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1986-10-20 第107回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十月二十日(月曜日)     午前九時三十分開議  出席委員    委員長 竹内 黎一君    理事 愛野興一郎君 理事 麻生 太郎君    理事 久間 章生君 理事 古賀  誠君    理事 野田  毅君 理事 中西 績介君    理事 鍛冶  清君 理事 小渕 正義君       大島 理森君    自見庄三郎君       三原 朝彦君    村井  仁君       岡田 利春君    中沢 健次君       細谷 治嘉君    藤原 房雄君       吉井 光照君    児玉 健次君  出席国務大臣         通商産業大臣  田村  元君         労 働 大 臣 平井 卓志君  出席政府委員         通商産業政務次         官       中川 秀直君         通商産業政務次         官       小島 静馬君         通商産業大臣官         房総務審議官  山本 幸助君         通商産業大臣官         房審議官    緒方謙二郎君         通商産業省立地         公害局長    加藤 昭六君         資源エネルギー         庁長官     野々内 隆君         資源エネルギー         庁石炭部長   高橋 達直君         中小企業庁計画         部長      小林  惇君         労働政務次官  松岡滿壽男君  委員外出席者         労働省職業安定         局高齢者対策部         長       新村浩一郎君         参  考  人         (石炭鉱業審議         会政策部会長         需給価格部会         長)      向坂 正男君         商工委員会調査         室長      倉田 雅広君     ───────────── 委員の異動 十月二十日  辞任         補欠選任   金子原二郎君     大島 理森君   古賀 正浩君     村井  仁君 同日  辞任         補欠選任   大島 理森君     金子原二郎君   村井  仁君     古賀 正浩君     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  石炭対策に関する件      ────◇─────
  2. 竹内黎一

    竹内委員長 これより会議を開きます。  石炭対策に関する件について調査を進めます。  この際、田村通商産業大臣及び平井労働大臣から、それぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。田村通商産業大臣
  3. 田村元

    田村国務大臣 過ぐる七月に通商産業大臣を拝命いたしました。当然のこととして石炭問題とは深いかかわりを持つ職務でございます。皆さんにはいろいろとお教えをいただかなければなりませんが、何分にも浅学非才な身でございまして、今後ともどうぞよろしくお願いを申し上げます。  本日は、石炭問題に対します私の考えを基本的に申し述べまして、皆様方の御参考に供したいと存ずる次第であります。  御承知のとおり、我が国石炭鉱業を取り巻く情勢には非常に厳しいものがありますが、私といたしましては、石炭政策推進に最善を尽くしてまいる所存でございます。委員長初め委員各位格別の御指導、御協力お願い申し上げる次第でございます。  大変簡単なごあいさつで痛み入りますが、目下、御承知のように第八次審で御審議をいただいております折でございますので、私から多くを申し上げることをあえて御遠慮申し上げます立場を御理解賜りたいと存じます。  それでは、続きまして、第百七回国会における衆議院石炭対策特別委員会の御審議に先立ちまして、石炭対策に対する私の所信一端を申し上げます。  近年、国際石油情勢は基本的には緩和基調で推移しており、昨年末から原油価格も大幅に低下しております。  しかしながら、こうした原油価格低下は、将来のエネルギー需給逼迫化を早めるおそれがあります。エネルギー供給構造の脆弱な我が国が、二十一世紀に向けて健全な発展を遂げていくためには、中長期的な展望に立脚して、石油代替エネルギー開発導入促進を図るなど、エネルギー安定供給のための基盤づくりを着実に推進していくことが極めて重要になっております。とりわけ、石炭につきましては、石油代替エネルギーの重要な担い手の一つとして大きな期待が寄せられており、政府といたしましては、総合エネルギー政策の重要な柱の一つとして、石炭の安定的な供給確保とその利用の拡大を図るため、引き続き所要の施策を推進してまいりたいと考えております。  まず、国内炭につきましては、エネルギー供給安全保障機能において相応の役割を果たしているところでありますが、国内炭エネルギー供給に占める比重の低下、近時の内外炭価格差拡大等を踏まえますと、その役割は従来に比べ変化しており、従来のように生産を前提として需要確保するという考え方をとることは困難となってきております。  このような諸情勢変化を踏まえ、地域経済社会への影響を極力緩和しつつ、石炭鉱業生産集約化を図るべく、現在、石炭鉱業審議会において第八次石炭政策検討が鋭意進められております。  これまでの審議の過程では、原料炭問題を中心需給業界意見になお隔たりがあり、その調整に時日を要しておりますが、今後の同審議会審議進展期待しているところであります。  政府といたしましては、同審議会最終答申を踏まえて適切に対処してまいりたいと考えております。  また、国内炭生産に当たっては、保安確保が大前提であり、近時重大災害の教訓を踏まえ、自主保安を基本としつつ、保安確保に万全を期してまいる所存であります。  次に、海外炭につきましては、低廉かつ長期安定的な供給を図るため、産炭国における探鉱開発から、コールセンター等国内受け入れ施設の整備に至るまで、一連の海外炭安定供給システム確立を図ってまいります。  鉱害対策につきましては、臨時石炭鉱害復旧法等関係法律の期限内に残存鉱害最終的解消を図るべく、公正かつ円滑な鉱害復旧の実施に努めてまいる所存であります。  産炭地域振興対策につきましては、産炭地域計画的な発展を図るため、引き続き総合的かつ効率的な対策を実施するとともに、石炭鉱業生産集約化に伴う地域経済社会への影響緩和に努めてまいる所存であります。  我が国石炭鉱業は、国際的なエネルギー情勢変化の中で、現在、重大な岐路に立たされております。  私としては、関係者理解協力のもとに、新たな石炭政策確立全力で取り組んでまいる所存でありますので、委員各位におかれましても、今後とも御支援、御協力をいただきますようお願い申し上げます。(拍手
  4. 竹内黎一

  5. 平井卓志

    平井国務大臣 大変ごあいさつが遅くなりましたが、先般、労働大臣に就任いたしました平井卓志でございます。  第百七回国会における衆議院石炭対策特別委員会の御審議に先立ちまして、石炭鉱業における今後の労働問題につきまして、一言所信を申し上げます。  今日の我が国経済は、昨年九月以降の急速な円高進展や国際的に調和のとれた会社への変革を図るための経済構造調整推進等への適切な対処が求められておりまして、労働行政を取り巻く環境には極めて厳しいものがございます。本委員会におかれましても、石炭需給問題、鉱山の保安問題、石炭鉱業からの離職者に対する再就職問題、旧産炭地振興問題等労働行政に密接にかかわりを持つ重要な課題を抱えておられます。また、最近に至り、石炭産業を取り巻く情勢は一段と厳しさを増してきていると承知いたしております。  今後の石炭政策のあり方につきましては、現在、石炭鉱業審議会において炭価問題等の大きな課題を抱えながら、鋭意審議がなされているところでありますが、労働省としましても同審議会からの答申を踏まえ、関係機関との連携を一層密にして新たな状況のもとでの石炭政策推進に万全を期していくことが必要であると考えております。  労働行政に課せられた責務は、石炭鉱業における労働者の雇用の安定とあわせて、労働安全衛生法等に基づきその保護に努めるとともに、合理化等により離職を余儀なくされた方々に対しては、炭鉱離職者臨時措置法等に基づき、手厚い援護の措置をとりつつその再就職の促進に努めることにあり、その重要性を認識し、これらの課題全力を挙げて取り組んでまいる所存でございます。  以上、石炭鉱業における今後の労働問題につきまして所信一端を申し上げました。  私は、労働行政に寄せられている国民の期待にこたえ、活力のある豊かな経済社会を実現していくため、政府社会政策産業政策と密接な連携をとりながら、地方公共団体とも緊密な協力関係を保ちつつ、山積している課題の解決に向けて全力を挙げてまいる所存でございます。  委員長初め委員各位の一層の御指導、御鞭撻を賜りますようお願いを申し上げます。  以上であります。(拍手
  6. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、中川通商産業政務次官小島通商産業政務次官及び松岡労働政務次官から、それぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。中川通商産業政務次官
  7. 中川秀直

    中川政府委員 通商産業政務次官中川秀直でございます。  ただいまの大臣あいさつにもありましたように、石炭行政をめぐる環境にはまことに厳しいものがあると考えております。今後は田村大臣のもと小島政務次官とともに新たな石炭政策確立、遂行に全力を挙げて取り組んでまいりたいと考えておりますので、委員各位格別の御指導、御鞭撻を心よりお願い申し上げる次第であります。ありがとうございます。(拍手
  8. 竹内黎一

  9. 小島静馬

    小島政府委員 通商産業政務次官小島静馬でございます。  国内石炭鉱業が厳しい環境に置かれている中、中川政務次官とともに田村大臣を補佐し、石炭行政推進全力を挙げてまいりたいと思います。  何とぞ委員各位格別の御指導、御鞭撻お願い申し上げます。(拍手
  10. 竹内黎一

  11. 松岡滿壽男

    松岡政府委員 おはようございます。労働政務次官を拝命いたしました参議院松岡満壽男でございます。  労働行政を取り巻く環境は、ただいま大臣所信表明にございましたようにまことに厳しいものがございますけれども、大臣を補佐し、全力を尽くしたい、かように考えておりますので、委員長初め、委員皆様方の御指導、御鞭撻を心からお願い申し上げまして、ごあいさつといたします。(拍手)     ─────────────
  12. 竹内黎一

    竹内委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として石炭鉱業審議会政策部会長需給価格部会長向坂正男君の出席を求め、御意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 竹内黎一

    竹内委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人からの御意見質疑応答の形で聴取することといたします。     ─────────────
  14. 竹内黎一

    竹内委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡田利春君。
  15. 岡田利春

    岡田(利)委員 向坂先生御苦労さまでございます。先般、参議院エネルギー調査会出席をされて第八次政策審議状況、また昭和六十一年度の原料炭価の問題についていろいろ述べられておることを承知をいたしておるわけです。  ただしかし、今日の事態はさらに深刻な状況が追加されておるわけであります。本日十時から、三菱鉱業においては労働組合に対して臨時経営協議会開催を申し入れをする。この席上、高島炭鉱閉山提案が行われて、十一月の二十日までには閉山を完了したい、全員解雇をする、こういう提案がなされることは明らかな状況になっておるわけです。もちろん今日まで長い時間かけてそれぞれの企業から意見の聴取もいたしておりますし、また中間報告を読めば、中間報告の中では、今後企業経営についてのとことん詰めた意見も求めて詰めていく、こういう内容中間報告にも盛られておるわけであります。  そういう点から判断いたしますと、検討小委員会もしくは小委員長として、この三菱高島閉山については事前に相談があったのではないか、私はこうも思うのでありますけれども、まずこの点について第一点お伺いをいたしたいと思います。
  16. 向坂正男

    向坂参考人 高島炭鉱がきょう中央労使協議会を開くということについては聞き及んでおります。しかし、その内容については私は承知いたしておりません。第八次石炭政策検討検討小委員会で進めてまいりまして、今御指摘のように各炭鉱経営状況についてもいろいろ事情を聴取いたしました。しかし検討小委員会の仕事はこれからの第八次の政策の枠組みをつくることであって、個々炭鉱がいつどのように閉山するのか、すべきであるのかといったような問題については検討小委員会は関与いたしません。それぞれの石炭会社が第八次政策フレームのもとで、あるいは独自に石炭行政の見通しを考えることがあるかもしれませんけれども、独自の判断経営方針を決めることだというふうに考えております。
  17. 岡田利春

    岡田(利)委員 閉山をする場合には当然閉山の制度もございますし、一定の手続も必要でありますから、後から通産大臣にも質問をいたすわけでありますけれども、政府当局としては相当詳しい相談を受けているんではないかと私は思っておるわけであります。  そこで、九月三十日の、いわゆる七人委員会と称しておられるのですが、石炭鉄鋼、それぞれの代表二名ずつ、それから中立委員三名の方々で構成している委員会開催をされているわけです。  一応伝えられるところによりますと、この委員会では石炭側鉄鋼側意見が一致をしない、折り合わないで、そのままでこの委員会が終わった、こう伝えられておるわけであります。  そこで、この七人委員会のそれぞれの主張は一体どうであったのかという点と、それからこの七人委員会がさらに今後の運営の問題について、いろいろまた伝えられておるのでありますけれども、次の七人委員会開催をするに非常に困難である、したがって、今後三人の中立委員がいろいろ検討して、言うなれば鉄鋼石炭側仲裁案と申しましょうか、あるいは調停案と申しましょうか、あるいはまたあっせん案と申しましょうか、そういう一定のものを提示をする考えを固められたとも報道されておるわけです。この間の事情についてきょうお伺いをいたしたい、こう思います。
  18. 向坂正男

    向坂参考人 七人委員会は九月三十日に第一回会合を開きましたし、それから十月六日には中立委員だけでの懇談会を開いて進め方を協議いたしました。十六日に第二回会合開催したのでございます。  この七人委員会では石炭鉄鋼業界方針の歩み寄りを何とか図ろうと努力しているところでございます。しかし現在までのところ、両業界主張にはかなりの開きがございまして、まだ両業界がどのように協調協力するか、どのような対応を示すかということについては、特に鉄鋼業界大変姿勢がかたいといいますか、これから原料炭国内炭引き取りについての経済的な負担に耐えることは困難であるという姿勢を今のところ崩していないわけでございます。  中立委員として何らかのあっせん案提示するかという御質問でございますが、近く三人委員会中立三人の懇談会を開いて方針を討議いたす予定でございます。その際どういう結論になるか、至近までの状況検討いたしまして方針を決めることになると思います。
  19. 岡田利春

    岡田(利)委員 そういたしますと、一方総理大臣通産大臣に対して、また福川事務次官を通じて検討小委員会の方にも、できれば石炭問題については今月末までに一定結論といいますか答申をしてほしいということは伝えられておると思うわけであります。そういう日程を一応頭に入れて考えますと、中立委員先生方が相当一歩出て仲裁的な案を出すのか、それを中心にして石炭側あるいはまた鉄鋼側理解を求めるというテンポの速い手法でなければ間に合わないと思うんですね。そういたしますと、大体来週あたりは三人の先生方仲裁案をほぼ検討されて、そして再来週あたりにはもう提示をする、これでも月末になってしまうわけですね。そういうテンポにならざるを得ないのではないかと思うのですが、向坂先生としてはこの要請に対してどういう受けとめ方をされていますか。
  20. 向坂正男

    向坂参考人 総理からの御指示もあり、石炭問題、特に鉄鋼業石炭業界との調整について急ぐようにという御指示があったことは承っております。七人委員会としても、そういう状況を伝えて極力その調整を急ぐという方針で進めているところでございます。
  21. 岡田利春

    岡田(利)委員 これは十八日ですか、NHKそしてその後日経に、通産省我が国炭鉱閉山計画というものがショッキングに発表されたわけであります。  私はこれを読んで、まず私の感想を率直に述べたいと思うのです。やったなという感じですね、これは陽動作戦でやったなという感じがしましたね。なぜそう感じたかというのは、これは今向坂先生の作業が進む——鉄鋼から出されている課題というのは二つあるわけですね。一つ閉山時期を明示してほしいというのが鉄鋼側要請でしょう。そういう原料炭縮小撤退計画というものをまずはっきりしてほしいというのが一つ要請だと私は承知をいたしたわけです。一つはもちろん炭価の問題にあるわけであります。そうしますとどちらにウェートがかかるのかというと、今日の政府が説明している財政事情から言えば、早く原料炭を撤収させることによっていわば負担を軽くするという手法が一番楽な方法として考えられるという判断は、だれしもがそういう判断ができるんだ、私はこう思うのです。  ですから、そうしますと今週、来週詰めていく。鉄鋼側について、二つの命題に対して一応仲裁案あっせん案中立委員先生が答えて最終的にまとめていかなければならない。だがしかし、検討小委員会として山の閉山計画なんて触れられるはずがないわけですね。そういうことは私は絶対に不可能だと思うのです、表面上は。そうしますと、やはり一定のものがぶち上がることによって一つ市民権を持って、言うならば鉄鋼側一つの、最終仲裁案あっせん案の場合にそういう一つ市民権を持ったものを背景にして御納得願う。私の勘ぐりでしょうかね、これは。私はそのときにしゃっとそう判断をしたわけであります。そしてこの内容を私自身でずっと見てまいりました。まあ後から通産大臣にも聞きますけれども、全然そういうことはないと言うでしょうけれども、専門的に見ますと、挙がるべき山は挙がっているわけです。また、かつて新聞で言われておった、私もパリでこれは見たのですけれども、その新聞に発表された当時もいろいろ問題あった通産省の首脳の意見とかそういう方向と全く同じなんですね。残る山それから早期閉山していく山、全部またぴしゃっともう一度あったわけです。二度目の検証が行われたわけですね。そういう点で、もちろん検討小委員会の場合でもそれぞれの経営者からは直接意見を聞いているのでありますから、そして先般五月に先生が述べられたように、一応十年間のバックグラウンドを考えながら当面五年間の内容検討して、そしてそういう積算の上にまとめていきたいというお話もあったのでありますから、そうしますと、この発表された計画内容というものは相当信憑性が高いのではないかと思うのであります。いやそうでないと言うんであれば、これは全然内容が今後変わってこなければならぬと思うわけでありますけれども、今の私の意見について向坂先生の率直な御意見をお伺いしたいと思います。
  22. 向坂正男

    向坂参考人 十七日に一部報道において、政府関係者政府が近くまとめる第八次石炭政策における閉山計画を明らかにしたとして今御紹介になったような内容紹介されたのでありますけれども、これは全く事実に反するものでございます。先ほどもちょっと触れましたように、第八次の石炭答申においては個々企業活動のいわばフレームとなるべき石炭鉱業をめぐる環境評価、国の石炭政策方向企業経営に対する指針等を明らかにする方針でありますけれども、そもそも個々炭鉱の将来にかかわる問題は各企業労使協議の上に立った経営判断に属する事柄でありまして、政府個別炭鉱閉山計画決定すべき性質のものでは決してないと考えております。あの報道に接しました後、私、政策部会長及び需給価格部会長として各委員に対して、以上申し述べました趣旨をお伝えしまして御理解を賜ったところでございます。  その報道された内容でございますけれども、決して陽動作戦でああいうものを漏らしたというようなことではなくて、検討小委員会では原料炭引き取り一般炭引き取りの将来のいろいろなケースが考えられますから、それぞれの主張を見ながら、一体需要業界主張にどの程度応じたならば生産がどういうテンポ縮小し、それが各炭鉱にどのような影響を及ぼすだろうかというようなことは検討した事実はございます。しかしそれはあくまでも政策あるいは縮小テンポなどを考える上に必要な検討でございまして、検討小委員会自身が何年にどの山を閉山するというようなことを決定したことはありませんし、またそういう決定をすべきものではないと心得ております。
  23. 岡田利春

    岡田(利)委員 既に検討小委員会では石炭協会側意見を聴取されておるわけでありますけれども、その際石炭協会側として正式に検討小委員会皆さんに、今の原料炭炭価決定が難航している状況にかんがみて、石炭協会側としては第八次政策期間五年間の最終年度原料炭供給をゼロにします、なお一般炭については当然原料炭ゼロになるわけでありますから、産業向け紙パとかあるいはセメントの一般炭についても供給ができないという形になっていくでしょう、それを踏んまえて最終年度には一般炭一千万トンの規模を確保してほしい、炭価についてはトン二百七十一円引き下げるということを公式に表明しておる、こう私は思うのでありますけれども、そういう理解でよろしゅうございますか。
  24. 向坂正男

    向坂参考人 政策部会需給価格部会の席上においてまたその後の七人委員会におきましても、石炭業界を代表しまして有吉石炭協会会長が今御紹介のように第八次政策の中で原料炭をゼロにすることはやむを得ない、また一般炭については電力用中心に一千万トン程度の需要確保してほしいというような発言があったことは事実でございます。
  25. 岡田利春

    岡田(利)委員 石炭側提案というのは苦悩の中における最終的な決断だと思うのです。しかし、私自身は、石炭協会の内部ではどういう形で国内を撤収するかあるいは転換、縮小するかということについては合意はないのであろう、こう思うのであります。ただ、このことは今の情勢鉄鋼側の意向、こういうものに随分きつく押されてきた、こういう中で石炭側としての最終的決断をせざるを得なかった、しかもそこの中には地域社会の摩擦をできるだけ避けなければならない、炭鉱経営した者としてそういう責任があるというものもその中には含まれていると私は思うのです。そうしますと、先ほどの報道されたと言われるこの案は、今年度を含めて第八次政策期間三年間でいわばほぼ撤収を完了するという案になっておるわけです。石炭側提示した案は五年間でなだらかにいわゆる撤収するものは撤収する、縮小、転換するものはする、こういう案であります。経営者側がこう明確に言った以上、それから大きく離れて議論しても議論にならぬと私は思うものでありますから、それに接点を求めてお伺いするのですが、少なくともなだらかな閉山ということは第八次政策の五年間の期間においていわばなだらかに、閉山するものは閉山するあるいは原料炭から一般炭に転換するものは転換する、縮小するものは縮小する、そういうものが総合的に行われることがなだらかな縮小でありなだらかな閉山でもあるのではないのか、こう思うのであります。  先ほど通産省閉山計画と言われたものについては全面的に先生から御否定があったわけであります。これが否定されるということは、残ったところ大体四年か五年しかないのですから、期間はせいぜいあと二年しかないのですから、四年か五年の期間をかけてこういう方向考えざるを得ないということになるのではないかと思うのですね。ですから、言うなればなだらかな閉山というものはでは何なのか、総理も言っておりますし、田村通産大臣も言っておりますし、皆さん関係者もなだらかな閉山閉山する場合にも必要である、こう述べられておるのでありますから、そうしますと、今の報道関係のこういう方向を否定するということは、石炭協会が苦渋の決断をした方向に近いものあるいはそのもの、そういう方向でやらなければならない、第八次政策が組まれなければならないということを意味するのではないかと思うのですが、私のこの意見について先生はどういう感想をお持ちでしょうか。
  26. 向坂正男

    向坂参考人 さきに開きました政策部会需給価格部会との合同会議の席上も、冒頭に八次政策検討小委員会の立場から審議状況を御報告したのでございますが、その際に、私方から強く申し上げたことは、この国内炭縮小の問題は今我が国が直面している産業構造調整の一環として取り組むべき課題であるし、また地域経済社会に対する影響というものを慎重に考慮して進める必要があるということで、これから日本が当面する産業構造調整のいわば試金石として、その調整による社会的な摩擦をできるだけ緩和することが検討小委員会方針であるということを御報告した次第でございます。  そのためには、需要業界状況などから考えまして、需要縮小に応じて生産をある程度縮小していくということは避けられない事態であるし、現実に石炭側からもさきのようなやむを得ざる提案といいますかそういうものがあったのでございまして、いわばそういう状況を頭に置きながら、どのように生産をなだらかに縮小していくか、その間にどの程度閉山というものが起こり得るのか、それをできるだけなだらかにやるという方針検討小委員会検討を進めているところでございます。しかし、なだらかな閉山を絶対に確保したいということはありますけれども、それぞれ何年にどの山がというようなことを八次策で、検討小委員会で決めるということではございません。
  27. 岡田利春

    岡田(利)委員 私の意見を交えながら先生の見解を尋ねたわけですが、私の判断意見が今後の八次政策決定、その方向について当たらないことを祈りながら実は意見を交じえて私は御質問をいたしておるわけです。  特に、石炭協会が言っている一千万トンという意味を考えてみますと、私は三つの問題点があると思うのであります。  一つの問題点は、千六百四十五万トンから数量が減っていくというのではなくして、これには雑炭供給が含まれておりませんから、雑炭供給を含めますと、実際は昭和六十年度ベースで千八百二十四万トンから八百二十四万トン減るという意味なんですね。雑炭は生産統計に入っておりませんから、昭和六十年度で百七十六万トンの雑炭があるわけです。五十九年度は百八十五万トンの雑炭があるわけです。したがって、それも生産されておるのでありますから、結局千八百二十四万トン、五十九年をとれば千八百六十八万トンから一千万トンに下がるということを石炭協会は言っているわけです。  それから第二の問題は、原料炭を撤収するという意味は昭和五十六年にトン当たりのカロリーは六千四百十カロリーなのです。これが六十年には六千二百三十八カロリーに減っているわけです。ですから、カロリー的に見ますと、一千万トン論という石炭協会の言っていることは六十年の六千二百三十八カロリーの平均カロリーから六千カロリーに平均カロリーはダウンするということをはっきり証明しているわけです。  そして、第三点の問題は、産炭構造の変化が起きるという意味であります。今北海道と九州の生産割合は、北海道六に対して九州が四、六〇対四〇の関係にあるわけです。しかし、今日的方向を見ますと、これが逆転をする。私は、恐らく北海道が四五で九州が五五のウエートになっていくということを一千万トン論というものは意味しているんだと思うのですね。この三つの要点がこの中に含まれておることを私は非常に重大視いたしておるわけです。  そういう意味で考えてまいりますと、今いろいろ言われておる中で、九州の高島炭鉱閉山提案が行われておる。ところが、その後行われる閉山は北海道の空知に限るという意味なんですね。これは厳然たる事実なんです。一地域に限られるのです。だから、なだらかな閉山がどうしても閉山する場合でも必要であるし、社会的摩擦をできるだけ解消する。かつての筑豊的条件にあるわけですね。この点を我々は地理的に判断しておかないと重大な誤りを来すのではないのか、こう私は思うのであります。もちろんこういう点について重大な配慮が払われるものと思いますけれども、いかがでしょうか。
  28. 向坂正男

    向坂参考人 だんだん私も老化して余り数字、正確なことを覚えにくくなったので、今御指摘のような数字については私よく承知しておりませんけれども、最後におっしゃった地域的な構造変化の問題は私ども十分注意を払っておりまして、今後生産縮小が進むに従って今までの需要家と供給している炭鉱との関係、その流通関係をいかに合理的に進めるかということが一つ考えなければならない課題と思っておりまして、その点は事務局でもいろいろ検討されているかと思います。  それから、これからの生産縮小が御指摘のように北海道の空知地域において起こるということはある程度考えられることでございまして、したがって、今御指摘のように一時に閉山が集中し、大量の失業者が発生するというようなことは、地域に対しても大変な大きな打撃でございますから、それを避ける意味において、閉山が今後起こるとしてもそれをできるだけいろいろの年次別に分散していく方が好ましい。そういう考えから、将来の需要をどの程度確保するか、どのようなテンポ生産縮小が行われることが好ましいか、そういうことを検討小委員会の中で検討している次第でございます。
  29. 岡田利春

