ですが、これも同じように、保証協会というのはそもそもいわゆる民間の金融に対する補完機関として行われたわけであって、それは中には取りっぱぐれもあると思います。代位弁済せざるを得ない場合も相当あるとは私は聞いておりますが、これはあくまで金融機関に対する保険の補てん機構でございまして、当然、政府としては、保証協会等に対する出資について、どれだけやられるか。普通の金融機関は、大体三%前後これは倒産して取りっぱぐれるんだな、そういうことを計算してちゃんとやっているわけですが、政府の保証機関の場合は、そういう危ない人を保証するわけであって、その危険負担の度合いというのは当然のことながら民間金融機関以上に高くあるべきはずであります。  ところが、運用を聞いてみますと、同じよりなおかたいというふうに聞いておるのです。何のために信用保証協会というのをつくったのか。確かにずさんな保証をしてどんどん貴重な政府お金がなくなるということは防止しなければなりませんが、こういう御時勢でございますので、三・九五でやりますよ、一部については五%でやりますよというけれども、果たしてどれだけの方が借りられることができるかどうかということになりますと、形だけであって実は隔靴掻痒の感があるのではないか。政府はやったやったと言っておる。新聞も書いた。僕らも聞かれると、政府はこういうようにつくりましたよ。いや、先生、実はあれは形だけで、私どもは使えないのですよという声が非常に多いわけなんです。  これについて、今直接の担当ではございませんから、金融機関の掛け目がどうで、保証協会の事故率がどうでという細かいところまでは私はお伺いいたしません。また次の機会にあらかじめそういう質問も用意してお伺いしたいと思いますが、関係のところには通報していただいて、また経済調整のいろいろな重要な会議においては、そういうところまで具体的な御配慮をぜひお願いいたしたい。それを中小企業は求めているのだということを、単に数字を並べるだけではなくて、よくその辺を頭に入れていただいて、諸般の政策の充実にひとつ御尽力を賜りたいと思います。  次に、きょう労働省はお見えになっておりますか。先ほどちょっと触れましたように、一般の国鉄だとか、今問題になっております石炭等については、具体的な事例あるいは具体的な産業のことでございますから、労働省としてもその調整については最大の努力をされておられると思いますが、実は先ほど申しましたとおり、産業空洞化と申しますか、自動車産業あるいは電子工業等ではどうも新規採用がことしは非常に少ない。私のところでもほとんど採らない。どうもどんどん外国へ工場を持っていきそうだ。大きな流れといたしましては、ある程度、産業自分で生きていかなければなりませんから、競争力を持つ以上、低価格の部品等の供給体制ということで、あるいは相手国の市場との調整問題で、アメリカだとかあるいは東南アジア諸国に工場を設置するというのは、企業のまたは産業の立場からはわかります。しかし、私ども同じ仲間、同じ日本人が同じ地域に住んでおって、実は今こういう産業ではどんどん解雇をいたしておるわけでございます。これらの実情等、労働省としてどういう対策考えておられるか、ひとつ現状についての御返事をいただきたいと思います。
  19. 廣見和夫

    ○廣見説明員 お答え申し上げます。  今先生から御指摘のございました雇用情勢でございますが、私ども、先生今いろいろとお述べになられましたように、基本的には大変厳しくなってきておる、このように認識をいたしておるわけでございます。  若干マクロ的な数字で恐縮でございますが、例えば職業安定所の方でやっております有効求人倍率、これは昨年後半以降低下傾向にございまして、ことしの八月には〇・六一倍にまで下がってきておる。あるいは完全失業率を見ましても、大変高い水準になっておりまして、御案内のとおりことしの七月、八月、二カ月連続で二・九%ということで過去最高水準になっております。職業安定所の方の窓口にあらわれます求職者も離職者が中心になって増加いたしておりまして、特に最近製造業から出てこられる離職者の方、事業主都合による離職という形の人たちが非常に多くなってきているという点を私どもも心配いたしております。  さらにまた、それぞれの企業での雇用の問題につきましては、先生も今お話ございましたような形で雇用が過剰であるというふうに感じておられる企業が非常に多くなってきておりまして、私どもの労働経済動向調査によってみましても、最近製造業の中で二〇%の事業所が雇用過剰感を持っておられる、それからまた何らかの形で雇用調整を進めておられる事業所、これは製造業の中では三一%あるというようなことになっております。それからまた、個別には、るる先生もお話ございましたので一つ一つ申し上げるまでもないかと思いますが、造船あるいは非鉄金属、鉄鋼を初め、大量の過剰人員が生じておると思いますし、今申し上げましたような雇用調整も進んでおる。さらにまた、金属製品あるいは一般機械あるいは電気機械等の加工組み立て業種とか輸出関連業種このあたりでもかなり事業主の都合の離職者というものが出てきてございます。石炭につきましても確かに今いろいろ深刻な状況にございまして、現在石炭鉱業審議会でも政策について議論いただいておりますので、これがどういう形になるかということもあるでしょうけれども、その動向いかんによってはかなり離職者が出てくるということも懸念されます。  それからまた、産地につきましても大変状況が厳しくなってきておる。私どもは、輸出を主としております産地につきましてヒアリングその他を労働省といたしましてもやっておるわけでございます。一応代表的なものを四十一地域選んでやっておりますが、昨年の十月以降ことしまで何らかの形の雇用調整をやり解雇者を出したというのはそのうち二十二地域になっておりまして、十月以降足し上げてみますと約二千七百人の解雇者が既に出てきておるというような状況になっておるわけでございます。こういうような状況で推移いたしておりますし、ますます厳しくなるという覚悟はしておかなければならないだろうというふうに思っております。  そういうような情勢でございますが、それに対応いたしまして、基本的に私どもといたしまして当面の対策といたしますと、先ほど来お話も出ております総合経済対策に基づきまして、労働省としましては、例えば雇用調整助成金、この制度内容の改善を図るということで失業の予防、再就職の促進を図っていくということをやっております。具体的に幾つか項目はございますが、代表的なものとして雇用調整助成金を申し上げますと、これは例えば休業される事業主の方には休業手当の二分の一を助成するという基本的な仕組みであったわけでございますが、中小企業には特に配慮いたしまして、通常は二分の一ですが、中小企業の場合はその三分の二を補助するというものでございます。これをことしの、つい先ほどでございますが、十月二十日からこの総合経済対策に基づく対策といたしまして実施いたしまして、率をアップいたしておりまして、通常の場合は三分の二にし、中小企業の場合は特に四分の三にするという形で高い率にいたしております。そういう形で総合経済対策を早く実施するということで既に実施に移しておりますし、あるいはまた特定不況業種、特定不況地域につきましての指定を自動的に行い、それによる対策を積極的に進めるというようなことなどをやっておるわけでございます。  ただ一点、先生が御指摘になりました海外投資に伴う雇用問題につきまして、これは私ども、最近の動き、急激な動きがございますが、今後非常に大きな課題になってくるだろうというふうに認識いたしておりまして、これにつきましては相当突っ込んだ議論もいただかなければならないと思いますし、一定のコンセンサスも得ていく必要があるだろうというふうに思っておりまして、先般、労働省に雇用問題政策会議というものがございまして、ここでは学識経験者あるいは労使の代表の方々に入っていただいておるわけでございますが、この雇用問題政策会議で海外投資と雇用の問題を取り上げていただき、一定のコンセンサスを目指して議論を進めるというふうにしていただいております。  そういうような問題として対応すると同時に、もう一つは、先生先ほどから御指摘ございましたように、こういったような雇用情勢は特定の地域に集中して出てくる、地域に偏りがあるということで、地域対策を今後強化していくことが非常に重要であろうということで、地域の雇用開発を中心とする対策を早急に確立したいということで現在具体的な検討を進めております。中央職業安定審議会でも現在具体的な検討をやっていただいておりまして、必要があれば立法的措置等も含めて検討いたすよう審議を進めていただいております。  大体以上のような状況でございます。
  20. 牧野隆守

    牧野委員 今労働省でも刻々調査をされておられ、考えておられるようでございますが、実はこの問題、非常に大きい問題でございまして、手おくれになりますと一つの社会不安というものを醸成するわけで、刻々の調査に全力を挙げていただきたいと思います。もちろんそれによってどんどんデータを発表することによって必要以上に社会不安を醸成するというようなことになってはいけないと思いますが、しかし、その変化に応じて適切なる対策がとられるように、適切な対策と申しましても、例えば失業した場合の保険をどうするとかお金をどうするとか、これは半年とか一年の問題であって、先ほど申しましたように、こういう産業調整というのはこれから三年ないし四年どうしてもかかるという状況になりますと、単に失業手当を出すということで問題が解決されるわけじゃないわけなんですね。これは一労働省の問題としては、こういう場合にはこれだけの措置を講じてあるから企業主はこれだけ払いなさいよ、掛金を少し上げてその解雇される人の手当を一カ月延ばすとか、こんなことはいつでもできる問題であるわけですが、それ以上に産業調整の問題と関連して、労働省からは、常に調査をしていただいて、業種別に調査をしていただいて、自動車産業はこういうようにいくぞ、電子工業の動きはこうだ、あるいはこの関係はこうなっていくという雇用の問題から積極的にその問題を提起していただきたいと思います。  先ほど中小企業の問題と関連いたしまして、一つは転換の説明がございましたが、転換というのは、きょう言ってあしたできる、そんな簡単な問題じゃないわけなんですね。二十代の人は幾らでも業種転換できますが、もう三十五を過ぎますと、繊維関係をやっている人はやはり繊維関係で探さざるを得ない。機械関係をやっている人はやはり機械関係でと、サービスなんてみんな簡単に取っついて行きますが、全部失敗しているわけで、産業転換あるいは雇用転換というのは、その人その人の長年の蓄積があるわけでございますから、そう簡単にいかない。だから、雇用の問題からも、もちろん今技術研修とか一生懸命労働省が御努力になっておられることは私は地域でも細かく見ておりまして、喜んでおられる方がたくさんおられます。しかし、こういう大転換期でございますから、そういう産業転換の問題についても、労働省の立場から、こういう業種、こういう産業、さらに雇用問題懇談会ですか、どんな人がメンバーになって適切な答申が出てくるかどうかわかりませんが、雇用の立場からも積極的に経済運営にぜひ参画してほしい。  そういう意味においては、ただいま企画庁長官席を外しておられますが、産業調整機構としての経済企画庁の重みというものが――戦後、安定本部というのがございました。これはすごい官庁でございました。もちろん統制機能を持っておりましたけれども、要するに経済安定本部が中心になって、当時の戦後の混乱した日本経済一つの中核になっていろいろなリードをしてくれたわけです。戦後とは全く性格が違いますが、この三年ないし四年間の国際経済日本経済との調整問題、今まで経験しない大変な問題でございまして、そういう点で、長官中心にいたしまして経済企画庁の俊秀の皆さんに大いにこれから頑張っていただいて、我が国の今後の方向について間違いのないように全力投球をしていただきたい、このようにお願いいたしたいと思います。  あと、具体的な円高差益の問題について、牛肉とかエネルギー関係とか小麦、また運輸関係のサービス等いろいろお伺いしたいことがあるわけですが、時間が参りましたのでこの次の機会に具体的にお伺いすることにいたしまして、本日の私の質問をこれで終わらせていただきたいと思います。
  21. 河上民雄

    河上委員長 次に、小野信一君。
  22. 小野信一

    小野委員 大臣がおりませんけれども日本経済中心官庁である経済企画庁皆さんの率直な御意見を聞かせていただきたいと思います。  最初に、現在の世界経済に対する認識をお尋ねいたします。  世界経済は、現在長期的に停滞いたしております。摩擦と不均衡が広がりました。米国を初め日本、ECなどの先進諸国の成長も鈍化いたしております。また、失業が高い水準になりました。同時に、これが慢性化し、財政の赤字、貿易の不均衡を続けております。米国は、急激なドル価値の低落にもかかわらず、景気停滞し、貿易収支は改善されておりません。日本は、円高にもかかわらず、貿易の黒字は八月に八十四億ドルと、年率に換算して一千億ドルに達するだろう、こう予想されております。対米、対欧の貿易摩擦は一層激化するのではないかと心配される事態です。南の発展途上国の累積赤字の状態は次第に悪化し、一兆億ドルに上るのではないかと心配されますし、石油は値下がり、先進国は不況によって国際収支が悪化し、回復の見込みがないのではないか、泥沼に入ったのではないかと心配される事態であります。世界の実物経済停滞し、一次産品の価格が下がっている中で、日、米、欧州諸国では株式・証券ブームになりました。不景気の株高現象を呈し、一九二九年十月二十四日魔の第三木曜日の前夜のような状態ではないだろうか、こう心配される経済学者もおります。  現在経済企画庁は今度の世界不況の実態についてどのような認識をお持ちになっておるのか、まずお尋ねいたします。
  23. 川崎弘

    川崎(弘)政府委員 お答えを申し上げます。  今、世界経済情勢という点につきまして、先生御指摘のような大変不安定な点も多々あろうかと思います。ただ一方におきましては、総じて見ますと、例えば先進国経済、物価の安定の中で緩やかではございますが一応の着実な成長を遂げているのではないか。ただ、アメリカにつきましては、先生も御指摘のとおり、確かに最近やや減速傾向が出ております。しかし、今回七―九のGNPの速報が出ましたけれども、これはやや回復しているという数字が報ぜられております。西欧の方は、確かに一―三月あたりまではかなり弱い感じが出ておりましたけれども、四―六以降を見てみますと、このところ緩やかでございますが景気は拡大テンポをたどっておる。物価も安定をいたしております。もちろん、例えば西欧におきます高失業の問題あるいは発展途上国におきます債務累積の問題、非常に難しい問題があろうかと思いますが、そうした状況の中で、世界の一割を占める日本といたしまして、各国との政策協調の中でこういった困難の打開に一つずつ取り組んでいくということが必要ではないか、そういうふうに考えております。
  24. 小野信一

    小野委員 以上のような世界経済の実態の中で我が国経済に目を移したときに、国民生活を最も豊かにして安定する、その方向を破壊するあるいは障害物になるのは失業であり雇用不安であろうと私は思います。この失業率も、先ほど労働省の担当官が説明しておりましたけれども、二・九%、百九十万、ことしじゅうには二百万の大台に乗るのではないか、こう心配される事態になりました。この失業率の増大に非常に拍車をかけたのが昨年の九月二十二日のG5の合意だったと私は思います。あれから十三カ月、G5の評価あるいは反省すべき点あるいは準備不足の点、それらに対する考え方が明らかになっておるのではないかと思います。したがって、経済企画庁が今G5に対する評価をどのようにお考えになっておるのか、どのようにまとめておるのか、お聞きをいたします。
  25. 川崎弘

    川崎(弘)政府委員 昨年の九月二十二日のG5以降確かにドル高是正という形で非常に急速に円高になったという状況日本の国内経済、特に輸出中心にした製造業に大きな影響を与えているということは私どもも十分認識しております。  ただ、あのG5をやるに至った経緯というのを考えてみますと、それ以前に続いておりましたドル高傾向の中で日米関係中心にして大変大きな対外不均衡が生まれてきた、その中でアメリカを初めとして西欧各国も含め保護主義が非常に高まってきた、こういう情勢の中で対外不均衡を是正するためにああいったドル高是正のための協調行動というのがとられたものでございまして、それはそれなりに評価すべきものだと思いますし、現実に今のところの数字は確かにJカーブ効果等がございまして目立った改善はしておりませんけれども、数量面で見ますと、輸出が伸び悩みからやや減少する、輸入の方がふえているという形で、もう少し長い目でとらえてみますと、対外不均衡の是正という点については漸次効果があらわれてきているのではないかと我々は考えております。  しかし、一面におきましては、そういった効果が国内にデフレ的なインパクトを与えているというのは事実でございまして、今回の総合経済対策におきましても、そういった面に十分留意しながら、一つは国内需要の追加創出による内需の振興、もう一つは、そういったことで非常に不況に苦しんでおります中小企業中心とした産地とか地域について摩擦を緩和するための中小企業対策といった両面を中心といたしまして今回の総合経済対策というのが策定された、そういうふうに私どもは理解しております。
  26. 小野信一

    小野委員 もしG5の合意事項がなかったならば、ドルは一九三〇年代のあの大暴落が再び襲ったのではないか、こういう心配があり、そのことを防止したという意味では私は大変大きな仕事だったろう、こう考えます。  しかし、振り返ってみますと、ドルの外国通貨に対する水準は下がっておりません。要するに日本だけが大暴落しておるというのが現在の姿になります。当時の竹下大蔵大臣は、帰国して飛行場で胸を張って成功をうたいましたけれども、今考えますと、日本経済に対する影響はまことに深刻なものであった。私は、あれほど胸を張って帰ってこられるような内容だったんだろうか、今まことに不思議に思うわけでございます。したがって、我が国政府あるいは経済企画庁、大蔵省として、G5の合意が現在のような深刻な事態を招くのだということは、当時は全然予想されなかったのだろうか。もし予想されるということが既に当時把握されておるとすれば、その時点から対策を十分立てておらなければならなかったはずだ。これは今になって言えることなんでしょうか。それとも当時既にそのことが検討されておらなければならないことをしておらなかったとするならば、政府責任は、経済企画庁責任はまことに大きいと言わなければならないのですけれども、その辺の率直な意見をお聞かせ願いたいと思います。
  27. 川崎弘

    川崎(弘)政府委員 確かにG5を行って協調行動をとったという時点においては、今日ほどの急速な円高テンポの展開というのは私どもも予想いたしてなかった面がございます。したがいまして、もちろん急速な円高過程の中で、昨年の十月、十二月、それからことしの四月、五月と累次にわたって対策は講じてまいりましたけれども、その後の急速な円高の進展が余りにもテンポが激しかったということもございまして、むしろ円高の持ちますマイナスの面と申しますか、デフレ的なインパクトというのが現実の経済に色濃くにじみ出ているというふうに私ども考えております。
  28. 小野信一

    小野委員 もしG5で合意することによって当然予想される円高不況が今日のように深刻にならないだろうと予想したとすれば、私どもはその責任は追及せざるを得ないだろう、やはり当然予想されたものではないだろうか、こう考えます。もちろん、その間思わぬ原油の値下がりということがありまして、これを補うあるいは促進した両面があると思うのですけれども、それらに対するしっかりとした責任感はやはり政府は持たなければならないんだろう、私はそう思います。  というのは、昨年の七月の末日に政府は市場開放のための行動計画指針をつくりました。今年の四月に日米首脳会談で中曽根総理は国際協調のために経構研の報告をレーガン大統領に報告をいたしました。日本経済輸出志向型の経済から内需拡大、輸入志向型に変えていく、こう約束いたしましたけれども、そのことがアメリカに対して日本経済に対する過大な期待を生んだのではないだろうか、こう考えられます。  三つ目は、今年四月初めに総合経済対策をつくりました。総理は、円高差益還元によって数兆円の減税と同じ効果が生まれる、秋には景気は好転するだろうと言明いたしました。しかし、事実は不況が深刻化いたしまして、九月十九日に再び総合経済対策閣議決定いたしまして、補正予算を出さなければならなくなりました。  こう考えてみますと、当時の国の判断経済企画庁判断は非常に甘かったのではないだろうか、こう考えざるを得ないのですけれども、もう一度その点に対する御判断をお聞かせ願いたいと思います。
  29. 川崎弘

    川崎(弘)政府委員 円高という問題には二つの側面がございまして、円高に伴います輸入代金の節約といった意味の円高のメリットと、それからマイナス効果としては輸出の数量減あるいは円高に伴います輸出企業の手取り額の減少が輸出企業の収益なり業況観に影響を及ぼすというふうなマイナス、こういった両面がございます。  確かにこれまでのところはどちらかといえばデメリットの方が色濃く出てきたということはあるようでございますが、しかし、最近の個人消費の動きであるとかあるいは住宅投資の動きの中には、円高あるいは原油安に伴います物価の安定、これが実質所得の増加を通じまして国内需要あるいは消費者のマインドに対してプラスの効果を働かしているというところもあろうかと思います。  そういった意味におきまして、今この時点で一体どの程度のメリット、デメリットになっているかというのは、軽々には定量的になかなか把握できないし、言えないところではございますが、やはりそういったメリット面も次第に今後本格化してくるんじゃないかと我々は期待しているところでございます。
  30. 小野信一

    小野委員 何日か前の日経に、慶応の教授だったと思いますけれども、歴史的に見ますと、為替レートが大幅に、かつ、急激な自国通貨高になった状態で、そのメリットによって景気が上向いたという先例はない、こううたっております。政府はデフレ効果の深さの方を余りにも軽く見過ごしたのではないだろうか、私はこういう感じがしてならないのですけれども、その点はいかがです。
  31. 川崎弘

    川崎(弘)政府委員 円高に伴いますメリット、デメリットの比較考量というのは大変難しい問題がございます。  一つは、円高に伴いまして日本からの輸出がどの程度影響を受けるのかあるいは日本への輸入がどの程度ふえるのかというところの見方と、それから交易条件効果と申しますか、いわゆる輸入代金の節約に伴うメリット、これをどう見ていくかという問題だろうかと思います。最近の情勢を見ておりますと、どうも円高の数量調整効果というのは輸入数量を非常に増大しているという形であらわれてきているんじゃないかというふうに最近の数字では理解できるわけでございますが、メリット、デメリット、どちらが大きいかというのは、もう少し時間をとってみないと、例えばメリットの方はある程度のタイムラグを伴ってまいりますので、直ちに評価はできないかと思います。  ただ、もう一つ、今回の場合は、先ほど先生も御指摘のとおり、油の値段の大幅な低下というのが非常にプラスの方に働いているんじゃないか。したがいまして、その油の面も加えて考えますと、総合的にはプラスとして今日本経済に働いているんじゃないか。ただ、その効果がどこにあらわれているかという点については、部門別にかなりのばらつきが見られるというのが現状ではないかと思います。
  32. 小野信一

    小野委員 経済の基礎条件を為替相場というものは当然反映しておのずと決まっていくものだろうと思うのですけれども、現在の為替相場を見ますと、各国の経済的基礎条件を反映したものにはなっておらないような気がしてなりません。要するに投機の対象となっております。したがって、一ドル百五十円台というものが果たして日本経済の基礎条件を反映しているのかというと、私はそうは思われないのですけれども経済企画庁は世界の通貨が自国の経済の基礎条件を反映しておるように感ぜられますか。概略として反映しておるというそういう判断ができますか。
  33. 勝村坦郎

    ○勝村政府委員 お答えを申し上げます。  ただいまの御質問、非常に難しい御質問かと思いますが、ファンダメンタルズということでまず何を言うかということですが、これは常識的には一国の成長率、物価の安定度あるいは対外収支の動向というようなものが基礎的な条件として通常考えられるわけであります。  一九七〇年代までは、大体ファンダメンタルズで各国の為替の相互の動きというのはほぼ説明できる状態が続いておりました。それが一九八〇年代に入りまして、アメリカの急速な高金利という状況が生じまして、資本市場における為替の移動、特に円ドル間の移動というものが急激に生じまして、資本市場の方のインパクトが貿易を中心といたしました財の市場の方に大きな影響を与えるという状態が生じたというふうに一般考えられているわけであります。したがいまして、そういう状況の中ではいわゆるファンダメンタルズで説明できるような為替レートとは非常に乖離をいたすということでありまして、したがって、ちょっと常識では考えられないようなドル高というものが、かつ相当長期間にわたって持続をしたというのが八〇年代前半の状況であったろうと思うわけであります。  そういう為替レート状況に伴いまして、国際的な不均衡、特に日米間の収支の不均衡というものが非常に膨れ上がりまして、これ以上はお互いに耐えがたいというような状況になってきたのではないだろうかと思います。この期間は、明らかにさっき申しましたように金利差ということから、これもアメリカの高金利ということが基本的な原因でありますが、内外金利差ということから資本市場における為替移動のインパクトが非常に長く続きましてそういう今申しましたような不均衡を生み出したわけでありますけれども、こういう状況をいつまでも放置できない、やはり基本的には財の市場を、つまり貿易収支と申してもよろしいし、あるいは経常収支と申してもよろしいかもしれませんが、それを均衡させるような為替レートに戻さないと世界経済混乱の度を一層深めるという認識が各国共通になってきたと思うわけであります。その結果が、幾つか問題ははらんでいたかとは思いますが、先ほど御指摘のG5に至ります各国の協調の方向であったというふうに考えるわけでございます。  G5以降の急速な円高、これはその前にドルのオーバーシフトが非常に強かったものですから、その反動といたしまして円高・ドル安のテンポがこれまた余りに急速に感じられたという事実はあろうかと思うわけでありますが、また、現在の百五十四、五円という水準がファンダメンタルズから見て果たして十分説明できる水準であるかということになりますと、この二つの問題は確かに非常に難しいわけであります。  ただ、基本的には、昨年の秋以降為替レートと申しますのは、それまでの資本市場のインパクトを中心にしたレートからファンダメンタルズを反映したレートの方に大きく揺り戻してきたというふうに考えられるわけでありまして、百五十四、五円がファンダメンタルズから見て適正な相場であるというふうにはちょっと申し上げることができませんけれども、基本的にはファンダメンタルズを反映する方向に動いてきたという意味では評価できるのではないか、こういうふうに考えております。
  34. 小野信一

