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1986-11-20 第107回国会 衆議院 内閣委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十一月二十日(木曜日)     午後一時三十一分開議  出席委員    委員長 石川 要三君    理事 北口  博君 理事 竹中 修一君    理事 戸塚 進也君 理事 船田  元君    理事 宮下 創平君 理事 上原 康助君    理事 鈴切 康雄君 理事 和田 一仁君       有馬 元治君    内海 英男君       小川  元君    大村 襄治君       河野 洋平君    鴻池 祥肇君       佐藤 文生君    武部  勤君       月原 茂皓君    前田 武志君       三原 朝彦君    宮里 松正君       谷津 義男君    大原  亨君       角屋堅次郎君    田口 健二君       野坂 浩賢君    市川 雄一君       斉藤  節君    川端 達夫君       塚田 延充君    児玉 健次君       柴田 睦夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         外 務 大 臣 倉成  正君         国 務 大 臣          (防衛庁長官) 栗原 祐幸君  出席政府委員         内閣法制局長官 味村  治君         内閣法制局第二         部長      大森 政輔君         防衛庁参事官  瀬木 博基君         防衛庁参事官  古川 武温君         防衛庁参事官  千秋  健君         防衛庁参事官  筒井 良三君         防衛庁長官官房         長       友藤 一隆君         防衛庁防衛局長 西廣 整輝君         防衛庁教育訓練         局長      依田 智治君         防衛庁人事局長 松本 宗和君         防衛庁経理局長 池田 久克君         防衛庁装備局長 鎌田 吉郎君         防衛施設庁長官 宍倉 宗夫君         防衛施設庁総務         部長      平   晃君         防衛施設庁施設         部長      岩見 秀男君         防衛施設庁建設         部長      大原 舜世君         防衛施設庁労務         部長      西村 宣昭君         経済企画庁調整         局長      川崎  弘君         経済企画庁総合         計画局長    及川 昭伍君         外務大臣官房審         議官      渡辺  允君         外務大臣官房審         議官      斉藤 邦彦君         外務省アジア局         長       藤田 公郎君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省経済協力         局長      英  正道君         外務省条約局長 小和田 恒君         水産庁長官   佐竹 五六君  委員外出席者         内閣委員会調査         室長      石川 健一君     ───────────── 委員の異動 十月三十一日  辞任         補欠選任   児玉 健次君     金子 満広君 同日  辞任         補欠選任   金子 満広君     児玉 健次君 十一月二十日  辞任         補欠選任   有馬 元治君     三原 朝彦君   住  栄作君     小川  元君   川端 達夫君     塚田 延充君 同日  辞任         補欠選任   小川  元君     住  栄作君   三原 朝彦君     有馬 元治君   塚田 延充君     川端 達夫君     ───────────── 十月三十一日  一般職職員給与等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第二四号)  特別職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第二五号)  防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案内閣提出第二六号) 同月三十日  国家機密法制定反対に関する請願安藤巖紹介)(第五一七号)  同(児玉健次紹介)(第五一八号)  同(山原健二郎紹介)(第五一九号)  同(柴田睦夫紹介)(第五五六号)  同(松本善明紹介)(第五五七号)  スパイ防止法制定に関する請願羽田孜紹介)(第五二〇号)  同(羽田孜紹介)(第五五八号)  同(羽田孜紹介)(第六〇一号)  シベリア抑留者恩給加算改定に関する請願赤城宗徳紹介)(第六四二号)  旧台湾出身日本軍人軍属補償に関する請願(林大幹君紹介)(第六四三号) 十一月十日  人事院勧告完全実施に関する請願外一件(佐藤徳雄紹介)(第六八一号)  旧台湾出身日本軍人軍属補償に関する請願梶山静六紹介)(第七四二号)  国家機密法制定反対に関する請願児玉健次紹介)(第七六一号)  同(佐藤祐弘紹介)(第七六二号)  同(柴田睦夫紹介)(第七六三号)  同(辻第一君紹介)(第七六四号)  同(中路雅弘紹介)(第七六五号)  同(矢島恒夫紹介)(第七八四号)  三宅島の米空軍艦載機夜間離着陸訓練基地建設反対に関する請願上田哲紹介)(第七八二号)  三宅島の米艦載機訓練基地建設反対に関する請願上田哲紹介)(第七八三号) 同月十一日  国家機密法制定反対に関する請願藤田スミ紹介)(第八二五号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第九二二号)  同(金子満広紹介)(第九二三号)  同(児玉健次紹介)(第九二四号)  同(寺前巖紹介)(第九二五号)  同(不破哲三紹介)(第九二六号)  旧台湾出身日本軍人軍属補償に関する請願有馬元治紹介)(第八二六号)  国家秘密法制定反対に関する請願近江巳記夫紹介)(第九二一号)  旧台湾出身日本軍人軍属補償に関する請願宮崎茂一紹介)(第九二七号) 同月十四日  三宅島の米空軍艦載機夜間離着陸訓練基地建設計画即時撤回に関する請願岡崎万寿秀紹介)(第一一一六号)  国家機密法制定反対に関する請願寺前巖紹介)(第一一一七号)  同(東中光雄紹介)(第一一一八号)  同(藤田スミ紹介)(第一一一九号)  同(正森成二君紹介)(第一一二〇号)  同(村上弘紹介)(第一一二一号)  三宅島の米空軍艦載機夜間離着陸訓練基地建設反対に関する請願岡崎万寿秀紹介)(第一一二二号)  三宅島の米艦載機訓練基地建設反対に関する請願岡崎万寿秀紹介)(第一一二三号) 同月十七日  旧台湾出身日本軍人軍属補償に関する請願(三ッ林弥太郎紹介)(第一一六七号)  旧軍人恩給欠格者に対する特別法制定に関する請願権藤恒夫紹介)(第一二〇七号)  旧台湾出身日本軍人軍属補償に関する請願田村良平紹介)(第一二〇八号)  同(牧野隆守紹介)(第一二〇九号)  国家秘密法制定反対に関する請願外一件(経塚幸夫紹介)(第一二一〇号)  同(藤田スミ紹介)(第一二一一号)  同(藤原ひろ子紹介)(第一二一二号)  同(村正弘紹介)(第一二一三号) 同月十八日  国家機密法制定反対に関する請願浦井洋紹介)(第一三三五号)  同(金子満広紹介)(第一三九七号)  同(佐藤祐弘紹介)(第一三九八号)  旧台湾出身日本軍人軍属補償に関する請願臼井日出男紹介)(第一三三六号)  同(有馬元治紹介)(第一四三九号)  旧台湾人日本軍人軍属補償に関する請願小沢貞孝紹介)(第一三九五号)  防衛費の削減に関する請願大原亨紹介)(第一三九六号)  スパイ防止法制定に関する請願大村襄治紹介)(第一四三八号)  国家秘密法制定反対に関する請願井上一成紹介)(第一四四〇号)  同(左近正男紹介)(第一四四一号) 同月十九日  旧台湾出身日本軍人軍属補償に関する請願永末英一紹介)(第一四九五号)  同(村山喜一紹介)(第一五二〇号)  同(大塚雄司紹介)(第一五六一号)  国家機密法制定反対に関する請願柴田睦夫紹介)(第一五一八号)  同(山原健二郎紹介)(第一五一九号)  同(児玉健次紹介)(第一五六〇号)  旧台湾出身日本軍人軍属補償に関する請願船田元紹介)(第一五二一号)  国家機密法制定反対に関する請願井上一成紹介)(第一五五九号) 同月二十日  スパイ防止法制定に関する請願衛藤征士郎紹介)(第一五九一号)  同(衛藤征士郎紹介)(第一六六四号)  同(衛藤征士郎紹介)(第一七三二号)  同(衛藤征士郎紹介)(第一七七四号)  同(亀岡高夫君紹介)(第一七七五号)  同(小渡三郎紹介)(第一八三六号)  同(坂本三十次君紹介)(第一八三七号)  旧台湾出身日本軍人軍属補償に関する請願有馬元治紹介)(第一五九二号)  同(伊藤茂紹介)(第一五九三号)  同(臼井日出男紹介)(第一五九四号)  同(太田誠一紹介)(第一五九五号)  同(友納武人紹介)(第一六六五号)  同(梶山静六紹介)(第一七三三号)  同(亀岡高夫君紹介)(第一七三四号)  同(石川要三紹介)(第一七七八号)  同(田川誠一紹介)(第一七七九号)  同(竹中修一紹介)(第一七八〇号)  同(前田武志紹介)(第一七八一号)  旧台湾人日本軍人軍属補償に関する請願小泉純一郎紹介)(第一五九六号)  同(小坂善太郎紹介)(第一五九七号)  同(有馬元治紹介)(第一六六六号)  国家機密法制定反対に関する請願外一件(柴田睦夫紹介)(第一七七一号)  同(不破哲三紹介)(第一七七二号)  同(藤田スミ紹介)(第一七七三号)  旧台湾出身日本軍人軍属補償に関する請願有馬元治紹介)(第一七七六号)  同(池田行彦紹介)(第一七七七号)  同(大西正男紹介)(第一八三八号) は本委員会に付託された。     ───────────── 十一月二十日  人事院勧告完全実施に関する陳情書外十二件(第一五一号)  スパイ防止法制定促進に関する陳情書(第一五二号)  国家秘密法制定反対に関する陳情書外二件(第一五三号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出第一〇号)      ────◇─────
  2. 石川要三

    石川委員長 これより会議開きます。  内閣提出防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大原亨君。
  3. 大原亨

    大原(亨)委員 防衛二法について質問をいたしたいと思うのですが、その前に、やはりこれからの核ミサイル時代における戦争と平和にも深いかかわりのある、そういう国際的な情報問題について伺いたいと思います。  三十八度線をめぐりまして、御承知のようにキム・イルソン主席金日成主席の殺害問題というのが世界じゅうを駆けめぐりました。日本情報機関も大きな役割を果たしておると言われております。三十八度線にいるアメリカ軍は非常に冷静であったというように言われておるわけですが、最初のころはちょっといろいろな情報が出ておりました。しかし、韓国国防省が非常に突出した活動をして、前線の拡声機で反逆説まで出てきておるし、あるいは国民は半旗を掲げているというふうな報道までしておるわけですね。  私はかなりの年配ですから、これで二つのことを思い出すのですが、昭和六年にあの関東軍が柳条湖ですか柳条溝を爆破しまして、そしてこれが張作霖側の陰謀であるということで関東軍行動を開始する名目になったわけです。そしてあの十五年戦争が始まりまして、日本内外情勢は非常に変わってまいりました。また、私が青年期に入った当時、今でも覚えておるわけですが、昭和十一年には、私が学校を出る当時でしたが、二・二六事件が起こりました。議会政治は完全に死滅をいたしまして、クーデターをやった者は軍刑法で軍の処罰を受けたのですが、しかし軍部独裁政治が突っ走っていった経過を思い出すわけです。  それ以上に今日は情報化社会でございまして、一つ情報が、とり方いかんによりましては核戦争の契機にならぬとも限らない、こういうふうな、また当時とは違った危険な時代であります。そういう韓国国防省が突っ走った情報を出して、国会まで出席をいたしましてその実態を述べておるわけですが、振り返ってみまして、そういう一方的な情報世界じゅうが大混乱に陥るというふうなことがあれば、どこかでだれかが一つ挑発をかければ、柳条溝事件じゃありませんが、そういうことが起きたならば、これはどういう事態に発展するかわからない。デマが飛び、疑心暗鬼で、一つの実際的な行動がもしそれにつれて起きたとするならば、これは大変なことになるのではないか。  それらの一連の行動を振り返ってみて、日本政府はどのような、外務省はどのような情報収集、整理をしてこれに対応していったのか、こういうことについて、この場を通じて外務大臣防衛庁長官からお答えをいただきたいと思います。
  4. 倉成正

    倉成国務大臣 お答えいたします。  ただいま大原先生からお話がございまして、最初に核に対する認識の問題についてのお話がございましたが、広島出身大原先生、また私も長崎の出身でございますから、この基本的な認識については同感でございます。  同時に、今お話し北朝鮮金日成主席が死亡したという、結果的には誤報でございましたけれども、これが韓国国防部から発表された経緯、これに対して外務省はどういう対応をしたかという御質問の御趣旨のようでありますが、本件につきましては、十五日ごろより金日成主席が死亡したのではないかといううわさがどこからというわけでもなく流れてきたことは御承知のとおりでございまして、我々の耳にもそういう話が入ってきておりました。十七日の午前に至りまして、韓国国防部のスポークスマンが、北朝鮮は十六日、前方地域において拡声機放送を通じ、金日成が銃撃により死亡したと放送したと、その趣旨を発表したものと承知しておる次第でございます。  その間、外務省といたしましては、今次事態についてそれぞれのルートを通じ、あらゆる手段を通じて情報収集情報の交換に全力を尽くしてきたわけでございます。いろいろ新聞報道その他なされておりまして、私ども記者団皆さん方からいろいろ御質問いただきましたけれども、いろいろな方面からいろいろな情報を得ておるけれども事実を確認することはできないでいるということを終始お答えをしておったわけでございます。結果的にはこれは誤報であったというのが実情でございます。  どういうところでどういう情報収集したかということは、これは我々外務省当局としては、あらゆる手段を通じて、あらゆるルートを通じてということでひとつ御了承をいただきたいと思うわけでございます。
  5. 大原亨

    大原(亨)委員 それを振り返ってみて、外務省政府は、なぜこういう問題が起きてきたのか、なぜこういう大きな言うなればデマ情報、もちろんいろいろな問題についての議論はあったわけですけれどもデマ情報、事実に反する情報がこんなに大きな形で、韓国では国会でも取り上げた、こういう形で大きくなってきたのか、その原因はどこにある、その背景はどこにあると思いますか。
  6. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいま大原委員お話しになった点がまさに重要な点であろうかと思いまして、我々も、どうしてこういう誤報がこのような形で大きく宣伝され,そしてまた駆けめぐったのかということについて、今慎重に情勢分析しているわけでございます。政府当局、また外務省としましては、この事実は確認できないということは終始申しておった次第でございます。
  7. 大原亨

    大原(亨)委員 北の方に、朝鮮民主主義人民共和国側に、そういう言うなれば分派活動的な事実があったかないかという議論一つあるでしょう。それと一緒に、韓国側に、やはりこの際、事と次第によっては三十八度線で緊張状況をつくり出すことによって、言うなれば、秋に施行されるかどうかわかりませんけれども、一部で言われておった戒厳令の問題、そういう問題に関係づけて情報殊さら大きく流したのではないか、韓国側内部に事情はなかったのか、こういうことがいろいろと言われておるわけです。  これから、国際情勢については、北の方から入ってくる情報は非常に冷静であるということでありますから、やはり日本の場合にも、これは自主性を持って、そういう情報情勢分析については冷静に、そして事実に基づいて判断するように今後も十分留意をする必要があるではないか、こういうふうに思います。  これに対する御感想をお聞きしたいのですが、それに関係しまして、もう一ついい情報としては、国際オリンピック委員会が、今度のソウルオリンピックには社会主義圏も十九ヵ国全部が参加をする、こういうことについて関係国の意思を受けて会長が発表したというふうな情報がありますが、これは大臣でなくてもよろしいのですが、外務省はその事実については確かめておりてますか。
  8. 倉成正

    倉成国務大臣 最初の問題、今大原委員お話し北朝鮮内部に何か問題があったのじゃなかろうか、あるいは一方の方から謀略的にこういう情報が流されたのではないか、諸説いろいろあることも御承知のとおりでございます。  これらの点を含めて、我々今真相を慎重に分析をしておるという次第でございまして、今お話しのように、一方からだけ情報をとるということでなくて、北の方からの情報あるいはいろいろな情報について情報を集めろというお話でございますが、それは当然のことでありまして、やはり北朝鮮と特別な関係のある国々の方々もいらっしゃるわけでございますし、いろいろな手段をもってあらゆる角度から情報分析をいたしたという次第でございます。今日もなおその真相の解明については努力を続けておるというのが現在の状況でございます。  IOCソウルオリンピックの問題につきましては、政府委員からお答えさせます。
  9. 藤田スミ

    藤田政府委員 IOCサマランチ会長が、ただいま委員御指摘になりましたような、北朝鮮を含みます社会主義圏ソウルオリンピックへの参加が実現するとの印象といいますか心証を自分は得たというような発言をフランスでなさったということは、私ども報道承知いたしておりまして、現在、どのような背景でこのような発言が行われたのかの事実を調査中でございます。
  10. 大原亨

    大原(亨)委員 オリンピック社会主義圏国参加の問題は、例えば政治オリンピックを切す離す、こういう歴史的な一つの課題が解決できるならば、これは私は望ましいことである、こういうふうに思います。しかし、それはそう簡単にいくものかどうかという懸念もあるわけであります。つまり、朝鮮民主主義人民共和国は、会場を南北同じように設定をすべきである、こういう議論等があったわけですから。ですから、私は、そういう問題は一つの明るい問題ではないか、こういうふうに思うわけです。  申し上げておくのですが、おととい等を中心にいたしまして、もし三十八度線で、どちらかというような議論はしませんけれども武力行動等がどこかで起きるというふうなことがいかなる理由にしろあったならば、これはもう収拾のつかない事態になるのではないかということを、この情報化時代に私は非常に危惧をいたします。そういう面において、日本は、国際的にも微妙な地位にあるわけですから、これから順次質問をいたしてまいりたいと思うのですが、十分自主的に、冷静に処理すべきである、こういう意見であります。  それから、レーガン大統領がきょう、日本の時間で午前十時、アメリカ演説をしたことが報道になっております。これは直接日本政府とは関係ありませんが、レ-ガン大統領国務長官にも話をしないでイランに武器を供与しておった、そしてそれは人質問題との取引であったというふうな報道が国際的に出たわけであります。これは、米国民は今までかつてない非常に冷たい反応をしたというふうに言われておるし、レーガン大統領自体も今までのような演出ができなかったというふうに言われております。  そう単純には判断できませんけれども、今まで軍事予算等も削ってきたし、SDIの研究計画も、年度ごとに編成してやっておるのですが、削ってきた民主党が、上下両院ともかなり多数をとった。それで、二年間の任期があるレーガン大統領が死に体になる、そういう判断は私はしませんけれども、しかし、そういうことで中間選挙以降はアメリカ側外交安全保障に対する対応の仕方はかなり変わるのではないか。日本との関係においてはいろいろな問題がありますよ。貿易摩擦防衛問題をくっつけたりするような考え方を民主党の一部で持っていることは私ども承知しておりますが、しかし、全体とすればアメリカは変わってくるのではないか、私はこういうふうに思うわけです。  外務大臣はどういう見解をお持ちか、なかなかあなたの立場で言えば難しいと思うのですが、せっかくの機会ですから、ひとつはっきり物を言ってもらいたいと思うのです。
  11. 倉成正

    倉成国務大臣 これからアメリカ外交政策中間選挙の結果を踏まえてどう変わるかという御質問でございますが、私は、アメリカ外交政策あるいは国防政策というのは、御案内のとおり共和党民主党を通じて基本的なラインについては大きな相違はない、日本における与党と野党との相違とは大分様子が違うと認識をしております。したがって、基本的な方向についての変化というのはあり得ないと信ずるわけでございます。  ただ、予算の問題について、民主党が多数を占めるといったような状況の中で予算をどうつけるのかというような問題について全然影響がないとも言えないかもしれません。したがって、これは今後の推移を見守る以外にないと思うわけでございますが、基本的な変わりはないというのが私どもの考えでございます。
  12. 大原亨

    大原(亨)委員 あなたは、アメリカ与野党関係日本における与野党関係のようなひどい違いはない、こういうことですね。これは後に回そうかと思ったのですが、あなたの時間もあるでしょうから先に質問するのですが、日本においてはどんな開きがあるのですか。
  13. 倉成正

    倉成国務大臣 まずその前に申し上げておきたいのは、アメリカの場合にはそれぞれの政党、共和党民主党ございますけれども、投票に当たっては必ずしも党の政策に拘束されない、それぞれの議員が独自の判断で投票するという慣習があることは御承知のとおりでございますが、日本の場合においては、御案内のとおり党でお決めになれば大体党の方策でそれに投票されるという慣習になっておる。それが絶対的なものであるかどうか、棄権された例が過去にどうあるかということについては私も寡聞にして知りませんけれども、そういうことになっておる。これは基本的に違うのではないだろうかと私は思います。
  14. 大原亨

    大原(亨)委員 それなら国会のやり方が悪いということになるのですね。  私が質問いたしましたのは、そういうことでなしに、政策上どういうふうな開きがあるのかということです。よく皆さん方は、皆さん方個人演説会とかアメリカに行きましたら、社会党などというのは煮ても焼いても食えぬというような演説をしてきた、その名残が少しあるのではないかと思うのです。  私はこういうふうに思っているのです。あなたもここへ額が出ているでしょう。ああ、これだ。二十五年の永年在職議員の表彰を受けられました。私は連続十一回ですけれども、ちょっと中で休憩しました、広島市長選挙ということがありましたから。ただし、連続十一回で永年在職です。そのときに私はこういう演説をいたしました。  六〇年安全保障条約の安保闘争のときには、前の長官の加藤君はあのデモの中にいたというような話ですが、あのときに浅沼委員長が右翼の凶刃に倒れたということは、昭和三十三年に出たのですから、私の政治生活の第一歩として非常に大きなショックであった。しかし、その長い間を振り返ってみると、議会政治ではたくさんの大切な問題について実績を積み上げてきたと思う。その一つは、平和に関する諸原則である。第一は、非核三原則である、第二は、専守防衛、海外派兵禁止である、第三には、武器輸出禁止である、第四には、防衛費はGNPの一%の範囲内で決める、GNPは、分母は動くわけですけれども、そういう問題を挙げたわけです。  私は振り返ってみて、日本議会政治の中で私ども社会党は、憲法を厳格に守っていくということを、核戦争の反省として、核時代における戦争と平和の問題として認識をして、厳しく守っていく、この理想を絶対に放さない、こういうことが必要であるという観点から言えば、前文もそうですが、第九条は、簡単に言うなれば国際紛争を解決する手段として戦争に訴えない、戦力は持たない、つまり外交日本を基本的に防衛するのだ、平和共存以外に核時代における自由と繁栄の道はない、こういう考え方ですね。     〔委員長退席、船田委員長代理着席〕  四つのブロックに分けるかどうかは別にいたしまして、今申し上げました平和の諸原則というのは、これは日米安全保障条約が実際にある、締結されておるという事実、反対ではあっても、締結されておれば国民に対しましては権利義務を拘束するわけですから、実際に存在しているわけです。これから審議する自衛隊も現実に存在している。発足の当時、昭和二十九年前後の当時からずっと考えてみて、法律の改正、いろいろな計画を経て今日まで議論をしてきたけれども、そういうことの事実、国会を通過して現実に作動しているという事実は認めた上で、つくらない、持たない、持ち込ませないの非核三原則だって、持ち込ませないという問題をめぐって議論があるわけです。  自衛隊の海外派兵の問題等についても、海外派兵をしない、専守防衛、これは洋上防衛その他の問題で議論があるのですけれども議論しております。それも自衛隊が存在しておる事実は認めておるわけです。しかしこれは憲法との関係一つの原則を議論して、国会でも確認をし、政府も確認し、国会で決議をしているわけです。  第三の武器輸出禁止の問題も、SDI、武器供与の問題にも、例外措置であるかどうかは別にいたしまして関係いたしますが、武器輸出三原則というものは現に存在しておるわけです。  そして、GNP一%の防衛費の歯どめの問題にいたしましても、これは現実には自衛隊とかあるいは日米安全保障条約の存在というもの自体を否定しているわけではないわけです。経済大国日本が軍事大国にならないという歯どめとして我々は議論しておる。憲法に基づいて、テーゼに対してアンチテーゼとして議論をして、そして合意を得たものが平和に関する日本の諸原則であるというふうに考えてよろしい。  私は永年在職表彰のときの演説で、この原則は長い間国会において議論をした議会政治一つの成果であって、このことが核時代における戦争と平和や国際問題を解決する大切な基準になるのだ、こういうふうに演説をしたことを記憶しておるわけですが、そういう点で言うなれば、あなたが言うように非常に違っておる点もあるかもしれないけれども、しかし自民党だけが一辺倒でどんどん進んだ場合にはどうなるかということを考えてみた場合には、それは大きな論争を通じて一つの接点が生まれておるのではないか、このような国民的な合意や国会の決議というものを守ることが日本の内政や外交の大切な基準ではないかというふうに私は思うのです。  あなたはアメリカに行って、非常に開きがあって煮ても焼いても食えぬと言ったかどうか知りませんが、私が行ったときにはそういう話を聞くのですよ。私はいろいろなときに行っておりますけれども、それを聞くわけです。だから社会党もアメリカとの間において、学者や議員や民間人との間において十分意思疎通をすべきだということであります。  しかし国民的に、両国の国民の間で意思疎通しているのは核の廃絶の問題であると思っております。これはアメリカが落としたにいたしましても真珠湾の攻撃があるにいたしましても、やはり広島を繰り返してはならないという、長崎を繰り返してはならないという気持ちは、これはアメリカの非常に発達した民主主義の中においてはかなり国民の中で浸透し支持をされておる共通の問題であると思うのです。  私の言うような考え方に対しまして、外務大臣はどういうようなお考えを持ちますか。
  15. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいま大原先生お話を聞いておりまして、私は非常に力強く勇気づけられた次第でございます。御案内のとおり民主主義の社会でありますから、いろいろな意見があって、その意見を集約して、そして民主主義のルールに従っていろいろなものが決められていくということで、その現実を踏まえて最高機関である国会の意思を尊重して行動するというのが政府の任務であろうかと思うわけでございまして、そのことについて大原先生がるるお触れになったと思いますが、その点も全く私は先生の御意見に賛成でございます。  ただ、私が違いがあると言ったのは、御案内のとおり、平和を求めるということについてはもうだれも反対する人はないと思います。特殊な、よほど頭のおかしな人以外はないと思います。まず、世界のすべての人が平和を求める。しかし、どういう手段で、どういう方法でやるのかということで、日米安保条約ということを、私ちょうど国会に出てきた直後でございましたけれども、改定のときにこれは非常な騒ぎになりましたけれども、御案内のとおり、我々の党と野党の方々との意見が大変対立したということも御承知のとおりでございますし、いろいろな問題についても非常に意見の対立があった、結局最終的には民主主義のルールによって決定がされたということではないかと思うわけでございます。  したがって、反対の御意見があるということについて、私どもアメリカに行って特定の党を煮ても焼いてもというようなことを、少なくとも外務大臣倉成正に関する限り、もう本当につめのあかほどもございませんから、その点はどうぞ誤解のないように。全国のマスコミの方にそういうことでも通ずると、私にとっても大変なことでありますから。反対の意見があることは決して、私は民主主義の社会にあってどのような意見があってもいい、そしてそれをお互いに話し合いながらやっていくというのが議会制民主主義のルールではなかろうかと思うわけでございます。したがって、率直な意見の交換というのが与野党の間にもあっていいのではないかと思っておる次第でございます。
  16. 大原亨

    大原(亨)委員 さっきあなたは、本音かどうかわからぬけれどもアメリカ共和党民主党も、あるいは民主党が多数になっても変わらない、同じようなことだ、日本のように与野党が離れておらないという議論をされたからそういうことを言ったわけです。  ベトナム戦争をすぐやめよという問題が一番盛り上がったとき、アメリカかなり複合的な交渉を外交交渉でもやるわけですが、そのときに沖縄の返還協定の問題があったわけです。調印がありましてね、そのときに私はワシントンにひとりで行きまして、国会議員の人やあるいは事務所の人や学者等との間に懇談したときに、こういう話をいたしました。  日米安全保障条約についてはアメリカ側は二つの側面を持っておるのではありませんか、こう言いました。防衛庁の研修生なども来ておりましたけれども、二つの側面があるんじゃないか。一つは、日本に基地を設けて、ソビエトの脅威ですか、ソビエトの侵略ですか、ソビエトと対決をする、そしてアメリカを守る、そういう方針が一つある。それに、日本を守るということが表面に出ておる。もう一つの側面は、日本に基地を置いて、講和条約以来そうですけれども、その基地のおもしで、日本における軍国主義の復活、つまり日本の民主主義に対する信頼性の問題ですが、それをチェックする、日本が戦前のような軍国主義に暴走しないようにチェックする、そういう二つの側面があると思うが、いかがですか。  そして、民主主義をチェックするという意味においては社会党は非常に大きな役割を日本の国内で果たしていると思うが、どうか。自民党の中でも、憲法改正すべしということをタイトルに掲げてどんどんやっておられる人もあるわけで、岸元総理大臣もその一人ですけれども、そういう面においては、社会党との交流に窓を開いて、日本の民主主義についていろいろな意見をアメリカが理解をすることが必要ではないかという話をしたわけですよ。そうしましたら、ほとんどの人がそれは賛成である、その二つの側面があるという議論については賛成である、社会党との間においても大いに議論をしたい、こういう話があったわけです。  アメリカは、同じようでありますけれども、大統領が要求いたしました軍事予算にいたしましても、物すごく修正決定をするわけですね。自分で予算国会に出すわけではありませんけれども、修正決定をするわけですよ。SDIについても調べてみればそういうことですね。ですからアメリカは、そういう議会における機能というものは、やはり大統領や与党に対しましてはある場合においてはかなり大きな機能を発揮する場合がある。  私は、民主党上下両院において多数をとったということは、レーガンのレーガノミックスが言うなれば一つの壁に突き当たったときに、大きな転換期のときに民主党が多数をとったということは、これはアメリカの内外の方針にも大きな開きがあるのではないか、こういうふうに私は思う。私の考えに対してどう思われますか。
  17. 倉成正

    倉成国務大臣 先ほどもお答えしたとおりに、基本的には大きな変化がないであろうということを私は申し上げました。しかし、民主党上下両院において多数を占めた、そういうことによって影響が全然なしとはしないということは、それは当然のことでしょう。しかし、基本的に外交防衛政策については共和党民主党の間において大きな、日本与野党のようには相違がない、そういう意味での話を申し上げた次第でございます。     〔船田委員長代理退席、委員長着席〕
  18. 大原亨

    大原(亨)委員 防衛二法案やあるいはSDIという、言うなればとてつもない大きな構想による戦略があるわけです。それにどう対応するかという議論を我々はこれからやるわけですが、これらの問題は密接不可分であると思うのです。  そこで、基本的な問題で外務大臣防衛庁長官、それぞれ国務大臣としても聞いておいてもらいたいと思うのですが、日本アメリカ貿易摩擦、これが非常に大きな課題になった。ある一部では貿易摩擦防衛政策というものを混同させて、そして赤字を解消するために日本は兵器を買えというようなことを言う人もアメリカではおる。それは後での話といたしまして、日米貿易摩擦というものは、為替レートの問題、それからアメリカが強く要求いたしました公定歩合引き下げ、低金利の問題、これは設備投資、内需拡大ということでしょうが、そういう問題だけではこの大きな貿易赤字は解消しないと私は思います。  一番大きなものは何かといいますと、ソビエトもそうですが、ある新聞が特集をきのうから始めておりますけれども、ゴルバチョフ書記長がどういうふうな大きな転換をするかは別でありますが、しかしレーガンとの間において、核軍縮交渉についてそれぞれ客観情勢を踏まえながら虚々実々のことをやっておる。アメリカの国内の中間選挙の結果はありますが、レーガンも一定の目標を持ってやっておるというふうに私は思います。しかし、一番大きな問題は、ソビエトもそうなんですが、アメリカ防衛予算が非常に大き過ぎるということが一番大きな問題ではないか。日本の金に直して、百六十円で計算をいたしましても約四十三兆円の国防費ですね。  これは政府委員でもいいのですが、ちょっと議論をする前に、アメリカの国防費は今幾らですか。それを答えて記録に……。
  19. 倉成正

    倉成国務大臣 何年から申し上げましょうか。
  20. 大原亨

    大原(亨)委員 一九八六年。
  21. 倉成正

    倉成国務大臣 一九八六年の国防費は二千七百十四億ドルでございます。
  22. 大原亨

    大原(亨)委員 それは決定額ですね。大統領が要求して議会が修正した分、最終決定額ですね。それを百六十円で計算いたしますと四十三兆円ぐらいですね。日本予算に匹敵するような膨大なアメリカの国防予算アメリカのがんと言われておる二つの赤字を生んでおる。二千億ドル近い財政赤字、そしてもう一つアメリカの軍需産業の肥大化に伴う民間企業の活力の低下、GNPの伸び率が低い、そういうことの結果として、アメリカ日本の製品あるいは韓国、台湾等アジアNICSの国々からの輸出が殺到して貿易赤字の原因になっておる、こういうふうに私は思うのですが、これは外務大臣はどういうふうに思われますか。
  23. 倉成正

    倉成国務大臣 確かにアメリカ防衛費アメリカの財政に大きな負担をかけておるということは事実だと思います。  ただ、この点で一つ申し上げておきたいのは、米国政府は、やはり今日の厳しい国際情勢のもとで抑止力の信頼性の維持向上のために国防予算の確保を図っておる、厳しい財政情勢の中でも国防予算については大きなプライオリティーを置いてやっておる、同時に、貿易赤字及び財政赤字削減のために最大の努力を払っておる、非常に苦心をしておるというのが実情ではなかろうかと思うわけでございまして、確かに財政赤字の一つの原因になっておることは間違いありません。しかし同時に、厳しい国際情勢の中において国防予算をこれだけつけることが必要である、そういう認識のもとで予算を編成しているというのがアメリカ政府の立場であろうと思います。
  24. 大原亨

    大原(亨)委員 倉成外務大臣、あなたはアメリカ政府のスポークスマンではないのですからね。しかし、ある場合には向こう側を代表するあるいはこちら側を代表する、これは外務大臣一つのエチケットでしょう。抑止力の議論は私は議論しなければならぬと思うのです。  しかし、ある学者が日本経済新聞の経済教育欄の特集に出しておりましたが、世界の軍事予算が一兆ドルに近づいておる現状で、これから軍拡を進めるか軍縮に向かっていくかという場合の世界経済の言うなれば将来推計で、いろいろな想定を設けたシミュレーションをやって発表しているのがありました。これは創価大学の大西教授が、「やさしい経済学」という横長の欄にずっと連載しておるのに出しておりました。これは他のところにもあります。これは宮崎さんたちも出されたことがあります。  その中で、軍拡の場合を挙げておきまして、逆に米ソの核軍縮交渉が進展をして世界的軍縮が実現したと仮定をし、各国の国防支出が八六年度水準で凍結をされたというシミュレーションをしてみた。そして、軍備の削減で浮いた財源のうち、先進国ではその半分を発展途上国に回す、政府開発援助ですね、残り半分は自国の経済発展に使う。そして発展途上国では全額を経済開発に使う、そういう前提で計算をして、二〇〇〇年の世界経済の姿を想定したわけです。そういたしますと、米ソの実質国内総生産は、それぞれアメリカは一五・一%GNPは増大する、ソビエトは九・九%増大する、日本は一一・七%、先進市場経済全体でECを含めて五・一%、発展途上国は一四・四%である、世界経済全体としては七・三%増が見込める、こういう少し単純化してシミュレーションをやってみますと、現状で凍結をしただけでも経済の成長は申し上げたような状況になる。  やはり軍事予算は、池田勇人総理大臣国会で、私どもは初めて出た当時のことなんですけれども、よく言っておりましたけれども、軍事予算というのは、軍事経済というものはこれはそのときの消費はいたしますが、拡大再生産には向かわないというのが普通の常識なんであります。ですから軍事予算のウエー卜がどんどんふえていくということを何とかとめないと世界の平和共存もできないわけです。  そういう考え方の基本は、私の意見について異議がございますか、外務大臣
  25. 倉成正

    倉成国務大臣 まさに大原委員お話の精神が国連の精神でございまして、私もニューヨークに参りまして国連総会でも演説をしたところでございます。  しかし、戦後御案内のとおり百五十の紛争が各地で起こっておるという現実、これはまことに残念なことでございますけれども、そういう現実が今日の世界の姿である。幸いにして日本はそういう紛争に巻き込まれていない、四十年間平和を享受できたということでございますけれども、世界で百五十、それぞれ大きなもの、小さなものございますけれども、現に中東においてイラン・イラク戦争が行われ、あるいはその他の地域においてもいろいろな紛争があるということは御承知のとおりでございますから、大原委員の理想と申しますか、精神については全く賛成であります。しかし現実は、そういう理想と反した現実が今日の世界の姿であるということも直視していかなければならないというのが我々の立場でございます。
  26. 大原亨

