運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1986-12-09 第107回国会 衆議院 決算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年十二月九日(火曜日)     午前九時四十一分開議  出席委員    委員長 堀之内久男君    理事 糸山英太郎君 理事 上草 義輝君    理事 熊谷  弘君 理事 古賀  誠君    理事 近藤 元次君 理事 新村 勝雄君    理事 草川 昭三君       岡島 正之君    高橋 一郎君       古屋  亨君    穂積 良行君       森下 元晴君    谷津 義男君       小川 国彦君    渡部 行雄君       小川新一郎君    古川 雅司君       大矢 卓史君    野間 友一君  出席国務大臣         労 働 大 臣 平井 卓志君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 稲村 利幸君  出席政府委員         環境庁長官官房         長       山内 豊徳君         環境庁企画調整         局長      加藤 陸美君         環境庁企画調整         局環境保健部長 目黒 克己君         環境庁自然保護         局長      古賀 章介君         環境庁大気保全         局長      長谷川慧重君         環境庁水質保全         局長      渡辺  武君         運輸省海上技術         安全局船員部長 増田 信雄君         労働大臣官房長 岡部 晃三君         労働大臣官房審         議官      佐藤 仁彦君         労働省労政局長 小粥 義朗君         労働省労働基準         局長      平賀 俊行君         労働省婦人局長 佐藤ギン子君         労働省職業安定         局長      白井晋太郎君         労働省職業能力         開発局長    野見山眞之君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部保安課長  伊藤 一実君         経済企画庁調整         局財政金融課長 大塚  功君         経済企画庁調査         局海外調査課長 大来 洋一君         環境庁長官官房         会計課長    山下 正秀君         法務省入国管理         局総務課長   木島 輝夫君         法務省入国管理         局警備課長   書上由紀夫君         外務大臣官房領         事移住部旅券課         査証室長    木村 光一君         大蔵省主計局司         計課長     兵藤 廣治君         国税庁直税部資         料調査課長   佐々木秀夫君         厚生省社会局生         活課長     矢野 朝水君         林野庁指導部長 小澤 普照君         通商産業省生活         産業局繊維製品         課長      川田 洋輝君         労働大臣官房会         計課長     伊藤 欣士君         会計検査院事務         総局第二局長  天野 基己君         会計検査院事務         総局第四局長  吉田 知徳君         日本国有鉄道職         員局職員課長  門野 雄策君         決算委員会調査         室長      大谷  強君     ───────────── 委員の異動 十月二十九日  辞任         補欠選任   谷津 義男君     尾身 幸次君 同日  辞任         補欠選任   尾身 幸次君     谷津 義男君 十一月五日  辞任         補欠選任   岡島 正之君     伊藤宗一郎君   高橋 一郎君     宇野 宗佑君  古屋  亨君     小此木彦三郎君   穂積 良行君     海部 俊樹君   森下 元晴君     田中 龍夫君   谷津 義男君     原田  憲君   渡部 恒三君     松野 幸泰君   野間 友一君     工藤  晃君 同日  辞任         補欠選任   伊藤宗一郎君     岡島 正之君   宇野 宗佑君     高橋 一郎君  小此木彦三郎君     古屋  亨君   海部 俊樹君     穂積 良行君   田中 龍夫君     森下 元晴君   原田  憲君     谷津 義男君   松野 幸泰君     渡部 恒三君   工藤  晃君     野間 友一君 同月六日  辞任         補欠選任   野間 友一君     田中美智子君 同日  辞任         補欠選任   田中美智子君     野間 友一君 同月十四日  辞任         補欠選任   野間 友一君     中路 雅弘君 同日  辞任         補欠選任   中路 雅弘君     野間 友一君 同月二十六日  辞任         補欠選任   野間 友一君     工藤  晃君 同日  辞任         補欠選任   工藤  晃君     野間 友一君     ───────────── 本日の会議に付した案件  昭和五十九年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十九年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十九年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十九年度政府関係機関決算書  昭和五十九年度国有財産増減及び現在額総計算書  昭和五十九年度国有財産無償貸付状況計算書  〔総理府所管環境庁)〕  昭和五十八年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十八年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十八年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十八年度政府関係機関決算書  昭和五十八年度国有財産増減及び現在額総計算書  昭和五十八年度国有財産無償貸付状況計算書  昭和五十九年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十九年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十九年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十九年度政府関係機関決算書  昭和五十九年度国有財産増減及び現在額総計算書  昭和五十九年度国有財産無償貸付状況計算書  (労働省所管)      ────◇─────
  2. 堀之内久男

    堀之内委員長 これより会議を開きます。  この際、本委員会が、去る十一月十二日、茨城県下(東海村)原子力施設現地視察を行いましたので、その概要について、便宜本席から御報告申し上げます。  私ほか委員六名は、八時三十分、衆議院正玄関をバスにて出発、車内において、科学技術庁興監理官原研横川次長及び動燃日吉課長から説明を聴取し、十時四十分、原研東海研究所に到着いたしました。  まず、石川副理事長及び更田副所長から原研の歩み、予算、各研究所概要及び現在の主要テーマ等について説明を聴取した後、研究号炉JRR−3)の撤去工事の現場を視察いたしました。  JRR−3は、研究用原子炉として昭和三十七年に運転を開始した国産一号炉でありますが、予算総額三百十八億円で改造工事が進められております。  工事は、原子炉建屋を残したままで炉体撤去し、その跡に新しい炉を設置するものであります。  撤去には、炉体を床から切り離し、つり上げて約三十四メートル水平移動し、大型廃棄物保管庫へつりおろして納めるという原研と清水建設が共同保有する特許工法が採用され、十月十四日につり上げ、十一月七日に保管庫につりおろしております。撤去経費は、モックアップ試験も含めて約十億円であります。  この工法は、工期の短縮、経済性等の利点を有し、類似する原子炉撤去には応用されるものと期待されております。  次に、動燃事業団東海事業所に赴き、石渡副理事長大町理事より東海事業所各種施設とその役割等について説明を聴取した後、使用済み燃料処理工場において再処理工程視察いたしました。  同工場は、一日の処理能力が約〇・七トンで、昭和五十六年一月から本格運転に入っており、昭和六十年度には七十三・五トンを処理し、約百億円の収益を上げております。  現在、諸準備が進められている日本原燃サービスの再処理工場建設運転に当たっては、動燃が同工場で得られた技術蓄積もと技術協力を行うこととなっております。  次いで、高レベル放射性物質研究施設視察いたしました。  同施設では、高速炉燃料リサイクル技術及び高レベル放射性廃液処理処分技術に関する試験研究を行っておりますが、昭和五十七年十二月から再処理工場からの実廃液を用いてガラス固化試験及び固化体評価試験を行っており、これらの試験結果をもとガラス固化プラント設計建設を進めることとしております。  本視察中、特に、原子炉使用済み燃料の再処理及び廃棄物に関する安全性、ノーハウの民間利用にかかる料金問題、その他技術的諸問題について質疑が行われました。  十五時十五分、視察を終了し、同施設を出発いたしました。  以上、御報告申し上げます。  この際、お諮りいたします。  ただいま御報告いたしました内容の詳細につきましては、これを視察報告書として本日の委員会議録に参照掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 堀之内久男

    堀之内委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────     〔報告書本号末尾に掲載〕      ────◇─────
  4. 堀之内久男

    堀之内委員長 昭和五十九年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、まず、総理府所管環境庁について審査を行います。  この際、環境庁長官概要説明会計検査院検査概要説明を求めるのでありますが、これを省略し、本日の委員会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 堀之内久男

    堀之内委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────    昭和五十九年度歳出決算に関する概要説明                   環境庁  環境庁昭和五十九年度歳出決算につきましてその概要を御説明申し上げます。  まず、昭和五十九年度の当初歳出予算額は、四百三十五億三千三百十八万円でありましたが、これに予算補正追加額一千三百六十三万円余、予算補正修正減少額五億一千六百四十三万円、予算移替増加額一億一千三百九十一万円余、予算移替減少額二十七億九千九百七万円余、前年度からの繰越額一億四千四十七万円余を増減いたしますと、昭和五十九年度歳出予算現額は、四百四億八千五百六十九万円余となります。この予算現額に対し、支出済歳出額四百一億二千二百三十五万円余、翌年度への繰越額一千六百八十八万円余、不用額三億四千六百四十五万円余となっております。  次に、支出済歳出額の主なる費途につきまして、その大略を御説明申し上げます。  第一に、公害防止等調査研究関係経費といたしまして、五十八億一千四百四十三万円余を支出いたしました。これは、化学物質実態調査等実施するための経費及び国立公害研究所国立水俣病研究センター運営等経費として支出したものであります。  第二に、自然公園関係経費といたしまして、四十四億三千七十三万円余を支出いたしました。これは、自然公園等における管理及び園地、博物展示施設長距離自然歩道等整備並びに渡り鳥の調査、絶滅のおそれのある鳥獣の保護対策等経費として支出したものであります。  第三に、環境庁一般事務経費といたしまして、二百九十八億七千七百十七万円余を支出いたしました。これは、公害防止を図るための施策推進に必要な調査費地方公共団体に対する各種補助金公害防止事業団及び公害健康被害補償協会に対する交付金環境行政に従事する職員資質向上のための研修所運営費並び環境庁一般行政事務等経費として支出したものであります。  最後に、翌年度繰越額不用額について主なるものを御説明いたしますと、翌年度繰越額は、自然公園等施設整備費において、異常気象等によって事業実施に不測の日時を要したこと等により年度内に完了しなかったものであります。  また、不用額は、退職手当等人件費を要することが少なかったこと等のためであります。  以上簡単でありますが、昭和五十九年度決算概要を御説明申し上げました。  よろしく御審議のほどお願いいたします。     …………………………………    昭和五十九年度決算環境庁についての検査概要に関する主管局長説明                 会計検査院  昭和五十九年度環境庁決算につきまして検査いたしました結果、特に違法又は不当と認めた事項はございません。     ─────────────
  6. 堀之内久男

    堀之内委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小川国彦君。
  7. 小川国彦

    小川(国)委員 最初に、環境庁長官にお尋ねをいたしたいと思います。  環境庁長官には、御就任以来、日本国土環境保全ということに大変御尽力をなすっておられまして、進んでいろいろ現地ごらんになる、こういうことで、先般は知床国有林伐採問題等についても、みずから現地へ出向かれて視察をなされた、そういう点で私ども評価をいたしているわけでありますが、国土保全、特に国有林保全自然環境保全ということについては、国民ひとしく関心を強めているときであり、私どもも国政の場でこうした問題について一つ一つ環境保全という問題を大切に考えていかなければならない、こういうふうに思うわけであります。  そういう意味で、スーパー林道というものが各地につくられてきているわけでありますが、こうしたスーパー林道等について長官が御視察なすったことがあるかどうか。それから、きょう私は奥鬼怒スーパー林道の問題についての質問をさせていただくわけでありますが、これも大石長官時代から、あるいは鯨岡長官、長い歴史的な経過を持った問題なんでありますが、こういうようなスーパー林道等現地を御調査なすったことがあるか、また、今後そういうような現地ごらんになって、スーパー林道あり方等についても御検討なさるお考えがあるかどうか、その辺をまずお伺いしたいと思います。
  8. 稲村利幸

    稲村国務大臣 小川先生の今の御質問、私は栃木県の出身でございますので、奥鬼怒の全部ではありませんが、一部は行ったことがございます。しかし、長官として改めてこの問題を視察いたしたことはありません。  あとは、自然環境保全ということについては、十分心しているつもりでございます。
  9. 小川国彦

    小川(国)委員 問題によっては現地ごらんになってというようなお考えは、いかがでございますか。
  10. 稲村利幸

    稲村国務大臣 機会があれば、喜んで視察をさせていただきたいと思っております。
  11. 小川国彦

    小川(国)委員 次に、これは事務当局の方が詳しいと思うのでございますが、昭和四十六年当時、この奥鬼怒スーパー林道につきまして、当時の大石武一長官が、尾瀬道路は認めない、中止する、こういうような御発言があったという経過については御存じのことと思いますが、その当時のいきさつは御存じでございますか。
  12. 古賀章介

    古賀政府委員 ある程度承知をいたしております。
  13. 小川国彦

    小川(国)委員 その当時は尾瀬道路を認めない、こういう発言であったことは間違いございませんか。
  14. 古賀章介

    古賀政府委員 尾瀬道路について中止を求める、関係方面に要請をするということを当時の大石長官がやられたというふうに承知をいたしております。
  15. 小川国彦

    小川(国)委員 その当時の理由はどういうような理由でございましたでしょうか。
  16. 古賀章介

    古賀政府委員 尾瀬ケ原並びに尾瀬沼の貴重な自然というものを保護するというような観点であったと思います。
  17. 小川国彦

    小川(国)委員 環境庁長官を初めとするそうした厳しい姿勢があったのでありますが、いろいろな政府の内情、どういう経過があったか、私もつまびらかでないわけでありますが、その後スーパー林道がいろいろな経過を経てとうとう実施されるようになった。そういうことで、奥鬼怒原生林があるということで、ここへの道路の開通ということについては、自然環境破壊ということから相当な懸念があったわけでありますが、昭和五十六年七月に鯨岡長官現地視察なさったというようなことがございまして、そのときにいわゆるスーパー林道自然破壊をするおそれのあるスーパー林道としては認められない、しかし三メートル幅の林道としては認める、俗に鯨岡裁定と言われる一つの判断が示された、こういうふうに承っているわけでありますが、その経過についてはいかがでございますか。
  18. 古賀章介

    古賀政府委員 今先生指摘になりましたように、鯨岡長官のときでございますが、地域林業振興日常生活に資する道路必要性も否定し得ないとの観点から、林業専用林道としての構造規模管理を備える道路としてならば認める、観光用は認めないという基本方針をお出しになったわけでございます。  幅員につきましては、基本的な幅員は三メートル、有効幅員三メートル、路肩〇・二五から〇・五メートルでございますので、全幅は三・五から四・〇メートルということにいたしたというふうに承知をいたしております。
  19. 小川国彦

    小川(国)委員 ところが、スーパー林道ではない、あくまで林業専用林道である、こういうことで今お話しのように三・五メートルから四メートルまでの範囲、道路は三メートル、こういう基本原則の上でお認めになったというふうに承知をしているわけでありますが、その後林野庁当局工事施行状況を見ますと、これが四・六メートルの幅員工事部分的に行われてきている、こういうふうに承っているわけでありますが、そのことについて林野庁の方はどういう部分にそういう幅員道路をおつくりになったのか、その辺をちょっと経過説明願いたいと思います。
  20. 小澤普照

    小澤説明員 お答えいたします。  この林道は、今先生のおっしゃいますように、昭和五十六年におきます環境庁長官見解表明がございまして、観光が主たる目的となるような林道は認められないが、林業振興災害防止地域住民日常生活の改善に寄与する林道必要性は否定し得ないという御見解をいただきまして、実施しているわけでございます。  したがいまして、一定区間につきましては、構造規格もいわゆる三・五メートルの二級林道規格工事をいたしておりますが、またその方針で今後もやるわけでございますけれども、御指摘の一部区間お話が今出たわけでございますが、これは実は実態トンネル工事をしておりますので、このトンネル工事実施することに伴う機械の使用、それから資材の置き場が必要でございます。また、堀削土砂の運搬のためのトラックの回転場所引き返し場所でございますが、最小限必要な幅員を確保する必要がありまして、部分的に三・五メーターを超える部分があるわけでございますけれども、この部分につきましては、工事完成後、規定の幅員に復することとしているものでございます。
  21. 小川国彦

    小川(国)委員 そういたしますと、三・五メートルではなくて現実に幅員四・六メートルになりましたところは、工事終了後またすべてもと基本原則三メートルに戻す、こういうことでございますか。
  22. 小澤普照

    小澤説明員 そのとおりでございます。
  23. 小川国彦

    小川(国)委員 そういたしますと、道路に対する補助金は、今御答弁のように幅員三メートル場合には二級林道である、この場合の補助率は四五%、私どもはこういうふうに承っているわけでありますが、この奥鬼怒スーパー林道につきまては、実際は大規模で多目的なということで六〇%の補助がなされている。こういうことになますと、今の御説明の、あくまでも二級である、こういう説明とは相反してくるのではないか、こういうように思いますが、この点はどういうわけでございますか。
  24. 小澤普照

    小澤説明員 この林道につきましては、俗称スーパー林道ということが言われているのですが、これは根拠は、森林開発公団法に規定されております特定森林地域開発林道というのが正式の名称でございまして、いわゆる多目的林道とされておるわけでございます。ところが、自然環境に対する影響の問題というようなことを考慮いたしまして、一定区間につきましてはその幅員規模をいわゆる通常の林道の二級林道規格実施しておりますけれども観光等につきましてはマイカー規制というようなことが出てくるわけでございますけれども一定区域については規格構造を縮小して実施しておりますけれども実施意味合いは、目的はあくまで特定森林地域開発林道であるということは変わらないというように考えておりますので、そういう意味でその補助率特定森林地域開発林道補助率を用いているわけでございます。
  25. 小川国彦

    小川(国)委員 そうすると、これは環境庁との合意事項に反することになってくるのではないのですか。環境庁との合意の中では、そういういわゆるスーパー林道は認められない、なるがゆえに三メートル幅の林道なのだ、林業専用林道なのだ、こういうことで合意がなされたがゆえに、当然二級林道補助率工事が施行されるべきであるのに、正確な補助率は何%か、これをここではっきりさせていただきたい。
  26. 小澤普照

    小澤説明員 私どもといたしましては、環境庁との調整を了して実施しているものでございますので、その点につきましては五十六年の環境庁長官表明の趣旨に反していないというように考えているわけでございますが、やや詳しく申し上げますと、その当時の見解表明の要旨は、先ほども申し上げましたように、観光が主たる目的となるような林道は認められないがということがございましてやっておりますけれども、さらにその見解表明の中には、林道を認めるに当たっては、自然環境保全に留意した工夫がなされるとともに、完成後の管理についても十分な配慮が必要であるということがございます。  さらに、その長官見解表明を受けまして事務的調整をいたしたわけでございますけれども、この場合、いわゆる一定区間八丁ノ湯から奥、八丁湯以奥と言っているわけでございますけれども工事につきましては森林開発公団環境アセスメント調査を行い、その結果を工事等に反映させるということが一つ。それから、自然環境に対する影響を極力少なくするため、林道幅員は二級林道相当に縮小するということが一点。それから、今後開設する八丁ノ湯−大清水間については、マイカー等交通規制を行うという事務的調整を行いました。なお、工事実施に当たりましては、あらかじめ詳細設計図書をもちまして環境庁長官に協議を行っておりまして、環境庁長官より異存がない旨の回答があったもので、これについて工事をしているものでございます。  それからなお、補助率の詳細につきましては、補助率が〇・六、六〇%でございますが、これに調整率というのが、係数が一・〇四五五かかりまして、実質補助率は六二・七三%でございます。
  27. 小川国彦

    小川(国)委員 この林道専用、しかも二級林道で、そうすると六二・七%という補助率は、この全行程にわたってこの補助率実施されているのですか。
  28. 小澤普照

    小澤説明員 そのとおりでございます。
  29. 小川国彦

    小川(国)委員 そうすると、今も読み上げられた、林道幅員は二級林道を相当とすると環境庁との合意がなされておって、そしてその二級林道補助率は四〇%ですか、こう承っているわけでありますが、ここのところにおいては皆さんの方は六二・七%ということは、補助率において協定に反するのではないですか。
  30. 小澤普照

    小澤説明員 ただいまの補助率お話は、いわゆる一般補助林道補助率先生おっしゃっているかと思いますけれども、私どもが現在この奥鬼怒林道に適用しております補助率は、あくまでも先ほど申し上げましたように特定森林地域開発林道でございまして、その補助率を用いているわけでございます。  なお、その規格構造によって補助率が変わるというよりは、これは目的によって変わるということでございまして、また、この幅員を縮小しておりますゆえんは、あくまでも自然環境破壊をしないため、そこに配慮をしているために構造上の縮小を行っているものでございますので、補助率については変更というものではないというように考えておるわけでございます。
  31. 小川国彦

    小川(国)委員 これは建前に反すると思うのですね。皆さん方が二級林道だということで環境庁説明したからには、補助金工事実態もやはり二級林道として行うべきなんですよ。それを皆さんは、ここのところで特定森林地域だという理由をつけて、そして六二・七%の補助率に持っていったというのは、実質的にはスーパー林道補助率と変わらないんじゃないですか。
  32. 小澤普照

    小澤説明員 規格構造の問題につきましては、二級林道とするということではございませんで、二級林道で使っております幅員を適用するという意味でございますので、先生にお言葉を返すようでまことに恐縮ではございますけれども、二級林道にするという意味とは、そこは意味合いが異なるかと思うわけでございます。
  33. 小川国彦

    小川(国)委員 しかし、あなた方のやっている工事は、実質的には幅員を三メートルじゃなくて四・六メートルというスーパー林道規模工事をやって、しかも補助率はそういう割合の補助率にして、そうすると三メートルという幅員は全くの建前にすぎない、こういうことになってしまうと思うのですがね。この点、環境庁はその点についての御説明を受けて、かつ、これに同意なすっていらっしゃるのですか。
  34. 古賀章介

    古賀政府委員 私どもは、留意事項を遵守していただきたいということを強く要望しておるわけでございまして、補助率の問題については特段触れておらないということがございます。あくまでも留意事項の遵守ということを森林開発公団に求めておるということでございます。
  35. 小川国彦

    小川(国)委員 これは林野庁の行政のあり方として今後ただしてまいりたいと思いますが、そうしますと、四・六メートルの幅員になった部分について、これは環境庁として同意なすったのですか。
  36. 古賀章介

    古賀政府委員 これは先ほども御答弁申し上げましたように、有効幅員三・〇メートル、全幅は三・五ないし四・〇メートルということで同意をいたしておるわけでございますが、先ほどもお話がございましたように、部分的には、ないしは一時的にはそれを超えるものがある。また、待避所部分などでは全幅が五メートルを上回るものもあるということでございますが、協議内容に基づく工事が行われているものと理解をいたしております。
  37. 小川国彦

    小川(国)委員 林野庁、こういうふうに待避所部分ということで五メートルということでこういう場所をつくりまして、結局つくった後は、これはやってしまえば、こういう部分はまた交通に必要なんだ、だからこれを壊すのはもったいないということで、既成事実にされていくというのがおよそ役所のやり方なんですよ。結局そういうことになるんじゃないですか。
  38. 小澤普照

    小澤説明員 この林道工事実施に当たりましては、自然環境に対する影響等も十分に考慮してやることといたしておりますし、また、その工事につきましても環境庁の方と十分な協議をしつつ行うということにしておりまして、この方針はいささかも変わりませんし、したがいまして、一時的な車の回避場所等につきましては、当然最終的には規定の幅員で実行することといたしております。御理解いただきたいと思います。
  39. 小川国彦

    小川(国)委員 これは長官にもお伺いしますが、約束は今守ると言っておるのですが、役所のことを信用しないということは大変失礼なんですが、こういうふうに環境庁と三メートルということで決めてきたものを、現実にはそれに違反した工事を行って四・六メートルにして、終わってしまえばそれを既成事実で残す、こういうのがやり方なんですが、これに対しては、環境庁としては、今林野庁が言うように、終わったら全部壊してもとどおりの幅員を守るということを守らしていく、こういうことについて環境庁の御判断はいかがですか。
  40. 稲村利幸

    稲村国務大臣 環境庁林野庁の協議内容については、これはあくまで守っていただくように環境庁としてはお願いをしていくつもりでございます。
  41. 小川国彦

    小川(国)委員 大臣、非常に紳士的に、お願いをしていくとおっしゃられたのですが、守らせる、ひとつこういう決意でお願いしたいと思いますが、いかがでございますか。
  42. 稲村利幸

    稲村国務大臣 その方向で、ぜひこちらからも強い要請をいたします。
  43. 小川国彦

    小川(国)委員 この林道は、林業のための専用ということの道路よりも、どうもスーパー林道ということで、観光目的が主に逆転するのじゃないかという懸念を、私も現地を見てきた者として痛切に感じているわけです。そういう意味からいうと、この内容についてはなお検討されなければならないというふうに思うわけですが、皆さんの方の現在までの、五十七年までに使われた予算がほぼ四十億、さらに事業費が増加して今九十八億五千三百万ということで、当初計画二十億から見るともう五倍の予算がかかっているという実態と承っているのですが、数字はこのとおりですか。
  44. 小澤普照

    小澤説明員 ただいまの九十九億円でございますか、これにつきましては、これは計画上の金額でございます。
  45. 小川国彦

    小川(国)委員 そのうち、実施の金額はお幾らになっておりますか。
  46. 小澤普照

    小澤説明員 事業実績でございますけれども、四十五年度から六十年度までの期間にわたります事業費は、総額で六十六億八千七百万円でございます。
  47. 小川国彦

    小川(国)委員 この予算を投じたスーパー林道的な林業専用道路というものがつくられているのですが、この便益計算、どれだけの利益が上がるのか、効用がどれだけ上がるのかということについては、かなり疑問があるわけであります。特に、奥鬼怒スーパー林道ができることによって全体で三十億の経済便益がある、国有林で十万平米、民有林で五万平米ということなんですが、民有林の対象林群が見当たらないのでありますが、ここに民有林の対象林群というのはどういうものがあるのでございましょうか。
  48. 小澤普照

    小澤説明員 ただいま詳細な資料をちょっと持参しておりませんけれども実態は、民有林も存在いたしておりますので、国有林、民有林ともにこの林道の利益を受けるものでございます。
  49. 小川国彦

    小川(国)委員 その点についてはまた林野庁のところで伺いたいと思いますが、最後に、奥鬼怒スーパーのアセスメントについて、環境庁工事工法を変えるということに同意をなすったのかどうか。というのは、景観上の評価について、さまざまの工法があるわけでありますが、ここのところをできるだけ自然景観を損なわない、こういうことで、コンクリート工法ではなく、できるだけそこに草木を植えて自然の景観を大切にする、こういう配慮をなすということになっているのですが、最後に、その点について現地が変わってきているような状況にあるのですけれども、この点は確認されているかどうかですね。
  50. 古賀章介

    古賀政府委員 当初協議をいたしました内容と、その工法については変わっておりません。
  51. 小川国彦

    小川(国)委員 ところが、現実には工法が変わってきているのです。林野庁、これは変わっておりますね。時間がないから申し上げますが、ブロックの工法でゼロからマイナス一〇の間でやるというものが、ウオールコンクリート工法でマイナス三〇で最低の工法に変わっている、こういう実態があるのですが。
  52. 小澤普照

    小澤説明員 ただいまそのコンクリート等の詳細な資料についてはちょっと持っておりませんけれども、この工事施行に当たりましては、すべて詳細な、設計図書と称しておりますが、設計の書類を環境庁とよく協議をして実行しておりますので、その工事内容に問題があるとは考えておりませんけれども、なお詳細につきましてはまた後ほど先生に御報告させていただきたいと思います。
  53. 小川国彦

    小川(国)委員 時間が参りましたので、今私の質問点に答えていないわけですが、その工法が変わった指摘に答えてないのですが、この点については、環境庁長官も地元ということで大変心強い感を持っておりますので、機会が得られましたら、ぜひ長官在任中に長官の立場で、まして地元の環境保全意味を持つ、奥鬼怒のすばらしい景観、環境を保全するという立場から現地ごらんになっていただきたい、こういうように思います。
  54. 稲村利幸

    稲村国務大臣 機会がありましたら、先生の御要望におこたえしたいと思います。
  55. 小川国彦

    小川(国)委員 終わります。
  56. 堀之内久男

    堀之内委員長 新村勝雄君。
  57. 新村勝雄

    ○新村委員 私は、環境問題のうちで沼、湖、内水面の汚染についてお伺いをいたしたいと思います。  特に都市近郊の内水面が汚染が進んでおるわけでありまして、これは前にもお伺いいたしましたけれども、千葉県の手賀沼、印旛沼の汚染が非常に進んでおるわけでございまして、そのうちで手賀沼の汚染はワーストワンということであります。閉鎖水面の汚染については、既にこの問題が取り上げられてから久しいわけでありますが、その抜本的な解決が非常に難しいという面もございまして、例えば手賀沼の汚染にいたしましても、浄化がほとんど進んでいないという状況であります。  手賀沼を初め、特に都市近郊の内水面、閉鎖水面の汚染の現状について、まずお伺いしたいと思います。
  58. 渡辺武

    ○渡辺(武)政府委員 お答えいたします。  先生指摘のように、我が国の水質の保全という観点からいたしますと、問題になりますのは閉鎖的な水面でございます。閉鎖的な水面と申しますと、一番最初に問題になりますのが御指摘のような湖、沼でございますし、続きまして、海の中でも瀬戸内海とか東京湾とか伊勢湾とかいったような地形的に湾灘になっておるというところでございまして、私たち、環境基準というあるべき水質の姿というものを決めておりますけれども、それの達成状況を見てみますと、湖にとりましては、一般的でございますけれども、平均的に申しまして大体四割台が達成という状況になっております。  特にその中でも、御指摘のような都市近郊と申しますか、市街化、都市化の激しいところにつきましては、汚染の程度がひどうございまして、先生指摘の手賀沼、印旛沼と申しますのは、周り全体が都市化の中にあるということでございまして、同じような湖であります霞ヶ浦あるいは琵琶湖といったものもかなり汚染が激しくなってまいっておりますけれども、まだ湖の周辺全面が都市化するといったような状態ではございませんので、手賀沼、印旛沼の汚染は、霞ケ浦あるいは琵琶湖なんかに比べましてもひどい状況にあるというのが現状でございます。
  59. 新村勝雄

    ○新村委員 都市近郊の閉鎖水面は周辺の都市化によるのが一つ、それからまた、その内水面の周囲まで極めてその周辺を利用しようということで埋め立て等もやっておるわけです。したがって、水面の面積あるいは水量が減っておる、その一方で汚水が流入をしておるわけでありますから、その二つの面からやはり解決をしていかなければいけないと思うのですね。できればその水量をふやすという工夫が必要だと思います。それから流入する汚水を規制するということ、この両面からの対策が必要だと思います。  例を手賀沼にとるならば、手賀沼の面積は過去において約三割あるいはそれ以上も水面が減っておる、減少しておるわけです。したがって水量も減っておる。それに対して、周辺からの汚水の流入の量は倍加をしておる。それから、質的にも極めて悪化をしておるという状況であります。  これに対しまして、政府におかれましても、特に建設省ではその対策をお考えのようでありまして、北千葉導水路事業によって水量をふやしていく、きれいな水を補充していこうという計画もおありのようでございますし、また流域下水道の計画もありまして、これも一定の成果を上げておるわけでありますけれども、そういった面からの、両面からの対策を今おやりになっておりますけれども、一刻も早くこれを進めていただきたい。  沼の汚染については、内水面の汚染については、一定程度を超しますとなかなか回復が難しい。手賀沼は既にもう死の沼だなんて言われておりますけれども、その限度を既に超えておると言われておりますが、一定の限度を超えますと、これを回復する経費にしても努力にしても、倍加するあるいは三倍加するというようなこともございますので、そういった面での総合的な対策をなお一層御努力をいただきたいと思います。その点について伺います。
  60. 渡辺武

    ○渡辺(武)政府委員 手賀沼、印旛沼、特に手賀沼につきましての状況、あるいはそれにつきましての対策といったものにつきまして、ちょっと御説明申し上げたいと思います。  先ほど申し上げましたような一般論の中で、特に都市化が進んでおるということでございまして、手賀沼、印旛沼につきましては汚染の度が高いわけでございますが、その中心は、工業排水というよりもむしろ生活系の汚濁が非常にウエートを高めてまいっておるわけでございます。  千葉県におきましては、五十七年からこの水をきれいにするための計画づくりをされまして、いろいろな事業をやってこられておりますこと、先生承知のとおりでございまして、私たちといたしましてもこれに協力をしてまいったわけでございます。しかし、現状におきましても、あるべき姿から見ますと、かなりまだ汚染の度は高うございますので、私たちといたしましては、これを抜本的にきれいにするための措置をとらなければならないということでございまして、御承知のように、湖沼法と俗称いたしております法律を六十年から施行をさせていただいておるわけでございます。  もちろん、この手賀沼、印旛沼、両湖につきましてもこの湖沼法に基づきます指定湖沼に指定をいたしまして、指定をいたしますと、各県の知事さんが中心になりまして、いろいろな水をきれいにするための計画づくりをすることになります。それは水質保全計画というのでございますけれども、千葉県におきまして手賀沼、印旛沼につきましての水質保全計画の策定作業が今進められているところでございますが、これが一日も早く策定されることを私たちは強く望んでおるところでございます。  この計画では、まだでき上がっておりませんので、中身をはっきり私たちも承知しておりませんけれども、基本となりますところはやはり三つあるのではないかと思います。  一つはハード面でございまして、汚染の中心が先ほど申し上げましたように生活系の家庭雑排水の負荷が一番中心でございますので、これを除去しますためには、何はともあれ下水道の整備が必要でございます。両湖におきましても、それぞれの流域を中心にしました広域な流域下水道の整備建設省を中心に鋭意進められておるわけでございますが、これをぜひとも計画どおり進めていくというのがまず第一だと思います。  あわせまして、先生指摘の水を多くするといいますか、きれいな水をそこに導入していくという計画、これも六十五年度を目標にいたしました手賀沼につきましての導水事業というのがかなり前から実施されておりまして、まだ事業実施中でございます。これも毎秒十トンということでございますので、一日当たり八十六万トン程度になろうかと思いますけれども、今手賀沼への一日当たりの流入量は大体四十万トンと言われておりますので、それの倍近くの利根川のきれいな水が流れ込むというようなことにもなるわけでございまして、浄化にとっては非常に大きな効果がある事業だと思っております。それを計画どおり進めていく、こういうハード面での下水道と導水事業実施、これがまず第一になろうかと思います。  それから第二番目は、ソフトの面でございますが、湖沼法が制定されまして水質保全計画ができ上がりまして実施されるということになりますと、私たちがやっております一般的な水質汚濁防止法に基づきます排水規制、これよりもっときめの細かな、現地の事情に合いましたようなきめの細かな排水の規制が可能になるわけでございます。そのようなことも十分やっていかなくてはならぬということでございます。  それから第三番目は、同じくソフト事業でございますけれども、何はともあれ家庭からの雑排水の流入が一番中心でございますので、住民一人一人の御協力にまつところが非常に大きいわけでございます。台所、風呂場等から流します水につきましては、できるだけごみといいますか固形物は一緒に流さないようにするといったような、非常に地道な話ではございますけれども、一人一人の御協力を得るための啓発事業が非常に大きなウエートを持つのではないかと思っておりまして、そのような面でも重点を置いて仕事を進めてまいらなければいけないと考えております。  以上三つが中心になろうかと思いますけれども、早くこの水質保全計画が千葉県において策定されまして、それが実施に移されることを私たちとしましても希望しますし、そのための御協力を申し上げてまいりたいと考えておる次第でございます。  以上、長くなりましたが。
  61. 新村勝雄

