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1986-10-21 第107回国会 衆議院 決算委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和六十一年九月十一日)(木曜 日)(午前零時現在)における本委員は、次のと おりである。    委員長 堀之内久男君    理事 糸山英太郎君 理事 上草 義輝君    理事 熊谷  弘君 理事 古賀  誠君    理事 近藤 元次君 理事 新村 勝雄君    理事 貝沼 次郎君 理事 小沢 貞孝君       岡島 正之君    高橋 一郎君       古屋  亨君    穂積 良行君       松野 頼三君    森下 元晴君       谷津 義男君    湯川  宏君       渡辺美智雄君    小川 国彦君       渋沢 利久君    渡部 行雄君       斉藤  節君    春田 重昭君       北橋 健治君    野間 友一君 ────────────────────── 昭和六十一年十月二十一日(火曜日)     午前九時三十一分開議  出席委員    委員長 堀之内久男君    理事 糸山英太郎君 理事 上草 義輝君    理事 熊谷  弘君 理事 古賀  誠君    理事 近藤 元次君 理事 新村 勝雄君    理事 草川 昭三君       岡島 正之君    高橋 一郎君       古屋  亨君    穂積 良行君       森下 元晴君    谷津 義男君       渡辺美智雄君    小川 国彦君       渡部 行雄君    古川 雅司君       大矢 卓史君    野間 友一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 塩川正十郎君  出席政府委員         内閣官房内閣内         政審議室長         兼内閣総理大臣         官房内政審議室         長       的場 順三君         内閣法制局長官 味村  治君         文部大臣官房長 古村 澄一君         文部大臣官房総         務審議官    川村 恒明君         文部省初等中等         教育局長    西崎 清久君         文部省教育助成         局長      加戸 守行君         文部省高等教育         局長      阿部 充夫君         文部省高等教育         局私学部長   坂元 弘直君         文部省学術国際         局長      植木  浩君         文部省社会教育         局長      澤田 道也君         文部省体育局長 國分 正明君         文化庁次長   久保庭信一君         厚生省援護局長 木戸  脩君  委員外出席者         公正取引委員会         事務局審査部第         一審査長    菊池 兵吾君         警察庁刑事局捜         査第二課長   古川 定昭君         警察庁刑事局保         安部少年課長  根本 芳雄君         外務大臣官房審         議官      太田  博君         外務大臣官房外         務参事官    渋谷 治彦君         大蔵省主計局司         計課長     兵藤 廣治君         文部大臣官房会         計課長     野崎  弘君         厚生省薬務局経         済課長     佐藤 隆三君         通商産業省機械         情報産業局情報         処理振興課長  近藤 隆彦君         通商産業省生活         産業局文化用品         課長      松倉 浩司君         会計検査院事務         総局第二局長  天野 基巳君         決算委員会調査         室長      大谷  強君     ───────────── 委員異動 九月十一日  辞任         補欠選任   貝沼 次郎君     草川 昭三君   斉藤  節君     古川 雅司君   春田 重昭君     小川新一郎君 同月二十五日  辞任         補欠選任   湯川  宏君     渡部 恒三君 十月十四日  辞任         補欠選任   北橋 健治君     大矢 卓史君 同月二十一日  理事貝沼次郎君九月十一日委員辞任につき、そ  の補欠として草川昭三君が理事に当選した。     ───────────── 九月十一日  昭和五十八年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十八年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十八年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十八年度政府関係機関決算書  昭和五十八年度国有財産増減及び現在額総計算書  昭和五十八年度国有財産無償貸付状況計算書  昭和五十九年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十九年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十九年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十九年度政府関係機関決算書  昭和五十九年度国有財産増減及び現在額総計算書  昭和五十九年度国有財産無償貸付状況計算書 同月十二日  昭和五十九年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書  昭和五十九年度特別会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書  昭和五十九年度特別会計予算総則第十一条に基づく経費増額調書及び各省庁所管経費増額調書  昭和六十年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その1)  昭和六十年度特別会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その1)  昭和六十年度特別会計予算総則第十二条に基づく経費増額調書及び各省庁所管経費増額調書(その1)  (承諾を求めるの件) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  国政調査承認要求に関する件  昭和五十八年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十八年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十八年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十八年度政府関係機関決算書  昭和五十八年度国有財産増減及び現在額総計算書  昭和五十八年度国有財産無償貸付状況計算書  昭和五十九年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十九年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十九年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十九年度政府関係機関決算書  昭和五十九年度国有財産増減及び現在額総計算書  昭和五十九年度国有財産無償貸付状況計算書 (文部省所管)      ────◇─────
  2. 堀之内久男

    堀之内委員長 これより会議を開きます。  この際、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。これよりその補欠選任を行いたいと存じますが、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 堀之内久男

    堀之内委員長 御異議なしと認めます。よって、草川昭三君を理事に指名いたします。      ────◇─────
  4. 堀之内久男

    堀之内委員長 次に、国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  すなわち、決算の適正を期するため、本会期中において  一、歳入歳出の実況に関する事項  二、国有財産増減及び現況に関する事項  三、政府関係機関経理に関する事項  四、国が資本金を出資している法人の会計に関する事項  五、国又は公社が直接又は間接に補助金奨励金助成金等を交付し又は貸付金損失補償等財政援助を与えているものの会計に関する事項 以上の各事項につきまして、関係各方面からの説明聴取、小委員会の設置及び資料の要求等の方法によりまして、議長に対し、国政調査承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 堀之内久男

    堀之内委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ────◇─────
  6. 堀之内久男

    堀之内委員長 次に、昭和五十八年度決算外二件及び昭和五十九年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、文部省所管について審査を行います。  この際、文部大臣概要説明会計検査院検査概要説明を求めるのでありますが、これを省略し、本日の委員会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 堀之内久男

    堀之内委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────    昭和五十八年度文部省所管決算概要説明  昭和五十八年度文部省所管一般会計及び国立学校特別会計決算概要を御説明申し上げます。  まず、文部省主管一般会計歳入につきましては、歳入予算額二十一億四千三百九十九万円余に対しまして、収納済歳入額は三十三億一千八百十三万円余であり、差引き十一億七千四百十四万円余の増加となっております。  次に、文部省所管一般会計歳出につきましては、歳出予算額四兆五千六百二十七億七千八百十七万円余、前年度からの繰越額百二十八億九千五百三十八万円余を合わせた歳出予算現額四兆五千七百五十六億七千三百五十六万円余に対しまして、支出済歳出額は四兆五千六百九億八千八百二十二万円余であり、その差額は百四十六億八千五百三十三万円余となっております。  このうち、翌年度へ繰り越した額は八十五億七千二百五十七万円余で、不用額は六十一億一千二百七十六万円余であります。  支出済歳出額のうち主な事項は、義務教育費国庫負担金国立学校特別会計へ繰入、科学技術振興費文教施設費教育振興助成費及び育英事業費であります。  次に、これらの事項概要を御説明申し上げます。  第一に、義務教育費国庫負担金支出済歳出額は二兆二千五百四十五億三千七百九十六万円余であり、これは、公立義務教育学校教職員給与費等及び教材費の二分の一を国が負担するために要した経費であります。  第二に、国立学校特別会計へ繰入の支出済歳出額は一兆百五十六億四千五百十一万円余であり、これは、国立学校大学附属病院及び研究所管理運営等に必要な経費に充てるため、その財源の一部を一般会計から国立学校特別会計へ繰り入れるために要した経費であります。  第三に、科学技術振興費支出済歳出額は五百十一億八千三百三十四万円余であり、これは、科学研究費補助金日本学術振興会補助金文部本省所轄研究所及び文化庁附属研究所運営等のために要した経費であります。  第四に、文教施設費支出済歳出額は四千九百三十四億五千百四十四万円余であり、これは、公立小学校中学校特殊教育学校高等学校及び幼稚園校舎等整備並びに公立学校施設等災害復旧に必要な経費の一部を国が負担又は補助するために要した経費であります。  第五に、教育振興助成費支出済歳出額は五千八百七十九億九千八百二十四万円余であり、これは、養護学校教育費国庫負担金義務教育教科書費学校教育振興費社会教育助成費体育振興費及び私立学校助成費に要した経費であります。  第六に、育英事業費支出済歳出額は九百三億四千四十一万円余であり、これは、日本育英会に対する奨学資金原資の貸付け及び事務費の一部補助のために要した経費であります。  次に、翌年度繰越額八十五億七千二百五十七万円余についてでありますが、その主なものは、文教施設費で、事業実施不測日数を要したため、年度内支出を終わらなかったものであります。  次に、不用額六十一億一千二百七十六万円余についてでありますが、その主なものは、教育振興助成費で、学校教育振興費を要することが少なかったこと等のため、不用となったものであります。  次に、文部省所管国立学校特別会計決算について御説明申し上げます。  国立学校特別会計収納済歳入額は一兆五千五百二十四億七千九百四十二万円余、支出済歳出額は一兆四千九百七十億七百七十六万円余であり、差引き五百五十四億七千百六十六万円余の剰余を生じました。  この剰余金は、国立学校特別会計法第十二条第一項の規定により三十六億八千八百四十九万円余を積立金として積み立て、残額五百十七億八千三百十六万円余を翌年度歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。  次に、歳入につきましては、歳入予算額一兆五千百四十二億五千七百三十七万円余に対しまして、収納済歳入額は一兆五千五百二十四億七千九百四十二万円余であり、差引き三百八十二億二千二百五万円余の増加となっております。  次に、歳出につきましては、歳出予算額一兆五千百四十二億五千七百三十七万円余、前年度からの繰越額百十七億五千三百四十万円余を合わせた歳出予算現額一兆五千二百六十億一千七十八万円余に対しまして、支出済歳出額は一兆四千九百七十億七百七十六万円余であり、その差額は二百九十億三百一万円余となっております。  このうち、翌年度へ繰り越した額は百三十四億一千四百三十一万円余で、不用額は百五十五億八千八百七十万円余であります。  支出済歳出額のうち主な事項は、国立学校大学附属病院研究所施設整備費及び船舶建造費であります。  次に、これらの事項概要を御説明申し上げます。  第一に、国立学校支出済歳出額は八千二百四十五億五千九百二十九万円余であり、これは、国立学校管理運営研究教育等に要した経費であります。  第二に、大学附属病院支出済歳出額は三千五百五十二億九千八百六万円余であり、これは、大学附属病院管理運営研究教育診療等に要した経費であります。  第三に、研究所支出済歳出額は九百六十三億七千九百十六万円余であり、これは、研究所管理運営学術研究等に要した経費であります。  第四に、施設整備費支出済歳出額は一千八百十五億一千五百七十五万円余であり、これは、国立学校大学附属病院及び研究所施設整備に要した経費であります。  第五に、船舶建造費支出済歳出額は十九億三千五百八十七万円余であり、これは、国立学校における実習船及び大学附置研究所における研究船代替建造に要した経費であります。  次に、翌年度繰越額百三十四億一千四百三十一万円余についてでありますが、その主なものは、施設整備費で、事業実施不測日数を要したため、年度内支出を終わらなかったものであります。  次に、不用額百五十五億八千八百七十万円余についてでありますが、その主なものは、国立学校で、不動産購入費を要することが少なかったこと等のため、不用となったものであります。  なお、昭和五十八年度予算執行に当たりましては、予算の効率的な使用経理事務の厳正な処理に努力したのでありますが、会計検査院から不当事項十三件の御指摘を受けましたことは、誠に遺憾に存じます。  指摘を受けた事項につきましては、適切な措置を講ずるとともに、今後、この種の事例発生未然に防止するため、より一層指導監督徹底を図る所存であります。  以上、昭和五十八年度文部省所管一般会計及び国立学校特別会計決算につきまして、その概要を御説明申し上げました。  何とぞ、よろしく御審議のほど、お願い申し上げます。     …………………………………    昭和五十八年度決算文部省についての検査概要に関する主管局長説明                 会計検査院  昭和五十八年度文部省決算につきまして検査いたしました結果の概要説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項十三件でございます。  検査報告番号九号から一四号までの六件は、義務教育費国庫負担金経理が不当と認められるもので、これらの都道県では、国庫負担金の算定に当たり、その基礎となる教職員標準定数等について、一部の小学校及び中学校で、実際は、児童生徒が、実在していなかつたり、既に他の市町村等へ転出していたり、他の学年に在学するものであつたりするなど、当該学校又は当該学年に在学していない者であるにもかかわらず、これらの者を在学していることとして、実数に上積みし、事実と相違した過大な児童生徒数を報告していたのに、これをそのまま用いて算定していたため、当該教職員標準定数等が過大なものとなり、これに基づいて算定された国庫負担金が過大に交付されていたものであります。  また、検査報告番号一五号から二一号までの七件は、補助事業実施及び経理が不当と認められるもので、公立文教施設整備事業において、補助の対象とは認められないものを事業費に含めていたり、契約の処置が適切を欠いていたりしていたものであります。  以上、簡単でございますが説明を終わります。     ─────────────    昭和五十九年度文部省所管決算概要説明  昭和五十九年度文部省所管一般会計及び国立学校特別会計決算概要を御説明申し上げます。  まず、文部省主管一般会計歳入につきましては、歳入予算額二十三億三千五百五十四万円に対しまして、収納済歳入額は四十七億四千九百九十二万円余であり、差引き二十四億一千四百三十八万円余の増加となっております。  次に、文部省所管一般会計歳出につきましては、歳出予算額四兆六千六百七十九億九十六万円余、前年度からの繰越額八十五億七千二百五十七万円余を合わせた歳出予算現額四兆六千七百六十四億七千三百五十四万円余に対しまして、支出済歳出額は四兆六千三百二十七億三十一万円余であり、その差額は四百三十七億七千三百二十二万円余となっております。  このうち、翌年度へ繰り越した額は九十億五千八百四十一万円余で、不用額は三百四十七億一千四百八十万円余であります。  支出済歳出額のうち主な事項は、義務教育費国庫負担金国立学校特別会計へ繰入、科学技術振興費文教施設費教育振興助成費及び育英事業費であります。  次に、これらの事項概要を御説明申し上げます。  第一に、義務教育費国庫負担金支出済歳出額は二兆三千三百九十七億七千七百八十六万円余であり、これは、公立義務教育学校教職員給与費等及び教材費の二分の一を国が負担するために要した経費であります。  第二に、国立学校特別会計へ繰入の支出済歳出額は一兆九百六十八億六千八百六十六万円余であり、これは、国立学校大学附属病院及び研究所管理運営等に必要な経費に充てるため、その財源の一部を一般会計から国立学校特別会計へ繰り入れるために要した経費であります。  第三に、科学技術振興費支出済歳出額は五百十二億二千七百二十八万円余であり、これは、科学研究費補助金日本学術振興会補助金文部本省所轄研究所及び文化庁研究所等に要した経費であります。  第四に、文教施設費支出済歳出額は四千二百六十二億五千九十万円余であり、これは、公立小学校中学校特殊教育学校高等学校及び幼稚園校舎等整備並びに公立学校施設等災害復旧に必要な経費の一部を国が負担又は補助するために要した経費であります。  第五に、教育振興助成費支出済歳出額は五千六百二十八億五千二百十七万円余であり、これは、養護学校教育費国庫負担金義務教育教科書費学校教育振興費社会教育助成費体育振興費及び私立学校助成費に要した経費であります。  第六に、育英事業費支出済歳出額は八百六十一億一千六十二万円余であり、これは、日本育英会に対する奨学資金原資の貸付け財政投融資資金の利子の補填及び事務費の一部補助のために要した経費であります。  次に、翌年度繰越額九十億五千八百四十一万円余についてでありますが、その主なものは、文教施設費で、事業実施不測日数を要したため、年度内支出を終わらなかったものであります。  次に、不用額三百四十七億一千四百八十万円余についてでありますが、その主なものは、義務教育費国庫負担金を要することが少なかったこと等のため、不用となったものであります。  次に、文部省所管国立学校特別会計決算について御説明申し上げます。  国立学校特別会計収納済歳入額は一兆六千五百二十三億三千二百六十九万円余、支出済歳出額は一兆五千九百十八億二千八百三十万円余であり、差引き六百五億四百三十九万円余の剰余を生じました。  この剰余金は、国立学校特別会計法第十二条第一項の規定により翌年度歳入に繰り入れることとして、決算を結了いたしました。  次に、歳入につきましては、歳入予算額一兆六千二百四十九億八千八百六十二万円余に対しまして、収納済歳入額は一兆六千五百二十三億三千二百六十九万円余であり、差引き二百七十三億四千四百七万円余の増加となっております。  次に、歳出につきましては、歳出予算額一兆六千二百四十九億八千八百六十二万円余、前年度からの繰越額百三十四億一千四百三十一万円余を合わせた歳出予算現額一兆六千三百八十四億二百九十三万円余に対しまして、支出済歳出額は一兆五千九百十八億二千八百三十万円余であり、その差額は四百六十五億七千四百六十三万円余となっております。  このうち、翌年度へ繰り越した額は百四十二億二千七十七万円余で、不用額は三百二十三億五千三百八十五万円余であります。  支出済歳出額のうち主な事項は、国立学校大学附属病院研究所施設整備費及び船舶建造費であります。  次に、これらの事項概要を御説明申し上げます。  第一に、国立学校支出済歳出額は九千二百三億九千四百二十四万円余であり、これは、国立学校管理運営研究教育等に要した経費であります。  第二に、大学附属病院支出済歳出額は三千七百三十九億四千百七万円余であり、これは、大学附属病院管理運営研究教育診療等に要した経費であります。  第三に、研究所支出済歳出額は九百八十三億六千四百七十五万円余であり、これは、研究所管理運営学術研究等に要した経費であります。  第四に、施設整備費支出済歳出額は一千五百六十億五千二百三十五万円余であり、これは、国立学校大学附属病院及び研究所施設整備に要した経費であります。  第五に、船舶建造費支出済歳出額は十七億九千九百六十七万円余であり、これは、国立学校における実習船代替建造に要した経費であります。  次に、翌年度繰越額百四十二億二千七十七万円余についてでありますが、その主なものは、施設整備費で、事業実施不測日数を要したため、年度内支出を終わらなかったものであります。  次に、不用額三百二十三億五千三百八十五万円余についてでありますが、その主なものは、国立学校で、退職者が少なかったので退職手当を要することが少なかったこと等のため、不用となったものであります。  なお、昭和五十九年度予算執行に当たりましては、予算の効率的な使用経理事務の厳正な処理に努力したのでありますが、会計検査院から不当事項二十七件の御指摘を受けましたことは、誠に遺憾に存じます。  指摘を受けた事項につきましては、適切な措置を講ずるとともに、今後、この種の事例発生未然に防止するため、より一層指導監督徹底を図る所存であります。  以上、昭和五十九年度文部省所管一般会計及び国立学校特別会計決算につきまして、その概要を御説明申し上げました。  何とぞ、よろしく御審議のほど、お願い申し上げます。     …………………………………    昭和五十九年度決算文部省についての検査概要に関する主管局長説明                 会計検査院  昭和五十九年度文部省決算につきまして検査いたしました結果の概要説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、法律政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項二十七件、意見を表示し又は処置を要求した事項一件であります。  まず、法律政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項について説明いたします。  検査報告番号七号から二六号までの二十件は、義務教育費国庫負担金経理が不当と認められるものであります。  北海道ほか十九府県内の一部の小学校及び中学校では、この国庫負担金の算定の基礎となる児童生徒数について、実際は、児童生徒が実在していなかつたり、既に他の学校へ転学していたり、当該学校に入学又は転入学の事実がなく他の学校に在学していたりなどしているのに、これらの者を当該学校などに在学していることとして、その数を実数に上積みし、事実と相違して過大に報告していました。しかるに、これらの道府県では、これをそのまま用いて標準学級総数及びこれに基づく教職員の標準定数を算定していたため、これらの数値が過大なものとなり、その結果国庫負担金が過大に交付されていたものであります。  また、検査報告番号二七号から三三号までの七件は、補助事業実施及び経理が不当と認められるもので、公立文教施設整備事業等において、補助の対象とは認められないものを事業費に含めていたり、補助事業で取得した財産を目的外に使用していたりしていたものであります。  次に、意見を表示し又は処置を要求した事項について説明いたします。  これは、国立大学における授業料免除の取扱いに関するものであります。  北海道大学ほか五十二大学における授業料免除の実施につきまして検査いたしましたところ、これらの大学では、将来の返還を条件として奨学金の貸付事業を行っている日本育英会の推薦基準よりも緩やかな基準など合理的とは認められない任意の基準で、大学ごとに実施している事態が多数見受けられましたので、文部省において、速やかに合理的な基準を設定して各大学に示すとともに、各大学に対し指導を十分に行つて、授業料の免除を適切に実施するよう意見を表示したものであります。  以上、簡単でございますが説明を終わります。     ─────────────
  8. 堀之内久男

