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1986-11-27 第107回国会 衆議院 内閣委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十一月二十七日(木曜日)     午前九時三十分開議  出席委員    委員長 石川 要三君    理事 北口  博君 理事 竹中 修一君    理事 戸塚 進也君 理事 船田  元君    理事 宮下 創平君 理事 上原 康助君    理事 鈴切 康雄君 理事 和田 一仁君       有馬 元治君    内海 英男君       小川  元君    大村 襄治君       木村 義雄君    河野 洋平君       鴻池 祥肇君    武部  勤君       月原 茂皓君    前田 武志君       宮里 松正君    谷津 義男君       大原  亨君    角屋堅次郎君       佐藤 敬治君    田口 健二君       斉藤  節君    川端 達夫君       児玉 健次君    柴田 睦夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総務庁長官) 玉置 和郎君  出席政府委員         総務政務次官  近岡理一郎君         総務庁行政管理         局長      佐々木晴夫君         総務庁行政監察         局長      山本 貞雄君         総務庁北方対策         本部審議官   舩津 好明君         北海道開発庁計         画監理官    大串 国弘君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         厚生大臣官房総         務審議官    長尾 立子君         厚生大臣官房審         議官      佐々木喜之君         厚生省保健医療         局老人保健部長 黒木 武弘君         厚生省社会局長 小林 功典君         厚生省児童家庭         局長      坂本 龍彦君         厚生省保険局長 下村  健君         社会保険庁年金         保険部長    岸本 正裕君         自治大臣官房審         議官      森  繁一君  委員外出席者         経済企画庁総合         計画局審議官  蜂巣 賢一君         大蔵省主計局主         計企画官    内野 正昭君         内閣委員会調査         室長      石川 健一君     ───────────── 委員の異動 十一月二十七日  辞任         補欠選任   佐藤 文生君     木村 義雄君   住  栄作君     小川  元君   野坂 浩賢君     佐藤 敬治君 同日  辞任         補欠選任   小川  元君     住  栄作君   木村 義雄君     佐藤 文生君   佐藤 敬治君     野坂 浩賢君     ───────────── 十一月二十五日  人事院勧告早期完全実施に関する請願武田一夫紹介)(第一九五一号)  国家機密法制定反対に関する請願安藤巌紹介)(第一九五二号)  同(柴田睦夫紹介)(第一九五三号)  同(寺前巖紹介)(第一九五四号)  同(不破哲三紹介)(第一九五五号)  同(山原健二郎紹介)(第一九五六号)  同(浦井洋紹介)(第二一四二号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第二一四三号)  同(東中光雄紹介)(第二一四四号)  スパイ防止法制定に関する請願愛野興一郎紹介)(第一九五七号)  同(大坪健一郎紹介)(第一九五八号)  同(木村守男紹介)(第一九五九号)  同(畑英次郎紹介)(第一九六〇号)  同外七十五件(粟山明君紹介)(第一九六一号)  同(山下徳夫紹介)(第一九六二号)  同(大島理森紹介)(第二一五三号)  同(片岡清一紹介)(第二一五四号)  同外一件(佐藤敬夫紹介)(第二一五五号)  同(齋藤邦吉紹介)(第二一五六号)  同(自見庄三郎君紹介)(第二一五七号)  同(竹内黎一君紹介)(第二一五八号)  同(竹中修一紹介)(第二一五九号)  同(虎島和夫紹介)(第二一六〇号)  同外七件(中村靖紹介)(第二一六一号)  同(二階俊博君紹介)(第二一六二号)  同(野田毅紹介)(第二一六三号)  同(東力君紹介)(第二一六四号)  同(三塚博紹介)(第二一六五号)  同(森喜朗紹介)(第二一六六号)  旧軍人恩給欠格者に対する特別法制定に関する請願大橋敏雄紹介)(第一九六三号)  旧台湾出身日本軍人軍属補償に関する請願大橋敏雄紹介)(第一九六四号)  同(亀井静香紹介)(第二一四五号)  同(戸塚進也紹介)(第二一四六号)  同外二件(永末英一紹介)(第二一四七号)  旧台湾出身日本軍人軍属補償に関する請願伊藤茂紹介)(第一九六五号)  同(奥田敬和紹介)(第一九六六号)  同(亀岡高夫君紹介)(第一九六七号)  同(愛野興一郎紹介)(第二一四八号)  同(梶山静六紹介)(第二一四九号)  同(宮下創平紹介)(第二一五〇号)  恩給法等国家補償堅持に関する請願外一件(伊藤宗一郎紹介)(第二一一五号)  同外一件(石破茂紹介)(第二一一六号)  同(今枝敬雄紹介)(第二一一七号)  同外一件(宇野宗佑紹介)(第二一一八号)  同外一件(小渡三郎紹介)(第二一一九号)  同(大石千八紹介)(第二一二〇号)  同(大野功統紹介)(第二一二一号)  同外一件(大村襄治紹介)(第二一二二号)  同(奥野誠亮紹介)(第二一二三号)  同外一件(川崎二郎紹介)(第二一二四号)  同外一件(住栄作紹介)(第二一二五号)  同外一件(関谷勝嗣君紹介)(第二一二六号)  同(谷垣禎一紹介)(第二一二七号)  同(津島雄二紹介)(第二一二八号)  同(畑英次郎紹介)(第二一二九号)  同外一件(吹田愰君紹介)(第二一三〇号)  同(藤本孝雄紹介)(第二一三一号)  同外一件(町村信孝紹介)(第二一三二号)  同外一件(武藤嘉文紹介)(第二一三三号)  同外一件(森喜朗紹介)(第二一三四号)  同外一件(山崎拓紹介)(第二一三五号)  国家秘密法案に関する請願岩垂寿喜男紹介)(第二一三六号)  同(江田五月紹介)(第二一三七号)  同(田川誠一紹介)(第二一三八号)  同(竹入義勝君紹介)(第二一三九号)  同(中村巖紹介)(第二一四〇号)  同(山花貞夫紹介)(第二一四一号)  旧台湾人日本軍人軍属補償に関する請願田川誠一紹介)(第二一五一号)  同(塚原俊平紹介)(第二一五二号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  地方公共団体執行機関が国の機関として行う事務整理及び合理化に関する法律案内閣提出第一四号)  臨時行政改革推進審議会設置法案内閣提出第一八号)      ────◇─────
  2. 石川要三

    石川委員長 これより会議を開きます。  内閣提出地方公共団体執行機関が国の機関として行う事務整理及び合理化に関する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柴田睦夫君。
  3. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 時間がありませんので、直ちに法案問題点についてお尋ねいたします。  本法案には、機関委任事務団体委任事務にするものが十七法律、三十三事項あります。我々は団体委任事務化それ自体について反対するものではありませんが、このうち五つの法律は、政府・自民党がさき通常国会国民の強い反対の声を押し切って成立させました国庫負担率削減一括法によって国庫負担率を大幅に削減された福祉関係法律であります。  昨年の十二月に出されました補助金問題検討会報告、これが国庫負担率削減一括法の論拠となっておりますが、この報告の中では、社会保障の分野、特に老人福祉児童福祉身体障害者福祉精神薄弱者福祉補助率のあり方について、「地方公共団体自主性に基づいた行政に改められるので、国の負担割合は二分の一とすることが適当である。」と述べております。ここで指摘しております「地方公共団体自主性に基づいた行政に改められる」ということは、本法案身障者福祉法老人福祉法児童福祉法などの入所措置など一部事務機関委任事務から団体委任事務に改められるということを指しているのかどうか、まずお伺いいたします。
  4. 佐々木晴夫

    佐々木(晴)政府委員 御指摘のとおり、社会福祉関係の諸措置につきまして補助金検討会でもっていろいろと御論議をいただいたわけであります。行革審答申にありましても、この補助金検討会検討結果も踏まえつつ、この機関委任事務団体事務化について検討するということが指摘されておりまして、本法律は、この福祉関係につきまして諸般の機関委任事務から団体事務化への手当てをいたしておりますけれども、その検討結果を踏まえたものであります。  ただ、念のために申し上げますと、補助金検討会では、この補助率の問題につきましては、事務事業性格、それから地方利益、それからもう一つ地方財政事情、こうしたものを考えながら補助率について検討するということを示しておるわけでありまして、その一つ部分には、確かに事務事業見直しということは今のこの法律趣旨と合致するわけでありますけれども事務性格補助率とがすぐに結びつくというわけではないわけであります。この法律は、まさしく事務事業性格から機関委任事務団体事務化する、こういう趣旨で、この社会福祉関係法律につきましても改正を御提案申し上げている次第でございます。
  5. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 結局、「地方公共団体自主性に基づいた行政に改められるので、国の負担割合は二分の一とすることが適当である。」こう各論にちゃんと書いてあるわけです。それから、福祉施策について一部の意見があったということもありますけれども、ともかく各論ではちゃんと「二分の一とすることが適当である。」ということを書いてあるわけです。要するに、機関委任事務団体委任事務になるから二分の一に下げる、こういうことを言っているんじゃないですか。
  6. 佐々木晴夫

    佐々木(晴)政府委員 今の補助金検討会報告指摘をしております点は、この補助率見直しにつきましては三要素がある、一つは国の当該行政への関与度合い関心の強さ、それから地方住民に与える利益程度、三番目に国、地方財政状況等の諸要素を総合的に勘案の上、決定さるべきものである、このようなことを述べておられるわけであります。  今回のこの法律が御提案申し上げている趣旨は、まさしくその事務事業性格という面から、確かに機関委任事務地方自主性にゆだねるために団体事務化をするということを御提案申し上げているわけでありますけれども、これはあくまでも事務性格に着目したいわば整理としまして、地方自主性を尊重するために、地方自主性の余地を拡大するために機関委任事務団体事務にする、こういうことを申し上げているわけでありまして、先ほど申しました補助金検討会の結論、この三要素のうちの確かに一つ部分には該当するかもしれませんけれども、それとすぐに補助率見直しとが結びつくわけではない、こういうことでありまして、今回はその事務整理ということでもって御提案申し上げている次第でございます。
  7. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 では伺いますが、この法案さき国庫負担率削減一括法はお互いに関係があるわけであります。国と地方事務関係、特にその事務権限と国と地方財政負担割合についてどう考えておられますか。
  8. 佐々木晴夫

    佐々木(晴)政府委員 これは国、地方財政関係を定めます基本法であります地方財政法の第九条におきまして、地方公共団体で行われる事務並びに地方公共団体がいわば国の機関として執行する事務、そのいずれをとりましても原則地方公共団体がこれを支弁するということに仕分けがされておるわけであります。ただし、第十条でもって、国が進んでその財源負担すべき事項ということで幾つかの項目が列挙されておるわけでありまして、これがまさしく今の補助金補助率ということと関係をしてまいるわけであります。
  9. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 しかし、結局は補助金問題検討会報告に基づいて削減したわけでしょう。各論の方ではちゃんとそういうふうに言っているわけです。この点どうですか。
  10. 佐々木晴夫

    佐々木(晴)政府委員 確かに先般の補助金特例法によりまして補助率の一部削減が行われたわけであります。ただし、それは何回もお答え申し上げておりますように、物の考え方としまして、補助金問題関係閣僚会議もとで開催されました補助金問題検討会認識によりまして、補助率基本的には、先ほど申しましたように国の当該行政への関与度合い関心の強さ、地方住民に与える利益程度、国、地方財政状況等の諸要素を総合的に勘案の上、決定されるものと考えられるということを述べておられるわけでありますけれども、そういう認識もとで、これは補助率の問題として、そういうものを総合的に勘案して、今おっしゃるような補助率削減措置を講じたものである。  今回出しておりますこの機関委任事務整理合理化法は、事務事業性格から、地方自主性を拡大するためにこの機関委任事務団体委任事務に改める、こういう趣旨のものである。この相互の関係では、若干は部分的に関係するところがあるかもしれないけれども、いわばそういう認識が一致したということであって、決して補助率のカットがあったからその事務性格を見直すというたぐいの話ではないということであります。
  11. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 部分的な関係というふうに認められましたけれども、結局今までのこの流れ全体から見ましても、検討会報告に書いてあるこの問題がやはり基本だというふうに見るわけであります。  では、団体委任事務にした場合は国庫負担を減らさなければならない、そういう制度現行法上あるわけですか。
  12. 佐々木晴夫

    佐々木(晴)政府委員 それは全くないわけであります。別に団体委任事務だから補助率が少なくなるとか、機関委任事務だから多くなるということは全くありません。ただ、先ほど申しましたように、今の事務性格、それからもう一つ地方住民に与える利益程度、それから国、地方財政状況、こうしたものを総合的に勘案して補助率をそれぞれ定めておる、こういうことであります。
  13. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 地方財政法の国の負担補助というのは、事務事業が国の利害に関係があるかどうかという観点から行われるという趣旨であります。私はこの立場だけというのは問題があると考えておりますけれども現行法においてはそうなっているわけであります。今認められましたように、機関委任事務だから補助率が高い、団体委任事務だから補助率国庫負担率が低いということではないわけであります。補助率削減団体委任事務化というのは全く別個の問題であります。この補助金問題検討会報告が土台になっているわけですけれども団体委任事務化理由とするというのはこじつけと言わなければならないと思うわけであります。その点はどうでしょうか。
  14. 佐々木晴夫

    佐々木(晴)政府委員 何回も御答弁を申し上げておりますけれども、今度の補助率見直しは、やはり基本的には国の財政状況、こうしたことが非常に大きく影響したものと承知をいたしております。要素としましては先ほど申したような三つの要素、こうしたものを勘案しておる。そのうちで、いわば事務事業性格といいますか、あるいは地方住民に与える利益程度、こうしたものにつきまして、本法律で御提案申し上げております機関委任事務団体委任事務関係といいますか、機関委任事務団体委任事務に改めるということと若干の関係はないとは言えませんけれども、今の補助率の問題とこの法律団体事務化とは事柄としてはおよそ別個のものである、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  15. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 機関委任事務団体委任事務化によりまして、地方自治体裁量権は広がることになります。したがって、地方自治体責任が相対的に重くなるわけであります。しかし、団体委任事務化とあわせて国庫負担率削減する、これは法案提出経過検討経過からそう言えるわけでありますが、こういうことになりますと、地方自治体責任を果たす保障を奪っておいて責任だけを自治体に押しつけるということになるのではありませんか。
  16. 佐々木晴夫

    佐々木(晴)政府委員 おっしゃるとおり、この法律機関委任事務整理し、中にはその廃止、それから団体事務化をしていく、それからまた権限市町村により拡大をしていくという趣旨は、地方自主性自律性を拡大し、地方に十分な自治の基盤を充実していく、こういうことを趣旨とするものであります。  一方、補助率の問題につきましては、さき国会で御論議がありましたように、これはまさしく国、地方財政状況その他から発した特殊な要因であります。三年間でこれを見直すということになっておるわけであります。  ところで、本法では機関委任事務団体事務化いたしますけれども、これは恒久的な措置としてこれを行うわけであります。両者それぞれのいわば理念といいますか目的を持っておる、このように御理解をいただきたいと存じます。
  17. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 どうも問題がありますが、憲法二十五条の第二項ですが、「国は、すべての生活部面について、社会福祉社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と述べておりまして、国民に対する社会福祉責任を明確にしているわけであります。この憲法精神に立つならば、国の財政負担削減は許されるべきものではないと思うわけでありますが、この点について見解を伺います。
  18. 小林功典

    小林(功)政府委員 憲法規定は先生ただいまおっしゃったとおりでございますが、昭和六十一年から三年間の暫定措置としてとっておりますこの補助金引き下げにつきましては、単に国と地方公共団体負担区分の変更でありまして、国民に対する福祉サービスの水準に直接影響を及ぼすものではないということが一つございます。  また、地方公共団体負担増につきましては地方財政計画で必要な対応が行われておりますので、今回の措置は先ほどおっしゃった国の責任を軽減させるものではなくて、憲法二十五条二項に違反するものでもないと考えております。
  19. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 まさに国の負担を減らして自治体にやらせるということで、自治体に対する押しつけであるわけであります。結局そういう考え方というのは実態を無視したものであると言わなければならないと思うわけであります。  地方交付税財源は、法人税所得税、酒税の国税三税の三二%が充てられております。これを一定の計算のもとに全国の交付団体に分配するのでありまして、基準財政需要額の算定に幾ら入れましても、国税三税の三二%の枠が変わらない限り、自治体財政はふえない制度になっているわけであります。もっと単純明瞭な事例は、不交付団体というのがあって、不交付団体の場合には交付税が全く交付されないわけですから、削減された分は全部自治体負担となるわけでありますが、この点はどうでしょうか。
  20. 佐々木晴夫

    佐々木(晴)政府委員 地方交付税の細部の問題につきましては、私どもは所管ではございませんものですから今お答えはできかねるわけでありますけれども、例えば交付税あるいはその他のもろもろの経費によりまして地方財政上もそれ相応の国の責任、役割を果たしておる、このように認識をいたしております。
  21. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 結局、財源の問題からいえば、自治体財源を削られた上に責任だけを押しつけられることになるわけであります。それは国が責任自治体に転嫁するということであるわけです。  国庫負担率削減一括法ですが、これは三年の時限立法でありまして、三年後に負担率検討するという建前になっておりますから、今の負担率の十分の五からまたもとの十分の八に戻す、そういう検討可能性も含まれていると思うわけであります。そうなった場合に、これを団体委任事務化するから負担率を減らすという考え方があるわけですけれどももとに戻す場合には事務権限もまた改めなければならない、そういうことをしなければ理屈が合わなくなると思うのですが、この点についてはどう考えておられますか。     〔委員長退席船田委員長代理着席
  22. 内野正昭

    内野説明員 お答えいたします。  昭和六十一年度の地方財政対策について概要を申し上げたいと思いますが、六十一年度におきましては、補助率見直しによる影響等を織り込んで約一兆一千七百億円という地方財源不足が見込まれたわけでございますが、この財源不足額に対しましては、建設地方債を活用するとともに、国、地方たばこ消費税の引き上げをお願いいたしまして、国の増収見込み分につきましてはその全額を地方交付税に特例加算することによりまして補てんいたしまして、地方財政運営支障が生じないよう措置することとしております。  昭和六十二年度以降におきましても、地方財政対策の中で所要の措置を講じ、地方財政運営支障を生じないように措置する予定にしております。
  23. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 答えはなかったのですけれども、結局一体のものとして見なくてはならないし、そうなれば今のような矛盾が出てくるということになるわけであります。  そこで、三年後に国庫負担率の再検討をする際に、事務団体委任となったことを理由に、国庫負担率削減固定化ないしは国庫負担率をさらに削減するのではないかという心配を私は持っているわけですけれども事務団体委任化理由国庫負担率削減固定化するものではない、また新たな削減措置はとらないということは約束できますか。
  24. 内野正昭