    大原(亨)委員 百五十カ所で地域紛争があるのは事実である、しかし大国間においてはやはり大戦争がなかった、核を手段としてやる戦争もなかったということであります。  私は、たしか四年前だったと思うのですが、パリで開かれました、OECDが初めてやったのですが、国会議員のシンポジウムを資源問題、エネルギー問題等を中心にやったことがあるのです。与党では武藤元農林大臣出席されまして、私は野党で出席したのですが、そのときに私はこういう演説をしつこくやったのです。その中にはアメリカも来ておりますし、イギリス、フランス全部おるわけです、OECDですから二十四ヵ国来ておるわけです。オブザーバーもおりました。中近東は当時はまだ火を噴いておりませんでしたが、部分的にはいっぱいあったわけです。  今、局地紛争を激化させておるのはここに出席をしておる先進諸国の武器輸出が原因ではないのか。一番たくさん武器を輸出しておるのはソビエトであったりアメリカであったりして、これはシーソーゲームですね。これはアメリカの議会でも、先ほどイランに対する武器援助を人質の取引に使ったということでレーガン大統領は窮地に陥ったという話をいたしましたが、武器の輸出をアメリカもソビエトも自分の外交手段として行うわけですよ。だからソビエトでもアメリカでもあの手この手でイランやイラク両方に武器を出しておるわけです。その中へブローカーが入っておるわけですよ。  中近東の石油産油国で、まだ当時は非常に羽ぶりがいいときですから、この地域の人々が一番心配をしておるのはポスト石油だ、石油の後また砂漠に返るのではないかという不安があるのではないか。日本は憲法を盾にとって、あるいは社会党も大いに頑張って主張をして武器輸出禁止の原則を国会で決議している。そして日本は、自衛隊を制限しておるのと一緒に、防衛力を制限するのと一緒に、日本が軍事大国にならない、今までの戦前の轍を踏まない、こういう覚悟で憲法を守っているのだ、その先頭に私どもは立っているということである。  ここへ出席しておる各国の政府は、フランスやイギリスや西ドイツを含めて全部武器を輸出をしておる。アメリカにおいてもひどい武器の輸出の仕方である。武器輸出を制限をして、ポスト石油、例えば海水の淡水化とか砂漠の緑地化とかそういうふうなポスト石油の問題について知恵を出し合うというふうなことをすれば、中近東の紛争はなくなるのではないか。武器輸出をどんどん先進国はしておる。日本は、自動車とか戦車とかあるいは軍艦とか戦艦とかそういうものをつくって皆さんと競争すれば皆さんの市場を席巻するかもしれない、それで皆さん方が文句を言うかもしれない、しかし日本はそういう市場には出ないということで規制をしておるのだ。  日本のそのような考え方、私の考え方に対して、もし皆さんの中で日本政策はいけないとか君の考えは間違いであるとか、そういう意見がある者があったら言ってもらいたいと言って、私はしつこく二、三回にわたって演説したのです。だれもじっと聞いておるだけで発言をしなかった。アメリカはいかがですかと、名前を言って失礼だったのですが言ったら、私は共和党じゃありません、レーガンじゃありません、強いアメリカなんか言っておりません、こう言って民主党議員であることを言っていました。  それで後、昼食会のときにみんないろいろと議論に花が咲いたわけです。  百五十カ所で地域紛争があるというのは、発展途上国は、とにかく今ごろはほとんど有料援助ですからね、中古をただでもらうというようなことはほとんどないですから、その他新しい兵器を買うということになりましたら、借金を背負いますし、開発はできないでしょう。貿易も拡大しないということになって先進国に回ってくるということになるわけですから、武器輸出についてやはり規制をすべきであるということを日本が声を大きくしてやることが、大臣が言われました百五十の地域における地域紛争を静めていくもとではないかと私は思うのですよ。そういうことを私はやらなければいけないと思う。  あなたはそういう現実があると言う。現実があるから私の考えは違います、日米間の貿易摩擦の問題についても、軍拡か軍縮かという問題についても違いますと言われましたが、私は、そうじゃない、百五十の地域における紛争を静めるためには、やはり武器輸出禁止とか、先進国、米ソの核軍縮を実際にやるということがその地域紛争を静める最大の要因ではないかと思うのです。いかがですか。
  27. 倉成正

    倉成国務大臣 先ほどの私の答弁が舌足らずであったかもしれませんけれども、決して大原先生お話が間違いであるとか意見が違うということを申し上げたわけではないわけです。ただ、御案内のとおり戦後四十年の間で百五十の大小の紛争が起こっているという現実、このことをやはり頭に置く必要があるという現実の客観的なことを申し上げただけのことでございまして、したがって、今お話しのように、武器輸出をなくし、そしてこの世の中から核兵器はもとより武器というものがなくなっていくということは人類の理想であろうと思います。このことについては異論はありません。もう全く大原先生と同じ気持ちであります。  ただ、一つ我々が考えなければならないのは、いかにしてそれを現実のものとして実現するか。恐らくこの議論に反対する人はないでしょう。しかし具体的にどうやってそれを実現するのか。今仮に武器の輸出を用意ドンでやめたとしたら、今持っているところが有利になってくるということになるから、なかなかそうはいかないでしょう。いろいろそういう具体的な難しさがあるというところに今の政治の難しさがあるのじゃないでしょうか。また、そういういろいろな問題と同時に、今宗教的な問題があり民族的な問題があり、いろいろな問題がふくそうしているというのが世界の現実の姿でありますから、議論としてはいろいろなことが成り立ち得るわけですけれども、これを現実の政治の世界において我々が政策としてとっていくということになってくると、これはなかなか難しい問題である。  だから、原則論については恐らくその会議においても、私はOECDの会議の詳細を承知しておりませんけれども、皆さん反対する人はないでしょうけれども、それでは具体的にどうするかということについて具体的な実現可能であるような提案をされた方が一体あったかどうか、もしそういう御提案があれば私ども大いに参考にさせていただきたいと思うわけでございまして、大原先生の精神というものについては私ども全く賛成でございます。
  28. 大原亨

    大原(亨)委員 精神においては賛成であるということなんですが、しかし現実の問題を処理するのが政治外交だと思うのですね。だから、こういう現実があるからということでシーソーゲームのように軍拡競争が進んでいくということはいけないわけですよ。これは行き着く先は決まっておるわけです、どうなるかということは。それは、第一次大戦前、第二次大戦前のような国際情勢とは今違っておりますから、そう単純にはそういうこともないわけですけれども、しかしそういう考えだけではいけない。例えば、日本が武器輸出を禁止しているということについて国際緊張緩和においてどのような役割を果たしておるかということを自信を持って主張するならば、世界政治については一定の日本発言力を確保することができる。  そこで、栗原長官等の答弁を私も議事録をちょっと読んだわけですが、出てくるわけですが、あなたの意見もそうですし、中曽根さんもうり二つのような、全く同じような議論をされますが、あなたがお話しになりました抑止力の理論ですね、抑止と均衡によって平和を保つという議論です。  しかし、そういう議論を進めてまいりますと、ソビエトが新しい兵器を持つとアメリカは対抗して新しい兵器を持つ、アメリカが持てばソビエトが持つ、そういうことでずっとこれは進んできまして戦略体制ができたと思うのですね。しかし、これはバランスがとれておる、均衡がとれておると言う人がありますが、しかし、均衡がとれているというふうな議論は、そういう正確な絶対的な議論というものはないのではないか。もしそういうことが科学的にあるいは客観的に証明できるということになれば、ここでとめようということになるのだけれども、そうでなしにシーソーゲームになるから、それで毎年毎年軍事予算がふえて一兆ドルに達する、百六十兆円に達する、その半分を米ソが持つというふうな状況が進んでおるのではないか。  そこで、今度はレーガン大統領は、ICBMという宇宙を飛ぶ兵器について宇宙で射とめる、ICBMの核弾頭制御装置を壊す、こういうSDIの構想を出したわけでしょう。しかし、それは後で時間がある範囲内で議論を進めてまいりますけれども、そういう宇宙にまで拡大をして、そしてソビエト側は六千発を超えるICBMの核弾頭を持っておるわけですから、これに対抗してSDIをもって息の根をとめるというふうに悪循環を断ち切るというふうなことが、演説ではできても事実上できるかどうかということになると、これは非常に大きな疑問があると私は思う。  今、三十分ぐらい外務大臣とやったのだけれども、あなたが長くなって、あなたで終わりになりそうだけれども、それは防衛庁長官もちゃんと聞いておられるし、後いつ答弁するかわからぬから質問いたしますが、抑止の理論というのは、これは防衛庁長官にも聞きたいわけですけれども、よく言われますね、過剰殺りくとかオーバーキルとか言われておる、全人類や地球を何回も殺傷し破壊するだけの力を、今や双方、ICBM、戦略核兵器を中心に持っておるわけでしょう。五回とも言うし、十回とも言いますし、それ以上とも言うのがある、そういう過剰殺りくとかオーバーキルというふうな、そういう状況にある軍拡競争の中においては抑止の理論というものは作用しないのではないか。それは、大体攻撃をしたならば双方とも致命的な打撃を受けるという段階でのバランスの問題であって、何回も全人類を殺す、放射能で殺す、あるいは双方を破壊する、地球を破壊するというふうな、そういう時代においては抑止の理論というものは作動しないのではないか、そういう認識を持たなければ、米ソの核軍縮を成功させて、そして人類と地球を救うことはできないのではないかと私は思うのです。  これは栗原長官の方から先に聞きます。指名いたしますが、あなたは抑止と均衡の理論ということを言われますが、この認識については改める必要があるのではないかと思うのですが、いかがですか。
  29. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 この問題は、元来、外務大臣お答えするのが今までの慣例でございますが、あえてお名指しでございまするし、私は抽象的な議論はやめまして、自分自身が政治家としてワインバーガー長官と二年前、それからことし、二回にわたりまして、軍縮・核軍縮・軍備管理の問題について話し合いました。  私は、先ほどお話のあったとおり、いわゆる軍備あるいは防衛のために世界各国が金をどんどんつぎ込むというようなことは非常に悲しいことだ、この地球上には貧しい方々がたくさんいる、そういう方面に回したらどうだ、そういう考え方を持っておりまして、いわゆる国防大臣であろうと、あるいは防衛庁長官であろうと、平和を守るためにあるのだ、その認識に立って、自分もワインバーガーさんと話をするときにこれを聞いてみようということで聞いたのです。  あなたの方はいろいろと言われるけれども、私はやはり基本的には軍縮をする、核軍縮をする、軍備管理をする、核を廃絶する、そういうことで頑張るべきじゃないか。特に、米ソ二大国というのは重大な責任がある。あなたの方からすると、ソビエトがどうのこうのと言うかもしれぬけれども、自由主義陣営から見ると、やはり頼りになるのはアメリカなんだから、アメリカ自体がソビエトとの間の軍縮の問題、核廃絶の問題について積極的にやってもらいたい。二年前に行ったときにも、米ソ両首脳が話をすべきだ、ぜひやってもらいたいという話をいたしました。今回もその話をいたしました。  そのときに、ワインバーガー長官も、まことにそのとおりであって、アメリカとしても日本の言うように、忍耐強くソ連との話し合いをしたい、核軍縮をいたしたい、こういうふうに思っておるが、日本の長官、一つだけ考えてもらいたい。私どもは、核軍縮をする、核配備をするという場合には、相互検証ということが必要だ。この相互検証について私の考え方を言うと、我々の方が納得するような相互検証の問題にソ連の方が乗ってこない、これが非常に残念であるという話がありました。  私は米ソ間にどのような話がされているか知らないけれども、このワインバーガー長官の、相互検証をやろうと思うのだけれども、その相互検証の問題についてソ連の方が乗ってこないという言葉については留意をしておるわけでございます。そういう意味合いで、御説のとおり、抽象問題じゃなくて、具体的な問題としてこの核廃絶の問題、軍縮の問題はやっていかなければいけない、こういうふうに考えております。
  30. 大原亨

    大原(亨)委員 相互検証の問題で、長官、最近、注目すべき一つの案が議論をされていると私は思うのです。  倉成さん、あなたも長崎ですが、ソビエトのゴルバチョフ書記長が核実験を一方的に停止をしているというのは非常に大きな決断である、これは世界じゅうかなりの人々が支持していると私は思うのです。それは評価してよろしいと思うのです。ただし、今言われました検証の問題があるというわけですよ。百五十キロトン以上、以下という問題があるのですけれども、検証の問題がある。そのときに、今のソビエトの核実験が、そしてアメリカもそれに対応して実験を停止をいたしますと、地下実験も。そうすると、軍縮をめぐる大きな情勢の変化になるというふうに思う。つまり核実験競争というのは形を変えた戦争なんですから、宣戦布告をしない戦争状況なんですから、これは核兵器は将来、廃絶するのだという前提で実験を禁止することが必要であると思うのですね。そのときに検証の問題が出てくる。  検証の問題の中で注目すべき点は、実験検証の方法としてコーテックスという方式、問題が取り上げられておるわけであります。そのコーテックスという検証技術の問題は、米ソの軍縮関係者がジュネーブでもかなり突っ込んで議論をしておるというふうに言われておる。そして、ある程度目安をつけたのじゃないかということを言われておるわけですね。そういう地下核実験の全面停止の問題を含めまして、その技術上の問題、検証上の問題について私が指摘をいたしました点について、政府の中で、外務省の中でどういうふうにキャッチをし理解をしておられますか。
  31. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいま防衛庁長官からお答えをいたしましたとおりに、核実験禁止に向けて進展を図るためには、関係国間の信頼ということが一番大切なことだと思います。相互の信頼関係が最大の課題であろうかと思います。したがって、我が国としては、そういう核実験禁止についてのいろいろな進展を図るためには、やはり双方が納得し得る検証措置の合意が不可欠であるということが、ただいま防衛庁長官お話しになった趣旨であろうと思うわけでありまして、我が国は両国がこの合意に向けて真剣に努力を行う用意があるか否かを見きわめる必要があると思っておる次第でございます。  したがって、レイキャビクの首脳会合において米ソ間で核実験問題についてもかなりの進展が見られたということは私も歓迎すべきことだと思うわけでございますけれども、今後ともこれは米ソの極めて技術的な、非常に専門的な問題であろうと思います、検証という問題は。相互の首脳がただお互いに約束するというようなことでいけない、軍事専門家が本当に納得し得るようなそういう技術的かつ詳細な詰めを必要とする問題であろうかと思うわけでございますから、したがって、早期にこの実質的な進展が図られることを期待しておるわけでございますけれども、現時点では米ソ間で検証の分野で問題がなくなったと判断することは、事柄の性質上時期尚早ではないかというのが私ども判断でございます。  なお、検証問題に関する具体的な合意がない状況において一方が核実験をやめるということを宣言を云々しましても、果たして本当のモラトリアムであるかどうかうかがい知れない側面もあります。したがって、ステップ・バイ・ステップで十分な検証措置を伴った体制をつくり上げていくことの方が重要ではないかと考えているのが私どもの立場でございます。
  32. 大原亨

    大原(亨)委員 私の質問はこういうことなんです。レイキャビクの米ソ首脳会談で米国は、実験検証方法としてコーテックス、もう一つ地震波方式という検証方式があるのだそうですが、コーテックスをもとに、米ソ未批准の地下核実験制限条約、一九七四年、平和的核実験制限条約、この二つの条約を、双方とも未批准ですが、その条約を批准してもよいというふうに提案をして、そしてジュネーブにおいて包括的な軍縮交渉の中で技術的に詰めておる、こういうふうな情報、そういうのを私は読んだわけですけれども、これは事実かどうか。これは政府委員が答弁してください。
  33. 小和田恒

    ○小和田政府委員 ただいま御指摘がありましたようなレイキャビクにおける会合の模様については、そういう報道がなされておることは承知しております。  それで、検証に関しまして今御指摘があったような二段階提案をソ連側に対して提示したという話は私どもも聞いております。それとの関連におきまして、検証方法について満足のいくような合意ができれば、核実験の制限二条約、つまり地下核実験の制限条約とそれから平和目的の地下核爆発実験制限条約について上院に提出をする用意があるというような方針をアメリカ側が行政府が持っておるというようなことも聞いております。  しかし、先ほど大臣が申し上げましたように、この検証方法そのものについて非常に原則的な話し合いはなされたようでございますけれども、具体的な検証方法について双方で満足のいくようなことが全部詰められたというわけではございませんので、その点については特にジュネーブにおける軍縮交渉の場を通じて具体的な詰めを行うことが必要である。レイキャビクにおける話し合いというのは、あくまでも検証問題についての米ソの双方の立場についての原則的な意見交換、話し合いであったというふうに承知しております。
  34. 大原亨

    大原(亨)委員 ある程度の合意があって、これは専門家の間において詰めていこうということでジュネーブで話を進めているのではないかということで、もう一歩進んで答弁してもらいたいと思ったのですが、それはお伺いすることができませんでした。  ただ、外務大臣、もう一問にしますが、予定が過ぎて、あなたばかりになっているから悪いけれども、この間、質問しようと思って調べておったら、軍縮局というのが日本にないんですね。日本の国に軍縮局というのがないというのはやはりおかしいと私は思うのですよ。外務省の機構改革をして、やはり軍縮局をつくるべきだ。倉成さんのときにつくったらどうですか。アメリカでもちゃんとやっていますからね。そして独自の提案をしている、データを集めておりますよ。これについては、何かあれば答弁してください。  それで、あと一問です。たくさんあるのですけれども、あと一問にしておきますが、SDIのいわゆる交渉担当大臣外務大臣ですね。SDIなどについて一番詳しくない外務省が担当しているということなんでしょうか。これは適当かどうか、軍縮局もない、こういうことですね。専門家も余り育っていないというようなことでしょう。  そこで、これは防衛問題ですから答弁してもらえばいいのですが、SDIについては、技術供与というのは日本は対米技術供与ということで企業が研究に参加しておるのですね。これは兵器の輸出ですよね。武器の輸出ですね。武器の輸出の一つの問題点ですね。これは今は研究段階だということで非常にルーズになされておりますが、開発の段階、配備の段階、それぞれ段階があると思うのですが、それぞれ段階ごとに判断をきちっとしてもらいたいというふうに私は思うわけです。中曽根総理も、SDIが核兵器であるということがあれば日本参加しない、こういう意味のことを、かなり彼は閣僚の中では詳しいというようなことですが、わかっていないかもしれないが、答弁しておる。そのことも聞きたかったわけですが、きょうはそれは栗原長官に聞く。  そこで、本格的にSDIに参加するときには、ずるずる沼の中に入っていくようなことではなしに、やはりガイドラインを外務省政府はつくるというふうに言われておりますが、いつごろを目標にしてつくるのか。それができた場合には、何らかの形で国家間の取り決めとして、例えば国会の承認を求めるとか、それはいろいろな条約の形式、協定の形式があると思うのですが、私はそういうふうにすべきではないか。これは調べてみればみるほど非常に大きな問題でございますから、そういうふうにちゃんと歯どめをすべきではないかという議論を私なりに考えておるわけです。  私は、ガイドラインの策定がいつかということを含めまして、将来にわたって重要なときには国会の承認を得るような取り決めにしてもらいたい、そういうことを前提に交渉に当たるべきではないかということを指摘いたしますが、外務大臣の最後の答弁を求めます。
  35. 倉成正

    倉成国務大臣 二つの御質問でございます。  軍縮局をつくってはどうかというお話でございますが、御案内のとおり、この委員会の先生方は大変御理解が深くて、外務省に対して人員その他について大変お力添えをいただいて、また特に大原先生はそういう意味で激励をいただいたと思いますけれども、現在の機構の中で新しく局をつくるということになると、やはり相当の人員また予算がなければ、名前だけつけてもそれは大きな機能を発揮することができないわけでございますので、その辺のところが大変苦労があるところでございます。しかし、大原委員がおっしゃる御趣旨と申しますか、軍縮という問題を真剣に平和憲法を持っておる日本国の外務省としては考えるべきだ、そういう意味でのお話として承ればまさにそのとおりでございまして、その精神というか、御提案は十分我々の心にとめさせていただきたいと思うのでございます。  それから、SDIの問題でございますけれども、我々は、研究の問題の段階、これに日本の企業等が参加する場合に円滑に行われるような取り決めをしようということでございまして、現行の枠内、法律あるいは取り決めの枠内、こういうことでやるわけでございますから、御案内のとおり、汎用技術、一般の技術は、ココムを除きましては自由に企業間での交流ができるわけでございますし、また、対米に関しましては武器技術に関する協定があるわけでございますから、新しいことをやろうというのじゃなくて、現在の範囲内で物事をやっていこうということでございますから、この点は企業等が参加する場合に円滑にいけるようにひとつ交渉していこうということでございます。  そして、今お話しのように開発あるいは配備という段階になりますと、これはまさに御指摘のとおり、レーガン大統領も申しておりますように、同盟国と十分協議をする、また同盟国のみならずソビエトともこれは協議をするということを明らかにしておるわけでございますから、その段階になれば――SDIというものがまだ本当に子供の段階で、どういう発展を示していくものか、いろいろな新しい近代技術の問題で難しい技術上の問題があることも我々承知しておりますから、これがどのような形になっていくかということを見きわめながらいくわけでございますから、そういう御心配は当然私ども認識をしておる次第でございます。  なお、アメリカとどういう話し合いをしたかということにつきましては、できるだけ御説明できる部分については御説明を申し上げるということにしたいと思っておる次第でございます。
  36. 大原亨

    大原(亨)委員 外務大臣、切りがないから、もう答弁やめていいですよ、エンドレスだから。  私が今質問いたしましたのは、終わりの方は十分理解されてなかったと思うのですが、研究の段階では企業参加という形ですね、そういう問題等があるわけですが、実際はその次の段階である開発――境がなかなかわからぬですけれども、開発あるいは配備、こういう段階等になりますと、これは言うなればアンチICBMですからね、SDIというのは。その一種です。ですから、ICBMは米ソの間において関係があるのですけれども日本関係ないわけですからね。宇宙を飛んで行くICBMは日本を攻撃目標にしてはいないわけです。日本を攻撃目標にしてのソビエトとの関係について我々が一定の方針を持つということは当然であります。  だから、宇宙に戦域を拡大するような場合に、西側を守ると言ったところで、そういう無謀な宇宙戦争、スターウオーズが開始されたならば、一番中間的な地帯にある日本が大きな影響を受けるのですから、そういう段階では、アメリカとの取り決めの際には、いろいろな問題に関係いたしますから国会で承認を得る、そういう形式を整えるべきではないか。外務省の担当者は残っておるようですけれども、私はそういう点で厳重に問題点を指摘しておきたいと思います。  それからその次に、スパイ防止法、軍機保護法、秘密保護法、国家機密法、これは担当者はだれですか。手を挙げてみてください。来てないですか。――いないですね。じゃ、外務大臣といってもなにだから、国務大臣として栗原長官やりますか。防衛庁の中にはスパイをやる人がいっぱいおるじゃないですか。宮永陸将とか、この間、何とかいう海自二佐が資料を売ったというのがあるでしょう。データを二百万円で売ったとか、いろいろなことがあるでしょう。大体秘密保護法というのはスパイ防止法といって、軍の機密、自衛隊の機密が一つの中心ですからね。  私はこれについては、非常に大きな問題である、これはスターウオーズとの関係があるのではないかというふうな気持ちを持っておるわけです。これは自民党の中でも意見書が出たようですが、日本弁護士連合会も、あの改正案は――時間がありませんからそういう細かな議論は別な機会に譲りますが、問題を提起しております。前の原案と変わらない。三百四名とったという勢いで右翼ばねでやるという手もあると思うのですが、そういう問題ではないと私は思っております。  ただ問題は、栗原長官に国務大臣として答弁してもらいたいと思うのですが、私のいろいろな、アメリカの公文書館等へ行ってみた経験から言いますと、私は、情報公開法というのをきちっとつくることが先決であると思うのです。  というのは、アメリカの公文書館にはペンタゴンからも――私が公文書館へ行った契機は何かといいますと、広島、長崎に原爆を投下した原子爆弾戦争のあの戦略をつかさどったマンハッタン管区というのがありまして、原爆をつくるときから、落として、その後アフターケアで、どういう影響があったということを全部精密に調査をしたマンハッタン管区調査団というのがテニアン島から日本に真っ先に上陸いたしまして、ずっと資料を持って帰って、公文書館にあるのです。これは膨大なものです。戦後、関係大学や各官庁、自治体等からごっそり持っていかれたのがあるのです。つくってから、使って、それを最後まで見届けるということなんですが、それもペンタゴンにはなくて、戦後三十年たっておりますから、情報公開法で、それに類する法律で各官庁のものは秘密書類も全部出ているのです。三十年たちましたから、全部公文書館に集まっている。整理できたものは印刷に付しまして、製本いたしまして国会図書館に流れるようになっているのです。マンハッタン管区調査団の報告書は未整理のままでございます。  しかし、私はそれをずっとピックアップしてみまして、アメリカはやはり民主主義の国だなと思った。日本の武道館の隣にあるようなちゃちなものではなしに、大きな公文書館がありまして、そこで公文書が、税金で仕事をしたものはデータはすべて秘密はない、三十年後には全部公文書館へ集める、そして国民に公開する、その公開を通じて、三十年前に責任者は税金を使って何をしたかということを残しておくわけです。後の世代に対して行政が責任を持つということです。  そういう情報公開法というふうなものがないと、軍事機密だけを保護するということを焦点に置いたにいたしましても、言論とか報道に対する拡大解釈がどんどん進むことになるのではないか。自由民主党の中で熱心に主張される人があるようですが、しかし、これは順位を誤ってはいけない、少なくとも情報公開法をきちっと整備をして、それを前提として議論を煮詰めるべきではないか、多数をもってこのことを立法化して、それがひとり歩きをすることは、非常に日本政治にとって、外交にとっても危険ではないかと私は思うのです。  これは国務大臣である、しかも栗原長官は私と同じように九段宿舎におりますから、非常に近い関係ですから、ひとつ栗原長官の御答弁をお願いしましょう。
  37. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 先ほど申し上げたとおり、これは私の所管ではございません。したがって、有権的な答弁ということはできませんが、今のお話に対する私の感想を申し上げます。  私は、いわゆるスパイ防止法というのを、どういうものをスパイ防止法として今考えておられるかわかりませんが、いわゆるスパイ防止法ということで党の方でもいろいろと御議論をされておるということは承知をしております。それがどういうものになったかという詳細はまだ存じておりませんが、いわゆる防衛機密というものは守っていかなければならぬ、そのためにひとつ有効な手だてを考えてやろうということでいろいろ作業をいただいているものと思います。  そういうお気持ちに対しましてはその労を多とするものでございますが、しかし、現実にこのスパイ防止法というものをどうこうするということになりますと、いつも申し上げているとおり、これは総理も言っておりますけれども、一般国民がどう考えるか、今話された知る権利との関係をどうするか、基本的人権との関係をどうするか、そういったものもございますので、そういうものを総合的によく勘案をして慎重に対処すべきものである、そういうふうに考えております。
  38. 大原亨

    大原(亨)委員 今、直接自衛隊の責任者である栗原長官から非常に慎重な意味の御答弁がありました。情報公開法についてはあなたは担当大臣ではありませんけれども情報公開法というのはやはり一つの民主主義の基本である、私はそのことを指摘をして、引き続いて議論を続けていく、こういうふうにいたしたいと思います。  その次は防衛庁長官ですが、私は防衛二法案を審議するに当たりまして、自衛官の欠員状況、充足状況についていろいろ調べました。現在、陸海空と統幕で、全体の中で欠員は何名で、それから充足率は何%ですか、その結論だけお答えをください。
  39. 松本宗和

    松本政府委員 お答えいたします。  現在、最近の時点では六十一年九月三十日現在でございますが、陸上自衛隊の定員は十八万名、それに対して現員は十五万五千四百十七名、差し引きいたしまして欠員は二万四千五百八十三名、充足率は八六・三%となっております。また海上自衛隊では、定員は四万五千百九十九名、現員は四万三千三百九十八名、欠員は千八百一名、充足率は九六%でございます。次に航空自衛隊では、定員は四万六千八百三十四名、現員は四万四千九百七十六名、欠員は千八百五十八名、充足率は九六%でございます。なお、統幕につきましては、定員百二十九名に対しまして現員百二十九名、充足率一〇〇%でございます。
  40. 大原亨

    大原(亨)委員 それで長官、私は初めて質問するからあれなんですが、三軍と言ってはいかぬのですか。(栗原国務大臣「何ですか」と呼ぶ)
  41. 石川要三

    石川委員長 三軍と言ったらいかぬのかと言っている。――栗原防衛庁長官
  42. 大原亨

    大原(亨)委員 いや、時間がむだだからはしょります。  陸海空三自衛隊の自衛官のトータルで、言われたような欠員があるわけです。約一割ほど欠員がある。充足率は八九%ちょっとです。その欠員が生じておる原因は何でしょうか。
  43. 松本宗和

    松本政府委員 陸上自衛隊で現在の充足率八六%、かなりの欠員を抱えておるということでございますけれども、これは平時において一般に部隊を運用するという立場から効率的にやる、現在の厳しい財政状況のもとでできるだけ効率的に運用していくという観点から必要最小限度に人員を抑えてかかるというようなことも考えておりまして、こういうことも念頭に置きまして、現在おおむね八六%ぐらいのところで平時の運用を行っておるというところから、このような数字になっておるということでございます。
  44. 大原亨

    大原(亨)委員 募集をいたしました定員のとおり入ってこないのは、今言われました予算上の理由が一つと、それから陸海空の自衛隊に対する志願者も少ないのじゃないですか。
  45. 松本宗和

    松本政府委員 優秀な隊員を確保いたすためには優秀な応募者が必要でございますけれども、現在、過去数年と申しますか、相当な期間にわたっておると思いますが、大体二倍程度の応募者を確保しております。これは部隊におきまして必要とする資質を備えた隊員を確保する上ではまず十分な数字ではなかろうか。また、現実にこの約二倍の中から選抜いたしまして毎年約二万名の隊員を採用しておりますけれども、部隊におきまして、ほぼ部隊の要請を満足する資質を持っておるというように伺っております。
  46. 大原亨

    大原(亨)委員 今回、自衛官の六百六名の定員増の提案がございます。予備自衛官を除きまして、提案がございます。その提案は、そういう欠員状況との関係はどうなるのですか。また、防衛大綱との関係はあるのですか、いかがですか。     〔委員長退席、北口委員長代理着席〕
  47. 西廣整輝

    西廣政府委員 まず大綱の点から申し上げますが、大綱の枠組みとして定められておりますのは、陸上自衛隊について定員が十八万人ということで定められておるのが大綱との関係であります。  一方、定員と充足の関係でございますが、先ほど先生、欠員が生じておるというようにおっしゃいましたけれども、実は現在の欠員というのは、それが生じておるということじゃなくて、そのような充足で管理をしておるというようにお考えいただきたいと思うわけであります。つまり、定員の方は枠組みとして必要な人員、例えば一個師団が七千名必要である、それはそれぞれの部隊の構成、装備、そういったものから積み上げて七千人なら七千人という一つの師団の定員をつくっておるわけであります。  一方、それについて平時どういう形で維持しておくかという点になりますと、我々の希望としては一〇〇%充足が望ましいわけでありますけれども、やはり財政上の事情その他ございまして、より効率的な経費の使用ということで、平時必ずしも一〇〇%にしておかなくても済むもの、教育訓練等に多大の支障を与えないものについてはできる限りそれを欠にしておく、つまり充足を避けておくという工夫を、それぞれの国もしているわけでありますが、我が国におきましても、例えば戦車の定員が四名であれば、そのうち弾を込める人間一名は平時は欠にしておくとかいうような工夫をしまして、人件費が平時余り食わないように、陸についてはほぼ八六%、八六・数%でございますが、そういった充足率というものを定めまして、予算的にそういうものが決定をされておる。  一方、海空は若干事情は違いますが、同じような充足管理を求められてはおりますけれども、同時に海空の場合は、装備そのものを運用するためにほとんどの人が使われてしまうということでありますので、九六%という充足率を予算的に定められておるわけであります。  これはある意味では一〇〇%に近い数字とも言えるわけでありまして、通常、隊員の採用というのは、幹部であれば防大等、あるいは一般大学を出た者を四月に採用する、それから士につきましても、多くの者は高校等の新卒者から採ってくるということで、四月段階では一〇〇%に近くなる。しかしながら、一〇〇%以上採ることはできませんから、それが途中段階でやめる人が出てくる、それを補充することになりますと、ならしにするとどうしてもある程度の充足低下はあるというように御理解いただきたいと思います。
  48. 大原亨

    大原(亨)委員 今度の六百六名の定員増は、じゃ何を根拠にして提出されたのですか。
  49. 西廣整輝

    西廣政府委員 それぞれの年度におきまして、例えばかねがね発注しておった航空機が就役してくる、あるいは艦艇が就役してくるというようなことがございます。さらには、例えば統幕でございますと、中央指揮所ができますと二十四時間運用するための人間が要るというような所要が生じてまいります。一方、各年度におきまして航空機なり艦艇、そういったものの除籍といいますか、耐用命数が来て落ちていくものがございます。それは今度はマイナスで、逆にそれに必要な人間は余ってくるということになります。  そういったものを相殺をいたしまして、どうしてもこの年度にそれだけの人間の枠を採りませんと、就役してきた船なり飛行機が幽霊船になってしまうということでありまして、そういったものに見合うもの、あるいは必要になってきた組織を編成するためにどうしても増員しなければならない部分、そういったものについて減るものとふえるものを相殺した差の人間を増員でお願いをしておるわけでございます。
  50. 大原亨

    大原(亨)委員 時間も参りましたので急ぎます。  ちょっとこれは離れておるのですが、この前、昭和六十一年二月二十四日ですから、前の加藤防衛庁長官のとき、増岡鼎という陸上自衛隊東部方面の総監が「月曜評論」に対談で語ったというのが問題になりました。これは、私が読んでみますと、考え方は別にしまして、かなりまじめな人のようでもある。しかし、その中身は、一言で言えば、落ちこぼれが多くてとても機能が発揮できないというふうな意味のくだりもあって、当時加藤長官が格好よく譴責をした。加藤君の評価が上がったところもあるし、下がったところもある、いろいろな議論がございました。この増岡さんは今どうしておられますか。
  51. 松本宗和

    松本政府委員 私ども知っております範囲では、保険会社の嘱託ですか顧問ですか、そういう職についておられるというぐあいに承っております。
  52. 大原亨

    大原(亨)委員 それは余談のようなんですけれども、ちょっと聞いておく。  スパイ事件でやめました宮永陸将補は今どうしておるのですか。
  53. 松本宗和

    松本政府委員 現在掌握しておりません。
  54. 大原亨

    大原(亨)委員 私は聞いておりますが、言いません。  それで、私が言い残したことが一つあるのですが、長官、公務員は公務員法で守秘義務というのがあるのですよね。だから別にスパイ法ということよりも守秘義務を守っているという、これは増岡総監のことは別ですよ、そういうことの問題もあるということを念頭に置かなければいけないということが一つ。  それで、いよいよ時間がありませんから、GNP一%という問題は、それに対する影響は、一つは欠員の補充をどういう観点で補充率をどうするかという問題がある。予算上あるいは人事の問題。例えば海軍でしたら、昔は海軍へ行きましたらいろいろな免許の資格も取れましたし外国へも行けました。私も海軍で短期の現役の経験があるのですけれども、今ごろの若者は、あんなところは狭くて窮屈で死んだと同じだというふうな考えを言う人もあるし、外国に行くというても、そんなにして行くことでもない。それから船の資格を取っても、陸上へ上がりましたら、民間へ帰ってまいりましたら就職先はないわけです、不景気のどん底ですから。だから希望者が少ないと思うのですよ。パイロットや整備士なんかとは少し変わると思いますね。だから、それでどうこうというわけではありませんけれども、充足率の問題はいろいろ分析をしてみると非常に大切であるし、ある面では装備との関係でこれは縮めることもできるが、今の充足率は九割、八九%、これもGNP一%に関係がある。  それからもう一つ、円高・ドル安で、アメリカとの関係で技術や戦闘機等を購入する際に、去年の九月のG5からずっと下がってきておるわけですが、昭和六十年度、六十一年度、ことしは十一月ですが、そういうことにかけまして、ドル安というのは防衛費に対しましてどういう影響を及ぼしているか。
  55. 池田久克

    池田(久)政府委員 為替の関係につきましては、防衛庁といたしましてはかなり多数の外貨関連の契約をいたしておりますけれども、これは事実問題としまして全部特約条項がついておりまして、為替の変動に伴う差益が出ればこれを支払わない、召し上げるということになっております。したがいまして、これは予算が成立いたしましても、補正とか決算の段階で整理をいたしております。もちろん翌年度の予算を編成する際は新しいレートで決定してまいりますから、当然円高になれば円高の段階で予算を計上することになります。  いずれにしましても、現在までのところ、円高で仮に差益が生じましても、これは防衛庁として、それによって新しい装備品を買ったりそういうことをしない仕組みになっておりますので,メリットがあるというものではございません。
  56. 西廣整輝

    西廣政府委員 充足の問題と装備の近代化との関連でございますけれども、先生のおっしゃるように、装備品が逐次近代化していくという点で人の節約ができるという面は十分ございまして、例えば艦艇等でございますと、同じ規模の例えば二千トンなら二千トン規模の船であっても、かつて十年、二十年前は三百人近く乗員がおったというのが現在では百数十人まで減っておるということで、三、四〇%少ない人員で運航可能なように、それだけ自動化をされておるということは事実でございますが、一方、そういったことで装備等がかなり値上がりしておるということもまた事実でございまして、その点は我々としては一つ一つの装備を発注する際に、選定する際にそういうことも十分含めた検討をいたしておるつもりでございます。
  57. 大原亨