    小野委員 少なくとも現在までの為替相場というのはファンダメンタルズの条件を反映したものでないということだけは確認していただけると思います。もし為替相場がそういう形のものであるとすれば貿易調整機能を失っているんだろう、私はこう思います。  我が国、資源のない日本がこれからも繁栄を続けるためには、一つは自由貿易の原則が確立されておらなければならない。同時に、科学技術が世界最高の水準になければ日本経済というものは国民生活を維持していけないだろう、私はそう考えます。そうしますと、為替相場が経済の基礎的条件を反映していないとすれば、現在の貿易に行政が介入して少なくともファンダメンタルズに近いものにするということが一つと、あるいは貿易の自由化を維持していくような政策が立てられるのでなければ日本の持続的な成長を維持することが難しいだろう、私はこう思います。  ところが、今日の貿易実態を見ますと、日米間でも、半導体、たばこ、ワイン、各分野ごとに政府がお互いに話し合いまして交易条件を決めております。私はこういう姿は自由貿易と言えないような気がするのです。したがって、自由貿易でなければ日本経済が立っていけないとするならば、相手の利益を尊重しながら貿易を拡大するような協調貿易の原則を今つくらなければならないんじゃないだろうか。私は、言葉はどうあろうとも、対外経済法というようなものがつくられて、日本の貿易は集中豪雨的な輸出はいたしません、少なくとも相手に失業を輸出するようなものは自主規制をいたしますというような世界に対する宣言のようなものが今日本経済に必要なのではないかと思う。経済企画庁は私の意見に対してどういう判断をお持ちになりますか。
  35. 川崎弘

    川崎(弘)政府委員 我が国といたしましては、調和ある国際経済関係を形成するというのは大きな国是でございます。その国是はどういう形で実現していくのかという点につきましては、やはり自由貿易体制というものを前提に置いて、それを維持発展させていく、これがやはり日本としては一番重要であり、また国際的にもそれが必要なことだろうと思います。こういった意図というのは、いろいろな国際会議の場におきまして累次日本政府代表者が発言しているところでございます。  したがって、そういった自由貿易を前提に貿易の拡大均衡を図っていくということが必要になるわけでございますが、もちろんただいま先生御指摘のように、特定品目がどしゃ降りのように特定地域に集中して出ていって相手国の産業経済混乱させる、これは好ましくないことでございます。そういった意味での節度ある輸出の確保というのは、これまでもいろいろな形で対策が講じられてまいりました。今後ともそういうことは引き続き適時適切にやっていくということになろうかと思いますし、そのための手段も貿管令を初め幾つかあろうかと思います。ただ、全体として貿易をいわば管理貿易の方向に持っていくようなそういったフレームワークをつくるというのは、やはり自由貿易というものを大前提にいたします現在の国際的な考え方から見まして、やや問題が残っているのではなかろうかというふうな気がいたします。
  36. 小野信一

    小野委員 先ほど申し上げましたように、資源のない日本がこれからも繁栄を続けるためには、自由貿易の経済体制でなければならぬということは大前提になります。自由貿易であるから何でもいい、どんなことをやってもいい、安くていいものであるならばどんどん輸出して構わない、こういうことは自由貿易の原則ではないのじゃないだろうか。自由貿易にも原則というものがあるのじゃないだろうか。少なくとも相手国、輸入される側の経済に大打撃を与えまして大きな社会不安を起こすような自由貿易であってはならないのじゃないだろうか。そういうものを、世界の国々の人たち日本の立場を理解してもらうような自由貿易の原則、こういうものを日本がつくって、今の世界の国々から日本に対する不信感を払拭して、自由貿易を日本は守る国だ、少なくともこちらから規制を要求しなくてもある条件に達した場合には自主規制をするのだ、安心して貿易のできる国なんだ、こういう意思表示を世界の国々にする必要があるのじゃないだろうか、私はそう考えるわけでございまして、管理貿易にしなければならぬとかそういうことを言っているわけじゃございませんが、少なくとも精神上の国民の意思としての世界に対する意思表示が必要なのではないだろうか、そんな気がしてならないのですけれども、もう一度いかがでしょう。
  37. 川崎弘

    川崎(弘)政府委員 我が国の貿易は、一つはガットのルールに従ってやっていくということだろうと思います。ガットのルールの中には先生も御高承のとおりセーフガード・クローズというのがございまして、攪乱的な輸出がなされるような場合にはセーフガード・クローズをガットの条項に従って発動するということも輸入国のサイドではできるわけでございます。ただ、日本といたしましては、そういったところに至る前に、これまでもいろんな品目につきまして自主規制という措置で対応してまいりました。そして節度ある輸出に努めるということはいろいろな場におきましてこれまで日本としても発言をしてまいったわけでございまして、趣旨におきましては先生御指摘のような努力を今もやっているということでございます。
  38. 小野信一

    小野委員 次は、日本は巨額な貿易黒字を稼ぎながら、それを上回る資本投資を外国に行っております。一生懸命働いてお金をもうけて、それを外国にドルや証券あるいは土地という形で残してしまう。一生懸命働くけれども日本国民生活には一向に寄与しない、豊かにならない、まことに困った事態ではないだろうか、こう思います。昭和五十六年から六十年までに一千七百四十六億ドル、六十一年一月から八月まで七百九十八億ドル、実に五十六年から本年の八月までに二千五百四十四億ドル、資本が流出しております。  金融機関や企業にだぶついておるこれらの巨大な資金が国内に投資されないで相当部分が海外に流出している。この問題は、今度のようにドルの暴落を伴う場合には大きなリスクを伴うわけです。国民に対して大きな危険負担を強いるわけです。損失を強いるわけです。外国の投資外国にそのまま残した金というのは、日本国民生活には一向にプラスにならないで、ドルが暴落したときにだけ大きな損害を国民に与えるということになります。この損失は今回のドルの暴落によっていかほどになったんだろうか、こういう疑問を当然国民が持ちますので、もしそれらの計算がなされておるとすれば御報告を願いたいと思います。
  39. 勝村坦郎

    ○勝村政府委員 お答えを申し上げます。  ドルが下がったことによってどれだけ日本の対外資産の損失が生じたかという問題でございますが、一つは、ドルのどの時点からの額を言うのかということがあろうかと思いますが、その前に、先生も今御指摘になりましたけれども日本の対外資産、負債の大体の額を昨年度末で申し上げますと、御承知と思いますが、対外資産が四千三百七十七億ドル、それから負債が三千七十九億ドル、純資産といたしまして千二百九十八億ドル、約千三百億ドルの純資産がございました。昨年末のレートというのは大体二百円でありまして、仮にその二百円で評価したものが現在の百五十四円になったらどれくらいという計算はもちろんできるわけでございますけれども、ただ、そういう数字を計算をして発表するということは、余り意味がない、むしろ考えようによっては害があるんではないだろうかというふうに私ども思っております。  と申しますのは、今申しましたような計算というのは、対外資産が全部ドル建てであって、かつ、将来必ず円に戻して、それで円に戻した上で国内で運用されるというふうに考えましたときにはそういう形の計算もできますけれども、これは損失というものを余り過大に評価し過ぎることになるだろうと思います。一つは、ドル建てが全部ではない、ヨーロッパ通貨建てもございますし、部分的ではありますが円建ての資産もあるわけであります。それから、損失あるいは差益と申しますが、実際買ったときのドルのレートが幾らであったかという問題もございまして、一番高いときのドルレートでそこからこれだけ損失したというふうに言うのも、これも過大評価であろうということがございます。  それから、現在かなりの資産と申しますか資本取引は先物でカバーをされておりまして、その部分はレートの変動の損失を直接にはこうむらない。したがって、あえて申しますと、先物でカバーをしていない、かつ、将来円に戻して円として再利用するというような部分については、確かに円高になった場合にはある程度の損失ということがあり得ようかと思いますが、ただ、その場合でも、御承知のように内外金利差あるいはいわゆるクーポンレートの差ということがかなりあって、それでそれにはある程度の為替リスクも含んで投資をしているわけでありますから、その部分だけを取り出して何兆円日本は損をしたというような言い方をするのは的確ではないだろう、むしろ非常に誤ったインフォメーションを社会に与えてしまうのではないかというふうに思いますので、私どもといたしましては、レートが何円から何円になったときに日本は何千億あるいは何兆円損をしたというような言い方はしない方がよろしいのではないかというふうに考えております。
  40. 小野信一

    小野委員 新聞報道によりますと、我が国の生命保険会社が約四兆円の投資を行っておる、こうなっております。今回の円高・ドル安によって一兆円の損失を受けた、これを手持ち株式の譲渡益で償却した、こう報道されております。保険会社は、被保険者ですか、要するに保険を掛けてくれた人たちの利益を守らなければならないのに、一兆円の損失を出した、こう言われております。大臣、それで一般市中銀行ならまだしも、非常にお客様を大切にしなければならない保険会社が外国に投資し証券を買う、ドル建てで行うことによって今回のような場合に莫大な損失を来している、こういう実態はいかがなものだろうか。これに対する経済企画庁なり政府あるいは大蔵省の指導、あるいは考え方が明らかになってもいいのじゃないだろうか、そういう感じがするんですけれども大臣、いかがでしょう。
  41. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 保険会社の海外投資について大蔵省がどういう規制といいますか指示、指導をしているか、私もちょっとよく存じておりませんが、当然先生のおっしゃるようなことは十分配慮しなければならないというふうに思います。  ただ、確かにおっしゃるように現時点での円高によるところの円表示資産の減価ということはありますが、アメリカは最近までは非常な高金利であったわけでございますので、その投資してから最近まで高金利であったのでそれで相当稼いだ面もあったという感じがするんですね。ですから、為替レートのリスク、マイナスと、それから、最近アメリカも金利が下がっておりますが、ひところの高金利で相当ドル価値が上がっておりますので、そっちのプラスの面と円高マイナスの面で差し引きどうなっているのか。私も保険会社に友人がおりますので、話を聞いてみると、これからはともかくとして、この円高で相当稼いだ分があったというようなことを聞いたこともございます。そのあたりが差し引きどうか。  いずれにしても、国民皆さんから大事な保険のお金を預かっての運営でございますから、先生御指摘のように、十分慎重の上にも慎重に処していかなければならないというふうに私は考えております。
  42. 小野信一

    小野委員 政府方針としてドル価値の暴落の防止のためにドル投資を非常に奨励しているように私には思われる。少なくともこれからは、今大臣がおっしゃったように、今までは利益があったかもしれません、あったろうと思いますが、しかし、これからはドル建ての投資、債券買いというのは非常なリスクを伴うだろう。そうなった場合に、政府は適切な方針が指導方針として示されていいのじゃないだろうか。国民に対するそれが親切じゃないだろうか。私はそう思うのですけれども、いかがでしょうか。     〔委員長退席、青木委員長代理着席〕
  43. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 先生のおっしゃることは私もよく理解できるわけでございますが、基本的に生命保険会社にしてみてもいわば営利会社でございますので、その営利会社としての一種の財務運営ですね、投資運用の中でいろいろなことを考えていく必要があるし、またそれが一定の限度を超えないような形で大蔵省として指導すべき面も確かにあるのではないかというふうに思います。  先ほど調査局長の話もございましたが、いろんな将来のリスクに対してヘッジをして、そして為替リスクをできるだけ最小にしようという努力も当然考えなければならないというわけでございますが、ただ、為替レートそのものについては、なかなか国としてどうこうと言うことも、これもいろんな状況で決まるわけでございますので、当然起こり得べき為替リスクについてしかるべき対応を営利会社としてまず基本的にやる必要があると思います。しかし、そういう十分な配慮がないような場合については、いろいろの指導をしなければならない面もあるかもしれない。そのあたりはよく大蔵省としても考えてもらう必要があるというふうに思います。
  44. 小野信一

    小野委員 政府がドルの暴落のために日銀を通してドルを買う、ところが証券会社、市中銀行はどんどんドルを売る、こういう傾向が長く続きましたね。私は、政府方針政府の政策と全く逆な方針が金融機関によって行われるということに対して経済企画庁が沈黙を守るというのもおかしいんじゃないか、当然適切な指導がなされるべきじゃないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  45. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 今日本をめぐる金融体制というのは方向として自由化の方向にずっと流れているわけでございますので、なかなか政府の指導で投資をしろとも言いにくいし、また抑制も言いにくいわけで、それはそれぞれの内外金利差とそれに基づく資金の流出入によってそのウエートがどの辺に決まるかという、これはまさにもうそういうある意味では自由な資金の国際的な移動の中でおのずからレートが決まってくるわけでございますので、そのあたりに対して、こういう国際的な金融自由化の中で政府の行うべき指導というものもおのずから限定されてくるというふうに思います。そのあたりを勘案しながら、しかし先生の御指摘のような保険者や預金者や投資家の最低の保護をどの辺で考えるかということは、これは検討すべき課題であるというふうに私は考えております。
  46. 小野信一

    小野委員 高金利であり経済成長率が高い場合にはある程度ほうっておいても国民経済なり国民生活は豊かになっていくんだろうと思いますけれども、これからそのようなことが期待できないとすれば、非常にリスクが伴うとすれば、政府の指導、強制的な指導はできないにしても、発言、それらの配慮は必要なんだろう、私はこう思います。それらに対する十分な御指導をお願いしたいと思います。  それで、大臣が参りましたので最後に一つお尋ねしておきたいのは、先ほど私の前に質問した先生もありましたけれども、多国籍企業の問題。昭和五十七年に経済企画庁が大来先生をキャップといたしまして「二〇〇〇年の日本」という資料を発表いたしました。そのときに、日本は一九六〇年、一人当たりのGNPは千百七十五ドル、一九八〇年には一万六百ドルになるだろう、二〇〇〇年には二万一千二百ドルになるだろう、こう発表いたしました。その同じ年度でアメリカは、一九六〇年に七千百六十九ドル、一九八〇年に一万二千三百ドル。日本は一九八〇年にアメリカの八〇%、二〇〇〇年には完全にアメリカを超すだろう、こういう予想をしておりました。当時経済企画庁は、日本の将来はバラ色である、こういう非常に高い評価を含めまして発表したことを私は今でも覚えております。  ところが、今回のG5以降のドルの急激な値下がり、円の値上がりによって十五年早くアメリカよりも日本の一人当たりの所得が多くなってしまいました。一九六〇年という年はやはりアメリカが国民所得を発表した年ですけれども、この一人当たりのGNPを見まして、アメリカの経営者はヨーロッパに直ちに現地生産工場を建設するという方向に向かったと言われております。私は、この大来委員会の「二〇〇〇年の日本」、この結果を見た経営者はアメリカの経営者と同じ考え方を持たないとは限らないと思います。必ず持つだろうと思う。一九八〇年に日本が一万六百ドル、そのときにECその他の国は八千九百ドル、二〇〇〇年に二方一千二百ドルの日本、そのときにECその他の国は一万三千五百ドルですから、それより安い他の国々に現地生産に入るのは経営者としては当然だろう。そうしますと、先ほど前の質問の先生がおっしゃったように、国内に雇用問題が発生することは当然でございます。  特に、多国籍企業の販売総額を国民総生産と比較した場合に、一九八一年、エクソンが各国のGNPの国ごとに並べていきまして二十一位、スイス、チェコよりも上です、一社で。ロイヤル・ダッチ・シェル、これは八百二十三億四千万ドル、オーストラリアより上です。アメリカは今完全に生産が停滞しておる、こう言いますけれども、アメリカに本社を持つ多国籍企業の生産高を国内産GNPに加えますと一向に生産高は落ちておらない、こういう内容を含みます。日本も現在は海外で三・四%しか生産しておりませんけれども、この「二〇〇〇年の日本」を見ますと、二〇〇〇年には二〇%を生産するだろう。これはドルが暴落しないときですから、十五年早く来ることは当然予想される。そうなった場合に、日本経済に与える影響、多国籍企業の外地での現地生産の影響というものはまことに大きいものがある。これに対する策を早急に考えておかなければならない。これは抑制する方向に持っていくべきなのか、世界経済関係からして抑制できないものなのだ、こうお考えになるものなのか、多国籍企業に対するその辺の判断を企画庁にお尋ねいたします。
  47. 及川昭伍

    ○及川政府委員 御指摘のように、「二〇〇〇年の日本」の作業では、二〇〇〇年時点でアメリカの一人当たりGNP日本が超す、実は二〇〇〇年ではなくて二〇〇〇年の前に超すということを実質ベースで申し上げていたわけですが、円ドルレートの変更によってそれよりは大分早くドルベースでは来ているということでございます。その過程で海外直接投資が進んで海外生産が多くなると考えておったわけでありますが、現時点で考えても、おおむね二〇〇〇年時点で日本の製造業の二〇%程度の生産高が海外で生産されるというふうに考えております。二〇%程度を海外で生産するというレベルは、現在の西ドイツあるいはアメリカの水準であります。  現在、我が国は海外で製造業生産高の二、三%程度しか生産をいたさずに、国内で生産したものを非常に多く輸出するということで、経常収支の黒字が非常に大きな問題になっているわけであります。そういう意味で申しますと、国際的な水平分業を進め、国際経済と調和ある日本経済を実現するという意味からは、これから直接投資がさらに進むということについて、政府としては抑制すべきことではなくて、その環境条件を整備するというような方向で政策がとらるべきものであり、経済構造調整推進要綱でもそのような方向を決め、現在具体策について検討を進めているところであります。  ただ、GNPではなくて国内の製造業の生産高の二〇%と考えておりますが、そのように製造業の二〇%程度が海外で生産されるという状況になったときに国内の雇用にどのような影響を与えるかという点につきましては、産業構造審議会でも試算をしておりますし、私どもも試算をいたしておるわけですが、最大で百万人程度、通常の計算をいたしますと五、六十万人程度の雇用機会の喪失になると考えております。  そういうときに我が国の雇用の全体の状況がどうなるかということが次の問題でありますが、雇用の全体の状況といたしましては、現在不況という状況でありますが、年々就業者の数は日本国内で五十万ないし六十万人増加をいたしており、二〇〇〇年までには六百万人程度の就業者の増加、雇用機会の増加があると考えております。当然製造業の就業者はそう大きくふえないで、第三次産業中心とした高付加価値産業で就業者がふえると考えております。  問題なのは、そのような急激な構造変化に対応して雇用の転換がスムーズに進むことができるかどうかということであります。労働力の総需要と総供給という点からしますと、現在労働者が非常に余ってきている産業、職種、地域と労働力が非常に足りなくて困っておる職種、産業地域があるわけでございます。そのようなミスマッチをどのようにして調整していくかということが経済政策、雇用政策として非常に大事な局面に来ていると思います。経済構造調整の中での雇用調整はそういう意味で従来の枠を超えた総合的な雇用対策を検討していかなければならないと考えておりまして、直接投資による雇用機会の減ということも含めまして、他の雇用機会増とどのようにミスマッチ解消の視点から総合対策を講じていくかということが大事であると考えております。
  48. 小野信一

    小野委員 時間がありませんのでそれ以上の質問は差し控えますけれども、最後に大臣にお尋ねしたいことは、昨年の日本の貿易黒字四百九十七億ドル、ことしは一千億になるのではないか、こう予想されます。そうしますと、非常に金がだぶついておるということはわかります。株に反映いたしておりますから。しかし、先日の新聞を見ますと、希少金属、レアメタル、そういうものの備蓄が日本の場合わずか二カ月ぐらいしかない。アメリカの場合には三年分保有している。しかも、このレアメタルは、アフリカや南米の外れと言えば語弊がありますけれども日本から非常に遠いところにある。自動車にしましてもカメラにしましてもビデオにしましても、先端技術製品には絶対に必要なこのメタルの備蓄が非常に少ない。  世界からは貿易の黒字が多過ぎるのじゃないか、国内的にはそういう希少金属の備蓄が少ない、こう考えた場合に、だれでも考えるのは、もうけたお金日本経済安定のために、生産機構の安定のためにレアメタルを備蓄輸入したらどうだろうか、そういうことによって日本は貿易黒字をこのような形で処理しているという意思を世界に明らかにすることができるのじゃないか。もしそういうことであるならば、国債を発行してもいいのじゃないだろうか。備蓄国債を発行して、無税でもいい。もちろんこの国債は現物があるのですから一向に心配のない国債。赤字国債ではございませんから。そういう形で国内経済の安定と貿易黒字に対処していく方がいいのじゃないだろうかと思うのですけれども、いろいろ問題はあるにしても、最後に大臣の所見をお伺いいたしたい。
  49. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 経済の安定成長、そしていわゆる経済安全保障のために先生御指摘のようなレアメタルを備蓄すべきだという考え方は、例えば私の何代か前の長官である河本敏夫先生などもこういうことをいろいろな機会に言っていらっしゃるわけでございますので、大事な政策提言であるというふうに思います。  問題は、御指摘もございましたように、備蓄をどういう金でファイナンスするかということでございまして、金を借りてもではその金利分をだれが見るのかという問題からこれまで政府としてはなかなか踏み切れなかったわけでございますが、御指摘のような、そういったレアメタルを産出している産出国に対する経済援助という面もいろいろございましょうし、経済安定の保障をどうするかという問題もございます。幸い今金利が非常に安いときでございますから、それを活用しながら何らかのことは考えられないかというのが先生のお話の趣旨であるというふうに私は理解をいたしますので、こういう時期でございますから、ひとつ経済企画庁としてもいろいろな角度から検討させていただきたいと思います。
  50. 小野信一

    小野委員 質問を終わります。
  51. 青木正久

    ○青木委員長代理 この際、暫時休憩いたします。     午後零時一分休憩      ────◇─────     午後一時四十三分開議
  52. 河上民雄

    河上委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。奥野一雄君。
  53. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 経企庁の方は今国鉄改革の方に行っておられるようですから後に回しまして、最初に航空運賃の関係についてちょっとお尋ねをしておきたいと思います。  先日、商工委員会の方での経済企画庁長官の所信表明の中に、航空運賃の割引制度の拡充という項目が入っております。しかし、担当は運輸省の方でございましょうから運輸省の方にお尋ねをしておきたいと思うのですが、現在の割引運賃制度はいろいろたくさんあるわけでありますけれども、ここで述べている拡充ということになりますと、現行のものをさらに範囲を広げるとか新しいものを考えるとか、そういうことでなかろうかと思っているわけであります。どんなものについてお考えになっておるのか、最初にまずお尋ねをしておきたいと思います。
  54. 平野直樹

    ○平野説明員 お答えいたします。  割引運賃につきましては、既に前から行われているものがたくさんございますけれども、今回九月三十日までに切れるものが幾つかございますので、それが切れますときに改めて見直しをいたしまして、若干拡充をいたしまして実は十月一日から実施したところでございます。  その内容といたしましては、団体包括旅行割引運賃につきまして対象地域を拡大するということで、東北地方あるいは奄美諸島を追加しております。それから、あわせましてその割引率についても若干の拡充をいたしております。それから、新たな割引制度といたしまして、沖縄関係の路線につきまして団体往復割引運賃というような大型の団体につきましての新しい割引制度を導入しているということが主でございます。
  55. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 航空運賃は基本運賃と割引運賃とになっているようでございますけれども、そのうち基本運賃については路線原価あるいは総合原価ということになっているようですが、割引と基本運賃と二本立てにしている理由は何でしょう。
  56. 平野直樹

    ○平野説明員 基本運賃と申しますのは、経費を賄うに足りる収入を確保するための基本的な収入のベースになるものというふうに考えておりまして、これが中心になって事業運営をやっていくものと考えております。これに対しまして、割引と申しますのは、いろいろな要素がございます。社会政策的なものもございますけれども、営業割引的なものが中心でございまして、需要喚起をいたしましてさらに収入の拡大を図るといったようなねらいを持つものがかなりございます。そういった性格のものだというふうに考えております。
  57. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 全国的な航空機の利用状況というものを見てまいりますと、航空旅客の半分程度は今割引運賃を利用しているようでございます。そのほかに、各航空会社の方では大口のお客さん方に対しましては割引搭乗券というものを発行している。こういうようなことは業界では大体常識になっているわけです。今のお答えの中では、基本運賃というのはその経営を賄っていける中心になるものだと言われているわけでありますが、利用客の大体半分くらいが割引運賃を使っているということを考えますと、果たして基本運賃というのは何なんだという感じがするわけでございます。運輸省の方はこの基本運賃については総合原価方式というものをおとりになっておられるようでありまして、安全を第一として運営や路線確保を全体的に見て決めると言われているわけでありますけれども、一割か二割が割引運賃を利用するというのであれば話はわかりますが、今申し上げましたようにほぼ半分ぐらいの方が利用している、あるいは割引制度をさらに拡充するといったことになった場合には、基本運賃というのは一体何だという疑問が出てくるわけです。そういう点についてはどうお考えになっているのでしょうか。  今お答えにあったように、基本運賃というのはそういうものなんだということになると、本来ならそれでもってすべてを賄うということで、特例として割引が出てくる。しかし、今言ったように割引が半分以上ということは、基本運賃に食い込んでいっているということになるだろうと思うのですね。また、そうでなくて、割引ということをあらかじめ想定して基本運賃を決めているということになりますと、これは割引制度を利用できない人方に負担をかぶせているということになっていくだろうと思うのですよ。その辺のところはどうでしょう。
  58. 平野直樹