    内野説明員 お答えいたします。  昭和六十四年度以降、すなわち経過措置の三年の期間が過ぎた後の補助率の取り扱いにつきましては、今後の諸情勢の推移を勘案いたしまして、その時点におきまして関係省庁とも協議の上、予算編成過程において適切に対処してまいる考えでおります。
  25. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 適切な対処というのが、現状の中でいろいろ言いましたような理由を踏まえて絶対に十分の五を固定化してはならない、ましてや削減などはしてはならないということを強く要求しておきます。  次に、児童福祉法の第二十四条の改正について伺いますが、改正案の第二十四条で、「市町村は、政令で定める基準に従い条例で定めるところにより、」「保育に欠けるところがあると認めるときは、」「保育所に入所させて保育する措置を採らなければならない。」こうあります。現行法は、保育に欠ける児童入所措置しなければならないと規定しておりまして、市町村長入所措置義務が明確でありますが、改正案はこの点については同じ趣旨であるというように考えてよろしいかお伺いいたします。
  26. 坂本龍彦

    坂本政府委員 今お尋ねの児童福祉法二十四条の改正につきましては、市町村において条例を定めるということは、入所措置を行う場合には条例で定めるところによって行わなければならないというものでございまして、条例を制定したから入所措置を行う責務が生ずるという趣旨ではございません。現行法趣旨と変わっておりません。
  27. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そうしますと、条例の問題ですが、この条例自治体事情からつくられなかったという場合であっても、保育に欠ける児童がいるときは、現行法市町村長に対する義務と同じ意味で今度は市町村にその義務がある、こう理解してよろしいですか。
  28. 坂本龍彦

    坂本政府委員 保育行政につきましては、既に市町村で十分定着しておりますので、実際に条例を定める必要がありながら定めないということは私どもとしてはないと考えておるわけでございますが、万一仮にそのような事態が生じた場合でありますと、児童福祉法規定に違反する、形式的にそういう問題が出てまいりますので、条例を制定して入所措置を行うように国としては強く指導するということになろうかと思います。これはあくまでも万一仮定の場合でございます。
  29. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 結局やるということですね。  それから、保育所入所措置について、厚生省は政令でその基準を定めるとしております。地方自治体自主性を尊重するという立場からするならば、政令を設けることは地方自治体自主性を阻害するということにならないか、こういう危惧がありますが、この点はいかがですか。
  30. 坂本龍彦

    坂本政府委員 まず基本的には、児童福祉法におきまして、親の就労あるいは病気等によって保育に欠ける児童がある場合に、それを保育所に入れて保育をするという基本的な条件があるわけでございます。その法律上の「保育に欠ける」という文言につきましては、それだけでは具体的な内容についてかなり解釈の幅のようなものが出てまいります。そこで、政令で基本的な要件を定めることにいたしまして、この「保育に欠ける」という概念を明らかにした上で、さらに個々の市町村の実情も十分反映できるように条例で定めるという仕組みになっておるわけでございますので、あくまでも法律上の基本的要件を明らかにするという意味において政令を定めるものであって、市町村の独自性を否定するというものではございません。
  31. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 では伺いますが、現行の機関委任事務もとでは通達によって入所措置基準が出されております。それと比較して、団体委任事務もとで政令による入所措置基準がつくられるわけでありますが、この二つを比較した場合に、一体自治体自主性がどのように強められるのか、具体的に比較して説明していただきたいと思います。
  32. 坂本龍彦

    坂本政府委員 現在は機関委任事務となっておりますので、国が保育所への入所措置基準につきまして通達をもって非常に細かいところまで決めておるわけでございます。これが団体委任事務になりました場合には、政令で定める基本的要件の範囲内で、地域の実情に即して市町村がみずから条例で入所対象者の具体的要件を定めることになるわけでございます。大体において全国を通じて基本的要件に合致するものが大部分であろうかと思いますが、それぞれの地方の実情によっては特色が出てくるというふうに考えられるわけでございます。
  33. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 今でも母親の就労時間等の具体的運用方針を持てと通達で厚生省が自治体を指導しているわけで、今の説明で、自治体自主性を伸ばすということから見るとどれだけ自主性が伸びるのか非常に問題があるというふうに思うわけであります。  保育所の入所基準は、国民の権利義務にかかわる重要問題であります。それを「政令で定める」としているわけですが、その内容について一切明らかにしておりません。政令は、手続的には法律が成立した後に閣議決定するのは当然でありますが、その案を国会論議することも何ら問題はありませんし、事の重大性からいって政令案を国会に明らかにして審議すべきであるというように私は思うわけであります。厚生省は政令案を明らかにすべきだと思いますが、この点はどうですか。
  34. 坂本龍彦

    坂本政府委員 ただいまおっしゃいましたように、政令自体は法律国会の御審議を終わって成立してから決定、公布すべきものでありますので、そういう意味において現在政令案と言える具体的な内容の固まったものまでまだ私たちは持っておるわけでございません。ただ、この問題につきましては、事務的に法律が成立した後に具体的にどういう政令をつくるかという点についての検討はもちろん行っておるわけでございます。  現在、基本的に私どもがこういう内容にしてはどうかという、まだあくまでも本当の素案というようなものの内容でございますが、法律に定める親の就労あるいは疾病等による保育に欠ける児童というのを基本にいたしまして、例えば日中両親が就労している場合であるとか、あるいは片方の親が死亡によっていないとか、あるいは母親が出産の前後である、あるいは病気であってかなり子供の面倒を見られない状況、さらに母親が同居の親族を常に看護している場合というような典型的な例を含めまして、さらに保護者がこれらと同一視し得るような状態にある場合について地方の実情に即してお決めいただけるように、そういう政令をつくるべく検討しているというのが現在の段階でございます。
  35. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 ちょっと時間がないので細かく聞けませんが、では結論的にいいますと、現行の入所措置水準を狭めるということはない、こう言えますか。
  36. 坂本龍彦

    坂本政府委員 今度の団体委任事務化によりまして福祉の水準が低下するというようなことはないように私どもは考えておりまして、現在の入所措置基準というものについて実質的にこれを下げるようなことは全く考えておりません。
  37. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 次は保育料の問題であります。  保育料は国庫負担削減などによって年々大幅に高くなっております。統一労組懇の自治体部会が全国二十七都道府県の二百一市町村を対象に八四年の十二月から八五年の三月までの期間について調べたところ、その期間に保育料を値上げした自治体は八八・二%に上っておりまして、毎年のように値上げがされております。四万円台が最高で六二・五%、五万円を超える自治体も一四・七%に達しております。  千葉県の場合を見てみますと、八六年度、千葉市の保育料の最高額は四万八千百九十円、船橋市が四万九千九百八十円、それから習志野市は五万八百二十円、県内で一番高い館山市では五万四千三百二十円、五万円を超える自治体が七つあります。そういう状況であります。こういう状態でありますから、保育料が高いために保育所に預けたくても預けられないという状況が生まれてくるわけであります。現に生まれているわけです。  総務庁が八一年に行った保育所の調査によっても、入所が決まったのに辞退した理由の中で、保育料が高い、それが理由だというのが最も多く、二〇・九%を占めております。保育所の定員割れが今深刻な問題になっておりますが、その一つの大きな要因が高い保育料にあるということはもう否定できない事実であります。国庫負担が引き続いて削減される、そういう削減措置がとられることによって自治体住民負担が重くなって、ますます保育料の値上げが懸念されるわけでありますが、厚生省はどう考えておられますか。
  38. 坂本龍彦

    坂本政府委員 保育料につきましては、毎年、例えばそこで働く職員の方の賃金の改定あるいは諸物価の変動等に応じまして実際に保育に要する費用が変わってまいりますので、それを勘案しながら国としても保育料の基準というものを毎年改定しているのが実情でございます。ただその際に、実際に保育料を負担される方の負担能力というものも十分に勘案いたしまして、無理のないような保育料となるように考慮しながらその基準を決めているところでございます。実際に負担される方のこの負担感というものはそれぞれいろいろなお感じ方があると思いますが、私どもとしては無理のない御負担をいただけるように常に十分に配慮しているわけでございます。  さらに、定員割れの問題でございますが、これは最近におきまして児童の出生数が年々減ってまいりまして、一方において、かつては保育所が不足していたために各地方団体においてこの増設に力を入れた結果、保育所の定員については相当増加をしたわけでありますが、その増加の傾向と、一方において最近における出生数の低下、こういう両方の事態から、現在の段階では実際に入所している児童が定員を下回るという状況が出てきているものと理解をしておるわけでございます。
  39. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 それは総務庁自身の調査でも、今言いましたように保育料が高いという理由で入れないという人が非常に多いということから考えてみても、単に人口の減少、そうしたもので解消するということは間違っているということですから、この保育料を、保育所を利用できるようなものにしなければならない、そのために努力すべきであるということを要求いたします。  入所率が高いところを見てみますと、保育時間が長いところ、ゼロ歳児の低月齢児から保育しているところ、それから保育料の安いところというのが入所率が高いわけであります。  保育時間から見れば、四時までが七六・九%ですが、七時までというのが八六・五%となっておりますし、受け入れ月例別の問題では、産休明けが九二・〇%、一歳以降になると今度七九・六%になる。それから保育料の問題。二万円未満九三・五%、三・五万円以上は七九・六%と減る。こういう調査結果が統一労組懇の自治体部会の調査で出ているわけであります。  結局、国庫負担削減、それから国の高額な費用徴収基準などが高額の保育料を招いている一つの要因になっていることは明らかであります。今負担能力ということが言われましたが、今回の法案でも新たに保育料の徴収について「負担能力」という文言を挿入されましたけれども、これは高額の保育料を正当化するものであると言わざるを得ないと思うわけであります。  時間が参りましたので、最後に一つ。  ことしの二月二十五日、全国の社会局関係主管課長会議で配付された参考資料を見ますと、「社会福祉施設への入所措置事務等の団体委任事務化について、合同会議における議論のあらまし」、この資料によりますと、この基本考え方としては、「地域の実情や住民のニーズに的確に対応できるよう地方公共団体自主性を尊重し、その創意工夫を生かせる方式に改めるべきであろう」、こう書いてあるわけであります。  そこでお伺いしたいのですが、「地域の実情や住民のニーズに的確に対応できるよう地方公共団体自主性を尊重し、」とあるわけですが、入所措置団体委任事務化によって住民のニーズに的確に対応できるようにしなければならないわけですけれども、この住民のニーズ、保育所に対するニーズは、入所措置基準を厳しく適用されて保育所に子供を預けたくても預けられない、また、入所が許可されても保育料が高くて預けられない、そうやっておいて、定員割れだからと保育所が統廃合される。住民保育所へのニーズはこういう今起きている問題を改善してほしいということが圧倒的に多いわけですが、こうした住民の具体的なニーズにこたえようという考え方を持っておられるかどうか、お伺いいたします。
  40. 坂本龍彦

    坂本政府委員 保育所への入所につきましては、最近において、例えば乳児保育の需要がふえている、あるいは延長保育、夜間保育といったような、保育時間についても従来の定型的な保育とは異なった弾力的な運用が求められておりますので、私どもとしては、予算面におきましてもそういった新しい需要に応じることができるような措置もとっておるわけでございます。今後とも、このような新しい現実の需要に対応できるように、各方面の措置を進めてまいりたいと考えておるわけでございます。
  41. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 児玉議員に関連質問していただきます。
  42. 船田元

    船田委員長代理 関連して、児玉健次君。
  43. 児玉健次

    ○児玉委員 関連して御質問いたします。  今度の数多くの法律改正が俎上にのせられているその中に、電源開発調整審議会の問題が電源開発促進法との関連で出ております。  そこで、経済企画庁にお尋ねをしたいのです。私は簡潔に聞きますのでぜひ簡潔にお答えいただきたいのですが、いわゆる電調審が電源開発基本計画に新規地点を組み入れようとするとき、関係都道府県知事の同意を得ないまま電調審に付議したことがこれまでにあったでしょうか。
  44. 蜂巣賢一

    ○蜂巣説明員 電源開発に当たりましては、地元の理解と協力を得るということが大前提でございますので、今までも新規の電源開発地点を基本計画に組み入れます際には、地元の意向を尊重するために、電調審開催に先立ちまして事務局が都道府県知事に対して地元情勢等を考慮して意見を求めるということをやってきております。こういうことでやってきておりますので、地元の意見も十分に尊重してきておりますために、今まで地元都道府県知事の意見に反して電調審付議を行ったことはないというように承知しております。
  45. 児玉健次

    ○児玉委員 すなわち、電調審の事務局を担当されている経済企画庁が事前に知事の意見を十分に聴取して、知事の同意がなければ電調審に付議しなかった、こういうやり方で今御答弁のようになった、その点はこの後も変わりがありませんか。
  46. 蜂巣賢一

    ○蜂巣説明員 従来の方法を変える考えは今のところ持っておりません。
  47. 児玉健次

    ○児玉委員 さらに、この電調審の審議の中で、必要があれば知事の出席を求めて直接意見を聞くことを排除するものでもない、このように理解しますが、いかがですか。
  48. 蜂巣賢一

    ○蜂巣説明員 今回の法律改正は、従来の電源開発調整審議会が関係都道府県知事の出席を求めた上で意見の聴取を行っていたものを、文書と知事の出席以外の方法によっても意見聴取が行えるように、そういう意味で聴取手段の多様化を図るということでございますので、知事の出席を排除するものではないということでございます。
  49. 児玉健次

    ○児玉委員 そうであれば、今回の法改正はこの部分についても必要がないという意見を述べて、次の問題に移りたいと思います。  今、柴田議員がいろいろ触れた問題とも関連するのですが、今回の法改正と一括の補助金カット、これが社会福祉事業にどんな深刻な影響を及ぼしているのか、それを保育所の問題に絞って私は少し触れてみたいと思うのです。  そこで、まず厚生省にお尋ねをしたいのですが、保育所の定員の充足率の推移をこの五年間で示していただきたいと思います。
  50. 坂本龍彦

    坂本政府委員 五年間ということで、五十七年度からお答えいたします。  定員に対する措置児童数の比率でございまして、これを充足率と考えますと、これはこれから申し上げます毎年の四月一日現在の数字でございますが、五十七年度が八七・三%、五十八年度が八六・五%、五十九年度が八五・六%、六十年度が八五・一%、六十一年度が八四・八%となっております。ただ、四月一日の数字がこうなっておりますが、十月一日時点で再調査をいたしました結果では、これよりも若干高い充足率になっております。
  51. 児玉健次

    ○児玉委員 充足率は高いほどいいと私たちは考えるわけですが、今の厚生省の数字でも明らかなように、四月、十月の違いは少々あるとしても、全体の傾向としてはこの五年間充足率が下がってきている。別に言い直せば、保育所の定員割れが大きくなってきている。  私はそれを札幌で調べてみたのですが、札幌は大体保育所の定員がことしの四月一日で一万三千二百六十五名、この五年間で大まかに約一万三千名、そういう定員を持っています。昭和五十六年の公私の保育所の定員割れは四月一日現在で六百五十五名です。それがことしの四月一日でいえば千二百三十八名、約二倍、文字どおり激増をしています。これはほぼ全体の傾向をあらわしている。一方、公立保育所の統廃合が今非常に進んでいる。例えば室蘭市で昨年三カ所の公立保育園が廃止になった。函館市と士別市では各一つ保育園が廃止になる。充足率の低下、定員割れの増加、なぜこのような事態が生まれているのか、その点について厚生省のお考えを端的に聞かしていただきたい、こう思います。
  52. 坂本龍彦

    坂本政府委員 定員割れの根本的な原因は、保育所の整備が進み、一方において児童の出生数が最近減少しているということが考えられるわけでございます。例えば出生数で見ますと、五十七年度に百五十一万五千人であったものが六十年度には百四十三万二千人、六十一年度には百四十二万五千人というようにかなり大幅に減ってきておるという事態があるわけでございます。  さらに、地域別に見ますと、それぞれの地域における人口の移動あるいはその周辺の大きな産業の状態の変化、こういったものによってそれぞれの地域における就業者の動向なりなんなりにも違いが出てまいると思いますし、そういった個別の事情というものもまた影響している面があろうかと考えております。
  53. 児玉健次

    ○児玉委員 保育行政に重要な責任を持っていらっしゃる厚生省が今のような理解では、この後の保育行政の前進はない、残念ながら私は率直に指摘したいと思うのです。  北見市の職員組合保育所支部が、昨年、預かっている保育児童の家庭全部を戸別訪問して、現在の保育所に何を望むのかということを一つ一つアンケートで聞いたケースがあります。その中で、保育行政に望むことの第一は、保育料を安くしてほしい、これが調査対象の五〇%です。第二は、入所基準を緩和してほしい、これが三六%です。そして第三が、保育所への入所手続を簡素化してほしい、二六%です。それが実際に保育所に子供を預けている父母の願いです。私たちは、この定員割れの増加の最大の理由は、今の父母の声にも出ているように保育料の高さだと考えます。北海道の士別市では保育料の最高額がついに六万四千円に上がりました。  ことしの四月十六日の大蔵委員会で、今御答弁になった坂本局長に対して我が党の蓑輪議員が質問したことがありました。そのとき、国の補助の大幅な削減が国の負担と保護者の負担をどのように大きく変えたのか、それをあなた自身が御答弁になったことがあります。ちょっと思い出していただきたいのですが、保育費用総額に占める国庫負担と保護者負担割合昭和五十五年は国が四五・七%、保護者が四二・九%でした。それが昭和六十年で国が三三・五%、約一〇%低下している。保護者の負担は五二・二%、一〇%上がっている。補助率を下げた分がもろに保護者の負担となってあらわれている。そしてことしは、御答弁では予算上の数字であるがということで、国は二四・四五%にさらに落ち込む、保護者の負担は五一・一%。これらは国の補助が八割から五割にカットされた結果ではないのか、こう考えるのですが、この点について御意見を聞きたいと思います。
  54. 坂本龍彦

    坂本政府委員 国の負担割合につきましては、昭和五十九年度までは地方公共団体に対して八割でございましたが、昭和六十年度において特例的に七割、さらに六十一年度からは三年間暫定的に五割という法律上の改正がございましたので、国の負担割合としては確かに減っておるわけでございます。しかし、それに伴って地方公共団体に対して所要の財源措置を講じておりますから、国と地方公共団体とが合わせて負担する比率についてはほぼ同様と考えてよろしいかと思うわけでございます。  そこで、残るは保護者が負担する方の割合でございます。これは確かに、相当以前の、十年ぐらい前の割合を見ますと、例えば五十年代の前半においては四〇%弱という程度でございましたのが、現在では五〇%程度になっておりますから、そういう意味ではふえているという事実は否定できませんが、最近、五十七年度以降におきましては、大体五一%ないし二%の間で横ばいになっております。今回の補助率の引き下げによってもこれは特に大きく変化しているとは考えておりません。  さらに、保護者の所得階層の割合を見ますと、所得額の多い階層というものが年々比重が高まってまいっておりまして、例えば私どもが一番高い層と考えております段階では、五十五年度に七%前後のものであったのが現在では一五%程度まで上昇しているという、保護者の方の所得階層率の推移もこの負担率には影響しているというように考えておりますので、国の補助率削減が直接に保護者の負担率影響しているというようには理解しておりません。
  55. 児玉健次