    大原(亨)委員 全然把握してないですかね、決算に出てくるのでしょうが、召し上げるという話がありましたが。やはり円高・ドル安でレートが変わってくれば、向こうから購入するものについてはちゃんとそのレートで精算するのでしょう。そうしたらやはりドル安の影響はあるでしょう。かなり余裕が出てくるのじゃないですか。
  58. 池田久克

    池田(久)政府委員 成立いたしました外貨建てのものにつきましてそれぞれ精算をいたしてまいります。そして補正の段階でわかるものにつきましては、例えば今年度予算で申し上げますと、現在の支出官レートが百五十九円になるのじゃないだろうかということで補正を編成しておりますけれども、それの関連では現在百八億、補正でマイナスの減額にいたしております。  これから決算までということでございますけれども、これは実は防衛庁の装備品の購入は非常に長期にわたるものが多いわけでございます。例えば、飛行機は四年でございますし、船でございますと五年にわたるものがございます。そうしますと、最終の納期の大体半年ぐらい前に数ヵ月かけて精算をいたします。外貨関連の証拠書類を突合いたしまして、例えば飛行機をつくるとしますと、会社は部品を先行手配いたします。これは外貨で外国から買います。それを、どの段階で買ったかということを精算して決着して決算に持ってまいります。  御承知のように、昨年度の十月以降円高に転移いたしました。しかし五十九年それから六十年度前半は、御承知のように支出官レートが二百三十七円、二百三十八円と一円の差で二年間推移いたしましたけれども、当時は大体二百五十円以上のレートでございました。したがいまして、そのときに先行手配したもの、そして外貨を会社が払っておるものは今のレートで精算するわけにいきませんので、それを個々に精算いたしまして、我々は中途確定と申しておりますが、数ヵ月の作業をいたしまして、それを整理して決算に持ってまいりますので、今、幾ら出るか、そういうことはわからない、こういう仕組みになっております。
  59. 大原亨

    大原(亨)委員 ただし、去年のG5の九月のときには一ドルが二百四十二円だったわけですから、それがずっと百五十円台まで下がって、また少し、百六十円になっているわけですから、そういうことで、昭和六十年度についてはもうそれで契約支払いは、決済は済んでいるわけですから、どれだけ浮いてくるとか、その調子でいくと本年はどのぐらいとかいうふうなことは推定ができるのではないか。  もう一つは、GNP一%に及ぼす問題は人事院勧告の問題ですね。充足率の問題と為替レートの問題と人事院勧告の問題、これは支出がふえてまいりますね。  それで考えてみて、私は防衛庁の共済年金を、共済年金全体をやっておりますから、かなり突っ込んで見ておるわけですが、長官、定年は高いところで陸幕の長とかその他は六十まで定年をやったらしいが、あとは五十八歳でやったり五十五歳で抑えているわけです。これはつまり戦闘力がなくなるから、体力に限界があるから抑えているわけです。それは将来、共済年金は国家公務員共済年金なんですけれども、六十歳に行き、そして六十五歳まで行くことになるのです、昭和六十五年から七十年にかけましてなるわけです。そうすると、防衛庁の共済は、自衛官については五十五歳定年ですから、五十五歳で年金を開始するということになれば、五十五歳から六十歳まで、六十五歳まで、それは特別に出すわけですよ。  そういうのは、これは他の年金でプールにして財政調整するということは相ならぬということで、去年共済四法案のときに中曽根総理が統一見解を出して、これは国鉄の場合ですが、これは構造上の問題である、自分の意思ではない、こういうことで国が責任を持つということをやったわけです。防衛庁の方も、定年が早くて年金開始が早いわけですから、そうするとかなりの人が年金の年齢になりますと支出がふえてくるということになります。だからそういうことも、五年後、十年後を考えてみると支出がプラスする要因ですね。そういうものを、プラス・マイナスを全体見ながら、装備を見ながら、GNP一%というのは十年間守ってきたと思うのです。防衛大綱十年と言いますが、守ってきたと思うのです。  長官の考えは、GNP一%の歯どめをなくしようということなんですか、いろいろなところの質疑応答を私見ましたが、あなたの真意をひとつこの法案を審議するに当たって聞かしてください。
  60. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 私の真意は、一%を突破しようとか廃止しようというのが真意じゃございません。ただ、今大原さんもおっしゃったとおり、この一%の中で予算を組んでおりますけれども、その内容ですね、この内容というものを離れて一%の論議だけが出てくるというのは好ましくないのじゃないか。もっと言いますと、今いろいろありましたけれども、正面装備に対する後方というのもあるのです。隊舎の問題とか、あるいはいろいろの設備とか、これはいろいろあるのです。そういうものを全体見ながら、この防衛費というものは本当にそれなりの防衛費かどうかということも論議してもらいたい。  私はもちろん三木内閣のときのGNP一%の閣議決定を守ってまいりたい、そういうつもりでございますけれども、GNP一%について、これを超えると軍事大国になる、あるいは以下なら軍事大国にならない、あるいは「防衛計画の大綱」もこれで抑えるべきだ、そういうような議論はいただけない。GNP一%という問題について、もっと国民的にあらゆる角度から御論議いただきたい、そういう意味合いで皆さんの御批判なり御議論をお願いをしておるというのが実態でございまして、一%突破に生きがいを感じておるわけではございません。
  61. 大原亨

    大原(亨)委員 あなたが最近都内で講演をされたときに、GNP一%程度に変える時期として、来年度の予算編成をするときだ、具体的に言うと予算編成をする閣議だ、そういう演説をされたのですか。十二月末に来年度の予算を決定する、そのときの閣議でGNP一%程度というふうに言われたのですか。そういう講演をしたのですね。その程度というのは上限はどこですか。  私が今まで質問してきましたように、非核三原則とか憲法とか、現行条約、法律との関係、専守防衛、海外派兵禁止あるいは武器輸出禁止、そういう、経済大国が軍事大国にならないという歯どめとして数量上のGNP一%を設定した経過がある。分母のGNPというものは動いていくのですから、四%成長するか、本年二%台になるかもわかりません、そうすると分母が違ってくるのですね。そうすると、GNP一%という絶対値は変わってきますね。その面からまだ変わってきますけれども、しかし大体GNPはふえていくのですから、そういうことから考えてみて、その歯どめを外せば歯どめというものはなくなるじゃないかという議論を私どもはしているわけです。  程度ということによって上限をどれだけにするのか、どこまでが程度か。二%までいいのか、一・五%までいいのか、それが程度の範囲か。二つの問題について閣議決定をいつするのですか、方針を決めるのですか。あるいは、その程度というのは、程度というので数量的に数字的に幾らでもいいということで青天井になりましたら、これはあなたの話の趣旨とは全然違ってくる。それはどういうことなんですか。いかがですか。それをはっきり言ってください。
  62. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 私は、今まで、一%程度ということでよろしいという自分の見解を申し上げたことはない。一%程度という議論があるが、これも一つ議論をする対象になる、そういう意味で言っているのであって、私が一%程度ということに移行したとか、そうしたいということではございませんので、この点は御了解いただきたい。  もう一つ防衛費の一%の問題は、最終的には予算編成をするときに出てくるわけですよ。その前の「防衛計画の大綱」をつくったり、あるいは中期防や何やらいろいろありますね。あの中期防だって一・〇三八%ですから、五ヵ年計画全体で年別にしますと。ですから、最終的に一%の問題が本当にきいてくるのはいつかということを、予算編成のときであるということを言ったのであって、六十二年度という特定の年度を指したわけではございません。
  63. 大原亨

    大原(亨)委員 程度という言葉は言ったことはない、そういうことですね。程度といえば一%をはみ出るのですから、はみ出るとすれば限界がなくなるではないか。それでもいいのか。そうではなしに、予算編成するときに、一%というのはちゃんとめどとして、いろいろな全体の有効な使い方をするということを、防衛庁長官といえどもシビリアンコントロールの一つとしてこれをやはり積極的に受けとめて理解をすべきではないか、こういうことであります。  SDIその他の問題で非常に大きな問題があるわけですが、時間が参りましたので、時間を厳守いたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  64. 北口博

    ○北口委員長代理 柴田睦夫君。
  65. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 防衛二法改正案についての質問の前に、まず、在日米軍基地で働く日本人従業員の給与など労務費の日本側負担の問題についてお尋ねいたします。  地位協定の第二十四条では、第二項で日本国が負担すべきものを定め、第一項でそれ以外の在日米軍を維持することに使うすべての経費は日本に負担をかけないで米国が負担する、こうなっております。当然労務費はアメリカが負担するものと読めるわけですけれども、そこにいろいろと解釈に工夫を加えて、地位協定の範囲内だと強弁しながら福利費や国家公務員の給与水準を超える部分の経費を日本が負担してまいりました。  在日米軍基地従業員の給与などいわゆる労務費というのは、地位協定二十四条一項に規定する在日米軍を維持するに伴う経費ではないか。要するに、維持的経費とは何か、まず具体的に明らかにしていただきたいと思います。
  66. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 地位協定二十四条一項の問題でございますので、私からまずお答えをさせていただきます。  地位協定第二十四条一項に申します合衆国軍隊を維持することに伴う経費につきましては、在日米軍がその任務を遂行していく上で必然的に発生する経費をいうものでございます。したがいまして、労務費との関係で申しますと、在日米軍がその任務を遂行する上で労働力を使用するのに直接必要な経費を意味するものと考えておりますけれども、このような経費としての賃金でございましても、日本側が決定したものすべてがそのまま自動的に二十四条一項によって米側の負担になるものというふうには考えておりません。これは、労務の需要者でございますアメリカ側がいかなる水準まで負担して労務の提供を受けることになるかは、諸般の事情を勘案の上に合理的に定められるべきものであるというふうに考えております。
  67. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 今の答弁ですが、この前の委員会でも藤井北米局長が、間接雇用の制度のもとで日本側がその賃金をいろいろの状況を勘案して決定するものであるから、そのまま自動的にすべてが米側の負担になるものではない、こう答弁されております。  これは防衛庁長官にちょっと伺いたいと思いますが、七八年の四月二十日に参議院の社会労働委員会防衛施設庁の菊池労務部長が、二十四条一項について、在日米軍が任務遂行のために日本の労働力を使用するのに直接的に必要な経費、労働基準法第十一条に該当する経費、つまり賃金などは維持的経費に当たる、労務費のうち福利費などは間接的経費でこれに当たらない、こういう趣旨の答弁をされました。  私はこの答弁をすべて肯定するわけじゃありませんが、続いて八〇年の三月二十五日には、玉木施設庁長官はこの内閣委員会で、現在米軍が負担している賃金の内部まで負担の枠を拡大することは、地位協定の規定上できないと答弁されております。  長宮も、この玉木施設庁長官や菊池労務部長と同様な考えであるか、この前の委員会で大体同趣旨のことを言われておりますが、これらの趣旨と同じことであるかどうか、確認したいと思います。
  68. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 昭和五十三年四月二十日の防衛施設庁菊池労務部長の答弁でございますが、今柴田委員がお読みになったとおりでございますけれども、さらにつけ加えて申し上げさせていただくならば、この質問は法定福利費に係る質問でございまして、菊池さんも、法定福利費等以外の経費の日米負担の振り分けにつきましては詳細まだ検討しておりませんと、そのときに御答弁しているかと存じます。  それから、二番目にお尋ねでございました五十五年三月におきます玉木施設庁長官の答弁でございますが、それは五十四年度から始めました給与の一部負担に関連いたしまして、現行地位協定の枠組みの中では国家公務員の給与条件に相当する部分まで日本側が負担するのは無理である、こういう答弁をいたしておりまして、そのことにつきましては、今日も、先ほど外務省の渡辺審議官からお答え申し上げましたように、同じように解しているわけでございます。
  69. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 施設庁の方から答弁がありましたが、外務省の見解も防衛庁の見解と同一であるということですね。
  70. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 そのとおりでございます。
  71. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 どうも答弁を研究してみますと、何か今までの答弁がだんだん拡大されていくように受け取られる部分があるわけであります。  そこで、駐留費負担に関連してことしの防衛白書では、「在日米軍の駐留を円滑にするための施策」という第六節が設けられまして、「ホスト・ネーション・サポート」という括弧書きがつけ加えられております。このホスト・ネーション・サポートというのはどういうことをいうのかお伺いします。
  72. 西廣整輝

    西廣政府委員 ホスト・ネーション・サポートというのは、外国軍隊を受け入れている受け入れ国側が実施する駐留支援全般を指すのに一般的に用いられているのではないかと思います。
  73. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そうしますと、今までも日本アメリカの駐留軍を受け入れてきた、このホスト・ネーション・サポートというのが初めてことしの防衛白書に登場してきた、この理由は何でしょうか。
  74. 西廣整輝

    西廣政府委員 従来の白書におきましても説明が入っておりますが、「在日米軍の駐留を円滑にするための施策」というのがございますが、その副題としてホスト・ネーション・サポートという言葉を使用したということであって、新たに項目ができたというように私どもは考えておりません。
  75. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 アメリカの国防総省の報告書に「共同防衛への同盟国の貢献度」というのがありますが、その中で「米国と日本の間には公式のHNS協定は締結されていないが、日本が実際に行っている自発的な平時HNSは顕著な貢献をしているし、戦時HNSの可能性に関しても、一九七八年の日米防衛協力に関する指針に基づき研究が進められている。」こういうことが書いてあります。  この防衛白書のホスト・ネーション・サポートと、今の同盟国の貢献度という報告書にありますHNS、それから地位協定の二十四条の規定、これはどういう関連になりますか。
  76. 西廣整輝

    西廣政府委員 ただいまの御質問がどういうものか必ずしも明らかでございませんけれども防衛庁が「日米防衛協力のための指針」、いわゆるガイドラインに基づいて行っておりますのは、我が国防衛のための日米の共同対処行動の研究のためのものでありまして、例えば共同作戦計画の研究であり、あるいはそのほか調整機関をどうするかとか、そういった研究でありまして、我が国有事に際してのホスト・ネーション・サポートに係る研究といったようなものを特に行っておるわけではございませんし、先生がおっしゃっておる米側の、何でございますか、私ちょっと十分聞き取れなかったのですが、それに基づいて、日本側には特にないわけだが云々ということとは特段に関係がないのではないかと私は考えております。
  77. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 この国防総省の報告書の中に、ちゃんと「平時HNS」ということと「戦時HNSの可能性に関しても、一九七八年の日米防衛協力に関する指針に基づき研究が進められている。」こういうことが書いてあるわけですけれども、これは国防総省の報告が間違いだということになるわけですか。
  78. 西廣整輝

    西廣政府委員 我が国の有事に際しまして、自衛隊と米軍が日本防衛するための整合性のとれた作戦を円滑に共同して実施をする、そのために、指針にございますように、必要な分野において我が国から米軍に対していろいろな支援がなされることが重要であるということはもう当然のことであるわけですが、研究の具体的内容についてはここで申し上げるのは差し控えさせていただきたいわけです。  いずれにしましても、日米の間で非常に有効な対処行動を行うためには、我が方から米側に対してさまざまな支援が行われるということは当然のことだろうというように考えておるわけであります。
  79. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 中身は言われないと言われましたが、研究が進められているという事実はあるのですか。
  80. 西廣整輝

    西廣政府委員 御承知のように、ガイドラインに基づく諸研究の中には、日米の共同作戦計画に関する研究あるいはシーレーンの防衛に関する研究といったものが今主体となっておりますが、そのほかに、例えばこれは主として外務省の方がやっておられますけれども、六条事態であれば、これは防衛作戦行動そのものではない日本側の支援ということが考えられるでありましょうし、それ以外に後方あるいは通信その他についてもいずれも今後研究していく対象になるべきものであるというようには考えておるわけでございます。
  81. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 このNATOの加盟国では、アメリカと米軍を駐留させている国との間で協定を結んで、平時と戦時における受け入れ国支援でどんなことができるか、どんなことをするかという細目と費用分担まで細かく取り決めております。国防総省報告がちゃんと日本でも有事のときの日本の支援のあり方について研究しているということを言っているわけです。  例えば、アメリカが受け入れ国との間で戦時HNSに含めているものを見ますと、施設の治安だとかあるいは予備役の導入だとか核・生物・化学汚染除去、基地防空、戦争捕虜の安全確保、戦闘被害の修復、輸送、補給、基地支援機能などの研究が含まれているというように言っているのですが、こういう点についての支援の研究、こういうことが行われているわけですか。
  82. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほどもお答え申し上げたように、日米が共同して有効な対処行動を行う際の研究を行うわけでございますから、現在は先ほど申し上げたように作戦計画の研究なりシーレーンの防衛の研究が主体でやっておりますから、そのような防衛行動事態において日米がどのように有効な防衛作戦を遂行できるかという意味で、どういう機能をこちらが主として担当してやるかとか、そういう機能分担の面、その他いろいろな研究が行われるわけであります。  同様に、後方支援の部門なり他の面でもいろいろな面でそのようなものが必要になってこようかと思いますが、まだ研究はそこまで至っていないというのが現状であります。
  83. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 六十年の、去年の防衛白書によりますと、在日米軍の「駐留を真に実効あるものとして維持するために、わが国としても、条約に定められた責任を積極的に遂行する必要がある。」こう書いてあります。これは、五十九年の防衛白書では全く同じ文章になっているわけです。ちょっともとに戻って、このガイドラインができる以前の防衛白書を見てみますと、例えば昭和五十三年ですが、相互に条約の責任を守る、こうなっておりました。これは、労務費や施設費の一部を分担する以前のことであります。  ところがことしの六十一年度の白書では、条約責任を積極的に遂行する、この六十年度まであった部分を削って、やめて、「駐留を真に実効あるものとすることは、日米安全保障体制のもつ抑止力を有効に機能させる上で必須の条件である。」これを前提にした上で、「在日米軍の駐留を円滑にするための施策を積極的に実施していく」、こう書き改めているわけです。今までは条約が中心でありましたけれども、今度は駐留自体を円滑に進める施策を積極的にやっていく、こういうことになっているわけです。  そういう意味ではだんだん膨らんできていると思うわけでありますが、今、日本政治全体を見てみまして、国民の福祉だとか教育だとか国民の経営、暮らし、そうしたものについての予算が削られるということで、先ほどの貢献度にもありますように、アメリカからは褒められているけれども、条約を越えてアメリカから求められることを日本が積極的にアメリカの要求に従っていく、そのために国民の生活が犠牲にされているというのが現状であるわけで、こういうことは、国際間において条約を越えて、かつて思いやりというような表現をされましたけれども、そういうことはあってはならないことだというように考えるものであります。     〔北口委員長代理退席、委員長着席〕  次に、日米統合実動演習の問題であります。  十月二十七日から三十一日までの間に、史上初めての日米三軍統合実動演習が行われました。このことに関連して一点だけ尋ねますが、この演習に先立ちまして米陸軍第二十五歩兵師団は、対化学戦用のMA81化学剤警報器や対核戦争用の携帯式放射能測定器、線量計などを展示いたしました。自衛隊の方も、線量計だとか核汚染除染器などを展示いたしました。そして陸上自衛隊が携帯するものとして、防護マスク、携帯線量計、除染器、化学防護衣、化学加熱機、こういうのがあるというように報告を受けましたが、こうしたものを持った部隊が演習を行うわけですから、この演習は核戦争、化学戦にいつでも備えるという演習や訓練も含まれるのじゃないかと思うのですが、その点についてお伺いします。
  84. 依田智治

    ○依田政府委員 お答えいたします。  十月二十七日から五日間、北海道大演習場等で行いました日米統合実動演習、これに先立ちまして陸上自衛隊と米陸軍で十六日から一日まで共同演習をしたわけでございます。その途中において、先生先ほど御指摘ございましたように、二十日に、それぞれ帯同しておる装備品、これは化学関係の装備品だけでございませんで、小火器とか火砲、誘導弾、戦車、こういうのも展示しておるわけでございますが、その中に米軍側として先生御指摘のような車両除染器とか化学剤検知器、また我が自衛隊の方としましては防護マスクとか化学防護衣、線量計、こういったようなものを展示してございます。  これは部隊移動する場合には、通常個人装備品、その部隊の装備品等帯同しておりますが、これは展示しただけでございまして、今回の訓練におきましては核戦争とか化学戦を想定した訓練等は一切実施しておりません。  以上でございます。
  85. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 核戦争や化学戦争を想定した演習というように言われますが、既にそういう想定がシナリオの中にあったかどうかという問題ではないわけです。  ただ一つマスコミに公開されました演習の中で、指揮官がガスだと叫んで、付近にいた隊員が一斉に防護マスクをつける場面があったということが報道されております。これは核・化学防護訓練ではないでしょうか。
  86. 依田智治

    ○依田政府委員 マスコミの報道にもございましたように、何か早とちりというか間違ってそういう場面がちょっとあったようでございますが、これは全くの早とちりであって、全く訓練ではないというように承知しております。
  87. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 実戦さながらの演習の中でそういう早とちりが行われるということ自体が、やはり何か場合によってはそういう状況になるということを考えていたということになるのじゃないかと思うわけであります。  演習のシナリオというものは一般の演習に参加する人には示されないわけでありますが、そういうことでありますと、隊員にとっては状況の発展によって核・化学戦の防護訓練もそこでやらなければならない、そういうシナリオを知らないわけですから、シナリオの中にはなかったかもしれないけれども参加する隊員にとっては状況によってはそういうこともやらなければならない、そういう演習ではないでしょうか。
  88. 依田智治

    ○依田政府委員 陸上自衛隊におきましては、いわゆるCBR兵器等の問題に関する、これを使用するという意味での訓練というのは一切やっておりませんが、通常、もし万が一核等が使用された場合にどう対応するかというごく初歩的な訓練で、防護マスクの着用というものは各部隊で心得としてやっておるわけでございまして、今回はたまたま一部隊員がちょっと間違えた行動があったわけでございますが、今度の訓練自体では一切そういう想定は入っておりません。そういうことでございます。
  89. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 それでは、米軍側では、演習の中で展示機器の一部を使うとか化学戦を想定し実際にスモークを上げて対応する、こういう言明をしておりましたが、アメリカの方では、化学戦あるいは核攻撃があったことを前提とする訓練、演習を行った事実はありますか。
  90. 依田智治

    ○依田政府委員 先ほどの二十日に展示したということに関連してそういう記事が一部報道で流れておりますが、アメリカの方も我が方といろいろ今回の訓練につきましては相互に十分調整してやっておりますので、そういう想定のもとに訓練は行われなかったと承知しております。
  91. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 日常初歩的な訓練をするということを言われましたが、この演習ではそういう核・化学戦などの初歩的訓練は一切取り入れていない、そういうことでありますか。シナリオになかったということでありますか。
  92. 依田智治

    ○依田政府委員 今回の場合にはそういうシナリオは一切入っておりません。地上の、韓国等から一部A10、OV10というのが参加しましたが、日米双方でいろいろ演習をして進んでいくというような訓練はやっておりますが、そういう中にそういう想定は一切入っておりません。
  93. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 演習の中に核・化学防護訓練を取り入れたことは過去にありますか。
  94. 依田智治

    ○依田政府委員 先ほど私もちょっと御報告いたしましたが、各部隊でそれぞれ防護的意味での防護マスクの着装とか、そういう除染の要領というものを小規模に実施しておる程度でございまして、まだ演習という中でそういうものを取り上げたというのはございません。
  95. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 これは参議院の上田耕一郎議員の要求によって防衛庁から提出された資料でありますけれども、これを読みますと、「放射能に汚染された状況の下における防護に関する訓練としては、防護マスク等の防護用装備品の取扱要領等の訓練を行っているが、これらは各部隊で適宜実施しているものであるため、その時期、場所、演習名等についてはいちいち把握していない。」とあります。  ここでは、使った演習を把握していないと言っているのですが、これを見ると、演習でこの訓練を行うということがあったように見えるのですが、いかがですか。
  96. 依田智治

    ○依田政府委員 先生の御質問の方に演習というような言葉がありましたので、こちらもそういう言葉を使ってお答えしたわけでございますが、これは各部隊等で本当に小規模にやっておる訓練というような意味でございまして、先生の質問が演習等云々というので、私の方もそれを一、二、三ということで使ってお答えさせていただいたということでございます。  実際に日米演習とか実動演習というような演習で使っておる、そういう訓練をやっておるという状況はございません。
  97. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 八四年に「みちのく84」という日米合同演習がありまして、当時の大高教育訓練局長が、日米双方でお互いのやり方を研修し、戦術技量を向上させる、その過程で化学兵器の防護訓練が機能別訓練の一つとして出てくる、一番最後に総合的訓練が行われる、こういうことを述べておられますが、この「みちのく84」ではいかにも化学兵器の防護訓練というものがあったようにとれますけれども、このときはいかがだったのでしょうか。
  98. 依田智治

    ○依田政府委員 当時もやはり演習の途中で装備品の展示が行われた。それで、それの取り扱い等の問題について、その場で、研修というか行われたというように承知しておりまして、訓練というような段階のものではございません。そのように承知しております。
  99. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 全面的に否定されておりますけれども、今まで、要するに演習のシナリオは一般に知らされない、発表されない。それから、核・化学用の防護機器は携帯をする。それから、この十月末の演習では、公開演習でそういうマスクをつけるという場面があった。それから、アメリカ軍が、使うぞと言明している。それから、日常的にこれらの防護訓練は、初期防とは言われますけれどもちゃんとやっている。こういう答弁を総合して考えますと、これだけの演習で、要するに参加する自衛隊員はちゃんと機器を携帯しているわけですから、いつそういう状況になるかもしれない、そういうことを判断して対処する、そういう訓練は少なくともあったのではないかと考えるわけであります。  それでは次に防衛二法についてですが、防衛庁設置法の改正によりまして、海上自衛官が三百五十二人、航空自衛官が二百三十一人、統幕の自衛官が二十三人の定員増加、また、自衛隊法の改正によって、予備自衛官を、陸上千人、航空三百人を増加しようとするものでありまして、シーレーン防衛を初め、戦える自衛隊づくり、日本アメリカと一緒に参戦できる体制づくり、そういう方向に進んでいく一環であると考えるわけであります。  まず予備自衛官の増員問題からお尋ねいたします。予備自衛官を自衛官退職者以外の者から採用することを検討しているということがこの委員会で問題になっておりますが、この問題は防衛庁ではどの機関が検討されておられるのか、それぞれの検討課題も含めてお答えをいただきたいと思います。
  100. 松本宗和

    松本政府委員 お答えいたします。  我が国の予備自衛官でございますが、諸外国の予備兵力に比べましてその規模が著しく小さいというところから、その改善が以前から望まれております。さらに、自衛隊の業務の合理化、効率化という面から、より一層の活用の道がないか、例えば、今後業務の民間委託の拡大を検討する際に、有事の支援体制を確保するというような観点から予備自衛官の適用業務を拡大できないかというようなことが検討の対象となっております。  ただ、このようなことで予備自衛官制度を拡大していくということになりました場合に、その拡大の規模によりましては、現行制度のように自衛官経験者だけをその採用のソースとしております状態ではおのずから拡大の範囲に限度が生じてくる可能性があるというところから、自衛官の未経験者を予備自衛官として採用するということの可否について、法的側面も含めて検討していこうという発想が生まれてまいりまして、現在検討を進めておるということでございます。  それで、この検討しておる組織でございますけれども、これは現在防衛力の有効性の確保という観点から、防衛庁、自衛隊の業務、運営全般にわたりましてみずからの手で業務、運営全般を点検し見直していこうということ、いわゆる防衛行革と言われておりますけれども、そういうことを目的といたしまして部内に業務監査小委員会というものを官房長を長として設けてございます。  ここで検討項目としてただいまの問題を掲げまして検討しておりますが、具体的に検討いたしておりますのは、それぞれ予備自衛官について所掌しております関係部局ということになっております。
  101. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 前回の委員会で、陸上防衛態勢研究会というところでも検討している趣旨の答弁だったと思いますが、この陸上防衛態勢研究会では予備自衛官問題についてはどんな検討をしておりますか。
  102. 西廣整輝

    西廣政府委員 陸上防衛態勢研究会におきましては、陸上防衛のための各種の部隊のあり方その他について研究いたしますから、特に予備自衛官制度そのものについてそれを専門的に研究するということではございませんで、人員計画全般の中でどう考えるかというようなことで触れられることは当然あると思いますけれども、予備自衛官制度そのものについて研究をするということはいたしておりません。
  103. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 防衛庁の業務・運営自主監査委員会昭和六十一年四月に中間報告を発表いたしました。それは「業務運営に関する改善検討状況について」というのが中間報告として出ておりますが、これを見ますと、「装備品の整備業務、コンピュータ・ソフトの維持管理業務、部外に教育機関のある教育等の民間委託」という項目があって、その検討結果として、「補給処・造修所・航空工作所における整備」「練習機の整備等」、それから「保管業務」の補給、こうした「整備・補給業務については、予備自衛官制度の活用と関連して検討」ということが書いてあります。  それからあわせて、十月二十八日の当委員会防衛局長が、整備とか補給の業務は平時から制服自衛官が担当した方がよいのか外部に委託した方が合理的かを検討している、その補充のために予備自衛官制度で賄うという方法を検討しているということを言われました。また、平時に民間委託をするが、それが有事の際には予備自衛官制度を活用して有事における人員の確保も可能にしたいということで検討しているとも答えられました。  さきの中間報告では、さらに「予備自衛官制度の活用」のところで、「現行制度の下での適用業務の拡大について検討するとともに、整備・補給業務につき民間委託との関連で概案作成中」、こういうようになっております。  これは「整備、補給業務」というものを予備自衛官に委託するということの検討をしているということも含むわけですか。
  104. 松本宗和

    松本政府委員 お答えいたします。  ただいまお挙げになりました各種の項目がございますけれども、これも外部に委託するかどうかということも含めて検討しているわけでございまして、その際に、予備自衛官をどういう形でか適用する道がないか、あればそれを検討していこうということでございまして、現在まだ具体的にそれにつきまして結論を出しておるわけではございません。そういう意味で、今先生の御質問に対しまして具体的にお答えし得る状態にまでは至っておりません。
  105. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 整備、補給業務を予備自衛官に委託するということも検討の課題に、今はやってないと言われましたから、そういうものも検討の課題になるのか、反対に業務委託を受けている者を予備自衛官に採用する、そういうことも検討の課題になるのか、お伺いしたいと思います。
  106. 松本宗和

    松本政府委員 先ほども申しましたように、まだ具体的な検討がそこまで進んでおりません。したがいまして、今お尋ねの件につきましても、検討がまだそこまで参っておりませんので、具体的に申し上げられる段階ではないというぐあいに御理解賜りたいと思います。
  107. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 では、もう一つの予備兵力という問題に関してお尋ねしますが、「国防」という雑誌がありまして、ことしの一月号に、宮崎弘毅という現在防衛法学会理事で元陸幕法規担当であった人が、「昭和三十三年一月に、第二次防衛力整備計画に関する陸上自衛隊の問題点について私見を開陳した。」と述べて、その中身がいろいろと書いてありますけれども、その中に、自衛官歴のない十八歳から五十歳の者の志願などによって郷土防衛部隊を編成し、治安維持及び空襲災害復旧に当たるという構想を述べた、こういうことが出てくるわけであります。  そうすると、もう既に昭和三十三年当時、古くから一般民間人の予備自衛官採用が防衛庁の内部で論議されていたのじゃないかと思いますが、現在予備自衛官問題を検討するに当たりまして、この郷土防衛部隊的な構想、こうしたものは検討の対象にされているのでしょうか。
  108. 松本宗和

    松本政府委員 お答えいたします。  自衛隊の経験のない一般の人から予備自衛官を採用するということにつきましては、先ほどから申し上げたような発想で研究をしております。  しかし、ただいまおっしゃいました宮崎氏の私見でございますか、これにつきましては、個人的見解でありましょうけれども、この郷土防衛部隊構想といったようなものは当初から私どもの検討には対象としては入っておりません。
  109. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 今回の陸上予備自衛官千名ですが、軽普通科連隊の一編成に相当するわけですけれども、軽普通科連隊の構想はどうなっているのか。この千名の予備自衛官の増員というのは、新たな軽普通科連隊をつくることを構想するものであるのかどうか、その点をお伺いします。
  110. 西廣整輝

    西廣政府委員 有事になりますと、当然のことながら戦闘地域に主力部隊というものが詰めかけていくことになる。そうなりますと、それらの部隊、例えば師団等が配備されておった地域がある意味では空き家になってしまうわけでありますが、それを埋めるための、軽普通科連隊と今先生言われましたが、その種の警備のための部隊というものが当然必要になってくるというように我々は考えております。  したがいまして、従来から陸上自衛隊の予備自衛官の中の相当数の者はその種警備のための部隊を編成するための要員に充てたいというように考えておりますが、具体的にそれがどこに置かれるかとか、どういう編成にするかというような問題につきましては、そのときの状況によろうかと思っております。
  111. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 軽普通科連隊を日本の各県に置く、こういう方向での検討がされているんじゃありませんか。
  112. 西廣整輝

    西廣政府委員 ただいまもお答え申し上げたように、具体的なそのときの有事の態様によりましてその置かれる場所なり地域というものはおのずから決まってくるということでありまして、必ずしも各県に一つずつ置かなければいけないというようなものではないというふうに私どもは考えております。
  113. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 次は、航空自衛隊の予備自衛官三百名を新設されるわけでありますけれども、この予備自衛官は航空機の整備、基地防空部隊要員などの予備勢力を確保しようとするものであるということでありますけれども、有事の場合にこの航空自衛隊の予備自衛官はどこに何名配置されるわけでありましょうか。
  114. 西廣整輝

    西廣政府委員 有事の際の予備自衛官がどこに配備されるか、それはそのときの状況によるわけでございまして、あらかじめ予備自衛官が、この人間はどこに行くということで決められるわけではございませんで、今回お願いしておりますのは、先ほど先生が申されたとおり、例えばレーダーサイトなり航空基地の防空要員、これは平時からその種のものを全部実員で抱えておくということは、ある意味では大変むだといいますか経費のかかることでありますから、基幹要員だけを抱えておって、そのほかの部分については予備自衛官に相当部分を依存するということも必要であろうというふうに考えておるわけであります。
  115. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 北海道の千歳基地に昨年十月から航空基地防空群というのが発足いたしましたが、これはどういうことをする部隊であって、また自衛官の定員は何名なのか、あわせてお伺いいたします。
  116. 西廣整輝

    西廣政府委員 第一基地防空群は、ただいまお答え申し上げた、例えば航空基地それからレーダーサイト等の防空のための部隊で、そのための装備としては、例えば短SAMだとか携帯SAMであるとか、あるいは高射機関砲というものがあるわけでございますが、そういったものを有事にそれぞれの基地に配備するわけですが、平時からそれではそこに配備するかということになると、必ずしも地積の関係からそれに適さない場合もございますし、特に現在はその種防空部隊、基地防空部隊のまだ初めて編成する時期でありますので、現在のところ、第一基地防空群という形で千歳にまとめてそれを編成して、基幹要員の養成その他を行おうというものであります。  人員等については、ちょっと手元に資料がございませんので、後ほどお答えをいたします。
  117. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 この千歳には基地防空訓練隊というのがありまして、有事の場合は予備自衛官を補充して基地防空隊を編成するのだということが言われておりますが、この防空訓練隊と基地防空群とは、その機能においてどんなふうに違ってまいりますか。
  118. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほどお尋ねの第一基地防空群の定員でございますが、全体で二百十五名ということで考えております。  そこで、基地防空群と基地防空隊のことだろうと思いますが、その関係を申しますと、防空隊というのがそもそもそれぞれの主要な基地に置かれるものでありまして、防空群は、現在のところそれを分散配備をしないでまとめて抱えておる形、群という形でまとめておるというふうに御理解いただければいいと思います。
  119. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そうすると、それをまとめるということは、その機能を強化するということを意味するわけですか。
  120. 西廣整輝

    西廣政府委員 機能を強化するということではございませんで、そもそも基地防空隊というものはそれぞれの基地にあって初めて機能を果たせるわけでありますけれども、平時からすべての基地に分散配備をするということになると、管理なり練度の維持ということがなかなか難しいわけであります。特に現在のようにまだこれからつくっていこうという段階でありますと、群という形でまとめておいた方がその管理なり訓練に都合がよろしい、そういうことでまとめておるということであります。
  121. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 第一基地防空群というように言われましたが、これからどんな基地がつくられる計画であるのか、明らかにしていただきたいと思います。
  122. 西廣整輝