    ○平野説明員 お答えいたします。  若干沿革的なこともございまして、割引運賃というのは最近特に私どもかなり奨励していろいろな種類が出てきておるというようなこともございまして、確かに先生御指摘のように収入の構成その他を見ますとむしろ割引の方が多くなっておるというのは事実でございますけれども、やはり私どもは、基本運賃というものがベースにあって、それとの関係で割引運賃というものが決まってくるというふうに考えておりまして、先ほど若干舌足らずでございましたが、経営を賄うという点では、もちろん基本運賃だけではなくて、そういったいろいろな運賃をあわせましてトータルで経営を賄っていくというようなことでございますので、割引にはそれぞれ目的がございますので、それらをあわせて実施しているというのが実態でございます。
  59. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 私、今申し上げることの中身はそんなに詳しくありませんが、六月に運輸政策審議会から運輸大臣に答申をされた「今後の航空企業の運営体制の在り方について」、これでは基本運賃についてはどうなっていますか。
  60. 平野直樹

    ○平野説明員 お答えいたします。  六月に運輸政策審議会の答申をいただきましたが、この審議会では事業運営のあり方につきまして主として答申をいただいたのでございまして、実は運賃につきましては余りこの中では議論をされておりません。
  61. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 これはことしの八月二十七日だったですか、日経連の大槻会長が、もっと航空運賃を引き下げるように積極的に取り組むべきだ、こういう発言をされているわけでございます。現在、先ほど申し上げましたように航空機の利用というのは大衆化されてきているというような状況の中であって、そして最近の航空会社の方の状況というものを見てみましても、ここ十数年の間、航空機の利用というのは相当な伸びを示してきているわけです。これは御案内のとおりだと思うわけです。利用客は十五年間に国内線で二・八倍ふえている。国際線はもう四・八倍ふえているし、営業収入も、国内線では七倍、国際線では五・九倍ふえていっておるわけです。そして運輸省の方では、今航空運賃の中に加えられております一〇%の通行税を廃止しようか、こういう動きもあるように聞いておるわけですけれども、これと基本運賃の見直しという関係はどういうふうになるのでしょうか、それをちょっとお尋ねしておきます。
  62. 平野直樹

    ○平野説明員 お答えいたします。  先生御指摘のように、私ども、来年度の税制改正の要求の中に通行税の廃止ということを盛り込んでおります。これは、私ども昨年度からお願いをしておるところでございますけれども、従来の経緯はいろいろあろうかと思いますが、今や航空は国民の足というふうな形になっておるということで、この通行税を廃止していただきたいというお願いをしておるのでございますけれども、これが廃止になった後運賃がどういう形になるかということにつきましては、通行税の制度そのものがどういう形になるかということを前提にして考えませんと今の段階で具体的に申し上げるわけにはまいりませんが、私どもといたしましては、税金がなくなればそれに応じて利用者の負担も軽減されてしかるべきであろうというふうに考えております。
  63. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 通行税を廃止になったら、これは当然一般の利用者として考えればその分だけ料金は安くなる、そうあってほしいという今の御答弁でございますから、これはぜひそういうことでやってもらいたいと私は思うのです。私どもがちょっと耳にしております状況の中では、なかなかそうはいかないんではないかという動きも実はあるやに受け取れるわけです。今運輸省の航空の方では三大プロジェクトといわれているような事業をやろうとしている、あるいはやりかけているのもあるわけで、そっちの方に回されるんではないかというおそれもあるので、これはぜひやめてもらいたい。通行税が廃止ということになったら当然最低まず一割は航空運賃が安くなる、そういうふうにやっていただくようにこれはお願いをしたいと思う。  さっきの割引運賃との関係で、先ほどから私申し上げておりますように、半分ぐらいはもうとにかく割引で動いているわけですから、そうすれば今の航空運賃というものについても当然これは見直すべきだ。初めから基本運賃と割引運賃と二本建てになっているということに私はどうも疑問を持つのです。これは普通の商品なんかでも、価格が例えば決まっているというもの、その価格でたまに割引制度というのはありますよ。今西武だって優勝すればバーゲンセールやるんでしょうからね。しかし、それはたまたま行われる割引制度ということであって、今の航空運賃なんかの場合だったら、物によっては閑散期というんですかお客さんが余り乗らないような時期とかそういうときに割引をするということがありますけれども、ほぼ一年間を通して割引をやっている。これはいいですよ。しかし、割引やるんだったらみんなが利用できるような割引でないと、該当しないと割引できないわけですから。それから例えば実年の夫婦の割引というのがありますね。夫婦でもって八十八歳以上の年齢になった場合。これだって知らない人は知らないんですから。私も今まで知らないから夫婦たまに旅行したって割引制度を利用しないのだ。利用したら二割違うわけですから。そういうものだってあるわけですね。  だから、初めから割引というものを考えながら運賃を設定するんであれば、むしろ私は基本運賃というものを見直すべきだ、これに手をつけるべきだと思うのです。割引制度を拡充するということは、運賃体系とすればどうも本筋ではないという感じがするわけですよ。やはり本筋というのは基本運賃であるべきだ。その中で、お客さんを呼ぶためにいろいろなことをやらなければならないから、そういう意味で割引制度があるというならこれは話はわかるわけですけれども、基本運賃というものについての考え方、もう一つそれははっきりしたことをお聞きをしておきたいと思うのです。  それと関連をいたしまして、私は決して路線別の原価をとれということを主張する気はございません。路線別の原価をとっていけば乗客の少ないところは割高になるということになってまいりますからそういうことを申し上げる気はございませんけれども、特に私どもの方の北海道の場合には、運賃は計算をしてみると割高だ、こういうことになるわけです。これは試算したものを見ますと、北海道の千歳―東京間というのは国内ではナンバーワンでしょう。ナンバーワンの旅客を運んでいるわけですよ。それだけ運んでいるから本来なら路線別原価をとったら相当安くなるはずです。しかし、今それはとってないからあれですけれども東京―福岡とか東京―鹿児島とか、九州あたりに比べるとキロ当たりの単価は北海道は決して安くはない。僻地とか離島なんかはある程度考慮しているはずでございますけれども、そういうのであったら、遠隔地はもっと優遇してもらわないと困るんじゃないか。もし割引制度ということで仮にやっていくんだったら、北海道の遠隔地とかあるいは沖縄のようなところだとか、そういうものはやはり考慮をしてもらわなければいけないと思うし、その前に本来なら基本運賃を下げるべきではないか。だから、先ほど言ったようなそういう基本運賃の考え方と、今の北海道が非常に割高になっているということについてひとつお尋ねをしておきます。
  64. 平野直樹

    ○平野説明員 まず初めの基本運賃の問題につきましてお答え申し上げます。  私ども、先ほど申し上げましたように、割引運賃というものが需要を掘り起こす効果も持っておるということで、そういったことによって企業の経営が改善されるということであれば、その分ほかの利用者の方に便益が及ぶという意味でこれを奨励している面もございます。おっしゃるように、運賃を下げるという意味ではもちろん基本運賃がベースでございますが、これにつきましては、確かに昨今の原油の値下がりによりまして経費が節減されている部分もございますけれども、航空運賃につきましては五十七年以来運賃を据え置いておりますし、それから昨年の事故以来、これは企業の特殊な事情でございますけれども、非常に需要が伸び悩んでいるということもございまして、ただいまは経営が非常に厳しい状況でございまして、現段階におきまして基本運賃の値下げということはなかなか困難な状況にございます。ただ、今後さらに経営の状況につきまして見守っていきたいというふうに考えておる次第でございます。  それから、二点目の路線別の賃率の格差でございますけれども、先生御指摘のように、確かに北の方、特に北海道につきましてはほかと比べて割高になっているのは事実でござます。これはいろいろな経緯がございまして、南の方は特に例えば沖縄が復帰するときの事情でございますとか、あるいは北海道につきましては飛行経路が変わったというようないろいろな事情があるわけでございますけれども、割高であることも事実でございます。私どもといたしましては、むしろできるだけ個別原価を反映していきたいというような考え方はございますが、やはり現実の運賃というものをある程度ベースにして、余り激変をしないような形で手直しをしていく必要はあるのではないかというふうに考えておる次第でございますので、今後の基本運賃の改定の時期をとらえまして順次改善をしてまいりたい、このように考えております。
  65. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 今の基本運賃は五十七年に設定されたままで据え置かれている。その据え置かれるという場合、二つあると思うのです。一つは、例えば経営が非常に苦しいけれども、我慢をして据え置くというのと、もうかっているのだけれども下げないで据え置くというのと、二色これはあると思うのですよ。だから、今の経営の状況というのは、日航のああいう事故があってから日航の方はなかなか大変だという話は聞いておりますけれども、先ほど申し上げましたように、総体的に利用客が相当ふえ、営業収入も国内では七倍、国際では五・九倍というふうにふえていっているわけで、しかも今の円高だとかということもあるはずでございますので、これはぜひそういう面では見直しをしてもらいたい。  しかも、先ほど言ったように、割引制度というのはいいように聞こえるけれども、もう利用客の半数くらいの人が割引を使うなどという時代でありますというと、これはオール割引というような感じになってしまうのではないか。それだったらもうオール割引にした方がむしろいいということですから、それなら基本運賃を下げればそういう感じになるわけですし、そういう面ひとつ将来御検討いただきたいと思います。  あとちょっと簡単にジェット料金の関係についてお尋ねをしますが、このジェット料金、おたくの方からいただいた資料の特別着陸料というのがジェット料をいただいて空港周辺対策や何かに使われている金ですか。
  66. 平野直樹

    ○平野説明員 そのとおりでございます。
  67. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 そうすると、どうなんでしょう。騒音対策というのはある一定のところまでいけば、騒音対策事業というのはまあ多少は範囲を拡大しているということはありますよ、今まで例えば空港周辺から一キロであったものが一・五キロにするとかということは承知をしておりますけれども、しかしそれにしたって一定のところへいったらこれは終わるわけでしょう。新しい飛行場でもできない限り、あるいはプロペラ機のところがジェット機にならない限りにおいては、一定のところへいったらこれは仕事は終わりということになるんじゃないかと思うのですが、それはどうなんですか。
  68. 平野直樹

    ○平野説明員 先生おっしゃるとおり、一つ考え方に従って事業をやっていった場合に、その範囲内で終わるものであればもちろん終わるわけでございますが、この問題というのはなかなか根が深うございまして、必ずしもここで、このレベルで済むということでもないようでございますので、事業費というのがなかなか縮小してこないという面があろうかと思います。
  69. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 私は全国の飛行場に行っているわけではありませんから全国の飛行場の状況はわかりませんが、私のところの函館空港というのは町の真ん中でございます。だから、これはある程度、相当範囲内まで、一つの地点が終わったらまた少しふやすとかなんとかということはしなければならない。しかし、あと大半はまず都心部から相当離れている。もっとも、離れておったって、ある程度低空で来るわけですから、例えば千歳空港にしても本州方面から行く場合には苫小牧なら苫小牧あたりから室蘭にかけて低空になっていくわけですから、そこまでやるということになったらこれは大変だということになるけれども、そこまでは今やっていないはずだと思うのです。  これを見ますというと、逆に収入より支出の方が、支払いというのですか、これが年々ふえてきておりますね。事業を拡大するというのはいいことだと私は思うのですよ。いいことだと思います。しかし、中身は問題ありますよ。これは中身はきょうはそっちが主眼でありませんからやりませんけれども、これは函館でも事件が起きておったということは御案内だと思うのだけれども、不正利用されているような感じのものだってあるわけです。それは本質が違いますからきょうは触れませんけれども。しかし、例えばある程度の事業ということで終われば、ジェット料金というのは将来どうするのですか。取らないということになるのですか。そのために取っているものだから、本来なら要らないということになるのでないか。あるいはジェット料金を安くするとか、それはどういうふうになるのですか。
  70. 平野直樹

    ○平野説明員 ただいまのジェット料金とそれによる収入と費用の関係は、先生御案内のとおり、ここ二年ほどは収入の方がむしろ上回っておるという状況でございますけれども、それまではかなりの期間収入の方が低いというような状況が続いておったわけでございまして、今後騒音対策がどんな形になるのかというのは、今の段階では、先ほども申しましたように、ちょっと予見ができない状況にございますので、これが仮に非常に縮小してくれば、先生御指摘のようにジェット料金についても考え直すという必要があろうと思いますけれども、今の状況ではジェット料金についてすぐどうこうということにはちょっとならないのではないかというふうに考えております。
  71. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 いや、今どうのこうのということでなくて、これは仮定の話ということであれば仮定の話では答えられないというのが何かよくあるんだそうだけれども一般的に考えてみて、ジェット料金というのは例えばそういうもののために徴収しているんだ、利用者に負担をしてもらっているんだ、だからそれが例えばその事業がもう必要がなくなってきたとかということになってきた場合には、それじゃ常識的にはジェット料金というものは要らなくなるだろう、あるいは幾らか必要としても今のように九百円取らなくたって済むということになるのではないかと考えるのは一般的でないかと思うのですけれども、将来そういうふうになった場合にはどうなるのですかと、それを今聞いているわけですよ。今どうするこうするということはちょっとできないと思うのですが、それはどうですか。やはりなくなりますか。
  72. 平野直樹

    ○平野説明員 もちろん、将来騒音対策状況が変わってまいりますれば、その段階で当然検討してしかるべきだろう、こういうふうに考えております。
  73. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 時間の配分の関係がありますから、またいつかの機会にお願いしたいと思いますから、どうぞひとつお引き取りいただきたいと思います。  経企庁長官もおいでになりましたし、次に物価の関係でこれは簡単に何点か聞いておきたいと思います。ただ、物価問題、こう言いましても、円高関係してくる部分なんかございましてどうもきちって分けられない部分があるわけですが、最初に、これはお答えになるのはどちらの方になるのか、総務庁の方でも結構でございますし、あるいは経済企画庁の方でも結構なんですが、ごく簡単にお尋ねします。  消費者物価指数の基準年次が今度五十五年が六十年に改正になります。その改正の趣旨というものを見てまいりますと、家計の消費構造を正確に反映させるために、こうなっているわけです。私は、家計の消費構造を正確に反映させる場合に、指定品目を追加したり要らなくなったものを削るということはわかるのですね。消費構造を正確に反映させるという場合に。しかし、基準年次を五十五年から六十年に改正をしないということが正確に反映させるということにどんな邪魔になるのかということがわからないわけなんですよ。そこのところだけちょっと説明願いたいと思うのです。
  74. 海野恒男

    ○海野政府委員 お答えいたします。  あらゆる統計がそうでございますけれども、大体五年ないし十年の間隔を持って基準年次を変えていくわけでございますけれども消費構造が大きく変わるためにその結果として個々の品目の持つ重要性、ウエートが大きく変わるということがございまして、ある場合には特定の品目が非常に大きなウエートを占める場合もあるし、ある場合にはその商品がほとんど意味を持たなくなってウエートが非常に小さくなってしまう。そういう場合には、そういったものを外して、五十五年の時点ではほとんど使われなかったけれども最近時点では非常によく使われるようなもの、そういったものをどうしても新たに入れ込んで、最近時点の一定の区切りのいい時点でのいわば消費構造を十分反映させた形で消費者物価指数というのをつくらないと実感に合わなくなってくる。そういう意味で、それぞれ五年ごとに基準年次を変えて、そして新しい家計調査によって、全国の平均的な世帯がどんなものを使っているか、どんなものを毎日の生活に使っているか、こういうことを調査した上で、先ほど申しましたように、ほとんど使わなくなったものは外し、そして最近時点で生活の中に入ってくるものについてはそれを入れていくということをやっていかないと、実際の生活実感とそれから指数との間に乖離が出てくる、こういうことで五年ごとに変えるということにしておるわけでございます。
  75. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 今言われたものは私もわかるのですよ。わかるということは、五十五年当時余り大きなウエートでなかったものが今はそのウエートが高くなってきたとか、そのとき余り使われなかったものが今出てきたとか、この品物はもう今余り使われていないから外してもいいとか、これはわかる。それは品目の変更であり、またウエートのとり方の変更ということはわかるのだけれども、基準年次を五十五年から六十年にするということは、五十五年をいわば一〇〇として計算してきたわけでしょう。そして毎年毎年物価はどう変動したかということを出すわけですね。極端に例えばインフレだとかデフレが激しくなっている年次の場合であれば、それはもうこの年次で比較したってとてもじゃないが今に当てはまらぬよということはわかるわけです。しかし、五十五年あたりからだったらそんなに大きな変動をしてないと思うのです。そのときに基準年次というものをどうして六十年に持ってこなければならないのか。品目や何かいじるということは、先ほど私も言ったし、今お答えにもあったから、これはわかる。しかし、年次は、今度は六十年を一〇〇にしてこれからやっていくわけでしょう。その年次を直さなければならないという理由が今わからぬということなんです。
  76. 海野恒男

    ○海野政府委員 総務庁の方の担当課長いらっしゃると思いますので、正確にはそちらの方からお答えいただいた方がいいかと思います。
  77. 伊藤彰彦

    ○伊藤説明員 御説明いたします。  先生のおっしゃいますように、確かに、一〇〇とする年をどうして六十年にしなければいけないか、こういうことでございます。これは単なる算術的な問題でございまして、物価の伸び率自体は一〇〇にする年を変えることによって変わることはありませんので、その辺は問題はないということでございます。それで各国の物価指数のつくり方を見ましても、やはりウエートを変え品目を変えたときにその数値を一〇〇としているのが慣用になっておりまして、しかし、そのことが物価指数を分析する意味で支障になるというようなことはないと思っております。
  78. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 私は別に支障があるとかないとか言っているのではなくて、そういう仕組みでやるというのならそれはそれなりにいいのですよ。ただ、理由が、いや、こんな理由があって指数を一〇〇にする基準年次が五十五年ではまずいから六十年に変えるんだという、何かそんなような理由があればなるほどわかる、こういう気がするんだけれども、五十五年を一〇〇にして計算したからといってそんなに不都合でもないようだ。いや、またそれは六十年を基準にしてやったってそんな不都合はない、こう思うわけですが、どうもその辺のことがわからなくて、しかも物価指数というものを、五年くらいでこの一〇〇というものを変えていくこと自体いいのかどうかという疑問は残りますけれども、いいです、それはそれ以上深くやる気はございません。はっきりわからないということだけわかったのですからいいのですけれどもね。  次に、長官、これは商工委員会の際にも若干の議論はあったところなんですけれども、これからの卸売物価なり消費者物価というものはどう動いていくんだろう。それは二十一世紀までなんというのはとても展望できないと思いますけれども、ここ何年かの将来でもどういうふうに動いていくのか、私はいろいろなものを見させていただいて自分自身でなかなか見通しをつけられない点があるわけでございます。例えばこれは経企庁の方のいろいろな判断なんかが出されているわけですけれども、それを見たり、あるいはこの前商工委員会でもちょっと議論になりました電力料金見通し関係、これは輸入原油価格がどうなるのかちょっとわからぬとか、円高がどうなっていくのかわからぬとか、いろいろそういうようなものを見させていただいて、さて考えてみると一体これからの物価というものはどういうふうになっていくのかわからない、こういう面があるものですから、その辺のところをちょっと見通しをお聞かせいただきたい。
  79. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 先生の御指摘、これからの物価はどうなるのかという見通し、なかなか難しい問題がございますが、最近のデータを見ますと、御案内のように円高、さらに石油価格の低落ということを反映して、卸売物価はここ数カ月は対前年度一割以上下がったわけでございますし、これは相当輸入品価格、それから輸出品価格、まあ輸入品価格は素材価格を反映しておるわけですが、輸出品価格というものも反映しての数字でございますし、また消費者物価はここ数カ月は大体同水準、〇・一、二%上ったか上らないかぐらいの数字でございますが、将来どうなるかといいますと、まずお話ございましたように、円レートがどうなるかとか、それから国際的な素材価格がどうなるかという問題もございますし、片一方で国内的な生産性がどうなるか、生産性の向上というものは当然物価を下げる要因でございますし、それと見合いで労賃がどうなっていくのか、需要供給の関係というものも物価を決める大きな問題であります。私は、この日本においては、少なくとも生産能力を考えますと、ずっとこれまで新規投資をしてきているわけでありますから、その供給容量、余力から考えての需給のアンバランスからの物価上昇ということは、そう先のことは先のことでわかりませんが、そうなるのかな、こういうことでございます。  そういう点じゃ供給サイドからの物価を押し上げるということはない、むしろどちらかと言えば抑えぎみであり、あとは今度コスト要因としての外国為替のレート、そして国際的な素材の値段、さらには労賃とかそういったものが今後どうなるかということで、こういったものの相互の関係の中で物価が決まってくる、こういうことだと思いますけれども、先のことはともかくとして、当面は私は卸売物価そして消費者物価、安定的に推移するものと考えていいのじゃないか、かように考えております。
  80. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 これはもちろん今経済の動きだとか、物価はもちろんその経済の動きにも大いに影響あるわけですが、私も非常に難しいというふうに思っているのですね。  せんだって商工委員会の中で水田委員の方からでしたか、なぜ電力料金についてさらにやらないのだ、これは円高差益関係で言われておったわけですけれども、例えば、これは円高問題で本当は次の方の質問に入っているものなのですけれども、これは通産省ですけれども、通産省の方では本格的改定は見送らざるを得ないという判断を固めた、その判断の基準になったのは、円レートは何とか落ちつくと思うけれども、原油価格は不安定な状態が続く見込みだ、そういうことであるから、これから電力料金なんかの円高差益還元について、料金改定はちょっと今すぐできない、こんなようなことを言っておられるわけですね。  それから経企庁の方で出されているものの中では、物価が今まで下がりぎみだったけれども、これからちょっと横ばいになるのじゃないか、こういう見通しを出しているわけですね。卸売物価の方は八月にはたしか前年同期比では一一・二%も下がっておる。これは戦後最大の幅で下がった、こうなっておるわけです。しかし、九月上旬になるとこれは横ばいになってきて、それから消費者物価の方は九月は御案内のとおり東京都区部では〇・五%上がった、こういう状況になっている。経企庁の判断の中では、今後円高が急激に進む可能性は小さい。円高はほぼ落ちついてそんなに大きな変動はないだろう。それから国際商品の相場が反騰に転じてきている。それで輸入物価は今後は余り下がらないだろう、こういう見通しを経企庁の方では立てておられる。それから、今長官が言われましたように、生産が減少するということになって賃金コストが上昇する、そういうようなことからむしろ物価を押し上げる要因が出てきているのでないか。全体として見ると、物価はやや強含みになるという判断を経企庁の方ではされている。そういうのがあるわけですね。  そういうものと、これはちょっと円高の方と区別するのが非常に難しくて今困っているわけですけれども、そういうような見通しが一方にあって、そして一方においては円高の差益の還元、これは経企庁の方の調査によりましても差益額というのは十兆四千億も実はあるんだ、そのうち還元されたのは四兆五千億だ、こういう調査も経企庁がされて試算されているわけですね。これなんかと比べて考えていくと、これはどうなっていくんだ。  だから、本来でありますと、これはもっと物価を下げる、それから七月二十三日の経企庁の「物価レポート」によりますと、理論的には――理論的にというのか、理論値とすれば物価はもっと下がっていなければならないはずだというようなことを言われているわけですね。だから、そんなのを総合的に考えてみますと、それはむしろやりようによっては、例えば円高差益、先ほど言ったように十兆何がしかの差益があるんだけれども、半分くらいよりまだ還元されていない。だから、例えばそういう還元などというものをもっと積極的にやるとかいうようなことを仮にやれば物価はもっと下がるのではないのかなという感じがするわけですね。  しかし、先ほど言いましたように、経企庁の一方の判断では、物価は強含みの状況にあるという判断もされている。そんなようなことなんかもあるものですから、一体物価というものはこれからどうなっていくのかが我々としては的確につかめないものですから、もしできたらその辺のところをもう少しお答えをいただけたらなと思うのです。
  81. 海野恒男

