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1986-12-02 第107回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十二月二日(火曜日)     午前九時三十六分開議  出席委員    委員長 竹内 黎一君    理事 愛野興一郎君 理事 麻生 太郎君    理事 久間 章生君 理事 古賀  誠君    理事 野田  毅君 理事 中西 績介君    理事 鍛冶  清君 理事 小渕 正義君       金子原二郎君    北村 直人君       自見庄三郎君    鳩山由紀夫君       三原 朝彦君    岡田 利春君       中沢 健次君    細谷 治嘉君       藤原 房雄君    児玉 健次君  出席国務大臣         通商産業大臣  田村  元君  出席政府委員         資源エネルギー         庁石炭部長   高橋 達直君  委員外出席者         労働省職業安定         局高齢者対策部         長       新村浩一郎君         参  考  人         (日本石炭協会         会長)     有吉 新吾君         参  考  人         (石炭労働組合         協議会会長)  野呂  潔君         参  考  人         (北海道知事) 横路 孝弘君         参  考  人         (大牟田市長)         (全国鉱業市町          村連合会会長) 黒田 穰一君         参  考  人         (石炭鉱業審議         会政策部会長) 向坂 正男君         商工委員会調査         室長      倉田 雅広君     ───────────── 委員の異動 十二月二日  辞任         補欠選任   上草 義輝君     北村 直人君   松野 頼三君     鳩山由紀夫君 同日  辞任         補欠選任   北村 直人君     上草 義輝君   鳩山由紀夫君     松野 頼三君     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  石炭対策に関する件(第八次石炭対策に関する問題)      ────◇─────
  2. 竹内黎一

    竹内委員長 これより会議を開きます。  石炭対策に関する件、特に第八次石炭対策に関する問題について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本問題調査のため、本日、参考人として、石炭鉱業審議会政策部会長向坂正男君、日本石炭協会会長有吉新吾君、石炭労働組合協議会会長野呂潔君、北海道知事横路孝弘君及び大牟田市長全国鉱業市町村連合会会長黒田穰一君、以上五名の方々の出席を求め、御意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 竹内黎一

    竹内委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────
  4. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、去る十一月二十八日の石炭鉱業審議会答申に関し、政府から説明を聴取いたします。田村通商産業大臣
  5. 田村元

    田村国務大臣 本日の御審議に先立ちまして、石炭鉱業審議会の第八次答申が取りまとめられましたので、一言あいさつ申し上げたいと思います。  今後の石炭政策あり方につきましては、昨年九月三日の諮問以来、石炭鉱業審議会におかれまして、一年余りにわたり広範な角度から慎重な御審議を尽くしてこられ、先月の二十八日にその答申を受け取ったところでございます。  御承知のとおり、エネルギー需給緩和、大幅な内外炭価格差需要業界動向等、近時の石炭鉱業を取り巻く諸情勢には非常に厳しいものがあり、本答申はかかる諸情勢を十分に踏まえたものとなっております。  第八次答申につきましては、後ほど事務当局から詳細な説明をいたしますが、その内容は、今後国内炭生産規模を段階的に縮小して、六十六年度にはおおむね一千万トンの供給規模とし、石炭鉱業労使双方最大限自己努力前提として、政府の適切な支援需要業界のぎりぎりの協力により、今後の石炭鉱業の歩むべき道を見出そうとするものであります。  当省といたしましても、今後は本答申を踏まえ、第八次政策の遂行に当たって、関係者の御努力が報われるようできる限りの支援を行いたいと考えております。特に、需給ギャップ調整するための過剰在庫対策閉山対策等に努めるとともに、地域経済雇用に及ぼす影響緩和するため、関係省庁等連携をとりつつ、雇用対策地域対策には遺漏なきを期する所存であります。  委員各位におかれましても、答申趣旨を御理解いただき、その実現について御協力くださいますよう、お願い申し上げる次第であります。  以上をもちまして、簡単ではございますが、私のごあいさつといたします。
  6. 竹内黎一

  7. 高橋達直

    高橋(達)政府委員 ただいま大臣からごあいさつのございました石炭鉱業審議会の第八次答申要旨等につきまして、補足して御説明申し上げます。  まず、同審議会審議経過について申し上げます。  昨年九月三日、通商産業大臣から石炭鉱業審議会に対しまして、「今後の石炭政策の在り方について」との諮問がなされまして、これを受けまして同審議会におきましては、いわゆる第八次石炭政策あり方につきまして、一年余りにわたりまして、審議を行ってまいりました。この間、生産需要業界労働組合及び関係地方公共団体からの意見聴取を含め、政策部会に設けられました検討小委員会を二十五回、また、政策部会を三回開催し、我が国エネルギー政策上の観点から国内炭位置づけ検討を行うと同時に、我が国が直面している課題であります産業構造調整一環との観点も踏まえつつ、審議を重ねてきたわけでございます。  このような審議を経まして、新しい石炭政策あり方につきまして、去る十一月二十八日の総会におきまして結論を得るに至りまして、ここに通産大臣に対し答申がなされたところでございます。  次に、その要旨について申し上げます。  まず、基本的な考え方でありますが、基本的な考え方といたしましては、国内炭一定の役割を評価した上で、生産規模段階的縮小はやむを得ないという考え方をとっております。しかし、集中閉山の回避が基本でございまして、地域経済雇用への影響緩和して、生産体制集約化を円滑に行うことが必要としております。  そのためには、親会社関連グループ企業を含めた石炭企業側での自己努力がまず求められておりまして、これを前提にいたしまして、需要業界のぎりぎりの協力政府の適切な支援が必要であるというふうに指摘をしております。  次に、国内炭生産あり方でございますが、第八次石炭政策におきましては、生産前提として需要確保するという従来の考え方維持することは困難であり、今後は、需要動向をも十分に勘案した生産体制にするべきであるという見解を出しております。  そうした場合、需要業界最大限協力を得るとしても、原料炭の引き取りにつきましては、今後漸減して最終的にはゼロとせざるを得ず、一般産業用一般炭につきましても、原則として同様の傾向をたどるものとしております。  したがいまして、第八次石炭政策におきましては、電力用一般炭中心需要確保することを期待いたしまして、最終的にはおおむね一千万トンの供給規模とすることが適当としております。  なお、政策期間につきましては、生産体制の円滑な集約化のため、五年程度とすることが適当であるというふうにしております。  次に、各般の対策でございますが、まず稼行炭鉱対策につきましては、石炭企業自己努力前提として、政府現行支援基本とすべきであるという見解を出しております。  また、保安確保生産の大前提でございまして、政府も引き続き適切な措置を講ずることが必要とされております。  次に、いわゆるIQ制度でありますが、第八次石炭政策においては、国内炭の引き取り協力を支えるための措置は必要であり、このため、生産規模段階的縮小を進める過程においては、当面、輸入割り当て制度の適切な運用により対処することもやむを得ないという見解を出しております。  また、需給調整につきましては、石炭業界は、国内炭需要見通しを十分勘案しつつ生産を行うことが基本ではあるが、一方、政府におきましても、石炭業界自己努力で解消し得ない需給ギャップ調整を図るため、過剰在庫対策を講ずるべきであり、その実効確保するための機関設置について検討を行うべきであるという見解を出しております。  また、基準炭価制度につきましては、石炭企業経営基盤維持する上で不可欠であり、その継続が必要であるとした上で、今後、生産業界での一層の合理化を期待し、炭価原則として据え置くことが適当であるという見解を出しております。  次に、閉山対策離職者対策地域対策でありますが、閉山対策につきましては、石炭企業最大限自己努力を求めており、また、これを前提に、政府現行閉山制度について所要の見直しを行いつつ、その活用を図ることが適当であるという見解を出されております。  離職者対策につきましては、現行離職者対策を充実し、関係地方公共団体連携をとりつつ再就職あっせん対策最善努力を払うことが必要としております。  地域対策につきましては、まず各地域は、地域振興に主体的に取り組むことが重要であるとした上で、石炭企業等地域振興への積極的な貢献が必要であるとしており、また、地元経済関係者を初め民間関係者の一体となった取り組み、協力を期待しております。  また、関係道県は、地域対策に積極的に取り組むべきであり、政府においては、関係各省庁挙げて、閉山に伴う地域への影響緩和に万全を期すべきであるという指摘をしております。  なお、石炭利用拡大海外炭安定的確保につきましても、その施策の推進につき指摘をしております。  最後に、鉱害対策産炭地域振興対策につきまして、従来からの対策趣旨を尊重し、引き続き実情に即した所要対策を講じていくことが必要であるという指摘をしております。  以上でございます。
  8. 竹内黎一

    竹内委員長 これより参考人から意見を聴取いたします。  この際、参考人各位一言あいさつを申し上げます。  本日は御多用中のどころ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人におかれましては、本問題につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  それでは、議事の順序について申し上げます。  まず有吉参考人野呂参考人横路参考人及び黒田参考人から御意見をそれぞれ十分程度お述べいただきました後、委員質疑に対してお答えいただきたいと存じます。  なお、向坂参考人におかれましては、御意見委員質疑によりお述べ願いたいと存じます。  それでは、まず有吉参考人にお願いいたします。
  9. 有吉新吾

    有吉参考人 日本石炭協会会長有吉でございます。  本日は、当委員会におきまして石炭業界立場から発言する機会を与えていただきまして、厚くお礼を申し上げます。  さて、御高承のとおり、十一月二十八日、石炭鉱業審議会より、通商産業大臣に対し、第八次石炭政策に関する答申がなされました。  この答申によりますと、政策期間最終年度、すなわち昭和六十六年度の需要はおおむね一千万トンということでございまして、昨年度の実績約千八百万トンから、この間に約八百万トン減らさなければならぬこととなります。  したがいまして、先日、三菱高島閉山が決定いたしましたが、あとの大手十炭鉱のうち五ないし六の炭鉱は、昭和六十五年度までに毎年一山ないし二山と閉山しなければならないという極めて難しい事態を迎えることとなります。  また、残るべき炭鉱につきましても規模縮小が必要になると存じますし、炭価昭和六十一年度に原料炭トン当たり千円、一般炭トン当たり五百円の引き下げをいたしまして、今後も原則としてこの炭価水準を据え置くことになっておりますので、極めて苦しい経営を余儀なくされると思うのであります。  しかしながら、本答申は、石炭鉱業審議会におきまして、昨年来長期にわたり、諸般の情勢を踏まえ、さまざまな角度から御検討いただき、特に最終取りまとめには大変な御心労を煩わしました結論でございますし、厳しい経営環境にあると思われますユーザー各位にもいろいろとお考えいただいた上での結論でございますので、私どもといたしましては、この答申に沿って最善努力を傾注していくほかないと覚悟をいたしている次第でございます。  つきましては、ここで本委員会先生方にお願いしたいことを申し述べさせていただきたいと存じます。  それは、石炭政策基本法でございます石炭鉱業合理化臨時措置法ほかの現行法律は来年三月をもって期限が参りますので、まずその期限を延長していただきますことが第一でございまして、それとともに、さらに、本答申の線に沿った内容の拡充について御高配賜りますようお願い申し上げます。  具体的に申し上げますと、まず第一に過剰在庫対策でございますが、答申にも、石炭業界努力によっても「なお解消し得ない生産体制集約化過程における需給ギャップ調整するための過剰在庫対策について所要措置を講ずるべきであり、その実効確保するための機関設置について検討を行うべきである。」と示されております。私どももぜひこのような措置具体化されますことを切に念願いたしております。具体的に細かい点はいろいろと今後詰めて検討しなければなりませんが、このような機関設置するに当たりましては国からも出資をしていただき、実施に当たっての資金の調達及び金利等につきまして特段の措置を講じていただきたいと存じます。  このような措置によりまして今後生産体制集約化してまいることになりますが、ここで私どもが心配いたしておりますのは生産規模についての歯どめの問題であります。  答申におきましては、八次策以降について一定生産規模維持と一層の規模縮小という両論併記の形となり、問題は先送りとなっております。しかしながら、将来の国内炭についての存在意義一定生産規模維持が明確になりませんと働く者にとりましては先行き全く不安でございまして、保安上の問題も生じかねませんし、先々の人員の新陳代謝も思うようにならず、特に技術面等中心となる学卒者確保も困難になると存じます。したがいまして、将来の生産規模維持という点が明確になりますよう今後とも先生方のお力添えをお願い申し上げます。  次に、稼行炭鉱につきまして、その合理化には今後あらゆる努力はいたしますが、生産規模縮小貯炭費用の増加、あるいは複数の炭鉱を有する企業の一部閉山に伴う負担増等によりコストアップを余儀なくされることが予想されます。したがいまして、現在実施されている政府助成に加えて、保安確保のための現行助成の強化、現行融資制度条件緩和、さらにできますれば生産規模縮小に伴う減産に対する助成制度等につきまして、お考えをいただけないものかと存ずる次第であります。  次に、この政策期間において多くの閉山をしなければなりませんが、その影響は極めて深刻でございまして、私ども石炭企業親会社ともどもできる限りのことをしなければならぬことはもちろんでありますが、何分にも微力でございますので、答申にも閉山対策離職者対策及び地域対策についての政府支援についてきめ細かな御配慮が示されておりますが、その具体化につきましてぜひとも御高配を賜りますようお願い申し上げます。  最後に、政府行財政改革の進められております中で難しい問題もあるかと存じますが、以上のような諸対策を講じていただきますためにはぜひとも所要の予算を確保していただきますよう、切にお願い申し上げます。  以上、私どもはこの第八次答申に沿って最善努力を傾注する所存でございますので、今後とも諸先生初め関係当局の一層の御援助、御指導を賜りますようお願い申し上げまして、私の陳述を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  10. 竹内黎一

