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1986-12-11 第107回国会 衆議院 農林水産委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十二月十一日(木曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 玉沢徳一郎君    理事 近藤 元次君 理事 鈴木 宗男君    理事 月原 茂皓君 理事 保利 耕輔君    理事 松田 九郎君 理事 田中 恒利君    理事 水谷  弘君 理事 神田  厚君       阿部 文男君    上草 義輝君       大石 千八君    大原 一三君       太田 誠一君    木村 守男君       菊池福治郎君    小坂善太郎君       佐藤  隆君    谷垣 禎一君       森下 元晴君    保岡 興治君       柳沢 伯夫君    山崎平八郎君       石橋 大吉君    串原 義直君       竹内  猛君    辻  一彦君       玉城 栄一君    吉浦 忠治君       木下敬之助君    寺前  巖君       藤田 スミ君  出席国務大臣         農林水産大臣  加藤 六月君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      甕   滋君         農林水産大臣官         房審議官    青木 敏也君         農林水産省経済         局長      眞木 秀郎君         農林水産省構造         改善局長    鴻巣 健治君         農林水産省農蚕         園芸局長    浜口 義曠君         農林水産省畜産         局長      京谷 昭夫君         農林水産省食品         流通局長    谷野  陽君         食糧庁長官   後藤 康夫君         林野庁長官   田中 宏尚君         水産庁長官   佐竹 五六君  委員外出席者         国土庁計画・調         整局計画課長  糠谷 真平君         文部省体育局学         校給食課長   石川  晋君         海上保安庁警備         救難部警備第一         課長      垂水 正大君         海上保安庁警備         救難部救難課長 小澤 友義君         労働省職業安定         局特別雇用対策         課長      加藤 輝雄君         建設省住宅局建         築物防災対策室         長       遠藤二三男君         農林水産委員会         調査室長    羽多  實君     ───────────── 委員の異動 十月二十三日  辞任         補欠選任   寺前  巖君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   東中 光雄君     寺前  巖君 同月二十四日  辞任         補欠選任   辻  一彦君     土井たか子君 同日  辞任         補欠選任   土井たか子君     辻  一彦君 同月二十八日  辞任         補欠選任   上草 義輝君     河本 敏夫君   太田 誠一君     竹下  登君 同日  辞任         補欠選任   河本 敏夫君     上草 義輝君   竹下  登君     太田 誠一君 同月三十日  辞任         補欠選任   藤田 スミ君     田中美智子君 同日  辞任         補欠選任   田中美智子君     藤田 スミ君 十一月四日  辞任         補欠選任   寺前 巖君      金子 満広君 同月五日  辞任         補欠選任   上草 義輝君     村田敬次郎君   太田 誠一君     山下 元利君   菊池福治郎君     武藤 嘉文君   谷垣 禎一君     村山 達雄君   保岡 興治君     山崎  拓君   山崎平八郎君     粕谷  茂君 同日  辞任         補欠選任   粕谷  茂君     山崎平八郎君   武藤 嘉文君     菊池福治郎君   村田敬次郎君     上草 義輝君   村山 達雄君     谷垣 禎一君   山崎  拓君     保岡 興治君   山下 元利君     太田 誠一君 同月六日  辞任         補欠選任   金子 満広君     寺前  巖君 同月二十日  辞任         補欠選任   上草 義輝君     住  栄作君   太田 誠一君     友納 武人君   菊池福治郎君     竹下  登君   谷垣 禎一君     染谷  誠君 同日  辞任         補欠選任   住  栄作君     上草 義輝君   染谷  誠君     谷垣 禎一君   竹下  登君     菊池福治郎君   友納 武人君     太田 誠一君 十二月十一日  辞任         補欠選任   佐々木良作君     木下敬之助君 同日  辞任         補欠選任   木下敬之助君     佐々木良作君     ───────────── 十二月九日  流通食品への毒物の混入等防止等に関する特別措置法案宮崎茂一君外五名提出、衆法第六号) 十月二十三日  アフリカなどへの食糧援助等に関する請願阿部未喜男君紹介)(第三四〇号)  同外一件(稲葉誠一紹介)(第三四一号)  同(坂上富男紹介)(第三四二号)  同(沢藤礼次郎紹介)(第三四三号)  同外一件(前島秀行紹介)(第三四四号)  同(安田修三紹介)(第三四五号)  同(小川国彦紹介)(第三七二号)  同(金子みつ紹介)(第三七三号)  同(川崎寛治紹介)(第三七四号)  同外一件(川俣健二郎紹介)(第三七五号)  同(新盛辰雄紹介)(第三七六号)  同(田並胤明君紹介)(第三七七号)  同(中村茂紹介)(第三七八号)  同(永井孝信紹介)(第三七九号)  同(村山喜一紹介)(第三八〇号)  同(大出俊紹介)(第四〇五号)  同(関山信之紹介)(第四〇六号)  同(水田稔紹介)(第四〇七号)  同(武藤山治紹介)(第四〇八号)  同(安井吉典紹介)(第四〇九号)  同(小川国彦紹介)(第四六二号)  同(野坂浩賢紹介)(第四六三号)  同(水田稔紹介)(第四六四号)  同(安井吉典紹介)(第四六五号)  同(串原義直紹介)(第四八三号)  同(沢田広紹介)(第四八四号)  同(関山信之紹介)(第四八五号)  同(中村茂紹介)(第四八六号)  同(前島秀行紹介)(第四八七号)  同(水田稔紹介)(第四八八号)  漁業者救済漁業政策に関する請願外一件(岡田利春紹介)(第四八二号) 同月三十日  水田利用再編次期対策等に関する請願上草義輝紹介)(第五一三号)  アフリカなどへの食糧援助等に関する請願外一件(石橋政嗣君紹介)(第五一四号)  同(田中恒利紹介)(第五一五号)  同(浜西鉄雄紹介)(第五一六号)  同(井上普方紹介)(第六二八号)  同(辻一彦紹介)(第六二九号)  二百海里体制の確立に関する請願菊池福治郎紹介)(第五九五号) 十一月十日  農産物輸入自由化反対等に関する請願寺前巖紹介)(第七二四号)  アフリカなどへの食糧援助等に関する請願辻一彦紹介)(第七二五号)  同外一件(中村正男紹介)(第七五九号)  同外一件(土井たか子紹介)(第八一一号)  二百海里漁業水域全面適用等に関する請願福島譲二紹介)(第七七八号) 同月十一日  農薬パラコートに関する請願外一件(近江巳記夫紹介)(第一〇〇八号)  農産物市場開放反対等に関する請願寺前巖紹介)(第一〇〇九号)  同(藤田スミ紹介)(第一〇一〇号) 同月十四日  農産物輸入自由化反対等に関する請願寺前巖紹介)(第一一〇二号)  同(藤田スミ紹介)(第一一〇三号)  同(寺前巖紹介)(第一一六五号)  同(藤田スミ紹介)(第一一六六号) 同月十七日  農業政策確立等に関する請願五十嵐広三紹介)(第一三一九号)  農薬パラコートに関する請願経塚幸夫紹介)(第一三二〇号)  同(正森成二君紹介)(第一三二一号) 同月十八日  土地改良事業等に関する請願坂口力紹介)(第一三八七号)  農業政策確立等に関する請願上草義輝紹介)(第一三八八号)  同(安井吉典紹介)(第一三八九号)  米作と食糧安定供給等に関する請願寺前巖紹介)(第一四三六号)  農産物市場開放反対等に関する請願寺前巖紹介)(第一四三七号) 同月十九日  農産物輸入自由化反対等に関する請願寺前巖紹介)(第一五八九号)  農産物市場開放反対等に関する請願寺前巖紹介)(第一五九〇号) 同月二十日  農薬輸出に関する請願経塚幸夫紹介)(第一八三一号)  農産物市場開放反対等に関する請願寺前巖紹介)(第一八三二号) 同月二十一日  アフリカなどへの食糧援助等に関する請願外一件(中西績介紹介)(第一九四八号)  農産物輸入自由化反対等に関する請願寺前巖紹介)(第一九四九号) 同月二十五日  農産物輸入自由化反対等に関する請願寺前巖紹介)(第二一一〇号)  農産物市場開放反対等に関する請願外一件(寺前巖紹介)(第二一一一号)  第七次漁港整備計画の促進及び漁港関係事業予算に関する請願戸塚進也紹介)(第二一八二号) は本委員会に付託された。     ───────────── 十一月五日  農林水産物市場開放阻止に関する陳情書外三件(第八六号)  水田利用再編次期対策に関する陳情書外九件(第八七号)  米穀政策に関する陳情書外一件(第八八号)  農業基盤整備推進に関する陳情書外一件(第八九号)  地域林業活性化国有林野事業の再建に関する陳情書外十一件(第九〇号)  松くい虫被害対策拡充強化に関する陳情書外一件(第九一号)  韓国漁船操業に関する陳情書外三件(第九二号)  竹島周辺漁業安全操業確保に関する陳情書(第九三号)  日朝民間漁業暫定合意書永続的延長に関する陳情書(第九四号)  北洋漁業救済対策に関する陳情書外一件(第九五号)  カツオ・マグロ漁業経営安定対策強化に関する陳情書(第九六号)  農水産業におけるバイオテクノロジー等技術研究開発に対する助成に関する陳情書(第九七号) 同月二十日  米輸入自由化反対に関する陳情書(第一七一号)  山林伐採に関する陳情書(第一七二号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件      ────◇─────
  2. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。月原茂皓君。
  3. 月原茂皓

    月原委員 それでは、トップバッター質問させていただきます。答弁の方は、適宜政府委員及び大臣の方で判断していただきまして適当な人にお願いしたい、このように思っております。  まず、せんだって農政審議会中間報告と申しますか、まだ最終的なものではないのでしょうが、報告がありました。私はそれを読んで、中心となるものは、生産性向上担い手育成ということに重点を置いている、このように思うわけでございますが、農林水産省としては、現在、生産性向上担い手育成というものに重点を置いた稲作中心とする水田農業確立についてどのような考えでおるのか、見解をお尋ねしたいと思います。
  4. 加藤輝雄

    加藤国務大臣 先月末、農政審議会から御報告をいただきました「二十一世紀へ向けての農政基本方向」におきましては、「農業生産性向上と合理的な農産物価格形成を目指して」という副題がついておりますが、この副題からもうかがえますように、国民の納得し得る価格での食糧安定供給に努めることを基本としまして、与えられた国土条件等の制約のもとで最大限の生産性向上を図る必要があると提言しております。  このため、御質問のように、我が国農業基幹であります水田農業中心としまして、生産性が高く、産業として自立し得る農業確立を目指すことが重要であり、経営規模拡大担い手育成等構造政策を強力に展開する必要があると考えております。政府といたしましても、この報告を踏まえ、生産者が将来に向けて明るい展望を持って農業生産にいそしめるよう、具体的な施策の展開に全力を傾注してまいる所存でございます。
  5. 月原茂皓

    月原委員 このような基本方向と今大臣お話しになられた考え方に基づいて、水田農業確立対策大綱、それに基づく施策が発表になったわけでございますが、今言われたようなことを確立するために、どういう点にさらに重点を置いて解決しようとしておるのか。特に私が思うのは流動化というか、要するにコスト削減の一番大きなものの一つは、私は規模拡大にあるのじゃないかと思います。その点をどういうふうな方法で達成しようとしているのか、そういうことについてお考えをお伺いしたいと思います。
  6. 加藤輝雄

    加藤国務大臣 経営規模拡大をやりますためにはいろいろな手段方法があるわけでございますが、まず、先般決定しました水田農業確立対策の特徴というのを御説明申し上げますと、四点あると思います。  すなわち、まず第一に、水田における稲作転作を通ずる生産性向上地域輪作農法確立といった水田農業全体の体質強化するということを中心に据えております。それから次は、生産者生産者団体主体的な取り組みを基礎に、生産者団体と行政とがいわば車の両輪のごとく一体的に推進するということでございます。そして三番目は、助成につきましては、従来の米から他作目への転換を重視した奨励措置というものにかえまして、構造政策を重視した水田農業体質強化を図るという観点に立って再編成することにしたわけであります。そして四番目は、転作等目標面積の配分に当たっては、将来とも我が国農業稲作生産を担う地域担い手層において米生産の大宗が担われるように配慮することとしたこと等であります。  二千年の歴史を有する水稲を中心とした我が国農業について、その生産構造転換することは一朝一夕には実現しない難しいことではありますが、本対策の着実かつ的確な推進こそが二十一世紀を展望して農業を発展させていくのに不可欠な前提であります。農林水産省としましても、施策の焦点をこの点に集中しまして、対策の着実な実施を図っていく所存であります。そういう中におきまして、生産規模拡大というのは重要なポイントになってくるわけでございまして、あらゆる方法手段を講じましてこれを実現していきたいと考えておるところでございます。
  7. 月原茂皓

    月原委員 非常に大きな曲がり角である。今申されたように基本方向も出、そして画期的な水田農業確立対策及び食管制度運営改善大綱をつくり、それに基づいて今からスタートするわけでございますが、今お話しのように非常に大きな転換であり、それが円滑に行われるように一層の配慮をお願いしたいと思います。  続きまして、先般、日韓の間で水産協議が行われて、一応一年間継続するというお話でございますが、今後、農水省としてはどういうふうな態度で臨んでいくのか。そして、全国漁業協同組合連合会大会等に出ましても、この人たちの強い要望として、韓国に対して二百海里の適用をすべきである、こういうようなことが出ておるわけです。こういうものも含めまして、これは非常に微妙な問題かと思うのですが、今までの経緯、そして今後の考え方を説明していただきたい、このように思うわけであります。
  8. 佐竹五六

    佐竹政府委員 日韓漁業関係につきましては、日韓漁業協定、それから北海道沖済州道沖自主規制措置によって規律されているわけでございますが、この北海道沖済州道沖自主規制措置が本年の十月末で失効することになったわけでございます。そこで七月以来、庁長長官会談も含めて七回の実務者協議を続けてまいったわけでございますが、北海道沖韓国船操業について、私どもは、最小限の要求として国内規制措置を守ってもらいたい、それから日本船が減船している以上韓国船漁獲努力量を削減してほしいということを強く申し入れたわけでございます。韓国側は、永久に北海道沖操業するつもりはないけれども期間を明示して数年のうちに第二の国内規制措置、つまりオッターラインの外に撤退することはできないということで決裂したわけでございます。ただ、韓国側も引き続き協議必要性は認めておりますので協議を続けることにいたしまして、協議継続期間中にいろいろトラブルが起きることは避けなければならないだろうということで意見が一致いたしましたので、協議継続している間は従来の自主規制措置延長しようということにしたわけでございます。ただ、これも無期限に長くだらだらと続けるわけにはいきませんものですから、一応一年を限りということにして、結果的には一年間延長されたと同じような格好になったわけでございます。協議継続主体でございまして、一年間延長がまず決まったわけではございません。  それから、それでは今後どういうふうに持っていくつもりか、特に全漁連の二百海里即時適用決議をどういうふうに生かしていくつもりかという御質問でございます。私どもは、日韓それぞれどういうふうな操業をすればお互いに我慢し合えるかという内容面を詰めることを主体に、特に十月末失効を控えて北海道沖中心に議論したわけでございますが、実は北海道沖に限らず西日本海域でも、韓国船操業については沿岸漁業者の不満が非常に高まっているわけでございます。考えてみますと、日韓漁業協定が締結されてから二十年経過しているわけでございまして、二十年間に両国漁業を取り巻く事情は全く変わってしまったわけでございます。日韓漁業協定日本漁船韓国周辺操業することを念頭に置いてできているわけでございますが、今や事態は逆転しておりまして、このような情勢の変化を踏まえて、西日本海域北海道海域を含めて日韓漁業関係の全面的な見直しをしよう、さらにまた、日韓漁業協定は既に二十年たって時代に適応しなくなったわけであるから、新しい漁業秩序をつくろうということを強く提案いたしまして、いわゆる枠組み問題も含めて、韓国側と今後交渉していくことを考えているわけでございます。  この場合に、二百海里の即時適用というのが非常に有力な手段であることは私どもも否定いたしません。しかしながら、一方、先生も御承知のように日韓漁業協定が既に存在しているわけでございまして、日韓漁業協定が存在したままで二百海里を適用させることは論理的に不可能でございます。したがって、これを何らかの形で解消しなければならぬ。解消するためには、現在、日韓漁業協定を廃止しますと直ちに韓国側で言う平和ライン李ラインが復活する、こういう構成になっているようでございまして、次にどういう漁業秩序をつくり上げるかという見通しなしにこれを廃止いたしますと、また拿捕事件がすぐに始まるわけでございます。そこで、私どもとしては、日韓両国間でぎりぎり我慢し合える漁業秩序はどういうふうな形になるかということについてまずその交渉を詰めて、その結果、二百海里をお互いに引き合うという方法もあろうかと思います。それからまた、あるいは日韓漁業協定を改定して取り締まり権強化等をする、そして北海道沖にもこれを適用する方法もあろうかと思いますが、具体的提案韓国側に対してできるだけ早い時期にしなければならないかというふうに考えているわけでございます。現在、外務省ともその辺の意見調整を図っている段階でございます。
  9. 月原茂皓

    月原委員 今のお話でわかりましたが、私はここでお願いしておきたいことは、精力的に継続実施するのだ、そうするとまたそのうちに一年がくる、その直前になってまた慌てる、こういうことはないとは思うのですが、多くの場合そういうパターンがあるものですから、意欲的に取り組んでいただくとともに、日本漁業者が非常に関心を持っておるものだけに、ある限度内ではございましょうが、今こういうような状態だ、そして今お話しのように漁業協定がある、それを廃止していくとまた李ラインの問題がある、拿捕が出る、そういうようなことであるからというようなことも十分話していると思いますが、皆さんの交渉経緯を適宜関係者に説明して理解を求めておいていただかないと、爆発的にいろいろな意見が出てくるおそれがあると思いますので、その点御配慮をお願いしたい、このように思います。  続きまして、米の輸入問題、これは我々にとっては考えられないとっぴな話だな、こう思うのです。向こうの国の事情としていろいろな理由があったと思うのですが、その辺はどういうような背景で起こっているのか。それからさらに、ある新聞のインタビューに載っておるのでは、来年六月三十日までと期限を切って日本改革案を出すよう交渉していく方針を示したというようなことを向こう全米精米業者協会の副会長さんが日本に来てお話しになった。これはちょっと古い新聞かもわからぬのですが、そういうものが出ておるのです。そういう点についてお尋ねしたい。  繰り返しますが、向こうが出してきた自由化の申し立ての背景いかんと、それから、今後今言ったようなタイムスケジュールがあるとするならば農林省としてはどのように対処しておるか、この問題についてどういう考えを持っておるかということです。
  10. 後藤康夫

    後藤政府委員 今回のRMAによります提訴の経済的な背景ということでございますが、まず第一に、八〇年代に入りましてから世界の米の生産量が増大をいたします中で、開発途上国食糧増産政策の成功というようなこともありまして、貿易量は逆に縮小してまいっております。そういう中で、アメリカタイ、豪州といった特定の輸出国が非常に激しい輸出競争を行っているという現状にございまして、特にアメリカにつきましては、輸出量が七〇年代後半には大体タイと同じぐらいの水準であったわけでございますけれどもアメリカ米価格国際価格に比べて割高であるというようなこと等によりまして、精米ベースでございますが、八五年にはタイ国の約半分の二百万トンを切りまして百九十万トンに減少し、国際市場におけるシェアを縮小してきたというようなことがございます。そういったことも背景にいたしまして、ことしの四月から米につきましてマーケティングローンという支持制度がとられ、これによりまして財政負担はふえますけれども米国産米の国際競争力が高まった、これを武器にしてひとつ国際市場シェアの回復に向かっていこうという意図を業界が持っていたということが背景に挙げられようかと思います。  それから、この提訴の問題につきましては、御案内のとおり米国政府却下決定をいたしたわけでございまして、中間選挙前にアメリカの行政府の中でもいろいろ議論があったようでございますけれども、今回の提訴については却下ということで、この点につきましては私どもも一応評価ができるものと考えておりますが、同時に、我が国の米の問題をガットの新ラウンドの場で取り上げる意向の表明といわば抱き合わせの形での決定ということになっておりまして、そういう点におきましては今後に大きな問題を残したものと考えております。  米につきましては、日本国民の主食でございますし、それから日本農業全体の基幹であり、また基盤をなすものでございます。また水田稲作は、国土自然環境の保全あるいは我が国の伝統的な文化の形成とも深くかかわっておりますし、今官民挙げて米の生産性向上需給調整に取り組んでいるさなかでもございます。そして国会でも、米の自給につきましては両院で御決議もいただいているということでございます。さらに、米の貿易制度はガット上容認された国家貿易制度であるというように私ども考えておるところでございまして、ガットの新ラウンドにつきましては、宣言が採択をされまして、今いろいろ取り進め方について多数国間で議論がなされ、これから決定をされていく問題でございますけれども、先ほど申し上げましたような基本的な立場に立ちまして、米国側の理解をさらに深めるように、私どもといたしましては全力を傾けまして今後の対処に誤りなきを期してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  11. 月原茂皓

    月原委員 今のお話でわかりましたが、話によればアメリカの方が、米、米というより農業関係が今まで非常に黒字だったのが赤字になってきた、そして小さいところを切り捨ててであるけれども、大規模なものについては大変大きな生産力を潜在的に持ってきておる、こういうところから今後いろいろ問題が出てくると思うのです。何かの資料に、将来的には世界全体でいえば人口もふえてくる、食糧の問題というのは今でこそ余剰という問題があるけれども、長期的に見れば基盤を持っていなければならない。まさに農林省が今考えられておる生産性向上、そして担い手育成してみんなが合理的に納得するような価格で提供できるようなものを目指して進んでいるわけでございますから、その基盤をつくる過程において米国の方から大きな力によって乱されないように、けんかするということじゃなくて、よく理解してもらいながら今持っておられる方針で強く進んでいただきたい、このように思うわけであります。  さて、円高差益の問題でございますが、これは農水省も頭の痛いところだと思うのです。というのは、百貨店等ではウイスキーは下がっておるとか、いろいろ目に見える輸入品については下がっておるけれども、やはり実感として円高になって非常によかったなというような印象は国民にない。産業界がこの問題に直面して急速に大変困難な状態に陥っているだけに、国民全体としては円高というのはどうなっているのだという空気が非常に強い。これに対しては、農水省関係のものそのものの円高メリットというものが国民に一番大きく影響する、そういうことで共感を呼ぶのに一番大きな要素だと思うだけに、今どのような方策を講じておられるのか、そしてどのような成果が出ておるのか、一、二の例をとりながらでも結構でございますが、御説明願いたいと思います。
  12. 谷野陽

    ○谷野政府委員 ただいま御指摘がございましたように、円高になりますと、国際競争力という観点から申しますと大変厳しい状況が出てくるわけでございますが、その反面、消費財あるいは農業生産資材の面におきましては円高のメリットというものが当然出るべき性格であるわけでございます。これにつきましては、そういう特定の物資につきまして、ある輸入業者でございますとか流通段階で吸収されることなく、市場メカニズムを通じまして広く国民一般の利益に資していくというようにすることが極めて重要なわけでございます。  私どもといたしましては、消費財につきましては、一月置きぐらいでございますが、既にことしの春以来三回の調査をいたしましてこれを公表いたしております。農林水産関係の物資では十九品目の調査をしておるわけでございますけれども、そのうち十七品目、具体的にはマグロでございますとかエビというような水産物、あるいはバナナその他の果物、それから紅茶、食用油等につきましては、円高のメリットが相応のレベルで消費者の皆様のところに届いておるという結果になっておるわけでございます。もちろん、中には海外の市場が大変逼迫をいたしまして、タコなどにつきましては値段が十分下がり切らない、あるいはインスタントコーヒーのように、下がってしかるべきではございますが、なおその浸透が不十分であるものがあるわけでございますけれども、今後、これらにつきましてもさらに十分監視の目を届かしてまいりたいというふうに考えております。  また、農業関係の資材の点につきましては、配合飼料につきまして昭和六十年十月以降五回の価格改定をやっておりまして、合計いたしますと二一・八%の引き下げを行ったわけでございます。また肥料につきましても、原料の石油系の製品が値下がりをいたしておりますので、昭和六十一肥料年度の価格につきましては、全体で一〇・三%の引き下げというようなことを行っておるわけでございます。  このように、消費財あるいは農業生産資材の双方にわたりまして、それぞれの性格に応じましてその効果が末端に浸透するように努力をしてきておりますが、今後ともそのような方向で、円高につきましてのそういう厳しい側面のほかに、メリットの面につきましても十分浸透が図られるように努めてまいりたいというふうに考えております。
  13. 月原茂皓

    月原委員 今終わりのところで資材関係の話が出てまいりました。これはなかなか答弁しにくい問題かと思いますが、あるところでは、農産物のことについては政府みずからが差益還元を阻んでいるというような厳しい表現もあるわけであります。ですから、新聞等にも小麦の問題がどうだとか肉の問題がどうだとかということがありますが、こういうのが非常にシンボリックに取り上げられているだけに、政府としてこういう問題についても真剣に取り組んでいただきたい、このように私は思うわけであります。  時間があと少しになりましたので最後に質問したいのですが、私は農林水産委員会に属しておるから言うわけではありませんが、少し前ですが、行政管理庁が農協に対していろいろ監察するのだというような話があって、これは一部軌道修正されたようでありますが、これはそういうところがやる話ではない、そういうことを言われて農林水産省が行動を起こしたとすれば、伝統ある農林水産省としては本当に嘆かわしい、私は期待をしておるだけにそう思うわけであります。現在、世界の情勢はいろいろなものが変わっていっておる。そういう中にあって農水省として、農協について、こういう点についてはお互いに話し合いながらよりよき農業のために改善をしていきたいということであれば、それにはどういうような問題点があるのか、それについてどういうふうに取り組もうとしているのか、こういうことをお伺いして私の質問を終わりたい、このように思っております。
  14. 眞木秀郎

    ○眞木政府委員 お答え申し上げます。  御案内のとおり、農協は農業者の自主的な協同組織でございまして、組合員農業者の営農あるいは生活の安定向上のために、農協法に基づきまして各般の事業を行っておるわけでございますが、最近、事業運営あるいは組織活動のあり方等につきまして、いろいろな意見なり批判が出ているということは承知しているわけでございます。このような中にありまして、系統自身におきましても、営農指導事業の充実など事業活動の強化に取り組んでおりますし、また、先般組織決定をいたしました新しい農政運動方針におきましても、これまでの価格問題あるいは米対策等に偏することなく、今後は構造政策に力点を置いた対策を進めるということにしたと聞いております。最近の農業をめぐります諸情勢が一段と厳しさを増しております中で、農協があくまでも自主的な協同組織として農業者のニーズにより一層適切にこたえて、国、農業の発展あるいは農家の生活の安定のために責任と自主性を持って取り組んでいくように、いろいろな問題があろうと思いますけれども、我々としてもしっかりと今後とも指導をしてまいりたい、このように考えております。
  15. 月原茂皓

    月原委員 最後に。非常に大きな曲がり角に来ている、ここ一、二年が農水省にとって、日本農業にとって一番大事なときじゃないかと私は思います。それだけに、そしてまた米国との関係あるいは世界の各国との関係についても、こちらの方から積極的に当たって理解を求めながらいかなければならないことでもあると思います。そういう意味で、農水大臣以下皆さんの今後の御努力をお願いいたしまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  16. 玉沢徳一郎

  17. 串原義直

    ○串原委員 まず、私は大臣に伺いたいのでございますが、ここに私たちが強く関心を持たなければならぬ資料があります。これは農林省が作成してくださったものでありますが、「主要国の穀物自給率の推移」であります。この中で私が特に注目しておりますのはイギリスの推移でありますが、かつて第二次世界大戦中に食糧自給率、穀物自給率が四〇%前後に低下をして苦労したイギリスが、昭和五十年、つまり一九七五年の穀物自給率が六四%、それが八二年には一一一%に伸びた。私はこれは驚くべきと表現してもいい数字だろうと思う。さらに、先進国という立場の中でこれを見ていきますと、最初に申し上げるのは一九七五年、後で申し上げるのは八二年でありますが、この先進諸国では、西ドイツは一九七五年の八〇%が九五%に伸びた、フランスは一五二%が一七九%に伸びた、アメリカは一七四%が一八三%に伸びている、カナダは一七一%が二二二%に伸びているのであります。この先進諸国と言われる国の中で、我が日本だけが一九七五年の四〇%から今日三〇%に低下をしてきている。私はある意味で重大な数字を示しているのではないかというふうに思います。  実は、私は先ごろ朝鮮民主主義人民共和国を訪問いたしました。寸土も大切にいたしまして、農業振興に大変力を入れておられました。農業問題を話し合っております中で、ある幹部はこう言ったのであります。「日本では穀物自給率三〇%と聞いておりますが、近ごろ、なおアメリカから米を買おうという動きがあると聞いております。大丈夫ですか。私たちは食糧確保は国家存立の基本考えております。米を初め穀物はおよそ五百万トン程度あれば我が国は自給できるのでありますが、今一千万トン確保できるまでになりました。さらに千五百万トンまで高めようと考えております。食糧を他国に依存したら国家の自主性は失われます。食糧はいつまでも安心して輸入できるものでしょうか。」ずばり痛いところを突かれました私は、お話しのように我が国はいい方向ではありません、食糧を外国に依存するという姿勢は間違いです、こう答えたのであります。この質問大臣がされたとしたらどうお答えになりますか。  そこで、大臣は十一月二十八日、全国農業委員会会長大会の祝辞で、ここに祝辞は書いて持ってきているけれども、この祝辞を読んでもありきたりの内容でありますからこれはこれとしてここに置いておいて、私の率直な意見を申し述べたいと思う、こう前置きしながらごあいさつをなさいました。その内容の中でこう言われたのです。瑞穂の国と言われてきた日本が今世界で最も多い農産物輸入国となり、穀物自給率が三〇%まで落ちてしまいました、これは大変なことです、こういうあいさつをされました。このほか、激励を兼ねまして二点ほど触れられたのでありますが、私はまことに立派な内容であったというふうに今も記憶をいたしております。つまり、大臣は、穀物自給率三〇%という現状は好ましくないと常々考えていらっしゃることをこの会長大会で披瀝なさったのじゃないか、こう私は受けとめました。  そこで、先ほどの先進諸国の穀物自給率の推移、それから農業委員会会長大会の祝辞でもおっしゃったそういう立場を踏まえ、私が耳にしてきた社会主義国家であります北朝鮮の幹部の意見等も踏まえて、穀物の確保、食糧の確保ということに対する大臣の所信をここで改めてきちっと伺いたいと私は思います。
  18. 加藤輝雄

