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1986-10-21 第107回国会 衆議院 商工委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十月二十一日(火曜日)     午前九時三十分開議  出席委員    委員長 佐藤 信二君    理事 臼井日出男君 理事 奥田 幹生君    理事 加藤 卓二君 理事 田原  隆君    理事 与謝野 馨君 理事 城地 豊司君    理事 二見 伸明君 理事 青山  丘君       麻生 太郎君    甘利  明君       尾身 幸次君    大坪健一郎君       奥田 敬和君    玉生 孝久君       中山 太郎君    野中 英二君       松本 十郎君    宮下 創平君       山崎  拓君    緒方 克陽君       奥野 一雄君    関山 信之君       辻  一彦君    浜西 鉄雄君       水田  稔君    長田 武士君       薮仲 義彦君    辻  第一君       藤原ひろ子君  出席国務大臣         通商産業大臣  田村  元君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      近藤 鉄雄君  出席政府委員         公正取引委員会         事務局取引部長 柴田 章平君         経済企画政務次         官       島村 宜伸君         経済企画庁調整         局長      川崎  弘君         経済企画庁物価         局長      海野 恒男君         経済企画庁総合         計画局長    及川 昭伍君         経済企画庁総合         計画局審議官  冨金原俊二君         経済企画庁調査         局長      勝村 坦郎君         通商産業省通商         政策局長    村岡 茂生君         通商産業省貿易         局長      畠山  襄君         通商産業省産業         政策局長    杉山  弘君         通商産業省立地         公害局長    加藤 昭六君         通商産業省基礎         産業局長    鈴木 直道君         通商産業省機械         情報産業局長  児玉 幸治君         通商産業省生活         産業局長    浜岡 平一君         資源エネルギー         庁長官     野々内 隆君         資源エネルギー         庁石油部長   内藤 正久君         資源エネルギー         庁石炭部長   高橋 達直君         資源エネルギー         庁公益事業部長 岡松壯三郎君         中小企業庁長官 岩崎 八男君  委員外出席者         商工委員会調査         室長      倉田 雅広君     ───────────── 委員の異動 十月二十一日  辞任         補欠選任   上坂  昇君     辻  一彦君   工藤  晃君     辻  第一君 同日  辞任         補欠選任   辻  一彦君     上坂  昇君   辻  第一君     工藤  晃君     ───────────── 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ────◇─────
  2. 佐藤信二

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。奥田幹生君。
  3. 奥田幹生

    奥田(幹)委員 日本経済世界経済の中で一割国家になったということで、非常にその限りでは好ましいのでございますけれども、しかしアメリカから見ますると、非常にアメリカ財政赤字でございますし、EC諸国は相変わらず失業率が高い。そういう西欧の国々からは非常に日本経済は羨望の的になっておるような感じ、したがって何かにつけていろいろな注文が厳しくついてくる。しかし実際に国内経済情勢を見ますると、ちょうどこれは円高になり始めましてから一年たちましたが、一年前にはこれだけ、百五十円台にまで進むとは、高くなるとは我々予想もしませんでした。したがって、輸出関連業界、とりわけ中小企業輸出業者は大変なピンチになっておる。加えて、業種別に見ますると、鉄鋼でございますとか造船業界、これはもう大変な不況皆さん方は四苦八苦の毎日でございます。あれこれ考えますと、まさに日本経済は、少し言葉がオーバーかもわかりませんけれども内憂外患という感じを私は持つわけでございます。  自由民主党でせんだって総合経済対策をおまとめになり、この月末、いずれ近いうちに補正予算も大蔵省の方から提示をされると私ども聞いておるのでございますけれども、あの三兆六千億余りの総合経済対策をおとりになっても、これだけ景気が落ち込んでおりますと、果たして政府が言っておられる経済成長四%、この四%が見込めるのかどうかということを私どもは危惧しておるわけなんです。内需拡大策、これはもう必要なことはだれしも異存がないわけでございますけれども政府がおっしゃっている四%は果たしてどうなんだろうかな。通産大臣はそれぞれの経済牽引車の役目から、何とか四%に持ち込みたい。経企庁長官は多角的にいろいろ数字を検討されて、やっぱり閣僚としてそういうことに非常に熱意を持っておられると思うのですけれども、私どもからしますと三%もいくのかなというような感じを持つわけでございますが、同じ問題でお二人の大臣にお尋ねするのもどうかと思うのですけれども、お立場がそれぞれ違いますから、この点については通産大臣経企庁長官、それぞれ率直なお考えをお述べいただきたいと思うのです。  それから経企庁長官にお尋ねするのでございますけれども差益還元ですね。政府の試算によりますと十兆四千億円でございましたか、それはこの六月の一日から電気、ガス、たしか一兆八百億円ほどの還元がございました。そのほかにつきましても鋭意御努力をいただいておるのでございますけれども、一般の国民立場から見ますると、まだまだ政府差益還元について御努力いただく余地があるのじゃなかろうかなという感じを持っている方が多いように私は思うわけなんです。その点も、やはり還元をしていただきますと、これは内需拡大の一助にもなるわけでございますから、その辺のところのお考え長官の方からお述べいただきたい。
  4. 田村元

    田村国務大臣 とにかく我々としては、高目成長を目指してあらゆる可能な限りの手を打って四%に限りなく近づけたい、その努力をこれからも果たしていきたい、こういうふうに考えております。
  5. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 奥田先生の御指摘のように、昨今の経済状況は厳しい側面もございます。ただ、いろいろ最近の経済指標を分析をしてみますと、消費は依然として現在のところ堅調でございますし、また民間住宅建設も昨年よりは好調に推移をしております。さらには四月、五月と当面の経済対策というものを実施をいたしまして、その中でもいろいろな施策を講じたわけでありますが、特にいわゆる公共事業の前倒しということを講じてまいりましたので、政府の支出も、これも順調に増加をしております。  ただ、お話がございましたように、いわゆるG5以来の急激な円高で、輸出中心といたしまして製造業では大変な深刻な不況に陥っている業種もございますし、また地域もございますので、これは確かに景気に対して足を引っ張っていることになりますが、しかし一方輸入関連やまたサービス等のいわゆる非製造業種ではむしろ収益が増大するなり一方で設備投資も極めて堅調でございますから、そうした点で日本経済は二面性、非常に堅調な面とそれから深刻な面とこの二面性が存在して、どうも昨今はその二面の度合いが拡大しているのじゃないか、私どもはこういうふうに考えているわけであります。  そうした状況を踏まえまして、私ども景気回復といいますか、私ども考えております六十一年度の経済成長率を、落ち込んだ分は回復をするように努力をいたしたい。今内需の話を申しましたが、少なくとも最近までの統計で見る限り、内需は増大している部分と落ち込んだ部分が相殺しているような感じでございますが、特に円高からくる輸出入関係が、数量的に申しますと、輸入が増大しそして輸出が多少減少している。これがGNPを押し下げてくるようになっているわけですが、具体的にどれぐらいになるかは、実際の数字は、いわゆる四月―六月期の四半期の国民所得速報値は出ておりますけれども、それからまだデータがそろいませんので、その後の国民所得の伸びについては確定できない状況であります。  いずれにしても、輸出入からくるマイナスの要素というものについて、何とか内需拡大によってこれを回復していきたい、こういうことで、御指摘ございましたように、九月十九日に政府としては三兆三千三百六十億円のいわゆる総合経済対策を決定したわけでございます。これが国民所得GNP成長率をどれぐらい押し上げることになるかということは、これは全部消化して多少時間を置きますと、いわゆる乗数効果ということで相当な効果を期待できると私どもは思っておるわけでございますが、端的に申しまして、いわゆる六十一年度どうかということは、まさにその年度内にこうした総合経済対策考えられております事業がどの程度消化されるかにかかっておるわけでございます。何としてもこれはできるだけ年度内に消化を進めたい、こういうことで、先般も大蔵大臣中心として関係者政府・与党の首脳が集まりまして、特に一兆四千億の公共事業についてはできるだけ年度内着工して完成を見る、完成ができなくても着工はして進める、こういうことでいろいろ資金的な配慮もしたわけでございます。  具体的には、今月中には補正予算を編成して国会の御審議をいただきたい、こういうことでございますので、こういう形で年度内着工度合いを進めることで相当GNPを押し上げる効果は持つ、こういうふうに考えているわけであります。  次に、お話ございました円高差益の問題でございますけれども、これもいろいろな仮定の計算をしておりますが、十・四兆円ということでございますので、これがどれぐらい民間皆さん還元されるかということを仮定の議論でいたしますと、大体消費物価が抑えられて卸売物価が下がっている、こういうことで四兆五千億ぐらいの還元がなされている、こういうことでございます。
  6. 奥田幹生

    奥田(幹)委員 通産省の方でも、特に経済の中でも中小企業が非常に大きな役割を果たしておりますから、円高に困っておる中小企業中心に何とか厚い手だてを施していかなければいかぬということで、近々二本法案を提案したいということです。まだ提案されておりませんから、その中身については私はどうこう申し上げるものではございませんけれども、超低利の特別貸し付けあるいは信用補完特別措置等々お考えになっておられるようなんです。  しかしこれは通産大臣、仮にこの臨時国会で二つの法案が通り、それぞれの都道府県でもそれを受けて立って円高中小企業に厚い手当てをするということになりましても、都道府県予算措置手当ては、もう年末の定例議会になると思うのですね。そうしますと、効果が出てきますのは年が明けてからでございます。しかも、地方の中小企業に悪いにもいいにも影響が出てまいりますのは、半年から十ヵ月後になるわけですね。  なるほど、通産省のいろいろの考え方を聞いてみますると、大臣がこの間所信表明でおっしゃいました傷口手当て、これは向こう一年以内を予測しておられるわけでございますけれども、少なくとも、この昭和六十一年度内に果たしていい影響が出てくるだろうかどうかということについて私どもは危惧するわけなんです。もう現に、先般の新聞によりますと、この六十一年度の税収不足が一兆二千億から一兆三千億予想される、こういうような状態でございますけれども政府が何とかせにゃいかぬということで具体的な施策をお考えいただいても、末端までいい影響が届くには相当暇がかかりますので、果たしてその一兆円の傷口対策、私はできるだけ早くやってほしいと思うのでございますけれども、その辺の見通しはいかがなものでございましょうか。これが一つでございます。  それから、もう時間が迫ってきておりますからついでに伺いますけれども大臣がこの前海外出張されまして、ガット総会では大変な御苦労をいただいた。これが所信表明の中にも載っておるわけでございますけれども日本問題というのは我々はこれまで余りよく知らなかったわけなんで、大臣が帰られた途端に通産省から、大臣はものすごく今度頑張られましたよという話も聞きましたので、この活字に書いてある以外で、本当に日本問題ではガット総会でどうだったのかということを、もう少しこの場で御報告を願えたら大変ありがたいと思います。
  7. 田村元

    田村国務大臣 まず、中小企業問題につきましては、長官から具体的にお答えをいたさせたいと思います。  ガット並びにその前にありましたポルトガルシントラにおける四極貿易大臣会議、これについて私の受けた印象、またいろいろな問題等について御報告を申し上げますと、結論から言いますと、貿易インバランスについて、日本に対する感情というものは非常に厳しいものがあります。私が予想しておったどころではありません。特にEC日本に対する感情というものは、ちょっと筆舌に尽くしがたいものがあるということでございます。  終始問題になりましたのは、利益バランス、俗に言うBOBという問題でございます。この利益バランスというものを今度のガットの新ラウンド宣言文の中に入れろ、こういうことでECが強く主張いたしました。  それに対して私は、ガット自由貿易ルールを論じ、つくる場である、保護主義管理貿易を排除して、あくまでも自由貿易ルールの場であって、結果として得た利益バランスを問う場ではない、こう言って頑張り通したわけであります。それぞれの国にはそれぞれの国の事情があります。国土の広い狭いもあります。また国民性もあります。また経営者経営方針経営態度労働者労働の姿、生産性の問題、いろいろありますから、ガットルールを守った上で得た利益、結果として得た利益バランスを問われてはそれは困る、そういうことで私ども頑張り抜いたわけであります。西ドイツのバンゲマンあるいはフランスのノワール等々と随分激論もいたしました。あるいはECドクレルク、机をたたいて激論もいたしました。結局、ウルグアイの外務大臣議長をしておりまして、倉成外務大臣と私とでいろいろと訴えまして、議長の御裁断もあって、この利益バランスというのは宣言本文の中に入れないで結びの言葉として議長両論併記をするということでおさまったわけであります。  ただ、そのときにEC側につきましたのはセネガルそれからマダガスカルという程度でございまして、アメリカを初め皆日本を守ってくれました。しかし私どもは、多くの国々日本を守ってくれたというふうに考えるべきではないと思うのです。多くの国々が守ったのは自由貿易を守ったのであって、つまり保護主義管理貿易を排除する、そのためにBOBを排除、つまり本文に入れなかったのであって、結果として日本を守ったことになりましたけれども、いわゆるジャパン・バッシング、日本問題というものは回避されましたけれども、それは日本を温かく守ってくれたというものではない、あくまでも自由貿易を守ったのだというふうに考えなければいけないと思うのです。それだけに、我々は今後自主的な努力をよほど思いを新たにしてやらないと大変なことになる。現に、我々を守ってくれたはずのアメリカでもどこでも、二国間の問題になりますとなかなか厳しい問題があることは御承知のとおり。アメリカがとうとう米まで持ち出した、御承知のとおりであります。  でございますから、私どもは中長期的な問題としては、国際協調型の輸出バランスのとれた経済産業構造の改善ということを当然考えなければなりませんでしょう。また、目先の問題としては、内需拡大というものを一生懸命やらなければならない。もう外国の大臣日本内需拡大について、おまえのところは幾らの枠ならどの程度成長率、向こうが計算しておるのです。逆に私が教えられるような場面もあったぐらい、日本内需拡大には非常に関心を深めておる。それにいま一つは、海外投資等もやらなきゃならぬでしょうし、そして輸入の促進を大いにやらなきゃならぬだろうと思いますが、答弁が長くなっても恐縮でありますから、結論的に申せばそういうことであって、BOBに関して、日本問題に関して決して日本を守ってくれたのではない。自由貿易を守ったのであって、それだけに日本の今後の責任はまことに重大であり、朝野を挙げて思いを新たにして取り組まなければならないということを痛切に感じて帰ってまいりました。恐らく倉成君も同じ気持ちだったと思います。
  8. 岩崎八男

    岩崎政府委員 中小企業円高対策につきましては、先生承知のとおり、年初来、いわゆる新転換法に基づきまして五・〇%の特別貸し付け、その他無担保保証別枠等対策を講じてまいりました。今回の総合経済対策一兆円の中には、それの延長、拡充という形で、例えばその五・〇%の国際貸し付けは既に二千億を消化しておるというようなことで、今後その運営に支障なきを期すような、その対策一つございます。それは当然これまでのベーシックな対策裏づけとして必要であるというふうに考えております。  もう一つが、先生指摘の特別の地域に対する対策でございまして、これについては、今度法律を出すということで、地域の確定をやっていきたいと思います。その裏づけとなる補正予算につきましては、大臣もいろいろと御支援をいただきまして、ようやく先日補正予算ベースで二百三十四億円の対策が確定いたしました。これが一兆円の裏づけとなるものでございます。これを補正予算政府全体としていつ国会に提案されますか、それと相前後して、私ども法案国会に御提案申し上げたいと思います。その後は国会の御都合によりますけれども、私どもとしてはできるだけ早くその法案の成立を見まして、御指摘のとおりこれの裏づけとなる十二月県会がございますので、その県会に県としての対応もできるよう、そういう段取りで進めていきたいと思います。ただその場合でも、確かに実効が上がるのは来年初めからになるかと思いますけれども、これは年初来やっておりますベーシックな対策でつないでいく、その上に付加的に特定地域対策がある、このように御理解いただければと思います。
  9. 奥田幹生

    奥田(幹)委員 あと一つ石炭問題につきまして、今第八次石炭政策、これは石炭鉱業審議会で御審議を願っておるそうでございますけれども、これだけ外炭に比べて国内炭が三倍というようなことになりますと、先ほど申し上げたような鉄鋼業界、これはもう外炭並みの値段にしてくれ、これは一理あると思うのです。やむを得ぬ主張だと思うのです。石油ショック以来の経過を見ますると、雇用問題もございますし、むげに今国内炭はもう要りませんというようなわけにはまいりませんけれども、やはり何とか一歩も二歩も前進させないことには大変なことになると思うのですが、第八次の石炭政策はいつごろどういう方向で固まるのでしょうか。最後にこれを伺います。
  10. 田村元

    田村国務大臣 御承知のように今八次審で御審議中でございますが、去る三十日に第一回の会合が開かれました七人委員会というのがあります。これは石炭鉄鋼と中立ということで向坂さんが座長でやっていただいて、今鋭意詰めをしてもらっておりますが、なかなか歩み寄りができない。今おっしゃったように鉄鋼も大変厳しい状況下にある、石炭はもう破局の一歩手前ということでありますから、もう全く丸裸、紙入れに金の入っていない者に物を買えというような格好なので非常に苦慮いたしております。ただ手順としていま少し、向坂さんにしても圓城寺さんにしてもせっかく御苦労願っておるのでありますから、これを横目でにらまなければなりませんが、もうぎりぎりの時期が迫ってまいりましたから、ある時期を見て、私も場合によったら中に入らなければならぬのかなというような気持ちもいたしております。いましばらく横目でにらみたいと思いますけれども、そのしばらくというのは極めて短期間というしばらくというふうにお考えを願って結構と思います。
  11. 奥田幹生

    奥田(幹)委員 終わります。
  12. 佐藤信二

  13. 臼井日出男

    臼井委員 両大臣所信関連をして御質問させていただきたいというふうに考えておりますが、最初に、田村通産大臣にお伺いをいたしたいわけでございます。  先ほど奥田先生の質問にも出てまいりましたけれども、本年、先ほどお話しいただきましたポルトガル四極貿易大臣会合、そして先月のガット閣僚特別総会等にお出かけになったわけでありますが、EC等日本に対する強い反発あるいは開発途上国先進国、特に日本等に対する反発、そうした強い攻撃の中でもって大変な御活躍をされた、こういうことを承っているわけであります。特に利益の不均衡問題、いわゆる日本問題について新ラウンド交渉開始宣言の中に含めないというふうにできたということは、これは私ども日本にとって大変よい結果だった、こう考えているわけでございますが、このことは、それと同時に世界貿易自由体制の堅持、発展、このためにも大変結構なことであった、こう感じるわけであります。  いよいよこれからニューラウンドとしてのウルグアイ・ラウンドルールづくりというものが始まるわけです。一体いつそれが軌道に乗るのかということは大変問題でございますけれども、このガット閣僚特別総会出席をされて、大臣が直接肌で感じられた、特に先進国日本への対応、そういったものをお伺いいたしたいと思っております。特に来年早々になりますと日本EC閣僚会議等も控えておられるということでございまして、その後の経過を見ましても、かなりEC日本に対する圧力というのは強くなってきておるということでございますので、その点もお考えをいただきながらお答えいただければと思います。
  14. 田村元

    田村国務大臣 先ほど申し上げましたように、想像を絶する厳しさがございました。特にEC日本に対する考え方というものは非常に厳しいものがございました。日本EC閣僚会議は場合によったら年内にあるかもしれません。そういうことでございますが、まず四極貿易大臣会議、これはアメリカのヤイター、カナダのカーニー、ECドクレルク、そして私と四人が会合したわけでありますけれども、とにかく何かというと利益バランス、そのために私はオウムのように、ガット自由貿易ルールを定める場であって結果として得た利益バランスを問うべきところではない。いわゆる、俗に言う利益バランス、全体としての利益バランスでなく結果として得た利益バランスというようなことをガットが承認すればそれは管理貿易になるではないか、我々は管理貿易には断じて反対する、結果として得た利益バランスというものは問われるべきではない。こういうことで、利益バランスには二つあるわけでございますが、共通利益、一層の利益という言葉もあるわけでございますけれども、私ども共通利益を一層増進せしめることはもちろん賛成でございますけれども日本には日本立場がありますから、一生懸命に働いて稼いだことを責められては困るということは強く言いました。これはもう本当に先ほど申し上げたように、机をたたいての激論でございました。  一たんEC側はそれを引っ込めたように私は思ったのです。ベルギーでドロール委員長に会ったときも、またドクレルク委員に会ったときも、引っ込めるようなことを言っておったのです。ところがガットへ行きましたら、プンタデルエステへ参りましたところが、いよいよというときにこれが出てきて、そして我々は徹夜をしたわけでございますけれども、いわゆる、俗に言う日本問題、一般論としての利益バランス、これを要するに、ルールを守ってももうけ過ぎてはいかぬ、こういうことですから、我々は、ルールを守って結果として得た利益バランスは問われるべきでない、しかしだからといって今度は本文に、いわゆるガットの精神に、一般論としての、ルールを守ってももうけちやいかぬなんということを書かれちゃたまったものではない、これは管理貿易だ、こう言って頑張ったわけです。  最終的にはああいうことになって、まあまあおかげさまで、特に国益を損ずることもなかったわけです。国益といいますよりは、私はあれによってガットを守り得たと思うようです。  先ほど申し上げたように、やはり諸外国は我々に対して二国間の問題では非常に厳しいけれども管理貿易あるいは保護主義というものからガットを守ってこれたというだけのことであって、思いを新たにしなければならぬのじゃないか。私は、率直に言って、日本のエゴは通らぬ時代が来たと思います。それほど厳しい感想を持って帰ってまいりました。
  15. 臼井日出男

    臼井委員 ぜひとも二十一世紀に向けての新たなる貿易秩序、そういうものをつくり上げるために一層の御尽力をお願いいたしたいと思います。  次に、通産、経企、両大臣にお伺いをいたしたいわけでございますが、去る十九日の経済対策閣僚会議において総事業費三兆六千億円に上る、今までで最大の総合経済対策を決定いたしたわけであります。現在の我が国の経済においては、海外貿易摩擦の解消、そのためにも内需拡大というのは緊急かつ最大の問題点になっているわけでありまして、そういう点から考えますと、この総合経済対策というものが本年度の補正予算でもってどれくらい盛り込めるだろうか、これが一つの焦点であろうと思うわけであります。  今回の補正予算の内容というものを見てみますと、その規模の大きさ、それから昭和五十五年に財政再建というものがスタートいたしましてから、一般公共事業に対しての追加予算に建設国債が使われたということはかつてなかったわけでありますので、そういった意味からも、私はこの補正予算というものはかつてないものであるというふうに評価をいたしているわけでございます。しかも当初一兆四千億に上る、見た目のがらからすると、実際に実効ある建設国債等が非常に少ない、三百二十億程度であった。これでは余りにも実がないではないか、こう考えておったわけでありますが、実際先般の自民党と建設大臣等との協議によりまして一千三百三十億円に大きくなってきた、こういうこと。それからゼロ国債を六千億円から三千億円に圧縮していただいた。こういうもので、私は、かなり内容も私どもの満足に近いものになってきている、こう考えているわけでございます。  このほかにも中小企業対策とかあるいは住宅建設あるいは道路建設、民活推進、こういったものを合わせて三兆六千億、こうしたもので当初政府が目標としておられました四%成長といったものにどれくらい近づけるのか、また所轄の大臣といたしましてもっとこうあるべきだ、こういう点もございましたら両大臣にお聞かせをいただきたいと思うわけでございます。
  16. 田村元

    田村国務大臣 インフレーション、特に悪性インフレーションを起こさない範囲内においては、それはもう拡大策が多ければ多いにこしたことはありません。けれども財政には限界がございます。私は、先般のあの一兆四千億の中身が改善されたことは御同様評価してよいと思っております。建設国債の発行についてとかくの議論がございますけれども、今度の補正予算内需拡大という特殊の目的を持ったものでございまして、言うなれば一種の緊急避難と言ってもいい対策だと思っております。でありますから、私は当初から建設国債発行論者でありました。まあどこまで効果を上げるか、何といっても経済波及効果が一番大きいと言えば公共事業でございましょうから、これに対して私どもは強い期待を持っております。  それから、御承知のように三兆六千億──先ほどちょっと私から企画庁長官に注意をしておいたのですが、うっかり三兆三千億と言ったようですが、私に訂正しておいてくれと言っておりましたので三兆六千億。この三兆六千億というものが、民間投資も含めておりますが、これがどういうふうに作動するか。それから例えば電力、ガスでございますけれども、これが昨年の十月にたしか一千億円の投資、それからことしの四月にまた一千億、それから二千億の六十二年度の発注の前倒し等々も含めて随分努力をしてきてくれております。六十一年度で前倒し発注を含めて、私の計算が間違っていなければ約四兆一千億ぐらいの投資になるのではないでしょうか。そのうちの三千億ぐらいは三兆六千億とのダブりがありますけれども、本来の三兆七千億に三千億を上乗せしてくれたということは非常に大きな効果がある。もちろんそのうちの二千億の前倒しは発注ということでありますけれども、景況感というものは非常にメンタルなものがありますから、これはだから大変な援軍であったと思っております。  それからまた、先般私は有名百貨店あるいはスーパーマーケットの社長方にお集まりいただいて、そして大いに内需拡大に御協力願いたいと、まあほかの言葉でお願いしたのですけれどもお願いをいたしまして、もちろん円高差益の問題もお願いをしたわけでございますけれども、そういうことで、私どもは、やはり一たん掲げた四%成長という旗印はおろしてはならぬと思うのです。それが達成できる、できないということを論ずる前に、限りなくそれに近づける努力をしなければならない、このように考えておるわけです。それが先ほどの経企庁長官の答弁にもなったと思っておりますが、我々は、中小企業対策も含めまして、総力を挙げて内需拡大に取り組み、もって国民の負託にこたえんとするものであります。
  17. 島村宜伸

    ○島村政府委員 お答えいたします。  六十一年度の成長率につきましては、まだ第一・四半期の実績が出たのみでございまして、現段階で確たることを申し上げることはできません。ただ、最近の経済情勢を見ますと、内需が緩やかに増加する一方で輸出が弱含みに推移するなど、需要動向には二面性が見られます。このような経済情勢を踏まえまして、政府は今般公共投資等の拡大などを中心とする総合経済対策を策定したところであります。ただいま通産大臣もお触れになりましたとおり、本対策事業規模三・六兆円強に上るものでありまして、この波及効果をも考えれば相当程度内需拡大効果を持つことは言うまでもなく、円高、原油価格低下によるメリットが経済の各方面に浸透することと相まって、我が国経済は今後内需中心とした着実な拡大が図れるものと思考いたしています。  いずれにせよ、今回決定した総合経済対策は現下の状況のもとで最大限の努力を払ったものでありまして、これを実効あるものとするため全力を挙げて取り組んでまいりたい、そう考えております。
  18. 臼井日出男

    臼井委員 経済は、私は生き物だと思います。ですから、やはり同じような形でもってめり張りなくやるよりは、ここ一番というときはやはり力を入れるべきだ。そういう意味で、今回の政府の措置というものは必ずいい意味で生きてくるんじゃないだろうか、そういうふうに期待をいたしておるわけでございます。  次に、中小企業対策についてお伺いをいたしたいわけでございますが、現在非常に厳しい円高不況の中に中小企業はあえいでいるわけでございまして、中小企業、零細企業の方々は政府の強力な、しかも迅速な対策というものを一生懸命に望んでいるというふうに私は思うわけであります。こうした中で、今回の総合経済対策の中での中小企業対策、こういったものは向こう一年程度の規模で一兆円、こういうことで進んでおられるわけでありまして、これはそれでいいわけでありますが、しかし何よりも早く早くと皆さん望んでいるんだろう、私はこう思うわけであります。  そこで私どもは、自民党でも部会として考えていろいろ御要請もいたしていることは、できるだけ一兆円の内容というものを早く補正予算に取り入れて、あるいはそれに引き続く二つの法案というものを上げていただいて、早く直接及ぼすようにしてもらいたい、こういうことを私どもは望んでいるわけでございまして、先ほどのお話にもございましたけれども補正予算規模二百三十四億円というふうなことで話し合いがついたというふうに伺っておるわけでありますが、この項目が地域対策、一般対策いろいろあるわけでありますが、この項目の中でどれくらい補正予算の中に盛り込んでいけることになったのか、その点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  19. 岩崎八男

    岩崎政府委員 先ほど二百三十四億と申し上げましたけれども、これは補正予算に計上される額でございまして、実はそのほかに私ども大蔵省と合意いたしておりますのは、中小企業事業団あるいは中小企業信用保険公庫から別途二百八十億程度の資金をこの対策裏づけとして用意をしております。したがいまして、今回の総合経済対策の中にある中小企業対策としては、国の資金として一応五百億円超の資金を用意できた、このように考えております。  その中身でございますけれども、一般的なこれまでやっておりました対策の拡充、延長という意味で、先ほどの国際経済調整貸し付け等、それから信用補完の別枠の特例、こういうものに補正予算ベースで約百五十億程度を今回計上をしております。  それから、特定地域対策の方では、三・九五%の超低利融資と言われるものの裏づけとして補正予算ベースで三十億、その他に私ども信用保険公庫の融資から百三十億、合計百六十億を用意しております。  それから、この特定地域信用補完の別枠の裏づけとして補正予算ベースで五十五億、それから地域活性化対策でいろいろな技術開発の支援がぜひ重要だと思っておりまして、この関係中小企業事業団の融資は、今後おおよそ三年間でございますけれども、百五十億円程度の国の資金をこの技術開発支援のために用意をしておる、こういう状況でございます。
  20. 臼井日出男

    臼井委員 マル経資金の金利の引き下げなどはどうですか。
  21. 岩崎八男

    岩崎政府委員 マル経資金はいわゆる新転換法の対象業種あるいは特定地域対策等に従来の六・三%をさらに〇・五%引き下げまして五・八%にしたいということで、これは法律改正を必要としませんので、近日中に実施に移したいと思っております。
  22. 臼井日出男

