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1986-10-16 第107回国会 衆議院 日本国有鉄道改革に関する特別委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十月十六日(木曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 細田 吉蔵君   理事 小此木彦三郎君 理事 小里 貞利君    理事 佐藤 守良君 理事 三塚  博君    理事 山下 徳夫君 理事 井上 普方君    理事 嶋崎  譲君 理事 西中  清君    理事 河村  勝君       甘利  明君    臼井日出男君       尾形 智矩君    大島 理森君       片岡 清一君    亀井 静香君       亀井 善之君    北村 直人君       久間 章生君    古賀  誠君       古賀 正浩君    佐藤 静雄君       桜井  新君    鈴木 宗男君       関谷 勝嗣君    津島 雄二君       中島  衛君    中村正三郎君       野中 広務君    野呂田芳成君       長谷川 峻君    原田  憲君       松田 九郎君    森田  一君       谷津 義男君    山村新治郎君       若林 正俊君    上田 卓三君       小林 恒人君    新盛 辰雄君       関山 信之君    戸田 菊雄君       村山 富市君    山下洲夫君       浅井 美幸君    石田幸四郎君       遠藤 和良君    柴田  弘君       阿部 昭吾君    中村 正雄君       工藤  晃君    児玉 健次君       中島 武敏君    村上  弘君  出席公述人         東京大学経済学         部教授     岡野 行秀君         駒澤大学経営学         部教授     近藤 禎夫君         神奈川大学経済         学部教授    村尾  質君         日本長期信用銀         行常務取締役・         調査部長    竹内  宏君         弁  護  士 牛久保秀樹君  出席政府委員         運輸政務次官  柿澤 弘治君         運輸大臣官房審         議官      井山 嗣夫君         運輸大臣官房国         有鉄道部長   丹羽  晟君  委員外出席者         日本国有鉄道常         務理事     川口 順啓君         地方行政委員会         調査室長    島村 幸雄君         運輸委員会調査         室長      荻生 敬一君     ───────────── 委員の異動 十月十六日  辞任         補欠選任   小沢 辰男君     北村 直人君   亀井 静香君     尾形 智矩君   長谷川 峻君     谷津 義男君   原田  憲君     佐藤 静雄君   増岡 博之君     古賀 正浩君   小林 恒人君     新盛 辰雄君   村上  弘君     児玉 健次君 同日  辞任         補欠選任   尾形 智矩君     亀井 静香君   北村 直人君     小沢 辰男君   古賀 正浩君     増岡 博之君   佐藤 静雄君     原田  憲君   谷津 義男君     長谷川 峻君   新盛 辰雄君     小林 恒人君   児玉 健次君     村上  弘君     ───────────── 本日の公聴会意見を聞いた案件  日本国有鉄道改革法案内閣提出第一号)  旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律案内閣提出第二号)  新幹線鉄道保有機構法案内閣提出第三号)  日本国有鉄道清算事業団法案内閣提出第四号)  日本国有鉄道退職希望職員及び日本国有鉄道清算事業団職員の再就職促進に関する特別措置法案内閣提出第五号)  鉄道事業法案内閣提出第六号)  日本国有鉄道改革法等施行法案内閣提出第七号)  地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第八号)  日本鉄道株式会社法案伊藤茂君外八名提出衆法第一号)  日本国有鉄道解散及び特定長期債務処理に関する法律案伊藤茂君外八名提出衆法第二号)  日本鉄道株式会社退職希望職員等雇用対策特別措置法案伊藤茂君外八名提出衆法第三号)      ────◇─────
  2. 細田吉藏

    細田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出日本国有鉄道改革法案旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律案新幹線鉄道保有機構法案日本国有鉄道清算事業団法案日本国有鉄道退職希望職員及び日本国有鉄道清算事業団職員の再就職促進に関する特別措置法案鉄道事業法案日本国有鉄道改革法等施行法案及び地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律案並び伊藤茂君外八名提出日本鉄道株式会社法案日本国有鉄道解散及び特定長期債務処理に関する法律案及び日本鉄道株式会社退職希望職員等雇用対策特別措置法案の各案について公聴会を行います。  この際、御出席をいただいております岡野公述人近藤公述人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、大変御多用にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございました。  申すまでもなく、本委員会といたしましては各案について慎重な審査を行っているところでありますが、この機会を得まして広く皆様方の御意見を拝聴いたしますことは、本委員会審査に資するところ大なるものがあると存じます。両公述人におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  御意見を承る順序は、まず岡野公述人、次に近藤公述人順序でお願いすることといたします。  なお、御意見はお一人十五分程度でお願いすることとし、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  念のために申し上げますが、発言する際は委員長の許可を受けることになっております。また、公述人委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきを願いたいと存じます。  それでは、岡野公述人にお願いいたします。
  3. 岡野行秀

    岡野公述人 ただいま御紹介にあずかりました岡野行秀でございます。  私、東京大学経済学部で四十一年以来交通経済学を担当しておりまして、私の教え子の中にも現在国鉄で働いている者が数名おりますし、現場の優秀な職員の中から大学研究委託員として、今まで十名ほど私のところへ来られまして研究したこともございます。こういう関係で、私も、国鉄については、国鉄のこれまでのいろいろな施策の関係でもお手伝いしたことが何回もございます。  このたびの日本国有鉄道改革法案及び関連法案日本鉄道株式会社法案及び関連法案について私の意見を述べさせていただきます。  私は、内閣提出日本国有鉄道改革法案及び関連法案にほぼ全面的に賛成であります。お許しいただいております時間が制約されておりますので、国鉄改革の核心である改革法案第六条の旅客鉄道事業分割及び民営化とそれに伴う措置について私見を申し上げさせていただきたいと思います。  国鉄財政破綻を来していることは周知のことでございますが、昭和四十年代初めから二十年間に繰越欠損金長期負債は雪だるまのように膨張し、また昭和六十年度も一兆八千五百億円弱の純損失を計上し、繰越欠損金は八兆八千億円、長期負債合計は十八兆円を上回っております。これに加えて、二度にわたって特定債務整理特別勘定へ移しかえられた繰越欠損金五兆三千億円がございます。政府からの助成金を除きまして六十年度の旅客貨物収入に雑収入を加えますと三兆三千億円、これに対して、人件費物件費合計が三兆七千億円で、利子支払い減価償却に充てる額が残らない状態でありますから、企業としては完全に行き詰まっているということは言うまでもありません。  私は、過去、昭和四十七年五月八日の衆議院運輸委員会参考人として、国鉄運賃法及び国鉄財政再建特別措置法の一部を改正する法律案に関する意見を陳述いたしました。そのとき、民間企業会社更生法を適用するのと同じ考え方で、国鉄が自主的に健全な経営ができるように措置をした上で累積債務を一掃すべきであると申し上げました。当時の累積欠損金は四十六年度末で八千億円、長期負債は三兆八百七十億円でございました。五年後の五十二年四月二十七日の運輸委員会で、いわゆる運賃弾力化法案について参考人として陳述したときにも、再び全く同じ見解を述べました。したがって、今回の国鉄改革の基本的な考え方は、十数年前からの私の見解と一致しております。ただ、余りにも遅きに失したことを大変残念に思う次第であります。  破綻した国鉄会社更生法と同じ考え方を適用するのであれば公社形態のままでもいいではないかと言う人もあります。しかし、鉄道再生し、鉄道が果たすことのできる役割を一〇〇%発揮できるようにするには民営化すべきだと思います。  公社形態については、政治の介入、国民の過大な要求、そして公企業であるがゆえの経営に対するさまざまな制約など、既に各所で御指摘されている欠点があります。ルードウィッヒ・フォン・ミーゼスという著名な学者がおりますが、彼が一九四四年に出版した著書「ビューロクラシー」の中の一章に「ビューロクラティック・マネージメント・オブ・パブリック・エンタープライズ」、訳しますと「公企業官僚的経営」という章がございます。その章でミーゼスは、公企業に不可避と思われる欠点を余すところなく明快に分析し、指摘しておりますが、国鉄問題点がそのとおりであることがそれを読みますとよくわかります。  これを改め、経営成果を高める、それは社会にもたらす便益の増大につながりますが、そのためには民営化するのが最善の策であります。どのような施設設備を備え、それと労働資材等をどのように組み合わせてどのような生産物——この場合は輸送サービスでありますが、生産物生産し、幾らで売るか、つまり、投資、投入物の調達、生産、販売の意思決定経営責任者によって行われることが何よりも重要であります。常に利用者のニーズを的確に把握して経営意思決定を行えるようにすべきであります。  次に、分割についてですが、国鉄改革が問題になり始めましたころ、当初、分割しないで全国一社か、あるいは分割するならばできるだけ細かく分割するのがよいのではないかと考えたことがありました。しかし、主として次の理由によって、分割する方がよいという結論に到達しました。  第一は、地域ごと交通市場、したがって鉄道輸送市場条件、性格が異なるので、分割する方が市場条件によく対応できます。第二は、不採算路線、私は私なりの厳密な意味でこの用語を使っておりますが、不採算路線存廃ないし内部相互補助の問題が明確になること。第三は、第一とも関係しますが、全国一社体制であれば、単に国鉄であるという理由で、コストその他の条件の差異にかかわりなく、国民がすべて同じように扱うことを要求しなくなること。以上三点の理由によります。  第二の理由から説明させていただきます。  不採算路線存廃の問題は別にしまして、不採算線で生ずる赤字を採算がとれる路線の黒字で補てんできるようにする、しかもそれを一律の賃率で行うことが採算のとれる路線運賃を必要以上に高め、国鉄競争力を低下させたことは、再建監理委員会が指摘するまでもなく、以前から指摘されておりました。全国一社のように経営単位が大きくなるほど不採算線を存続することの他へ及ぼすマイナス影響があいまいになります。分割して経営単位を小さくすればその中で内部補助を行わねばなりませんから、それがもたらすマイナス影響あるいはそれが可能な限度が明確になり、どのような鉄道網を持つべきかが明確になります。この点からいいますと、分割は小単位にする方がいいということになります。  第三の理由と第一の理由につきましては、一つの例を挙げてあわせて述べることにしたいと思います。  ことしの夏、北海道を旅行いたしました。実は釧路から千キロばかり知床半島等をレンタカーで走ったわけですが、ほとんどの道路国鉄の線路と並行して走っております。一週間の旅行の間に、網走に泊まった一日を除きますと、国鉄が走っているのを見たのはわずかに富良野線で一列車だけでありました。  そこで、北海道を旅行した途中で国鉄北海道総局に立ち寄りまして、かつて大学で私の講義を受講したことがある職員と話をいたしました。その中で、札幌—小樽間に高速道路を利用する急行バスが運行されるようになって国鉄特急列車利用客が三〇%近く減少したということであります。この状況を改善するために特急料金引き下げを行うことを考えて本社にその意向を伝えたところ、急行バスとの競争があるからといって当該区間特急料金引き下げをすぐ認めるわけにはいかないということでありました。恐らく本社は、他の地域で、同じ国鉄なのに一部の特定区間特急料金を安くするのはおかしい、自分地域特急料金引き下げろ、そういう要求が出てくることを危惧したに違いないと推察します。このような本社の行動は、国鉄に対する国民考え方を考慮しますと無理からぬことであります。分割民営化は、国民の従来の国鉄に対する考え方を改めさせ、地域市場の実情に応じた対策を適切かつ速やかに採用できるようにすると考えられます。  また同時に、彼らは私に、北海道へ赴任して初めて、本社にいるときに考えていた鉄道一般経営あり方とは異なる北海道鉄道経営あり方というものがわかったと語っておりました。こういう点から、分割地域に密着した鉄道輸送サービスを提供できるようにするとされておりますが、これは観念論ではなく、事実としてそうなるであろうと確信しております。  分割の仕方につきましては、当初から私は、三島を独立させるべきだ、同時に基金といういわば持参金を持たせる方式を考えておりました。したがって、この点については私は法案と同じ考え方を持っております。  本州三分割につきましては、具体的な、詳細な数字を持っていなかったので、分割する方がよいけれども、どのように分割すべきかについては私自身、自信のある案を持っておりませんでしたが、この法案の三分割案は、ほとんどのトリップが地域内で完結するように分割されていますので、適切であると考えます。  私は、今回の国鉄改革国鉄再生ではなく鉄道再生を目指すものと考えております。日本鉄道は、ヨーロッパ諸国鉄道と比べましてはるかに市場条件に恵まれております。一九八三年度の輸送状況を比較してみましても、日本国鉄は、輸送人員イギリス国鉄の九・八倍、西ドイツ国鉄の六・四倍、フランス国鉄の九・四倍、輸送人キロイギリス国鉄の六・四倍、西ドイツ国鉄の五・〇倍、フランス国鉄の三・三倍の旅客を輸送しております。もっとも貨物輸送ではこれらの諸国に及ばず、トンキロでイギリスを上回るだけでありますが、いずれにしましてもヨーロッパ諸国国鉄と比較しますと市場条件にずっと恵まれているわけであります。  最初に申し上げましたように、これまで大学委託研究生を十数人お預かりした経験、あるいは国鉄で働いております自分教え子たちを見ましても、これらの人々は素質的に非常にすぐれております。私は、国鉄職員は素質的に非常にすぐれており、その潜在能力を発揮するならば、この恵まれている市場で十分な成果を上げると確信しております。  先日、ある雑誌で東京の大手私鉄社長さんと鼎談をいたしました。その社長さんも、私たちが、国鉄分割民営化についてどう考えるか、どう評価するかというふうに質問いたしましたところ、東日本鉄道株式会社が当面の相手になるわけですが、国鉄にはもともと非常にすぐれた人たちがおり、そして技術も非常にすぐれている、彼らが本当にやる気になったならば、東日本鉄道会社自分たちにとって非常に強力な競争相手になるだろう、このように語っておられました。  分割民営化は、この潜在的能力を発揮できるような環境をつくることにほかならないと思います。これはあたかも、プロ野球で素質に恵まれているけれども実力を発揮できないでいる選手が、トレードで他の球団に移った途端に環境がよくなったために実力を発揮するようになるケース、こういうケースがこの分割民営化に伴う国鉄の将来であると考えております。(拍手)
  4. 細田吉藏

    細田委員長 ありがとうございました。  次に、近藤公述人にお願いいたします。
  5. 近藤禎夫

    近藤公述人 ただいま御紹介にあずかりました駒沢大学近藤と申します。  ちょっとのどを痛めまして、まことに申しわけありません、お聞きづらい点はお許しいただきたいと思います。  国鉄経営危機的状況にある、そういう認識は、責任論は別としまして、これはもう何人も否定することはできない、私もそういう認識に立っております。昨年公表されました再建監理委員会意見書でも述べておりますけれども、今改革を行う必要があるという点も同様に感じております。しかしながら、分割民営がなぜ必要かという問題になりますと、意見書あるいは政府法案趣旨とは少しく趣旨が、あるいは認識が異なるのであります。  改革前提として、国鉄財政破綻原因につきましてはこれまで多くの識者によって指摘されたところでありますし、国会の当特別委員会でも討議が深められていますことは承知いたしております。その破綻原因というのは、もう言うまでもなく外部干渉経営自主性の喪失、不正常な労使関係事業範囲制約あるいは全国一元化組織、そういった理由が挙げられておりますけれども、それらは挙げて公社制度に内在するものというような形で批判されております。  私の考えでは、公社であろうとなかろうと、現在と同じような諸規制が加えられれば結局同じことになろうかというふうに考えております。つまり、公社制度企業形態論立場から見まして即悪であるというのではなくて、そもそものゆえんは、昭和二十三年七月二十二日付のいわゆるマッカーサー書簡に基づく公共企業体日本的あり方を決定したときに基本的には端を発しているのではないかというふうに考えております。  しかし、今私はこの場所でこういう国鉄破綻原因解明というようなことに時間を費やす意図も余裕もございません。本日の公述の目的は、当然ながら現時点での改革論議ということでございますので、以下では主として国民的見地から見て国鉄問題にどのような論点があるのか、大変限られた範囲でございますけれども、私の専攻が会計学でございますので、会計的な問題を中心にお話をさせていただきたい、こういうふうに考えております。  前置きが大変長くなりましたけれども、時間の関係もありますので、結論だけまず先に述べさせていただきたいと思います。補足的な説明は後ほどの質疑でお答えしょうというふうに考えております。  まず第一は、分割民営化経営目標民鉄事業並みの水準を目指すという点に関しての私見でございます。  第二は、政府提案分割民営化全国一社制との経営収支上の比較検討ということでございます。  第三に、民営化のとらえ方について一定の見解を述べたいと思っております。そこでは、国民各層あるいは国家、地方自治体等費用負担確立の原則というものを中心に述べさせていただきたいと思います。  最後に第四に、総合交通体系から見た鉄道優位性交通体系をめぐる諸問題を会計的見地から論じてみたい。  こういうふうに、大体四つほどに絞ってお話ししたいと思っております。  第一の点でございますけれども、私は国鉄問題を論ずるときに民鉄問題を避けて通ることはできないのではないかというふうに考えております。というのは、常に国鉄改革と対比すべき民鉄の現状でございますけれども、特に大手十四社の経営実態中心に申しますと、公益事業とはいえ私企業でありますので、言うまでもなく株主に対する一〇%以上の長期安定的な利益配当を維持する責務を経営者は負わされております。  しかしながら、会社の商号にも使われている本業であるはずの鉄軌道部門ないしは会社によっては自動車部門営業収支に寄与する度合いは極めて低いと言わざるを得ません。例えば、昭和五十年から六十年の十年間の実績で見ますと、鉄道自動車部門利益貢献度が最も低い五十年、この年には大手十四社平均でわずかに二四%という数字になっております。裏を返せば、副業に依存しなければ私鉄はやっていけないということであります。副業依存度は五十年には何と七六%という驚くべき数字になっております。つまり、民鉄長期安定配当兼業で辛うじて支えられていると言わざるを得ません。  これが何を意味するのかはもう御承知のとおりだと思いますけれども、要するに、企業間競争からは鉄道部門のみに依存できず、これは脱車輪戦略のあらわれだと存じます。輸送部門経営不振は、土地分譲中心とする兼業部門のウエートを高めて収益をカバーしてきたのが実態であります。すなわち、輸送効率がよいとされる民鉄でさえ、バス鉄道のみでは独立の企業体として成り立ちがたいいい証左と言えましょう。要するに利益配当が捻出されないのであります。鉄道バス部門採算及び会社への寄与は、運賃値上げ実施年度に限られる傾向にあるわけです。したがって、大手といえども、国鉄同様に兼業規制があれば、とうの昔に破綻していると言わざるを得ません。  その他、私鉄問題についてはいろいろございますけれども、ちょっと時間の都合がありますので、後ほどの質疑の点にかえさせていただきます。  第二に、政府提案と一社制の問題でございますけれども、新たに提出されました十月三日の政府統一資料を見ますと、三島基金の積み増しによって六社全体の当期利益が計上されることになっております。各会社推計値を見ますと、前回法案提出段階参考とされたと思われる監理委員会データと今回の統一資料で示された各社の収支見通しとの間に相当大きなギャップが見られます。今回のデータ断り書き部分に「本資料の内容は、現段階における運輸省及び国鉄による試算結果であり、新会社発足までの間に更に精査されるべきものである。」と述べております。となると、仮に法案通過後に三たび収支見通しが変更されるのではないかという危惧を感ずるのであります。算定根拠を持たない我々国民としましては、いつの段階の何を信じて判断をしていいのか理解に苦しむところであります。  別の見方をすれば、精査精査を重ねて万全を期すと好意的に受けとめることもできますが、いやしくも自信を持って大改革を進める以上、最終見通しを固めてから法案提出すべきではないかと判断いたします。なるほど、それほど予測というものは難しいものかもしれませんが、五年、十年先のデータというのはいかに積算積算を重ねても信頼性に乏しいのであります。我々部外の国民一般にとりまして、算定結果だけが報道等を通じて流れてくるわけでありますから、今言ったような点について奇異の念を持つのはやむを得ないことと存じます。  さて、分割会社収支見通しを拝見しますと、人件費につきましては、全国一社制の場合ですと、一般管理費あるいは管理職非現業職分割した場合よりもさらに節減されるのではないかという点が考えられます。さきの意見書によりますと、一社制における事業部制は、過去の歴史的ないきさつから、経営の重要な要素である運賃労働条件決定権などが本社に留保される結果、経営環境等の変化に弾力的に対応し得ない、それゆえ否定されましたけれども、当局に当事者能力があり、徹底した分権化確立を図れば十分機能するものと思われます。昭和四十五年での失敗は、今日の大改革前提とした場合とは質的にも異なり、同じ轍を踏むとは考えられません。  今回の改革状況を見ますと、多分西日本だと思いますけれども、分割をしてさらに支社制を導入するということでございます。これは一種の事業部制の合理性をみずから認めたものではないでしょうか。多分反論としては、地域に密着したということになりましょうが、地域を強調する余り、国全体の見地が国民意識から遠のくおそれがあると存じます。  その他、物件費、設備投資、もろもろございますけれども、これも後ほどにいたしたいと思います。  第三に、一社制を前提としたこれからの会計情報の公開のあり方について述べたいと思います。  分割民営化を実現しますと、六旅客会社、貨物会社、新幹線保有機構、バス会社、その他、トータルで二十数社という数になります。将来、兼業、関連事業を子会社、関連会社を設けて経営をしますと、実に大変な数の同一資本による独立会社が存在することになりましょう。国鉄財産の分散化は国民共有財産の運用状況または行方をわかりづらくするもので、たとえ公認会計士の厳重な監査が実施されるにせよ、国民共有財産の全体像を知ることが著しく困難になると言えましょう。  したがいまして、この点に関しましては、例えばイギリス国鉄での決算書に見られますような、国鉄単独の決算書の公表のみならず、連結会計ですとか、あるいはインフレーションに対応したカレントコスト会計というような公表の仕方、あるいはドイツの国鉄に見られますような区分会計制度、つまり責任領域別の費用負担の原則の確立のために、国鉄で現在実施しています主要幹線あるいは地方交通線というような区分会計ではなくて、いわゆる政府で責任を持つ領域あるいは企業国民がそれぞれ負担すべき範囲、こういったようなものを確立するためには、ドイツの区分会計方式が絶対に正しい、いや絶対的なものとも思いませんけれども、それらを範として、国鉄改革の際には国民にそういうような情報を提出して、国鉄活動の実態というものをこれからは表明していくべきであるというふうに存じます。その場合に、やはり全国一社制という点は、資本の分割による財産の行方の不明確という点から会計上も重要になろうかと思います。  最後に、もう一点は、これは自動車問題に触れることはタブーかもしれませんけれども、しかしながらモータリゼーションによって膨大な社会的費用あるいは社会的損失が生じております。したがって、鉄道輸送の存在理由あるいは一元的維持について、やはり競争基盤の平等化と申しますか、モータリゼーションが進行することによって生ずる不平等な自動車、モータリゼーションの利益享受、こういった問題についてのいわゆる社会的負担の公平化の問題をここで論じてみたいと思います。  モータリゼーションによると、本人の過失の有無に関係なく膨大な人的損失と申しますか、人命の損失がございます。過去十年間ぐらいで、負傷者まで入れますと、大体大阪市全体の人口が死んだりけがをしたりするような状態であります。それに比べまして鉄道輸送というのは、年間に二百人から三百人程度の犠牲は出しておりますけれども、大量輸送のメリットから、そういうような安全輸途、大量輸送という面では、自動車優先主義よりもすぐれた点があろうかと思います。  第二に、硫黄酸化物や窒素酸化物による酸性雨による森林、湖、河川の見えざる損失であります。このような点は、近年ではカナダ、アメリカでは国境間で国際紛争の一つの問題にもなっておるわけで、これは自動車だけではありませんけれども、航空機や船舶、工場、そのような排煙によりまして生ずる社会的損失ははかり知れないものであります。つまり私の言いたいことは、このような社会的損失、費用というものも計量化して、やはり自動車によって利益を得ている層は何らかの形で費用負担をして、そして社会的損失を与えられた方に還元すべきではないか、そのような負担を増大させることによって、鉄道とのいわゆる採算性の均衡というものを考えていくべきではないか、そういうことを念頭に置いて考えたわけです。  最後の問題につきましては、非常に計数化、計量化のできない難しい問題でございますけれども、やはり会計の領域では、公害管理のための会計ですとか、あるいは社会責任会計ですとか、そういうような領域もございますので、計数化をすることによって各種交通機関の存在理由あるいはバランスのとれた交通体系、そういったものの確立のために役立たせることができるのではないでしょうか。  それから、もう一点つけ加えさせていただきますと、例えば国鉄民鉄、その他の事業体の、そこで働くいわゆる人材の会計的評価もできます。つまり人間資源会計という問題であります。それによって、果たして国鉄というのは他の産業に比べて劣っているのかどうかというような比較検討も、人間資源会計というような問題の追求によってある程度解明することができるというふうに私の立場では考えております。  大変限られた時間ですので、もうこれ以上詳しくここでは述べられませんので、後ほどにさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
  6. 細田吉藏

    細田委員長 ありがとうございました。  以上をもちまして両公述人の御意見の開陳は終わりました。     ─────────────
  7. 細田吉藏

    細田委員長 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の際は、公述人を御指名の上お願いいたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。津島雄二君。
  8. 津島雄二

