運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1986-10-21 第107回国会 衆議院 日本国有鉄道改革に関する特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十月二十一日(火曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 細田 吉蔵君   理事 小此木彦三郎君 理事 小里 貞利君    理事 佐藤 守良君 理事 三塚  博君    理事 山下 徳夫君 理事 井上 普方君    理事 嶋崎  譲君 理事 西中  清君    理事 河村  勝君       甘利  明君    粟屋 敏信君       臼井日出男君    江口 一雄君       遠藤 武彦君    小川  元君       小沢 辰男君    大島 理森君       大野 功統君    片岡 清一君       金子 一義君    亀井 静香君       亀井 善之君    北村 直人君       久間 章生君    古賀  誠君       古賀 正浩君    佐藤 敬夫君       斉藤斗志二君    桜井  新君       杉浦 正健君    鈴木 宗男君       関谷 勝嗣君    田中 直紀君       津島 雄二君    渡海紀三朗君       虎島 和夫君    中島  衛君       中村正三郎君    野中 広務君       野呂田芳成君    長谷川 峻君       鳩山由紀夫君    原田  憲君       二田 孝治君    前田 武志君       増岡 博之君    町村 信孝君       松田 九郎君    村上誠一郎君       持永 和見君    森田  一君       山村新治郎君    上田 卓三君       小林 恒人君    関山 信之君       戸田 菊雄君    村山 富市君       山下洲夫君    吉原 米治君       浅井 美幸君    石田幸四郎君       遠藤 和良君    大橋 敏雄君       柴田  弘君    阿部 昭吾君       中島 武敏君    東中 光雄君       村上  弘君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         厚 生 大 臣 斎藤 十朗君         運 輸 大 臣 橋本龍太郎君         郵 政 大 臣 唐沢俊二郎君         労 働 大 臣 平井 卓志君         建 設 大 臣 天野 光晴君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     葉梨 信行君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 綿貫 民輔君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      近藤 鉄雄君  出席政府委員         内閣審議官   中島 眞二君         内閣法制局第四         部長      大出 峻郎君         日本国有鉄道再         建監理委員会事         務局次長    吉田 耕三君         警察庁警備局長 三島健二郎君         総務庁人事局次         長         兼内閣審議官  田中  史君         経済企画庁調整         局審議官    田中  努君         経済企画庁総合         計画局長    及川 昭伍君         国土庁土地局長 田村 嘉朗君         大蔵省主計局次         長       角谷 正彦君         大蔵省主計局次         長       斎藤 次郎君         大蔵省理財局次         長       入江 敏行君         大蔵省理財局た         ばこ塩事業審議         官       頼松 祥典君         厚生大臣官房審         議官         兼内閣審議官  佐々木喜之君         中小企業庁指導         部長      長瀬 要石君         運輸政務次官  柿澤 弘治君         運輸大臣官房長 服部 経治君         運輸大臣官房審         議官      井山 嗣夫君         運輸大臣官房国         有鉄道再建総括         審議官     林  淳司君         運輸大臣官房国         有鉄道部長   丹羽  晟君         運輸省運輸政策         局長      棚橋  泰君         運輸省地域交通         局長      熊代  健君         運輸省貨物流通         局長      松村 義弘君         郵政省電気通信         局長      奥山 雄材君         労働大臣官房長 岡部 晃三君         労働大臣官房審         議官      佐藤 仁彦君         労働省労政局長 小粥 義朗君         労働省労働基準         局長      平賀 俊行君         労働省職業安定         局長      白井晋太郎君         建設省建設経済         局長      牧野  徹君         建設省都市局長 北村廣太郎君         自治大臣官房審         議官      渡辺  功君         自治省税務局長 津田  正君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       杉浦 喬也君         日本国有鉄道常         務理事     岡田  宏君         日本国有鉄道常         務理事     須田  寛君         日本国有鉄道常         務理事     長谷川 忍君         日本国有鉄道常         務理事     山田  度君         地方行政委員会         調査室長    島村 幸雄君         運輸委員会調査         室長      荻生 敬一君     ───────────── 委員の異動 十月二十一日  辞任         補欠選任   臼井日出男君     村上誠一郎君   小沢 辰男君     田中 直紀君   亀井 静香君     平沼 赳夫君   久間 章生君     虎島 和夫君   古賀  誠君     持永 和見君   桜井  新君     斉藤斗志二君   鈴木 宗男君     鳩山由紀夫君   中島  衛君     前田 武志君   中村正三郎君     町村 信孝君   若林 正俊君     佐藤 敬夫君   小林 恒人君     吉原 米治君   工藤  晃君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   佐藤 敬夫君     若林 正俊君   斉藤斗志二君     江口 一雄君   田中 直紀君     北村 直人君   虎島 和夫君     久間 章生君   鳩山由紀夫君     鈴木 宗男君   平沼 赴夫君     遠藤 武彦君   前田 武志君     古賀 正浩君   町村 信孝君     中村正三郎君   村上誠一郎君     粟屋 敏信君   持永 和見君     小川  元君   吉原 米治君     小林 恒人君   東中 光雄君     工藤  晃君 同日  辞任         補欠選任   粟屋 敏信君     金子 一義君   江口 一雄君     杉浦 正健君   遠藤 武彦君     渡海紀三朗君   小川  元君     二田 孝治君   北村 直人君     小沢 辰男君   古賀 正浩君     大野 功統君 同日  辞任         補欠選任   大野 功統君     中島  衛君   金子 一義君     臼井日出男君   杉浦 正健君     桜井  新君   渡海紀三朗君     亀井 静香君   二田 孝治君     古賀  誠君     ───────────── 本日の会議に付した案件  日本国有鉄道改革法案内閣提出第一号)  旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律案内閣提出第二号)  新幹線鉄道保有機構法案内閣提出第三号)  日本国有鉄道清算事業団法案内閣提出第四号)  日本国有鉄道退職希望職員及び日本国有鉄道清算事業団職員の再就職促進に関する特別措置法案内閣提出第五号)  鉄道事業法案内閣提出第六号)  日本国有鉄道改革法等施行法案内閣提出第七号)  地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第八号)  日本鉄道株式会社法案伊藤茂君外八名提出衆法第一号)  日本国有鉄道解散及び特定長期債務処理に関する法律案伊藤茂君外八名提出衆法第二号)  日本鉄道株式会社退職希望職員等雇用対策特別措置法案伊藤茂君外八名提出衆法第三号)      ────◇─────
  2. 細田吉藏

  3. 井上普方

    井上(普)委員 私は、この国鉄問題を考えますと心が千々にちぎれまして、きょうの質問もあるいはあっちこっち飛ぶかもしれませんが、お許し願いたいと思います。  まず第一番に、監理委員会要員算定につきまして、私鉄の六十一社の要員数、これをもとにいたしまして適正要員算定した。その際に、算定基準の様式といたしまして、回帰式という統計上のやり方をやっておる。ところが、このことにつきまして、十月の四日に経済統計学会というのが東京で行われました。その際に、統計学者の菊地という先生から、この監理委員会統計のとり方が間違っておる、こういう指摘があって大論議になったと私は承っておるのでございますが、この点御存じでございますか。
  4. 林淳司

    林政府委員 ただいまの先生の御指摘の点については、私はちょっと現在存じておりません。
  5. 井上普方

    井上(普)委員 少なくとも公の経済統計学会の席上におきまして、私鉄六十一社の基準算定方式が間違っておるということを指摘せられておるのであります。したがって、このことにつきましては、当然監理委員会からも反論があってしかるべきだと私は思う。しかしながら、このように学会上、学問上、統計が違ってきている。すなわち、六十一社の実人員、五十七年当時の人数が五万四千七百十一人であるにもかかわらず、五万二百九人と計算されてしまいまして、四千五百二人少なくなって、これが基礎になって回帰式要員国鉄要員も決められておるというのであります。これでまいりますと、どういたしましても国鉄要員というものが今までの十八万六千から二十四万近くになるのであります。こういう点につきまして監理委員会としてはどういうお考えでおられますか。この点を指摘せられておるのでありますが、どういうふうにお考えになりますか。
  6. 吉田耕三

    吉田(耕)政府委員 国鉄再建監理委員会事務局でございます。  ただいまの先生の御指摘は、私鉄実態実績値合計が五万四千七百十一人であるにもかかわらず、当方でやりました回帰式による理論値合計が五万人ということで、四千五百人ぐらい少ないではないかということでございますが、まず第一に、私鉄実態を見ますと、例えば駅での乗降人員とかあるいは列車キロなどなどの輸送量を反映いたしました指標が仮に倍になったといたしましても、職員数が当然に直線的に倍になるという関係にはございません。つまり、グラフにかけば匂配が徐々に緩くなっていくという曲線になるわけでございます。すなわち、スケールメリットが働いているというのが実態でございます。  一般に、この種の直線でない、非線形の対数回帰分析に際しましては、理論値合計実績値合計を下回る場合もあれば上回る場合もあるということでございまして、理論的に必ずしも一致するわけではございません。直線回帰でありますと、必ず理論的に実態理論値が一致いたします。しかし、対数回帰分析につきましては、上回る場合もあれば下回る場合もあるということでございます。
  7. 井上普方

    井上(普)委員 今初めてそんなことを言っておりますけれども、あなたの言う回帰式対数回帰式によりまして計算したところによりますと、誤差は九%も出ておるのです。統計学上、九%の誤差というのは考えられない。意識的にこれを少なくした数字であると言わざるを得ない。私も一応統計学というものをちょっとかじったことがある。しかし、誤差が九%というのは、いかに対数回帰式でやったにいたしましても誤差が大き過ぎる。ともかく、こんなざっとした統計国鉄要員の数を算定しておるところに大きな問題があると私は指摘せざるを得ない。しかも学会におきましてそういうことが堂々と論議せられておる現状であります。この点につきましてどういうようにお考えになるのか、亀井さんお見えになっておらないから、事務当局からもう少し御答弁をいただきたいと思います。
  8. 吉田耕三

    吉田(耕)政府委員 私ども回帰式計算した要員数でございますが、その場合に対象といたしました個々の私鉄について見ますと、六十一社の実績値のうち、先ほど来申し上げておりますようにグラフが寝ておりまして、規模の大きい順に私鉄をとっていきまして、約二千八百人以上の規模の六社だけで、先生が御指摘のような理論値合計値との差、これが既に四千人弱の差が出ております。  私鉄実態が非常にばらついておりまして、特に大きい六社のあたりで実績値がばらついております。先ほど先生が申し述べられました理論値実績値の差が四千五百人あるといううち、約四千人弱は上の方の六社で既に差が出てしまっております。したがいまして、残りの、より規模の小さい五十五社につきましては、理論値合計実績値合計との差はおおむね一致しているという状態に式の上でなっております。  今回、この回帰式を用いて算出いたしました国鉄在来線につきましては、全国を約五百弱の経済計算単位に分割して算出いたしておりますので、国鉄在来線の場合、理論値が二千八百人以上の経済計算単位はわずかに二つにすぎません。つまり、残りのほとんどの在来線経済計算単位は二千八百人以下の理論値となるものであります。したがいまして、こういう回帰式を用いましても、新会社全体の適正要員数算定に与える影響はほぼないと考えております。
  9. 井上普方

    井上(普)委員 あなたの示された回帰式計算方法というのはこれですよ。おたくの方で出しているもの、私が言っているのは。しかしながら、意図的にこのカーブよりも低くしたカーブ計算しておるのであります。こういうようになりまして、しかも学会の問題になっている。これで計算いたしまして十八万三千人が正しいと今まで宣伝し続けてきたのが監理委員会の態度であります。このことによりまして国鉄職員は不安を感じ、悩まされておるわけでございます。  このような重大な「意見」の過ちと申しますか、あるいは私に言わせれば計算過ちでありますが、これでこの基礎ができておるということはまことに重大だと言わざるを得ないのであります。明確な御処置を政府としてはとっていただきたいと思います。いかがでございます。
  10. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、実は統計学というのは落第をいたしまして、その御議論の中を分析するだけの力を持ちません。ただ、現実問題といたしまして、現在御審議をいただいております、スタートをいたします時点国鉄の新しい姿、その会社における要員は二十一万五千であることは委員御承知のとおりでありまして、監理委員会の数値の正否を私は論ずる能力がありませんけれども、いずれにしても新会社の発足時における要員としては十分な体制スタートができると思います。
  11. 井上普方

    井上(普)委員 十八万三千人でともかくいけるんだということを監理委員会は言い、それの二割増しで、大体三万人かで体制をつくれば大丈夫だ。基礎にあるのは十八万三千人なんです。それからいきますと、これが基礎にあって要員というのは決められておるんだから、私ども計算によりますとあるいは過ちがあるかもしれません。しかしながら、二十四万人という数字が出てくるんです、回帰式でいきますと。そこに大きな食い違いが出てきている。このことはまことに重大な問題だと私は言わざるを得ないんだ。でございますので、この点につきましてはさらに御留意になっていただいて、計算し直してやっていただかなければ国民は納得しないし、従業員も納得しないと思う。この点につきましては強く要求いたしておく次第であります。  続いて、私は先日、四国公聴会に参りました。そこで、時間の制約がございますので簡単に申し上げますと、四国国鉄というものの経営が成り立つだろうか、私は不思議に思わざるを得ない。  前の通常国会予算委員会でも、私はそのことを指摘いたしました。私は、当時一つの問題といたしまして、修繕費二十八億で一体いけるんだろうかということを指摘いたしたことがございました。そのときに、少なくとも六十億ないし七十億の修繕費が要るんじゃないかと言って、これは車両の数等々から私は質問をいたしたのであります。そのときには監理委員会は、いや、あれは私鉄並みにやればそれで十分でございます、二十八億で十分でございますと言ったんだが、今度の政府計画によりましたら、私の言うとおり大体五十八億にしている。そのことについてはまことに、ともかく政府も素直になったんだなという感じはするんでございますけれども、この内容全体を見ますと、私には納得できないところがたくさんある。  一例を挙げますならば、四国人員は、今度は四千九百人にする、そしてその人件費は二百四十四億でよろしいという。人件費一人当たりにいたしましたら四百九十七万九千円。これを他の会社の例と比べますと、東海人件費従業員一人当たり五百四十一万二千円になる。一割以上違うんですよ。一体どうなってこういうような数字が出てくるのです。九州も大体四国と同じ、五百万円、人件費で。これは一体どうなっているんだと言わざるを得ないのですが、どうなんです。
  12. 林淳司

    林政府委員 ただいま先生指摘単価の違いでございますけれども、これは退職手当引当金の違いでございます。したがいまして、それを引いて残り人数で割りますと、これはほぼ同じ金額になります。
  13. 井上普方

    井上(普)委員 それは納得できない。会社同士でも同じような計算方式をやっているはずなんだ。東海会社人件費が一人当たり五百四十万円かかる、四国は五百万円足らず、九州は五百六万だ、こういうような差はなぜ出てくるんだ。今、林君、あなたが言ったのは、全国同じようにできているはずなんだ、計算方法は。なぜ差が出てくるんだ。北海道四国との間に、九州との間に差があるというのはわかる。しかし、西日本あるいは東海となぜこういうような差が出てくるんだ。この点ひとつ。
  14. 林淳司

    林政府委員 失礼をいたしました。各会社単価が違いますのは、北海道の場合は寒冷地手当、これがございます。それから本州四国九州、この水準に差がございますのは、主として都市手当の差でございます。それが単価の差になってあらわれているということでございます。
  15. 井上普方

    井上(普)委員 都市手当の差と申されますけれども、一割もあるんですか。そんなに都市手当の差がありますか。
  16. 林淳司

    林政府委員 都市手当につきましては、これは八%からいろいろあるわけでございますけれども都市によってそれぞれついたり、あるいは率が違ったりするわけでありまして、そこで平均的に見ますと、本州東日本会社あるいは西日本会社東海会社、こういうところは都市手当のつく地域が非常に多いわけでございます。したがいまして、平均的に見るとそれくらいの差がついてくるということでございます。
  17. 井上普方

    井上(普)委員 都市手当が一割もつくようなこととは私ら思えない。出発の当初から四国鉄道会社東海鉄道会社との間においては人件費一人当たり一割の差がついている。納得ができません。  林さんに聞くが、東日本は五百十八万なんだ。出発の当初において既に人件費においてこういうような差がある。こんなことが認められますか。
  18. 林淳司

    林政府委員 失礼いたしました。各会社給与水準単価計算しているわけでございますけれども、先ほど先生がおっしゃった数字は、引当金退職手当を全部込みで、それを恐らく人数でお割りになったんじゃないかと思います。私ども、それを差し引きまして……
  19. 細田吉藏

    細田委員長 御静粛に願います。
  20. 林淳司

    林政府委員 退職手当引当金を差し引きまして、それでもって計算をいたしますと、例えば四国の場合は四百六十二万三千円ということでありまして、それに対して西日本の場合は四百九十九万八千円、九州は四百四十七万七千円ということで、おっしゃるような差はつかないわけでございます。
  21. 井上普方

    井上(普)委員 何を言っているんだ。北海道は一人当たり人件費は五百四十六万、東日本は五百十八万、先ほども東京四国と一緒にいくかと言ったけれども、この差はわずかに二十万円だ。ところが、東海だけは一人当たり五百四十一万なんだ。  それじゃ聞くが、東日本東海と、どうして一人当たり人件費がこんなに違うのです。まことにずさんな計画と言わざるを得ぬじゃないですか。
  22. 林淳司

    林政府委員 それでは、私どもの方の計算退職手当引当金を差し引いたいわゆるネットの人件費でもって計算をしてみますと、六十二年度、北海道が五百四万三千円でございます。それから東日本が四百九十六万三千円、東海が五百十万四千円、西日本が四百九十九万八千円、四国が四百六十二万三千円、九州が四百七十七万七千円でございます。これは引当金とあれを引いたものでございます。  そこで、この違いは、先ほど申しましたように、北海道水準が高いのは、寒冷地手当水準が非常に高いということでございます。それから、本州会社四国九州給与水準の差、これは先ほど申しましたように、主として都市手当の差でございます。ただ、会社によってかなり年齢構成が違います。その年齢構成の違いもこれには反映しておるということであります。
  23. 井上普方

    井上(普)委員 年齢構成で逃げる。しかしながら、全国的に見ますと二十三万という。これこそ統計学的にいうと余り差はなくなってくるはずなんです。  今もおっしゃいましたが、四国は四百六十何万とおっしゃいましたな。それでも四十万円差があるのですよ、ほかの地域と。出発の当初においてなぜこういうように差があるんだということを私は聞いているんだ。少なくとも同じ水準でなければならないのに、人件費がこれだけ各会社によって違ってくるのはどういうわけだ。
  24. 細田吉藏

    細田委員長 御静粛に願います。
  25. 山田度

    山田説明員 人件費単価の問題でございますけれども、六十二年の単価といたしましてベースにいたしましたのは六十一年四月一日の時点でございます。これをベア前、地域別並びに年齢階層別年齢別の要素を織り込みまして、要するに実績がございますね、六十一年四月当初における実績というものをまず置きます。それをもとにいたしまして、六十一年度及び六十二年度は、全国一律のベアをしておりますのでそれぞれ二・〇二%、三%というものを想定いたしまして単価を設定しております。  それにさらに基準外賃金、退職手当等々を想定するわけでございますけれども、では、なぜ現実に差が出てくるのかという問題がございます。現実に既にそういう単価の差が地域的にございます。それは主に年齢別の構成の現実の問題、それから都市手当の問題、まあ一人当たり大体十万円ぐらいだと思われますけれども、そういう差が既にございます。  さらに将来につきまして年齢をそれぞれ想定しておりますけれども、例えば御指摘四国の場合、どのような年齢構成を想定するかといいますと、これはそれぞれの、六十一年度末から六十二年度首にかけての年齢別人員を想定いたしますが、その場合に、四国はトータル、旅客会社四千九百人に対しまして二十九歳以下の方がおおむね二五、六%と、非常に若い方が多いわけですね。これはもちろん広域、異動、希望退職あるいは現実の退職の発生率等によりまして、六十一年度からはまた変わった姿が出てまいりますけれども、若い方が割合多い。  東海が非常に単価が高いではないかというお話がございましたけれども東海の現実の年齢構成を反映いたしまして、東海旅客会社約二万五千人の中で四十歳代が一万二千人というふうに、まあ四割、四五%ぐらいを占める。したがいまして、そういう意味で年齢構成単価が高くなる。また都市手当も高いというようなことを反映いたしまして、そういう各地域別のアンバランスが出てくるわけでございますけれども、これらは各地域の実情を反映したということでございまして、当初から格差をつけるためにそういう単価差を想定したものではないということでございます。
  26. 井上普方

    井上(普)委員 今のお話は、私は納得できない。答弁も、最初は都市手当と言い、都市手当でないということを指摘すると年齢に変わってくる。しかも年齢につきましては、全国一律に国鉄というものは人員整理も行ってきたはずなんです。少なくとも全国的に一律に、ともかく希望退職を募って今まで人員整理をやってきたはずなんだ。これが今全国で大体一律の年齢構成になっておるというのが今の国鉄の姿でなければならないと私は思う。にもかかわらず、こういうように四国九州とが極端に低い。これは予算ですよ。こういう形になっている。  いよいよ来年から、四月一日に発足させようというときに、一人当たり人件費がこのように違うということは、我々は納得できない。多少の差であったらいいが、一割以上だ。一人当たり一割以上の差がある。これをどう考えるか。私はこの点は納得できない。しかし、時間の関係がございますので、次に移ります。  今一つ思い出したので申し上げるんだが、この十一月にダイヤ改正というのが行われますな。この十一月のダイヤ改正というのは、来年の分割・民営に備えてそれを引き継ぐものだと考えて差し支えございませんか。どうです。
  27. 須田寛

    ○須田説明員 現在御審議をちょうだいいたしております法案が成立をいたしました場合には、結果的にはそういうことに相なる、かように存じます。
  28. 井上普方

    井上(普)委員 そこで、私、この間高松の公聴会に参りました。そうしますと、こういうことを言うのですね。  今度の十一月のダイヤ改正によりまして、予讃線においては急行がえらい減りました。特急がえらいふえまして急行が減ったのであります。特急がどれくらいふえたかといいますと、今まで三本程度であったのが、えらいふえてまいりました。しかし、今度は急行が少なくなった。少なくなった分だけ特急がふえている。いいなとお考えになる。ところが、停車駅は、前の急行の停車駅と同じところで特急がとまるのです。スピードアップされておるかと思ったら、スピードアップもされてない。どうしたのだ、こういうことはと思って見ましたところが、急行料金が特急料金に変わっただけ、こういうようなことが行われておるのですが、この点、御存じですか。
  29. 須田寛

    ○須田説明員 御指摘がございましたように、今回予讃線におきましては、特急が、現在四本ございましたものが十三本ということになっておりまして、逆に急行が十二本から五本に減っております。しかし、全体といたしましては二本増発になっておるわけでございますが、先生指摘のように、確かに特急がふえたことは事実でございます。ただ、今回、特急用の車両を、三十八両でございますけれども、最新型の車を投入いたしましたことと、従来の車につきましても内装をいろいろ改善いたしまして、かなりな程度サービスアップをさせていただいたつもりでございます。  したがいまして、停車駅につきましても、今先生から御指摘がございましたように、確かに、現在の急行列車を御利用いただいておりました方に御利用いただきますために、停車駅は急行停車駅にとめておりますけれども、列車ごとにいろいろパターンを工夫いたしまして、一つの列車が停車駅が非常にふえてくるというふうなことがないように、列車がたくさんございますものですから、バランスをとったつもりでございます。しかし、やはりいろいろな意味で、そういったいい車両が入るということと、いい時間帯の列車も走るということを総合的に考えまして、特急料金をちょうだいしてもよろしいのではないか、このように考えまして踏み切った次第でございます。
  30. 細田吉藏

    細田委員長 御静粛に願います。
  31. 井上普方

    井上(普)委員 今まで急行であったものが特急に上がっておる。停車駅も同じ。スピードアップもされてない。名前が特急に変わっただけ。そして車両がよくなったといったって当たり前の話。四国の車両というのは、耐用年数を過ぎたのが大体六割あるんだ。それをことし七十両、新しく予算措置したことは知っておる。  しかし、どうです。東海道でも新幹線でも、車両が新しくなったからといって急行料金を上げますか。高崎線もそうだ。新しい車を入れたからといって、車両が多くなったからといって特急料金を上げますか。どういうことなんだ、これは。総裁、どうなんです。
  32. 杉浦喬也

    杉浦説明員 地元のいろんな御要望の中に、急行を特急化しろというような御要望も非常に各地にございます。急行、特急の違いは、やはりスピードとか、あるいは列車の車両のアコモデーションなり車両の新製、年齢といいますか車齢等々の利便性の問題から格付をしているわけでございまして、今常務が説明いたしましたように、いい車両をこれに投入するということは、それだけサービスの向上につながるということでございます。
  33. 井上普方

    井上(普)委員 国鉄総裁の答弁は、私の聞いていることに答えてない。いいですか。特急になることは結構なことだ。それには、停車駅も少なくなるし、特急というのだから時間短縮も行われてしかるべきだ。それは全然なし。これも全く急行と同じで、今度は特急料金だけは、今まで高松から松山まで千円であったものが二千円になる。これは恐らく四国だけじゃないと思う。九州もあるいはまた北海道も同じような現象が起こってくるのじゃないかと私は思うのです。だから私は聞いておるんだ。こういうことをやっている。  東海道で新しい車を入れたり、高崎線で新しい車を入れたら、サービス料金だといって急行を特急にしますか。国鉄総裁、どうなんです。こういうことをやられているんだ。
  34. 杉浦喬也

    杉浦説明員 やはり乗客の利便性といいますか快適性、そういうものに着目をいたしまして、今まで以上に快適度合いが増加することに着目しまして特急化を考えたということでございます。
  35. 井上普方

    井上(普)委員 そういうような答弁で納得できると思いますか。
  36. 須田寛

    ○須田説明員 一言御理解いただきたいことがございますが、今回のダイヤ改正に当たりまして、先生指摘のように、確かに特急列車がふえております。しかし、四国全体で現在四百十本しかございませんローカル列車、普通列車が五百十本にふえておりまして、その中には急行列車から快速になったものも実はあるわけでございます。この場合は料金をちょうだいしないで、むしろ速い速度の列車に乗っていただける地域もございます。したがいまして、総合的に御判断をいただきました場合に、やはり私どもはお客さまのニーズに沿ったダイヤをつくっておりますので、そういう点、総合的な御判断がいただければ大変幸いと思います。(発言する者あり)
  37. 細田吉藏

    細田委員長 井上君、井上君、質問を続行してください。今答弁があったでしょう。質問を続行してください。——さらに答弁させますか。御発言ありませんか。
  38. 井上普方

    井上(普)委員 先ほども申しましたように……
  39. 細田吉藏

    細田委員長 御静粛に願います。
  40. 井上普方

    井上(普)委員 特急というのは時間も短縮される、これが特急の姿なんです。しかし、時間は同じなんです。そしてあなた、急行から特急に格上げしただけなんです、料金と名前だけ。高松から松山までは、今まで千円の急行料金だったのを二千円にしている。民営化するためにこういうことをしているんだ。さっきの答弁でそのとおり言っているじゃありませんか。こんなことで、一体どういう態度でやるんだ。どうです。
  41. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 率直に申しまして、私も、急行が特急になるという場合には、少なくともスピードが多少は速くなるものであろうという感覚でおりました。それだけにもう少し国鉄当局と委員の御議論を拝聴したい心境です。
  42. 井上普方

    井上(普)委員 運輸大臣のお話はともかくまことに常識的だ。特急というのは時間が短縮される、これで今まで国鉄というのは全部やってきたはずだ、特急になると。時間は同じだ、停車駅も同じなんですよ。車が新しくなったといって、高崎線で新車両を入れたら料金が上がりますか。こういうようなことをやっているんだ。これは、来年の四月一日からのダイヤのための準備のダイヤ改正なんです。こんなので済みますか。どうなんだ。変えると言えばイエス、そうでなかったら審議できるか。
  43. 杉浦喬也

    杉浦説明員 今御指摘のような点は、社会常識的に言いまして、普通は急行より特急の方が速いということはごもっともでございます。場合によりまして、そうしたスピードアップということがなしに、車両の新製、アコモデーションの向上ということに着目をした料金改定もあり得るわけでございますが、先ほど常務も申し上げましたように、その地域全体のお客さんに対するサービスということにも御注目をいただきたいと思います。
  44. 井上普方

    井上(普)委員 私は納得できません。常識的にもこれは納得できない。
  45. 須田寛

    ○須田説明員 補足して御説明申し上げますが、先ほど先生から、他の線区に同じような例がないかという御質問がございました。実は高崎線で新特急というのがございますが、これは急行列車を格上げいたしまして、速度は余り変わりませんけれども、いい車が入ったということで特急料金をちょうだいしたケースもございますし、各線にこういうケースはたくさんあるわけでございます。それは、さっき総裁が申し上げましたように、やはり地域の皆様方はよりいい列車で、そして特急サービスというものを御期待になっておりますものですから、各地域にたくさん例がございます。  それから、今回の場合は、高松—松山間で現在一番速い列車は二時間五十分でございますけれども、これが二時間四十六分ということで、非常に速くなった列車もございますし、全体として特急と急行の速度をごらんいただきました場合にはスピードアップになっております。ただ、個々の列車のある区間をとってみました場合に先生の御指摘のような例がある、こういうことでございますので、総合的な立場で御判断いただきたいということを重ねてお願い申し上げます。  それから快速につきましても、高松その他の都市周辺ではございますけれども、相当程度の増発をいたしております。さっき申し上げましたように、ローカルだけで百本ふえているわけでございますので、そういうものもうまくお使い分けいただければ、全体として最適のダイヤができている、私どもはこのように確信をしてやっておるわけでございますので、ぜひとも総合的な御判断を賜りたいと思います。
  46. 井上普方

    井上(普)委員 この問題は、私は今の答弁では納得できません。これは見解の相違だというものではない。常識的な問題だ。したがいまして、この問題についてはひとつ理事会でお取り計らいを願いたいと思うのです。同時に、全国においてもこういう例が、少なくとも三島においては行われているんじゃないだろうかと思いますので、これらの資料をひとつお出し願うように委員長に御善処願いたいと思います。
  47. 細田吉藏