    西廣政府委員 現在のところ具体的な計画を持っておるわけではございませんが、ちなみに、現在の第一基地防空群というのは北部航空方面隊の千歳に置くということで、いわば北部日本あるいは北海道を中心に考えておりますから、いずれは、地域的に考えれば中日本であるとか西日本ということも考えられますが、それらが基地防空群という形でまとめた形でつくられるか、あるいはそれぞれの防空隊という格好でそれぞれの基地に配備するかというようなことはまだ決めておりません。
  123. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 千歳基地はことしの三月にFl5を持っております二飛行隊に増強されまして、三沢の米軍基地と共同して対ソ威嚇と有事における米軍のソ連攻撃を援護するという重大な基地であります。  この基地防空を有事の際に引き受けるために予備自衛官が配備されるというふうに私たちは見ております。航空自衛隊の予備自衛官の新設ということは、そうした面を含めた有事即応態勢を一段と固めていく、その一環と言わなければならないものであるというふうに考えるものであります。  次に、武器防護問題に関連してお伺いします。  この点はこの前の委員会で我が党の児玉議員質問をいたしまして、今度武器防護の対象に入れております通信施設の一種であります対潜水艦ソナーケーブルの問題についてお尋ねいたしましたら、松前の名前は一ヵ所挙げられておりますけれども、ほかのところについては答弁を差し控えるということになりました。  まだ理事会での結論が出ておりませんのでここで聞いておきますが、今まで国会でもこの松前のほかにも下北あるいは竜飛、沖縄の勝連町、対馬、下関、東京湾での設置ということが随時認められてきたわけであります。今挙げましたところに存在するということはこの場でも確認ができるわけでありますか。
  124. 西廣整輝

    西廣政府委員 ただいま先生が挙げられましたすべての基地を含めて、どこに所在するかということは申し上げられません。
  125. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 今言いました松前以下の場所、それも今は言えない、今まで国会などで随時言ってきたのは間違いであった、こういうことになるわけですか。
  126. 西廣整輝

    西廣政府委員 専守防衛の我が国にとりまして、そういった例えば監視機能、ソナー等の機能というものは極めて重要なものであります。また、この種のものがどこにあるかということは我が国に限らずどこの国においても非常に厳重な秘密にしておるものであります。したがいまして、これらのものがどこに所在をするかということが表ざたになること自体が我が国の防衛力というものをそれだけ脆弱化するということになると考えておりますので、答弁は差し控えさせていただきたいと考えております。
  127. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 それでは、一般論でやる以外にないわけでありますけれども、ソナーケーブルは、国際法の関係になるかもしれませんが、領海を越えてケーブルの敷設ということはできるわけでありますか。
  128. 西廣整輝

    西廣政府委員 外務省もおられないようですからお答え申し上げますが、例えば船舶の航行等に危険を及ぼさないような形でその種のものが敷設されるということについては、特に問題はないというふうに理解をいたしております。
  129. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そうしますと、領海外においても、条件つきでありますけれども、ソナーケーブルの敷設ができるという見解でありますが、領海外に延びております、すなわち公海上に敷設してありますソナーケーブルについても今度の法案によって武器防護の対象ということになるわけでありますか。
  130. 友藤一隆

    友藤政府委員 お答えをいたします。  ただいま防衛局長から答弁ございましたように、対潜ソナーケーブルの設置場所につきましては事柄の性質上答弁を差し控えるということがございまして、御質問趣旨が領海外に設置された対潜ソナーケーブルを前提としてお尋ねの御様子でございますので、そういうことでしたら答弁については差し控えさせていただきたいと思いますが、従前からお答えをいたしておりますように、対潜ソナーケーブル自体は九十五条の防護対象としての有線電気通信設備であるというふうに私ども認識をしておるということは変わりません。
  131. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そうしますと、公海に敷設されているソナーケーブルがあって、それを日本の自衛隊が、何者かが損壊しようとしていると判断をした場合には武器をもって排除できる、これが今度の法案の趣旨になるわけでありますか。
  132. 友藤一隆

    友藤政府委員 先ほど来お答えいたしておりますように、設置場所については申し上げるわけにはまいりませんが、武器防護につきましては、警察権の行使といたしまして非常に厳重な制約のもとに武器の使用を認めておるということでございまして、それもその必要がある場合に警護、防護する、こういうことでございます。その点については同様でございます。
  133. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 結局、警護するに当たって武器の使用をするのが合理的だという判断は当事者である自衛官の方でやるわけであります。そういう点から見てみましても、こうした公海上でそういう問題が生じてくる可能性があるということは、やはり重大な事態を引き起こす問題であるわけであります。  次に、船舶を防護する場合のことでありますが、当委員会防衛局長は、自衛艦船での部隊ぐるみの――束ねてという言葉を使われましたが、部隊ぐるみの武器使用が可能だということを答弁されております。  現在宗谷海峡で護衛艦などが監視を行っております。その際に、艦船護衛の必要が生じたということを判断して、護衛艦の艦長の判断で武器が使用されることを認めるということになりますと、結局それは集団的行動、部隊行動になるわけでありますから、もし相手方がそれに対応するということになりますとまさに戦闘状態ということになりかねない事態を生ずる重大な問題であるわけであります。そういう現場から戦闘状態に入れる、入りかねないということが考えられる武器使用の問題があるわけですけれども、この点について防衛庁長官ほどのようにお考えですか、見解を伺いたいと思います。
  134. 友藤一隆

    友藤政府委員 法律問題でもございますので、私の方から申し上げます。  御質問のような仮定の事態を想定いたしましてお答えをするのはなかなか難しいわけでございますが、法律的に一般論として申し上げたいと思います。  自衛隊法九十五条の規定によります武器の使用は、先ほど来申し上げておりますように、武器等を職務上警護する自衛官に対しまして、警察権の行使として武器等の防護に必要な限度で認められておる、こういうことでございます。  こういった立法趣旨からしますと、こういった警護任務を付与された自衛官、これは単数の場合もございますし複数の場合もあるわけでございます。複数の場合には、上位の者の指揮命令のもとに組織的に防護を行うということは、組織行動を行う自衛隊の特性上当然のことでございます。九十五条の規定は、自衛官個々が警護任務につく場合もあるということを前提にいたしまして、それぞれ警察権の行使として認めておるわけでございまして、これは、複数の自衛官が組織的に防護すること自身を排除しておるものではないというふうに考えております。  それから、自動的に交戦状態に入るのではないか、こういうお尋ねでございますけれども、交戦状態という意味が必ずしも明確ではございませんが、先ほど来申し上げておりますように、九十五条によります武器の使用、こういったものは非常に厳重な要件のもとに警察権の行使として認めておるわけでございまして、交戦状態に入るといったような事態は考えられないところでございます。
  135. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 法律では、警護するに当たって合理的に必要があるというときに合理的な武器の使用、そういう条件はついております。しかし、実際は武装集団であるわけで、その武装集団の方がその必要性を判断をするということであるわけであります。そういう点から、海上の自衛官が武器を使用する、そういう事態が生じるという可能性、これは十分にあるわけであります。  そして、実際上、今までの過去の戦争というものが、みんな防衛、自衛というようなことで戦闘状態、交戦状態、そうしたものを引き起こしてきているということを考えてみた場合に、そういう艦船を守るための武器の使用ということは、主観的な判断が伴うものであればこそ、本当に危険なものであるということを言わなければならないと思うわけであります。     〔委員長退席、船田委員長代理着席〕  次に、新聞で見たわけですけれども、埼玉県の入間基地や愛知県の小牧基地で、基地防空訓練と称して近隣の住民に自衛隊が銃口を向けるという事件が今までも発生しているわけであります。  今度の改正案では、全国に無数に存在する通信施設、それから個々の自衛官が携帯しております通信機器も武器で防護できる対象に加えるわけであります。しかも、通信施設が存在する建物へ侵入する者があるというように判断すれば、しかも、その通信施設その他のものの防護が必要であるということを自衛隊の方で判断すれば武器での防護ができるということになるわけですから、自衛隊の持っているすべての施設が武器で防護されると言うに等しいものになるというように見なければならないと思うわけであります。  結局、武器で防護できるものを法律では例示的にどれどれと挙げておりますけれども、そのものを持っている建物の武器防護ということも状況によって許されるということでありますから、実際上は自衛隊の施設全体が、条件はありますが、武器で防護されるということになるのではないかと思いますが、見解を伺います。
  136. 友藤一隆

    友藤政府委員 お答えをいたします。  現在でも、武器防護の対象としましては、弾薬、火薬、車両、航空機等々、相当広範にわたっておるわけでございますが、それを全部武器防護ということで常に防護しておる状況というわけではございません。私どもといたしましては、必要なときに、しかも厳重な制約条件のもとに武器防護を行うということでございますので、その辺は御理解を賜りたいと思います。
  137. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 しかし、自衛隊の持っているほとんどのものが武器で防護される。だから、例えば先ほど明らかにされなかった対潜ソナーケーブルのところに、これがソナーケーブルだということがわからないわけで、そこに自衛官が警護している、これは一体何だろうかとそばに近づけば、自衛隊側の判断によって武器が、銃口が向けられるということも当然考えられるわけであります。そういう角度から、国民の方から見ますと、自衛隊が警護する施設あるいは機器を携帯する自衛隊員に近づくということになれば、自衛隊の判断によっていつでも銃口が向けられるあるいは武器によって威嚇されることもあり得るということであります。  国民の方から見れば、自衛隊の施設、自衛隊がどういうところまで来ているか、これは憲法上の論争も含めてやはりその真実を知りたい、実態を知りたいと考えているわけでありますけれども、そういう調査をすることがこの武器の使用ということによって阻まれる、そういう危険につながるものであるということを私は言いたいと思います。  次に、国賓の輸送問題です。  今度、国賓等の輸送任務を自衛隊に与えるというわけであります。国賓等の範囲、これは政令で定めることになっておりますが、これはその範囲をどのように検討しておられるのか、当然もう検討されていると思いますが、そのことをまずお伺いいたします。
  138. 友藤一隆

    友藤政府委員 お答えをいたします。  自衛隊法百条の五第一項で定める航空機による輸送対象者でございますが、「国賓、内閣総理大臣その他政令で定める者」ということになってございまして、お尋ねの政令で定める者の範囲でございますが、基本的には例示にございます国賓及び内閣総理大臣、これに準ずる者を考えておるわけでございまして、現在関係各省等と協議中でございます。具体的には現在まだ申し上げられる状況にはございません。
  139. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 その総理大臣に準ずる者というのはどういうところですか。日本で言えば三権の長の一つが総理大臣であると言われますが、三権の長、国会の議長あるいは最高裁の長官、そういう者は準ずる者に入るわけでありますか。
  140. 友藤一隆

    友藤政府委員 現在検討いたしております中には、今先生からお話がございました国会の両院の議長、最高裁判所の長官、こういった者も検討の対象として考えておるところでございます。     〔船田委員長代理退席、委員長着席〕
  141. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 一般の国務大臣、なかんずく防衛庁長官は入りますか、検討されておりますか。
  142. 友藤一隆

    友藤政府委員 お答えいたします。  現在その辺も含めまして検討をさせていただいておる、こういうことでございます。
  143. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 自衛隊に対する新たな任務の付与ということでありますが、この自衛隊機によって総理大臣を外国に輸送するということもこの新たな任務の中に入るわけでありますか。  ついでに、自衛隊が国賓等の輸送の用に供するための自衛隊機を持って、これによって国賓等を外国に輸送するということも新たな任務の中に加わるものでありますか、この点、お伺いします。
  144. 友藤一隆

    友藤政府委員 お答えいたしますが、依頼によりまして内閣総理大臣、国賓等の輸送を行うということでございます。任務になるかどうかというお尋ねでございますが、主たる任務は、御案内のとおり自衛隊法で我が国の防衛ということで明確になっておるわけでございまして、付加的な任務というようにお考えをいただきたいと思います。
  145. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 だからその付加的な任務、今度加えられた任務の中に、この総理大臣を外国に輸送する、自衛隊機によって輸送するということが入るのか、また、自衛隊機を持って、国賓などを外国に輸送することも入るのか、これが質問であります。
  146. 友藤一隆

    友藤政府委員 先ほどからお答えいたしておりますように、依頼によりましてそういうことが行えるということが任務でございまして、地理的範囲については特に限定をされておりませんので、現在そのような航空機は持っておりませんけれども、そういった飛行機、航空機があれば、輸送できるということは言えるのではないかと思います。
  147. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 だから、法文から言えば、そういう飛行機を持ち、そういうこともあり得るわけですが、その場合において、そういう輸送の場合の国賓等の警備、それから飛行機自体を警護するということもできるのかどうかお伺いします。
  148. 友藤一隆

    友藤政府委員 内閣総理大臣あるいは国賓等の身辺警護ができるかということでございますが、これは自衛隊の任務には含まれておりません。  それから、御指摘の自衛隊機の警護が、内閣総理大臣を輸送する自衛隊機というものが第九十五条の航空機に該当するかという御趣旨でございますれば、このような飛行機も自衛隊の航空機ということでございますので、九十五条に言う航空機に該当するということでございます。
  149. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 依頼によって自衛隊機が外国に行く、そういう場合に、その飛行機自体を警護するということもできるということですか。
  150. 友藤一隆

    友藤政府委員 ただいまお答えをいたしましたように、九十五条の対象である航空機に該当いたしますので、この条項におきます条件のもとで警護ができる、こういうことでございます。
  151. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 この問題と関連して、いろいろ今までも議論になっておりますが、中曽根総理は、国際緊急援助隊を創設し、これに自衛隊を参加させることが一つの検討課題であるというようにことしの一月の本会議で答弁されております。また、一昨年の九月に日米諮問委員会の報告書が発表されましたが、その中には、国連に対する積極的支援の一環として、日本は多国間平和維持活動に、可能であれば制服要員の派遣を通じて参加することを準備すべきであろう、こう述べております。  国際緊急援助隊、国際平和維持軍への自衛隊の参加という問題について、これは長官の見解をお伺いしたいと思います。
  152. 西廣整輝

    西廣政府委員 国際緊急救助隊につきましては、現在外務省が中心になって検討されているというように聞いておりますが、私ども防衛庁はその検討のチームには入っておりません。
  153. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 確かに今までも外務大臣がこういう問題について国会で答弁されております。しかし、制服要員の派遣というものを、日米諮問委員会で、準備すべきであるということも言われております。それから中曽根総理自身も、これも一つの検討課題だ、こういうことを言われているわけでありますから、単に外務大臣だけの問題でなくて、やはり防衛庁長官としても見解をお持ちであるのが当然だと思います。そういう点で長官にお伺いしているわけであります。
  154. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほどお答え申し上げたように、本問題については、外務省が中心となって、例えば自治省、消防庁関係とか、そういった各省庁が入ったチームができて研究をされているというように聞いておりますが、その中に防衛庁は入っていない。仮に防衛庁にそういったものについて参画するような要請があれば別途申し込みがあると思いますが、現在のところ何らお話がないというところであります。
  155. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 答弁をいただけませんので申し上げますと、亡くなられた園田外務大臣は、平和活動であっても、自衛隊の海外派遣という問題については、それによって本当の海外派遣の入り口になってしまうからよくないということを言われておりますし、当時の伊東外務大臣も、「世界も日本の憲法というのは平和憲法だということで非常に高く評価しているわけでございますから、私は、政策的に、法律が許しても自衛隊員を派遣するということは平和活動のためにもやらぬ方がいいと。」こういう答弁をされております。  この見解について防衛庁長官の御見解は伺えないのでしょうか。
  156. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 それは、それぞれ御見識のある見解だと思います。
  157. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 この問題についてはいろいろ検討されて、結局、法律の改正が必要であるということが防衛庁側から出ているということが言われているわけであります。防衛庁としても、海外派遣ということになっても、自衛官、制服が行っても、実際上やることといえば、一般の専門家による救助活動のようにはいかないというようなことも言われているわけであります。  今まで園田外務大臣や伊東外務大臣が言われましたような見解がやはり正しい見解であるし、この海外派遣の問題というのはもう検討する問題ではない、検討課題だということはやめて中止すべきものであるということを申し上げまして、ちょうど時間が参りましたので終わります。
  158. 石川要三

  159. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私は、社会党の同僚議員初め他の党からも防衛二法の改正問題についていろいろ議論がございましたが、後ほど御出席になります中曽根総理に対する御質問の方は、防衛関係の我が党きってのベテランでございます上原委員の方にお譲りをして、重点的な問題についてひとつお伺いをいたしたいと思うのであります。  私は元来ハト派議員でございまして、こういう防衛防衛庁の長官初め政府委員の人に、ハードな立場から、答弁になられるのにかんかんがくがくやるのも一つの方法でございますけれども、もっとグローバルに、外交防衛問題、あるいは第二次大戦の教訓、我が国が防衛問題を考える場合にどうすべきか。一国の安全保障を考える場合には、もちろん軍事力というのも一つのファクターであることは、これは国際常識として当然考えられるわけでありますが、同時に、我が国は敗戦の結果平和憲法をいただいておる、第九条には、こういった問題に対する基本的な考え方というのが明示されておる。  同時に、私も戦時中は、大東亜戦争の初めにフィリピン戦線に行き、さらに一息つく暇もなく中支戦線に行き、そして最後は、本土決戦部隊ということで、九州の福岡で命令を受けて、五島の福江に行く途中に長崎原爆の体験をいたした一人でございます。したがいまして、核廃絶、こういった問題については、私が戦後革新の道を選ぶ原点は、長崎原爆の惨たんたる惨状の体験であったということが私の実感でございます。  きょうは、外交防衛の重点的な問題ということで、同期の倉成外務大臣にも御出席を願い、同じ東海ブロックで大変御教示をいただいております栗原防衛庁長官にも御出席をいただき、内閣法制局長官にも御出席をいただいて、最初から三人そろったところで、外交から入り、次に防衛というプログラムを立てておったわけであります。ところが、倉成外務大臣は後の三十分のところで出席をするということでございますし、法制局長官もそれから三十分おくれるところで出席をされる、こういうことになるとなかなかやりにくいのであります。しかし、これは理事会の御相談に基づき、いろいろ御手配を願い、努力を願った結果そういうことでございますので、そういうことを踏まえながら御質問をいたしてまいりたい、こう考えておるわけでございます。  外務大臣が後の三十分でございますから、私が予定をしております米ソ首脳会談、日ソ首脳会談、朝鮮半島問題あるいは対中国問題、先般フィリピンのアキノ大統領がおいでになりましたが、いわゆるフィリピンに対する経済援助等を含むこれからの問題、また、韓国朝鮮民主主義人民共和国関係では漁業問題、特に、近く久野さんが団長で日朝民間漁業協定でおいでになられる、私も長い間社会党の水産政策委員長を担当しておりますので、そういうソフトな問題にも言及しながら、予定しておる順番の問題については若干配慮して質問をいたしたいと思っております。  御案内のとおり、去年は国連四十周年がありまして、中曽根総理も御出席をされ、私が見ても演説としては共感できる演説だった、実際はそうやっておるのかなという点は別でありますけれども。そしてことしは国連平和年、さらにはソ連は革命七十周年を来年迎える、日本では天皇在位六十周年の式典も行われていくという年に当たるわけであります。殊にことしは国連平和年でありますけれども、なかなかその趣旨に沿うように進展していないということはまことに残念なことだと思っております。  最初に、大臣としては防衛庁長官が御出席でございますので、ひとつ敬意を表しまして防衛庁長官に御質問申し上げたいと思います。  恐らく中曽根総理の御信頼も厚いのかと思いますけれども防衛庁長官二度目のお務めであります。これは中曽根総理大臣は、対アメリカ関係でも、アメリカの国防筋あたりも前任のときの栗原長官のいろいろな対米の折衝について評価をしておるというようにお読みになったのだと思いますが、それにしても、前回のときと今回御就任になったときでは、世の中も動き、そしてまた国際的にも動きのある中で、防衛庁長官としていかに処していくかということで努力されておるのだと思います。  防衛問題については、我々の党の場合と政府あるいは自民党の場合で基本的に違った面ももちろんございます。しかしながら、我々の場合も、例えば外からは安保、自衛隊問題をどう考えるのかといったような問題を投げかけられておることも事実であります。私自身はこの点には非常にネガティブな態度でございますけれども、しかし、こういった問題についても、四十一年の今日の戦後の歴史の中で将来を展望してどう考えるべきかということは、これは重要な政治検討課題だというふうに私自身も受けとめておるわけであります。  栗原防衛庁長官にお聞きしたいのは、前回御就任のとき、それから、今回二度目のお務めに相なられるわけでありますが、どういう所見をお持ちでございましょうか、まずこれをお伺いいたします。
  160. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 私は御指摘のとおり二回防衛庁長官を拝命したわけでございますが、基本的には何も変わっておりません。  ただ、私、今角屋さんのいろいろお話を聞きましたけれども防衛問題に対してあらゆる角度から論議をしなければならぬと思います。  まず、日本防衛力というのはどこに基本があるかというと、憲法に基づいて必要最小限度の防衛力をやるのだ、その必要最小限度の防衛力は何かというと、防衛政策としては「防衛計画の大綱」である、その水準を達成するように別表というものもあって、それを逐次やっていかなければならないのだ、そこら辺の定点を確立する。  この定点を確立した上で、アメリカに対して、我々はあなた方が何を要望されようとも、我々としてできることはこれを着実にやっていくことですよということでよく理解をさせなければいかぬ。もう一つは、国民皆さん方に対して、我々は過大なことをやるのではないのだ、「防衛計画の大綱」に基づいて着々とやっていくのだ、これだけは日本が日米安全保障体制の中で我が国の防衛ということをやっている場合に果たさなければならぬことなのだ、ぜひそれを御理解いただきたい。  それからもう一つは、これはアジア諸国ももちろんでございますけれども、俗に言う西側陣営の一員として、西側陣営が一体日本防衛というものをどう見ているか、そのときに過大な期待を持たれては困るわけです。アメリカと同じように、日本としては必要最小限度の防衛力の整備をやるのです、それは具体的にはこのような計画でやっておるのです、それ以上のことはできません、しかしそのことがやはり西側陣営全体の中で大きな役割を果たすものでございますということをよくわかっていただこう、そのために実は腐心をしているのです。  それで、アメリカの方は、この前も行きましたし今度も参りまして、いろいろと向こうは御要望がございます。御要望はございますけれども、私は、リーズナブルなことについては耳を傾けますけれども、アンリーズナブルなものについては、それはだめですというふうにはっきり言っているのです。それから、この前は西ドイツとかフランスとかそういう方面に参りましたけれども、向こうの方では、やはり日本は随分金があるじゃないか、だからいろいろの装備品を買えとか航空機を買えとかあったですよ、しかしそれはできませんということも話をしたのです。  問題は国民の皆さんです。国民の皆さんの中にいろいろの意見があるわけです。残念ながら、野党の中には我々と全く反対の考え方の方もおられます。しかし、それも国民でございますから、そういう人たちを全部含めましてよく理解をしてもらう、そのために誠心誠意やっていきたい。  私が最近いろいろな問題をオープンにやろうと言うのはそこなのです。もう防衛問題で、角屋さんもおっしゃったとおり、立場はありますけれども、本当に国民的サイドで、私はこう思う、これはいいのじゃないか、これは悪いのじゃないか、そういう論議をしないといけないと思うのです。そういう意味合いで、私は、時には栗原君少し勇まし過ぎるのじゃないかというような御意見を承りますけれども、勇ましいのじゃなくて、本当のことを言おう、本当のことを言ってお互いに日本防衛というものを考えようということでやっております。どうぞそういう意味で、御支援、御鞭撻を賜りますようお願いを申し上げたいと思います。
  161. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 栗原長官にはこれから頑張って私の質問に答えてもらわなければなりませんので、食事のゆとりを与えます。  本来は同期生の倉成外務大臣の御出席の上でソフト面を最初やるつもりでございましたけれども、後ほど来られるときは三十分でございますから、政府委員のベテランも外務省おりますので、若干地ならし的に御質問を申し上げさせていただきたいというふうに思います。  まず第一は、米ソ首脳会談の今後の見通しの問題であります。  昨年の十一月十九日、二十日の両日に、御案内のとおり米ソの首脳会談がジュネーブで行われました。なかなかいい線の空気で次回が期待をされたわけであります。しかし、ことしの十月にレイキャビクにおきます第二回の会談、じきじきで非常に真剣な議論がなされたかと思いますけれども、結局、伝えられるところでは、SDI問題というところで激しい対立があって、今まで話し合った戦略核半減問題あるいは中距離核戦力、INFの削減問題というのをテーブルに置いたまま、交渉が中断になったと伝えられておるわけであります。  我が国の立場からすれば、アメリカ、ソ連は世界の核保有国の中の核の九五%を占めておる核超大国である。イギリスがあり、フランスがあり、あるいは中国があり等しますけれども、結局圧倒的な核を持っておる米ソがそれぞれ自分の立場に固執して、後、再開の見込みなしということでは国際政治に対する責任を果たしたことにならない。これは我が国の立場からも、もちろん総理、外務大臣を中心にして、いずれ予想されます日ソの首脳会談等も含めて、実り多い結果を生むように米ソ首脳にはやってもらわなければならぬ。  去年の国連四十周年の式典の際の中曽根総理の演説はなかなかよかったというふうに私申し上げましたが、ことしの外交青書の中に中曽根総理の演説が載っております。若干共感できる面を読んでみますと、これは八五年の十月二十三日、ニューヨークでの国連創立四十周年記念会期における中曽根総理の演説の一部になりますけれども、   日本人は、地球上で初めて広島・長崎の原爆の被害を受けた国民として、核兵器の廃絶を訴えつづけてまいりました。核エネルギーは平和目的のみに利用されるべきであり、破壊のための手段に供されてはなりません。核保有国は、核追放を求める全世界の悲痛な合唱に謙虚に耳を傾けるべきであります。とりわけ、米ソ両国の指導者の責任は実に重いと言わざるをえません。両国指導者は、地球上の全人類・全生物の生命を断ち、かけがえのないこの地球を死の天体と化しうる両国の核兵器を、適正な均衡を維持しつつ思い切って大幅にレベルダウンし、遂に廃絶せしむべき進路を、地球上の全人類に明示すべきであります。 こういうふうに中曽根総理は言っておられるわけでありまして、まさにこの点は、日本国民も、我々自身にもこの主張には異議がないわけであります。中曽根内閣登場以来そういう姿勢でやってきたかというのはこれはまた別の問題がありますけれども、この主張自身は我々も共感できる共通の立場であります。  そこで、外務省にお伺いしたいのでありますが、いろいろな外交チャンネルを持っておられるわけでありますけれども、いわゆる米ソの首脳会談、これはここ当分再開される見通しはないというふうに情勢判断をしておられるのか、あるいは、いろいろな外交チャンネルを通じて判断をするところでは、若干時間はかかるけれども、明年のしかるべき時期には開かれる可能性も相当程度考えられるというふうに判断をしているのか、この辺のところをひとつお答えを願いたいと思うのであります。
  162. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 お答えを申し上げます。  最初に、先生も御指摘になりましたけれども、十月のレイキャビクにおきます米ソ首脳会談以降のいわば米ソ関係でございますが、御指摘のとおり、レイキャビクでの会談では特に軍備管理・軍縮問題を中心にいたしまして、そのほかにもいわゆる人権問題、世界各地域におきます地域問題、それから米ソ二国間の幾つか実務的な問題がありますが、そのような問題等を含めまして非常に幅広い討議が行われ、それなりに進展のあった分野もあったわけでございます。特に、中心的な重要性を帯びております軍備管理・軍縮問題につきましては残念ながら最終的な合意には至らなかったわけでございますけれども、ただ米ソいずれも、レイキャビクで話し合われたことは消えてしまったわけではないので、いわばテーブルの上に載ったままになっているという態度をその後も示しているわけでございます。  今月の初めにウィーンで米ソ外相間の会談がございまして、この結果を注目しておりましたが、残念ながらさしたる進展はなかったようでございます。これはレイキャビク後まだ時間も浅いことでございますので、ある程度いたし方ないことであったかと思っております。  私どもといたしましては、双方ともにそれぞれレイキャビクでの話し合いの結果がテーブルに残っていると言っていること、さらに対話の努力を続ける用意はあるということは言っておりますので、現在ジュネーブで例えば軍備管理交渉が米ソ間で行われておりますし、そのような各種の場を通じて米ソ関係に進展が見られることを期待したいということでございます。  その関連で一言申し上げますと、軍備管理等の関係で昨年ジュネーブで行われました米ソ首脳会談では、中距離核の問題を戦略核及びいわゆるSDIの問題と切り離して暫定的な合意をすることができるという合意があったわけでございますけれども、レイキャビクで残念ながらソ連側から全体がパッケージでないと最終的な合意ができないという態度表明があって、最後に全体的に合意ができなかったわけでございますが、この点も含めまして今後の進展を私どもとしては期待したいと思っております。  それで、首脳会談がこの次どういうことになるであろうかということでございますけれども、これは正直に申し上げて見通しを立てることは非常に難しいところがあるとは思います。ただ、レーガン大統領の方も、アメリカ側の招待は今でも生きている、もう一度会うことは有用であろう、ただ、訪米するかしないかは結局ソ連のゴルバチョフ書記長に決めてもらわなければならないという立場をとっておりますので、我が国といたしましては、こういうレーガン大統領の呼びかけにこたえて、ゴルバチョフ書記長の訪米、それに伴う第二回の本格的な米ソ首脳会談の開催が早期に実現されることを期待しておりますし、また、できることがありますればそういう方向で働きかけをしていくべきものであろうと思っております。
  163. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 核の削減、核の廃絶、これは世界人類の平和の課題としてはまさに緊急かつ重要な課題であります。これが使われる場合には勝者も敗者もない、世界人類を、二十回といい二十数回といい、とにかくそれだけ壊滅させるだけの破壊兵器である。我々はそういう意味においては、日本では日本の国内におりますと平和のような環境で考えておりますけれども、世界全体を考えてまいりますと、まさに恐怖の時代に生きておるという実感を私は持つのであります。したがって、そういう点から見て、米ソの首脳会談を通じて、戦略核についてもあるいは中距離核についても大幅な削減を通じ、さらに廃絶をするという努力を日本も強力に推進をしてまいらなければならぬと思います。  その際に私は、例えばイギリスのサッチー首相あるいはフランスのミッテラン大統領等々の報道を通じての御発言を見ておりますと、例えばイギリスのサッチャー首相の場合には、みずからの手で安全を確保できるしっかりした手だてが見つからぬ限り核兵器を手放してはならない、こういう趣旨のことを言われるし、あるいはフランスのミッテラン大統領の場合は、十一月初めの閣議で、仏の核戦略は米ソの軍縮交渉と直接にかかわりを持たない、そういう形で独自路線を行くんだと公言しておる。いわば核拡散防止条約の中で核をつくり得る潜在能力を持つ国があるわけであります。日本もその一つになるわけでありますけれども、核保有国が核の優位を認め、あくまでもこれを保持しておこうということについてはやはり厳しい批判がなされなければならない。  そう思いますが、いろいろな報道を通じて、ヨーロッパのNATO諸国というところでは、米ソの首脳会談を通じて例えば中距離核戦力、INFについては全廃をするというふうな話が出てまいりますというと、頭越しの交渉という立場から、アメリカはヨーロッパから核の点については手を引く、あるいはアメリカの世界戦略についてはヨーロッパからアジアに比重を移すんじゃないか、こういった声もいわゆるヨーロッパの西側の諸国で聞こえてまいるわけであります。  こういった点について外務省としては、こういうヨーロッパの核保有国、あるいは核を持たないけれどもアメリカの中距離核をヨーロッパに配備するというためには、西ドイツその他相当な反核運動の抵抗を受けながら苦労してようやく配備した、この中距離核を全廃をする、とんでもないことだといったような、地上兵力あるいは核戦力を含めて、ワルシャワ体制とNATO体制のバランスという立場等も含めて、頭越し核軍縮交渉であるという立場からの批判の声も聞くわけであります。これは核廃絶に対するブレーキ的な作用をしているようにも受けとめられるわけでありますが、そういった核の削減あるいは核の全廃という方向については、日本は文句なしだと私は政府・与党を通じてでも思うわけであります。しかし、ヨーロッパ諸国のそういうところを見ると、ブレーキ役をやるということが今後ともにあり得る。  そういった中で、米ソを通じての核の今言ったような問題が進み得るのかどうかという点についての情勢判断はいかがですか。
  164. 西山健彦

    ○西山政府委員 まず、ヨーロッパの事情でございますけれども、フランスないしイギリスが独自の核抑止力に非常に強く固執いたしますのは、通常戦力の分野で見ますと、ワルソー条約諸国の力がいわゆる北大西洋条約諸国、NATO諸国の通常戦力に比べて圧倒的に強いということから出てくるわけでございます。これはいろいろな説がございまして、通常戦力の比較を明確にできる人はいないわけでございまして、今、NATOの中で専門家グループをつくってその評価をやっておりますが、例えば一つの例といたしまして、フランスの国際関係研究所がつくっております資料などによれば、ワルソー条約諸国が直ちに動員を始めた場合には、恐らく二・四対一ぐらいで通常戦力ではワルソー条約諸国の方が優勢である、したがって、そういう急襲を避けるためには絶対に核抑止力が必要なんであるというのがフランスあるいはイギリスの考え方でございます。  したがいまして、そういう認識に立って核抑止力というものの重要性を主張しているわけでございますので、その立場を、それ以外のところにある者から核は問題であるというふうなことを言いましても、これはなかなか当事者としては自分の考え方をにわかに変えるというわけにはまいらないことだと思います。  要するに、一般に一国の安全保障政策というのは、やはりその国の置かれた歴史、それから地勢的な状況、そういう総合判断の上に立ってなされるものでありまして、その情勢状況が違う立場にある者からの見方というものは、もちろん参考にはするでありましょうけれども、なかなかそれをそのとおり、わかりましたということにはならない、そこに現代の核軍縮あるいは通常戦力の削減という問題の一番の問題点があろうかというふうに考えております。  したがいまして、米ソの交渉も、その交渉が単に核にとどまりますと今のような問題が見逃されてしまいますので、同時にこれは通常戦力における軍備削減にまで広がっていかないと進まないのではないか。具体的に言えば、特に化学兵器でございますが、そういうものの軍備管理交渉にまで及ばないとヨーロッパ諸国がなかなか納得しがたいのではないか、かように考えております。
  165. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 もう一点この問題に関連してお伺いしたいのは、中曽根総理がレーガン大統領に対して、ソ連のSS20の問題については、ヨーロッパだけの頭でやるのではなしに、アジアに置かれておる、まあことしの防衛白書でいけば百六十二基以上というふうに数字を示しておるわけでありますけれども、このSS20の問題はアジアの問題も含めてちゃんとやってもらいたい、こういうふうに注文をつけたはずであります。この点は米ソの首脳会談を通じてどういう形になったのか、お答えを願いたいと思います。
  166. 渡辺允

    ○渡辺(允)政府委員 ソ連のSS20を含みます中距離核の問題につきましては、私ども承知しておりますところでは、最終的にこれを全世界的にゼロに持っていく、その中間の暫定的な措置として、ヨーロッパの場合は両方ゼロにする、それからソ連は、弾頭にして百でございますから、ミサイルの数にいたしますれば一つにつき三つ弾頭がついておりますので三十三ということになりますけれども、それをソ連の中に持つ、それから同じものをアメリカアメリカに持つという権利を留保するというような格好の合意ができかかったというように承知をしております。  これで見ますと、SS20というものは動くものでございますので、やはり全体としてはグローバルに見るべきものであろうと思いますし、グローバルに見ました場合に現在に比べましてたしか九〇%近い削減になるわけでございますが、そういう意味で世界的な安全保障に役に立つものであろう。しかも、あくまでこれは最終的に両方がゼロにするに至る、そのいわば暫定措置であるということで私どもは理解をいたしております。
  167. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 日ソの首脳会談問題については、倉成外務大臣がおいでになって主としてお聞きしたいというように思うのであります。  ただ、大臣の前に、これは情勢としてはいろいろ動いておるわけであります。この間、日ソの間でモスクワに行って高級事務レベルの会議も持たれたわけでありまして、そういった問題も含めて、ゴルバチョフ書記長の一月の訪日というのは、これはもう事実上断念せざるを得ない、ならば春とか、まあそう遠くない時期に訪日の可能性があるのか。  この間、ソ連の日本におる公使と党の日ソ特別委員会でお会いする機会がございまして、そのときにいろいろお話が出ておりました。その中で、ゴルバチョフ書記長が来るのには必ずしもいい環境にない、例えば北海道の恵庭を中心に日米の合同統合演習が展開された、あるいはソ連が厳しい眼を持っておるSDI問題について日本政府は研究参加を決定をしたといったようなこと等を例に挙げながら、必ずしもいい環境にないという話をされたのであります。私はその際に、国際情勢の中で、米ソの関係にしろあるいは日ソの関係にしろ、すべて好条件のもとで話ができるということはなかなか期待できにくいと言ったわけであります。  ことしは日ソ国交回復三十周年でありますけれども、これは鳩山総理が病身を押して行かれて、そして日ソの平和条約に至らずに、これは領土問題が基本でありますけれども、日ソ共同宣言、それを結んで日ソの間に国交回復の扉を聞いた。それ以来、冬の日もあれば若干小春日和のときもありましたけれども、最近までの状況の中では、アフガン軍事介入の問題あるいは大韓航空機撃墜事件の問題等があって、非常に厳しい時期が数年前にございました。  この内閣委に席を占めておる佐藤文生さんと私がジュネーブの列国議会同盟に出席した際に、私は日ソ議連の事務局長を八年ばかりやっておる立場もあって、厳しい空気でありましたけれども、私の任務からいってもとにかく訪ソして、ざっくばらんな話し合いを通じてソ連の国会代表団を日本に迎えるというレールを敷きたいというふうなこともあって、佐藤文生さんと訪ソし、御承知のようにそれがその年の秋に実って、クナーエフ政治局員を初め代表団が来るという運びになったわけであります。いかに厳しい状況の中でも、やはり平和の立場からあるいは国益の立場から、話は推進すべきときには推進しなければならぬ。  ソ連大使をやめられた高島大使が、ソ連に行ったときにこういう話をしておりました。外務省の高級幹部の心構えとしてもそれは持っておられると思うのですけれども外交は、あの国は好きである、あの国は嫌いであるという好き嫌いでやってはいけない、好きであろうが嫌いであろうが、日本の立場に立ってやるべき外交は進めなければならぬ、感情で外交をやってはいけないというふうに言われました。もう一つのことは、別の問題で私にお話しされたのですけれども、高島大使自身も長いシベリア抑留者であったことは御案内のとおりであります。  いずれにしても、外務省外交を進める場合に、日本国民の世論調査を見ても一番好きな国というとまずアメリカが挙がってくる、その次はどうだといったら大体中国が挙がってくる、一番嫌いな国はどこだといったらソ連が挙がってくる、これにはいろいろな理由があろうと思いますけれども、そういう感情というのは私自身もないわけではございません。しかし、外交はそういう感情で進めてはいけないということだろうと思います。グローバルな国際外交あるいは平和の問題というものを進める場合には、やはり双方に対して扉を開いていく、対話の推進をやっていくということが日本外交の基本になければならぬと思うわけであります。  そういう点から見ますと、最近は、アメリカの言うことは政治外交防衛、何でも結構でございます、ソ連、そんな簡単に言うこと聞くか、こういう空気が率直に言ってないわけではございませんけれども、私も、ソ連との関係政治家としては全然ない形の中で、君ひとつ超党派の議員団だからまとめてもらう役としてやってくれ、率直に言って余り気が進んだわけではありませんけれども、役目からそういうことをやっておるわけであります。  同時に、私は、先ほども申しました長崎原爆の体験者として、アメリカもそうでありますけれども、核超大国であるソ連、そういうところと軍事対決の空気が強まって、まかり間違って、日本にSS20にせよ、その他の原爆にしても投下されるということになったらそれはおしまいである、外交ルートを通じ、あるいは議員外交を通じ、あるいは民間外交を通じて、いかに厳しいときでも細いパイプでも通しておかなければいかぬというのが私の政治信念であります。  そういう点で見て、とにかく日ソの問題あるいは米ソの首脳会談問題というときにおける日本の立場というものは、アメリカ一辺倒の立場あるいはソ連に対してはアメリカと同様に対峙する立場というのをとってはならないというふうに思うわけでございますが、その辺のところは、外交のそれぞれ重要な衝にあられる外務省はいかがでございますか。
  168. 西山健彦

