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1986-10-17 第107回国会 衆議院 日本国有鉄道改革に関する特別委員会公聴会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十月十七日(金曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 細田 吉蔵君   理事 小此木彦三郎君 理事 小里 貞利君    理事 佐藤 守良君 理事 三塚  博君    理事 山下 徳夫君 理事 井上 普方君    理事 嶋崎  譲君 理事 西中  清君    理事 河村  勝君       逢沢 一郎君    甘利  明君       石渡 照久君    臼井日出男君       遠藤 武彦君    大島 理森君       片岡 清一君    亀井 静香君       亀井 善之君    久間 章生君       佐藤 敬夫君    桜井  新君       鈴木 宗男君    関谷 勝嗣君       津島 雄二君    月原 茂皓君       中島  衛君    中村正三郎君       野中 広務君    野呂田芳成君       鳩山由紀夫君    二田 孝治君       町村 信孝君    松田 九郎君       森田  一君    山村新治郎君       若林 正俊君    上田 卓三君       小林 恒人君    関山 信之君       戸田 菊雄君    村山 富市君       山下洲夫君    浅井 美幸君       石田幸四郎君    遠藤 和良君       柴田  弘君    阿部 昭吾君       中村 正雄君    工藤  晃君       中島 武敏君    村上  弘君  出席公述人         航空政策研究会         理事      山本雄二郎君         信州大学経済学         部教授     高梨  昌君         交通評論家   角本 良平君         宮城町村会副         会長               宮城県小牛田町         長       栗村 和夫君         高千穂商科大学         教授      高野 邦彦君         法政大学経営学         部教授     廣岡 治哉君  出席政府委員         運輸政務次官  柿澤 弘治君         運輸大臣官房審         議官      井山 嗣夫君  委員外出席者         日本国有鉄道常         務理事     山田  度君         地方行政委員会         調査室長    島村 幸雄君         運輸委員会調査         室長      荻生 敬一君     ───────────── 委員の異動 十月十七日  辞任         補欠選任   小沢 辰男君     佐藤 敬夫君   亀井 静香君     月原 茂皓君   古賀  誠君     二田 孝治君   中島  衛君     鳩山由紀夫君   中村正三郎君     町村 信孝君   長谷川 峻君     遠藤 武彦君   原田  憲君     石渡 照久君   増岡 博之君     逢沢 一郎君 同日  辞任         補欠選任   逢沢 一郎君     増岡 博之君   石渡 照久君     原田  憲君   遠藤 武彦君     長谷川 峻君   佐藤 敬夫君     小沢 辰男君   鳩山由紀夫君     中島  衛君   二田 孝治君     古賀  誠君     ───────────── 本日の公聴会意見を聞いた案件  日本国有鉄道改革法案内閣提出第一号)  旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律案内閣提出第二号)  新幹線鉄道保有機構法案内閣提出第三号)  日本国有鉄道清算事業団法案内閣提出第四号)  日本国有鉄道退職希望職員及び日本国有鉄道清算事業団職員の再就職促進に関する特別措置法案内閣提出第五号)  鉄道事業法案内閣提出第六号)  日本国有鉄道改革法等施行法案内閣提出第七号)  地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第八号)  日本鉄道株式会社法案伊藤茂君外八名提出衆法第一号)  日本国有鉄道解散及び特定長期債務処理に関する法律案伊藤茂君外八名提出衆法第二号)  日本鉄道株式会社退職希望職員等雇用対策特別措置法案伊藤茂君外八名提出衆法第三号)      ────◇─────
  2. 細田吉藏

    細田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出日本国有鉄道改革法案旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律案新幹線鉄道保有機構法案日本国有鉄道清算事業団法案日本国有鉄道退職希望職員及び日本国有鉄道清算事業団職員の再就職促進に関する特別措置法案鉄道事業法案日本国有鉄道改革法等施行法案及び地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律案並び伊藤茂君外八名提出日本鉄道株式会社法案日本国有鉄道解散及び特定長期債務処理に関する法律案及び日本鉄道株式会社退職希望職員等雇用対策特別措置法案の各案について公聴会を行います。  この際、御出席をいただいております山本公述人高梨公述人角本公述人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわらず御出席を賜り、まことにありがとうございました。  申すまでもなく、本委員会といたしましては各案について慎重な審査を行っているところでありますが、この機会を得まして広く皆様方の御意見を拝聴いたしますことは、本委員会審査に資するところ大なるものがあると存じます。公述人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  御意見を承る順序は、山本公述人高梨公述人角本公述人順序でお願いいたします。  なお、御意見はお一人十五分程度とし、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  念のために申し上げますが、発言する際は委員長の許可を受けることになっております。また、公述人委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。  それでは、山本公述人にお願いをいたします。
  3. 山本雄二郎

    山本公述人 山本でございます。  本日は、日本国有鉄道改革法案など関連法案につきまして若干の意見を申し上げ、今後の御審議の参考に供したいと思います。時間の関係で、基本的な考え方を最初に述べさせていただきまして、個々の点につきましては後ほど御質問があればお答えさせていただく、こういうことにさせていただきます。  国鉄改革必要性につきましては改めて申すまでもないことでありまして、国鉄窮状を一日も早く打開しなくてはならないとだれもが考えていると思います。もちろん、これまでも手をこまねいてきたわけではありませんで、何とか事態を好転させたいという試みが行われてまいりました。昭和四十四年度以降国鉄財政再建計画が実施されてまいりましたけれども、それらの国鉄再建計画は御承知のとおりすべて中途で挫折いたしております。この事実は極めて重大であると考えます。このたび重なる挫折の原因を分析してみますと、そこの中に私は、国鉄窮状を打開するために二つのことが不可欠だというふうに考えました。このことは何年も前から機会あるたびに申し上げてきておることであります。  第一点は、国鉄再建ではなくて、国鉄改革でなくてはならないということであります。これまでの国鉄再建計画は、第一次再建計画がそうでありましたように、十カ年計画を立てまして目標年度、第一次の場合は五十三年度でありますが、その目標年度に黒字を出すということを目的としたものであったというふうに理解いたしております。そしてその主眼とするところは、財政を立て直す、収支均衡を図るということ、つまり財政再建であったというふうに思います。  もちろん財政再建も非常に大切なことでありますけれども、それがすべて途中で挫折してしまったのでは全く意味がないわけでありまして、国鉄再建計画つまり国鉄財政を立て直すという計画が挫折した背景には、それなりに問題点があったと思います。  私は、その中で三つ問題点を取り上げたいと思います。  第一は、時間との競争に負けたということであります。つまり、何事によらず、ある対策を立てようといたしますときに、実現までに大変時間がかかりまして、ようやくその対策実現したときには既に手おくれであったというケースが幾つかあったと思います。例えば法定制のもとでの運賃値上げがそうでありましたし、あるいはまたその運賃値上げにかかわる法定制緩和というようなものにつきましても、実現までに非常に時間がかかったと記憶いたしております。  第二は、それぞれの再建計画の中で需要の見積もりが常に過大であったということであります。どうしても財政を立て直す、収支均衡を図るということが先行いたします関係で、そこにウエートが置かれる余り需要の伸びというものに期待をかけ過ぎたからではないかというふうに思いますが、いずれにしても実績が計画を下回るということになりますと、それだけ収入が予定どおりないということになりまして計画破綻を来す、こういうことになったと考えております。  第三は、甘えの構造があったということだと思います。やはり国鉄公共企業体であったがゆえに不沈艦意識がつきまといまして、当事者であるところの国鉄労使あるいはその利用者、また見方によっては行政府立法府にもそういう見方の甘さというものがあったのかもしれないと思います。  このように見てまいりますと、国鉄財政を再建するというアプローチを続ける限り、私は国鉄窮状を打開することはできない、こう言わざるを得ないと考えます。そうなりますと必要なことは、国鉄そのものあるいは国鉄を取り巻くシステムを改革するほかはない、こういうことになろうかと思います。その意味で私が申し上げたいのは、これからは財政を立て直す、つまり国鉄再建ではなくて、国鉄にかかわるシステムを改める、すなわち国鉄改革でなくてはならない、こういうことを申し上げたいわけであります。そのためには、経営形態変更を含むシステム見直しが必要でありまして、さきに国鉄再建監理委員会が、国鉄破綻原因として公社制、それから全国一元的運営の問題を挙げておられまして、その対策として分割民営化という方向を打ち出されましたのは、今私が申し上げました国鉄にかかわるシステムを改革するということと軌を一にするものであると考えます。  それから第二点目は、国鉄改革には私は三つの柱が必要であるということを常々考えております。その三つの柱と申しますのは、過去の清算現状打破、それから将来の展望ということであります。おわかりいただけますように、過去の清算といいますのは、長期債務処理のように、これまで長い間国鉄にあったしがらみというものをなくすということであります。現状打破といいますのは、直ちに着手すべきこと、例えば新規採用の中止であるとか設備投資の抑制であるとかあるいは職場環境の改善、そういったようなことであります。将来の展望というのは、働きがいのある企業にするということであります。その中には経営形態変更というものも含まれるというふうに考えます。  以上、第一点目で申し上げました国鉄改革を目指すということ、第二点目に申し上げました国鉄改革には三つの柱が必要である、そういう角度から見ますと、現在御審議中の政府案は極めてリーズナブルなものであると私は考えます。政府案国鉄分割民営化ということを基本的な理念といたしまして国鉄改革を図ろうというものでありますけれども、現在考えられております対策の中ではこれが最善のものである、私はこう言ってよろしいかと思います。今後、基本的にこの方向国鉄改革が進められることを期待いたしますし、そのためには一日も早く政府案を成立させていただくことが大切である、こういうふうに思います。  なお、政府案の中には国鉄改革に関連いたしまして鉄道事業法案というのが含まれておりますけれども、これは国鉄改革はもちろんですが、国鉄だけではありませんで広く鉄道事業全般を対象にした法案でありまして、これからの新しい鉄道の道を開く、こういうふうに考えられまして、私は評価されてよろしい法案だと思っておりますということを申し添えておきます。  最後に、国鉄改革を推進するに当たりまして特に留意をしなくてはならないと思われる点について申し上げたいと思います。それは、国鉄改革の渦中、渦巻きの中にある人たちへの配慮、そしてまたその人たちが一体何をするかという問題であります。  第一は、国鉄職員雇用対策でありまして、特に、今後国鉄を離れていく人たちに対する雇用の確保というものに対しては万全を期さなくてはならないと思います。既に政府を中心に対策が進められておりますけれども、より強力にそれを推進していくために、立法府としてもぜひ格段の御配慮をいただきたい、こう考えます。  それと同じことが国鉄共済年金についても言えるわけでありまして、ほかの公的年金あるいはその他の年金と比べますと成熟度が極めて高いわけでありまして、それを一体どのように処理するかという問題に迫られていることは御承知のとおりであります。この点につきましてはまだ最終的な対策が打ち出されていないように私は理解しておりますが、この点も雇用対策同様、よりよき対策を生み出す意味立法府としての御協力をぜひお願いしたい、こういうふうに思います。  第二は、新事業体で働く人たちの問題であります。これから六つの旅客鉄道会社一つ貨物鉄道会社に今国鉄で働いている人たちが分かれていくわけですが、この旅客鉄道会社貨物鉄道会社というのは、私は今新しい仏をつくろうとしていることだというふうに考えております。その仏に魂を入れるのはまさにそこに働く人でありまして、経営者であれ職員であれ、そういう方たちが本当にその気になって対応を考えない限り、仏に魂が入るということにはならないと思うわけであります。よく「企業は人なり」というような言い方をいたしますが、どんなに立派な制度、法律がつくられても、当事者がその気になってチャレンジをするということでなければその新しい企業というものの前途は開けないのではないか、こういうふうに思います。その意味で、新しい事業体で働く人たち意欲を持って取り組んでいってほしいということを期待したいと思いますが、そのためにもやはり国会審議などを通じて、これからの鉄道事業というものがやりようによっては明るい展望が開けるんだ、そういったようなことが伝わるような御配慮もお願いいたしたいと思います。  一応私は基本的なことに絞りまして冒頭考え方を申し上げ、一日も早く政府案が成立することを期待して終わりたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
  4. 細田吉藏

    細田委員長 ありがとうございました。  次に、高梨公述人にお願いいたします。
  5. 高梨昌

    高梨公述人 高梨でございます。  私は、政府提出法案に従いまして、いわゆる経営形態見直し民営分割化がされるというこの場合の問題点について、私の意見を申し述べさせていただきたいと思います。  私は労働経済労使関係が専門でございますので、問題点二つの点に限定したいと思います。一つは、新会社への職員移行の問題でございますけれども、その際の採用方法等について意見を申し述べさせていただきたいと思います。もう一点は、いわゆる余剰人員対策でございます。この二つ問題点に限定したいと思います。  なお、経営形態見直し問題についてはいろいろ議論のあるところでございまして、私も実は昨年、当国会の参議院の運輸委員会民営分割の問題につきまして私の意見を開陳させていただきました。その折に私が申し述べたことは今日でも変わっておりませんけれども、経営形態としては民営化は望ましい経営形態変更であるという、この点では政府考え方にほぼ近い考え方を私は持っております。  ただ、企業分割につきましては、地域別分割が果たして良好な経営成果を生むかどうかについては疑問を持っておりまして、私としましてはむしろ事業分野別分権管理をする方が望ましいのではないか、こういうことで考えております。政府案の中にも旅客貨物とバスということで一応別会社にしていますけれども、私は、今日企業で一部やっています分社化傾向会社を分けることをやっていますが、それに近いことを考えておりますので、その点の事業分野別考え方は私の考え方に近いわけでありますけれども、旅客鉄道会社を六地域に分けることにつきましては、私はまだそこの問題、どういうように経営管理をしていくかにつきましては具体的に提示されておりませんから、これにつきましてはここでは賛成、反対も言いかねるわけでありますけれども、私の考えは、そういうふうに小規模企業にしてもなおかつ鉄道経営を効率的にしていくためにはもう一工夫必要なのではないかと考えまして、それぞれ路線事業を行う事業分野とそれから路線乗務員等のサービスを行う地域事業分野二つ事業分野に分けて、そのマトリックスで経営効率を高めるべきではないか、こういうふうに考えておる次第でございます。そういうような方向が将来どう打ち出されるかは私として注目したい点でありますけれども、先ほど冒頭に申しましたように、私は二つの点に絞ってこれから見解を申し述べさせていただきたいと思います。  まず、新会社、いわゆる承継法人への職員募集選抜採用に関する件でございます。これは法律の二十三条にかかわることでありますけれども、御承知のように国鉄改革を成功させるポイントは、何といいましても国鉄関係職員意欲を持って働ける環境をつくることが基本的前提だと私は考えます。したがいまして、新会社への移行に伴う職員採用等のあり方もしくはそこでの実行の仕方が将来の労使関係を大変強く左右する面を持っております。このことを肝に銘じて、職員には無用な不安や不満、これを持たせないように十分配慮して実行することが私は必要だと考えます。何といいましても経営体にとりまして必要なことは、職員のやる気であります。これを呼び起こすような改革案を、また募集採用行為をすることが私は大変重要なことだと考える次第でございます。  そのために、まず採用基準の件でございますけれども、これは言うまでもなく、この基準が社会的公正に定められること、またその基準に従って採用選抜をするわけでありますけれども、この選抜も公正に行わなければならないと考えます。それを行うために例えば、国鉄職員の中から採用するわけでありますけれども、特定組合員であることをもって差別をしないことが重要だと考えます。第二番目に、当然採用に当たっては過去の勤務成績等採用基準とされることは十分考えられることでありまして、それは必要なことであると思いますが、この基準の適用に当たっても公正でなければならない、こう考える次第でございます。また、普通の民間企業での就職でもそうでありますけれども、この採用基準が明確に定められ、関係職員にこれが十分周知徹底されることが私は必要だと思います。これが採用基準にかかわることであります。  第二番目に、労働条件内容にかかわることでございます。これは運輸省令で定める事項になっておりますが、この労働条件内容は、いわば新会社就業規則、もしくは労使間で団体交渉の結果労働協約ができれば労働協約の一番基本をなすものになるかと考えます。職員にとっても、労働条件に従ってそれぞれ応募するわけでありますから、可能な限り広範囲の事項労働条件として提示する必要があるのではないか、こう考えます。職員に疑問とか迷いが生ずることを可能な限り防ぐということが私は重要だと思います。そのため、職員労働条件について知りたい事項は何かということで、意見を聞く機会を提供することが必要だと私は考えます。そういうような配慮をして労働条件内容を決めていく必要があるかと思います。  その際、私としまして労働条件内容でぜひこの点は盛り込む必要があるのではないかと考える点を二点だけ申し上げたいと思います。  一つは、現在の国鉄の問題、これは既に重々指摘されているとおりでありますけれども、そういう問題点を踏まえまして、職員意欲を持って能率よく勤務できるように工夫することが労働条件の中身として大変重要だと思います。例えば、勤務内容とか業務の量の違いとか、一種働きぶりでありますけれども、これが反映するような賃金形態ということをぜひ考える必要があるのではないか、これが第一点でございます。  第二点に、事実上職員のほとんどの方は新会社に継続採用されるかと思うわけでありますが、そこで労働条件が大幅に切り下げられた、こういうような不満を生まないように努力する必要があるんじゃないか。事実上職員方々は三月三十一日から四月一日ですぐ違った職場に行って労働条件を切り下げるということはまず大勢としては考えられないことでございますし、また職員方々の多くも、継続雇用される、こういうような感情を持っているはずでございます。法律上は退職して新会社への採用になっていますけれども、実際はそうでなしに、職員感情というものはそうでないと考える。こういうような持っている継続雇用という職員感情を殊さらに逆なでしてまで、皆さん方は退職して採用ですよと、こういうことは強調なさらない方が望ましいのではないか、私はこう考える次第でございます。  その際、継続雇用する際のメリットとして例えばこういう点はぜひ御配慮いただきたいわけですが、新規採用でありますと、民間会社の例えば年次有給休暇は初年度は六日で、まあ最低基準でありますが、それじゃ六日で済むかということじゃありませんで、過去の退職金についても年金についても通算されることに法律でなっていますように、やはり年次休暇についても過去の権利は継続する、こういうように配慮する必要があるんじゃないか。また、労働条件の極端な切り下げですね、特定職員に大変不利になるような、こういうようなことはぜひ避けていただきたい。一種激変緩和措置でありますが、民間でも他の職場へ移って賃金が下がる場合にはその減収分を補償しております。従来の賃金を保障するという慣行がございますから、それもぜひやっていただきたい。それから労働条件につきましても、先ほどの採用条件と同じように、これを事前に関係職員方々に提示して、職員方々意見とか希望とか、これを聞く手続はぜひ踏んでいただきたい。また、労働条件の提示する内容につきましても、できる限り誤解のないように十分に職員に説明することが必要かと考える次第でございます。  そこで、以上のようなことを適切に実施するためには、それぞれ関係者の誠意ある努力と、とりわけ温かみのある対応が大変必要でないか、こう考える次第でございまして、例えば政府におかれましても、新会社設立委員方々に、採用に当たって留意すべき事項とか、必要があればその指導をするとか、こういうような指示、指導助言ということをぜひ政府として努力していただきたい。また、国鉄当局にいたしましても、設立委員方々に対して従来の国鉄の中の問題点を十分説明すること、それからまた、職員希望意見等があれば、設立委員方々に十分伝えることが必要かと私は思います。また、設立委員方々にも努力を願わなければならないわけですが、新会社の健全な、かつ安定した労使関係が樹立されますように十分配慮する必要があります。また、関係の諸労働組合大変努力が必要かと思います。新会社への職員移行が円滑に進むように、組合員への相談業務とか指導業務とか助言業務とかをぜひ強めていただきたい。こういうような、いわば政労使すべての方々が鋭意努め、協力しないと、このような大事業は到底成功しないと私は考える次第でございます。  以上が採用基準にかかわることですが、その次の余剰人員対策にかかわることでございます。  原則は、言うまでもなく現在の国鉄職員のすべてが新会社移行することが望ましいと私は考えます。民間企業でも定年退職、希望退職等の自然減耗策に基づきまして要員の削減をやっているのが実態でございます。国鉄におきましても、民間でやられていますこの要員削減慣行をぜひ適用していただきたいと考える次第であります。とりわけ今日、円高、また産業構造の転換に伴いまして、成人の家族持ちの労働者の失業問題が深刻化しております。ここにさらに政府企業部門である国鉄から離職者を大量に出すということは、離職者対策、再就職援助にしましても大変困難な問題を生むのではないか。こういうような緊急事態が一方でございますので、なおのこと、今言った原則に従って余剰人員の処理をお願いしたい、こう考える次第でございます。  その際、政府計画の四万一千人の清算事業団に配属する人員の問題でございますけれども、これは可能な限り圧縮する必要があるだろうと考える次第でございます。もちろん、現在、公的部門三万、民間部門一・一万人の採用枠は提示されておりますが、これは採用枠にすぎず、そこでの求人、求職で結果的に全員が採用されるという完全な保証はございません。中にはうまくマッチできずに再就職できない人も出かねないと私は予想する次第でございまして、できましたらそれらの人たちは新会社にぜひ引き取っていただけないか。とりわけ本州の三社につきましては若干経営状態がよろしゅうございますので、そこに余剰人員を二割プラスアルファで加えていただけないかと考える次第でございます。もちろん、そうしますと人件費負担の増加が起きます。このための負担経減措置としまして、本州三社が引き受けております長期累積債務十四兆二千億円となっておりますが、これを削減するということが必要かと思います。その負担の経減の財源は、土地その他の資産の売却収入の一部を充てるということでできないだろうか、こういうように考える次第でございます。  もちろん、これによりましてもまだ問題は残ります。とりわけ私が心を痛めていますのは、北海道、九州地区の国鉄職員方々であります。ここの余剰人員をどう処理するか。北海道に至っては大変な再就職機会が狭い地域でありまして、北海道の他の産業も大変な苦労をしているところでございます。おまけに国鉄職員の多くは成人の家族持ちの職員でございますので、なかなか地域異動することが困難でございます。今、広域異動の希望を募っておる状況を見ましても、それほど多くの希望者が挙がっておりません。人間というのはどうしても家族持ちになれば郷里を愛し、そこに定住志向を持ちます。このことの気持ちは私はやはり尊重すべきでないかと考えるわけであります。  そこでこういう点を提案したいわけでありますが、一種の在籍出向制度によって派遣する、こういうことが実施できないかということを提案したいと思います。例えば北海道会社に余剰人員部分を張りつけておいて、その余剰人員の方々を定期的に交代で東日本もしくは東海鉄道会社に出向派遣させる。一人二、三年単位で、一種の単身赴任になるかと思いますけれども、これを三、四回繰り返せば、余剰人員分は自然減耗でほぼ処理できるのではないか。一種の単身赴任型の出向システムということを活用願えないだろうか、こういうことを考える次第でございます。  それから、なお清算事業団に最終的には配属される転職者の対策の問題がございます。これは三カ年計画で予定しておりますけれども、事実上三カ年滞留することはその人間のモラールをダウンさせますから、できるだけ前倒して、三年後に雇用が決まっている雇用予約を必ず決めることと同時に、三年後に採用が決まった人でも直ちに採用先に赴任させる、こういうようなことが必要かと思います。これは、試用期間でもあり、また職場適応訓練、こういうようなことでも結構でありますけれども、そういうようにして受け入れ先に溶け込むようにすることが私は必要だと思う。  そうしますれば、これも出向制度で扱って、政府民間会社については出向助成金ということで賃金の二分の一補助、今度は三分の二補助までしよう、こういうことでございますので、清算事業団の、今予算単価八○%でありますけれども、五○%ぐらいの単価でもって相手方の会社賃金にプラスする、こういうことでかなり効率的にできるのではないか、こう考える次第でございます。  最後に、私、もう時間もございませんから、皆さん方立法府方々にお願い申し上げたいと思うわけでありますが、現在の国鉄問題の一番大きな論点の一つは、何といいましてもぎすぎすした不健全な労使関係にあるかと私は思います。新会社労使関係が安定し、かつ健全なものになるためには、職員のモラールを高め、鉄道利用者へのサービスも向上させるということもそれによって当然起こるわけでありますけれども、そのために関係者の格段の努力が私は必要かと考えます。もちろん関係者には労使方々すべて含んでおります。そのため、以上私が述べましたことを誠意を持って実行していただきたい、こう考える次第でございます。  またさらに、労使関係の問題にちょっと限定して申しますと、国鉄労使関係一つ問題点は、私は、非組合員の範囲を大変広くしたことが問題を呼んでいると思います。もっと組合員の範囲を広め非組合員の範囲を狭くする、そうしますれば、職場で仕事の上で実力を持っている人たちが組合のリーダーになってくると思うのです。そうしますと、そこでの労使関係はかなり健全なものになるに違いない、そういうようなことに十分配慮していただけたらと、こう考える次第でございます。  以上で私の意見表明を終わらせていただきます。御清聴どうもありがとうございました。(拍手)
  6. 細田吉藏