    細田委員長 理事会において善処をいたしたいと存じます。  質疑を続けてください。
  48. 井上普方

    井上(普)委員 大分時間がたってまいりましたが、まだまだたくさん問題は四国の場合にはあるんでございます。九州もそのとおりです。この経営見通しを見てみますと、なぜこういうように減したんだろうかというような問題がたくさんございますが、とりあえず違う問題につきまして質問を続行いたしたいと思います。  国鉄の赤字償却のためには一体どうすればいいかということで今非常に問題になっておりますが、これは遊休土地の売却によって処理しようという考え方で、大体政府も思っておりますし、ある程度それでやらざるを得ないなというのが国会の全体の考え方であろうと思うのであります。  そこで、橋本運輸大臣は、土地は少なくとも一般公開入札にすると言い、あるいは総理大臣は、信託制度を考えてもいいわという御意向を漏らされたやに承っております。しかしながら、考えてみますと、運輸大臣、鉄道の土地というものは強制収用法の対象になると言ったのです、線路の場合あるいは駅舎の場合は。したがいまして、人民からといいますか国民から土地を買収する際には、強制収用法を常にバックにして土地を収用してきた、買収してきたというのが実態であります。  そういうような土地であるならば、果たして一般公開入札というのは適当なものであろうか。例えて言うならば、遊休土地で膨大な土地ができた場合には、その地にあります地方自治体がこれを有効活用して将来地域発展のために尽くしたいという場合には、これを優先的に扱うべきではないかと私は思うのでございますが、どうでございます。
  49. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、国鉄の路線の敷かれた当時あるいはそれぞれの駅のつくられた当時、どういう状況でその土地が収用されたかに定かな知識は持っておりません。しかし、あるいは今委員指摘のように、国家の意思というものを背景にして用地買収が行われたというケースはあったかもしれないと思います。しかし、それぞれの時代において、その場合においても、私は適正な地価は支払われておったと思います。これが第一点であります。  同時に、仮に今の委員の御論議であるならば、その収用された土地を売却あるいは譲渡するとすれば、旧所有者に時価で返せと言われるのであれば、これは一つの理屈だと思います。しかし、第三者である地方自治体に、だから渡せというお話とは、これは直に結びつかないのじゃないでしょうか。私は、理論的には必ずしもそれが簡単に結びつくものだとは思いません。  確かに、私どもは、長期債務を償却していくために、そして最終の国民負担をできるだけ減少させるために、国鉄の三千三百三十ヘクタールに上る土地を今処分したいと考えております。その処分をする場合に一番私ども考えなければならないことは、この土地の処分というものが公正に行われているということを国民に御理解のいただける手法をとることがまず第一であります。ですから、私は実は公開入札というもので、オープンな形でこの処分をしてまいりたいと申しております。  総理からも御示唆がありましたように、理論的に信託による財源捻出という方法もあり得ることは事実であります。その可能性を否定はいたしません。しかし、今日まで借りたいというお申し越しのあったケース等々をも考えてみますと、実は元本の償還に資するだけの料金設定というのはなかなか難しいというのが実感でありました。そうした中で、私どもはこれを、資産処分審議会の手を経て、国民に疑惑を呼ばないような形で処分をしてまいりたい。  ただ、繰り返して申し上げておりますが、地方公共団体が道路等本当に国民から疑惑を招くようなものではない目的のために買収をしたいという場合に、随意契約を否定はいたしておりません。しかし、現実に地方公共団体に随意契約で払い下げられた土地が他に転用され、転売をされたケースがありますだけに、こうしたケースについても私どもは厳重にチェックはいたしたいと思っております。
  50. 井上普方

    井上(普)委員 もとの所有者に土地を戻すのが理論的だとおっしゃいますけれども、何十年もたった土地だ。理論的だとおっしゃるけれども、今のこの時代にせっかく公共用地ができておるのです。しかも国の方針としては、公共用地を拡大しろというのが歴代自民党政府の方針であったはずです。この点はいまだに変わっておらぬと思いますが、国土庁長官、どうです。
  51. 綿貫民輔

    ○綿貫国務大臣 国土の発展のために国公有地がいかなる条件で利用されるかということは極めて重要な問題でございますが、既に国公有地が地価の高騰につながらないようにというようなことを国土法でもいろいろと研究をしておるところでございますが、今回の国鉄用地の売却につきましては、国土法の地価高騰を抑制するという目的、今後新しい法律ができました場合に清算事業団その他がこれについてお考えになる目的、それぞれの目的が合致するように関係省庁とも連絡をしてやらなければならない、こういうふうに考えておるわけでございまして、国有地が国民のためにどのように有効に利用されるかということは十分考えていかなければならないと考えております。
  52. 井上普方

    井上(普)委員 御答弁になっておらないのですが、まだ国有地を多くしよう、公有地を多くしようという政府の方針が変わったとは私は承っていない。今度の国鉄資産というものを処分するに際して、単に高く売ればいいというだけの問題じゃない、地方自治体に対しましてもやはり配慮すべきである、私はこう強く考えるものであります。  そこで運輸大臣、あなたのおっしゃる一般公開入札というのは、会計法あるいは予決令で言う一般公開入札ですか、どうなんです。
  53. 林淳司

    林政府委員 いわゆる国が会計法等によりまして一般公開競争入札をする、それに準じた方法ということでございます。
  54. 井上普方

    井上(普)委員 そこで具体的にお伺いしたいのだ。これはきのうから私、国鉄の方に言ってあるのだが、長崎の駅前の土地、亀戸の土地あるいは両国の土地を去年売却していますな。これのいきさつをひとつお知らせ願いたい。どういうようになっておるか。
  55. 岡田宏

    ○岡田(宏)説明員 お答え申し上げます。  今先生からお話のございましたこの三件は、いずれも公開競争入札でございます。  長崎の土地につきましては、六十年三月二十六日に入札を行いまして、面積が四百三十二坪でございますが、長崎水産会館が落札をいたしまして、当該落札者と契約を締結いたしております。  亀戸の用地につきましては、六十年十二月二十四日に入札を行いまして、面積が百十七坪でございますが、相和工業株式会社が落札をいたしまして、同社と契約を締結いたしております。  両国の用地につきましては、六十年十二月二十四日に入札を行いまして、面積は四十四・三坪でございますが、大旺建設株式会社が落札をいたしまして、同社と契約を締結いたしております。
  56. 井上普方

    井上(普)委員 金額は幾らで契約しましたか。それと入札の人数はどれくらいですか。
  57. 岡田宏

    ○岡田(宏)説明員 一般的に公開競争入札で売却をしました土地の物件につきましては、その金額は今まで、従来の事例で申しますと申し上げていないというのが実例でございます。  ただ、一、二の例外はございます。例えば品川の跡地の売却とか、あるいは先般行いました九段の用地の売却とか、そういった時点ではあらかじめ、公開競争入札に御参加いただく方々に、この物件については落札者名及び落札金額について公表するということで御了解をとりまして、そういった事例については公表申し上げたことがございますけれども、一般的には申し上げていないのが今までのやり方でございました。  しかしながら、先生からお話もございまして、本特別委員会における審議の重要性にかんがみ、相手方とも了解をとりましたので値段を申し上げさせていただきます。  長崎の水産会館の土地でございますが、七億七千万円でございます。坪当たりにいたしますと百七十八万円に該当いたします。亀戸の土地でございますが、八千五百万円でございます。坪当たり七十二万五千円に相当いたします。両国の土地でございますが、四億四百万円余でございます。四億四百五十六万八千円でございます。坪当たりは九百十一万五千円でございます。  なお、入札参加者数について申し上げますと、長崎水産会館の場合は二社でございます。亀戸の土地につきましては一社でございます。両国の土地につきましては三社でございます。
  58. 井上普方

    井上(普)委員 これが公開入札。この亀戸の土地につきまして、どうですか、一社で公開入札が行われたというのは常識ですか。おらなきゃしようがないのなら随意契約すればいい、そう予決令には書いてある。会計法上にはそう書いてある。先ほど聞きますと、国鉄も公社でございますから、会計法及び予決令に準じた扱いでやっておるとおっしゃいましたが、予決令でこんなことが書いてありますか、どうなんですか。一社で入札することは構わぬのですか。これを一般公開入札というんですか。
  59. 岡田宏

    ○岡田(宏)説明員 先ほど審議官がお答えになりましたけれども国鉄の場合には会計法、予決令の適用はございません。ただ、国鉄が公開競争入札と称しておりますのは、一般競争入札の方法に準じて入札をされるということになっております。しかしながら、いずれにしましても公告をいたしまして応札者を募る。その場合に、入札者が一社であるといった場合であっても、当該公開競争入札は有効に成立すると考えております。
  60. 井上普方

    井上(普)委員 大蔵省、どうだ、予決令の解釈上そうなりますか。一社の場合には再度公告をして再入札をやるということになっておるはずだ。
  61. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 会計法につきましては、各省各庁の長の定める会計事務を管理しておりますので、国鉄については直接適用がないことは、先ほど国鉄の答弁があったとおりでございます。  ただいまお尋ねの会計法につきまして、一般競争入札につきまして一社が応札した場合でも有効に契約が成立するかという問題でございますが、これは国の場合におきましても、一般競争入札である場合におきましては有効に契約が成立する、ただ、応札者が全くないような場合には再度入札にかける、こういう扱いでございます。
  62. 井上普方

    井上(普)委員 私は今まで、一社で応札した場合には随意契約でやるのが常識だ、やっておると思っておる。そう予決令にも書いてあると私は理解しておる。  しかしながら、このたびの両国の土地及び亀戸の土地なんというのは、その土地に一週間前に柱に公告を国鉄が出しただけ。一日だけその公告を見たと言う人もおる。一日だけだったと言う人もおる。私はそんなことはないと思うけれども、一日でその公告は撤去されて入札にかかっておる。  しかも長崎の例で言いますならば、見積もりに参加した社は十社ある。ところが、十社が、何の関係か知らぬけれどもどんどんどんどん減って、長崎水産会社一社及びそれのダミー会社のごとき会社に入札されておる。これが入札した二社なんだ。駅前の立派な土地なんだ。常識では考えられない。そういうような入札方法がとられておる。長崎はどういう公告をしたか私は知りません。亀戸及び両国についてはそういうようなやり方をやられている。去年やられたんだ。これが一般公開入札と言えるか。  さらにまた、公開入札の後、一体幾らで落札したかということは他の業者にも報告するのが常識なんだ。大蔵省のやり方あるいは建設省のやり方、他の省庁のやり方というものは、落札価格については公表するのが普通であります。やらないのは運輸省だけだ、運輸省というよりは国鉄だけだ。こういうやり方をやっている。私は、どうしてもこの国鉄の入札方法につきましては不思議でならない、何かあるという考え方を捨て切るわけにまいらない。これが橋本さんが言う一般公開入札であれば、私はこういうようなことで国鉄に絶対に資産売却の入札をやらしてはならないと思うのです。どうです。
  63. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 御指摘を受けましたケースは、私も先ほど報告を受けました。そして、率直に申して、私は委員が感じられたと同じような感じを受けました。しかし、これは現在までの国鉄の行った行為でありまして、我々がこれから清算事業団で対応していこうとするときに、このようなやり方をするつもりはありません。
  64. 井上普方

    井上(普)委員 あなたも常識人だ。普通考えるとこれはおかしいと思う、こう言う。しかし、ほとんどがこういうケースでやられているんじゃないだろうか。私は不思議に思われてならないのです。  この亀戸、両国の件につきましては、実はある方から土井委員長のところに電話があったのです。それで我々はこれを調べたのです。そうすると、一社で、ともかく公開入札だという。公開入札した場合には、普通、落札価格というものは出すものだ。それを全然報告してない。こういうやり方は私はやめてもらいたいと思う。しかも膨大なる土地を今のままやられたのではたまらない。大蔵省は、麹町の土地を売った際にはすぐに落札価格というものは公表した。建設省も、落札したときには、大体土地の売却の場合には公表しておるはずなんです。これはしています。  例えば十人の方が入札したとする。そのうちのA社というのが落札したとする。ほかの九社というのは札を入れている。それじゃ、だれが私の値段よりも安かったか高かったかというのは、全部わからないじゃありませんか。わしは三百万円で入れたのだけれども、二百万円、二百五十万円で落札せられたかもわからぬということになれば、これは大変なんで、少なくとも入札した業者には、幾らで入札しましたということを発表するのが普通なんです。その入札した人に発表するということは公表と同じなんだ。これが普通じゃありませんか。これをやらないような会計処理がおかしくてしようがないから聞いているのです。
  65. 岡田宏

    ○岡田(宏)説明員 今先生から幾つかお話がございました。  まず両国、亀戸の件につきましては、入札期日の前日から起算いたしまして七日前までに現地に掲示公告をいたしております。この掲示公告については確認をいたしております。  それから、長崎水産会館の件につきましては三月十五日、二十六日入札でございますが、入札の十一日前に、西日本新聞、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、局報に掲載をいたしております。なお現地にも公示を掲出いたしております。  それから、今先生から入札者の面前で値段を言ってないというお話がございましたが、決してそのようなことはございません。応札をされました方の面前で開封をいたします。そして読み上げをいたしますので、少なくとも応札された方全員に、御自分が幾らでお値段をお入れになったか、Aさんは幾らで入れた、Bさんは幾らで入れたということについては当然その面前で申し上げております。
  66. 井上普方

    井上(普)委員 だから、それは公開したと同じで、我々に言わないのはおかしいじゃないですか。応札した者には全部公表するのだ。国民にはなぜ発表しない。それはおかしい。これはやはり入札したものは公表すべきである。一部の者にしか入札価格がわからない。一人だけだったらともかくだ。全部に知らせるべきであると私は思う。何かおかしいことがあるか。何言ってるんだ。
  67. 細田吉藏

    細田委員長 御静粛に願います。
  68. 井上普方

    井上(普)委員 少なくとも十社が入札したら、九社のほかの人には言っておるんだ。これは一般に公開するのと同じことを意味する。これをなぜ発表できないのか、私は合点がいかない。  こういうようなことは、先ほども申しましたときに、長崎については私は言わなかった。しかし、亀戸については現地に掲示した。掲示したけれども、その掲示したのは一日だったかな、二日だったかな、こう言われているのです。このようなことはしょっちゅうあるのです。こういうようなことがもし行われておるとするならば大変でございますので、あえて私は申し上げておる。ですから、運輸大臣も、これからの入札に関しましては、今までのやり方と大いに異なって、国民にガラス窓で見れるような制度をやっていただきたいということを強く要望しておきます。
  69. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、確かに、この現地の公告というやり方は、本当にたくさんの方々に物件の存在を知っていただき、そして買いたい方々の意思をできるだけ広く集めるという意味からいって、先ほど首をかしげたわけでありますが、こうした指摘を受けないような工夫は責任を持ってやりたいと思います。
  70. 井上普方

    井上(普)委員 大分時間がたってまいりましたので、私はまだまだ問題があるのでございますが、国鉄の今までのずさんさということにつきましてひとつ御説明したいと思います。  先日来、国鉄が不用品と称して土地の中に資材を隠すような事件がたくさんあった。新聞報道せられまして、それに対しまして我が党の関山委員がこれを質問いたしました。あの答弁を見てみまして、私は納得ができないのです。なぜああいうばかなことをするのかな、なぜああいうようなことをやったのかな。しかも全国同時多発的に行われている。新聞報道によると、土崎しかり、長野しかり、富山、福井、香川というように、たくさんの土地で同時多発的に行われておる。本社が関与しておるんじゃないだろうかと私は思わざるを得ないのですが、国鉄総裁、どういうお考えですか。
  71. 杉浦喬也

    杉浦説明員 資材、物品の管理につきましては、日ごろ厳正にやっておるところでございます。  御指摘のレール等のこれを隠したというような事柄につきましては、まことに残念でございますが、おっしゃるように、全体を調べてまいりますと全国で十五件程度の事実がございます。  中身をよく見ますると、やはり帳簿の記載と現品、これを照合せいということは常に指導しておるところでございますが、過去のいきさつ上、帳簿上の記載と現品の食い違いが現地で発見された。それに対しまして当方から内部監査で厳重にこれを指導に参ろうとしておるわけでございますが、それに対応しまして、現地の職員が、大変遺憾ではございますが、そうした誤りを指摘されることを恐れる余り、これを隠して、そうしたことのないような隠ぺいをしたことは確かでございます。これも非常に処理上は遺憾なことでございます。そうしたことのないように、帳簿以上のものがあっても正確に出しなさいということは今厳重に指導しておるところでございます。
  72. 井上普方

    井上(普)委員 関山君の質問のときには全国で二、三カ所と言っておった。今は十五、六カ所になっておる。金額にしてどれくらいになります。
  73. 岡田宏

    ○岡田(宏)説明員 金額は全部集計をしてございません。概算でいたしますと、全体をトータルいたしまして数十万円の規模であるというふうに考えております。大至急集計をいたします。  なお、先般、委員の御質問に対しまして、私、ほかに二カ所ぐらいということを申し上げた張本人でございます。大変調査が疎漏で、まことに申しわけございませんでした。
  74. 井上普方

    井上(普)委員 私は、実はこの問題につきまして調べてまいりました。調べてまいりますときに、その職員は、先生、こんなことが許されていいのでしょうかと言って、涙を流しながら私に報告した。しかし、先生にこのことを申したならば私は人材活用センターへほうり込まれる、こう言って、実は名前は伏せてくれということでやったんです。  私は、運輸大臣、あなたの正義感に期待します。でございますので、これから申すことをひとつ冷静にお聞き願いたい。  実はこういうものがある。これは当時の写真です。こういうような不用品が出たといって——このドンゴロスの中に入っておった新品をここにほうり出しました。そして、これを不用品にするためにどういうことをやったかというと、食塩を買うてきまして塩水をかける。油のたくさんついておるものについては三日間ドラム缶の中に漬けておる。そしてそれを外へ出して、また毎日毎日塩水をかけておる。刑事事件だ。こういうことが行われている。これがこの写真だ。これがこの姿だ。食塩をかけたのはスクラップにして、下請業者がこれを買うておる。新品ですよ。今こういうことが堂々と行われているんだ。  その際にどういうことが言われておるかといいますと、分割・民営が間近になった。資材は税金がかかるので在庫品の整理をやらなければならぬ。机の上の整理はよくできておるけれども、どうもできてないから、ひとつこれに塩水をかけてスクラップにしろということを言っておるのであります。その前に実は監査が入っている。土崎においても本社の監査が入っておる。その後で土の中に隠された。どう思います、大臣。
  75. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私の率直な感想を申し上げるなら、全く信じたくないような話と申し上げたいと思います。しかし、これは委員から御指摘を受けた事実でありますから、この場で国鉄当局にもう少し十分事実を調べるように指示をいたしたいと思います。
  76. 井上普方

    井上(普)委員 事実を調べると先ほどもおっしゃいましたが、今まで十五、六カ所でやられたのは全国で数十万円単位であったというお話なんです。私が調べたのでは、一カ所において五百十七万九千五百円、合計いたしまして九百八十七万七千円余りの品物が、新品がスクラップにせられて廃品業者に売られている。これはどうなの。一体どういうような考え方でおられるのか、ひとつ伺いたい。
  77. 杉浦喬也

    杉浦説明員 帳簿外の品物につきまして、これを正式に帳簿につければそれで済むことでございます。それを監査ということに対応するために、現場におきまして、どう勘違いしたか、品物自体を隠すというふうにすりかえたわけでございます。そういうことのないように、しっかりと帳簿と現品とを今後ともに厳重に照合するようにということは、これから指導を厳重にしたいと思います。
  78. 細田吉藏

    細田委員長 御静粛に願います。
  79. 井上普方

    井上(普)委員 これは、各地点におきましても監査が入った後やられておることなのです。しかも監査は帳簿をきっちりしろとだけしか言ってない。そのために、実はこういうような財産、資材が塩漬けにせられて、真っ赤にせられてスクラップ業者に売られている。  だから総裁、あなたの方は一体どう考えるんだということを言っている。しかし、今後のことばかりおっしゃって、この事態についての明確な御意思がないんじゃないでしょうか。
  80. 杉浦喬也

    杉浦説明員 こういうことはまことに残念、遺憾でございます。二度とないようにいたします。
  81. 井上普方

    井上(普)委員 この品物は、さらに言いますならば、去年の八月二十八日にこの地点に送られてきた。新品なんです。何で不用品になるのか。帳簿上合わぬようになる。その数字は、先ほども申しましたように、点数にしまして一体幾らです。もう一千万円になんなんとするものがともかくやられている。私はどうしてこういうことが行われるのか不思議でならない。あるいは本社の監査の連中が、分割・民営になったら不用品に税金がかかるから、こう言っているという。こういうことが言われている。そして全国にざっとそれが行われている。これは本社の指示じゃございませんか。どうなんです。
  82. 杉浦喬也

    杉浦説明員 本社の指示は、厳正に管理するようにという指示でございました。  今、監査があった後にというふうにおっしゃいましたが、これは監査があることを考えて、事前の対策として自分らが考えたというふうに私どもは思います。
  83. 井上普方

    井上(普)委員 そんなの答弁にならないでしょう。おたくの監査が入った後やられている、土崎にしても長野にしてもあるいは東京近辺にしても。こういうことをやられている。しかも土崎においても長野においても、どう言っているかというと、分割・民営になったら税金がかかるから、これは土の中に処分しろということを上司に言われてやったと言う。上司もそういうような訓示をしておるじゃありませんか。命令でやられておるのでしょう。  この間も高松に行きましたら、香川県の多度津でやられている。これは業務命令でやられたんだということを一般の職員は言っている。こういうことがやられている。それでどこから入ったかといえば、この品物はほとんどが鉄道機器株式会社富山工場から去年の八月二十八日に送られてきたものだ。新品ですよ。それがあなた、でたらめにもこういうようなことになっている。この責任はどうするんだ。ここをはっきりしてもらわぬことには、ともかく話にも何もなりません。こんなずさんなことを国鉄がやられているのかと思うと、一体どうなるんだと思うのです。
  84. 杉浦喬也

    杉浦説明員 責任者を明確に把握いたしまして処分いたします。
  85. 井上普方

    井上(普)委員 しかし、これは組合員ができる仕事じゃない。何を言っているんだ。これは上司の方から命令がなければできないことだ。
  86. 細田吉藏

    細田委員長 御静粛に願います。
  87. 井上普方

    井上(普)委員 そこの国鉄の皆さん、あなたが調べたところで、どこどこでこういうような不祥事を起こしておるのですか、おっしゃってごらんなさい、全国十六カ所と言ったが。
  88. 岡田宏

    ○岡田(宏)説明員 全国十五カ所でございます。  なお、先ほどの価額の点でございますが、私どもの調べましたところによりますと七十八万円余でございます。  それから、監査の後というお話がございましたが、そういう事実は全くございません。監査の後であるというふうに聞いております。  それから、先ほどの資材に火を通したという件、あるいは塩水をかけたという件でございますが、これにつきましては、私どもの聞いておりますのは、古材であって、しかも相当古いと申しますか、その場所で利用価値がない、あるいは転用計画もできない、そういったもので新品に見えるものを古く見せかけるために火を通したとか、あるいは塩水をかけたというふうに聞いております。  なお、これら二、三の件につきましては、既に実行行為者、監督責任者を含めて処分をいたしております。
  89. 井上普方

    井上(普)委員 十五カ所の場所の名前を言ってごらんなさいと言っているんだ。
  90. 岡田宏

    ○岡田(宏)説明員 お答え申し上げます。  先ほど監査の後と申し上げたかもしれませんが、監査が入るということを恐れて、監査の前にやったというふうに聞いております。訂正させていただきます。  それから、箇所について申し上げます。  東京西鉄道管理局の拝島保線区河辺支区、拝島支区、支区ごとの単位で申し上げます。東京北鉄道管理局上野保線区の赤羽駐在、田端支区、本区、長野鉄道管理局松本保線区の松本支区、本区、西条駐在、上諏訪保線区の上諏訪支区、それから新幹線総局広島管理部の新岩国保線区、広島保線区、小郡保線区、新幹線総局静岡保線所でございます。それから金沢鉄道管理局の福井保線区、高岡保線区、これが今確認をされているところでございます。  なお、今資料を全部申し上げましたけれども、そういう話がございましていろいろ確認をいたしましたけれども、事実が確認をされていなかった箇所もまざって申し上げました。大変失礼を申し上げました。その事実が確認をされていない場所について申し上げます。  東京北上野保線区の赤羽駐在と申し上げましたけれども、ここは事実がございませんでした。田端支区については一部事実がございました。それから松本保線区の本区につきましては事実はございませんでした。  以上でございます。
  91. 井上普方

    井上(普)委員 金額は。
  92. 岡田宏

    ○岡田(宏)説明員 先ほど申し上げましたけれども、七十八万六千円というふうに把握をいたしております。
  93. 井上普方

    井上(普)委員 名前が出たから言いますが、拝島の保線区でやられたものは簿価二百三十九万五千三百十一円。数十万円てどこから出てくるんだ、それ全部で。それからもう一つ、河辺支区と言ったが、これは二百二十二万八千三百三十九円、簿価がちゃんとこう出ているんだよ。これも去年の八月二十八日に富山の工場から入った品物なんだ。真っさらです。新品ですよ。  今もお見せしましたね。このドンゴロスの袋に絵符がついている。一回入ったということが絵符にちゃんと書いてあるんだ。新品はこれなんです。使い捨てのものじゃないのです。袋に新品が入ったままのものをやっているのです。そして金額においてもそんなものだ。ちぐはぐじゃありませんか。それがあなた方の調査なんですか。
  94. 岡田宏

    ○岡田(宏)説明員 私どもの調査におきましては、今の拝島保線区河辺支区、拝島支区におきまして資材に火を通したとかあるいは資材に塩水をかけたという話につきましては、新品であるという報告を受けておりません。したがいまして、よく調査をさせていただきます。  私どもの調査によりますと、これはいずれにいたしましても使用見込みのない古品であるというふうに聞いておりまして、そのように評価をいたしますと、ここで一万八千円と三万六千円ということでございます。
  95. 井上普方

    井上(普)委員 今のお話でも、いかに国鉄当局の調べというものがずさんであるかということがわかる。彼らは調べておるのです。調べておるから私は聞いておるんだ。その数字が出てきているじゃないですか。分割するからといって、税金がかかるからといってこんなことをやっているんだ。しかも、それに対しては、今も言われておりますが、拝島と河辺は監査の後やっておる。やったのは八月の十八、十九日に廃品業者がこれを持っていった。監査が入ったのは八月の七日、八日でしょう。どうなっているんですか、これは。
  96. 岡田宏

    ○岡田(宏)説明員 拝島保線区の河辺支区の件につきましては、六十一年七月十日という報告を受けております。したがって、この件につきましては、監査の前であるというふうに確認をいたしております。拝島支区の件につきましては、ちょっと日にちが記帳されておりませんので、これも厳重に調査をいたします。
  97. 井上普方

    井上(普)委員 あるいは品物によりましては、長いものは土の中に隠した、埋めたという話も聞いております。四トントラックで二回これを運んでいるのです。それぐらいしかあなた方はお調べになっていないのですか。一回調べておるんだよ。にもかかわらずこの程度の答弁しかできないんだ。監査が入った後やっているのですよ、あなた方は。  国鉄総裁、どうです。こういうようなことが行われておる。処分しますだけでは済まない。監査の後こういうことが必ずやられている。そして今の拝島のごときは、これは五十九年にやられたというから、それであれば二回やられているはずだ。五十九年と今度やられたのと二回やっておるはずだ。二回目の後の方が二百三十九万でしょう。先ほど数字を示した。どうなんです、一体。こんなことでいいのか。
  98. 杉浦喬也

    杉浦説明員 監査の前後に関係なしに、こういうことはよくないことでございますので、私ども、再度厳重にこれを調査いたしまして、しかるべき処分をしたいというふうに思います。
  99. 井上普方

    井上(普)委員 私はまだ、国鉄総裁、あなたが言ったところ以外にもあるんだ。東飯能、五日市それから中浦、ここらでやられているのですよ。我々が何で資料を政府に出さなければいかぬ。調べる責任は向こうにある。これもすべてが、分割・民営にするスタートで税金がかかるから、こういう理由のためにこの五カ所はやられているんだ、私が調べた五カ所は。しかし、それを信用するぐらい国鉄の当局者というのは弱いんだろうかと私は考える。だから、私は何でこれがやられたのかわからない。製造下請業者をもうけさすために新しいものをまた買わなければならぬからこういうようなことをやったのではないかと、私は疑問を持たざるを得ない。真相は明確にしなければいかぬと言っておきましょう。  しかし、本社の監査の連中も調べなければいかぬですよ。どういうようなことを言っているか。帳簿はきちんとできているけれども、机の上は市役所と比べると非常に悪い。直しなさい。帳簿はきちんとできておる、こう言った後でこれが行われた。どうなんです、一体。これが今の国鉄の姿なんだ、私に言わすと。こういう連中にその土地の売却を任すわけにはまいらない、私はこう思うのです。だから、私は出したくなかったんだけれども、余りにもずうずうしい答弁をするからこういうことを言わざるを得ないのです。どうです。
  100. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 先ほども申し上げましたように、むしろ私は本当に信じたくない気持ちがするという感じを受けました。その上で、皆さんの前で国鉄総裁に調査を指示をいたしました。しかし、同時に、これから新たに発足をしていく各会社、そして処分に当たります清算事業団においてこういう事態が起こるようなことはさせるつもりはございません。そのために、この用地処分をいたします清算事業団の中の資産処分審議会には利害関係者を入れないということも申し上げておるわけでありまして、あくまでも公正に処分をいたすつもりであります。
  101. 井上普方

    井上(普)委員 関係省を入れないのは常識です。しかしながら、現場においてこういうことが行われているんですよ。  先ほども、土地の処分につきましては、私は信じたくはないけれども、現地に公告を一つ出した、一日見えたけれども、次には見えなんだと言うんだ。すぐにそれを撤去して、入札には一人しか加わらなかったという例がある。これを一般公開入札だと言っている。私は、これは随意契約が当然じゃないかと思う、一名であれば。にもかかわらず、それは一名だけで、ほかに入札が入る余地がなくしてやられている。そしていかにも入札価格というのは公表せぬのが当然のごとく言われている。片方においては、こういうように一週間にわたって塩水をぶっかけてるんですから、真っ赤になるのは当たり前だ。油がたくさんついているものを三日間ドラム缶の中に入れておくんだ。そしてまたこれを太陽の下にさらして塩水をぶっかける。そして不用品にして、これはもう不用品になったといって廃品業者に売っている。  おもしろい話がありましてね。塩を買うのに、どこへ行ったら塩があるだろうかといって、塩を探すのに往生したそうだ。その廃品業者が塩を買ってきて、さあこれでやってくれということでやっている。これは労使じゃない、使の方だ。こういうようなことが全国多発的に行われている。この実態を見て、私らは今の国鉄の姿というものを情けなく思わざるを得ないのであります。  調査をしますと言って、先日関山君がこの問題を指摘したら、全国的に調査いたしました、三カ所でございましたと言って、きょうは十五カ所になる。私が指摘したのはその十五カ所の中に入ってない。どうなんだ、これは一体。国鉄本社の調査能力というのはこれくらいしかないのですか。  国鉄総裁、当時の西局の局長は今本社へ来ておる人じゃないのですか、八月だったら。どうです。
  102. 杉浦喬也

    杉浦説明員 その時分の局長は異動はございません。
  103. 井上普方

    井上(普)委員 いずれにいたしましても、これから国鉄分割・民営に向けましてさらにこういうような資産の処分等々が行われるでございましょう。これは運輸大臣、厳重なる注意をもってやっていただくことを強く要求いたしておくのですが、いかがでございますか。
  104. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 こういう御指摘を受けるようなことがないようにいたしたいと思います。
  105. 井上普方