    竹内委員長 ありがとうございました。  次に、野呂参考人にお願いいたします。
  11. 野呂潔

    野呂参考人 石炭労協野呂であります。  日ごろ石炭産業のために御尽力をいただいております先生方の前で、炭鉱労働者を代表いたしまして意見を述べる機会を与えてくださいましたことを、厚く感謝申し上げる次第であります。  既に御承知のように、十一月二十八日の石炭鉱業審議会におきまして第八次石炭政策に関する答申が決定されました。石炭問題をめぐる厳しい状況下立案作業に当たられました向坂先生初め関係者の御労苦に対し深く敬意を表しますが、私ども石炭産業労働組合としては、この答申一言で言えばまさに人間不在弱者切り捨て政策ではなかろうかと考える次第であります。したがいまして、初めに答申をめぐる問題点について私ども考え方を申し述べたいと思います。  その第一は、答申ではエネルギーセキュリティー確保という視点から国内炭位置づけていくという立場が欠落していることであります。  本来、石炭政策は国の総合的なエネルギー政策一環をなすものであり、その策定に当たっては、我が国のような資源小国においては当然エネルギーセキュリティー確保という観点からも検討を深め、長期エネルギー確保体制をより確実なものにしていくことが重要であると考えます。しかし、答申で掲げたエネルギーセキュリティー確保されているという論拠のこれらの点の多くは、仮に国際エネルギー事情に何らかの急変があった場合、たちまち崩れ去るのではなかろうか、そのためにこそセキュリティーの問題が重要なのではないのか、私たちはそういう素朴な疑問を持つものであり、またそこに国内炭生産の道も見出していけるのではないかと考える次第であります。  その第二は、国内炭生産あり方として「需要動向をも十分勘案した生産体制」という考え方に立って、年間生産規模を一千万トンに縮小しようとしていることであります。  御承知のように、第八次策における国内炭生産規模をどの程度にするかは最も大きな争点になっていました。この中で鉄鋼業界は六月以降国内原料炭の引き取り価格を八千五百円に引き下げ、仮払いするという挙に出ただけではなくて、六十一年度の引き取り量についても当初予想された三百十五万トンから大幅に削減することを主張し、結局百七十万トンに落ち着いた次第であります。これは、ユーザー側国内炭引き取り問題への不当な対応姿勢を端的に示していると私たちは受けとめています。つまり、この一千万トン体制は「需要動向をも十分勘案した生産体制」などというものではなく、需要動向だけを重視した生産体制にほかならないと判断いたします。  確かにその背景には国内炭海外炭値差の問題があるわけでありますが、この問題は我が国だけではなく西ドイツ、イギリス、フランスなどヨーロッパ炭国でも直面している問題であります。これらの国々では、政策的な対応策をとることによって、内外炭値差負担ユーザーにだけ押しつけることなく、適正な解決の道を見出しており、国内炭海外炭が両立していることは御承知のとおりであります。つまり、ヨーロッパではエネルギーでもうけているところはないということだけは明らかであります。しかし、今次答申ではこのような視点すらなく、専ら国内炭生産大幅縮小により対処することをねらっているわけであり、まさに弱者切り捨て政策そのものであると言えます。  その第三は、今述べたとおり、一千万トンという国内炭生産位置づけ自体極めて問題でありますが、それだけではなく、答申ではこの一千万トン体制すらキープしていける有効な歯どめ策が用意されていないということであります。  ここで歯どめ策とは何かという問題であります。この点について私たちは、第一に需要確保されること、第二に適正な炭価が設定され、その中で生産費が最低限償われること、第三に保安生産体制確立を図る上で所要の投資が行われること、第四に石炭企業経営体制確立されること、そして第五に必要労働力確保されること、最低この五点が八次策の中で用意される必要があると考えます。しかし、答申ではこの点に関する政府助成について、せいぜい現行横滑りあるいは現行マイナスアルファとされているのが実態であります。  特に問題なのは基準炭価であります。答申では、八次策期間中は「六十一年度水準で据え置く」とされています。これは「需要業界負担を極力軽減すべきことを勘案」してとられた措置でありますが、少なくとも炭価はこれまで石炭生産を支える柱の一つになってきたもので、このような炭価くぎづけ状況の中で果たして存続できる炭鉱があるのか、極めて大きな疑問を持たざるを得ないわけであります。  以上は八次策下、つまり六十二年度以降の歯どめ策の問題でありますが、御承知のように六十一年度において国内原料炭の引き取り量が大幅に削減され、引き取り価格も引き下げられたわけですが、この結果、各炭鉱では引き取りのめどのないまま貯炭が累増し、このため経営は現在極めて厳しい状況にあります。したがって、例えば国による貯炭買い上げあるいは貯炭融資など、実効性ある対策確立推進していくことが急務となっていると考えます。八次策下の歯どめ策はもちろん重要でありますが、各炭鉱が八次策のスタートラインにつくためにも、七次策下緊急歯め策として、貯炭対策について本委員会でも十分御検討いただき、ぜひ有効な対策確立していただくようお願いいたします。  その第四は、多数の炭鉱閉山を予測しながら、これに伴う雇用対策地域対策等が必ずしも明記されていないということであります。  国の政策として炭鉱をつぶすことにより、多数の労働者を失業に追い込み、産炭地域を荒廃のどん底にたたき込む、それが第八次石炭政策推進に伴う避けがたい結末であるとすれば、職場を追われる労働者の再雇用はだれがやるべきなのか、産炭地域ゴーストタウン化を回避する対策はどこが主体的にやるべきなのか、多くを語るまでもなく、これは当然国が前面に出て解決すべき問題だろうと考えます。  答申では確かに雇用対策地域対策必要性についてるる述べています。しかし、私たちが知りたいのはそんなことではありません。自分の意思に反して山を追われる労働者に対して、おまえの再就職はこのようにして実現する、再就職までの期間、おまえの生活はこのように保障するということを、政府から具体的にわかりやすく示してもらうことです。これは地域対策についても全く同様です。いずれにせよ、私たちは、血の通った人間らしい雇用対策地域対策確立推進を切に期待するものであります。  その第五は、答申労働力確保とこのための労働条件改善という課題にほとんど目を向けていないということであります。  これまでの石炭政策答申は、何らかの形で労働条件改善について触れてきており、特に第六次及び第七次石炭政策では、他産業とのバランスを考慮した、地下産業にふさわしい労働条件確保政策課題として明確に示されてきました。今次答申では、この問題について最終段階で、労働組合側の強力な意見開陳もありまして、急遽若干の字句が追加されましたが、これは石炭企業に対して地下産業にふさわしい労働条件確保に努めることを求めただけで、あえて政策問題として取り上げる姿勢は見られません。石炭産業がたとえ規模縮小されても将来にわたって存続していくことが必要であるとすれば、これに伴って若年労働者技術者技能労働者を含む必要労働力を恒常的に確保していくことが必要であり、このためにも、労働条件改善政策的課題として取り上げていくことがその前提となると考える次第であります。どうせつぶす産業なら労働条件の面倒まで見切れないというのが答申の真意なのでしょうか。いずれにしても、ここに人間無視の姿が浮き彫りになっているのではないかと考える次第であります。  第八次答申をめぐる問題点については、以上申し上げましたとおりであります。  このような答申に基づく八次策が明年四月からスタートすることになりますが、政府政策助成についても強化されることが明確でありません。このままでは、政策展開の過程石炭産業と産炭地は深刻な状況に突き落とされることは必至であると判断されます。中でも、大量の炭鉱離職者の発生と閉山地域ゴーストタウン化は最も深刻な問題になると考えます。一千万トン体制縮小される過程で一万人以上の離職者が出るだろうという新聞報道も既に行われていますが、これは閉山が予想される炭鉱の従業員数を合計しただけの人数であり、実際に閉山が行われれば炭鉱関連の事業所、炭鉱地帯の商工業者からも多数の失業者が出ることになります。また、これは一千万トン体制が完全にキープされた場合の話であり、先ほど申し述べました歯どめ策いかんではこれが大きく崩れることになり、離職者はその分だけ増大することになります。  御承知のとおり、かつて閉山で離職いたしました四千八百五十人ほどの人々が現在緊急就労、開発就労等で働いています。これに要する事業費補助だけで年間百七十五億円ほどの額に達しているのが現状であります。これに新規の離職者が加わるわけであり、就労対策に伴う費用は年々相当な額となることが想定されます。このほか、閉山に伴う閉山交付金、さらに産炭地域振興対策費などが必要となり、これらを合算すると大変な額になると見られるわけであります。  以上、るる申し述べました実態は、石炭政策という名の炭鉱スクラップ政策がいかに非人間的なものであるか、それだけではなく、いかに巨額の金を長期にわたり必要とするかを端的に示したと思います。  今次第八次石炭政策は、当面する産業構造調整の試金石とされています。産業構造調整がたとえ国策であったとしても、その推進により、炭鉱で働く多数の労働者産炭地域で生活を営む多数の住民に生活の進路を百八十度転換しなければならないような多数の犠牲を押しつけることが果たして許されるのか。答申のどこを読んでも一言半句も説明すらありません。まさに人間不在答申と言わなければなりません。  以上、炭鉱労働者の率直な考えを述べました。  なお、補足いたしておきますが、十一月二十七日高島炭鉱閉山になりましたが、これも同様の取り扱いをするよう重ねて要請をいたします。  本委員会が私どもの危倶しております問題を解決するための諸対策確立し、政府に実行を確約されんことを要請いたしまして、炭鉱労働者を代表しての意見陳述を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  12. 竹内黎一

    竹内委員長 ありがとうございました。  次に、横路参考人にお願いいたします。
  13. 横路孝弘

    横路参考人 北海道知事横路でございます。  衆議院石炭対策特別委員会竹内委員長初め委員の諸先生方におかれましては、石炭鉱業の安定と産炭地域の振興に常日ごろから格別の御高配を賜っておりますことを心からお礼を申し上げたいと思います。また、本日は参考人として発言の機会を与えていただきましたことに対して、重ねてお礼を申し上げます。  さて、第八次石炭政策につきましては、去る五月十五日に開催されました当委員会参考人意見聴取の際にも申し上げたところでございますが、エネルギー政策としての基本的な観点、そしてまた、それに加えて、産炭地域の実情を考慮していただきまして、ぜひとも現存炭鉱の存続が可能となる政策としていただくよう、訴えてきたところでございますし、産炭地域の住民の方々も、政策によって炭鉱の存続が図られることを期待し、かたずをのんでその行方を見守っていたところでございます。  しかしながら、先日の石炭鉱業審議会答申は、石炭鉱業にとってはかつてない厳しい内容でございまして、御承知のとおり第八次石炭政策最終年度の六十六年度には、おおむね一千万トンの供給規模に半減することを基本とするものでございます。  もとより、経済の合理性は必要なものではございますけれども、それのみで律せられるならば、全国の産炭地域は壊滅的な打撃をこうむり、そこに生活の場を求めてきた人々にとってまことに悲惨な状況をもたらすものでございます。  今回の答申によりますれば、北海道の主要八炭鉱の中には、縮小閉山に追い込まれる炭鉱も出ると見られております。まさに、これら炭鉱に大きく依存している産炭地域の住民の方々を初め、私ども地域を預かる者にとりましても耐え得ない答申でございまして、まことに残念なものと受けとめざるを得ないのでございます。  産炭地域は、御承知のようにこれまで石炭産業と盛衰をともにしてまいりました。戦後傾斜生産体制の中で増産に励み、我が国経済復興に大きく貢献したところでございますが、昭和三十年代に入りまして、石油の大量輸入というエネルギー革命により、主役の座を追われたところでございます。  しかし、その後、二度のオイルショックを契機に、石炭の見直しが図られ、炭鉱に働く人々は、増産のかけ声のもとで必死に頑張ってこられたのでありますが、今また、第八次答申により大幅な生産縮小閉山を余儀なくされようとしております。この間、全国で、ピーク時に約八百五十の炭鉱が現在ではわずか二十八炭鉱、従業員も二十八万人から二万四千人と十分の一以下に激減をいたしまして、産炭地域は、苦しみの極に達しているところでございますが、このような現状のもとで、今回さらに炭鉱縮小閉山が現実のものになりますと、地元市町村では、多くの炭鉱離職者が滞留することは必至でございまして、これらの方々の再就職対策に加えて、下請中小商工業者の皆さんの受注の確保、電気や上水道の供給などの緊急対策、また、閉山地区の再開発などの中長期対策の実施に迫られるのでございます。  これらの問題に対しましては、もちろん、私どもとしても、地元市町と十分連携をとりながらできる限りの努力を払ってまいりたいと考えておりますが、今回の答申は、産業構造調整一環としての観点も含めて政策の転換が図られたのでございますので、これに伴う石炭鉱業の安定と産炭地域関連の諸対策につきましては、今後とも、政府の責任におきまして充実強化が図られるべきものと考えているところでございます。  以下、こうした観点に立ちまして意見を述べ、御要望を申し上げたいと思います。  まず、石炭鉱業の安定対策についてでございますが、炭鉱は、切り羽の準備、坑道の維持等の面から、需要の変動に即応し生産調整することが困難なものと承知しておりまして、今後、国内炭需要が減少する中で、貯炭が急増することは明らかとなっております。このため、貯炭の一時買い取りなどを行う石炭需給調整機構の設置を図っていただきますようお願いをするところでございます。  また、第八次政策の実施を待たずに、国内炭の引き取り減少は、今年度から実施されておりまして、既に、今年度当初に比べ、貯炭が倍増し、全国で三百万トンを超えている実態にございます。このため、特に大幅な削減となっている鉄鋼向けの原料炭を多く生産している炭鉱では、相当、資金繰りが逼迫しており、貯炭融資などの措置を講じなければ、資金倒産を招くのではないかと懸念されておりまして、早急に適切な措置を講じていただくよう、あわせてお願いをいたします。  石炭鉱業安定対策に係る二点目の要望は、生産合理化交付金制度の創設についてでございます。  答申では、第八次政策期間中、原則として炭価を据え置くこととされておりますが、各炭鉱では、既に今日まで労使の皆さんが相当の努力を重ねられてきておりまして、今後一層の自助努力前提としても、最小限のベースアップや資材費の上昇を吸収することは大変難しいことと存じます。  加えまして、生産規模縮小を余儀なくされる炭鉱にあっては、人件費の削減はある程度実現できるものの、固定的経費につきましては、石炭鉱業の持つ特性から削減することは困難でございまして、全体的なコストアップ要因につながるものと考えられます。これを救済する意味で、減産に伴う生産合理化交付金制度をぜひ創設していただきたいと存ずるところでございます。  これら事項につきましては、答申の中でも過剰在庫対策実効確保するための機関設置や「炭鉱規模縮小対策について所要措置を講ずるべきである。」との表現で挿入されておりますが、政策実施の段階で、ぜひとも具体の制度として発足させていただきたくお願いするところでございます。  次に、産炭地域関連の諸対策でございますが、まず雇用の場の確保についてでございます。  北海道は、構造的な不況業種といわれる鉄鋼造船などを多く抱え、さらに北洋漁業の大幅な減船や米の減反問題などから、有効求人倍率は全国の二分の一以下という厳しい雇用情勢にありますこと、従来の閉山と異なり、他の炭鉱での炭鉱離職者の受け入れが困難であるということ、産炭地域におきまして、立地条件の厳しさから、石炭鉱業にかわり得る産業の導入、育成を早急に図ることがなかなか難しいことなどから、今後、炭鉱離職者が発生した場合、地元志向や炭鉱志向が強いこともあわせて考慮しますと、地元での滞留が懸念されるわけでございます。  こうした方々が、生活保護に頼るのではなく、生活の糧を働く場で確保することが緊急の課題であると考えております。このため、例えば、不用となった炭鉱住宅やボタ山の撤去事業など地域環境整備につながる事業の実施によって、雇用機会の創設をぜひとも図っていただくようお願いをいたしたいと思います。  いずれにいたしましても、雇用問題は一番大事な大きな問題でございますので、政府におきまして雇用対策の万全をぜひ期していただきたい、心からお願いをする次第でございます。  次に、地域振興についてでございます。  北海道の内陸部に所存します産炭地域のほとんどは、山間僻地にあって、その立地条件は極めて劣悪な環境にありますことから、今日までもそれぞれの産炭地は大きな努力をしてきております。  例えば夕張市におきましても、企業誘致でございますとか観光開発でありますとかあるいは夕張メロンなどの特産品の開発など努力をしてきているところでございますが、しかし、まだまだ町の経済の中で石炭産業の持っているウエートは七割、八割というウエートを持っているわけでございます。しかも置かれている状況、こういう状況にございますので、通常の誘導策ではすぐ成果を上げるということはなかなか困難な状況にございます。  今後も炭鉱石炭生産集約化過程で、縮小閉山が予想されるところでございますけれども炭鉱が存続している間に、早急に地域の振興方向を見出して、先取りした振興対策を進めることがぜひとも必要であるというように考えております。  したがいまして、私ども努力いたしますけれども、可能な限り現存炭鉱の存続を図っていただく一方で、地域振興に対する支援措置の抜本的な強化、例えば新たな基金の創設などをぜひ図っていただきたいというように考えております。  そして石炭鉱業にかわる産業の導入を促進するため、現行の金融、税制上の優遇策の抜本的な見直しを図っていただき、企業誘致についてもまた特別な対策をぜひお願いをいたしたい、そのための政府のさまざまな機関の御協力をいただきたいというように思う次第でございます。  また、新たな地場産業や観光開発などの動きを積極的に支援するため、現在、政府が創設を検討している経済構造調整基金の活用をもぜひ図っていただきたいと考えております。  次に、市町村の財政援助対策でございます。  炭鉱の終閉山は、鉱産税と人口の急激な流出に伴う住民税などの減収や終閉山に伴う諸対策の実施など、市町村財政を強く圧迫することが予想されることから、これに対する特別な援助措置、例えば臨時交付金制度の大幅な増額などの措置を講じていただきたいと考えております。  また次に、地元の中小商工業者対策でございますが、炭鉱に頼りながら、炭鉱の安定や地域経済の振興に大きく寄与してきた地元の中小企業閉山により債権の回収が不能になったり、移転、転業に追い込まれるなど深刻な事態になることを考えますれば、単なる融資制度ではなくて何らかの補償策が必要であると考えております。この点などにつきましても、今後の対策の中でぜひ御検討いただきたいと思う次第でございます。  以上、種々お願いを申しましたけれども、私としては、何としても地域住民の生活を守っていかなければなりません。先ほども申し上げましたが、北洋漁業の大幅な減船、国鉄の分割・民営化、鉄鋼、造船の合理化、あるいは米の減反問題など抱えておりまして、まことに厳しい社会経済情勢のもとにありますことをぜひ御賢察いただきまして、今後とも政府の責任において諸施策が実現できますように、先生方の特段の御高配をお願いいたしまして陳述といたします。  ありがとうございました。
  14. 竹内黎一