    岡田(利)委員 そのことが主力炭鉱十一炭鉱に限定されている今日非常に難しいことだと思うのですね。そういう意味では、やはり規模の縮小というものが大きな火花を散らす摩擦が起きる。本来であれば一千万トンというのは無理なんです。まして四年か五年で原料炭をゼロにする。原料炭をゼロにするということは一般炭産業向けをゼロにするという意味ですからね。そのことを短い期間でやるということは非常にむちゃなことですね。結局内外炭の格差、鉄鋼さんの態度から追い詰められて選択をせざるを得ないという協会の方向だろうと私は見ておるわけであります。  今さら申し上げてもいかがかと思うのですが、五月十五日当委員会で私は植田参考人に対して質問をいたしました。気にかかったものですから、そのときに。第七次政策の今年については、炭価の問題については御心配ないんでしょうねと、電力側は心配はない、量も心配はない、こう述べられたわけですが、植田参考人はその場合にちょっと、この発言の中で非常に困難な面があるということは述べられていました。だが、しかし、それから五日たって二十日に、この委員会参考人を呼んで我々が意見を聞いておるのに、たった五日後に鉄鋼連盟は渡辺通産大臣に申し入れをしているわけですね。何のために一体委員会参考人を呼んで我々が質問をして意見を聴取しているのか。五日後に通産大臣に申し入れる状況にあるならば、委員会で堂々と述べるべきではないでしょうか、私はこう率直に思います。  そして二十一日には石炭協会通産大臣への要望書を参考書類として送付をして、その二十一日には当委員会で第八次石炭政策に関する決議が行われておるわけです。そういう状況の中でこういう経過をたどっておることを指摘しておかなきゃなりません。そして二十八日には新日鉄の今井敬常務の名前で、昭和六十一年度の原料炭価格についての交渉申し入れが協会側に行われた。三十日に石炭協会側から有吉新吾名で鉄鋼連盟と今井新日鉄常務に対して回答がなされた。そして、六月から選挙の慌ただしい中で、六月以降八千五百円かより支払わないという事態になっている。それが今日にずっと続いておるわけです。  ここで一言申し上げておきたいと思うのは、なぜ一体原料炭の内外炭格差に対して政策的な制度がなかったのか。ここがやはり考えておかなきゃいかぬところですね。第一次答申のときには油に対して一般炭の価格。そのときの答申は、油に対してキロリッター当たり千円の消費税、その消費税というのはC重油だけにかかりますから、これでは負担が多くなるというので関税にしちゃったのですよ。それが今日のいわゆる従価税である石油関税の財源になっておるわけです。そのときに石炭の問題も、原料炭は大量に輸入していましたから、しかし原料炭は入手が非常に困難である、こういう状況でありました。したがって当分状況を見ようということで推移をしてきたわけであります。その後西ドイツでは一つの制度が生まれる。石炭の財源は石炭で取るのが本当じゃないか、数千万トン以上も輸入しておるではないか、こういう議論もあったことも事実であります。  第四次政策に当たって永野重雄さんがこの委員会出席をして、原料炭はどうしても確保してもらわなきゃならない、原料炭確保するために出る一般炭については電力はつき合うべきである、こういう永野さんの発言もあったのであります。いわば原料炭については引き取る。かつては電力よりも原料炭の方が多かったのですから。そして、第五次政策でも鉄鋼は八百万トン以上の石炭を引き取る。第五次政策まで続いてきたわけです。だから、政策の流れは、そういう一つの補てん措置をとらなくても、一応原則として鉄鋼側一定原料炭を取ります。第六次になって漸次価格が引き上げられてきた。だから一般炭へのシフト化が要望されて、石炭側はこのシフト化の方向協力をしている。原料炭生産が四百万トンまで減ってしまったわけですね。こういう政策の流れというものを無視してはならないと思うわけです。  残念ながら、当委員会は選挙が終わってからきょう初めて開かれるものですから、こういう問題についても一言触れておかなきゃならぬと思って述べているのです。早く委員会が開かれておれば、そういう問題については委員会を通じて意見を述べることもできたのであります。私は、そういう点を特に、向坂先生に十分、政策は流れである、四分の一世紀近く過ぎてきたのですから、そういう上に立って最終的なまとめについての御努力をぜひお願いしたいということを申し上げておきたいと思います。  そして最後に、先般五月八日に「第八次石炭政策に関する検討小委員会審議状況について」ということで中間報告がなされました。この中間報告をずっと読んでまいりますと、例えば七の(1)と八の(2)、これは、読みますと、七の(1)は「需要動向についても十分勘案した生産体制とすべきである」。八の(2)は「需要確保するための措置は必要と考えられる」。こういう、ちょうど七と八に補完するような表現になっておる。七の(2)、八の(1)、九の(1)そして十一の(1)、これはそれぞれ、七の(2)の場合には経営の見通しを明らかにさせろということを書いていますし、八の(1)には基準炭価制度は維持する、決定方法は検討する、九の(1)に現行の政府助成の継続を基本とする、そして十一の(1)、(2)には閉山対策等について若干触れておるわけであります。  したがって、この中間報告と言われる今申し上げました項目は、原則的には従来と多少変わっておりますけれども、IQ制度とかあるいはまた基準炭価制度とかあるいはまた特別会計の財源確保とかこれらの点についてはその流れは認めておる中間報告になっておるのであります。当然この中間報告は今日においても、本格答申にまとめられるに当たってこれは基礎となっておるもの、こう私は理解するのでありますけれども、いかがでしょうか。
  30. 向坂正男

    向坂参考人 さきに申し上げた合同会議の席上、検討小委員会検討状況を御報告いたしましたときにも、今御指摘のように原則的に第七次の石炭政策の枠組みを維持するということを御報告した次第でございます。石炭企業の自己努力を前提とした上で政府需要業界協力を求めつつ基準炭価制度、需要確保措置等所要の措置を講じるとともに、生産規模縮小に伴う地域経済、雇用問題について適切に対処すべきであって、また、需要業界については、その理解協力なしに円滑な縮小は不可能である、国内炭をめぐるこれまでの経緯をも踏まえて引き続き協力が必要であるという趣旨のことを申し述べた次第でございます。
  31. 岡田利春

    岡田(利)委員 どうもありがとうございました。
  32. 竹内黎一

    竹内委員長 古賀誠君。
  33. 古賀誠

    古賀(誠)委員 向坂先生にはきょうもまた早朝から当委員会に御出席をいただきまして、本当にありがとうございます。また同時に、先生には今日まで石鉱審の政策部会検討委員長として、また七人委員会の座長として、大変混迷いたしております第八次石炭政策に大変御労苦をいただいているわけでございまして、心から敬意を表する次第であります。  今日、この国内石炭政策というものが産業構造調整の試金石というふうに言われております。昨今、この問題に関する連日のテレビ、新聞報道というものは、そういった国民のこの問題に対する関心の高まりを如実にあらわしているものだというふうに私は思っております。この問題がどのように解決されていくかということは、国民が今日大いに注目をしているところでありまして、もとより、我が国が国際社会の中で置かれている立場からしますと、産業構造調整というものは積極的に進められるべきであるというふうに私も考えております。  しかし、問題はその進め方にあるということを十分踏まえていかなければいけないと思います。仮にこれを急速に進めて我が国の今後の運営に禍根を残したり、また国民の不信感を招くようなことがあっては断じてならないものだというふうに私は思います。私は率直に申し上げまして、この産業構造調整というものを進める際に生ずる国内でのいろいろな摩擦、またこれをできるだけ小さくするための手段とか手法というものがどうあるべきか、こういった問題は政府内部でも十分な結論が得られないのではないか、今日そういう危惧をいたしているのでありますが、そういった産業構造調整テンポがどのようにあって、そしてまた、それによって生ずる産業の空洞化の問題や地域問題、雇用問題、これをどう解決するか、そういった解決のためのコストはだれがどのように負担するか、このような問題は非常に大切な、いわば国民の世論形成というものを必要とすると思っております。そういった中で、この国内石炭政策というものは不幸にもいや応なしに早期に解決をしなければいけない、こういった立場に置かれているということを私なりに踏まえて、先生に五、六点お聞きをしておきたいと思います。  この七人委員会は、先月の三十日、そして去る十六日と開かれておるわけでございますが、その内容については新聞等で私も漏れ承っているわけでありますが、私がまず最初に先生にお伺いをいたしておきたいことは、御承知のとおり、今回の第八次石炭政策というものは、本来ならば当然遅くとも八月いっぱいには答申を得るべきだ、そういうスタンスで実は石鉱審が行われてきたと理解いたしております。今日、石炭を取り巻く環境が、御案内のとおり円高による炭炭格差はもとよりでございますが、需要者側、特に鉄鋼、こういった業界の不況によりまして需要者側、石炭業界は大変な意見の食い違いが起きているわけでありまして、そういった中で今日までこの第八次石炭政策答申を得ることができない、私はそういった食い違いが大きな要因だと思っております。先生が石鉱審の政策部会または七人委員会を通じてここまで答申を困難にしている要因がどこにあるのか、需要者側、生産者側の言い分を含めて、簡単で結構でございますが、お話を伺いたいと思っております。  また、そういった中でこの問題を解決するために小委員会生産者側、需要者、特に鉄に対してどういう要請が行われたのか、それに対して各界の対応はどういう対応であったか、お伺いをいたしておきます。
  34. 向坂正男

    向坂参考人 御指摘のように、石炭業界鉄鋼業界との間には大変大きな開きがございます。その開きの主な理由は、原因は鉄鋼業界が国際競争にさらされており、急激な円高のもとで大変な不況、大幅赤字、またこれから大いに合理化をしなければならない、そういう状況に迫られているということから、もはや割高な国内炭をこれ以上引き取りを続けるということは困難な状況にあるということを繰り返し説明されております。十六日の七人委員会では、私の座長を努める立場から言いますと、幾らか進展がございまして、政府のいろいろな支援策をもっと明らかにしていくならば、鉄鋼業界も全くそれを——政府がどういう支援をするかということ、それから鉄鋼業界に対して具体的にどういう負担を求めるかということを提案されるならばそれを検討いたします、答えはイエスであるかノーであるかは別としまして、ともかく検討いたしますというところまで鉄鋼業界も進んできたという状況でございます。しかし、どの程度の負担をしてくれるのかということは全く明らかでございませんし、また政府の支援策も従来の第七次政策、その決められている制度だけではなくて、もっとほかに支援を求めたいということを鉄鋼業界が言われておりますから、今後七人委員会はその問題も含めて検討しなければならないと思いますし、またこれは石炭部とか石炭鉱業審議会を超えて財源問題、施策の方向などを検討する必要があるというふうに私個人は感じている次第でございます。
  35. 古賀誠

    古賀(誠)委員 お断りをいたしておきますが、大変質問岡田委員質問と重複する点があるかもわかりませんが、私もじかにお聞きしたいものですからその点はひとつ御寛容いただきたいと思います。  ここで向坂参考人に確認をいたしておきたいのでございますが、去る五月十五日の当委員会におきまして岡田委員の経構研の方向、すなわち全面撤収論に立ってなのか縮小論の立場で漸次撤収していくのかというお伺いに対して、参考人先生は次のように実はお答えをいただいておるわけであります。   経構研の内部でどういう意見が出たかはよく承知しておりません。報告書は大幅な縮小という表現でございますが、その大幅がどの程度であるかは必ずしも明らかでございません。しかし、経構研がどういう意見であろうと、私ども石鉱審の立場としては、石鉱審独自の立場で広範な視点から将来の生産目標を考えるという責任がある、そういう立場をとりたいと考えております。   私ども、全面撤収などという考え方を持っているということは絶対にございません。しかし、現存炭鉱の維持が困難になってきているという点からいえば、地域社会に与える諸般の影響なりあるいは失業雇用問題なりいろいろな点に配慮しながら、部分的に閉山が起こることはあるいはやむを得ない事態になるかもしれない こういうふうに発言をしておられますが、答申作成のいわば最終的段階に至った今日でも、同様のお考えであるかどうか。いかがでしょうか。
  36. 向坂正男

    向坂参考人 私の考え、また検討小委員会考えは全く変わっておりません。
  37. 古賀誠

    古賀(誠)委員 石炭政策は、今もお話が出ておりましたが、第一次答申昭和三十七年十月に行われて以来第七次政策の今日まで、長い経緯の中で、国民全体がこの政策理解し、そして今日まで支持をしてきたわけであります。その間、そのときそのときのいろんな時代の流れの中ではありますけれども、電力において、また鉄鋼を初めとする産業界において石炭が果たした役割というものも私は見逃すことはできないというふうに思っております。  今日、我が国エネルギー供給の中で、完全な国産エネルギーとしては三千六百二十万キロリットル、実に八・三%という極めて少ない比率であります。したがいまして、エネルギーの安全保障という面から考えますと、この純然たる国産エネルギーとしては総エネルギーの何%ぐらいを確保する必要があるだろうか。先生の率直なお考えをお聞きいたしたいというふうに思います。  また、そういった中でよくフランスだとか西ドイツだとか、そういった国々と比較されるわけでございますが、石炭産業というのはもう先生も御承知のとおり、一回つぶすと二度と掘れないものであります。そういう産業構成を持っているわけでございます。特にまた石炭というものは有限のものでありまして、この有限の資源を大切に使っていくという注意深い配慮というものも私は十分考えていくべきではないか。そういった中で、今日言われております石炭の国際価格の比較の中だけで、高いからやめるということだけでは私は論ずることはできない、また論ずべきではないというふうに思っておりますが、先生のお考えはいかがでしょうか。
  38. 向坂正男

    向坂参考人 エネルギーの総合的な安全保障は、単にエネルギー供給国内比率がどの程度であるかということだけでは判断できないことではないかと思います。緊急時対策として、石油備蓄などなどの対策も必要でございますし、長期的な安定供給確保するという意味からいうと、原子力、天然ガス、石油などを初め、石炭も含めて、広範にいろいろなエネルギーの組み合わせによって、また供給源をできるだけ多方面に分散することによって、エネルギーの長期的な安定供給を保つという方策で進むべきであろうと思います。また一方、エネルギーの効率利用という面も安定供給確保する上からも大事な点であると思います。  で、日本の国内炭の安定供給上の役割につきましては、そのエネルギーに占める比率も非常に小さくなりまして、また特に原料炭につきましては非常に割高なので、国際競争にさらされているという鉄鋼業からこれ以上引き取りを続けていくのはいろいろ困難な事情があることもよくわかるのでございます。一般炭についてはやや事情が違いますけれども、今後輸入炭をふやすと同時に、国内炭の安定供給上の一定役割を評価して、電力を中心一定生産を続けていくということが重要であろうかと思います。  今御指摘のように、石炭国内のいわば唯一のエネルギー自然資源でございますから、これをできるだけ長期に有効に使っていくということは国民の支持を得られることだと思いますが、しかし同時に、その経済性あるいは海外からの輸入の可能性などを考えてみますと、やはりここで石炭生産水準をこのまま続けていくことはまあ無理な状況になってきているのではないか、ある程度減らすことはやむを得ない状況になってきているのではないかというように考える次第です。
  39. 古賀誠

    古賀(誠)委員 それでは、本年度の基準炭価にちょっと触れさせていただきたいと思います。  第七次政策の継続中でありますことし六月以降、鉄鋼が三分の一の価格でしか原料炭を引き取らない、これはいわば実力行使だというふうに私は思っておるわけですが、これは従来の商品取引の慣行から甚しく逸脱したものであると同時に、商業道徳上からも認められないまことに遺憾なことだというふうに私は思っております。そういった中で、この石炭政策の根幹であります基準炭価の制度の基本にも触れる問題である、同時に、原料炭の山の倒産につながる大変な社会問題でもあるわけであります。  私は、こういった問題を考えた場合に、ユーザー側は、鉄鋼は速やかにこれは譲歩すべきである、そういうふうに考えております。七人委員会でもこの点についての意見等が恐らく議論されてきたのではないかと思いますが、どのような議論があり、どのように今日お考えになっているのか、お尋ねをしておきたいと思います。
  40. 向坂正男

    向坂参考人 六十一年度の基準炭価は、いわば第七次政策の中のことでございます。第七次政策では、石炭生産費及び海外炭状況、価格の状況など、そういうことを勘案して基準炭価を決めるということになっておりまして、これまでの経緯でいえば、主として生産費を中心にして基準炭価が決められ、もし翌年度の、新年度の基準炭価決定がおくれる場合には、暫定的に前年度の基準炭価で取引決済が行われるということでございまして、そういう慣行といいますか状況にある中で、鉄鋼業界が唐突に六月から三分の一、輸入炭価格並みにしか払えないというような行動に出たことは異例のことでございまして、七次政策の範囲内のことでございますから、そういう継続性といいますか、そういう点についても異例だというふうに考えざるを得ません。  七人委員会におきましても、この点について主として中立委員からいろいろ意見が出ました。やりとりはいろいろありましたけれども、鉄はもう、いろいろその議論はあるかもしれないけれども、今の窮状また今後の見通しからいうと、やむを得ざる行動に出ざるを得なかったということでございます。しかし、この六十一年度の基準炭価問題は、今後七人委員会としましては、第八次政策における原料炭引き取り量、鉄鋼業界引き取り量とあわせて今後さらに六十一年度の基準炭価及び原料炭引き取り量を詰めていきたいというように考えている次第でございます。
  41. 古賀誠

    古賀(誠)委員 お話はよくわかりますけれども、私は、今回の鉄鋼のそういったいわば実力行使的なことについては、商業道徳上の問題からだけではなくて、長い今日までの鉄鋼石炭お互いの助け合いの精神の中からもまことに遺憾であるということを改めて表明をさせていただきたいと思います。  そこで、私ども自民党の政調会の石炭対策特別委員会におきましても、九月十七日、三十日、また、これは向坂先生に御出席をいただきましたが、十月十六日、あるときには鉄、セメント、電力、また石炭協会の代表、今申し上げましたように向坂先生にも御出席をいただきまして、いろいろな角度から御意見を聞いてきたところであります。同時に、この石炭特別委員会委員先生方の大変熱心な議論を今日重ねてまいりました。  その中で、需要者側の意見石炭協会側意見に大変大きな隔たりがあるという党の委員会先生方の認識を見たわけでありますが、そういった中で、まず第一に、第八次石炭政策以降のエネルギーの確保という意味での石炭、これは恐らく一般炭に主力を置くことになると思いますが、第八次石炭政策以降も電力のみで最低一千万トン以上の生産規模を確保すべきである、これは我が国のエネルギー政策上どうしても一千万という数字を下回ることは考えられないということで委員先生方意見の一致を見たところであります。  また第二点目は、原料炭山の問題でありますけれども、今言われておりますような需要者側の急激な縮小というものは、単に我が国のエネルギー政策の面からだけではなくて社会政策の面からも大変な問題である。この問題につきましては、現に総理も、九月十七日本会議質問に対しまして、石炭問題は町ぐるみの社会問題でもあり、政府も慎重に対処すべきだという答弁をいただいているところであります。党の石特の委員先生方も全員の委員先生方が、激減は社会政策上も許されるものではない、そういう御意見でありました。原料炭山の縮小というのには最低五年以上は、私は個人的には七年というふうに考えておりますが、必要である、しかもできるだけ緩やかに縮小すべきだという強い意見の表明がありました。私も全く同じ考えであります。  そこで、審議会といたしましても、こういった我々党の意見も十分尊重していただきまして八次政策答申案をまとめていただく努力をぜひひとつお願いしておきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  42. 向坂正男

    向坂参考人 国内炭をできるだけ有効に使う、また、閉山縮小がやむを得ないとしても、それをできるだけ分散するという方針で進めておりますし、また、第八次政策の中において、いわゆる歯どめ、どの程度の山を残せるかということをはっきりさせるべきだと考えております。  原料炭については、既に今八次政策の中で、これは五年か七年かわかりませんけれども、ゼロにすべきだという、せざるを得ないということは石炭業界もそれを了承をせざるを得ない状況になってまいりましたし、また、検討小委員会としましても、鉄鋼業界状況考えますといつまでも原料炭引き取り鉄鋼業界協力してもらうということもだんだん無理になってきているという判断もございます。そうしますと、国内炭生産維持、いわゆる歯どめを考えますと、電力業界一般炭引き取りに大きく依存せざるを得ないのでございまして、先般合同部会におきましては、電力業界からは、八次策の最終年度は六百万程度にとどめたいという主張がありました。六百万トンでは八次政策を立てる上に大変困りますから、それ以上の引き取りを電力業界にはぜひ協力してほしいと思っております。  先般、先ほどの自民党の石炭対策委員会伺いましたときに、皆さんから一千万トンはどうしても確保しろという御意見、全員一致のそういう御意見を承りましたので、これをこれからの政策検討の中に十分考慮していきたいと思っております。
  43. 古賀誠

    古賀(誠)委員 ぜひよろしくお願いをいたしておきたいと思います。  それから、その特別委員会の折に、実は今日の国内炭考えた場合にある程度縮小していかざるを得ない、これは我々もそのように認識をいたしております。そういたしますと、当然閉山に伴います閉山対策、いわば財源の確保というものがある意味では大変大切なことになるわけでございます。そこで、我が党の石特の委員会の中でも輸入炭課税というものを真剣に考えてみる必要があるのではないかという議論が実は出ました。御案内のとおり、今日の石特会計の財源であります原重油関税といいますのは、いわば石炭から石油にエネルギーが代替をいたした折に、石油に課税することによって閉山対策、鉱害といったものの財源の確保に充てているわけでございます。今度はまさに原料炭原料炭との炭炭格差によって日本の原料炭がゼロになろうとしている。そうしたら原料炭に課税をしてもおかしくないのではないか、私なりにそういう理論構成をしているわけでございますが、そういった点について先生はどのようにお考えでしょうか。
  44. 向坂正男

    向坂参考人 まさに理屈から考えますと、国内炭の競争相手は海外炭ですから、海外炭に何らかの税金をかけるということは、筋道はあるいは通るかもしれません。ただ、この問題は対外的な関係、ガットとか対産炭国との関係とか、世界的に石炭流通をふやそうという時期でございますし、日本の市場開放という問題もございますから、この点は十分慎重に検討しなければならないというように思います。  それで、七人委員会におきましても、従来の閉山対策、地域対策だけでは産業構造調整をできるだけスムーズに進める上に不十分ではないか、もう少し政府の支援の幅を広げる、従来の制度を超えて何か考える必要もあるのではないかというような意見も出ました。しかし、一体その財源をどうするかというところで、今の原料炭課税の問題も出ましたし、また何とか石炭特会の中で繰り上げて借り入れするなり何なりでできるだけそういう方向考える、それで調達できない場合には一体どうするかということでいろいろ意見は出ましたけれども、まだ結論を得ている状況ではございません。  なお、今後閉山に伴ういろいろな対策、広い見地から、それからまた雪崩的な集中閉山にならないような方策といいますか、そういうものも含めていろいろ検討しなければならないことではないかというように考えます。
  45. 古賀誠

    古賀(誠)委員 この問題については午後政府側にも実はお尋ねしようと思っているわけでございます。  最後に、お尋ねというより先生の御感想になるかもわかりませんが、お聞かせいただきたいと思いますのは、今も岡田委員質問にあっておりましたように、去る十七日、NHKのニュースで、今後の閉山計画について個別炭鉱名まで名指しされた報道が実はなされました。私も実に驚いたわけでございます。まだ石鉱審で答申さえ得ていないときに、こうした個別の炭鉱名まで名指しにされる。特に私の大牟田の四山鉱というところまできちっとその名前が出たわけでありますが、これは三池炭鉱の中の一つの坑口にすぎないものでありまして、まことにこれはどういう形でそういったものが出たのか不思議で仕方がないのでありますが、まさか通産省側が明らかにしたということはとても考えられないことでありますし、今申し上げましたように、まだ石鉱審の答申を得ていない時期であります。しかし、こういったような報道がなされますと、地域の不安というものは本当に想像もつかないような。パニックになりまして、そして大変な混乱を来しているわけであります。十分こういった問題は今後も気をつけていただかなければいけない問題だと思いますけれども、先生のこの件に対する率直な感想をひとつ最後にお聞かせをいただいておきたいというふうに思います。
  46. 向坂正男

    向坂参考人 一部の報道につきましては、先ほど申し上げましたように、部会長としての意見委員への理解を求める文書を出した次第でございまして、全く、八次策の中でああいうことをお決めになったというようなことは絶対にございません。  検討小委員会といたしましては、一時的な集中閉山とか大量の失業の発生、特にそれが地域に集中する可能性がございますので、したがって、どのように生産縮小を進めていくかは検討小委員会も慎重に検討する必要があると思っておりますし、またその答申を出した以降に、答申にはなだらかな閉山、なだらかな縮小と書いてありながら、実際に集中的なことが起こったときにどう対応するかというようなことも、答申案の中に書くかどうかは別としまして、そういうことも十分考えた上での政策考えていく必要があるというように考えている次第でございます。
  47. 古賀誠

    古賀(誠)委員 終わります。
  48. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、藤原房雄君。
  49. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 向坂参考人には、政策的に困難な問題を今御検討中、心から敬意を表するものであります。また本日は、大変御多忙の中、御出席を賜りまして、心から感謝を申し上げる次第であります。  私はまず、現在日本の置かれております産業構造といいますか、日本経済の非常に危機的状況という、こういう中で、弱い産業が大きな波風を受けておる現状の中で、特に石炭産業がその矢面に立っているわけであります。先ほど来のいろいろな質疑の中でも、石炭産業は撤退といいますか、縮小やむを得ざるものという、そういう前提の上に立ってお話があるわけでございますが、その中で、経済構造調整研究会の話がときどき出るのですけれども、確かに産業構造の大きな転換を迫られている事実は我々も認めるわけであります。しかしながらいわゆる前川レポートというのは総理の私的諮問機関で取りまとめたということでございまして、国家行政組織法にのっとった公的な手続を経たものではないだけに、軽んじていいということでは決してないのかもしれません、厳しい、こういう経済状況の中にありますから考えなければなりませんが、先ほど来のお話を聞きますと、非常に短期間のうちに縮小やむを得ざるというような方向がどうもにじみ出てくる。それは石炭産業は非常に厳しい状況にあるということをあらわしているということも言えると思うのであります。向坂参考人の、経済構造調整研究会の答申に対して、特に石炭産業は名指しでこれが記載されておるわけでありますが、このいわゆる前川レポートというものに対しましてどのようなお考えを持っていらっしゃるのか、まず最初その点からお聞きしたいと思います。
  50. 向坂正男