    井上(普)委員 この問題につきましては、私は、本社ぐるみの不正、不用品の破損といいますか、そういう感じがしてならないのであります。本社が監査に入ったところが必ずやられている、後で、あるいは前後に。私が知ったのは、後です。こういうようなことをやられておるので、私は、これからも厳重なる注意をひとつやっていただきたいと同時に、正義感に燃える組合員あるいは職員が、これでともかく不当ななににはならぬようにひとつ御注意願いたいと思うのであります。  そこで、時間が参りましたので、もう一つお伺いいたしておきたい。それは年金問題であります。  きのう大蔵省からいただいた資料によりますと、六十四年までに国鉄の年金会計におきましては大体三千億円の欠損が出るという予想が出ております。この処置は一体どうするのですか。関係四大臣がこれは相談するというようなことが言われております。しかしながら、少なくとも六十四年までのこの赤字というものは、負債ではない、債権ではないにいたしましても、一種のそれに似た性格のものであろうと私は思う。  この間宮澤大蔵大臣は、国もその責任を負います、負担を負いますということをおっしゃられました。当然のことであります。しかしながら、この債権に類するものは、やはりこの国会において明確に処置というものはしていただかなければならないと思うのですが、いかがでございます。
  106. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先般来答弁を申し上げておりますように、本件につきましては、昨年の十一月二十八日に政府が統一見解を申し上げております。それによりますと、「国鉄の経営形態等の動向を踏まえつつ国鉄の自助努力と国の負担を含め、諸般の検討を加え、支払いに支障のないようにいたします。」ということを申し上げておりまして、これにつきましては六十一年度中に結論を得まして云々、こういうことを申し上げております。これは六十四年度までの分でございますが、これが政府の統一見解でございます。
  107. 井上普方

    井上(普)委員 統一見解はそうであるけれども、今審議しておりますのは、国鉄の負債問題等々を審議しておるわけなんですね。これは負債に類するものだと私は思う。債権と私は明確に言えませんけれども。ですから、他の債権と同じように、これはやはり方針だけはこの審議中に出していただかなければならぬと思うのですが、いかがでございます。
  108. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先般からしばしば申し上げておりますが、六十四年度までの分につきましては、既に関係四閣僚が何度か協議をいたしておりますが、御承知のように今後の退職者等の年齢構成がただいまのところ不明でございますから、今年度末までにそれがより明確になるのを待ちまして計数をはっきりさせまして、その上で結論を得たいという意味で六十一年度中ということを申し上げておるわけでございます。
  109. 井上普方

    井上(普)委員 大蔵大臣、これは私は、数字をきちっと出してそれの処理方針を決めろと言うのじゃない。どういう方針で年金の六十四年までの——赤字が出ることはもうきのうの資料でもはっきりしておるのですから、年齢構成なんというそんなけちなことを、大蔵大臣おっしゃられたのではだめですよ。これはどういう方針でやるか。四大臣が協議する、年度中に協議する、こうおっしゃいますけれども、方針だけは出せる問題です、金額はともかくといたしまして。出せる問題じゃないですか。それでなければこれを我々は審議できないじゃありませんか。一体どうなるのか。  といいますのは、国鉄職員は今も非常な負担にあえいでいる。また、国鉄共済年金を受け取っておる人たちも、スライドはないのです。職域加給もないような現状になっている。不安で不安でたまらない。せめて六十四年まではどういうようになるんだろうか。これは国鉄職員のみならず、他の助けておるNTTにしましても国家公務員共済組合にしましてもたばこ産業の連中にしましても、みんな、援助はしたけれども、六十四年までにそんな赤字が出るのか、我々にまたかぶってくるんじゃないだろうかと、不安でたまらない。方針ぐらいはお出しなさいよ。出すのが当然でしょう。どうです。
  110. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そこで、昨日御提出申し上げました資料に明らかでございますように、六十四年度までに毎年平均で約四百五十億円の援助を国家公務員、電電、たばこ産業からしてもらっておるわけでございますが、この四百五十億円のほかに、さらに平均七百億円程度の不足が生ずる見込みだということを資料で申し上げたわけでございます。  これがこういう範囲になっておりますのは、資料で三年間の見込みを幾らから幾らまでという範囲で申し上げましたのは、小さい方が平均的な退職があった場合、大きい方が高齢者と若年層の割合を三対一といたしました場合、その方が収支額の赤字が大きくなるわけでございますが、この辺の見通しが年度末になりますとはっきりいたしてまいりますから、それによりましてどれくらいの不足があるかということがわかる。それがわかりませんとどういうふうにそれを負担していくかということがはっきりいたさないわけでございまして、その場合の方針は何か、それを示せとおっしゃるのでございましたら、それは統一見解によりまして「国鉄の自助努力と国の負担を含め、」云々というのが基本の方針であるわけでございます。  それをはっきりさせますためにはどのぐらいの収支残があるかということが明確にならなければなりませんし、そのためには退職者の年齢構成がどうなるかということがわかりませんと答えが出てこない、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  111. 井上普方

    井上(普)委員 これは自助努力と国の援助ということがありますけれども、これだけではわからない。そうすると、まだますます自助努力ということで、今十五・幾らでしたか負担をしておる国鉄職員に、さらにもう少しふやせということでございましょうか。あるいは年金生活者に、今スライドをストップさせておる、また職域加算は抑えられておる、それをまだ切り込めとおっしゃるのでございますか。そこらあたりを明確にさせなければなかなか不安というものは解消できないと思う。少なくともこの審議中には結論を出していただくように強く私は要求をいたすものでございます。  委員長、処置をお願いしたいと思います。
  112. 細田吉藏

    細田委員長 時間が参りました。
  113. 井上普方

    井上(普)委員 今、六十四年までの推定される赤字、これに対処するにはいかなる具体的な方法を持っておるのか、方針をひとつ明確にしていただきますよう私は要求しておるのです。
  114. 細田吉藏

    細田委員長 あなたの質問があることは承知いたしました。
  115. 井上普方

    井上(普)委員 この問題につきましては、時間がございませんが、しかし、委員長においては処置せられることを強く要求いたしまして、私の質問を終わります。
  116. 細田吉藏

    細田委員長 これにて井上君の質疑は終了いたしました。  この際、休憩いたします。     午前十一時五十三分休憩      ────◇─────     午後三時開議
  117. 細田吉藏

    細田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。西中清君。
  118. 西中清

    ○西中委員 最初に、職員の再就職問題、雇用問題について伺っておきたいと思います。もう既に多くの同僚議員からこの問題は質疑がなされておりますが、ごく限られた問題だけに絞ってお伺いをいたしたいと存じます。  まず第一点は、去る九月十二日に国鉄職員等再就職計画が閣議決定をされましたけれども、これによりますと確保すべき再就職先の目標数が六万一千人、こういうふうになっております。この確保すべき就職先の目標数というのは、当然結果として採用された数字、こういうように理解をしたいと思うのでございます。  こういう質問をしますのは、今までの答弁を聞いておりますと、雇用の申し出についていささか楽観的なお話も伺いますので、まあ楽観的というのは言い過ぎかもわかりませんけれども、順調に進んでおりますというような発言もございましたから、やはり最終的に六万一千人が採用された、こういう数字だというふうに思わなければならぬと思います。確認をしておきたいと思います。
  119. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 御指摘のとおり、私どももそう考えております。そして、たびたび申し上げておりますように、私どもとして、公的部門の採用数が確定をいたしておりません点について今鋭意努力中でありますが、昨日も総理御自身から地方自治体関係者に対して特に協力のお願いを申し上げたところでありますし、また昨日以来きょうまでの間に、例えば文部省の採用予定があと四百人ふえてきたとか、枠の点ではおかげさまで六万五百人という求人申し込みのところまで参りました。  しかし、ここで繰り返してお願いを申し上げておりますように、私どもは、民間の一万という就職をお願いした員数について、少なくともそのお願いをする一万の数倍の求人がいただきたい。それでないとなかなか、一人一人の御希望と採用してくださる方々の御希望がぴたりと合ってこない場合があるということで努力を続けているわけでありまして、決して楽観をいたしておりませんし、これから後も全力を尽くしてまいりたいと思います。
  120. 西中清

    ○西中委員 その点を確認いただきましたので一応安心をいたしておきますけれども、特に公的部門、関連企業、そして一般産業界、今お話にありましたように、一般産業界の求人というものは就職する側と条件的にいろいろ一致をしないケースが非常に多いわけでございますね。したがって、僕は、計画というのは、採用すべき人間の数というよりもむしろ、最大これぐらいはやはり申し出を確保しなければならぬだろうという目標がなければなかなか促進はしないのじゃないか、こういうふうに思っております。今、数倍というお話がございましたけれども、公的部門、関連企業、一般産業界についてどの程度の申し出が望ましいとお考えなのか、数字がございましたならばおっしゃっていただきたいと思います。
  121. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 関連事業の二万一千、また公的部門の三万につきましては、その上乗せをして数を用意するという状態には至らないと率直に私は考えております。ですから、やはり民間で御採用を願いたいとお願いをしております一万名というものに対し、きょう現在の時点で受け入れ条件が煮詰まって条件が明示されております求人は一万一千二百名、なお受け入れ条件について折衝中のものが八千五百人、今一万九千七百人の求人をいただいておるわけであります。  これは何倍ということを申し上げるのは、お願いをする私どもの立場からしてある意味では大変不遜なことでもありますし、私自身としては一人でも多くというお願いを申し上げているわけでありますが、これにつきましても、実は先般総理から経済団体のそれぞれのグループについて、官邸にお招きをいただき御依頼をいただきました。私個人からすれば、少なくとも三倍や四倍の求人はいただきたいものだと願っておりますが、現時点においては条件折衝中を含め一万九千七百名ということでありまして、これからもなお努力をいたしたいと思います。
  122. 西中清

    ○西中委員 とりわけ私も一番心配いたしておりますのは、公的部門、中でも国の一万八千五百人、これが果たして達成できるのかどうかという点について憂慮いたしておるわけでございますが、八月一日に第七次定員削減計画の実施についての閣議決定をいたしまして、五年間でおよそ四万三千九百八十人の削減目標を決めております。したがって、各省庁にお伺いをいたしますと、まさしくこの国鉄の職員の採用については四苦八苦というのが実情ではないかと思います。  この時期に当たって、行政改革の一環だと思いますが、その重要性は認めますけれども、さらにまたこうして国鉄職員を一万八千五百人、果たしてこれが可能なのかどうなのか。これはかなり矛盾に富んだ二つの計画ではないかと思いますけれども、どういうふうにお考えか、伺っておきたいと思います。
  123. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 御参考までに現在の国並びに特殊法人等の数字を申し上げますと、きょう現在で国の合計が五千八百人になりました。これは主として昨日から今日にかけて、文部省で枠を確定していただいたおかげであります。また特殊法人等につきましては、清算事業団の二千五百名を含めて現時点で約四千九百名、お申し越しのとおりに決して楽ではございません。  ここから先は、実は私が御答弁を申し上げるのが適当かどうかわかりませんけれども、一方で私は、国全体の行政のスリム化という視点からいえば、着実な定員削減というものは行われてしかるべきものだと思います。その反面、これはあくまでも不要不急あるいは既に重要度を失ったところにおいて定員を減らしていくわけでありますから、その削減そのものは、私は当然国として努力をしなければならないことだと思いますが、一方で新たな行政需要に対応するため、あるいは業務量の増加に対応するための定員の査定、いわゆる増員というものも確定をされていくわけであります。  その中において、その採用率の中の一定割合を国鉄の職員を受け入れていただきたいというお願いは、各省にとってはなかなか大変な問題であろうことは私は理解をいたしますけれども、国の中で極めて大きな改革をしようとしている今日、最大限の御努力を各省にも願いたい。そしてまた、現実に各省の人事担当者は非常な努力を払いつつありまして、最終的に私は目標が達成できるものとかたく信じておりますし、また協力をお願いをしているところであります。
  124. 西中清

    ○西中委員 先ほど私が申しましたように、結果としてこの採用が完全に果たされるという観点からまいりますと、やはり極めて厳しいというふうに判断せざるを得ないわけであります。行政改革、定員削減というものは、それなりに必要であることは私もよくわかっておりますし、非常に大事な問題だというように思います。しかし、この時期に果たしてこれが無理に行われていいものなのかどうなのかということについては、やはり疑問を持たざるを得ないのでありますが、総理、どういうようにお考えになっておるか、伺っておきたいと思います。
  125. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 無理と言われますと、これは大変つらいのでありますけれども、私どもは、現実に無理なことをお願いを申し上げているとは思いません。各省が御努力をいただけば可能な範囲のお願いを申し上げておる、そのように思っております。
  126. 西中清

    ○西中委員 そうしますと、いまだに政府、国の採用計画が決まらない、これはまた私たちにとっては非常に不思議なことなんでございますけれども、僕はやはりこの定員削減計画がひっかかっておるというふうに実は理解をいたしておるのです。  そこで、少し具体的にお伺いをしたいのでございますけれども、この各省庁の採用計画、これは一体どういう形で積算をされておるのか、その算定の根拠は一体何なのかということについて伺いたいと思うのです。  九月十一日付の新聞によりますと、公的部門の採用の内訳が出ておりました。この内容は果たして政府でもうお決めになっておるのかどうか、この点について伺っておきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  127. 田中史

    田中(史)政府委員 お答え申し上げます。  先ほど閣議決定されました国鉄等職員再就職計画では、公的部門におきます雇用計画のうち国は一万三千人を、清算事業団を含みます特殊法人等は五千五百人を、合わせて一万八千五百人を確保するということになっているところでございます。そのうち国につきましては、昭和六十一年度分につきましては各省一律に一〇%以上、それから昭和六十二年度以降につきましては一律に一四%以上を確保していただくということになっておりまして、このほかに率先して雇用対策を推進すべき運輸省等の省庁を初めといたします省庁等の協力分を合わせまして、合計一万三千人の雇用の場の確保は可能であるというふうに考えております。
  128. 西中清

    ○西中委員 そうしますと、まず六十一年度で千二百人、要するに採用予定枠一万二千人の一〇%、これは今おっしゃったとおりだと思いますね。  それから、一四%ということでお決めになっている部分は何人になるのか、伺っておきたいと思います。
  129. 田中史

    田中(史)政府委員 お答え申し上げます。  昭和六十一年度におきましては、一〇%相当分として千二百人、一四%相当分として八千六百人、合わせて九千八百人。それ以外に任意の協力分等で約三千二百人を見込んでおります。
  130. 西中清

    ○西中委員 先ほどおっしゃいました、この新聞では努力分となっておりますが、運輸省、総務庁、労働省、自治省、この四省のいわゆる一四%に積み上げる部分というのは何名になっておりますか。
  131. 田中史

    田中(史)政府委員 本問題の重要性にかんがみまして、主として、率先して雇用対策を推進すべき省庁、運輸省、総務庁、労働省、自治省には一四%を超えます協力をお願いいたしておりますが、これにつきましてはおおむね千三百人程度になろうかと見込んでおります。
  132. 西中清

    ○西中委員 その各省庁別の努力分の枠は決まっておるんでしょうか。
  133. 田中史

    田中(史)政府委員 ただいま申し上げました四省庁以外の各省庁におかれましても一四%を超える協力を強くお願いしておるところでございますが、それにつきましてはおおむね千百人程度というふうに見込んでおります。
  134. 西中清

    ○西中委員 私が申し上げているのはそうじゃなくて、その千百人というのは一般の省庁全体に対しての努力分、協力分ですね。先ほど申し上げたのは、それ以外に運輸省、労働省、総務庁、自治省、この分はおのおの各省何名か決まっておるのか、千三百名分の内訳を伺っておるのです。
  135. 田中史

    田中(史)政府委員 お答えいたします。  各省それぞれの採用につきましては、定員と現在の欠員とのいわばすき間におきまして各年度、各年度に採用するものでございまして、各省庁ごとに厳密に何人採用するかということを決定するのは困難でございますので、四省庁合計いたしましておおむね千三百人、上積み分を約千三百名ということで考えております。
  136. 西中清

    ○西中委員 まだこれははっきりしておらないということでございますね。  それから、ちょっともとへ戻りますが、一四%で八千六百人という根拠はどういうことになっておるのか、算定根拠を伺っておきたいと思います。
  137. 田中史

    田中(史)政府委員 お答えいたします。  一四%という率につきましては、各省各庁の定員事情あるいは職種ごとの構成その他を考えまして、また一方では、一般国民の就職機会というものを余りにも狭めることのないように、しかしながら、国鉄職員の再雇用という目的を達成することができる率ということで、諸般の要素を勘案いたしまして定めたものでございます。この一四%のいわば義務的な分に先ほど来申し上げました協力分を合わせまして、おおむね一万三千人の達成は可能であるというふうに考えております。
  138. 西中清

    ○西中委員 おかしいですね。先ほどは、各年度の採用が明確でないからとかいうようなお話がありました。しかし、この一四%というのが八千六百人になるというその算定はどうして出てくるのですか、その根拠を聞いておるのです。  それからもう一つ、ついでに言っておくけれども、協力分に国会等八百というのがありますが、これは間違いございませんか。
  139. 田中史

    田中(史)政府委員 お答えいたします。  一四%の率を算出するに当たりましては、昭和六十年度までの採用の実績等を勘案いたしまして、先ほど来申し上げましたような諸要素も勘案いたしまして算出したものでございます。  また、これ以外に約八百名の、いわば任意協力分の中のその他というようなものを考えておりますが、これは行政府以外の、例えば国会でございますとか裁判所でございますとか、それから各行政機関の中でもこの国鉄職員の採用の対象とならない職種におきましても、各省庁が自己努力によりまして採用する分、そういったものを見込んだ数字が約八百ございます。
  140. 西中清

    ○西中委員 まだよく説明がわからないですね。一四%という数字は一体どこから出てきたのかということなんです。ですから、言いかえるならば、採用するすべての人員はこれだけで、それに対する一四%というのはこれだけの数字になる、こういうふうにはっきり答えてほしいのですよ。いかがでしょうか。
  141. 田中史

    田中(史)政府委員 先ほど来申し上げましたように、六十年度までの採用実績、それをもとにその後の退職者の増加状況等を勘案いたしますと、昭和六十二年から六十五年度当初までの国鉄職員雇用の対象となり得る国家公務員の採用数はおおむね六万二千になるわけでございます。この六万二千に一四%を乗じますと、先ほど申し上げました八千六百という数字になるわけでございます。
  142. 西中清

    ○西中委員 次に、特殊法人についてはどういうようになっておるか、伺っておきたいと思います。
  143. 田中史

    田中(史)政府委員 特殊法人につきましても、国家公務員と同じような考え方で、国家公務員に準じてお願いをいたしておりまして、昭和六十一年度につきましては、この再雇用の対象となる就職者数が約四千名、これの一〇%で約四百人。それから六十二年度以降は、国家公務員について申しましたと同じようなベースで申しますと、約五千人の三・五倍、一万七千五百人ということでございまして、それに一四%を乗じまして約二千五百人、合わせて約三千人の雇用を見込んでおります。
  144. 西中清

    ○西中委員 今、大体の数字は明示をしていただきましたけれども、あえて申し上げるならば、この時点において、もしも間もなく法案が通過するならば、当然採用の作業というものが始まるわけですね。しかるに政府の採用計画というものは、一体いつの時期にこれの採用を決めるのか、何人決めるのかということについては、いまだに漠然としてよくわからない、こういう状況でございますが、職員にとっては自分の身分、これからの将来の道を選択するについて、やはり早い時期にこの計画というものは示されなければならぬと思うのです。今まで、まだ作業を進めておりますということでありますけれども政府としてはいつごろこの全体像、各省庁別の人数を決定するつもりなのか、伺っておきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  145. 田中史

    田中(史)政府委員 お答えいたします。  国家公務員の場合、採用につきましては、定員とその後退職、死亡等によります欠員の状況を見ながら採用してまいるわけでございますので、将来につきまして、各年ごとにあるいは各省庁ごとにというのはなかなか困難でございます。しかしながら、私どもといたしましては、各省庁に対しまして一括選抜をお願いいたしておりまして、既に多くの省庁におきまして一括選抜の申し出がなされております。したがいまして、このように一括選抜が進んでまいりますれば、昭和六十二年度以後につきましても逐次数字が固まってくる、また全体として一万三千の目標が達成される、こういうふうに考えております。
  146. 西中清

    ○西中委員 大臣、やはりこの問題は極めて重要でございますので、一日も早く決定するということが大事でございます。大臣としての決意を伺っておきたいと思います。
  147. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 先ほど申し上げましたように、私自身が政府部内においてこれを決定する衝にありませんために、私からはお願いをするということになりますが、今人事局の次長さんからお答えをいたしましたように、政府自身としてはこれを完遂する見通しを持っております。  委員の御指摘のように、各年次ごとということになりますと、私どもはできるだけ一括選抜をしていただきたいというお願いも申し上げておりますために、個々の年度の受け入れ数につきましては、それぞれの年の定員の査定の結果を見ないとお返事のできない部分もあるいはあろうかと思います。しかし、御指摘のありましたような点を踏まえて努力をしてまいる決意であります。
  148. 西中清

    ○西中委員 総理、やはりこういう問題は総理が決断をしていただく、また督促をしていただくということが大事でありまして、今も申し上げましたとおりに、一日も早い計画の立案というものがなければならぬと思います。決意を伺っておきたいと思います。
  149. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 雇用問題は今回の国鉄の改革の最大眼目の一つでありまして、既に政府側は三万人受け入れということを決めており、一万三千人が国、一万一千五百人が地方公共団体、五千五百人が政府関係機関、そういうふうに割り当てまで決めておるところであり、先般一四%という数字も決めましたので、鋭意充実させるように全力を尽くします。
  150. 西中清

    ○西中委員 一般的に見まして、転職の場合、若年層は比較的条件に恵まれております。一方、中高年の方は非常に厳しい状況にあることは申すまでもございません。特に中高年齢層というのは、子弟の教育であるとか親の扶養であるとか、さらには住宅ローンであるとか、最も生活経費がかかる世代であります。それだけにまた雇用の条件も難しいということにもなるわけでございますが、国鉄を見ました場合には、関連企業は年金受給資格を有する高齢者を中心に採用されることになると思いますが、公的部門ではやはり若年層が求められておる。おおむね三十歳未満、場合によっては三十五歳ぐらいというようなケースがほとんどである。これは地方自治体の方でもそうでありますけれども、この雇用対策というのは、いわば中年層の雇用、これが一つのポイントになるのではないかと私は思っております。したがいまして、その公的部門における年齢制限枠の問題、これはやはり一考を要するのではないかというように思いますが、その点いかがでしょうか、大臣。
  151. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 確かに、国鉄の職員の方々の再就職先、現在までの状況の中で、やはり国鉄関連企業あるいは一般産業界からの採用の申し出というものが主体になっております。これは受け入れる側の種々の事情を勘案しながら、職種、年齢、処遇の条件等を決めていくわけでありますけれども、今後の再就職の取り決めを進める段階におきまして、できるだけきめの細かい配慮をしていくことによって、中高年齢層の職員の採用が円滑に進むように気をつけてまいりたいと思います。
  152. 西中清

    ○西中委員 この中年層の採用をなお促進するための手だてというものが、政府に工夫があってもいいのではないかなという気がしないわけではありません。したがいまして、中年層、まあ高齢者もその中に含めてもいいのではないかと思いますけれども、こういう人たちを採用した企業に対して、何らかの助成措置なり賃金の底上げといったようなことを政策的に考えていってもいいのではないかと思うのですが、労働省、何か御意見があったら伺っておきたいと思います。
  153. 平井卓志

    ○平井国務大臣 お答えいたします。  全般的に、雇用の問題につきまして、運輸大臣から御答弁を申し上げておりますが、政府としましても、一般産業界に対するお願いは総理大臣御自身から重ねてお願いをいたしておるところでございます。一般産業界から約一万九千七百の採用申し出というのも、もう御案内のとおりでございます。そういう意味で、全般的には比較的順調に推移しておるかなという感触もいたしますが、地方のばらつき、またミスマッチもございまして、今後とも雇用情勢の推移等を十分に踏まえて、特にきめ細かに再就職促進対策に努めてまいらなければいかぬと考えております。  なお、この清算事業団職員を雇い入れる事業主に対する助成はどうかということになりますと、これはもう委員指摘の方向でひとつ検討してまいりたいと考えております。
  154. 西中清

    ○西中委員 全体的に各年齢層おのおの十分な配慮を政策的にもしていただきたい、心から念願をしておきます。  ここで、今度は土地の問題について質問をいたしておきたいと思います。  これまでしばしば土地信託の問題について論議がございました。総理からこの話が出てまいったわけでございますけれども、この制度の導入を考えられた理由について、まず伺っておきたいと思います、総理。
  155. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 やはり公正処理ということが第一で、第二は、国鉄の収入を上げて借金を返す、そういうことを前提にして、その範囲内でうまい方法はないか。  次に出てくる問題は地価の抑制という問題です。特に、東京や大都会における地価の抑制を何とか実現しなければならぬ。そういう意味において、必要とするお金が入ってくるというならば、そういう条件のもとに土地信託というものがもし実現可能ならば、研究材料としてこれは必ずしも排除する必要はない。そういうものありやなしやということは、ケース・バイ・ケースで、近くできる清算事業団の審議会でいろいろ検討してもらうということになると思いますが、その可能性を排除する必要もないのではないかという考えを申し述べたのであります。
  156. 西中清

    ○西中委員 それに対して橋本大臣は、当初、この問題については運輸省の中でいろいろと検討したけれども、債務の返済のためにはこれは考えられない制度だというようなかなり強い発言をしておられました。否定的な発言だったと思います。その後若干変化をなさったように私たちは印象を受けているわけでありますが、信託制度がいいとか悪いとかというのを私は論じようとは思っておりません。ただ、そういう若干の変化があったために、果たして信託制度というものが行われるか行われないか、これは総理の御答弁では、審議会で一遍検討させる、こういうことでありますけれども、果たしてそういうことでいいのかどうなのかということを私ちょっと問題にしておきたいと思うのです。  ということは、何かというと、今、日本じゅうでいろいろのプロジェクトがあります。それが、こういう制度が入ってくるのか入ってこないのかということが一つ大きな問題でございまして、国民の間で、やはりこの答弁についてもう少しはっきりしたものがなければ、今日までの計画、そしてこれからの計画、さまざまな面で影響があるわけでございますから、そういう点では、運輸大臣としてはどういうように考えておるのか、伺っておきたいと思います。
  157. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 けさほども、同様の御質問に対し、総理の御了解を受けた上で、手持ちのメモの答弁を私は正確に読み上げたわけであります。現在も、お尋ねとあれば同じことを申し上げなければならぬわけでありますが、私どもは、清算事業団の土地の処分に当たっては、あくまでも公開競争入札というものを基本として売却する方針に変わりはございません。  ただ、この場合に、信託により運用する可能性というものを完全に否定するものではありませんし、それが元本を返済するに十分な信託というものが出てくれば、これは私は一つの方向だと考えております。  しかし、現時点における検討の結果を私は先般も申し上げたわけでありますが、通常長期間にわたるものが多いということと同時に、その信託によって得られる配当というものが清算事業団の債務の元利償還額に見合うかどうかというような点につきましては問題がありまして、現段階では慎重に考えざるを得ないと申し上げております。  なお、具体的な処分に関しては、清算事業団に置かれる資産処分審議会において検討いたすことになります。
  158. 西中清

    ○西中委員 この問題は、今までも議論がありますから、これで打ち切りますけれども、しかし、一体こういう考え方が果たしてどうなのかということ。当初、やはり土地の処分は十年をめどにするのだ、何といっても橋本大臣は、少しでも高く売りまくりたいというような積極的なお話があったわけでありますから、どうなってきたのかなということはぬぐえないわけでございまして、可能性は検討するということですから、それでいいでしょう。しかしながら、私どもまだ若干残っておるということを申し上げておきたいと思うのです。  そこで、こういう信託という問題でありますけれども、この制度を事業団の土地の処分に仮に導入するとするならば、この関連法のどの法案のどの条文によって可能となるのか、伺っておきたいと思うのです。
  159. 林淳司

    林政府委員 今回の清算事業団法の業務のところに規定がございますけれども、土地の処分、この処分という言葉の解釈で信託は読めるというふうに考えております。
  160. 西中清

    ○西中委員 処分というのは、売却ではないのですか、譲渡ではないのですか。その点はどういう判断か、もう少し詳しくおっしゃってください。
  161. 林淳司

    林政府委員 信託の場合は、通常所有権を一たん移転をいたします。したがいまして、その所有権移転というところに着目して、これは処分というふうに解釈できると考えております。
  162. 西中清

    ○西中委員 信託が二十年なら二十年、その期間が過ぎた場合は、やはり所有権はまた事業団へ戻るわけでしょう。そうすると単純なる処分ではないと私は思うのですけれども、どうでしょうか。
  163. 林淳司

    林政府委員 確かに、通常の場合、信託につきましては、所有権を一たん移転しまして、受益証券を受け取ります。それで、ある一定期間、いわゆる信託期間を過ぎますと、所有権はまた戻ってくる、あるいは途中でその受益証券を売却するということもあり得るわけです。売却する場合は、これはもちろん問題はございませんし、それから所有権が信託期間が終わってから返ってきましても、一たん所有権を相手方に移転するという行為は処分という行為に当たるというふうに考えております。
  164. 西中清

    ○西中委員 国有財産法等で処分というのは、やはりそういう解釈でおるわけですか。その点はどうですか。
  165. 大出峻郎

    ○大出政府委員 お答えを申し上げます。  ただいま国有財産法の関係の御質問があったわけでありますが、これは先般の通常国会におきまして、土地信託制度を導入する国有財産法の改正というものが行われたわけでありますが、その際に若干の御論議があったわけであります。  国有財産法の二十条というところでございますが、そこには私権の設定という趣旨の言葉が出てまいりまして、これに信託が含まれるのではないかというような角度での御質疑があったわけであります。結論として申し上げますと、それには含まれないであろう、これは改正前の法律のことを言っておりますが、そういう趣旨の答弁をしているわけであります。  これはどういうことかといいますと、改正前の国有財産法の二十条一項というのは、条文を申し上げますと、「普通財産は、」ちょっと飛ばしますが、「これを貸し付け、交換し、売り払い、譲与し、又はこれに私権を設定することができる。」こういう条文であったわけであります。普通財産の処分の態様を具体的に明記をいたしまして、限定的にここで規定をいたしておったわけであります。この規定のうちの「貸し付け」とか「交換」とか「売り払い」とかあるいは「譲与」、こういう用語に信託は含まれないということは明らかであると思います。  私権の設定という包括的な用語でございますが、これにつきましては、これは改正前のでありますが、国有財産法二十条一項の場合、「これに私権を設定する」、こういうふうに規定をしておったわけであります。「これに」といいますのは、条文上普通財産にということであります。したがいまして、普通財産、すなわち国が所有する財産の上に、例えば地上権等の用益権等を設定することを意味するものである。ここに言う私権の設定には、財産権の移転を伴うようなそういう信託というものを含むと解することは困難であろう、そういうような御答弁を申し上げたことがあるわけであります。  このような観点から、改正前の国有財産法におきましては、土地の信託制度というものを法律を改正しないでやっていくことは無理ではないだろうか、こういうようないきさつがあるわけであります。  これに対しまして、今回の清算事業団法案の第二十六条第一項第二号でございますけれども、これは先ほど運輸省の方から申し上げましたように、「土地その他の資産の処分を行うこと。」というふうな規定のしぶりをいたしております。つまり処分の態様というものを特に限定しているわけではないわけであります。そこで、財産権の移転その他の処分を内容とする信託というものは、この条文の、つまり二十六条一項二号の「処分」には含まれるというふうに解するのが妥当であろう、こういうふうに私どもは理解をいたしておるわけであります。
  166. 西中清