    ○海野政府委員 まず、事実関係について申し上げたいと思いますが、私どもが物価を担当する局として正式に今御指摘のような意見を持っているということはございません。よその局でやったかもしれませんけれども、私どもは少なくとも先ほど大臣が申し上げたとおりの考え方を持っております。  ただ、こういうことがあるということは認めなければいけないと思いますのは、先ほど大臣も御指摘になりましたように、円レートの問題それから石油価格の問題、その他の一次産品の動向というものを考えた場合に、今までのような勢いで円レートがさらに円高に進み、あるいは原油価格がさらに下がっていくといったような状況ではないということだけは確かだと思うのです。そういう意味でこういった海外からのインパクトというものはこれまでのような形でさらにどんどん進んでいくということではないので、そのインパクトは次第に消えてくるだろう。したがって、先ほど大臣も申し上げましたように、卸売物価はこの九月でいきますと一一・八%という前年に比べて絶対水準で非常に高いといいますか、大きな落ち込みをしているわけですけれども、こういった落ち込みがさらに一一・八が一二、一三というふうにどんどん落ちていくということではなくて、前年に比べては水準としては一一%あるいは一〇%前後の差でもってといいますか下落率でもってずっとしばらく推移する。水準は、したがって、前年に比べてかなりの長期にわたってといいますか、ここ当分の間、円高の、あるいは原油価格のインパクトが続く限りはずっとかなりの下落率で進むであろうということであって、下落率がさらにどんどん進んでいくという状況ではない。そういう意味では下げどまりという意味が、あるいは逆に上がっていくというようなことは申し上げておりませんけれども、そういう意味では下落率の下げどまりというのはあるのかもしれない、水準としてはそれ以上もう下がってこないということはあるかもしれないのですけれども、前年に比べれば相当大きな下落率で推移するということだろうと思うのです。  問題は、この卸売物価の大きな下落の見通し、それから消費者物価がそれに関して比較的理論値よりも少なくしか、本来下がるべき姿から比べると相対的に下落率が少ない、あるいは差益の還元が少ない、こういう御指摘だろうと思うのですけれども一つには、卸売物価と消費者物価に大きな技術的な、先ほど大臣もちょっと触れられておりましたように、技術的に消費者物価は卸売物価ほど下がらないという要因があるのですけれども、それだけでなくて、素材からだんだん加工して最終財として消費者物価が出てくるということで時間もかかるという面もあるので、我々の分析では大体円高なり原油価格の低下という海外からのインパクトが水際から上陸して最終需要財にまで至る期間というのは平均的に見て大体七カ月ぐらいかかると物価レポートにも指摘したわけです。  そういう意味では、為替レートが大きく下がり始めたのは去年の九月で、ちょうど一年たちますけれども、実際に百六十円とか五十円になってきたのはことしの春以降でございますし、原油価格が大幅に下がってきたのもこの春以降だということでありますので、そういったインパクトは消費者物価にはさらに今後出てくる。したがって、これでもう上がるということではなくて、そのインパクトはさらに続いてきている。そしてまだパイプラインの中に詰まっている。出てきているのは今御指摘のように消費者物価が前年に比べて〇・六%程度の上昇率にとどまっているけれども、さらにパイプから流れてくる力は依然として残っているので、しばらくは消費者物価も安定的ないしはさらに差益が還元された形で、つまり消費者物価がさらに安定していく方向でしばらく続くという見通しを私ども持っているということです。
  82. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 時間があれば本当はもうちょっと私の考えなんかも含めて意見の交換をしたいところなんですが、時間が少し経過しておりますから、これはまたいずれ機会が幾らでもございます。商工委員会でもまたやらせていただけるかもしれません。  次にちょっとお尋ねをしておきたいのは、これは公取委の方になるのだそうでございますけれども、オープン価格商品の関係で、きのういろいろ担当者の方々ともお話をしたのであります。これは北海道の業者団体の方々が具体的に調査をされたところが、オープン価格商品、違反すると言えば言葉があれかもしれませんけれども、家電製品公正取引協議会北海道支部が実際にチラシなんかをチェックしたところが、メーカー希望価格などの価格表示ができないオープン価格商品が堂々と二重価格をつけて掲載されている、あるいはメーカー名や機種の型名を明記していないものが次々と見つかったということで、調査内容についてもある程度お話をしてございますが、業界業界でそれぞれ指導をされているし、みずから一生懸命やっておられるわけです。きのうは、消費者の方にはどうするんだ、我々はチラシを見たってこれがオープン価格商品であるのかそうでないのかなんて大体判断がつかないというふうに申し上げたのですが、いや、それはなかなか難しゅうございますと言っております。  経企庁の方で出された物価レポートの中にも、例えばオープン価格の問題について「小売段階の価格競争が活発になるため、消費者にとってメリットがあると考えられます。しかし、消費者が商品の品質や性能などを的確に判断するための商品知識やオープン価格制度に関する知識や情報などを持たなければ、安心して買い物ができないというデメリットも考えられます。」こう書いてあるわけですね。こういう心配があるのであれば、当然消費者に対してそういうような啓蒙なんかをやらなければならないのではないかと私は思うのですが、それについてちょっと意見を聞かせていただきたいと思います。
  83. 柴田章平

    ○柴田政府委員 先生から今お話のございました二重価格表示の問題でございますが、希望小売価格がないいわゆるオープン価格商品というふうに私ども称しているわけでございますけれども、この場合、任意の価格を希望小売価格として、それから幾ら安くなっているということになったのでは、これはまた逆に消費者にとって非常に不適切な情報で、つまり、希望小売価格という一つの客観的なものがあればよろしいわけですけれども、そういうものがない場合に勝手にそういうものを設定されては消費者を惑わすだけであろうと私ども考えておりまして、これはやはり景品表示法の第四条第二号に違反するということになっているわけでございます。実施機関としての公正取引協議会においてもやはりこの問題をきちっとやらせようということでかねがね取り組んできてはおりますけれども、先生がおっしゃったように、消費者がこの商品についてオープン価格商品であるかどうかということがわかっていないというのは極めて不親切ではないかというのが御質問の趣旨であろうかと思います。  ただ、御承知のように、家電製品と申しましても、例えばテレビをとりましても、サイズあり、発売年月あり、いろいろな商品がございまして、家電製品およそ数百というオーダーになっているのだろうと思います。したがって、そういうもの一つ一つについて一般消費者の方に広く、これは希望小売価格があります、これはオープン価格商品でありますということを一般的にうまくお教えする手段というのは、私ども残念ながらなかなか見出しがたいと思っておりまして、どういうことをやっているかと申しますと、一つは、公正取引協議会にお問い合わせいただければその当該関心品目がオープン価格商品であるかということはわかるようになっておりますし、それからメーカーにお問い合わせいただいてもそれはわかるわけでございます。もっと手短に申し上げれば小売屋さんに行ってもわかるわけでありますけれども、今先生からお話がございましたようになかなか小売屋さんまで徹底していないのじゃないかという御批判もございますから、もしそういう御心配があって、自分の買いたい商品、特に御関心のあるものについては、やはりそういう対応をしていただくより私どもいたし方ないのじゃないか。一人一人の消費者と申しますか、私どもがみんな電話帳のような商品カタログを持っているわけではありませんので、なかなかそういうことを一般の方々に申し上げるのは実務的に非常に難しいのだろう、私はこういうふうに思っております。
  84. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 この点については私も大変難しいだろうと思うのです。買う方が気をつければ一番いいということになる。私なんかだったら全然わからないからそういうものでもすぐ買ってしまうのだろうと思います。今のところは余り問題になっていませんからそんな大きな社会問題にまだなっていかないと思うのですけれども皆さんの方でこれは適切な指導をしてくださいと言われたって消費者まではなかなか大変ですから、やはり業者の方々が良心的にやってもらえば問題がないことになるわけなので、そちらの方に対してはぜひ御指導などをいただきたいと思います。  次に、灯油価格の関係についてちょっとお尋ねをしておきます。  灯油価格はことしは大分値下がりをしてきているようでございます。新聞の報道なんかを見ましても大分安くなってきている。北海道は今一リットル四十五円で生協などが契約しているようです。ただ、心配されますのは、けさのテレビでしたか、けさだったかゆうべおそくだったか、忙しいものですからどっちだか忘れてしまったのですけれども東京で若干問題を起こしたようですね。東京都の通産局の方はもう手を打たれたのか、業者の方はそんなことをした覚えはないと言っているようですから今のところは水かけ論争になっているようですが、余り安売りをしたのではそこの業者に灯油はやらないよという、何か東京の生協とメーカーの方でちょっとトラブルがあったようでございます。その事実はあるいは御承知かと思うのですが、これは通産の方になるのでしょうね。そういうことのないようにしてもらわなければならないと思うのですが、もしその実態をつかんでおったらちょっと教えてもらいたいと思いますし、これも先行きの見通しの問題と絡んでくるものですからなかなか的確には難しいのですけれども、灯油価格はこれからどうなっていくのか。  けさの新聞あたり見ましても、例えば原油なら原油の方はほぼ落ちついているようだ。これは北海原油の方ですか、一時ちょっと上がったけれども、また前の状態に戻ったという記事が出ておりまして、スポットなんかの場合ほぼ落ちついた感じになっているのではないかと思われるのですね。OPECなどでは減産とかということを話し合いをしたようだけれども、原油価格はそう上がらないのではないかという印象を受けたわけなんです。そういう状況円高という状況、これはある程度落ちついてきていますけれども、一体どのくらいのときのものが今の価格になっているのかということもあります。そういう面も含めて、ことしの灯油価格の見通しはどうなんでしょう。
  85. 海野恒男

    ○海野政府委員 通産省の方がおいでになっていないようでございますので、私の方からお答え申し上げますが、灯油価格の動向は、御存じのように昨年の正月あたりからずっと下がる傾向にございまして、例えば昨年の五月は十八リットル缶一缶で大体千五百二円だったと思いますが、これがことしの五月には千二百十円ということで約三百円下がっておりますので、私どもは、市場メカニズムがある程度働いているという見方をしております。そして、原油価格の動向を的確に反映していると思っております。  これが今後どうなるかという御質問でございますけれども、非常に難しい問題でございます。特に、原油価格の動向を予測することは極めて難しいわけで、日本の場合には在庫評価の仕方が後入れ後出し法といいますか、例えば西ドイツのような場合には、後で入ったものが先に出ていくという後入れ先出し法でありますので、ごく最近時点の価格がすぐに反映されるような在庫評価をしますけれども日本の場合にはむしろ平均法という形で、安く入ってきてもこれまで在庫として積み込んでいたものの平均価格で出していくということでありますので、原油価格が非常に下がった効果が直ちに西ドイツのように出てこないかわりに、仮に上がったとしてもその分だけ上がり方はおくれて出てくる。  そういうふうに在庫評価の仕方が大分違いまして、下がるときにはそれほど目に見えて下がらなくても、また逆に上がるときに驚くほど上がってこないというメリットがございますので、これまでの経過を見るところでは、少なくともこの冬大きく問題になるほど灯油価格が急騰するようなことはないだろうと私どもは思っております。むしろこれまでの価格動向を見る限りでは、市場メカニズムといいますか競争が割合よく働いておりまして、原油価格の動向がよく反映されているということで、それほど心配する必要はないというふうに思っております。
  86. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 私も、そんなに心配はしない。むしろ、もうちょっとぐらい下がるのではないかなと思っているのだけれども、先ほど言いましたようにけさのテレビか何かで、東京で何かそんな安い値段で売るのだったら――東京は十八リットル六百二十円ぐらいだと聞きました、この新聞ではそこまでいってなかったかな、それでメーカーというか業界の方では、そんな安く売るのだったら品物は入れないよというようなことがあってトラブルが起きているんだ、そんな話をちらっと聞いたのです。  だから、例えば見通しとして、円のレートは大体百五十円台ぐらいでもって落ちつく、それから海外の原油価格もそんなに大きな変動はないだろうということになると、最低でも今の価格である程度維持していけるという見通しが立つということだと思うのですね。そういう見通しなのに、これより安く売ってはいけないのだ――東京は随分安い。だからそんなことのないように、これは所管は通産になるのじゃないかと思いますけれども、物価という面を扱う官庁としてはそういう点も御留意をいただきたい、こういう意味で申し上げたわけです。  時間がなくなりましたので少し急ぎまして……。  円高差益がなぜ還元をされないのかという議論を随分やってきているわけですが、通産省の調査というのは、いや八割くらい円高差益の還元が進んでいる。しかし、これはなかなか消費者の実感にはぴんとこない。これはブランド商品というものが余り下がっていないことなどもあると思うのですが、これは通産の方になるのでしょうか。通産はおいでになってなかったのですかな。並行輸入の方の関係だけですね。  この前商工委員会では、なぜ価格が下がらないのかということについて経企庁長官もお答えになったように思っているのです。西ドイツの例なんか出されて言われておったのを記憶しているわけで、そういう部面は経企庁の方からお答えいただいても結構なわけなんですが、通産省の調べた実態というのは、先ほど言ったように、ブランド商品の関係とかそういうものについては余り言ってないのじゃないかというような感じがするのです。本来そこのところをもう少し詳しくやりたいのですが、時間が迫ってきていますので……。  一方においては並行輸入ということが行われて、これは相当小売価格が下がっているわけですね。ゴルフクラブなんかだったら三万二千円まで、小売価格がむしろ輸入価格以上に下がっているという実態もある。そうすると輸入総代理店という制度、今そういうものがあるが、そっちの方は余り下がらない。今の円高でも変わらないことになるわけですから、そうすると円安のときもそういう状況でやってきておって、今円高になってもその部分が小売価格に反映してこないということは一体どういうことなんだ、そこに何かがあるのではないかと思うのが一般常識でないかと思うのですね、円安のときだってずっとそれでやってきているわけですから。そうしたら、円安のときに損をしながらやってきたのかということになると、損をしてやってきたから、今円高でプラスになった分はそっちの損失の方の穴を埋めるというなら話はわかります。しかし、そんなことはないと思うのですね。そうすれば、今の円高という問題については取り過ぎているということに当然なるわけなんですから、そういう面は一つは輸入行政という問題、一つは物価対策という問題で、そういうものについての指導だってやっていかなければいけないのじゃないか、こう思うわけです。  そういう点と、あと並行輸入ということをやって、こっちの方は非常に小売価格の方に反映していっている。それは消費者から見れば非常にいいということになるものですから、そういうことについて実態はどういうふうに把握しておられますか、あるいはそれに対する政府の見解はどうなんですかという点をお聞きしたいと思う。
  87. 柴崎和典

    ○柴崎説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生の並行輸入は一体どのくらい入っているのかという、その辺の正確な量的把握というのは大変難しいわけでございますけれども、各種の情報を総合いたしましてもそうですけれども、並行輸入を取り巻く経済的な環境と申しますか、円高の進行あるいは御指摘のような総代理店ルートでの流通価格との価格差、こういう点から並行輸入を取り巻く環境はむしろ好転しておるということで相当伸びつつある、私どもはかように認識しております。  それから、並行輸入に対するスタンスという問題でございますけれども、御指摘のような輸入総代理店制度というものが片やありまして、この輸入総代理店制度は、それなりに市場開拓の効果あるいはアフターサービス体制の整備、あるいは輸入総代理店の持っている販売網の活用等を通じまして安定的な輸入品の供給体制を確保できるというメリットも、私どもは評価しなければいけないと思いますけれども他方、御指摘のようにいろんな流通チャネルが複数存在しまして、その間で競争が促進される、それによって輸入の拡大あるいは円高メリットの還元、こういうような点がより強化される、これも大変好ましいことではなかろうか、かように評価をいたしておるわけでございます。
  88. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 この並行輸入の関係では、これは本来どっちが主体なのかということがあると思うのですね。それは輸入の総代理店というようなものがあって、そっちの方を通してくるのが本来の道なのか、あるいはそうではなくて、いや、こういうものがあってもいいんだ、これは個人輸入も現在現実にやっているわけですから。その本当の道筋というのは一体何が正しいのかということがはっきりしてきますと、それはそれなりに指導ということだとかいろいろな対策がとれるのじゃないかと思うのです。その辺のところはもうちょっと詳しくお聞きをしたかったのですが、時間が参りました。また、本来個人輸入の関係と、それから公共料金経済企画庁の事務次官が座長さんですか、何かでもってやっておられる、公共料金の検討をされておるのだが、運輸省では公共料金については円高差益は還元をしないという態度をお決めになった。そのことについても見解を聞きたかったのですが、時間になりましたので後日に譲らしていただきまして、きょうは終わりたいと思います。  大変どうもありがとうございます。
  89. 河上民雄

    河上委員長 次に、草川昭三君。
  90. 草川昭三

    草川委員 公明党・国民会議草川昭三でございます。  まず最初に、経済成長率のことについてお伺いをしたいと思います。  御存じのとおり、私ども経済成長率見通しということは非常に大切だ、こう思っております。ことしの成長率は、ことしの一月下旬に閣議決定で決められた、こういうことですね。四%の見通しをされたわけですが、この前提はたしか二百四円の対ドルレートということではなかったかと思います。この見通しの修正について、私は、ことしの春の当委員会でも議論をしたことがあるわけでございますが、特に最近の円高状況、こういう状況になってまいりますと、閣議の中でもいろんな意見があったようでございますし、長官自身も与党の勉強会で、軽井沢でいろいろと御発言をなすっておみえになるというのを新聞報道で我々も聞いておるわけであります。最大限の努力対策をしても四%の成長は難しい、そういうことを言っておみえになったのではないか、こう思うのですね。  しかし、こういう現状になってまいりまして、政府の方もいろいろと努力をするから、四%の見通しについては修正する必要がないというような御発言もあるわけでございますが、いずれにいたしましても、歳入欠陥が明確に一兆三千億近いものが出てくるという状況、しかも減額補正をこれからされるようでございますが、そういう段階になってもなお経済成長率については下方修正をするという考えはないのか、お伺いしたいと思います。
  91. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 先生がお話ございましたように、いわゆる実質成長率四%というのを政府が発表いたしましたのは一月でございますが、そのときの一つの大きな前提として、これもお話ございましたように、ここ一年ぐらい為替レート一ドル二百四円で推移する、こういう前提でいろいろ、しからば消費がどうだ、投資がどうだ、輸入がどうだ、輸出がどうだ、こういう計算をしたわけでございますが、現実はあれからずっと円高が進みまして、今や百五十三、四円という数字でございますから、既に五十円ほど円が実際切り上がった、こういう状況でございます。  私、いつも申しているわけでございますが、日本経済のように非常にダイナミックな、活力にあふれた経済というものが、いろいろな経済的な状況について敏感に適応するのは当然でございますから、一ドル二百四円のときに決まった見通しが五十円切り上がって、何か棒を飲んだようにあらゆる経済指標全く動かないということはありません。今お話がありましたように、物価にもいろいろな影響をしている、輸出にも影響を与えておるわけでありますから、率直に言っていろいろな経済指標が動いて当然。しかも、そういったことですから当然GNPも変わる方が普通だ、私はこういうふうにまず基本的に認識しているわけであります。  しかし、私どもは、あえて申しますけれども民間の経済調査機関ではございませんし、客観的に見てこういうことになるからということを発表するだけで事終われりというわけにはいかないので、実質成長率四%ということでいろいろな計算が成り立っているわけでございます。そして、諸外国もこの四%経済成長というものを多少期待しながら、日本の国際収支がどうなるということをいろいろな会議に、大蔵大臣が行こうが通産大臣が行こうが、いろいろな会議お話しになっておる報告を聞いておりますので、新しい昨今の為替レートのもとでGNPを構成するいろいろな要素がある程度動くとすれば、それを政策的な努力でどの程度リカバーするかということで、ワンセットで皆さんお話しをしなければならないのじゃないかというのが実は私の考えでございまして、レートが変わって輸入がふえて輸出が伸びないから、その分だけGNPが減るよということをただ言うだけでなしに、とすれば、それをどういう形で今度は政府の政策努力によってリカバーするか、それで差し引きどの辺になるのかなということを言うべきではないか、こういう考えでございます。  そこで、経済指標というものは時期的におくれて出てくるものでございますから、今どうだということはなかなか難しいのでありますけれども、正式に発表しておりますのは四月―六月期の四半期の国民所得速報でございます。これは御案内のように〇・九%前期からアップである、そして前年同期と比較すると二・二%だ、こういうことになっておるようですけれども、これがずっと例えば〇・九%で仮に後の三四半期続いたとして、どのくらいの最終的なGNPの伸び率になるかというと、これは機械で計算すると二・七%ということになりますし、いろいろな民間の調査機関もその種の見通しを立てている、これが私が軽井沢で、自民党の研修会で申し上げた数字でございます。  とすれば、一%からいろいろな要素があって、多少プラスアルファぐらいに下がるとすれば、それはどうしたらリカバーできるかというと、名目でいいますと六十年度のGNPが三百二十兆円でございますから、仮に一%落ち込むとすればすなわち三兆二千億になりますから、その分ぐらいのものを新たに政策的な、内需拡大政策で上積みすれば、落ちた分はもとに戻ることになるのではないか、こういうことで実は総理からも強い御指示がございまして、内需拡大を中心とする総合経済対策考えよ、補正予算を含めて考えよ、こういうことでいろいろ政府部内でまとめたのが九月十九日に発表いたしました総合経済対策で、それは三兆六千三百六十億、いろいろな形で新たに内需を増加する政策をまとめた、こういうことでございます。
  92. 草川昭三

    草川委員 私、前段で長官がおっしゃったそのお言葉は、大変そのとおりだと思うのですね。ただ、総理からいろいろと注文がついた、四%断念は言い過ぎだったと言って前言を撤回されるというのは、私はいかがなものかという気がするんです。前段のお考えをそのまま素直に延長しながら、あるいは政策的努力をしてカバーをする、それは当たり前の話で、それはそれでいいと思うのです。そういうふうにしなきゃいかぬと思うのですが、しかし、総理からいろいろと注文がついたから断念をしたというのはかえって問題を後に持ち越すことになって、本当に六十一年度の決定はこうだったよというときに経済企画庁としての権威がなくなるのではないか、前段の御意見をそのまま進めることがかえって国民は納得できるのではないかと私は思うのです。その点はどうですか。
  93. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 経済企画庁として六十一年度経済成長GNP四%断念という言い方は、実は事務局としてはしなかったわけでございますし、私もそういう発言はしなかったわけであります。ただ、いろんな経済指標を見る限り、現状のままに推移するとすれば、四%経済成長は難しいかもしれないなあというような言い方をしたのが、それがマスコミ等によって経企庁は断念をした、こういうふうに伝えられましたので、そういうことではないんで、これからの努力もいろいろあるわけで、そのためのこれからの政策でございますから、断念ということは必ずしも正確に私ども考え方を伝えられたことではない、こういうことで改めて言い直しをした、こういうことでございます。
  94. 草川昭三

    草川委員 言葉じりはやめておきますが、しかし、非常に本質的な問題だと思うのです。  私がことしの五月、当委員会でやはり同じような議論をしたわけですが、当時の赤羽調整局長はその政策的努力云々の議論の中でこういう答弁をしておるのです。円高プラスの面を見てほしい、それから円高というのは、交易条件の改善を通じて所得をふやす、国民全体の購買力をふやす効果があると言っておみえになる。そういう言い方は、それはそれでいいんですが、果たしてそういうような形で今進んでおるかどうか。これは午前中にも円高差益の還元という問題も出たようでありますし、いろんな意見もありますけれども、私は、そんなに輸出なんかも政府期待するような形になっていないようでありますし、輸入数量もたしか六・七%ふえると言ったのですかな、当時。そういうようにふえておるのかどうかわかりませんけれども、本当に政策的な努力というのが具体的に少なくとも反映しているかどうか大変疑問なんですが、ひとつ具体的に内需の伸びを、今でも四%を超えてマイナスをカバーすることができると思っておみえになるのか、これをお伺いしたいと思います。
  95. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 赤羽局長、今審議官でございますが、言ったというふうに先生おっしゃいましたけれども、現実に円ベースで調べてみますと、確かに、例えばことし七月、八月、九月、そして七月は円ベースの受け取りが一八・一%減でございます。八月は円ベース受け取りで二〇・九%減でございます。九月は一六・八%減。ですから円ベースの受け取りは、昨年同期よりも二割前後減っているわけです。これがまさに円高のデフレ効果というふうに考えていいと思うわけであります。  片っ方、同じ円ベースで輸入を見てまいりますと、同じ七月は、輸出一八・一%減に対して何と輸入支払い代金が三三・七%減なんですね。八月は、二〇・九%輸出受け取りは減ったけれども、支払う方は四一・二%少なくなっている。九月は、一六・八%輸出受け取りは減ったけれども、現実に今度は円の支払いが三五・九%減っているわけです。だから、輸出と輸入のボリュームの差が多少はございます。だけれども、絶対的に輸出の受け取り減よりも超えて輸入の支払いが減っているわけでありますから、その分は円でいいますとお金として残っている感じになるわけであります。  こういういわば円ベースの差益が発生して、それが現実に今度は消費になってまた投資を誘発するということは、これはいろいろ実態に即して考えますと、半年から九カ月くらいかかるのかな。水際で円高が発生してそれが今度は会社の利益になって、例えば九月決算で計上されて、それが今度は配当になりボーナスということになってくるともう暮れになっちゃうわけですね。  ですから私どもは、そうした円高デメリットはすぐにあらわれる即効性のある劇薬みたいなものですけれども円高メリットというのはゆっくり効いてくる、例がいいかどうか、栄養剤みたいなもので、つまりじわじわ効いてくる。だけれども、表はそういう劇薬効果がすぐ効いてきますけれども、しかしメリットはじわじわ広がってきて、おのずから我々日本人の体質を強化していて、それが消費になり投資となっていよいよこれから出てくるんじゃないか。ただ大事なことは、経済は人間の行動でございますから、その見通しに対して消費者が悲観的である、それから企業が悲観的だとすると、やはりそういう円高のメリットの方は貯蓄に回って、アクティブな投資なりアクティブな消費に出てこないわけでありますので、そういう意味で、将来に対する一つ政府のきちっとした政策的な決意、意向を表明したのが私ども総合経済対策である、こういうようにお考えいただきたいと思うわけであります。そういう効果もございます。
  96. 草川昭三

    草川委員 私どもが実は言いたいのは、今最後に長官もおっしゃっておられますけれども円高効果というのが国内にどのように反映するかにはずれがあるとおっしゃった、そのとおりだと思います。それと同時に、これほど急激な円高ということになりますと、企業は自衛手段として何らかの形で国内で仕事をするという、いわゆる内需を刺激するような形にそう簡単にいきませんわな。重厚型のは、国内で消費産業に変わるというわけにいきませんね。結局、海外で新規の生産をせざるを得ないわけです、これは自衛手段として。  でございますから、雇用の面からいいましても日本の国内に空洞化というのが始まるわけですよ。日本輸出産業消費型に変えるといいましても失業者がふえるということになり、いろんな空気からいいまして消費等は冷え込む形になってきますね。こういうものがある限り、私が先ほどから申し上げましたように、輸出で当初予定をいたしました四・三%でございますか、そういうような効果期待することは非常に難しいのではないかということを再度言いたいわけですし、そこら辺あたりをかつてOECDあたりも非常に注目をし、国内をもっと刺激をしろということを注文つけておるのではないか、こう思うわけですね。  ついでながら、ちょっと通産省の方もお見えになっておられると思うので、日本の製造業の最近の動向というのは一体どのようになっておるのか、通産省にお伺いしたい、こう思います。
  97. 江崎格

