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1986-10-09 第107回国会 衆議院 日本国有鉄道改革に関する特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十月九日(木曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 細田 吉蔵君   理事 小此木彦三郎君 理事 小里 貞利君    理事 佐藤 守良君 理事 三塚  博君    理事 山下 徳夫君 理事 井上 普方君    理事 嶋崎  譲君 理事 西中  清君    理事 河村  勝君       甘利  明君    臼井日出男君       小沢 辰男君    大島 理森君       片岡 清一君    亀井 静香君       亀井 善之君    久間 章生君       古賀  誠君    古賀 正浩君       桜井  新君    鈴木 宗男君       関谷 勝嗣君    田中 直紀君       武村 正義君    津島 雄二君       中島  衛君    中村正三郎君       野中 広務君    野呂田芳成君       鳩山由紀夫君    原田  憲君       平沼 赳夫君    松田 九郎君       森田  一君    若林 正俊君       上田 卓三君    小林 恒人君       関山 信之君    戸田 菊雄君       村山 富市君    山下洲夫君       浅井 美幸君    石田幸四郎君       遠藤 和良君    大橋 敏雄君       柴田  弘君    中村 正雄君       工藤  晃君    中島 武敏君       村上  弘君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         外 務 大 臣 倉成  正君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         厚 生 大 臣 斎藤 十朗君         運 輸 大 臣 橋本龍太郎君         労 働 大 臣 平井 卓志君         自 治 大 臣 葉梨 信行君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (国土庁長官) 綿貫 民輔君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      近藤 鉄雄君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 稲村 利幸君  出席政府委員         内閣審議官   中島 眞二君         内閣法制局第四         部長      大出 峻郎君         北海道開発庁計         画監理官    大串 国弘君         経済企画庁総合         計画局長    及川 昭伍君         環境庁大気保全         局長      長谷川慧重君         国土庁土地局長 田村 嘉朗君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      中平  立君         大蔵省主計局次         長       角谷 正彦君         厚生大臣官房審         議官         兼内閣審議官  佐々木喜之君         運輸政務次官  柿澤 弘治君         運輸大臣官房審         議官      井山 嗣夫君         運輸大臣官房国         有鉄道再建総括         審議官     林  淳司君         運輸大臣官房国         有鉄道部長   丹羽  晟君         運輸省運輸政策         局長      棚橋  泰君         運輸省地域交通         局長      熊代  健君         労働大臣官房審         議官      佐藤 仁彦君         労働省労政局長 小粥 義朗君         建設省都市局長 北村廣太郎君         自治大臣官房審         議官      森  繁一君         自治省行政局公         務員部長    柳  克樹君         自治省財政局長 矢野浩一郎君         自治省税務局長 津田  正君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       杉浦 喬也君         日本国有鉄道常         務理事     前田喜代治君         地方行政委員会         調査室長    島村 幸雄君         運輸委員会調査         室長      荻生 敬一君     ───────────── 委員の異動 十月九日  辞任         補欠選任   小沢 辰男君     田中 直紀君   亀井 静香君     平沼 赳夫君   長谷川 峻君     古賀 正浩君   増岡 博之君     武村 正義君   山村治郎君     鳩山由紀夫君 同日  辞任         補欠選任   古賀 正浩君     長谷川 峻君   田中 直紀君     小沢 辰男君   武村 正義君     増岡 博之君   鳩山由紀夫君     山村治郎君   平沼 赳夫君     亀井 静香君     ───────────── 本日の会議に付した案件  日本国有鉄道改革法案内閣提出第一号)  旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律案内閣提出第二号)  新幹線鉄道保有機構法案内閣提出第三号)  日本国有鉄道清算事業団法案内閣提出第四号)  日本国有鉄道退職希望職員及び日本国有鉄道清算事業団職員の再就職促進に関する特別措置法案内閣提出第五号)  鉄道事業法案内閣提出第六号)  日本国有鉄道改革法等施行法案内閣提出第七号)  地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第八号)  日本鉄道株式会社法案伊藤茂君外八名提出衆法第一号)  日本国有鉄道解散及び特定長期債務処理に関する法律案伊藤茂君外八名提出衆法第二号)  日本鉄道株式会社退職希望職員等雇用対策特別措置法案伊藤茂君外八名提出衆法第三号)      ────◇─────
  2. 細田吉藏

  3. 上田卓三

    上田(卓)委員 きのう、おとといと同僚議員から既に総括的な質問がなされておるわけでございます。そういう意味で、私は各論、とりわけ国鉄長期債務中心とする諸問題につきまして御質問を申し上げたい、このように思うわけであります。  まず、国鉄再建につきましての特に六十年度の監査報告によりますと、長期債務は二十三兆五千六百十億円、こういうことのようでございます。そういうことから、膨大な長期債務とか、あるいは国鉄破産状態である、こういう宣伝がなされておるわけでございますが、そもそもこの長期債務がなぜ発生したのか、こういうことが非常に大事ではないか、こういうように思っておるわけでございます。国鉄監理委員会の答申では、この長期債務原因について何らといいますか、十分に説明がなされていないように思うわけでございまして、そういう点で運輸大臣としてこの発生原因についてどのように考えておるのか、まずお答えいただきたい、このように思います。
  4. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今上田委員から御質問がありました長期債務、確かに数字は御指摘のとおりであります。そして、六十年度末の長期債務残高約二十三兆六千億円の中で、設備投資によるものが約十四兆五千億円、また償却赤字に相当いたします運営資金不足による長期債務残高が約九兆一千億円であります。この設備投資によるもののうちで約五兆円が減価償却費相当の取りかえ工事充当分でありますから、純粋の増強改良工事等のための設備投資によるものは約九兆五千億円でございます。  これらの長期債務の中で、設備投資によりますものは、私どもとしては輸送サービス向上とかあるいは安全確保等それなりの役割を果たしてきたものだと考えておりますし、運営資金不足によるものについては、経営効率化重点化というものが的確に図り得る体制になかったということに起因すると考えております。
  5. 上田卓三

    上田(卓)委員 大臣からもお答えのように、長期債務の多くの部分といいますか、約半数に近いものがいわゆる設備投資であるわけでありまして、新幹線建設とかあるいは輸送力増強など約十四兆円が相当するのじゃないか。しかし、その財源のほとんどが自前調達といいますか、特に借入金が十三兆六千二百億円ですか、全体の九〇%にも達しておる、こういうようなことのようでございまして、これは昭和三十六年から昭和五十九年の間にそれだけの債務がある、こういうことではないか、こういうように思うわけであります。  そこで、例えば新幹線鉄道整備法の第十三条によりますと、建設資金助成その他必要な措置を講ずることを国に求めておるわけでございまして、実際には守られていない、こう言ってもいいのではないか。例えば、ちなみに政府出資、それから助成金、これは昭和四十六年から六十年度までにトータルいたしましても七千億円ほどしか出していないということになるわけでありまして、もう圧倒的部分自前調達である、こういうことになるのではないか。そこで、新幹線整備などはある意味では採算性を度外視した設備投資がなされてきたというように思うわけでありますが、その理由はどういうものであったのか、どのように御理解でしょうか。
  6. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 確かに、今御指摘ありましたように、この長期債務残高の内訳を考えてみますと、資金運用部及び簡易保険局からの借入金棚上げ債務分を含めますと十二兆五千四百四十六億円、一般会計からの借入金が、これは財政再建借入金も含めますと三千三百八十億円、金融機関からの民間借り入れ五千八百五十一億円という状況にあることは事実であります。  ただ、今上田委員の御指摘でありますが、例えば、確かに上越東北新幹線鉄建審で御審議をいただきますときのいわば目安として、半分を政府出資という話があったようであります。この当時私は関係しておりませんから、あったようでありますという言い方をいたしますが、それが実際上出資という形ではなく、三・五%を超える部分についての利子補給という形で国はその助成を講じたわけでありますが、これは仮に七%の利率というものを仮定をいたしますとその出資の場合とほぼ同額に見合うということでありまして、必ずしも私は完全に国がその責任を持ってこなかったと言われる中身ではないと思います。  ただ、今御指摘を受けましたけれども新幹線等設備投資というもの、これは投資採算性も考慮された上で輸送力増強あるいは輸送サービス向上安全確保策等を通じて経営の改善に資する、寄与すると考えて行ってきたものでありますから、今申し上げましたように、政府としてはそれなりに所定の財政措置は講じてきたと考えております。(発言する者あり)
  7. 細田吉藏

    細田委員長 御静粛に願います。
  8. 上田卓三

    上田(卓)委員 確かに、長期的に見れば採算性というものが大きな問題であろうと思いますが、ある程度そういう政治性というのですか、あるいは政策的というのですか、あるいは国民ニーズといいますか、要望というものも踏んまえて、あるいは経済に対する活性化というものもありましょう。そういうことから、当面は採算はとれない、しかし将来にそういうものがある程度トータルとして可能になってくる、こういうようなことではなかっただろうかと私は思っておるわけでありまして、例えば、これはお答えいただきたいのですけれども東北新幹線上越新幹線、何年ごろになれば大体採算がとれるのか、そういう見通しについてそれではお聞かせいただきたい、このように思います。
  9. 林淳司

    林政府委員 ただいま先生の御質問は、東北上越新幹線につきまして、建設当時どういう見通しをしていたかということかと思うのですが、これにつきましては、基本計画を策定した昭和四十六年当時でございますが、このころに一応の試算をしておりまして、東北上越新幹線、いずれもこれは建設費の大体半額、二分の一程度出資があるという前提での試算でございますけれども東北新幹線につきましては、いわゆる償却後全体として収支がとれる時期というのは開業後六年、それから、これを仮に在来線総合収支を見た場合には、同じく開業後六年たてば採算がとれるだろう。それから上越につきましては、新幹線単独の場合で開業後八年、それから在来線との総合収支で見ますと開業後十一年というところで収支採算がとれるであろう、こういう想定をしておりました。  これは二つ要素がございまして、一つ輸送量が当時の趨勢から見るとかなり増加するんじゃないかということでありまして、これが現在の実績に比べるとかなり多いという点が一つございます。それからもう一つ建設費でございますけれども建設費も実際にかかった建設費に比べると、当時の物価水準からいってそれほど高騰するとは考えていなかったということで、建設費がかなり低目に見てあった。この二つ要素があるかと思いますが、その結果として実際には採算がとれる状況には現在なっていないということでございます。
  10. 上田卓三

    上田(卓)委員 新幹線ができましても結局在来線が今度は収入が減るというようなことになるわけですから、そういう意味では新幹線在来線トータルしていつごろにペイするのか、そういうことになるのじゃないかというように思うわけでありまして、新幹線開業後でもトータルして十一年くらいかかるのじゃないかということでございますけれども、それが今日ではその見通しについてはどうなんですか。大体そのようにいっているのですか、いってないのですか。
  11. 林淳司

    林政府委員 ただいま申し上げましたように、昭和四十六年の基本計画策定時におきましては、ただいま申し上げたような目標、予想というものをしておったわけでございますけれども、その後実際の輸送量が当時の見込みとは相当食い違っておるわけですね。当時の予想より輸送需要が大体半分程度以下というのが現状でございます。それから建設費も当時の予想に比べまして三倍以上というふうな状況でありまして、したがって当時の試算前提が相当狂っておりますので、現段階では、東北上越というのは今のままの姿でいった場合にいつになれば採算がとれるかということについては、その見通しはなかなか難しいわけであります。そこで、今回のこの改革法案では、そこら辺のところもいろいろ勘案しまして、新幹線一括保有で、いわゆるリース方式という方式をとって、全体として新しい会社の経営基盤の確立ということを考えたということでございます。
  12. 上田卓三

    上田(卓)委員 運輸大臣、今のお話のように、当初在来線も含めて十一年ぐらいでペイするんじゃないかということが、今なかなかその後の社会的変化等も含めてその独算めどがつかない、こういうようなことのようですね。私は大体そんなものだと思うのですね。だからそういう点で、ある程度長期的、と言ったってどの程度ということになるかわかりませんけれども、少なくとも五年とか十年という一つ見通しの中で何とか採算が合うんだというようなことであっても、これはなかなか難しい、こういうことになっておるわけでありますから、こういう部分というのは相当長期間というように我々考えなければならぬのではないか。そういう意味では短期的には利子補給も含めて相当な赤字になってくる、こういうことは明らかになっておるんじゃなかろうか。  例えばもう一つ青函トンネル、これも十五年で約六千億円ですね。実際完成しても、それを後どのように利用するのかというようなめどが立っていない、こういうこともありますね。  それから本四架橋、これも非常に大事なことでありますけれども、しかしこれとても、これは鉄道が通るわけじゃないんでしょう。通りますか。(橋本国務大臣備讃線が通ります」と呼ぶ)ああ将来。そういう点で、この本四架橋というものを一つとりましても、直接国鉄というものと一体どこまで関連性があるのか、こういうことにならざるを得ないし、いわんやこの採算性ということになれば一体どうなるのかということで、これ自身も非常に大きな問題があるのではないか、こういうように思っておるわけであります。  あるいは大都市圏輸送力整備とか、あるいはその中でも東海道線とか総武快速とか京葉線など一つ見ましても、それらが採算に乗る部分もあるし乗らない部分もあるわけでありますが、現在の東海道新幹線、非常にドル箱的でありますが、しかしこれ自身もやはり開業まで相当な期間が要ったし、また開業後どの程度採算がとれたのかということに、一番いいところでも相当無理をしているということになるのではないか、私はこういうように思うわけであります。  こういう点については、例えば昭和三十七年三月二十八日でありますけれども、きのう、おとといですか、ある委員からもお話があったようでございますけれども、当時の鉄道建設審議会での小委員長をされておりました田中角榮先生がこういう発言をしておりますね。「採算のとれないところの投資をしてはならないということは間違いと思う。鉄道の制度の考え方でペイするとかしないとか考えていたら、鉄道の持つ本当の意義は失われると思う。私は、鉄道はやむを得ないことであるならば、赤字を出してもよいと考えている。」私はこれは全く正しい意見だと思っておるわけでありますが、この点について運輸大臣はどのようにお考えでしょうか。
  13. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今御指摘になりました事項のうちで確かに青函トンネル、これはたしか四十六年四月に基本計画が決定されました当時、青函連絡船客貨輸送量が非常に着実に増加をし続けていた。また、慢性的な輸送力不足であり、しかもその輸送安全性安定性を確保する必要性があるということから、まさにナショナルプロジェクトとしてスタートをした。そのために、調べてみますと、まさにナショナルプロジェクトとして、しかも本州と北海道を一体化するといった意義等をも込めて着工が決められておりまして、収支試算というようなもので確定したものが実はないようであります。これはその時点においても相当な助成措置をしなければ収支の均衡は難しいという予測がされていたようでありまして、その点をとらえて考えれば、私は上田委員の御指摘が必ずしも不当であるとは思いません。国鉄というものが確かに従来まさに公共輸送中心をなし、全国的な輸送の中核をなしておりました時期においては、私は御引用になりましたような田中先生の御意見等も当然成立し得るものであったと思います。  しかし、今日、全く国民交通に対する依存度、かつ交通機関別依存度というものが変わってきている状況の中で、私はこれから先も国鉄を含めて鉄道輸送採算を度外視した公共性を求めるということはいかがなものであろうか、むしろやはり設備投資につきましても、効率的な経営形態のもとで採算に配慮しながら国民ニーズに適合した投資をしていくことの方が真に利用者の利便になるものではなかろうかと考えております。  これは大変恐縮な話でありますけれども、実は私自身運輸行政というものに全く十分な知識を有しないままに運輸大臣を拝命して、その中でさまざまなデータを見てまいりました。そういたしますと、その中で本当にある意味では地域の特性というものが交通機関依存度においても大変差異がある。また同時に、鉄道輸送というものがまさに国民ニーズとして求められているものは、大都市圏における通勤通学中心とした輸送、また自動車の移動では遠過ぎる、航空機を利用するには近いという、いわば中距離の移動、こうしたところに大変国民鉄道というものに対しての希望がかかってきておる。こういう状況を見ますと、私どもは、新たに民営化していくべき性格を持つ国鉄、現在の国鉄、それが将来におきまして、やはり他の交通機関が持つと同様の公共性はもちろん必要でありますけれども、それを超える公共性の負担を求めるということは将来には合わないのではなかろうか、そんな感じがいたしております。
  14. 上田卓三

    上田(卓)委員 鉄道がやむを得ないものであれば、必要であれば赤字を出してもいい、当時はよかったんだけれども、今はそうはいかないんだというようなお話のようですね、一つは。その中身からいうと、やはり国鉄は今後は採算性を考えていくべきだ、こういうことのようですが、私も国鉄というものは一つ企業体でありますからそうあっていいと思うのですね。  しかし、そういう国鉄の意図というものを度外視して、先ほど私が申し上げたように、国鉄長期債務と言われる中の半分に近いそういう債務設備投資、そういうものの多くが政治的な、我田引水ということもありますが、政治路線というようなことも言葉としてもあるわけですが、そういう政治的なものとか、あるいは政策的なものとか、あるいは公共性というのですか、どうしても国民要望が強いという場合は、これは国として責任を持ってその部分についてはフォローしていく、赤字でもそのことを公共性という立場からフォローしていくのが国の立場じゃなかったのですか。そして、そういう立場で今まで赤字覚悟国鉄にある程度採算を度外視してやりなさい、政府責任を持ちましょうということで積もってきたこの長期債務が今日になっているんじゃないのですか。大臣、ひとつその点をお答えいただきたいと思うのです。
  15. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、採算を度外視して赤字覚悟で何でもかんでもやりなさい、全部政府責任を持ってあげますというようなことではなかったと思います。むしろそういう形をとらずに、やはり経営健全化が図られるべきであるという前提というものは私は従来からあったと思うのです。そしてそれぞれの時期において、先ほどお話がありました、例えば新幹線の敷設を決めた時点においても、あるいは青函トンネル、これは先ほど申し上げたように特殊な事情がございます。しかし、例えば本四架橋の中で鉄道を載せることになっております備讃線計画にいたしましても、それぞれにおいてその時点においては、やはり将来において黒字に転じ、経営を悪化させないで済むというそのバランスはとっておったものと考えておりまして、赤字でいいからどんどんやれ、そういう性格のものではないと思います。
  16. 上田卓三

    上田(卓)委員 確かに、国鉄に対して、赤字になってもどんどんやれ、政府が面倒見てやろう、そういうような、私ちょっと言い過ぎたかもわかりませんが、私はそういう意味で言ったのじゃなしに、やはりある程度採算性を度外視してでも国民要望あるいは諸般の事情からするべきものはする、赤字を出してもするということは、今までも正しかったし、今後もそうすべきだと私は思っていますよ。必要なら赤字を出してもする。そのために政府というのはあるんだから。非常に財政難であるという一つ前提がありながらも、にもかかわらず国民要望なりを、あるいは政策的な立場でそれをどう実現していくかということは、私は今後も追求されなければならない課題だ、こういうように思っているのです。  そこで、例えばそういう立場から上越新幹線とか東北新幹線がある程度、十一年ぐらいたてば採算をとるようにということでやったけれども、実際いまだにそれが見通しが立たないというようなこと一つ見てもそうだし、青函トンネルもそうなんですね。これからやろうとする整備新幹線も、果たしてそういう意味でどこまで採算見通しがあってこれから計画しようとするのか、これについても私は未知数じゃないかと思うのですね。しかし、必要ならやろう、やろうじゃないか、何ぼでも政府が見てやろうということじゃないにしても、ある程度必要ならやろうという路線がそのまま踏襲されているんじゃないですか。その点どうですか。
  17. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今整備新幹線にお触れになりましたけれども整備新幹線につきましては、今検討委員会でそれこそ収支のバランスから、あるいは財源から、将来影響等々を勘案して結論を出すということで検討が進められております。しかしこれも、全く赤字になり、あるいは地域交通体系がそれによって大きく影響を受けるような形で検討委員会の結論が出されるとは私は考えておりません。  同時に、これは上田委員、大変恐縮でありますけれども、ちょっと私は数字を申し上げさせていただきたいのです。  実は、確かに敗戦後、私は敗戦のとき小学校の二年生でありますけれども、敗戦後の混乱期において国鉄国民生活の維持向上のために果たした役割というものは極めて大きかったと思います。そして、その当時においてはまさに国鉄というものは国民の動脈であり、本当に大きな役割を果たしてきたと私は思います。しかし、その後、一方では自動車交通というものがどんどん伸びてきた、道路も改良されてきた、また、最近特に航空輸送が人的輸送、貨物の一部を含めまして非常に伸びてきた、そういう中で鉄道の果たす役割というものは変わってきたと思うのですね。そして、その変わりつつある交通体系の中で従来と同じ考え方で国鉄を考えていったら、また鉄道を考えていったら、これは狂いがくると私は思うのです。現に今鉄道輸送に対して一番国民要望の強いのは、実は五百キロから七百五十キロの移動であります。次に高いのは三百キロから五百キロの移動であります。千キロを超えればもう完全に航空機の輸送量がふえる。百キロから三百キロの間の移動は自動車が圧倒的なシェアを占めている。そうしますと、私は先ほど申し上げたように、都市圏における通勤通学輸送あるいは中距離都市間の輸送、こういうものが中軸になる鉄道というものを頭に描く限り、従来の国鉄に求めたと同じイメージを今後とも鉄道に求めるというには無理がありはしないか、私も率直に申し上げるとそういう感じがするのです。
  18. 上田卓三

    上田(卓)委員 それは大臣、私も同感ですよ。確かにそうですよ。昔のように鉄道に依存するというよりも、こうやってモータリゼーション化といいますか、マイカー時代あるいはトラック輸送というものも非常に進んでいますね、今までは貨車で利用しておったものがトラック輸送ということで。当然幹線道路とか高速道路とかあるいは都市部では環状線とか、どんどん整備しておるわけですから。また、当然空も海も整備されておるわけですから、鉄道に依存する部分が減ってきていることは事実ですよ、客観的に。そういうように政策をしているのですから、国の方が。やりながら、なおかつ国鉄に、嫌がる国鉄とは私言いませんよ。しかし、政府のあるいは議会筋の圧力で、圧力と言えば語弊がありますけれども国鉄に過大な任務を今まで押しつけてきたのじゃないですか。そして破産状態になったということで、けしからぬ、どうなんだ。国鉄に押しつけるのは押しつけておいて、当然私は、国鉄の当局は労使ともに、それは一つの事業体としてやはりある程度採算性というものがなければ、そんな何ぼ何でも、国の方が赤字は見てやるから何ぼでもせいと言うたって、ちょっと待ってください、我々はやはり一つの組織だからといって、私はそれだけのセーブというのですか、そういう自覚というものがあったと思うのですよ。にもかかわらず、政府の後押しというのですか、口はうまいことを言うのだけれども、実際金は出さぬということで、困り果てているのが国鉄の実際の姿であると思うのです。  そういうふうに、鉄道輸送というものがかつてのようなものじゃなしに、だんだんだんだんシェアが狭くなっているにもかかわらず、なおかつ新幹線がどうだとか、これから整備新幹線がどうだとか、本四架橋がどうだとか、そういうような形で実際押しつけてきた交通政策全体の、そういう意味で私は国の責任だと言わざるを得ないと思うのです。だから、これを国鉄責任というよりも、そういう現在の国鉄状況に持ってきたというのは、これはひとえに政府責任、あるいは国会の責任もあるというふうに考えざるを得ない、こういうふうに思っているのです。その点はひとつ大臣、お言葉ですけれども大臣のお言葉は全部あなたにお返ししなければならぬ状況にあるのではないか、こういうふうに思っております。総理大臣、いかがでしょうか、この意見について。
  19. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今の御指摘を私は決して否定をいたしません。ただ、そういう状況を招いた原因が、今せっかくの委員の御意見でありますから、私はそれは甘んじてちょうだいをいたします。ただそういう、あるいは政府責任があるかもしれません、国会も責任があるかもしれません。そうした圧力といいますか、あるいは影響を国鉄が排除し得なかった原因は何だといえば、実はここに公社制というものの持つ限界があった、私どもはそう思っております。  だからこそ、民営というものが必要ではないか。そして、その地域性を今度考えていけば、やはり分割というものも、旅客の場合には、それぞれの地域内完結度に応じて適正規模に分割をした方がいいのではないかという考え方を出してきたわけでありまして、まさに今ちょうだいをした御批判は甘んじて受けますが、それが私どもが民営が必要であると考えたポイントでもある。その辺は御理解をいただきたいと思うのです。
  20. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 国鉄の使命という中には公共性が非常にあるということでありました。そこで、国土の均衡ある発展、そういうような考えもありまして、青函トンネルをやるとか本四架橋をやるとか、そういう思想でやったので、それはそれなりに私は意味があったと思うのであります。  しかしその後、高度経済成長以来大きく変化しまして、競争路線が出てきた、あるいは競争業種というものが出てきた。そうすると事態は非常に変わって、ほかに輸送手段がないという状況ではない。あるいは飛行機を使い、あるいは道路を使うという形になって、輸送体系が激変してまいりました。そういう点から見ましても、もはや今までの国鉄性格が違ってきて、民間会社と競争しなければ生きていけないという形になってきて、それがサービスとかその他の面にもまた影響もしてきました。そういう大きな時代の変化というものの新しい観点に立って、やはり根本的改革をやる時期が来た。そういう面も一面においてある、そう私は思うのであります。
  21. 上田卓三