    細田委員長 ありがとうございました。  次に、角本公述人にお願いいたします。
  7. 角本良平

    角本公述人 私は、過去四十五年間、交通を研究してまいりまして、また国鉄に働いていた期間もございます。その間に私は、国鉄の仕事量ができるだけ多くなることが従業員にとっても仕事を確保することになる、こういうふうに考えてまいりました。しかし、残念ながら私が申し上げてきたことが今日まで余り採用されてきませんでした。分割民営法律案がやっと出ましたが、私十二年前からそれを申し上げて、この案を推進してきた一人でございます。まあ小さな一人でございます。  そこで、国鉄が欠損になりました最初のころ私が申し上げたのは、拡大投資は国鉄経営を破滅させる、そう申し上げました。当時、総裁は磯崎さんの時代でございます。それから、昭和五十年代に入ったときから、貨物はもはや縮小すべきであると申し上げました。やがて高木総裁が長い間お務めになりました。しかしながら、私の意見二つとも残念ながら採用されませんでした。それだけに私は地域分割の案が大事であると思っております。  そこで、まず大きな第一番目は、基本に返って考えるということでございます。  そのうちの一つは、いかなる産業、いかなる企業におきましても、コストを高くして成功することはあり得ないし、それは利用者にとりましても納税者にとりましても、もちろん従業員にとりましても大変な失敗になるということでございます。国鉄の大先輩が既に昭和十八年の段階におきまして、官庁型の経営で、大規模経営で、しかも独占を前提にした経営、これは大変非能率なものであるから改革しなければならないと、既に十八年の段階でそう言われておるわけです。これは大槻信治さんでございます。  そこで二つ目は、すべての企業、特にサービス企業においては労働に対して当然の適切な対価、プライスが支払われるべきであるということでございます。残念ながら、政府昭和三十五年以来、公共料金の抑制と称して運賃を抑えてまいりました。また、国鉄内部の労働組合の中にも、運賃値上げ反対という行動をしまして経営の足を引っ張るということが現実にあったわけであります。  三つ目は、交通というのはそもそも地域で考えるべきことであります。それぞれの地域のコストとそれぞれの地域の他の競争企業との間で考えるべきことであります。ところが、残念ながら国鉄だけが全国一律で物事をしてきたために、すべての地域で敗北するという羽目に陥っております。  四つ目は、供給が乏しかった時代の法律制度は、供給が豊かになった段階では当然変えるべきであります。現在の法律は、昭和二十四、五年ごろ、国民が非常に貧しかった段階の法律であります。しかしながら、今日では大変豊かになってまいりました。輸送力も豊富になりました。この段階において、従来の公共運送人といった発想はもう一度検討し直してみるべきだと考えます。  そこで、大きな二つ目は、以上の基本考え方に立ちまして、まず第一に現在の体制を改革する、その場合に、どんな案をつくりましても各人必ず意見がございます。社会的選択という議論がございまして、それでノーベル賞をもらうような人も出たようですけれども、社会的選択においては全員が一致することはあり得ません。私はこの法律案に対して自分の違った意見をもちろん持っております。しかしながら、今から申し上げるような論点はございますけれども、私は、今これを否決するのではなくてこれを一度通していただいて、その上で、世の中の推移を見まして必要な場合には修正するという進め方がよいと思います。  それで、幾つか申し上げる一つ目は、貨物では「主として長距離の輸送及び大量の輸送」、これは改革法の八条に書いてあります。しかし長距離の輸送とは何事であるか。大量ならば話がわかりますが、距離が長いから国鉄だということはもはや通らない社会でございます。大量でなければ絶対にもうからないあの小さな五トンのコンテナなどは、早くおやめになった方がよいわけです。  それから二つ目は、新幹線保有機構というのは、これは大変苦心しておつくりになった案だと思います。しかしながら、複雑な組織というのは紛争の種になります。私はできるだけ早い時期にもう一度見直してみられる方がよいと考えます。  三つ目は、運賃の決め方。これは事業法の十六条に書いてございます。法律にすれば大体こういうふうになりますけれども、一体、適正な原価を償う運賃というのは、これは運賃収入全体なのか、それとも個々の運賃がそうでなければいけないのか、そういった点になりますと、昔からの議論がここでは解決されておりません。しかしながら今これを言っていたのでは百年かかっても法律になりませんから、これでお通しになった方がよいと私は思います。しかし、この場合の運用ということが大変大事でありまして、政府はこれまで適正な原価に見合う運賃収入を企業に与えるようになさってきたかということになりますと、私は大変疑問だと思います。  四つ目は、分割の数が六つがよいかどうか。私は長年、もう少し数が多い方がよいと思ってまいりました。  そこで、そのような意見はございますけれども、最初に申し上げたように、できるだけこれを早く通すべきだと考えております。運送事業というのは、これは経済活動でございます。経済活動をあらかじめ固定しておく、土地の値段は幾らであるはずだ、こういうふうな固定は全くできない、柔軟に物事を変化させていかなければいけないと思います。  そこで、大きな三つ目は、政治行政への私の希望でございます。  国民の希望として、まず一つ目は、分割後の企業運営におきまして、収支が常に国民に明確にわかるようにしていただきたい。収支というときに、頭っから収入に基金からの利益を入れまして収支は黒字だ、こう言う前に、それを入れなければ三つの島は赤字である、しかしそれによって補うから経営は維持できる。黒字ということをいきなり印象づけると国民は判断を間違えるということになろうかと思います。また、分割後の企業運営は、当然ローカルの他の企業の運賃や給与、これらを前提にしまして競争していきませんと、国鉄の仕事量はますます減ってしまう、それでは従業員の不幸になるということをぜひお考え願いたい。  二つ目は、整備新幹線の問題でございます。これは、国民の中にたくさんの議論がございます。しかしながら、今スタートしようという人たちに重荷を背負わせてはスタートができない。ですから、少なくとも三年間はまずこれは慎重に考えていただくという方が私はよいと思います。  それから三つ目は、関連事業でございます。法律の中には、旅客鉄道株式会社等の法律でございますが、十条には中小企業への配慮が書いてございます。これは私、当然な条文だと思いますと同時に、国鉄に働いていた従業員もまた人間であるということをぜひとも皆さん考えていただきたい。今彼らがどうして生きていくかという場面に来ているときに、国鉄であったがゆえに、あるいは形式上大企業であったがゆえにこれを拘束するということは、果たして国民の権利として許されることであるかということで、ぜひ両方をよく配慮した政治行政をお願いしたいと思います。  四つ目は、責任者の任命でございます。明治十八年の昔に、既に榊原さんという人がアメリカの鉄道を五年間研究した末に、ゼネラルマネジャーが最高責任者と同時にいかに大事であるかということをちゃんと書いております。今後発足していく新しい企業においても、最高責任者とその次の人、これがいかに大事であるか。その際、私が歴代総裁の手腕を見てしみじみ感じますことは、独占組織から来た人は私はだめだと思います。競争企業の中で育ってきた人でなければ、これはできないのじゃなかろうか。そうしてうまくいっている例がよその部門にあることは、御承知のとおりでございます。  それから最後に用地の問題でございますが、用地が高く売れるか安く売れるかについての判断のうち、皆さんは、東京や大阪についての通勤の能力のことを関連させて考えていただきたいと思うのです。と申しますのは、東京駅付近あるいは汐留付近、新宿付近は非常に高く売れるという前提で、霞が関ビルが九十二も建つというような案を一部の方は立てておられる、あるいは建設省はそういう方向を推進しておられるように伝えられますけれども、一体この人たちをどこでだれが運ぶことができるでしょう。このビルに働く人は、皆東京二十三区の外から来るわけです。そうでなければ家はありません。その場合に、二十三区の外と丸の内や汐留を結ぶ通勤能力はもうないわけです。  東京二十三区というのは既にニューヨーク市の二倍の人が働いております。これは驚くべき事実でありまして、私はつい最近、東京も膨張をとめざるを得ないという趣旨の研究をまとめて、ぜひとも皆さんにこの点を配慮していただきたい。したがって、丸の内の土地は、ビルを建てようと思ってもそこは通勤できない場所である。やがて値下がりせざるを得ないかもしれない。まあ、値下がりすることはないとしても、そんなにビルを建てられる場所ではない。汐留も同じことでございます。こうしたこともぜひ考えていただいて、国鉄の土地があいたからといっていきなり東京を混乱させるようなことはぜひともやめていただきたいと思います。  以上、いろいろ聞いていただいてありがとうございました。(拍手)
  8. 細田吉藏

    細田委員長 ありがとうございました。  以上をもちまして公述人各位の御意見の開陳は終わりました。     ─────────────
  9. 細田吉藏

    細田委員長 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の際は、公述人を御指名の上お願いいたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。村山富市君。
  10. 村山富市

    ○村山(富)委員 きょうは、三人の公述人の先生方には御多忙の中にもかかわらず御出席をいただきまして、貴重な御意見を聞かしていただきました。大変ありがとうございます。なお若干の御質問を申し上げまして御意見を承りたいと思います。  その第一は、山本公述人からもあるいは高梨公述人からも大変重要な課題として雇用問題が提起をされたわけであります。本来この雇用問題というのは、国鉄に関する限りは今日国鉄がこういう状況になったその経緯というものはもう明らかになっているわけですが、ある意味では国鉄職員というのは大変優秀な職員が集められておる。ああいう過密なダイヤで事故もなく安全に運行できる、旅客を運べる、こういうすばらしい点もあって、しかも、その国鉄に魅力を感じて一生国鉄で働きたい、こういう念願で国鉄就職をして働いている人が現在大部分だと思うのですね。それがたまたま今日、大きな累積債務を抱えて、何としても改革をして再生しなければならぬ。その再生をする過程で何よりも一番大きな犠牲を受けるのは、やはり国鉄職員ということになっておると思うのですよ。先ほど山本さんからも過去の再建のあり方についての若干の御意見がありましたけれども、再建計画の中でほとんどは中途で挫折しておるわけです。成功しておるのは職員の整理だけです。そういう過去の経緯を見ても、やはり職員の皆さんが一番大きな犠牲を受けておる。それだけに、今度の改革に当たって四万一千人という余剰人員が出る、その余剰人員の就職の問題やあるいは新会社採用される人たちの扱いというものは、よほどやはり、高梨先生も言われましたように、不安がない、不満がない、そしてやる気を持って新会社就職できる、こういう前提と条件をつくっていくことが大事ではないかと私も思うのです。  そういう観点から今度の法案を見てまいりますと、特にこの二十三条でありますが、果たして新会社雇用される場合の労働条件はどうなるのか、もうすべてこれからの話でありまして、何ら明らかにされておらないわけです。労働組合はありますけれども、労働組合との団体交渉事項にもなってないし、話し合いの場も持てない。さらに、個人個人の職員からいたしましても、新しい会社ができて、設立委員労働条件やらあるいは採用基準やらを提示して職員にそれを公開する、職員はそれを見て、私はぜひこの九州鉄道株式会社に入りたい、あるいは北海道鉄道株式会社に入りたい、こういう希望を述べるだけであって、その意思が確認をされた後は一切本人にも何らの話もない、そして一方的に国鉄によって選定されて採用される、こういうことになるわけですけれども、これまで民間会社のそういう事例を考えてみましても、あるいはごく最近電電公社やらあるいは専売公社等の民間への引き継ぎ等を考えてみましても、大体の職員は承継されているわけですよ。今回の場合も業務も債務も資産もすべて承継されながら、職員の身分だけは承継されない、そして一応これは解雇になるのか退職になるのか知りませんけれども、新しく採用される。こういう扱いの中から不安を除けといっても、私は無理じゃないかと思うのですよ。  こういう今度の改革の、少なくとも新採用のやり方等に対する問題についてどのようにお考えでしょうかということを、まずお尋ねしたいと思うのです。これは山本先生からも高梨先生からもそういう意味の話がありましたから、両先生にお尋ねします。
  11. 山本雄二郎

    山本公述人 お答えいたします。  ただいまの質問は、この国鉄改革を推進していくに当たりまして最も基本的な問題の一つであると私も考えます。  今御指摘がありましたけれども、四万一千人という人たちの新たな雇用の場を確保しなければならないというのは大変なことでありまして、四万一千人というのは、例えて言えばどこかの地方都市の人口に相当する数だと思いますので、そういった大量の方の職場確保というのはそのこと自体大変難問題であるので、先ほど冒頭政府としてもあるいは立法府としても格段の御配慮をお願いしたいということを申し上げたわけであります。  そこで、今度新しい事業体採用されるに当たりまして、今御指摘がありましたように新規採用をするということですが、その場合の労働条件その他がどうなるかという問題、これは私も、新規に採用するということであって、その新しく採用する会社の側が示す基準なり条件、そういうものがまず明らかにされて、それに応募するかしないかということが行われ、その雇用をされる側の意思に従って国鉄あるいは事業団によって名簿がつくられるということだと思いますが、その場合にやはり大事なことは、これは先ほど高梨公述人が言っておられましたことと同じことですけれども、やはり公正であるということがどこまでも私は必要だと思います。  それからもう一つ大事なことは、国鉄でこれまで職員の出向あるいは派遣ということが行われておりましたけれども、私が承知しております範囲では、その出向先、派遣先で非常に評判がいいケースが多かったわけです。ということは、私は今の国鉄職員というのは、準公務員という言い方がいいかどうかわかりませんが、特にある一定の試験を通って採用され、人材という意味では私はかなり豊富な人材ではないかと思います。そういう意味で、雇用する側ももちろん考慮しなければいけませんし、またその行かれる方も、今の出向、派遣の例でおわかりのように、やる気になってやればかなり相手側で受け入れられるということを同時に考えて、その行動をお願いしたいわけです。  ただ、一たん国鉄を離れるということは大変つらいことだと思いますが、これは例えば運輸の部面で見ましても、海運、造船、そういうところでもやはりいろんな形で雇用調整を行わざるを得ないような状況が顕在化いたしておりますし、それ以外の分野でも、例えばかつて「鉄は国家なり」と言われた鉄鋼各社でもやはりいろいろそういう人員調整ということを行わざるを得ないわけでありますので、国鉄だけが例外であってすべての職員が新事業体にそのまま継続されるということは、私はやはり経済社会のあり方としてかなり困難ではないかというふうに思います。  いずれにしましても、その採用、選定の基準あるいはそれの説明あるいはその後の扱いについて公正適切であるということがあくまで大事であるというふうに考えます。  以上です。
  12. 高梨昌

    高梨公述人 高梨でございます。  今二十三条問題で、私が先ほど申しましたとおりでございまして、この中で採用基準労働条件について私は区分けをして申し上げたつもりでございます。通常、採用基準というのは労使関係上の交渉とか協議になりにくい事項だと私は判断しております。そこで、先ほど言ったようなことを申し上げたわけであります。それにしましても、どういうような採用基準に基づいて選抜されるのかは、個々の国鉄職員にとって大変な重大な問題でございますので、これは公正妥当でなければならない、こう申し上げた次第でございます。  それから労働の条件、これは運輸省令で定める、こうなっております。私は、労働省関係のさまざまな労働政策で審議会に幾つか参加してまいっておりまして、例えばこの七月一日から施行されました労働者派遣法、これにつきまして私、十年ぐらい審議会の座長としましてこのまとめに苦労してきたところでありますけれども、その労働省の審議会は、労働組合代表と経営者代表、それから私のような学識経験者、いわば公労使三者構成機関で運営されております。そこでの審議は、労働大臣から政府提案立法につきましては諮問を受けて、それについて労使各側の意見と公益の意見を合わせて政府に答申をいたす、こういうことで政府提案立法を決める手続を踏んでおります。法律国会で承認されますと、その後、政令とか省令の事項に入るわけですが、これも同様に審議会の議を経て決めております。  したがいまして私は、運輸省にはそういうような審議会がございませんけれども、少なくとも運輸省令労働条件を定めるについては、そういうような労働組合の、これは交渉、協議じゃございません、一種の参加して発言をする場、機会を認めるということですから、そういうような筋に従って私は、労働条件にかかわることについて運輸省令で決めるに当たっては、関係職員や、その中には団体も入るかもしれませんが、そういう方々意見を十分に聞くという、こういう手続、方法が不可欠だ、こういうように申し上げた次第でございます。  もちろん新規会社へのそれは立法政策上の問題で、一たん退職して新規採用——普通の営業権譲渡でいけば資産と人間はそのままつくのが普通でございますけれども、NTTと国鉄の場合は違いまして、NTTは電電公社一社がNTT一社に変わる、こういうことでございますが、国鉄の場合には、民営化される点ではNTTと同様でございますけれども、企業分割されるということと、それからもう一つは、余剰人員が発生してこれをどう処理するか、こういうことで立法政策上も変えざるを得なかったのじゃないか、私はこういうように判断する次第でございます。
  13. 村山富市

    ○村山(富)委員 時間がないものですから私の質問の真意というのが御理解いただけなかった点もあるのじゃないかと思うのですけれども、私は、先ほど高梨先生からお話がありましたように、今働いている国鉄職員は新会社にこのままの条件で行けるもの、引き続いて仕事ができるもの、こういうふうに期待しているし、思っておると思うのですね。それを殊さら、一遍やめてもらって、そして新規採用する、こういう手続をとる必要はなかったのではないか、むしろそのまま継続して、やる気を持たして希望を持たせるということの方がよかったのではないかというふうに思うのですけれども、その点、もし御意見ございましたらちょっとお聞かせいただきたいと思うのです。
  14. 高梨昌

    高梨公述人 それも先ほど私申し上げましたように、法律上は身分は一応切れるわけでありますけれども、国鉄職員のほとんど、というよりも全部と言っていいと思うのですけれども、身分は継続する、こういうように考えている。だから、そういうような国鉄職員感情を殊さらに逆なでしてまで、あんたたちは身分が切れますよ、こう言うのは、私はその国鉄職員のやる気を失わせて、将来について明るい展望を抱けなくするのではないか。それを余り強調するよりむしろ、事実上継続する人が圧倒的多数だと思うのですね、だから、そういうようなことが私は必要だ、こういうことで、先ほどの例としては、例えば年次休暇についてもそれは継続する扱いを私はすべきじゃないか、こういうように一例を挙げて申し上げた次第でございます。
  15. 村山富市

    ○村山(富)委員 その次にお尋ねをしたいと思うのですが、いずれにいたしましても、再建監理委員会の案を見ましても四万一千人の余剰人員が出る。これは清算事業団に移されて、そしてこの三カ年間で一人も困らないように雇用の確保を図ります、こう言って約束をされているわけです。  ただ、そういう言葉とは別に、先ほど先生からもお話がありましたように、とりわけ余剰人員が多い九州、それから北海道で、今日第一次、第二次と広域異動の募集をしてやってますけれども、実際問題としてはやっぱりこの住宅の問題やらあるいは子供の高校入学の問題やら転学の問題やら何かいろいろありまして、そう簡単にはいってないというふうに聞いているわけですが、こういう経過から見ましても北海道、九州の余剰人員をどう雇用確保していくかということは大変大きな問題だと思いまするし、特に炭鉱がつぶれるとか、あるいは円高不況で先ほどお話もございましたように造船から海運から中小企業からどんどん失業者が出てきて、今失業率は最高を記録している、こういう状況になっていますし、これにかてて加えて新卒がどんどん入ってくる。まさに雇用問題は一番大きな深刻な問題になっておる。  こういう状況にあるときだけに、労働省なんかも、先生御案内のようにできるだけ定年を延長して長く働いてもらうとか雇用してもらうとか、あるいは中高年を雇用した場合には援助金を出すとか、あるいはどうしても企業が操業短縮する必要があるという場合には補助金を出して一時帰休の制度を保護するとか、いろんな方策を講じて雇用が確保できるように努力しているわけですよ。こういう各般の雇用問題に対する努力から考えますと、私は、国鉄が今度抱える要員についても私鉄並みの要員ということを基準にして計算をしておりますけれども、まあこの計算の中身についてもいろいろもう今までも議論されてきているところなんですが、その私鉄並みという採算性だけから考えるのでなくて、そういう社会全体の雇用問題、社会的利益といったものを考えた上で、雇用問題についてはもっと考え直してもらう必要があるんではないかというふうに考えるのですが、どうでしょうかというのが第一点です。  それからもう一つの問題は、先ほど高梨先生からは、できるだけ新会社雇用は引き継いでもらって、そして九州、北海道等からは雇用の確保が深刻だから東日本とか西日本とか東海とかそういう会社に一時出向するというような扱いをとったらどうか、こういうお話もございましたが、そういう点について、できればもう少し詳しく御説明いただければと思うのです。
  16. 高梨昌

    高梨公述人 私鉄並みの要員算定の件でございますが、これは国鉄当局が算定したそれを尊重せざるを得ないと私は思っております。もちろん、人件費が経費、コストの重要な部分を占めますから、これによって経営が健全化することが前提であります。それで、鉄道を動かすためには乗務員、駅務等々の要員が必要でございますから、その辺の要員をどう細かく算定して職別、職種別に配属するかについては、それぞれの新会社発足後に労使関係で話し合って決めていく必要が私はあると思うのですが、絶えずそれは適正要員が確保され、余剰人員については別途な手配が私は必要だ、こういうことで政府支援が必要なんではないかというように申し上げた次第でございます。  それから、出向制でございますけれども、これは民間で広く出向制度がございます。この財源は雇用保険特別会計からの財源でございますけれども、国鉄は現在その雇用保険に入っておりませんから、これは政府清算事業団の方の予算で計上せざるを得ないと思いますけれども、それの支援によりましても、民間では賃金補助がされておりますから、賃金補助を例えば五〇%補助をして出向先で五〇%の賃金を負担してもらう、こういうことになれば、仮に三年先に採用されることが予定されていてもそれに先立って直ちに派遣、出向先に行って働く、こういうことも可能でしょうし、また現に、今私もう一つ申し上げているのは、北海道鉄道会社に所属した人が、その余剰人員分については東もしくは東海鉄道会社に単身赴任型の出向をしていく。これを二、三年単位でやっていく。その際の要員は当然本州三会社にその要員分はくっつけるということ、こういうことでありますけれども、こういうようにして労働者の郷里を愛するという定住志向を一方で尊重しながら、その余剰人員の少し段階的というんでしょうか、余り激変しないような徐々なる適正人員化政策を私は進めるべきじゃないか。そういうような激変緩和措置はぜひ講じていただきませんと、やはり国鉄職員の不安、生活不安、これは職員のみならず家族もそうだと思いますけれども、そういうようなことの不安はできるだけ軽減してさしあげるのが私は務めではないか、こう考える次第でございます。
  17. 村山富市