    臼井委員 含まれているわけですね。今のお話でも、私どもが当初伺っておったよりもかなり補正予算に多くのものを盛り込んでいただいておるようですので、中小企業、零細企業の業者のためにぜひともお力を尽くしていただきたいというふうに考えるわけでございます。  差益還元のことについて経済企画庁に主としてお伺いをいたしたいわけでございますが、御承知のとおり円高による差益還元の問題は国民にとって大変大きな関心を呼んでいるわけでございます。さきに、五月十三日に決定をいたしました電力、ガスの円高差益還元、首都圏の標準世帯で月に一千四百三十四円の差益還元が行われたわけでございます。当時から還元の率は低いのじゃないかという話もございました。  先般、経済企画庁が試算として発表されました円高、原油安の差益だけをとってみましても、十兆四千億円の円高差益に対して四兆五千億円、五〇%を割る程度のものしかまだ還元されてない、こういうふうなものが出てきているわけあります。まだまだ還元の余地があるのではないだろうか。一般の流通過程における差益還元というものを当然進めていただかなければならぬわけですが、しかし、それはそれとしてやっていただくとして、まず電力、ガスと直接影響力のあるものについてだけでも早くやっていただくべきじゃないだろうか。電力、ガスの差益還元の措置は来年の三月までが期限ということになっているわけでありますが、それを待たずしてぜひとも再引き下げをしていただきたい、私はこう考えているわけでありますが、近い将来、電気、ガス料金等の引き下げというものをお考えになっているのか、またどの程度のものになるのか、おわかりになったらお答えいただきたいと思います。
  23. 田村元

    田村国務大臣 これは私どもの所管でございますから私からお答えいたしますが、御承知のように去る六月、一兆一千二百億円の還元をしたわけです。そのときは百七十八円、それから原油が十九ドル、そしてガスが原油換算で二十三ドルというときでございました。それから、確かに円は高くなっておりますし、油も安くなっておるわけでありますけれども、今の為替レートがなお投機性をはらんでおります。それからOPECの動向がどうなりますか、このあたり一つの山ではないかと思うのですが、OPECの動向もまた非参加国、OPECに参加していない産油国の動向等も横にらみをしなければなりません。そういうことでございますので、今私どもは為替相場や原油価格、特にOPECの動向等をじっと横にらみをしておるという段階でございますので、今すぐに再還元ということは白紙の状態でございます。
  24. 臼井日出男

    臼井委員 大臣お話しのとおり、当時換算レートが一ドル百七十八円程度だった。原油の輸入価格も一バレル十九ドルと想定してやったわけでありますが、その後、現在百五十円台まで円高も進んでおりますし、九月では一バレル十ドル台までさらに落ちておるということでございますので、再引き下げの余地は十分にあると思いますので、ぜひとも早い時期にお願いをできたら、そう考えているわけでございます。  時間がございませんので、直接所信関係ない問題で恐縮でありますが、簡単にお答えをいただけたらと思います。  税制の問題で二点ばかり簡単にお伺いしたいのですが、昨年、流水占用料あるいは農水省の水源税構想というものが出てまいりました。これが新しく衣がえいたしまして森林河川緊急整備税としてまたあらわれてくるやに聞いているわけでございまして、これは他省庁のことでございますが、本来こうしたものは一般財源で扱うべきである、これが税制上の正しい議論だろう、こう思っているわけであります。特に工業用水については、地下水のくみ上げによって地盤沈下がある、したがって安い地下水を使わないで工業用水を使いなさいということであえて使っている企業等が大変多いわけでありまして、一方でそういう措置をしながら、二重課税にかかわるようなものをやるというのはいけないのじゃないか、私はこの点について所信をお伺いをいたしたいと思うわけであります。  それからいま一つ、国土庁で、投機的な土地取引の規制と宅地の安定供給をねらって土地政策税制を大幅に見直す、要するに土地転がしを抑制するために二年以内の転売による所得を対象に実効税率九五%強の短期譲渡所得の重課税制度を設ける、こういうことでございます。これは土地投機の抑制のためには必要だと思いますが、これによって中小企業のいわゆる善良な宅建業者が非常に商売がやりにくいんだ、こういう声が出てきているわけでございますが、中小企業を担当している省としてこの点はどのようにお考えになっておるか、お聞きしたいと思います。
  25. 田村元

    田村国務大臣 まず、俗に言う水源税でございますが、これは治山治水担当者が金を欲しがっているのは当然だと思うのです。災害があるたびに人災だと言われ、被害者が出ればその前にひれ伏しておわびをする、まことに気の毒な話だと思います。私もそういうことを党で担当してまいりました。政府で担当したこともございました。でございますからよくわかりますが、問題は、治山治水というものは全国民の生命、財産を守るものでございます。それだけに、今度のような税制が果たして妥当かどうか。つまり六六%というものが農業用水ですが、それは横へおいて、わずか一八%の工業用水、一六%の上水道、わずか三四%というものを対象にして、そしてそのうちの四分の一を地方に回し、あとの残ったものの約九百億を四対三で河川と治山で分けるということは、これはいかにも考え方がこそく。言うなれば苦し紛れのことでございましょうけれども気持ちはよくわかりますけれども、それこそ一般会計で堂々とこれは訂正すべきものと私は思います。  そして、あえて率直に物を申せば、一般財源というものをいじくるのに、シーリングだ、いや公開財源だ、いろいろなものがありますが、それで非常にがんじがらめに縛られております。縛られておりますから、こういう税制を出すぐらいの努力をするのならば、財政当局と関係省の内部で抜本的な各項目に対する予算の枠の再配分を検討すべきもの、そしてもし足りなければ財政当局が一般財源から大きくそれに上乗せをすればよい。わずか九百億を四対三で分ける、そのようなみみっちいことはやめたがよい。やるならもっと大きくやって一般会計で処理をすべきものというのが私の意見でございます。  それから、今の宅建の問題、これは建設省の方へ、御意見があった旨を申し伝えておきます。
  26. 臼井日出男

    臼井委員 どうもありがとうございました。終わります。
  27. 佐藤信二

    佐藤委員長 水田稔君。
  28. 水田稔

    ○水田委員 昨年の円高以前から既に構造不況ということで鉄鋼や造船は非常に悪かったわけです。そこへ急激な円高、しかも少々じゃなくて四〇%という円高で、今連日のように新聞に報道されておるのは、何千人という単位の人が職を失うということがずっと報道されておるわけです。ですから、鉄にしても造船にしても非鉄金属にしても、アルミも全部撤退、あるいはまた、これは通産関係じゃありませんが、例えば北方漁業の関係では漁民が、あるいは石炭は既に第八次の検討の中で大幅に縮小、まさに国内挙げて今生身の人間があすの生活の不安に駆られておるという状況なんです。  そういう中で、これは大臣所信の中にも、「景気の足取りは緩やかなものとなっており、その先行きは楽観を許さぬ」こう書いておるのですが、実際にはこの実態を、本当に日本の産業構造をこれからどうやっていくのか、あるいはまた現実に職を失ったたくさんの人たちにどういうぐあいに働く場所をつくっていくのだろうか、そういうことを私はもう少し深刻に受けとめるべきではないか、こう思うのですが、どうもそういう点が大臣所信の中には出ておらないわけです。  これは、統計数字でいきますと、失業率というのは二・九%、有効求人倍率〇・六一、しかし実際には、これはいろいろな計算の仕方がありますが、例を挙げますと、ある鉄鋼会社では約一万人おる中で、二千人強を下請とかあるいは関連企業へ出しておる。さらにその上合理化を進めようということですから、恐らく産業、企業によって違いますけれども、二〇%から三〇%ぐらいは社内に潜在的な失業者を抱えておる。これは、今までは耐えてきたけれども、これからこの状態が続けば、それがだんだん顕在的な失業者になってくるだろう。ですから、顕在的な失業者と潜在的な失業者を足せば実際には五%ぐらいの失業率と見るのが今の日本経済の実態ではないだろうか。  もう一つは、これは法案を出して対策を講ずる予定でありますが、輸出の中小産地というのは全く火の消えた状態。考えてみれば日本列島全体が冷え切った状態の中で、一体こういう事態をどういうぐあいに考えて、そして簡単に産業構造の調整なりあるいは転換というようなことを言われるのですが、一体それだけ出てきた失業者にどうやって働く場所をつくっていくのかという当面する対応、あるいはまた将来的な展望というのは、この大臣所信表明の中では全く感じとれないわけですが、一体どのようにお考えになっておるか、まずその点をお伺いしたいと思うのです。
  29. 田村元

    田村国務大臣 今おっしゃった潜在失業率が五%であるかどうかはとにかくとして、失業率がやや高目になってまいったことは事実でございます。私は労働政務次官と労働大臣をいたしてまいりましたので、非常にこの点は深刻に受けとめております。  今おっしゃいました問題でございますが、非常に具体的な答弁もあるいは求められておるかもしれませんが、それは担当者にお答えをさせるといたしまして、私から基本的なことを申せば、まず中長期的には、我が国産業の構造を輸出入バランスのとれた国際協調型に持っていかなきゃなるまい。そして同時にまた、その際の雇用問題あるいは空洞化問題等々につきましては、いわゆる未来産業といいますか、創造的な技術開発等による新規事業分野というものを開発して、そちらへ吸収をしていくということが必要だろうと考えております。  それともう一つは、私今度参りまして、これはヨーロッパでもそうでございますけれども日本の海外直接投資を求めておる国が大変多うございます。こういうふうに対外直接投資の円滑化を図り、そしてまた国内においては産業調整の推進等を通じた適切な国際分業体制の構築をしていくということ、それからまた、今申し上げましたように、産業構造の転換に伴って発生する雇用、地域あるいは関連中小企業等への影響への配慮が一番重要であろうと思っております。  そういうことでございますが、特に輸出関連中小企業、これが非常に苦しんでおります。いわゆる構造不況業種と言ってもいいかと思いますが、非常に苦しんでおる。これを我々は何とか助けなきゃならない。中小企業のうちの約三分の二が下請関連でございますから、なおさらその点は意を用いなければならないと思っております。我々としては、そういう点でも先ほど来御議論のあった内需の拡大をどんどんやっていただきたいし、今の景況感をやはり高目成長ということへ持っていかなければならぬだろうというふうに思っております。
  30. 杉山弘

    ○杉山政府委員 ただいま大臣から基本的なことはお答えを申し上げたとおりでございます。先生指摘のように、昨今の景気に基づきます各企業が抱えております潜在失業が顕在化してくるという問題については、我々も決して楽観をいたしておるわけではございませんで、こういった点につきましては景気全体をよくするということで何とか吸収をしていこうと努力をしているところでございます。  中長期的にはどうかということにつきましては、御案内と存じますが、産業構造審議会の総合部会企画小委員会の答申によりますと、大臣申し上げましたような新しい産業分野、それから昨今の消費者ニーズの物離れ、多様化、高度化ということを背景といたしましてサービス分野での新しい需要というものも起こってまいりますので、そういった分野で構造調整によって発生をいたします雇用については何とか吸収をしたい。マクロ的には、大臣も申し上げましたように、高目成長を遂げることによりまして労働力需給全体としてはバランスがとれるというような試算の結果も得ておりますが、マクロ的にバランスがとれるからといって必ずしも問題が解決するわけではないわけでございまして、職種間ないしは地域間といった面でのミクロ的な労働力のミスマッチというのが出てまいりますので、こういった点につきましては、これから私ども労働省等と十分連絡をいたしまして、産業構造転換に伴う雇用問題に遺憾のないように対策を講じていくべきもの、かように考えているところでございます。
  31. 水田稔

    ○水田委員 大臣、数は統計もありますけれども、それ以上にもうとにかく連日のごとく出ておるわけですから、この数というのは今万という単位でとにかく連日のごとく減ってきておるわけですね。減るというのは、例えば造船のある会社を挙げますと最盛期の半分に労働者がなっていますね。これは三次産業へ行くということで、三次産業へ行った連中は全部給料は三割くらい減っておるわけですね。何とか食わなければならぬから行っておるだけで、それまで持った技術を生かしてというような転業はほとんどないのが実態。  それから、今産政局長は産業構造審議会の企画小委員会の将来展望も言われたのですが、例えば新素材の市場というのはこういうぐあいにふえていくというようなことは書いてあるのですね。例えば素材が新しい素材に転換したら古い素材は減るわけですね。減るわけでしょう。そこで減ることは余り計算されてないのです。  あるいはまた、内需拡大というのでちょっと例を申し上げますが、例えば自動車が輸出アメリカへ山ほど行く、けしからぬ、こう言われる、それで自主規制をやってきておる。ところが、実際には自動車は対外的に非常に強い。その下でタイヤを納める―─タイヤの例を挙げますと、タイヤと自動車業界というのは力が全然違うわけですよ。そうすると、これを安く上げるためには徹底的にたたかれる。ここでは余りもうけが出ぬわけですね。タイヤをたたかれると今度はそれのもとの合成ゴムをたたかれるわけですね。ここではまた適正な利潤が上げられない、労働賃金も抑えられる、そういう形になって物すごい輸出ドライブがかかってきたわけですね。  今度は円高になった。円高になって自動車がある程度数としては落ちるということになるのであれば、値を上げて向こうで競争力は少し落ちる。国内では万という部品、一万以上の部品を集めるのですから、そういうところが適正な値段で取引されておればいいのですが、御存じかどうか知りませんが、どういう対応がとられたかというと、自動車では下請単価を下げる、もちろん自分のところでも合理化しますけれども、そういう形で、ある社によっては自動車というのは在庫を全く持たぬ形でずっと生産しておるわけですね。そして固定費の割り振りを低くするためには、普通八時間使ってとめるものを二十四時間動かす、そうすると三分の一に固定費が下がるわけですから、そういうやり方でやってきたわけでしょう。下請を下げたらどうなるのですか。下請が七%、あるいは会社によって違いますが四・五%下げたわけですね。どうなるかといったら、国内内需は減りますね。そうでしょう。そこへ支払う総額は減るわけでしょう。まさにそういう点では、先ほど大臣が言われたり局長が言われたように、現実の問題としては内需拡大の方向へ全く日本経済の仕組みというのは動いてないということを御存じなのかどうか。  そこらまで含めて、これからいわゆる内需中心にして、そして国際的にはいい商品を高くても喜んで買ってもらえる、そういう形に変えないと、安いからいわゆる集中豪雨的に輸出するという形では国際社会で日本は生きていけない。そういう中で日本の産業構造は一体どうなるのですか、例えばの話。例えば、鉄鋼は今一億トンで生存可能という形で努力をしてやっておる。それがことしは一億を切ります。そのために、今までも大変な合理化をやっていますが、さらに九千万トンで生き残れる努力をしているわけですね。ところが、後でこれは出てきますが、海外進出せざるを得ない。出ていくと当然部品調達は向こうでやれということになってくる。その計算を、今海外生産が二十万台少々ですか、これが恐らく一九九〇年には二百万台を超すことになってくる。鉄鋼の生産は、その計算でいっても千六百万トン日本で買い入れる量が減ってくるわけです。鉄鋼が九千万トンで生き残ろうと努力をして、なおかつ実際に国内生産はそれを下回るのですね。  そういうような形で産業構造が変わっていくわけですね。そこでまた労働者は失業をしていく。そういう雇用をどうやって吸収するか、産業構造をどうするかということまで含めて、具体的にどういうところへこれから産業構造をシフトしていこうかというのを通産省考えてもらわなければ、今ここでどんどん失業しておる人たちが働く場所がない。そして来年卒業の、特に高校卒業生の就職が大変難しいというのもそれが端的にあらわれておるわけでしょう。これから新しく育ってくる労働者の働く場所さえもないという状態になることを通産省はどういうぐあいにお考えになって、具体的にどうやるのか。それは本当は大臣に──細かいことは聞きたくないです。本当にそういうぐあいにしていくためにはどういう産業をとにかく国内では誘導していく、発展させる、そこに労働者を吸収させますというような柱があっていいと僕は思うのです。柱がなければ、これは今いわゆる対症療法だけで幾らやったところで大きな動きの中ではどうにもならぬ。まさに日本の産業は冷え切った状態、緩やかなとかいうような状態でないということだけはぜひ大臣に理解してもらいたい、そういう意味で申し上げているわけです。
  32. 杉山弘

    ○杉山政府委員 繰り返し申し上げるようになるかと存じますが、産業構造転換問題を行っていく上で最大の問題が雇用問題の処理であろうということについては、我々も全くそのように考えております。いかなる分野で構造調整の結果出てくる雇用を吸収していくかということになりますと、先ほど先生もお触れになりましたような新素材でございますとかバイオテクノロジーでございますとか、それからさらにはマイクロエレクトロニクス化が進んでくるというようなことで、技術革新の結果として新しく出てくる製造業の分野、こういうところも相当雇用吸収の可能性がございますし、またサービス業分野におきましても、過去十年間におきましては日本の就業者増加の約七五%くらいを吸収いたしておりますし、御案内のとおりサービス業と申しますのはかなり労働集約的でございますから、こういった分野でもこれからの新しいサービス需要に応じて雇用吸収が図られる。  ただ、いずれにいたしましても、マクロとしてのバランスはとれましても、職種面さらには地域面、こういったミクロ面でのアンバランスというのが出てまいりますから、こういった点について政府が十分な努力をしていかなければいけない。そのためには通産省のみならず、労働省等とも十分に連携をいたしまして、この問題の処理に当たってまいりたい、かように考えているところでございます。
  33. 水田稔

    ○水田委員 これは局長よりも私は大臣と、とにかく物の考え方で、私は細かい数字大臣にお答えいただかぬでも結構なんですが、考え方でお答えいただいていいのですが、例えばの話で、労働省とというものは、例えば失業者が出た場合に、どれだけいわゆる雇用調整金をどういう業種に出すのかというようなことの相談なんですね。今の制度を変えるという考え方は今ないわけでしょう。例えば今の産業構造の転換というのは、明治維新あるいは戦後のあの荒廃の中から日本が立ち上がってきて三十年から急激に伸びた、そういう幾つかの転機があったとき、そのくらいの大きな転換期にあるわけですね。そうすると、今までベテランのいわゆる熟練工として働いた人たちは山ほど失業していくのですね。三次産業というのは何ですか。例えばチェーン店の販売をやるとか、あるいはどこかの守衛さんをやるとか、そういうところへずっと行っておるわけですよ。持ってきた今までの技術、能力のあった人たちがそういう仕事はやれないわけですね。だから、非常に能力を持った、技術的な能力を持った人たちが、新しい職場で一人前の労働者として働ける、そういう条件をどうやってつくるかということを話すのなら、局長の言うように労働省と話をするのはわかるんですよ。それが今必要なときじゃないですか。  例えば、今やめた場合には半年職業訓練が受けられる。その間は、例えば雇用保険が切れても、余分に保険料をもらいながらやれる。半年でどれだけの技術を身につけられますか。例えばの話で、二年間ぐらいはとにかく生活して、新しい職場で、これからそういう技術者も足らぬようになるわけですから、将来二百万足らぬ、こういうのですから、そういう部門へ行けるような人を養成するだけの、そういう職業訓練をするとかいうような考え方が出てこなければ、今の大変な産業構造の転換というのは対応できない。そして、高校だけ出て勤めておる人たちが、まだ三十代とか若い人でやる気のある者だったら、二年行けばそれは例えば短大卒の資格を与える、そして技術的なこういう資格を与えるというようなことまで含めた労働省との話をするお考えはあるのですか。
  34. 杉山弘

    ○杉山政府委員 私どもの方でやらなければならない雇用吸収対策といたしましては、若干迂遠な話にはなりますが、技術開発、さらには地域的な問題等といたしますと、産業構造調整の結果として、影響を受けている地域に対して新しく立地する企業ないしは地元で設備拡充をするような企業に対しまして、資金的、税制の上での応援といったようなことが中心になろうかと思いますが、労働省にお願いをしたいと考えておりますのは、今先生指摘のような、いわゆる職種間の転換をするためには職業訓練等をやらなければいけない。また、それ以外の新しく労働者を雇い入れる事業所に対する助成といったような問題もございますが、こういった点について、私ども労働省と日ごろ事務的な連絡をいたしておりますが、労働省の方でも構造転換に伴う雇用対策につきましては非常に重要な問題と考えておられまして、現在、今までの雇用対策、その延長ということではなくて、新しい幾つかの対策というものも現に検討しておられる、かように承知をいたしております。
  35. 水田稔

    ○水田委員 今の前段のことは当然通産省の仕事で、私は今の危機的な日本の産業の状況というのを本当にとらまえてやってほしいと思うのですよ。どうも甘いような気がしますし、それから、労働省が雇用問題を考えるのですが、通産省は産業構造ということを考えられる。その中での雇用というのは大きな柱なんだという理解の上で対策を講じていただきたいと思います。  これだけで時間をとり過ぎましたので、次には、昨年の九月二十二日のG5以来、貿易収支の不均衡を是正しようということで──G5といっても実際にはG2なんでしょうね。そこで円高になったわけです。これは昨年以来一年間続いてきたわけです。貿易収支の黒字幅が減っておれば、これも効果があったな、苦労したというのもある程度はやむを得ぬかということになりますけれども、昨年が五百五十一億ドルの貿易収支の黒だったと思うのです。ところが八六年度は、最終の数字はまだですが、どうも八百億ドルどころじゃなくて九百億ドルを超えるのではないだろうか、こういうことになりそうなわけですね。そして日本の産業は冷え切ってきた、こういう状態なんですが、一体この原因はどこにあるとお考えになっておるのでしょうか。
  36. 畠山襄

    ○畠山政府委員 御指摘のように、ことしに入りましてからの我が国の貿易収支動向を見ますと、大幅な黒字が依然として続いている状況でございます。  この原因はどこかという御指摘でございますが、まず第一にドルベースでの価格が、ドルの価格が下がり円の価格が上がったものですから、前どおりの円をとるためにドルの価格を上げなくちゃいけないものですから、そのドルベースの価格が上がりまして、例えば一─九で見ますと二一%上がったというようなことになっているわけでございます。数量が仮に横ばいだといたしますと、それだけで二一%輸出金額がふえるわけでございまして、大ざっぱに申し上げて、去年の輸出額は千八百億ドルぐらいでございますから、それに二一%を掛けた額が輸出面でふえていくというようなことが起こるわけでございます。これがいわゆるJカーブ効果と言われるものでございます。  それから第二に、輸入サイドでございますが、これは御案内のとおり原油の価格が大幅に下落をしたということでございまして、一─九で見ますと、原油の輸入総額が四割近く減っております。そんなことで、輸入サイドでも、製品輸入こそふえておりますが、一─九で見て若干の微減になっておりまして、その輸出サイド、輸入サイド両方の原因で今黒字が依然として続いている、こういう状況になっておるわけでございます。
  37. 水田稔

    ○水田委員 そうすると、去年のG5で貿易収支の黒字幅を縮小していこうという合意は不成功に終わった、ますますこの状態では、もちろんECもそうですが、アメリカからのいわゆる貿易収支の問題について、今米の問題まで出てまいりましたが、あらゆる分野でけしからぬ、こういうことで、いわゆる摩擦がさらに大きな日米両国間の政治課題、これでは紛争を縮小するよりは拡大するという形になってくる、そういう心配があると思うのですが、それに対してどういう手だてをしたらいいとお考えになっているのか、お聞かせいただきたいと思います。
  38. 畠山襄

    ○畠山政府委員 まず前段の、昨年のG5等の合意による円高が貿易収支を減少させる意味合いにおいて不成功に終わったのかという点でございますけれども、それは私どもは必ずしもそう考えておりませんで、現在でこそ先ほどお答え申し上げましたように依然として貿易黒字は続いておりますが、例えば来年になってまいりますると、この円レートが今の近傍で安定している限りは、来年新たにJカーブ効果が起こるということは考えられませんし、また輸入サイドでも、御案内のとおり原油の価格は若干の落ちつきを取り戻してもおりますので、これからしばらくはこういった貿易収支の黒字は続きますけれども、来年になってまいりますると一応の落ちつきを見せるのではないかというふうに思っております。  ただ、御指摘のように、現状がこういう数字でございますので、いろいろアメリカからの要請その他がございますので、その点については個別にいろいろ理解もさせながら対策を打ってまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  39. 水田稔

    ○水田委員 大臣所信の表明の中に、先ほどもちょっと申し上げましたが、経済構造調整を円滑に進めることによって貿易不均衡の是正を図る、こういう言葉があるのですが、産業構造の調整という中で、例えば海外投資あるいは輸入の促進ということがうたわれておるわけです。今政策的にそれをやらなくても、円高ですから国内でつくると割高につく。今起こっていることは、例えばセメントにしても、韓国のウォンはドルに連動していますから大変輸出しやすくなっています。セメントも入ってくる。あるいはまた鋼管についても、四割安ければ問屋はそれを買ってから、JIS規格を持っていますから、それを売る、そういうようなことがどんどん進んでおる。あるいは部品調達をするにしても、海外で質のいい部品ができるところは恐らく出ていくでしょうね。それからまた、海外へ立地をしていくというようなことは企業が生き残るためにみんなやっておるわけです。これは当然何も政策的にやらなくてもそういうことが起こって、そのために、それでなくてさえも基礎素材を中心にしたいわゆる中程度の技術のものはNICSに追い上げられる。これはアメリカのドルと連動していますから、全く関係なしにどんどんいくわけです。日本輸出がどんどん減ってくる。こういう形になれば、今起こっている以上にこれから出ていけば当然向こうでは雇用が起こる。しかしこっちの雇用はそれだけ失われることは間違いない。  例えばかつてカラーテレビがアメリカから攻撃されて現地へ出ていった。今恐らくカラーテレビは、アメリカの方はほとんど向こうで現地生産になっている。そのときに、そこでは大変な労働者が本来職を失うべきだったが、ビデオデッキの生産、売り上げがふえてきてその中へ吸収することができた。このビデオデッキは、これはちょっと違いますけれども世界のシェアをほとんど占めているということでそういうことは起こらないかもしれませんが、海外へ出ていくために新しいところへ吸収できる商品をつくる職場がないところでは当然雇用が失われてくるのです。ですから、産業構造調整ということを簡単に言われます、そして海外立地あるいは海外からの部品調達といったことを言われるけれども、その場合失われる雇用をどうやって国内で吸収していくかということが大きな課題になるわけです。ですから、先ほどもちょっと鉄鋼の問題で言いましたが、自動車が出ていけば国内の基礎素材まで雇用が失われていくことになるのです。基幹産業である鉄鋼さえ揺らいでくるということになるわけでございますから、そういう点は、簡単に言われておるけれども、その場合の雇用を国内でどういうぐあいに確保していくかということをお答えいただきたいと思うのです。
  40. 杉山弘

    ○杉山政府委員 先ほど鉄鋼の例を挙げて御説明になりましたし、また、今はカラーテレビのケースについてお話がございました。確かに、おっしゃいますように、輸入がふえ、また海外進出、直接投資が行われるということになりますと、それが本来国内で生産をされていたであろう場合に比べますと、雇用面で問題が出てくるということは御指摘のとおりでございます。  したがいまして、我々としては、産業構造の転換につきましては、雇用面にも十分配慮しながらこれを進めていかなければならないというふうに考えておりますし、先ほどもお答えしたことでございますが、やはり国内において新しい雇用の場を見つけていく、またその場合でも、雇用の質、それから地域間の労働力の移動といった点で、現実にはいろいろ問題が出てまいりますので、そういった点についてもあわせてきめ細かな対策を講じてやっていかなければならないということで、私ども構造問題については、雇用問題がこれを円滑に進められる上での一番のキーポイントであるということで、その重要性は十分認識をしながら対策を進めていくつもりでございます。
  41. 水田稔

    ○水田委員 私は大臣所信表明に対してそのことをお伺いしておるのですから、本当は大臣にお答えいただきたいのですが、担当局長としてはもう少し、国民が、おっ本当にこういうところをやってくれるのかということがわかるように答えてほしいのです。それだったらまさに抽象的なんです。みんなそう思うのです。しかし、具体的にどうするかということはなかなか出てこないのですよ。首を切られる労働者側でもまだ具体的なことはできないわけでしょう。このままいきますとアメリカの二の舞を日本の産業はやるのではないか、日本経済はなるのではないか。ですから、企画小委員会のあれを読んでみたら、日本ではハイテク産業と研究機関と財テクの機関、そうなりつつありますね。東京の地価が一年間で五〇%も上がるのは、まさに金融のセンターになる、そのために外国からどんどん来るわけです。それで土地が上がっていっておるわけでしょう。事務所が足らぬようになる。そういうことで、まさに多くの労働者が失業する状態にある。そういうものだけで国民が生きていけるのかどうか。ですから、内需拡大というのは、内需はどういう産業を張りつけることによって吸収できるという一つのはっきりしたものを出してもらいたい。  私は歴代通産大臣が就任されるといつもお話をしてきたのですが、これはそれだけという意味じゃないですよ。例として、例えば民間航空機産業というのは、日本では部分的に今あるのはアメリカの下請をやっておるだけです。YS11で百二十億の赤字を出して慌ててやめてしまったのですが、これはそう言っては失礼ですが、自動車、造船という技術ではいわゆるNICSが追い上げてくる、そしてそういうところが追い越していく。なぜなら、労働賃金が安いから、あるいは今のような為替相場であれば、そういう中で日本が負けていくということになってくる。雇用はそこで失われる。しかし、航空機産業のようなものは、ハイテクに近いけれども非常に労働力を吸収し得る産業、例えばそういうものを政策的に伸ばしていく。YS11で失敗したのは、どんないい飛行機をつくってもこれは売れなければ、ニーズにこたえるものでなければならぬわけですね。そういう点で販売なり向こうのニーズ、いわゆる情報をとることができなかった。そのために大変な苦労をしたわけですね。ですから、市場を考えれば、例えば日中の共同開発、あそこは市場としては大きいですね。そういうことも考えられるじゃないか。しかし、現に日本を越えてアメリカが中国との共同開発をやろうかということになってきている。あるいはインドネシアやブラジルでさえ航空機の輸出をやっておる。これはこのままいけば──軍用のものはライセンス生産とか日本でもやっているけれども民間航空機はそういう産業として、多くの労働者を雇用するものとしては通産省に目を向けるあれが今までなかったのではないか。これは一つの例ですよ。例えばそういうもの。  それからもう一つは、例えば伝統的な国民生活に必要なもの、伝統的な産品がその地域で根づいていくようなものを助成していく。財投も含めてそういう投資などを具体的にやる。  今緊急のことと、それから中長期的な日本の産業構造をどうしていくかということを考えるときに来ているのではないか。そういう点で、このままいけば、今大臣所信のようないわゆる経済調整ということだけであれば、まさに日本アメリカの二の舞をするという心配があるが、大臣はいかがお考えでしょうか。その点をお答えいただきたいと思います。
  42. 田村元