    竹内委員長 ありがとうございました。  次に、黒田参考人にお願いいたします。
  15. 黒田穰一

    黒田参考人 全国の鉱業市町村、石炭関係の市町村百十三市町村長で組織しております全国鉱業市町村連合会会長の、大牟田市長黒田でございます。  今回の八次策の策定に当たりましては、石特の先生方には石炭の事情というものを御理解いただきました上で大変な御尽力をいただきましたことを改めて厚くお礼を申し上げたいと思います。  ただ、今回の八次策は、いずれにいたしましても、非常に石炭を取り巻く環境の厳しさの中で、私ども地域住民といたしましては、当初は全く予期もしなかったような大変な答申が出されたわけでございます。残っております十一炭鉱の各市町村は、本当に閉山縮小という、必ず今のまま無傷では通れない実態となったわけでございます。そして、かつて石炭対策がとられましてから、昭和四十年の中ごろまでにほぼ一応の閉山が終わりまして、今残っている炭鉱は、その後平穏に、将来安定して操業ができるという想定のもとに今日まで操業を続けてまいりました。ところが今回、産業構造調整というような関係から全体が縮小閉山ということに追い込まれるに至ったわけでございまして、私どもとしては非常に残念でたまらないわけでございます。  しかしながら、私ども、こういう取り巻く環境の厳しさと需要業界の問題等についても理解は示すべきものと思います。今回出されました八次策につきましては、そういう意味では、この政策の目的としております秩序ある生産集約化というような方向に向かいまして、私どもも全力でもって、特に地域混乱を起こさないための最善努力をして、八次策の目的を達したいというふうに思う次第でございます。  しかし、今回出されましたこの八次策の中身につきましては、いろんな問題課題を抱えていると思います。問題点につきましては、既に各参考人先生方が御指摘をなさっておりますとおりでございますが、中でも歯どめ策の論議、私ども、日本のエネルギー政策としての国内炭位置づけをいま一度振り返って考え直す必要があるのではないだろうかという点でございます。  まず何と申しましても世界の先端的な技術を温存し、蓄積してきました日本の採掘技術あるいは探鉱の技術あるいは地質学、こういったものが企業家と離れていく中では、地質学とかそういうものにつきましても恐らく学問としても存続しないことになるんではなかろうか。そうだといたしますと、日本もこの環太平洋地域からの石炭の輸入というのは今後も大いに待たなければならないであろうし、その場合に、特に後進性の環太平洋地域の技術指導というものについて、せっかく持っているこの技術を国際協力という意味からしても放てきしていいのだろうかという、原点論というものをやはりいま一度考え直していただく必要があるのではなかろうかということ。  それから、例えば有明海にもまだ有望な無限の資源が眠っているわけでございますけれども、民族資源がこれだけありながら今これを閉山するというようなことにでもなるとするならば、再び日の目を見ることはないということを考えますならば、こういった視点からでも、この国の長期にわたるところの安定した我々民族の資源をどうするのかという論議も考えられていいのではなかろうかというふうに思うわけでございます。要は、やはりそういった問題がはっきり位置づけをされることによりまして、私どもがいつも言っております歯どめ論というものの方向性というものがはっきりしてくるのではなかろうかというふうに思われます。  それから、時間もございませんので、今回の八次策が具体的な施策として、あるいは実際の運営として、あるいは政策立案というようなことがなされる場合に、こういった点が問題ではなかろうかという点を申し上げたいと思います。  まず最初に、私ども一番危惧しますのは、従来の政策閉山対策ということが非常に制度として確立してきたわけでございます。しかし、今回、残された十一炭鉱の中には閉山対策の中に閉山という形で終息するものもあると思いますけれども縮小という形で進んでいくものもあるだろうと思います。その際、縮小であろうと閉山であろうと、ともに産業構造調整という一つの政策の目的あるいは政策路線の上に立ってこの縮小も行われるわけでございます。したがいまして、単なる閉山対策ということではなくて、縮小も今回の終息政策の中の位置づけ閉山と同じように位置づけをしてもらう必要があるのではなかろうか。例えば三池炭鉱におきまして四百六十万トンを仮に四百万トンに落とす、六十万トンを落とすということは高島炭鉱が一つつぶれることになるわけでございまして、そのことは離職者対策あるいは地域対策というようなものにつきましても、同様の問題というのは地域あるいは労働者の方に発生するわけであります。縮小したところの労働者には黒手帳は交付されるのだろうかあるいは鉱産税がゼロになる閉山は臨時交付金が交付されるけれども縮小されるところにはこの交付金は交付されることになるだろうか、あるいは取引業者との関係に対しましても現在閉山交付金は交付されておりますけれども縮小による影響を受けた中小業者に対する交付金は支給されるのであろうか、こういった点についての縮小閉山政策の隔たりがあってはならないのではないかという意味で、今後はこの位置づけ閉山と同様に明確にしていただきたいということをお願いいたしたいと思う次第でございます。  次には、飛び飛びになりますけれども、従来の産炭地振興策というものは主に、まさにその柱は工場誘致にあったわけでございます。いわゆるインダストリーを誘致することによって石炭にかわる地域活性化を図っていくということに主眼が置かれ、土地の造成あるいは企業誘致の誘導策がとられたわけでございます。しかし、今後私どもがこういう中で企業誘致をしていきます場合に、いわゆる工業の分野でどんな立派な企業を持ち込みましても雇用吸収力は非常に低いということでございます。投資は大きくても雇用吸収力は非常に低い。したがって今後は、日本の経済構造がこうして変わっていく中で、単に工業の分野だけではなくてやはりもっと幅広い地域活性化策というものを地域としてもとらなくてはならない時期に来ているということを考えてみますと、特に内需の拡大その他の点につきましても考えていきます場合に、商業とかの流通関係、サービスあるいは情報産業あるいは観光、文化、こういうものにつきましても一つの事業として、雇用吸収力を持つ事業として地域の特性に応じてそういった事業はなし得るわけでございますし、またなさなければならないわけでございます。こういう点につきましても、今後は産炭地振興策の土地造成であるとか融資の特例というようないろんなことにつきましても、幅広く見ていただくようにお願い申し上げたいと思います。  それから次に、私どもが今後第二の筑豊にならないということのためには、従来の施策のどこに誤りがあったのかという点をいま一度見直す中から、現在の経済情勢に適合したぴっとした政策というものをいま一度見直していただきたいということをお願いしたいわけでございます。これらの点につきましては、なお詳細に私どもとしても従来の政策の見直しをし、こういう点については今後はこうしてもらいたい、今申しましたような点も含めまして今後検討を進めて、行政側とも十分連携をとりながらお願いを申し上げたいと思います。  その中でも特に問題なのは、従来の振興策が市町村単位でとられていたという点に大きな問題があるのではないか。やはり空知地区あるいは筑豊にいたしましても、広域的な地域インセンティブをするような大きな事業というものは市町村単位でやり得るわけではないわけで、相当広域的に取り組むような大型プロジェクトでなければ地域の活性化にはつながらないと思います。そういう意味からいたしまして、今後はやはり広域的な事業、となりますとこの事業主体を少なくとも県に置く、あるいは道に置くような事業というものを主眼に置いて、それに関連して各市町村の位置づけをして、それぞれの持ち分を各市町村が分担してやっていくということが必要になってくるのではなかろうかということを思うわけでございます。この点につきましても特にお願いを申し上げたいと思います。  それからいま一点は、従来の閉山の中で大きな問題を残したのは、鉱業用地を、鉱業権利を石炭業者に持たせたまま閉山したというところに問題があると思います。今後縮小後の地域を利用できるものは鉱業用地にしかないわけでございます。ところが、企業閉山後の利益追求、当然だと思いますけれども、その目的にのみ用地が利用されたのでは残された住民がその土地を活用しながら地域の活性化を図るということはできないわけでございます。今回の答申には若干そういった点に触れられておりますけれども、用地の解放という地域のオーソライズされたような大きなプロジェクトにつきましては、それに協力しなければならないというぐらいのものがなければ地域を発展させる計画を具体的に地域課題として取り組むことはできないだろうと思います。こういう点につきましても格別のお願いを申し上げたいと思います。  それから、こういった問題、まだまだ多くの問題をはらんでいると思いますけれども、今後私どもも十分いろんな角度から今後の新政策あり方についても検討してまいりたいと思いますけれども、何と申しましても資金の確保は本当に図られるんだろうか、八次策が絵にかいたもちになるのではなかろうか、そして充実した地域対策等がなし得るだけの財源がぜひ確保されなければ、従来の石炭特会の中のパイの分け合いということだけではもはや目的を達し得られないような状況にあるという点から、ぜひひとつ財源確保については格別の御配慮をお願いを申し上げたいと思います。ただ、従来石特会計の一つのならされた慣行の中でいろんな制度、離職者対策にしましても地域振興にしましても、ありましたけれども、こういった点は見直すと同時に、新しい悲惨な地域が生まれるわけでございますので、今後重点配分について政府の方でも格別の思い切った角度からそういった点をお願い申し上げたいと思います。  そのほか、残り得る炭鉱につきましての資金的な援助等も当然やってもらわなければ自滅するわけでございますので、こういった点についての御配慮もぜひお願いを申し上げたいし、あるいは需給調整機関につきましても、政府出資による、そしてまたコントロールを政府介入によってやっていくような機関をぜひおつくりをいただき、秩序ある縮小の方向へのコントロールをお願い申し上げたいと思います。  長くなりましたけれども、以上お願いを申し上げたいと思います。ありがとうございました。
  16. 竹内黎一

    竹内委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。     ─────────────
  17. 竹内黎一

    竹内委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鳩山由起夫君。
  18. 鳩山由紀夫

    ○鳩山(由)委員 参考人の皆様方、御苦労さまでございます。  特に向坂参考人におかれましては、石鉱審の部会長といたしまして大変な御努力を払われたと思います。そして、その八次答申を読ませていただきまして、原案と答申の差というものを私は感じたわけでございますが、その差の生じました経緯につきましてお教えいただきたいと思います。
  19. 向坂正男

    向坂参考人 この答申につきましては、生産縮小することは余儀なくされますけれども、一時に閉山が集中するということを絶対に避けたい、また、先ほど来歯どめという議論がございましたけれども、残存し得る炭鉱についてはその残存を確保するということ、つまり生産体制集約化をできるだけ円滑にするという考え方で、それを実現するための対策をいろいろ検討したところでございます。  それで、先ほど来御議論のありましたような過剰在庫対策、それからまた生産規模をかなりの程度縮小せざるを得ない炭鉱も出てまいりますから、その縮小が円滑に行われるような対策、またそのほか閉山あるいは閉山後の離職者対策地域対策など、検討小委員会としてはかなり細かい点を具体的に検討したところでございます。それで、政策部会に提案した答申の原案にはややそういう表現の具体性を欠くところがございましたので、また政策部会においてもいろいろな意見からもっと具体的に政策を書き込めという御意見が多くございましたので、それを受けて原案を修正したというところでございます。
  20. 鳩山由紀夫

    ○鳩山(由)委員 その具体的な政府政策に関しまして、例えば需給調整機構の設置であるとかあるいは閉山対策離職者対策に関しましてかなり政府の強い支援を要求する内容になっておると思いますが、この質問は向坂会長としての御意見でもあるいは個人的な見解でも結構でございますが、今後政府が石鉱審の答申を実行していくに当たって石鉱審の委員としてあるいは個人としてどのように見守っていかれるのか、フォローということに関しましてどのような立場をとられるのか、お聞きしたいと思います。
  21. 向坂正男

    向坂参考人 検討小委員会でいろいろ具体策を検討していたとき、あるいは将来の需要をどの程度国内炭の引き取りが可能であるかということをある時期に検討していた状況に比べますと、最終的な需要確保国内炭引き取りの決着の状況は当初検討小委員会で予想していたよりも早く縮小するという事態を余儀なくされたわけでございます。その意味で、もちろん石炭企業の自主的な努力なりあるいはまた需要業界のぎりぎりな努力が必要でございますが、同時に、政府としてもこの答申の目標にあるいろいろな方向を実現するように十分な支援対策またいろいろな具体的な対策をとってほしい、これは、検討小委員会検討経過をずっと知っています私としては政府に対して強く要望したいところでございます。  さしあたり来年度予算にこの具体策がどれだけ盛り込まれるかは、この答申案の審議をいたしてきました私として重大な関心を持っておりますし、将来また政策部会なり需給部会なりでそれぞれの毎年の対策の実施の状況なり、また石炭業界状況なりを十分に見守っていきたいというふうに考えております。
  22. 鳩山由紀夫

    ○鳩山(由)委員 向坂参考人にあと一つお尋ねしたいんですが、八次政策期限は一応六十六年ということになっておりますが、六十七年以降に関しまして一千万トン体制維持されていかれるのか、あるいは一千万トンというのはある過程であって、さらに縮小の方向に進まざるを得ないのか。この答申の中では、適正な生産体制確保に努めるというようなことがうたわれておりますが、多少不明瞭な部分があろうかと思いますので、このことに関しまして御意見をお伺いしたいと思います。
  23. 向坂正男

    向坂参考人 石炭業界のこれからの労使の厳しい努力を求められている状況、せっかく厳しい努力をしたあげくに八次策以降でつぶれるということでは労働者も耐えられないことであろうという心情はよく理解できると思います。  しかし、同時に需要業界の方では、この割高な石炭をいつまで引き取らなければならないのか、消費者に対してどこまでこういう高い石炭を引き取ることが認められるかということに対して需要業界としては関心を持たざるを得ないと思うのであります。その意味で、ポスト八次において引き取りを縮小したいという根強い要望があったことは事実でございます。で、審議会としましては、全般のエネルギー情勢とかあるいはまたいろいろな内外炭の今後の動向、その中における国内炭の役割など十分検討した上で、八次策以降をどうするかということを政府としては明らかにしてほしいというように思うわけでございます。  正直申しまして、この問題にまで立ち入って検討を始めますと、もう八次策はいつまとまるかわからないという状況でございますので、答申の結びの最後に書いたような表現で、しばらく時間の猶予をいただいて、ある時期に検討をしたらいいのではないかということでございます。私の個人的な感想をあえて申し上げさせていただけば、ある経済的な範囲で資源量が豊富であり、またある程度採掘条件の合理化の余地があり、また経営としても活力があるような経営、そういうものは八次策以降も残してほしいという私の感想を最後に申し上げさせていただきます。
  24. 鳩山由紀夫

    ○鳩山(由)委員 ありがとうございました。  続いで横路参考人にお尋ねしたいんですが、参考人はつい先日シュミット元西ドイツ首相と対談をなさいまして、その中でシュミット氏が、日本の石炭政策は誤りである、特に第三次の石油ショックというのは必ずいつかは来るんだから、そのときには海外炭もかなり値上がりが予想される、ですから、そのときのために独自のエネルギー源は常に持っておかなければならないんだ、そういう経済政策上の問題としてアピールすべきだというふうに述べておられたかと思いますが、横路参考人は知事といたしまして、その対談をお聞きになってどのようにお感じになったか、お聞きしたいと思います。
  25. 横路孝弘

    横路参考人 五月にこの場で参考人として意見を申し上げたときにも、大事な国内エネルギー源として、いわば国のエネルギー政策の根幹として国内の資源を何とか存続をさせていただきたいということを申し上げましたけれども、先日たまたまシュミット前首相との対談の際に、西ドイツにおけるいろいろな石炭政策についてお話をお伺いをしました。西ドイツでは石炭各社を統合して一元化を図っておりまして、この石炭企業政府の多額の援助のもとで経営がされている。その基本は、今先生お話あったように、これからのいわば国の安全保障政策の一つとしてやはり国内資源というものを大事にすべきじゃないか、こういうお考えのようでございまして、私も全く同意見でございます。
  26. 鳩山由紀夫

    ○鳩山(由)委員 実は横路参考人にはいろいろと御質問させていただきたいのですが、時間の関係北村先生にお譲りしたいと思いまして、野呂参考人にお聞きしたいと思います。  私も山に何度か参りまして、いろいろな方とお話をさしていただくんですが、山で働いておられる方々は、もうおれたちは山で生きるしかないんだというようなことを申されます。ただ私も実際に入ってみまして、ああいう厳しい過酷な状況のもとで働かれる方というものはほかの御職業も十分にこなしていかれるんじゃないか、それなのに山に固執されるのはなぜだろうか、むしろ意識改革のようなものを指導されていかれた方がよろしいんじゃないかと思いますが、いかがなものでしょうか。
  27. 野呂潔

    野呂参考人 ただいま鳩山先生から言われましたことは、検討小委員会先生方からもいろいろと言われたことがございます。私の方で石炭産業に固執をするんではなくて、他産業に行って幸せになるんであれば、我々労働組合の指導者としては積極的にそういうことはやはり取り上げなければならない、こういうふうに思っています。しかし、皆さん方も御承知のように、今炭鉱があるところの求人率あるいは就職率というものを参考までに言いますと、全国的には〇・五人とかといいますが、北海道、九州では〇・二四か二五くらいであります。それで、一人前の労働者就職したとしても総収入で、これはつい最近の札幌の職安で調べたものですが、十六万四千円程度。八時間働いて、弁当持って家から出ていってその金でどうして生活ができるのかということであります。つまり、そういうことでは、奥さんもアルバイトで働くのは当然でありますけれども、生活をすることができない。したがって、私たち労働組合としては労働省の加藤次官とも会って話をいたしました。就職あっせんというのは我々も喜んで受けよう、しかし、生活できるような就職のものを持ってきてほしい、二十万円というのが一つの目安とすればそれ以上あるものを持ってきてほしいと言いましたら、今のところはゼロと言わざるを得ないというのが実態であります。  そういう中で、私たち、意識改革をと言われるのはもう十分承知をいたしておりますけれども、生活ができない、そういう実態の中にほうり込むのは余りにも惨めだということで、やはりそれには石炭産業をできる限り維持してほしいということにならざるを得ないという考え方で申し述べましたので、検討小委員会先生方もそういう実態を初めは主張しておりましたが、いろいろと検討された結果、離職者対策とか雇用対策については相当考えざるを得ないということで、なだらかにゆっくりと閉山をするようにしたいという意向に固まったと推測をいたします。先ほど、向坂先生も言われましたように、想定したよりもテンポが早まったと言われるのはそういうことではないかと私たち考えているわけであります。  以上であります。
  28. 鳩山由紀夫