    ○西中委員 当時の質疑によりますと、   現行の国有財産法を見てみますと、普通財産の管理処分の方法として、貸し付けとか売り払いとか交換とか、いろいろなものについて規定を設けておりますが、信託について触れた規定はなく、したがって信託を予定しているものとは解されません。そういう点からしますと、御指摘のような信託を行うことは現行の国有財産法のもとでは難しいのではないか、このように私ども考えております。   国有財産法の規定を通覧いたしましても、信託についての規定はないわけでございます。ところが、信託につきましてはいろいろ、これはもう先生十分御承知のとおり、信託というものは委託者が受託者に財産権を移転しまして、そうしていろいろと一定の指示、方針のもとでこれを運用し、そうして利益を受益者に配付するというような内容でございまして、非常にいわば今までの国有財産の管理処分の方式からいたしますと、非常に態様の違った形のものでございます こういうことで国有財産法は改正をしたと思います。したがいまして、この信託制度というのは、今までの処分の概念とは違った概念であるという重要な位置づけをしておるわけですね。  本来ですと、この事業団法において、いわゆる譲渡及び貸し付け、そして信託ということが記入されておるべきが当然ではないかというように私は思うのです。そのために国有財産法におきましても、わざわざこうして改正をして信託の条項を設けておるわけですね。そういう点で、その他の処分というような、かなり抽象的といいますか、あいまいな表現だけでなぜ終わったのかという点について、どうも疑点がとれないわけでありますけれども、その点どういうようにお考えなのか、伺っておきたいと思います。これは運輸省に聞きたいのです。
  167. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 法律の解釈問題であり、条文作成の技術上の問題でありますから、法制局から御答弁をいただきたいと思います。
  168. 大出峻郎

    ○大出政府委員 お答え申し上げます。  先ほど申し上げましたように、改正前の国有財産法二十条の規定は、「貸し付け」とか「交換」とか「売り払い」とかあるいは「譲与」とかいうような形で、いわゆる処分の態様につきまして、個別具体的に規定をいたしておったわけであります。そうなりますと、これらのそれぞれの用語の中には信託という言葉を含めて読むことは無理であろう、こういうことであったわけであります。  ところで、いわゆる処分という言葉の概念でありますが、処分といいますのは、法令におきましてはいろいろな場合にいろいろな使われ方がされます。私法上、行政法上あるいは訴訟法上いろいろな使い方がされますけれども、いわゆる財産権の関係等について申し上げますと、財産権の移転、その他財産権について、権利について変動を与えること、こういうものを広く処分というふうに言っておるわけであります。  そういう観点から考えますと、これは信託法第一条という規定がございますが、そこでは、信託というのは、「財産権ノ移転其ノ他ノ処分ヲ為シ」云々ということで、財産権の移転等をその内容とした行為でございます。したがいまして、先ほどの事業団法案の二十六条一項二号の「処分」ということは、これは特に限定をいたしておりませんから、信託という法律行為も含めて広く読めるというのが私どもの理解であります。
  169. 西中清

    ○西中委員 どうも納得しかねますけれども、これは解釈の上の問題ですから、これ以上言ってもしようがないと思います。しかし、私は別にここへ記入せよとかしないでもいいとかいうことを言っているわけではなくて、もしもこの制度を導入するならば、やはりここできちっと明記をしておかなければならぬだろうし、やらないならこれは入れる必要はない、こういう立場でおるわけですね。  ですから、その他の処分というところにこの信託制度が入るという解釈をとっておられるわけですから、これはいたし方がないと一応百歩譲りましょう。しかしながら、この信託制度の導入に伴いまして、さきの国有財産法の改正のときには、地方自治法の改正であるとか、その他予算決算会計令まで改正をいたしておるわけでありますけれども、結局この信託というものは、公正、公平という立場からいくと若干問題がないわけでもないわけですね。ですから、この信託制度はどの範囲でやるのか、先ほど財産の処分という問題で、売り払いよりも有利である、こういう話がございましたけれども、それなりにきちっとした縛りといいますか制度といいますか、そういうものを決めておかなければなりません。  そういうわけで、この信託を行う場合には、まあ法律法律としておいておきましょう、政令なり省令なりには当然きちっとした規定を必要とするのではないかと私は思うのでございますけれども、どうお考えか、伺っておきたいと思います。
  170. 林淳司

    林政府委員 私ども、将来検討して、いわゆる信託制度というのが非常に有利である、要するに、単に売り払うよりはその方が有利であるということに確信が持てた段階では、それを導入することも可能性としてはあり得るというふうに考えておるわけでありますが、その場合の処分の方法といたしましては、清算事業団法の三十条にございますように、「一般競争入札の方法に準じた方法」ということで原則として実施をしていきたいと思っております。その場合に、具体的な一般競争入札の仕方、方法と申しますか、これについては業務方法書等できちっとそれを明記いたしまして、これは運輸大臣の認可制でございますけれども、公的にきちっとそれをオーソライズした形で実施をさせていきたいというふうに考えております。
  171. 西中清

    ○西中委員 例えば国有財産法では、「土地の信託をすることにより国の通常享受すると見込まれる利益が、当該土地の貸付け又は売払いをすることにより国の通常享受すると見込まれる利益を下回ることが確実と見込まれるとき。」信託をしてはならないというような条項がありますが、こういう考え方は採用されますか、どうですか。
  172. 林淳司

    林政府委員 現在まだ具体的にどういう方法かというところまでは検討いたしておりませんけれども、いずれにしても、これが疑惑を招いたり、そういうことがないようにきちっとした基準を決めていきたいというふうに思っております。
  173. 西中清

    ○西中委員 いろいろと今お伺いをしてきましたが、この点については、やはり将来禍根を残すとか疑惑を招くようなことのないように、実は政令をこの審議が終わるまでにちょうだいをいたしたい、提示をしていただきたいと思っておるぐらいですけれども、それなりのきちっとした対応をしていただきたいと思うのです。大臣、いかがでしょうか。
  174. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 政令は、つくる段になりますと、関係各省庁との整合等々もありますので、これを提出することは不可能でありますが、実質において御意見の方向を十分体してまいります。
  175. 西中清

    ○西中委員 引き続いて土地の処分の問題でありますけれども、大臣はこれまでの答弁の中で、清算事業団が処分する用地の売却については転売禁止期間を十年程度にしたい、こういう御発言がございましたが、これはやはり具体的には政令でお決めになるのですか、どうですか。
  176. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、具体的な部分につきましては、これは清算事業団と当該譲渡を受ける相手との契約の中で縛るべき事項だと思っております。
  177. 西中清

    ○西中委員 契約の中でということでありますけれども、それはそれなりに大臣の御意向、通達なり何かというものが必要ではないかと思いますが、その点はいかがですか。
  178. 林淳司

    林政府委員 ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、これは基本的に契約になるわけでございますけれども、具体的な契約をする場合のモデル的なものについては、例えば業務方法書の中できちっと規定しまして、運輸大臣がこれを認可するというふうな形で担保をしていきたいと思っております。
  179. 西中清

    ○西中委員 確認をしておきたいのですけれども、十年の転売禁止の対象となる土地は随意契約、一般競争入札、すべてを含むのか、それとも含まないのか、伺っておきたいと思います。
  180. 林淳司

    林政府委員 通常、随契の場合にはそういう形で担保するのが妥当であろうということで、現在も国鉄等でもそれを既に実施しておるところでございますが、一般競争入札については、これは一般論としては、そういういわば転売禁止というふうな形の条項をつけるのは通常の形ではないだろうと思います。しかし、例えば東京の都心の土地でありますとか、あるいはその他大都市の地価等が非常に問題になっておって、土地転がしとかそういう投機の対象になるようなところについては、これはやはりきちっとそういう歯どめをかける必要があるのではないかというふうに考えております。
  181. 西中清

    ○西中委員 それでは少しあいまいですね。一般競争入札の場合は、歯どめをかけるケースとかけないケースがある、こういうことですね。いわゆる土地の投機がどうこうするようなところはやはり問題だから転売を禁止する、そうでないところは転売を禁止しないんだという御答弁だと思うのですが、こういうやり方が少し国民に、土地の売買について公平、公正、ガラス張りというものの印象を損なうのではないか、私はそういう気持ちを持つのですけれども、この点はいかがですか。
  182. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今、審議官の方からお答えをいたしましたとおり、一番問題なのは、例えば随意契約によって、今日までにもう幾つか当委員会で例示をされましたように、地方公共団体等に売却をされましたものが非常に短い期間のうちに民間業者等に転売をされたというようなケース、これが私は一番問題と思うケースだと考えております。それだけに随意契約そのものに対しても、何回も申し上げておりますように、私は大変厳しい申し方をしてまいりました。ただ、一般公開入札で売買をされる場合には、原則論から言いますならば、私は審議官の申したとおりであろうと思います。  しかし、この場合に考えなければならないことは、公平さ、公正さというものと同時に、これも委員会でいろいろな角度から御指摘がありましたが、例えば都市計画その他整合をさせなければならない、先行する地域の自治体における計画等があるわけでありまして、そうしたものとのバランスを見ながら、制限を加えるべき場合にはそうしたことも考えなければならないのか、今、これはまさに一般論として考えてまいりますと、私はそういう申し方の方が妥当であろうと思います。  そして、公正を旨とするその売却という一点に関してならば、これは一般公開入札というものぐらいオープンなシステムはないと私は思っております。
  183. 西中清

    ○西中委員 そうしますと、先ほどの御答弁の中で、土地の高騰が激しい地域においてはそういう転売禁止期間を設ける場合がある、これはどういう範囲を想定しておられるのか。例えば東京近辺であるとか関西圏であるとかというような具体的なことをお考えになっておるのかどうか。それから、そういうことを判断するのは審議会でやられるのかどうか、その点を伺っておきたいと思います。
  184. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、その資産処分の業務そのものについては、やはり資産処分審議会の意見を聞くべき重要な資産の範囲というものを何らかの形で考えていかなければならぬとは思います。しかし、これは資産処分審議会自身が行動をしていただくべきものでありまして、我々ができるとすれば、一定のルールを課すということでありましょう。     〔委員長退席、佐藤(守)委員長代理着席〕  そうしますと、例えば地域における土地利用への影響でありますとか、あるいはその結果として清算事業団が得る収入について、その重要性等を考えた場合に、やはりそれぞれの地域における一定の面積あるいは一定の価格といったようなものを一つの判断材料にするのかなと思います。  これは非常にあいまいな言い方なんでありますけれども、同じ面積を想定いたしましても、例えば東京の都心部で一千坪といえば大変な価値を有するものになります。しかし、北海道の原野において例えば一ヘクタールの面積といいましても、それは売却価格としてはそう大きなものにはなってまいりません。そうなりますと、これは全国的に一律の物差しを当てるというのは大変困難でありまして、むしろ今後の資産処分審議会の運営の上で種々配慮すべきことではなかろうか、そのように思います。
  185. 西中清

    ○西中委員 その辺はかなり抽象的なことになるわけで、実は心配を残すのじゃないかというふうに私は思いますけれども、でき得るならばある程度明快な基準を設定しておく必要があるのじゃないか、こういうように思います。  それと随意契約による土地の規制は、転売禁止期間だけではなくて他の規制もお考えではないかと思います。いわゆる用途指定とかそういった規制をお考えになるべきではないかと思うのですが、そういった点をあわせて御答弁を願いたいと思います。
  186. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 御指摘のとおり、随意契約で売却をいたした場合の転売禁止に違反をした場合、私どもは実はでき得るならばそれを取り返したいぐらいに思っております。しかし、善意の第三者に渡ってしまった場合にそれができない状況もあるわけでありまして、そのための違約金等も検討いたしてまいりました。  しかし、その違約金を払ってもなおかつもうかるケースがあるではないかというような御指摘も受けております。その場合に、例えば税務当局の御協力を得ることはできないかとかいろいろなことを考えてみておりますが、今こういう形で万全の対応をという結論まで達しておりませんので、これからも私どもは、これは十分検討したいと思っております。
  187. 西中清

    ○西中委員 私は、一般競争入札の場合に、やはりどう考えてもこれはそれなりの転売禁止規定というものが設けられないと、土地転がしその他の問題で土地の高騰にもつながってくる問題だという考え方は捨てるわけにはいきません。  そこで、こういうことはどうなのでしょう。昭和五十八年三月三十一日の大蔵大臣の通達は「当面の国有地の管理処分について」ということですけれども、一般競争入札の実施に当たっての条件として「落札者は、国有財産売買契約締結の日から五年間、国の承認を得ないで売買物件の所有権を第三者に移転してはならない。」こういうように通達が出ておるわけでございます。国有財産でもこういうような管理処分のやり方を厳しく規定しておるわけですね。ですから、一般競争入札はそうはやらないのだというのではなくて、それこそ運輸大臣通達で十年にするのか五年にするのかは別として、少なくともこれぐらいの措置をとっておかなければならないのじゃないかと私は判断しておるのですけれども、この点についてはいかがですか。
  188. 林淳司

    林政府委員 先生のおっしゃる御趣旨はよくわかるわけでございます。ただ、私どもとしましては、できるだけ土地を高く売らなければならぬという一つの、また国民負担軽減という要素もあるわけでございます。そこで、厳しい条件を付すれば付するほどそこがまた非常に問題になってくるという二律背反の面があるわけでございます。しかし、おっしゃるように、これが不当な土地転がしあるいは投機というものに拍車をかけるようなことは絶対避けなければいけない、これは当然でございます。したがいまして、これについて十分検討したいと思います。  ただ、国有財産の場合も、これは全面的に一般競争入札全体について条件を付しているのではありませんで、地価高騰地域だけにたしか絞っているはずでございます。したがいまして、その辺も参考にしながら、具体的には、先ほど大臣から申し上げましたように、清算事業団の資産処分審議会で公正、妥当なやり方を十分検討していただくということでございますが、清算事業団に対しましては、運輸大臣としての一般的な監督権限もございますし、そういう中で公正を十分保っていくということで対処したいと思います。
  189. 西中清

    ○西中委員 その点は一度やはりよく検討していただきたいと思います。  同時に、先ほどもう少しはっきりしなかったのですが、この通達ではやはり用途指定がしてございます。御承知のとおり、五年間物件を風俗営業などに類する業の用に供してはならない。余り縛りをすると高く売れないというようなお話もございましたけれども、まさしくそれが一つの大きな問題でございまして、日本の国有鉄道の土地というのは、何といっても、国民共有の財産という観点からいくと、あの土地がこういう形になったのか、こういう町づくりになっちゃったのかということであってはならぬと思うのですね。ですから、この転売禁止期間とともに、やはり用途指定についてもそれなりの配慮をやっておかなければならぬのじゃないかというように思いますけれども、もう一度御答弁をいただきたいと思います。
  190. 林淳司

    林政府委員 現在、国鉄等でいわゆる随意契約で地方公共団体に譲渡する場合には、これは公共用目的あるいは公益的な目的というものを達成する、当然そういう前提で随契をするわけでございますから、それを担保するために、例えば利用目的等について厳しく制限を付しておるということでございます。  一般的に公開競争入札の場合は、そのような形で土地利用を規制するというか、利用目的を限定するということが妥当であるかどうか、この辺はいろいろ問題があろうかと思います。その辺のところについては、具体的にどういう制限と申しますか、どういう条件を付するのかということについては、いろいろな観点を含めてこれから十分検討させていただきたいと思います。
  191. 西中清

    ○西中委員 そこで、昭和六十一年度中に国鉄が処分される土地の件数と面積を伺っておきたいと思います。
  192. 岡田宏

    ○岡田(宏)説明員 六十一年度内におきまして、今までに七百件の売却を行っております。残っておりますのは千百件を予定いたしております。
  193. 西中清

    ○西中委員 この事業団が発足した後の土地の処分について、いろいろと今も議論させていただきましたし、同僚議員からもたくさんございましたが、これはかなり大きな件数でございます。今、これという大した規制もなく売買をされておるわけでございまして、ある面でいったら、今土地を買うことと来年四月から仮にスタートしたとすればそれ以降とは条件が異なってくる、こういううらみがあるわけですね。いい言葉ではないかもしれませんけれども、いわば駆け込み売却というような調子でどんどん今のうちにやろう、このようなことであっては相ならぬわけであります。  もうこうして土地の売買の問題についての議論が行われているわけでございますし、これから売却される土地の方が今日まで売却した土地よりもまだ多いというような状況でございますから、今後の用地売却については、やはり転売の禁止期間であるとか用途指定であるとか、そういうものは来年のスタートと同じような条件で考え直す必要があるのではないかというように私は思うのですけれども、その点いかがでしょうか。
  194. 杉浦喬也

    杉浦説明員 基本的な考え方、問題点は、今運輸大臣並びに運輸当局からお話ししたとおりでございます。基本的には、一般公開入札の場合は条件は付さない。それから、随意契約の場合は現在ぴしっと条件を付しておるところでございますが、ただ一般公開競争入札でも、今運輸省から御答弁がありましたように、特殊な例というものがあろうかと思います。そうした点について土地転がし等の弊害がないように何か方法があるかなという点の検討はいたしたいと思います。
  195. 西中清

    ○西中委員 先ほど御答弁がございませんでしたけれども、面積はどうなっていますか。
  196. 岡田宏

    ○岡田(宏)説明員 今年度内の売却全体で四百四十四ヘクタールでございます。先ほど申し上げました千八百件全数につきまして四百四十ヘクタールでございます。
  197. 西中清

    ○西中委員 残余の面積は。
  198. 岡田宏

    ○岡田(宏)説明員 先ほど七百件、千百件と申し上げました。この全体千八百件についての面積が四百四十ヘクタールでございます。
  199. 西中清

    ○西中委員 千百件の面積はいかがですか。
  200. 岡田宏

    ○岡田(宏)説明員 千百件の面積は、ちょっとお待ちください。——既に売却いたしましたものの面積が約百九十ヘクタールでございますので、残っておりますのは二百五十ヘクタールということでございます。
  201. 西中清

    ○西中委員 大臣に最後にもう一遍伺っておきたいのですけれども、このような広大な土地の売却がこれからまだなされようとしておるわけです。ですから、大臣通達で、先ほども御説明がありましたけれども、地価高騰地域について、大蔵大臣が国有財産についてやはりそれなりの通達をお出しになって、それなりの歯どめをかけておられるわけですね。それでなくともこの国鉄の土地は、来年四月から大変な面積、三千三百三十ヘクタールを売却しようということで高い関心が集まっているわけです。今まさに今年だけで四百四十ヘクタールというような大変な土地が売られているわけでありますから、こういう点についてやはり機動的に、この大蔵大臣の通達のように当面の歯どめをすぐにやっておくということについてお考えがないかどうか、再度気持ちを伺っておきたいと思います。
  202. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 率直に申しまして、実はこの御質問を受ける時点まで、私は明年度以降いかに公明正大な売却をするかしか考えておりませんでした。ただ、今御指摘を受けて、委員の御意見もそれなりに私にもうなずけないではありません。ですから、やはり地価上昇の著しい地域におけるいわゆる土地転がしといったようなものを防止する、投機による不当な地価の上昇につながらない処分方法があるかなどを含めて、国鉄自身にもっと勉強をさせます。
  203. 西中清

    ○西中委員 十分な配慮を要望しておきたいと思います。  次に、株式の売却について、放出について伺っておきたいと思うのです。この売却の時期は三年後にそのめどをつけたいというようなお話があったと思うのですが、確認をしておきたいと思います。
  204. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 三年後にめどをつけるというのではありませんで、この前の、一体どれぐらいかかると思っておるんだという御質問に対して、さあ、三年ぐらいはかかるんじゃないでしょうかという申し上げ方をしたと私は記憶をいたしております。これはあくまでも、やはりそれぞれの会社がみずからの足で立ち、業務を行い、そしてその業務の実態というものが国民の目で見て安心をしていただける状態ということが前提でありますから、あのとき、一体めどはどうなんだという御指摘で、私はそれは三年ぐらいあればという趣旨でお答えをしたと思っております。
  205. 西中清

    ○西中委員 政府がお出しになりました資料によりますと、旅客会社の予想配当率の見通しというのが出ておりますが、六社とも昭和六十六年度まで「一応最低限五%程度の配当が可能かと思われる。」こういうふうに記載されております。確認しておきたいと思うのですが、このとおりですか。
  206. 林淳司

    林政府委員 そのとおりでございますが、ただ、これは前提条件と申しますか、ちょっと舌足らずの点がございまして、北海道四国九州の各会社も含めた六社全体で見た場合に、いずれの会社も最低限五%の配当ができるということでございまして、会社によってはもう少し高配当ができる、そういう試算のところもございます。
  207. 西中清

    ○西中委員 大変自信のあるお答えでございますけれども、そうなればそれにこしたことはないわけでございますね。  そこで、東証の上場審査基準によりますと、上場前一年間は配当が行われていること、第二点は、かつ上場後一株当たり五円、つまり一〇%以上の配当が継続できる見込みのものとなっております。その他いろいろな条件がございますけれども、一応配当という点で今申し上げておるわけでありますが、この審査基準から申しますと、六十六年度まで最低五%の配当としている政府の見通し、ここから判断するとおおむね五年間ぐらいはどうもこの基準に達しそうにないな。今ちょっと、中にはいいところもあるでしょうというお話でありますけれども、常識的に考えて上場は難しいのではないかというように私は判断するのでございますが、いかがでしょうか。
  208. 林淳司

    林政府委員 国会の方にお出ししました資料は、私どもが一応の前提を置きまして試算をしたものでございます。それで見ても五%程度の配当は可能であろう、こういうことでございましたが、実際に来年度以降分割・民営化された会社、これが従来の国鉄と違って非常に活力を持ってくるということになりますと、その経営努力というものが、その成果が出てくる可能性もあり得る。  そのほかに、例えば関連事業でございますけれども、関連事業については、基本的には従来国鉄がやっておった関連事業、例えば駅ビルですとかあるいは直営売店ですとか、そういう関連事業、附帯事業をある程度拡大するということでございますが、その他のいわゆる多角経営と申しますか、そういう事業については見込んでいないということでございますので、そういう事業がかなり展開できればそれなりの収益性も見込まれるということであります。したがって、全く可能性がないということではないんじゃないかというふうに考えております。
  209. 西中清

    ○西中委員 今の御答弁によりますと、一〇%程度に到達する、そういう配当が行える時期というのは大体どのように予測をしておられるのか、伺っておきたいと思います。
  210. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 これはちょっと御質問の方が難し過ぎまして、むしろその時期を示せる日が一日も早く来るように努力をしたいという答弁で御了解をいただきたいと思います。
  211. 西中清

    ○西中委員 私もその質問をするつもりはなかったのです。ただ、まさに五%を超える配当がすぐにできるようなことをおっしゃるからつい言いたくなるわけです。  そこで伺っておきたいのですけれども、上場基準に達しない程度で株式を売却することはあり得るかどうか、この点はどうでしょうか、上場しないで。
  212. 林淳司

    林政府委員 やはり株式を売却するときには、上場基準に達して上場するという状態で売却するのが、売却収益というものを最大限に確保するためには必要ではなかろうかというふうに思っております。
  213. 西中清

    ○西中委員 六つの会社ないしは貨物会社等がございますが、収益はそれぞれ企業努力その他で将来違ってくると思うのです。したがって、配当も同じように、どこの会社も足並みそろえて一〇%を達成するような状況はまず想像しがたい。そういう中で、株式の処分というものはばらばらに条件を満たしたところからやっていくのか、それとも全社が大体そろう時期を待ってやっていくのか、その辺はどういう判断でございましょうか。
  214. 林淳司

    林政府委員 これにつきましては一斉に行う必要は全然ないわけでありまして、そういう可能性が出てきたところから逐次やっていけばいいのではないかというふうに思っております。
  215. 西中清

    ○西中委員 収益の開きが起こってくるという点で申し上げますと、一番心配なのは三島の経営でございます。この三島会社の収支、これは皆さん方の見通しとしては黒字が出るということになっておるわけでございますけれども、仮に収益が悪化した場合、いつまでも株式の放出ができないのは言うまでもございません。同時に経営そのものも心配になるわけでありますけれども、基金の積み増しはお考えになるのかどうか、伺っておきたいと思うのです。
  216. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 これは資料としてお目通しをいただいておりますとおりに、私どもは、再建監理委員会の答申に基づく数字を改めて精査をした上で、不足と思われる額を積み増して安定基金をスタートさせております。それだけに、関係者の努力により経営はこれで十分成立をすると考えておりますし、安定基金の積み増しを必要とするような事態が来るとは考えておりません。
  217. 西中清

    ○西中委員 一般的にも、それからせんだっての公聴会におきましても、やはり三島の経営については国民の間では非常に危惧を持っていることは事実でございます。その際、考えてはおられないでしょうけれども、そういう状態を予想しておられないということはわかりますが、実際に赤字がどんどん累積されるというような状況が起こったときにはどういうふうにされるのですか、それを伺っておるのです。
  218. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 これは困りましたな。私どもは、経営が努力によってうまくいくという状況をつくり上げて三島会社スタートさせようとしているわけでありまして、うまくいかない場合を想定した対策というのは、今ちょっと私どもとしては申し上げられません。むしろ、きのう、例えば貴党の御質問に対して総理から、四国会社はこういう形にすれば大変バラ色の夢が描けるという御答弁もあったぐらい、我々は将来への可能性を持ち得ると考えております。
  219. 西中清

    ○西中委員 では、その問題はこれまでにしておきます。  次に、鉄道弘済会について伺っておきたいと思います。  今度の改革で関連して大きな影響を受けるのは鉄道弘済会ではないか、こういうように思います。この財団法人のこれからの運営は一体どういうふうになっていくのか、まず概略を御説明いただきたいと思います。
  220. 杉浦喬也

    杉浦説明員 鉄道弘済会は、今運営している事業が大きく分けまして二つございます。一つは、いわゆるキヨスクという駅の売店を主体といたします収益事業でございます。もう一つは福祉部門、公益事業を抱えておるわけでございまして、収益部門の収益から公益部門へお金を回しまして福祉事業をやっているというのが現状でございます。  これからどういうふうにするかということにつきましては、今私の方でも検討いたしておりますし、運輸省とも御相談をし、結論を将来出す必要があるわけでございますが、現在私ども考えております概略の考え方としましては、収益部門を独立させまして一つ一つの地域の旅客会社とタイアップしませんとなかなか——旅客会社自体の利便もありますし、またキヨスク自体の発展も必要があろうかと思いますので、それぞれの旅客会社の区分に対応いたしました株式会社をつくる、つまり六つのキヨスクをつくっていく、こういうようなことを考えております。  それから、公益事業につきましては、これを分離、独立した公益法人にいたしまして、ここに基金を設け、その運用益等によりまして従来の福祉事業を若干狭めた福祉事業の形で今後も継続をしたい、これが一般論でございます。
  221. 西中清

    ○西中委員 そうしますと、六つの販売会社といいますか、キヨスクの部分の会社、それと一つの公益法人ということですね。この法案が仮に通過をいたしましたとするならば、四月一日から本体の国鉄の方は分割をされるわけでありますけれども、弘済会は同時に分割をすることになるのか、別の時期なのか、その辺はいかがお考えでしょうか。
  222. 杉浦喬也

    杉浦説明員 その辺は今鋭意詰めておる段階でございまして、必ずしもぴったり同時ということにしなくてもいいのではないかと思いますが、時期等についてはよく検討いたします。
  223. 西中清

    ○西中委員 この会社、キヨスクというもの、これは現在駅の構内等国鉄財産の中に店を張っておるというケースが多いわけですね。いわば別会社ではあるけれども、これは極めて密接な関係を持っておる、こういうことですから、この会社、新しくできる販売事業の会社というものはやはり国鉄と深いかかわりを持ちながらこれからも事業をやっていくということになると思うのですね。したがいまして、この会社と新会社とはどういう関係を持つのか、全く別の存在とするのか、または株式の保有をするのか、そういった点はどのようにお考えになっているのか、伺っておきたいと思います。
  224. 杉浦喬也

    杉浦説明員 事実上非常に緊密な連携が必要かとは思いますが、資本参加をどうするか等も含めまして今検討中でございます。
  225. 西中清

    ○西中委員 当然この事業会社は、今日までも国鉄に一つの収益があったわけでございますけれども、六十二年度の旅客会社の収支見通しや六十六年度までの収支見通しの中にこれらの収益が計上されていると思うのですが、その点はどうなっているか、明らかにしていただきたいと思います。
  226. 林淳司

    林政府委員 現在、鉄道弘済会が駅等で売店等を経営しておりますが、これは国鉄に貸付料を払っているわけです。これについては、今回の収支試算でも、それぞれの分割会社に同様の関連事業収入として貸付料を収入計上しております。
  227. 西中清

    ○西中委員 そうしますと、恐らく出資をされるのではないかというように私は思っておるのですが、出資額は計上されておりますか。
  228. 林淳司

    林政府委員 現在、鉄道弘済会と国鉄の間には出資関係はございません。したがいまして、将来の会社の経営方針としてそういうことをやるかどうかというのはこれからの問題でございますけれども、現段階では、収支試算にはその出資は計上しておりません。
  229. 西中清

    ○西中委員 そういうことになると、六十二年度及びそれ以降の出資額が入っておらぬということですから、収支の見通しとしては若干狂いが出てくるということでございますね。
  230. 林淳司

    林政府委員 計上しておりませんので、確かにおっしゃるとおりかもわかりませんが、具体的な段階になりますと、額としてはそれほど大きな額ではないと思いますし、これは会社スタート時点での現実の経営判断に基づいて行われるものであろうというふうに考えております。
  231. 西中清

    ○西中委員 仮に一〇〇%出資するとするならばどの程度のものになるか、伺っておきたいと思います。
  232. 杉浦喬也

    杉浦説明員 検討中の問題ではございますが、ちょっとまだ数字を詰めておりません。
  233. 西中清

    ○西中委員 この問題については、またお知らせをいただきたいと要望しておきます。  それから、今、国鉄自身が民間私鉄並みの経営をしなければならないということで、全国で直売店をふやしていらっしゃいますね。そういう点で、キヨスクと直売店、これは置く品物によってはそう競合しないかもわかりませんけれども、弁当を売る場所で競合している駅も拝見いたしております。そういうような形で、直売店とキヨスク、この事業は、私鉄としてこれからどんどんやっていくとするならば競合が激しくなる。こういう点でやはり何らかのめどをつけて、双方がうまく立ち行くようにしていくということが必要だと思うのですね。ですから、直売店と弘済会の売店との比率をバランスいいものにしておかなければならぬと思うのです。どういう考え方でやるか、ちょっと伺っておきたいと思います。
  234. 杉浦喬也

    杉浦説明員 考え方としましては、直接店舗を持って大いに関連事業をやりたいというのが活性ある民間企業のあり方だと思うのです。ただ、キヨスクという現在存在するものがございますので、今先生おっしゃいますように、それとの調整を十分に図りながら両方うまくやっていきたいというのが私の現在の気持ちでございます。
  235. 西中清

    ○西中委員 それから、六会社という売店事業会社ができるわけでありますけれども、この収支は一体どういう状況になるのか、また見通しはどうなるのか、特に三島については心配をいたしておりますが、この点について御説明をいただきたいと思います。
  236. 長谷川忍

    長谷川説明員 ただいま六キヨスク会社の収支につきましては検討中でございますけれども、ただ、三島のキヨスク会社につきましては、確かに御指摘のとおり収支は生易しいものではないわけでございまして、その点、現在、できるだけ効率化を図るように、例えばパート化を図るとか、そういった経費規模の圧縮を一方で考えつつ、逆に、収入をふやすいろいろな手だてを弘済会の方で御検討いただいております。     〔佐藤(守)委員長代理退席、委員長着席〕
  237. 西中清