    上田(卓)委員 だからすぐ民営だ、公社制が問題だ、こういうようなことで飛躍があるようですが、これについてはさらに詰めていきたい、このように思っております。  一つは、そういう長期債務の中での過大な設備投資、これも必要悪として当然必要だから今までやってきた、こういうことの結果だろうというように思います。  それから年金制度も含めてですが、国鉄のいわく因縁といいますか歴史性というのですか、そういうものも大臣もちょっとおっしゃられたと思うのですが、そういう意味で、例えば国鉄共済年金の追加費用の累計ですが、これは五十一年から昭和六十年の十年間で三兆八千三百億円にも達しておるわけであります。  もともと国鉄というのは、大臣もおっしゃられたように、戦後海外からの引揚者の雇用対策というのですか、失業対策という言い方がいいのかどうか別として、雇用対策として戦後の経済復興のために相当な貢献を果たしてきたということも、これまた私、事実ではないかというふうに思うのですね。それが今日の年金の危機を招く、こういうことになってくるわけでありますけれども、例えば昭和五十年のときにはこの年金の追加費用が八百八億円あったのですね。それがずっと積もり積もって、六十年度だけを見ますと四千五百八十一億円、こういうことになっておるわけであります。  そういう点で、年金の問題一つ見ても、これは国鉄責任というよりも国策としてそういう雇用対策、引揚者に対する対策という立場から、国鉄に国が押しつけたというのですか、国鉄がそれを引き受けたということの結果が、今ツケとして多くかぶさってきているという面が一つありますね。  それから、それに関連してでありますが、その中身として例えばこういう問題がありますね、軍人恩給。国鉄職員で召集を受け軍人として兵役に従った人は、その期間が軍人恩給期間として通算される。その軍人恩給は約十七万人分。八二年度だけで十七万人分がある。  それから恩給負担金。これも、鉄道省として国の事業であったとき任官し退職した官吏の恩給を、公社になった後も負担している。これが百三十四億円ありますね。  それから共済年金に通算される恩給。国鉄共済が発足して以降退職した人で、恩給期間と共済期間を合計して資格を得、通計して年金を受ける人の恩給分、これが約十四万人分、九百五十五億円。いずれも八二年度の分でございますけれども。  それから、官吏として任官する以前の人の年金ですね。これは鉄道省時代年金制度があったのだけれども、その年金が二千八十九億円ですね。  それから、外国特殊法人に勤めた人への恩給相当分。南満州鉄道、華北鉄道などに勤めた人に対して、恩給と同じように給付が行われた。その恩給相当分が約一万人分、二十二億円。  こういうような部分で、本来戦後の国鉄とは関係のない、戦前、戦時中のそういう戦争体制の中での、敗戦処理というような状況の中でなされたものもここに含まれておるわけでありますが、この点について、厚生大臣もお見えでございますので、運輸大臣も含めてこういう点についてどう考えておられるのか、お答えいただきたい、このように思います。
  22. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 個別に挙げられた数字は、いずれも正しいものであろうと思います。私、ちょっと正確な数字を覚えておりません。ただ、旧令恩給法を引き継ぐことによって、国鉄共済に非常に大きな影響が出た事実は否定しがたいものと思います。
  23. 斎藤十朗

    ○斎藤国務大臣 国鉄共済年金問題につきましては、御承知いただいておりますように、ただいま国鉄年金問題に関する閣僚懇談会を持ちまして、昨年の十一月政府統一見解をお示しをいたしました中におきます、昭和六十四年までの間について「国鉄経営形態等の動向を踏まえつつ国鉄の自助努力と国の負担を含め、諸般の検討を加え、支払いに支障のないようにいたします。」こうなっておるわけでございますが、主に当面する六十四年度までの分について現在検討をいたしておるところでございます。また、六十五年度以降のことにつきましては、この検討の後に速やかに六十五年度以降の問題について検討に入ってまいりたいと考えておりますので、残念ながらただいま直ちにどのようになっていくかということを具体的に申し上げることはできないわけでございます。  同時にまた一方、年金の将来、昭和七十年をめどといたしまして一元化をいたしてまいろうということを考えておるわけでありまして、そういう中で年金制度全体の改革に取り組み、御承知のように基礎年金構想というものを実現をいたしたわけでありますが、いわゆる俗に言う二階建て部分、報酬比例部分等についても今後見てまいらなければならないわけでありますが、これまでの各年金制度の歴史的な沿革等によりまして、それぞれ負担や給付にばらつきもあるわけであります。そういったばらつきなども調整をいたす中で一元化へ向けて検討を進めてまいる、そういう中で国鉄の問題も当然入ってまいることである。いずれにいたしましても、国鉄共済の年金支給が確保されるように努力をいたしてまいりたいというふうに思っております。
  24. 上田卓三

    上田(卓)委員 国鉄の共済年金についてもやはりこういう大変な状況になっておるわけでありますが、そのいわく因縁は先ほど申し上げたようなそういう歴史性から来ておるわけでありますから、十分にひとつ対処をしてもらいたい、こういうように思っておるわけであります。そういう意味で、やはり国鉄長期債務と言われるものが、過剰とは言いませんが、国鉄の荷には重いような設備投資といいますか、そういうものがあったり、あるいは戦後の引揚者に対する戦後復興での役割、そういう国鉄が多くの人を雇用対策で抱えたこともこれありということも考えていただいたのではなかろうか、こういうように思っておるわけであります。  そこで、冒頭の話になるわけでございますが、長期債務の、累積債務責任は、私は国鉄というよりも、やはり原因を掘り下げてみるならば政府に多くの責任はあったということがわかっていただけるんじゃないか。押しつけがましい言い方になるかもわかりませんけれども、どうも大臣の話あるいは総理大臣の話を聞くと、政府責任あるが国鉄にあるんだ、その国鉄の公社制度に問題があるんだ、もう諸悪の根源はそこにあると言わんばかりのそういう言い方というのはどうもいただけない、もっと謙虚に政府責任というものを痛感してもらう必要があるのではないか、そうしてどうするかということがやはり議論にならなければならぬ、こういうように思います。  そこで、昭和五十八年の国鉄監査報告というのがあるわけでありますが、その中での長期債務問題についてのくだりでありますが、「その大部分国鉄の企業採算を超える構造的問題であり、国鉄自身の努力のみでは到底解決し難いものである。」と正しく指摘しているわけですね、私が先ほどから言っていることはこのことを言っているわけですが。ところが、国鉄再建監理委員会の答申の中身を、その部分のくだりを読みますと、「国鉄経営が悪化した最大の原因は、公社という自主性の欠如した制度の下で全国一元の巨大組織として運営されている現行経常形態そのものに内在するという認識に到達した。」もうまるっきり違いますね、これは。片方は、監査報告によると、「国鉄自身の努力のみでは到底解決し難い」云々ということになっておるのですね。監理委員会ではこれはもう公社制度、そういう経営形態に根本的な、国鉄そのものにあるんだ、こう言っているのですけれども、この矛盾をどのようにお受けとめされていますか。
  25. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 これは決して私、理屈をこね回すつもりはありませんけれども設備投資による累積債務の構造のみを強調されましたけれども、私は先ほど運転資金不足による、通常で言えば償却赤字に相当するもの、これも申し上げておることは一回ここで確認をいたします。  そこで、私は、再建監理委員会の結論と監査報告に打ち出している問題、本質的には同じことではなかろうかと思います。国鉄という組織の存続の中で、継続する中で、それこそ監査委員会は仕事をしてこられた。そしてその中で、国鉄という公社組織の中ではとても解決できない問題であるということを言われている。監理委員会は、まさにそれが経営形態そのものであるというところまで掘り下げられた。本質的には同じ問題点を指摘しておられる。ただ、その監査報告の中では監査委員会というものの性格からして、では国鉄経営形態をどう改めるかとか、そういうことまではお触れになっておらないということでありまして、指摘されている問題は延長線上のものと私は理解をいたします。
  26. 上田卓三

    上田(卓)委員 それじゃあれですか、同じ中身ではないか、矛盾していないという、延長線上というような考え方ですけれども、これはどうも常識的に見ても理解できないと思うのですよ。国鉄監査報告では、「国鉄の企業採算を超える構造的問題であり、国鉄自身の努力のみでは到底解決し難いものである。」こういうことですね。それはやはり長期債務のことを述べておるわけですね。それで、こういう状況国鉄自身では解決できない問題だ、こう言っているわけですから、国鉄の公社制を変えたら云々というものと全然問題は別だと思うのですよ。そんなこと何も言ってないんだから。そうでしょう。ところが、それを何か国鉄の公社制度を変えればそのものが全部解決するような言い方というのは私はいただけない、こういうように思うのです。  ちなみに、鉄道事業というものを例えば外国なんかではどうしているかということになるわけです。私は、前国会でも大蔵委員会で質問をたしかさせていただいた記憶があるのですけれども、フランスとかイタリアとか、鉄道の歴史の長いものがあるわけですけれども、外国ではどういうことになっていますか。こういう国有鉄道長期債務にかかわって国の援助というのですか、そういうものは相当日本と違うように我々の資料ではあるのですが、どうですか。
  27. 林淳司

    林政府委員 ヨーロッパ諸国でも、国によってやり方がいろいろ違うわけでございますけれども、例えばドイツあたりは、かつては単年度、毎年出た赤字を二年おくれで国がこれを補てんするというやり方をとってきたわけです。ただ、最近に至りましては、その赤字補てんがやはり国家財政上非常に難しいという状況になってまいりまして、資産を売却したり、あるいはとりあえず借入金でしのぐというふうなやり方に最近は変わってきておるということであります。  それから、例えばイギリスなんかの場合でありますと、これは日本と違いまして、イギリスの場合は特定の都市交通で非常に赤字が出るものですから、その都市交通については国なり地方団体というものがそれなりの補償をしていくという形をとるということと、それからイギリス国鉄全体についての赤字については、これは国の方が一定の補助の限界を設けまして、その限度内でおさめてもらうという、そういうノルマといいますか、そういうものを国鉄の方に課しておる。そういうふうなやり方をとっておるということで、国によっていろいろやり方が違うわけでございます。
  28. 上田卓三

    上田(卓)委員 私の手元の資料では、一九八四年、西ドイツでは運輸収入が一兆五千億、それに対して国の補償金ですね、二年目に一年ずつ補償するということのようですが、八千億円の補償金を出していますね。これは全体の五三%が国の補償金。だから、公共性国鉄に求めておるわけですから、やはり鉄道は独立採算採算を頭に入れる。しかし、採算を度外視した部分公共性という形で国有鉄道が引き受けているわけですから、その赤の部分を国が補償金という形で毎年単年度決算で国鉄会計に繰り入れるということで、西ドイツでは八千億円、五三%。それから、フランスは一兆一千六百億円、国の補償金は六千三百億円、五四%国が補償しているのですね。  ところが我が国の場合は、一九八六年、ことしでありますけれども、三兆二千億円の運輸収入があるようでございます。それに対して補償金は何と三千七百億円、たったの一二%しか国が見てない、こういうことになるわけですね。こういうことを一つ見ても、他のヨーロッパ諸国に比べて相当なやはり過重負担というのですか、先行投資的なものを設備投資で押しつけておりながら、その赤字部分、公共部分に充当する部分が非常に日本政府の持ち出しが少ないというところに大きな問題があるんじゃないか、私はこういうように思っておるわけでありますが、この点についてはどのようにお考えですか、大臣
  29. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、実は単純にその数字の比較はできないのではないかと思います。それぞれの国の交通特性、地域の実情、さらにその国民の個別交通機関への依存度、これは全く違うわけでありますから、一概な対比は私は難しいと思います。
  30. 上田卓三

    上田(卓)委員 確かにそうでしょう。やはり日本の事情というものもあるわけですからね。だから、ある日突然、これだけのたくさんな長期債務ができたわけじゃないのでしょう。やはり十数年にわたってずっと積み重ねてきたんだから、もっと早くなぜ国の方がこういう破産状況に——私はまだ破産状況だとは思ってないのですよ、後から申し上げますが。しかし、あなた方は破産状況だとおっしゃっておるわけですから、それじゃ破産状況であるとするならば、なぜここまでほってきたのか、今までなぜもっと国が手厚い援助をしてこなかったのか、そこに政府責任というものをやはり追及せざるを得ない、私はこういうように思うのですが、総理大臣どうですか。
  31. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 どうも、私の先任の運輸大臣がたくさんおられまして、先輩方の責任をと言われますと、大変私もお答えがしづらいのであります。  ただ、今までに何回か経営改善計画というものが練られ、そして国会でも御審議をいただき、それによって国鉄当局が努力してきたということも事実であります。しかしまた、それで解決できなかったということも事実でありまして、私どもは、今ここまで全体の状況が押し詰まってきた中で、やはり鉄道というものを生かし、国民が今まで親しんで守ってこられた鉄路というものを守るとすれば、分割・民営という方式による以外にないという決断を下し、そしてそれに基づいた法律案を国会に御提出を申し上げ、今御審議をいただいておるわけでありまして、いわば何回か国鉄という形の中での経営改善計画は繰り返してまいりましたけれども、それで解決をし切れなかったということで御理解をいただきたいと思います。
  32. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 国鉄赤字につきましては、さまざまな要因があると思います。御指摘のような設備投資の問題もございます。金利負担という問題もそれから随伴して出ております。  しかし、近年に至りましては、やはり経営の手法というものが民間の運輸業者に対抗できなかった、あるいは飛行機に対抗できなかった、そういうような経営問題という問題もなきにしもあらずである。もう一つは、やはり労使問題というものが必ずしも正常化してない。そういう意味において能率的な経営というものが阻害されて、赤字をつくる原因にもなった、サービスの低下にもなった。そういうようなこともございまして、一言でだれに責任があるというふうに決めつけることは難しい、非常に複合的な、相乗的な結果をもってこういう結果が出てきたと考えざるを得ないと思います。
  33. 上田卓三

    上田(卓)委員 総理大臣、確かに国鉄の今日のこういう膨大な赤字長期債務というものを考えますと、先ほどずっと私が言ってきましたところの国鉄のそういう特殊な生い立ちというのですか事情というものとか、あるいは公共性ということで国鉄採算性を度外視した設備投資というものもあるが、それ以外に今日言われているところの親方日の丸的とか、そういう問題に対する民間的手法というのですか、発想の転換といいますか、もっともっと企業として経営に取り組む姿勢というものにも問題ないとは言えないだろうし、また、当然労使問題というものも大きな問題としてあることも、これまた事実だと私は思うのですね。  そういう国鉄に対する内外からのいろいろな批判ということの中から、経営問題についても、後から申し上げますし、また、おととい嶋崎委員からもお話ありましたように、ここ近年、一般営業損益というものは黒字に転じている、こういうことでありまして、全然見通しがないということじゃないわけであります。問題はやはり、一にも二にもこの長期債務、これをどうするのか、この処理にあるわけでありまして、経営そのものは今非常に正常にいっている、さらに努力すればもっといいものになっていくだろうというように私は思っておるわけでありますから、そのことを抜きにして、この過去のものから類推してすぐ公社制度をやめて民間ということは大きな飛躍があるのではないかという論点で、私は先ほどから申し上げておるところであります。  そこで、この長期債務中身でありますが、先ほどからずっとるる申し上げておりますように、国鉄監理委員会の方で示されておるところの長期債務中身というものは、ことし、六十一年の四月ごろですか、これが一つの基準になっているのじゃないかと思うのですが、まず、長期債務は二十五兆一千億円、それから特別退職等のものが二千億円、それから年金負担等が五兆円、それから三島会社安定基金でありますが、これは一兆二千億円、雇用対策費が九千億円ですね。それから鉄建公団ですか、これが四兆五千億、それから本四架橋が七千億、トータルで三十七兆五千億という数字が出されておるわけでありますが、この中で、いわゆる国鉄自身長期債務と言われるものはこの二十五兆一千億だと私は理解しておるわけですが、これでいいんですか。
  34. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 いわゆる国鉄長期債務と言われましたもの、一般勘定並びに特別勘定の累計が二十五兆七百九十六億円ということはそのとおりであります。  ただ、例えば、やはり年金の負担にいたしましても、あるいは本四架橋鉄道が利用する部分についての負担にいたしましても、これらが私は国鉄の負担すべきものでないとは思いません。そして、その累計額というものが再建監理委員会から示された内容になっておることも委員御承知のとおりであります。
  35. 上田卓三

    上田(卓)委員 確かにそういう点はあると思いますが、やはり本来の国鉄長期債務と言われるものにプラスアルファされて、関連はあるとはいえ、それはいろいろいきさつがある部分でありますから、それを国鉄長期債務だというような形で押しつけるということはいかがなものだろうか、こういうふうに思っております。だから、当然三島会計の一兆二千億なんかも全然、これはこれからのものであるわけですから、今までの国鉄長期債務でないこともはっきりしておるわけですし、また雇用対策、九千億円ですか、これもやはり民営化する、分割するに際してのそういう費用というように考えていいのではないか、私こういうように思っておりますので、そういう意味で、何か国民からいうと三十七兆円も長期債務があるのかということで、非常に誤解を与えている部分があるわけでありますから、そういう点で国鉄本来の、純粋のものを取り出せば二十五兆何千億という数字であるということをはっきりとやはり認める必要があるのじゃないですか。
  36. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 委員の御指摘、確かに一般勘定並びに特別勘定を合計をいたしました国鉄長期債務が二十五兆七百九十六億円であることは、そのとおりであります。  ただ、同時に、なぜ清算事業団にこれだけのものが集中をしたかといいますならば、これから新たに発足をいたします各旅客会社あるいは貨物会社、それぞれこれから自分の足で立っていってもらわなければなりません。その場合に、この長期債務の中で、例えば確かに人口そのものの少ないといった事情のある三島の場合には、長期債務は引き継ぎをさせておりませんし、また、収支がバランスをいたしますように安定基金を設けたわけでありますが、同時に本州の旅客会社等に対しては、その資産に見合うだけの債務は負担させましたけれども、これから起こり得る、例えば年金の負担にしましても、あるいは本四架橋が完成をいたしました時点での負担すべき費用にいたしましても、これを一度にきちんと処理をしていこうとすれば清算事業団にそろえたということでありまして、その手法自体、私は間違っているとは思っておりません。ただ、一般勘定、特別勘定の合計額が長期債務として二十五兆七百九十六億円であるということは、これはそのとおりであります。
  37. 上田卓三

    上田(卓)委員 そうだと思いますよね。だから二十五兆約一千億、それが国鉄長期債務である。それ以上言う必要はないのですよ。あと、あなた方がこの民営・分割ということの中から、この際ということでいろいろひっつけて、本来ならば昭和三十九年に鉄建公団という形で新幹線については処理しているその部分についての四兆五千億もひっつけてしまう、そして三島会計の一兆二千億もひっつけてしまう、雇用対策の九千億もひっつけてしまう、そして三十七兆円が国鉄長期債務なんだ、だから破産だ、こういうように言っているところに問題があるわけでありますから、そういう点、大臣の方でちゃんと頭の中で整理をされ、国民にわかりやすく説明していただいておるわけでありますから、その点について余りくどく申し上げる必要ないと思います。  そこで、さらに論点を進めたいと思うわけでありますが、先ほど私申し上げましたように二十五兆七百幾ら、二十五兆約一千億でございますが、これだけの負債があるからもう国鉄は破産であるぞ。一般営業損益はもう黒字体質に転換しておる。あと問題は、約二十五兆一千億のそういう長期債務についてこれを何とかしなければならぬ。当然年金の問題も別に関連してあるということも、これまた事実であるわけです。そうすると、当然本四架橋の問題もそれはありましょう。これは別建てでありますから、国鉄の分は国鉄の分でそれは計算すればいいとはいうものの、私はそういうふうに整理していかなければならぬだろうと思うのです。  そこで、普通民間の企業であれば、破産とかあるいは倒産ということになりましたら、負債が幾ら、資産が幾らということで評価しますよね。そういう点で、国鉄の場合は負債額はこうやってわかっておるわけでありますが、資産がどうもわからない、こういうことになっておるわけでありまして、特に六十年度の国鉄の土地資産、これは昭和三十年度にそれ以前の簿価の部分は時価に再評価しておりますね。それから三十年以後の部分については買い取った時点の簿価になっておる、こういうことでありまして、国鉄の総資産は八千四百八十一億円、こういうことのようですね。そして土地面積、これは約六万六千ヘクタール、こういうことのようであるわけでありますが、ちなみに週刊誌などでも、いや国鉄の資産は全部評価すると百兆円ぐらいあるんじゃないかというようなことも言っている部分もありますし、また、先般私ちょっと聞いたのですけれども、野村総研の調査によりますと、昭和三十年から六十年までの地価の上昇率は、五大都市で六十四倍、それから市街地で四十二倍くらいではないか、こういう試算をされておるわけですね。そうすると、四十二倍ということになりますと三十六兆円あるわけですね。それから六十四倍ということになりますと五十四兆円というようになるわけですね。だから、どのように見積もるかということにもなってくると思いますが、大臣は大体どのくらいあるというようにお考えですか。     〔委員長退席、佐藤(守)委員長代理着席〕
  38. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、上田委員が御計算になりましたような考え方をとったことがありませんでした。ですから、そういう数字は考えたことがありません。なぜなら、今上田委員は破産会社の例をおとりになったわけでありますが、国鉄は民営・分割の後においても業務を停止するわけではございません。そしてその土地その他は依然としてレールが敷かれ、活用をされていく性格のものであります。ですから、こういうものを私どもは資産として計算をしたことはございませんでした。ただ今回、長期債務を返済していくために監理委員会では二千六百ヘクタールの処分可能地があるという御指摘でありましたが、国鉄自身が精査をされて三千三百三十ヘクタールの売却可能土地があるということで提示をされましたものにつきましては、先日委員会にお届けをいたしましたとおり、総額として約七兆七千億ぐらいという見積もりがされております。
  39. 上田卓三

    上田(卓)委員 国鉄は破産しているわけでも何でもないわけです。現実に走っているわけですから、営業しているわけですから。しかし、監理委員会では、民間では破産会社だ、こういうことでしょう。国鉄はもうこれはだめだ、だから民間で分割するんだということになるのですから、民間でいうたら破産会社扱いですよね。ですから、少なくとも負債はわかっているわけですから、そうしたら資産はどのくらいあるのかということは、ちゃんとある程度国民が知りたがっていると思いますよ。そういうことを考えた場合に、そういう民間サイドの感覚で言うと、決して破産状態じゃなしに結構やっておる、正常にやっているのじゃないですか。どこの企業でも皆借金がありますよ。ちゃんと渡しているのですから。  ちょっと監理委員会、聞きますけれども、一年間に、利子とかそういう支払い部分がありますね、どれぐらいあるのですか。一兆円くらい、もっとあるのじゃないですか。そういうものは渡せないような状況になっているのじゃないのでしょう。ちゃんと渡すものは渡しているのじゃないですか。にっちもさっちもいかぬようになっているのですか、どうですか。
  40. 前田喜代治

    ○前田説明員 昨年度、私の方の損益勘定で支出いたしました利子は、若干の取扱諸費も入っておりますが、一兆二千百九十九億でございます。
  41. 上田卓三

    上田(卓)委員 昨年度、利子は一兆二千億。元金はどれだけ渡していますか。
  42. 前田喜代治

    ○前田説明員 昨年度償還いたしました元本でございますが、一兆三百四十九億でございます。  それから、先ほどちょっと私、損益勘定といいますか、国鉄の損益で負担した利子と申し上げましたが、そのほかに建設期間中の利子でございますとか、あるいは債務整理特別勘定で払いました利子等もございますので、それを入れますとさらに一兆六千億ぐらいの利子を払っております。
  43. 上田卓三

    上田(卓)委員 大臣、今お聞きのように利子で一兆二千億、元金で一兆三百億ですか。それからそのほかで一兆六千億ということですから、大変な支払い能力がありますね。一年間に三兆八千億からそういう支払いをしているし、一般営業損益では黒だということでありますから、普通の会社であったらどんどん金を貸してくれるんじゃないですか。民間会社であったら銀行は喜んで金を貸しますよ、こんな会社であれば。こう思うのですけれども、どうですか。
  44. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 これは、現実に国鉄当局が資金を調達するのに大変な苦労をしております実態をごらんいただけば、民間が大喜びでお金を貸してくださる状況であるかどうかということは、事実が証明するように私は思います。  ただ、先ほどから申し上げておりますように、先ほど上田委員国鉄の資産、それが一体総額でというお話をされたわけであります。それが全部総額として、これが破産でもう仕事を終わってしまうのでありましたらば、それは確かに全部処分の対象になるでありましょう。しかし、その大半は今後ともに事業を継続し、分割されたそれぞれの企業が事業用地として使っていくものでありますから、それを資産と言うのは、私は時価で評価をしろと言われましても、それは本当に御無理ではないかと思うのです。ですから先ほど申し上げましたように、売却対象地は再建監理委員会時代においては五兆八千億と言われておりました。委員会の御命令により、それを一定の仮定を置いた上で伸ばしてみまして七兆七千億、売却予定地域としてはこれだけのものがありますということをお答えをしておるわけであります。
  45. 上田卓三