    加藤国務大臣 串原先生が今おっしゃいましたが、そのときに、私たちは今胸に手を当ててこの問題を考えなくてはならぬのだ、こういう表現もいたしたと思うわけでありますし、先進国の中で最低の自給率というのも相当強く言ったと思うのであります。私が申し上げた趣旨というのは、我が国が世界最大の農林水産物の輸入国であるということ、我が国の穀物自給率は三〇%で、先進国の中で最低であるということ等を訴え、我が国食糧自給の現状についての事実をまず申し述べたつもりでございます。  私としましては、限られた国土のもとで国民が豊かな食生活を営むためには、飼料穀物等を中心にある程度輸入に依存せざるを得ない面もありますが、この間、十一月二十八日にいただきました農政審の報告にもございますように、食料の需給については、「中長期的にはなお不安定要因を抱えていることに留意し、与えられた国土条件等の制約の下で最大限の生産性向上を図り国内の供給力の確保に努める」、また農産物の供給については、「米等現に国内で自給する体制が確立されているものについては一層の生産性向上を図ることによりその供給体制を維持する」一方、「国内生産と併せて輸入によりその供給の安定を図っているものについては、国内生産について一層の生産性向上によるコストダウンに努めるとともに、安定的な輸入を確保すること。」というような問題等も念頭に置きながら申したわけでございまして、何といいましても、それぞれの国がそれぞれの国の主権を維持していくためには、国民の主食を中心としてしっかりした考え方、しっかりした自給対策を持っていかなくてはならないと考えております。
  19. 串原義直

    ○串原委員 つまり大臣、あなたは日本の現状の穀物自給率というものは低い、できるならば一%でも二%でも上げたい、こうお考えになっているというふうに受けとめたいのですが、いかがですか。
  20. 加藤輝雄

    加藤国務大臣 ただし、前提条件があります。より安く、より質のいいものでということ、あるいは内外価格差を無視したということはいけないのでありますが、自給率を上げたいということは、これは政治家、国民全体の願いであると私は思っております。
  21. 串原義直

    ○串原委員 だれでもいいものを安くということを望んでいることは、これは大臣、当然のことだと私どもも受けとめているわけですね。しかしそれには限度があります。無理なことはできようはずがない。そこで、日本の穀物自給率、食糧自給率を高めてまいりますためには、そこで汗を流さなければならぬ重大な課題が存在をする。そういう意味で、私は今後一層大臣の御健闘を期待するわけでございますし、今御答弁のように、できる限り自給率を高めたいというその立場に立って一層頑張っていただきますように期待をしながら、以下、質問を続けていきたいというふうに思うのでございます。  まず、これも大臣に伺いたいのでございますが、アメリカ全米精米業者協会、RMAは去る九月、アメリカ通商代表部に対して、日本が米の輸入を制限しているのは不当であるといたしまして、通商法三〇一条に基づき輸入制限を撤廃するように求め、拒否する場合は報復措置をとるように要求した。この要求は一応却下されたようでありますけれども、通商代表部はガットの新ラウンドで改めて協議することとしているというふうに伝えられております。大臣は、このガットの新ラウンドで米問題を取り上げるというアメリカの姿勢をどう受けとめ、どう対応されるつもりですか。
  22. 加藤輝雄

    加藤国務大臣 まず、我が国食管制度並びに米政策というものは、私は、ガット上容認された国家貿易制度であるという考え方を持っております。したがいまして、我が国の米の問題をガット新ラウンドの場において取り上げたいという米国側の意向については、我が国としては、ガット新ラウンドにおいて農業貿易に関する新たなルールづくり等に積極的に参加していく考えではありますが、交渉の具体的内容については、今後多数国間で決定していく問題であると考えております。そして、先ほど月原先生のお尋ねに長官からもお答えいたさせましたが、私としては国会における決議というものもありますし、それからまた、米は一〇〇%国内で自給という基本方針のもとに米国側にさらに理解を深めていくように全力を傾注してまいり、今後の対処について誤りなきを期してまいりたいと考えておるところでございます。
  23. 串原義直

    ○串原委員 大臣、つまり今の御答弁を要約するならば、新ラウンドで協議をするというアメリカの姿勢については賛成いたしません、こういうことでしょう。
  24. 加藤輝雄

    加藤国務大臣 ガットの新ルールづくりには積極的に、前向きに参加いたしますが、米の問題をそこでとやかくというのはおかしい、多数国間でこういう問題は決める。御存じのように、ガットの貿易に関する新しいルールづくりの主なテーマになるのは世界共通の問題、そしてそれぞれの国が受け入れられるぎりぎりの実効性のあるものを模索していくわけでございます。特定の品目を挙げてどうのこうのという場所ではないと考えております。
  25. 串原義直

    ○串原委員 だから、そのルールづくりということになりますと別な話になるだろうと私は理解いたしますが、アメリカが米の問題を新ラウンドで現状の中でストレートに持ち上げていくということについてはちょっと賛成するわけにはいきません、こういうことなんでしょう。いかがですか、大臣
  26. 加藤輝雄

    加藤国務大臣 そうでございます。
  27. 串原義直

    ○串原委員 そこで、大臣にもう一点、確認の意味も含めまして伺っておくわけでありますけれども、この十月の下旬、アメリカ通商代表部のヤイター代表は米市場開放につきましてこう言っているというのであります。それは、「日本政府が来年夏までにこの問題について「前向き」に対応しない場合は、「問題を再検討する」と述べ、再提訴受理もあり得るとの姿勢を示した。」こういうのでありまして、さらにこの報道を見ますると、「「米国のコメ政策も間接的補助金に依存し過ぎており、欠点がある。日米ともにコメ政策は決していばれたものではない」と述べ、米国もコメ問題をこの場で話し合う用意があることを明らかにした。」この場というのは新ラウンドというふうに受けとめますが、「その上で、交渉開始には日本政府も合意、署名していることを指摘、来年夏までに日本政府が「前向き」に対応するよう求めた。」こう報道されているのでございます。そこで、この合意、署名の内容というのは何なのかということと、来年夏までに云々ということに対しては、今大臣の答弁されたような姿勢の中で理解するならば、来年夏までに考えます、前進をいたしますなんていうようなことは考えておりません、こういうことだろうと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  28. 加藤輝雄

    加藤国務大臣 米国通商代表部がRMAの提訴却下した後、私は農林大臣談話を出しております。その中で、今おっしゃったようないかなる問題もないということをはっきり申し上げております。
  29. 串原義直

    ○串原委員 それでは次に進みまして、食糧管理制度につきまして伺います。  私、まず初めに、基本的な問題でありますから大臣に一言お答えをいただいて進みますが、食管制度は、生産者はもちろん、むしろ消費者のために大きな役割を持っていると考えるのでありますが、食糧管理制度は今後とも堅持してまいる決意でございますか。
  30. 加藤輝雄

    加藤国務大臣 米は日本国民の主食であり、我が国農業基幹をなすものであることはたびたび申し上げてきております。また、水田稲作国土自然環境の保全上不可欠の役割を果たしているのみならず、我が国の伝統的文化の形成にも深く結びついております等々、今まで当委員会並びに関係委員会でも私申し上げてきておるわけでございますが、極めて重要な作物でございまして、国内で必要とされるものについては全量を国内生産により供給することとして国民生活の安定を図っていく。  そこで、具体的なお答えになるわけでございますが、このような米についての国内自給方針のもとで、食管制度については、政府が責任を持って米を管理することによって生産者に対してはその再生産を確保し、また消費者に対しては安定的にその供給責任を果たすという制度の基本は維持しつつ、広く国民各界各層の理解と協力が得られるよう適切な運用、改善を図り、より一層国民の理解を求めていきたいと考えておるところでございます。
  31. 串原義直

    ○串原委員 今お答えの中で、食糧管理制度の基本については堅持してまいります、こういう話でございましたが、時によりますとその基本ということにつきまして、言葉の上もありましょうが、人によって若干言い方が違う場合があります。でありますから、食糧管理制度の基本とは何か、大事な時期にありますだけに、私はここで改めてもう一度伺って確認しておきたいと思うのでございます。いかがでしょう。
  32. 加藤輝雄

    加藤国務大臣 実は、私も食管制度基本と言ったり、あるときは根幹と言ったりいたしておりまして、これは一本にした方がいいのかどうか、こう思っておりましたが、要は、農民に対して再生産を保障する、消費者に対して安定的に主食である米を供給していくという体制、制度ということでございます。ただ、ここをはっきりしておきまして、あとはいろいろな応用は出てくると思うわけであります。
  33. 串原義直

    ○串原委員 言葉の若干の言い方、あやはございましょう。それは理解をいたしますが、つまり、食糧管理制度の根幹については守ってまいりますという従来の政府の答弁、その根幹については政府の直接管理が一つである、全量買い入れをやって間違いない管理をすることが一つでございます等々の根幹についての御意見がございましたが、従来から言われてまいりました食糧管理制度の根幹、基本、私は根幹でも基本でもそれほどのことはないと思っておるのでございますが、これは加藤六月大臣も変わりありません、こういうことなんでございますね。
  34. 加藤輝雄

    加藤国務大臣 根幹は維持する、あるいは基本は維持するということを申しておるのであります。ただ、先ほど申し上げましたような需給動向でありますとか、生産面あるいは販売面等においての市場原理、競争原理のようなものは導入していきますよということは基本の周辺にあるものであると考えております。
  35. 串原義直

    ○串原委員 大臣の言わんとすることはこれから私、詰めてまいりたいと思うのでございます。つまりは、従来この委員会政府が答弁をされてきた食糧管理制度を守っていく根幹については同じレールでございます、同じことでございます、こういう理解の上に立っていいわけでしょう、大臣
  36. 加藤輝雄

    加藤国務大臣 レールと言われるとすぐ列車を思い出して、真っすぐに一直線しか行かないのでありますが、そこら辺は、基本と根幹とは若干意味が違うのじゃないかと思います。要はその機能が十二分に発揮されるように、食管法のねらうところが十二分に発揮していかれるように、そして硬直化したりあるいはいろいろな弊害が出ておる分は、国民各界各層の理解を得るためには直していきますよということは御理解いただきたいと思います。
  37. 串原義直

    ○串原委員 よく言われますところの枝葉という話がございますが、これはまさに枝葉の段階では若干の変更もあるでしょうし、修正もあるでございましょう。私が申し上げますのは、繰り返すようで恐縮ですけれども、幹は変えませんね、こういうことを言っているわけなんです。これは非常に大事なところなんです。葉っぱが一つや二つ落ちるとか、また新しく生えるとかという話もあるでしょうが、幹は変わりませんよ、このことを確認しているところです。
  38. 加藤輝雄

    加藤国務大臣 おっしゃるとおりでございます。
  39. 串原義直

    ○串原委員 そのことを確認させていただいた上で、以下、具体的なことで伺ってまいります。  水田農業確立対策に関連をいたしまして、農林省は、食糧管理制度の運営改善につきまして公表をいたしました。今私ちょっと枝葉という話をいたしましたが、これはまさに葉っぱの部門というようなことでございましょうか、公表されました。これを見ると、葉っぱとはいってもなかなかこれは問題点が多い、心配点が多いと思いますので、以下伺ってまいります。  まず、「運営改善」の第一項目の「買入れ、売却面による対応として、「超過米等の発生により政府米が売却不振となり政府在庫が累積し、売却可能な限度を超える在庫状態となることを回避するため、買入れ・売却(積極売却)両面において事態に応じた対応を図るものとする。」とありますが、これは運用の仕方によっては私は非常に心配をします。これは具体的にどういうことをなさるのでしょうか。
  40. 後藤康夫

    後藤政府委員 私ども食糧管理制度の運営に当たりまして、三度の過剰の発生を絶対に防止しなければいけない、そしてまた、五十九年の端境期に需給のゆとりが非常に少なくなったことがございますが、そういった事態が起きないように、需給についてはゆとりを持った需給ということで考えていく、いわば、その二つの谷間に落ち込まないように尾根道を歩いていくということでやってまいっておるわけでございますが、御案内のとおり、ことしは三年続きの豊作でございます。局面といたしましては、やはり三度の過剰米処理というようなことが起きないことに留意しなければいけない局面にあるわけでございます。  こういったことから、水田農業確立対策の円滑な推進とあわせまして、過去の過剰米が五百万トン、六百万トンと積み上がりましたときの経過というものを調べてまいりますと、豊作が続く、そしてその中で転作面での対応がなかなか機敏にできない面もあったということに加えまして、政府売却の面におきまして超過米と自主流通米を優先させて流通させる、いわば消極的にといいますか、政府売却を抑えて過剰在庫を積み上げていったという経過がございます。そういう消極的な売却ではなくて、積極的という言葉がちょっと御心配を起こさせておるようにも私ただいま伺いましたけれども、私ども考え方は、計画的にきちんきちんと売却をいたしてまいるということと、それから、食糧の回転備蓄として持ち越し在庫を売却していきます場合の限度というものがおのずからございます。私ども、大体百五十万トン程度というふうに考えておりますが、それを超えて在庫が増大をするというふうに見込まれました場合には、その超える分につきまして集荷団体、生産者団体に自主的な調整保管ということをやっていただきまして、月々約三十万トン売却をしております政府米の世界だけではなくて、そのほかに二十四、五万トンの自主流通米の流通というものがございます。そういう五十四、五万トンの口径の太い水道管と申しますか、そういうものの中で豊作が続いた場合の天の恵みを円滑に売却をし、流通させていくということを通じて三度の過剰の発生というものをぜひとも回避をしたい、こういうことを考えておるわけでございます。
  41. 串原義直

    ○串原委員 これは詳しく検討してみなければ私もわかりませんが、今の長官の御答弁によりますとなかなか難しいなという感じを持つわけですよ。政府の米と自主流通米、これとの関連の中で買い入れの調整、時によれば売却も、積極売却という言葉は別といたしまして今のような姿勢でやるとするならば、集荷団体等々との連絡協調を図るための何らかの話し合いの機関みたいなものがないとできないのではないか。その辺はどうお考えなんですか。
  42. 後藤康夫

    後藤政府委員 直接的には私ども食糧庁と、あと集荷団体ということになりますと全農と全集連というのがございます。串原先生御指摘のとおり、来年の十月に見込まれます持ち越し在庫百九十万トンというものを主食用として売ってまいるということは、これは正直に言いましてなかなか容易なことではないというふうに思っておりますし、全農等におかれましてもこれは初めての経験でございます。関係団体と十分協議をいたしまして、お互いに協調を図りながら事柄を進めてまいりたいという点につきましては、私どもも串原先生と全く同様に考えております。今までも四カ月単位の自主流通計画というようなものでいろいろ御相談をしておりましたけれども、もっともっときめ細かく協議をしながらやってまいる必要があろうというふうに私ども考えております。
  43. 串原義直

    ○串原委員 今お話もありましたが、集荷団体等によりますところの自主流通米の調整保管ですね、今の御答弁をいただきました内容も含めて、このことについてはそれぞれの民間団体と、あなたの答弁をされたような方向で行きましょうということで今のところ話し合いがついているわけなんですか。ついているということであるならば、その場合の保管料、米の価格の問題等々はどういうことになるわけですか。
  44. 後藤康夫

    後藤政府委員 まず、先ほどお答えを申し上げましたように、関係団体と私どもの間で、三度の過剰が発生をいたしました場合には食糧管理制度が危殆に瀕する、適正な運営が期しがたくなるだけではなくて、昭和四十年代に一度、昭和五十年代に一度、それぞれ金利、倉敷も含めますと一兆円、二兆円、合計いたしますと三兆円、農林省の一年分の丸々の予算に該当するぐらいの経費を投じまして過剰米の処理をいたしましたが、これで六十年代に三度の過剰が出るというようなことになりますと、十年に一度ずつきちんきちんと膨大な過剰在庫が出るような制度の仕組みはおかしいではないか、あるいは、私ども米の自給の基本方針を堅持してまいりたいというふうに思っておりますけれども、世論の一部から、そういったことであればもう少し輸入も含めて需給調整機能を考えろというような声も出てきかねないというような心配もございます。そういうことで、三度の過剰を何としても回避しなければいけないということにつきましては完全な意見の一致を見ておりまして、生産者団体、集荷団体におかれましても、組織の合意を前提にして、この自主調整保管の問題につきましては避けて通れないということで取り組もうということで、今組織の下部にもおろしていろいろ御議論をいただいているということでございます。あと、政府管理米の売り方とも関連をいたしまして、集荷団体がどういうふうな売却の仕方をしていくのかというふうなことにつきましても、今関係団体の内部で御検討をいただいておるところでございます。  それから、販売価格の問題でございますが、これは自主流通米なり超過米の世界でございますと、販売業者と指定法人と申しますか、集荷団体との価格協議で決まるわけでございますが、この自主調整保管と申しますのは、仮にそれを行わないといたしました場合、つまり、来年の九月末までにこの作況一〇五の天の恵みを全部今までのような形で売り切ろうといたしました場合には、先生も御案内のとおり、ことしの春に二十二万トン、自主流通米につきまして特別販売ということで、一俵二千円の値引きというようなことで販売をした例がございます。需給事情からいたしますと、恐らくこれ以上の大幅な値引きをせざるを得ないような状況にもなる心配がございます。むしろ、自主調整保管ということで、販売期間を長くしながら計画的に売っていくということは生産者団体にとってもプラスになる要素があるということもあわせて御理解いただきながら、今関係団体の中で具体的にどう取り組むかということについての御検討をいただいておる、こういう段階でございます。
  45. 串原義直

    ○串原委員 今の集荷団体等によりますところの調整保管については、関連する問題も若干出てくるでございましょうが、それを含めて関係団体で協議中であります、こういう答弁でございましたが、あなた方の方では関係団体に対して、その協議をいただいて答えをいただくのはこのころまでにお願いできませんかという意味の話をされていらっしゃると思う。この答えが出ることをいつごろとめどをつけているわけですか。
  46. 後藤康夫

    後藤政府委員 これはやはりできるだけ早くということでお願いをいたしております。ただ、要するに具体的にどういうふうに取り組んでいただくかということにつきましても、御案内のとおりその大綱的なものをどうするか、あるいは細部についてどうしていくかという大筋から細かいところまでございまして、細かいところにつきましては多少検討に時間を要する部分もあろうかと思いますけれども、できるだけ早期に内容を固めていただきまして、それに従ってなるべく前広に事態を見通しながら対応していくということが望ましいことだと考えております。
  47. 串原義直

    ○串原委員 今御答弁の中にもたびたび出てまいりましたが、過剰在庫というお話がありました。この過剰在庫という判断については私とあなたの見解も随分開きがあると思う。時間がかかりますからここでは数字を挙げて論議はいたしませんが、実はあるんです。今農林省、食糧庁で考えている過剰在庫の限界、この程度から上は過剰在庫でありますというのはどんな程度に考えていらっしゃるのですか。
  48. 後藤康夫

    後藤政府委員 先ほど申し上げましたように、三度の過剰の防止とゆとりある需給という両面を考えながらやってまいるといいます場合に、主食用として円滑に売っていけるという観点からまいりますと、百万トン前後というようなところが一つの目安になろうと思います。これが十月末の持ち越し在庫がかなり下回りそうだというような状況になりました場合には、需給のゆとりの方の心配をし始めるといいますか、そちらの方に傾斜した配慮をして需給操作なり米の問題について考えていく。それからまた、百五十万トン、これは月々政府が売却をしております約三十万トンという規模から申しますと、新米穀年度に入りまして新米を全く売らないで売り切るのに五カ月かかるという数字でございます。また、五十九年に臭素米の問題が起きまして以来、北海道のような冷涼なところを除きまして原則として低温保管ということでやっておりますので、これを持ち越し米につきましてぎりぎり低温保管倉庫への入庫をおくらせるとしましても、五月というふうなことで考えますと、大体新米を三割、持ち越し米を七割というようなことで五月まで売っていかなければいけないということで、この辺が主食用として売っていける一つの上限、それを超えますと、どうしても主食用に充てるということで買いましたものが主食用に売れなくなるという事態が生じかねないわけでございまして、それを上回るような持ち越し在庫の見通しになりましたときに、その上回る部分についてはひとつ自主的な調整保管ということで需給調整に一つのクッションと申しますか幅をつける、それがまた、転作面積とか予約限度を年々作柄によって細かく動かしていくというようなことをしないで済む一つの弾力的な要素にもなる、そしてまたそういう需給状況のもとでは、先ほど申し上げましたように、年度内に全部売り切ろうとしますと自主流通米の値崩れというふうなことが起きる心配もある。そういうふうないろいろなことから、その上回る部分につきまして自主調整保管という考えを出しておるわけでございます。  言いかえますと、需給の変動の中で百五十万トンまでは政府がみずからの負担と責任におきまして全部調整をいたします、しかし、それを超える持ち越し在庫ということになりました場合にやはり過剰米処理という事態が発生する心配がございますので、それから先につきまして経過的に自主調整保管ということを生産者団体、集荷団体にも考えていただく、それがまた自主流通米等の価格形成にもプラスの影響を持つはずであるということで考えているわけでございます。
  49. 串原義直

    ○串原委員 実はこの問題は重要な課題だと思っております。ここで時間があればいささか質疑をしたいのでありますが、きょうはありませんからやめますけれども、今長官は百五十万トンという数字を挙げられました。私はそれでは少ないと考えております。安心できる数字ではない、こう考えています。この点については関係団体、政府部内においてももちろんですが、より御論議をいただきますように。私はその限度は少ないと思う。非常に安心できる数字ではない、こう考えますだけに強くそのことを申し上げておくわけでございます。時間がないことを残念に思いますが、それは御検討いただきますことを強く強く要請しておきます。  そこで、もう一つ今度のこの改善計画を見て苦になりますのは、自主流通米と政府管理米の割合をこれからどんな程度にしようと考えていらっしゃるのか、非常に重大なことだと思っているのですよ。いかがですか。
  50. 後藤康夫

    後藤政府委員 自主流通米の数量拡大につきましては、多様化しております消費者ニーズにこたえますと同時に、今後の食管制度の運営改善にも寄与するということで考えておりまして、より一層の市場メカニズムを導入してまいるという観点から、自主流通米制度運営の見直し、充実を通じまして、当事者間の合意のもとでその拡大が図られることを期待しておるわけでございまして、自主流通米制度の充実、見直しということにつきましてこれから少し具体的なことを詰めてまいりたいと思っておりますが、私ども、流通量なり自主流通米の比率について何百万トンとか、あるいはまた何十%というふうなことで固定的な比率を考えておるわけではございません。過去の経過を見ましても、いろいろ良質米生産の動向でございますとか、あるいはこれまで主食用のウルチの自主流通米比率が一番高くなりましたのは五十九米穀年度であったと思いますが、ああいった不作が続きましたときには需要者の側でいわば玉の確保というようなこともございまして、自主流通が伸びるというようなこともあるわけでございますが、いずれにいたしましても、消費者にとりまして品質に応じた選択ができる、生産者にとりましては政府売り渡しよりも価格上のメリットが得られる、そしてまた食管運営としても弾力性が図られ、若干ではございますけれども財政負担の合理化にも資するという、三つの長所を生かして伸ばしてまいるという考えでございます。固定的な比率を今特に考えているわけではございません。
  51. 串原義直

    ○串原委員 なるほど、固定的な比率を考えないという話もわかりますが、それでは、政府管理米は何百万トンやはり管理してまいります、米の全生産量が一千万トンであるならば、政府の管理米はこれだけは管理していかなければならぬと考えておりますということはお考えでございますか。
  52. 後藤康夫

    後藤政府委員 今の食管制度におきましては、御案内のとおり、政府の管理すべき米穀というものが米穀の基本計画のもとになっておりまして、それに基づいて予約限度数量の総量が決まるということになっております。先ほど申し上げましたように、自主流通米について固定的な比率を考えておりませんと申しますことは、予約限度数量が自主流通米と政府買い入れ米に分かれるわけでございますので、裏から申せば、政府買い入れ米についても固定的な比率を考えているわけではないということになるわけでございます。
  53. 串原義直

    ○串原委員 時間が参りましたから次に伺うわけでございますが、この転作面積、転作目標とあえて申し上げます。この配分について今回は生産者団体もともにこの作業に参画をする、こう書かれているわけでございますが、これはやり方によりますとなかなか問題を起こすのではないかという危惧を持ちます。現場の例えば農協等々の生産者団体が、いや、それは私のところでやる仕事ではありません、とてもできません、お手上げというような格好になったらどういたしますか。
  54. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先生御質問転作面積の配分の問題でございますが、水田農業確立対策におきましては、米の需給均衡の確保を生産者みずからの問題として受けとめていただきたいという考え方に立ちまして、生産者生産者団体主体的責任を持った取り組みを基礎にいたしまして、生産者団体と行政とが一体となって推進するということを考えているところでございます。  この点につきましては、具体的生産目標の配分におきまして共同責任といいましょうか、そういう考え方で、双方が協議をいたしまして、配分の通知は両者が行うということでございまして、過般の都道府県の配分におきましても、全中のルートあるいは都道府県のルートというものを並行的に行ったところでございます。特に大綱におきましては、市町村の段階から農業者の配分については極力生産者団体がみずから行うように指導するというふうに考えているところでございまして、これの考え方は、先ほど基本的な考え方を申し上げましたけれども、一つは、今度の水田対策が米あるいは転作作物を通ずる生産性向上あるいは輪作体系の確立といったような営農に深くかかわっているものでございますので、そういう意味でこの点を極力行うようにということを書かしていただいたわけでございます。事実、現在の段階、現在の対策におきましても、営農計画と関連づけながら、転作の部分につきまして約三百近くの農協がこれを実践しております。ただ、先生御指摘のように、すべての農協が一律に現在市町村が行っているものを全部肩がわりするというのを短期間に実施するということは、その体制等々議論があろうと思います。そういうようなことから、配分は極力生産者団体が行うように努めるものとするという形で、地域地域の実態に応じて今のような主体的な考え方に立つべきだという基本考え方になるように、今後も指導させていきたいというふうに考えているところでございます。
  55. 串原義直

    ○串原委員 時間が参りましたものですからこれでやめることにいたしますけれども、学校給食にできるだけ米を使うようにすべきではないかという立場で質疑をしようと考えまして、文部省の方にいらっしゃっていただいていると思うが、時間になってしまってお伺いすることができませんで済みませんでした。あえて申し上げておきますが、こういう事態になっただけに学校給食は順次米食に移行すべきである、私はより強くそういう考え方と期待を持っているわけです。それは日本国民のためになると思っているところであります。  そういうことで進めていただきますことを強く要請をし、まだ三つ四つ伺いたいと思っておりました点につきましては時間の関係で伺えませんでしたが、今回の新しい水田政策、転換政策を含め、それから食管制度の運用等について示されましたが、問題点なしとしない、非常に心配点が多い。当初大臣の答弁されましたように、食管制度の根幹は間違いなく守るという立場に立って頑張っていただかなければならぬ、間違いない方向をきちっと出していただきますように強く強く期待をいたしまして、これで質問を終わることにいたします。
  56. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 竹内猛君。
  57. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私は、当面の農政の問題について幾つかの質問をしたいと思いますが、まず最初に、現在の日本農政は国際的には開放経済、自由化時代に入り、国内的に見れば財界の主導のもとに行政改革が行われ、新たな政治問題、社会問題というような状況を呈しているように思います。そこで、十一月二十八日に農政審議会の議を経て報告をされたその内容は、官房の皆さんを中心としたそれぞれの努力にもかかわらず、結局経構研の前川レポートを具体的に農政の中に展開したという形であって、大蔵省やそういうところの圧力をはね返すだけの迫力を持たないものだと思うのです。これはもう努力の限界だと思います。  五十五年の十月に「八〇年代の農政基本方向」が答申され、五十七年八月には「「八〇年代の農政基本方向」の推進について」という報告が出され、さらに引き続いて今回の報告になったわけでありますが、こういう一連のものを見ていると、三十六年に、社会党が空席のまま農業基本法が押し通されたわけでありますが、その農業基本法の前文には非常にいい内容のことがうたわれておりますけれども、これとはまさに似ても似つかないような方向がだんだん打ち出されている。したがって、二十一世紀に向かっての日本農政のビジョンが浮かんでこない。こういう点について、この報告について責任ある大臣はどのようにこの報告を受け取られているか、まずそこからお伺いいたします。
  58. 加藤輝雄

    加藤国務大臣 冒頭に、私も農業基本法の前文を、農政審の答申をいただく前に繰り返し繰り返し読ましていただいたということを申し上げておきます。  そして、ただいまの御質問に対するお答えになるわけでございますけれども、この報告は、最近の農業農政を取り巻く内外の諸情勢の変化等を踏まえまして、国民各界各層の理解と協力が得られるような農政のとるべき基本方向について提言しており、今後の農政にとって貴重な指針になるものであると考えております。具体的には、農政報告では「農業生産性向上と合理的な農産物価格形成を目指して」という副題がついておりますように、農政農業の持つ基本的かつ多面的な役割を踏まえつつ、国民の納得し得る価格での食糧安定供給に努めることを基本としまして、与えられた国土条件等の制約のもとで可能な限り生産性向上を図ることを中心に、各般の施策を展開すべきであるという提言をされております。こうした方向づけは、農業をその担い手にとって希望を持って取り組める産業として育て、それを通じて基本的な食糧供給力の確保等を図っていく上で緊要となっていると考えております。  政府といたしましても、農政審の報告を踏まえ、生産者が将来に向かって明るい展望を持って農業生産にいそしめるよう、また、農政に対して国民各界各層の幅広い理解と納得が得られるよう、今後具体的な施策を展開していきたい、こう考えております。
  59. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 今の大臣のお答えは願望であって、願望としては聞くことができるけれども、現に農村の方へ行って話をしてみるとやや農政にあきらめを感じている。霞が関の農政というものはなかなか文章は豊富できれいだけれども、実際は減反はどんどん進められるし、補助金は打ち切られるし、外国から米は入れられようとする。まさにこれは非常に願望と遠くなっている。  そういう中で兼業農家が非常にふえてまいりました。財界は、あるいは一部の評論家からは過保護論などというものがずっと前から言われている。これに対してこの報告では、今話があったように構造政策を前面に出してきて、生産力を高めて安い米、また農畜産物をつくってこれを供給していく。これは理想としてはそういうことだと思うのです。それに反対する者はだれもいない。ところが、それができないところに実は問題がある。何が問題かというと、御承知のとおりに兼業農家というものが非常にふえてきて、そしてその兼業は一方に職場を持ち、一方では食べるものは自分でつくる、そういう所得構造になっている。ますますこの形は固定化して定着する傾向にある。特に、ポスト第三期の問題の質疑が今ありましたが、全国の水田の大体四分の一を減反する。これは、五十三年に三百三万ヘクタールであったものを六十五年には二百七十二万ヘクタールにしよう、そして七十六万ヘクタールの減反をしようという八〇年の展望の数字にぴったり合っている。この点だけはまさに面積も数字も合っているわけですが、その反面に兼業農家が物すごくふえてきた。これは米を減反をした場合にかわるべき代替作物がないということなんだ。そういう状況の中で生産農民はますます圧迫をされているということで、農政というものを避けて、自分はどうしたら生活が守れるかという方向に移ってしまっている。したがって、そこには農政無関心というものが出てきているのじゃないか。これは非常に危険だと思うのですね。そういう点について大臣、これは願望じゃなくて、率直に二十一世紀のビジョンとしてどういう形の農業をつくっていくのだということにしないといけないと思うのですが、どうですか。
  60. 加藤輝雄