    ○西中委員 その点は、三島は本体と同じく非常に厳しい状況になると思います。したがって、十分なる配慮をしていただくように要望しておきたいと思います。  それから、福祉事業でございますけれども、公益法人一本としてやっていくんだというお話でございますが、その財源は一体どういうことになるのか、御説明をいただきたい。恐らく、今までの事業の中では非常に困難ではないかというように私は推測いたしておりますが、旅客会社が何らかの拠出をするというようなことがあり得るのかどうか、伺っておきたいと思います。
  238. 長谷川忍

    長谷川説明員 六十年度の実績で申し上げますと、社会福祉事業の弘済会の規模は四十三億でございまして、そのうち十八億程度のものは、国あるいは地方自治体等の助成金で賄っているという状況でございます。ですから、差し引き約二十五億のものがキヨスクの収益事業から補てんされているというのが六十年度の実績でございまして、結局、弘済会のキヨスク分が分離されますと、その二十五億の収益事業からの補てん部分をどうするかという問題になるわけであります。  その点につきましては、先ほど総裁からも申し上げましたように、一つは、基金を設定いたしましてその運用益でどこまで賄えるかという問題でございまして、その点、現在弘済会の方で検討しておりますのは、現在やっております福祉事業を極力効率化する方法はないかということが一つございます。一方、現在弘済会が持っております財団法人としての財産、資産を細かく今検討しておりまして、そこで、運用益を生み出せる資産はどの程度あるか、そういうことを検討しておりまして、現在、両方合わせまして対応がどこまでできるか、検討中の段階であるというわけでございます。
  239. 西中清

    ○西中委員 この福祉事業が縮小されることがないように、十分にひとつ検討いただきたいというように要望しておきます。  あと、時間も迫ってまいりましたので、整備新幹線について若干伺っておきたいと思います。  この問題につきましては、総理が九月三日に全国知事会で、計画凍結の政府方針の見直しに積極的な意向を表明されました。その後、凍結見直しは言ってはいないんだ、ただ、希望の灯は消してはならないと言っただけだというように、若干慎重な姿勢に変わられたように受けとめておりますけれども、総理の本当のところはどういうお心であるのか、伺っておきたいと思います。
  240. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 私は選挙前から、希望の灯は消してはいけない、そういうことを言っておりまして、終局的にも整備新幹線は完成さすべきであると思っております。  ただ、財政状態がこういう状況であり、まだ調査も不十分な状況でございます。したがいまして、問題検討委員会の検討を経た上で、もしそれが是であり、諸般のいわゆる障害となっている問題について解決が見込まれ、そしてちゃんとした手続が済めば、これは今までの閣議決定を変更してそれに入る、そういう手続になるでしょう、そういうことを申し上げたので、現在はその検討をしていただいている、そういう状況でございます。
  241. 西中清

    ○西中委員 検討委員会の検討のめどは遅くとも六十二年四月まで、こういうようにされております。  一方、自民党の交通部会等三部会は、八月二十二日に、「六十二年度整備新幹線建設予算は全額公共事業費として必要額を確保すること。」とし、さらに検討委員会は、「これが実施に支障を来さない時期までに結論を出すものとする。」というふうに決定をいたしております。これは、我々の受けとめ方としては、予算編成までに検討委員会の結論を出すというように受けとめられるわけでございますけれども、この決定についてはどういうように対処されるか、伺っておきたいと思います。
  242. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今委員が御指摘のように、総理からの御答弁のとおり、私どもは今、整備新幹線財源問題等検討委員会におきまして、財源問題、また国鉄分割・民営化後における建設主体、運営主体のあり方、並行在来線廃止の具体的内容等、着工の前提条件についての検討を行っている最中でありまして、関係省庁の局長クラスで構成されております幹事会は六回、また課長クラスで構成されておりますワーキンググループは今までに十五回開いて検討を続けてまいりました。そして、今お触れになりました新幹線の建設方式について自由民主党が意見をまとめられたことも、もちろん承知をいたしております。  そうした状況等を踏まえ、また同時に整備新幹線が従来までの新幹線と比べて輸送需要などの面で差のあることをも考慮し、現在その取り扱いについて検討を進めているところでありまして、できるだけ早く結論を出したいと願っております。
  243. 西中清

    ○西中委員 早い時期というのはわかるのですが、年内と考えてよろしいですか。
  244. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 この委員会の座長は官房長官でありまして、私どもはいわばその事務局に当たる立場でありますから、できるだけ早くという以上はお許しをいただきたいと思います。
  245. 西中清

    ○西中委員 この新幹線に関連しまして、いわゆる新技術者集団という構想があるわけでございますね。鉄建公団と国鉄とを一つにして技術者を集める、それによって新幹線を建設しようという構想だと思うのですが、大臣は就任後の記者会見で、どちらかといえば否定的、消極的な発言をされておりました。それは今どうなのか、変わっていないのか変わっておるのか、その点を伺いたいと思うのです。  同時に、御答弁をいただきたいのは、結局これが実際にスタートする場合には、鉄建公団法とか新幹線整備法の改正が必要となるのではないかと思います。その点を確認しておきたいと存じます。  さらに、もしもその集団ができるとするならば、今私たちが審議をいたしております国鉄改革施行法案の見直し、こういうことに相なると思うのですが、この三点について伺っておきたいと思います。
  246. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 実は私は党内におきまして、おまえ、新幹線のことを余りしゃべるなと、いつもしかられております。なぜなら、おまえの県は新幹線ができている県だから、できている県のやつにできていない県の痛みがわかるかということでおしかりを受けることがしばしばでありまして、大変お答えをしにくい点であります。  しかし、今御指摘を受けました新技術者集団、自由民主党の中においてこうした構想が検討されており、御議論があるということも私自身承知をいたしております。同時に、私は、鉄建公団が過去におきましてその存廃が大変問題になりましたときに、青函トンネルの工事が完成するまでという時限を切り、その時期をまとめた党側の責任者でもございました。そうした両方の側面から、私は就任以降、自分なりの感想を申しております。  今御審議をいただいておりますこの法律案と、青函トンネルの完工というものを目途にその後の鉄建公団の姿を考えていくということから申しますならば、私どもは直接関係のあるものとは考えておりません。また、整備新幹線の建設主体というものをどうしていくかにつきましても、これは実はまさにこの財源等の検討委員会の中で検討をされていくべき事項として扱われておるものでありまして、今その内容を云々する状況にはないと私は考えております。
  247. 西中清

    ○西中委員 時間が参りました。終わります。
  248. 細田吉藏

    細田委員長 これにて西中君の質疑は終了いたしました。  次に、阿部昭吾君。
  249. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 国鉄改革の審議がだんだん終局に近づきつつある。今の国鉄改革というものの中で、何かこう行き詰まったから民間に渡す、こういう受けとめ方になっておる、実際は。しかし、そうではなくて、今のような時代に次の我が国の鉄道の進路を一体どうするのか、こういうもう少し積極的な面の問題がこの国鉄改革の中で明らかにされていく必要があるのではないかと思うのであります。  今整備新幹線の議論が行われました。今、国全体の姿を見ますと、新幹線のあるところ、それと大体並行して高速道路が通っておるのであります。新幹線もない、高速道路もないという地域とある地域とでは、ちょうど世界における南北問題のような問題が起こっておるのであります。しかし、それじゃ日本じゅうに全部新幹線のネットワークが簡単にできるかというと、これはそう簡単にいかないのであります。したがって、こういう中で、今度の国鉄改革でこれが民間に渡っていく、そうなった先はますます、民間でありますからもうかることを積極的にやらなきゃいけない、収益性の低いようなところはやはりどんどん手を抜かざるを得ない、これが新しい鉄道会社が直面しておる一つの問題であります。  さっき運輸大臣は、私のところは新幹線の通っておるところなんで、余り物を言っちゃいかぬなどと言われておると言われましたが、私は、やはり鉄道の問題を論ずる以上、日本の国全体の将来の展望をどうするのかということを踏まえて国鉄改革というのは論じられなければならぬのではないかと思うのであります。そういう面で、今日の鉄道輸送というのは、私は、都市間の物流あるいは人間の輸送というのが鉄道の今後の使命、そういう意味で、地方都市がだんだん力を失っていく中では、山手線がどんなに繁盛しても、大きな意味の鉄道の進路というのは、大きな力を培っていくことはできないんじゃないかと思うのであります。  この間、北海道の地方公聴会に行ってまいりました。あそこで、この数年の間に一万人以上の国鉄から去らざるを得ない人が出てくる。炭鉱は全部だめになってくる。漁業も大変、鉄鋼もだめ。こういう中で一体どうするんだ。したがって、国鉄改革は賛成する。しかし、政治の責任において、雇用の創出ということに対して、単なる経済界の流れのままで、北海道がどうなるかということや、日本全体の中でも南北問題のような状況がどんどん広がっていく中での雇用の創出を、全体のバランスをとってどういうふうに展開するかということに、政治はこの国鉄改革と並行して責任を持つべきではないかという議論が公聴会でございました。  私は、そういう総論めいたことを申し上げたのでありますが、一つは、例えば整備新幹線問題が出ましたけれども、民間に渡ってから以降のもので本当に整備新幹線をやるとすれば、新しい鉄道会社もどこかにちょっぴり参加をする、いろんなものを組み合わして。その中の中心は、率直に言って財政が相当のことをやらなければ、今考えられておるような、整備新幹線をどんどんやろうなんというそんな体制にならぬだろうと私は見るのであります。それは、そう簡単に進んでいいのであろうかという問題もまた起こってくると思うのですよ。  そこで、例えば今までの大がかりな新幹線、ああいう姿のものとはちょっと角度を変えて、今の日本の鉄道をもうちょっと軌道の幅を広げた広軌鉄道にしていく。二百二十キロは困難だけれども、百八十キロぐらいのことはできるというようなものにしていくとか、それならば幹線鉄道というものをやるのに一体どのくらいのことをやらねばならぬかとか、いろいろなことで大改革をやって、今までやってしまったところはいいけれども、あとのところは幹線も何も、もうかるかもうからぬかだけで、民営会社でありますから考えざるを得ない。その先のことをどうするのかということについては、私は、政治の責任というのは相当明らかにしていく必要があるのではないかというふうに思うのであります。  非常に総論めいたことで申しわけないのでありますが、お考えをお聞かせ願いたいと思うのであります。
  250. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、委員が述べられた全体の大きな絵図面について反対をするものではございません。鉄道の整備というものがそれぞれの地域において大きな役割を持つことも承知をいたしております。  ただ、今例示に挙げられました北海道全域の雇用問題となりますと、これは私の一存で御答弁のできる話ではありませんので、こうした点についての意見は控えさせていただきますが、今、鉄道の将来に一つの希望を持たせるという意味から、現在の在来線の広軌化といいますか標準軌化といいますか、こういうことを考えてはどうかという点については、私どもの立場から申し上げるならば、仮に狭軌の在来線を標準軌に広げて新幹線の代替としてのスピードアップを図るとすれば、まず少なくとも曲線の部分、カーブの部分の改良は必要であろうと思います。また踏切の立体交差化なども必要でありましょう。こうした大規模な改良工事が相当程度必要ではなかろうか。また、トンネルの径などもそのままでいいのであろうかどうであろうか。あるいは貨物列車など在来線との直通運転のための対応を図ることなどについては、まだ技術的に開発すべき問題が相当残されておると私は聞いております。  ですから、仮に今のような御意見を採用するとしても、それを一体どこの線区に当てはめるのか、また、そういう改良を行うことによってその効果は大変大きく異なる場合もあるでありましょうし、これらは今後の検討課題であろうと私は考えております。
  251. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 今運輸大臣が言われますように、例えば広軌条鉄道で百八十キロぐらいのものをやろうといっても簡単じゃないのです。例えば踏切だけでも、幹線系といっておるレール全部で、たしか幹線系線区は今一万四千三百五十一カ所ぐらいの踏切がある。この踏切の三分の一ぐらいはなくするとしても一万カ所ぐらい、半分踏切を廃止して半分だけやるとしても五千カ所ぐらいの立体交差をやらなければできないということなんでありまして、トンネルだけでも千九百カ所以上あるのであります。これがそのままでやっていけるかというと、そうもいかない。鉄道橋だって、これは大小合わせると二万六千ぐらいあるわけであります。それでも今の新幹線というのは、これは百年、二百年たってももつのかどうか知りませんけれども、とにかく大変なものである。フランスの高速鉄道などと比べてみましても、とにかく大変な中身のものだと言われるわけであります。  そういう意味で、日本の鉄道の前途というのは、このまま民営に渡して、そのままということになれば、整備新幹線というのは、その鉄道会社をどこかにちょっぴり参加させて別のところでやらなければ、そう簡単にいくものじゃない。  それから、さっき申し上げましたように、国全体のバランスのことを考えますれば、幹線系線区と言われるようなところは順次何らかの意味で——まだこういう線区で複線や電化が終わってないところもたくさんあるのであります。そういうようなものをどうしていくのか、これは民間会社になってからどういうことになるのか、実際は非常に困難なものだろうと私は思う。そういう意味で、この鉄道改革というのは、今はみんな後ろ向きにとらえられておるのでありますけれども、将来の鉄道の進路をどうするかということをもう少しはっきりさせていくことが必要なのではないか。  例えばリニアモーターカーなんというものは相当長い期間研究されたわけでありますが、今どのあたりまでいっているのか、将来どのあたりからこのようなものは実用化されるような見通しを持っているのかというようなことなども、いろいろな角度で我が国鉄道の進路というものを、行き詰まったからこうするんだということじゃなくて、将来こういう展望を切り開くのであるということを今度の国鉄改革の中で明らかにする、もっと鮮明にしていくということが政治の責任なんじゃないかと私は思うのであります。
  252. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 先日も私はどなたかに御答弁を申し上げたわけでありますが、私どもは決して後ろ向きの対応として今回の法案を御審議願っているつもりはございません。むしろ線路というもの、長年国民に親しまれてきた鉄路というものを生き残らせながら、委員も御指摘のように、中距離都市間の輸送、また大都市圏における通勤通学輸送、国民が今まさに鉄道に求めている使命に向けて再編成をし、新たなスタートを切り、そしてよりすぐれた存在になっていってもらうことを願いながら、この改革は御審議を願っているわけであります。  その中におきまして、今御指摘になりましたような国鉄の技術、これが将来に夢をつなぐものであることも間違いがありません。今国鉄が開発しているリニアモーターカーは、時速四、五百キロメートルの高速輸送、超高速というものを目指して大変研究が進められておると聞いております。ですから、技術的な部分につき委員がもし御必要でありましたら技術当局から説明をしてもらいますけれども、この改革において財団法人として鉄道技術の総合的な研究所を設立し、リニアモーターカーの研究部門ももちろんここに引き継いで、ますます技術の発展、普及を目指しておるのもそうした観点からであります。
  253. 岡田宏

    ○岡田(宏)説明員 ただいま大臣からお話がございましたように、国鉄におきましてリニアモーターカーの開発を進めているわけでございますが、この場所は、宮崎に七キロの実験線を持ちまして進めております。今次の改革に当たりましては、この実験線は財団法人鉄道総合研究所に引き継ぐということにいたしているわけでございます。  現在どこまで進んでいるかということを申し上げますと、宮崎の実験線におきましては、かつて逆T型のガイドウエーで五百十七キロという速度を達成したわけでございますが、その後ガイドウエーをより実用的なU型のガイドウエーに直しまして、三両編成の有人走行を行ったわけでございます。一応その成果が出ましたので、今回お金をいただきまして電源装置を今増強しているところでございます。  十二月にはそれが完成をいたしまして、この新しい電源を強化したもの、それから四十四人乗りのプロトタイプ車両をつくることにいたしておりますが、これによりまして実験を繰り返す。そういったことで、今の見通しといたしましては、三十キロないし五十キロ程度の短距離での実用化ということにはおおよそ二年程度でめどがつけられるのではないかというふうに考えております。  さらに、より長大編成でございますとか、あるいはもっと長い区間での使用ということが当然考えられると思いますので、そういったものにつきましても今後三年程度を目途としてめどをつけていきたいというふうに考えているところでございます。
  254. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 これは国民が考えておるよりも、今の御答弁ですと三年ぐらいの間にあるめどが出てくるということでありますから、こういうものが本当に実用化されていくということになれば相当状況は変わってくるのだろうと思うのであります。しかし、そうはいいましても、技術的には可能であっても実際上の経営的な意味で成り立つかどうかというのは、私はそう簡単なものではなかろうと思うのでありますけれども、整備新幹線との関係でぜひひとつ——新会社が始まる、もう難しい鉄道の問題は、時代の変化でいろいろな意味でずれが出てまいりました鉄道というのは民間に渡すんだということでは済まない問題がある。  そういう意味で、整備新幹線はもちろんのことですけれども、今の幹線系線区のこと、これなども将来一体どのように位置づけていくのか。枝線のことまで全部やれといったって、それは民間にゆだねていいのではないか。しかし、幹線系線区の将来展望ぐらいのものはやはり政治の責任において組み立てていかなければ、新幹線が進み、並行して高速道が進む、その地域だけはどんどん肥大化していって、そうでない地域はどんどん細っていく。これは私はやはり国の進路にとっても重大な問題であろうと思うのであります。したがって、整備新幹線とともに幹線系線区の将来のあり方について、今度の国鉄改革の中において将来どう扱っていくのか、どういう展望をはっきりさせていくのかということをぜひひとつ明らかにしてもらいたい、こういう希望であります。いかがでしょうか。
  255. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 整備新幹線につきましては、先ほど来御答弁を申し上げておりますとおりの現況でありまして、官房長官を座長とする検討委員会において真剣に検討を続けてまいります。  ただ、委員指摘のように、その幹線系線区というものを国が云々ということは、私は必ずしも賛成をいたしません。むしろ国がという名目のもとに、今まで国鉄がさまざまな問題を抱えてきた、その反省が今回のこの民営・分割という方針を持ってきた中には一つあると私は思っております。そして、あくまでもこれから先の鉄道というものが本当に伸び伸びと羽ばたいていくためには、むしろ民営という手法の中で将来を目指す方がよりすぐれた成果を上げ得るということでこうした方向をとったわけでありまして、それをまた部分的に制約を加えるような事態は、私は長い目で見たときに決して望ましい方向ではないのではなかろうか、そのような感じがいたしております。
  256. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 今の大臣の考え方ですが、整備新幹線というのも同じことなんですよ。それ以外のところはどうするのだ。整備新幹線にしても、今官房長官が座長で責任者でやっておられるということでございますけれども、どっちみち何らかの方向を出すわけでしょう。国全般の中から見ると、分割・民営の中で北海道などは、今後どういうような姿を出せるかについて、彼らは全く自信がないと言うのですよ、公聴会に行ってみますと。六人の公述人がおりまして、あなたはこの経営の中に参加しますかと言ったら、その自信がありませんと言う人が大半で、一人だけはいろいろな前提条件があるならばやってみてもいいというのがいましたけれども、それはやはりみんななかなか深刻なんです。  そういう意味で、整備新幹線は何らかの意味でやりますよ、あとは三島は基金だけですよ、これで果たして国土の均衡ある発展というものを政治の責任で目指すことになるのかどうかということなんであります。私は、民間会社に対して——民間会社は民間独自の立場でいくわけでありますが、どうしたって収益性の高い部分は大いにやるけれども、収益性の低いところはどんどん手を抜いていくという格好にならざるを得ないだろうと思うのであります。そういう意味で、国土の均衡ある発展という政治の責任との関係で、この鉄道の進路を一体どういうふうに考えていくのかということはやはり責任があるのじゃないかと私は思うのです。
  257. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 困りましたな。私どもは、これもたびたび繰り返しておることでありますけれども、三島会社についても、経営安定基金を、再建監理委員会の数値を見直し、実質より増額をする必要があると思い、積み増しをして今御審議をいただいております。そして、それだけかという委員のお話でありますが、逆に本州の各会社、三つの会社はその資産に応じた債務も承継するわけであります。三島会社にはその債務も負わせておりません。その中でそれぞれの足で立てるような状態の試算をし、それなりの目安を得て御審議を願っているわけでありまして、私どもなりにそうした点にも考慮は加えておるつもりであります。
  258. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 この問題だけやっておるわけにはいきませんけれども、私が冒頭に申し上げましたように、今度の国鉄改革に対して全般的に受け取られておる国民の感じは、行き詰まったから民間に渡していく、こういう感じで受け取られておるわけであります。したがって、私は、やはり国土の将来の、政治が描くあるべき展望というものを明らかにして、その中で鉄道は何をやっていくのかということがなければいけないのだろうと思うのであります。  そこで大臣、観点を変えますけれども国鉄内における労働組合と国鉄総裁との間に第二次労使共同宣言というものを締結されておる。この中身は御存じでしょうか。
  259. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 一字一句記憶はいたしておりませんが、その方向は存じております。
  260. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 私はこの中身を見まして、大変なものだというふうに感じておるのであります。 この第二項は、    あるべき労使関係について   今後の鉄道事業の発展のためには、相互の理解と信頼に基づいた新たな労使関係の確立が何よりも重要であることは労使の一致した認識である。この観点に立ち、「組合」は組織的統合への一層の努力を払うとともに、労使は「国鉄改革労使協議会」における議論を更に充実させ、「国鉄改革労使協議会」が今後の鉄道事業における労使関係の機軸として発展的に位置づけられるよう、緊密な連携、協議を行う。  このような労使関係の帰結として、「組合」は この次なんであります。  今後争議権が付与された場合においても、鉄道事業の健全な経常が定着するまでは、争議権の行使を自粛する。 こういう中身であります。  今まで日本の労働組合で、日本だけじゃないと思うのでありますけれども、労使の間の約束事として「争議権の行使を自粛する。」などという協定は、率直に言って近代資本主義社会においては余り例のないことなんであります。こういう中身の労使共同宣言が行われておるという事実は、国鉄の労使の間に今度の改革をどうしてもなし遂げて、しっかりした鉄道会社の進路を切り開こうということで、非常に苦しみ抜いた結果こういうものがつくられるに至っておる、私はこういう認識をしておるのでありますが、運輸大臣はどういうふうに考えられるか。
  261. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私はこの仕事に入ります前、全繊同盟呉羽紡績労働組合の執行部の一員でありまして、三十六年の全繊のストライキの執行部を突き上げた張本人の一人でもあります。そういう記憶を持ちますだけに、この共同宣言の中に書かれております「争議権の行使を自粛する。」という文章の重みは、恐らく大抵の方々と同じくかあるいはそれ以上に理解ができるつもりであります。  私どもからすれば、個々の労働組合の内容あるいは労使間の協議に口を入れるべきことではありません。ただ、労使双方の協力のもとにこの改革が円満に、より国民に喜ばれ親しまれる姿の中で移行することを願うのみであります。
  262. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 そこで、きょうのニュースが報じておることなんでありますが、この共同宣言を結んだ組合の数はたくさんある、改革協と呼ばれる協議会をつくっておるたくさんの組合があるのでありますが、このたくさんある組合が近く新しい鉄道会社の発足を目指して一つにまとまろう、こういうことを決めたというのがきょうのニュースであります。その組合に参加をする組合員の数は十二万を現時点で超えるであろう、こういう報道であります。  私は、この国鉄改革の進路に対して、それをこれから担っていくであろう職場の皆さんがどういう決心を持っているか、労使間に本当の意味の信頼をつくっていこうという熱意があるかどうかということが鉄道改革の将来にとってまことに重要な問題の一つだ、こういう認識をしておるわけであります。そういう意味で、今私はあえて運輸大臣に、この共同宣言の中身というものを御存じか、その中身をどのように御認識になっていらっしゃるかということを伺ったわけであります。  そこで、こういう状況がある反面、職場の中におきましては、共同宣言を結んでおる人たちとまだそこまで至っておらない人々との間にいろいろな意味で、人間関係の本当に深奥まで触れたいろいろなトラブルやいろいろないきさつがあるのであります。そういう中で今後だんだんこの改革が、この法律が成立をいたしまして具体的に来年の四月に向けてその準備の段階に入っていく、こうなります場合には職場の中でまだいろいろなことが起こり得る。例えば、先日、全国的に国鉄改革推進フェスティバルなるものが方々で開催されました。このような行事を開かせまいという人たちと開こうとする人たちとの間で小競り合いのようなものが幾つかのところで起こっておるという事実もございます。私のところにある方から手紙が参りまして、具体的には長野だそうでありますけれども、そこで警官の皆さんが出動するほどのトラブルになったというふうに聞いておるのでありますが、どのような事態だと把握されておるか。特に、今後だんだんと国鉄の問題が具体的にいろいろなことをやらねばならぬ段階に入っていくときに、やはり不正常なトラブルなど起こらぬようになってもらわなければならぬ。  そういう意味で、この間の国鉄記念日の際に二、三の地域でトラブルがあったと聞いておるのでありますけれども、その状況をどのように把握されておるか、お伺いしたいのであります。
  263. 杉浦喬也

    杉浦説明員 各地で先生おっしゃいましたような国鉄改革へ向けましてのいろいろな集いあるいは協議会が持たれております。  今御指摘の長野で、今月十四日にそうした集いを開こうという計画がございました。関係者が集まったわけでございますが、それに反対する人たちが会場の入り口でピケを張りましてこれを阻止し、両者の間で小競り合いが行われ、結局はその集会が中止になった、こういういきさつでございました。  私どもといたしましては、このような改革の気持ちで職員が相集い、将来に向かって頑張ろうという、そうした動きというものは非常に歓迎をいたします。それに対しましてこうした妨害行為が行われるということは極めて残念であります。組合員全員に対しまして、私は常日ごろから全く公平、平等に対処しているつもりでございますが、今までのいろいろないきさつ等がございまして、主義主張が違う、また改革への方向が、理解できない、理解するという面で分かれております。こうした事柄につきましては、私ども、どうか理解してほしいということで今後とも粘り強く話を続け、来るべき新しい会社へ向けましての労使のあり方というものを正常化したいというふうに考えておるところでございます。
  264. 葉梨信行