    ○児玉委員 ちょっとそれは現場の保母さん方や父母の皆さんに直接聞いてほしいという気持ちがしますね。国の補助率が大幅に下がることで、そしてあなたも既に述べられているように、保護者の負担率昭和五十五年の四二・九%から昭和六十年の五二・二%に約一〇%はね上がっているのです。この事実はあなた否定できないでしょう。  そして、今局長は、暫定的に五割と言われた。それではお尋ねしますけれども、この暫定期間が終わったらもと補助率に戻すのですか、その点お答えいただきたい。
  56. 坂本龍彦

    坂本政府委員 暫定的にと申し上げたのは、昨年の補助金問題検討会の結論を踏まえまして政府として三年間の暫定措置として決めたわけでございますので、そのとおり申し上げたわけでございます。その後にどうするかという問題については、これはその時点においてまた検討する問題となっておると理解しております。
  57. 児玉健次

    ○児玉委員 その後において検討する、保育行政責任を持つ担当部局としては、その点でどういう御意見をお持ちでしょうか。
  58. 坂本龍彦

    坂本政府委員 このたびの補助率の改定問題につきましては、単に保育所問題だけを取り上げたということではございませんで、各種の補助金全般についての検討の結果でございます。したがいまして、これは補助金のあり方全体としての検討でございますので、保育所だけについて個別の見解というものはお示しできるものではございません。
  59. 児玉健次

    ○児玉委員 児童家庭局長という職にある方の発言としては、私は到底理解はできない。  そこで、こういった状態の中で、すなわち、全体としての父母の負担の増加、そして入所基準の厳しさ、そういう中で保育所の充足率が低下し、保育所に入らない子供が増加している。これらの子供を待ち受けているのがいわゆるベビーホテルです。  そこで、ベビーホテルについてちょっとお伺いしたいのですが、ベビーホテルとは無認可の乳幼児の保育施設であって、夜間保育、宿泊を伴う保育または時間単位での一時預かりのいずれかを行っているもの、厚生省はこのように考えられていますか。     〔船田委員長代理退席、委員長着席〕
  60. 坂本龍彦

    坂本政府委員 ベビーホテルは、いわゆる無認可保育所の中でも今御指摘がございましたようなものを特色としているものというように私どもは考えております。ただ、これは法律上定義があるわけでございませんで、私どもが実態上そういったものとしてとらえて認識しておるわけでございます。
  61. 児玉健次

    ○児玉委員 厚生省が五十六年七月二日付の児童家庭局長通知の中で、無認可保育所について、その充実を求めることを趣旨とした通知を出されておりますが、その中で厚生省は、今その改善指導の重点をベビーホテルに置くべきだというふうに述べております。  私はここに東京の電話帳を持ってきたんですが、電話帳の中でベビーホテルという形で子供たちを募集しているところはわずかです。例えば「城北保育園 園児募集 キャリアーママのお手伝いします 保育と幼児教育 産休明から入学児まで (夜間年令、問わず)」こういうふうに出てきている。これらが全体としていわゆる保育産業、福祉産業の方に流れていく。  時間が来ましたが、皆さん方の一括しての補助金カット、そして今回の一括の法改正、これらが大きく保育産業の方向にいく。そこで貫かれるのは競争の原理です。そして、全体としての需要は、ある専門家によれば約二兆円。その方向で民間活力導入と称して進んでいく、そのようになる危険性が非常にあると思うのですが、この点について最後に伺いたいと思います。
  62. 坂本龍彦

    坂本政府委員 今お述べになりましたようないわゆる無認可保育所の問題につきましては、私どもその内容について劣悪なものにならないように十分指導監督をしてまいりたいと考えております。  ただ、今回の補助率の改定等によって、例えばこういういわば産業的なものが拡大をしていくかどうかという点について、私どもはあくまでもこの補助率の改定は国と地方との負担区分の変更によるものというように理解しておりますので、これによってそういった産業が拡張するとかそういうことについては、私どもは特にそういう方面が拡大するような考えは全く持っておりません。
  63. 児玉健次

    ○児玉委員 最後に私は指摘したいのですが、送迎バスつき、一人一人の子供についてタイムカードがある、即刻受け入れる、こういった新しい形の保育産業に大手の食品産業やホテル企業がこの保育園をチェーン化する方向で今乗り出してきている、そういった中で公立、私立の認可保育所をどのように充実させていくか、この点での厚生省の努力の強化を強く求めて質問を終わります。ありがとうございました。
  64. 石川要三

  65. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 総務庁長官にお伺いいたします。  一体何のためにこの機関委任事務整理合理化をやろうとするのですか、その意味を聞かしてください。
  66. 玉置和郎

    ○玉置国務大臣 先生に対する直接の答弁にならぬかもわかりませんが、さっき共産党の方々がいろいろ聞いておられまして、僕は、日本の国というのは、これはやはり地方自治というものを尊重していくんだ、そしてなるべく地方自治体権限を委譲してそして本当の地方自治を育てていくんだというこのやり方、これは方向として間違いはない、こう思っております。  かつて外国を旅行したときに、どの国とは言いませんが、地方自治の話になりまして、地方自治というのはあなたの国でどうしていますかと聞いたら、地方自治というのがわからない、そういう国がありました。びっくりしました。それだけに、日本の国はやはり我々と皆さん方が協力してそして地方に中央の権限をできるだけ整理合理化してお渡しをし、権限を委譲していく、こういうことはやはり方向として間違いがない。それだけに今回の機関委任事務というものについていろいろと御審議をお願いしておるところであります。
  67. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 大変立派なお言葉で、私は長い間地方行政委員会に所属しておりまして、あなたが主張しているようなことを主張してまいりました。大変いいことだと思います。  しかし、私も外国へ行っていろいろ自治体なんかを調査してまいりましたけれども、あなたは今、外国へ行っても地方自治がわからない、こう申されましたが、向こうでは、先進国では地方自治というのはほとんど当たり前のことなんですね。ところが、日本に来ますと非常に中央集権的な行政の形が強いので、わざわざ地方自治と主張しなければ地方自治がつぶれてしまうような状態になっているのです。そういう意味で、私どもは長い間機関委位事務というものの整理統合を主張してきました。  あなたが今申されるように、地方自治体権限を与えなければ地方自治体というものはもう活力を失ってしまうのです。ところが、それを最大に縛っているものは何かというと、この機関委任事務なんです。私は先般地方行政委員会でもこの質問をしましたけれども市町村事務のどのぐらいこの機関委任事務があるか、自治省の答えですよ、少なくとも半分以上だ、こう言っているんです。県にいきますと、ほとんど六、七割ぐらいあると思うのです。いわば地方自治体というものは中央の下請機関だと言われているゆえんなんですね。これを整理しなければ真の意味の自治とは言えない、こういうのでこの整理を主張してまいったわけであります。  行革審でもあるいは臨調でも、これを整理しなければだめだと言っていますね。その趣旨に基づいてやってきておるのですけれども、それにしては今度出されているこの整理統合の数ですね、まことに少ない。この前の行革審などなかった五十八年の第百国会のときの行政事務簡素合理化法案、この法案が出たときでも五十六件もあったんですね。ところが、今度はわざわざ行革審なんというものを掲げて、そしてやったにもかかわらず、数としてはまことに少ない数でありまして、一体本気になってこれをやるつもりかどうか。この前でも五十六あった。今度は四十五法律しかないんです。五十八年と今回で二回目ですが、この機関委任事務というものは、単に自治法の別表で見てもまだ五百近くあるんですよ。一体いつになったらこれを本格的に全面的に手をつけて整理統合するのか、私は、本気になってやっていないのじゃないか、こういうふうに思うのですが、大体この数についてどう思っていますか。
  68. 玉置和郎

    ○玉置国務大臣 おっしゃられるとおりで、先般も申し上げましたが、国家構成というものがいささか先進国の皆さん方と違います。それは、日本政府というものは長い中で、明治から始まったのですが、これは天皇という存在があって、そして天皇のもと政府であったということ、そこからずっと始まってきて、特に強かったのは内務官僚であります。  今日私は非常に遺憾に思っておりますのは、我々所属する自民党も猛反省をしなければならぬのは、大体地方自治体の首長そしてその下の幹部、それが自治省から大変たくさんあちこちに行っておられる、これで本当に地方自治というものが確立するのだろうか、依然としてそういう形の中央集権が残っておるのではないかということ等についても真剣に今考えておりまして、今お話がありました数字については、さらにこれから御審議をいただきますポスト行革審、新行革審において引き続きこういった問題について強力に推進をしていきたいという考えでございまして、いろいろな構想を今練っておるところでございます。  先生、これは長い歴史がありまして、なかなか一遍にいきません。しかし、おっしゃっていただきましたその御意見というものを十分参考にしながらやっていきたいと思います。
  69. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 機関委任事務整理しようとする最大の目的は、国、県、市町村、こういうものにずっとまたがっている二重、三重の行政、このレッドテープを断ち切って、そして身軽になれば、国は国として仕事をやり、県は県として仕事をやり、市町村市町村の仕事をやる、大変身軽になる。二重、三重行政というものを断ち切る。そして繁文縟礼を廃止して、そして経費も安く、人も少なく、そしてまた国民もいろいろな役職、行政に縛られなくても楽に手続ができる、これをねらっておるわけなんですね。だから、地方自治体もあるいは国の臨調も行革審も全部これを整理しろ、こう言っているのです。  ところが遅々として進まない。二回やってたった百近くしかできてないけれども、単に数の問題だけじゃないのです。ここに出てきたものは行政を簡素化する効果の全くないものばかり出てきているのです。やってもやらなくても同じものしか出てきていませんよ。  例えば、ここに内閣委員会調査室から出したものがあるのですが、これを見てみますと、どれも何もやる必要がないからこれを出しますというわけです。実際に効果のあるものは一つもここに書いてないのです。単に数が少ないだけではなくて、内容も、やってもやらなくてもこんなものなくてもあっても何にも必要のない、そういうものしか今度のこれに出てきてないのです。この前もそうでした。これはもうみんな指摘していることです。政府自体もこんなものやってもやらなくてもいいから出しましたと言っているのですよ。そんなものしかここに出てきてない。あなたが今言われたように、二重、三重の煩雑な行政を排除してもっとすっきりしたものにする、こういうような趣旨というものは、数の上でもあるいはまた内容の上でも何にも出てないのです。全く形で、ただ出せばいいというので出しているだけなんです。  だから私は、政府は本気になってこの地方自治体を縛りつけている機関委任事務というものを整理する意思があるのかどうか、こういうふうに今お伺いしているのですが、あなたからお聞きしますと一朝一夕にはできないと言う。なぜできないか、そこをちょっと教えていただきたい。
  70. 玉置和郎

    ○玉置国務大臣 私もこの総務庁長官に就任しまして、前から感じておりましたが、日本の政府というものは各省庁の縄張り根性というものが非常に強い、その中でとにかく機関委任事務というものを御審議をいただいておりますような形にしていこうということでやっておりまして、とにかくまず門を開くということで、今のところこれがいろいろ各省との話し合いの中で精いっぱいのところじゃないだろうか。しかし、新行革審ができましたら、これを門を開いたら今度は一気にひとついろいろな問題についてやりたいという新しい構想を持っております。これは今まだ発表は私はしませんが、恐らく自治省もびっくりするようなことになると思います。言うことを聞かなかったら、本当に今度は監察を入れますよ。そういうことでひとつ御理解をいただきたいと思います。
  71. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 これは自治省に聞いたらいいのかあるいは総務庁に聞いたらいいのかわかりませんが、今度権限委譲をやりますと一体どういう費用効果があるのですか、事務の方でいいですから教えてください。
  72. 佐々木晴夫

    佐々木(晴)政府委員 今回のこの法律趣旨は、要するに機関委任事務整理あるいは団体事務化あるいは市町村委譲、そうしたことをいたす、それからまた都道府県に権限を移す、こういうことでありますから、いわば行政の仕組みの改正である、それによって地方自律性自主性を強化するのだ、こういうことでありますので、経費面ではさしたることはないのは事実であります。  ただ例えば機関委任の整理十事項につきましては、この中には試験その他のものも一応含まれておりますけれども、一定の経費の節減効果というのは生じてくる、このように考えております。
  73. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 よくわからぬのですが、経費の節減というのは何もないということですか。
  74. 佐々木晴夫

    佐々木(晴)政府委員 機関委任事務を十件廃止いたしております。それによってやはりそれ相応の経費の効果は出てくるのだと思いますけれども、これにつきましての経費の積算は今しているわけではない。例えて申しますと、調理師試験の廃止というのがございますけれども、これは毎年七万人の受験者に係る試験事務負担がなくなる、また宅地建物取引主任者資格試験を廃止するということがありますが、これは毎年約十万人の受験者に係る試験事務負担がそれぞれなくなってまいるということでありますからそれ相応の経費の節減効果は生ずると思いますけれども、これにつきまして例えば幾らというように今お示しできるような数字は持っていない、こういうことであります。
  75. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 経費の節減がないと言うけれども、私はこの機関委任事務というものを本気になってやれば、大変大きな経費の節減になると思いますよ。後であれしますが、例えば、大臣あなたは御承知でしょうけれども、民生委員を推薦するために民生委員の推薦会がある、知事のところに今度それの審査会があり、そしてまた大臣のところに来ている。たくさんの人数で推薦会をやって、それから知事の審査会にやって、こういうあれをずっと通ってきているのです。これを一つなくせれば大変な経費の節減になるのですよ。  一面においては地方自治体を縛る一つの鎖を断ち切るという意味でもあるけれども一つには、例えばあなた方がにしきの御旗にしている行政改革をやる。行政改革というのは、国鉄もあるし電電公社もあるしいろいろなものがあるかもしれないけれども、最大の問題は国と地方にかかわるところの行政組織、これを簡素化してすきっとしたものにすることが最大の行政改革だと私は思います。国鉄だとか電電公社、ああいうものは民間に移したりあれしたりいろいろなことをしようとしているけれども、本当の意味の行政改革ではないと思う。不断にやらなければいけないのは国と地方を通じるところの行政の繁文縟礼を常に整理していく、これが一番の本当の意味の行政改革だ。  そういう意味で、今権限を委譲しても費用がどのくらい出るか計算してないなどということは、私は大変怠慢だと思う。これをやればどのくらいの行政費用の効果が出てくるのか、きちっと計算しながらやらなければいけない。だから、私はさっきから言っておるとおり、本気になってやっていないということなんです。やってもやらなくてもいいような、何も足しにならないようなものしか出てこない。計算するものが出てきてないのです。実際に行政効果があってそのためにレッドテープが断ち切られて、そして費用がこのぐらい節約になりますよ、こういう計算をしないから、何の効果もないものだけ出てくるから、計算する気もないのです。だから、その費用効果なんというものを計算する気がないのです。そんなもの全然頭にないのですよ。本当に実効のあるものをなぜ出さないか、どうでしょうか。
  76. 玉置和郎

    ○玉置国務大臣 私は、今その話を聞いておって、機関委任事務の問題、これを出した理由はやはりいいところにあるなと思って感心しております。それだけに、地方行政のベテランである先生から御指摘いただきまして、これがもし法律が出なかったら先生の御苦労もここへ出てこないのですよ。それだけに法律を出した意義というのはここにあるんだなと思って、勉強いたしますからよろしく。
  77. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 どうも恐れ入りました。  先ほども大臣言われておりましたけれども地方自治体に対する国の権限委譲というものが遅々として進まない、これはまさにそのとおりでありまして、臨調で機関委任事務を二年間で一割整理しろ、こう言っているのですね。確かに、二年間で一割だか何だかわからないけれども、この前五十何件か出てきました。二年たってまた四十何件か出てきました。一割ずつ二年でやって全体をやろうとすると、簡単な算術ですが二十年かかるのです。世の中どんどん変わって、こんなことじゃ無意味なんですね。要するに、このままでいきますと、これはやらないということなんです。ちょうど二年で、少しずつ、五十件近くずつ出てきているのです。これはこれからまた本格的に手をつけてどんどん進めるつもりですか、これで終わりですか。
  78. 佐々木晴夫

    佐々木(晴)政府委員 事実の認識の問題につきまして、先生のお話は確かにいろいろと御論議があるというのはよくわかるわけであります。御承知のとおり、実は機関委任事務につきまして初めて手を加えたのが臨調の第三次答申のときである。このときに、言われるように一割ということがその目標とされまして、この際に、百国会行政事務簡素合理化法を提出いたしまして、政省令事項を含めまして五十五事項を整理した、これが実は機関委任事務整理を始めた一番最初であります。  それから、今回の法律案につきましては、今おっしゃるとおり、機関委任事務関係で三十四法律五十事項を措置する、あわせまして、これもちょっと御認識いただきたいのですが、政省令事項につきまして三十一事項についてさらにこれを整理する、こういうことを決めておるわけであります。これが第二回目である。  今まで確かに地方六団体とかあるいは地方制度調査会等のいろいろの御指摘をいただいておったわけでありますけれども、これはいわば地方関係者からの意見として、ある意味では言いっ放しになっておった、それを臨調、行革審でいわば各省庁といろいろな論議をして、そこでこの具体的な改革に手を染めた、こういう点については御評価をいただきたいと思います。今後ともこうしたような機関委任事務整理合理化につきましては、行革審の指針に従いまして我々としては見直してまいりたい、このように考えておるわけであります。
  79. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 さっきも大臣言っておられましたけれども、これが進まない最大の原因は、要するに中央省庁の抵抗なんですよ。これが許認可や機関委任事務あるいは補助金行政指導、こういう三本の手続で中央省庁は地方をコントロールして、それが本来の地方自治をゆがめて、権限地方に渡してしまえば地方への統制力が弱まって、ひいては省庁自身の機構縮小、人員減にもつながる、そういう考え方で、地方権限をつめのあかほどでも委譲することは絶対反対だ、中央省庁はこういう考えなんです。これがなくならなければ私は実際に実効のあるような機関委任事務整理なんというものは絶対にできない、こう思います。  この前の六十年度の予算でも最大の問題になりました国庫補助率の一律カット、あれをやるからどうしても許認可事務地方にやらなければいけない、こう言ってあれを抑えたけれども、あの程度しか出てこない、何をやっても中央省庁の抵抗の壁を突破することができないから行政改革はできないと私は思うのです。そこで、わざわざ二つの省庁を統合して、こうしてあなたが今おさまっている総務庁というものをつくりました。その設置の一つの意義というものは、こういう壁を排除してこういうことをどんどんやりなさい、こういう意義がうんと強いと思うのです。やはり総務庁というものはこういうことをもっとよく理解して、強力に各省庁の壁を排除してこれを進める必要がある。  あなたは、何か新しい方策を得て、自治省びっくりするだろうと言っておりますが、どんなことを考えているのですか。
  80. 玉置和郎