    ○鳩山(由)委員 わかりました。  あと一つ、有吉参考人にもお伺いしたいのですが、有吉参考人生産者の方の代表といたしまして大変に御尽力されておると思いますが、今政府に特に喫緊の課題として要求される支援の方法をお教えいただきたいと思います。特に、私は需給調整機関というのは来年に入りまして必ず政府がつくってくださるものと確信しておるのですが、それまでの間の問題といたしまして大変に厳しい状況が予想されますので、その辺の問題だろうと思いますが、一つだけ挙げていただきたいと思います。
  29. 有吉新吾

    有吉参考人 御指摘のように鉄それから一般産業の今年度の引き取りそのものが急激に減りましたので、例えば鉄の百七十万トン、六十一年度の引き取りと申します。この十月末までで既に百三十五万トンというのが行っているわけです。したがって、十一月以降十一、十二、一、二、三と五カ月は三十五万トンしか引き取ってもらえないわけです。したがいまして、急激に生産を落とすわけにもいきませんが、生産を相当セーブいたしましても、原料炭一般炭合わせましてことしだけで二百五十万トンくらいの貯炭がふえる。金額にいたしますと四百億ぐらいの金額になります。これにつきまして何とか金繰りを、これは今の経営改善資金とかそういうものではちょっと出ないわけでございますので、何らかの緊急の方策をひとつお願いしたいと思っております。
  30. 鳩山由紀夫

    ○鳩山(由)委員 どうもありがとうございました
  31. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、北村直人君。
  32. 北村直人

    北村委員 参考人の皆さんに敬意を表する次第でございます。  私も北海道から出させていただいておる一人でございます。きょうは北海道の横路知事さんに御意見を聞かせていただければ大変ありがたいと思うわけでございます。  国内石炭産業は、これまで歴史の中では地域開発の先兵として大きな役割を果たしてまいりました。そのことは今後も変化はないと私は思います。しかし、主要炭鉱閉山されていくということになれば、その炭鉱を抱える市町村は大変大きなダメージを受けることになると思います。特に北海道は大きな炭鉱を抱えているわけでございます。今、答申の中には、政府は適切な支援が必要であるとか閉山に伴う地域への影響緩和に全力を期すべきだという答申がございます。であれば、自治体として、北海道知事として、この閉山あるいは減産に向かって対処していけるような方策があるかどうかを、知事さんの御意見としてお聞きしたいと思うわけでございます。
  33. 横路孝弘

    横路参考人 お答えをいたします。  北海道の産炭地は、いずれもその市、町の中で石炭産業が大変高いウエートを占めております。それだけに、縮小あるいは閉山が続きますと、地域にとりましても大変大きな影響を受けることになるわけでございまして、たくさんの課題がございます。  今度の答申の中で今先生お話しのような表現がいろいろな分野でございますが、それが政策として具体化していくことを私ども強くお願い申し上げているところでございます。例えば地方の財政対策というような点につきましても、これからいろいろな事業を地方の自治体は行っていかなければなりません。しかし、例えば閉山になりますと人も減る、事業もそこで縮小するということになりますと、税収の面ではすぐ大きな影響を受けるわけですね。それに対する対応というのは、先ほど申し上げました例えば臨時交付金の大幅な増額をこの際思い切ってやっていただく、あるいは町村が前向きの事業を進めていく上での資金調達をどうするかという点がございます。こういう点につきまして、例えば基金制度みたいなものをつくっていただく、その基金をもっていろいろな仕事をやる、そんなことも私ども先ほどお願い申し上げたところでございます。  また、企業誘致でございますとか観光開発とかそれぞれ考えておるわけでございますけれども、全体的に企業誘致を進めましても、むしろ日本の国内の企業の目は海外の方の投資に向けられているということで、投資をめぐる環境もなかなか厳しい状況にございます。そういう中で、企業誘致などをとりましても全国的に地域間の競争が大変激しくなってきておりまして、よほどの思い切った優遇措置政策的にとっていただかなければ、このような産炭地域への企業立地ということは、地域努力していますけれども、率直に言ってなかなか難しいというわけでございまして、その辺のところの政策、例えば私ども意見の中には、生活保護などにもっとお金をかけるということではなくてやはり働いて生活をしていくというようなことで、例えば産炭地への立地をした企業に対して雇用の面での助成金を大幅に出すとかいうようなことをやって、結局国としてトータルに今後かかるいろいろな資金というものを考えた場合に、それをできるだけ前向きのことに活用できるような点をぜひ考えていただけないものだろうか。  私ども、先ほど申し上げた点を含めまして具体的な御要望をたくさん持ってございますので、この答申に盛られていることが予算を伴って具体化されることを強くお願い申し上げたいと思います。
  34. 北村直人

    北村委員 大変厳しい質問というよりも、御意見をお聞かせいただきたいと思うのですが、横路さんには五十八年に北海道知事になられました。そのときからこういう事態もある程度予測されていたわけでございます。今いろいろな御要望、確かに政府としてはそのことに全精力を挙げて取り組んでいかなければならないし、それから自民党の石特の委員会としてもそれを本当に大きな目で見てそれが遂行されるように努力をしなければならないと思いますが、これだけ大きな問題になりますと、自治体あるいは国民も総ぐるみでこの問題に取り組まなければならないのではないかと思うわけでございます。そんな中で北海道としてこれならできる、これはやらなければならないというようなものが知事さんの頭の中にあって、これをするから国はぜひこれをしてほしいというものがもしございましたらお聞かせ願いたいと思うわけです。
  35. 横路孝弘

    横路参考人 先ほど申し上げましたように、石油の時代そしてまたオイルショックが来てというように、国の石炭政策自身も今まで相当大きな転換を何度かしてきております。今日、急激な円高あるいは産業構造の国際的な協調というような観点から今回の政策がとられたわけですが、私どもにとりましては大変大きな、しかも急激な政策転換であると受けとめております。もちろん、石炭の資源というのはある意味では有限でございますから、それぞれの産炭地域におきましてもいろいろな努力をしてきておるところでございます。  先ほども御紹介申し上げましたが、例えば夕張市におきましては、観光開発も、みずから資金調達もやりながらあそこに石炭の歴史村といったようなこと、スキー場の造成というようなこと、いろいろなイベントなども毎年組みながら大変熱心にやっておりますし、御承知の夕張メロンなども最近は全国的にもすっかり有名になりましたが、こういうものの特産化、さらにこれからブランデーとかお酒をつくったり、アイデアも出し、そしてまた努力もしてきたところでございますし、企業誘致も、北海道の自治体の中では企業誘致の実績としては非常に上げている地域の一つでございます。私ども、これからの産炭地域のことを考えた場合に、何かすぐ特効薬があるということではございませんで、従来とも続けておりますこのような努力企業誘致でございますとか地域の観光開発あるいはいろいろな他の産業をもっと幅広く育てていくというようなこと、これは大いに努力をしてまいりたいと思っております。そして、その努力をする上での財政的なあるいは事業の面でのあるいは金融、税制の面でのバックアップというものを国の方にお願いを申し上げたいと思っております。ただ、この地域の中にはほかの産業の全く育っていないところもあります。これは、その土地の条件などによりまして、やはりなかなか努力をしても難しいということもございますが、しかし、そういう中でも何とか一つでも二つでもやろうということで、各市町それぞれいろいろな努力石炭企業などのバックアップもいただきながら行ってきているところでございます。  私どもは、十二月五日の日に産炭地の市長、町長集まりまして、来年度に向けてのさらにより具体的なこの答申を受けての対応をいたしたいと思っておりますので、また取りまとめていろいろお願いに参りますので、よろしくお願いをいたしたいと思います。
  36. 北村直人

    北村委員 最後に、もう一点だけ知事さんの御意見を伺いたいと思いますが、国内炭は今後、電力用の一般炭中心確保をしていくということになります。北海道では、最大のユーザーであります北海道電力があります。しかし、苫東の火力一号でさえ海外炭へ転換を考えているというようなこともお聞きをしております。しかし、国内炭を積極的に使って地域振興に寄与していただかなければならないと思いますし、特に北海道電力さんの場合は地域を代表する公益の事業であるという性格を考えたときに、やはり電力の方々には国内炭を使っていただかなきゃならない。ただし、北海道電力さんだけに大きなウエートがかかるのではなくて、ほかの電力さんにもそのことはお願いをしなければならないと思いますが、知事さんとして、北海道には北海道電力がある、そのほかの電力会社さんにもぜひ北海道の石炭を使っていただきたい、そういうお願いをこれからしていただかなければならないと思いますが、そこら辺のことを一言意見を聞かしていただいて、終わらさしていただきたいと思います。
  37. 横路孝弘

    横路参考人 ただいま先生のおっしゃるとおりだというように考えております。北電には従来からいろいろと需要の面で御努力をいただいておるわけでございますが、今後とも産炭地域の振興を図るという観点で継続使用が図られますように、北電に対しても要請してまいりたいと思っております。電力業界として六十六年度末八百五十万トンという引き取りを決めておりますので、この数字はまた業界の責任におきまして各社に配分されるものと考えておりますけれども、私ども産炭地域といたしまして、今後とも各ユーザーの皆さん方にこの継続使用についてお願いをしてまいりたいと思っております。
  38. 北村直人

    北村委員 終わります。
  39. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、細谷治嘉君。     〔委員長退席古賀(誠)委員長代理着席〕
  40. 細谷治嘉

    ○細谷委員 参考人の皆さん、大変御苦労さんです。とりわけ、この答申をまとめるために一年有余にわたって努力されました向坂先生、御苦労さまです。敬意を表します。  ところで、まず向坂先生にお尋ねしたいのですけれども、昨日ですか、ある新聞に「ひと」という欄がございます。御本人ごらんになったかどうかわかりませんけれども、ちょっと御紹介しますと、「「原案は合格点スレスレかな。石炭企業も真剣に努力しないと困る」と自己採点も厳しい。」こう書いてある。その前の方にいろいろと書いてあるのですが、お尋ねしたいことは、これは「原案」と書いてありますけれども、最初の原案なのか今度の最終的な答申なのかはよくわかりませんけれども、恐らく私は二十八日に出たものじゃないかと思うのですよ。この答申の中に脱石炭化、産業構造脱石炭化という言葉が非常にたくさん出ておるのですね。例えば、ちょっと御紹介いたしますと、「地域対策」として「地域経済構造の脱石炭化に向けて主体的な取組みを行う地域に対し、」こう書いてある。脱石炭化ということは産業構造を、これは全般的に言っていますから、日本の今の産炭地というのはみんな脱石炭石炭やめてしまえということを意味しているんじゃないかと思うのです。その辺、この脱石炭化という言葉を答申の中に使われているのはどういうことなんでしょうか。率直にお聞きしたいのです。
  41. 向坂正男

    向坂参考人 地域経済構造の脱石炭化ということは、やや表現を縮めたために誤解をもたらす懸念があるかと思いますが、その意味するところは、できるだけ将来に向かって石炭産業への依存度を軽くしていくという方向に考えるべきだという意味でございまして、石炭資源はやはり有限な資源ですから、やがては石炭に依存できない状況も来るわけですから、その地域地域によっては違いますけれども、将来に向かって石炭への依存度を軽減して他の産業を発展さしていくという方向を目指すべきだという意味でございます。
  42. 細谷治嘉

    ○細谷委員 向坂さんの考えているのはそういうことだと思うのですけれども、これは全般の答申の流れを見ますと、もう九次以降の政策はないんじゃないか、こういうことが言われるような流れが予定されておるのです。そういう中において脱石炭化ということは、もう産業構造を石炭に頼らない、ウエートを軽くするんじゃなくて頼らない、そういうものにしていく。  私は、黒田市長さん、ちょっとこのことについてお尋ねをしたい。三十日付の地元の大牟田の新聞ですが、これに「減産必至の三池」こう書いてあります。その中に、「地域経済構造の脱石炭化に向けて主体的な取り組み」、私の言いたいことは、これはもう経済原則に基づいて石炭として立っていけないところは逐次脱石炭化を進めることはいいと思うのですけれども経済ベースに乗ってやっているところは何もやめる必要ない、努力しているのですから。減産があるかもしれません。そうだとすると、もう何もかんも全部つぶしちゃうんだ、石炭というものはもう要らないんだ、こういうことでは困りますし、有吉参考人も言っておりましたように、やはり九次政策というのはどういうことになるか今わかりませんけれども、八次政策を進めた段階において諸般のいろいろな条件を配慮して考えていく、こういうことにならなきゃならぬ。やはりできるだけ石炭資源というのを活用していくということだと思うのですけれども、大牟田の方では脱石炭化というこの言葉、新聞にまで出ているものですから。どういうふうにお考えなんですか。
  43. 黒田穰一

    黒田参考人 どういう新聞かは私、ちょっと存じておりませんけれども、少なくとも私どもは、地域を支えております三池の石炭、これはもう何が何でも死守していきたいということがまず基本でありまして、とはいいましても、情勢がこれだけ厳しいので、石炭のみに頼るのではなくて、やはりもう少し多角的な方面に地域経済構造を少しずつ変えていきたいという考え方でございます。
  44. 細谷治嘉

    ○細谷委員 わかりました。  そうなってまいりますと、知事さん、お尋ねしたいのですが、北海道の空知地方というのは、私はずばり言いますと、今度の八次政策では全滅、こういうことにつながるのではないか、こう思います。そうならないように願っておりますけれども。そうしますと、どういうような対応をしていくのか。これはもう全滅しちゃったら、まあメロンという話もありましたけれども、メロンというのは、石炭があって、奥さん方がパートの意味でやっておるから夕張メロンがあるのだと言っています。そうしますと、大変深刻な問題になるわけでありますが、これに対してどういうふうにお考えですか。
  45. 横路孝弘

    横路参考人 北海道七市町に炭鉱があるわけでございますが、空知では六市町、総人口十二万七千人のうち炭鉱関係が七万五千人でございます。各町の中に占める就業者数あるいは工業出荷額、商業販売額などどれをとりましても大変ウエートが高いわけでございまして、先ほどお話し申し上げました夕張市の場合、人口の大体七割が炭鉱関係者、商業販売額の九割が炭鉱関係ということになっております。運送業などの売り上げもその八五%が炭鉱関係、工業出荷額で五四%、こういうような状況になっております。  私どもこれからの動きになるわけでございますけれども炭鉱閉山縮小というものが集中しますれば、夕張の場合も原料炭の山が今二つあるわけでございまして、これから人口減を含めまして、もちろんそれは本当に地域の崩壊につながりかねない重大な局面を今迎えているわけでございます。もちろん私ども、それぞれの市町でも頑張って努力を重ねておりますし、我々も今度個別の対応を含めて、そしてまた将来の地域開発というようなことにつきまして努力はしていきたいというように思っていますけれども、大変深刻な事態であるということを申し上げることができると思います。
  46. 細谷治嘉

    ○細谷委員 大体北海道の石炭というのは、原料炭一般炭と、大体割合が一般炭が四分の三、原料炭が四分の一程度ではないか。原料炭の代表的なものは別として、何らかの手を加えれば原料炭から一般炭に大体転換できていく、そういうものがあると思うのです。したがって、四分の三が一般炭でありますから、エネルギー資源というのは非常に重要でありますから、空知の一般的に絶望だと言われておるところに対しても、やはり何とか現存炭鉱を守っていくということで努力をしていただきたい、こう思うのです。  そうなってまいりますと、やはり地元の受け入れ体制、こういうことが大変問題だと思う。いろいろありますけれども、例えば先ほど来、予算は既に六十二年度要求予算は出ておるけれども、これは八次政策が出る前、どういう内容になるかわからないときでありまして、例えば産炭地域振興対策についてのいろいろな費用、要求というのは、前年、六十一年より五億円減っておるわけです。こんなことではとてもじゃないが受け入れ体制というのはできない、地域社会を守っていくということはできないのじゃないか、こう思います。     〔古賀(誠)委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、時間がありませんから具体的にお聞きするわけですけれども、例えば今まで通産省が努力された産炭地振興、こういうものについては十分に手厚くなかった、こう私は思っております。やはりこの時期において、八次政策が出てやる場合にはもっと真剣な取り組み、予算上の増額、こういうことが必要だろうと思うのであります。したがって、これは後ほどまた委員会政府当局に詰めなければなりませんけれども、地元として、例えば臨時交付金あるいはその他のいろいろな財政上の措置を積極的にやっていただく、雇用対策もどんどんやっていただく、そのための予算を裏づけることが必要である。同時に、現行法のそのままの延長を認めてくれという有吉会長意見もありました。財政的なことを見ますと、この通産省の法律によらないで地方の財源というのをカバーしているわけですよ。例えば産炭地は人口が急減していっておりますから、その急減に対する交付税の補正措置あるいは産炭地がやっておる事業に対する補正措置、こういういろいろなものがあります。あるいは道県に対しては、広域的に産炭地振興をやりますと、金が要ります。そういうものに地方債を起こしてやった場合には利子補給という制度があります。こういうものもどうも来年になりますとだんだん減っていくという状況が確実なんですね。ですから、この際そういうものも生かして充実していかなければいかぬということになりますけれども、具体の問題として、今までの産炭地に対する対策というものは不十分であった、ぜひこうしてもらいたい、こういうことについて率直な知事さんの意見あるいは大牟田の市長さんの意見ございましたらお聞きしたい、こう思います。
  47. 横路孝弘