    向坂参考人 経済構造調整研究会のレポートに関しましては、日本の置かれた国際的な地位、市場開放を海外から強く迫られる、そういう状況にあることは私どもも十分頭に置いていかなければならないことでございますから、経済構造調整研究会のレポートにつきましては、私的諮問機関とはいえ、そのことを報告は十分参考にして石炭政策考えなければならないというふうに考えております。
  51. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 参考にしなければならないいろいろな意見があることは私も認めますが、それに拘束されるといいますか、強制力はないのだという観点で大きくひとつ見ていただきたいし、また先ほど来お話もございますように、地域に及ぼす、地域経済また働いていらっしゃる二万弱の方方、こういう非常に大きな影響力があるという、こういうこと等も考え合わせて十分な施策をお考えいただきたい、それを念頭に置いていただきたい、このように思うわけでございますが、いかがでしょうか。
  52. 向坂正男

    向坂参考人 御指摘のとおりの御意見を十分頭に置いて進めたいと思っております。
  53. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 先ほど来いろいろなお話が同僚委員からございましたが、私は、第八次の答申のめどといいますか、何といってもいろいろ議論はあるし、その中に潜在します問題も非常に困難な問題がたくさんあるわけでございますけれども、今山元で最も求められておりますのは、基準炭価を初めといたしまして八次答申というものがどういう方向決定するのか、決まるのかということでございまして、それが最大の関心事であり、そのためにまた参考人初め皆さんいろいろ精力的にお取り組みになっていらっしゃる、こう思うわけでございますが、八月二十日ごろということが八月終わり、九月、そしてもう十月も半ば過ぎという今日でございます。困難な諸問題は確かにあろうかと思いますけれども、やはりひとつ、八次答申の骨格といいますか、こういうものはだんだんだんだんいろいろな議論の中から浮き彫りになってきたようでございますけれども、参考人といたしまして、部会長としてどのぐらいを目途にして作業をお進めになっていらっしゃるか、端的にこの点についてはお聞きをしたいと思うわけでございます。  昨年の九月から石鉱審の政策部会検討小委員会、回を重ねてまいりました。それらの事情についてもよく存じておりますが、何せ今こうやって審議会が開かれ、さらにまた委員会でいろいろな参考人の御意見をお伺いしているこの間にも、炭鉱では企業として経営が成り立たぬということでその閉山といいますか、そういうことも検討され、また資金繰りに大変だというところも出ておるという現状でございまして、地域の大きな経済力を担っております石炭産業だけに、目途といいますか、そういうものについては非常に待たれておるし、またそういうことについてもしお考えがあればぜひひとつこの席でお話しをいただきたいものだと思うのであります。
  54. 向坂正男

    向坂参考人 いわゆる原料炭問題が起こりましてから、検討小委員会における八次政策検討も実質的な進展が見られないので、それで先に政策部会需給価格部会との合同会議を開いて委員皆さんの御意見を承った上、原料炭問題を早急に片づけなければ八次策の答申ができない、そういう理由から七人委員会を設けて原料炭問題を詰めようということになった次第でございます。  で、七人委員会を二回開きまして、率直に需給石炭鉄鋼業界意見も聞き、また中立委員側からも、特に鉄鋼業界に対して現実的な対応を強く求めた次第でございます。しかし、まだ十六日の七人委員会の段階では需給業界主張の間には相当大きな開きがございまして、これをできるだけ早く詰めるよう、近く三中立委員相談して今後の進め方を決めようと思っている次第でございます。  そういうような状況で、一体いつまで答申が出せるかということは確たる見通しはございませんけれども、鉄鋼業界との交渉を詰めまして、できるだけ早期に対策が七人委員会でまとまればというように考えている次第でございます。
  55. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 小委員会のいろいろな今日までの経過については今お話もございましたが、鉄鋼業界もかたくなな姿勢だけではなくして、話し合いに応じようという姿勢もあるようでございます。何といいましても、この答申のおくれは、ユーザー側の話が、石炭企業との間に大きな隔たりがあるというところに問題があるのだろうと思います。これは鉄鋼業界初め、ユーザー側にも今日のこの大きな経済変動を何とか乗り切らにゃならぬということもございます。  そもそもこういう問題が起きましたのは内外石炭価格の差という炭価の格差、特に去年の九月から円高で急に大きな格差が出てきたわけでありまして、それぞれの企業にはそれぞれの対応の仕方というのがございまして、まだ去年の九月からですから、一年そこそこの間に四割も五割も円が高くなるという、こういう荒波をかぶっているわけでありますから、それを企業としてどう乗り切るかということにつきましては、企業としても非常に苦慮していらっしゃる、そういう中での交渉ですから非常に難しい面はあるだろうと思います。しかしながら、いつまでも基準炭価を初めとしまして八次答申の目途というものが定まらないということですと、これは今後の石炭鉱業のあり方というものについて非常に問題になってくるわけであります。  そういうことからいたしまして、やはり両者の歩み寄り、相当大きな隔たりはあるわけでございますけれども、やはりそれは歩み寄った中で、どうしても隔たりのあるものについては何らかの対策考えなければならぬ。そういうことから、先ほどお話のございました関税問題とか、いろいろなことがまたお話があったようでありますが、私はやはり、現在の石炭産業のために行われております石炭勘定ですか、石特会計、こういうものもあわせて両者の、ユーザーと石炭企業側との間のお互いの話し合いということと、また当然、今まで大きな内外炭格差ということのなかった時代から今日こういう大きな経済変動を招いた現時点で石特会計というものを見直してみなければならない時期に来ているのじゃないか、そういうようなものを全体をひっくるめてこれは検討しなければ、ただユーザーと企業だけの話では大きな隔たりが埋まるのかどうか、こんな感じもするわけでありますが、参考人はどのようなお考えを持っていらっしゃるかお聞かせいただきたいと思います。
  56. 向坂正男

    向坂参考人 私どものところにも各地域からあるいは組合からいろいろな陳情が連日のごとく来ておりますし、また新聞報道を見ましても、八次策の決定あるいは六十一年度の基準炭価決定がおくれていることがそれらの方々に大変不安を、心配を与えているということもよく承知しておりまして、この答申が延び延びになっているということは私どもも大変遺憾に存じている次第でございます。  今度の石炭政策を従来よりはもっと広い立場から検討すべきではないかという御意見でございますが、その具体的な内容についてはどういう御意見かよくわかりませんけれども、私どもの考え方も、従来の石炭政策はやはり継続すべきではないか、石特会計というものも維持すべきではないかというように考えております。ただ、それだけで果たして需要業界の現実的な対応を引き出せるかどうかというところが今一つの問題でございまして、その点について七人委員会でもいろいろ議論しているところでございます。しかし、政府支援の幅を広げようとすると必ず財源問題にもひっかかりまして、いろいろ検討すべき要素も多いように思いますが、いずれにしましても、産炭地状況考えますと、できるだけ政府の支援の内容も詰め、鉄鋼業界の現実的な対応を引き出して、それで八次政策検討に入る答申をできるだけ早く出したいというつもりで進めるつもりでございます。
  57. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 それから、八次答申が待たれる一つのまた大きな問題としまして、石炭生産量ですね。第七次では二千万トン、これは一千六百五十万トンという現実でございます。ですから、これはもう七次の石炭政策からは変更しなければならないのは当然のことだろうと思います。これは先ほど来同僚委員からお話がございますように、閉山計画がもうちゃんとできているみたいな発表がなされるなんということは最も不謹慎なことでございまして、先に閉山ありきということじゃなくて、現在の日本の石炭産業の中でどれだけの生産量というものが可能なのかということを、目標を設定することが大事なことだろうと思います。  今、御存じのとおり日本では、長期エネルギー需給見通しにもございますとおり石炭需要量というのは年々ふえるという計画もございますが、現実に石炭需要はふえておるわけでございまして、一億トンを超しておるという現状であります。そういう中で、国内の唯一のエネルギーであります石炭がもう消えてなくなっていいんだということでは決してないだろうと思うのであります。やはりこれは技術の継承または研究開発、今日、諸外国と比べまして日本の石炭産業の能率は最も能率が上がっておると言われております。それだけ先人の方々の技術開発や働く仲間の方々の御努力によって進められてきておるわけでございまして、ただ、現場の状況等非常に厳しい中での作業ということが強いられている。私も北海道各地の炭鉱を見てまいりましたが、やはり炭鉱ごとに、どう生産性を上げるかそしてまた経費を軽減できるかということで、深部化、奥部化ということではなくして、できるだけ経費を節減できるような方向に御努力をしていらっしゃる。そしてまた、赤平等においては、出炭量は少ないにしましても、露天とかいろいろなことで転換しようというようなことで努力し、そういうこともまた可能な状況の中にもある。大きな出炭量ということになりますと、それは安易なことじゃないかもしれませんが、そういう状況考えますと、先ほど来お話がございますように、一たん働いております炭鉱閉山いたしますと、再開というのは非常に難しい状況にもあり、国際情勢がこれからどう推移するかということ等もこれは見なければならないことなのかもしれませんが、安定的な国際状況がこのまま進むといたしましても、日本の国の最低の石灰産業のあるべき姿というものは当然確保しなければならぬだろうということ、これはもう参考人も十分に御理解いただけると思うのであります。当然小委員会等におきましてもその点については御議論があろうかと思いますし、また日本の唯一のエネルギーといたしましても、最小限度の確保ということと、技術の継承や、またそれが技術開発等いろいろなことに結びついていく大事なものとして、最低限どこまで企業ベースという観点もこれは加味しなければならないかもしれませんけれども、審議会ではその辺のことについてはどのように御検討なさっていらっしゃるのか、出炭目標といいますか、これらのことについてひとつお伺いしておきたいと思います。
  58. 向坂正男

    向坂参考人 この八次策の検討の過程で、石炭生産状況を個別の炭鉱別に詳しく伺いまして、厳しい環境の中で石炭会社、特に技術者、労働者は大変な苦労をしてああいう自然条件の悪いところで生産性を年々上げていくという努力をされたことは、十分私どもも敬意を払っている次第でございます。  一方、国内炭をめぐる環境を見ますと、決してそれは生産者側の理由ではなくて、国内炭をめぐる対外的な環境あるいは需要業界、特に円高の打撃を受けた素材産業の状況などなどから石炭生産縮小せざるを得ない。つまり、需要業界需要の動向を勘案しながら生産を決めざるを得ない。今までのように生産量を決めて国内炭引き取り協力してもらうというような考え方では済まなくなってきたという状況判断のもとに、八次政策検討を進めてきているところでございます。  それで、今後、先ほど来のお話にもありましたように、部会では、石炭業界需要業界状況考えると原料炭は八次政策の中でゼロにせざるを得ないというような見解の表明もございました。また一方、国内炭は主として電力業界によって支えられるという状況にならざるを得ないと思いますので、電力業界に対してはできるだけ多く長く引き取り協力お願いしたいというように考えております。電力業界とどの程度の引き取りをしてもらえるのかという話し合いは今のところまだ詰めておりません。原料炭の問題、基準炭価及び八次策の原料炭引き取り問題を先に詰めませんと、それを詰めつつ電力業界との最終的な引き取り量の詰めに入りたいというように考えて進めておりますので、現在の段階では、最終の生産水準がどの程度になるかということは、ここで申し上げる時期にないというふうに申し上げたいと思います。
  59. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 確かに需要供給のバランスで、需要のないところに供給できるわけがございません。そういう経済原則は当然理解をいたしておりますが、需要ということだけで石炭産業考えていいのかどうか。国内消費の一割を切らんとする、こういう状況の中でこのまま経済原則だけといいますか、そういう中で生き残れる企業はどうあらねばならないかという、いろいろな条件があるかもしれません。しかし、先ほど来申し上げております国際情勢もつい五年ほど前エネルギー需給が大変だというようなことがあったり、揺れ動いた時代もございました。五年、十年前ですと大変な時代だったわけですが、石炭が非常に見直されて、石炭消費は国内でもそういうようなこともございました。大きな振れはないといたしましても、国内で最低限技術的なものを維持するということの上からも、これは最低ある程度のものは確保しなければならぬというふうにお考えなのか、もう需要のないところに供給は必要ないということで、石炭産業がどんどん衰退していくことはやむを得ざるものというふうにお考えなのか。石炭産業という、国内唯一のエネルギーとしての見地からいたしまして、その間のことについてはぎりぎりのところどういうふうにお考えになっていらっしゃるかということをお尋ね申し上げているわけでございます。  それともう一つ、時間がございませんで、最後でございますが、何といいましても石炭産業は北海道では空知という内陸部に集中いたしておりまして、そういうことから工業立地とかいろいろなことにつきましては企業誘致やほかのことに転換するというのは非常に難しい。冒頭に申し上げました産業構造調整なんという、産業構造の調整なんかできるような立地条件にはございません。本当に調整できるものなら、いち早く転換の方向を模索しておったと思うのですが、急激に撤退いたしますと、これは何十万という地域住民に大変な影響を及ぼすことになります。そういうことで、万やむを得ざる事情ということがありましても、地域経済や地域住民または働く労働者方々のこと等について十分にひとつ審議会答申の中にも明確に明記をしていただいて、万全の策を講ずるようにしていただきたい。七〇年代はそれなりに転職の方法とかほかの企業へという見通しもあったわけですが、今回各産業それぞれ厳しい状況の中にある。特に北海道におきましては、農業、漁業、石灰などの一次産業を初めといたしまして、各産業非常に危機的状況の中にある。産業構造転換のために本当に血のにじむような現状の中にあるわけでございまして、石炭産業だけこれをどうするかということですといろいろな策はあるのかもしれませんけれども、そうでなくて、二重、三重、四重にいろいろな産業にそれが及んでおって、地域の中の問題としてあるということでございますから、その点のことについて十分にひとつ御検討いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  60. 向坂正男

    向坂参考人 私ども、八次策の検討に当たって決して需要のみを考えているわけではございません。需要業界が全く自分の立場で言えば、鉄鋼業界はもう即刻引き取り量をゼロにしてほしい、電力業界もできればゼロにしたいんだけれども、公益企業としての立場もあり、国のエネルギー政策協力するという意味で引き取りは続けるというふうなことでございますから、決して私ども需要業界主張にそのまま依存していくということではございません。やはりエネルギー供給上の役割国内炭役割また特に地域対策、地域に与える大きな影響、そういうことに十分配慮して最終的に生産水準を決める、また縮小やむを得ないとすればそれをできるだけなだらかに縮小していくというような方策を決めていきたいと考えている次第でございます。  地域対策につきましても、従来の地域振興策をより一層充実してやっていかなければならないんじゃないか。そのためにはある程度、仮に閉山に追い込まれる企業であっても、時間的な余裕があればそれだけ失業者に対する対策なり地域に対する対策なりもやりようがございますから、十分なことはなかなかできませんけれども、そういう意味でできるだけなだらかな縮小過程というものを考え、と同時に地域対策について従来よりさらに充実した方策を考える必要がある、そういう考えで八次策の検討を進めている次第でございます。
  61. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 どうもありがとうございました。
  62. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、小渕正義君。
  63. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 向坂参考人には、日本の経済構造転換という時代の中での大変な重荷を背負ったような石鉱審の中で、責任者という立場から非常に御努力なさっているわけでありまして、心から敬意を表する次第でございます。  時間もありませんので、端的に率直な御質問を申し上げますが、八次政策の前提となる本年度の原料炭の基準炭価問題をめぐりまして、現在にっちもさっちもいかなくなっておる中から七人委員会が持たれて、それぞれ需要側、供給側、それに中立委員皆さん方、経験の豊富な皆さん方三人を含めて現在までやられておるわけでありますが、過去二回行われました中でもなおまだそれぞれ大きな隔たりがあるということで、七人委員会としての調整といいますか、まとめられない状況にある中でなおこれからも努力なさるわけでありますが、率直に申しまして、どうなんですか、時間をかけて鉄鋼側供給側の石炭側、それぞれの意見調整を何とか、中立委員側の皆さん方の御意見を入れて、中で調整を図っていこうということだけで果たして解決していく性格なのかどうか。今日までの経過を見まして、そういうことだけではどうにもならないところにきておるのではないかという気が私は非常にするのでございますが、その点、なお残された期間努力なされるということはわかりますが、その点の御見解はどうなんでしょうか。率直にお尋ねいたします。     〔委員長退席、愛野委員長代理着席〕
  64. 向坂正男

    向坂参考人 御指摘のように、鉄鋼業界石炭業界との考えの間には相当大きな開きがあることは事実でございます。石炭側、あるいは検討小委員会考えと言ってもいいのですけれども、先ほど来御議論にあるように、集中的な閉山が起こったり一時的に大量な失業が発生することはどうしても防ぎたいという考えが一方にあり、石炭業界も当然そういう線に沿って考えているわけですが、一方、鉄鋼業界は現在の経営状況、将来は現在よりも一層苦しい環境にあるし、相当な合理化をやらざるを得ない鉄鋼業界から見ると、もう原料炭引き取りはできるだけ早く、できるだけ少なくという考えですから、その差は相当隔たりがある。もし鉄鋼業界の言うようなことになれば、もう集中閉山必至という状況でございます。そういう状況のもとで、七人委員会、何とか調整をということで、鉄鋼業界も対案を検討をいたしましょうというところまできたわけでございます。しかし、その両者、需給業界のギャップを埋めるのに鉄鋼業界原料炭引き取り増だけに——依頼できるかどうかということは、御指摘のように、そこは大変難しい状況にございます。鉄鋼業界も言っているように、政府の支援というものをもっとはっきりさしてほしいということでございますから、今後の検討は、石炭業界も、もちろん親会社を含めてできるだけ厳しい対応策を考えてほしいと思いますが、それにはやはり私どもはある程度限界があると思っておりますので、今後は政府支援というものをどこまで拡充できるのか。それと鉄鋼業界の現実的な引き取り対応というものを何らかの形で引き出していくというような状況にきているのではないか、このように判断しております。  近く三人の中立委員相談いたしまして、次の七人委員会、いつ、どのように開くかというようなことを検討いたす予定にしておりまして、周辺の状況から考えまして、これをできるだけ早く決着に持ち込みたいということで努力を続けてまいりたいと思っております。
  65. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 今の状況の中では、中立委員のお三方がこれからの進め方等についていろいろ話し合われることになっておりますが、今お話もありましたように、確かにもう政府がどのような形でこの問題に対して関与していくか、支援をしていくかということの関係なしにはこの問題は一歩も前に進まないと思いますね。そういう意味でこれから中立委員の三人の方が政府関係者とのいろいろの連携を持ちながらの調整案といいますか、取りまとめ案をおつくりになるだろうと思いますが、私は、ここまで参りますと、向坂先生や、この石炭政策についてはずっとかかわりを持ってこられた方ばかり三人の委員の方がおられますから、皆さん方、今日までの我が国のエネルギーのいろいろな変遷の中においてそういう政策にいろいろとかかわってこられた、そういう中立側、公益側の委員という立場からひとつお三方の独自な考え方をまとめられて、そして、政府もこれだけはぜひやってもらいたい、そしてまた関係業界もこれをぜひ受け入れてもらいたいという、そういう一つのものをつくっていかないことには、そういう一つ決断をなさらないことにはこの問題は一つも前には進まないのではないかという気がするのですね。そういう意味で、私は、でき得れば中立委員の今御苦労なさってこられた三人の方たちが一つ方向策といいますか、具体的なものを持たれて、少なくとも政府でもこれを聞いてくれなければ我々はお断りだ、そういう仕事はもうできないと言うくらいのかたい決意で今回対処するところまできているんじゃないかという気がするのですが、その点いかがでしょう。
  66. 向坂正男

    向坂参考人 中立委員三人が何らかの対案を出すべきでないかという御意見は、ただいまも承りましたし、ほかからもそういうことを承っております。ただ、私どもは、中立委員として対案を出す以上、やはりそれが実現されなければ困りますので、当然政府とも連絡をとりながら、そういうものを出すべきかどうか、まとめて出すことが事態の進展に好ましいかどうか、そういうことはきょうの御意見を承って中立委員で十分相談をいたしたいというふうに思います。
  67. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 実は、石鉱審が昨年の九月から作業を始められましてから、急激な円高という非常な国際状況変化の中で、しかも我が国の産業構造を調整転換しようという重大な問題をたくさん抱えて、その試金石的な形で今この問題が石鉱審で議論されておるわけです。そうなりますと、これだけ政府が前川リポートを基準にして対策本部をつくり、それぞれそうした作業に入ろうとしておるわけですから、石鉱審の立場から見ましたならば、こういう産業構造の大きな転換、調整転換するという中での道筋として政府としてはどのような施策を持っていくのか、どのような財政的な立場をとるのか、政府としてどういう方針でやろうとしているのか、そういう大きな一つの進むべき枠組みが示されない中で、ただ石鉱審、あなた方がやってくださいと諮問されておるというのが今の現状ではないかという気が私はするのです。だから、石鉱審に諮問された最初のスタートからして問題が余りにも大き過ぎておるという気がするわけです。そういう意味では、まず政府としてこれらの産業構造の転換、調整等に対してはどのような方針があるのか、そういうものをはっきり示されないことにはこの問題の審議に入れない、こういうような形で石鉱審の議論がそっちの方へ向くのも至極当然ではないかな、そういう大きな問題を抱えておるのが今の状況ではないかと私は思うのですが、その点はいかが御判断なさいますか。     〔愛野委員長代理退席、委員長着席〕
  68. 向坂正男

    向坂参考人 私ども検討小委員会がこれまで進めてきた経験から申しましても、今の困難な事態を打開するにはやはり政府が従来の制度に重ねてどのような支援策を考えるかということを政府自身検討していただきたい、それなしには鉄鋼業界との交渉がなかなか進まないという意味のことは、中立委員として政府にも申し上げておるところでございます。ぜひその検討政府としても進めていただきたいというように考えております。
  69. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 ぜひその点は強い姿勢でひとつ臨んでいただきたいと思います。  時間がございませんので、まとめて御質問申し上げます。  先ほどから今回の鉄鋼の態度についていろいろな御意見が出されておりましたが、確かに生きていく上でもう異例の状況でああいう態度を出したとは一応理解はいたしましても、先ほどから御意見が出ておりましたように、第七次石炭政策の来年度三月まではそういう炭価の問題についてはそれが生きているわけですから、そういう意味で、いかに苦しいと言いながらもあえてこういうものを無視してこういうことをすることについては、石鉱審という立場からきちっとした物を言うべきではないかという気がするのです。それは事情事情としてわかる、しかしわかるとして、それを次の政策に反映させることは当然かもしれませんけれども、今は第七次政策がまだ進行中でございますから、そういう中でいかにいろいろ思惑があったにいたしましても、少なくともそういう責められるべきところは責めるようなきちっとした態度を石鉱審としてもとるべきじゃないかということをどうしても私は感じるわけでありますが、この点についての御意見をお尋ねいたします。  それからあわせて、先ほどから出ておりましたが、第八次政策の中では生産縮小という方向はもうやむを得ない方向にあるようです。そういう関係から第八次政策の中では特に閉山対策等についてはきめ細かなものを、より充実したものを考えていきたいということでございましたが、それをまた、中身については多く期待するわけでありますが、ただこの場合、きょう話がありましたように、三菱高島礦がきょう閉山提案をして大体あと一月くらいでやめてしまうわけですね。これは第七次政策の中で出てきておる一つの問題です。第八次で今後閉山対策その他をより充実したものにしていこうという場合の政策のそういう流れの中で、こういう第七次政策の中で閉山が進んだものとの関係をある程度どうするのか、これは第七次政策のときと第八次政策と違うということだけでは切り離せない、やはり前広に対応してもらわなければいかぬような状況になるのじゃないかと思いますが、そこらあたりのお考え方はどうですか。  あわせて、非常に答申がおくれておる関係からそれぞれ石炭の各企業においては資金繰りその他で大変な苦境に立たされておるわけでありますが、そういう点では、こういう現状の中で石鉱審としても貯炭融資その他についても緊急的な提言で政府に対してもっとそういった方向から何らかの打開策を図るということが必要ではないのか、そこらあたりについての御見解を承り、私の質問を終わります。
  70. 向坂正男

    向坂参考人 鉄鋼業界の唐突な実力行使に関しましては、先ほども御報告いたしましたように、七人委員会の中でもこういう行動に対していろいろ意見を申し述べまして、それに対して鉄鋼業界はとにかくやむにやまれぬという答えでございます。鉄鋼業界事情にも十分理解すべきこともあろうかと思います。まあそれはそれといたしまして、六十一年度の基準炭価問題及び引き取り量、それから八次政策における原料炭引き取り量、そういうものをあわせて鉄鋼業界とさらに詰めてまいりたいと思います。  それから閉山対策については、いよいよ現実のものとなりそうですから、そういうきめ細かい対策を十分考えていかなければならないというように思います。特に地域振興対策について、従来以上のものを考える必要があるのではないかというように思います。細かいことはさらに詰めてまいりたいと思います。  それから高島炭鉱の、きょう労使協議会が行われてあるいは閉山提案が行われるのかもしれませんが、それに対して第八次政策で決めた閉山対策を適用するのかどうかということについては、これは制度上どういうことになりますかは今のところまだ検討しておりませんから、今後、政府石炭部と検討小委員会の中で詰めなければならないというように思います。気持ちとしては、産業構造調整の一環として、もし高島がそういう状況に追い込まれるとしたら、今後の新しい政策が適用されることをもちろん希望いたします。しかし、制度上どういうことになりますかは政府にさらに検討お願いしたいというように思っております。  それから、資金繰りで金詰まり倒産が起こりはしないかということは、この八月以来、検討小委員会としてもまた政策部会の経理小委員会としても十分注意しております。もちろん政府もよく注意しておりまして、最低限の資金繰りをつけるためのめどなどによる経営改善資金などによる支援を講じておるところでございます。今後ともそういう状況は続ける必要があると思います。特に、貯炭がどんどんふえてまいりましたし、今後、来年以降になりましても、生産縮小ということになりますと、中間的に貯炭がふえるということも十分考えられますので、貯炭融資については対策を十分講じていく必要があるというように考えております。  以上でございます。
  71. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 ありがとうございました。
  72. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、児玉健次君。
  73. 児玉健次