    ○新村委員 湖沼法ができまして、それに基づいて着々と改善の施策が進められておることについてはまことに御同慶にたえないところでありますが、今お話しのように、下水道にしても、そういうハード面については既に仕事が進んでおりますけれども完成までにはまだ若干の時間があるわけですから、それまでの間あるいはそれが完成した後においても、沿岸住民の環境浄化に対する御協力、これが必要なわけです。そして当面の問題としては、各家庭においていかに排水を規制していくか、あるいは流れ出る水の個々の工夫における改善、各家庭の工夫によってかなり程度が違ってくるはずでありますから、それらの住民の御協力を期待する面も重要だと思うのですが、そういった点で、この沿岸をそういう排水を中心とした生活環境浄化の特別の指定地域にするとか、そこに対して物心両面の奨励措置をとるというようなお考えはございませんか。
  62. 渡辺武

    ○渡辺(武)政府委員 家庭雑排水につきまして、各家庭が流しますときに、できるだけ固形物を中に入れないようにするというのが基本でございまして、そのようなことを啓発するため、あるいはそれをそれぞれの地域で共同してやっていこうというモデル的な事業、そのようなものを私たち環境庁としても予算を持っておりまして、手賀沼、印旛沼の地域におきましてもそのような仕事をやっていただいております。  六十二年度予算におきましても、若干それを拡充した形で予算要求を今やっておるところでございますが、先生おっしゃるとおりやはりそれが基本でございまして、モデル事業ではございますけれども、そのような事業を活用していただきまして、啓発を強めてまいりたいということでございます。  余談になりますが、私も先月現地を見せていただきました。固有名詞を挙げて恐縮でございますけれども、手賀沼の汚染の中心になっております柏市などにおきましては、そのような面での活動を非常に熱心にやっておられまして、聞くところによりますと、一年間に大体百回、一週間に二回ぐらいそれぞれの地区の主婦を集めて、今申しましたような趣旨の会合を持って啓蒙に当たっておるということであったわけでございまして、今後そのような努力が大きな効果を呼んでまいるのではないかと考えておる次第でございます。
  63. 新村勝雄

    ○新村委員 住民に対する啓発、宣伝あるいは住民に御協力を願うという点にこれから特に重点を置いて、今おっしゃったような施策を一層強力に進めていただきたいと思います。手賀沼、印旛沼、まことにローカルなようでありますけれども日本の閉鎖水面の一つの象徴のような格好になっておりますので、ぜひ今後も御努力いただきたいと思います。  それについて環境庁長官、歴代環境庁長官は、御就任になりますといつも千葉県の手賀沼、印旛沼の現地視察をされておるわけでありまして、これが恒例のようになっておるわけでありますけれども、まだ現長官はおいでにならないようであります。環境浄化対策の一つの象徴のようなものでございますので、御都合がつきましたら手賀沼、印旛沼においでいただいて現地を御視察なされ、また住民に対しても御協力をお願いする、あるいは激励をいただくということをぜひお願いしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
  64. 稲村利幸

    稲村国務大臣 大変関心の高い先生の御指摘のこの沼に関しまして、とりあえず今渡辺水質保全局長に行っていただきまして、私も機会があれば視察をさせていただきたいと思います。
  65. 新村勝雄

    ○新村委員 歴代長官がみんないらっしゃっているのですよ。ですから、ぜひ稲村長官も御都合をつけて現地視察をいただきたい、特にお願いいたします。  次に、もう一つの問題。千葉県に関係することばかりで申しわけないのですけれども、東京湾横断道路建設が決まりまして、それに伴って新しい構想が出てきたわけですね。というのは、東京湾横断道路の一部、神奈川県側が海底に潜るわけですけれども、海底に潜るその入り口に、これは千葉県に近いところ、木更津市の沖合になりますけれども、人工島をつくるという構想が最近出されております。まだその詳しい点については発表がありませんし、実は先般質問書を提出いたしたわけでありますけれども、その答弁の内容が極めて不十分といいますか、お伺いしたい点についてはまだ答弁の段階ではないということのようでございますけれども、この問題。  それから、この問題と関連をするわけですが、東京湾というのは、内水面ではありますけれども、首都東京と一体をなす一つ自然環境、自然として極めて重要な地位にあるわけですが、東京湾を将来どうするのか。今まで千葉県側ではかなり埋め立ても進んでおりますし、その埋め立てについても必ずしも東京湾全体の将来構想という観点からなされたとは言いがたいと思います。  いわば浅いところをそのときそのときの考えによって埋め立てしてきたということでありますけれども、そういうことではなくて、東京、そしてその東京に隣接する東京湾あるいは東京湾の沿岸地域、この地帯を将来どうするか。埋め立てをするのであればどの程度埋め立てをするのか、あるいはどういう地点をどの程度に埋め立てするのか、あるいは横断橋というような大きなプロジェクトをつくるとすれば、それと東京との関係、東京湾の自然との関係をどう考えていくのか、あるいは将来、横断道路だけではなくて、東京湾の中にもっと新しい開発が行われるのかどうかというようなことについて、我々は将来の展望は全くわからないわけですし、政府においても、そういう東京湾を中心とする地域の将来の開発構想についての全体構想というものがまだ示されてないように思います。  しかし、全体構想と言っても、遠い将来は別としても、短中期的な東京湾の開発構想あるいは東京湾の自然保護構想、これはなければならないと思うのですけれども、そういった点について現在どういう構想を持っていられるのか。そういう全体構想をお示しになる御予定等がおありになるとすれば、それを伺いたいと思います。
  66. 加藤陸美

    ○加藤(陸)政府委員 先生の御質問、大変広い視野に立った御意見でございまして、なかなか今直ちにどうこうというところまで私どもがお答えできる段階ではないかとは思いますけれども環境庁といたしましては、非常に広い視野に立って、相当長いレンジで、長い期間を頭に置きながら物を考えていくというのが大事な務めかと思っておるところでございますので、非常に概括的かつ事務的な御答弁になりますけれども、若干お答え申し上げたいと思うわけでございます。  先生のただいま御指摘になりました幾つかの問題、これは実は非常に広範な分野にわたるわけでございます。したがいまして、これは政府全体として考え方をまとめつつ、適時タイムリーに必要な対策を考えていくべきものだと存じます。ただ、現在の時点では、先生先刻御承知のとおり、東京湾の特に北部につきましては、例えば羽田空港の沖出しと言っておりますが、埋め立てて、沖合への拡大と申しますか、新しい国内航空に対処できるようにというプランが、現にこれは環境庁も相談にあずかりまして、計画を認めておるところでございます。そのほか、東京港沖合についての諸埋立事業も計画的に行われておるところでございます。これは御承知のとおりだと存じます。  それから、具体的に、東京湾横断道路計画にあわせて人工島の問題をちょっとおっしゃいましたが、これにつきましては、具体的な話には現在なっておらないと承知いたしております。  いずれにいたしましても、この首都東京に隣接いたします東京湾全体のあり方という問題は、先生いみじくも御指摘がありましたように、大きな目で見た自然環境、特に千葉県側には豊かな自然が残されておりますし、特にその中でも自然海岸の豊かな部分、そこには野鳥の貴重な渡来地もあるわけでございまして、こういうものを総合的に考えながら適時適切に対応していくべきものと思っておるわけでございます。  他方、東京の現状及び将来を見渡して諸種の計画案があることも承知はいたしております。この辺につきまして、現時点で総合的にどこをどうしていくかというところまで将来構想にわたっては固まっておりません。  ただ、言えますことは、東京湾は単に東京都に隣接するだけでなしに、千葉県、神奈川県を初めとして関連の広域にわたる区域でございますので、いずれにいたしましても環境庁にはいろいろな形での御相談がある、またあり得る話がたくさんございます。アセスメント、環境影響評価の問題からまいりましても、広域にわたる環境評価という問題が常にあるわけでございますので、その辺は関係各省庁とも連携を密にいたしつつ、適時適切に対応し、先生から御指摘ありましたとおり、基本的に自然環境と人工との関連を十分精査しながらアセスメントを適切に行い、総体的な環境保全が図られるよう考えてまいりたいというのが現在の状況でございます。
  67. 新村勝雄

    ○新村委員 時間が参りましたので、この問題については別の機会にまたお伺いしたいと思います。  ありがとうございました。
  68. 堀之内久男

  69. 小川新一郎

    小川(新)委員 大臣にまずお尋ねいたします。  環境保全の長期構想についてという大きなテーマでございますので、これはぜひ環境庁長官にお答え願いたいと思います。  十二月五日、中央公害対策審議会と自然環境保全審議会とが、昭和六十年代の環境行政の指針となる「環境保全長期構想」をまとめて稲村環境庁長官に答申しております。今までは全部「長期計画」でございました。これが「構想」に変わりました。計画と構想とはどう違うのでしょう。どの時点で計画は構想に変革されたのか、まずこの点、長官にお尋ねします。
  70. 加藤陸美

    ○加藤(陸)政府委員 長官にお答えいただく前に、事務的な問題が若干ございますので、私から答弁させていただきます。     〔委員長退席、古賀(誠)委員長代理着席〕  先生からお話がございましたとおり、「環境保全長期構想」というのは、せんだって関係両審議会から答申が出されたところでございます。  この名前の点でございますが、若干過去の経過を申し上げないといかぬと思いますが、昭和五十二年に環境保全に関する長期計画というのが、昭和六十年までをめどといたしまして作成されております。これは長期計画という名前を冠しておったわけでございます。  今回のものは、その長期計画の目標年次が昭和六十年度でございましたので、昭和六十年代を目指しまして、二十一世紀に向かう準備段階という期間でもございますので、その時期に当たり、環境行政をどういう理念で進めていくべきかということを中心といたしまして、ここ二年間にわたり関係審議会におきまして御検討を重ねていただいておったわけでございます。  そこでは、具体的な定量的なと申しますか、という問題以前に、非常に時代の変革も甚だしゅうございますので、考え方と申しますか、自然保護、それから公害問題を一体的にとらえて、どういう考え方で行政を持っていくべきか、あるいは国民の皆様方からの御協力を得ていくべきかということをねらったものでございます。したがいまして、名称も長期構想というふうに名づけられたわけでございます。  いつ変わったかということにつきましては、これはちょうど十年計画が終了いたしました時点でございますので、これを次の十年の計画のときに構想という名前をつけたわけでございまして、まあ計画といい構想といい、それほど中身をえらく変えるという趣旨で名前が変わったというものでなしに、ただ定量的なもの以前に、哲学というとちょっと言葉が先走りますけれども考え方、政策の方向というようなことが中心になりましたので、構想という名前がふさわしいかということでつけられたものでございます。
  71. 小川新一郎

    小川(新)委員 そうしますと、五十年代計画というものはすべて達成された、それでいよいよ六十年代に入るので構想に変わった、哲学が入ってきた。それはいろいろと複雑で多岐多様にわたる、環境庁だけではどうにもならない、哲学が必要であり、政策の転換が必要であり、さらにそれは前進するために諸施策が必要なために構想となるんだ、そのために計画でないからいろいろな数値が出てこない。非常に美辞麗句、触れ合いだとか思いやりだとか助け合いだとか、ボランティア活動の人たちが口にするようなことを随所にちりばめ、多岐多様にわたるところの公害対策問題についてのシビアな範囲から、加害者負担制度から今や受益者負担に取ってかわるための公害税などというような名称のもとのような、要するに負担の交代制というものさえ打ち出されてくる、これが私がこれから質問する問題でございます。  そこで、例えば東京都の大気汚染の例を一つ取り上げてみても、昭和五十年代に計画された十年間の数値、それがすべて解決されたから新しく構想というものを打ち出してきたんだ、こういうふうに私たちは理解してしまうおそれが出てくるわけですね。  そこで、昭和五十二年に作成された長期計画、前回の計画と今回の構想とはまずどこが違うのか、どういうふうに違っていくのか。窒素酸化物を年間三百三十万トン削減することが必要であるとか、自然環境保全地域の面積を十倍増の六十万ヘクタールにするとかいったような、十年計画の数値が明確に前は示されておった。そんなものは絵にかいたもちなんだ、できっこないんだ、まして、公害問題はおおむね解消されてきたんだ、四十年代、五十年代から見れば物すごく進んだんだ、今や公害対策がすべてに優先するというにしきの御旗ではなくなったんだ、このようなシビアな経済情勢の中ではもうそんなことは言っていられないんだというような概念を持ったのでは、これは大変であります。  例えば、年率四%国民総生産が成長したといたしまして、十年間では一・五倍になるわけですね。この間人口も大都市集中型、急増ではないけれども徐々に徐々に集中してくる、ごみを初め生活関連公害というものは当然大都市に集中してくる、こういう問題がこの構想の中で、どのように解決するかということは打ち出されていないじゃないですか。  しかも、ソ連のチェルノブイリの原発事故、または東京湾横断道の環境保全の問題、大阪新空港の問題、もはや環境庁だけでは対応できない。国土庁、建設省、厚生省、ありとあらゆる省庁にまたがった、四十年代、五十年代とは全く違った形の、そして、ハイテク、バイオテクノロジー、我々が考えてきたこともないような科学の進歩による微生物の発生によるところの公害、こういった問題に対応するのに、私は、このような構想、哲学だけでは絶対に解決できないことをここで警鐘したい。そのための計画指数が全然出ていない。  しかも、環境庁長官は、この保全構想を次官会議、閣僚会議に訴えて、環境庁の六十年代、二十一世紀への橋渡しになるところの哲学及び構想についての報告をまずしたのかどうか、またそれらの意見を受けたのかどうか、こういった問題さえ我々は国会でまだ聞いておりません。この決算委員会で本当に必要なことは、決算されたすべての問題をあしたの予算に前向きに前進するところにこの委員会の本質があるわけでございますので、まずこの点。  例えば原子力発電の問題一つ取り上げても、長官みずから科学技術庁と協力して視察を行うとか、北海道の原子力発電に伴うところの汚染物質の最終処理における反対等、これはどこですか、ちょっと場所は忘れましたが、今計画進行中で住民運動が起きているところもございますね。  要するに私の言いたいのは、そういった数値の問題がまだ出ていないというところ、また、構想に変わった、計画ではもうどうにもならないんだというようなことを私としては納得できない。  今ちょっと思い出しましたが、北海道の幌延ですね。幌延における原子力発電の汚染された物質を処理するところですね。こういう問題だって何にも出ていないじゃないですか。また、当然その警鐘されることについて、大臣が何らかの構想というものを打ち出さなければならない。  二、三点今申し上げましたが、これは大臣にひとつお答えいただきたいのです。よろしくお願いします。
  72. 加藤陸美

    ○加藤(陸)政府委員 大きな方向の問題につきましては大臣からお答えいただきますが、各種の問題をおっしゃいましたので、すべて事務的に御説明し切らないかと思いますが。  一番最初におっしゃいました従来の計画との関係でございますけれども、実は従来の計画で、これは六十年を目標にしたわけでございますが、その中で各種の数値目標、それから環境基準の達成目標というものが示されておりました。これはすべて達成されたのかという御意見が最初にございました。  この点につきましては、確かに相当部分達成できたこともあると考えておりますけれども、しかし、いまだ実現できない事項が多々あることも事実でございます。先生一、二東京都の大気の問題等を例に出されましたけれども、それはいまだ達成できない部分があることも事実でございます。今回の長期構想においてはあえて個別の数字は挙げておりませんけれども、前回の長期計画で掲げられた各種の達成すべき目標は、これは期限内にできなかったのは申しわけありませんのですけれども、引き続き維持されることは当然でございますし、その点は長期構想の御答申の中にもきちんと提言されておるわけでございます。また、一言つけ加えますが、環境基準というものの考え方は、これはベースでございますので、当然維持されるべきものでございます。  それから、他省庁との関係で、閣議の関係等を若干おっしゃったわけでございますが、これは最初の長期計画におきましても同様でございますが、環境庁方針でございまして、前も閣議の決定等の手続は経ていないものでございます。しかし、内容におきましては、環境庁もともと総合調整官庁という立場でございますので、これは関係省庁にも、ひとつこういう考え方、こういう目標のもとにそれぞれのつかさ、つかさで御尽力いただきたいという趣旨は当然含まれておるわけでございまして、今回のものにつきましても、今後そういう道筋で進めていきたい、また、関係各省庁におきましても御尽力をいただきたいという点は、前回計画と同様でございます。  それから、ハイテクの問題等具体的な問題につきましては、内容にわたりますので、またお時間が許されれば後ほど御答弁を補足させていただきたいと思うわけでございます。  それから、原子力発電の関係のことでございますが、これはもう先生十分御承知の上で御質問になっておると存じますけれども、基本的には、放射性物質による問題というのは、環境庁の所掌からは直接的には除かれておることを御理解いただきたいと思うわけでございます。もちろん広い環境問題の視野の中でございますので、それは念頭にないかといえばもちろんそうではございませんけれども政府部内のつかさ、つかさということは御理解いただきたいと思うわけでございます。
  73. 稲村利幸

    稲村国務大臣 小川先生の御指摘は十分理解をさせていただいております。それで今回の場合は、公害防止と自然保護、共通の理念のもとにできるだけ一体にとらえて、定量的な目標を示すことよりも、新しい視点から環境政策の新たな展開の方向づけを行うことに重点を置いておるから構想としたものですが、その都度関係省庁と協議の上で、具体的な施策についてはもちろん数字をちゃんと踏まえて具体的に取り組んでいく、こういうことでございます。
  74. 小川新一郎

    小川(新)委員 だから私が言っていることは、そういうふうに行政が多角化し、今いみじくも原子力の問題が出た、それはよく存じていますよ。だけれども、そういうわかり切ったことが、ヨーロッパ、ソ連、アメリカで国際的な大問題になってきた。日本で起きる可能性がないとは言い切れない。だから今、計画のような小さな物の見方よりも、構想という大きな面になったのだということは理解できますので、では、具体的に次官会議にこういうことを報告して、あなたの守備範囲ではないかもしれないけれども、公害の最高責任者として言うべきはきちっと言う。また、こういう行政の仕組みの中で変革をしなければならぬという問題が出てくるはずですよ。そうじゃなければ、ただ単なる言葉のあやの操作にしかすぎないじゃないですか。何にもあなたらしいものが出ないじゃないですか。閣僚会議稲村長官が熱弁を振るったという新聞報道もないのです。  私は尊敬している。あなたのように若い、テレビで拝見しておっても、ああこの大臣なら六十年代、否七十年代、二十一世紀に向かっての公害担当責任者として適格であると私たちも満腔の拍手をしている。その一念がこういう答申になってあらわれたと理解するならば、当然それに対する対応が出てこなければならない。何にもないじゃないですか。これじゃ全く画竜点睛、張り子のトラ、何とも言いようがないじゃないですか。私はまずその点でも非常に遺憾に思うのです。  その次、そのように進まなければならないにもかかわらず、次は何が出てきたかというと、御存じのとおり公害健康被害者補償制度の問題が後退してきた。これは御存じのように東京とか大都会。  その前に、ちょっとこれは事務系統の方にお尋ねしたいのだが、「被認定者数の概況」という資料の中で、「四十九年度地域別構成」によると、大阪は三二・五%の被認定者が出た。神戸・尼崎は二一・七%、横浜・川崎一四・二%、名古屋一一・三%、その他一四・四%という配分が出ております。それが十年たった六十年度になるとどうなるかというと、昭和五十年には被認定者が一人も数えられない数値になっていたのが、十年後には東京がトップで三九・七%、大阪の三三・二%を超してしまった。こんなばかげた数字は私は見たことがない。ゼロであった、「その他」の中に入っていた東京が十年間で実に一〇〇%の中の約四〇%も認定される患者が出たなんて、そんないいかげんな数値で出されて、しかも今度この公害認定の枠を取り払って、今までの患者さんは面倒を見ても、これから出た患者さんについては、公害認定地域の患者についてはお金も払いません、補償もしません。ところが十年たって、ゼロだった東京が四割もふえてしまった。それがあなた方の言う構想なんですか。計画のときよりさらに後退しているじゃないですか。だからおかしいと私はさっきから言っているのです。どうなんですか、これは。
  75. 目黒克己

    ○目黒政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの認定患者数の推移でございますけれども、御指摘のように、この十年間で増大をしているわけでございます。しかしながら、この増大をいたしました原因には幾つかございますが、その一つは指定地域がふえたということ。第二は、増加をいたしました患者さんの大部分はぜんそくの患者でございます。  ぜんそくの患者さんというものは、この制度の非特異疾患でございます指定疾病でございます。これは先生承知のように、私どもが認定をいたしております疾病は非特異的疾患でございまして、大気汚染以外の原因によっても発病するのでございます。したがいまして、この被認定患者の増加原因でございます気管支ぜんそくについて見ますと、この数年、指定地域での気管支ぜんそくの被認定患者の増加率と申しますものは、全国的に見ますと、一般の気管支ぜんそくの患者の増加率とほぼ同じ水準となっているわけでございます。このようなことが先般の中央公害対策審議会の答申案に述べられているわけでございます。  また、全国的にこの気管支ぜんそくの患者が増加をいたしております原因につきましては、国民の生活意識とか医療水準の向上あるいはアレルギー素因者の増加、都市的な生活様式の拡大による食生活や住居環境の変化あるいは高齢化の進展等といろいろ考えておるわけでございますが、まだ科学的には十分説明をされていない部分もあるわけでございます。したがいまして、増加の原因につきましては、以上申し上げたような傾向であるということでお答え申し上げたわけでございます。
  76. 小川新一郎

    小川(新)委員 聞いてもいないことをしゃべらなくても結構。私が聞いているのは、東京都がなぜ十年前にゼロになっていたものが一挙に四〇%になったのか、それを聞いているのだよ。
  77. 目黒克己

    ○目黒政府委員 指定地域は、東京都が五十年に指定をいたしておりまして、そのときに大幅に東京都の各区の指定を行いました結果、患者がふえてきたのでございます。
  78. 小川新一郎

    小川(新)委員 そうすると、五十年度はこの一四・四には東京は含まれていなかったのですね。これが入ったから、実に約四〇%ふえた、こういうことですか。
  79. 目黒克己

    ○目黒政府委員 そういうことでございます。五十年度に指定をいたしました所が東京都は大変多かったわけでございますので、そういう状況なのでございます。
  80. 小川新一郎

    小川(新)委員 それではもう一遍お尋ねいたしますが、赤羽、要するに荒川を挟んで埼玉県川口、鋳物工業の盛んなところ、最も大気汚染のすごいところ、職業病が出ております。埼玉県の中では最も一種の慢性気管支炎、気管支ぜんそく、ぜんそく性気管支炎、肺気腫——私も川口でこの病気の一つにかかって選挙に苦しんだのですが、埼玉県の川口はなぜ外れているのですか。これは調査したことがありますか。赤羽とどのくらい違いますか。
  81. 目黒克己

    ○目黒政府委員 当時でございますが、御指摘地域につきましては、当然公害健康被害補償法におきます地域を指定する要件でございます「著しい大気の汚染が生じ、その影響による疾病が多発している地域」を指定地域として指定したわけでございます。したがいまして、東京都側の方につきましては調査をいたしているわけでございます。
  82. 小川新一郎

    小川(新)委員 川口は赤羽よりも公害発生が少ない理由一つもない。千葉県の中では千葉市が入っている。神奈川県では横浜や川崎が入っている。どうして中小企業の鋳物屋の町川口が外れて、荒川の橋一つ渡っただけで全く差別をされなければならないのか。しかも大気の汚染の状況は年々悪化しております。大臣も一遍御視察いただきたいのでございます。  私は浦和におりますが、昭和四十二年、私が当選したときに車で国会まで来るのに約一時間で来れた。今日朝八時に出発しますと二時間二十分かかる。その間車がどれくらいできて増加したのかという質問はしませんが、恐らくNOxまた硫黄酸化物、これらの排気、大変なものだと思っております。  でありますが、なぜこのように大気汚染に対する問題が、公害認定の要素になるもの以外のものでもなるという因果関係がまだはっきりしていないときに、この認定患者の枠を取る。さらに逆に言えば、認定地域よりも公害で余計に苦しんでいる地域があることも事実であることの調査もしない。     〔古賀(誠)委員長代理退席、委員長着席〕  何にもそういう理由も発表もしないで、一挙に今回の被害者補償制度の問題のすりかえに使われたのでは大変だと思うのですが、これは考え直す必要が大変あると思います。新たに線引きのし直しも必要でしょう。また、ないところ、公害が減ったところ、これは取ってもいいでしょう。だけれども、今計画から構想に変わったという前向きの御姿勢の中から、公害問題に対応する姿勢が国民や私たちから後退したという印象を受けたのでは、稲村長官、あなたの政治姿勢や理念から後退すると言わざるを得ないと思うのでございます。その点、賢明なる大臣、川口市の測定をお願いしたいということがまず一つ。  第二点は、今度全国の補償制度の後退、全廃に強く反対する立場から、多くの人たちが今見詰めております公害被害者の補償を、救済上での画期的な成果と評され、大きな成果を上げてきたこの制度の事実上の崩壊を意味するような公害行政の大きな変質問題については、大臣、確たる御答弁をお願いしたいのであります。  私が今申し上げました点が一つ。そして、先ほど御答弁いただけなかったのですが、環境庁の所管以外の省庁にまたがる、複雑多岐にわたるところの公害に対する閣僚会議や次官会議における大臣のお考えの徹底、こういう問題に対して行政がどのように変化するかという確信、この二点を大臣の口からどうかお願いしたいと思います。
  83. 目黒克己

    ○目黒政府委員 先に事務的にちょっと説明をさせていただきます。  最初に、先生指摘のこの問題でございますが、今回の中央公害対策審議会では、現在の大気汚染の状況のもとでは、汚染原因者の負担によって個人に対して民事責任を踏まえた補償を行うという合理性は、この大気汚染の影響が気管支ぜんそく等の主たる原因とは言えないということからも失われていると考えられるというふうにしているのでございます。したがって、指定地域の解除を行うということでございますが、既認定患者に対しては従前どおりの扱いをするわけでございますが、将来発生する患者に対しましては、個人に対する個別の補償はしないで、地域全体に総合的な環境保健対策を行うべきである、このような答申がなされているわけでございます。したがいまして、私どもは今のような中公審の答申を尊重して対処してまいりたいと考えているところでございます。  また答申では、この地域指定の解除を行った後に、「環境保健に関する施策の充実」の方向として、「健康被害防止事業実施」と並んで「調査研究の推進」ということも書いてございます。そのようなことが答申として出ているのでございます。
  84. 稲村利幸

    稲村国務大臣 私も自分の選挙区から先生と同じ道路を通りましてこちらへ通っておりますので、率直に自分なりに大変時間のかかること、車の増加等を身にしみていることだけは、私も全く同様の気持ちでおります。そういうことで、あの荒川を渡るときの気持ちというものは、私も同じ気持ちでございます。  公健制度の問題につきましては、学識経験者等三年にわたり御審議をいただいた、そういう問題を踏まえながらも、公害による健康被害に対して適切な措置を行うとともに、制度を合理的、公正なものにしていかなければならない、こういうことは私も基本に考えているつもりでございます。また、長期構想に沿って各種の施策を実施していくに当たっては、関係省庁の理解と協力が不可欠でございますので、関係省庁と真剣に詰めて、よく相談をしていきたい、そしてそれを推進していきたいと思います。
  85. 小川新一郎

    小川(新)委員 これは前進なのか後退なのか。要するに、公害健康被害補償制度の改廃というものが今申し上げたように前進したとは私は受けとめられない、バックしているのじゃないかと思うわけですね。  そこで、十月三十日、中公審の答申が出る以前に、また国会の審議も何ら経ることなく、今申し上げました制度の改廃を前提に、基金制度なるものの設置が環境庁と財界との間で既に取り決められているとの報道があったことは事実でありますが、これが事実とすれば本末転倒、大変な誤りであります。これは中公審の恣意的利用ではないかと思うのであります。  環境庁と経団連のトップ同士が、長官がそういった経済界の大物と正式に会談するときには必ずマスコミに報道され、正式に内容、時、場所、そして何の理由によってそういう会談が行われたかということが明確になってきたのが今までの通例であります。しかし、今回は全く会談の事実やその内容が公表されておりません。秘密にされたのはなぜなのか。基金制度というものをつくるために、中公審の答申の出る前にこのような会談を行って、ゆがみある答申にさせるようなことがあってはならないと危惧するのは、私一人だけではないと思います。正義感の強い大臣ですから、まさかそんなことをおやりになったとは思いませんが、今申し上げました事実関係並びに内容、そしてなぜ、その結果は、この点についてお答えいただきたいと思います。
  86. 加藤陸美

    ○加藤(陸)政府委員 大臣にお答えいただく前に、先生のおっしゃいました点につきまして、御説明を若干加えさせていただきます。  この答申の中に提言の形で、集団に対する対策の一つとして予防的ないし環境改善的な事業をやるべきだ、それの方法の一つとして社会的責任を有する事業者等から基金ないし拠出をして事業をやっていくべきだ、安定的にするのに基金という方式がいいであろうという答申が十月三十日に出されております。  その前にいろいろな接触があったのはおかしいではないかというお話でございますが、実はその前の段階で一体どういうことが可能であるかというような接触といいますか打診といいますか、これはいろいろ関係団体と接触をし、打診することはあるわけでございます。これはあに経済関係団体のみならず、医療関係の団体であるとか、あるいは患者さん方とも私どもいろいろな事前の接触はいたしておりますので、そういう段階のお話はひとつ別にして御理解をいただきたいと思うわけでございます。  正式に基金をどうしていくかというのは、現在一生懸命に準備検討を進めておるところでございますが、その関係での経済界とのやりとりにつきましては、大臣の方からお答えをいただくようにいたします。
  87. 稲村利幸

    稲村国務大臣 十月三十日に中公審の答申をいただきまして、私は早い機会に関係団体とと思いまして、拠出をしていただく団体である経済界に、国会のスケジュールを見てちょうどあいているということで約十数分、懇談ということでなく、できる限り変わらず御協力をお願いしたい、そういうことを言っただけでございます。
  88. 小川新一郎

    小川(新)委員 大臣のお言葉を信ずる立場から了解いたしますが、どうか誤解のないようにお願いしたいと思います。公害補償制度が後退するという印象を与えてはならないというところで、また、中公審や環境審議会の答申等出る大事な時期でございますので、いささかなりとも大臣の前向きの行動が後退や疑惑の目で見られることのないよう慎重な御配慮をお願いする次第であります。
  89. 稲村利幸

    稲村国務大臣 小川先生の御意見、御指摘、十分尊重して心します。
  90. 小川新一郎

    小川(新)委員 川口の問題を取り上げたいと思いますが、時間がありませんので、最初に問題点を三つぱあっと読み上げます。お答えいただけば結構。  埼玉県川口市と住宅・都市整備公団により、国鉄川口駅西口前の再開発事業を推進しておりますが、この事業用地は、昭和五十五年三月、筑波研究学園都市へ移転した跡地である旧通産省工業技術院公害資源研究所跡地が活用されているわけであります。したがって、川口市は本年春、その国有地を大蔵省より払い下げを受けて事業着工しておりますが、新聞報道によると、川口市が調査を行った結果、この国有地が総水銀または砒素等に土壌が汚染されていることが判明したわけであります。  環境庁は、ことし市街地土壌汚染に係る暫定対策指針を発表しておりますが、まず川口市における公害資源研究所の跡地の汚染状況をどの程度に把握しているかということでございます。また、その汚染された原因は何か、その責任はどこにあるか。  国立の研究所で、しかも公害を調べる最先端研究機関公害資源研究所の跡地から基準値を超す水銀が検出されたことは、大臣、これは大変な政治に対する不信感であります。ここには公共の文化施設や公園、公団住宅建設予定地、隣接する公園の地下には災害時における飲料水として活用できる浄水場も建設するので、徹底した公害調査を行うべきであります。  そこで、この汚染処理に当たって、法令に従って処理されることになると思いますが、その費用負担はどこがするのか。  次に、市民から不安の声が出ておりますが、汚染結果から見てその安全性は問題がないのか。  住宅・都市整備公団の払い下げ時期はいつか。  箇条書きにぱぱっと申し上げて恐縮でございますが、簡単明瞭にお答えいただきます。
  91. 渡辺武

    ○渡辺(武)政府委員 簡潔にお答えいたします。  川口市の公害資源研究所跡地の問題でございますけれども先生指摘のように、私たち、市街地土壌汚染の問題につきましては、今年一月に、汚染があった場合にはどのように対処すべきかという指針を取りまとめまして、地方公共団体等にも御連絡を申し上げました。それは、人の健康に問題があります物質を九物質挙げまして、そのような跡地につきましてそれがほかの目的に転用される場合には、調査をしましてその物質が残っているかどうかを見る。そして、残っておりましたら、どの程度あればそれは対策を要する土壌であるかということを判定する基準、それを決めております。そして、その汚染の状況に応じましていろいろな対策を講じてください、こういう内容でございます。  それと、そのようなことを発表いたしましたことに伴いまして、川口市におきます公害資源研究所跡地の問題につきまして、川口市は、この十月に私たちがお示ししましたものとほぼ同一内容の暫定対策指針というのをおつくりになったわけでございます。それに基づいて調査をまずやられたわけでございますが、その結果が十一月十四日に公表されております。調査地点は全体で五十五地点を選ばれたようでございますが、その中で対策を要する土壌汚染の判定基準値以上の汚染があったものというところは、水銀及びその化合物というものにつきまして二十一地点、砒素及びその化合物につきましては一地点であったというように聞いておるわけでございます。  このような汚染がもたらされました原因といたしましては、先生指摘のように、この土地はかつて通産省工業技術院公害資源研究所があったところでございまして、長い間の研究活動の過程でこのような汚染が生じたのではないかというように聞いておるところでございます。  それから、第三番目の点でございますけれども、このような汚染につきまして、これを除去するための事業が必要でございます。原則的にはこれはPPPの原則が働くものだと私たちは考えております。しかし、これは現実には土地が国から川口市あるいは住宅公団その他に売買をされておるわけでございまして、原則はさっき申しましたようなことでございますが、それでは現実に対策事業をやるのはどの方かということにつきましては、売買契約の内容にもかかわることでございますので、両当事者間でよく相談してお決めになるべき事柄ではないのかと私たちは考えておる次第でございます。  それから、住民の安全性の問題でございますけれども、先ほど来御説明申し上げましたように、私たちといたしましてはかなりの安全性を加味した基準をつくりまして、それと全く同内容のものを川口市がおつくりになったわけでございますので、この川口市がおつくりになりました指針に基づいて対策が行われる限り、周辺の環境に対する安全性に問題はないと考えておる次第でございます。  以上でございます。
  92. 小川新一郎