    ○葉梨国務大臣 国鉄の分割・民営化をめぐりまして、賛成、反対をめぐり各種不法事案の発生が懸念されているところでございます。警察といたしましては、公共の安全と秩序を維持し、国民生活の平穏を確保するために、警察の総力を挙げてその未然防止と厳正かつ徹底した取り締まりを行ってまいりたいと思います。
  265. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 そこで、申し上げましたように、今後現場段階はいろいろな意味で先鋭化されるような状況、だれかは新会社に残る、だれかはどこかに行かざるを得ない、そういう状況をめぐってだんだん難しい姿が出てくるであろう。そういう場合に、要らざる険しい状況が起こらぬように、国鉄当局はもちろんのこと努力をしてほしい、こう思うのであります。  さっき運輸大臣は、雇用の創出などといっても、今やっておられる地方公共団体であるとか、関連会社であるとか、民間であるとか、いろいろなところに非常な努力をして、本来一万人お願いしようと思うならばもっと大勢頼むという中で、今の国鉄の職員から見れば選択の幅をいろいろ考えながらやってもらえるくらいの努力をしておるんだというお話をされたわけでありますけれども、今問題は、地域によっては、率直に言って国鉄の町と言われるようなところもあるのですよ。  例えば北海道の長万部なんというところに行くと、あの町はほとんど国鉄の町です、こう言っておる。今度の改革によりますと、このあたりは人がみんな大きく動かざるを得ない事態になる。これは動かざるを得ない人も大変だけれども、町自体が成り立たぬようになるというのです。これは、例えばかつての炭鉱の再編成などのときも起こったように、同じような事態が起こってくる。それらの地域の皆さんから見ると、国鉄改革はやらなきゃいけません。しかし、我がコミュニティーは成り立たぬようになります。したがって、自然の流れで何とかなっていくというのではなくて、企業の立地であるとか町当局だけの努力ではどうにもならぬのだ。そういう面につきましても、政治の方はやはりもうちょっと責任を持ってもらわなければ困る、こういう議論が非常に強いのであります。  運輸大臣は、民間に従来の国鉄の職員をこのように引き受けてもらいたい、地方公共団体にこのようにしてもらいたい、関連会社はこうだというのと同じように、例えば通産なら通産あたりと連携をとりながら、そういう幾つかの国鉄の町と言われるような地域、今度の再編成によって相当大きな状況が起こるような地域に対してはそれなりの努力というものがあっていいんじゃないか、なすべきなんではないか、こういうふうに思うのであります。
  266. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私一人の力に余ることでありますが、国鉄の改革につきましては政府全体挙げて協力をいただいておるところでありますので、関係各省とも連絡をとりながら進めてまいりたいと思います。
  267. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 国鉄改革法の二十三条に、採用方式は、新会社が現在の国鉄職員の中から新規に社員を採用するということでありますけれども、これらの問題のほかにもう一つの側面があるのは、三島会社と三つの本州の分割される会社、これらによって、あるところは寮などもちやんとある、あるところはそういうものはほとんどないとか、あるいは病院などの厚生施設なども非常に整備をされておる会社とか区域とか、いろいろなばらつきがたくさん出てくるのであります。そういうものは全部新会社になってからそれぞれで考えろ。今度の分割、六つの会社でいろいろやっていく。  例えば基金の問題まで含めて、今それぞれの会社が立っておるそういうような部面まで丁寧な気配りをされたかというと、私、国鉄の内部の事情をいろいろ聞きますと、とてもそこまでは手が回らぬというのがどうも実態のように思えてならぬのでありますが、私が今申し上げましたような点に対して、運輸大臣もこれは大変だと思うのでありますけれども、どういうような考え方を持たれたか、お聞かせを願いたい。
  268. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今の御指摘の点は二つに分けて御答弁をせざるを得ません。  まず第一点の病院なんかの場合でありますと、これは新会社の職員は皆、日本鉄道共済組合の組合員でありますから、病院の診療面に関する取り扱いで新会社間に格差を生じることはありません。  ただ、宿舎につきましては、確かに、各会社に分かれて承継をされることになるわけでありますから、その利用は基本的には各会社の判断によって決定されることになると考えます。しかし、やはり移行時において職員の生活に支障が生じないような必要な配慮は当然行われなければならないと思いますし、また行われるでありましょう。あるいは宿舎の利用料金等々までを含めてという御指摘かもしれませんが、これはまたそれぞれの地域の類似の実情あるいは経営状態等を踏まえて、各会社が将来にわたって判断をしていくべきものになろうと私は思います。
  269. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 今までもしばしば議論になっておるのでありますが、採用基準というもの、これは一体どの時期に明らかにされるのか。採用基準の考え方は、適性のことであるとか何であるとか、いろいろと大臣の考え方をお伺いいたしました。この採用基準というものをどの時期に一つのまとまった形のものとして明らかにされるのかということであります。
  270. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 これは、これらの、今御審議をいただいております法律案を衆参両院で通過、成立をさせていただきまして、直ちに私どもが設立委員の方々をお願いを申し上げ、新会社についてのいろいろな御努力を願うわけでありますが、その設立委員の方々が採用基準というものは決められるべきものでありまして、今私どもがどうこうと言うものではございません。ただ、私自身の感じとして、その採用基準の中に含まれるであろうものといえば、健康状態、年齢、適性といったようなものを今まで申し上げてまいりました。こうしたものは当然含まれるものと考えております。
  271. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 それから、設立委員というものにゆだねられるということでありますが、従来、この設立委員というのは、学識経験者であるとか、あるいは民間のしかるべき人であるとか、いろいろなことが言われておるのでありますが、私は、ずっと今度の新しい鉄道会社、新しい体制がつくられていくまでの間に、設立委員という人の立場の持つ意味、役割というのは非常に大きいというふうに思うのであります。したがって、この設立委員というのが相当大きな役割を果たす以上、国鉄の人たちがこの中に入らぬということになるとどういうことになるのかなという懸念を持つのであります。  設立委員の構成の中には、当然国鉄のしかるべき人が、国鉄の今までの状況に対して苦しみ抜いてきた人たちがやはりそういう重要な役割にかかわらなければいかぬのではないかというふうに思うのですが、このあたりはどうなのでしょうか。
  272. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 設立委員につきましては、それぞれの会社ごとに任命することを私どもとしては考えております。そして、どういう方々にお願いをするか、これは過去の特殊会社等の例などを参考にしながら決めてまいりたいと考えておりますが、その場合、例えば学識経験を有する者、また地域の関係者あるいは関係省庁の職員等から選出することが通例の状態であろうと思います。  なお、一つの先例として考えてみますならば、電電公社が民営化をされるとき、また専売公社が民営化をされるとき、それぞれの総裁は設立委員の中に入っておったと私は記憶をいたしております。
  273. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 私が申しておりますのは、設立委員というのは、新会社が六つ、貨物と七つ、このようにできるわけでありますから、七つの設立委員会というものができる。仮にそうだとすると、それぞれの中に全部、国鉄の中で今まで実際にずっと苦労してこられた皆さんが——今の大臣の御答弁ですと、専売の場合あるいはNTTの場合、総裁はみんな入ったというふうに思っておるということは、国鉄の人たちは当然私が言っておりますように入るのだというふうに理解していいのですか。
  274. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 これは阿部さん、法律審議していただいていて、成立した後のことを想定してお聞きいただきましても、下手にお答えしたら後でしかられてしまう話でありますから、例示として今私が、電電公社が民営化をされ、専売公社が民営化をされますときの設立委員の中にはそれぞれ総裁が入っておられたと記憶しておると申し上げた点で、でき得れば御理解をいただきたいと思います。
  275. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 わかりました。よく金丸さんのおっしゃるあうんの呼吸というのが最近はやるのでありますけれども、私が申し上げたいのは、やはり今の改革の進行過程をずっと考えてみると、設立委員の役割というのは非常に大きいんだということに気づくわけであります。そうすると、この大きな役割を新会社が発足してまいりますまでの間に果たす設立委員というものの中に、国鉄の現状、この中で苦しみ抜いてきた人が入っておらぬというのではやはり困るだろうと私は思うのであります。  そういう意味で、何もどの新会社の設立委員にだれが行くかはっきりしろなんて言っているのじありませんからつ固有名詞のことを言っておるのじゃないのです。しかし、考え方としては、設立委員会の構成の中には、国鉄の今までの中で苦しんできた、苦労してきた方々が入るという考え方は当然なんだというふうに、この法案審議のために認識しておってよろしいのかどうか、こう聞いておるわけであります。
  276. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、今阿部委員が御主張になったような考え方を持つ方が普通であろうとは思います。ただ同時に、逆に、過去のしがらみを捨てて新たなスタートを切っていこうとする新会社、それが余り過去に拘泥することはどうかという議論も成り立つわけでありまして、余りこの議論を深めるよりも、先ほど金丸副総理の例を引かれて御納得をいただいたようなあたりでおおさめをいただきたいと思います。
  277. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 これ以上は申し上げませんが、私は、新会社の前途は、普通の民間の新たな、それぞれがみんな集まって会社をつくりましょうというようなものとは違うと思うのですよ。今までのしがらみに縛られちゃいかぬと言うけれども、やはり今までの経過の上に新たな転換を遂げようとしておるのですよ。したがって、新会社発足までの大きな役割を果たす設立委員会というのは大変重要な役割を持つ。だとすると、過去のしがらみというものをどのようにとらえるかは別にして、そこを十二分に認識しないままでは、その先はそう簡単にいくものではない、私はそういう思いなんであります。  したがって、今、固有名詞でどの人どの人、そんな無理なことを私は言うのではない。そんな全く新しいものを何かつくろうというのとは違う。今までの非常に困難な状況の中で、私などが危惧をするように、行き詰まったから何とかするというものだけではなくて、先に向かっては、我が国鉄道の進路かくのごとしという希望も進路もあるような新会社になってもらわなきゃいかぬということになると、今までのしがらみは全く抜きというわけにはいかぬじゃないかという思いも込めて言っておるわけであります。     〔委員長退席、佐藤(守)委員長代理着席〕
  278. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今、阿部委員の御指摘を私なりに理解をしてみますと、一体その新会社それぞれの社是はどうなるのか。言いかえれば、その社是をつくる人々を選ぶ設立委員というものはどういう認識を持っていなければならないか、そういうふうに言いかえられるかと思います。  確かに、公社制度による運営というものにはいろいろな御議論も今までございましたが、私どもから考えてみますと、外部からの制約あるいは経営の自主性の喪失、また、大変申しにくいことではありますけれども、ややもすると不正常な労使関係というものが指摘をされておりました。また、公社制というものの持つ制約の中で事業範囲の制約等もあったわけであります。これらの弊害を除去するために経営形態を民営化し、将来へ向けての発展をしょうとするわけでありますから、新会社としても、こうした従来の問題点を十分に知り尽くし、その上に立って民営化の趣旨を十分理解した上で、民間の自律自主の精神のもとに時代の変化をいわば先取りしながら、効率的な積極的な経営を行っていけるような人材を選んでもらわなければならない、その役割がまさに設立委員である、私はそう理解をいたします。そして、それだけの重みを持った人選をいたすつもりであります。
  279. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 大臣のお考えも私が言っておりますこととそう大きな違いがあるものではない、こういうふうに認識をいたしまして、これから相当難しい、いろいろなことを乗り越えていかなければいかぬわけでありますが、ぜひひとつ円滑に新会社発足まで、そして将来もちゃんとなっていけるような歩みができる、責任ある設立委員というものを選ばれるように希望したいと思うのであります。私の希望としては、その中に国鉄で本当に苦しんできた人が入ることを希望するということであります。  今大臣の方からもお話が出ましたけれども国鉄の六つの旅客会社と一つの貨物会社、いろいろなことが言われるのであります。例えば東日本鉄道会社は本社が仙台になるんだとか、いや、そうじやない、大宮だよとか、いろいろな理屈があるのでありますが、こういうことも設立委員の任務ということになりますか。
  280. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 実は、西日本会社の本社をぜひ地元へ誘致しろと岡山県も申しております。それだけに大変私も申しにくいことでありますが、私は、これはやはり設立委員の方々にお決めをいただくべきものと思います。
  281. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 ですから、運輸大臣、やはり設立委員というのはそう簡単なものじゃないのですよ。新しい職員を採用することもそうだし、本社はどこにやるかなんということまでみんなこの設立委員会がやる。つまり新会社の始まるときには、本社がどこで、主要なる支店や営業所はどこで、定款はどうでなんというところまでみんなやらなければいかぬわけでありますから、設立委員というのは非常に重要な任務である。それだけに、今日までの現状の上から大きな転換を遂げようとしておるのがこの国鉄改革という意味で、さっきも私が非常にくどいほど固執して申し上げた点があるということを御理解を願いたいと思うのであります。  私は、貨物会社というものを本当に貨物会社として成り立つようにしていくのならば、よく言われる戸口から戸口までの姿をちゃんとしていかなければ成り立たないと思うのであります。果たしてそこまでのことがきちっと新しい貨物会社はやれることになるのかということに対して、今までの審議の過程では必ずしも鮮明でないように思うのであります。  名前を挙げてはいかぬけれども、宅急便、この姿は日本の物流の姿を全く変えたと言っていいのであります。したがって、国鉄の貨物会社の進路がどのようであるかは、今のこの社会で広範に大きくなってまいりました宅急便というものとちゃんと対応してやれるかどうかということがなければ成り立たぬだろうと私は思っているのであります。  新しい貨物会社というのは、口の悪い言い方をして申しわけないのでありますけれども、今どうもそこまでの度胸というか確信は持っていない。うっかりすると、案外国鉄はだんだん貨物の分野からは安楽死していこうということになりかねないのじゃないかということを私も懸念するし、そういう懸念をしておる人は意外に多いのであります。いかがでしょうか。
  282. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 事務方の諸君が大変克明なメモをまとめてくれておりまして、これを読み上げることも一つかと思いますが、むしろ私自身の感じからお答えをしてみたいと思います。  今御指摘のような御意見は、今日までもたびたび出てまいりました。しかし、先般来御説明を申し上げておりますように、この貨物会社基礎計算していく段階で、私どもは随分細かく荷物の流れをとらえてみました。そして、従来大量に鉄道輸送で運んでおりました荷物の中でも、減少していくと思われるものは思い切って削りました。その収入を落としております。同時に、これからの主力輸送の商品として貨物会社に伸ばしていってもらいたいと願っておりますコンテナ等につきましては、それなりの伸びも見込んできました。  そうした中で、ドア・ツー・ドアという問題に対して十分対応する体制整備を図るべく、今回も鉄道運送取扱業に関して駅別免許制を廃止することなどを内容とした通運事業法の改正案を準備して、御審議もお願いしているわけであります。また、トラックとの共存ということからピギーバック等も検討を続けております。  これはもちろんさまざまな努力はしなければなりません。さまざまな努力はしなければなりませんけれども、私どもは、もっと将来に向けて明るい展望の中でこの貨物というものを見ていただきたい、本当にそう思います。そして、先般どなたかの御質問でありましたが、この業法そのものをもっと検討してみろという宿題もちょうだいをいたしまして、もっと勉強いたしますということも申し上げてまいりました。  私どもとしては、今委員が御指摘になりましたような戸口から戸口へという総合的な輸送システムというものを、ある場合は、今御指摘のような他の業者の方々と連携をすることももちろん含めながら、全力を挙げて貨物輸送の安定を図りたい、そのように思います。
  283. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 今大臣の言われましたことの大きい流れは、そこまでおやりになるというならばという気がするのですよ。しかし、前提条件として、ある場合はと。例えばそれは一気にやると、今この業界もだんだん過当競争の段階のような様相が出てきておるわけであります。そこへ国鉄の新しい貨物会社が参入して、戸口から戸口のそこまでやるといったら、それはえらい騒ぎになる。したがって、どこかと提携させよう。この関係で果たしてうまくいくのかという問題であります。  しかし、そのことは、相当早い時期に大胆に見通しを立てていかなければならぬ。この宅急便スタイルがぐっと今の物流をほとんど変えるほどまでの大きな力を持ってきた現段階で、国鉄の貨物というのは全然対応できなくなってどんどんシェアを下げてきた、こういう状況にあるわけですね。したがって、新会社は最初から相当大胆に次の姿というものをつくっていかなければ、私の認識では、この貨物会社全国約一万五千名というのですか、その程度で簡単に貨物会社は十分成り立っていくんだというふうにはなかなか思えないのであります。その方面の専門の皆さんも同じような懸念を随分持っておるようであります。  今大臣の言われた、ある場合はという前提つきではありましたけれども、通運事業法の改正をしてでもやはり戸口から戸口へというところまでいこう、こういうあれはわかるのですが、相当早い時期にそこまでの姿をちゃんと見通しを立てていかなければ、大体この鉄道貨物会社に人が集まらぬのじゃないかと思うのですよ。それは設立委員が採用するのですから。私の聞いておる限りでは、はて、この国鉄改革でどこに希望を持つかということの議論が今非常に起こっておる、その中で一番人気の悪いのは貨物会社だそうであります。  大臣は、役人の書いたものをそっちに置いてと言ったけれども、恐らく役人の書かれたものは、今大臣が生でしゃべられたのよりはもっと緩いものを書いておられたんじゃないかという気がするのですが、そこのところをもうちょっと鮮明にすべきではないか、していただきたい、私はこういう願望を持っておるわけであります。
  284. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 これをそのまま読み上げてみたいと思います。  一、鉄道輸送を「戸口から戸口へ」という総合的な輸送システムとして成立させ、きめ細かなサービスを実施できるようにすることは、今後、鉄道貨物輸送の発展を図るうえで極めて重要なことであると考えている。  二、このような観点をも踏まえつつ、今般、通運事業者が戸口から戸口への一貫輸送を円滑に行えるよう体制整備を図ること等を目的として、鉄道運送取扱業(運送契約業務等)に関し、駅別免許制を廃止すること等を内容とする通運事業法改正案を準備し、その御審議をお願いしているところである。  三、また、鉄道と通運との連携をさらに緊密化していくため、鉄道貨物協議会等両者の会議体を設置し、戸口から戸口への鉄道貨物輸送が円滑に実施されるよう体制整備を図っているところである。    さらに、トラックをそのまま鉄道で輸送するというピギーバック輸送が本年十一月より開始されることとなっており、トラック輸送と鉄道輸送との新たな形での連携を図ることとしている。  四、なお、新鉄道貨物会社が自ら戸口から戸口への輸送を行う場合には通運集配に関する免許が必要であるが、それについては鉄道輸送の健全な発展を図るとの観点等を念頭に置きつつ判断することといたしたい。 これが事務方の答弁であります。  しかし、私は、率直に申しまして、この委員会で貨物会社というものに対して本当に大変明るくない御質問ばかりが続いておるわけでありますが、なぜ逆に明るくするためにはという視点での御論議が余りいただけないのか、大変残念であります。そして、関係者はもちろん全力を挙げて努力するであろうと私は信じますし、その中でこの貨物会社というものがみずからの力で成り立っていけるように、私どもも全力を挙げて支援をしたいと考えております。
  285. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 そうしますと、私が非常に素朴に言っておりますように、物流の姿を大きく今日の姿に変えてきたものに宅急便というスタイルがある。国鉄がやるんならそこまでいかなければ新会社は成り立たぬぞ、これが一般的な見方でありますが、今の国鉄体制で、国鉄の新しい鉄道会社で一気にそこには行けない。したがって、どこかとジョイントを組むか、何かやらせなければいけない。そのジョイントを組むとなると、これもまた大変難しい問題がいろいろ出るんだと私は思うのですよ。そのために相当大胆な手だてを最初からやはり始めていかなければいけないんだろうと私は思うのであります。  今大臣の方で、そこまでの決意を持って新貨物会社をやっていこう、そうすれば、ある意味ではネットワークは全国至るところに組まれるわけでありますから、それなりの——ただしかし、どこかに手足をいろいろに縛りながら、今日の物すごい生命力、エネルギーを持っておる宅急便スタイルと鉄道の新貨物会社が対抗しようといったって、私は成り立たぬだろうと思う。したがって、早い時期に、今の物流のあの激しい競争場裏の中にどういうふうに乗り込んでいくのかという姿をはっきりと整えていくということでないといけないんではないか、こう思っているわけであります。  国鉄御自身の側からも、この新貨物会社に対する具体的な考え方、やり方、今の事務方のは運輸省でお書きになったんだと思うのですけれども国鉄自体の貨物会社に対する考え方を、今まで赤字になった最たるものの一つに貨物がある、こう言われてきたのでありますが、ぜひお聞かせをいただきたい。
  286. 杉浦喬也

    杉浦説明員 現在大変な赤字を抱えておる貨物というものを、今度は抜本的に健全経営に一気に切りかえようということでございます。そのこと自体大変な努力が要るわけでございますが、今政府でおつくりいただいておる方向につきましてはいろんな角度から検討が行われておったわけでございます。  まず第一番に、今まで大変障害になっておりましたコスト関係、これは極端にコストを低減いたしまして安い運送というものに徹底する必要がございます。いわば鉄道特性を発揮するための第一手段がこれであろうかと思います。     〔佐藤(守)委員長代理退席、委員長着席〕  それからいろいろな問題がございますが、一つは、やはり旅客のレールを使うということでダイヤの問題あるいはスピードの問題、そうした荷主からの要望というものを的確にとらえるようなものでなければいけない。旅客のレールを使うに当たりまして、旅客と貨物との十分な調整が必要であり、荷主が喜ぶ、そういうダイヤを持って運送を売ることにしませんとなかなか荷主が寄ってこないということがあろうかと思います。  また、今先生指摘のような両端の輸送というものをどうするか。あわせまして、両端輸送は現在通運業で担当しておりますが、通運業の持っておる集荷機能というものをやはり十分に活用する必要があろうかと思いますが、その点についての諸問題をどう解決するかという問題。  あるいはまた販売の方法、コンテナの売り方と専貨輸送の売り方との違いはございますが、そうした販売の方法につきましても従来と違った抜本的な改革が必要であろうというふうに思います。  こうした問題を持った上でいろいろと検討した結果、現時点におきまして何とか健全経営のめどを立てた貨物会社の設立という方向にまとまったということであるわけであります。
  287. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 六つの旅客会社もそれぞれの問題を乗り越えていかなければいかぬわけでありますが、貨物会社のことにつきましては特に懸念を持っておる向きが非常に多いのであります。そういう意味で万全の体制をぜひとっていただきたい。  それから、さっきもお話に出ましたけれども、株式の売却という問題ですね。これは、再建監理委員会の試算では売却益が額面で六千億、こう言っておるわけでありますが、国民の負担を軽減するという観点からもやはりできるだけ多くの売却益を出すような努力をすべきではないか。そういうような角度で、この売却の方法、仕組み、そういう努力をすれば売却益はもうちょっと見込めるとか、そういう可能性があるのかどうか、こういう点もお聞かせをいただければ大変にいいと思います。
  288. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 旅客会社並びに貨物会社の株式につきましては、長期債務処理の財源としては、最終的な国民負担を軽減するためにも、御指摘のようにできるだけ売却益を多く出すことが望ましい、そのとおり私も思います。  これらの株式の処分に当たりましては、資産処分審議会の審議を得た上で、公正かつ適正な方法というものを考えて処分を行いたいということを考えておりまして、具体的には現在進められておりますNTTの株式処分の方向が大変いい参考になると考えております。  また、監理委員会の試算によります株式の売却収入の六千億と言われるものは、これは実はその時点における売却額の予測が大変困難でありますことから、とりあえず会社の資本金相当額を計上したものと理解をしておりまして、政府の試算においても同様な考え方をとっておるわけであります。  いずれにいたしましても、これも委員御承知のように、その売却を図るときの経済情勢その他によっても大きく変動することでありますから、最善のタイミングを見て、最も収益の上がる、言いかえれば国民の負担を軽減し得る時期、タイミング等を選びながら当然処分が行われると考えております。方式としては、現在進められているNTTの株の売却方式、これが有力な参考になる、そのように考えております。
  289. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 そこで、この前河村議員が指摘をされたのでありますが、新幹線機構というのは、本当にあれは要るんだろうかという疑問を持つのであります。清算事業団は要ると思いますよ。新幹線機構というのは本当に要るんだろうかなと思うのでありますけれども、新幹線機構はこうこうこういう意味でどうしてもなければならぬのだということをぜひひとつ端的にお示しをいただきたいのであります。
  290. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 河村委員からも何回もおしかりを受けておりますが、私どもは新幹線機構というものは必要にして十分なものと考えております。なぜなら、私なりの考え方で申し上げますならば、新幹線ができましてから今日までの経緯の中で非常に償却の進んでおりますもの、また今後償却の始まるようなものがあることは御承知のとおりであります。そして、仮にこれを切り離してそれぞれの分割会社に所属をさせるといたしました場合には、非常にそれぞれの会社間のバランスを失することになります。また同時に、乗客の利便からいきましてもそうした状態は望ましいものではございません。むしろこの新幹線保有機構という形をとり、そこが一括貸し付けをし、そしてリース料を取り、それをバランスよく配分することによって、いわば皆がその利益を享受できる形をとることは、決して私は間違っておるとは考えておりません。  もっと専門的な御説明が必要でありましたら、事務方から補足をいたさせます。
  291. 林淳司

    林政府委員 考え方は、ただいま大臣から申し上げたとおりでございます。  具体的には、現在四つの既設新幹線がございますけれども、それぞれ建設時期が非常に違います。いわゆる建設費というものがその時期によって大きく違っておるということ、さらに償却の進みぐあいが非常に違うということから、それぞれのコストの差が非常に大きゅうございます。それからもう一つは乗客の輸送密度、これは例えば東海道新幹線と上越新幹線と比べますと非常に大きな違いがあるということでございます。したがいまして、これをそれぞれ別の会社に所属をさせますと、コストの面での違いあるいは乗客の量の違いという面から、例えば東北・上越新幹線の場合でありますと非常に大きな赤字が出る、東海道新幹線は非常に大きな黒字が出る、こういうことで会社間のバランスが非常に欠けるということになります。  仮にそれを解消しようといたしますと、東日本会社東海会社に比べて大変高い運賃を徴収しなければいけない、東海会社は非常に安い運賃でいいということで、利用者の負担に非常に差が出てまいります。この四つの新幹線というのは、国土の均衡ある発展と申しますか、そういう意味での意義も非常に大きいわけでございます。したがって、利用客の負担をできるだけやはり適正化する、公平にするという見地も必要であろうかと思います。  そういう観点から、これをそれぞれの会社に所属させるのではなくて、一括して一つの機構に保有をさせて、一定の客観的な基準によって、負担の公平という見地からの一定の基準によって貸付料を算定して、そしてそれぞれの会社にこれを貸すという方が利用者にとっても非常に便利であるし、公平であるし、また各会社のバランスも結果的にそれでとれるようになる、こういうことで今回こういう方式をとらしていただいて、法案で提案をさせていただいておるわけでございます。
  292. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 新幹線保有機構のそれぞれの新幹線が立っておる条件が違っておる、したがってその間のバランスをとる、このことはわかりました。あとほかに、この新幹線保有機構は何をやりますか。
  293. 林淳司

    林政府委員 ただいま申し上げた仕事が新幹線保有機構のほぼすべての仕事でございますが、ほかに若干附帯的な仕事がございます。  一つは、現在の東北新幹線、これは上野—東京間が現在工事中でございます。東北新幹線については、この保有機構で一括保有する対象でございまして、その一部である現在工事中の上野—東京間というものについては、経過的にこの保有機構が建設主体になる。ただし、これは建設工事そのものを直接やるのではございませんで、あくまで建設主体という地位で、実際の工事は例えば東日本会社にこれを委託するということに相なるわけでございます。  それからもう一つは、大規模災害、通常の災害についてはそれぞれの会社が維持管理ということでやるわけでございますけれども、非常に大きな災害が生じた場合、これについてはその会社一社の負担でやるということになると非常に大変なことになるというケースが考えられます。したがいまして、そういうものについてはそれぞれの関係会社にきちっと意見を聞いた上で、保有機構でもって同じくこれを取り扱っていく。ただ、工事そのものをやるわけではございません。工事はそれぞれの関係会社に委託いたします。したがって、工事能力を持つわけではありませんが、保有機構で一括してこれを取り扱っていくということを考えております。
  294. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 今私が申し上げておりますのは、問題を浮き彫りにする意味で、新幹線保有機構というのは果たして要るのかという非常に大げさな言い方をしておるわけですが、今お聞きのように、災害のときに新幹線保有機構はそれぞれの会社に工事をやらせる。それから各新幹線間のいろいろな立っておる生い立ちがあって、償却その他ばらつきがある、この調整をとらなければいかぬ。それから東京—上野間の工事、これも保有機構そのものがやるわけじゃないけれども、保有機構の名においていろいろなところにやらす、こういうことだ。だとすると、今のようなことならば、今の時代でありますから、計算の方式その他をちゃんと入れて、保有機構というものでない格好でそれぞれの新会社なりなんなりができるのじゃないかというふうにも思うのです。  清算事業団は確かに必要だということは国民のだれもがよくわかると思うのです。この新幹線保有機構は、リース料を取る、そしてバランスをとる。大工事の場合に、自分は工事をやらぬが、どこかに委託して工事をやらす。東京—上野間の工事もやらせますよ、しかし自分がやるのじゃなくて、どこかへやらすのですよと言うのですが、それだけだと、清算事業団のように国鉄改革に伴って次にどうしてもなければならぬ存在というふうに、この新幹線保有機構というものに果たして説得力があるのであろうか。何か問題が屋上屋、行革路線とは異なる行き方ではないだろうか、こんなふうな議論もあるのですけれども、ちょっとそこをお聞かせ願いたい。
  295. 林淳司

    林政府委員 この点につきましては、やはりだれかがこういう機能を持たなければいけない。それぞれの旅客会社というのはそれぞれ別の法人でございますから、したがって一括して保有してそういう調整を行うということになりますと、そういう法人格を持っただれかがそういう仕事をしなければいけないということになります。  そこで、それじゃ清算事業団その他にやらしたらどうかという御議論もあろうかと思いますけれども、私どもとしては、清算事業団というのは過去の問題、いわゆる長期債務、追加費用あるいは余剰人員対策といったような過去の問題を処理する。今回の改革の目的は、過去のしがらみと申しますか、そういう過重な負担というものを完全に切り離して、身軽な事業体をつくって、それが将来赤字を出さないように、いわゆる分割・民営化によって効率的な活性化された経営をしていく、これが今回の改革の眼目でございます。したがって、そういう過去の問題を扱う清算事業団と事業体の方の先ほど申しましたような機能を持つものとを一緒にするわけにはまいりません。これは一緒にするとかえって弊害が出ます。  そこで、別の何らかの法人がどうしても必要になってくる、こういうことになるわけでありまして、先ほど申しましたような仕事でございますから、それほど大きなものを私どもはつくる気はございませんけれども、最小限のそういう機能を果たす法人というものは必要であるというふうに考えているわけであります。
  296. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 大臣、今の運輸省の林審議官のような頭のいい人の御答弁でありますけれども、それだけでもやはりちょっと釈然とはしないのです。  清算事業団は確かになければならない。新幹線保有機構というのは、幾つかある新幹線の、実際の業務は何もやらないのですよ。ほかにいろいろやらすだけなんです。しかし、確かにそれは調整も必要だと思うのです。それならば、もっと別のところで、屋上屋を重ねずに、何か方法がないのであろうかというふうに思うのです。  私も、四つの新幹線の間において、普通の資本償却とかなんとかという理屈のままではいけない状況になることもよくわかるのですよ。したがって、何らかのバランス、調整をとらなければいけない。災害も確かにあるでしょう。これからやる工事の問題も、東京—上野間があると言うのですが、それじゃ新幹線機構はみずからやるのかというと、どこかにみんな委託してやるのですということだとすると、果たして屋上屋、リース料を取ってというそのあれが要るのであろうかという疑問であります。
  297. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私も実は、河村先生の御指摘を受けた後、同じような疑問を持った時期がございました。私は、この職につきます前、党の行革の責任者でありましただけに、いろいろな工夫ができないかと、事務方の諸君とも議論をしてみました。ただ私は、やはり林審議官がお答えをしたことに中身としては尽きると思うのです。  確かに、例えば清算事業団というものの中に同じような機能を持たせることは、組織図をかくということでは可能であります。しかし、それは、まさに過去と断絶をし、切り離し、新たな姿でスタートすべきその会社と、そして過去の、いわば本当に洗いざらいの処理をしていかなければならない清算事業団というものと、せっかく切り離しを図ったことが崩れてしまうわけであります。そうなりますと、それでは、例えば旅客会社なり貨物会社なりに新幹線保有機構に持たせるような機能を付与してうまく機能するかと申しますと、やはりこれはバランスがとれません。  いろいろな議論をやってみましたが、今私自身も、新幹線保有機構という形をとったことは、これにかわるべき案が出てこないという感じを持っております。
  298. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 私も全く同じような意味であえて問題にしたわけでありますけれども、確かにバランスはとらなければいかぬ。今言われるようなことも確かにやらねばならぬのでありましょう。しかし、それならば、なぜそのことだけで新たなものがつくられて、ずっと置かなければいかぬのですか。  もう一つは、この中で貸与期間というのは一体どのくらいの期間を想定しておるのかということが全然まだはっきりしておらない。貸与期間というのは、大体のめどとしてはどのくらいの期間、例えば今のバランスの問題も含め、いろいろな問題を含めて、どのあたりから貸与という状況を解くことができるようになるのか。
  299. 林淳司

    林政府委員 貸与期間につきましては、現在おおむね三十年程度を考えております。ただ、この期間につきましては、法律上明記をしなかったというのは、要するに、今回一括保有する新幹線の施設につきまして、残存耐用年数の平均というものを考慮して客観的、技術的に算定することが適当であろう、こう考えておるわけでありますけれども、現実に、では、この四つの新幹線は具体的にどういう施設を保有機構の方へ所属させるかということにつきましては、いわゆる承継計画の中で具体的にその内容を決めていくということになるわけであります。したがいまして、現段階でその具体的な範囲を想定して法律に明記するというのは非常に難しい、こういうことでございます。現実には三十年という程度の期間を考慮しております。
  300. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 貸与期間の終了後、それぞれの会社に譲渡をする、この譲渡の形態はどのようになるのかということですね。例えばそのときに、今のお話にありました、なお残存耐用期間がどの程度残るかといったようなことで実際の計算をちゃんとやって、有償譲渡にするということになるのか。実際上は、形式上の残存耐用年数というのは確かに残るのですよ。三十年先の日本列島がどのようになっておるかはわかりませんけれども、うんと濃密なダイヤグラムを編成してもお客さんが満杯でいける東海道新幹線もあれば、今より以上のダイヤ編成をやったら空の車を走らせなければならぬといったような過疎の地域を走る新幹線も出ればということになってくる。  そうすると、形式上の残存耐用年数で計算をしてなどというわけにはいかない事態というものが出てぐる。私は、それがあるからこそ、今くどくど申し上げました。バランスをとるために新幹線機構が要るのだということとかかわってくるように思うのですけれども、おおむね三十年くらいを考える、その先は一体どういうようなことになるか、三十年先のことは知らぬわいということでいくのかどうかですね。
  301. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今審議官の方から御説明を申し上げましたような経緯を通り、新幹線鉄道に関する貸付期間が満了した、そして当該施設に係る資本費が回収されてしまった、そういう状態を想定してみますと、これはもう本当に新幹線保有機構というものを引き続き保有しなければならぬという特別な理由はなくなるわけです。同時に鉄道施設そのものは、原則としてその運営主体が保有することが自然でありますし、更新投資を旅客会社が行っているわけでありますから、長期間を経過すれば実態的に施設の多くが旅客会社の所有になっているであろうこと、こうしたことを考えていきますと、やはりこれを旅客会社に譲渡することが適当であると考えて、その旨二十一条四項に記したわけであります。  ただ、これは先日も一つ御議論がありましたが、有償とすべきか無償とすべきかということになりますと、私は、貸付期間満了後の旅客会社等の状況などを勘案しながらも、その時点での政策判断にゆだねるということが本当に適切ではなかろうかと思っております。理論的にはこれを、もう既に支払い済みなんだ、だから無償で当該会社に払い下げるべきだ、渡すべきだという御議論も成り立つことは否定をいたしません。しかし、その時点でも、その施設はその後その企業が使って営業活動をする施設でありますから、また設備でありますから、果たしてその時点の国民が旅客会社に無償で譲渡をすることをお認めになるかどうか、これは私は、そのときの国民感情というものはどちらとも言えないと思います。ですから、これはその時点の判断にゆだねたい、正直な答えを申し上げてそういう感じを持っております。
  302. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 時間がそろそろ迫ってまいりましたが、今度の国鉄改革の問題をめぐって、国鉄の労使の関係というのは今まで非常にまずかったということが言われてきたのでありますけれども、労使共同宣言というものが締結をされた。しかも、世界の労使関係の中にも例がないような、争議権が付与されるような場合でも新鉄道会社の経営が一定の見通しが立つまで争議権の行使は自粛するといったような労使共同宣言が結ばれておる。これは、国鉄現場の中で労使が本当に苦しんで苦しんで苦しみ抜いて、この大改革を何としてもなし遂げよう、こういう姿だと私は思うわけであります。  したがって、今度のこの法案は、政府側にとってみればそれなりに大変な努力をされて、最善のものとして出されたのだと思うのであります。しかし、いよいよこの衆議院段階における改革法、関係法の審議が大詰めに参ったわけでありますけれども政府がいろいろ努力をされて提案された改革案でありますが、実際面ではまだいろいろな点を考慮しなければならぬような状況もやはり起こってくるであろう。そういう意味で、この改革につきましてはそれぞれの立場の意見というもの、我々の側の意見等もぜひひとつ検討いただいて、万全の改革のこの大事業をなし遂げるようにしてもらわなければいかぬ、こう私は思っているわけであります。  私どもは大筋、民営・分割を軸とするこの改革をなし遂げるべきだという立場なんでありますけれども、この法案の最終段階のことにつきましてはそれなりにまたいろいろな意見もあるわけであります。そういう意味で、運輸大臣、また総理大臣におかれても、ぜひひとつ我々の意見に対しましても耳を傾けられて、最終的な対応をしていただきたいという希望を持っておるのであります。  私のそういう希望に対して、また私のこの考え方に対して、総理大臣及び運輸大臣の御見解をもう一度お伺いして、時間が参りましたので最後の質問にしたいと思います。
  303. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 御意見はよく拝聴いたしまして、検討してまいりたいと思います。
  304. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣  私なりに全力を尽くします。
  305. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 以上で終わります。
  306. 細田吉藏