    ○児玉委員 本日は、私たちの委員会に御出席いただいてありがとうございます。  今、この委員会審議に対して、日本の山の労働者、家族、そして産炭地皆さんの祈るような期待が寄せられております。その期待は何かといえば、日本の山を何年もたせるか、ソフトランディングをどうするかという問題ではなく、日本の石炭産業の永続的な擁護、発展、そこにあるだろうと私たちは思っております。  そこで、向坂先生にお伺いしたいのですが、五月八日に発表された「検討小委員会審議状況について」という中間報告に次のような部分があります。「海外炭については、数量面では当面手当て済みの状況にあり、長期的にも確保が可能と見込まれる。」この指摘は一つのポイントだと私たちは受けとめているわけでございます。七次政策でオーストラリアやアメリカのストライキ、そしてポーランドの問題が言及されていた、委員長よく御承知だと思います。そして、今また南アフリカに対する経済制裁の問題。日本は南アフリカから相当の数量を輸入しております。オーストラリアの現状がこのままいくとは私たちは思いません。そこで、昨年の七月に第十回IEA閣僚理事会コミュニケというものが発表されました。その中で、現在の石油市場情勢が一九九〇年代、さらにその先にかけて持続することは期待できない、一九七三年、七四年及び七九年、八〇年に見られたような供給中断、オイルショックです、それが再現することになることを示唆している、こう述べた上で、閣僚理事会としては、エネルギー情勢の予測は非常に困難だと指摘しつつ、この後石油市場における逼迫傾向を指摘するIEA、各国政府及び業界の予測を無視することは軽率かつ危険であることに合意した、こういうふうに述べております。もちろん、IEAのこの問題は石油について述べておりますが、石油の情勢のドラスチックな変化は大きなインパクトをエネルギー情勢全体に与えます。そういう面からすれば、五月八日の検討小委員会中間報告海外炭の長期的供給が十分見込めると断定してしまうことは軽率かつ困難というそしりを免れないことにはならないのか、その点について先生のお考えを端的にお聞きしたい、こう思います。
  74. 向坂正男

    向坂参考人 IEAの理事会におけるそういう指摘は十分承知しておりますが、国際的な石油事情がいつ逼迫するのかというような点については必ずしもIEAのような見解だけに絞られているのではなくて、石油業界の中にもまだ石油については供給の余裕も持っているという意見もございます。しかしいずれにしましても、石油が資源的にいつの時期かは必ず増産の限界に来ます。したがって値段が高くなることも予想されますから、一方では石油の供給中断、例えば中東情勢なんかにおいてそういうことが起こり得るということに備えての国家備蓄の増強なり、と同時に長期的には石油は輸送用、石化用などできるだけそれに適した用途に向けながら、他の熱エネルギーはできるだけほかの、原子力なり天然ガスなりあるいは石炭なりでそういう多様なエネルギーを使う方向に努力する、現在、これまで石油ショック以後進めてきたエネルギー政策というものを続けていかなければならない、その意味で結論的にはIEAの指摘と同じだと思います。  同時に、省エネルギーという問題も非常に重要だと思います。  それで、石炭につきましては、まず国内資源というものを需要家が使える限り、またエネルギー安定供給上ある役割を持つ限りできるだけこれを使用していく、利用していくということは当然のことであり、これに対してある限度で、つまり保険リスクを国民の負担お願いするということは国民の理解を得られることではないかと思います。  一方海外炭につきましては、豪州あるいはアメリカ、カナダでのストライキなどによる供給中断とかそういうことも起こり得ることは確かでございます。しかし、日本の置かれた状況から見ますと、これは豪州、カナダあるいは南ア、さらに中国も日本に対して石炭供給をもっとふやしたいという強い要求を持っておりまして、このように輸入炭の供給源というものをうまく分散しておけば、私は海外炭供給についてそれほど不安視する必要はないのじゃないかというように思います。  そういう意味で、国内炭海外炭に比べて非常に大幅に割高になったということ。それから、一方輸入炭につきましては、値段が安いだけではなくて、供給源を分散しておけば供給の安定度を高めることができるという意味で輸入炭をふやし、国内炭は現在の状況ではある程度縮小にもっていくことはやむを得ないというように考えている次第でございます。
  75. 児玉健次

    ○児玉委員 エネルギーの長期的な展望が予測困難であるという点については先生よく御承知でございますけれども、そこで今の先生の御発言伺いながらどうしても私は忘れられないことがあります。それは有沢広巳先生を団長とした石炭鉱業調査団、これが昭和三十七年の十月十三日に政府に対してある報告を出しております。その中で「石炭が重油に対抗できないということは、今や決定的である。」そのように断定されました。その断定をきっかけにして日本の石炭産業は急激に崩壊の道をたどりました。その後どうなったか。御承知のとおり二度のオイルショック。そして先生がお手がけになった第七次石炭政策。その中で、油炭格差は完全に逆転した、こう述べておられます。有沢さんは、重油と石炭を競合関係にとらえて、石炭はもう勝てないと断定された。もしかしたら今八次策は、海外炭国内炭を競合関係にとらえて、そして国内炭の勝ち目はないと言われようとしているかもしれないと思うのです。これは非常に困難だし、有沢調査団の御努力というのは当然あったと思いますが、この後の国家百年の大計という点からすれば、先ほどから論議されているようなコストの問題その他いろいろありますが、時間があればそれも論議したいのですが、何よりも国家の長期的なパースペクティブという観点に立てば有沢さんがやったような過ちを今の検討小委員会に犯していただきたくない、この点について私は御見解をいただきたい。  もう一つ。それは先ほどから議論があった前川レポートとの関連ですが、石鉱審というのは日本の石炭産業をこの後どうやっていくか、大胆な石炭政策提起を行う上で最もふさわしい場所ではないかと思うのです。例えば西ドイツやフランス、イギリス、そういうところで海外炭国内炭の価格差が存在している上でどのような政策的な援助がなされているか、これはもう釈迦に説法ですから私は申しません。私たちもこの十月十五日に共産党としての考えをまとめました。そういった中で、ぜひこの際石鉱審として今後の日本の石炭産業を擁護していくという立場で、財源の問題は端的に申しますが政府考えさせればいいので、石炭産業に対して責任を負うという立場から向坂先生中心にして大胆な政策提起をしていただきたい。この点について伺いたい。  そして、前川レポートについてこの五月十五日に小沢和秋議員が質問したのに対して先生はこうお答えになりました。経構研は国際的な関係からの論議だ、私ども石鉱審としては、単にそういう国際的な日本の置かれた立場、豪州やアメリカからたくさん買えというようなことを重視して審議しているわけではないと言い切られました。この立場を堅持していただきたい。この点についての決意も含めてお伺いしたいと思います。
  76. 向坂正男

    向坂参考人 第七次政策審議しておりましたころは国際的に石炭ブームでございまして、内外炭の格差は縮まると同時に石油に対して石炭は割安になるというような状況審議が行われました。そのとき私どもの判断はやや楽観的過ぎたかもしれません。つまり国内炭海外炭とある程度競争できる、その格差はそれほど大きくならないんじゃないかということを考えたのでございますけれども、八三年には海外炭の値段も下がり日本のCIF価格も下がってきておりまして、その上に昨年の暮れ以来円高というものが急速に起こったために、海外炭に対する競争力は今の状況で言うと決定的に失われた。経済的には競争力がなくなったというふうに言えると思います。  将来についてどう判断するかは、検討小委員会の経過報告では、将来にわたってこの内外炭の格差を大幅に縮小するのはなかなか難しいだろうという見解に立っております。それはいろいろな理由がございますけれども、問題は円レートがどうなるかということは大きく響くと思います。しかし、為替関係を除いた供給コストからいいますと、もう世界的に露天掘り時代になっております。それから港もいろいろ整備され、機械化も進みまして、そういう意味で地下六百メートルあるいは千メートル近いところを掘っている日本の石炭とは生産コストの上で決定的な違いが出てきた。つまり、レートを度外視して考えれば、日本の競争力を維持するのはなかなか困難になっているという判断は私は間違いないんじゃないか。内外炭格差がどこまで縮まるかはレートの問題が大きいと思います。しかし、レートの問題を考えましても、今の内外炭格差が大幅に縮小するということはなかなか見通しがたいという判断に立っているわけでございます。同時に、先ほど申し上げたように、供給源としましては環太平洋圏に豊富な資源の安いコストの供給源があるということも、日本経済全体の立場からいうとこれを十分頭に入れて考えなければならないというように考えております。  前川レポートにつきましては、私どもの立場は、石炭政策は石鉱審独自の立場で考え、それは当然日本の資源を有効に使うとか、あるいはまた地域に対する影響に十分配慮するとかということも含めまして、対外的な関係も、前川レポートにありますように日本としては当然配慮しなければならないことですから、それを参考としつつ石炭八次策というものを決めようという態度でいるわけでございます。  石炭産業を擁護せよということですが、私どもの立場はもちろん石炭産業ができるだけ長く生きられるように考えなければならないことは基本的な立場でございますけれども、国内炭をめぐる周辺の状況から考えますと、ある程度なだらかな縮小方向へ向かわざるを得ないという判断、私どもの考えでいえば、石炭産業を今の時点で擁護する方法はこのような方法しかないという判断に立っているわけでございます。
  77. 児玉健次

    ○児玉委員 時間ですから、間違っても日本の石炭産業の幕引きの手順をお示しになるということのないように強く切望いたしまして、終わります。
  78. 竹内黎一

    竹内委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人に一言御礼を申し上げます。  本日は、御多用中のところ、当委員会に御出席の上貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。  午後零時三十分に再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十五分休憩      ────◇─────     午後零時三十二分開議
  79. 竹内黎一

    竹内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。古賀誠君。
  80. 古賀誠

    古賀(誠)委員 田村大臣におかれましては、御就任早々大変な急激な円高によります不況の克服、また相変わらずの海外摩擦等の解消のために大変御労苦いただいているわけでございます。心から敬意を表する次第でございます。  実は、午前中、向坂参考人にお越しをいただきまして、石炭政策に関する基本的な視点についての御意見を伺ったところでございます。私は、これを踏まえて私の考えなりをまとめ、政府のこの問題に対する対応をきょうはお伺いしたいと思います。  御案内のとおり、国内石炭政策というものは産業構造調整の試金石と言われているのでありまして、昨今この問題に関する連日の新聞、テレビの報道は、国民の今問題に対する関心の高まりを如実にあらわしているものだと私は思っております。この問題がどのように解決されていくのだろうかということは、国民が大いに注目をしているところであります。  もとより、我が国が国際社会の中に置かれている立場からすれば、産業構造調整は積極的に進められるべきであるし、またこのことは我が党の基本方針でもあります。しかしながら、問題はその進め方にあると私は考えるのであります。これを急速に進めて我が国の今後の運営に禍根を残したり、またいたずらに国民の不信感を招くようなことがあっては断じてならないというふうに考えております。私は率直に申し上げまして、この産業構造調整を進める際に生じる国内での摩擦をできるだけ小さくするための手段なり手法がいかにあるべきかといった点については、政府内部でも十分な結論が今日得られていないのではないかという危惧を持っているわけであります。一体この産業構造調整テンポはどうあるべきか、いかにあるべきか、またそれによって生じる産業の空洞化の問題、地域問題、また雇用問題をどうして解決するのか。当然この解決のためにはコストをだれがどのように負担すべきかということも重要な問題でありましょうし、もし国がこれを負担するとすれば、今日行われております行財政改革の中でどう調和をとっていくのか、これらについては明確な回答が得られていないのが今日の現状ではないかというふうに認識いたしております。現在の国内炭政策の不幸は、このような中でとにもかくにも問題の解決を図っていかなければいけないというところに第八次石炭政策の苦悩があるのではないかと私は考えております。  私はそこで、今我々にできることはどういうことか、またどういうところに注意していかなければいけないかといいますと、第一には、短期的な経済的な視点のみでこの問題を取り扱うといった誤りを絶対に犯さないようにすること。第二には、与えられた条件の中で摩擦をできるだけ小さくするようにお互いに英知を傾けていくこと。第三には、そのためにはどうしても関係者のお互いの負担と犠牲を求めていかざるを得ないということ。そのうちでも政府がやらなければいけない支援体制等いろいろあろうと思いますが、考えてみますと以上のようなことに要約することができるのではないかと私は思っております。本日は、これらのことをより具体的に国内石炭問題に当てはめて政府の御見解を伺いたいと思います。  前置きがちょっと長くなりましたけれども、今申し上げましたように今日の国内炭問題というものは産業構造調整の一環としてとらえられているという宿命は避けられないところでありましょうし、この問題が同時にまた地域問題と深いかかわり合いを持つ、そしてさらに、基本的にはあくまでもエネルギー政策の重要な課題であるということを忘れてはならないと思っております。そこで私は、本問題の解決に当たって次の三つの原則だけはどうしても堅持されるべきだと考えております。すなわち第一に、産業構造調整の観点からはある程度国内炭生産の縮減はやむを得ない、そう考えますが、第二には、地域対策的な観点からこれを考えますと、急速な雪崩閉山、集中閉山は絶対に避けなければいけない、避けるべきである。そして第三には、エネルギー政策上、平常時におけるエネルギー供給源の多様化、また非常時における安全保障、すなわち貴重な国内資源の有効な活用。そして忘れていけないことは、技術の温存といった点から見て、国内炭一定量の生産の継続。この点につきましては党の石炭対策特別委員会におきましても、最低一千万トン以上確保すること、そういう合意ができておるわけでありますが、いわゆる一定の歯どめ、これが非常に大切なことであり、必要だと考えております。  これらの三原則の確保について、まず大臣の御所見と御決意を伺っておきたいと思います。
  81. 田村元

    田村国務大臣 今おっしゃいました経済、産業の構造改善、まさに御指摘のとおりでありまして、私どもはこれに対して万全の対応をしながら進めていかなければならないものと思っております。でありますから、本来ならば構造改善というものは中長期的に眺めるべきものという感じはいたします。と同時に、一通産省のみでなしに日本国政府の名において行われなければならないだろう、このように思います。また、先ほどおっしゃった種々の問題に対応するためにも、新しい産業分野、例えば未来産業、ハイテクとかバイオとかいろいろな未来産業の分野を開拓して、あるいはまた業種の転換等を行って、空洞化や地域問題や雇用問題等を解消していかなきゃならぬというふうに考えております。  当面の問題としてはもう申すまでもなく内需の拡大等でありますが、それはそれとして、今石炭問題で御意見を承った、そのとおりでございまして、従来の石炭政策というものはまず生産を前提として需要を求めてきた、ところが今日石炭事情が変わりました。輸入炭は国内炭に比べて三分の一というような値段であります。現在千六百四十五万トンという石炭計画されておるわけでありますけれども、今八次審で御審議中でございますから私からいろいろと審議会に予断、予測を与えるようなことを申し上げるべきでもないし、いわんや精神的に心理的に圧力をかけるようなことは絶対に避けなければなりませんけれども、しかしだからといって、私どもは、ドラスチックな対策というものはいかがであろうか。やはり地域の問題、雇用の問題等も考えながらなだらかな政策をとるべきではなかろうかというふうに考えております。しかし、それ以上のことに関しましては、今鋭意御検討中でございますから、あえて私見を述べることを差し控えたいと思います。
  82. 古賀誠

    古賀(誠)委員 それでは、生産縮小問題についてちょっとお伺いをしておきたいと思います。  私どもがさきに党の委員会石炭協会の有吉会長をお招きいたしまして有吉会長の御意見を聞いた折に、有吉会長は、第八次政策の最終時点では、原料炭をゼロにすると同時に、電力用炭を除く一般産業用の一般炭についてもゼロになってもやむを得ない、こう発言されたと私は記憶をいたしております。これは、私なりに考えてみますと極めて大変な重要なことであり、相当思い詰めた発言であるというふうに感じたわけであります。すなわち、このことだけで、現状約千八百万トンの需要量のうち四〇%に当たる七百万トン近くが消えるのであります。もちろん八次策の期間が何年になるのかでその影響は異なるでありましょうが、私は実際問題として相当急激な変貌であり、石炭企業が本当にこれに耐えていけるかどうか、大変疑問に思っているのであります。  そこで第一に、八次政策期間、私は個人的には七年は絶対必要だというふうに考えておりますが、一体何年を想定しておられるのか。また第二に、有吉発言政府としてどう評価しておられるのか。第三に、このような思い切った提案に対しても鉄鋼理解というものが得られないのか、まとめてで結構でございますから御答弁をいただきたいと思います。
  83. 高橋達直

    ○高橋(達)政府委員 ただいまの先生の御指摘でございますが、私どもの石炭鉱業審議会におきましても、その委員であられる石炭協会の有吉会長から先生が今おっしゃったような趣旨で御発言があるところでございます。  ところで、お尋ねの今度の第八次石炭政策期間でございますけれども、これも実は審議会検討マターでございまして、現在鋭意検討中ということで申し上げるしかないわけでございます。ただ、審議の議論の方向としましては、いずれにいたしましても、国内炭をめぐる環境を見通せる期間でなければいけないというような議論、あるいはこれまでの議論で、生産の規模については縮小方向はやむを得ないけれども、やはりその過程において激変を回避する、これに要する期間というものが必要だ、こういう御議論があるところでございます。  次に、有吉会長の意見表明に対する政府の評価はどうかということでございますが、この発言につきましては、私ども、石炭協会の社長会における空気を代表したものというふうに聞いているわけでございまして、いずれにいたしましても石炭鉱業をめぐる厳しい環境を認識した相当の御決意を示したものというふうに理解をしているところでございます。  第三に、鉄鋼業界のその後の対応でございますけれども、午前中にも向坂参考人からお話がございましたように、石炭鉱業審議会の少人数のグループでの検討が現在行われているわけでございますけれども、依然として需給業界意見の隔たりは大きい状況にあると言わざるを得ないわけでございます。
  84. 古賀誠

    古賀(誠)委員 この急激な削減についてはどうしても回避すべきだ、これは党の石炭対策特別委員会委員先生方全員の要望でもあります。第八次石炭政策を何年にされるかということは答申を見てからということでありますが、この点についてはひとつ十分配慮して御検討いただくように政府方にも強く御要請をいたしていく次第であります。  それで、ここでちょっと関係者負担問題についてお伺いをしておきたいと思います。  俗に世に三方一両損の解決を図ったらどうかという話もあるようでありますが、今仮の話といたしまして、例えば八次策の期間内に原料炭をゼロにするとした場合、鉄に現状引き取りを継続してもらう場合と比べ、常識的に鉄の負担はどのくらい軽減されるのか、また、これに対して政府負担がどの程度になるのか。もちろんこれは前提でありますが、およそのオーダーで結構でございますので、明らかにしていただきたいと思います。
  85. 高橋達直

    ○高橋(達)政府委員 八次政策期間中に段階的に原料炭生産をゼロにした場合、鉄鋼業界にさらにどのような負担を持たせることになるかという第一のお尋ねでございますけれども、その段階的に減らしていくテンポにもよるわけでございますが、当然のことながらそのあたりを含めまして審議会で御検討いただいているわけでございます。算術計算といたしますれば現状の負担を継続する場合に比べまして、毎年等率で減少させていくとすれば、期間のいかんにかかわらず半分になるという計算になるわけでございます。  この過程において政府がどのような支援をするか、私どもとしてできるだけの支援をしてまいりたいと考えておりますけれども、その具体的内容については審議会の御審議の結果を待って結論を得たいと思っております。
  86. 古賀誠

    古賀(誠)委員 恐らく鉄の軽減を考えた場合にはかなりの額に軽減をされ、また政府も相当の支援を今後考えておかなければいけない、こういうことが考えられるのではないかというふうに思います。  また反面、石炭業界におきましては、地元また炭鉱に働く人々がその間金銭に換算しがたい大変な極度の不安と負担と犠牲というものを強いられることになるわけであります。私は、今さら昔のことを言っても仕方がないと思いますが、戦後の復興期や高度成長期には鉄と石炭は互助の精神で助け合いながら日本流のよい産業間秩序というものを保ってきたわけであります。今鉄鋼業界が大変な不況に立たされていることは私なりに十分理解するところでありますが、だからといって突然に、しかも実力行使的な形で、一度は合意したはずの七次政策の最終を待たずして一切の負担ができないと主張されることは、私には到底理解できないことであり、まことに遺憾なことだというふうに考えております。また、党内におきましてもこのことについては大変首をかしげられる向きの多いところであります。そうした意味で、何とか通産省としても鉄に対して指導をしていただくことはできないのか。言葉を言いかえさせていただければ、どうも鉄鋼業界通産省は弱いのではないか、そういう感じさえ私は率直に感じるわけでございますが、大臣の御存念を伺っておきたいと思います。
  87. 田村元

    田村国務大臣 鉄鋼業界自体が極めて経営状態が悪い、内容が悪いということで、御承知のように新日鉄は既にリタイアを決定したようであります。各企業もそれに倣った計画を立てておるようであります。でありますから、従来の鉄というものと今の鉄というものを同じ目で見ることは、これはちょっと不可能かと思います。しかし、だからといって、いかに苦しいといっても石炭よりはましなんですから、何とか石炭のことに対しても御協力を願わなければならない、これはもう当然だと思います。ただ、ちょっと表現がどうかと思いますが、石炭と鉄のやりとりというのは、丸裸の者ががまぐちに金の入ってない者に物を買えと言うようなことなんですね。でございますから、これが一番ネックになっておる。  そこで、審議会においても遅々として進まなかったものですから、私が指示いたしまして、一度石炭と鉄と話し合いをさせてみたらどうか、こういうことで、先ほどお見えになったと思いますが、向坂氏に座長になっていただいて、いわゆる七人委員会というものをつくっていただいていろいろと御議論を願っておるところでございます。なかなか難しいようでございますから、最終的にはいずれかの日にといいますより、ある時期、早い時期にその見きわめをつけて、時には私自身が出向かなきゃならぬような場面もあるのかなというふうに思っておりますが、いましばらく向坂さん、また円城寺さん等々の御努力を見守りたいというふうに思っております。
  88. 古賀誠

    古賀(誠)委員 これも仮定ですけれども、もし鉄鉱業界協力が得られないまま国内石炭問題を解決しよう、こういうことを考えると、これも党の委員会の中で議論になったところでありますが、もはや輸入石炭課税によって財源を確保して価格差補給でもする以外にないのではないか、こういうことが実は特別委員会の中で多くの方々から意見が出てきたわけであります。これは非常に難しいようにも思いますが、私は私なりに、これは冷静にいいますと語弊があるかもわかりませんが、考えてみますと、今、石炭勘定であります石特会計は、いわばエネルギーの大きな変換の中で石炭から石油にかわってきたときに、原重油関税ということでその財源の確保を図ってきたわけであります。これは申すまでもなく皆さん方がよく御承知だと思います。今回はまさに原料炭がゼロになって、原料炭がその分輸入されるわけであります。そういった意味では、当然それに伴います閉山対策というものにも財源が必要でありましょう。そういったことを考えると、ぜひこの輸入石炭課税というものを真剣に考えていただくわけにはいかないか。ガットに違反するじゃないかというふうに言われるかもわかりませんが、先ほど私が申し上げましたように、第八次政策の最終時点では有吉会長も原料炭はゼロになってもやむを得ないということをはっきりとおっしゃっているわけですね。ということは、むしろこれは原料炭の自由化になるわけです。私はそういうふうに認識するわけです。ガットに違反どころか、むしろ原料炭の自由化という非常にアメリカ初め外国が求めているような姿になっていく。そういった意味では、この輸入炭に対する課税というものは十分真剣に考えてみる必要があるのではないか、こういうふうに私なりに考えるわけでございますが、政府の御見解をひとつお聞かせいただいておきたいと思います。
  89. 田村元

    田村国務大臣 ガットの問題になることは必定でございましょう。これは否めない事実でございますが、特にアメリカ、カナダ、オーストラリア、それに南アということでしょうが、特に米、加、豪。  そこで、今おっしゃったことは一つの案だと思うんです。つまり将来の自由化ということを十二分に説明をして、そしてその過渡的な措置として了承をしてもらえまいか、そういうことによって報復をしないでほしいというようにじゅんじゅんと説くということは一つの案だと思うのです。案だと思いますが、それにしても大変な努力を要する問題だし、私は先般ポルトガルのシントラの四極貿易大臣会議、またウルグアイのプンタデルエステにおけるガット閣僚会議にも出ましたけれども、日本に対する感情というものは日本ではちょっとわからないぐらいの感覚で、行ってみて私と倉成外務大臣と二人がもう困り果てた場面が幾たびかございました。不信感というものが渦巻いております。例えばアメリカの場合でも二千億ドルの貿易赤字の三分の一強の七百億ドルは日本にやっつけられたというような感情を持っております。でございますから、よほどの努力を必要とするであろう、このように考えますが、今おっしゃったことは党の方でお考えのようでもございますし、一つの案ではなかろうか。ただ、八次審の答申を見る前に、それは結構ですね、そうしましょうという答えはちょっとできないだろうと思いますけれども、一つの案だというふうには思います。
  90. 古賀誠

    古賀(誠)委員 大変前向きに御検討をいただくようでございまして、大変力強く思っております。  いずれにいたしましても、今後石炭経営というものは非常に楽観は許されないというふうに考えております。閉山はもとより大変なことでありますけれども、生産を続けるべき炭鉱についても、大変な合理化努力が必要になると考えております。これらに対して政府といたしましても必要な支援をやっていく、こうした力強い姿勢がないと需要業界協力もまた得られることができないというふうに考えますが、このような国の支援に関する大臣の御決意を伺っておきたいと思います。
  91. 田村元

    田村国務大臣 同じことばかり繰り返して大変恐縮でございますけれども、八次審の答申がどのように出ますか、私どもそれを今じっと待っておるわけでございますけれども、その答申が出ました場合に、我々は当然あらゆる可能な限りの努力を払うべきものというふうに思っております。
  92. 古賀誠