    小川(新)委員 大臣、お聞きのとおりでございます。公害発生を防がなければならない公害研究所が垂れ流した。それに対してPPP、要するに汚染者が負担をしなければならない原則だけれども、契約上疑義あってお互いに話し合ってやってくれ、こういうふうに逃げているのですね。冗談じゃないですよ、こんなことは。公害を発生することを防ぐ省庁が垂れ流した問題を、何で川口市が負担しなければならないのですか。こんなあほな話は、聞いたこともなければ見たこともないですよ。こんなことは国で自分でやったらどうですか。これこそ環境庁長官が声を大にして、公害関係の責任者である長官にこれは言っていただかなければならぬということですね。よろしくお願いします。この答弁をお願いします。
  93. 稲村利幸

    稲村国務大臣 この問題は、もう一度私なりに正確に調査し、把握したいと思います。
  94. 小川新一郎

    小川(新)委員 ありがとうございます。  もう時間がありませんから、見沼田んぼの開発について一点だけお尋ねします。  この問題は、埼玉県内の非常に大きな問題でございます。浦和、大宮、そして川口、県南の三都市に流れております芝川、一級河川でございますが、機関委任事務をされて埼玉県が管理維持をしております。しかし、国の責任である見沼田んぼの見沼三原則、これは低開発地帯におけるところの水の遊水地として、この開発が規制されております。この規制が、昭和六十年代に入って、諸般の都市問題の解決の中から、どうしても開発をして土地の利用を図らなければならないという情勢に追い込まれてまいりました。そこで、建設省や国土庁とも相談し、また農水省とも相談し、この開発規制について今県では大騒ぎをしている状態でございます。  時間がありませんから個々にわたって御質問できませんが、ここで大宮市がごみの終末処理をしたい、こういった問題、各公共団体がこの土地利用の中で見沼田んぼの見沼三原則を超えた汚染に対する問題を長官はどのようにお考えになっておられますか。環境庁はお考えになっておられますか。これに対して、開発をした方がいいのか、このまま規制を続けた方がいいのか、これは細かい点になってまいりますので、大臣でなくても結構でございます。環境庁は、農水省や建設省、国土庁、埼玉県、関係市町村、自治省、これらとお話し合いをすると思いますが、環境整備の立場から、環境保全の立場から、この見沼の三原則を解くべきであるのか否か、開発を推進するのがいいのか、環境保全上とっておいた方がいいのか、この点をお答えいただいて、ちょうど時間でございますので、私の質問を終わらせていただきます。
  95. 古賀章介

    古賀政府委員 今先生の言われました見沼田んぼの保全につきましては、都市近郊に残された貴重な緑地空間として、現在埼玉県において今後の土地利用方針に関し検討が進められていると聞いております。その内容については、私どもはいまだ十分承知をいたしておりません。当庁といたしましては、自然環境保全に十分配慮された、関係各方面との調整を十分行われました後の利用方針が策定されるものと期待をいたしております。
  96. 小川新一郎

    小川(新)委員 まだほかに質問があるために省庁の御答弁者にお忙しい中をこうして来ていただきましたが、私の質問の技術の拙劣なために質問ができませんで、むだ足を運ばせてしまいました。この席をおかりしておわびをしますとともに、次回続きをやらせていただきますので、どうかきょうは御容赦のほどをお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。よろしくお願いします。
  97. 堀之内久男

    堀之内委員長 大矢卓史君。
  98. 大矢卓史

    ○大矢委員 民社党の大矢卓史でございます。  まず、長官にお伺いをしたいと思います。  私は、環境行政は大変重要な行政の一つである、特に、何と申しましても人命にかかわることにつきまして、また健康を守っていく、そして住環境と生活環境を十二分に守っていく大きな使命を持っておると思うのであります。それにつきまして、環境行政に取り組まれます長官の基本的な御姿勢を承りたいと思います。
  99. 稲村利幸

    稲村国務大臣 環境行政の基本は、釈迦に説法でございますが、健康を第一に考え、そしてさらに並行して自然環境保全する、さらには、二十一世紀に向かって潤いのある豊かな心を持てるように、緑を大切にし、水、空気等よりよい方向で私どもも享受できるような努力をしなければならないと心しております。
  100. 大矢卓史

    ○大矢委員 長官、非常な決意で在任中環境の問題に取り組んでいただけることを確信しながら、私は質問を進めさせていただきたいと思います。  ちょうど私のおやじも戦後八回この衆議院に議席を置かせていただきまして、三十七年の一月に亡くなりました。その亡くなります直前に、私初めて、これからの課題についてということでおやじに教えを請いました中で、その三十七年当時、大阪、堺の臨海工業地帯、ここから出ます公害の問題、そして大和川の汚染の問題、そして下水道の完備の問題、これらを私はおやじの亡くなります前に教えをいただいたのであります。  それ以後、堺の臨海工業地帯から出ます公害発生、これによりまして、絶対に強いと言われておりました自民党の左藤知事さん、黒田共産党知事に敗れ去ったという、やはりこのような大きな公害問題の発生と申しますか、国民の高まりがあったわけであります。それ以来、徐々にこれらの問題の改善がなされてきておると思うのでありますが、まず、大阪の大和川、この水質の保全の現状について御説明を願いたいと思います。     〔委員長退席、新村委員長代理着席〕
  101. 渡辺武

    ○渡辺(武)政府委員 お答え申し上げます。  毎年、私たちは公共水域につきまして汚染の状況を測定した結果を発表しておるのでございますけれども、五十九年度の結果でございますが、川につきましては、有機汚濁の代表的な指標でありますBODというのを基準にして汚濁度を発表いたしております。  それによりますと、まず大和川の中流では、このBODが一二ないし二〇ミリグラム・パー・リッター、ppmと同じ単位でございますが、一二ないし二〇ということになっておりまして、環境基準、あるべき姿というのがここでは五ppmでございますので、かなり大幅に環境基準を上回って汚染があるという状況でございます。また、下流につきましても、同じく二四ミリグラム・パー・リッターでございまして、ここでは環境基準は八でございますので、この下流につきましても、中流同様にかなり大幅に上回った汚染になっております。  六十年度の結果につきましては、今全国集計を行っている最中でございますけれども、大阪府からの個別の報告によりますと、中流では、先ほど申しました五十九年度とほぼ同じ水準であったようでございますけれども、下流につきましては若干よくなったというように聞いておる次第でございます。  以上でございます。
  102. 大矢卓史

    ○大矢委員 今の御説明にもございましたように、環境基準から見ますとざっと五倍ほどのオーバーということでありますけれども、この環境基準というのは努力目標であるのか、そこら、ただいまの御説明の中に、六十年度は若干よくなったようでありますというような説明がございますけれども、ただ単に努力目標で、なおそれが五倍近くもオーバーしておっても非常によくなったのだというような説明で済まされるのかどうか、それらについて、また先ほどからも水質汚濁の原因についていろいろと言われておりますけれども、どういう原因でこういう汚濁が進んでおるのか、それについてのお答えを願いたいと思います。
  103. 渡辺武

    ○渡辺(武)政府委員 お答え申し上げます。  環境基準と申し上げますものは、いろいろな水を利用する、この利水との関係でこの川ではどの程度のBODであるのが相当であるかということを地元でいろいろ御相談になりまして、そして、それならばこの程度というように決めた、努力目標といえば努力目標、あるべき姿と私たちは考えておりますが、できるだけそれに近い将来近づけるというあるべき姿というように御理解いただけたらと思います。  大和川につきましては、そのようなあるべき姿と現状が今申し上げましたようにかなり乖離をいたしておりますが、乖離をいたしております大きな原因は、やはり先ほどの御質問等にもいろいろございましたけれども、都市化といいますか、住民がたくさん住みつくといったような状況の中で下水道の整備がそれに追っつかないという、生活排水を中心とした汚濁が大きな割合を近年占めてまいっておるということに尽きるように思います。  これの対策でございますけれども、まず一つは、水質汚濁防止法という法律がございまして、それでは、工場なりいろいろな事業場から水を排水いたします場合に、一定の基準以上のものは出してはならないという規制をしておることが一つございます。全国一律の基準があるわけでございますけれども、この大和川につきましては、水質汚濁の状況等を考えまして、大阪府におきまして、国が定めました一般的な基準の上乗せ、より強くする排水規制を行っておられまして、その基準値は、大阪府の中でもいろいろ種類がある、段階があるようでございますけれども、大和川水域につきましては大阪府の中では一番きつい水質といいますか、排水の規制が行われておるわけでございまして、このような排水規制というものが対策の一つのものでございます。  第二番目の対策といたしましては、先ほど申しましたように汚濁の原因が生活排水ということでございますので、何をおきましてもやはり下水道の整備が第一だと思います。現在下水道の普及率はこの地域では一五%というように伺っておりまして、今その普及率を高めるために大和川下流流域下水道事業というものが行われておりまして、このような下水道整備事業が急速に行われていくということが必要であろうかと思っておるわけでございます。私たちといたしましては、このような下水道事業を所管いたします建設省等々とよく御相談申し上げ、また、関係の大阪府とも御相談申し上げまして、今後とも大和川の水質の改善ということにつきまして努力を尽くしてまいりたいというように考えておる次第でございます。  以上でございます。
  104. 大矢卓史

    ○大矢委員 今御説明承りましたように、生活排水における影響が非常に大きい、環境基準は府が非常に厳しくつくっておるのだということでございますけれども、やはりその範囲内にとどめていくということが努力目標であろうと思います。それが、数値は数値なんだ、そしてこれはこれであくまでも努力目標だから、三倍ないし四倍のオーバーした数値であっても、それは徐々にやっていけばいいんだというようなことではないと思うのであります。  そこで、やはり下水道の完備の問題、今指摘をされましたけれども、これはすべての行政にも言えることなのですけれども、ただ単にそこの省庁だけで片づけられる問題ではないと思います。そういう問題については、やはり下水道の整備もあわせて、環境庁長官、国務大臣でございますので、その点も含めて、やはり先ほどから言われておりますように、環境行政がそこの省庁だけで終わる、ただ単に指示を出して、これを皆さん守りなさいということだけでなくして、それを徹底していく。環境庁の中で、それらの問題を扱っていく省庁に対しても、これはやはり社会資本というものはこれからどんどん充実させていかなければならぬわけでありますから、その辺についても、こういうことが完備をしていけばよくなるというのであれば、大いに国務大臣としての環境庁長官がこれからの下水道の完備についても努力していくという決意のほどをお伺いをいたしたいと思います。
  105. 渡辺武

    ○渡辺(武)政府委員 先ほど申し上げましたような事柄でございまして、私たち環境庁といたしましても、関係省庁と連絡を密にいたしまして、いろいろな施策を講じてまいることに努力を傾けていきたいというように思っておる次第でございます。
  106. 稲村利幸

    稲村国務大臣 先生の御意見を尊重して、一生懸命頑張ってまいります。
  107. 大矢卓史

    ○大矢委員 そこで、これまた今おっしゃいましたように下水道の問題になってまいりますと、下水道は下水道なりに終末処理で汚泥が出てまいるわけです。汚泥を処理をすることに大変皆さん困っていらっしゃるわけでありますけれども、それと同時に、その汚泥から公害物質が出るんだというふうに一時告発がございました。その点の実情はいかがでございますか。
  108. 渡辺武

    ○渡辺(武)政府委員 先生今御指摘のように、下水道の整備に当たりましては、管をずっと引いていくという点での問題とあわせまして、汚泥の処理ということが非常に問題になっております。適切な埋立地といいますか、汚泥を処理する場所を確保するということが必要でありますし、またその汚泥の中にいろいろな形での有害物質が入っているんじゃないかというようなことも、我々の生活が非常に多様化いたしましていろいろな物質を使うという過程で、それが最終的にそのような下水道の中で汚泥の中にたまるということがあるわけでございます。このような汚泥の処理につきましては、私たち環境庁といたしましても、いろいろな調査研究をやって、どのようにすればそのような有害物質を含みます汚泥を安全に最終的に処理できるものかというようなことにつきまして研究を従来ともに行っているということでございます。今後ともそのような努力を続けてまいりたいということでございます。
  109. 大矢卓史

    ○大矢委員 研究の段階ということでございますけれども、やはり終末処理は地方自治体にとって切実な問題なんで、研究研究としても、あらゆる研究を通じて実際に現場でいろんな方法を実験していただいて、これが一番いい方法なんだという方法を一日も早く生み出していただいて、その方法、終末処理の有害物質が出ないように、終末においてただ単に埋め立てをしたらいいんだということじゃなくして、そこらの埋立地における住民の非常な不安を除くためにも、有害物質がどういうふうにして除去されるんだという、非常に難しい問題だろうと思いますけれども、一日も早く実行していただくという決意のほどもお伺いいたしたいと思います。
  110. 渡辺武

    ○渡辺(武)政府委員 先ほどは若干抽象的なお答えを申し上げましたけれども、汚泥の処理に関しましては、これは建設省の所管になって申しわけございませんけれども、下水道法の中で汚泥の処理につきましてのやり方、基準といったものも決められておるようでございます。  また私たちは、その汚泥の処理一つといたしまして、農用地にそれを還元するといったようなこともあります。それを通じまして農用地が汚染するというおそれもありますものですから、汚泥を使いまして農用地の土地改良、土壌改良をする場合の基準といったようなものもつくっておるわけでございます。いずれにいたしましても、まだ不十分であるところが多いと思いますので、今後研究を積み重ねると同時に、できるものからそれを実行に移していく努力を続けてまいりたいと思っておる次第でございます。御了承いただければと思います。
  111. 大矢卓史

    ○大矢委員 今言われましたことは、たしか九州の方で実験的にやっておられるということもお聞きをいたしておりますけれども、それも今おっしゃいますように、農業に使いました後の問題がまた完全でないというような問題もありますので、これは先ほど申しましたように、環境基準だけをつくっていくということでなくして、終末でこういう公害物質が出るということに関しましては、やはり積極的に何らかの形でこれだという答えを出していただいて、実際の終末の汚泥処理が完璧にいきますように今後とも御努力願いたいと思います。  次に、交通公害についてでございますけれども、阪神間、御承知のように国道四十三号線訴訟で一応裁判の結果が出ました。それについてのお考えをお伺いいたしたいと思います。
  112. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 お答えいたします。  国道四十三号線につきます訴訟につきましては、先生も御案内のとおり六十一年七月十七日に判決が出ておるわけでございます。内容等につきましては先生御案内のとおりでございますので省略させていただきますけれども、私ども従前から、交通公害問題につきましては、関係各省あるいは自治体と連携をとりながらいろいろな対策を講じておるということで、四十三号線につきましても、いろいろな対策は既に講じられておるというぐあいに理解をいたしておるところでございます。なお今後とも関係のところと連携をとりながら、交通公害、騒音対策につきましてはさらに努力を続けてまいりたいというぐあいに考えております。
  113. 大矢卓史

    ○大矢委員 交通公害につきましては、いろいろな場所でいろいろな調査をしていらっしゃいますけれども、全般的に完全になったというようには聞いておりませんけれども、その点いかがでございますか。
  114. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 交通騒音につきましては、先生のお言葉にもございましたように、全般的には非常に厳しい状況にございます。私どもといたしましては、関係各省なり自治体とも連携をとりながら、いろいろな対策を講じておるところでございます。  もう少し具体的に申し上げますと、例えば自動車の単体に関します騒音につきましては、中央公害対策審議会の答申に基づきまして、大型車に対する六十一年規制など、そういう面での規制強化を逐次行ってきておるところでございますが、引き続き騒音低減のための技術開発を促進するなど、騒音の抑制のための適切な対策を講じてまいりたいというぐあいに考えておるところでございます。  また今後は、こうした単体の規制に加えまして、総合的な自動車交通対策の実施が必要であるというぐあいに考えておるところでございまして、最高速度の制限なり、あるいは大型車の通行制限等の交通規制、あるいは遮音壁の設置等によります道路構造の改善、緩衝建築物の誘導等の沿道対策などの従来から講じてまいっております対策の充実強化を図りますとともに、地域特性に応じた抜本的な対策といたしましては、大都市地域におきます物流の合理化等によります自動車交通量の抑制、あるいは物流施設の適正配置等によります大型車の都心部への乗り入れ抑制、それからその他の都市地域におきましては、環境保全に配慮したバイパス等の整備によります大型車の都市内通過抑制など推進していく必要があるというぐあいに考えておるところでございます。
  115. 大矢卓史

    ○大矢委員 今の問題にいたしましても、いろいろな方策を考える必要があるということでございますが、これは環境庁が直接やられることもあるかもわかりませんけれども、なかなか難しいだろうと思います。その点はその考えだけはお聞きをいたしましたけれども、今後実際に実行していく上の各省庁との関係はどういうふうになっているのですか。
  116. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 関係の各省連絡会議というものを設けまして、年に二回ないし三回、お互いにやっております施策の情報交換等を行っております。  またこれ以外に、あわせまして私どもといたしましては、研究調整費等を使いまして、各省におきますいろいろな調査研究についてその促進方をお願いしております。  それからまたもう一つは、今年度から実施いたしたところでございますが、大都市等におきますそういう問題につきましては、そういう検討会を開きまして、そこに専門家、学者の先生、それから各省庁の代表の方々、それから自治体の方々を含めました大都市におきます自動車交通騒音あるいは自動車交通公害に対します検討会というのを設けまして、実際の場におきますいろいろな対策について検討してまいりたいということで、今年度からそういう検討会を設けて検討いたしておるところでございます。
  117. 大矢卓史

    ○大矢委員 具体的にはなかなか実行に移せぬような難しい問題ばかりだと思います。しかし、できるだけ各省庁との連絡を密にして、そういう交通公害をできるだけ除去していくように御努力願いたいと思います。  そこで、先ほど長官に冒頭お伺いをいたしましたその中で、私は環境庁のお仕事が直接人命にかかわるということを申し上げたのでありますけれども、これは非常にこじつけになるかもわかりませんけれども、大阪の国鉄阪和線の高架の問題、この上に阪神高速道路公団が二重に上に乗っかるという、この都市計画は大阪府の方では昭和四十六年に審議会を通っておるわけであります。それがいまだにいつ完成をするかわからないような非常におくれた問題。  これは市内部における立体交差と申しますか、私鉄、国鉄の高架につきましてはやはり住民が合意をするという、そこまでは十分に至っておると思いますけれども、その上に高速道路を乗せるんだということになりますと、環境基準等実際に数字的に果たして説明ができるのかどうか、住民に対してどのような説得力があるのかどうかということが、私は非常に疑問でございます。そういうことで大変なおくれを来したわけであります。  その中で、国鉄の高架が大変おくれてまいりました結果、やはりあかずの踏切といいますのが、毎朝八時から八時三十分まで三十分間ほど、ほとんど瞬間的にあくだけで自動的に閉まっていくというような、その中で最近もお年寄りがここをかいくぐって列車事故で亡くなられたというようなことがございます。そういう場合、果たしてこの阪和線の上に、言葉の上では高速道路でございますけれども専用自動車道というものが乗っかっていくという、この必要性がどうであろうかということは別にいたしましても、そういう環境が国民に、住民に十二分に理解されるような努力をどういうふうに環境庁は図ってこられたのか、またどういうふうに指導してこられたのか、それについてお伺いをいたしたいと思います。
  118. 長谷川慧重

    ○長谷川政府委員 先生から今お話ございました国鉄阪和線の問題でございますが、御指摘のように、鉄道の上に高速道路をつくる場合におきます鉄道騒音なり道路騒音の問題でございますが、それぞれの騒音の特性に応じまして周辺地域の住民の生活環境に支障を及ぼすことのないように、周辺に十分配慮する必要があるというぐあいに考えておるところでございます。  この高速道路あるいは鉄道双方の騒音が重なり合うことが考えられるわけでございますが、特性の異なる道路騒音と鉄道騒音が複合した場合の騒音の影響ということにつきましては、はっきり申しまして、現在のところはっきりした知見がないわけでございまして、なかなか難しい問題であるというぐあいに考えておるところでございます。  環境庁といたしましては、当面、現在あります在来鉄道に対します騒音対策といいますものを鋭意進めておるところでございますが、この進め方をさらに進めてまいりたいというぐあいに思っておるわけでございます。したがいまして、先生のお尋ねのこの阪和線のような問題につきましては、これからの検討課題、研究課題というぐあいに受けとめて勉強してまいりたいというぐあいに思っております。
  119. 大矢卓史

    ○大矢委員 これは今私が申しましたように、長官昭和四十六年に都市計画が通っておるわけです。それから今日までなかなか進捗しなくて、大阪は大阪の事情がございまして、湾岸線が終わりますのが六十四年でございますか、その六十四年から先にぼちぼちやろうかというようなことで、これは四十六年から見ますと二十年近くそのままになっておるわけです。それだけ阪和線の高架の問題がおくれておる。その間に非常に大勢の犠牲者を出しておる。最近もまた死者も出したという。  私は、今お聞きいたしておりますと、これから研究するんだ、そういうような環境庁の答えでは、住民が納得しないのは当たり前だと思う。この私鉄、国鉄の高架化については全面的に賛成をしておる住民が、上にそういう二重に自動車専用道路が乗る場合に、今もお答えのようなことでは、これから先も住民が果たして納得するかどうか、私は非常に不安でならないわけであります。  これは大阪全体の交通対策として別な環状線をつくっていくとか、いろいろな問題がございますけれども、そういう環境庁の今のようなお話でございますと、この計画そのものが非常に難しくなってくるのではないか。それらは早急に今から研究ということで私びっくりしたのでありますけれども、二十年近くそのままになっておって、これから研究というのではちょっと私は納得しかねるのであります。  今後この問題は、冒頭に申しましたように人命にかかわる問題でございますので、長官、この問題についての決意のほどを聞かしていただいて、私、質問を終わらしていただきます。
  120. 稲村利幸

    稲村国務大臣 先生の御趣旨は御理解できますが、十分研究をさせていただきます。
  121. 大矢卓史

    ○大矢委員 終わります。
  122. 新村勝雄

    ○新村委員長代理 次に、野間友一君。
  123. 野間友一

    野間委員 限られた時間の中で、私はかすみ網による密猟の問題と、それからナショナルトラスト、この二つについて質問をしたいと思います。  まず、かすみ網による密猟の問題ですが、ピークが過ぎたとはいえ、シベリアからの冬の渡り鳥が渡ってきております。被害に遭うのは、ツグミ、アトリ、アオジ、カシラダカ等々であることは御案内のとおりであります。日本野鳥の会の調べでも、今なお年間約三百万羽、お金にしますと三億円程度被害に遭っておるというふうに言われております。特に最近になりまして、暴力団の資金源の一部にもなっておるという指摘もありますし、事は大変大事だというふうに私は思っております。御案内のとおり、法律的にはかすみ網による野鳥、保護鳥を密猟することは許されないわけですけれども実態はそうではない。  まず初めに、こういう事態を環境庁はどのように認識されておるのか、お聞きしたいと思います。
  124. 古賀章介

    古賀政府委員 先生指摘のように、昭和二十五年だったと思いますが、かすみ網による猟法を禁止をしたわけでございます。しかしながら、その後、七つの県が主要な密猟が行われておるというようなことが言われておりますけれども、そういう密猟が後を絶たないということにつきましては、野生生物、特に鳥類の保護の面から極めて残念なことであるというふうに考えております。
  125. 野間友一

    野間委員 警察庁にお伺いしますが、先ほど申し上げた暴力団の資金源の問題ですが、これは本当に重大だと思うのです。そこで、最近のかすみ網による密猟の検挙件数、それから、特に暴力団との関係についてどのように実態を把握しておるのか。さらに、ことしも岐阜県で二件検挙されて、その一件は暴力団の組長だというふうに私は理解しておりますけれども、これらの点についてもお答えいただきたいと思います。
  126. 伊藤一実

    伊藤(一)説明員 お答えいたします。  昭和六十年中に私ども警察庁に報告のございましたかすみ網の使用によります密猟事件の検挙は四十四件、五十三名でございまして、このうち暴力団にかかわるものが三件、三名。なお、本年の十一月末までに私どもの方に報告がございましたかすみ網の使用によります密猟事件の検挙が二十四件、三十一名ということでございまして、このうち暴力団にかかわるものが一件、一名ということでございました。  ただいま委員指摘の事案でございますけれども、これは本年十月二十三日、岐阜県の警察本部生活保安課と多治見警察署で合同で検挙いたしました暴力団組長によりますかすみ網使用によります保護鳥の違法捕獲事件ではなかろうかと思われますので、お答えいたします。  岐阜県警察本部では、この十月からこの種の事案に対します特別の態勢を組みまして取り締まりを強力に展開しておりました。この過程で、岐阜県内の瑞浪市内の山林で暴力団と思われる者が密猟をやっているらしいという情報が入手されまして、岐阜県警の方では、ヘリコプターを使用いたしまして上空から撮影した空中写真をもとに容疑場所を特定いたしまして、去る十月二十三日早朝に、捜査員を現場に派遣いたしまして被疑者を現行犯逮捕したという事案でございます。本件につきましては、その後十一月十一日に岐阜県地方検察庁の方に送致いたしたというふうに報告を聞いております。  以上でございます。
  127. 野間友一

    野間委員 それは瀬戸一家のある組の組長だと思いますが、いかがですか。
  128. 伊藤一実

    伊藤(一)説明員 そのとおりでございます。
  129. 野間友一

    野間委員 これはいろんな野鳥の会の調べ等、私も雑誌等でも勉強したのですけれども、今まで暴力団の関与について言いますと、その子分が関与するのが多かったと思うのです。これは、見張り番とか入山料などで小遣い銭稼ぎ。ところが、今ではそうではなくて、組長みずからが乗り出してきてこういう密猟をやる。しかも、御案内かもわかりませんが、鳥屋共済、こういうものまでつくって罰金とかあるいはおとりの都合とか、いろいろな手だてをしておるということにもなっておるわけですね。こういう鳥屋共済という制度がありまして、お互いに検挙されたときに、今申し上げた罰金を、共済制度ですから、それで払うとか、あるいは網やおとりをそれぞれがいろいろなところで入手して、それを分けてやるとか、そういう制度、これは暴力団に頼ってきた者に対しては全部面倒を見るというような制度があるそうですけれども、こういう実態については把握しているかどうか。警察でも環境庁でも結構です。
  130. 伊藤一実

    伊藤(一)説明員 お答えいたします。  暴力団みずからがこの種事案に乗り出すことは、恐らく資金源を求めてのことと推測されますけれども、各事件を通じての彼らの資金源獲得の実態その他については、必ずしも詳細把握できていないというのが実態でございます。
  131. 野間友一

    野間委員 環境庁、いかがですか。
  132. 古賀章介

    古賀政府委員 先ほど先生指摘の問題につきましては、私はまだ承知をいたしておりません。
  133. 野間友一

    野間委員 だから局長、格好だけいい格好されますけれども、実際、こういう実態すら把握していない。これは非常に遺憾だと思うのですよ。こういうものを野鳥の会、いろいろな人たちが調べていろいろな書面に書いておるわけでしょう。これはぜひ、こういういろいろな実態、特に暴力団が絡んでおりますし、こういう実態をぜひ調査してほしい。いかがですか。
  134. 古賀章介

    古賀政府委員 よく調査をいたしまして検討させていただきたいと思います。
  135. 野間友一

    野間委員 これは皆焼き鳥の商売をするわけですね。料亭、料理屋に売るわけです。  これは野鳥の会の調べですが、昨年の秋、福井と岐阜の県境、これは二十歳代の東京新宿出の男が福井県の自然保護課から東京へ、これはいろいろその事件で送致されておるようですが、この調べの中では料亭を通じて売りさばいておる、バックに右翼の線があるということまで調べられておるようです。  いろいろなケースがあります。資金源の面で言いますと、岐阜で昨年の十月半ばから十一月半ばまで、約一カ月の間ですが、二人、運び屋を入れますと三人ですが、実に五千羽、これは一羽大体千円というのがツグミの卸の相場のようですが、一羽千円としますと、五百万円の資金源にもなるわけです。最近いろいろな中小企業は不況だし、キノコの不況というようなこともありまして、こういうようなことがあちこちで起こっておる。大臣の地元でもいろいろなそういう密猟もあるやに私も聞いておるのですが、こういうゆゆしき事態が起こっておる。  それから、これはある全国紙の大阪版の夕刊に出た、十二月一日付ですが、局長御案内かどうか、「ヒノキ林の中に、大きく切り開いたような形の落葉樹林地帯を設けて仕掛けられた鳥屋場を見つけた。」これは野鳥の会の皆さんが調査した中で見つけたわけです。小型飛行機で監視したわけですね。写真も出ておりますように、このヒノキの樹林の中で白くなっておるのは落葉樹林です。渡り鳥がえさを求めてここへどどっと出てくる、そこにかすみ綱を張って一網打尽にとらえる、こういうようなことまで言われておりますし、実際に調べた結果が新聞報道でもあります。  こういう実態を知っておるのかどうかということと、こういう点からいいますと、どうしてもこの山林の所有者、こういう人たちにも、これは故意かあるいは過失か、あるいは全く知らないかともかくとしても、こういう大がかりな、鳥を誘い込んで一網打尽にかすみ網をかけるというようなことは、写真をはっきり撮ってありますし、実際の調査の結果明らかなんですが、こういう実態御存じなのかどうかということと同時に、今後は山林所有者にもこういうようなことについて、結果として密猟に加担するようなことのないように森林組合等を通じて要請するべきだ、当然そうしなければならぬと思いますが、いかがでしょうか。
  136. 古賀章介

    古賀政府委員 今先生の御指摘になりました問題につきましては、ある程度承知をいたしております。  それで、森林所有者に対する普及啓発でありますけれども国有林につきましては、昨年十月、林野庁に対しまして密猟の防止を依頼いたしまして、林野庁から関係営林局に指示をしていただいたところでございます。民間の森林の所有者に対しましては、その民間の森林所有者に対する普及啓発は重要であると考えておりますので、今後関係機関と連携を密にいたしながら、森林所有者、なかんずく民間の森林所有者に対する啓発を一層推進してまいりたいというふうに考えております。
  137. 野間友一

    野間委員 この新聞報道にもありますように、ここまで大がかりになりますとまさにプロの存在、「プロの組織存在?」と書いてありますけれども、本当にゆゆしき事態だと言わざるを得ないと思うのです。これは口先だけではなくて、本当に強力にお願いしたいと思うのです。特に森林組合等を通じてひとつ要請をしていただきたいという具体的な要請ですが、いかがですか。
  138. 古賀章介

    古賀政府委員 今私ども考えておりますのは、都道府県または市町村を通じて普及啓発を図りたいというふうに考えております。
  139. 野間友一

    野間委員 いずれにしても、ひとつ強力にお願いしたいと思います。  それから、現場の摘発ですが、今申し上げた「死のオアシス」という報道記事、これも飛行機で空から監視をして初めて発見をしたという事例です。野鳥の会の方々にいろいろ聞いてみますと、暴力団絡みのケースでは非常に怖い、命がけだ、こう言われるわけです。確かにそうなんです。したがって、一つは強力に行政がいろいろな手だてをされると同時に、やはり飛行機で監視するのも非常に大事だと思うのです。  これについて言いますと、これは全部都道府県持ちと申しますか、各自治体の予算を組んでやっております。福井の場合には県の予算が年百万円、三回ヘリを飛ばしてもう終わる、こういうことで予算がなくなる。石川県、岐阜県等々、石川の場合にはことしから二回ヘリを飛ばしたそうですが、野鳥の会ではカンパ六十万円でセスナ機を飛ばした。しかし非常に高くつく、もっと飛ぶわけですからね。こういうようなことについてはせめて国から一定の補助ができないものかという要請を皆さんされるのですけれども、いかがでしょうか。
  140. 古賀章介

    古賀政府委員 かすみ網の密猟の重点的な取り締まりを実施しております県の中には、県の警察本部のヘリコプターなどを活用いたしまして効果を上げているところがありますので、今後ともこのような方向で指導をしてまいりたいというふうに考えております。  なお、密猟取り締まり経費を含めますところの都道府県の鳥獣保護行政経費についてでございますけれども、これは狩猟者が納付する目的税である入猟税を主要な財源とする仕組みとなっておりますので、かすみ網密猟取り締まり経費を国が補助することは極めて困難であるというふうに考えております。
  141. 野間友一

    野間委員 これはぜひ再検討していただきたいと思います。大臣、これは大事な問題ですから、いろいろ内部で検討していただけませんか。
  142. 稲村利幸

    稲村国務大臣 よく検討をするようにいたします。
  143. 野間友一

    野間委員 それから、この鳥獣保護員は非常勤の公務員ですが、これがハンターに偏り過ぎておる、こういう批判が常々出ております。これは野鳥保護団体の人たちも加えるなどしてやれば、もっと効果的に監視の目が行き届き、事前に検挙ができるというふうにも思うのですけれども、バランスのとれた保護員の選任と申しますか、これをぜひひとつお願いしたいと思いますが、いかがですか。
  144. 古賀章介

    古賀政府委員 先生御案内のように、鳥獣保護員は、鳥獣保護事業を円滑に実施するための補助員として、都道府県知事が任命しているものでございます。その選定に当たりましては基準がございまして、三つほどございますが、「勤務地の市町村に居住していること」、それから二つ目が「鳥獣保護及び狩猟に関し相当の知識を有し、鳥獣保護事業に熱意を有していること」、三つ目が「地元住民の信望があり、かつ、身体強健で時間的及び経済的にも制約の少ないこと」ということを基準としておるわけでございます。現在全国に配置されております鳥獣保護員は約三千二百名でございますけれども、これらの基準に従いまして、都道府県知事が適切にかつ適正に任命しているものと考えております。
  145. 野間友一

    野間委員 いや、私が申し上げているのは、野鳥の会等々こういう保護団体からもぜひバランスがとれるように加えて、より効果的な運用ができるように私の方からお願いしておるわけです。大臣、いかがですか。
  146. 古賀章介

    古賀政府委員 例えば野鳥の会でありますとかその他鳥に関する自然保護団体に加盟している方々の数は三万名弱であろうと思います。それから、狩猟免許を持っている人たちというのは約三十万名おるわけでございます。そういうような全国的な分布状況から見まして、先ほど申し上げました三つの基準に照らしまして知事が適切に判断をしておるということでございますので、殊に地方におきましてはそういう狩猟者が鳥獣保護員になるということも、現状から見てある程度そのような趨勢になることもあり得るのではないかというようなことでございます。しかしながら、先生指摘の面につきましては十分研究をさせていただきたいと思います。
  147. 野間友一