    加藤国務大臣 一つは、先ほども申し上げましたが、国民各界各層の理解と納得をしていただく農政ということ、一つは生産性向上を限りなく高めていきまして、そして内外格差というものを注視しながら、国際的に抵抗力のある足腰の強い農政を実現していく。したがって、今回、水田農業確立対策というふうに名前も変えてやりましたが、その中には、今までと違って十項目の基準のうち三つは新しい考え方を入れたりなんかいたしておるわけでございます。
  61. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私は、官房の企画室から出した報告書の中の五つのポイントというものはまさに大事なことだと思うのですね。ところが、それはそのとおりであるけれども、そういうものが具体的に末端の農家の中で、この地区ではどうするのだというそのつながりがはっきりしない。やはりあれは一つの報告にすぎない、どうしてもそれに魂が入らない、こういうふうに思うのですね。外圧やあるいは大蔵省の圧迫を頭に置きながら最大限努力したことはわかる。現実に今農水省がやっていることを見ると、構造改善局では土地改良をやり基盤整備をやって、どんどん生産力を高めて増産をしていこうという努力をしている。一方、農蚕園芸局では、減反をして、せっかくつくった農地を今度は米から別なものに切りかえていこうという。それでは別なものは何だ。この減反というのはきのうやきょう始まったことじゃない。四十年代から始まってもう三期までやっている。その間に何が定着したんだ。ところが、同じように麦だの大豆だの飼料作物だのということを繰り返しているにすぎない。どういうものがどこに定着したかというと、これについてはいささかはっきりしないでしょう。しかも面積がふえるだけだ。そして今度食糧庁は赤字を穴埋めするためにきゅうきゅうとして、過剰に対して頭を痛めている。これでは生産する農民というものは一体何をねらってどうしたらいいのかということがさっぱりわからないでしょう。  だから、困難であっても一定の方向とビジョンが出たら、こういうふうに決めたんだからそれに向かって頑張っていくんだということが説明できるような、そういう強いものができてこなければ困るじゃないですか。一々大蔵省から言われればそれに対して頭を抱える、あるいは外圧が来ればそれに対して――まあ頑張っているようだけれども、だから先ほども答弁があったように、五十五年の食糧自給力を強化する決議あるいは五十七年以降何遍にもわたって、日本の国内でできるものについては極力これを守っていくんだという決議をしている。そういうふうにしなければ、ECにしてもアメリカにしても自分の国の農産物はがっちり保護をして守り、そうしておきながら日本に対しては攻撃をかけるというこんなばかばかしい話を聞いているわけにいかない。こういう点について大臣ひとつ頑張ってもらいたい。力がある大臣だからそれぐらい頑張らなければだめだ。
  62. 加藤輝雄

    加藤国務大臣 最後の部分に関しては、私はけさもあるところで言ってきたのであります。「敵を知りおのれを知れば百戦危うからず」、諸外国の農業保護政策あるいは補助金づけあるいは国境保護措置等々のことも我々は折衝のときには口を酸っぱくしてまず相手側に言いますということを言ったのでありますが、そういう全体を通じて、意欲ある農家に意欲を持ってもらい、そうして自分で企業として成り立つようなあらゆる努力をする。その努力が報いられ、展開していくようなことを私たちは常に念頭に置かないといけないと考えておるところでございます。
  63. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 答弁はまことに優等生のいい答弁であって、それを聞いている限りは楽しいですけれども、現実にはそういうふうにはなっていないということをもう一遍言って、きょうは時間がないから先の方へ行かないと、この辺で停滞しているわけにいかない。  そこで、円高・ドル安というものが日本の経済あるいは産業にどういう影響を及ぼしているかということをかいつまんで言ってみると、輸入をして最終消費が国内でとまるものは別にして、食糧も機械もむしろ海外の広い土地と安い労働力と、それから日本の技術を持っていって生産して輸入した方が安いじゃないかと言う者さえいる。私はこの間あるデパートへ行って、そのデパートの専務というか社長に聞いたら、この花もこの果物もこの野菜もみんな外国から来たのです、こう言うんですね。四、五時間あればもうちゃんと来るんだ、それで値段はかなり安い、問題は安全性の問題だ。安全性をどこで確保するかそれはわかりませんが、品物と値段に関する限りはまあ大したものですね。そういう状態になっているわけだ。  したがって、今度は工場の方でも、逆に海外に工場を移して、そっちでつくって日本へ入れた方がいいということで、既に気の早い人はどんどん工場を海外に移して、そこで仕事をして日本に入れているでしょう。そういう形になれば農村も工場も空洞化が行われるじゃないか。せっかく私たちのところには農村工業導入法あるいは通産省の工業団地等々によっていくつかの工場が移ってきた。これが最近どうなっているかというと、倒産をして倉庫になっているところが多々ある。このように今やだんだん経済がおかしくなってきているという状態の中で、農業をさらに支えていくために一体どのような手だてが必要かということについてはお考えになっていますか。どうですか。
  64. 加藤輝雄

    加藤国務大臣 先々のことを余り言うのもどうかと思うわけでございますが、ただいま我が国は国を挙げて産業経済構造の調整に取っ組んでおるわけでございます。そしてその過程で大変議論されておりますのが、今先生がおっしゃいました産業の空洞化の問題と雇用不安の問題でございまして、この産業経済構造を調整し終わったときの日本国民経済、国民生活の姿というものと、そして、そのときにおける我が国農業の位置づけというものを私たちはこれから常に念頭に置いてやっていかなくてはならないと考えております。
  65. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そこで、八〇年代の見通しというものはかなり前につくった。農業基本法第八条の農政審議会の議を経て閣議の決定をしている。その後のものは審議会でやって報告しているわけで、閣議とは別に無関係ということですから、この際、現在のこういう国際化、自由化、開放経済の段階での日本農業のあり方というものについて二十一世紀のビジョンをつくっていく。報告によると引き続いて検討する、こういうことが残ってはいるが、やはり正式に農業基本法第八条に基づいた長期計画というものをこの段階で見直していく。その場合に、生産者、消費者、流通、国際問題等について、今度の報告の五つのポイントを基準にして八〇年代のものを見直し、二十一世紀のビジョンをつくっていく、こういうことをぜひやってもらいたいと思うのです。そうして報告にとどまらないで、やはりこれをつくりかえるということで進めてもらわないと実態から離れてしまうのじゃないか。これは言葉としてはよくできているけれども責任の問題が不明確ですね。どうですか大臣、これはひとつこの際明確に答えていただきたい。
  66. 加藤輝雄

    加藤国務大臣 この基本方向に向けまして施策のすべてを集中してやり遂げていきたい、こう考えておるところでございます。
  67. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 それは基本法の八条に基づいてやるということと理解していいのか、その辺はどうですか。
  68. 甕滋

    ○甕政府委員 ただいまの先生のお話基本法に基づく長期見通しの取り扱いの件かと思いますので、考え方を申し上げさせていただきたいと思います。  御承知のように、六十五年長期見通しを昭和五十五年に立てて現在行っておるわけでございます。これにつきましては、今回の農政審議会におきます検討の中でもいろいろ論議が行われたわけでございます。その論議を踏まえまして、一九九〇年代の食生活あるいは農業生産がどう見通されるかということにつきましても、六十五年見通しのフォローアップという形で行われたわけでございますけれども、それは今回の農政報告の最後のところに検討結果が出されております。これは必ずしも固定的な数字を示すということではございませんで、定性的なものとして書かれております。今後、長期見通しの改定ということも当然出てまいるわけでありますけれども、生産見通し等につきましては、生産性向上がおくれている品目についてこれからどうしていくかというような面、その他不確定な要因もあり、今回の基本的な方向を受けましてなお検討を進めまして、時間を若干かけることによって長期見通し等の作業は継続してまいりたい、このように思っております。
  69. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 ぜひそういうような作業を進めていただいて、そのときの作業の仕方についても後でちょっとまたお願いもしなければならないと思います。  今申し上げることはちょっと耳ざわりかもしれませんが、ひとつ静かにお聞き取りをいただきたいことがあります。それは、なぜ農政問題が社会問題あるいは政治問題になったかということについての裏づけを私はここで申し上げる。これは新聞を読んでいる人はははあと気がつくかもしれないが、読み過ごしてしまったのではまずいからもう一遍思い出していただきたい。十一月十九日の朝日新聞にこういうことが書いてある。ちょっと長いが読みますと、  「有権者の半数近くを占めるサラリーマンや、主婦たちを味方にすれば、農民を敵に回しても三百議席以上は取れる」との主張を読んではいたが、同日選の結果、「農漁協、医師会、特定郵便局の三者が自民党の支持母体、基盤だとする考えはもう古いとはっきり認識したのだ」と首相側近はいう。   ①兼業農家の人々は勤務先の労組との関係から、革新候補にかなり投票する②農協職員に革新系が増え、農協の自民党単独支持を揺さぶっている③農協幹部は自由化反対のために野党にもすり寄っている と分析、米価の引き下げは失敗したが、据え置き批判、食管見直し論と行革をてこにして、  食管制度見直しを狙う中曽根=後藤田ラインに参戦したのが、玉置和郎総務庁長官だった。   八月中旬、軽井沢で静養中の中曽根首相のもとに玉置長官から電話が入った。「総理、あなたのためにひと肌脱ぎたい。農協の連中は選挙事務所に来て酒を飲むばかりで、集票能力がない。食管に手をつけたい」「同感だ。後藤田君も同じ考えだ。食管見直しは、あなたみたいな強力の人じゃなきゃ無理だ。ぜひ頼む。世の中も絶対支持する」――こんなやりとりがあったとされる。   この日から玉置長官は「食管見直し論」を公然と繰り返し、農水省に対する行政監察の中で農協関係の補助金や委託業務を洗うよう、総務庁に指示した。 と報道されている。それから今日までこの記事がそのままになっているところを見ると、承認されたものであると理解をする。  そこで、加藤大臣に伺いたい。仮に総務庁長官にそうした調査権や監察権があったとしても、農水省には経済局農協課があり、全国の農協の指導に当たっているはずだし、監査も行っているはずだ。また農協自体も自主監査をしている。そういうときに、先ほども月原さんからお話があったように、総務庁長官が農水大臣調査をしろという話を閣議でするのはわかるけれども、自分でそこに手を出す、自分の仲間の者を送り込んで手を出す。しかも、この長官は農水省だけじゃない、外務省の外郭団体のJICAにも手を出した。最近は大蔵省の関係にも手を出そう、こういうようにどこにでもここにでも手を入れる。こうなってはこれは行政ファッショです。それぞれの役所にちゃんとした指導機関があり監査機関があるのに、なぜ一体総務庁だけがそういうことでどこにでも手を入れるか。これは大変な行政上の問題だと思うのですね。大問題だ。こういう問題を黙っているということはどうしても許されない。  私のところの県のある農協にも総務庁の方が調査に来たそうです。聞いてみると調査員は何もわからない素人だ。農協は自分でやりますから、あなた方にお願いをするはずはないからという形で、雑談をして黙って帰っていった。これは国費のむだ遣いだ、これこそ問題にすべきことじゃないのか、こう思うのですね。この点について有力な閣僚として、このような傾向は望ましくないということで閣議の問題にすべきじゃないですか。 どうですか。
  70. 加藤輝雄

    加藤国務大臣 今回の総務庁の農協に対する行政監察は、通常の行政監察と同様、総務庁の権限に基づき、行政機関である農林水産省に対して行われるものと承知しております。農協に対しましては、この監察に関連して必要な調査が行われるものでありますが、この場合、国庫補助を受けていない業務につきましては、農協の協力を得た上で初めて資料の提出等の調査が行われるものであると考えております。なお追加しますと、農協の事業活動につきましては、農協法に基づく検査及び必要な指導を通じ、その適正を農林省としても期しているところであります。  最近の農業をめぐる諸情勢が一段と厳しさを増しておる折から、農協が農業者の自主的な協同組織として農業者のニーズにより適切にこたえ、我が国農業の発展及び農家の生活の安定のため、責任と自主性を持って取り組んでいくよう今後とも指導してまいる所存であります。
  71. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 その前に、玉置長官の横から手を入れることについては閣僚の範囲内で抑えておいて、あちこちに手を回さないように、犯罪人じゃないんだから、その点についてははっきり閣議で問題にしてもらいたいということを今言っているのです。
  72. 加藤輝雄

    加藤国務大臣 いろいろな面で玉置総務庁長官には申し上げております。
  73. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 兼業農家の問題についてちょっと質問したかったけれども、時間の関係からこれは抜きますが、ひとつ農水省の皆さんに兼業農家、中核農家というものの定義と内容、その問題を整理してもらいたいと思うのですね。一方では中核農家をつくっていくんだと、こう言う。ところが、現在のように地価が高い、農産物価格が安い、一方、周辺にはいろいろな仕事場がある、こういうことで、米をつくっても何をつくってもさっぱり見通しがつかない、こういう状態の中で兼業というものが定着をしている。その兼業の問題と、それから、報告の中で言おうとしている中核農家というものを具体的にどうつくり上げていくかということ。十四万の集落が日本にはあるのですから、三千二百の市町村、自治体、そういうものがあるのですから、それをしっかりやってもらいたいと思うのですね。  そこで、今度は国土庁にお伺いしますが、三全総から四全総に移るわけですけれども、三全総の場合には大都市の人口と産業の集中を抑制して、地方を振興して過密過疎の問題に対応した。全国の土地利用の均衡を図って、人間居住の総合的環境の形成、いわゆる定住圏構想というものが目標となっていたが、今回の四全総の中間報告では国土の均衡利用の理念が失われて、それが放棄されて、東京圏への諸機能集中を認めた上で、各地方に分相応の形で役割を分担させるという手法がとられている。これからますます東京圏の地価が高くなってきて生活がしにくくなるという状況に拍車をかけることになるが、この問題について、一体これは好ましい方向だと思っているのか、それとも何か圧力があったのか。どうですか、これは。
  74. 糠谷真平

    ○糠谷説明員 お答えをいたします。  今回公表されました四全総の審議経過報告は、今後、四全総最終決定までの間に国民各界各層の皆様と意見交換を十分行いましてよいものをつくっていこう、そのためのたたき台として計画部会において取りまとめられたものでございます。報告におきましては、三全総の定住構想の理念を引き継ぎまして、さらに交流の活発化ということを通じまして地域活性化をもたらそうという考え方を出しているものと理解をいたしております。交流の活発化によりまして、大都市圏あるいは地方圏を通じまして、それぞれの地域が役割を分担いたしまして連携をする、いわば多極分散型の国土というものを目標としているというふうに私ども理解をいたしております。  今後、この報告をもとに、地方公共団体その他関係各方面の皆様と十分意見交換を行いまして、地方振興のための具体的な施策というものを最終決定までに盛り込んでいきたい、このように考えております。
  75. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 農村が兼業化し、人口が東京に多く集まってくるということと同じように、北海道でも札幌、旭川、室蘭というところに人口が集まる。それからその他の府県でも、県庁の所在地や県内の第二、第三都市に人口が多く集まってくるという形で過疎過密の傾向がいろいろなところに明らかになってきて、そのために地価が変動するということで、特に、今度は国鉄の分割問題をめぐって、地方の赤字線というものが採算がとれなくなってこれを廃止するということになれば、ますます過疎地帯は住みにくいところになってくるんじゃないか。こういう状況から考えたときに、この四全総というものは好ましい方向に進んでいないと思うのですね。そういう点で、これはお答えは要らないけれども、四全総について、今の状況についてまだ結論が出ていないのであればやはり再検討してほしい。わざわざここへ来ていただいたのはそのことを言うためだ。申しわけないけれども、ひとつ……。
  76. 糠谷真平

    ○糠谷説明員 お答えをいたします。  先ほど御説明をいたしましたように、今回出しましたのはあくまでも計画部会のたたき台でございますので、今後、農山漁村地域の役割、その振興方策を含めまして、関係各方面と十分意見交換を行いましてつくってまいりたい、このように考えております。
  77. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 次に、建設省の方にお伺いするわけです。  先般、本委員会では鹿児島と宮崎に視察をいたしました。そのときに宮崎県の都城市で、自分の山から切った間伐材で牛舎をつくっているところを見せていただいたが、大変立派な牛舎ができておりました。特に内需振興、そして森林をよくしなければならないというときにこのような努力をしていることは非常に立派だというふうに私たちは思っておりますが、これは和牛でありますけれども、こういうところにもぜひ助成をしたり補助をしたりしてほしいということが一つ。  それから次は、同じ都城市の林産物の集出荷施設を調査したときのことでありますけれども、これは五十九年に広域林業構造改善事業の導入によってつくられたものであります。この施設の管理棟は三百十九平方メートルの規模でありますけれども、建築基準法の制限によって天井には新建材が使ってある。せっかくの林産物を集出荷する施設であるのになぜ一体天井が新建材でなければならないのかというと、これは建築基準法によってそうされるのだということだった。これは建設省けしからぬ、こういう話でありまして、これはどうしても直してもらわなくてはならない。それで、消防庁がいろいろなことを言うからということだったので消防庁に聞いたところが、私の方ではそのことについては何ら意見を挟んでおりません、問題は建設省の建築基準法第六条に関連することだから、その六条に対してひとつ問題を提起してほしい、こういうことでありますが、その点どうですか。
  78. 遠藤二三男

    ○遠藤説明員 お答え申し上げます。  第一点の畜舎の取り扱いでございますが、建築基準法におきましては、木造建築物に対して、木の材料の特性に応じまして構造、安全及び防火上、必要最低限の諸規定を定めているわけでございます。これらの中で、特に畜舎等につきまして、延べ面積が千平米以上の規模を超えるものにつきましては防火壁の設置とか、建築面積が三百平米を超える木造建築物に対しては小屋裏隔壁の設置ということで、火災拡大の防止を目的とした基準が定められております。これらに対する緩和の要望があるということは承知しておりまして、これにつきまして農林省ともいろいろ相談してまいったところでございますが、今後この基準の取り扱いについて見直しの検討を進めてまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。  それから、二番目の御指摘の検収場の内装の問題でございますが、建築基準法におきましては、火災時の火災の拡大の遅延とか避難の安全を確保するということを目的といたしまして、集会場、劇場等の不特定多数の人が集まる施設で、これが百平米以上の規模のものにつきましては内装の制限を課しているわけでございますけれども、御指摘の施設の検収場につきましては、利用形態等いろいろ考慮してそれなりの考え方が出てくるものかと思われますので、もう少しその辺の取り扱いが的確に行われるように特定行政庁に対して指導を強化してまいりたい、こういうふうに考えております。  以上でございます。
  79. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 特に、森林を振興して山をよくし、緑を守らなければならないというときに、間伐材というものを使う、また使っている、それが国内で十分に活用できるような道を開いてもらいたいということを建設省に強く要求しておきます。農林水産省との間でも中央畜産会を通じてそれぞれ努力をしていることは知っていますが、早くそういうことについての答えを出してほしい。  次いで、農業共済制度について要請と質問をしますが、質問というよりもむしろこれは意見ですけれども、三十八年に三八協定というのを結んで、短期、長期に建物共済を分けることで共済協会と農協との間である申し合わせをした。それから二十何年かたっておりまして、この間に五十五年五月ですか、行政監察局が手を入れて、重複加盟があるということが言われております。茨城県は非常にうまくやっておりますので問題はありませんけれども、私のところにも他の地区から、同じ農家にかわるがわる勧誘員が来て、長期の話もするし、一方は短期の話もする、こういうことは非常にややこしいということでいろいろな意見が出ております。だから、その点についてはこの際整理をするか、あるいはもう一遍検討するかしてほしい。ともかくこの二重加盟の問題については、仲間、親類、隣近所という形でこれは人情でやっているところが非常に多いし、それからそれぞれにノルマを与えてどのぐらい集めてこい、こういう話もしているようですから、非常に難しいとは思うけれども、その点が一つ。  もう一つは、きのうも共済の大会があったわけですが、家畜の中の豚の共済掛金の国庫負担割合を、現在四〇%のものをもう少し上げてほしい、五〇%ぐらいにしてほしいという要請があります。この二つについて、簡単でいいですからお答えをいただきたい。
  80. 眞木秀郎

    ○眞木政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘のように、いわゆる三八協定を踏まえまして、昭和四十二年以降次官通達によりまして、長期のものは農協団体で、短期は農業共済団体で行うということになっておるわけでございます。この建物共済は、農協団体が行う場合は長期のものでございますので、長期間の経過によります建物の耐損に対処するという目的でやっておりますし、また、農業共済団体が行う短期のものにつきましては、主として火災による建物の損壊に対応するということで、それぞれのニーズに対応しておるわけでございます。現在、各県段階の両団体におきまして詳細な取り決めを行いまして、全体としてはおおむね円満に事業の実施が行われておるものと承知をいたしております。  そこで、この建物共済に伴っていわゆる重複超過が生じた場合の問題だと思いますけれども、この農協共済と農業共済との重複超過の問題につきましては、現在、民間の損保のような場合に準じまして時価優先払いというようなことで処理をしながらやっておるわけでございますが、いずれも両方が重なることによって生ずる問題につきましては契約段階でできるだけこれを防止していくべきではないかということで、昭和五十五年に通達を出しまして、共済団体に対しましてその改善について指導をしておるところでございます。今後ともその点については十分意を用いてまいりたいと考えております。  また、豚の農業共済に対する補助率の問題でございますけれども、現在四〇%ということで、これに対して御要望が出ておることも承知をしておるわけでございます。ただ、この掛金の国庫負担割合の引き上げにつきましては、農業共済制度全般にわたります国庫負担等が、六十年度の実績で見ますと一千億円を超えるという多額の財政負担を行っておる中で、また、いろいろとさらに厳しい状況のもとで合理化、、効率化も要請をされているという状況で今すぐこれをやるというのは非常に難しい問題であるとは考えておるわけでございますが、今後の畜産の動向なり加入の状況、あるいはまた財政状況等を見ながら検討課題として承っておきたい、こう考えております。
  81. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 最後に畜産の問題で、採卵鶏と豚の問題についてです。  まず、採卵鶏の問題については、去年のちょうど国会の終了間際に、社会党、公明党、民社党が鶏卵の需給と価格の安定に関する法案を出すほどまでに整理をして、いろいろ話し合いをしてきた経過がある。その後えさの値下がりもあり値が安定をしてきたわけですし、行政の方も我々が法案でねらっていたようなところまでの努力をされて調査をした。しかし、調査の結果約二千万羽近いやみ増羽があったということも事実です。このやみ増羽の始末をどうするかということが一つ。  それから、各地に起きているやみ増羽の傾向、特にテレビあたりで宣伝している愛知県の赤玉一千万羽、これは既に渥美半島に土地を買ってブラス線を張っているということを聞いていますが、こういうものを許しては努力が何にもならない。過去においていろいろな経過があったのが二つほどありますけれども、これは今反省をしておるようですから取り上げるまでもないが、この赤玉については調査をして押さえ込まなければ、テレビで堂々とやり、チラシを配っております。これはひとつ整理をして、許してはいけないということでしっかりやってもらいたい。  それから豚については、えさの値が下がったために六百円の安定基準価格を五百四十円に下げたが、本年の九月末から今日まで一回も五百円を超したことがない、値が四百円台でずっと低迷をしている。そういうときに、差額関税制度もあるし、それから畜産物の振興事業団もあるし、いろいろな措置があるにかかわらず、こういうことを全く手抜きにしていくということでもないだろうけれども、どういうわけで行政の動きがないのか、これは非常に疑問ですね。その点でぜひこの二つについて、特に豚の問題についてしっかりしてもらいたいと思うのです。確かに、豚は農家戸数が減って飼育頭数がふえた。ということは、それだけ農家は投資をして借金をしていることですから、安定基準価格を二カ月半も下回るようなことになると、これはやはり返済に困るという形になることですから、そういう点についての畜産局の対応についてお答えをいただきたい。
  82. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 御指摘のございました畜産関係二点についてお答えを申し上げたいと思います。  まず、鶏卵の問題でございます。  御承知のとおり、現在鶏卵生産につきましては、需給が大変頭打ちになっておるということもございまして、生産者の自主的な生産調整主体に、これを行政的に最大限の支援をしていくという体制で計画生産が進められておるわけでございます。その効果もございまして、五十七年から五十九年にかけて大変低迷をしておりました鶏卵価格も、六十年度以降、ことしに入りましても小康状態を保っておるという状況でございます。特にまた御指摘ございましたように、計画生産の円滑な実施を図るために無断増羽の抑制を図ってきておるわけでございますが、その調査の一環として、ことしの調査結果でございますが、約千二百万羽程度の無断増羽が存在するということを私ども掌握しております。この無断増羽については、各種の行政施策から排除していくということを根幹にいろいろな指導を行っておりますが、今年の調査で出ました無断増羽の措置につきましては、そういった最終判断をするまでに、御案内のとおり、生産者団体等と現在この問題の処理について相談を始めております。できるだけその相談の結果を尊重しまして適切な対処を図っていきたいというふうに思っておるわけでございます。  さらにまた、一部大規模養鶏で愛知県等でこの無断増羽に結びつきやすい新しい鶏飼養の動きが出ていることについては私ども情報をキャッチしておりまして、関係者に対しまして、県あるいは農政局を通じまして、無断増羽にならない形で考えていくように現在強力な指導を進めておるところでございます。私どもも、必要がありますればそれらの関係者に対して十分指導をしてまいりたいと考えております。  それから、第二点の豚の問題でございます。  御指摘のとおり、本年九月の下旬以降、年度当初に定めました安定基準価格を下回りまして、東京市場で申しますと、最近におきましてはキログラム当たり四百七十円程度の枝肉卸売価格水準が生じておるわけでございます。この原因につきましては、御案内のとおり需要面で加工需要は伸びているけれども、家計消費が非常に停滞をしておる、総じて需要規模が頭打ちだ。そしてまた生産面では、相次ぐ配合飼料価格の値下がりによりましてやや生産刺激的にこれが機能しておる。さらにまた、これも御承知のとおり、秋口から冬にかけましては毎年価格低下の季節変動がございます。そういったものが重なって現在の価格水準が形成されておるわけでございます。  こういった状況に対処しまして、私ども関係者に対しまして、加工需要の開発等も含めましてできるだけ国産の豚肉の消費拡大を進める、そしてまた生産者団体及び加工業者団体を指導いたしまして、自主的な調整保管を現在進めていただいております。現時点で、当初予定しましたこの自主的な調整保管の枠がまだ若干余裕がございますけれども、御指摘ございましたように、畜産振興事業団の助成によります調整保管という方法もあるわけでございます。需給の動向をよく見きわめながら、必要が生じますれば、適時適切にこの畜産振興事業団の助成によります調整保管が実施できますように検討を進めていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  83. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 もう時間がなくなったからこれはお答えをいただくわけにいきませんが、せっかくのことだから二点だけ申し上げて、後で検討してほしい。  それは、長い間価格が低迷しているということと、業者との間で裏カルテルでもしているのじゃないかという風説さえあるわけですから、そういうことの行われないように、ひとつその点については厳重に調査をしてほしいということが第一点です。  それから第二点の問題は、家畜衛生指導協会という団体自体が各地でいろいろなことをやっていますが、その家畜衛生指導協会が行っているところのワクチンが高いという問題です。手数料を取ったりいろいろなことをしている、外国に比べて何十倍か高いということでありまして、これは具体的な例を示して改めてまた委員会でやりますけれども、その家畜衛生指導協会の性格、運営、その監督、人事構成、予算、決算というようなものを見て、どうもいろいろな天下り傾向の人たちがそこに盤踞してやっている。茨城県でも、八十五歳を超したおじいさんが家畜衛生指導協会の会長として頑張っておられる。人は悪くはないけれども、趣味でやっておられて大変扱いにくい傾向もないことはない。各地でも同じようなことじゃないのかなと思っておりますので、家畜衛生指導協会に対する調査、御指導を願いたい、この二点を申し上げて終わります。
  84. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 午後一時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十八分休憩      ────◇─────     午後一時三十三分開議
  85. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。田中恒利君。
  86. 田中恒利

    田中(恒)委員 午前中に引き続いて、私は、主として食管、米問題について御質問いたします。  串原委員の指摘もあったわけですが、食管制度のあり方が、アメリカの米輸出問題以降非常に鋭く我が国の政治の中に持ち込まれておるわけであります。政府はポスト三期の対策の輪郭をようやく明らかにしておりまして、その中でも、食管制度の改善というか弾力的運用という面が出てまいっておりますし、農政審の答申も、食管制度を変えていくという方向が非常に強く出てきておる。財界などは、御承知のように十年後に食管廃止ということを大胆に明らかにしていくようでありますし、率直に申し上げまして、各党の中でも現行食管制度のあり方についてそれぞれ検討がなされておる、こういう状況であります。しかし、この問題は我が国農政の中で、戦後というよりも、戦前、戦中、戦後を通して主要食糧管理の問題は幾多の変遷を経て今日に至っておりますし、戦後の食糧管理制度の改正の中でもいろいろな議論を生んでおるわけでありまして、今回の政府の弾力的運用というか改善というか、こういうものの中にも我々として非常に考えなければいけない問題があると思います。そういう意味で、午前中御答弁いただきましたが、重ねて農林水産大臣の方から、食糧管理制度をどうしていくのかという視点に立っての御答弁をお伺いしたいと思います。
  87. 加藤輝雄