    古賀(誠)委員 これは午前中の向坂先生にもお話を伺ったところでありますけれども、実は十七日のNHKのニュースで、今後の閉山計画について非常に具体的に個別の炭鉱名まで名指しをされた報道がありました。私は大変驚くと同時に、これはまことに遺憾なことであるというふうに思っておりました。まさか通産省が明らかにされたというふうには決して考えておりませんが、このような報道がどうしてなされたのだろうか。大変私ごとで恐縮でございますが、ちょうど私の郷里の大牟田の三池炭鉱石炭を守る大会をやっておりました。七千人からの市民の参加をいただきまして、この第八次石炭政策で山を守っていくんだ、市民ぐるみの、市民を挙げての大会をやって、それが終わったと同時にこのニュースが流れた。我我が想像する以上に市民の皆様方の動揺というものは大きなものでありました。そういったものに対して私も本当に言いようのない憤りを実は感じたわけでございますが、この点について政府はどのようにお考えでありますか。
  93. 田村元

    田村国務大臣 まず、結論から申し上げますと、明らかな誤報であります。審議会もどの山をどうするというふうに決定する権限を持っておりません。また、通産省もそういう権限を持っておりません。これは民間企業の問題でございます。経営者あり、株主あり、労働者あり、民間企業がお決めになることであって、私どもが具体的に鉱山の名を挙げて、これをどうするああするというような権限は持っておりませんし、またそうすべきでないと思っております。どういうわけでああいう報道がなされたか私は存じませんけれども、私自身も非常に憤りを感じました。  こういうことを言うとちょっとみっともない話でありますけれども、犯人がおるかおらぬか省内を探索させました。どうもいないようでございます。もしおったら承知しないというつもりで探索をいたしましたが、いないようでございますから、明らかに誤報。しかも、最終的には審議会と私が責任をとらなければならぬ問題でございます。権限もない問題で責任をとらなければならぬ。それが一官僚の口から出るはずはございません。明らかにこれは誤報でございます。また、審議会の方のだれかの意見として仮に出たとしても、私は出ていないと思いますが、審議会がまだ結論を出していないのに個人がしゃべったとすれば、それは一私見にすぎません。でありますから、ここで全国民の皆さんに明らかに誤報でございますということを大臣の名においてお答えをしておきたいと思います。
  94. 古賀誠

    古賀(誠)委員 どうもありがとうございました。  今大臣おっしゃるように、石鉱審の答申の前にこういった問題が出る、こういうことはあり得ないことだと思いますけれども、なお十分お互いが気をつけていかなければいけないことだというふうに思います。それだけこういった報道が地元に与える影響というものは大きいわけであります。  そこで、報道のみならず最近の石炭をめぐる非常な不安感というものは、炭鉱保安確保についても重大な悪影響を与えるおそれがありはしないか、そういった意味で私は非常に心配しているわけでありますが、最近の炭鉱保安について当局としてどのような御指導なり措置をしておられるか、ちょっとお伺いをさせていただきたいと思います。
  95. 加藤昭六

    ○加藤(昭)政府委員 通産省といたしましては従来から保安確保を最優先としております。その上に立ちまして生産を行うよう石炭企業指導してきております。今後仮に閉山が不可避となった場合におきましても、閉山の過程におきまして保安対策に特に緩みが生じないよう、保安に万全を期してまいりたいと考えております。
  96. 古賀誠

    古賀(誠)委員 保安確保が第一であることは申すまでもないことでありますので、なお一層御指導措置というものに十分御配慮いただきますようお願い申し上げておきます。  次に、産炭地域振興の今後のあり方について少し触れさせていただきたいと思います。  御案内のとおり、昭和三十年代以降の我が国石炭というものは、石油との競争に破れまして年年大幅な撤退を余儀なくされてきたわけでありますが、このような状況の中で、炭鉱閉山による地域の疲弊を回復し地域の経済の発展、住民生活の安定を図るため、昭和三十六年の十一月に産炭地域振興臨時措置法が制定されたわけであります。この法律はこれまで三度延長されておりました。この間施策の拡充が図られてきたり、また中身についてもいろいろなことを検討してきたわけであります。この政策の基本というものは産業基盤の整備と企業誘致及び地方財政の援助の三本柱によって成り立っているわけでありますが、これまで二十有余年の諸施策の遂行により、それはそれなりの成果を上げてきたこともまた私は十分承知をいたしているところであります。しかしながら、多くの産炭地域においてはまだまだ炭鉱閉山による疲弊は解消されておりませんし、地域によっては相対的な格差がさらに大きくなっていることもまた事実であります。  産炭地域振興ではほかの地域政策に比べてきめ細かい各般の助成策を講じておりますが、これは炭鉱閉山の地域に及ぼす影響の大きさから見れば当然のことと言えましょうし、そしてまた、これまでの対策というものが閉山に対する事後策、いわば後追いという面に大きな力点が置かれていたと考えられております。申し上げるまでもなく石炭産業というものは有限の資源を対象とする産業でありまして、いつかはこの資源というものが枯渇をするという運命は避けられないのであります。そういうことを考えてみますと、産炭地域の振興策もこのような観点を重視して、むしろ前向きの、事前の対策ということを講ずることがより大きな効果をもたらして、財政的な面から見ましても非常に効率的ではないかと思っております。石炭産業がまだ稼業している間に地域の産業構造を多様化し、地域の経済、社会基盤、そういったものの活性化を図ることが特に重要ではないかと思っております。  そこでお尋ねをいたしますが、通産省としてこのような新しい方向での産炭地域振興についてどのような考えをお持ちになっているのか、またこのための具体的な施策について今後どのように取り組まれるお考えなのか、お伺いをしておきたいと思います。
  97. 高橋達直

    ○高橋(達)政府委員 産炭地域振興施策につきましてただいま先生から御見解が述べられたわけでございますが、私どもといたしましてもこれまでいろいろな対策を講じてまいりましてそれなりの成果を上げてまいったと思っているわけでございますが、まだ十分であるとは思っておりません。今後とも引き続き産炭地振興対策推進に努めてまいりたい、かように考えているわけでございます。ただいま御指摘がございました、むしろ先行的に脱石炭的にその地域の産業構造を多様化していくあるいは活性化していくという問題については、私ども全く同じ問題意識を持っておりますが、具体的には今年度から産炭地振興対策予算の中に、これまでの公共事業的な、いわばハード面での振興対策のほかにいわばソフト的に、地域の主体性を重視いたしまして、その上に立ってその地域を地域全体としてどのように持っていくかというような観点からいろいろと勉強していただくという意味で、ビジョンの費用であるとかあるいは人づくりの費用であるとかというものを予算をつけていただいたわけでございます。今後ともそういった面で、単にハードだけでなくてソフトの面も含めて地域の主体性を重視しながら国あるいは道県がこれを支援していくということで産炭地振興の問題を前向きに、いわば先取りする格好で進めていく必要があろうか、かように考えております。
  98. 古賀誠

    古賀(誠)委員 御答弁いただきましたように、山がまだ非常に活力のあるうちに例えばその地域の商業化なりいろいろな町づくりというものについて産炭地域振興というものは具体的な施策に今後どんどん取り組んでいっていただく、そういった前向きの姿勢をお取り入れいただきますように重ねて御要望いたしておきます。  私の持ち時間がございませんので最後になりますけれども、これはもう既に報道されていることでございますが、ついに高島の炭鉱におきましては、第八次石炭政策を見る前に閉山ということが叫ばれております。お聞きいたしますと、きょう労使の協議が行われたということでありまして、その結果はどうなったかわかりませんが、そういうふうに今日たくさんの山が非常に切迫していると考えられているわけであります。ということは、今日のように鉄の三分の一の仮払いというものが続けば、これは高島だけではなくて、ほかの炭鉱でも資金繰りが破綻するところも大いに出てくるおそれがあるのではないかと私は非常に心配でありますと同時に、大変な問題だと認識をいたしております。いずれにいたしましても、この問題を早急に解決をしていくことが不可欠なことではないかと思います。この高島の閉山に伴いますことについては、同僚であります久間委員からいろいろ御質問があろうかと思いますが、私は最後に大臣に、一体いつごろまでにこれらの問題を解決していこうと考えておられるのか、ぜひひとつ地元の不安を取り除く、明確な御答弁を最後にお願いをしておきたいと思います。
  99. 田村元

    田村国務大臣 いつまでと言って、何月幾日と言うわけにもまいりますまいけれども、極めて急ぎたいと思っております。中曽根総理からも私に対して、急いでもらいたい、自分は産炭地のことを非常に心配しておる、小学生に返事まで書いた、産炭地のことを思うと胸が痛む、だからどうか急いでもらいたい、こういう指示も実はございました。でありますから、その指示があるとなしとにかかわらず急がなければならぬことですが、大いに急ぎたいと思います。  それから、先ほどちょっとお答えいたしました、例の石炭課税の問題でございますが、ちょっとした報道から既に外国で大分問題になっておるようでございまして、某国大使から、非公式ではありましたが、厳重な申し入れが既に入っておることをつけ加えておきます。
  100. 古賀誠

    古賀(誠)委員 ありがとうございました。私の質問を終わります。
  101. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、久間章生君。
  102. 久間章生

    ○久間委員 ただいまの同僚議員の質問に関連いたしまして、高島の問題につきましてお尋ねいたしたいと思います。  御承知のとおり、本日、三菱石炭鉱業株式会社は、組合側、会社側双方出席して臨時中央経営協議会を開いて、いよいよ十一月二十日で山を閉山する、鉱員については全員解雇するという方針提案されたようでございます。こういう報道、事実を目の当たりにしながら、非常に残念でならないわけでございます。  一つには、明治の初め以来三菱の発生の地となったあの山が、しかも九州の各地区が閉山になるときにそこの退職したあるいは離職した職員を次次と抱えていった高島炭鉱がつぶれる、そういうことで非常に残念でございますけれども、もう一つには、閉山するにもかかわらず、いまだにその後の石炭政策についてどうなっているかという第八次答申が出ていないということ、それと同時に閉山後の高島町は一体どうなるのか、そういう跡地対策について、あるいはまたその地域振興について確たる方針一つも示されていないところに、今日の石炭政策といいますか、炭鉱の抱える諸問題について政府が、無為無策とまでは言いませんけれども、なすすべをなかなかなし得なかったんじゃないか、私はそういう気がして非常に残念でならないわけでございます。  まさに本日臨時中央経営協議会が開かれてそういうことが提案されたそのときに当たって、通産大臣としてこのような問題についてどうお考えなのか、御所感をお聞きしたいと思います。
  103. 田村元

    田村国務大臣 私は、若き日に朝夕高島を眺めて生活をした経験がありますだけに、まことに胸痛む思いでございます。閉山労働組合提案したということを聞いて、私も、これはもう重大なことと受けとめておりますが、きょう通商産業省として公式にこの問題について見解を表明いたしました。これを読み上げることによってお答えにした方がよいかと思いますから、読み上げます。   本日、三菱石炭鉱業(株)は、臨時中央経営協議会において、十一月二十日をもって同社の高島砿業所を閉山する旨提案した。   本問題は基本的には企業経営判断に属する問題であり、労使間の十分なる協議を経て決められるべきものと考えるが、当省としても本問題の雇用、地域に及ぼす影響に鑑み、これを重大に受け止めつつ、当面事態の推移を注意深く見守りたい。   仮に閉山というような事態になった場合には、上記の趣旨に照らし、当省としては、同社及び親会社に対し、雇用対策、地域対策に万全を期すよう指導するとともに、地元県、町と連絡を密にしつつ、関係各省庁等と協議の上、その対策に遺漏なきを期する考えである。 きょう発表した見解でございます。
  104. 久間章生

    ○久間委員 遺漏なきを期すようという話でございますけれども、今の話を聞いておりましても、通産省として、政府としてどれだけのことをするのかというような姿勢がはっきり打ち出されていない、そういうところに私は非常に残念な気がするわけです。もう閉山は時間の問題だというふうに去年から言われてきておりました。そして、今になってみると、石特会計にも金がない、通産省としてもなかなか自分が金まで出して助けることはできない、あるいはまた、地域対策としても県とか各省庁が協議していろいろなことを考えてくれというようなことで終わっておるような気がしてならないわけでございます。したがって、これまで石炭政策を背負ってきた通産省として、これから先の地域振興対策としてもやはり自分が中心になって取り組むんだという姿勢で取り組んでもらわなければ——特に島でございます。高島の外れにありますいわゆる軍艦島、あそこだって今はもう無人島になってしまっております。かつての伊王島もそうでございましたけれども、とにかく七、八千人おった人口が今一千五百人ぐらいに減ってしまっておる。この高島町も今六千人の人口がおりますけれども、産業としてよっぽど通産省中心になっててこ入れしない限りは恐らく町が消えてしまうのじゃないか、そういう不安を持っておるわけです。県に指導してもらう、県と一緒になって協議してもらうと言いますけれども、県だって造船不況、海運不況その他いろいろな意味で不況で、企業に来てもらおうと思っても島にまでどうやって持ってくるか、なかなか難しいわけです。特に高島町の場合は全島の六割が三菱石炭鉱業が持っている土地でございます。その上に非常に古い住宅が建っております。こういう住宅を撤去するにも金がかかるでしょう。このときに一体政府はどういうようなてこ入れをしてくれるのか、そういうことについても町も県も非常に心配しているわけです。かつては通産省に行くと、そのときは何とかしよう、金についても考えようというような雰囲気であったけれども、このごろ行くと、政府だって金はないよというようなことを自然とにじみ出るようにおっしゃられるというような話が伝わってくると、一体この町はどうなるんだろうかという不安が非常に強いわけでございます。大臣としては、まだ答申が出る前にいろいろ発言しにくい点もあろうかと思いますけれども、通産省当局としてぜひこの問題については前向きに、積極的に取り組んでいただきたい、そのようにお願いを申し上げたいわけでございますが、再度の御決意をお願い申し上げます。
  105. 田村元

    田村国務大臣 答申直前のことでございますので、率直に言って戸惑いがございます。ございますが、答申を受けまして——私は就任以来通産官僚に申しておりますことは、とにかく百の考え休むに似たり、積極果敢に行動せよ、これを強く言っておるわけであります。同時に、セクト主義は一切忘れろ、労働省にも頭を下げろ、何省にも頭を下げろ、そして大きな問題は日本国政府という名において取り組んでいくべきだ、このような考え方でなければこういう問題はなかなか解決しない、だから、そういう姿勢を忘れることのないように、これは私は最初から言い続けておることであります。そのかわり人事には介入しないから安心しろと言ってございますけれども、とにかくそういうことで通産省の役人は今ぴりぴりしておると思いますが、それくらいぴりぴりさしていいんじゃなかろうか。積極果敢な行動ということで八次審の結果と取り組んでいきたい、このように思っております。
  106. 久間章生

    ○久間委員 労働省にお尋ねしたいわけでありますけれども、職員百名相当はまた親会社の方でもいろいろ配慮してもらえると思うわけですが、とにかく関連して働いておられる方が二千人弱おるわけでございます。そういう人たちが十一月二十日をもって全員仕事がなくなってしまう。大量の失業者が出るわけです。これについては、通常でございますと県の県庁所在地に、長崎市なら長崎市において、県当局のセクション等中心になっていろいろと就職のあっせんその他やっていけばいいわけですけれども、何せ場所が島だけに、これから先離職者対策を講じるについてもなかなか大変だろうと思うのです。労働省としては出先機関を現地に置いてまででもそういう問題と取り組んでいくようなそういう姿勢があるのかどうか、その辺についてひとつお尋ねしたいと思います。
  107. 新村浩一郎

    ○新村説明員 先生言われましたように大変地理的に難しい条件があるところでございます。我々としましては、臨時に現地に職業相談所等を設置することといたしましてこの問題に対処いたしたいと考えております。
  108. 久間章生

    ○久間委員 それから、細かい話になって恐縮でございますけれども、通産省の方にお尋ねいたします。  私も高島には行ったことがございますけれども、御承知のとおり高島は企業誘致するにしても非常に狭い島でございます。その上、掘り出したボタをそのまま海の方に押し出しておる。そして、そのまま毎年毎年ずっと海岸べりに押し出したままになっておるわけでございまして、それをそのままにしておったのでは、一たび台風が来れば大変じゃないかというようなことを先般も行きましたときに町当局にも言ったことがございますけれども、幸い最近はこの十年近く台風があそこに押し寄せたこともございませんで、大きな波も上がってないようでございますけれども、閉山ということになりますとやはりそのままでは済まされないのではないか、そういうふうに思います。そういうようなボタの跡等については一体どういうふうに指導していくのか。  それからもう一つは、先ほど言いましたように、もう今人が入っていないような古い住宅もございます。そういう住宅等については、そのままにしておったのでは出てくる企業にも差しさわりがある、そういう跡地を活用するにもやはり差しさわりがあるということで、町当局としても何とかしてもらいたい、そういう希望を出しておるようでございますけれども、それらの問題についてはどう考えられるのか、通産省当局としてのお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  109. 高橋達直

    ○高橋(達)政府委員 仮に閉山ということになりました場合に、その地域をどう立て直していくかということにつきましては、先ほど来大臣から御答弁申し上げておりますように、私どもとしても重大な関心を持って積極的に取り組みたいと思っております。  ただいま御指摘のございましたボタ捨ての問題と海岸の整備あるいは炭住の跡をどうするかというような問題につきまして、関係各省にもまたがっている問題でもございますので、私どもとして産炭地域振興関係各省会議というのがございますので、まだ正式に閉山ということではございませんけれども、会社から提案があったということで、とりあえずこの会議を近いうちに開かせていただきまして、ただいま御指摘のあったような問題も含めて各省にもお願いいたしまして、いろいろな問題について遺漏のないように注意してまいりたいというふうに思っております。
  110. 久間章生

    ○久間委員 それから、高島ではございませんけれども、先ほど同僚古賀議員からも話が出ておりましたけれども、生き残った山にしても、とにかく仮に何トンということが第八次答申で出されまして、その中に枠内に入って生き残った山にしましても、原料炭その他非常に値段が安いということになりますと、非常に経営が圧迫されて、近い将来閉山に追い込まれるのではないかというような、そういう不安がやはり残るわけです。  したがいまして、これから先の石炭政策を進める場合には、そういうふうにこれは残すんだとなった以上は残した山についてはやっていけるだけのそういう政策をどうしてもやる必要があるのではないか、そういうふうに思うわけです。閉山になったところはそれはもうある意味ではやむを得ないかもしれませんけれども、閉山にならずに今度の計画で残った山は少なくとも向こう十カ年なら十カ年は安心して自分たちは仕事をやれるんだという、そういうようなことをやはりやるべきじゃないか、そういうような気がいたしますけれども、八次答申が出る前にそういうことを言うのもまたなんでございましょうが、答申を出してもらうに当たって通産省としてはそういうような基本的な姿勢で臨んでおられるのかどうか、お尋ねしたいと思います。  というのはなぜかといいますと、例えば県内にも松島炭鉱なら松島炭鉱があります。ここも原料炭を今まで出しておる。ところが、今のこういう状態の中でおれたちが出しておる、こういうようなことを続けておって、自分たちの山はどうやら今度は何か続けてやっていけそうだけれども、本当に二年、三年後にやっていけるんだろうか、自分たちはここで仕事をしておっていいんだろうかという絶えず背中の後ろに不安感がつきまとって、そういう中で仕事をやっていくというのは本当につらいのですよという話を先般聞いたわけです。私も話を聞きながら、そうだろうなと思いました。だから答申を出すに当たっては、少なくとも出した以上は、残ったそういうような山については、あなたたち心配せずに仕事をやれ、そういうふうなことが言えるぐらいのことをやってもらいたい、そういう気持ちがあるのですけれども、それらについての通産省のお考えをお聞きしたいと思います。
  111. 高橋達直

    ○高橋(達)政府委員 将来の生産規模のあり方、これを現在審議会検討中であるわけでございますけれども、議論の方向といたしましては、先ほど来出ておりますように生産縮小はある程度やむを得ない、ただ今先生から御指摘のございました操業を今後続けていく炭鉱経営上の配慮、これについては私どもも十分念頭に置いて審議会を補佐してまいりたい、かように考えております。
  112. 久間章生

    ○久間委員 時間もないようですから、最後に一問だけお尋ねしたいと思います。  いわゆる通産省では城下町法案、特定中小企業対策法ですか、この法律によって不況業種地域の地域指定をやっていく、そしてまたそこについてはいろいろと手厚い対策を講じようというようなことでございますけれども、産炭地域はこの法律によってカバーされようとしているのか、それとも今まで既にあります法律によっていろいろな施策が講じられているので、その法体系でやろうとしておられるのか、その辺についての考えをお聞かせ願うと同時に、私の個人的な意見を言いますと、産炭地というのは今言いましたようにほかのものではなかなかカバーし切れないいろいろ特殊な問題もございます。しかし、それだけにほかの不況業種以上にあるいはそれ同等の手厚い対策を講じなければやっていけないこともあるわけですから、その法律に入らないとすればそれなりの対策を現在までの制度の中に取り込んでやっていく必要があるのじゃないかと思いますけれども、これについての考え方をお聞きしたいと思います。
  113. 田村元

    田村国務大臣 この法律案はまだ提案もしてない問題で、今何とも物の言いようがないのですけれども、ただ全国から殺到しておることは事実であります。毎日私のところにだれかが、国会議員さんが地元を連れていらっしゃる、そのたびに、御趣旨のほどはよくわかりましたという返事しかできないわけです。でございますから、ここで私は産炭地について特にどうこうということを言うわけにまいりません。法律案は提案もされなければ、まだ通過も何もしてないわけですから。でございますから何も言えませんが、ただ一言だけ申し上げるならば、産炭地に対して無関心ではおれないという私には強い気持ちがございます。
  114. 久間章生

    ○久間委員 終わります。
  115. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、岡田利春君。
  116. 岡田利春

    岡田(利)委員 第八次政策を前にして、私は今回炭鉱閉山するのも残るのも地獄になるのかなという感じがしてならないわけであります。特にきょう、三菱の高島炭鉱閉山会社より組合に提案をされたわけです。非常に象徴的ではないかなと私は思うのです。今通産大臣も、若かりしころ高島の島を見て暮らしたという話がございましたけれども、ここは炭鉱が開発をされてもう百三十年以上になると思いますし、またグラバーさんがこの炭鉱開発に参加をして、我が国初めての立て坑を開削した、いわゆる近代炭鉱のまた発祥でもあるわけです。そういう面から見ても極めて高島炭鉱閉山は象徴的ではないかなという感じがしてなりません。  同時にまた、では一番先に閉山する高島炭鉱経営格差の面で一体どうであったのか。残念ながら最も経営が悪いという認定ではないのであります。安定補給金トン一当たり二百五十円、太平洋、松島、三池は二百円でありますけれども、その上が高島炭鉱二百五十円。空知の炭鉱は千百五十円であるわけです。これが各社の安定補給金の配分の実態であります。低い安定補給金を受けていたその炭鉱が一番先に閉山をする、極めて象徴的であるわけであります。そして、この第八次政策を前にして、今なぜ緊急に閉山提案をしなければならないのか。閉山提案は当然、大臣に直接ないかもしれませんけれども、通産省には事前に相談があったはずであります。私は、そういう政策の流れからいっても、この高島炭鉱が今日閉山提案をしたということについては極めて不満を持っておりますし、また、産炭地炭鉱に働く人々に与えた衝撃は非常に大きい、こう思うのであります。  そういう意味で、先ほど大臣高島炭鉱閉山についての談話というものを読まれましたけれども、第八次政策をどうしても今月中にまとめなければならないという大臣の心境と今日閉山提案をしたという事実、そういう面における、政策の最高責任者である通産大臣の感想を求めたいと思うわけです。
  117. 田村元

    田村国務大臣 先ほど申し上げたとおりでありますが、民間企業判断でございますから、率直に言って私にはしっかりわかりません。むしろ八次答申の直前になぜと私が聞きたいぐらいな話でございますが、しかしこれからも注意深く見守っていきたいと思います。  実は、先ほどもちょっと触れましたように、私はあのすぐそばで二年余り生活をしました。伊王島、高島と毎日眺めておったのであります。それだけにひとしお身にしみる思いがいたします。これからも何くれとなく私もまた目配りをしていきたいというふうに思っております。
  118. 岡田利春

    岡田(利)委員 先ほど向坂委員長参考人出席をしましたけれども、石炭鉱業審議会の中につくられた検討小委員会、そして政策需給部会が開かれて七人委員会が構成をされた。今この委員会は何をやっておるのですか。第八次政策をやっておるのですか、それとも今年の基準炭価を決めることをやっておるのですか、いかがですか。
  119. 高橋達直

    ○高橋(達)政府委員 その両方をやっております。
  120. 岡田利春

    岡田(利)委員 とすれば、一体なぜ小委員会を開いて、小委員会の了解を正式に受けて七人委員会を構成されないんですか。そうじゃなかったでしょう。七人委員会というのは、石炭鉱業審議会政策部会需給部会が開かれてその中から構成されたわけでしょう。しかし、第八次政策石炭鉱業審議会が受けて検討小委員会に任したわけでしょう。そして検討小委員会石炭鉱業審議会答申をする、こういうことになっているわけです。七人委員会というのはその検討小委員会政策部会需給部会の合同会議で報告したその中から生まれてきたわけですね。ですからそういう意味では、通産省の報告書を見ても、七人委員会設置までは昭和六十一年度基準炭価の経過の中に入っている。第八次政策の中に入ってないんですよ。あなた方が出している文書を読めば。ここにありますけれども。そこがどうもこんがらがっているのではないのか。どういう脈絡になるんですか。では、基準炭価の諮問と八次政策というものはどういうことになっていくんですか。
  121. 高橋達直