    上田(卓)委員 いや、だから民間の新会社にその資産が引き継がれるわけでしょう。売却するものは別にして、売却しない、今国鉄が利用しているその資産は皆新会社に引き継がれるわけでしょう。そうすると、国民からいうたらこの財産は国民の財産ですよね、平たく言えば。そうすると自分たちの財産が新会社、これはもう全く民間の会社へ引き継がれるわけですから、国民の感情からいうたら、一体国鉄の資産は何ぼあるねん、我々得しているのか損しているのか、新会社は損するのか得するのか、やはりそういう感情になるのは当たり前じゃないですか。だから、実際それを売るのでないんだったらなおさら時価に評価してあげたらいいじゃないですか。売るなら、時価にしたらまたちょっといろいろ問題になるかもわかりませんけれども、売らないんだったらなおさらある程度評価してあげたらいいじゃないですか。非常に難しいということはよくわかりますよ。しかし、いずれにしてもしなければならぬじゃないですか。あるいは新会社としても、これは六十二年度からですか、その場合に負債は幾ら、それから資産は幾らというような形で、そういう試算表というのはないのですか。
  46. 林淳司

    林政府委員 まず、先ほど破産に近い状態であるかどうかということについて御質問ございましたけれども、通常の民間企業でありますと、メーカーなんかの場合ですと、年間売り上げと大体同程度の負債というものが大体限界である、年間売上高を超えると赤信号がつく、こういう状態でございます。私鉄なんかの場合ですと若干装備率が高い経営構造というのがございますので、大体年間売り上げの一・三倍ぐらいになります。大体その辺のところが限界でございまして、それを大きく超えると、これはもう経営的には成り立たないというのが普通の常識なわけですね。  国鉄の場合ですと、年間売り上げが大体三兆円でございますから、二十五兆というのは七、八倍ということでありまして、七倍ないし八倍の負債があるということになりますと、これはもう民間会社でいえば破産に近い状態、近いというよりも、むしろもう完全に破産の状態というふうに言えるのじゃないか。その場合にはもう資金調達は、現在国鉄は公社でございますから、そういう信用のもとに資金調達は何とかできておりますけれども、これが仮に民間であれば資金調達は全く不可能というのが現状だろうと思います。     〔佐藤(守)委員長代理退席、委員長着席〕  それから、先ほどの御質問でございますけれども、例えば破産の場合、この場合には先般にも申し上げましたけれども、いわば債権の保全、要するにこれはもう完全に企業は成り立たないという診断がまずありまして、したがってその後債権整理をするという観点から、その事業はもう廃止する、そしてその資産を時価で再評価しまして債権者にこれを分配していく、要するに最大限の債権者の利益保護を図っていくという手続であるわけでございますので、これは完全に時価評価をいたします。  それから、会社更生の場合、これは企業を継続していく場合でありますけれども、この場合にも確かに会社更生法ではいわゆる企業継続価値という観点からいわば再評価をするわけでありますけれども、その場合にも企業を継続していくために、企業継続ということを前提にしまして、そういうことで可能な限度の再評価というのが会社更生法の場合の手続なわけであります。  今回私どもがこの法案を御提出いたしました改革案では、要するに新しい会社は諸般の収支計算をし、いろいろな検討をした結果、簿価を基準として資産を引き継ぐということで初めて会社の経営が成り立つということでありますので、したがってそれをいわば企業継続価値というふうにみなして簿価を基準とするというふうに法律に書いてあるわけであります。したがって、これを時価で評価するということになりますと莫大な赤字が出て、これは会社は到底成り立たないということでありまして、したがって簿価を超えるいわゆる時価で評価するということは、これは全く意味がないというふうに考えているわけであります。
  47. 上田卓三

    上田(卓)委員 それは納得できませんね。簿価で計算すれば何とか収支が合う、時価ですれば全然収支が合わない、そういうことはないと思いますよ。だからちゃんと、それはもう新会社に対してはっきりと責任をとるという意味からも、ある程度の時価というものを出して、引き渡すなら引き渡すということが考えられてしかるべきだ、こういうように思っております。そういう意味で、この新会社での六十二年度の資産と負債の試算表というものができておるようであったら出してもらいたい。その試算表、明細表、出ますか、ありますか。
  48. 林淳司

    林政府委員 会社ごとの資産、負債を明記した貸借対照表ですね、これは出してございます。会社ごとに全部提出をしてございます。全部国会の方へ提出してございます。
  49. 上田卓三

    上田(卓)委員 やはり国民は、国鉄の資産が全体どれだけあって、簿価じゃなしにやはり時価でどの程度の価値のものが新会社に引き継がれるのかということは非常に関心があるわけでありますから、この点についてさらにひとつ御検討をいただきたい、こういうように思います。  それから、この清算事業団を通じて処分するところの三千三百三十ヘクタールですか、これについてでありますが、最初は二千六百ヘクタールということで五兆八千億、その次には政府見通しということで三千三百三十ヘクタールで五兆九千億。それが、きのうでしたか、おとといでしたか、さらに七兆七千億という数字が出てきておるわけであります。都心部での地価の高騰というものは一年間だけでも五〇%以上超えるものがあるというように聞き及んでおるわけでありますが、そういう点で果たして最近の地価上昇の土地の実勢価格をどれだけ反映しておるのかということで我々非常に疑問を感じておるということと、それから、この土地を十年間で売り渡すということでありますから、これから土地がどれだけ上がっていくのかというようなことにもなりかねないので、そういうようなものが一体どのようになっておるのか。政府で持っていて御自由に売った方が実際利益が上がるということに、それだけでも十分負債を賄われるのではないのかなというような感じもせぬでもないのですけれども、今のこの価格、一遍にこの一年間に売り飛ばすわけじゃないでしょう。十年間で売るということでありますから、相当トータルが、今七兆七千億ということ、これは実際このとおり売れるかどうかは別ですよ。もっと高くで売れる場合もあるし売れない場合もあるかもわからないし、余り高過ぎたら地価の暴騰につながるし、余り安く売り飛ばすと国民の財産が安く売り飛ばされるということで問題もあるわけですけれども、いずれにしてもやはりその点について非常に国民の皆さん方は関心が深いわけでありますから、それを一体どのように考えておられるか、お聞かせいただきたいと思います。
  50. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 先般来当委員会でお答えを申し上げておりますように、二千六百ヘクタールという数字は、再建監理委員会の作業の過程において、新会社に引き継がず売却可能な土地として出てまいった数字であります。その後国鉄当局が精査をしましたところ、三千三百三十ヘクタールが売却可能であるという数字が出てまいりました。そして、その五兆八千億という数字は監理委員会試算をされた数字でありますが、私どもとしては、これからこれらの土地を売却をしていくに当たりまして公開入札を、国民から余計な疑惑を持たれたりしないためにも公開入札を原則として対応したい、その場合の予見を入札者に与えたくないということから、その数字はお出しができないと申し上げてきたところであります。  ところが、先般来当委員会の御審議の中で、例えば先般公表されました公示価格等を参考にしながら、仮定を置いて、一体その五兆八千億というものはどこまで伸ばせるのか、伸びるのか、仮定の計算でよろしいから試算提出しろという御指示がありまして、仮定計算で七兆七千億という数字を申し上げました。  なお、再建監理委員会当時五兆八千億と言われておりましたものが、当初委員会に御提示をいたしましたとき五兆九千億と申し上げておりましたのは、北海道会社で土地で持たせるべき資産と考えておりましたものを現金で持たせる形に切りかえまして処分の対象地域をふやしましたために、その分が一千億ふえておったということであります。
  51. 上田卓三

    上田(卓)委員 きのうの毎日の夕刊によれば、こういう記事が出ております。「地価公示価格は、行政組織などが土地価格を推定する目安にすぎず、実勢地価とは大きな差があるのが常識。」「一般に都会地では公示価格は実勢の四分の一といわれているが、それをもとに推定すると、」売却益は三十兆円に達する、こういう報道があるわけでありますが、私は土地なんかいろうたことがないのでよくわかりませんが、いずれにしてもこういう公示価格は地価の実勢の四分の一、それが正確であるかどうか別にして、都市部においてはそういうような意見があるということのようでありますが、そういう意味から見ても、やはり国民から見ると、あの七兆七千億というのもどうなのか、こういうような感じをいたすわけでありますが、この点についてどのように考えていますか。
  52. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は毎日新聞さんがどういう推計によってその金額をはじき出されたのか存じませんけれども、先ほどから申し上げておりますとおりに、その七兆七千億という数字はまさに再建監理委員会提出された数字に委員会の御命令により仮定を置いて試算をいたしましたものであります。そして、これは私の立場からいたしますと、この不用地の売却によって最終的に残る、国民に御負担を願わなければならない金額を少しでも減らしたいわけでありますから、それは高いにこしたことはありません。しかし、都市計画その他いろいろな要素があるわけでありますから、そうした点を配慮しなければならないことも事実でありますし、そして、例えば道路に使われるような土地、こういうものは随意契約でお売りをしなければならないものがあるかもしれません。しかし、その場合においても地方自治体に払い下げたものが他に転用された例がございますので、そういう場合に目的外に使われたり転売をされたりすることを防ぐ措置というものを考えなければならない。厳正に対応するつもりでありまして、私はその毎日新聞さんの推計理由は存じませんけれども、私どもとしてはあくまでも御命令どおり仮定の試算としてこの数字はお出しをいたしております。
  53. 上田卓三

    上田(卓)委員 いずれにいたしましても、この国鉄用地の売却については、今日の都市部ではもう最後の新規土地、供給の土地がもう本当にわずかになっているわけですから、最後の部分だと言ってもいいと思うので、やはり慎重な配慮というものがされなければならない。当然地価の暴騰につながってもいけないし、安く売るということについても問題があるし、そういう点でそれらがどういう目的に利用されるのかというようなこともやはり非常に大事ではないかというように思っております。  特に、これも新聞記事で見てびっくりしたのですけれども、きのうの朝日新聞によれば、大阪の鶴橋の駅近くで国鉄の用地売却地にラブホテルが建っておった、もってのほかだ、こういうふうに思っておるわけであります。そういう点で、やはりそういう土地転がしとかあるいはそういう不正目的に使われるということがあるわけでありますから、それの予防のための、例えばきのう大臣は五年以上の転売禁止といいますか、そういうようなことも述べられておると思うのですが、やはり私は最低十年くらいは転売禁止するということもあってしかるべきだというように思っておるわけでございまして、ぜひともこの点についての考え方を明らかにしてもらいたいし、あるいはまた都心部での大規模土地の利用について、やはり運輸省、国土庁あるいは関係自治体、学識経験者などによるところの審議会の設置というようなものもぜひとも必要ではないかと思いますし、あるいは公開入札での利用目的の明示、それとこの違反に対する罰則規定というのですか、そういうものも非常に大事である、こういうように考えておりますので、これについては運輸大臣と総理大臣にお答えいただきたい、このように思います。
  54. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 その大阪の事案につきましては、私も新聞で見て驚いております。必要がありましたら国鉄当局からこれについては答弁をさせますが、今御指摘の問題点は、いずれも大変大事な問題でありまして、まさに資産処分審議会がその役に当たるわけであります。そしてそこはそれぞれの専門家、しかも利害関係を有しない専門家によってきちんとした運営をさせなければなりません。  また、御指摘のように私自身転売禁止の期間を本当に十年程度は持ちたいと考えておりますが、実は第三者に売り渡された場合に、これは買い戻しの特約をつけておりましても、それがなかなか効果を発しません。今、国有地の場合には違約金等を徴収するようになっておるようでありますけれども、これが一つは今御指摘のように、処分価格が実勢価格と乖離しておりました場合には、三〇%程度の違約金をかけてもなお転売してしまった方がもうかるなどということも考えられないわけではないわけでありまして、そうした場合の対応についても今工夫を凝らしております。御指摘の点は大事に受けとめたいと思います。
  55. 上田卓三

    上田(卓)委員 その点についてはぜひとも真剣に方向を出していただきたい、このように思います。  次に、清算事業団の資金計画でありますが、二十六年で償還する計画提出されておるわけでございますが、毎年幾らくらい償還することになるのか、あるいは清算事業団債というのですか、債券の発行なども当然しなければならないのではないかと思うのですが、その目的とか発行条件とか、そういうものも非常に大事だと思います。いずれにしましても元金それから利子も含めて毎年相当償還しなければならぬ、こういうことで、株式の売却が六十四年以降ということのようでございますが、いずれにしてもこの七兆七千億ですか、それが実際どれだけに売れるかということにもなりましょうが、まあ四、五年で売れるということに仮定しても、恐らく四、五年もたてば後どうするのかということが問題になってくるのじゃないかと私は思うので、その点についての具体的な資金計画を示していただきたいし、また、国民負担と言われておりますところの十四兆六千億ですか、これについても、年利七・五%にいたしましても二十五年間で総額で、元利で二十五兆円か六兆円くらいになるんじゃないかというように私は思うわけでございまして、そうすると一年間で約一兆円ぐらいの金が必要になってくる、こういうことになるわけでありまして、大蔵大臣は増税をしないで債務償還、こういうことでありますが、実際どうなるのか、そういう資金計画を明らかにしてもらいたい、このように思います。
  56. 林淳司

    林政府委員 清算事業団の長期債務の償還計画でございますが、これは既に資料として御提出を申し上げておりますけれども、六十二年度はこの長期債務の元利合計で一兆四千六百億、これは約定に従って償還をし、利子を支払った場合ですが、その後十年程度は、ピークは一兆九千五百億程度でございますが、大体一兆六、七千億というのが毎年の元利合計でございます。その後逐次減少してまいりまして、大体昭和八十六年、スタートから二十四年後くらいに約定による償還はほとんど終了するということでございます。  それで、清算事業団全体の、清算事業団は国鉄長期債務だけではございませんで、そのほかに先ほど来御議論があります追加費用の支払いでありますとかあるいは雇用対策費、あるいは三島に対する基金とか、いろいろあるわけでございますが、そういうもろもろの毎年度の支出というものをそれぞれ支払っていく必要があるわけでありまして、それは来年度で見ますと、六十二年度の年間の支払い額が約二兆八千億になるわけです。それに対して約六千億の自主財源が一応見込まれますので、残り二兆二千億について、先日来申し上げておりますようにとりあえずは財政事情の許す範囲内で国からの助成を行う、あとは資金繰りに困らないような措置をしていくということでございます。  そして、最終的に何年でこの清算事業団の債務を完全に処理をするかというのはこれからの検討でございますが、いずれにしても相当長期にわたってこれを行う必要がある。監理委員会でも二十五年ないし三十年という程度の期間を予定しておるわけでありまして、そういう期間をかけて処理をしていく。その場合に当然これは国民に御負担をお願いしなければならぬ部分があるわけでございますが、これについて本格的な財源、措置というものについては、雇用対策はおおよそ三年で終わる、それからそのころには土地の売却についても大体最終的なめどが立つであろうということで、今から三年後、スタートから大体三年程度の期間をかけてその辺の確定をいたしまして、その時点で本格的な財源、措置を講ずる、そして長期にわたって完全にこれを償還する、こういうことで現在考えているわけでございます。この趣旨はことしの一月二十八日の閣議決定に盛られているところでございます。
  57. 上田卓三

    上田(卓)委員 時間も迫ってまいりましたので総論的に申し上げたいのですけれども、いずれにしても今までの議論の中で私が感じますのは、確かに経営形態につきましては民間的手法というのですか、そういう、社会党案もございますから、民間ということになってもそれはいいというように思うわけです。あるいは公社制度のもとでも、もう既に一般営業損益において黒字という形に経営的にはなっているわけですから、私は、公共企業であってももっともっと民間的手法で発想の転換をすればいいわけであって、何ぼ体が民間になっても頭がついていかなければ何にもならぬということにもなりかねないわけでありますから、必ずしも体を変えたら頭が変わるというものでもないわけですからその点は柔軟に考えておるわけですが、私たちはそういう意味で、やはり分割というものについて相当デメリットというものがあるのではなかろうか、こういうように思っておるわけであります。  特に貨物会社などは、絶対にこれはもう独算制にはならないのではないか、大変な状況になりはしないだろうかというように思っておりますし、あるいは三島会社についても果たしてどうなのか、もう既に三島基金の千六百億円の積み上げがなされておる、こういうことで、こういうものが、基金を取り崩しを将来しなければならないような状況にもなってくるのではなかろうかというような気もいたしますし、あるいはバス部門が十三グループの分割が十グループの分割になって、あるいは北海道と四国と九州はそれをまた旅客会社にという形で、独立してはなかなか難しいということで、結局七グループになっておるようでございまして、そういう点で一たん旅客会社にひっつけた三グループが将来また独立ということに果たしてなるのかどうかというようなこともいろいろあるのではないか、こういうように思っておるわけであります。そういう意味で、やはり分割によるところのメリットよりもデメリットの方が多いのではないか、そういう意味でやはり十分にこの国会審議の中でそのことを明らかにしないと、初めに分割ありきという態度はいかがなものであろうか、こういうように思っておるわけであります。  それから、例えばデメリットの中に、現在例えば国鉄と私鉄あるいは地下鉄などの相互乗り入れですね、この切符の精算はコストがかかり過ぎるということで、実際はやってないというような状況のようでございます。しかし、三島会社などにおいてはその域内での行き来が圧倒的部分ということで、その部分については余り大きな問題はないだろうと思いますが、都市部を含むところの西日本会社一つとっても、確かに地域外流動が三%ということのようでございますけれども、しかしそれが何と四千万人にも達しておるわけでございまして、収入の四〇%を超えるということになりますと、そのことだけで果たして精算ができるのか。したら、コストが高くついて全然成り立たない。そういう意味からも、かえって一本の全国単一の事業の方が採算がとれるというようなことも聞いておるわけでございまして、そういう点でやはり大変大きな問題があるのではないか、こういうように考えておりますので、そういう点についての考え方というものもひとつここで明らかに、再度運輸大臣それから総理大臣からお聞かせをいただきたい、このように思います。
  58. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 大変広範な御質問でありますので、要点に絞ってお答えを申し上げたいと思います。  旅客会社の分割に対し貨物が一本にまとめられております理由は、まさにこれから鉄道で運ばれる貨物の特性と申しますものが従来とは変わってくるということであります。しかも、区間を越えて長距離に輸送されるものが多い実態、殊にこれから先主力商品となるでありましょうコンテナ等においては一層に長距離にわたるわけでありますから、これは一本で運営した方がより望ましい形だと私たちは考えております。  細部にわたりましては答弁は差し控えますけれども、いずれにしてもそれぞれの会社が大体均等の利益を上げられる、そうした試算をお示ししておるとおりでありまして、私どもとしてはこの方向に自信を持っておるということだけ申し添えます。
  59. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 上田さんの御所論をずっと拝聴いたしまして、なるほどもっともだと思う点もなきにしもあらずであります。特に、今までの国鉄性格から見まして、公共性ということを重んじてやってまいりました点には、国鉄の責めに帰すべからざる点もあると私も認識いたしております。  ただ、ここで申し上げたいのは、高度経済成長以来の日本の社会経済の大激変という問題が出まして、交通体系がここで大変革をいたしましたし、輸送手段もまた大変革をいたしました。それに順応する時期がなかった。そういう点が非常にあると思うのであります。そういう欠陥を克服して、これからのいわゆる国鉄を再建していく方策がどこであるかということを考えてみますと、やはり競争原理あるいは市場原理というものを思い切って取り入れてやる以外にはない。それがまた従業員の前途を保障するゆえんであるし、サービスもよくなる。そういう考えに立って分割をやったわけであります。  この分割の点が上田さんのお考えと我々と一番違う点でございますが、我々はこれによって競争させる、そしてそれによってコストの低下とサービスの向上を望む。本州二分割、三分割という点、大分我々も議論いたしましたが、中部というものを入れましたというのは、本州も東と西だけでやるというと、やはりマンネリズムになってしまって、そうして活発な競争原理が動かぬ。割合に採算点のいい中部というものをここへつくることによって、これが両方に大きな刺激を与えて、そして激しい競争が出てくる。そういうような意味におきまして我々は市場原理、競争原理というものを取り入れ、民間手法を取り入れるという意味で分割というものに踏み切ったわけでありまして、その点はぜひ御理解をいただきたいと思う次第でございます。
  60. 上田卓三

    上田(卓)委員 時間が来ましたので終わりたいと思います。外務大臣、時間がのうて、せっかく来ていただいたのですけれども、申しわけない、結構です。
  61. 細田吉藏

    細田委員長 これにて上田君の質疑は終了いたしました。  午後零時四十五分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時四十八分休憩      ────◇─────     午後零時四十六分開議
  62. 細田吉藏

    細田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。石田幸四郎君。
  63. 石田幸四郎

    ○石田委員 一昨日来いろいろと国鉄改革論議が交わされておるわけでございますが、私も、基本的な問題並びに用地の問題あるいは貨物問題、安全あるいは災害対策、そこら辺を中心にいたしまして、個別の問題についていろいろと伺いたいと思うわけでございます。  まず、総理にお伺いをいたしたいわけでございますが、百年余の歴史を持つ国鉄が今大改革をされようといたしておるわけでございますけれども、この国鉄はまさにさまざまな要件によって破綻を来そうとしている、そういったことから改革論議が起きているわけでございます。私は、今回の改革論議というのは、国鉄そのものというよりはまさに鉄道そのものの再生を目的とした改革でなければならない、このように思っておるわけでございますが、総理の見解を承りたいと思います。
  64. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 おっしゃるように、鉄道の機能というものが総合交通体系の中で見直されて、現代にふさわしいような経営形態というものが要請された、そういう点も非常にあると思います。
  65. 石田幸四郎

    ○石田委員 まさに、今総理から総合交通体系の話が出たわけでございますが、きのうも審議の中で経企庁長官総合交通体系なる言葉を引用されておるわけでございますけれども、この鉄道の再生という問題を考えましても、また、国鉄がモータリゼーションの発達に対して対応できなかった、あるいは航空機による旅客輸送に対する対応がおくれておった、いろいろな問題があろうと思うわけでございます。そういった意味におきまして、自動車、それから航空機、船舶、鉄道、この四つの大きな輸送機関の整合性を図っていかなければならないと思うのでございますが、今政府はそういった意味での総合交通体系なる政策をお持ちであるのかどうか、そこをまず伺いたいと思います。
  66. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 お答えをいたします。  総理からもお話ございましたように、経済、社会の変化に対応して、高度化、多様化しながら増大をしております人や物のモビリティーを確保して経済の発展、国民生活の向上に資するためには、総合的に交通政策を推進していく必要がございます。そのために、昭和五十八年に閣議決定をいたしました「一九八〇年代経済社会の展望と指針」において次のような政策の基本的考え方を示しております。  すなわち、交通政策の推進に当たっては、各交通機関の適切な競争と利用者の自由な選択が反映されることを原則としつつ、今後とも財政、空間、環境等の制約の強まりが予想されますので、各種の計画や他の社会資本の整備等と調和を図り、全体として効率性、整合性が保たれるようにする必要がございます。また、その整備に当たっては、需要の動向、交通手段の特性に応じ、できる限り相互補完的に組み合わせて、長期的な視野から順次選択的に整備し、効率的な体系の形成を図る必要がございます。さらに、安全の確保、環境の保全及びエネルギー効率の向上を図る必要がございます。こうした基本的な考え方で幹線交通についてはまず高速交通網の形成を図り、大都市圏と地方圏及び地方圏相互を幹線交通網によって円滑に結びつけ、国土の均衡ある発展を図ってまいります。  こうした考え方で高速自動車国道、さらに鉄道新幹線、そして航空網、こうしたものを総合的、相互補完的に結びつけた体系をつくりたい、これがこの「八〇年代経済社会の展望と指針」に示された内容でございます。  今回の国鉄改革は、こうした基本的な考え方に立ちまして、輸送需要の動向を的確に把握し、適切かっ健全な運営体制ができるように国鉄経営形態の抜本的な改革を実施するものでございまして、それぞれ地域地域の具体的な需要に即応しながら、従来のような全国画一の対応ではできなかったきめの細かい対応を民営化によって行うことができる、こういうものと私たち考えている次第であります。
  67. 石田幸四郎