    ○津島委員 両先生、大変忙しい時間を私どものために割いていただきまして、有益な御意見をありがとうございました。  岡野先生のお話でございますけれども、今度の国鉄改革鉄道再生を目指すものである、またいろいろな意味でそれは可能であるというお話がございまして、先生の所論の内容に加えてこのような結論に対しまして、私ども非常に励まされる思いで意を強うして聞かせていただきました。今後とも私どもに必要なアドバイスを与えていただくように、この機会にお願い申し上げたいと思います。  近藤先生のお話でございますけれども、いろいろ参考になる点がございましたが、なお幾つかの点について御質問させていただきたいと思います。  まず第一に、四つの点を挙げておられますけれども、分割民営経営目標につきまして、民鉄並みを目標にしていることについては非常に大きな問題がある、こうおっしゃったわけであります。その問題点の一つとして、現在の民鉄経営を見ますといわゆる脱車輪が進んでいるじゃありませんかと。そのこと自体について、私はここでお聞きするつもりはございませんけれども、むしろ現在の民鉄運賃決定に当たりましても、かなりオープンにコストを計算して運賃を決定してまいりますね。その上で鉄道分野だけ取り上げましても、民間鉄道は赤字ではないわけであります。その運賃決定が適時適切に行われているという中で、健全な経営を進めておるわけですね。国鉄が現在のような膨大な赤字をつくってしまったということは、どうも今のような民鉄並みではぐあいが悪いよという議論を支持することにはならない。少なくとも民鉄並みの経営はおやりになれるんじゃありませんか、やっていただきたいよという声が強いのであります。その点、どういうふうにお考えか、ひとつお聞きしたいと思います。
  9. 近藤禎夫

    近藤公述人 ただいまの御質問でございますけれども、第一点は、確かに運賃原価を決定する際には、全社ではありませんで、私鉄のいわゆる鉄道部門の収支だけで計算する、運賃原価の算定根拠にしている、これはもうそのとおりでございます。私の申し上げたい点は、ここの資料にありますように、最後に出てきます差し引き収支の過不足の問題でございますが、これは五十七年、五十八年、赤字でございます。それから経常利益、鉄道部門収支だけの経常利益で見ますと、五十七年は十四社で百八十三億でございます。五十八年になりますと九十四億でございます。つまり、一年間で経常利益がたった半分になってしまう、非常に不安定だということでございます。したがって、二年ローテーションないしは三年間で運賃値上げをしなければ、鉄道部門の収支はバランスがとれないということでございます。それから、大手私鉄並みの合理化を進めて生産性を高めましてもこのような実態である。つまり、私鉄会社鉄道部門あるいはバス部門だけで経営したら、到底経営は成り行かない。  したがいまして、現在進めている改革でございますけれども、国鉄の場合も、少なくとも今着々と進められている改革は、大手並みの生産性を目指して人員の削減とかあるいは生産過程のいろいろな合理化問題とかをおやりになっていると思いますが、そこまで行きましても、国鉄で本当に私鉄並みの生産体制になっても黒字が計上できるかどうかといいますと、私は非常に危惧の念を持つわけであります。つまり、国鉄の場合は、やはり民間並みということであれば、所有している膨大な設備を活用して兼業部門等も活性化しなければ、到底私鉄競争ができないのではないかという気がいたします。
  10. 津島雄二

    ○津島委員 ただいまの御説明でございますけれども、一般に企業、しかも公営企業が赤字を出すという場合に、ただいまの国鉄の仕組みで言えば、その赤字は利用者であろうとなかろうと国民負担にいくわけであります。ですから、どのような議論がございましても、民鉄鉄道部門がやれるくらいの経営はしてもらいたいという議論は、私どもは、最低限の議論であり、また国民の支持は得られるのではないかと考えておることを申し添えておきたいと思うのでございます。  二番目に、先生は全国一社制と分割の問題をお取り上げになりましたね。ここで岡野先生の御意見と両方拝聴しておりまして、まず第一に私は、交通市場地域性というものを先生はお認めになるのかどうか、近藤先生にお伺いしたいのです。もしこれをお認めになるとすれば、これを画一の条件によってやっていくことによってさまざまな問題が起こってくることは、先生も否定されないと思うのですね。この矛盾をそのままにしておきますと、先ほど先生が三番目に挙げられました費用負担のあり方、これを明確にしろとおっしゃったのだけれども、交通市場地域性を認めながら全国画一にコストを計算するということを放置しておきますと、費用負担のあり方は全くわからなくなってしまうのじゃないか。  特に、分割をするとわからなくなる、国民共通財産の姿がわからなくなると先生はおっしゃるのですけれども、今のように膨大な、群盲が象をなでるような大きな姿で、どこに利益がいっているのか、どこにコストがいっているのか、資産の評価はどこでどうおやりになっているのかわからない。今の国鉄というのはわかっているのですか、その費用負担のあり方が。でございますから、今の交通市場地域性というものを前提としてきめ細かな議論をやり、そして資産の評価についても、そういう観点からいうと一律にできないということを前提といたしましたときに、先生がなおかつ一社の方が費用負担のあり方がわかりやすい、こうおっしゃる点をもうちょっと御説明いただきたいのでございます。
  11. 近藤禎夫

    近藤公述人 例えぱ全国一社制をとる場合でも、きょう冒頭申し上げましたように、今やはり改革しなければなりませんし、改革という場合には、政府で提案されているような改革実態は進行中でございますから、もうこれはとめることはできない。ですから、少なくとも同じ条件でということでございますね。例えば六万二千人の問題ですとか、いろいろな債務負担の問題ですとか、同じような条件でやった場合に、結果は分割した場合としない場合とではそれほど違わないのではないかというふうに考えたわけです。  それから、さっきの御質問でございますけれども、ばらばらにした方がわかりやすい、こういうふうにおっしゃいましたが、それは逆でございまして、少なくとも今の段階では、我々国民立場からしますと、監査報告書一冊見れば国鉄全体がわかります。しかし、一応国民にはそれしか公表されておりません。したがって、少なくとも日本国有鉄道の監査報告書に示されているような全体的な実態はある程度公表されております。しかし、これを二十数社、関連会社、子会社ばらばらに分割しますと、国民一般としましては、今までの国鉄の全体像がどうなっているかと申しますと、百数十社くらいの決算書全部を集めてこないと全体がわからぬ。この場合、相互に債権債務の問題とかいろいろな問題がありますから、そういったような相殺とか、連結会計の場合には非常に難しい調整問題が出てきます。そうしますと、逆に私はそういった点ではわけがわからなくなる、こう申し上げたわけであります。
  12. 津島雄二

    ○津島委員 私も、企業会計を長年やってきた者の一人でございますが、非常に手間がかかるけれども、手間をかけた方がよくわかるという面もあるということをこの際御指摘を申し上げておきたいのです。  その問題と離れて最後に一点だけ。先生は最後に、総合交通体系との関係で社会的費用の計量化をしたい、そしてそれにふさわしい費用の負担を考えていきたいという御意見を述べられましたが、これは私は大変参考になる御意見だと思うのです。そのためにも、社会的費用というものがそれぞれの交通サービスに伴う費用として、やはり具体的に、しかも現実的に算定をされていかなければならないというような意味におきましても、先ほどの問題に返ってまいりますけれども、膨大な全国一社が何とはなしに国民のために交通サービスをやっているという姿は、社会的費用の計量化のためには甚だぐあいが悪いという意見があると思うのですが、その点をひとつお伺いしたい。
  13. 近藤禎夫

    近藤公述人 私が最後に提起した問題は、これは確かに社会問題であるという点での認識は先生とそう違わないと思うのでございますけれども、実際にこれを制度的に確立するとなりますと、残念ながらこれからの研究課題でございますし、それは政府、民間一体となってそのような点の確立に、国鉄が来年どうなろうとやはり継続的に考えていくべき問題ではないか、そういう認識でございます。
  14. 津島雄二

    ○津島委員 どうもありがとうございました。
  15. 細田吉藏

    細田委員長 次に、戸田菊雄君。
  16. 戸田菊雄

    ○戸田委員 きょうは両先生、大変御多忙のところ公述人として参加をしていただいて、本当にありがたいと思います。  まず、岡野先生に、経営形態の問題で触れられておったようでありますから、その点について質問しておきたいと思うのです。  今後二十一世紀に向けての日本の交通全体、これは陸海空すべて含めて一体どうあるべきか。殊に国鉄の場合は、今日まで第六次計画再建方式ということで三十七年以降やってまいりました。それに対してことごとく失敗したのですね。これは何かというと、大量の投資です。三十七年以降、三兆円から始まって総体二十四兆円という負債を背負ってしまった。これはすべて国が新幹線とか何かをやる場合に、大投資が国鉄の自前方式で全部持っていかれたのですね。こういう状況の中で、殊に三十七年ですよ、今の予算総額からいけば三十兆円台、そのときに三兆円の膨大な投資をやったのです。だから、社会的に景気浮揚その他で国に対する寄与は相当あったと思うのですね。ところが、これらはすべて結果的には自前方式でやれ、こういう結果が今日の債務を生んでいると私は思うのです。ですから、こういう経営全体の中で総合交通政策と相含めてどういう態様がいいのか、この辺をちょっと意見として聞かせていただきたい。
  17. 岡野行秀

    岡野公述人 お答え申し上げます。  ちょっと御質問の趣旨がわからない点があるのですが、後者の方の、昭和三十七年以降の膨大な投資が今日の国鉄の問題になったという御指摘についてはわかるのですが、それと総合交通体系との関係で、このような投資をしていってはぐあいが悪いというふうにおっしゃったのでしょうか。
  18. 戸田菊雄

    ○戸田委員 ちょっと私の舌足らずで申しわけなかったのですが、今国際的に交通はすべて高速化、広域化していますね。日本国内においてもそうです。一つ新幹線の例をとれば、東京—仙台間は二時間で大体来るわけですね。それから、名古屋から東京までもそういう状況です。そういうものに対して、全体の交通政策としては広域化、高速化に進んでいる。ところが今回、民営分割ということで二時間単位でみんなぶった切っているのですね。これが果たして効率、運用その他に結びつくかどうかということです。
  19. 岡野行秀

    岡野公述人 この点で申し上げますと、今四全総でいろいろ検討している中でも、交通の広域化、とりわけこれまでの交通体系は東京、大阪中心への高速化である、広域的な地域内では決してそうではなくて、九州の知事さんたちは、知事会をやるときには東京よりか大阪へ集まった方が早い、そういう状況であったわけで、広域的に高速化を図ろうというのがこれからの方向だろうと思います。  それにつけても、国鉄を使えば二時間でということでありますが、どこへ行くにも国鉄を使わなければならないという理由はないわけでありまして、最も効率的に早く行ける交通手段が使えればいいわけであります。したがって、国鉄分割するときに二時間単位になっているからぐあいが悪いということにはならないわけでありまして、車でも結構でありますし、場合によっては、将来コミューターなんかも出てくるかもしれませんが、いろいろな交通手段が利用できて、それによって広域的に高速化が行われればよいということでありますので、国鉄分割とは私は直接関係がないというふうに考えます。
  20. 戸田菊雄

    ○戸田委員 債務等の問題について一点お伺いしますが、監理委員会の答申の中で、三十七・三兆円の債務分担は、国鉄長期債務として二十五・四兆円、それから年金負担、三島基金、余剰人員対策、鉄建公団の資本費負担、本四架橋の資本費負担、この鉄建公団の青函トンネルとか本四架橋等等は国鉄の負債とは違うのじゃないでしょうかね。この辺の見解をちょっと聞かせていただきたい。
  21. 岡野行秀

    岡野公述人 私が申し上げましたように、これは国鉄の再建ではなくて鉄道の再建である、したがって、鉄道のために投資したものはやはり鉄道が負担しなければならないというのが建前だろうと思います。そして、確かに鉄建公団の場合には、大変残念ながら、三十九年に鉄建公団ができまして、私が調べただけでも、五十二年までに鉄建公団が手をつけて開業した線区を調べますと、AB線のうち、実に四〇%近くが今回の第一次、第二次特別地方交通線に指定されている。いかに収益を生まない、赤字をもたらすような投資をしたかということであるわけです。したがって、今鉄建公団が建設している中には、特にCD線のようなものは将来十分に使えるものもございますので、今回新しい会社がそれを負債として受けなければならないというのは、私は当然であるというふうに考えます。
  22. 戸田菊雄

    ○戸田委員 近藤先生にも今の見解をひとつお伺いしたい。  それから、国鉄大手民鉄同様兼業化されれば経営効率はよくなって採算がとれる、こういう見解についてはどうでございましょうか。  また、外国の例を述べられましたけれども、確かに西ドイツ等は、大投資はほとんど国が面倒を見ますね。国鉄自身としては、大体交通施設、安全施設、そういうものに限定をされる。そして単年度主義で全部やりますから、いわば累積債務なんというのはない、年度決算で全部やっておる、そういう点がありますが、そういう点についてひとつお聞かせを願いたいと思います。  それから、総合交通体系から競争基盤の平等化、すなわち交通市場の競合化で運営する、こういうことでありますが、総合交通体系との関係でどう判断されておりますか、その問題について。  それからもう一つは、株の問題は全然内容が触れられていないのですけれども、例えばNTTの場合は三分の一国が保有、あとは売却、こういうことになりますが、国鉄の場合は全然それが触れられていない。単に収支試算の中において資本金〇・六兆円、総体においてとっているだけですね。これはどういうことで今後対処したらいいのか、そういう見解をも含めて説明していただきたいと思います。
  23. 近藤禎夫

    近藤公述人 大変盛りだくさんな御質問で、一遍に答えられるかどうかわかりませんけれども……。  第一番目の私鉄並みの経営効率ということでございますけれども、これは現にそういう形でもう改革をお進めになっているのでしょうから、したがって、もし来年四月にスタートするということになれば、当然そのときの体制というのが私鉄並みの水準になっているはずでありますね、人員の面とかいろいろな面で。こういった点で国鉄民鉄並みになるというふうに存じます。  しかしながら、私の場合は、民営化あるいは分割化という場合に、特に民営化という場合には一応括弧つきの民営化、つまり今四月にスタートしょうとするときの民営化と、それから五年あるいは何年先かわかりませんけれども、完全民営化ですね、いわゆる株式の完全売却、こういう時点での民営化とは少し区別して考えておるわけであります。少なくとも括弧つきと申しますか、括弧つきの民営化というのは、実態は公営ですから、世間で民営民営と言いますから全く株式会社になってしまうのじゃないかという誤解をする向きもかなりあると思いますけれども、さしあたりの段階で私は今言った民営化には反対していないわけであります。  ただ問題は、将来、完全民営化したときにいろいろな諸問題が生ずるだろう、この点はペンディングにしてほしい、慎重に今後の成り行きを見た上で判断してほしいということを申し上げているわけで、何でもかんでもだめだというふうには言っておりません。最初に申し上げたとおり、今改革に着手しているわけですから、これは当然ある程度進めなければ国鉄再生しないという点は、私も共通した認識であります。  それから、さっきのドイツの会計の問題でございますか、この点ちょっと出ましたけれども、ドイツの場合は、私、五月に実はある雑誌にその問題を書いたわけでございます。つまり、安全輸送と申しますか、国民に対して責任をとるべき基本的な施設、インフラストラクチャーといいますか基礎設備については国家が責任を持つ。それから商業的な他の輸送分野と競合する分野については企業あるいは国民がひとしく責任を持つ。だから、運賃値上げの場合もそのような区分別経理によって、例えばこの領域で赤字が出たということになれば、国民は、値上げは絶対反対ではなくて、やはり受益者負担の原則から、ああ、なるほど、こういう理由でこれはこの分野から生じた赤字なのか、では運賃値上げに甘んじなければならぬということになりますし、この分野は国家の責任において生じたというなら、これはやはり国が補てんすべきだろう。つまり、幾つかの分野別に責任を明確にし、その上で、経営努力の結果いろいろな問題が生じた場合には、これは国民も負担しなければなりませんし、鉄道経営当事者も、それぞれやはり合理化の努力のためにいろいろそういう義務を負わされるということになろうかと思いますね。  そういう意味でドイツで、これはドイツの会計制度としてやっているわけではございませんけれども、営業報告書の中に一九八〇年度から毎年そういったものを入れまして、政府企業も労働組合も報道界も、いろいろな領域で一応ドイツ方式のやり方というものは共感を持って受けとめられているということでございますから、ひとつ我が国もこういった点をお考えになったらどうかということでございます。  それから、競争基盤の平等化という問題でございますけれども、これはさっき自民党の議員さんにちょっとお答えしましたが、私自身、最終的に、どのようにそういう社会的費用という問題を計量化したらいいか、計数化したらいいかということはまだ考慮中でございますから、今すぐ具体的には申せませんけれども、やはりこれだけ自動車がはんらんして、今昼間、都内で、ちょっとここから銀座へ行こうといったって三十分ぐらいかかる。そして地方へ行けばどうかというと、今度は歩道がなくて、大多数の人間の方が車をよけて歩かなければ歩けない。そのような形で自動車の利用者というのは大変利便を受けております。  しかし、その反面、もたらす公害というのはたばこの害どころじゃありません。これはもう特に田舎へ行きますと、杉林とかそういったような森林は酸性雨によりまして、つまり排ガスを出したところで被害が起きるのではなくて、上昇気流に乗って、はるかかなたの遠隔地で被害が起きるというような非常に難しい問題があるわけでございます。しかし、そのような損失はやはりそういった利益を受ける人によってカバーしなければならない。だから、そのようなルールというものを決めなければならない。鉄道はそういう公害はどの程度出すか、自動車はどの程度出すか、こういったことをやはりきちっとしていく。そうしますと、確かに自動車の方はもう少し高くなるかもしれませんね。自動車メーカーに負担させる、石油業界に負担させる、これはちょっとできないかもしれません、国際競争という問題がありますから。だから、いわゆる車を利用する人が目的利用税的な形でその分税金を負担する。そうすると、多少貨物トラックやなんかの運賃コストも高くなるかもしれない。そのようなことによりまして鉄道の場合とのバランスがとれるようになると思います。  それから、最後にもう一点だけ、ここでお話をさしていただきたいのですが、国鉄運賃が非常に高い、こう申しますけれども、私鉄運賃を決定する場合でも、基本的な運賃を決める基礎というのは全体の事業計画であります。これはもう電力会社もガス会社もみんな同じであります。だから、そこで国鉄当事者能力のない経営者自分で設備投資とかいろいろな意思決定ができないとしたならば、膨大な、今の財政状態ではしょい切れないようないわゆる事業計画を決めなければなりません。そのような事業計画をもとに要員計画、修繕計画、資本計画その他いろいろ入れていきますと、国鉄運賃は当然高くなる。これは私鉄より高いのは当然であります。したがいまして、いわゆる括弧つきの民営化と申しますか、そういう形になればその辺の問題点の解消はこれからだんだん進んでいくのではないかというふうに考えております。  大変長くなりまして申しわけありません。
  24. 戸田菊雄

    ○戸田委員 岡野先生に二点ほどお伺いしたいのですが、今回の民営分割に当たって、効率的な経営あり方ということで、監理委員会としては民鉄方式をとります、こういうことを言われているんですね。しかし、出されている法案をいろいろ検討しますと、すべて運輸大臣の許認可事項に入っています。軽微な変更まで届け出をしなさい、こうなっているのです。がんじがらめですね。専決条項、全部そこへ行っちゃっている。民鉄の、いわば本当の民間手法の自主経営というものは全然ないように考えられるのですが、この辺の見解をひとつお伺いしたい。  それからもう一つは、民営分割されますと、必ず運賃は格差運賃でもって地域によって違ってきます。あるところは三%、あるところは六%高い。今までですと遠距離逓減法という運賃制度で全国同率にやられる。それが今度はばらばらになって、さらに運賃が上がる。八十五線、既に地方ローカル線は切られています。今後やはり民営手法でいきますと、採算のとれないところは全部切っていくということになりましょう。そういうことがないかどうか、見解はどうですか、お聞かせ願いたい。
  25. 岡野行秀

    岡野公述人 お答え申し上げます。  第一点の効率的な経営の件については、これは戸田先生と同じ意見でありまして、確かに運輸大臣のいろいろな許認可の点が法案に出ております。ただ問題は、これは今までの国鉄法よりは少なくとも緩くなっていることは間違いございません。  それから、法律の問題と実際の許認可行政の中での厳しさということは別でありまして、法律は緩くできていても、その運用について厳しくやれば実際上は厳しくなります。ですから、私は、法律の上ではこういう許認可のことを決めておいても、実際上の法律の運営に当たっては、経営の自主権を最大限に発揮できるように緩く活用するということをしていただきたいというふうに思っております。  その一つの例としまして、旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律案の第十条に「中小企業者への配慮」というのがございます。これも条文を見ただけではどの程度、どういうふうに配慮をするのかということはわかりませんが、この配慮が非常に厳しい形でなされるということになりますと、これはがんじがらめになります。それから、それを適当な範囲で、もっともな程度の範囲で抑えるのであれば、自主性は損なわれないということになりますので、法律そのもので決めている、法律の中に示されていることと、それが実際上どの程度の、効率的な経営を阻害するような規制になるかについては、むしろ実際の行政を含めて考えるべきでありますので、私は法律の上でそれが以前よりも緩めてあるという点で評価したいというふうに考えております。  第二番目に、分割民営をした場合に運賃格差が起きるだろう、現在のような一社制でなければ遠距離逓減が問題になるだろう、それから運賃が上がるだろうし、赤字線は廃止されるだろうというお話でありますが、私は運賃格差は生ずるだろうと思います。むしろ生じていいというふうに考えております。  なぜコストの条件が違うところで同じ運賃でやらなければならないのか、それはむしろ私は不公平だというふうに考えます。例えば電力についても、九電力でコストが違えば、九電力の会社でそれぞれ違った料金を徴収しております。もっと激しいのは水道料金でありまして、水道は、その水道をつくるためのコスト、水のコストが非常に違います。地域によって非常に違います。これも当然であります。したがって、確かに運賃格差はできるだろうというふうに思います。しかし、それは鉄道がどの程度実際に必要であるかということから起こるわけでありまして、運賃格差そのものがあっても、自分たちが払うに十分なサービスであるならばそれを支払うべきだと考えております。  それから遠距離逓減ですか、既に遠距離逓減は行うということをおっしゃっているようでありますが、これは行うか行わないかということを別にしましても、私はこの法案全体を考えるときに、常に、もし自分経営者であったならばこれでやっていけるだろうか、あるいはどうするだろうかということを考えて読んだわけであります。遠距離逓減の場合でも同じでありまして、私が会社社長であるとします。今の併算制で、ただ加算して高い運賃にしたらお客さんはふえるだろうか減るだろうか、これはやはり隣の会社と相談をして、遠距離逓減をやった方がお客さんも乗ってくれるし、収入も上がるというのであれば、私は喜んで遠距離逓減をいたします。したがって、何もこれを初めから決めておかなくても、遠距離逓減があった方がいいところについては当然行われるというふうに考えております。  三番目は、運賃は上がるかということですが、現在、交通市場が既に非常に競争的になっております。先ほど例を挙げました札幌—小樽の間等でもそうでありますし、九州の博多—熊本の間でもそうであります。競争が非常に激しくなっておりますので、今度は自分たち運賃を割合に値上げしやすくなったからといって運賃を値上げすれば、鉄道離れが起こることはもう明らかでありますから、いかにコストを下げて、運賃を上げないでお客さんに使ってもらうか、あるいは多少高級なサービスをコストをかけてやって、そのかわり高い料金も払っていただく、そういう形でいろいろなサービスをできるだけ低い価格で提供するということをやらない限り鉄道は生き延びられないと思いますので、すぐに運賃が上がるなんということは到底考えられないと思います。  それから、赤字線廃止の問題でありますが、これは本当は詳しく申し上げますと少し時間がかかるのですけれども、赤字線を廃止するかどうか。現在、例えば第三次特定地方交通線に挙げられているものもございます。第二次のものもあります。実はこれは一線一線あらゆる手段を尽くしてみて、どのぐらい収入が上げられ、どのぐらいコストが下げられるのか。二千人の利用者に満たないからといって全部条件が同じではなく、コストの条件も、利用者が支払う能力についても違うわけであります。一線一線あらゆることをしてみて、例えば、これは少し簡単なものでも、駅をふやしてやれば乗るというのであれば、駅をふやすコストとそれによって使ってくれる人の数がふえるのを考えながら経営をしていくわけです。したがって、今までの国鉄の会計上で出てきた赤字になっている線をどんどん切ってしまうなどということは、私が社長であれば、自分が持っている資産をできるだけ活用して収入を上げ、成績を上げようということでありますから、喜んでどんどん切るなどということはないわけでありまして、切るところは、どう見てもお客さんが乗ってくれないというところだけを、そしてコストがかかるというところだけを切る、廃止するということになると思いますので、赤字線の廃止がどんどん起きるだろうということは私はあり得ないと考えます。
  26. 戸田菊雄

    ○戸田委員 時間がありませんから、私も端的にお伺いしますので、ノー、イエスでひとつお願いしたい。今の問題については、近藤先生にもひとつ見解を後で述べていただきたいと思う。  それから、今回民営分割に持ってきた監理委員会の手法というものは、民間の破産会社の再建方式で来ているのです。そういうことだとすれば、資産なり財産目録なり全部時価でもって計算をして、これで一体財産はどのくらいあるのか、そして足らないところはどう補てんをするかということで一生懸命やりますね。ところが、今回はそういう点で全然その手法にのっとっていない。例えば三十七・三兆円の総体の債務について、普通なら、民間手法なら、銀行債権六割カットしますよ、あるいは商品債権何ぼカットしますよ、こういうことで全部カットしますね。賃金も、これは大事だけれども、この際やむを得ないからベースアップはやめてくれというようなことでいろいろとやります。ところが、全然やっておらないですね。殊に国鉄というものは、国と国鉄は親子の関係です。この債務が膨れてきたというのはほとんどが利払いですからね。この債務に対して、財投資金の六・二%なら六・二%の利払いでもって大変な債務が膨らんできているわけですから、本当に民間手法でもって今回再建をやる。監理委員会でも指摘しているように、これは明らかに破綻状況だ、それで民間手法をとります、こう言っているのです。やはりそういうものをやるべきだと私は思いますが、国が減免をびた一文もやっていない。これは国でやるべきだ、こういうふうに考えますが、その辺の見解が一つであります。  それから、含み資産が非常に多い、三十一年の簿価でもってやりますから。ですから、今時価にすればほとんど千分の一ないし二千分の一でやられておる。そうすると、そういった含み資産を各会社でもっていっぱい抱えることになる。これを三千三百三十ヘクタールさしあたって非事業用地として売却をする、こう言っている。例えば東京駅前の国鉄本社、これなどは坪一億、こう言われていますね。不動産会社に聞いたら、大体東京ですと五千万でもペイしましょう、こう言っているのです。そういう高価な時価評価でいっているときに、簿価でもって全部くれてやるのですからね。そういった不当性が今回の民営分割の発足に当たってある。こういう点をやはりきちっと是正をしてやらなければいけないだろう、こういうふうに私は考えます。  それからもう一つは、用地売却の場合に大体公開入札が原則、これは橋本運輸大臣も言っています。しかし、随意契約もやりますよ、こう言っている。それが私は非常にくせ者だと思う。ですから、こういうものに対する歯どめがないかどうか、こういった見解をひとつお伺いしたいと思います、両先生から。
  27. 近藤禎夫