    ○高橋(達)政府委員 八次政策の諮問につきましては、昨年の九月に通産大臣から石炭鉱業審議会に行われたところでございます。一応の目途といたしまして、一年ぐらいの審議期間で御答申をいただこうということで鋭意御検討をいただいていたわけでございます。それがことしの四月以降の状況の中で、御案内のとおり毎年通産大臣が基準炭価を定めることになっておるわけでございますが、その基準炭価の問題に関連いたしまして、それが今後の八次政策の基本にかかわる問題が生じてきたわけでございます。したがいまして、そういう事態でございますので、ことしの炭価問題とそれから八次の答申をいただく基礎を固める問題とが、一体となって解決しなければいけない問題として出てきたわけでございます。私ども審議会の事務局といたしまして、これはどうしても初めに基準炭価の問題を片づけていただいて、その上で八次政策を御審議いただき答申をいただく、こういう手順になろうかということでお願いをいたしまして、現在基準炭価の問題が七人委員会で議論されているわけでございます。この七人委員会政策部会需給価格部会の合同会議の下に設けられたということでございまして、そういう意味におきまして基本的には八次の問題をにらみながら今年度の炭価問題を解決するための、原料炭の問題を御審議いただく組織として位置づけられておるわけでございます。
  122. 岡田利春

    岡田(利)委員 基準炭価通産大臣審議会意見を聞いて決めればいいんですよ。別に諮問するわけじゃないんですね。意見を聞いたらあと自分で決めればいいということに立法上なっているわけですね。もちろん政策は、これは諮問するわけですから答申を受けなければならぬわけです。その辺の感度が、私から言わせると、諮問も意見を聞く炭価決定もごちゃまぜになって非常に混乱している、こう言わざるを得ないんですね。ですから、一般の人が聞いてもわからない、すかっとしないわけですよ。基準炭価を決めるといったって、今鉄鋼の出方からいえば、第八次政策の基本を決めないで決められないわけでしょう。だから七人委員会というのは第八次政策の根幹を決めるわけでしょう。そういうことになるわけでしょう。例えば、あっせんする、仲裁するといったら、第八次政策の根幹になるものを出さないであっせんできますか。そうしたら、これは第八次政策そのものを決める——たまたま昭和六十一年の基準炭価の問題が絡んできた。本当はこれはやる気なら離すことができるんですよ。IQ制度はどこが持っておるんですか。通産省が持っておるでしょう。鉄鋼だってIQ制度があるじゃないですか。あんな三分の一より払わない、そういうものにどうしてIQの割当ができるか。どうして言えないんですか。言えるわけでしょう。基準炭価だって決められるでしょう。第七次政策があって、通産大臣意見を聞く。聞いてもまとまらぬ場合がある。その場合は通産大臣が決めなければならぬわけでしょう。今の法律ははっきり書いている。これが本当でしょう。しかしやわらかくやっていきたいというあなた方の心情はわかります。しかし、私が言っているのが本当じゃないですか。いかがですか。
  123. 高橋達直

    ○高橋(達)政府委員 基準炭価の問題につきましては、石炭鉱業合理化臨時措置法に基づきまして毎年通産大臣審議会意見を聞いて諸々の要因に基づいて決めることになっておりまして、その審議会に御意見を聞くというプロセスを現在やっておるわけでございます。  それから、IQの問題でございますが、これは輸入貿管令に基づいて行っておるわけでございますが、私どもといたしましては、基本的にはやはり割り当てられる相手方の納得を得ながらやるべき筋合いの運用の問題というふうに心得ております。
  124. 岡田利春

    岡田(利)委員 それはIQだって国内炭の保護をする必要がなかったら、IQ制度を指定する必要はないでしょう。優先引き取り、全量引き取りという前提があるからIQ制度になっておるわけですよ。政策も法律もそういう立て方ででき上がっておるわけですよ。基準炭価だって、炭鉱の方が弱いから守らなければならぬから基準炭価制度があるのですよ。だから、基準炭価を崩した場合には通産大臣は勧告できる、それは既に炭鉱の社会的な地位が低いから守るために法律はそうなっているのですよ。私は、そういう政策立案の過程とか今日の立法の本質、精神というものを曲げて解釈してはならないということを申し上げておきたいのであります。  では、もう一つ聞きますけれども、昭和六十一年度の石炭の合理化計画はいつ決めるのですか。
  125. 高橋達直

    ○高橋(達)政府委員 お尋ねの件は六十一年度の合理化実施計画のことかと思うわけでございますが、ただいま基準炭価の問題について審議会に御審議をいただいているところでございますし、この問題が片づき次第合理化実施計画を定めてまいりたいと考えております。
  126. 岡田利春

    岡田(利)委員 高島炭鉱閉山相談通産省にあったのに今年度の合理化実施計画もつくらぬでそのことに同意を与えるのですか。そういう動きがあるならば、昭和六十一年度の石炭合理化計画は当然石炭鉱業審議会意見を聞いて通産大臣が決めるのでしょう。同じ石炭鉱業審議会意見を聞くのですよ、炭価の問題も、この合理化実施計画もそうなんです。そういう動きがあるならば、当然合理化実施計画についても早急に並行的にやらなければならぬ問題ではないでしょうか。いかがでしょう。
  127. 高橋達直

    ○高橋(達)政府委員 今年度の生産を決めます実施計画につきましては、先ほど申し上げたとおり基準炭価を先に決めたいと思っているわけでございますけれども、個々会社からの生産計画等についてはこれまでも順次事情を聴取しているところでございまして、炭価決定し次第これも決めてまいりたいと考えております。
  128. 岡田利春

    岡田(利)委員 労働省おりますけれども、石炭鉱業合理化臨時措置法の第四条の二、労働大臣は就職計画を定めなければならないとありますね。労働省の方も通産省の方ばかり見ていてこういう計画については後手後手に回っていると思うのですよ。夕張の例もしかりであります。夕張の実態も御承知のとおりであります。結局はこれも労働大臣石炭鉱業審議会意見を聞かなければいかぬのでしょう。意見を聞く準備はできておりますか。
  129. 松岡滿壽男

    松岡政府委員 ただいま御質疑がございましたように、私ども労働省といたしましては、石炭鉱業合理化実施計画と合わせまして石炭鉱業審議会意見を聞いて再就職計画決定することになっておるわけでございます。本年度の再就職計画につきましても通産省石炭鉱業合理化実施計画と合わせて策定する考えでありますけれども、その前提になります石炭鉱業合理化実施計画の策定が先ほど来の御質疑のようにおくれておるわけでございます。したがって、現在のところまだ再就職計画についても策定いたしていないというところでございます。しかし、いずれにいたしましても六十一年度の再就職計画につきましては通産省石炭鉱業合理化実施計画と歩調を合わせまして策定いたしたい、かように考えております。
  130. 岡田利春

    岡田(利)委員 もう一つ労働省に聞いておきますけれども、炭鉱離職者臨時措置法の中にその雇用状況によっては緊急就労事業を計画しなければならぬと書いてあるわけですね。今の緊急就労は既に十五年から二十年経過しておるわけですね、企業ぐるみ閉山が終了したのが十六年前ですから。これは九州とか山口県、もちろん佐賀にも一部ございますけれども、常磐にも若干ある。これは北海道には全然ないわけであります。夕張でもまだ五百名程度の労働者が職につけないでおるわけです。したがって、機会均等論からいえば、政策の整合性からいえば、北海道に炭鉱離職者が滞留するならば、当然この緊急就労事業の計画を発動しなければいかぬのではないですか。あるいは使命が終わったものをやめても発動しなければいかぬのです。いずれにしても無視するわけにはいかぬのじゃないですか。これが政治というものではないでしょうか。いかがですか。
  131. 新村浩一郎

    ○新村説明員 炭鉱離職者対策につきましては、昭和三十八年三月に炭鉱離職者臨時措置法の改正によりまして、事業に炭鉱離職者を吸収するという従前の方式から、これらの者に対しましては原則として三年間有効な炭鉱離職者求職手帳を発給いたしまして、その間公共職業安定所におきまして強力に職業指導を行いますとともに、就職促進手当等を支給する等によりましてそういったような方々の再就職の促進のために必要な措置を講じようという方式に切りかえたわけでございます。これらの炭鉱離職者のうちで他の地域で就職を促進する……
  132. 岡田利春

    岡田(利)委員 それは知っております。緊急就労を聞いているんです、やる気があるかどうか。
  133. 新村浩一郎

    ○新村説明員 それでは少し技術的な話になるわけでございますが、炭鉱離職者臨時措置法四条の規定でございますけれども、これは現在、炭鉱離職者臨時措置法の規定そのものがこの手帳方式に切りかえられた後におきましては、これ以後手帳を発給された者及びその手帳の有効の期間中の者についてのみ適用するという仕組みになっているわけでございまして、今先生御指摘の一遍炭鉱離職者求職手帳を受給いたしまして必要な就労指導を受けた方々につきましては、この炭鉱の臨時措置法の四条は、要するに失効後の話でございますので、これについてはこの四条は規定の適用がないということになっているわけでございます。
  134. 岡田利春

    岡田(利)委員 全然私の聞いているのじゃない。聞かないことを答弁しておりますね。これからの事態ということを聞いているのです。今後そういう多量に失業者が発生した場合に緊急就労をやる考えがあるかどうかということを聞いたわけです。まあいいでしょう。とにかく問題提起ですから覚えておいてください。  そこで、今高島炭鉱の地域は松島炭鉱の池島があって、これは西彼杵炭田というのですが、このポテンシャルは今までの調査の結果でも筑豊炭田を上回るポテンシャルであるというのが大体常識化されているのではないでしょうか。同時並行的にやった三池炭鉱調査の結果も佐賀寄りに非常に有望な炭田が全部調査済みで確認されておるわけです。あるいは釧路炭田の沖の調査の結果も予想を上回って非常に安定的な炭層が賦存しているという状況が今日明らかになっているわけです。高島炭鉱閉山ということは、この西彼杵炭田は残念ながら今の池島地点、これは採掘可能な地域以外を放棄するということに決定づけられる、私は非常に残念なことだと思っておるのであります。そういう意味でも、今後の石炭政策方向を決める点について、それらの問題についても我々は十分注意を払っておく必要があるのではないかと思います。  そこで、私は通産大臣一つ聞いておきますけれども、中曽根総理が心配をされて、月末までに答申をまとめてほしいと要望された。ある解説では、十一月四日からアメリカの中間選挙が始まるからそれまでに何らかの形で出せという意味だ、こう書いているものもありましたけれども、通産大臣の認識として、我が国石炭産業縮小されてアメリカからの石炭の輸入がふえると思いますか。どうでしょうか。
  135. 田村元

    田村国務大臣 これはふえるか減るか、現状でちょっとお答えのしようがないと思います。ただ、さっきも申し上げたように、十一月に中間選挙があるからというお言葉がありましたが、中間選挙と石炭とは関係なさそうでございます。
  136. 岡田利春

    岡田(利)委員 大臣は極めてさらりと言われましたけれども、私が予算委員会で特に総理大臣質問したときに、経構研のいわゆるはしりは石炭の大幅縮小であった、しかも先ほどから言われているように、そのことは産業調整の試金石である、こう言っているのですから、その経構研を中曽根さんはレーガンさんに言って公約したわけですから、だから、ないと言えばうそになるし、あるとも言いたくないというところじゃないかなと私は思うのですが、結構です。  ただ、申し上げておきたいことは、アメリカというのは今までの輸入量はかつては一番多かったのですよ。ところが、どんどんどんどん減ってまいりました。昭和四十五年アメリカから二千五百四十三万トンの石炭我が国は輸入していた。昭和六十年どうなったか。一千二百八十万トン、マイナス千二百六十三万トン減っているのであります。片や豪州の方はどうか。千五百七十六万トンが今や三千万トンにふえているのですよ。中国においてしかり、カナダにおいてしかり、南アにおいて、今問題の南アなんというのは急増しておるのであります。これなんか今問題のところですね。だから、日本の石炭鉱業縮小したからといってアメリカから石炭が輸入されるなんてことは、もうそれはよほど音痴な人の考えなんです。ですから、対米貿易の面でもしこの日本の石炭鉱業縮小を重点的に考えておるとするならば大間違いだと私は思うのですね。  そういう点も気にかかるものですから申し上げておいたのでありますが、そういう中で、先ほども質問のありました通産省発と言われる閉山計画、どうも気にかかるのであります。先ほど明快に大臣は否定をされました。この案は第七次政策最終年度昭和六十一年から六十四年、八次政策の三年間、この中で次々々と閉山をしていくという内容になっているわけであります。だが、私が指摘をしましたように、実際の石炭縮小というのは千六百四十五万トンからの縮小じゃなくして、雑炭を含めて千八百二十四万トンからの縮小になるというのが本当なんです。一千万トンにするという意味は、八百二、三十万トンの生産量を縮減するという意味なんです。そうしますと、これを三年ないし四年でやる場合と五年でやる場合には相当ウエートが違ってくるわけであります。だから、これは否定するのは結構ですよ。否定されるのは結構です。否定されるというのは、ここに流れている計画の流れそのものを否定されますか、いかがですか。例えば四年、これは四年ですね、第八次政策では三年間です。この基本を否定されますか、どうですか。
  137. 高橋達直

    ○高橋(達)政府委員 第八次石炭政策期間を何年にするか、これは今後審議会で最終的に御議論をいただいて取りまとめていただく予定にしておりますが、いわゆる一部新聞、一部報道によりますところの政府閉山計画なるものは存在しないことについては、先ほど大臣から明確に御答弁いただいたところでございますけれども、その根底に流れる問題ということで御指摘がございますが、これは午前中に向坂参考人からお答えがありましたように、審議会においてはいわば企業活動フレームになる問題を御検討いただき、お取りまとめをいただくということでございますので、国の石炭政策方向なりあるいは企業活動に対する指針なり、それを支える環境がどういうものであるか、こういった問題を御審議いただき、御答申いただくことになっているものでございます。国の政策方向の中に将来の生産目標がどういう形になるか、こういう問題が出てこようかと思うわけでございますし、またそれについては地域あるいは雇用に対する影響というものを十分考えた上でやらなければいけないということについては、先ほど来向坂参考人からのお答えもあったとおりでございますけれども、いずれにいたしましても、個々の山の問題、そういった問題については審議会でも扱わないし、国がこれを決定することはない、こういうことでございます。
  138. 岡田利春

    岡田(利)委員 そういうことは建前なんですよ。建前で言っているだけであって、そんなことはあなた、まかり通りますか。全然企業の意思に任せますなんて、そんなこと政治がやれますか。それは建前論にしかすぎないですね。やはりある程度のものはかちんとした、計画経済というものはないでしょうけれども、めどというものは、目標というものがなければできないでしょう。ですから、私は、そういう目標というものが否定されるならば、この六十一年から四年間でこれだけの量の閉山をするということは否定しますかということを聞いているわけですよ。これは否定しなかったらほぼ同じですよ。五十歩、百歩ですよ、そんなもの。発表したのと同じわけですよ。NHKの報道や日経の報道は大体間違いがないということですよ。そう私が思うのは間違いでしょうか、お教え願いたいと思います。
  139. 高橋達直

    ○高橋(達)政府委員 同じ答弁を繰り返すようで申しわけないわけでございますが、どのくらいの生産規模になるかということについてはこれから審議会で最終的にお決めいただくものでございまして、私ども、現在どのくらいというふうに申し上げるわけにいかないわけでございますので、ただいま岡田先生からの御質問についてはそれ以上お答えができないわけでございます。
  140. 岡田利春

    岡田(利)委員 通産大臣、今ぐっとにらんでいるから、やはりそれ以上答弁できないのでしょうね。  そこで、私は、今度の石炭協会の方で言った中で一番かちんとくるのは、原料炭供給はゼロだ。原料炭がゼロだということは、残念ながら一般炭の一般産業向けもゼロという意味なんですね。そうでしょう。鉄鋼の方にゼロにしてセメントや——麻生さんのセメントとか紙パの方にゼロにしないというわけにはいかないわけですよ。ゼロという同義語なんです。原料炭供給をゼロにするということは一般産業向け一般炭もゼロにする。ここが重大なわけです。油がそのうちに十八ドルになるでしょう。円は一体どういう水準に将来なっていくのかという問題もあるわけでしょう。しかし、少なくとも一般炭の場合にはまた横持ちもあるわけですから、山の中だってセメント工場あるわけですから、その動向いかんによっては差が縮んでくるわけでしょう。日本の一般炭全部、オール水洗の石灰なんですね。外炭は大体未洗で輸入しているのが一般炭の実態なんですよ。そういうメリットもあるわけであります。あるいはまた、火力発電所の関係では油よりも国内炭の方が決して高くはないということになるかもしらぬですよ、二、三年先になったら。かもしらないですよ、これは。だから、我々は慎重を期さなければならない、こう言っているわけですよ。原料炭をゼロにして一般炭産業向けを残すことができますか、できないですか、明快にしてください。
  141. 高橋達直

    ○高橋(達)政府委員 石炭協会の有吉会長が審議会において石炭業界を代表して表明をした考え方の中には、原料炭をゼロにすると同時に電力用炭以外のいわゆる一般産業用の一般炭についても最終的には期間中にゼロの方に持っていく、ゼロにするというふうに御発言をされているわけでございまして、私どもとしてはそれを踏まえて審議会での御議論をしていただこうというふうに思っております。
  142. 岡田利春

    岡田(利)委員 有吉さんの方は最終的に一般炭一千万トンを自給を確保してもらいたい。自民党の野田委員会の方では一千万トン以上確保するようにすべきだ、こういう結論を出されておるわけですね。だけれども、どうも計算してみると一千万トンなんて切るのじゃないかなという感じがしてならないのですよ、大体計算してみますと。山が多くないのですから、出てくるのですから。ですから、向坂先生は私に何回も言っておったのは、経構研以下のことは絶対ない。経構研だってあれだけ問題になって、一千万トンにする、撤収論ですから、経構研の以下ということは絶対ない。だから、大体初めは一千百万トンから一千二百万トンの規模を考えておった。状況が悪くなってから後退した。では、経構研で議論したその経構研の水準よりは下回らないということを約束できますか。通産大臣、いかがでしょう。
  143. 田村元

    田村国務大臣 今とにかく買い手に対して買ってもらうのに懸命の努力を払っておるということでございまして、場合によったら、そう遠くない時期に私も頭を下げに行かなければならぬかな、石炭のために、国内炭をより多く買っていただくように、頭を下げに行かなければならぬかなというふうに思っております。
  144. 岡田利春

    岡田(利)委員 通産大臣は今後いろいろな産業調整の問題を手がけてまいられると思うのです。その最も象徴的だと言われる石炭問題なんですが、今後産業間で、正常な商取引が行われていて、そういう慣習があるのに、一方が一方的に、おれはもうこれしか払わないというようなことがとられて、産業調整がスムーズにいくんでしょうか。社会通念もあれば政策の精神もあるわけです。これも今大事な時期ですから、余り大臣に強い見解を求めるということはいかがなものかと私も承知をしております。しかし、一般論として、産業の調整を、経済の構造調整をスムーズにやっていくという場合には、過去の慣行というものは一応尊重されつつ、お互いに言い分を言い合って調整するということでなければならぬということだけは言えるんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。
  145. 田村元

    田村国務大臣 それは当然のことだと思うのです。問題は、過去の慣習、経緯等を念頭に置いて、つまり、全面的に忘れることなく、しかも構造改善の実を上げる、国際協調のバランスのとれた日本の経済、産業の構造に持っていくというこでございますから、先ほども申し上げましたように、いわゆるドラスチックなことはしない方がよい。なだらかな方がよい。それにはもちろん大変な努力も要ります。と同時に、また、一般の方々からごらんになればじりじりされるでしょうけれども、急激な変化を求めるよりその方が実が上がるであろうと考えますけれども、だからといって今度はのんびりしておるわけにもいかないということです。  今、鉄鋼の話が出ましたけれども、さっきも申しましたように鉄鋼自体が大変なんです。で、もちろん鉄鋼に買ってもらわなければならぬのです。買ってもらわなければならぬのですけれども、どれだけ買ってくれるか。炭鉱にもそれがあるように、鉄鋼にもまた経営者と株主と労働組合があるわけです。なかなかこれは難しい問題で、通産大臣というのは、毎晩私は布団に入ってから、またやられたなと、苦しきことのみ多かりきと思って寝ますが、今、言うなれば胸突き八丁、大変なときであると同時に、またスタートのときでもあるというふうに思っております。
  146. 岡田利春

    岡田(利)委員 先ほどの幻の閉山スケジュールでありますけれども、せっかく通産省側が否定し否定し、強く強く否定をするのですから、私も素直にそれを受けとめましょう。そんなに強く否定するのですから、同じようなものが出るはずがない。同じようなものが出るんだったら、それは責任はないけれども、そういうようなことも何か議論されたところがあるでしょうなどということになるかもしらぬ。そんなに強く否定されるのですから、これは幻の計画であって、これと同じようなことはない、こう私は受けとめておきたいと思うのです。  そして、山の関係というのは非常に難しいわけですね。すべてが原料炭という山はないわけですから、すべてが一般炭という炭鉱は十一のうち三つあるわけですよ。そのうち一般炭の、純一般炭の二つが今度の幻と言われる、通産省が否定する計画に出ているわけですね。一つしか残らない、こういうことになるわけですね。あとは全部、多いか少ないか、ウエートは別にして、一般炭原料炭が一緒に出る山なんです。残る山だって、原料炭を出してはならないんだから、その分をカットするか——三池四山なんて名前がわざわざ御丁寧に出るものだから、我々、坑内の条件を知っていますからね、ぴんとくるわけですよ。私も三池炭鉱の坑内でかつては働いたことがあるのですから。ですから、残る山だって、今度は原料炭はだめだというのだから、転換するか、その部分だけやめてしまうか、やめない部分はズリをまぜてカロリーを下げて手取りを安くして対応しなければならない、こういうことになるわけですね。ですから、そういう意味で、やめる山も残る山も大変だということを僕は先ほど言っておるわけであります。ですから、第八次政策についてはそれらの点についての歯どめをするものには歯どめをするというのがはっきり出るのでしょうね。そういうものがなければおかしいでしょう。例えば貯炭の低利融資などということですが、どんどんどんどん負担が増して炭価も上がらないということだったら、残った山だってつぶれるのですよ。だから、そういう点についてぴしっと歯どめ的な政策がなければ第八次政策とは言えないと思うのですよ。そういう点、構造的にはっきりしているのですから、大事なポイントだと思うのですよ。後からの行政でやるなどという問題じゃないですよ、これは。いかがでしょう。
  147. 田村元

    田村国務大臣 審議会で御審議いただくのに、政府から余りいろいろな枠をはめたりあるいは条件をつけたりということはこれは従来的にしておりませんし、またすべきでないと思うのです。審議会委員はすべて非常に有能かつ練達、良識のある方々ばかりでございますから、そこいらは良識を持って答申をお出しになるもの、このように思っております。
  148. 岡田利春

    岡田(利)委員 大臣がせっかくの答弁でありますから、大臣の今の答弁で了といたしましょう。私も、ここで明確に指摘をしておくということは、指摘されたことは気にかかりますからね。参考にもなるわけでしょう。ですから、そういう意味で、大臣のせっかくの答弁ですから、これはとどめて、私が今提起している問題点については十分検討して、最終的には答申の中で回答すべき問題であるということを申し上げておきたい、かように思います。  今、我々の一番隣の国韓国、韓国では二千三百万トンの石炭を掘っているのですよね。朝鮮は七千万トンを超えているのです。朝鮮半島から一億トンの石炭が掘られている。日本の方々はその事実を余り御存じないようであります。それだけにやはり、朝鮮半島でも日本が記録したことのない一億トン程度の石炭を今日なお産出をしているという現状があります。  先般、竹内委員長を団長にして石特からヨーロッパに調査団が参りました。私が常に委員会で指摘をしておりましたフランスの炭鉱、大体これも縮小傾向であります。しかし、昨年は一千五百万トンラインで生産をとどめているわけですね。非常に日本と似ているということもたびたび私は指摘をしている。GNPは半分以下でありますから、そうしますと、日本はGNPが倍であって、国内炭はフランスと同じ程度、条件は日本よりフランスの方が悪いですよ。条件は決してよくありません。私もフランスの炭鉱の坑内も視察したことがあります。そういう状況で、先般、通産大臣とパリで同じホテルに泊まったわけでありますけれども、フランスも、縮小ではあるが、なだらかですよ。それは、地域経済、これは大事だ、こう言っている。ある程度国民負担があっても地域経済を大事にしなければならない、それが均等ある発展である、こう言っているわけでしょう。六十万トンぐらい、五年かかって三百万トンぐらい、大体そういう水準の縮小になるんじゃないでしょうか。日本の場合には、GNPはフランスの倍であるけれども、地域経済はすべて自治体がともに崩壊をするという地点ばかりなのに、血も涙もない、一瀉千里で行こうとする気配が、通産大臣はそう思ってないでしょうけれども、何か客観的にいろいろ強まっている風圧を非常に感じざるを得ないわけであります。  そういう面から考えますと、私は、少なくともなだらかな閉山ということは、百歩譲ってみても、等量で五分の一ぐらいずつ五年間ぐらいで縮小される、最低そういう視点がなければなだらかな閉山なんという言葉を使うべきではないと思うのです。自治体がそれに対応でき得る条件、私も日本の炭鉱一つ一つほぼ状況を知っておりますから申し上げるのでありますけれども、そういう点でこの第八次政策というものをまとめていく、こういうことが大事だと思うのです。これも答弁をいただくと、大臣が予見を与えることは差し控えたいと述べるでしょうから、私の気持ちをここで率直に申し上げておきたい、かように思います。  そこで、閉山の問題についても、高島閉山の問題がありますからちょっと触れておかなければなりません。  通産省産炭地振興法第四条において産炭地域振興実施計画審議会意見を聞いてつくるわけですね。第三条では産炭地域振興基本計画がつくられておって、六十一年度の目標が出ておるわけでしょう。過去二十五年間振り返ってみて、またスクラップ・アンド・ビルドの閉山が始まって二十年を過ぎている今日、産炭地の現状は依然として惨たんたる状況にあるわけですね。先ほど部長はハードだとかソフトとか——ハードでもソフトでもどっちでもいいのですよ、どっちもないのですから、率直に言うと。かつてもハードの面で随分政府も言われたけれども、何一つ実ってないのでありますから。本当にこれをやるのかどうかとこうことですよ。これは重大ですよ。経構研あたりの議論を聞いてごらんなさい。金はじゃんじゃん出す、しかし縮小はする。なに、金はじゃんじゃん出さないわけでしょう。言葉だけが先行しておるわけです。だから、第八次答申はそういう意味で従来と違って産炭地振興法の第三条の基本計画やあるいはまた第四条の実施計画、こういう意見が聞かれなければならないし、そういう点の配慮というものが行われなければならない問題ですよ。第七次にはないでしょう。産炭地振興対策、鉱害というのはばあっと題目を書いてあるだけでしょう。今度はこれではだめですよ。この点はいかがでしょうか。
  149. 高橋達直