    ○村山(富)委員 同様な質問について、山本先生それから角本先生、御意見があったらお聞かせいただきたいのですが……。
  18. 山本雄二郎

    山本公述人 同じことの繰り返しになると思いますが、この国鉄改革が本当に成果を上げるためには、雇用対策が絶対に欠くことのできない条件であると私も思います。  ただ、今御指摘がありましたように、北海道、九州を挙げて大変雇用が厳しいということを言っておられましたが、私もその点全く同感でありまして、かねてから国鉄改革を進めていく中でいろんな意味での地域格差がある、特に雇用の問題が一番深刻な形で出てくるということが現在の状況だと思います。そこで先ほど申し上げましたように、政府あるいは立法府として格段の御配慮をお願いしたいというのはそういう点でありまして、その新しい会社だけがそれに対応するのか、あるいはもう少し地方公共団体あるいは一般産業界を含めたそういった広範な対応をするのか、いろいろな選択があり得ると思いますが、そういう点での格段の配慮は特に必要ではないかというふうに私は考えております。
  19. 角本良平

    角本公述人 私は、大部分の点では山本さん、高梨さんと意見は同じでございますけれども、しかしながら、百十五年も一つの組織の中で働いてきた人たちがすっかり気分を改めるということがこの際必要である、そこらがNTTと国鉄との大きな違いではなかろうかと考えております。したがって、継続という考え方よりも、一度切るということは私はやはり必要だと思います。それから、今日の赤字につきましては、従業員もまた責任があるんだということを私は申し上げておきたいと思います。  それからもう一つは、今必要な人手以上に仮に何らかの理由でそこへ職場に入れますと、それが慢性化しまして必ず能率が悪くなるということが言われております。したがって、余剰人員を入れるということは、たとえ出向にしろ、私は必要な人以上の人数を職場に入れることは反対でございます。  それから最後に、北海道、九州でというふうに土地に固執するということは、近代社会におきましては私は不可能だと思います。むしろ我々は国際的にもう職場を探す、こういう時代に入っているときに、ある炭鉱の付近とかある機関区の付近とか、こういうふうに考える時代はもう過ぎている、もう少し国全体の中で労働力が移動する、私もやむを得ずここに来ておるわけでございますが、移動するということはやむを得ないことだと考えております。
  20. 村山富市

    ○村山(富)委員 時間がないものですから次にお尋ねしたいのですけれども、特定人件費の処理ですね。共済ですけれども、これはもう成熟度が非常に高くて破綻状態にあることは先ほど来お話があったとおりなんですけれども、特にこの追加費用の問題、例えば旧満鉄から引き揚げてきた、あるいはいろんな鉄道関係から引き揚げてきた、さらにまた戦後の経済復興の中で、人、貨物を運ぶ国鉄の使命ということから必要以上に人も抱え込まされた、こういう歴史的な経過があると思うんですよ。そういう、国鉄自体の原因でなくて他から持ち込まれたような要員について、今の国鉄の共済で賄うあるいは国鉄自体が負担をするということについてはやっぱり若干問題があるんではないか、これは当然国の責任で国がその財源負担をすべきではないかというような意見もあるわけでありますが、そういう点についてはどういうふうにお考えでしょうか。これは高梨先生にお願いします。
  21. 高梨昌

    高梨公述人 今村山さんから御質問がありましたように、特定人件費の処理政府処理せざるを得ないと私も考えますが、それは国民の負担とイコールであります。  問題は、例えば民間会社でいいますと、戦後日鉄、今は新日鉄になっておりますけれども、この日鉄も満州その他から引き揚げた人を、八幡、富士製鉄が引き受けておりますけれども、その際は、その前の年金相当部分、退職金相当部分については政府負担ということで処理した経緯がございます。ところが国鉄につきましては、発足と同時に、満鉄等から引き揚げた方々国鉄共済あるいは国鉄経営の中で処理する、こういうことでまいったことが現在特定人件費として相当過大な負担を呼び起こしているわけでございますけれども、今回いろいろな面で政府支出、国民の負担がありますから、当然その分はその中にカウントされて、政府のあるいは国民の負担になっている、私はこういうように考えている次第でございます。  それをどういうように積算して織り込むかは、ある予算技術上の問題に還元されていくのではないか、こう考える次第でございます。
  22. 村山富市

    ○村山(富)委員 最後に、分割問題に関連をして若干お尋ねしたいのですけれども、分割されますとそれぞれ九州は九州、四国は四国、西日本は西日本というように独立して会社になるわけですから、したがって、その会社の中で収益を上げるために一生懸命努力されるというのはある意味では当然だと思うのですね。  そこで、ダイヤの編成なんかでも、例えば夜行寝台列車というようなものを考えた場合に、鹿児島から東京まで行かれる、この夜行寝台列車と、それから各自分の会社路線内においてできるだけ通勤列車を確保したいとか、いろいろな意味でこれからローカル性を持って地域のニーズに十分こたえなきゃならぬというようなことがあるわけですけれども、そういう寝台の夜行列車の乗り込みやらあるいは貨物列車の乗り込みやら、こういうものと地域のニーズにこたえるダイヤの編成と必ずしもうまくいかない点が出てくるのじゃないかというようなことを考えますと、私は、やはり分割にはいろいろなデメリットがあるなというふうに思うのですけれども、そういう点についてどういうふうにお考えになっているか。  同時にこれは、そういうものを協議する、例えば一本の会社なら会社の中で十分相談ができてやれると思うのですよ。私は、今までだってローカル線をもっと地域のニーズにこたえてやれるような方法があったと思うのですよ。だけれども、新幹線やら特急列車が中心になって、そして次から次に切られていった。したがって、地域の者が国鉄を利用しようたってなかなか思う時間帯に汽車が走らぬというようなこともあって、だんだん離れていったという経緯もあると思うのですね。そういう反省を踏まえて、できるだけ地域のニーズにこたえられるようなダイヤ編成をしていこうというふうに考えていると思うのです。  そういう全体を貫く列車、それから地域のニーズ、こういうものの矛盾というものがやはり出てくる可能性がありますし、一体そういう点はどこでどういうふうに調整をするのだろうかというようなことを考えますと、私は、やはり分割にはいろいろ問題があるのではないかというふうに思うのですが、この点についてはどういうふうにお考えか、三人の先生方にちょっと御意見をお聞きしたいと思うのです。
  23. 山本雄二郎

    山本公述人 ただいま御指摘のありました分割のデメリットということですが、確かにこれまで全国一元的に運営されてまいりましただけに、そのシステムを根本から変えるその影響というのは全くないかといったら、私はそれはあり得ると思います。しかし、冒頭申し上げましたように、現在の国鉄窮状を考えますときに、従来と同じように全国一元的な運営をするということは、むしろその方のデメリットの方が大きいというふうに考えます。  そこで、比較考量の問題になるわけですが、ただいま御指摘があったように、例えばブルートレインのような、複数の旅客鉄道会社にわたって列車が運行される、それが果たしてうまくいくのかというような御指摘がありました。こういう点は、さっき申し上げましたように、確かに絶無ではないと思いますが、私は、各社それぞれこれから営業収入をふやす、そういう企業努力を続けるという中で、AならAという会社、それからまたBならBという会社、それぞれやはり協力し合うあるいは譲るところは譲るということがないと、それぞれの新しい旅客鉄道会社あるいは貨物鉄道会社の前進はないと思います。そういう意味で言えば、これまで幸いにしてといいますか、一元的に運営をしていたかつての国鉄のいわば同志がそれぞれの会社にいるわけですから、御指摘があったように、利害が対立してしまってもうどうにもならなくなるというようなケースというのはほとんどないのではないかというふうに考えます。  それからまた、今でも首都圏におきましてはいろいろな民鉄と国鉄、あるいは民鉄相互というような相互乗り入れが行われるように、現在の段階では、特にコンピューター技術がこれだけ普及してまいりますと、そういったダイヤの編成あるいは調整ということはそんなに難しい問題ではないのではないかというふうに思います。と同時にまた、幾つかの旅客鉄道会社にわたって列車が走るというようなケースは、分量的にいいましてもそれほど多くないのではないかというふうに思いますので、仮に今御心配のようなデメリットがあるといたしましても、それを乗り越えることは十分に可能だと私は考えております。
  24. 高梨昌

    高梨公述人 私、先ほど細かい点を落としたのですけれども、要するに、国鉄の今までやってきました中央集権的管理が行き詰まったことは確かでありまして、私は、それは分割よりも分権管理でということを提案したペーパーがございます。  私が分権管理ということを申し上げましたのは、世界的な大企業で百万人単位の企業がございますけれども、そこでも分権管理、それもとりわけ事業部制に基づく分権管理、それぞれの事業部は事実上の会社的な独立採算制をとっている例が世界各国でございます。そういうことで分権管理を提案したわけでございますけれども、一体その際の適正規模はどうかといいますと、これは学問的に定説はございません。試行錯誤でやられているのが実態でございます。ですから、地域別に会社分割された際、例えば東日本鉄道会社がどういうように効率的な管理組織で行うかということは新会社経営者に負託されていることでございまして、具体的にまだ提起されておりません。  私の考えは、鉄道事業の場合にはそれぞれ線路がありまして、その線路に列車を走らせるわけでありますから、そのダイヤグラムの編成いかんによっては交通需要をうまく掘り起こせる。それからまた、そこでの列車編成の台数とか、これによって随分旅客の戻り方が違うわけでありますから、そういうようなことで路線事業部的な権限を認めて、そこでダイヤ編成権を認めたらどうか。そういうような路線旅客や貨車が動くわけでございますから、それに対して乗務員を——サービスするのはそれぞれ地方鉄道管理局の通勤範囲内に住んでおります国鉄職員でありますから、その人たちがサービスを提供する、それから駅での乗降客がございますから、そこでの駅サービスを行う。そういうようなことで、それを地域事業部と私は名づけたわけでありますが、その両者のマトリックスで経営することが鉄道事業の効率性の確保につながるのではないか、こういうことで私は分権管理を主張したわけでございまして、それぞれの鉄道会社が島別に分かれた後もそういう問題は当然出てくるだろうと思います。  もう一つは、全国ネットワークでつながっていることに国鉄意味がありますけれども、実際の旅客流動は、通勤通学人口で見ましてもわかりますように、特定の狭い地域でございます。また、長距離の人はむしろ航空機輸送の方にシフトいたしますから、どうしても中距離輸送になるかと思います。その辺をダイヤ上どう調整していくかということは、相互乗り入れですが、このところが技術的に今コンピューターで可能になってきておりますから、どこまで可能か、この辺はぜひノーハウを開発していただきたい、こう考えるものでございます。  以上でございます。
  25. 村山富市

    ○村山(富)委員 時間が来たものですからもう結構です。ありがとうございました。これで終わります。
  26. 細田吉藏

    細田委員長 西中清君。
  27. 西中清

    ○西中委員 きょうは大変御多用中のところ御出席いただきまして、ありがとうございました。先ほど来、極めて貴重な御意見を賜りまして、勉強させていただきました。  我が党の立場は、公明党でございますけれども、御承知のとおりと思いますが、基本的に民営分割に賛成の立場でございます。その上で先生方にまたお伺いをさせていただくわけでございます。  先ほど、鉄道事業の将来展望、これは明るいものにしなければならないというお話がございました。これにはいろいろな考え方があると思うのですけれども、法律基本的なスタンスというのは、この鉄道は、近距離の通勤通学、そういったものの輸送、それから都市間の中距離輸送、これをベースとしてこれからの鉄道の使命を果たしていくということが基本になっていくと思います。そういう点が果たしてこれからもいいのかどうなのか。  それから、私鉄もおおむね輸送事業では採算が非常に苦しいというところから、勢い関連事業というものを重視しなければならないという動きが続いております。こういう点で、輸送事業と関連事業、これをどういうように兼ね合いを考えていったらいいのか。こういう点で鉄道事業の将来をどのようにごらんになっているか。まず御意見を、三人の先生方に共通でひとつお聞きをいたしたいと思います。
  28. 山本雄二郎

    山本公述人 ただいま御質問いただいた点でありますが、確かに国鉄、というよりもこれからの鉄道が担うべき役割として、大都市圏における通勤通学輸送あるいは中距離輸送というようなところにウエートが置かれていることは私もそうだと思いますが、現在の状況から見まして、先ほど角本公述人もおっしゃっておられましたけれども、私も全く同感ですが、やはり鉄道というものは地域性ということを抜きにして考えられないと思います。これはむしろ鉄道というよりも交通そのものがそうだと思いますが、特に鉄道の場合にはそういう地域性が強い一つの輸送形態でありまして、そこのところを十分に生かしていくことがこれからの分割民営化一つの理念としてあり得ると思います。そういう意味で、これから新しく生まれ出る鉄道会社は、旅客貨物を問わず、そういった地域のニーズを十分に把握し、それにこたえていくという方向に行くことが必要だと思います。  私鉄の場合にも鉄道部門だけでは経営が苦しいのではないかという御指摘がありまして、それとの関連で関連事業のお話がありました。私は、私鉄の場合には、特に大手十四社の状況を見ておりまして、必ずしも鉄道部門で苦しいということを一概に言うことはできないと思います。もちろん苦しい会社もありますし、それから立派に鉄道部門として業績を上げているところもあります。     〔委員長退席、佐藤(守)委員長代理着席〕 ただ、一般的に言いまして、これは私鉄の運賃値上げ申請のときの審査基準もそうなっておりますけれども、一応私鉄事業としては鉄道部門と関連事業部門等の経理をはっきり分けておりまして、鉄道部門としての採算とかそういう点を中心に運賃値上げ審査が行われるというような状況があるわけですから、私鉄の行き方としては私は一応その主力であるところの鉄道輸送部門を中心に展開を考えていると思いますし、それから、現在の大手私鉄十四社というところを見る限りでは、一部の例外を除いては私は十分に、まあ十分にとは言わないまでも、ある程度やっていけるというふうに思います。  それに関連して、活発な関連事業が行われているわけですが、これからの旅客鉄道会社あるいは貨物鉄道会社の場合にも、こういった関連事業というものにも十分に力を入れていく必要があるだろうと私は思います。ただ、本務はあくまで鉄道輸送業務でありまして、それをないがしろにしてというわけにはまいりませんし、また、新しく生まれ出た事業体は本務を軌道に乗せることを第一義的に考えるべきだと思いますが、近い将来、こういった関連事業の展開というのは私鉄並みに行われるべきだと私は思います。
  29. 高梨昌

    高梨公述人 実は私は、先ほどの公述では専ら雇用問題に焦点を当てまして、経営形態の方については触れない姿勢でまいったわけですが、実は、この中にも御案内の方があるかもしれませんが、四年ほど前に国鉄労働組合から私は委託を受けまして国鉄研究会の座長を務めて、「国鉄の経営再建に関する提言」という報告書を一昨年の九月に国鉄労働組合提出いたしました。これは即日、国鉄労働組合は受けがたい、こういう御返答が出てしまったわけであります。  この国鉄研究会は、私引き受けるに当たりまして、別に国鉄労働組合の運動方針や路線に賛成して引き受けたわけではございません。そのことはこの報告書にも断りましたように、国労の運動路線にこだわらずに専門研究者の立場から研究、検討する、また、この提言についてどう受けとめるかは国労の主体的判断に任せる、こういう二つの約束の上で引き受けた次第でございます。国鉄職員は多数を国労が占めているわけでありますから、もし間違えた事実認識に基づいて経営再建に取り組んだとしたら大変な問題を呼び起こすのではないか、そういうようなことが起きないようなことを願って引き受けたわけでございますけれども、残念ながらその方向に行きませんでした。国労が大変組織的に今混迷に陥っているのは、皆さん御案内のとおりでございます。  その中で私が幾つかの点を強調しているわけでございますけれども、一つ鉄道経営について私が申し上げたいのは、これからは何といっても高速鉄道時代の幕あけである、こういうことは申し上げておいた方がいいかと思います。もちろん新幹線鉄道を敷く、これは私どもの表現ではハードな新幹線と言いますが、もう少し建設コストの安いソフトな新幹線を敷くことを考えられないか。また、新幹線鉄道を敷きますと、当然在来線から旅客が新幹線鉄道の方にシフトいたしますから、在来線については、一本でつなげるよりも、国電並みにそれぞれ新幹線の駅周辺でそこの地方鉄道に変えるべきではないか、そうすれば投資効率は非常に有効性が発揮できる、こういうことを提言している次第でございます。     〔佐藤(守)委員長代理退席、委員長着席〕  それからもう一つ鉄道と関連事業活動の問題でございますけれども、鉄道事業そのものではなかなか収益が上がりません。経済学では、鉄道は敷いたことに伴う外部経済効果が大変大きいわけでございます。こういうような外部経済効果を鉄道経営者の方に内部化する、こういうことが大変必要だということを強調しております。したがいまして、鉄道事業というのは、従来国鉄は関連事業活動が制限があってなかなか容易にできませんでしたが、これをもう少し自由にできるようにしていく、そのためには民営しか考えられないんじゃないか、これが私の根拠であります。  それからもう一つ鉄道事業が他の輸送手段と違った大変なメリットがあるということも私は強調しております。鉄道は、安全性が高い、それから、他の輸送手段に比べて、とりわけ道路輸送に比べますれば重量物を大量に運べる、しかも時間が正確である、こういうような特性を持っています。それからエネルギー消費効率を見てみましても、輸送需要さえあれば、一番エネルギー効率の高い、効率のよい輸送手段でございます。こういうような鉄道の持っているメリットを最大限生かす、そのためには、地方交通線を含めて、鉄道を最大限残す努力をする必要があるんじゃないか、そのことは国民経済的に見ても大変プラスである。  そこで私は、国民経済的効率性の確保のためにも、鉄道経営というのを、できるだけ日本国内にネットワークを残す努力をすべきではないか、こういうように提案した次第でございまして、その残すためには、当然関連事業活動も大いに進めてもらわなければならない。そのために私は、国鉄の土地、資産の処分も避けられませんけれども、将来これは関連事業活動をするための資産でありますから、可能な限り残してそれを活用する、こういうようにしていただけないか、こういうことを申し上げたいと思います。  以上でございます。
  30. 角本良平

    角本公述人 今高梨さんがおっしゃったまさに需要があればということが、私は、御質問のお答えに一番大事なことだと思います。  鉄道というのは、全世界どこでありましても線路が必要でございます。線路は大変高いものであります。コストの高いものを有効に利用するだけの需要がなければ鉄道を引くことは無意味であります。改革法の第六条に旅客鉄道は何をする、あるいは後の方にまた貨物鉄道はということを書いてございますけれども、私は実はこの書き方に不満であります。主要都市を連絡する長距離の幹線ならすべてそうであるか。そうではございません。そうではなくて、大量に旅客あるいは貨物が毎日決まった形で、すなわち定型で継続してある、こういう場合にだけ鉄道は成り立つ。その見本が山手線であり、東海道新幹線でございます。新潟まで行く新幹線でありますと、残念ながら収支は赤字でございます。  そこで、関連事業との関連づけでございますが、先週、高松—多度津—琴平という四国の電化、多度津までは複線化でございますが、その工事の様子を見てまいりますと、今工事は進んでおります。進んでおるのは鉄道の工事だけでございます。一体香川県はこれをどう利用するのか、その計画があるのかないのか。大事なことは、鉄道をつくるときに同時に、県知事が、あるいは市町村がこれをどう利用するという計画を持っていなければ今の御質問の趣旨は生かされない。そのことを特に申し上げたい。したがって、国鉄が今後うまくいくかどうかは、かかって地方自治体の態度にあるということが一つございます。  それから関連事業につきまして、先ほど中小企業との関係で法文があって、私の意見は申し上げたとおりでございます。そこで、国鉄の駅と私鉄の駅とを見ますと、国鉄の駅は余りにも鉄道だけにしか利用されていない、あるいはその周りは鉄道だけにしか利用されていない、こういうことでございまして、今後、鉄道の駅舎の中に郵便局と市役所の出張所あるいは警察の派出所、そういったものを全部含むと同時に、コミュニティーのセンターとしてのいろいろな他の機能も入れた方がよいと私は考えております。ただし、これはもちろんある程度以上の市町村の駅に限られます。  そこで、鉄道だけで採算がとれるかどうかというお話でございますが、先ほど私は新しい事業法の運賃のあり方について意見を申し上げました。例えば定期運賃の割引率でございますが、通勤一カ月について京都市の地下鉄は三割しか引いてないのです。国鉄は、国鉄なるがゆえに五割あるいは五割以上引くという法律が今までございます。同じ鉄道でありながら一体なぜ運輸行政は京都市の地下鉄と国鉄とを差別するのか、あるいは東京の地下鉄と京都市の地下鉄を差別するのか。これは大変政治の怠慢だと思います。ですから、政治はこういうことを直して、国民が公平に鉄道を利用できるようにしてくださらなければ困る。国民の一人として私は皆さんに申し上げたいわけです。  ですから、ぜひとも鉄道は、鉄道に働く労働者が対価が十分得られる、そういう形にしていただきたいと同時に、鉄道へ投資する場合にはそのような需要があるようにしなければならない。鉄道鉄道として成り立ち、さらに関連事業によって地域が発展していくという姿を私は期待したいと思います。
  31. 西中清

    ○西中委員 あと私の質問は五、六分というところなんでございますけれども、二点について、またお三方から簡単にお答えをいただければと思います。  それは、一つは、私どもは貨物会社の経営に危惧を抱いておるわけでございまして、各旅客会社において経営をすべきであるというような考え方を持っております。この点、貨物会社についてどういうようにごらんになっているか。  もう一点は、地方の国民が非常に心配しておるのは、民営ということで、その経営のいかんによっては地方交通線の将来がどうなるのか、こういうことがございます。これには、法律的には何ら存続する担保というものはございません。したがって、この地方交通線についてどういうようなお考えを持っておられるか、伺っておきたい。この二点でお願いいたしたいと思います。
  32. 山本雄二郎