    野間委員 これは古くて新しい問題なんですよ。今これから研究でなくて、そういう配慮をするようにぜひ都道府県に対して指導をお願いしたい。これは時間がありませんのでお願いだけしておきたいと思います。  通産省にお伺いします。  鳥獣保護法の改正の問題が国会でも何回か論議されました。つまり、使用禁止だけでは実効が上がらない。特に現行犯逮捕でなければなかなかこれは検挙できないわけですから、実際上がらないわけですね。それから、製造販売の全面禁止、これは特に学術研究調査等々の場合に限定して、あとは一切製造販売をできないようにというのが強い要請として私も野鳥の会から受けておりますし、私もそう思うのですけれども、せめて所持の禁止だけでも何とかならぬか。通産省は難しいとかいろいろ言うのですけれども、そうでなければ、使用禁止だけでは効果が出ないわけです。武器をつくったら必ず使うというようなもので、持っておるということは使うわけですから、所持の禁止だけでもぜひという要請がありますが、この点についていかがでしょうか、通産省。
  148. 川田洋輝

    ○川田説明員 先生指摘の点につきましては、野鳥の会の方々からも私、何度かお話を伺っておるところでございますが、なかなか難しい問題があることも、今先生お述べいただきましたとおりでございます。  かすみ網と申しますのは、一般に漁網などの網生地を狩猟用に仕立てたものでございますけれども、網生地の段階では、漁業用その他の用途の区別が非常に難しゅうございます。これをかすみ網に仕立てる段階があるわけでございますけれども、この段階あるいは小売商業などになりますと極めて零細であることから、製造販売の実態は、実際問題としてつかむことがなかなか難しいということでございます。  ただ、私どもとしても、先ほど申しました野鳥の会の方々のお話ですとか、環境庁を中心といたします政府部内のお話でございますとかいうのを受けまして、網地をつくっております日本漁網工業組合などに対しましてできる限りの指導を、今までもしてまいっておりますが、これからもそれはしてまいりたいというふうに思っております。
  149. 野間友一

    野間委員 時間がありませんので、これは次の機会にさらに論議をすることにして、この問題について最後に一点だけ、網の輸出の問題です。  一九六六年、ロンドンで行われました国際鳥類保護会議が勧告をしております。かすみ網の使用、販売については、資格を与えられた人、組織に限る、科学目的に限定しろという勧告ですね。それから、東アジア鳥類保護会議、これは昨年の五月にかすみ網の輸出禁止の決議文をつくっております。これは野鳥の会の会報等にも出ております。イタリアでも非常に問題になっておりますね。日本から輸出した網で野鳥が捕獲されて、冷凍にして日本に輸入して料理屋で焼き鳥に使う、こういうような事態が起こっております。  そこで、網の輸出についても、国際的な批判を浴びるようなことは絶対してはならぬと思うのです。こういうような国際的な要請も踏まえて、大臣、批判を浴びないような措置をぜひ検討してほしいと思いますが、いかがですか。
  150. 古賀章介

    古賀政府委員 先生の御指摘の問題、極めて難しい問題だと思います。関係省庁とも十分相談をしながら検討させていただきたいと思います。
  151. 野間友一

    野間委員 大臣、これは本当に大事な問題ですので強く要請しておきますので、ぜひ検討していただきたいと思います。そうでなかったら、国際的に大変な批判を浴びますから。  次には、ナショナルトラストの運動です。  これは御案内のとおり、財団法人天神崎の自然を大切にする会の設立認可を七月十五日に和歌山県知事から得たのですが、ところが問題は、これからの作業としては、税制上の恩典が受けられるためにはいわゆる自然環境保全法人の認定をされなければならぬわけですね。これは例えば、私も予算委員会の分科会でも取り上げたのですが、固定資産税、所得税、法人税、相続税の非課税等々いろいろな措置も、環境庁あるいは大蔵大臣の認定がなければこういう税制上の恩典も受けることができないわけですね。  きょうも電話で聞いてみますと、和歌山県は十二月十五日ごろに環境庁を経由して大蔵大臣に出すんだというふうに言っております。これを早くやらぬことにはいろいろな税制上の恩典を受けられないわけですね。しかも聞きましたら、四次にわたる公定歩合の引き下げで今預貯金の目減り、利息で大体一人の専従を置きたいというふうに考えておったところが、これができない。ですから、五千万円の基本財産で発足したのですけれども、それではとても出ないということで、さらに五千万の追加寄附を募ると今やっておるわけですね。ところが、認定がなければ寄附金控除等の税制上の恩典が受けられない、こういうことになりまして非常に困っておるわけですね。ですから、十二月の半ば——私どもは早くということで県庁にもお願いしておるのですけれども、出れば直ちに認定してほしいと強く要請しますが、いかがですか。
  152. 古賀章介

    古賀政府委員 今先生がお挙げになりました財団法人天神崎の自然を大切にする会は、和歌山県知事が自然環境保全法人の認定を行う上で必要な条件をすべて満たしていると考えられております。現在、和歌山県知事が環境庁を経由して税務当局とその認定に係る協議を行っているところでございます。環境庁としましても、できるだけ早く認定が行われますように最大限の努力を払っておるところでございます。
  153. 野間友一

    野間委員 年末で大変忙しいと思うのですけれども、出てくれば迅速に処理をして、年内にできるように、大臣、いかがですか。
  154. 稲村利幸

    稲村国務大臣 今局長が答弁されたように、できる限り早くしたいと思います。
  155. 野間友一

    野間委員 年内にぜひお願いしておきます。  それから、大臣にお聞きしたいのは、先月ですが、ナショナルトラストの全国法人、この構想をぶち上げられました。私は非常に評価しております。これをとにかく早くつくって、今三十、四十、幾つかのトラストのいろいろな運動が起こっておりますけれども、これに対する援助なり指導、こういうようなセンターにもしていただきたいと思うわけですね。いつごろをめどにどういう構想をお持ちなのか、それから既存の、例えば今の和歌山のような法人との関係は一体どうお考えなのか、お答えいただきたいと思います。
  156. 稲村利幸

    稲村国務大臣 全国法人につきまして、現在、基本財産の確保を図るとともに、発起人や理事等の選考を進めております。今後は民法第三十四条に基づく財団法人の設立許可のための所要の手順を踏んで、できる限り早く法人の設立が実現できるよう努力してまいりますし、私自身も、大臣としてぜひこれを早期実現したいという意欲を持っております。
  157. 野間友一

    野間委員 三月ごろをめどにというふうに私は聞いておるのですけれども、そうなのかどうか、もう一つは、今申し上げたように、例えば天神崎のこういうローカルな法人との関係、これについてどういう構想をお持ちなのか、あわせて。
  158. 古賀章介

    古賀政府委員 今大臣が御答弁されましたように、全国法人の設立に向けて、大臣並びに私ども、精力的に力を注いでおるわけでございます。その時期につきましては、何分関係者等といろいろ協議をしながら進めていく問題でもございますので、時期を明示することはできませんけれども、今大臣が言われましたように、できるだけ早くこれを実現させたいということで御理解をいただきたいと思います。  もう一つは、地方のナショナルトラスト活動を行う法人との関係でございますけれども、今考えております全国法人の事業というのは、大きく言って二つございます。一つは、法人みずからが土地を所有し、管理をするということ、もう一つは、資金などに不足をしておるナショナルトラスト活動を行う地方の団体等に対する助成ということでございます。したがいまして、そういう地方の活動団体に対しまして助成を行うということも、この法人の二つの事業の柱のうちの一つであるというふうに考えております。
  159. 野間友一

    野間委員 もう時間が来たわけですけれども、もう一つお伺いしたいのは、この天神崎の場合、外山八郎さんという方が法人の専務理事になられたのですが、これを教育の場にしたい、人間と自然との交わりと申しますか、そういうものを子供に生きた教育の場として使いたいということで、前にも予算委員会の中でも私、申し上げたのですけれども、自然観察センターですね、そういうものも簡素なものを、自然の中に溶け込んだものをつくりたい、こう言われておるわけですけれども、これに対して予算措置をぜひお願いしたいと思うのが一つと、それから最後に大臣、これはいろいろな運動の形態がありますけれども、ナショナルトラスト法、こういうものをぜひつくっていただきたい。これは上田環境庁長官も、いろいろなことを検討した上でそういう方向でやりたいというふうに言われておりますけれども、その点をあわせてお答えをいただいて、質問を終わりたいと思います。
  160. 古賀章介

    古賀政府委員 天神崎におきまして、財団法人日本自然保護協会が設立三十周年記念事業として自然観察センターを建設しようとする計画があることは承知をいたしております。しかし、環境庁の有する現行制度では、このような民間施設に助成することは、現在の厳しい財政状況から見まして極めて困難であるというふうに言わざるを得ません。そのように御理解を賜りたく存じます。
  161. 稲村利幸

    稲村国務大臣 法制化の問題につきましては、ナショナルトラスト活動の進展をよく見きわめながら慎重に検討をしてまいりたい、こういうふうに今大変難しい問題だろうと思います。
  162. 野間友一

    野間委員 時間が参りましたので終わりますが、ちょっとやはり前の上田環境庁長官の答弁より後退していますよ。これはぜひもう一遍検討してほしいと思います。  それから、今の予算上の措置がちょっと難しいというお話ですけれども、これまた再度お願いしたいと思います。  時間が来ましたので、これで終わりたいと思います。
  163. 新村勝雄

    ○新村委員長代理 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十二分休憩      ────◇─────     午後一時三十分開議
  164. 堀之内久男

    堀之内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和五十八年度決算外二件及び昭和五十九年度決算外二件を一括して議題といたします。  これより労働省所管について審査を行います。  この際、労働大臣の概要説明会計検査院検査概要説明を求めるのでありますが、これを省略し、本日の委員会議録に掲戴いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  165. 堀之内久男

    堀之内委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────    昭和五十八年度労働省所管一般会計及び特別会計決算説明  労働省所管昭和五十八年度決算について、その概要を御説明申し上げます。  まず、一般会計の歳出決算について申し上げます。  歳出予算現額は、五千四百三十三億六千六百十五万円余でありまして、その内訳は、歳出予算額四千九百三十五億三千六百九十八万円余、予備費使用額四百九十八億二千九百十七万円余となつております。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額五千三百九十五億七百一万円余、不用額三十八億五千九百十三万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものについて申し上げますと、雇用保険国庫負担金及び失業対策事業費等であります。  これらの経費は、「雇用保険法」に基づく求職者給付等に要する費用の一部負担及び「緊急失業対策法」に基づき実施した失業対策事業に要したもの等でありますが、このうち失業対策事業の主な実績は、事業主体数五百九十八箇所、事業数二千百九十九、失業者の吸収人員一日平均五万三千人余となっております。  なお、不用額の主なものは、職業転換対策事業費等であります。  つぎに、特別会計の決算について申し上げます。  まず、労働保険特別会計について申し上げます。  この会計は、「労働保険特別会計法」に基づいて昭和四十七年度に設置されたものであり、労災勘定、雇用勘定及び徴収勘定に区分されております。  初めに労災勘定について申し上げます。  歳入につきましては、歳入予算額一兆五千七百六十一億九千八百九十二万円余に対しまして、収納済歳入額一兆四千七百九十六億六千六百三十一万円余でありまして、差引き九百六十五億三千二百六十万円余の減となっております。  これは、徴収勘定からの受入れが予定より少なかつたこと等によるものであります。  つぎに、歳出につきましては、歳出予算現額一兆五千七百六十三億四千六百六十三万円余でありまして、その内訳は、歳出予算額一兆五千七百六十一億九千八百九十二万円余、前年度繰越額一億四千七百七十一万円であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額九千三億四千四百九十四万円余、翌年度繰越額二億二千八百十五万円余、不用額六千七百五十七億七千三百五十二万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものは、「労働者災害補償保険法」に基づく保険給付に必要な経費及び労働福祉事業に必要な経費等であります。  この事業の実績の概要について申し上げます。  保険給付の支払件数は、五百四十二万四千件余、支払金額は、六千五百三十九億七千三百四十二万円余となつております。  なお、不用額の主なものは、支払備金等に充てる経費であります。  つぎに、雇用勘定について申し上げます。  まず、歳入につきましては、歳入予算額一兆八千三百六十四億五千八百六十八万円余に対しまして、収納済歳入額一兆六千六百五十四億六千百五十七万円余でありまして、差引き一千七百九億九千七百十一万円余の減となつております。  これは、予備費を使用することが少なかつたこと等により積立金からの受入れが少なかつたこと等によるものであります。  つぎに、歳出につきましては、歳出予算現額一兆八千三百六十八億一千三百十四万円余でありまして、その内訳は、歳出予算額一兆八千三百六十四億五千八百六十八万円余、前年度繰越額三億五千四百四十六万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額一兆五千八百七十五億六千百五十五万円余、翌年度繰越額二億七千八百五十二万円余、不用額二千四百八十九億七千三百六万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものは、「雇用保険法」に基づく失業給付に必要な経費及び雇用安定事業等四事業に必要な経費等であります。  この事業の実績の概要について申し上げます。  失業給付のうち、一般求職者給付及び日雇労働求職者給付の月平均受給者実人員は、一般求職者給付八十五万六千人余、日雇労働求職者給付十万六千人余、また、短期雇用特例求職者給付及び就職促進給付の受給者数は、短期雇用特例求職者給付七十万八千人余、就職促進給付五万一千人余でありまして、支給金額は、一般求職者給付一兆一千百三十二億五千四百九十二万円余、日雇労働求職者給付三百二十三億六千六百三十一万円余、短期雇用特例求職者給付一千四百五十六億三千六百九十万円余、就職促進給付六十七億九百四十二万円余となつております。  また、雇用安定事業等四事業に係る支出実績は、支出済歳出額二千三百二十二億三千八百二十七万円余となつております。  なお、不用額の主なものは、雇用安定等事業費等であります。  つぎに、徴収勘定について申し上げます。  まず、歳入につきましては、歳入予算額二兆三千四百六十三億四千七百七十二万円余に対しまして、収納済歳入額二兆二千二百二十四億六千二十六万円余でありまして、差引き一千二百三十八億八千七百四十六万円余の減となつております。  これは、労災保険の有期事業に係る保険料収入が予定より少なかつたこと等によるものであります。  つぎに、歳出につきましては、歳出予算現額及び歳出予算額とも二兆三千四百六十三億四千七百七十二万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額二兆二千二百十七億三千八百二十七万円余、不用額一千二百四十六億九百四十四万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものは、労災勘定及び雇用勘定への繰入れに必要な経費であります。  この事業の実績の概要について申し上げますと、労災保険適用事業場数百九十九万三千余、労災保険適用労働者数三千四百五十一万人余、雇用保険適用事業場数百四十一万四千余、一般雇用保険適用労働者数二千六百三十七万人余、日雇雇用保険適用労働者数十五万人余となつております。  なお、不用額の主なものは、他勘定へ繰入れに必要な経費であります。  最後に、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計のうち、労働省所掌分の炭鉱離職者援護対策費及び産炭地域開発雇用対策費の歳出決算について申し上げます。  歳出予算現額及び歳出予算額とも百八十四億四千九百四十四万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額百七十九億一千八百四十六万円余、不用額五億三千九十八万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものについて申し上げますと、炭鉱離職者緊急就労対策事業に必要な経費及び産炭地域開発就労事業に必要な経費であります。  これらの事業の実績の概要について申し上げます。  まず、炭鉱離職者緊急就労対策事業につきましては、事業主体数三十九箇所、事業数百六十七、就労人員延四十八万四千人余となつております。  つぎに、産炭地域開発就労事業につきましては、事業主体数四十六箇所、事業数百九十六、就労人員延六十九万二千人余となつております。  なお、不用額の主なものは、炭鉱離職者援護対策費であります。  以上が労働省所管に属する昭和五十八年度一般会計及び特別会計の決算概要であります。  なお、昭和五十八年度決算検査報告において掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでありまして、誠に遺憾に存じております。  これらの指摘事項につきましては、鋭意改善に努め、今後このような御指摘を受けることのないよう一層努力をいたしたいと存じます。  以上をもちまして、労働省所管に属する一般会計及び特別会計の決算説明を終わります。  よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。     …………………………………    昭和五十八年度決算労働省についての検査概要に関する主管局長説明                                    会計検査院  昭和五十八年度労働省の決算につきまして検査いたしました結果の概要説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項九件であります。  検査報告番号一〇三号は、身体障害者職業訓練校の運営委託に当たり、委託費の精算が適切でなかつたため、支払額が過大になつたものであります。  この委託契約は、身体障害者に対し職業訓練を実施するために労働省が設置している広島身体障害者職業訓練校の運営を広島県に委託し、本件業務を実施するために必要な人件費及び事業費を委託費として交付しているものでありますが、委託費を精算するに当たり、精算の対象となる金額を過大に計上して委託費を精算していたものであります。  また、検査報告番号一〇四号は、労働保険の保険料の徴収に当たり、徴収額に過不足があつたものであります。  これは、事業主が提出した保険料の算定の基礎となる賃金の支払総額が事実と相違していたことなどにより、徴収額に過不足があつたものであります。  また、検査報告番号一〇五号は、雇用保険の失業給付金の支給が適正でなかつたものでありまして、失業給付金の受給者が再就職しておりますのに、引き続き失業給付金のうちの基本手当を支給しており、給付の適正を欠いたものであります。  また、検査報告番号一〇六号は、雇用保険の特定求職者雇用開発助成金の支給が適正でなかつたものであります。  この助成金は、高年齢者等特定求職者の雇用機会の増大を図るため、特定求職者を公共職業安定所の紹介により雇用した事業主に対して、その特定求職者に支払つた賃金の一部を助成するものでありますが、事業主が既に雇用していたりしているなど支給要件を欠いておりましたのに助成金を支給しており、給付の適正を欠いていたものであります。  また、検査報告番号一〇七号は、雇用保険の定年延長奨励金の支給が適正でなかつたものであります。  この奨励金は、定年の引上げによる高年齢者の雇用の延長の促進を図るため、定年の引上げを行つた事業主に対して支給するものでありますが、実際はこの定年の引上げを行つていなかつたりしているなど支給要件を欠いておりましたのに奨励金を支給しており、給付の適正を欠いていたものであります。  また、検査報告番号一〇八号から一一一号までの四件は、職業訓練関係補助金の経理が不当と認められるものであります。  この補助金は、職業訓練法の規定に基づいて都道府県知事が、離転職者等を対象として職業に必要な技能を習得させるために行う職業訓練を実施した場合に、その都道府県に対してこれらに要する費用を補助するものでありますが、補助の対象とは認められないものを事業費に含めていたり、実支出済額を上回る額で精算していたりして事業費を過大に精算していたものであります。  なお、以上のほか、昭和五十七年度決算検査報告に掲記しましたように、福祉施設の設置及び管理運営について意見を表示しましたが、これに対する労働省の処置状況についても掲記いたしました。  以上をもつて概要説明を終わります。     ─────────────    昭和五十九年度労働省所管一般会計及び特別会計決算説明  労働省所管昭和五十九年度決算について、その概要を御説明申し上げます。  まず、一般会計の歳出決算について申し上げます。  歳出予算現額は、五千十七億五千五百六十七万円余でありまして、その内訳は、歳出予算額五千十億六千四百九十九万円余、予備費使用額六億九千六十七万円余となっております。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額五千三億四千七百六十五万円余、不用額十四億八百一万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものについて申し上げますと、雇用保険国庫負担金及び失業対策事業費等であります。  これらの経費は、「雇用保険法」に基づく求職者給付等に要する費用の一部負担及び「緊急失業対策法」に基づき実施した失業対策事業に要したもの等でありますが、このうち失業対策事業の主な実績は、事業主体数五百九十五箇所、事業数二千九十三、失業者の吸収人員一日平均四万六千人余となっております。  なお、不用額の主なものは、職業転換対策事業費等であります。  つぎに、特別会計の決算について申し上げます。  まず、労働保険特別会計について申し上げます。  この会計は、「労働保険特別会計法」に基づき昭和四十七年度に設置されたものであり、労災勘定、雇用勘定及び徴収勘定に区分されております。  初めに労災勘定について申し上げます。  歳入につきましては、歳入予算額一兆六千二百七十九億六千七十九万円余に対しまして、収納済歳入額一兆五千三百九十八億二千三百六十八万円余でありまして、差引き八百八十一億三千七百十一万円余の減となっております。  これは、徴収勘定からの受入れが予定より少なかったこと等によるものであります。  つぎに、歳出につきましては、歳出予算現額一兆六千二百八十一億八千八百九十五万円余でありまして、その内訳は、歳出予算額一兆六千二百七十九億六千七十九万円余、前年度繰越額二億二千八百十五万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額九千四百八十六億三千六百八十七万円余、不用額六千七百九十五億五千二百八万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものは、「労働者災害補償保険法」に基づく保険給付に必要な経費及び労働福祉事業に必要な経費等であります。  この事業の実績の概要について申し上げます。  保険給付の支払件数は、五百四十八万七千件余、支払金額は、六千八百十九億五千四百七十六万円余となっております。  なお、不用額の主なものは、支払備金等に充てる経費であります。  つぎに、雇用勘定について申し上げます。  まず、歳入につきましては、歳入予算額一兆九千六百六十六億八千五十七万円余に対しまして、収納済歳入額一兆六千六百六十一億三千五百八十三万円余でありまして、差引き三千五億四千四百七十四万円余の減となっております。  これは、予備費を使用しなかったこと等により積立金からの受入れが少なかったこと等によるものであります。  つぎに、歳出につきましては、歳出予算現額一兆九千六百六十九億五千九百十万円余でありまして、その内訳は、歳出予算額一兆九千六百六十六億八千五十七万円余、前年度繰越額二億七千八百五十二万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額一兆六千二百七十八億九千四十二万円余、翌年度繰越額七千五百六十三万円余、不用額三千三百八十九億九千三百四万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものは、「雇用保険法」に基づく失業給付に必要な経費及び雇用安定事業等四事業に必要な経費等であります。  この事業の実績の概要について申し上げます。  失業給付のうち、一般求職者給付及び日雇労働求職者給付の月平均受給者実人員は、一般求職者給付八十万六千人余、日雇労働求職者給付十万九千人余、また、高年齢求職者給付、短期雇用特例求職者給付及び就職促進給付の受給者数は、高年齢求職者給付二万九千人余、短期雇用特例求職者給付六十八万四千人余、就職促進給付十四万一千人余でありまして、支給金額は、一般求職者給付一兆一千八十六億二千三百九十九万円余、高年齢求職者給付百二十三億二千八十万円余、短期雇用特例求職者給付一千四百八十七億七千五百十九万円余、日雇労働求職者給付四百三十七億三千百五万円余、就職促進給付三百五十一億八千八百六万円余となっております。  また、雇用安定事業等四事業に係る支出実績は、支出済歳出額二千百六十億二千九百八十二万円余となっております。  なお、不用額の主なものは、雇用安定等事業費等であります。  つぎに、徴収勘定について申し上げます。  まず、歳入につきましては、歳入予算額二兆四千二百十六億五千九百四十六万円余に対しまして、収納済歳入額二兆三千百六十九億五百八十三万円余でありまして、差引き一千四十七億五千三百六十二万円余の減となっております。  これは、労災保険の有期事業に係る保険料収入が予定より少なかったこと等によるものであります。  つぎに、歳出につきましては、歳出予算現額及び歳出予算額とも二兆四千二百十六億五千九百四十六万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額二兆三千百五十七億二千三百六十九万円余、不用額一千五十九億三千五百七十六万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものは、労災勘定及び雇用勘定への繰入れに必要な経費であります。  この事業の実績の概要について申し上げますと、労災保険適用事業場数二百三万五千余、労災保険適用労働者数三千五百十九万人余、雇用保険適用事業場数百四十四万五千余、一般雇用保険適用労働者数二千六百八十二万人余、日雇雇用保険適用労働者数十五万人余となっております。  なお、不用額の主なものは、他勘定への繰入れに必要な経費であります。  最後に、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計のうち、労働省所掌分の炭鉱離職者援護対策費及び産炭地域開発雇用対策費の歳出決算について申し上げます。  歳出予算現額及び歳出予算額とも百八十一億六千八百七十八万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済歳出額百八十億二千七百五十九万円余、不用額一億四千百十八万円余で決算を結了いたしました。  支出済歳出額の主なものについて申し上げますと、炭鉱離職者緊急就労対策事業に必要な経費及び産炭地域開発就労事業に必要な経費であります。  これらの事業の実績の概要について申し上げます。  まず、炭鉱離職者緊急就労対策事業につきましては、事業主体数三十八箇所、事業数百五十六、就労人員延四十三万六千人余となっております。  つぎに、産炭地域開発就労事業につきましては、事業主体数四十七箇所、事業数百九十八、就労人員延六十八万五千人余となっております。  なお、不用額の主なものは、炭鉱離職者援護対策費であります。  以上が労働省所管に属する昭和五十九年度一般会計及び特別会計の決算概要であります。  なお、昭和五十九年度決算検査報告において掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでありまして、誠に遺憾に存じております。  これらの指摘事項につきましては、鋭意改善に努め、今後このような御指摘を受けることのないよう一層努力をいたしたいと存じます。  以上をもちまして、労働省所管に属する一般会計及び特別会計の決算説明を終わります。  よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。     …………………………………    昭和五十九年度決算労働省についての検査概要に関する主管局長説明                                    会計検査院  昭和五十九年度労働省の決算につきまして検査いたしました結果の概要説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項五件であります。  検査報告番号一〇三号は、労働保険の保険料の徴収に当たり、徴収額に過不足があつたものであります。これは、事業主が提出した保険料の算定の基礎となる賃金の支払総額が事実と相違していたことなどにより、徴収額に過不足があつたものであります。  検査報告番号一〇四号は、雇用保険の失業給付金の支給が適正でなかったものでありまして、失業給付金の受給者が再就職しておりますのに失業給付金のうちの基本手当を支給していたり、事実と相違した再就職年月日を基に再就職手当を支給していたりして給付の適正を欠いたものであります。  検査報告番号一〇五号は、雇用保険の特定求職者雇用開発助成金の支給が適正でなかつたものであります。この助成金は、高年齢者等特定求職者の雇用機会の増大を図るため、特定求職者を公共職業安定所の紹介により雇用した事業主に対して、その特定求職者に支払つた賃金の一部を助成するものでありますが、事業主が既に雇用している者を新たに雇用したこととしているなど支給要件を欠いておりましたのに助成金を支給しており、給付の適正を欠いていたものであります。  検査報告番号一〇六号は、雇用保険の定年延長奨励金の支給が適正でなかつたものであります。この奨励金は、定年の引上げによる高年齢者の雇用の延長の促進を図るため、定年の引上げを行つた事業主に対して支給するものでありますが、実在していない者を対象被保険者として申請したりしているなど支給要件を欠いておりましたのに奨励金を支給しており、給付の適正を欠いていたものであります。  検査報告番号一〇七号は、職員の不正行為による損害を生じたものであります。これは、加世田、鹿児島両公共職業安定所及び鹿児島県民生労働部職業安定課で職業相談、失業の認定等の事務に従事していた労働事務官が、架空の労働者名を使用し、関係書類を偽造するなどして失業給付金の支給を請求し、これを領得していたものであります。  以上、簡単でございますが説明を終わります。     ─────────────
  166. 堀之内久男

    堀之内委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。新村勝雄君。
  167. 新村勝雄

    ○新村委員 労働省所管の諸問題について御質問いたしますが、その前に幾つかの点でお伺いをしたいと思います。  その一つは、ただいまの本会議で雇用問題についての決議がございました。我々国民から見ましても、雇用問題が今後の日本の政治、経済、社会問題として大きな課題になるであろうという感じがするわけでありますが、そういった点で大臣のお見通し、御見解を伺いたいと思います。
  168. 平井卓志

    ○平井国務大臣 ただいま御指摘の点でございますが、まさにおっしゃるように、今後内閣施策の中心に置くべきものは雇用問題であろうか。昨今の円高、構造不況地域、業種は今後の悪化がさらに懸念されるわけでございまして、そういう意味では、幸いなことに物価も安定いたしておりますし、悪質な長期にわたるインフレ、また大型の雇用不安というのは必ずや社会不安につながるという意味からも、雇用対策には政府全般が総力を挙げてやらなければならぬ。  いま一つ申し添えますると、今後の見通しはなかなか厳しいものがございまして、御案内のように日米関係、なかんずく経済を中心にした今後の摩擦、推移等を考えてみましても、来年度はさらに難しくなるのじゃないか。そういう中で、やむを得ないこととは申しながら、経済構造調整もさらに迫られておる。これは御案内のように一年、二年で達成し得る話ではございませんで、やはり五、六年かなり汗を流し、血を流すようなことでないとなかなか達成できない。  そういう中で、当面労働省の対策といたしましては、できるだけ失業者をふやさないように抑えていかなければならぬということでございますので、従来の労働省の、失業者をふやさないという雇用調整助成金等々の拡充強化、さらに今後地域に対する新たなる雇用の開発等々を含めてやりましても、労働省の枠内における対策だけで果たして今後の雇用不安が解消できるかということになりますと、いろいろなお考えの方がおりましょうが、じりじりとふえてまいるというこの雇用不安に対しましては、やはり政府全般の経済政策、産業政策をもって取りかからなければならぬし、さらには緊急の雇用対策として今後また国会に財政の出動等々も含めた総合的な抜本策、緊急強化策をお願いしなければならぬ、こういうふうに考えております。
  169. 新村勝雄

    ○新村委員 雇用問題は労働問題でしょうけれども、極めて大ざっぱに考えますと、労働することによって我々人間の生活資材、生活物資を生産して生活をしていくということでありますが、文明の極めて初期の段階では、人間は一日じゅう自分の労働力をフルに活用しても自分の生活を支えるのに手いっぱいであった、あるいはそれを支えるだけの生産ができなかった、そういう時代から次第に生産力が向上して、生活資材の生産では十分余る、それ以上の文化を築いてきた、経過からすればそういうことだと思いますね。余剰労働力が次第にふえてきたということが言えると思うのですが、そういう過程からすれば、生産力が向上し文明が進歩すれば人間の労働力は余っていく、そういう趨勢になる一面もあると思うのですね。  現在の労働と生産を考えた場合には、いわゆるワークシェアリングという考え方を十分取り入れていかないといけないのではないか。そういう意味からいいましても、労働諸立法は既に時代おくれになっているのではないか。あるいはまた、生産力と国民総労働力といいますか、そういう言葉があるかどうかわかりませんけれども日本国民が持っておる総労働力と生産との関係あるいは生産性との関係は、極めて巨視的な観点から考えた場合にアンバランスが生じつつあるのではないかと思うわけでありますけれども、そういった点の御認識はいかがでございましょうか。
  170. 平井卓志

    ○平井国務大臣 御指摘の点でございますが、国際社会の中における日本の地位が非常に大きくなったわけでございまして、戦後四十年間にわたる日本の基本的な経済運営、さらには企業間活動が押しなべて貿易立国であるということで、技術の革新と輸出奨励型と申しましょうか、そういうところに力点が置かれて今日まで参ったことは御案内のとおりでございます。今日程度日本の存在、経済力、影響力が大きくなりました場合、私はよく申し上げるのでございますけれども、現在まで安全とある意味のある程度の豊かさというものは実現されたわけでございますが、今後我が国に求められるのは、あくまでも世界の中における日本の国際協調という面がどうしても無視できないわけでございます。そういう中で、遅かったのか早かったのかという問題はございましょうが、国際協調を問われたのが現在の日米関係であり、対ヨーロッパその他の輸出入貿易関係の摩擦がそこらあたりに起因するのではないかというふうに私は考えております。  御指摘のように、日本の生産力はただいままさに過剰でございまして、生産品がオーバーフローするということでございますから、そういうはけ口をすべて従来のような形において海外に求めるということになりますと、国際協調がなかなかうまくいかない。世界有数の市場であるアメリカ等の現状も、議員御案内のように財務体質も非常に悪くなり、なかんずく日米貿易では過剰な黒字を問われておる。そういうことで、政府としても九月に、今後内需主導型に経済構造調整していかなくてはならぬというところで、内需振興も含めて総合政策を打ち出したわけでございますが、今後我が国の労働力がどういうふうに問われるかということから、非常に難しい問題でございますけれども、昨今話題になっております時間短縮等々の問題も含めて、先行き早晩ワークシェアリング等々も真剣に考えなければならぬような労働情勢が足元にやってきておるというふうに理解をいたしております。
  171. 新村勝雄

    ○新村委員 もう一つでありますが、今大臣が言われたように、日本経済ばかりではなくて日本の国の存在そのものが、世界の中の日本として、これからそれこそ世界の信頼を得ながら、諸国民の信頼にこたえながら生きていかなければいけないという関係があるわけでありますけれども、そういう中でほとんど自由化をいたしまして、既に経済的には国境がないと言われております。そういう中で労働力だけは完全に日本はまだ鎖国の状態だと思うのですけれども、こういう問題について、国内の雇用問題がこれから問題になるという段階でありますが、同時に、対外的に考えた場合、特に中後進国を対象に考えた場合に、そういう諸国と日本との間の労働力の国際化というもの、これは将来そういうことが要請されることがあるのではないかと思われますけれども、そういう問題はどうでしょうか。  特に、日本は今まで国際社会の中で生活をしてきて今日の大をなしたわけでありますけれども、かつては日本が中後進国であった時代に、先進国に対して移民というような形で労働力を輸出した時代があるわけですね。それで、既にそういう人たちが何百万か、アメリカあるいはブラジル等で生活をしておるわけでありますが、こういう日本が後進国の時代に先進国に労働力を輸出というか、言葉は適当でないかもしれませんけれども、出かけていって、そこでその国の、早く言えばお世話になってきたという経過もありますね。そういう経過考えた場合に、これから日本は、こちらから見た場合に、日本は単一民族で、日本だけで完全雇用あるいは完全雇用に近い状況を楽しんでいればいいんだ、外国の労働力は一切受けつけませんというような姿勢をこれからずっと続けることができるのかどうか、また、そういう問題について検討するあるいは考える必要があるのかないのか、その点を伺います。
  172. 白井晋太郎