    近藤公述人 今二点ほど御質問をちょうだいしたと思いますけれども、まず国鉄旅客会社として独立する場合、簿価で引き継ぐ、こういう問題につきましていろいろ問題があるんじゃなかろうか、そういう御趣旨だと思います。  これは、やはり引き継ぎをする場合に、今の国鉄が破産して全く新会社をつくるということと、それからもう一点は、今の事業を改革の上引き継ぐ、こういう場合とでは資産評価のあり方に若干違いがあるんではないか、こういうふうに考えますし、同時に、このことは労働者の雇用問題にもかかわる問題だろう、私は労働問題は素人でございますけれども、素人なりにそういうふうに判断するわけでございます。というのは、もしも国鉄が破産した、新会社になるんだということになりますと、新事業体は全く新しく人間を雇用するし、当然破産した企業としては、自分の財産をやはり時価評価して負債を引いて引き継がなければならない。となりますと、新会社は時価評価で資産を評価しなければいかぬということになります。しかしながら、一方、今の事業体を改革の上引き継ぐんだ、こうなりますと、簿価で評価しても別に問題は起きない。ですから、どういう基本的な姿勢で今度の改革というものをとらえているのか、この見方によって会計上の評価もいろいろそういう問題も絡めて出てくるのではないかと思います。  それから、先ほどの御質問で私一つ落とした点なんですが、株式売却という問題でございますね。この問題にまず若干絡んでいますけれども、完全民営化したときに株式を売却する。そうすると、これは必ず私鉄と同様に企業間格差というものが生じますし、ましてや貨物という問題も入ってきますし、したがって五年先の経営実態がどうなるか、これは恐らくだれもわからない話ではないかと思うのですね。だから、その場になってみないと、各社がどういうばらつきになるのか、あるいはならないのか、この辺も見当がつきませんが、問題は、売却時期は恐らく一緒にできないだろう。それから、売却するとき、特に三島の場合には基金が与えられています。基金は、三島はお困りでしょうから、何とか全国民立場からお助けしましよう、営業損益で赤字を出すんだから基金で黒字を出して、どうか黒字でやってください、こういう趣旨だと思うのでございますけれども、今度は三島が営業損益の段階でうまくいくようになった、そうなれば基金は清算事業団にお返し願いたい、そして国民全体が負担する負債にやはりそういったものは充てるべきだろうというふうに考えます。  それから、じゃ株価は幾らになるかという問題ですけれども、とりあえず今の政府の案ですと、会社は簿価で引き継ぎができることになっています。いろいろ資料を拝見しますと、どうも六社全体と貨物を入れて資本金が六千七百億円、こういう金額であります。それから、国民負担の債務に充てる株式売却に七千億円充てている。三百億ほどちょっと誤差がありますけれども、およそくっついているわけですね。そうなりますと、そのときの株価のつけ方いかんによっては分割譲渡を受けた人は膨大なプレミアムを得ることになる。それは全国民が利益を享受するのではなくて、そういった株を購入できる一部の層のみに還元される、そういう問題がありますから、やはり株式売却のときの、もしも売却があるとすれば、株価というものは非常に慎重に考えなければ、これは大変な問題になるだろうというふうに考えております。
  28. 細田吉藏

  29. 戸田菊雄

    ○戸田委員 結構でございます。  時間がありませんものですから、最後に二点ほどお伺いしたいのですが、今回の民営分割に当たっての中心は幾つかあります。多様ではありますが、そのうちの二点について見解をお伺いしたいのです。  その一つは国民負担分ですね、最終的に十六・七兆円。審議の段階で土地の売却費が七・七兆円になりましたから、若干これは減りました。これは国民の負担ということで指摘をされて、政府はまだそれに対する回答を与えておりません。どうするのか、全然ない。こういう点についての見解が一つであります。  それからもう一つは、財産や何かは全部新会社にくれてやりますよ、しかし職員は別ですよ。これは一たん実質的に解雇されますね。そして六十二年度首で二十七・六万人、新事業体は二十一・五万人にいたします、こうなっております。その余剰人員と称するのが九万三千人おりますよ。これを今国鉄推薦、設立委員会推薦、そして最終的に運輸大臣で確定、こうなっていくわけですね。だから私は、これは全く不法じゃないか、こう考えるのです。憲法二十七条の職業選択の自由あるいは二十八条の労働三権の付与の問題等々の保障ですね。この財産保障と労働権保障というものはやはり経済支柱の二つの柱と言われているのですね。これは憲法の根源にかかわる問題そういった団結権すら否認をしている。会社更生法でいくなら、その所在するところの組合の代表あるいは従業員の過半数を占める代表、これとよく協議をする。納得のいく協議ですよ、そういうことで秩序が生まれているのですから。そういうものが全然ない。一方的に運輸大臣がそれをやっている。だから、こういう点の雇用政策というものはないのじゃないか、こういうふうに私は考えるのですが、その二点についてひとつ見解をお願いしたいと思います。
  30. 岡野行秀

    岡野公述人 国民負担の問題ですが、十六・七兆円と大体計算されておるわけですが、具体的にどうするかはこれからの問題でいいと私は思うのです。といいますのは、国民にどのくらい責任があるかということになるのですが、これは国鉄であって、そして国の関係でありますから、国は打ち出の小づちで金をつくり出すわけにはいかないわけですから、結局税金等々で上がってきたものから国鉄に出す、あるいは財政投融資のような形で出していったわけで、その結果として今行き詰まってどうしても十六・七兆円、土地の売却いかんによってはこの額が減るということは十分あり得るわけですけれども、いずれにしても国民に若干残るであろう。  国鉄がそもそも赤字になり始めた最初のころは、国民は徹底的に運賃値上げに反対をしまして、そのため運賃値上げがおくれたり、場合によっては運賃値上げが見送られたりしまして、それが赤字の原因になり、だんだん積もり積もってそれが利子を生むようになったことも事実であります。それから、さまざまな地方のローカル線を建設したことについても、これもやはり国民が希望したので、それが政治を通じて反映されて建設されたに違いないわけでありますから、私は、これは何らかの形で国民か、ある種の国鉄再建税ですかどうかわかりませんけれども、そういうような形で負担せざるを得ないということは明らかであると思います。もちろん、インフレが起きれば、この額がうんと減ることになることは間違いありませんが……。  それから、第二の点ですが、これは会社更生法といっても、私は民間の会社更生法と全く同じ手続でやれと言うわけではなくて、民間の会社更生法と同じ考え方でやれということであります。民間の場合でも、その行き詰まった会社をどうするかというときに、その会社はあるいは成立するかもしれない。もちろん減資をし、そして債務等々については一部を切り捨てるとか棚上げするとか、面倒を見てもらうにしてもやっていけるかもしれない。その場合でも、職員等について、労働者について、それが将来企業をやっていくのにどうもふさわしくないといいますか、うまくいきそうもないということであれば、可能性としては経営ができる場合であっても、それは会社更生法に従って再建をしないで、引き受げ手がないだろう、多分それは解散してしまうだろうということになると思います。  今度の場合は、これは解散するわけにはいかないわけでありまして、国鉄分割民営化されますが、企業としては残るわけであります。したがって、そこでその職員について、どのようにその職員が新しい会社に配属されるかわかりませんけれども、いずれにしても、人数を減らさない限り新しく再生する鉄道はやっていけないわけですから、この点はやむを得ないというふうに考えます。
  31. 近藤禎夫

    近藤公述人 今の最後の問題ちょっと私の専門外でございますので、御意見を差し控へます。
  32. 戸田菊雄

    ○戸田委員 それでは時間ですから。どうもありがとうございました。
  33. 細田吉藏

    細田委員長 次に、柴田弘君。
  34. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 きょうは、両公述人にはお忙しいところを本当にありがとうございます。また、貴重な御意見を伺いまして非常に参考になるわけであります。  今いろいろと御意見等を拝聴いたしておりましたが、私、まず第一に、非事業用地の国鉄用地、御承知かと思いますが、三千三百三十ヘクタールのいわゆる売却あるいは処分の方法、このあり方につきまして具体的に御意見を承りたい、このように思います。  今まで特別委員会審議の中でこの売却のあり方をめぐって、総理初め運輸大臣等々からいろいろと答弁がありました。それを聞いておりまして、どうも政府の中で意見の食い違う面があるんじゃないか、このような感じを実は持っております。もちろん、この売却あるいは処分に当たりましては、公平、公正、そしてガラス張り、これが大原則であるということは当然であります。ただ、具体的な手法でどうしていくかという問題がこれから大きな問題になってくると思うのですね。例えば、御承知だと思いますが、今建設省の方で、国鉄用地等を中心にいたしまして地域の活性化のために新都市拠点整備事業あるいは来年度からは定住拠点整備事業、これは地方都市でありますが、とにかくやっていこうということで、それぞれ調査費がつけられまして進行している部分もあるわけであります。  いろいろとあちらこちらの具体的な事例を見てまいりますと、土地の活性化あるいは使用について自治体がストレートに払い下げを受けてやる場合、これは随意契約でやっていく場合もあろうかと思いますが、この点についてもまだ運輸省においては、事業そのものは付加価値がつく基盤整備になるから否定しないんだが、随契まで担保はされていない、このような答弁である。一方、建設省の方は、やはり当の自治体の意見に従って政府部内でもよく検討して対応していかなければならない。これは微妙に食い違っておるわけであります。  こういったところを見てまいりますと、こういう処分のあり方について、受け皿の問題、建設主体、開発主体の問題、あるいはそれが本当に地域の活性化のために役立ち、また公正、公平に行われるという一つの原理原則を確立していけば、そういった問題は自治体の意見等をよく聞いて対応していかなければならない。例えば、今はやりの民活でやるという場合もあるわけでありますね。あるいはひょっとすると第三セクターを設立してやる場合もあろうかと思います。こういったいろいろな問題が出てくる、私はこのように思いますが、そういった観点につきまして、ちょっと前置きが長くなりましたが、処分のあり方、売却のあり方、こういったものにつきまして両公述人にまず御意見を伺っておきたい、このように思います。
  35. 岡野行秀

    岡野公述人 国鉄の非事業用用地の売却、処分につきましては、私は、ちょっと補足をしますが、原則として売却はできるだけ高く売るべきであるという考え方をとっております。といいますのは、土地というのは、今皆さんが自分たちで不動産を経営しているということを考えればすぐわかるわけですが、土地の一番高い価格はだれがどう決めるかといいますと、自分がそれを最も有効に稼げるように使った場合に一体どのぐらい不動産収入があるであろうか、そしてそれをつくるためにどのぐらいのコストがかかるか、そうすると用地にこのぐらい払ってもいいなということが出てくるわけであります。したがって、最も有効に使って最も稼げるような人が一番高い価格をつけるわけです。それより低い価格で売りますと、実はその有効に使える人たちから見ますと、資本利得、キャピタルゲインをみすみすくれることになるわけであります。したがって、安く処分するということは特定の人にキャピタルゲインを与えるということでありますので、原則としてできるだけ高く売るべきだ、それが国民が負担しなければならない負担分を減らすのに役立つ、そういうふうに私は考えております。  ただし、特定の場所については、これはぜひこういうように利用したいというようなことが自治体あたりで出るかもしれません。その場合にはどう考えるか。その場合でも、原則的には、やはりそれだけの価値があるならば自治体がそれだけ払えばいいじゃないかというのが私の基本的な考え方ですけれども、それが無理であるならば、それと同等な価格に多少の色をつけるというぐらいの程度であって、ただし、それを自治体が当初の目的どおりにちゃんと使うということを担保した上で行わせる、行う、その程度の緩め方しか私は考えておりません。原則としてできるだけ高く売る、それがキャピタルゲインの不当な発生を防ぐことになるというのが私の考え方でございます。     〔委員長退席、佐藤(守)委員長代理着席〕
  36. 近藤禎夫

    近藤公述人 私は少し見解が違うのでございますが、確かに非事業用地を最大限高く売るということは、これは自分が商人であれば当然そういうことは考えますけれども、そのことによって国鉄問題で費用軽減がなされましても、今度は周辺土地の価格の上昇、そういったような、だれもが知っているような問題が生じまして、それによる固定資産税の増大とかいろいろな問題で、あちらを立てればこちらが立たないという問題であると思うのです。  したがいまして、国鉄の土地を処分すると、確かに今の国鉄の危機を救うという観点に立てば最大限に高く売るということは当然だと思いますけれども、しかしながら、政府見解でもいろいろ建設省とか御意見がお分かれになっているように、これは非常に難しい問題ですので、目いっぱい高く売るというよりも、むしろ社会全体の地価の安定ということで、国鉄の方の債務返済分が多少減少しても、これはやはり適正な何らかの基準価格を決める委員会で決定すべきだろう、むしろその方が日本国土全体の地価の問題から考えますと適正ではないか、最大限でなくてもよろしいのじゃないかと僕は思います。  卑近な例ですけれども、私は東京の下町に住んでおりますが、最近ではもう価格というものはめちゃくちゃでありまして、虫食い的に土地が買われていって、最後に一軒頑張ったのが追い出される。ちょうどイギリスの昔の囲い込み運動じゃありませんけれども、下町から住民がどんどん消えていく、こういう現象が現に起きていますし、国鉄問題の処分の方法をそのような最大限で売るなんということですべて物事を考えた場合には、はるかに社会的な問題というのは大きい、そういうふうに私は考えております。     〔佐藤(守)委員長代理退席、委員長着席〕
  37. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 岡野公述人の御意見は、やはり長期債務の返済ということを重点に置いての御意見だと私は思います。  今近藤公述人からお話がありましたように、やはり高く売るということは、それは一面からいえば私も決して否定するものではない。ところが、今まで例がありましたように、また今後恐れられていますように、いわゆる周辺地価の上昇というものがつながってくる可能性が十分ある。その場合の歯どめというのを一体どうかけていくかという問題も実は議論をいたしました。ところが、国土庁にいたしましても、これから関係省庁と相談をしていくのだということで、本委員会においてはまだきちっとした見解というのは示されておりません。  それで、果たして今回の国鉄の用地の放出というものが——私はやり方だと思います。だから、そこにしっかりとした政策選択をして、きちっとした歯どめもかけていかなければならぬと私は思いますが、運輸大臣が申しますように、用地を供給するのだからそれは上がりませんよ、そんな単純な議論だけで、そういった発想のもとに行っていくということは非常に危険性があろう、こう私は思います。  でありますから、岡野公述人にお聞きしたいのは、高く売るのは、一面からいえば私も決して否定するものではない。その長期債務をできるだけ少なくしていこう、国民負担を少なくしていこうという気持ちは私もわからぬではありませんが、それ以上のいわゆる大きなデメリットというものを考えていかなければならない、それについての歯どめ。  それからもう一つ、国鉄用地というのは国民の共有の財産であります。でありますから、その地域のいわゆる地域政策あるいは活性化、また都市計画等々というものとやはりきちっと整合性のある密着したものをつくっていかなければならない、そこに国民の共有財産の大きな利用、活用の道があろうか、このように私は考えておりますが、その辺についての御意見があればひとつお聞かせをいただきたい、このように思います。
  38. 岡野行秀

    岡野公述人 第一の、周辺の地価の上昇に拍車をかけるだろうという議論については、これは極めて特殊な条件を除きますと実はないわけであります。あるというのは、実際にもっと高い値段がつけられてもしかるべきと思ったのが、ただ実際上つけられていなかったというだけであります。  といいますのは、もし国鉄の非事業用地を売却した場合に、そこの利用によって隣の利用価値が直接に生ずる、それがなければ利用価値がなかったけれども、例えば非事業用地をホテルにした、そうしますと、そのホテルの周辺で、多分お客が来るだろう、喫茶店をやったらもうかるからというので、それ以前と比べればもっと高い地価でもいいということは起きますが、そういうことがないとしますと、実は本来隣の土地は、潜在的にはそういう価格がつくべきものであったものがただつかなかっただけであって、そういう地価に影響するということは表面にあらわれた面であって、実際のメカニズムの中では影響しないというふうに考えます。それが第一点であります。したがって、国鉄累積債務国民負担分を減らすということはもちろんでありますが、それと同時に、特定の人にキャピタルゲインをみすみす与える必要はない、これは大変な不公平だというのが私の基本的な見解であります。  それから、もし都市計画上このようにこういう形で使うのが望ましいということであれば、それは都市計画の方が先行しまして、国鉄の特別の用地だけでなくて全体について都市計画ができて、そして国鉄の用地の部分についてはこういう利用の仕方しかできないということであれば、その条件のもとで入札をすればよろしいわけでありまして、その場合には、ただ何にでも使っていいという場合と比べますと売却価格は安くなるかもしれませんが、そのかわり都市計画上プラスになるわけですから、国民も、少し負担がふえるけれども、それでよくなれば我慢しようということであれば、それは結構であると思います。
  39. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 具体的な問題でもう一つお聞きしておきます。これは両公述人にお聞きしたいと思いますが、用地の活用の方法で土地信託制度ということが今この委員会でも実は議論されたわけであります。この辺についてはひとつ端的に率直に、その土地信託制度の導入、活用ということについてはどうでしょうか、両公述人からお聞かせいただきたいと思います。
  40. 岡野行秀

    岡野公述人 この土地信託を活用するということも全く考えられないわけではありません。一つは用地を、例えば非事業用であるけれども、これは新しい会社兼業に使おう、そのかわり、その分について債務も一緒につけてもらうということをやってもいいわけですね。ただし、その場合に、新しい鉄道会社がこれを非常に有効に利用して収益を上げることができれば、その収益をもってつけられた債務を返済することができるわけであります。そういう使い方が一つあります。その場合に、用地はあるけれども、自分のところで果たしてうまく使えるだろうかということであれは、土地信託の形で利用させて、地代相当分といいますか配当分といいますか、その分け前をもらうということも一つのやり方でありまして、それは、有効に自分自身が使えるか、それともその部分は委託してやった方がいいのかという判断によると思います。
  41. 近藤禎夫

    近藤公述人 国鉄の本業以外の問題になりますと、これはいろいろなノーハウというか、私鉄の場合には長い歴史がありますけれども、国鉄当事者がそういったような問題に今直接介入をしたとしてもなかなか難しい問題ではなかろうかと思うのですね。こういったような観点からしますと、やはり適正な監督のもとにある程度そういったような方法も考えられるのではないかというふうに考えております。
  42. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 そこで、この用地の利用、活用という問題でもう一問お聞かぜいただきたいのですが、御承知のように三千三百三十ヘクタールの処分につきましては、清算事業団に置かれました資産処分審議会でいろいろ検討される、今の都市計画上の問題ですとか自治体のいろいろな意見ですとか、そういったものを処分審議会で検討してもらおうというのが政府考え方であろうと思います。土地信託制度もそうであります。  しかし、私ども考えておりますのは、そういったもろもろの土地の処分につきましては、今後いろいろなケースが出てくると思います。その中で、やはり一つの地域の政策に見合った土地政策あるいは都市計画上の問題もいろいろ出てくると思います。そういったいろいろな問題が複雑に絡み合って、私は、この三千三百三十ヘクタール、いろいろなケースが出てくると思います。複雑に絡み合ってくると思います。そういった問題を処分審議会だけで果たして処理していけるかどうかということも、私は正直に言いますと疑問に思っております。でありますから、少なくとも国民の共有財産であるこの膨大な国鉄の非事業用地の処分に当たって、やはり処分審議会だけでなくて、私は総理府に利用計画委員会、まあ仮称でありますが、そういったものも設置をして、国が、政府がこうした貴重な用地の活用、利用というものをきちっと検討していくべきではないか、このような考え方でおるわけでありますが、この資産処分審議会とは別に、いわゆる総理府の中に置く利用計画委員会の設置ということについてはどのような御意見でございましょうか。この辺の御意見がありましたらひとつお聞かぜいただきたいと思います。両公述人にお願いいたします。
  43. 岡野行秀

    岡野公述人 その処分の委員会でそういうことが議論できないのかどうか、屋上屋を重ねる必要もないだろうというのが私の感想であります。要するに、その中で何を審議してどういうふうに決めるかということの問題でそれを片づけることができるのじゃないか、そのように思います。
  44. 近藤禎夫

    近藤公述人 委員会あり方につきましては、私もそれほど特別今の御意見と違うわけではございません。  ただ、この非事業用地の処分の問題について一点だけちょっと申し述べたいと思うのですけれども、とにかく今度の改革によって土地を全部処分する、これで将来国鉄経営というものがもし成り立たなくなった場合、二度と累積赤字を補てんする土地はないんだ、再再建はないんだというような認識のもとにひとつこの問題は慎重に考えていただきたいと思っております。
  45. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 時間が迫ってまいりましたので、続きまして御意見をお聞かせいただきたいと思いますが、いわゆる分割民営化経営収支の見通しの問題であります。  これは政府がもう既に資料を提供いたしておるわけでありますが、この六十二年度の営業収入を見てまいりますと、北海道会社あるいは四国会社ともに監理委員会が答申いたしました金額よりもそれぞれ三十七億円あるいは八億円減少している。それから九州のみがただ二十八億円増加をしている。一方、営業費用はそれぞれ、北海道が三十一億、四国が十四億、九州が四十二億増加している。監理委員会の答申が出ましてからわずか一年二カ月であります。このように修正をしなければならなかったということは、経営の先行きに非常に不安定要因があるのではないか、まさに綱渡り的な経営と私は言わざるを得ない、こう思います。  これらの三島会社には、御承知のように経営安定基金が千六百億円上積みをされまして一兆一千八百億円になりました。その運用利子で辛うじて黒字をひねり出すという苦しいやりくりである。本州会社の方にいきましても、飛行機離れの影響とか、あるいは新幹線の好調ということで増額修正をされましたが、これも本当にそのとおりいくのか、一過性の現象ではないかというふうに心配をされるわけでありますが、この経営見通しについてはどうかということ。  それからもう一つ、これは先ほども出ておりました運賃の問題ですね。いろいろと見てまいりますと、それぞれ三%から五%ないし六%、各会社毎年上げていくわけであります。ところが、一方においてはいわゆる輸送人員が、たしか西日本会社以外は減少傾向である。そうしますと、やはり経営収支を何とか黒字に持っていくために、客離れ現象、運賃の値上げ、そしてそれに対しての客離れ現象というものが起きる、そしてまた運賃の値上げ、この運賃の値上げと客離れ現象というものが相互に繰り返されましていわゆる悪循環になるおそれがあるんじゃないか、こんなふうに危惧をされるわけでありますが、その辺についての御見解経営収支見通し、そして運賃の値上げの問題について両公述人の御意見を承っておきたい、こう思います。いかがでしょうか。
  46. 岡野行秀

    岡野公述人 この経営見通しにつきましては、もちろんこれを非常に明確に、確実なものとして見通しを出すことはまず不可能であることは間違いないと思います。ただ、この内容を見ますと、今度多少訂正が加えられましたけれども、確かに四国などを見ましても、相当これでも大変だろうというふうに私は実は思っております。しかし、その基金をつくってもらったことによって少なくとも当面やっていけるだろう、そのように考えております。  それから、そもそもこの経営の見通しは、まず絶対だめであるというような見通しでは困るわけです。そうかといって大甘の、これだったらもうだれがやっても楽にやっていけるという見通しであっても困るわけであります。私は、そういう点からいいますと、この経営の見通しはまあかなりかたいところであろうというふうに考えております。  どの会社にありましても、幾ら国鉄であっても、どんな民間の会社も、例えば新年度の初めにその新しい営業の見通しを発表します。ところが、常に非常に正確な会社であっても、年度の途中で減額修正をしたり増額修正をしたりします。鉄道の場合でも同じでありまして、景気がどうなるか、それから利用者がどうであるか、場合によっては、観光については天候がどうなるかということにも影響されるわけであります。したがって、努力をすればこれよりももっとよくなるだろうし、そういう自然的な条件が悪ければ場合によっては多少悪くなることもある。しかし、それにしても、かたく見積もって経営破綻を来さないでやっていけるということになれば、それで私は十分であって、この経営の見通しについてはそういう考え方で見ております。  それから運賃について言いますと、私が先ほど最初に申し上げましたように、国鉄職員が新しい会社へ行って大変やる気になれば、実はかなり増収にすることができるだろう。いろいろな工夫をもう既に考えております。あるものはもう現在でも実施されております。そういう点からいいますと、運賃を上げるといっても、これは物価上昇分があればほとんどそれに見合う程度というぐらいに考えて、それで頑張れば、いわゆる運賃値上げと客離れの悪循環ということをむしろ避けることができるのではないか、私はそのように考えております。
  47. 近藤禎夫