    山本公述人 第一点の貨物鉄道会社の経営見通しの問題ですが、先ほどといいますか、以前政府から提出されました資料を拝見する限り、発足した六十二年度はもちろんのこと、六十五年度まで一応収支均衡あるいはそれ以上の見込みがあるという資料が出されておりました。私もそうなることを期待したいと思いますが、現実はかなり厳しいのではないかと思います。厳しいということは、採算が全くとれないという意味で申し上げるのではなくて、これは鉄道による貨物輸送あるいはもっと大きく言えば物流全体が、御承知のように、かつてのようにGNP関連があって伸びるというようなことではなくなってきておりますだけに、物流業界自体が大変厳しい状況にある中で鉄道輸送というのはかなり厳しい局面に当面するだろうということは容易に想像できるわけです。  ただ、今度新しく発足する貨物鉄道会社の場合にはいろいろな状況を見ておりまして、例えば需要の見積もりなどを見ておりましても、むしろこれからは減っていくであろうという前提で収支の見通しを出しておるようです。そういう意味で、必ずしも楽観的にこの問題をとらえているというふうには考えませんが、やはり簡単に言ってしまえば、新たに発足する会社がどのような企業努力をしてそういった収支見通しにかなうような努力をしていくか、そこにかかっているのではないかと思います。  ただ、方法としましては、今後国鉄貨物輸送を引き継ぐ場合、やはりコンテナあるいは専用貨物というような方向に特化していくことが必要でありますし、また将来的には、総合物流業者というような方向を指向するのも一つの方法であろうかと思います。ただし、これは時期は別にいたしまして将来的なことでありまして、やはり当面は、そのオンレールといいますか鉄道として貨物輸送を行い、それによって会社経営が成り立つような大変な企業努力をしなければならない、そういう状況にあるだろうと思います。  それから、第二点目の問題ですが、この辺につきましては、例えば現在進行中の特定地方交通線、第一次から第三次分はそのまま行われるとして、その後の地方交通線の扱い、例えば休止とか廃止ということが全くないかといえば、私は、一〇〇%絶対にないということは言い切れないと思います。  しかし、基本的に考えまして、これからの旅客鉄道会社企業として経営していくためにはより多くの収益を上げなければなりませんし、また、先ほど申し上げましたようにそれは地域のニーズに合ったものにしていかなければならないという意味で、簡単に単に赤字だからといって地方交通線を切り捨てるということは私は企業としてとるべきではないし、また、現実にそういうことにいかないのではないかというふうに思います。と申しますのは、地方交通線といいますけれども、それは幹線に対して十分に培養効果を持っているとかいろいろなメリットがあるわけですから、それぞれの旅客鉄道会社の枠の中で考えていただくということが必要でありまして、私は方向としては、一〇〇%今後未来永劫に絶対ないということは言い切れないと思いますが、基本的にはそういう方向にいくべきでないと思いますし、また、いかないだろうという見通しを持っております。
  33. 西中清

    ○西中委員 あとお伺いしたかったのですが、時間が参りまして、まことに申しわけないのですが以上で終わります。
  34. 細田吉藏

    細田委員長 阿部昭吾君。
  35. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 お三方の先生方にお伺いをいたしますが、今度の国鉄改革は、一つのけじめというか区切りというか、そういうものをやらねばならぬ、根本的な大転換、変革というものだと思うのであります。そういう立場から先ほど高梨先生が、職場の中におけるいろいろな問題、御指摘がございました。私も確かに、先生おっしゃられる点に一々それなりの問題と軽視できない重要な問題があると思うのであります。  そこで、私が最近思っておりますのは、設立委員というのはこれから新会社発足まで相当重要な役割を持つ。この設立委員の中に今日のこの苦しみ抜いておる国鉄当事者がやはりいなければいかぬのじゃないかと私は思っておるのですが、この点はお三方どのようにお考えになられますか、一言ずつお願いしたいと思います。
  36. 山本雄二郎

    山本公述人 今お話しのように、今度の国鉄改革は決定的なけじめであるというのは御指摘のとおりだと思います。  それから、その設立委員の人選につきましては、これは今後の問題だと思いますが、今、その中に苦労した国鉄当事者を入れてはどうかというお話だったと思います。それは全体のバランスを決めて考えることであると思いますので、今後の扱いによると思いますが、私は、その当事者が入ることは非常に適当であろうと思います。
  37. 高梨昌

    高梨公述人 今の山本公述人と私は同意見でございまして、設立委員の任命、構成に当たりましては、今御質問のとおりに、私はできるだけ民間企業経営者出身の人が多数を占めることが望ましいと思っておりますけれども、事実上職員方々はほとんどが継続雇用されるわけでありますから、少なくともその人たちの過去の実情を知っている人たちが参加することも同様に望ましい、そのようなバランスのとり方だろうと思います。
  38. 角本良平

    角本公述人 趣旨としては私は高梨さんの御意見に賛成でございます。ただ、必ずしも絶対そうでなければいけないのか、あるいはそこらの事情に詳しい方がおられればそれでも済むのか、やはりもう少し具体的条件の中で考えた方がよいと思っております。
  39. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 私は、国鉄が今日の事態を迎えた、このことを考えてみますると、いろんな今指摘されたとおりのところだと思うのでありますけれども、その中でやはり認識としては、私も長年国会で建設委員会というところにおりましたけれども、道路整備五カ年計画というのは第九次、その間、道路特定財源を設定いたしまして大変道路を整備いたしました。この二十数年の間の物すごいモータリゼーション、これは鉄道輸送と違いまして、ある意味で言えば、出発するうちから目的のところまできちっと届いて、いろんなことも自由にやって、また自由に帰ってこれるというものなんであり、貨物の場合も、今のクロネコヤマトに対抗できるようなものをやらなければ、私の認識では、コンテナを中心にやっても貨物会社がこの間何か出されましたようなペイするなんという状態にはそんな簡単にはならないと思っておるわけであります。したがって、今日の国鉄の事態というのは、モータリゼーションと道路整備、これと逆に、どんどん行き詰まってきたのであります。もちろん、そのほかに労使の問題もあったろうし、親方日の丸もあったろうし、いろんな問題がたくさんあったと思うのであります。しかし最大の問題は、やはり交通輸送の行政が全く根本から変わった。そういう変化に対して、私鉄の側はもっともうかるいろんな分野に自由に手を出すことができた、国鉄は手足を縛られたままである、そのことを私考えますと、やはり政治の責任というのは大変に大きいと思っているわけでありますが、私はそういう認識を一つ持っておるのであります。  時間がございませんので後で一言ずつ御見解を伺いたいのでありますが、もう一つ伺いたいのは、今の事態になっての国鉄再建というのは、全く行き詰まって、ちょうど敗戦当時の焼け野原から何かやるかみたいなそんな感じでありますが、そうじゃない発想が必要なんじゃないか。そういう意味で、例えて言えば、先ほどもお話出ましたけれども、広軌条鉄道の進路をどうするとか、その中で今の新幹線のようなべらぼうにどえらい銭のかかるものではなくて、もうちょっと高速交通という性格を持てるような進路をどうつくれるかとか、あるいは、相当長い間研究その他をやっておるわけでありますが、いつ一体どのような時期に実用化するかまだ余り明らかではありませんけれども、リニアモーターカーの問題であるとか、私は、この時点で国鉄は全く絶望、したがって、さあ大変だ、武装解除だというのではなくて、やはり次に向かっての明るい進路というものを示さなければならぬのじゃないかという思いを持っているのであります。このことに対する御認識をお聞かせいただきたい。  もう一つだけ。それは、需要があれば東海道新幹線、山手線、私はその行き方だけを追求いたしますと、日本の国は大都市集中がますます進んでいって、結局人類の歴史が都市集中が暴発して行き詰まって滅んでいくということを何度も繰り返してきたように、日本も大体そんなようなおそれが非常に強まっているように思われてならぬわけであります。したがって、ローカルをどのように強くするのか、その中で国鉄は一体どういう役割を果たすのか、新鉄道会社はどういう役割を果たすのかということが国鉄改革の進路の中の一つにどうしてもにらんでおかなければならぬ点ではないかと私は思うのでありますが、その点に関しましてお三方から、時間がございませんので簡単に伺いたいと思います。
  40. 山本雄二郎

    山本公述人 では簡単に申し上げますが、第一点の貨物輸送の問題は、状況としましてはおっしゃるとおり、道路整備、自動車の普及ということが大きかったことはそのとおりだと思います。ただしかし、それにいたしましても国鉄側の対応がおくれたという事実は否定し切れないと思います。そういう意味で、これから一体どういうふうに新しい貨物鉄道会社がやっていくかですが、やはり私は第一義的には鉄道部門で採算がとれるということを目指すべきであって、例えば宅配便のようなものをいきなり手がけるということが果たして妥当かどうかという点は考えなければならないと思います。  第二点目の、新しい技術を駆使したような、未来を明るく見たやり方があるのではないかというお話ですが、確かに私もそう思いますが、残念ながら今は、人間で言えばもう大変瀕死の重病人でありまして、まず健康を取り戻すことが第一である。健康を取り戻したときに、次に新しいどんなスポーツをやるかとかそういうことをお考えいただくべきであって、そこら辺の手順というものを前後しないようにしていくことが必要ではないかと考えます。  それからローカルをいかに強くするかということですが、やはり私も角本公述人がおっしゃったと同じことでありまして、鉄道輸送の特性ということを考えるときに、そこには大量定型という需要があったときに成立し得るものであって、需要がそれほどないところ、極めて少ないところに無理やり鉄道を持っていく、あるいはそこに存続させるということ、その辺のやり方というのはかなり将来問題を残すのではないかと思います。もちろん地域のニーズを先取りする、密着した鉄道経営をやるということは必要ですが、ローカルをより強くしなければならないという命題がそのまま成り立つかどうかというのはちょっと違う問題ではないかと思います。
  41. 高梨昌

    高梨公述人 第一点の問題でありますけれども、要するに道路輸送と鉄道輸送との連携は、例えば貨物に例をとれば、私はその辺は、貨物営業の見通しが定かではありませんけれども、少なくとも道路輸送に逃げた、トラック輸送に逃げた貨物をいかに鉄道に戻すかということは国民経済的に大変重要だと思うんですね。特に、道路輸送の場合には排ガス公害が一方でございます。電車の場合には排ガス公害がございませんので、公害防止政策としてもそういうようなことを図る必要があるのではないか。  そこで、一つは、通運業法によって駅頭が閉鎖されますから、もっと駅頭を開放することをひとつ考えて、トラック業界と新鉄道会社とが連携をとれるような、こういうことを考える必要があるのではないか、これが一つであります。  それからもう一つは、全体的な総合交通政策、これは必ずしも私、今十分だとは思いません。どういうような道路なり鉄道なり、また道路でもトラック、マイカー、バスがございますけれども、どういうような輸送手段が最も経済的に効率性が高いかということで総合交通政策を絶えず見直しながら、現実の輸送ニーズに合うように変えていく必要があると思うんですね。荷物にしましても、従来の重厚長大型の荷物からだんだんと軽薄短小型の荷物に変わっております。それからまた多品種に変わっておりますけれども、それはコンピューター技術を駆使すればかなりできると思うので、そういうようなことを配慮していただけたら……。  地交線は、先ほど私申し上げたとおりでございます。
  42. 角本良平

    角本公述人 まず第一点は、国鉄の将来というのは、新しい鉄道会社の将来でございますが、旅客については私は悲観する必要はないと思っております。恐らく旅客の輸送量の九割以上は国鉄に、あるいは新しい会社に残るだろう。これは造船業あるいは外航海運業と比べますと大変有利な見通しでございます。  二つ目。貨物はということは、私は貨物輸送安楽死論という言葉をつくった本人でございます。大量の貨物以外は早く鉄道は撤退した方がよい。よその国は内陸で鉄道しか方法がないから貨物がある程度ありますけれども、日本は海運国でありますから、内陸国の鉄道が運んでいる貨物は船で運べます。  三つ目。新しい技術あるいは新しい高速の鉄道、そういう技術を考えましても、問題は技術の前に土地が必要であり、トンネルや橋をつくらねばいけない。南関東とか近畿地方ではこれは非常に高いお金になりますので、私は大変困難であろう。  それから四つ目。ローカルの問題につきましては、鉄道をまず見捨てたのはローカルの人たちでございます。残念ながら、ローカルの地域では今非常に車が便利に使われております。私は、地域の発展のためには今必要なのは、東京の空港、大阪の空港を強くして地方にも空港を置くことと、それから高速道路並びに一般の道路をよくしていくことではなかろうかと考えております。
  43. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 終わります。
  44. 細田吉藏

    細田委員長 工藤晃君。
  45. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 初めに山本公述人に伺いたいと思います。  四十四年度以降の財政問題について分析をされまして、その中で、それは再建と言うけれども単なる財政再建にすぎなかったと言われたと思います。私は、財政再建でもなかったんではないか、そう考えておりますが、その点いかがか。  それは以下の点とも関係しますが、例えば需要見積もりが過大であったと申されましたが、例えば一九六八年十一月国鉄財政再建推進会議が、当時の財政状況から見て十年間の設備投資の規模は三兆七千億円ぐらいでこれを超さない方がいいという意見が出されましたけれども、列島改造計画とともに七二年十兆五千億円にまで引き上げられてしまった。具体的にはこういうことを指して言われているのかどうか、お答えいただきたいと思います。  さらに、甘えの構造ということも言われました。ここで甘えの構造と言うとき、国鉄設備投資や鉄建公団の設備投資を見ますと、その資材の発注、工事の発注を常に受ける大手の企業の名前は、毎年連ねてみればほとんど決まって出てまいりますけれども、国鉄設備投資が多ければ多いほどそれらの会社の仕事がふえるというそういう関係がいやが上にも発展しますし、今電力の設備投資がそういう関係になっていると思いますけれども、その中で国鉄を見ておられた方の中には、新幹線二キロつくれる工事で一キロしかつくらなかったというようなことさえ大変けしからぬことでありますが言われるような状況があった。甘えの構造というようなことは、こういうことを含めて言われているのかどうか。最初にそのことについて答えていただきたいと思います。
  46. 山本雄二郎

    山本公述人 第一点目の需要の見積もりの問題でありますが、これは、今お挙げいただいたその数字自体は私は正確に把握しておりませんけれども、収支を合わせるということが先行して、それに逆算してとは言いませんけれども、本当にきちっと積み上げて精査した需要の見積もりがあって再建計画がつくられたというふうに果たして言い切れるかどうかという点に疑問があるということを申し上げたわけでありまして、需要の見通しが多くなれば当然それに見合って投資も多くなるという循環になるわけですから、先ほど御指摘のような点が全く無関係ではないと思います。  それから第二点目の、甘えの構造の中に、そういった具体的な建設業者との関係の御指摘がありましたけれども、私は個々の事例は存じ上げておりませんが、少なくとも本来設備投資を抑制すべき状況であったにもかかわらず、公共企業体なるがゆえに恐らく一般の企業であればそういう選択はしなかったであろう投資をあえてやるというような選択があったと思います。それが今御指摘のようなある特定会社と結びついているかどうかということは別問題にいたしまして、そういった投資なら投資の決定に当たって、その前提といいますかそのもとになった認識の中に甘えの構造があったことは、これも否定できないように私は思います。
  47. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 引き続き山本公述人にお願いしますけれども、山本公述人は再建ではなく改革でなければならないと言われました。日本共産党は七三年、実は六九年のときの政策もありますが、七三年に一つ改革案を示して、このままの国鉄財政を続けたら大変なことになる、五つの点を改善すべきである、その一つに、公共交通機関にふさわしい財務の制度を設け政府の責任を明らかにせよということを言いました。これは何も新しい発明でも何でもなくて、既にEC諸国で広くやられ出していた制度でありまして、特に基盤の建設、改良については国がこれをやるべきである、それからまた、福祉のために、あるいは政府国鉄に対して外から押しつけたある政策、例えば戦後外地から大勢の方が帰ってきて国鉄へ働くことが一つの政策になった、そういう政策から生じた赤字とか経費はこれは国が負担すべきである、基本的には国鉄はいわゆるランニングコストで収支償うようにしていくべきではないか、こういう提言も行ったわけであります。それから同時にもう一つ、先ほど言いました十兆円を超えるような設備投資はもっと縮小しなさいということを言いましたが、そういうことをやっておればこれほどのことにはならなかったという感じがあるわけですが、こういう改革案があるにもかかわらずいきなり改革イコール民営化というところに飛躍を感じます。  民営化でこれまでの鉄道が維持され、これまでのサービスが維持されるということは、私は証明されてないと思います。路線も、先ほど言われましたが、廃止は自由化されると思います。それからさらに、これは電電公社の場合と違いまして、電電公社の場合ですと、電気通信事業は技術革新の真っただ中で需要が非常に広がっていくのに対して、鉄道需要見通しというのは、今度この委員会に出された政府の資料を見ましても先細り的なものしか出されないような状況でありますから、仮に民営化民営化ということになれば、どうしても大手私鉄型の、鉄道をむしろ副業にするような形にならざるを得ないのではないか。山本公述人は先ほど、改革というときは必ず将来の見通しですか、将来の展望がなければならないと言いましたが、その辺、結局そういう私鉄型になっていくということを頭に置いて展望を描かれているのかどうか、その点も伺いたいと思います。
  48. 山本雄二郎

    山本公述人 幾つかの御指摘をいただいたわけですが、日本共産党がこれまで国鉄問題に対して非常に熱心に御検討をされ、それぞれその都度提案をされてきたことは私もよく承知しておりまして、敬意を表しているところであります。  問題は、その財政措置を国が考えるべきではなかったかという御提案があったと言いますが、私もその点はある意味で同感でありまして、例えばこれまでの国鉄設備投資その他をすべて借入金でやるという方式、そういう方式が果たして妥当であったかどうかは問題のあるところだと思います。しかし、これは過去の問題でありまして、そういうことが行われないまま今日に至ったわけであります。  それからもう一つ、いわば一般論として言えば、例えば公共負担というようなことをおっしゃったと思いますが、この点も今までどおりのやり方でよかったかどうかは疑問のある点が少なくないと思います。  しかし、いずれにいたしましても、そういった点が積み重なった結果今日の国鉄の状況になってしまったわけでありまして、今ここで一挙に改革するのは飛躍があるのではないかという御指摘がありましたけれども、それは状況がもうそこまで切迫してしまってどうにもならない段階に来ている以上はそういう対応をせざるを得ない、こういうふうに私は思うわけであります。恐らく、このままある段階的にもしアプローチしていくといたしますと、やはり状況がさらに悪化して、本当に列車の運行もできなくなるような状況が起こり得るのではないか、そういうことを考えます場合には、ここでやはり改革ということに踏み切ることの方がベターであろうと私は思います。  将来の展望という点で申し上げますと、私は、御指摘のありましたように、やはりこれから旅客鉄道会社貨物鉄道会社も同じかと思いますが、極めて私鉄型に近づいていくことは当然考えられると思います。ただ、今お話がありましたように鉄道部門がむしろ副業だ、今の私鉄をそう見るかどうかという辺もあるいは議論が分かれるのかもしれませんが、必ずしもそういうことにはならないと思いますし、また、そういう方向に行くことが望ましいとは思いません。  以上です。
  49. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 高梨公述人に伺いたいと思いますが、高梨公述人は、退職して新規に採用されるということを余り強調するなと言われました。そのお気持ちはわからないでもないのですが、そもそも今度の法律が、国鉄職員の身分を一度失ってしまってそれで採用になるという、そういう法律になっているのではないか。九電力分割のときは法律上何の規定もなかったとのことでありましたが、しかし資産とか事業と一緒に、働いている人たちはみんな引き継がれていきましたし、たばこも電電も同じでありましたが、今度この国鉄に限ってこういう異常な法律の仕組みになっている。会社を続けたいけれどもここで首を切ってしまえというとき、悪質な資本家が偽装倒産して、そうして一度全部首にしてから新規採用というのはよく見られます。これは法律的にけしからぬということになっておりますけれども、法律そのものの仕組みにそういうものが入っているのではないか、その点だけ伺いたいと思います。
  50. 高梨昌

    高梨公述人 私先ほど申しましたように立法政策上の問題でございますけれども、実際新会社には帳簿価額で固定資産は引き継ぐ、こういうことになっております。ただ、累積長期債務につきましては、三会社がそのうちの一部を引き継ぐ、三島会社は引き継がない、こういうことでマイナス財産の方は引き継いでおりませんから、必ずしも民間の場合の営業権譲渡とは若干違っているのではないか。それからまた、一方で余剰人員が出る点では、NTTの民営移管の場合と違っているために立法政策上どうしでも身分を一たん切って新会社採用、こういう手順を踏まざるを得なかったのではないか。しかもそれは、旅客会社貨物を入れて七会社でございますから、なおのこと、その職員の新会社への採用の場合でも、それぞれに現在の国鉄職員が応募の資格要件を持つわけであります。どこに応募するかは原則自由であります。まあ事実上今現在勤めている場所の会社に勤めることになると思うのですけれども、そういう意味でも私は、法律技術的にはそうでも、先ほど言いましたように、事実としては雇用が継続していると職員が観念するのは当然のことなので、その気持ちは尊重しながら円滑な新会社への移行を図るべきではないか、こういうようなことを申し上げた次第でございます。
  51. 細田吉藏

    細田委員長 工藤君、時間が参りました。
  52. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 角本公述人には大変失礼いたしました。時間がないので、これで終わります。
  53. 細田吉藏

    細田委員長 これにて午前中の公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人の皆様には、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  この際、休憩いたします。     午後零時九分休憩      ────◇─────     午後二時二十一分開議
  54. 細田吉藏

    細田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、御出席をいただいております栗村公述人、高野公述人廣岡公述人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわらず御出席を賜り、まことにありがとうございました。  申すまでもなく、本委員会といたしましては各案について慎重な審査を行っているところでありますが、この機会を得まして広く皆様方の御意見を拝聴いたしますことは、本委員会審査に資するところ大なるものがあると存じます。公述人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  御意見を承る順序は、栗村公述人、高野公述人廣岡公述人順序でお願いいたします。  なお、御意見はお一人十五分程度とし、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  念のために申し上げますが、発言する際は委員長の許可を受けることになっております。また、公述人委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。  それでは、栗村公述人にお願いいたします。
  55. 栗村和夫