    加藤国務大臣 食管制度につきましては、米を政府が責任を持って管理することによりまして、生産者に対してはその再生産を確保し、また、消費者に対しては安定的にその供給責任を果たすという制度の基本は維持しつつ、広く国民各界各層の理解と協力が得られるよう適切な運用改善を図ってまいりたいと考えておりますということをけさ以来重ねて申し上げたところでございますし、私の率直な意見でございます。ただ、今御指摘のように、一部から農業の過保護問題あるいは食管制廃止問題等が出てきておることは事実でございまして、こういうあたりに対しても熱意を持って精力的に御説明し、納得をしていただくようにさらに努力しなければならないと考えておるところでございます。
  88. 田中恒利

    田中(恒)委員 私どもはこれまで、そしてこれからも、食糧管理制度の基本といい骨幹といい、いろいろ言い方はありましょうが、根本をなすものは米の全量管理、二重価格制度、特定ルートを設定した国民への食糧供給体制、そして今問題になっております国境措置というか国家貿易、こういうものが食管制度の骨組みだというように理解をしておるわけでありますが、けさ串原さんの質問に対して大臣は、全量管理方式について、国内で必要とするものを全量管理していくのだ、こういう御答弁がたしかあったと私は聞きながらメモに挟んだわけであります。国内で必要とするものを全量管理するという方式、これは私どもはこれまでの国会の議論、それから食管法も私ちょっと見ておるわけでありますが、法文が細かくて十分見きわめておりませんけれども、少なくとも国内で流通する米については全量管理する、こういう理解に立っておったわけでありまして、政府が必要とする米の全量集荷ということになりますと、これは大分内容が違ってくると思うわけであります。全量管理方式について重ねて大臣の御見解を賜りたいと思います。
  89. 後藤康夫

    後藤政府委員 やや制度の中身についてのこともございますので、大臣のお答えの前に私からお答え申し上げたいと思います。  五十六年の食管法の改正によりまして、御案内のとおり、配給統制というものを緊急時に発動できるという形にいたしまして、配給計画というものをやめました。それにかわるものとして、政府基本計画あるいは供給計画を立てるということになっております。その場合に、政府の管理すべき米穀ということで、国内の需要に見合った数量につきまして基本計画を立てるという概念を一つ制度の中に取り込んでおります。それをもとにして予約限度数量も設定をする、こういうことになっておるわけでございます。しかし、御指摘のように豊作によってそれをオーバーする米が出てまいることも当然あるわけでございます。御案内のとおり超過米ということでございますけれども、こういうものにつきましては流通ルートを特定いたしまして、米の流通に混乱のないような形で流通をさせるということになっているわけでございます。したがいまして、政府の管理すべき米穀という概念があります一方、それを超えて生産されたものにつきましても、全体が流通混乱しないように、政府の目が届く形で流通がなされるということを制度の基本にいたしておるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  90. 加藤輝雄

    加藤国務大臣 昭和五十九年の国会決議というものも私の脳中にあるわけでございます。また、今回の水田農業確立対策いろいろ議論し、勉強していく過程におきまして食管法の各条項を克明に読んで、先ほど申し上げましたようなお答えをいたしたわけでございます。
  91. 田中恒利

    田中(恒)委員 農林水産省が今度出しておる資料ですが、「水田利用再編対策後の水田農業に関する施策の展開について」というのを食糧庁企画課が六十一年十月に出しておるわけですけれども、この資料の中にも――今まで米、農産物、これは食糧でありますから、天候というか作況というものは当然前提としてふえたり減ったりすることは考えられるわけでありますので、そこで豊作でたくさん出てきたときには、政府基本計画の中で当然これを政府の在庫という形でこれまで処理してきたと思うのですね。ところが、今度の場合はその余剰がすべて政府在庫だということにはならない。つまり、この四十万トンの今度の農協自主調整という機構の中に落ちつくのだと思いますが、そういう解釈を新しくしてきておるわけです。しかしこの問題はこれまでの食管制度の管理方式と非常に違うし、このことは食糧管理制度の中のある分はそれから全然外してしまうのか、こういうことにもなると思うのであります。例えば、この四十万トンの自主調整というものは食管法とどういう関係にあるのですか。全然食管法の外なのですか、食管法と関係を持つのですか、持つとすればどういう位置づけになるのですか。
  92. 後藤康夫

    後藤政府委員 お答え申し上げます。  これは食管法の枠内のものでございます。先ほどもちょっと申し上げましたけれども、私ども、今の方式を全量管理というふうに言っておりますが、これは食管法で国民に対します安定的な供給を確保いたしますために、国内で流通するお米につきましてその性格なり必要性に応じて政府が直接に買い入れ、売り渡す、あるいは自主流通米につきましては流通計画の認可等を通じましてこれを適正に流通させる、それから超過米などが出ました場合に、これも流通に混乱を来さないように流通規制を行いまして特定のルートを通じて流していくということで、いろいろ態様は異なりますけれども、全体として適正に管理を行って安定供給の責任を果たしていく、こういうのが全量管理の責任の意味だというふうに私ども考えておるわけでございます。  この自主調整保管につきまして、今具体的な取り組みについて関係団体で詰めていただいているわけでございますが、その辺が固まってまいりました場合には、毎年三月に定めます米穀の基本計画の策定なり、あるいは期別に定めます自主流通計画の認定というようなものの中にもこの自主調整保管をきちんと位置づけてまいりたい、こういう考えでございます。
  93. 田中恒利

    田中(恒)委員 食管法の枠内で、全体の基本計画の中で処理をしていくということでありますが、そういうことになると、例えば今度やる自主調整保管の経費の負担などは、勝手に生産者団体と言っておるが、これは生産者団体じゃなくて生産農民が出すわけです。そういう作業がもう始まっておりますね。それを出しますというような約束、協約書のようなもの、合意を取りつけなければいけませんからね、合意書を取りつける。そういう米の調整保管という食管法上のきちんとした仕組みの中で動くものに、保管料なり金利なり倉敷料なり、そういったような経費負担は勝手にやれというのはちょっと酷なんじゃないですか。
  94. 後藤康夫

    後藤政府委員 御指摘のとおり、食管運営におきまして自主調整保管と申しますのは初めてやることでございます。これは、過去の二度にわたります過剰米の累積とその処理といういわば苦い経験を踏まえまして、食管制度基盤を安からしめるために新しくこういう仕組みを取り入れるということでございますが、そういった意味におきましてこの自主調整保管は、一つは三次の過剰発生を防止する、過剰米処理を防止するということがございますけれども、同時にこれは作況一〇五ということで、平年作に比べますと約五十万トン天の恵みで供給がふえておるわけでございます。仮にこれを、従来の自主流通米あるいは超過米の販売と同じように来年の十月末までに完全に売り切ろうというふうにいたしました場合には、ことしの春、自主流通米の特別販売という値引きがございましたが、あれよりも大きな価格の変動を来す可能性がある。そういう意味におきまして、販売期間を若干長くして計画的に販売をしていくということは、これは集荷あるいは生産者団体のみならず、生産者の方々にもプラスになる面があるわけでございます。現に他用途利用米というものを年に二十七万トンという予定で生産しておりますが、これも豊作になりました場合には、一年分のその収穫を十三カ月ということで販売期間を延ばして売っていくということも現にやっておるわけでございます。そういう意味で、自主流通米の安定的な価格形成ということにも役立つことでございます。  それからまた、もし百九十万トンを政府が全部抱えるということになりました場合には、二年古米というものが恐らく生ぜざるを得ない。それを避けようといたしますと、この一〇五という作況指数の五の部分について、来年なら来年単年度で供給にその分のすき間をつくるといいますか、言いかえれば転作面積を非常に大きくふやす、予約限度を非常に大きく減らすというようなことをしない限りは過剰米処理に追い込まれるわけでございます。そういうことを避けて、水田農業確立対策の前期三年の転作目標なり予約限度を安定的にさせる、そのことによりまして農家の方々にも安定した営農をやっていただける、そういったいろいろなメリットがあるわけでございます。そういう観点から、生産者団体、集荷団体にも御理解をいただきまして自主調整ということで取り組んでいただくということでございますので、この実施につきましては、私どもの売買操作と緊密な連絡協調をとりながらやってまいりますけれども基本的な性格として、やはり生産者団体が自主的に取り組んでいただいてしかるべき性格のことではないだろうかというふうに私ども考えておるわけでございます。
  95. 田中恒利

    田中(恒)委員 長官の御答弁は、私は苦し紛れの答弁のように思えてなりません。しかも、食糧管理制度という我が国農政の土台というか基本をなしておる制度と自主流通米、去年二千円の安売りをやったからそういうのがまたもっとひどくなるじゃないかという当面の需給事情の問題は結びつけるべきではないので、やはり制度は制度として、その制度を運営、管理する責任は政府がきちんと持っていく。そのための食管の予算というものが計上されておるわけでありますから、財政が厳しいときでしようがないからこういう方法をとらざるを得ないという注釈でもあれば多少今の政治論としてわからぬことはありませんが、やはり制度論としては、食管の枠の内でこういうものがつくられておるということであればその経費は当然食管を管理している政府が持っていく、こういう建前をとらなければ筋が通らないと私は思うのです。  大臣大臣意見を聞かなければいけぬが、私どものところもあなたのところもそうだが、例えば今度の自主調整の四十万トンの米は超過米、自主流通米、こう言われておるわけですが、その超過米、自主流通米は全国的にどういう分布をしていくかということになりますと、これはやはり米産地が圧倒的に多いと思いますよ。そうすると、今いろいろやっておりますけれども、私が知る限りにおいては、かつて歩どまり加算の問題で東と西が内部けんかをやりましたが、ああいう状況が出てくるような様相を今呈しておるわけですよ。私どもの県も昔は需給事情とんとんでしたが、今は三万トン米が足りません。だから十二県から米を入れてこなければいけないのですね。超過米もないことはないのですけれども、しかし非常にわずかです。そういうところもみんな平等に全国一律にやられるというのは不公平じゃないか、こういう問題などが出てきて、そういうものが食管に対する不信とか不安という形になっている。あなた方はこういう運営改善方式で何とか米の管理をやっていきたいと言われておるわけだが、やはり農民の理解がなければいけない。農民が理解しないというものをつくっていけばやはりだめだと思うのですね。だからこれは何らかの形で、方法手段は頭のいいお役人さんがいらっしゃるわけだからまたいろいろ考えられると私は思うが、そういう問題でこれは考えておかなければいけないと思う。少なくとも食管の枠の中でやるものであればそれなりの対策考えるべきである、こういうふうに思いますが、大臣はいかがですか。
  96. 加藤輝雄

    加藤国務大臣 食管の枠の中というか、私は食管の傘の中と申し上げたいわけでございまして、その食管の傘というのは、個々の農業関係者お一人お一人も努力して食管制度を守るという一念に集中していただきまして、その食管の傘の中で大いに頑張っていただき、御協力もいただきたい。そしてまた、先ほど来長官にもお答えいたさせましたように、私たちは、ゆとりある安定的供給という問題、第三次過剰を起こしたら食管制度そのものが吹っ飛んでしまうという本当に狭い選択の幅を今歩んでおるわけです。そこら辺もともに御認識いただいて、食管制度を守る、食管制度の傘の中で御協力と御努力をお願いいたしたい、こういうのが私の率直な考え方でございます。
  97. 田中恒利

    田中(恒)委員 食管制度の枠の中と傘の中とそんなに違いはないと思うのですが、私は政府の言うことをまともに受けとめておりますよ。しかし、食糧管理制度の戦後の変遷の過程をじっと見ておると、やはり政府が関与する割合はだんだん薄くしておる、一口に言えばそういうことだと思うのです。今度のこの自主調整米制度というものは当面緊急の措置だということのようでありますが、果たしてそれでとどまるのかどうか、私はやはり心配であります。もしこれを逆にだんだん大きくしていくということになっていくと、例えば、自主流通米制度にしてもかつて政府は――自主流通米制度のウエートはきょうの質問ではなかなかお答えできないということのようでありますが、これも私は問題だと思うのですね。政府が完全に管理する米と自主流通米と飯米とそれからやみ米と称するものですね、そういうものがきちんと決められなくてどうしてこの長期的な計画ができるか疑問に思います。しかし自主流通米制度というのは、たしかこの数年前までは、だんだん多くなり過ぎた、もう少し政府管理米の厚さを維持しなければ食管の本当の管理体制はできない、こういう解釈であったと思いますが、この一、二年の間に、自主流通米のウエートをぐっと持たしていくという方向に変わり始めてきておりますね。私は食糧庁自体がそういう方向に変わってきておると思うし、今度の農政審答申などを見ると、もうはっきりと自主流通米制度のウエートを大きくすべきだ、こういうふうに大体出ておるわけですね。  こういうことになっていくと、管理機構そのものも何か暫定的で、豊作時だけで百五十万トンを限度としてそれをオーバーした場合にと言っておるけれども、だんだんこの制度が大きくなってきて、結局現在の食糧管理機構というものが大きく変質をしていく。一方では食管制度をなくせよ、こういう形の声が非常に強く出てきておるわけでありますから、そういう不安を考えると――私が今言っておるのは、農民なり関係者の中にそういうことを心配している人が相当おるわけなんですよ。そうすると、あなた方が農民の信頼、農業団体の食管を崩してはならない、そして米の輸入をさしてはならない、そういうことのために今度の水田転作を成功させなければいけない、自主管理もやってくれ、こうおっしゃるわけだけれども、しかし、その辺の問題がぴしっと一緒にならないとそういうふうにはなかなかなれぬと思うのですよ。そういう意味でもやはり原則に返って、管理制度の枠でやるのなら管理制度の枠の中でやるような政府の責任もちょっぴり、本当は我々はちょっぴりと言ったらいかぬのですけれども、やはりお考えになるべきじゃないか、こう提案しているわけですよ。重ねてこの問題について、あなた方の方で再検討せられる意思ありやなしやお答えいただきたい。
  98. 後藤康夫

    後藤政府委員 この自主調整保管の問題、あるいはまたことし豊作の恵みによりまして供給がふえた部分をどういうふうに保管し、流通させていくかという問題につきましては、今関係団体の中で具体的なやり方をいろいろ御検討中というふうに承知をいたしております。初めてのことでございますのでいろいろ御苦労があると思っておりますし、私どももできるだけの御相談には応じ、団体と私どもと協調しながら、需給を適正に操作していくということに努力をしてまいりたいというふうに思っておるわけでございます。  自主流通米の問題につきましては、先ほども、また午前中にもちょっと申し上げましたが、四年連続の不作の中で、需要者側がいわば玉を確保したいというようなことで急速に率が伸びたということがございます。平年作の状況を考えればやや急速に率が伸びたという認識を申し上げたことがございますが、今言われております自主流通米制度の見直し、充実による自主流通米の増加と申しますのは、自主流通米もすっかり定着してまいりましたけれども、当初考えておりましたときに比べますと、いろいろな意味で硬直性があるというようなことも言われております。第二政府米だというような批評もあるところでございます。自主流通の本来のよさ、長所を生かすという形で、その結果自主流通が伸びていく、そのためのいろいろな工夫をしながら弾力的な運用を図っていく、そのことによって、逆に申せば硬直性があるところにつけ込んでくる不正規流通というようなものができるだけ少なくなるようにという願いも込めまして、そういう意味での自主流通米の充実ということを考えているわけでございます。
  99. 田中恒利

    田中(恒)委員 いろいろありますが、水田転作の問題にちょっと焦点を絞ってみたいと思います。これまでの水田再編対策と今度の水田農業確立対策、いずれもいわゆる減反政策でありますが、これはどこが違うのか、この点をまずお示しいただきたいと思います。
  100. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 現行の水田再編対策と来年から実施しようとしております水田農業確立対策考え方におきまして違う点について特に申し上げますと、四点に集約されるものと考えておりますが、これまでの水田転作の経験あるいは教訓、そういったものの反省に立ちまして、これらの四点について構想、検討が行われたところでございます。  まず第一点といたしまして、稲作転作を通ずる生産性向上、あるいは地域輪作農法確立といった水田農業体質改善というものを中心に据えようとしておることでございます。これまでの、例えば四十六年から実施してまいりました稲作転換という時期におきましては、どちらかといえば緊急避難的な考え方に立っていたかと思います。その後、現行の水田再編対策におきましては、転作にあわせまして、転作等につきましての自給力の弱いものについて考えていく、あるいは地域農業といった観点も加えておりますけれども、やはりこの点については、水田農業確立あるいは水稲自体のコストダウン、そういった観点がやや弱かったというような反省があるわけでございます。さらにまた転作におきましても、転作田といったことにあらわれておりますような点に力点がありまして、地域輪作といったような観点がやや弱かったという反省がございます。そういう意味で、今申し上げましたように、稲作転作を通ずる生産性向上あるいは地域輪作農法確立といったものをあわせまして、水田農業体質強化中心に据えたという点が第一点でございます。  第二点目は、この実施の推進主体でございます。もちろん、農業者の方々が各地域におきましてそれぞれ英知を傾けられまして、あるいは各地域における先進の情報というものを酌み取られまして、いろいろな状況の中で新しい農業を展開されておりますが、どちらかといいますと上からの、先ほど先生のお話にもございましたように減反といいますか、具体的に受けとめる場合にも生産者団体というよりは市町村といったようなものが主体になりまして、そういう観点からいろいろな問題が起こっていたというふうに我々反省しているところでございます。そういう点で、生産者あるいは生産者団体主体的な取り組みを基礎にいたしまして、生産者団体と行政とが一体的に推進する、こういう点が第二番目の変わった点であろうと考えております。  三番目の点といたしましては、助成等におきまして構造政策を重視したということでございます。これまでの例えば加算の段階の考え方といたしましては、定着性といったものを中心にいたしまして団地化加算というものが中心でございましたが、この加算制度については思い切って、例えば担い手育成であるとかあるいは地域的な主産地の形成であるとか、そういったものを加えることによりまして拡充を図っております。また、加算制度等におきましても農協等が財政的な意味での基金をつくる、そういった共補償といったものを前提にいたしまして、従来以上の加算の手厚い措置を講じたという点でございます。  最後に第四番目といたしまして、我が国稲作を担う地域あるいは担い手等において米の生産の大宗が担われるように配慮することとした点でございます。
  101. 田中恒利

    田中(恒)委員 今四点言われましたが、いずれもこれまでの稲転の問題点を指摘されておると私も思います。一口に言えば、ともかく転作の結果を一〇〇%やればいいということで、量というか面積というか、そういうものにとらわれて、いわゆる農家の営農というか経営というか、あるいは広げて地域全体の活性化というか、そういう視点が非常におくれてきたので、一番目の水田農業確立ということで、稲作にプラスアルファをつけて経営構造なり地域営農体系というものを思い切って本格的な日本農業体質に変えていくということですから、水田農業確立ということがこれまで十五年経過した後にやっと気づいたというか、そういう方向に向かい始めたという意味では私は評価できるわけです。ただ問題は、それが今度のこのやり方でできるのかどうか。単に農民の主体的なものでとおっしゃるわけですけれども、これは上の方がおっしゃるわけで、下の方はまだそこまで十分な理解をされていないわけであります。ですからへまをすると、根っこは、お金がだんだん少なくなって奨励金も減らさなければいけないし、転作面積はもっとたくさんやらなければいけないから自分でやっていきなさいということで、農業団体や農民に責任ということはないが一切を任していく、こういう姿勢ではないかという批判も厳しくあります。  第一、今局長さんおっしゃった水田農業確立というような問題がそんなに簡単にできるものじゃないと私は思います。大臣も、二千年の歴史を持つ日本稲作生産構造を一朝一夕にできるものじゃない、こういう談話も発表されておりますね。ですからそういう意味では、この期間の問題にしても、これは六年間ということになっておりますが、前期三年、後期三年の六年間で終わるものではない、そういう短い期間でできるような内容のものじゃないと思うのですね。そういう点についてはどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  102. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先生御指摘のとおりでございまして、水田農業確立といったような命題は我が国農業の最大の問題でもございます。これまで二千年来の水田農業の問題を具体的な短期間に対応していくということもなかなか難しい問題でございます。加藤大臣におきましても、この点は容易ならざる問題であるという認識のもとに、すべての農政の問題をこの一点に絞るというか、そういったようなことで、関連事業の集中的な実施といったようなものも含めていろいろ談話等の発表もあったところでございます。そういう意味で私どもといたしましては、大綱におきまして、次期対策といいますか水田農業確立につきまして実施期間を二期六年としたことにつきましては、次のような考え方に立つわけでございます。  この点につきましては、政府部内においても、率直に申し上げまして極めて短期間の中でやるべきだという意見もありました。そういうことに対しまして、繰り返すようでございますが、水田における稲作転作を通ずる生産性向上あるいは地域輪作の確立といった水田農業体質強化中心に据えるというこの事業におきましては、短い時間ではなくてある程度の時間やっていかなければいけないということが一つあります。そういうようなこととか、他方、行革審等から出てまいっております奨励金体系からの脱却というようなこともございまして、そういった中で強い体質を持った水田農業確立を図ること、あるいは長期的観点から農業の将来を見通せること、あるいは、現行において諸般の情勢がいろいろと変わっていきますので、そういった中で経済情勢の変化にも対応できるような期間であること、そういうようなことから前期三年、後期三年、計六年という期間を設定したところでございます。
  103. 田中恒利

    田中(恒)委員 稲転の十五年の歴史の中でも、やはり取り組み方によっては、あなた方は今盛んにそれを宣伝していらっしゃるわけだが、なかなかいいモデルというか、やっておるところがありますね。私も幾つか承知しておりますが、それはそれなりに、あなた方の言葉どおり言えば、農家や部落やその地域の農協等の団体、役場など関係者の自主的な、意欲的な営農づくり、村おこしというものの中でできつつあります。そういうものが今度のポスト第三期でまたちょっと冷や水をかぶるのではないかというような気も私はするのですよ。基本的には、そういうところは稲作から転換する条件を非常に持っておる。私どもの山の地域でも、山間の野菜、高冷野菜、こういうものの可能性を持っておるところはうまくやってきております。ところが、そういうところももうぎりぎりになっておりまして、これは後で細かく聞きたいところだが、今度の減反の七十七万ヘクタールの割り当てを受けるようになってはもうこたわぬ。そういうところは、あなた方が言われているように今まで自主的にやっておるところなのです。ところが今度は、これ以上はこたわないという形が出てきておりますよ。そういうものも注意深く見積もってもらわなければいけませんよ。何もかも今までよりはいいのだというように宣伝されてもらっては困るので、それはやはり奨励金が下がっていく、面積はふえていくということです。  問題は、奨励金と転換する作物との組み合わせで、稲作の水準にほぼ近いとかとんとんとか、場合によってはそれをオーバーするとかという状況ができたときにいわゆるばねが出てくるわけです。それがなくてやれということは精神論だけでありまして、なかなか今の世に簡単に通用しにくいと思うのです。そういう意味では、このポスト三期減反は面積が多くて助成がぐっと落ち込むわけでありますからなかなか難しいと私は思う。ですから、根本的な諸般の農業政策とどういうふうに結びつけていくかということを最終的にはとらざるを得ないでしょう。しかし、それをするにしては、現在の例えば行政機構をとってみたって、前々から言っておるように縦割りで、さっき竹内委員が言われたが、農蚕園芸局は転作だと言っておる、構造改善局は基盤整備だと言っておる、食糧庁は米は余っておると言っておる、こういう縦の線が統一的にされ得るような機構が本省を初め出先あるいは町村でもなされないと、そういう体系まで変えないと今のくせはそう簡単に直るものではないと思うのですよ。そういう意味では、この問題は三年や五年や六年でどうこうなるような問題でないだけに、三年ごとで六年で終わるとかこれで打ち切りとかいうことのないように、水田農業確立の方向をずっと継続していくならいくようにやってもらいたいと思うのです。ただその場合に、さっき申し上げましたように、農民の信頼を得るような点については多くの問題を今残しておりますから、そういう点を十分注意してやってもらいたい、こういうふうに考えます。  そこで、七十七万ヘクタールの府県配分というものは、もういろいろ説明を受ける必要はありませんが、これまでの七要素プラス三要素、十要素でもって配分しておるのですが、従来のようにその配分の割合、ウエートは決まっておるのですか。というのは、今県の割り当てをやりました。そして今度は町村に行くわけですね。今、町村へ行くのにどういうふうにしたらいいのかということでごたごたしておるわけですが、この問題についてはあなた方の方で何か指導していくとか、こういう基準でとかいったような考え方で臨んでいらっしゃるわけですか。
  104. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 転作面積の地域配分の問題でございますが、この点につきましては、現行私ども考えております大綱考え方によりますと、一つは、水田農業確立という基本理念のもとに、各種の土地利用計画による線引き政策との整合性の面から、市街化区域水田等については傾斜配分を行うということ、もう一つは、今後とも稲作農業を担う地域あるいは担い手等にも配慮して行うということ、この二点が具体的な問題として考えているところでございます。ただいま先生御指摘のとおりでございまして、従来、水田再編対策におきましては、具体的な事項といたしまして、自主流通米比率であるとか圃場整備の状況等々七項目を配分の要素として考えていたところでございますが、水田農業確立対策という具体的な考え方の視点に立ちまして、稲作生産性担い手のウエートあるいは農業の依存度、稲作の依存度といったものを都道府県の配分の中に入れまして、十項目で区分して県の配分を行ったところでございます。  先生御指摘のこれから具体的な県内の市町村への配分という点につきましては、私どもといたしましては、こういった考え方をこれから開かれますブロック会議等でも十分申し上げて、いろいろな参考にさせていただきたいと考えておりますが、それぞれの都道府県なり市町村の段階における配分等におきましては、やはり基本的には地域地域におきますところの農業の実態、営農の実態に即応して配分が行われるべきだというふうに考えております。そういう意味においては、冒頭に申し上げました二点が一つの具体的な、これからも全国各地でいろいろ勘案していただかなければならない重要な基準だというふうに私ども考えておりますので、そういった点を一方では中心に据えながら、各地域地域においての配分を展開していただきたいと考えておるところでございます。
  105. 田中恒利

    田中(恒)委員 共同責任でやっていくということについての法律的な基礎があるのか、あるいは水田転作、これは農政の具体的な政策としては最大の課題でありますが、そういうものを生産者団体と行政機関とが一緒にやっていく、こういうことだけで済むのかという疑問を実は持っております。ですからそういう問題をちょっと詰めたかったわけでありますが、時間がございません。そこで、後でまた機会を得たいと思いますが、二つだけちょっと違った問題で御質問しますので、一括御答弁いただきたいと思います。  一つは改良普及員、内容としては人件費補助でありますが、協同農業普及事業交付金ですね。これは交付金制度に変わったわけであります。私ども、その改良助長法改正の際に、このことが地域の改良普及員のこれからの配置や要員などをめぐって変動があってはいけないから、その線はきちんと守ってもらうということが一つの大きな条件になっておったと思いますが、今回またこれを一般財源化するという方向が来年度予算編成で相当表へ出て、関係者の間で大きな不安を巻き起こしております。この点については前回同様でありますが、現行の交付金制度で十分な対応をとれるような予算対策をきちんと講じていただきたいということが一つであります。  それからいま一つは、果振法の改正をやりまして、御承知のように需給調整機能というものを法律の中に相当大きく植えつけて、そしてことし初めて実行されておるわけであります。ことしは裏作で、全体的に果実の供給は少なくなっているわけでありますが、特に果汁ですね、ミカンジュースなどの集荷をめぐって大変困難ではないかというような声もあるわけであります。この果振法の運用をめぐって、ことしの需給上、ジュース、果汁原料が集まらぬということになりますと、来年のオレンジ、牛肉の日米交渉などの問題にこれは直接響くわけでありますが、そういう点について十分態勢がとれておるのかどうか。この二点をお尋ねをして質問を終わりたいと思います。
  106. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 最初の協同農業普及事業の問題でございます。この点につきましては、昭和六十二年度の予算編成に関連をいたしまして、他省でございますけれども、現行の交付金の対象職員に対しまして一部一般財源化の要求が行われたということに端を発しまして、それとの関連もございまして、協同農業普及事業の交付金についても一般財源化の問題が提起されているわけでございます。  この点につきましては、先生御指摘のとおり、昭和五十八年五月の農業改良助長法の一部改正によりまして、都道府県の自主性を尊重しつつ事業の弾力的な運用を図るため、それまでの定率制の負担金の制度から現行の定額の交付金に切りかえるということをしていただいたわけでございますが、私どもといたしましては、全国的にバランスのとれた一定の行政水準を確保する必要があること、あるいは国と都道府県との協同事業としての性格を有しているというようなことから、この協同農業普及事業につきましては、安定的な財源措置を講ずる必要があると考えておるところでございます。今後とも、農林水産省といたしましては、現行の協同農業普及事業交付金制度の堅持あるいは継続のため、最善の努力を払ってまいる所存でございます。  次のミカンの問題でございますが、御指摘のとおりでございまして、裏作に当たっているというようなこともございまして、予想収穫量が二百十六万トンということでございまして、前年に比べまして一三%の減少が見込まれておるところでございます。これにつきましては、ミカンの生産者団体、生産農家、その団体等におきまして去る十一月に緊急の対策会議が開かれまして、果汁の原材料のミカンを三十六万八千トンというようなことで、前年対比七四%ではございますが、その確保のための諸活動の決定をなされたところであります。農林水産省、農蚕園芸局といたしましても、本年度の温州ミカンの生産状況にかんがみまして、加工の原材料の確保が達成できるように、例えば生産県の課長会議でありますとか、あるいは地方農政局を通じた関係各府県あるいは生産者団体に対する指導でありますとか、あるいは全国団体との共同による出荷団体に対する巡回指導等のことを行いまして、現在、この原料の確保という点に全力を挙げているところでございます。  なお、最近の時点、十二月の七日現在でございますが、二十万二千トンということでございまして、計画の仕向け量の過半といいますか、五五%の原料が現在果汁工場に搬入されているという状況でございます。ことしの暮れから明年二月にかけまして、さらにこういった指導を強化してまいりたいというふうに考えております。
  107. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 水谷弘君。     〔委員長退席、保利委員長代理着席〕
  108. 水谷弘