    横路参考人 私ども現存炭鉱のできる限りの存続ということでお願いをしているところでございますので、よろしくお願いいたしたいと思います。  もちろん従来の制度を拡充していただきたいということで、例えば先ほども陳述の中で申し上げましたけれども、鉱産税や人口の流出に伴う住民税の減収分でございますとか地域振興策のための財政支出の増加分を産炭地域振興臨時交付金で見ていただけるように、これはぜひ予算面で増額をしていただきたい。  それから、今例えば中小商工業者の皆さんへの対策、これは全面的に山に依存しておるわけでございまして、炭鉱がなくなれば従業員と同じように移住あるいは転業を余儀なくされるわけでございます。しかも炭鉱とともに築いてきた土地でございますとか建物などの資産というものはもうほとんど無価値化してしまうわけでございまして、多大な損害をこうむると同時に、新しい転業していくための資金というような問題も出てくるわけでございます。そのために、例えばこうした無価値化した資産に対して補償の措置などを講じていただけないものだろうか。従来の枠組みではなくて、今回政策転換に伴う状況にございますので、こんな措置などは新しい措置として何とかお願いできないものだろうかというように考えておるところでございます。  先ほど来申し上げた点に今の点をつけ加えさせていただきたいと思います。
  48. 黒田穰一

    黒田参考人 さっきもちょっと触れましたけれども閉山時にトン当たり百十五円の市町村に対する交付金があるわけでございますけれども、これはまさに鉱産税の目減りに対する穴埋めだけであって、市町村が閉山によってこうむる減収というのは、先ほどもお話ししたようにいろいろな面で出るわけでございます。そういう面についても面倒見ていただく、しかも、それも先ほど申しましたように縮小の場合にもお願いしたいという点が一つ。  さらに産炭地振興の問題で特にお願いしたいのは、今回特に残る炭鉱につきましては、やはり地域を活性化するにも時間的な余裕がなくなったということのために、相当地域活性化を前倒しにやらなければならなくなってくる。私の市でもマスタープランを今つくり変えております。長期計画を後期のものを前期にシフトするということで相当の財政負担にもなりますけれども、これは克服していかなければならなくなった。こういう場合に、従来のような産炭地が閉山後の死に体になったところに対する産炭地振興策ではなくて、生きているときの産炭地振興策ということをやらなければ、同じ投資をするにも投資効率が全然違うわけでございますので、前倒しの産炭地振興策には濃密な予算的な裏づけをお願いしたい、こういう点が一番大きい点でございます。
  49. 細谷治嘉

    ○細谷委員 いろいろお聞きしたいことはあるのですけれども、産炭地というのはなだれ閉山、これは地域社会の崩壊につながりますから防ぐということについて、今度の答申の中に極めて抽象的でありますけれども、触れられております。参考人意見にもございました。何といってもやはり具体的にどういう機構をつくる、そしてどういう資金をもって対応していくか、あるいは緊急融資現にまだ七次の段階でございまして、来年の春から八次に入っていくわけでありますが、現にもうそういう事態に来ているわけですから、緊急融資の措置を機構をつくる前に講じなければならぬという真剣な問題がございます。これはぜひともやらなければいかぬ問題であります。  同時に大牟田の市長さんが先ほど言いました、何といってもやはり石炭というのは民族の資源なんだ。それで有力な北海道の炭鉱として釧路あり、九州の方では池島あり、あるいは今度やめます南の方の高島があります。池島と高島との間に海底炭というかなり立派な鉱脈があると承っております。また、三池炭鉱の北部の方にはNEDOの調査によりまして今まで以上の良質な石炭が海底に眠っておる、こういうことを聞いております。こういうふうな資源を将来にわたって活用しないということはおかしいと思うのです。そういうことが気がかりでありまして、向坂先生に、脱石炭化というのは一体どういうことなのか、もう五年したら石炭をやめてしまうのか。そういうことが基本では困るのであって、前向きにこの国内資源というものを守っていく、こういう形で、もう少し強い姿勢で対応していただかなければならぬ、こう私は思っておるのですが、こういう問題についてひとつ黒田市長さんなり、あるいは向坂先生のお答えをいただきたいと思います。
  50. 向坂正男

    向坂参考人 お説のとおりに、現在稼行している炭鉱においても将来かなり長い期間にわたって採掘可能な資源量の豊富な炭鉱があることは確かでございますし、経営のやり方によっては採掘条件を合理化しながら、コストを余り上げることなく長期にわたってできるという可能性を残す炭鉱もあると承知しております。そういう炭鉱につきましては、やはり日本が持っているエネルギー資源として貴重な資源ですから、そういう炭鉱をできるだけ長期に稼行を続けていくということについては国民の理解を得られるのではないかというふうに私は個人的に考えております。しかし、この答申ではその問題は少し先送りしまして、もう少し内外の石炭の動向なり国内炭石炭業界の動向なりを見、またそのときの経済情勢も勘案しながら適当な時期に八次策以降の資源開発については考えるべきものというふうに答申したわけでございます。
  51. 黒田穰一

    黒田参考人 先ほども申し上げましたように、一番安定しているものは国内の石炭であると思います。だから、今回の答申の中ではいわば経済ベースで論議され、特に需要業界の動向を勘案してということでございますけれども、これだけの民族資産としての資源、これはどうしても守っていくべきであろうと私どもも思いますし、そうだとすれば、国策としてこれをどう温存し、今後の資源として活用し得るかという視点からの論議が八次策の中でもしてほしかったし今後改めて原点論を国策として、国の政策としての論議をお願い申し上げたいというふうに思うわけであります。
  52. 細谷治嘉

    ○細谷委員 終わります。
  53. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、岡田利春君。
  54. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 参考人の皆さんには大変お忙しいところ御苦労さんでございます。また一年二カ月にわたって答申のために御努力された向坂先生、特に初めに私は向坂先生に、答申が決定される過程の問題、認識の問題についてお伺いをいたしたいと思うわけです。  とにもかくにも一年二カ月第八次答申に時間を要した。いわばマグニチュード七の直下型の大地震というべき円の急騰、これは予期していなかったことでありまして、いわばいろいろな現象は急激な円高に根源がある、こう言わざるを得ないと思うわけであります。そういう意味で非常に長い時間を要したわけです。ただしかし、今度の答申の中に盛られている文章を拝見しますと、無理してきれいに語っているなという感じも私自身はしないわけでもないのであります。特に第一の問題として、政策期間は五年間にするというところに無理があるのではないかと思います。過去の政策でも中途で政策を変更したことは幾らでもあるわけです。そうしますと、やはり今度の場合には、第七次の最終年度炭価を決めただけではなくして需給の構造を根本的に変えたわけでありますから、それはやはり政策の重大な変更であるわけです。だからそういう意味で、昭和六十一年度、四月に遡及するのでありますから、需給関係も遡及するのでありますから、これは第八次政策の初年度であって、第八次政策は六十一年度を出発点にして六年間である、素直にこう考えられた方が正しいと私は思うのです。ちょっと一年を第七次の最後に無理やりくっつけておいて、政策期間五年だというところにまず第一点無理があると思うのですが、この点、いかがでしょうか。
  55. 向坂正男

    向坂参考人 八次策の検討を始めましたときは、当然六十二年度以降の五年間を対象、あるいは場合によっては七年間もあり得るということをいろいろ検討してみました。しかし最終的にはやはり五年間でいこうということでございまして、六十一年度の問題については、まさに御指摘のように、円高による直撃を受けた産業、また内外炭価格差の拡大など、予期せざる事情が起こり、そのために鉄鋼業界を初めとし、国際競争にさらされている産業においては経営に大変大きな困難が生じましたので、六十一年度についてもそういう需要業界から引き取り量を削減するといういろいろな問題が起きまして、結局この問題は八次策の五年間と切り離して論議できない問題になりましたので、体制上は需給・価格部会、政策部会と分かれておりますけれども、合同で会議を行い、その結果七人委員会というものを設けて、まず原料炭問題について結論を出し、それで答申の取りまとめに向かっていこうということになったわけでございます。状況はそういうところでございます。
  56. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 しかし、政策の流れからいうと、そういう認識がないと、例えば需給関係の問題は後からお伺いいたしたいと思うのですけれども、つなぎが欠落しているのですよ。法律を改正して、例えばNEDOから出資するかどうか。出資するとすれば、法律を改正して、それからしばらく時間がかかって、そういう機構ができるんですね。下手するとこれは下期に入ることになるでしょう、実際の運用は、夏まではかかるのですから。だから、そういう認識がないから、その間の一つの政策的な支えというものが欠落しているのではないのか。いずれ政府と議論したいと思っているのですが、私は実はそういう認識を持っておるのであります。  第二点は、生産体制の集約、生産の集約体制などという表現が使われておるわけです。私はこれは適切な表現でないと思っているのです。なぜかというと、かってスクラップ・アンド・ビルド、集約する場合にビルドインがあるなら集約体制だといってもいいと思うのですよ。ところが、生産規模からいえばいずれもビルドインはないわけです。全部縮小でしょう。どんな優秀な炭鉱でも縮小する、残念ながらそういう状況なんだ。全体の縮小なんですよ。そして閉山が行われるわけです。その集約体制化というものはいかがなものかということ。  同時に、歴史的な我が国石炭産業の中で、原料炭生産をゼロにするということですね。これは従来とちょっと違うわけです。従来は原料炭一般炭生産縮小するという過程でありますから。やはりこれは閉山縮小、個々の山も縮小なんですから。例えば、三井三池であろうと、松島であろうと、太平洋であろうと、これも生産縮小するし、全体の規模縮小するわけですから、スクラップと縮小体制に移行せざるを得ない。ですから縮小せざるを得ないんだ、そして原料炭も切り捨てるんだという宣言にほかならないのでありますから、生産体制集約化という表現はいかがなものかと、私自身今までの石炭政策に携わってきた者としてそういう感じがするのですが、先生はいかがでしょうか。
  57. 向坂正男

    向坂参考人 集約化ということをどういうふうな意味に使っているかというふうに考えますと、私は先ほどもちょっと申し上げたように、ある程度経済性のある資源量がかなり豊富で長期にわたって使え、しかも採掘条件の悪化を防げるというような炭鉱、それからやはり企業でございますから、経営力がしっかりしているところ、いわば効率のある、経営力のある企業への生産を集中していく、そこを残していくという意味で使ったのでありまして、実態はスクラップ・アンド・ビルドではなくて閉山があり、また残存炭鉱についても若干の生産規模縮小ということは可能性がある、その事実はお説のとおりでございますけれども生産体制集約化という意味は、今申し上げたような意味で使っているつもりでございます。
  58. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 今度の答申の中で、その過程においては、検討小委員会やこの審議会の手を離れて政府も乗り出して、需給の調整関係については大変な動きがあったわけであります。ですから、今までの答申と違って、需給関係ユーザーと交渉し、合意に達しているわけですから協定みたいなものですね。そして最後にほぼ一千万トン程度、こういうのでありますから、答申する場合には物すごく硬直していたわけです。先に抑えられるところは全部抑えておるわけですから。今年度炭価決定ということでポイントも全部決まっているわけですから。がきっと硬直化してしまって、それにすべて合わせて最後のまとめをしなければならない、私はこういう経過であったのではないかと思うのであります。  そう考えてまいりますと、ここまではっきりすれば、もうちょっと親切に言った方がいいかもしらないという気もするわけです。なぜかなれば、今年原料炭が百七十万トンで半減する。一般炭も大体半減みたいなことになるのです。かつては外割りは二〇%なんです。去年炭価を上げたという理由で一六%にしたのです。炭鉱に関連のあるセメントなんかは二〇%なんですよ。それを今度は一一・五%にしたわけですから、大もとの二〇%から見れば、これまた半減だというのです。一般炭の一般産業向けも半減になっている、こう申し上げても差し支えないわけであります。  そして六十五年度には原料炭一般炭産業向けがゼロでありますから、六十五年三月末までで、後はゼロになるわけであります。したがって、そういう点からいいますと、おのずから毎年の原料炭一般炭生産量というのが決められてくるわけです。六十二年、六十三年、六十四年、六十五年、四年間でありますから、六十五年度になるともう最後の年になるわけでありますから。ここまで来るとある程度指標を示した方がむしろ親切ではないか。それは労使で決めなさい、会社の意思決定ですよというだけではいかがなものか。かつて、ベルギーなんかの場合には、政策に合わなければスクラップジャッジも発動もする、金も出してるんだからスクラップジャッジだってできるわけですから、そういう点までいかなければやはり秩序のある、なだらかな閉山ということは非常に難しいのではないか、私はこういう感じがするわけであります。したがって、答申には生産前提とした需要ではなくして、「需要動向をも十分勘案した生産体制」普通、一般的には需要に見合う生産体制、こう言われておるわけであります。ここも、今までも生産前提にして需要確保をされたということじゃないと思うのです。決してそうではないと思うのです。需要が先にあって生産があったはずなんです。  問題は、国内炭生産をどの程度位置づけるかということなんですね。二千万トン程度位置づけするとするならば、生産体制はこうで、需給の構造の関係はこういう政策需要をつける。ですから、全部政策需要なんですから、自然に任したものではないわけであります。今回の場合も、そういう意味では第七次政策以外のそれぞれの政策と全く同じ立場にあるのでありまして、言うなれば需要動向生産体制が決まるのではなくして、やはり国内炭をいろいろな要因からどの程度位置づけをするのか、縮小過程はどうするのかということがあって需要が決まるのではないでしょうか。  問題は、依然として石炭政策の命題は国内生産石炭位置づけをどうするのか。今度の場合には、原料炭はカットする、やはりエネルギーとして国内炭を活用するんだというのが今度の答申でしょう。そうすると、その規模は大体どの程度であって、それに見合う生産体制はここまで縮小しなければならない、依然として第八次政策も変わらないと私は思うのです。もしこれをオープンにして、これだけの内外炭の格差があるんですから、需要に任せると言ったら、これは買わないというわけでしょうね。そういう意味で、この表現の仕方は何か今度八次で急に変わったような印象を与えますけれども、大きな流れ、本筋としては第一次政策以来第八次政策まで変わっていない、こう思うのですけれども、私のこういう認識についてはいかがでしょうか。
  59. 向坂正男

    向坂参考人 この検討小委員会の初めにかなりの時間をかけまして今の問題について論議をいたしました。しかし、結論はこの答申に書きましたとおり、需要動向を十分勘案した生産だというふうに表現をして、そういう方向で施策の検討を始めたわけでございます。  それに至る論議の過程では、まずエネルギー安全保障という面から見て、国内炭の役割がどう変わったのか変わらないのかという論議でございました。しかし、その点につきましては、諸般の情勢は、やはり国内炭エネルギー安全保障上の役割というものは変わってきているのではないか、端的に申し上げれば、やはり低下してきているというふうに判断をせざるを得ないという状況でございまして、もちろん低下しているのですから、エネルギー安全保障上の役割があることは認めておりますし、特に一般炭に関しては、エネルギー利用に関してはそういう役割が残っているだろうという判断でございます。  しかし、なぜ需要動向を勘案するというふうにせざるを得なかったのかということは、やはり七次政策の主として前半期でございますけれども、そのときの状況とはかなり変わってきているということを認識せざるを得なかったわけでございます。それは一々御説明するまでもなく、内外炭格差、国際的な石炭ブームが終わった後海外炭価格低下が始まり、やがてそれに円高が追い打ちをかけまして価格差が大幅に拡大して、需要業界としてその負担に耐え切れないという状況が一部に出てきたことでございます。そのほか、環太平洋では石炭の比較的安定した供給源、またインフラもよく整備された供給源というものが用意されておりまして、海外炭の供給源を多角化しておけば何か問題が起こったときにもある程度石炭は確実に確保できるという見通しもあったことも事実でございます。  もちろん、この判断には石炭の特有の事情といいますか地域問題雇用問題についての配慮も十分しなければならない。と同時に、一体、あれだけ逐次大きな災害を起こすような状況でいつまでも続けていいのかというような意見も出てまいったわけです。これは需要と必ずしも関係はございませんけれども、今のような状況を考えますと、まず二千万トン維持だということを打ち出しておいて需要業界を説得する、協力を得るという状況にはなくなってきているという判断に立ちまして、需要業界とのいろいろな折衝を行い、このような数字でまとめたという経緯でございます。
  60. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 需給問題の関係で先ほど指摘をしましたように、何らかの需給調整機構ができるまでの期間というものは大変なものですね。先ほど会長さんは三月末四百万トン、若干の貯炭、こう言われておったようでありますけれども、私まだふえるんじゃないかと思うし、陰の貯炭、雑炭などを勘案すると相当な量になるんだろう、こう思っておるわけであります。  そこで、それまでの期間やはり持ちこたえなければならぬわけですから、どういう議論をされたのかその経過をお聞かせ願いたいというのが第一点と、何らかの需給調整過剰在庫対策機関をつくる、この機関について意見の交換があったのかどうか。つくる機関の三原則というのを私自身は持っておるわけです。一つはやはりストックの需給機関というものをはっきりつくる、それには政府の出資をする、そして低利融資をする、この三つの原則は絶対必要である、そういうものを満たした機関をつくらなければならぬというのが私の意見でありますけれども、そういう議論がされておるのかどうか、この点についてお伺いいたしたいと思います。
  61. 向坂正男