    ○西山政府委員 先生がかねがね日ソ関係の改善のために御尽力になっておられますことは我々もよく承知をしておりますし、先生がいろいろと成果をお上げになっておられることについてはかねがね深い敬意を抱いているものでございます。  ただいま御指摘になりました点につきましては、当然のことながら、我々は我々の外交を我が国の国益に最も沿った形で進めたいと常に念願しておるわけでございます。  その場合に基本的に踏み外してはならないことは、第一に、我が国がいわゆる民主主義工業先進国の中の一国であるということでございます。したがって、政治体制、経済体制あるいは社会体制においても同じ基本的な制度的価値をともにする諸国との連帯ということが、国際社会における日本の立場を向上せしめていく上で最も重要なことと考えております。したがいまして、アメリカの言うことであれば何でも聞く、ソ連の言うことには何でも反対ということではなくて、今申し上げましたような我が国の立脚しております基本的な価値に照らしまして、最も望ましい方向に外交のかじをとっていきたいというのが我々の念願でございます。
  169. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 栗原長官がおいでになりましたら日中の問題について若干触れたいと思いますが、この際、朝鮮関係の問題で、韓国あるいは朝鮮民主主義人民共和国、こういった関係の中で、まずソフトな問題として漁業問題を少し先に取り上げさしていただきたいと思います。  御案内のとおり、いわゆる北朝鮮との関係においては国交がまだ樹立しておりませんので、漁業については日朝民間漁業協定ということで、断続もありましたけれども、やっておるわけであります。関係漁業者にすれば、産業、生活の立場から非常に重要な問題の一つであります。近く超党派で久野さんを団長に訪朝されて日朝民間漁業協定問題の交渉をやられる、十二月で期限が切れるわけでありまして、ぜひとも成功さしたいものだ、こういうふうに念願をしております。  ちょうどそういう時期に、韓国放送を通じて金日成主席が死亡したようだと、事実は全くそれに反する結果でありまして、いずれの国の主席であれ、あるいは総理であれ、無事であったということは喜ばなければならぬことだと思うわけでありますが、そういう新たな情勢等、それに中曽根総理が訪中したときに、韓国の問題の橋渡しを中国にやられた。きょうあたりの新聞報道によりますと、いわゆる韓国関係の問題の橋渡しについては中国の首脳からはお断りされたというその後の報道が出ておるわけであります。  これはアメリカあるいは南北朝鮮、中国を含めた四者会談をやったらどうだ、オリンピックについて中国の参加を求めたいということについては、これは平和の祭典、スポーツでありますから結構だと思いますし、これはかつて私と同期の安倍前外務大臣がシェワルナゼ外務大臣とことしの一月に会ったときに、シェワルナゼ外務大臣に、北朝鮮に対して幾つかの問題についてひとつ意向打診をしてお答えを願えないかといって、そういうことをやられたことは御承知のとおりであります。その回答の結果は、ソ連に行ったときにお聞きして、必ずしもいいことばかりではなかったわけでありますけれども、このときにもやはりオリンピック参加の問題あるいは北朝鮮におる日本人妻のいわゆる帰国問題、いろいろなことをひとつ北朝鮮の方に打診をしてくれと頼まれたわけであります。  そういう意味における打診は公式、非公式を問わず結構なことだと私は思うのですけれども、ただ、四ヵ国会談ということを中国の首脳部に言われるという中曽根総理の政治判断はいかがであっただろうかという気もします。  その問題はその問題といたしまして、水産庁長官がおいででありますので、日朝の民間漁業協定の問題についての見通しをどう持っておられるか、従来の経緯からどうであるか、簡単にお答えを願いたいと思います。
  170. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 現行の日朝民間漁業暫定合意、いわゆる民間協定でございますが、昭和五十九年当時、社会党の石橋委員長を団長とする社会党代表団の訪朝に続き、日朝友好促進議員連盟、さらにまた日朝漁業協議会の一行が訪朝され、二年以上にわたって中断されていた協定が復活、更新されたものであります。これによりまして我が国の零細な漁業者の沖合イカ漁業の漁場及び安全操業が確保されたわけでございますが、現行協定の期限が先ほど先生のお話にもございましたように十二月末に切れるところから、今月二十四日、議員連盟、協議会の関係者が訪朝し、協定の延長について協議するものというふうに承っております。  現時点で協議の見通しについて申し上げることはできないわけでございますけれども、私どもといたしましても、先ほど申し上げましたように、沖合イカ釣り漁業にとって大変重要な漁場になっているわけでございますので、協定が円滑に更新されることを期待しているわけでございます。
  171. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 引き続き水産庁長官お答えを願いたいのでありますが、日韓については漁業条約がありましてやられておるわけでありますけれども、北海道方面においてもあるいは日本海方面においても、韓国の違反操業ということで非常に問題が出ておりまして、全漁連初め漁業団体では、今の二百海里の線引きが、日韓の関係、あるいは日中の関係もそうでありますけれども、暫定的な形をとっておる、本格的にひとつやってもらいたいという強い要請が出ておるわけであります。  本来、基本的にはそういう姿勢でこの問題をやっていかなければならぬ。もちろん竹島問題というなかなか厄介な問題がございまして、これは例の北洋漁業における日ソの漁業協定の問題の場合でも北方四島の日本の領土の問題がございますけれども、そういうことは双方の立場を念頭に置きながらということでさばいた経験がございます。本格的に二百海里時代のレールを敷くべきであるといった強い声がございますけれども、これらの問題はどうお考えでございましょうか。
  172. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 日韓漁業関係の基本的枠組みは、昭和四十年に締結されました日韓漁業協定によって決まっているわけでございます。それ以来二十年たったわけでございまして、両国の漁業の実態さらに両国の漁業を取り巻く環境条件も大変大きく変わってきているわけでございます。この変更に対応すべく、五十五年の北海道及び済州島沖の自主規制等の措置も講じられたわけでございますが、もはやそのような措置では対応できなくなっており、全般的な見直しをいたすべき時期に来ているのではないかというふうに私ども判断しているわけでございます。私も先般二度ばかり訪韓いたしまして韓国の姜水産庁長と会談いたしましたけれども、二十年経過し、実態が大きく変化しているという点につきましては、韓国側もその認識は否定いたしておらないところでございます。  しかしながら、それではどういう枠組みで処理すべきか、新しい漁業秩序を確立しなければならない時期に来ていることについては韓国側も、全面的ではございませんけれどもそういう実態については認識をしているわけでございます。それをどのような枠組みで処理すべきであるかということにつきましては、現在の日韓漁業協定との関係をどのように整理するか、あるいは先生の今のお話にもございましたように竹島の問題が当然関係してくるわけでございまして、これをどのように処理するか、解決すべき多くの問題点が存するわけでございます。先般十月末で北海道沖、済州島沖の自主規制措置の期限が切れましたわけでございますが、引き続き協議を続けようということで韓国側も合意をいたしております。今後はそのような枠組み問題も含めて議論をしてまいりたいと思うわけでございまして、外務省とも十分相談の上、対応してまいりたいということでございます。  いずれにいたしましても、日韓関係は特に西の海域におきましてはまさに一衣帯水でございまして、離れられない関係にあるわけでございますので、そのような実態を踏まえて、先ほど申し上げました制度的な問題についてはその日韓漁業協定の関係等を十分整理した上で適切に対応してまいりたい、何とか一年以内に結論を見出したいと考えております。全力を挙げて交渉を進めてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  173. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 今の日韓あるいは日朝の漁業関係の問題のうちで、例えば日朝の漁業協定を民間で結ぶ場合に、入漁料の問題が俎上に上ってくるのではないか、あるいは日朝相互の漁場の相乗り入れの問題が出てくるのではないかといったようなことで、久野忠治団長初め超党派の議員団、相当な苦労があろうと思うわけでありますが、これはぜひお互いにバックアップをしながら成功するように努力してまいらなければならぬと思います。  時間の関係で次に進ませていただきます。次は日中関係であります。  日中の関係は、十一月八日、九日、中曽根総理が訪中をされて鄧小平党中央顧問委主任、趙紫陽首相、胡耀邦総書記、こういった幹部の方々に会われて、藤尾発言あるいは教科書、靖国神社問題等で波風があった雰囲気は、中国側とすれば藤尾問題については総理の英断というものを評価されて、行ったときは比較的とげとげしい空気でなくて、訪中は一定の友好の雰囲気の中で帰られたのじゃないか。  先ほど指摘をいたしました韓国の四者会談等の橋渡し役というのは少し勇み足的なところもあって事実上は断られたというふうに言われておるわけでありますが、中曽根総理も日中青年交流センター定礎式ということで行かれて、アキノ大統領と同じようにまず簡単な中国語で言われて、それから日本語でしゃべられた。それは「ラオポンユー、ウォイエシ チンニェン」、親しい友人の皆さん、私も青年でございますというところを中国語でしゃべって、それから日本語で本論に入ったと聞いておるわけであります。  この日中関係防衛庁長官にお伺いしたいことがございます。  御案内のとおり、防衛庁長官は中国の国防省幹部がおいでになったときに、来年しかるべき機会に中国へいらっしゃいというお招きを受けて、報道では、正式のお招きがあれば喜んでお伺いしたいというふうにお答えになっているわけであります。ただ、防衛庁長官が中国に行くというのには、夏目さんも行ったわけでありますけれども、いささか私はひっかかるのであります。  もちろん、日米安保条約の相手国であるアメリカは、ワインバーガー長官は二度にわたって中国を訪問しておられる。最初は一九八三年九月に行かれて、米中軍事協力問題等々も含めてお話をされた。この間はレイキャビクの米ソ首脳会談直前に行かれて、そして国防大学では講演もしておられる。中国とベトナムで一番最前線にある昆明にまで行かれておる。国防大学では、米中両国はソ連の脅威で利害を共有しております、我々の意図は中国に自衛の能力を提供することにあるというレーガン大統領のお言葉を引用しながら、我々は既に中国と合作をしており、引き続き中国の国防近代化に貢献するだろうというようなことを講演したと言われるわけであります。  基本的に、このような調子には防衛庁長官はいかないと思うのであります。それで、もしお招きがあって栗原防衛庁長官が行かれるのには、いささか私、抵抗の点がございますけれども、どういうお気持ちで中国へ行かれるのか、これをひとつお答え願いたいと思う。
  174. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 私が今回――この間中国から見えたのは総後勤部長というのです。この方が見えまして、向こうの張国防部長からぜひおいでをいただきたい、そういうお話がございましたので、正式に御招待があれば喜んで参りますと言ったことは事実です。  なぜそうなったかと申しますと、実は私が第一回目の防衛庁長官をやりましたときに、張国防部長アメリカを回って日本へ来られて、私を表敬訪問された、そのときにも暗においでいただきたい、こういう話があったわけです。しかし、私はまあまあということでそのときには御返事をしなかった。私が防衛庁長官をやめましてから、夏目次官が向こうへ行く、それから向こうの方からも首脳が来る、前の長官の加藤さんのところにも招待状が来て、加藤さんもその招待に基づいて参る、こういう経過があるわけです。  私がなぜ一番最初御返事をしなかったかというと、防衛庁長官ではあるけれども、やはり国務大臣として考えた場合に、グローバルに見なければいかぬ、そこで今の段階で私が行くことはいかがなものかなという考え方があったのです。しかし、今申しましたように、その後いろいろと向こうからのお招きがあり、今回は二回目のお招きですから、ここで私が参らぬということになると、なぜ参らぬのだということになるのですよ。  しかも、考えてみますと、中国が周辺諸国あるいは世界の軍事情勢についてどういうことを考えておるか、そんなことも承知する必要もある、あるいは中国が日本防衛政策について本当に理解をしていてくれるかどうかというようなことも、これは意見を交換することにおいてわかることでして、決して意義のないことではない、こういうふうに考えまして、実は、正式に御招待があれば喜んで参ります、こう言ったわけでございまして、特にこちらの方からどうこうということで決まったものじゃございませんが、今の段階ではそれはそれなりに有意義な訪問にいたしたい、こう考えております。     〔委員長退席、船田委員長代理着席〕
  175. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 これは来年以降の問題ですから、栗原防衛庁長官に対する訪中問題はこの程度にいたします。  ただ、アメリカの極東戦略という立場から、私の見るところでは、アメリカは、日本は日米安保体制を通じて軍事的にも緊密にいきたい、あるいは米韓の関係については、米韓の安全の関係の体制を通じてアメリカ韓国をきちっと掌握しておきたい、それに加えて中国、政治的な思想、イデオロギーからいけば本来はソ連との兄弟関係にあるはずだけれども、中ソの激しい対立が起こり、あるいは国境の紛争事件があり、その後、ここ数年来改善の努力がなされておりますけれどもアメリカとすれば政治的にも軍事的にも日本韓国、中国をつないだ形で対ソ包囲網というものをつくりたい、こういった考え方が極東戦略の重要なファクターとしてあると私は見ておるのであります。  その辺のところは、外務省はどういうふうにごらんになっていらっしゃるでしょうか。
  176. 藤田スミ

    藤田政府委員 先生の御質問に直接お答えすることになるかどうか自信がございませんけれども、米中間の軍事協力関係というものをアメリカがどういう考え方で進めようとしており、かつ、中国がどういうふうに対応しているのかというふうに御質問趣旨を解釈いたしますと、米中の間は、委員も御指摘になりましたように、人的な交流、軍事面でございますね、さきのワインバーガー長官の訪中も含めまして人的な交流でございますとか、先般青島に米艦が入港した事態でございますとか、武器技術面での協力という主として三つの方面で、過去に比べますと着実に進んでいるということは申せるかと思います。  ただ、これが一体どういうところまでいくかということを考えてみますと、例えば武器技術の供与にいたしましても、アメリカ側は、中国に提供される武器技術は防衛的な性格のものであって、中国周辺の友邦と同盟諸国に警戒心を呼び起こすようなものではないんだということを基本方針として明らかにいたしております。また中国の方も、先般中曽根総理が訪中をなさいました際にも、米中関係というのは概してうまくいっている、しかしながら、これがどこまで進むかということについては、中国は自主独立の外交をやっていくつもりだし、アメリカ側もそれほど大幅な進展ということは考えてないのじゃないかと思うというような話がございましたし、客観的に見ましても、着実に進んではおりますけれども、それが非常に画期的といいますか、密接な米中軍事関係が一挙に出ていくというような状況には至らないのじゃないかと考えております。
  177. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私自身は、日中の関係あるいは中国のここ当分の国の進み方というものについては、今四つの近代化ということで、人口十億からおる国ですからいろいろな面で立ちおくれのあるのを、アメリカあるいは日本等を含む西側の経済、技術援助も得ながらスピードアップして近代化を進めたい、その一念に非常にウエートがある。したがって、軍事的な問題も含めて中国はソ連に対しては、中ソ国境問題あるいはカンボジア問題あるいはアフガン問題、三つの障害事項を挙げておりますけれども、この間鄧小平さんは中曽根総理に対して、カンボジア問題が片づけばゴルバチョフ書記長と会う気持ちもあるんだというふうにおっしゃっておるわけですね。そういうところを見ると、鄧小平さんというのは何回か不遇の状態になってカムバックしたというだけに、なかなか柔軟、ダイナミックな指導者だという感じを受けるわけです。  我が国と中国というのは、満州事変、シナ事変、さらに大東亜戦争を通じて、十五年戦争を通じて中国には人的にも物的にも大きな被害を与えた加害国なわけですね。しかも、中国自身はそういうことに対して正当な賠償を求めなかった。私どもは、日本が敗戦の廃墟の中で、もし十五年戦争で大きな被害を与えた中国から正当な賠償要求が出たら、今日GNP世界第二位なんというようなことを言っておれない事態に相なっておっただろうというふうにも思うわけでありまして、中国というのは隣国の中でも将来にわたって大切にしなければならぬ国である、それは平和な、経済的なことを通じてであって、日本自身が将来中国に出かけていって矛を交えるというようなことは、道義的立場からいっても断じてあってはいけないことであるというふうに私は思うのであります。  防衛庁長官、その辺のところはいかがでございましょうか。
  178. 藤田スミ

    藤田政府委員 これは、委員御高承のとおり、故大平総理が中国を訪問されました際に、日中間の協力の三原則ということを宣明されました。その三原則は、第一は、日中間の協力というのは軍事面での協力は行わない、それから第二番目が、日中間の協力は他のアジア諸国、特にASEAN諸国の犠牲においては行わない、それから第三番目が、他の西側諸国と協調して対中協力を進める、こういう三つの原則を宣明されました。その言葉のとおりに、日中間の経済、技術面での協力関係というのは非軍事面で行われているというのが現状でございます。
  179. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 フィリピンの問題に若干触れたいと思います。  アキノ大統領が十一月十日に訪日をされまして、各方面の首脳あるいは経済団体とも接触を持って、好感を持たれて、そういった中でお帰りになったというふうに私は思うのであります。かつてフィリピンに戦争で行った反省の立場からいっても、日比新時代の幕あけの中で立派にやっていってもらいたいというふうに希望するわけでございます。  しかし、残念ながらフィリピンの政情というのは、私どもポイントのところは必ずしもつかみかねますけれども、エンリレ国防相との間における対立が言われたり、あるいはラモス国軍の参謀総長が中に入ったりというふうなことがあり、また最近では、大変残念なことであって無事にぜひ帰ってもらいたいものだと思う三井物産マニラ支店長の若王子さんの今月十五日の誘拐事件というふうなものも起こり、あるいは人民党議長の射殺事件というふうなものも起こっておりまして、一体フィリピンのアキノ政権の安定度をどう見るかということが問われておると思います。  同時に、中曽根総理も会われまして、カラカ石炭火力に対する特別借款あるいはこれからの民間企業等も含めたサポートという点ではひとつ私どもの方も協力申し上げるよというお話をされたわけでありますけれども、これからの経済協力という問題について、担当のところではどういう形になるか。マルコス疑惑という非常に忌まわしい問題が起こった国に新しいアキノ政権が生まれて、それに対する経済援助。我が党の土井委員長がフィリピンに行かれてアキノ大統領ともお会いになったというよしみもございまして、お二方がお会いになって、経済援助はひとつクリーンな援助で、お互いにきちっとやろうじゃないかという話をされたことも報道で御承知だと思います。  いわゆるアキノ政権の安定度、今回のいろいろな事件背景等も含め、これからのフィリピンに対する経済援助というものに対する姿勢ということについてお答えを願いたいと思います。
  180. 藤田スミ

    藤田政府委員 アキノ大統領の政権は二月に例の無血革命で成立いたしましたけれども、ただいま御指摘のとおり、いろいろな問題を抱えております。問題は大きく分けると四つあるかと思います。  第一は、政権内部の不統一と申しますか対立抗争というものが挙げられると思います。アキノ政権自体が反マルコスということだけで共同行動をとった政権でございますので、反マルコス革命が成功しました後の国づくりということになりますと、それぞれ異なった主張、立場の方が政権内部におられるので、その内部をどうやって調整をしていくかという問題がございます。それがまさに委員御指摘のエンリレ国防大臣の問題等にあらわれているかと思います。  第二番目が、政権の正当化と申しますか、無血革命でできましたけれども、これを法律的にきちんとしたものにしなければいけない。したがって、新憲法をつくるという作業を進めておりまして、この案文も固まり、来年の二月初めに国民投票を行うということになっておりますが、こういう法制の整備というものがございます。  三番目が、革命軍、武力抗争をしております新人民軍との和平交渉ということで、これはアキノ大統領が話し合いで、対話で解決をしたいということで鋭意進められ、休戦も達成されたわけですが、その直後に例の人民党議長の暗殺ということが起こりまして、若干この先行きが懸念をされている状況にございます。  四番目が、経済困難の打開ということでございまして、マルコス前大統領の末期二年間ぐらいは、マイナス成長で非常に厳しい状況にございました。この経済をどうやって立て直すかということで、この経済の再建という面では、日本アメリカその他の友好諸国、それから国際機関等が協力をする余地がございますので、先般大統領が来日された際にも、中曽根総理から、我が国ができる限りの協力を経済、技術面で行っていくという意図を表明された次第でございます。
  181. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 外務大臣は後ほどおいでになりますので、ポイント的な問題は倉成外務大臣が来られたときに少しくお伺いをするということにいたしたいと思います。  そこで、ぼつぼつハードな面に入っていくわけでありますけれども、まず、過般の第二次世界大戦で、日本はもちろん、中国、アメリカ、イギリス、フランス、ソ連あるいはドイツ、こういうところも含めて、第二次世界大戦における人員の損傷というのは一体どれぐらいなものであったか、ひとつお答えを願います。――時間が貴重でありますので、私の方で若干触れたいと思います。  これは、トータルといたしまして五千六百四十六万の人員の損傷があり、そのうちで死者二千二百六万、負傷者三千四百四十万。この五千六百四十六万というのは、一九四五年十一月二十一日、これは戦争の終わったときでありますが、バチカンの教皇庁が発表した集計によるというのでありますから、これはまだ各国ずっとトータルいたしますとこういう形だけではないと思いますけれども、いずれにしても、兵員の関係あるいは一般市民の関係等も含めて、今言った死者二千二百六万、あるいは負傷者三千四百四十万よりは恐らくもっと多いだろうと思います。  そのうちで人員の損傷の一番大きかったのはソ連で、私の手元の資料からいけば千二百万ないし千五百万、その次がドイツ、これが九百五十万、その次が日本、六百四十六万、その次がポーランド、五百五十九万、その次が中国、三百十八万、以下各国が書いてありますけれども、やはりソ連、ドイツ、日本。特に、ポーランドにも参りましたが、ポーランドは私ども行きますと六百万というふうに言っておりますし、ソ連に参りますと通常二千万というふうに言っておるわけであります。  いずれにしても、第二次世界大戦の中でこれだけの死傷者が出、私の手持ちの資料では、交戦国の直接戦費がどれだけ要ったのか、あるいは各国の物的被害はどれだけであったのか、あるいは第二次世界大戦における交戦国の戦時中の最高兵力はどうだったのかという資料等もありますけれども、それは別といたしまして、五千万以上に上る数字は相当な人員であります。そういう被害が第二次世界大戦で出ておる。  日本は、一方で広島、長崎の原爆あるいはアメリカの爆撃等を通じての国内の被害等もございますけれども、中国大陸を初め南方方面に行って、いわば加害者的立場というので相手に人的、物的な被害も与えた、同時に日本の兵士も死傷したという形に相なるわけであります。  そういう第二次世界大戦と違って、冒頭に申し上げましたように、今日は米ソの核超大国が世界人類を二十数回せん滅させるだけの核を持っておる。あるいはイギリス、フランス、中国、インド等、核の潜在能力から見て他の若干のところも報道されたりするわけでありますが、これが使われるということになりましたら、数日前も民間で核の冬ということで報道しておりましたし、古い時代にNHKが核の冬で相当な期間報道しておりました。私は、三原山のあの噴火の状況がテレビに出たりするのですけれども、自然の力あるいは自然のエネルギー、こういうものをひしひしと感ずる、あれを見ておると、何か原爆投下のときの世界人類の終わりというような感じもしたりするわけであります。  現実に核が相当大幅に使われるということになったら自然界は正直に答えを出してくるわけでありまして、空が曇れば凍結する、大変な事態になる、食糧も食べられないということでありますから、我々が考える防衛あるいは外交一点に絞って言えば、今日恐怖の時代に生きておる我々が、国の指導者も、あるいは幅広く世界のすべての人たちも、こういう恐怖の核を廃絶するということが共通項でなければならぬ、それが使われるときは大変な事態になると考えるわけであります。  それと同時に、今、全世界の軍事支出というのはどんどん増加をしております。これは防衛庁に資料を要求していただいたのでありますが、一九八三年の全世界の軍事支出というものについて御説明を願います。
  182. 瀬木博基

    ○瀬木政府委員 世界の軍事支出というのはいろいろな計算の仕方がございます。特にソ連というような国は公式にどの程度の軍事費を持っているかということを発表いたしておりません。そのためにいろいろなところでいろいろな計算がなされているということでございます。  アメリカの軍備管理軍縮局というところが出しておりますところの数字によりますと、八三年で八千百十九億ドルという数字でございます。他方、スウェーデンの民間の研究機関でございますところのSIPRIというところから出ております年鑑によりますと、六千三百十五億ドルという数字がございます。
  183. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 今お話がございましたが、米国の軍備管理軍縮局発行の「ワールド ミリタリー エクスペンディチャーズ アンド アームズ トランスファーズ 一九八五」、こういう資料で見ますと、一九八三年の全世界の軍事支出というのは約八千百十九億ドル、その中でアメリカが二六・七%、ソ連が三一・八%、この両国で五八・五%を占めておる。NATOは、アメリカも入れて四〇%、アメリカ以外では一三・三%。ワルシャワ体制ではソ連を入れて三六・九%、ソ連を除くと五・一%。こういった形を見てまいりますと、軍事支出では米ソが半数以上を占めておる。  だからこそ、アメリカにしてもイギリスにしても、経済的には大変な事態の中でなおかつオーバーコミットメントでいろいろなところへ軍を出し、兵器をじゃんじゃんやる、そういうことはもう少しレベルダウンしたらどうだと言いたいところでありますけれども、現実はアメリカ、ソ連で軍事費の五八・五%を占める、あるいはNATOとワルシャワを合わせてみると七六・九%を占めるという状態であります。そういう中で軍事費がどんどん伸びておる。しかも武器輸出というのは、第三世界等にやられておるのを見ますと、アメリカ、ソ連が三分の一、武器輸出をやっておるという状況であります。  しかも、時間がありませんから触れませんけれども、米ソの海外に展開しておる兵力数を見ますと、アメリカ、ソ連、それぞれ東南アジア、南西アジアから始まってヨーロッパから中近東、アフリカ、サハラ以南のアフリカ、中南米、大洋州、それから洋上展開しておる部隊というのを見てまいりますと、地域によってアメリカの方が強い配置もありますし、ソ連の方が強い配置もありますけれどもアメリカ、ソ連は戦後四十一年を経ておるのに各地域に相当大きな兵力を配置し、あるいはヨーロッパにおいてはNATO諸国に中距離核を配置する、それに対してソ連側も対応するといった形に相なっておるわけでありまして、アメリカ、ソ連を、国際的な世論、各国の努力でもっと低レベルの状態に持っていくようにする必要があると私は認識をしておるわけであります。  同時に、「わが外交の近況」という外交青書の一ページを見ますというと、「世界のGNPに占める主要国の割合」というのがグラフで出ております。アメリカが二九・二%、日本が九・九%、西独が五・四%、フランスが四・三%、英国が三・八%、ソ連が一三・四ないし一五・一%、こういうふうに「世界のGNPに占める主要国の割合(一九八四年)」というのが外交青書の一ページに出ております。  これを見ると、ソ連は大変なことだなと思う。つまり、アメリカ日本、西独、フランス、イギリスを含わせますと、世界のGNPの五二・六%を西側と言われておる国で占めておる、それに対してソ連は一三・四ないし一五・一%である、これで対抗的な軍事力をやらなければならぬというのだから大変なことだなと思う。ソ連が脅威だとかいろいろやっておるとか言うけれども、これは非常な苦労だなというふうにソ連についても思う。  アメリカは、地理的に言うと、ソ連のように中国からずっとヨーロッパにかけて長い国境線を抱えておるわけじゃない。地上兵力が多いとかやれなんとか言うけれどもアメリカは、北の方のカナダを見たら友好国である、南の中南米にちょいちょい問題があるけれども、これはアメリカにどうということではない、せいぜい大陸間弾道弾とか潜水艦からの核攻撃とかいうソ連から来るものだけのことであって、北も南も余り心配ない。しかも、独立戦争以来いまだかつて本土に軍隊が入ってきてやられた歴史がない。逆に言えば、本土の防衛ということでは一番神経をいら立たせているのはアメリカではないのか。  かつてキューバに核ミサイルを配置しようとしたときに、ケネディ大統領は異常な対抗を示した。ところが、そのアメリカは、西ヨーロッパ諸国、NATOの西ドイツその他に対しては、ソ連のすぐ近くだけれども、何の神経も使わずに、ソ連からいろいろ警告が出たけれども、これを配置しておる。こういうアメリカという国の防衛の姿勢。  これは防衛白書を見ると、まずソ連の方から書いて、それにアメリカの方が対応してかくかくしかじかやっておるということを書いてあるけれども、GNP問題あるいは軍事費の問題、いろいろな点から見ると、シベリアを含めヨーロッパの北の方を含めたソ連の長い国境線の配置から見て、また、南へというと、自衛隊はアメリカから三海峡を封鎖せよと強く言われていまして、ソ連からすればなかなか出にくい地勢を日本が占めておる。  そういった状況の中で、いわゆる米ソ問題あるいはソ連の性格について「私の防衛論」というのを前統幕議長の栗栖さんが書いておる。これはいわゆる栗栖発言で解任をされましたけれども防衛問題を勉強するにはこの本も一読の価値がある。  私は時間上そこから引用しますが、ソ連の見方とかあるいはソ連の防衛力というものを考える場合に、この本では、ソ連の能力についてアメリカ側がNATOの参加国に前年に問題を出して翌年報告書を出させた。アメリカは三十六通りの戦力判断を出した。それで、各国がそれぞれ戦力判断を出したのを見るというと、数多く出したところと、イギリスの場合はオンリーワン、一つだけの戦力判断を出した。これは古い時代のことで、栗栖さんがそう書いておるのだが、米ソの軍事的対峙の中で、アメリカはソ連の軍事力判断を三十六通りも出したのである。  だから、防衛庁は、さあっとまずソ連から書いて、それからアメリカのことを書いてということだけれども、もっといろいろなファクターの中で米ソの軍事力問題を考える必要がある。日本は日米安保条約がございますけれども、いずれソ連とも、日ソ首脳会談でお会いになるときも含めて、核廃絶やそういう問題については国際場裏の中でぜひ日本外交としてはやってもらわなければならぬじゃないか。  外務大臣がおいでになりましたので、タイムリーでありますから、まずその辺のところからお答えを願います。
  184. 倉成正

    倉成国務大臣 実は、最初のところを十分伺わないで、ちょうど御質問の途中から入ったわけでございますけれども、とにかくソ連、アメリカ、特にソビエトについては大変な軍事力が経済の負担になっている、またアメリカにおいてもかなりの軍事費を使っている、したがって、そういうむだなというか、そういうものをもう少し平和的に使えないか、核廃絶をどうしたらよいかという基本的なお話だと承って、お答えを申し上げたいと思います。  御案内のとおり、今アメリカの経済にとっても、八六年のアメリカの国防予算は二千六百億ドルから二千七百億ドル前後の予算を組んでおるわけでございますから、これも相当な負担になっておることも事実でございます。  したがって、私どもとしましては、この米ソ両超大国が何とか話し合いをすることによって、軍縮・軍備管理、そしてそういうことによってこれから地球の人類にとっての平和が来るように努力していかなければならないということを考えておるわけでございまして、角屋委員お話しのとおり、今ありますアメリカが所有している核あるいはソビエトが所有している核、両方合わせますと人類をもう何回も皆殺しにしてもなお余りあるほどのものを持っておるわけでございまして、こういったばかげたことをぜひ良識のある指導者がお互いに話し合ってやめていくということが、我々政治家にとっても悲願であるわけでございます。特に私も長崎の出身でございますから、そういう気持ちにおいては人後に落ちないわけでございます。  ただ、一つ言い得ることは、私は国連の演説でも話したことでありますけれども、宣言とか演説とかそういうもので軍縮とか軍備管理というのはできるものではない、やはり具体的な検証であるとか本当に相互の信頼関係がなければそういうものはできない。したがって、レイキャビクにおいて米ソの首脳が、また軍事専門家を交えていろいろとお話しをいただいた、あるところまでいったけれども最後の段階においてどうもこれが決着を見なかった、もう一度やろうということで、ウィーンにおける会議もあったけれども、これも不調に終わったということはまことに残念に思っておるわけでございます。  しかし、それにもかかわらず、これからジュネーブその他の場において、我々のレイキャビク以降のボールはテーブルの上にある、提案はテーブルの上にあるということを、表現は違いますけれどもアメリカもソビエトも、ゴルバチョフさんも申しておることでございますから、何とかひとつ両国の首脳が、ただいま角屋委員お話しのような気持ちで、話し合いによって軍備管理・軍縮という人類の悲願を、我々の希望をかなえるように努力をしていただきたいということを心から期待するわけでございまして、我々もまたその意味において努力をいたしたいと思う次第でございます。
  185. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 きょうは内閣法制局長官もお呼びしてありますので、ここで憲法と自衛権、自衛隊という問題で内閣法制局長官にお尋ねをいたしておきたいと思います。  私は、こういう問題を取り上げるときに、まず、昭和二十一年六月二十六日に当時の吉田首相が憲法第九条に関する提案理由の説明を行った、当時の問題をやはり想起しながらお尋ねをいたしたいと思うのであります。  憲法議会におきます第九条の制定論議ということで、吉田首相が提案理由の説明を行っておりますが、吉田総理は第九条の問題について、途中からでありますけれども、  是ハ改正案ニ於ケル大ナル眼目ヲナスモノデアリマス、斯カル思ヒ切ツタ条項ハ、凡ソ従来ノ各国憲法中稀ニ類例ヲ見ルモノデゴザイマス、斯クシテ日本国ハ永久ノ平和ヲ念願シテ、其ノ将来ノ安全ト生存ヲ挙ゲテ平和ヲ愛スル世界諸国民ノ公正ト信義ニ委ネントスルモノデアリマス、此ノ高キ理想ヲ以テ、平和愛好国ノ先頭ニ立チ、正義ノ大道ヲ踏ミ進ンデ行カウト云フ固キ決意ヲ此ノ国ノ根本法ニ明示セントスルモノデアリマス ということで、提案理由の説明を行い、原夫次郎さんの、戦争放棄とあるいは自衛権の問題はどうだといったような質問に対して、吉田総理は、  戦争抛棄ニ関スル本案ノ規定ハ、直接ニハ自衛権ヲ否定ハシテ居リマセヌガ、第九条第二項ニ於テ一切ノ軍備ト国ノ交戦権ヲ認メナイ結果、自衛権ノ発動トシテノ戦争モ、又交戦権モ抛棄シタモノデアリマス、従来近年ノ戦争ハ多ク自衛権ノ名ニ於テ戦ハレタノデアリマス、満州事変然リ、大東亜戦争亦然リデアリマス、今日我ガ国ニ対スル疑惑ハ、日本ハ好戦国デアル、何時再軍備ヲナシテ復讐戦ヲシテ世界ノ平和ヲ脅カサナイトモ分ラナイト云フコトガ、日本ニ対スル大ナル疑惑デアリ、又誤解デアリマス  故ニ我ガ国ニ於テハ如何ナル名義ヲ以テシテモ交戦権ハ先ヅ第一自ラ進ンデ抛棄スル、抛棄スルコトニ依ツテ全世界ノ平和ノ確立ノ基礎ヲ成ス、全世界ノ平和愛好国ノ先頭ニ立ツテ、世界ノ平和確立ニ貢献スル決意ヲ先ヅ此ノ憲法ニ於テ表明シタイト思フノデアリマス こういうふうに答えておるのがいわゆる憲法制定当時の第九条の原点であります。     〔船田委員長代理退席、委員長着席〕  私は、その後におけるマッカッサー元帥の指令に基づく警察予備隊の発足、その後、保安隊、そして自衛隊、そしてこの自衛隊も大きく伸びてきておる。海上自衛隊一つをとっても、ソ連の極東海軍あるいは第七艦隊というのにはとても及びはつきませんけれども、しかし、南北朝鮮、中国、フィリピン等々を含めて考えれば、海軍としてはその先端を行く力を持ってきつつあるというふうに言うことができましょうし、海空重点主義で、とにかく空についてもさらにやっていこうという空軍のこういったアジア諸国との関係というものを見てまいりますというと、自衛隊どこまで行くのか、憲法第九条のとりではどこで一体歯どめがされるのかという危惧は、私ばかりでないというふうに思うのであります。  この際、憲法と自衛権、そういった問題について内閣法制局長官からお答えを願いたいと思うのであります。
  186. 味村治