    ○玉置国務大臣 何か僕が物を言うと各省がぴりぴりしております。これがやはり総務庁のいいところだと私は思うのです。  しかし先生、私自身も大臣なんかになりたくなくて逃げ回っておった。とうとう押さえられてやむを得ずなった。なったら、びっくりしたのは、例えば民生委員の方でございましてもやはり大臣のところへ来たがるのですね。これがいいか悪いか、この議論は私は避けますが、やはりその辺から直していかなければならぬ、国民意識の改革というものをやはりどうしても行政改革の中に生かしていかなければならぬ、その工夫をこれからしていきたいと思います。  自治省についてはきょうは勘弁してください。新行革審の審議が大体済んだあたりのところでいろいろと御相談を申し上げて、そして考え方を出したい、こう思いますので、その節はぜひ御指導を賜りたいと思います。
  81. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 機関委任事務というものは一体どこで決めるのですか、機関委任事務にするとかしないとか。総務庁ですか、あるいは自治省かもわからぬけれども
  82. 佐々木晴夫

    佐々木(晴)政府委員 機関委任事務は、国の事務として全国的統一性、公平性を確保しつつ、地域の実情に応じた事務運営を行うための仕組みであるということでございます。  そこで、個々の行政事務機関委任事務とするかあるいはそのほかの事務の種類とするかにつきましては、基本的にはそれぞれの政策目的に沿う当該行政事務性格や類似の事務との関連性等の要素から決定されるものであります。したがいまして、その政策を立案するところの個々の所管省庁の問題ということになるわけであります。  ただ、この各種法令の制定に当たりましては各省庁間において協議が行われておりまして、その際、自治省が、地方自治影響を及ぼす国の施策につきまして必要な意見を申し出る権能を有する立場から、諸般御協議をなさっておるというように理解をいたしておりますので、そのあたりにつきましては自治省から御説明があるものと思います。
  83. 森繁一

    ○森(繁)政府委員 今総務庁の方から御答弁がありましたように、事務の実施主体を国なりあるいは地方団体のいずれといたしますか、またこれを機関委任方式で処理するかあるいは団体事務として処理するかという点につきましては、それぞれの事務の根拠となる法律の立案段階におきまして事務の性質などに応じて決定いたしておるところでございます。  自治省といたしましては、各省からの法令協議がございますが、その際、国、地方を通ずる行政の簡素効率化及び地方自治の尊重の観点から、住民に身近な事務住民に身近な地方公共団体において処理することが適当である、こういう考え方から、機関委任事務の新設について真に必要なものに限定するよう意見を申し述べているところでございます。
  84. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 今、一方ではこれを整理しようとしておりますけれども、一方では、今度のものにも出てきますが新設されているのもあるのです、新しくつくっているのもあるのですよ。一方では整理しながら一方では新しいのがまた出てきている、整理の意味がないと私は思うのです。これをどこかでやはり整理をして、できるだけこういうような機関委任なんというものは出てこないように、何か一つ基準をきちっと定めて、こういうものは機関委任事務にする、こういうものは地方が直接やればいい、あるいは国が直接やればいい、こういうような一つ基準を定めなければ、むやみやたらに国の都合だけでどんどんどんどん押しつけられて地方が困るということが出てくるのですが、何かそういうような基準をきちっとつくる、こういう御意思か考えはありませんか。
  85. 佐々木晴夫

    佐々木(晴)政府委員 先ほども申しましたように、何を機関委任事務とするかというのは、一つの政策が立案されまして、それに伴います事務の発生、それから関連事務との関係等において考えるわけであります。  そこで、まことに個別的な対応ということで考えていかざるを得ない話でありますけれども、臨調及び行革審におきまして、これはそれ相応の整理合理化基準というのがまた定まっておるわけであります。私どもとしては、そこで臨調、行革審の言うところの社会経済情勢の変化だとかあるいは地方に同化定着している事務だとか、こうしたものにつきまして、極力これは機関委任事務から排除をしてまいる、このようなことで今後とも考えてまいりたい、このように思っております。
  86. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 大臣、この機関委任事務というものは、私は根本的にはない方がいいと思うのですよ。国でやるものはきちっと国でやればいい、県でやるものは県でやればいい、市町村でやるものは市町村でやればいいんです。それを、国から市町村までやって、手続を一生懸命やっているから、こういう問題が出てくるのです。  根本的には、私はこれはなくした方がいいと思う。今、臨調が何かあればいいと言うのですけれども反対の意見もあるのですよ。地方制度調査会だとかあるいは行革審だとか、そういうところでは、こういうものはない方がいいという意見もはっきり出ているのです。そういう意見もあるのです。だから、本当になくするつもりならば、全国知事会なんか答申を出しているのですが、国でやるもの、県でやるものあるいは市町村でやるもの、全部分ければ分けられるのです。  分けられないものがあるのですね。それは、機関委任事務で命令じゃなくて、委託という形で、これは本来国がやるのだけれども地方がやった方が便利だからと言って、委託といって経費をつけて仕事をやってもらえばいいのです。そうすれば、地方自治法の別表が何もなくなると思うのですよ。それが私は理想だと思うのです。どう思いますか。
  87. 佐々木晴夫

    佐々木(晴)政府委員 今、先生おっしゃいましたように、確かに臨調、行革審は、この機関委任事務制度は、「全国的統一性・公平性を確保しつつ、地方の実情に即した行政を行うもので、地方行政の総合性の確保や、住民に身近な行政機関での事務処理の実施が図られるとともに、行政コストの面からも全国に国の出先機関を設けることは不経済であることから、それが正しく活用されるならば有効な制度である」というような御指摘をいただいておるわけであります。  ところで、今、先生おっしゃいましたように、地方制度調査会あるいは地方六団体からは、機関委任事務制度はそもそも必要ないんだ、こういうふうな御議論があることも承知をいたしております。特に、この六十年の二月に出されました地方六団体からの意見では、これは従来の機関委任事務の観念に、国の事務であるが地方公共団体が取り扱うことが適当な事務とか、あるいは国と地方公共団体が協力して実施する事務とかいったような新たな区分を設けるということの御提案もございます。ただ、この場合にありましても、この事務を明分する基準というのは非常に不鮮明でありまして、これは非常に混乱を起こしてくるという可能性もあり得るということであります。  なお、先生からいろいろと臨調、行革審の意見そのものが大変不十分ではないかというような御指摘、したがいましてこの法律も不十分ではないかという御指摘でありますが、臨調、行革審では、地方六団体あるいは地方制度調査会の意見をやはりそれ相応に検討しつつこうしたような結論を出されたわけであります。  具体的に言いますと、機関委任事務関係につきましては、例えば公益法人の認可みたいに、権利能力を付与したりそれから公益性の判断を行うものとか、あるいは薬局開設の許可のように、職業選択の自由の制限を行うものとか、あるいは資格制度のように、全国的共通性だとか流動性確保が必要なものとか、あるいは施設への強制入所措置のように、基本的人権の制限に係ることから適正確保が必要なものとか、あるいは地域・地区の指定と規制のように、財産権の制限等が必要なものとか、例えばそうしたものはやはり全国的統一性あるいは公平性を確保しなければならないではないかということでもって、これは引き続き機関委任事務にすべきである、こういうところからやはり問題を絞り込んでこられたわけでありまして、あの行革審の御努力については私どもはこれを大変評価しておるわけでありますが、大臣が言われましたように、なかなかそう一遍にはいかぬ、そのあたりはよく御理解をいただきたいと存じます。
  88. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 私は、行革審が不十分だから出てきたのも不十分だなんて言っていないのです。行革審は不十分だと思うけれども、その不十分なものさえ、その意思さえあなた方はやっていないのです。行革審はこれをどんどん進めろと言っているのです。ところが、あれが出てから何年になります。五十八年に最初出てきた。それまで二年かかった。それから二年かかったから、五年か六年かかっているでしょう。それで、この前に五十何ぼ、今度は四十何ぼしか出ていない。まだ五百も六百も、項目にすればまだ千何百も残っているのです。行革審は不備だけれども、その不備な行革審の精神さえあなた方は酌んでやっていないのです。だから私は文句を言っているのですよ。行革審のとおりあなた方がやっているならばさしあたりは文句はないのですが、そのとおりやっていないのだ。
  89. 佐々木晴夫

    佐々木(晴)政府委員 この機関委任事務につきまして行革審の答申が出ましたのは六十年の七月二十二日でありまして、その後、私どもとしては前国会にこの法案提出いたしておるわけであります。しかるに、これは前国会で御審議をいただけなかったものですから、今回再提出をしたというわけで、あれからもまだ一年半もたっていない、私どもとしてはいろいろ努力をしているつもりでございます。
  90. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 ところが、同じものを五十八年にやっているのですよ。あなたは、六十年にやって我々がけ飛ばしたからできないと言って我々に文句をつけているけれども、冗談じゃありませんよ。何を言っているのですか。五十八年にちゃんとやっているんじゃないですか。私が今言ったでしょう。五十八年、第百国会行政事務簡素合理化法というのが出て、五十六件ですか、整理しているのですよ。六十年に出てきたんじゃないのですよ。本当に冗談じゃないよ。何を言っているんだ。
  91. 佐々木晴夫

    佐々木(晴)政府委員 ちょっと私の説明が不足いたしておりましたけれども、臨調が第三次答申で機関委任事務整理を提言しましたのが五十七年の七月三十日でございます。それに対しまして、これを五十八年に提案いたしまして、そのときが一割整理と言われておりましたので、そこで四十五法律整理をいたした、こういうことが第一段階目であります。  それで、今私が申し上げましたのは、今回の提案に係る行革審の答申は、昨年、つまり六十年の七月二十二日に答申された、それを今回法律化をした、こういうことでございます。
  92. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 これをやっていたってしょうがないのですが、さっきの答弁、どうですか、何かこれを基準を定めて機関委任事務がふえるのを整理する方法というのは。さっき、山本さんですか、だれか手を挙げていましたが、何か御意見ありますか。
  93. 玉置和郎

    ○玉置国務大臣 山本局長が答えるかどうかわかりませんが、専門的なことに入っておるのでなかなか準備が難しいんだろうと思いますが、その前に、一つ私がどうしても言いたいのは、さっきからの論議を聞いておりまして、保育所の問題ですが、これは市町村段階で任しておくとどうもやりにくいから、中央でしっかりしたものをつくってやってもらいたいというようなことについては、これが本当に地方自治精神にそぐうのかどうか、これはやはり党のいろいろな考え方があって御発言になっておるのでなかろうかというようなことをふと思いまして、それだけにいかに機関委任事務についても難しいかということがわかります。党利党略というか、やはりそれが先行しておる。そうしたことについてはこの際本当の地方自治を確立する上において論議を重ねていただきますが、ぜひ御協力をいただきたいな、こういうように思っております。
  94. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 要するに何も考えてないということですね。私がさっき言ったのは、機関委任事務をふやすのをチェックするために一つ基準か何かつくってやるというようなことを考えてないかと聞いたのですが、それに対する答えが何もないが、どうですか。なければないでいいですよ。
  95. 山本貞雄

    ○山本(貞)政府委員 先ほどはどうも失礼いたしました。佐々木管理局長から大体御答弁いたしましたので答弁を差し控えさせていただいたわけでございますが、せっかくの御質問でございますので、もう一度重ねて申し上げますと、行革審の答申におきまして、機関委任事務とはどういうものであるべきかということは一応言っておるわけであります。  おおよそ行政事務というものは、先生よく御承知のとおり、純粋に全国的統一性、公平性を確保する必要があるものから、専ら地域の実情に即して処理すればいいという形のもの、その中間で、両方の点を十分調整する必要があるものまでさまざまございます。真ん中のものにつきまして、御案内のとおり機関委任事務団体委任事務の両方の制度がございますが、臨調答申は、事務性格から厳格に全国的に統一性、画一性を維持する観点から、それが必要なものについては機関委任事務制度というものが必要であり、かつ有効であると言っておるわけであります。  しからば、どのようなものが機関委任事務であるべきかという基準的な考え方につきましては、先ほど佐々木局長から申し上げましたように、例えば国政選挙事務、戸籍事務等々、あるいは権利能力を付与するような問題とか、さまざまございまして、七つぐらいの基準その他ということで挙げておりまして、大体こういった線で機関委任事務というものはあるべきだということを行革審ははっきりと答申しておる、こういうことでございます。
  96. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 時間がないので具体的なことを聞きますが、今度の整理法案の中で団体事務化というのがあるのです。この中で厚生省の十八項目のうち四項目が今回の法案で新たに条文を起こしておるのです。私は、これはちょっと理解に苦しむのですが、どういうことなんですか。簡単に答えてください。
  97. 佐々木晴夫

    佐々木(晴)政府委員 これは厚生省関係社会福祉関係の老人施設だとか精神薄弱者援護施設その他につきまして、従来の長期滞在のものの治療のほかにデイサービスとかショートステイを設けることにいたしております。これは従来から事務として行われておったものですけれども、これを長期療養のものとの対比でもって団体事務として位置づけたというのが、先生言われるところの新たに条文を起こしておるというものではなかろうかと思います。
  98. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 そうすると、これは機関委任事務団体事務化するということでしょう。今までこれは条文も法律も何にもなくて機関委任事務になっておったのですか。
  99. 小林功典

    小林(功)政府委員 今お話しのデイサービスとショートステイでございますが、これは従来、機関委任事務ではございません。予算措置でやっておったわけでございます。したがいまして、強いて言えば市町村の固有事務という認識でございます。  ただ、それをやっています施設が、例えば特別養護老人ホームでありますとか養護老人ホームでありますとか、そういう入所措置を伴う施設に付設してやっておったものですから、それにあわせて、附属事業である、あるいは附帯事業であるデイサービス事業あるいはショートステイ事業も施設と同様に団体委任事務にした、こういうことでございます。
  100. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 市町村の固有事務のものを何も今団体事務化することはないでしょう。これは整理じゃなくて格上げじゃないか。法律も何もなくて、補助金を出して仕事をさせて、それが機関委任事務だ。それが、今度整理するというので、整理に都合が悪いから条文を起こしたということだね。違いますか。
  101. 小林功典

    小林(功)政府委員 そういうことではございませんで、従来法制度がなかったわけでございます。予算措置で対応していたわけでございます。ただ、その事業を従来から法律規定されて存在しておりました特別養護老人ホームあるいは養護老人ホームといった施設で同時にやっておったものですから、その施設とあわせて整理をしたというだけで、別に格上げとか格下げとかそういう性質のものではございません。
  102. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 おかしいんだな。今ここに法律を出さなければいけないようなものなら前に法律が必要だと私は思うのですよ。前に法律が必要でなくて今ここで法律が必要だなんて、そんなばかな話はないと思う。自治法でも、百四十八条に機関委任事務にするときは法律または政令によることとちゃんとあるのですよ。それを、法律も何もなくて実質的には機関委任事務をやっているのじゃないか。そして今これを整理しようとして法律を出してくる。今法律が必要なら前に法律が必要でしょう。
  103. 小林功典

    小林(功)政府委員 実は老人福祉の分野につきましては、従来はどちらかといいますと施設が不足しておったものですから、その収容施設をなるべく整備するということで社会福祉事業をやっておったわけです。それに対して最近は、御老人はやはり住みなれた土地で家族に囲まれながら過ごすのがより幸せであるという一つの哲学がございまして、在宅福祉が重点になってきたわけであります。ですから、施設とそれをパラレルに措置したというだけの話でございます。
  104. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 だけの話ではないんだ。大臣、こういうふうに法律も何もなくて、ただ予算だけで機関委任事務をやっておるのはたくさんあると思うのですが、これはやはり何かおかしいですよ。私はこういうものはきちっと整理する必要があると思うのです。  それから、団体事務化ということの意味が私はよくわからぬのです。団体事務化するものが十七法律、三十三項目ありますけれども団体事務化というのは団体委任事務であるのか団体自体の事務になるのか、どっちなんですか。
  105. 佐々木晴夫

    佐々木(晴)政府委員 団体事務化という言葉を使っておりますけれども、より具体的には団体委任事務にするということであります。
  106. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 それではなぜこれを団体委任事務と書かないのですか。明瞭に団体委任事務であるというならここに団体委任事務と書けばいいではないですか。なぜ団体事務化と書いてあるのですか。後ろに何か意図があるのじゃないか。
  107. 佐々木晴夫

    佐々木(晴)政府委員 行革審で団体事務化という言葉を使っておったものですから、そのまま団体事務化という言葉を使ったわけであります。それで具体的には、自治法で固有事務とか行政事務とか公共事務とか団体委任事務、こうしたものがまず定められておりますけれども、このあたりを全部含めまして団体事務という言葉を使っております。  ただ、おっしゃるように、機関委任事務団体事務化するに当たりまして、法令でもって当然その基準があるわけですから、その基準に従って地方公共団体においてやっていただくということになります。具体的に言いますと、今回の機関委任事務整理合理化の際の団体事務化というのは、法令があるわけですから、これは団体委任事務ということに改めてまいる、こういうことでございます。
  108. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 そうすると、ここに出ている十七法律、三十三項目というのは全部団体委任事務ですね。
  109. 佐々木晴夫

    佐々木(晴)政府委員 そのとおりであります。
  110. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 厚生省の方、来ていますね。一つ、非常に具体的なことを聞きます。  私はさっきから何にも実効のないものを出しておると言っておりますけれども、これは実効のあるもので、機関委任事務を廃止しろというのでよく例に挙げられるものに民生委員制度があるのです。私はこれは真っ先になくした方がいいと思うのです。  大臣、聞いてくださいよ。さっきもちょっと申し上げましたけれども、民生委員制度については民生委員法というのがあります。これは、民生委員の定数だとか選任の方法だとか職務の基本だとかいうものを決めてあるのです。この法律があるために、さっきも言いましたとおり一番下の市町村の段階では民生委員推薦会というものをつくっているのです。これは民生委員を推薦する会です。民生委員が何人要るか、厚生大臣の定める基準に従い知事が定めると書いてあるけれども、何人だかわかりませんけれども、それをやるためにまず民生委員推薦会というのがある。八条に若干人と書いてあるけれども、何人だかわかりませんが、これはかなりな人数なんです。そこですったもんだしまして、まずそれを決めるのに大変な手間がかかるのです。  これは、市町村の議員がおりまして、自分の選挙に有利にするためというのでいろいろな者を引っ張ってきて、まずこれを決めるのに大騒動なんです。そしてその中でまた今度は民生委員を決めるためにすったもんだして、大変なものなんです。私は市長をやってまいりましたからよくわかります。大変な手間がかかるのです。そして、これに一々全部辞令を出すのです。何回も市役所に招集して、会議を開いて、大変な手間がかかる。そうしてあげくの果てに委員を決めるのですが、それで決まらない。  今度は、県の知事のところに民生委員審査会というものがある。これも長を含めて最低十人、今度は何かと一緒にして、兼任をして間に合わせるようにしたようですけれども、最低十人いるのです。そこへ行ってまたすったもんだするかというと、これは恐らくすったもんだしないと思いますよ。何もわからないから下から上がってきたものをただそのままトンネルで通すだけなんです。これも十人か何人、形式的に辞令を出して、下から来たものをやらなければいかぬのです。そこへ行ってもまだ決まらない、厚生大臣のところに行く。厚生大臣に一体何がわかりますか。厚生大臣が形式的にやる。今度はまた同じように知事の審査会にやって、これでよろしいと言って大臣から来ましたと言って、またそこで大会議を開いて、また市町村へ来て推薦会で大会議を開いてようやく決まるのです。  そして決まったその民生委員が一体何をやりますか。法律で民生委員というものは自分の市町村の範囲だけやりますとちゃんと書いてある。なぜ市町村のことしかやらないのが、知事のところへ行って、大臣へ行って、また同じ筋道でバックしてきて、往復運動してこんなものを任命しなければいけないか。これは、さっきもちょっと言いましたが、大変な手間暇がかかりますよ。これがなくなったら、恐らく市町村の民生委員関係の人が半分ぐらい要らなくなりますよ。これは大変なんです。  この民生委員制度機関委任事務を廃止しろという例にしょっちゅう出されるのです。私はさっきから実効のないものばかり出しておると言っておるが、今回これをやめたら、市町村の固有事務にしてしまったら大変な経費の節減になりますよ。こういうものをなぜ出してこないか。しかも、これを市町村の固有事務にしたって痛くもかゆくも何ともない、かえっていいのですよ。こういうものを出さないで、何にもならないものばかり出してきておるのです。大臣、だから私はさっきからこんなものは何にもならぬと言っているのです。本当にやりたいならば、本当にやるつもりならば、こういう民生委員制度というものは、これに一項を追加して市町村固有事務にする。廃止というところに、こういう民生委員制度を廃止すると言って一遍出せばいいのですよ。機関委任事務をやめる。どのくらい喜ぶかわかりませんよ。厚生省と大臣の意見を聞きたいのです。これを廃止して市町村の固有事務にする考えはありませんか。
  111. 小林功典