    ○白井政府委員 お答えいたします。  外国人労働力の問題でございますが、国際的に見まして、日本の現状は決して欧米諸国より厳しい状態ではないわけでございまして、技術関係の労働者とか外資関係で入ってくる従業員とか、そういう面についてはかなり開放いたしております。単純労務につきまして原則として入ることを禁止いたしておりますが、これにつきましては、一時高度成長期には、欧米諸国、特に西独は外人労働力を多数入れまして、EC諸国内だけでなくて、トルコとか東南アジアその他から入れていたわけでありますけれども、現在はむしろその人たちを奨励金をつけて国へ帰そうというような措置をとっているところでございます。それから、英国や米国におきましては、入国許可のほかに労働の許可証がなければ労働ができないというような状態になっております。そういう制度的に見まして、決して日本が鎖国状態であるということではないと考えております。  しかし、先生がおっしゃいました国際的な関係、特にいろいろな国際化が進められている中で今後の外人労働力についてどう考えていくかということは、先ほど先生お話にもございましたように、経済の発展が日本国民ないし世界のためにどうなるかということで、そこはやはり最終的には分かち合いの精神と申しますか、公平に富が分配されるということが最終目的だろうと思いますけれども、この労働の問題についても究極の目的はそこにあるかと思います。  しかし、人と物とは若干違う点があるわけでございまして、日本の経済発展は、経済だけが発展することが目的ではなくて、完全雇用が最終目的ということで現在まで発展してきたわけでございまして、その間、労働条件の問題とか労使間の問題とか、人間関係の中での国民としての問題もいろいろございます。そういうことを十分配慮しながら、長い目で見て検討を進めていくべき問題ではないか、こういうふうに考えております。
  173. 新村勝雄

    ○新村委員 次に、言葉の問題、用語の問題であります。これは文部省にお伺いすれば一番いいのでしょうけれども、労働省さん、すべての省庁に関係がございますのでお伺いをするわけでございます。  最近、外来語、特に英語が洪水のように日本に流れ込んでおるわけですね。町を見ますと英語の看板がある。単なる言葉だけではなくて、文章、センテンスまでが英語で、しかも横文字で、ローマ字で書いてある。ですから、英語そのものですね。そういうような状況が見当たるわけであります。その可否についてはいろいろ議論があろうと思いますけれども、各省庁においてもほとんど無原則に外来語を使っておるという傾向が見受けられます。  今お伺いするのは、実はこれは堀之内委員長からお伺いしたわけでありますけれども、労働省の施設にサンアビリティーという施設があるそうですね。サンは太陽、アビリティーは能力、サンアビリティーズですか、複数になっていますか、そういう施設があるそうでございまして、それは何をやるのかということが、そのサンアビリティーズだけでは全くわからないわけですよ。ところが、これは障害者の施設だそうですね。  そこで、公共機関、しかも広く国民にその機能を知ってもらわなければいけないような施設にそういう外来語、しかもサンアビリティーズ、これは必ずしもまだ日本語化した英語ではないですね。全く日本語化していない。ですから、まさに外国語ですよ。そういう外国語を政府の機関に、施設につけるということは、どうも常識からいって無理ではないかというふうな気がするわけでありますけれども、その点はいかがですか。
  174. 白井晋太郎

    ○白井政府委員 お答えいたします。  今のサンアビリティーの問題につきましては、委員長からの御指摘もありまして、地域住民の御意向もよく確かめながら検討をし直すということで、事務的に検討させてもらうことになっております。  確かに先生おっしゃるとおり、変なと言ったらあれですが、外来語で、いろいろな形がございますけれども、実は中野に、このころは高度成長期で青少年のための施設をつくったわけでございますが、サンプラザという名前でつくっております。そのサンという名前とプラザ、それからアビリティーの方は身体障害者の能力ということを考えたんだと思いますけれども、そういうことで、全国各ブロックにつくっておりますこのサンプラザの場合には、それぞれそれが引用されております。そういう観点から障害者のための施設についても何かニックネームはないかということで、いろいろ各般の人々の意見を聞きながら統一的に考え出したのが数年前のようでございまして、私もそういう委員長お話があるということを聞いて、やっとそういうことがあるのかなということを知ったような次第でございましたけれども、サンアビリティー何々というのを考えたようてございます。今先生のおっしゃったような点も十分留意しながら、今後名称についでは注意してまいりたいと思います。  ただ、これは、サンプラザの場合もほとんど施設は労働省が計画いたしまして雇用促進事業団につくらせておりますが、運営自体は財団法人その他で運営していただくということにいたしているわけでございます。
  175. 新村勝雄

    ○新村委員 いろいろ御苦心なさっているとは思いますけれども、それからまた国際化の時代でございまして、経済が国際化するだけではなくて言葉の国際化ということもあるでしょうし、日本語は今海外で大分人気があるそうでございます。そういう意味で、文化の交流、言葉は文化の重要な部門だと思いますけれども、言葉の国際化ということも必要だと思いますが、やはり国民に理解のできるような、というのは平均的な日本人にすぐに、ああそれかというふうに理解のできる言葉をひとつ選んでいただきたいと思います。  そこで、次は決算の問題に入るわけですが、会計検査院の五十八年度、五十九年度検査の結果の不当事項あるいは不正事項というものが、労働省所管の中に若干あるわけでございます。五十八年度において、身障者職業訓練校の運営委託に当たり、委託費の精算が不適切であったというような件、それから労働保険、雇用保険の運用について不当事項があった、これは五十八年度、五十九年度両方にあります。さらに補助金の経理に不当な点があったというのがございます。それから五十九年度では、職員の不正行為が報告されておるわけであります。  こういう不当、不正事項について、これは膨大な事務量でありますし、またこれを扱う職員の数も大変多くの方々が扱っていらっしゃるわけでありますから、全くゼロというわけにはまいらないと思いますけれども、同じような種類の、例えば労働保険、雇用保険については五十八年、五十九年両年度にわたっておるわけであります。これは五十八、五十九年度に限らず、ほとんど毎年幾らかこういう不正が指摘をされておるようでありますが、これについて根絶をする方法はないものかどうか。  それからさらに、身体障害者の訓練校の問題あるいは補助金の問題、これは国と地方団体との関係があるわけですが、この記載によりますと地方団体に責任があってこういう間違いが起こった、そういうニュアンスの書き方でありますけれども、それが実際はどうであるのか。もしそういう地方団体の事務処理が万全でなかったということであれば、それはこれから十分監督をしていただかなければなりませんし、五十八年、五十九年両年度にわたって同じ件が、五十八年にも五十九年にもその名前があらわれておるというようなこともありまして、その辺、問題があるのではないかと思うのですけれども、その辺の事情を御説明願います。
  176. 岡部晃三

    ○岡部政府委員 お答え申し上げます。  先生指摘のように、昭和五十八年度において六項目、五十九年度におきまして五項目の指摘会計検査院からなされておるわけでございまして、常日ごろ予算の執行に当たりましては適正を期すべく努めているわけでございますが、このような不当事項が記載されたということは、まことに遺憾に存じているところでございます。もとより私ども、根絶を目指しまして今後とも努力をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。特に今年度からは大臣官房に会計監査室の創設を見たところでございまして、関係部局に対します指導を一層徹底してまいりたいというふうに考えております。  御指摘の国と地方との関係につきましては、これは要綱が不備であったというふうなこともございまして、明確な指示が行われるようにその辺の改善につきましても努めてまいりたい、このように考えております。
  177. 新村勝雄

    ○新村委員 次に、予算の執行でありますけれども、これは相当膨大な予算の執行でありますから、これをぴったり使い切る、予算どおりに不用額ゼロ、全項目なかなかそうはいかないと思いますけれども、その中でちょっと目につくのがあるのです。これは労働省として本来最も力を入れなければならないところでありますが、〇一三 項 特定地域開発就労事業費、それから〇〇五 項 職業転換対策事業費がありますけれども、五十八年、五十九年ともに、この二つを合計しまして五十八年は九億五千六百万、五十九年は約十億というふうに不用額が目立つわけであります。  この費用を使う使い方といいますか、対象を完全に把握することは必ずしも容易ではないと思いますし、不確定要因もあろうかと思いますけれども、両年度にわたって約十億程度の不用額があらわれるのはどういうわけなのか。労働省として最も力を入れなければならない本来の仕事であるはずでありますから、その辺の事情をひとつ詳しく伺いたいと思います。
  178. 白井晋太郎

    ○白井政府委員 お答えいたします。  特開事業及び職業転換対策事業費につきましては先生指摘のとおりでございますが、まず、その職業転換対策事業費の方が大きく不用額を出しているわけでございますけれども、この職業転換給付金制度は、特定不況業種の離職者または中高年齢者、心身障害者等の就職が困難な失業者に対しまして、生活の安定を図りながら再就職の促進を図ることを目的として、各種の給付金を支給する制度でございます。したがいまして、この実績は景気の変動で非常に変化いたしてまいりまして、景気状況を正確に予測しなければならないわけでございますけれども、しかし、途中で予算不足が生ずることがないように十分の措置をしてまいりたいということで、その年度によって不用額を生じる。特に五十八年、五十九年については約九億の不用額を生じたということでございます。  この年は割と平均して雇用失業情勢が安定していたということがございますし、それから、これは一般会計でございまして、これから払う事業費は、失業者の増等にもよりますが、もう一方では、特別会計の失業給付を受け終わった後に、それでもなお就職できない場合にもらうという対象者の範囲が多うございまして、五十八年、五十九年につきましては、失業給付を受けている間に就職していかれた層が多かったというようなことがあったわけでございます。今後、ことし、来年につきましては非常に雇用情勢が心配される状況でございますので、このお金が有効に使われるように我々としては措置してまいりたいと思っております。  それから、もう一つ特定地域開発就労事業不用額は、五十八年度及び五十九年度ともに七千二百万で、これはそれぞれ予算額の一%でございますけれども、予定より事業が少なかったということによるものでございます。
  179. 新村勝雄

    ○新村委員 支給対象の把握は確かに難しいと思いますし、経済は常に変動するわけでありますから、ぴったりというわけにはいかぬと思いますが、査定というか審査が厳し過ぎて、もらえるものももらえなかったということでなければいいわけであります。ぜひこれは適正な運用をしていただいて、せっかく予算に計上されておるわけでありますから、無理に使うというわけにはいきませんけれども、運用に十分の御配慮をいただきたいと思います。  次は、今後の労働問題であります。雇用問題、労働問題は、もちろん時の国内経済、場合によっては国際経済と密接な関係があるわけでありまして、そういう点からいって、六十一年度あるいは翌年度の経済情勢がどうであるかということは、雇用問題を考える場合に欠くことができないと思います。     〔委員長退席、糸山委員長代理着席〕  そこで、六十年、六十一年の経済見通しでありますが、この見通しが必ずしも政府の見通しどおりにいかなかったということがありまして、これは急激な円高ということもありましょうけれども、六十一年度の経済見通しは政府の見通しを下回っておる。経済見通しといいましても極めて広範な概念でありますけれども、その中でも最も象徴的というか、それを代表するものが経済成長率であるとするならば、六十一年の経済成長率は七−九期で前期比〇・六、これを年率に換算しますと二・六ということが最近の報道で言われております。この見通しは、政府見通しの四・〇%に比較しますとかなり低い見通しになるわけでありますけれども、現在の時点で六十一年度の成長は最終的にどの辺に落ちつくものであるのか、その見通しを伺いたいと思います。
  180. 大塚功

    ○大塚説明員 昭和六十一年度の経済の見通しでございますけれども、御指摘のとおり、七−九月期の国民所得統計の速報が先週出ました。これで見ますと、前期比が〇・六%、年率にいたしまして二・六%ということでございます。ちなみに、四−六月期につきましては前期比が〇・九で、年率にいたしまして三・六でございました。  この七−九月期の前期比の〇・六というのを内外需別に見てみますと、内需の方は〇・九%寄与しておりまして、外需の方はマイナス〇・三%ということで、合わせて〇・六ということでございます。この数字にあらわれておりますように、内需の方は個人消費とか住宅投資が非常に好調でございまして、堅調に推移いたしておるわけでございますが、外需の方は、現在対外不均衡の是正ということが急速に進んでおりまして、マイナスに寄与するという状況になっているわけでございます。これは四−六月期から続いておる傾向でございまして、こういう傾向を年度全体に押し広げてみますと、やはり内需は好調だけれども、外需の方はマイナスに寄与するという姿が出てくるのではないかというふうに考えておるわけでございます。  六十一年度の実績見込みがどうなるかにつきましては、来年度、六十二年度の経済見通しとあわせまして、当庁におきまして現在作業中でございます。年末を目途に算出しようというふうにやっておるところでございまして、本日の段階では確たることを申し上げる段階にはないわけでございますが、先ほど申しましたような傾向から考えますと、私どもは当初、六十一年度の見通しを四%成長と考えておりましたけれども、これにつきましては、現時点では相当厳しいものがあるというふうに考えておるわけでございます。と申しますのは、四−六、七−九月期と実績が出ましたので、これから四%成長を達成するために前期比どれぐらいでいかなければいけないかという計算をいたしますと、十−十二月期、それから来年の一−三月期につきましては前期比二・八%の伸びでいかなければいけない。これは年率にいたしますと一一・七%ということでございますので、内需の好調をもってしても、外需、対外不均衡の是正が進んでいる過程では、なかなかこういった成長は難しいなという感じを持っております。  いずれにいたしましても、現在作業いたしておりまして、年末までの段階でお示しをしたいと考えております。
  181. 新村勝雄

    ○新村委員 そうしますと、目標の四%はよほどのことがない限りは無理だということになろうかと思いますが、その狂い、これは円高という一言で片づくかどうかわかりませんけれども、その原因。円高ということは大体わかっておりますけれども、そのほかにどういう要因があったのか。それから、政府目標の四%、これは非常に難しいということでありますが、来年度予算編成まではこの四%を修正しないのかどうか、近いうちにこの四%を修正するのか、その点をお伺いします。
  182. 大塚功

    ○大塚説明員 先ほど申しました経済成長の姿につきまして、その原因でございますけれども、御指摘のとおり円高の予想以上の急速な進展でございます。内需につきましては、私どもが当初から申し上げておりましたけれども、円高とか原油安につきましては、デメリットもありますけれどもメリットもございまして、物価の安定という大きなメリットがございます。そういうことがありまして、私ども予想していたとおりの推移をたどっているのではないかと思われるわけでございますが、何分円高が、昨年の今ごろ私どもが今年度の見通しをつくりました段階で考えておりました水準からしますと、はるかにかつまた急速に進展してしまったということでございます。  それから、来年度の見通しを現在作業しておると先ほど申し上げましたけれども、六十一年度の数字につきましても実績見込みという形で同時に示すことになるわけでございまして、この段階でその四%という数字をどうするか、修正するのかどうかということを決めたいと考えております。いずれにしましても、年末までの段階でその作業をやりたいというふうに思っております。
  183. 新村勝雄

    ○新村委員 六十二年度の成長についても、これは民間の各調査機関なんかの試算によりますと、決して楽観できないようですね。三%以上というのは極めて少ない、二%台が多い、極端なのは二%を割っているというような調査の結果があるわけですけれども、来年度の見通しとしてはどの程度を見込んでおられるのか。  それからもう一つは、日本経済と一番関係の深いのは米国経済でありますが、米国経済の現状及び来年度の状況はどうであるのか。報道等によりますと、七−九期の成長は年率で二・九というふうに発表されているようですけれども、その程度を維持できるのかどうか。それから、アメリカ経済の趨勢からして、それが日本経済にどういうふうなはね返りあるいは影響があるのか、伺いたい。
  184. 大塚功

    ○大塚説明員 六十二年度の経済見通しにつきましては、先生指摘のとおり、民間研究機関等ではいろいろの見通しを既に出しておりますが、政府の見通しにつきましては、現段階では作業中でございまして、まだ姿を示すことはできない段階にございます。ただ、民間の見通しを見てみましても、強く見るところもありますれば弱く見るところもあるということで、海外経済の見方でありますとか円相場の見方、あるいは来年度どのような政策がとられるか、いろいろな前提の見方の違いによりましていろいろ分かれておる状況でございます。  いずれにいたしましても、私ども現在鋭意作業しておりまして、年末までにはお示しする予定でございますが、本日の時点では申し上げるべき数字を持っておりません。  海外経済につきましては、海外調査課長の方からお答えいたします。
  185. 大来洋一

    ○大来説明員 アメリカ経済の現況と見通しでございますが、アメリカでは個人消費と住宅投資といったような項目が比較的堅調でございまして、景気は、現在のところ緩やかではございますけれども、一応拡大の途上にあるというふうに私ども見ておるところであります。  ただ、最近の情勢としまして、鉱工業生産などがまだ緩やかな伸びにとどまっておりまして、製造業の稼働率がしたがって低い、設備投資がこれによりまして低迷をするという状況でございますし、それから外需の寄与が、アメリカの場合ドル安になったわけで、プラスになることが期待されたわけでございますけれども、外需の寄与が依然としてマイナスになっているという状況でございます。  来年につきましては、現在の個人消費の堅調といったようなことが来年も持続するかどうか、それから税制改革がございましたので、これが設備投資にどういう影響を与えるのか、その辺が不透明でございます。多少懸念もあるといったような状況でございますが、ことし原油価格の低下で打撃を受けました石油採掘部門が、来年はやや立ち直るのではないか。  それから、ドル高の修正、ドル安でございますが、これは先ほど申し上げました外需のマイナスといった形になってことしあらわれておりますけれども、来年は少し変わってくるのではないか、そういうプラスの面も期待できるわけでございます。  現在のところ、アメリカ政府は、ことしの成長率の見通しといたしましては、二・九%という見通しを立てております。来年につきましては、アメリカ政府は四%という数字をことしの八月の段階で出しておりましたけれども、けさ方のニュースによりますと、大統領の経済諮問委員会委員長が、これを多少引き下げる、大体一%程度引き下げるということを言明したそうであります。  政府の見通しは以上のようでございますけれども、民間では、ことしにつきましても来年につきましても、平均的に言いまして大体二・六%。これはブルーチップという機関が民間の予測の平均を出しておりますけれども、これによりますと大体二・六%という数字を出しておるところでございます。  以上でございます。
  186. 新村勝雄

    ○新村委員 次に、これは労働問題に極めて関係の深いことでありますが、経済的には国境がなくなったと言われておりまして、円高とか経済状況のいかんによっては、資本がどんどん国境を越えて移動するという時代になってきたわけでありますが、特に最近の円高等によって海外への直接投資がふえておるということが言われております。二〇〇〇年までは年平均一四%程度のテンポで直接投資がふえるのではないかというふうなことが報道されております。六十年末の我が国の海外直接投資の残高は八百三十六億ドルで世界第三位だと言われておりますが、イギリスを抜くことはもうすぐ目前でありましょうから、世界第二位の海外投資を持っている国ということになるわけであります。これは同時に、国内の雇用問題と直接関係があると思うのですが、この直接投資と雇用問題との関係について、労働省ではどういうふうな認識をお持ちでございますか。
  187. 白井晋太郎

    ○白井政府委員 お答えいたします。  海外投資の雇用への影響につきましては、従来からいろいろ議論があるところでございますが、従来、海外投資の増加によりまして、一般的には国内の雇用機会の減少を生じさせる効果があるということで、いろいろ計算されているわけでございますけれども、しかし、これまでの海外直接投資につきましては、貿易摩擦の緩和、海外諸国の輸入規制に対応した現地市場の確保、これらを目的にしまして、輸入規制に伴います我が国の輸出の減少分に見合う生産を現地で行うという性格が強かったのじゃないかというふうに思います。したがって、例えば先進国向けの投資が最近まで活発でございました自動車や電機につきましては、海外現地生産に当たって国内で解雇を伴うというようなこともございませんし、また両産業とも昭和五十四年以降雇用は増加傾向に推移していたわけでございます。  しかし、本年に入りまして、急激な円高に伴います海外直接投資が現地生産を本格化していくということで、我が国の輸出と競合したり、特定の産業、業種において国内雇用へのマイナス効果をあらわしてくるということが懸念されるわけでございまして、これまでのような貿易摩擦の対応だけではなくて、円高に伴います国際競争力の面から、生産拠点を国内から海外に移すという動きが出てくると見られます。この場合には、海外進出に伴います雇用機会の喪失、それから海外からの逆輸入による雇用に与える影響が大きくなってくるのじゃないか。  それから、いろいろな計算によりますと、中長期的には産業就業構造の変化が行われる中で、第三次産業その他で雇用の拡大が見込まれるというふうに計算されておりますが、この分野での雇用吸収を図っていくには、ミスマッチが生じないように転換訓練その他適切な対策が必要であるというようなこと等がございます。そういうことで、雇用面にかなりの効果が及んでくるのではないかということを懸念いたしている次第でございます。
  188. 新村勝雄

    ○新村委員 そうしますと、海外直接投資という部門だけに限って考えた場合には当然雇用機会の喪失ということになると思います。日本の産業構造が空洞化するかしないかということについては両論があるようでございまして、空洞化するという心配もありますし、同時にまた、空洞化しないという議論もあるようでありますが、直接投資という部分だけをとってみれば、雇用が減るということは明らかだと思うのですね。ですから、その場合に、例えば一兆円の製造業が外国へ行った場合には十八万人の雇用がなくなるという試算もあるようです。これはちょっと過大だと思いますけれども、普通、もちろん製造業にしても、先端産業であるのかあるいはそうでないのかによってかなり違うと思うのですけれども、例えば一兆円の海外直接投資によって、平均的に考えてどのくらい雇用が減るものですか。
  189. 白井晋太郎

    ○白井政府委員 お答えいたします。  一兆円の投資と申しましても、産業、業種その他によりまして、労働集約型の産業もございますし、いろいろな産業もあるわけでございまして、規模の問題もございますから、一概に一兆円で計算するのは甚だ困難だと思います。我々としましては、今までいろいろな計算も出ておりますし、六十一年十二月には、これも先生御存じと思いますが、経済審議会の経済構造調整特別部会の中間報告で、輸出転換率五〇%と仮定した場合に、一九八三年から二〇〇〇年までに約六十万人の雇用機会を失うというような計算もございます。  それらの実態をよく把握いたしまして、どういうふうな実態になっていくのかということを専門的な立場で検討をしていただくということで、この年末から来年にかけまして、専門の先生方にお願いしながら、実態のヒアリング調査、さらにはいろいろな計算の仕方、それから今後雇用問題についてどういうふうにあるべきかというようなことを御検討いただくということで、現在鋭意作業を進めておるところでございます。
  190. 新村勝雄

    ○新村委員 次に、雇用問題が一つの転機に来ている、重要問題になるということは繰り返し申し上げたわけでありますけれども、特に最近の問題として、政策的に雇用が失われるという問題、例えば国鉄のような問題があります。それからさらに、経済構造の変化によって雇用問題が起こってくるということで、炭鉱の問題、鉄鋼産業あるいはまた造船業というような問題があるわけです。  その中で国鉄の余剰人員対策については、雇用問題であると同時に、政治問題でもありまして、政策によってこのような結果が生まれてきたわけでありますから、政府としてももちろん万全の対策をとっておられると思いますし、特別措置法等も決定をいたしましてそれに対処されておるわけでありますから、今後の政府の対策あるいはその成果を見守るといいますか、期待をいたしておるわけでございます。特に政策によって失職をする方々については、絶対に計画のそごがないように万全を期していただきたいと思います。  そして、早速国鉄では二十七万人を超える人たちの民間移行に伴う振り分けあるいはまた清算事業団への振り分け等がこれから行われるわけでありますが、それらの作業が順調にいっているのかどうかという問題がございます。それから、六十二年度の当初において余剰人員が四万一千人になるという計算でありますけれども、この四万一千人がその後の状況によって若干減るのではないかというような見通しもあるそうでありますが、これはどうなるのか。それからまた、再雇用先についての確保の状況はどうであるのか。  それからまた、もう一つの問題として、これは政策的な問題でありますけれども、国鉄離職者を受け入れた企業に対しては助成金を考えるというようなことも、これは総理の発言としてあったようでありますけれども、こういう政策については具体化したのかどうか、具体的にはどういう程度のどういう形でこれが出されるのか、その点を伺いたいと思います。
  191. 門野雄策

    ○門野説明員 国鉄といたしましては、先生指摘のように、雇用対策をいかに円滑に進められるかということが国鉄改革の成否を握るかぎである、そういう認識のもとに、これまで関係方面の御協力を仰ぎながら雇用の場の確保に努めてまいりました。国鉄関係の先般の特別委員会でもたびたび御説明申し上げたところでございますけれども、現在約六万九千人分の雇用の場を一応確保しておりまして、確保いたしました分については、職員本人の希望に基づきまして、現在適切な再就職のあっせんに努めているさなかでございます。これまでのところは対策は順調に進んでまいっておりますが、清算事業団に移行した後におきましてもさらに雇用の場のより一層の拡大に努めますとともに、職業指導でございますとかあるいは教育訓練などのための組織、要員等の体制の整備を図りまして、労働省初め関係省庁との連携をさらに密にして、雇用対策の円滑な遂行に万全を期してまいりたいと考えております。  なお、お問い合わせがございましたいわゆる振り分け作業関係につきましては、今後各会社の設立委員会等の御指示も仰ぎながら、先生の御指摘も踏まえまして円滑に進むように努めてまいりたいと思います。  それから、移行時点におきましての清算事業団に移行していく職員の数でございますが、監理委員会の答申では御案内のように四万一千という一応の想定が立てられておりましたけれども、これも特別委員会等で御説明申し上げましたように、三万七千人ぐらいではないかと現時点では見通しておりまして、これより若干数が少なくなっていく方向に向かうことは考えられますが、逆の方向はないであろう。ただ、六万九千人の雇用の場といたしましては、一人一人の職員を希望に基づいてあっせんいたしますためには、一対一でいいというものでもございませんし、個々の職員の希望等のマッチングの問題もございますので、さらに雇用の場の拡大に努めてまいりたいと考えております。  なお、助成金関係につきましては、現在関係省庁にお願いをいたしておるところでございます。
  192. 新村勝雄

    ○新村委員 国鉄の問題については両院の特別委員会で論議がほぼ尽くされておると思いますし、余剰人員の再雇用についても論議が重ねられておるわけでありまして、今後は当局の、その論議を踏まえての完全再雇用、再就職についての御努力を期待する、見守るということになると思いますけれども、ぜひ両院の論議を踏まえて、それを完全に実行に移していただくように御期待をするわけでございます。  次に、これまた雇用問題と大きな関係がありますが、炭鉱の問題あるいは鉄鋼の不況の問題等があるわけです。従来の日本の産業政策としますと、競争力を失った産業にはできる限り政治の力でその延命策を図ってきたという経緯があると思いますが、石炭とか鉄鋼についてはなかなかそうもいかない面があろうと思います。日本経済の構造的な変化の中であらわれた問題であるだけに、大変難しい問題だと思いますけれども、その中で炭鉱の問題、それから鉄鋼業の問題、この二つについて労働省としてどういう対策をお持ちであるかを伺いたいと思います。
  193. 白井晋太郎

    ○白井政府委員 お答えいたします。  まず、鉄鋼業でございますが、先生指摘のとおり、構造不況の中でもろに円高の影響を受けまして、厳しい状況に陥っております。最近におきましては、新聞報道等でもございますが、大手高炉メーカーの一部が相当規模での一時休業を実施するというような措置をいたしております。ヒアリングその他情報の結果によりますと、現在まで明らかになっているところでは、一万三千五百人ぐらいについての休業措置その他がとられるということでございます。ただ、この休業措置というのは、これらの各会社が一定規模の中で、一カ月のうち一人の人が四日ないし五日休業して、それをローテーションで回していくという、いわゆるワークシェアリング的な措置をとられるわけでございますが、それらの措置をとりながら余剰労働力に対応していくという措置がとられることになっております。  それから、炭鉱につきましては、これも八次答申が出まして、今約二万四千人の炭鉱労務者がおられるわけでございますけれども、生産規模が一千万トンに五年間で落ちていくということの中で、離職者が一万人前後は出てくるであろうということが予想されているわけでございます。特に長崎の高島炭鉱では既に閉山が行われまして、炭鉱関係労務者千四百人、それから関連労務者を入れますと約二千人の離職者が発生するという状況に至っております。  これらに対しましては、鉄鋼、炭鉱を含めて造船その他の構造不況業種でございますが、先ほど大臣からもちょっと説明がございましたように、雇用調整助成金制度の機動的な活用等によりまして、休業に対する助成率の引き上げ等を行い、また出向に対する助成期間の延長等を行いまして、これらの企業、特に鉄鋼が行います雇用調整についての援助、バックアップを行っているというのが現状でございます。  それから、炭鉱につきましては、特に長崎につきましては対策本部を設置いたしまして、なお、現地にも同じく臨時相談所その他を設置いたしまして、閉山前から既にアンケート調査その他で、今後のあり方について調査を行っているところでございます。今週に入りましてからは、個々の失業者に対しまして今後の職業相談その他を実施いたしますとともに、今後長崎その他へ移転すること等も含めながら、希望に沿った求人開拓その他をいたしますとともに、既に長崎につきましては新たに雇用促進住宅を設置する等の措置をとって、万全を期してまいりたいというふうに考えております。
  194. 新村勝雄

    ○新村委員 いろいろの問題で御苦労は多いと思いますけれども、そういったマイナス要因がこれからお互いに複合し合って日本の雇用問題をますます難しくしていく、そういう心配があるわけでありまして、失業率につきましても、従来先進諸国の中では飛び抜けて失業率が低い、三%を超えたことは最近ではほとんどないと思うのです。それが最近増勢に転じて、三%を超えるのではないかというような心配もされておるわけでありますが、短中期的に見て、その率を考えた場合に、どういう趨勢をたどるというふうに予想されますか。
  195. 白井晋太郎

    ○白井政府委員 お答えいたします。  今十月で失業率は二・八%でございますが、ことしに入りまして二・九%の月もございましたし、さらに男子のみでは三%を超える、また女子のみでは三%を超えるというようなこともございました。しかし、二・九、二・八のところで、高目ではございますが推移している状態でございまして、それにつきましては、失業の予防等を図りながら何とか下支えをしているのが現在の状況でございます。しかし、今御指摘のように、今後構造不況業種その他から離職者が発生するというような事態が非常に懸念されるところでございまして、三%台に達することもあり得るというようなことを我々としては懸念いたしている次第でございます。
  196. 新村勝雄

    ○新村委員 そこで、政府、労働省におかれましては、雇用対策立法として地域雇用開発促進法、これは正式の名前であるかどうかわかりませんけれども、こういうような新しい立法を構想中であると言われておりますが、その構想の概要がわかればお伺いをしたいと思います。
  197. 平井卓志

    ○平井国務大臣 御指摘がございましたように、このたびの全般的な雇用不安、雇用調整の中身を率直に申し上げますと、特定の業種、さらには特定地域に非常に集約をされておりまして、そういう意味からやはり地域対策を抜本的に急がねばならぬということで、九月の総合経済対策等におきましても、ただいま局長から御答弁申し上げましたように、雇用調整金の拡充その他現行制度を弾力的、機動的にやっていこうという緊急雇用対策を実施いたしたところでございますが、抜本的に地方に対する対策を講じなければならぬということで、十一月十日でございますか、中央職業安定審議会から建議がございました。  概略を申し上げますると、一つには地域の求職者の雇い入れに対する賃金助成制度を新設してはどうか、さらに事業場の新設、増設に対する雇用促進融資制度をつくってはどうか、いま一つは、第三セクター方式によりまする雇用開発への援助、さらには助成の実施、これら雇用機会の開発を中心とした地域の雇用対策の整備充実についての建議をちょうだいいたしたわけでありまして、労働省といたしましては、この建議を受けて総合的な地域雇用対策の整備を図るべく検討を進めておるわけでございまして、成案がまとまりましたら、次の通常国会に所要の法律案をお諮りを申し上げたいと思うわけでございます。あくまでも国会で御決定いただくことではございますが、やはり地域の雇用開発促進ということから申し上げますると、これは年が明けました段階でできるだけ早くお願いを申し上げたいというふうに考えております。  さすればこれで十分かということになりますると、決して私そうは思いませんので、きょうも、昨日できました雇用対策の促進本部というものが、自民党、政府、また党首脳等々お入りいただいて、総理御自身が本部長になられて、今後迎えるべき雇用不安に対して積極的に対応していこうという第一回会合があったわけでございまして、いずれにいたしましても、そういう総合政策をもって運営、対処しなければならぬ問題ではございますが、当面労働省としての地域対策としては今申し上げたようなことを考えておりまして、各関係省庁とも今後さらに密接に連携をとりながら、各種の雇用対策を機動的に実施してまいらねばならぬ、かように考えております。
  198. 新村勝雄

    ○新村委員 地域対策としてはそういうことをこれから構想したいということのようでありますが、また産業構造審議会、経済構造調整部会ですか、そこで中間取りまとめが十二月の初めになされたようでありますが、その考え方をどういうふうに政策化しようとするのか、その概要を伺いたいと思います。
  199. 白井晋太郎

    ○白井政府委員 お答えいたします。  御指摘のように、十二月三日に産業構造審議会の方から取りまとめがございましたが、今後産業構造の転換を初めとしまして雇用を取り巻く環境が急速に変化する中で、雇用の安定を確保するためには、今大臣も言われましたが、内需を中心とした景気の着実な拡大を図るとともに、雇用の安定を基本に置いた産業政策を機動的に運営していくことが肝要であるというふうに考えております。雇用対策の面におきましては、これら関連施策を緊密な連携のもとに進めながら、企業の雇用維持努力に対する援助を通じました失業の予防、それから円滑な企業間、産業間の労働移動の促進、三番目には雇用開発を中心とした総合的な地域雇用対策、四番目には産業構造の転換に対応した能力開発体制の整備等々の施策を積極的に推進していかなければならないというふうに考えております。
  200. 新村勝雄

    ○新村委員 雇用対策に当たって、今までのように産業の延命策を図るという一面と、それから、延命策ではなくて、積極的に構造改善というか、構造変化を健全な形で促進するような政策をとる、二つの面があると思うのですね。それと同時に、個々の労働者の福祉的な面から、例えば失業手当の受給期間を延ばすとか、そういう方法があると思いますけれども、どういう点にこれから重点を置いて政府はやっていかれるわけですか。
  201. 白井晋太郎

    ○白井政府委員 お答えいたします。  今申し上げましたようにもろもろの施策をとっていかなければならないわけでございますが、御指摘のように、今度の場合には、この円高不況に伴うものは景気の回復がもちろん必要ではございますけれども、それとともに内需拡大その他で産業の構造変化が行われていくということでございまして、これに対応するには、それに需要と供給が見合うような施策を進めていかなければならない。したがって、職業転換に対します能力開発、職業訓練の機動的な実施、それから失業者がなるべく出ないように企業から企業間へ移るための転換をスムーズにするための情報の収集とともに、その間でのいろいろな援助、賃金補助その他の援助を進めながら、それにスムーズに移っていけるという体制をとっていくことが雇用政策上重要なのではないかと考えております。
  202. 新村勝雄

    ○新村委員 そこで一つの問題があるのですが、労働基準法を初めとして労働立法、労働法体系が既に時代おくれではないかという指摘がありますね。そういう点で今労基法の抜本改正というか再検討が行われているというふうに聞いておりますけれども、そういう点はいかがですか。
  203. 平賀俊行