    ○江崎説明員 円高の進行によりまして我が国経済に非常に大きな影響が出ておりますけれども、特に先生御指摘の製造業におきましては、非常に業況が厳しくなっております。  先般発表されました八月の鉱工業生産動向を見ましても、前月比でマイナス二・七%という大幅な下落になっておるわけでございます。特に、輸出依存度の高い製造業ですとか特定の産地というところでは、企業収益の大幅な下落とか雇用の不安といったような深刻な影響が出ている状況でございます。
  98. 草川昭三

    草川委員 今通産省が言いましたように、これは先ほど長官が言ったことをある程度裏づけする御発言でありまして、ここは本当は通産省に聞きたいところですが、通産省に聞いても期待する答弁があれでございますので、経済企画庁にお伺いします。  通産省は日常的に勉強してみえると思うのですけれども、急激な円高によるデフレの影響は、六十一年度は約五兆円に上り、実質経済成長率を一・五マイナスにする結果が出るのではないか。ですから、六十一年度の成長率は二・五%程度にとどまるという議論をしておるのですね。これは、通産省的にはそれなりの問題提起だと思うのですが、成長率マイナス一・五というのは非常に重要な議論ですね。先ほどもお話がございましたが、これは単なる民間の経済機関が言ったというのとは少し違いますね。だからこそ、政策的な努力が必要だという結論になるのですよ。私はそのことを言うのではありませんが、通産省の二・五になるという言い方を経済企画庁はどのように評価をなされるのか、改めてお伺いしたいと思います。
  99. 川崎弘

    川崎(弘)政府委員 お答え申し上げます。  今通産省の資料を手元に持っておりませんし、もともと内部作業資料というふうに伺っておりますので、それ自体についてコメントするのは差し控えたいと思いますが、先ほど先生御指摘のように、円高効果にはメリット、デメリット両面がございまして、デメリットの面の評価の見方によって変わってくることがあろうかと思います。  と申しますのは、円高には交易条件の効果として、先ほど長官から御説明いただきましたような輸入代金の節約、それが国内物価の低下、安定を通じまして、実質国民所得の上昇という形で反映してまいるメリットがあるわけでございます。一方におきまして、円高に伴います輸出競争力の減退それから海外からの輸入の増大という数量調整効果がございます。この数量調整効果をどの程度に見込むかという見込み方によって、まず一つ差が出てくることが考えられます。  もう一つは、先ほどからございましたが、円高が生じますと直ちにあらわれてまいります円の手取り額の減少、これは企業の収益に直に響いてまいりますが、こういった円の手取り額の減少というのが企業の業況観に非常に影響を及ぼしまして、それが企業のいろいろな支出活動等に影響してくる、ここのところをどう評価するかという点によって変わってまいろうかと思います。  私どもも、いろいろな形でそういった計算、大胆な仮説を置く必要がございますけれども、油の大幅価格安ということもひっくるめて全体として検討いたしますと、円高のメリット、デメリットというのは大体プラスの方向に働く。ただし、その出方は、まず円の手取り額の減少というところから始まるものですから、デフレ的なインパクトの方が先にあらわれてくる。実質所得の向上という形はややおくれて出てくるものですから、そこにタイムラグがあるというぐあいに認識をいたしております。
  100. 草川昭三

    草川委員 御答弁は非常に歯切れが悪いわけでございますが、通産省なりの見通し、あるいは長官が軽井沢で御発言なさったのがいずれにしても本当の姿だ、私はこう思っておるのですよ。かえってその方が国民には、指標というものに対する信頼性があるよということを私は言いたいわけです。  そこで、指標という問題については、予測性と目標性があると思うのですが、経企庁は予測性に重点を置いておみえになったと思うのです。ところが今は、どちらかというと、目標的な願望に近いような形にすり変わってきているような気がしてならぬのですが、どちらのウェートが高いのですか。目標なのかあるいは予測なのか、どうですか。
  101. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 先生もよく御案内だと思うわけでありますが、経済というのは生き物といいますか、経済を構成している各要素要素の将来に対する見通しによって、影響を受ける分野が非常に強いわけでございます。特に、経済に対し大きな影響を与える民間設備投資というのは、将来どういう見通しで企業家が投資活動を決めるかによって大きく影響してくるわけでございますし、国民所得のターム、数字の中で、民間設備投資は五十五兆円ございますから、これが例えば一%ふえるだけで五千五百億円、二%ふえれば一兆円強の、国民所得のタームで申しますと需要増になるわけでございます。  ついでに申し上げますと、民間の消費需要は百九十七兆円でありますから、一%ふえるだけで一兆九千億、二%ふえれば三兆八千億、これだけでもGNPを一%押し上げる力を優に持つわけでございます。ですから、経済政策というのは客観的な経済の推移の中で、実体的にもまた心理的にもさらにプラスの効果を与えることで、結果的には目標とする経済成長を達成する、もしくは力がつくという効果もあるし、最初に申しました民間の調査機関と違って、現実に政策担当をし、政策を動かす力を持った政府としてやるべきことは、このままではこうだよということじゃなしに、それならこういうことをしていくんだよということをこの政策のいわばアナウンスメントエフェクトというのですか、発表効果というものを考えながら政策決定をし、そしてそれを国民皆さんに示し御協力を仰ぐ、こういうことでございます。  先生から、努力目標か客観的予測か、そういうお話がございましたが、そのあたりは一体となって、国としては目標を示しながら、なおかつそれに対して予測、だから目標と予測というのは一致して本来はあってしかるべきではないかと私ども考えておるわけでございます。
  102. 草川昭三

    草川委員 この問題をやって余り時間をとってもあれですが、本問題について最後に、いずれにしても補正予算を出すわけですね。補正予算を出す場合には、従来から政府見通しというのはある程度見解が出るわけですね。従来どおりいきますよと言うなら、補正予算考え方というのは別になるわけでありますし、それから現実に税収不足、減額という問題も出るわけですから何とかしなければいかぬわけです。てこを入れても四%を確保したい、こう言われると思うのですけれども、少なくとも補正を出す以上は、従来のこの考え方について、今のままでいくならば、例えばマイナス幾らになりますよ、だからこれを通すなら通せ、こういう議論になるのか、あるいは、いや指標は四%なんだ、下方修正なんか全然必要ないんだというお考えそのままで補正予算を出されるのか、我々も対応の仕方があると思うのです。補正予算を出される場合の経済成長率、下方修正は、依然として修正する考え方はないのか、もう一回お伺いをしておきたいと思います。
  103. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 補正予算は、今度の景気対策の大きな柱になるわけでございます。その中で、特に一兆四千億の政府の直接関与いたします公共事業がございますので、これを六十一年度内にできるだけ余計消化することが、それだけ六十一年の経済成長率を上げることになりますので、単に補正予算として経費を計上するだけじゃなしに、こういうものを早速契約をし、着手し、実行する、こういうことで関係各省にもお願いを同時にしておるわけでございます。  そこで、その場合の見通しはどうなんだ、こういうお話でございますが、実は昨年も一昨年もそうでございますけれども、毎回補正予算を組みましたが、大体補正予算は十二月から翌年頭、年が明けてからの補正予算になっておりますので、そのころになりますといろいろな経済指標も明らかになってきて、六十一年度は大体これぐらいかな、補正を組めばこうだ、こうだというのは出るわけでございますが、今度は今月中に何とか補正をまとめて国会に出して、来月早々にも御審議いただいて御採択いただきたいと思っておりますので、いろいろなデータ、経済指標が出そろわないままに補正を組まなければならない。ですから、従来のような形で確定値というか、相当きちっとした形で数字をお出しするところまでなかなか現実問題としていかないのじゃないか。ですから、多少概算、見通しを含めて、この補正予算を採択いただいて実行するとこのぐらいになるとは考えますがという程度のお話はさせていただくことになると思いますが、昨年、一昨年のような形の、いろいろなデータが出そろった形の見通しということは今回は技術的に少し難しいのではないか、こう考えておる次第でございます。
  104. 草川昭三

    草川委員 この問題はこれで終わりますけれども、今の長官お話を聞いていて非常に気になるのは、経済企画庁という本当に重大な役割を持っておみえになる省庁でありまして、そういう一つの大きなターゲットというのですか、指針というのがあるからこそ我々も安心をして、例えばインフレにならないとか、あるいはデフレ効果がひど過ぎる場合の修正をするとかという、本当のパイロットの役割を皆さん方持っておみえになる非常に重要な役所だと私は思っておるのですよ。ですから、それが政策的、頭からまず結論ありき、公共投資はこうあるべきだ、とにかく困っておるから金をつけろ、建設公債でいいじゃないかという、非常に乱暴な形で結論が先取りをされて補正予算が組まれていることについては、非常に私は心配を持っておるわけです。それをブレーキをかけるのが皆さんの役所だと思うのです。それは本当に日本国民の先頭に立ってしるしを出すところですから。それが非常にあいまいで、今申し上げましたように、総理がこう言うからせっかくの提言も問題提起も何か怪しげになる、こういうことを私は非常に心配をするものであります。そういうことのないように、ぜひこの補正に対しても経済企画庁としてのきちっとした姿勢を示していただいて、今後の努力をされていただきたいということを非常に強く要望しておきたいと思うのです。  第二番目に、時間を少し食ってしまいましたので、きょうぜひ議論をしたいという抵当証券の問題に移りたいと思うのです。  抵当証券の問題につきまして、私は、かねがね悪徳商法であるところの豊田商事問題というのをこの委員会でも取り上げてきたわけでありますけれども、悪徳商法というのはとどまるところを知らず、姿を変えて相変わらずはびこり、国民の皆様に多くの被害を拡大しようとしておるのではないか。しかも、最近のように低金利時代というのですかね、しかもマル優制度がなくなるのではないか、こういう議論の中では、我々国民、私自身もそうですけれども、やはり老後の不安というのがあります。あるいは、子供の教育に多少なりとも蓄えを準備しなければいけないというので預金をするわけでありますけれども、普通ならば、昔でいうならば郵便貯金ですよ。少しお金に余裕があるならば信託銀行ですね。あるいはワリコーを買うとか電力社債を買うというところが、庶民のお金の運用の常識だったわけであります。  ところが最近では、保険会社もいろいろな商品を売り出す。それから、こういう中で抵当証券というのが出てまいりまして、高金利を非常にあおるわけですね。まじめに郵便貯金だとか銀行預金をしておったって奥さんだめですよ、これこれしかじかのこういうのがある。新聞なんかを見ましても、最近ではマネーゲームのページというのがどの新聞にも非常に大きく出てくるわけですね。テレビでも出る。本屋さんへ行きましても、マネーについての利殖方法の本というのが非常に売れている。最近ではそういう専門の先生なんかもいるわけでありまして、私ども庶民としては預金金利というものに非常に動揺しておるわけですよ、これは率直に言って。そういう預金金利に対してどうしたらいいのだろう、自分は郵便貯金なり銀行預金するのはばかばかしいのじゃないかというような心理になりつつあるところに、悪徳商法が入るわけですね。  ですから豊田商事は、それを主としてお年寄り、ひとり暮らしの方々にターゲットを絞って、全くペーパー商法、紙切れ一枚で預かり証というのを置いてお金を巻き上げ、社会的に糾弾されるということになったわけです。これで本来ならば一件終わりですよ。二度とあんなようなことはないだろうと思ったのですが、そういう残党が今さまざまな運動というのですか行動に入ってまいりまして、今から申し上げる抵当証券、この中にも随分流れ込んできておるわけであります。  私は、そういう意味では、抵当証券に関する質問主意書をつい最近十月二日に提出をいたしまして、全部で七項目にわたる質問をし、政府の方も非常に真剣に現状についての答弁書を出していただいたわけであります。  今さらここで私が、抵当証券についての内容をくどくどと言うわけではございませんが、念のために何が問題点なのかということを申し上げておきますと、抵当証券の取引というのは、これは抵当証券法という法律があるわけでありますが、それに基づいて抵当証券の原券というのが発行されるわけです。本来は、その原券を消費者が買うということならば普通の流れということになるわけでありますけれども、その原券を消費者というのか投資家に渡さずに、モーゲージ証書といういわゆる預かり証だけ渡せば事足りるわけです。ここに非常に問題が出てまいりまして、悪質業者によるところの空売り、抵当証券が発行されてないにもかかわらず預かり証だけ売るという全くペーパー商法であります。  それから、一応は原券が発行されておるのだけれども、それを細分化して売る場合に、いわゆる担保となるべきもの以上に倍になり三倍になり売るわけでありますけれども、それは消費者としては、投資家としてはわからぬわけですね、一々どことどうだという監視ができませんから。また、これを監視する省庁もないわけです。これは後ほど質問いたしますけれども。容易に悪質業者がつけ込むところがあるわけであります。その結果、一般の投資の被害者がたくさん現に出ておるわけでありますし、さらに将来これが発生することが予測をされます。しかもその悪質業者というのが、ここ二、三年来発生をしてきておるわけでありますから、やがて、これが何年物かということで売っておりますから、その投資家の方々が換金を求めてきた場合に、果たしてその企業が存続するかどうかわからないという事態も予想されるわけであります。  しかも、この抵当証券業者の中には、あたかも大手銀行の系列会社だというような社名を使って、一般投資家を誤認させるものがあるわけですね。これは類似商法というのですか類似商号ですね。例えば一流の企業の名前、これは豊田商事がやった例でございますけれども、そして事務所もろくにないようなところですけれども、宣伝だけは派手にするとかいうようなことでございまして、これらの特に悪質業者の中には、かつての海外先物取引や現物まがい商法で被害をたくさん発生させた豊田商事あるいは豊田商事グループといわれた方々が結構転身をしているわけでありますし、既に警察庁の方からもそれぞれ処分というのですか、摘発を受けておるところもあるわけですね。しかし、これは今、単にそのところで終わっておるわけでありますけれども、こういう経営は、今は自転車操業でございますけれども早目に手を打って法規制をかけるならかける、あるいは対応を立てるなら立てるということをしませんと、再び豊田商事事件のようなことが起きるのではないかということでございまして、銀行の保証だとか、公認会計士の監査証明を添付をすべきだとかいろんなことが出ておりますが、そういう問題がございます。  そこで、この際、順を追って関係省庁にもお伺いをしたいと思いますので、お答えを願いたいと思うのでございます。  まず、抵当証券の発行というのは、昭和五十五、六年ごろまでには非常にわずかでございましたけれども、五十五、六年以後飛躍的に発行がふえておるわけでございます。どうでしょう、推定どの程度の市場規模になっているのか、あるいは取り扱いの会社数はどういうようになっておるのか、まず概要をお伺いしたいと思うのですが、どちらかの省庁からお答え願いたいと思います。
  105. 田中康久

    ○田中説明員 お答え申し上げます。  まず、抵当証券の発行を取り扱っておる会社数でございますけれども、四十九年の七月からことしの六月まで、これまでの間に抵当証券の発行の申請があった件数は百十四でございまして、うち個人が三人おります。ですから、会社数として百十一ということでございます。  それで、現在のところ抵当証券がどのくらい出たかというお話をまずしたいと思いますが、債権額にしまして大体一兆円でございます。これからこれが伸びていくかどうかについては、私どもとしてはちょっと推計ができません。  その発行状況でございますけれども、先ほど先生が御指摘のようにここ数年急激にふえまして、債権額にいたしましては五十九年が約二千五百五十六億円、六十年が三千八百七十八億円、それから本年に入りまして一月から八月までに三千七百五十一億円ということでございまして、本年は多分五千億を超える状況になっておる。これからどういうことになっていくかは、私どもの方ではちょっと資料を持っておりませんのでわかりかねます。
  106. 草川昭三

    草川委員 それからもう一つ、今百十四の業者がいるということを言っておりますが、最近では証券業界、生保業界あるいは流通業界とか、いろんな業界が非常に参入をしてきておるわけでございますけれども銀行系列、商社系列、生保系貸金業という分類について、あわせてお答え願いたいと思います。
  107. 杉井孝

    ○杉井説明員 お答え申し上げます。  私どもで把握しております銀行等の関連会社であります抵当証券の取り扱い会社数は四十社でございます。それから生命保険会社の関連会社である抵当証券取り扱い会社は六社、それから証券会社の関係会社と言われる抵当証券取り扱い会社は十一社というふうに把握しております。
  108. 草川昭三

    草川委員 今、御答弁にはちょっと触れられてないのですが、私どもの調べた中では、さらに今流通業界なんかからも非常に抵当証券に進出をしてまいりまして、それを小口で売り出している、しかもこれが非常に人気が強くて完売をしておるということが言われております。ですからデパートだとかスーパー、こういうところでは、物を売るところがデパートだとかスーパーだと思っておりましたけれども、最近ではお金を売る商売に変わろうとしているわけですね。そういう事例もあるわけであります。  これは本来ならば、出資法等あるいは大蔵省銀行関係の範囲でございますが、そういうところから出てきて、いわゆる物を売るのではなくてお金を売るような時代になってき、抵当証券というのはノンバンク時代の先駆けではないかと思うのですが、そういう事実について経企庁は国民生活を守るために、そういうように流通状況が変わってきておることをどのように判断なされるのか、お伺いしたいと思います。
  109. 横溝雅夫

    ○横溝政府委員 先生御指摘の抵当証券関係の業者が流通業界にあるということは新聞紙上等で承知しておりますが、そのこと自体は、これも先生御存じのとおりと存じますけれども、抵当証券法で定める要件や手続に従えば、現段階ではできることになっておるわけでありまして、そのこと自体が大きな問題という理解はしておりませんけれども、先ほど来御指摘のようないろんな問題をはらむ可能性があるわけですから、大きな関心を持って見守っていきたいと存じております。
  110. 草川昭三

    草川委員 確かに、今抵当証券法に基づいて発行されておるわけですが、非常にこれからの問題が出てくると思うのです。この抵当証券法という法律は昭和何年に制定された法律でございますか、お伺いします。
  111. 田中康久

    ○田中説明員 昭和六年でございます。
  112. 草川昭三

    草川委員 昭和六年に制定された法律でございますから、私は、多分法務省は流通でこんな状況になるということは夢にも思っておみえにならなかったと思うのですね。ですから今日のように一兆円の発行ということになる、しかもことしは五千億というものが予想をされるということになると、もうそろそろこれも何らかの業を、いわゆる証券業を営む対応ということを真剣に各省庁は考えなければいかぬのではないかと思うのでございます。その点については、今いろいろと議論をなすっておみえになると思うのでございますが、どんなような議論が進んでおるのか、お伺いしたいと思うのです。
  113. 杉井孝

    ○杉井説明員 お答え申し上げます。  確かに先生おっしゃいますように、抵当証券というのは抵当証券法に基づいて発行される有価証券でございますが、現在抵当証券取り扱い会社が販売している方法というのは、先生御指摘のように、モーゲージ証書あるいは預かり証といったような形で取引がなされておりまして、そういう格好でなされている点に伴いまして各種の問題を生じる可能性があるという問題点は十分認識しておりまして、私どもといたしましても抵当証券法の主管は法務省でございますが、一般の投資家を対象として販売していることや、あるいは資金需要者サイドでは長期の資金調達手段として機能しているといったようなことがございますので、大蔵省としても抵当証券の取引一般につきましては関心を持って注意しております。  先生御指摘のような問題をはらんでおりますので、いずれにいたしましても投資家保護を図る観点から、これまでも法務省とよく相談しながら現在検討しているところでございますが、今後さらに法務省と相談しながら検討を進めてまいりたいと考えておるところでございます。
  114. 草川昭三

    草川委員 ただいま検討中だという答弁でございますが、私は、そういうことでは手おくれではないかということを少し具体的な事例を出して質問をします。そこでまた後で今の基本的な考え方についてお答えを願いたい、こう思うのです。  実は私は、去年の二月八日の予算委員会で豊田商事問題を取り上げたときに、まがい商法というのですか、まがい商号という問題を取り上げました。ちなみに六十年二月八日の予算委員会の私の発言、竹下大蔵大臣とのやりとりが議事録に出ておりますのでちょっと読んでみますと、「三和信託というのがあるんです。三和信託といえば、これはやっぱり三和銀行関係の企業ではないかと思う、」しかしそうではないのですね。三和信託というのは三和銀行と全く関係ない。れっきとした信託と書いてあるわけですから、庶民は三和銀行の関連の信託銀行だと思って契約をするという趣旨を言っておるわけです。大蔵大臣は、けしからぬという答弁があるのです。  私が国会でこういう指摘をしましたら、どういうことか知りませんけれども、この会社は日本相互リースという会社にすぐ名前を変えたわけであります。この日本相互リースというのが、名前を変えまして何をやったかといいますと、悪徳商法でございますが、豊田商事と同じような、金(きん)を売ろうということで見せかけ商法をやった。豊田商事と同じことをやったわけです。やがて豊田商事事件が大きな問題になりまして、これが昨年の十月十六日に破産をいたしました。つぶれたわけです。この問題は、三和信託、日本相互リースというのはだれがやっておったかといいますと、豊田商事の元幹部なんです。豊田商事の元幹部がこの会社を興しまして、自分たちで同様なペーパーまがいの商法をやっておる。お金を集めて、そのお金をどこへ今持っていっておるかといいますと、レブコ・ジャパンという会社にお金を渡しまして、そこで今、実はこれから申し上げますけれども、この抵当証券絡みのグループでいろいろなことを画策しているわけでございます。  私は、なぜこのレブコ・ジャパンという会社の名前を挙げたかといいますと、これは現在民事訴訟を受けておる会社でございまして、原告の方々はどういう方々かといいますと、ちょっと請求の趣旨を申し上げますと、被告株式会社レブコ・ジャパン並びに被告日本相互リース保証会社、これは元三和信託ですね、これは連帯をして被害者に被害金額を払えという内容になっておるわけであります。いわゆる「詐欺商法により、」と明確に言っておるわけですが、「三和信託及び被告レブコは、訴外豊田商事株式会社の元従業員らにより、昭和五八年頃、あい次いで営業を開始したものである。三和信託が、後述の三和信託の「現物まがい商法」により、千葉、三多摩地区の老人や主婦等を中心とした一般大衆から総額六〇億円を越える巨額な金員を集金し、被告レブコが、右金員の運用機関であり、両者が一体となって、右金員の騙取」だまし取っている疑いがあり云々、こういう訴状になっておるわけです。  そこで、このレブコ・ジャパンというのが何をしておるのかといいますと、これは後ほど説明してもいいのですが、グループとして三つの抵当証券会社を持っておるわけであります。たまたまAとBとCという名前にしておきましょう。このAという会社とレブコ・ジャパンというのは役員についても、私、ここにいろいろと登記の証明を持っておるわけでございまして、関係はあるわけでございますけれども、この抵当証券会社の一番大きいのは港区の赤坂にあるわけであります。もう一つの抵当証券会社は中央区の日本橋にあるわけです。もう一つの会社は山梨県にあるわけで、この三つの会社が人的には結びつくわけであります。一番大きい港区赤坂にある抵当証券会社は名前が、まがい商法でございますから、日本でも非常に大きな家電メーカーと同じでございますので文句がついたのでしょうね、つい最近の十月の一日に商号を変更しております。これは、そういう会社もあるし同様な名前の証券会社があるものですから、その証券会社から文句をつけられたということだと思うのですね。それで商号が変わった。  これは何をやっておるかといいますと、この抵当証券会社が実は中国地方のある大きな都市の土地を担保にいたしまして法務局に届け出をする、これが全部で二十八億くらいになると言われております。それから、これを三つの会社が今それぞれ売っておるのですよ。私どもも、一々全部フォローをいたしておりませんので決定的なことは申し上げませんけれども、ダブルで売っておるのではなくて、三重に売っておるのではないかという疑いが関係者からも言われておりますし、内部の方々からも非常に問題だと言われておるところでございます。  この抵当証券のあり方については、今から不動産鑑定士のあり方等も言うわけでありますが、もう一つ問題の土地をこの抵当証券会社は持っておるわけであります。これは、私の出身である名古屋市港区の南陽町にございます藤高新田というところの土地を今押さえておるわけであります。これはまだ、抵当証券化するというところまではいっておりませんけれども、非常に複雑な入り組んだ土地でございますが、いずれにしても押さえておるわけであります。  これは水面下の公有地なんですね。ですから、私が非常に気になりますのは、これは将来のことになりますけれども、水面下の公有地、利権屋が非常に入り組んだところでございますが、それをもし悪徳業者が自分の所有に移して、それを例えば法務局に持っていったとするならば、法務局というのは一々中身について調べて登記をするという役所ではないわけですから、一定の書類の体裁さえあれば自動的に受けてしまうわけです。だから、ここからひとり歩きをする可能性が出てくるわけであります。ですから私は、この問題こそ事前に、これは社会的な不正義の問題として批判をする必要があるのではないかと思うのです。  これは事例研究ということで私は言うわけでありますが、こういうことが一つあるということを頭に置いておいて、直ちにこの問題について関係省庁から答弁を求めると、個別案件ですからなかなか答えが出ないと思うのですが、一応こういうことにまで進んでおるぞということを言っておいて、まず警察庁に、抵当証券に関する最近の相談状況についてお伺いしたいと思います。
  115. 上野治男