    向坂参考人 八次答申で出されたこの過剰在庫を調整する機関につきましては、それが設立するまでの間在庫がかなり膨れる見通しがございます。きょう会長も言われたとおりでございますから、それに対する対策をどうするかということを検討いたしましたが、それは主として緊急融資という問題、物理的に在庫を積む場所がないという事情は余りなさそうなので、主として緊急融資ということで考えた次第でございます。過剰在庫、つまり生産縮小過程で、これが早まりましたから、その過程で起こる在庫の過剰ということはかなり量も多い深刻な問題だと考えます。その意味では、これからのなだらかな生産縮小ということを考えますと、予期せざる閉山を起こすようなことのないように過剰在庫対策を十分やる必要があるのではないか。それをやるために、過剰在庫の需給ギャップ調整機関をつくるとしてもどういう機能を持たすかいろいろ検討いたしました。しかし、ここではまだ必ずしも答申のときには結論的ではございません。  しかし、まず第一に、生産縮小需要縮小との間のギャップで起こる過剰在庫を企業負担から軽減させて予期せざる閉山を防止する、そういうことをしっかりやる機能をつくり、またそれは多分民間の機関だけではなくて政府も関与した、支援した機関でなければならないのじゃないかということで、それ以上の機能のことはこれからまた政府、協会がいろいろ考えるということだと思います。
  62. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 有吉さん、先ほど需給機関の問題について触れましたけれども、ずばり言って協会はどういう原則を満たした需給機関設置してほしいという希望があるのですか。
  63. 有吉新吾

    有吉参考人 私どものそういう特殊機構と申しますか考えておりますのは、なだらかな閉山という方向で進んでいきますけれども、それに基づく供給と需要とがぴたっと合わないわけでございまして、どうしてもそこにギャップが生まれますので、それに基づきます過剰貯炭に対して何らかのそういう機関をつくりまして対策を講じまして雪崩閉山的な現象を防止したい、こういうのが基本でございまして、私どもとしての希望、今余り具体的になっておりませんけれども、大筋でこういうふうにしてもらえないかと思っております構想は、株式会社でもいいのですが、貯炭管理と需給調整を目的とするそういう一つの特殊会社、管理会社と申しますか、こういうものを政府の出資もぜひ加わっていただきましてつくってもらいたい、こういうふうなことが一つでございます。  それから、そのギャップに基づきます貯炭をその機構で買い上げてもらいたい、こういう考え方をいたしております。したがいまして、その機構が買い上げる金が要るわけでございますから、その機構として買い上げの資金を借金するわけでございますけれども、できますればその利子補給を予算でひとつ考えてもらえないか、こういうふうなことを考えておるわけでございます。実際、それは過剰貯炭の管理でもございますが、閉山によって今までの需要家に対する供給が欠落をいたします、その分を今までの供給先でないところから入れなければならぬとか新規の発電所なんかの問題もあるのでございますが、これをどこのソースで供給していくかとかこういった需給調整を行うにつきまして、やはりこの過剰貯炭を買い上げてその機構のものにした方が非常にやりやすい、こういうふうな問題も一つございますので、大体そういうふうな構想を持っております。
  64. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 協会の方は政策的経験があるわけでしょう。電力用炭納入株式会社というものがあって、これはもちろんペーパーでやりましたけれども政策的に経験があるのですよ。ですから、やはり協会の方も全然そういう経験がないわけじゃないですから、かつてあったわけですから。今度電力だけでしょう、最後は。そうすると同じでしょう。そういう点で、やはりもう少し具体的にまとめられた方がいいんじゃないかということを申し上げておきたいと思います。  最後横路知事にお伺いいたしたいと思いますけれども、いろいろ先ほど議論が出ておりましたけれども、北海道の産炭地振興を叫んだわけです。けさ、NHKでもやっていましたですね。二十年たって、まだこのとおり、北海道も大変だろうというようなことがNHKの特集で出ておりました。  北海道の閉山地域が本州の閉山地域よりも私はおくれておると思うのです。大体、団地の消化の仕方が違うのですね。九州あたり九〇%いっているのに、北海道は、公式発表では七〇%ですけれども、実際これは五〇%なんですね。釧路の釧白工業団地、最大の団地というのは全部完成になっていないからあれですけれども、完成にしちゃうと五〇%ぐらいしか売れていないと私は認識しておりますから大変だと思うのですよ。あるいはこれからできる空知の中核団地、これも大変だと思いますね。今北海道で、選挙区で飛行場のないのは第四区なんですよね。むしろ飛行場をつくって臨空工業団地にするというくらいの構想の方が私はいいんじゃないかと思うのでありますけれども、そういう意味で、北海道の閉山地域の認識について第一点伺っておきたい、こう思うわけです。  それと、炭鉱閉山すると、北炭で経験されてわかるように、土地から何から全部まとめて鉱業財団に入っちゃうわけですね。だから、例えばNEDOの方で担保を解除をしてみたところでどうにもならぬというのが本当なんですよ。これなんかを、政府が連絡会議を開いて何か解決することをやらないと、ここに随分うまく口当たりのいいことを書いてありますけれども、実際には実行に移されないのですよ。土地使えないんですから。そうすると、ボタ山だってやっぱりそうなんですね。そういう意味では、その点の打開ということが一番大事じゃないかと思うのですが、今現実に閉山されておる地域について、そういう問題についてどうお考えになっているか。この二点だけ伺って終わりたいと思います。
  65. 横路孝弘

    横路参考人 北海道の場合は、本格的な開拓、開発の歴史が本州の各県に比べますと浅いわけでございまして、百十数年の歴史しかございません。そんな意味では、町の構造も産業の構造も割と単一化しておりまして、鉄鋼の町、石炭の町、魚の町というように、あるいは米の町といいますと、産業もそれ一つが特化しておって、すそ野が狭いというような面もございますし、産業の基盤整備も最近おかげさまで大分進んでまいってはおりますけれども、本当にここ数年間で空港のジェット化もようやく進んできたということになっております。  今いろいろと御指摘ございましたけれども、例えば産炭地域、千歳空港を中心としまして、高速道路も今ようやく岩見沢から旭川に向かって建設中。ようやく今度、例えば千歳―夕張線も格上げになったというようなことで、基盤整備もこれからというような面がたくさんございます。  そのような点などにつきましても、今後政府におかれましては、この答申にございます記述が、予算を伴った具体的な政策として具体化することを、ひとつ国会の先生方にも御努力をお願い申し上げたいと思います。  確かに北海道の閉山地域はそういうような要素がございますし、例えば福島県の産炭地の閉山地域などは、その後企業誘致も大分成果が上がってきております。これはやはりいろいろな基盤整備も進み、東京圏とも近いというような点を生かしたのではないかと思っておりますが、私どももそんな意味で、今後とも基盤整備なども皆さんのお力もいただいて進めながら、産炭地域の振興を、大変厳しい状況でございますので、やはりできる限り現存炭鉱を残していただきながら、時間をいただいて、その間に私どもとしても政府の御協力もいただいて努力を重ねていく、こういうことでお願いを申し上げたいと思っております。
  66. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 終わります。
  67. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、藤原房雄君。
  68. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 本日は、参考人の皆さんには大変御苦労さまでございます。特に向坂参考人につきましては、一年何カ月ですか、大変に御努力をいただきましてこのたびおまとめになられたわけでございます。  国家行政組織法にのっとりましての審議会審議であり、また答申ということですから、これはそれなりに私どもも尊重しなければならないことだろうと思いますし、また、今までも委員会がございましていろいろ議論させていただいたところでございます。  そういうことからいいまして、ある程度の当委員会また参考人初め委員会に来ていただきましてお話をしたこと、そういうこと等についても随分勘案なさっていらっしゃる、こんな感じもするわけでありますが、当委員会におきまして、私も国内炭位置づけといいますか、意義というものについて評価はしましても、もう原料炭についてはゼロという、こういうことで将来日本のエネルギー問題について禍根を残すことはないのか、こういうこと等について、国内炭の問題については随分発言をさせていただき、また大臣にも訴えたところでございますが、今日こういう答申も出た時点におきましては、それはそれといたしまして、やはりこの答申に沿った、ある程度尊重するという立場の上に立って諸問題について考えていかなければならないだろう、こう思うわけであります。  最初に向坂参考人にお聞きをしておきたいと思うのでありますが、最初にいろいろな諸情勢について述べられ、そしてまた国内炭につきましてもそれなりの評価といいますか、位置づけをお考えになっていらっしゃるのは文面ににじみ出ておるわけであります。需給状況といいますか需給バランスというか、そういうことが一つの大きな前提の上に立っておりまして、端的にいいまして、「むすび」のところで、非常に苦しいといいますか、一方では、「石炭業界は将来とも一定生産規模維持が明確になることを期待している」ということと、「他方、需要業界の中には将来とも生産規模の一層の縮小を求める意見が根強く、いずれにせよ、政府は、」云々、こうあるわけでありますが、両論といいますか、両にらみの上に立って政府がかじ取りをせよということなんだと思います。この中で「政府は、石炭業界最大限自己努力前提とし」、これはもう当然のことだと思いますが、「その時点での経済的諸環境を勘案しつつ、適正な生産体制確保に努めることが必要である。」  今、経営者または働く人たちにとりまして、この五年間のことについては粗々、これからまだ詰めなければならないことがあろうかと思いますけれども、しかし、その先は一体どうなるのかという――それは確かに答申をまとめる段階でも難しかったろうと思います。過日も有吉参考人にこの点について私はお尋ねしたのかもしれませんが、経営する経営者、また働く人たちが今回のようなこういう大きな変動が起きるということになると、五年先、これは一体どうなるのかという、この先のことについても、ここのところは、私が今読みましたところについては答申原案にはなかったところで、そこのところに、この文章、「なお、第八次石炭政策以降について、」ということでつけ加えられておるわけでありますから、随分といろいろな御議論があったのだろうと思いますし、これだけの配慮をしたということなのだろうと私は受けとめております。しかしながら、この「経済的諸環境を勘案しつつ、」という、あくまでもこれは経済原則の上に立って「適正な生産体制確保」ということでございますが、先ほど来議論のありましたように、もうここまでまいりますと後がないということでございまして、経済情勢がさらに悪化しているということで、もうあとは、原料炭はもちろんのこと、一般炭についてももう国内エネルギーとしての価値はなくなるというようなことになってしまうのかどうか、ここのところは非常に大事なところだろうと思うのであります。「経済的諸環境を勘案しつつ、」という、ここのところについて、要するに八次策以降については大臣にもいろいろなお話をしましたが、私の現在の立場で先々までは言える立場にはないということでありますけれども審議会では随分議論もあり、また立場立場によってはそこのところは非常に大事なところでもあろうかと思うのでありますが、その辺のことについての審議会のいろいろな論議の過程、また現在の参考人のお考え等を含めましてお聞きをしておきたいと思うのであります。
  69. 向坂正男

    向坂参考人 ただいまの問題は主として電力用炭ということになるわけでございます。原料炭最終年度はゼロとするという方針でございますから、残るものは主として電力用炭その他若干の小さい需要を満たすということになるかと思います。ここに最後につけ加えましたのは、答申原案を出した後、その前からございましたけれども石炭業界、特に労働組合からは、この五年間最終年度まで非常に苦労して生き抜く、生き抜いたあげく九次策ではやめだよと言われるようなことになれば、一体何のために苦労したかということになるわけでございますから、ぜひ八次策以降も適当な規模で残すようにという強い要請がございました。また、主として電力業界でございますけれども、やはり大変割高だ、こういう割高な一般炭をいつまでもずっと引き取っていくということはやがて消費者から批判を受けるのではないかということも懸念されているようでございますし、現在でこそ円高差益などで電力業界経営的には余裕がありますけれども、将来にわたってはそういうことも決していつまでも続くわけのものではないので、国内炭の引き取り量及び価格については非常な関心を持たれるということも当然かと思います。そういう両側の意見を正直に申し上げまして、八次答申のまとめをするまでに調整することは困難であるという考えもございまして、こういう一種の両論併記で、しかし適当な時期にやはり政府は八次策以降の炭鉱維持について検討をしてほしいということを書いたというのが経過でございます。
  70. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 それは、ある時点になりまして政府の考えとか需給動向とかいろいろなことを勘案して判断するということでございますね。現在は踏み込んで先までどうするということについて文章化するとか明言するということは非常に難しいことなのだろうと思いますけれども審議会での意見としまして、心情的ということはこういう世界にはできないのだろうと思いますが、国内エネルギーとして最低限経営合理化集約化、いろいろなことがありますけれども、それを乗り越えてやはりあることが望ましいし、そうあるべきだというお考えは一致したものはあるのでしょうか。
  71. 向坂正男

    向坂参考人 この問題の判断の基準は、エネルギーの安全保障なりまた消費者に対する経済的な負担国内炭を使えばやはりそれだけ発電コストは高くなりますから、結局消費者が負担するということになると思います。したがって、その他のいろいろな事情もございますけれどもエネルギー安全保障上の国内炭の役割やそのときの国際的なエネルギー情勢なり、特に石炭をめぐる海外の動向なり、そういう面からの判断があり、また経済的な負担をどこまで消費者として受け取るかというようなことについて、結局国民の理解、国民が今のような観点からこれだけの炭鉱を残すことは妥当であるというような理解があって初めて決断できることではないかと私は思います。それを今やるよりは、何年か後にそのときの情勢を勘案して決めることの方がむしろ妥当だという考えと言っていいと思います。
  72. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 答申の原案をさらに敷衍するといいますか補足するといいますか、そういう点では、離職者対策とか地域対策とかいうところについては原案よりも答申の方につきましては具体性を持った形になっていると思うわけであります。委員会等ではいろいろなことを言われておりますが、明文化してこういう答申をきちっと出されるということになりますと、それはそれなりの評価をいたしますが、この離職者対策にしましても地域対策にしましても非常に重要な問題でありまして、産業構造調整ということで今他産業の先頭に立って石炭産業が一つの大きな新しい転換の苦しみを味わおうとしておるところでありまして、その石炭産業に対してどういう対処をするかということは、他産業もかたずをのんで見ていることだろうと思うのであります。  きょうは時間もございませんし、個々の問題についてさらに具体的にお尋ねするという時間もございませんからあれでございますが、離職者対策とか地域対策とか、ここでいろいろ言われておりますこと等を勘案いたしますと、経済情勢はもうひところとはすっかり変わっておるわけでありますから、現在の石炭基本法とも言うべき石炭鉱業合理化臨時措置法は、少なくとも閉山交付金等については四十八年以来据え置いているということ等を考えますと、全般的にこういう法律の中身についても、来年の三月三十一日ということですから期間延長はもちろんのこと、中身についてもやはり検討を加えなければならない、法改正の必要なところが出てくるのではないかと私は思うのです。離職者対策とか地域対策とか、いろいろなことについて、審議会の中でも当然その審議過程におきまして、こういう法改正が必要だということ等についてもいろいろな議論があったのだろうと私は思うのですが、このことについては審議会の中ではどのようなお話があり、また法改正も含めての問題についてはどのようなお考えを持っていらっしゃいますか、お尋ねをしておきたいと思います。
  73. 向坂正男