    ○栗村公述人 私は、東北本線と陸羽東線、石巻線、さらには気仙沼線のジャンクションである小牛田駅のある町の町長であります。したがって、これから、首都圏より離れた地方の立場と現に自治体を預かる立場の両面から、率直な意見を申し上げさせていただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。  まず第一に、今回の国鉄大改革について地方の住民がどういう不安なり要望なりを感じているかについて述べてみたいと思います。一つは、分割民営化によって料金の格差がますますひどくなるのではないかということであり、二つには、ダイヤが徐々に縮小をされ、いずれは廃止になるところが出るのではないかということであります。  こういう中で、今回上程されました法案は、一つ分割民営化方向を目指すものであり、一つは全国一社・株式会社化ということでありますが、二者択一を迫られるということになれば、結論から申し上げまして、私は全国ネットワークを崩さない方がいいと考えるものであります。  では、なぜかということになりますが、私は、日本列島どこに住んでいようが、今までどおり鉄道料金は同じであるべきだと考えるからです。最近では、国鉄運賃の改定ごとにアップ率について中央、地方の格差がつき始めましたが、それでも原則としてはまだ一律化の範疇の中にあると考えます。  現職の町長をやっていますのでいささか言いにくいのですが、率直に申し上げまして、現在の国鉄経営の官僚化、硬直化はどうしても克服しなければならないと私も考えます。車社会に象徴される時代の流れに見る見る取り残され、今日の事態を迎えてしまいました。こういう中で、アンチ親方日の丸型経営という観点から、私も一時は分割民営化もやむなしかという感も抱きましたが、その一方で、待てよ、料金格差は一体どうなるのだろうか、在来線のこれからのありようはということを終始問い直しておりました。  こんな中で接したのが、九月七日付の朝日新聞紙上での磯崎さんの発言であります。  分割民営化は、総合交通体系の哲学を欠く。分割はナンセンスであり、ダイヤ編成が難しく、利用者に不便になる。赤字路線はますます支えにくくなり、どんどん切り捨てられるだろう。ヨーロッパではばらばらだったのを一本にしているではないか。赤字の本当の病根は、新幹線、通勤輸送の改善など膨大な設備投資国鉄は全部借金でやらされたことだ、などなどであります。  私は、この発言に接しまして、元国鉄総裁としての重みを感じ、俗に言う目のうろこがとれた思いであります。その後「正論」誌上で屋山太郎さんの磯崎批判の論にも接し、指摘の鋭さを感じましたが、総体としては磯崎さんの発言には一本太い筋が通っていると思いました。  持ち株の割合などについていささか粗っぽい法案の感じはいたしますが、全国ネットワークのもとでローカル線を維持していくという、伊藤茂さん外八名の方の提出による案に基本的に賛意を表したいと思います。  この一社化案につきまして、一社化すれば現国鉄のように画一的本社統制型となり、地域の実情に応じた弾力のある運営ができなくなるとか、あるいは通し運賃制の採用であるから乗りかえについて何の不便もないとか、固定費、変動費のありようが地域で著しく異なるので運賃格差はやむを得ないとかの反論のあることも承知いたしております。しかし、政府の追加資料によりますれば、既に近い将来の運賃値上げに関する部分では、北海道、四国が各六・二%、九州が五・四%、西日本が三・五%、東海二・六%、東日本二・五%という展望を示しております。  例えば通信などとともに、国鉄もまたナショナルプランの代表的なものだと考えるからであります。短絡過ぎるかもしれませんが、全国どこに住んでいようが、電話料金やテレビの聴視料が同じであるように、鉄道運賃もまた今までのように同じであるべきだと思います。  巨大企業での管理限界論に対しましても、新日鉄やIBMなど国内外の優良企業を例に、マスコミなどから疑問が提起されてもおります。経済合理主義だけで貫くのではなく、依然として過疎化が進み、企業誘致や人口の定着化に悩み続けている地方のために、可能な限り温かい目を注いでほしいと思うのです。  車社会の時代の中では利用者の少ない鉄道運賃が少しぐらい高くてもいいのではないかということは認識の誤りだと思います。それでなくてもこういう地方は、森林や川を守り、米をつくり、魚をとって大都市の人々の暮らしを支えている第一次産業地帯が多いのであります。したがって個人所得も少ない地方なので、人々は、鉄道まで運賃が高いのでは全く住みにくいよということになってしまいます。幾ら車社会といっても鉄道にはそれほどの重みがあるのであります。よく言われるように、地方線という枝葉を切って幹を枯らすことのないようにしてほしいと願うものであります。  いろいろ地方の立場より申し上げましたが、申し上げるまでもなく、数学や自然科学の分野以外にこれは絶対ということはあり得ません。提出されている二つ法案につきましての比較論も同じことだと思います。極論すれば、やってみなければわからないということになるのかもしれませんが、国鉄には中距離都市間輸送でトップのシェアを持ち、通勤圏でもかなり強いという側面があると言われております。それだけに一社化案の場合は、その地域の実情に合った運営をどうやるかということについては相当思い切った手だてを組む必要があると思います。  終わりに申し上げたいことは、せっかくあるものをどう活用すべきかということについてであります。内容としては二つ、在来線の活用といわゆる遊休地の利用についてであります。  鉄道あるいは電車の歴史は、私たちに次のようなことを教えてくれています。初めに電車ありきということであります。まず電車を引く、その沿線に宅地を造成して分譲する、そして人口が張りついたところで宝塚や動物園等の娯楽施設をつくって、人々がいやでも電車を足として日常の暮らしの中に組み込んでいくことになったという手法を、歴史的教訓として遅まきながら学ぶべきでありましょう。それは、経済、行政等の中枢機能がある中心都市圏だから可能だったというとらえ方だけではなく、日本列島を網の目のように張りめぐらされている在来線を改めて見詰め直そうということであります。  最近の若干の実験について触れてみたいと思いますが、仙台鉄道管理局が仙台駅を中心に東北本線、常磐線、仙山線、仙石線等々の列車を国電型ダイヤ化することを目指して積極的に取り組み出したのは、昭和六十年三月の東北新幹線上野乗り入れを契機にしてのことでございました。  ところが、東北本線の松島以北は取り残されてしまいましたので、松島より北、八つの町で国電型ダイヤの改善を求める地域連合を結成し、大運動を展開いたしました。当然のことに国鉄側の言い分は、ダイヤをふやしても乗客がさっぱりではということであり、私たちは、ダイヤがふえれば必ず列車の利用者がふえていくということでそれぞれの開発プランを示し、辛抱強く話し合ってまいりました。いわゆる卵が先か鶏が先かという議論でしたが、やがて双方が卵も鶏も同時進行ということにしましょうということになり、ことし三月のダイヤ改正で第一弾の増発がなされ、第二弾としてこの十一月一日、さらに増発が実現することになりました。その結果は、とにかく沿線の人口が横ばいまたは減少傾向にまだある中でも着実に利用者がふえてまいりました。私たちは、在来線の中にこの国電型ダイヤを目指すことは、まさに地域開発または活性化の戦略的手段だと位置づけております。  「国鉄線」という雑誌がありますが、その八六年六月号の誌上に「民鉄における低輸送密度線区の経営」と題した地方交通線対策室次長山崎正夫さんの論文があります。それによりますと、「鉄道増収施策」「サービス向上策」という小見出しの中で、この面で民鉄に国鉄が最も学ぶべき点は、列車ダイヤと駅間距離である。列車ダイヤについて見ると、ほとんどの会社が一日片道二十本以上、データイムには毎時二本以上の列車を確保しており、駅間距離は一・五キロ、国鉄地方交通線は平均三・六キロでその半分以下であるということであります。この山崎論文は分割民営化に向けた提言ではありますが、これからのあり方について真剣に論ずべきテーマでありましょう。  それとともに大切なことは、地域または沿線自治体の対応のありようであります。いわゆる空気だけを運ぶような現象は、ひとり国鉄の責任ではなく、車社会、過疎化など社会的、経済的要因によるものでありまして、このせっかくある在来線を先手先手と手を打って活用しなかったということについては、我々地方自治体担当者や地域住民の側にも大いに責任があったということであります。端的に言えば、国鉄沿線の開発を怠ったということであり、人口の張りつけ施策に怠慢だったということでもあります。初めに電車ありきの手法に極めて鈍感だったということであります。さきに引例しました山崎論文のように工夫をすれば、ダイヤの増発、場合によっては新駅の設置等は、従来の新幹線等大プロジェクトに比べれば微々たる投資でできると思います。鉄路は既に敷かれているのですから、まず便利なダイヤありきの精神で取り組む方策を明示していただきたいと思います。  次に、非業務用地の活用のことについてでありますが、このことにつきましては、大都市圏と地方とでは区別して議論をし、再建策について方向づけをすべきではないでしょうか。これも磯崎さんの発言にございましたが、なるほど国民の共有財産に違いありません。したがって、所在自治体による都市計画や駅周辺の環境整備等に活用させることを優先にしたとしても、大いに民活導入のために開放したらいいと思います。利権絡みとか地価暴騰の要因とかの配慮も大切ですが、県都の所在地ぐらいのところでは民活導入といったら引く手あまたかもしれませんが、田舎の駅構内ではそう簡単に処分できないと考えるからであります。  やはり在来線の将来の地域開発についての位置づけが最重要課題だとの認識に立つとき、少なくともこのダイヤの利便性と遊休地の活用については、地方と中央の方を区別して見詰め直していただきたいと思います。  以上、率直に意見を述べさせていただきました。ありがとうございました。(拍手)
  56. 細田吉藏

    細田委員長 ありがとうございました。  次に、高野公述人にお願いいたします。
  57. 高野邦彦

    ○高野公述人 高野邦彦であります。  私は、本日、いわゆる改革案一つの骨子であります民営分割、これに賛成する立場から若干の意見を申し上げたいと思います。  まず、今日、国鉄が経営破綻に陥っていることは改めて言うまでもありませんし、抜本的な改革を緊急に必要としていることも言うまでもありません。国民も、基幹的な交通網であります国鉄の一日も早い再生を願っております。これまで国鉄は、過去何回か改善計画改革案提出してきましたけれども、そのどれ一つも中途半端に終わって、結果としては悪化の一途という運命をたどってまいりました。したがいまして、今までのような改革の路線上では、現在陥っている国鉄の困難を救うことは到底不可能ではないかということがまず第一点であります。  そこで、では民営分割あるいは分割民営化したらどのようなメリットがあるか。まず私が賛成する第一の理由は、要するに、国民の交通需要が非常に質的にも量的にも変化してきているということであります。これは既に皆さん方御存じのように、いわゆる我々日本あるいは先進国共通の課題でありますが、経済社会が従来の工業化中心の社会から情報化とかサービス化とか言われる時代に大きく転換してきたということがその第一点でありまして、国民の需要というものは、まさしくかつての単に量だけを求める時代から質的に高度なもの、あるいは質的に多様なものを求める時代にはっきりと変わってきたということであります。  こうした大きな時代の流れの中で、やはり国鉄は、従来のあり方あるいはその巨大性等々からしまして、需要対応する力あるいは環境を欠いてきたということであります。したがいまして、どうしてもそういう需要対応できるような国鉄の新しい姿に切りかえなければならない。それにはどうしても、現在考えられ得る改革としては、分割し、民営化する以外にちょっと考えにくいというふうな事態に入った。これが私がまず第一に分割民営化に賛成する理由であります。  その中で、いわゆる国鉄鉄道事業に対する需要というものも年々大きく変わり、かつ交通全体の中に占める地位も非常に低下してきております。したがいまして、このままの状態はもはや続けることが不可能になってきているというふうに思います。その象徴的な例を貨物輸送の実態に見ることができるのではないかというふうに思います。  ところが、国鉄公社制度を今日までとってまいりましたけれども、この公社制度のさまざまな制約というものが、国鉄の新しい時代への対応力をまさに束縛してきたというのが事実ではないかというふうに思います。公社制であるゆえに、政治的なもろもろの制約をこうむってまいりましたし、社会的な要請にもそれなりにこたえなくてはならないというふうな事態があったわけです。このあたりの問題点は、いわゆる国鉄再建監理委員会の報告が極めて明白に物語っているのではないかというふうに考えております。したがいまして、先ほど来申し上げましたような変化に対応する体質、形づくりというものがぜひとも求められるということであります。  これと裏腹の関係にありますが、第二に、しかし民営分割化し、政治あるいは社会的な多くの制約から逃れても、国鉄自身に、新しい組織に自主性というものが十分回復されないと新しい事業体というものは運営できないだろうというふうに思います。分割して、しかも民営化する、あるいは民営化して分割する、これは一体のものと私は思っていますけれども、これによって初めて事業体における経営の自主性というものがより確立できる、そういうチャンスに恵まれるというふうに思います。  事業経営でありますから、いわゆる企業経営の基本的な要請というものは、要するに経営における自由な決定とその決定に対応する結果に対して十分な責任をとる、これが自由社会の一つの根底にある認識だと思いますので、国鉄の自主性というものを大きく回復することに、あるいは確立することに国鉄民営分割化というものは役立つであろうというふうに考えております。  そういたしますと、民営分割された各会社は、現に民間鉄道会社がやっているような事業展開というものを十分でき得る余地が出てまいりますし、その他の交通機関あるいは分かれたそれぞれの会社とお互いに競い合いながら利用者のニーズにこたえていくよりよい体制ができてくるだろうというふうに考えております。公社制というもとにある限り、国鉄に自由な決定権とまたそれを負うだけの責任の体制というものは、現在の公社制の中では非常に希薄になるというふうに思っております。  もちろん、分割民営化されたといっても、各社が自由、勝手なことができるというふうなことは当然あり得るわけはないわけでして、そこにはやはり株式会社としての制約もございましょうし、あるいは分割された国鉄といっても、地域交通においては相当の優位に立つために、その地域の独占的な問題に関しても配慮していかざるを得ないというふうに考えております。  鉄道事業あるいは交通全体は、経済が相当に低成長の中にありましても、いわば成長産業の一つに考えられると思います。したがいまして、国鉄がこの鉄道あるいは鉄道を中心とした関連事業を大きく展開することによりましてかなり明るい未来が開けるというふうに考えております。  それから、これと関連いたしまして第三番目にもう一つ申し上げておきたいのは、いわゆる分割民営化によって国鉄職員のモラールの向上に大きく役立つではないかというふうに私は考えております。  公社制のもとでは、元来が国営ということもありまして、その結果としていわゆる官僚的な体質ということがしばしば指摘されております。そういう問題が色濃く現在もある程度残っているというふうに言われます。これは倒産がございませんし、一般民間企業では、社員はやはり倒産の危険というものをかなり深刻に受け取りながら、しかし積極的にチャレンジする姿勢というものを持っているのですけれども、そこまでは考えておらないと思います。倒産のない安心感、しかもコスト意識、これはかなり不徹底であったと思いますし、それから生産性向上への意欲というものもさほど強くはなかったというふうにも思われます。巨大な組織でございますから、国鉄の社員を縛る規則というものは恐らく膨大な量に上っているだろうと思います。したがいまして、この規則に縛られた国鉄職員というふうな姿というものがかなり鮮明にあったのではないか。これが分割され、民営化されたときには、そういった制約から大きく解放される可能性が非常に強いというふうに思います。したがって、分割民営化への改革は、公社制度では生かされなかった社員内の創意と、それから才能、意欲、そういったものが十分に生かされる余地が出てくるというふうに私は思います。  ここでちょっと、私は民営分割とを同義語あるいは同じような言葉として扱ってまいりましたけれども、分割民営ということを分ける考え方も当然あり得るだろうというふうに思います。しかし、私は、国鉄の場合はこれは一本で考える必要があるだろうというふうに思っております。単に民営化しただけでは現在の国鉄をよみがえらせることは大変難しいのではないかというふうに考えております。  それはなぜかといいますと、結局、国鉄鉄道事業そのものが極めて労働集約的な産業である、企業体であるということであります。それが第一。それから第二に、しかし、地域にもう一つ密着したサービスを今後はやっていかなくてはならない。国民の交通、特に鉄道需要地域的な流動ということを考えますと、かなり広い範囲にとりますと、つまり今度改革案に出されました六つの会社の営業領域というものを見てまいりますと、その中で流動する人口というものが恐らく九〇%以上に達しているというふうな数字もございますので、そういう意味では、分割することによってその地域に密着したあるいはその地域の特徴ある交通体系というものがそれぞれの企業によって、それぞれの会社によって生まれてくるのではないかというふうに思います。  逆に、いわゆる一体化した国鉄、いわゆる国鉄の全国一律の考え方、現在とっております公社制、これは既にある種の破綻というものを来しております。昭和三十年代の中ごろ、国鉄は御存じのように支社制度というものをつくられまして、全国を幾つかの支社に、その後次第に数がふえたようですが、支社制度をつくられて、いわゆる中央における管理と地方における特性というものを巧みに結びつけた、大変意欲的なユニークな案であったというふうに思います。もしこれが十分に機能できたら、今日の国鉄というものはもっと状況はよかったのではないかというふうに考えます。しかし、この支社制度というのは、昭和四十五年を境に廃止されざるを得なくなったわけであります。  結局、この制度の失敗した原因を眺めてみますと、やはり支社相互間の、いわば地方における格差、いろいろな意味での格差がかえって拡大する傾向というものをとるようになったということであります。それは一つは、賃金国鉄一本、全国的に決まっておりますし、それから人事権が中央に握られておりますので、これは我が官庁によくあるように、二、三年で支社のトップの人が交代せざるを得ないというふうな問題、あるいは設備投資の状況、償却の負担の状況等々いろいろな原因があったように思われますけれども、いずれにしろ、高度成長の中にありながらやはりこの方式というものを放棄せざるを得ない。現在では北海道、四国、九州に若干その形骸が残っているようでありますけれども、本州は本社に直接管理される体系になったというふうなことが言われております。したがいまして、全国一律の組織形態というものは、どうしても新しい時代に対して、特に地域の流動の状況を見るにつけて、維持するのが困難ではないかなというふうな感じを強くするわけであります。  さて、第四に指摘したいことは、ちょっと先ほどもお触れになられたように、地域性というものを非常に重要視するということで、私は国鉄の駅というものの新しい行き方、あり方というものに対して、恐らくこの分割民営というものがよりよく適切に対応できるのではないかというふうに考えております。  分割民営というのは、実は分割というのは私の好みからいいますとできるだけ小さく分割した方がいいというふうに私は考えておりますけれども、それは財政的な問題その他である程度くくらなくちゃならないということは当然だと思います。問題は、国鉄の全国に持つ駅をそれぞれが活性化していく、特に大都市圏以外の駅についてこれを強く期待したいというふうに思います。  昔から、駅は、我が国の近代工業化が全国的に波及していく場合の一つの重要な窓口であったというふうに思います。知らないある駅に中央から違った文化が地方に流れ込んでくる、今までにない新しい知識が流れ込んでくる。これもやはり駅というものを中心にして流れ込んできて、そして我が国の近代化、工業化というものに大きく役立ってきただろうというふうに思います。  したがって、今日、地方の駅を廃止するあるいは委託駅にするというふうな状況は、今後はむしろ逆の発想で、もう一度新しい、先ほど来申し上げましたサービス化時代に適応するような形で再活性化する、そういうことが、これは中央一元の考え方の中では必ずしも出てこない発想だというふうに思います。やはりそれぞれの地域に根をおろした、それぞれの企業が各地域の特性に応じてそれぞれの駅を活性化していくというふうな方向というものが、まさに民営分割によって可能だろうというふうに考えております。もう一度、特に地方大小都市の中心に——今まで、少なくとも工業化時代には大中都市の中心に駅というものは存在したというふうに思われますけれども、それが交通体系その他の急変によってだんだん置き去りにされてくる、そういう地域も出てきているわけですから、もう一度駅というものを中心にいたしまして、その駅で新しい事業、サービスなりあるいはレストランなりショッピングなり、あるいはさまざまな情報のいわばターミナル、つまり、これからの国鉄の駅は新しい時代に即した情報のターミナルであってほしいというふうに思います。  それには民営なり分割化していくという方向がやはり最大の方策ではないかというふうに考えております。そうすることによって、再び国鉄の駅を中心として地域開発が行われ、ひいてはそれが地域づくり、地域開発の芽になり、国づくりの基礎になってくる、そういうふうに私は考えております。  最後に、今度の改革に当たりまして一言だけ申し上げておきたいのですけれども、改革の実際的な手続に当たって二つの点を私は期待しております。一つは、やはり極めて常識的であるということが一つ、それからもう一つは公平であるということ、この二つを今度の改革の手続の一つの基礎的なものとして提示していただければ、国民的な理解も大いに得られ、それから新しい国鉄の再建への大きな一つの基礎になるのではないかというふうに考えております。  どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)
  58. 細田吉藏

    細田委員長 ありがとうございました。  次に、廣岡公述人にお願いいたします。
  59. 廣岡治哉

    廣岡公述人 限られた時間でございますが、簡単に私の意見を申し上げたいと思います。  結論から申しますと、国鉄は、昭和五十五年にできました再建法に基づきまして、経営改善計画を毎年作成して運輸大臣に報告する義務を負いました。昭和六十年度の決算において、この経営改善計画の目標は超過達成されたというふうに私は理解しております。  私自身、この法律ができましたときに国鉄総裁の諮問機関の委員をしておりました。これは何回かあった再建計画の中で最も現実的なものであるというふうに私自身は評価いたしました。ということは、要するに資本費用とそれから特定人件費の問題を処理すれば、今や国鉄は健全経営に戻る、そういう基盤ができたということであります。それは要するに、戦後非常に膨張した職員昭和五十年代には大量に退職する、このチャンスを生かして健全経営の基盤をつくらなければならないというのが我々の意見であったわけですし、けさですか、民営分割論を唱えられた角本さんもそういう御意見であったわけですが、その点については、角本さんと私とは意見は一致しておったわけです。  ただ、従来の国鉄企業形態そのものが適切でなかったということについては、私自身年来考えていた点でございまして、結論から言いますと、やはり政治、行政の責任と経営の責任は明確に分離する必要がある。そうでなければ活力のある企業経営はできない。鉄道が独占であれば官庁的なやり方で旧来のやり方を踏襲しておってもいいのですけれども、実は非常に競争が激しくなった市場において鉄道が国民の期待にこたえるためには、どうしても鉄道自身に技術革新、イノベーションが必要である。鉄道が自己を革新して、そうしてサービスを革新し、マーケティングを革新する、そういうことができるためには経営の自主性がないといかぬ。経営者にそれだけの権限がなければならないというふうに私自身は考えるわけです。そこから出てくる結論は、株式会社形態がベターであろうということです。  私自身、ロンドン大学で二年間世話になったロブソンさんという先生がいらっしゃいます。国際政治学会の会長もお務めになった政治学者で、公企業論の権威でありますけれども、ロブソン先生は公共企業体という制度を非常に高く評価された。これは二十世紀最大の行政上の革新であるとまで評価されたわけです。それは結局、政治、行政と経営の責任を分離する、それで公共的な課題を民間企業と同じような効率をもって遂行する、そういう組織である、そのために予算、人事等について企業の独立性を保つような工夫ということを言われたわけですが、実際には、公共交通機関が独占が破れて、特にマイカー時代になって、採算をとって経営することが非常に困難になったときに、やはり公共企業体制度にも一定の制約があることがわかってきたように思う。その意味では、経営責任をより明確にするためには株式会社の形態の方がよかろうというふうに思います。  しかし、それでは鉄道、特に幹線鉄道網というものを純粋に民営企業の論理に従って経営できるのかということになると、これには非常に疑問があります。どこの国でも、鉄道に対して国家的な使命を課さざるを得ない、そういうものとして現に鉄道というものは存在しますし、また、今後新幹線を整備していくというようなことを考えても、純粋の民営企業としては難しいのではないかというふうに思うわけです。  現在、常磐新線とか整備新幹線の財源調達が問題になっておりますが、鉄道建設の持つ開発効果を長期間にわたって社会に与える、受益者は不特定の多数にわたり数十年の将来にわたるということから考えますと、やはりこれの建設財源の調達というのは公共的な性格を帯びざるを得ないというふうに思います。この点について、どのようにして開発利益を還元するかということについて種々の議論が十数年来行われているわけですけれども、いずれにしてもこれには難しさが伴うと思います。そういった点からいいますと、公共資源の投入というのは避けられない。そうなりますと、公共補助の受け皿としての企業形態というのは公的な企業ということにならざるを得ないだろうというふうに私は理解します。  それからもう一つ、今度の国鉄の再建ということに関連して言いますと、例えば再建監理委員会亀井委員長の講演なんかを聞き及んでみますと、国鉄は破産状態であるというふうに言われるわけですが、企業の破産とは一体何かということを民間企業になぞらえて考えるならば、疑問がないわけじゃない。資産と債務とを比較して債務が資産を超過しているのかと言えば、これは明らかに資産の方がはるかに債務を超過しているように思われる。それから、もちろん、従来の制度からいって資金繰りそのものも予算統制の中にあるわけですから、そういう類推はできないというふうに私自身は理解しています。そういう意味で、国鉄の資産額が一体幾らあるのか、累積欠損に基づく負債の方は監査報告書でも明示されておりますが、これに数倍する資産があることは確かであろう。これは国民の資産であるというふうに理解できますから、これを簡単に民間に売却するというわけにはいかないだろうというふうに思います。  では、株式会社形態の公企業に返すとして、それで民間出資の道を開くという方法は一つあり得るのではないか。これは今よく言われます民間活力の活用ということ、あるいは、これは一般に各国の公企業金融で問題になっていることですが、国家の財政投融資に一定の財源的な制約が加わる場合、公企業に必要な技術革新を賄うための資金調達も非常に困難になる。この制限を打ち破るためには民間からの資本調達ということを真剣に考えなければならぬ。そのためには民間出資の可能な形態というものも模索する必要があるだろう。そういう意味では、全く国有の株式会社でなければならぬということじゃなくて、民間活力の吸収あるいは民間のノーハウを活用する、あるいは民間の資金を供給し得るようにするというような意味からいっても、民間出資の道を開くということは企業の活性化の道を求めるということと結びついて必要ではなかろうかというふうに思っております。  なお、時間が少し残っておると思いますので、政策上の問題と公共補助について触れさせていただきたいと思うのです。  どちらかというと、総合交通政策というのは流行おくれ、あるいはイデオロギー的な議論だというふうなことが再建監理委員会の周辺で言われてきましたけれども、これは非常に問題がありはしないか。鉄道が持っている長期的な国土経営上の利点あるいは役割というものを考えますと、どうしても計画的な、調整的な配慮が必要になる。大体公共交通投資というのは非常に寿命の長い、建設期間も非常に長いものでありますから、どうしても計画的な要素が必要なわけであります。計画的な要素を取り入れれば総合的にならざるを得ないわけで、個別的に道路は道路、空港は空港、鉄道鉄道というふうにそれぞれ競争すればいいというふうに簡単にはいかないわけです。相互に補完的な役割もあるわけでして、そういう意味では国家あるいは政策が果たすべき役割というものはあると思います。  それから環境、エネルギー、アクセシビリティーとかモビリティーの確保、そういうことも政策上確保すべき目標でありますし、また自由競争が効率的経営を導くからといって、むやみに長時間で不規則の労働を野放しにしていいということにはならない。これが現実に重大な交通事故を引き起こして社会に損害を与えるということもあるわけですから、そういった点でやはり法律や政治が市場の働きに一定の枠をつくっていく、そのことによって市場メカニズムが公正に合理的に働くようにしなければならない、これは交通政策の非常に重要な課題であると思います。  それから、実は不合理な依存関係が効率的経営を阻害しておる、ですから民営分割しなければならないというふうに言われたわけですが、この点については、ヨーロッパ諸国のECの規則では、できるだけそれを回避するために、社会的に必要ではあるけれども不採算な鉄道サービスについては公共的に補償するという原則を立てた。それ以外のものについては商事的経営を要求する、つまり独立採算制を要求するという構造になっているわけです。私はその方がいいのではないかと思います。大都市線区や幹線の利益でもってローカル線を維持するということでは、やはり大都市線区のサービス改善を妨げることになります。あるいは東京や大阪で見られるような国鉄と私鉄の間の運賃格差、これがいつまでも温存されるということになるだろう。そういう意味では、やはりできるだけ合理的な基礎に立って鉄道の自立採算というものが可能になるような運営方式というものを探求するべきではないだろうかというふうに思っておるわけです。  したがって、整備新幹線とか大都市交通線とかの建設の場合、あるいは不採算ではあるが社会的に必要な地方交通、地方鉄道サービスの確保、そういったものには明確な基準を設けて公共的に補償する、あるいはヨーロッパ諸国でやっているような契約ベースでやるというのは、行政責任あるいは政治責任と企業責任を明確化するという点で一番望ましいというふうに私は思いますけれども、ともかく競争的市場で鉄道が自力でやっていけるような条件を今度の改革に当たってはぜひ与えていただきたい。  私自身は、幹線鉄道網を分割するというのは鉄道が競争する上で非常に不利だというふうに思っております。ヨーロッパの場合には、例えばフランス政府と西ドイツ政府は、パリからベルギーのブリュッセルを経てケルンに至る新幹線網を建設するということで合意しました。あるいはフランス政府とイギリス政府は、ドーバー海峡を海底トンネルでつないでそこに新幹線を走らせるというふうな計画について合意しました。ヨーロッパでは国境を越えて鉄道を統合する機運にあります。それは鉄道が航空機や高速道路と競争するためにはやはりイノベーションが必要になっているわけでありまして、日本の鉄道でも、例えば仙台から静岡へ直通するような鉄道サービス、列車設定というようなものは必要になってきます。  そういうことを考えますと、幾つかの会社分割するというのは、鉄道が幹線で競争する上で非常に不利になる。実は鉄道旅客収入の三分の二はこの都市間の特急、急行旅客輸送であります。これをいかにして確保し、拡大するかということで鉄道の今後は決まってくるわけでありまして、これを守っていくためには、例えばイギリスの鉄道が、現在ロンドンの南から北へ直通する線路の改良に取り組んでおりますけれども、東京なりロンドンで乗りかえしなければならないような列車ばかりつくるのではなくて、できるだけ利用者が利用しやすいような、各都市の利用者、潜在的な鉄道旅客というものを最大限に鉄道に誘致できるような、そういうサービス、列車計画というものが必要でありますし、またマーケティングにおいてもそれが必要であろうと思います。そういう意味で私は、幹線鉄道網については一本で経営できる形態の方が鉄道の長い将来のためには望ましいというふうに考えるわけであります。  どうも失礼しました。(拍手)
  60. 細田吉藏