    ○水谷委員 冒頭に、先般、我が党の農水部会で、大島の大島町の三原山噴火に対する農林水産物に対する被害の救済に対して大臣にお願いをいたしました。そのときも大臣からしっかり取り組んでいくとのお答えをいただいたわけでございますが、その後の状況を見ますと、当初、第一次噴火に関する調査で出てまいりました被害と比べものにならないほど大変大きな被害が出ているようであります。まだ島へ帰れないで東京におられる皆さん方の御不安は大変だと私は思っております。そういう意味で、いわゆる花卉類等については共済の対象になっていなかったり、またハウスの中の花卉についても共済に加入していなかったり、現行制度を適用しての救済措置は大変難しい面がたくさんあるということで、活動火山対策特別措置法の適用を具体的に講じなければならないという要望が強く出ておるわけであります。さらにまた、東京都においては激甚の指定をということで真剣に取り組んでおられるわけでありますが、今申し上げましたとおり、現状の法と制度では直接的な有効な救済対策が講じられない、こういうことが考えられるわけであります。しかし、国民全体もそうでありますが、今回のこの異常な、全島民が島から退去しなければならないという不幸な大災害に対して、やはり国としてでき得る限りの対応をしていくべきだと考えております。緊急対策本部でもいろいろ御検討されているようでありますが、大臣には特に特段のお取り組みをいただきたい。お考えをお伺いしたいと思います。
  109. 加藤輝雄

    加藤国務大臣 三原山噴火に伴い花卉、家畜等の被害が発生しているところでございますが、現在、東京都は現地に農林水産対策班を派遣し、その被害の軽減に努めているところであると承っております。農林水産省といたしましても、東京都と十分連携を図りつつ、速やかに被害の実態を把握し、その救済対策についても、被害の実情等に応じ、適切に対処してまいりたいと考えておるところでございます。
  110. 水谷弘

    ○水谷委員 先ほど申し上げましたように、活動火山対策特別措置法等の特例の適用等についても閣議において大臣から強く要請をしていっていただきたい、重ねて申し上げておきます。  次に、先ほど来、十一月二十八日に出されました農政審の報告についての御議論がいろいろございました。私はあの報告書を手にしまして、委員の各位が大変努力をされ、我が国農業を取り巻くいろいろな問題について思いをめぐらせながら、二十一世紀を目指した我が国農業のあり方についての真剣な取り組みをされたことは報告書の中からうかがい知ることができるわけでありますが、しかし、この報告書をもとにして、二十一世紀生産者も消費者も、国民全体が本当に日本農業が見事に発展をしてきたと言えるようにしなければならぬわけでありまして、そういう意味から、きょうは大臣と直接さしでいろいろとお話を申し上げたいし、私も大臣の率直な御意見を伺いたい、こう思っております。  大臣は就任以来、現在の日本農業のいろいろな問題について、その状況を大変厳しいというふうに判断をされていると同時に、大転換のときを今迎えているという発言もありましたし、また、発想の転換をしなければならないという発言も重ねておいでになります。そういうことを考えますと、加藤農水大臣が、これからの二十一世紀を目指す我が国農業の展望、またその方向づけに対して大変情熱を持って取り組んでおられるということがよくわかるわけであります。それを踏まえた上で、今回の農政審の報告をお受けになって今大臣はどのようにこれをとらえ、そして今後どう取り組んでいこうと決意をされておられるか、冒頭にお伺いをしたいと思います。
  111. 加藤輝雄

    加藤国務大臣 先月末、農政審議会からの御報告をいただきました。この「二十一世紀へ向けての農政基本方向」は、生産者だけでなく、消費者を含めた国民各界各層の理解と協力を得られる農政基本方向を定めるべく、各界を代表する委員の方々が論議を積み重ねてこられた貴重な成果であり、農業農政の持つ基本的な役割に即して作成された今後の農政の指針として、私は高く評価するものでございます。そして農林水産省といたしましても、本報告に示されている農業生産性向上や合理的な価格形成を目指した施策の方向を踏まえ、生産者が将来に向けて明るい展望を持って農業生産にいそしめるよう、具体的な施策の展開に全力を傾注してまいる決意でございます。
  112. 水谷弘

    ○水谷委員 それでは何点かちょっと伺いたいのでありますが、全体を通じて、確かに報告の中身はいろいろな方向性について示してあります。しかし、その中でも、少なくとも昭和三十六年六月、農業基本法を制定して以来今日まで歩んできた我が国農政の中にあって、今回のこの報告の中に方向性が示されているものについて、全く新しい角度から出てきたものというのは私は考えられません。全く目新しいものが出てきたとは思っておりません。であるならば、三十六年以来今日までの農政推進の中にあって、国民のいろいろな各層各界から農業に向かって注文をつけられている点等々がなぜ実現することができなかったのか、その反省と分析が果たしてどの程度行われたのかということを私は率直に感ずるわけであります。  申すまでもありませんが、基本法の第二条には、これからの我が国が国の施策として講じなければならないこととして、その第一項一号に、需要の動向に即した生産の方向という問題やら、外国産の農産物に対する生産の合理化について、また第二号には、農業生産性向上、第三号では、農業経営の規模の拡大、農地の集団化、農地保有の合理化及び経営の近代化を図る、また第七号では、近代的な農業経営を担当するにふさわしい者の養成等々、法のスタートからこれらは明確に位置づけられ、今日まで推進をされてきたわけであります。そういうふうに考えてきますと、今回のこの「方向」の中で特に構造政策中心に据えて、水田農業確立ということについては生産性向上とさらに規模の拡大というものをまた中心に据えてきているわけであります。しかし、こういうことは従来から力を入れて取り組んでこられたものであったはずであります。これだけの時間をかけ、これだけの労力をかけて今日まで取り組んできた。しかしながら、いまだにその実が確たるものを見ることができない。そこで、今回改めてこれらの問題を取り上げて方向づけをされるということになりますと、従来の手法、従来の行い方ではとてもこれはできないだろうと考えるのは私だけではないと思うわけであります。そういうことについて、本当に産業として自立できる農業確立、また価格政策の合理化、水田農業確立、このような問題を具体的にどのように進めていけるのかという問題についての掘り下げた、突っ込んだものを私は見ることができないわけでありますが、大臣、このことについてはどのように考えておられますか、お伺いをいたします。
  113. 甕滋

    ○甕政府委員 ただいま先生から御指摘ありましたように、私ども現在抱えているいろいろな問題、これから解決していかなければならない問題、これまでも私どもの取り組むべき問題としていろいろあったわけでございます。また、今回の農政審議会における検討におきましても、前回の御報告等も踏まえまして、構造政策の進捗状況でございますとか稲作生産性の現状、こういった問題についてフォローアップを行ってまいりました。また、その原因分析等についてもいろいろ御論議があったところでございます。そういったものを踏まえまして、今回の報告が取りまとめられてきたわけでございます。農林水産省といたしましても、その報告に示された事柄あるいはそこに至るまでのいろいろな御論議を頭の中に置きまして、これからの取り運びの道筋も念頭に置きながら具体的な施策の展開に今後全力を傾注していきたい、こう考えておるわけでございますし、また農政審議会におきましても、今後またこの報告を具体化していく上で必要となります幾つかの重要事項についてさらに検討を深める、こういうことになろうかと思います。  具体的に、特に構造政策についてなかなか難しい問題がある、施策の展開上どうしていくのかという御指摘もございました。構造政策推進に当たっては、農政審の今回の報告のねらいとなっております生産性向上、それに基づきます国民の納得のし得るような価格での農産物の供給といった事柄を実現するために、構造政策についてもぜひこれを加速化していくべきである、こういうことが指摘されておりまして、具体的にその進め方等におきましても、今後、個別に規模拡大施策といった施策を行っておりますものに加えまして、もろもろの農業政策、施策についてもその辺に焦点を置いて整合性を持って運用していくべきである、こういうような御指摘もございますので、私ども、農用地利用増進法に基づきます規模拡大施策あるいはその基盤をなします生産基盤の整備、生産対策、そういった事柄につきましても、構造政策との関連を助長、促進するといった観点に立って全体の政策も整合性を持って取り進めていかなければならないということで、具体的な検討を早速来年度予算編成等に向かっても始めておるところでございます。
  114. 水谷弘

    ○水谷委員 またそれらは後でまとめてお尋ねをいたしますが、私は、この日本農業は経済合理性を無視したものであってもよろしいとか、また国際化に対応できなくても構わぬというような考えは決して持っておりません。当然、現在の社会における農業の位置づけというものはそういうものを乗り越えていくものでなければならないということは考えます。しかし、急激にそれを現在の農業に要求しても、これはとてもかなうことではないわけであります。そういう意味から、この報告書を見ますと、産業政策的視点からのいろいろな方向性というものが余りにもくっきりと出てき過ぎておりまして、その路線はもう申すまでもございませんけれども、前の方でも触れておられましたが、国際協調経済構造調整研究会報告、いわゆる前川リポートと言われているものに極力沿うような方向での方向性を示されているな、余りにもその色彩が強く出され過ぎているのではないかな、こういうふうに考えるわけであります。  特に、先ほど冒頭でも自給力、自給率の議論が大臣とございました。この報告書を見ますと、自給力という言葉がこの報告書の中に全く見られないわけであります。前回の五十五年の農政審の答申では、冒頭の「今後の農政基本方向」の第一項には「総合的な食料自給力の維持強化に努める」こういうふうに挙げてあって、第二章には「食料の安全保障」を設けてございました。先ほどの大臣の答弁を聞いておりますと、こういうことがどうでもいいというふうにはお考えになっていない、もちろん自給力を向上させなければならないという御決意でおられるとおっしゃっておりましたが、しかし、こういう報告書の中にあらわれてくる言葉、表現というものは、ただそういう言葉を使わなかった、供給力という言葉に変えたというだけの問題ではなく、やはりここには思想があらわれてくるものであります。というのは、従来は、極力自給力を高めた上で、不足するものは安定輸入を図っていくという基本的な考え方で来たはずであります。ところが、今回の報告書の中を見ますと、「基本的には、国内生産と輸入の適切な組合せを図りつつ、」ということで、いわゆる国内生産と輸入というものを並列に取り扱っている。この並列な取り扱いというのは、即いわゆる自給力、我が国における食糧の自給力を極力目指していくという思想が大幅に撤退されたのではないのか、このように受け取らざるを得ないわけでありますが、このことについて大臣から、どういうふうなこの辺の変更が行われてきているのか、もしそうでなければよろしいのでありますが、お伺いをしておきたいと存じます。
  115. 加藤輝雄

    加藤国務大臣 午前中の御質問に対してもお答え申し上げたとおりでございます。まず申し上げておきたいのは、今回の農政審の御答申、「農政基本方向」の中に、ただいま先生は産業政策的視点を中心におっしゃいましたが、光をいろいろに当てておられるわけでございまして、社会政策的視点、国土政策的視点、消費者政策的視点、国際協調的視点というように五つに光を当てて、それぞれの立場で分析し、御提言をしてくださっておるわけでございます。そして、食糧国民生活にとって最も基礎的な物資であり、一億二千万に及ぶ国民食糧安定供給を図っていくということが農政基本的役割であり、また政治の原点である、このように私は考えております。  また、答申の中にもいろいろうたっておられまして、「穀物等の国際需給は当面緩和しているが、中長期的にはなお不安定要因を抱えていることに留意し、与えられた国土条件等の制約の下で最大限の生産性向上を図り国内の供給力の確保に努める」ことが必要であるということも強くうたっておられます。それぞれの国が国民の主食であるものの自給率を上げていき、より安定したものを願うということは、これまたそれぞれの国の主権を発動していく大きなもとであるとも考えておるところでございます。そして今回の報告の中で、生産性の高い農業生産を実現し、コストダウンに努めつつ食糧供給力を確保していくという考え方に立っておるということを繰り返して申し上げるところでございます。
  116. 水谷弘

    ○水谷委員 確かに五つの視点はここに明確にありますが、全体を通じて流れている思想が、どうしても僕が申し上げた産業政策的視点が強いのではないか、こう指摘をしておいたわけでございます。  次に、国際協調の点について、先ほどからいわゆる米の輸入自由化の問題についていろいろな議論がございました。大臣の答弁を伺っておりまして、米は断じて自由化しない、こういうはっきりとした答弁がございましたので、この問題についてはこれ以上大きくは申しませんが、ガットの場で、二国間の協議から多国間の協議に流れていくという大変難しいテーブルに着くわけでございます。こういうふうになってきますと、よほど政府の姿勢と国民の合意というものがしっかりでき上がっておりませんと、いわゆる外交交渉を行う場合に、国内でいろいろな議論がわがまま勝手にひとり歩きしているようでは大変に困るわけです。米を自由化に踏み切らざるを得なくなるそのときはもう一度日本の貿易体系というものを考え直す、そこまで追い込まれたときでなければそんなことは絶対できない。工業製品をストップさせても米を入れるな、極論を言えばそこまでするのが民族生存のために政府がとるべき態勢であろうとまで私は考えております。  そういうふうに考えなければならないわけでありますが、しかし無責任な議論が国内に横行している。マスコミを通じても、いろいろな方面でいろいろな議論が行われている。米のいわゆる価格差の問題についても、十倍だ、六倍だという議論がある。ところが、消費者価格は一・九倍程度しか違いませんよという議論は明確に表に出てこない。またアメリカの米政策に対して、八五年においても約十億ドルの財政負担をしているという問題については明確に表に出てこない。日本が米を自由化に踏み切るということはどういう問題が派生してくるのか、さらにまたそれが本当に消費者、国民にとってプラスになるのかならないのか、こういうことを政府がもっと国民に明確にPRもし、その事実を明らかにしていかなければならないと私は思います。まだまだ財界や一部の発言者の声の方が大き過ぎて、正論が国民のもとに届いていかない。いわゆる世論操作という話じゃありませんが、そのようなことが行われている。そういう日本の国内状況を外から見れば、あれは何だ、国内においてもあれだけ輸入自由化に踏み切れという議論があるではないか、そういう問題を私は憂えるものであります。どうか大臣、もっと農水大臣の毅然たる姿勢で内外に訴え切っていっていただきたいと申し上げたいわけでありますが、いかがでございますか。
  117. 加藤輝雄

    加藤国務大臣 私もその点は水谷先生と全く同意見でございます。特に憂うべきことは、国内の世論が二分してはならないということであります。それは一つは、輸出産業の関係から見れば、日本農産物自由化しないから我々輸出産業がこのようにたたかれるという議論、逆に農業関係者から見ますと、連中が輸出し過ぎるから我々農業にこういうはね返りが来るという議論、これが国内的に二分されるようなことではいけない。国民一億二千万の英知と努力を結集して、一本化して国の将来を考えるのであって、どちらかに責任をなすりつけるような態度ではこの問題は解決していかないということが一点でございます。  そしていま一つは、表現は余り適当でありません、交渉相手国ということの方がいいのでありますが、午前中、「敵を知りおのれを知れば百戦危うからず」と言ったのですけれども、敵という言葉は不適当でございますから撤回して、世界の国々の農業における実態、保護政策、ダンピング輸出、こういう問題等の実態を国民の皆さん方にもよく知っていただき、そしてそれに対応するあらゆる措置をまた国内的にやっていかなくてはならない、それが本当に国民生活、国民経済の今日と現在を憂え、考えていく人々のとるべき態度であろう、こう私も思い、そこら辺の点はあらゆる機会をとらえて私も今後やっていきたいと思いますので、先生も今の御議論を一段と機会をとらえてよくおっしゃっていただきたいと、逆に私の方からもお願いをしておくところでございます。
  118. 水谷弘

    ○水谷委員 しっかり取り組んでまいります。  米については今申し上げましたが、これから交渉のテーブルにのってくるいわゆる十二品目、それから現在の輸入制限品目の二十二品目、これは、私は率直に申し上げまして全部制限をすることはできないと思います。すべてこれをこのままもっていくということは不可能だろうと私は個人的に考えております。これは私だけではないだろうと思います。私は、これらのものがその地域における特産品であり、地域経済を支えている重要な品物であることはよく知っておりますが、しかし、これが二十一世紀を迎えるまでこのまま推移していくということは考えられません。そこで、何を残し、何を開いていかなければならないのか、その方向性を生産者に早く伝えるということが私は大切なことであろうと思います。外交交渉の中で押し切られて、それが突如として現場へどんと落ちていくという例がいつもあるわけでありますが、そういうことではなく、外から攻められてきてみずからの門戸をやむを得ず開くという方向性はこれから長く続くことではないだろう、そうなれば我が国の国内において、また農業の世界において、それぞれの地域経済においていろいろ検討し、いろいろなものについてどうするかという方向性はある程度示していかなければならない。私の言うのは大分大胆な意見かもしれませんが、しかし、そういうことをそろそろ明確にしていきませんと、その地域農産物が本当にだめになったときはそれにかわるべき雇用、就労の機会が用意されていなければなりませんし、その地域の経済を保てるだけの対策が既に講じられていなければならぬわけであります。そういうことを考えても、制限品目並びに十二品目に対する政府考え方基本的な取り組みについてお伺いしておきたいと思います。
  119. 眞木秀郎

    ○眞木政府委員 ただいま輸入制限品目二十二のうち十二品目が、これまでの日米関係の間でいろいろな経緯を経ながら、ガットの場でパネルを設立して議論していこうという段階に至っておるわけでございます。ガット上、農業は工業と違う特殊性があるということで、一定の例外のもとに輸入制限等も認められておるわけでございますけれども我が国のこの十二品目がガットのどういう条項等に照らして判定がなされるかというための議論がこれから行われるというところであろうかと思います。  我々は、この十二品目はいずれもそれぞれの地域にとっての基幹的な作目、他にかえがたい地域特産物であるということを踏まえまして、これまでアメリカとの交渉においてはこの点を力説し、主張してまいったわけでございます。今後、場面が変わってガットの場での議論になるわけでございますけれども、いずれにいたしましても現在のガットの条項というものは、例えばある品目について一定の生産制限を国内でやっておるということと、一定のミニマムアクセスといいますか、輸入をある程度の量認めるということを条件として、それが正当化されれば認められるということでございますが、実際にそれを適用するとなりますと、ガットができたころ、こういう現在のような状況がまだ予想されていなかったときにつくられた条項であるという点もございまして、なかなか現実には適合しがたいということで現在のような議論があるわけでございます。  他方、アメリカ等におきましても、ガットに入るときに、当時の一九三三年の農業調整法の規定に従って国内で守りたいものは全部ウエーバーをとって、現在十四品目がウエーバーになっておるということで、これは、無制限かつ無期限に輸入制限をしていいということで実際の公平性の見地からも問題がある。また、ECにおきましても同様、輸入課徴金制度に立って自由に保護ができるといういろいろな状況があるわけでございます。我々としては、その中でこの十二品目の問題について十分な主張をしていきたいと考えておりますが、先般開始が宣言されましたウルグアイ・ラウンドにおきましては、こういういろいろな輸入制限的措置のすべてをとらまえまして、これをどの国もちゃんと守れるような形での新しいルールをつくろうという動きになっているわけでございます。我々といたしましては、この新しい農業が工業と違う特殊性を持つということを踏まえつつ、あらゆる国が守れるような形での新しいルールづくりということに積極的に取り組んでまいりたいということを言っているわけでございます。この状況と今申し上げた状況、いろいろとマルチの新しいラウンドが始まっている状況のもとで、また二国間の問題についてパネルで議論をしていくということで状況は非常に込み入っておるわけでございますけれども、最初に申し上げましたような考え方できちっと守るべきものは守るという立場に立って、我々は今後とも情勢の変化を見きわめつつ適切に対処してまいりたい、このように考えております。
  120. 水谷弘

    ○水谷委員 当面する課題にはしっかり取り組んでいっていただきたいと存じます。私が申し上げているのは二十一世紀という将来の展望の上に立っての話でありまして、これから交渉につくのに最初から外してもいいなどというような考え方はとんでもないことでありまして、それはごちゃまぜにしないでいただきたい。ですから、今局長の答弁がございましたように、これは新しい農産物貿易のルールづくりの中でも当然主張をしながらしっかりと取り組んでいっていただかなければならぬと思います。それからウエーバー品目についても、これは当時の状況がああいう状況でございましたが、今日においては全く不公平、不平等といいますか、こちらから注文をつけてウエーバー品目を外させてもいいくらいな問題でありますので、それらもひっくるめて、新しい農産物貿易のルールづくりについては強力に、真剣に取り組んでいただきたい、こう思うわけであります。  次に、水田農業確立ということ、これはポスト三期もひっくるめての問題でございますが、これを中軸に置いてこれからの日本農業確立を図られるということについては、私も大変重要であり、ぜひそうあらなければならないと考えております。冒頭にも申し上げましたけれども、これを確立していく上においては、いろいろなことがこの中に盛られておりますが、私が全体を通じて見ますと、やはり規模拡大を図って生産性向上させる、これが大きな柱になってきている。それからまた、担い手が生産費を償えるような価格政策というものがもう一つ、こういう形で農政審の報告が出ております。  そこで、規模拡大を図るということについてですが、これは本当に今日まで大変な努力で進めながらなかなか進まなかった。そのためにある論者は、価格政策をそこへぶつけて、そして中核的な農家が生産費を償えるような価格にすれば、それを潜るような、赤字経営になるような零細農家は稲作の経営から手を離して、その農地は貸すか売るか、いわゆる専業農家にその農地が流動化を起こしていくであろう、こういうふうに言う人もおります。しかし零細農家というのは、いろいろ見てみますと、特に第二種兼業農家というのは、採算を度外視しても先祖伝来の伝統的な水田を一生懸命に耕す、そういう真剣な取り組みがあったり、またはコスト意識というものについて考えてみれば、種を買って肥料を買って、自分の労働力なんか全然無視するぐらいでもまだ心配ないんだという考え方は、特に規模の小さい二兼農家の皆さん方には依然としてあるそうなってくると、価格政策で例えば現在の価格が引き下げられるようなことがあったとしても、現実にそれらの人たち稲作経営から離れていくようなことは考えられない。  またもう一つの考え方は、現在の専業の稲作担い手と言われる方々は五十から六十を超えておられる、そうすると、あと十年くらいたてば本当に農作業にたえられなくなってそれをどなたかに引き継がなければならない、いわゆる高齢化の進展が流動化を起こしていく一つの要因になっていくのではないか、こういう考え方も中にはあります。しかし、これも現在の稲作経営は非常に省力化されておりまして、ある程度高齢になっても十分たえられる。さらにまた、いわゆる生きがいといいますか、高齢者の生きがいの場としての稲作経営というものはその地域においては大事な位置づけになるであろうというようなことをずっと考えていきますと、現在の政策の延長線上においてこの規模拡大を図るということは、先ほどお話がございましたけれども、本当に構造政策をよりスピードアップして進めていくというためにはほかにそれなりの施策を講じていかなければ考えられないことだ、私はそう思うわけでありますが、具体的にこの規模拡大推進される手法としてどういうようなことをお考えになっていらっしゃるのか、お尋ねをいたします。
  121. 鴻巣健治

    ○鴻巣政府委員 今お話しのように、土地利用型の農業部門では零細の兼業農家は大変たくさんありまして、中核農家の生産金額に占める割合は約三割にしかならないというわけであります。今御指摘のように、その理由は、一つは農家の資産保有の意識が非常に強い、あるいは大体農家十軒のうち六軒ないし七軒はもう通勤兼業という形で、農家にいながら兼業、しかも恒常的な、つまりいつも勤め先に出て行くというような形もあるし、それから、大体土曜、日曜に稲作をやれば何とか稲作ができてしまうというくらい稲作の技術も平準化しているという原因があろうと思います。  そこで私ども考えておりますのは、今先生のお話の中にありましたように、六十歳以上の農家で現在後継ぎが同居していない農家というのはかなりたくさんあるわけです。これが全体でたしか五十一万戸ほどございますから、こういう人がある老齢に達して引退をするときに後継ぎが農業を継がないと、この人自身は農業から足を洗うとかあるいは経営規模をもっと格段に縮小する、そのときに農地の流動化が起こる契機がぐんとふえると思っております。ただ、第二種兼業農家自身は、自分の食生活を豊かにするとかあるいは生きがいのために、昔風に言わせていただけば五反歩あるいは七反歩という農地の中で、一反二反は自家用の米をつくるとか自家用の野菜をつくる。それはそれで結構だと思っているのですが、残りの三反歩とか四反歩を担い手農家に貸してもらえないかというのが私たちの構造政策としてこれからもっとやらなければならないことだと考えています。  そのために、一つは、土地基盤整備が終わり圃場整備が完了し、そして換地が終わった後で、今はまたもとの農家に農地を分け与えますけれども、そうでなくて、そのときに中核農家とかあるいは営農集団が担い手になるように、圃場整備の終わった瞬間をつかまえて農地の流動化を図る。それから、もう一つはやはり農地の貸し借り、今はほとんど相対が中心でございますが、それをむしろ村の肝いりとか、あるいは地域のリーダーと呼ばれる人々をもっと多数動員して、草の根運動のように地域ぐるみで話し合いを進めて、そして中核農家のところに貸してあげる、あるいは農作業の受委託をしてもらう、そういう運動をもっと強烈に興すことが必要だろうと考えております。そのために、そういうこと自身によって地域農業全体を組織化していくことが大事であり、それがまた中核農家と兼業農家が一つの村の中で共存していく道だろうと考えております。  そういう意味で、基盤整備後の農地の流動化をもっと結びつけて考えること、それから、今私どもは農地の流動化促進員とかいろいろ言っておりますけれども、農地の貸し借りあるいは農作業の受委託というものの仲立ちをする地域リーダーをたくさん育成して、その人たちに信頼をして公の市場で農地の貸借がもっと数多く出てくるように、先ほど言いました老齢農家の引退がこれから非常にたくさん見込まれますから、それを使ってアクセルをかけるということが大事でして、そういう意味では、従来の政策を基本にしながら、これにどうアクセルを踏むかということが一番大事なことじゃないかと考えております。
  122. 水谷弘

    ○水谷委員 時間が迫ってきまして、もっとお尋ねしたいことがあるのでございますが、今お話がありましたようにやはり規模拡大、私の考えているのは、その規模拡大における一番大事なものは人です。優秀な、いわゆる経営能力を持っているそういう中核的な人、中核というのは、労働時間がどうのこうの、年齢が幾つでなどというそんなことでなくて、本当に経営者としてしっかりとしたものを持っている人、もちろん生産技術もしっかりしてなければいけない。しかし、あの人に任せれば心配ないなというそういう人が、先ほども話がありましたように、十四万の集落があって大体約二十ヘクタールの規模がある、その二十ヘクタールの規模に規模拡大するとすれば集落全部でたった一人しかいない。そういう本当にこの人なら任せられるという人物がその地域、その集落にいるかいないかが一番大きな問題になってくるだろうと私は思います。そういう意味では人の育成、これは来年度の予算の中でも新たに目玉としてしっかりと位置づけておられるようでありますけれども、さらに力を入れて予算措置をし、本格的に生産者というその者に光を当ててやっていかなければならないというときがいよいよ来たな、こういうふうに考えておるわけでございますので、この点はお取り組みをお願いしたいと思います。  最後に、国際価格比の問題がどんどん出てまいります。しかし、この国際価格比という問題が余りにも意識過剰になって、価格政策が農産物のコストというものを無視した方向に少しでも近寄っていった場合には農業生産はもうできなくなっていく、いわゆるコストの論理というものをしっかり押さえておいてほしい、私はこういうふうに申し上げたいのであります。それともう一つは、幾ら国際化の経済情勢とはいえ、一国経済主義というものはどこの国もまだ全部とっているわけであって、その国その国の経済事情というものがあります。まして、日本の国の農業の置かれている条件というものは、ほかの国とは全く違う過酷な条件の中での農業というものの位置づけがある。世界経済が一本化をして世界じゅうが一本で動いているのであれば、国際価格比というものを本当に目くじらを立てて議論しなければなりませんけれども、そういうことを考えますと、我が国生産者価格というものがどの程度までならば消費者や国民が納得してくださるものなのか、こういう議論というものも起こしていかなければならないな、こう私は考えておりますが、最後に大臣にその点をお伺いして、終わりにしたいと存じます。
  123. 加藤輝雄

    加藤国務大臣 先ほど来申し上げたところでございますけれども、やはり私たち政治の場にある者としては内外価格差というものを無視することはできない。しかし、それぞれの国の自然の条件あるいは生活習慣、もろもろの問題もまた加味して考えなくてはならない。ここら辺の整合性あるいは調和というものをどう保っていくか。要は、いかに立派な考え方あるいは方策でありましても、国民の理解と納得を得られなかったらすべて失敗するわけでございます。そういった幅広い観点から、私たちはこれから内外価格差の問題を含む、国民食糧を安定的に供給していくという立場でやっていきたいと思っておるところでございます。
  124. 水谷弘

    ○水谷委員 二、三質問を残しまして済みません。終わります。
  125. 保利耕輔

    ○保利委員長代理 吉浦忠治君。
  126. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 漁業の問題についてまとめてお尋ねをいたしたいと思いますが、最初に、基本問題の認識について、大臣並びに長官の見解をいただきたいと思います。  昭和五十二年に米ソが二百海里を設定いたしまして、日本がやむを得ず、変則的ではありますけれども、二百海里の漁業水域を設定してからちょうど十年たつわけでございます。その間に沿岸諸国の漁業に対する管轄権が年々強まってまいりまして、先般、我が国漁業は五十二年、五十三年に次ぐ大幅な減船を余儀なくされたわけでございます。この減船に対する政府の救済措置は関係者にはかなりの不満があるわけでありますけれども、このことはともかくといたしまして、我が国の遠洋漁業、特に北洋漁業の先は見えてきたと言ってもいいのではないか、こう思うのです。日本漁業生産量一千二百万トンから見てまいりますと、今後の北洋漁業における漁獲はそんなに大きな変化はないだろうというふうに見ることができるわけであります。また、日本の沿岸の資源やあるいはそのふやし方といいますか、それをどう使っていこうかというその機運、さらに増加の機運というものが出てきておりますけれども漁業をめぐる情勢というものは非常に厳しい、こう思うわけでございます。このように考えてまいりますと、この辺で腰を据えて日本漁業の将来というものを根本的に見直すときが来ているのではないか、こういうように思うわけでございます。  第一に、例えばでございますが、日本食糧の中で水産物をどう位置づけるのか、そのうち日本漁船でとれるものはどの程度が適当というふうに思われるのか、またその場合の漁船の規模はどのくらいなのか、いわゆる隻数とかあるいは漁法はどうあるべきなのか、あるいは漁業者の数はどの程度でいいのか、また今の栽培漁業の将来というものはどう位置づければいいのか、考えればいいのか、あるいは水産業を中心とした漁村社会のあり方はどうあるべきか、また海洋開発における漁業の位置づけ等を十分に検討していただきまして、そのための漁業関係の諸制度を見直す必要はないものかどうか、あるいは漁業法はどうか、あるいは水協法はどうなのか、減船の方法はこれでよいのかどうか、総合的、根本的に再検討するときが来ているのではないか、こういうふうに思うわけであります。  大臣にも、また水産庁長官にもお願いしたいのですが、来年度の指定漁業の一斉更新を控えておるわけでありまして、中審いわゆる中央漁業調整審議会の中において小委員会が設けられている、また、これら基本問題の検討に着手するというふうに言われておるわけでございますけれども、まずこの点をどういうふうにお考えなのか、お尋ねをいたしたいと思います。
  127. 加藤輝雄