    ○味村政府委員 我が国の憲法は、その前文におきまして平和主義及び国際協調主義の理想を高く掲げまして、その理想のもとに、憲法九条におきまして戦争の放棄について定めているところでございます。  政府といたしましては、憲法第九条は独立国家に固有の自衛権までも否定する趣旨のものではございませんで、自衛のための必要最小限度の武力を行使することは憲法九条のもとにおいても認められておりますし、また、自衛のための必要最小限度の実力の保持は同条によって禁止されていないという見解を、これは従来からとってきているところでございます。  政府は、このような立場から、憲法九条のもとにおきましては自衛のための必要最小限度の範囲を超えて武力を行使すること及び自衛のための必要最小限度を超える実力を保持することは許されないと解釈しておりまして、したがって、集団的自衛権を行使することとか、いわゆる海外派兵をすること、あるいは性能上専ら相手国の国土の壊滅的破壊のために用いられる、例えばICBM等の兵器を保有することは許されないと解釈しておりまして、このことも従前から表明してきているところでございます。
  187. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 この問題は基本的な問題で、歴代内閣の第九条解釈、憲法上のもう少し広い意味の解釈というのは、憲法第九条を大きく空洞化する方向に、そして自衛隊自身でいえば、違憲的性格を持つ、そういう性格に大きく伸びてきておるというふうに基本的には言わざるを得ないかと思うのでありますが、外務大臣は後から来られて、持ち時間の関係もありますので、外務大臣の方に話を移したいと思います。  先ほど来、外務大臣おいでになる前に同僚の大原委員も取り上げた問題と関連をいたしますけれども、いわゆる米ソ首脳会談の今後の見通し問題、あるいは日ソの首脳会談については、これは直接外務大臣としては所管の責任大臣でありますが、この問題について、現状は一月は断念をせざるを得ない、しからばなるべく早い機会にということで、政府としてはどういう見通し、判断を持つような状況にあるのか。  同時に、一点、これと関連をしてお伺いしておきたいのは、ゴルバチョフ書記長が日本においでになるという場合に、これは外務省に正式にそういうお話があったとは必ずしも思いませんけれども、私ども日ソの議連の関係もあったりしていろいろ聞いておるところでは、おいでになったときには、もちろん政府首脳といろいろ話し合われるわけだけれども、広島の被爆地に行きたいという希望を強く持っておられるというふうに私どもは承っておるわけであります。  倉成外務大臣は長崎の原爆投下された該当県であり、同僚の大原委員は広島の被爆地の該当県であり、私は長崎の原爆でやられた被爆の体験を持っておる一人であります。私は、アメリカレーガン大統領の場合もあるいはソ連のゴルバチョフ書記長の場合もあるいはサッチャー首相その他の場合も、核を持っておるような国々、これが日本に参る場合には、広島になるかあるいは長崎になるかは別として、いわゆる唯一の被爆国である被爆地に行って生々しい当時の被爆の惨状というものを身をもって体験をするということが、基本的には核廃絶につながる大きな力になるというふうに信じておるのでありますが、今言った問題について、外務大臣からお答えを願いたいと思います。
  188. 倉成正

    倉成国務大臣 お答えをいたします。  ただいま三つの問題についてお話がございました。第一はゴルバチョフ書記長の来日の時期の問題、第二は米ソ首脳会談の見通しの問題、第三はゴルバチョフ書記長がおいでになったとき広島訪問についてどう思うか、そういう御質問だということで、その一つずつについてお答えを申し上げたいと思います。  まず第一のゴルバチョフ書記長訪日の時期については、御承知のとおり、ただいまちょっと先生からお話がありましたけれども、まだ一月に来るのを断念したということにはなっておりません。これはひとつ誤解のないようにお願いを申し上げたいと思います。確かに、私がシェワルナゼ外相とニューヨークで会談した際には、先方はことしじゅうは無理だ、しかしそれから先は、米ソの交渉のこともこれあり、関係もあるから、ひとつ日程を整理してお知らせをするということでございました。その後、ごく最近では、梁井外務審議官がモスコーに参りまして、そしてカピッツァ次官あるいはシェワルナゼ外務大臣とお目にかかりまして懇談をしました。その際にも、日本に来たいというゴルバチョフ書記長の気持ちは依然として変わらない、しかし、日程をいろいろ検討しているけれども今申し上げることはできない、こういうことでございました。  そこで、私は実はこう判断しているわけでございます。すなわち、先方にいろいろな機会に申し上げておるのは、やはりせっかくおいでになるならしっかりした準備をしたい。その準備としては、日本国民としては、先般衆参両院で全会一致で御決議いただきました北方領土の問題、すなわち平和条約の締結の問題ということをやはり我々は念頭に置いて、国民の感情として、これはもう日本国民の悲願である、戦後四十年を経て、平和条約が、隣国である、そして移転することのできない日本とソ連との間にないというのは異常な状態である。したがって、この問題についてはぜひひとつ前進し、そして解決ができる、そういうことを日本国民はひたすら念願をしておる、このことを十分踏まえておいでいただくことが実りのある会談になるでしょうということを申し上げておるわけでございます。  なお先方に申し上げておるのは、事務的にも外交ルートを通じても、準備にはやはりある程度時間をちょうだいしたい。でなければ、時期をまず確定する、その時期を確定することによって、初めてソビエトの首脳が日本に来られるということですから、しっかりした事務的な相互の話し合いをしようということで、時期を確定することをまず決めましょう、そしてその上でひとつお互いにしっかりした準備をしましょうということをシェワルナゼとの間で合意をしたわけでございます。  したがって、私が当初申し入れたのは、私が外務大臣に就任した直後、翌月の八月の初めにソロビヨフ駐日大使を外務省に招致いたしましてこのことを申し入れまして、ニューヨークでシェワルナゼ外相と会談をした、そしてまた先ほどのような経過を経ておるわけでございます。したがって、やはり一週間、十日前に行くからとおっしゃっても、それはちょっといかないわけでございます。時期をお示しいただくというか先方の御都合を知らせていただくには、おのずからある一定の期間が要るだろうと存ずるわけでございます。  我々としては、一月末ということは、国会その他いろいろな行事を考えてこれが一番日本にとって好都合の時期でありますということを八月から申し上げておるわけでございますから、このボールは先方にある、先方がどういう回答をされるかということを今待っておるという状況であります。おのずから期限はあろうかと思いますし、一月が一日ずれたらいかないとかそういうことでなくて、日本側の希望を申し上げておるわけでございます。先方の御都合もこれあろうことでしょうから、なるべく早くその時期を明示していただいて、そしてその上に立って日ソの首脳会談が実現すれば、これは歴史的な、そして成果のあるものにしたいというのが私の希望でございます。ボールはいまだソ連側にあるということでございますから、いましばらく様子を見ておるというのが実情でございます。  第二の米ソの首脳会談の見通しでございますけれども、これは御承知のとおり、レイキャビクの後、またウィーンにおける会議等行われたのですけれども、なかなか進展が見られなかった。レイキャビクの場合には御案内のとおりかなりいい線までいったわけですけれども、最後の段階において決着を見なかった、ウィーン会議においても進展が見られなかったということでありますから、我々としては非常に残念にたえないわけであります。  しかし、いずれにしましても、両首脳が、言葉の表現は別ですけれども、とにかくテーブルにまだその提案はあるということを言っておりますから、両首脳がいつどこでどういう形で会談をされるかということについては、ちょっと第三者の我々が申し上げる筋ではない、しかし一日も早い両首脳の対話が実現することを期待しておると申し上げたいのでございます。  それから、広島訪問、ゴルバチョフ書記長が御来日を決められた時点でどうじゃという話でございますけれども、これはやはり時期を確定した上ですべてのものはひとつ決めようということでございますから、その時点においてこれらの問題は検討すべき問題であろうかと思うわけでございますので、そういう時点でいろいろ先方の御希望、正式な外交ルートを通じてのお話があれば、いろいろな問題について話し合いをいたしたいと思う次第でございます。
  189. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 第三番目の問題がちょっと聞こえにくかったのですが、日本政府側としては、近くゴルバチョフ書記長が訪日された際に、広島あるいは長崎になるかわかりませんが、そこを訪問したいということを御要請になる場合には、日程全体をにらまなければなりませんが、もともと初めからそれはお断りでございますということじゃなしに、そういう御注文があり、全体の中で日程が組めれば、それは受け入れてよろしいということであるのか、もう一回ひとつ明確にお答えを願いたい。
  190. 倉成正

    倉成国務大臣 先ほども明確に申し上げましたとおりに、まず日程をひとつ決めましょう、その上で、訪問の時期を確定してから日ソ両国間でいろいろお話をいたしましょうということをいたしておりますから、日程が確定後にそれらの問題を含めてお話し合いをすることに御協議を申し上げるということになろうかと思います。
  191. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私の方は、SDIからさらに「防衛計画の大綱」別表の見直し、それから中期防衛力整備計画等々の問題を含めて、あと三十分くらいやらなければならぬ課題を持っておるわけでありますが、きょうは防衛二法の改正問題の議論でありますので、最後に一つ栗原防衛庁長官の方にお伺いをいたします。  昭和三十二年に我が国の「国防の基本方針」が決まった。それから一次防とか二次防とかいろいろありました。そして五十一年の段階でいわゆる「防衛計画の大綱」というのを決め、数日後に当面防衛費をGNP一%以内にとどめる、そういうことでスタートをしたわけであります。それで五三中業、五六中業をやって、五九中業かと思ったら、中期防衛力整備計画で国防会議政府の決定というように格上げしたわけであります。  いろいろな資料等を専門調査室あるいは国立国会図書館等からお願いをしたりしまして、それらを目を通してみますと、中曽根総理が言っておるように、防衛計画大綱が最初に決まって、一息ついてからGNP一%以内が決まったんで、最近ではこれは注意事項だ、そんなことを答弁したりしておりますけれども、これは防衛庁長官あるいは防衛庁の政府委員の方は御承知かと思いますが、あのときは、私はそういうことの資料を手持ちしておりますのでそうだったのじゃないかと思いますが、亡くなった大平大蔵大臣と今元気でおられる坂田防衛庁長官が、三木総理のときですけれども、とにかく「防衛計画の大綱」を議論する中でも、あるいはGNP一%以内にするかどうかでも相当な議論をやり、それが財政の問題の点は持ち越しになって、そしていろいろ大平・坂田議論があって、最終的に三木総理が裁断をして決めた。そのときに坂田防衛庁長官の方から、総理の裁断が下った以上はそれは認めるけれども、「当面」と「めど」をぜひひとつ入れていただきたいということで「当面」と「めど」が入ったというふうな記録、そういうものを私は手に入れておるわけであります。私は、国防会議に行っておるわけでもないし、議事録を見ておるわけでもないし、当時の状態がどうであったのかはわかりませんけれども、そういう記録を持っております。  また、別の私が集めた資料によりますと、防衛庁長官を中曽根さんがやっておるときに、四次防のときに新しい計画をつくろうということでいろいろやって、自民党内からも反撃を受け、中国その他からも厳しい批判が出て、そしてなかなか物にならなかった。したがって、江崎防衛庁長官国会答弁の中で、中曽根前防衛庁長官のときは昭和三十二年に決めた「国防の基本方針」というものを変えるのを前提でいろいろ提案されたけれども、これは昭和三十二年の「国防の基本方針」に基づいてやった、性格的に違ったものでございますというふうな形の議論等の経過もあるわけですね。  私はそれに深く触れようとは思いませんけれども、「防衛計画の大綱」の見直し論が与党内にあったり、アメリカから強い要請があるのかどうかという点は定かでありませんけれども、あるいは別表の見直しも大綱の枠内でできる、あるいは中期防衛力整備計画はGNPに対しては数字上では一・〇三八%という形になっておる。こういう中で、憲法の制約あるいはアジア全体を考えてみると、我が国は大東亜戦争で大きな被害を与えたという意味では、アジアからの厳しい目というものを我が国の防衛力を整備していく場合には考えていかなければいかぬということもございます。  そういった点も含めて、これから防衛庁長官としてどういうふうに進めていこうというのか、お答えを願いたいと思います。
  192. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 いろいろと御意見を承りましたが、一%問題、いろいろ言われております。今角屋さんは角屋さんで検証されました。しかし、それとはまた違った証言をされる方もあるわけです。  特に、これは非常に重要でございますので、私は坂田元防衛庁長官にこの間も聞いたのです。そうしましたら、一%の問題というのは、「防衛計画の大綱」が決まった後で一%というものが出たのであって、関係は非常にあるけれども、一体であるというものじゃない、こういうお話でございます。  それから、字面を見ますといろいろあります。字面を見ますと、「当面」あるいは「めど」というのがある。特に「当面」というのがついたということはそれなりの意味があると思うのです。ただ、御指摘のとおりGNP一%というのは非常に重い意味を持っておりまするし、私も今、三木内閣の一%の枠を守ってまいりたいという気持ちでおりまするし、また、近隣諸国の方もどういうふうに見ているかということについては細心の注意を払わなければならぬと思っております。  しかし、先ほど来から申し上げておるとおり、いかにして我が国の防衛力を整備していくか、そのネットの問題に論議が集中しないで、何か数字だけがひとり歩きをしておるという格好はまずいというふうに考えておるわけでございます。
  193. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 以上で終わります。どうも遅くまでありがとうございました。
  194. 石川要三

    石川委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後七時五分休憩      ────◇─────     午後八時四十分開議
  195. 石川要三

    石川委員長 休憩前に引き続き会議開きます。  これより内閣総理大臣に対する質疑を行います。上原康助君。
  196. 上原康助

    ○上原委員 総理、お疲れのところを御苦労さんです。  きょうは、参議院の国鉄特別委員会、また今社労、引き続きこの内閣委員会と、本当ならこんな時間から総理へ質問をするのも不本意なんですが、廊下を駆け足で歩いたり大変忙しいと思うのですが、こんなに忙しくてもまだ総理は続けたいですか。
  197. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 国会で皆さんの御質問お答えし、また皆さんの立派な御見解を承ることができるのは大変うれしいことであります。
  198. 上原康助

    ○上原委員 あなたはこういうことを何か趣味にしておられるようだから結構楽しんでおられるのかわかりませんが、限られた時間ですからお尋ねをさせていただきたいと思います。  そこで、防衛二法ですから防衛問題から入るのが筋かと思いますが、防衛も、今の国際情勢からして結局は国際平和あるいは核廃絶、軍縮というものをどう具体化をしていくかというグローバル、マクロで見る、そういうことが最も大切だと思うのですね。そこで、最初にまず総理の対ソ外交の御認識、姿勢についてお尋ねをしたいと思うのです。  これはゴルバチョフ書記長の来日問題とも関連をいたしておりますが、まず対ソ外交について総理はどういう御認識で、またこれからどのように進めようとしておられるのか、これまでもしばしば披瀝はしておられますが、今大変注目をされている時期でありますので、御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  199. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 四島返還を実現いたしまして、そして平和条約を締結するということが基軸であります。その上に立ちまして、対話を深め、あるいは広げ、そしてソ連との間に安定した関係を長期的に築いていきたいというのが私の考えであります。
  200. 上原康助

    ○上原委員 これまでのありきたりの御答弁で、もちろん北方領土返還というのは我が党もこれは主張しておりますし、国民の非常に強い関心事であり、課題であることは間違いないわけですが、私が冒頭このことをお聞きいたしますのは、先月の末から今月の八日までたまたまソ連を訪問する機会があったので、向こうでも、おなじみのカピッツァ外務次官、あるいは長いこと駐米大使をなさり、党中央委員会の書記をし、外交部長であるドブルイニンさんあたりとも岡田副委員長を団長として会ってまいりましたが、四島返還を実現して平和条約を締結する、これは歴代の自民党内閣の公式的見解になっているわけですね。それはそのこととしてわかるのですが、昨年五月にゴルバチョフ書記長が登場なさった後のソ連の対内外政策ということについて、総理を初め、外務省日本政府がもう少し新しい視点に立った御認識で対ソ外交というのを進めるべきでないかというのが私たちの実感ですが、そのことが非常に欠けているということ。  時間がありませんので多くは申し上げられませんが、例えば第二十七回ソ連共産党大会における政治報告であるとか、今年七月二十八日のウラジオストク演説ですね、あれには極東アジアあるいは日本との関係をよく述べておる。七月三十日のハバロフスクにおける演説、さらに、八月十八日には核の管理を早目にということでソ連国民向けのテレビ演説をしておる。そういう中で一貫して基調として出てきているのは、ソ連の対内外政策、私などが言うのはいかがかと思うのですが、いわゆる転換の哲学というものを非常に説いているわけですよ。そういう背景で今回のレイキャビク会談が生まれ、核廃絶、核軍縮ということに非常な熱意を持ってきていると私たちは見ているわけです。  こういう新たな指導者の対内外政策というものに対しての、日本政府なり総理の考え方が、さっき非常に定式的におっしゃっているがゆえに、今回のゴルバチョフ書記長の来日問題というのもあなたが御期待をしている方向に進んでいないというように思うのですが、今私が若干指摘をしたものとの関連において、もう一度ゴルバチョフ書記長の一月訪日というものを、先ほども外務大臣はいろいろおっしゃっておりましたが、まだ断念したことではないということですが、我々の感触としては、恐らく今の日本政府対応の仕方ではなかなか訪日はなされないのじゃないかという気がしてならないわけですね。改めて御見解を聞かしてください。
  201. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 今申し上げました基本方針は、中曽根内閣においては不動であります。その上に立ちまして、ただいま申し上げましたように、長期的な安定的な関係を築きたいと申し上げておる。  今、上原さんがおっしゃいましたのはゴルバチョフ政権の政策に対する評価のお話のようでありますが、私はチェルネンコさんのお葬式に行って約一時間ゴルバチョフさんと話して、帰ってきて国会でも私の印象を御報告申し上げましたが、その考えは今でも変わっておりません。それは、ゴルバチョフ氏は恐らく二十年ぐらいの持ち時間が自分にあると思っていらっしゃるでしょう。そして、ソ連共産党の政策は外政、内政ともに今や行き詰まってきている、これを打解して、そしてマルクス・レーニン主義のソ連の体制というものをここで改革をして、ある意味における一大改革者としての実績を上げたい、それによってソ連の運命を開きたい、そう考えているのだろう。その手法は割合に西欧の近代的政治家の手法を思わせるものを持ってきている、その点において前のグロムイコさんあるいはチーホノフさんとは違う味がある、そういうことも申し上げたとおりで、この考えは今でも変わっておりません。  しかし、新しい政権ができた場合でも、過去のいろいろなしがらみがあると思います。そのしがらみをなかなか一挙に払拭できるものではなくして、ある程度時間がかかると思うのです。ですから、その後のいろいろな政策展開を見ておりますというと、言うことはかなり言っていらっしゃるけれども、その方向に展開したいという意欲はうかがわれますが、実際に歩み出した距離というものはまだ短い、そういうふうに思っております。それはいろいろな過去のしがらみがあるからだろうと私は思います。  例えば、この間のレイキャビク、あるいはさらにその前の、おっしゃったウラジオストク演説、あるいはその後、いろいろな面におきまして、例えばアフガニスタンあるいは中ソ国境に対する兵力の問題とか、あるいはアジア・太平洋に対する認識であるとか、そういういろいろな面を見ますと、何かなさんとしているという意欲はうかがわれると思うのです。しかし、実際歩み出した距離というものは、まだまだ我々が、あっ歩いたなと、そういうふうに感ずるところまではいっていない。  日本に対するいろいろな行動にいたしましても、何だかモスクワは霧が深くてよく正体がつかめない、そういう感じがしておる。しかし、どこから聞こえるかしれぬけれども、今あなたがおっしゃったような割合に大きい声はしておるのですね。大きい声はしておるけれども、遺憾ながらあちらから言ってくるいろいろな声は、人によってまた違いますね。そういうような点において我々も慎重に今対処しておるというところであります。あくまで我々は日本の考えに立って自主的に対処していきたい、そう考えておるところであります。
  202. 上原康助

    ○上原委員 そういう御答弁は、これはソ連のしかるべき方々とか、あるいは国民がよく聞いたりして、どう評価するか、やると思うのですね。  本来ならこういうことをもっと議論を深めていきたいのですが、やはりしがらみを持っているのはどうも総理のような感じがしてならないわけです。  ゴルバチョフさんは、今おっしゃったようにこれから先二十年くらいの長期展望でやっている。一年の中曽根さんとはここは大違いだな。  そういうことは別として、要するに、モスクワは霧は深くなくてとても明るかったんですが、ソ連が見る日本の今の中曽根内閣というのは、私は何も一方的立場で物を見ようという考えはありません、あくまでも日本国民という、あるいは一国会議員という立場でいろいろなことを判断したいというだけの努力はやっているつもりですが、要するに、モスクワを横目に見ながら例えば韓国問題をいろいろやるとか、あるいは訪中したのを別にいけないということではないが、訪中をなさる、またシグール米国務次官補が来日をしていろいろなことについて日米間でやる、特に、ゴルバチョフさん、一月においでおいで、いらっしゃいと言いながら、日米韓、フィリピンの空軍まで入れた合同軍事大演習をやっている、これは日本側からいえばこんなこと当たり前じゃないかと言うかもしれませんが、事やはり外交としての首脳会談をやるという背景づくりとしては、相手に不快感を与えることはこれは当たり前だと思うのです。  だから、いわゆる言っていることは、今の中曽根首相は書記長を歓迎するということを口ではおっしゃるのだが、その雰囲気づくりに努力しておられるかどうか極めて疑問だというのが向こうの要路の方々の見方でもあるわけですね。そこはやはり私はもう少し政府としても考えてしかるべきじゃないのか。言わんとするところは、日本独自の主体性を持った日ソの首脳会談をやろうというのか疑わしいという、これはどなたが言ったとは言いませんがね。サッチャーさんでもゴルバチョフさんとの会談においては非常に誠意を示した、フランスはフランスなりの対ソ姿勢があるのだが、中曽根さんにそれだけのお考えがあるかなというのが向こうのいわゆる中曽根観なんですね。あなたが言うように、向こうも非常にこちらを霧深く見ているわけで、その霧をやはり総理御自身が解く努力をもう少しなさらないといかないと思うのですが、そこいらはどうなんでしょう。
  203. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 既にことしの正月、シェワルナゼ、安倍両当時の外務大臣の話し合いもあり、共同声明もあるわけでありまして、それを誠実にお互いが実行するということが大事であり、それが国益を確保するゆえんである。そういう国益を確保しようというところを犠牲にしてまでも相手方の意を迎えるということは外交からいったら正しくはない、私はそういう考えに立ちまして、日本の主体性に立って日本の国益を擁護しながらソ連との関係を打開しよう、そう思って努力しておるところであります。
  204. 上原康助

    ○上原委員 別に私が今指摘をしたことが国益を著しく損ねるとかということではないと思うのですね、SDI計画への参加問題を含めても。  もちろん、けさのある新聞にもありますように、私たちも、せめて日ソ共同宣言、五六年をスタートにして首脳会談をやってみたらということもいろいろ提案というか意見交換をやってみましたが、それはやはり日本政府の出方いかんという、ストレートにそうは言わないが、そういう言い方をしているわけです。  だから、けさの新聞にもありますように、主権国家である日本、ソ連が領土問題を出そうが出すまいが、それはそれぞれの国の考えだということで、領土問題は絶対話さないという雰囲気じゃないですよ。話すけれども、領土問題以外は余り日ソ首脳会談をやる意味がないんだというところにウエートを置こうとしているからなかなか準備が進まないというのが、私は向こうの考え方だと思うのです。  したがって、こういうことについては、過去のしがらみという表現は私はいかがかと思うのですが、いろいろないきさつがあることはわかるし、また外交的に非常にシビアな態度をとるということも、私たちもそれは見落としてはならないと思うのですが、迎えるならば、いま少しそういう雰囲気づくりをしていかなければ、一月来日どころか――そのほかにもいろいろな御指摘がありましたよ、事外交のことですから余りここで申し上げませんが。  だから、要するにこれまでソ連観というのは、今の総理の御答弁の端々にも出ているような感じがしてならないわけですが、世界の共産化を図るクレムリンという固定観念を前提として対ソ観を組み立ててきたところに私は非常に問題があると言うのですよ。軍縮問題にしても防衛問題にしても、ソ連脅威論、朝から晩までそれだけしか言わない。  そういうことじゃなくして、きょうもいろいろ議論が出ましたが、アメリカもソ連もあれだけ軍事費に国の予算を投入せざるを得なくなっている、したがって国民生活というものは経済面においては相当制約を受ける、その点はいろいろな面で問題があるということを私たちも率直に感じました。だから、そういうことではなくして、軍拡ではなくして、どうすれば核を廃絶し、軍縮の方向に持っていけるかということは、私は真剣に考えていると思うのですね。  だから、まさに私たちが言ったのは、アメリカもソ連も日本を見習ったらどうか、日本が今日の経済的繁栄を得たのは、今日まで軍備に余り金をかけなかったからだ。アメリカも行き詰まっているわけでしょう。そういう面で、軍縮ということにもっと力を入れなさい、その外交方針をあなたがイニシアチブをとって、核廃絶なり核軍縮というものを、あるいは通常の兵器を含むいわゆる軍縮というものを、まさに日ソの首脳会談のメーンテーマにするぐらいの意欲をあなたが示せば、本当に歴史に残る宰相になるかもしれませんが、今さっきのような御答弁では、失礼ですが、アメリカの一翼を担うような立場でゴルバチョフさんいらっしゃいと言ったって、なかなか来ないですよ。来ないというよりも、それでは実りある成果は得られないんじゃないですか。  そういう面で、ゴルバチョフさんが一月にどうも来そうにない。あなたは大分意欲を持っておったが、きょうの答弁からすると、いや、もう来なければいいですよと言わんばかりのことなんですが、今私が指摘したことを含めてこのことをどうなさるのかということと、もう一点は、じゃ仮にゴルバチョフさんが一月もあるいは桜の花の咲くころまで来ないとなると、あなた御自身訪ソする御意志があるのかどうかを含めてお答えをいただきたいと思います。
  205. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 この前シェワルナゼさんがおいでになり、カピッツァさんもおいでになって、今度は向こうが来る番だ。また先方も日本に行きたいと言っておられたし、日本に行くときはお知らせいたします、そうとも言っているので、時間的なタイムテーブルから見れば先方が日本においでになる順番になっておるのですから、私がのこのこ出かけるという、そういう場ではないのであります。  それから、シェワルナゼさんと安倍元外務大臣との対談、対話以来、日ソ間の一つのいろいろな話し合いのテーマというのはある程度輪郭がもうできておるわけであります。その線に従って物事はずっと進んでおるのであって、ボールは向こう側のコートにある、そのボールをいつお打ちになるのか、こっちへ返してくるのか、向こうの選択の問題でありますから、こっちが何もやきもきするほどの問題ではない、向こうの選択を静かに見守っておる。外交に一番禁物は焦るということであると思っております。
  206. 上原康助

    ○上原委員 一時は大分焦っておられたのじゃないですか。ゴルバチョフさんを一月――向こうは一月に何も約束した覚えは、覚えというか、向こう側から一月提案したあれはないと言っていましたね、それははっきり。しかも、なぜ一月にこだわるのかがわからないと。三月以降は日本でどういうことがあるかもちゃんと向こうはわかるんですよ。だから、中曽根首相というのは何でも自分の政治的なショーに活用する能力においては今までで一番たけている、パフォーマンスがうまいからななどとある人が笑っていましたがね。  ですから、焦る必要はないと思うのですが、少なくとも、冒頭申し上げましたように、レイキャビク会談がああいう格好で、十分実りあるものにはあの時点ではなっていないということと、両核超大国である米ソが本当に核軍縮なり軍縮ということに真剣に取っ組んでいかないところに今問題があるわけです。本来なら、これが向こうで、レイキャビクでSDI問題が出されて不発に終わったわけなんだが、あれがまとまっておれば、日本の今の新防衛力整備計画とかいろいろな軍備拡大の政策においても、検討する余地は十分あると私は思うのです。だから、そうあなたがおっしゃるのなら、それはお待ちになってください。ただ、向こうの方はかなりそういう面については逆にあなたの方を、あなたというか日本政府の今の対ソの姿勢というものを見ておるということを指摘をしておきたいと思います。  特に、領土問題は先ほど申し上げましたようなことなんですが、SDI計画への参加については、日本が西側陣営の一員という立場で今日まで対米を基軸にやってきているので、そこまでとやかく介入する権限は、立場にはソ連はない。それは当然でしょう。ないのだが、余りにも一方的に加担をしていくということには非常に問題がある、こういう指摘はありますね。これは国際的に見ても私はそういう批判を受けると思いますよ。きょうはそのSDIの問題に触れられるかどうかわかりませんが、少なくとも、先ほど申し上げましたように総理を初め我が政府の対ソ外交姿勢というものについては、もう少し大所高所から検討をして、日ソ間の善隣友好というか、領土問題を含むことをやっていくということをむしろ総理がイニシアチブをとって展開をしていくべきだ、そのためには余り刺激的なことはなさらぬがいい、そういう感じを我々は率直に受けました。  もう一遍この問題についてお聞かせを願いたいと思います。
  207. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 別に私は刺激的なことは一向言っていないと思います。招待は今でも生きておるし、おいでになれば歓迎したいと思っております。前から申し上げているとおりであります。日ソ間には、ともかく隣同士という、これは地球が壊れない限り宿命的にある関係があるので、その関係をお互いに良好ならしめていくということは、両方の為政者としての心がけであり、両方の国民も望んでいることであると思います。  ただ、やはりいろいろな重要な懸案問題がありますから、こういう問題を解決するということも国民の強く望んでいるところであり、先般も領土問題については国会の満場一致の決議を衆議院、参議院両方においていただいておるところで、政府は重大な責任をまたしょっておると言わなければならぬのであります。
  208. 上原康助

    ○上原委員 そういうお考えであるという点がより明確になったような感じがしますので、これはこれからの推移を見守りましょう。  そこで、次は、本当は防衛庁と少し丁々発止で議論をしてからじゃないとなかなか防衛問題入りにくいのですが、そういう時間がありませんでしたので、ちょっとやりにくいのですが、「防衛計画の大綱」についていろいろ予算委員会なり安保特あるいは本委員会等でも議論をされてきているわけです。主に総理にお答えをいただきたいのですが、「防衛計画の大綱」策定当時の国際情勢の基調というか国際情勢のとらえ方ですね、その当時と現在の状況において重要な変化があるという御認識なのかどうか、お聞かせいただきたいと思います。
  209. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 防衛計画大綱の基本には、たしかあれは坂田君が三木内閣のときつくったと思いますが、いわゆる基盤防衛力という思想が根底にあると思います。あの基盤防衛力という根底にある考え方は現在も生きており、防衛計画大綱の基礎になっておる、そう考えております。
  210. 上原康助

    ○上原委員 基盤防衛力構想が基礎になっている――坂田さんの前はたしか中曽根さんですね、総理ですよね、防衛庁長官は。あのときも私はあなたにお会いした。  そこで、私が今聞いたのは、大綱策定当時の情勢の基調と重要な変化があるという御認識なのかということを聞いているのです。
  211. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 基本的には、基本情勢というものは変わっていないと思います。  その後、極東におけるソ連軍の増強というものはかなり顕著に出てきておる。例えば、ヘリ空母が来たり、あるいは四島における約一個師団と言われる兵力の増強、あるいはバックファイアあるいはSS20の展開、そういうような面を見ますというと、やはりかなり増強されているというそういう変化はあったと考えておりますが、基本的な枠組みというものはそう変わってはいないと思っております。
  212. 上原康助

    ○上原委員 これは防衛庁長官もそうなんですが、防衛局長外務省も含めて、基本的には変わっていない、しかし極東ソ連軍の軍事力は著しく増強している、これは異口同音にそういうことをおっしゃるのですね。きょうはそこまで数量を挙げてやる時間がないので残念ですが、同時に日米間でもいろいろ増強されてきているわけでしょう。これは、かつて僕がここで防衛白書のソ連極東軍の見積もりといわゆる第七艦隊とかそういう面での見積もりがおかしいんじゃないかということでやって、翌年の防衛白書は若干手直しをしてありましたが、いろいろな疑問があるのです。端的に言うと、SS20の配備とか今言うようなバックファイアとか、そういうのは確かに変化があるでしょう。二言目には、対ソのそういったことが非常に問題があると言うのが、私たちも、基本的枠組みというか基調は変わっていないと見ているのです。  この「防衛計画の大綱」をつくったとき、皆さんが言っているのは、前提は、一つは日米安保体制の有効な維持でしょう。二点目が、当分米ソが核戦争を含む大規模な武力紛争には至らないと見通せる。中ソ関係の対立は根本的解消に至らない。これはむしろ、根本的には解消されていないかもしらないが、緩和の方向に向かっていますね。米中関係の継続、調整、これも、御承知のように米中関係は大きく違っている。朝鮮半島情勢、一昨日の問題等もあるのでなかなかこれは一概には言えませんが、朝鮮半島だって今すぐ火を噴くということではなく、おおむね現状維持。こういうのが前提になってあの基盤的防衛力というのがつくられたのです。  そこで、基盤的防衛力構想の基調は変わっていない、基本的にはそうだと言う。では、基盤的防衛力とはどういうことですか。
  213. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 こちらの側から見ますと、限定・小規模の侵略に対して独力で対処し得る能力を持つ、これが我々の今の防衛力の基本でありますが、そういう客観情勢にある、そう考えております。
  214. 上原康助

    ○上原委員 これもそうだ。いつも限定かつ小規模侵路に対しては、今、原則とは言わなかったけれども、独力で排除をする拒否能力を有するのが基盤的防衛力だ、簡単に言うとそんなものでしょうかね。  そうしますと、防衛庁を含めて、今、基盤的防衛力構想でこの「防衛計画の大綱」策定以降、そして昨年決定をした新中期防衛力整備計画、これは進めているという御認識ですか。
  215. 西廣整輝

    西廣政府委員 御質問趣旨を必ずしも十分に理解しておると思いませんが、先ほど総理が申されたとおり、現在の国際的な大きな枠組み、これが大綱策定当時とそう変わっていない、つまり、ある一国と一国との間にある程度の兵力上の差ができたら直ちに片方が侵攻するといったような状態にはない、一応東西という両陣営が対峙しながら相互に抑止をしているという態勢が動いていないということで、そういう態勢の中であれば、日本としてはいわゆる基盤的防衛力、小規模・限定的な事態に独力で対応し得る能力をまずみずからが持ち、さらにそれを超えるものについては日米安保に期待をするといったような形の防衛体制を持てば対応できるのではないかというように考えております。
  216. 上原康助

    ○上原委員 ちょっとおかしいですが、おかしいというか、私がお尋ねしている点と少し食い違う答弁をしておるのですが、いいです。いいというより、進める意味で、もう一つ、基盤的防衛力整備と専守防衛防衛力との関係はどうなりますか。
  217. 西廣整輝

    西廣政府委員 御承知のように、基盤的防衛力構想というのは大綱以降の話でございますが、それ以前の、限定的な事態、非核、局地戦以下の事態に最も有効に対応できる防衛力というものを目標として整備しておった時代も含めまして、我が国が整備をしております防衛力はすべて専守防衛防衛力でございます。
  218. 上原康助