    堀之内委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡島正之君。
  9. 岡島正之

    岡島委員 委員長初め委員の方々の御配慮をいただいて、質問の機会をいただきましたことを感謝申し上げます。  初めての質問でありますし、さらにまた、私は地方政治の中に長くおりましたから、森全体を見るというよりも木のみを見るという、そんな感じがございますから、質問の内容も偏っておりましたらお許しをいただき、答弁はひとつ簡潔にお願いをしたいと思います。  初めに、臨教審の第二次答申の問題についてお伺いをいたします。  発足以来極めて精力的に検討が重ねられてまいりました臨教審も、昨年六月の第一次答申に引き続きまして、第二次答申が本年四月に提出をされました。それを受けて、教育改革推進の閣僚会議、あるいは文部省においてはそれぞれのプロジェクトチームにおいて取り組まれておるようでございますけれども、今回の答申は、特に徳育の充実、教育内容の改善など具体的な提言がなされ、教育改革の効果的な推進が期待をされております。  そこで文部大臣として、これらを受け、今後どのように取り組んでまいられるのか、その決意のほどをお伺いし、さらに六十二年度の文教政策の展開の中の具体的な重点施策についてお伺いをいたしたいと思います。
  10. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 まず、臨時教育審議会の答申をどのように受けとめるかという御質問でございますが、私は、臨時教育審議会の答申と文部省が従来からとってまいりました学校制度を中心とした教育体系の改革、これをうまくマッチして、より立派な改善案を作成いたしたいというのが念願でございます。  文部省は、百数年にわたりまして、学校制度を中心とした教育体系の整備に鋭意努力してまいりました。しかし、顧みますと、この改善案はやはり現場中心になっておったように思うのでございます。それなりの努力を積み重ねてまいりましたけれども、社会の進歩というものは、特に技術革新を中心として世の中の生活あるいはまた社会のあり方に相当激しい変化が起こってきておると思うのでございます。そういった場合に、急激に変化したこの社会から、つまり社会人が現在の教育制度に対して一体どういう見方をしておるかという御意見も十分に聞かなければならないと思うのでありまして、そういう立場に立って御意見をまとめていただいたのが臨教審だ、こう認識しております。  そこで、現場中心に改善をしてまいりました文部省と、それから社会人として見ていく臨教審の答申を合わせることによってよりよき改善案をつくりたい、こういう趣旨でございまして、私たちは臨教審が答申されます趣旨と議論の経過、内容というものを十分に尊重して対処していきたい、こういう考えでございます。
  11. 岡島正之

    岡島委員 いずれにいたしましても、臨教審の答申に従って、よりいい国民の期待される教育行政の展開というものが求められてまいりますので、さらに一層そういう面で御活躍を心から願ってやみません。  二番目に、スポーツ振興の問題についてお伺いをいたします。  先般、アジア大会が成功裏に終了されました。日本選手団の活躍についてはそれぞれ考え方がおありだろうと思いますけれども、過去のアジア大会に比較いたしまして、相対的に日本の選手団が不振であったという印象はぬぐえないだろうと私は思います。大会の後で、東京オリンピックで重量挙げの金メダルを取りました三宅義信選手がいみじくも言いました言葉が印象的であります。中国、韓国は国旗を背負って戦っている、東京オリンピックのとき、私たちは日本の日の丸を背負って戦ってきた、しかし、今回の選手はそれがなかった、こんなことを三宅義信選手が言われております。また、新聞論調の中に、日本の選手は負けたときにこにこしていたなどという批判がありました。  私は、国際大会は単に金メダル至上主義であればいいという考えではありませんけれども、少なくとも国民の素朴な感情としては、やはりそこに大きな期待があります。選手強化の面で知る範囲では、例えば韓国におきましては日本の五倍、中国では九倍だという。日本は体協が文部省補助金を入れても約五十億弱だという。強化費の面を考えましても、その辺に問題があるのかなと言われますけれども、日本のお家芸だと言われる種目におきましても、幾つか不本意な成績があったわけでございます。  大臣として、今回のアジア大会の結果についてどのようにお考えか、まずそれを一点お聞かせをいただき、さらに、二年後には同じソウルでオリンピック大会があるわけでございますけれども、これにつきましてはそれぞれ計画的な進め方がされておるだろうと思いますけれども、ソウル・オリンピックについての見通しあるいはまた期待、そういうものについて大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  12. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 岡島さんのおっしゃるように、確かに今度のソウルのアジア大会においては、金メダルに対しましては我々が期待するほどの効果はなかった、そう思います。しかし、スポーツ界におきましては、それぞれ懸命の努力をしてきたことは事実だと思うのです。それをさらに追い越して韓国あるいは中国等が錬磨をされまして優勝数を獲得していった、私はそう思うておるのです。日本が錬磨するよりもさらに向こうの方が強かったように思うのです。  それともう一つは、やはり競技種目がうんとふえまして、その増加した分に対応する日本の対応というものが多少手薄じゃなかったのかという感じがするのであります。  それと、もう一つ私が感じますのは、おっしゃるように日の丸をしょってという気持ち、これは今回もやはり希薄だったな。日の丸という表現は適当であるかどうかわかりませんが、とにかく代表選手であるという気迫、それは他の国と比べまして若干希薄であったような感じは、私はもう率直に認めざるを得ないと思うのであります。  ついては、私はこういうことを考えますが、スポーツでも技術がやはり相当進んできておると思うのです。そうすると、その技術の進歩、各種目ごとに技術の進歩にやはり日本のスポーツ界も対応した措置を検討しなければならぬのではないか。ただ根性だ、いや頑張れという精神の面だけではなくして、技術面でも相当あるのではないかという感じを持っておるのでありまして、こういう点につきましては、機会を早急につくって一度各スポーツ界の方々と忌憚なく話し合ってみたいと思うております。  それからもう一つは、選手の強化内容の中で、先ほど御質問にあった気持ち、根性の入れ方というもの、これをどう見ていくかということ、私はそういう点が大事だろうと思うております。ソウルにおきますオリンピック大会への準備、私はこのアジア大会の反省が一つのばねになって、二年後にはより一層すばらしい成績を上げてくれるだろうと期待しておるのでございますが、この二年後のソウルのオリンピック大会に対して体育界あるいはスポーツ界がどういうふうにしておるか、これも十分に意見を聞きまして、その実効が上がるように我々もお手伝いしていきたい、こう思うております。
  13. 岡島正之

    岡島委員 今いろいろとお話がございましたけれども、ソウル・アジア大会の反省の上に立って、オリンピック対策についてひとつさらに格段の御配慮を願いたいと思います。技術的な面というお話がございましたけれども、先般新聞で拝見しましたら、競技人口の拡大の問題を含めて、国立総合体育研修センターの設置構想などがあるようでございますから、そういうものを通してさらに科学的な、また技術的な面の体育振興に向かって邁進をされますことを御要望申し上げます。  次に、教育現場の問題について幾つか具体的なことをお話し申し上げますけれども、小学校中学校、大学を出て、子供たちが社会人となってまいります。社会人になった子供たちに対して、学校生活の中で何が一番心に残っているのかなということを端的に聞きますと、大体子供たちの多くが共通して言っておりますのが、学校の先生と学校時代にもっと人間的なつながりが欲しかったということを言われます。私もそういうことをよく聞きますけれども、要は、先生ともっと人間的なつながりが欲しかったと言いますから、その考えをただしてまいりますと、一番大事なのは、やはり学校の先生の温かい豊かな人間性というものが教育の現場で一番必要だということだろうと思います。  いじめの問題、非行の問題あるいはまた落ちこぼれの問題、いろいろ発生したものがありますけれども、私は、それらに関係しているだろうと思います。また同時に、子供たちと先生との人間的な信頼、これが教育の一番もとだろう、こう思っております。教育というのは人間の創造でありますから、その意味におきましては、教師の専門的な知識だとかあるいはまた実践的な指導力、このことも必要でありますけれども、やはり教育に向かう先生の持つ情熱、そしてまた大きな使命感、これが私は教育の一番大事なところだろう、こう思いますが、まず大臣はどのようにお考えか、お聞かせを願いたいと思います。
  14. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 私は、教育問題の根本はやはり先生だと思うておりまして、その点におきましては、岡島さんのおっしゃるのと全く同様でございます。確かに親しみが最近なくなったというのは、私ら現に家庭を持っておって過去子供を育ててまいりましたときなんかでも、それは実感として感じます。私らの小学校中学校当時の先生と今の関係は、若干違うように思います。しかし、これはやはり社会生活あるいは社会状況、こういうものが変わってきておるに伴っての変化だろうと思うのでございますが、しかし、これから学校行事だとか授業を通じてのそういう温かい交流というものをどうしてやっていくかということ、これは先生なんかの御研究も必要でありましょうけれども、そういう親しみやすいような時間をつくってやるということも私は大事だろうと思い、そういうことについて今後も努力を重ねたいと思う次第であります。
  15. 岡島正之

    岡島委員 先般、臨教審の第二次答申の後、また大臣が御就任なされましてからいろいろとお考えを発表されておりますけれども、そういう中で研修の問題がございます。私は、今学校の先生が情熱と使命感を持ってやっていくということが大事だということを言いましたが、同時に、それに向かってのたゆまざる研修というものが教育現場に働く先生には必要だろうと思いますし、そのための施策をより大切にしていかなければいけないと思いますけれども、大臣がいろいろと機会をとらえて御発言になっております初任者研修の問題について、あるいはまた六十二年度に試行ということのお話がございますけれども、それらの内容について、お考えの基本的なものをひとつお聞かせをいただきたい、こう思います。
  16. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 基本的に考えておりますのは、今六カ月間の現場中心の研修をやっておりますけれども、私は、やはりよき指導者を得て、一年ぐらいみっちりと先生への心構え、それから教える技術というもの、これを修得してもらいたいと思うておるのでありまして、先生の資質の向上の中で一番大事なのはそれだろう。  先生になる人は、私は非常に優秀な人がなっていると思うておりますし、現にそうなんであります。ところが、学校を卒業をしてすぐにぽっと職場、つまり教室に立つということと、それからみっちりとよき指導者について研修を受けてから立つということとは相当違う。そこで、何としても優秀な人材を、研修期間の一年の間に教師としての自意識を高めるとともに、教えるテクニックもやはり大事だと思います。私なんかでもよく聞きますが、あの先生に教えてもらうのはわかりやすい、教え方上手だという先生と、非常にすばらしい頭を持って、非常にいい学問的な素質を持っておられるんだけれども、教えるのはどうももう一つ上手ではないという先生があると思うのです。こういうのを一年の間に修得していただいて、平準化していくということをいたしたい。具体的な今後のスケジュール、内容等につきましては、加戸局長から説明いたします。
  17. 加戸守行

    ○加戸政府委員 初任者研修制度につきましては、本年四月の臨時教育審議会の第二次答申の中で取り上げられまして、新規採用教員を一年間にわたりまして指導教官等によります研修を実施するという提言がございまして、それを受けまして、私どもとしましては、六十四年度に初任者研修制度を導入することを前提といたしまして、当面六十二年度、六十三年度の二年間におきまして初任者研修の試行という形で研究を行い、本格実施への円滑な移行を図りたいという考え方で、現在六十二年度予算で概算要求を行っているところでございます。  具体的には、新採教員が学校現場におきまして、授業を持ちながらいわゆるベテラン先輩教員によりますマン・ツー・マン方式による指導を受け、かつ集団研修等にも参加するという形で密着し、その中におきまして実践的な指導力あるいは使命感を養っていただく、あるいは幅広い知見を得ていただくというようなことを考えまして、現在要求しております具体的な内容としましては、五十七都道府県、指定都市のうち三十都道府県、指定都市につきまして、二千百九十人の新採教員を対象といたします具体的な指導教官の配置であるとか、あるいは研修実施体制のために必要な措置予算を要求している段階でございます。
  18. 岡島正之

    岡島委員 いずれにいたしましても、学校の先生のそういう情熱そのものによって動かされる人間教育が生まれてくるわけでございますから、期待される教師像をしっかりつくり上げ、そしてそれに向かってさらに文部省当局におきましても研修その他に努めて御精進いただきますことをお願いを申し上げます。  学校にいい先生が余計おられ、また一生懸命やっておられましても、学校経営というのは、やはり私は次には校長、管理職、この存在が極めて大切だろうと実は強く考えております。そういう中で、校長の持っております指導力あるいは責任感、そういうものの中に生き生きとした教育現場が生まれ、そしてまた堅実な学校経営というものがつくられてくるわけでございます。校内暴力の問題もやや鎮静化したという状態ではございますけれども、さらにこれからの校長の指導体制あるいは責任体制の確立というものが強く求められていくだろうと私は思います。  そこでお伺いをいたしますのは、文部省といたしましてもあるいはまた各都道府県におきましても、それぞれ中央研修あるいはまた都道府県の校長研修、管理者研修、そういうものが行われておるわけでございますけれども、前段に申し上げました学校の先生の研修もそうでございますけれども、管理者としての校長を対象にした研修機関といいますか研修制度といいますか、そういうものがより必要だろうと思いますが、まずこの点についてお伺いをいたします。
  19. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 管理職の研修はもう絶えずやっていかなければなりませんし、非常に大事なことでございますが、特に校長等の選任ということ、この人事、これが私は非常に大事だろうと思うのでございまして、校長の努力によってといいましょうか、校長の情熱によって学校はすっかり変わってしまう。  私は、つい最近、忠生中学というのを見学に行きましたが、この荒れすさんだ中学校をあんなにすばらしい学校にぱっと変えてしまったというのは、これは先生、そして地域の方々、PTAの努力もございますけれども、やはり校長の燃えるような情熱だったと私は思うのであります。それと、やはり方針が的確であったと思います。でございますから、研修とあわせて各教育委員会等において校長の人選ということ、これを本当に深刻にひとつ考えていただかなければならぬ問題だろう、こう思うております。
  20. 岡島正之