    ○石田委員 私が申し上げております総合交通体系というのは、例えば昭和四十六年に運輸政策審議会が答申をいたしました我が国の総合交通体系、こういうものがかつてあったわけですね。ところが、この四六答申にも貨物輸送国鉄としては増強をすべきである、強化をすべきである、そういうような構想がこの中に盛られておったわけでございます。しかし、実際にやってみましたら貨物の需要というのは大変な停滞に次ぐ停滞で、ついにこの四六答申なるものは破綻をしてしまっているわけですね。  その後、昭和四十年代の後半においていわゆるオイルショックがございました。このオイルショック後のいわゆる総合交通体系をつくろうではないかというような、そういう論議が運輸委員会あるいは物価に関する特別委員会等で実はあったわけなんです。その当時の経企庁長官は福田さん、総理であった福田さんが当時経企庁長官をやっておられたのを私は今も覚えているのでございますが、総合交通体系をつくるべしという議論は、野党の要求もありましたけれども政府もつくろう、こういうようなことはおっしゃっておったのでございます。しかし、いまだに総合交通体系なるものが経済企画庁の方から提示をされておらない。そういった意味で、いわゆる今長官がおっしゃった、確かにそういったものが文言としてはありますけれども、まさに自動車あるいは航空機、船舶、鉄道、こういうものをかみ合わせたいわゆる総合交通体系なるものが現在存在をしないのではないかというのが私の危惧であり、指摘であるわけでございます。  まさに総理もおっしゃったように、今度の国鉄改革というのは鉄道を再生させるための改革であるわけでございますから、その鉄道が今後どんな目的、どんな日本経済に対する貢献をするのか、やはりそういった意味でもう少し明確な位置づけというものが必要ではないか、こう私は考えておるわけでございまして、今後この交通体系をおつくりになるつもりはございますか。
  68. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 先生の御指摘がありました四十六年の考え方の流れの中で、先ほど申しましたように「八〇年代経済社会の展望と指針」を基本的な考えとしてはつくっておるわけでございますが、毎年毎年のいわゆるリボルビングプランの中で、それぞれ現実に適応した形で総合交通がいかにあるべきかということについては、経企庁が中心になりまして関係各省と調整をしてまとめているわけでございますので、この国鉄の民営化を踏まえまして、さらに大きく条件が変わってまいりますから、そういう中でリボルビングプランを改定する形の中で今後総合交通体系の推進を具体的に進めてまいりたい、かように考えておる次第であります。
  69. 石田幸四郎

    ○石田委員 しかし長官、今申し上げましたように、もう福田さんの時代からこの問題は何回も議論をされたけれどもできなかったという経過があるわけなんです。私は、これは全くできないことではないというふうに考えておりますけれども、例えば自民党の加藤現農林大臣、この方も、全国的な総合交通体系をつくるということは非常に困難だけれども地域的な総合交通体系を考えてみてその上に積み重ねをしていけば、一つの、大変アバウトではあるかもしれないけれども、将来の方向を指し示すそういった体系というものが考えられるのではないかということを言うていらっしゃる。私もその意見には全く賛成でございまして、この経済動向の変化の大変激しい時代に、一遍に全国的な総合交通体系をつくるというのは無理なんですね。空間の利用の問題もございますし、いろいろな変化がありますからかなり無理。しかし地域的に考えることは、これはかなり可能なわけです。  そういうようなことで、私も地域別の総合交通体系をまずつくってみたらどうですかというような議論をしたことがあるのですけれども、それすらも出てこない。もう十年たっているわけですよね。十数年たっておる。それでも出てこない。ここら辺について、なぜ今までそういったことが不可能であったのか、どうすればこの総合交通体系なるものができるのか、そこら辺の御意見はいかがですか。
  70. 近藤鉄雄

    ○近藤国務大臣 先ほどもお話しいたしましたように、今度の国鉄の民営化というものはまさに鉄道輸送にとっては革命的な状況の変化でございます。したがいまして、地域の実情に応じて、本来国鉄というか鉄道輸送が果たすべき役割がもっともっときめ細かく具体化をしてきて、それが鉄道輸送の合理化、競争化、そして採算性の効率につながるというふうに考えたわけでございます。  地域の積み上げという話もございますが、全体として長距離は当然航空輸送でございますが、地方中距離間の都市圏の交通鉄道輸送の方がベターであるし、大都市圏内の通勤通学のような交通は、これまた鉄道輸送がスペースの経済の問題やエネルギーの問題を考えて適切である、こういうふうに考えるわけでございますので、基本的な考え方は今申しました「展望と指針」に含まれておりますし、その具体的な輸送施設につきましては、国土庁で考えておられるまさに四全総の中でこれまた具体的に取り上げていかれる問題だというふうに私ども考えております。  いずれにいたしましても、先生お話もございますので、こうした総合交通体系について新しい状況のもとでひとつどういうふうなことを今後考えていくのかについて関係各省それぞれと御相談をしてまいりたい、かように考えております。
  71. 石田幸四郎

    ○石田委員 それ以上の議論をしてもつまらないと思いますので、いずれにしても近藤長官任期の中でぜひ総合交通体系なるものの模索をしてもらいたい、これを要望を申し上げておきたいと思います。  私はなぜこの総合交通体系なるものを問題にしたかといいますと、この鉄道輸送というものを、今後改革後の展望を見た場合に、例えば自動車関係については道路に対する特別会計方式があるわけで、そういうような措置がされておるわけでございます。また航空行政の中を見ましても、やはり飛行場の建設についての計画もありますし、またそういった財政措置も行われておる。また船舶についても、やはり港湾整備ということで第何次計画というような形で進んでおるわけでございます。そういったものがそういう措置も行われ、予算もつき、政府助成をいたしておる。  しかし、四本柱の中で将来の鉄道輸送の問題を考えたときに、政府がやるべきそういうものが一体どんなものがあるのか。このまま港湾も整備します、飛行場も整備します、自動車に対する道路整備もいたします。特に自動車網というものが、この鉄道輸送の中の旅客部門あるいは大幅に貨物が減少いたしている最大の問題であるわけでございます。私はそれをけしからぬと言うのではありませんけれども、そういった道路網に対して政府が多額の金をつぎ込んで整備をしている一方、鉄道に対するそういうような措置が欠けているとすれば、これはやはり将来ともに貨物はどんどん減る傾向になってくると思う。現にこのいただいております資料を見てみますと、貨物輸送というのは民間会社になって、貨物会社になって六十二年度後の試算を見てみるとさらに減少傾向をたどっているというデータが出ておりますね。そういう傾向はこのままにしておいたならまたそういうような轍を踏むであろう、こういうふうに私は思うわけでございまして、これはかつて運輸省には総合交通特会の考え方、住田さんが運輸次官をやられていたときにそういうような構想もあったわけなんですね。しかし、残念ながらこれはつぶれてしまった。そういうことを考えてみますと、まさに住田次官が考えられた総合交通特会なるものは、鉄道用の問題についても配慮をしようという、そういう構想があったように私は理解をいたしておるわけでございまして、運輸大臣、これは将来どういうふうにいたしますか。  今確かに大変な赤字が出ております。長期債務の問題が問題になっておりますから、そういうようなところまで踏み込んだ議論がないのでございますけれども、しかし、このままの形では鉄道輸送の環境というものはだんだん衰微してくる危険性は多分にある、こう思わざるを得ないわけでございまして、自動車に対しては道路の特別会計措置がある、港湾は港湾整備がある、空港は空港整備がある。鉄道問題はどうしますか。
  72. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今経済企画庁長官から御答弁が総合交通体系あるいは政策という意味でございましたが、委員御承知のように、都道府県単位の計画というものは一応できておるわけであります。そして私どもからいたしますと、望ましい交通体系というのは、やはり各交通機関がおのおのその特性を発揮することによって国民生活あるいは国民経済上のニーズに的確に対応できる質の高い交通サービスが提供できるようなものであるべきだと考えております。  その中において、今例えば航空あるいは港湾といった形でお取り上げになり、さらに道路の特別会計という形で自動車交通への対応を述べられた上で鉄道へという御示唆があったわけでありますが、これはもう委員がよく御承知のとおりに、我が国には今日まで民間鉄道というものと国有鉄道というものが並列的に鉄道事業を経営いたしておりました。そして、その中で全国的なネットワークというものを国有鉄道が維持してきたことは御承知のとおりであります。しかし、それが現在の交通機関に対する国民の依存率の中で性格が大きく変わり、都市部における通勤通学輸送中心とした一つのネットワークとそして中距離輸送というものに変わってきた中で、今私どもは民営・分割という方向で御審議を願っておるわけであります。  そうなりますと、これは鉄道の持つ性格というものはまさに変わってまいりまして、その持つ公共性というものをこれは決して否定するわけではありませんし、国として今後ともに十分な指導等は必要と思いますけれども、特別な財源措置を用意するということには私は直ちに結びつかないような感じがいたします。仮に分割をいたしました、今後スタートをするであろう各会社に対して何らかの財政措置を考慮するとすれば、当然民鉄に対しても同様なことを考えなければなりません。今P線のようなものもありますけれども、基本的には、やはり私はこれから特別な財政措置を必要とするような形はとるべきではないとむしろ考えております。
  73. 石田幸四郎

    ○石田委員 現時点の問題を論議すれば、それは運輸大臣おっしゃった事柄を私も理解をしないではないのですね。しかし、先ほど申し上げましたように、運輸省においてもかつて素案としてそういう考え方があった。それは確かにモータリゼーションの発達もあるでしょうけれども、そういうものに相呼応した一つの政策があり、財源措置があったわけですね。そういうのはどんどん発展をしてきた、幹線道路ができましたというような状況になっているわけですね。特に青森から九州に至るまで幹線道路の大骨ができておりますけれども、それを横断すべき幹線道路がまたいろいろとできましたね。そういったことによっていわゆる旅客も貨物も減少したという事実を考えたときに、やはり私は将来そういった措置を考えなければならないと思っているわけです。  後でもまた議論をいたしますけれども、例えば安全対策という問題を考えましても、鉄道の老朽化というものは年々ひどくなっていると言われているわけですね。例えば耐用年数を二倍以上過ぎているもの、三倍以上過ぎているもの、そういうものだってあるわけですね。だから全国の中にはかなりの数に上って徐行運転をしなければならない、そういうようなところも出てきているわけですよ。そういうような問題まで考えたときに、果たして新しい旅客会社がそれに対応するようなそういった投資ができるだろうかとなると、これは設備投資額を見ていただければわかりますけれども、例えば北海道あたりで年に百二、三十億でしょう、とてもとてもできる数字ではないわけですね。私たちも現場へ行っていろいろな意見を聞きましたけれども。さらにそういった輸送力増強するための経費なんというのは、予算書を見てみますと数億ですよ。そんな程度では私は老朽化を防ぐことはできないと思います。そういった意味でもそれが一つのポイントになるかなと考えておるわけでございますが、いずれにいたしましても将来の問題としてこのことはお考えをいただくことを期待をいたしまして、検討を期待いたしまして、この問題については一応質問を終わりたいと思うわけでございます。  次に、長期債務にかかわっての用地売却問題がきのう、おとといと大変な議論になっておるわけでございまして、これについてお伺いをしていきたいわけでございます。  まず、総理にお伺いをいたしたいわけでございますが、用地売却のポイントと申しますか、これを考えるべき原則論があると私は思います。一つは、一昨日来非常に議論になっておりました、長期債務を減らすために一般公開入札を原則としてできるだけ多額の売価で売りたい、こういう問題が一つ要請として出ていると思います。これは私も否定しません。しかしもう一つは、やはり今まで蓄積された国鉄用地、今まさに売却されようとしている国鉄用地というものは、国民が支払ってきた運賃、あるいは国民が支払ってきた税、あるいは財投資金、そういったもので投資されたものでございますから、この用地が売却されると同時に、その活用が、国民の目から見て国民のために確かに役立っておる、そういうような活用が期待をされている、こう思うわけでございまして、私はこの二つの問題が国鉄用地の売却に対する基本的な問題点ではなかろうかと思っているわけでございますが、総理はいかがお考えでございますか。
  74. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 国民の大切な財産でございますから、公正に行われるということがまず基本であると思います。今回の改革におきましても、まず運輸省に財産に関する処分の委員会をつくりまして、これが新しい旅客会社に行くべきもの、それから清算事業団に行くべきもの、この振り分けといいますか、基本計画をつくる。それに基づいて旅客会社に行った分について評価をどうするかということで運輸省に同じように評価委員会をつくる。それから清算事業団に行ったものについては清算事業団の内部に審査委員会をつくって、そしてこれが適正に審査をする。そういうような委員会をつくることによりまして、客観性と公正を保証しようということをまずやる考えでおります。それから今度はおのおのの処理をするという段階になりましたならば、これはやはりガラス張りの中で行われるように、これが保証されるということが大事であると思います。  価格の問題等について非常に大きな関心を呼んでおりまするので、相手によりましょう、公共団体の場合、あるいは一般競争入札の場合、おのおの適正に行われるように我々は心がけてまいらなければならない、そう思っております。
  75. 石田幸四郎

    ○石田委員 今総理のお話を伺いましても、長期債務国民負担分を減らそうというような考え方で、用地を適正に、公正に売らなければならない、要するに売る方に力点がかかっていらっしゃるように思うのですけれども、私は、それだけであってはならない、やはり国民にとって残された貴重な公共用地でございますから、その活用という問題についても十二分の配慮を払う必要があるんじゃないかと申し上げておるわけですが、これに対しては何か御異論がございますか。
  76. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 国民の貴重な財産でございますからと申し上げましたが、そのとおりでございまして、その土地が最もふさわしいような行われ方で活用されるということが望ましいと思います。
  77. 石田幸四郎

    ○石田委員 それではさらに議論を進めてまいりたいと思うのでございますが、昨日来いろいろ伺っておりますと、当初国鉄に対する再建監理委員会ですか審議会におきまして、五兆八千億の価格が試算として表示をされました。これはいわゆる一つ一つの土地の積み重ねであるから、それを立証するためにある程度の価格が表示されなければならない、こういうような要求があって、昨日公示価格を中心にして工事費を除いた七兆七千億という数字が出てきたわけでございますが、この五兆八千億なり七兆七千億の価格というものは、国鉄あるいは運輸省が期待をいたしておる一般公開入札原則、これによって最高価格を設定をいたしたい、こういうふうにしているわけですね。同時にまた、国土庁の方では、現在の土地の価格の高騰、地価の高騰から抑制したい、こういうような方針を出していらっしゃるわけです。  これは前回の運輸委員会でも私、指摘を申し上げたわけでございますけれども、そこでもそういった意味で高騰している地域において対策を打たなければならない、こういうようなことを言っていらっしゃいます。また、昨年八月の紀尾井町の例を取り上げられまして、そういったことが非常に地価に心理的にも具体的な影響を及ぼすので、そういう配慮を重ねながら関係方面に強く要請をいたしたい、今後もこの立場をとる、こういうふうに国土庁おっしゃっておるわけですね。これはまた改めて国土庁長官にお伺いしなくても、昨日の議論の中にも出てきておるわけです。しかし、片や抑制をしたい。片や一般公開入札を原則として高く売りたい、この二つの考え方というものは矛盾しているというような指摘もあるわけですね。  ある社の社説を読んでみますと、「いま都心の地価は狂乱的に上昇している。」「地価抑制を唱える政府が、一方で「より高く」を主張しているのは、たいへんな自己矛盾である。」私だけじゃない、そういうことを言っている。  この基本方針がはっきりしないと、仮に七兆七千億という数字をはじき出しても、一割違えば七千億の増減があるわけでございます。一体これはどういうような形でいつごろまでに調整をされるつもりでございますか。この基本方針が決まらなければ七兆七千億の議論をしてみても私は余り意味がないのじゃないか、こういうふうに思うのでございますが、いかがでしょうか。だれがお答えくださいますか。
  78. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 確かに運輸省の立場といたしましては、この売却予定地につきましてはできるだけ高値で処分をされることによって国民負担の軽減をしたいという気持ちは大変強く持っております。しかし同時に、御指摘がありますように、その地域によりまして土地利用に関する計画との調整を図る必要のあるものももちろんありましょう。そしてまた、地域開発のために地方自治体が自分たちが欲しいと言っておられるようなものもございます。  ただ、私どもは、実は現在の地価高騰の一つの要因、しかも私どもから見ますと大変大きな要因ではないかと考えておりますのは、東京にいたしましても大阪にいたしましても、供給がほとんどなされていないところでの需要が非常に発生をしておりますために、必要以上に地価が高騰しておる側面というものは否定できないと思います。その場合に、これだけの国鉄の所有地が民間に放出されますことは、私は地価抑制の効果というものも当然考慮に入れられてしかるべきものだと考えております。ですから私どもといたしましては、清算事業団の中に、先日来公明党の御意見をちょうだいをいたしながら私ども考えておりますけれども、学識経験者から成り、しかも利害関係者を除いた資産処分審議会というものをつくるわけでありますが、そこにおいて地方公共団体等の意見も十分に聞きながら適切な時価で売却をしていきたいと考えているわけであります。     〔委員長退席、佐藤(守)委員長代理着席〕
  79. 石田幸四郎

    ○石田委員 では、国土庁長官にお伺いいたしますが、運輸大臣今おっしゃったのだけれども、この国鉄の用地を売却するについては地価抑制のそういう効果もあるのではないか、期待できるのではないかというふうにおっしゃっておるわけでございますけれども、しかし、今までの新聞をいろいろ拝見いたしまして、そういうような論議というのは私は初めてなんでございまして、今特に東京あたりはオフィスが足らないというようなことで大変な高騰を招いているわけなんですけれども、やはり地価抑制の効果というのはありますか。
  80. 綿貫民輔

    ○綿貫国務大臣 国鉄用地の売却につきましては、国民負担の軽減をするという意味においてその必要性は十分理解をいたしておるわけでございます。土地政策につきましては、この十月一日に各都道府県で調査をいたしました調査の結果が発表されましたのをごらんになってもおわかりになりますように、四十の都府県ではほとんど横ばいであります。八都市において異常な高騰が見られている。特に東京でございますが、東京は国際化あるいは情報化というようなことで大変ビル需要が逼迫しておるということが引き金になっておるようであります。また、投機的なものも含まれておるということでございまして、国土庁といたしましては、特に短期の取引によりまして投機が生ずるようなことのないように短期取引に対する重課税というような方向も今打ち出しておるところでございますし、いろいろ規制の面も考えておりますが、同時に、供給というものも考えていかなければならないと考えておるわけであります。  昨日来からもこの委員会において御論議がございますように、東京における新しい土地供給についていろいろなプランが今出ておるわけであります。しかし、この国有地につきましては、高騰する地区において、その売却によってさらに高騰に拍車がかかるようなことがないように関係の省庁で今一生懸命その処分の仕方について検討しておるところでございます。  ただいまお話のございました紀尾井町等の問題につきましては、新聞紙上等では四倍とかいう話が出ておりますが、その物差しの当て方によりまして、国土庁としては四倍とかいうようなべらぼうな値段で売れたとは考えておらないところでございます。
  81. 石田幸四郎

    ○石田委員 地価抑制をいたしたい、都心部において地価抑制をいたしたいというのが国土庁の方針でございまして、抑制をいたしたいというのはやはり上がるのじゃないかということをお考えだからそうなると思うのですね。  現に、これは七日のですか、夕刊に出ておったことは、「財界四首脳、自民に要請」ということで「国鉄再建の面からは、高く売れるのがいいだろうが、地価の暴騰を誘発するのが心配だ。処分の仕方や適正価格を審議する客観的な委員会を設置したらどうか」というような要請をして、自民党は、だれが御出席になったかわかりませんけれども、「検討を約束した。」というようなお話もあるわけでございまして、この議論をいろいろ繰り返してもしょうがないのですけれども、いずれにしても総理、これはどうしますか。どちらの方向にウエートを置くかによって何千億の狂いが出てくるわけですよ。やはり政府として統一見解を出すべきだ、こう私は思いますけれども、いかがですか。
  82. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 総理のお答えの前に、一点だけ事実関係を御報告申し上げておきます。  今御引用になりました報道は私も見まして、どういうことかと確かめてみました。幹事長からの御連絡によれば、国有鉄道の所有地についての論議であったのではない、むしろ出席された経済界の方の中に建設省の宅地の審議会の委員の方がおられ、その審議会の役割と限界というものから総論としてのお話が出たと聞いておりまして、報道の中身とはちょっと違ったようであります。事実関係としてこれだけ申し上げておきます。     〔佐藤(守)委員長代理退席、委員長着席〕
  83. 石田幸四郎

    ○石田委員 新聞の報道、少し趣旨が違うというお話、それはそれで結構でございます。しかし、そういうお話があったからといって、依然として基本方針、公開入札による最高値、あるいは抑制策、そういったものの中には大きな差が出てくるということは、これは否定できないのじゃないですか。そういった意味で総理、統一見解を出すべきだと私は思っているのです。
  84. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 一般的に言って、一番公正に出るのは一般競争入札だろうと思うのです。しかし、地方公共団体のような公共性、公益性を持っているものについてはこれは指名ということも、随意契約ということもあり得ると思うのです。それが一応の原則だろうと思います。やはり公正ということがこの際は一番大事だと思います。だがしかし、東京のような場合には地価抑制という要請も出てまいります。そういう面からしますと——だから適正価格と私は申し上げておる。最初から申し上げたのは適正なる価格という意味であります。しかし、この適正価格を生み出すという意味においては、必ずしも一般競争入札によらない方がいいという場合もあり得る。だから、これはケース・バイ・ケースでおのおのの審査会なり委員会が、そのたびごとにこれはどうすべきかということを、大きなものについては、大事なものについては、また問題のあるものについては考うべきではないか。場合によっては信託制度ということによって、所有権は旅客会社が持っておる、そして信託で民活でやらせる、そうすれば一挙に幾らで買うという問題は出てこない。そういうようなやり方でやれば、空中権という問題もその中に包含される、そういう場合もあり得ると思うのです。そのかわり、じゃ旅客会社はお金が一挙に入らぬじゃないか、借金を返せないじゃないか、そう言われるかもしれませんが、しかし、これは考えようによって、民活とかそのほかでやれば、大体二十年間ぐらいのそこから出てくる収益料というものを考えれば、じゃこれはどれぐらいで信託として一括してもらえるか、そういうことも時価が出てこないでやり得るということもあり得る。あるいは分割的に支払っていくという場合も幾つもございますね。  ですから、ケース・バイ・ケースで何が一番適正に行われるかという点を考えて、一般競争入札もあれば、あるいは公共団体に対するような場合もあれば、あるいは信託制度を活用する場合もあれば、そのほかのいろいろな考え方をそのときに考えるのが適正になるのではないかと思います。
  85. 石田幸四郎

    ○石田委員 総理の言っていらっしゃることはわからぬのではないのですけれども、しかし、私がなぜこれを問題にしますかといいますと、七兆七千億の数字が出ましたね、八兆五千億ですか、じゃこれをちょっとお伺いしますけれども審議官に伺った方がいいのかもしれませんが、この七兆七千億は公示価格で一応算定をされたわけでしょう。そうですね。その他の条件を加味してこれが出てきたのですか。  例えば大型の操車場でございますと、今の公示価格は容積率二〇〇%、準工業地帯でということでその公示価格が出ているわけなんですね。これは大都市、特に都市の中心部ということになりますれば、実際に活用するということになりますれば、容積率二〇〇%なんというのは、これは問題にならない。どうしてもこれを上げていかなければならない。そこでまた価格の算定の基準は変わってくる、こういうふうにも思うので、念のため伺っておるわけですが、いかがですか。
  86. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 審議官からお答えをいたします前に、先刻の総理の御答弁を補足して申し上げたいと存じます。  総理からお話がありましたように、また委員からも御質問がありましたように、この用地の活用というものには理論的にはさまざまなものが考えられるわけであります。しかし、一番大切なこと、私どもが一番大切なことと考えておりますのは、この用地を処分していきますに際して、あくまでも公正にこれを処分したと国民から御理解をいただける手法ということがやはり第一義的に必要なことであります。ですから、私どもは実は、本当に公開競争入札というものを原則にし、地方自治体等が、例えば公共用の道路といった特定の目的のために払い下げを受けたいという場合には随意契約もあり得るが、しかしその場合においても転売禁止その他の処置は十分に講じたい、違約の場合に対する対応策も講じたいということを申し上げてまいりました。  また、この用地処分につきまして、——大切な部分でありますから、ここだけ言わせていただきたいと思います。これを基本的に売却という方針を決めてまいります過程においては、御指摘のような、例えば土地信託等も検討はいたしたわけであります。あるいは、ある自治体からは借りたいというお話もございました。しかし、そうした場合で、結局長期債務を減らすためにはいずれも足りないということが計算の結果出てまいりまして、その結果、私どもは売却というものを前提に今日対応を考えておるわけでありまして、総理がお話しになりましたように、基本的にさまざまな形態はあり得るわけでありますが、あくまでも私どもとしては、現在においては公開競争入札による処分というものを前提といたしております。  また、算定に対しまして、細部のお尋ねにつきましては審議官からお答えをいたさせます。
  87. 林淳司