    ○高橋(達)政府委員 現在御審議いただいております石炭鉱業審議会検討小委員会の中におきましても、今後生産縮小方向に向かっていく場合、地域の振興というものは極めて深刻な状況の中で重要な位置を占めてくる、こういう認識で皆さん一致をしておりまして、審議会においても地域振興については極めて重大な問題と考えて取り組んでいると考えております。  また、私どもといたしましても、答申でそういった方向が出れば、今岡田先生から御指摘がございました産炭地振興関係の基本計画なり実施計画についても見直しが必要なものであれば見直していくという考え方で、また改めて今度は産炭地域振興審議会の方にお願いしていくことになろうかと思います。
  150. 岡田利春

    岡田(利)委員 しかし、もう高島は提案をしたのですよ。十一月二十日でやめるという提案をしているのですよ。もちろん労使の話し合いはそう簡単にいくものとも思われません。しかし、もう既に提案しているわけですよ。こういう状況の中で第八次答申が出されようとしているわけですね。先ほどの質問に対しても——報道関係にも随分漏れるのですね。そこに会社が工場をつくって人を雇う場合には設備資金とか運転資金を有利に貸し付けましょう、産炭地振興法ではこれは制度がありますけれども、それ以上のものをひとつ考えようなどということもまことしやかに出ているわけです。今度の八次政策ほどよく報道関係に——通産省は一貫して、始めから終わりまで、そういうことはありません、ありませんと来たわけでしょう。前にも田村通産大臣がパリにいたときに、一日の朝日新聞を見たらうわっと出ておったわけですね。びっくりした。帰ってきてから聞いたら、そういうことはない、エネ庁長官報道関係にそういうことはないという文書を出した。出したけれども、何かやっているというだけであって、とにかく出てきますわね。今回の場合なんかまさしくそうですよ。これはやはり世論操作ではないかという疑いが非常に強いのですよ。僕はそういう感じがする。  これは通産大臣はおりませんでしたけれども、先ほど向坂さんのときに私言ったのですよ、今鉄鋼との間で調整する場合、何が問題なんですかと。炭価を補てんすると言ったらもう終わりですよ。外炭と同じに炭価を補てんすると言ったらそれで終わりだ。何も閉山をしなくてもいいわけです。これができないわけでしょう。政府はできないと言っている。できないから、補完するものは何なのか。石炭企業だって炭価を下げることがそんなに簡単にできるような状況にはないわけですから、早く負担を解消するということは、早くやめればいいわけですよ。今すぐやめれば負担はゼロですからね。何も鉄鋼に頭を下げる必要はないわけでしょう。  そうすると、もし鉄鋼調整に入る人がおるとすれば、基本になるのは二つの柱があるのですよ。鉄鋼の言うことを聞く場合には、閉山の速度をずっと寄せるわけでしょう。できれば二年か三年くらいに閉山する。だからそういう感じがちゃんと出ているのですね、今度の案に。そこで、今までのあれもあるから協力してもらいたい。石炭は四百万トンから毎年減りますから、最終的には半分以下になる。四分の一くらいになるでしょう。負担はずっと減る。後はきれいに解決する。この二つよりないはずですよ。だから私は、そういう調整案が堂々と出せますか。なかなか難しいのではないでしょうか。抽象論しか出せないのではないでしょうか。だが、これが出ておけばある程度、ああいう新聞に書かれたようなことをもって言えば、以心伝心でぴんとわかるわけです。だからそういう意味で、あえてこういうものを巧妙に世論操作で流したなというのが私の感じなんです。私はそう思っている。だからさっきから強く言っている。この計画のようにはなりませんね、なりませんねと言っている。ならないならそれで安心するわけです。これで結構なんです。  そういう心配があるのですよ。大臣が最後に入られる場合にも私の指摘した点というのは重要なんですが、御感想はございますか。
  151. 田村元

    田村国務大臣 例の報道は、先ほど申し上げたように明らかに誤報であります。私はこれは何回でも申し上げてはばかりません。第一、そういう計画はつくりません。つくる意思はありません。でございますから、その点はどうぞ余り勘ぐりのないように、素直に受けとめてもらったらいいのじゃないでしょうか、私が言うことですから。  それと同時に、同じ取り組みにしても、クールに取り組む場合と同情し悩みながら取り組む場合とでは違いますよ。でございますから、そういう点も御参考までに聞いておいていただきたい。今私は非常に悩んでおるということもどうぞお酌み取りを願いたいのであります。
  152. 岡田利春

    岡田(利)委員 最後に、これからの税制の改革が政府税調で進められております。先ほど大臣もいろいろ答弁されましたが、税制のあり方いかんによっては輸入原料炭でも輸入一般炭でも課税されるということはあり得るわけですね。ただ、ヨーロッパのような場合は付加価値税というのがある。みんなかかっているのですよ。それが一般財源に入りますから、それで補てんするわけですよ。ドイツなんかそういうような形式でしょう。  大型間接税、付加価値税、いろいろ問題になっておりますけれども、ガットに違反しない、許されるものだったら課税はあるのだ。やるかやらぬかは別ですが、消費税までそんな文句はつけないわけでしょう。ですから、そういう点では、絶対にこれはガット違反である、あるいはまたIEAの閣僚会議決定の重大な違反だと決めつけられないで、柔軟に対応する場合もあるとは言われないでしょうけれども、そういうこともやはり考える必要があるのではないか、こんな感じでおります。  そういう意味で、そういう点も含めて今後のまとめに、今大臣がきっぱりと答弁された趣旨に基づいて対応してくださいますようにお願い申し上げまして、終わります。  ありがとうございました。
  153. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、鍛冶清君。
  154. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 午前中来、いろいろ同僚の委員方々質問を重ねてまいりまして、どうも後になるほど用意しておりました質問が重なりまして、発想の少ない私は大変困惑しておるのでございますが、多少質問がダブることもあるかと思いますが、ひとつ御容赦を願いまして、なるべく丁寧にお答えをいただければと思っております。  最初に、第八次石炭政策答申の時期の見通しについて、内容を突っ込んでいろいろお話がこれまであっておりましたが、一番基本的なところに立ち返りまして、答申の時期についてお尋ねを申し上げたいわけでございます。  本日、これも先ほど来論議されておりますように、三菱石炭鉱業高島礦業所、これは閉山ということが会社側から提案されて、労使の話し合いに入ったということもお聞きしております。この三菱鉱業高島礦業所は、聞くところによりますと、八次政策答申までは何とか持ちこたえてというような話も巷間聞いておりましたけれども、答申がこれまで延びてきてどうにもならない、こういうところで閉山決定をせざるを得なかった、労使の話し合いに入らざるを得なかったということもお聞きしております。  閉山については、これは大臣も御答弁があったように企業内容、いろいろ事情がございましょうから即断はできないとは思いますけれども、やはり八次の答申が早目に各関係者の努力の中でまとめられてその方針答申をされておれば、あるいはそれによって対策なり今後の打つ手というものが考えられておったのではないのか、これは石炭業界だけではありませんで、石炭のユーザー業界、それから私の地元も旧産炭地域でございますが、これの方にも影響があるというふうに非常に心配をしているわけでございまして、大変広範にわたって多くの関係者方々、多くの人々が非常に関心を持ってこれを見詰めておるというのが現状であろうかと思います。これがいつまでも、またずるずる長引くようなことがありますと、それによって見通しを立てれば何とかなったものが立てられぬままに閉山になるとか、ほかにいろんな事故が起こることもあり得るというふうにも非常に心配されるわけでございますが、そういう意味からもこの答申をなるべく早く出すようにしなければならぬのではないか。総理もなるべく早くというふうに通産大臣に申し入れをされた、指示をされたというふうにも先ほど御答弁もございました。  これはアメリカの中間選挙と関係があるかどうかは別としまして、まさに私は早く答申を出すという方向に最善の努力をなさるべきだと思いますし、重ねてこの答申の時期について大臣にお尋ねをいたしたいと思います。
  155. 田村元

    田村国務大臣 先ほど来申し上げてまいったとおりでありますが、少し詳しく申し上げますと、八月末に答申をいただくという当初の予定でございました。ところが今日まで延引しておるということは、それほど石炭問題は難しいということなんです。その一語に尽きると思うのです。私どもとしては一日も早く答申をいただきたい。まさかアメリカの中間選挙と石炭が関係あるとは思いませんけれども、ドイツならコールという人がおりますからどうか知りませんが——それは関係はないと思いますけれども、それはそれとして一日も早く答申をいただきたい。そして、その答申を待って関係法令の見直し作業をしたいと思うのです。  それで、少し丁寧に詳しくということでございましたから、ちょっと六十二年三月三十一日、つまり今年度末で期限切れになります石炭関係の法律を申し上げますと、もう御存じと思いますけれども、石炭鉱業合理化臨時措置法、石炭鉱業経理規制臨時措置法、産炭地域における中小企業者についての中小企業信用保険に関する特別措置等に関する法律、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計法、炭鉱離職者臨時措置法、この五つでございます。こういうものを延ばすなら延ばす、直すなら直す、いじくらなければならぬということでございます。
  156. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 別な角度からまたこの件でお尋ねをしたいのですが、今言ったような関係の五法、これも確かにそうでございましょうし、この八次答申のおくれがこれ以上また進んでいくと、恐らくは関係省庁の予算要求にも大変影響が出てくるのではないかなというふうにも思うわけです。  そういう中で、極めて難しい状況にあることは十分承知ではございますけれども、なおなおこれは努力を傾注いたしまして必要な予算を絶対確保することが、これはまた石炭関係に対する大臣も言われました目配りをきちんとし、行き届いた施策を講ずるという大前提になると思うわけですけれども、そういう予算を確定し要望するという点から見て、残された時間というものは限られてくるような気がしているわけですが、この面から見てタイムリミットというものはどういうふうにお考えになっているのか、お答えをいただきたいと思います。
  157. 田村元

    田村国務大臣 もうタイムリミットということを考える時期じゃないと思うのです。一日も早くという時期に差しかかっております。
  158. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 引き続きその努力はぜひお願いはいたしたいというふうに御要望を申し上げておきたいと思います。  次に、今大臣も法律の名前を挙げられましたが、その中で私どもの住んでおります福岡県、特に私どもの地域では旧産炭地域を抱えておりまして、今大変な問題を抱えながら一生懸命自立への道を歩んでいきつつあるわけですけれども、この問題について、特に石炭六法と言われる中の三法、今挙げられた中にもございましたが、石炭鉱業合理化臨時措置法、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計法、それから炭鉱離職者臨時措置法、これが来年三月には期限切れを迎えるわけでございますが、私どもにとりましても、旧産炭地域石炭政策を遂行する上でもこれは必要不可欠な重要な課題であり、法律になっているわけでございますが、多少重なる向きもございますけれども、この答申が余りにおくれますと運営に支障を来すというふうに考えられるわけですから、この面から見ました石炭三法についての見通し、どういうふうにお考えか、改めてお尋ねをいたしたいと思います。
  159. 高橋達直

    ○高橋(達)政府委員 先ほど大臣からの御答弁にもございましたように、一日も早く審議会答申をいただきまして、所要の法律案作成の準備に入りたいと思っております。  御指摘のいわゆる石炭三法でございますが、合理化法、石特法、それから労働省御所管の離職者法、この三法についても第八次答申の結果を見まして所要の手当てを迅速に行い、次期通常国会冒頭に出さしていただきたいというふうに、冒頭と申しますのは来年になりまして、日切れでございますのでそれに間に合うようにという意味でございますが、できるだけ早く出さしていただきたいと思っております。
  160. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 そこで、産炭地域の問題についてお尋ねをいたしたいわけでございますが、これも先ほど来質問がございました中で言われておりましたが、産炭地域振興臨時措置法、これは昭和三十六年に施行されて、以来二十有余年を経過しているわけでございますが、確かにその結果私どもの地元を含めてあちこち回りましても、大変に産炭地域がよくなってきておるというのが最近目立ってきておるというのは事実だと思います。しかしながら、地域的に申し上げますと、田川とか筑豊とかいったような内陸部の産炭地域では、これまでの施策は実施されてきましたけれども、なおなお鉱害復旧とか炭住の改良等を含めて大変な疲弊が残っているわけでございます。  現実に、ちょっと例を挙げて申し上げますと、炭住でございますが、これは御承知のように極度に老朽化いたしましてスラム化しておって、これがまた青少年の健全な育成を阻む一つの大きな障害になってもおるわけでございますけれども、これらの炭住も確かに建てかえられてきれいになってまいりました。しかしながらこの炭住というのは、御承知のように所有権が非常に複雑でございまして、事業主体となる関係市町村の財政力がまた極めて低いということとも絡み合って、現行の住宅地区改良法、これでは十分対応ができない、こういう状況が実はあるわけです。一つ例を挙げますと、福岡県の田川市におきましては、昭和四十八年から住宅地区改良法によりまして不良炭住の改良が実施されてまいりました。六十年度、昨年までにおかげさまで千九百四十四戸という炭住が改良して完成されたわけです。しかし、なお老朽の不良住宅というものが実は約三千戸ばかり残っておる状況でございまして、これらの市町村、特に田川市もそうですが、脆弱な財政力ではこれはいわゆる産炭地域臨時措置法が期限切れとなります六十六年十一月ですか、これまでには極めて難しいんではないかということも考えられるわけです。特にまた六十一年度におきましては、一般の改良住宅の予算配分枠というものが縮小されておりまして、特に土地整備費の配分が大幅に削減されているものですから、今後の事業の進捗というものが極めて心配されているわけです。こういう事実から見ましても、これは炭住問題だけではなくて、残存鉱害の問題を含めて、相当こういった問題というものはデータの上からも見受けられるわけでございまして、さっき申し上げました産炭地域振興臨時措置法、これがあと約五年ちょっとで期限切れになるわけですが、これに伴って石炭三法は当然延長されるべきであると私どもは思っておりますけれども、これがされたといたしましても、この期限内にこういう産炭地域振興臨時措置法に盛られた精神が生かされて果たしてその復旧ができるんであろうかということを非常に心配をしているわけです。この点についてどういうふうにお考えか、まずお答えをいただきたいと思います。  さらに、八次石炭政策答申の中で、今までの質疑の中でも伺っておりました。私もそうなるのかなと思っておりますが、石炭生産規模というものの相当の縮小ということも想定されるというふうにも思われるわけですけれども、こういう中で予算手当ても、相当今後いろいろな新しい形での分野の予算も必要になってくる、こういうようにも思うのですが、こういったものがいろいろ重ねられた結果、現在の炭鉱のない産炭地域の振興予算というものが重大な影響を受けるのではないか、はっきり言えば削られてきて、これはだんだん先細りになるのではないか。そうすると、産炭地域振興臨時措置法に盛られたその精神にのっとりまして六十六年の十一月までに果たしてこういった今まで申し上げたようなことが全部復旧できるのかどうかということが心配されるわけでございまして、こういう予算の問題も含めて旧産炭地域の財源確保、この問題についてもお答えをいただきたいと思います。
  161. 高橋達直

    ○高橋(達)政府委員 第八次政策の御審議審議会でいただいているわけでございますが、この中には財源のあり方の問題も入っているわけでございまして、その答えを待って私どもとしては所要の措置を講じていくこととしているところでございますが、御指摘の鉱害対策なりあるいは産炭地域対策でございますが、これも当省といたしまして従来より重要対策として実施をしてきているわけでございまして、今後ともこれらの対策推進につきましては従来どおり進めてまいりたいと考えておるわけでございます。  鉱害対策につきましては十年計画で五十七年度以降やっておるわけでございまして、今後とも効率的、計画的にこれを推進してまいりたいと思っておりますし、産炭地域対策につきましては従来からいろいろと諸般の施策を講じてきたわけでございますが、今後ともそういった施策に加えて、地域の活性化に資するような事業も加えてまいりたいと思っております。  なお、御指摘のございました炭住の改良事業でございますけれども、私どもとしても建設省の住宅改良事業に産炭地域ということでいろいろと関与させていただいているわけでございますが、御指摘のような点も踏まえて今後とも十分に注意を持って見守ってまいる所存でございます。
  162. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 これはひとつ強力にお願いをいたしたいと御要望申し上げておきます。  さらに、これに関連してでございますが、これも先ほど来ちょっと触れられておりましたけれども、産炭地域の振興ということにつきましては、特に基本的な方向としては、やはり地元で自助努力を一生懸命やらなければいけないというのが大切であろうかと思っております。これはもう私が申し上げるまでもなく、五十五年の産炭地域振興審議会答申の中でそのことが言われておりまして、「地元関係者においても、それぞれの役割と責任の重要性についての認識を新たにし、従来にも増して、産炭地域振興のための主体的かつ自主的な努力を払うことが不可欠である。」こういう指摘があるわけです。これは、まさにそのとおりと思うわけですけれども、こういう自主的な発展を図るためには、この中心となる役割を果たす事業というものが非常に必要になってくるわけでございますが、この点については国の支援が大変に必要になってくると思います。この観点から、国においてはどういう形でどのような方策を講じてきたか、これは先ほど御質問もございましたが、まずお答えをいただきたいと思います。
  163. 高橋達直

    ○高橋(達)政府委員 御指摘のとおり、五十五年十一月でございますが、産炭地域振興審議会答申におきましても、地元の主体的かつ自主的な努力が必要であるという提言があるわけでございまして、この線に従いまして、国としてもこうした努力を支援する観点からいろいろな方策をとってきているわけでございます。具体的には五十六年度からでございますが、地元が策定いたしました広域発展計画に基づきます各種の事業を実施する場合の助成でございまして、予算の項目で産炭地域振興臨時交付金というのがございますが、その特定事業の調整額として、例えば六十一年度では十四億程度の資金を確保しているわけでございます。また今年度からでございますが、地元が地域活性化を行うための地場産業興しに対する助成ということで、予算といたしましては約五千万円を確保して、そういった地元の主体的な努力を支援するような格好で進めておるところでございます。     〔委員長退席、古賀(誠)委員長代理着席〕
  164. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 これは、さっきから答弁の中でも、また質問された方々の中でハードとかソフトとかという話が出てきたと思うのですが、ハードもソフトもないというお話がございましたけれども、我が方にはソフトは大変必要でございまして、これからあってはならないことだと思いますが、答申の結果では、現に先ほど申し上げたように高島礦業所が閉山という方向でどうも動き出したようでございます。そういう新たに閉山という可能性がある、そういったところに対しての対策といたしましては、これは従来のものとは別途に考えていかなければならぬ問題だと思いますが、その中では確かにハードもソフトもない、ひっくるめて対策が必要になるという時期もあるいはあろうかと思います。  私どもの地域では、旧産炭地域ではハードの面では割と建物等も国からのいろいろな援助金を受けながら建ててきたというようないきさつの中で、やはり地域で、例えば一市とか一町だけで、そこの地方公共団体だけで物を考え、また自立自助、主体的に考えていくというのはどうも限度に来ているという気もするわけです。だから私としましては、じっと見ておりまして、やはり広域にわたってということが答申の中にも触れられているわけでございますから、こういったせっかくの補助金をもっと広範に、柔軟に使えるように考えをしていただいたらどうかというふうにも思うのです。一つ考え方として、各市町村から優秀な若手の役人の方々に出ていただいて、そしてプロジェクトをつくって広域的にそこの地域を浮揚させるということを真剣に考えていく、こういうことも必要な時期になってきていると思いますし、その中でいろいろなアイデアが出てきそうなという感じもしているわけです。特にああいう産炭地域で、これから閉山することがあるのかないのか、ない方がいいわけでありますが、そういうところも含めて、あるとすればやはり人心というものを本当に前向きに、しかも活力ある形に将来目標を定めて一生懸命やるという姿勢が出てくるのが何よりも大切だというふうに私ども痛感をいたしております。  そういう意味からこれらの資金、具体的には活性化支援事業というものが今年度から組まれておるというふうにお答えいただいておるわけですが、そういう広域的な地域発展を図るという方向への傾斜というものを十分お考えをいただきたい。さらには、約五千万とか余りけちな数字にしないでもうちょっとたくさん、本当に浮揚になるならば私たちは応援しますよ、こういう姿勢も示していただきたいと思うのでございますが、この点についてのお答えをいただきたいと思います。
  165. 高橋達直

    ○高橋(達)政府委員 御指摘の産炭地域活性化支援事業でございますけれども、六十一年度から実施をしているわけでございます。私どもといたしましても、先生今御指摘がございましたように状況に応じて広域的に連携をしながら産炭地域の振興を図っていく必要もあるのではないかということで、状況に応じ市町村の行政単位を越えて実施できるような運用にいたしたいというふうに考えておるところでございます。  なお、この事業の拡充をせよという御指摘でございます。六十二年度の予算要求におきまして、答申が出るまでは一応仮の要求という格好でございますけれども、その中においてもこういった事業については思い切った——と申しましても数千万円のオーダーでございますけれども、かなり拡充をしたつもりでございます。
  166. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 それでは、通産関係は終わらせていただきまして、労働省の関係でお尋ねをいたします。  閉山による離職者、現実には高島礦業所がもう出てきそうな気配でございますが、これを含めて、今後この問題は大変真剣に取り組んでいかなければならない問題だ、こういうふうに考えるわけでございます。大枠の質問でございますが、この離職者方々に対する対策はどういうふうになさっていくお考えなのか、改めてはっきりとお聞かせをいただきたいと思います。
  167. 松岡滿壽男

    松岡政府委員 石炭鉱業の合理化に伴いまして発生した離職者につきましては、先ほど議論のございました炭鉱離職者臨時措置法が来年三月で期限が来るわけでありますけれども、この措置法に基づきまして炭鉱離職者求職手帳を発給しておるわけであります。まことに事務的なお話で恐縮でございますけれども、この手帳所持者に対して雇用対策法に基づく就職促進手当、訓練手当、移転費等を支給するほか、炭鉱離職者を雇い入れる事業主に対しては特定求職者雇用開発助成金を支給する等の援護措置を講じて再就職の促進を図ってまいるわけでございます。  今後におきます石炭政策のあり方につきましては、先ほど来も議論があったわけでありますけれども、現在石炭鉱業審議会において検討が進められておるわけであります。本年五月に出されました同審議会政策部会委員会中間報告におきましては、今後の国内炭生産については、需要動向を十分勘案した生産体制にすべきであるというふうにされておるわけでありまして、炭価問題等から当初予定より大幅におくれておりますこの答申の中で国内炭生産規模の縮小が打ち出されるということが予想される部分もあるわけであります。今後大量の離職者の発生が予測されるわけでありますけれども、この対策に当たりましては、当該地域の特性、炭鉱への依存度が高いということ、雇用機会が著しく不足していること等を考慮いたしまして、他の産業からの離職者に対する再就職援助措置内容にも配慮しつつ、関連産業等からの離職者をも含めた早期再就職の促進のための対策の強化が必要であろうというふうに考えているところでございます。     〔古賀(誠)委員長代理退席、委員長着席〕
  168. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 今答弁の中でも触れられておりましたが、私どもの旧産炭地域では炭鉱離職者の緊急就労事業、いわゆる緊就でございます、それから産炭地域の開発就労事業、開就でございますが、こういった就労事業等につきましては地元のためには非常にプラスになってきておるわけでございまして、失業対策の一環ではございますけれども、むしろこれは地元では必要欠くべからざる事業として位置づけられているわけでございます。こういう事情はもう御存じとは思いますけれども、そのほかに雇用の関係の状況は極めて厳しいわけで、働きたくてもまともな雇用はほとんどないというのが現状でございます。こういう中での緊就、開就、特開事業等につきましては、地域振興、開発の上からも非常に重要な役割を果たしておるわけでございます。重ねて申すようでございますけれども、今失業対策の打ち切りという方向の中で緊就、開就についても画一的な年齢の線引きとか強制首切りなどがあるのではないかという不安が随分とあるわけでございます。こういった関係については、ぜひとも存続の中でさらに強力な対応をしていただきたいと思うのでございますが、この点につきましてお答えをいただきたいと思います。
  169. 新村浩一郎

    ○新村説明員 先生お話しの炭鉱離職者緊急就労事業、それに産炭地域開発就労事業、いわゆる石炭二事業につきましては、昨年十一月「失業対策制度調査研究報告」におきまして、労働政策の観点から見ましてこれらの石炭二事業につきましては、「失業対策事業や特定地域開発就労事業と同様の問題点を包摂していることから、今後事業の改善を図っていくための検討が必要である。」と御提言をいただいているわけでございます。それに加えまして、先ほど先生お話がありましたように、石炭対策に要します財源の問題いわゆる石炭政策の財源問題も絡んできております。我々といたしましては、現在これらの二事業が実施されている地域におきましては、これらの二事業が産炭地域の振興あるいは炭鉱から離職された方々に対して雇用の場を提供するという意味におきまして非常に重要な役割を果たしているということは十分承知いたしておるわけでございます。したがいまして、このような実情等にも十分配慮しながらその改善を図っていくことが必要であると考えておりまして、現在その検討を進めておるところでございます。
  170. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 予定しました質問が終わりますので、若干予定時間よりもわずか早いようでございますが、最後に通産大臣に再度、八次政策答申のことについてはお伺いいたしましたので、旧産炭地域の振興の問題につきまして予算措置並びに各諸施策を強力にお願いをしたい、今後とも変わらずお願いをしたい、こう思うわけでございますが、その決意のほどを伺って私の質問を終わりたいと思います。
  171. 田村元