    ○上原委員 だから、私は改めて五十一年の大綱策定時の防衛白書やその後節々のものをちょっと目を通してみたのですが、これはなかなかの知恵袋がつくっておるのね。憲法上の制約は専守防衛、そして整備すべき防衛力整備の構想は基盤的防衛力だ、しかし、そうは言ってみたって実態はそうなっていないというところに問題があるのです。本当に僕はきょう時間がないのですが、これは五十一年のあの時点までさかのぼって、もう一度専守防衛とは一体何なのか、なぜ基盤的防衛力構想が生まれたのかというのは、これは総理も専門だし、防衛庁長官も御検討いただかないと、今はまた、際限なく防衛力いわゆる軍事費というものが突出をして、際限なく拡大をされていくんじゃないかという新たな疑問を、私も持つし、国民は持っていますよ。そこに重要なポイントがあるということ。  そこでもう一度聞きたいことは、「防衛計画の大綱」策定時においては――時間がありませんから、私が言っていることが当たっているかどうか、ひとつ言ってみてください。当時、いわゆる四次防までいろいろ五ヵ年計画でやって防衛費が倍増倍増でいくから、単年度方式に切りかえてやっていこうということで基盤的防衛力構想というのが出たわけだ。いろいろいきさつはある。これは三木内閣のとき福田副総理がやめたのだ、政変があって。だから、この大綱決定と一%問題は五日か一週間おくれで決定されている。十月二十九日と十一月五日ですから、一週間か。  そのときにこうだったのじゃないですか。陸上自衛隊は現行定員の枠内で一部の編成がえを行うだけで十分というのが一つですね。それと、海上自衛隊は潜水艦二隻と航空機十機程度が不足だ。航空自衛隊は警戒飛行部隊の新設を必要とするだけで、戦闘機を含めて他の編成、装備はすべて目標に達している、こういう見積もりなんですよ、あのときに。しかし、現在の実態どうなっていますか。さらにそれだけではなくして、新中期防衛力整備計画ではもっと拡大をしていく危険性が十分あるということを指摘しておく。  だから、当初の国際情勢においてそういう基調が変わっていないと言うならば、当然、大綱を策定するときの目標として定められたことなども守らなければいけない。それを具体的に進めていく歯どめとして一%問題が出たんじゃないですか。今私が言ったことに対して、防衛庁長官あるいは総理大臣はどうお考えですか。
  219. 西廣整輝

    西廣政府委員 ただいま先生の御質問の中で、当時もう既にほとんどのものが達成をしておるという筋のことを申されましたけれども、当時、例えば持っておりました戦闘機あるいは対潜航空機というものは、現在の大綱の別表にある数字より多いものを持っておったわけです。それを若干低めたところでも内容をより近代化すればいいということで、大綱というものは当時現実に持っておる飛行機の数よりも少ない数字を定めた。その後、整備が、必ずしも十分に更新等が行われないために大綱の数字を下回ってしまっておるというのが現状であります。
  220. 上原康助

    ○上原委員 大綱の水準が達成されていないという意味からすれば、それはそういう見方も成り立つかもしれません。しかし、実際にその後整備をされたものの、兵器やそういったものの装備の種目を挙げて、具体的に検討をし議論をしていかなければいけない課題として残っておるということを私は指摘をしておきたいと思います。  そこで、これは確認をしておきたいわけですが、そうしますと、「防衛計画の大綱」の水準というのは、我が国の防衛力整備の量的な上限を明らかにしたものと私たちは理解をしているのですが、どうですか。
  221. 西廣整輝

    西廣政府委員 限定的・小規模に対応する防衛力というもの、いわゆる大綱の限度でございますが、これは量的な上限というよりも能力的な上限をあらわしたものというように私どもは理解をいたしております。
  222. 上原康助

    ○上原委員 そこが非常に、あなた方のすりかえ論というか、なし崩し論というか、当時から、「防衛計画の大綱」は我が国が平時から保持すべき必要最小限の防衛力の水準を示したものである、これは防衛白書にもちゃんと書いてある。国会答弁にもそういうのが随所にある。同時に、この水準は我が国の防衛力整備の量的な上限を明らかにしたものである。この基盤的構想がなし崩しにされたがゆえに今のあなたの答弁が出てくるのです。  そうなりますと、西廣さん、あなた専門だから――時間が来ればというお考えかもしれないが、それでは私は納得できないのです。いつまでもそういう防衛論議をするからかみ合わないのだ。  そうしますと、あなたが言うようなことになると、大綱決定以前の我が国の防衛力整備、いわゆる周辺の脅威に対抗して防衛力は増強すべきであるという所要防衛力構想に逆戻りしたということになってきますよ。今歩もうとしていることは、明らかにそういう方向に来ていると私は思う。これは議論をすれば限りがない。この点で、「防衛計画の大綱」というものは平時の上限を示したものである、その水準に達成をするための予算措置として一%の枠の歯どめがあったということなんです。そうなれば、議論もかみ合うのです。国民もわかるのです。そこいらはどうなんですか。総理、お答えください。
  223. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 それは基盤防衛力整備の考えから来る定性的水準を示したものでありましょう。ですから防衛能力ということを西廣局長も今お答えした。定性的水準であります。そのようにお考え願いたいと思います。
  224. 上原康助

    ○上原委員 定性的水準というと、これも定性的か定量的かいろいろ議論されていますね。一つの原理原則だということなのでしょう。原理原則がそう簡単に変わったらどうしますか。そこまで議論する時間がありませんのは残念ですが、定性的水準である。  そうしますと、それではずばり聞きますけれども、この「防衛計画の大綱」の水準が達成できれば、我が国が保持すべき基盤的防衛力あるいは憲法の制約というか専守防衛を本旨とする防衛力整備は達成できる、こういうふうにならなければ話はつじつまが合いませんね、どうですか。
  225. 西廣整輝

    西廣政府委員 まず先生に御理解いただきたいのは、防衛力というのは例えば道路を何キロつくりますというように、つくってしまいましたらあとは十年なり二十年はそのまま道路が使える、若干の修理をすればいいというものとは違うという点を御理解いただきたいのです。  一つは、ある水準に達したということでありましても、それを維持し続けるということがかなり難しい問題であります。例えば現在年々防衛力整備をしておりますけれども、そのうちの大部分のものは古くなった装備を更新し近代化しつつそれを維持していくということに使われておりまして、増強分というのはごくわずかであります。そのように、ある水準に達したからといってそれでは防衛力整備は何もしなくて済むかというと、引き続き八割あるいは九〇%以上のものはその維持に力を注いでいかなければいけないというもので、引き続き努力が必要であるということを御理解いただきたいと思います。  と同時にもう一つ、周辺の諸国の軍備の動向なり、軍事技術の進歩というものが時間を経るに従って出てまいりますから、それらについてはやはりそれに対応し得るものを我々としても追求し続けないと水準の維持ができない、先ほど申しましたある一定の能力というものの維持ができないということになるわけでございまして、その点を御理解いただきたいと思います。
  226. 上原康助

    ○上原委員 話がすぐそういうところにすりかえられていく。確かに兵器の近代化あるいは軍事技術の進歩等を勘案をして云々というのはある。それはありますよ。いつまでも質的変化がないということを私は言っているわけじゃないのです。  我が国が一応目指している専守防衛という一つの憲法的枠、しかも基盤的防衛力という、皆さんが鳴り物入りで言ったその基盤的防衛力構想ということで整備するならば、やはり上限があってしかるべきでしょう。その上限に達するための予算的措置は対GNP一%枠内でやりますよというのが基盤的防衛力構想の骨幹なんです。質的な問題とか科学技術云々というのは全く否定はいたしませんが、しかしそれにしても、限定的な小規模事態に独力で対処できる自衛力という歯どめがあるわけなんです。  もう一点確認しておきたいことは、防衛局長はこの間の本委員会あるいは予算委員会でも、私は随分乱暴な言い方だと思うのですが、三百七議席も占めるとこれほど野党を小ばかにするのかと思うほどしゃくにさわるのですが、小規模・限定事態対応するためのものとしては防衛力の質的な整備というのは青天井であります、諸外国の水準というものに常に合わせていかなければならない、これはまさに所要防衛力構想じゃないですか。防衛局長、これはどういう意味なの。冗談じゃないですよ。青天井とは一体何だ。
  227. 西廣整輝

    西廣政府委員 これは大綱をつくった当時から申し上げているように、質的なものについては常に周辺諸国なり軍事技術の水準に追随していかないと限定的・小規模な事態対応できなくなりますので、そういう点ではどこが限度であるということを定量的あるいは定性的に申し上げることはできないという意味で青天井という言葉を使ったわけであります。
  228. 上原康助

    ○上原委員 青天井というと際限なくできるということじゃないですか。  そうしますと、定性的歯どめというか定性的水準というのが大綱だ、定量的歯どめは別表、これは不離一体のものなんだが、そこは確認できますね。
  229. 西廣整輝

    西廣政府委員 大綱の本文に書いてございますように、一番端的な例が先ほど来申し上げておる限定的・小規模事態対応できる能力を持つことというのが大綱の本文に書かれてあるわけですが、そこで、そういう小規模・限定的事態に、兵器体系、周辺諸国の動向をにらみ合わせて当時つくられたものが別表でありまして、当時の状況としては、仮にその段階で直ちに別表のような態勢ができ上がれば、限定的・小規模事態対応できる能力を持ち得たというふうに考えております。
  230. 上原康助

    ○上原委員 そこはまたいずれやりましょう。あなたはなかなかずばりは言いませんね。私は、別表が定量的限界だと理解して、またそうでなければいけないと思います。  そうしますと、私は「防衛計画の大綱」と別表は一対のものだという理解をしてお尋ねするわけですが、そこで定められておる基幹的な装備の体系の変更とか増強、拡大ということをまさか考えておるのじゃないでしょうね。
  231. 西廣整輝

    西廣政府委員 御質問趣旨を十分理解できない点があるかもしれませんが、防衛庁が別表の改定、別表にあります数量等の改定を現在考えておるのかという御質問でありますれば、そういうことは現在考えておりません。
  232. 上原康助

    ○上原委員 これは総理からお答えいただきたいわけですが、基盤的防衛力構想に基づいてやっておる、大綱の見直しももちろん今考えてないという答弁、別表の改正も考えてない、そうしますと、当然一%を守らなければいけないという結論が出ますね。それはお守りになっていきますね。
  233. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 これは歴代総理大臣防衛庁長官が口を酸っぱく申し上げておるように、大綱水準達成を目途として努力いたしております、そして、一%の三木内閣決定の方針は守りたいと思います、そういうことを申し上げておるので、私もそのとおり、申し上げておるとおりであります。
  234. 上原康助

    ○上原委員 極めて不十分ですが、この点はこの程度にせざるを得ません。  そこで、時間があとわずかしかありませんので総理に聞いておこうかと思うのですが、最近の円高問題でいろいろなことが出てきております。とりわけ駐労問題等々で日米の新たな政治課題というか非常に重要な課題になるかもしれない問題があると思うのです。給与法案が来週あたり本委員会議論されることにあるいはなるかもしれませんが、そうすれば駐留軍労働者の賃金も同時同率で決定をしていく、この従来の基本方針は当然変わりないと思うのですが、今米側からいろいろ出されている、例えばMLC全体をパートに切りかえるとか人員整理を新たにやるとか定年退職後は補充しないとか、こんな一方的に労働者だけに犠牲を負わすというようなことは私は断じてあってはならぬと思う。それはいろいろな問題はあると思いますが、そういうことに対して政府としてはどういうふうな解決策というものをこれからやろうとするのか、ひとつ基本だけお聞かせいただきたいと思います。
  235. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 先にちょっと申し上げます。  今先生のおっしゃいましたようなことで、アメリカの当局の方は、円高の問題のほかに歳出削減法ということで歳出が非帯に限定されているということもございまして、今御指摘のようないろいろな合理化をせざるを得ないような状況になっております。私どもといたしましては、駐留軍労務者の労働の安定というものを頭に置きつつも、米国が米国の事情におきまして、我が国と同様でございますが、合理化をいたそうという努力につきまして、これを頭から否定することもできないだろう、このように思っております。  でございますから、基本的には日本側におきます労働の安定ということを考えながら、米国の合理化努力との調整を図ってまいるよう米国にも申し入れているところでございます。
  236. 上原康助

    ○上原委員 そこで、時間が来ましたので、私はこの問題を言うとさっきのこととも関連するのでなかなかやりづらい難しい面もありますが、念のために申し上げておきたいことは、よく思いやり予算と言うのだが、これは施設整備の方が駐労経費よりもはるかに大きいということ、この実情についてはもう少し防衛施設庁も国民にわかってもらうようにせぬと、何か駐労経費があるから思いやり予算だ、みんなこう思っている、このことは指摘をしておきたいと思います。  今のことについては総理も御関心があると思うのですが、解決をする、あるいは防衛庁、外務省を督励なさってそのよき方法に努力をなさる御決意はありますか。
  237. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 せっかく総理でございますけれども、私が防衛庁長官で、全体的にこの問題について関心を持っていますから、あえてお答えいたします。  実は、私がアメリカへ行ったときに、端的に向こうは、円高メリットを還元すべきである、こういう意見がございました。その場合に、装備品や何かをもっと買わぬか、いわゆる防衛計画をどんどんやってくれと言われたが、それはだめだと言った。そうしましたら、駐留軍労務者の労務費の問題が出ましたよ。私は正直言って、それに対して、はい考えましょう、いろいろやってあげましょう、そういうオブリゲーションは一つもないのです。恐らくアメリカは私にはそう言わないと思いますよ。  ただ、この問題は、あなたも御指摘になったように、いろいろと屈折した格好で大きな問題になると思います。したがって、これは政府としても十分に考えなければならぬけれども、当該の労働組合あるいはそれに関係される方々も十分な関心を持っていろいろと対策を立てることが必要ではないか、こう思います。
  238. 上原康助

    ○上原委員 せっかくですから、総理、一言この件についてお答えください。
  239. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 駐留軍関係の労務者の労務関係の安定については、政府も重大な関心を持ちまして、できるだけベストを尽くしていきたいと思っております。
  240. 上原康助

    ○上原委員 以上で終わります。
  241. 石川要三

    石川委員長 鈴切康雄君。
  242. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 防衛二法の締めくくりに総理においでを願ったわけでありますけれども、時間が余りございませんので、端的に明快に御答弁を願いたい、そのように思います。  中曽根総理は、我が国との友好関係にある韓国に行かれまして全斗煥大統領と会談し、さらに今回、日中交流センター定礎式に出席のため訪中され、鄧小平国家主席あるいは胡耀邦総書記、趙紫陽首相と相次いで首脳会談を行い、幅広い意見交換を行ったということについて、私は、隣国の友好促進にはずみをつけたろう、そのように思っております。  しかし、戦後日本が抱える最大の政治課題であり最後に残された外交問題は、何といってもソビエト問題と言っても過言ではないと思います。ソビエトとの友好を促進し、平和条約を締結するには、韓国や中国のようなわけにはいかないいろいろ面倒な政治問題があることは既に御承知のとおりであります。  ゴルバチョフ書記長の来日問題については、本年二度にわたる日ソ外相間定期協議の際、両国最高首脳の相互訪問について原則的に合意されたことは共同コミュニケでも明らかであります。となると、今までの経過から見て、早晩ゴルバチョフ書記長来日ということになりますけれども、去る九月に日ソの外相会談がニューヨークで行われたその際、最重要課題は北方領土問題の取り扱いであったと聞いております。一月と五月の外相間定期協議でも、平和条約締結交渉を進めるに当たり、残された問題は領土問題だけに絞られてきたという感があります。  そこで、ゴルバチョフ書記長が訪日するに当たって、総理としては北方領土問題についてはどのような基本的な考えで臨まれるのか、その点についてお伺いいたします。
  243. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 北方領土問題を解決して、そして平和条約を締結するというのが我々の基本方針であり不動の基軸でございます。
  244. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 ゴルバチョフ書記長が七月二十八日にウラジオストクで演説をしたときに、日ソ間において過去の諸問題にこだわることなく日本との経済関係を進めたい、そのように言っています。今、ソ連としては経済問題が最重要課題で、ゴルバチョフ書記長としても経済の活性化ということに一番力を注いでいるようでございます。となると、日本の経済協力、科学技術協力、シベリア開発への協力を求めてくると思われますが、さきの領土問題とこれらの問題について、総理はどのような基本的な考え方で日ソ最高首脳会談に臨まれるのか。総理はよく、無原則な政経分離はとらないとかあるいは私は幻想は抱いていないとも言われますけれども、総理の真意はどこにありましょうか。
  245. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 私が基軸であると申し上げたのは、やはり四島返還の領土問題を解決して、そして平和条約を締結する、これは避けて通れない、経済の問題もさることながら、やはりこの基軸の問題というものを解決せずしてほかの問題にいくということは、日本側から見れば邪道であると考えております。
  246. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 きょうの新聞でしょうか、ソ連のノーボスチ通信社長が、北方領土問題に関して「ソ連は、たとえ一方的な性格のものであっても、いかなる問題も交渉から排除しない。」と述べ、少なくとも領土問題も話し合いのテーマであることを認めましたけれども、気になるのは、「四島返還論のほか、中間的な考え方」が日本国内にあり注目しているということを述べたというふうに書いてありますけれども、総理はこの問題についてどう考えておられましょうか。四島一括返還という日本側の基本的な考えには変わりがございませんでしょうか。
  247. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 前から一貫して四島一括返還と申し上げているとおりであります。
  248. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 外務大臣は来月中旬に行われるECの外相会議出席され、シュルツ国務長官と会談をされる予定だとも聞いておりますけれども、となると、外務大臣の訪米というよりも、むしろアメリカ中間選挙の結果、議会構成にも変化があったことに伴うアメリカの国内情勢の推移を見ると、日米の経済摩擦や防衛力増強要求など対日圧力が高まる懸念が出てきたわけでございますが、今回のソ連のゴルバチョフ書記長の一月訪日もまず無理だというふうになると、総理は来年早々にも訪米してレーガン大統領と話し合われる必要が出てきたのではないかというふうに私は思うのですけれども、総理はどうお考えでしょうか。
  249. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 アメリカへ来月あるいは一月に行くという考えはありません。
  250. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 五十一年の三木内閣のとき、平時における基盤的防衛力構想のもと「防衛計画の大綱」が十月二十九日に閣議決定され、その一週間後に防衛関係予算としてGNP一%枠が閣議決定されましたが、大綱と一%枠の関係を総理はどのように認識をされているのか。総理の本会議等の答弁を聞いておりますと、大綱が中心にあって、そしてこれを運用していくについてこういう注意が必要だというので、次いでGNP一%枠が追加的に決められたということですが、そのとおりなのか、もう一度明確な答弁をお願いいたします。
  251. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 今鈴切さんがおっしゃったとおりに考えております。すなわち、大綱水準達成というのが基本であって、この基本を達成するために我々は努力しているわけでありますが、その運用について一%ということを注意していく、そういう意味で三木内閣の閣議決定があった。ですから、一週間おくれて決められたというのは、まず大綱が基本で先行していた、そういう事実を忘れてはいけないと思います。
  252. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 総理、そこに若干問題があると思うんですよね。あの五十一年に閣議決定された二つのいわゆる柱というのは、一つは、「防衛計画の大綱」という基本方針、もう一つは、やはり当面の防衛力整備の関係予算で、言うならばGNP一%枠、この二つが閣議決定されたわけです。  そこで、「防衛計画の大綱」というのはどういうことかといいますと、従来の所要防衛力構想と違って基盤的防衛力構想という新しい考え方を取り入れ、今後我が国の防衛のあり方についての指針となるものがいわゆる「防衛計画の大綱」であり、これが基本方針であります。  しかしそうは言うけれども、それじゃどの程度の脅威に対処できる防衛力の整備を図るかといえば、我が国の憲法の範囲内で防衛力を保有するに当たっては、有事には日米安保体制と相まって対処するにしても、平時においては十分な警戒態勢をとり得るとともに、限定的かつ小規模な侵略までの事態に有効に対処できる防衛力の整備を図っていくということになって、別表で陸海空自衛隊の規模と装備体系を明らかにしていますね。これが一つです。もう一つは、相手方の脅威に対処して防衛力の質的な維持向上を図り近代化を図っていくが、しかし近代化を図るために青天井であってはいけませんよ、当面の防衛力整備の関係予算のめどとしてはGNP一%枠という予算のつけ方を基本指針として明確にしておきますよという二本の柱になっているわけでありますが、この二本の柱がいわゆる防衛力整備に当たっては必須の条件になっているわけです。  だから、昭和五十二年七月の防衛白書をよくごらんになっていただけばわかりますけれども、その防衛白書の中でも、「政府としての総合的な見地から、」この「総合的な見地」というのは二つの問題である。いわゆる「防衛計画の大綱」と防衛関係予算、この二つの「総合的な見地から、当面の防衛力整備については、年々の防衛関係経費の「めど」を示す」必要があったと明記をしておりますね。そういうことで言いますと、「防衛計画の大綱」と予算というのは、あなたが言うように別々に閣議決定されたとしても、ワンセットである。  総理大臣、あなたはすりかえが非常にお上手でして、五十二年に防衛白書が出たときに書かれている状況を見ますと、「防衛計画の大綱」とGNP一%というものは、言うならばまさしく「総合的な見地から、」決められたのですよ。だから、日にちが一週間違おうが十日違おうが、そんなことは問題じゃない。これでワンセットになっている。だから、あなたの言うようなそういう認識は間違っているとはっきり申し上げたいと思います。その点はいかがですか。
  253. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 防衛計画大綱の基礎には基盤防衛力という思想があったということは先ほど上原さんの御質問お答えしたとおりで、その点は今鈴切さんがおっしゃったとおりであります。  ただ、防衛計画大綱を決めたいきさつ、それから一%を決めたいきさつ等を詳細に調べてみましたら、当時坂田防衛庁長官、その後三原防衛庁長官あるいは金丸防衛庁長官、みんな関係した方々です。その方々等にも私もよく聞いてみました。その方々の証言とも言うべきものは、やはり私が申し上げましたように防衛計画大綱というものをまず決めた、ところがいろいろな議論も出てきた、これでは青天井になるじゃないか、そういう意味で、これの大綱を実現していく上について注意を要する点がある、そういう意味において一%というものを追って追加的に閣議決定をして、これを運用していく上の一つの指針とした、そういうことを私も聞いておる。  当時、経済計画等を見ますと、五ヵ年計画等によりますれば日本の経済成長率は大体一〇%を超えた経済成長率が予想されておりました。それがもし実現されていくならば大体三年から五年ぐらいでこれは実現されるだろうという予想であった、そういうことも聞いておる次第でございます。三年ないし五年である、そういうふうにたしか言われた方もおります。その後、しかし経済成長率も下がりまして、そして今のような状態でまだ防衛計画大綱の達成ができていない、そういうことで今我々は努力しているという状態なのであります。
  254. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 幾ら証言があるとかなんとかおっしゃっても、記憶というのは非常にあいまいなものなんですね。この防衛白書というのは防衛庁が監修しておつくりになったわけでございまして、そういう意味から、こういうふうなことについては一応書かれたもので明確に申し上げる以外にないわけですね。「当面の防衛力整備について」というところでございまして、「各年度の防衛関係経費が、国民総生産(GNP)の一%を「超えない」とされているのは、当面の経済財政事情等を考慮すれば、今後当分の間は防衛費を大きく伸ばすことは困難であると考えられ、他方、近年の防衛費は、GNPの一%近くで推移している実情にあるので、これらを総合的に判断して一%を「超えない」こととされたものである。」だから、「総合的に」というのですから、結局「防衛計画の大綱」だけではいわゆる画竜点睛を欠くわけですね。また、予算だけでも画竜点睛を欠く。言うならばこの二つはワンセットであるという物の考え方が正しいんじゃないですか。あなたの考え方は、もう十年もたちますと随分変わってきておられますね。やはりそのとき、できたときの状況の言うならば文章をもとにして私は申し上げているんですが、その点どうなんでしょうか。
  255. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 私が申し上げたことは間違ってないと思っています。それは坂田議長にも聞いたことでもありますし、坂田議長もそういう談あるいは文章を残しておったと記憶しております。それから、三原長官やあるいは金丸長官は、国会の答弁でもたしかそのようなことに触れた答弁があったと記憶しております。  そういうことで、当時の人々はそういう考えに立ってやったということは間違いないと考えております。
  256. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 では防衛庁、この防衛白書は全くでたらめの書類である、そうお考えでしょうか。責任を持って防衛庁は防衛白書を出しているんですよ。「総合的」というふうに書いてある以上は、これはワンセットということじゃないですか。
  257. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 それは基本と運用でワンセットと、そういう意味は当時言えるだろうと思います。
  258. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それは本当に詭弁でして、総理の言うことは本当に詭弁で、これは論議になりませんよ、こういうことを言うと。だけれども、もう時間がかなリ……。  それでは、次に進みますけれども、五十一年十一月五日の「当面の防衛力整備について」というところに確かに「当面」という言葉がございます。しかし、閣議決定である以上、政府は遵守する義務があることは当然であります。  GNP一%以内の枠は歯どめとしては明確なんですが、定量的な歯どめがあいまいということになれば、もはやその時点から予算は青天井になってしまいます。定性的な歯どめも、科学水準、質的な近代化ということになれば、これまた予算は青天井。  公明党は、従来から歯どめなき軍事予算については問題があるということを主張してきました。その意味からも、GNP一%枠を守れ、そのように言っているわけでありますが、先ほど防衛局長は定性的にも定量的にも青天井ですなんて、これは何です。あなた、随分おかしなことを言いますね。それじゃ何のためにこれをつくったんですか、GNP一%枠は。そんなことは問題です。この歯どめについて政府はどういうふうにお考えですか。
  259. 西廣整輝

    西廣政府委員 私が先ほど申し上げたのは、防衛力について青天井だとか、あるいは能力について青天井と申し上げたのではなくて、技術というものについては何が限界であるかということは、我々先のことは読めませんから、それを文章であらわすことはできません。つまり、どこまで技術というものは伸びていくかわからないという意味で青天井と申し上げているわけでありまして、大綱で定めておる防衛力整備、我が国が平時持つべき防衛力については、先ほど来何度も申し上げておりますように、限定的・小規模事態対応し得る能力というものを限界にしておるということでございます。
  260. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いいですか、定量的な歯どめというのは青天井なんでしょうか。定量的な歯どめの中にはGNP一%もあるでしょうし、別表というものもあるでしょう、こう申し上げたいのですけれども、その点はどうなんですか。
  261. 西廣整輝

    西廣政府委員 もう一回先ほどの御答弁を繰り返しますが、技術について定量的とかあるいは定性的な限界というものはないということを申し上げただけで、私は防衛力について定量的な歯どめも何もないということを申し上げているわけじゃないということをまずお断りをいたしておきます。  そこで、それでは大綱では定量といいますか防衛費の規模についてどうなっているかということでございますが、これは先ほど来総理がお答えしておられますように、大綱はまずある能力を持つということが目標として定められております。ところが、それだけではどういうテンポでやっていくかということが全くないわけであります。ということは、例えばそれは非常に多量の防衛費を使い過ぎるではないかという人に言わせれば、一年でつくってしまおうとすれば大変な金がかかる。一方、それでは全然それについてのめどがなければ、百年かかってもいいということになると何もしないで百年過ごしてしまう、目標だけつくって置いておくということになりますので、そういうことではなくて、当時、大綱をつくりましたときに、その目標を達成するについて合理的な期間というものを念頭に置いた場合、当時の経済計画、経済見通しその他を総合的に判定をして、当時の状況としては一%を超えない程度のものを投入していけば合理的な期間に達成できるであろうということで、一%というものが当面のめどとして決められたわけでございます。
  262. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今防衛局長が言ったとおりに、やはり総合的な見地からということじゃないですか。そうなれば、総理が言っているように、追加的に加えられたなんて、そんな言うならばわけのわからない答弁をしておりますと、この昭和五十一年に閣議決定された内容が変質してしまいますよ。  「防衛計画の大綱」については、昭和五十一年十月二十九日に閣議決定され、基盤的防衛力構想に基づいて「防衛計画の大綱」が打ち出されました。  「防衛計画の大綱」というのは、内外の諸情勢が大きく変化しない限り、今後の我が国における防衛力の整備、維持及び運用の基本的指針となり、自衛隊の管理運営の準拠たるものであると規定されておりますね。防衛白書には「今後のわが国の防衛のあり方についての指針を示すものである」と明記されていますよ。  となると、内外の諸情勢が大きく変化しない限り、六十一年から六十五年までの中期防達成時はもちろんのこと、ポスト中期防においても基盤的防衛力構想に基づいて打ち出された「防衛計画の大綱」には変化がない、相当長い期間この考え方は続くものである、そのように見ていいかどうか、その点はどうでしょうか。
  263. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 我々は防衛計画大綱水準達成に今全力を尽くしておると前から申し上げているとおりでありまして、それが達成されるという暁には、次の段階の問題については、そのときの内外の諸情勢すべてを勘案した上でそのとき考うべき問題である、そのように思います。
  264. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それでは、そのときに所要防衛力構想にまた逆戻りするということでしょうか。基盤的防衛力というのは、平時における「今後のわが国の防衛のあり方についての指針を示すものである」。それをただ単に、「防衛計画の大綱」が終わったら、後は野となれ山となれでは困るのですよ、これは我が国の言うならば防衛のあり方についての指針なんですから。それとも所要防衛力構想にお変わりになるのでしょうか。その点についてはっきりしてください。
  265. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 そのときはやはり国民の世論というものをよく考えてやるべきだと思います。もちろん、憲法、非核三原則、あるいは「国防の基本方針」、そういうものが基礎にはあるわけでありまして、それに適合するように、かつそのときの財政、あるいは周辺の状況、あるいは国民世論、そういうものをすべて見た上で考うべきものであると思います。
  266. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、「防衛計画の大綱」が達成されたときに、所要防衛力構想に変わるかあるいは今言われました「防衛計画の大綱」である基盤的防衛力構想でいくか決めるということなんですね。そういうことですか、もう一度。
  267. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 今は防衛計画大綱水準達成に全力を尽くしているときでありまして、その後の問題については、その時点に立って、そのときの情勢をすべて勘案して考うべきである。でありますから、基盤防衛力がまた延長されていくのか、あるいはまた新しい発想が出てくるのか、それはそのときの、先ほど申し上げたような諸条件を勘案して適切に与えらるべきものであると考えております。
  268. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 「防衛計画の大綱」の基本方針は変わらないにしても、別表については策定当時から見れば質的にも大きく変わってきておりますね。このままで、運用面だけで十分に対応ができるのかというと問題も出てきます。  防衛庁は、質的変化に伴う装備体系の変化あるいは近代化した戦略、戦術の変化となれば別表の手直しということも考えているのではないだろうかという点があります。六十一年度の防衛白書の九十三ページにはたまたまそれが書かれていますね。内容を見ると、「諸外国の技術的水準の動向等に対応するため、装備体系等を変更する必要が生じた場合には、安全保障会議及び閣議の審議、決定を経て、別表の内容を変更することも可能である。」と明言しておりますね。大綱と別表は表裏一体で今日まで来ましたし、別表の改定というのは大綱そのものの変質につながっていくのではないかというふうに思っておりますけれども、大綱と別表の関係政府は別々というふうに考えておられましょうか。
  269. 西廣整輝

    西廣政府委員 ただいまの御質問お答えする前に、先ほどの総合的という部分についてちょっと補足させていただきたいのですが、先生、白書で「総合的」と書いてあって、これが大綱と一%の閣議決定というその二つの総合というふうにおっしゃいましたけれども、あの白書に書かれている意味、それから私が御答弁申し上げた総合的と申しますのは、一%のめどの閣議決定をするに際しまして、経済計画なり財政状況なり、そういったことを総合的に判断をして決めたということでありまして、大綱と一%というものの二つを総合してという意味じゃございませんので、その点はよく読んでいただきますと御理解いただけると思います。  それから、別表の話でございますが、別表についてここ数回御答弁申し上げておりますけれども、まず我々としては、仕組みについてお尋ねがありましたので、そのように兵器体系等の変更があれば変え得るものである、大綱の本文にある基本的な考え方の枠の中であれば変え得るものであるということは申し上げておりますが、それと別表を直ちに変える気があるということとはまた別問題でありまして、現在そういうことを考えておるわけではございませんので、その点はお断り申し上げておきたいと思います。  なお、別表と大綱というものは私どもはその時点時点においては一体のものである、つまり、小規模・限定的な事態対応するために必要なものが別表として常につくられておるというふうに考えております。したがって、それが限定・小規模の事態対応できないような状況になれば、別表を変えることによって大綱との一体化を図っていくべきものである、そういうことで大綱と別表はある意味では一体であるというふうにお答えいたしたいと思います。
  270. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 六十三年にはいわゆる見直しがございますね。そのときに要するに別表の見直しを考えているのか、あるいは六十五年、「防衛計画の大綱」達成までは別表は一切変えないんだ、そのようにお考えなんでしょうか、どちらですか。
  271. 西廣整輝

    西廣政府委員 どうも大分先のことなので私どももなかなか想像のつかない点があるわけでございますが、私がまず申し上げたいのは、最近、五ヵ年計画が政府決定されまして、これが順調に達成されれば大綱水準が一応達成できるのではないかというように我々考えておるわけです。  そこで、達成できるということで五ヵ年計画ができたものですから、最近急に、達成したらもうやることがなくなってしまうのではないかとか、あるいは達成したら当然次に何か継ぎ足さないと、何も防衛力整備しなくてよくなってしまうのではないかというようにお考えの方が多いのではないかと思います。そういうことで、しきりに別表の改定の話が出てまいるわけです。  その点につきましては、私、先ほど申したように、水準を維持するということが非常に大変でございますし、さらに周辺の諸国の軍備の動向なり軍事技術の動向に対応して我が防衛力を近代化していくことも大変なことでございますので、その点、達成したらすぐ何か次のものをつくらないと行き詰まってしまうとか、あるいはもう何もしないでいてもいいということではありませんので、五ヵ年が過ぎてしまったら、あるいは三年後の見直しに、どうしても別表の改定に着手しなければいけないというものではないというふうにお考えいただきたいと思います。
  272. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 六十一年度では、補正予算編成で、原油の値下がりや円高差益、経費節減によって、二・三一%引き上げの人事院勧告完全実施しても一%枠を守ることができる見通しがついたというふうに言われております。急激な円高のメリットが防衛関係費に出たと言っても過言ではありません。  六十二年度での防衛費の概算要求は、前年度比六・三%増になっております。来年の経済成長率についてはいまだ政府は決定していないにしても、名目成長率は来年もやはり厳しい見通しになることが予測されます。今年度の名目成長率五・一%を上回る五・五%以上に設定しなければ一%枠をオーバーする計算になりますが、政府としては三木内閣の閣議決定を尊重し守っていきたいという考えから、六十二年度予算編成もこの点を十分に配慮していきたいというのか、あるいは閣議決定の「当面」が、もう十年たったからそろそろというふうにお考えになっているのか、その点についてはどう判断されていますか。
  273. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 この問題は、今お話のありましたとおり、GNPがどうなるかという問題が一つございますね。私どもの基本的な考え方は、「防衛計画の大綱」水準達成のために今中期防衛力整備計画がございますが、その二年目でございますから、それが実質的に達成できるように今大蔵の方と折衝をしているわけでございます。今の考え方というのは、一%を突破したいとかどうとか、そういうようなことではなしに、ひたすら「防衛計画の大綱」水準の達成ができるように折衝しておるというのが実情でございます。
  274. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 最後になりますが、思いやり予算については、地位協定二十四条の一項、二項でアメリカ日本との負担区分が明確になっております。しかし、地位協定の解釈による日本側の負担も現状がもう限界に来ているのではないか、そのように私は思います。  そこで、円高による駐留米軍の基地に勤務する日本人労務者の雇用の負担については、米側から再三肩がわりの要請を受けておりますけれども、円高だからといってそのことだけを優遇することには問題があるのではないかと私は思います。といって、労務者の雇用の安定という見地から考えると、政府として新たな協定を結ぶ方向を模索しているのではないか、また、昭和六十二年度の概算要求が出されておりますけれども、さらに増額をするというような考え方に立っているのかどうか、その点についてお答え願いたい。
  275. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 駐留軍労務者についての思いやりの問題についてお尋ねでございますが、今御質問の中で出てまいりました現行地位協定の解釈、これがほぼ限界ではないかということが一つ。  この点につきましては、従来から政府で答弁しておりますように、おおむね現行の取り扱いというのが地位協定の解釈上限界に近いというような御答弁を申し上げてまいってきておるわけでございます。  それに対して、新しい協定をつくるしかないじゃないかということでございますが、これは外務省で御検討をなさるべき事柄だと存じますが、私どもが伺っている限りにおきましては、目下のところ何ら結論が出ているものとは承知しておりません。  それから、さらに、いろいろなことをどういうふうにしてやるんだというようなことでございましたが、その辺のところは、私どもといたしましても米側の困難な事情も考えながら、また先ほど御答弁申し上げましたように、駐留軍労務者の労働の状況の安定ということも考えながら、一体どういうふうにこれを考えていったらよろしいのかということは思案はいたしておりますが、目下の段階では何も申し上げられる状況ではございません。
  276. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 時間が参りましたので、以上で終わります。
  277. 石川要三