    ○平賀政府委員 労働基準法その他労働関係の法律は、昭和二十二年、終戦直後に立法されたものが多いことは事実でございます。したがって、時代とともに必要に応じて、例えば労働基準法の分野でいいますと最低賃金法を制定したり、あるいは安全衛生法を切り離して独立の法律にしたり、そういうことで逐次法律制度の改善に努力してまいりましたが、御質問にありましたように、労働基準法の中で、例えば労働時間に関する部分について法律の面での改正はしておりませんでしたが、中央労働基準審議会でこの労働時間の問題につきまして検討が進められている段階でございます。
  204. 新村勝雄

    ○新村委員 労働時間を一つとってみましても、最近の統計によっても、日本の年間実労働時間は、所定内で千九百四十七時間、所定外が二百二十一時間ということが言われておりますが、一方西ドイツの場合は、所定内労働時間が千五百三十五時間、所定外が七十八時間ということになりますと、二〇%以上の格差がそこにあるわけですね。  それから、年間の労働日と休日の比較においても、日本は先進諸国の中では労働日が一番多い、こういうことが言われておるわけでありますが、雇用が問題になっておるときに、就労しておる労働者の一人当たりの労働時間が非常に長い、先進諸国に比較をして二〇%以上も長いということ、これは大変な矛盾でありまして、仕事を分け合うという点からいっても大変矛盾が多いと思うのです。今検討中ということでありますけれども、これがどういう方向でどの程度に改正をされようとしておるのか、これを伺います。
  205. 平賀俊行

    ○平賀政府委員 御指摘のように、欧米の諸国と平均的な数字を比較したときに、労働時間が長いという結果になっておることは事実でございます。その原因もいろいろございますが、我が国の場合は、やはり特に高度成長の期間を通じてだんだんと労使の自主的な御努力で労働時間の改善が進んでいることもこれまた事実で、特に規模の大きい企業などについては、そういった先進諸国に比べてずっと進んだ労働時間の制度を既に獲得しているところ、確保しているところもございます。ただ、どちらかというと、小さな規模の企業で労働時間についての改善がおくれております。したがって、そういう小さな規模の企業については、労働組合の組織もない等の理由でやはり法律による下支えが必要である、こういう見地から基準法の改正も含めての検討が進められております。     〔糸山委員長代理退席、委員長着席〕  ただ、現在まだ審議会で検討中の段階でございますので、私ども政府の側からその内容について御説明できる段階ではございませんが、例えば審議会の検討の基礎になりました労働基準法研究会の報告におきましては、所定労働時間をどう短縮するか、それから労働時間の短縮を進めるに当たって、最近の三次産業とかそういう小さな規模の企業などの実態に合わして労働時間の仕組みを弾力化する方法はないだろうか、あるいは年次休暇、今休暇の日数のお話がございましたが、休暇の中で、例えば祝祭日とか年末年始とかそういう意味の休日は、日本の場合は各国に比べてかなり長いのですが、年次休暇の取得状況も含めてその日数が短いというのも実態でございますので、その年次休暇の法定制度をどうするか、こういった分野から検討が進められておるのでございます。
  206. 新村勝雄

    ○新村委員 日本の場合には、労働組合の組織率が非常に低いわけですね。労働組合があったにしても、同じ組織されておる労働者にしても、大企業と中小企業では大変な格差があるということでございます。そういう中で労働条件、特に時間短縮あるいは週休二日制の実現ということになりますと、労使の間の力関係ではなかなかうまく調整のとれない面があるのではないか。大企業はいいのですけれども、中小企業の労働組合はやはりそれなりに力が十分でないし、また組織されない労働者が七割もいるわけでありますから、労使の交渉あるいは労使の力関係によって労働条件が改善されていくという機能は、現状では日本の労働組合には全面的には期待できないんじゃないか。そうであるからこそ、政治がそこに出動していく必要があるのではないかと思いますが、政治の出動というのは統制という意味ではなくて、労働条件の改善あるいは雇用問題と関連をさせたところの労働法体系の改善、こういう面からこれから一層政府の責任というか政治の機能が期待されると思うのでありますけれども、大臣の御見解を伺います。
  207. 平井卓志

    ○平井国務大臣 今委員が御指摘になりました問題でございますが、局長からお答え申し上げましたように、時間短縮を中心にした問題につきましては、正確に申し上げますると、あす審議会の総会において決定されるということでございますが、基本的に戦後四十年という経過で、取り巻く経済環境また労働環境も変わってまいる、当然労働時間法制もそういう情勢にマッチしたものでなければならぬ。他の先進国に比べて非常に労働時間が長い、これは委員指摘のとおりでございます。  ただ、そういう中で、どういう形で今後この法制化、またどんな形で国会にお諮りすべきかという点、今後十二分に検討をさせていただくわけでございますが、いずれにしても中長期的な展望に立って我が国の労働時間法制のあるべき姿を見通したものでなければなりませんし、さりとて、他面我が国の労働時間の実態等十分踏まえたものでなければならぬ、さらには社会経済情勢の変化に十分耐え得るものでなければならぬというふうな点がございまして、委員も御案内のように、やはり労働条件の改善、福祉の向上、さらにはあすへの活力等々のみならず、国際協調、最近よく言われます言葉では、今日的に申し上げて時代の要請ではないかというようなことを十分総合的に考えてみますると、やはりここで抜本的に法改正を国会にお諮りしなければならぬな。当然のことながら、今申し上げましたように、配慮すべき点についてはやはりそれなりの配慮もしながら十分慎重に検討した上で成案を得て、また国会にお願いいたしたい、かように考えております。
  208. 新村勝雄

    ○新村委員 経済を初めとして諸般の社会情勢が各国内だけでは解決のできない時代、まさに国際化の時代になっているわけでありまして、そういう面では労働条件、労働法等についても国際的な考慮を十分払われた上での運用であり、改正でなければならないと思いますけれども、この統計にあらわれているように、先進諸国より一五%も二〇%も長い時間働いているという実態は、やはりそこから日本の国際競争力はアンフェアではないかというような議論が出てくる心配も十分あるわけです。  ですから、そういった面もひとつ踏まえていただいて、もう戦後四十年を超える労働法体系ですから、この際開放経済というか国際化した経済にふさわしい、あるいはまた世界の日本としてふさわしい労働法をぜひつくっていただきたいと思うわけです。そういった点で、今検討中の基本法についても、労働条件をよくする方向で、国際水準を抜いていくような考え方で御検討いただきたいと思いますけれども、いかがですか。
  209. 平井卓志

    ○平井国務大臣 御指摘のとおりでございまして、十二分に検討をいたしたいと考えております。
  210. 新村勝雄

    ○新村委員 時間がもうないと思いますから、あと一問だけ。  それは来年の春闘ですが、従来の春闘はいわゆる管理春闘というようなことで、本当に経済の実態に即した、労働者の生活状態あるいは労使の関係を本当に反映したものではないというふうな一部の見方があるわけです。最初から管理されているんだということが言われておるわけであります。もちろん、春闘の相場を政府が云々というわけにはいかないわけでありますけれども、やはり経済界を大きく指導するという立場あるいはまた日本の労働界の全体を指導するという立場から、管理春闘というようなことを言われておるわけでありますから、そういうことを言われないような、本当の意味の内需拡大に役立つ思い切った賃上げ、これができるような状況を、政府が指導はできませんでしょうけれども、そういったお気持ちでひとついろいろな労働行政なり経済施策に対処をしていただきたいと思いますけれども、そういう考え方はいかがでしょうか。
  211. 平井卓志

    ○平井国務大臣 ただいま御質問の春闘問題につきましては、これはもう委員御案内のように、あくまでも労使の方々で十二分に意思疎通を図ってお決めいただくということでございますが、日本経済も非常に難しい転機に立っておりまして、私の立場としてはあれこれ申し上げることは差し控えたいと考えておりますけれども、やはり払えるところはできるだけ豊かにしていただいて、内需拡大に寄与していただければありがたいなという感じは持っております。
  212. 新村勝雄

    ○新村委員 終わります。
  213. 堀之内久男

    堀之内委員長 草川昭三君。
  214. 草川昭三

    ○草川委員 草川でございます。  最初に、大臣に所信表明のごときものをちょっとまず頭に聞いておきたいという気が今してきたのですが、私、長い間実は社会労働委員会に所属をいたしまして、労働行政についてもいろいろと勉強さしていただいたわけですが、率直な言い方をしますと、日本の役所の中では先取りを非常にしてきた役所だと思うのです。先進諸国と言われた当時には、ドイツだとかヨーロッパのいろいろな雇用だとか職業訓練だとか、あるいは失業給付の問題、あるいは高齢者問題、定年退職を過ぎた人たちに対する企業に対する助成、こういう言い方は変ですけれども日本の役所には非常に珍しい先取りを行ってきたと思うのです。これは我々も評価をしなければいかぬと思っております。  ところが、日本御存じのとおり非常に高成長をしてまいりまして、そして、世界じゅうから非常に注目をされてくるような時代になってくる。ただいまの議論にもいろいろとあったわけでありますが、そういうトップの国になってくるだけに、円が高くなってくるということで、ついせんだっても、前川レポートのフォローアップとも称すべき構造なんとかといいましたね、経済審議会、前川さんが、いずれ将来、日本は輸出は半分に減るのではないだろうか、とするならば、日本は空洞化してくる、そういう中で雇用というのも六十万ぐらいは減少するのではないだろうか、こういうように非常に大胆な問題提起をしてみえるわけでありますね。そういうものに対して日本の産業界がどうするのか。それだけに内需刺激で雇用というのを吸収しなければいかぬ、こういうことになってくるわけですが、労働行政というのも本音と建前の部分をどのようにつかんでいくかという非常に重要な問題が出てくると私、思うのです。  きょう、そういう意味では、私は、日本船員の乗り組みが非常に減ってきておるような問題、日本の海運業がどのような対応をしているのか、これは運輸省関係になるわけですけれども、そういう問題も提起をしたいと思いますし、それから、日本の国内における中小企業が少なくとも百五十円あるいは百四十円台に対応するには、なりふり構わずに海外労働者の非常に低い労賃の方々を日本の国内で受け入れざるを得ない実態というのがあるんだというような問題を取り上げていこう、こう思っておるわけでございますが、ひとつ労働省として、今後雇用という問題について大きな展望というものをどういう視点に置いておみえになるのか、まず頭のところで一言意見を聞いておきたい、こう思います。
  215. 平井卓志

    ○平井国務大臣 先ほども、私、当委員会で申し上げたわけでございますが、今後の日本のあらゆる施策の中で、雇用の安定確保というのは、やはり政治課題の中では一つの中心ともいうべき非常に重要な課題であろうと考えております。  ただいま前川レポート等々の御指摘ございましたけれども、申すまでもなく、従来四十年間日本が一貫してとってきました輸出振興型、外需依存型の体質は、いや応なくこれは転換せざるを得ない。そこに基本的に日米を中心にした貿易摩擦も出てまいる。そして、これはもう好き嫌いなく経済構造調整、言いかえれば産業構造の転換ということを迫られておるわけでございますが、これらはあくまでも産業政策、また基本的な政府の経済運営において中長期的に見て処理しなければならぬ問題。  当然この経済構造調整というのは、私らの理解では早くても五年や六年かかるわけでございまして、労働省は事業官庁でもございませんし、あらゆる産業政策にかんでおるわけでもございませんけれども、そういう経過を見ますると、やはり相当な痛みを覚えるのではないか。これは出血なしに、なかなか簡単に産業構造の転換等はでき得るものではございませんので、一つにはやはり抜本的に、財政の出動と言わず、総合政策をもって景気浮揚、内需振興を図らなければならぬ。  同じパイの中ではやはり一つのばば抜きゲームになりまして、悪いところへは悪いものはしわ寄せするということでございますので、商業構造の転換等々きめ細かい政策、対策が必要でございますが、それまでの痛み、出血を、できるだけ失業を抑えるという形で労働省いよいよ本腰を入れなければならぬな。  そこで、じゃ何が必要かということになりますと、労働省としては従来の雇用保険制度がございますので、その中ででき得る範囲、非常に拡充強化、弾力的にやってまいらなければならぬということは先ほど来御答弁申し上げたとおりでございますが、なかんずく、産業の構造の転換と並行して特に今後重要になってまいるのは、やはり各分野における能力の開発と、就業の中身が今後非常に高度化してまいりますので、職業訓練等々は今後特に中心に据えて力を入れていかなければならぬ政策だと考えております。  当面、何と申しましても、日本の従来の労働政策の中心でございます一人でも失業者を出さないように抑えていこうということを中心にしながら、これは非常に総合政策になりますけれども、とにかく雇用不安を起こしてはならぬ、大型の雇用不安につながってはならぬという意味において、きょうも雇用対策の本部ができたわけでございますから、これはもう積極果敢に取り組んでまいらなければならぬ、かように考えております。
  216. 草川昭三

    ○草川委員 その大臣の決意でぜひ臨んでいただきたいわけですが、実際各論ということになってまいりますとなかなか厳しい対応があるのではないか、こう思います。ぜひ頑張っていただきたいと思うのですが、きょうは決算でございますから、少し過去の問題点についてお伺いしたいと思います。  第一に、雇用促進事業団というのがあるわけですが、今大臣のお話ではありませんけれども、雇用促進事業団のこれからの仕事は、やはり職業訓練あるいは身体障害者対策というところに力点がどんどん移っていくのではないかと思うのです。ところが、今まで雇用促進の場合に、住宅という大きな役割があるわけであります。いわゆる地域的な大量の失業が発生した場合に、それを広域に移動して、そこで宿舎というものを確保しようではないかということで、エネルギー転換等かつての炭鉱労働者の方々を再配置をするという意味で、雇用促進事業団の宿舎の位置づけというのは極めて大きいものがあったと私は思うのです。  ところが、そういうような生い立ちがありますから一定の入居基準というのがあるわけでありまして、非常に厳しい入居基準というのがあります。原則的には一年というのがある。そして、その範囲内で新しい住居を見つけるという趣旨でつくったわけでありますから、事業団宿舎には管理人もいる、あるいは事業団宿舎というのは非常に狭い、場所も悪いというようなこともあったわけでありますが、たまたま行政管理庁あるいは会計検査院の方から特記事項として、移転就職者用の宿舎の貸与期間は一年であるはずだ、ただしやむを得ないと認められるときには延長できるということなんだが、五十五年度検査報告の中では、二年以上の入居の戸数というのは全体の六〇%以上を占めていると指摘をされているわけでありますね。こういうようなこと、あるいは行管庁の方からもそれなりに、家賃の問題だとかあるいは地域地方公共団体に移管の方法を考えたらどうかとか、さまざまな提案があるわけでございますが、以上の問題提起について労働省としてはどのような対応を立てられるのか、お伺いいたしたいと思います。
  217. 白井晋太郎

    ○白井政府委員 お答えいたします。  移転就職者用宿舎は、もう先生御存じのとおりでございまして、前回の石炭離職者が出たときに、広域紹介の中で宿舎の確保が必要だということで、移転就職者のための宿舎が建設されまして、その後現在までいろいろな形で建設してまいったわけでございますが、おっしゃるとおり、その長い期間の中でいろいろな問題が発生いたしております。  まず、その移転を伴う安定所の紹介を得なければいけないとか、いろいろな決め方で細かい規定がございまして、それらにつきましては、原則一年末満でなければならない、やむを得ない場合に一年末満のもう一回の延長を認めるというようなこともございまして、いろいろなそういうことにつきましては、原則としてはそれを守ってきているわけでございますけれども、今御指摘のように、実情は期間が延長されたりいろいろしているのが実態でございます。特に、二年を超えて入っておられましても、一律に退去させることは本人の生活権を奪うことにもなりまして、困難と考えるのでございます。宿舎の貸与に当たりましては、その宿舎の設置の趣旨をよく周知徹底をさせておりますが、そういう面での指導をしながら、原則は原則として実態に合った貸与をせざるを得ないということで進めてまいってきているわけでございます。  それから、住環境が非常に狭くなっておるという問題もございます。これにつきましては、二戸を一戸に改造するとか、それらの措置をとってまいっております。現在は大体三DKの広さになってまいりましたけれども、最初は非常に狭い形でございましたので、大体昭和三十五年から三十八年までに建設した六畳、三畳の二K宿舎につきまして、これを対象に昭和五十年から計画的に二戸を一戸に改造するというような措置もとってまいっております。  今後の問題としましては、今いろいろと御指摘もございました点につきましてどういうふうに今後この移転宿舎の問題を解決していけばいいのかというようなことで、現在職業安定局内におきましていろいろとプロジェクトをつくりながら検討を進めているところでございまして、時代に対応し得るように今後移転宿舎問題につきましても検討を進めてまいりたいというふうに考えております。
  218. 草川昭三

    ○草川委員 私はたまたま今検査報告と行管庁の問題提起を言ったわけですが、実は私の質問をするスタンスというのは、行管庁、会計検査院の言うとおり一年以上期限がたったらすぐ退去しろという趣旨で申し上げておるわけじゃないのです。現在の地代が非常に高騰し、持ち家ということが現在の入居者にはとても不可能だという、そういう置かれておる条件を考えるならば、現在の入居基準をこの際改めて、一年とか二年ということではなくて、本来の公営住宅並みの入居基準に切りかえるべきではないかという主張を私はしたいわけです。  これは大臣もこの近くの雇用促進事業団の宿舎を一回訪問していただきたいと思うのですが、まず非常に場所が悪いということです。当時できたときにはそういうところしか場所がなかったわけですから、マイカー通勤をせざるを得ないのですが、その駐車場もない。ところが、車を買うには駐車場の証明がないと買えないわけですから、周辺住民の方々に大変高い値段を出して駐車場を借りて、それで許可を取ってマイカー通勤をするとか、ドアをあけてみたら、ドアをあけたすぐ左側なり右側なりにお勝手だ、全くこんな宿舎状況になっておるわけです。  言っては悪いのですけれども、今日のウサギ小屋という表現がございますけれども、ウサギ小屋以下の非常に条件が悪い。だから今お話がありましたように、二戸を一戸に切りかえようということで、これは非常に評判がいいわけです。そこでようやく人並みの暮らしができるというところまで来たわけですよ。けれども、これには非常に予算が足りませんから、この予算をもっとふやしてもらいたい。そして、少なくとももう少し将来展望に安心感を持ちながら入居したいというのが、現在入居者の率直な気持ちだと思うのです。  そういう段階の中で今どういう声が起きてくるかといいますと、当初雇用促進事業団というのは、職業を変わった、広域移動した方々が中心ですから、今さらもう九州の炭鉱に帰るわけにはいかない、ここで老後を送らなければいけないということになりまして、仕事をやめるわけです。定年を過ぎるわけです。定年を過ぎるということになりますと、当然入居基準を失うということになるわけです。そういう方々に今さらどこへ出て行けと言っても大変苦しい状況になるわけで、少なくとも過去のいろいろな経過考えるならば、雇用促進事業団の入居者については、一代限りあるいは奥さんの代も含めて入居を認めるべきではないだろうか、こういうような提案を私はしたいと思うのですが、その点どうですか。
  219. 白井晋太郎

    ○白井政府委員 お答えいたします。  時代は変わってまいったということ、それから、宿舎につきましても、その広さ、環境等につきましてだんだんよくしているつもりではございますが、時代のたつ中で、当初建てた分については先生の御指摘になるようなものが多かったということは事実だと思います。我々としましては、先生の御指摘のような方向でいろいろ検討を進めてまいりたいというふうに思っておるわけでございますが、低廉な家賃にしていかなければならないというようなこともございますし、また出資の原資が雇用保険の特別会計から出されているというような面もございます。それらの面から見た目的ないし制限というものもまたあるわけでございまして、それらも配慮しながら、この雇用促進住宅、これは一般の公営住宅に比べますと特殊な立場にある住宅でございますので、全体の住宅とのバランスも考えながら検討を進めていかなければならないというふうに思っております。  したがって、今の定年退職者の問題につきましては、一代限り、それから奥さんまでということは、今のその趣旨から照らすとなかなか困難な面が多いわけでございますが、運用の弾力的な措置としましては、定年退職したからといって直ちに退去をお願いするというわけではなくて、その後、働く意思と能力があれば安定所の紹介その他も受けるという立場にもあるわけでございますので、その点も十分配慮しながら、入居者の立場にも立った運営を行っていきたいと考えております。
  220. 草川昭三

    ○草川委員 特に今回、先ほどの前川レポートではありませんけれども、大胆な産業構造の転換をしろと片一方は言うわけでありますから、その犠牲を労働者が受けるのは当たり前だと思うのです。ですから、当然広域移動ということをせざるを得ません。そういう意味では、住居の受け皿としての雇用促進事業団宿舎のあり方というのは、今までと違った意味で大きなウエートがあるわけでありまして、逆にそういう意味での柔軟な対応を考えていただくことが裏の面で、表へ出ませんけれども、雇用を守る大きな役割だ、こう私は思うわけでございますので、ぜひ検討していただきたいと思います。第一番目の話はこれで終わります。  二番目は、現在、日本の国内における海外からの不法残留者ともいうべき労働者の方々がたくさんいるわけでございまして、実は体験を申し上げますと、私自身もそれまで知らなかったのでございますが、今回の選挙で、中小企業の現場を訪問するわけでありまして、たすきをかけて握手に行くと、必ず私に握手をしない人間が数名いるわけであります。おかしいな、私に投票しないので握手をしないのかと思うと、周辺の連中がにやにや笑うわけです。それで社長が頭を抱えて、草川さん、勘弁してくれ、こう言うわけです。それで、生産の現場で旋盤を使い、溶接をやり、プレスをする外国人労働者がおるというのを、私は今回のダブル選挙で初めて知ったわけでありまして、それから興味を持っておりましたら、たまたま三重県亀山でタイの建設労働者の方々が四人、自動車事故で亡くなったというショッキングな事件が出ておるわけであります。一体どういうビザで日本に入られて、どういうような労働条件で仕事をしているのか、ここらあたりはある程度のことはわかっておりますから、法務省から簡潔にお答えを願いたい、こう思います。
  221. 書上由紀夫

    ○書上説明員 お答え申し上げます。  委員指摘の外国からの日本に対する出稼ぎ、不法就労者は、一概に申せないわけでございますが、多くは観光等の短期滞在資格で日本に入国し、今御指摘にございましたような工場その他で稼働しているという実情でございます。私ども入管当局がそうした不法就労者についてこれまで発見いたしました場合には、摘発をいたしまして、本国へ送還をしているわけでございますが、その件数は、昭和五十六年が千四百三十四件でございました。昨年、昭和六十年は五千六百二十九件と約四倍に増加しているわけでございます。この増加傾向は本年に入っても続いておりまして、本年は八月末現在で四千五百六十七件という状況でございます。このまま推移いたしますと、本年は九千ないし一万件ぐらいになるであろうという推定がございます。  他方、そうした不法就労者がどういう分野で不法就労に従事しているかと申し上げますと、これは依然として多くのものは女性による出稼ぎでございます。第一位がホステスでございます。ところが、昨年の後半ころから男性の不法就労者が顕著な事実として出てきております。この半年間、八月までの実績を見ますと、第一位が今申し上げましたホステスでございますが、第二位に土木作業員、そして第三位がストリッパーでございますが、第四位に再び工員という状況でございまして、男性の不法就労者の数も増加しつつあり、またその職域も相当広がっているという実情にございます。
  222. 草川昭三

    ○草川委員 これは労働省もよく聞いておいていただきたいのですが、私が中小企業のおやじと話をすると、こう言うのです。草川さん、労働省の御指導のように年間千九百五、六十時間の労働者を私どもがどうして雇えますか。今回の円高で二百四十円が百六十円、百五十円になると、親会社から三五%のカットだと言われる。これはいい悪いじゃないんだ。それは通産省からいろいろな指導があるからいろいろなことをやればいいんだけれども、そんなことを言ったら仕事はもう引き取ってくれない。協力するかしないかだと言われれば、我々は自衛手段として、少なくとも一カ月間七万円から八万円の労働者を雇わざるを得ないと言うわけです。  私は、そんなことをやっておったらとにかく大変なことになるから、それはやめてもっとほかの意味での合理化を考え、いろいろなことをやられた方がいいですよ、もしこれが見つかったら大変ですよと言って御注意を申し上げたことがあるのですが、あなた、そんなことを言うのなら円を少なくとも百八十円で話をつけてこいよ、あるいは百九十円で話をつけてくれば、私はあしたからでもこういうことはしません、こう逆に言われるわけです。  こういう現状というのがじわじわと広がっていくわけですから、先ほども法務省が言われましたように土工に多いと言いますが、今ゼネコンは、大手の建築会社は、外国人労働者を雇うなという通達を現場へ出しているのです。ということは、そういう労働者を現実に雇っておるということを親会社も承知をしているわけです。過日のNHKの場合でも、何かテレビの最後で、非常に汚い仕事をやっておる産業廃棄物の現場の、タイ人かフィリピン人か知りませんけれども、我々がこういう仕事をやらなければ日本人はやらないのではないですか、だから我々に正当な権利を認めろ、働くことを認めろというような意思表示をしておるようでございますが、実は大変な事態が起きておるわけであります。  私は、国の名前をとやかく申し上げるのは大変恐縮でございますが、例えばの話ですが、バングラデシュから今男女で二千二百名近く入っておみえになりますね。私は、バングラデシュの友好議員連盟の一人でございますし、現地へも行っておりますから、非常に条件が悪いということは百も承知をしております。そういう方々が日本に短期ビザで入られて、日本観光するという条件にないことは事実だと思うのです。ですから、統計なんかを見ていると、今の法務省のある程度の裏打ちがわかると私は思うのです。  ですから、そういうものに一体これから日本の国はどうあるべきかというのは、法務省は何か、将来、雇った雇用者を処罰するということを言っておみえになりますが、労働省全体としてもどう見たらいいのか、あるいは警察庁としてどう対応したらいいのか、これは単なるホステスの問題ではなくて、男性ジャパゆきという問題は非常に重要な問題があると私は思いますし、同時に、それをあっせんするいわゆる手配師のひどさというのは、近代工業国家として国際的に批判される状況になると思うのです。  私は、きょうたまたまフィリピンの国内の手配師の契約書を持ってきました。その契約書は向こうの現地一つのモデルでございますが、男も女も適用するので、私はこの仮訳を衆議院でやっていただいたわけでございます。ちょっと長いのですが、読んでいきます。       契約覚書         ——以下の文書により     関係者全員が認知——   この契約は下記の二者により 甲と乙ということですが、   相互に締結されたものである。   フィリピン国マニラ市トンド地区ロザリオ通りS二四二九を住所とし、同所を郵便配送先とする成年者のフィリピン人○○ これは甲のことですが、   (以下第一当事者と呼ぶ)並びに○○○を住所とし、同所を郵便配送先とする成年者のフィリピン人○○(以下第二当事者と呼ぶ) の確認事項だということで、       確認事項    第一当事者は、フィリピンで直接従業員を募集するよう指示を受けている在日本の○○を これは団体、いわゆる日本側の手配師ですが、それを正当に代表するものである、いわゆるエージェントだ、こういうわけですね。  「第二当事者は、」すなわち乙ですが、   第二当事者は、第一当事者への雇用を請負うことを欲するものであり、両当事者は前述の事項にかんがみて下記のことに合意する。       期間及び条件   一、第一当事者は次の義務を負う。   1、第二当事者の旅行に要する費用の全額、すなわち必要物品、旅券、入国査証その他第二当事者が必要とする関連手続の経費などを支給すること。   2、第二当事者に対して、一日八時間勤務制を適用し、超過勤務があった場合はフィリピン国の超過時間労働法に規定する手当支給率に従って手当を支給すること。   3、第二当事者に対して、本契約の期間中の宿泊及び食事を無料で提供すること。本契約が切れるまでの間、毎日仕事場へ通勤するための費用も含めるものとすること。   4、第二当事者が、本契約の期間中に ここからが問題ですが、   逃亡したり勤務を中断するなど契約違反を犯した場合は、第二当事者はあらゆる負債を支弁すると共に、第一当事者が第二当事者の国外旅行のために負担した経費の一切を、第一当事者へ弁済するものとし、これには訴訟用の弁護士雇用費も含めるものとする。 だから、最後にトラブルがあったときに弁護士の費用も君払えよという、大変な締めつけの契約で日本に来るわけです。   二、第二当事者は次の義務を負う。   1、本契約日から向こう二年間第一契約者のために勤務すること。 だから、短期ビザもくそもないわけですね。少なくとも二年間は日本で働きなさいよということで来るわけですね。   2、第一当事者の支給する俸給、すなわち月額三百五十ドル、勤続一ケ年ごとに月額五十ドルの昇給、その他の手当を現金で受けることに同意すること。 だから、向こうでもきちっと四百ドルという話をしてくるわけですね。   3、勤務時間中の第二当事者の個人的費用はすべて第二当事者自身が負担すること。 日常活動は自分で払え、こういうことですね。   4、本契約の期間中に逃亡したり勤務を中断するなど契約違反を犯さないことを承諾すると共に、もし違反の事実があった場合は第一当事者の負担した旅行経費の一切を第一当事者へ弁済すること。 帰ったら君払えよ、こういうわけですね。   5、両当事者は本契約の期間中、相互に各権利、各規定を尊重するものとする。   以上の事柄を立証するため、両当事者は一九八〇年○月○日フィリピン○○○○においてこの文書に署名する。     第一当事者 ○○○○     第二当事者 ○○○○     証人 ○○○○ 二人 こうくるのですね。  それだけならいざ知らず、もう一つ最後に「承認書」というのがありまして、「フィリピン共和国及びマニラ市あて。」ということで、    (氏名)○○○○が(役所名)○○○発行○年○月○日付居住証明書第○号を持参して、また(氏名)○○○○が(役所名)○○○発行○年○月○日付居住証明書第○号を持参して、本○年○月○日、本公証人のもとへ本人ら自ら出頭し、同人らが前掲の契約覚書を取り交した当事者と同人人物であることを本公証人によって確認された上、同覚書が同人たちの自由意思に基づいた行為によるものであることを同人ら自ら承認した。    このことの証人として本公証人は本○年○月○日前記の日付及び場所による文書に署名する。       公証人○○○○   文書番号○○   綴込番号○○   ページ番号○○   年度番号○○ といって、公証人のもとでサインをして日本に派遣をされてくるわけですから、戻れぬわけですね。  たまたま愛知県で入国管理官の手によって不法残留だといって追い返されたわけですが、その人は一体どういうことかというと、こういう契約があるので、向こうの手配師が親に対して、契約違反だから金をよこせ、こう請求されてきておるわけです。だから、どうしてももう一回日本に戻ってこなければいかぬという、非常に悲惨な訴えが実は寄せられているわけであります。こういうことを我々が、それは知りません、それは勝手に何人かの人間が不法残留をしておるんだということで果たして済むかどうか、私はこれは非常に深刻な問題だと思うのです。  こういう人が一体どういう形で日本に来るのか。手配師がいるはずだ。向こうにも手配師がいるし、日本にも手配師がいるわけですね。こういう手配師をやっつけなければいかぬじゃないか。一体だれが保証してギャランティーをつけて呼ぶのか。日本人学校という名前で呼ぶならば、日本人学校というものをもう少し権威づけなければいけない。一体外務省はどういう保証でビザを発給するのか。あるいはまた法務省も、人数がいないから私は大変だと思うのですね。また現地の外務省も、ビザをもらうために毎日何百人の人間が大使館に並ぶんだそうですね。だから、余りひどいこともできないからオーケーする。オーケーするとこういうことになる。気がついたときに、私がたまたま選挙で気がついたような、中小企業のおやじさんがそういう者を使っておるという、現実にそういう話があるわけですね。  こういうものを労働省はどう見るのか、あるいは外務省はどう見るのか、入国管理局はどう見るのか。入国管理局ももっと人をふやして水際でとめるのか、あるいは入った人間をフォローアップして徹底的に追跡をするのか。追跡をするならば、働いている人を追い出すのではなくて、中間搾取をする人間こそ、それをやっつけるにはどういう省がどういうことをやったらいいのか。これはたまたま男ですが、女も同じもので来るのですよ。女性の場合は昼中の働き以外に夜働け、こうくるわけでしょう。そして、いわゆる売春行動をさせるわけでしょう。  いろんな問題が今話題になっておりますけれども、こういうことをやっておりますと、いずれ国際的に批判をされることになると私は思うのです。だから、この点については、まず外務省はどういうことでビザを発行なされておるのか、私の今のような問題点をどうして克服されるのか、お答え願いたい。それから入管、それから労働省、こういう順番で御答弁を願いたいと思います。
  223. 木村光一

    ○木村説明員 お答えいたします。  査証発給の現状でございますが、特に先生から御指摘のございました、男女を含めましていわゆるジャパゆきさんに対する査証の発給の現状でございますが、外務省といたしましても、御指摘のこの問題が生じていることは、国内的に見ましても好ましくない、また国際的にも対日イメージを損なうものであるというふうに私ども認識して、非常に遺憾に思っているところでございます。  こういうジャパゆきさんたちが日本へ入国しようとする場合に、査証面でどういう形で申請を越すかということでございますが、先ほども先生がちょっと御指摘になりましたように、観光等目的でまず査証申請をしてくる、または極端な場合は、真正な査証を得ることなく、偽造、変造の査証で入国を試みる、そういう二つの対応がございます。  こういうことが目立ち出しましたのは数年前からでございますが、その時点から私どもの方では在外公館長に指示を出しまして、厳格な査証審査を行うように、これは少し技術的なことになりますけれども、どういうことかと申しますと、大別しまして三つほど措置を講じております。  一つは、真の渡航目的を見分けるために、通常観光査証を申請しました場合には非常に簡単な書類提出で審査いたしまして査証を出しておりますが、しかし、いわゆるジャパゆきさん等が参ります一部東南アジアの諸国にある我が在外公館におきましては、これに追加的にいろいろな書類の提出を求めております。これは確かに申請人が本人であって、観光目的日本に来るということが書類上できるだけ確認できるような書類を要求しております。具体的に例を申し上げますと、渡航費用の問題、それから渡航して入国いたしまして滞在するわけですが、滞在費用が十分かどうか、これは見せ金等の場合がございますし、切符の場合にいわゆる片道切符のようなことがございます。往復の正規の切符を持っておりましても、それは単に貸与されただけでございまして、後で取り上げてしまうというようなこともございます。そういったような厳しい査証審査でまず入国の真の目的を確かめる。  第二には、このような書類の審査をいたしましても、先ほどもちょっと先生が言及されましたけれども、偽造、変造、または公証人の署名を得たものを持ってくる、しかしながら確かにそれが本人に該当するのかどうかというのが非常に怪しい場合がございます。本来やはり決め手になりますのは、本人の出頭を求めて直接査証官が面接をいたしまして、いろいろと質問をして疑問のある点をただしまして真の入国目的を確かめる、納得がいった上で査証を発給するという対策を講じております。  三番目に、偽造、変造の査証に対する対応でございますが、これは旅券に押捺いたしますスタンプがございますが、これを非常に精巧なものにいたしまして、例を申し上げますと、例えば一色のものを三色にするとか、実は三色にいたしましても偽造が出てくるものでございますから、これを多色化する、七色ぐらいにする、これでもやはり最近製版の技術等が非常に進んでおりますのですぐに偽造、変造の対象になりますので、これをまた防止するために特殊なシール、印紙を張りつける、そういったような対策もいたしております。  ただ、このように厳格な査証審査を実施しているわけでございますけれども、最近になりまして、余りにも審査が厳格すぎることによりまして善意の申請人からたびたび苦情が出てくるというのが現状でございます。在外公館が査証の審査の段階でこういうジャパゆきさん等の入国を防止するためにいろいろと全力を尽くしているわけでございますけれども、余りに厳格にいたし過ぎますと、そのために苦情を申し越されるとか、または人権上の問題等もございまして、査証上とり得る措置というのはもう限界にきているというのが私どもの偽らざる現状でございます。  したがいまして、それではこういう厳格な査証審査をくぐり抜けて入国した場合にはどうするのかということになるのでございますが、これにつきましては、日本に入国をいたしまして不法活動等を行う者につきましては、やはり国内関係各省庁の御協力を得まして、特に法務省及び警察庁がこういう不法行動等の摘発に一層努力を払っているというふうに私ども承知しております。
  224. 木島輝夫