    加藤国務大臣 先ほど吉浦先生がおっしゃいました問題は、我が国の単に漁業ということよりも政治問題に絡む大きな問題であり、そしてまた、我々が水産行政に取り組むすべての問題点を指摘されたと思うわけでございます。それぞれについで長官等にもお答えさせたいと思いますけれども、私はまず総論的なことを申し上げておきたい、こう思います。  まず第一は、我が国漁業は、諸外国の漁業規制の強化あるいは魚価、水産物消費の伸び悩み等の厳しい状況のもとで、漁船隻数の過剰、漁業経営の悪化等の重大な問題を抱えるに至っておりますことは、基本的認識として全く一致するところでございます。そして、最近に至って二百海里体制が国際的にも定着するとともに、燃油等生産資材価格が軟化してくるなど、漁業を取り巻く状況は厳しいながらも落ちつきを見せておると判断いたしておるところでございます。そして農林水産省といたしましては、このような状況の変化をとらえて腰を据えて漁業振興を図るため、中長期的展望に立ちまして、我が国漁業のあり方について真剣に検討してまいる所存でございます。
  128. 佐竹五六

    佐竹政府委員 先生のただいま開陳されました御意見の中で、まず一つは長期需給見通しの問題がございました。長期需給見通しをきちっと立てて、それに基づいて将来の我が国漁業の姿を見通すべきである、こういう御提案でございました。まことにごもっともな御指摘であろうかと思います。  今さら申し上げるまでもございませんが、農産物につきましては、農業基本法の規定に基づきまして需要と生産の長期見通しを作成し、政府が公表しておるわけでございますが、水産物につきましては技術的な困難性もあって、そのような権威のある見通しというものは公表してないわけでございます。しかしながら、水産物が国民の食生活上大変重要な役割を占めていること、特にたんぱくの供給源という意味で、植物たんぱくと動物たんぱく、さらに動物たんぱくの中の水産物と畜産物との関係をどう見るかということは農産物の長期需給見通しを立てる上でもどうしても必要な作業でございまして、その限りでは私どもも将来の水産物の需給見通しを一応策定し、参考として農産物の長期需給見通しの付表に掲げているわけでございます。いずれにいたしましても、確かに今後の水産政策の展開に当たっては、需要をどう見るかということの必要性は私ども痛感しておりますので、どういう方法でこれを策定するかということも含めて御期待に沿えるようなものを作成すべく、今後検討してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  その中で、我が国漁船漁業の果たすべき位置づけ、農産物で言う自給率のような観念というものが果たして存立し得るかどうかという御指摘でございましたが、これは遠洋漁業の場合には特に申せるわけでございますが、外国二百海里内での漁獲物も一応我が国漁船の供給量の中にカウントされるわけでございまして、どうも農産物におけると同じような意味で自給率ということを策定することが果たして意味があるのかどうか、私ども内部で、今後の一つの課題として議論してみたいというふうに思っております。従来そのような観念が水産物についてなかったのは、どうも政策的に見ても農業の場合とはやや意味を異にするがゆえにそういう観念が余り出てこなかったのではないかと思います。  それからまた、その場合に、一体我が国漁船がどのような漁法、どのような船型の船でそれをとるか、また栽培漁業によってどのくらいの供給を考えるのか、その場合に一体雇用問題はどうなるのか、いずれも非常に適切な御指摘でございまして、特に雇用問題については現に深刻になりつつあるわけでございます。我が国産業構造の変化によって日本においても雇用問題が西欧諸国あるいはアメリカと同様に深刻になるときに、まさに漁業もまた同じ問題に直面しているわけでございまして、いずれも今後の検討課題ということでございますが、先ほど大臣から御答弁申し上げましたような観点から真剣に取り組んでまいりたいと思います。  制度の問題についても同様でございます。一斉更新につきましては、法律上来年度行うことが義務づけられておりますので、私どもの作業の成果をすべてそれに反映させるというにはやや時間が足りない感じがいたしますが、いずれにいたしましても、一斉更新の際にも、今後の一つの大きな課題としては漁獲努力量の削減ということがポイントになってくるかと思うのでございまして、それをどうやつてスムーズに推進するかということも含めて、一斉更新にも私ども考え方の一部は反映させてまいりたい、かように考えている次第でございます。
  129. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 長期見通しでございますけれども農政審では既に「二十一世紀へ向けての農政基本方向」が示されたわけですが、漁業の場合に大変難しい情勢でありまして、前の佐野長官は、外国の二百海里内の見通しが立たないので長期需給見通しはできないというふうに答弁をされたわけであります。このように資源につきましても将来がほぼ見えてきたし、あるいは人工衛星なり機器の発達等によりましてかなり正確に把握できるということで、そうなりますとあとは農業と同じでありますけれども、需給見通しができないわけではなかろうというふうに私は思っておるわけでありまして、十分な検討をしていただきたいと御要望を申し上げたいと思います。  次に、魚価の問題についてお尋ねをいたしたいと思うのですが、円高の定着によりまして、我が国産業全体が見直されなければならない時代になっていると思うわけでございます。漁業の場合も全く同じでありまして、円高に伴いまして安い水産物が輸入されると輸出ははかどらない、国内に滞る、一般産業と同じ傾向になってきております。日本は世界で最良の水産物市場であるわけでございまして、日本漁船が撤退した二百海里でとった魚が沿岸国から日本に怒濤のように輸入されてくる、こういうふうな状況になる、そのために今後の魚価はかなり低い水準に落ちつくというふうに考えなければならない。現在IQで守られている魚種についても連動して下がってくるのは当然だろうと思うわけであります。  そこで、まず第一に水産物の輸入についてでございますけれども、現在のままの輸入制度では、先ほど申し上げましたように集中豪雨的に入ってくる。外国では労賃が安いし、あるいは需要が少ないので入ってくる状態になろうと思いますが、それでは日本漁業が成り立たなくなる。日本の需要のどの程度まで輸入が許されるというふうに考えられるのか、またその水準を確保するためにどのような方法考えられるのか。また、水産物の輸入は漁場の確保とリンクして行われる必要がありまして、水産庁もその方向で輸入行政を行っておられると思います。いわゆるスケソウダラなりニシンのガット協議などを考えてまいりますと、今後その方向を貫くことができるのかどうか。さらに、最高の水産物市場を持つ日本として我が方の方針を貫くための手段を持たなければならないのじゃないか、私どもこう強く考えておるわけでありますけれども、この点、どういうふうにお考えなのかお答えをいただきたい。
  130. 佐竹五六

    佐竹政府委員 先ほど既に御答弁した部分とちょっと重複するわけでございますが、私どもとしては、農産物と同じような意味で自給率ということを考えることが漁業について果たして制度的な意味があるかどうか、政策的な意味があるかどうかということについては、一つの検討課題であろうというふうに思っているわけでございます。農産物の場合についても、先生も御承知のように率を問題にするのはおかしい、自給力が問題なんだ、こういう考え方がございます。私どもも、漁業についても同じように考えるべきではないかというふうに思っているわけでございます。  今さら申し上げるまでもございませんが、円高はすべての産業に共通な要件として考えていかなければならないと思います。ただ、二百四十円から現在の百六十円まで余りにも変化が急激でございまして、これでは我が国漁業者及び水産加工業者が対応できないのも無理はないわけでございます。この急激なショックを緩和するための措置というのはそれぞれ講ずべきであろうと思いますけれども基本的には、やはり新しい経済的な条件の中で漁業の姿というものを考えていかなければならないのではないか。むしろそれを円滑に移行するにはどういうふうにするか、できるだけ摩擦が起きないように私どもとしてはこの移行を図っていかなければならないのじゃないかというふうに思うわけでございます。  それからIQ制度でございますが、御案内のように、現在アメリカから二十三条二項協議をニシン、スケソウダラについて求められているわけでございまして、水産物もまたガットの枠組みの中でこれが議論されるというような時代が参っているわけでございます。そういたしますと、国内の漁業者の経営の観点だけを前面に押し立ててこれを乗り切ることはなかなか難しいわけでございまして、私どもとしては、水産物の資源論というようなことを後ろ盾としましてガット上の理由づけをしていくということを考えているわけでございます。私どもは、ニシンにしてもスケソウダラにいたしましても、IQは現在の漁業の実態から見て絶対守る必要があると思います。それの理由づけは、やはりガットの論理に即してこれを考えていくと同時に、現在の制度がアメリカ側にとってもそれなりにメリットがあるということを十分納得させてこの交渉を決着させることを考えているわけでございます。現実には、確かに今回の日ソ交渉の中身にございますように、漁場の確保にIQ制度が役立っていることは事実でございますが、しかし、これはガットの世界ではなかなか通用する理屈ではございませんので、やはりIQ制度は、需給上の観点から輸入割り当てを行うという主張を根底に置きたいと思います。現実的には漁場を確保する役割を私どももIQに果たさせたいと思ってはおりますけれども、それを前面に押し立てて諸外国と交渉しても、これは特にガットの世界では通用しない議論でございますので、その点は今申し上げたことを御理解いただきたいと思います。  したがいまして、また漁場確保のために何らかの対抗手段が必要ではないか、こういう御意見も、私どもも例えばアメリカが、サケ・マス交渉あるいは捕鯨の交渉等に北洋漁業を結びつけて自分たちの要求を貫徹させようとしているような場合には確かにその必要を痛感したわけでございますけれども、現在時点で言えば、今直ちにそのような制度がないと交渉がやれないというわけではございません。将来にわたっていわゆる対抗法のような法制度も絶対考えないというわけではございませんけれども、相手方が非常に不当な要求をしてくれば、我々としてはそれなりに対抗するためにまたそのような制度も検討しなければならないかと思いますが、例えば、アメリカが自国二百海里内の漁獲割り当てを、自国の漁業者に一〇〇%使わせるために減すことが非常に不当であるということはなかなか言えないわけでございまして、現在時点では、いわゆる対抗法のような制度が必要であるというふうには必ずしも考えていないわけでございます。むしろ、現在ガットで日本の輸入割り当て制度が俎上に上っているということも考えて行動すべきではないか、かように考えている次第でございます。
  131. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 大体心情はわかりますけれども、その対応策というものを水産庁としてもお考えにならなければならないときが来ている、こう私は思っておるのです。  次に、魚価支持制度についてお尋ねをいたしておきたいのですが、十周年を迎えました魚価安定基金制度も、短期間、局地的には効果を発揮しますけれども、今後予想されますところの長期的な魚価安には役立たないのではないかというふうに私は思うのです。せっかくつくった制度でありますし、魚価の水準をどの程度に保つかということ、あるいは国内の生産者をいかに保護するかという政府の方針が当然関連するわけでありますから、生産制限なりあるいは輸入制限を伴う魚価支持制度が創設されませんと長期的に日本漁業はだめになってしまう、こう考えるわけです。漁業を除く畜産とか農業にはあるわけでありまして、特に畜産では、畜産振興事業団というものがありましてこのようなことをやっているわけであります。魚の場合には大変種類が多いとか、あるいはまたとれたときとか、とれた場所とかによって値段が違うわけでありますから大変難しいことはよくわかるわけでありますけれども、畜産の方の牛肉においても霜降りがありますし、そうでないものもあるし、また老廃牛などもあるということで、魚に魚価支持制度がないのは食糧供給産業としての漁業の位置づけが明確になっていないのじゃないか、こう思うのです。そこで、そういう点からいうと知恵がないのかなとも思うし、この点、ぜひ何とかしていただきたいというふうに私は考えておりますけれども、長官はどのようにお考えなのか。
  132. 佐竹五六

    佐竹政府委員 この問題は大変基本的な問題でございまして、適正な魚価水準をどう考えるかということにつながってこようかと思いますので、短時間の間に意を尽くせるかどうかわかりませんが、一応考え方を申し上げますと、魚価変動は、御案内のように生産の季節的集中によって起きる。ある時期にイワシやサバがたくさんとれてそのために浜値が落ちる、こういうための魚価変動、あるいはそれが年によって豊漁と不漁がある、それによって起きる魚価変動、もう一つ、ただいまお話ございましたような構造的ないわゆる魚価安、漁業者の方はそういうふうにおっしゃっていますが、この三つがあると思います。先生の今の御指摘は、前者については大体今の魚価安定基金が一応の役割を果たしているけれども、構造的な問題については大変無力である、こういう御指摘であろうと思うのでございます。  具体的に申し上げますと、例えば、昭和四十八年には生鮮マグロ一トンで燃油が七十キロリットル強買えたわけでございます。それが現在は二十キロリットルを割っているわけでございます。こういう現象をとらえて漁業者は魚価安というふうに言うわけでございますが、七十キロリットル買えたときの漁業の姿を政策的に維持しようとしても、それは不可能ではないかと考えているわけでございます。先ほど申し上げましたように、もう二十キロリットルを割ったものしか買えなくなった、諸物価がそのように変動してきたわけでございまして、これは単に漁業だけではなく、日本産業、石油化学あるいはアルミ、鉄鋼等みんな共通の問題でございまして、私どもは、こういう新しい経済条件に適応できる漁業をつくるということを考えていきたいと思っているわけでございます。価格支持制度によって昔の姿を維持しようとすることには無理があるのではないかというふうに私は考えているわけでございます。  ただ、この種の議論は実はここ十年間、水産庁の内部はもちろん、水産業界でも余り行われていないわけでございます、当面の問題に追われるのに急でございまして。ただいま先生から非常に的確な問題提起をいただいたわけでございますが、私ども決して自分たちの意見に固執するつもりはございません。この問題は、先ほど大臣が御答弁申し上げたような基本的な問題を中長期の観点に立って議論する際に、一つの大きな検討課題として十分議論してまいりたいと考えておるわけでございます。
  133. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 きょうは基本的な問題ばかりをお尋ねしていて大変恐縮でございますけれども、時間が余りないものですから十分な討議はできませんが、私としては、そういう対策を十分練っていただいて確立していただきたいと思っております。  いずれにいたしましても、魚価安が定着していくといたしますと、その値段にたえ得るところの漁業生産体制をつくらなければならないと思うのです。そういたしますと、合理化なり効率化なりということを進めなければならなくなるわけです。そうすると漁業構造をどうするかという問題になるわけですね。これには関連する問題が大変多いと思います。  すなわち、まず効率漁業を進めていくとすると、効率の悪い漁業は当然やめなければいけない、駆逐しなければいけない。私の地域で行っております例えばサバのたもすくい漁法とかカツオの釣り漁法とかまき網等の関係のものですとか、また、全船が効率よくすれば資源との関係で漁獲努力量を削減しなければならないという問題も起こってくるし、いずれにせよ減船ということが生ずるわけであります。この場合に従来のように共補償減船ではできないわけでありまして、政府の交付金は当てにできないとするとその財源をどこから持ってくるのか、あるいは輸入課徴金はどうするのか、あるいは漁獲高の一部をふだん積み立てたらどうかといった問題が出てくるわけでございます。最も基本的な問題は、漁業の民主化を図ることを目的とする漁業法、あるいは沿岸漁業者等の地位の向上を図ろうとするところの沿振法の考え方、これが将来とも保持できるかということが出てまいろうと思うわけです。さらに、漁船の数とともに、生産漁民の数なり漁協の規模なりあるいは漁村のあり方まで、波及するところは大きいと思うわけでございます。これらの問題を早急に詰めていかなければいけない、私はこう思っておりますけれども、どういう見解を持っておられますか。
  134. 佐竹五六

    佐竹政府委員 できるだけ簡潔に御答弁申し上げようと思いますが、認識は先生の認識と全く一致しているわけでございまして、財源の必要性を非常に痛感しております。これをどこに求めるか、現在講じている諸政策では御指摘いただいたように非常に不十分な面がいろいろございますので、その充実を図るためには何らかの財源対策考えなければならないわけでございまして、これが今回の検討の非常に大きな一つの柱になろうかと思っているわけでございます。  それからもう一つは、非効率的な漁業を縮小し、漁業の姿を変えていく場合、最大の問題は負債をどうするかということであろうかと思います。二度にわたるオイルショックを乗り切るためにそれを融資でつないだわけでございまして、これをどう整理していくかということが漁業の姿を変えていく上でのポイントになろうかと思います。これにつきましては、私ども、融資保証制度を通じてそれなりの措置をいろいろしているわけでございますが、今後も負債整理をどのように進めるか、さらに政策手段を追求してまいりたいと思います。  その他いろいろ御指摘のあった問題につきましては、いずれも当然そういう問題が出てくるわけでございまして、それらの問題についての解答を出さなければ日本の新しい漁業の姿は描けないものであろうというふうに考えております。
  135. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 佐竹長官の時代にひとつそういう構想を練っていただいて、定着させていただきたいと思っているのです。  次に、遊漁関係について少しばかりお尋ねしておきたいのです。  海はだれがどのように利用するかということでございますけれども、今、国民全体が海に目を向けてきた時代でありまして、海洋開発の面でもレジャーの面でもそうであります。そうしてまいりますと、これまでのように漁民の利益が最優先されるという時代はもう終わったのじゃないか。いかに協調していくか、あるいは共存していくかという時代が来たと考えざるを得ない、こう思うのです。  私は、今まで遊漁との関係をこの委員会でもいろいろ提案をしてまいりました。そこで、漁業法でございますけれども、現在の漁業法が遊漁にも及んでいるわけでございまして、漁業調整規則によりまして遊漁の秩序化を図ることができる、このことは法制上そのとおりだと思うのです。しかし、一般の遊漁者はもちろんでございますが、漁業関係者も必ずしもそうとは思っていないのでありまして、そのために、遊漁に対して調整委員会の指示が出された例も少ないし、出されてもきちっと守られたことがない。紛争が常に絶えないわけでございます。一方、漁民の方からは、我々が違反すれば罰金などがすぐ課せられるのに遊漁者は全く自由じゃないか、漁民の生存さえ脅かしているような状態じゃないかという不満があるわけでございます。漁業法が制定された時代には、このように三千万人の遊漁者が出るというふうには思わなかっただろうと思うのです。現在の漁業法では、これまでに大きくなった遊漁に対するその秩序化は、今までのような状態では無理があるのではないかと思います。運用なり施行体制なりに不備があるのじゃないかと思うわけでございますけれども、この関係性をどういうふうにお考えになるか。
  136. 佐竹五六

    佐竹政府委員 海は国民に共通な自然環境であり、それは我が国国民がひとしく利用できるものである、私どもはこういう認識を今後は持っていかなければいけないのではないか。この点は、漁業者の意識にはまだ若干ギャップがある現状でございますが、先生の御指摘のように、やはり漁業者と遊漁者が協調をし、共存していくということが必要な時代になっている、かように考えるわけでございます。  それでは、その遊漁者の遊漁行為をどのように既存の漁業秩序と調和させていくかという問題になるわけでございますが、これは関係者がひとしく苦労しているところでございます。基本的な考え方を申し上げますと、水産庁の現在の考え方といたしましては、法的な規制を直接一人一人の遊漁者に加えるということを考えてみてもなかなかうまくいかないだろう。もちろん必要最小限の措置は、水産資源保護法、漁業法あるいはそれに基づく漁業調整委員会指示という手段はございますけれども、やはりそれらを的確に守らしめるためには遊漁者を組織する必要があるだろうということで、その組織化ということを推進すべく、現在、予算措置によってでございますけれども、努力を傾注しているわけでございます。そのような認識のもとに、必要最小限の法改正を先般の沿振法の改正で図ったことは既に御承知のとおりでございますが、それらの対応ではまだ足りないという面が確かにあるのかもしれません。私どもも実態をよく把握し、その制度のあり方について今後とも検討してまいりたい、かように考えております。
  137. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 海上保安庁もおいででございますから、一点だけ先にお尋ねいたしたいのですが、私のところに常に不満が寄せられておることでございますけれども、遊漁者が遭難をした場合、これは海の慣習として漁民が助けに行く、もう何をおいても助けに行く、こういう大変立派な慣習があるわけでございます。ところがその費用はすべて漁民持ち、こういうことになっている。常日ごろ遊漁者によい感情を持っていない漁民としては当然ここで不満が起こるだろう、こう思うのです。それでも遊漁者が少ないうちはそうでもなかったわけでございますけれども、今日のように多くなってまいりますと、漁業者の負担も多くなるわけであります。このような無料救助の習慣というものは商船あるいは漁船の乗組員の中で培われてきたものだと思います。日本の伝統的な美風だろうと思うのです。しかし、こういうように遊漁者が漁民の漁場に参入してきておりますし、これも時代の流れでしょうけれども、そうなりますと時代に即応したことを国も考えなければいけない、こう思うのです。  例えば、水難救済会というのがございます。会員である漁民の方が一回出動すると二千五百円の出動費がここから出される。それ以外は一切ないわけです。これは遊漁団体等からも基金を集めて実情に即した手当を出すとか、あるいは遊漁者が当然保険に入ってその方途を開くとかいった方法をやらなければいけないと私は思っているのです。漁民の方が損するから救助しないというふうな世知辛いことになっては大変だ、こういう時代になっては大変だと思うのです。私は今まで何回かこれをお尋ねしてきましたけれども、明快な方法もないし、回答も寄せられないようでございますが、海上保安庁はどのような体制をお考えなのか、少し前進なさった御答弁をいただければと、こう思うわけです。
  138. 小澤友義

    ○小澤説明員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、近年海洋性レクリエーションが普及している状況のもとで、遊漁船等プレジャーボートの海難はかなりの数に上っております。この種の海難が発生した場合、遊漁者等と沿岸漁民の活動の場というのが同じでございますので、御指摘のとおり、漁民により救助されることも非常に多くなっております。この際、救助に要する費用の問題が生じてくるわけでありますが、人命の救助費用の問題につきましては、海難ニ於ケル救援救助ニ付テノ規定ノ統一ニ関スル条約及び商法などの規定により無料とされております。これが国際的な慣行として定着しておるわけであります。しかしながら、そうはいってもこの問題は重大な問題でございますので、水難救済会を初め、我が国における民間海難救助体制の充実強化を検討する際の重要な課題と考えておりまして、基金、保険等の活用により救助費用の補てんができないか、非常に難しい問題ではありますけれども、検討を行っているところでございます。
  139. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 海上保安庁に続いてもう一点だけ。本年の五月に、議員立法で外国人漁業規制法を改正いたしたわけでございますが、我が国の領海での外国人の違法操業などの罰金の額を、最高二十万から四百万に引き上げたところであります。その後の罰金の適用状況というものはどういうふうになっているのか。  私の聞くところによりますと、これは大臣もちょっと聞いておいていただきたいのですが、違反をしてもこの二十万円を超える罰金を科された事例が少ない。少ないと決めつけるわけにはいきませんけれども、どうも少ないようです。その理由はどういうところにあるかというと、つかまえても、長く係留したり、またとどめて処罰をすれば金もかかる、この枠内ではできない、だから違反をしてもみすみす見逃しておかなければしようがない。こういうことが本当かどうかわかりませんけれども、そういうふうな状態のような姿です。ですから、もう少し海上保安庁に予算をとって十分な対応ができるようにしなければ、幾ら議員立法で額を上げたとしてもその枠内でできない。海上保安庁は一言も言わないのですけれども、できないからその違反者を見逃しておかなければしようがない、こういう状態では困るのじゃないか。あなたは農林水産大臣であり国務大臣ですから、大蔵大臣じゃないことはよく知っておりますけれども、その辺のことも考慮していただいて、十分に海上保安庁に予算化をしていただかなければならぬのじゃないか。幾ら国会で法律を改正いたしましょうとも、外国漁船の領海侵犯を防止することはできない。こういう趣旨が生かされるように、海上保安庁にひとつそういう点で温かく手を差し伸べて増額をし、また取り締まりができるようにしていただかなければならぬ。  まず、海上保安庁からお答えをいただきたい。
  140. 垂水正大

    ○垂水説明員 お答え申し上げます。  先生からありがたいお言葉をいただきまして、海上保安庁、非常に感謝申すわけでございますけれども、ただ、状況をまず最初に説明させていただきたいと思います。  先生の御指摘のとおりでございまして、先般、外国人漁業の規制に関する法律が改正されたわけでございますが、その改正法が施行になりました六月九日以降現在まででございますけれども、うちの方で同法違反等で検挙したのが、韓国漁船でございますけれども十七隻ございます。このうち、十三隻が略式請求によりまして罰金二十万円を科せられております。残りの四隻が公判請求で裁判にかかっているわけでございますけれども、このうち二隻が既に判決が出まして、残りの二隻がまだ公判中でございます。判決が出た二隻につきましては一隻が懲役六カ月、執行猶予三年、それに罰金二十万円が併科された、それからもう一隻につきましては罰金五十万が付されております。  議員立法で罰金刑が上がった関係でございますけれども、我々海上保安庁が巡視船で違反操業を現認しまして法律違反で検挙する一連の手続といたしましては、あくまでも刑事訴訟法の手続に従って行うわけでございまして、基本的には、船長等を現行犯人として逮捕しまして船体とか漁獲物を証拠品として押収し、それを巡視船艇が最寄りの海上保安署まで連行しまして調べるわけでございますけれども、海上保安庁としましては、四十八時間以内に調べを終えまして証拠品とともに被疑者を検察に送致するという手続でございまして、お金がないからなるべく長期に置いておきたくないとかいう状況ではございません。  ただ、一言つけ加えさせていただきますと、公判請求になった場合に、実は議員立法で改正されたときに我々非常に心配したことは、被疑者は最終的には裁判等にかかれば拘置所等で勾留されますので海上保安庁は直接関係いたしませんが、例えば参考人的な一緒に乗っている者、同行船員と我々称しておりますけれども、その者が来るときは、どうしても海上保安庁の方で不法上陸などしないようにある程度監視をしないといけない。そのお金がいろいろかかるというような問題がございましたけれども、現在、公判請求になった者につきまして、一応起訴になりまして船を置いておく必要がない、検察からも船は還付してもいいという形になった場合に、同行船員につきましては、例えばその船員の一人が船を動かす資格があればそのまま日本から出航させる、それからそういう資格を持っている者が乗っていない場合には、公海上ですから領海のところまで我々が船を持っていきまして、向こうの資格のある人をその船に乗せて帰すというような形で処理をやっております。  以上でございます。
  141. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 大臣には聞いていてもらえばそれで結構でございます。  最後に、もう時間になりましたけれども、畜産関係で一点だけお尋ねして終わりたいと思います。  先ほども質問があったと思いますけれども、大手鶏卵販売業者の中で赤玉鶏の一千万羽増羽ということが今行われているときでございます。こういうことを許しておきますと、今後養鶏業界に異業種大資本の進出を可能にしてまいりまして、養鶏業界はもはや農外大資本が完全に制するということになって、まじめな全国養鶏生産者の方々の死活問題になるわけでございます。四十九年から開始されました鶏卵の生産調整の問題で私何回か取り上げてまいりましたけれども、五十三年に全党一致の国会決議も実現しているわけでございます。過剰生産、長期低卵価に死ぬ苦しみをして生産者の方々は今日頑張っておられるわけでありますけれども、こういうことを許しますと大変な問題になることは農水省も御承知のとおりだと思うのです。この問題について、簡単な経過と対応で結構でございます。またこれをどのように処理されようとなさっておるのか、その三点、明快にお答えをいただきたい。
  142. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 鶏卵の需給問題につきましては、御指摘のとおり、かねてから生産者の自主的な御努力を基本にし、我々行政側もこれを全面的に支援するという体制で計画生産が進められておるわけでございます。そういった状況の中で、ただいま御指摘ございますように、一部の鶏卵販売業者が赤玉の鶏卵の生産、販売を意図して、大規模な採卵鶏飼養のプロジェクトを持っておるという情報を私どもも入手をしております。私どもは、直ちに関係県あるいは私どもの出先でございます農政局、さらには関係県の鶏卵需給調整会議の方にも御連絡をいたしまして、関係者を呼び出しまして状況を聞き、かねてから進めております計画生産の枠組みの中でこれが行われることならともかく、それに違反するような事態にならないように再考を求めるということを現在重ねております。一部鶏舎の建設等に着手している面もございますが、えさの手配なりあるいはまた鶏の導入というふうな具体的な採卵経営の生産活動に入っておりませんけれども、繰り返しこの指導を続けて、何とか計画生産の枠組みの中で行われるものに是正をするように指導するつもりでございます。  いずれにしましても、鶏卵につきましては、御承知のとおり加工需要が非常にふえてきているとか、あるいは流通形態が変化をして仕入れが大量化するというふうな事態に対応して、生産自体も組織化あるいは大規模化するという合理化努力が避けられない状況でございますけれども、そういった中で需給問題がいろいろ問題になることでございますので、五十三年に当委員会でお決めいただきました決議を十分踏まえながら、計画生産が的確に実施されていくようにさらに努力を続けてまいりたい、私どもかように考えておる次第でございます。
  143. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 しっかりした行政指導を期待いたしまして、質問を終わります。ありがとうございました。
  144. 保利耕輔

    ○保利委員長代理 木下敬之助君。
  145. 木下敬之助

    ○木下委員 まず大臣にお伺いいたします。  このところ海外からの農産物市場開放を求める声や、日本と海外の米の値段の差等に対する消費者の不満の声などが盛んに出されております。そういう中で、中曽根総理や玉置総務庁長官の農政に対する発言がいろいろと報道されておりました。少し前のことになりますが、十月二十八日の夜、都内のホテルで開かれた自民党の衆議院当選一回議員の集まり、七夕会というのですか、この席で総理が、米国の圧力を利用し、米の自由化農業改革を進めるべきである、こういった趣旨の発言を行ったと聞いております。また、このところマスコミをにぎわしております農協批判問題にも触れられ、農協の方から自分で改革すると言わせるようにしているのだ、玉置総務庁長官の発言なんかも私が言わせているのだ、こういった趣旨の発言をしたと伝わっております。納得のいかない発言なんでございますが、こういう発言の真意について大臣はどう理解され、どう対処なさるお考えかをお伺いいたします。
  146. 加藤輝雄