    近藤公述人 二点ほどお答えしたいと思います。  まず経営収支の見通しの問題でございます。五カ年計画というものが出ておりますけれども、実は何年か前に、固有名詞を出していいかどうかわかりませんが、京成電鉄が倒産寸前で再建計画をやった。あのとき、銀行が融資したとき、再建計画を何度も出させて、それで銀行が協調融資をしていてどこまでのデータを信用したかというと、五年計画の債務返済計画を京成がつくって出したもののうち、結局三年までですね。三年以降は改めて協議をするということで、五年計画というものは信用していないわけです。  つまり、我々が見せられたデータというのは結果でございまして、これは会社の決算書でもそうでございます。問題は、どういう根拠でこういう結果になったのかということが国民にわからなければ、我々は何もお答えのしようがない。結果を見て、これを信じろと言えば、そうですかと言わざるを得ないわけですが、少なくとも運輸省あるいは国鉄積算の根拠が過去の実績をもとにやっているとすれば、実績年度に近い初年度あるいは運賃値上げの予定されている二年度、この辺までの収支予想はほぼ根拠が正しければ信頼できるものだと思うのです。しかし、三年以降の予測については、これを信頼する方がどうかしているのじゃないかというふうに思っております。  それから、収支のもう少し細かい問題を申し上げますと、設備投資の問題、私自身、いろいろ調べてみたのですが、九州と四国、ここはもう大変老朽車両が多うございまして、もう既に税法上の耐用年数を過ぎているものが四国の場合四六・五%、六十年度に耐用年数に達したものは、総数三百七十両のうち、これは客車百二十両を除きますけれども、気動車とかそういったもの三百七十両のうち百七十二両を更新しなければならない。新会社発足時にはさらに五十三両が耐用年数に達しますから、全体保有車両の六〇%、二百二十五両の更新が計算上は必要になってまいります。今回出されたデータは、再建監理委員会データよりも四国の場合十億円設備投資の増額を行っておりますけれども、その大半が車両ではなくて地上設備である。となりますと、その金額で果たしてこのような設備更新が新会社はできるか、もしやったら赤字になるのではないか。  考えられますことは、今の国鉄総裁も、昨年ですか、九州へ視察に行かれたときに記者会見で申しているように、今の国鉄のうちに九州と四国は新しい車両に取りかえるのだ。となると、結局新会社をきれいに見せるために、今の国鉄のいわゆる一般工事予算四千億円の中で駆け込み投資をして、そういう形でいい姿を見せるのではないかな、私ども国民側から見るとそういう疑念を持つわけであります。  九州の方も、機関車、電車、気動車、総数千七百九十六両のうち、今後十年間で更新を要するのは六五%であります。電車、気動車の大半、これは耐用年数が二十年間でございますけれども、大半が耐用年数が過ぎたか過ぎようとしている状態であります。それにもかかわらず再建監理委員会当時のデータでは車両投資に二十九億円しか計上しておりません。今回、今度の資料で設備投資全体で昭和六十二年度の二十六億円の積み増し、以下毎年二十億程度の積み増しに改められておりますので、九州の場合は四国と同様の駆け込み投資になっているかどうか、この辺はもう少し私も調べてみないと正確なお答えはできませんので、九州の場合、ちょっと控えさせていただきます。  それから二番目に、運賃旅客離れということでございますけれども、これは必ずしも両者の間にそう明確な、ここで断定できるような相関関係があるかどうか、その点は私はちょっとよくわかりません。
  48. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 どうもありがとうございました。時間が参りましたから終わります。
  49. 細田吉藏

    細田委員長 次に、河村勝君。
  50. 河村勝

    ○河村委員 公述人には御苦労さまです。民社党の河村勝でございます。  先に岡野先生にお尋ねをいたします。  先ほど先生のお話の中で、不採算線区のことについて、全国一社制である場合には地域市場実態に即した仕事ができないから、どうもその辺があいまいになって、行き過ぎた内部補助が行われて企業としての活力を失わせる、そこで分割をやることによって、不採算線区の存廃を含めてもっと実態に即した対応ができるであろうという意味のことのように理解をいたしました。もし違いましたらおっしゃっていただきたいと思います。  しかし、実際分割をしてみましても、幹線系線区と地方交通線——特定地方交通線は別です。これは廃止またはバス転換が決まっておりますから別にして、それ以外の、国全体で言うと七千キロに上る地方交通線というものがあって、これが現実には大きなガンになっているわけです。この状態というのは、例えば東日本会社を例にとりましても、今までと変わらない形で残っているわけですね。それが分割をしたことによってどういうふうに改善され、どういうふうに対応できるというふうにお考えになっておられるのであろうか、それを伺いたいと思います。
  51. 岡野行秀

    岡野公述人 不採算線区の問題でありますが、私、最初に申し上げたときに、この内部相互補助の問題に絡む存廃については、実は分割はできるだけ小さい方がいいというふうに申し上げました。それは、小さければ、その会社の中でここの赤字の線を経営するためにはどこからか収入を持ってきて埋めてやらなければならないということになれば、明らかにわかるわけです。例えば一番簡単な場合には、三線か四線持っているところを考えればいいわけです。一線を残すために二線、三線から収入を上げなければならないということになったらどうなるか、どの限度までできるかということは明らかにわかるわけです。  したがって、その東日本会社というのはそういう意味ではちょっと大き過ぎるかなという気が実は私の見解としてはしないでもないわけであります。本当はもうちょっと小さくてもいいじゃないかというふうに思うわけでありますが、ただ、今まで不採算と言われているものはすべて、今までの国鉄が今までの国鉄のやり方で経営してきた結果として不採算であるのであって、例えば輸送密度が四千人もあれば、これはやり方いかんでは十分やれるというところも出てきましょうし、したがって、今まで不採算であるからといって、今後も新しい会社になって不採算であるとは限らないという認識を私は持っております。  これを一線一線調べて、そしてさらに幹線との連絡の関係もありますから、本当に培養線の役割を果たしているのかどうかということまで含めまして一線一線調べていけば、その結果として、この地方交通線は特定地方交通線には指定されなかったけれども、やはりこれはこの中でやっていくわけにはいかぬというところが出てくると思います。その場合にはそれを廃止することを考えればいいのではないか、そのように考えております。
  52. 河村勝

    ○河村委員 地方の私鉄として独立しておればやれるかもしれない、そういうケースがあろうというお話でありましたが、運賃水準、賃金水準、これがそういう場合には変わっておりますね。ところが、分割後におきましても、幹線系の線区と地方交通線と大きな格差を運賃の面でつくることは事実上不可能ではないかというように私は思います。いわんや、一つの会社の中で賃金水準を変えるというのは、言うべくして不可能であろうと思うのですね。そういう条件前提に置いたらおっしゃるようなことが可能なのだろうか、どうでしょうか。
  53. 岡野行秀

    岡野公述人 先ほど申し上げましたように、私は自分社長になったとしたらどうするかということでありますが、もしその場合、相当節約して、しかも何とかあらゆる手を打つ、例えば、場合によっては増発もしてお客さんを誘致しようとして、それでもうまくいかなくてどうしても若干の赤字が出る、その赤字を他線の収入で埋めるには限度があるということになったら、私は沿線の地方自治体に伺いまして、何かコントリビューションをしてくれないか、そのコントリビューションをしてくれれば私は赤字を出すということを考えると思います。それから、場合によってはそれは逆に、ここは特別に少し運賃を高くしてもいいか、それでもお客さんが使ってくれるというのであればそういうふうにすると思います。  要するに、利用者の方は、自分が使うに当たって、その鉄道サービスが自分が金を払って使うに値するサービスであるかどうかということを基準にして行動するわけでありますから、英語でいいますとグッド・バリュー・フォー・マネーになるようなサービスを提供することこそ経営者の仕事であり、したがって、会計上の現在赤字線と言われているものの存廃についての考え方とは多少違いがありますので、その点をちょっと注意しておきたいのですけれども、そのように配慮をして行っていくということになると思います。ただ、こういうことも今までの国鉄と同じように許さないということになりますと、やはり今後の鉄道会社にとっては一つの問題が、国鉄時代の問題がそのまま残るということになると思います。
  54. 河村勝

    ○河村委員 私もそこにこれからの大きな問題があるのだろうと思っているのです。それで伺ったわけです。  それから、先ほど、本州三分割はその地域内で輸送の流れがほぼ完結をしているから、自分はこれでいいと思うというお話でありましたが、輸送の流れを考えるのと一緒に、やはり企業として分割をしたら、その中でのそれぞれの会社の収益が一応バランスしてなければ不合理であると考えるのですが、今度の場合、どうもそういうぐあいにはいかなくて、企業外の力によって収益調整をしなければならぬようになっておりますね。その点は一体どうお考えになっていますか。
  55. 岡野行秀

    岡野公述人 今の御質問の趣旨は、六つの旅客鉄道会社に分けた場合に、またがり輸送の場合……。違いますか。
  56. 河村勝

    ○河村委員 輸送の流れがほぼ完結しているというのはそのとおりだと思います。ただ、具体的に言えば、東海会社だけがえらくもうかってしまって、東と西はほっておけばだめであるというような格好になっているわけですね。それでやむなく新幹線保有機構などというものをつくって、収益のバランスを図らなければならぬというような形になっているわけですよ。その点をあなたはどういうふうにお考えになっておりますか。
  57. 岡野行秀

    岡野公述人 経営の見通しと、それから現実にはどうなるかによるわけでありますけれども、最初の調整の仕方は、それだからこそ三島についてはいわゆる基金を与えて三島でもやれるようにするということでありますし、東日本、西日本等本州三社についてはそういうものなしに、逆に債務をつけて調整したということでありますから、その債務の調整によって、収益が著しく条件によって不公平になるということは避けられるというふうに考えております。
  58. 河村勝

    ○河村委員 近藤さんに一つお伺いします。  先ほど、民営分割によって私鉄と同じような状態に持っていくというのは事実上不可能であろう、その中で、私鉄の場合でも鉄道部門ではもうかってないので、だから鉄道だけでもうけるようにするのは無理だというお話でありました。しかし、それなら私鉄並みに——私もそうだと思うのです。私鉄鉄道部門だけで配当できるようにはなっておりませんよね。ですから、それは事実だけれども、附帯事業によってカバーしているわけですから、新しい会社も附帯事業を私鉄並みに四〇%ぐらいやれるあるいは三〇%ぐらいやれるという状態なら、分割民営にした新しい事業体が十分に私鉄に拮抗できるようになるんじゃないか、そう思うのですが、その点はどうお考えですか。
  59. 近藤禎夫

    近藤公述人 にわか商人は、私鉄のような大ベテランの不動産業者とかそういう業種と到底——国鉄職員が急に兼業の問題に手を出しましても、それはできません。私は、経営というのはそれほど甘くないと思っております。しかしながら、民営鉄道と同じような諸条件、こういったものに合わせて国鉄で問題を考えていけば、それに近い水準の経営は何とかやっていけるだろう、その程度の認識はあります。  それからもう一点、大手十四社、十四社といいますけれども、経営内容が十四社みんな違うのです。だから、平均で物を考えるというのは非常に危険な面もあるという点をちょっとお答えとして申し上げておきます。
  60. 河村勝

    ○河村委員 終わります。
  61. 細田吉藏

    細田委員長 次に、中島武敏君。
  62. 中島武敏

    中島(武)委員 両先生、大変お忙しいところ御苦労さまでございます。  最初に、岡野先生にお尋ねしたいのですが、最初のお話の中で、分割民営にほぼ全面的に賛成である、国鉄財政破綻している、六十年度も一兆八千億円の赤字だということを述べられました。先生も御存じかと思うのですけれども、監査委員会の報告でも、六十年度一般営業損益は三千百八十九億円の黒字でございます。それでもなおかつ膨大な赤字が累積しているというのは、これはもう申し上げるまでもないのですけれども、東北・上越新幹線などを初めとして非常に大きな投資を借金でやるように、政府・自民党の押しつけによるものであることは明瞭であります。それで、先生はまた、公社は政治の介入を招きやすい、こういうふうに言われました。私は、そのように余り一般化するのじゃなくて、やはりその責任を明確にするということが非常に大事なんじゃないかと思うわけですけれども、この点について先生の御見解はいかがですか。
  63. 岡野行秀

    岡野公述人 第一の点の経営改善計画の収支でありますが、今御指摘がありましたように営業収支で黒字になっておりますけれども、これはいわば親がずっと商売してきたところをそのまま借りまして、家賃もその他も全部親が払ってくれる、それで自分のところは仕入れて売ってもうかった、その収入だけを考えているようなものでありまして、もし自分が独立しますと、そのすべての費用を負担しなければならなくなるとたちまち赤字になる、そういうケースでありますから、これは少なくとも企業経営が成立するという意味での黒字ではないということを最初に申し上げておきます。  それから公社の場合でありますが、実は、先ほどちょっと申し上げましたように、鉄道建設公団が発足してから五十二年までに完成して開業した分のAB線の中で、既に四〇%程度が特別地方交通線に指定されている。あるいはもう既に廃止されたものもございますが、ということは、いかに初めから乗りそうもないような、使われないような線をおつくりになったかということであります。これがつくられたという背景は、これは時の政府だけではなくて実は国会の先生方皆さんに私は大変文句を言いたいところでありますが、この鉄道を建設することについては与野党全部一致していたというふうに私は理解しております。したがって、こういうことがないようにするためにはやはり政治の介入をなくすべきである。  それから、一社でありますと——私が見たところでもいまだにまだ建設中のところがあります。早くつくれば、これは観光のお客等々でいいのではないかと思う線でも、まだ完成しておりません。既に二十年近くたっております。それは一社でやって、そして建設をしていくということになりますと、特別の線を一遍につくってしまった方が本当は収益にすぐ寄与するわけですが、政治的な関係で、それではあそこもやれ、ここもやれと、すべてカメが歩くようにそれぞれのところで少しずつやっていく。それで全部一緒にでき上がればいいですが、結局、お金がなくなってきますと、それがだんだんスローダウンして、支出だけしているけれども、収益を生まないような格好になっているということであります。したがって、私は、やはり経営の責任は、もし経営がうまくいかなければその経営責任者がすべての責任をとってやめるとか、そういうような環境でない限り経営が本当には行われないというふうに考えております。
  64. 中島武敏

    中島(武)委員 公社制度だから、またいろいろ押しつけてあるのは国会にも大いに責任があるというお話ですけれども、念のために申し上げておきたいと思うのですが、私ども共産党は、膨大な設備投資を赤字でやるというようなことをやればこれは大変なことになる、だからそういうことをやってはいかぬと実は言ってきたのだということを、この問題に関しては念のためちょっと申し上げておきたいと思います。  きょうはちょっと論争というのじゃないので、時間も余りありませんので進みたいのですけれども、分割のメリットについて述べられた中で、全国一社制では内部補助を行うので不採算路線があいまいにされてしまう、分割して小さくすれば不採算路線存廃を明らかにすることができる、こういう趣旨であったかと思うのです。それで、私、この御意見を聞いておって、これはどうも率直なところを言って、不採算路線は廃止をするという御見解なのかなという感じを持って聞いたのですけれども、それでよろしいでしょうか。
  65. 岡野行秀

    岡野公述人 多少詳しくなりますけれども、ある線を廃止するかどうかということを考えるとき、通常、現在の赤字というのは、会計上、すべての共通費から何から配賦した後にできた費用と収入を比べております。その収入についても、実は完全な一線だけで終わっている線であれば、その収入は完全に確定できますが、またがり線があれば、その収入のある分は配賦してその収入としているわけであります。  それで、赤字か黒字かということであれば、その経常的な収支で決まるわけですが、存廃を考える場合には、私が社長であればどうするかといいますと、まずこの線をやめたならばどのくらい節約できるのか。例えばこの前、北海道で駅を売ったようですが、二つだけ買い手がついて一万幾らだったということでありますが、これが果たして売れるものかどうか。要するに、この線をやめたならば本当に節約できる分は幾らあるだろうか。その次に、あらゆることをやってみよう。逆に金をかけても、いいわけですが、あらゆることをやってみて、そして収入がどれだけ上げられるか。  要するに、あらゆる努力をしたあげくに、収入と節約できる費用、したがってこの中にはもう役に立たない、経済学の言葉でいいますとサンクコストといいますが、そのサンクコストに当たる分はもう考慮に入れないで考えます。というのは、やめたところでそれは回収できるわけではありませんから。その上で、やめれば回避できる費用、これは帳簿上の費用ではなくて実際に回避できる費用でありますが、これと比べて収入の方がまさるならば私は続けますし、それから、例えば鉄橋があっても、鉄橋を外す方のコストが高いので鉄橋はそのままにしてしまう。帳簿上は鉄橋のコストがありますが、やめてもそれは節約できるわけではありませんから、したがってその鉄橋のコストは入れない。要するに、やめるならば節約できる費用と最大限の努力をして確保できる収入とを比べてどうしてもコストの方が上回るというのであるならば、原則として、やめさせてくれというふうに言います。その上で、しかしその足りない分はどのくらいかということで、地方自治体なりあるいは沿線の住民がクラブをつくって寄金してもいいよということであれば、私はその分を含めて経常収支が成り立てばやるだろう。  そういう意味でありますから、現行での赤字線のすべてが廃止される——私はむしろ助かる分が結構あるんじゃないかというふうに考えておりますので、その点誤解のないようにしていただきたいと思います。
  66. 中島武敏

    中島(武)委員 もう一つ、分割のメリットについて述べられたことについてお尋ねしたいと思います。  北海道を例に挙げてお話をされました。札幌—小樽間の高速道路を運行している高速バス影響国鉄の特急乗客が減少している、こういうふうにたしか発言されたかと思うのです。さらに、その対抗上、料金に特例を設けるよう提案したところが、本社は拒否したというふうに何か私は聞こえたのですけれども、要するに、本社は実情をよく知らないから分割した方が地域の実情に応じていろいろやれるメリットがあるのだという趣旨であったかと思うのです。  それで、お話を聞いておって私が思いましたのは、これは札幌—小樽間じゃなくて、ひょっとしたら札幌—室蘭間の間違いかなというふうに思いました。といいますのは、札幌—小樽間は非常に短いのです。これは三十分くらいなんですよ。鈍行でも四十分か五十分かそこらくらいですから、ここはお客が競争に負けて減っていくとかなんとかいうような区間ではなくて、ほとんど乗らないのです。ここは余りにも近いところですから、特急のお客というのは、この札幌—小樽間だけ乗るというお客はまずいないわけでありまして、ちょっとこれは、お話を伺っておって、札幌—小樽間じゃなくて札幌—室蘭間のことじゃないかなという気がいたしました。  それから、札幌—室蘭間だとしますと、ここは国鉄と並行して確かに高速道路、高速バスが走っているわけですね。それで、ここはやはりバスに対抗する上から特別料金制が既にもう採用されておるわけであります。例えば札幌—千歳空港間ですと乗車券と特急券合わせて九百円と、普通にかかるものの半分近いような値段でやっているわけでありまして、その点では全国一社制であってもこういうふうに、どうすればうまくいくかということができるのでありまして、何かちょっと論拠として例を引かれたのは正しくないのじゃないかなという気が率直にいたしたものですから、お尋ねしたいのです。
  67. 岡野行秀

    岡野公述人 私もメモをとって話を聞いたわけではございませんので誤りがあるかもしれません。しかし、たしか私の記憶では間違いないと思うのです。  国鉄本社で拒否したわけではございませんで、直ちにそれをオーケーと言うわけにいかないというのは、やはり国鉄のある意味ではつらい立場でありまして、国民の方は国鉄は一つであるというふうに考えていますから、したがって、あるところで特別の料金をやるならばなぜここの場所でやっちゃいけないのか、あそこでやるのは不公平じゃないかとか、そういう見解になってしまうわけです。それは実は鉄道を生かす道にならない。競争条件あるいはコストの条件で違うところについては、それぞれにふさわしいような形の運賃なり料金なりをできるだけ設定できるようにして、そして利用者をふやすこと、それが一番やらなければならないことで、こういうことをやるためには、もう一つ申し上げましたように、やはり北海道鉄道北海道鉄道としてやるべきで、鉄道一般で考えているような経営ではだめだということを言っておりましたが、私は、むしろその点も含めまして、より地域に密着してやる方がよりよいサービス、そしてよりよい経営ができるだろうと確信しております。
  68. 中島武敏

    中島(武)委員 終わります。
  69. 細田吉藏

    細田委員長 これにて午前中の公述人に対する質疑は終了いたしました。  両公述人には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  午後一時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十一分休憩      ────◇─────     午後一時三十分開議
  70. 細田吉藏

    細田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、御出席をいただいております村尾公述人、竹内公述人、牛久保公述人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、大変御多用にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございました。  申すまでもなく、本委員会といたしましては各案について慎重な審査を行っているところでありますが、この機会を得まして広く皆様方の御意見を拝聴いたしますことは、本委員会審査に資するところ大なるものがあると存じます。公述人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  御意見を承る順序は、まず村尾公述人、次に竹内公述人、続いて牛久保公述人順序でお願いすることにいたします。  なお、御意見はお一人十五分程度でお願いすることとし、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  念のために申し上げますが、発言する際は委員長の許可を受けることになっております。また、公述人委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきを願いたいと存じます。  それでは、村尾公述人にお願いいたします。
  71. 村尾質