    林政府委員 ただいまお尋ねがございましたけれども、昨日お出しいたしました七兆七千億の用地の積算につきましては、これは一昨日、この質疑の中で、例えば再建監理委員会試算の仕方、こういうものを延長して出すというふうな方法ではどうか、こういう一つの仮定条件をお示しいただきましたので、それに従って計算をさせていただいたということでございます。  そこで、基本的には六十年の公示価格というものを基礎としておるわけでございますが、大部分の用地はこの六十年の公示価格というものを用いております。しかし、大都市等の用地につきましては、それだけではなくて、その近傍類地の取引事例というふうなものも参考にして計算をさせていただいておるということであります。  したがいまして、先生いろいろ御指摘でございますけれども、具体的にそれぞれの土地について、実際の道路計画はどうなるか、緑地計画はどうなるか、そういう公共減歩とかいろいろのものがどうなるか、それからさらにそこについて一体どういう用途変更があり得るのかというふうなことについては、これはやはり現実にその土地の売却を具体的に計画して、そして具体的にそれを売却する時点でないとわからないわけでありまして、あくまで現在は、そういう一般的な仮定条件のもとに計算をさせていただいたということでございます。
  88. 石田幸四郎

    ○石田委員 私がなぜそういうことを申し上げるかというと、結局五兆八千億にしても七兆七千億にいたしましても、それがどういう基準で考えられたかというのは明確じゃないのですね。今申し上げましたように、一般公開入札があくまでも原則なのか、地価抑制策というのがそれに加わってくるのか、あるいは今お話がありました随意契約あるいは公開入札、例えば随意契約がこの三千三百ヘクタールのうち三分の一ぐらい出るとすれば、一般公開入札を原則にしたものを七兆七千億と考えた場合に、これはやはり一兆円以上の差が出てきちゃうのですね。だから、七兆七千億あるいは五兆八千億の価格表示というのは全くの一つの試みの算であって、それを私は否定するわけじゃないのです。だけれども、今その五兆八千億なり七兆七千億なりのいわゆる考え方の基準というものを明確にしていかなければ、国民の皆さんがこの価格はそういうことで根拠があって考えられた数字かなということがおわかりをいただけない、そういう意味で私は申し上げておるわけでございます。  もう少し先へ行きまして、例えば私は一つの考え方をお示しするわけでございますが、用地を売却するということを考えた場合に、今の国鉄用地の中ですぐにも売却可能なものが一つあるだろう、これはいわゆる公開入札、随意契約、いずれもあるわけであります。それから、土地を整備した後に売却をする、公開入札、随意契約、両方ある。それから、土地を整備した後において土地区画整理組合等の方式を導入して、そして道路やあるいは下水道等を完備した上で売却するものがある。それから、例えば国鉄の本社のように、当分使わざるを得ないから暫定利用をした後において売却をしよう、これも公開入札、随意契約、いずれもあるわけでございますけれども、こういう一つの手法が考えられる、こう私は思うのでございますけれども、総裁、どうですか、こういう考え方も成り立つのじゃないですか。
  89. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 売却の対象によりまして、今先生がおっしゃいましたような三通りでございますか、四通り、そういうようなやり方が考えられると思います。特に大きな用地の場合、周りの地域との整合性あるいはその用地の使い方によりまして付加価値を高めるための道路整備その他、こういうものが必要であろうかと思います。そうした意味で、なるべく高い値段で売りたいという趣旨を貫徹するためにはいろいろな仕組みを考えていきたいと思います。
  90. 石田幸四郎

    ○石田委員 今申し上げたように、総裁もこの方法を否定しなかったわけでございますけれども、だから、そういうことも価格を算定してみる上において取り入れてしかるべきではなかろうかというふうに私は思うわけでございます。すぐにも売却可能なものあるいは土地整備さえすれば売却できるもの、これが一体どのぐらいあるかということも一つめどの立て方だと思うのですね。そこら辺もできれば後で資料としてお出しいただきたいわけですが、今私が申し上げました四つの方法、では、これについてどうですか、資料をつくって提出をしていただけますか。
  91. 林淳司

    林政府委員 先ほど申し上げましたように、現段階ではあくまで一般的な基準によってしか計算ができないわけでございまして、個々の土地について具体的にどういうふうな形で付加価値をつける、あるいはどういう形でこれを売却するかということについては、これはやはり現実にこれを売却する時点でないとなかなかわからないわけでございます。そういうことでございますので、個々のそういう付加価値のつけ方あるいはどの範囲について付加価値をつけるかということについては、現段階ではちょっとこれは算定が難しゅうございますので、御勘弁をいただきたいと思うわけであります。
  92. 石田幸四郎

    ○石田委員 私はそういうことは不可能じゃないと思うのですけれどもね。出しにくいということであればそれはそれで結構ですが、この中で一番問題になるのは、土地整備をして、しかも土地区画整理組合等の方式を導入をしてやらなければならない、そういった大型の売却予定地、これは一体どのぐらいあるのですか。いかがですか。大体で結構ですけれども
  93. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 今運輸省からお答え申し上げましたように、なかなか将来予測はできませんが、私の方からの概要の見込みで計算した段階では、約百カ所ぐらいあろうかと思います。
  94. 石田幸四郎

    ○石田委員 さて、ここで土地の利用計画の方へ入っていきます。だんだん時間がなくなってきたのですけれども国鉄の方でお考えになっているのは約百カ所ぐらい、こういうことをおっしゃっておるわけでございます。そうしますと、この百カ所についてはそれぞれの地元で、あるいは国鉄の係の方も入っていたというふうに思いますが、それぞれの総合整備計画、そういったものが現に発足しているのもあるわけでございまして、そういうものが中心になってこの土地の活用が考えられてくる、こういうふうに思うのでございますが、私の認識は違っておりましょうか。
  95. 林淳司

    林政府委員 現在、国鉄の大規模用地について地方公共団体等がこういうふうに使いたい、ああいうふうに使いたいというふうなことをいろいろ御計画あるいはお考えになっているということは私どもも聞いてはおります。ただしかし、これは私どもとしては全然オーソライズしている話ではございませんで、私どもとしては、現段階ではそういう問題については全く白紙の状態にあるということで、先ほど来大臣が申し上げておりますようにあくまで公開競争入札というものを基本にして今後対処してまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  96. 石田幸四郎

    ○石田委員 そこが問題なんですね。しかし、現に国鉄からの資料によりますと、三十カ所ぐらいそういうような地方自治体も入って、民間団体も入って計画委員会あるいは構想委員会なるものが練られているわけですね。そういったものを的確にどこで判断をしていくかということをいろいろ運輸省に伺ったらば、資産処分委員会であるというようなお話なんでございますけれども、それではやはり不十分じゃないか。きのう、おとといですか、我が党の浅井委員の方からも御質問がございましたけれども、当初やはり総理も言われたように、その活用の仕方というものが重要であることはお認めになったわけでございますから、そういった意味で、そういった地方ごとの計画を尊重していかなければならない、こういうふうに思うわけですね。それで、資産処分委員会なるものがどれだけの機能を持つかわかりませんけれども、そういったものが的確にここで判定をする資格と能力があるのかしら、こういうようなことも考えてみなきゃならないわけでございまして、そういった意味では、やはり公正に土地が使われる、ただ国鉄当局の要望だけじゃなくて、もちろん都市計画の網がかぶるわけですからそれが前提になりますけれども、当然地方の方々が要望されているような、そういうような土地の活用というものが大前提になる。  そこで、例えば名古屋の笹島あたりの構想が新聞にも大きく出ているわけなんです。その中に第三セクター方式か何か活用して、いわゆる公共部門で使う一つのエリア、それから商業部門として使うエリア、こういうものが計画されているわけですよ。そうすると、片一方は随意契約で、恐らくそうなると思うのですね、片一方は一般公開入札ということになって、それと、国鉄要望されている予定価格とぶつかるおそれすらある、ないかもしれないがぶつかるおそれもある。やはり計画をきちっとまず最初に決めて、それからいわゆる売却価格というものが想定をされるのだと思うわけでございまして、そういった意味では、やはり計画をかちっと審議できる強力な機関がなきゃいけない、こういう意味で昨日来この点を申し上げておるわけですが、いかがでございましょう。
  97. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 一昨日そして昨日、浅井委員から同趣旨の御質問をいただきました。その必要性を私は決して否定をいたしておりません。そして、資産処分審議会というものをその御指摘の目的に役立つものにいたしたいということも申し上げてきております。そしてそれだけの機能も持たせたいと考えております。
  98. 林淳司

    林政府委員 ただいま大臣が申し上げたとおりでございまして、いわゆる土地利用計画、これは地方自治体のいろいろな都市計画に関連する土地利用計画があると思います、こういうものについては、将来個々具体的な用地の処分に当たりましては、当然それとの調整を図っていくということは必要でございまして、このことは、清算事業団法の中にもその旨は明記してあるわけでございます。したがって、将来個々具体的に土地を処分する場合に、清算事業団の資産処分審議会の場におきまして必要に応じて地方の方々の御意見も伺いながら、その辺の利用計画を固めつつ処分計画を固めていくということになるわけであります。ただ、それはあくまで具体的な処分の時点の問題でございまして、現段階では個々の土地についてそういう想定は難しゅうございます。したがいまして、先ほど申しましたように、一定の仮定条件のもとに一般的な基準で計算をさせていただいたということでございます。
  99. 石田幸四郎

    ○石田委員 現時点においては一般的な根拠で計算をするというその意味はわかるのです。ですけれども、地方の計画というのはどんどん進んでおるわけですね。もう既にこれは売却されるであろう、そういうことを想定してそういう計画が進んでおるわけですから、その受け皿を早いとこつくらないと、計画ができてからそれはだめでございますというような言い方はできないわけですので、その点を憂慮している。特に、どうしても処分委員会の中でそれをやるんだ、計画委員会でだめだとおっしゃるなら、処分委員会の中ですらそういうような部局というものが当然必要になってくるわけですね。一歩下がって申し上げればそういうことですけれども、いかがですか。
  100. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今御指摘になりましたような地方の計画というもの、私も幾つか陳情等を伺っております。そしてその中には、なるほどと私どもが考えられるようなものもございます。しかし同時に、民間の土地と交換を予定し、それを前提にして計画を組まれておるようなものもございまして、私は、一概に地方の計画だからといってそれが全部対象になり得るものだとは考えておりません。それだけに、今御指摘のような点を考えれば、この資産処分審議会の中にそうした機能を持たせる工夫というものはいたさなければならないと思います。
  101. 石田幸四郎

    ○石田委員 昨日出された八兆五千億の数字に伴って、土地の価格については不確定要素が多いというので幾つか挙げられておるわけですね。特に三番目として、「土地の価格は、基盤整備の方法、用途等によって大幅な差が生じる。」こういうふうに言われているわけでございますから、いち早く、先ほど申し述べられた百カ所については、その計画が妥当であるかどうか、あるいは意見交換をするという作業が必要になってくるというふうに私は思いますので、この点は強く要望をいたしておくわけでございます。いずれにしましても、この八兆五千億を想定するについての条件というもの、あるいはほかの方法もあるかもしれないが、要求の中では、時価相場で一遍計算してみたらどうだ、これも一つ試算の方法としてあるかもしれませんね。そういうようなことはお考えになりませんか。
  102. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私どもは、当初監理委員会試算の数値で御勘弁を願いたいと委員会にお願いを申し上げました。しかし、委員各位の大変強い御要望があり、一定の仮定を置いた数値、しかもその監理委員会試算の数値を伸ばしたものでよろしいから試算せよという御命令を受け、昨日提出をいたしたわけであります。これ以上いろいろな試算をいたしてみまして混乱をすることは私は避けたいと思います。
  103. 石田幸四郎

    ○石田委員 いずれにしましても、この八兆五千億の問題については不確定要素が多いということですね。国民の皆さんは、どうしてそういうような数字が出てきたのか、一つ公示価格という基準が出てきたなというようなことなんですね。ですから、そういった意味において、今後例えば公開入札を原則とすればこう、あるいは随意契約を何%取り入れればこうというような、あるいは私が指摘をいたしました用地の売却方法、こういったものも加味してみるとか、そういうような諸条件を整備をすることが国民の皆さんに納得をいただく一つの手だてであろう、こういうふうに私は申し上げているわけでございますので、そこら辺のことは今後の問題として十分ひとつ御検討をいただきたい、こういうふうに思うわけでございます。その諸条件整備についてはいかがお考えですか。
  104. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 先ほど総理からお答えを申し上げましたように、さまざまなケースが想定はできるわけであります。ただ、現時点において私たちはこうであるということを申し上げてまいりました。その範囲内において一生懸命に勉強させていただきたいと思います。
  105. 石田幸四郎

    ○石田委員 もう用地問題はそろそろやめなければいかぬのですが、建設省お見えになっていますか。——建設省で都市整備計画等を進めておるわけでございますが、この中で、国鉄用地を当てにして、もしくはこれを含めた計画を立てられているようでございますが、現時点でどのくらいあるか、将来調査費等をつけてこういう形でやりたい、その中に国鉄用地が含まれている、そういうような用地がどのくらいありますか。お答えください。
  106. 北村廣太郎

    ○北村(廣)政府委員 お答えを申し上げます。  私どもでただいま国鉄用地を対象といたしまして都市の活性化、再開発に役立てている事業がございます。六十年度から開始いたしました新都市拠点整備事業でございますが、これにつきましては、六十年度、六十一年度の二カ年間に調査箇所及び事業箇所含めまして十一カ所中十カ所が国鉄用地でございます。それから、六十二年度要求しております九カ所の中で八カ所がやはり国鉄用地でございます。それから、六十二年度から新規に地方都市におきまして、国鉄の用地と既存の中心市街地等あわせまして再開発を一体として行おうという新しい事業を要求しております。定住拠点緊急整備事業という名前をつけて要求しておるわけでございますが、これは七カ所要求しておりまして、全部これは国鉄用地を対象と考えておるわけでございます。(石田委員「合計二十五カ所ですか」と呼ぶ)はい。合計で、全二十七カ所中国鉄用地二十五カ所でございます。  以上でございます。
  107. 石田幸四郎

    ○石田委員 大臣、ですから、もう既に建設省の方はつばをつけておるわけですよ。現に愛知県の名古屋市の熱田区にある国鉄用地で二・七ヘクタールが、まだ売却されてないのですけれども、それもこの都市整備計画の中にもう含まれておる。だから、これを仮に自治体が買うなりあるいは住宅・都市整備公団が買うなりということになると、これは随意契約というようなことになってしまうわけですね。そういうようなことで、そういう制約の面も既にあるわけですよ。だから、いわゆる利用計画委員会を強固にしなければ、これを機構的に整備しなければならぬというようなことも、そこにも一つ原因があるわけなんです。この議論をしているともう終わってしまいますから、これはそういったことを十分勘案をしていただきたい、十分注意しながら対策を立てていただきたいということを御要望だけ申し上げておきたいと思います。  次に、貨物論議を少しやっておきたいと思うのですが、国鉄当局に対して、私が貨物鉄道会社全国一社制のメリットについてどういう問題が考えられるかというのを要求をいたしました。これは大臣、ごらんになりましたか。——まだごらんにならない。
  108. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 国鉄当局に要望されて、国鉄当局が提出をした資料というのは私は存じません。
  109. 石田幸四郎

    ○石田委員 そうですが。それを読んでみますと、「鉄道貨物会社の経営体制に関しては、その輸送形態が旅客輸送に比し輸送距離が長く、コンテナ列車の約六割及び紙・化成品等の車扱列車については複数の旅客鉄道会社にまたがって運行されることになる」、そういうようなことで往路復路不均衡、こういうような特徴があるんだというのですね。そういうようなことから一元的に行うことが望ましい、こういうふうに言われています。全部読めばいいんですけれども、しかし、どうもこれだけ見たのでは、我が党は、貨物会社を一会社にするということは非常に効率も悪いし、経営というものが非常に不安定なのじゃないかなというふうに思っておるわけでございます。そういった意味で、じゃこれは国鉄当局、総裁にお尋ねをするわけでございますが、これらのメリット、そちらでごらんになって、これがもし旅客併合であってもこれらの問題は全部クリアすることができると私は思っているのですけれども、いかがでございますか。これらの問題だったならばどっちでもできる、こういうふうに私は思うのですね。
  110. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 貨物問題としまして、将来どうしたらいいかということの検討の結果、これは監理委員会の御答申なりあるいは運輸省の検討の結果、これは全国一社ということになったわけでございまして、私どもの方で先生の方に御説明した内容も、なぜ一社にしたのかという、そういう理由をいろいろとお話ししたのかと思います。したがって、メリット、デメリットという観点からの議論ではなかったと思うのでございますが、いずれにいたしましても、貨物輸送というものは旅客と違いまして、やはり全国的な輸送実態というものがございますので、そうしたものに着眼いたしますと、全国一社制の方が望ましいということでございます。
  111. 石田幸四郎

    ○石田委員 それはおかしいと思いますよ。メリット、デメリットを検討しないで一社にしましたなんということはあり得ないわけで、もう時間もありませんので具体的に指摘をしたいと思います。  一つはダイヤ編成論の問題ですね。いわゆる貨物会社が貨物の輸送についてどういうダイヤを編成するかがこれはもう最大の商品なんですね、最大の商品。ところが、実際の輸送手段というものは旅客会社が所有しておるわけで、その旅客会社の営利性が当然優先をされるわけですね。そういった点で、本当に貨物会社がダイヤを確保することができるのか。その確保ができないあるいはまた十分なる商品としてたえ得るようなそういったものが減らされる、そういうような心配はございませんか。今までの議論を聞いていると、まさにこのダイヤ編成によって貨物の商品価値が決まるので、恐らくこれは社長会の最大の議題の一つであろう、こういうふうに言われているわけでございます。そういった点からいって、それは、六十二年発足時は貨物会社あるいは旅客会社のそれぞれの幹部というのは多く国鉄から来られるでしょうから、割と話がつくかもしれませんが、五年先、六年先になって、それぞれの会社がそれぞれの努力をするような状況になったときに、その輸送手段を所有している旅客会社の方が発言力が増してくることは私は当然だと思う。そういった意味で、ダイヤ編成という問題は、私は、貨物会社にだんだんに不利になっていくおそれがある、こういうふうに指摘せざるを得ないのですが、いかがですか。
  112. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 先ほどの総裁の答弁とは別に、私どもが全国一社制を採用しましたことについて、委員が触れられました以外のところで多少述べてみたいと思います。  一つは、貨物運賃というものが個別折衝により決められている実態から、各社ごとにその折衝を要することになる、あるいは契約も各社ごとに取り決めなければならなくなるという点は、通運業者にとって大変不便なものになりはしないかという懸念を、分割した場合には私どもは持っております。今御指摘になりましたダイヤの問題は、確かにこれが失敗をすれば大変大きな問題であることは間違いありません。ただ、あらかじめ関係会社間でのダイヤ設定の優先度、調整ルール等についての協定を結ばせることにしておりまして、十分これは調整をされると考えておりますので、分割によって貨物のダイヤ設定が特に難しくなるような状態というものは想定はいたしておりません。しかし、これは運輸省としても、今後の貨物輸送の中でなお鉄道輸送の占める比重というものを考えました場合には、その重要性は十分認識しておりますので、貨物列車にも十分配慮してダイヤ設定が行われるように指導はしてまいるつもりでおります。
  113. 石田幸四郎

    ○石田委員 それは大臣おかしいんじゃないですか。それぞれの旅客会社、貨物会社は民営会社ですよ。民間会社ですよ。自主的なことによってダイヤ編成にどういうふうに取り組むかが決まるんじゃないでしょうか。ですから、今までの御説明を受けていると、まさにこのダイヤ編成権なるものは社長会の最大の議題である、それを協定されることを命ずるわけですか。
  114. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 ですから、私どもは、その話し合いの中で貨物輸送について特に不利益になるような状態が設定されるとは考えておりません。ただ、もしそういう状態が起これば、これはやはり国民生活に極めて大きな影響を持つ貨物輸送でありますから、運輸省として指導をいたすのはこれはまた当然ではなかろうかと思います。
  115. 石田幸四郎

    ○石田委員 貨物会社の収益、今後の営業試算表なんかを見てみますと、余りよくないことは御存じのとおりでございまして、これは非常に問題なんですよ。それは、極端に悪くなれば貨物会社から運輸省の方へ助けてくれというような話もあるでしょうけれども、しかし、通常は各会社間のいろいろな協議によって一年一年改定をされるべき問題だと私は思いますよ。そういう中で、貨物会社が有利なダイヤを組めなくなる、その部分経営に対して決定的な影響を与え得る。今いわゆる黒字計算になっているけれども赤字計算にもなり得るわけなんですよ。そのことを私は御指摘をしているわけでございます。  時間がありませんから先に行きましょう。次に、アボイダブル論が貨物会社の経営の基本になっているわけでございます。その実態については先ほど議論がございました。私は、このアボイダブルコストというのは、私の目から見るならば、まさに貨物を存続させるための政治原価である。市場原価、競争原理にもなじまない、こういうものではないかというふうに思います。現に日本の経済界の中で、民間会社で、使っているものの資本費負担をしないなんというのはどだい無理な構想ではないか。他の国に行われているからこれは適用できるんだというようなことでございますけれども、そういうような問題が基本的に存在をする。自由主義経済の中に無理やりにアボイダブルコストというものを導入したということについて、私はいささか批判があるわけでございます。しかも、このアボイダブルコストの適用期間というものをどう想定するかというのが私は非常に問題であろう、こういうふうに思うわけでございます。  貨物会社の経営見通しがずっと暗いというようなことからこのアボイダブルコストの適用を考えておられると思うのでございますけれども、仮に一つの議論として、貨物会社が貨物輸送の伸びがあった、あるいはまたその他の理由、いわゆる貨物会社の資産を活用して貨物会社の黒字がふえてきた、そういうような場合には、資本費を負担している旅客会社は、もうちょっとこのアボイダブルコストを上げてもらえないか、そういう要求、特に北海道、その他四国、九州にしても経営は厳しいわけでございますから、西日本会社でも厳しいわけでございますから、そういう要求が出てくる可能性がなしとはしない。しかし、貨物会社がそれを認めるようなことになってしまったら、たちまちまた経営が危うくなってくるわけでございますから、貨物会社の方から見れば、アボイダブルコストというものの適用期間はある程度保証してもらいたい、そういうような御要望があるのではないか、こういうようなことを考えておるわけでございますが、このアボイダブルコスト論に対して、将来そういった要求が出てこないというふうに運輸省はお考えなのかどうか、お示しをいただきたいと思います。
  116. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 一般的に、二つのものがある施設を共通に使う場合、この両者の使用頻度が近似していれば、これはその施設にかかる費用を基本的な部分を含めて案分するということは普通でありましょう。同時に、使用頻度に大きな差がある場合に、使用度合いの少ないものが追加的な費用を負担するというのが私は普通の方法であると思います。この議論の中で、まさに今御指摘のように、現在の鉄道貨物の輸送の実態から見ますと、旅客輸送が高頻度で利用している線路等の施設を共用するという形でありまして、これは委員がまさにおっしゃいましたとおり、他国でも利用されている形態であります。そうして、基本的には私どもは、将来にわたってその使用頻度が大きく変わらない限りにおいては継続的にこの方法がとられると想定をしております。ただ、この関係に大きな変更が生じ、貨物会社が極めて大きな黒字を享有できるという状態になりました場合には、私は、それは旅客鉄道会社から貨物の会社の方に話し合いが持たれ、その時点での実態を踏まえての新たなルールづくりあるいは具体的なコストというものが定められると思いますが、その使用頻度に大きな変更が生じない限りはこの状態が続くと考えております。
  117. 石田幸四郎