    加藤国務大臣 率直に申し上げまして、我が国農業経営規模拡大の停滞、生産性向上の立ちおくれ、担い手の高齢化、農産物需給の不均衡などの諸問題に直面いたしておりますとともに、各方面から内外価格差の是正、農業体質強化等が要請されておるところでございます。総理や総務庁長官の発言は、このような状況を踏まえ、農業農政が厳しい対応を迫られる面があることを認識し、国民全体の一致した支持のもとに、将来に向けて明るい展望を切り開いていくことが必要であるという観点から指摘されたものであるというように理解しております。  いずれにいたしましても、今後の農政推進するに当たりましては、農業農政の持つ基本的かつ多面的な役割を踏まえつつ、今後の社会経済情勢の変化に的確に対応していくことが重要であり、広く国民各界各層の声に耳を傾け、その理解と納得を得ながら、各般にわたる施策推進してまいりたいと考えておるところでございます。
  147. 木下敬之助

    ○木下委員 大臣、海外からいろいろ言われておることはわかります。しかし、そういった外圧でどうこうという問題ではない。我が国農業は、当然ながら我が国食糧安全保障、また国土の保全等にも関係しております。そういった意味で、こういう総理や長官の発言が火に油を注いだわけではないでしょうけれども、このところ農業や農協に対する批判が大変強い。農協もみずからそういったものに対していろいろな宣伝活動を行っているようでございますけれども政府としても、今国民の合意を求めるということを言われておりますが、そのためにも農業の大事さ、そして価格の問題等だけじゃない重要な点についての宣伝を政府みずからも考えていくべきであると思いますが、この点どうお考えになられますか。
  148. 加藤輝雄

    加藤国務大臣 国民各界各層の理解と納得をいただくためには、今まで以上に、政府としてもあらゆる機会をとらえまして、今先生がおっしゃいましたような趣旨に従ってPRあるいは広報活動というものを積極的にやっていく必要を私も痛感いたしております。
  149. 木下敬之助

    ○木下委員 そういう外圧の中でも、特にこのところ米の自由化といったものが大変言われております。つい先日の新聞に、個人でカリフォルニア米を本格的に輸入しようと試みて、いろいろな方策で持ち込もうとした方が写真入りで大きく報道されております。こういうのを読めば国民も、本当においしくて安い米が入るのならなという気持ちを持たれる方もかなり多かろうと思います。そういう米の自由化という問題に対して、政府はこう考えておると明確な方針を出されて、その理由等もはっきりと宣伝していかれる必要があると思います。ところが、総理等の発言をいろいろと見てみますと、日本農政の改革は必要だ、改革すべきものは改革し、調和を生み出していかなければならない、こういった、読みようによれば米の輸入自由化に対して含みを持っているのではないかと思われるような発言もございますが、大臣はこの米の自由化という問題に関してどのように考えておられるか、はっきりとおっしゃっていただきたいと思います。
  150. 加藤輝雄

    加藤国務大臣 今先生がお触れになった前半の問題は、昨日の参議院の決算委員会においても問題になりました。私はあえてその記事の中身は言わなかったのでありますが、その記事にも数字の問題で間違いがある、日本の米が高くてアメリカの米が安いと書いてあるその数字にも誤りがあるということを指摘しておきました。  米の自由化に対する私の見解をはっきりしろと言われますが、今までたびたび当委員会でも申し上げておるところでありますが、改めて申し上げます。  米は日本国民の主食であります。我が国農業基幹をなすものであるというのが第一点でございます。また水田稲作は、国土自然環境の保全上不可欠の役割を果たしております。そして我が国の伝統的文化の形成とも深く結びついておる等、極めて重要な作物であります。今後とも、国会における米の需給安定に関する決議等の趣旨を体し、国内産で自給する方針を堅持していく考えであります。
  151. 木下敬之助

    ○木下委員 今大臣は米の完全自給、食管維持、こう言われますが、精神論だけじゃなくて、どういう方策を講じることによってこういったものの堅持が可能であると考えておられるのか、具体的なものもお聞かせいただきたいと思います。
  152. 加藤輝雄

    加藤国務大臣 十一月二十八日に農政審の御答申もいただきました。また、それと並行しまして、水田農業確立対策を先般発表いたしたところでございます。こういうもろもろのものを通じまして、必死になって生産性向上を図りながら、米の自給、そして食管制度の根幹を守っていきたい、このように考え、その点にあらゆる施策を集中しまして頑張っていきたいと考えておるところでございます。
  153. 木下敬之助

    ○木下委員 その先般決定された水田農業確立対策についてこれからお伺いしたいと思いますが、その前にちょっと一点だけ教えてください。  この新聞の記事、またこの問題で最初に報道された新聞も私よく記憶しておるのですが、戦後、慣行的に持ち込みを許されていた外国航路船員の米の持ち込みがことしの九月に突然禁止になった。この記事は前にも見ましたし、これにも書いてあるのですが、これはどういうことで、今後の方針とかをちょっとこの問題に関連して教えていただきたいのです。
  154. 後藤康夫

    後藤政府委員 米につきましては国家貿易ということでやっておりますけれども、先生も御案内と思いますが、旅客が携帯品として持ち込むものだとか国際郵便で送付されるものにつきましては、非常に細かいところまでいわば目くじらを立てないでよかろうということでやっておりますが、実は船員の方々のお米の持ち込みにつきましては、船員あるいは航空機の乗務員の方々と申しますのは、運賃を要せずして業務上出入国を繰り返す方々でございまして、従来から旅客には該当しないという解釈であったわけでございます。実際上、過去に余りそういう例もなかったので特に問題にならなかったようでございますが、ことしの春でございましたか、最近お米を持ってこられる方が少しふえてきたというふうなことがございましたり、あるいは持ってこられたものを売っておられるのではないかというようなうわさが出たりいたしまして、税関の方から私どもの方に照会がございまして、船員の方々は旅客には該当しないというふうに理解しておりますということを御回答申し上げました。突然ということではなくて、十分周知徹底を図ってということで、船員組合の方々にも税関の方からそういうお話をして、たしか九月の一日でございますか、それまで税関がばらばらな取り扱いでございましたものを、旅客には該当しないという扱いに統一をしたということでございます。
  155. 木下敬之助

    ○木下委員 そういうことでわかりましたが、宣伝合戦で言うと、何かこういう時期にかなり宣伝負けしているという感じがしますので、先ほどから申し上げておりますが、これは大いに宣伝も心がけないといけないのじゃないかと思っております。  それでは、水田農業確立対策についてお伺いいたします。  まず、転作目標面積の配分についてですが、「行政と生産者団体の共同責任で、双方が協議調整の上決定し、配分通知は両者が行う。」このようになっておるようでございます。生産者団体の責任でなされるように事務が生産者団体の方へ移行されるというのもいいことだと思います。適切な措置だと思いますが、そうすればまたその分、政府の管理経費等も減ることができるのだろうと思いますし、そうやっていくのが当たり前だと思いますが、この政府の管理経費圧縮のための具体的な方策をお伺いしたいと思います。職員の削減等も考えておるのかどうか、お伺いいたします。
  156. 後藤康夫

    後藤政府委員 米に係ります政府管理経費につきましては、その大部分が金利とか保管料とか運賃等のように、物流管理のために民間流通の場合でも必要な経費でございますけれども、これまでもできるだけ節減合理化に努めてまいったところでございまして、過剰米処理の促進と各種の節減合理化によりまして、五十五年度の三千二百億から最近では約二千億強という程度のところまで減少をしてまいっております。今後ともばら流通の促進等によりまして、集荷、輸送、売却といった業務運営の各般にわたりまして、物流の一環を担っている者としまして一層の改善合理化を図ってまいりたいと思っておりますし、事務人件費なり組織につきましても、支所の統廃合を進める、あるいは抽出検査、ばら検査の拡大、それから食糧検査士というような制度の活用もいたしまして、検査官の縮減を中心にいたしまして定員の計画的な削減を図るということで、年々着実に実行をいたしておるところでございます。
  157. 木下敬之助

    ○木下委員 次に、転作目標面積の配分基準並びに助成金の考え方についてお尋ねいたします。  転作目標面積の配分基準については、今後とも「稲作生産を担う地域担い手等に配慮する」、このようにありまして、また助成金についての考え方の中で、「担い手中心とした生産組織の育成」、このように考えておるようでございます。これは一種もしくは二種兼業農家の切り捨てを意味することになるのか、政府水田農業確立対策の中で中核農家以外の切り捨てを推進しようとしているのか、このようにも考えられますが、お考えをお伺いいたします。
  158. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 水田農業確立対策につきましてはこれまでもお答えを申し上げておりますが、水田におきます稲作転作を通ずる生産性向上あるいは地域輪作農法確立、さらには需要の動向に応じた米の計画生産を一体として推進するという考え方重点を志向して実施するものでございます。このような観点から、転作目標の面積の配分におきましては、地域農業の実態を踏まえまして、今後とも農業稲作生産を担う地域あるいは担い手等に配慮する等の基本的な考え方に立って実施しようとしているわけでございます。  また、助成金の考え方につきましては、従来の米から他作物への転換を重視した奨励措置という考え方にかえまして、構造政策を重視した水田農業体質強化を図るという観点に立って再編成をしようとしているわけでございます。この場合におきます助成金の内容につきましては、端的に申し上げまして、加算額について従来の転作奨励金の加算額と同等の水準に置きましたという点も加えまして、団地化加算だけでありましたものをさらに拡充しております。その上に、地域営農加算の重複の交付化という点も考えておりまして、そういう意味では、従来加算体系におきましては二万円一本であったというものに対しまして、今度は二万円プラス一万円、場合によりましては三万円という加算体系になったところでございます。  先生御指摘の担い手育成でございますが、先般の農政審の答申にもございますように、規模拡大等についてのいろいろな道があるわけでございます。農政審答申におきましてもこの点が強く述べられておりますとおり、いわゆる中核農家を中心といたしまして、それを包摂をいたしまして兼業農家あるいは高齢化農家、機能分担を図っていく、それで地域の望ましい生産システムをつくっていくということが提言されておりますけれども、そういった考え方はこの水田農業確立において当然考えていかなければならない点であろうというふうに考えております。今申し上げましたような加算の問題あるいは構造政策的視点によります補助金の組みかえ、そういったような中で担い手中心とする担い手以外の農家を含めての地域システムというものを当然考えていくわけでございまして、冒頭申し上げましたように水田農業確立の中に、地域輪作農法確立という作法といいますか、作付体系の面からもこの点が触れられておるというふうに我々は考えておるところでございます。
  159. 木下敬之助

    ○木下委員 我が国は土地がかなり狭い、そんな中で規模を拡大していくと当然あぶれてくる、広い土地が中核に集まっていけば、その分、残った狭いところでたくさんの人が農業に従事する、こういう部分も逆に出なければならない、そうでなければ農業の従事者が減っていかなければならない、こういう状況になろうかと思います。ところが、今の日本のいろいろな産業等も雇用にかなり大変な問題が起こっております。私、ちょっと調べてみたのですが、農業を主とする人々の職業移動状況を見た場合に、昭和五十六年に二万六千人増加し、以後毎年増加を続けて、昭和六十年には四万四千五百人の増加、このようになっております。これは日本経済の景気がここのところ低下してきて、他産業から農業へ追いやられた結果こういった現象が発生している、こういう見方ができるのではないかと思っております。そういう意味で、日本農業に対する政策も、日本全体を眺めたときの雇用政策という意味で大変な問題のある方向ではなかろうか。また、先ほど申しましたような休職中の人の緩衝機関のような役割もある程度果たしてきた農業、こういう目で見たときに、労働省はこういった雇用問題をどのように考えておられるか、農業と雇用の関係、また雇用全体の見通し等も含めてお答えをいただきたいと思います。
  160. 加藤輝雄

    加藤説明員 ただいま先生の御質問の関係でございますが、農業を離れまして他の産業に転職をする希望者の方々は年来相当の数に上っておるわけでございます。したがいまして、労働省といたしましても、こういった離農転職希望者の方々に対しましていろいろな施策を講じておりますが、具体的に申し上げますならば、例えば離農者が発生するような農村地域農業者転職相談員という方々を配置いたしまして、離農転職希望者の把握あるいは雇用情報の提供それから職業相談の実施、こういったようなことを具体的にやらせる、あるいは農業人材銀行を設置いたしまして、きめ細かい職業指導あるいは職業紹介の実施をするとか、さらには、農業従事者の方々が他の産業へかわる場合の職業訓練の実施あるいは職場適応訓練の実施、それからさらには、こういった訓練を受けたりあるいは他の産業へ就職するための求職活動を行う場合にいろいろな経費がかかりますので、こういったものにつきまして職業転換給付金を支給するとかいうような措置を講ずることによりまして、他の産業への転職を積極的に援助いたしておるわけでございます。さらには、農林水産省を初め関係機関と協力をいたしまして、農村地域への計画的な工業の導入を図るということを通じまして、安定的な地元雇用機会の拡大に努めてまいっておるところでございます。  それから、最近の状況との関連でございますが、円高の進展等に伴いまして、今後とも、農村を含む地域におきます雇用情勢につきましては厳しさが増していくことが予想されるところでございます。こういうことで、労働省といたしましては、去る十一月十日に中央職業安定審議会におきまして、地域雇用対策の整備充実を図ることについての建議を受けております。したがいまして、この建議の趣旨に沿いまして、雇用機会の開発を中心といたしました総合的な地域雇用対策の整備を図るべく、現在検討を進めておるところでございまして、次の通常国会に所要の法律案を提出する予定でございます。今後とも、これらの施策を積極的に推進することによりまして、離農転職希望者の方々の雇用機会の増大と就職の促進に努めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。     〔保利委員長代理退席、委員長着席〕
  161. 木下敬之助

    ○木下委員 一言申し上げたいのですが、農業からかわりたいという人のお世話もこつこつやっておるでしょうけれども、逆に産業の方から農業の方に入ってきている方が、先ほど私が申し上げたように大変大きな数字ですね。ですから、層用政策全体を見るときに、農業からかわりたい人のお世話をこれだけしているという目じゃなくて、産業全体を考えるときに、今の日本の状態だったら逆に農業の方に雇用をかなり持ってもらっておるのだという位置づけで眺めてみなければならない、そういう大きな目で見なければならない部分があるのじゃないか、このように申し上げておるところでございます。どうかそういった意味で、これは労働省の方に言うというより日本全体を考えるときに、農業全体を大事な視点として受けとめていかなければならない、これは日本全体の雇用の問題であると私は考えます。きょう細かく詰めるようにはなっておりませんけれども考えてみていただきたいと思います。大臣、どうぞこの点、私の発言を記憶にとどめておいてください。  それでは、水田農業確立対策の中身に戻って質問を続けます。  政府は、これまでの転作奨励金にかえて水田農業確立助成補助金と名称を変更されていますが、このように変えた理由、そしてこういった対策の主眼がどう変わったのか、お伺いをいたします。
  162. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 水田農業確立対策助成におきましては、先生御指摘のとおり、今回転作奨励金の名前を変えております。その考え方といたしましては、従来からの米から他作物への転換を重視した奨励措置という考え方にかえまして、構造政策を重視した助成措置にするという考え方に立つものであります。この対策の趣旨に即しまして、全国各地における農業者あるいは農業関係者主体的な取り組みにつきまして、望ましい水田利用形態に可能な限り誘導する見地から助成補助金を交付するという考え方に出るものであります。この場合におきます農業者が水田農業確立に向けて行う主体的な、自助的な努力、そういったものに対して援助をするという考え方から、従来の奨励補助金にかえまして助成補助金というふうに名前も変えたところであります。
  163. 木下敬之助

    ○木下委員 少し確認をさせてください。水田農業確立で、この前転作のときに私どもは、米をやって余っておる、転作する、そのときに、効率よくいい米をつくるところを残して、そうでないところをかえていけばいいじゃないか、こういう趣旨もあったと思うのですよ、どうせ転作をしていくのなら。今度は逆に、米以外のほかのもので効率のいいところをできるだけふやそう、こういうことですか。米以外のもので非常に効率よくやるようなものがあったら、それの方の助成をよくしてそういったものをつくっていこう、こういうことですか。
  164. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 水田農業確立対策基本考え方でございますが、これは、これまでやってまいりました十六年間にわたる稲作転換あるいは現在実施してまいっております水田再編対策、そういったものの経験とか、あるいはそれに基づきます反省といいますか教訓といったようなものに立って行っていこうというわけでございます。その点、私どもの一番の点は、確かに現行におきましては、これまでの実践の中から転作の作物等をどういうふうに考えていくかということに思いをいたしてきておりますけれども水田農業といいますか、水稲あるいは転作を通ずる生産性向上という視点が弱かったのではないかという反省があるわけでございます。そういう意味で、我が国の二千年来営々と築き上げられてまいりました水田につきまして、現下の最も喫緊の課題であります生産性向上というものを真ん中に据えまして、水稲と転作を通ずる生産性向上中心的な課題にしていこうというのが次期対策の根幹なのでございます。先生御指摘の点に、どちらにというお話がございましたが、もちろん生産性向上ということを中心に据えているという意味で、御賢察のとおりでございます。両方を通じながら生産性向上を図っていこう、あるいは現下におきます需給ギャップというものも克服していこう、こういう内容にしていこうというのが我々の考え方でございます。
  165. 木下敬之助

    ○木下委員 ちょっとよく教えてください。配分が変わるわけでしょう。配分を変えたりすることの基準に、転作を奨励していくときは残った米の効率を上げなければならぬ、そういう命題があるときに、効率の悪いところを変えるときに余計な転作の奨励をしていけば、効率のいい田んぼが残るということはわかるのですが、今回変えた新しい作物の方の効率のいいところを奨励していくと、何も効率のいい田んぼが残るとは限らないというふうに私は読めるのですが、この辺どうですか。米自体の効率を上げていかなければならないというのにこれはどういう関係を持っておるのか、ちょっと教えていただきたい。
  166. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 具体的な作物の点について先生御提起をなさっておられますが、私ども基本的な考え方は、場としての水田というものをまず考えていかなければいけないのではないか。そういったものが今までの稲作転換の中でともすると等閑視されていたという反省の上に立ちまして、両面の意味で水稲と水田というのは同じように理解されますが、私どもはそういう意味ではなくて、水稲と転作作物を通ずるということを申し上げさせていただいておりますが、水田という言葉でそれを表現してそれぞれの生産性向上していこうという考え方をとったわけでございます。
  167. 木下敬之助

    ○木下委員 その配分の基準というのに対して、そういう両方通じてというのがどんなふうに絡んでおるのかは非常にわかりにくうございますけれども、そのくらいにしておきましょう。  それでは次に、関連施策の積極的活用として「米価政策の適切な運用」、このようにありますが、これは米価の値下げを意味するのかどうか、将来どの程度値下げすると考えておられるのか、お伺いをいたしたいと思います。
  168. 後藤康夫

    後藤政府委員 先ほども木下先生と加藤大臣の間に、米の自由化の外圧の問題についての御議論がございましたが、その中に、やはり外に対して対応してまいる場合には中での国民のコンセンサスが大事だというお言葉がございました。米価政策の運用につきましても、適切な運用ということで考えておりますのは、一方で、今度の水田農業確立対策の中で稲作体質強化ということで、生産性向上に視点を置きました構造政策なり生産対策等関連諸施策推進していくということがあるわけでございますが、その成果を踏まえながら、それとも関連いたしまして、稲作の中核的な担い手になるような農家なりあるいは能率の高い集団が地代負担力を確保しながら経営規模拡大し、生産シェアを高めていけるように配慮した米価水準、そしてまたこういった対策をもう十数年やっているわけでございますから、全体として需給均衡化の観点に立った水準に設定することを基本として米価政策の運用を行っていくということでございまして、毎年の米価と申しますのは、具体的にいろいろな算定要素がそろいましたところで、米価算定方式についてのいろいろな検討も米価審議会からの宿題としていただいておりますけれども、そういうものを使って年々計算をしてまいるということでございまして、特定の幅をもって幾ら引き下げるということを今から予定しているものではないわけでございます。米価政策の運用につきましての考え方を書いておるということでございます。
  169. 木下敬之助

    ○木下委員 そういう今後の米価政策に当たって、国際米価の水準といったものはやはり考慮に入ってくるのですか。
  170. 後藤康夫

    後藤政府委員 国際米価と申します場合に、米の輸出国の国内価格考えるか、国際市場価格考えるかという問題がございます。国際市場価格につきましては、現在、特に米の輸出競争が非常に激しゅうございまして、いろいろな輸出奨励措置がとられているということも考えてみなければいけない問題だと思っております。輸出国生産者価格ということになりますと、タイについて見ますと人件費が日本の八分の一というような水準でございますし、アメリカについて言えば、稲作の面積が百五十倍、二百倍ということでございます。我が国の置かれております条件を考えますと、これに合わせていくとか、あるいはまたこういうものに機械的に近づけていくということについては、正直申しまして我が国の制約条件からなかなか難しい。このことにつきましては、消費者の方々を含めて国民の理解と御納得をいただきたいと思っているわけでございますが、我が国が置かれております条件の中で、生産者の方々も、そしてまた我々農政に関係しております者も、できるだけコストダウンを図って、それを価格にも反映させて、消費者の方々にもそれが及ぶような努力をたゆまずやってまいる、そういうことを通じまして、先ほど先生からもお話がございましたような米の管理なり米の政策についての国民のコンセンサスも得てまいりたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  171. 木下敬之助

    ○木下委員 国際的に米価を比較するといってもいろいろ条件が違いますから、当然だと私も思います。また米といっても、日本の米と異質で、同じような食べ方をしようと思ってもできないようなものもいっぱいあると思うのですが、どういうふうになっていますか。米の国際需給の状況と、そしてその中で日本人の嗜好に合うような米というのはどの程度あって、どういう見通しなのか、ちょっとお伺いしておきたいと思います。
  172. 後藤康夫

    後藤政府委員 米の国際需給につきましては、八〇年代に入りまして世界的に生産が増加をいたしました。一方、開発途上国中心食糧の自給化が進んでまいったこともございまして、貿易量は若干減っているという状況でございます。世界の米の生産は、一九八五年の数字でございますが、もみで約四億七千万トンぐらいでございます。日本人の嗜好に合うと言われております米の種類は長粒種ではございませんで、中粒種ないし短粒種でございますが、世界の生産の中では長粒種が主体でございます。中粒種、短粒種は、日本のほか中国、韓国あるいは北朝鮮、アメリカで申しますとカリフォルニア州、それから豪州にもございますけれども、全体として見ますとごく一部に限られております。この中短粒種を区分けした正確な統計はございませんので、いろいろなデータからごく大ざっぱな推計をいたしますと、世界全体の生産量の一割強程度、そしてその大部分は東アジアの国で生産をされ、そのほとんどが自国で消費をされているという状況でございます。
  173. 木下敬之助

    ○木下委員 食管制度の運営改善についてお尋ねいたします。  政府は、米の第三次過剰在庫の発生防止のため、過剰米在庫を集荷団体に負担させることにより生産者主体的生産調整を促そうということであります。しかし、超過米に対する自主保管の推進は、経費の節減という点からは結構なことのように思われますが、倉庫保管料の生産者負担という見地からとらえた場合、これはやみ米の増加ということが考えられるのですが、政府はある程度のやみ米の発生は容認しようという意図を含めてこのような措置を講じようとしているのかどうか、お伺いいたしたいと思います。  また、超過米については、地域の作況指数により発生するところとしないところがあると考えられますが、その場合保管料の調整はどのように行うのか、お伺いいたします。
  174. 後藤康夫

    後藤政府委員 この自主調整保管の問題につきましては、本日のこの委員会でも何回か出ておりますけれども、三度の過剰米の発生、過剰処理の事態をあくまでも回避するということのほかに、自主流通米の安定的な価格形成、あるいはまた、豊凶の変動がすぐに転作目標面積とか予約限度数量にもろに響かないようにするための一つの緩衝的な仕組みにもなるということで、生産者団体、集荷団体に御検討願い、取り組む基本方向を出していただいているところでございまして、これによりましてやみ米を助長するというようなことはさらさら考えておるわけではございません。私ども、集荷団体、生産者団体に対しまして、生産された米が流通をします場合に全量を集荷するように積極的に取り組んでほしい。結局、集荷がそれだけきちんと行われない場合には正規のルートに乗ったお米が売れないということになるわけでございますので、その辺は集荷団体も十分理解をしておるところでございます。私ども昨年、特別集荷制度というような仕組みも導入をいたしまして、集荷団体の主体的な取り組みを求めながら、不正規流通の防止に努めているところでございます。  それから、地域ごとに作況が違うというふうなお話がございましたが、御指摘のとおりでございます。米の集荷につきましては、一次集荷業者、農協で申せば単位農協でございますが、それから二次集荷業者、県連段階、それから全国段階に指定法人という形で全農なり全集連がございます。こういうところの中で、自主流通米なり超過米の販売につきまして従来からいろいろなプール計算をやっております。そういった組織の中での検討、合意を踏まえて、それぞれの系統の中で一定の調整がなされることを私どもとしては期待をし、またそういう御検討が今行われているように承知いたしております。
  175. 木下敬之助

    ○木下委員 「自主流通米の拡大等による食糧管理制度運営の活性化」「集荷・販売両面にわたる流通体制への競争条件の導入」、このようにありますが、これは、政府米を圧縮し、政府指定業者を廃止することにより食管制度をどのように変えようとしているのか、もしくは近い将来当制度を廃止しようというような意図でもあるのかどうか、こういった意図も含めた見直しなのかどうか、政府の御意見をお伺いいたします。
  176. 後藤康夫

    後藤政府委員 大臣が先ほど先生に御答弁申し上げましたように、私ども、食管の基本は守ってまいるという考え方でございます。食管の大きな一つの要素といたしまして、販売流通ルートの特定という考え方がございます。私ども、今自主流通米の拡大なりあるいは制度の充実という問題あるいはまた集荷、販売への競争条件の導入ということを考えます場合にも、そういった基本的な枠組みの中でより弾力的な運営をするにはどうしたらいいかという方向で考えてまいるということでございまして、その基本を崩すことを考えているわけではございません。
  177. 木下敬之助

    ○木下委員 時間が参りましたので、最後に、私の地元大分で農家の方から緊急な問題として幾つか提言されたものを申し上げて御答弁をいただきたいと思います。  肥育牛経営をなさっている方の肥育牛の経営安定のためには、素牛の価格や枝肉の価格の安定が不可欠であります。今子牛が安くて、大体このぐらいで売れているからということでやっても、その育ち上がるころにはまた値段が違っておるというと経営ができない。対外とのいろいろな枠の問題等もこれから起こってまいります。そんな中で、少し長期的に安定した経営ができることを考えてもらいたいということでございます。  そしてまた、この肥育牛だけじゃなくて、養豚等も含めた畜産農家で、大変多額な借金を抱えてその金利等もかさんで、経営が行き詰まって自殺をしたという方が前にもございまして、一度予算の分科会で申し上げたこともあるのですが、近ごろまたございました。どうかこの抜本的な畜産農家の負債対策というものも考えていただきたいと思います。  そして、この畜産に関係して、簡易畜舎等に対して固定資産税は免除措置を講ずることができないのか、このような要望も出されております。この肥育牛、それから畜産についての私の今申し上げました質問に対して御答弁をお願いいたします。
  178. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 お尋ねのございました畜産関係の問題、まず、肥育牛経営の長期的な安定のためには、素牛価格なり枝肉価格の安定が大変重要な要素であるということはお説のとおりでございます。したがいまして、御承知のとおり、牛肉についての価格安定制度あるいは子牛の価格安定制度、さらに経営費の相当な部分を占めております配合飼料の価格安定制度等を適切に運用しているところでございます。そういった観点でこれらの諸制度が適切に運営をされまして、肥育牛経営の長期的な安定に役立つように私どもも十分努力をしてまいりたいというふうに考えるわけでございます。  それから第二点の、肥育牛経営を含めました畜産経営全般についての負債対策の問題でございますが、ごく最近の状態を申し上げますと、経営的に見た場合に、経費の大変大きな部分を占めております配合飼料価格のたび重なる値下げによりまして、経営条件は非常に好転をしているのではないかという認識を基本的に持っております。ただ、長期的な懸念材料としまして、特に肥育牛経営の場合でございますけれども、素牛価格がやや高目の傾向をとっておるわけでございます。このことは、肉用牛の資源増殖を考えた場合に繁殖農家にとって一つの励みになる要素でもございますので、過熱しない限度で、適切な素牛価格の水準というものはやはり確保していく必要があると考えております。いずれにしましても、総体として最近におきます畜産の収支状況といいますか収益状況は比較的好転をしておると思っておりますが、規模拡大とか諸般の合理化努力の結果、一定の負債を持っておることも事実でございます。経営の実情に即しまして所要の金融対策を講じてきておりますが、畜種ごとあるいは地域によっていろいろ事情が違います。それらの実情をよく踏まえまして、金融対策につきましても、私どもよく検討をしていきたいと考えております。  それから最後に、簡易畜舎についての固定資産税の問題でございます。先生の御指摘になる簡易畜舎というものがいかなるものであるのかよくわかりませんけれども、御案内のとおり、土地家屋、償却資産に該当するものにつきましては、地方税としまして固定資産税が課されることになっております。この中で、土地家屋、償却資産の種類によって若干の差はございますが、一定の免税点が決められておるわけでございます。順次年によって変動はございますけれども、この免税点制度によりまして簡易畜舎の免税を受けられる場合があるやに聞いておるわけでございます。さらにまた、これは市町村段階で、そもそも固定資産税を課税する対象の資産として考えるかどうかという判断について一定の弾力性を持っておるところでございまして、一部の地方では、ごく簡易な比較的安価にできる畜舎等については課税対象にしてないというふうな事例も聞いております。市町村当局の弾力的な運用もございますので、その御活用もひとつ御工夫をいただくことが必要ではなかろうかというふうに考える次第でございます。
  179. 木下敬之助