    細田委員長 これにて阿部君の質疑は終了いたしました。  次に、東中光雄君。
  307. 東中光雄

    東中委員 今度の国鉄改革といいますのは、百十四年の歴史ある国鉄が事実上なくなって、大量の国鉄職員が整理をされる。これはかつてないような形態の抜本的な改革でありますと同時に、未曾有の合理化、人員整理でもあると思うのですが、そういう状態の中で、労働者の団結権、憲法二十七条が保障している労働権、思想、信条による差別を許さない憲法の十四条、あるいは表現の自由や良心の自由を保障する憲法二十一条、十九条、こういった一連の憲法の体系に従ってやられなければ、それが立法であろうと、措置であろうと、あるいは執行であろうと許されないことだと思うのです。  最初に総理大臣にお伺いしたいのですが、この大原則、とりわけ憲法の二十七条なり二十八条なりを尊重して厳格に守ってやるということであろうと思うのですが、御所見をお伺いしたいと思います。
  308. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 今回の改革は、もちろん憲法の各条章、大原則を遵守して行っておるものでございます。
  309. 東中光雄

    東中委員 それで、国鉄当局にお伺いしますが、国鉄は昭和四十六年三月以降、国労との間に雇用安定協約を締結されてきておりましたが、昨年の十一月からその締結を拒否されておるということであります。一方では、分割・民営に賛成をし、そして共同宣言に同意をしたといういわゆる国鉄改革協所属の労働組合との間では労働協約、雇用安定協約が締結をされております。国労に対して拒否されておるのは、分割民営に同意をしない、共同宣言に調印をしないから、そういう状態では雇用安定協約は締結することができない、こういう態度をとっておられるように思うのですが、基本的な態度を、総裁、明らかにしてほしいと思います。
  310. 杉浦喬也

    杉浦説明員 労使間の基本は、あくまで労使の信頼関係がもとであるというふうに思います。そうした観点から、各組合ともいろいろな話をし、いろいろな問題の解決に当たってきたわけでございますが、過去一年あるいは一年半の出来事を振り返りますと、こうした信頼関係を樹立することができる組合とそうでない組合とが明瞭に分かれてまいったわけでございます。大変残念なことではございますが、大変大きな組合がそうした意味で信頼関係を私どもはとても持つことができないということで現在に至り、御指摘の雇用安定協約も結べない状態になっております。  いろいろないきさつがございますが、御指摘の労使共同宣言というものは、いわば今雇用問題の大変重要な時期でございますので、一般の国民に対しまして労使一体となってやるんだという姿勢を示す、こういうようなことが両方で一致することが信頼関係のもとであるというふうに私どもは思っておるわけでございまして、そうした労使共同宣言に調印のできないあるいはすることに反対である組合に対しましては、私ども信頼を持てません。したがいまして、雇用安定協約を結ぶことができないということでございます。
  311. 東中光雄

    東中委員 非常に明快に、労使共同宣言の締結に同意しない限り、一体になって、分割・民営反対などということを言わない、分割・民営路線を進めるということについての共同宣言をしない限りは締結はできない、することを前提にして締結することがあり得る、こういうことだということを今言われたわけでありますが、そういうのを差し違え条件の提示による不当労働行為であるというふうに労働法的には言うのです。  最高裁の判例も何回か出ておるわけでありますが、労働省にお伺いしたい。昭和五十九年五月二十九日付の日本メール・オーダー事件の最高裁判決とか、昭和六十年四月二十三日の日産自動車残業差別事件の最高裁判決、いずれも差し違え条件の提示による、要するに共同宣言に賛成をすることを条件にして協約を結ぶ、それをのまなかったら協約は結ばない、こういう姿勢を併存する労働組合の一方に対してとる、他の組合に対しては賛成をしたから協約を結ぶという姿勢をとる、これは不当労働行為であるという最高裁判決です。  労働省、最高裁判所の差し違え条件提示による不当労働行為、それが不当労働行為になるという判例の趣旨について説明をしていただきたい。
  312. 小粥義朗

    ○小粥(義)政府委員 今御質問の二つの事件のうち、新しい方の日産自動車残業差別事件の方からまず申し上げますと、企業内に複数の組合が併存している場合に、使用者が労働協約の締結に一定の条件を付したところ、両組合の間でその条件に対する対応が異なったために両組合の間の取り扱いに差が生じたとしても、団体交渉は一種の取引である以上、それをもって一般的、抽象的に論ずる限りは不当労働行為ということにはならないけれども、組合に対する支配介入の意思を認めさせるようなそうした特段の事情がある場合には不当労働行為の成立が認められる、こういうふうに判示した例でございまして、具体的に申しますと、日産自動車の場合に、残業組み入れの条件として交代制勤務及び計画残業に応ずることを二つある組合のうちの一方に求めた。それに対して、それに応じなかったために、したがって残業手当も支給しないという措置をとったわけでございますが、それらの行為を全体として見た場合どうなるかということで判示があるわけでございます。  要約して申し上げますと、前提条件自体合理性はあるにしても、それが組織の影響力を弱め、あるいは弱体化を生ぜしめる、また、会社が当初から組合を無視し、その後の団体交渉においても誠実な交渉を行わなかったといったような事情が認められる場合に、これは不当労働行為の成立が認められると判示した例でございます。  いま一つの日本メール・オーダー事件でございますが、これは一時金支給の条件として生産性向上に協力することを会社側が求めたケースでございまして、この点については、この前提条件は、その内容が抽象的で、しかも使用者側としての十分な説明がなく、ある意味での合理性がない、しかも使用者がこの前提条件にあえて固執しているということは、組合に対する支配介入といったものを認めるに足るものであるということで、不当労働行為の成立を認めたケースでございます。
  313. 東中光雄

    東中委員 労政局長は普通の人が聞いたら何を言っているのかわからないような説明をしましたけれども、判旨はもっと明快なんですよ。  ここに私も判決を持ってきていますから言いますが、この日本メール・オーダー事件の場合は、一つの組合は生産性向上運動に協力をするということで一時金の協定を結んだ。併存するもう一つの組合は生産性向上運動に協力はしない、そんな協定は結べないと言ったので、だから一時金を払う協約をしなかった。生産性向上運動に協力するかしないかというのは組合の方針によって違うので、その方針を拒否している組合に対して差別になるような協約を結んだら、その協約は組合切り崩しになるのであって、それは不当労働行為だと最高裁ははっきりと言うておるわけです。共同宣言を出すならば雇用安定協約を結ぶ、生産性向上運動に賛成するならば協約を結ぶ、同じことなんです。これを差し違えというのです。  それからもう一つの日産自動車の判決でいいますと、二つの組合が併存する場合、「使用者は各組合に対し、中立的態度を保持し、その団結権を平等に承認、尊重すべきものであり、各組合の性格、傾向や従来の運動路線のいかんによって差別的な取扱いをすることは許されないもの」、こういうふうにはっきりと判示しているのです。路線が違うからといって、分割・民営に反対か賛成か、それはそれぞれの組合が自主的に持つのです。その意見が違うからといって、一方とは協約を結んで、一方とは協約を結ばないという差別的取り扱いをすることは許されない、不当労働行為である、組合切り崩しになるんだ、こう言うておるのですよ。  今国鉄がやっておるのは、雇用安定協約の締結拒否、そして路線転換を要求するあるいは組合に分割・民営を認めさす、共同宣言を出さすということをやること自体が不当労働行為なんだ。判例の趣旨からいって明白です。やめるべきだと思うのですが、どうですか、
  314. 杉浦喬也

    杉浦説明員 この共同宣言は、ごらんのとおり中身は全く社会的な当たり前のことでございます。法令を遵守する、合理化を行う、雇用を守る、これが基本でございます。そうしたようなことをやりましょうというふうに呼びかけることは、私どもまことに当然なことであるというふうに思います。そうしたことも勘案したかどうか、最近の国労は方向を転換をいたしまして、この労使共同宣言を結びたいというふうに当局にアプローチがありました。そういうような状態でございますので、そうしたような事柄を踏まえた我々の行動を不当労働行為というふうに言われることは全く的外れでございます。
  315. 東中光雄

    東中委員 国労は、天下周知のようにそういう路線はとらないということをあの大会で決定したじゃないですか。それを何を申し入れてきたのですか。そういうふうに言うその行為が使用者としての国鉄総裁の支配介入の行動なんだ、不当労働行為なんだ、こういうふうに言っているのがこの判決の趣旨なんですよ。全く詭弁というほかない。  それなら聞きますけれども当たり前のことだという、先ほどの生産性向上に協力をするということの協約、メール・オーダー事件ですね、それはあなたの考えからいえば、生産性向上に協力するのは当たり前じゃないか、そう思うでしょう。ところが、生産性向上運動というのは実は歴史的な概念なので、だから、ある組合はそれには反対だと言っている。しかし、そのことによって差別をしてはいかぬ、こういうことなんですよ。自分の方で当たり前のこと、だれでもそういうふうに思うことだから、労使協調は当たり前だと思うから、そんなこと言うたって、そうでないと言うている組合にそういうふうに押しつけることが差し違え条件の提案ということになるのですよ。裁判をやったら極めて明快に結論が出ると思うのです。  それでお伺いしますけれども、労働協約でありますから、雇用安定協約をつくって、一方では、要するに協調路線、分割・民営を認める組合とはそういうものを結んだ。そして、国労その他賛成しない、反対だと言っているところとは結ばない。その結果、雇用安定について、国労の組合員と国労以外の国鉄改革協傘下の組合員との間で、労働条件をこれから整備をしていくことについて、協約締結組合と無協約時代の組合との組合員の扱いについて、国鉄当局は差別をするのですかしないのですか。差別をするのだったらどういうふうに差別をするのですか。その点をお伺いしたい。
  316. 杉浦喬也

    杉浦説明員 私ども、繰り返し申し上げておりますが、各組合に対しまして全く公平、平等、無差別、この原則で対応をいたしております。その組合員がどの組合に属するかによりましてその待遇その他を絶対に差別はいたしておりません。
  317. 東中光雄

    東中委員 そうすると、雇用安定等に関する協約で締結をしておろうが締結をしておらなかろうが、組合員に対しては一切差別はしない、この協約は結んでおっても結んでなくても同じなんだ、そういう意味ですね、差別をしないと言うのですから。
  318. 杉浦喬也

    杉浦説明員 差別をしないというのは、具体的な労働条件、それぞれの職場の問題等々、現在あることについての差別はないということでございます。雇用安定協約と関係ありません。
  319. 東中光雄

    東中委員 違うのだよ。雇用安定協約を締結しておる中で、それでは、現在差別をしない、将来差別をするということですか。将来差別をするとなると、どういう差別をするのですか。  要するに、協約締結というのは、それの効果が、雇用安定という言葉を使っているから、この協約を締結すれば雇用は安定されるけれども国鉄が締結をしないと言えば雇用安定が図られないような印象を与えるようになっている。そうでしょう。ところが、実際は、この協約では、締結をしようがしまいが、差別はできないようになっているのですよ。  それで、現にまた差別をしようと思うてないと言っているでしよう。だから、雇用安定について、この協約の締結があろうがなかろうが、差別をしないということなのか。雇用安定ということについていえば差別があるというのだったら、違いが出てくるというのだったらどういう違いが出てくるのか、そこのところを明らかにしてほしい。
  320. 杉浦喬也

    杉浦説明員 雇用安定協約は、日本国有鉄道法二十九条のいわば労働協約による例外措置というふうに考えられます。したがって、雇用安定協約がない場合は日本国有鉄道法二十九条に立ち返るということであるわけであります。
  321. 東中光雄

    東中委員 日鉄法の二十九条も身分、それから降職をしないという保障がございます。ただ、日鉄法二十九条の四号の関係でその発動があれば、それは協約があるのとないのとで違ってくることがあり得ると思うのです。  それでは国鉄総裁に聞きますけれども、現在の国鉄は、今の法案でいけば来年の三月三十一日までしか存在しないわけですけれども、その間に日鉄法の二十九条の四号の発動をして、業務の縮小その他経営上のやむを得ない事由によって人員整理をやるという方針なり計画なり、そういうものはあるのですか、ないのですか。
  322. 杉浦喬也

    杉浦説明員 二十九条四号は厳然としてあるわけでございますが、それの適用をするかしないか、これは私は今考えておりません。
  323. 東中光雄

    東中委員 いや、私が聞いているのは、今提案している側からいえば、この日本国有鉄道法というのは三月三十一日までしか効力がないわけでしょう。そうすると、来年の三月三十一日までにもし日鉄法二十九条四号の適用を発動するんだったら、もう今から計画せんければ間に合わぬですね。業務の縮小とか業務量の減少とか、そういうことで大々的な人員整理をやるというのだったら、そういう方針があるのだったら、方針を出したらいいです。そういう方針も計画もない。考えていないと今おっしゃったのですけれども、だから日本国有鉄道法二十九条の四号の発動は、国鉄がある限り、来年の三月三十一日までの間に発動することはない、発動は考えていない、それで先の計画はない、これをはっきり言ってください。
  324. 杉浦喬也

    杉浦説明員 今二十九条四号の存在はあるというふうに申し上げました。それに対しまして、現在の段階で考えていないというふうに申し上げたところであります。
  325. 東中光雄

    東中委員 そうすると、現在の段階で考えていないし、今法案が出されている状態で、この法案のやり方で、分割・民営方式で人員整理をしようとしているのであって、そういう日鉄法の発動によってやろうとしているものではないことはもう明白なのです。考えてないだけじゃなしに、考えてないからやれないことも明白なのです。そうしたら、日鉄法の二十九条の適用の場合にだけこの雇用安定協約というのは効果を発生するのであって、それ以外には効果が発生しない。語るに落ちるで、言われているわけですから、この協約はあってもなくても一緒なのだということになります。そうでしょう。  少なくともそうでないのだったら、この法律の、今提案されている分割・民営の法律の適用について、日鉄法じゃなくて協約に基づいて差別扱いをするということはあるのですか。この協約というのはそういう効力を発生するものですか。どうですか。
  326. 杉浦喬也

    杉浦説明員 どの協約かはちょっとわかりませんが、雇用安定協約というものは二十九条四号のいわば例外規定であるということでございまして、その協約を結んでいる組合とそうでない組合の違いは、二十九条四号の発動があるかないかの違いであります。
  327. 東中光雄

    東中委員 それじゃ、結んでいない国鉄労働組合、国労に対しては二十九条四号を発動して、そうでない、協約を結んでいるところには発動をしないということはあり得ますか。
  328. 杉浦喬也

    杉浦説明員 さっきから申し上げているとおり、二十九条四号の対象になり得る組合とそうでない組合がある。私の心情は、現在の段階ではそれは発動という点については考えていない、こういうところであります。
  329. 東中光雄

    東中委員 現在の心情と言いましたけれども国鉄の方針としてそういうものは考えていないということでしょう。あなたの個人的な心情なんか聞いているのではないのです。どうですか。
  330. 杉浦喬也

    杉浦説明員 二十九条四号は発動し得る状態になっております。私の心情はそれを発動したくない、こういうことです。
  331. 東中光雄

    東中委員 国鉄の方針はどうかと聞いている。個人的な心情を聞いているのではないんですよ。あなた、今までの答弁全部一貫しているじゃないですか。発動する考えはない、こう言うているでしょう。今になったら心情と言う。あなた個人じゃないでしょう。これは国鉄の方針なのでしょう。  だから、結論的には極めて明快です。来年の三月三十一日までに日鉄法の二十九条の四号を発動して国鉄人員整理要綱を出していく、そういう場合には、この雇用安定協約というのは、効果がどの程度あるか知りませんが、あるかもしれぬけれども、しかしそういう発動をする状態にないことは明白なんですから、日鉄法の二十九条四号の発動がない以上、この協約は何ら締結組合と非締結組合との間で差別をすることはできないということなんです。  それをあたかも差別をするかのように言うて、そして、これを結ばない方は不利益ですよと言わんばかりのことを言うて切り崩しをやる。これが不当労働行為だというふうに先ほど言った判例は言っているわけです。(発言する者あり)判例を見たことのない人、労働法についてさっぱりわからぬ人、こういう人はそういうことを言いますけれども、私は少なくとも三十数年労働法の勉強をしてきました。明白な判決があって、そして白昼堂々とこういう不当労働行為を国鉄がやっている、こういうふうに言わざるを得ない。  もし日鉄法の二十九条の四号を発動した場合、いわゆる企業の縮小及びやむを得ない事由で経営上の理由による人員整理をやる場合は、普通は、日本の労働法体系上、その人員整理については団体交渉を行い、人員整理の基準の決定、条件、そういうものについては労使間で誠実に団体交渉をやらなければいけない、そうでなければ人員整理はできないというのが労働法の法制だと思うのですが、その点、労働大臣どうですか。     〔委員長退席、佐藤(守)委員長代理着席〕
  332. 小粥義朗

    ○小粥(義)政府委員 使用者がその雇用する労働者について人員整理をする場合の整理解雇等の基準については、これはいわゆる団体交渉事項ということに一般的になっておるわけでございまして、その団交について応じない場合は労働組合法で言うところの不当労働行為ということになるわけでございますが、公共企業体の場合は、公労法の中で団交事項は明確に規定してございますから、その規定によるということになると思います。
  333. 東中光雄

    東中委員 公企体であろうと一般の労働組合法であろうと、事柄の論理は極めて明快であります。労働条件にかかわる人員整理の問題について日鉄法の二十九条四号を発動したということになれば、それは労働者との間で団体交渉を当然やらなければいけない、団体交渉事項であることは明白です。それを、日鉄法の発動をしないことによって、こういう分割・民営の立法方式をとることによって団体交渉の対象から外してしまうということが、今回のこの法案の提案された役割だというふうに私は結論づけていいと思うのですが、運輸大臣は、国鉄について今関連の八法案が出されております、そして国鉄は余剰人員がいろいろつくり出されている、その合理化、人員整理を日本国有鉄道の段階で、来年の三月三十一日までの段階で、この法案とは別に、国鉄の余剰人員整理のためのそういう日鉄法二十九条四号に基づく整理をやるというふうなことが監督官庁として考えられますか。     〔佐藤(守)委員長代理退席、委員長着席〕
  334. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今御論議になっておられましたことと御審議を願っております法案との間に、どうも私は必ずしも相関関係がないような気がいたします。そして、現在私どもが御審議を願っております法律案、まさに今回の国鉄改革の中で、新たな会社の職員は、国鉄職員の中から新会社の設立委員が提示する採用の基準に従い新規に採用される仕組みとなっておるところでありまして、その際、所属組合等による差別があってはならないと思います。残る職員は、清算事業団において各種の措置を講じて、三年以内に計画的に全員の再就職を図る仕組みとなっておるところでありまして、この場合においても所属組合等による差別があってはもちろんならないでありましょう。  さらに、新会社に採用された職員は、新会社設立後に労働協約の締結に向けた団体交渉ができることは当然であります。同時に、清算事業団職員についても団体交渉を行うことができるのは当然でありまして、先ほどからのお話で、何か分割をすることにより、また民営化を図ることにより労働基本権を侵害しているかのごとき御議論がありましたが、そうは考えておりません。
  335. 東中光雄

    東中委員 今の御答弁でわかりました。この法律の、分割・民営法案の適用に際しては、例えば従業員を選別、名簿を選定するとかそういう場合には、労働組合の所属によって、あるいは思想、信条によって差別するようなことはしないということだと言われたことは、しかと承っておくわけでありますけれども……
  336. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 であろうと思いますと申し上げたのです。
  337. 東中光雄

    東中委員 あろうと思いますというのとそうだというのとどう違うのですか。そんなに確信がないのですか、あなた。まあ、それはいいです。  じゃ、この法案についてお伺いしましよう。あの労働協約では、新法の適用については、労働協約はあってもなくても、雇用安定に関する協約というのは全く関係がないんだということを実質的に今言われたことになるわけです、差別をしないということですから。そう言われたわけです。それはそれでいいんです。
  338. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 いや、よくないです。国鉄の労使関係につきましては、国鉄の内部のことでありまして、私は何も申しておりません。
  339. 東中光雄

    東中委員 それでいいです。あなたが何も言ってないのは承知しております。論理的にそうなると言っているのです。  それではお伺いしますが、この改革法案では、国は国鉄が経営している旅客鉄道事業あるいは貨物鉄道事業等を承継法人に引き継がせるものとするというふうになっていますね。だから、引き継ぐ対象は、六条にしましても八条にしましても鉄道事業なんです。鉄道事業を引き継がせる、こういうふうになっているわけですね。資産を引き継がせると書いているのじゃないのです。六条でもそうでしょう。  鉄道事業というのは、資産、施設、車両もあるでしょうし、いろいろあります。そういう物件だけで鉄道事業というのはないわけですから、それを動かす労働者があってこそ鉄道事業でしょう。鉄道事業を引き継がせるものとするという条文になっています。それならば、引き継ぐ具体的内容、計画というのが次にありますね、基本計画、そこでやっていくのは、引き継ぐものは一体何と何なのか。  鉄道事業を引き継がないのかという点で、もう一つ言うならば、鉄道事業を引き継ぐとしながら、その事業を担当している労働者は全部引き継がない。引き継ぐという規定はどこにもない。これはどういうわけでそういうことをされたのか、お伺いしたい。大臣答えてくださいよ、条文について言っているのじゃないですか。
  340. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 事務的に答えさせます。
  341. 林淳司

    林政府委員 今回の法案におきましては、電電、専売の場合等と異なりましていわゆる承継という形をとっておりません。要するに、新しい会社を設立しましてそこに国鉄から引き継ぐということで、引き継ぐ内容は、法案にございますように鉄道事業というものを引き継いでいく、さらにその構成体としての資産、債務というものをそれぞれ個別に選定をして引き継いでいくわけであります。  その場合に、じゃ職員はどうかということでございますが、これは当然に承継をしなければならない、引き継がなければならないというものではございません。今回は、立法政策としまして、やはり新しい会社は、その会社の構成員としての職員構成というものが今後の会社の経営を左右する非常に重要な要素でございますので、したがって新規採用という方式をとりまして、会社のいわゆる経営意思というものを反映できるような形でこれを新規採用する、こういう立法措置をとったということでございます。
  342. 東中光雄

    東中委員 三月三十一日の日本国有鉄道の状態は、例えば山手線を運転していますね。車両も施設も鉄道事業として山手線を運転しているわけです。鉄道事業がやられているのです。そして一瞬で四月一日になると、その鉄道事業を引き継ぐ。鉄道事業を引き継ぐと書いてあるんだから、引き継がせると書いてあるんだから。そのときに、労働者だけは引き継がないことになるんです。そうなっているんです。今そういう答弁をしましたね。だから、引き継ぐと書いてあって、その中から労働者だけをのけたのは一体なぜなのかということなんであります。  それで、まずお聞きしましょう。郵政大臣に来ていただいたのですが、郵政事業、電気通信事業はもともと国がやっておりましたね。もともと国がやっておって、それがたしか昭和二十八年だったと思いますが、公社と国際電電株式会社になった。国の直営事業が事業形態が変わって、公社になり、株式会社になった。これは分離してやったんですね。その公社が今度は民間に引き継がれた。この場合には、いずれの場合もいわば生産手段といいますか、施設、物件は引き継がれる、同時に労働者も引き継がれる、労働条件もそのまま引き継がれる、こういう関係になりましたね。相手が会社であろうと分割しようと公社になろうと、いつもそういうふうにやっているわけですが、それは事実だと思うのですが、事実かどうか。なぜそういうふうにして新規に採用するというような奇妙きてれつなことはやらなかったのかということをお聞きしたいのです。
  343. 唐沢俊二郎

    ○唐沢国務大臣 今申されましたように、昭和二十七年八月、電気通信省から電電公社へ改組の際には、日本電信電話公社法施行法の規定によりまして職員の身分はそのまま引き継いでおります。  なお、KDDにつきましては、昭和二十八年三月に電電公社の出資により設立されまして、そのときは一部分離でありますから、公社の職員が自動的にKDDの職員となる形はとられておりませんが、KDDの職員となった者の労働条件につきましては、公社時代より不利にならないようにしておるものと承知をいたしております。  今回の電電公社の経営形態の変更につきましては、日本電信電話株式会社法附則六条によりまして、電電公社の職員の身分はそのままNTTに引き継がれております。しかし、この場合は、公社全体をそのまま引き継ぐ形でいたしております。したがいまして、電電公社は、財産は全額NTTに出資をする、そして電電公社の権利義務は一切NTTが承継するという形で、職員の身分も、地位、労働条件もそのまま引き継いだわけでございまして、国鉄のように複数の事業体に移行する場合とはおのずから事情は異なるものと考えております。
  344. 東中光雄

    東中委員 たばこ専売についてお伺いしたいのです、同じことだと思うのですが。大蔵大臣、労働者の地位、それから労働条件をそのまま引き継いだということです。
  345. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 日本たばこ産業株式会社法十三条によりまして、「公社の解散の際現に公社の職員として在職する者は、会社の成立の時において、会社の職員となるものとする。」こういうふうにいたしております。
  346. 東中光雄

    東中委員 その条文は知っております。そのことによって、労働条件はそのまま、労働者の職場における地位、それから労働組合との関係で言えば協約、そういうものも全部そのまま引き継いだのではありませんかということを聞いているのです。
  347. 頼松祥典

    頼松政府委員 お答えいたします。  公社の解散の際に現に公社の職員として在職した者は会社の職員となりまして、そういう経緯から職員の地位や労働条件も基本的にはそのまま引き継がれたと聞いております。
  348. 東中光雄

    東中委員 当然そういうことになるのですが、今度の場合は、二十七万七千の国鉄職員がその身分を失うか失わないかという問題ですね。だから国鉄職員は、改めて契約をするなり、あるいは就職するなり、あるいはどこかから任命を受けるなりしない限りは、日本国有鉄道法が廃止をされる、今の案でいけば四月一日に廃止をされる、したがって国鉄はなくなる、そのときに日本国有鉄道の職員たる地位は失われる、全員国鉄の職員でなくなる、こういうことではございませんか。
  349. 林淳司

    林政府委員 今先生おっしゃったような解雇ではございませんで、要するに、この法律によりまして新しい会社に採用される職員というのは、本人の希望に基づいて採用されていくわけであります。したがって、強制解雇ではございません。  それから、その他の職員、新会社の方に行かない職員、これにつきましては、いわばそのままの形で国鉄が清算事業団に移行いたしますので、法人格は同一でございます。したがって、これは身分、労働契約はそのまま引き続いていくということでございます。したがって、これも解雇ではございません。
  350. 東中光雄

    東中委員 解雇ということを私は言っているのではないのです。新たな採用についての採用基準をつくって募集をして、そしてそれに応じて、しかも採否を決める、要するに新たな会社との契約ができない限り、その人は国鉄職員でなくなりますね。そして清算事業団について言えば、清算事業団の職員は理事長が任命をするというふうになっていますね。どうして任命という行為がなければ職員の地位がそのまま引き継がれるということになるのですか。そういう規定がありますか。
  351. 林淳司

    林政府委員 先ほど申し上げましたように、新しい会社に採用されない人は、そのまま国鉄が清算事業団に移行いたします、したがって労働契約はそのまま継続をしていくということでございます。それで、今おっしゃいましたけれども、任命という行為は、これは新規採用した人間を採用するというときだけではなくて、例えばあるポジションにその人をつけるという場合も任命という行為でございます。
  352. 東中光雄

    東中委員 職員は理事長が任命するということになっていますね。職員の地位を得るのは、任命行為がなくても地位が得られるという規定はどこにありますか。会社は、日本国有鉄道は移行すると書いてある。しかし、日本国有鉄道の鉄道事業は承継すると書いてあっても、その承継の中に労働者の地位は入ってないでしょう。今度は、事業団の場合は移行すると書いてあるけれども、労働者はそこに移行するという規定はどこにもないですよ。今の専売あるいはNTTとは違うのです。そういう規定になっていないのです。清算事業団に移行するとは書いてあるけれども、地位が移るとは書いてないのです。どこに書いてありますか。書いてあるなら言ってください。
  353. 林淳司

    林政府委員 清算事業団法には、国鉄は清算事業団になるものとする、こう書いてございます。これは同一法人格であるということをあらわしているわけであります。したがいまして、労働契約は当然につながるわけでございます。任命という行為は、先ほど申しましたように新規採用のときだけに使われる言葉ではありませんで、具体的な職務の指定あるいはポジションの指定、こういう場合にも任命という言葉を使うわけでございます。
  354. 東中光雄

    東中委員 事業団法の附則第二条に、国鉄は四月一日に事業団となるものとする、それは四月一日になるものとするということが書いてあるのです。移行のことというのは、これは改革法の十五条で移行させると書いてあるのです。しかし、地位を承継するという規定はどこにもない。どこにもないですよ。ほかの規定はちゃんとそうなっていますよ。地位を承継することとしている。そうすると、事業団に対して労働協約はどうなるのですか。
  355. 林淳司

    林政府委員 ちょっと先ほど申し上げましたことに補足いたしますけれども、改革法では移行する、これは要するに改革の基本的な骨格を定める法律でございますので移行という言葉を使っておりますが、いわゆる法人の実体をあらわすのは清算事業団法でございますので、その附則でもって「なるものとする」というのが、法的には同一法人格をあらわしているということでございます。  それから、労働協約につきましては、これは当然先ほど申しましたように法人格はつながるわけでありますから、労働協約もそのままつながっていくということでございます。ただ、清算事業団は従来の国鉄と業務内容は著しく異なりますので、当然これは労使間で団体交渉を行われて、適切な労働協約に変更されるべきものであろうというふうに考えております。
  356. 東中光雄