    岡島委員 今大臣のお話の中に、校長の人選、人事の問題、いろいろお話がございました。私も長い間千葉県の県議会で教育問題に取り組んでまいりましたけれども、いろいろな問題が発生しますと、議会等で呼んで現場の校長先生にいろいろとお話を伺いますが、中には全く被害者意識が先行している方もいらっしゃいます。何としても学校経営というのは校長だなという印象を今でも強く持っておりますが、大臣のそういうお考えに従って特に私がお願いしたいのは、やはり各都道府県の校長人事の中に考えとしてつくり上げていただきたいのは、やはり有為な人材を発掘していく、そしてそういう人たちによって責任感と使命感を持った校長の選任というものをつくり上げていただきたいという、こんなことをまず特に強くお願いをしておきます。  特にまた、校長の管理職手当の問題もいろいろと話題になっておりますけれども、現行一二%から一四%の範囲、一般のほかの管理職は二〇%だというその辺の差異もいろいろあるようですから、これらにつきましてもさらに検討をしていただきますことをお願いを申し上げます。  それから、次にお伺いをしたいのは教育の条件整備の問題でございますけれども、特に今回のこの決算委員会の内容の中で、五十八年度決算において会計検査院の報告を先般お聞かせをいただいたわけでございますけれども、特にその中で、文部省関係として、義務教育費の国庫負担金経理についてということで不当事項指摘がございます。義務教育に要する経費のうち都道府県の負担する教職員給与について国で二分の一を負担することになっているものでありますけれども、その基準日が五月一日現在の生徒数でありますけれども、実際にはその実数に上積みをし、出席簿などの改ざんにより過大な報告をし、国庫負担の過大交付がなされているという指摘であります。さらに、五十九年度決算におきましても同じ事態が厳しく指摘をされております。五十八年度は十億六千八百一万円、五十九年度が八億二千八百余万円とされております。特にこの中で、両年にわたって三県が同じ行為で指摘をされております。  少なくとも、このことはやはり一つの不祥事だろうというふうに私は考えておりますけれども、この実態等につきましてどのように文部省は認識をされておられるのか、助成局長さんの指導通達等も拝見させていただきましたけれども、今後どのように具体的な指導をされていくのか、これについてまずお伺いをいたします。
  21. 加戸守行

    ○加戸政府委員 先生今御指摘ございましたような昭和五十九年度並びに六十年度会計検査院検査におきまして、いわゆる水増し問題の指摘がございました点につきましては、大変申しわけなく存じておる次第でございます。  このような指摘を受けまして、私どもといたしましては、各都道府県に対しましていわゆる各県の自主的な検査も行っていただくと同時に、今後の問題につきましては文書あるいは主管課長会議等を通じまして、児童生徒数の正確な数の把握ということに努力していただくとともに、このよって起こります問題の原因は、いわゆる児童生徒数の変動によりまして学級数が増減する、特に減少するという事態に対応して、そういうものを恐れた観点から行われた面がございます。したがいまして、いわゆる五月一日現在の児童生徒数と四月以前に見込みました数との差というものによって生じますような学級増減に対しましては、学級編制の認可あるいは教員の配置等につきまして、都道府県教育委員会において市町村と相談をしながら弾力的な対応をしていただきたいという形での指導を申し上げている段階でございます。  事柄は、まことに児童生徒数の実際に存在しない数を報告するということに基本があるわけでございますので、これの絶滅を期するということが大切でございますし、指摘を受けました時点以降の結果が出てまいりますのはまだ二、三年先の検査によるわけでございますので、現在のところ、私どもとしましては、指導後におきますようなこういう状況というのは全く起こらないということを各都道府県に強くお願いしている段階でもございますし、また今申し上げましたような弾力的な運用ということで、各現場の実情に応じた学級編制なり教職員の配置というものが行われるように、なお強く指導してまいりたいと思っております。
  22. 岡島正之

    岡島委員 学級編制の基準日が四月一日がいいのかあるいはまた五月一日かという問題がございますけれども、いずれにいたしましても、年度途中の生徒数の減少の問題によってこれらの問題が発生していると私どもは伺っておりますから、そういう中で考えますときに、年度の当初の認可数は生徒数の減少によって年度内に変更しないといいますか、そういう指導というものが各都道府県を通して徹底していけば、ある意味におきましてはこれらの問題は改善でき得る、そんな感じが私はしておりますから、特に都道府県の教育委員会を通しましてこれらの問題の徹底方をひとつお願い申し上げます。  同時に、これらの問題は、やはり何としても四十人学級という問題にぶつかっていくわけでございますけれども、五十五年スタートしました第五次改善計画に従って六十六年完全実施ということが既に文部省の見解として、また方向として打ち出されておりますけれども、これらにつきましての一つの見通しといいますかお考えを、簡単で結構でございますからお聞かせいただきたいと思います。
  23. 加戸守行

    ○加戸政府委員 先生御承知のように、昭和五十五年度から六十六年度にかけます十二ヵ年の教職員定数改善計画の進行中の段階でございまして、途中の国家財政状況等にもよりまして抑制措置が講ぜられたわけでもございますが、当初の目標の約八万人弱の教職員定数増ということとあわせまして、四十人学級の実現ということに向かいましては、今後の児童生徒数の大幅な減少に伴います教職員定数の減がございますので、その教職員定数減の範囲内におきましてこの十二ヵ年計画、改善計画を達成することが可能でございますので、各年度の状況等を踏まえながら、この完全実施に向かって最大の努力を傾けたいと考えております。
  24. 岡島正之

    岡島委員 計画どおりというお話でございますから、そういう方向に向かってひとつしっかり進んでいただきたい。教育の環境整備といいますか、そういうものが一番大事だし、同時に、教育内容の質的な向上という両面をあわせていい教育をつくっていく、そういう方向に、特に義務教育でございますから歩んでいただきたいことをお願い申し上げます。  続いて、義務教育じゃありませんけれども、高校教育の問題について、一、二お伺いをいたします。  もう既に九四%の進学率になっておりますから、高校教育は義務教育である、そういう見方すらも生まれておるわけでございます。各都道府県におきましては、特に教育行政の中において、高校問題というのは多くの課題を抱えております。特に人口密集地帯の首都圏の周辺地域、私どもの千葉県もそうでございますけれども、特に高校の新しい学校の新設あるいはまた既設校の整備、こういうことで大きな財政負担となっておりますのは事実でございますけれども、何としても九四%になってきた高校教育でございますから、そのための万全の体制をなし得なければならない、そういう見解でございます。  ただ、その高校教育の中で案外目立たないといいますか、そうみんなが目を向けなかった問題で、実は高校の中退の問題あるいは留年の問題、こういう問題を実は私どもは強く感じておるわけでございます。私は、実は千葉県の教育問題研究会の会長を議会の中で長くやっておりましたが、そのときに、たまたま千葉県は五十九年度で二千人の中退者がいたという、毎年毎年高校を二校、三校、四校とつくっていく中で、一校分以上の二千名の中退者がいたという実態を見て実は驚いたわけでございますけれども、国会へ出てまいりましていろいろ勉強さしていただきましたら、国全体の中でいきましても、五十八年度では中退者が公立、私立を合わせて十一万一千五百人おられる、こういう実態でございます。このことについて、文部省の当局としてはまずどのように認識をされておられるのか。  同時に、この中退の内容を見てまいりますと、七〇%以上が、進路の変更、あるいはまた学業の不振、さらにはまた学校が不適応だ、こういうことが主でございまして、例えば病気だとか家庭の事情だとかいうことではないというところに一つの問題があり、さらにもう一つは、一年生の特に一学期が終わったところで多いという、早期中退が多いという、この辺が実は私は一つのこの問題の難しいところだろう、こんなふうに考えておりますけれども、これはやはり高校教育全体の中では極めて深刻な問題だろうと私は思います。これについてのお考えをまずひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  25. 西崎清久

    ○西崎政府委員 先生御指摘のとおり、高等学校教育における学校適応の問題として、中退者の数の問題が大きな課題になっておるわけでございます。  数字につきましては先生御指摘のとおり。新しい数字で申し上げますと、五十九年度で十万九千人、五十八年度で十一万一千人、約十万人ぐらいの中退者があるということは事実でございます。  この理由でございますが、私どもの調査によりますと、一番多いのが学業不適応、これが一番多うございます。約二六%でございます。それから進路変更が二四%。三番目まで申し上げますと、学業不振が約一四%でございます。  これらの理由につきましての詳細の調査というものは、従来行われていなかったわけでございますが、その理由としましては、学籍を離れるものでございますから、学校を通じての調査というのがなかなか難しい。しかし、私どもとしては、やはり高等学校教育の大きな問題としてこの点については追跡調査をしようということで、本年度から、全体の数を全部とらえて調査をするわけにはまいりませんので、約二千名につきまして書面調査をしたい。そのうちの百人ぐらいにつきましては面接調査をしまして、中退の理由であるとか中退後の進路の状況であるとか、そういうふうなものをよく調べました上で、高等学校教育における学業適応の問題あるいは進路指導の問題について十分今後の生徒指導面で生かしていきたい、こんなふうな考えでおるわけでございます。しばらく時間をいただきまして、調査結果をまとめてこれからの対応をしていきたい、こんな考えでおる次第でございます。
  26. 岡島正之

    岡島委員 今お話ございましたが、中退の問題、留年の問題、このことは一面隠れた事実のような感じがしますけれども、さらにひとつ、今お話がございました追跡調査を含めて、対策を御検討願いたいと思います。  そこで、それに関連してお伺いいたしますのは、中学の進路指導の中で、きのう教育課程審議会の答申も文部大臣に出されておったようでございますけれども、個性を生かすという教育、そんなことが新聞の見出しにもけさ出ておりましたけれども、そういう中で関連して考えますときに、私は、中学の進路指導の中において、単に高校の合格率だけではなくて、やはり個性だとか能力だとか、そういうものの中から進学指導というものはしていくべきではないか、こう思います。  そこで、私は職業高校の見直しというものをかねてから強くみずからの考えとして言ってまいりましたけれども、今全生徒の二六・五%、百四十万人の生徒が職業高校に行かれております。ところが、この職業高校の実態、これはいろいろ差異はあると思いますけれども、例えば私どもの知る範囲では、農業高校に行ってまだ今くわを使っているという、簡単に言いますとそういう実態しか、教育の指導しかありませんよ。そんなことも言われますし、また中学の進路指導の中で、普通高校から職業高校の序列があるという一そんな感じが私はしております。例えば普通高校のA、B、Cと来る、次にはやはり工業へ行け、その下は商業へ行けよ、一番悪いのは農業高校へ行けよという、実はそんな進路指導が残念ながら現場の中にはありますけれども、そうではなくて、やはりそれぞれの個性、能力というものを見ながら、職業高校をもっと見直して、職業高校は大切だという、そういう高校教育全体の考えをしっかり打ち出していくべきだろう、私はこう思います。  特に今の先端技術の発展しております時代でございますから、そういうものの専門の高校、あるいはまたサービス経済化の中で時代対応ができるような職業高校、そういうものを考え、そして魅力のある職業高校、こういうものをしっかり打ち出していく時期に来ているのではないかなという、そんな感じが私はしておりますけれども、職業高校の見直し等についてひとつ御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  27. 西崎清久

    ○西崎政府委員 先生御指摘のとおり、産業構造の変化は著しいものがございます。職業教育における高等学校のあり方というものにつきましては、これから大いに改善充実を図ってまいらなければならない、御指摘のとおりでございます。数字といたしましては、先生御指摘のように百四十万人の職業高校の生徒がございます。この農業、工業、水産というふうな職業教育における高等学校の教育のあり方というものにつきましては、理科教育及び産業教育審議会の答申が最近出ておりまして、職業教育の学科の再編とか職業教育の教科内容のあり方等についての今後のとるべき方策についての答申が出ておるわけでございます。  一、二、申し上げますと、学科の改善充実ということで、新しい学科でございますが、電子機械科であるとか農業経済科あるいは国際経済科というふうな時代にマッチした新しい学科をつくる必要がある、これが第一点でございます。  それから第二点としましては、やはり教育課程の中身につきまして多様化を図っていく。日進月歩でございますが、従来どおりの教育課程では間に合わない、こういうふうな意味で多様化、充実を図っていく、これが第二点でございます。  それから、やはり職業教育でございますから、新しい設備、機器の充実が必要である、これが第三点でございます。  これらにつきましてのそれぞれの学科の改善充実あるいは再編ということにつきまして、私ども各都道府県と相談しながら今後も相努めてまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  28. 岡島正之

    岡島委員 いずれにいたしましても、職業高校をもっともっと重要視していく、同時にまた、今言われましたような内容について充実をさせていくということが大切だろうと私は思います。過去にも何回かいろいろな通達なり審議会の答申等が出されておるわけでございますけれども、ひとつ具体的な施策の展開というものを強くお願いをいたします。  それから次に、最後でございますけれども、教育の国際化対策の問題について一、二、お伺いをいたします。  国際社会の中において日本の立場上果たすべき責任がいろいろな面で強調されておりますけれども、私は、文教政策の面におきましても、まさに地球社会の日本として果たしていかなければならない一つの政策の展開というものがあるだろう、こう考えております。  そこでまず第一に、語学指導のための外国青年招致事業というものについてお伺いをいたします。  十月八日に文部省の通達が出されております。計画では、従来の二百人、アメリカ、イギリスが中心でありましたのをさらに八百人にして、オーストラリア、ニュージーランドを加えてやっていこうという計画のようで、今度は文部、外務、自治、三省それぞれの合同の事業としてというお考えでございますが、まず、これについての考え方を、簡単で結構でございますから、お聞かせをいただきたい。  それからもう一つは、続いてお伺いいたしますけれども、日米の貿易摩擦のために四月に日米の国会議員で日米貿易拡大委員会が結成をされ、私どもの自民党の林義郎先生が委員長としてこの問題を取り扱っておられますけれども、その中でアメリカの大学分校の日本誘致が提唱されております。先般予算委員会で、大臣何か御答弁なされたということを伺っておりますけれども、国内の学校教育法あるいはまた私立学校法律等いろいろあるわけでございますから、これらの制約もあろうと思いますけれども、これらの問題について具体的なお考えがあるのかどうか、この辺、ひとつこの機会にお伺いしておきたいと思います。
  29. 西崎清久

    ○西崎政府委員 前段の方の外国人教師の招致のことにつきまして、私の方から簡単に御説明申し上げますと、従来文部省といたしましては、アメリカから予算上は七十人、それからイギリスから予算上は四十人、それぞれ実績としてはもっと多いわけでございますが、そういう招致を行ってきております。しかし、全体の予算上の制約もございますし、これをもっともっと広げたいということで、自治省、外務省と年来御相談をしてまいりまして、今後は地方交付税措置によってそれらについての給与費等を賄うということで、選考につきましては外務省、そしてそれぞれの配置その他につきましては文部省、全体の立案とか財政措置につきましては自治省、こういうことで三省共同の次官通達を御指摘のとおり出したわけでございます。  今後の計画数といたしましては、都道府県あるいは市町村の単独事業という姿でこれをとらえておりますので、それぞれの自治体の計画数を総合いたしまして、できるだけこの範囲を広げていきたいというふうな考え方でございますが、現在のところ、各都道府県等を通じての調査では、七百人余の招致が希望として上がってくる、こんなふうな段階でございますので、私どもとしては鋭意努力をして全体の枠を広げてまいりたい、こんなふうな考えでございます。
  30. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 日米経済摩擦解消の一環として、アメリカの大学の日本分校誘致ということでございますが、御承知のように、日本は大学教育におきましては私立大学のウエートというものが非常に高いのでございまして、これは世界にも珍しい例でございます。この私立大学を充実するということがやはり我が国としては一番大事なことだろう。ただし、世界各国のいろいろな大学との交流ということは十分やっていかなければなりません。  そこで、分校問題については、もうしばらく民間ベースで話し合ってもらったらどうだろう。その上でいろいろ御相談があるようでありましたら、我々も相談はお聞きいたしますが、まだ文部省として直接この分校問題を議題にして対米交渉に入るとか、そういうことは全く考えておらないというところでございます。
  31. 岡島正之

    岡島委員 今お話ございました私立大学の振興、これはもちろん私も大事だと思いますから、ひとつさらに大きくしていただきたいと思いますが、国際化社会の中の文教政策として、また特に委員会等の中の資料では各自治体の希望のリストが上がっておるというようなこともございますから、これもあわせてひとつ検討をしていただきたい、このように思います。  時間も参りましたので質問の方は終わりますけれども、いずれにいたしましても、追いつかなければならない時代、そしてまた、前のランナーの背中を見ながら走ってきた時代、それが日本の近代百年と言われた時代の今日までの姿であったろうと思います。しかし、これからは新しい二十一世紀に向かってみずから切り開いていかなければならない。そして同時に、誤りなき日本の進路をつくり上げていかなければならない。だとするならば、その根幹にあるのは、私は民族の繁栄というものは教育の振興、教育の発展だろうと強く考えております。ひとつ文部大臣を初め文部当局の皆さん方の層一層のこれからの御精進を心から期待をいたしまして、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  32. 堀之内久男