    小林(功)政府委員 先生よく御案内のように、民生委員は社会奉仕の精神、いわゆるボランティアで社会福祉の第一線で活躍をしていただいている方々ばかりでございます。したがいまして、私どもは、社会福祉責任を持つ厚生大臣が直接御依頼申し上げるのが筋だろうということで従来からやっているわけでありますし、また、さっきちょっと総務庁長官もおっしゃいましたように、民生委員の方自体も大臣の委嘱を望んでおられるということもはっきり言ってございます。したがいまして、市町村の固有事務にするというわけには私どもとしてはまいりません。
  112. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 要するに大臣まで行く、知事まで行くことは何も必要ないけれども、厚生大臣から任命されたい。厚生大臣の方はそれを任命して、民生委員という全国的な大きな組織をきちっと握っていたいということなんですね。それだけの話なんです。厚生大臣から命令する効果というものは何もないですよ。ただ形式的、それだけです。こういうものを廃止しないでどうして一体この機関委任事務整理ができますか。どうですか、厚生省ではなくて大臣から聞きたい。
  113. 玉置和郎

    ○玉置国務大臣 私の兄貴も今市長をやっておるのですよ。この民生委員の選定について大変な苦労をしています、あっちからこっちから言われて。私の兄貴は選挙に強いものですから余りそのことは関心を持たないのですが、このやり方については、言われるとおりやはりいろいろと選挙も絡んでおってやっておられると思います。  しかし、とにかく民生委員になられる方は大変な御苦労でございまして、それなりに地域に対して大変な奉仕活動をしておられる、それは高く評価するものですが、民生委員になられる方も人間でございます、それだけに厚生大臣のお墨つきをもらうということは将来において叙勲の対象にもなるというようなことでございまして、その辺がやはり難しいですね。しかし、これは検討せんならぬ問題だ、私はこう思いますから、私からもまた厚生大臣にもお話を申し上げたいと思います。
  114. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 時間になりましたから最後に一つお聞きしたいのですが、権限委譲という字です。厚生省の方は委譲という字に委ねるという、委任の委を使っているのです。ところが、自治省の方は移すという字を使っているのです。全く同じ文章の中で使っているのですが、なぜ厚生省、総理府と、自治省とは違った字を使っているのですか。
  115. 佐々木晴夫

    佐々木(晴)政府委員 大変お詳しいので感心をいたしますけれども、この権限委譲という言葉につきまして、この法案の前提になりました行革審答申でもこれは委譲という字を使っているのです。それで、内容的にも知事への機関委任事務として国の事務の管理を委ねるということでありますから、これは用語と内容が一致するということで、委ね譲るという字を私ども総務庁の方では使っているわけであります。  自治省の方では移すという字を使っていらっしゃるのですけれども、これは自治省の方からの御答弁があるものと思います。
  116. 森繁一

    ○森(繁)政府委員 自治省の方では従来から機関委任事務団体事務化等の地方への権限移譲につきましては、当該事務につきましての権限が端的に地方団体の方に移る、こういう意味で移す譲るという字を使っております。本来の権限は国に残っており、それを地方に委ねるという、委ね譲るという言葉は使用しておりません。地方制度調査会の答申におきましても、移す譲るという言葉を使っております。
  117. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 大臣、今両方のあれを聞いてどう思いますか。委ねるの方がいいか、移すの方がいいか、どっちと思いますか。
  118. 玉置和郎

    ○玉置国務大臣 今はこのままそっとしておいてください。
  119. 佐藤敬治

    佐藤敬治委員 終わります。
  120. 石川要三

    石川委員長 大原亨君。
  121. 大原亨

    ○大原(亨)委員 今佐藤委員の質問を聞いていたんですが、最初に、これは全体の問題ですが、行政改革のプリンシプル、何を目標に行政改革をやるのか、こういう点について、今までいろいろと議論がありましたが、ひとつまとめて簡単に言ってください。非常に大きな質問ですよ。
  122. 佐々木晴夫

    佐々木(晴)政府委員 臨調それから行革審の答申を受けて私ども行政改革を進めておるわけでありますけれども、臨調、行革審におきまして行政の目標としまして、活力ある福祉社会の建設とそれから国際社会に対する責任を全うしていく、この二つを挙げておるわけであります。二十一世紀に向けて活力ある福祉社会を建設するために、それからまた国際社会への貢献ということでもって、私ども行政見直しを行っておるということでございます。
  123. 大原亨

    ○大原(亨)委員 効率化とかいろいろ言われましたが、そういう面で言えばどうですか。
  124. 佐々木晴夫

    佐々木(晴)政府委員 臨調で行政改革の観点というのを挙げております。これは変化への対応というのが第一で、総合性の確保それから簡素効率化それから信頼性の確保、この四点を行政改革の観点として掲げておるわけであります。
  125. 大原亨

    ○大原(亨)委員 権限委譲の問題、この法律の問題は権限地方に委譲する問題ですね、長官。  もう一つ加えると、分権化ということも行政改革の目標としては重要ではないか、一つのプリンシプルとして掲げるべきではないかと考えますが、いかがですか。
  126. 玉置和郎

    ○玉置国務大臣 分権化を進めたいということでいろいろお願いをしておりますので、その精神に沿ってやっていきたいと思います。
  127. 大原亨

    ○大原(亨)委員 簡素とか効率化とか公平とか、あるいは変化する時代に対応するという問題ですね。高度成長時代の行政について、このままでいいというふうには私どもも考えないわけです。ですから、そういう変化に対応する真に民主的な行政改革はどういうことかということで議論をしていると思うのです。  それで、分権ということについても長官はお話しになりましたが、あなたは行政監察をされておりますが、今の行政の欠陥は、やはり中央集権で、しかも縦割り行政である、省別の縦割り行政であるだけでなしに、一つの省内においても、厚生省内においても縦割り行政である。たくさんの法律があって、補助金をとるために、町会議員さんや村会議員さんや皆さん団体長が陳情するという、中央政府に対する参勤交代というか選挙運動というか、陳情政治がある、これを整理して、そして行政の重点を地方に移していって、そして住民に直結した民主主義の政治を確立するというのは、私は大きなプリンシプルであると思うのですね。それは長官が答弁されたことと同じですか。
  128. 玉置和郎

    ○玉置国務大臣 私は、かねてよりこの陳情政治についてはやはり限界を心得べきだということを言ってきました。かつて総務会におりましたときも、年末の予算編成のときに大挙してやってこられる地方自治体の幹部、そしてまた団体の長、大群のように押しかけてきてそしてやる、しかもそれが各省庁の指示に基づいてやる傾向があり過ぎる。そこで、そういうものについては廃止しろ、そういうことをやるものについては予算をつけるなと総務会で厳重に言ったことがありますが、私は今先生におっしゃっていただきましたとおりの考えでございまして、今もなおこの問題については、この年末にも控えるものは控えるというふうにしていきたいと思いますし、また、この行財政改革をやってみまして、やはり節がたくさんあり過ぎる、市町村、県、それからまた農政局だとか建設局だとか各ブロックにある、これもやはり節をなくするということ、これがやはり大事じゃないか。  陳情するのにも、県に行って、また、私が出た和歌山ですと、京都に出たり大阪に出たりして陳情して、そこからまたこっちへ上がってくる、その旅費たるものや経費は大変なものでございまして、これが改革されるだけでも大変な改革になるのじゃないか、私はこう思っておりますので、その趣旨を踏まえてさらに関係のところで発言をしてまいりたい、こう思います。
  129. 大原亨

    ○大原(亨)委員 今度の権限委譲もその趣旨に従ってなされるということでなければならぬし、そうだろうと思うのですね。  ただ、今までずっと議論がありましたから、私もメモを見せてもらいましたので重複を避けたいと思うのですが、しかし、知事や自治団体、六団体の権限委譲に対する要望事項と、今回の行革審あるいは閣議決定に基づく政府提案との間においては、まだかなりの開きがある、たくさん課題があるのではないか。  今回の委譲措置で、これは総務庁か何かの外郭団体の機関紙の中に出ているのですが、これはもう見られなくても皆応用問題ですからいいですが、今回やった権限委譲はごみのようなものだというふうなことが書いてございまして、なるほど大分綿密にやっているようだけれども、大して権限委譲と言われるものに相当するものはない。ごみのようなと書いてありますから、政府の外郭団体としては相当思い切ったことを書いてあると思うのです。これからがやはり大切であるということだと思いますね。だから、自治体の側から見て、こういう権限については県や市町村においても行政能力はあるし、そこでやることが必要ではないかということ。  これからの二十一世紀にかけましての高齢化社会で、言うなれば低成長時代ですから、高度成長のようなことはできないわけですが、しかしプリンシプルとしては二つあると思うのです。一つは、学者の間でほとんど定説になっておりますが、行政のインテグレーション。インテグレーションというのは統合というのですかね、インテグレートすることが必要だ。縦割りをまとめてみて、国民の一人一人の生活の観点から行政をサービスしていくことが必要であるというインテグレーションということ。  もう一つのプリンシプルは、ノーマライゼーションというわけですね。例えば老人の施設でも、今度出ておるのですが、障害者の福祉施設等にいたしましても、町の郊外の山の中につくるというのでなしに、小規模でもいいから町の中へつくっていく、そして、日常生活、在宅との連携をうまくしていって、その地域において精神障害者その他等含めて、いろいろな福祉のそういう施設というものは生活の中でやはり制度を充実させていかなければならない、そういうことをノーマライゼーション、こう言うわけですが、私は、その二つの観点を十分考えるということになれば、分権ということは、権限委譲ということは非常に重要なことではないか、こういうふうに思います。  私が申し上げたことを御理解いただけますか。
  130. 玉置和郎

    ○玉置国務大臣 よく理解できます。しかし、先生、私は英語は弱いので、日本語でうまいこと話してもらわぬと。しかし、大体のことはよくわかります。
  131. 大原亨

    ○大原(亨)委員 玉置さん、健康に気をつけて、長いこと長官をやってくださいよ。  今、今度の法律の評価の問題があるのですけれども、この中で厚生省が非常に多いわけですね。厚生省の中で、この提案こそは画期的なものである、こういうものがあったら二、三挙げてみてください。これは今までから考えたら大変に変わったものだ、ごみのようなものでないというものをひとつ挙げてみてください。
  132. 長尾立子

    ○長尾政府委員 お答えをさせていただきます。  この法律案の中の厚生省関係の内容でございますが、まず機関委任事務整理合理化関係では、事務を廃止または民間委譲するものが調理師試験等の三事項でございます。  団体委任事務化いたしますのが――今先生お話しの、いわば最も身近なところが福祉の仕事について権限を持っていくという形では団体委任事務化というのが大きいかと思いますが、これにつきましては、身障福祉法、老人福祉法児童福祉法等の私どもの抱えております福祉事業のうちのほとんどのものにつきまして団体委任事務化するということが今回大きな事項ではないかと思います。
  133. 大原亨

    ○大原(亨)委員 これは引き続いての質問ですが、佐藤委員の質問の中で最後の質問を聞いていまして、在宅の短期入所の問題を新たに団体事務化したという問題について政府の方が答弁して、佐藤さんの方は全体的にこの問題の制定の意義について議論していましたね。  私は、日本の福祉の問題では、社会保障の問題では年金も、時間があれば後で申し上げるのですが、基礎年金を初め世界にないような欠陥が非常にございまして、これはぜひ改正しなければならない。もう一回昭和六十五年、七十年にかけまして大改正が必要である。昭和七十年に公的年金一元化を目標にしているのですが、閣議決定しているのですが、どういうプロセス、過程を通して改革するのかという案は今全然ないのです。昨年私は、十一月でしたか、中曽根総理大臣の出席を求めて、国鉄の共済について全体を見た上での統一見解を求めましたけれども政府は何回もお経のように予算委員会その他で答弁しております。しておりますが、それを一歩突き進めてみますと、年金の制度も今のままではもういけないのです。どうするかということについても政府はないのです。それから、医療保険についても今非常に大きな問題を抱えておるわけです。そして、医療保険と非常に関係の深い社会福祉サービスの面においては、これは国際的に見ましても、高齢化の先輩国に比較をいたしましてまだまだ全然なっておらぬわけです。その一つのことが今議論になっておるわけですね。  年金とか医療とかいうのは、内部にたくさんの矛盾を抱えているのですが、水準はある程度進んでいる。例えば障害者問題等については、文部省関係の障害者教育等については、その路線の上では一定の水準には行っておるわけです。しかし、今議論をしている福祉五法の関係社会福祉施設またはサービスと言われる面は、日本は最もおくれておるのです。これはまさに自治体が中心となって責任を持って、政策の統合、インテグレートをやって、そして高齢化社会に対応しなければ、社会は支離滅裂になるわけです。自由とか平等という民主主義の原則ですけれども、自由自由ということで、もちろん効率化も必要なわけですね、むだを省くことが必要なんですが、平等ということがなかったら、これは社会的な連帯が崩れるのですから、そういたしますと、議会制民主主義、民主主義の基本が崩れるということになるわけです。平和の基礎が崩れるということになるわけです。  そういう点で議論しておりますと、今の議論は、団体事務化したものの中には、各福祉五法ですか、五法の中にそれぞれ在宅の短期入所についてこれを団体事務化するということを明文化した、政府の答弁ですよ、佐藤委員の質問に対しましての答弁ですが、そういうことが今回の提案の一つの特色であるというように言われておるわけです。予算措置でやっておったものを、それを法律にして、そして団体委任事務とした、こういうことですね。  これはこれからは非常に重要なことなんです。短期入所というのは毎日毎日の、一日一日ですから、デイサービスというのが一つあります。お年寄りや精薄や障害者の方々を、朝一緒に行きまして、そして夕方連れて帰る一日のデイサービスというのが一つありますね。それから、よく言われているショートステイというのは、そういう寝たきり老人とか痴呆性老人等を抱えておりましたら、家族は、一人は全くくぎづけになるだけではなしに、家庭生活が崩壊するわけです。ですから、そういう人々を一週間なら一週間預かってもらって、そして旅行するとかあるいは一つのまとまった仕事をするとかということが、ノーマライゼーションと言いましたが、生活の周りにそういう施設があるということが望ましい。福祉五法の全部の施設はそうですね。そういう施設の一つとして、在宅の今の短期入所のデイサービスやショートステイ等と言われているものを団体事務としてやったということですね。  これは私はそれなりに、私の観点からいえば意味がある。もっとも佐藤さんは、そんなものは予算上の措置で実際やっておったものであって、固有事務と同じものじゃないか、固有事務と同じものを団体事務としてやったといって、そしてここへ法文として挙げておくというのは、そんなに大したことはないじゃないかと言う。そういう側面もありますよ。ありますが、私が言ったような側面がある。  ただし、そういう場合には受け入れの施設が必要なわけです。施設がなければいかぬです。デイサービスとかショートステイで、身近なところ、例えば中学校なら中学校区ごととか小学校区ごとに、小さくてもいいからそういうところがないと、これは大変なんですがね。だから、そういう面をどう拡充するかということに政策の背景がなければいかぬわけですよ。  質問ですが、市町村の言うなれば団体委任事務にする、団体委任事務にして、デイサービスとかショートステイで預かってくれる施設というものの建設、受け入れ態勢はどういうものであり、どういう現状であるかという点をひとつ聞いてみましょう。
  134. 小林功典

    小林(功)政府委員 先生おっしゃいますように、確かにデイサービス、ショートステイはこれからの社会福祉の重点だと思います。在宅福祉の重視という意味で重点だと思います。  そこで、確かにおっしゃるように、それを受け入れる施設がなければいけません。そこで、私どもはそれの計画を一応持っておりまして、昭和六十年代に三千カ所を全国に配置するという計画で、かなり大幅な増設を本年もやりましたし、来年度の概算要求でも要求をしているところでございます。それから、六十年代に三千カ所を整備いたしまして、その後は、できれば中学校区に一カ所ずつぐらいを整備したい、このような計画を持っております。もちろん、時間がかかりますけれども、計画的に整備を進めてまいりたいと思っております。
  135. 大原亨

    ○大原(亨)委員 まあ昭和六十二年ですから、これから八年間に三千カ所をやるといいましても、一市町村について一カ所か、あるいは大きな市町村では何カ所かということになりましたら、百万都市の広島とか二百五十万都市の名古屋とか、東京なんかに至っては物すごいわけです。  そういう面において、例えばそういうことを厚生省だけでなしに政府全体の計画にすることが必要だと私は思う。そしてこれだけは大蔵省もちゃんと、防衛なんかも議論がここであるわけですけれども、計画計画で先取りしてやっているのですから、継続費を使い、後年度負担でやっているのですが、そういうものこそ政府全体の計画にして、老人福祉を初め福祉五法の機関委任事務あるいはこれを整理をいたしまして団体委任事務にするというふうなことの中には、そういう裏づけをぜひやらなければ、そういう法律をつくりましても固有的な団体委任事務にはならない。そういうものについては、特に国全体として計画を持ちながら自治体が対応できるようにしていくという中期、長期の計画を、こういうものこそつくるべきであると私は思うのです。  言うなれば全体について発言をする総務庁長官ですから、私の意見についてどういうふうにお考えですか。
  136. 玉置和郎