    石川委員長 和田一仁君。
  278. 和田一仁

    ○和田委員 総理、きょうは大変御苦労さまでございます。私に与えられました時間は大変短い時間でございまして、この限られた中でいろいろお聞きしたいわけですが、そういう意味で私、単刀直入にお聞きいたしますので、よろしくお願いいたしたいと思います。  最近の防衛論議をずっと見てまいっておりますと、特にきょう一日の防衛論議あるいは今直前のいろいろなお話を聞いておりまして私がつくづく感じますことは、今国民は、従来ともこの防衛の問題で一つの大きな焦点になっておるところの防衛費の歯どめの問題、一%枠というものが一体どうなるのであろうか、こういう点について、特に同時選挙後、いろいろ伝えられるところによると、この一%枠なるものが次第に枠から程度に変更しているのではないか、こういうことが伝えられておりまして、このことについて今も論議が行われておるわけでございます。  五十一年度時代に決定されたときには、確かにこれは枠という感じよりは、むしろ当面一%を超えないことをめどとしてというような決定であったと思いますが、それがその後一%枠という非常に厳格なものになりまして、それが今日まで続いておる、これは一つの歯どめとして、国民は、なるほどそれを枠とするのか、こういうふうに受けとめてきたと思うわけでございます。それだけの受けとめ方を国民がして、それなりの効用を果たしてきたとするならば、この枠を変えるのか変えないのかは、変えるというよりも枠を広げるのかあるいは枠と言わずに程度とするということになるのかは、非常に関心の高いところだと思うのです。  防衛庁長官の今すぐ前の御答弁によりましても、これは大綱水準達成がとにかく急がれる、そのためには水準達成が優先であって、一%の枠をどうのこうのということはその次の問題であるというような御発言でございましたが、総理、この点についてはいかがなんでしょうか。
  279. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 最近の内閣では、やはり防衛計画大綱水準達成というものを一生懸命やる、これがやはり第一義であると、みんなそう言ってきていると思います。私の内閣でもそう言ってきております。しかしGNPがどう動くか、諸般の計数関係というものも出てきております。しかし、その中にあっても一%というこの三木内閣の指針は守りたい、そういうことを私も言ってきておるのです。  来年度予算につきましては、十二月に予算編成のときに、経済成長はどうなるかあるいは油の値段がどうなるか、そういう為替の関係がどうなるか、いろいろな変数がまだあるわけであります。ですから、今どうということは言えませんが、しかし我々としてはできるだけ一%の枠は守りたい、そういう考えでおります。
  280. 和田一仁

    ○和田委員 総理は守りたいとおっしゃるし、長官は達成が優先である、こうおっしゃっている、若干の違いがあろうと思うのです。  私は、六十一年度はあるいは時と場合によってはこの一%枠を超えるのではないかというふうに心配をしておりましたが、これは円高であるとか油が安いとか、こういうことによって装備品の調達額の減額等でどうやらすれすれで済みそうな感じですけれども、来年の六十二年度の予算編成で、今概算要求を六・三%増ということで出されているようでございますけれども、こういったものが実施される見通しと、それからこれが六・三でいくのか五%程度でいくのか、その辺の絡みもございますが、来年の経済成長の見通しを考えましてもそれはそう高い水準は望めない、こういうことになってまいりますと、この一%枠というものは突破する可能性が非常に強いのではないか、私はこう思うわけです。  そういった見通しがあるだけに、いよいよのときのことに備えて長官は今のような御答弁をされている、私はこう思うのですが、私はそういう意味でこの一%にこだわっている立場ではないのです。もしそうであるならば、その点をはっきりして新しい歯どめを示していただきたい、こういう考えがあるだけにお尋ねをしておるわけでございまして、その辺、長官の真意をお聞かせいただきたいのです。
  281. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 私は、先ほども言ったとおり、一%を突破したいと言ってやっているのじゃないので、要するに「防衛計画の大綱」水準を達成いたしたいということを申し上げておるのです。したがいまして、守ってまいりたいという姿勢は総理大臣と同じでございます。  しかも、今予算の概算要求をしていよいよ十二月の本番です。そのときに、私が特定の枠を考えながら進めるということになりますれば、そのこと自体が大蔵省との予算折衝で非常なこれはブレーキです。最終的には防衛庁だけの意思じゃいかないわけです、政府全体として決めるわけでございますから。そういう意味合いで、ひたすら今防衛力の整備を着実に計画的、継続的にやっていきたい、その一心であるということで答弁をしているわけでございます。
  282. 和田一仁

    ○和田委員 そうすると、予算折衝の中で一%枠というのは非常に邪魔である、こういうものがあれば防衛庁が今考えているようなそういう大綱の水準を達成するためには非常に面倒である、だからそういうことには触れないで、大綱水準を達成することが優先だということを強調されているわけですね。  そういうことになりますと、総理、私どもはいつも言っているのですが、この一%という議論ではなくて、防衛のために必要な水準を達成することが大事だという長官の気持ちはよくわかるのです。そのために中期防が出て、十八兆四千億の総枠が新たに示されたわけですね。これは一つの歯どめでしょうか、総理、いかがでしょう。
  283. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 いわば総量規制的な一つの指針をつくった、しかし実際GNPとの関係がどうなるかというのは、毎年毎年大蔵省と折衝して内閣で決めた予算で、それは決まり出てくるものであります。
  284. 和田一仁

    ○和田委員 総枠がそういうふうに中期防で示されて、それが六十五年までの間に達成されるためには、やはり単年度ごとの一%というもの、これは突破することがあり得る、またそうでなければ今の経済見通しからいってこれは到底達成はできないのではないか、私はこう思います。したがいまして、この今まで枠としていたものを早晩言い直されるときが来るのではないか、こう私は思っておるのです。それを解釈を変えて程度と言うのか、それとも閣議決定を撤廃して程度というものにしていこうとされているのか、その辺は、総理、いかがですか。
  285. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 来年度のことは十二月の予算編成のときに決まるのでございまして、今からいろいろ予測することは困難であります。しかし、栗原長官も私も、やはり防衛計画大綱水準達成というものが第一義であると申し上げております。しかしできるだけ一%の枠を守りたいと思っています、そういうことも申し上げておる。  結局、十二月の予算編成のときの諸般の情勢判断して最終的には決まるものであるとお考え願いたい。それまでは一%に関して発言しても意味がないと思うのです。程度であるとか少し出たらいいとか悪いとか、そういうことはともかく十二月の予算で正式に決定するときにいろいろ諸般の情勢を見て考うべきものである、しかし私は守りたいと思っておりますと今までずっと申し上げてきた、一連の発言をすべてお考えいただきたいと思うのであります。
  286. 和田一仁

    ○和田委員 来年度予算案の時期が極めて迫っておりますが、そういうときに今の総理の御答弁を聞いていると、これは時と場合によって来年度は超えるな、概算要求どおりに来年の予算をつけるということになれば、単年度として来年は初めて枠を突破することもあり得る、私はそう理解せざるを得ないわけでございます。  それで、そういうことに関連してですが、防衛大綱を新たな一つの歯どめに考えておられる、防衛大綱を防衛力整備に関する定性的な歯どめとして長官は答弁をされておりますが、総理もそうお考えではないかと思うのですね。さっきの御答弁もそのようでした。総理はさっきも、軍事的な技術の変化、それから周辺の軍備の増強等、そういうものに見合って装備体系の変更はあり得るんだ、白書自体にもそれは書いてあるではないか、装備体系の変更はあり得るということで、これはたしか先般の予算委員会だったと思うのですが、御答弁になっておりますね。五日の予算委員会ですが、大綱自体に科学技術の変化に対応することを認めており、装備の変更はあり得る、科学技術、防衛兵器の変化がどう出てくるかよく勉強し、対応を研究すべきであるという御答弁で、これは別表の見直しもあり得る、こういうことではないかと思うのです。  この別表で決めた防衛力の具体的な水準を必要に応じて見直せるというのであるならば、私は大綱そのものは歯どめにならないと思うのですが、いかがでしょうか。
  287. 西廣整輝

    西廣政府委員 たびたび御答弁申し上げているように、大綱が現存する限り、大綱が限界というか目標としております防衛力というものは限定的な小規模事態に独力で対応できる防衛力ということでございますので、それを超えるようなものが別表で定められるということはあり得ないということで、そこに限界があるというように私どもは考えております。
  288. 和田一仁

    ○和田委員 防衛局長の先ほど来の御答弁をずっと聞いておるのですが、私は結局あれは青天井の御答弁ではないかと思うのですね。何回も同じような質問をしておるわけですけれども、青天井なら青天井で、これはまたそういう考え方もあろうと思うのです。防衛というものは、ここまででいいんだという限界がきちっと示されないんだ、その理由は、技術的にどんどん進歩する、質的にも変化してくる、そういうものの限界というのはないんだからということになりますと、これはある意味で、そういった定性的なものはあっても、その定性的の根幹にそういうものに対応する最小限の基盤整備が必要なんだと言えば、基盤はどんどん上がってくるのですから、これは一種の青天井ですよ。  そこで、量的な歯どめは何かと言えば、単年度の一%の枠があったから、国民はまあそこで何らかの定量的な歯どめだなと思っていた。それが、この水準達成がもう最優先だということになると、これはもう少し明確な歯どめを、もし必要として示すというならばお示しいただかないと、国民の側にとりましては、これは何か本当に何もかもが青天井になっていってしまうのではないか、こういう危惧を持つのは当然だと思うのですが、総理、いかがですか。
  289. 西廣整輝

    西廣政府委員 若干補足して御説明させていただきますが、先ほど来申し上げておりますように、限定的と申しますのは、それ自身、例えば非核である、時間的あるいは地域的な限定がある、そういった意味で限定があるわけでございまして、そういった点でまず枠組みがはまっておる。しかも小規模ということでございますから、十分な準備をしてそこの国が国力をかけてかかってくるというものではないということでまた限定があるわけでございます。  つまり、我が国周辺の中には我が国の何十倍というような防衛力を持っておる国がございますが、それにスライドした防衛力を持つということではなくて、それらの国が限定的かつ小規模な状況で侵攻してくるものについては独力で対応するということで、かなりの量的な限界というものもその中には含まれておると私は考えております。  ただ、そういった小規模・限定的な事態というものも、相当の期間が推移しますとその質なり量なりというものが変化することは否めないわけでございますから、それに対応していくということは必要でございます。その際、大綱では、できる限り質的な向上によってそれに対応していこうということが本文に書かれておるわけでございます。それの最も顕著な例が兵器体系の変更だろうと思うわけです。つまり、非常に都合のよいと言いますと語弊があるかもしれませんが、我が防衛にとってぐあいのいい何か兵器ができてきたということになって、それを採用することによって質が非常に上がれば、別表にある兵力量といいますか防衛力の枠組みの量が減ることもあり得るわけでございます。  そういうことでございますから、別表の改定は質との相関関係において見直されることがあるし、それは必ずしも常にふえる一方ではなくて、減ることもあるというように御理解いただきたいと思います。
  290. 和田一仁

    ○和田委員 時間が非常に少ないのですけれども、総理、例えば防衛で最近非常に問題になっております洋上防空体制、これをやっていこう、整備していこうということになれば、今の要撃戦闘機十個隊というのでは、南西航路あるいは南東も含めたらとても十個隊ではやれない、これを十一か十二にふやすのか、そういったことがなければこれは対応できないと私は思うのです。  そういうことをどこまでの限度で別表の中で見直しをされるか、この別表の見直しというものはその都度、その都度幾らでも変えられるのか、一回限りで、これは変えたらもうそれきり、またしばらくは変えないというのか。おのずから限界があるとは言っておりますけれども、別表をいじらないでこれはできないと思うのですが、そういうことになると非常に問題が出てくる、そのことについてぜひひとつ総理のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  291. 西廣整輝

    西廣政府委員 技術的な問題でございますので私からお答え申し上げます。  先ほど申したように、いろいろな脅威の状況が変わってくる、例えば、従来は余りなかったであろう洋上においても空からの脅威がふえてくるということになると、それに対応することが必要になるわけでございますけれども、それならその場合に、例えば本土の広さよりも洋上ははるかに広い、したがってたくさんの航空機が要るであろうということでは必ずしもないと私は思うわけです。  と申しますのは、そういったところに進出し得る相手方の航空機というものも限定されておるわけでありますし、当然のことながら、そういう洋上まで出てくる航空機というのは護衛戦闘機がついているわけじゃございませんから非常に脆弱である、つまり、こちらが早く見つけることができ、それを要撃する手段さえ持てば相手としてはもう出てくることすらしなくなるではないだろうかということでありますので、そのために必要な防衛力の量というものはそれほど多いものではないのではないか。ということであれば、まだまだ今の別表の枠組みの中で工夫することによってこれを持つことも可能であろうというように考えております。  もちろん、先生の御指摘のように脅威というものは変化していくものであります。そういった際に、しかるべき対抗するための技術的な手段というものが見つからない場合に、場合によっては量によってそれに対応せざるを得ないという場合もあろうかと思いますが、我々としては、できる限り質的な向上、技術的な向上によってこれに対応していくことを追求していくべきであるというように考えているわけであります。
  292. 和田一仁

    ○和田委員 この辺の議論はまたひとつ時間をいただいて、防衛局長、ゆっくりやらしていただきます。  きょうは時間がないので最後に総理にもう一つお聞きしてやめますけれども、私はこの防衛問題全体の中でやはり一番気になるのは、有事の際の法的な整備がなされていない。有事法制化についてはいろいろ調査研究をされて、第一分類、第二分類等分類までされていろいろ研究はされておるけれども、この有事の中で非常に大事な点がいつまでもこうしたままでいていいかどうか。これを、少なくも第一分類、これは防衛庁自身で整備できる、こういったものについてはやはり至急やってほしい、これがおくれていることは私は非常に不安でなりません。  そのことは、防衛庁長官はこれは高度の政治的な判断に係る問題である、こういう御答弁なんですが、最高の責任者である総理がどう判断されるか。特に私は、第一分類について、みずから努力すればやれるこういった問題をいつまでもこのままにしておかれるかどうか。いよいよ有事になったときに、これはしようがない、超法規的な行動を認めるというようなことにでもなったら、それこそシビリアンコントロールの根底が崩れるということを考えますと、やはりこの有事法制化は急いでいただかなければいかぬ、こう思うのですが、総理、いかがでしょうか。
  293. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 防衛を全うするという意味におきましては、後方体制を整備するということも大事で、こういう意味におきましては、おっしゃるとおりの点もあると思います。  ただ、第一分類、第二分類、第三分類全般をやはり均斉のある形で体系づけるということも非常に重要で、そういう点から見ますと、第三分類が非常におくれておるわけです。第三分類について、もう少し政府全体として力を入れて早く整備する必要があると考えております。
  294. 和田一仁

    ○和田委員 時間になりましたので、終わります。
  295. 石川要三

  296. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 アメリカの海洋戦略について総理に質問いたします。  この国会でもしばしば問題になりましたが、ワトキンズ海軍作戦部長の海洋戦略、ケリー海兵隊司令官の水陸両用戦戦略、レーマン海軍長官の六百隻海軍、この三論文をアメリカの海洋戦略と総称しておりますが、この論文が発表されたこと、さらにことしの六月には、ソロモン国務省政策企画局長が、ヨーロッパの戦争が勃発した場合に極東で第二戦線を開くという講演をいたしまして、大きな反響を呼びました。  政府は、これら海洋戦略に対しまして、抑止の理論に基づくものであると答弁をしてこられました。政府が抑止の理論と言うアメリカの海洋戦略は、その中で、ヨーロッパ有事の際、アメリカの攻撃型潜水艦は太平洋でもソ連の海空部隊の脅威をなくし、同盟国軍の対潜部隊もソ連の潜水艦を壊滅させると言っておりますし、さらに、アメリカの海兵隊は千島やサハリン島へ上陸するということまで明らかにしております。海洋戦略は、抑止が破れた場合、有事の場合の戦略も述べているわけであります。  総理はアメリカの海洋戦略についてどのようなお考えをお持ちであるか、お伺いいたします。
  297. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 日本は、憲法のもとに日本固有の防衛政策防衛体系を持っております。すなわち、個別的自衛権の範囲内に、そして本土防衛を全うする、そういう意味の基盤防衛力整備という、その趣旨にのっとった前提のもとに努力をしておるわけであります。それに尽きると思っております。
  298. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 防衛白書によりますと、アメリカの戦略につきまして、アメリカは「抑止戦略を一貫してとっておる」ということ、それから、「紛争が生起した場合にはこれに有効に対処し得る態勢の確保に努めている。」こと、このことを防衛白書は述べております。ですから、抑止が破れた場合のことをも言っておりますが、この場合、千島、サハリン上陸が行われ、我が国が戦火にさらされる可能性が大きいわけであります。  このようなアメリカの海洋戦略についてどう考えるのかということをお聞きしたいわけであります。答弁を求めます。
  299. 瀬木博基

    ○瀬木政府委員 技術的な点でございますので、私から答えさせていただきます。  ただいま先生自身御指摘になりましたように、海洋戦略の中に、アメリカの基本的な国防政策は抑止であるということがはっきり書かれております。さらに、この抑止が破れたときにどうするか、これによって侵略者が自分の利益を得るようなことにならないか、これに対するような方策を示す、これがまさに抑止の根源であります。その点で、海洋戦略は、侵略者が仮にも自分の行動によって利益を得るようなことのないような、そういうような方策をアメリカが示している、そういうふうに日本政府は受け取っております。
  300. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 総理は、日本戦争に巻き込まれることがないようにするのが政治家の仕事であるということをしばしば述べておられますが、そういうことであるならば、まさに日本戦争に巻き込まれるような戦略が出されているわけでありますから、こうしたアメリカの戦略は認められないということをはっきり言うべきではないかというように思いますが、いかがでありましょうか。
  301. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 先ほど来申し上げておりますように、やはり憲法のもとに、個別的自衛権の範囲内で、そして本土防衛を全うする、そういう考えで我々は防衛対処を考えておるのであります。それ以上のことは日本としては考えておりません。
  302. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 アメリカの海洋戦略は、同盟国の参戦ということを計画に入れております。この同盟国の参戦のシナリオは、三段階から成っております。第一段階は、ヨーロッパで米ソ戦争の危機が高まった段階の作戦準備であります。第二段階は、ヨーロッパで米ソ戦争が勃発した段階でありまして、さきに言いました同盟国の対潜部隊によるソ連潜水艦の撃滅が入っております。第三段階は、ソビエト領土への進攻でありまして、ここに同盟国軍の導入ということが入るわけであります。  日本アメリカの同盟国であるという前提に立ちまして、同盟国が参戦するとされていることについてどのように総理はお考えでありますか。
  303. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 先ほど来申し上げております日本防衛の基本方針及び日米安保条約、国連憲章、こういうものを守って日本は対処するということでありまして、一言で簡単に言えば、日本本土が侵略された場合に防衛の活動というものが出てくる、自衛隊を中心にする活動が出てくる、そういうふうに申し上げられると思うのであります。
  304. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 中曽根内閣の金丸副総理が所長を務めておられる日本戦略研究センターが、「軍事脅威とわが防衛作戦―有事シナリオとその対応」という報告書を出しております。  ここでは、「中東有事の際、米軍が進攻作戦を行う場合には、これに最大の支持を行うと共に、我が兵力をもこの進攻作戦に参加させる必要が生じてくる。状況により、独自で、北方四島やサハリン等に対する反攻や発進基地に対する追尾攻撃を積極的に行う」という想定をしております。この報告書は、竹田五郎元統幕議長、大賀元海幕長、生田目元空幕長、永野元陸幕長、こうした元自衛隊の最高幹部であり、しかも日米ガイドラインに基づく日米共同作戦計画づくりに参画してきた人たちによってつくられているわけで、これはただの軍事評論家あるいは民間人、そうした人たちのものとはまた違ったものであると見なければならないと思うわけであります。  このことに関しまして我が党が本会議質問いたしましたときに、総理は、「日本防衛のために自衛隊はあるという本義に徹してやっておる」、こう答弁されました。この答弁は、自衛隊は千島、サハリン攻撃作戦に参加する、あるいは千島、サハリン攻撃を行うということはないということでありますか、お伺いいたします。
  305. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 日本防衛に関する日本行動は先ほど申し上げたとおりで、民間人がどういう意見を言っているか知りませんが、政府は全く関知しておりません。
  306. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 本土防衛に徹するという答弁でございますが、それは、私がいろいろ聞きました海洋戦略あるいは今のセンターで出しております報告書で言っておりますような千島、サハリン攻撃、こういうことはない、政府の見解はそういうことでございますか。
  307. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 先ほど来申し上げておりますように、本土防衛に徹して我々は自衛隊の運用を考え、国防の方針を持っておると申し上げておるとおりであります。
  308. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 この点につきましては、十月二十七日から北海道、それから太平洋海域を主な舞台として行われました日米統合実動演習で、在日米陸軍司令官のダイク中将が新聞記者のインタビューに答えまして、日本有事という事態が、日本だけの有事より世界のどこかの米ソの紛争が波及して発生する可能性が強いと述べております。  こういう事態のもとでも、日本防衛のために自衛隊はあるという本義に徹して、千島上陸作戦、こういうことは絶対にあり得ないということが明言できるものでありますか。
  309. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 先ほど来申し上げたとおりであります。
  310. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 それでは、ちょっと別なことですが、これは防衛庁の方にまずお伺いしますが、さきに航空自衛隊のパイロットがT33練習機十機を訓練を名目に私用に使ったということで、これが大問題になりまして、この委員会においても論議されました。  この件につきまして報道がなされておりまして、空幕長、各航空団司令などの幹部、それから実際に私用の飛行をしたパイロットを含めて処分する方針を固めたということが報道されておりますが、これは事実であるかどうかお伺いします。
  311. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 そういう前提で調査を今やっておるところでございます。
  312. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 自衛隊最高指揮官として総理は、この私的な練習機の使用、そしてそれに対する対処、このことについてはどのようなお考えをお持ちでいらっしゃいますか。
  313. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 自衛隊の監督は栗原長官に任してあります。
  314. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 では、任してあるということですが、最後に、先日テレビ報道を見ておりましたら、元自衛隊パイロットの話といたしまして、この件以外にも私用にパイロットが使っているという話が出ておりました。今回の件以外にも調査をしておられるかどうか、最後にお伺いしたいと思います。
  315. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 現在特にございません。
  316. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 終わります。
  317. 石川要三

    石川委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  318. 石川要三

    石川委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。北口博君。
  319. 北口博

    ○北口委員 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となっております防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に対して賛成の討論を行うものであります。  国の独立を維持し、平和と安全を守ることが、国家として最も重要な責務であることは、今さら申し上げるまでもございません。  また、今日、国際社会における我が国の地位は著しく高まり、世界的視野に立って国際社会の平和と安全の強化に貢献することが我が国に強く期待されておりますが、そのためにも、我が国がみずからの安全保障を確かなものにすることが必要であります。  もとより、世界の平和と安全は人類の最大の課題であります。  しかしながら、現下の国際情勢は、ソ連の一貫した軍事力の増強、頻発する国際テロ事件など、依然として厳しく不安定な状況が続いているのであります。  我が国の周辺におきましても、極東ソ連軍の顕著な増強とこれに伴う行動の活発化によって、我が国に対する潜在的な脅威が増大し、また、朝鮮半島における緊張も依然続いております。  このような状況のもと、我が国としては、今後とも日米安全保障体制を堅持するとともに、有効で効率的な防衛力の整備に努めることが肝要であります。  今回の改正法案は、海空自衛隊及び統幕の自衛官並びに予備自衛官を必要最小限度増員するとともに、武器を使用して防護し得る対象に自衛隊の通信設備、船舶を追加すること、さらに航空機による国賓等の輸送権限を付与すること等を内容とするものであり、いずれも当然の措置であると考えるものであります。  もとより、我が国の平和と安全はひとり自衛隊のみで全うし得るものではありません。政府は、今後とも、防衛問題に対する国民の理解と支持のもとに、さらに有効で効率的な防衛力の整備に努め、アジアひいては世界の平和と安定に大きく貢献されることを要望し、私の賛成討論といたします。(拍手)
  320. 石川要三

    石川委員長 上原康助君。
  321. 上原康助

    ○上原委員 私は、ただいま議題となりました防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案について、日本社会党・護憲共同を代表し、反対の討論を行います。  今回のいわゆる防衛二法の改正は、財政危機の中で自衛官の定数をふやし、防衛力の増強を図ろうとしており、さらには予備自衛官制度を三自衛隊に広げ、数の上でも次第に増強しようとしているばかりか、近い将来、民間人からの起用を示唆していることは民間防衛体制を企図したものであり、容認できるものではありません。また、自衛隊法第九十五条に基づく武器を使用して防護することができる対象の増大措置は、文字どおり有事法制の先取りであり、自衛隊の武器防護を名目にした自衛官の武器自由使用に道を開こうとするものにほかならない。この措置はシビリアンコントロールの面からも重大な問題と言わなければなりません。同様に、自衛隊に対する国賓等の輸送任務の付与は、自衛隊の海外派兵の実現を目指す突破口にされる危険性があり、到底認めるわけにはまいりません。  また、最近相次いでいる自衛隊の不詳事件、事故等も看過できるものではないのであります。  したがって、今政府がやるべきことは、自衛隊の規模等の拡大、増強ではなしに、徹底した防衛行革による防衛費縮減の方途を国民の前に明らかにすることこそ優先さるべきであります。これが本二法案に反対する第一の理由であります。  次に指摘しておかねばならないことは、中曽根内閣発足以来今日までの四年間、日本の軍事化がさらにエスカレートしてきたことであります。  平和憲法の理念に反する政府・自民党の外交防衛政策はことごとく米国の対ソ戦略に組み込まれ、我が国を核戦争の脅威にさらそうとするものであり、防衛費の突出は財政再建に逆行し、国民生活に犠牲と負担を押しつける結果を招いております。このことは、与野党対決法案となっているお年寄りとサラリーマンに著しい高負担をもたらそうとする老人保健法案の改悪一つを見ても明白であります。  そして、このような状況を反映して、最近、防衛費の対GNP比一%枠には合理的な根拠がないとして撤廃しようとする論調が見受けられますが、我が党はこのような動きを黙視することはできません。一%が合理的でないとするならば、一%程度も一・五%も同様に合理的とは言えないではありませんか。軍事大国にならないための有効な歯どめ措置としての役割を果たしてきたところに、一%枠の重要な意義があると言えます。  しかるに政府は、昨年九月、実質的には一%枠を突破する新中期防衛力整備計画を作成いたしました。これは「防衛計画の大綱」の実質的な見直しにつながるものと言えましょう。その証拠に、大綱と別表は不離一体のものであるにもかかわらず、大綱の基調を見直すことなく別表改定は可能であるとして、政府みずから鳴り物入りで決定した基盤的防衛力構想をなし崩しにして、所要防衛力整備への逆戻りを画策しているからであります。  このような政府の姿勢は、防衛政策の一貫性を欠いているばかりか、アジアの緊張緩和を阻害し、我が国の近隣諸国に対し、警戒と危惧を抱かしめることになります。同時に、米国の対ソ戦略の一端を担い、三海峡封鎖、北方前方防衛及び洋上防空など、戦略、作戦を遂行する危険きわまりないものであり、専守防衛を本旨とすべき我が国防衛力整備の限界をはるかに逸脱した憲法無視の自衛隊増強路線と断ぜざるを得ません。  加えて、自衛隊増強にとどまらず、日米防衛協力の一層の進展に伴い、在日米軍を初め米極東戦力はますます強化される傾向にあります。  具体的には、トマホーク積載艦のたび重なる寄港やFl6の三沢基地配備、激化する日米合同演習、さらには三宅島の米軍機離発着訓練場計画、逗子の米軍家族住宅計画及び沖縄における軍用地二十年強制使用など、日米安保体制は軍事同盟の性格を一層あらわにしつつあります。  そればかりか、今や日米軍事協力は宇宙規模にまで展開しようといたしております。SDIすなわち戦略防衛構想への研究参加がこのことを如実に示しております。そもそもSDI計画は、米国内においてさえ多数の科学者を中心に根強い反対意見があるにもかかわらず、非核で防御兵器であるとの米国の説明をうのみにしてSDIへの研究参加を決めたことは極めて重大であります。SDIに使用される可能性の高いエックス線レーザーは核爆発を利用したものであり、現在行われている核実験の大部分がSDIの研究用と言われていることからしても、SDIを非核と称することは、黒を白と言うがごとく、全くの詭弁と言うほかありません。  以上指摘してきたとおり、円高不況、行財政改革の厳しい環境下で国民生活は大きく圧迫され、さらに重い負担を強いられようとするときに、防衛関係だけ特別扱いしようとすることは納得しがたいところであります。しかも、日米軍事同盟のもと、自衛隊が米軍の補完的役割を担いつつ、みずからの規模と能力においても際限なく増強しようといたしております。このような軍拡路線を容認することはできません。その具体的措置を盛り込んだ本二法案に重ねて強く反対することを表明して、私の反対討論を終わります。  以上です。(拍手)
  322. 石川要三

    石川委員長 斉藤節君。
  323. 斉藤節

    斉藤(節)委員 私は、公明党・国民会議を代表し、ただいま議題となっております防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に反対の討論を行うものであります。  我が党は、現憲法下において、日本の平和的存立を守るための自衛権は認められているとの立場をとっております。そして、その具体的裏づけとしての能力として、領土、領海、領空の領域保全に任務を厳しく限定した領域保全能力の保持を主張しているところであります。  このような我が党の主張を踏まえ、現在の自衛隊を見ますと、我が党の主張しております領域保全能力と共通する要素もありますが、同時に領域保全能力の観点から見てふさわしくない要素も目につきます。  具体的にふさわしくない要素を指摘するならば、一千海里シーレーン防衛とその洋上防空体制の強化と防衛予算の突出という点であります。  一千海里シーレーン防衛とその洋上防空体制の強化については、何の脅威から何をいかなる手段で守るのか、またそのことが日本防衛とどのようなかかわりがあるのか等、基本的な考え方が一向に明確にされないまま進められている状況であります。特に、従来から政府が主張してきた専守防衛という枠組みからも逸脱するのではないかという疑問は解消されていないのであります。  その結果、国民はひとしく、自衛隊が日本を守るためというよりも、極東における米軍の補完的役割を果たすのではないかと危惧しているのであります。すなわち、極東における米ソ両国の核のせめぎ合いの中で、我が国が積極的に米国の極東戦略体制に加担しようとする危険な構想が、一千海里シーレーン防衛の強化とその洋上防空体制の強化であります。  しかも、その実現に当たっては膨大な装備と費用が要求されるところであります。政府は既にその点を見越して「防衛計画の大綱」の別表の見直しを公言し、昨年九月の中期防衛力整備計画では、防衛費のGNP比一%枠突破の計画を決定したのであります。  「防衛計画の大綱」の基本的枠組みのもとに決定したという中期防衛力整備計画は、実は大綱を逸脱し、日本を新たな軍拡路線に向かわせる危険が極めて強いものと言わざるを得ないのであります。今回提出された防衛二法案は、中期防衛力整備計画の具体化されたものであります。  我が党は、一千海里シーレーン防衛の強化とその洋上防空体制の強化に対しては強く反対するとともに、防衛費のGNP比一%枠は厳守すべきであることを主張してきたところであります。このような立場から、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に反対するものであります。  以上です。(拍手)
  324. 石川要三

    石川委員長 和田一仁君。
  325. 和田一仁

    ○和田委員 私は、民社党・民主連合を代表して、ただいま議題となりました防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に対し、一括して賛成の討論を行うものであります。  申すまでもなく、安全保障政策は国政の大本であり、防衛政策はそのかなめともいうべき重要性を持っております。我が党は、かかる視点に立って、防衛二法についても従来からそれが必要な改正である場合には賛成してまいりました。その意味で、今回の改正の主要項目、すなわち海空自衛隊の定員増や予備自衛官の増員、また武器等の防護のための武器使用の対象拡大、さらに政府専用機による国賓等の輸送などは、いずれも今後の自衛隊の効果的な運用にとって必要不可欠な改正であると理解するものであります。  しかし、この際、私は今回の改正に関連して以下の諸点を政府に対し要望いたすものであります。  その第一は、いわゆる有事法制の速やかな整備であります。自衛隊法を初めとして、有事における自衛隊の行動に係る法制上の欠陥をこれ以上放置し続けることは許されません。それは結果的に、有事における自衛隊の超法規的な行動を認め、シビリアンコントロールを空洞化するものであります。政府はみずからの責任を十分自覚し、その速やかな立法化に努めるべきであります。  第二は、陸上自衛隊の充足率の向上と、陸上を中心とした予備自衛官の拡充であります。充足率の向上には、予算面を初めとしてさまざまな制約があることは十分承知いたしております。しかし、日本が有事の際、アメリカの支援を最も受けにくいのが陸上戦闘であることは明白であります。したがって、海空重視も結構でありますが、政府は陸上自衛隊の充足率の向上や、陸を中心とした予備自衛官の充実にもさらに力を注ぐべきであります。  第三は、緊急時における在外邦人の救出を自衛隊の任務に加える問題を真剣に検討すべきであるということであります。我が国企業の海外進出や邦人の海外旅行は増加の一途をたどっておりますが、他方、世界各国における地域紛争は一向に減少しないのが実情であります。かかる現状を考慮すれば、緊急時における在外邦人の救出を自衛隊の任務に加える問題は真剣に検討すべき課題であると考えます。  以上申し述べました諸点について政府が責任を持って速やかに取り組まれんことを強く要望し、私の賛成討論を終わります。(拍手)
  326. 石川要三

  327. 児玉健次

    児玉委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、防衛二法の一部を改正する法律案に反対する討論を行います。  今回の改正案は、アメリカのアジア・太平洋戦略に基づく日米共同作戦体制強化、そのもとで米軍の補完部隊としての自衛隊の増強を一層進めるものであり、我が党は断じてこれを容認することはできません。今日、自衛隊は世界でも有数の強大な軍隊となっています。  アメリカのレーガン政権は、ことし一月、海洋戦略を発表し、ヨーロッパ有事の際、アメリカは直ちにアジアにおいても第二戦線を展開し、千島、サハリンへの上陸作戦さえ強行するということを明らかにいたしました。重大なことは、アメリカがこの戦略の中で同盟国の参戦を予定し、特に日本の役割を重視していることです。このことは、一九八七年度の米国防報告が、ソ連の極東艦隊の出口をふさぐ日本の戦略的位置を指摘しつつ、日本は東アジアにとどまらず、地球的規模の抑止に大きく寄与すると述べていることを見ても明らかです。  中曽根内閣は、アメリカのアジア・太平洋戦略に深くかかわり、アメリカの軍事要求に積極的に応じる姿勢を強めています。Fl5、P3Cの大量導入、OTHレーダーやエイジス艦の導入をも盛り込んだ中期防衛力整備計画の策定、在日米軍駐留経費の負担拡大、三宅島NLP基地建設の推進、そして戦艦ニュージャージー寄港承認、SDI参加などは、そのことを端的に示すものであります。  一九七八年十一月に決定された日米防衛協力の指針によって、自衛隊がアメリカの起こす戦争に参戦するという日米共同作戦体制は飛躍的に強化され、極めて危険な段階に達しています。八四年十二月には日米の制服レベルの間で日米共同作戦計画が調印され、本年一月の安保事務レベル協議においては一千海里シーレーン防衛共同作戦計画の早期策定について合意がなされています。  こういった中で、十月二十七日から北海道、太平洋海域を主な舞台として行われた日米三軍の総合演習は、対地攻撃を含め実戦さながらに繰り広げられ、これには在韓米軍部隊も参加し、米日韓軍事一体化の体制づくりも進められるなど、自衛隊の対米従属、侵略的性格がますます明らかになっています。  今回の改正案に盛り込まれた自衛官の増員は、護衛艦、Fl5などの新たな配備に伴うものや中央指揮所の二十四時間運用態勢を確立するためのものであります。さらに予備自衛官の増員は、防衛庁が将来、自衛官OBだけでなく民間人を募集して、物資輸送などに従事させるにとどまらず、即応戦力として直ちに戦闘に投入するという危険な構想であります。  また改正案は、自衛官が武器を使用して防護する範囲を、全国各地に散在する通信施設や船舶にまで拡大しようとしています。本委員会の論議で明らかになったように、松前を初め全国数ヵ所にある対潜ソナーケーブルから自衛隊員個々が携帯する無線機にまで武器防護の範囲が及ぶことが明らかにされました。国民が自衛隊の通信施設と知らずに接近し、立ち入れば、国民に銃口が向けられるという事態も十分生じ得ます。まさにこれは自衛隊の国民に対する弾圧体制を一段と強化するものにほかなりません。  また、憲法違反の自衛隊が国賓や総理大臣を海外にも輸送できるとした本改正案は、自衛隊の国際緊急援助隊への参加、ひいては海外派兵に道を開くことを意図したものであります。  以上のように、今回の防衛二法改正案は、日米軍事同盟のもとで、日米共同作戦体制の強化、自衛隊の増強を進めるものであり、絶対に許すことはできません。この際、歯どめのない軍備拡大ときっぱりと手を切り、日本戦争に巻き込む日米軍事同盟を廃棄し、非同盟中立の道を歩むことの重要性を重ねて強調し、防衛二法の一部を改正する法律案への反対討論を終わります。(拍手)
  328. 石川要三

    石川委員長 これにて討論は終局いたしました。     ─────────────
  329. 石川要三

    石川委員長 これより採決に入ります。  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  330. 石川要三

    石川委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  331. 石川要三

    石川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  332. 石川要三

    石川委員長 次回は、来る二十五日火曜日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後十一時十二分散会