    ○石田委員 今までの御答弁を聞いておりますと、条件の置き方がいろいろ問題なんですね。ただ、この貨物会社は当初再建監理委員会では一万五千人と想定した。運輸省が試算してみたら一万二千五百人でよろしい。しかし、その一万二千五百人もかなり余剰人員を抱えざるを得ないという条件のもとに二千五百人余計抱えておる。数年後一万人にするんだ、こういうお話なんですね。そうすると、二千五百人の人件費を考えてみると、年収四百万と計算しても、五、六年後には発足時よりも百億円収入がふえるわけですね。二千五百人やめるとなれば物件費も減るでしょうね。そうすると、貨物会社というのはその他のいろいろな営業努力によってかなり大きな黒字を生める可能性がある、それが何年後であるかはわかりませんけれども。  そうしてみると、そういったアボイダブルコストというのは、それぞれの旅客会社から、七年後になるか十年後になるか五年後になるかわかりませんけれども変更をしてもらいたいというような要求が出てくる可能性がある。それは何を意味するかというと、それを変更すれば貨物会社というのは生かさず殺さずというようなことになってしまう。そういうような危惧があるからこそ、昨日浅井委員指摘した、いわゆる貨物会社志望の人は非常に少ない。貨物会社というのは二千五百人さらにまた数年の間に整理されるということ、貨物会社の経営基盤というものは非常に不安定じゃないかというふうに不安に思っている、そういうところから貨物会社志望の方が少ないのじゃないかなというふうに私は想定をいたしておるわけでございます。この議論は一つの仮定を置いた議論でございますからこれ以上申し上げませんけれども、アボイダブルコストというのはそういった意味で問題がある、こういうふうに思わざるを得ないわけでございます。  それから特に、私の党は、こういう貨物会社というのは旅客会社に併営させた方がいいというふうに言っておるのですけれども、じゃ、一体この一万二千五百人のうち大体どんなように配置されるのですかというふうに資料要求してみました。そうしたら、北海道が千二百人、東日本会社地域が五千七百人、東海会社が千五百人、西日本会社が三千五十人、四国会社は九十人。ここに支社をつくるとすればたった九十人なんですよ。貨物と旅客会社の間には運転士等の受委託、その他の問題の受委託もあるわけですね。そうすると、四国なんか九十人ぐらいの支社をつくるよりも、旅客会社に全面委託をした方が経費の節減にもなるんじゃないかなというような感じすら私はしているわけです。これは非常に問題ですよ。しかもその中では運転が三十人、工場が十人でしょう。こういうようなことはもう四国会社に委託をされた方が事は早い。そういう欠点をこの貨物会社は持っているということを私は指摘せざるを得ないわけです。  まあこういうのは議論でございますから、これ以上御質問しても無理かと思いますが、いずれにしても、この貨物会社の数値をいろいろ見ておりますと、輸送量はどんどん減ってしまうというようなことで、しかもそういう中で収入はふえていく、そういうような大変奇妙な試算を出していらっしゃるのですけれども、そこら辺はいかなる理由によりましょうか。
  118. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 先日もお答えを申し上げたわけでありますが、貨物会社の今後の需要予測につきましては、通運業者あるいは荷主等の需要動向を踏まえながら次のような考え方をとりました。例えば、石炭につきましては最近の国内炭をめぐる諸般の情勢、また、石灰石について大口荷主の動向等を勘案してかために輸送量を想定いたしました結果、これは大幅に減少するという数字になっております。しかし、石油とかセメントなどの場合は今後とも安定的な生産量が見込まれているということから、輸送量についてもほぼ横ばいに推移すると見込みました。そして今御指摘のように、荷動きが減りながらなぜという御指摘に対しましては、今後の主力商品として期待をいたしておりますコンテナにつきまして、物流事業者等への一括販売の推進などによりまして、将来にわたって順調に伸びていくという予測を立てております。そうなりますと、全体の貨物量としてはやや減少いたしますけれども輸送距離が長い、また、トン当たり収入の大きいコンテナというものが伸びていくということから、会社全体の収入としては着実に増加し得ると見込んで試算をいたしたわけであります。
  119. 石田幸四郎

    ○石田委員 時間がありませんので……。しかし私は、運賃収入が四年間で百八十一億も急増するというようなことはちょっと問題かなというふうに思うわけでございます。その中で、特に輸送量の問題で北海道、九州、四国、ここら辺の営業係数はどういうふうになるのか、ここら辺を御要求したいと思いますが、後で資料をいただけますか。貨物会社の営業係数。(橋本国務大臣地域別ですか」と呼ぶ)三島の地域別のを。資料は後で結構ですが、いただけますか。
  120. 林淳司

    林政府委員 貨物会社については全国一本で会社を考えておりまして、先ほど先生指摘ありましたように、要員数につきましてはそれぞれ地域に当てはめてみたわけでございますけれども収支はやはり全国一本でないと、地域に分けることは非常に難しゅうございますので、その点はちょっと御勘弁いただきたいと思います。
  121. 石田幸四郎

    ○石田委員 林さん、それはありませんよ。私らが今まで視察をした中では、例えば滝川の駅に行ったことがありますけれども、そこでも私らが視察に行ったときは営業係数を掲げていましたもの。計算してできないことはないと思いますので、まあ一遍御考慮ください。答弁はいいでしょう、もう時間がないから。では後で議論をしましょう。  それからもう一つ、アボイダブルコストの中で、各旅客会社に支払うべきアボイダブルコストによる経費は六十二年度についてそれぞれどのくらいになるか、これも後で結構でございますから資料をちょうだいをいたしたい、こう思いますが、いかがでしょうか。
  122. 林淳司

    林政府委員 アボイダブルコストとして旅客会社に支払う費用は三百億でございます。(石田委員「会社別はわかりますか」と呼ぶ)ちょっとその辺は、検討してみますけれども、会社別は難しいかなと思います。  それから、先ほどの、先生おっしゃいましたけれども、それぞれ確かにターミナル等でそのターミナルの収支というのを出しておりますけれども、これはそのターミナルに発着する貨物の、例えば発貨物についてどれだけ収入があったかというふうなことでありまして、これはその地域収支ではないわけなんです。発地でどれぐらい収入があったか、それに対してそのターミナルでどれぐらいの経費がかかったか、こういう計算でございまして、これはその地域収支ではないわけでございます。したがいまして、貨物の場合は全国的にいろいろな貨車運用とかコンテナ運用をやっておりますし、それから収入も、これは発地で収受するというふうなことになりますので、これを地域別に収支を出すというのは恐らく困難だろうと思いますので、その点は検討はいたしますけれども、なかなか難しいんじゃないかというふうに考えております。
  123. 石田幸四郎

    ○石田委員 じゃ、その点は了解しました。  もうあと十分しかありませんので、最後に公害対策の問題についてまとめて御質問をいたします。  ことし、名古屋の地域の住民が起こしました新幹線公害訴訟が和解をしたわけでございます。環境庁の暫定目標値七十五ホン以下に沿うよう、騒音、振動の軽減に努力をするとのそういう条件で、国鉄側が条件提示をして和解をしたものでございます。過去十年間に投じられました音源対策あるいは家屋対策費は、東海山陽についてだけでも約千三百億と言われておるわけでございます。さらに、この環境庁の暫定目標値七十五ホンについては、住宅密集地について五年以内に達成すべし、こうなっておるわけでございます。今後、東京—博多間約千四百キロ全域で、七十五ホン以下、環境基準に合うように下げるためには大変な費用がかかるのであろう、こういうふうに思っておるわけでございますが、これらの費用については、六十二年以降、新会社の収支試算見込みの中に入っておりましょうか、これをまず伺っておきます。  それから、今申し上げましたように、それぞれの会社の規模が非常に小さくなるわけでございますから、その対策費を出すということになりますと大変な負担になるわけでございまして、そこら辺はどう考えているのか。また、新会社がやることではなかなか済まされない、できないかもしれない、そういう場合に、政府に対応策があるか、あるいは政府がこれを援助するとか何かの方策を立てることがあり得るのか、全く新会社にお任せなのか、ここら辺の問題を含めてお答えをいただきたいと存じます。
  124. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今御指摘のありました東海道・山陽新幹線の環境対策につきまして、委員は全区間という御指摘をされたわけでありますが、全区間という形では私ども今対応を考えておりませんでしたけれども、住宅密集地が連続しております地域につきましては、五年以内を目途に七十五ホン以下になるよう努めることということで、本年度から対策を講じております。その千四百キロのうちで住宅密集地域が連続している区間というものは、施行延長で約百八十キロ程度ということを考えておりまして、この部分の費用につきましては新会社の経費の収支計画の中で見込んでおります。ちなみにその金額は五カ年で百五十億円でありまして、環境対策全体としては東海、西日本両会社で二百十三億を見込んでおりますので、この百八十キロについては対応ができると思っております。  現在対策を講じております住宅密集地域の連続している場所、これは今、住宅地域における環境基準が達成のできる範囲が大幅に拡大をしておりまして、商業地域につきましてはほぼ達成できるものと考えております。これは委員が御承知のように、住宅地域におきましては既に防音工事等を相当完了いたしまして、一応住民の生活環境の保全に努めておる状況になっております。以上のような数字をもとにいたしておりまして、私どもは、新会社になりましても十分この百八十キロの環境対策はたえ得ると考えておりまして、それを前提にしておりますが、やはり住民の生活環境にかかわる問題でありますから、運輸省としても十分今後ともに様子を見ながら対応していきたいと思います。
  125. 石田幸四郎

    ○石田委員 大臣、そこまで明言されるわけでございますので、御信頼を申し上げなければなりません。ただ、この問題はかなりお金がかかると思いますので、十分な継続的な措置を私はお願いをいたしたい。  こういう問題を含めまして、私は実はもう一テーマ持っておりまして、安全投資問題をやりたかったのですけれども、時間がもうほとんどありません。この間北海道に行って、北海道総局の様子もいろいろと伺ってまいりました。また、今まで私も運輸委員会で、安全投資について年々その投資額がだんだん減っているということを何度も指摘をしてきたわけでございます。北海道の新会社、たしか六十二年当初は設備投資が百四十二億円、それに輸送増強予算が五億円ぐらいしかついていないわけですね。この実態はどうなんだと言ったら、現場では、私がこういうことを申し上げると後で物議を醸すかもしれませんけれども、確かに厳しいですと、そういう表現。足らないとは言えませんわね。国鉄当局の方でございますから、足らないとは言えない。大変厳しい。  これは各旅客会社の試算表を特にまた精査してみなければならないわけでございますけれども、安全投資については、旧来のいわゆる古い施設、いまだに大正年代につくられた設備が修理されながらその使用にたえ得るようにやられているわけでございますが、これはどう物理的に考えてみましても、摩滅現象というのは避けられないわけですね。そのために徐行運転箇所や何かが相当な規模に上っておるということを考えますと、この安全対策については、当然政府で何らかの対策を講じなければ、いわゆる鉄道という輸送機関の根本的な使命である安全性というものが年々損なわれてくる。これは今度の試算表を見ましても、大体設備投資が今までの十年間と比較いたしまして一八%の削減なんですね。三千億円台から二千四百億円ぐらいになっておる。また、輸送力増強等のあれを見ましても、八百七十六億でしたかね、従来のそういうような経費に比べると、これは六五%減なんですよ。そういうような計算で経営が成り立つような試算をしていらっしゃるということについては、これは政府はもう一考を要する問題であろう、こういうふうに思います。  この点については、また時間があれば議論をすることにいたしまして、そのことを強く指摘をいたしまして、私の質問を終わりにいたしたいと思います。どうぞ大臣、何かございますれば……。
  126. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 これは議論を申し上げるつもりはございません。ただ、今御指摘のように、確かに五十六年、五十七年を加えて御議論をいただきますと六五%という御指摘を受けます。ただ、その五十六年、五十七年というのは新幹線投資がピークに達しておった時期でもありますので、この点は御理解をいただきたいと思います。
  127. 石田幸四郎

    ○石田委員 それはいささか議論のあるところですけれども、またこの次にいたしましょう。
  128. 細田吉藏

    細田委員長 これにて石田君の質疑は終了いたしました。  次に、山下洲夫君
  129. 山下八洲夫

    山下(八)委員 まず最初に、総理にお尋ねをいたしたいわけでございますが、実は十月七日に、私たちの同僚でありまた先輩の、この委員会の理事でもございます嶋崎委員質問に対します総理の答弁について、確認を含めて私まず最初に伺いたいと思うわけです。  そのときの質問の内容を簡単に申し上げますと、分割・民営化に反対をする五千万署名につきまして質問がなされたわけでございますが、そのときの総理の答弁を伺っておりますと、私もまだ議事録をきちっと読んでおりませんので、てにをはの部分は違うかもわかりませんが、社会党がやられたような署名はそれなり意義はあると思うが、顔を出さないでやる世論調査とは大分違う、日本人は大部分は頼まれればああいいよと署名をする、報道機関のやる調査の方が信憑性が高い云云、このような答弁があったわけでございます。  確かに署名を街頭、いろいろなところでよく行っています。だけれども、日本国民はきちっと、これはどういう目的の署名活動であるだろうか、それをやはり確認をして署名を行っておる、私はそのように確信をいたしております。しかもこの署名は、三千五百十四万四千百二十八名もの多くの国民が署名をなさったわけでございます。そういう中で、私のところにも、ちょうどあのときテレビ放映もございましたし、山下さんあの答弁は余りにもひどいじゃないか、このような電話をちょうだいしました。何か社会党本部にも随分そのような抗議の電話が入ったそうでございます。過去に——過去といいますよりごく最近でこざいますが、九月二十二日のあの自民党全国研修会の米国問題での発言問題あるいはまた女性のネクタイ発言問題等々、このところあるわけでございます。そのようなことを考えていきますと、この答弁も一連の答弁として重大な発言だというふうに私は受けとめております。その辺につきまして総理の答弁をいただきたいと思います。
  130. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 私は冒頭に、やはり社会党がおやりになった署名は署名なりに、それなり意義があると思うと評価はちゃんとしておるわけです。ただ、報道機関等が顔を見せないで、顔を見せないという意味は、戸別訪問みたいな形で一人一人が相対で、知っておる人とか行ってやる戸別訪問的なやり方でやる場合、署名をもらいに行く場合、それから報道機関等がアルバイト等を使って顔も知らない人が行ってどうですかと聞いた場合と、そういう場合に答える場合には、戸別訪問的に来られると情が移るのですね、情が移るものだから、ああいいよと。日本人は非常に情が深いですよ。ところが、アルバイトなんかで顔も知らない人が来た場合には、割合にイエス、ノーをはっきり言える。日本人にはそういう特性があると思うのです。そういうような面を私は考えて、日本人にはそういう特性がある、そういうふうに申し上げたのであります。
  131. 山下八洲夫

    山下(八)委員 今の総理の御答弁をお聞きしていますと、何か日本人は大変情にもろい、その情によってこのような重要な内容の署名も行う、結論を申し上げますとそのような答弁のようでございますが、私は、このような署名的なもの、これは場合によれば政治の流れを大きく変える問題でもございますし、少なくとも日本の知識ある国民の皆さんはそのような軽率な考えで署名をするとは考えられないわけでございます。そういう意味ではきちっとやはり理解をなさり、そして確信を持って署名をなさっている。私は、そういう意味からいきますと、少なくとも三千五百万以上の皆さんが署名されたわけでございますし、そのすべての皆さんがあのテレビを通じて本当に大変ショックを受けていると思っているわけです。そういう意味で、もう一度そこの部分について御答弁いただきたいと思います。
  132. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 社会党がおやりになりました署名についてはそれなりに私は意義があることであり、国民の意思も表明されているだろうとは思います。この点は先ほど申し上げたとおりであります。
  133. 山下八洲夫

    山下(八)委員 この問題はいつまでやっても切りがありませんので、この辺でおきたいと思います。  いろいろと国鉄の用地問題が議論をされているわけでございます。今、六万六千二百三十ヘクタール、そういう中で、簿価では一定の数字がわかっているわけでございますが、きょう私のところの上田委員質問の中にも出ました。この国鉄の土地を中心とした資産がお幾らなのか、これが盛んに質問した中でも出てこないわけでございます。少なくともこれから大改革をしよう、そんな状況の中ではこれは出ないはずはないと私は思いますし、ぜひまず出していただきたい、そのように考えておるわけですが、なぜ出せないのか、まずその辺をお尋ねしたいと思います。
  134. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 先刻来の答弁の繰り返しになって恐縮でありますけれども、私たちは、今日の国鉄改革というものが国鉄資産の処分を目的とするのではなくて、あくまでも鉄道事業の継続を図っていくことを目的として物事を考えております。そういう態勢であります以上は、そのまま新しい事業体に引き継がれていきます資産というもの、事業用の資産というものは、処分を行う前提で再評価をするというのは私は意味がないと思っております。先ほどからそういうことを繰り返し申し上げてまいりました。仮にもし国鉄資産を何らかの方法によって時価で評価をいたしたと仮定をしてみましても、これは国鉄の現在抱える膨大な長期債務処理問題にとっては何ら解決にならないわけであります。その資産を全部継続して使われるのでありますから、売り飛ばされるものではないのでありますから、これを再評価するというのは、私は全く意味がないという感じがいたします。むしろ何らの解決にならなくて、苦しい資金繰りの状況が変わらないばかりではなく、再評価をする結果、減価償却費とか諸税の負担が増してしまって長期債務がさらに増大する、むしろ利払い増によっての経営の圧迫要因にすらなるのではなかろうか、私はそう考えております。
  135. 山下八洲夫

    山下(八)委員 国鉄用地を中心に、国鉄というもの自身国民の共有する大変重大な、また重要な財産であるわけでございます。今回の大改革を行おうという中で、少なくとも国民に対します負担を軽減するという考え方はあろうかと思いますが、国民の財産を三千三百三十ヘクタール、一応民間あるいは公機関も含めて払い下げをなさる。売却益が七兆七千億円でございますか、大体そのようなことも出てきているわけでございますが、現実に、この重要な貴重な土地をこのように売却しないと本当に再建ができないのか、また、売却をしないと国民負担がふえるのか、この辺のことも明らかにしないとならないと思うわけです。その上に立っても、私は、今どれだけの資産があるのか、このことも重要だと思いますし、最近新聞によりますと、何か今度は土地だけではなくて国鉄用地の空中戦、このような記事も出ております。それは、東京駅のホームの上だとかあるいは新宿駅のホームの上だとか、あるいは軒並み山手線のホームの上あたりが空中戦になる要素は確かにあるわけでございます。そんなことがありますから、そういうことを実際真剣に考えていけば、本当に貴重な国有財産でもありますこの土地を売却する必要があるか、そういうことも疑念を感じているから私は今お尋ねしている次第でございます。
  136. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 委員、繰り返しになりまして大変恐縮でありますが、一点正確に申し上げたいと思いますのは、七兆七千億というのは予定売価ではございません。これはあくまでも、再建監理委員会が要するに処分をする土地として二千六百ヘクタールの土地を捻出をし、それを五兆八千億という数字で表現をいたしましたものを国鉄自身がさらに精査をし、事業用地として新会社に引き継がない、いわば処分可能な土地として三千三百ヘクタールというものを提示をいたしました。この価格について、本委員会の御議論の中から、お許しをいただいて一定の仮定を置いたあくまでも試算でありまして、この七兆七千億というものは私どもが売却をし、得ようとしている収入ではないということだけは正確に申し上げておきたいと思います。  その上で私どもから申し上げなければなりませんのは、まさにそのとおり処分を予定しておりますものについては一応私どもはすべての土地を資料として提出をいたしました。しかしこれは、先ほど総理からさまざまな場合を想定して御答弁がございましたものを受けて私が御説明をいたしましたように、国民から疑惑の眼を注がれたりするようなことのないように、あくまでも公正な処分を前提として一般公開入札によってこれを売却する、その場合の予見を与えないために現在個々の地価については公表を御了承いただきたいということで今日まで御説明を申し上げておるわけであります。委員が問題としておられるものは、まさにそれ以外に、今後ともに鉄道事業というものが継続していくために必要な資産を時価評価をしろというお話でありまして、それは先ほども申し上げましたように、そういう操作をいたしました結果としての減価償却費、諸税等の負担が増すといったこと、長期債務がその結果さらに増大をし、利払いの増により経営の圧迫の要因になることすら私は恐れているということを申し上げたわけであります。
  137. 山下八洲夫

    山下(八)委員 御案内のとおり、社会党は民営的手法は取り入れますけれども、全国一社制で国鉄を再建しよう、こういう法律案を提案させていただいていることは御案内のとおりであるわけでございます。そういう中で、本当にこの貴重な国民の財産であります用地を、軽々と言いますと言葉はちょっと悪いわけでございますが、本当に売り渡さなくても、もっと英知を出し合ってそして再建をする道はないか、そのことを探ることが私は大変重要だと思うわけです。  本日、私は、建設大臣さんをお願いしておりませんのであれですが、特にきょうまた昼にいただきました資料を見させていただきました。過日もらった倍くらいになっていまして、これはまだ詳しく見ておりませんが、私も全く素人でございますけれども、その中でも岐阜県、特に私は岐阜県でございますから岐阜県、そういう中で、同時に自分の住んでいる町のおおよその売買相場というのは承知をしております。五万三千の小さな町でございますし、地価もそんなに高くありません。だが、駅前周辺というのは、どんな田舎町であっても坪単価で言いますと大体百万円前後、これはすぐ言われる売買価格でもあるわけでございます。そういう中で、今回の七兆七千億円でございますか、そのほかいろいろな経費はかかっているわけでございますが、では坪単価で大体どれくらいになるんだろう、ざっと計算してみましたら、坪当たり七十万円くらいになるようでございます。全体的に見ていきますと、私は素人なりに見ましても、この数字ですらまだ大変小さい数字ではないか、実際この後もっともっと大きな数字になるのではないか、そのようにも一方では思うわけでございます。  前提といたしまして、私は売り渡してほしくない、この気持ちが強いわけでございますから、そのことは申しません。だが現実に、新会社というより今の国鉄でこの用地、あるいはまた鉄道用地、事業用地として使用していますその用地をもっともっと活用すべきではないか、そしてその中から、結局は国民負担軽減につながるそのようなものへ転化をしていく、そういう努力をすべきではないか、そのように一方では思うわけです。特に私が申し上げたいのは、東京は本当に住宅難でございます。マンションもどんどん値上がりをしている。そのように盛んに新聞報道されております。あるいは一方ではオフィスも足りない。どんどんもっともっと建てたい。土地は本当に高くてなかなか遊休地はない、大変な状況になっております。  そのようなことを考えれば、例えば山手線のレールの上に住宅は建たないものだろうか、マンションは建てることはできないだろうか、あるいはそれぞれの駅の上に、ホームの上にオフィスをつくることはできないだろうか、このようなことを検討する必要もあると思うわけです。その中から売却利益が出てくれば土地を処分する必要はないわけでございます。空中の建物を処分すればいいわけです。売却益で補てんをしていく、このようなことも考えていいのではないか、私はそう思うわけでございます。そういうことを考えていくには、やはり国鉄の全体的な資産も大切に私はすべきだと思うわけです。そのような考えがありますからお尋ねしているわけでございますが、そういう方法で十兆や二十兆は簡単に国民転嫁分を吸収できる、そのように私は確信をいたしております。そういう意味で、この点につきまして御検討されたことがあるのかどうか、その辺を含めて御答弁をいただきたいと思います。
  138. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今社会党案、そしてその社会党案に盛られておりますお考えを引用されながら御意見を述べられました。ただ、私どもが現実にお答えのできますことは、従来何回か国鉄については、現在の国鉄経営形態のままさまざまな手法を講じて経営改善ができないかということでありました。そしてそれが現実にうまくいかず、長期債務が累増しておる状況委員御承知のとおりであります。そうした中で分割・民営化という方針が打ち出され、そして現に国会で法案の御審議をいただいておるわけでありますが、その過程においてはさまざまな検討がなされてきたことは事実であります。そして三千三百三十ヘクタールの売却を予定しております用地にいたしましても、売却あるいは土地信託、リース、さまざまな検討がなされてまいりました。それは先刻総理からの御答弁にもあったとおりであり、そうした可能性を今後とも残しておらないものではありません。可能性としてはそういうものも残しております。しかし、実は信託方式とかリースとかといった方法によっては到底これだけの長期債務を埋めるという数字が出てまいりませんでした。  これはある地方自治体の首長から、現実に私自身も土地を借りたいという御要請を受け、その御要望というものはそれなりに理解のできるものでありながら、自治体の支払える借り地料と、その土地から生み出して長期債務を減らして最終的な国民負担を減らさなければならないと考えておりますものとの間には大変大きな乖離が現実にあったわけであります。ですから、さまざまな検討の結果、今私どもは、この三千三百三十ヘクタールという用地につきましては処分をし、それを財源として長期債務をできるだけへずっていきたいという考え方に立っております。ただ、昨日も御論議がありましたが、東京駅の上空を利用しての計画というものを天野建設大臣が私見として述べておられます。その詳細について私は伺っておりませんので、論評は昨日も差し控えさせていただきましたし、今もそれ自体の論評は控えたいと思いますが、仮にこれを実行するとなりました場合においても、工法でありますとか極めて多くの技術的課題を残しておることもまた事実でありまして、私どもは、やはり現実の長期債務の償還というものの中に、将来における夢を算定の基礎に入れることはできないのではなかろうかと考えております。     〔委員長退席、佐藤(守)委員長代理着席〕
  139. 山下八洲夫