    田村国務大臣 八次審の答申を受けましたら、その内容に沿いまして、愛情を持って産炭地に対応する所存でございます。
  172. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 質問を終わります。どうもありがとうございました。
  173. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、小渕正義君。
  174. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 まず、大臣に所見をお尋ねいたしますが、今我が国のこの第八次石炭政策をめぐって、非常に社会的に大きな関心を呼んでいる重大課題でございますが、現在までのいろいろの議論を聞いておりまして、非常に政府自身の中に、我が国としての資源、唯一の国内エネルギー資源としての石炭というものに対する認識といいますか、理解といいますか、位置づけといいますか、そういうものがもうほとんど薄らいでしまっておるのではないか、そういう危惧を私なりに持つわけです。  それで、この前この石特で西ドイツ、ベルギー、フランスを調査してまいりましたが、やはり我が国と同じような坑内掘りをしておるそれぞれの国で、地下九百メートル、千メートルの中で生産活動がされておるわけでありますが、ベースになっておるものが、やはり国内の資源だけは大事にしたい、特に西ドイツあたりでは、いかに経済性が海外炭との関係でいろいろ議論はあるけれども、やめてしまうということは自分の国の資源をもうなくしてしまうことだ、こういうふうな認識を強く持っておりましたし、フランスにおいても、ともかくエネルギーはでき得る限り他の国に依存しない、極力何とか国内の中で考えていく、他国に余り依存しない、そういう基本的な認識、考えの中でこういったエネルギー政策が進められておるような感じを強くして帰ってきたわけであります。特に、EC等におきましても、必ず石油価格はまだ一バレル二十ドルくらいまで上がっていくだろうとか、いろいろエネルギーの石油価格の動向についてはそれぞれの意見があるかと思いますが、いずれにいたしましても、そういう自国の大切な資源だけはやはりきちっとしていかなければいかぬという中からスタートして、このエネルギー政策は進められているような感じを強くして帰ってきたわけであります。  そういう意味でいきますと、我が国の場合には、もう非常に供給量が需要に対して割合がどんどん減ってきたという関係もございまして、もう安易、安易という言葉は語弊があるかもしれませんが、すべてエネルギーを海外に依存してしまうという体質になっているわけであります。それがますます今回の石炭政策の中では促進されてしまうというような感じになっておるのではないか、かように私なりに思うわけであります。  そういう点から見まして、大臣としてこれは、そういった我が国のこういう国内資源、唯一のエネルギー資源としての石炭というものに対する基本的な理解というか認識だけはきちっとされながら、この石炭政策を進めていただきたいという感じを強く持つわけでありますが、その点に対する大臣の御所見を承りたいと思います。
  175. 田村元

    田村国務大臣 エネルギーのみならず、四面海で囲まれております日本でございますから、いろいろな面で可能な限りの自給体制をとるということは、これは当然のことだと思います。その典型的なものが農産物であろうと思います。  でございますから、当然それに対する認識は私ども強く持っておりますが、何分にもこの石炭に関しましては、従来の、掘って売る、こういう姿から、買い手にお願いして掘るというような形になってきたという非常に特殊な事情がございます。であればこそ、八次審議会でも随分悩んでいらっしゃるんだろうと思うし、私も非常に悩んでおる。今私のやっております仕事は非常に幅広うございますけれども、一番苦しんでおるのが石炭問題。例えば、石炭をかつてやっつけた石油が今、脱石油なんて言わないでくれと。例のオイルショックのときには七三%のシェアを持っておった、それが今では五三%になったというようなことでありまして、いわゆる契約というものの微妙さ、難しさというもので、しかも自由経済でございますから、政府が国家権力をもってこれを抑えるということは不可能なことも多うございます。  そういう中にあって、今おっしゃったような気持ちはもう全く政治家同士お互い同感でございます。いろいろと悩んでおる。悩みながら、できるだけいい方向にと思って一生懸命に努力をしておる、こういうことでございます。
  176. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 時間がありませんので次に進みますが、これはちょっとまた前回の同僚議員の方からの質問で繰り返しになりますが、先ほど大臣は、この十月九日の日経に報道された「米中間選挙前に「石炭」決着 首相、通産相に指示」、こういう記事が出たわけですが、これについてはそういうものじゃないんだということで否定されたようでございましたが、ここに書かれていることからいきますと、要するにアメリカの中間選挙を前に日本の石炭問題を決着つけてアメリカに対する顔を立てようということで、大臣にそういう指示がなされたような記事になっておるわけです。だから、中身は別といたしまして、やはりそういう、今回の石炭問題に対する首相からの何らかの指示があったのかどうか、その指示という内容は一体どういうものだったのか。その点、この記事との兼ね合いもありまして、妙に我々国民は皆、こういうものを見て、やはり我が国石炭政策はアメリカのそういう顔色を見ながらやっておるのかなという、まあ誤解かもしれませんがそういう感じをほとんどの関係者の人たち皆お持ちになるわけですから、この点、やはり一つのポイントとして、そういう何らかのものがあったのかどうか、その点の状況をお知らせいただきたい。
  177. 田村元

    田村国務大臣 実は、先般指示があったことは事実なんです。それは中間選挙のこととは全然関係がなくて、私に、田村君、石炭はなかなからちが明かぬのかね、こういうことで、なかなかうまくいきそうにもない、それで悩んでおる、しかしやらなきゃならぬ、しかも、もうちょっと時間をかしてもらいたい、こういう答えをしたわけです。そうしましたら、実はどこかの産炭地の小学生か何かから手紙ももらって、自分は直筆で返事も書いた、産炭地のことを思うと本当に胸の痛む思いがする、とにかく今、ただいま御審議中でございまして何も言えません、御審議中でございまして何も言えませんと政府は言い続け、君は特にそれを言い続けておるけれども、そういうようなことでは産炭地はもう非常に不安な状態だろうと思う、だから早く結論を出してあげなきやならぬのじゃないか、その意味で急いでくれませんかと、こういう話はございました。アメリカの話はございませんでした。
  178. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 今のお話ですが、恐らくそれは、小学校の子供からの手紙は、高島礦の関係の人たちが首相にいろいろと出したという報道がされておりましたので、そういう内容だと思いますが、いずれにいたしましても、そういう意味で産炭地の人たちは、特に実際、現在生産に活動されておる人たちも、今のような状況の中で一体どうなっていくのかという不安の中だけで、しかも鉄鋼のああいう一方的な強行措置等によりまして資金難になる。そして労働諸条件はまた何らかカットしなければいかぬ。夏の一時金さえ半分しかもらえない。その上でなおまた働く条件を下げていかなければいかぬ。現場に働いている人たちはそういうぎりぎりの努力をしながら、なお、一体これからどうなるのだろうか、こういう非常に不安の中で毎日を過ごしておるわけでありまして、これにもしも事故でも起こったら大変なことでございますが、そういう非常に極限のような状態の中に置かれておるわけでありまして、そういう関係では一日も早くこの第八次答申案をまとめ上げてもらわなければいかぬわけでありますが、その経緯を見ますならば、先ほど大臣は、答申案を尊重するし、答申案を早くまとめてもらうためにお願いをしておるということを言われておりましたが、政府が何らそれの中に介入すべきでないという立場での御意見でございましたが、やはり私、今日のこの経過を見ますならば、政府が何らかの形での一つ考え方を示した中で取りまとめをお願いするような形にしないことには、結果的にこういうような形になってずるずる、ただ単なる当事者能力でないですけれども、こういう形になってしまったのではないかと思うわけでありまして、やはりそういう意味では政府政府なりの一つの何かのものを示しながら、そして早くまとめてくれということで、ただお願いするだけでなしに、そこに何らかの政府としての基本的な考え方か認識か、そういうものを示す時期じゃないのか、そういう中で初めて作業が進んでいくのじゃないか、こういう感じがしてならないわけでありますが、その点、いかがでしょうか。
  179. 田村元

    田村国務大臣 おいら立ちはよくわかりますが、元来、審議会というものは、政府が圧力をかけるものではございませんし、また何らかの与件というものを与えるということはしない方がよい、すべきでないということでございます。かつて私は、たしか労働大臣のときだったと思いますが、余計なことを言ってえらくしかられたことがございましたが、しかし、もう既に答えの出る時期が来ておるわけでございますから、私もいつまでもじっとしておるわけにはいきません。じんぜん日を費やすわけにいきません。今おっしゃったとおりでありまして、でございますから、いま少しく、ということは本当の意味でのいま少しく事態を見守って、その上で何らかの行動をとりたいというふうに思っております。
  180. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 審議会に対する諮問の態度からいきますならば、大臣が言われたように建前論はまさにそのとおりでございますが、やはりそこだけでいかないところに問題があろうかと思いますが、いずれにいたしましても、今の大臣の御答弁を我々としては大いに期待するわけであります。特に、今の炭鉱で働いている人たちから言わせますならば、これは大臣承知しておいていただきたいと思いますが、かつて第一次石油ショックは、中曽根首相、今は首相です、当時通産大臣、わざわざ現場の坑内まで入ってきて、ともかくもう一トンでも二トンでも増産、増産、頑張ってくれ、労使に対して盛んにお願いしたという経緯があるわけですね。それから第二次石油ショックのときも大平さん、当時は首相じゃございませんが、やはり関係者を呼んで、ともかく我が国のエネルギーを守る立場から頼むぞ、こういうような形の中で来られ、そして我が国石炭政策推進してきたわけでございます。  第七次の政策は御承知のように、私が言うまでもないことでありますが、第七次までともかく頑張ってくれ、掘ってくれ、掘ってくれと言いながら、もういよいよ第七次が終わろうとする途端にまるで掘るのが迷惑だみたいな状況の雰囲気になっていることに非常に私は、国としてもそこらあたりに対するけじめだけはきちっと自覚して持っておきながら、今日までのそういう流れを政府みずからも一つの責任という立場から十分自覚した上において、やはりこの第八次石炭政策というものは取りまとめていただきたい、こういうふうに特にこれは私からのお願いとして申し上げますので、もし大臣の御見解がありましたならば承りたいと思います。
  181. 田村元

    田村国務大臣 これはもう全く私の想像でございますけれども、審議会も悩んでおられるのだろうと思うのです。いわゆる俗に言うばっさりという答申を出すというのなら簡単だと思うのです。何とかという努力が重ねられておる、そのために時間がかかっておるんじゃないかと思うのです。私はそのように想像しております。けれども、それにしても時が切迫してまいりましたから、私なりに全力を挙げて今後取り組んでまいりたい、このように思っております。
  182. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 では、具体的な問題でちょっとお尋ねいたします。  先ほど大臣から、今の石炭立法については、それぞれ手直し、見直し、その他内容の充実という方向の中で総合的に、前向きに取り組まれるということがお話ありましたが、そういうことを前提にしながらも再度お尋ねいたしますが、これは労働省の方に、炭鉱離職者臨時措置法の適用が長い間ずっとやられてきたわけですね。ここで一つ問題になっているのは、この適用職種というか対象者、実際直接そういった生産に関係したような人たち、補助的な役割をした人たち、いろいろ仕事がございますが、そういう中でやはり限られた人たちだけしかこの対象にならない。もちろん、補助的な仕事、いろいろありますが、そういう関係とか、例えば坑内下請の関連の人たちの中でも、直接、炭を掘るところに関係する人以外は、同じ炭鉱の中で働いておったにしても対象にならないとか、いろいろ具体的にそういう問題が今日まで実際運用された中では問題点として提起されておるわけでありますが、やはりこの際、今、条件も前の炭鉱閉山していったときの時代とも違いまして、今まさに雇用情勢が悪い、しかも資本は海外へどんどん投資していく、ますます雇用環境が悪くなっているような状況の中でどこに再度就職するかといったら、もう十年前と全然比較にならぬような雇用情勢、厳しいわけですから、そういう中における一つのこういった問題の運用についても、今までの経験、実際のそういった面を十分生かして、もう少し前向きに、内容が充実するような方向でひとつぜひ見直していただきたい、こういうように考えますが、その点、いかがですか。
  183. 新村浩一郎

    ○新村説明員 先生御指摘のように、炭鉱離職者臨時措置法に基づきまして求職手帳を発給します際の要件としましての炭鉱労働者としましては「鉱業権又は租鉱権の鉱区又は租鉱区における石炭の掘採又はこれに附属する選炭その他の業務に従事する労働者」という定義があるわけでございます。また逆に、このような手厚い措置は、このような特殊な労働に従事し、再就職に大変困難な特殊な事情があるという点をつかまえましてこのような定義をしておるわけでございますけれども、先生御指摘のように、このたびのような炭鉱閉山ということになりますと、ここに言いますところの炭鉱労働者のみならず、下請の事業主からの離職者、あるいは、さらにひいては地域からの関連の離職者等も出てくるわけでございますので、こういったような人たちに対します援護措置につきましては、他の各種の援護措置との内容のバランス等も十分考慮しながら検討したいと思っております。
  184. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 もうその点は、十何年これの運用をやってこられていろいろ問題点が出ておるわけですから、ぜひひとつ前向きに取り組んでいただきたいと思います。  それから、もう時間がありませんので、あと一つだけ通産省にお尋ねしますが、要するに閉山になる。現実に高島が閉山になり、あそこは特に特殊な町として、高島礦に依存して町ができ上がっている。しかも一つの島だ。小学校から水源の確保その他、あらゆるところが炭鉱との併存の中で行われてきておったわけでありますから、それだけに今回の閉山が与える影響は、町の財政は言うに及ばず、商工業界の人たちその他、いろいろとはかり知れない深刻な問題が派生してくることは間違いございません。したがって、そういう点ではこれを単なる通産省産炭地域振興ということだけじゃなしに、例えば町の財政のいろいろな問題につきましては地方自治体、自治省との関係もございましょうし、そういう意味では広範な、各省庁にまたがるようないろいろな問題が、今回特に高島礦の場合には閉山後の対策としていろいろなあれが出てくるのじゃないかということが、大体、現在要望を出されている内容を見ましても、そういう単なる産炭地域振興ということだけではいけない、やはり総合的に各省庁にまたがっていろいろと問題を詰めて前向きに解決していただくような、そういうことが必要じゃないかと私は思いますが、そういう意味で、ひとつこの問題については特に従来のあれを超えてそういうような角度から問題に取り組んでいただく、こういうことにならないのかどうか、そこらあたりに対する御見解をお伺いしたいと思うのです。
  185. 高橋達直

    ○高橋(達)政府委員 御指摘のとおり、高島町はまさにほとんど一〇〇%高島炭鉱に依存している島であるということは私どもも十分認識した上で、仮に閉山という事態になった場合に、その閉山後の対策につきましては重大な関心を持って、関係方面と一緒になってその対策に充実した成果を上げていくようにしたいというふうに考えているわけでございます。  具体的には、ただいま先生から各省の問題もあるんじゃないかという御指摘でございましたが、まさにそのとおりでございまして、体制といたしましては関係の各省庁会議というのがございますので、できますれば今週中にもその会議を開きまして、とりあえずの問題点を把握し、どういう格好で国として対策を講じていくかということの検討を各省にお願いをしたいというふうに思っております。  いずれにいたしましても、御指摘の趣旨を十分踏まえて、遺漏なきよう対策に万全を期してまいりたい、かように考えております。
  186. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 では終わります。
  187. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、児玉健次君。
  188. 児玉健次

    ○児玉委員 これまで随分論議されてきましたから端的にお尋ねしますので、ぜひ端的に簡潔に答えていただきたい。  まず第一、昭和六十年度の基準炭価が決まったのはいつですか。
  189. 高橋達直

    ○高橋(達)政府委員 本年の三月でございます。
  190. 児玉健次

    ○児玉委員 本年の三月に基準炭価が決まるまでの間、鉄鋼原料炭について毎月どのような決済をしていたか、お答えいただきたい。
  191. 高橋達直

    ○高橋(達)政府委員 個別の取引の詳細については承知しておりませんけれども、一般的には前年度の価格をもって六十年度の毎月の支払いを行っていたものと承知しております。
  192. 児玉健次

    ○児玉委員 私たちもそのように承知をしているわけですが、基準炭価が決まるのは早いにこしたことはありませんが、決まるまでの間、前年度の炭価で払って、そして決まった後全体として決算をする、これが今までの確立した慣例だった、こう思うのです。  そこで大臣にお伺いしたいのですが、現在はそのようになっておりません、御承知のとおり。そして基準炭価決定されていない、それもこの十月でされてない。しかし、去年は三月だったわけですからまだ少し時間があるわけです。早い方がいいというのははっきりしていますがね。  そこで石炭鉱業合理化臨時措置法の第六十一条に「石炭の販売価格が基準炭価を下り、鉱業権者及び租鉱権者の相当部分の事業の継続が困難となるに至るおそれがある」云々と、そう述べていって、その場合は「基準炭価によるべきことを勧告することができる。」こう書いておりますが、大臣鉄鋼に対して勧告をするおつもりはありませんか。
  193. 高橋達直

    ○高橋(達)政府委員 石炭鉱業合理化臨時措置法の、先生が今御指摘になった勧告に関する規定でございますが、その前提として基準炭価を決めなければいけないということになるわけでございまして、鋭意その基準炭価の設定をまさに急いでいるところでございます。なお、基準炭価を仮に決定をした上で需要家の方がそれを守らない場合にそういうことがあるか、こういうお尋ねであるとすれば、それにつきましては、法律上現在の規定では、石炭企業あるいは石炭の販売業者のサイドに対する勧告という格好になっておりますので、直接需要家にはできないという仕組みになっております。
  194. 児玉健次

    ○児玉委員 大臣にお伺いするつもりだったのですが、大臣、法律上の詳細についてはさまざまにありますが、先ほど大臣は、国の力でもって企業に対して余り抑えつけるのは好ましくないという趣旨のお話をなさいました。私たちもそれに余り異を唱えるものじゃありませんが、少なくとも基準炭価の遵守という点、そして決まるまでは前年度のそれによる、これが確立した慣行である以上、鉄鋼大手がそれを現在実力行使的に無視している、大企業の社会的な横暴に対する国の最小限の規制として、そのような法のさまざまな条文を駆使して実効ある規制をなさるつもりがあるかないか、そこをお聞きしたい。
  195. 田村元

    田村国務大臣 おっしゃるように、鉄鋼関係うまくいっていないので、通産省としてはいろいろとお願いをしておるわけでありますが、今おっしゃったような行為は、もう既に八次審の答えが今出ようとしておるときでございますから、むしろ七人委員会で合意がなされればよし、今後鉄鋼に買ってもらわなければならぬのですから、合意がなされればよし、もしトラブルな答えになった場合には、場合によっては私が鉄鋼業界に直接お願いをしなければならぬこともあり得るかなというふうに考えておるということを先ほど来お答えをしておるところでございます。
  196. 児玉健次

    ○児玉委員 先ほどの部長のお答えは、確かに法文によれば、「租鉱権者又は販売業者に対し、」云云と。ところがこの法の趣旨、この趣旨を貫くために実効ある行為ということになれば、私たちはやはりこの大臣の勧告、そして勧告したことについての公示、こういうことが必要になるだろう、そう思っているのです。その点について私たちの意見を述べつつ、二つ目の問題に入ります。  現在日本の制度で、例えば坑内骨格構造の整備充実に対する補助、鉱山保安確保事業への補助、時間がありませんから、計算は相当難しいようですが、一トン当たり国から出されている補助として、これを大まかに計算すれば約二千円、西ドイツでは恐らく四千円くらいになるだろう。これに支出されている経費は約三百八十億というふうに承っております。そこで通産省にお聞きしたいのですが、大まかな数字でいいのですが、昭和三十五年から六十年までの間、閉山に伴う支出のトータルは幾らになっているか。
  197. 高橋達直

    ○高橋(達)政府委員 昭和三十五年度から六十年度までの間の閉山関連の費用でございますが、予算額の合計としまして千三百億円程度となっております。
  198. 児玉健次

    ○児玉委員 今のお答えは閉山交付金のことを述べているんだと思いますが、炭鉱離職者対策、それから石特会計ができた四十二年以降のもの、それについてもお答えいただきたいと思います。
  199. 高橋達直

    ○高橋(達)政府委員 御指摘のとおり、先ほどの御答弁はいわゆる閉山交付金の関係でございますが、そのほかに炭鉱離職者関係の予算額といたしまして合計で二千九百億でございまして、これを加えますと四千二百億でございます。なお、この数字は昭和三十五年度から六十年度までの累計でございますので、石特会計ができてから以来のものも入っているわけでございます。
  200. 児玉健次

    ○児玉委員 石特会計ができて四十二年以降、産炭地域対策が千二百億、鉱害対策が六千三百億、計七千五百億、それらを足すと一兆一千七百億円になります。これはそれぞれの年度の支出額の言ってみれば総計ですから、それ以後の物価の動向を加えれば大変な金額になってきている。先ほど来の論議の中で、これまでの国の対策は後追いにかなり力を払ってきた、こういう議論もありました。  私たちは、国として閉山に伴う必要な社会的責任をとる、当然のことだと思います。私は大臣伺いたいのですが、かつて私が北海道で夕張新鉱の大災害に関連して共産党の対策責任者をやっていたときに述べたことでもあるのですが、昭和三十五年から今日まで一兆一千七百億、物価を換算すれば数兆という金額になりますが、これだけの金額を山の葬式のために支出するのでなく、山を蘇生させるために、山に栄養を補給して日本の石炭産業を今後発展させるために使うのが本当の意味での使い道ではないのか。  ちなみに、これらの金額は特に新しい税金を必要としなければならない性質のものではありません。制度上国は所要の経費として支出しなければならないものですから、どうせそれだけの金額を出すのであれば、閉山に伴う経費としてでなく、山の再生のために大胆に支出すべきではないのか、この点について大臣の所見を伺いたいと思います。
  201. 高橋達直

    ○高橋(達)政府委員 対策の問題でございますので、とりあえず私から御答弁申し上げますが、当省といたしましては、鉱害対策並びに産炭地振興対策石炭政策として極めて重要なものと考えておりまして、従来どおり推進させていただきたいと思っております。  今後の問題につきましては、現在審議会で御審議をしていただいているところでございますので、その結果を待ちまして適切に対処してまいりたい、かように考えております。
  202. 児玉健次

    ○児玉委員 大臣の御所見をいただきたいのです。
  203. 田村元

    田村国務大臣 ただいま申し上げたことが私の発言とお心得いただいて結構です。
  204. 児玉健次

    ○児玉委員 通産省が現在踏まえるべき石炭政策というのは、もちろん現瞬間においては第七次石炭政策だと思うのです。きょうの午前中の向坂先生に対する御質問の中でも私は一つの文書を御提示申し上げたのですが、去年の七月九日に第十回IEA閣僚理事会コミュニケというのが発表されました。これは仮の訳ですから、読んでみてどうもここの訳はどうなのかと思う部分もございます。しかし、その中で言っているのは大体次の幾つかの点に尽きると思うのですが、現在の世界のエネルギー事情、それが九〇年代さらにはその先にかけて持続することは期待できないとの結論に達した。そして若干のことを述べた後、石油の価格上昇圧力がもたらされて、一九七三年—七四年、七九年—八〇年に見られたような供給中断に対して脆弱な事態が再現することになることを示唆している。そして最後に、長期のエネルギー予測は極めて困難だが、この後、「石油市場における逼迫傾向を指摘するIEA、各国政府および業界の予測を無視することは軽率かつ危険であることに合意した。」海外炭の長期供給は安定して可能だとかいろいろな議論がありますが、IEAはそれとは別のパースペクティブを提起しております。  そして、田村大臣に私は申し上げたいのですが、このIEAの閣僚理事会には日本からも村田通産大臣が参加なさってこの閣僚理事会コミュニケに参加されているのです。そうであるとすれば、石鉱審云々というのは、それはそれで重要な論点ですが、通産省としてこのエネルギーに対する長期的な見通し、国内炭に対する責任、そしてここで言っている国内炭海外炭にまさることは今後ないだろうという断定のもとに海外炭輸入に切りかえていく、これは「軽率かつ危険」ということにならないのか、この点について大臣の御所見をいただきたいと思います。
  205. 野々内隆

    ○野々内政府委員 そのコミュニケの閣僚理事会に私も村田大臣のお供をして参加いたしておりましたが、確かに長期的に言いますと現在のような石油の需給が緩むということは余り続かなくて、将来はやはり逼迫する可能性がある、したがって従来から各国がとっております長期的なエネルギー政策推進すべきであろうということで一致いたしておりまして、私ども通産省といたしましてもそういう方向でやっていきたいと思っております。  現在の石鉱審の内部の議論におきましても、中長期的なそういう観点を踏まえて御検討いただいているものと考えております。中間的な議論では、残念ながら日本の国内炭が外国の石炭に対しまして競争力を回復するのはなかなか難しいのではないかと言われておりますが、いずれにしましても中長期的な観点からの石鉱審の審議並びに答申期待してまいりたいと思います。
  206. 児玉健次

    ○児玉委員 中長期的な見通しで議論をしなければならないという限りでは、ただいまの御答弁に私は同感いたします。  そこで、先ほど私は昭和三十五年からと申しましたが、大体あの時期からの日本の石炭政策の中長期的な経過を振り返ってみますと、昭和三十七年十月十三日、有沢広巳先生を団長とした石炭鉱業調査団が派遣されて報告書を提出された。その中で有沢調査団は、石炭が重油に対抗することができないことは今や決定的と述べられました。その後第七次政策は、油と炭の格差は完全に逆転したと、有沢報告の歴史的な誤りについてその判断を示された。だれがその責任をとらなければいけないのかということを私はどうしても思います。  そこで、最後に、私は大臣に何回もお尋ねして今度は御答弁いただきたいのですが、去年一年間の日本の石炭需要は、通産省からいただいた資料によれば一億九百三十八万トンになっております。そして、二〇〇〇年には一億六千万トンを超す。これも政府の見通しです。今や日本は石炭の最大の輸入国です。そういうときに中長期的に、円高その他一時的、経過的な情勢にでなく中長期的に日本の国内エネルギーに対して責任を負う、その立場で通産大臣に必要な御努力をしていただければ、田村通産大臣は日本の歴史に残る通産大臣になると思うのですが、この点どうでしょうか。
  207. 田村元

    田村国務大臣 これはどの大臣でも同じでございますが、通産大臣という仕事を仰せつかった以上は、責任を持って一生懸命に努力をすることは当然のことでございます。エネルギー問題のみではございませんが、中長期的な問題といいましても、当然中期とは何ぞや、長期とは何ぞや、いろいろございましょう、また出先の問題もございましょう。そういう問題で、私の後の大臣、これから何十人なりますか、みんな恐らく苦労していくことと思いますけれども、後の人の苦労が少しでも少なくなるように懸命の努力をいたしたいと思っております。
  208. 児玉健次

    ○児玉委員 終わります。
  209. 竹内黎一

    竹内委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時二十九分散会