  33. 高橋一郎

    高橋(一)委員 私は、まず委員長を初め委員の方々に、発言の機会をお与えいただきました御好意を感謝申し上げます。  私は、きょう、大都市における教育機能についてと題して御質問を申し上げたいと存じます。  最近、中曽根総理が、第四次全国総合開発計画、いわゆる四全総草案に対して、大都市政策を政治の中心に据えなければならないと発言された由を報道で伺っております。総理のこのような認識はまことに当を得たものであり、ぜひその方向で政治のかじ取りをしていただきたいと思っております。  さて、大都市を東京に例を引いてみますと、まず政治、そして経済、産業、金融、外交、さらに教育、文化、芸術、マスコミ、医療等、言うまでもないことですが、あらゆる機能が高度に集中しております。本委員会の本日の主題であります文教問題に限っても、東京には大学百五校、短期大学八十二校、高等専門学校四校、高等学校四百六十五校、専修学校四百校、各種学校三百三校があり、これは昭和六十年五月一日現在国公私立の総数でありますが、これをまた大学を例にとってみますと、我が国全大学の二三%、学生数五十七万余人はまさに全学生の三割に達しております。東京には高度かつ専門的な教育機会を求めて、近県はもとより広く全国、さらには諸外国からも学生が集まってきているわけであります。また、大都市は、戦後の急激な産業や人口の集中、中学卒業者のほとんどが高等学校へ進学する等義務教育及び高等学校就学者の急増に対応するため大変な努力を払い、膨大な財政負担をしてきたところであります。  今我が国においては、御承知のとおり、高度情報化、国際化、そして技術革新などが急速な進展を示しているわけであります。我が国が当面しているこのような経済、産業、社会などの大きな変革に的確に対応するためには、心と体の健康はもちろんでありますが、高度の知力を備えた多くの人材を速やかに、そして着実に養成する必要があることは言うまでもありません。大都市が持つ教育機能は、この意味でも我が国の発展に欠くべからざるものであるだけでなく、むしろ大都市が持つ特有の機能であると思います。言いかえますと、いわゆる民活を含めて、あすの日本のために大都市が今何をなし得るか、また何をなすべきかが改めて厳しく問い直されていると言ってもよいと思います。  さて、このように大都市が果たしている我が国における教育上の大きな役割あるいは機能について、所管大臣であられる文部大臣はどのような御認識をお持ちですか、お尋ねいたしたいと思います。また、いかなる政策上の御配慮をなされてこられたか、基本的なお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  34. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 私も大都市出身の議員の一人でございますので、都市議員としてもこの問題には重大な関心を持っております。  総理が大都市中心の整備計画を急ぐべきであるとおっしゃった。それは、やはり国際化に向けての一つの要件であったろうと私は思うのでございますが、一方におきまして、政府並びにその政府を構成しております自由民主党においては、均衡ある国土の発展ということも同時の課題になってきております。でございますから、絶えず大都市の機能の充実を図ると同時に、また全国的な均衡ある発展というものを考えていかなければならぬと思うのであります。  しかし一方、教育の面について申しますと、先ほど高橋さんのお話のように大都市、特に東京に集中してきておる。それはやはり学生を抱えるだけのエネルギーが大都市にあるということと同時に、学生であり同時に若人は、社会の多様なニーズに対応するのが都会にあって地方にはその機会が少ないというところから、都会に自分の欲望を満たしていく、あるいは勉学の欲望でございますか満たしていく、こういうことで東京に集中してくるであろう、こう思うのであります。といって、東京を中心にいたしまして教育行政を全面的に集約していくという方向にあるとするならば、教育行政に対する負担が非常に大きくなってくるし、財政上の負担も私は大変だろうと思うております。したがって、やはり個性ある学校というものを地方に植えつけていって、そして地方と都会との交流を通じて教育について万全を期していった方がいいと私は思うのであります。  最近の例でございますが、田舎の大学等におきましてはなかなか多様な分野の学問の集約というのがやりにくい、しかし、今高度に発達しました情報機能というものを使いますならば、都会におっても田舎におっても同じようないわば教育的環境をつくろうと思ったらつくれるではないか、こう思うのであります。ですから、都会におきます学校のあり方というものは情報の根源としてそういう学校の育成をする、地方にあってはそれを享受して個性のある学校を地方において開発していく、そういうことで進むべきではなかろうか、私はこう思う次第であります。
  35. 高橋一郎

    高橋(一)委員 大都市の教育の機能の問題、今大臣からお話をいただきましたが、大変重要な課題だと思いますので、今後も当局において御研さんいただきたいと思います。  次に、義務教育費国庫負担金制度についてお伺いいたします。  今、決算委員会審査の対象になっております昭和五十八、五十九会計年度において、大都市、特に東京に対する負担支出の状況を、義務教育費国庫負担法の原則に沿って、すなわち地方交付税を受けている県並みに算定した場合の推定措置額は幾らになるのか、実際に措置した額は幾らだろうか、その差は幾らになるのか、それぞれについて算出基礎とともにあわせてお答えを願いたいと思います。
  36. 加戸守行

    ○加戸政府委員 義務教育学校教職員の給与費国庫負担につきましては、原則として実支出額の二分の一を負担する建前になっておりますけれども、地方交付税不交付団体につきましては、特別の事情があるものとしてその負担額の最高限度を政令で定めるようになっております。  それで、一般県と不交付団体との差は、まず給料でございまして、いわゆる不交付団体につきましては、国家公務員、国立学校教員の給与をベースといたしまして、それを定額のような形で算出いたしました。各都道府県、例えば東京都あるいは大阪府のようなそれぞれの不交付団体におきます学歴別あるいは勤務年数別に算定いたしました計数を国家公務員に当てはめまして計算いたしました額を定額といたしまして、その二分の一を負担する建前になっております。  それから、諸手当でございますが、通勤手当あるいはその他住居手当等につきましては、国立学校教員の例に準じて算定いたしました額の二分の一を負担いたしております。  それから、退職手当につきましては、制度的には本来教員の今申し上げました定額単価でございますが、年間の給与単価に千分の八十四、昭和六十一年度におきましては千分の五十でございますが、それで算定しました額の二分の一を負担するというようなシステムをとっております。  その結果、東京につきましては、昭和五十八年度の一般県並みに算定いたしたとしますれば、対象額が千八百二十億円でございますけれども、現実の補助負担対象額は千六百六十三億でございまして、その差が百五十七億円でございます。それから、昭和五十九年度につきましては、一般県並みに算定いたしました場合の仮定額が千八百三十八億円でございまして、それに対します負担額が千六百八十八億円でございまして、その差百五十億円でございます。  なお、大阪府につきましては、昭和五十八年度、五十九年度は交付団体でございましたので、このような数値といいますか差がございません。実額どおりの負担をいたしております。
  37. 高橋一郎

    高橋(一)委員 五十八、五十九年度の実態はわかりましたが、それでは、同じく東京都に対する負担金の支出額は、六十年度、六十一年度にはどうなっているのか、算出基礎をあわせてお示しいただきたいと思います。
  38. 加戸守行

    ○加戸政府委員 六十年度につきましては現在決算処理中でございまして、六十年度、東京都に対しまして支出いたしました額が現在千七百八十六億円でございます。ただ、決算処理中でございますので、もし交付団体であったとすればという仮定の作業はまだできておりません。したがって、今申し上げました百五十七億円あるいは百五十億円といった五十八年度、五十九年度のような差額の数値はまだ出ておらないわけでございます。  それから、六十一年度につきましては、現在いわゆる予算執行中でございまして、六十一年度に幾らが支出されるのかという推計ができる段階に現在至っておりません。
  39. 高橋一郎

    高橋(一)委員 東京都のみならず、大阪府、愛知県あるいは神奈川県等も不交付団体になっておりますが、とりあえず大阪府について同様な点をお聞きいたしたいと思います。
  40. 加戸守行

    ○加戸政府委員 大阪府につきましては、昭和六十年度から不交付団体になったわけでございまして、六十年度義務教育費国庫負担につきましては、システムは先ほどの東京の場合と同じように、いわゆる定額制によります給与あるいは退職手当の算出等の差は東京都と同様でございまして、六十年度執行いたしまして大阪府に支出いたしました経費が千四百九十八億円でございます。  なお、交付団体であった場合の数値につきましては、東京都の場合と同様に、まだ決算処理中でございますので数字は出ておりません。
  41. 高橋一郎

    高橋(一)委員 この制度が発足して以来、例えば公立中学校における学校栄養職員を国が負担する対象をふやしたり、教職員退職手当負担率を引き上げるなど改善充実が図られておりますが、これはどういう理由から行われたのか、お示しいただきたいと思います。  また一方、六十年度に旅費、教材費の一般財源化や、六十一年度には恩給、共済費の追加費用の負担率の引き下げ等を行っていると聞いていますが、その理由についてお聞かせ願いたいと思います。
  42. 加戸守行

    ○加戸政府委員 義務教育費国庫負担法の精神といたしましては、各都道府県におきましてひとしくその義務教育の規模、内容を維持する、あるいは義務教育の水準の維持向上を図るという観点で出たものでございまして、基本となりますのが教職員の給与負担でございます。  そもそもの制度発足時点から見ますれば、歴史的に、当時の地方財政事情等によりまして、例えば旅費であるとか恩給費であるとか共済費であるとか、あるいは職員につきましても学校栄養職員、事務職員という種類の増大が行われてまいったわけでございます。これはその年の地方財政状況もございますし、あるいは考え方として義務教育の根幹をなす教職員であるという判断をいたしまして事務職員が導入され、あるいは学校栄養職員の給与負担が導入されたという経緯があるわけでございまして、歴史的な中に、義務教育負担金の制度は、その対象となる職員の種類あるいは対象とする経費というのが年度的に増大をしてまいったという過去の経緯があるわけでございます。それで、もちろんすべての経費あるいはすべての職員の種類ということまで及んでいるわけではございませんけれども、義務教育を支える中核となる事柄がおおむねカバーされてきたわけでございます。  ところが、先生今御指摘ございましたように、昭和六十年度におきまして旅費及び教材費を国庫負担の対象から外したわけでございますが、これは導入された当時の地方財政状況と今日とが違ってまいった、あるいは国の財政事情もきつくなってきた、それから地方公共団体においても、これらの旅費、教材費というものの支出の実態がほぼ固まってきているというような状況を踏まえまして、財政当局とも相談いたしながら、これを国庫負担の対象から外すこととさせていただいたわけでございます。  それから、六十一年度におきましては、恩給費並びに共済の追加費用につきましての経費を、国庫負担の二分の一の補助率を、六十一年度から六十三年度までの三カ年の特例措置といたしまして、負担率を三分の一に変更させていただいたわけでございます。これも当時の財政状況等、あるいは地方の財政状況等によりまして導入されたものでございますけれども、やはり同じく財政当局と相談をさせていただいて、このような特例措置を講じたわけでございます。  いずれの場合におきましても、いわゆる地方公共団体の財政を考慮いたしまして、交付税の面でそれに見合う財源措置をしていただいて、執行上遺漏のないようにさせていただいているということでございます。
  43. 高橋一郎

    高橋(一)委員 私は、義務教育費国庫負担金については、義務教育の全国的水準の維持向上を図る最も基本的な制度の一つであると理解しているわけです。地方交付税の不交付団体であるという理由だけで負担金に差等を設け、また、年度によって算出基礎や負担率などにまちまちな変更を行わなければならない理由は何であるのか、伺いたいと思います。
  44. 加戸守行

    ○加戸政府委員 現在の義務教育費国庫負担法が制定されましたのが昭和二十七年でございまして、二十八年度からこの制度が続いておるわけでございますが、それ以前の昭和二十五年から二十七年にかけましては、地方財政平衡交付金制度というものによりまして、各自治体においてその平衡交付金の中で財源的に対応していただいたわけでございまして、この義務教育費国庫負担法の制定に伴いまして、一般の県につきましては、その二分の一を国庫負担といたすことに伴いまして、地方交付税のうちの二分の一が移しかえられた。つまり、財源的には平衡交付金で賄われていた分の半分を国に財源的に移しかえたという措置をとったわけでございます。  一方、平衡交付金の不交付団体につきましては、新たな財源措置として国がその二分の一を負担する仕組みがとられたわけでございまして、その意味におきましては、いわゆるある程度地方財政上裕福なという言葉は語弊がございますけれども、余裕のある、余力のある不交付団体につきましては、義務教育の妥当な規模、内容を確保する観点からも、一般県と同様に全額の二分の一を全く負担するということではなくて、国庫負担についてのある程度の抑制をするという考え方が昭和二十八年以来とられていたわけでございます。特に退職手当等につきましてもそういった措置があるわけでございますが、これは二十八年以来続いておりまして、不交付団体については、ある程度の余裕がある、そういう観点で、一般県に対比しましては若干の抑制措置が沿革的にとられてきている。それも、もとはといえば、この制度発足のときの国が新たに財源の追加措置をとったということに起因しているのではないかと考えております。
  45. 高橋一郎

    高橋(一)委員 今、局長がいみじくも富裕団体とおっしゃった。私はそれに対してはちょっと意見がある。財源調整は地方交付税が不交付であることを理由にしているというのですけれども、そもそも、地方交付税算定上の財源超過団体であることをもって、即それを富裕団体とみなすことは適切とはいえないと思うのです。なぜなら、地方交付税の総額は国税三税の三二%と総枠が限られている。そして財源超過額は、この限られた地方交付税総額を配分する過程で生じたあくまでも計算上の数字なんです。御承知だと思うのです。さらに、基準財政需要額の算定も、例えば都のように巨大都市の財政需要を的確に反映するような仕組みにはなっていないのです。まして大都市は、大臣の地元の大阪もそうですけれども、二十一世紀に向けて下水道の拡充とか公園の整備とか、あらゆる都市基盤の整備を積極的に推進していかなければならないのです。これら膨大な財政需要を抱える大都市に対して、地方交付税上の不交付団体であることをもって富裕団体とみなすということは、また財源調整によって多額の財源を吸い上げることは、大都市における都市基盤整備を進める上ではかり知れない打撃を与える。内需の拡大を中心とする我が国の経済にとって好ましくない影響を与えるものだと私は信じているのです。また、地方交付税の不交付に加えて財源調整措置を行うことは二重の財源調整を行うものであって、合理性に欠けるものじゃないでしょうか。これはお立場があるのでしょうから、答弁は要りません。  次に進みます。  そこで大臣、最近伝え聞くところによりますと、昭和六十二年度は、学校栄養職員と事務職員の給与費のほか、公務災害補償基金への負担金、教員の児童手当に対する雇用者負担の打ち切り、地方交付税の不交付団体の国庫負担分給与費一〇%カットが検討課題になっているとのことでありますが、これでは戦後四十年かけて今日まで努力してきた国民の教育水準を低下させるおそれがあります。それですから、仮にもそのようなことのないように、来年度予算編成に向けて文部大臣の確固たる決意のほどを伺っておきたいのです。
  46. 加戸守行

    ○加戸政府委員 大臣のお答えの前にちょっと説明させていただきますが、現在、今先生がおっしゃいましたような学校栄養職員あるいは事務職員を負担から外す、あるいは公務災害補償基金への繰入金あるいは児童手当の負担金等を外すというような話が、具体的に財政当局から出ているわけではございません。ただ、可能性の問題として、そういう話あるいは考え方は出てくるであろうという蓋然性はあるわけでございますけれども、現時点におきましては、私ども、この義務教育負担金制度につきましては、その制度の基本を踏まえながらそのときの状況等によりまして適切に対応したいと考えているわけでございまして、基本的な考え方は大臣の方から申し上げさせていただきます。
  47. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 お尋ねの学校栄養士あるいは事務職員というものは、今日では教育の重要な基幹的要員として世間も認めておりますし、また、それによって学校も機能しておるわけでございますから、これを切り離して、この部分だけは別に適応さすというようなことは、文部省としては承知できません。第一、現在シーリング制が五十六年からとられておりまして、それによってそのしわ寄せがどうしても文部省とか、官庁で言いましたらそういうソフトの面に集約されてきておるということは、私は非常に残念だと思うております。この際、こういう栄養士問題あるいは事務職員問題等あわせてひとつ御支援をお願いしていきたいと思うのでございますが、我々としては既定どおりの予算を獲得するということに努力してまいります。
  48. 高橋一郎

    高橋(一)委員 大臣の御努力に大いに期待いたしたいと思います。  日本社会の国際化、情報化、そして急速に進歩する技術革新に対応するためあすの日本を担う人材を育成することは、我が国のなすべき急務であります。中でも、東京、大阪のようにその機能が特に集中している大都市に対しては、中曽根総理の言葉にもありますように、政治がその中心に据えて力を入れるべきであると思いますが、政府の文教政策の基本的なあり方と大都市政策との間に矛盾が感じられないでしょうか、お答え願いたいと思います。
  49. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 従来から政府がとっております大都市政策、その中におきまして文教政策とそごを来すということは私はないと思うておりますが、しかし今後の課題としては、私は十分に考えなければならぬ問題であると思うのであります。  先ほども申しましたように、私は、大学には教育の面と研究開発、学問のうんちくをきわめるという面とあると思うわけでございますが、やはりそういう研究開発という問題については、できるだけ都市の方が、情報的に見ましてもあるいはまた経済環境等から見ましてもやりやすいように思います。しかし、教育という面については、私は地方の方が実際は適しておるのではないかと思うのでございます。したがって、大都市政策、教育の面から見た大都市政策の中の一環として見るならば、研究開発と教育という面、そういう面に重点を置いて都市政策と地方政策を考えていくべきである、そのような感じを私は持っております。
  50. 高橋一郎