    ○上野説明員 お答えいたします。  本年九月末までに警察庁あるいは全国の警察に抵当証券関係相談のありました件数は、合計二百四十一件でございました。そのうち、半数以上が女性からのものでございます。大体四十代から六十代前半までの人が、全体の七割を占めている次第でございます。  相談の内容といたしましては、その当該の抵当証券会社の安全性あるいは信用性にかかわるものが大半でございます。中には、解約したいけれども相談に応じてくれないという人も最近かなり出てきておる次第でございます。  また、対象になっております会社について申し上げますと、全体の二百四十一件のうち約七割が特定の六社に集中しておるわけでございます。
  116. 草川昭三

    草川委員 できたらその特定の六社を公表してもらいたいわけですが、個別案件でございますし捜査当局でございますから、六社に集中しておるということを私どもは重大に受けとめて、問題提起をしたいと思うのでございます。  抵当証券に関する検挙の状況というのですか、つい最近静岡県警がやっておるようでございますし、その他のところも、新聞ではたしか中国の方でございますか、捜査をされておられると思うので、今後の対応も含めて状況をお伺いしたいと思います。
  117. 上野治男

    ○上野説明員 お答えいたします。  消費者をといいますか、投資家を食い物にする犯罪というのが最近非常にふえております。そういうことで、昨年も豊田商事の事件があったわけでございますが、昨年の夏ごろから悪質な業者が抵当証券の業界に入り始めている。特に、本年になりましてからそれが顕著にあらわれてきたということもございまして、私どもでは全国の警察に、抵当証券会社の実態について解明するように、あるいは違法行為の掘り起こしをするようにということを繰り返し指示しておるわけでございます。  その結果でございますが、最近ですと静岡県警におきまして、静岡市所在の日証抵当証券会社という会社の代表取締役が、抵当証券を入手するにはその前提になる抵当権を設定されていなければいけない、さらにその前提として債権債務があることが必要でございますが、そういうような債権がないにもかかわらずあるかのごとく装って抵当権を設定し、その抵当権に基づいて抵当証券を入手したということがあったわけでございます。その抵当証券に基づいてあちらこちらに販売を続けておりまして、現在までに判明しているだけでも、百数十名の人から合計数億円の金を集めておるということであります。この事件につきましては、私どもでは今申しましたように登記簿に事実でないことを記載されたということをとらえまして、公正証書原本不実記載、同行使及び詐欺で、現在同社及び同社社長宅等の捜索を実施し、関係者の取り調べをしておる次第であります。  もう一つの件は、広島県警で検挙した中国抵当証券に関するものでございます。これは、同社代表取締役が抵当証券を全く持っていないにもかかわらず、さらに言いますと抵当証券の発行申請を法務局に提出していないにもかかわらず、抵当証券預かり証というものを発行して、それに基づいて顧客十数名から約百万円の金を集めていたという事件がございます。これは本年八月以降に売り出したばかりで、発行してから一月ほどの間に関係者の逮捕に踏み切っておりますものですから、まだ商売を始めたばかりということで非常に内容的には小さいわけでございますが、今申しましたように、全く根になるものを持ってなかったケースでございます。
  118. 草川昭三

    草川委員 警察当局が非常に早期に対処されているということについては、私ども非常に敬意を表するわけであります。  たまたま一番最初お話がありましたように、女性なんかでもかなり相談にお見えになるということが報告をされておりますが、女性ならずとも、もし私が抵当証券を買うとすれば信用してしまうと思うのです。私、ここに抵当証券の原本とモーゲージ証書というのを持っております。例えば「NLCモーゲージ証書」、日総リースのものを私は持っておるのですが、その下に「抵当証券保護預り証書」というのがついているのです。「抵当証券保護預り証書」という中に、この場合は株式会社徳陽相互銀行という銀行の名前がきちっと入っているわけです。だから、もし私が広告を見て、非常に高く利息を払いますよというので日総リースへ行ったとすると、証書がもらえる。そして、抵当証券証書という原本はここにあるよ、証書の原本は最後に法務局の登記官何々の名前がばんと書いてあるわけですから、法務省も保証してくれた、しかも銀行まで保護預かりになっておる。普通の人ならばこれは安心だと思うのですね。  そこで大蔵省にお伺いしますが、抵当証券保護預かり証書というものは、いざ抵当証券会社がつぶれたときに保証することを意味する預かり証書であるかどうか、お伺いしたいと思うのです。
  119. 杉井孝

    ○杉井説明員 お答え申し上げます。  業界団体によりますと、抵当証券の保管につきましては、抵当証券会社自身が保管する場合あるいは先生御指摘のように万全を期して銀行に保護預けをする場合等々、さまざまな形態があるように聞いております。銀行等が保護預かりをする場合には、銀行等が抵当証券会社に保護預かり証を交付するケースもあるようでございますが、その保護預かり証は、銀行等が抵当証券の元利金を保証するといったような趣旨ではないというふうに考えております。
  120. 草川昭三

    草川委員 大変明快な御答弁ですね。保証するものではない、それは当たり前だと思います。だとすれば、抵当証券保護預かり証書というものを銀行がつけることもおかしいのです。責任がなければやめればいいのですよ。だけれども、現実にそういう証書を渡すわけです。こういう流通問題について、経済企画庁長官聞いておみえになりますが、素直に国民の代表として、そういうものが現在一兆円も出回っておるわけです。いいと思われますか。
  121. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 今の先生のお話を聞いていたわけでございますが、抵当証券なるもの、実はきょう初めてこの種の書類を拝見するわけでございますが、いろいろ問題の御指摘がございまして、私もこれは大変問題なことであるなと率直に思います。
  122. 草川昭三

    草川委員 では今度は、最初の役所である法務省へ戻ります。  今のようなことにひとり歩きをしていくわけでございますが、法務省としても、こういうやり方については規制がないわけであります。ひとり歩きをする状況、しかも一兆円というところまで大きく市場が育ってしまった、原局というのですか、もとの官庁としてどのようなお考えを持っておられるか、お伺いしたいと思うのです。
  123. 田中康久

    ○田中説明員 たくさん債券が今出回っているために、私ども、どういう事故が出てくるかということについて非常に心配をしているわけでございますが、抵当証券を発行するまでは私どもの所管でございまして、その発行の際に、現在はその担保目的物がちゃんとした価値があるものかどうかということを不動産鑑定士に評価していただいて、その評価を信じて抵当証券を出しているわけでございます。  他は、先ほどからお話がありましたように、抵当権の設定自体が空の場合ということがあるわけでございます。債権債務が本当にないのに抵当権を設定する、その上で抵当証券の発行申請があるというケースがあるわけでございますけれども、その抵当権の設定自体は、当事者の双方が登記所の窓口に出てきて申請すれば私どもは受けざるを得ない、そういう性質のものでございまして、その上で抵当証券を出すということで、さらに今言った不動産鑑定士の評価書をつけていただいて、それで間違いなければ断るわけにいかないという状況にございます。その上で抵当証券が本来予定しておりますのは、裏書譲渡で本来は流通することになっておりまして、それが違う方向で今流通しているわけでございます。そういうことで、いろんなトラブルが起きることを非常に私どもも心配しておりまして、何か私どもでできるだけこれから被害が発生しないようにできることを私どももやりたいというつもりでおります。
  124. 草川昭三

    草川委員 これも後ほど最後にまとめて、この業を営む者についての法規制を急げという結論にこれはなるわけでありますが、今お話がございましたように、もう一つ、この抵当証券の信用を高めるに不動産鑑定士の鑑定評価というのがあるわけですから、役所の方ですね、法務局はその金額を評価したものを記載する、こういうことになるわけですね。その不動産鑑定士、それぞれ権威のある方々がおみえになっておりますが、最近この不動産鑑定士に対する不満というのですか、評価についての苦情というのが寄せられているというように聞いておりますが、どのように把握をなすっておみえになるか、お伺いをしたいと思います。これは、国土庁お見えになっておりますか。
  125. 森悠

    ○森説明員 お答えします。  不動産鑑定士は、ただいま先生のおっしゃいましたように、不動産の鑑定評価に関する法律というものに基づきまして国土庁の土地鑑定委員会が実施します試験によって資格を与えられた者でございます。こういった者の評価についてでございますが、これはそういった試験によって資格を与えられた、評価に関する専門家であるということで、その鑑定評価技術は十分信頼に足るものであるというふうに考えております。  それで抵当証券に関しましては、現在までのところ私どもの方には、その評価についての今お話しのような問い合わせ等はございません。
  126. 草川昭三

    草川委員 ですから、恐らくこの鑑定評価というものについて、一般国民皆さんなりあるいは貸付業者の方からは異論がないということでございますが、実は私は今事例研究ということを申し上げましたが、もう一回今度は最初に戻りまして、たまたま水面下にある土地を、これはある人間が所有をしてこれを抵当証券化しようという動きがあった場合に、不動産鑑定士はどういうような評価をするのでしょうね。これは仮定の話でございますが、水面下の土地、こういう場合に鑑定士はどういう評価をなされるのか、お伺いしたいと思います。
  127. 森悠

    ○森説明員 突然のお話でございますが、その不動産鑑定士が鑑定評価の対象にいたしますのは土地及び建物ということになってございます。それで、先ほど先生は水面下の公有地――土地でごさいますか、その水面下の土地が登記簿上等で一たん記載されたもので経済的な価値が存するという場合には、これは評価は非常に難しかろうかと思いますけれども、何らかの経済価値が認められます場合には、そういったものを十分考慮して評価することは可能であろうかと思います。
  128. 草川昭三

    草川委員 まあ、その不動産鑑定士の問題はちょっとまたおいておきますが、私がなぜ今水面下の土地の問題を取り上げたかといいますと、これも豊田商事事件に関連をする土地でございます。これは名古屋市港区の南陽町の土地だということを言いましたが、これは実は非常に複雑な内容になっておるということを先ほども言いましたけれども、豊田商事グループの日本海洋開発、これは豊田商事グループの中に明確に位置づけをされている、銀河計画の流れの中の会社でございますが、ここから、先ほど申し上げました株式会社レブコ・ジャパンというところに賃借権が移っておるわけでありますし、また、地裁の仮処分等のいろいろな要素があるわけですが、こういう豊田商事絡みのいろいろな土地をこの会社が今押さえている。あるいは、その役員人事で非常に関係のある抵当証券会社が既に、非常に安い土地を三倍ぐらいの評価で抵当証券化をしているという、売り主がこんなに高く買っていいのだろうかと思うぐらいに、低いものよりも高く買って、それを三倍にもして抵当証券化している。しかも、関係者の方々の評価によりますと、百億近い商いをしておるのではないか、こういうわけですから、先ほど来から出ておる空売りというんですか、あるいは二重売りというんですか、三重売りというんですか、非常に問題になってくる可能性があるわけであります。  そういう意味で一つ、警察庁にまた戻ってお尋ねをしますが、かって豊田商事絡みの悪徳商法を行っていた者がこのような抵当証券に手を出している例があるのではないかということで、私は問題提起をしておるのですが、警察庁としては承知をしているのか、またどのように対処するのか、お伺いしたい、こう思います。
  129. 上野治男

    ○上野説明員 お答えいたします。  確かに、最近ですと悪質業者といいますか、消費者を食い物にするという人がたくさんふえてきております。また、その人たちはあの手この手といろいろな方法を変えて、我々の取り締まりの網の目をくぐるようにして犯行を繰り返しているというのが実情でございます。  そういう面で、ただいま先生から御指摘のありました会社の豊田商事関連の者がどの程度にいるかということにつきまして、具体的にはどこの会社にどのようにいるということを承知しているものもありますが、お答えを控えさせていただきたいのです。一般的に申し上げることができますのは、現在、抵当証券関係の容疑の会社幾つかを絞って捜査を各地で進めているわけでございますが、そのかなりの部分が、かつて同種の犯罪を行った会社に関係していたかあるいはその関係者たちとの接触があったかという人たち、そしてそういうところを通じて前にいろいろな取引、商売の仕方を覚えて新たに入ってきた人たちが非常に多いということは申し上げることができるかと思います。その中には、特に豊田商事の関係は、相当多数の、一万人ほどの関係者がおったわけでございますが、かなりの多数の者が入っているということは、一般論として申し上げることができるだろうと思います。
  130. 草川昭三

    草川委員 今一万人も、たくさん関係者がいるんだから当然のことながらという御答弁でございましたが、一たんこういう非常に悪徳商法を身につけた方々は、私が最初に申し上げましたように、あの手この手でやってくるわけであります。非常に対応を急がなきゃいかぬわけですが、今仮定の議論として、この水面下の土地のことを指摘したわけであります。  これも法務局にお答えを願いたいのですが、もしこういういろいろな複雑な入りまじった、しかもかつて豊田商事関係の企業が持っておった土地を、そのまがい商法をやっておる連中が持ってきて登記をする、あるいは抵当証券のようなこういうものを持ってきた場合どういう所存になるのか、お答えを願いたい、こう思います。
  131. 田中康久

    ○田中説明員 お答え申し上げます。  私どもの立場としましては、その売り買いをするあるいは抵当権を設定する当事者間がどういう立場の人であるかということについては、私どもの方でこの人の場合は断るとかそういうことはできません。ですから、申請があれば、登記申請を受けざるを得ない状況にございます。ですから、仮に、その抵当権を設定する者がかつては悪いことをした人だということが登記官がわかっても、私どもとしては、それを断るわけにいかない状況にございます。  先生の御指摘のような、先ほどお話がありましたその水面下の土地については、もともと所有権の対象になるかどうかが今争いになっている点でございますから、結論的にはどうこうというのはちょっと難しゅうございますけれども一般的に申しまして、そういう土地について評価をされる場合には不動産鑑定士がついてこられるわけでございますから、不動産鑑定士はそこはちゃんと見て評価をされるはずだと私ども信じております。また、そういうことの保証があるからこそ、私どもは不動産鑑定士の評価書が出てくればそれを信じて、今抵当証券を出しているわけでございます。ですから、もし、たまたま法務局の現場の方で懸案の土地について、場合によってはいろいろ知っていることもございます、そういうところについて、不動産鑑定士が誤った評価をしているということが明らかな場合には、本当に見ただけでもう間違っているということがわかれば、私どもの方でも鑑定士等には注意をしたり、そういうことはするつもりでございます。
  132. 草川昭三

    草川委員 前段の方の御答弁はそのとおりだと思いますから、あえて私は異論を申しません、当たり前のお話ですから。  しかしという問題になってくるわけでございまして、最後の、後段の御答弁をぜひ法務局としても、非常に争いのある、問題のあるところというのは大体わかっておるわけでありますから、事前に十分対応ができるような処置をしていただきたいということを強く申し上げておきたいと思うわけであります。  そこで、今後の問題ということにこれで絞られていくわけでありますけれども、まず警察庁にお伺いをいたしますが、いろいろな事例研究という形で私、申し上げたわけでございますが、抵当証券問題について、ずばり言って警察というのは今後どう対処されるのか。ただいままでの御答弁では、非常に積極的に前倒し調査をなすっておみえになるわけでありますし、国民の被害が少しでも拡散をしないようにやっておみえになるという態度を私は非常に評価をするわけでございますが、ひとつどういう対応をなされるのか、お伺いをしたいと思います。
  133. 上野治男

    ○上野説明員 お答えいたします。  最初に、先生から高く評価していただきまして、大変感謝をしております。  国民の保護、弱者の保護ということが私どもの任務になっております。そういう見地から、現在悪徳な業者がのさばってきて、それが弱い消費者を食い物にするという現実があるとしたならば、私どもに与えられた法律、権限を最大限に駆使して、徹底的に取り締まっていくということを今後とも強くやっていきたい、こう思っておる次第でございます。  そういう意味で、この抵当証券につきましては、全国の警察で、どうしても一つ一つの事件については捜査に手間がかかるものですから、数多くのものができないということがあるわけですが、それぞれの県で目標を定めて、それぞれ捜査、内偵を進めておる段階でございます。  また、私どもとしましてそういう捜査をしても、その間に被害に遭ってしまう人がいるということが非常に残念でございますので、知る限りの私どもの経験、知識を思い切って公開していく、そしていろんな県警を通じて、あるいはいろんなマスコミを通じまして、あるいはその他いろいろな機会を通じて私ども考えている、こういうことを気をつけていただいた方がいいということを国民に広く知ってもらうような措置を、繰り返し今後もやっていきたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  134. 草川昭三

    草川委員 じゃ、大蔵省と法務省、それぞれ今御相談をしているという先ほどの御答弁でありました。  今のように、警察当局も被害を最小限に食いとめるために一生懸命やっておるという御答弁ですね。今の御答弁を聞いていて大蔵省、とにかく相談をするということでは済まぬと思うのです。ひとつ早急な、いつごろまでに、いわゆる取り締まりをする抵当証券業法をつくるのか。非常に条件をつけて、今、証券業懇話会も自主基準をいろいろとつくっておるわけですね。それぞれの内部の信頼性を高めるために年二回の経理を公開するとか、あるいは第三者機関によって権威づけをするとかいろんなことを言っておみえになりますが、そういう機運が非常に盛り上がっておるわけでありますから、大蔵省と法務局、いつごろまでにやるのか、次期国会に提出するのか、はっきりとした態度をお答え願いたい、こう思います。
  135. 杉井孝

    ○杉井説明員 先ほどもお答えいたしましたように、現在投資家保護を図る観点から鋭意検討しているところでございますが、今後とも法務省ともよく相談いたしまして、御指摘のような法制の整備の問題も含めまして、さらに検討を進めてまいりたいと考えております。
  136. 草川昭三

    草川委員 ちょっと法務省にいく前に、審議しておるというか検討しておるということはわかるのですよ。検討は、やってもやらなくても検討ということを皆さん言うのですから。やるという前提で、本当にめどを一体どこに置くかということを言ってくださいよ。今の答弁だと、外に出て階段に出たら、やらなくていいことになっちゃうのですよ。それは納得できぬ。
  137. 杉井孝

    ○杉井説明員 抵当証券の問題につきましては、問題があるということは重々認識しております。ただ、抵当証券法と現在行われています取引関係をどう考えるかとか、そういった非常に難しい問題もございますので、いつまでということは申し上げられるような状況にございませんが、できるだけ検討を急ぎたいと考えております。
  138. 草川昭三

    草川委員 できるだけといっても、今法務省が答弁されますが、法務省は困っているのですよ。困っておるという発言ですよ、本音を言えば。そんな被害の話をどんどん出されたって、うちの今の態度はこうだというわけです。だけれども、法務局も割り切っていただいて、大蔵当局ときちっとしてもらわなければいけない。やはり、もとは法務省ですからね。法務省は今のような大蔵の態度でなくて、もう少し明確な態度で答弁してください。
  139. 田中康久

    ○田中説明員 抵当証券を発行しておりますのは私どものところでございますから、その限度では私ども責任でございます。先ほどから申し上げますように、評価の関係については本来は不動産鑑定士がやられることで、それが正確に行われるはずだという建前になっております関係上、現在、そこの点をチェックするということは私どもではほとんど不可能でございます。ただ、全国のいろいろな問題のケースを取り寄せて見ておりますと、やはりちょっとおかしいなと明らかにわかるような不動産鑑定があります。そういうものについては、こういうのはこういうところを見てチェックしてほしいということを私どもも何らか現場に少し示したいということで、今、事例等を集めている点でございます。  いずれ、そういうところで何らかの基準的なものができればと思っておりますが、これは一つにはまた不動産鑑定士の方の協力体制といいますか、そちらの方の指導のあり方との兼ね合いもございますので、いずれこの辺は関係者とちょっと調整をしたいとは思います。  今、大蔵省の方からお話がありましたけれども、私どもの方でも、この際抵当証券法を改正するかどうかというのは検討しております。ただ、私ども現在考えているところでは、現在の流通過程は本来抵当証券法が予定していないものでございまして、これを現在の抵当証券法の中に入れ込むというのは法技術的には非常に難しゅうございます。私どもは現在のところは、現在の運用形態の方を、流通過程を何とか改正していただければ、抵当証券法そのものの改正はしないでも乗り切れるのではないだろうかというふうに思っております。
  140. 草川昭三

    草川委員 大蔵省と最後に長官、ちょっと答弁してもらいたいのですが、流通過程の問題だから結局は、最後は大蔵省だという話ですよね。しかし、しょせん原局である法務省も法務局も、自分のところから出た先のことは知りませんぞというわけにはいかぬと思うのですよ、現実の問題としては。だから、そこら辺はやはり両省が本気になってやりませんと、第二の豊田商事になりますよと言いたいわけですよ。豊田商事のときもこういうことをずっと何回か言ってきて、大蔵省もぐずぐず言ってきて、最後にああいう大事件になっちゃうわけですよ。だから、早目早目に手を打たなければいかぬというわけです。焦っておる省庁だってあるわけです。警察庁のように、これはもう大変だぞと思っているわけですから。だから、こういうことは真剣に、検討する検討するということではなくて、大蔵省、本気になって次期国会には出すというくらいのことを言ってください。審議官の立場から言えないかどうかわかりませんが、本省に戻って――やはり国民生活を守るという視点に立つか立たるかですよ。お役所の立場に立っておったら、そういう結論は出ません。だからもう一回、本気になってやるかやらぬか、大蔵省の答弁と最後に長官の御意見を聞いて終わりたい、こう思います。
  141. 杉井孝

    ○杉井説明員 できるだけ検討を急ぎたいと思います。
  142. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 きょうの委員会は大変重要なことについての御指摘がございまして、国民生活を守るというのは経済企画庁国民生活局の仕事でございますし、いわゆる物的な商品だけではなしに今のような金融商品についても、これは国民生活に対して大変深刻な影響を与えますので、また関係各省相談してできるだけのことを考えていきたいと思います。
  143. 草川昭三

    草川委員 最後に長官、ぜひ大臣同士で詰めた話をしていただきたい、それだけちょっと答弁してください。
  144. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 関係閣僚と相談いたします。
  145. 草川昭三

    草川委員 以上です。
  146. 河上民雄

    河上委員長 次に、北橋健治君。
  147. 北橋健治

    ○北橋委員 民社党・民主連合の北橋健治です。  冒頭、石炭の引き取り問題について、通産省の基本的認識並びに姿勢をお伺いしたいと思います。  現在、石炭鉱業審議会のもとの七人委員会におきまして、鉄鋼業界の石炭引き取り問題をめぐって論議が続けられておりますが、大変難航しておるやに聞いております。その理由は、鉄鋼業界、石炭業界とも大変な経営不振に陥っておりまして一歩も引けないという事情があるからだと思いますが、通産省としては大体いつごろまでをめどに結論を出していくつもりか。まず、そのスケジュールをお伺いいたします。
  148. 西川禎一

    ○西川説明員 ただいま御質問の中でお示しいただきましたように、現在、石炭鉱業審議会の七人委員会で鉄鋼業界の原料炭引き取り問題につきまして、いろいろ集中的な御議論をいただいているわけでございます。  この七人委員会が設置されましたのは九月二十九日、同審議会の政策部会及び需給・価格部会の合同会議で設置が決定され、なるべく早く結論を出すようにということで審議が進められているわけでございます。現在のところ、まだ結論がいつまとめられるのか定かでございませんが、私どもといたしましてはできる限り早く、できましたら今月中にも七人委員会の結論が関係者の十分な理解と協力のもとに得られないかということを期待いたしているわけでございます。
  149. 北橋健治

    ○北橋委員 そこで、この問題をめぐりまして、議会の中にも国内炭を鉄鋼業界が引き取らないという事態を避けるためにも、輸入炭に対して課税をするという内容の構想が一部浮上しておりまして、こういった発想は、国際化に向けて日本経済社会が改革していかねばならないという基本的スタンスからすると極めて好ましくない発想だと私は思いますけれども、輸入炭に対して課税をするというような構想が今日の国際情勢のもとにおいて果たして容認されるのでしょうか。通産省の御見解を伺います。
  150. 西川禎一

    ○西川説明員 私どもといたしましては、来年四月以降の第八次石炭政策をどうするかということにつきましては、石炭鉱業審議会において御議論をいただいている、お願いしているということでございます。  今お話がございましたように、原料炭あるいは輸入炭に課税をしたらどうかというような意見も一部出ているようでございますが、私どもといたしましては、石炭鉱業審議会の審議の結果を踏まえましてこれに対処していくということが基本的な立場でございます。これまでの石炭鉱業審議会の審議におきましては、これは石炭政策全般にわたりましていろいろな項目を広くチェックするという見地から、そういった課税問題につきましても、その与える影響も含めまして御議論をいただいたことはございますが、明確な方向というものが出ているとは承知いたしておりません。
  151. 北橋健治

    ○北橋委員 そこで、その問題を解決していくための一つの提案でございますけれども、それを考える場合に、それぞれの産業界の置かれている苦しい立場をまず十二分に認識するところから始めねばならないと思います。  石炭業界の方は、閉山の危機、離職者発生、地域経済への大変な影響という難しい問題を抱えておりますし、また、片や鉄鋼産業の方では、急激な円高で今未曾有の不況下にあります。企業内の労使の合理化努力をはるかに上回る速度で鉄冷えが進行しているわけでございまして、しかもまた一方においては、アジアNICSからの急速な追い上げという問題も加わってまいります。そういう中で、非常に大きな内外炭価格差があるにもかかわらず鉄鋼業界に対して国内炭を引き取れと義務づけていくことは、現状にはもう即さないと思うわけであります。また、それを国内炭業界の方にしわ寄せすることも好ましくない。  そこで、聞くところによりますと、ヨーロッパの方におきましては、内外炭の価格差の問題については財政的な支援をすることによって解決を図っているところがあるやに聞いておりますが、政府としても今後、この国内炭の引き取り問題の解決に当たって、内外炭価格差について応分の負担を考えていくお考えはないか、お伺いいたします。
  152. 西川禎一