    田村国務大臣 確かにおっしゃるような懸念がないとは言い切れません。ただ問題は、産業経済の構造を改善する、これを再調整するということはあくまでも中長期的な問題であります。と同時に、現在やらなければならない問題もあります。でございますから、まずとりあえず、今当面しておる問題については、私が産政局長以下皆に言っておりますのは、私は労働大臣の経験者だから言うわけではありませんけれども、こういう問題は日本政府の名においてやらなければならぬ、労働省に対して頭を下げてでも協力を求めなさいということを言っております。  それからまた、新分野への転換の問題、これもそれではすぐにことしできるか、そういうわけでもございますまい。でございますから、あらゆる英知を結集していかなければならない、これは当然のことでございます。  私がかつて運輸大臣時代に、通産省側と逆の立場で話し合ったことがあるのですが、飛行場なんかフローティングエアポートにしたらどうだろう、浮き桟橋のランウエーをつくったら造船業界は一気にそれだけで息を吹き返すよというような話をしたこともあります。これも一つのノーハウだと思うのです。結局は、高松空港をやってみたらどうかというので試算をさせましたところ、お金が三倍かかるというのであきらめた経緯はありますけれども、そういうことも一つのノーハウだ。私はそういう点で、いろいろな知恵を今もう洗いざらい一遍とにかく出してみろ、おれも考えてみる、同時に他省庁にも恥ずることなく相談をかけてみろ、知恵をかりてみろ、こういうことを言っておる次第でございます。
  43. 水田稔

    ○水田委員 時間がもう余りありませんので、次の問題にちょっといきたいと思います。  電力料金の問題ですが、これは通産省も今御検討なさっておるようでございますが、本年五月十三日にはこれは一ドル百七十八円、一バレル十九ドル、こういう計算であったわけですね。それで六月に、四月から一部値下げをしたわけです。しかし現実には百五十四円前後で、一バレル幾らに見ますか、十二ドルというのもあるし十四ドル、十五ドル。それにしても、これはことしの還元の保留分が三千七百億、それから今の差額が見方によって三千五百億から五千億ぐらいになる。別に別途積立金が五千億あるわけですから、一兆四、五千億というのが留保されておる、こういうことになるわけです。  例えば非鉄金属でいいますと、これは特別に今度この補正の中で通産省考えて御配慮いただいておるようでございますけれども、例えば非鉄金属の電力料を一キロワットアワー一円下げれば去年の一年間の赤字はもう消える。赤字が消えるというのは、企業として対応がやりやすい。赤字を抱えたままではやれぬわけですから、銀行融資もできぬということで。そういう点では電力料が二回目のオイルショックによって大体七割ぐらい一遍に上がったときに、電灯料よりは電力料の方が多く上がったのです。そのために電力多消費の基礎素材というのはほとんどがお手上げの状態になってきた、大変な苦労をしながら。そういう点では、上げるときにはこれだけ上がったんだよと原価計算、内容も国民には見せません、通産省は見るのでしょうけれども。そしてごぼっと、とにかく払わなんだら電気をとめるわけですから、そうやって取る。しかし、何の努力もなしに計算した基礎が変わってきた、その差額はここまでとにかく持っておくということは私は許されぬと思うのですね。ですからこれは、ほかのものに比べればまだ下げておるのですが、全く下がらぬものもありますから、円高差益還元されないものもありますから、そういう点では一部下げておりますが極めて不十分ではないか。そして今、産業構造の転換の中で電力多消費の産業というのは四苦八苦しておる状態の中で、一日も早く──将来に向かっては値上げをある程度引き延ばしていく、そういう原資に使うという考え方もあるようでございますけれども、このまま一兆四、五千億のものを電力だけが抱えておくというのはいかがなものか。むしろ国民に、そして今特に電力多消費の基礎素材関係では大変な状況にあるだけに、できるだけ早い時期にこれは還元するということが、今いろいろ進められておる産業構造の転換やあるいは内需拡大国内に失業者を出さないという役割を果たすわけですから、そういう点はぜひやっていただきたいと思うのですが、いかがお考えでしょうか。
  44. 田村元

    田村国務大臣 同じことを言い続けておりますが、電力等の差益還元につきましては、今なお我々は白紙の状態でおります。  率直に言って、今百五十四、五円というところで安定しておるかのように見えますけれども、これは単なる小康にすぎない。こんな高値で安定されたらたまりませんし、そういうことでございますから、なお投機性が全然消えたと言えないというところで不安を感じております。また原油の問題も、OPECでああいうような協議のときでもございますし、またOPECに参加していない産油国の動向もございます。でありますから、今は全くの白紙状態ということでございます。  それから個別分野の電力料金の引き下げ、これは公平の原則から困難だと思います。
  45. 水田稔

    ○水田委員 私は、今の格差が正しいという意味じゃなくて、かつては一対五だったのが一対二・五ぐらいに上がるときに逆に大幅に上げられておるわけですから、それをもとに返すように少ししたらいいんじゃないか、そういう意味ですから。今あるのが正しいのだということで言えば、もう今大臣の言われたとおりですが、そうでない歴史があるわけですね、電力料には。それはやはり日本の産業というのはそこに労働者の雇用を守るという点もあって、成り立つためにそういう電灯料と電力料の格差をつけてきた。だから今のが正しいということは言い切れないわけですね。ですからそのために、それを差を縮めたことによって、負担を電力料にふやしたことによって産業が衰退していった、そういう事実があるわけですから、そこは当然配慮すべきではないか。  それから、私は、白紙でおられると言うけれども、これだけ国全体の産業が不況にあるときに、円高差益をごっそり抱えたままである産業があっていいのかどうか。そういう点では、これは国全体が今こういう状態ですから、それぞれの分野でお互いに分担し合う、そういう気持ちでなければこの大変な今の経済状況というのは切り抜けられないんじゃないか。ですから、ぜひ早急に御検討いただきたい、このことを要望として申し上げておきます。  森林河川緊急整備税については、先ほど臼井委員から御質問がありまして答弁いただきまして、私、大臣のお考え、全く同感であります。ただ、通産大臣としてお考えいただきたいのは、先ほど来申し上げましたように、内需は伸びない、輸出もとにかく落ちてきた、全体に経済が沈んできた中で、例えば紙パルプなどは原価に占める水道料金の比率というのは三〇%、その他化学産業、鉄鋼、そういうところでは六%とか七%、そういうものですね。それにしても鉄鋼もとにかく一億トンでやれなくて九千万トンに何とかしよう、そういうふうですから、何とか生き残りの努力をしておるところへ追い打ちをかけるようにやるというやり方というのは、まさに政府のとるべき態度じゃないんじゃないかという気がするものですから、そういう点についてもぜひ大臣の方で、頑張ったけれどもだめだったということのないように、これは要望として申し上げておきたいと思います。  あと経済企画庁長官がおいでになりませんので、それじゃこれは通産大臣にひとつお伺いしておきたいと思いますが、先ほどの質問の御答弁にありましたが、例えば四〇%円高になったわけですが、それでも物価が下がらぬわけですね。まあ全体で見れば十兆五千億に対して四兆幾らとにかく還元されておる、こういう計算はあるけれども国民の実感として見れば──例えばガソリンは、確かに百六十円ぐらいのが安いので百十円あるいは百二十円前後に下がったという実感があります。あるいは灯油も下がったという実感があるのですね。それは、実際に円高が完全に還元されたかどうかというのは、計算のしようによって若干の違いがあります。それから、一番下がった実感があるのはレモンなんですね。四個百円というのですから、これはもう大変な下がりようなんですね。例えば日本の大豆を使った製品というのは、恐らく九五%以上は輸入ですが、四〇%下がっている。飼料もそうですよね、ほとんど輸入ですから。ところが、その関連の商品というのはほとんど下がらぬ。これは農水省の方が多いのです。  そして、数字で申し上げますと、基礎素材の卸売物価というのは五六・六%になっている。中間材が八九・六%。飼料は四三・一%輸入価格が下がっておるのに下がらぬ。どういうことなのだろう。それから、私が一番直接感じますのはプロパンですね。同じ石油の枠内に入っておる石油製品は全体的に下がっておるのに、プロパンは卸で五八%になっているわけですから四二%下がっておるのに実際に小売は九九・七%ですから、ほとんど下がっていない。通産省は指導されたのですか。新聞報道に出ていますが、二十キロボンベで百円下がっておるのです、現地で買えば。どこへ行ったのです、これは。これはこの前、備蓄のときに私申し上げたのですが、一体どこへそれだけのものが行ったか。加工せぬわけですから、入ってきたのをボンベに詰めるだけですから。最近は完全に業界に丸々入っているのじゃないか。そういう点では、特に石油関係でいえば通産省の指導の傘下にある業界であります。ですから、これは経済企画庁長官にお答えいただこうと思ったのですが、通産大臣関係がありますから―─それでは経済企画庁長官、円高でなぜ物価は下がらないか、少し内容を言いながら御質問を申し上げたのですが、お答えできるようでしたら、準備ができておりましたらお答えいただきたいと思います。
  46. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 もうお話があったかもしれませんが、円高でも下がっているものは結構あるわけでございます。ただ、例えばドイツなんかと比較されて、ドイツの場合には小売価格まで下がるが日本の場合は下がっていないじゃないか、こういうお話もあるかもしれませんけれども、調べてみますと、ドイツと日本の大きな違いは、日本の場合には石油製品価格が、全体のウエートがドイツほど大きくない、したがって石油製品価格が下がるウエートが大きいだけドイツの方は消費物価が下がっている、こういうふうに一つ考えられます。それから統計のとり方でございますけれども卸売物価なんかでは、むしろ日本の場合には輸入品も卸売物価の中に入っておりまして、ドイツの場合には入っておらない。したがって、日本の場合には卸売物価の値下げがドイツよりも大きく出ている、そういう統計上の問題があるようでございます。  ただ、私どもといたしましては、そうはいっても、できるだけ円高が末端価格まで浸透するようにいろいろ考慮しておりまして、例えば、そうした消費財価格動向の調査関係各省を通じて進めてもらうとか、また、並行輸入をもっともっと積極的にするように指示するとか、そうしたことで、できるだけ円高のメリットを一般の消費者に享受していただけるような措置を講じている次第でございます。
  47. 水田稔

    ○水田委員 長官がおいでになる前に具体的な数字をちょっと挙げながら申し上げたのですが、政府が言う場合も、民活、それから市場メカというのをよく言うのですね。日本経済というのは一体、市場メカというのは働かない何らかのものがあるのか。それは確かに、政府の制度としてあるものもある。あるいは経済の形態、自然になっている民間経済の流通のあり方の中にあるのか。そういう点も含めて、これだけの円高によって、一つ国内産業が空洞化するかもしれないという中で、円高メリットを最大限生かすことも、いわゆる内需をふやすためには大きな役割を果たすわけですね。  そういう点では、例えば今申し上げたのはプロパンの問題が一番はっきりしておるのですね。四二%下がって、ほとんど下がっていない。十キロボンベで五十円ですよ。そんなことはあり得ぬわけですね。これは例として申し上げたので、それだけを取り上げて言っておるわけじゃないのですが……。     〔委員長退席、臼井委員長代理着席〕 それから飼料ですね。あるいはまた、大豆製品というのは日本にたくさんあるわけですが、こういうものを原料としている。これは恐らく九八%ぐらいまで輸入じゃないですか。それが四〇%下がっておる。しかし、それでつくった我々の身の回りの生活必需品というのは、まあこれは農水省の関係になると思いますが、そういう点では、国民の実感として円高利益というのは全くないではないかということを考えるときに、個別の業界を指導するというだけではなくて、それももちろん必要ですけれども、同時に、日本の全体の市場メカが働かない経済の仕組みというのを一遍検討してみる必要があるのではないかという点についてはいかがでしょうか。
  48. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 御指摘のことはよくわかりますが、ただ、例えば大豆製品であるところの豆腐だとか納豆だとかそういったもの、それから、例えば小麦製品でありますパンだとかうどんとかそばとか、この原価構成を調べてみますと、こうした輸入原料の全体の末端価格に占める割合が必ずしも大きくございません。これは関係業者の中では末端まで、わずかのマージンということになる場合も多いわけでございますので、なかなか下げていただけないという面があると思いますが、そうした問題について、今委員からお話がございましたように、何とかこの競争条件というものを実際に進めることで、競争という形で幾らかでも値下げが実現するように配慮いたしたい、こういうことでございます。     〔臼井委員長代理退席、委員長着席〕
  49. 水田稔

    ○水田委員 もう二、三ありましたが、時間がほとんどありませんので……。  今大臣から言われたように、確かに原価構成の中に占める割合というのは、固定費から変動費、ほかの変動費があるものですからそうなんですが、上がるときは、ちょっと為替がどうなったとか現地が干ばつだったといったら、上がるのは一挙に上がる。下がったときは黙っておるわけです、下がらぬわけです。その次にまた上がる要因があって上がったということは、日本世界で一番物価の高い国になってきておるのではないかということですから、これは商取引ですからそれぞれそう簡単に規制できるものではないけれども、全体的に競争ができる条件があれば──例えばヨーロッパでは、一つの国が変なことをしておったら隣の国へ皆買いに行くわけです。日本は島国ですから、それができないからそういう商取引がまかり通るということなんです。ですから、そういう点では簡単にはいかないと思いますけれども、一銭も給料上がらぬでもこの一年間に日本労働者の賃金は国際比較で言うたら四割上がった、実感としては一割も上がった感じがない、そのことがこれからの日本経済考える上では大事ではないだろうか。そういう点では、総代理店という輸入の仕方が下げないという問題があって、並行輸入という問題が起こる。そういういわゆる実勢価格が、国際的な商品の価格が国内で本当に通用するような仕組みというのも、まあこれはすぐできるものではないけれども御検討いただければありがたいということで、時間が参りましたので終わります。
  50. 佐藤信二

    佐藤委員長 奥野一雄君。
  51. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 最初に、経済企画庁の方にお尋ねしたいのですが、ただ問題の中身によりましてどうしても両方にまたがるというようなことなんかもございますので、その点あらかじめ御了承いただきたいと思います。  所信表明に関する件で、最初に経済見通しと総合経済対策について簡単にお尋ねをしておきたいのですが、ことしの二月二十一日の商工委員会で、私は当時の平泉経企庁長官と六十一年度の経済見通しについて質疑をいたしました。毎年やらせていただいているのですが、同じ大臣とやれば、去年こう答えたのではないか、それがことしどうなったのだというようなことでやれるわけなんですが、残念ながら大臣の方も毎年おかわりになるものですからなかなかうまくいかないのですが、その中で私は、六十一年度の成長率の見通し四%というのは非常に難しいだろうということにつきまして、私どもの方の調べたデータに基づいて、こういう要素があるから四%達成は難しいということを一々例を挙げて質問したのです。平泉長官の方からは、いや個人消費も伸びているし大丈夫だというようなことでお話があったのですが、結果を見ますと、残念ながらこの四%達成というのは非常に難しい。先ほど通産大臣は、限りなく四%に近づけるようにこれから努力される、こういうようなことのお話でございました。政府の方では八月の月例経済報告、この中で、大体景気は後退をしてきている、こういう景気後退宣言というのですか、そういうのを大体公式に認められたのではないのかな、こう思っているわけでございます。  そういう状況の中で九月十九日に総合経済対策というものを決定をしたわけなんですが、本来でありますと、この総合経済対策についてじっくり時間をかけてお伺いをしたいところなんですが、時間的な余裕がございませんので、若干の点について簡単にお尋ねをしてまいりたいと思っております。  最初に、これからやろうとしておられるこの総合経済対策を実施することによって具体的には一体どんな効果が上がってくるのか、これをひとつお答えをいただきたいと思うわけです。
  52. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 委員も御存じだと思いますけれども総合経済対策は三兆六千三百六十億円の内需拡大をしよう、こういうことでございますが、その中心になっておりますのが三兆円の公共事業等でございます。内訳を申しますと、一兆四千億がいわゆる公共事業でございまして、あと八千億が地方単独事業、そして一千億が道路公団等の建設、これを財投の融資でやっていただこう、こういうことでございます。それに住宅建設七千億ということでございますが、その中核は何といっても一兆四千億の公共事業投資でございます。  私どもは、この一兆四千億の公共事業をできるだけ年度内に、単に契約だけではなしに着工をする、そしてその中でできるだけ多くの割合を年度内に完了するようにできないか、こういうことで実は大蔵当局ともいろいろ話をいたしました。既に新聞等で発表されておりますが、一兆四千億の中で二千五百億は年度内に完了する。そして四千億につきましては、年度内に国が前払い金を払って着工してもらおう。あとの三千億は財政事情から国が払えませんが、しかし当今のような金融緩慢の時代でございますので、契約がなされれば民間の金融機関の融資等を受けて仕事が進められるだろう。こういうことで何とか一兆四千億を年度内に施行し、実行するようにいたしたいということでございます。  どれぐらいのGNPを押し上げる力になるかということにつきましては、いろいろ施行のタイミングその他ございますので簡単にはここで申し上げられませんが、三兆六千三百六十億を完全実施をいたすとすると、一年ぐらいの間の乗数効果等々を勘案いたしまして四兆九千億のGNPを押し上げる力を持つであろう、率にして一・五%でございますので、その勘案でどれくらいことしのGNP成長率を押し上げるかにつきましてはもうちょっと様子を見ないとわかりませんが、相当の効果があると私どもは期待しておるわけであります。
  53. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 今のお答えで、大体四兆九千億ぐらいのGNPをふやすことができる、大体一・五%くらいだ。最初ちょっと聞き漏らしたのですけれども、この公共事業の財源は全部建設国債ですか。これは私どもが聞いておる中では、すべてが建設国債ということであればGNPを押し上げるという力になっていくだろう、しかしそうでなくて地方任せだとか公団だとかあるいは債務負担だとか、そういうようなやり方であったのではGNPを押し上げる力にはならぬだろう、こう言われているわけですが、その財源の面と絡んでそれはどうですか。
  54. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 一兆四千億の中の五千五百億がいわゆる災害復旧費でございますが、これは通常四分の三は国庫の負担、国の負担でございまして、四分の一が地方の負担でございますので、国の負担分が、私ちょっと今数字を覚えておりませんが四千百数十億ということでございまして、これは建設国債で処理しよう、こういうことであります。  それから、二千五百億分につきましては年度内に工事を完了するということでございますが、二千五百億のうち国の割合が幾らかは、いろいろ補助率が全部違いますので、その補助率によって半分であれば千二百五十億ですね、二千五百億の半分ですから。だけれども、補助率の違いがございますので八百二十五億というふうにこの分は考えております。  それから四千億につきましては、これも国と地方の分担がどうなるかということでございまして、補助率の関係がございますが、一応そのうち国費で払うものとして五百五億を考えてございます。  それから、あとの三千億は国が前払いをしない。ただ契約ができますとおのずから、地方の建設業者も仕事を待っておりますから、契約ができれば後は市中の金融機関、地方銀行等から融資を受けて仕事に着工できる、こういうことでございます。ですから、建設国債でなければ仕事ができないという状況ではございませんので、国が前金を払うものと、それから民間の金融機関から借りて仕事をするものと三つございますけれども、現状のような金融緩慢の時代で、しかもいろいろ関係業者が仕事を待ち望んでおりますので、契約ができれば、資金のやりくりはいかようにでもなるので、要は国がこれを年度内着工し実行するのだということが、関係者の御協力が得られれば建設国債でなくても仕事が具体的に進みまして国民所得を押し上げる効果があるもの、かように考えておるわけでございます。
  55. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 今お答えになった部分でもうちょっと聞いておきたいのがあるわけですが、この公共事業地域配分の関係、これは当然それぞれの地域の中での関係についてはお考えになっておられると思うのですが、全体的な底上げを図ろうとすれば、特に不況地域というところには重点的に配分をしなければならないだろう、こういうふうに考えているわけですが、その点と、それからもう一つは、住宅関係七千億というふうに聞いたのですが、これはどんなような形でやられようとしているわけですか。
  56. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 その前に、私ちょっと数字を間違えまして、今年度完了事業が二千五百億と申しましたが、一千五百億でございます。その約半分ということで八百二十五億でございますし、それから前金を払うものが先ほど申しましたように四千億で、そのうち五百五億を国費で払う、こういうことでございます。なお、災害復旧工事につきましては五千五百億でございますけれども、国の払い分が四千百六十億、合計で五千四百九十億でございますが、これは建設国債によって賄う、こういうことになっておるわけでございます。  今お話がございました、円高でいろいろ影響を受けておる地域だとか、それからなお地方で景気が後退しているような地域につきましては、今後こうした補正予算を編成してまいります過程の中で建設省その他関係省庁と御相談いたしまして、そうした地域にできるだけ傾斜配分をして景気回復の実効あらしめたい、かように考えておる次第であります。
  57. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 住宅の関係は。
  58. 川崎弘

    ○川崎(弘)政府委員 お答え申し上げます。  七千億の住宅の投資でございますが、これは財政投融資からお金が出る、そういうことでございます。
  59. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 内訳をちょっと、わかりますか。
  60. 川崎弘

    ○川崎(弘)政府委員 七千億についての細かい内訳というのはございませんけれども、この七千億によりまして、七千億というのは事業規模でございますが、貸付枠三万戸増加する予定にいたしておりまして、さらにこうした住宅投資が促進されますようにということで昨年から導入されまして非常に評判のよい特別割り増し貸し付けというのがございますが、この制度を昨年までは百五十万から三百万という割り増し貸付額でございましたのを二百五十万から五百万に増額するということを一つやります。  それからもう一つは、げたばき住宅でございますが、従来げたばき住宅の場合には、非住宅部分は住宅公庫の融資対象になっていなかったのでございますが、これを対象に加えるということをやります。  それからもう一つ大きな改正は、住宅公庫の貸し付けの上限面積、つまり広さの面積についての規制が今までございましたのですが、現行百八十平米というのを二百平米に増加する、こういうふうないわゆる貸付条件なり貸付内容の改善をあわせて行いまして、この三万戸の増枠をなるべく実現したいということでございます。
  61. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 住宅の方は別な機会にまたちょっと詳しく触れさせてもらいたいと思うのですが、ただ申し上げておきますと、今三万戸貸し付けというようなことですけれども、現実には私どもの知っている限りでは一万四千戸はもう既に進んでいるんだというふうに承知をしているわけであって、あと残りは一万六千戸だ、こういうふうに理解をしておるわけです。今その中身は僕も触れません。  あと経企庁の方に、先ほど私申し上げましたけれども、八月の月例経済報告の中では、大体景気の上昇というものはストップしてきた、こういうような見方をしているというふうに私は受けとめているわけですね。大体ことしの一月―三月期、あるいは四月―六月期というのは景気の上昇というのは横ばい状況というようなことになってきている。本来であれば下方修正ということをやらなければならないのだけれども、いつか私新聞でもって、経企庁の方は何か下方修正をやるような記事をちょっと見たことがあるのです。そうしたら何かまただめだ、やるなというふうに言われて下方修正をしないで、先ほど通産大臣がお答えになったように、限りなく四%に近づけるために努力をするんだ、こういうようなことで、これから努力されるということなんですが、先ほどの財源の内訳などをお聞きいたしましても、こういう状況の中で四%というものを達成するということは非常に難しいだろう。民間なんかではほぼ下方修正をやっているわけですね。政府の方だけはまだ頑張っているわけでございます。  これは私はことしの二月二十一日のときの商工委員会でも申し上げましたように、実際に四%を達成するという見通しであるならば、内需拡大というものはこういうふうに努力をするとか、具体的に出てきていないと、形の上だけで四%達成と言ったってそれは不可能ではないか、そういうふうに申し上げたのですが、今回の場合も、どうも外圧もあるかもしれないけれども、むしろ内圧によって下方修正ということをやらないで過ごそう、そんなふうに考えておられるのでないかなという気がしてならないのですね。そうでなければいいと思うのですが。  例えば財政再建でも私そうだと思うのですよ。これは皆さん方はどうお考えになっているか知りませんが、我々の受ける感じ、それから国民皆さん方が受ける感じでは、六十五年度まで財政再建が今の状況の中でできっこない。しかし、できっこないということは言われないと思うものですから、政府の方ではいや財政再建という旗をおろしません。しかし、その旗をおろさないということになるから、予算はどうしてもマイナスシーリングというものをある程度持続をしていかなければならなくなる。マイナスシーリングというような形でやっていくから、国内景気はどうしても上昇ということにならないで、横ばいなり停滞せざるを得ないような状況というのは今日続いてきているのではないかと思うのですね。  経済見通しなんかでもそういうようなことをやってこられたから、国民皆さん方経済動向に対する認識というものがどうもあいまいな形で過ごされてきているのではないか、そういう気がしてならないわけですね。そういうようなことばかりやっておったのでは、経済企画庁というのは一体どういう役所なんだ、その辺のところは、私非常に不思議に思うのです。経済の総合政策を立てなければならない官庁だ。しかし、そういう官庁が各省なり、大蔵省あたりからのいろんな力が加わってきたり、そういうことでもって、本来実質に合わないと言えば語弊があるかもしれませんけれども、そういう経済見通しのまま進まなければならなくなる。  去年の十二月ごろだと思うのですが、六十一年度の経済見通しをお立てになる作業を始められたときに、経企庁の方では幾ら頑張っても大体三%の後半くらいより見込めない、そういうことで臨まれたというふうに私は聞いているんですね。ところが、いやそれではうまくない、いろいろな関係があるからやはり四%ということでやりなさい、こういうふうにして作業を進めたというふうにも私ども聞いているわけなのですけれども、今こういう状況下にあって、先ほど通産大臣が言われた努力というのは私わかるわけですよ、四%に近づけるという努力はわかる。それだったら実際にやはり四%になるような、各方面から言われているように財源の問題にしたってそれが即効果をあらわすようなことを実際やらなければ、幾ら言葉だけで四%に近づける努力をする、まだその望みは捨てていないということを言われましても、その裏づけになるものが出てこないというとこれは信用できないということになるのではないか、こういうおそれがあります。その辺のところと、仮に今世界、まあ世界というよりもアメリカあたりから特に内需拡大ということについては強く要請をされているわけですけれども、四%を達成できないというような状況になった場合に、外圧というものは果たしてどんな影響で出てくるだろう。全く関係ないか、あるいは四%達成ができなければ、二月二十一日のときにも申し上げましたが、税収にだって影響してくるだろうというようないろいろな面から申し上げたわけでありますけれども、この四%達成ということについてもう一度考え方と、外圧の関係があるかないか、それから現在のこういう状況の中でも、補正予算の財源やなんか見ましても、なおかつ四%が達成され得るという自信というものをお持ちになっているのかどうか、これをお答えいただきたい。これは大臣の任期中にわかるのではないかという気もするわけですけれども、その辺のところをひとつ。
  62. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 最初にちょっと申し上げますが、私ども景気後退宣言を八月にしたわけじゃございませんで、従来、景気拡大の足取りは緩慢という言い方をしておりましたのを、八月になりましてから、景気は底がたさはあるもののその足取りは緩やか、こういう表現に変えたわけでございますが、ここで意味しておりますのは、いわゆる景気は確かに輸出中心として製造業は後退をしておっても、むしろ非製造業、サービス業は結構好調でございますので、その二面性がより出てきた、だから一概に拡大と言えないけれども、まあまあ総合して緩やかになる、こういうことでございます。  実は六十一年度の見通しをつくったときに、いろいろ国民所得のコンポーネントを当然予測をしたわけでございますが、それと最近の動きを比較いたしますと、今申しましたように民間設備投資は二面性があるが、消費だとか、住宅投資は年率百三十数万戸でございます。これは昨年よりも数%上回っているわけでございますので、決して深刻な面ばかりではない。ただ、今のような状況がこのまま推移いたしますと、新聞その他で今度は非常にネガティブないろいろな情報が出てまいりますので、そういうことに民間設備投資がさらに引きずられていくと、よりもって成長率が鈍化する、こういうことでございますので、やはり国が積極的な成長政策への決意を示すことが何よりも大事であるというふうに考えておるわけでございます。それが先ほど来言っておりますところの九月十九日の総合経済対策の三兆六千三百六十億円でございますが、これは過去のこの種の対策の中では最高の、最大の量でございますし、それから六十年のGNP、名目で三百二十兆円で比較いたしますと一・一%強でございますから、これは本当に実行されれば景気に対して相当な活力を与えるものである、こういうふうに考えておりますし、それを今お話しいたしましたようにできるだけ前倒しで早く消化するような措置を、公共事業におきましても、また住宅につきましても、その他電力会社の投資とかいろいろなことはそれぞれ関係各省にお願いして、関係業界なり関係団体にお願いをしよう、こういうことでございます。  そういう形で政府成長政策へのコミットメントというものがはっきりして、具体的に政策が動いてまいりますと、景気というのは、政府施策もさることながら、結局民間設備投資がどれだけついてくるか、さらに民間消費がどれだけ拡大をするか、政府公共事業予算は六兆円そこらでございますけれども民間消費需要は国民所得のタームで約百九十兆円でございますから、それが一%ふえるだけで一挙に二兆円ふえちゃうわけですね。二%ふえれば三兆八千億円、約四兆円近くなる。ですから私どもは、国もやることはやるけれども、その辺がきっかけになって民間設備投資そして民間消費をどれだけ誘発することができるかが実はこれからの景気対策の決め手になる、こう考えておりますので、私たちの政府施策について皆さんの御理解と御協力があれば、通産大臣お話があったということでありますが、限りなく四%に近づくことは決して不可能でない。問題は、国の施策プラス民間経済活動をどれだけ誘発するかということがこれからの景気対策成長政策の決め手である、こういうふうに私ども考えて、何とか皆さんの御協力を得たいということで成長政策の旗を掲げて事に臨んでおる、こういうことでございます。
  63. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 今までも政府の方では、景気の先行きということについては、我々から言わせますと大変強気の見通しということで主張されてきておったわけですね。円高のデメリットというのは早く出るだろうけれども、しかしやがてプラスの面もあらわれて、ことしの秋口以降になると円高、原油安のメリットが出てくる、そして輸出関連産業などの不振をカバーして景気は拡大に向かう、これが大体今までの政府の見通しなんですよ。ところが、実際に今日段階になってきて、じゃ設備投資というものについてはそういうふうにして伸びていったのか。個人消費支出は若干の微増というような感じのものですね、そう極端に上がっていったということではない。それがやはり今日、景気後退宣言はしていないと言われるけれども、まあまあ何となく横ばい、こんなような状況だと思うのですよ。そして今大臣言われましたように、政府の方で成長政策への熱意というものを示して、民間皆さん方もどんどんやってくれ、この気持ちは私わかると思うのです。  しかし、そう言われておって、さてそれでは具体的にどうかというと、先ほど水田委員の方から質問がありましたね、例えば電力料金に対する円高差益の問題、これを見ますというと、いやまだ原油安だとか円高ということについての見通しがはっきりしないということで先送りというような感じになっておるわけですね。その辺は不明確なんですよ。やはり民間の方々が設備投資や何かでもいろいろなことをやろうなんということを仮に考えられても、そういうような見通しというものが国の方では少しあいまいな感じでしょう、我々から言わせますと。それは立てられないということもわかるかもしれませんよ。しかし、そういうものをきちんと出してやらないと民間はおっかなくてついていけない、こんなことにもなってまいりますので、これはいずれ私、二十三日の物価対策委員会でそっちの方はお尋ねしようと思っていますのでこれは後にしますが、そういう面もやはりお含みの上でやってもらわないと、事業はやるんだ、しかし円高関係については先行きまだわからない、まだわからないというような感じの中では、これは民間だってなかなかついてこれないということになりますので、その辺はひとつ申し上げておきたいと思うのです。  時間の関係がありますから、次に通産大臣の方に、これは経企の方にもちょっと関連する部分がございますので後でまたお尋ねしてまいりますが、経済企画庁が発表しております地域経済動向、これによりますと景気拡大が続いているのは関東だけだ、こうなっているわけでありまして、その他の地域は決して景気拡大に向かっていないという状況になっているわけです。特に北海道の場合は、六月の鉱工業生産は前月比六・九%減、これは過去一番悪い大幅ダウンであって、全国でも最低水準になっています。それから、これは二月二十一日にやはり商工委員会で申し上げましたけれども経済対策考える場合に、トータルでもって、日本全体でこうなったからいいだろうということでは困ります。その地域地域によって格差があるのであっては、トータルでもってよくたってだめな地域はどんどん落ちていくわけです。だから地域格差を解消するということにもひとつ重点を置いて経済対策を総合的にやってもらわなくては困るというふうに申し上げておるわけであります。  先日の通産大臣所信表明を拝見しますと、その中で総合経済対策にも触れられまして、特に景況の悪化の著しい中小企業に対する緊急対策、これは全身全霊を傾けておやりになると述べておられますし、それから中小企業対策の中でも「地域中小企業ひいては地域経済の新たな活性化を促進する」こういうふうにも述べられているわけですが、その具体策というのは一体どういうふうにお考えになっておるのですか、代表的なもので結構でございますがお示しをいただきたい。これは通産大臣
  64. 田村元