    向坂参考人 先ほども申し上げたように、最終段階離職者対策あるいは閉山対策、また地域対策それから過剰在庫あるいは生産規模縮小対策など、ポイントになる点についてはある程度具体的に書き込むことができましたし、それは、検討小委員会検討に基づいての提案ということでございます。来年度予算以降においてできるだけこれを確実に実現していただくことを切に要望する次第でございます。  もう一つの法改正の問題につきましては、検討小委員会の席では、正直に申し上げてこの点はむしろ政府に譲ることであって、当然法改正が必要であるという見解は持っておりますけれども、どこをどう変えるかということはこれから通産省が検討されることだと考えております。
  74. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 有吉参考人にお尋ね申し上げます。  規模縮小、なだらかな閉山、こんな言葉が使われております。まことに遺憾なことで使いたくない言葉でありますが、現実は現実として、最小限度考えてみましても、需給動向とかいろいろなことからいってそういう方向に進まなければならないのかもしれません。そういうことから、離職者対策とか地域対策とかいろいろなことについては審議会でも議論になり、答申にも明文化されておるわけでありますが、残る鉱山に対してこれまた意を注ぎませんと、せっかく残るだけの力がある鉱山にいたしましても、配慮を欠きますと、雪崩閉山といいますか力を失ってしまう。基盤が非常に弱いというだけに、残る企業に対してはそれなりの配慮をする必要があろうかと思います。  例えば閉山交付金とか経営改善交付金、こういうそれぞれの交付金があり、そしてまた対策はなされているわけであります。石油関税を初めとして石特会計という一つの枠の中で、今までも閉山はあったかもしれませんが、こんなに、五年間に日本の国の石炭産業が半分近くにということでありますから、どうしても後始末の方にお金が行ってしまう。ということになりますと、残る炭鉱には、近代化資金等で経営を何とかしなければならぬ、機械化その他合理化をしなければならない、そういう十分な合理化ができるだけの、従来並みといいますか、それなりの条件がありながら資金不足というようなこと等が起きないのかどうかということを非常に心配をしておるわけであります。  また、部分閉山なんということで、固定経費が非常にかさむという炭鉱の特殊性からいいまして、骨格構造とかいろいろなことについてはどうしてもしなければならない手当てがある。しかし、部分的に生産縮小しなければならぬということになりますと、生産性を上げようと思ってもなかなかそうはいかぬ、一時期は。そういうことで、残る炭鉱についての配慮というのは非常に重要なことだろうと思うわけであります。  こういうことについても、経営者の立場から随分いろいろな御発言があっただろうと思います。また、審議会でもいろいろな議論があったのだろうと思いますが、とにもかくにも閉山というものがあって、そのための諸対策というものがとかく論じられますが、残ってそこでたくましく生きようとする鉱山に対しての配慮を欠くとこれは大変なことになる、こんな思いも込めて有吉参考人に、これらのことについての御見解また審議の経過過程の中での御発言、いろいろなことについてお伺いしておきたいと思うのです。
  75. 有吉新吾

    有吉参考人 今の残った炭鉱での一番の問題でございますけれども、これは、最初から御質問のございます残すものはちゃんと残すという基本的な姿勢がはっきりしないというところに根本があると思うのでございます。私ども審議の始まりました当初におきましては、客観情勢からいって、つぶすべきものはつぶすけれども残すものはちゃんと残す、供給数量は減らすけれども残すものはちゃんと残すんだ、こういう考え方があったのでございます。ところが、審議を重ねていきますうちにだんだん需要家さんの、減らせ減らせという声ばかりが強く影響いたしまして、先ほどの最終的には両論併記的なそういうことに終わっておるわけでございます。私どもは、二十八日の最終総会、政策部会の前の十二日のときにおきましても、この問題はもうちょっと残すものは残すという姿勢をはっきりしてもらえないか、こういうことをるる申し上げまして、その結果が最終答申両論併記、こういうことにつながっておるわけでございます。私ども意見をとことんまで通すとなると需要家さんの賛同を得られない、こういうようなこともありまして、ああいうことになっておるわけであります。  それで、何といいましても働く人たちの気持ちの問題がやはり一番重要でございまして、この調子であったら残ったものの先行きはどうなっていくんだろうということが大方の一番不安に思っている問題でございます。でございますので、先ほどの陳述にも申しましたように、そういう気持ちが保安問題に非常に影響するのじゃないかということを私は心配しているわけでございます。それから、先行きも見込みがないようなところには最高の技術者あたりもなかなか来ない、こういうことになってまいりますといよいよじり貧になっていくというようなことでございます。そこが根本だと思っております。  それから、確かに現在でもトン当たり九百円ぐらいの赤字でございますが、それを原料炭は千円値下げをし、一般炭は五百円値下げをするわけでございまして、答申では原則として一応五年間据え置きだ、こういうような格好でございますので、経営は非常に苦しくなります。それに閉山をいたしますと、今おっしゃいますように、閉山交付金とかそういうものだけでは足りませんで、相当大きな閉山に対する負担というもの、そのはね返りが来るわけでございます。  それから、将来の八百五十万トンという電力枠というようなものを考えますと、残っている山自体がどうしてもある程度規模縮小をやらざるを得ないのじゃないか。これは、炭鉱というのは固定費が非常に高いわけでございますから、八五%ぐらい固定費になるわけでございますから、非常にコストアップにつながるわけでございます。そういうことで極力合理化には努力をして対処するつもりでございますけれども、今年もとうとうベースアップはまだ見送ったままでございますし、期末手当も六割を払っただけで来ております。  そういうようなことでございますが、いつまでもこういう状態でやっていけるかと申しますと、これまたなかなか難しい問題でございます。でございますので、私どもは今、答申にもちょっとございますけれども、一番大きいのは規模縮小に伴うところの割高、こういったものに対しまして何らかの一つの対策をやってもらえないか、こういうことをお願いをいたしております。お願いするばかりではだめで、やはり自分で努力をしなければなりませんので、極力やっていくつもりでございますけれども、繰り返して申しますが、やはり基本的に、先行きどうなんだ、これが一番の心配だ、こういうことでございます。  以上でございます。
  76. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 野呂参考人にお尋ねを申し上げますが、今有吉参考人がおっしゃったことが即また働く人たちにとっても同じことだろうと思うわけであります。  答申の中にも「労働環境等の整備」ということで、原案では一項目でありましたが、これをさらに分けて書かれてはおりますけれども、それからまた具体的に現行制度を引き継げ、こういう明文化されておりますが、働く人たちの現在非常に危惧されている、先ほども陳述がございましたけれども、重ねて先行きに対する不安ということの重要性ということを先ほどから申されているわけでありますが、明文化されていない、それがなかなかでき得ないんだというお話でございますけれども、その面のことを絡めて労働側、働く方々の立場からひとつお述べいただきたいと思います。
  77. 野呂潔

    野呂参考人 今先生から御質問のございましたことが、私たち労働者として一番心配していることなんです。それは今有吉参考人も言いましたけれども、ことしの賃金も上げないで、それからボーナスも六〇%程度の内払いでございました。皆さん方も御承知のように、炭鉱労働者、第一次のエネルギーショックのときにどうやら人並みの賃金を支給しようということで、今後閉山はないよというようになったわけであります。それから二次、三次となって――三次はまだ来てないのですが、いろいろな過程がありまして、そのときは会社の方は、賃金は鉄鋼並み、こう言って物差しを持っていたのですが、それ以降は鉄鋼並みではなくて鉄鋼とか電力、ユーザー以下ということでありました。今日の段階では、ユーザー以下ではなくて、生きるために何でもかんでも我慢せよということが物差しであります。  そうですから、労働力がそこにとどまっているだろうか。先ほど有吉参考人も言ったのですが、将来おまえの産業は心配ないよということでなければ若年労働者は入ってくるわけがないのであります。今いる労働者も、これはもう早く逃げ出した方が、御身大切にした方がいいわということで流出いたします。そうなりますと労働力の面から石炭産業は崩壊していくだろうというのが私たちの心配でありますので、そこのところをはっきりと書いてほしいしやってほしい、こういうふうに言ったわけであります。  両論併記をされました。私はその中では、ヨーロッパのどこよりも負けないで生産性も上げ、労働時間の延長もし、協力をし、努力をし、世界の炭鉱の技能者コンクール大会では常に第一位をとるというくらい頑張ることだけは、この国会の場でもお約束をいたします。しかし、それにこたえるようにしてほしいと思っているのであります。  これからは、八次策以降は電力だけですから、電力は公益事業でございますし、ヨーロッパエネルギーでもうけているところはないわけでありまして、イギリスもドイツもフランスも、イタリアにおいてもベルギーにおいても、その他すべてのヨーロッパではエネルギーは全部公的所有であります。したがって、日本の国内石炭もそういうように皆さん方の御協力によってさしていただくことができるのではないかと思うわけでありますが、それまで何としても歯を食いしばって頑張っていかなければならない、こう思っておりますので、より具体的なそれらの対策を本委員会検討されて、政府にやらせるようにお願いをいたしたい。  それから特に離職者対策について鳩山先生からもありました。私たち心配しているのは、確かに文言ではきれいに書かれていますけれども、現実の処理としてはあの高度成長政策、五千万トン体制から急激に減っていったときは全部高度成長政策でしたから、他産業に受け入ればできました。今日他産業に受け入れるようなところは何一つとしてない。国鉄問題でもそうでありますが、受け入れるところがないのであります。ないけれども閉山をし炭鉱離職者が出ていくのであります。出ていって行くところがない。そして物すごい低賃金の中で生活をしていくということを考えますと、私はここでそのことについて、これから労働組合としては一生懸命皆さん方に頭を下げて就職対策をお願いせざるを得ない。一人でも二人でもということでやらなければならないのですが、一万人以上も出るような状態でございますので、ひとつ国会の中で十分考えてやっていただきたい。その点は私たちは、政府に、国鉄でとっているようなそういう対策をお願いをしたいものだということをこの席をかりて、藤原先生からの御質問ではございませんでしたが、特に労働者としてのお願いをいたしたい、こう思っています。  以上であります。
  78. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 時間もございませんで、端的に申し上げますが、横路参考人に、私も災害対策、いろいろ委員会を担当したことがございますが、自然災害じゃなくて人為的激甚災害というような感じがしてならない北海道の各一次産業が集中的にこういうことでございますので、地域の問題について責任ある立場に立ってその施策を遂行するということになりますと、どうしてもそこには裏づけとなる財源がなければならないということで一番のお苦しみになっていらっしゃるのはそこにあるのだろうと思うのであります。政策を立てる、いろいろな計画を立てましても、その裏づけになるものが――過日あの漁業交渉によりまして漁船の減船問題がございましたが、二百八十億という国の補償だということですが、地方自治体が百億近くの負担を強いられるということで、最近行財政改革ということで地方に財政の負担がどんどんふえておるという、こういうことを考えますと、この石炭政策につきましても当然地域問題として道が、県が取り組まねばならない問題もあろうかと思います。  しかしながら、国が本来ならば負担してやっていただける部分について随分地方自治体の負担がふえ、そしてそれが計画を立ててもなかなか遂行できないという、こんなことがあってはならない、こんな気持ちで私はおるわけでありまして、いろいろなことを申し上げたいのでありますが、地域のいろいろな計画等今進められていらっしゃるのだと思いますし、また主張もいろいろおありになると思いますが、この財源ということについて非常に心配して先ほどもお話がございましたけれども、今後に政府に対するといいますか、この答申を受けた段階での要望等端的にひとつお述べいただければ、こう思います。
  79. 横路孝弘

    横路参考人 確かにこれは全国的でございますけれども、特に北海道の場合、経済も低迷しておりまして、税収の伸びに多くを期待できない。しかも他方補助率カットの影響を大変、従来補助率が高かったということもございまして道財政、大きな影響を受けておりまして、この間の公共、非公共合わせまして補助率カットによる負担増が大体年間で八百億円ぐらいに上っております。そういう中で市町村、特に産炭地域では、例えば電気でございますとか上水道といったような従来炭鉱企業の方から供給を受けていたものについて、炭鉱閉山になった場合に地域の残っている住民にどうするのかというような問題など、やらなければならない仕事が随分たくさん出てくるわけでございます。これらにつきましては、先ほどいろいろな地域振興策のための財政支出の増加分でございますとか、あるいは人口の流出に伴う税の減収分などを交付金でぜひ見ていただきたい。そのためにはやはり増額措置をやっていただきたい。  また、この際、例えば確かに滞留がございます。数年前に閉山になりました北炭夕張新鉱の例をちょっととってみますと、この十月末現在でございますが、職業安定所への当時の求職者数は二千四百五人ございました。うち就業者数は千二百八十七名でございます。そのほか移転した者が五百十一名ということでございまして、必ずしも正確な数ではございませんが、残る六百名ぐらいの方が地元におられるというように見ております。しかも、この就職者数千二百八十七名のうち九百五十名が炭鉱に再就職をしておりまして、今後炭鉱での受け入れがないとすれば、地元での滞留者が相当大幅に出るということは必至な状況になっております。私は、先ほど来申し上げておりますように、これらの人々に対して生活保護費ということではなくて、やはり仕事をしていただいて生活をしていただく、そういう生活の糧というものがどうしても必要だというように思っております。  そんな意味で、この産炭地域それぞれの市町村でもいろいろな事業に着手をしたり、地域開発、観光開発などの努力も始まっておりますけれども、財政面でのバックアップということで、先ほど基金などをぜひつくっていただきまして、その財源などにつきましてはいろいろ御議論もあろうかと思いますが、例えば輸入炭から一定のお金を納めてもらうというようなことなどもその方法の一つかと思いますので、何とか工夫をしていただきまして、地域振興のための財源あるいは基金制度といったようなものをこの際つくっていただければというように思っておるところでございます。
  80. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、小渕正義君。
  81. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 参考人の方、大変御苦労さまです。特に向坂参考人には長い間御苦労をお願いして大変感謝いたしておりますが、きょうはそういう点は知りながらも率直なところをいろいろとお尋ねしたいと思います。  先ほど来よりこの第九次政策、果たしてあるのかどうかということが一番今回の答申のポイントになっておるわけであります。一千万トン体制以後がどうなのかということでありますが、そういう点で先ほど来の石鉱審での大変御苦労なさった経緯等もお聞きしておるわけでありますが、しかし、何といいましても、この答申案の流れを見ますならば、残念ながら向坂参考人には一千万トン以後のことに触れることについては、議論することについては非常にいろいろとまた問題が出てくるので、それ以上のことは触れなかったということを言われたわけでありますが、結論的に言いますならば、問題は、我が国石炭産業縮小傾向の方向で一つの方向として出しておるのか、もう撤退だということの中で今回の答申案が出されてきたのか、その点が流れを読んでみましても極めて不明確ですね。しかし、全体として感じられるのは、もう撤退方向に行かざるを得ないような流れができ上がっているのが今回の答申案じゃないか、こういう私なりの判断をしているわけであります。  特に一千万トン体制以後については、これは「国内炭生産の在り方」の中でも「需要業界最大限協力を得るとしても、原料炭の引取りについては、今後漸減して最終約にはゼロとせざるを得ず、また、一般産業用一般炭についても、原則として同様の傾向を辿るものと考えられる。」このことを見ますならば、もう当然これは結果的には一千万トンを、とりあえず五年後までは一千万トンになりますが、それ以後は需要家側の意向を勘案していくと原料炭と同じような一般炭の方向もやむを得ないということでありますから、需要家側としてはもう国内炭要らぬ、高いから要らぬという一つの流れですから、そういうことを考えますならば、もうこれはまさに石炭産業我が国から撤収してしまうという流れをここの中でつくり出しておるのではないかという気がしてならぬわけでありますが、その点はいかがでしょうか。
  82. 向坂正男

    向坂参考人 ただいま答申案の内容の一部御紹介がございましたけれども原料炭がゼロ、それから一般炭についても同じような傾向ということは八次策の中のことでございまして、それ以降のことに触れるような内容ではないというふうに私どもは考えて報告書をまとめている次第でございます。御承知のように現在一般炭千二百万トン程度でございましょうか、それが最終年度には一千万トン近くに減るという方向をそういうふうにあらわしたということでございます。  それで、新聞のコメントなんかにもありましたように、何か全体としてもう撤退する方向を考えているのではないかということがございましたが、決してこの検討小委員会ないし政策部会でそういう方向を考えているわけではございません。ただし、炭価は据え置き。これは、需要業界にあれだけの引き取りを協力してもらうのに、これ以上炭価を上げたのではとても引き取れないというような強い意見もございましたし、それから一方、石炭産業としてもできるだけの合理化をして、こういった炭価を上げなくても残存炭鉱については生き抜けるような努力をしてほしいという意味を込めて、基準炭価制度は残すけれども上げるのは難しいということを明示した。そのほか、いろいろな政策のフレームを示して、この中で石炭企業としては自主的な合理化努力で生き抜いてほしい、ただし、八次策以降のことについては改めて検討するということでございます。
  83. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 八次策五年間のことだけだということですが、今この答申に盛られた流れがずっと五年間続くとしますならば、先ほど来より有吉参考人または野呂参考人からも言われておりましたが、結果的にはこの一千万トン体制すら維持できないような企業企業基盤がもうますます弱くなってしまって、先ほども例が出ておりましたが、将来に対する展望がなかったら、先ほどの労務倒産じゃないけれども、まず働く人たちが集まってこない。これは現実の問題です。しかも、若い技術者なんかがとても来ない。そういうことだけ考えてみても、もうやりたくてもやれないような状況にだんだん追い込まれていって、自然安楽死ですか、そういう方向にもう行かざるを得ない状況に五年後にはなるのじゃないでしょうかね。そのときになって何らか新しい対策を立てようとしたところで、そのときはちょっと手おくれになるのではないかという、私なりのそういう気がするわけです。  したがって、一千万トン体制までこの八次で触れるならば、それを一千万トン体制にするならば、せめてそれなりに国としてどういう措置をしなければいかぬか、そういうものについてもう少し大胆に踏み込んだ問題提起がもう少し盛られてよかったのじゃないかと私は思うのですね。これは何か非常に申しわけないのですけれども、ちょっと失礼な言葉になるかもしれませんが、余りにも両論きれいごとばかり並べて書いてあるという、これは率直なところで申しわけございませんけれども、やはりもう少し国に対しても問題提起として思い切って踏み込んだことがこの中に盛られてもよかったのではないかという気が私はするわけです。  特に、この中でここにも触れられておりますが、ある面においては国内炭エネルギー政策上の相応の役割ということはそれなりに、程度は変化しておるとしても、そういう役割を果たさなければならぬということが一応触れられておるわけですね。だから、そういう点からいきますならば、特に既存炭鉱地域経済、社会における重要な役割を果たしている、そういう面にも触れられておるわけですから、そういう面からいくならば、そういうことから考えた場合にもう少し踏み込んだ政府に対する問題提起というか、そういうものがこの中に盛られてよかったのではないかという気がするのです。特に、先ほどから会長言われておりましたが、消費者動向その他勘案していくと、将来どうなるとかいろいろ言われておりましたが、しかし、我が国の国内唯一のエネルギー資源としての石炭産業位置づけについても、総合的な我が国経済政策全体の中でひとつぜひ考えてほしいとか、何かもう少しそういう踏み込んだ問題提起をそれなりに盛られるべきではなかったかという感じが私はしてならぬわけです。  そういう意味で、先ほどちょっと失礼なことを申しましたが、余りにもきれいごとばかり並べたにすぎないような惑じになっていると思うのですが、そういった点は、特に今の石鉱審の構成メンバーからいきますならば、需要業界と供給業界、あとは第三者的な人たち、それの言い分を何とか中和させて盛って書いてしまったということだけでは、私は石鉱審としての立場としては中身についてもう少しそういう意味での問題の提起が欲しかったという気がしてならぬわけでありますが、その点に対する御見解があればお聞きしたいと思います。
  84. 向坂正男