    ○村尾公述人 私が村尾でございます。横浜にあります神奈川大学の教師をしております。きょうは国鉄分割民営化問題について話せと言われて参ったわけです。私の名前、ちょっと読みにくい字ですが、村尾質(ただし)と読みます。  最初に申し上げておきますが、私は国鉄民営化には反対しません。条件つきではありますが、民営化には反対しません。分割に反対であります。分割は絶対に避けるべきであるというふうに考えています。これは後で申し上げますが、分割には正当な理由がない。それとデメリットが大きいということであります。  私のレジュメは渡りましたね。レジュメを見ながら——レジュメはワープロでやろうかと思ったけれども、まだなれないので時間がかかり過ぎるので、汚い字で申しわけないのですけれども、手書きでやりました。  経済的デメリットにきょうは焦点を絞らせていただきます。経済的デメリットと技術的デメリットがあるのですが、時間の関係で、技術的デメリットは後で質疑応答の間でもしチャンスがあればお話し申し上げるということにしまして、経済的デメリットに限定してお話し申し上げたいと思います。  経済的デメリットを三つぐらい挙げましたが、第一は規模の経済性を失う、規模の経済性の喪失ということであります。  規模の経済性と申しますのは、皆さんよく御存じと思いますが、工場なんかで生産規模を増大する、大量生産すると生産コストが下がるという産業の特性であります。これは、大きな設備を持つ近代的な産業は大体規模の経済性があると言われていまして、鉄道もその代表的な一つであります。ところが、分割すると規模の経済性が失われるというわけであります。  この点につきましては、私の尊敬します慶応大学の藤井弥太郎教授、これは近代経済学のすぐれた理論家であります。マルクス経済学じゃないですよ、近代経済学のすぐれた理論家ですが、この藤井弥太郎教授が去年の「経済評論」の特集号(増刊号)で次のように述べています。  「路線網あるいはネットワークの大きさという意味では、地域分割により規模の経済性が失われるかもしれない。」「かもしれない」というのは、慎重な理論家の特有の発言でありまして、失われると言っていると思っていただいてもいいと思います。「とくに、(中略)ネットワークが大きいことは、他の交通手段との競争において販売力やマーケティングの面できわめて重要・強力な競争力の要因である。」源泉である。つまり、分割すると企業規模の経済性が失われるということを言っているわけであります。  私もそう思います。国鉄が現在全国的な路線網を持っているということが、中長距離のバスや航空機の潜在的な旅客を何とか確保していくための大きな力の源泉になっていると思われるわけであります。このメリットをわざわざ自分から捨てて競争力を低下させるということは、非常に愚かなやり方であると言わざるを得ません。これによって、せっかく民営化で効率よくやろうとする新しい鉄道会社が非常にマイナスになってしまう。せっかく民営化で規模の経済性を発揮しようと思ってもできないという変なことになってしまって、民営化の効果を阻害してしまうというわけであります。これが、きょう私がレジュメの題に書きました「「分割」は民営化の効果を大幅低下させる」の第一の原因であります。  二番目は、レジュメの1.の(2)に書きましたように、「収益の外部流出による利益インセンティヴの阻害」。結局、それによって中長距離の各社間直通列車減少のおそれがあるということであります。この問題は、監理委員会意見書では技術的問題に入れておりますけれども、私は、一応経済的問題に入れたわけです。  もう少し詳しく申し上げますと、この問題を考えるためには、現在の国鉄分割された各社で運賃収入をどういうふうに分配するかとか、費用をどう分担するかということがはっきりしないと答えが出ないのですが、監理委員会意見書には、どういうわけか、その点に一切触れていないのですね。こういう点で私は、この報告書はちょっと欠陥商品だと思うのですけれども、何にも触れていない。ですが、想像するのに、恐らく現在の私鉄の相互乗り入れと同じやり方を考えていると思われます。このやり方は、今ヨーロッパの各国国鉄の相互交流の場合と同じやり方であります。  どういうことをやるかといいますと、例えば今の東京では、東急が高速度交通営団ですか、いわゆる営団に乗り入れています。お互いに相互乗り入れ。この場合に、渋谷から東の方は東急が営団の路線に入るわけですね。営団の路線に入ると営団の運賃で計算して、収入は全部営団の収入になるわけです。だから東急には収入は入りません、渋谷から東は。しかし東急の列車が走っているという形ですね。収入は全部営団に入りますから、もちろん費用も営団が負担します。ですから、東急は電力費もただで使えますし、レールもただで使えます。それから、あと車両の費用と運転手、交代しない場合の運転手の人件費なんかは、後から営団が清算して東急に払うわけです。もちろん、営団が東急に入り込んだら同じ、逆のことが行われます。  そういうやり方を分割各社に適用した場合どういうことが起こるかというと、短距離の場合は余り問題はないのですが、長距離の場合、例えば東日本会社が島根県の津和野、私も一度行きました。美しい津和野に旅客の観光キャンペーン、最近もよくポスターで「日暮れが惜しくなる」とか京都のキャンペーンをやっておりますけれども、そういうキャンペーンで津和野にお客を呼んだ場合、運賃はみんな東海道新幹線と山陽新幹線と、あと小郡からの山口線ですか、そこに行っちゃうのですね。理論どおりにいくと東日本会社はゼロになります。しかし、それではまずいということで、まだこれは決まっていないみたいですけれども、もしかしたら熱海までは東日本会社の収入になるかもしれません。しかし、そうなってもキロ程から見まして全体の一割ぐらいであります。これでは東日本会社は利益が少なくて意欲をわかせないということであります。そういうことで、非常に利益インセンティブが阻害されるということですね。そうなった場合、細かいことは後でまた申し上げますが、そういう直通列車が減るおそれがあるのですね。これもいろいろ問題があります。後で質疑応答のときに申し上げますが、減るおそれがあるということであります。  西日本会社も、同じように、東日本に来た場合、三陸海岸までやっても余り収入にならないということになってくるわけですね。みんな東海会社と東日本にとられてしまうという格好になるわけです。時間がなくなりますから、細かいことは後でまた申し上げます。  ところが、監理委員会意見書によりますと、各会社は民間的経営の発想でやるので、共同、協調して開発、販売が行われるから大丈夫だと楽観しているのですね。ですが、私に言わせると逆でありまして、民営化されるから利益に敏感になる、だからそういう利益の少ないところには熱意を失うということになるのでありまして、意見書は少し楽観し過ぎているということであります。  意見書では、今、例えば伊豆急との間の特急踊り子号なんかうまくいっているというような例を挙げていますけれども、これはちょっと特殊例でありまして、この問題も後で質疑応答のときに若干詳しく申し上げたいと思います。  第三の経済的デメリットは、「追加的費用の発生」ということであります。  これは、分割各社間でいろいろダイヤとか運賃の協議、清算といったようなことが起こります。これはヨーロッパの今申し上げた相互乗り入れで起こっているわけですが、これも時間がないので後で申し上げます。  以上で三つですね、規模の経済性が失われる、それから収益が外部に流れて中長距離の直通列車が減るおそれがある。  これで一つ言い落としましたけれども、直通列車が減れば、結局分割各社にとっての経営マイナスになることはもちろんですが、それ以外に国民経済的にもマイナスになる。というのは、その減った分が飛行機にいったりマイカーにいったりしますと、安全とか公害とかエネルギー消費の面でマイナスになりますね。そういう国民経済的なマイナスにもなる。あとはもっと単純に、鉄道旅行の好きな人の楽しみが減るということにもなるわけであります。  それから三番目のデメリットは、今言いました追加的費用の発生であります。以上、三つの経済的デメリットがあるということです。  次に、二番目の「国鉄分割には根拠がない」という話であります。  まずその一番、「本州三分割では「地域に密着した運営」は不可能」。これは実は監理委員会意見書も認めているんですね。監理委員会意見書を見ますと、最初の方で、地域に密着した経営が必要だ、それから不合理な依存関係も省かなければいけないということを書いているのですけれども、そのすぐ後でこういうふうに言っているんですね。地域に密着するためには地域的になるべく小さい経営単位にしなければいけないと言った後で、しかし、小さい経営単位に分けるために、全国三十カ所ある鉄道管理局単位、その辺に近い単位でやってみたら、技術的な問題が大き過ぎる、あと経営の利益の格差が大きくなる、収益差が著しい、それから安定経営の基盤となる路線を持たない会社が多くなるというので、これはだめだということでそれは捨てられるのですね。つまり、監理委員会意見書でも地域に密着できる小分割案は捨てられたわけです。  しかし、本州三分割ですと、結局東日本会社の東京の本社が青森のダイヤを組み、運賃を決めるという形で、現状と余り変わらないことになってしまうんですね。結局地域に密着できないということであります。大多数の国民は、分割すると地域に密着できると思って期待しています。しかし、もう意見書自体それはあきらめているので、これは国民の期待を全く裏切るものですね。ですから、分割の第一の根拠は消えたと言わなければなりません。政府は、法案を通す前にこの点をはっきり国民に知らせる義務があると思うのです。黙ってほおかぶりしてやるのは非常にずるいと思います。  それから二番目です。「本州三分割では「不合理な依存関係」の解消も無理」、でかい分割では東京の運賃私鉄並みにならないということでありますが、これも時間がないので省略します。後で申し上げます。  それから、二ページ目の最初に書きました三番目、「「経営管理の限界を超えている」というのは素人論議だ」という話であります。これは実際にそう思います。大き過ぎるというのは耳に入りやすいのですけれども、実際にはそういうことはない。経営規模が大きくなると、最近ライベンシュタインという人が言い出したX非効率ということがあるというのですが、確かにそれはあると思います。X非効率というのはビューロクラシー、官僚主義による効率低下ですね、それは確かにあると思います。ですが、大企業にはやはり先ほど申し上げた規模の経済性もあるわけで、どっちが強いかということです。  この点、アメリカのすぐれた産業組織論の学者、産業組織論というのは独占とか競争とか寡占問題をやる学問ですが、それの世界の第一人者でありますジョー・S・ベインという学者がこういうことを言っているのですね。「アメリカでは最大の企業でさえも、まだ巨大規模の不経済性をこうむるほど大規模になってはいない。」当時、この本が書かれたころ、アメリカの自動車会社のGMは五十万人の従業員を持っていました。それでも大規模過ぎて不経済になってはいないと言っているのですね。  それから最近の例ですと、一九八三年十二月三十一日に企業分割されましたアメリカ最大の電気通信会社AT&T、有名な会社ですが、この会社は、分割されたとき、八三年十二月三十一日現在の従業員数は、何と九十六万五千五百七十人いたわけです。国鉄の三倍ですね。それでもX非効率で経営効率が下がったから分割されたのではなくて、独占力が強過ぎるために、アンチトラスト法、日本の独禁法によって企業分割されたわけであります。  こういうことを考えますと、企業がでか過ぎるから経営の管理の限界を超しているというのは、どうも素人論だと言わざるを得ません。結局、国鉄経営がもしうまくいってないとすると、それは規模が大き過ぎるからではなくて、公社という形態にあったのではないかと思われます。公社形態の方が原因なんで、三十三万人という人間が多過ぎるのではないということですね。ですから、分割は全く見当外れだ、民営化だけで十分だというふうに私は考えます。  最後に、「提言」であります。  以上述べましたように、国鉄分割には根拠がない。つまり地域に密着もできないし、大き過ぎるというのも素人論だということになりますと、根拠がないわけですね、この二つが二大根拠だったわけですから。それが消えてしまった。一方、さっき言いましたように、規模の経済性が失われるとか、直通列車が減るとか、追加的費用が発生するといったような経済的デメリット、それから、きょうは申し上げられませんでしたが、技術的デメリットが出てきて競争力が低下する。つまり、民営化によってうまくやろうとしている競争力を低下させてしまうというのが分割であります。  私としましては、本当は旅客も貨物と同じように全国一社でやる方がいいと思いますが、状況を考え、一歩を譲りまして、結論は、三島のみ分割して本州は一本で経営しろ、本州は一元的に運営すべきだというふうに考えます。そうすれば、今述べました経済的デメリットあるいは技術的デメリットも大幅に減って、まあまあいいというふうになるのではないかと思います。三島はある程度やはり地域に密着できる。本州の、東京が青森のダイヤを決めるような問題じゃないですから、三島はある程度地域に密着できるということで、これはメリットがあるということで三島だけは認めるという考えであります。  ただし、もしも三島経営が赤字になった場合、最近の新聞によりますと黒字になるそうですが、万一赤字になっても絶対に解散しないという前提が必要であります。これについては私なりの論拠を持っているのですが、雑誌にも書いているのですけれども、きょうは時間がないし、議論が変なところへいくと悪いので、やめておきたいと思います。  とにかく、本州は一社として一本の運営をすべきだ、もしも強引に分割して数年後にまた統合するという羽目に陥るとか、あるいはそれでも自民党さんのあるいは政府のメンツがあって強引に不都合のままで分割体制を維持するというようなことにならないように願うものであります。  最後に、一言申し上げます。  ここに「いまこそ、政策転換の好機。」と書きましたのは、変な話ですけれども、今国労が分割の危機にさらされて、反対の政治勢力は非常に弱まっているのですね。まともに反対できるのは我々研究者ぐらいのもので、国労はだめになりそうなんですね、残念ですけれども。ですから、それがむしろ逆に政策転換の好機ではないか。今政府が政策転換しても、国労の力に屈服したと思われないですね。政府のあるいは自民党さんの英知によってやったというふうに解釈されますから、非常にいいチャンスではないかと思うわけであります。ですから、力関係からではなくて、勇気を持って、それから英知を持って、私の申し上げた点を理解いただきまして、二十一世紀に向かって日本の交通のために適切な政策転換をされることを心から期待するものであります。  以上で終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
  72. 細田吉藏

    細田委員長 ありがとうございました。  次に、竹内公述人にお願いいたします。
  73. 竹内宏

    ○竹内公述人 ただいま御紹介いただきました竹内でございます。  私の結論は村尾先生と反対でございまして、分割民営に賛成であるということであります。  現在、国鉄は二十五兆円の債務を持っているわけでございます。メキシコが今大変困っておりますけれども、その債務総額でも十五兆円であるということでございますから、もしこれが国際的なマーケットであっても、考えられないほどのスケールの累積債務であるというようなことであります。  この原因は既にいろいろ議論されておりますけれども、既に鉄道時代は終わりつつあるというようなことであります。御案内のとおり、旅客の輸送では二十四分の一になりましたし、貨物輸送ではたった数%でございます。ですから、この鉄道を国家的な事業としてやるような段階ではもはやなくなったというようなことではなかろうかと思われます。鉄道は、大都市周辺の過密地帯の輸送手段と、それから新幹線というすばらしい技術の出現によりまして中距離輸送の中心でございまして、長距離輸送はもう飛行機の時代に変わった、こういうことであります。  残念ながら、日本の過去の政策は余りにも鉄道にフィットし過ぎておりましたので、その結果、交通網の体系とかあるいは自動車網の体系とか、新しい社会の進歩に乗りおくれたのではなかろうかというふうに思われるわけであります。例えば、日本の飛行場で高速道路が飛行場に入っているところはごくまれでございます。これではエアポートではなくて、エアフィールドではなかろうかというような皮肉もあるわけでございます。  甚だ素人でございますのでよくわかりませんけれども、御無礼はお許しいただきたいと思うわけでございますが、民営にいたします最大のメリットは、政治的な介入をこの経済的な経営から排除するということが最大の目的ではなかろうかと思われるわけであります。  御案内のとおり、国鉄は設備投資も独自でできない、人事も動かせない、まして一番重要である賃金も独自に動かせないというようなことでございます。これでは当然当事者能力がございませんので、利益を追求する方法もないというようなことではなかろうか。私も企業に勤めておりますけれども、その企業で努力した成果が何らかのメリットとして目の前にわかる指標として明示されないということになりますと、勤労意欲は必ず失われるわけであります。  それから、中国でもソ連でも、能率を上げるために賃金で価格メカニズムを生かす、よく働く人にはよく賃金をやる、なかなか働かない人には賃金をその分だけ下げるというようなことで能率の向上を図っている時代でございますけれども、そのようなこともなかなかできにくいというようなことになりますと、国鉄はもはや企業体ではないというような感じがするわけであります。  もちろん、ここにいらっしゃる先生方、そういう方ではございませんけれども、何となく国鉄を全国民でむしり取ったというような感じすらいたすわけであります。そのむしり取った残高が実に二十五兆円に達したのかなというふうにすら思われるわけでございます。  ですから、国鉄当事者能力がなくて、しかも鉄道時代を終わった衰退産業でございますから、それこそ責任を持たせて企業経営すべきそのときに、まさに一層政治的な力が加わってきた。昭和三十九年、まさに日本は自動車時代に移ったときから国鉄が赤字になり、衰退すればするほど政治的な力が加わりやすい体質を持っていたということで、債務が累増してきたというふうに思われるわけでございます。  そういうような点から申しまして、政治的な関係から国鉄を外す。しかも、現在は国鉄は必ずしもシビルミニマムではございません。地方に行きましても自動車にお乗りになりますし、あるいは甚だ口幅ったいようなことでございますけれども、国鉄の赤字路線廃止で陳情に来られるときに、飛行機に乗ってこられたりバスに乗ってこられたりするような時代でございます。そういうことから考えますと、国家は当然国鉄から手を引くべきであるというように考えるわけであります。  今のような状況のもとで働いておりますと、実にやる気がなくなるわけであります。実際に国鉄労使関係がうまくいかないとかいろいろな問題があるのも、やはりそのような政治が介入し過ぎて自分たちの目的が達成されないというか、勤労意欲がわかないというようなことにあるわけでございますし、例えばだれも乗っていない電車を一人で運転されているという国鉄職員の方は大変お気の毒でございます。それにもかかわらず事故が発生しなかった。これは実に国鉄職員の方のレベルの高さを物語っているというような感じであります。何となく政治的な力よりもはるかに国鉄職員の方が頑張っていたのではなかろうかというような感じすらいたすわけでございます。  分割につきましては、やはり現在よく議論されておりますように、東京都とかブロックでとりますと、国鉄の使われておりますのは大部分地域内輸送である、こういうことであります。遠方は飛行機を使うというような時代でございますから、どうしても全国的なネットワークを張る意義が非常に少ないというようなことでございます。張ればかえってデメリットが大きくなるのではなかろうかというふうに思われるわけであります。  元来、鉄道事業は全般として衰退産業でございますから、どういたしましても他の分野で収益を上げながら投資を向けていかなければならない、投資資金を生み出していかなければならない、あるいは黙っていますと鉄道のお客が減りますから、どういたしましても鉄道のお客をふやすような対策が必要だ、こういうようなことであります。私鉄ではいろいろな努力をしているわけでございます。国鉄でもまさに駅は町の中心にあるというようなことであります。この町の中心が非常にうまいぐあいに開発されて、すばらしい町づくりができたならば、国鉄のお客は必ずふえるに違いないというように思われるわけであります。  今までは全国均一料金とかいろいろな原則がございます。ですから、一番もうかる東京の国鉄運賃私鉄より高い。一番もうけどころが私鉄にとられていくわけであります。地方で余りもうからないところが国鉄運賃が安くなっておりますから、これでは経営の戦略としては非常に問題があるというような気もするわけであります。  その上、東京の駅は実に惨めでありますけれども、地方の新幹線の駅はお客が来ないのに実に堂堂としているというような、投資のミスアロケーションが発生しているというような感じがいたすわけであります。過度の投資としか思われないような豪華な駅もあるわけであります。  そういうことを考えますと、どういたしましても、企業に任せてといいますか、民業にいたしまして効率的な投資を進めていかなければならないとともに、新たな需要を開発するためには国鉄に周辺の業務に大いに活躍してもらいまして、ちょうど電力会社が電力の需要を発生させるために地域の開発に努めていると同じように、民営化された国鉄は、地域の開発とか美しい町づくりであるとか、町の中心にすばらしいいろいろな施設をつくるとか、そのような担い手に当然なっていくべきではなかろうかというような感じがいたすわけであります。さもなければ、鉄道の需要は減退する方向にありますから、とても収益的にはやっていけないかもしれないと思われるわけであります。  そのような観点から見ますと、六地区に分割されましたり、貨物会社ができたりいたしますけれども、果たして採算に乗るのかなという点には若干の疑義があるような感じもいたします。相当な経営努力をし、政治的な関係から一切外すというようなことを厳しくやりませんと、どういたしましても赤字路線とかいろいろな不採算の投資を強要され、再び国鉄の、私どもの国民の重要な資産がむしばまれていくのではなかろうかというような感じがいたすわけでございます。  そのような点から考えますと、本州三分割になりましても、あるいはもうちょっと細かい方がいいかなという感じもいたしますけれども、それはともかくとして、これらの新しい会社が全力投球して、あるいは残業に次ぐ残業ぐらいのことをやりませんと、どういたしましてもうまくいかないのではなかろうか。その意味で、民営分割の後も、この新会社でございますと、大変ハードな時期が多分あるのではなかろうかということでございます。  以上申し上げたような観点からぜひ民営分割化していただき、しかもそこから先、新会社として発足されるその会社は、大変苦しいことではございましょうけれども、民間企業の数倍の働きをして、ぜひともこの新しい鉄道の位置づけをしていただきたいというように思うわけであります。それと同時に、新しい交通体系、つまり日本は特に航空ネットワークが非常におくれているというようなことであります。全体のそのような交通体系の中から国鉄の位置づけをするというようなことが大切ではなかろうかというようなことであります。国鉄だけを考えますと、日本交通体系はさらにさらにおくれてしまうというような感じがするわけであります。  甚だ口幅ったいことを申しましたけれども、以上で公述を終わらせていただきます。(拍手)
  74. 細田吉藏

    細田委員長 ありがとうございました。  次に、牛久保公述人にお願いいたします。
  75. 牛久保秀樹

    ○牛久保公述人 今国鉄分割民営化に対して、国鉄の膨大な土地を中心国民の疑惑が集まっています。政府特別委員会に三千三百ヘクタールのリストを提出して、公示価格を根拠に七兆七千億円を算出いたしました。この値段は、国民負担金の額に直接はね返るものであり、十分に精査されるべきは当然のことであります。  資料を今お配りしておりますが、その二枚目、三枚目にあるとおり、私たちの試算だけでも、一千二百二十・六ヘクタールで、三千三百ヘクタールのわずか三六・九%で十八兆八千六百億円の時価になることが判明しています。三千三百ヘクタールはこの試算の三倍近い面積ですから、総額は、二倍とまではいかなくても、若干の値上がりを含めて二十五兆円規模と見得るものとなっております。この売却予定地の時価を見るだけでも、国鉄自身の借金とされている六十年度末の二十三兆六千億円を超える金額となるのであります。  この土地のリストは、より厳密に総合的に検討されることは当然のことでありますが、現在の国鉄当局はそのことを行う能力を十分持っているということを明らかにしたいと思います。例えば二冊目の資料に添付いたしました一枚目から二十四枚目までの資料は、渋谷の駅と錦糸町の駅の国鉄の土地の分析表であります。  渋谷の駅について見ますと、一枚目の右側に単価一ヘクタール三百九億円、すなわち一平方メートル三百九万円と算出をしています。しかし、この資料の六枚目に「地価調査表」という分析表がございますが、この公示価格を昭和六十一年四月一日現在のものにし、基準地価を十月一日現在のものとするという最新の情報を記入し、さらに取引事例、例えば昭和六十一年四月の坪五千万円という渋谷駅近辺の取引事例を記入するならば、現在この渋谷駅の土地の時価は一平方メートル二千万円が妥当であるということはたちどころに判明するところであります。  私どもはこういった分析表を既に幾つも入手しておりますが、十枚目にある地図を見ていただいても、公示価格一平方メートル九百万円と記入されている国鉄当局の資料の土地が、なぜ三百九万円という三分の一の値段で評価されるのか。すべての土地について厳密な検討を再度なすべきことが必要だと考えます。  この見直しの意味はそれだけではありません。すなわち、再建監理委員会亀井委員長はその談話で、本改革案が国鉄事業を再生させる唯一の方策であり、かつ国民の負担を最小限のものとする最善の方策であると確信すると述べました。しかし、この売却の土地の値段を見るだけでも、最小限の国民負担どころか、国民負担などなくても可能なことを示していますが、このことは、高く売れれば国民負担が少なくなるというレベルの問題ではなくて、そもそも再建監理委員会の答申の計算上の前提が根本的に狂ってくることを意味しているのであります。私は、そういう点で、再建監理委員会の答申を撤回し、算出をやり直すことを求めるものであります。  国鉄の資産は土地だけではありません。国鉄は、NTTにも比すべき全国鉄道電話、みどりの窓口などのコンピューター通信システム、光ファイバー通信システムなどの全国通信網を持っています。資料一冊目の四枚目から七枚目に記載いたしましたこの膨大な日本列島を縦断する通信システムを、資産価値として一体どのように見るのでしょうか。国鉄当局は単なる電線などの物的設備と見て、帳簿価額二千七百億円と算出していますが、とんでもない話です。  また、国鉄は、二冊目の資料の最終枚に引用しましたとおりに、膨大な企業の大株主です。しかも、私どもの調査によりますと、持ち株比率は、営団地下鉄五四%、日本交通公社三七・五%、日本旅行五〇%などとなっています。それは単なる株の額面額ではなくて、裁判上の実務でも純資産価値方式などとして再評価されなければならないほどの比率になっています。そのほか川崎の火力発電所などの膨大な資産全体についてまず再評価をして、売却ではなく活用方法も含めて全面的に検討し直すこと、それは企業再建の実務の当たり前の大前提であります。  また、国鉄の財産上驚くべき事実も判明しております。一冊目の資料の八枚目に掲載いたしましたが、昭和六十一年度国鉄に初めて名義を変更するなど、登記名義変更の件数が一年度で実に百十五万三千八百九十九件もあるということがこの間判明いたしました。また、私どもが国鉄関係者から聞くところによりますと、未登記の土地が今なお膨大に存在し、数年間にわたって百万件以上の登記整理が続くということが言われています。そもそも企業再建、企業譲渡などが論ぜられるとき、その企業体がいかなる土地を保有するのか、登記を完備せずして土地の譲渡が行われることはないのであります。  私は、この土地問題などで判明したずさんなデータ分析を見るとき、いま一度分析を根本からやり直すことが求められていることを感じます。貴委員会が、国民の負託にこたえ、すべてのデータ国民に公開し、客観的に検証されることを心から望むものであります。  この計算上のずさんさは、資産だけではありません。余剰人員と言われる人員の計算においても同様です。  大手私鉄人件費比率が五〇%であるのに比べて、ことしの国鉄人件費比率は三六・九%になりました。また、国鉄の豊田駅と京王線八王子駅との比較がよくなされますが、国鉄豊田駅の方が一人当たり収入は一・七倍、一人当たり列車本数は一・二倍となっています。営業キロ数で比べると、私鉄は一キロ当たり十八・四人の人員を持っていますから、仮に私鉄並みと考えると、国鉄の必要人員は三十八万六千四百人ということにもなるのであります。どこに九・三万人も退職させる余剰人員があるというのでしょうか。  次に、経営形態論について意見を陳述いたします。  これらの議論の前提は、従来の経営形態では経営が成り立たないということにあります。果たしてそうでしょうか。このことについて、昭和六十年度監査報告書はその百五十六ページ、一枚でお配りいたしましたが、その資料の中にも明白なとおり、一般営業損益で三千百八十九億円という巨額の黒字を国鉄は昨年度で出したことを示しています。この黒字額は、営団地下鉄を除く私鉄大手十三社の営業利益二千四百七十九億円の一・二九倍という規模のものになっています。このことは、国鉄財政問題というものは、国鉄の通常の経営形態とは別の問題であるということを明確に意味しています。  問題なのは、監査報告書でも認めているとおり、利子及び債務取扱諸費等の資本経費であり、特別の特定人件費というものであり、それらは、いずれも個別に発生した原因と責任とを明確にして、いかなる経営形態をとろうとも、独自の債務処理の方法をとることが求められるものであります。政府案でも、分割民営化では解決できず、結局、国鉄の土地の放出と国民負担に求めており、さらに二兆円の資金負担を十年以上も行うとも報道されています。  債務処理について言うならば、その内容をすべて国民の前に公開して、一つ一つその債務の種類を検討すれば、十分に解決可能な事態であると考えます。この点から見ても、国鉄財政問題とは、国鉄改革法第一条の規定する経営破綻などでは全くないことが明らかであります。  また、分割民営化問題点は、経営形態論にとどまりません。政府案に対して、国民生活が一体どうなるのか、極めてリアルな問題であります。  まず、地方ローカル線は加速度的に廃止が進行します。公共性を捨て去り、営利中心民営鉄道が、全国的利益の配分というバックアップもないまま経営されるとき、ローカル線が廃止されていくのは当然の事態だからです。  さらに、国鉄改革法第六条は「資料一冊目の十一枚目に記載しましたとおり、鉄道事業の役割を、主要都市を連絡する中距離の幹線輸送と大都市圏輸送と地方主要都市圏の輸送としています。ここからは、過疎地域の輸送であるとかブルートレーンなどの長距離輸送は、そもそも鉄道事業の役割から外されているのであります。この法律どおりとするならば、この二つの日本地図にあるとおり、日本列島の鉄道網はずたずたに切り裂かれていくことは明白であります。  ここには国民の生活権、教育権がかかっています。資料十二枚目にある廃止された北海道相生線の場合には、右上にある津別—相生間が、国鉄定期が五千八百四十円だったところが、民間バス定期で二万二千八十円と三・七八倍にはね上がり、高校生の通学は極めて困難となってきています。  十四兆円から十六兆円と言われている国民負担についても、歳入欠損が言われる国家財政のもとでは、財源確保のためにと、結局大増税に道を開くものであります。  さらに、国鉄の安全が危惧をされています。  分割民営化の先取りとして実行されているホーム要員の廃止、保線職場の人減らし、検査、修繕の周期の延長は、大事故を予感させるほどの事態です。一冊目の資料十三枚目にあるとおり、国電の飯田橋駅では、要員合理化で、七・五日に一回の事故が三・九日に一回と、この間一・九二倍に増加をしています。国電中央線のホーム事故が多発をしています。安全の面から見ても、人減らし、合理化のための余剰人員づくり、広域異動、熟練技術労働者を収容する人材活用センターは直ちに中止し、撤廃すべきものであります。  東海道新幹線の安全問題も重大です。資料十四枚目にあるとおり、東海道新幹線の構造物は既に限界に近づき、雪害対策は実施されず、東海地震対策は決定的におくれています。これらの大事故防止策は、新幹線保有機構が行わないとするならば、一体どこが行うのでありましょうか。一民間旅客鉄道会社でなし得る財政負担ではありません。  以上述べてまいりましたが、私は、政府案の国鉄分割民営化に反対いたします。私だけではありません。今、国鉄分割民営化に反対する声は全国に広がっております。地方自治体における国鉄分割民営化反対、ローカル線廃止反対決議は、二冊目の資料二十五枚目にもあるとおり、昭和六十年九月現在で八百六十自治体に上っています。また、私どもが全国の選挙公報を集めて分析した結果、資料一冊目の十七枚目にあるとおり、分割民営化に賛成した議員は全体で五十三名しかおりません。  鉄道は、エネルギー効率から見ても、さらに無公害、無事故の交通機関としても優秀な交通手段です。さらに、日本国鉄はすぐれた人材と技術、優良な資産を持っています。そして、何よりも国民に愛されてまいりました。それはこの国のすぐれた文化の一つともなっています。これを分割民営化するなど、まさに暴挙と言わざるを得ません。まして、百十五年を迎えた長い歴史を持つ国鉄をわずか二カ月程度の審議で廃止してしまうなど、全く納得できないものです。  私は、国鉄分割民営化に真剣に賛意を表する人をも含めて、今必要なことは、データを公開し、正確に分析し、そして、分割民営化の功罪を国家百年の計に立って徹底的に慎重に討議することと考えます。その点で言うと、昭和六十二年四月一日実施にこだわる理由は全くないと考えるものであります。  貴委員会の慎重審議を心から要望いたしまして、私の意見陳述を終わります。(拍手)
  76. 細田吉藏