    ○西川説明員 確かにヨーロッパの国々におきまして、例えば西ドイツあたりでは通常の電力料金に一定の課徴金を上乗せいたしまして、これを石炭政策の原資に当てるということをやっております。またイギリス、フランスにおきましても、財政によりまして両国の石炭公社の赤字を補てんしていくという措置を通じまして、需要者の負担を軽減するという措置をとっているのは事実でございます。  私ども日本で、日本の今後の石炭政策におきましてかような措置をどう考えるのかという御質問の趣旨でございますけれども、仮に西ドイツのような電力料金に一定の課徴金を課するというような形態を新たにとるということになりますと、これは広く電力ユーザーにその石炭費の負担をお願いするということに相なるわけでございまして、そういうことにつきましては、広く国民の合意の形成が必要になる問題ではないかと理解をいたしております。  いずれにいたしましても、そういう問題を含め、国がどういう形で石炭業界助成をしていくかということにつきましては、石炭鉱業審議会におきましていろいろと深く御検討いただいてございます。原料炭問題を決着をつけまして、第八次石炭政策自身の最終答申をなるべく早く得まして、それに基づきまして来年以降の政策を決定していきたい、それに基づきまして対処していきたいというふうに考えております。
  153. 北橋健治

    ○北橋委員 了解いたしました。それではぜひとも鉄鋼業界の置かれたまことに苦しい立場と、国内炭業界の立場を十二分に参酌されまして英断を下されますように祈念をいたします。  次に、当面する経済情勢全般について質問を続けさせていただきますが、まず第一に、為替相場の見通しについてお伺いしたいのであります。  もちろん、この問題については、政府としても明快なる御答弁はなかなかしにくい問題ということは承知しております。私の記憶している限りでも、竹下大蔵大臣がかつて神のみぞ知るとお答えになったこともございましたけれども、しかしながら、これまでの円高のカーブを振り返ってみますと、カーブの上昇がとまったときには、いわゆる口先介入と言われたような形で人為的に円高に誘導されてこられた経緯があると思いますので、そういう事情を踏まえまして、経済企画庁として当面する為替相場の見通しについてどのようなお考えを持っておられるのでしょうか。     〔委員長退席、小野委員長代理着席〕
  154. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 今、神のみぞ知るというお話がございましたが、なかなかこれは難しいことでございます。ただ、円為替を上げる要因、下げる要因を考えれば、対米輸出がさらに増大を続けていく、すなわち日本の対米黒字がふえるということは円を上げる要素になりますし、また、内外金利差が大きくなって日本からアメリカに金が流れるということは円を下げる要素になるわけでございます。日本が今後積極的な内需拡大政策をとることに対して諸外国が信頼を持ってくれば、これは円を安定化させる要素になるわけでございますし、日本内需拡大政策に対して信頼が持てないということであると、これはさらに円を押し上げる要因になる、こういういろんな難しい要素がございます。また一方で、アメリカの経済なり国際経済が今後どういうような推移をたどるかということも、円の為替相場がどのあたりにどういうふうな推移をするかということについて大きな影響を持つ、こういうように考えるわけであります。  したがいまして、私どもとしては、何とか内需拡大政策を実行することによって少なくとも現在の円を安定化さしたい、円の対外相場を安定化することに全力を注ぎたい、こういうことでございます。
  155. 北橋健治

    ○北橋委員 相場の安定といいますと、現行水準並みということに理解していいでしょうか。また、経企庁の物価局長でございましたか、インタビュー記事で、百七十円以上の円安にはなるまいというような観測も拝聴しておりますけれども、どうですか。
  156. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 少なくともこれ以上の円高は何としても防ぎたい、私が安定と申し上げましたのはこういうことでございます。
  157. 北橋健治

    ○北橋委員 そこで、昨年九月のG5以来急激な円高で、いわゆる円高デフレという言葉に象徴されますように、輸出関連の産業あるいはその地域というのは大変苦しい思いを余儀なくされております。例えば鉄鋼、造船を例に挙げますと、一時帰休というかつてないショッキングな方法も今や検討の俎上に上がっているやに聞いております。確かに円高によるメリットは、経済企画庁も強調されるように相当あると思いますけれども、これまで日本経済発展を支えてきた多くの基幹産業においては、もう企業内の労使による合理化努力では到底耐え切れないというところまで来ておるわけでございます。そういう意味で、最近の雇用情勢の悪化という点も考え合わせますと、果たしてこのような円高デフレ、国内経済の失速という状況を前にして、現行の円高水準が、本当に日本経済のファンダメンタルズを適正に反映した水準と言えるかどうかについて私は少々疑問なのでありますけれども、いかがでございましょうか。     〔小野委員長代理退席、委員長着席〕
  158. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 為替レートがどの水準が適正であるかということは、これは学問的にもいろいろな議論の仕方がございまして、適正水準をどうだということはなかなか難しいわけでございます。ただ、お話がございましたように、現在の円レートが短期間で非常に急激に参ったということ、したがってこれに対して、今御指摘ございましたような業界業種中心としてこうした数字に対するいわば経営内の対応が非常におくれている、こういうこともございますので、大変深刻な状態を招来しているということについては、私ども十分に認識をしている次第でございます。
  159. 北橋健治

    ○北橋委員 G5による通貨調整、これは去年八月の日銀の論文にあったと思いますが、いわゆる円高・ドル安によって日本からの輸出にブレーキをかける、内需拡大でやっても黒字減らしにはおのずから限度があるということで、通貨調整によって貿易インバランスを是正する、いわゆる切り札として登場したと理解しておりますが、しかし最近の通関統計等を見ておりますと、政府経済見通しを大きく上回る貿易インバランスの傾向が出てきていると思います。貿易収支等を含めまして、今年度の経済見通しの指標について改定をするお考えは現時点にあるかどうか、お伺いをします。
  160. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 お話のように、円高傾向というものは理論的には日本のものをドル表示で高くするわけでございますから、輸出が抑えられるわけでございますし、もしくは減ずるわけでございます。それから今度は、円表示で外国のものが安くなるわけでございますので輸入がふえる、こういうことでございます。  現実に、輸入の方は昨年とことし、殊に最近の月ごとの物量、輸入数量を比較いたしますと相当な輸入増になっているわけでございますが、輸出についてはこれは多少弱含みでございますけれども、そんなに大きな輸出数量の減がないのが現状でございます。ただ、私たちが予想した以上に国際収支の黒字の解消がならない、むしろ国際収支の黒字が増大しているような傾向にございますのは、御存じのとおり円高プラス原油安がこれに合わさってまいりまして、このことと同時に国際的な素材価格の低迷、これが輸入がそれだけふえてもドル表示の支払いがそれほどふえない、こういう結果でございますので、こうした状況の中で国際収支の改善がどうなるかということはまだ相当な不確定要素がございます。  しかし傾向としては、数量的には輸入が増大する、そして輸出が伸び悩むという形での物量的な調整が進んでいるわけでございますので、円レートが安定をして、さらには国際的な原油価格と素材価格が今のような状況で推移してまいりますと、漸次経常収支改善効果があらわれるもの、私はかように考えております。
  161. 北橋健治

    ○北橋委員 去年のG5以降の経済情勢を見ておりますと、やはり通貨調整を主体とするインバランス是正にはおのずから限度があると言わざるを得ません。したがって、私どもが提唱してまいりますように、やはり思い切った内需拡大、それを柱とする積極的な経済、財政への転換しかないと思うわけであります。そういった意味で、公共投資はもちろんのこと、所得税減税と民間設備投資促進について、現時点で、補正予算も出てまいりますけれども、一工夫できないものかと思っております。  その見地から、以下ちょっと聞かしていただきますが、補正予算にことしの春、与野党間で合意した所得税減税を盛り込むことについて、経企庁長官はどういう御見解でしょうか。
  162. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 与野党の減税に関する合意事項については、これはもう公党間のお約束でございますから、当然十分な配慮をするだけに、実現に向かって努力をしてまいらなければならないと思っておるわけでございます。  ただ、現在、政府の税調において本格的な税制改正をいろんな角度から審議をしている段階でございますし、また我が党内におきましても、これと並行していろいろな角度から税制改革を審議してございまして、これは総理の御指示もございまして、来年度の予算編成に間に合うように、したがって来年の税制改正に十分反映できるような形でスピードを上げてやれ、こういうことで内閣、党一体となっていろいろ議論している段階でございますので、その与野党合意の減税というものをどういう形でどの時点で取り組むかということについて、いろいろ政府の内部においても議論があるところでございます。
  163. 北橋健治

    ○北橋委員 まだ最終的な結論は出ていないということでしょうか。
  164. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 基本的な考え方としては与野党合意の線に沿って実現をする、こういうことであると考えておりますが、今いろいろな議論が行われていると聞いております。
  165. 北橋健治

    ○北橋委員 公共投資も大事でありますけれどもGNPの四割を占めるのは個人消費でございまして、現在の景気を思い切って回復する有力な手段はやはり所得税減税だと思いますので、ぜひとも補正予算に計上されることを長官お願いをしておきます。  次に、設備投資についてなんですけれども、最近の経済を見ておりまして、一つの特徴は企業の財テクということです。企業の手元流動性比率という指標を見ますと、五年ぶりに非常に高い水準になってきておりまして、円高差益が企業の設備投資の抑制によって貯蓄に回っていることをうかがわす指標が出てきております。こういうことで財テクが活発になっていきますと、貯蓄と投資のバランスが一層崩れまして、下手をすると対外不均衡の一層の拡大、ひいては円高の圧力につながるということはゆゆしき事態でございます。  そういった意味で、企業内の財テクに回っている資金を積極的に有効需要の創出に振り向けなければならない、これが重要な政策的視点だと私は思いますが、そのためにはやはり技術開発とかニューメディアとか前向きの設備投資需要は相当にあると思いますので、それを引き出すためにはかなり大型の投資減税というのは今の時点で相当有効だと思いますが、そういったものを補正予算に計上していくというお考えはないのでしょうか。
  166. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 先生の御指摘のことは私もよく理解できますし、御指摘ございましたような経済全体としての貯蓄過剰現象といいますか、財テクにあらわれているような過剰流動性状況というものを積極的な、前向きの設備投資に振り向けるためのしかるべき措置を講ずべきであり、それは積極的な企業減税によって行われるべきじゃないか、こういう御示唆だと思うわけでありますが、税制についてあえて申し上げますと、今申し上げましたように、本格的な税制改正に内閣として真剣に取り組んで、何としてもこれを来年度以降実現をいたしたい。  いろいろな角度から検討していることでございますし、そしてそういう税制改正の基本的な方向は、アメリカやヨーロッパにも見られておりますように、いわゆる公平、公正、簡素合理化、そしてつけ加えれば選択、活力といいますか、日本を含めてどうも税の体系が余りにも複雑になって、日本の税制で申しますと、いわゆる租税特別措置法的な配慮が余りにも細かくなり過ぎたために、企業が投資活動をする場合に、その企業の将来的な配慮よりも、さしあたって当面どういうふうな資金を使えば節税ができるかということが、どうも企業の資金運用の大きな判断の基準になっている、こういうことがある意味では経済活性化してない、こういうような認識もあるわけでございます。  そういうことで、先生おっしゃるような、前向きな設備投資をするための多少のいわゆる租税特別措置的な配慮と、それからこれまでいろいろな形で考えてきたことをこの際簡素合理化しようという考え方と、そのあたりの議論の整理に多少時間がかかるのではないか、こういうことでございますので、御指摘の趣旨は十分にわかりますが、全体としての税体系の見直しの中で改めて慎重に配慮すべきことではないか、かように考える次第でございます。
  167. 北橋健治

    ○北橋委員 それでは、その抜本的な税制改革でぜひともそういった投資減税、大型の所得税減税が実施されることをお願いをしておきます。  次に、補正予算についてお伺いいたしますけれども、伝えられているところによりますと、このたび提案されると予定されております補正予算の規模、この一年間の波及効果というのは、需要拡大効果がおおむね四兆九千億円と言われておりますが、しかし、それを早く消化しませんと今年度に間に合いません。特に四%成長の達成については、有力閣僚の一部にもさまざまな意見が出ておりますし、経企庁の事務当局の首脳の間にもこれまでもいろいろな意見があったわけでございます。  そういった意味で、四%成長をぜひとも達成していただくためにも、事業の消化を可及的速やかに実行するということと、同時に、景気のまだら模様がかなり明暗になってきておりまして、特に輸出関連型の企業城下町というところでは大変な不況でございます。そこで、新たに企業を誘致するとか少々の金融、税制上の中小企業対策を講じても、とても今の不況は乗り切れないという状況にございますので、現下の急激な円高に伴って景気のまだら模様がかなり明暗になって出てきておりますから、そういった不況業種、不況地域に対する重点配分という点を予算の執行に当たってはぜひとも考慮していただきたいのでございますが、その点についての御見解をお伺いします。
  168. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 御指摘のとおり、今回三兆六千三百六十億の新しい内需拡大政策が総合経済対策のいわば柱でございますが、その中心になりますのが、一兆四千億の直接国が関係する公共事業と、それから地方自治体お願いをしております八千億の地方単独事業でございます。  そこで、この一兆四千億の中の五千五百億相当がいわゆる災害復旧対策費でございますが、これは当然、早急に着工して早急に施行を図り完了を期す、こういうことでございますが、残りの八千五百億につきましても、私どもは、年内に着工して完全にこれを消化するものと、それから年内国が多少前払い金を払って着工して、これもできるだけ消化を期するものと、それから第三に、国は財政的な事情その他で前払い金は払わないけれども、しかし契約を受けた企業がそれぞれ民間の資金の調達によって、そして企業をファイナンスして、事業をファイナンスして実行するものと、まあ大体三つくらいに分けてそれぞれの対策を講じているわけでございます。  問題は、この六十一年度のGNP成長率円高によっていろんな影響からへっこんだとすれば、それをもとへ戻すというか、押し上げ効果をこの六十一年度GNPで見るとすれば、それは来年の三月三十一日までどれだけこうした事業が実際に消化されて、所得効果を生むかにかかっておるわけでございます。私は、総理や官房長官、そして大蔵大臣建設大臣その他関係閣僚とずっと最近個別にいろいろ御相談をいたしまして、できるだけ年度内消化に全力を挙げるように、それぞれの各省において関係筋にいろいろお話お願いをいたしたいという要請もお願いいたしておる、こういうことを申し上げてまいった次第でございます。
  169. 北橋健治

    ○北橋委員 経企庁長官としては、現時点において四%成長達成はできると自信を持っておられますか。
  170. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 三兆六千三百六十億というこの新しい内需追加政策はGNPに対比して一・一%強でございますし、これが仮に年度内に全部消化されれば、お話がございましたようにいろんな過去のデータで計算するわけでありますけれども、四・九兆とか一・五%アップとかこういうことになるわけでございますが、先ほど申しましたように、どれだけこれが年度内に消化できるかということが一つの決め手になるわけでございます。しかし同時に、私は常に申し上げておるわけでありますが、GNPを構成する要素というのは、国が直接間接関係する投資活動以外にも、例えば住宅も、これは総合政策に入ってございますけれども、例えば民間の設備投資も五十五兆円ありますから、これは一%ふえるだけで五千五百億、二%では一兆円。さらに、GNPの中で消費の占める額が百九十兆円でございますから、これが一%で一兆九千、二%で三兆八千ですか、こうなるわけでございます。  したがって大事なことは、国はやることをやらなければなりませんが、しかし国がやることをやって、同時に民間の企業の方々が国の政策に信頼を持たれ、そして協調されてそれぞれ設備投資を進めていただく。また同時に民間の方々、これから暮れからお正月にかけて少し奥さん方にも財布のひもを緩めていただいて、ひとついろいろ買い物しよう、こういうことになれば、これはまたウン千億、場合によっては一、二兆円上積みできるわけでございます。  ですから、できるかどうか、こういうふうにおっしゃれば、私ども努力する方向でいわばポリシーミックス、国の政策を中心にしますが、しかし同時に民間企業の投資意欲、そして奥さん方の消費活性化といろんなことが総合して進んでいけば、その努力目標に近づくことは私は不可能ではないと思う。そういう気持ちで一生懸命、経済企画庁中心になって関係各省、また民間の方方にもお話を申し上げている、こういうのが現状でございます。
  171. 北橋健治

    ○北橋委員 続いて、雇用問題についてちょっとお伺いいたします。  労働省によりますと、急激な円高景気後退によって完全失業率は年内に三%に達すると言われておりますけれども、その三%台という数字は、二十八年の労働力調査開始以来最悪の事態だと思います。経企庁としては六十一年度の見通しをどれくらいに考えておられますか。そしてまた、産業空洞化現象ということは後ほど質問いたしますけれども、失業率、雇用の問題は極めて重要な指標でございまして、政府経済見通しの一項目にぜひ加えて、一つの指標を明らかにしていただきたいと思います。  以上、二点についてお伺いいたします。
  172. 川崎弘

    川崎(弘)政府委員 失業率につきましての御質問でございますが、確かに最近の雇用情勢、弱含みに推移いたしております。八月の失業率二・九%、六月は二・七という数字でございましたが、最近は二・九%といったところで推移しておりまして、私どももこの動きには関心を持って見守っておるところでございますが、六十一年度中に失業率がどうなるかという見通しについては、現時点では申し上げることを差し控えさせていただきたいと思います。  ただ一つ言えますことは、確かに製造業を中心にいたしまして、例えば労働省の方からけさほどもございましたような事業主都合による解雇といった失業者も出てきておりますけれども、一方におきまして雇用者数の方は依然として、例えば先月は一・七%ほど伸びているということもございます。これは若年、女子労働者、かつ非製造業が中心ということで、そういった意味で、かなり雇用構造の変化というのが最近の円高の中で出てきておるかと思いますけれども、そういった面も考えますと、あとは今回の対策等の効果期待いたしまして、こういった失業率がこれ以上に上がらないように政策的な努力をしていきたいというふうに考えております。
  173. 北橋健治

    ○北橋委員 時間が限られてまいりましたので、答弁はひとつ簡潔にこれからお願いいたします。  そこで、いわゆる産業空洞化現象について経企庁の認識をお伺いしたいのでございますけれども円高を契機としまして、企業の海外進出が今後相当に進むとの見方が広がっております。民間銀行のある調査によりますと、四割近い企業がG5以降今まで、あるいは今後数年の間に海外進出をする、そういう計画を持っておりますが、こういう傾向が続いていきますと、いずれ日本にもアメリカのような産業空洞化現象が出てくるのではないか、労働界に危惧する向きが強まっております。この点についての基本的な認識をお伺いします。  それから、続けてお伺いいたしますが、ある民間銀行の試算によりますと、一兆円ほど海外生産に回すと十八万二千人が国内で雇用機会を失う。仮に六十年度の経常海外余剰分十二兆円すべてが海外生産に向かうと、二百十八万四千人という膨大な数の雇用機会がなくなり、失業率は約三・七%上昇する、こういった有力な民間銀行の分析も出てきておりまして、かなり重要な問題となってきております。経企庁としては、今の円高によって海外生産が加速化して、国内雇用の縮小という問題がどのように今後推移してくると見通しを持っておられるか、それも含めてお願いいたします。
  174. 冨金原俊二

    ○冨金原政府委員 お答えいたします。  我が国経済産業空洞化の問題につきましていろいろな議論が行われておりますことは御承知のとおりでございますが、私どもも中でいろいろ検討を進めておりますけれども産業空洞化と言われる現象をどういうふうにつかまえるかというのが一つ問題ではございます。と申しますのは、アメリカなんかで盛んに議論が行われておりますけれども、実はアメリカの中でも産業空洞化については否定的な見解もかなりございます。  産業空洞化という問題につきまして一つ議論になりますのは、一つは、主要な競争力の強い企業が海外に進出することによって我が国の競争力が失われてしまうというようなことに対する懸念とか、あるいは経済が今後ソフト化、サービス化を進めることによって第三次産業のウエートが高くなり、その結果として成長率が下がってしまうのではないか、あるいは政治的な観点から見てどうかと、いろんな議論があるわけでございますが、端的に申し上げまして、現在、少なくとも現時点においてはいろんな考え方はございますけれども、私どもとしては、産業空洞化が明らかに起こっているという状況ではないんではないかと考えておるわけでございます。  しかしながら、一方では先生が御指摘のように、こういった円高の中で海外に対して企業がどんどん進出を進めていくということの中から、確かに雇用機会がその分だけ少なくなっていくということも事実でございまして、一つの試算を先生が御説明になりましたけれども、私ども内部でも若干の試算をしたものがございます。  少し御説明させていただきますと、問題は、海外に対する直接投資が今後どれくらいのスピードで伸びていくかという見方が一つございます。それからもう一つは、その設備投資、直接投資が海外に行われることによって、我が国輸出がどれだけ振りかわってしまうかという見方の問題がございます。したがって、その仮定の置き方によっていろいろな数字が出てくるわけでございますけれども一つのめどといたしまして、現在我が国の国内と海外の生産比率は四%弱、三%台でございます。最近、かなりのスピードで直接投資がふえていっておるわけでございますが、アメリカの場合を見てまいりますと、海外生産の比率が大体二割ぐらいという数字がございます。今後二〇〇〇年くらいまでの間にそれくらいの比率になるという仮定を一応置き、同時に、輸出が海外生産に代替されるという割合が五割だという計算をいたした場合にどうなるかということについて若干の試算をいたしております。  もちろん、これは一〇〇%になるという計算もございますし、もっと低くなるという見方もございます。通産省などのアンケート調査によりますと、大体四六%という数字も出ておるようでございますが、仮に半分ぐらいという計算をいたしてみますと、これまで行われた海外直接投資によって雇用の機会が失われた数が、一九八三年時点で二十四万人ぐらいという計算になります。それに対して、今申し上げました前提で二〇〇〇年までを展望いたしますと、二〇〇〇年時点では八十四万人ぐらい、したがって足元の二十四万人を差し引きますと、六十万人ぐらいは雇用の機会がその分だけ減るのかなという計算が一つ出てくるわけでございます。  この数字は、決して軽い数字ではないという認識でございますが、それだけに一方では、先ほども長官申し上げましたように、我が国経済成長率をできるだけ高くして、雇用の機会を国内でつくっていくということが非常に重要ではないかと考えておるわけでございます。全体的な方向としましても、経済の情報化とか高度化、ソフト化、サービス化といった中で、第三次産業のウエートがかなり高くなっていくだろうし、これまでの動きを見ましても、年間五十万人程度の就業者がふえておりますけれども、そのかなりの部分がサービス産業に吸収されている現象も既にあるわけでございまして、適正な成長力、できるだけ成長を図ることによって今後の国内における雇用機会の吸収に努めていくということは、極めて大事だと考えております。
  175. 北橋健治

    ○北橋委員 時間が参りましたのであと一問だけ、国土庁に地価の問題について最後にお伺いいたします。  円高景気後退でございますから、今後企業の中で大幅な賃上げは期待しにくい情勢でございまして、その中で勤労者の生活を守っていくためには消費者物価を抑制する、できれば引き下げるという政策目標は、今後さらに重要になると考えます。日本の勤労者は世界一の所得水準にありながらその実感が伴わないというのも、一つは食料品そして地価に関連する住居費にあると考えます。その見地から、都市近郊の農地について宅地化を推進するというのも地価を抑制する一つの施策だと思いますけれども、市街化区域内の農地を宅地化していくことによって地価に対してどのような影響が出ると思っていらっしゃるか。  そして同時に、さきに建設大臣が積極的に宅地化を推進する姿勢を明らかにされたことは評価いたしますけれども、都市近郊農地であくまでも農業を続けたいという方については生産緑地制度を活用する、それ以外の農地については積極的に宅地化を促進するという姿勢が今後重要であると私は思いますけれども、その点について国土庁の見解をお伺いして、質問を終わります。
  176. 原隆之

    ○原説明員 御説明申し上げます。  地価は、土地の需給バランスの中で決定されるわけでございまして、土地の供給量がふえれば需給関係の緩和を通じまして地価の安定につながるということは、先生おっしゃるとおりだと思います。ただ、現在の地価の動向ということからまいりますと、全国的には地価は安定をいたしております。ただ東京では、先ほど来お話のございましたような国際化、情報化といったことを背景にいたしました都心部における旺盛な事務所需要というのがございまして、商業地、住宅地ともに地価上昇の著しい地域が拡大しておるという状況にあるわけでございます。また、東京以外の主要都市におきましても中心商業地、スポット的ではございますが、高い地価上昇というのが生じておるということでございまして、全般的には安定している、一部のそういう事務所需要等が強いところで上がっているということでございます。  一方、先生が御指摘になられた住宅地の問題につきましては、東京におきましても東京都の区部の南西部、大田区、世田谷区、杉並区、そういった南西部におきまして条件のよい住宅地を中心に著しい地価上昇が生じておりまして、これが東京圏全体ということにはまだなっておらないわけでございます。  市街化区域内農地は、東京圏におきまして約三万八千ヘクタール、東京都の区部におきましても千九百ヘクタールもあるわけでございますが、これらの宅地化を促進していくというのは、既成市街地の低層住宅地、低利用地、未利用地というようなものの高度利用と並びまして宅地の供給量を増加させるということで、同一需給圏内の地価の安定に寄与するということは当然のことであろうと考えております。  そこで、私どもこういう地価の状況を踏まえましていろいろ検討しておるわけでございますが、一つには宅地の供給の促進でございますし、二つには投機的土地取引の抑制ということになるわけでございます。  第一番目の宅地の供給促進ということの一つといたしまして、先生御指摘の市街化区域の中の農地、当面営業を継続するという御要望も土地所有者の方々にあるわけでございます。したがいまして私どもといたしましては、当面の営農の継続を図りながら住宅地の造成、住宅の建設をあわせて行うという農住組合事業というのをやっております。こういった仕事中心に今後とも農地の宅地化を大いに推進して、地価の安定に寄与する方向に持っていきたいと考えております。  以上でございます。
  177. 河上民雄