    東中委員 事業団法の四十三条では、労働条件は運輸大臣の承認を受けなければならぬ、そして別に決定することになっていますね。当然承継するんだったら、こういうことにはならぬはずです。これは体系が違うじゃないですか。労働条件は変わるのでしょう。今までの説明からいったって、一〇%なり二〇%なり下げるということを言っているじゃないですか。そうでしょう。当然承継するとあなたは言いましたけれども、労働条件体系が違うんだから。その点はどうですか。そんなところで後ろから知恵を入れてもらわなければいかぬのですか。
  357. 林淳司

    林政府委員 先ほど申し上げましたのは、いわゆる労働法上の労働協約がそのまま移行するということを申し上げたわけでありまして、清算事業団法の先ほどの規定はいわゆる行政監督上の規定でございます。したがいまして、これは全然別体系の問題でございます。実質的には、先ほど申しましたように、団体交渉が行われて、いわゆる清算事業団の業務にふさわしい労働協約が当然締結されるものであろうというふうに考えております。
  358. 東中光雄

    東中委員 労働協約は当然移行するのだったら、労働契約は、そして労働者の身分、地位、そういうものはそのまま当然引き継がれることになりますね。当然移行するというのだから、当然引き継がれるのでしょう。そうじやないんですか。
  359. 林淳司

    林政府委員 先ほど来申し上げておりますように、労働契約も労働協約もいずれも引き継がれることになるわけであります。ただしかし、じゃ、どういう具体的な労働条件になるかということについては、これは清算事業団の業務内容との関係で団体交渉で決めていくべきことでございます。
  360. 東中光雄

    東中委員 引き継がれるというのなら、契約はそのまま引き継がれていくんです。当然というのですからね。一括、包括、当然承継だというのだったら。しかし、条件は変わっていくのだ、その労働条件については団体交渉で決めるんだ、これは通りません。そんな理屈はないです。  それではもう一つ聞きましょう。  今、全然基礎的な知識のない人が、私の言うていることがわからぬと言うて嘆くのは勝手ですけれども審議の妨害になるようなことをするな。  現在訴訟を起こしている、国鉄労働組合が裁判を……
  361. 細田吉藏

    細田委員長 御静粛に願います。御静粛に願います。——御静粛に願います。
  362. 東中光雄

    東中委員 取り締まってください。
  363. 細田吉藏

    細田委員長 御静粛に願います。——御静粛に願います。——御静粛に願います。——御静粛に願います。——御静粛に願います。——御静粛に願います。  質問を続けてください。
  364. 東中光雄

    東中委員 審議妨害するな。これは質問妨害ですよ、こんなのは。
  365. 細田吉藏

    細田委員長 御静粛に願います。  質問を続行してください。—御静粛に願います。
  366. 東中光雄

    東中委員 今、不当労働行為で国鉄に対して随分提訴されていますね。人活問題その他裁判が随分起こされています。そういう場合に、四月一日、この法体系ができた段階で、その裁判はどうなるのですか。
  367. 林淳司

    林政府委員 来年の四月一日から清算事業団になるわけでございますので、基本的には、国鉄時代の権利義務のうち承継法人に引き継がれないものについては、これは清算事業団の方にそのまま残るということであります。ただ、その時点で、いわゆる現在の国鉄の労働組合がそのままの形で存在しているのかどうか、その辺の問題も絡んでまいりますので一概には申せませんが、基本的にはそういう形で、承継法人に行くもの以外の権利義務は清算事業団の権利義務になるわけであります。
  368. 東中光雄

    東中委員 現在裁判を起こしているのは、国鉄労働組合が起こしているのもありますし、国鉄の地方組織が起こしているのもありますし、国鉄職員国鉄労働組合の組合員が起こしているのもある。随分たくさんあるでしょう。それも不当労働行為だということで起こされている。国鉄が公の機関でありながら不当労働行為を公然とやっているのに対して、裁判の救済を求めた。その裁判が係属中に、この法案を通すことによって、その裁判は——例えば、裁判を受ける権利が国民にはあるのですから、人活センターへの事実上の配転、降格は不当労働行為として許されない、無効であるという裁判を起こしていますね。その裁判は、この法律が通ったら、四月一日になったらどうなりますか。
  369. 林淳司

    林政府委員 ただいま申し上げましたように、現在の国鉄に対して権利義務関係が生じている事態につきましては、来年四月一日以降は、その地位は清算事業団が引き継ぐということになるわけであります。
  370. 東中光雄

    東中委員 日本国有鉄道相手の不当労働行為の裁判、配転は無効であるという裁判を起こしている、その裁判係属中に国鉄解散させて移行させた場合に、その裁判はどうなるのですか。その裁判は承継するのですか。承継したって、どうもできないじゃないですか。
  371. 林淳司

    林政府委員 国鉄解散するわけではありませんで、清算事業団になるわけであります。したがって、国鉄イコール清算事業団とお考えいただけば結構だと思います。
  372. 東中光雄

    東中委員 国鉄における裁判であります。国鉄における裁判でありますから……(発言する者あり)そうなんだ。解散したらいかぬ、事実上の解散をやっているじゃないかと、まさに鈴木委員に言わせると、これは解散だというふうに考えているようです。自民党の中にもそういうふうに言う人がおるのです。そういう状態なんです。  いずれにしても、事実上裁判を、こういう労働者の条件を引き継がないという方法をとることによって、裁判を受ける権利さえも奪ってしまうということになります。だって、清算事業団が承継したって何にもならぬじゃないですか、形式だけじゃないですか。そういう立法をやって、労働者のその権利、裁判を受ける権利が事実上じゅうりんされてしまう、こういうことになっているわけです。  いずれにしましても、こういう状態で鉄道事業を引き継ぐものとするということにして、しかも鉄道事業の中での労働者関係は、別の仕事をやる清算事業団へ持っていくかいかぬかは別としても、鉄道事業をやるところへ承継しないというこのからくりが、今までのどのこういう移行についても、経営形態の変更についてもやられたことはないのです。  国鉄自身が、国が直営をやっておる、そして公団になるとき、施設と一緒に、法形式は別として、そのまま公団の職員に変わったはずです。電通関係でいうても、直営から公団に変わり、公団から株式会社に変わるときも、それから公団から国際電電のように分離して変わるときも、法形式は別として、全部事実上そのまま引き継いでいるのです。生産手段と結びついている。  国鉄の場合、今だけそういうことをやらないというのは、この方式をとることによって、日鉄法二十九条の四号でやらないと言うておる人員整理をやろうというところにあるのでしょう。人員整理をやる、事実上の解雇をやるためにこういう方式をとった。今まではどこもそういう方式はとっていないのに、国鉄だけそうやったのは、そういうことではないのですか、どうですか。
  373. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 大変興味深い御論議を承りました。
  374. 東中光雄

    東中委員 国鉄の分割、そして労働者を分割すること自体を言うているんじゃないのです。事業は引き継ぐけれども、労働者は引き継がない。改めて募集をするんだ。世界じゅうどこへ行ったって、二十数万人の労働者を抱える大企業が、全員解雇して次に行こうと思うが、生産手段そのままについていかないで、改めてそこからどういう条件であろうと出してくれば、それに従っていく。国鉄職員の地位は、国鉄職員の意思は全く通じない。向こうから言うてきたことを受けるか受けないかだけじゃないですか。そういう仕組みというのは、これは希代の悪法です。  新会社が、承継法人が採用基準をつくる、労働条件を決める、それについては国鉄職員の労働条件とは、関係はあるかもしれぬけれども、全く別個の立場でつくるということになりますね。その点はどうでしょう。
  375. 林淳司

    林政府委員 今度の場合は、新しい会社が全く従来の国鉄と違った形で、活性化された効率的な会社としてスタートをするということを期待しておりますので、したがってその新しい会社にふさわしい採用基準というものを設立委員が決めていくということでございます。  それから、先ほど来の先生のいろいろ御質問でございますけれども、今回、先ほどの電電あるいは専売の場合と違いますのは、今後競争の中で十分生きていけるような企業体となるためには、どうしてもやはり余剰となる人員が出るわけであります。したがって、新会社に全員これが行けるということにならないわけであります。それが一つ。  さらに、新しくできる企業は幾つかの複数の企業になる、いわゆる分割されるということがあるわけであります。そういう形のときには、NTTあるいはたばこ産業のように、当然に権利義務が包括的に承継されるという形はとり得ないわけであります。したがいまして、それぞれの鉄道事業をそれぞれの会社の範囲に応じてこれを引き継いでいく。さらに、それを構成する資産、債務というものもそれぞれ必要に応じて引き継いでいく。それから、職員についても必要な人数引き継いでいく。  その場合の引き継ぎの方法が違うわけであります。例えば債務あるいは権利義務、こういうものにつきましては、これはいわば客観的に決め得るものでありますので、政府が基本計画でその承継の方針を決める、具体的なものについては、国鉄がいわば政府の補助という立場で具体的な承継計画を決める、こういう引き継ぎ方法というものをとっているわけであります。  それに対して、職員につきましては、先ほど申しましたように、新会社の新しい経営方針というものを十分反映した形で職員構成をする必要がある、こういうことで職員については採用方式、こういう方式をとったわけであります。債務とか資産の場合におきましても、例えば三島の場合、北海道四国九州の場合には債務を引き継いでおりません。したがいまして、職員だけではなくて、その他についてもそれぞれの必要に応じて債務あるいは資産というものを引き継いでいるわけであります。
  376. 東中光雄

    東中委員 運輸大臣に聞いておきますが、承継に関する事業等の引き継ぎ並びに権利及び義務の承継等に関する基本計画の案というものは既にできておりますか。
  377. 林淳司

    林政府委員 基本計画につきましては、これは法律を成立さしていたださましたら、その段階でこれを作成するということになります。
  378. 東中光雄

    東中委員 基本計画の作成はそうでしょうけれども、案もはっきりしていない。それから、実施計画は運輸大臣が認可をすることでありますが、実施計画についても案もないのですか。案はあるけれども、今発表したのでは非難ごうごうとするから発表しない、法案ができてからやるんだ、こういうことなんですか。どっちなんです。
  379. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 仮にそういうものがあったとすれば、逆に国会で御審議を受けているさなかに不謹慎だと思います。
  380. 東中光雄

    東中委員 法律をつくるときに、これは政令でどういうふうに実施細目をつけますとか、省令でどうしますとかというようなことはある程度明らかにしておくものですよ。こういう計画はどうなのか。そのときになって法律ができてしもうたら、えらいとんでもないものが出てくるんだな。それはもう政府が任されたんだというんでは実質上の審議はできない。そういう内容、案を当然明らかにすべきである。いわんや労働者の、本来ならば引き継ぎ得るものを分離をしてやるから、事業は分離できる、鉄道事業は分離できる、しかしそこで働く労働者は分離はできないんだ、これは筋が通らないですよ。分離して引き継ぐんだったら引き継いだらいいんですよ。  ところが、新たに出してくる案というのは、国鉄における案と違った内容のものに、むしろ降職、降格、そういうふうな解雇——採用基準及び労働条件というのは、現在の国鉄職員国鉄における地位、労働条件と比べて、今度提起されるものは下がらないという保障はどこにもないわけですね。だから、新たに、勝手に設立委員がつくっていくんだ、その内容はわからない、こんなことを言っているんですから、これは降職あるいは降給と同じようなことがそういう法体系をとることによってやられることになる。  国鉄職員からいけば、日鉄法によって降給、降職あるいは免職されることは、意に反して行われることはないという保障があるわけです、公務員だから。そういうことでしょう。それがこういう法体系をとることによって一方的に出されてくる。しかもその内容をここで明らかにしない。これはまさに現在の国鉄の職員の労働条件を決定的に決めるのに、それは設立委員に皆任せてしまう。労働者、労働組合は何にも言えない、言う機会がないという法制度になっているんですから、これは団交権をそのまま奪うものだ、労働権をそのまま奪うものだということになります。その点どうですか。
  381. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 新たな会社は、法律案が通過、成立をした後に私どもが準備を進めていって、いろいろな手順を踏んでいった結果、明年の四月一日にスタートをするわけであります。そして雇用関係もその日から成立をするわけであります。その後にはもちろん労働関係の話し合い等々もなされるでありましょう。
  382. 東中光雄

    東中委員 私はそういうことを言っているんじゃないんです。今ある国鉄国鉄職員及び国鉄職員の労働組合、その労働組合は現在の国鉄職員の労働条件を守るものとして団結権が保障されて現にあるわけですね。それは四月一日になったらどうなるのかということについて、どういう労働条件になるのかもわからぬ、そういう法律を進めようとしておるときに、現在の国鉄労働組合が現在の国鉄職員の労働条件について団体交渉する相手はありますか。この法律ができなかったら、国鉄職員は来年の四月一日以降も職員なんですね。そうでしょう。できるかできぬか、これは今審議中だから、政府はつくりたいと思っているけれども、そういう状態でしょう。それで理論的なことを言っているんですよ。  だから、国鉄職員の労働条件というのは、国鉄の労働組合が使用者との間で交渉し、それを守っていくというのが団体交渉権なんです。それから、保障されているのが労働権でしょう。ところが、来年の四月一日になったらこういうふうに奪ってしまう、あるいはどういう条件が出てくるかわからぬぞということになっておるのに、そんなことじゃ困りますという交渉をやる相手がないのです。受け付けないのでしょう。これは、こういう法体系をとることによって団結権を奪ったことになる、それを言っているのですよ。現在の国鉄の職員の労働条件はどうなるのかということについて、交渉する相手がありますか。この体系でどうなりますか。
  383. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 ですから、新しい会社における雇用関係が発生すれば、当然そこには新しい労働関係が発生をいたしますと申し上げております。
  384. 東中光雄

    東中委員 全然違うのです。現在の国鉄職員の労働条件をどうするか、解雇するか、地位を失うか失わぬかという問題は重大な問題ですよ。人員整理ということになれば団体交渉をやるのは当たり前だと言って、さっきも話が出ておったでしょう。結果においては降職をするあるいは降給になる、労働条件を改悪する、それは新たな提案という形でやってくる。そういうやり方は国鉄の労働者の団結権を奪うことになるということを言っているわけです。何ぼ頭を横に振ったって、現に団体交渉してないでしょう。これは団交権を奪うものだ、そして労働権を奪うものである。新しいのができればそれに従うんだ。そんな、できるかできぬかの問題じゃないです。今の国鉄労働者の労働条件をどうするかということなんです。  いずれにしましても、そういう新会社への移行についての新しい労働条件の提示及び採用基準が明らかにされて、しかもその上で国鉄が職員の意思を確かめて、名簿をつくって新会社に出すという二十三条のシステムになっていますね。その選定する基準というのはまだ出されていないから、選定しようがないわけですね。選定の作業もしようがないわけでしょう。そういう段階だという答弁がずっとやられておるわけですが、そういうことでございますか。
  385. 林淳司

    林政府委員 その点につきましては、確かに、この法律が通りましたら、設立委員が任命されて、設立委員会で採用基準、労働条件を定めて、そして国鉄にこれを通知し、募集をするということでございますので、まだそういう段階に至っていないということでございます。
  386. 東中光雄

    東中委員 だから選定のしょうがないということだと思うのです。  ところが、今国鉄の職場の中で、ちょっと資料を配っていただきたいのですが、現に新しくできるであろう会社への振り分けを既にやっているという実態が明らかになった資料を私は入手しました。これは国鉄電気工事局の電力課作成の資料であります。  国鉄電気工事局の電力課の現在の職員の数は八十四名であります。  資料I「電力関係要員」という一覧表は、簡単に説明をいたしますが、一番左に順位というのが書いてあります。これはどうもいわゆる勤務成績の順位というふうな意味で、一番から七十九番まで、番外もありますが、ずっと一人一人の名前を書いて順位をつけています。その次が氏名、年齢、学歴、次に評価というのがあります。これは、国鉄当局が二月二十八日付で出したあの「職員管理調書の作成について」という文書で管理調書をつくった、それに基づく評価を書いてあるわけです。国鉄当局が既にこういうものを書いて、そして出しておるということがまさに問題なのであって、そのことをここへ出されたら困るのは、国鉄当局の非人道的な状態がはっきりするというだけのことじゃないですか。  その次にAとか助とかPとかということが書いてあります。これは組合の所属であります。Aというのは東京鉄道協議会、こういうことであります。要するに労使共同宣言を発した国鉄の改革協に入っておる人たちであります。Pというのはどこの組合にも所属をしていない人たちなんです。そしてこの組合の欄が空欄になっておるのは国労の組合員なんであります。それは実際に当たってみて極めて明快なんです、明白なんです。  そういう形で組合の所属を書いて、一方的な評価をやって、この順位からいきますと、御承知のように、分割・民営を認める組合の所属者、Aと書いてあるのが順位のずっと上の方を全部占めています。そして次はP、どこにも所属しない、白紙という人たちが大体占めている。国労所属の記号のない人は全部下へ追いやられている、こういう状態になっています。その右の欄に東とか海とかと書いてあるのは、東は東日本旅客会社、海は東海旅客会社、転と書いてあるのは転勤、何にも書いてないのは余剰人員としてほうり出す、そういうリストなんであります。  資料IIの四枚目、五枚目、六枚目を見ていただきますと、電力課自身がつくったわけでありますが、「東日本旅客会社要員」ということで、選定していないどころか、ちゃんとこういうふうに実名を挙げて現場では選定をしているのです。「東海旅客会社要員」、そして「余剰人員」という格好で、余剰人員は全部国労組合員じゃありませんか。  こういう選別を既にやっている。採用基準は出ていない、労働条件はわかりません、設立委員も決まっていません、だからそういうことについてどうもしようがないのですと言いながら、もう現実には東日本旅客会社要員はだれとだれとだれである、こういうことまで書いてあるのです。こういう点についていかに思われますか。全くの不当労働行為によるこういう選別を既にやっているということであります。
  387. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私はこういう資料が現実のものであるかどうかを存じませんけれども、そしてまたその真偽を判断する立場におりませんけれども、むしろ私は、こういう形で国会の場に名前を出された方々がお気の毒だなと思っております。
  388. 東中光雄

    東中委員 国会の場に出したのが悪いのではなくて、国鉄当局、電力課が既にこういう選別を、しかもむちゃくちゃな不当労働行為によってやっているということを正視しなければいかぬと思うのです。国鉄は、成績順位をつける、組合の所属、そして国鉄が指示したあの管理調書に基づく評価、それによってこういう選別をするということを現にやっている。このことについてどう考えますか。
  389. 杉浦喬也

    杉浦説明員 日ごろ本人の勤務状態は十分把握しておりますが、かかるような資料について本社から命じたことは絶対ございませんし、このような資料の存在は、私どもはあり得ませんと思います。
  390. 東中光雄

    東中委員 存在はあり得ませんと言ったって、現にあるんですから。国鉄総裁はありませんと言うた。——黙れ。妨害するな。
  391. 細田吉藏

    細田委員長 御静粛に願います。——御静粛に願います。——御静粛に願います。
  392. 東中光雄

    東中委員 審議妨害ですよ、これは明白な。
  393. 細田吉藏

    細田委員長 御静粛に願います。
  394. 東中光雄

    東中委員 存在は認めませんと言うけれども、現に存在しているんじゃないか。存在している事実を見ても、それを認めませんとは何事ですか。しかもこの評価がいかにひどいものであるかということは、資料の……
  395. 細田吉藏

    細田委員長 御静粛に願います。
  396. 東中光雄

    東中委員 IVを見ていただきたい。
  397. 細田吉藏

    細田委員長 御静粛に願います。
  398. 東中光雄

    東中委員 資料IVの評価は、国鉄自身が、先ほども言ったように二月二十八日付の「職員管理調書の作成について」という文書、これはもうどこででも論じておられるわけですが、その二十項目にわたっての評価をしろという職員管理調書を適用してこの一覧表をつくっているわけです。これを見てくださいよ、いかにひどいものかということがわかります。これは、国鉄本社の正式の文書によってやられたものであることは明白なんです。  これで、余剰人員に送られた人、資料IVの二枚にまたがっている一覧表ですが、この上から七番目の沢井英二という人のを見てもらったらいいと思うのです。これは、余剰人員の一番先頭に挙げられた、しかも表に出ておる順位は七十九位という、一番低く評価された人の勤務成績がここで評定されているのです。この評定の仕方を見ますと、国鉄というのはむちゃくちゃに評定をしている、組合によって差別をしょうとしているということが歴然とするのです。二十項目についてやれと書いています。  その第一項目は、実務知識についての評価を五段階で決めると書いてあるのです。それが沢井さんで言えば、五段階の中の三ですから普通ということです。次は技能、これも普通ということになっている。そして計画性、これも三段階で二ですから普通です。それから業務の速さ、手際よさ、これも三ですから普通になっている。そして業務処理の正確さ、これも四段階の三ですから普通よりややよろしいということになっている。判断能力はどうかと言えば、これも四段階のうちの三番ですから、ややよろしいということになっている。責任感はどうか、ちょうど普通。協調性は普通。これだったら勤務成績は普通というふうになるのが普通ですね。  ところが、そこから先についておる評価項目というのは、これは国鉄当局が決めた評価項目ですよ、こういう項目があるんですね。業務改善提案をやったかどうか、これはサービス労働をやったかどうかということになるんですが、それについて言えば、この沢井さんは何と一、最下位に落とすわけですね。だから、業務外のことについての評価ではぽんと落としてしまう。次に職場の秩序維持はどうかと言うたら、これもまた一で、五段階の最低ですよ。それから服装の乱れというのがある。これも一にして最低。指示をやれば、それに対して問い返したということで、これも普通より下にする。組合活動ということになったら、これはもう最悪、一にしてある。  こういう評価をやって、トータル点数が四十五点であるという評価をして、業務について言えば普通であるけれども、組合活動に絡むものではどんどん落として、トータル点数が七十九人中の一番少ない四十五点になったということで、総合評価は五なんです。五というのは一番悪いということなんです。だから、今度はすぽっと下へ落としてしまうのですね。それで余剰人員にしてしまった。こういう経過が歴然とするのです。こういう基準を示したのは、国鉄当局が公に示している基準に基づいて電力課がこうして評価をしているわけです。こういう形になっています。  それから、もう一つだけ申し上げておきますが、下から四段目の、評価としては四十一番に評価された佐藤誠治さんという人、この人の場合は、業務知識は五段階で四番目ですからよろしいということになっているのです。特に、これは全部技術者ですから、技能については五、トップクラスなんです。そして仕事の提案あるいは自発性、判断能力、業務に関係することは全部上位にある。ところが、組合活動の方へいくとずっと下げてくる。国労所属だからです。そして全体としては、総合評定は三になっているんです。ところが、全体の順位からいけば四十一番であるはずなのに、この人は国労の組合員であるからということで、今度は配置ということになったら余剰人員のところへぱっと入れてしまっている。  これは国労の組合員であることによって、仕事がよくできる、トップクラスであるということがこの勤務成績表ではっきりしておる者でさえ落としてしまう。これこそ典型的な不当労働行為なんですね。だから職場において——今この国会では、設立委員も決まってないんだから、法律も出てないんだから、準拠すべき……
  399. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 法律は出ていますよ。
  400. 東中光雄

    東中委員 法律案が出ているのです、法律は成立していないけれども。だから採用基準も決まらない、雇用条件も決まらない、それなのに、それに従って選別するはずのものが、今労働組合運動に従ってこういう選別を現に職場でやっている。まさに国会の審議とはまるっきり非合法にこういう組合による差別をやっている、しかも国鉄当局が公に示した基準に基づいてやっている、こういうことになるわけですが、それはどうですか。
  401. 杉浦喬也

    杉浦説明員 こういう資料をどこで御入手されたか知りませんけれども、その存在は私ども全く認めることができません。実在でない人物についての資料だろうと思いますけれども、仮に実在であるとしたら、これは非常に先生の御主張に相反する資料ではなかろうかというふうに思います。
  402. 東中光雄

    東中委員 実在しないとは何だ。電力課の職員全員の名前が出ているじゃないか。国鉄総裁、それをわからないで、自分でわからなかったら実在しないとは何だ。  この資料は、どうして我々知るようになったか、では言いましょう。電力課でこの資料を持って、そして職制が、あなたは国労におればこういうふうになりますよ、だから国労を脱退しなさい、そういう切り崩しに使ったのですよ。電力課の職制がやったのです。それに基づいて我々の手に入ったのです。どうして我々の手に入るんだ、これは存在しないと言うが、ここに書いてあるのは全部実名じゃないですか。  私が今挙げた人は、自分のことをこういうふうに書いておるということで非常に憤慨しているから、その実情を聞いて今……
  403. 細田吉藏

    細田委員長 静粛に願います。——静粛に願います。
  404. 東中光雄

    東中委員 それでは国鉄に聞きましょう。  日本国有鉄道東京電気工事局電力課の中の現在する職員八十四名、その名前がここに載っている。その名前が載っていることについて、これは実在する人間であるかないか、国鉄当局答えてください。
  405. 杉浦喬也

    杉浦説明員 こういう資料の存在を私認めておりませんので、お答えできません。
  406. 東中光雄

    東中委員 この資料に載っておる人間が国鉄の先ほど言った東京電気工事局の電力課にいる人……。名前を全部言いましょうか。言わぬでも資料に書いてあるから言うてないだけの話。その人間はいるかいないか、国鉄当局はわかるのかわからないのか、どうなんです。  あなたは、これを自分に不利だから認めない、そういう主張はできるでしょう。それは暴力というものなんだよ。現にあるじゃないか。それを認めないから、ここに書いてある人間が実在する人間であるかどうかわからぬと言うから、国鉄はそのことがわからぬのなら調べなさい。いるかいないか、はっきりしなさい。どうですか。
  407. 杉浦喬也

    杉浦説明員 お答えしようがないと思います。
  408. 東中光雄

    東中委員 答弁拒否ですよ。お答えしようがないというのはどういうことですか。答弁拒否じゃないですか。  ただしてください。実在する人間であるのかないのかということについて、どうなっているか、聞いてください。
  409. 細田吉藏

    細田委員長 国鉄総裁。——国有鉄道、だれか答弁しなさい。  御静粛に願います。——御静粛に願います。——御静粛に願います。——静かに願います。——静かに願います。  この名簿が実在するかしないかについて、質問でございます。その点についての国鉄の答弁をお願いします。
  410. 杉浦喬也

    杉浦説明員 先ほどお答えしましたとおり、この資料の存在を私認めませんので、お答えしようがありません。
  411. 東中光雄

    東中委員 私は、資料の存在を国鉄当局としては認めたら大変なことになるからほおかぶりしようという気持ちはわからぬでもありませんけれども、ここに書いてある人の名前は、我々は責任を持って人の名前を——国鉄当局でつくった中にあるのだから、そんなものは架空だというふうなことを言うのは許されません。  そういうひどいことを言うのだったら、ここに書いてある人間は、電気局の八十四名現在員、それが全部書いてある。七十九名まで順位をつけてある。実名が書いてあるのですから、それは実際におる人のことなのか、おらぬ人のことなのか、わからないのだったら調査するのか、その三つしかないわけですよ。この資料を認めなかったら、なぜこの人がおるかおらぬかというのが答えられないのですか。お答えください。
  412. 細田吉藏

    細田委員長 委員長から申し上げますが、国鉄総裁は二度にわたってああいう答弁でございますから、その答弁を前提に置いて質疑を続けていただきたいと思います。
  413. 東中光雄

    東中委員 これは実在の人間であることは、私たちはその実在の人たちに会って、そしてこの資料を手に入れたわけでありますから、それを実在であるかないかさえも答弁できないぐらいに、答弁したらもう格好がつかない。だからもう数の暴力でとにかくほおかぶりしよう、これが国鉄の今のやり方なんですよ。  公然たる不当労働行為を黙ってやっておいて、そして今なお、共同宣言に入らなかったら差し違えの提示をやって不当労働行為をやる。不当労働行為でないと言って堂々と不当労働行為をやって切り崩しをやる。こういう姿勢、これは法体系、法治国としてはあるべからざることですよ。  国鉄は、この事実について、この人間がいるかいないかについてさえ答弁を拒否せざるを得ないほど、この文書でやっていることは違法であるということを認めたものと言わざるを得ない。これはもうはっきりしておきましょう。  もう一つ申し上げましょう。
  414. 細田吉藏

    細田委員長 御静粛に願います。
  415. 東中光雄

    東中委員 資料Vを見ていただきたい。これは「職員評定調書」と書いてあります。業務機関コード七一〇一四五二〇、そして業務機関松山駅、松山駅の駅長の判こも押してあります。これを見ますと、総合評価について、国鉄本社の指示に基づいて、ことしの四月全国一斉に、先ほど示した——総裁自身は真っ正面から否定した。しかし、残念ながら、何ぼ否定したって、全国的にやりますということをあなた方は言うた。そして六十一年の四月評定をやった。六十一年の九月にも全国同一様式によってやった。その結果が松山駅ではこういう「職員評定調書」という形で書かれているんです。  これを見ますと、例えば桑野一男という人は四の評価から五の評価に下げられています。四の評価から五の評価に下げられた人が四人います。それから三の評価から四の評価に下げられた人もいます。  この表によりますと、こういう評定の引き下げの変更の事由が書いてある。どう書いてあるかといいますと、「七月二十六日十七時三十分から十八時三十分、松山駅前抗議集会に参加し「分割・民営化」反対、不当な差別、選別に抗議、」こういう行動を起こしたというのです。これは時間外の、職場外の集会ですね。分割・民営に反対した。そうすると、次に書いてあります「現状認識ができていない。」こういう評価をして、現状認識ができていないと国鉄では言うんです。そして四から五の段階へランクを落とす。これを次の白紙、余剰人員へ追い込んでいって、採用しない、選別する、こういう方式をとっているということが当局側の資料によって明らかになりました。  こういうことをやっているじゃないか。これについてもどうですか、存在を認めませんか。この資料が我々の手に入った。どうですか。
  416. 杉浦喬也

    杉浦説明員 先ほどから申し上げておるように、この資料の存在を私認めません。  それから、不当労働行為は一切行っておりません。差別もしておりません。
  417. 細田吉藏

    細田委員長 東中君、時間が参りました。東中君、時間が参りました。
  418. 東中光雄

    東中委員 やかましくて言えなかった分だけ、ちょっと最後に一言だけ。
  419. 細田吉藏

    細田委員長 最後、それじゃ一問だけ。
  420. 東中光雄

    東中委員 ここに載っておる、これは資料を渡してあるわけですから、この人物が存在するか存在しないか。この書類を認めるか認めないかじゃなくて、この書類に載っておる人間が実在するかしないかについて国鉄当局が調査をして、そして回答をしてもらいたい。この調書の存在を認めないという発言が何回もやられていますけれども、ここにあるんですから、現にあるものを、存在を認めないというのは、これはもう全くの暴言です。
  421. 細田吉藏

    細田委員長 東中君、時間です。
  422. 東中光雄

    東中委員 だから、こういう暴力的な、あるものを認めない、こういうことを言って差別をするということは断じて許せない。これが分割・民営の今の国鉄実態である。はっきりと申し上げて、質問を終わります。
  423. 細田吉藏

    細田委員長 これにて東中君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十二日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後八時十五分散会