    ○玉置国務大臣 私も所管外ですから余り詳しいことは知りませんが、斎藤厚生大臣から老健法の話を聞いておりまして、今御審議をいただいておりますが、老健法の中に先生がおっしゃっていただきましたような施設について考えていくのだということを聞きました。  もともと私は、老人というものが残る余生を大切にして生きていきたいというときには、家族となるべく近づいたところでやっていきたい、こういう願いは皆持っていると思います。しかしその場合に、保護者の方が参ってしまう、そして一般社会活動ができないという場合がたくさんあると思います。それだけに、町村単位といったら余りにも多くなりますが、そういうものについては組合立のことで今いろいろやっておりますが、その辺あたりに、小さくともいいからそれぞれ保護者の方と週に二回なり三回なり意思が通い合えるようなものをつくっていきたいなというのが私の日ごろの念願でございまして、先生も長い間社労に関係しておられましたが、私も社労の理事を参議院で十年連続してやっておりましたので、ほかのことは余り知りませんが、そのことだけは大事だな、こう考えておりますので、よく理解できます。  それだけに厚生大臣にもこういう論議があったということを申し上げまして、機会があったらまた閣議等で発言をしてまいりたいと思います。
  137. 大原亨

    ○大原(亨)委員 社労におられたわけですし、あなたの発言もそうなんですけれども、これから高齢化社会になりまして、今福祉五法の問題を含めて議論しておるわけですが、この中には特別養護老人ホームというのもあるのですね、これは重度の寝たきり。それから養護老人ホームというのもあります。もちろん保育所等もあるし、障害者の施設等もあるわけです。収容施設があるわけです。これは申し上げたように、地域に近いところでやる、そして計画的に全国の水準を引き上げていくことが必要だ、そういう財政の裏づけ等を国はなすべきである、これは非常におくれている面ですね。  もう一つ、在宅の短期入所の問題がここに書いてあるのですが、今の老人保健施設というのは中間施設ですから、病院と在宅との中間にあるのですから、これも地域に密着した格好で設備がなされなければいかぬわけですね。ただし、これは入ろうと思う人の契約によって入るのですから、入所の措置行政関与するのではないわけです。これは契約で入っていくわけです。しかしながら、それは老人保健施設という中間施設を全国にばらまく、三十万ベッドという構想を持っているんですが、具体的な裏づけはありません。その性格をめぐって今議論しておりまして、今参議院に回っているわけです。これも中間施設の問題です。  全体がおくれておるわけですけれども、日本の在宅の福祉の中でさらに最もおくれておるのは何かといいますと、例えば寝たきり老人あるいは痴呆性老人等も二十一世紀へかけて倍以上にふえていくわけです。それから、障害者その他の福祉施設も、いろいろな形で障害者がふえて複雑化しておるし多様化しておるわけです。寝たきりとか痴呆性老人というのは、人間が最後になって重度の障害者になるということですから、これは高齢化社会の最大の社会問題です。そのときに、特別養護老人ホームとか中間施設あるいは緊急性のあるものは病院とかというふうにそれぞれやろうというのですが、それがむちゃくちゃになっておるから整理しようという政府の意図ですが、それはいろいろな議論もあります。  そこで問題なのは、福祉サービスの面で在宅なんです。在宅の福祉サービスとはどういうことかというと、家に寝ておるお年寄りとか寝たきり老人とか痴呆性老人あるいは重度障害者とか精薄の方、そういう人を抱えて在宅で治療しておる人がおるわけです。これも高齢化社会の非常に大きな社会問題です。最大の社会問題です。この問題を処理しないといけないわけです。  高齢化率は、大都会周辺の団地は少ないのです。しかしながら、農村とか古い都会などは、古くから住居が続いておるところは四世代のファミリーになるのです。ひいおじいさん、ひいおばあさんがおるのです。ですから年金とか医療とか福祉施設サービスが必要ですが、サービスの中で日本は非常におくれておるわけです。  これはホームヘルパーとか介護人です。今ほとんどは在宅しておるわけですから、特別養護老人ホームは十万ベッドくらいしかないのですから、六十万人くらいの対象の場合にはほとんど四十万人くらいは在宅なんですから、だから入所する場合、ショートステイだって今限られておるのですけれども、できることは在宅のそれらの人々に対する、今までは非常に低所得階層に限定いたしまして、一週二日間で時間を限定してやったわけですが、そうでなしに一週のうちで三回、必要ならば四回でも五回でも行けるような介護人が必要なわけです。そうしないと、税金の使い方にも関係いたしますが、公平なことにはならないし、社会問題を解決することにはならないというわけです。  例えばヨーロッパの方は、スウェーデンは東京よりも人口が少ないわけです。千何百万、千二百万人くらいですか。しかし、ホームヘルパー、介護人は五万人以上いまして、そういうときには心配ないような措置をとっておる。もちろんこれはボランタリー活動も兼ねたものです。賃金労働者的な感覚でなしに、ボランタリー活動も兼ねたものですが、そういうものもある。しかし、東京は一千二百万の人口の中でホームヘルパーは何人でしょうか。大体何人くらいおりますか。答えられる人は手を挙げてごらん。――頭をひねるような答弁はいい。大体四千人台です。これは所得を制限した上に、所得を制限するといいましても、かなりの所得のある人でも、そういう寝たきりの老人とか障害者を抱えましたらこれは大変なことなんですよ。特に大都会においては大変なんです。住宅環境がよくないですからね、そういう障害者の対応できる環境にないですから。例えばスウェーデンでしたら、デンマークでしたら、あるいは西ドイツ、全部そうですよ。  これから日本は高齢化社会になるのですが、今零歳の人の平均余命率が世界一高いのですが、しかし、それ以外に、高齢化に行くスピードが速くて高齢化が世界以上に進むということで、これから十年、二十年、三十年が大問題だというところに問題があるわけです。ですから、在宅の福祉を言った場合には、ホームヘルパー、訪問看護、そういう網の目をつくっておかないと本当に家庭崩壊を招くところがたくさんある。今随所にあるというように私は思うわけです。そして、今在宅の短期入所の団体事務化の問題がありましたが、やはり福祉サービスを、介護人その他を計画的に充実させていくということは絶対に必要なことである。このことをやらないと雇用問題も何も解決しないということです。  ですから、こういう問題についても長期計画を立てて、そしてこういう権限委譲とともに中身のある地域福祉というものをつくる計画が必要である。それは防衛計画にも決して劣らない、それ以上の重要な問題である。むしろこの方が先であるという考え方で処理をしなければいけない。片っ方は、十年前にGNP一%の議論をしまして、デタントの時代であったと言われるのですが、その後緊張の時代があって、今度はデタントにならなければ全世界は全滅する、軍縮の時代にならなければならぬという時代になっておるわけです。  ですから、日本は平和国家としてそういうスタンスを明確にするという意味においても、施設と一緒にサービスについても中期、長期の計画を立てて、政府がこれを閣議で認めてそして計画的にこれを整備しなければ、権限委譲にタイアップするような中身のある行政はできないのではないかということでありますが、これは力のない厚生省が言いましてもなにですから、長官の方から政治的な決断の答弁をいただきたいと思います。
  138. 玉置和郎

    ○玉置国務大臣 貴重な意見でございますので、十分腹の中に入れて対応していきたい、こう思います。
  139. 大原亨

    ○大原(亨)委員 今度、権限委譲の事務整理いたしました中に医療関係もあるわけです。医療関係が非常に多いのです。特に日本の医療制度というのはこれは非常に大変なんです。これから五、六年後のことは考えられないように、老人保健法を審議したって、これはどこまで続くかわからないですよ。  それで一つの問題は、私は長官に、あなたも社労におられて感じておられると思うのですが、ぜひ関心を持って行政監察をしてもらいたいという点にも触れるのですが、その前にちょっと政府に答弁をしてもらいましょうか。  昭和六十一年度の全国民負担をしている国民医療費、それから昭和六十五年に推定できる医療費、それは大体一年間に何%の医療費の増大として見ておるのかという点について簡単に答弁してください。
  140. 下村健

    ○下村政府委員 国民医療費でございますが、昭和六十一年度が十六兆七千六百億円、大体今年度の伸び率四・九%と見込んでおります。  それから六十五年度の総医療費、これは前提条件によりましてなかなか難しゅうございますが、一応現在のところ私どもが見ておりますのが二十二兆、平均七%の伸びになるというふうに考えております。
  141. 大原亨

    ○大原(亨)委員 大臣、答弁がありましたように、七%プラスアルファの伸び率が予想できる。それは実際上さらに伸びるかもしれない、制度のつくり方ですが。つまり、低成長時代に入って国民所得あるいは賃金所得を超えて医療費が増大するというところに一つの構造的な問題があるわけです。ただし、必要であるならば、年金が成熟するに従って給付がふえるのですから、そのことを当然のことの計算で考えなければいけない。これは租税と社会保険料の負担率で今三六%ですが、それを四〇%の前半にするか五〇%までにするかということの議論があるのですが、これは私の議論としては必ずしも低い方がいいとは言えない。税金も適正に取り保険料も取って、所得を再配分しながら生活を安定させる、こういうことは必要である。これは当然の政治の機能であると思うのです。この議論は私は今はいたしませんが、国民医療費は非常に大きな問題になっているのです。  そこで、これから質問に入る前に、長宮、あなたは行政監察の名人というか非常に威力を持って発言をする人ですから、これは私は上手を言うておるわけですが、申し上げておくのですが、一人当たりの医療費を市町村別に調べてみますと、大変な格差があるのですよ。市町村別の資料というのはなかなか難しい、非常にたくさんありますから、それをまとめて都道府県別に計算しましても、国民医療費を形成しておる一人当たりの医療費というのは非常に格差があるのです。俗に西高東低と言われるのです。大阪とか京都は高いのです。それで長野県とか静岡県は半分程度なのです。そして全体としては十六兆円であり二十二兆円であり、年に七%以上の増大になっておるわけですね。西高東低のことで言いましたが、私が言ったことは倍半分と言いましたが、政府委員間違いないですね。
  142. 下村健

    ○下村政府委員 医療費、実は今一番高いのは広島県でございまして、五十九年の実績で十七万九千二百四十五円。それから次が北海道でございまして、三位が高知県、四位山口県、五位富山県というふうな順番になっております。それから低い方は、一番低いのが沖縄県でございまして八万七十一円。したがいまして、一番高いところと低いところを比べると倍以上の開きになっておりますが、千葉、埼玉、茨城、栃木という順番で低くなっております。千葉県が九万九千三百二円ということで、千葉、埼玉あたりと比べますと約七割増しか八割増し、そんな感じになっております。
  143. 大原亨

    ○大原(亨)委員 長官、広島が出たから悪いけれども、全然そういうことは考える必要はないのですが、あの中に割合近畿地方は出ていないね。玉置さんのところは出ていないね。
  144. 下村健

    ○下村政府委員 十位まで申し上げますと、六位が岡山県、七位福岡、八位京都、九位長崎、十位徳島という順番になっております。――和歌山県はちょっと今持っておりませんが、恐らく十位台だったというふうに覚えております。
  145. 大原亨

    ○大原(亨)委員 高齢化の比率とかそういうものは、大体比率というようなものは余り変わらないのですよね。それは地域によって違うのですよ、高齢化の比率は。過疎地帯は非常に高いですよ。三〇%を超えておるところがありますね、町村で。そうかといって、六、七%のところもあるわけですよ、新しい新興の都会は。それから住宅、新しい新興団地がふえておる周辺の土地なんかというのは、若い家族が多い世帯が多いですから、これは非常に低いわけですね。そういうこと等もあるわけですが、高齢化率等もあるのですが、それを考えてみましても、一人当たりの医療費について七割増しというようなところがあるのですね。  北海道が高いというのは、何か冬の間に入院したりして働いておるときのなにをいやしたり、治療したりする習慣があるとかいう話がありますが、どうかな、ほかにないから病院に行くということもあるかな、わかりませんよ、それは。私が一言多いかもしらぬけれども、非常に高いです。  そういうことについて行政監察をして、適正な医療というのはどうあるべきか、臨調の答申を見てみましたら、私も一わたり見たのですが、これは大体古くなっておるのですよ、年金でも何でも。しかし、そこにはやはり乱診乱療による、必要以上に医療機関にかかることによる医療費の増大というのをトップに一項目を挙げていますね。やはり日本の医療保障を整備するためには、医師もコントロールしなければならぬ、患者もコントロールしなければならぬ、そうして政府も全体を見て、言うなれば効率のある行政が必要であるということがあると思うのですよね。  一時の医療費の状況が少し流れが変わっておる、今の発表を見ておりますと。流れが変わっておることに注目しなければなりませんが、しかし、全体的に給付と負担の公平を期するという医療改革の方向を行革審も出しておるのですから、給付の中身というものを含めて、一人当たりの医療費がこんなに差があるというようなことは問題ではないか。そういうことをきちんと整理をしないで、こうあるべきだ、大体において常識的にこうあるべきだということをやらないで、負担について、どんどん国庫負担をカットしまして保険医療に切りかえていくようなことや患者負担をふやすというようなことは、これはざるの中に水を入れるようなものではないか。  この点については厚生省は、自分でやっておるのですから、自分のことはわからぬ、わかっておっても言わぬ。だから、そのために言うなれば行政監察があるわけですから、農協もいいですけれども、いいか悪いかはまた別ですが、あれはちょっと私も勇み足のところもあると思うが、それはこれからのいかんですが、こういう点についてはちゃんと見て、こうあるべきだという点を言わないと、私は時間があるだけ議論をいたしますが、大問題になりますよ。こういうような問題は大問題になる。いかがですか。
  146. 山本貞雄

    ○山本(貞)政府委員 ただいま先生御指摘の点は非常に重要な問題だと思います。ちょうどこの問題につきましては大臣からの指示もございまして、現在四千五百万人が加入しております国民健康保険事業、これに関する運営行政監察を行っております。その中で、この保険給付の実施状況、ただいま先生が御指摘になった問題がこれに含まれるわけでございますが、あるいは保険料の徴収状況、さらに保健増進対策の実施状況等々につきましてただいま行政監察を実施中でございます。  なお、それ以外の医療保険の問題につきましては、ただいま来年度以降の監察テーマ等について検討中でございますので、先生御指摘の点も十分参考にさせていただきまして、今後その扱いを検討してまいりたいと存じております。
  147. 玉置和郎

    ○玉置国務大臣 農協をやったりODAをやったり、また今度金融資本をやろうとしておるし、その中で、やはり私はかねてから社労におりましたので、乱療乱診、こういうことについてはもう少し厳しい態度で臨むべきだ、きょう御指摘いただきました西高東低というような問題につきましても、やはり厳しい監察をやらなければいかぬのじゃないかなというように考えて指示をしておったわけです。  おかげで緒につきましたので、これから大方針をどうするかということについては、総務庁だけではいけませんから、厚生省その他とも相談しながら、この辺のところはやるよというふうなことになるかもわかりません。しかし、これはなかなか、何でもかんでもやったら、あいつは何でもやる八百屋というようなことになりますから、八百屋の総務長官と言われたくないから、やはり決めるところはぴしっと決めて、一たん緒についたら断固としてやるというような方針を固めております。
  148. 大原亨

    ○大原(亨)委員 それでは次に、医療関係の、自治体の基礎は市町村ですから、市町村の窓口あるいは市町村機関あるいは団体、公共団体、そういうものが扱っておる医療保障制度、保険から公的扶助に至るまで、そういう制度を全部――全部といったってわかっておるのですが、列挙できますか、列挙せよという質問に答えられますか。
  149. 下村健

    ○下村政府委員 手元に完全に整理したものを持っておりませんので、大きいものを申し上げますと、国民健康保険は御承知のとおり市町村がやっておるわけでございます。それから老人保健事業、それから退職者医療もこれに関連して行っているわけでございます。なお、老人医療については都道府県もその一部の費用を負担するという関係になっております。それから精神あるいは結核等の公費負担医療につきましても、これは主として都道府県ということになりますけれども地方団体が行っているという状況でございます。それから生活保護、これは都道府県と市町村とそれぞれ福祉事務所を持つ、持たないということによって分かれておりますが、主として町村分については県が、それから市の部分については市が直接生活保護の医療扶助の部門を担当しておるわけでございます。
  150. 大原亨

    ○大原(亨)委員 大体よろしいですね。八割ぐらいですか。九十点ぐらいか。八十点だな。  その中で、言われましたように国民健康保険、それから退職者医療、それから老人保健法、ヘルスサービス、それから老人福祉法に基づくサービス、それから生活保護法、これは分類されている事務別にやりますとどういうことになりますか。国民健康保険はこれは団体事務、既に団体事務ですね。そういうふうに分けますとどうなりますか。
  151. 下村健

    ○下村政府委員 国民健康保険は市町村団体委任事務、その他は大体機関委任事務という形で処理をいたしておると思います。
  152. 大原亨

    ○大原(亨)委員 例えば退職者医療制度、これは団体でしょう。それから老人福祉法も、全部じゃないけれども、一部は団体ということになりますね。それから、生活保護は機関委任ですね。大体私が言ったとおりでしょう。  これをずっと全体を見てみましたら、政府がいかにでたらめなことをやっているかということになるのだけれども、例えば国民健康保険でいいましたら、今まで税金で財政調整をやったわけですが、国庫補助は四五%でしたね。それを三八・五にしましたね。きょうの新聞、どこかに出ておりましたが、今度は三八・五の補助は、七割の給付に対しましては五〇%ですが、その中で国の負担を二千八百億円ですか、それを県の負担にする、もちろん交付税で見るということでしょうが、そういうことが政府の中で、大蔵省等で議論をされておるのですか。
  153. 下村健

    ○下村政府委員 私もその記事は見ましたので大蔵省にも照会をいたしましたけれども、現在のところ、私どもに対して大蔵省からそのような提案があったという事実はございません。
  154. 大原亨