    ○木島説明員 ただいま御指摘のとおり、この種の不法就労ケースというものが急増傾向にある、なかんずく悪質な事犯が顕著に増勢にあるというようなことを踏まえまして、これに有効に対処するにはどうしたらいいかということを今真剣に検討しております。  先ほど先生指摘のとおり、水際でまずこれに対処する必要があるということ、それから、日本に入った後で摘発等の適切な措置をとる必要があるということでございまして、水際、例えば空港における入国審査を厳重に行うことが必要かと思いますが、そのための入国審査官の充実あるいは摘発に際して必要な入国警備官の充実というようなことを、各関係省庁の御協力を得て真剣に取り組んでいるところでございます。  さらに、特に悪質事犯につきましては、先ほど御指摘のあったブローカーが介在しているケースでございますとか暴力団が関係したケースであるとかということにつきましても、関係省庁と密接に連絡をとりながら対処しつつあるということでございます。
  225. 白井晋太郎

    ○白井政府委員 お答えいたします。  外国人の単純労働者が入ってくるという問題につきましては、今先生おっしゃいましたような現状もよくわかるわけでございます。しかし、低賃金労働力として我が国の労働市場に参入すると、賃金、労働条件に悪影響の問題もございますし、雇用情勢からの問題もございます。さらに、非常に低賃金、悪労働条件で働いているということになれば、当面はいいでしょうけれども、国際問題にも発展しかねないというような問題でございまして、本質的に見れば、やはり単純労務者の参入は禁止すべきだというふうに我々は考えております。  実際に取り締まりその他の問題につきましては、悪質な仲介業者その他は、派遣法に基づきます派遣法違反、いわゆる労供ということで取り締まりの対象になりますし、事業主に対しては雇い入れないということを指導してまいらなければならないと考えております。
  226. 草川昭三

    ○草川委員 実は最近の各新聞の社説を見ますと、毎日でも朝日でも、それから東京新聞ですか、社説はこういうことを言っているのですね。現実に流入している外国人労働者というのはいるのではないか、これを低賃金と黒い手配師のもとに放置をするのはおかしい、脱法行為がはびこるのは日本が外国人労働者に門戸を閉ざしているからだ、まあ今の話ですが、いわゆる単純労働のことに限るわけですが、そろそろ国内事情と調和を図りながら一定の職種と人数の枠を限って海外労働者の入国を認め、入国後は監督を厳重にする方向に転換をした方が本来の救済になるのではないかというのが、数紙の社説として掲載されておるのですね。私はこれは一つの問題提起だと思うのです。今の御答弁では単純労働は従来どおり認めない、こういう態度ですが、そろそろその態度を考えたらどうだという問題提起について、これは大臣、どうお考えになられるのか、大臣の見解を問いたいと思います。
  227. 平井卓志

    ○平井国務大臣 長期的に見て真の意味の国際化という観点でとらえますと、委員指摘のように、これは今後の対処が非常に難しい問題だろうかと思うわけであります。問題になっておりますのはやはり単純労働者の問題でございまして、日本人では代替できないような技術、技能の持ち主に対しては、一定の条件下において入国、在留を許可しておるわけでございますが、単純労働者の受け入れはやらないという方針で今日まで来ておる理由につきまして今局長からも御答弁申し上げましたけれども、将来の展望はともかく、現状におきましては、現在我が国においても百数十万の失業者を抱えて雇用不安があるわけでございます。さらに、高年齢者の安定した雇用の確保も今後また非常に重要ということになれば、なかなか外国人の単純労働者を受け入れる余裕のあるマーケットではないという議論、さらには、外国人単純労働者を無原則に受け入れますることによる国内の労働条件の低下、さらにまた、低賃金労働力を海外から入れるという国際的批判、さらには、長期的に見て考えますと、終身雇用、年功賃金等諸外国と労働慣行がかなり大きく違うわけでございまして、労務管理上もそういう視点でとらえるとまたトラブルのもとにもなりかねない等々の理由から、現在まで一貫して単純労働力はこれを入れないということでございます。  ただいま委員指摘のような、観点を変えて真の意味での国際化、国際協調という面では、また発想の転換もしかるべきではないかという御意見でございますが、ただいま我が国のとっておる政策によりましては、むしろそういう国々に対しては、職業訓練、さらには技術の支援等をその国に対して援助してまいる、そしてその国における雇用の開発等々に寄与すべきではないかという方策をとっております。しかしながら、今後ますます国際化の波が荒くなる展望でございますので、あらゆる観点から今後検討してまいらなければならぬような一つの課題ではある、かように理解をいたしております。
  228. 草川昭三

    ○草川委員 国際化と雇用あるいはまた労働問題というのは非常に深刻ですから、私もかくあるべきだということは、アメリカの動きなりヨーロッパの動き等から考えますと、単純に外国人労働者を認めることがいいかどうかということについては戸惑いはありますけれども、しかし、現実に私の体験を語るだけでも中小企業の中にあるわけですから、これは相当真剣な対応が考えられなければいかぬと思うのです。この問題は、今回限りではなくて、ぜひまた次の機会にも問題提起をし、特に手配師の問題を我々はこれからも追及しなければいかぬと思うのです。  残りの時間、非常にわずかになりましたが、実はきょう運輸省にも来ていただいておりまして、日本の船員の問題、日本影響力下にある、外国に籍を置きながら日本のいろいろな物資を運ぶいわゆる雇い船の問題、仕組み船の問題、そういう仕組み船に日本の船員及び外国人、フィリピン、タイ、台湾といったような方々を混乗させる船員のいわゆるやみの職業安定業者、やみ職安、そういう人たちのこと、手配師ですね、そういう問題を最後に取り上げたいと思うのです。  そこで、時間がありませんから簡単に申し上げますが、外航船の船員というのは非常に減っておりますね。半分くらいに減ってきたわけです。日本の船会社というのは、コストを安くするために、日本の船員ではぐあいが悪いわけですから、外国の船員を乗せようとするわけです。そのためには日本の旗がついている船ではだめでございますから、便宜に税逃れのために外国に籍を置いて実際は日本の船会社が支配をするのですが、そういう船に対して外国人船員を乗せながら荷物を運ぶ、簡単に言うとそういう問題があるわけであります。  同時にまた、日本の方もリース会社がありまして、船を何隻かリースをして、それで船会社に貸す。ところが、日本ではなくて外国の船会社に貸す。外国に貸すのだけれども、その外国の船会社は実質的には日本の船会社の影響力下にある。そういう船に対して、ワンギャングという言葉があるのだそうですけれども、船長以下例えば一年間幾らで請け負うというようなこと、あるいは月に日本人船長には九十万だ、日本の船員には四十万だ、中国の場合は月四千円程度で入れるとか、そういう混成のあっせんをする、いわゆる配乗というのですけれども、そういう業者の方々がいるという問題を取り上げてみたいと思うのです。  そこで、私が今申し上げましたような業者がいるということを運輸省は承知しているのかどうか、運輸省にお伺いをしたいと思います。
  229. 増田信雄

    ○増田政府委員 お答えを申し上げます。  先生指摘の業者でございますが、一般的には船を裸で借りてくる、ないしは自分の持っている船に船員を乗せて、タイムチャーターと私どもは呼んでおりますが、それを貸し渡すという事業者、これは海上運送法によって正式に認められている業者ということで、おるのは承知いたしております。
  230. 草川昭三

    ○草川委員 運送法というのは単なる届け出でございますけれども、船員の職業紹介というものはそれに付与されているのですか。
  231. 増田信雄

    ○増田政府委員 船員の職業紹介はそれには付与されておりません。船員の職業紹介は、公的機関あるいは労働組合、そういうものだけに限られております。
  232. 草川昭三

    ○草川委員 それでいいのですよ。それですから私の問題提起があるのですが、たまたま私、ここにある会社のパンフレットを持ってきました。いわゆる船舶の総合マネージメントをするというリース会社一〇〇%出資の会社であります。それのパンフレットを見ますと、「世界の海に展開するダイナミックな総合マネージメント・サービス」をしますよ、私の会社は「船舶メンテナンス」、保船業務ですね、「船舶の運航管理業務、並びにマンニング(乗組員の雇用・配乗業務)を」、配乗は船に乗せるという意味ですが「担当していました」、それで、「時代のニーズ先取りのワールドワイドな充実したサービス」を私の方はやりますよ、「部品供給基地などのサービス」だとか「乗組員の手配、編成からメンテナンスまで、」とこう書くわけですね。そして「マネージメント付での船舶リースをも手掛けています。」「リース船舶のマネージメント」も「乗組員の確保、船体内の装備、」「運航管理業務を代行します。」この運航管理業務の代行は、今部長がおっしゃったことを指しているわけです。これは届け出ですね。ところが、この中には乗組員の確保、配置もしますよ、こういうわけです。「他社船舶のマネージメント」もしますよ、「国内、海外のオーナー(船主)、オペレーター(運航業者)から委託を受けて、マンニング、メンテナンスなどを行っています。」マンニングというのは、先ほど申し上げましたように日本人船長は月九十万、一年間幾らだ、こういうことなんですね。  いろいろと聞いてみますと、何か六万トンぐらいの船で二十四名の在籍、それから日本の船員を入れますと予備員を五〇%入れなければいかぬから三十六名、一年間だと平均して一人一千万として大体三億六千万ぐらいかかる。ところが、つい最近だと、一年間二十五万ドルで船員等を提供しますよ、こういうのをこういう会社がやるというのですね。そうすると、こちらの方は四千万ですね。日本人の船員で運航すると三億から四億近い。ところが、こういう業者に頼むと四千万で混乗する外国人船員を連れて運航をやってくれるわけですから、先ほどおっしゃったようにこれが現実にたくさんおるわけです。これによって日本の海運というのは維持されておるわけです。だから、御存じのとおり海員組合もいろいろと御注文があるわけですよね。  一体、この紹介者はどういう手当を取るかというと、マネジャー料として一五%から二〇%受け取るというのです。一五%から二〇%受け取ったうちの一部を、実質的な支配をする日本の親会社の重役にキックバックするというのですよ。こういう事実が蔓延しておるわけです。これも私は問題だと思うのです。  だから、きょうは時間がございませんが、こういうことについて国税は税の捕捉をしておるのかどうか。それはバックマージンを受け取るトップの連中も私は問題だと思うし、今の御答弁だと、そういうマンニングをするのがおたくの方へ届け出るというわけでしょう。届けておりながら、片一方で禁止をされておる職業紹介をパンフレットでやっておる、こういうわけでしょう。おかしい。こういうことを国税はどう思うのか。  そして、最後に労働省、もしこれが陸上なら、これからどんどん海外に企業が出るというわけでしょう。一番最初に申し上げたように、前川レポートでは輸出産業の五割は海外に行くというわけですから、そういう海外に混成の職業紹介をするようなことがあったら、それは認めるのか認めぬのか、仮定の議論で結構ですし、一般論でいいですが、国税庁と労働省の見解を聞いて、ちょうど時間が来たと思いますのでやめたい、こう思います。
  233. 佐々木秀夫

    ○佐々木説明員 お答えします。  一般論としてお答えすることをお許しいただきたいと思うのですが、私ども国税当局といたしましては、課税の公平ということのために各種の資料、情報が必要でございます。そのためには、新聞、雑誌等で報道されます事柄はもちろんのことでございますし、国会で御議論されているような事柄を含めまして、いろいろな資料、情報を収集いたしておりまして、その間で税務上の問題があるというように認められます場合には、的確な税務調査を行いまして、課税の公平に努めたいと思っております。  なお、委員十分御承知のことと思いますが、キックバックというような、会社の役員とか使用人が自己の職務に関連いたしまして勤務先の会社の取引先等から金品等の贈与が行われる場合がございますが、そのような金品の取り扱いは、所得税法上雑所得ということに該当して取り扱っているところでございます。  いずれにしても、今後課税の充実のために、各種資料、情報を収集しながら努力を続けていきたいと思います。
  234. 白井晋太郎

    ○白井政府委員 お答えいたします。  一般の場合に、日本国内で職業紹介を行う場合は、先生御存じのとおり、職業安定法三十二条に基づきまして、一定の職業に限り労働大臣の許可を受けなければできないということになっております。それで、その許可を受けた者が海外への職業紹介を行うことについては、この職業紹介の許可の条件としまして、海外への職業紹介はできないという旨をつけております。  なお、先生先ほどからおっしゃっている面では、派遣業法上の問題もあるかと思いますが、派遣業法の方では、これは御存じのとおり十六業務に限られておりますけれども、海外へ派遣する場合には安定所へ届け出る。その届け出の中身につきましては、個々の契約につきまして特別の措置を規定する。特別の措置と申しますのは、派遣業法上、派遣先の事業主が派遣業法上いろいろな措置をしなければなりませんが、その措置が契約書の中に盛り込まれているということを確認するための届け出を行うことになっております。
  235. 草川昭三

    ○草川委員 これが最後になりますが、今私は、本来ならばそういう業は正式に人材派遣業の対象業種として行った方がかえっていいと思うのですよ。ところが、それを労働省にお伺いしましたら、法制定のときに、船員の問題等については運輸省だということになっておるようでございますけれども、私は、海上運賃が非常に今厳しい状況ではありますから、船会社の現状ということについては知らないわけではありません。しかし、そうかといって、そういうようなあり方が蔓延化すると、残念ながら日本人船員の雇用というのはますます狭められ、結局空洞化することになるわけであります。  日本船員の持っておる例えばボイラーの資格、そういうものは残念ながら陸上では資格はないわけですよ。これは本当は時間があればきょうは労働省にお願いをして、例えば船員が船舶で持っておるボイラーの資格というのは、日本の陸上でも何らかの関係で同様な取り扱いができるようにしていく、そういう中で新しい雇用を認めさせていくというようなことも必要だと思っておるのですよ。  そういう立場から考えると、今私が申し上げた点については、運輸省は現状を十分承知しながらまだまだ目をつぶっている点がある。だから、それはやはり現状を正しく認識をして、悪いものは悪い、あるいはどうすべきかということを真剣に考えながら、海上労働者の労働条件ということを守ってあげなければいけないと思っておるわけであります。これは海上労働の問題でもありますが、いずれ陸上においてもこのような便法的な雇用のあり方というものはこれからどんどんふえてくると思いますので、そういうことについてはぜひ労働省としての一段の御関心を高めていただきたいということを強く要望して、私の質問を終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  236. 堀之内久男

    堀之内委員長 大矢卓史君。
  237. 大矢卓史

    ○大矢委員 民社党の大矢卓史でございます。  まず、大臣に御所見を承りたいと思います。  先ほどからもお話がございましたように、労働省は働く人たちの権利を守っていくということで、非常に御努力願っておるわけであります。特に労働省は、昭和二十二年に初めて労働法が制定をされまして、労働省が設置をされ、米窪初代大臣、また加藤勘十大臣と、労働運動の経験の中から戦後の労働行政が出発をいたしたのであります。  その間、いろいろと労働運動の流れがございました。そして、新しく労働運動の流れが変わりつつあるわけであります。全民労協から全民労連という新しい労働組合のナショナルセンターも間近になってきたと思います。それら労働界の変化に伴います新しい時代の労働行政につき——労働運動の離合集散といいますのは、戦前戦後を通じまして、革新政党の離合集散にも通じておるというふうに言われており、非常に大事な時期であろうと思います。そういうときに、これからのこういう労働組合に対する御見解なり、また、労働省全般における今後の取り組みについて大臣の所信をまずお伺いいたしたいと思います。
  238. 平井卓志

    ○平井国務大臣 ただいま委員から御指摘ございましたように、戦後四十年を経過する中で、やはり経済運営、また各企業活動も大きく転換の時期に参っておると思うのであります。当然のことながら、労働運動、労働界を取り巻く諸条件も時代とともに変わってまいる。特にこのたびは、非常に大きい転機と申しましょうか、我が国の経済自体が外需依存型から内需振興型に大きく変わるというよりも、もう必然として変わらなければやっていけないというところでございますから、当然混乱もあり、痛みも伴うわけでございますけれども、やはり国際的な日本の立場を考えました場合は、これまた我慢するところは我慢すべきではないかというふうに考えるわけであります。それだけに、一口に申し上げると、世界における日本の経済力、あるべき地位、影響力は非常に大きくなってまいったということであろうかと思います。したがって、そういう中での労働運動というものも、やはり従来の枠組みの中ではなかなか難しい諸問題が出てまいります。     〔委員長退席、上草委員長代理着席〕  ただ、日本の労働運動というものは、委員御案内のように、非常に意思疎通がよく、理解すべきところはお互いに理解してまいった、そういう協調していくべきところは協調してきたということが、また今日非常に経済的に発展することができました一つの大きい理由でもあるわけでございます。しかしながら、環境が大きく変わりますと労働の中身も非常に多様化してまいりまして、それに対する各組合の方々、労働者の方々の対応の仕方もいろいろなお考えがございます。そういう中での一つの離合集散等々はございましょうが、あくまでも今後の日本の労働者また勤労者の生活の向上、さらには企業の発展、さらには国際的な責任を果たしてまいらなければならぬということが基本でございまして、そういう意味では、今後とも十分御理解をいただけるような、そういう望ましい方向でおやりいただければありがたいというふうに考えております。
  239. 大矢卓史

    ○大矢委員 今大臣も指摘されましたように、日本の労働運動というのは一種独特と申しますか、生い立ちが企業内労働組合としての非常な働きをしてきたと思います。それが、本来私どもが理想にいたしておりましたアメリカにおける産業別また職種別の労働組合へ追いつけ追い越せという形でいかなければならぬというように当初思っておりましたけれども、世界から評価をされましたこの日本の企業内労働組合と申しますか、企業とともに栄えていく労働組合の考え方というのは、今日の日本の経済的な発展に大きく寄与してきたと思うのであります。  そういう会社とともに進んでまいりました労働組合、やはり組合といたしましては、法人格という問題、資産を持ちますと法人格を持っていくという問題がございますけれども、それの現状、法人格を持っております労働組合の数と、またその内容につきまして御説明を願いたいと思います。
  240. 小粥義朗

    ○小粥(義)政府委員 労働組合の法人格の取得につきましては、労働組合法でもって、先生承知のとおり、労働委員会の資格審査を受けてその証明書を登記所へ持っていけば、法人格が取得できるわけでございます。実は、法人格のあるなしが、労働組合のいわゆる活動それ自体を必ずしも制約するものではないものですから、余り毎年そうした調査をしておりませんで、十年以上前の数字しか手元にないのですけれども、それでいきますと、五千を超える数の組合が法人格を取得しているという状況を今のところ承知しているわけでございます。
  241. 大矢卓史

    ○大矢委員 少ない数だといえば少ないのですけれども、やはり多い数だといえば多い数だと思います。その労働組合がやはり資産を持っていらっしゃいまして、資産を、労働組合の長がかわるたびにかわるということじゃなくして、そういう法人格の資産として持っていらっしゃると思います。そういうこともございまして、今申しましたように、日本型の労働組合というのは、ある程度会社の業務と申しますか、そういう中での大きな働きもあると思います。しかし、労働組合がこういう法人格を持ちますことによって、そのトップでございます長が労働組合の業務そのもので災害を受けた場合の措置についてどのような法的な、一般労働者でございますと労災等ございますけれども、その適応の方法はどのようになっておりますか、御説明願いたいと思います。
  242. 平賀俊行

    ○平賀政府委員 御質問は、労働組合の委員長のような方が労働組合の活動によって災害を受けられた場合というふうに限定されておられますが、この場合は、労働組合の活動ということで、その委員長の方が会社の従業員という身分はあったとしても、やはりそれは切り離して考えるということになりますので、労働組合の活動に従事している場合は、法人であろうとなかろうと、やはりそこに一つの労働組合という経営体という見方をし、その経営者という立場にならざるを得ない。したがって、原則としては、その組合という経営体に働く労働者、従業員という形ではないものですから、労災保険の適用はございません。  ただ、そのような場合であっても、特別の道が一つ講じられておりまして、労災保険にその委員長の方が特別加入するという道、これは中小規模事業体についての特例扱いでございますが、その特例扱いを受けて特別加入の措置をとっている場合には労災が適用される、そういう手段はございます。
  243. 大矢卓史

    ○大矢委員 先ほど五千と言われました法人格で、特別加入に入っていらっしゃる委員長の数はどの程度になっていますか。
  244. 平賀俊行

    ○平賀政府委員 労働組合という類型で事業体を分析しておりませんので、組合の委員長の方が特別加入されるという数字は把握しておりません。
  245. 大矢卓史

    ○大矢委員 労働者そのものを守っていただかなきゃならぬことはもちろんでございますけれども、労働組合というのは労働省にとりましてもやはり大きな存在だと思います。その労働組合が法人格を持っておるのが、その当時五千といいますと今はもっとふえておるのではないか。そのトップの人が労働災害を受けた場合に、特別加入の制度があるけれども、その実態をつかんでおらないということになりますと、日航の事故等もございますし、また交通事故等もこれからも頻繁にあろうかと思いますが、そのような実態をつかんでおらない段階では、果たしてこの特別加入がどこまでそれらの方々に浸透しておるのか。  また、特別加入という制度がそのままでいいということじゃなくして、そこの長といえども、労働者の一人として労働者全般が受ける強制加入の中に組み入れていただいてはどうか。今申されましたように中小企業の一つの枠として考えていらっしゃるということでありますけれども、そういうことでなくして、やはり強制加入の中の枠として何とか別な方法で考える余地はないのかどうか。今後もしどうしても余地がないといたしますならば、現在の法人格の組合に対して、これら特別加入をしていらっしゃるのか、していらっしゃらない場合には、こういうことがありますのでぜひ加入をされることが万が一のときに結構なんではないかというようなPRをするとか、どちらか一つ選んで、そういう特別災害がありましたときの補完と申しますか、そういうことをすべきであると私は思いますけれども、いかがでございますか。
  246. 平賀俊行

    ○平賀政府委員 労働組合の活動として人を使って、例えば書記さんとかそういう方々を使って仕事をしておられるということも事実でございますので、それを一つの経営体と見ると、これはやはり一般のいろいろな形の法人とかあるいは会社その他中小の事業体よりも経営基盤がむしろ強いと言えるかもしれません。そういう意味では、労働組合の運営の責任に当たっている委員長さんについて、人を使っているその面で経営体の責任者と見る見方は、むしろ一般事業体全般を通じて見る必要がある。そういう意味で、そういう方々を強制的に労災保険の加入の対象にするというのは、もちろん日本には非常に小さい経営体があるので、そういう人たち、自営業あるいはそういう小さい経営体の人たちをどう見るかということなどと共通する問題として、基本問題として考える余地はあろうかと思いますけれども、現在の労災保険の制度の枠組みの中で、それを強制加入にするというのはなかなか難しいと思います。  したがいまして、今御質問にありましたように、むしろ労働組合組織、特に全国レベルの組織までいろいろございますし、私どもはそういう方々とのいろいろな交渉といいますかお話し合いをする機会などもございますので、そういう労働組合の組織とのお話し合いの場を通じて、ただいま御質問の御趣旨にありましたように、そういう道が開けているということについてはできるだけお知らせをし、またそういうような万一の事態に備えることも有用ではないかということについて知っていただくということはいたしたいと思っております。
  247. 大矢卓史

    ○大矢委員 それでは、どうしても現段階では強制加入は無理だということでございますので、特別加入の件につきましては、先ほど十年前で五千件ということでございますけれども、やはりその実態を把握していただいて、そしてその中でどれだけの方が特別加入をしていらっしゃるか、特別加入していらっしゃらないなら、こういうことでございますということで周知徹底させていただいて、来年度にはその報告をぜひともちょうだいをいたしたい、そのように思いますのでよろしくお願いを申し上げたいと思います。  先ほど申しましたように、労働組合の大きな再編成の中で、これから政策要求というものが非常に大きくなってまいります。その政策要求の中に、やはり雇用の創出というのが一番大きいわけであります。大臣も先ほどから雇用の創出が労働省の一番大切な任務であるということを言っておられますけれども、先ほどから質問にもございますように、非常に海外へ向けての投資が多うございます。その海外の投資は、貿易摩擦の解消には非常に役立ちますけれども、雇用ということになりますと、これが失われていく。特にこれからも増加の一途をたどると思いますけれども、創出をしていきますためにも、これからの海外へ資本が出てまいりますための雇用の減少についてお答えを願いたいと思います。
  248. 平井卓志

    ○平井国務大臣 企業の海外進出、その問題は、御案内のように、空洞化という呼び方でさきの補正予算等々でも引き続いて大変論議のあったところでございます。この問題、まだまだ私ども勉強の突っ込みがこれからであろうかと思っておるわけで、非常に不確定な部分が多いわけでございますが、例えば一口に海外投資、企業進出と申しました場合に、一体我が国におけるどのような業種がどの地域にどういうふうなタイミング、どういう規模で進出していくのであろうか、さらには、海外投資のうちのどの程度のものが輸出に置きかえられると見たらいいのかという前提のとり方がいろいろございまして、現在までのところは、御案内のように、海外における生産というのは国内全般から見ますと二、三%というところで、そのこと自体は決して大きい雇用不安につながったという経過はございませんけれども、現在の為替を見てみましても百六十円台前半ということでございまして、相当の輸出関連企業が耐え得るのか、さらには海外進出を考えなければならぬのか、その場合にその企業は大企業が多いのか、さらに、そうではなくて中堅企業の中でそういう考え、計画のあるところが多いのかというさまざまな問題がございまして、その側面は今後の推移の中で非常に複雑であろうかと私は考えております。  いずれにしましても、この海外進出と雇用の動向、雇用に与える影響については、常に実態を今後正確かつ十分に把握しなければいかぬ。できるだけ国内雇用に悪影響を与えることのないように、それじゃどうするかということになりますと、これは基本的には従来から言われております内需を中心にしたどうしても一定規模以上の経済成長を図っていかなければならぬ。当然のことながら雇用政策だけで対処できる問題でございませんで、全般の産業政策等々とこれは不可分の関係がございまして、一体となって雇用機会の確保ということを基本に置いて進めなければならぬと考えております。  具体的にどう対応するかということになりますと、雇用問題政策会議においてただいま専門的な御検討をいただいておるわけでございまして、こういう検討を通じて、海外投資に伴う雇用問題にいかように対処すべきかというコンセンサスを得て今後十二分に対処してまいりたい、このように考えております。
  249. 大矢卓史

    ○大矢委員 先ほどから大臣言われておりますように、民生の安定、これは雇用の確立というのが一番大切だということであります。経済成長では四%が当たる当たらないというような問題もございますけれども、失業ということについては上昇してもらっては困るわけでありますが、失業率は現在大体どのくらいで、雇用不安が起きますのはどの程度になりますと本当の雇用不安が起きてくるのか、その点を御説明願いたい。
  250. 平井卓志

    ○平井国務大臣 言いかえれば、ただいまいろいろな地域、業種において雇用不安が起きておりまして、それぞれ中身は違いますけれども、さまざまな雇用調整が行われておるわけでございます。そういう中で、現在のところ二・八%程度の失業率が続いておるわけでございまして、有効求人倍率が〇・六一でこの三カ月ばかり横ばいで推移しております。この統計をとり始めましてから現在まで、私が承知いたしておる範囲では、昭和五十三年一月の有効求人倍率〇・五一というのが最低でございまして、そのときの失業率が二・一%であったかと私は記憶いたしております。  ただ、五十三年から今日までの経過を見てみますと、いろいろ変動した点はございますが、労働力に占める高齢者が非常にふえてまいった。そのこと自体が失業率を押し上げてまいるという構造的な側面もございます。ただ、どの程度超すと社会不安につながるかというのは非常に判断が難しいわけでございますが、委員もう既に御案内のように、現在二・八、悪いときで二・九という数字がございましたけれども、人数にいたしまして六千万ベースで計算いたしましたら百六十数万ということでございまして、現在まで全国平均で三%を超えた経過はございません。  そういう意味で、三%を超えることが社会不安かどうかということは別にいたしまして、非常に牽引力となる産業が見つかりませんし、さらには経済構造調整も、これは順次間違いなくやっていかなければどうにもならぬという現状でございますから、最も心配いたしておりますのは、じりじりと失業者がふえてくるということは最も懸念されまして、なかんずく各地域、業種においてさらにそれが悪化するということが懸念されますので、何%ということはなかなかこれは判断が難しいわけでございますが、でき得るだけ現状程度にとどめたいというのが私ども考え方でございます。  したがって、そういう面でできるだけ失業を出さないというところに全力を挙げ、なおかつやむなく離職した方々には、現行制度の中でそれなりの給付その他救済制度がございますけれども、さらに今後の職業訓練等々を通じて、これまた非常に重要な問題でございまして、先ほども申し上げましたように、非常に就業の中身が高度化してまいりまして、やはりあらゆる面から能力の開発向上訓練をやりませんと、なかなか技術の革新と申しましょうか、ついていけないという側面もあわせ持つ、言うなれば日本経済、産業自体が非常に大きな転機に立っていると見なければなりませんので、そこで多少の痛み、出血は、これはいたし方ないところでございますが、それをできるだけ小さく食いとめてまいらなければならぬということが当面の緊急対策であろう、こういうふうに私は考えております。
  251. 大矢卓史

    ○大矢委員 先ほど申しましたように、大臣、現状のパーセンテージで頑張っていくんだという決意のほどはお伺いいたしましたけれども、高い経済成長を目標に、それは努力目標ということでございますけれども、やはり失業率だけは低いほうがいいわけです。特にこれからまだまだ海外への投資がふえていくと思います。そして、産業の空洞化が言われております。そうなりますと、大臣の任期中と申しますか、そういう間は頑張っていただけると思いますけれども、これから先の長期の展望に立ちまして、非常な雇用の不安ということがあるのではないか。  そうなりますと、やはり労働省としては、先ほどから三%以上になったことはないということでございますけれども、この三%を割っていくという、これがやはり至上命令のような気もいたします。現状でいくことはもちろんでございますけれども、今後とも三%を割るということで、決して三%以上にならない、そういう努力目標で、労働省全体はどのような産業の空洞化が起きても頑張るんだということを確認いたしたいと思いますが、いかがでございますか。
  252. 平井卓志

    ○平井国務大臣 不確定要素が多うございまして、非常に断定的なことを申し上げるのは控えさせていただきたいと思うわけでございますが、いずれにいたしましても、雇用不安が大型になりますると社会不安につながる。これはまさしく政治の最も心すべき非情に重要な政策でございまするので、御案内のように、内閣におきましても雇用促進のための対策本部ということで、総理御自身も大変御理解をいただきまして、今後労働省の対策のみならず、抜本的にこの雇用の確保、雇用不安をなくするということで取り組んでまいるわけでございまして、当然のことながら、労働省の政策プラスやはり政府として産業政策も、またあらゆる事業官庁もそれ相応の御協力をいただいて対策を速やかに推進してまいりたいというふうに考えております。
  253. 大矢卓史

    ○大矢委員 大臣始め内閣の今後の行政に期待をするのでありますが、労働省の中で職業紹介というのが非常に大きな仕事だと思いますけれども、やはり従来の職業紹介という考え方、これは職業紹介が、先ほどから言われておりますように、労働省固有のものであって、それ以外に許可したものについてはこれを民間にゆだねるというようなことがあるようでございますけれども、何か従来の職業紹介所というのは、失業保険の給付を受けに行くところだというような感じに受け取れてならぬわけでありますが、従来とは違った意味の新しい時代の職業紹介所のあり方、これについてご意見ございませんか。
  254. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 お答え申し上げます。  先ほどから御指摘いただいておりますように、最近大変失業雇用情勢が悪化してまいりました。こういう中で公共職業安定所、全国のネットワークをもっておりますが、そこが本来の労働力需給機能を発揮いたしまして、産業間あるいは地域間の紹介を行い、そして一日でも早く、一人でも多く就職できるようにしていくのが安定所の役割だと思っております。  現在も安定所を利用される方は、求職者で五百万人、求人でも約五百万ほどございます。それだけの求人、求職を持っているわけでございますから、そうしたものが有効に結びつくように、そしてかつ円滑に、かつ迅速にできるようにしていくことが必要であろうと思っております。  このため、公共職業安定所に最近コンピューターシステムを導入いたしまして、求人者の地図まで出る、あるいは求職票を持ってまいりますと、それをそのまま自動的に読み込ませることができる、そういうコンピューターシステムを導入いたしまして、職業紹介、雇用情報提供機能の強化を図っているところでございます。こうすることによりまして、労働市場圏内における結合が迅速に行われると思いますし、また広く地域間の移動にも役立っていくのではないかと思います。こういう努力を積み重ねまして、公共職業安定所が真に総合的な雇用サービス機関となるよう努めてまいりたいと考えております。
  255. 大矢卓史