    田村国務大臣 もう既に御承知思いますけれども地域によっては集中的、非常に深刻な円高影響を受けておるところが相当ございます。そういう地域につきましては、中小企業の構造転換の円滑化を図って地域経済全体の活性化を図っていくことが必要であろうと思っております。  このために、まだ出していない法案でございますけれども、特定地域中小企業対策臨時措置法、あくまでも仮称でございますが、これを制定いたしまして、三・九五%という超低利融資制度の創設、三・九五%というのはこの種の利率としては非常に超低利だと思いますが、これの創設。それから特定地域信用補完制度の創設等によって地域中小企業事業転換等を推進いたしたい。それから金融、税制措置等によって特定地域に対する企業の誘致を促進することなどを通じて地域経済の新たな活性化を図るための総合的な対策を展開することとしております。この新法、まだ提案もしておりませんし、成立もしておりませんが、これが大変評判がよいのか、毎日のように私のところへ与党、野党を問わず国会議員の方々が地域の方々をお連れになっていらっしゃるというようなことでございまして、うんと力を入れてまいりたいと思っております。
  65. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 今私が通産大臣にお伺いをしたのは、通産省通産省中小企業対策あるいは地域産業の活性化とか地域経済の活性化というようなことについて努力をされる、これは当然の任務で御努力されるのだろうと思っているのです。  ただ、私は国の経済政策ということについては大変疑問に思っているのです。経企庁というのは総合経済対策考える役所だ、こう言われているのですが、それで今大臣地域経済の新たな活性化、中小企業対策にこれからもどんどん力を入れる、こう言われているわけなんです。考えてみますと、例えば私の住んでいる北海道の場合、北洋漁業の減船問題で今大変な状況になってきている。約七千人からの失業者が出る。これは漁船の問題だけじゃないです。せんだって私も調査をしましたら、例えば釧路などではハイヤー、タクシーの事業者が今度は参ってしまう。乗らなくなってきたわけですから、実車率がどんどん下がっていく。漁業問題なのだけれども地域経済の中でハイタクならハイタクというものに大変な影響を及ぼす、こうなるわけですね。あるいはまた石炭問題、これは通産省で大変御苦労されておるわけですが、石炭問題でやられればまた北海道の炭鉱は軒並みなくなってしまう、こういう問題があります。あるいは今やられている国鉄改革の問題もまた、北海道ではその人員を吸収することができないから、広域配転などということもやらなければならない。あるいは農業も減反減反をやられていく。あるいは造船産業も今二〇%の能力カットということで北海道の造船産業は皆なくなってしまうだろう、こう言われているわけですね。これは林業でも同じということになるわけです。  こういうことを考えてみますと、これはもちろん全部が政府の責任だということにはならないと思うのですけれども、個々の官庁では、自分たちの受け持っている産業分野の合理化とかいろいろなことで、これがベターだというようなことで恐らく計画を立てられると思うのですね。しかし、結果的にはそこの一つ地域経済をだめにしてしまうという現象が今日起きてきている。同じ国がやっていることであって、それがそういうことになって出てきているわけです。これは一体どうしたものだろう、そういう疑問を私は感ずるわけなんですね。  そこで、例えば造船なら造船という問題があります。あるいは石炭という問題があります。石炭はこれは通産大臣の所管でございますから打ち合わせも何もないと思うのですが、例えば造船なら造船ということでこれは運輸省でやられる。二〇%の能力カットをしなければ今の日本全体の造船業を何とかもっていけないということについては私はわかるわけですよ。しかし、今度はそれを例えば同じ造船であっても―─これは私はよく営林署の統廃合のときなんかも農水大臣には申し上げたのですが、東京あたりだったら官庁一つなくなったって地域経済にはそんなに大きな影響を与えないと私は思う。しかし、町村あたりにいきまして営林署が一つなくなったなんということになった場合には、そこの地域経済に与える影響というのは非常に大なんですよ。再生できないぐらい落ち込むということになるわけですね。だから、今の造船なんかの場合でも、私は函館ですから、函館どつくがある。これは坪内グループの方に入って何とか今息をつないでいるけれども、これが二〇%船台カットということになったら、これはつぶれるわけです。それから、今国鉄改革が行われて、来年度青函トンネルが開通すれば連絡船が廃止になる。ここでまた我々の試算では五百億以上のデメリットを地域経済に与える、こうなるわけですね。  そうすると、それぞれの官庁が、海造審なら海造審でもって運輸省がやっている場合に、これは日本全体の造船産業を守るためにこうなんだということについてはわかるけれども、では特定の地域の中で今度はどうはね返ってくるのか、特定の地域がいろいろな産業のしわ寄せがそこに来てだめになった場合に、今度は経企庁なり通産省地域経済の活性化のためにまた何かやらなければならなくなってくる。そこにまた国民の血税をつぎ込んで、今通産大臣が言われましたような、例えば低利の融資もしなければならなくなる。一方においては、つぶすというのは語弊がありますけれども、つぶすようなことをやっておいて、一においてまたそれを救済しなければならないというような、一つ政府がやる経済政策というのは何か矛盾があるのではないかというふうに思われてならないというのが私の今の気持ちなんですが、そのあたりはどうなんでしょう、これは両方でお考えを聞かしていただきたい。
  66. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 いわゆる円高対応のための産業調整と申しますか経済調整というのは、先生指摘のような雇用問題を含むことでありますので、長期的には日本の新しい産業構造に適応する形の雇用調整というものを積極的に進めていかなければならない、こう思うわけであります。  しかし、今北海道のお話がございましたが、先般知事さんもお見えになりましていろいろお話を承ったのでありますけれども先生の御指摘のような造船の問題から山の問題から漁業の問題とか、結局当面こういった方々に対する雇用機会の創出ということ、公共事業中心とするような建設、土木事業といったものが直接雇用吸収の力も持ちますし、またそういうことで経済が活性化いたしますと関連の方にも多少活性化を広げる、こういうこともございますので、やはり当面は公共事業を積極的に、特に円高等で影響を受けた地域に進めることをしたい。こういうことでございますので、先ほどもお話をいたしましたが、今度の補正予算その他の総合経済対策の中で地域的な不況対策ということについても十分配慮をするように関係各省と打ち合わせをして措置してまいりたい、こう思っておる次第でございます。
  67. 田村元

    田村国務大臣 北海道に関しましては特に特殊の状況というものがございます。私はかつて党の北海道開発特別委員長というのをやって、北海道という地域の立地条件それからまた重要性、と同時にまた非常に難しい面、いろいろな面を知りました。そして大の北海道ファンになってしまったわけでありますが、先ほど中小企業庁長官が申しましたような諸施策を講じ、また地域的にも細かい施策を講じ、今経企庁長官が言いましたように公共事業等をどんどんと起こしていく。  同時に、今お話のありました函館どつく、これと佐世保重工というのは南北の両雄で非常に悪いわけでありますけれども、この造船というものは海運との絡みを無視して論ずることはできません。海運と造船というのは、地獄へ行くときは一緒に行くのですけれども、はい上がるときにはけ飛ばし合いをするというようなことは、これは御承知のとおりであります。そういうことで私も随分運輸省担当のときには海運、造船で苦労いたしましたが、そういうことも考えて、通産省は申すに及ばずでございますけれども、特に経済企画庁が中心になっていただいていろいろな省庁に対して御意見をいただく。そしてこういう今のような特殊な状況、しかも北海道のような特殊な地域、これを救うのは一省庁ではできるものではない、それこそ大げさに言えば日本政府の名において行わなきゃできるものじゃないということでございますから、私は、先ほども申し上げたように、部下に対して、一切のセクト主義を排していかなる省庁に対しても相談をかけ時には頭を下げてでも頼め、それが国民のためだ、こう申しておりますが、今言ったような運輸省部内の操作というような問題もございます。特に函館どつくにおいては非常に難しい問題がございます。そういう点を私どももまた遠慮せずに運輸省の方へも進言をしていきたいというふうにも思っております。
  68. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 私は今地域問題は一つの例として出したのであって、そっちの方を特に詳しくお聞きするという気はなかったのです。ただ、国の経済産業政策のあり方として、先ほど言ったようにそれは官庁はそれなりのあれでやられる。通産大臣石炭なら石炭をやられる。それは通産省という立場の中で石炭政策というものを考えられていく。これはまあそれなりにわかる。しかし、そのことが地域経済を壊滅させてしまって、その対策をまた経企庁なり通産省が立てなきゃならなくなるというこの矛盾した現象についてどうお考えですかということを実は聞いたわけですが、ちょっと時間がありませんので最後の方に入らせてもらいます。  事業転換の関係について、これは当初の私の予定では、今までの事業転換対策、これはいずれ法案が出ました場合にじっくり審議させてもらいたいと思って、その経過を本当はお聞きしたかったのですが、ちょっと時間がなくなってきたので簡単にお伺いしておきたいと思うのです。この点については、特に繊維関係については後で同僚の辻議員の方からお尋ねをすることになっていますので、そっちは省略をしてまいりたいというふうに思っております。  そこで、今経企庁長官も言われましたし、先ほどの水田議員との質疑の中でも言われておるのですが、問題は雇用関係ということになってくる、こう思うのですね。総務庁の七月の労働調査では完全失業率は二・九%、これは過去最高だ、こうなっているわけであります。六月の有効求人倍率は全国で〇・六〇ですが、北海道は〇・二三、これまた地域格差が非常に強いわけです。そうした中で、北海道の場合には事業転換ということになりましてもあれですが、石炭なんかというのが今度具体的に出てきますと、あるいは北洋漁業問題なんかでも事業転換ということになってくるわけですが、雇用問題というのは大変重要なことになってくる。一説には、例えば石炭なんかの場合だったら安楽死だと言われているのもあるわけです。そういうことからいえば、ちょっと言葉は悪いかもしれないけれども、高島炭鉱なんかの場合には自殺ということになるんでしょう。人間、我々が毎日何となく生きておるというのは、自分の死ぬ時期がわからないからですよね。自分の死ぬ時期がわかっていたら、これは大変な問題が出てくると思うのですが、わからないから悠々として生きているのです。死ぬ時期がわかったところというのは大変だということは、今の国鉄ではっきりしていると思うのですよ。国鉄の場合には死ぬ時期というのをはっきり明示したわけです。あれは全員解雇ですから、一時解雇ですからね。そして必要なものだけ再採用するというのですから。NTTの場合には全員解雇でなかったから、そんなような紛糾というのは余り起きなかった。  ですから、事業転換なんかをする場合であっても、これは転換といったってそう簡単にいかない。どうしてもそこについて回るのは雇用問題だ。しかし雇用問題は労働省ですから、これはまた別な機会に労働省を呼んで、法案審議の際にはじっくりお聞きをしたいと思うのですが、きょうは、先ほど言いましたように、本来は今までの事業転換がスムーズにいったかどうか、この経過を若干聞きたかったのですが、これは次に譲ります。雇用関係の問題は労働省ですが、担当する省庁として労働省に対しては、雇用対策についてこうしてほしいとか、ああいうふうにすべきだとかというふうな打ち合わせとか要請というものはどういうふうにしてやられているか、その点だけお尋ねしておきたいと思うのです。
  69. 杉山弘

    ○杉山政府委員 先ほど来問題になっております産業転換に伴います最大の問題としての雇用対策についての労働省との間の連絡状況についてお尋ねでございますが、労働省との間では最近、両省の次官以下関係局長会合を持っておりまして、双方ともやはりこれから進むであろう経済構造調整、産業構造転換に伴って雇用問題というのが最大の問題になるという点について十分認識をいたしておりますし、また、労働省ではそれに対応して従来の制度等についても見直しをし、新しい対応考えたいということもお話しになっておられました。  それからまた、具体的には、産業政策局の通産省といたしまして雇用問題を扱う課と労働省の窓口課との間に定期的な連絡もやっておりまして、通産省は現在来年度の新政策において構造転換対策上どういう対応考えているか、またそういうことに伴って労働省としてはどういう対応をしていかなければいけないかということにつきましても、比較的綿密に連絡をとっているところでございます。
  70. 川崎弘

    ○川崎(弘)政府委員 私どもの企画庁は地方に手足を持っておりません。そのかわり年に二回は企画庁長官以下幹部が地方へ出かけまして、地域経済界の方々等を中心にいたしまして地域経済懇というのをやっております。実は、ことしもこの総合対策をまとめるに当たりまして、その直前に、たしか北海道は函館だったと思いますけれども地域経済懇を開催いたしましていろいろ地方の実情も伺ってまいりました。  それから労働省との関係につきましては、実は労働省に産業労働懇話会というのがございまして、これは労働大臣が主宰されます経済界とそれから労働組合関係との会合でございますが、企画庁長官及び私が常にそれに出席させていただきまして、いろいろな労働事情のお話も伺うということをやっております。今回の対策を取りまとめるに当たりましても、労働省との間では特に連絡を緊密にいたしました。雇用対策の中で、御承知の雇用助成金の給付対象地域なり事業の拡大、あるいは給付条件の改善あるいは雇用開発助成金の方についてのやはり同様の条件改善、このあたりにつきましては、例えば今回通産省がお考えの特定地域中小企業対策臨時措置法をその対象地域に加えてもらう問題であるとか、いろいろなことにつきまして御相談は申し上げたということでございます。単に労働省にとどまりませず、対策をまとめるに当たりましては運輸省、農林省、関係の各省ともその辺は十分連絡をとってやっているつもりでございます。
  71. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 私はもうやめますけれども、御要望申し上げておきますけれども、この事業転換対策等のものでは今それぞれお答えいただいたのですが、余り具体的でなかったように私聞いておるわけなんで、法案審議の際までには、労働省との具体的な折衝の中身というのですか、もしそんなのがあったらそのときにぜひお出しをいただくように要請申し上げておいて、辻さんの方にバトンタッチをいたします。
  72. 佐藤信二

    佐藤委員長 辻一彦君。
  73. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私、貴重な奥野委員の時間を若干いただきまして、今のに関連して、繊維が今非常に不況になっております。特に私どもの北陸繊維産地は、長繊維の輸出産地としては福井、石川と合わすと大体日本の八割を占めており、今深刻な不況に見舞われている、その中で二、三お尋ねをいたしたいと思います。  福井県の織物構造改善組合が行った円高不況調査によると、こういう数字が出ておりますので、ちょっと参考に申し上げて、それから大臣の見解を伺いたいと思います。  それは、組合員千九百八十四件に対して、織機は五万七千九百八十三台を対象にして、九月五日から十六日にかけて組合の総代が各機屋さんを全部訪ねて、そして休機、いわゆる織機を休んでおる状況、それから十月以降に休む見込み、そういうものをずっと個々に全部調べた大変貴重な調査記録があります。さらに、設備共同廃棄への参加希望を聞き取っておりますが、それによると、回答率は千四百十四件で七一・二%、織機四万二千二百二十三台に対して七二・八%が回答している。その中で七月から九月の間に業者数の五四・八%が、織機にしますと二三・二%が休んでおる。それから十月以降をどうするかという聞き取りに対しては、業者の五七・七%、織機の三二・六%が機を休めなくちゃならない、こういう答えをしている、こういう結果が出ております。それから設備共同廃棄に参加をする希望を確かめた中身では、四百五十九件、組合員の二三・一%、八千六百二十三台が今設備共同廃棄に参加をしたい。さらにもう一つ、規模を縮小してこれに参加をしたいというのを入れると七百四十件で一万四千四百四十八台が設備共同廃棄に参加をしたいという希望になる。これは極めて深刻な北陸産地における、世界の長繊維の産地をもって任じておる産地の深刻なる不況裏づけておると私は思います。  さらに、九月から十月にかけて、これは通産省大臣の方にも経企庁の方にも参っておると思いますが、北陸産地から続々と市町村議会、理事者、さらに県議会で意見書を採択をしてそれを背景にした知事等々、異例の国会通産省等への要請陳情が行われて、これを見ますと、北陸産地における繊維不況は極めて深刻であると考えざるを得ませんが、これに対して通産大臣はどういう認識を持っていらっしゃるか、まずお尋ねいたしたい。
  74. 田村元

    田村国務大臣 おっしゃるとおり、私のところへとりわけ北陸地方から本当に深刻な声が聞こえてまいります。私の部屋へもほとんど連日と言ってもいいようにいらっしゃるわけです。お話を承りましてまことに胸の痛む思いでありますが、それだけにでき得る限りのお手伝いを申し上げたい、このように思っております。
  75. 辻一彦

    ○辻(一)委員 深刻な状況にあるということは通産大臣も十分御認識のようでありますので、その上に立って具体的な問題で二、三伺いたいと思います。  まず第一に、一番今問題になっておるのは、織機の設備共同廃棄の事業がストップをしているということが一つ大変大きな問題になっております。例えば一つの例を引きますと、六十年度に北陸の産地では共同廃棄をしたのが七百四十七件で一万三千十三台に及んでおりますし、その中で福井県は三百四企業で五千四百十五台がこの設備共同廃棄を行いました。ところが、御存じのとおり撚糸工連事件という非常に遺憾なる事件が起こりまして、そのために共同廃棄事業は凍結、ストップになって、そういう中で通産省は、従来のそういう設備共同廃棄のやり方を見直しをして新しい取り組みを行うということを五月三十日には経済関係閣僚会議で決定をされておる。それに基づいて今具体的に進められておるのでありますが、産地としては、撚糸工連事件はまことに遺憾な事件であるし、これは再びこういうことが起こらないようにしなくてはならない、これは当然のことであります。しかし、産地の命運をかけた設備共同廃棄事業がこのためにストップをして非常に困っておるということも事実である。そういう点から、一刻も早く凍結を解除して設備共同廃棄事業を再開してもらいたいという非常に強い要望がある。それは先ほどのとおり連日通産省の方にも要請が参っておるわけでありまして、そういう点で今は通産省はこれについていろいろと見直しをし、検討をし、さらにいろいろな審議会等の経緯を経て具体化の少し前にあるように理解をしておりますが、そのめど等についてはどういうような状況になっておるか、大臣からお伺いいたしたい。
  76. 田村元

    田村国務大臣 大変遺憾な事件でございました。そのために繊維行政、繊維対策が糾弾を浴びるという、対策そのものが浴びたわけではありませんが、繊維対策についていろいろな目で見られて、そのためにとんざをしたということでございます。しかし、いろいろと御要望も非常に強うございます。私のところへも大変たくさんの方が御要望にいらっしゃいますが、これはまあ私どもの省だけで決めるわけにもいかない問題ではありますけれども、この御要望を反映して、可及的速やかに検討の上結論を得たい、このように考えております。
  77. 辻一彦

    ○辻(一)委員 可及的速やかというのはいつもよく聞く言葉ですが、既にもう十月の下旬になり、間もなく十一月を迎えようとしている。この事業を具体的に進めようとすれば、再開しようとすれば、やはり地方の自治体の負担等もかなりいろいろあるわけでありますから、そういう面では、地方は十二月の議会を開いて、そのときに既にいろんな措置を講じなければならない。そのためには、これが余りにもおくれるということは、全体の計画が非常におくれていくということになるわけでありますが、そういう意味で、時期的に大体いつごろ一応具体的に打ち出すのか。可及的速やかといっても、およそいつごろであるか、このことについてお尋ねいたしたい。
  78. 田村元

    田村国務大臣 今、何月の幾日というお答えはできませんが、とにかく急いでおります。でございますから、可及的速やかという言葉は、文字どおり可及的速やかというふうに御解釈いただいて結構と思います。
  79. 辻一彦

    ○辻(一)委員 それでは、月の日まで私は言いませんが、十月の終わりなのか、下旬なのか、十一月は上、中、下と三つに分けられますが、一体それぐらいの区切りではいつごろになりますか。
  80. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 御指摘のとおり、この事業につきましては、国の資金のほかに都道府県の資金が必要でございまして、都道府県サイドで所要の手当てを一番早くやっていただくとすれば、先生指摘のとおり、十二月の補正予算ではなかろうかというぐあいに思っております。したがいまして、県サイドで必要な対応ができる、十二月の補正予算対応ができるというようなことを考えますと、私どもに残されております時間はそう多くはない、一カ月もないんじゃないかという気持ちは持っておりますけれども、何せ御相談をすべき相手もあるわけでございますので、明確に上旬、中旬、下旬というようなことを申し上げるのは難しいわけでございますけれども、非常に残された時間は少ないという気持ちは切実に持っているわけでございます。
  81. 辻一彦

    ○辻(一)委員 そこらは今産地は一日も早く知りたいところなのであえて申し上げますが、では、一カ月以内には大体出されるということですか。
  82. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 ただいま申し上げましたとおり、あるいは先生からも御指摘もございましたが、一度基本的にルールを全部洗い直すというようなことになっております。したがいまして、国と県の負担割合といったような問題も新たにもう一度吟味をする必要が出てくるわけでございまして、私どもといたしましては、まさに先生おっしゃるようなスピーディーな対応をしたいというぐあいに思っているわけでございますけれども、御相談すべき相手側の方でまたそれなりにいろいろの御意見もあるわけでございますので、ちょっと私どもの方でいつまでに協議を調えるということを断言をするのは適切でないかと思いますけれども、繰り返しでございますが、全力を挙げて急がなければならないし、懸命に説得をしていきたいというぐあいに思っている次第でございます。
  83. 辻一彦

    ○辻(一)委員 局長の今の御答弁では、急がなければならぬということははっきりしておりますが、大臣、まさにその可及的速やか、それを具体的にひとつ早く実現してもらうように要望しておきます。  その次に問題になるのは、時期とそれから、一体幾らで買い上げるのかということがやはり、今腹を決めようとしている産地にとっても経営者にとっても非常に大事なところなんです。設備共同廃棄事業を三カ年計画で出発をして問題があった、いろいろな経過があったにいたしましても、六十年度の買い上げ価格と差がつくということは、行政の公平を図るという点、三ヵ年を目指す中で、一年やって問題があったから次は差がつくというのは非常に問題があると思うので、これは従来の価格で買い上げるべきであると思いますが、そこらについての見解をひとつお尋ねしたい。
  84. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 現在通産省の中で検討をいたしております新しい仕組みの原案といたしましては、残存簿価の例えば三倍というようなラインを一つの心づもりとして検討をいたしております。  ただ、先生指摘のとおり、繊維関係の七業種につきましては、実は六十年度から六十二年度までの三カ年計画があったわけでございまして、そのうちの六十年度分だけを実施をいたしまして、残りを新しい仕組みに乗せるということになっております。したがいまして、この七つの業種につきましては、確かに六十年度の買い上げ対象になりました企業と新しい仕掛けに乗ります企業との間で著しい価格の差があるというのは、やはり地域内あるいは産地内におきまして非常に大きな不公平感を引き起こすおそれがあることも事実でございます。いろいろと議論もあるわけでございますが、田村通産大臣の方からも、この七業種については極端なアンバランスを起こさないというのが正しい方向ではないかというような御指示もいただいておりますので、そういう方向に沿いまして、この七業種につきましては特別配慮的な措置を講ずるべきではなかろうかというようなことで検討いたしているわけでございます。なるべく開きが起きないようにというような気持ちでいるわけでございますけれども、これも財政当局等と御相談をしている最中でございますので、どの程度の近づけ方にするかということは今はっきり申し上げるわけにはいきませんが、大臣からも先ほどお話ございましたように、できることは何とかいろいろ工夫するようにというようなお話もございますので、そういった気持ちで取り組んでまいりたいと思っております。
  85. 辻一彦

    ○辻(一)委員 これは通産大臣に産地の人はいろいろな形で接触もし、また今局長御答弁のように、できるだけ差のないように、こういう指示をしているというお話を私も間接的に聞いております。しかし、直接大臣から一遍お尋ねしたいのは、なるべく差のないようにといいましても、それは表現の問題があって、一〇〇%近いのか、それから九九なのか九五なのか九〇なのか、いろいろあると思うのですが、どれぐらいのところでこの問題は決断するのですか。私はこれはなかなか事務当局の答弁では難しいと思うのですよ。やはり相当政治決断を必要とする内容であると思うのですが、あえて大臣にその点をお尋ねをしたい。
  86. 田村元

    田村国務大臣 実は私が局長に指示いたしましたのは、六十年度と六十一年度余りアンバランスを出さないように操作するように、年度が違ったらこうも違うかというようなことであってはならぬ、現地の者の身にもなってみよ、こういうことは申しました。ただ、具体的に数字をどうするこうするというのは、これは大臣の仕事ではなくて官僚の仕事でございますので、官僚が出してきたものを私が見て、場合によったらクレームをつけるかもしれないし、しかしこれだけ強く言ってあるのでございますからまあまあの配慮はしてくるのではなかろうか、このように考えております。
  87. 辻一彦