    細田委員長 ありがとうございました。  以上をもちまして公述人各位の御意見の開陳は終わりました。     ─────────────
  77. 細田吉藏

    細田委員長 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の際は、公述人を御指名の上お願いいたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。津島雄二君。
  78. 津島雄二

    ○津島委員 三人の公述人の先生方のお話、それぞれのお立場から大変興味のある、また参考になる御意見を伺わせていただきまして、ありがとうございました。興味深く拝聴させていただきましたが、若干の疑問点がございますので、御質問をさせていただきたいと思います。  まず最初に、村尾先生でございますが、民営化に反対しない、分割にいろいろ問題があるというお話でございましたが、まず最初に、規模の経済性ということを非常に言われましたね。大きいことはいいことだ、私は政治家的にそういうふうに承ったのでありますが、現下交通市場実態につきまして、ただ大きいことがいいことではないよ、鉄道特性を持った鉄道市場あり方というのはこういうものですよ。  昔のように日本全国国鉄が独占的にやっているときには、大きいことはいいことだというのはわかったかもしれませんけれども、五百キロから千キロ以上にわたると飛行機との競争にさらされる、そのほか鉄道事業が独占でなくなったという現状において、先生がおっしゃった大きい規模の経済性が、全国一本でなくなるとか分割をされるとなくなってくるということについては、今の鉄道特性あるいは今の交通市場との関係でどういうふうに受けとめたらいいのかということをまずお伺いをいたしたいわけであります。  関係して二番目の問題点になるわけですが、そういう大きな規模でございますと、収益の外部流出を防げて、そこに利益インセンティブが生まれる、こうおっしゃつたのですね。これは逆に言いますと、大きな規模で片っ方に非常に能率のいい市場があり、片っ方に非常に能率の悪い市場がありますと、能率のいい市場から悪いところに内部補助が起こる。内部補助というのは、私から申し上げるまでもなく、経済学的にディスインセンティブです、ある意味では。効率の悪いところに補助がいきますから、だからそういう意味で、大きくて、収益が外部流出せずに内部補助が起こることを直ちによしとする先生の所論に対しては、私はどうも疑問が残るわけでございますが、この点をお伺いをいたしたいわけであります。  三つ目にお伺いいたしたいのは、今度は根拠の方について三点お挙げになりましたけれども、それを総括いたしまして、規模が大きくても今決して限界を超えてない、悪いのは公社制だとおっしゃった。しかし、私は例えば一つの例を挙げますと、画一運賃のデメリットについてまず先生どうお考えでしょうか。けさの議論にも出てきたのでありますけれども、北海道で並列する高速道路ができて、バス運賃との競争になった。そのときに北海道は、そこでの競争が大事だから特急運賃について特例を設けてくれ、こういうことになると、いやいや全国一本のあれだから、特急は特急で全国で見させてくださいというような、そういうことで非常に画一性のデメリットがありますね。そういうことから考えますと、交通市場の現況からいってもメリットが発揮できるような形の企業にすることの方がいいという考え方がかなり説得力があると思うのでありますが、その点をどういうふうにお考えになるか。  最後に、いずれにいたしましても今の国鉄は非常に重体であるということは先生もお認めになっているようでございますけれども、これを立ち直らせていく上で、企業として一体どうして立ち直らせていくか。先生は民営化はいいとおっしゃるのですけれども、今、逐年二兆円に近いような赤字を出しておる、そういう企業をそのまま民営化していいということに受けとめることはなかなかできないわけであります。それは、裏からいえば毎年毎年国民負担でやりなさいという話になるわけですね。そういう国民負担を国民に納得させていいかどうか、私ども政治家としてなかなかその根拠は見出しがたいわけでありますけれども、以上、私、四つの点を挙げたと思いますが、それぞれについてお教えをいただきたいと思います。  委員長、牛久保先生にも御質問がございますが、分けて……
  79. 細田吉藏

    細田委員長 後にしてください。
  80. 津島雄二

    ○津島委員 以上、ひとつ村尾先生お願いいたします。
  81. 村尾質

    ○村尾公述人 必ずしも完全に理解できなかったのですが、最初の、規模の経済性が今の例えば航空に旅客を食われている中でどうかというお話でしたが、ちょっと次元が違うと思うのですね。規模の経済性には二つありまして、工場規模の経済性と企業規模の経済性というのがあるのですね。私が申し上げたのは企業規模の経済性です。今おっしゃったのは恐らく工場規模の経済性に関する問題ではないかと思うのですけれども、私が申し上げた規模の経済性は企業でして、結局販売力とかマーケティング、そういう面の問題ですから、別に市場が独占が失われようと何しようとやはりそれは問題があるのですね。独占が失われたらこそマーケティングが重要になるわけで、その点で、別に航空に食われたから、企業規模の経済性がでかいとなくなるという問題ではありませんから、一応別問題だと思います。工場規模の経済性と違うのですね。航空機との長距離が強いか弱いかというものは生産力面で、工場規模の経済性に関する問題だと思います。私の言っているマーケティングとかなんとかいうのは企業規模でありまして、これは全国ネットワークがあれば強いわけで、これはもう航空に食われようが何しようが関係がないんだと私は理解しています。  それから、二番目の質問はちょっとわからなかったので、これは後回しにさせていただきまして、三番目の、画一運賃でいいのかとおっしゃったのですか。私は別に画一運賃は主張しません。事実、現在の国鉄でももう画一運賃は捨てていますね、地方交通線は高い運賃を取っていますし。画一運賃は私は別に主張もしませんでしたし、主張はしていません。  それから最後の、赤字を民営化にしていいのかとおっしゃったのですが、私は、赤字はやはり国民の負担ですから、なくす必要があると思うのですね。ただ、完全に赤字をなくすことは不可能の場合があるということにつきまして、先ほど変な方向に議論が行くとまずいと言って避けましたけれども、私の根本的な考え方がありまして、今言いましたように国民の税負担を避けた方がいい、だから赤字はできる限り縮小すべきだけれども、完全な黒字にはなれないのは仕方がない。  これはヨーロッパあたりではもう確立していると思うのですね。先ほど竹内さんおっしゃった、お客のいない車を運転しているという話がありましたけれども、本当、私三年前にベルギーのブリュッセルへ行きましたけれども、夜中の十二時半過ぎごろ、私のアパートから見ますと、二、三人しか乗っていない路面電車が毎日のように十二時四十分に入っていきます。赤字なんですね、大赤字。収入の七三%が国の補助であります。それでも全然国民は批判しないみたいですね。つまり、ヨーロッパでは公共交通は赤字であるのは当然だと思っているのですね。  そう思わないのは日本だけです。なぜかというと、私鉄大手が黒字だからですね。これはぎゅうぎゅう詰めの、外国人にはとても耐えられない状況があって、それで日本私鉄はもっているわけで、そういうものを排除した外国では絶対もたないですね、公共機関は。これはもう準公共財であるという観念がヨーロッパではどうも確立しているみたいですね。だから、みんな税負担になるから合理化努力していますけれども、日本みたいに親方日の丸とかいってわあわあ騒いでいないようです。  ですから、私も究極のところは、結局準公共財と見るべきだと思っていまして、実は、私最近「経済評論」に二回ばかり論文を書いて、今論争中ですけれども、そういうふうに考えまして、完全な黒字にはまずならない。なれば一番いいのですけれども、努力目標は、少なくとも黒字でなくてもとんとんになるべきですが、国民の税負担を減らすべきですが、完全に黒字でなければいけないという考え方は間違いだ。  これはなぜそうかといいますと、結局、自動車——マイカーが入ってきたために交通市場がおかしくなっている。マイカーは値段がないですね。要するに燃料費だけで、人件費も計上されませんし、とにかく値段がつかないサービス、しかもマイカーは利益は要りませんよね。普通の企業だったら利益がなかったらやめちゃいますけれども、マイカーは利益がない。要らないと思ったら車を売り飛ばせばいいんで、中古車を売り飛ばせばいいんですね。普通の企業と全然行動が違うのです、マイカーは。こういうものが市場に入ってきたために市場が今おかしくなっている。現在の交通市場はおかしくなっている。それで結局、有用で効率よくやっている公共交通ももたないという状況が起こっているので、これは準公共財にするしかないというのが私の考えであります。
  82. 津島雄二

    ○津島委員 ありがとうございました。  マイカーがなくなれば国鉄ももっとよくなるであろうという、ちょっと私どもとしては現実性がない御意見でございました。  そこで、一つだけ申し上げておきますけれども、先ほどの規模の経済性について私が申し上げたのは、先生が路線網が大きければいい、ネットワークが大きいほどいいというところをおっしゃったから、これはまさに今問題になっているところではないかということを申し上げたのですが、お答えは結構でございます。  それから、収益の外部流出がないのがいいということに対してお答えがなかったのですけれども、これは収益を何でもかんでも中に入れておくということは、いわば内部補助を中へ隠してしまうというディスインセンティブがありますよというところを御指摘申し上げただけで、これもお答えは結構でございます。  そこで、時間がございませんので、牛久保弁護士さんにお伺いをいたしたいのであります。  土地の評価、資産の価値の評価、その他その他計算がまことにずさんであるという所論を展開されましたけれども、そういう計算を先生がお望みのようにやっても、三十兆円を優に超える国鉄の過去債務であるとかあるいは逐年の現在の赤字であるとかいう問題は、幾ら計算してもこれは直らないのですね。我々はそれを何とかしょうと思って今苦労しておるわけなんですけれども、そこで一言ずばり伺います。     〔委員長退席、佐藤(守)委員長代理着席〕  さっきは三千百八十九億円黒字だとおっしゃったけれども、大事なところを隠しておられる。金利負担や特定人件費や、それから減価償却がありますね。こういうものをあれすると堂々たる赤字になってしまうわけですね。これを何とか処理をしなさい、こうおっしゃるのだが、それは要するに今のままほっておけば毎年国民負担になるわけだ、税金で払ってくださいという話になるのですけれども、そういう私の解釈が正しいのかどうか、それが一点。  もう一つは、先ほどから私申し上げているような交通市場の変化を前提といたしましても、国鉄経営破綻でないとおっしゃった。これは現在の交通市場の中の鉄道特性のあり方を基本的に否定をしておられる。つまり、百十五年間の独占時代の国鉄経営も今もまだ破綻をしてない、こうおっしゃっているふうに私は受け取れたのですけれども、その点について、この二点だけちょっとお伺いをいたします。
  83. 牛久保秀樹

    ○牛久保公述人 まず第一点ですが、企業の再建問題ということを論ずるときに、その持っている企業の資産と債務の分析を正確に行うということは当然の事態で、そのことが何らなされずに企業の再建論が議論されていることについて、私は弁護士の実務家として極めて異様な事態だというぐあいに考えているわけです。そのことを抜きにして、その企業の持っている資産をどのように活用すべきなのか、その資産を処分できるものはどのように処分すべきものかという議論の大前提が成り立たないということを指摘しているのであります。  それから次に、債務の問題について言うならば、今先生がおっしゃいましたように、金利負担、特定人件費減価償却、これなどはいずれも資本経費と特定人件費という性格のものです。これは経営形態と別問題であり、分割民営化されると、では金利負担が消えるのかというと、そういう問題ではないのです。まさにこの金利負担をどのように解決をし、特定人件費をどのように解決をするのかという、これは分割民営化問題とは別に十分議論すべき問題だということを指摘し、その上で私が申し上げたいことは、六十年度末で二十三兆六千億円と言われている債務のリストを、これは企業再建では当然のことですが、債権者リストとして国民の前に公開すべきであります。  まず、その中には、国が国有鉄道に貸し付けているという膨大な金額があるということが判明いたします。国有鉄道に国が出すというお金は、貸付金ではなくて、日本国有鉄道法第五条第一項に基づく本来資本金であるべき問題であります。この国が貸し付けているというお金を、貸付金ではなくて資本金というぐあいに変更するだけで、国鉄の借入金は相当消えるだろうと私たちは考えています。  二つ目に、この間国鉄が払い続けた利息については、金利九・二%を含めて大変高い利息を払い続けただろうというぐあいに思っています。しかも、この利息については、日本国有鉄道法四十一条の脱法行為の疑いさえある利息だというぐあいに私は考えております。そうしました場合には、この利息の支払いが果たして適切妥当なものであったのかということを含めて、企業再建の当然のことでありますが、利息の棚上げ、切り捨てということの議論がなさるべきだというぐあいに考えております。  そのようなことが、企業再建のもっともっとオーソドックスな方法に基づいてまず議論をし、それで可能か不可能なのかということが何ら検討されずに、分割民営化と本来この問題と別なことに議論しようとしていることについて、私は納得いかないということを感じている次第です。  次、二つ目の問題で、経営効率の破綻という問題ですが、日本について言いますと、鉄道特性がある国土だというぐあいに考えておりますし、現に再建監理委員会の答申に基づきましても、ヨーロッパの五倍の経営効率を持っている。ヨーロッパの国鉄が十分やっていけて、五倍の経営効率の日本国鉄がやっていけないという話は本来的にないということと、さらに、航空機、自動車などについては、まさに総合交通体系として位置づけし直すならば、国鉄は十分やっていけるというぐあいに考えています。その点で、交通手段全体の総合交通体系について、この委員会でもぜひ御議論をいただいて、方向を見出していただくことを心から望む次第です。     〔佐藤(守)委員長代理退席、委員長着席〕
  84. 津島雄二

    ○津島委員 ありがとうございました。  一言だけ。資産、債務の評価をちゃんとやって、貸付金を出資に振りかえるべしということであろうと私も思っていましたが、これもやはり国民負担でございますから、振りかえるときに国民負担になるということだけ申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
  85. 細田吉藏

    細田委員長 関山信之君。
  86. 関山信之

    ○関山委員 三先生方には、きょうは本当にお忙しいところをおいでをいただきまして、貴重な御意見をいただきましてありがとうございます。  最初に、竹内先生に一言だけ確かめておきたいと思うのでありますが、きょうは議論の場でもございませんので、賛成、反対の立場で先生と御議論を申し上げる立場にはございませんが、先生のお話を承っておりますと、大変に大胆なといいましょうか、いささか乱暴じゃないかなという感じさえする御発言がございました。言うならば、鉄道時代は終わりつつある、衰退産業だ、そして、もはや国家事業としてやるべきでもないし、シビルミニマムでもないという御発言の趣旨なんですけれども、そういう延長線上でいきますと、つまり、今国鉄はもう自然死をさせるほかない。とりわけ、私どもそういう論理からいけば、地方交通線などというものはもうまさに死してやむを得ざるものだというように受けとめられるのです。そして、なお先生のお話を承っておりますと、国鉄としては周辺の事業、まあデベロッパーみたいな仕事をせっせとやる以外にないんじゃないかというような御趣旨なんですが、そのように承っておいてよろしゅうございましょうか。
  87. 竹内宏

    ○竹内公述人 私が申し上げたかったのは、国鉄は独占事業としてやるような段階ではもはやなくなった、こういうことでございますし、それから、国鉄をシビルミニマムと考えますと、あの経済的な合理性がなくなりまして、結局それは国民の税負担になって反映するというようなことを申し上げたわけでございます。  それから、地方のローカル線でございましても、これはやりようによっては採算に乗るところもあるかもしれないというようなことであります。よく有名な、千歳から帯広までは民営の特別な車両をつくりましたら、これは採算に乗ったというようなことであります。ですから、地方を全部一括して何か補助をするのではなくて、それぞれ独立性を持たせて、そこの人々の創意工夫を生かしたらいかがかなというようなことを申し上げたわけであります。  やや乱暴かもわかりませんけれども、勤労者といいますかあるいは私企業に働く人々の英知といいますか、その努力といいますか、そういうものをぜひ信じていただきたい。私企業に任せるとすべてもっとだめになるのではなかろうかというようなことかもしれませんけれども、私ども私企業に働く者は、かえって私企業に任せた方がよくいくのではなかろうか、創意工夫が生かせるというように存じているわけでございます。そのような中からおのずとローカル線のあり方は決まってくるというような感じがいたしているわけでございます。  失礼いたしました。
  88. 関山信之

    ○関山委員 衰退産業でありますとか鉄道時代は終わりつつあるというお言葉がありましたものですから、国鉄独占の事態でなくなりつつあるということは、それは私ども承知をいたしておりますが、必ずしもその前段の御発言の趣旨だけではないというふうに承っておきたいと思います。  そこで、これは村尾先生にお尋ねをしたいのですけれども、やはり一方で、この法案自体もそうなんですけれども、今国鉄改革に臨んで、何よりも効率優先、経済合理主義というものですべて一つ物差しを当てて仕切っていこうという流れがございます。しかしこれは、我が国の最近の状況の中におきまして一連の流れになっております臨調路線と、いいましょうか、規制緩和の流れといいましょうか、競争原理の一層の導入、民間活力の導入といったようなものとつながっていくのでありましょうが、私どもはどうも、交通分野に関しては、さっきの先生の御発言にもあるのですが、必ずしもすべて市場原理で仕切るわけにいかない代物ではなかろうか。  これは、設備投資が何兆円にも上る極めて膨大なものを持っている、あるいはあまねく国民の足は守らなければいかぬ、あるいは安全性の問題といったようなことを考えますと、先ほど先生の御発言にもございましたが、やはり公共性というものが絶えず市場原理とのバランスの中で確保されなければならないのですが、その前提として総合交通体系というようなものについて一つきちっとしたものがなければならぬじゃないかと常々思っておるのですが、いかがでございましょうか。一言だけ、これはごく簡単にお答えをいただければ……。
  89. 村尾質

    ○村尾公述人 私も確かにそう思います。市場原理で一〇〇%はできない。昔は鉄道独占があったからこれを規制しなければならないという状況でしたが、今は逆に独占が崩れて赤字になったのですね。その意味で、交通というのはいつも市場の中で異端児でありまして、昔は独占という——世界に独占が初めて出たのは鉄道なんですね。自由競争がだめになってきて政府が介入する。今度は逆にその独占が崩れて、普通ならもうとっくに鉄道は姿を消していいのですが、それは消せない。なぜ消せないか。これは今おっしゃった公共性だと思うのですね。  公共性という意味が非常にあいまいですが、普通、経済学的に言うと、公共性といいますと、独占性と社会的必需性だと言われますが、私は、そればかりでなくて、もう少し、これは先ほど言いました藤井弥太郎さんなんか、近代経済学とか言っていますけれども、利用可能性ということですね。今使わないけれども将来利用するかもしれないということで、利用可能性を持っている、これが鉄道の重要な使命であるというふうに言っていまして、これが公共性の一つの重要な論点だと思うのです。  そういう意味で、これはシビルミニマムとかいろんな形で言いますけれども、私も総合交通体系は必要だと思いますし、市場原理一点張りではいかないものが交通にはあるというふうに考えております。
  90. 関山信之

    ○関山委員 きょうは先生から分割にかかわる問題についてお話があったのですが、何分にも時間が大変短うございまして、十分な御議論の展開をいただいておらないようでございますので、少し伺っておきたいと思うのです。  今もお話ございました収益の外部流出という問題利益インセンティブの阻害というような問題について、国鉄改革意見書などでは、日航とのレール&ジェットの問題やら踊り子号の問題など具体的に挙げて、そういう心配はないのだという、総じてこの意見書では、私どもが一番最大の問題にいたしております分割のさまざまなデメリットあるいは技術的な困難性などについては、いとも簡単に楽観的に処理をされるように書かれておるわけなんでございますけれども、この問題について、先生もう少し詳しくお聞かせをいただけるとありがたいと思います。
  91. 村尾質

    ○村尾公述人 利益の外部流出の問題ですね。先ほどちょっと時間がなかったので申し上げませんでしたが、今言いましたように、意見書では、民間の発想でやれば大丈夫だということで、その例として、今は国鉄さんと日本航空の間でやっているレール&ジェットの共同販売、共同宣伝があります。しかし、これは例にならないですね。車両の乗り入れがないわけですから、鉄道と飛行機ですから乗り入れ全然なし。したがって、運賃収入の配分などということも費用負担関係も起こりませんから、これは全然別のケース、何を言っているかという感じですね。  もう一つの伊豆急との特急踊り子号、これはまさに乗り入れでありますが、これはたまたま条件がよかったからなんですね。私、調べてみましたら、東京から伊東までの国鉄線の運賃が二千円になります。それから、伊東から伊豆急の伊豆下田までの運賃が千二百四十円。これは、国鉄はこの間の九月の値上げ前の運賃ですが、二千円と千二百四十円で割とよくバランスしているということですね。さっき言いましたように、一割なんというものじゃないのです。ただ、伊豆急の方がちょっと少ないのですけれども、伊豆急としましては、首都圏の旅客を吸引できるという大きなメリットがあるのですね。ですから、運賃収入がやや少ないぐらいは問題じゃないということで、非常に伊豆急にとってもよろしい、条件が合うということでこれはうまくいっていると思います。ですから、国鉄さんの場合は全然違うのですね。伊豆急と今の国鉄関係とは全然違うのですね。西日本とかに入っていった場合、あるいは東海、西日本に入っていった場合の運賃の分担関係とは全然違うということであります。  大体そんなことでよろしいでしょうか。
  92. 関山信之

    ○関山委員 つまり、これは非常に特異な例だというふうに受けとめてよろしいわけですね。
  93. 村尾質

    ○村尾公述人 ええ、そうなんですね。いつもそういくとは限らない、現国鉄相互の場合は。片一方はよそのところに入ったのがほとんど大部分で、例えば京都に行ってもそうですね。京都に行く場合でも、大部分は東海会社と西日本に入る。東京の会社は熱海までもらえるかどうかわからないのですね、意見書には何も書いてないですから。東海道線は東海会社が管轄すると書いてありますから、その会社が全部運賃収入を取るのでしたら、全部東海会社へ行ってしまう可能性もあるのですね。しかしそうならないのではないかと思って、さっき熱海までは入るかもしらぬと言ったんですが、そこはまだ全然わからないのです。
  94. 関山信之

    ○関山委員 実は、当委員会でもこの分割の問題に関しては、運賃収入をどう配分するかとか、経費の配分をどうするかとか、その他具体的な問題についてまだ当局サイドのきちっとした答えが出ておりませんものですから、大変議論のしにくい部分もあるのですけれども、その限りで言えば、意見書に沿っていろいろお考えを伺うほかないわけでございまして、そこで、収益が外部流出をする、つまり、せっかく東日本会社で、企画商品なんかもそうでしょうけれども、他の旅客会社の商品を一生懸命売ってみても収入はほかの会社へ行ってしまうといったようなそういう問題との関連で、今津島先生から、そういう利益インセンティブを、全国的な非分割、つまり一社体制でやると、逆に内部補助の方に回ってしまって、これはいかぬのじゃないかという趣旨の御質問がございました。  私どもは逆に、今国鉄改革法を見ておりますと、分割と言っておるのですが、事実上、例えば新幹線保有機構にいたしましても、三島基金にいたしましても、まだ十分議論が展開をされておりませんが、貨物会社のいわゆるアボイダブルコストの問題につきましても、これは旅客会社と貨物会社との協議というようなことになっておりますから、時に内部補助的な役割を果たしかねない、そういう要因もはらんでおったりしまして、今、政府案が分割をしているという割には、その分割のねらいの一つである内部補助、過度の内部補助、まあ過度という場合にどこら辺が限度かという問題が残りますけれども、一向にその問題は解決されていないのじゃないか。そういう意味でも、私どもは余り分割意味なし、こう思うのですが、先生、そこら辺のところ、もう少し詳しく御意見を承っておきたいと思います。
  95. 村尾質

    ○村尾公述人 お答えいたします。  私は、大きい分割であれば地域に密着した運営ができないと同じ理由で、大きい分割であれば不当な依存関係はやはりなくならないと思うのです。結局、東京の山手線あるいは私の乗っている横浜線、横浜線も今第二位の黒字だそうですが、こういうところの旅客が青森、秋田の旅客運賃を負担するという関係はなくならないと思うのですね。意見書を見てもなくなると書いてないのですね。結局は負担することになると思います。  それで、実はこの点、意見書自体が自己矛盾を犯していると思うのです。意見書は、先ほど申し上げましたが、小分割すると経営の基盤となる路線を持たない会社がたくさん出てくると書いてあるのですね。経営の基盤となる路線を持っているということはどういうことかというと、つまり黒字路線を持っているということです。それがそれ以外の赤字路線を支えるということですね。これはつまり、黒字路線が赤字路線を支えるという内部補助を肯定しているわけですね。だから、三分割でも、大きい三分割ですと経営の基盤となる路線があるから三分割がいいのだということは、結局、東京の山手線なり横浜線が地方の交通線を支えるということを認めているわけですね。ですから、監理委員会意見書自体が自己矛盾だ。一方でそれをなくさなければいかぬと言いながら、一方で安定経営の基盤となる路線が必要だということを言っているのは全くの自己矛盾でありまして、私は委員長に聞いてみようと思うのですね、そこをどう考えているのか。私も非常に疑問に思っております。
  96. 関山信之