    細田委員長 ありがとうございました。  以上をもちまして公述人各位の御意見の開陳は終わりました。     ─────────────
  61. 細田吉藏

    細田委員長 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の際は、公述人を御指名の上お願いいたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。久間章生君。
  62. 久間章生

    ○久間委員 公述人皆様方にはお忙しい中を御出席を賜り、貴重な御意見等を賜りまして、大変ありがとうございました。時間もございませんけれども、二、三点だけお尋ねいたしたいと思います。  まず栗村公述人にお尋ねしたいと思います。  先ほどの話を聞いておりますと、今度の改革で民営化するについては、現在みたいな官僚体質ではいけないのでその点は賛成であるけれども、民営化分割することによって料金格差が開くのではないか、あるいはまたダイヤが縮小されたり、また廃止されたりするのではないかというような気持ちから反対だ、そういうように受け取ったわけでございます。今の状況でいくと行き詰まってしまっておるから民営化しなければいけない、そこまで賛成していただけたら、民営化した後、これを一本でやったがいいのかあるいは分割したがいいか、それについてちょっとお尋ねするわけですけれども、北海道とか九州とかあるいは四国、こういった地域方々でございますと、非常に先に不安があるというようなことから料金が高く取られるのではないかという、そういう気持ちはあろうかと思います。しかし、それなればこそ、分割する場合でもそういう採算がうまくいかないところについては基金を置いておこうという話になっておるわけであります。そういう意味では、むしろ東日本あるいは東海あるいは西日本、こういったところは、今までは一生懸命稼いでも、内部で一生懸命利益を上げても、それを全体として北海道とか九州とかそういうところに補助をやっておった、そういうことがやれなくなってきたというようなことで、それをその当地域内だけで利益を上げていくということになると、かえってみんなが一生懸命頑張るのじゃないか、その地域の沿線に住んでいる人はかえっていいのではないかというような気がするわけですけれども、そういうのはどういうふうにお考えですか。そういうふうな考え方というのは地域では余り意見として出てきておらないのかどうか、お尋ねしたいと思います。
  63. 栗村和夫

    ○栗村公述人 世帯が大きくて一本化していれば、地方の条件の悪い地域を走っている、今でいえば在来線ですが、それを支える総体的な力が出るだろう、これが基本的な認識です。したがいまして、さっき意見の陳述をしていますとき、東日本会社が二・五%値上げ率のあれが資料で発表になっていますとき、宮城県もそれだからいいのじゃないかというようなお話がちょっと出てきたのですが、宮城県がよければいいとかでなくて、やはり北海道でも九州でも、そっちの方を思いながら、基本的にどこに住んでいても同じ料金で乗れるようにするには一本化であって、大きな企業的経営の中でそれを支えていく、そういうふうに思うのです。  それから、物理的に言いまして、その沿線に人が住まない、企業もない、そういうことになりますと汽車に乗る人だってまあ少なくなっていきますが、多少我が宮城県の経験でも、国電型ダイヤでダイヤを思い切って、仙鉄局その他の英断だったと思いますけれども、それがなされてから着実に利用客がふえているわけですね。それはどういうことかというと、人間の心理として、一々時刻表を見なくても、大体八時二十分に乗りおくれれば四十分が来るとか、こういうことになりますと通勤なんかでも非常に弾力的に対応できるようになりますから、そういう意味で私は、例えば根室に住んでいようが土佐に住んでいようが、やはり料金は基本的に、まあある程度の格差はしようがないのかもしれませんけれども、アップ率とかそういうものについては同じであるべきだ、こう思うのですね。  それからもう一つは、別な言い方をしますと、それでは九州とかあるいは北海道の道東とかあるいは四国の方は非常に不採算路線で、それを山手線とかそういうところを利用している都会の人たちが犠牲を払って、百円で間に合うところを百四十円払って乗っているのだ、こういう議論になりますが、そういう議論なら私はそこであえて言ったのですが、山を守ったり川を守ったり魚をとったり農業をやったりしているという第一次産業地帯が大都市の水道も支えている、あるいは食糧も支えている、魚も含め。そういうような意味で、こういう国家的なプランというものは、やはりその地域地域の採算性だけでなしに取り組むべきでないか、やはり政治、行政の基本的な課題の中に国鉄鉄道というのは入るのではないかな、こういうふうに考えます。
  64. 久間章生

    ○久間委員 今までは大都市間の輸送で上げた利益で、北海道とか九州とか四国とかそういったところに内部で補助といいますか回すことによってうまくやってこれていたわけですね。ところが、大都市間も非常に競争が激しくなってきた、そういうことになってきますとそういう余裕ができなくなってきた、そういうところに国鉄の今日の破綻一つ原因もあると思うのですよ。そうなってくると、これから先は各地域で切磋琢磨して頑張っていかなければならぬ。ところが、北海道とか九州とか四国ではどうしてもやっていけないから基金をつくるという案になっているわけですね。それで料金はできるだけ格差がないようにしようということになっているわけですね。  そうしたときに、せっかく民営化については賛成していただいているのだけれども、民営化して分割したがいいかどうかということになると、要するに鉄道だけではもうやっていけないようなそういう時代になってきている。関連事業をこの際やらせようじゃないか、国鉄にも今から先民間企業として、株式会社としてやらせようじゃないかとなってきたら、先ほど公述人が言われたように地域の特性を生かしてそこで頑張ってもらう、関連事業にも。そのためには全国一本の株式会社では、地域の特性を生かしてそこで職員が活力を持ってやるようなことにはならないのじゃないか。むしろ、それこそ分けた方がいいのじゃないかという意見が非常にあると思うのですけれども、そういう意見は近くでは出てきませんか、東日本の場合には。
  65. 栗村和夫

    ○栗村公述人 私たちも地元で、主として仙鉄局長とかそのサイドの接触は極めて緊密にありますし、三塚さんの地元でもありますからある程度深部に触れたお話も伺っていますが、今までの公社のあり方では、いろいろな工夫をしようにも、収益を総合的に上げるための工夫をしようにもできなかったのだが、これは本当にぜひやりたいんだ、それは一社化でも、さっき先生のお話があったように、支社とか、北海道なら支社というのでしょうが、あるいは地方局ですね。こういうところに相当弾力的な機能を与えるとか、場合によっては第三セクター的なものが組み込まれていってもいいと私は思うのですね、画一的なものでなくて。そういうことで、一社化でもいいから地方地方に合ったオリジナルな経費の工夫といいますか、できるんじゃないでしょうか。
  66. 久間章生

    ○久間委員 こういうことをお尋ねして恐縮ですけれども、先ほどの高野公述人さんのお話でも、かつて三十二年に支社制度をしいたことがある、ところがなかなかそれがうまくいかなかったというような話をされましたけれども、どうも私が思うに、日本人の場合、何でもかんでもすぐトップを出せ、交渉でもすぐトップを出してこいというようなことがあるように、支社制度に権限を持たせてもどうしても東京に東京にとすべての判断を仰ぐような、そういう傾向があるんじゃないかと思うのです。  そうすると、今まで町長さんをなすっておられまして、いろいろな話で仙台の局長のところに行って済むように思ったことでも、やはり東京に足を運ばれたこともあるんじゃないかという気もしますけれども、どうしてもそういうふうに中央へ中央へと何でも判断を仰ぐような、そういう傾向が日本人にあるんじゃないでしょうか。そういうところにも地域分割した方がスムーズにいくんじゃないかという話になったような気もするのですけれども、その点はどうでしょうか。
  67. 栗村和夫

    ○栗村公述人 町長を二十年やってきていますのでそういうふうに飼いならされていますというか、陳情の仕組みですね。そういうことは否定はいたしません。やはり何となく、例えば仙鉄の営業部長がまあ大丈夫ですよ、多小ダイヤを増発しますからと言っても、本社に一回足を運んで、行くことないですよと言われても何か行かなければ落ちつかないというようなことは確かにございます。それはまた、上手に陳情していれば、なるほど地方にはこんな小さなことでも相当のウエートの大きい悩みになっているんだなとか、理解していただくということもあると思いますが、それは、今のお話は否定いたしません。
  68. 久間章生

    ○久間委員 それから、時間もないようですから、廣岡公述人さんにお尋ねしたいと思います。  廣岡先生の話でも、健全経営をやっていくためにも、今のような政府の責任と国鉄の責任が一緒になったような形ではなくて、やはり行政と経営をきちっとすべきという意味では株式会社にする、民営化するについては同意見だというようなお話でございました。  ただ意見が違うのは、いわゆる分割すると幹線鉄道分割されることによって航空機その他との競争力において負けるんだ、これが一つの決め手みたいなお話でございますけれども、もう今御承知のとおり、五百キロ以上については飛行機の時代にほとんど国民のニーズが移ってしまっております。そうしますと、仙台から静岡あたりまで行くには飛行機と競争することになるかもしれませんが、その場合は新幹線を乗り継いで今でも行っているわけなんですね。これが会社が三分割されたことによってそういうお客さんたちが行けなくなるかというと、私は今度の案を見ておっても、そういうことについてはお互いがむしろ競争して、鉄道にお客をとろうとするならば、飛行機よりも有利な方法を講ずるということでお互い三会社が協力するのではないか、また協力をさせなければならない。そういうことによってその辺はうまく、仙台から静岡まで新幹線で乗り継いでいく従来のパターンあるいはまた特急列車で行くというパターンもちゃんと残るようになっているのじゃないかと思いますけれども、その辺はいかがでしようか。
  69. 廣岡治哉

    廣岡公述人 お答えします。  現在は一つ企業がこれから分かれて出発しようということですからそういう連帯感があるわけですが、これが別々の会社として長年経営するということになりますと、どうしてもこれまでであれば内部の取引であったものが外部の取引になって外部効果ということになりますので、そこでの費用の負担とか列車編成上の技術的な問題等でいろいろディスカレッジされる点が出てくる。それはヨーロッパの例でも、数十年という歴史を経てだんだんに規格を統一したりサービス促進をやってきているわけですけれども、バリアを非常にたくさん越えなければならなかったわけですね。そういう点で、やはり一社の方がやりやすいということがある。  それから、鉄道が高速道路や飛行機と競争する場合のことですが、私自身は大体鉄道を利用して三時間というふうに時間的な限度を考えているわけですが、実はイギリスの国鉄のマーケットサーベイで明らかになったことは、鉄道の乗車時間と費用だけではなくて、航空機を選択する非常に大きな因子になっているのがアクセシビリティー、要するに空港へ行くのが近いか鉄道の駅へ行くのが近いか、便利かということなんですね。ヒースローの空港に近いところにいる人はユーストンまでなかなか行きたがらないというようなことがある。  そういったことを考えますと、鉄道というのはいずれにしても攻撃される側にいるわけですから、守っていくためには鉄道に来てくれる人を最大限に引きつけられるようなマーケティングというものを考えなければならぬ。そのためには、仙台から静岡というのは割合から見れば小さいかもしれませんけれども、そういった旅客も大事にしていかなければならぬ。それは仙台—静岡だけではなくて、およそ三時間程度でつなげられる都市間の列車サービスというものは最大限に開発していくという体制が必要だ。そのためには幹線鉄道が一体の方がいいんじゃないかというのが私の意見でございます。
  70. 久間章生

    ○久間委員 それから最後にもう一点廣岡公述人にお尋ねしますけれども、先ほどの話の中で、いわゆる外部の資本を資本参加させる方法も考えていいんじゃないかというお話でございますが、今のような膨大な負債がありますときに、これで民間資本に参加してくれといってもなかなかできない。とりあえず長期債務について政府が責任を持って処理する、そのかわり民営化して各鉄道会社は頑張ってくれというのが今度の法案でございまして、それをしかも三分割してあるいは六分割して競い合わせよう。そうした暁に、みんなが参加するというような気持ちになったときに民間に株式を放出するというようなことになってくるわけで、それは結局先生のおっしゃる民間資本が参加することと同じじゃないかという気がしますけれども、基本的に何か違うのかどうか。
  71. 廣岡治哉

    廣岡公述人 新しく出発する国鉄については、鉄道自体の業務については今申し上げたような方向で考えているわけですが、そのほかに、どうしても鉄道だけでは成長に限界がある。成長に限界があれば当然費用を十分にペイすることができない。経営の多角化というのは必然的だと思うのですね。経営を多角化して新しい事業分野に進出していくという場合に、従来の国鉄が持っているノーハウだけではだめだ。それから国鉄あるいは財政投融資計画の中で賄える資金だけでは不足するというような事態が当然予想できるわけですね。そういう場合に民間の資本や民間のノーハウを活用する道というのは真剣に研究する必要があるだろう。それは、株式を売却するというよりは、いろいろな形態で、例えばジョイントベンチャーをどこそこで設立するというような形も含めてあり得るわけなんですね。  民間に株式を売却するといっても、成長産業でプロフィタブルな、利益が上がる企業であればこれはみんなが飛びつくわけですけれども、そうでなければ、不動産に魅力でもなければ株式を買わないわけであります。不動産に魅力があって株式を買うということでは、これまた国民資産の売却という点で問題が出てくるように思います。そういう点は今後十分研究されてしかるべきテーマではないかと思います。
  72. 久間章生

    ○久間委員 終わります。
  73. 細田吉藏

    細田委員長 小林恒人君。
  74. 小林恒人

    ○小林委員 昨日来多くの皆さんから数多くの非常に多岐にわたる分野からの御指摘やら公述を賜りました。きょうはまたお三人の皆さん方に大変お忙しいにもかかわらずおいでをいただきまして、幅広く意見を聞かしていただきますことに心から感謝を申し上げたいと思います。  既に先ほどそれぞれ御意見を賜っておりますので、いま少しく陳述をされた内容を中心にして御意見を賜っておきたいと思うのであります。  小牛田の町長さんは、長い間地方自治体で首長をやられながら、地域の課題というものと全国の統一課題、こういったものとを総合的に御判断をされて町民、住民の皆さんの期待にこたえていくという、そんな意味では数多くの御苦労をされてきたんだと思いますが、この点について敬意を表すると同時に、今回国鉄分割をする、民営化を図っていく、こういう視点での御指摘の中で、我が党が提起をいたしております一社案というのは賛成だよという御意見をいただいておりまして、感謝を申し上げているのであります。  電話にしても水や空気や太陽やあらゆる分野を見ても、人間ひとしく平等であるということは大変重要なことなのでありまして、その意味では、どうも分割をされることになれば地域格差運賃の拡大につながっていくのではないかという御指摘がありました。実は私どももその点について大変危惧の念を持っているのでありますけれども、現行の国鉄が実施をいたしております運賃体系の中で格差運賃が一部導入をされているわけですね。この一部導入をされていることに対する住民皆さんの反応というものはどのような形であらわれているのかということについて、できればお聞かせをいただきたいと思うのです。
  75. 栗村和夫

    ○栗村公述人 ちょっと難しいですが、値上げが発表になって、やはり地方ローカル線はアップ率高いぞということになったときに、暗い気持ちになりますね。そうしているうちに、そういうことが実施されてしまうと、ちょうどサラリーマンが引き去りで源泉徴収されるとか、たばこも百五十円から二百円になったとき、そのときは買いだめするような心理になるが、後は間もなくなれてしまう、こういうことがありますから、地方はうんと高いんだぞ、山手線ならこれが百四十円で乗れるところ、うちの方は二百十円だとか、例えばの話ですが、そういうような形での議論というのは率直に言って余り聞きません。聞きませんが、地方がアップ率が高くなっていったとき、やはり地方というのはこういうとき損なんだなとか、そういうようなことではちょっと湿っぽい空気にはなりますけれどもね。だからいいということではなかろう、こう私は思うわけです。  今程度の格差運賃というものは、あるいは将来ともある程度は弾力的運営の中で必要なのかもしれませんが、基本的にはやはりキロ数掛ける単価で出すというようなことが仕組みとして残っていきませんと、工場誘致だあるいは地域の活性化だといっても、国鉄はそんなに軽い存在でありませんから、格差がない方がいい。そうするとみんな明るい気持ちで地域開発に取り組むとか、あえて言えば、ちょっと抽象的な話ですが、そんな感じであります。
  76. 小林恒人

    ○小林委員 もう一つお伺いをしておきたいのですが、在来線の活用というのは積極利用の方針を出すべきであってというお話を伺いました。私も同感なんですけれども、特に遊休地の利用、例えば貨物跡地なんかが特に大きいと思いますし、かつて貨物を扱っていたホーム跡地なども各所に点在をいたしているわけですけれども、例えば自治体という立場から見た駅周辺の遊休地の活用などについて、具体的にどういう利用方法があるとお考えでしょうか。
  77. 栗村和夫

    ○栗村公述人 所変われば品変わるだと思いますね。その地域に合ったような活用の仕方ですが、一つは、何といっても道路を広くするとかミニ公園をつくるとか駐輪場をとるとか、駐車場まではちょっと無理ですから、それが最優先だと思います。これは普遍的な課題だと思いますね、それは駅周辺の環境整備という意味で。そういう土台づくりを行政がやったときに、それじゃそこに商店街をちょっとつくってみようかとか、上野のアメ横に似たようなものをやろうかとか、これは余りかたいこと言わずどんどん民間の投資を受け入れる、こういう姿勢でいいと思います。これが一つ。  二つ目は、住宅の張りつけだと思います。中高層の集合住宅、アパートですね。公団がいいかどうかということになってきますが。そして駅まで歩いて三分とかなんかということになりますと、あえて盛岡になくても、北福岡に仮にあっても、仙台になくて仙台の北の石越あたりにそういうものがあっても、一時間ぐらいの見当で通えるなら、集合アパートというものはそういうような張りつけをすることが二つ目だ。それが一番無難なというかリスクの少ない手だてのように思いますね。そして、住民が住みつけば、幼稚園だ、ごみの処理だ、し尿の処理だと金はかかりますけれども、それ以上に活性化していきますから、定住を図るという構想からすればそのアパートが出てくるのではないか、こう思います。  それからもう一つは、多少規模の大きいものでありましたら、それは文部省の所管を言うようになりますが、図書館とか、ミニ集会所とか、多少のコンサートぐらいやれるような、そういうものを張りつける手もありそうに思うのですね。  そういうものをやるときは、国鉄職員の人の再就職の道というのは相当厳しくて大変なんですね、ですから、第三セクターでそういうものを総合してやって、行政の方は道路を整備する、あるいは図書館をつくる、ミニホールをつくるというところに何か企業的な発想を持って、雇用の場をやはり地元で働けるように確保していったらどうか。タイプとしては、いろいろ私たちも、小牛田は割と二・七ヘクタールぐらいの開放になるわけでして、大体国会審議が進んでその場所も特定して教えていただけるようになりましたので、本格的に今練っていますが、うちの町なら鉄道遊園のようなものをひとつつくってレジャー施設をやったらどうかなとか、こんなことをいろいろ仙鉄局の担当者と練ったりなんかしております。  やはり所変われば品変わるですから、県都の所在地に近いとか、地方中心都市に近いとか、どのくらいの距離があるとか、そういうことで決まっていくのではないでしょうか。そして、幼稚園とか図書館とかが整備されますと企業は進出してくるものなんです。そういうことは非常に重要な要件になっていまして、そういうことの活用もあるのではないか、こう思います。
  78. 小林恒人