    ○木下委員 時間が参りました。どうもありがとうございました。
  180. 玉沢徳一郎

  181. 寺前巖

    寺前委員 朝の十時半から大臣も御苦労さんでございました。私が最後でございますので、事務当局からいろいろ御発言があった内容を踏んまえた上で質問をしたいと思いますので、できるだけ要領よくお答えをいただくことをお願いいたします。  まず第一に、十一月二十一日に全島民の島外避難命令が出された伊豆の大島の災害問題です。お話を聞かせていただきたいことは幾つかあるのですが、さしあたって、昨日私、要望を受けた点について質問をしたいと思うのです。  その第一点は、噴火に伴うところの被害はもちろんこれから検討していただかなければならないと思いますが、現に植わっている花とかあるいは豚肉とか卵とかそういう問題に対して、出荷をしてせめてちょっとでも金になるものは金にさせてほしいという願いがあるわけです。さしあたって九日から三泊四日ですか、消毒その他のことで農業関係者が現地へ行かれたようですけれども、全島帰島を前にして、ともかく先遣隊を派遣してでも出荷体制をつくって、この二十八日、二十九日まで花の分野でも市場に出せないことはない、こう言っているのです。ですから、この問題に対して関係方面と、できるだけ金になるように最大限の条件を保証してやるように話し合って進めていただきたいというのが私の聞かされている第一点なのです。いかがですか。
  182. 青木敏也

    ○青木政府委員 今回の災害につきましては、島に残されました家畜、また特に島におきましてはその出荷期等が大変重要な花卉が農作物としてウエートが高いということで、ただいま先生のおっしゃるような心配があるわけでございます。私ども、今回の災害に対します対策としましては、まず何といいましても特にそういう畜産とかハウス関係ですね、この管理をできるだけ徹底して、被害を最小限に食いとめるということが極めて重要だというふうに考えております。幸いに、これまで畜産農家とかハウスの栽培農家等で編成しました救援隊を段階的に島に送っておりましたけれども、九日から大規模な農林水産対策班というものを派遣することになりました。こういう形で、やはり島の畜産、農作物の被害が少なくとも従来よりは最小限のものになるようにできる道が開かれた、こういうふうに存じております。出荷面におきましても、既に豚とかそういったものにつきまして本日あたりも出荷の途についておりますし、そういうことで極力被害の抑制に努めていきたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  183. 寺前巖

    寺前委員 大臣、私の提起している問題のもっと具体的な焦点について御理解がないみたいなのです。私は東京都庁の人に聞いたのです。花の出荷についてどうなんだ、取引はどこまで考えているんだ。十二月の十五日の取引くらいで終わりだという話を関係者が言ったのです。今度の九日から三泊四日で帰るというのでは消毒その他の体制はできても、花の分野については、出荷体制が十二月十五日を限度と考えておったならば、これはせっかくの願いを聞いてもらうことにならないのだ。だから全島復帰の問題は、いつからというのはこれは全面的になるから大変だろうけれども、せめて全島復帰の間に、この三泊四日の後も、今度は出荷できるようにせめてその分野だけは特別な配慮をしてほしい、これが願いだと言っているのだ。だからこの願いに相談に乗ってやってくれるか、私の聞きたいのはここなんだ。いかがです。
  184. 加藤輝雄

    加藤国務大臣 大島の花卉の関係で見ますと、ブバルディアと寒小菊があるようでございます。そして今回の派遣班が、そういうものについての病害虫の駆除あるいは追肥あるいは開花物の摘み取りを行うということ等を中心にやってくれておるようでございます。もちろん、キヌサヤエンドウやその他の関係もあるようでございます。そういう中で、出荷ということをもちろん念頭に置かなくてはなりませんが、果たして出荷に伴うところの島内の運搬、そして島から東京市場への運搬、運送手段というものが今日の段階において確保できるかできないか、これは総合的な判断によると思います。そして、期限を言われるのはよくわかります。正月用の花でありますから、これが二十五日に持ってきたところでもう手おくれであるというお気持ちはわかります。したがって、関係農民の皆さん方の切迫した気持ち等はよく理解できるわけでありますが、農林水産省としましては、東京都あるいは関係諸官庁と十分に相談して、できるだけのことは今後やっていかなくてはならぬと考えておるところです。
  185. 寺前巖

    寺前委員 大臣、要するに相談に乗ってやってくれなければ困るのです。ちょっとでも金になるようなことを考えてくれ、全島復帰になったらそのときには仕事になるだろうけれども、その以前までにも、九日から三泊四日のこの間の先遣隊ででも再度よく話し合って決めてほしい、力をかしてほしい。私、この話を東京都の諸君にもしました。十五日という問題については、そうですかと言ってやはり考え直しておったのです。だから、考え直そうという気があるのだから手を打ってやってほしいですよ。生の声としてぜひ聞いてほしい。大臣、率直にそのことだけ私もう一回聞きたいと思う。
  186. 加藤輝雄

    加藤国務大臣 そういう島民の皆さん方の御熱意というものはよくわかりますし、そしてまた期限が来ておるということもよく理解するわけであります。ただ、それの島内運搬と、島とこちらとの運搬、これは農水省だけの力ではどうにもなりません。関係方面ともその意向を踏まえて十二分に今後調整してまいりたいというお答えをさせていただきます。
  187. 寺前巖

    寺前委員 続いて、私会った人は園芸、花をつくっておられる人で、一つ三百万円くらいの貯水槽を二つつくっておって制度資金を借りてやってきた。ことしの分は六十万円ですか、もう返済したそうです。来年九十万円返済しなければならぬ。今の状況では花を切って来年の春に咲かすというようなことになっていくけれども、その借金に対する返済について相談に乗るということになっておるけれども、ことしは払ったが来年九十万円払わすという条件は非常に難しい。こういう人も引き延ばすようにちゃんと指導してもらえるのかどうかという疑問が一つは出されている。  それからもう一つ出されているのは、一年間繰り延べてもらったところでまた一年分の金利がふえるのだ、この金利の利子補給くらいは考えてもらえぬのだろうか、この問題が出されておるのです。いかがですか。
  188. 青木敏也

    ○青木政府委員 被災農家が現に借り入れをいたしてございます。私どもの手元の資料におきましても、大島町におきます各種の制度資金、農業近代化資金あるいは公庫資金等ございますが、関係農家による約四億余の借り入れがあるわけでございます。こういう既借り入れ分につきまして、災害時につきましては私ども被災農家の要望に弾力的に対応いたしまして、ただいまの先生の償還条件の緩和措置、これはいろいろな対応がございます。償還期限を一時的に延長することもございますし、期中の据え置きを設定するような対応もございます。そこはいろいろな弾力的な対応を極力いたす考えでおりまして、既に先月の二十八日に、私ども、関係機関にその旨の通達を発出しているところでございます。どうぞ被災農家の方々が窓口に率直な御要望をおつなぎいただきたい、こういうふうに存じているわけでございます。  それから、資金の金利の問題がございます。被災農家に対しまして極力低利の資金、かつまた期間の長い資金を融通していきたいというふうに考えているわけですが、先生御案内のように、現在自作農維持資金という災害資金を私ども持っているわけでございまして、これの金利は四・六でございます。この自作農維持資金の貸付金利は、災害資金という性質から特に低い金利に設定されているわけでございまして、この金利をさらに引き下げるということはなかなか難しい、こういうふうに考えております。しかし、いずれにいたしましても、この資金は二十年という期限の非常に長い資金でございますから、先ほどの償還条件の緩和措置、またこの自作農維持資金の活用等を踏まえて被災農家に対する資金対策の万全を期していきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  189. 寺前巖

    寺前委員 私が提起している問題の御理解がもう一ついただいておらぬのですが、償還の繰り延べをやる。そうすると期限が長くなっていくから利子がつくのです、繰り延べてくれるのはいいけれども。だから、その繰り延べによってついた分の利子は補給をしてやってもらえぬかというのが一つの願いなんですな。  それから、もう一つ聞こうと思ったのだが、あなたが先に言っておられるからあれですが、これから借りようという分、それは自作農の維持資金を災害用のものをやる、四・六%で百五十万円という枠がある。これは百五十万円という枠自身をちょっとふやすことを考えてあげぬと、例えばあそこで四十棟のハウスで花をやっている人がおります。三千万円の借金をしている。それで二人の人を雇っておるけれども、これが運営ができぬというような話をしておられました。そういう人は、百五十万円の枠ではなとやはり言っているんですね。もう少し枠を広げるということを考えてやる。今全体が低金利時代に四・六%はやはり高い。三%ぐらいにしないとね。これはこの分野だけ言っておってもあかんと思うのです。ですから、私は横並びにいろいろな分野があると思うので、大臣、こういう枠をもっと拡大する、利子をもっと低金利時代にふさわしいように変える、それから繰り延べた分の利子は払わなくていいようにするというような、こういう政治手腕を発揮してもらう。積極的に関係方面とこの問題について相談してもらうというような措置をやってこそ、こういう天災のようなときに、ああ、政治があってよかったなということになると私は思うのだけれども、いかがなものですか、大臣
  190. 青木敏也

    ○青木政府委員 特に資金の借入限度額のお話でございますが、この点につきましては、まさに自作農維持資金の限度額は百五十万ということになっております。これから被災農家の具体的な資金需要を私ども確かめまして、前に三宅島の噴火の際におきましては、都におきまして都の単独の資金も用意をいたしております。恐らく今回も都においてそういう資金の発動を考えているかと思いますが、十分都とも連携をとりまして、都の単独資金、また自作農維持資金を兼ね合わせて、そういう限度額の需要に十分対応できるように努力したい、こういうふうに考えております。
  191. 加藤輝雄

    加藤国務大臣 先ほどいみじくも出ましたが、私は三宅島の噴火のときの国土庁長官をいたしておりました。あらゆる知恵、あらゆる制度を使いまして、その島の復興、再建に尽くしたという気持ちを持っております。今回の大島の三原山の噴火の件につきましても、先ほど来お答えいたしておるわけでございますが、制度、資金、その他を十分活用し、また、先ほども申し上げましたが、東京都とも十分に連絡をとりながらやっていきたいと考えます。
  192. 寺前巖

    寺前委員 私は、低金利時代にふさわしいように積極的に打って出る、こういうような態度がなかったならば、既存の枠内で最大限に努力するということだけでは今日の状況のもとにふさわしいあり方だとは思わぬ。そこのところをぜひ再検討願いたい。意見を申し添えておきたいと思います。  緊急の問題として、もう一つは、日ソ漁業協定が締結されたようです。枠が決まってきたようです。ところが、それにしても、あの北洋の漁業の減船問題を今解決しないと、出るにも出られないという事態が現地で生まれているんじゃないでしょうか。釧路で聞いてみると、沖底の船の乗組員百六十八人の完全失業を含めて三百十人が想定解雇者数になっている。沖底船の船主一人が廃業し、もう一人が七億円の借金で破産する、トラックが一社、鉄工所が二社倒産というふうに、関係する被害がずっと出ているのですね。それから根室を見ても、根室でも大変な事態になってきている。  今度の北洋漁業の救済対策費は、要求しておった千二百九十五億円と比べて百九十六億円ですから一五%だ。共補償もそこにはない。このままでは出るにも出られぬという深刻な事態になっておる。せっかく一方でそれなりの国際的な話をつけてこられるのだったら、これに出られる条件を積極的につくってあげる。だから、共補償のあの資金について早いこと要望にこたえるような手を打ってあげるということが今非常に重要な責務だと私は思うのです。その点で、いつまでに要望のどの程度を解決することができるか、ちょっと展望を示していただきたいと思う。
  193. 佐竹五六

    佐竹政府委員 北洋漁業の減船対策でございますが、十二月一日にまず要綱、要領を施行したわけでございます。私どもも、救済交付金につきましては年内に交付するように、現在事務手続を進めているところでございます。  また、共補償につきましては、沖合底びき業界、母船式サケ・マス業界、それから太平洋中型サケ・マス業界がそれぞれ共補償の実施を決定しております。それに伴いまして農林漁業金融公庫の融資を要望しておりますので、現在、財政当局と協議中でございますが、これにつきましても、できるだけ早く結論を出して措置ができるように努力したいというふうに考えております。
  194. 寺前巖

    寺前委員 要望に対してどの程度の期待を持って迎えることができましょうか。
  195. 佐竹五六

    佐竹政府委員 要望の金額につきまして一〇〇%実施するということはなかなか難しいかと思います。現在、沖合底びき網業界では一隻当たり二千百万円、太平洋中型サケ・マス業界では四億円、それから母船式サケ・マス業界では一隻当たり二億七千万円、それぞれ要望しているわけでございますが、その金額につきましてどの程度実現できるかにつきましては、現在、財政当局と協議中でございますので、私どもとしては、できるだけ業界要望に近い数字を実現したいというふうには考えておりますけれども、やはり一定のルールもあるわけでございまして、現在、どのくらい実現できるかということについてはお答えできない状況にあることを御理解いただきたいと思います。
  196. 寺前巖

    寺前委員 北洋漁業救済対策費の場合に一五%しか要望に対して賄えないという事態の中で、非常に深刻になっておるわけでしょう。だから、この共補償の資金をつくってやることぐらい一〇〇%要望にこたえてやるということをやらなかったら大変だろうと私は思う。私は、この問題について積極的に大臣自身に乗り出してもらわなければいかぬと思うのです。一つは大臣の決意を聞きたいと思います。  それからもう一つは、これと関連して二百海里問題。全漁連が百十三万二千三百八十九名の署名を持って国会に押し寄せてこられています。これは一体どうするんだ。海上保安庁の「九州北西岸沖合から東北日本海側沖合に至る海域における韓国漁船の監視取締り状況」という資料を見ますと、確認延べ隻数は、領海で、昭和五十五年に五十四隻であったものが今では四百九十一隻だ。これは領海内の話ですよ。漁業に関する水域では、三百十四隻が二百二十四隻。これは大体横並びになっているけれども、ともかく領海の中にまで大量に確認されるところの、監視の対象になるような事態がどんどん広がってきているのですよ。ですから、時代は国際的な諸関係が変わってきている中で、二百海里問題をいつまでも韓国漁船に対してあいまいにしておくことは許されぬ。それが全漁連のこれだけの数の署名になってきておると思うのです。これはいつまでに解決されるのか。この間の日韓交渉の状況を見ておっても、日本の方はこの交渉を有利に運ぶためのカードとして二百海里の対韓適用問題を持ち出したが、これは実現性が希薄と見られ、多分に圧力をかけるための常套手段とみなされているなんというようななめられた話が向こう新聞にばあっと書かれているわけですよ。大臣、この問題を日韓の一年間の延長の間にけりをつけますか。けりをつけるんだったら、日本の国内体制もそれにふさわしい条件をつくらなければいかぬと思う。この二つの点について大臣の見解を求めたいと思う。
  197. 佐竹五六

    佐竹政府委員 まず私から考え方を述べ、要すれば大臣からお答えいたします。  日韓問題でございますけれども、現在の日韓漁業関係を規定する枠組みは日韓漁業協定北海道沖・済州道沖の自主規制でございまして、日韓漁業協定が締結されてから二十年たっておるわけでございます。先生も今御意見がございましたが、全くさま変わりになっておるわけでございます。そのような観点から、日韓漁業秩序として今の形は非常に変則的であって、新しい枠組みに移行することが必要であるということは私どもも痛感しておるわけでございます。その新しい枠組みの一つとして、二百海里をお互いに引き合うことが有力な手段であることは私どもも十分認識しておるわけでございます。  ただ、現在、日韓漁業協定に基づきまして韓国二百海里内で安全に操業している我が国漁船がいることもまた事実でございまして、日韓漁業協定をそのままにしたまま二百海里の線引きをお互いにすることは、論理的に考えて不可能でございます。現在の日韓漁業協定の秩序を一応解消しなければ、二百海里は法律的には引けないわけでございます。そうしますと、もし解消するということになれば韓国側はかつてのいわゆる李ラインが復活するということでございまして、何らの準備なくこれを解消させればかつての拿捕事件が再燃するおそれなしとしないわけでございますので、私どもとしては、新しい時代の秩序において相互にどういうふうに入漁し合うことを認めるかという、いわば将来の見通しをまず韓国との間で詰めることが何としても必要でございまして、一方的に二百海里を引くということは現実問題として非常に難しいのではないかというふうに考えているわけでございます。そこで、今申し上げましたような観点から、二百海里をお互いに引き合うことも含めて、その制度的枠組みについても今後韓国側交渉してまいりたい、かように考えておるわけでございます。  それでは、一体いつまでたったら解決するのかという御疑念が当然出てくるわけでございます。私どもとしてはだらだらとやることは当然できないということでございまして、十月末に自主規制措置が失効した際にも、協議を続ける、協議を続ける以上はお互い紛争が起きては困るから従来の措置は延長しようということで、ただ、無期限にそれをやったのではということで一応一年というめどをつけたわけでございます。それでは一年以内にできるかというふうなお話もあろうかと思いますが、私どもとしては何としても一年以内に片づけなければならないというふうに考えているわけでございまして、これを放置すれば、漁業交渉の非常な特殊性といたしまして、その交渉によって影響を受ける漁民が直接海上で接触するわけでございますから、どんなトラブルが起きるともわからないわけでございます。この点を強く韓国に訴えて何とか交渉の促進を図りたいと考えておるわけでございまして、この点につきましては、我が国外務省とも全く一致した見解で協力してもらっているわけでございます。現状と見通しについて、一応私どもの事務的な立場から御説明したわけでございます。
  198. 加藤輝雄

    加藤国務大臣 今長官から御説明申し上げましたが、それにつけ加えますと、今月の五日、六日に日韓定期閣僚会議が行われまして、倉成外務大臣並びに私からも、今の日韓漁業交渉に対する危惧の念その他を強く表明いたしました。  長官が申し上げました点以外をさらに申し上げますと、日本の漁民の不信と不安は極度に高まりつつあるということと、北海道沖周辺においては韓国の大型漁船であり、そしてまた一部漁場においては我が国の漁民に許されていない漁業までやっておる、これは即刻枠組み全体を改めるときに来ておるのだということを中心に、初日の全体会議でも申し上げ、また六日の個別会談でもさらに繰り返し強くそういう点を述べ、そして最終的な全体会議におきましても、さらに最終的に強く我が方の主張を申しておいたところでございます。
  199. 寺前巖

    寺前委員 新しい時代にふさわしい体制を、国内の諸準備もちゃんとやられて早く行われることを期待します。  次に、水田農業確立対策について聞きます。聞きたいことはたくさんありますが、主として二点聞きたいと思います。  ポスト三期の問題で言うと、減反面積を現行六十万ヘクタールから七十七万ヘクタールにする、奨励金については二千百七十四億円を千七百五十億円にする。そうすると、単純平均すると十アール当たり奨励金は約四割減ってしまう。これでは転作の条件は悪くなる。一体何を転作したらいいのかということを農民は率直に言い始めた。  そこで聞きますけれども、昭和五十三年一月二十日の閣議決定で「稲から自給力向上必要性が高い飼料作物、大豆、麦等に重点を置いた他作物への転作等を推進する」ということが決定されています。これに基づいて転作がずっとやられてきた。ところが今度の水田農業確立対策では、地域の自主性に任せて転作すべき重点作物を示していない。転作を通じて麦や大豆の自給率を向上させるという従来とっていた方針はこの際にもう打ち切りになった、そういうふうに理解をしてよろしいですか。
  200. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 水田農業確立対策考え方は、これまで御説明を申し上げてまいりましたけれども、これまで実施してまいりました稲作転換の経験あるいは教訓といったようなものに打ち立てられているわけでございます。そういう意味で、この対策は、水田を活用して生産される作物の生産性向上あるいは地域輪作農法確立、需要の動向に応じた米の計画生産を一体的、総合的に推進しようとするものであります。先生御指摘のとおり現行の対策におきましては、自給力向上必要性の高い大豆、麦等の重点的な他作物への転換という条項がございます。私ども考え方といたしましては、具体的な加算制度のところをごらんいただきとうございまして、その点におきましては、麦、大豆等一般作物では現行の約八割を確保する仕組みになっておりますし、さらに、具体的に米から自給力の低い農作物への転換を図るという点においてはこれまでの経験の上に立って実施するということでございまして、私ども放てきしたわけではございません。そういう意味で、米と他作物の有機的、計画的な作付体系を実施するための地域輪作体系の農法といったことに重点を志向しているということでございまして、今先生の御指摘のような自給力の向上という点をこの対策で否定したわけではございません。
  201. 寺前巖

    寺前委員 否定したわけではないと言うけれども報告書を読むと随分変わってきていますね。麦や大豆の生産見通しについても、昭和五十五年の八〇年代云々のところでは「できる限り生産の拡大を図る」と書いてある。今回の農政審の報告では、ある程度増加する、言葉がちゃんと変わってきている。それから麦、大豆等を特定作物、こう言っておったのを一般作物に格下げしてきているという内容にもそれは見られてきている。だから、何やかんや理屈は言うても、全体として意識的に自給率向上の方針として出されてきているというふうには解釈できないというのが私があれを読んでの率直な感想ですよ。そうじゃないと言うんだったらその方針を農水省は堅持すべきだ。  それから自主調整保管の問題ですが、先ほどから皆さんの話を聞きました。要するに政府は、持ち越し量百五十万トン以上のそれをオーバーするものについては、減反が未達成でふえたら、ふえたものを含めてたとえ一〇〇%減反がやられたとしても、そのオーバーした分については生産者団体で面倒を見なさいやということです。そうすると、全量管理の食管制度の中で、自主流通米の価格の分野で責任を放棄してしまって、今度は管理する分野で残ったものは全部おまえのところで管理せいやということで、ここでも管理をほかしてくる。食管の根幹は守るのだと言うけれども、実際上は全体としてどんどんほかしていくことになってしまうんじゃないだろうか。  そこで私が聞きたいのは、この間、経団連が近く提言を出したいということが新聞で報道されました。あの新聞で報道された中を見ていますと、当面三年で政府米の割合を二割にするということが出てきておる。自主流通米でつぶされる、余り米の問題ではこれは生産者団体で面倒を見なさい、こうほうり出す、次には今過半数を占めている政府米の割合を二割に減らしていく。さあ、それでも管理はやっていますと言い切れるのかどうか。これはアバウトな話ですから、一番考え方を示す問題ですから大臣の見解を聞きたいと思う。そんなものが食管の根幹を守るという内容としても考えられると言うのかどうか、いかがです。いや、私は大臣でいいです。細部の事務の話は要らぬ。
  202. 後藤康夫

    後藤政府委員 私ども、経済団体が何か提言をするということで検討していることについては新聞紙上で承知いたしておりますけれども、その内容は詳細に承知をいたしておりませんし、私どもがそういうことを考えているということではございませんので、そのことを一つ申し上げておきたいと思いますのと、もう一つは、自主調整保管と申しますのは、やはり三度の過剰米処理を何としても避けなければいけない、それから自主流通米の安定的な価格形成というのにもむしろ役に立つ、そしてまた、豊凶の差というものを転作面積とか予約限度数量に直ちにはね返すということではない一つのクッションの役割も果たすということで考えているわけでございまして、先ほどもちょっとお答えをいたしましたように、国の米に関する計画なり、あるいはまた自主流通計画の中にも組み込んで、今の食糧管理制度の枠の中でまさにやっていこうというものでございます。現在の食管法の九条にも、政府は、特に必要ありと認めるときには保管及び移動に関し命令をなすことを得という規定がございます。政府以外の流通段階での在庫保管というふうなものも、今の食管法の九条で、現行の食管の全量管理の一つの態様として法律上も予定をされているというふうにお考えをいただきたいと思うわけでございます。
  203. 寺前巖

    寺前委員 だから、私が今事務の話は別に聞きとうないと言うのはそのことなんです。要するに管理をするというんだったら、残ったものはちゃんと責任持って私の方で面倒見ますからおつくりなさい、その分については私の方で金を持ちます、こう言わなければいかぬ。もうつぶれてきておるんだ。もともと、自主流通米から崩れ始めておるんだ。米について全部責任を持ってどういうふうにやっていくかということにならない。もうペーパープランだけになってくるんだ。そういう発想が許されていったら経団連のようなことになるんじゃないだろうか。今でも政府米というのは五割ちょっと超えている程度です。だからこの政府米だって、こんなもの四割になったって何も大して変わらぬじゃないか、三割になったって変わらぬじゃないかというようなことで、それで管理はやっぱりできています、ちゃんとどこにどういうルートを通じて米が届けられます、全部ちゃんとこちらで采配しますと言うておったら、私は、もう事態というのはだんだん変わっていっていると思う。  そこで、大臣に聞きたい。政府米を三年先には二割にしようじゃないかというこの案に対して、これはまだ確定したものでも何でもない、文書はまだ出ていないのですよ、動きの話として新聞に出ているのだが、そんな動きなんて私は聞く耳ないと言うのか言わぬのか、どっちです。
  204. 加藤輝雄

    加藤国務大臣 私もその記事は読みました。ただ、具体的提言あるいは考え方あるいは中身を全然まだ存じてないわけでございますので、それに対するコメントは遠慮さしていただきたいと思います。  ただ、この際申し上げておきたいことは、食管法があるから、食管制度があるから政府はこれをせい、あれをせいという態度が果たして本当に食管制度基本、根幹を守っていくことの道になるのか、それとも逆に、食管制度基本、根幹を守るために私たちもこうしましょう、ああしましょうとお互い努力をしていくことが食管法並びに食管制度基本を守ることになるのかという論争は今後相当行われてくると思います。また、昨日も参議院の決算委員会におきまして部分管理の問題等についてもいろいろ御提言がありましたが、私はことごとくこれを拒絶しておきました。
  205. 寺前巖

    寺前委員 私は、本当にもう一回きちんと整理をして、食管の根幹を守るとは何ぞやということを大臣に勉強してほしいと思うのです。  国会の論議をずっと見ても、昔は、自給率の向上のためにということで各党みんな意思統一してきたものです。それがいつの間にやら、自給率と言うておったものが自給力、要するに土地があったら、水田ができるような条件にあったら米はできてくるのだから、そういう力があるのだからそれでええやないかという話になった。ところがだんだん変わってきて、今度は何かと言うたら、供給力があったらよろしい、供給力というのは何も日本の中だけではない、外国から持ってきてでも供給する力がある、それを責任を持って政府が間違いなくやっておったら国民安定供給ができるじゃないか。だんだん話が、自分の土地を主体にして、物を責任を持って現物として安定的に安全なものを提供するという考え方から違う方向に発展してきておる。国民は、こんな自給率とか自給力とか供給力とか、何だかわからぬ間にだんだん変なところに進んでいきよるなという不安を持っているというのが私は実態だろうと思うのです。こういう言葉のもてあそびというようなことはやめなければいかぬ。だれが見たって、食糧については国が責任を持って国民に対して出します、それは日本国土の中でつくっていくのだ、それは世界各国がそういう動向になっているのだ、この基本的な態度で筋を通していかなければあかん。ところが、政府が直接政府米として管理するものが半分以下の方向に流れようとする話が出てきておるときに、それはということが言えないようでは、これはえらいことになってきている、自民党の政治というのはそういうものだったのかと私があえて言わなければならぬようなことになってきているのです。だから、これについてはもう時間がないのできょうはやめておくけれども、本当に食管の根幹を守るとは何ぞや、はっきりしなければいけないと思うのです。  そこで、もう一つこの際にちょっと聞いておきたいのですが、水田農業確立対策では、各都道府県への減反目標の配分で、市街化区域への一層の傾斜配分という問題が出てきておるのです。都市農業について新しい問題がずっと出てきたわけだ。そこへもってきて宅地並み課税の見直しという問題が出てきておる。今でもそうなんだけれども農業収益でもとても太刀打ちができない税金問題が出てきておるのに、見直せという問題が出てきておる。そこに輪をかけて、今度は転作奨励金の加算は市街化区域については除外するという話まで出てきている。これは都市におけるところの水田の持っている役割をどう見ているんだろうか、農民の持っている役割をどう見ているんだろうか。あるいは中小河川の対策にも遊水地帯として必要になっているし、あるいは緑地としても必要になってきているし、いろいろな意味で都市農業というのは総合的に見ていかなければいかぬ。そういうやさきにこの転作奨励金の加算の市街化区域除外という問題が出てきた。これは本当にやる気で相談が始まっているんだろうか。まさか農水大臣、そんなことをお考えになるとは思わぬのだけれども、これは本当ですか、やる気ですか、これはもう除外すると。私はその点について大臣の見解を聞きたいと思うのです。
  206. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先生お話しの加算の問題が一つありますが、私ども考え方といたしましては、水田農業確立に当たりまして、その中で具体的な配分にわたっての問題におきましては、地域農業の実態を踏まえまして、各種の土地利用の計画の線引き政策との整合性を配慮して行おう、こういう方針を立てておるところでありまして、そういう観点の上に立っての大綱を決めただけでございます。こういう加算等については、私どもまだ成案を得ておりません。
  207. 寺前巖

    寺前委員 もう時間が来たからあれだけれども、難しい言い方はやめて、大臣、要するに都市農業考えていくときに、この加算を外してしまうというような考え方をしておったらぐあい悪いのと違うか。今都市農業を守るために自治体は、いろいろな加算を独自ででも考えて一生懸命サービスしていますよ。ところが、それに今度頭からばんとかぶせるようなことはすべきでない。これはもう大臣の腹をひとつばんと固めていただかなければいかぬ内容だと思うのです。いかがですか。
  208. 加藤輝雄

    加藤国務大臣 先ほど局長からお答え申し上げたところでございますが、転作率は上げますけれども、まだ加算の問題は結論を出しておりません。  なお、都市農業の位置づけといいますか重要性というものについて、ちょっと私の、農水省の考え方を申させておいていただきたいと思います。  都市農業は、都市住民に対する野菜等生鮮農産物の供給に加え、緑やレクリエーション空間の提供、大気の浄化、洪水調整等環境保全の役割を果たしていることは一般に認識されているところでございます。また都市地域には、農業に意欲を持って取り組む農家が相当数存在しておることも事実であります。しかし、都市農業に供されている農地については、宅地等農業外の土地需要に対する供給の確保とどう調和させていくのかという問題があることもまた事実であります。そこで、都市計画法や農振法の適切な運用により、調和ある国土利用を図っていくことが重要であると考えておるところでございます。
  209. 寺前巖

    寺前委員 もう時間が来ましたのでやめます。また、山の分野については、せっかく御準備いただいたのに失礼いたしましたけれども、またの機会にさせていただきます。どうも済みませんでした。
  210. 玉沢徳一郎

    玉沢委員長 次回は、来る十八日木曜日午前十時十分理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十八分散会