    ○大原(亨)委員 それは大体一割が二千八百億円、こういうふうに出ておるのですが、かねてから議論されておることなんです。そういうふうに補助金地方に回していくのは、民主的とは言わぬし分権とは言わぬわけですね。  行政改革は「増税なき財政再建」ということが目標なんです、政府が言っているのは、中曽根さんが言っているのは。しかし、行政改革というのは、簡素化とか効率化とか公平化とか信頼性とかということを言いましたけれども、そういう趣旨からいいますと、最近の国民健康保険において国庫負担をカットして財政調整率を下げている、それから退職者医療制度で見込み違いをやる、これは国民健康保険の中に勘定をつくりましてやっているのですから、市町村が言うなれば団体委任事務としてやることになります。それから、老人保健法を三年前のものをさらに改正しまして、加入者按分率を一〇〇%にするものをどうしてもやるというふうに政府は言っているんですね。  例えばそれだけをとってみましても、昭和六十二年には約七千七百億円くらい大企業、大手の組合管掌の健康保険でも出すわけですから、政府管掌もそれと同じように出して、一兆五千億円くらい。それから皆さん方の共済の短期給付も出すんですね。拠出金をふやしていくんですね。今までは、五〇%以下という議論を三年前に私も予算委員会等で徹底的に議論して、参議院で修正しました、あなたはおられたと思うのですが。以上であったものを以下にしたわけです。加入者按分率を以下にした。それは、私が提起しましたけれども憲法違反であるという議論ですよ。秋田の地裁の国民健康保険の判決等を引用しましてやったのですが、それを五〇%以下にしまして加入者按分率を四四・七%というふうにしたわけです。半分以下にしたのです。  今度はこれを一〇〇%に上げていく、ことしが八〇で途中九〇で六十五年に一〇〇にするのです。昭和六十二年でやりますと七千七百億円ほど組合健保がありまして、政府管掌がそれと同じようにありまして、それで共済の短期給付も拠出金を出すんですね。合計しますと保険料負担が二兆円近いですよ。一兆九千億円くらいあるんですよ。一方では所得税減税、所得税減税と言いながら、片っ方では拠出金制度を変えて保険料をふやしていく、青天井でふえていく。そして、必要な医療費に至りましては、今行政監察について言われましたように、GNP以上に増大するだけでなしに、物すごい不平等がある。それをそのままにしておいてああいう老人保健法のようなむちゃくちゃなことをやる。  ここにもありますけれども、亀井正夫という有名な人がいますね。筋を通すところもあるし、むちゃくちゃ言うところもあると思うのですが、あの人は臨調以来ずっとかかわってきているのですよ。土光さんの後継ぎじゃないかと言われるぐらい。この人が健保連のどこかで大演説をしておりました。これは労使がみんな行っておるわけです。今度の拠出金の取り方というのは、社会保険制度のメリット、自主性、保険料を出した者がお互いに給付を出して支え合っていくというコンビネーションを崩してしまう、医療費が増大するときに拠出金を青天井で出していくような制度をつくることは、まさに租税法定主義、保険料法定主義に違反するというふうに、私も言っておるわけですけれども、これからも議論を続けようと思いますが、実質上の増税であって、「増税なき財政再建」という行政改革の趣旨に全く反するということを亀井さんは断言して演説をしておりました。私は、その点だけはさすがに筋を通して議論する人だなと思いました。経営者負担が多くなるということもあるでしょうけれども、しかし増税じゃないかと言っておる。  財政のやりくりをして、その中でマイナスシーリングのしわを実際上福祉に寄せる。これは一部の人のように軍事予算だけのことを目標に置いて私は議論しないですよ。福祉にしわを寄せるというふうなことでやりくり算段をして制度をめちゃくちゃにする、社会保険制度の、自分たちで自分たちのものとしてよくやろうじゃないかということについてなくしてしまう、保険料を拠出金というふうに、税金と同じように取り上げてしまう、そして、四、五年後には飽和状態、パンク状況になるというのですよ。そんなことを公然とやっておる。私は、そういう今政府がやっておることは行政改革でも何でもない。  地方自治体が引き受けている機関委任事務、固有事務で医療費に関係するものはたくさんあるわけですが、退職者医療についても窓口になっておるのですが、非常に複雑ですよ。この勘定を扱っておるのは市町村ですけれども国民健康保険の中にあるのですから。老人保健法に至りましてもそうなんですね。老人保健は特別会計ですけれども国民健康保険としては市町村がやるということになりますね。私は、これから租税や保険料を負担する際に、老人保健法のような、稼得能力のない人は税金で見ていくしかない、そして、サービスの点を考えていかなければなりません。そういう改革をしなければいかぬということになります。  そういうことから考えてみまして、私が申し上げたいのは、国民健康保険制度は今のままでいかぬわけです。そうかといって、医師会の言うように被用者保険と一本にするわけにいかぬわけです。一元化というのは、制度は分かれておるけれども整合性があるようにするというのですが、国民健康保険を大改革をしなければいけない。そのことをやっておいてこういうたくさんの施設をやっていかないと、日本の医療保障制度は行き当たりばったりということになる。こういうことは、行政改革といたしましても、分権といたしましても、権限委譲といたしましても、背景にある国全体の政策としてこれは根本的に大きな問題があるという点を私は指摘をしておきます。  時間が参りましたから、その指摘に対しまして長官の御見解を聞きまして、私の質問を終わります。
  155. 玉置和郎

    ○玉置国務大臣 今段々のお話がございましたが、非常に大事なことでございますので、総務庁としては医療の監察、そういうものについて十分やっていきたい、その中でやはり改革するものは改革するということでやっていきたい、こう思っております。ありがとうございます。
  156. 大原亨

    ○大原(亨)委員 以上です。
  157. 石川要三

    石川委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  158. 石川要三

    石川委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。柴田睦夫君。
  159. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、地方公共団体執行機関が国の機関として行う事務整理及び合理化に関する法律案に対し、反対の討論を行います。  反対する第一の理由は、本案が、さき通常国会国民の強い反対の声を押し切って成立させた国庫負担削減一括法と表裏一体のものとして、国民地方自治体負担と犠牲を強いて、福祉行政の大幅後退に道を開くからであります。  本案では、保育所、老人ホーム、母子寮、身体障害者更生援護施設、精神薄弱者援護施設などの入所措置やあるいは費用徴収を機関委任事務から団体委任事務に改めるとしています。これらの措置費の国庫負担は、さきの一括法によって大幅に削減されているものばかりです。  我が党は、一般的には機関委任事務団体委任事務に改めることに反対するものではありません。しかし、今回の福祉に関する団体委任事務化は、措置費の国庫負担削減と一体のものとして提案されています。政府補助金問題検討会報告でも、社会保障分野の国庫負担削減理由について、「地方公共団体自主性に基づいた行政に改められるので、国の負担割合は二分の一とする」と明記されています。このことによっても、国庫負担削減団体委任事務化が不可分の関係にあることは明瞭であります。国庫負担削減と車の両輪ともいうべき本案は、これを正当化するだけではなく、国庫負担削減恒常化の布石ともいうべき危険な意図を包含していると言わざるを得ません。  このような補助金削減と一体となった団体委任事務化が福祉の地域間格差を拡大させ、国民への高負担化、福祉施設の縮小、統廃合などを促進して、福祉の加速度的後退を招くことは明らかです。これは憲法第二十五条に定めた社会福祉に対する国の責任を放棄し、その責任地方自治体に転嫁するものにほかなりません。  我が党が保育行政で中央集権を強めるように主張しているとの玉置長官の先ほどの発言は、以上の点から見ても全く見当外れと言わなければなりません。  反対理由の第二は、本案が地方自治体自主性を図るとしながら、逆に国の指揮監督を強めていることです。  それは、国の許認可権限の委譲という名目で、首長の罷免までできる国の強力な指揮監督権限が付されている機関委任事務を知事に対して十一法律新設し、市町村長に対しても五法律増しており、また福祉に関する団体委任事務化についても、政令などによって地方自治体の実質的な裁量権を限定していることでも明らかです。しかも、それらのほとんどの事務経費が自治体負担であり、この面からも地方財政を圧迫しているのです。  また、本案には、調理師、宅地建物取引主任者の資格取得試験などを民間団体が実施できるようにする改定も含まれております。これらは国民の健康、安全、生活に直接かかわる免許の取得であり、消費者保護、試験の公平性の確保などの点から問題があり、賛成できません。  なお、本案を個別的に見るなら、我が党は、四十三法律のうち二十一法律改正を是とするものであることをこの際明らかにしておきます。  最後に多数の法律を一括して一挙に処理しようとする問題についてであります。制度の内容、性格の違いを無視し、国民生活に重大な影響を与える法律四十三本の一括法案は、国会の審議権をじゅうりんし、議会制民主主義の形骸化に一層拍車をかけるものと断ぜざるを得ません。  しかも、このような広範多岐にわたる法案を、我が党の質問時間を不当に削るなど、全体でもわずか七時間半の極めて不十分な審議で採決に付すことに強く抗議するとともに、本法案の撤回を強く要求して、私の反対討論を終わります。(拍手)
  160. 石川要三

    石川委員長 これにて討論は終局いたしました。     ─────────────
  161. 石川要三

    石川委員長 これより採決に入ります。  地方公共団体執行機関が国の機関として行う事務整理及び合理化に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  162. 石川要三

    石川委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ─────────────
  163. 石川要三

    石川委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、戸塚進也君外三名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・民主連合の四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。上原康助君。
  164. 上原康助

    ○上原委員 ただいま議題となりました自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・民主連合の各派共同提案に係る附帯決議案につきまして、提案者を代表してその趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     地方公共団体執行機関が国の機関として行う事務整理及び合理化に関する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の諸点について配慮すべきである。  一 国民福祉のナショナル・ミニマムに係る行政事務整理に当たっては、国民の福祉水準と行政水準が低下しないよう、特段の配慮を払うとともに、そのための財源措置について十分な手当を行うこと。  一 機関委任事務については、臨時行政改革推進審議会答申及び地方団体の意見等を踏まえ、一層の整理合理化に努めること。  一 機関委任事務団体委任事務団体事務等の相違については、行政の混乱を招くことのないよう、その性格について周知徹底を図るとともに、行政事務配分が複雑化し、その責任があいまいとならぬよう特段の留意を払うこと。  一 政省令を定めるに当たっては、従前の福祉水準の維持を基本とし、多様なニーズにきめ細かく対応できるよう、地方公共団体の意見も踏まえるとともに、地方公共団体自主性を尊重するため、地方公共団体の自主的努力を損ねることのないよう十分配慮すること。  一 施設等に係る入所者等からの費用の徴収については、過大な負担により法の主旨が歪められることのないよう、国及び地方公共団体は適切な補助に努めること。  一 入所措置に係る処分に対する審査請求、再審査請求の廃止については、行政不服審査法に基づく異議申立ての権利について周知徹底をはかること。  一 高齢化等に的確に対応し、住民福祉の向上・発展を図り、福祉水準を多様なニーズに適合するよう、福祉施設、給付、サービスの充実について、さらに一層の推進に努めること。   右決議する。  本案の趣旨につきましては、先般来の当委員会における質疑を通じて既に明らかになっておることと存じます。  よろしく御賛成くださいますようお願い申し上げます。(拍手)
  165. 石川要三

    石川委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  166. 石川要三

    石川委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、総務庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。玉置総務庁長官
  167. 玉置和郎

    ○玉置国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、その御趣旨を十分踏まえまして検討してまいります。     ─────────────
  168. 石川要三

    石川委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  169. 石川要三

    石川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  170. 石川要三

    石川委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十九分休憩      ────◇─────     午後三時三十分開議
  171. 石川要三

    石川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出臨時行政改革推進審議会設置法案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武部勤君。
  172. 武部勤

    ○武部委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、中曽根内閣の最重要課題の一つとされております行政改革の実施に対する決意を改めて確認させていただき、今後における改革の展望と手続を明らかにするという見地から、いわゆるポスト行革審法案に対する若干の質問をさせていただきたい、かように存じます。  まず、政府はかねて行政改革に不退転の決意を持って取り組むことを公約いたしまして、その実現に努力することを再三にわたって言明してきたところでございますが、今回の百七回臨時国会の冒頭におきましても、九月十二日の所信表明演説におきまして中曽根総理は、二十一世紀への基礎づくりの観点から、次のように述べておられるのであります。すなわち、   政府は、行政改革を国政上の最重要課題の一つとして位置づけ、臨時行政調査会及び臨時行政改革推進審議会の提言を最大限に尊重しながら、その推進を図ってまいりました。幸いに国民の御理解と御協力を得て、行政改革は着実にその歩みを進めており、今や正念場を迎えるに至っております。 このように言明しているのでございますが、実行の段階で正念場を迎えた行政改革につきまして、その推進のためにポスト行革審の新しい機関が必要である、かようなお考えのようでございます。  また他方、財政再建やいわゆる地方行革など今後に残された課題もまた少なくない、かように存ずるのでございまして、去る六月に提出された最終答申におきまして、「行財政改革はいまだ道半ば」、かように示されているのでありますが、行政改革の進捗状況及び今後の基本方針について、行革推進の責任大臣たる総務長官ほどのようにお考えになっておられるのか、御所見を伺いたいと存じます。
  173. 玉置和郎

    ○玉置国務大臣 御承知のように、今国会、いわゆる臨時国会でございますが、重要法案と言われております国鉄再建法、それから老健法、今御審議をいただいておりますが、この重要法案のすべてが臨調、行革審から出たところの案でございます。また、過去におきまして、皆さん方の大変な御協力をいただき、国民理解もいただきまして、そしてNTTをつくり、さらに専売公社の改革をやってのけたわけでありまして、今中曽根内閣に入りまして、すべての重要法案はこの臨調、行革審の答申を受けての内容だ、このように理解をいたしております。しかし、今お話のあったように、また行革審の答申の中にもありますように、まだ道半ばだということ、これは事実でございます。  そこで、私たちはこういう臨調、行革審の精神を受け継ぎまして、農協だとかODAだとか、さらにこれからやろうとしております金融資本だとか、きょう御指摘をいただきました医療の問題、そういった問題にまた真剣に取り組んでいきたいということでございまして、これなくては本当の国民に信頼される政府はつくれない、また、地方自治体におきましてもこの精神を受けて、そしてそれぞれの努力をしていただくということでないと、本当に政治の信は国民から得られないという考えでございまして、一生懸命努力していきたいと考えております。
  174. 武部勤

    ○武部委員 長官の決意のほどをよく理解できたのでありますけれども、次に、今後の進め方についてお伺いをしたい、かように存じます。  今大臣御指摘のとおり、行政改革は依然まだ残された課題が多い、今後も粘り強く頑張っていかれる、かようなことでございます。  しかしながら、最近非常に社会経済情勢が厳しいという状況のもとで、内需拡大の要請も非常に強くなっているところでございます。したがって、緊縮一点張りではどうかという声もしばしば論議されているところでございまして、特に現在の経済実態から見ますと、円高不況という真っただ中にありまして、地域によっては深刻な雇用不安を生んでいる。特に、私は北海道出身でございますけれども、北海道は北洋に打ち続く石炭の問題、そして構造的に非常に厳しい状況下にありまして、こういう状態が長引くということに相なりますと、どうしても行革の名のもとの緊縮一点張りの政策運営で果たしていいのかという議論も、また批判も強くなっている、かように存ずるわけでございます。行政の簡素化、効率化ということは永遠の課題であるということは言うまでもないわけでございますが、最小のコストで最大の行政サービスを求めるという国民の声には政府も十分にこたえていかなければならない、これも言うまでもないことであろう、かように思います。  しかしまた、私も当選させていただいて議席を得て、随分勉強するところだ、朝七時半には家を出て各部会で大変な論議をしている、そしてそれぞれの地域のいろいろな問題、悩みを持ち寄って、理想と現実のギャップをどのように埋めていくか、また行革の使命というようなことにどうこたえていくか、これは真剣な議論でございまして、一部マスコミの報道で伝えられるようないいかげんなものはないと私は感じているわけでございます。  かようなことをも勘案いたしまして、今後どのように行政改革を進めようとされておられるのか、その具体的な方策について構想があれば御見解をお示しいただきたい、かように存じます。
  175. 佐々木晴夫

    佐々木(晴)政府委員 大臣から御答弁をいたします前に、若干今までの臨調、行革審を通ずる経過について御説明を申し上げたいと存じます。  これはもちろん御承知のことでありますけれども、臨調が設けられました昭和五十六年の三月、そのときの問題意識というのは、高度経済成長時代は既に去ったんだ、これからは安定成長ないし低成長の時代に入る、そうしてみた場合に、一方で老齢化その他の現象があるとすれば、これは二十一世紀に向けていかなる国家をつくっていくのか、またいかなる行政を考えていくのか、こういうことが非常に強力な問題意識として臨調にあったわけであります。そこで、国家の目的として活力ある福祉社会の建設並びに国際社会への貢献の増大、こういうことを目的として臨調はいろいろと答申を出した、それを行革審が受けたというような経過があったわけであります。  今は、先生御指摘のように大変な経済状態になっておる、これはまた事実でありますけれども、二十一世紀に向けてこれからのいわば行革といいますか、活力ある社会、行政を目指して頑張らなければならないということであろうと思うのであります。  そこで、今回のポスト行革審も、この前の行革審で国民の協力を得ながら今後とも行政改革の実を上げなければならぬ、そこでこの行革審のいわば後身を設立せよ、こういうような答申があったものですから、これを設けることを御提案申し上げているわけでありますけれども、今おっしゃいましたように経済の不況その他の現象は確かにあるわけでありますが、引き続いて行政の簡素効率化あるいは行政の仕組みの改革、こうしたものを続けていかなければならないものだと思います。  その際の考え方といたしましては、やはり関係各方面の御意見を十分聴取しながら、また今般設置をお願いしている新行革審に必要な御審議を願いながら、その御意見を踏まえて今後とも対処してまいりたい、また、その結果につきまして成案を得ましたら、法律改正を要する事項については国会の御審議を願うことを通じて、各般の改革施策が社会経済情勢の変化に即応して適切なものとなるように引き続き十分努力してまいりたい、このようなことで今回御提案申し上げた次第でございます。
  176. 武部勤

    ○武部委員 ところで、政府は本法律案の提案理由説明において、この新行革審を設置する理由として、今後とも行政改革の推進のため所要の施策の実施に努めるに当たっては、「各界有識者の御意見を聴取しつつ諸般の施策を推進することが、重要かつ有益である」、ただいま御答弁のとおりでございますが、これはいわば改革課題の具体化の側面であろうと思うのでございます。しかしまた、これはある意味で物の一面を述べているのでありまして、端的に言いまして、新行革審には政府行政改革の監視機関の側面もある、このようにも私は聞いているわけでございます。  この六月に旧行革審が解散するに当たって各方面から寄せられた意見に共通していたのは、旧行革審にかわる新たな監視機構の設置の要請でございました。行政改革は物事を変えようとするものでありまして、それだけにその実行には痛みが伴いますし、また、先ほど申し上げましたように非常に難しい一面、特にこれを逃れようとする人の心、人情というものが伴うものでありまして、ほっておけばどうしてもこれに逆行する動きが出てくることも当然のことであろう、そこに難しさがあると私は思うのであります。私は、臨調以降の行革がこれまでの行革にない成果を上げてきている、このように存じますが、そしてまた臨調及び行革審というものがあって、政府の改革が緩み、逆戻りしようとするのを監視してきたことによるところが大きいと思いますけれども行政改革のための審議機関については、改革課題の具体化と政府の実行監視の二つの側面がある、こう思うのでございます。  そこで、新行革審の設置に当たって、ウエートの置き方を明確にすることは非常に難しいとは思いますけれども、新行革審の役割について、この辺のところの長官の御所見をお伺いしたい、かように存じます。
  177. 玉置和郎

    ○玉置国務大臣 臨調、行革審は、言うならば一つの原則、大綱、もっと言葉をかえて言えば憲法的なもの、基本法的なものを示していただいた、こう私は思っております。  しかし、第三番目になったときには、これを具体的にどういうふうにがっちり進めるのか、これにはそれぞれの関係の方々の反発も相当強い、これは単に官界だけでなしに経済界においても各界においてもそうだと思います。それだけに今までにないフレッシュなものをつくっていきたいと考えておりまして、実行部隊というような形で委員の選定に当たりたいな、そう思っております。  今ついでに言っておきますが、マスコミに報道されているような方々は私の頭の中にはありません。それだけははっきりしておきます。ということは、変わった形の、実効の上がる委員というものをお願いをしていきたいな、こう考えております。
  178. 武部勤