    山下(八)委員 私、資料を持ってきたつもりでどうも忘れているようで、推測で、数字的には若干狂いは生じるかわかりませんが、私がある建築の専門家に若干の試算をしていただいたわけでございます。そういう中で、建設省の基準で三LDK、かなり立派なマンションだそうでございますが、大体九十一平米だったと思いますけれども、それぐらいが基準である。そういう中で、坪単価にしまして大体百万円ぐらいの経費を使用して一定の十階建てなら十階建てのマンションを建設する。そうしますと、大体二千七百万円ぐらいだったと思いますが、そのぐらいの経費で今の国鉄の線路の上に十分建つ。そして山手線一周三十一・五キロだったですか三十四・五キロだったですか、その資料をちょっと忘れてきたものですからあれですが、そのような中で十階建てで一周り建てますと、大ざっぱに三十万戸建つというのです。これを考えますと、東京の住宅事情というのは一遍に解決するのですね。  だから、民営的手法であの空中をなぜ国鉄に利用させていただけないのか。そしてそれを国鉄が売却して、その売却益で——先ほどもちょっと触れましたとおりマンションは今本当に大変な高値を呼んで、同時に住宅難でもある。そうしますと、簡単に十兆円や、それこそ先ほど申し上げました二十兆円くらいの売却益が出るわけでございます。それで今の赤字補てんをしていく。そのようなことを考えますと、本当に国民負担は少なくなってくる、また土地の売却すらしなくてもいい。また、技術的な問題とおっしゃいました。技術的な問題で申し上げましても、今や日本の土木建築、この技術力というのは世界一と誇ってもいいと私は思うわけです。それぐらいすぐれていると思います。そういう中で、技術的に不可能、そのような言葉は今やなくなったと言ってもいいぐらい解決する問題だと私は考えています。素人の私ですらそのように思うわけでございますから、それこそもっともっとお互いに知恵を出し合って検討すれば、立派に今の国鉄としてやっていける。  結論を申し上げますと、先ほど申し上げまして、お答え出ませんけれども、今の国鉄の資産はお幾らか、これが出なくても、仮に三十七兆五千億円累積債務があったといたしましても、そのようなものはすぐ吸収もできますし、同時に、そういう観点からいきますと、民間企業ということを考えてみてください。民間企業というのは、景気がいいときは五十円の株でも五百円、千円と相場が上がるわけです。倒産したらどうなるんでしょう。あの相場が千円になったものでも、額面が五十円であっても五十円で引き取り手がないわけです。紙くずになるわけでございます。そして自分の資産を全部売り払って、まだ大きな借金を残して倒産するのではないでしょうか。そういう意味では、国鉄の場合は、今日的に考えてみましても、仮に累積債務が今申し上げました三十七兆五千億といたしましても赤字と言い切れるのかどうか、そのこともぜひこの際お互いに検討し合うべきだと私は思うわけです。その辺につきまして御答弁いただきたいと思います。
  140. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私は、三十七兆五千億といわず、本来の現在国鉄の持っております累積債務の二十五兆七百九十億という数字でありましても大変な赤字だと思います。
  141. 山下八洲夫

    山下(八)委員 それは確かに大変な赤字であることは事実なんですよ。だけれども、実際、それを一方では土地売却で一部国民負担を軽減していく、あるいは分割・民営にして、後ほどまた地方税の問題で触れたいと思っておりますが、あらゆるところで保護政策をとって、そして何とか将来やっていく、このようなものが出てきているわけですね。だけれども、実際に国民負担というのは大変あるわけですから、その国民負担をやはり少なくすることは、民活導入ということは私は一〇〇%いけないとは一つも思っておりません。ですから、社会党も特殊会社方式を提唱しているわけでございます。ですから私は、売ればいい、分割をすれば再建できる、ここが大きな問題であるわけですから、売らなくても再建できる方法を探ろうではないか、そうやって今提起をしているわけですから、その辺について今私の考え方を申し上げたわけです。だから、三十七兆円にいたしましても、今申し上げましたとおり空中戦、空中戦で騒がれるんであれば、そこの空中をうまく活用することをお互いに知恵を出し合おうではないですか。(「十年前に聞きたかったね」と呼ぶ者あり)そういう土俵をつくろうではないですか。そのことが私は大事だと思うのですが、いかがでしょうか。
  142. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今、委員の中から十年前にそういう御意見が聞きたかったという言葉がありましたが、私も実はそういう感じがしないわけではありません。ただ、そういうことを抜きにして、今の御意見に私なりにこうお答えをしてみたいと思います。  私どもは、現在の国鉄状況は本当に深刻に受けとめております。これは委員も御同様でありましょう。しかし、国鉄が多様な輸送機関の発達に伴う輸送構造の変化というものに抗し切れずに今日の状況に至ったという中には、単に公社制度による自主的かっ弾力的な経営が困難であったということばかりではなく、やはり全国一元の巨大組織というものの中で画一的かつ競争意識というものに乏しい運営が行われてきたために、私は、輸送需要のきめ細かな対応ができにくかったということが極めて大きな原因だったと考えております。     〔佐藤(守)委員長代理退席、委員長着席〕 もとより、それ以外にいろいろな原因があることはけさほど上田委員また石田委員から御指摘があった点でもあります。  ですから、実は私どもは、この国鉄の新しい改革というものを考えていきます場合に、大変失礼でありますが、社会党案のように、民営化はする、しかし、全国一社制はそのままに存続するということでは不徹底ではなかろうかという感じをまず持っております。(「それはない」と呼ぶ者あり)そういうふうに私は感じるということであります。また、七つの支社にということを考えておられるわけでありますが、恐らく人事あるいは給与決定等々の基幹的な部分は本社が握ることになるのでありましょう。そうなりますと、地域の他の交通機関との対比の中での競争というものにも限界が生じるのではなかろうか、私どもはそんなふうな感じも持っておるわけでございます。さままざまな論議はいたそうと思えばいろいろな議論はできるわけでありますけれども、今御指摘になりましたようなお考えについて、私どもは必ずしもそのとおりだなと申し上げ切れないのは、むしろこの際、公社制というものの持っていた一つの壁を突き抜けていくとすれば、そして新しい道を求めるとすれば、分割・民営にまで進むことの方がより望ましい形ではなかろうかと考えております。
  143. 山下八洲夫

    山下(八)委員 私は、公社制だから、同時にたとえ民営的手法であってもこれだけ巨大企業であるから、分割して民営化しない限りきめ細かな、サービスを含めましてなかなか管理運営が難しいだろう、このようなことは時代錯誤もいいところだろうと思うわけです。今や世界じゅうに進出をしまして企業も活躍をしておる時代であるわけです。地球の裏側まできちっと管理をしながら今行っている時代であるわけです。なぜできなかったか。私は、なぜできなかったかというより、したくてもさせていただけなかった、このことが重大だろうと思います。粗っぽい言い方になるかもわかりません。極端な言い方をしますと、駆け出しですから許していただきたいと思うわけですが、(「二年生だ」と呼ぶ者あり)二年生の駆け出しですから許していただきたいと思いますが、私は、東海道新幹線、東京—大阪間は別にいたしまして、極端な言い方をすれば、国鉄のレールというのは全部政治路線と言っても決して言い過ぎではない、そのように一方で思うわけです。だが現実にその地域では大変重要な足でもあるわけです。レールでもあるわけです。地域もぜひつくってほしい、今でも要望はたくさんあるわけです。そういう中で赤字覚悟して建設をしないといけない、このような問題があったわけですから、私はそういう観点からもやはり考えていただけばいいと思うわけです。立派に働いてきたわけでございます。働かないから赤字を出したんではございません。初めから赤字がわかっていて建設している部分があるわけです。  ですから、私が今申し上げるのは、そうであってもやはりいつまでもこのように放置することはできない。だから、社会党はそれなりに全国一社制で、そして将来に向かって地方ローカル線等が廃止されないように何とか努力をしていく。小さくすればするほど、同じ赤字でも痛みは大きいわけです。そうしますと、地方ローカル線等の廃止は今より可能性としては高くなる、こういうことは当然だと思うわけです。そんなことも防いでいく。そう考えますと、全国一社制の上できちっと運営をしていく、こういう方向を打ち出していただきたいと思うわけです。先ほど申し上げましたとおり、大臣の答弁にお返しするわけではございませんが、私は、今の日本におきまして全国一社制にいたしまして管理をしたりすることは十分やっていける、また地域性を生かすこともできる、そのように確信をいたしております。
  144. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 これは私も決して議論をするつもりで申し上げているわけではないのですけれども、たびたび繰り返して実は他の委員にも申し上げてきたことでありますが、今国民交通機関別依存度というものを考えてみました場合に、都市部における通勤通学輸送、そしてまさに中距離の都市間輸送、これが鉄道に対して一番求められ、利用されておる部分であります。まさに航空機に長距離の旅客がとられてしまった。三百キロ以内の場合にはむしろ自動車の方が国民依存度は高くなった。そういういわば国民ニーズの変化の中で将来を考えた場合に、私は分割方式というものが非現実的だとは決して思いません。今、委員は管理能力は十分にあるというお話をされましたし、全国一社制で行けるという理論を展開されましたが、この点は私は本当に意見を異にいたします。そしてこの分割・民営案でも、資料として御提出を申し上げておりますように、特定地方交通線につきましては、これはバス転換を本当に考えておりますし、転換を考えなければならない状況にありますが、その他の地方交通線については、むしろ分割後のそれぞれの会社においてはこれを存続し、再生させるという考え方で計算をいたしておることも御理解をいただきたいと思うのです。
  145. 山下八洲夫

    山下(八)委員 この辺で議論しておりますと、持ち時間で後に支障がありますので次へ移っていきたいと思いますが、いずれにしましても、社会党案をもっともっと深くお互いに議論をする場もつくっていただきたいな、そのようにも思います。  若干雇用問題に触れさせていただきたいと思うわけです。仮定という話をつけまして恐縮であるわけですが、仮に新会社へ移行した場合、まずその最初のスタートは最低二十一万五千人体制からスタートをするんでしょうか。
  146. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 御指摘のとおりであります。これは多少の説明をさせていただきますならば、関連事業等を経営する場合に、その分野に従事し得る要員をも含み、同時に離職者の数をできるだけ減らしたいということから算定をしております。
  147. 山下八洲夫

    山下(八)委員 そういたしますと、六十一年四月一日現在二十七万七千人の職員だというふうに私は理解をしているわけでございますが、せんだってのこの委員会の中でも希望退職者の数が出たようですが、一万六千幾つだったかな、出たようでございますが、最終的には一応二万人ということで希望退職を募っているわけでございます。そうしますと、その後もう一つ特別退職ですか、これはどれぐらい見込んでいらっしゃるのか、その辺ちょっと御答弁いただきたいと思います。
  148. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 六十一年度中の特別退職ということでごさいますね。——希望退職が二万人ございますが、いわゆる一般的な特別退職は約五千人ということで、両方合わせまして本年度中に二万五千人退職するであろうというふうに計算しております。
  149. 山下八洲夫

    山下(八)委員 大体今年度中に二十五万二千人を予定なさっているということでございますね。そういたしますと、二十五万二千人から二十一万五千人を引きますと三万七千人でございますか、たしか三万七千になると思いますけれども、このような言葉は使いたくないわけでございますが、このような国家的な事業を行おうとしているときでございますし、特に国鉄に採用されましたすべての職員の皆さんは、やはり公機関でございますし、きちっと試験を受けられて、優秀な成績で合格をされて、そして生涯鉄道マンとして退職まで勤め上げよう、こういう気持ちで私は職員になられたと理解をしているわけでございます。そういたしますと、このような思ってもいないような大改革が目の前に来ている、職員の皆さんも大変な不安を感じていらっしゃるわけでございます。そういう中から、当面見ていきますとざっと三万七千人、余剰人員という言葉は使いたくありませんけれども、ほかに転職をさしあたって急いでしなければならない分、あるいは希望退職の二万人の中にも多くの方が、退職後再就職を考えている方もいらっしゃると思います。そういうことを合わせましても五万七千人ぐらいになるわけでございます。そこで申し上げたいのは、五万七千人、やはり責任を持って国及び国に準ずる機関で私はすべて採用すべきだと思いますが、その辺はいかがでしょうか。
  150. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 昨日、国鉄当局から、四万一千と言われていた数字は約三万七千という見通しが述べられました。ただ、私どもは、その希望退職の二万の方々をも含めて、あくまでもやはり国鉄を去っていかれなければならない六万一千の方方に対しての職場を用意しようと今努力をしております。ただ、山下さんは全部国または国に準ずると言われましたけれども、私は、現在国自身が国家公務員の数を抑えて減量経営をしようとしておるときに全部をというのはやはり無理なことだと思います。そして今その六万一千、あくまでも私どもは六万一千名を対象としてその職場を用意するつもりでありますが、そのうちの二万一千名はやはり国鉄に関連した関連企業で御採用を願いたいと思っております。そして国、地方公共団体、これは三万人という目標を立てて現在努力をいたしておるわけでありますが、そのうち国及び特殊法人等国関連ということで一万八千五百人を目標といたし、地方自治体にも一万一千五百人の受け入れをお願いをし、努力をしておるところであります。民間に、これは山下さんのお話からいきますと民間の話をしちゃいかぬのかもしれませんけれども、民間にも私どもは一万人以上の雇用をお願いしたいということで今大変御努力をいただいておるわけでありますが、私どもは、あくまでもこの六万一千の方々に対して国として全力を挙げて新しい職場を用意し、移っていただける状態をつくろうとは考えておりますが、全部国家公務員というのはこれは無理であります。その点は御理解をいただきたいと思います。
  151. 山下八洲夫

    山下(八)委員 私も本来なら六万一千人、この数字の方が正しいと思います。そういう中で、この六万一千人の方も退職まで国鉄で勤め上げる、本当にこういう気持ちで国鉄職員になられたと私は思うわけです。私がちょうど少年時代といいますか幼年時代といいますか、少年時代と言った方がいいと思うわけですが、線路のわきでよく遊んだものです。そしてあの機関車を見て、私もあの機関士になりたい、こういうあこがれを持ったこともあります。多分大臣も、私よりちょっと先輩ですけれどもそのような世代だと思うわけです。それぐらい国民に愛され、そのような世代の方がたくさん国鉄に入り、そして今現実に路頭に迷っているわけです。だけれども、そのように愛情を持って自分で選んだ職場なんです。それが現実にはこの大改革で本当に不安を感じているわけでございます。ですから、希望して、私はどうしても民間企業に行きたい、そういう方は、私は民間を否定するわけではございません。どんどん民間企業へ行っていただいていいわけです。だけれども、やはり最終的には国が責任をとる。そして国で六万一千人どうしても確保できない、そうしたら地方自治体にもあるいは関連企業にも、全部にやはりお願いする、これは当然のことだろうと思うわけです。だが国が、やはり国の機関に準ずるようなそういうところで責任を持っていく、これが一番今の職員も安心する道ではないか、そのように思うわけです。  特に、地方自治体は三千三百ございます。そのうち小さな自治体もございます。村の小さな自治体もございます。一人採用するのが困難なような自治体もあるでしょう。あるいはまた東京都のようなマンモスもあります。そういう中で、この三千三百の皆さんにもそれはお願いしていく、これも必要であろうと思うわけです。だが国で責任をとる、そういう形で、まずこの採用、職員の安心を買うためにもやはり確保する、大臣、そのようなことを考えていただいてもいいのではないか、私はそのように思うわけです。いかがでしょうか。
  152. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 今、六万一千の職員を路頭に迷わせると言われましたが、私どもは、そういう事態を招きたくないからこそ今必死で一人でも多くの方々を採用していただきたいと民間企業にもお願いをし、関係各省庁にもまた特殊法人にも地方自治体にもお願いをいたしております。そして現在、数から言えば五万八千五百人分だったと思います、ちょっと今数字を忘れましたが、既に求人をいただいております。それだけの努力をここまでも払ってまいりました。これからも払います。
  153. 山下八洲夫

    山下(八)委員 また私の町が出て恐縮でございますが、岐阜県というのは内陸で海がないわけですが、その中の人口五万三千という小さな町に私は住んでおります。人口は五万三千です。その中で国鉄職員が今日でも五百名ぐらいいらっしゃるわけです。私のところにも毎日のように、例えば市役所へ入れぬだろうか、どこかいい職場はないだろうか、本当に真剣になって悩んでいらっしゃいます。そして五年ぐらい採用も停止されています。その上に立ちまして、今若い人といっても二十四歳以上なんです。そういう中で、大体独身者も年ごろの独身者でございます。結婚もしたい。山下さん、僕振られたよ、国鉄に勤めているから先が不安だと言われた、そのような人も現実に見えました。それぐらい大変な状況が今現場で生まれているわけです。  今度岐阜県で越美南線が長良川鉄道として六十一年の十二月十一日に新しくスタートいたします。ここでは全部で七十六人の要員でスタートをするわけでございます。その中で国鉄のOBの皆さんが三十一名就職をされます。今派遣職員ということで四十一名行っていらっしゃるわけです。地図を見ていただけばわかると思うのです。これは岐阜県の地図であるわけですが、越美南線というのはこんな山奥であるわけです。そしてこっちの山の奥の方にいらっしゃる方は、長良川鉄道になると職場を失うわけです。その中で駅関係の皆さんが、国鉄をやめて給料は大幅にダウンするけれどもこの長良川鉄道に行きたい。三十名この周辺に住んでいらっしゃいます。そのうちの半分の十五名の方が、今の国鉄をやめて第三セクターの長良川鉄道にかわってもいい、そう希望を出されたわけです。たったの四名しか採用していただけないわけです。そうしますと、あとは広域配転に応ずる以外もう生活の道はないわけです。そのような不安を感じているわけです。一生懸命努力なさっていることは私も理解します。なぜこれを私が申し上げるかと申しますと、少なくとも第三セクターというのは、運輸省にとりましてもあるいは国鉄にとりましても大きな責任があると思うわけです。民間企業を初めいろいろなところへ希望なさるのであれば、このような問題についてももっともっときめ細かく、そしてできれば現職の皆さんが今のところを、国鉄を退職してかわりたいとおっしゃれば最優先すべきではないですか。その辺、国鉄当局を含めていかがでしょうか。
  154. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 先ほどの中で、大変申しわけありませんが、私が五万八千五百と申しました数字、現在五万九千五百名の求人をいただいているということを言い直させていただきます。  そして委員、御自分の郷里の例を挙げて大変力説をされましたが、私どもは本当に現に努力をいたしておるわけであります。そしてなおこれからも努力をいたしますと申し上げておるわけであります。そして現に努力をいたしております。全力を尽くします。
  155. 山下八洲夫

    山下(八)委員 では一歩進めたいと思いますが、国鉄にお尋ねしたいと思うわけです。  特に地方の自治体に再就職をする場合、一日以上の空白期間を置かないといけない、このように少なくとも国鉄と自治省の間で、どういう公文書で約束を交わされたかわかりませんが、きちっとなされていると思いますが、それは間違いございませんですね。
  156. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 自治体に大変御支援をいただいておるわけでございますが、その場合に、閣議決定で雇用対策につきましての決定が行われた中に、自治体でよろしく御採用方をお願いすると同時に、退職手当の問題につきましては地方公共団体に負担をかけないようにと、こういうことが閣議決定をされております。そうしたことも踏まえまして、私ども自治体にお願いする場合におきましては、国鉄を去る場合に退職金をお支払いいたしまして、それで自治体には退職手当の御面倒をおかけしない、こういうふうな仕組みを決めたわけでございます。
  157. 山下八洲夫

    山下(八)委員 自治大臣にお尋ねしたいと思うわけですが、地方自治体も公機関でございますから、自治省の御努力も感謝をするわけでございますが、これにつきましても、先ほどの運輸大臣との議論ではございませんが、一万一千五百ですか、そのようなみみっちい話ではなくて、もっともっとたくさん採用する、このようなことでぜひ指導していただきたい、そのように思うわけです。確かに地方行財政改革の中で大変厳しいですし、また地方の財政は大変貧弱でございます。そういうことを考えますと、本当に難しい面を百も承知しております。だが現実には、地方に行けば行くほど職場というものはだんだんとなくなるわけでございます。その辺からぜひ一考願いたいと思うわけでございます。  その上に立ちまして、今国鉄から答弁いただいたわけでございますが、自治省の公務員一の第五十号というのですか、通知が出ているわけでございます。その中に、一つはきちっと、国鉄職員を採用する場合には「必要な期間(一日以上)を置く措置を講ずることについて国鉄においても了解済みであるので、適切に対処されたい」、このように言われています。私は、できれば、これはわざわざ一時退職をしないでも転職できる、このような道を開いていただきたい。時間がありませんからまとめて二、三点訴えておきたいと思いますが、第一点はそのことについて明確な御答弁をいただきたいと思うわけです。  それから二つ目は、「別紙」といたしまして、その中でやはり同じように「国鉄からの推薦者の提示」というのがあります。その中で見てみますと、国鉄の職員で「連絡を受けた採用予定数に五を乗じた数推薦するものとし、」とわざわざ「五」という枠がはめてあるわけです。これも場合によれば選別の対象になる可能性がございます。こんなものは外していただきたいと思います。その辺につきましても、なぜ「五」をするのか、そのこともあわせて答弁いただきたいと思います。  もう一点、あわせてお聞きしておきたいと思いますが、同じように「国鉄からの推薦者の提示」の中で「判断にあたって参考となる事項等」、この「参考となる事項等」というのはどういうことなのか、これを教えていただきたいと思います。
  158. 柳克樹

    ○柳(克)政府委員 お答え申し上げます。  まず第一点の退職手当につきまして一日切るということでございますが、これはただいま国鉄の総裁の方からお答えがございましたように、できるだけ雇用の場を確保するという観点から、退職手当につきまして国鉄の在職期間はこれを除外した方がよろしかろうということで定めたものでございます。  それから五倍の点でございますが、これは一般的に試験をいたします場合に、五倍程度の職員、候補者から選ぶということを考えておりますので、それに準じて、通常行います試験のやり方にのっとって考えてほしい、こういう趣旨でございます。  それからもう一点の参考となるものでございますけれども、これはその職員の資質が公務員に向いているかどうか、地方公務員に向いているかどうか、その他いろいろなそういうことがわかるものを適宜出していただきたい、こういう趣旨でございます。
  159. 山下八洲夫

    山下(八)委員 そういうことはおおよそ見当はつくわけでございますが、今現場におきましては、この「五を乗じた数」、このようなものがあるから、一方で職員は大変不安を感じているわけです。本当に不安を感じているから、採用試験を受けたい方がたくさんいらっしゃるわけです。希望者がたくさん出るわけです。だけれども、現場管理者がAさん、君はだめ、Bさん、君はだめと振り分けてしまうのです。ですから、私はこれをぜひ今回外していただきたい、その御答弁がいただきたいのです。何人受けてもいいじゃないですか。大勢受ければ受けるほど優秀な職員がまた地方自治体に確保できるじゃないですか。なぜそれができないのですか。こういう枠をはめる必要はないじゃないですか。その辺いかがですか。
  160. 柳克樹

    ○柳(克)政府委員 ただいま申しましたように、試験をいたしますときに、例えば一倍というようなことですと大変困るということもございまして、逆に五倍程度は出してほしい。しかし、それ以上になりますと、これはまた試験の手続が非常に煩瑣になるというおそれもございます。それで、通常の場合考えられますものとして五倍程度というものがいいのではないかということで出したものでございます。
  161. 山下八洲夫

    山下(八)委員 愛知県はこの枠を外していらっしゃるんです。また近々採用試験があるようでございますけれども、愛知県は外していらっしゃるわけです。希望者が仮に百人いたとすれば、その百人の中から採用する側は選ぶべきじゃないか、そう言って外しているわけです。私はそれが一番公平な試験制度だと思うわけです。ですから、一方では、この枠を利用して選別をしている、そういう現場長もいらっしゃるわけです。この際、雇う側といたしましても、少しでも優秀な職員を採用したい、まあ当然な気持ちです。ですから、私は枠を広げてもらいたいと思うわけです。これを外していただきたいと思うわけです。もう一度、ぜひこれを変えていただきたいと思いますが、いかがですか、自治大臣大臣、いかがですか。
  162. 柳克樹

    ○柳(克)政府委員 先生のおっしゃることもわかるところもあるわけでございますけれども、ただ、試験の実施機関である地方公共団体の方からいたしますと、余りたくさんおいでいただくというのも試験の手続上非常に難しいということもございます。先生おっしゃるように、団体によっては五倍を少し超えても受けさせているところもあるかもしれませんけれども、一般的な話としては、やはりその程度めどというのが試験を行う場合の地方公共団体における通例でございますので、御理解いただきたいと存じます。
  163. 山下八洲夫

    山下(八)委員 通例であるんなら、わざわざ何でこうやって通達を出されるのですか。そうでしょう。通例であるなら出す必要はないじゃないですか。現場に任せばいいじゃないですか。そうじゃないですか。
  164. 柳克樹

    ○柳(克)政府委員 たびたびで恐縮でございますけれども、五倍といいますのは、その上の方を切ったということだけではございませんで、それぐらいの人数を出してほしいという意味もあわせてあるわけでございます。そういう意味で通例ということを申し上げたわけでございます。
  165. 山下八洲夫