    高橋(一)委員 義務教育費国庫負担法は、言うまでもなく、国家における義務教育の適正な基準を維持し、国民の教育水準を維持発展させることを目的として、国みずからが定めたものであります。先ほど局長が触れましたように、そのための支出を国と地方がそれぞれ二分の一ずつ負担する割合の是非は、私の立場では考え方がありますので今あえて触れませんけれども、国みずからが定めたものを、いかに財政の問題とはいえ国みずからが破るのでは、法の趣旨を大きく損なうことにならないのでしょうか、これをお伺いいたします。
  51. 加戸守行

    ○加戸政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、どのような種類の職員に対しどのような経費負担するのかというのは、国庫負担制度の中で職員の種類も追加され、あるいは対象経費も、当時の地方財政状況と国の財政状況との勘案の上で国が負担することとした経緯があるわけでございまして、現下の国家の厳しい財政状況の中にありまして地方とどのような形で責任を分かち合うかということにつきましては、ある程度の弾力的な対応があり得ると考えるわけでございます。ただ、制度の基本はあくまでも義務教育の水準の維持向上にあるわけでございますので、そういった制度の基本は踏まえつつも、財政的な面で国と地方とが共同して分担し合う関係には、若干の変化なりあるいは応用動作というのがあり得るのではないか、そういう観点での対応を六十年度、六十一年度にさせていただいたということでございます。
  52. 高橋一郎

    高橋(一)委員 今後の負担金の措置に当たっては、大都市の持つ教育機能の重要性と法本来の趣旨に照らして改善を強く望みまして、次の質問に移ります。  次に、私立学校についてお伺いいたします。  現在、私立の幼稚園、小中学校高等学校は全国で約一万九百校に達し、三百二十五万人もの青少年たちが通学しております。私立学校は、それぞれ独自の建学の精神に基づき、個性豊かな特色のある教育を行っており、我が国の教育に果たす役割は、公立学校とともに今後ますます重要になってくるものと思います。  そこで大臣、このように多くの生徒が学んでいる私立学校の教育条件等について、公立学校と比較した場合まだ大きな格差があるものと聞き及んでおりますが、この点についての御所見を伺いたいと思います。
  53. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 お尋ねは、公立学校と私立学校ということでございますが、公立学校で私立学校と比べます場合一番の問題は、高等学校幼稚園。小中学校義務教育でございまして、私立の関係のシェアというのはごくわずかでございます。高等学校では、私の感じでは約三〇%が私立学校に依存しておるように思うのでございます。幼稚園におきましては約七五%が私立に依存しておる、そういうアバウトな感じを持っております。そういたしますと、私立が占めますウエートというのは、おっしゃるように確かに非常に高い。その場合に、教育条件を比べるときに一番大事なポイントは何かというと、授業料だろう。  だから、お尋ねの教育条件の格差というのは要するに授業料であろう、こう思いまして、授業料について申しますならば、いろいろな助成を私立の高等学校あるいは幼稚園にいたしております。しかし、なおかつ高等学校におきましては、負担公立の約六倍ぐらいあるということを聞いております。幼稚園におきましては四倍だ。高等学校で六倍、幼稚園で約四倍、これは確かに大きい差でございます。そこで、改善策として、国がやはりそういう私立の高校、幼稚園に対していろいろな助成措置を講じておりますけれども、十分ではない。そこで私は、この問題は、やはり公立学校でございますので、地方自治体がこの均衡化を真剣に考えていただかなければならぬだろう、こう思います。その一つとして授業料の水準化を図る。助成でやるのかあるいは他の方法でやるのかは別といたしましても、それをひとつ真剣に考えていただきたい。これを私は要望いたしたいと思うております。
  54. 高橋一郎

    高橋(一)委員 今大臣から地方自治体でのいろいろな措置を要望されておられましたけれども、国は私立学校振興助成法によって、私立学校に対する経常費補助を行っている都道府県に対して、そのための財源措置はお話しのようにされているわけです。しかし、東京都や大阪府など地方交付税の不交付団体には、国庫補助の単価が減額されるなど他の府県にはない厳しい措置がとられています。そこで、なぜこのような措置がとられるのか、御所見をできましたらお聞かせいただきたい。
  55. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 御承知のとおり、高等学校以下の私学経常費助成につきましては、所轄庁でございます都道府県が一般財源で経常費助成を行った場合に、国がその一部を財源補てん的に補助することができるという私学振興助成法の規定に基づきまして五十一年度から補助してきているわけでございますが、その場合に、国がその一部を補助することができるということで補助している補助金の機能といたしましては、一つは、国が補助金を出すことによって各都道府県における補助水準のアンバランスをある一定水準以上に確保する、担保するという機能を一つ果たしておるということと、もう一つは、そもそもスタートしたとき、先ほど御説明申し上げましたとおりに、一般財源の一部を財源補てんしておるという、そういう補助金の性格から、財政調整的な機能もこの補助金は、ある意味では負担金と違って持っておるというように私ども理解しておるところでございます。そこで、五十一年度からスタートしたとき以来、不交付団体につきましては、若干ではございますが、本来行くべき補助金の〇・五%をカットして、減額して支給しているところでございます。  この点につきましては種々議論があるところでございますが、昨年、補助金問題関係閣僚会議というものが官邸に設置されまして、この閣僚会議のもとに置かれました補助金問題検討会というところで専門家が種々議論をしていただいたわけですが、その報告が十二月に出ておりまして、その報告の中でも改めて、国と地方の財政調整の見直しの一環として、財政状況の良好な地方公共団体向けの補助金等について適切な調整措置を講ずることが適当であるという趣旨の報告を、昨年の十二月二十日に関係閣僚会議がもらっているわけでございます。  その関係閣僚会議が、翌十二月二十一日に、来年度予算編成に当たっては、この補助金問題検討会の報告を尊重して予算編成を行うという結論を出しまして、それを受けまして、私ども六十一年度予算におきましては、財政力指数が過去三年間の平均が一を超える地方公共団体、都道府県に対する補助金につきまして五%の減額措置を講ずるということで予算編成を行ったところでございます。そこで対象になりますのが東京都、神奈川、それから愛知、三県でございます。大阪府につきましては、五十九年度から不交付団体になったものでございますので、過去三年間の平均が財政力指数一を超えないものでございますので、六十一年度はその減額対象にはならないところであります。  したがって、以上のような経緯で減額措置を講ずるわけですが、今の国の財政状況と地方の財政状況を総合的に勘案した場合に、私どもとしましてはまことにやむを得ないぎりぎりの措置じゃなかろうかというふうに考えているところでございまして、そういう観点から不交付団体の関係者にも御理解をいただきたいということでお願いをしているところでございます。
  56. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 私は、公立と私立の比較をされる場合に、ぜひ高橋さん自身も検討していただきたいと思う問題があるのです。それは昭和十年ごろ、日本でいいましたら非常に安定した時期なんでありますが、この時分、今の高等学校はその当時中学校、東京都立中学校ですね。この例を一つとりまして、中学校の生徒一人に要する教育経費、これに対する学校納付金、つまり父兄の負担でございますが、それと昭和五十九年と比較していただいたら非常に格差が出てきておるのです。非常に違ってきております。幼稚園も同様でございまして、幼稚園も昔は私立がほとんどですが、やはり公立もございました。その幼稚園の園児一人当たりに要する教育経費、それに対する保育料の納付、これを十年、そして昭和五十九年と比べていただきたい。そういたしますと、私はその間に相当公立学校は地方団体が考えていただかなければならぬ問題があると思うのです。国立を比べてまいりますと、昭和十年ごろの負担率と昭和五十九年の負担率はそんなに大きい差はございませんが、公立におきましては非常に差がある。ここにやはり非常な問題があるだろう。といって、国は財政が許すならば当然私立に対する助成はやっていかなければならぬのですが、公私の格差という問題だけをつかまえて言うならば、そういう点も一つ検討してもらいたい、こういうことです。
  57. 高橋一郎

    高橋(一)委員 私も旧制の府立中学を出ましたから、その当時のことを思い出しながら、大臣の言われようとする趣旨はわかります。私も勉強いたします。  そこで、昭和五十四年から今日まで、東京都は私学振興のために私立学校経常費の二分の一補助を達成すべく八年間にわたる努力を重ね、高等学校について、ようやく東京都議会の決議を踏まえて、昭和六十一年度予算においてその目標を達成したところであります。私は都議会出身ですから言わせていただいたわけですが、ちなみに、東京都における昭和六十一年度私学助成費総額は九百五十九億円に上っています。しかもこれらの補助金は、東京都以外から都内の私立学校に就学している生徒の教育にも均てんしているところであります。  このように東京都などが、大都市の教育に関する機能の重大性にもかかわらず、地方交付税の不交付団体なるがゆえに国庫補助金の削減が行われるのはどんな理由でしょうか。先ほど来いろいろ論議をしてきたところですが、改めてお伺いします。昭和五十八年度から六十一年度までの各年ごとの削減額をお示しいただくとともに、その理由を明らかにしていただきたい。ゆめ財政上の単純な理由ではないとは存じますが、事教育に関する重要な問題でありますだけに、真剣にお答えいただきたいと思います。
  58. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 まず、数字から申し上げますと、五十八年度の減額額が七千百万円、五十九年度が六千八百万円、六十年度が七千三百万円でございます。六十一年度につきましては、まだ各都道府県の補助水準が明確でございませんので、補助減額につきましては、数字については明らかになっておりません。  その減額の理由でございますが、先ほど申し上げましたとおりに、高等学校以下の経常費助成がスタートしたときの考え方というのは、およそ所轄庁でございます都道府県が高等学校以下の経常費助成を一般財源で行った場合に、国が各都道府県の助成水準をある一定水準以上に確保したいということと、もう一つは、そういうことで補助金の一部を財政補てん的に各都道府県に国から国庫補助を行うというのが、現在の高等学校以下の経常費助成の基本的な仕組みでございます。  その場合に、私どもとしましては、一般財源措置すべき所轄庁である各都道府県のその補助金の一部を国が財政補てん的に補助するものでございますので、スタートしたときからこの補助金は財政調整的な機能をあわせ持つのではないかということで、五十一年度からスタートしたときから、不交付団体につきましては、まことに恐縮でありますが、財政調整的な機能の一環といたしまして補助金の一部を減額さしていただいてきたという経緯がございます。  これにつきまして、先ほどの答弁とダブって恐縮でございますが、六十一年度予算編成を行われる直前になりました六十年の十二月に、補助金問題検討会から、その種の不交付団体に対する財政調整的な機能というのは、現在の、これは何も高等学校以下の経常費助成に限らないで、国からの一般的な不交付団体に対する補助金については補助金の一部を減額措置するようなこともやるべきではないかという報告を改めて受けたものでございますので、高等学校以下の経常費助成につきましても、六十一年度以降五%の減額措置を講ずるということで予算編成を行ったところでございます。
  59. 高橋一郎

    高橋(一)委員 私も、国家財政の再建という問題が緊急かつ重大だということは十分わきまえております。そしてまた、私はきょうはいろんな設問はいたしましたものの、あえて議論はいたしませんでした。この点をお酌み取りいただいて、今後の行政の上で御努力いただきたい。まして、先ほど補助金問題検討会等のお話も出ました。閣議で討議されたというふうなお話も聞きましたが、私をして言わしめれば、都市議員が少ない現状において唯一の都市議員である塩川文部大臣、この点においては、ただ単に文部行政のみならず、閣議においての御活躍を期待いたしたいと思います。  そして最後に、先ほど岡島委員も教育の国際的な問題に触れられましたが、東京都は既に国連大学の敷地を設定して、建設のつち音が聞こえるのを待っているわけであります。この点について、私は、一日も早い着工、竣工、そして国際的な社会の中での日本の貢献ということをお考えいただきたいということを要望して、時間が参りましたから質問を終わります。  ありがとうございました。
  60. 堀之内久男

  61. 新村勝雄

    新村委員 この点については既に前の質問者がお触れになりましたけれども、もう一回確認と、それから大臣の御決意を伺っておきたいと思います。  それは、六十二年度において、義務教育費国庫負担法の規定にもかかわらず、給与費のうち事務職員の国庫負担七百八十六億、それから栄養職員に対するもの百七十六億、これは二分の一国庫負担ということで法的にもその基礎があるわけでありますけれども、これを減額というか、削除するというようなことが伝えられておるわけであります。恐らくこれは財政当局からそういう要求があるであろうということが予想されるわけであります。     〔委員長退席、古賀(誠)委員長代理着席〕  そういう場合に、大臣としてはぜひこの点についてはあらゆる努力をお払いをいただいて、絶対にそのようなことのないようにお願いをいたしたいと思うわけであります。この点については、給与費だけではなくて、今までの経過を見ますと、教育費の国庫負担については、戦前から戦後の教育重視、民主主義の拡充の時代において着々とこの国庫負担の枠を増大をし、国の教育に対する配慮が厚くなってきた経過がありますけれども、それが四十七年を境にして、今度はそれを削減する方向に潮流が変わってきております。先ほどもお話がありましたように、教材費、旅費が六十年度でなくなった。それから、六十一年度では共済費の二分の一が三分の一になった。さらに、六十二年では給与費のうち事務職員と栄養職員の分がなくなろうとしておるわけであります。  そういうようなことが伝えられておるわけでありまして、これは絶対に阻止をしなければならない、避けなければならない事態でありますけれども、大臣の御決意を伺いたいと思います。
  62. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 先ほどその問題につきましては自民党の高橋委員の方からも質問がございましてお答えいたしましたが、要するに、学校栄養士職員、それから事務職員、こういうような方々は、やはり現在の義務教育を進める上におきましても基幹的な要員であることは、すべての人が認めておるところでございます。したがいまして、この方々だけを補助対象から外すというようなことは、私は、理屈に合わない、全くそれは財政上からそういううわさが出てきておるんだろうと思うのでございますが、私たちは、六十二年度予算の編成に際しましては、全力を挙げてその対象として確保していくことを申し上げた次第でございます。
  63. 新村勝雄

    新村委員 そういう事態になった場合には、ぜひひとつ大臣、あらゆる努力をお払いをいただき、職を賭しても守っていただくという御決意をもう一回お願いしたいと思います。
  64. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 おっしゃるように、最善の努力をしてまいります。
  65. 新村勝雄

    新村委員 次の問題でありますけれども、日本は経済大国として、国際的にもいわゆる世界国家としてこれからあらゆる分野で世界に貢献をしていくべきである、こういう期待が内外から今大きく起こっておるわけであります。そういう中でまず必要なことは、日本を中心として国際間の理解を深めていく、日本の発想なり日本的な考え方も外国に理解をしてもらわなければいけないと思います。同時にまた、外国の発想あるいは外国の考え方も日本人が理解をしていかなければいけない。こういう相互的な問題になろうと思いますけれども、そこで問題になるのは、やはり何といっても言葉の問題であります。  日本語というのは、語系からいっても世界的に特殊な語系に属する、非常に難しい、英語、フランス語というようなヨーロッパの言葉とは系統の違う特殊な言葉だと言われておりますけれども、それでも最近、日本語に対する理解というか関心が世界的に起こっておるということを聞いております。そして、外国においても日本語学科が大学にどんどん新設をされておる、また、日本語を勉強するために日本に来ておる人たちもたくさんいる、これからますますふえる傾向にあるというようなことが言われておるわけであります。そしてまた、現在既に日本国内には日本語学校がこの時代の潮流に即応して急増しておる。東京の中だけでも数百の日本語学校があるというふうに言われておりますけれども、外国人が日本に来て日本語を勉強する、この新しい傾向について、これはまだ制度的なものにはなっておりませんけれども、文部省としてはどういうふうに現状を認識され、あるいはどういうふうに対処をされようとしておりますか。
  66. 植木浩

    ○植木政府委員 確かに、今先生がおっしゃいましたように、近年日本語を学習する外国人が急速にふえつつございます。国内では三万五千人、海外では五十八万人もいるというふうに言われております。今後、文部省といたしまして、このように日本語を学習する外国人に対する日本語教育というものを充実をしなければいけないと考えております。  そのためには、まず日本語の教員の養成ということが大変大事でございますので、大学等におきまして日本語の教員養成の学科を近年設置してきておりますし、また日本語の教材が大切でございますので、日本語の教育方法や教材の開発というものにも力を入れてきておるわけでございます。
  67. 新村勝雄

    新村委員 そうしますと、現在、日本、主として東京だと思いますけれども、外国人を対象とする日本語学校が何校ぐらいあるのか。それからまた、もちろん設置基準等は何にもないと思いますけれども、そういったことについて一定の基準を設けるお考えがあるのか。それからまた、日本語教師の資格要件等についてはどうであるのか。また、外国人に対する日本語教育のための学科を大学に設置する、あるいはまた教員に必要な知識を指導、教授する課程をつくるお考えがあるのか、あるいは現在あるのかないのか。
  68. 植木浩