    ○小林委員 ありがとうございました。  それから、高野先生の公述の中で私は大変感銘を受けたのは、駅は町の文化の窓口だというお話がございました。ただ、残念なのは、これはかつての話であって、最近はそうなっておらない、こういうことなんであります。よって、駅そのものはさらに活性化を図る必要がある。小牛田の町長さんのお話も、そこは非常に重要なところで、交通機関を中心とした町づくりというものは今日までも進められてこられたし、既に線路が存在をするという限りにおいては、どう有効活用していくかという大事なことなんだと思っているわけです。  そこで、こういったベースがありながら、高野、廣岡両先生ともどもに公社制度について言及をされているわけです。明らかにお二人とも、公社制度である限り自由な決定はできないということを含めて、支社制度も失敗をした、こういうお話がありました。廣岡先生の方からは、逆に、公社制度そのものについては評価されてしかるべきものであって、運用そのもので問題があったのではないかという御意見のように伺いましたけれども、鉄道そのものは、現行体制であったとしても、あるいは民営化をされたとしても、公的な交通機関であることについては変わりはないわけでありまして、その意味ではいましばらく公社制度に限定をして、ちょっと私自身が聞きそびれたのかもしれませんけれども、内容的に問題点があった部分についてお知らせをいただきたいと思いますし、それから、廣岡先生については、公社制度そのものの評価でき得る部分について御意見を聞かしていただきたいと思います。
  79. 高野邦彦

    ○高野公述人 お答え申し上げます。  公社制度は、形の上ではいろいろな形があり得る、あり得ただろうと思いますけれども、少なくとも国鉄に関しましては、まず第一に経営責任が大変に不明確であったということであります。つまり、総裁が決定できる権限が大変に少なかった。かつて、よく私聞かされた経営者からの話なんですけれども、経営者国鉄の総裁に推薦された方がその推薦された方から大変にしかられたというふうなことを聞いております。経営者のやるべきことは一体何なんだ、これができないのではないかというふうなことで、その方はお断りになったというお話を聞かされておりますけれども、一つはその経営責任の所在が大変に不明確である。例えば鉄道の最も基本的な経営の要素であります運賃、賃金、それから投資、そういった決定が自由にできなかったということに最大の問題点があったのではないかと思います。それが第一点。  それから第二点は、それらが行政あるいは政治を通じて決定されるということのためにタイミングよく決定することができなかった、つまり常におくれて決定されてきた、その間に相当の時間的なおくれがやむなく発生したというふうなことがもう一点挙げられるかと思います。
  80. 廣岡治哉

    廣岡公述人 お答えします。  公社制度の評価できる部分というのは、公共的な目的を民間企業的な効率的経営でもって達成しよう、つまり利潤原則であれば企業の行動原理というのは明確であるわけですが、利潤原理でないものをしかし効率的経営を確保するという点で、公社制度というのは理念的に評価できるところがあったと思うのです。  そこで、公社制度にとって非常に本質的に重要な部分というのは、経営の自主性の確保あるいは責任の行政と経営との分離と明確化ということであろうと思うのです。ところが、公共交通機関、特に鉄道の経営についていいますと、ヨーロッパやイギリスの場合には一九五〇年代後半から自動車、航空機との競争が激しくなって、財政的な収支均衡——公社制度は同時に収支均衡原則というのを持っておったわけです。収支均衡基準として企業は行動するわけですが、それが構造変化によって確保できなくなった。その際に全く自由に経営を拡大したり多角化したりあるいは不採算な業務を廃止したりできれば収支均衡基準でもって企業は行動できるわけですが、公共性ということで当然鉄道の沿線の産業あるいは社会生活を守るという点から自由な行動というのは制限される。そこに公社制度の矛盾もあったと思う。しかし、イギリスの国鉄の場合には一九六〇年法で非常に自由化されたわけですね。それはそういう競争条件に対応させようということであった。ところが、日本の国鉄公社制度というのは、公社というのは名前だけでありまして、経営の自主性は最初から全くない。運賃でさえも国会法律で決めるというような、要するに全く独占を前提とした制度であったわけですから、これはもっと早く改められるべきであったろうというふうに思います。  ですから、日本の公社制度の評価できる部分というのは、本来の公社でなかったわけですから、これはもうないというふうに言った方がいいのじゃないか。むしろドイツの連邦鉄道のように官庁企業なら官庁企業であった方が政府の責任が明確であった。今ドイツの連邦鉄道では新幹線を公共投資で進めております。これは政府が責任を持つということなんですね。日本は、投資は政府で決定するわけですけれども、責任は国鉄に負わせるわけです。ところが国鉄はそれを賄うだけの独占的な地位にありませんから、矛盾は結局借金の累積という形で泥沼状態に入った、こういうことだと思います。
  81. 小林恒人

    ○小林委員 目下国会の中で、分割民営を主軸とした法案と、私どもが提起をいたしております一社体制で民営手法を導入してという三法案と、全部で十一の法律案を提起をして論戦が闘わされているわけです。特に、政府が提起をしている法律案の中で、国鉄の赤字論、こういったものは大変大きなウエートを占めているわけです。  廣岡先生にちょっとお伺いしておきたいのですけれども、先生は交通学界の中でも非常に幅広く交通問題を研究されてきて、私も幾つか論文を読ませていただいておりますが、特にアメリカの鉄道会社更生、こういったものについて日本の今の国鉄の再建問題と対比をして参考になる御意見がありましたら幾つかお聞かせをいただきたいと思います。
  82. 廣岡治哉

    廣岡公述人 大変私の弱いところをつかれて困るのですが、法律には全く弱いわけですが、私自身は破産法専攻の早稲田大学の先生でアメリカの鉄道の更生法を専門に研究して帰国された方に実は教えていただいたわけですけれども、日本の会社更生法というのはアメリカの会社更生法をモデルにして戦後つくられたということのようです。アメリカの会社更生法というのはもともと鉄道の破産に基づく会社更生の必要から生まれたということであります。というのは、鉄道というのは、アメリカの場合民間鉄道会社でありますけれども、鉄道が破産したからといって普通の民間企業と同じように扱うわけにいかない。というのは、その鉄道に依存して地域の産業や社会生活が成り立っておりますから、できるだけ鉄道を更生させることが社会的に必要であるということなんですね。  そういったことから、鉄道の破産救済の必要から会社更生法というのは発達してきたわけですが、日本の国鉄の場合にこれは破産に該当するのかどうかということを法律学者に聞きましたら、どうも日本の国鉄は破産能力がないというのが二人の法律学者の見解です。ですから、亀井委員長が破産状態にあるとおっしゃるのは、あくまで比喩的なものにすぎない、破産とは言えないというふうに思います。  ただ、アメリカの会社更生の場合にも、鉄道で働いている従業員あるいは労働組合というのは利害関係者として当然会社更生計画に対して申し立てができるというのですか、要するに管財人は従業員の意見を聞かなければならぬわけですね。ところが、今度の日本の国鉄の再建の手続を見てみますと、その辺が私には非常に納得できない点があるように思うのです。その点が労使関係の不必要な混乱を招いているのではないか。これが今後影響を与えることを非常に懸念しているわけです。  以上、私の気づいた点を申し上げました。
  83. 小林恒人

    ○小林委員 高野先生にちょっとお伺いをしたいのですが、言うまでもなく、国が責任を持って交通政策をどう組み立てるかというのは非常に重要な事柄でございまして、運輸省も二度にわたって総合交通体系を確立をするために運政審答申を出しているわけです。ただ、八一年答申というのは、臨調の議論をも踏まえて七一年答申とは少しく変わりましたが、総合的な交通の枠組みを行政責任においてどこまで詰めていくか、そういう重要性について説かれていることは論をまたないのでありますけれども、独算制を強いられる、国がどこまで担保をすればいいのかという課題と現行の国鉄の赤字状態、こういったもの、ここらを勘案をして、行政責任における交通政策というのはどの辺までのエリアを指すのかという点についてお聞かせをいただきたいと思うのです。
  84. 高野邦彦

    ○高野公述人 大変難しい質問でございますけれども、交通体系における行政責任の範囲というふうに受け取らせていただきまして考えますと、実は、公共性ということのために行政責任は必要以上に拡大する傾向が非常に強いのではないかということが一つ言えると思います。同じ鉄道でありましても、例えば民間鉄道というものもやはりそれなりの公共性を持っていると思いますので、私は、民間鉄道に近い状態まで行政責任を後退させるべきだというふうな感じを実は持っております。  ただ国鉄の場合は、今回の改革案その他で負債の処理あるいは従業員の諸問題等々、いわば国鉄自体の大きな問題がありますので、ここは十分にこれまでの行政、あるいは国鉄当事者も含めまして、いわば国鉄の赤字増大に貢献したと申しましょうか、影響があった程度においてはその責任というものはやはりとる必要があると思いますけれども、基本的には、できるだけ交通政策の中では民鉄に近いところまで行政の範囲というものを後退させる方が、今の交通需要の多様化に対してより適切な対応になるのではないかというふうに私は考えております。  大変抽象的な形で失礼でございますけれども、以上気がついたところを申し上げます。
  85. 小林恒人

    ○小林委員 総合交通体系といいますか政策といいますか、ここら辺は非常に総花的なものだという言い方も一面であるのでありますけれども、逆に、直接国民生活と関連するところ極めて大なるものがある部分もあるわけでありまして、その点では先生の御意見、そのように伺わせていただきます。  そこで、公社制度の中でも明らかにされた独算制を求められた交通機関、国鉄というものなんですけれども、盛んに言われるのは、競争が大変激しくなってきた、こういう中で、学問的には競争的公企業のあり方なんというものがあるのでしょうけれども、競争的な公企業というのは、国鉄に限らず、民間鉄道あるいはバス、フェリーをも含めて幅広く存在をすると考えるのです。当面、国鉄そのものを競争的公企業という視点から眺めた場合、最も望ましい経営形態というものはどのように両先生はお考えなのか、高野先生と廣岡先生にお伺いをしたいと思います。
  86. 高野邦彦

    ○高野公述人 お答え申し上げます。  現在国鉄が担っている中心的な役割というのは、やはり大都市の交通網のエリアと、それから先ほど来御指摘がありましたいわゆる都市間輸送、これは九州から北海道まで乗り継ぐというふうな、国鉄を利用して乗り継いで行かれるという方は大変に少なくなってまいります。したがいまして、ここでは事業体として成立する国鉄の形と、それからもう一つは、先ほどの政策あるいは行政との絡みで、これからの日本全体の地域計画なりなんなりをどのように樹立していくかということと、二つの面があると思います。  今の御質問は、前者の国鉄事業形態ということになると思われますので、私は、中距離都市間の交通を含むエリアで、そのエリアについて自主的に経営能力が発揮できる経営形態というものが、やはり一番ベターではないかというふうに考えております。  例えば、政府提案の東日本会社あるいは西日本会社それぞれは、その内部での流動性というものは非常に高くて、その両地域を、両会社をまたがる交通量が、その内部の交通量に比べまして大変に少ないという、そういう状況もあると思われますので、事業体としては、そういう域内流動を中心にした鉄道のあり方ということから見まして、分割した後でのその地域需要に合う民営会社というふうなのがやはり理想的な形というふうに考えております。
  87. 廣岡治哉

    廣岡公述人 競争的公企業としての国鉄の望ましい形態ということでありますが、当面は国有の株式会社で、一本の株式会社で出発して、経営の自主性を十分に与える。そこで経営の実践の中で、経営の自主性において組織については柔軟に考えるのがよろしかろうというのが私の判断であったわけですが、事態は民営分割ということで非常に進んでおりますので、今こういうことを言っても非現実的に聞こえるかもしれませんが、私としてはまず一本の株式会社として出発して、特に幹線網の一体的経営を確保しながら、各地域ごとにローカル線やバスについては子会社を組織していくということで、それぞれの地域の実情に合った経営が可能になるのではなかろうか。  それからもう一つは、関連事業その他への、都市地域開発事業への進出、これを自由化していく。そのことによって鉄道需要を培養することもできるし、また成長分野への進出ということが可能になるだろう。これは恐らく別会社形式ということになるのであろうと思う。NTTがデータ通信事業部を別会社にするように聞いています。別会社をNTTはたくさんつくっていくと思いますけれども、そういうことはもともと民間企業は普通にやっていることでありまして、事業の分野、地域に応じてそういう適切な組織をつくっていけばいいわけです。本来、政治的にこういう組織でなければならぬというふうにやると、企業経営の実態には合わなくなるだろうというふうに思います。  問題は、ですから鉄道をどのように経営するかという戦略、経営戦略を経営者が立てる。その経営戦略に応じてふさわしい経営組織をつくり出していく。その点については、やはり国鉄で働いている人が十分に環境の変化を自覚して、どのように鉄道というものを維持し発展させなければならないかということについて意識を深めるということに立脚して、それは可能になっていくということじゃないかというふうに考えております。
  88. 小林恒人

    ○小林委員 大変懇切丁寧に公述を賜りましたことに心から感謝申し上げて、御質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  89. 細田吉藏

  90. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 本日は大変にお忙しい中、熱心な御意見を賜りまして心から御礼を申し上げます。  最初に、三人の公述人の皆様に御質問をさせていただきます。  先ほどからしばしばお話の出ております総合交通体系と申しますか、そういうのがいまだに政府の中から出てこないのは大変遺憾なわけでございますけれども、そういった大きな意味での日本の国をネットワークする交通体系というものを考える中で、現在の国鉄の役割と申しますか位置づけと申しますか、国鉄のような極めて公共性の高い鉄道事業がどういった意味合いを持つのか、三人の公述人の皆さんがどういうような御認識であるのかということを初めに伺っておきたいと思います。
  91. 栗村和夫

    ○栗村公述人 冒頭の公述でも申し述べましたが、現在の国鉄が、この後経営形態移行されるにしても、これはやはり動脈としてきちっと基本的に中心に据えられるべきだ、こういうふうに思います。利用者の数それから地域との密着度、こういうものからしますと、飛行機やフェリーの比ではないと私は思います。あるいは、トラックとかタクシーとかマイカーも含めたそういうものの比較の中においても、国鉄鉄道というものは最も大切な動脈として位置づけた上で総合交通体系は練られるべきではなかろうか。特に北海道から、沖縄には鉄道はありませんが、鹿児島までの列島の長さからすれば、なおさら日本の場合特にということになるのではなかろうか、こう思っております。
  92. 高野邦彦

    ○高野公述人 私は、国鉄事業体としてのあり方ということと、それから国の総合交通政策ということに関しては、何というか、今むしろ模索の段階に入っているんじゃないかなというふうに考えております。ということは、国鉄が我が国のあらゆる意味で流通、物流、人、物を含めました根幹であった時代というのは、我が国の工業化、特に重工業を中心とした工業化にとって必要不可欠であり、また国鉄によって我が国の産業、工業化というのが大きく進んだ、それによって国民所得の増大がもたらされたという意味で、非常に重要な役割を持っていたというふうに考えております。  しかし、時代はそれから大きく変わってきている。マイカーの普及にもありますように、あるいは航空機利用、それから船舶その他の問題等々、さまざまな国鉄に対する競合機関がたくさん出てきているということでございますから、恐らく列島を貫く長距離を考えた国鉄というものは、その役割がかつての時代に比べてやはり相当低下していると言わざるを得ないというふうに思います。したがいまして、国鉄の役割というのは、先ほど来申し上げました中都市間、主要都市間の主要交通網であるし、それと大都市とを結ぶ重要な機関であるというふうには思っております。  ただ、公共性ということと関連して一つだけ申し上げたいのは、事業体財政的な基礎というものが、疑いのない、かなり確固たるものでない限り、十分な公共性というものは発揮できないのではないかというふうに私は考えております。それだけ申し上げさせていただきます。
  93. 廣岡治哉

    廣岡公述人 お答えします。  従来といいますか、かつての国鉄の公共性というのは、独占性と公益性、日常必需性というようなものが結合したものであったわけですが、今日においては、代替性が非常に低い独占性の強いものと、それから独占性が非常に低下して代替的な交通手段の選択が可能なものと出てまいっております。都市間とか貨物輸送というのは代替交通機関が非常に発達した、そういう意味で競争性の強い分野であります。これらの輸送需要においては、需要の価格弾力性あるいはサービス弾力性が非常に高いわけですから、ほかしておいても国鉄がむやみに高い運賃を取ったりサービスを悪化させたりしますと、旅客が離れていくわけであります。ところが東京の通勤輸送のように、サービスが悪くても運賃が高くても旅客国鉄を利用する以外に選択を持たないというところは、ほかしておけば最大限に高い運賃を取り、サービスの運行回数は最小限に抑えよう、そのことによって収益を最大化する。で、競争的市場においてサービスを改善し、運賃を競争運賃にするということが起こりかねないわけですね。そういう意味では、なお独占的な力を持っているところは、公益的な規制がどうしても必要として残るだろうというふうに思うのです。     〔委員長退席、佐藤(守)委員長代理着席〕  ですから、そういった通勤通学輸送の分野については、ヨーロッパ各国の場合には、一定の運賃で一定の運行回数のサービスを国鉄に提供させる、そのかわりそれによってこうむる国鉄の損失については補償するという、いわゆる契約システムをとっているわけです。日本の場合には、その点は従来は真剣に検討されたことがなかった。  そこで、総合交通体系という場合に、かつて昭和四十五年当時総合交通体系が問題になったのは、自動車重量税の配分をめぐって、これを道路と公共交通機関にいかに配分するかということをめぐってその論議が起こったわけですが、本来は計画的に調整するか自由な競争にゆだねるかということですが、もちろん計画に全面的に依存して体系を決定することは不可能で、それは非常に資源の配分をゆがめる可能性があるので、そこには競争のメリットというものを十分活用する必要がある。しかし、自由競争にのみゆだねることはできない。そこで、公正な競争条件というものをいかにして整備するかということが総合交通体系論では非常に重要ではないかというふうに考えます。
  94. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 具体的に鉄道事業に対する国の責任と助成のあり方でございますけれども、いわゆるほかの交通網、例えば道路、あるいは港湾、あるいは空港の整備等につきましては、これはやはり国の一般財源あるいは特別会計等で仕事をしてきたわけでございますが、国鉄に対しては借金という形でやってきまして、その結果今日二十五兆四千億円ですか、長期債務がたまっちゃった。これが国鉄破綻原因でございまして、これをどうするかという議論になっているわけでございますが、今後も鉄道事業に対して国はどういう責任と助成を果たしていくとお考えであるのか、この辺を高野さんと廣岡さんにお伺いしたいと思います。
  95. 高野邦彦

    ○高野公述人 鉄道輸送に対する国の政策、責任ということですけれども、これは一方では今大変変化しているという状況があるのと、基本的には鉄道特性というものを十分に生かした形が最も望まれると思います。例えば大都市圏の通勤、これらに関しては確かにある程度の規制もございますけれども、少なくともその周辺における競争条件というものが多くの場合出てまいりましたので、競争条件がない、先ほどの廣岡先生の御指摘のように、少なくとも独占的な状況というもので、それ以外に選択のしようがない交通機関に対するある種の規制というものはあると思います。  これはしかし、新しく変化する、改革された新しい会社について同様なことができるかどうかは必ずしもはっきりいたしませんけれども、少なくとも現段階では極めて独占性の強い、しかし他に選択の余地がない交通機関に関してはやはりある種の規制というものが必要であるだろう。国の鉄道に関する規制というものは、できればやはり私は、今までの過大な要請に対してできるだけ少なくしていくという方向が望まれるというふうに思います。     〔佐藤(守)委員長代理退席、委員長着席〕
  96. 廣岡治哉

    廣岡公述人 お答えします。  私は、非常に重要なのは、効率的経営に徹するということと同時に、やはり経営の革新、サービスの革新が活発に起こるような企業体にしていくということが一番重要ではないかというふうに思っているわけです。そういう観点でいきますと、当然、収支均衡義務を課して経営努力を要求するわけですから、これに反するようなものについては、国が要求する場合には当然国は公共的に補償しなければならない。  あるいは、具体的な例で申し上げますと、青函トンネルが最初発想されたときは戦争中だったと思いますけれども、ともかく鉄道しかない時代、あるいは洞爺丸が沈んで、それで安全な輸送機関が欲しい、北海道開発のためにも青函トンネルが欲しいというようなことでできたわけです。ところが、青函トンネルを国鉄の負担で資本費をカバーするということになりますと、到底ペイしない。これは環境の変化もありますし、本州の幹線の収益力そのものが低下してきているということもあるわけでして、そういう場合に、例えば青函トンネルは国の公共施設として保有して、国鉄にはその利用によって受ける便益の範囲内で利用料を支払わせるというふうな制度を講じる。  あるいは、本四架橋の場合にも同じですけれども、やはり鉄道というものは二十一世紀まで必要だと私は思うので、道路だけでいいということにはならない。鉄道とか道路とか航空という、そういった複線的な骨格交通網というものを日本は持たざるを得ない。それがいろいろな意味合いで、安全保障も含めて必要だと思うのですけれども、その際に鉄道の自立経営というものを尊重していくことが必要なんであって、それに反するようなものは一切国の責任、それとも国が責任をとれないものは要求しないという原則を確立していただきたいと思います。
  97. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 地方交通線の問題でございますけれども、先ほど栗村公述人が地元の生の声と申しますか、切実な声を伝えていただいたわけでございますが、私も四国でございまして、ある研究グループが出した昭和五十八年度の鉄道地図と「「分割民営化」後の鉄道地図」というものを見てみますと、四国は全く鉄道がなくなるのではないかというふうな図面が出ているわけですね。昭和五十八年には日本列島の形が鉄道の形であらわれているわけでございますが、分割民営された後は地方は幹線だけしか残らなくて、いわゆる地方交通線は全くなくなるんではないか、四国などは一本も鉄道は走らなくなるのではないかというふうな、これはある研究グループの方のお考えでございますけれども、確かに今度の分割民営の論議の中では、私ども三島の立場からいいますと、分割民営はすなわち赤字ローカル線の切り捨てに直結をする、あるいは運賃の値上げに直結をする、こういうふうな心配をたくさん持っているわけです。四国の場合は毎年六%の値上げということでございまして、本州は三%という話でございますので、大体五年たったらその格差が一割、一五%ぐらいですか、それから十年たったら三〇%ぐらい高い料金になる、こういうことが推察されるわけですね。  栗村さんにお伺いしたいわけですけれども、運賃の値上げというものと鉄道に対する客離れ現象ですね、これはある意味で相関関係があるのではないか、こういうふうな危惧を持っているわけです。運賃を値上げすればするほどお客が減って、さらに収支の見通しが悪くなるというふうなことになりまして、最終的には鉄道の廃止につながっていくという心配があるわけでございますが、その辺の住民感情と申しますか、地方の皆さんの考え方というものはどのように認識をされますか、少し伺いたいと思います。
  98. 栗村和夫