    向坂参考人 ただいまの御発言はよく率直に受けとめて、これからの石炭政策の展開についてもその心得でやりたいと思います。  問題は、八次策をまとめねばならない、それには、委員の構成から考えましても全体にいろいろな配慮をせざるを得ない、ただ、それらを総合的な立場からどういうふうに判断するかというのが検討小委員会なんかの特に任務だと思ってやってまいりました。ですから、各方面の言い分はできるだけ聞きましたし、その言い分の合理的な調整点をどこに求めるかということが我々の仕事でございましたし、確かに表現には両論併記的なことも残っていると思いますが、しかし、目標を一千万トンまで下げるけれども、その実現をするための企業努力なりあるいは需要業界協力なり、また特に生産縮小が当初予想していたよりも早まるものですから、特に過剰対策その他、政府支援策の強化を訴えるというつもりで書いたつもりでございます。
  85. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 次に移りますが、企業の自助努力ということが、特に合理化努力でいろいろ今後やれということで、特に炭価据え置きという状況の中で触れられているわけでありますが、どうなんですか。率直に申し上げまして、今のそれぞれの炭鉱の中でまだまだ合理化努力が足らぬ、余地が十分ある、本当にそういうお考えをお持ちですか。現状果たしてそういう余地がまだ十分残されておりますか、その点率直にお尋ねします。向坂参考人並びに有吉参考人にお尋ねいたします。
  86. 向坂正男

    向坂参考人 私ども考え方として、石炭政策は甘過ぎるという批判もいろいろ受けております。財政は大変困難でございますし、ほかの業界にもこれから苦労の多い業界がたくさんあって、やはり問題は、この困難な時期を切り抜けるのは企業の自主努力であり、労使の協力という以外にないという判断でやっておりまして、この一定政策の枠組みの中で企業の自主努力によって何とか切り抜けてほしいというのが答申趣旨と考えております。
  87. 有吉新吾

    有吉参考人 三十年代のスクラップ以来合理化合理化を重ねてきておりまして、おっしゃいますようにこれをやればコストがこれだけ下がる、そういう非常に決め手になるような合理化案というものは今手元にはございません。一番手っ取り早いと申しますか、炭鉱というのは労働集約型でございますので、賃金、給与、こういうふうな問題をどうするか、こういうようなところが大きな要素に最終的にはなってこざるを得ないというのが一つの現実でございます。  ただ、全然そうでなしに余地がないかと申しますと、具体的にどこをどうするということではなしに過去のあれを見てまいりますと、毎年毎年ほんのわずかでございますけれども能率は上がってきているわけです。それでもって深部移行とか遠くなりますそういうコストアップを吸収をしてきておるわけでございますので、そういう今までの実績に徴しましても、さらにその努力を重ねていってそういう深部移行、遠くなるコストアップの吸収だけでなしに、よりコストを下げるような努力もしていかなければならぬ、こういうふうに思っております。
  88. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 私も三井の有川また松島のそれぞれ現地を見ましたが、ぎりぎりのところまで機械化されて今日まで生産上げておられるわけで、そういう関係から考えまして、いかに資金を投入しても果たしてまだそういう余地が残されておるのかなという疑問がなしとしなかったわけで、結果的には諸経費の節減、ひいては労務費その他のただもう縮減という形の中でこれがすべて肩がわりされてしまうのではないかという気がするわけであります。そういう面からもまさにこれは安楽死の方向へ行かざるを得ないような状況をつくり出すのじゃないかという懸念をするわけであります。  それは一応別といたしまして時間がございませんが、今回離職者対策閉山対策その他についていろいろ盛られていますね。しかし、先ほども話がありましたが、約二十年間炭鉱がそれぞれ閉山されていって産炭地域振興対策ということで国がいろいろの対策のための資金を投入してきた。それでもまだ産炭地から外れた地域といえばいわきと宇部ですか、あの地域二つだけに限って、ほかの地域は依然として今日でもまだ産炭地域振興の対象地域市町村として抜け出せない。こういう中で、しかも先ほど出ましたようにかつての高度経済成長政策の時代ならまだ就労、雇用吸収というものがある程度可能だと思われますが、今日のこのような来年度からもう失業率大幅にアップしようという状況の中で、こういう閉山による失業者を出していこうというわけですから、そういう意味では十ぐらいの今までのようなそういう地域振興対策閉山対策だけではだめなんだ、もう少し政府は思い切って大胆に取り組むべきであるというようなそういう問題提起というものが私は盛り込まれなければいかぬのじゃなかったのかという感じがするのです。先ほどからいろいろ文章盛り込まれておりますが、そういう意味でもう少し、ただ単なる従来のそういう今日までの産炭地域の実情というものをどこまで本当にいろいろ調査されてやられたのかなという疑問なしとしないのです。そういった点であと一歩踏み込んだものでないと、また従来の今日までいろいろ取り組んできたものをただいろいろやるということだけでは私は一つも問題解決にはならないのじゃないかという気がするわけですが、そこらあたりに対しての検討状況を御説明いただきたいと思います。
  89. 向坂正男

    向坂参考人 検討小委員会検討している過程ではある程度閉山生産縮小はやむを得ない、第七次策までと違って閉山対策あるいは地域対策、この地域対策閉山後だけではなくて残存する炭鉱地域についても先行的にいろいろ地域対策を講じてほしい、そういう意見委員会の中でも強く出てまいりまして、その意味では、これまでの政府支援策をより一層充実してほしいということでいろいろ議論をいたした次第でございますし、答申の中にはそういう意気込みは、姿勢は、抽象的ながらも、ある程度抽象的という批判を受けるかもしれませんけれども、なるべく具体的に書き込めるものは書き込んで、全体としてはそういう姿勢が出るようにというふうに考えたつもりでございます。
  90. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 時間が参りましたので終わります。どうもありがとうございました。
  91. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、児玉健次君。
  92. 児玉健次

    ○児玉委員 きょうは御出席いただいてありがとうございました。  これまで随分多岐にわたった論議、とりわけ八次策を仮に実施していくとすれば、私たちは八次策にどうしても賛成することができませんが、八次策を実施していくとすればどういう問題があるか、そういった観点からの論議が続きましたが、私はちょっと観点を変えまして御質問をしたいと思うのです。  最初に、横路参考人にお伺いしたいのですが、この夏以来、北海道の赤平とか三笠とかその他各地で、産炭地の市町村を含む北海道を中心とした地域ぐるみの集会がございました。私もずっと参加させていただいたのですが、その中で、なだらかな閉山であればやむなし、こういう声はついに聞かれませんでした。そして、産炭地域からの私どもに対するさまざまな要望書で一致しているのは、現存する炭鉱の存続、先ほど横路参考人も陳述の中でお述べになりましたが、それが一致した願いである、そのように私は受けとめております。  そこで伺いたいのですが、調べてみますと、昭和三十五年以来の全国各地の閉山に関連して支出された国の経費、通産省の調べですが、一兆一千七百億、これは過少に過ぎると思っていますが、一兆一千七百億を現在の物価に置きかえれば恐らく数兆になると思うのです。そこで、この八次政策を実行するとすれば再び巨額の支出が必要になりますが、閉山に必要な経費を国内炭に対する国の保護策に回すとすればどのような展望が開けていくか、現存する炭鉱の存続を可能にする国の政策についての御意見を含めて、産炭地の知事でいらっしゃる横路知事の御意見を伺いたい、こう思います。
  93. 横路孝弘

    横路参考人 先ほど来申し上げておりますように、私どもとしては、現存炭鉱存続を何とかしていただきたいということが産炭地を含めた私どもの願いでございます。石炭鉱業を長期間存続させるためには、やはりその再生産が可能となる炭価の決定、そしてまた需要確保という点が最大の課題ではなかろうかというように思っております。最近の海外炭価格動向あるいは石油価格の動向などから見まして、やはり現行対策のみでは石炭鉱業を長期間維持をしていくということは、これは困難ではないかと思います。  そこで、各国それぞれいろいろな工夫が行われているわけでございますけれども基本的には、やはり政府において大幅な助成策を行うということしかその方法はないものと考えております。
  94. 児玉健次

    ○児玉委員 そこで、向坂参考人にお尋ねしたいと思います。  私は、海外炭価格に国の保護その他の諸政策によって国内炭価格をいかにして近づけていくか、ここが世界の趨勢だと思っていますし、そしてそのような努力を行うということはそれぞれの国の経済的な主権の行使だ、こういうふうに考えております。前回のこの委員会でも参考人にお伺いしたのですが、そのとき明確なお答えをいただけなかった。  昭和三十七年の十月に、有沢広巳先生調査団長とする調査団が派遣されて報告書が提出された。よく御存じです。その中で「石炭が重油に対抗できないということは、今や決定的である」短期的な見通しでなくて長期を見通して、今や決定的、こう言い切られました。  ところが、その後の経過は御存じのとおりで、二次にわたるオイルショック、さらには海外諸国の石炭重視策を見るならば、政府の有沢調査団の犯した誤り、その責任の重大性を私はやはり強調せざるを得ないのです。参考人は、この十月二十日の委員会で、七次策の判断はやや楽観的過ぎた、こう私にお答えになった。有沢調査団の報告の誤りでなくて、七次策の判断が楽観的に過ぎた、そちらの方に開題があったという趣旨のお答えがありました。私は、どうしてもこれには納得がいきません。  そして今、昭和六十一年の十一月、今度は参考人中心になられて第八次石炭政策。その中では、国内炭海外炭との競争条件の悪化、それを長期を見通して指摘され、そして今、前川レポートの線に沿って国内石炭産業を崩壊させる方向に導かれているのではないか、こう受けとめざるを得ないのです。多少率直過ぎるかも知れませんが、そう受けとめざるを得ません。  IEAの閣僚理事会が昨年七月にありましたときには、その理事会のコミュニケの中で、一九九〇年の石油市場の逼迫、この予測を無視することは軽率かつ危険である、そのように指摘もしているわけです。その軽率かつ危険な方向を石鉱害は今残念ながら歩みつつあるのではないか、こう考えるのですが、その点いかがでしょうか。
  95. 向坂正男

    向坂参考人 内外炭価格差が今後どうなるかということは、この検討小委員会の当初において検討いたしました。事務局からもいろいろな資料を提出してもらって検討したわけでございます。  石炭価格は、現在もう供給過剰の状況でございます。特に環太平洋をめぐる産炭国は、炭鉱の開発のみならずインフラの整備も進めておりまして、なぜ日本は高い国内炭維持して安い海外炭を買わないのか、もっと市場を開放したらどうかということを言っているような状態でございまして、私は、石炭と石油とは事情が違うと思います。石油は、今の消費の伸び率が小さくはなりましたけれども、特殊な政治的な危機がないとしましても、来世紀の当初のある時期にはもう増産の限界に参ることは大体地質学者の一致しているところでございます。しかし、石炭についてはそういう事情がございませんし、特に、最近のように露天掘り中心の開発になってまいりますと、海外炭価格が日本の国内炭価格を超えるというような事態は私はおよそ考えられないという認識に立っております。
  96. 児玉健次

    ○児玉委員 その点について私は一つだけ指摘をしておきますが、現在、今先生からお話のありました海外炭について、その海外炭の資源を大手のメジャーがかなりの比率でもって占めつつある、そういう問題がある。ある研究者によれば、一九九五年、二〇〇〇年、二〇一五年、この段階になると、世界全体で現在稼行中の炭鉱だけでは需要を賄うのが困難になる、こういう指摘もございます。そして、一ドル百六十円台という現在の円レートがどこまで続くかという問題もあります。そういった中でこの後の石炭政策については、日本の石炭産業を大きく燃え上がらせる可能性を十分に含むという柔軟性、フレキシビリティーをこの後の皆さんの論議の中でぜひ進めていただきたいということを要望して、最後野呂参考人にお伺いしたいと思います。  昨日、首相の諮問機関である経済審議会経済構造調整特別部会がいわゆる産業構造の調整、そして空洞化の問題についてまたレポートをお出しになっております。そして、野呂参考人よく御存じのとおり、石炭における大幅な失業者の創出の問題それが石炭にとどまらず前川レポートの線に沿って鉄鋼、造船、非鉄金属、そういう方向に今急激に進みつつある。ちょっと私たちが試算しただけで、鉄鋼で約四万人、造船で三万人、それに石炭の予想される失業者の数は先ほど野呂参考人がお述べになったことと私たちの考えは一致いたします。そういった全体の失業、雇用状況の中で現に山で働いている労働者の暮らしと権利を守る、その点でどのような抜本的な政策を求めていらっしゃるのか、この点をお伺いしたいと思います。
  97. 野呂潔

    野呂参考人 ただいま児玉先生から質問があったところがこれからの私たち労働組合として一番頭の痛いところであり、現実に生活の場を追われて、そしてまた就職の場がない、生活を求めるところがないということで、これから後半年もたちますと各地で家庭崩壊、社会問題というようなことが起きるのではないかと危惧しているわけであります。  したがいまして、そういうようなことのないようにするにはどうするのかといいますと、私たちの望みといたしましてはやはり就職をさせる、その就職の場は第一には炭鉱があればいいわけでありますが、炭鉱がない場合にはそれにかわるような企業とかそういうところに就職ができるようにしてほしい。就職ができるといっても、生活ができないような企業就職しても家庭が崩壊するわけでありますから、雇用対策としてやはり一定の金額を国が面倒を見る。これは多少長期的になるかもしれません。五年とかそういう期間が必要かもしれませんけれども、先ほど私が言いましたように、十六万円で、札幌に出てきて家を借りて、朝から晩まで働いて、そして家庭の生活を維持できるかといったら、できないのであります。そうすると二十万円以上ということになると最低五万円、そういう金は国の政策の中で負担をする、雇用主に手当を支給するというような政策がどうしても必然的に必要であります。そういうようなことを総合的に考えていただいて、この閉山問題が現実問題として社会不安とか家庭崩壊ということで問題にならないように、ひとつ先生方の御協力を特にお願いいたしたいということが私たちの希望であります。  以上でございます。
  98. 児玉健次

    ○児玉委員 同様の質問を使用者の立場でいらっしゃる有吉参考人にいたしたいと思います。
  99. 有吉新吾

    有吉参考人 そういうことも考えまして、特定不況産業の指定に加えてもらいまして雇用者側に対する何らかの補助を出してもらう、こういうふうなことをつい最近閣議で決めていただいたわけでございます。
  100. 児玉健次

    ○児玉委員 きょうはお忙しいところを御出席いただいてありがとうございました。  私たちも、なだらかな閉山、ソフトランディングという立場でなく「あくまで国内炭をこの後維持発展させる、そのためには国の政策として国内炭に対する保護政策をこの際模索して、そして明年度の予算に向けてそれを具体化していく、そのために努力をすることをお約束して、私の質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  101. 竹内黎一

    竹内委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。  この際、暫時休憩いたします。     午後一時七分休憩      ────◇─────     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