    ○辻(一)委員 産地の人は、この時期と価格については非常に関心を持っているというか、一番肝心な点ですから極めて心配いたしておりますので、局長もひとついい数字をしっかり出してもらわなければいかぬし、大臣もそれを十分見て政治的な決断をして、ぜひ産地の声にこたえていただきたいと思います。  それから、今の問題と関連しますが、今度の場合に残存者負担金という一項が五月三十日に入っておるわけです。しかし、五月の状況と、あれから五ヵ月、半年近くたった今日では、円高の与える影響は半年前とは比較にならぬぐらい大きくなってきているということも事実なんです。したがって、五月三十日時点における判断と、あれから半年たった状況ではかなり考慮すべき点があろうと思うわけです。  その点で、今の産地組合の実態を見ると、これから残存者が新しく相当な負担をする、これはなかなか難しいと思うし、また秩序あるいろいろな取り組みをするために産地の組合がしっかりしていないといけない。ところが、後の残存者負担が余り多いなら組合におるのもどうかな、こういう心配をする人、脱落していかれる人もいろいろ出てくると私は思うのです。そういう意味で、残存者負担はできるならば従来方式の実質参加者負担を継続すべきであると思いますが、この点についての見解はどうなんでしょうか。
  88. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 釈迦に説法で恐縮でございますが、この設備共同廃棄事業は、いわば工業組合がそのメンバーのための共同利益になる事業として実施をいたします事業に対しまして、国なり県なりがその趣旨をまさによしといたしまして全体の資金の九〇%を無利子で融資するというような仕組みを基本にいたしております。残りの一〇%の費用を業界側で負担する際にどういう考え方をとるべきかという点がただいま御質問の点でございます。  今申し上げました事業の性格からいいまして、やはり組合員の一部が転廃業をしてまいりますと、残った方の事業機会というものがより豊かになる、あるいはチャンスがふえるというような観点から組合事業と位置づけられているわけでございますので、改めてこの事業の性格をきちんと洗いがえをいたしまして議論をいたしてみますと、費用の一部を残存者に負担をしていただくというのは組合原理としてどうしても出てくるというような性格でございます。また、実態面から申しましても、費用の一部をみんなが持っているということが、事業の厳正さを厳格にウオッチしていく一つの動機になるのではなかろうかというぐあいに思うわけでございます。  ただ、御指摘のとおり、需給のアンバランス、さらには円高というような状況下で非常に業界が疲弊していることも事実でございますので、この負担分をいきなり耳をそろえて準備するようにというのもなかなか現実的ではないわけでございますので、私どもはやはりその負担を何らかの形で将来に繰り延べるというような工夫をいろいろとしていくべきではなかろうかというぐあいに考えております。  具体的な繰り延べの方法等につきましては関係業界との意見調整も必要でございますが、そういう方法によりまして自主的に、今直ちに大きな負担がかからないような工夫を凝らしていくことはやはり必要だろうというぐあいに思っておりまして、鋭意検討いたしているところでございます。
  89. 辻一彦

    ○辻(一)委員 最後に一言だけ要望しておきます。時間があれば登録制の問題とか融資問題に触れたかったのですが、時間が来ましたので、登録制はひとつ原則的には崩さないように努力していただきたいのと、今の残存者負担は軽減策をぜひとも講じていただきたい、このことを要望して終わります。
  90. 佐藤信二

    佐藤委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十六分休憩      ────◇―────     午後三時二分開議
  91. 佐藤信二

    佐藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。二見伸明君。
  92. 二見伸明

    ○二見委員 田村通産大臣近藤経企長官所信表明に対する質疑を行いたいと思います。  最初に、貿易摩擦の解消と九月十九日のいわゆる総合経済対策関連して二、三お尋ねをしたいと思いますが、これは経企庁長官にお尋ねしますが、いわゆるG5以降一年経過いたしましたけれども政府は、黒字幅が縮小しないのはJカーブ効果があるからだというふうにずっと言われてまいりました。私もJカーブ効果があることは認めるわけであります。しかし、もう一年を過ぎた。そろそろJカーブ効果が薄らいできて、黒字幅が縮小してもいい時期に来ているのではないかと思います。経企庁としては、大体いつごろ黒字幅の縮小が明らかな形であらわれてくるというふうな見通しを立てておられるのか、まずお尋ねをしたいと思います。
  93. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 先生指摘のとおり、G5からもう一年以上過ぎたわけでございますが、現実に数量ベースで見ますと、最近は二、三%でございますけれども輸出は減っております。そして輸入の方は、もうここ四、五月ぐらいは数量ベースで二割前後ふえているわけでございますが、問題は、この円高輸入価格が非常に減っておりますのと、それから御案内のように石油価格も減っておりますので、価格で言いますと二割前後ずっと減っております。逆に輸出の方は、この円高分をドル表示価格で何とかもとへ戻したい、こういうことでございますので、依然としてドルベースは輸出がふえて、輸入は、数量でふえておりますけれども、価格が石油価格と一緒になって両方の効果が相乗しておりますので、御指摘のようにドルの収支がなかなか減らないで、むしろ増大しておるのが現状でございます。  いつごろになると本格的にこのドル収支が改善されるかというと、これはなかなか難しい御質問でございますが、輸出が数量で減で、輸入がふえておりますので、何とか早い機会にこのドルベースの輸出入の収支の改善がなされることを期待しているというのが現状でございます。
  94. 二見伸明

    ○二見委員 はっきり言えばわからないということだろうと思うのですけれども、それはそれといたしまして、九月十九日の総合経済対策で三兆六千何がしかの対策を講じたわけですね。これの裏づけとなってくる補正予算はこれから組まれるのだと思うのだけれども、実は私は、ことしの景気、四%を達成することができるかどうかということについては非常に疑問視をいたしております。  先日の予算委員会でもこの点についての議論がございましたけれども、例えば昭和六十一年四月から六月期の実質GNPは、前期比で〇・九%増です。年率で言うと三・六%です。これは前年同期比ですと二・二%で、第一次石油危機後の昭和五十年一―三月期の一・二%以来の低い伸びであります。そうすると、要するに四─六月期で既に年率にして三・六%、当初の政府の見通しを下回った実績しか出てこない。では、その後経済が足取りが軽くなったかというと決して足取りは軽くなってなくて、むしろ厳しい局面に達している。だから総合経済対策を打ち立て、さらに補正を組もうということになるのだと思うのですけれども、しかしそれでも果たして残された七─九、それから十─十二、一―三の各四半期で四%の達成ができるのだろうか。もしできるとするならば、前期比でもいいし前年同期比でもいいけれども、平均どれくらいの率ならば四%の達成ができるのか、まずそこら辺をお尋ねしたいと思います。
  95. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 御指摘ございますように四─六月期の四半期のGNPの速報値が出ておりますけれども、これは前期すなわち一―三月期比〇・九%のアップでございますから、年率に伸ばしますと〇・九掛ける四で三・六になるわけでございますが、実際の六十年と六十一年度のGNPの伸び率は、〇・九ずつ伸びていったとしてそれの平均と六十年の平均との割合、こういうことで計算いたしますと大体二・七%ということでございます。仮に四─六月期の成長率が続くとして二・七%でございまして、一・三%足りないということになるわけでございます。しからば、実際四%を達成するには七─九、十─十二、一―三月は対前期比でどのくらいの伸び率が必要かというのは、機械的に計算いたしますと一・七%になるわけでございます。  問題はこの七─九月期、十─十二月期、一―三月期とどういうようなGNP成長経路をたどるかということについてはまだデータが出ておりませんが、ただ最近のデータをいろいろ統計をとってみますと、依然として消費の方は好調でございますし、それから住宅投資は年百三十五、六万戸ということで、これもかつてない高い水準にございます。投資の方が非製造業製造業で二面性がある、こういうことでございますので、なかなか今の段階でははっきり言えない状況でございますが、いずれにしてもその四─六月期を伸ばせば二・七で一・三%ダウンでありますから、一%プラスアルファぐらいの内需を追加的に経済に投入すれば、ある程度成長率のダウン分のリカバーができるのではないか、こういうことで政府がいろいろ考えましたのが、御指摘のございました総合経済対策の三兆六千三百六十億円の新たな内需追加政策でございます。したがいまして、これは六十年度名目GNP対比一・一%強でございますから、これが完全に施行されて、しかもそれがいわゆる乗数効果を持ってくれば、我々の計算では一・五%GNPを押し上げる、こうなっておりますので、問題は来年三月三十一日までにどのくらいこれが消化できるか、こういうことでございます。  その中核は一兆四千億円の公共事業でございますので、これは災害復旧と一般公共事業と分けてございますけれども、何としても年度内にできるだけの契約そして着工そして消化を期すように、建設省その他公共事業関連役所ともいろいろ話を進めておりまして、できるだけ年度内消化を進めるように関係者との話し合いを進めてまいりたい、こう思っておるわけでございます。通産大臣もいらっしゃいますけれども、いわゆる電力会社の設備投資、今年度千百億上積みで来年度二千億、その前倒しをして契約をお願いする、こういうことも現実化いたしますと、これも景気に対してプラスの刺激効果になりますので、国の施策それから民間の誘発投資、そして円高メリットが具体的にあらわれてまいりますと、私ども半年から三ヵ月と考えておりますので、そうした円高メリットによるところの消費の増大、こうして政府の政策と投資と住宅と消費、これが四位一体となって今後推進することができれば相当な程度景気の、成長率回復が望まれる、こういうふうに私ども考えておるわけでございます。
  96. 二見伸明

    ○二見委員 今回の総合経済対策をとる前に我々野党は、景気が減速しないうちに早目に補正を組むべきだという主張をずっとし続けてきたわけであります。しかし現実的には、具体的な金目の問題になると、まだ補正予算はできてない。大蔵省は印刷も含めて今月の末までには補正予算国会に提出できると非公式には言っておりますけれども、それが国会にかかって審議をすれば十一月になってしまう。そうすると、公共事業にしても、南の方はいいけれども、東北だとか北海道だとか寒冷地帯では、お金がついたって、雪が降ってきてしまって寒くて凍ってしまってやりようがない、この議論もこの間の予算委員会であったはずですね。あくまでもこれが全部消化できればこうなりますという、それ以上言いようがないのだろうと思うけれども、私はこの効果がかなりおくれて出てくるのじゃないか。ですから、六十一年度という限られた間で見れば、四%というのはかなり至難ではないかなというふうに今でも思っております。経企庁長官は、いやこれが全部完全消化できればといろいろな仮定を置いて、そうすればこうなるでしょうとおっしゃるのだけれども、現実の問題としては相当苦しいのではないですか。
  97. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 国の予算一兆四千億は、御指摘のとおり補正予算を組んで国会で御承認をいただかなければできないわけでございますが、県単事業の八千億は大体九月県会でそれぞれの都道府県で予算を組んで成立しているのがほとんどでございますので、まずそうした県単事業をさしあたって、殊に積雪寒冷地帯においては早急に進めていただく、こういうことでございますし、国の一兆四千億は当然でございますが地方の負担もかかわるわけでございますので、これも早目に県会を開いていただいて、その分の地方負担についても態勢をとっていただきたいということを自治省を通じて都道府県にお願いしているような状況でございます。  電力会社の設備投資については、もう通産大臣にお願いして会社の方にもよくお願いしているわけでございます。それから住宅投資、これは七千億上積みでございますが、これも住宅金融公庫によくお願いをしてできるだけ応募者を募って消化してもらいたい、こういうことでございます。こういった住宅なんかは相手のあることでございますから、国の計画どおりにすぐにいかない面もありますけれども、こうしたいろいろな政策を積み上げてまいりますと、それが一つの勢いになってまいりますし、景気というものは国もやりますが、しかし民間の投資活動がそれにどれだけ増幅してくるかということでございますので、そういう意味で三兆六千億というのはかつてない大幅な内需拡大政策でございますし、これに対して、ともかく今月中に補正予算を内閣として組んで、来月早々にも御審議いただく、こういう不退転の決意を示して民間の企業の皆さんにもお話をすれば、国のやることと民間のやることが相まっていけば、先ほど申し上げましたようにある程度成長率回復は期待できる、私はかように考えておる次第でございます。
  98. 二見伸明

    ○二見委員 この政策によって成長率が若干持ち直すということについては私も異論はないのです。ただ、九月の県会で県の単独事業を決めたとおっしゃった。これはたしか八千四百億か何かですね。しかし、これは考えてみれば四%の達成が不可能だから県が単独事業を決めたのじゃなくて、もともと県でやるつもりだったことでしょう。そうじゃないのですか。もちろん四%と連動したものはあるかもしれないけれども、県としてどうしてもやりたい、国の成長率目標四%に関係なく県の方だってやりたいものはやっているわけなんです。ですから、それがあたかもこれから景気を持ち直すための大きなウエートを占めるというのはおかしいのじゃないかな。これは新しいものじゃないと思うのです。
  99. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 これは実は国民所得の見通しをつくる段階で、また予測をする段階でカウントしない分が実は八千億ということでございますので、これを新たに追加的な内需拡大というふうにお考えいただきたい。毎年九月、県会で補正はしますけれども、常にそれはプラスで乗っかってくる数字でございますので、GNPを引き上げる要因として私どもはカウントしているわけでございます。
  100. 二見伸明

    ○二見委員 私はこの総合経済対策成長率との問題で今議論しましたけれども、主眼はそこにあるのじゃなくて、むしろ貿易摩擦ということに関連をして一点私はお尋ねをしたいのですけれども、この総合対策によって黒字幅の減少は当然期待するわけですね。内需を拡大する、そのために製品なり原材料を輸入するということで黒字幅の縮少は期待されるわけですね。だけれども、どのくらいを期待されておりますか、三十億ドルとか四十億ドル、いろいろな説があるのだけれども
  101. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 最初申し上げましたように、まさに円高現象によって物量的には輸入は大幅に二割、三割ふえておりますし、輸出は低下しておりますので、物量的には貿易収支の改善はなされておるわけでございますが、これが石油価格の低落ということも考慮いたしますと、なかなかドルベースでは黒字幅の減少にならないというのが残念ながら現状でございます。  特にまたアメリカとの関係で申しますと、御案内のように日本のものは確かに高くなりましたけれども、韓国とか台湾とか香港といういわゆるNICS、中進国がこれは対ドル相場がほとんど変わりませんので、日本が減った分だけはむしろ韓国製品、台湾製品が入ってくる、こういうことで、なかなかアメリカの国際収支の改善に結果としてあらわれてこない、こういう問題がございますので、いつごろになると日米の収支が改善するかということについてはなかなか今お答えしにくい問題もございますが、しかしこの日本内需拡大政策が進むことによって漸次改善するものと私ども考えております。
  102. 二見伸明

    ○二見委員 通産大臣、ちょっと一点お尋ねしますけれども日本は製品輸入が少ないという批判が非常に強いですね。それは確かにそのとおりだけれども、資源がないという日本立場からすれば、製品輸入が少ないという批判は、これは批判されてもやむを得ない日本経済構造の事情があるわけです。ただ、アメリカ日本は製品輸入が少ないと言うことについては、私は個人的にアメリカに対しては文句があるんだけれども、例えば一九八三年の米国の主要市場への製品輸出を見ると、カナダに対しては三百八億二百万ドルでアメリカの製品輸出の第一位です。カナダが一番買っている。二番目に買っているのは日本だ。百二億一千九百万ドル。三番目がイギリス、八十四億千五百万ドル。四番目がメキシコ、六十一億八千二百万ドル。市場が自由だというふうにモデルにされている西ドイツは我が国の半分近くの五十九億三千九百万ドル。金額ベースで見ればアメリカにとっては日本は非常にお得意さんであります。日本アメリカの製品を輸入する、アメリカにとっては日本はカナダに次ぐ製品輸出の大変なお得意さんであります。お得意さんであるからこれ以上製品輸入をしなくてもいいなんということを私は申し上げているわけではない。だから、アメリカから一方的にそう言われることについては、そうしたデータを挙げてアメリカに対して反論したいけれども、しかしそれでもやはり日本としても製品輸入についてはこれからもいろいろな面で努力しなければならないだろうというふうに思います。  それで、こういう聞き方は大変ぎらぎらした言い方なのでお答えにくいかもしれませんけれども、例えば乗用車の輸出昭和六十年で日本は二百五十億ドル、輸入は五・四億ドル、鉄鋼輸出は百三十六億ドルで輸入が十五億ドル、繊維製品も輸出が六十三億ドルで輸入が三十八億ドルと、確かに日本輸出は製品輸出が圧倒的です。第一次産品の輸出なんてたしか〇・四%くらいしかないはずだ、四%くらいか。それで、そのように製品輸出でもって日本の国はもっているんだけれども、今度は製品を向こうから輸入するということになる。今までよりも製品輸入を大幅にふやすということになると、日本輸出している製品の部分と競合する分野もかなり出てくるわけですね。日本としてはこれから製品輸入というのはどの分野に、これは産業構造の調整とも深い関係が出てくるんだと思いますけれども、どの方向への製品輸入を誘導していった方がいいというふうにお考えになっているのか。具体的にこの分野、この分野、この分野と指摘できれば一番いいんだけれども、そうもなかなかいきにくい事情もあるでしょうが、どういうような分野での製品輸入の拡大をこれから図ろうとされていくのか、基本的なお考えを承りたいと思います。
  103. 畠山襄

    ○畠山政府委員 二見委員指摘のように、製品輸入の比率がアメリカに比べてまだ若干低いということはございますが、おかげさまで最近非常に伸びてまいりまして、去年の平均は三割くらいだったのが、ことしは今までのところ四割五分くらい、四五%くらいになっておるという状況でございます。  そこで、お尋ねの将来どういう産業分野というか、どういう製品輸入分野の輸入を推進していくのかということでございますが、製品輸入は産業構造がどういうふうになるかということと深くかかわっておりますので、結局、産業構造がどういうふうになっていくかということでございますが、基本的には我が国の産業構造を決めていくのは市場メカニズムということでございますので、市場メカニズムに従って産業構造が決まっていく、そしてそういうふうにして決められた産業構造に従って製品輸入が行われていくということでありまして、どの製品輸入を特別に促進し、それから別な分野の製品輸入を特別に抑制するとか、そういうふうな考えを持ってはおりません。したがって、製品輸入一般を促進していくということで考えております。  ただ、具体的に統計分類で申し上げると、四類と申しましょうか五類でございますか、五類から九類、工業製品の分野の製品輸入を促進していくというふうなことで、輸銀の金融でございますとか税制でございますとか、機械の税制、機械の特償でございますが、そういったもので推進を図っているところでございます。
  104. 二見伸明

    ○二見委員 確かに製品輸入というのは日本の産業構造と非常に密接に関係があるわけですね。産業構造のお話が出ましたので、産業構造についての考え方をお尋ねしたいと思うのですけれども、産業構造の調整なり転換については、例えば国際協調経済構造への変革という言葉がスローガンとしてある。それから、その産業構造の転換なり調整は国民生活の質の向上を目指すべきであるという理念もある。内需主導型の経済成長を図るとともに輸出輸入の産業構造の抜本的な転換を推進するという言葉もある。ことし行われた選挙のときにも、経済問題に関しては恐らく異口同音に、日本はこれから輸出依存型の経済を脱却して内需を拡大し、輸出に依存しないで済むような経済構造に転換をしなければならないと、恐らく党派を超えて候補者はしゃべったのだろうと思います。私もそういうふうに言いました。言いながら、私は国会報告会その他で言ったのですけれども、このことは逆に言えば、内需を拡大する産業構造に転換しなければならないということは、一つには日本で生産をしていたのでは割高で合わないという産業は、そういう分野は外国に依存するということになりますよ、韓国なりなんなりいわゆるNICSと言われておるところから製品として輸入するということにもなるのですよ、それはその分野についてはその産業が滅びる、衰退する、失業する、倒産するということにもなるのですよ、輸出依存型経済から内需依存型の経済へと口で言うのは簡単だけれども、そういう痛みを生じてくるのが内需拡大ということですよ、こう私は言ってえらく後で反発を受けたのです。冷たいことを言うんじゃないと大変怒られて、そういうことを言うと票が減ると言われたのですけれどもね。しかし、私は産業構造の転換というのは冷静に見ればそういうことだと思います。  ただ、今内需拡大をすればそれでもって貿易黒字が縮小して、何か一切が解決するバラ色のような幻想がある。じゃ内需拡大というのは一体何なんだろうと突き詰めていくと、今具体的に出ているのは住宅あるいは都市の再開発、この分野でしか内需拡大の、なるほどこういうことなのかとわかるのはそれっきりなんです。しかし、これだけでもって輸出依存型経済を脱却できるわけではない。今住宅政策に焦点を置かれているのは、極端な言い方をすれば、終戦直後からの日本の住宅政策が貧しかったから今住宅政策が目玉になっているんで、昭和三十年代に住宅政策がきちんと碓立していれば、今は住宅問題についての厳しい要求はないから内需拡大の住宅政策は目玉にないんだ。たまたまやってなかったから今目玉になっているだけの話なんです。そういうことになると、内需拡大内需拡大と言ってこれがにしきの御旗になってしまって、すべてが解決するような幻想を一部の国民は抱いているのではないか、これは非常に危険なことだなという思いがいたします。内需拡大ということになると、どういう形で内需拡大をしていこうかというそうした議論がこれからあって、それのためのいろいろな政策があってビジョンがあってということが必要なんだと思うのですけれども、その点については両大臣に、細かい議論ではなくて、一つの方向づけとしての議論でお答えをいただきたいと思います。
  105. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 実は、内閣総理大臣の諮問機関でございますが経済審議会というのがございまして、経済企画庁が事務局をやっているわけでございますけれども、この経済審議会の中に経済構造調整特別部会というのを先般設置いたしました。いわゆる前川レポートで国際的に有名になられました前日銀総裁の前川さんにこの特別部会長になっていただきまして、実は九月からこの特別部会でまさに新しい内需拡大に基づく経済成長、そして国際的な調整ができるような産業構造をどういうふうに持っていくかということについて、我が国の最高の権威者の方にお集まりいただきまして、かんかんがくがく議論をしておりまして、その中間報告をことし中に出したい、そしてそれをベースにいたしまして来年の春には最終答申を出したいと考えているわけであります。これはある意味では、そういう新しい内需拡大そして産業構造のいわば理論値を出していただきたい、こういうことを私は申し上げたわけですが、それと並行いたしまして、内閣と党に党の首脳と内閣の関係閣僚が集まりまして経済構造調整推進本部というのができてございます。これは中曽根総理を本部長といたしまして、官房長官経企庁長官に党の政調会長が副本部長ということで、経済審議会の特別部会が出した将来のビジョンというものを具体的に実地に移すためのいわば実動計画をこの推進本部でやろうということでございますので、経済企画庁はその事務方としていろいろ検討を進めているのが実情でございます。したがって、どの産業にどう持っていくか、どうするかということは、この特別部会の答申を待ってお話をすべきことだと思うわけであります。  ただ、お話がありました住宅は、まさにこれから内需拡大の大きな柱になるといいますか、大きな入れ物になっていく。今の住宅を変えてもう少し大型住宅になれば、テレビも大型化するし電気洗濯機も冷蔵庫も大型化するということで、ひところ三Cと言いましたけれども、ニュー三Cブームみたいなものが今後中長期的に、少なくとも中期的に起こってくるだろうと私は思いますし、それから全体の国土計画も、東京を中心でなしに、地方の道路交通網の整備、都市計画を進めることによってこれも新たな需要を受け取る条件になると思いますので、入れ物づくり、すなわち地方の開発と住宅の建設というものが内需拡大の大きな柱になる、かように考えております。
  106. 田村元

    田村国務大臣 産業の構造改善というのは、今おっしゃったとおり、国際協調的なものであり、また要するに輸出入バランスがとれた姿にしようというわけでありますが、この産業構造改善というのはすぐにできるものではありませんから、あくまでも中長期的なものとしてとらえなければならぬ。ですから、これと今論じておる内需拡大というものともちろん関係はあるのですけれども、ダイレクトに結びつけて幻想を抱かしめるということは僕はやはり間違いだと思うのです。ただ、高目成長を目指して内需を拡大せしめるということによって構造改善によってこうむるであろう痛手、痛みというものを和らげる、あるいは未来産業とも言うべき新分野を開拓することによって雇用あるいはその他の難問題を吸収していくというようなこと、それは当然のことだと思うのです。でありますから、私ども内需拡大というものはもちろん構造改善と無縁とは思っておりません。大いに関係はあると思っておりますけれども、だからといって、今の内需拡大策は、それはそれ、これはこれということであろうと思うのです。  そこで、具体的に内需拡大を申し上げますと、まず第一が可処分所得の増大と自由時間の増大を通じて、要するに消費の拡大と質的な充実を図るということだと思うのです。私が今言うのは、順番は重さで言うのではなくて羅列的にです。  二番目の問題は住宅投資等でございましょう。金融、税制面での対応やあるいは土地の有効利用のための規制の見直し、例えば大都会に農地が要るのかどうかというような問題もありましょうね。あるいは、一種住専の住宅の高さが十メートルで果たしていいのか、十メートルだったら三階はできないではないか、一階は半地下になるではないかというような問題がございますね。これは建設省等が考えることで別に私が考えることではありませんが、あえて物を申せば、そういうような規制の見直し等を通じた住宅投資あるいはニーズの掘り起こしというようなこと。  それから、三番目は何といっても社会資本の整備だと思うのです。民間活力の活用や財政の機動的運営を通じた生活環境施設あるいは情報通信システム、また新たな産業インフラ等、そういういわゆる社会資本の整備を積極的に推進していくということも一つの柱だと思います。  それからまた、税制や金融の活用を通じて民間設備投資というものを誘導しなければなりません。特にこれの安定的な拡大が必要だと思うのです。今民間の資本はある部分にはうんと余っておるのですから、これをどんどんと使っていただく。例えば、午前中に申し上げましたように、電力が投資をするのに当初の三兆七千億であった計画を二千億ふやしてくれて、一千億ずつ二回ふやしてくれて、また六十二年度の契約の発注を二千億繰り上げて前倒しをしてもらう。そうすれば四兆一千億というようなこともございます。というふうに民間設備投資をうんと安定的にやっていただくというようなことで内需拡大をやっていって、高目成長を目指してもらうということではないでしょうか。私は、そういう意味において、今二見委員がおっしゃった産業構造改善というものをいきなり目の前へぶん投げて、内需拡大というものと直結せしめて幻想を抱かしめるということはやはり間違いだ、しかし無縁ではない、このように思います。
  107. 二見伸明

    ○二見委員 私も今田村大臣と同じ考えでございます。それで、内需拡大と産業構造の転換をダイレクトに結びつけるのではなくて、内需拡大はこっちへ置いて、産業構造についてちょっと。  産構審の考え方で、一つは水平分業による輸入拡大を産構審で指摘しておりますね。午前中も水田委員から産業構造転換に伴って雇用の問題についてかなり深刻な議論が展開されたわけでありますけれども、産構審のこれは中間答申だったと思うのだけれども、こういう指摘をしておりますね。中間製品の輸入比率が八〇年の二倍、一〇・四%になると、約二百三十億ドルの輸入拡大効果を生むが、同時に約五十五万人の雇用機会の減少が予測される。五十五万人の雇用機会の減少というのをそのままストレートに失業と言っていいのか、それはそういうふうに理解していいのかどうかちょっとわからないのだけれども、いずれにしても五十五万人の雇用機会の減少が予想される。  それから今度は産業構造の転換のために海外投資というのがありますね。確かに私もヨーロッパやアメリカに行ったときに、日本からの企業の進出、現地企業ですね、これはかなり強い要求を何度も聞いておりますので、これからも海外直接投資というのは、向こうへ現地法人をつくる。例えばフランスではレーザーディスクの工場が、日本のソニーか何かの工場ができて、フランスでは大変喜んでいました。それは雇用機会がふえる、そればかりではなくて、日本の高度な技術のノーハウまで吸収することができるというのでフランスでは大変好評だったし、ロンドンでは日産が進出してくるというので、これで雇用機会の増大につながるというので喜んでいたし、カリフォルニアに行ったときは、日本通産省が命令すれば日本の優良な半導体企業はみんなカリフォルニアへ来るんだろう、そうしてくれるならば合算課税はやめてもいい、ユニタリータックスはやめてもいいなんという議論が去年カリフォルニアへ行ったときにありましたけれども、そのぐらい海外では日本の直接投資を望んでおります。  しかし、直接投資ということは、逆に言えばそれだけ日本の雇用機会も減るということですね。例えばトヨタが日本の工場でトヨタをつくって向こうへ送るんじゃなくて、トヨタがカリフォルニアへ工場をつくって向こうで生産して向こうで売るわけですから、場合によれば向こうでつくったものが日本へ入ってくるわけだから。年率一二%の海外直接投資の伸びが続いた場合に二〇〇〇年度の黒字削減効果は約五百三十億ドル、これに伴い国内では五十六万人の雇用機会の減少を招くと産構審の中間答申では述べており、こういう予想を立てている。ですから、水平分業をすることによって当然五、六十万人の雇用機会が失われ、直接投資をすることによってやはり五、六十万人の雇用機会の減少がある。  それでは、この雇用機会の減少をどこで埋めるかというと、産構審では、マイクロエレクトロニクス、新素材、バイオなどの技術革新が進むとその関連市場規模は年率六・九%増で拡大し、二〇〇〇年には約二百三十兆円、これは百十七万人の雇用機会を生む、これでツーペイになる、こういうふうに言っているわけです。実際こうなるのかどうかわかりませんけれども、いずれにしても瞬間風速的にはまず失業という問題は出てまいります、この数字どおりいったとしてもですよ。水平分業やあるいは海外投資でもって百十万人の雇用機会が失われる、そのかわりマイクロエレクトロニクス、新素材の方でもって百十万人できるからトータルで見ればチャラになる、こういう数字なんだろうけれども、しかしその数字を前提にしても瞬間風速的には失業は出る。ここで仕事を失った者が簡単に新しい分野へ行けるか。それもかなり難しいんだと思う。単純な作業から単純な作業へ行くのなら別です。そうでない、より高度な職場へ進出するということになると、これは非常にやはり難しい問題が出てくるので、瞬間風速的には雇用問題というのが大きな問題になる。これは午前中議論があったとおりです。  しかしもう一つ、果たしてマイクロエレクトロニクスとか新素材とかというのがそれだけ、日本経済を下から支えるほどの力があるんだろうかという、この検討もしてみる必要があるのではないだろうか。例えば自動車産業とコンピューターと比べてみると、その関連する規模の違いというのはこんなです。まず第三次産業という話もある。確かに第三次産業にこれから雇用機会はふえていくだろうけれども、しかし三次産業というのが日本経済そのものを押し上げていくものなんだろうかというと、それもやはり私は疑問に思うわけです。それで、私はマイクロエレクトロニクスや新素材は否定するのじゃなくてどんどん伸ばさなければいけないのだけれども、それが日本経済の土台をしょっていくほどのものなのかどうかですね、そこら辺についてはどういうような考え方をされておるのか、その点について承りたいと思います。
  108. 杉山弘