    ○栗村公述人 どういう経済原理でも値上げになれば客離れしていく、値上げになればたばこの喫煙者も減っていく、こういうことは直接的な要因として結びついていくとは思いますね。ですが、それは前提としてダイヤが不便なところでの値上げですから、それはそういうものとの、質、量の原則ではありませんが、私は、質掛ける量のような格好で料金値上げというものを理解していく必要があると思うのですね。ですから、それに歯どめをかけるには、ダイヤを便利にしてやはり鉄道の方が便利だぞということにすべきだ、こういうふうに思います。  単純な数学の計算のような話をすれば値上げイコール客離れということでしょうが、私は、そういう観点からだけでなしに、バスよりは少なくとも安いです。バスは高いけれども軒先まで停留所がいろんなところにあるという利便さが一つはあります。やはり値上げになれば客離れするということの要素もありますが、不便なためにちょっと間延びして、二時間も待たなくちゃ汽車が来ないというようなことで客離れしていくという要素とかみ合っていくのでなかろうか。じゃ、運賃値上げしなければ汽車の利用者が多いということには、一〇〇%なっていかないと思います。  ちょっとくどくなりましたけれども、おわかりいただけますかどうか、そういうような認識でおります。
  99. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 確かに、鉄道事業とその地方自治体の皆さんとのお話し合いというのが今後は大変重大な課題になると思うのですね。どういうふうに工夫をしていくかということもありますし、先ほどの駅というものを情報のネットワークにする、あるいは文化のネットワークにするというお話でございますが、これは自治体とどういうふうなお話し合いが具体的にできるかという問題があるわけですが、現状はやはり余剰人員を削るということから無人化になっている駅が多いわけですね。駅にだれもいない。あるところによりますと、何か非行のたまり場になっているような状態である、こういうふうな心配もあるようでございますが、こういう駅の活性化、ローカル線の活性化等につきまして、どうでしょうか、分割民営されたという前提のもとで、町長さんとして自信はおありですか、いかがでしょう。
  100. 栗村和夫

    ○栗村公述人 受けとめる側というか、駅を持っている町の町長だということ、それからもうちょっと離れて、別の町よりも相当不便なところに駅を持っている町長のつぶやきとか、そういうものをちょっと総合的にお話ししますと、やればやれるところとペンペン草が生えてしまうなというところと二つだ、こう思うのですね。その展望については、観光地を背後地に持っていれば、今第三次産業のウエートというのは非常に高くなっていますから、これはいろいろ工夫のしようがへんぴなところでも出てきそうに思います。  それから、無人化にどんどんなっているわけですけれども、そのために駅舎がいたずら火で火事なんかにならぬように鉄筋コンクリートの小さな駅舎に建てかえをしているとか、いろいろございますが、大方はやっぱり駅前というのはその町にとっては一番価値のあるところですから、大いにここを活用してということの発想は、開放されるところが特定されてきますと、次々に出てきそうな感じはしております。
  101. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 先ほど高野公述人から、国鉄の改革に伴う問題について、極めて常識的、公平であるというお話を最後に念を押されたわけでございますが、私、これを伺っておりまして、これはある意味では用地の売却のことも頭の上に置かれての発言ではなかったかなという推察をしたわけでございます。  御承知のとおりでございますが、この用地の売却については大変いろいろな議論があります。運輸省は、一般競争入札にしてできるだけ高く売却をする、そういうお話でございますし、あるいは建設省、国土庁あたりは、地価の高騰を防ぐ意味で、随意契約で地方公共団体に公共の目的のものに限るという条件はつけるけれども行う、あるいは総理の方からは土地信託制というお話も出てまいりまして、まだ統一見解というところには至っていないわけでございます。特に、常識的、公平であるということを念頭に置きますと、一般競争入札というのがいかにも公平であるわけでございますが、あとの随意契約あるいは土地信託制度について、この公平性を担保するということで具体的にお考えがありましたらお聞かせ願いたいと思うわけでございます。
  102. 高野邦彦

    ○高野公述人 大変微妙な段階で、問題であると思いますけれども、今回の国鉄の保有土地に関しますその処分に関しましては、私は、基本的には入札制、これがやはりベターだというふうに考えております。それが土地の高騰を招くのではないかという懸念は確かに表明されておりまして、特に大都市圏、東京では特にそういう騰貴を招き、高くなるのではないかというふうに言われますけれども、実は東京の土地の異常な高さというのは、東京の国際化に伴う問題でして、国鉄の用地売却とは直接関係のない、むしろ国鉄用地の売却によって、やはり土地の供給がふえるという意味で実質的には抑制効果に働くだろうというふうに私は見ております。ただ、この入札に当たって、やはりここに一点の疑念のないような形というものはぜひ必要であるだろうと思います。それが第一点。  あと、第二点としまして、これは新しい会社ができる前後の問題とも非常に絡むというふうに思いますけれども、ある程度の、国鉄の用地の中でもすぐに使えるというふうな用地というものはそう多くはない。余裕地はあってもいろいろな国鉄の施設その他ございますので、そういったものをかなり整備した段階での売却になるのか、あるいはそうではなくて、そのままの売却になるのかという、恐らく二つぐらいの形があり得るだろうという気がするのですが、その方式によっても若干の違いが出てくる可能性はあると思います。結局、これは国民の負担を幾分でもやはり緩和していくというふうな立場から考えますと、できれば、できるだけ国鉄全体にとって有利な形での売却というものが望ましいというふうに私は考えております。
  103. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 どうもありがとうございました。
  104. 細田吉藏

    細田委員長 河村勝君。
  105. 河村勝

    ○河村委員 栗村さんにお尋ねをいたします。  先ほど、あなたは分割反対という立場で、過疎地帯の在来線について積極的に列車台数をふやして、あるいは駅間距離を短くしてやっていけば、そうすればお客さんもふえてきて、それで収支も改善される、そういうことが大変望ましいし、期待できる、そういうようなお話でありましたが、そういう種類のことは一体分割問題と関係があるのだろうか。分割しようとすまいとそういう問題は同じであって、どちらかといえば、日本一本よりも東日本鉄道の方があなたの場合はそういうようなことはやりやすそうに感じられますが、なぜ分割反対の立場でそういう在来線の活性化がより期待できるというふうにお考えになっているのか、それを伺いたいと思います。
  106. 栗村和夫

    ○栗村公述人 東日本に予定されております株式会社は、東京、首都圏を抱えますから極めて強い体質になる旅客会社になるであろうことは存じておりますが、あの二・五%から六・二%ぐらいまでの値上げ幅でだんだんそれの差がついていく、しかも体質の弱い、極めて条件の悪いローカル線を維持していくことは、やはり大きな企業体の経営の中で初めて可能なのだろう、こういうような観点から私は一本化の方がいいのではないか、こういうような考えを持っております。我が町がよければそれでいいのではないかということには、やはりそういう考えにはなり得ないということです。
  107. 河村勝

    ○河村委員 高野さんにお尋ねをいたします。  高野さんは民営分割を無条件で礼賛しておられましたが、いかに民営にして分割しても、相当大きな部分の長期債務を棚上げして、それで人減らしの大きな合理化をしなければ分割しようが民営にしようが成り立たない。その点について全然お触れにならなかった理由はどういうわけですか。
  108. 高野邦彦

    ○高野公述人 これは長期債務処理の問題、余剰人員の問題、それから国鉄の各社の新しい活動の事業の問題と、三者が多分一体になっている問題だと思います。  今回の国鉄監理委員会の案あるいは政府案で見ますと、やはり清算事業団という存在でこの問題を一定期間の中に処理していくというふうな形をとっているために、むしろ私は鉄道事業としての今後の発展ということの面から、つまり清算事業団の問題に関しては特に言及を避けたわけでございますが、これについては、これはやはり政府あるいは全体の責任でございますので、この処理に関しては十分に手を尽くして解決していく、多少時間はかかっても十分に解決していかざるを得ないし、これは単に行政だけ、国鉄だけの問題ではなくて、やはり全体としての国の問題であるというふうに私は考えております。  きょうは特別に分割民営の新しい展望の方に目を向けたために、それがよって来ったさまざまな要因を一応清算事業団という形でもって処理しようとしているという、どちらかというと後ろ向きの対応のところに余り触れることをしなかった、時間の関係もありましてしなかったわけで、その点は大変申しわけないと思っております。
  109. 河村勝

    ○河村委員 そこで、先ほど将来の駅のあり方について非常にバラ色の夢をお描きになっておられました。地域文化の窓口として大いにサービスをよくして、そこにいろいろな情報や何かが集まってくるようにしたい、それが分割民営することによって可能であるというお考えのようでありますが、しかし、徹底した合理化をやっていけば、私鉄の駅がそうであるように、むだな人間は置かないんですね。ですから、むだというと悪いですけれども、要するに、輸送をこなす仕事量に関係のない人間は置かない。そうなれば、駅ビル等が成り立つ都市は別でありますけれども、一般の地域で駅がそういう夢のようなサービスをするというようになるというのは甚だ考えにくいのですけれども、それは可能だとお考えになりますか。
  110. 高野邦彦

    ○高野公述人 鉄道事業そのものに関する人員の縮小の問題というのは、これは鉄道事業として効率性を求める以上当然だと思います。  問題は、駅というものは、単に輸送——人とそれからさまざまのものが集散する、集まりあるいは散ずる、そういうやはりターミナルという性格というものを全体として持っているんではないか。したがって、むしろそのターミナルを、駅を中心にして生き返らせる。つまりこれは再開発、新しい事業体をつくり、あるいは子会社をつくり、場合によってはその地域、これが農村地域でありますればその農村の特性、特産物、その他さまざまの新しい情報をむしろ生み出してくる。それで、そこを通じて、それがまた周辺なりあるいは全国的に展開していくような、そういう、鉄道サービスそのものというよりか、それに付随する一つのターミナルの業務というものを大きく広げていってほしいし、またそうなることがやはり今後の鉄道そのものを生かす道になるだろう、私はそういう意味で申し上げました。
  111. 河村勝

    ○河村委員 それは一種の駅ビルみたいなものでありまして、それは採算がとれるような場所ではできますけれども、その金を新しい会社がもうかりもしないのに出すわけはありませんから、そういう意味で無理じゃないかと申し上げたわけであります。  廣岡公述人にお尋ねをいたしますが、あなたは、最近の国鉄の経営改善計画が成功した、ですから、特定人件費と長期債務の負担さえなければ成功しているんだから、あえて、民営はちょっとはっきりよくわかりませんが、分割などは必要ないんだという御説、簡単に言えばそういう御説のようでありました。  しかし、そこが問題なので、特定人件費、特に膨大な、毎年五千億近く払わなければならぬ年金の負担ですね、それから長期債務の利子償還、これを結局は国民負担で整理をしてもらわなければ成り立たないという前提があるわけですね。ですから、それを国民負担で解決をしてもらうからには、国鉄自体も徹底した合理化をやるのと同時に、今までの経営観念、経営体制を全面的に改めて、将来大いに能率的な仕事をやりますというあかしを立てなければ国民も認めてくださらないであろう、そのためには民営分割というぐらいの大手術をやらなければならない、そういうことではないかと思うのですけれども、その点、どう考えますか。
  112. 廣岡治哉

    廣岡公述人 恐らく意識革命が必要だということだろうと思います。私は意識革命は必要だと思います。過去の独占時代のしっぽを引きずっていたのでは鉄道の健全な経営というのはできないと思います。  しかし、それは分割しなければならないということではなくて、競争的な公企業としての理念、これは国会で十分審議されて新しい法律がつくられて、新しい政策で出発するわけですから、それを十分徹底すればいいわけです。それは信賞必罰で新しい労使関係が当然つくれる。経営者についても、それだけの権限も与えられるかわりに責任も与えられるわけで、経営成績が悪ければ経営者は当然交代するというふうな明確なルールが守られればいいわけですね。これまでそれがなかったわけですから、そういうルールをまずつくるということを国会で決めていただかなければどうしようもないんじゃないか。それ以上に、分割しなければならぬとかなんとかというのはちょっと行き過ぎではないかというふうに私は思います。そういう、分割するか、地域ごとに子会社をつくるかというのは、まさに経営者が判断すべきことであって、まず経営者にそれだけの権限を与え、責任も与えたらどうかというのが私の提案であります。
  113. 河村勝

    ○河村委員 さっきあなたは、国鉄は大変な債務超過だと言うけれども資産の方が多いんだという意味のことをおっしゃいましたね。そうでしたら、線路の下の資産を全部計上すればそうかもしれませんが、そういうのは、鉄道そのものを切り売りしない限りは資産価値はないわけですね。ですから、余り意味のない議論ではないかと思いますが、いかがでございますか。
  114. 廣岡治哉

    廣岡公述人 お答えします。  もちろん、私自身、数字についてつまびらかにしているわけじゃありませんし、ジャーナリズムで報道される程度の知識しかないわけです。もちろん、今日の鉄道資産あるいは関連資産を再取得価額で評価すれば莫大な価額になります。あるいは時価で評価するというのはそういうことだと思いますけれども、それは鉄道を放棄するに等しいというわけですから、そういうことはできないでしょう。私が言っているのは、直接鉄道のオペレーションに必要でない、つまり、ある意味で処分可能な土地は処分していいんだろうというふうに思います、実際の再建に当たっては。それは再建監理委員会で想定されたよりはかなり金額的には多い価格になるのではないかというふうに伝えられているのを、私自身は、非常にあり得る計算だ、かなり可能性の高いものだというふうに考えます。  ですから、財政が逼迫しているということもありますから、この際は処分し得る資産は処分した方がいいでしょう。しかしそれは、マーケットで最高限に高い値段をつけていただくということが国民の負担を軽減する上で望ましいし、また高い値段をつける人は高度に利用することを迫られる。安く売ればそれは安いようにしか利用しないわけで、それは鉄道にとって決して有利ではない。鉄道の近くの土地というのは、高い値段で売って高度に利用してもらって、それで鉄道に乗ってもらう、これが鉄道がとるべき戦略であるというふうに考えておるわけであります。
  115. 河村勝

    ○河村委員 終わります。
  116. 細田吉藏

    細田委員長 工藤晃君。
  117. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 栗村公述人にまず御質問をします。  先ほどのお話の中で、特に磯崎さんの発言から考えが非常に大きく変わられたといいますか、そこも感銘を受けましたし、特にダイヤの問題、こういうことも非常に大事だということを言われましたが、本当に不便なダイヤならば、ますます、しようがない、車で行こうとか、ほかになってしまうわけで、大事なポイントだろうと思います。  それとともに、私、今お話を聞きながら考えたのはこんなことなんですが、今、日本の福祉のあり方というのが問われています。これはヨーロッパへ行っても、貿易摩擦と必ずセットになってこういうことが問題になってまいります。日本で福祉というと、年金だ、医療がどうだ、あとは福祉施設だと言うのですが、ヨーロッパでの福祉というのを考えると、まず住宅が福祉である。確かに失業したとき安い質のいい公共住宅に住んでいると本当に安心なんで、そういう考え方もあります。それから、特に交通の問題でも、例えばフランスで最近つくられた交通基本法の中には交通権といったような考え方、概念がありまして、要するに、どこに住んでいても国民の足がなければいかぬ、だから地方線が赤字であっても、これは国が補てんしなければいけない、こういう考え方を打ち立てておりますね。日本の憲法で言えば二十五条の「健康で文化的な最低限度の生活」というと、これはどこに住んでいても、健康というのは、まず病院に行くのだって何か交通機関がなければ行けませんし、第一、文化的であるということは、そういう足が大事なんで、今、日本の中でもそういう交通権を守ろうというような考え方もあるのです。  私は実は、こういう地方の交通問題にしろ都会の交通問題にしろ、やはり交通を福祉と重ねて、そしてどこに住んでいてもそういう便利な交通を享受しなければいけないという方向に進めるか、これを後退させるかで、今度の問題の解決方法が変わってくるのじゃないかと思いますが、そういう点をどのようにお考えになっているかということ、それで、そこがはっきりすれば、何か山手線が稼いでいるから東北では山手線のおかげで鉄道を持っているという肩身の狭い思いをされる必要はなくなると思うのですが、いかがでしょうか。
  118. 栗村和夫

    ○栗村公述人 福祉の対象者をどう見るかということが一つあります。身障者というような見方もあるでしょうし、あるいは非常に所得の少ない人たち、ボーダーラインなりあるいは生活扶助なりを受けている人たちが余り財布を気にしないで汽車に乗られる、こういうような広い意味でこれを受けとめなければいかぬと思いますが、後者を対象にした場合、やはり母子家庭その他いろいろありますが、どこにいても基本的に同じ料金で汽車を利用できる、そしてその汽車がさらに便利になっていけばということについてはお話しのとおりの認識を持ってございます。  ただ、身障者、車いすとかという対象になりますと、そのために汽車だけかということになれば、今いろいろな、マイクロバスやその他、車いすで利用できるものは開発されていますから、そういう狭義の意味ですとちょっと議論は別になってくると思いますが、広い意味の福祉という観点に立てば以上のようなことです。
  119. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 私、広い意味で申したわけでありますが……。  次に、高野公述人に伺いたいと思います。  私も、お話を伺いまして民営化という点を大変楽観的にお考えではないかと思いました。特に、私の聞き間違いでなければ、鉄道が成長産業ではないかということも言われたように思うわけであります。しかし、私もいろいろ調べてみまして、今度の、民営化民営化と言いますが、例えば北海道なら六十年度の会計監査報告で大体経常損益で言うと二千五百億円赤字が出ています。東日本でも五千八百億円くらい赤字になっていますね。これが六十二年度突然黒字に転化するわけです。  それは何かといいますと、一つは、さっき言ったいわゆる資産の問題ですが、これを簿価にするとかうんと圧縮して、そうすると引き受ける債務が減っていく、そして利子負担が減るということが出てきますね。三島の場合はその引受債務さえないということがありますね。それから特定人件費はもう負担しないということがありますね。もちろん猛烈、強引な、私たちから言えば不当に強引な人減らしもやるという、こういうことで、北海道の場合で言うと二千五百億円の赤字が突然何とか黒字になる。東日本も、さっき言ったことに加えて、例の新幹線保有機構というので、補助金制度とは言わないけれども、補助金制度にかわるようなものを受ける、そういう形で何とか黒字にこぎつける。  こういうことを見ると、実は私たちもその点を主張し、それから廣岡公述人も述べられましたように、問題は特定人件費とか資本費の押しつけられたものを除けば何とか黒字になるということが別の形であらわされたものであり、そのことはまた、民営化すれば何でもうまくいくということではないということの証明のようにさえ私は考えるわけなんです。それに加えて、これほど事実上の補助金みたいなことをやりながらも、御存じのように、今度の法律案によりますと、鉄道の廃線は自由化されるということがあります。  それから、先ほどお話しの成長産業ということを言われるとき、恐らく何か大手私鉄タイプを頭に浮かべておられるのではないかと思いますけれども、そういう副業である方がだんだん主になっていって、鉄道が副業みたいになっていくような姿で初めて、株も値段が上がるとか含み資産がどうだとか、それで社債もどんどん発行できるとか、そういう企業体になっていくのだろうと思いますが、そういうことをお考えだとすると、なるほど会社としては立派な会社になったとしても、本当に全国の鉄道網が立派に維持できるであろうかということになると、何の保証もないではないか。これほど民間企業だというのに補助をしながら、しかし、結論として鉄道の維持、再生ということに関しては結果が悪いのではないか、こういうようなことを考えていたわけなんですが、いかがでしょうか。
  120. 高野邦彦

    ○高野公述人 そういうふうにお受け取りいただいたということであれば、私大変申しわけないと思います。私は交通事業が成長——つまり交通産業というふうな言い方をしたのではないかというふうに思っておりますが、もし鉄道というようにお受け取りいただいたとすれば、大変申しわけないと思います。  私が第一に申し上げたいことは、やはりサービス産業の中の核の産業は何かということからきておりまして、恐らく交通と通信と金融、これあたりがサービス時代の核になる産業なのではないかということから、輸送産業というものはいろいろな意味で成長産業になり得るはずだというふうに私は考えております。その点が一つです。  それから、鉄道の場合は、その中では、その役割は、その他の競合交通機関によってやはり競争にさらされます。同時に国民の、利用者の選択の幅というのは非常に広がってきている。鉄道を選ぶか、自動車を選ぶか、飛行機を選ぶか、こういうふうな選択の幅がやはり広がってきておりますので、国鉄を中心とした鉄道に縛りつける、縛りつけるというのは変ですが、利用してもらうためには相当な新しい、サービス時代に合った新しい価値を加えていかざるを得ないだろうという意味でございます。したがって、全体として鉄道を軸とし、あるいは場合によっては、例えば東急みたいに鉄道の部分が一〇%を切っているかもしれないという企業もございますけれども、そういうふうな形もあり得るかもしれないという形を私は想定しておりますので、輸送を中心とした成長産業というふうに申し上げたつもりでございます。したがいまして、国鉄を中心としたそういう附帯事業というものの展開が、これは民営化以外はできないだろうというふうに私は思いますので、その意味から民営化ということを強く申し上げた次第です。
  121. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 廣岡公述人に伺います。  国鉄の資産を簿価で引き継ぐという問題と時価で評価したら幾らかという問題ですが、どういう意味で言われたか。私は、一つは、少なくとも国民の財産である、これが一〇〇%の民間企業に移っていくという場合、少なくとも今の再取得価額だとか、時価でいうとこれだけありますよ、しかし鉄道を成り立たせるためには、これこれの評価、圧縮してお渡しするのだ、そういうことを説明しなければいけないのであって、少なくともその前段として、これだけの財産価値はありますよということを示した上で、なおかつ鉄道として維持するためにこれだけ圧縮するのだ、そこへいかなければいけないので、いきなり簿価でもいいのだというのはいささか乱暴ではないか、これが一つ。  もう一つは、鉄道が例のNTT、電電と違って、需要が今どんどん広がっていくというよりも、政府が出した資料でも少し下がりぎみのときで、この会社が何か私鉄として成り立っていくには、結局不動産とか、それから地域的な独占とか、そういうのを生かした資本になっていくということになると、どうしても大手私鉄型になる。東日本でいえば山手線の各駅の再開発とかということになってくると、当然そこに含み資産ということが出てくる。一部の鉄道以外の利用ということが出る。何も売却ということではありません。これを抵当に入れてお金を借りるということがあります。それから、含み資産が大きければ社債の発行でも有利でしょう。そうしてどんどん事業で出るということになると、この含み資産の利益というのは直接出てきて、直接資本に享受されるわけでありますから、そういうことが問題なんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  122. 廣岡治哉

    廣岡公述人 簿価でもいいというふうに言ったわけではありませんので、その点はちょっと誤解が……。  二番目の問題はかなり難しい問題だと思いますけれども、私が純粋の民営企業にするのについての問題点一つとして挙げたのは、要するに、現在国鉄は破産状態にあるというふうに言われているけれども厳密に言うと破産していない、少なくとも債務が資産を超過しているという意味での破産には当たらないということを申し上げているんで、その点は処理手続において注意しなければならぬのじゃないかということを申し上げました。  それから、含み資産を活用して借り入れや社債を発行することによる資金調達が可能ではないかという問題提起だとすれば、そういうことは可能であろう。ただ、民間の金融機関から資金を調達する場合には、それの返済能力というのが問題になるわけです。不動産というのはそう簡単に換金できるわけじゃありませんし、ですから、下手すれば黒字倒産ということにもなりかねないわけですから、その点で健全経営が可能になるような条件というものを考えなければならぬ。  それからもう一つは、含み資産をできるだけ持っておるべきだということだとすれば、私は、その点については現在、あるいは新しい経営者になるとしても、国鉄の不動産活用能力をそう高く評価してないのです。その点は民間のノーハウをもっと活用する方がいいであろう。民間のノーハウを活用するために、例えばある駅で合弁会社をつくっていく、まあステーションビルというのはそういう形態ですけれども、これは私は私鉄の経営者にも聞いたのですが、大手私鉄といえども鉄道出身の経営者というのはなかなか兼業の経営については能力が発揮できないのですね。やはり鉄道以外の出身の人を活用しているわけで、国鉄が今後経営を多角化していく場合には、そういう点で、鉄道のオペレーションにいかにベテランであっても、不動産の活用については素人であるという前提で考えなければならないだろうというふうに思っているわけであります。
  123. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 どうもありがとうございました。
  124. 細田吉藏

    細田委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人の皆様には、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  これにて公聴会は終了いたしました。  次回は、来る二十日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時七分散会