    河上委員長 次に、岩佐恵美君。
  178. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 まず、大臣にお伺いをしたいのですが、不十分な賃上げ、増税あるいは保険料のアップ、教育費等の上昇で、国民の暮らしは今大変な状況にございます。そういう中で円高あるいは原油安、こうしたメリットを国民生活に十分還元させるということは大変大事なことだと思うのです。特に、冬場を迎えまして電気、ガス、灯油、プロパン、そうした燃料費あるいは暖房費、こういう問題について家計負担が大変重くなるということで主婦は頭を痛めているわけですけれども、こういう問題について大臣の基本的な立場をまずお伺いしたいと思います。
  179. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 先生も御案内のように、ことしの六月に円高、原油価格の低下を反映して、電気、ガス料金を一割近く下げることにいたしました。全体の金額を申しますと一兆一千億程度のいわゆる円高、原油価格低下の値下げ、還元措置を講じたわけでございますが、その後さらに円高が進む、石油価格も下がる、ちょっと戻ったようでもございますけれども、そういった状況の中で電力料金その他を初め、今御指摘のような価格についても、もっと下がらないかという御要望が国民皆さんからあることを私たちは十分に理解をしておりますので、経済企画庁中心になりまして物価担当官会議、これは事務次官が座長でやっておりまして、この夏以来、私が長官になりましてからもこの会議を招集いたしまして、それぞれの持ち場、持ち場で、特に国が介入しておる公共料金等について積極的な値下げができないものか検討していただいて、さらに実行していただくことを要請してまいっておるわけでございます。
  180. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 電力ガス料金について還元を積極的に、より一層推し進めていただきたい。そういうお立場で仕事をしておられるということは私も十分承知しておりますので、なお一層お願いをしたいと思っております。  私は、きょうは灯油の問題一つに絞ってお伺いしていきたいと思っております。  今、灯油は年間二千四百万キロリットル使われています。そのうちの約半分、一千万キロリットルが一般家庭で使っている暖房用でございます。これは、電気とかガスといった公共料金とはもちろん性質が違いまして、いろいろ需給に応じて元売石油会社と消費者との間で価格が決められていくものでございます。しかし、本格的な需要期を迎えまして、今消費者と元売との間に灯油問題についてかなりトラブルも出てきているということですので、きょうはその点について伺っていきたいと思います。大臣にも、いろいろ後でお伺いしたいことが出てきますので、よろしくお願いしたいと思います。  その前に、委員長にもちょっと申し上げておきたいのですけれども、この物価問題に関する特別委員会では、こうした石油問題についての審議を行う際には、資源エネルギー長官ないしは石油部長が大体御答弁をされていた、私が質問したときはそういうふうなことだったのですけれども、今回、石油部長の都合がどうしてもつかないということで、これからはそういうことがないようにしますという通産省側の答弁もあったので、きょうのところはそういうことで進めたいと思いますが、今後こういうことが起こるやもしれませんので、よろしくお願いしたいと思います。  そこでお伺いをしていきますが、石油の原油輸入価格はずっと変化してきているわけですけれども、昨年の九月からことしの九月までの価格の推移を、余り時間もとれませんので、ざっと読み上げていただけますか。キロリットル当たり、円で答えていただきたいと思います。
  181. 黒田直樹

    ○黒田説明員 御説明申し上げます。  昨年九月からの原油価格をキロリットル当たり、円ということでございますが、通関統計によりますと、昨年の九月は四万一千百七十三円ということでございます。その後、御承知のようにOPECの増産等を背景にいたしまして、原油の値下がりが起こってきたわけでございまして、若干飛び飛びに申し上げますと、ことしの一月年初では三万五千二百九十七円、その後ボトム、一番安くなりましたのが八月でございまして、月平均でとりますと一万八十一円ということになったわけでございます。ただ、御承知のように、八月の初めにOPECの総会で暫定的な生産制限についての合意があったことを受けまして、国際的な原油価格は若干上がってきたわけでございます。それを反映いたしまして、九月には一万五百四十五円、さらに、最新時点の十月上旬では一万一千七百七十三円ということで反騰してきておるのが現状でございます。
  182. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 そうしますと、去年の九月からことしの九月の間に、キロリットル当たり三万六百二十八円下がっているわけですね。これは七四・三九%の値下げになるわけです。ちなみに、昭和五十三年下期の原油輸入価格は、キロリットル当たり平均で一万七千百五十二円でした。その当時の小売価格は、一缶当たり店頭で七百円、共同購入で六百円であったわけです。その後の物価等の動きを考えてみても、これは一つの参考になると思っています。  今、日本生協連等消費者団体では、今冬の灯油について、原油をバレル当たり十五ドル――十五ドルというのは、現在が十ドル、十一ドルですから、今説明があったように先行きをかなり見込んで十五ドル、為替レートを百六十円ということで試算をして、リッター当たり灯油の原価を二十五円、経費その他を含めてもリッター当たり四十円以下でできるのじゃないか、それは一缶当たり七百五十円以下になるはずだというような試算をして、今冬の灯油の値決めに入っているということを聞いているわけでございますけれども、ここ半年間、灯油の製品輸入価格は一体幾らになっているか、ちょっとお答えをいただきたいと思います。
  183. 黒田直樹

    ○黒田説明員 御説明申し上げます。  半年間ということでございましたけれども、年初来を申し上げますと、キロリットル当たりにいたしまして、本年初めの一月の段階では五万一千八百二十六円ということでございます。その後六月ごろから、原油の動向あるいは国際製品市況等を反映いたしまして輸入価格はさらに落ちてきておりまして、六月の段階では三万九千三百二十四円、八月の段階で一万七千六百四円ということになっております。
  184. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 生協連試算のリッター当たり二十五円というのはそうそう外れた数字でもない、輸入の灯油製品価格と比べてもそう外れた数字ではないということを示していると思います。  今、灯油の価格交渉をめぐって一部で深刻な事態が起こっております。きょうのNHKのテレビ、ラジオで報道されていたと思いますけれども、関東地域で生活協同組合と取引をしている特約店に対して元売が、生協と取引をするのなら出荷を停止する、あるいは生協と特約店が決めた値段について、これはけしからぬというようなことを言っているということでございます。こういう事例というのはきょうの報道された生協だけではなく、関東一円で今起こっています。生協から手を引けとか、あるいは値決めについてあんたのとこはトップバッターになるなとか、それから一缶七百円以下では取引するなとか、そういうふうな圧力を加えてきている、そういう例が出てきているわけです。  このような生協と特約店が値決めをする、その値決めに対してそれが気に入らないからということで出荷を停止をする、こういうことは絶対に許されないことであると思いますけれども、この点通産省それから公正取引委員会の見解を伺いたいと思います。
  185. 鴇田勝彦

    ○鴇田説明員 質問にお答えいたします。  ただいま先生も御指摘のように、冬場入りを控えまして、需要期を控えまして、各地で各地の生協さんと現地の販売店の間で新しい価格についての値決め交渉が行われているということは承知しております。また、一部の地域では、なかなか値決めにつきまして交渉が長引いておりまして、最終的な合意も得られていないという話もございます。ただ、先生御指摘のように、販売店、特約店とあるいは生協との間で具体的に価格が決まりまして、それに対しまして元売サイドの方から、仕切り価格の維持という観点から、ある意味では出荷停止とか、我々の理解といたしましては値決め交渉の中断という解釈をしておりますけれども、出荷について停止をほのめかしたりするというような事実があるということになりますと、これは見ようによっては独禁法違反という問題にもなりますので、現実にそういう問題がある場合には、厳正に当局から対処をされてしかるべきであろうという解釈をしております。  また、そういった立場から、エネルギー庁といたしましてもそういうことのないように、業界の方については注意を喚起しているということでございます。もちろん、それに加えまして、値決めについていろいろぎくしゃくするということはお互いにとってハッピーなことじゃございませんので、交渉に当たっては誠意を持って両当事者話し合うようにという指導は、常日ごろからしておるところでございます。
  186. 樋口嘉重

    ○樋口政府委員 お答えいたします。  先生が今御指摘なさった事例につきましては、私どもまだ事実を把握しておりませんので、具体的な答弁は差し控えさせていただきたいと思います。ただ、一般論として申し上げますと、生協と特約店が値決めをしたことについてその元売が出荷を停止するとか、あるいはその価格が元売の意に沿わないということで改定するようにというような行為は、独占禁止法で規定する不公正な取引方法に該当するおそれが強いのではないかというふうに考えております
  187. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 この生協の場合は、聞いたところによると、十数社の特約店と生協が契約をしたけれども、ある元売が特約店に対して出荷停止を言ってきたというようなことなわけです。ですから、そういう点では、個別事例が持ち込まれた場合には、それぞれのところで適正に対応していただきたいというふうに要望しておきます。  昨年も東北で同じようなトラブルがありました。そして去年の十一月二十一日、衆参両院それぞれでこの問題について商工委員会で取り上げられて、経企庁長官が積極的に対応いたしますという答弁をされているんですね。前の金子長官大臣がされておられます。中身は御存じだと思いますけれども、「これは消費者としては非常な問題でございますので、通産省の立場から言えばこれは自由商品だから介入の余地はないのだ、こうおっしゃりたいのだろうと思うのですけれども、やはり私は、政府の立場として消費者保護を徹底するために、ぜひこういう際は必要な行政指導なり要請をやって、話をつけさせるように持っていくことが大事だと思っております。」「ぜひそういう方向へ通産省とも連絡しながら持っていきたいというふうに考えておる」というふうな答弁があったわけでありますけれども、ことしもそういうことが起こってきているわけでありますので、大臣のお考えをお聞かせをいただきたいと思います。
  188. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 できるだけ円高差益一般消費者に還元をしていただきたいと関係業界にもお願いをしている立場の私でございますので、今金子長官の話も、私と同じような気持ちではないかと思うのであります。ただ、これはあくまでも当事者間の値決めの交渉でございまして、やはりそれぞれの立場なりまた企業といいますか会社の採算の問題とかいろいろなのがあると思いますので、そのあたりは関係者間で十分に話し合っていただく必要があるのではないか。それぞれの立場立場の議論があると思いますが、やはり関係者間でよくお話をしていただければおのずから正しい結論が出るのじゃないか、かように考える次第でございます。
  189. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 次に、東北地方での昨年の独禁法違反事件について公正取引委員会が対応されていますけれども、このことについて簡単に概要を御説明いただきたいと思います。
  190. 樋口嘉重

    ○樋口政府委員 昨年の東北地方における灯油をめぐる独禁法違反の件についての概要というような先生の御質問でございますが、私ども岩手県とそれから山形県と宮城県におきまして、生協に納入する特約店に対して元売がいろいろ干渉したのではないかというような疑いで調査を行いました。その結果、岩手県と山形県におきます元売の行為が、独禁法上問題あるのではないかということで警告を行っております。  その内容は、生協向けの灯油の価格決定に関しまして、元売会社が特約店の事業活動を不当に拘束するということでございます。そういう行為を行っている疑いが認められたということで、このような行為は不公正な取引方法の第十三項「拘束条件付取引」に該当して、独占禁止法十九条に違反するおそれがあるというものでございます。  岩手県の件につきましては六十一年七月十八日、三菱石油株式会社、コスモ石油株式会社、問題になった当時は大協石油でございましたが、その後合併しましてコスモ石油となっております。それから昭和シェル石油の三社でございます。また、山形県の件につきましては、同じく三菱石油株式会社に対しまして、同日付で警告しております。
  191. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 ことしの七月十八日付で口頭警告をされたということでありますけれども、今東北地方では例年のように需要期を迎えまして、消費者団体が主催をする石油業界との懇談会だとか、あるいは各県が主催をいたします消費者それから石油業界、そういう方々の会合がいろいろ開かれているわけであります。  この会合において、岩手の会合の後、岩手日報だとかあるいは朝日新聞で報道されておりますので、ちょっとお見せをしたいと思いますけれども、価格問題について一切触れてはいけないというふうな業界の理解であるということで、まず生活協同組合が、日本生協連の東北地連が灯油問題の懇談会をやりたいということで、九月十六日に開きたいというふうに言ったところが、元売会社が、価格問題について一切触れられないということなので出られませんということで出席をしませんでした。岩手県の灯油問題についての懇談会では、価格については全く触れないということで頑迷に一切価格については触れなかったということで、こういう抗議の記事になっているわけです。  こうした問題について、消費者の側からすると円安、そして原油高のときには一生懸命値上げの説明をしたではないか、これは通産省も、値上げの説明を相互理解を深めるためにやりなさいということを言っていたわけでありますから、そういう点では、通産省のそういう指導もあってやってきたのだと思いますけれども、それが今度逆に円高、原油安になったときに価格について一切触れないということでは、これはひどいのではないかということで、いろいろとトラブルが現地で起こっているというような状況でございます。  この問題について、公正取引委員会が口頭警告をされたわけでありますけれども、その意図といいますか、こういうことまでも全く禁じてしまったものなのかどうか、これの見解を伺いたいと思います。
  192. 樋口嘉重

    ○樋口政府委員 お答えいたします。  私どもがことしの七月に元売会社に対して警告した趣旨は、生協と灯油を供給している特約店との間の価格の取り決めに対して元売が干渉するというのは、独占禁止法に触れるおそれがあるということで警告したわけでございまして、そのような消費者と業界が石油の一般的な動向について話し合うというような会合に、元売会社が出席するのは好ましくないというようなことまでを私ども言ったわけではございません。一般論として申し上げますと、そのような会合に元売会社が出て、消費者の利益のために一般的な価格の動向などについて説明すること自体は、独占禁止法上問題となるものではないというふうに私ども考えております。  しかしながら、そういう会合に出席した複数の元売会社間でそれぞれが個別の取引価格に関して具体的に説明をして、元売会社の間で販売価格について共通の意思が形成されることになったり、あるいは特約店の個々の取引の価格を規制することになる、事業活動を不当に拘束することになるような場合が出てくると、独占禁止法上は問題が生ずることになりやしないかというふうに考えております。
  193. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 例えば岩手県の県が主催した懇談会でも、いわゆる個別の取引をそこでいろいろ丁々発止やるというような、そういう会合では決してないのですね。例えば出席者のメンバーを見ても、地婦連の役員の方とか、あるいは県の生活改善実行グループ連絡研究会とか、あるいは生活学校連絡協議会だとか消費者の友の会だとか、そういう方々が純粋に、ことしの灯油は家庭から見てどうなんだろうということで、やはり円高といったってどういうことかわからないし、あるいは特約店の果たす役割やら、あるいはマージンやら、これは一般的なマージンですね。それから小売店の配達料がどうだとか、そういうことについて従来どおりいろいろ意見交換をしてきた、そういうレベルでの話し合いなわけですね。とりたててコスモとどこかと消費者の会が幾らにするとか、あなたのところはそれだったらだめで、じゃ三菱にかえようとか、その場でやるということでは決してないわけであります。そういう点でこれは当然独禁法違反にならないと思いますけれども、念のためにちょっと公取の見解を伺っておきたいと思います。
  194. 樋口嘉重

    ○樋口政府委員 お答えいたします。  先ほども申し上げましたとおり、そういうような会合に出て一般的な価格の動向等について説明するということは、独占禁止法上特に問題ないと思っております。  先生も御承知のとおり、消費者必ずしもそういうような実態について詳しいわけではございません。そういうような場合に、そういう知識の豊富な人が説明するということは、適切なことではないかと私ども考えております。できますれば、そういう当事者の間で具体的な話をしていただいて、一般的な話は、客観的な第三者の立場に立ち得る人の方が適切な説明ができるのではないかというふうに私ども考えております。
  195. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 元売も、別にその販売コストを計算している人が出てくるわけじゃないでしょうから、業界の全体の説明ができるようなそういう立場でやるわけでしょうから、そういう点はそう心配ないと思います。  通産省にちょっとお伺いしたいのですけれども、通産省もそうした一般的な価格について消費者と話し合うということについて、別にこれがだめだというような見解を持っていないというふうに聞いていますけれども、その点、いかがですか。
  196. 黒田直樹

    ○黒田説明員 お答えいたします。  今、公取の審査部長さんからお答えがあったわけでございますが、もちろんその独禁法に触れるような形でいろいろな話し合いが行われるということが私どもの懸念の種でございまして、したがって、そういうことがないようにというのが私どもの基本的な考え方でございます。  ただ、今おっしゃいました一般的な価格の動向というのは、また若干抽象的な言い方でございますけれども、そういう意味で何が一般的な価格の動向かという点につきましては、いろいろ具体的なケースに即して判断されるべきであろうと思いますけれども、私ども考えておりますのも、独禁法に抵触しないような形でということが基本であろう、こういうふうに考えております。
  197. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 そういう通産省の考えだというふうなことなのに、九月の初めに通産省が通産局を通して業界を指導して、その結果業界は、通産局から厳しい指導が来たので消費者団体のそういう会合にも出られませんとか、あるいは価格については一切口を開いてはいけないというようなかたくなな県の見解だとか、そういうことが出てきているわけですけれども、一体どういう指導をされたのでしょうか。
  198. 黒田直樹

    ○黒田説明員 お答え申し上げます。  ただいま申し上げましたように、私どもも独禁法等を含みます法令を遵守するように、従来から業界を指導してきているところでございます。  また、他方で、先ほど来御議論がございました石油をめぐるいろいろな情勢につきまして、供給者が需要家に十分説明するようにという点につきましては全く賛成でございまして、従来からそういう機会を持つように指導してきているところでございます。今後ともその点については、従来どおり元売会社等を含めまして指導をいたしてまいりたいと考えているところでございます。  それで、先ほど御議論がございましたように、元売会社が販売業者と消費者の具体的な交渉に介入するというようなことになりますと、独禁法の問題が出てくるわけでございますので、そういうことから私どもといたしましては、独禁法に触れるような形で価格に関する発言がそういういろいろな場でないようにという趣旨での指導を、関係の通産局を通じまして行っているところでございます。したがいまして、そういう場に出席してはならないとか、価格に関して一切発言してはならないというようなことを申し上げているわけではございませんで、独禁法に触れるような形で価格に関しましていろいろなやりとりが行われないようにという指導を行ってきているところでございます。
  199. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 仙台通産局で伺ったのですが、九月三日に資源エネルギー庁からファックスで指導内容が来たということですけれども、この指導内容は今言われたような中身にはなっていないのではないですか。例えば「(別添二)」のところで、「昨冬の灯油問題に関する公取委の警告について」ということで、この「(別添二)」の三の中で、「今後、需要者あるいは消費者団体との懇談等の場に元売企業の社員が出席するような場合には、必ず事前に価格については言及できない旨進言し、懇談会等の主催者より確約をとること。」というふうな内容になっているのですね。これが皆さんの内部の文書であります。  私は、これは通産省からぜひ出してほしいということをお願いしたのですが、通産省からは、こういうものはありません、外には出ていませんということだったのですが、仙台通算局ではファックスで送られてきた。これは確かにファックスのまたコピーですから、とても読みにくいものです。これは通産省が隠しておられるだけで、仙台、岩手、ずっと東北各県、出回っています。元売会社にこれはみんな行っているわけですね。もう周知の事実になってしまっているわけです。これを読んでみんなが言っているわけです。これはどうも価格について言及できないということになると、今答弁があったことと全く内容が違ってくるわけですから、このような指導については文書で流しているわけですから、元売はみんなこれを持ってきて、これだから出られない、こうなっているわけですから、こういう指導をぜひちゃんと改めるべきだと思うのです。  伺ったところによると、十月十六日に、口頭ではどうもこの真意がよく伝わっていなかったので、誤りのないようにすべきだということで通知をしたということでありますが、問題になっている岩手の懇談会というのは十月十六日以降でありますから、十月二十一日に開かれている懇談会でありますから、通産省の十月十六日のせっかくの訂正といいますか、そういう真意が実際には伝わっていない、そういう指示については各方面に伝わっていないわけであります。ですから、私は文書で改めるべきだと思いますけれども、文書でやるかどうかは別にしても、しかるべききちんとした対応をされるべきだと思いますけれども、その点明確にお答えいただきたいと思います。
  200. 黒田直樹

    ○黒田説明員 先ほど申し上げましたように、関係の通産局を通じまして、独禁法に触れるようなことのないようにという指導を行っていることは事実でございます。  ただ、今回そういう注意喚起をいたしておりますのは、あくまで独禁法に触れる形での価格に関する発言をしてはならないという趣旨でございまして、出席してはならないとか、あるいは一切発言してはならないということではございません。先生ただいまおっしゃいましたように、その点につきまして一部誤解を生じた面もございますので、私どもといたしましては、注意喚起の真意につきまして既に元売会社に対して十分説明をいたしているところでございます。私ども確認いたしておりますところでは、元売会社に既に通じているというふうに思っておりますけれども、ただいまの御指摘を踏まえまして、改めて周知をいたしたいと考えております。
  201. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 次に、ちょっと量の問題について、一言伺っておきたいというように思うのです。  昨年までは、九月末在庫六百七十万キロリットルを確保していたわけでありますけれども、ことしは六百万キロリットルに灯油の在庫量が減らされているわけです。これは皆さんの説明では、灯油の輸入があるからだというふうなことになっているわけでありますけれども、この問題について業界誌等では、例えば石油会社が七月以降進めている原油処理量の削減、こういう中で中間留分の比率、得率も落とし、需給が急速に逼迫をしてきている、そしてこの逼迫が結局はその価格に反映をするというようなことを、るる業界誌等では指摘をされているわけでありますけれども、この点について本当に量が確保できるのかどうか、その点について通産省のお考えを伺いたいと思います。  それから、灯油の在庫の新しい資料が出ていると思うのですが、同時にちょっと教えていただきたいと思います。
  202. 黒田直樹

    ○黒田説明員 灯油の在庫の問題でございますけれども、従来から石油供給計画におきまして九月末、つまり需要期に入る直前の期末の在庫指導ということを実施いたしてきております。従来は、六百七十万キロリットルということで指導をいたしてまいりました。それで今回、今年度の供給計画におきましては、先生御指摘のように、これを六百万キロということで削減しているわけでございます。これは先生ただいまお話ございましたように、ことし一月から特定石油製品輸入暫定措置法という法律が施行されまして、灯油等の輸入開始が行われます。したがって、安定的な灯油輸入の確保が可能となったというのが一つございます。  それから、近年の設備の高度化等によりまして、灯油の得率調整能力が向上したといったような事情もございます。そういう状況を踏まえまして、本年四月の石油審議会の御了承をいただきまして、九月末の在庫水準というものを削減したわけでございます。事実、本年一月から輸入が開始された後、灯油につきましては、前の冬は非常に厳冬でございまして、当初の見込みでは、ことしの一―三月に二十万キロリットルぐらいという見通しを持っておりましたが、それを大幅に上回りまして、百万キロリットル以上の輸入が現実に行われて、安定的な供給に資したというような事情があるわけでございます。  それで、最近の状況でございますが、四―九月は灯油の不需要期でございますので、輸入の方も当初の見通しといたしましては半期で十万キロというふうに見込んでいたわけでございますが、現実には約二十八万キロの輸入が行われたという状況にございます。  それから、生産等の御質問があったわけでございますが、結果といたしまして本日出ました統計によりますと、九月末の実際の在庫水準は約六百四万キロでございまして、供給計画で決められました六百万キロを十分に確保しているというふうに見ているわけでございます。
  203. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 最後にちょっと長官お願いしたいのですが、今の在庫を六百七十万から六百万キロリットルに減らして、輸入をふやすから大丈夫ということなのでありますけれども、一応業界誌等に書かれているところでは、  九月末灯油在庫の目標を六百万キロリットルへ引き下げたばかりであり、供給不足分は輸入で賄うことになっているが、海外供給者(シッパー)はそうしたわが国の需給計画は先刻承知の上、強気で商談に臨んでいると伝えられる。   こうした状況から、欧米における寒波が早目に到来するなどの条件が重なれば、世界的に灯油市況が急騰する可能性もあるわけで、わが国の灯油の輸入環境が著しく厳しいものとなることも考えられる。 こういう状況なんですね。  要するに、今九月末在庫六百万は超えている、いわゆる供給計画は満たしているんだけれども、しかし、去年よりは七十万キロリットル低いわけですから、量と価格というのはいつも相関関係で、量が少なくなれば価格が上がるわけですから、円高のメリットが十分還元できないという事態も起こりますので、その点、経済企画庁長官としても十分ウオッチをしていただきたい、そのことを最後にお願いを申し上げたいと思います。
  204. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 今先生のお話、十分にわかりました。円高差益の還元ということが私どもの基本的な態度でございますので、それに合うように関係当局とも話し合いを進めてまいりたいと思います。
  205. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 終わります。
  206. 河上民雄

    河上委員長 次回は、来る三十日木曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十五分散会