    山下(八)委員 そんなあいまいな、出してほしい、この文章からいきますと、そう理解できないですよ。まあ行ったり来たりになってしまいますからこれ以上申し上げませんが、強く要望しておきたいと思います。自治大臣、これは撤廃をしていただきたい、そのように強く要望しておきたいと思います。もう御答弁はいいです。  いずれにしましても、このようにいろいろな面で国鉄の職員の皆さんは、雇用問題一つとっても、国鉄の将来はどうなるのか、本当に不安の中で毎日悩み抜いていらっしゃるわけです。そのことを考えますと、すべての皆さんが安心していける、そういう意味では、雇用の問題につきましては、まず公機関最優先でぜひ今まで以上の御尽力を心からお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  166. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 先ほどから繰り返して申し上げておりますように、政府としては、国家公務員で、またそれに準ずる機関において一万八千五百人を、地方自治体において一万一千五百人をという採用目標率を設定いたしております。その目標の貫徹に全力を挙げるつもりでおります。
  167. 山下八洲夫

    山下(八)委員 それから、全然角度は違うわけでございますが、国鉄職員は最終的に何名がいいのか、こういうような議論もたびたび出ております。何か監理委員会の回帰式でやりますと十八万三千になった、そして国鉄の積み上げ方式でやりますと十八万六千人でございますか、そのようになった、そして十一月のダイヤ改正ではそれが十八万六千三百人だったと思いますが、三百人になった、これも当然積み上げ方式だろうと思います。そういう中でこの線区別の資料は出ない、そうおっしゃっています。なぜこの線区別の資料が出ないのか、ぜひ私はお尋ねしたいと思いますがなぜこの線区別の資料が出ないのですか。
  168. 林淳司

    林政府委員 その点につきましては先般も御答弁申し上げたわけでございますが、監理委員会の線区別のモデル計算というものに対しまして、それを受けて政府の方としては検証の意味も含めて現場から積み上げをやったわけであります。それは運転とかあるいは電気とか施設とかというふうに系統別に積み上げをやったわけです。例えば運転をとりますと、ある電車区で幾つかの複数の線区を担当しているわけです。そこの電車区に所属する電車の運転士は一つの線区だけ運転しているわけじゃありませんで、複数の線区を運転しているということであります。現場のそういう機関ごとの積み上げになりますと、線区にそれを配分するということは非常に難しいわけでありまして、そういう意味で、各線区別の要員数というのは計算の仕方が違うものですから出ないということを申し上げているわけであります。ただ、その辺についてどういう資料を御提出申し上げるかということについては、これは委員会の方の御指示に従いますということを昨日も申し上げたわけでございます。
  169. 山下八洲夫

    山下(八)委員 いや、その線区別が出ない——私は今の御答弁を聞いても不思議で仕方がないのです。例えば電気なら電気で、Aという区間で仮に百人要るとしますね、Bというところで百人要る、だけれども、両方あわせば例えば百五十人で済む、そうすれば括弧くくりで出るじゃないですか。それが現場の積み上げじゃないですか。例えば乗務員にしたってそうでしょう。いろんなところを乗務されるでしょう。私は東海だからあの付近の線名がすぐ出るわけですけれども、例えば高山線では乗務員が何人要る、そして中央西線では何人要る、あるいは東海道では何人要る。だけれども、そういうことの中から今度はあわせますと、例えば三百人のが二百五十人なら二百五十人で済む、そういう形で出るじゃないですか。括弧でくくればいいだけじゃないですか。そんなこと簡単じゃないですか。だから全体的な数字が出ているのじゃないのですか。
  170. 林淳司

    林政府委員 線区に要員が張りついているわけじゃないのです。例えば電車運転士はAという電車区に張りついています。そこの電車区の運転士は、その乗務割りに従って幾つかの線区、複数の線区をまたがって乗務をしておるということであります。別のBという線区の運転士はまた別の線区をやっておるということでありまして、したがって、その線区に要員が張りついているんじゃなくて、あくまで運転区あるいは電車区というふうなところに要員が張りついているわけでありますから、その線区にそれを配分するということは、これは不可能なわけでございます。
  171. 山下八洲夫

    山下(八)委員 そんなことないですよ。例えば高山線に列車が何本走っている、それに対して機関士さんが何人要る、車掌さんが何人要る。例えば今度東海道へ、名古屋なら名古屋を拠点にして、東海道には何人要る、それすべてわかるのでしょう。またがっている、けれども、それをあわせて結局は括弧でくくれるじゃないですか、完全に。そうやって現場から積み上げているのでしょう。電車の本数とか、あるいは……(発言する者あり)
  172. 細田吉藏

    細田委員長 御静粛に願います。
  173. 山下八洲夫

    山下(八)委員 だから、そういうことで出せるじゃないですか。それはちょっと委員長理事会で検討してくださいよ。もう時間がなくて次をやらなくてはならない。(発言する者あり)
  174. 細田吉藏

    細田委員長 御静粛に願います。
  175. 林淳司

    林政府委員 何遍も申し上げますけれども、資料の提出については、昨日も申し上げましたように、その点については委員会の方の御指示に従って対処いたしますということを申し上げております。
  176. 山下八洲夫

    山下(八)委員 時間がなくなりますので、もうこの問題は終結をします。  地方税の問題について質問したいと思います。特に今回の八法案の中の一つに地方税の問題がございます。私は、地方税の問題はなるべく簡潔に、そして明快な御答弁をいただきたいと思います。茶の木畑に入りますと時間がなくなりますので、私もしっかりきちっと書いてきましたから、なるべくわかりやすく短い言葉で御答弁いただきたいと思います。  まず固定資産税の性格について、政府は、資産の所有の事実に担税力を見出して課税する物税であるとしていると思います。これは自治省の「地方税制の現状とその運営の実態」の「意義」の中にも、「固定資産税は、固定資産の資産価値に着目し、その資産を所有することに担税力を見出して課せられる物税」である云々ということが書いてあります。同時に、市町村にとって極めて有力な市町村税収入でもある。「市町村税の大宗をなすもの」、このような言葉が使ってあります。私は全くそのとおりだと思います。そういうことを考えますと、物税とは、所有者の個人的事情、例えば収益、収入等の要素で課税する人税とは異なって、これらの事情を考慮せずに、資産だけで税負担を考える税とされていると私は受けとめています。それで間違いございませんね。
  177. 津田正

    ○津田政府委員 固定資産税は委員のおっしゃるように物税でございまして、かつ現在の市町村におきます重要な財源でございます。
  178. 山下八洲夫

    山下(八)委員 今私は政府の考えは変わっていないという答弁をいただきましたので、そうしますと、固定資産税の課税において、資産所有者の収益の状況によって納税者の間に税負担で差を設けるのは固定資産税の性格に反すると思いますけれども、それは間違いございませんね。
  179. 津田正

    ○津田政府委員 今おっしゃられたことは、固定資産税の基本的性格でございます。ただし、政策的な配慮というものがやり得ると考えております。
  180. 山下八洲夫

    山下(八)委員 政策的配慮の点についてはちょっと保留しておきます。政策的な配慮があるということでございますけれども、今の考えも、政府の考えが変わっていないと私は確信しました。三島の旅客会社は、国鉄再建監理委員会が言いましたように、営業損益で赤字が生ずるという点で本州の旅客鉄道会社と異なっており、改正案で設けられている固定資産税での差の理由がこの赤字だからということになると、これは政府の言う固定資産税の性格に反すると思うわけですが、その辺いかがですか。
  181. 津田正

    ○津田政府委員 御提案しております法案におきまして、北海道、四国、九州の各旅客会社には本州の旅客会社以上の軽減措置を講じておるわけでございますが、この趣旨は、経営基盤がこれら三島の旅客会社が非常に厳しいということ、そしてかつ、この三島の旅客会社におきます鉄道事業の維持存続ということが、地域の発展あるいは地域交通の確保上必要というような政策的配慮によってやっておるものでございます。
  182. 山下八洲夫

    山下(八)委員 三島が厳しいといっても、三島は黒字なんです、あれがこうなってきますと。「昭和六十二年度以降五か年間の旅客鉄道会社経営見通し」というのがあるわけですが、北海道会社にしましても、租税公課を見ますと六十四年度からぐっと伸びていますし、東日本にいたしましてもあるいは東海、西日本にしましても、四国、九州にいたしましても伸びているわけですね。分割・民営にすれば黒字で出てきておるのですね。その辺から見ると、今の御答弁はおかしいのじゃないですか。
  183. 津田正

    ○津田政府委員 運輸省の試算におきまして経営が成り立つようになっておるわけでございますが、その前提としましては、御承知のとおり、長期債務を承継させない、あるいは経常安定基金を設けるというような国の措置が行われておるわけでございます。ただ、若干御説明を申し上げますと、物税でございますので、幾ら利益が出たから何割税金をまけるとか、あるいはどの程度赤字が出たからどの程度まけるということではなくて、経営基盤自体が苦しいということでございまして、経営努力によって赤字、黒字、それに応じて税の軽減措置をとる、そういう性格のものではなくて、今回の措置はあくまで物税という性格を守っております。
  184. 山下八洲夫

    山下(八)委員 確かに経営基盤が怪しい……(「怪しいのじゃない、弱いんだよ」と呼ぶ者あり)じゃ訂正します、経営基盤が弱いということで軽減している。そうしますと、幾ら政策的といいましても、私は物税の税の本質が本当に破壊するのではないかと思うわけです。確かに今御答弁がありましたとおり、それは三点ぐらいが理由になっていると思うわけです。その一つは、長期債務を継承させず基金を設けるなど、国で経営安定の特別の施策を講じていく。あるいはまた国土の均衡ある発展、地域住民の交通確保等関係地方自治体にいろいろな意義がある。あるいはまた、一定期間内に経営を軌道に乗せるための基盤の安定強化を図る必要もあるだろう、このようなことが理由になっていると思うわけです。  ただ現実に、今申し上げましたように、一つ目については、国で施策を講じていることは、直ちに地方税の特別措置を講ずる理由にはならないと思うわけですね。それは地方自治体の公益に合うかどうかで判断しないといけない問題だと思うわけです。二つ目の理由については、確かに地方自治体と関係があることは私は否定しません。公益を理由にして特別措置を講ずる理由にはなると思うわけです。しかし、同じ旅客鉄道会社であるのに、経営基盤が弱いといっても、三島会社の路線がある市町村の方が、どっちかといいますと本州会社の路線がある……(発言する者あり)ちょっと静かにしてください。
  185. 細田吉藏

    細田委員長 御静粛に願います。
  186. 山下八洲夫

    山下(八)委員 本州会社の路線がある会社よりもその公益性を高く認めなければならないのが本当だと私は思うわけですが、その辺が不明なわけですね。だから、公共性が高くなれば固定資産税の軽減措置で差を設ける理由にはならないと思うわけです。三島会社の地域の方が旅客会社がなくなることによる支障の度合いが大きいから、だから心配してそのようなことをやっていると私は思うわけです。これは分割・民営によって生まれる旅客会社の存立はその地域に任せることに今回の改革のねらいがあるから、このような特に三島会社についてその地域での応援が本州以上に確保された、私はそのように思っているわけです。その辺についてはいかがでしょうか。
  187. 津田正

    ○津田政府委員 先ほど申しましたように、長期債務の承継の問題あるいは経営安定の基盤、ここいらは、要するに全国的な観点からの基盤整備の援助というような点もあるかと思います。しかし一方、地域の足を確保するという意味では、ローカルな意味での公益性ということは十分考えていいのではないかと思います。もちろん先生御承知のとおり、現在でも固定資産税におきまして離島航空の確保のためにその軽減措置等を講じておるような状況でございます。
  188. 山下八洲夫

    山下(八)委員 ちょっと私は大蔵大臣にお尋ねしたいと思うわけですが、これは国税じゃないから関係ないとおっしゃらないでほしいわけです。やはり国税と地方税は表裏の関係にありますからちょっとお尋ねしたいと思うわけです。  近年、自民党の税調の方は大変参加希望者が多いようでございますし、また年末、そこでいろいろと適否を決定するための各界の要望書が何か電話帳と呼ばれているそうでございますが、人気があって、毎年どんどん厚みを増していると私も聞いています。また一方では、政府税調の方は残念ながら力を失いつつある、このようなお話も伺うわけですが、このような現象は、近年、国の財政難でかつてのように国が業界等に補助金を出すことができなくなったため、かわりに税の特別措置で税金をまけてもらおうとする業界と、それをバックアップする各省の攻撃の結果じゃないかな、私はこのような気がしてなりません。業界としては、補助金でもらうのと税をまけてもらうのは差がないわけでございまして、むしろ税金の方が、補助金と違って予算書などに掲載する必要もないですから、どちらかというとかえって都合がいいんじゃないか、そのように思います。税の特別措置が隠れた補助金と言われるゆえんはそこにあると私は思うわけです。そこで、このような形の税の補助金化は、本当に国の財政窮迫により増加をしているということはわかるわけですが、どんどんどんどんふえているということは大変な問題だと私は思うわけでございますが、その辺は大蔵大臣としてどのようにお考えでしょうか。
  189. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまのお尋ねにはいろいろな側面があるわけでございますけれども、まず原則的に申しまして、先ほどからお話があります政策的減税ということは、これは個々の場合にもあり得ることである。それは結果として財政の負担による助成ではないかとおっしゃれば、経済的効果はそういうことになろうと思いますが、ただその場合、税金を取ってそれを補助するということは、その間に徴税費の問題が入ってまいりますから、むしろそれよりは政策的な減税をした方がコストが安いという考え方はございますし、それから補助を受けるということになれば、それなりにいろいろな問題があるという観点は一つ確かにあると思うのでございます。いずれにしても、財政的な援助をそういう形で受けることになるという点では、そういう目的に確かに奉仕しておると思います。  ただそこで、そういうことは原則論として申せますけれども、政策的減税というものが、いわゆる租税特別措置法のようなものでございますが、余りたくさん積もってまいりますと、それは大変に税法そのものを混雑させますし、ある段階では、そういうものを整理して課税ベースを広くした方が結局税率が下げられるのではないかというような問題は確かにございますわけで、アメリカの場合も昨今そういうことをいたしたわけでございますし、今回我が国でも、所得税なり法人税なりの簡素化あるいは税率を下げるといたしますと、その反対面としていろいろなそういう特別の減免措置というものはなるべく整理をする、やはりある程度年月がたちますと、一遍きちんと整理をするということも要りようだということだろうと思います。
  190. 山下八洲夫

    山下(八)委員 整理をする、当然私はそのとおりだと思います。整理ではなくて、今回国鉄が分割・民営されますと、ますます煩雑に拡大をしていくわけですね。ですから、私はこの観点から見ましても大変な誤りだと思うわけですが、その辺は大蔵大臣、いかがでしょうか。
  191. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今の点は具体的な話でございますので、私は実は所管でございませんけれども、どういう感想を持っておるかとおっしゃれば、それは公社がいわゆる民間会社になるわけでございますので、基本的には民鉄と同じベースで考えるべきものである。つまり、納付金というものから固定資産税に変わっていくというのは、それは筋としては私はそうでなくちゃならぬと思いますが、ただその場合、激変緩和であるとか、あるいは非常に経営力に問題があるとかというところで経過的にそれを軽減するということは、これはいわゆる政策減税ということになるわけでございまして、運輸大臣と自治大臣が御相談になってやられること、法律をもって国会のお許しを得てやることは、それはそれなり意味があろうと私は思います。
  192. 山下八洲夫

    山下(八)委員 余り担当大臣でない大蔵大臣に申し上げるのは恐縮であるわけですが、大変いい答弁が返ってくるものですから、つい重ねてお尋ねしたくなるわけです。  確かに今政策減税、私は理解しないと言いません。だけれども、今度の国鉄の分割・民営の、例えば東日本にいたしましても東海会社にいたしましても、本州にあります新会社は二分の一であるわけですね。三島につきましては四分の一に激変緩和のために固定資産税を緩和をしている。私は、これが仮に分割・民営されたとしましても、西日本会社であれば西日本の最大の鉄道としての基幹産業であると思うわけです。北海道は北海道で全く同じだと思うわけです。そういうことを考えていきますと、今回の国鉄の分割・民営につきましてはすべて四分の一——本州の方の新会社につきましては二分の一。例えばNTTが確かに激変緩和されました。あれは償却資産だけが緩和をされているわけですね。政策減税でも行き過ぎではないかと思うのですね。大蔵大臣、もう一度そこの感想をお聞かせください。
  193. 葉梨信行

    ○葉梨国務大臣 各旅客会社の固定資産に対しまして特例措置をNTTと比べて厚く講じているのはどういうわけか、こういう御質問だと思います。  旅客鉄道会社に対します措置は、土地及び家屋をも軽減対象としている点で、基幹的な電気通信回線設備のみを対象といたしましたNTTに対する措置とは異なったものとなっておりますが、このように、国鉄に関しまして経過的に負担軽減措置の適用対象範囲をNTTよりも緩和することとしておりますのは、第一には、電気通信サービスの一層の質的充実と低廉化を目的とする電電公社の民営化と、破綻しております経営の再建と健全化を図ることを主たる目的としております国鉄改革とは、いずれも同じ民営化といっても趣旨が異なっておるわけでございます。第二には、国鉄再建監理委員会意見」においても、分割・民営化により私鉄並みとなることは前提としておりますが、経過措置によって、当分の間、現在と同程度の負担とすることを求めておるわけでございます。第三には、電気通信回線設備がその資産の大宗をなすNTTと異なりまして、国鉄におきましては、線路設備、車両等の償却資産額も膨大ではありますけれども、NTTよりもはるかに大量の土地及び家屋を所有しておりますので、それらを除外した場合には、昭和六十四年度における税負担の増加率が多くなる、再建監理委員会意見」の趣旨に反することになる、こういうことからNTTとは異なった措置をとったということでございます。  なお、この経過的な負担軽減措置の対象となりますものは、六十二年三月三十一日現在で固定資産税が非課税とされる固定資産に限られるわけでございまして、旅客会社が所有する固定資産のすべてがその対象となるわけではない、来年の三月三十一日以降に加えられる固定資産につきましては一般の民鉄と同じような措置がとられる、こういうことでございます。
  194. 山下八洲夫

    山下(八)委員 一般の民鉄と同じような措置がとられる、そうおっしゃるからまたここで質問が出てくるわけですが、一般の民鉄の措置以上に随分されておるのですよ、今回の措置は。
  195. 葉梨信行

    ○葉梨国務大臣 今まで国鉄が所有しておりました資産についての各般の軽減措置、内地の三民鉄会社、それから三島民鉄会社にそれぞれの経営内容に応じた軽減措置がとられているわけでございます。そのほか新しく新会社が発足しましてから加えられる固定資産については民鉄と同じ措置で固定資産税が課せられていく、こういうことでございます。
  196. 山下八洲夫

    山下(八)委員 一般の民鉄は固定資産は軽減されていないのです。今度は三島につきましては四分の一に軽減されておるのです。本州の会社については二分の一軽減されておるのです。民鉄は軽減されていないのです。
  197. 津田正

    ○津田政府委員 御提案しております税法のこのような軽減措置の考え方でございますが、これは納付金から固定資産税に移行する、それで民営の鉄道会社になる、そうすると民営の鉄道並みにする、こういうような措置一つ。それから、従来納付金が二分の一であったというものを七十二年までですか、それまで激変緩和のための、従来の納付金の率二分の一にしておく、こういうような措置。それから、一番最初御質問ございました三島におきますさらにそれの二分の一、合わせて四分の一の軽減措置、このような措置が組み合わさっておるわけでございます。
  198. 山下八洲夫

    山下(八)委員 いや、なぜこのような質問をするかといいますと、一つ運輸大臣、それこそ分割して民営化すればいろいろな、一地方税だけでもこのような膨大な措置が行われているわけですよ。そうしないと特に三島は成り立たない。だから安定基金まで予定をされる。いろいろな手を尽くされるわけですね。特に本州より九州あるいは四国の方が経営が困難だからこのような措置がなされた。本当に将来、もし分割・民営化された場合経営が成り立つと判断されるでしょうか。そして十年後——ここは後から質問します。
  199. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 先ほどから繰り返し御質問がありましたが、私どもは新たにスタートいたします各旅客会社につき、今御質問のありましたような税制上の措置を自治省にお願いをし、講じていただきました。そして、そうしたものをも計算の中に入れながら各旅客会社の収支を計算をし、三島会社につきましては安定基金を設けることによって各旅客会社の収支がバランスをとれるようにしたわけでありまして、経営は安定し得ると考えております。
  200. 山下八洲夫

    山下(八)委員 自治大臣、今から質問します。一応十年たちましたらこれは激変緩和を解くのですか。
  201. 葉梨信行

    ○葉梨国務大臣 ただいまの予定では、十年間の激変緩和措置をとって、十年たちましたら一般の民鉄と同じように固定資産税の納付を求める、こういうことでございます。  それから、先ほど申し上げました来年の三月三十一日以降に新しくつけ加わる固定資産についての固定資産税の納付につきまして、東日本、西日本、それから東海会社については先ほど申し上げたとおりでございまして、恐縮でございましたが訂正をいたしますが、三島の鉄道会社に対する固定資産税は二分の一軽課でございます。全く課税するということじゃなく半分だけ課税する、こういうことでございます、新しい固定資産税について。
  202. 山下八洲夫

    山下(八)委員 今の考えでは十年後ということでございますが、それを私はきちっと守っていただきたいと思うわけですが、それであっても実質的には十年であるわけですね。六十二年度と六十三年度につきましては現行どおり納付金制度で行う。なぜ納付金制度で行うのですか。同時に、納付金制度はこの二年間をきちっと守られるのかどうか、その辺を含めてお願いします。
  203. 津田正

    ○津田政府委員 御提案の法案の内容におきましては、六十二年度と六十三年度は納付金措置処理いたしたい、かように考えております。これの考え方は、六十二年度、例えば固定資産税でございますと、これは六十二年一月一日が賦課期日になります。これはまだ分割されておりませんので固定資産税は取れないということになります。それから、六十三年度分を固定資産税で考えますと、六十三年の一月一日が賦課期日という格好になるわけでございます。そういたしますと、膨大な資産等を抱えております国鉄資産、登記のされてない部分もございますし、あるいは地籍等の確認というような作業は非常に膨大な手間がかかるわけでございます。市町村の立場から申しましても六十三年度は固定資産の評価がえの作業を抱えておりますので、そういうような作業の点からいっても難しいのではないかというようなこと。  それから反面の話でございますが、納付金の場合におきましては、これは前年の三月三十一日が固定資産の評価に見合うような、賦課期日に見合うような格好になっております。そういたしますと、六十三年度の納付金というのは、六十一年度末、六十二年三月三十一日、国鉄最後の日と予想されておりますこの時点がいわば抽象的な租税債務が発生しておる、こういう関係から申しますと、清算事業団が一括六十三年度、固定資産税ではなくて納付金制度によって処理するということが適切ではないか、かように考えまして、作業的なこと、また法律的な問題からもこのような内容にしておるわけでございます。
  204. 山下八洲夫

    山下(八)委員 固定資産税においては、納税義務者である所有者のほかその固定資産の価額と必要事項を固定資産課税台帳に登録をしないといけないということになっているわけです。けれども実際、きのうですか資料が出されたようでございますが、何か国鉄用地というのは未登記の用地三百三十ヘクタール、二万筆、そして戦後の混乱期から住民が占拠している国鉄用地も六千四百七十件、四十五ヘクタール、こんなにあるということで、これをきちっとやるためには十年くらいかかるのではないか、このようなことも言われているわけですが、その辺を整理して、逆説になりますけれども、今度は六十四年度からきちっと税として確保できますか。
  205. 津田正

    ○津田政府委員 財産の整理につきましては、新しい法人の方々にも最大限の御努力をいただかなければならない、御協力をいただかなければならない、かように考えておりますが、市町村また自治省自体も、配分資産の関係がございますので、最大限努力して整理してまいりたい、かように考えております。
  206. 山下八洲夫

    山下(八)委員 最大限努力といいますけれども、これだけの膨大なものを二年間で整理できるというふうには私は思わないわけですが、そうしますと、本当にまた大きな問題を、汚点を残すのではないか、そのように思います。  本当は地方税の問題、まださわり程度しか質問をしていないわけでございます。もっともっと質問したいことがたくさんあるわけですが、もう時間がなくて私は大変悲しく思っております。これは大臣も、六日の夜にそれこそ提案理由説明をされました。そして最後に、何とぞ慎重審議の上とおっしゃいました。私は税の問題にしましてもまだほんのちょっとしかいたしておりません、この地方税の部分だけでも。まだまだたくさんしたいわけです。そういう意味で、これからももっともっと慎重審議を尽くす機会をつくっていただきたいと思います。特に委員長にもそのことを要望したいと思います。そういう意味で、ぜひ最後に運輸大臣と、そしてそのことにつきまして総理の御見解をお聞きしたいと思います。
  207. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 確かに「慎重御審議の上」と申しましたが、同時に速やかに御可決あらんことをともお願いをいたしました。
  208. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 運輸大臣と同じです。
  209. 山下八洲夫

    山下(八)委員 ありがとうございました。
  210. 細田吉藏

    細田委員長 これにて山下君の質疑は終了いたしました。  次回は、来る十三日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時十三分散会