    ○大矢委員 時代の流れで、非常にコンピューターの導入でございますとかいろいろなことを考えて実行していらっしゃるようでございますけれども、求人雑誌と申しますか、そういうものの出現によりまして、大きくそういう職業紹介が、労働省の手を経ずに、どんどん民間の知恵でもって行われていく。それらについても、私は労働省みずからがそういう雑誌等を発行してでも、新しい求人といいますか、雇用の創出に今後知恵を出していただきたい、このように考えておるのであります。  その労働省でなじまない職業として、私と申しますか民間の職業紹介がございますけれども、やはり今資料をいただきまして見ておりますと、現実に即さない、五年ごとに見直すということになっておりますけれども、この中で全然利用されていないような業種も含まれておるというように思います。これを現実的に、現在生きております体系と申しますか、そういう五年ごとの見直しをやっておるということでありますが、五十五年に見直しをされまして、それ以後、これからもまた見直していかれますお気持ちはございますか。
  256. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 お答えいたします。  国が行います職業紹介に対して、これを補完するものとして民営の職業紹介事業を一定の規制のもとに認めております。その認めております職種が、昭和二十二年の職業安定法施行当時十一職業でございましたが、その後必要に応じて随時、職業の追加でありますとか職業内容の見直し等を行ってまいりまして、現在二十八職業となっております。ただいま御指摘のように、昭和五十五年に四職種につきまして再編整理を行い、二職業の削減、二職業の新たな追加を行ったわけでございます。その後五十八年には医療技術者、服飾デザイナー等の四職種の追加を行いましたし、またことしの七月には家政婦でありますとかマネキン等の職業内容の見直し、範囲の見直しも行ったところでございます。最近のように経済社会の進展が著しいときにおきましては、こうした民営職業紹介を行わせる指定職種の追加でありますとか見直しについては、必要に応じ随時行っていきたいというふうに考えております。
  257. 大矢卓史

    ○大矢委員 そういうことで今後見直していただくのも非常に結構でございます。ただ、許可をとりましても手続き等が毎年毎年非常に難しい、これについても簡素化していかれる方がいいのではないか、実情に即したように指導していかれるのがいいのではないかと私は思います。  そこで、先ほどから問題になっておりますジャパゆきさん、特に単純労働ということでございますけれども、女性のことに関しましても、芸能人という名前で入国をしながらホステスとしてやっておるというような事例が非常に多かろうと思いますし、また、職業紹介所の証明をつけなければ入れないというようなこともやっておるようだと聞いておりますけれども、その実態はどのようになっておりますか。
  258. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 御指摘のいわゆるジャパゆきさんと呼ばれるフィリピンでありますとかタイなどのアジア諸国から観光ビザ等で我が国に入国いたしまして風俗営業関係でホステス等として就労している女性が、入国に当たっての資格外活動あるいは資格外活動絡みの不法残留等の入管法違反により摘発される事例が依然として後を絶たない状況にあり、そのことに対して憂慮いたしております。  現在我が国では、外国人の単純労働力につきましては、国内の労働市場への影響等を考慮いたしまして、原則として受け入れないという方針をとっており、この方針に基づき、この問題に対しましても今後適切に対処していきたいというふうに考えております。
  259. 大矢卓史

    ○大矢委員 この表をもらいましたけれども、私は、余りにも実態に即していないのではないか、もっといらっしゃるのではないか、それを今のようなお言葉で、単純労働だから今のままでもっと厳しくしていけばいいのだということにはならないと思います。やはりそれはそれなりに、そういう人たちが日本へ働きに来られる、これは先ほどからもお話ございましたように、余り締めつけていくことによって、果たして外交上いいのであるかどうかという問題も含めまして、このような状況の中でホステスとかストリッパーといいますのは果たして職業紹介の中に入るのかどうかわかりませんけれども、売春婦等もございますが、これら芸能人として入ってこられる方、またホステスという職業があるわけでありますから、それがいけないといっても、現実にはやはり大勢の人たちが日本で働いているわけであります。  逆に申しますと、非常に目につくのは、このあれからいきますと韓国等も少ないようでありますが、大阪等では繁華街はもう韓国のクラブばかりというふうに目につくわけであります。現実にその人たちに聞いてみますと、全部観光ビザだ。しかし、ここにあらわれておりますあれでは、非常に少ない人数であります。今の状態からいって、果たしてこれが的確な現状を把握していらっしゃるのかどうか、私は非常に疑問に思っておるのであります。  だから、そこらも含めまして現状をもっと把握していただいて、その中でこれらの人々を、先ほど草川委員からの指摘もありましたように、逆にある程度認めていくことによって、中間搾取とか非常に貧困な人たちに対して追い打ちをかけていくような過酷な扱いをしていくことが、果たして今後世界の日本として発展途上国と言われている国々の人に対する仕打ちがこのままでいいのかどうか、そのことも含めて、現在の考え方は考え方として、この機会に再検討していく余地が私は十二分にあると思いますが、このことを最後にお聞きいたしまして、質問を終わりたいと思います。
  260. 平井卓志

    ○平井国務大臣 一口に申し上げて、アジアの開発途上国の多くが非常に深刻な失業、さらには貧困の問題に直面しておりまして、そういう中から国外に雇用機会を求めようという人たちが依然として増加しておる、これはまさしく御指摘のように現実であります。  実態を正確に把握するということはなかなか困難でございますけれども、先ほど来この場で私が御答弁申し上げましたように、単純労働その他外国人労働者に対して大きくマーケットが開けた日本であるとは私は考えておりませんけれども、単純労働者その他の問題になりますると、やはりいろいろな側面から簡単に受け入れるわけにはまいらないということで、政府は一貫した施策をとってまいった。ところが、委員指摘のように、これからの国際協調、さらなる国際化の中で観点を変えて、多少の問題、そこらあたりは考え直してはどうかということでございますが、これは単純に考えましても、労働省のみならず問題が非常に国際問題全般に関連するわけでございますので、今後の展望を考えましたときに、さらに私どもも対処の仕方を勉強してまいりたい、こういうふうに考えております。
  261. 上草義輝

    上草委員長代理 野間友一君。
  262. 野間友一

    野間委員 三つばかりの問題についてお聞きしたいと思います。  まず第一は、三原山の噴火に伴う労働者の置かれたさまざまな困難な状況の救済についてであります。  ちょうど大噴火があってきょうで二十日目であります。幸いにして、将来の展望としてクリスマスあたりに帰島ができるのではないかというようなことも情報として私は知っております。しかし、帰れたとしてもそれじゃ直ちに仕事ができる状況にあるかといいますと、業者もそうですが、島の労働者の多くが観光に依存しておるという状況もこれあり、これからも大変不安な状況が続くのではないかというふうに思っておるわけであります。  そこで、まず労働省にお聞きしたいのは、この伊豆大島におきます事業所あるいは雇用労働者の数をどのように把握しておるのかということであります。
  263. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 伊豆大島におきます雇用状況でございますが、私どもが把握いたしておりますのは、雇用保険が適用され、その事業所となった事業所数、それからその被保険者数でございますが、雇用保険の適用事業所数はちょうど百でございます。それから、被保険者数は千百九名でございます。
  264. 野間友一

    野間委員 それは保険の関係でとらえた数字なんです。だから、もっと労働者の実数は多いと思いますが、そのとおりかどうかということと、それから、今申し上げたように、労働者の多くの部分観光に依存しておるというか関係しておられるということを私は知っておりますが、その点についての確認を。
  265. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 雇用保険の適用がされている被保険者のほかに労働者がおるであろうことは、そのとおりだと思います。また、産業別に見まして、他の地域に比べ観光産業従業者が多いことは事実だと思います。
  266. 野間友一

    野間委員 今は緊急で分散して東京におられるわけです。だから、毎日毎日どうするかということが中心的な関心事だろうと思いますが、いずれ実際に自分の生活そのものが大変になることは明らかなんです。  そこで調べてみますと、もう既に解雇は現実に出ておりますね。例えば歯医者さんの事務員であるとか、あるいは商店の従業員で解雇されたというのを幾つか私も聞いております。また、来春卒業する島内の高校生の就職内定の取り消しという深刻な事態も出ておるわけですね。こういう実態をどう見ておるのかということと同時に、事業者も労働者もともに責めに帰すべからざる事由、つまり不可抗力、こういう噴火というようなことで大変な被害を受けておるわけです。実際には失業というようなことではないのですが、事実上失業した状態がずっと続いておるわけです。こういう点から考えまして、災害時におきます失業給付をぜひ支給しなければならぬと思いますが、この点について労働省はどのように考え、どのように対処していくのか、お聞かせいただきたいと思います。
  267. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 災害時におきます雇用保険の失業給付については特例が設けられております。  第一のケースは、その災害を受けた地域が災害救助法の適用を受けた場合でございまして、この場合には、災害により事業を休業または廃止するに至ったため一時的に離職を余儀なくされた被保険者であって、離職前事業主に再雇用予約のある者につきましても、これを失業状態にあるとみなして、通常どおりの手続により保険金を支給するということにいたしております。  それから第二のケースは、激甚災害法の適用を受けた場合でございまして、この場合は、事業を休業するに至ったため就労することができない、かつ賃金を受けられない状態にある被保険者に対しまして、失業状態にあるとして雇用保険給付の支給を行うという仕組みになっております。  現在は、伊豆大島につきましては災害救助法の指定を受けておりますので、それに伴う措置をとっているところでございます。
  268. 野間友一

    野間委員 現に災害救助法に基づくそういう特例措置で失業保険の給付を受けておるのはどのくらいありますか。そしてまた、今申請したら、どのくらいたてばこの給付ができるわけですか。
  269. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 災害が発生いたしましてから、十一月末の数値として承知いたしておりますのは、十三名の方の離職届がございまして、現在手続中であると承知いたしております。
  270. 野間友一

    野間委員 具体的には、手続から給付までどのくらいの日数がかかりますか。
  271. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 災害救助法を適用の場合、求職の申し込み日から待期七日を経過いたしまして支給開始になります。
  272. 野間友一

    野間委員 これはぜひPRというか十分皆さんにお知らせをして、しかるべく遺漏のないようにひとつ措置をとっていただきたい、こう思います。  それから、新聞報道ですが、特に定時制の高校生が仕事をしたいとか、あるいは主婦の方の中でもパートの希望も非常に多いというのが出ておるわけですね。冒頭に申し上げたように観光が多いわけですから、実際に帰島できたとしてもなかなかすぐに就労できない、そういう困難な状況も十分考えていかなければならぬと思うのですね。そのために、都内におけるあっせんにも十分配慮していただきたいということと同時に、就労事業として、例えば大型の船舶が寄港できる港の改修、あるいは島内における安全地区への避難の道路とか施設、新たにこういうような仕事を起こして、当面仕事ができない人をここで就労させていくというような施策も私は必要だと思いますが、どうでしょうか。
  273. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 災害を受けられ、休業していた事業が再開するまでの間に、やはり機械の整備でありますとか店舗の整理でありますとか、それなりの労働力を必要とするというふうに思います。また、災害復旧のため、それから今回の経験から、港における水深を深くするとかそういうことも考えられているようでございます。いずれにせよ、災害復旧などで相当な労働力を要するのではないか、そういうことにより、一時休業をしている者、また離職した者がそうしたところに職場を求められることを期待いたしております。
  274. 野間友一

    野間委員 積極的に施策をとるべきだということなんですが、そういうように私の方で要請しておきます。  次に、いわゆるジャパゆきさんの問題についてお伺いしたいと思います。  まず警察庁にお伺いします。これはきのうの新聞あるいはきょうの新聞にも出ておりますが、山梨の石和の放火殺人事件、ここでは台湾出身の四名の女性、そのうちの二名がとうとい命を落とす、一名が重傷、一名が行方不明、これは新聞報道ですが、それぞれの身元がいまだにわからないということすら言われておりますが、身元は確実に確認できたのかどうか、この点についてまずお伺いします。
  275. 伊藤一実

    伊藤(一)説明員 お答えいたします。  ただいま委員お尋ねの件につきましては、昨日午前三時四十分ごろ、山梨県石和町で発生した事件でございます。既に報道等がございますとおり、現場から女性と認められる死体が二体発見されまして、さらに、同所に居住しておりました女性二名が重傷を負って病院に収容されたという事件でございます。  この病院に収容されました二名の女性は、いずれも台湾の女性ということで身元が確認されております。さらに、関係者の供述によりますと、この同じ場所に四人の台湾女性がいたということでございますけれども、焼死した二名が台湾女性であるかどうかについては確認されておりません。  以上でございます。
  276. 野間友一

    野間委員 これは新聞報道によると、宴会用のコンパニオンとして阿久井さんという人が雇い入れておったというような記事がありますが、この阿久井さんみずからも四名の身元については一切知らないという報道もありますが、それは間違いないのですか。
  277. 伊藤一実

    伊藤(一)説明員 お答えいたします。  本件事案につきましては、火災の原因等について目下現場検証等の基礎捜査中でございまして、お尋ねの件につきましていまだ把握するに至っておりません。
  278. 野間友一

    野間委員 大臣、今石和の悲惨な台湾女性の焼死事件についてお尋ねしておったのですけれども、まだ身元もわからないという人もあるやに聞いておるわけですね。これはいわゆるジャパゆきさんという報道もございますし、私もそのとおりだと思うのですけれども、非常に悲惨な事件なんですね。私は先ほどからの論議もずっと聞いておったのですけれども、報道等をごらんになりまして、大臣もこれは大変だというふうに思っておられると思うのですが、まずその所見だけお伺いしておきたいと思います。
  279. 平井卓志

    ○平井国務大臣 事実関係だけお聞きすれば、もう悲惨というか、申し上げようがないわけでございまして、本来的にこういうことはあってはならぬ問題でございまして、そこのところを先ほどのいろいろ御論議をいただきました中で、基本的には単純労働は受け入れない。ところが現実の姿はどうかということになりますと、入管、警察等々からもお話しございましたように、受け入れる素地がなければなかなか組織的に入れるわけではございませんので、やはり基本的に将来の展望に立ってそういう労働力を受け入れるかどうかという論議は別にしまして、現行制度の中でそういうことが行われていること自体がまことに遺憾な問題でございまして、関係各省庁ともども、そういう事態が起こらないように当面あらゆる努力をしなければならぬというふうに私は考えております。
  280. 野間友一

    野間委員 私は、労働省が今までとってこられたいわゆる単純労働者については原則としてこれは雇わない、働かさないという方針については同感なんですね。しかし実際には、この法務省の入管局の資料を見ましても、例えばことしの一月から八月まで、前年同期に比べて二三・四%の増、件数にいたしますと六千五十六件、非常に多いわけですね。これらの特徴は、先ほどからも出ておりましたように、いわゆる観光ビザで入って、そして不法に就労する、あるいは残留するというケースがその大半であります。ですから、労働省が一たんそういう方針を決めながらも、しかし実際にはそういうようなことで不法就労というものは後を絶たない、しかもそれはふえておるというのが率直な現状であります。  その中で、先ほどからも言われておりましたように、ブローカーとかあるいは暴力団、手配師、これが計画的、組織的に関与して、そして外国から連れてくるというケースが非常に多いわけですね。まず警察庁にその点についてお聞きするわけですが、資格外活動あるいは資格外活動絡みの不法残留、こういうような幾つかのケースを見る中で、今申し上げたように、ブローカーや暴力団関係の介在、これはかなりあると思いますけれども、どのように把握しておるのか、お答えいただきたいと思います。     〔上草委員長代理退席、古賀(誠)委員長代理着席〕
  281. 伊藤一実

    伊藤(一)説明員 お答えいたします。  お尋ねの件につきまして、数字としてまとまったものはいまだ把握しておりませんけれども、具体的な検挙事例から見ますと、まず日本人がみずから現地に渡航いたしまして、外国人女性を雇用して観光目的等で連れ帰りまして、みずからの店でホステス等として使用しあるいは売春をさせていたというような事例、さらには日本人が渡航いたしまして、現地で外国人女性を雇用して観光目的等で連れ帰りまして、風俗営業者等にあっせんいたしまして売春などをさせていた事例、さらには、国内のブローカーが観光目的で送り込まれました外国人女性を空港等で受け取りまして、スナック経営者等に引き渡して売春等をさせていた事例、こういったような事例を把握しております。
  282. 野間友一

    野間委員 これは警察庁あるいは法務省も、それから労働省も、今ある法律の仕組みと申しますか、入国管理法なりあるいは職安法等々、それを使いましていろいろ検挙してやっておられることは私も承知をしておりますけれども、その今の法の仕組みでは、なかなかこれについての根絶というものは困難だというふうに私は思うわけですね。特にこの組織的なブローカーとかあるいは暴力団絡み、こういうものの根源にやはりメスを入れなければ私はだめだというふうに思うわけです。  ことしの四月に、東南アジア女性を救済するために駆け込み寺、これができております。この関係者から聞きましても、開設以来半年余りを過ぎた現在、保護を求めてきた外国人女性の数は百人を超えておるというふうに言われておりまして、そのほとんどが、仕事を紹介すると言って連れてこられて、そして来たらやにわに売春を強要される、あるいは暴力を振るわれる、あげくの果てには給料をもらえない、必死の思いで逃げてきたというのが報告されております。  何か、仙台の鉄道公安官に逃げ込んで、そしていろいろ手当てをしてもらって東京に来たという女性もあるそうですけれども、この全部、ボランティアというか、こういう駆け込み寺の方がみずからの費用でいろいろな手配なり苦労をされておるというふうにも聞くわけですね。これはこのまま放置しておきますと、先ほどの論議もありましたが、国際的にも大きな批判を浴びるということは当然だと思うのです。  厚生省にまずお聞きしますけれども、厚生省来ていますか。——この駆け込み寺のいろいろな方々の要望を聞きますと、それぞれ各都道府県にあります婦人相談所あるいは婦人保護施設あるいは婦人相談員、こういうような公共施設に積極的にジャパゆきさんの問題に取り組んでほしい、こういう強い要望があるのですね。国籍を問わずに救いを求めたら直ちに対応してほしいという要請があります。率直に申し上げてなかなか十分いってないというのが現状のようですけれども、そういう点でぜひ要請していただきたい、こう思いますが、いかがですか。
  283. 矢野朝水

    ○矢野説明員 今お話にありましたように、売春防止法の観点から、売春防止法の中でも婦人相談所あるいは婦人保護施設、婦人相談員、こういったものが制度としてあるわけでございます。こういったところは、特に日本人だけを対象とするということじゃございませんで、当然外国の方も対象になるわけでございます。現に私どもが伺っているところによりますと、一時保護を求めてこられたということでお世話をした、こういう事例も把握しております。  ただ、こういった方々というのは、そのほとんどが出入国管理法上の問題がある、不法残留者というような形で問題があるわけでございまして、来られましても出入国管理事務所にお送りする、こういうことにならざるを得ないわけでございます。それからまた、言葉の問題とかいろいろ受け入れ態勢にも問題がございまして、なかなか十分お世話できる態勢にはなってないわけでございますけれども、御趣旨のような点につきましては今後とも十分配慮していきたい、こう思っております。
  284. 野間友一

    野間委員 推定によると約四万人、いわゆるジャパゆきさん、これは男性のジャパゆきさんも入れますとそういうふうに言われております。  ある新聞報道、これは十二月六日付ですが、新たにこういうジャパゆきさん規制立法を今法務省は検討しておる、こういう報道があります。その中身、新聞報道によりますと、外国人労働者の雇用者に対し、その者の在留資格の適法性の確認などを義務づけ、地方入管局への届け出と許可制を導入する、違反した雇用者に対しては営業停止等々の制裁をしていく、これについて法務省は労働省と十分検討し、協議をするというような趣旨の報道がありますけれども、法務省は今こういうようなことを検討しておるのかどうか、聞かしていただきたいと思います。
  285. 木島輝夫

    ○木島説明員 お答え申し上げます。  先ほど来お話のございましたような不法就労外国人の増加という問題が社会的関心を集めておりまして、このような外国人が急増しつつあるということは、我々が行っている外国人に関する在留資格制度そのものを乱すばかりでございませんで、国内における風紀、それから公衆衛生、労働市場、それから暴力組織の活動と、各方面にわたって悪影響を及ぼすおそれが大きいというふうに考えております。  そこで、入国管理局といたしましては、従前から入国の時点で、つまり水際で慎重な審査に心がけていることはもとよりでございますが、国内に入りました後でも摘発、それから送還といった各分野において積極的に取り組んでいるところでございます。  この問題に現在よりさらに効果的に対処する方策としてどんなものがあるかという点について、関係各方面と意見をいろいろ交換中でございますが、その検討の過程におきまして、今先生が御指摘になりましたような立法も必要ではないかというような考え方も、一つの案としては出ているわけでございます。ただ、今御指摘の十二月六日付の夕刊に報じられたような具体的な法案の骨子というところまで検討が進んでいる段階ではございません。
  286. 野間友一

    野間委員 この問題はこれで一応終わります。  次にお聞きしたいのは、これも先ほどから論議がありました労働基準法の改正、私は改悪だと思いますが、その点について以下お聞きしたいと思います。  現行法制、労働基準法では週四十八時間労働、一日八時間労働ですね。欧米では四十時間以下というのがほとんどであります。ですから、時短について今国際的にも大きな批判を浴びておるわけですが、いわゆる働きバチ、ウサギ小屋ということですね。ですから、国際的な批判にたえるためにも、少なくとも国際水準に近づける、私は欧米並みに週四十時間以下というふうに前進をさせるべきだと考えますが、まずこの点について所見を承りたいと思います。
  287. 平賀俊行

    ○平賀政府委員 欧米と日本とで労働時間の実態に相違があるということは、先ほども御答弁申し上げましたところですが、労働時間の決め方は、日本でも欧米でも、それぞれの事業所で労使で決めるというのが基本で、その中で、法律によって日本の労働基準法のように最低限を設定しているところ、それから設定していないところがございます。法律のないような国、例えばイギリスなどもございます。最低基準を設定している国で、例えばドイツのように四十八時間のままでやっているところ、あるいは四十二時間とか四十四時間とかというところもございまして、非常にまちまちでございます。したがいまして、法律に基づいて最低限を設定するという見地からは、それぞれの国でそれぞれの国の法制を選択している、こういうふうに考えております。
  288. 野間友一

    野間委員 イタリアは四十八時間以下だというふうに私は理解しておりますが、ほとんどが四十時間以下じゃないですか。
  289. 平賀俊行

    ○平賀政府委員 イタリーでは四十八時間、西ドイツでは先ほども申し上げましたように四十八時間、フランスは最近法律を改正して三十九時間ということになっております。アメリカは四十時間、それからイギリスは法制がございません。
  290. 野間友一

    野間委員 労働時間の短縮について昨年の十二月に労働基準法研究会が報告を出し、これを下敷きにして中基審、中央労働基準審議会が今建議をつくるのに準備をしておるようですけれども、これはあす発表されるわけですね。
  291. 平賀俊行

    ○平賀政府委員 中央労働基準審議会で審議を行い、それが大詰めに近づいており、現在の予定ではあしたの総会で建議がなされる、こういう予定になっております。
  292. 野間友一

    野間委員 労基研の報告書を見ますと、ここでは一週間の労働時間は四十五時間、こういうふうに書いてありますね。これが今度は、中基審ではさらにこれより後退して、四十六時間というふうにあす実は建議がされるということになっております。これは、十月三日にもう既に新聞社にレクチャーをやっておりますね。しかも四十時間については、目標としては掲げながら、全く時期については明記していない。労基研の四十五時間よりもさらに中基審では後退しておる、これは大変なことだと私は思うのです。  しかも、いろいろ統計上数字を調べてみますと、四十五時間あるいは四十六時間にしても、いずれにしても、日本のいろいろな企業の労働時間の実態調査を見ましても、ほとんど改良にはならないと私は思うわけです。これは数字の上で、労基研のいろいろな報告書の中の数字も見ましたけれども。ですから、今あるものを追認するということにしかならないのではないかと思いますが、いかがですか。
  293. 平賀俊行

    ○平賀政府委員 中央労働基準審議会の審議は確かに大詰めに近づいておりますけれども、現段階では、その内容について申し上げられる状況にはございません。  ただ、我が国の労働時間の実態から見ますと、労働者単位で平均的に、例えば四十五時間という形で見ますと、四十五時間以下の所定労働時間になっているところというのは五割強でございます。それから、四十六時間以下の所定労働時間になっているところは六割足らず、五九・何%という状況でございます。
  294. 野間友一

    野間委員 数字が間違っていますよ。四十五時間以下は五九・四%、四十六時間以下が六四・四%です。これはあなたのところの数字ですよ。  さらに、労働省が八六年八月二十一日に発表した労働時間総合実態調査結果、これは速報ですが、これを見ますと、事業規模別に、一人から四人、それからずっと区切って三百人以上が最大にしてありますが、平均して一週間の所定労働時間は四十三時間五十七分、こういうふうにありますね。間違いありませんね。
  295. 平賀俊行

    ○平賀政府委員 私がただいま概略申し上げました数字は、先生が後の方でおっしゃいました、一人以上の人を雇っている企業の労働時間の平均時間は四十三時間で、それから、先ほど申しましたように、四十六時間以下の所定労働時間になっているところは五九%強、こういうことでございます。  ただいまの四三%という数字は、私、今ここで正確には申し上げられませんが、その資料は間違いないと思います。
  296. 野間友一

    野間委員 ですから、労働省の労働時間総合実態調査の結果を見ましても、事業規模別に、一人から四人、五人から九人、十人から二十九人、ずっと分けてありますが、そのトータルを見ますと平均として四十三時間五十七分、こういう実態が出ていますね。間違いないでしょう。
  297. 平賀俊行

    ○平賀政府委員 間違いありません。
  298. 野間友一

    野間委員 だから、結局これは後追い、追認。  しかも、私はけしからぬと思うのは、労基研でも、国際的な四十時間でなくて四十五時間、こう言っているにもかかわらず、あす発表される中基審では四十六時間、四十時間については目標としか書いていないわけですね。もっとも、四十四時間になるべく早い時期にということも記述されておりますけれども、しかし、少なくとも労基研からは非常に後退しておる。これは、労働者側の委員も非常に不満を持っているのは当然だと思うのですね。  さらに問題は、四十八時間から四十六時間にいわゆる数字の上では短縮はしても、結局それと引きかえに労働時間法制に大穴をあけると申しますか、形骸化していくという点に大きな問題があると私は思うのです。  その一つは、八時間労働制の否定ですよ。これは労基研の報告などもそうなんですが、今の労働基準法の三十二条によりますと一日八時間労働、ですから、人間の一日のリズムというのは、八時間労働で大体回っておるわけですね。  ところが、労基研の書き物を見てみますと、これは一日八時間労働は取っ払って一週単位の規制をしていく、これが基本だ、一日の労働時間は一週の労働時間を各日に割り振りする場合に基本として考えていくことが必要だ、こうなっています。つまり、今の法制度では原則一日八時間、例外として四週総じてこれは計算するということになっていますが、労基研を見ましたらその原則と例外が今度は逆になっていると思いますが、これも間違いありませんね。
  299. 平賀俊行

    ○平賀政府委員 労働基準法研究会でも、一日の労働時間は原則八時間ということになっております。ただ、週の労働時間を考えるというやり方、これはどこの国でも週の労働時間を例えば所定労働時間について考えておる。日本の場合もやはり四十八時間という原則が今の労働基準法の中にもございます。そういう意味では、一日の労働時間の単位、メルクマール、それから週の労働時間、両方の単位があるというふうに理解しております。
  300. 野間友一

    野間委員 私が申し上げたのは、現行法は一日八時間、三十二条一項です。二項では、四週で云々という例外がありますね。
  301. 平賀俊行

    ○平賀政府委員 現行法では、一日八時間、一週四十八時間というふうに明記しております。
  302. 野間友一

    野間委員 それで、今言われた労基研では一日の労働時間を八時間とする、これは確かに明記しております。ただし、これは一週単位の規制を基本とする、一日の労働時間は一週の労働時間を各日に割り振りする場合に基本として考えていくことが必要だ、こういうことで、一日八時間労働が否定されて、結局一週間単位で決めたらいいんだということになっておるわけでしょう。ところが、これは中基審の建議を見ましたら、さらに一日八時間労働という基本すら取っ払っておる。だからずっと後退しておる。つまり、一日八時間労働、これは労働時間の基本なんですけれども、これそのものをもう取っ払っておるということになっておるでしょう。
  303. 平賀俊行

    ○平賀政府委員 私の方から中基審の建議について申し上げる段階にないということですが、まだ建議は出ておりません。
  304. 野間友一

    野間委員 これも三日にやっておるわけですよ、新聞記者に。だからうんと後退しておるわけです。労働者は、残業は別にして一日八時間労働で、朝行って八時間働いて家へ帰るわけですよ。特に婦人労働者の場合には、子供を迎えに保育所へ行くとか、あるいは食事の支度をするとか、そういうリズムがあるわけですけれども、だんだんそれが否定されまして、結局今申し上げたように、労基研では、八時間労働とするけれどもそれは一週間単位で割り振りするのだ、そのための基本にしかならないというようなことになって、しかもこれが中基審ではもう取っ払われて、一週間単位で時間は決めればいいんだということになっておる。これはもう大変なことだと思うのです。  しかも、労働時間の弾力化ということで非定型の十時間労働制、一日二時間延長して十時間労働、これは労使協定でできるのだということも書いてあるわけですね。これは労基研の報告の中にも記述がありますが、もし非定型十時間労働制がとられた場合には、事前に労働者に告知するということにはなるようですが、あす十時間働けと言えば、これは業務命令があった場合には拒否もできないし、残業代も払わなくて済むということになると思うのですが、その点、間違いありませんね。
  305. 平賀俊行

    ○平賀政府委員 研究会報告の中に、労働時間についての弾力的な取り扱いの記述がございます。そして、一週を単位にして、非定型というか、一日一定の時間を限度にして労働時間をならして見る。そういう形での勤務形態というか、それについての記述があるということは事実でございます。
  306. 野間友一

    野間委員 ですからその場合に、例えば前日に業務命令であすは十時間働け——十時間が限度でしょう。二時間延長すると言った場合に拒否できませんし、残業手当を払わなくて済む、こういうことになるわけでしょう。
  307. 平賀俊行

    ○平賀政府委員 なお具体的に言いますと、建議が出て、それから私どもの方で制度を考えるということになりますが、その枠内において所定労働時間についての変形が認められた場合は、その枠内であれば所定労働時間となる。言いかえれば超過勤務の対象にはならないということでございます。
  308. 野間友一

    野間委員 だから結局、非定型の十時間労働制がとられますと、やにわに、例えば前日に、あした十時間働けと言われても拒否はできませんし、残業手当もつかない、こういうことになるわけですね。あしたの労働時間もわからない非常に不安定な中で労働者が仕事をしなければならぬということになるわけです。  それからもう一つありますね。変形三カ月労働、これは四週単位の現在の三十二条二項でなくて、一カ月単位というのが労基研の中にありますが、中基審の中では削除されております。そして、三カ月単位の変形労働時間を設けよ、こういうふうにありますね。そうしますと、実際に三カ月単位で変形三カ月労働というものがとられますと、忙しい月には幾ら働いても残業手当も全然出てこないということになると思うのですが、これは論立てですからお答えいただけるでしょう。
  309. 平賀俊行

    ○平賀政府委員 いずれにしても、その研究会の報告にある御提案を基礎にして、中基審で御議論をいただいた上であした建議をされ、それに基づいて制度化をすることになります。制度化の内容あるいは建議の内容について現段階ではお答えできませんけれども、全体として労働時間短縮の方向に作用をする、それから所定労働時間の短縮に結びつく方向に作用する。それから、現在の四週四日の変形制度の経験などから見まして、そういう変形的な制度が弊害がある形で運用されるとは全く考えておりません。
  310. 野間友一

    野間委員 いや、聞いたことに答えてくださいよ。変形三カ月労働になりますと、三カ月単位で決めるわけですから、忙しいときにはうんと働いても残業手当はつかない、そういうふうなことになるのではないか。これは論立てですから、その点についてのお答えなんですよ。
  311. 平賀俊行

    ○平賀政府委員 先ほどの一週間の枠の中での変形制と同じように、その変形制としてもしそれが実施された場合に、その枠の中で所定労働時間を運用した場合は、その所定労働時間の中については超過勤務の対象にはなりません。
  312. 野間友一

    野間委員 それから、所定外労働時間の規制の強化については、一切見送っておりますね。昨年の労基研の報告あるいは中基審でもそうですよね。これは統計上、資料を見ますと、日本が二千百五十二時間、アメリカが千八百九十八時間、イギリスが千九百三十八時間云々とあります。この所定外労働時間の規制強化について、現在の三六協定でいいんだ、だからこれは法律で規制は強化しないんだというのが報告の中にありますが、これは間違いありませんね。
  313. 平賀俊行

    ○平賀政府委員 建議の中身についてはお答えできません。
  314. 野間友一

    野間委員 建議ではなく、報告ですよ。
  315. 平賀俊行

    ○平賀政府委員 報告の中には、休日の割り増し賃金の引き上げ等を検討の対象にせよということがございます。
  316. 野間友一

    野間委員 ちっともまともに答えないですね。七日の朝日新聞の投書の欄によりますと、一日平均十六時間も勤務しておる、「ないも同然の法定労働時間」という東京都のある会社員の方の投書とかあるいはもう一人の方の投書もありますけれども、物すごく残業が多いわけですね。実際に二千百五十二時間というのは、パート等も入れた数字だと私は思うのです。こういう状況でやりましたら、二千時間以下はこれは実際できない、実現は不可能だと私は思うのです。  時間がありませんからこれでやめますけれども、結局私が思うのは、戦後せっかくつくり上げた労働保護法、これがだんだんなし崩しにされて、例の派遣法から機会均等法、これを受けた労働基準法の一部改正、これは婦人労働者が改悪されたわけですが、今度は全面的に、これを改正というふうに言われるわけですけれども、労働時間一つとってみましても、いろんな形で労働者が非常にひどい目に遭うような仕組みに変えようということが報告なり建議で明らかだと私は思うのです。しかも、これを下敷きにして労働基準法の見直しをやろうというのですから、これはとんでもない反労働者的な方向でやるんじゃないかというふうに労働者が皆危惧しておるのです。  時間がありませんからこれ以上言いませんけれども、労働者の切実な要求を聞いていいものをつくる、労働時間短縮について仮に四十四時間、四十六時間、これだけを独立してやるならともかく、これと抱き合わせにいろんな点で改悪をするということは許されないと思うのです。  最後に労働大臣に所見を聞いて、終わりたいと思うのです。
  317. 平井卓志

    ○平井国務大臣 やはり中基審におきまして労使代表、中立の方々、御専門で長時間にわたっての御議論の上で、予定ではあす十日でございますが御建議をいただくということでございますので、それぞれの立場の方々からそれぞれの御意見、御議論があって、まとまった案としてあす総会において御承認になりまして建議をいただくということでございます。それなりの重みも考えながら、十二分にあらゆる角度から検討いたしまして、成案を得ました場合にはまた国会にお諮りし、一日も早く時間短縮という時代の要請にこたえる方に努力してまいりたい、こう考えております。
  318. 野間友一

    野間委員 また改めて別の機会にやりたいと思います。  終わります。
  319. 古賀誠

    古賀(誠)委員長代理 次回は、来る十一日木曜日午前九時三十分理事会、午前九時四十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十二分散会