    ○植木政府委員 まず、日本語の教育機関の数でございますが、私どもの知っている限りでは、現在国内に四百二十六ございます。このうち、大学とか短期大学等でいろいろと日本語教育を行っておりますのが、二百十でございます。また、専修学校や各種学校で日本語をいろいろと教えておりますが、これが三十六校ございます。このほか、今申し上げましたカテゴリーに属さないその他の学校が百八十ほどあるというふうに私どもは数字をつかまえておるわけでございます。  今先生御指摘のように、学校の基準といいますか、教育内容等につきまして特別の基準はございません。文部省といたしましては、日本語教育の専門家の方にお集まりをいただきまして、どういう教育の内容あるいは教育の課程が望ましいかということをいろいろと御議論をいただいて、一応のそういった内容の試案のようなものはできておるわけでございます。  それから、日本語教師の資質の問題でございますけれども、これも現在特別な基準というものがないわけでございます。これにつきましても、今申し上げましたような日本語教育の専門家の方にお集まりをいただき、いろいろと御審議をしていただきまして、日本語教員の資質の向上等を図るためにやはり何らかの基準があった方がいいのではないかということで、今日本語教員の能力の基準、こういった程度の能力があれば日本語教員として最低限の水準に達している、そういった能力の基準について御審議をいただいておりまして、できればそういった能力の基準に基づいた検定を行いたいというふうに考えておるわけでございます。  それから、日本語教育を行っている学科等でございますが、これもいろいろございますけれども、筑波大学であるとか東京外国語大学であるとか、その他年々そういった大学の学科をふやすように、今一生懸命充実策を進めておるところでございます。
  69. 新村勝雄

    新村委員 日本語学校の要件についての試案、あるいはまた教師の能力検定、そういったものについては検討中であるというお話でありますけれども、どの程度の、どういう構想のもとに進めておるというようなアウトラインはお話しいただけますか。
  70. 植木浩

    ○植木政府委員 今申し上げましたように、日本語教員の能力検定につきましては、学識経験者の協力を得まして準備を進めておりますが、その概要を申し上げますと、いわゆる資格試験ではない。これがなければ教えられないというものではなくて、その資質、能力の最低の水準に達しているかどうか、こういった試験でよいのではないかという点が第一点でございます。民間の適切な団体にこれを実施してもらう。学歴とか年齢制限等については、今検討中でございます。  それから、試験の科目につきましては、日本語教育に関する専門的な科目、例えば日本語学とか言語生活、日本事情、日本語教授法、そういったものが主なものとして考えられるわけでございます。  試験の種類につきましては、現在のところ、一種類にするか二種類にするかという議論はございますが、この辺も今最終的に検討中でございまして、一種類でよろしいのではないかという線が学識経験者の間では強いわけでございます。  以上が現段階での骨子でございます。
  71. 新村勝雄

    新村委員 既に全国に四百二十六校もあるということで、この問題は緊急の問題だと思いますね。なるべく早く実施をすべきだと思いますけれども、その検定の時期、いつごろから検定をやって、いつごろからその検定制度のもとに実施をしていくのか。
  72. 植木浩

    ○植木政府委員 来年度からでき得ればぜひ実施をしたい、こういう計画でございます。
  73. 新村勝雄

    新村委員 ぜひその準備を早めていただいて、なるべく早く実施していただく。来年度からということで、来年度より早いことは無理でありますから、来年度からぜひお願いしたいと思います。  それから、それとは逆の方向でありまして、日本は今対外援助をやっております。これは円借款あるいは無償援助、それから無償援助の中には技術供与というようなこともあります。それと同時に、その範疇に含まれると思いますけれども、日本の技術力あるいは一般的な日本の持っておる学問的な水準、これを世界の文化、科学技術の向上に役立てるという意味からいいましても、それからまた、日本を理解してもらう、世界から理解してもらうという意味からいいましても、留学生の受け入れ、これをひとつできる限り大規模にやっていく必要があるのではないか。  例えばアメリカ等においては、全世界からアメリカの技術水準なり学問なりを求めて、あるいはまたアメリカの自由な空気を求めてということもあるかもしれませんけれども、全世界から数十万、数百万の留学生がアメリカに集まっておるわけであります。日本からもたくさん、何万、何十万と行っておると思いますが、そういう状況が日本でもやはりできてこなければいけないと思うのです。  全世界から日本の学問を求めて、あるいはまた日本の気風といいますか、日本の自由な風土を求めて、日本の文化を求めて学生が集まってくる、こういう状況にならなければ本当の世界国家にはならないと思います。そのことが日本の世界に対する貢献であり、同時にまた、日本が世界国家として生きていくためにも、そのことによって世界政治の中における日本の政治力の向上、あるいはまた別の意味ではあらゆる意味の情報の収集、そういったことにも役立つわけでありますし、役立つというよりは、そのことが基礎になるのではないかと思います。  そういう意味で、留学生を世界じゅうから呼び寄せる、引きつける、こういう魅力ある日本の教育あるいは魅力ある日本の科学技術ということにしなければいけないと思うのですけれども、そういう意味では現状は大変不十分であり、お寒い状況ではないかと思います。恐らくアメリカの何十分の一しか留学生はいないでしょうし、留学生を受け入れる態勢がまずない。私も留学生の寄宿舎等を見学したことがありますけれども、大変貧弱な状態でありますし、そういう施設がまずないわけです。ですから、いろいろほかにも問題があろうと思いますけれども、まず政府の施策によって外国の留学生がどんどん入ってこられる、気安く入ってこられる条件をつくっていかなければいけないと思いますけれども、大臣はその点についてどうお考えですか。
  74. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 現在留学生、世界各国から年間大体一万五千人受け入れておるわけでございまして、これは私は、過去十年ほど振り返ってみますと、相当な増加であると思うておりますが、しかし一方、二〇〇〇年を目標にいたしまして十万人の留学生を受け入れよう、こういう計画があることは御存じのとおりだと思うのです。その際に一番なのは、御質問の中にございましたように、受け入れの態勢、これができておるのかということなんでございますが、受け入れ態勢にはいろいろな面で検討を要する問題が確かにあると私は思うております。  一つは、日本の大学を出ました、課程を終えた人が国際的に通用していくということ、この水準を合わさなければならぬ問題がございまして、例えて申しますと、医学部におきましても、日本の国家試験を通りました者と国際水準との比較というものが実はあるわけでございまして、これはバイラテラルに日本政府が努力いたしまして、日本の国家試験をそのままその国の有資格者に認めていくということが相当浸透してまいりました。しかし、なおそういう問題を解決しなければならぬ若干の問題もございますし、また、日本で勉学いたしまして、大学で博士課程を終えましても、なかなか博士というものが取得できないという、これは言語の難しさとかいろいろあると思うのでございますが、そういうことをひとつ国際水準に合わしていく、私はこれも受け入れの環境の重要な問題だろうと思うておるのです。  それと同時に、これから日本も国際化していきまして、企業も多国籍化していくと思うのでございますが、日本で留学したその学生が帰国して就職なりあるいは仕事につきやすいような環境をやはり日本もフォローアップしてやるということ、これも留学生を受け入れるための重要な条件だろうと思うのであります。これは日本の経済界、実業界に相当呼びかけまして、そういうことについての配慮をされるようになってまいりました。その点は逐次改善してきておると思うのであります。  そういう条件がございますけれども、一番根本的な問題は、私は奨学資金制度と住宅の問題だと思うのであります。  私も実は留学生の関係の団体の役員をやっておりまして、いろいろと意見を聞きます。一番問題は、やはり住宅の問題でございますが、下宿しようとしてもなかなか下宿を受け入れてくれるところが少ない。言語が多少不自由だということと、それから食べ物が違うということもございますし、そういう点で自炊をやるような条件の整うた下宿がなかなか見つかりにくい。したがって、これから日本の留学生対策の一つとして、留学生を受け入れるそういう建物をやはり充実してやらなければいかぬのだろう、こう思うのであります。  それともう一つは、日本に留学をいたしまして非常に金がかかるということをよく言っております。これをできるだけ学費等が節約できるようなことを考えなければならぬ。それには、奨学金制度がアメリカ、ヨーロッパに比べて貧弱であることは事実でございますので、これをやはり充実していくというようなことがございます。  要するに、留学生問題というのは、確かに一面から見ましたら、私は国政全般に広がってくる重要な問題を皆包含しておるように思うのでございます。したがって、文部省が二〇〇〇年、十万人を目標に受け入れるということは、この期間にそういう受け入れ態勢を逐次整備していくということは一生懸命やっていかなければならぬと思うておりまして、仰せのとおり努力を積み重ねていって所期の目的を達成したい、こう思うております。
  75. 新村勝雄

    新村委員 二〇〇〇年、十万人、これは大変結構でありますし、さらに一層飛躍的な拡大が必要だと思いますけれども、単に十万人とおっしゃるだけでは、なかなかこれは実現しないのじゃないかと思います。今大臣おっしゃるように、住宅の問題、奨学資金の問題、それから博士課程をなかなか日本では与えないという問題がありますね。こういった点、それからまた言葉の問題がありますし、そういう多くの問題があるわけでありますけれども、これは広い意味での対外援助とも考えられるわけであります。今、円借とか無償援助、いろいろなことをやっておりますけれども、対外援助についてもこれは充実をする必要があるのでありますけれども、留学生を受け入れるということは教育の分野における大きな対外援助でありますから、ぜひひとつ計画的に、必ずその十万人あるいはそれを超える外国人学生を受け入れることができるような条件づくりを、今からお願いをいたしたいと思うわけであります。  それと関連をして、やや関連はするわけでありますけれども、対外援助の問題であります。対外援助についてはある意味では大変広い概念であると思いますけれども、今政府が行っております円借あるいは無償援助等について、実はいろいろと問題が指摘をされておるわけでありますけれども、これについても国際間の理解が不十分であるという点もあると思うのです。日本が本当に国際国家になり切っていないという点もあると思うのです。それからまた、これは率直に申し上げて、日本の官僚機構の問題もあると思いますし、同時に、日本の習慣の問題等もあると思います。  そこで、文部省の所管とは若干それますけれども、最近、国際協力、対外援助の問題に関してマルコスの問題が出ましたけれども、その後において、国際協力事業団の課長代理が収賄容疑で警視庁に逮捕された、さらに別の課長代理も同じ容疑で捕まった、こういう事態が起こりました。海外援助は、今申し上げたように、経済大国日本が国際的責任を果たす上で大変重要でありますけれども、そういう極めて重要な国策の遂行過程でこのような事態が起こることは、日本の国際的な信用という面からいっても大変遺憾なことであります。外務省はこの不祥事をどうお考えになっておりますか。
  76. 太田博

    ○太田説明員 お答えいたします。  途上国に対する経済協力につきましては、日本政府といたしましても最近その拡充に努めてきたところでございますけれども、その過程においてただいま御指摘のような事件が起こったということでございまして、国際協力事業団、JICAを監督する立場にある外務省といたしまして、このような不祥事が発生したことはまことに遺憾であって、極めて深刻に受けとめておるところでございます。  事件発生後、外務大臣より事業団に対しまして綱紀粛正を指示し、また業務実施体制、内部監査体制等の改善策の検討を命ずるとともに、事業団の指導監督を行う立場から、JICAの今後のあり方につきまして各界の有識者の意見を聴取するための懇談会を開催している次第でございますけれども、今後の国際協力事業団のあり方について、有識者の意見をも参考にいたしまして具体的な改善策を早急に打ち出し、JICAに対しての国民の信頼回復のために最大限の努力をしていく所存でございます。
  77. 新村勝雄

    新村委員 今それに対する対策等を伺ったわけでありますけれども、十月八日の毎日新聞によりますと、外務省の幹部がこの援助事業に関連をする業者から過大な、度を過ごした供応を受けたという報道があるわけであります。単にJICAだけではなくて、外務省自体にもそういううわさがあるということは、これは極めて重大だと思います。この報道によりますと、海外援助事業に絡む業者、コンサルタントから百万円を超す接待を受けたと報道されております。他の報道機関も同じ趣旨の報道をしておるわけでありますけれども、外務省はこの問題についてどのように事態を把握しておられますか。
  78. 太田博

    ○太田説明員 お答えをいたします。  ただいま先生御指摘の報道に関しまして、新聞には実名は出ておりませんでしたけれども、ほぼ特定できるので、早速本人に連絡をとり、事情を聴取いたしました。本人は、業者と飲食をともにしたことはあるけれども、その交際は公務員としての良識の範囲内のことであって、何らやましいことはないというふうに述べておりまして、我々としても当人のこのような発言を信じたいと思っている次第でございます。
  79. 新村勝雄

    新村委員 業者と飲食をともにしたことはある、ただしそれは良識の範囲だというお話でありますけれども、良識の範囲というのはどういうことでしょうか。どういう範囲が良識であり、どういう線を超えたら良識を超えておるかということでありますけれども、その点について具体的にお伺いいたします。     〔古賀(誠)委員長代理退席、委員長着席〕
  80. 太田博

    ○太田説明員 お答えいたします。  一般論として申しますと、業者等民間人との交際につきましては、国内の諸事情を把握し、国内各方面の見解あるいは関心の所在を知るということが、外務省が仕事をしていく上で直接間接にプラスになるという意味において有意義な点も多くあるというふうに考えておる次第でございます。他方、このような民間人との交際におきましては、国家公務員であるという立場をわきまえる必要があることは申すまでもございませんで、民間人との交際というのも、そういう国家公務員としての立場をわきまえるという立場、その範囲内で行われる性格のものであるというふうに考えておる次第でございます。
  81. 新村勝雄

    新村委員 国家公務員といえども、人間関係を大切にする、あるいは人間関係をできるだけ広くつくっていく、これは必要だと思います。それは場合によっては、特に外務省の方々の場合には国益にも合致するということが言えると思います。それはいいのですよ。それはいいのですけれども、その相手が、今私が挙げておるのはJICAと常に仕事の契約を重ねておる業者、その公務の内容と関係のある業者です。いわば利権ですよ。そういう業者と会食するというか、接待を受けるわけです。そういうことは、今おっしゃる公務員が本来やっていいことと明らかに違うのじゃないでしょうか。  外務省さんあるいは建設省さん、いろいろ関係ありますけれども、契約を結ぶとかいう業者活動と関係のある公務員あるいはそのセクションの公務員が業者の接待を受けるということは、これは仮にコーヒー一杯であっても慎むべきではないですか、その場合には。そのけじめをはっきりしていただきたいわけですよ。公務員の皆さん方が人間関係を豊かにするためにつき合いをするということは、これはもうだれでも認めますよ。しかし、自分の勤務をしているセクションなりあるいは業務と関係のある業者と一緒になって飲食をする、あるいは接待を受けるということは、これはコーヒー一杯でもいけないんじゃないですか。その点を伺います。
  82. 太田博

    ○太田説明員 お答えいたします。  ただいま先生御指摘のような、直接仕事あるいは事業関係のある業者とのつき合いはどうかということでございますが、直接仕事と関係のある業者とのつき合いに関しましては、先ほど申しましたような公務員としての立場をわきまえる必要というのは特に大きいのではないかというふうに考えております。ただ、そういう特定の業者の場合でありましても、関連の情報の交換をする、あるいは意見の交換をするということ自体は、公務員としての規律の範囲を超えてはいないのではないか。ただ、特定の事業につきまして、そういう接宴を受けた結果特別の配慮を行うことは許されない、そういうふうに考えている次第でございます。
  83. 新村勝雄

    新村委員 業界の情報を知る、あるいは正常な形でのコミュニケーションをするということであれば、例えば外務省なら外務省のあのソファーでいいですよ。何もその辺の料亭なりあるいはバーに行く必要はいささかもないのですね。あそこにちゃんとソファーがあるでしょう、課長の前には。あのソファーで用務は足りるんじゃないですか。ですから、今あなたがおっしゃったことは、全く事態をごまかすものだと私は思うのですよ。あのソファーでやりなさいよ。その点、いかがですか。
  84. 太田博

    ○太田説明員 先生御指摘のように、特定の業者とのつき合いにつきましては、細心の注意を払うべきだというのはそのとおりでございます。特に政府開発援助という非常に重要な仕事を扱う立場にある職員につきましては、厳しくみずからの行動を律していく必要が特に強いということでございますので、今後そういう業者とのつき合いに関しましては、特に細心の注意を払っていきたいというふうに考えております。
  85. 新村勝雄

    新村委員 重ねて伺いますけれども、この元課長、本省の課長ですから、これは大幹部ですよ。元課長がJICAと常に契約をしておる業者から合計百万円余を超す接待を受けたと報道されております。これは明らかにあなたのおっしゃる良識の範囲でもないでしょうね。こういう報道がされておるこのこと自体が、こういうことが現に相当程度に行われている、また行われてきたということを我々は思わざるを得ないわけです。ですから、良識の範囲ということではなくて、今後外務省は、外務省だけじゃありませんね、これは。ほかの経済関係の省庁みんな同じですけれども、どういう方針でどういう形で自粛をしていかれるのか。
  86. 太田博

    ○太田説明員 今後につきましては、いやしくも疑惑を起こすようなことのないように、先ほどから繰り返し申しておりますように、公務員の立場をわきまえて細心の注意を払ってまいりたいと考えております。
  87. 新村勝雄