    ○関山委員 先ほど申し上げましたように、実は私どもまだその辺のところを十分国鉄なり運輸省の意見をただす段階に至っておりませんので、なお先生の御意見を承りながら今後ただしていかなければならぬと思っております。  追加的費用の問題についてのお話もございましたけれども、これは具体的にはどういう中身があるのでございましょうか。なお、ヨーロッパの例などにちょっとお触れになったようでございますけれども、そういった問題にもお触れをいただきながら、これまたはっきりしてないのですが、つまり、ダイヤ編成の問題、費用負担の問題、その他分割各社間のいわば経営のさまざまな分野における調整機関というものがどこかになければ、これは一体本当にやっていけるのだろうかという心配がございます。今までのところでは、各社間の協議といった程度の域を出ておらぬわけでございますけれども、この辺についてはどのようにお考えになりますか、お聞かせをいただきたいと存じます。
  97. 村尾質

    ○村尾公述人 お答えいたします。  本当にどういうふうに調整するのか、意見書に全然出ていないのですね。この点もやはりちょっとした欠陥商品だと思うのです。先ほどの分配方式も何も書いてないのと同じで、協議、調整をどうするのか、何も触れておりません。この点で、先ほどちょっと言いかけましたヨーロッパのことを。  私、実は三年前にブリュッセルに留学しましたときに若干調べてまいりましたが、ヨーロッパの鉄道は今非常にスムーズに動いております。私も夏のバカンスのときに鉄道で盛んに旅行しましたが、一社で経営しているように非常にスムーズに動いております。それにはやはり苦労をしているのですね。五つの機関があるわけです。欧州時刻表会議、CEH。これはイギリスは乗り入れておりませんから、一応サブという格好で、全部ドイツ語とフランス語でやっているのですね。それから欧州貨物列車時刻表会議、LIM、これはイタリー語ですね。あるいはCEM、フランス語ですね。それから欧州旅客運賃会議、CEV。それから中央清算事務局、BCCですね。それから国際鉄道連合、これは世界的な組織ですが、ULCというのがあります。  こういうのがありまして、ダイヤについては時刻表会議あるいは貨物列車時刻表会議に諮って、これは二年ごとに本部が会員の国の都市を回って移動するのですが、時刻表の決定も二年に一回ずつやります。それは西暦偶数年ですね。奇数年には小幅の編成がえがあって、偶数年ごとに大きい改正をやるのです。あと貨物列車時刻表会議をするのですね。旅客運賃会議というのは運賃を決定するのじゃなくて、運賃は各国鉄自分で決めるのですが、営業活動をダイヤ面に反映させるためのことをやるのが旅客運賃会議。旅客運賃会議はCEVといいます。中央清算事務局はBCC、これはベルギー国鉄の財務局が担当しています。あと国際鉄道連合は世界的な組織ですが、ヨーロッパの国鉄については費用計算の単価を決定するという仕事をやっています。  こういうものがありまして、そのほかいろんな協定がありまして、協力して非常にスムーズに動いているわけです。日本分割した場合も、必ずそういう協議、調整の機関が、常設機関が必要になると思うのですね。そのために追加的費用が必要だと思うんですが、何にも書いてないのです。これは去年の春の都留重人先生が主催した会議のときに僕は加藤寛さんに聞いたのですけれども、いや国鉄さんが教えてくれないからわからないなんて逃げていましたけれども、そういう状況であります。  それから今の、何ですか、その後にちょっとダイヤ編成のことをおっしゃったんですか。
  98. 関山信之

    ○関山委員 いや、結構でございます。  今、ヨーロッパの状況についてお話をいただいたのですけれども、やはりこの種のものがなければ、ダイヤ編成の問題など、これはそれぞれ運賃収入の配分方式やあるいは費用負担の形態などが定まりませんと、ある一定の前提を置きませんとなかなか議論しにくい問題ではあると思いますけれども、一応ヨーロッパ並みあるいは私鉄並みという方式でいくということを前提にしておるようでございますが、そういうものを前提にして議論いたしますと、例えばダイヤ編成などについても、かなり楽観的な書き方をしておりますが、先生の御判断では、この種のいわば調整機関みたいなものが本当にきちっとできないとやれないんだというふうにおっしゃっていただくことになるのでしょうか。今のヨーロッパの例に対する御判断から、今仮に分割になるとして、その種の機関の存否について御判断を伺っておきたいと思います。
  99. 村尾質

    ○村尾公述人 そのとおりであります。日本でも同じような常設機関が必要になるだろうと思っています。その場合に、やはり各社利害が対立しますから、ダイヤ編成にしても、意見書が言っているように楽観できないと思うのですね。意見書では、今の国鉄さんの中で分割各社間にまたがって運行している列車は全体の三%しかないと言っていますけれども、実数は、旅客が五百本、貨物が私の計算しましたので大体百八十本ぐらいあるんですね。全部で六百八十、約七百本が交流するわけですから、そんなに簡単なものじゃないということと、それから、私鉄さんが今六千本の列車が交流しているから、これでも平気でやっているんだということを言って楽観しているのですが、これは全然比較にならないですね。  私鉄の場合は近距離ですから、ピーク時とオフピークの時間が一致しているんですね。東急と営団が乗り入れても、どっちも同時にピークが起こるわけで、非常に利害が一致しているんです。ところが、国鉄の場合はそうはいかないですね。長距離の、例えばブルートレーンは小倉から発車して東京に入ってきます。それが朝のラッシュ時間にぶつかるわけですね。逆に、こっちから行ったのが向こうのラッシュ時間にぶつかります。それから、静岡あたりでも何か朝のラッシュにぶつかるのだそうです、それで文句が出ているんだそうですけれども。  これはどうするかというと、今のところ東京の朝のラッシュだけは避けている。ブルートレーンを入れない。しかし、それ以外は全部ラッシュ時にも通しているんですね。これは夕方もかかるらしいんですね。夕方もラッシュ時に出発がかかるということであります。東京の朝以外は全部ラッシュ時に突っ込んでいるという話であります。  しかし、これは今国鉄が一社だからできているので、もし分割化されたらそうはいかないと思うのです。もうラッシュ時は御免だということで、ブルートレーンの到着時間がまずい時間になっちゃう、早過ぎたり遅過ぎたりなっちゃう可能性が強いわけで、そうなるとブルートレーンの人気も落ちるというわけでありまして、ダイヤの編成はそんなに簡単にいかないと思うのですね。私鉄と比較にならないです。私鉄は非常に恵まれている。  特に、問題は貨物ですね。貨物はもうダイヤを昼間組めなくなるおそれがあると見ています。貨物は、そもそも安全の問題からいっても、昼間入れたくないですね。鶴見事故がいい例で、昼間入ると事故を起こすおそれがあるから、貨物は入ってほしくないのです。  しかも、旅客会社はよそから入ってきたら自分のところの収入になるから歓迎しますけれども、貨物は収入にならないですからね。意見書には書いてないですけれども、なぜそう思ったかというと、貨物は旅客会社路線を借りるんだからレールの賃借り料、使用料を払えと言っている。ということは、費用を負担するということですから、貨物はレールの使用料も電力料も全部払うのだと思います。ということは、収入も貨物がもらうということです。貨物はレールを全然持ってないのですから、収入を全部もらうか全部もらわないか、どっちかですわ。恐らくもらうことになる。そうすると、貨物列車は入ってきても旅客会社の収入にならないのですね。収入にならないくせに一方で危険な車両であるということになると、貨物はもう招かざる客で総スカンを食っちゃって、昼間は走れなくなるというおそれがあると思うのですね。そうすると、貨物はますます遅くなり、トラックに対する競争力がますます落ちるということで、非常に問題が起こりますね。この点からも、ダイヤと絡んで貨物は問題ですね。  要するに、そういうことでまたその調整のためにいろいろと常設機関が要るし、調整のためにお金もかかるし、特に時間がかかると思うのですね。それから精神的苦労ですね。利害対立。  今ヨーロッパはスムーズに動いていると言いましたけれども、実際はなかなか苦労があるらしくて、ヨーロッパは国鉄を統合しろという声も一部にあるのですよね。各国は自分の国の利益に縛られて個別に行動している、これではだめだ、ヨーロッパは国鉄を統合しろという声もある。今ヨーロッパはECということで非常に一体感がありまして、国家意識が薄れていると言われていますけれども、もしかしたら僕はヨーロッパの国鉄統合がそのうちに実現するんじゃないかなという気もしないでもないのです、わからないですけれども。つまり、向こうは今統合の機運があるのに、こっちは分割するというのは、それはもう逆だなという感じがするのであります。  以上で終わります。
  100. 関山信之

    ○関山委員 今、貨物列車のお話がありましたのですが、私も、貨物列車の論理と旅客会社運賃配分や費用負担の理屈とでは全く違った理屈立てでやっているものですから、こういうものが一緒に、それぞれ相互に競争し合うと、一体どういう結果が生まれるんだろうかというようなことは、かなり専門的、具体的なことでもありまして、よくわからない部分があるのですけれども、こういう問題というのはどう考えたらよろしいのでしょうか。  例えば、正直言って、一社体制でやらせるというのは無理がかなりあるんじゃないかと思うのですけれども、現実、この無理が、今お話しのようなことになっていくとすると、これはもう貨物会社として成り立たないというようなことにもなりかねないんじゃないかと思うのですが、貨物の一元的運営について重ねて御見解を承っておきたいと思います。
  101. 村尾質

    ○村尾公述人 貨物の一元的運営のことですが、私は、基本的に貨物を分離して一元運営することは、採算がとれるかどうか心配ですけれども、一応論理的にはいいと思うのですね。いいことがあると思うのです。というのは、政府の補助の目的がはっきりするということですね。今、旅客も貨物も込みで補助を出していますが、私は、本来、貨物は補助をもらうべきでないと思っているんですね。イギリス国鉄も、それはフルコストじゃないですけれども、アボイダブルコスト、回避可能原価は貨物は償うという原則を七八年から実現しています。日本もぜひそうあってほしいと思っています。ですから、分離して補助は旅客だけに補助する、貨物は補助しないという原理を適用する意味で、貨物を分離することはいいと思うのです。  今お聞きになったあれは何ですか、論点は。貨物の……
  102. 関山信之

    ○関山委員 経営として成り立つのかどうかということです。
  103. 村尾質

    ○村尾公述人 それは、この間の新聞を見ますと成り立つというあれが何か出ているらしいですけれども、これは僕は相当難しいと思うのです。ただ、私は貨物は結局鉄道だげをいじくってはだめで、トラックの方に問題があると見ていますね。というのは、一番大きいのは、やはりトラックの労働条件が非常に悪い。賃金の絶対額はそんなに低くないんですけれども、労働時間がもう殺人的に長いですからね。十何時間も働くというので、時間当たりにすると二割ぐらい安いんです。こういう状態をまず直さなければいかぬということと、あとトラックの公害規制をもっと厳しくやるというようなこと、そういうようなことである程度トラックを抑える。これは抑えるというのではなくて、当然もらうべき賃金を上げるようにする、あるいは労働時間を少なくするということです。トラックの労働時間を少なくして、もっと競争力を下げないとどうしようもないというふうに思っています。
  104. 関山信之

    ○関山委員 ありがとうございました。  余り時間もなくなりましたが、きょうほとんどお触れにならなかった技術的なデメリットの問題についてなお伺っておきたいと思うのです。  政府と申しましょうか監理委員会と申しましょうか、監理委員会意見書でも、従来の運輸委員会あたりの議論でも、これはともかく民鉄私鉄がやっているのだから心配ないんだということで、すべてこの技術的なデメリットについても押し切られておるわけなんですが、実は先ごろ、これはもう国鉄の内部にも、あの仁杉総裁以前のころには分割についてかなり深刻な御議論もあったようでありまして、専門家の間でもさまざまな問題を残しておるように聞いてはおるんですけれども、具体的な詳細なデータもまだ十分に整っておらぬものでありますから、今はこの意見書の極めて楽観的な物の見方だけが前面に出ておるわけでございますが、先生、この問題の御専門の立場からこの技術的なデメリットの問題についてはどのようにお考えか、お聞かせをいただいておきたいと存じます。
  105. 村尾質

    ○村尾公述人 先ほど時間の関係で省略しました技術的デメリットの問題について、若干お話し申し上げます。  まず、これには大きく分けまして三つばかりの種類がありまして、列車運用上のデメリットと、それから費用、収入配分上のデメリット、それからもう一つは利用者のデメリットと、三つに分けたわけです。  列車運用上のデメリットの一番は、やはり先ほど申し上げましたダイヤ編成が難しくなるという話でありますね。で、私鉄は、さっき言いましたようにピークの時間が合致するから問題ないということ。もう一つは、私鉄は、たとえよその列車が入ってきた場合でも運賃自分のものになるからいいんですが、そのほかに、よその列車が入ってくると、自分の方の列車をふやさないでピークの本数がふえるということですね。東急さんが自分をふやさなくても、営団さんの電車でやってくれるということで、非常に投資の節約になるということですね。そういうメリットもあるということを考えておかなければならぬ。その点で私鉄とは違う。私鉄は非常に有利である。国鉄はそういうことがないんですね。国鉄は、近距離の場合は国鉄でも起こりますけれども、長距離列車の場合はそういうことが起こらないということ。それから、お客を吸引するという点もそうですね。長距離列車は余り吸引効果がないということ。  それからもう一つは、これは私はわからなかったんですが、国鉄さん内部で出された分割反対の意見書、問題になった意見書らしいんですが、この中で言っているんですけれども、新幹線の列車運用が硬直化する。つまり、ダイヤを編成するときに、どの列車をどこでやるということをきちっと決めておかないと、途中で臨時列車を運転できなくなっちゃうということで、ヨーロッパは今そうですね。ヨーロッパは二年に一回で、もう決まっちゃったら変更できない。そういうヨーロッパ並みの硬直したダイヤになってしまうということであります。  あと、二番目の費用、収入配分上のデメリットとしましては、まず費用の単価の決定に問題があるんですね。つまり、例えば人件費を配分する場合とか、特に賃金に差があると人件費を後で清算するといってもどっちの賃金で計算するか、乗り入れた方の賃金で計算するのか、入ってもらった方、入れた方の賃金で計算するのか、ここに賃金格差があると問題が起こる。で、中をとって中間的な値としましても、いずれにしても賃金の安い方にとっては負担になりますし、高い方にとっては取り足りないということになりますから、どっちにしても満足できないことになるのですね、中間値をとっても。そういう難しい問題が起こります。  もう一つは、運賃収入配分手続が複雑化するということです。今は純収入計算方式といいまして、行き先や経由地がはっきりわからなくても、大体推定でやるらしいんですね。そういう部分がかなりある。これは例えばフルムーンパスとかナイスミディパスとかあるいは周遊券といったようなやつは、どこをどう行ったかわからないんですね。あと、短距離では、我々は自動販売機で買いますと、行き先はわからなくて値段だけ書いてあるのがあります。今は推計でやっているんですけれども、今は内部の管理資料ですからそれで済んでいるんですが、もしもこれが経営各社間で分けるとなると、実績と内容が合わなければいけない、そうすると全部はっきりさせなければならない。したがって、自動販売機も全部改造するとか取りかえるということで設備投資が必要になりますし、フルムーンパス、周遊券のたぐいも全部、行ったところ行ったところで判こを押すとかスタンプを押すとかいうことで、記入する必要が起こるということで旅客も面倒になるし、国鉄も業務が増すという問題が起こります。  三番目は、貨物があることによって非常に複雑化する問題があります。というのは、先ほど言いましたように、旅客列車の場合はよその会社が入ってきてもただで行けますね。つまりよその、営団に東急が入ってきたら、東急には電力をただで使わしてあげます、レールもただで使わしてあげますというんで、自分で全部、それは営団の帳簿で費用が計算されます。ところが、貨物が入ってきますと、貨物は違うんですね。貨物からは収入が来ませんから、電力費を下さい、レール費用も下さいということになります。ですから、旅客会社は電力費用とレール費用を一面では自分で負担しながら、一面では貨物会社からもらうという複雑な計算が起こるんですね。そういう複雑なことが起こる。私、会計学の専門でないものですから、これがどういうことになるのかよくわかりませんけれども、とにかく複雑化することは確かであります。そういうデメリットがあるということです。  最後に、利用者のデメリットは、これはよく言われています初乗り運賃の重複が起こるんではないかということ。これは意見書では起こらない、通算制にするから大丈夫と言っていますが、どうもこれはまゆつばだと思うんですね。最初は世論を気にしてそうやるでしょうけれども、必ず中で反論が起こると思うんです。  各経営者、やはり経営がつらいですから、初乗り運賃を欲しいですね。そうすると、国鉄さんは私鉄に対しては初乗り運賃を取らしてあげる、で、もとの国鉄同士だと初乗り運賃を取らしてくれない。これは理論的に矛盾しているんじゃないかという反論が必ず起こると思うんです。私鉄と同じにしろ、おれも民営化しているんだ、私鉄だぞ、何でおれだけ別扱いするんだという反論が必ず出ると思います。そうすると、数年にしてこれは結局つぶされるんじゃないかと思うんです。理論的に矛盾していますから、結局初乗り運賃を払う。そうなると、遠距離逓減制もつぶれちゃいますね、初乗り払うわけですから。ということで、この初乗り運賃、遠距離逓減制の問題も、意見書では楽観していますけれども、僕は最初だけであって、数年でつぶれるおそれが非常に強いと見ています。  まあ大体そんなようなことです、技術的デメリットとしては。
  106. 関山信之

    ○関山委員 ありがとうございました。きょうは主として分割の問題についてお話を伺いました。  最後に、牛久保先生、土地の値段が十八兆という金額に上るという御数字の提示がございましたが、先生はこの土地の処分の問題についてその是非、売却をしてその処分をするというそのことの是非も含めて、どう扱うべきかということについて最後に一言お聞かせをいただきたい。
  107. 牛久保秀樹

    ○牛久保公述人 とにかく国鉄には大変な土地があるということに改めて気がついた事態になっています。今、都市再開発また都市の活性化などを含めて見たときに、土地をどのように活用するのかという、その面からも極めて深刻な事態になっています。東京で言いますと、住民の皆さん方がいろいろ要求を実現していこうとしても、土地があるかないかということが最大の問題になるわけです。それから、大地震のときの避難場所、それから緑地、スポーツをする場所などを含めて、総合的にこの国鉄の土地問題については検討しなければならない。そういう点でいきますと、一たんこの公共用地を民間に払い下げるという事態になったときには、二度と国民の手にこの土地は戻ってこないという点で、私は国鉄の土地の放出については極めて慎重であるべきだというぐあいに考えています。  それでは、なぜ値段を出すのかということについて言いますと、私は、これだけの活力性を持っている資産をお互いに認識し合って、どう活用するのかという国民的な討議を開始すべきだろうというぐあいに思います。その点でいきますと、駅が交通と通信、産業の中心地点であるということを考えてみたときに、ここにオフィスビルを建てるなど、国鉄のそういうような新たな事業拡大などについては十分容認する余地があるのだろうというぐあいに考えています。  なお、私も東京で弁護士としていろいろな仕事をしていますが、地価の狂乱、高騰というのが相次いでいますが、私は実際に現場で、国鉄の土地が放出されるということを契機にして土地の値段が上がってきているということを見ています。そういう点での国土政策の立場から見ても、私は、一たん国鉄の土地の放出はやめるという政策判断をして、今の土地の異常な事態にストップをかけるべきだというぐあいに考えている次第です。
  108. 関山信之

    ○関山委員 どうもありがとうございました。
  109. 細田吉藏

  110. 石田幸四郎

    ○石田委員 まず、竹内公述人にお伺いをいたしたいと思います。  先ほどの先生のお話をいろいろ承っておるわけでございますが、私どもの公明党も分割民営賛成ということなんでございます。これには若干中身が政府案と違うところもあるわけでございますが、基本的な考え方についてはそう大きな差異はない、こんなふうに思っておるわけでございます。  ただ、実際に国鉄がそれぞれ民営会社になった場合を想定をし、そして将来のことを考えてみた場合に、先ほど総合交通体系のお話も出たのでございますけれども、現実は、モータリゼーションの発達によって道路が必要になってくる、そういうところからいわゆる道路に対する政策あるいは財政的な裏づけ、こういったものが積極的に行われておるわけでございます。飛行機にしても同様、飛行場を建設するについての財政負担というのは、国も相当な額を負担しているわけでございます。あるいは船の場合も、港湾の整備五カ年計画というのが何次かにわたって行われておるわけでございますが、そういうような状況の中で、旅客の伸びがないあるいは貨物が激減をしてきたというような背景を見ますと、やはりそういったいわゆる行政指導の結果も影響をしているのであろう、こういうふうに思わざるを得ないわけでございます。  そういうことで、鉄道が将来大型の投資をしなければならない場合、今話題になっているのが整備新幹線の問題でございますが、九州にあるいはまた北陸の方でもそういうような新幹線を導入したいという御要求も出ておるわけでございます。そういうような大型の設備投資をする場合、あるいはまた現在研究されておりますリニアモーターカー、こういうものを導入しようということになりましても、何千億の単位では済むまい、こういうふうに考えられるわけでございます。  そういうふうに考えてみますと、私は、将来の鉄道という問題、これが衰微産業で、全くなくなってしまうということではもちろんないわけでございますから、そういうような大型投資をしなきゃならない時代が来たときに、やはりそういった政策、そういうような制度というものが考えられてしかるべきじゃないか、こういう議論を実はこの間の特別委員会等でしておったわけでございます。  現在政府の方は、とにかく赤字の処理に追われておりますし、何とか民営分割しようということで、その目先の方だけにとらわれておりますので、それに対する確たる答弁はなかったわけでございますけれども、私は、将来鉄道民営化され、分割されるに従いまして、そういうような問題が必ず出てくる時代が来る、こういうふうに見ておるのでございますが、こういう問題に対して、現に東北新幹線にしましても上越新幹線にしましても、あるいは青函トンネルにいたしましても、その資本費を負担するような仕組みで来ました。そういったことがまたいわゆる国鉄財政悪化の大きな要因になっていることも、これは否定できない問題であろうと思うのですね。そこら辺のことも考えまして、今私が申し上げました考え方についてどんなお考えがあるか、お聞かせをちょうだいいたしたい、こう思うわけでございます。
  111. 竹内宏

    ○竹内公述人 まさに先生の御指摘のとおりでございまして、現在国鉄は、過去の路線といいますか、そのもとで大赤字になって、そこに政治的な問題も絡まって赤字になって困っている、そのようなことでございますけれども、オーバーに言いますと、国家百年の計を考えますと、まさに東海道新幹線が大成功であったように、新しい技術進歩を起こせば鉄道も復活する可能性はもちろんあると思っております。特にリニアモーターカーなどが将来できれば、これはまさに航空機に匹敵するような輸送システムになるに違いない。それによりまして土地の供給量はふえることになります。大都市とかその周辺の供給量も、時間距離が短縮しますのでふえることにもなりますし、それからさらに、このような密なネットワークができれば地方にも最先端の情報がよく流れますので、地方の開発にも役立つというようなことで、非常に必要なことではなかろうかと思われるわけであります。  でございますけれども、ただ、この負担を現在の国鉄なり、あるいは分割後の私企業になりましたものに負担させてはいけないと思うわけであります。しばらくの間、これらの企業は今までの民間活力を利用いたしまして、民間活力というのは、平たく言えば、従来の国営的な考え方で言えば赤字になれば補助金を出す、あるいはさらに赤字になれば廃止せざるを得ない、こういうことでありますけれども、民間の考え方でございますと、お客が減ればふえるような方策を必死になって検討する、客をふやす方法を検討するというのが多分民間ではなかろうかと思われるわけでございます。いずれにいたしましても、そのように分割されたものは非常に経営が困難でございますから、そのまま経営努力をしていただく、こういうことで、将来の整備新幹線とかリニアモーターカーは、まさに別の国営事業で行うべき問題ではなかろうかというような感じがしているわけでございます。  余分なことでございますけれども、まさに日本は、現在経常収支の黒字八百億ドルを超しているわけでございます。平たく言えば、日本には物と金があり余っている、にもかかわらず使うシステムがない、こういうようなことでございます。このような時期は、まさにこのような新しい交通システムを検討し、あるいは技術開発を進めるべきであるというように考えられるわけであります。整備新幹線ができましても当分は採算には乗らないというわけでございますけれども、国家がやるべきことは、五十年先にトータルしてみたら、全体の国民経済が成長し、総合的にメリットがあったというのがまさに国家のやるべき仕事ではなかろうかというふうに存じているわけでございます。
  112. 石田幸四郎

    ○石田委員 ありがとうございました。  それから、村尾公述人にお伺いをさせていただきたいと思います。  先ほど先生の御議論をいろいろ承っておったのでございますが、先生は基本的に民営化はよろしい、そのかわり全国会社であるというような話を基本になされたと思うのでございます。しかし、現在の公社制におきますところのいろいろな弊害というのは、いろんな角度から指摘をされておるわけでございます。当然民営をお考えになったこともそこから来ておると思うのでございますが、公社制の廃止だけで果たしてこの問題が解決できるのか。  もちろん、前提としては、民営化するに当たっては長期債務の棚上げなどが必要であろうということは推測できるわけでございますけれども、例えば、貨物なんかは今も御指摘がありましたように、全体のシェアの数%しかない、また、今までの資料によりますと、専用列車等はますます減るであろう、こういうようなことも言われておるわけでございます。その分を他でカバーをするというようなことも言っておるのでございますけれども、そういうようなモータリゼーションとの関連におきます貨物の減少傾向、そういう問題を考えなければならないのではないか。あるいは果たしてこの民営化一社案で今までの赤字体質が払拭できるものであろうか。また、先生は先ほどヨーロッパ等の例を見ても赤字はやむを得ないのではないかというようなお話もされたわけでございますね。  話が混同してはいけませんので、二つに分けたいと思いますが、公社制を廃止をいたしまして、今までのいろんな体質、例えば一兆二、三千億の借り入れをしてその分を借金の返済に充てていくというような状況等も考えまして、私はなかなか簡単ではないのではないかと思いますので、民営化一社案の中で際立ってメリットが考えられる点をひとつ御指摘をいただきたい、これが一点であります。  それから、先ほど先生がおっしゃった、鉄道輸送というのはヨーロッパの例を見ても赤字はやむを得ないのではないかというお話でございますが、しかし、民営ということになりますれば、当然これは先ほども話が出ておりましたように、将来は一〇%の配当などを義務づけられるというようなこともございまして、やはり営利性というものが重視されなければなりません。したがって、民営では鉄道赤字はやむを得ないのではないかという議論は、ちょっと対抗できないのではないか。  もちろん、そんな単純な論理で先生はおっしゃっているとは思いませんので、そういうような赤字を生むであろう、だから黒字にはならないのではないか、それに対してじゃ一体どんな手だてでこれらのものをカバーしていこうとされるのか。今の私鉄のように関連産業をどんどんどんどん拡大をさして、そしてツーペイにするのか、あるいは他の方法をお考えになっていらっしゃるのか、御意見がありましたらばお伺いをいたしたいと存じます。
  113. 村尾質