    ○武部委員 後ほど委員の人選等についてもお伺いしたいと思っていたのでありますが、今大臣からの示唆がございましたので、この点については要望だけにとどめておきたい、このように思う次第でございます。  審議会の委員の任命に当たっては国会の同意を要することになっているわけでございますけれども、本審議会の委員の人選については各方面の論議に十分耳を傾けていただきたい、慎重な考慮を加えて、実効の上がるように勇断を持ってやっていただきたい、このようにお願いをしておきたいと思います。  次に、現在政府が進めている行政改革はよく臨調行革と言われているわけでありますけれども、この行革、決してお祭りのような一時的なものであってはならない、祭りが終わったらだれもいなかった、何も残っていなかったということであってはならない、そう思うわけでございます。また、むしろ行政改革というものは休まずたゆまず取り組むべき課題だ、こう思うわけでありまして、臨調行革も、今後十年はおろか、それ以上の期間持続的に進められてこそ意味があるのではないか、このように私は思うのでございます。  ましてや今後三年という話ではなかろう、こう思うのでありますけれども、行革を推進する任務を負う新行革審が三年間の時限設置というのはいかがなものであろうか。時限を付するということは、目標を設定するという意味と同時に、これで終わりという意味も出かねないのでございます。むしろ時限を付さずに、政府が恒常的に進めるべき行政改革というものに対応した恒常的な機関として構想する方法もあったと思われるのでありますが、それをあえて今回三年の時限を付した趣旨はどこにあるのか、このことについてお伺いをしたいと思います。
  179. 玉置和郎

    ○玉置国務大臣 行革というのはいかなるときでも政府ととて責任を持って勇敢に進めなければならぬ問題でありまして、これは三年でいいとか五年でいいとかというものではない、ずっと恒久的にやっていかなきゃならぬ問題です。  しかし、物事はやはり急がなければならない。三年という期限を切ってお願いしておりますものは、やはりこの三年に実効のあるものといたしたい。それだけに三年間にお願いをして、ひとつしっかりそれぞれ督励をしていただく、御指導いただくという形で三年に切ったわけでございまして、今おっしゃられましたような形でなしに、だらだらとやるのではなしに、三年間で思い切ったことをやってくださいよ、こう言っておるわけであります。
  180. 武部勤

    ○武部委員 最近の新聞等を見ますと、新行革審のテーマについていろいろと論じているものを見ることがあるわけでございます。新行革審がその期待されている役割を果たすためには、先ほど言いましたように、委員の人選とともに、何を審議するか、どんな問題に取り組むかということが大事なかぎであろう、かように思うわけであります。伝えられるところによりますと、食糧管理制度のあり方あるいは地方行革の推進といった問題等が新行革審において検討の対象になるであろう、こういうふうに言われているわけでありますけれども、この点についてちょっと一、二触れて、長官の御見解を、またお考えを聞かしていただきたい、このように思うわけでございます。  まず最初に米の問題でございますけれども、食糧管理制度は、臨時行革審において全量管理方式の見直しを初めとする改革案ということが指摘されていることは既に私も承知しているのでありますけれども、また、この問題について経済界あるいは消費者の立場からいろいろな議論もございますが、日本の米作農業について考えますときに、これは米だけの問題でありませんけれども、私は、日本の農業の持つ歴史的意味といいますか、農耕民族として営々培ってきた背景というものがあって、日本民族の存亡を左右する大きな問題であるという認識を持っているわけであります。  それだけに、食糧供給基地としての使命を負っている北海道にある私たちも、農業らしい農業というものはどうあるべきかということを今真剣に考えていかなければならないと思いますし、また、農村が荒廃したらどうなるか、仮に農民が一人もいなくなったらどうなるか。私は、今日の日本の発展、繁栄の大きな背景は、やはり農耕民族として自然の恵みに感謝する気持ち、また自然の脅威に恐れおののく、そういう謙虚な気持ち、これを基礎にした日本の民族のすばらしさの上に今日の発展、繁栄がある、こう思っているわけでございます。  したがいまして、大臣は決して短絡的なことでおっしゃっていることではないと私は思いますけれども、今後、食糧管理の問題を仮に取り扱うということといたしましても、これは総合的な視野に立って、またいろいろな角度から、日本の農業はいかにあるべきかというその軌道を踏み外さない、そういう前提で慎重にそのあるべき政策の方向を検討すべきじゃないか、このように思うわけでございます。  この点について、大臣は農業問題についても非常に造詣の深い方でございますので、今まで新聞等で拝見している限りの知識しか私ございませんので、この食糧管理制度と農業、これから二十一世紀に向かっての農政の考え方等についてお聞かせをいただければありがたい、かように存じます。
  181. 佐々木晴夫

    佐々木(晴)政府委員 大臣からお答えを申し上げます前に、今、行革審のいわば審議事項、あるいはこれから新たに審議される事項がいかなるものがあるかということにつきましての御質問がございますので、それにつきまして事務的に私から今の建前を申し上げてみたいと思います。  第一に、新行革審において審議の対象となると政府側で予想しておりますものは、当然のことながら臨調、行革審の意見、答申のいわばフォローアップというのを大所高所からやっていただく。それから、臨調、行革審において課題として示されながらまだその具体案の十分ならざるものにつきまして、必要あればこれについて御審議を願う、こういうことでございますけれども、新行革審において現実にどういう課題が取り上げられるかということにつきましては、審議会の発足後の時点におきまして政府側から行政改革の進捗状況の聴取を願いまして、その後において審議会において御審議いただくべき課題である、その過程で具体的課題がピックアップされてまいる、こういうことでございますので、今の段階ではやはりそれを待たなければ何とも申し上げられないというのが率直なところであります。  ただ、御指摘の食管制度のあり方とか、けさほど問題になりました地方行革あるいは医療制度、こうしたようなものにつきましては、いずれも広範多岐にわたる臨調及び旧行革審の指摘事項の一つでありまして、これらにつきまして行政改革の重要な課題の一つであると認識しておりますけれども、新行革審においてこれらを正式な検討の課題とするかどうかにつきましては、今申しましたように、審議会御自身で十分御論議をなさった上で自主的にお決めになるという課題であろうと思います。もちろん、その段階にありまして政府側の認識というのは当然伝達されるわけであります。  食管制度の中身の問題につきましては、大臣からまた御答弁になると思います。
  182. 山本貞雄

    ○山本(貞)政府委員 食管制度につきまして臨調、行革審の答申の内容は先生御指摘のとおりでございまして、また、ポスト行革審においてどのように取り扱われるかという点につきましては、ただいま行政管理局長からお話ししたわけでございますが、行政監察の面から少し御報告を申し上げておきます。  この食管制度の問題につきまして、臨調、行革審は中長期的には全量管理方式の見直しということを言っておるわけでございますが、しかし、当面、自主流通の拡大、あるいは政府管理経費の節減等の制度面、運営面の合理化はやるべきである、そういった前提に立ちまして、実は大臣からの御指示もございまして、ただいま食管問題に関連いたしまして、政府管理経費の節減、あるいは米の流通面の合理化等を中心とした食管制度に関する行政監察を実施中であるということだけ、あらかじめ申し上げておきたいと思います。
  183. 玉置和郎

    ○玉置国務大臣 きのうでございましたか、農林省の方から農政審議会の内容について報告に参りまして、私たちの言っておることの全部が盛られておりませんが、しかし、大体方向としては間違いないなというように私は認識をしまして、しっかりその方向でやってくれ、こう言っております。  また、系統農協の方からも自主努力でこういうふうにしたいということを言ってきておりますが、それは、私たちが指摘をしましたように、営農指導それから生活指導、これが農協の本来の仕事でございますけれども、それに重点を置いた作文がなされておりまして、恐らく先生の目に入ったのじゃないかと思いますが、自主努力につきましてもかなり評価できる面があります。  しかし、具体的に監察はもう数県に入っておりますが、私がやりたいと思うのは北海道なんですよ。ホクレン、これは悪い。本当に悪い。それははっきり私が言ったということを言ってください。ホクレンに対しては、これではいけません。それだけに、あれだけ肥大化したホクレンが、本当に北海道農民の、あの極寒の、厳しい寒さの中で営農に一生懸命に励んでおる皆さんのために真剣になっておるのかなっていないのか、その辺のあたりもお調べをいただいて、そして、一回相談をしますが、北海道はなるべく早くやった方がいいなという考えを持っていますので、その辺は先生からもしっかり伝えて、ホクレンもっとしっかりせい、本当の営農指導をしっかりやれ、生活指導をしっかりやれ。北海道であれだけの職員を抱えながら、営農指導、生活指導に当たっている職員というのは本当にわずかでございます。そういうことを考えましたときに、あれだけの肥大化してきたホクレンというものが、北海道の実体経済の中で、特に農民のためにどれだけの役割を果たしておるのかという反省があって、そこから自助努力が出てくると思いますので、そのこともひとつこの機会にお願いをいたしたいと思います。
  184. 武部勤

    ○武部委員 大臣のお気持ちのうち、よく理解できる次第でございます。ぜひこれからも勇断を持って行政改革に取り組んでいただきたい、かように存ずる次第でございますけれども行政改革は、ともすれば総論賛成、各論反対、かような風潮もなきにしもあらずでありまして、我々も選挙区を抱え、有権者のさまざまな要請、要望を受けますと、時折深い反省の念に駆られることがあるわけでございます。  一つだけ要望といいますか御指摘申し上げたいと思うのでありますけれども、確かに行政改革というのは勇気の要ることでもありますし、かなりの逆風をついてでも邁進しなければならない、そういう性格のものであろう、かようには存じます。しかしながら、最前申し上げましたように、各政党やあるいは労働界、あるいは先ほど御指摘ありましたけれども、それぞれの地域の農民でありますとかあるいは消費者の皆さんでありますとか、数々の意見がその生活実態の中から当然出てくる、そういう性格のものがしばしばある。そこが我々のつらいところでありまして、理想と現実のギャップをいかに埋めていくかというのが政治家の使命であろう、そう簡単に一直線にはいかない、そこには説得と納得という関係が必要であろう、私はこう思うわけでございます。  そういう観点に立って、今後行政改革の推進に取り組む総務庁長官の決意をもう一度伺って、この点については終わりたいと思います。
  185. 玉置和郎

    ○玉置国務大臣 私は、当委員会だけでなしに予算委員会でも述べてきましたし、あちこちの対談がそれぞれの雑誌に載っております。新聞にも載っております。そうした総括的なものが恐らく武部先生も目にとまっておると思いますが、そういう精神で今後も引き続きやっていきたいし、総務庁の方も盛んに士気が上がっておりますので、やはりこれはかなり強力な力で推進をしていくことをお約束いたします。
  186. 武部勤

    ○武部委員 次に、せっかくの機会を与えていただきましたので、北方領土返還運動の問題について少しくお尋ねをさせていただきたい、かように存じます。  まず最初に、外務省の方、来ておられますか。――十一月二十日付のある新聞の記事でありますけれども、日ソ・ジャーナリスト会議代表団が十九日、モスクワを訪れまして、ゴルバチョフ書記長のブレーンの一人とされているファーリン・ノーボスチ通信社長と会見をした際に、同社長は北方領土問題に関して、「ソ連はたとえ一方的な性格のものであってもいかなる問題も交渉から排除しない」、かように述べ、また、「四島返還論のほか中間的な考え方」が日本国内にあることを注目している」、こういう発言をしているわけでございます。  今、御案内のとおり、北方領土返還運動の発祥の地でもあります、今現在は北方領土返還運動の拠点であります根室地域にありましては、北洋漁業の規制による大変な影響下にありまして、二島返還論も聞こえてくるわけでございます。私は、北方領土返還運動というのは何よりも世論の統一ということが一番大事であろう、かように思うわけでありますが、そういう観点からこの発言の影響度を心配しているわけでございまして、改めてこの際、北方領土返還要求の取り組み状況、このことについてお尋ねをしておきたい、かように存じます。
  187. 西山健彦

    ○西山政府委員 お答え申し上げます。  かねがね中曽根総理並びに外務大臣も申し上げておりますとおり、我が国といたしましては、北方四島、これを我が国固有の領土であるという立場からその一括返還をソ連に対して一貫して要求してきているところでございます。政府といたしましてはソ通側がこのような我が方の正当な要求を、速やかにこれに応じて四島返還することを強く期待している次第でございます。  ただいま御言及ございました中間的妥協案あるいは二島返還論等々、最近のジャーナリズムにいろいろ出ているのは事実でございますけれども、もしも二島返還で我々が甘んずるということであったならば、既に三十年前、一九五六年の時点において日ソ間において平和条約ができていたわけでございます。しかしながら、あの当時の、まだ戦後間もない国際的な地位も極めて低いその当時にあって、なおかつ我が国政府は我が方の要求が正当であるということで、あくまでも四島返還を求めることとして、そのためにこの問題は継続して交渉される案件となったわけでございます。その当時に比べますと今日の日本は国際的な地位がはるかに向上しているわけでございますから、あくまでも我が方の基本的な立場である四島一括返還ということに揺るぎない決意で臨んでまいりたい、粘り強く交渉してまいりたいというのが私ども考え方であり、取り組む姿勢でございます。  なお、根室の方々がいろいろと御苦労されていることは私どももよく理解しておりまして、いつも敬意を表している次第でございますが、漁業の問題につきまして一言申し上げておきますと、この問題と領土の問題とは必ずしも結びつき得ないことだと思います。と申しますのは、ソ連側は漁業資源、たんぱく資源というものを非常に今必要としておりまして、年々漁業交渉におけるソ連の立場が強くなっていくことは御承知のとおりでございます。例えば昨年は六十万トン、二百海里内の双方のとる量でございますが、六十万トンであったものがことしは一挙に十五万トンになってしまっているというようなことからもわかりますように、先方は領土の問題とは離れた実務的な必要から、非常に厳しい態度をとっております。したがいまして、我々もこの問題は一応領土の問題とは離れて、全く実務の問題として漁民の方々の利益を守るために最大限の努力を続けていきたい。現に交渉が今日ただいま行われているわけでございますが、そういう決意でこれに臨んでまいりたいというように考えております。
  188. 玉置和郎

    ○玉置国務大臣 私は今外務省の答弁を聞いておって甚だ遺憾なのは、北方四島一括返還については中曽根総理大臣、倉成外務大臣が一生懸命にやっておると言う。私を忘れておるのですよ。私は北方四島返還の本部長です。本部長を忘れてああいう答弁をするとは全くけしからぬ。恐らくODAの監察をやると言ったので外務省は私を疎外したのかもわかりませんが、これは常々思っておりますのは、北方返還の本部長としてあるいは総務庁としても一生懸命にやっておりますのは、国民世論をできるだけ喚起して、そして一億二千万の国民が火の玉のようになってソ連に対して当たっていくという、これがやはり大事なんです。その啓発活動は外務省がやっておるわけではないのです。中曽根さんもそれはちょこちょこ言うでしょうけれども、本気でやっておるのは総務庁なんです。その総務庁が外務省から疎外されて黙っておるわけにはいかぬから立ったのです。  それでもう一つ言っておきますと、これは私は前から言っておるのですが、アメリカに資料はあるのですがね。日本が戦争に負けた、そのときにソ連軍が北方四島に進駐というか侵入してくるときに一番気を使ったのは、アメリカ軍がそこにおらないかということで随分気を使ったのです。それだけに侵入が敗戦の時間より大分おくれたのです。このことを余り言わないのですね。それから、あそこにはちょうど戦争に負けるまで一万七千人の日本人がおって、ロシア人がほとんどおらなかった、この事実をなぜ言わぬのかということです。この事実はやはり正確な歴史的資料でございますから、そういうこともしっかり踏まえてやっておるのが総務庁でございまして、外務省がそんなこと言ったことがない、それだけに、きょうは今答弁を聞いて私が甚だ不満だということをこの国会会議録に明記をしていただきたい。総務庁としては真剣に取り組んでおるということを御理解を賜りたいと思います。
  189. 武部勤

    ○武部委員 私は、玉置長官が北方領土問題に対して確たる信念をお持ちの方であるということをよく承知しているつもりでございます。ぜひよろしくお願いしたい、かように申し上げたいと思います。  それで最後に、これも要望でありますけれども、先ほど申し上げましたように、北方領土返還運動の盛り上がりというものについて、一番大事なのは、やはり現地、北方領土返還運動の発祥の地であり原点であり拠点である根室地域の住民の皆さん方の姿勢、意欲というものが極めて大事なわけであります。しかし、現在はどういう状態にあるかといいますと、先ほども一部お話ししましたように、北洋漁業が壊滅的な打撃を受けているという状況下にありまして、また、国と国との外交交渉の結果ああいう事態になったということであるにもかかわらず、なかなか思うような対策が得られなかった、現地の皆さん方の期待のような結果にはならなかったというようなことで、おれたちがこんなに一生懸命やっているのにという声が非常に根強いものになっているわけでありまして、このことが返還運動に影響するようでは大変である、かように思うのであります。  それからもう一点、今、北洋漁業の影響ども受けまして、根室一市四町、いわゆる北方領土隣接地域でありますが、この地域は非常に疲弊しているのでございまして、何らかの手だてを求めて少しでも地域振興に力を入れようという状況下にあるわけであります。  そこで、期待されているのが北方領土隣接地域振興基金の問題であります。この点については、長官御案内のとおり我が党が中心になって当初議員立法で提出するときの背景には、百億を目途としてこの基金を積み立てるというようなことで法案を出したわけでございますが、これが五年を目途ということになっておりまして、あと一年でその期間が来るわけでございまして、今日四十億しか積み上げてない、あと六十億一遍に六十二年度でやってもらいたい、それを現地は政府を信頼して望んでいるわけでございます。なかなか容易でないことは私も百も承知の上でございますけれども、こうした返還運動をさらにこの時点で盛り上げていく、この返還運動をよどみのないような状態に盛り上げていくというような考え方に立ちました場合には、ぜひこの現地の声にこたえていただきたい、このことは強くお願いを申し上げておきたい、かように存ずる次第でございます。  なおまた、私事でございまして甚だ恐縮でございますけれども、このたび初めて質問に立たせていただいて私は非常に光栄に存ずる次第でありますが、たまたま思い起こしますと、玉置先生が初めて参議院の全国区に三十九歳でお出になったときのことでございます。そのときは残念なるかな先生は惜敗をされた、このように記憶しているのでありますけれども、私は二十一歳でありました。六本木のおばあちゃん、先生御存じだと思いますが、六本木のおばあちゃんが実は先生のことを長文の手紙に託して、私もささやかながら初めての選挙に携わったのが玉置先生のことであったということを思いますときに、きょうこうして初めて国会に出て質問に立たせていただく、その場で玉置長官に質問ができるということを非常に光栄に存ずると同時に、ただいま北方領土返還運動に対して極めて熱意のあるお話を伺いまして、非常に心強く感じた次第でございます。なお健康に留意されて、さらに一層御活躍いただきますようにお願いを申し上げまして、私の質問を終わりたい、かように存じます。
  190. 石川要三

    石川委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時十六分散会