    新村委員 もっとはっきりと具体的におっしゃっていただきたいのですが、アメリカでは、聞くところによると、そういう業者とのつき合いに関しては一食のディナーも不可である、サパーを一回ごちそうになるのもいけない、それをやった場合には処罰の対象になるというふうに聞いておりますけれども、そういうことは外務省ですから十分御承知だと思いますけれども、御存じであるのかどうか。  それからまた、抽象的な今のようなおっしゃり方ではなくて、具体的にこれからどう自粛していかれるのか、それをもう少し詳しく伺いたい。
  88. 太田博

    ○太田説明員 お答えいたします。  ただいま先生御指摘のアメリカにおける慣行でございますけれども、申しわけございませんが具体的な規定を存じておりませんので、早速調べまして、できるだけ早く先生の方に御報告を申し上げたいと思います。  それから、今後の具体的な接し方ということでございますけれども、先ほどから繰り返し御説明申し上げておりますような、この時点ではそういう御説明の仕方で御勘弁をいただきたいと考えております。
  89. 新村勝雄

    新村委員 この問題について、既に参議院の外務委員会で取り上げられておりますね。参議院の外務委員会で外務大臣がこうお答えになっておるわけです。「公務員としての良識の範囲内のことであって、何らやましいことはない」ということでありますけれども、この良識の範囲とは何かということ、それを具体的におっしゃることはできませんかと先ほどから申し上げているわけですけれども、具体的に、良識の範囲とは何か。例えば一回の接待が五万円ならばいいけれども、十万円はいけないのか。五万円を境にするのか、十万円を境にするのか、百万円を境にするのか、そういう具体的なことを伺っているわけなんですよ。
  90. 太田博

    ○太田説明員 お答えいたします。  先ほども御説明したところでございますけれども、いかなる場合にでもやってはいけないのは、特定の業者とつき合ったあるいは接宴を受けた結果としてその業者に対して特別の配慮を払うということでございまして、これはいかなる状況のもとであっても公務員の規律違反になるということで、してはいけないことだと考えております。  ただいま御指摘の幾らぐらいであったら良識の範囲かという点につきましては、特定の金額で、これ以下だったらば良識の範囲であろうというのは、具体的に言うのがなかなか難しい感じがいたしておりまして、事実そういう幾ら以下であったら接宴を受けてもいいという具体的な規則も実存しておりませんが、この点につきましても、良識といいますか、あるいは常識の範囲で、その程度の金額であるならば通常のつき合いとしておかしくないという程度の金額というふうに、一般的にしか申し上げられなくて恐縮でございますけれども、常識的に考えて、あるいは通常の飲食の料金、代金等を念頭に置きましてそれほどおかしくないという範囲の接宴、それが良識の範囲内における接宴ということになるのではないかと考えております。  具体的な数字をということでございますが、それを申し上げられなくて——申し上げる性質のものでもないような感じもいたしますが、いずれにいたしましても、趣旨は、こういう接宴を積極的にやっていいということではなくて、そういうものの必要性というのは、先ほども御説明したとおり、ないことはないわけでございまして、その範囲内で、先ほどから繰り返し御説明申しておりますとおり、細心の注意を払い、公務員としての立場をわきまえた上でそういうつき合いをしていくということが肝要であるというふうに考えておりますので、その点はよろしく御理解のほどをいただきたいと思います。
  91. 新村勝雄

    新村委員 同じことを繰り返してもしようがありませんけれども、そうしますと、今回のJICAの不祥事、そして外務省は不祥事とまでは申し上げませんけれども、まあそういううわさがあるということですけれども、こういう状況の中で、今後は外務省はこう自粛していくという新しい指導方針なり大臣の訓示なり、そういうことはお考えになっていますか。
  92. 太田博

    ○太田説明員 お答えいたします。  このたびのJICAの職員の汚職事件が起きましたことにつきましては、先ほど御答弁申し上げたとおり、外務省としても極めて遺憾であり、極めて深刻に受け取っておりまして、このような事件の再発は絶対に防止すべきであるという強い決意でございます。  既に、外務大臣から国際協力事業団に対しまして、今回のような事件の再発を防ぎ、国際協力事業団として今後事務の一層の効率的な運用、適正な運用を図るための改善策を検討するようにという命令が出されておりまして、その命令を受けまして、国際協力事業団で鋭意この種の事件の再発防止のための諸措置、それからJICA、国際協力事業団の事業の遂行を一層適正に行うための諸措置等について検討してまいりまして、近々、今週中にも、外務大臣にその命令に対する国際協力事業団としての立場、これを明らかにすることになっております。  それから、外務省といたしましては、そのような国際協力事業団を監督する立場にございますし、それから直接技術協力に関しましていろいろな仕事に従事しているわけでございますので、いやしくも疑惑が起きることのないように、職員一同改めて公務員あるいは外務省員としての服務規律の厳正な遵守、これに心がけておりまして、今後ともこのような措置を、あるいは心構えを踏まえつつ、我が国にとりまして極めて重要な経済協力、特に国際協力事業団の場合には技術協力が中心でございますけれども、それの健全なる、あるいは適正な遂行、これに心がけたいというふうに考えておる次第でございます。
  93. 新村勝雄

    新村委員 十分理解できませんけれども、JICA及び外務省を含めて、これからぜひこの綱紀の粛正について厳正な態度で臨んでいただきたいということを大臣にぜひお伝えをいただきたいと思います。  それから、そのうちにこの決算委員会で大臣にお目にかかる機会があると思いますけれども、それまでにひとつ、今出た例えば良識の範囲というようなことではなくて、もう少し具体的に、外務省はこう努力しますという外務省としての方針なり統一見解なりというものを示していただきたいということを大臣にお伝えをいただきたいと思います。  時間がありませんので、次の問題については私の方から続けて申し上げますので、御答弁も続けてお願いをしたいと思います。  それは、筑波学園都市の中へ筑波身障者短期大学というものを計画されておるわけですね。これについては、五十三年に最初の調査費がついてから、今日まで毎年この調査を続けてこられたわけでありますけれども、まだ着工にも至っていない。極めて長期にわたる準備をされておるわけでありますけれども、これには幾つかの問題点があると思うのですね。  というのは、一つは、身障者短大というようなものをつくって身障者だけを隔離をする、別の意味では差別、隔離というような形での身障者の教育が果たしていいものかどうか、こういう問題について教育家の間で両論があるのです。賛成している者もあれば反対している者もある、賛否相半ばということだと思います。身障者についても、これはできる限り一般の教育機関に受け入れて、その中で健常者と一緒に教育をするのが正しいんだという一つの議論があります。一方では、そうじゃなくて、隔離というか、身障者だけを集めて教育するのがいいんだという一つの議論があるわけですが、賛否相半ばしているわけなんですよね。ところが、この大学の計画についてはそういう賛否両論を十分に検討しないでこの建設を決めたという、その問題点が一つあるんじゃないかと思います。  それから、現在、国公私立大学のうちで身障者を完全に拒否をしている、締め出しておる教育機関が相当にあるということでありますが、これは極めて遺憾な事態でありまして、身障者であっても健常者と一緒に勉強したいという者については、十分にこれを配慮してやるべきではないか、そして門戸を完全に開放すべきではないかという議論が非常に強いわけでありますけれども、残念ながら、まだ身障者については試験を受けさせないという学校もかなりあるわけです。そういった点について文部省はどうお考えであるのか、それからまた、今後どう御指導をなさるのかということが一つです。  それから、現在既に身障者、特に視覚、聴覚障害者について、その人たちを主として対象とすべきである、常識的にそう考えられる短期大学なんかがあるわけであります。例えば鍼灸短期大学というようなものが私立にはあると思います。ところが、非常に奇妙なことには、この鍼灸短期大学に視覚、聴覚障害者が入っていないという事態があるのですね。視覚障害者がほとんど入っていない、一割以下である、あるいは何%であるということなんです。本来ならば、鍼灸短期大学というような教育機関はそういう方々のための大学ではないかと思いますけれども、それが逆であるというようなことがあります。  それから、現在でも既に筑波大学には附属の身障者短期大学があるのですね。あるのですけれども、それと同じような目的の大学をもう一つつくるということについての大変な不合理さがありますけれども、それについての御答弁をいただきたいと思います。これは時間が参りましたので、文書でも結構です。
  94. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 筑波の身障者関係の短大についての御指摘でございますけれども、御案内のように、大変多数の障害者の方々あるいは障害児を持つ親御さんの方々あるいは障害者教育に携わっておる方々からの多年にわたる熱望がございまして、文部省といたしましてもこの問題を検討してまいったわけでございますが、特に昭和五十三年以来はこれについての正式の調査費等あるいは準備費等も計上いたしまして、筑波大学にお願いをいたしましてその検討を進めてきたということで、おおむね基本構想もまとまりましたので、現在この短期大学、筑波技術短期大学と一応仮称で考えておりますけれども、これの創設を六十二年度の概算要求でお願いをしているというところでございます。  これの創設に当たりまして、一部に今先生が御指摘ございましたような反対の意見というのもあったわけでございますけれども、私どもとしては、一般の大学への受け入れをこれによってとどめるというものではなくて、こういうたぐいの大学へぜひ入りたいという方々のためにそういうものをつくっていくということで、一般の大学とこの短期大学とがいわば両々相まって身体障害者の方々の進学の機会の確保に役立つというような見地からこの問題を進めてまいったわけでございまして、現実にこの大学が成立をいたしました暁にも、一般の大学における受け入れということはいろいろと配慮をしてまいらなければならない、こう思っておるわけでございます。  具体に現状で申し上げますれば、昭和六十二年度の大学入学者選抜実施要綱というような形で、国公私立の一般大学に対しましての指導を一般にいたしておりますけれども、その中におきましても、身体障害者の方々の受験の機会の確保ということにぜひ努力をしてほしいというようなことを、各大学に国公私を通じて指導をいたしておりまして、また、年々そういう状況もついてきておると思っておりますし、また文部省の側としては、この指導をいたしますほかに、国立大学、公立大学、私立大学とも、それぞれ形は違っておりますけれども、身体障害者を受け入れた場合の経費等につきましての援助の措置というようなこともあわせ講じまして、一般大学への受け入れということを配慮をいたしておるわけでございまして、今後ともこういった方向で努力は重ねていかなければならないと思っておるところでございます。  なお、鍼灸短大についての御指摘がございました。私もちょっと手元に資料を持っておりませんのでうろ覚えで恐縮でございますけれども、この短大、設置をいたしますときから、視覚障害を持っておられる方々も受け入れることができるようにということで、そのために必要な点字の図書等も整備をさせまして、そういう体制を整えてつくっている短大でございます。現在の受験の状況、入学の状況がどうなっているかというのを、恐縮でございますが、ただいま資料を持っておりませんので、また後ほど適当な時期に先生に御報告をさせていただきたいと思っております。
  95. 新村勝雄

    新村委員 終わります。
  96. 堀之内久男

  97. 渡部行雄

    渡部(行)委員 宗教法人と文部省関係について御説明を願います。
  98. 久保庭信一

    ○久保庭政府委員 宗教法人につきましては、文化庁が宗教法人法に基づきまして所管をしておりますが、靖国神社は文化庁の所管する法人ではございませんで、東京都の所管する宗教法人になっております。
  99. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、昨年は中曽根総理以下閣僚がそろって靖国神社の公式参拝をやったわけですが、ことしは総理はこれを取りやめたわけです。それは大臣はなぜだと思いますか。文部大臣、それに対する御感想をお聞かせください。
  100. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 総理はやはり戦没された方々の慰霊をいたそうということで参拝されたものだと思うております。
  101. 渡部行雄

    渡部(行)委員 いや、私の聞いているのは、去年はそういう気持ちで参拝したでしょうが、ことしやめたのはなぜでしょうかと聞いているのです。どういう心境の変化があったのか、その辺を推察して大臣なりに感想を述べてもらいたい、こういうことです。
  102. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 これは中曽根総理御本人でないとわからないと思うのですが、私から推測するのもいかがなものと思いますが、いろいろ諸般の情勢を勘案されて一応ことしは参拝をされなかった、こう思うております。
  103. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それでは、この公式というのは、どういう条件が整えば公式参拝というふうに言えるのか、その辺をひとつ明らかにしてもらいたいと思います。
  104. 味村治

    ○味村政府委員 公式参拝と申しますのは、公務員が公的な資格で参拝することを言うわけでございます。内閣総理大臣その他の国務大臣が参拝される場合には、これは内閣総理大臣その他の国務大臣としての資格で参拝するというのが公式参拝というふうに私どもは理解いたしております。  その場合に、どういう状況があれば公式参拝になるか、こういう御質問でございますが、これについては、以前官房長官の示されました統一見解がございまして、それによりますれば、例えば玉ぐし料を公費から出すというようなことがございますと、これは公式参拝ではないというふうに否定はできないというふうに言われております。
  105. 渡部行雄

    渡部(行)委員 大臣という職名というか役職は、これは国の機関でしょう。国の機関が国の経費を使って参拝をするということは、これは憲法の二十条と憲法の八十九条に違反するんではないですか。
  106. 味村治

    ○味村政府委員 中曽根総理を初め当時の国務大臣が、靖国神社にいわゆる公式参拝を昨年の八月十五日にされたわけでございます。それにつきましては、いろいろ政府といたしまして検討いたしました結果、そのような公式参拝は憲法に違反しないという結論を得まして実施されたわけでございます。  この昨年行われました公式参拝は、昨年の官房長官談話でも述べられておりますが、祖国や同胞を守るためにとうとい一命をささげられた戦没者の追悼を行って、あわせて我が国と世界の平和への決意を新たにするために、それにふさわしい方式、神道儀式によらないという方式で行われたものでございまして、これは憲法二十条の宗教的活動に該当しない。さらに、これはただいま申し上げましたような祖国や同胞を守るためにとうとい一命をささげられた戦没者の追悼でございまして、いわば非宗教的な目的でございますので、その際に供花の実費を公費から支出しておりますが、それは追悼の誠をささげるという意味で支出したのでございまして、宗教的目的のために支出したものではございませんし、靖国神社を援助するというような目的のために支出したものでもないので、憲法八十九条には違反していない、このように考えております。
  107. 渡部行雄

    渡部(行)委員 おかしな議論をするものですね。それじゃ、なぜことしは取りやめたのですか。みずから憲法違反をしていると思ったからこそ取りやめたのじゃないですか。本当に正しいと信ずるならば、公式参拝と、堂々とやったらいいじゃないですか。やっている大臣もいるのですよ。しかも、総理大臣がやめたのは、韓国や中国から文句が来たのでやめたのでしょう。これは非常に大きな問題を含んでおると私は思うのです。大臣あるいは内閣総理大臣というのは、その人間に服を着せたようなものとは違うのですよ。機関をあらわすのですよ、人間そのものが。国の機関が宗教法人に関与していくということは明らかに憲法違反じゃないですか。その点、明らかにしてください。
  108. 味村治

    ○味村政府委員 どうしてことし靖国神社に対する参拝を中曽根総理がされなかったかということは、これは私の所管外でございますが、ことしの八月十四日、官房長官の談話がございますので、それを御紹介申し上げておきますと、昨年公式参拝をした。その目的は、先ほど私が申し上げたような目的であった。そして、これに関する昨年八月十四日の内閣官房長官談話は現在も存続しており、同談話において政府が表明した見解には何らの変更もない。つまり、昨年行ったと同じ形式による公式参拝というものは合憲だという見解には変更はない。しかし、あとは官房長官の談話を読ませていただきますと、   靖国神社がいわゆるA級戦犯を合祀していること等もあつて、昨年実施した公式参拝は、過去における我が国の行為により多大の苦痛と損害を蒙つた近隣諸国の国民の間に、そのような我が国の行為に責任を有するA級戦犯に対して礼拝したのではないかとの批判を生み、ひいては、我が国が様々な機会に表明してきた過般の戦争への反省とその上に立つた平和友好への決意に対する誤解と不信さえ生まれるおそれがある。それは、諸国民との友好増進を念願する我が国の国益にも、そしてまた、戦没者の究極の願いにも副う所以ではない。   もとより、公式参拝の実施を願う国民や遺族の感情を尊重することは、政治を行う者の当然の責務であるが、他方、我が国が平和国家として、国際社会の平和と繁栄のためにいよいよ重い責務を担うべき立場にあることを考えれば、国際関係を重視し、近隣諸国の国民感情にも適切に配慮しなければならない。 こういうことで本年は差し控えた、このようになっております。
  109. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これは時間がないからなかなか細かに追及できないので、私も実際困っているのですが、大体A級戦犯は日本国民のために死んだのですか。あれははっきりと国際裁判によって犯罪者として、戦争責任者として処刑された人たちじゃないですか。そして、日本をこのような悲惨な目に追い込んだ指導者ではなかったのですか。それが国のために死んだという認識をするということは大変なことですよ。その辺はどうなのですか。
  110. 味村治

    ○味村政府委員 A級戦犯が靖国神社に合祀されておりますことは御指摘のとおりでございますが、総理が靖国神社に昨年公式参拝されましたのは、戦争によって国のために犠牲になりました方々に対して追悼の気持ちをあらわすということでございまして、A級戦犯とかそういうことを意識して行ったわけではないわけでございます。
  111. 渡部行雄

    渡部(行)委員 次に、厚生省の方にお伺いしますが、去る十月十四日の毎日新聞の朝刊及び夕刊に掲載された靖国神社合祀に関する記事について、これは間違いありませんか。もし間違いがあれば、具体的に箇所を指摘していただきたいと思います。
  112. 木戸脩