    ○村尾公述人 今おっしゃった後の方からお答えいたしますと、どういう方法で、民営化された場合に赤字をカバーするかという問題ですが、私も前から、国鉄のままでもっと兼業をやれというのが私の持論でありまして、まして民営化されたら、できれば私鉄並みにどんどん兼業をやれという意見を持っています。その意味で、僕は今資産を余り売りさばくととは賛成しないですね。いいところはとっておいて、例えば汐留なんかとっておいた方がもうかるかもしらない、わかりませんけれども。その辺はよく計画を練って、利用できないところを売る、自分がこれから兼業化するときに役に立つものは売るなというのが私の意見であります。  あとは普通の合理化とか近代化でやるしかないと思うのですけれども、幸い監理委員会の「意見」でも黒字になると言っていますから、三島も黒字になるのかどうか、この間は黒字になると言っていたようですけれども、怪しいと思いますが、まあなってくれればいいと思うのですけれども、要するに普通の合理化努力と今の兼業ですね。問題は地方交通線をどうするかという問題であります。  これは実は問題で、先ほどちょっと触れかけましたが、僕はさっきちょっと言いましたように、マイカーの進出時代には今の交通市場市場としての機能をうまく発揮し得ないということで、だから、普通の市場だったら、赤字だったらやめちゃえばいいんですけれども、今の鉄道は、赤字だからやめちゃうということを世論はなかなか許さない状況があるわけですね。だから、その辺は結局現実の力関係になってくると思いますね。  僕は、市場が壊れている以上は、ヨーロッパ並みに赤字になったらカバーしろ、だから、幹線は完全に黒字にする、地方交通線の赤字の公共的補助は仕方がないと考えています。だから、例えば北海道が赤字になった場合も、これは北海道全体として公共的に支えるのは仕方がないと私は思っているのですね。北海道なんか、特に車が物すごく発達していると思います、田舎ですからね。こういうところではもう普通の市場の論理は貫けないというふうに私は考えていまして、国民の税負担ですから、できるだけそれは減らす必要はありますが、絶対出さないというのはやはりよくないと私は考えています。
  114. 石田幸四郎

    ○石田委員 それでは、先ほど合理化のお話もちょっと出たのでございますけれども、余剰人員なんて嫌な言葉が横行しておるわけなんですけれども、今国鉄の試算によりますれば、六万一千人を退職せしむるというようなことになっているわけでございます。民営化された場合に、先生はこういった人員問題についてはやはり縮小の方向をとらざるを得ないと思っていらっしゃるのかどうか、お伺いをいたしたいと思います。
  115. 村尾質

    ○村尾公述人 余剰人員問題は私の専門外なので余りお答えしたくないのですが、まあ素人として申し上げましたら、民営化するのであれば一応やむを得ない面もあるけれども、しかしどの程度それを救えるかですね。救うまでは何とか面倒見てやれ。これは失業しても社会保険が要るわけですから、いずれにしても金がかかる。経済学的に言いますと機会費用なしでありまして、これは失業したら失業保険が要るわけですし、失業保険で細細とやらせるぐらいなら、それを鉄道に補助をして、安い賃金でも何でも働かせるという格好にした方がいいと思うのですね。とにかくそういう人の就職問題が解決するまで何とか支えてやる。その間公共的に補助がある程度、ある期間出ても仕方がないというふうに考えます。ただ私、この問題は素人ですので余り深入りしたくないのですけれども。
  116. 石田幸四郎

    ○石田委員 それでは最後に、牛久保公述人にお伺いをするわけでございますが、今日の国鉄の赤字体質、先生のお立場からいたしますと、いろいろな政治責任の問題も出てくるでございましょうし、あるいは投資の拡大をそのまま、今も申し上げましたように、資本費を国鉄に負担させる等の問題も赤字拡大の要因になっておるわけなんですが、いわゆる赤字の問題はそういうことだけではない。  例えば、今も申し上げました貨物の減少などというのは、四十六年の総合交通体系なるものが運政審ですか、あそこから出た。その方針が間違っていたせいもありまして、貨物ヤードなんかを拡大をした。しかし、そういうことが、現実の市場メカニズムの中でいわゆる荷物の減少というのが出てきたわけでございまして、こういうものも国鉄が赤字になる大きな体質になっているわけですね。そういうようないわゆる市場メカニズムによって起こった赤字体質、そういうようなものなども、公社制度を現状のままで維持していくということを前提に考えたときに、なかなか私は対抗できないのじゃないかという心配は一つしておったわけでございます。  それに対するお答えをひとついただきたいのと、先ほど用地の問題に触れられて、関連事業の積極的な拡大のような御発言があったのでございますけれども、公社制度そのものの中でそういった関連事業をどんどん拡大をしていくということになりますと、これはちょっと問題なのではないかというふうに思うわけでございます。そういった意味で、現在の公社制を維持するということを前提にして、この二つの点、どんなお考えなのかお聞かせをいただきたい、こう思うわけでございます。
  117. 牛久保秀樹

    ○牛久保公述人 貨物の問題についてですが、私どもも研究している最中ですが、大胆な改革をなしていかなければならないというぐあいに思いますが、例えば、私どもも現場をずっと調査をして非常に驚きますのは、汐留の貨物のヤードですが、クロネコヤマトが大部分を占めて作業をしているわけですね。あのところは国鉄として十分仕事ができる可能性を本来持っているのではないだろうか。それから、武蔵野線沿線の大きな貨物ヤード。都市内の国鉄貨物と、それからそういう第二山手線規模のところまでの貨物と、その後の自動車輸送などの総合的な関連性、それから国鉄を使った高速度貨物輸送などの位置づけをなしていくならば、私どもは貨物の再生は十分できるだろうというぐあいに考えています。そのことの検討がなされないまま、貨物はもう時代おくれだということにはならないだろうというぐあいに考えています。  それから、関連事業の拡大の問題についてですが、国鉄鉄道事業の将来性という問題について斜陽であるというお話がございますが、例えば今までヨーロッパの話が出てきておりますが、アメリカにおいても決して斜陽ではない事態が今出てきているわけですね。例えばロサンゼルスについて言うと、自動車万能のような社会でしたが、結局鉄道をもう一度再生しないことには都市機能が成り立っていかないという中で、地下鉄を再生するべきだという真剣な検討がなされているわけです。  それから、アメリカの鉄道事業の再生の問題で大変有効な方法として出てきているのは、交通網と通信事業とをミックスさせて、駅がその都市の中心の総合センターとしての役割を果たしていく。例えばボストンの駅の総合開発などがなされていくわけですが、その点から見ますと、国鉄分割民営化の問題について、旅客鉄道会社分割問題が議論されていますが、私は、国鉄の持っている経済性ということを考えますと、通信事業、それから旅客鉄道事業、それから土地事業、貨物事業、そういう機能分割ということをしていくことは、結局国鉄の将来性をみずから道を閉ざすことにもなっていくのではないだろうか。それは、この国の経済の発展という立場から見ても、害をなしていくのではないだろうか。  そんな意味で、第二電電などの話もございますけれども、現在の国鉄の通信網、日本テレコムの社長がこの前言いましたが、電信事業を始めますとNTTよりも三割安で通信事業ができるということが雑誌のインタビューなどで答えられていますが、そんなことが総合的に活用されている鉄道事業の発展ということは私はあるだろうというぐあいに考えています。  地方交通線の問題についても、そのような問題として総合的に国鉄の収支を見ていけば可能だと思いますし、現に社会党の先生や公明党の先生や共産党の先生が御質問なさったというぐあいにお聞きしていますが、ことしの経常収支が巨額の黒字を出したということの問題については、私は分割民営化の大前提が崩れている問題として、国鉄企業努力にこそ今当面見守るべき可能性が現に出てきたのではないかというぐあいに考えている次第です。
  118. 石田幸四郎

    ○石田委員 もう終わりなんでございますけれども、ただ、牛久保先生のお話は、鉄道をそのまま残していく、それについてやり方はいろいろあるということでございますけれども、いわゆる公社として、鉄道がそこまで力を持ってあらゆる分野に進出することが他の民間企業との関連で許されてしかるべきであろうかという、ここに私の質問の要点があるわけでございまして、ちょっと恐れ入りですが……。
  119. 牛久保秀樹

    ○牛久保公述人 その一点だけに答えさせていただきますが、公社であることによって総合的な調和というのが図られていくのではないだろうか。私どもはある関係者の方と相談していますが、これだけの、巨象のような大企業の体質を持っているこの国鉄のものが、このまま民営という形で完全に市場原理に放置をされていくことこそ、私は、いろいろな産業との摩擦を大きくしていくという点で、公社として残しながら各産業との調和を図っていくという点をこそ検討されるべきだというぐあいに考えております。
  120. 石田幸四郎

    ○石田委員 終わります。
  121. 細田吉藏

    細田委員長 中村正雄君。
  122. 中村正雄

    中村(正雄)委員 村尾さんに最初お尋ねいたします。  村尾さんのお述べになりました意見を総合いたしますと、民営は賛成だ、しかし分割あり方について、いけない。そうして恐らくその趣旨は、本州を三つに分げるのではなくして、本州は一本でなくてはいけないのではないか。それを前提にして分割のデメリットをたくさん挙げていらっしゃると思います。したがって、お聞きいたしました理論については、それぞれ肯定できる面、たくさんあると思います。  しかし、本州を三つに分けることによってのメリットもあると思いますが、それは別にいたしまして、先生のおっしゃいました意見範囲内で私、一つだけ疑問点がありますのは、北海道、四国、九州はそれぞれ別会社にする、本州を一つの会社にする、こういうことでございますが、確かに北海道と四国は別会社も考えられますけれども、本州を一本にしなくてはいけないのであれば、なぜ九州だけ分離しなくてはいけないか、別会社にしなくてはいけないかということが私わからないわけなんです。  御承知のように、九州と本州ははっきりと密着しているわけなんです。島として九州はありますけれども、しかし鉄道という面で見れば、東京から鹿児島まで一本の線路でつながっているわけなんです。したがって、北海道、四国はわかりますけれども、本州一社制でなくてはいけないというのであれば、九州だけ切り離すということがなぜか私わからないので、その点だけひとつ理由をお聞かせ願いたいと思います。
  123. 村尾質

    ○村尾公述人 九州は本州と一体だということを、私、今言われまして本当にそうかなと初めて思いました。これはまさに私の研究不足であります。私は、九州がそんなに本州に密着していると思わなかったのです。私は、一般的に三島はそれぞれ地域性がある、それぞれダイヤを組むのにも北海道、四国をやれば都合いいのができるだろうと思いまして、何となく九州も同じだと思ったから言ったまででありまして、もし九州のことを正確に調べますと本州と一体性が強いということでしたら、私は、九州は本州と一体として、三島だけ分離という意見に変更してもいいですが、きょうは何とも申し上げられません。
  124. 中村正雄

    中村(正雄)委員 次に、竹内さんにひとつお尋ねしたいと思いますが、お述べになりました意見は、旅客会社中心にしての分割ということが中心になっておると思います。旅客会社は、御承知のように六つの会社に分けるわけですからそのとおりでございますが、貨物会社全国一社制でございます。したがって、これについてどういうふうにお考えになっておるか、御意見を承りたいと思います。
  125. 竹内宏

    ○竹内公述人 私は、貨物会社全国一定でうまくいくのかなという、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、そのような感じも持たないわけではございません。貨物の集荷というのは非常に地場に結びついて、そうしてそこに居座って一生懸命集めないと集荷ができないというようなことでございましょうし、それから配達もまさに地場と結びついていなければ配達ができにくいというようなことであります。そういうことになりますと、この新しい貨物会社は、よく言われておりますように、石油であるとかセメントであるとかコンテナであるとか、そういうものの長距離輸送が中心になるというお考えかな、それももっともな考え方だとは思います。  ただそれには、コンテナを走らせるためには、例えば船と直結させるとかさらに追加的な設備投資が必要だというような感じがするわけであります。ですから、貨物会社が特に甚だ経営が難しいし、それから事によったら追加的な設備投資が要るかもしれない、そのときには赤字体質でありながら追加的な設備投資をするということについて、若干世論の問題といいますか、があるかなという感じがいたします。それはむしろ、私企業になったら責任は一挙にそこにかかりますので、それから先は余り心配しなくてもいいのかなという感じもいたしますけれども、一部に危惧は残っております。
  126. 中村正雄

    中村(正雄)委員 牛久保さんに一点だけお尋ねいたしますが、牛久保さんのお述べになりましたそれぞれの意見は、結論的に言いますると、今の改革案は資産状態等検討されておらない。言いかえれば、改革案をつくるまでの道順が間違っておるから今の改革案は練り直せ、こういう結論的なように聞こえたわけでございます。これも確かに一つの理論だろうと思います。そうしますると、重複するかもわかりませんが、今の国鉄改革しなければいけないということについては御異論はないと思います。したがって、ではどのように改革すべきか。言いかえれば、今の制度そのままで、公述の中に人の数も三十八万幾ら要る、こう言われております、これは現在の人員よりも多いわけでございますが。したがって、今の機構で、そうして人はもう少しふやさなくてはいけない、こういうふうにお考えかどうか、その点だけお聞きしたいと思います。
  127. 牛久保秀樹

    ○牛久保公述人 手順が間違っているということと、結論も間違っているというぐあいに考えています。最終的な案について言いますと、結局今、先ほど経常収支の数字も見せて、三千億円という黒字になっているということを申しましたが、国鉄で言われている財政問題というのは、いわゆる資本経費と、それからこの間の希望退職などで出てきている異常な特定人件費、この二つに問題点が集中しているわけでありますから、これは経営形態を、いかなる問題をとろうと、それとは相対的、独自に解決をしなければならない問題なのである、そこのところを私は解決をすべきであるというぐあいに考えている次第です。  経営形態の問題について言いますと、民営という言葉については大変おかしい。今政府案の出している民営というのは、民営ではなくて、中曽根首相も述べていますが、民有でございまして、今まで国有であった、国民の共同財産と私は言っていますが、それが民間資本のものになってしまうという、このことが果たして認められるかどうなのかという点を含めて、いかなる国民の大きな資産が民有になるのかという、これは国民に判断を提供するために詳細なデータが公開されるべきだというぐあいに考えている次第です。  それから人員については、再建監理委員会の答申が、私鉄並みの生産性であるならば余剰人員だというぐあいにおっしゃっているものですから、私鉄並みの基準という目で見るならば、人件費比率で大手私鉄よりも既に下がっておるということ、それから私鉄並みというレールの長さで見るならば、三十何万という数字にもなってしまうものであるという点で、私は再建監理委員会が言っております回帰式の数式なるものをずっと検討してみたのですが、どうしても納得いかないのですね。  そういう点で、国鉄にしかるべき人員は一体何人なのか。例えば小さな問題ですが、ホームに駅員さんがきちんと配置をされているならば、それは何人なのか。上野の保線区というところに、私は現場に入りましたが、この一年間で二百六十名いた職員の方が百名も減らされて、毎日線路が巡回できなくなってしまっている、これが適切なのか適切でないのか。まさに安全のために一つ一つ積み上げ方式で人員を検討せずして、単純に私鉄並みという回帰方式は、私は国民の負託にたえる方策ではないというぐあいに考えている次第です。  以上です。
  128. 中村正雄

    中村(正雄)委員 終わります。
  129. 細田吉藏

  130. 中島武敏

    中島(武)委員 三人の公述人の先生方、大変お忙しいところ御苦労さまでございます。  牛久保公述人に伺いたいのですけれども、国鉄民営分割のねらいの一つというのは、私は率直に申し上げて、闘う労働組合をつぶす、それからまた、活動家を首切るということにあると考えております。この分割民営化された新しい会社は、資産は引き継ぎますけれども、人員は引き継ぎませんし、また労働条件、労働協約も引き継がないわけであります。このために、二十七万の国鉄職員の全員が一たん解雇をされて、気に入る者だけ新しい会社に採用される。それからまた、このために労働条件について団体交渉する権利も失われるという実態であります。また、新しい会社の発足を目指して、先ほどから言われておりますように要員の合理化が非常に大きく進められておりますし、また、そのために人活センターも設けられて、余剰人員としての特定化が事実上進んでいる。そのことはまた安全上も問題を引き起こしているという、私はこの辺の問題というのは非常に重大な問題だと考えておるわけであります。牛久保先生にこの辺の問題についての御見解を伺いたいと思うのです。
  131. 牛久保秀樹

    ○牛久保公述人 改革法二十三条に関連してだと思いますが、新会社にその経営体が引き継がれるときに労働者も引き継がれるということは、これは余りにも当然過ぎることであり、労働法諸法の根本原則の一つであります。ですから、協約や協定も引き継がれますし、現に電電、たばこの民営化の場合には、当然のこととして行われました。  私は、民間の労働関係の事件も現に担当しておりますが、財産などを全部新しい企業に引き継ぎながら労働者を引き継がないという事態については、数多くの労働裁判例などで、法人格否認の法理という、別な法人をつくり上げることによって労働者を解雇するというのは法人格の乱用であるということで、雇用を継続させるべきだという判決、判例、法理ができ上がっている次第です。例えば、いろいろな事例がありますが、ある新聞社で、Aタイムスという名前だった会社解散してAタイムズという会社にしたわけですが、これは当然同一会社であるということで雇用は引き継ぐことになったわけです。そういう点で、この憲法、労働法規のもとにおいて、国会がこのような憲法、労働法の原則を踏みにじるような事態については、私は厳として戒めるべきだというぐあいに考えています。  ところが、このことにつきまして葛西国鉄職員局次長は、まさにこのことが新しい画期的なシステムだというぐあいに述べられているわけです。その際に、国鉄の場合には、彼の言葉で言いますと、甘い協約、協定があるから、それを引き継がないことにメリットがあるんだというぐあいに述べていますが、協約、協定が甘いか辛いかということについて言うならば、使用者と労働者側において立場意見が異なる、だから団体交渉が行われるべき性格のものです。私は、協約、協定が現在の職場の条件に適応されるか適応されないかという問題については、このような新法人をつくることによって切り捨てるなどという、労働法の原則を踏みにじることではなくて、適切な団体交渉で労使が協議を尽くすべきものである。それが憲法の言う団体交渉権を規定した精神であるというぐあいに考えている次第です。  あわせて、採用問題について、国鉄改革法二十三条は三重のチェックを行おうとしています。働く意思があるかどうか、名簿に載るかどうか、そして新会社が採用するかどうか。これは私ども、この間の国鉄労働組合、全動労という労働組合に対する不当労働行為の数々を見てきているときに、国会でいかなる答弁がなされようとも、実際に現場においては労働組合差別、思想差別のチェックがなされるということは必至の事実だというぐあいに考えています。そのような可能性を残す法案についても、私は、不当労働行為を禁止しているという国家の今の法秩序の立場から、撤回をすべきだというぐあいに考えています。  安全問題について先ほども述べましたが、人減らしの結果、安全を十分守るような体制になってきていないということを十分注視していただきたいというぐあいに考えています。  あわせて、国鉄労働者の自殺が今や社会問題になってきています。一人の自殺者が出るときに、その周りには十名の予備軍があるというぐあいに言われていますが、乗客の命を預かる公共交通の場において、このような異常事態については早急に解決をすること、これが私は今何よりも必要だというぐあいに考えています。  人材活用センターの問題について言えば、私は、国家的な不当労働行為だということにあわせて、実際に人材活用センターの現場を回ってきて、この国の民主主義のあり方にかかわる問題だというぐあいに思っています。例えば松戸の電車区で言いますと、ブロック塀の倉庫に、危険という電気整流器が置かれている倉庫が突然人材活用センターになったために、労働者はその中で、夕方の四時半で四十五度という温度の中にはうり込まれているわけですね。このような収容所は、憲法の言う個人の尊厳の尊重に反する事態として、不当な強制、強要を行う事態として直ちに撤回すべき問題である。こういうことを放置したまま、公共の交通が残ると、国鉄分割民営化は安全を尊重するものだと言われていても、私は具体的な事実でそうではないということを今証明しているのではないかというぐあいに考えています。
  132. 中島武敏

    中島(武)委員 牛久保公述人に伺います。  人材活用センターについてのお話がありましたけれども、これのねらいについて、牛久保さんはどういうふうに考えていらっしゃるか、いろいろあちこちを回ってきて感じられているところを率直にお聞きしたいと思います。
  133. 牛久保秀樹

    ○牛久保公述人 人材活用センターに置かれている人たちの労働組合の所属とその労働組合の活動の経歴などを国会で具体的に御調査いただければ、たちどころに判明すると思います。国鉄の労働組合、全動労の労働組合の職場の活動の中心的な部分を担った人たちが、一斉に人材活用センターに置かれています。私は、これは二重の意味で不当労働行為だというぐあいに思っています。  一つは、積極的な組合活動家に対する差別であると同時に、残された組合員の皆さん方は団結の中心軸が失われていくという意味で、労働組合に対する支配、介入の不当労働行為に当たるというぐあいに考えています。  あわせて、労働者について、仕事をする中で自分の生きがいと能力を開発していくという意味で、仕事を奪い、そして本来の熟練労働者に何の合理性もないままチューインガムをはがすようなことをさせ、さらに私も現場を見てまいりましたが、九州のある人材活用センターでは四十過ぎの労働者の方にパソコンの操作を今教えているわけですが、この人たちについて言えば、これまでの熟練労働を生かして国民の公共サービスに励むこと、このことこそが彼の生きがいではないだろうかという点で、私は、人間の本来の勤労精神、そういうものにも反する事態が起きてきているというぐあいに思っております。
  134. 中島武敏

    中島(武)委員 最初の話にもあったのですけれども、余剰人員の問題ですね。これはもう本当に嫌な言葉なんですけれども、そういうものはないという見地に立っておられるわけですけれども、この根拠についてどういうふうに考えていらっしゃるかということについて伺いたいと思います。
  135. 牛久保秀樹

    ○牛久保公述人 私は、具体的な数字の調査、そして積み上げについては、国鉄当局が国会の指示に基づいて全面的に行うべきだというぐあいに思っております。そして、実際に余剰人員がいるかどうかという問題について言いますと、私は数多くの労働事件の現場を見てきて、職場が空、ポカ、やみだとか、さらに余剰だとかということになると、必ず職場の規律が荒れ、そしてその結果が実際の職務に影響し始めてきていることを見てまいりました。そのような体験から見てきて、日本国鉄が世界の国鉄にない正確なダイヤで安全な国鉄として進行しているということは、国鉄労働者が自覚的な規律に基づいてこの国鉄を支えている、そのことは、私は余剰人員がないということを示す大変大事な間接事実の一つではないかというぐあいに考えています。  具体的な数字について言いますと、きょうお示しした各種私鉄との比較を見ますと、私鉄に比べて国鉄労働者は多いという結論は、きょうの資料から見ても、いずれも決して出てきません。それならば、回帰方式なるものは、いかなる根拠でその回帰方式の数式が得られたのか、そのことの論証が得られない限り、私は余剰人員という結論は出し得ないだろうというぐあいに考えています。
  136. 中島武敏

    中島(武)委員 最後に一つ伺いたいのですけれども、人活センターに大変多くの熟練労働者をほうり込むということのために、安全上の問題もいろいろ起きてきているように思うのですね。さっきも一部お話があったかと思いますが、この問題について最後にお伺いをいたしたいと思います。
  137. 牛久保秀樹

    ○牛久保公述人 今、人材活用センターの問題は、国鉄の安全に一般的な影響があるというだけではなくて、具体的に運行に障害が起き始めてきているという事態だと私たちは考えています。  例えば、中央線の国電の熟練運転士の方が、労働組合の役員というだけの理由で人材活用センターに送られたということを聞いています。その結果、北海道の運転を経験された方が東京の総武線や中央線の運転をしている。四十幾つの方が、この東京の数分に一本という過密ダイヤを運転し、ホームにいっぱいの人が立っているという中で、例えば高円寺の駅などに入るときには、思わずブレーキをかけてしまう。そのために総武線や中央線がおくれたり、停止位置を誤るという事態が続いてきて、私どもの調査では、例えば総武線について言いますと、広域異動の運転士は三人続けて電車の運転はさせない。そうしないと大変なおくれが生じて困るということが現場で言われています。それから、北海道から運転士で来られた方たちが、東京のこの過密ダイヤのもとでは自信が持てないということで、既に退職された方も出ているというぐあいに聞いています。  このようなことを見てくるときに、今のこの民主主義破壊の人材活用センター、そして職場で安心して働けない、自殺者まで出てくる職場になってきているときに、私はホテル・ニュージャパンの事件も担当いたしましたし、日本航空の現場にも出かけてまいりましたが、このような職場に民主主義がないという事態は、どこかホテル・ニュージャパンの大火災の惨事と日本航空の事故と結びついている事態を招来するのではないか。そのことについて真剣に特別委員会が調査をし、検討されることを心から要望したいと思いますし、大きな事故が起きてからでは遅いのだということを、私はホテル・ニュージャパンの現場の惨事を見てつくづくと考えております。
  138. 中島武敏

    中島(武)委員 時間です。
  139. 細田吉藏

    細田委員長 これにて本日の公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人の皆様には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  明十七日午前十時より公聴会を開催することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時五十八分散会