    ○杉山政府委員 ただいま二見委員から産構審の中間報告について詳細な御紹介がございました。そのとおりだと考えております。  それで問題は、やはり産業構造転換を行います場合には委員指摘のとおり痛みを伴いまして、その最大の痛みと申しますのは雇用問題であろうかと思います。雇用問題の場合、産構審では、先ほど申されましたような海外投資による分がどのくらいか、それから輸入の拡大による部分がどのくらいか、これはそれだけしか出ない、ないしはこの程度でおさまるだろうということではなくて、一つの具体的なイメージといたしましてラフな試算をやってみたわけでございます。  それと同時に、産構審のレポートをつくります場合には、先ほど大臣も申し上げましたように、全体として高目成長を遂げることが産業の転換能力を増すゆえんでもあるということで、四%台のGNPの実質成長というのが前提になる。そういう前提を置いた場合に、二〇〇〇年という時点を考えましたときに、マクロの労働バランスがどうなるかということをやりますと、大体マクロとしては最近のような労働需給のバランスとほぼ同じぐらいでおさまるのじゃなかろうかという試算もやっておるわけでございます。  ただ、これで事足れりというわけではございませんで、御指摘のように時間的なラグの話もございましょうし、それから職種間でもいろいろ問題がございまして、これも御案内のとおりでございますが、産構審のレポートではむしろ二〇〇〇年というような時点を考えますと、需要が超過をいたしますのは技術者のクラスの職種でございますし、むしろ供給が超過をいたしますのはいわば現場の労働者中心とした技能者クラス、その間では技術者クラスが二百万人ぐらい需要超過になるのに対して、技能者クラスは同じく二百万人ぐらいの供給超過になるのじゃないかという結論も出ております。これはかなり大きな数でございますので、こういった職種間のバランスをどうとっていくかということも大きな問題でございますし、それからやはり輸入の拡大なり海外投資などで影響を受ける地域に必ずしも新しいサービス業なり新しい製造業の分野の企業が立地するということはございませんので、地域的にもいろいろ問題が出てきます。むしろこういったところをどう解決していくかということがこれからの産業構造問題をうまく処理できるかどうかということのポイントであろうということで、私ども来年度からまたいろいろとそういう点につきまして新しい対策も用意をいたしたいと考えておりますが、いずれにいたしましても産業構造転換の最大の問題は雇用問題、これをどう解決していくかということにあるということは十分認識いたしております。
  109. 二見伸明

    ○二見委員 私もこの産業構造の転換というか調整の問題はこれから本気になって考えなければならぬと思いますし、私たちも十二分に研究しよく勉強したいと思っております。ただ、この産業構造の転換をスムーズに余り大きな痛みがなくできるためには、やはり高目成長、かなり高目成長でなければ、成長が高いということは新しい仕事があるということだし移れるわけですからね、かなり高目成長をこれからも維持する努力というのが政策的に行われなければいけないというふうに思っております。来年度の六十二年度の経済がどういう状態になるのか、これからいろいろと経企庁の方でお調べになった上で暮れには来年度の経済見通しも出てくるのでしょうけれども、私は来年度も経済高目成長が維持できるような積極的な施策をぜひともお願いをしたいと思っております。  それで、次にちょっと細かい話になりますけれども通産省、これは通産省が十五日に発表した八月の鉱工業生産指数によりますと、一一九・〇ですね。速報段階を〇・三%下回って前月比二・七%の大幅な落ち込みとなった。通産省は、ことしの同指数が昨年を上回る、昨年は一二一・九ですけれども、これを上回るには九―十二月の四ヵ月間で毎月平均前月比一・一%程度の高い伸びが必要だという試算をしております。そうしないと年間で前年割れのおそれもある。ところが、前月比一・一%程度の高い伸びというけれども、五十八年から五十九年にかけてのいわゆる景気回復期の伸びというのが〇・七くらいですね。ですから、一・一というのは相当なテンポだということになります。これは正直言って、今度の総合経済対策が着実に行われたとしても前月比一・一%の伸びというのは無理だ、こう思います。となれば、必然的にことしの鉱工業生産は前年を割るな、こう思うわけですけれども通産省はそこら辺をどう見ておりますか。
  110. 杉山弘

    ○杉山政府委員 確かに、委員指摘のとおり、この十五日に発表されました八月の鉱工業生産動向の確報の説明の際に、通産省は今お話しになったような数字の御披露をいたしております。これは、八月までの実績を踏まえて、六十一年が前年水準を維持するために九―十二月一・一ということでございます。  御案内のとおり、鉱工業生産指数の場合には、八月の実績を出します段階で次の二ヵ月について予測指数というのを発表いたしておりますが、この予測指数をベースにいたしますと、予測指数では九月がかなり生産が伸びるという前提に立っておるものでございますから、十一月から十二月までの二ヵ月間平均〇・七の伸びが必要で、そうすれば前年水準をようやく維持できる、こういうことでございます。同じようなことを年度ということでやってみますと、十一月以降月平均が〇・五余りということで年度の平均が前年度並みということになるわけでございますが、御案内のように、月々の動きを見ておりますと、このところ、一―三月は前年比一・三のプラスでございましたが、第二・四半期が〇・六、その後七月が一・五、八月が三・〇というふうにいずれもマイナスでございます。私どもとしても、総合経済対策効果が早く出てくることを期待をいたしているわけでございますが、少なくとも年内について見る限りは前年水準維持というのはかなり苦しい、こういうことで十月十五日に発表させていただいたという状況にあると承知いたしております。
  111. 二見伸明

    ○二見委員 私も鉱工業生産のこの資料をいただいてグラフを見ましたけれども、伸びてきたものが八月に軒並み全部下がりましたね。上がっているのはなかったのじゃないかと思う。ということは、かなり厳しい状況になってきているな、景況感に二面性があるという経企庁長官お話でございましたけれども、確かに製造部門では落み込みがかなり出てきているなという印象をこのデータを見ながら持ったわけでございまして、やはりこれも景気にとっては決して好ましい現象ではないというふうに思います。そうした点からも、この総合経済対策はもっと早く出されるべきだったなと思っております。それについてはもう議論が終わっておりますのでそれ以上申し上げませんけれども、そういう感じがいたします。  それで、鉱工業生産が落ちた。例えば私は特にその中で深刻に受けとめたのは鉄鋼です。新日鉄など鉄鋼大手五社は雇用調整助成金制度に基づく一時帰休を実施するという方針が明らかになった。新日鉄では既に釜石だとかその他の高炉の火を消そうかということにまでなっているようであります。鉄鋼業界円高影響によって今年度の粗鋼生産量は九千六百万トン程度ということで、四十七年度以降最低の水準に落ち込むということが確実視されているわけでございますし、このため各社の経営は、六十年度第四・四半期から実質的な赤字経営になり、六十一年度上半期の五社の実質赤字額は千八百億円、年度を通しての実質赤字額は四千億円以上になる、こう予測されております。  私は、鉄鋼という日本のまさに基幹産業の部分でもって、いかに構造不況で予想し得る状況にあるとはいいながら、ここまで追い詰められてきていることについては非常に憂慮をいたしております。しかも、基幹産業であるばかりではなく、その地域にとってはまさにその地域の心臓となる経済でしょう。ですから、鉄鋼業をこのまま放置しておいていいわけはない。円高による中小企業対策の中に、鉄鋼関係は鉄くずであるとか圧延であるとかいうようなものはカバーされているのだけれども、新日鉄とかあるいは住金とかいわゆる大手五社が現在直面している問題に対して一体どうやっていくのだろう。それは各社の企業努力、合理化、そういうことも必要ではあるけれども、しかしそれももう、それに任しておいていい段階ではないと思う。ということになると、通産省としても何らかの考え方なり、あるいは、これがまた何か助成することによってアメリカから日本は新日鉄や住金に輸出補助金を出している、こう批判されるような形での助成というのはやりにくいだろうと思うのです。できないのだと思う。そういうことになれば、鉄鋼業界が息を吹き返せるような、それこそ産業構造の転換ではなくて内需拡大の方で考えなければこれはえらいことになるのではないかと思うのですけれども、その点はどういうお考えがございましょうか。  例えばこの間の衆議院の代表質問のときに民社党の塚本委員長が、レジャー時代だから豪華客船をつくれという質問をされましたね。私は、あれも一つのアイデアだと思う。ただ、あれは管理や何かでもってペイしないからできないというような政府側の御答弁だったけれども、ペイするかしないかは別として、それも一つのアイデアだと思う。と同時に、たしか通産省だと思うのだけれども、マリンコミュニティー、海の中に人工島をつくろうとか、そういうアイデアもありますよね。だめになるからというので萎縮するのではなくて、むしろ新しいものを日本の中につくっていこう。そうすればもちろん鉄も使うだろうし、造船のノーハウも使うだろうし、いろいろなところのノーハウも使ってくる。そういうような発想があってもいいのではないかと思うのですが、その点についてはいかがでしょう。
  112. 鈴木直道

    ○鈴木政府委員 先生指摘のとおり、現在我が国の鉄鋼業が直面している局面は大変厳しいものがございます。御指摘のございましたような数字、例えば本年度予想される収益状況等につきましてもおっしゃったとおりだと存じております。  鉄鋼業が直面している難しい局面の原因を分析してみますと、一つお話しのように円高そのもの、すなわち鉄鋼の中で三割は輸出でございますが、それが直面している問題と、同時に円高に伴う内需の減退すなわち円高デフレによる内需減、そういう両面があるわけでございますけれども、おっしゃるように長期的に考えた場合に、ではその鉄鋼業の現在輸出しております三千万トン、これに振りかわるべき他の供給源があるかどうか。もちろん、やや長い目で見ますと日本周辺の発展途上国自身が供給源として登場してまいりますけれども、それまではやはり日本が有力なる供給者として責任を果たしていかなくてはならない。ただ、お話しのように円高に伴う国際競争力の問題がどうしてもございます。そのための合理化努力というものはやはりどうしてもやらなくてはいけない。  一方おっしゃった内需の面につきましては、先ほどから御議論をいただいておりますように、内需そのものの振興によって国内の鋼材需要の拡大を図る、さらにはおっしゃったように地方にいろいろな新しいプロジェクトを設定していく等々あると思いますが、ベースは供給サイド、すなわち企業自身の問題と、その周辺環境、いわゆる需要をどうするか、両方あると思いますが、供給サイドの方につきましては、やはり今回の円高を前提とした自助努力というものがどうしても必要だと存じます。我々は、鉄鋼業自身が素晴らしい技術、素晴らしい設備、それから非常に優秀なる人材を抱えている、それである限りは自助努力というものを応援することによって難局は切り抜けられるのではないかと思っておりますけれども、やはり局面は非常に厳しゅうございますので、業界とも十分意見の交換をしながら、応援を必要とする場合には我々がそれはやっていかなくてはいけない、かように考えております。  輸出の方につきましては、やはり輸出し得るいい鋼材をつくっていく。性能、品質、技術、その辺の面で十分なものを開発していく。御存じのとおり、例えば自動車用の薄板等々は日本でなくてはできないような優秀なものがございます。そういうものは今後とも技術面で維持をしていくというようなことは必要だと思っております。いろいろまた御意見をお伺いしながらやっていきたいと思っております。
  113. 二見伸明

    ○二見委員 先日大手鉄鋼会社の関係者に会って、今度三兆六千億円の総合経済対策をやるから鉄鋼も幾らか潤うんでしょうと言ったら、けらけら笑われまして、これで鉄鋼の方の需要は数十万トンですよ、月産供給能力一千万トンで数十万トンというと一日か二日分の生産量で、総合経済対策鉄鋼業に及ぼす影響というものはスズメの涙みたいなものです、こう申しておりました。そのことを一言申し上げておきたいと思います。  鉄鋼業がそういう厳しい局面にあって、一方我が国では石炭が同じようにえらいことになっている。国内炭鉄鋼業界に引き取ってもらおうという話し合いが今進められておりますね。それは我が党の国対委員長の権藤恒夫、あの選挙区が大牟田でございまして、私がこれからこんなことを伺うと、やっこさんは頭にきて怒ってくるんだと思うのだけれども、彼は、我が大牟田では最低年間四百万トンの出炭を維持しなければつぶれてしまう、こう声を大にして叫んでおりまして、だからその立場からいけば鉄鋼石炭を買えということになるんだと思うのです。ただ私は、鉄鋼業界が四千億円もの赤字、収益減が予想されるような現状において、果たして国内炭を引き取るだけの能力があるんだろうか。正直、素人の目で見るとないと私は思う。ないのを承知の上で国内炭鉄鋼に引き取らせるのであれば、それをカバーするだけの鉄鋼業界への対策を講じなければ鉄鋼業界はたまったものじゃないと思う。露骨な言葉で言えば見返りです。その点については、通産大臣は両方抱えておりまして、これが石炭がほかの省庁であれば張り切ったことを言えるのでしょうけれども、両方抱えておられるからなかなか歯切れのいい御答弁は難しいのではないかと思いますし、我が党にも石炭を抱えておる代議士がおりますので、恐らくあしたあたりどなり込んでくるんじゃないかと思っておりますけれども、その点はどうお考えでしょうか。
  114. 田村元

    田村国務大臣 全くお説のとおりでありまして、私の今の心境を一言で申せば、ほとほと困り果てておるというのが率直な気持ちでございます。ただ、石炭の置かれておる現状というものはいま一つ深刻なものがあります。今石炭をドラスチックにどんどんと閉山をさしたときにどうなるであろう、社会不安というものは大変なことになる。でありますから、何とか石炭の──もちろん従来は掘ってそして需要を求めた。ところが現在ではそういう甘えたことはできなくなっておるというような状態。でありますから、当然なだらかな縮減ということはそれはあり得るでしょう。あり得るでしょうけれども、だからといって急激にやったらどうなるか。  そこで、ある程度国内炭というものを引き取ってもらわなければならぬ。そこで今八次審をお願いしておるわけです。特に七人委員会向坂先生を座長とする七人委員会石炭鉄鋼と中立で今お話し合いを願っております。何らかの結論が出るのじゃないかと思いますが、もちろん鉄鋼についてそれなりの配慮が示されることも私はあり得ると思います。審議会、もういよいよ大詰めでございますが、今私が大詰めの審議会に対して精神的に圧力をかけるようなことは言うわけにまいりません。まいりませんが、しかしもし仮に難航する、端的に言って素っ裸の者が紙入れに金が入ってない者に物を買えと言うわけですから、もし仮にどうしてもまとまらないというようなことでも起こり得れば私自身乗り出して、またお話し合いの中に加えていただくということもあり得るかなと思ったりもいたしておりますが、当面とにかく、いよいよ大詰めでございますから、審議会の御審議の模様を横目でにらみたいというふうに思っております。
  115. 二見伸明

    ○二見委員 その次に円高差益還元についてお尋ねをしたいと思いますけれども経企庁長官は午前中の質疑の中で、西ドイツの卸売物価の下落と日本の下落の幅の違い、これが消費者物価にあらわれてこないのは、例えば西ドイツの方は石油製品が多いということとそれから統計が違っているからだ、統計のデータが日本と西ドイツと違うのだから違いが出てくるのだというお話がありましたですね。しかしそれでも私はちょっと日本の方がひどいと思うのですよ。西ドイツは基準年次に対して卸売物価で昨年八月から一年間で約四%下がった。それに連動して消費者物価は〇・二下がった。一方日本は、卸売物価は一一%も下がった。消費者物価は〇・二だ。それは西ドイツの方が石油製品の輸入が多い、あるいは統計のとり方が日本と西ドイツと違う、といいながら四%と一一%、余りにも違い過ぎる。ということは、本来ならばもっと下がってしかるべき消費者物価が途中で吸収されてしまって、消費者のところには還元されてないんではないか。経企庁の調査だと一世帯五万六千円とかそういうデータはありますけれども、実感として下がったという感じはしませんね。  確かにガソリンは買いに行くと百十五円くらいだから、一時百六十円ぐらいしたんだからそれは安いなと思う。それ以外に安いものがあるか。例えば酒屋さんへ行って、私近所の酒屋さんにたまに行くんだけれども、いつも売っている輸入品のワインは去年もことしもおととしも同じですわ。スペインの何とかというワインは千三百円だ。今も千三百円、去年も千三百円、おととしも千三百円。三年前の輸入がストックしてあるわけないと思うのです。スコッチウィスキーが下がったか。下がっていない。たまにバーゲンでもって下げているのがあるけれども、下がっていない。どこかの新聞で、東京の地婦連が並行輸入することになったらば、英国産の四千円のスコッチが二千六百円で買えることになったという記事が出ていました。これは商取引だからやるのがなかなか難しいんだと私は思うけれども、それにしても円高のメリットというのは具体的な値段の下げでもって出てきていいんじゃないかと思いますけれども、その点はどうですか。
  116. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 午前中私が御説明申し上げましたのは、お話のように日本の場合は卸売物価が一割以上下がっています。西独は四、五%だ。この卸売物価の下落の差がどこからくるかといえば、日本卸売物価の中に輸出それから輸入両方入っているものですから、特に輸入が下がっていますから、これが全体として卸売を下げている。したがって、その卸売の下げ率に対比しての消費者物価の下げ幅が、西独は四、五%で〇・二、三%下がっています。日本は一〇%以上下がっているのに消費者物価がどっこいどっこいだ。差があり過ぎるではないかというお話の説明に、実は卸売が日本の場合統計的に余計下がるように出るのですよ、こう申し上げたわけでございます。  そこで、もっといろいろ下がってしかるべきじゃないか、こういうことでございますが、これは政府が決める価格じゃなしに町の、民間の価格でございますのでなかなか命令的に下げるわけにはいかないので、これはやはり競争輸入を積極的に進めるということ。それから、実は現実にもうデパートなんかでは円高差益還元セールということをやっておりまして、通産大臣も私もデパート幹部と会いまして、ぜひそういう形でやってくれ、むしろドル価格、ドル表示のコーナーをつくって、そしてそのときそのときの円でドルを買ってそれを買うというようなことになると、まさに円高が見事に価格に反映するのでいいんじゃないか、そういった知恵もお話をしたようなこともございますけれども、そんな形で、やはり競争で自主的に差益還元をしていただく必要がある、こういうことであります。ただ、なかなか電力料金のように目に見えたものがなくて、午前中申し上げましたけれども、例えば総理なんかは円高差益還元でもっともっとすしを安くしろ、またそばを安くしろとおっしゃるのだけれども、原価構成を分析してみますと、たかだか二、三%ぐらいになってしまっておりますので、業者もよう下げ切らないというのが実情じゃないか、こういうふうに思いますが、私どもは実際サービスの方で多少エビの大きさを大きくするとか、ともかく何とか円高差益が庶民のものになるように努力をいたしたい、こう言っておるわけであります。  ただ、私ども統計でマクロで考えてみますと、消費者物価も去年とことし比較して一・七%下がっている。そうすると、六十年度の実質の消費支出が百九十四兆円である。一・七を掛けますと三・三兆円下がっている、差益が出ている形になっておりますし、同じように投資につきましても、六十五兆円の投資に対して一・八%下がっているからこれも一・二兆円下がっている。投資そして消費を合算いたしますと、合計四・五兆円ぐらいの円高差益還元に計算はなる。ただ、数%でございますのでなかなか実感としてよくわからぬとおっしゃるのはわかりますけれども、現実には下がっているということも御理解賜りたいのであります。
  117. 二見伸明

    ○二見委員 もう少し肌身に感ずるように下がってきてもいいと思うのですよね。ただ確かに、これは円高とは関係ないのだけれども、去年パリへ行きまして、ネクタイを見た。私が友達の店で買ったネクタイが、そのとき日本で買ったのが三万円だった。全く同じネクタイを売っていて、幾らと聞いたら日本円で八千円だ。あのやろう、こんな高いものをおれに売りつけやがってと思ったのですけれどもね。外国製品が日本に来て向こうの小売価格の三倍も四倍もするということは確かにこれは実感としてある。この前ローマへ行って靴を買った。二万円ぐらいで買ったんだけれども日本へ帰って友達に見せたら、ああこれは十万円しますよと言うんだ。そんな高いものならもう少し買ってくればよかったと思った。  これは円高差益とは関係ないけれども、流通の問題なのかもしれないけれども、また日本人の中にブランド商品は高くした方が売れるという、買いやすいという妙な気持ちがあるのかもしれないけれども、私は、同じ外国製品を向こうで買う小売価格と日本へそれが輸入されてきたときの価格とが余りにもかけ離れ過ぎているというのは、これは一度実態を調べていただきたいと思います。関税だけの問題ではないはずなんです。これは消費者の意向もあるのかもしれないけれども、この点についてはいつも私は不審に思っている点ですのでお調べをいただきたいと思いますが、あわせてお答えいただきたい。
  118. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 実は八月だったですか、輸入商品の輸入価格とそれから末端の店頭価格を調べたわけでございます。今ちょっと私データを持っておりませんけれども、四、五十品目の商品を調べたのでありますけれども、そのほとんどが輸入時点の円表示価格の下がり分以上に末端の店頭価格が下がっておる。例えばゴルフ用品だとか時計だとか、そういったものはむしろ三、四倍下がっておる。時計とかゴルフ用品は国内でも過剰生産の品目でございますから、これに便乗させて、弾みをつけて下がったということもございますので、必ずしも円表示価格の下がり分が末端まで反映してないということじゃない。ただ、お話しのように、一部のブランド商品はやはり高いなるがゆえのブランドでありますから、余り安くしてもメリットがないというようなことで、これは彼らの商取引の採算でそうなっているような面もございますが、いずれにしても円高差益還元をして、国民生活が実質的に向上するように、私ども物価担当庁としても真剣に取り組んでまいらなきゃならないと思っておる次第でございます。
  119. 二見伸明

    ○二見委員 円高差益関連して電力料金の話が午前中出ました。通産大臣は、レートがどうなるかわからぬ、原油価格がどうなるかわからぬから現在白紙であるという御答弁でございました。それで、この点について一点お尋ねしますけれども、これは来年の三月で期限切れになりますね、現行の料金は。そのときにもとへ戻すことはまず考えられませんですね。それが一つ。それから、電力料金制度について、例えば夏場の料金だとか、たくさん使えばそれだけ割高になるといういろいろな料金制度がありますね。そうした料金制度のあり方については見直しをされるのかどうか。この二点についてお尋ねします。
  120. 田村元

    田村国務大臣 六月から三月までの例の一兆一千ですが、これをもとへ戻すようなことがあったら大変なことで、それは毛頭考えておりません。また、そういう事態が来ることは断じて避けなければならないと思います。  それから、今の料金の立て方の問題ですけれども、今まだ私どもこれについてとかく申し上げる段階ではないと思うのです。ぎりぎりの時期に来ておることは、これはもう間違いないですけれども、例えば原油が九月から少し上昇ぎみ、しかもOPECのある種の国は最低十八ドルぐらいで安定させたいというようなことを言っておるというようなことも聞いております。これは仮定の問題ですが、十八ドルで安定させてくれるならば日本でやれば十九ドルになりますから、何のことはない、六月のときと同じことになってしまうというようなこともあり、それから為替レートも今百五十四、五円ぐらいで何となく安定したように見えますけれども、これは、こんなことで安定されたらたまったものじゃない、まだ安定ということは言えないと思います、小康状態のようなこと。でございますから、そういう動向をじっと横にらみをしていましばらく考えたいというのが私ども気持ちでございまして、今料金をどういうふうにするかというところまでの考えはまだ持っておりません。持っておりませんということは、しないとかするとかということより、まだそこまで考える余裕がないという段階でございます。
  121. 二見伸明

    ○二見委員 最後に、大臣ガットについてお触れになりましたので、ガットについて一、二点、出席されての感想を伺いたいのであります。  私は、日本問題を決議に入れなかったことについてはよかったことだというふうに考えております。しかし、決議に入れなかったから日本問題がこれで不問に付されていいというわけじゃなくて、やはり日本としては解決しなければならぬ課題だというふうに思います。  ところが、やはり議論になったのはサービス貿易と農業の問題である。農業の問題では、交渉項目の中に農業問題としてこういうふうになっていますね。「農業貿易に直接・間接に影響を与える直接・間接の補助及びその他の措置のマイナス効果の段階的軽減等」、これを議論するということになっておりますね、交渉としては。この「農業貿易に直接・間接に影響を与える直接・間接の補助」というところ、例えばこれは、ECとオーストラリアの間で争っている農産物の輸出補助金みたいなものが議論の対象になっているのだと思うけれども、これに関しては、日本としては農産物に対して輸出補助金を出しているわけじゃないから、これは日本関係ない。しかし「及びその他の措置のマイナス効果の段階的軽減等」ということになると、日本の農業も、ガットの場でもって日本の農業政策が議論されてくるのではないか。米を輸入すべきであるというアメリカの強い圧力もある、あるいはアメリカ日本の農産品をガットに提訴しているということもある。そうなると、日本の農業、日本の農業政策に大きな影響なり変更をもたらすようなことが、これから四年の間にガットの場でもって議論されるのではないかなという感じを、私はこの交渉項目を見たときに思ったわけでありますけれども出席されていた大臣としては、農業問題については、日本は農業政策についてかなり厳しい見直しをしなければならない、これは避けて通れない道だというような御感想を持って帰ってこられたのかどうか。この細かい議論はどうせ農水でやらなければならないことですが、出席されての御感想はどうだったでしょうか。
  122. 田村元

    田村国務大臣 私は直接この交渉に参画いたしまして──今の二見委員の御質問、農業問題だけに絞ってお答えをしてよろしゅうございますか。  これは今度大きな問題になったのです。それは輸出補助金をめぐる対立でございまして、ECとそれからオーストラリア等農産品輸出国、俗に言うケアンズグループ、これが大変な争いになりました。私どもも中に入って、直接の関係はございませんけれども、そのエキサイトぶりに困惑をしたということはございました。  これは、元来通産省の所管ではありません。農林省の所管ではございますけれども、貿易という窓口でございますから、私どもも全然無縁というわけではありません。けれども、農林省からも代表が来ておりましたから、農林省の代表がいろいろと中に入ったと思います。  交渉の結果の、今お話のあった一番大切な問題なんですが、最終的にはケアンズグループとEC双方の主張を入れた妥協が図られました。結局、農業貿易に直接または間接に影響を与えるすべての補助金などに関する規律を充実することにより、競争環境を改善することを目指して交渉を行うことになった、こういうわけです。そこでちょっと深い意味がございますのは、これら交渉は、農業の特殊性に配慮して交渉を行うこととなる農業委員会が第一義的な責任を有することとなったということでございまして、いわゆるガットの一般の議論と違って、農業の特殊性を十分熟知した玄人たちが農業委員会で議論をする第一義的な責任をとっていく、こういうことになったものでございます。もちろん、日本農業に無縁のものではあり得ない。あり得ませんが、しかしこれは農林省の問題でございますから、私が余りくちばしを入れることはどうかと思いますけれども、農業をめぐる対立が深刻化することによりまして宣言が出せなくなることは回避すべきであると、世界各国の調整がなされるように日本側も求めました。私も直接求めました。ECに会いました。またオーストラリアにも会いました。両方に随分おしかりもいただきましたけれども、何とかG32を修正しないで通していただきたい、この農産物輸出の補助金だけにひっかかって妙なことになってしまっては大変だから、どうかひとつウルグアイ・ラウンドといいますか、ニューラウンドの開始宣言、これをとにかく無修正でやれるようにしてもらいたい、こう言って、私どもお願いを随分いたしました。  ということは、我々はそれを言う権利が幾らかあるのです。といいますのは、農産物の最大の輸入国は日本なんですから、我が国の立場も損なわれることのないようにということを各国の理解を求めて回ったというようなことでございましたが、大体私どもの所期の目的は達したと思います。農林省も随分苦労もしました。外務省もともに苦労もしました。私も国会対策ではないが裏国対、本当に徹夜で、おかげで、ウルグアイと日本とは時差が十二時間なんですが、徹夜したおかげで時差ぼけがなかったのですけれども、まあそれぐらいの騒ぎでございましたが、ほぼ所期の目的は達することができた、こういうことでございます。
  123. 二見伸明

    ○二見委員 これで質問を終わりますが、最後に、これは午前中に新たな水利用税の話がありましたね。私も、いわゆる水利税というのですか、この目的税構想には反対であります。大臣も決意を述べられましたけれども、やはりこういうものを目的税でやるという発想がいかぬ。私は、税の議論をする場所じゃないからしませんけれども、やはり目的税というのは、本質的には税の制度としては好ましくないのだと思います。森林資源・河川整備が大事だ。それは大事なことですが、だからといって目的税をやる、今度は臨調答申に基づいて教育改革をやる、何兆円とお金がかかる、では教育目的税、高齢化社会が来るのだから福祉目的税、全部目的税になってしまう。税のあり方からいっても、いわゆる水利水源税という目的税構想というのは好ましくない。一般財源でやるのが当たり前で、一般財源でどうしてもお金がなければ、増税するかほかの細目をへずるかという政策議論が出てくるわけであって、安直に目的税という構想でもってやろうとするのは好ましくない。これは長い目で見て、日本の財政のあり方から、税のあり方から、あるいはいろいろな政策体系そのものをゆがめてしまうのではないかというふうに思っておりますので、私はこの制度だけは何としてでも阻止をしなければならないというふうに考えております。お答え、ダブるかもしれませんけれども……。
  124. 田村元

    田村国務大臣 午前中も申し上げましたとおりでありますが、治山治水というものは全国民の生命財産を守るものであります。そして、例えば治水を一つ例にとりましても、かつて内務省土木局時代から昭和の三十年代の初期までは道路と治水は同格であったわけです。ところが、それが高度経済成長ということになって、産業関連である道路はどんどん伸び、港湾は伸びた。そしてその後を追いかけるように生活関連公共事業は伸びた。治水、まあ治山でもそうですが、治水なんかは何となく置いてきぼりを食らった。災害が来たときだけ大騒ぎが起こる、そして災害が来れば人災だといって担当官は責められ、被害者が出ればその前で本当に涙を流して土下座をしておわびを申し上げる。考えてみればかわいそうな話なんです。治水が今もって道路に対等の地位を得ておるものは何かといえば、建設省で技術屋さんが事務次官になれるというのは道路と治水だけなんです。あとはなれない。営繕も何もなれない。それだけの地位だけはまだ残しておるけれども、予算面では本当にかわいそうなんです。ですから、彼らの苦しみというものは痛いほどわかります。わかりますが、だからといって苦し紛れの税制というのはいかがなものであろうか。  例えばこの新税の方向も、全体の六六%を占める農業用水には手つけずで、わずか三四%の、工業用水一八、上水一六という三四%の水に対して税をかけて千二百億円をひねり出そう、その四分の一は地方に回して残った九百億を四対三で両省で分けよう、こういうことでございますが、私は率直に言って、これじゃ治山治水の担当者がかわいそうだと思うのですよ。もっともっと大きな構想で、国民の生命財産を守るためには財政当局も、また建設、農水当局も、一般会計で堂々と胸を張ってもっと大きな措置を講ずべきであるというのが僕の意見なんです。私はたまたまそういう持論を持っておったのが通産大臣になったものですから、何となく通産大臣になったからこういうことを言うように感ぜられるかもしれませんが、私はもともと公共族、建設族であったときから、私の持論でございます。これは私は間違っておるとは思っておりません。いわゆる特定財源というものは、これは苦し紛れの特定財源構想だけは避けるべきであるというのが私の意見でございます。
  125. 二見伸明

    ○二見委員 どうもありがとうございました。
  126. 佐藤信二

    佐藤委員長 青山丘君。
  127. 青山丘

    ○青山委員 通産大臣、就任早々それぞれの国へ行かれまして、国際会議で大変頑張っておられた姿を見まして、御苦労さまと敬意を表しておりました。  もう時間もそんなにありませんけれども、私なりの意見を少し申し述べさしていただいて、率直な御見解をひとつぜひ聞かしていただきたいと思います。  日本の国、おかげさまで通産行政の実を上げまして、技術革新に一定の成果を上げてきておりますし、情報化も急速な進展を見せてきております。このことは将来の日本経済社会、いささか展望を持つことができる、私は率直に評価しております。ただ、今例えば高齢化社会への対応、これはこれからのソフトランディングをうまくやっていかないとなかなか大変なことになる。それから、何といっても国際化の問題、日本は島国で、どちらかというと外国とのつき合いが余り上手ではなかった。しかし世界の一割経済国家としてその役割というのはだんだん重くなってきておりますし、世界の国からの批判も注文も要請も多く出てきておるようであります。ただ私たちは、過去に経験をしたことならばそれなりの対応が案外得意にできる国民ではないかと思うのですが、これまで余り経験したことがないこと、これから新しい経験、こういうことについては国じゅうで右往左往、苦しんでいきます。  例えば七年前にあの円高がありまして、実は私の地元でも大臣承知のように陶磁器の輸出産業でありまして、当時は大変なうろたえよう、取り乱しようと言ってもいいぐらいでした。しかし意外とこの産業、根強いところがありまして、大変苦しい中を切り抜けてはきております。しかし、今日のこの急激で大幅な円高というのは、これはもう初めての経験でありまして、これは特に景気の問題、雇用の問題で、座して見守ることのできない問題です。政府も何次かの対策を講じてくれました。しかしこれからまた取り組んでいかなければいけない。このまま放置すれば、大変な社会問題にこれは必ずなります。  それで、せっかくの大変な円高であるにもかかわらず、じゃ対外不均衡は是正されてきておるのかといいますと、むしろ円高が急激であり、かつ大幅であったために、Jカーブ効果で、ドルベースですとかえってその不均衡は是正されておらない、拡大の方向にある。一体この貿易不均衡というのはこれからどうなっていくのかという見通しもなかなか困難であろうと思いますが、このあたりをぜひひとつ大臣の率直な御見解で示していただきたいのでありますが、そういう中を、就任早々二国間会議あるいはガット、国際会議の場に臨まれて、国際経済の持続的な成長を図っていく、同時にまた国の権益、利益を守っていっていただかなければならない、大変努力をされたことに敬意を表するものであります。  私は実は率直にこうした感じを持っておりますが、先ほどの二見委員の質問の続きになりますけれども世界国々の人たちから日本に対する不信、不満あるいは強い指摘があったとけさからも言われておりました。率直にひとつ、どんなことに注文を具体的にされたのか、どんな要請を具体的に受けてこられたのか、金額の額のバランスの問題だけではなくて、大臣が受けられた印象とあわせてひとつぜひ聞かしていただきたい。そして、そのときに大臣として、いややはりこうしなければいけないんだなと今後の対処方針ももし考えられたら、ひとつこの機会にお述べをいただきたいと思います。
  128. 田村元

    田村国務大臣 断片的になりますが、私が外国へ行って受けた印象といいますかあるいは注文、これを率直に申し上げてみたいと思います。  私が意外に思ったことは、日本貿易インバランスに対しては非常な厳しい態度で、これはもう机をたたいて私にかかってくるというような状況でありましたが、案外、日本が物を売ることに対する文句よりも、買わないことに対する文句の方が大きかったように思います。それと、ダンピング等をしないよう、要するにアンフェアなことはするなというようなことであったように思います。でありますから、日本はやはりこれから、もちろん構造改善をやって国際協調型の産業構造にだんだんと切りかえていって、そして国際分業の一翼を担う国をつくっていく、これも当然のことでございます。  そのようにして輸出輸入バランスをとるということでありますけれども、とにかく今やらなければならぬことは、まず輸出の自主的な規制でありますが、これはもう本当に自主的に規制をしてもらわなければなりませんが、それ以上に、外国から物を買ってもらう、これが必要なんじゃないでしょうか。向こうは本当に文句を言っておりました。例えばオーストリアなんかスキーまで文句を言っていました。フランス、イタリー、ドイツ、ポルトガル等はワインです。イギリスなんか読んで字のごとしスコッチで、ウイスキー等々アルコール飲料とか、それは随分聞かされました。日本人はもっと買えということでございました。  今度は私が向こうに対して言ったことは、そういうことに余り触れないで、その努力はする。しかし、もう日本問題に対する対応で精いっぱいでございました。いわゆる利益の均衡、俗に言うBOBバランス・オブ・ベネフィット、これをニューラウンド本文にうたい込めということで。ところが、日本はそういうことを受け入れるわけにはまいりませんし、これは日本だけじゃありません。保護主義管理貿易というものから自由貿易を守らなければならぬ。そのためにはBOB日本問題というのは、日本問題ということじゃなくてむしろ管理貿易問題、保護主義問題と言ってもいいと思うのです。これは日本問題と言い切れないと私は思うのです。ガットというのは元来自由貿易ルールの場でありまして、結果として得た利益バランスを問うところではありません。共通利益、一層の利益というものを追求することは当然のこと、けれども、結果として得た利益バランスまで問うということになったら、これは大変なことになります。それぞれのお国ぶりというものもあります。でございますから、私は実はこの点は、とにかくもう途中でかっと退場するぐらいの決意を固めて、表現は悪うございますけれども、かつての時代と今の時代とは違いますが、松岡洋右というのは今のおれのような心境でおったのかなというようなことを考えたりして、これは全然内容は違いますよ、内容は違いますけれども、そういうようなことまで考えたりしまして、随分思い詰めて対応いたしました。  ところが、BOB、いわゆる日本問題についてECに協力をしたというのはセネガルとマダガスカルの二国だけであって、アメリカを初めとして多くの国は日本を支持してくれた。けれども、先刻申し上げたように、これは日本を支持してくれたのではないのです。彼らは日本を守ったのではなくて、二国間問題では日本に対して徹底的な攻撃なんです。そうじゃなくて、彼らは管理貿易になることを恐れ、保護主義の台頭を恐れてBOBというものを議長の総括として本文から外した、こういうことでございますから、しみじみ感じましたことは、これは国民大衆にも本当に訴えて、野党の方にもお願いしてみんなで訴えて、我々の自主的な努力日本貿易インバランスを是正する。そのためには内需の拡大その他も実効あるものにしなければならぬし、また、中長期的な問題であるにしても構造改善も深刻に受けとめていかなければならぬし、取り組んでいかなければならぬ。これは一通産省がやるべき筋のものでもなければ一企画庁が指図する筋のものでもない、日本政府の名においてやらなければならぬということをしみじみと痛感して帰ってまいりました。
  129. 青山丘

    ○青山委員 けさほど大臣が、いや日本を守ってくれたわけではない、自由貿易体制を守ってくれたのだと言われたときに、大変な名言だなと実は率直に感じました。ただ日本は、昔は、本当に経済力が弱いころ赤字基調の国でしたし、こんなに黒字基調で世界の国から激しい批判を受ける、こんなことは考えてみれば本当ならありがたいことだと言うべきことなんでしょうが、やはり度が過ぎれば世界の国はきっと怒るのでしょう。  ただ、昭和五十六年くらいから黒字基調が続いてきて、対外経済対策が繰り返し繰り返し、数次にわたりとられてきたわけですけれども、貿易の不均衡は是正されるどころか拡大の基調がずっと続いてきて、今日このような状態。これがうまくいかなかった原因というものは一体どこにあったのであろうか。日本政府として反省点はなかったのか。これから内需拡大、産業構造調整、これは真剣に取り組んでいかれるわけでありますけれども、それから外国の品物ももっと買っていかなければなりませんが、これはまた先ほどの話の続きに後でしていきたいと思っていますけれども、生活実感としてまだまだぴたっときてない。  円高の問題は二つの側面があることはだれでも承知しております。一つ輸出産業が大変競争力をなくして苦しんでいく、これはもう現象として出てきておる。しかし、もう一つの側面であるメリットがまだまだなかなか実感として国民生活の中にぴたっときていない。そういうことで、輸入品をふやしていくということも大切です。しかし、こんなにも対外不均衡が拡大してきた、その失敗というのはちょっと言い過ぎかもしれませんが、成功しなかった原因をどこらあたりにとらまえておられますか。私は特に難しく聞くつもりはありませんので、大臣の率直なお考えで結構です。反省点があったら、あのときこうするべきだったなというようなことがありましたら、大臣として率直にひとつ国民に意見を申し述べていただきたい、こんな気持ちです。
  130. 田村元

    田村国務大臣 大変素人っぽいお答えになって恐縮いたしますが、私は三十歳のときから約三十二年近く代議士生活をいたしております。私が代議士になりました当時は赤字で、そして本当に苦しい時代でございました。当時の国是はとにかく輸出促進で、輸出輸出で大騒ぎをしていたのです。与党も野党もみんなで騒いだのです。そして製造業中心主義に産業構造がどんどんと伸びていった。そしてあれだけ完膚なきまでにやっつけられ、焦土と化した日本がまさに東洋の奇跡と言われるような復興をした。ところが、それに弾みがついてしまった。しかもオイルショックで世界経済、産業情勢が変わってしまったということ、そういうようなことで、しかも、あえて他の国を言うわけじゃありませんが、日本人の勤勉さというものがこういう経済大国をつくっていったということだと思います。  大変素人っぽいことで恐縮でございますけれども、これは神様と言ってもいいくらいのことでしょうけれども、偉大なる神様のような大政治家がもしおったならば、あるいは先手を打ったかもしれない。けれども、こういう時代が来るということは、それこそ神様は知っておったかもしれぬが、お釈迦様でも御存じなかっただろうというようなことじゃないでしょうか。私のまことに素人っぽい答えでございますけれども、感想を申し述べました。
  131. 青山丘

    ○青山委員 大臣、率直に言われましたけれども、恐らく多くの人たちがそういうふうに考えておりまして、一面誇らしく感じている面も実はありますね。長く本当に赤字赤字で苦しんできて、しかし物を生産する力というのは本当に日本は立派につけてきた。問題はこれから外国との間にいかに調整をとっていくのか。例えば一つは大きな貿易不均衡の問題がありますし、その中の一つずつとってみれば、二国簡交渉だとか個別品目の交渉であるとか、個別品目の交渉といえばどうしたって管理貿易です。しかしガット、御承知のように自由貿易主義、この予盾する問題をきちっと調整していくというのはなかなか困難なことでしょうが、起きてくる問題についてはひとつ誠意を持って取り組んでいかなければいけないんだというような考え方なんでしょう。  そこで、ちょっとだけでもいいから御見解を示していただきたいのですが、例えばこれからまた出てくる日米の間における繊維の問題あるいは工作機械の問題、この個別交渉についてどんなお考えで臨まれようとされるのか。  それから、時間がありませんからついでにお尋ねいたしたいと思いますが、最近個別品目で出てくるものが国際競争力の弱いものではなくて、アメリカにとっても国際競争力を持っている、例えば半導体あるいは工作機械等の問題がテーブルに出てきています。これはやはりアメリカにとっても将来成長が期待できるものだということなんでしょう。ただ、こうした問題がだんだん個別品目の問題として出てきますと、これはやっているアメリカはなかなか賢明なやり方だと、よそ様の立場から見ればそう言えるんでしょうが、我々の立場から見ればなかなかそういうわけにいかない。こうした問題がだんだんと出てくる傾向にあるわけで、担当省庁としてはこれからどんな取り組みの姿勢をお持ちなのか、この機会に少し聞かしていただきたいと思います。
  132. 村岡茂生

    ○村岡政府委員 貿易インバランスというものが大変増高する中におきまして、特定の国におきましてはやはり保護主義というものの台頭、これは避けられない現象のように思われます。我々はいかにしてガット体制、自由貿易体制を守るかということに腐心しておりまして、非常に皮肉ではございますが、自由貿易体制を守るために、場合によっては一時緊急避難的にそれと相反する措置を行わなければならないということもあり得るわけでございます。  現在アメリカとの間に、先生指摘の工作機械の問題であるとかあるいは繊維の問題であるとか、現在交渉を継続中の問題がございます。本件につきましては継続中でございますので甚だ申し上げにくいわけでございますが、私どもとしては少なくとも双方合意の上で、理解できる範囲内でまとめなければならないもの、こう理解しております。特に工作機械、繊維につきましては、かなり早い時期にまとめなければならないもの、このように理解しておるわけでございますが、先方様は、先生御存じのとおり大変きつい強硬な態度を堅持したままであるということでございます。  特に工作機械につきましては、今週、明日からでございますが、東京におきまして交渉をする、こういう段取りになっておりまして、私どもも基本的にはアメリカの工作機械産業の活性化に協力する、こういう立場は堅持したい、こう思ってその枠内で相互に妥結可能なレベルを探る、こういうことにいたしたい、かように考えております。
  133. 青山丘

    ○青山委員 基本的には自由貿易体制を維持していく、守っていく、しかし個別品目についても日本としては誠意ある対応をしていかざるを得ない。我が国は開放経済体制でしか生きていけない、そういう事情がお互いにみんなあることはよくわかっているわけです。しかし、その中でも通産省立場国内の産業を守ってきていただいた。そして、それなりの輝かしい成果を上げてきたこともいろんな部面であるわけですので、評価をいたしておりますが、ひとつぜひ国内産業、国益を守るという立場もきちっと主張していただきたいと思いますし、通商政策局長も恐らく個人的に向こうに友人も多くおありだろうと思いますので、個人の心情もひとつ訴えて話し合っていただきたいと思います。  それから対外不均衡を少しでも改善して世界経済の調和ある発展に寄与するためにも、四%の経済成長をどうしても達成していきたい。これは午前中通産大臣の御見解でもありました。  経済企画庁長官、長官所信表明の中には四%という数字が入れてありませんでした。それは長官なりの考え方があったと私は率直に思いました。四%の経済成長はとても自信がないから書かなかったのだというような一面だけでなくて、これを載せることによって国際的な批判を受けることを少しでも避けていきたいというような気持ちがあったのかな、いやどうだかわかりませんが、私なりに実はそんな理解をしてきております。  そこで、ただ総合経済対策の柱とも言える、ついせんだっての公共事業追加分、この財源措置について新聞報道では、これは総合経済対策の中の重要な財源対策、こういうことですから、政府・自民党の間で話し合われたということでございますが、ここに普通ならば経済運営の責任者である経済企画庁長官が出席をされて話を進めてこられたというふうに受け取っておりましたら、そうではないようなニュースでございましたね。それはもともと入られないつもりでおられたのか、本当は入るべきところを入られなかったのか、あるいはまた参加はしなかったけれども私なりの考え方は十分訴えてきたし取り入れられてきているんだというようなことなのでしょうか。その辺の御見解はいかがでしょうか。
  134. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 私どもが第三次中曽根内閣の閣僚に命ぜられましたのは七月二十二日でございますが、実は当初から総理の話がございまして、経済企画庁長官としてやるべきことは内需振興を中心とした景気対策である、これは自分がダブル選挙のときから公約として国民に訴えてきたのであるので、ぜひこれに取り組んでもらいたい。それからもう一つは、いわゆる国際的な経済調整対策考えてもらいたい。この二つの話がございまして、特に大蔵大臣通産大臣といろいろ御相談をして考えるように、こういう話でございました。  どれくらいの経済対策をするかということにつきましては、実はいろいろ経済企画庁も月例経済報告を発表しておりますし、本委員会でも本日も申し上げたわけでありますけれども消費や住宅需要は堅調だけれども設備投資については輸出中心として製造業と非製造業との明暗、二面性がある、こういうようなことでございます。どれくらいの総合経済対策を必要とするかということについて具体的な経済指標を見ながら考えておったわけでございますけれども、いわゆる四─六月の四半期の国民所得速報値が出てまいりましたのが九月の上旬に入ってからでございますので、それを踏まえて実は実質的な総合経済対策の作成に取り組んだ、こういうことでございます。  四─六月の四半期、国民所得の伸びは前期比〇・九%でございますが、これを素直に伸ばしますと年率三・六%になりますけれども、六十年度と六十一年度の経済成長率を計算いたしますと、この〇・九%で仮に単純に四・四半期伸びたとすれば二・七%であって、これはいわゆる四・〇%から考えれば一・三%のダウンになる、こういうことでございます。したがって経済企画庁といたしましても、国民所得GNPが六十年度名目で大体三百二十兆円でございますから、これを多少上回る、少なくとも三兆円プラスアルファぐらいの内需振興策を考えなければならない、こういうことで実は大蔵省とも話をし、また当然通産省、建設省さらには郵政省も含めて関係各省といろいろ打ち合わせをして積み上げた数字が三兆六千三百六十億円という数字でございます。ですから、私ども景気対策を積み上げるためのイニシアチブとそれから調整役をずってやってまいったわけでございますが、問題は、三兆六千三百六十億の中の柱になりますのが一兆四千億の公共事業でございます。  実は、公共事業につきまして率直に申しますと、当初大蔵省が考えておりましたのは、災害復旧はともかくとして、それ以外の一般公共事業については、ゼロ国債と通説言っておりますけれども、債務負担行為で次年度の仕事を前倒しをして契約はする、しかし実際の実行については場合によっては来年度以降、四月以降にする。昨年も六千億のいわゆるゼロ国債、国庫債務負担行為でやったわけでございますが、実際の仕事は四月からやっておったわけでございますが、私ども景気担当官庁として、こうした仕事が契約だけはするけれども実際の仕事は四月以降であるとなると、国民所得を、GNPを具体的に押し上げる効果としては全くないわけでございますので、一兆四千億をできるだけ年度内に契約をするだけでなしに仕事に着手して、できるだけ三月三十一日までに完了を見るようなそういうことをぜひ講じてほしい。私も実は総理にたびたびお会いいたしましたし、大蔵大臣通産大臣や建設大臣お話をして、そして最終的には建設国債でやるか、それとも一般の金融機関からの借り入れでやるか、その融資、金繰りについてはともかくとして、少なくとも一兆四千億の公共事業については年度内に着手するんだ、そして実行を進めるんだということについて大蔵大臣の了解を得ておったわけであります。そのもとで大蔵大臣と建設大臣がお会いになって、さらに党の政調会長も中に入って、一兆四千億について、御存じと思いますけれども、災害復旧が五千五百億、それから一般公共事業がその残りの八千五百億でございますけれども、そのうち今年度内に完了する事業が一千五百億、前金をつけて行うものが四千億、その他いわゆるゼロ国債が三千億、こういうことで公共事業に関する補正予算の枠組みが決まった、こういうことでございます。
  135. 青山丘

    ○青山委員 長官、四%成長についてあえてもう触れるなという気持ちかもしれませんが、しかし朝からの質疑の中では、通産大臣が、こよなく四%に近づけたいと気持ちを述べておられましたけれども、さて本当にその見込みというものが一体どうなのか。いやもう間違いなく大丈夫だよとおっしゃるのかもしれませんし、いやなかなか困難であるけれども、そのためにこんなことも考えている、その見通しあるいは方針について通産大臣お持ちであったらひとつぜひ聞かしていただきたい。
  136. 田村元

    田村国務大臣 私が申し上げましたのは、四%成長という旗をおろすわけにはまいらないということで、こよなく四%に近づく努力をしたい。つまり今青山委員の御質問の言葉を借りて言えば、非常な困難を伴うであろうけれども我々は四%にこよなく近づく努力をしなければならぬ、至上命題だ、こういうことでございます。  それから、正確を期するためにちょっとつけ加えますが、先ほど私ちょっと落としたことがありました。外国へ行ったときいろいろ言われたこと、感じたことですが、日本企業の進出を各国が非常に求めておりました。これをつけ加えておきます。
  137. 青山丘

    ○青山委員 少し両大臣の感触が私違うような気がするのですけれども、問題は、今円高デフレが相当深刻でありますし、地域経済も疲弊しておりまして、一体為替のメリットがどこに埋もれてしまっておるのか、こういうような状況でありますし、これからの景気対策、今通産大臣は非常に明確に言われましたが、至上命題として四%はどうしても確保していきたい、そういう考え方でこれからも取り組んでいただきたいと私は思います。昔でしたら、昔といってもそんなに古くないのですけれども、いろいろな財政運営で景気対策ができたのですが、国家の財政が厳しい状況でして公債の発行もなかなかままにならない、そういう厳しい状況であることも十分承知いたしております。しかし、中小企業輸出関係者は塗炭の苦しみでありますから、これは景気回復か財政再建か、いや両方だなどというきれいごとではなくて、財政再建のためにも景気回復はきちっとここで四%是が非でもやっていきたい、それが日本が置かれている国際環境の中で、この状況を踏まえてまさに正念場に今ある。だから、もちろん財政再建は必要であるけれども、今そのためにこそ景気回復が必要だというような認識で経済運営をやっていただかなければならないのではないかと私は率直に思います。経済企画庁長官の御見解はいかがでしょうか。
  138. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 私が申し上げましたのは、六十一年度GNP成長率がどうなるかということについてまだ正確な経済指標が出ていないわけでございますので、四月―六月期の成長率を単純に延ばしますと、お話ししましたように二・七%の成長率になります。したがって一・二、三%ダウンするであろう、これは仮定の計算でございますが、大体そういうことを前提に置きまして、いわゆる一%プラスアルファの内需拡大政策をとらなければならないであろう、それが落ち込みをもとに戻す、通産大臣のおっしゃいました限りなく四%に近づけるための措置でもある、こういうことでございますので、一%プラスアルファが三兆六千三百六十億の新しい内需政策であり、その中核は一兆四千億の政府による一般公共事業と災害復旧事業である。これを向こう一年間ではだめなので、年度内にできるだけ消化するということがまさに経済成長率をもとに戻すための基本的な条件である、こういうことで今真剣に取り組んでいるということでございます。
  139. 青山丘

    ○青山委員 経済企画庁の方で先日円高差益還元状況について試算されました。先ほども二見委員の質問にも出ておりましたが、生活実感の中に本当に来てないですね。民間企業の経済活動でありますから、行政指導といってもなかなか徹底を期すことができないかもしれません。しかし、きのうこんな話を聞きました。日本からバンコクへ行って帰ってくる、つまり往復の航空運賃が約二十万円。ところがバンコクの友人にあちらの方で往復の切符を買ってもらったら十万円だというのですね。少しくらいの格差なら、サービスがいいとか安全だとかいろいろな理屈をつけて、一般の人たち、国民生活の中に納得もしていくのでしょうが、これは少しおかしいじゃないか、どこかで円高差益がとどまっているのではないか、こういうことを私に強く言われる方がありました。恐らくそういう一面もきっとあるのかしら、こういうことでは円高というのは国民経済に打撃だけ与えてメリットがほとんど生活の中に反映してこないのだ、こんな印象が今強くあります。  しかし、本当に円高のメリットが市民生活の中に浸透してくれば、なるほど円高もいい、こういう実感が市民生活の中に、例えば家庭の奥さんの買い物の中にそういう実感が出てくれば、これはまた必要なことだろうと思いますし、いいことだと私は思いますね。そういう意味で円高差益、何も電力とガスと石油製品の一部、こんなことではなくて、もっと幅広くやるべきじゃないか、この二点、担当大臣経企庁長官、御見解はいかがですか。
  140. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 国際航空運賃につきましては、実は先般の総合経済対策の中で、国際線の欧州線については日本からの往復の一二%、そして太平洋線につきましては片道の一〇%の値下げの措置を講じたわけでございますが、これは例えば日本航空とタイ航空の経営を考えてみますと、日本航空の経営というのはコスト的には全く変わっていないのです。ただ、ガソリン代だけが、燃料費が円高で安くなったわけですね。だから、実際の国内の航空会社、日本航空の経営は全く円で言いますと変わっていないわけですね。タイ航空は、また向こうは変わりないのですけれども、だから両航空会社はそれぞれの自国通貨で原価計算いたしますと、ガソリン価格、石油価格は違います。それ以外全く関係ないわけですね。ですから、日本航空の経営の努力と全く関係なしに円高でそれだけ差がついてくるので、これはいかんともしがたいのです。それがだめだということになると、日本航空は本社以下全部バンコクに持っていっちゃって向こうの通貨で経営をすれば、まさにタイ航空と同じだけの運賃でもペイするわけです。だから、国内的な面での経営は両社とも全く変わりなしに、為替レートだけでそうなってくるということで、御指摘のことはよくわかりますけれども、現実、会社の運営としてはなかなかできない、こういうことでございます。  全体の円高差益につきましては、私どもの計算でも、六十年十月から六十一年九月にかけて同じ量を輸入したと考えてどれくらい安くなったかというと、これは円高関係で六・四兆円、原油は四・〇兆円、合計十・四兆円、これだけ円の支払いが少なくて済むことになっているわけであります。  この十・四兆円をどれぐらい還元したかということを一応マクロで計算をいたしますと、消費支出については六十年度実績が百九十四兆円でございますが、物価が一・七%下がったということで計算いたしますと三・三兆円差益が生まれたことになりますし、投資につきましては、これは六十五兆円でございますので、これも卸売物価が一・八%下がったということで計算して一・二兆円、合計四・五兆円、ですから十・四兆円の水際における円高差益国民生活の中に四・五兆円物価水準の低下という形で還元されている、こういうふうに考えておるわけでございます。差し引き六兆円残っているわけでございますが、これも大変薄く広く行き渡っておりますので、これをこうすればこうだという形にはなかなかつかまえられない、とらえられない面がございますが、午前中から申しておりますように、これにつきましても輸入商品価格の実態調査や並行輸入を進めるという形で、何とか一般の消費者に円高差益還元できるように措置を講じてまいりたいと思っているわけでございます。
  141. 青山丘

    ○青山委員 行政指導ばかりではなくて政府みずからやればできることもあると思いますね。例えばパンの値段が下がっておるのかと聞いてみたら余り変わらない。余りじゃない、全然変わらない。だけれども、例えば常識的に見て、去年の九月に二百四十円であったら、すぐ百五十五円とは言いませんよ。言いませんけれども、家庭生活の中にはそのメリットが全然反映しておらない。パンでもうどんでもその原料は小麦粉、ほとんど輸入小麦粉ですよね。だけれども政府の公定価格ですから、パン屋さんでもうどん屋さんでもとても安くできやしない。でも、政府はその裏でちゃんと差益があって潤っている。これじゃメリットは全然市民生活に反映してきませんよね。そんなようなことは担当大臣として、いや直接パンやうどんじゃありませんけれども経済運営の担当大臣としてやはり私はきちっと調査して、あと六兆円分は吐き出していただければ家庭の主婦が、円高もマイナスばかりではないよお父さんと奥さんが言ってくれるようにならないと、これは国民の政治に対する信頼というのはなかなか得られない。これが一点。  もう時間がありませんから最後に一点。通産大臣、朝から何度も御答弁いただいておりまして、森林河川緊急整備税構想、これはもう大変立派な御見識だと思って尊敬しております。お考えは聞きましたが、これからの取り組み姿勢について、これからの事態の変化に対して通産大臣としてどのような取り組みをされるのか、その方針について一言ひとつぜひお申し述べいただきたいと思います。
  142. 田村元

    田村国務大臣 水源税の問題のことだと思いますが、これは通産省、厚生省十分の連携をとって、まず最初は与党の中の党内調整だと思うのですよ。でございますから、大いに頑張っていただく、我々ももちろん頑張りますけれども。それから、とにかくこういう法案が出ない方がいいんですから、出る前になくなった方がいいんですから、厚生省と十分連係プレーをしたい。  それから、さっきのお話内需の拡大の問題も、緊急避難と心得ております。でございますから、なりふり構わず内需の拡大策と取り組んでいきたい。  それから、電力等はまだ不確定要素があります。もう既に一兆一千も一遍ひねり出した後ですし、まだ不確定要素があって何とも言えませんけれども、たくさんの円高差益というものがまだあるのです。これは、言うなれば企画庁は設計屋さん、我々は仕事師、この仕事師が鉢巻き締めて絞れるだけ絞るというふうに、本当に懸命の努力をいたす決意でございます。
  143. 近藤鉄雄

    近藤国務大臣 円高差益は、特に政府が介入しておる物資については十分じゃないじゃないか、こういう御指摘でございますけれども、例えば牛肉なんかでも、実は牛肉に関する円高差益として計算されるものが二百四十億円ございますが、二百四十億円を、これを実はもう畜産事業団の売り出し価格の段階で完全に吐き出しております。たまたま国内牛肉の値段と輸入原価との差というのは依然として残っておるわけでございますが、これは畜産事業団としては差額をもって畜産振興に充てる、こういうことでやってきている。だから差額分は還元しましたけれども、もともとの輸入牛肉の値段と放出牛肉の差がある、こういうことでございますし、お話のございました小麦につきましても、これは食管会計の中の小麦勘定のやりくりでございますけれども、確かに安く小麦が入っておっても、ことしは国内産の小麦の量がふえたものですから、それを買い込むという形で円高差益がそっちへ吸収されてしまって、一般の小麦の市場価格には必ずしもすぐに反映していない。そうした農業政策上の配慮もあって、円高差益が出ても、なかなかそれがすぐに末端価格まで反映するということにはならない面もございますが、言いわけばかりしているわけでもありませんので、今通産大臣お話もございましたように、物価担当官庁として経済企画庁は、各省の関係者を集めた物価担当官会議というのがございますが、私そこへ出向きまして各省の物価の担当官に、何とか円高差益が一般の国民皆さんにより還元できるように、できるだけのことをやってくれとお願いをしている次第でございます。
  144. 青山丘

    ○青山委員 質問を終わります。
  145. 佐藤信二

  146. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 御関係皆さん、お疲れのところ大変御苦労さまでございます。  さて、九月二十九日に中小企業庁が発表いたしました最新の調査でも、今後ほとんどの企業が赤字となる産地が半数近くあると示されておりますように、円高倒産や休業、廃業の増大、首切り・人員整理による失業率の史上最悪の記録更新など、円高不況は日一日と深刻さを増しているわけでございます。私ども日本共産党議員団は、昨年の末とことしの初め、さらに続いて今回、北海道、秋田、埼玉、東京、石川、福井、京都などで円高不況の実態調査を行いました。その結果も踏まえまして、まず円高不況中小企業対策について私は質問をさせていただきます。  その第一は、大企業、大商社など親企業の下請中小企業に対する横暴や不正取引の問題です。石川、福井は全国の八二%を占める日本一の合繊長繊維織物産地であります。そして、大手繊維メーカー、商社関連の生産が七割から八割を占める賃織り加工産地でございます。輸出依存度は七割にも上っておりますし、円高は極めて深刻な状況をもたらしております。福井県織物構造改善工業組合の資料によりますと、福井産地の織物の平均工賃は、幅が百二十センチ、長さ五十メーターのナイロンタフタの織り工賃は、一昨年の四月から六月では千三百円だったのが昨年の四月から六月には九百円にされたわけですが、今度は円高だということでさらに四半期ごとに一割あるいは一割強の値引きをされて、今では五百円にまで下げられているわけです。ポリエステルのポンジーの工賃も、同じ時期に千円から七百円へ、さらに現在は四百円にまで下げられているわけです。これは他の織物工賃でも同じですし、御意見を聞きました業者の皆さん方お話も全くこのとおりです。また石川県でも同様の事態でございます。このように継続して取引をしている大手繊維メーカー、商社あるいは産地商社が円高を理由にして一方的に工賃を引き下げているわけです。さらに許せないのは、かつては約三ヵ月ごとに仕事と工賃が決まっておりましたのに、最近では単価も示されないで仕事をさせられる。そしてみずからが集金に行きますと、内金だということで一定額の支払いを受け取るわけですが、後になりましてあれは支払い過ぎていたんだ、こういって工賃を差し引かれることもあるというのですね。  公正取引委員会にお尋ねをいたしますが、こうした不当な工賃引き下げ、つまり値引き、そして工賃後決め、こういった事実は下請代金支払遅延等防止法いわゆる下代法に明白に違反する不公正取引だ、こういうふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
  147. 柴田章平

    ○柴田政府委員 お答えいたします。  今先生がおっしゃいましたように、親事業者が円高を理由として既に決められている下請代金を減額したり、あるいは発注単価を一律に切り下げるというふうなことが予想されているわけでございますけれども、一般論として申し上げれば、円高対応するため必要であるという理由であっても、例えば既納入分、既に決められている下請代金を減額すること、あるいは発注単価を同種の発注単価に比して著しく低い額に定めることといったようなことは、下請法の第四条第一項第三号の下請代金の減額の禁止あるいは第五号の買いたたきの禁止に違反する行為だというふうに、一般論としては私申し上げられるというふうに思います。
  148. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 まだまだございます。円高になる前は何ら問題はなく合格をしてA反ということで納品をされておりました織物が、今では半年から一年以上前に納めたものまで不良反のC反だ、こういってどんどん返品をされてくるわけです。しかも、一匹五十メーター織って四百円から五百円の工賃しかもらえないものなのに、これが返品されてきますと、反物の売り値で安いものでも一匹が一万円から一万二千円も請求をされているのです。石川県の鹿島町、鹿西町、鳥屋町では、協会の検査場に行きましてもこれでなぜ不良反になるのかわからない、こういうような織物までが不良反にされまして、二百三十万も罰金を取られているという人がおられました。毎月二十万も引かれて受け取る工賃は三十数万円です。そこから電気代や経費を差し引きますと、奥さんと息子さん三人で働いて三万円くらいしか残らないと本当に途方に暮れておられるわけです。これらは決して一、二の例ではありませんで、調査の先々でだれもが共通をして訴えられた事実でございます。また、支払い条件も大変です。京都の丹後地方では、ちりめんの織物を納品をいたしまして一ヵ月か一ヵ月半たってやっと二百十日の手形をもらうのです。地元ではこれを台風手形と呼んでおります。  不当な返品にしても、長期手形にいたしましても、全く明白な下代法違反じゃありませんか。零細な業者の皆さんから中小企業家に至るまでみんなが口をそろえたようにおっしゃるのは、大企業や親企業の横暴はよくわかっていても、一言でも盾突くとあすからの仕事が打ち切られる、こういうことです。それでみんな泣く泣く我慢をさせられているわけです。こういう毎日の暮らしは、実は娘にお父さん夜逃げをせんといてと言われるとか、お嫁入りのときには恐らく玉のこしであったろうと思われる奥さんまでもが、どうか首だけはつらないで、こう言って主人に頼んでおられるとか、これは余りに悲痛ではありませんか。ただ型どおりに通達を出したとか調査をしましたとか、これだけではだめなんです。国がやっているのは啓発事業だ、公正取引委員会が抜き取りをして役人の手で摘発をすべきだ、こういう怒りの声が出されているわけです。徹底した調査とともに悪質な違反企業名は断固公表すること、こういうことをして原状を回復することが大切です。実効ある是正指導を早期に行うべきだ、こういうふうに思いますが、公正取引委員会の決意のほどをぜひお聞かせください。
  149. 柴田章平

    ○柴田政府委員 公正取引委員会といたしましては、下請取引を公正化するとともに下請事業者の利益を保護するために、下請法に基づきまして、毎年親事業者に対して下請取引に関する書面調査を実施いたしております。これは下請法自体が、なかなか下請事業者からの申告あるいは申し出ということが得にくいということから、親事業者あるいは下請事業者に対して書面調査を実施して違反行為をなるべく見出そうということで実施しているわけでございますけれども、違反行為が認められた場合には所要の是正措置を行っておりますし、今先生からいろいろな事情を伺ったわけでございますけれども、ぜひそれには積極的に私どもも対処しなければいけないというふうに感じた次第でございます。
  150. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 先ほども申しましたように、下請事業者の申し出がないということは、ちょっとでも言えば、それがわかればあしたからの仕事がとめられる、こういうあしたの生活にかかわってくるという状況なんですから、悪質なところは企業名を発表するとか出向いて調査していただくとか、もう一つ皮をむいた手だてをぜひ打っていただきたい。  この問題の締めくくりといたしまして通産大臣にお尋ねしたいと思うのですけれども大臣大臣就任後の新聞のインタビューでこうおっしゃっております。通産大臣というのは中小企業大臣であるとの認識を強く持っている、中小下請企業の生の声を聞き行政に生かしていきたい、こう語っておられました。昨年の九月のG5によりまして、政府の政策によって異常円高が引き起こされて以来、もはや一年以上もたっているわけです。円高を理由とした大企業や親企業の不公正な取引をやめさせるために、通産省は徹底した調査、毅然たる是正指導を直ちに行うべきだと思うわけですが、大臣の決意のほどをお聞かせいただきたいと思います。
  151. 田村元

    田村国務大臣 通産省中小企業庁では、下請取引の適正化のために、下請代金法に基づきまして公取委と協力して親事業者を悉皆的に調査しております。参考までに申し上げますと、少なくとも一年に一回親会社、例えば資本金一億円以上は五千社くらいでありますが、これを通産と公取が半分ずつ調査をしております。下請は通産省が約二万三千くらい、公取も恐らくそれくらいかあるいは三万くらい調査をいたしております。したがいまして、ただいま御指摘の案件につきましては、これらの調査の過程で十分実態を把握して、この法律に基づいて、しかるべき毅然とした措置を講じてまいりたいと思います。  私が就任直後に申しました心境にいささかの変わりもございませんし、私自身、中小企業といいますよりむしろ零細企業の町に生まれ育ちました。でありますから、肌で零細企業の苦しみというものは知っております。知っておるつもりであります。こういうことでございますので、なおも中小企業庁を叱咤督励いたしまして、公取と十分の連係プレーをとるようにいたす所存でございます。
  152. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 徹底した指導と毅然たる是正指導を行うということをお約束いただきました。ぜひとも直ちにこれを行っていただきたい。今までも御苦労いただいていることは私も数字を見せていただいたりしてわかっているわけですが、このように隠れた問題が幾らでもあるという事態でございます。  次に、設備共同廃棄事業について伺いたいと思います。  あの政官界を巻き込みましたいわゆる撚糸工連汚職事件、これによりまして、初年度の事業を実施しただけで従来の設備共同廃棄制度は中断をされ、今新たな枠組みを検討する最終段階にあるというふうに聞いております。  そこでお尋ねをいたします。撚糸工連事件のような事件が二度と発生をしないように相互監視、この体制の強化や綱紀粛正ということなど、制度の厳正な運営に万全を期すべきであることは当然のことです。この問題で重要なことは、あのようないかがわしい事件に何のかかわりもない、それどころか、まじめに正直に一生懸命働いてきた善良な人々がとばっちりを食っているということなんですね。すなわち、二年目以降に設備廃棄を計画された方々が事業の中断に直面をさせられました。この方々は、円高不況による生産の落ち込み、経営悪化、加えて設備廃棄が一日延びるごとにさらに苦境に追い込まれ、夜逃げ、自殺寸前、こういうぎりぎりのところまできております。買い上げ価格など昭和六十年度並みの条件で設備廃棄の残る事業を直ちに実施すべきだと考えますが、生活産業局長の答弁を求めます。
  153. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 御指摘のとおり、撚糸工連事件をめぐりまして設備共同廃棄事業につきましても大変な論議があったわけでございますが、ことしの五月三十日の経済対策閣僚会議におきまして、現行設備共同廃棄事業は廃止するけれども、改めて厳格な要件のもとに特定産地等の構造調整を促進するための新たな設備共同廃棄事業を実施するという方針を決定をしていただいたわけでございます。  ただいま先生指摘のように、二度とああいう問題が起きないように、例えば事業の実施主体といたしましては産地組合を中心に据えるとか、あるいはチェック、監視体制を厳重につくりかえるとか、そういう方向で現在検討をいたしているわけでございます。現在検討いたしております制度は繊維だけではございませんで、中小企業全般に適用される制度でございまして、そういう観点から幅広く従来の制度の見直しあるいは反省を行っているところでございます。  ただ、御指摘のとおり、昭和六十年度から六十二年度にかけまして、三カ年計画にまたがります設備共同廃棄事業が予定をされておりました業種が繊維の分野で七つあるわけでございます。現在見直しをいたしております過程で特に問題になっておりますのが買い上げ価格の問題でございます。一般的な制度といたしましては、この買い上げ価格の問題につきましても十分な見直しが必要かというぐあいに思っているわけでございますけれども、確かに六十年度は従来の仕組みで、それから六十一年度、六十二年度は新しい仕組みで実施をいたします場合に、たまたまいずれの枠組みに乗ったかということで買い上げ価格が非常に違ってまいりますのは、やはり公平という観点から見ますと非常に問題があるというぐあいにも思われるわけでございます。午前中にも御説明申し上げましたが、田村大臣からも、そういう極端なアンバランスが生じないように十分配慮すべきだというような御指示もいただいておりまして、そういった方向に沿いまして現在鋭意検討を進めているところでございます。
  154. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 引き続いて中小企業庁にお尋ねをいたします。  今日の円高不況によりまして、繊維に限らず、合板、陶磁器など、他の業種におきましても設備の休止が広がっております。設備廃棄事業を望む声が大変強いわけです。こうした、やむにやまれず転廃業が多発せざるを得ないという業種におきましても、設備共同廃棄事業を当面認めなければならないというふうに私は考えますが、いかがでしょうか。
  155. 岩崎八男

    岩崎政府委員 御指摘のとおり、この設備廃棄事業というものを、私ども考えております特定地域対策の一環として、一つの手段として必要であり、かつそれが効果的であるならば考慮してもいいということで、さしあたりこの設備廃棄事業の新しい基準、要件、これがまだ決まっておりませんので、そういうのが確定した後で、ケース・バイ・ケースでこの制度を構造調整の一つの手段として適用することはあり得べし、そのように考えております。
  156. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 やめるも地獄、残るも地獄ということで本当に大変な事態です。残存者負担というようなことなどとてもできるような状態ではないわけですね。昭和六十年度並みの条件で共同廃棄事業を直ちに実施されるよう強く要望いたしまして、次に進みたいと思います。  さて、絹織物の脱法輸入規制の問題です。異常円高輸出の落ち込みに加えて中小企業製品の輸入の急増を招き、国内中小企業に二重、三重の打撃を与えております。京都の西陣や丹後など、和装絹織物も、輸出ではありませんけれども、大変深刻な状況になっております。和装絹織物は国民消費の低迷あるいは生活様式の変化などによって、関係業者の懸命な努力にもかかわらず、この間一貫して需要や生産が低下してきております。着物離れというのが起こっているわけですね。そして、この引き起こされました異常円高は、和装品の需要、消費の落ち込みに拍車をかけまして、生産も落ち込んできております。ここ一、二ヵ月は韓国、台湾、中国などからの絹織物の輸入も急増をして、その結果、問屋、商社などの倒産、自殺、夜逃げを生むというところまで事態は深刻化しているわけです。  そこで、委員長のお許しをいただきましてちょっと見ていただきたいものがあるのですが、委員長いかがでしょうか。
  157. 佐藤信二

    佐藤委員長 結構です。
  158. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 それでは、これは丹後で生産をされた絹織物で小幅ちりめんの生機と申します。それから、こちらのこれも絹織物なんですね。これはリボンだというのです。国内大手繊維メーカーや商社のダミーなどによりまして法の網をくぐって輸入をされてきたものです。つまり二国間協定で規制をされている織物ではないという織物なんですね。ここにこのリボンを私は持ってまいりましたが、これがリボンです。委員長のお孫さんにもリボンにしてくくって髪の毛にでも飾ってあげれば大変かわいらしい。お孫さんはいらっしゃいませんか。失礼をいたしました。大臣だったらいらっしゃると思いますが、こういうものをリボンというわけですね。これがリボンとは全く驚くばかりだというふうにも思うのです。ちりめんといいますのはこれなんですけれども、これは強いよりがかかっているわけです。ですから、この生機に水をかけますとこのようなものに縮んでしまうわけなんですね。これをリボンだといって輸入しているのですが、国内の細幅織物の基準が三十センチということになっているのです。そうすると、これは二十二センチから二十三・三センチなんですね。だからリボンだ。これを入れてきて、日本国内で精練をして仕上げますとこれになるわけです。これは三十六・四センチから三十六・五センチというふうに精練で引っ張るわけです。それでこういう織物になるわけです。以前はこれをちょっと染めまして、青竹とか若竹とか申しまして、織り上げた絹を薄く染めて脱法輸入をして、日本国内で色抜きをして白生地にして涼しい顔をしてきた、こういう脱法行為があったわけです。今度はリボンといってまた脱法輸入されて、これが国内産業を一層危機に追い込んでいるという状態にあるわけです。通産省はこうした事実を御存じなんでしょうか。もしも承知をしておられるなら、こんな脱法輸入を断じて許さない、徹底した調査や脱法行為に対する断固たる措置を講ずべきだというふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  159. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 ただいま先生から御指摘のありましたような事実関係は、私どももことしの六月ごろから関係産地の企業の方々から耳にいたしておりまして、また、ただいま先生がお示しになりました現物も私も手にとって見てみました。  御指摘のとおり、現在絹織物につきましては、韓国、中国あるいは台湾との間でいわゆる二国間取り決めという形で日本向けの輸出の自粛をお願いいたしているわけでございます。対象にいたしております織物は、先生指摘のとおりいわゆる和装物それから洋装物でございまして、幅三十センチ以上のものというのを対象にいたしているわけでございます。  御指摘のとおり、精練工程の一番初めの段階でございます水漬けというところをやりますと幅がうんと縮んでしまうわけでございます。だんだん精練工程が進みますと、最後は幅出しをいたしまして、普通は三十六、七センチの幅になるというわけでございます。初めの水漬けをいたしましたところで乾かしますと、御指摘のように、場合によりましては三十センチ以下になりまして、形の上では対象外の織物というぐあいに見えるわけでございまして、どうもこれを対象外ということで我が国へ持ち込みまして、我が国で精練工程を完成させているという状況らしいということを把握したわけでございます。率直に申し上げましていわゆる脱法行為とも言うべき行為でございまして、非常にアンフェアだと私どもも痛感をいたしました。  かねがねこれに類する問題はあったわけでございますが、私どもことしの八月六日に改めて関係窓口に通達を出しまして、輸入に際しまして確認体制をとっているわけでございますけれども、こういう紛らわしいものにつきましては、サンプル提出を求めまして、そのサンプルを現実に手にとってみて、先生指摘のような疑わしいものについては確認をしないということにいたしまして、こういう事態の発生を排除するという手当てをいたしたところでございます。
  160. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 西陣織物工業組合であるとか丹後織物工業組合でもこれは大変心配をしておられるわけです。ですから、通達を出していただいたわけですが、一度や二度周知徹底を図ったらおしまいということではなくて、今後このようなことが絶対に発生しないように、引き続き監視を徹底強化するようにお願い申し上げたいと思います。  次に、絹織物の二国間協定の問題ですけれども円高によりまして一層国際競争力を高めました韓国、台湾、中国の絹織物が安い値段で大量に輸入をされ、国内市場を脅かし、これが業界や業者の皆さんの深刻な不安となっているわけです。こういう事態を解消するためには、今年度も需要の減退に応じて輸入量を削減するという二国間協定を速やかに締結されるように一層の努力を要望いたしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  161. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 日本の絹産業をめぐりましてかねがね非常に大きな議論があるわけでございます。特に、先生御高承のとおり、生糸につきまして一元輸入体制がとられております結果、放置いたしますと、生糸で日本輸出できないものですから、絹糸あるいは織物といった格好で日本輸出をするというような動きが広がってくるわけでございまして、これに対して手当てをいたしませんと非常に不公平な事態が生ずるというわけでございます。しかし、ガットルール等もあるわけでございまして、現在の状況下で私どものとり得る最善あるいは最適の手だてといいますのは、輸出国との話し合いでございます。現在中国及び韓国とは政府間取り決め、それから台湾とは民間取り決めというような形で、日本への輸出につきまして日本市場の状況を十分見ながら自制をしてもらうように年々話し合いをいたしているところでございます。  昭和五十年度には絹織物の輸入が約四千万平方メートルあったわけでございますけれども昭和六十年度には一千九百九十万平方メートル、約半分にまで減らしていただいているわけでございます。その間、日本の絹織物生産は、五十年度の一億六千九百万平方メートル強から、六十年度には一億一千三百七十万平方メートル程度まで縮小しているわけでございますけれども、この間におきましては、輸入をカットした率の方が相当高いというような状況になっておりますことは、ただいまの数字で御理解をいただけると思います。輸出国側も輸出量を既に半減させるというところまで自制をいたしております結果、最近ではやはり何といいますか忍耐の限界に来たというような声も盛んに向こう側からは言われるようになっております。しかも、いずれの相手国につきましても日本の大幅出超というような状況がございまして、さらに一段の輸出カットを求めるというのはなかなか難しい状況になってきているわけでございますが、先ほど先生が御指摘になりましたように、確かに日本の絹業をめぐる状況も非常に厳しいわけでございます。今年度の話し合い、一部既に再開いたしておりますし、この秋からいよいよ本格的な詰めに入るわけでございますけれども、私どもといたしましては、何とか誠心誠意話し合いを行いまして適切な対応を引き続き相手国がとってくれるように努力をいたしてまいりたいと思っております。
  162. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 一層の御努力をお願いを申し上げます。  では、きょうの私の質問の第二のテーマでございます電力、ガスの円高、原油値下がりの差益還元、この問題についてお尋ねをしたいと思います。  政府は五月に電力、ガスの差益還元策を決定をして現在実施に移されております。しかし、その内容は極めて不十分だと先ほどから同僚議員の御指摘のとおりだと思います。しかもその後の為替レート、原油価格は、還元策の基準とされました一ドル百七十八円、一バレル当たり十九ドルを大きく下回り、差益の再還元を求めるという声は大変強くなっております。  そこでまず確認をさせていただきます。  為替レートは昨年十月から本年三月までの平均が一ドル百九十九円、四月から九月までの平均が一ドル百六十四円です。同様に同じ期間の原油CIF価格の平均は一バレル二十七ドル、十二ドル。原油換算LNGのCIF価格の平均は一バレル二十九ドル、二十二ドルとなっております。これは通産省からいただいた数字を平均したものですけれども、間違いはございませんね。簡単に、間違っているとかいないとかでお答えいただきたいと思います。
  163. 岡松壯三郎

    ○岡松政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの先生お読み上げの数字、若干の端数の問題はございますが、おおむねその数字で結構でございます。
  164. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 もう一点確認をいたします。円高差益は、この原油、LNG価格がそれぞれ一バレル二十九ドルのとき、一円円高による差益が電力九社で年間百二十億円、ガス三社で年間十四億円。原油、LNG値下がり差益は為替レートが一ドル二百四十五円のとき電力九社で年間一千億円、一ドル二百円のときガス三社で年間九十億円と通産省は試算をされているわけですね。その後、事前にお聞きしましたらやや違う試算もあるそうですが、この試算に間違いはないでしょうね。これも簡単に、あとの説明は結構ですから、いいとか悪いとかだけでお答えください。時間がないので済みません。
  165. 岡松壯三郎

    ○岡松政府委員 ただいまの前提でございますと、御指摘のような数字というのが概算でございます。
  166. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 今確認をされました数字と、現在の電気料金の認可基準であります為替レート二百四十二円、原油、LNG価格一バレル三十二ドルを基準にいたしまして、さらにこの九月以降今後一年間の平均レートを百五十五円、原油価格十五ドル、LNG価格二十三ドルとして計算をいたしますと、昨年の十月から来年の九月までの円高、原油値下がり差益の額は、現在実施されております還元額の電力九千七百十四億円、ガス一千百四十五億円を差し引きましても、電力九社で二兆一千八百四十億円ですね。ガス三社で千六百六十七億円にもなるわけです。これらは全額を一般家庭、円高で苦しんでいる中小企業あるいは農家に重点的に直ちに還元すべきではないでしょうか。
  167. 岡松壯三郎

    ○岡松政府委員 お答え申し上げます。  まず、先生前提にお使いになられました先ほどの数字でございますが、先生指摘のようにその時点の為替レート及び原油価格をベースにいたしております。そこから今お話しのありましたような、先生が前提を置かれました百五十五円、十五ドルというところまで一気に掛け算をいたしますと、これは概算でございますので大きな狂いを生じてくるというふうに考えております。  仮に、生じている差益をどこに還元するかということで、先生の御趣旨はそれを特定の分野に返してはどうかという御趣旨でございますが、電気料金につきましては御存じのように公益事業法に基づきまして原価主義ということになっておりますと同時に、また公平の原則ということが決められております。したがいまして、特定の分野に差益を集中的に返すということは、そういう考え方はとれないというのが法の趣旨であるというふうに考えておる次第でございます。
  168. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 いろいろおっしゃいましたけれども、私が示しました数字は、あなた方通産省がお出しになった数字や基準を使って計算をしているわけです。  最近発表されました経済企画庁の物価モニターの調査結果によりましても、電気料金の引き下げ幅は不満というふうに答えた人が約六割にも上っているわけです。為替レート、石油価格等の現実の推移や実績も、通産省差益還元の基準にした水準をはるかに下回っているわけです。私は今の答弁を到底認めるわけにはいきません。  先ほど示しました差益額を一般家庭に五割、残りのうちの七割を中小企業と農家に還元をすれば、一般家庭では電気料は年間二万九千円、一ヵ月平均二千四百円還元できます。ガス料金は年間一万六千三百円、一ヵ月平均で千四百円、また中小企業と農家に先ほど申しました割合で返還するならば、電気料は年間十一万九千円、一ヵ月平均九千九百円も返すことができるわけです。中小企業大臣であるという認識を持つと自負をしていらっしゃる通産大臣、私が申しましたこうした方向で直ちに差益還元すべきではないでしょうか。
  169. 田村元

    田村国務大臣 私どもには行政を混乱せしめてはならない義務がございます。でありますから、十二分に見きわめをつけませんと、簡単に結論を出すわけにいきません。  例えば原油でございますけれども、九月上旬の九ドル七十八セント、これはまだ未確認でありますが、これを底値に、中旬は十一ドル〇五、下旬は十一ドル四五、十月上旬が十二ドル一二というふうに徐々に値が上がってきております。そしてOPECの中でも、十八ドルぐらいで安定させたらどうだという意見もあるようであります。しかも、有力な国の意見としてあるようであります。もし十八ドルということになりますと、日本へ入れば十九ドルになります。  そういう不確定要素がまだございますし、為替レートでもそうでございます。為替レートでも、百五十四円、百五十五円というところの今の小康状態、これが安定していいのでしょうか。私はこれで安定されてはたまらぬと思うのですよ。下手なことをすれば、それこそ零細企業は皆もう総倒れになると思うのです。もう少し円を安くしなければならぬと思うのです。我々はそのためのいろいろな作業をしているわけでございます。でありますから、なお投機的な面が多分に見られる為替レートの変化でございますから、しばらくこれを見きわめたい、こういうことを申し上げてずっと答弁をしてきたわけでございまして、これは政治家として、また所管官庁を預かる立場として当然の慎重さと言っていいだろうと私は思っております。
  170. 佐藤信二

    佐藤委員長 藤原君に申し上げます。時間が過ぎておりますので……。
  171. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 はい、もう終わります。これで最後にします。  行政を混乱させてはならない義務と、それからもう一つ国民の暮らしを守る義務があろうというふうに思いますので、私は、ただいまの御答弁は、日々刻々深刻さを増して苦しんでおります国民、または、政府が人為的につくり出した円高で追い詰められている中小零細企業の苦しみをよく理解をしていただけていないというふうに感じるわけです。福井や石川では、先ほどの一匹五十メートルの織り工賃、これが二、三年前は千五百円、今は四百円、そのうち二百円は電気代なんですね。お正月の元日と二日に休むだけだ、三日目からスイッチを入れて、後はお盆までスイッチを切ったことがないというのが正真正銘の姿であるわけです。それで、工賃から電気代や経費を差し引けば生活費は残らない、そういうところまで追い詰められているわけです。  ですから大臣、今こそ円高差益を早期に還元をしてこの苦境を救っていただく、この義務を果たしていただくチャンスであろうというふうに思うわけです。ですから、差益額の五割を一般家庭に、残った分の七割は中小企業と農家に返してください、これが強い要望です。  しかも、先ほどから私が示しました還元額はまだ大変控え目なものなんです。昨年来、我が党の工藤議員が本委員会でも予算委員会でも要求をしましたように、八〇年の料金改定のときの原価過剰見積もりによるもうけ過ぎというのが、電力九社でさらに一兆五百二十四億円ですね。ガス三社で二千六億円もあるわけです。こうした差益の全額を一般家庭、中小企業、農家に重点的に、しかも直ちに還元をしていただきたい。さらに、電力、ガスはもちろんのこと、灯油などの石油製品あるいは輸入消費物価についても差益還元を徹底して実行していただきますように強く求めまして、私の質問を終わらせていただきます。
  172. 佐藤信二

    佐藤委員長 次回は、来る二十九日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十四分散会