    ○木戸政府委員 お答え申し上げます。  まず、昭和三十一年に「靖国神社合祀事務に対する協力について」と題する引揚援護局長の通知が出されていることと、その内容については事実でございます。  それから、昭和二十八年に、拘禁中刑死または獄死した者の遺族も援護法の対象になったこと、それから、昭和二十九年に恩給法の改正によって対象となったということは事実でございます。  それから、昭和四十六年に援護局長の通知によりまして、三十一年以降一連の関連通知を廃止したことは事実でございます。  それから、新聞の記載の中に、昭和三十四年三月十日付通知によりB、C級戦犯から送付することを決定し、さらに四十一年二月八日にA級戦犯を送付したとの記事がございますが、この点につきましては、戦犯の遺族につきましても先ほど申し上げましたように昭和二十八年の援護法の改正により遺族年金、弔慰金が支給されることになっておりますので、戦犯の遺族の遺族年金、弔慰金の裁定状況についても同様に調査、回答は行ったものと思います。そういう点では恐らく報道のとおりだと思いますが、具体的に個別名をいつ回答したかということについては、もう資料が厚生省には保管されておりませんので、確認はできないわけでございます。  それから、事実と反しますことは、合祀者の選定、決定は厚生省の指示で行われていた旨の記事及び祭神名票に頼らない合祀は行われたことがない旨の記事については、事実に反するわけでございます。  まず、合祀の選定、決定を厚生省の指示で行った云々のところでございますが、厚生省は昭和三十一年に靖国神社の合祀事務に協力するという通知は出しましたが、この考え方は、当時昭和三十年前後におきましては、遺族援護の重要な内容として、亡くなった人はいわゆる靖国神社に合祀してほしいという感情が遺族の中にあったのは事実でございます。それから、一方におきまして、当時もやはり憲法との関連で、国が直接合祀するあるいは合祀について公金を支出するというのは憲法違反だという議論があったわけでございまして、厚生省としても関係各方面ともいろいろ相談いたしまして、靖国神社からの調査依頼に応じて一般的調査、資料提供業務の一環として調査、回答する、つまり遺族援護の業務内容で調査資料の提供をする、こういうことであったわけでございまして、だれを合祀するかというのは靖国神社の判断であり、厚生省は合祀には関知はしていないわけでございます。  この点につきましては、五十九年二月十六日の盛岡の地方裁判所で、靖国神社の神野藤さんという禰宜の方も、この合祀というのは靖国神社の判断でやっていることであって、厚生省あるいは国は一切関知していないというようなことも言われている点でございまして、その点につきましては靖国神社側もお認めになっている、こういうふうに思うわけでございます。  それから、厚生省が祭神名票により送付しなかった者についても合祀の対象にはなっているわけでございます。例えば、細かくなりますが、対馬丸の遭難者とか外務省の職員等は厚生省においては把握はできておりませんが、私どもが靖国神社側に確認したところでは、このような者も合祀の対象となっている、こういうことでございまして、祭神名票に頼らない合祀は行われたことがないというのは事実に反するわけでございます。
  113. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これは逐次掘り下げて質問していきますが、戦後靖国神社に最初に合祀されたのは、昭和三十一年四月十九日付厚生省引揚援護局長の都道府県に対する通知から初めて行われたのですか、どうなのですか。
  114. 木戸脩

    ○木戸政府委員 靖国神社の合祀は、昭和三十一年の援護局長通知を出す以前からも行われていたわけでございますが、後からいろいろ資料を見ますと、三十一年に通知を出しましてから、通知の中に、三年間でできるだけ協力事務を終わらせるというようなことがございまして、その三年間で合祀がかなり進んだというような事実はございますが、合祀そのものはこの通知によって初めて行われるようになったということではございません。
  115. 渡部行雄

    渡部(行)委員 この合祀ということですが、これは靖国神社にとっては最も基本的な中心的な宗教活動でしょう。この合祀というものがなかったならば、靖国神社の存在価値すらなくなってしまうのじゃないでしょうか。したがって、この靖国神社は、合祀そのものが存在なのです。たとえ協力の名目であれ、この合祀に対して行為そのものが中心的な要素を構成するものであるならば、これは憲法上どうしても許されない違反行為だと私は思います。しかも、この事務は靖国神社自身がその能力を持っていないことは明白であります。だから、国は、戦前の合祀事務の継承として同じ事務形式を協力の名のもとに繰り返してきたにすぎません。それに間違いないでしょう。どうですか。
  116. 木戸脩

    ○木戸政府委員 先ほども御答弁申し上げたわけでございますが、厚生省としては、あくまでも遺族の援護事務として、一般的な調査資料提供業務の一環として、遺族年金、弔慰金の裁定関係の資料を提供するということで、靖国神社に対して資料を提供しているわけでございます。確かに当時は靖国神社関係の調査、回答が大変多かったわけでございますが、最近におきましては他の団体等の回答の方が大変多くなっているわけでございまして、私どもとしましては、遺族の援護事務の一環として一般的な政府の資料提供業務というふうに解しているわけで、憲法二十条に違反するものではないと考えております。
  117. 渡部行雄

    渡部(行)委員 あなた、最高学府まで出ているんだから、いいかげんなごまかしをやろうとしないで、真っ向から取り組んで答えてくださいよ。言っていることとすれ違いの答弁ばかりしているんだね。私の聞いているのをそのまま受け取っていないで、全然別な答弁をしているのですよ。  私は、この合祀事務というのは、靖国神社の中心的な、靖国神社の存在そのものを意味する重要な基幹的な事務じゃないかと聞いているのです。どうなんですか、それは。——答弁者、いないのですか。いなかったら総理大臣を連れてきてください。
  118. 久保庭信一

    ○久保庭政府委員 靖国神社は宗教法人でございまして、宗教法人の諸活動につきましては、私どもは規則を認証するという仕事でございまして、どのような祭神をお祭りするかということは靖国神社の自由でございまして、それにつきましては、文化庁としてとかくのことを申し上げる立場にございません。  なお、宗教法人靖国神社の規則によりますと、第三条に「目的」が書いてございますが、その中では、「国事に殉ぜられた人々を奉斎し、神道の祭祀を行ひ、」と、このように書いてございまして、靖国神社はそのような宗教法人であると理解しております。
  119. 渡部行雄

    渡部(行)委員 私は文化庁に尋ねたわけじゃないのですよ。政府に今言った質問に対する答弁をお願いしたわけです。文化庁は、今の私の質問に対して、その権限上、大体答える筋合いじゃないでしょう。これはこの祭神名票をつくらせた厚生省が答えるべきでしょう。それはどうなんです。
  120. 木戸脩

    ○木戸政府委員 祭神名票というのは靖国神社がつくりまして、これに記載してほしいということで、それに記載を四十六年まではしていたわけでございます。私どもが送りました弔慰金、遺族年金の裁定状況をもとにして靖国神社が合祀をしている。結果的には、私どもの送りました結果によりまして相当大多数の人が合祀をされているという事実はあると思います。
  121. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それでは、証人の言葉をかりて申し上げます。これは当時の厚生省幹部、そして靖国神社関係者の証言によると、「この通知内容に基づいた合祀事務は四十六年まで十五年間にわたって続けられた。神社側は同省から渡される「祭神名票」に基づいて霊璽簿を作成して合祀。二重合祀を避けるため神社が行うチェックで見つかった不備票以外に合祀対象からはずされたケースはなく、同神社が独自に合祀した戦没者もいないため、合祀者の選定、決定はA級戦犯も含めて事実上、事務を統括していた同省の指示で行われた、としている。」こういうふうに指摘してあるわけです。証人が言っているのです。  そしてまた、「四十六年二月、援護局長名の通知で、三十一年の通知を廃止。戦没者の身上事項の調査は「団体など」から依頼があった場合の一般的な事務として扱うこととし、」云々とあって、さらに、「厚生省の合祀事務について靖国神社側では「A級戦犯を含む戦没者の合祀は、厚生省が作成、手渡される祭神名票に基づいているのは事実だ」と話している。」こう書かれているのです。これはどうなんですか。
  122. 木戸脩

    ○木戸政府委員 先ほども御答弁申し上げたとおり、事務の流れといたしましては、私どもの弔慰金なり遺族年金の裁定状況というのが靖国神社側に協力の内容として伝えられる、それをもとに靖国神社が合祀しているというのが事実でございますが、厚生省が合祀をしているというようなことは全くございませんわけでございまして、その点につきましては先ほど御答弁申し上げたとおりでございます。  繰り返しになりますが、靖国神社も盛岡地裁の裁判の公式の席上で裁判官の証人尋問に対して、それは靖国神社が独自でやっていることだというふうに言っておるわけでございますので、ここに書いてあることは全く事実に反するわけでございます。  さらに申し上げますと、私どももここに書いてございます厚生省の先輩という人にも直接会ってみましたが、やはり先ほど私が御答弁したとおりにいろいろ考えて、やはり協力ということでいこうということになったということでございます。
  123. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これは非常に苦しい答弁をしておるようです。だから、あなたののどがかれているのが何よりも雄弁に物語っていると思うのですよ。靖国神社が大体合祀できるはずがないのです、全然経過がわからないんだから、厚生省から送られてきた都道府県から照会されたその祭神名簿を信頼して合祀しているだけのことなんですよ。そうでしょう。靖国神社が初めからわかっているなら、何も厚生省が憲法違反の疑いある事務に手を出す必要はないわけですよ。そこを明確にしてください。これは、「大西孝夫・厚生省援護局庶務課長の話」というのは、大変大うそがここに書かれているんです。「厚生省は五十年代になってA級戦犯合祀が表面化するまで、合祀されているかどうか、全く知らなかった。」こういう白々しいことを平然と言っているんですよ。こういうことが世間に通ると思いますか、どうです。
  124. 木戸脩

    ○木戸政府委員 何遍も御答弁を申し上げるわけでございますが、私どもはあくまで援護業務の一環として調査、回答というものを行っているわけでございまして、合祀そのものをやっているわけでないわけでございます。  それから、大西庶務課長のことの御指摘がございましたが、ここに書いてございますように、「厚生省は五十年代になってA級戦犯合祀が表面化する」というのは、これは新聞等によりますと、五十三年に合祀して五十四年にそれが新聞に載ったということでありまして、それまでは厚生省としては全く知らなかったというのは事実でございます。
  125. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それでは、ここに「公式参拝を推進している日本遺族会会長、長谷川峻元運輸相の話」、こういうふうになって、その一部を読んでみますと、「靖国神社への合祀や公式参拝は慣習法で認められている。」その後で、「A級戦犯合祀も国の手で行ったことがはっきりした以上、」云々と言っているんですよ。「国の手で行ったことがはっきりした以上、」こういうことで言っているんです。これは元大臣ですよ。これについては、この靖国神社への合祀や公式参拝は慣習法なんですか。これは法制局の方からひとつお聞きしたいと思います。
  126. 味村治

    ○味村政府委員 靖国神社への公式参拝につきましては、従前から憲法二十条三項との関係で問題があるという立場を政府はとってまいりました。それは昨年まででございます。それで、昨年検討いたしました結果、先ほど申し上げましたように、戦没者に対する追悼というのは非宗教的目的だ、宗教目的ではなく非宗教目的だ、そして、そういうために追悼というのにふさわしい方式、靖国神社の定めております神道儀式にはよらない方式で、昨年の場合は総理は一礼をされたわけでございますが、普通でございますれば、いわゆる正式参拝と申しますものでございますれば、いわゆる修祓を受けまして、玉ぐしを奉呈し、二拝、二拍手、一拝ということを行うのが、これが神道儀式でございますが、そういう儀式によらないでただ一礼をされた、そういう方式によるのであれば憲法違反にはならない、こういう見解のもとに昨年総理が公式参拝をされたわけでございまして、したがいまして、公式参拝はそれまでは行われていなかったわけでございます。
  127. 渡部行雄

    渡部(行)委員 いや、私の聞いているのは、これは慣習法なのかどうかということなんです。慣習法であるならある、そうでないならない、こういうふうに答えていただければいいのですよ。簡単にひとつ。
  128. 味村治

    ○味村政府委員 慣習というのは、ならわしとして行われていることが法的確信を持つに至った状態ということでございますが、私が先ほど申し上げましたものは昨年初めて行われたことでございまして、決してならわしとして行われていたものではございません。したがって、慣習法にはなっていないということでございます。
  129. 渡部行雄

    渡部(行)委員 私は法制局長官の答弁を信用いたします。問題は、日本の大臣をした人でさえ、この程度の法律知識しか持っていないのですよ。こういう法律知識で勝手に、これは合憲だ、違憲だと言われたんじゃ大変なことになりはしないかと私は危惧するものであるわけです。そしてしかも、これは厚生大臣が認めているのですよ。国の関与を。  これは十月十四日、東京新聞ですね。ちょっと読んでみます。「斎藤厚相は十四日の閣議後の記者会見で靖国神社の合祀事務にかつて国が関与していたことを明らかにした。これは厚生省が三十一年に「靖国神社合祀事務に対する協力について」と題する同省引揚援護局長名の通知を出し、都道府県に戦没者の合祀事務推進に協力するよう求めたもの。」そしてこの問題について今度は、「後藤田官房長官は同日の閣議後の記者会見で、「政教分離が憲法上の原則であるのは当然。従ってA級戦犯の合祀は政府が関与すべき筋合いのものでないことも明らかだ」との政府の立場を強調した。」と書いてあるわけですが、このようにちゃんと関与した事実を認めているのです。これについてはどういうふうに思いますか。
  130. 木戸脩

    ○木戸政府委員 十四日の日に厚生大臣が閣議後の記者会見で靖国神社問題について発言をしたのは事実でございますが、斎藤厚生大臣が申し上げましたのは、関与というのは、三十一年にこういう通知を出して、遺族援護という立場、それから一般的な調査、回答の一環として協力をしていた、こういうふうに申し上げたわけでございまして、合祀そのものに関与したというようなことは、斎藤厚生大臣は当日の閣議後の記者会見でも決して言っているわけではないわけでございます。
  131. 渡部行雄

    渡部(行)委員 あなたの言う合祀そのものというのは、つまり祭神名票を受け取ってそれを靖国神社の英霊の名に連ねること、その連ねることだけを言っていると思うのですが、合祀という事務はどこからどこまでが合祀なんですか。
  132. 木戸脩

    ○木戸政府委員 私は靖国神社の所管でもございませんので、どこまでを合祀というかということについては、一般論としてしかお答えができませんが、私の知識では、合祀というのはやはり一つの神社の行為でございまして、やはりその神社に神として祭る、具体的にはその名簿に亡くなった戦没者の名前を載せるということが合祀だというふうに理解をしているわけでございます。
  133. 渡部行雄

    渡部(行)委員 その名簿の作成までの作業を政府がやったということですね。それは全然合祀とは別なんですか。
  134. 木戸脩

    ○木戸政府委員 私どもは、戦没者の名前、それから遺族年金、弔慰金をいつ支給したか、どの部隊にいたか、こういったようなことについては靖国神社に回答をいたしておりますが、これは合祀そのものではないと私どもは考えております。
  135. 渡部行雄

    渡部(行)委員 遺族年金なんか、なぜ靖国神社が必要なんですか。そんなもの、靖国神社にとってなぜ必要なの、遺族年金が。生活援護事務なんでしょう、それは。  この厚生省の遺族援護の業務には大別して二つあるわけで、その一つは遺族の生活の援護の事業、もう一つは遺族の心情に配慮した事業、こういうふうになって、このどれに当たるのですか。なぜ靖国神社が遺族がもらうお金まで心配しなくちゃならないのですか。何のために靖国神社にそれを通知しなくちゃならないのですか。
  136. 木戸脩

    ○木戸政府委員 私どもは、積極的になぜ靖国神社に通知をしなければならないかというよりは、関係団体から回答を求められるときに、それが違法なものでない限り回答するというのが私どもの基本的な考え方でございます。私どもはやはり、政府の見解でございますが、靖国神社が戦没者の追悼の中心的な施設であるというふうには考えておるわけでございますし、靖国神社に対して、求めに応じて調査、回答するというのは、多くの遺族の方々が望んでいることだというふうに考えているわけでございます。具体的には私どもは、これは今先生がおっしゃいました遺族の心情援護に関する事務、こういうことに理解をしております。
  137. 渡部行雄

    渡部(行)委員 勝手に遺族がそう思うだろうと解釈するのも勝手かもしれませんが、そんなことは全然根拠のある話になっておりませんよ。  そこで、合祀者の選定や決定は、A級戦犯も含めて事実上、事務を総括していた厚生省の指示で行われたと証言しているのです。先ほど読んだとおり。これは全く今までの答弁は、事実を歪曲して、国会を侮辱し、軽視するものと私は思うのです。まるっきり今までの答弁は事実と反しておる。  しかも、政府が本当に正しいことをやってきたと確信するならば、なぜ昭和三十一年以降の通知を廃棄処分にしたのか。いささかの良心があったからこそそうしたのではないでしょうか。  そうして、言葉だけはいろいろと使い分けをしておりますが、それはちょうど私たちが背広を着がえるごとに人間まで変わりはしないのですよ。今の事務のやり方というのは、ただ表現を変えているだけで、事務そのものの内容は全然変わっていないのです。そして、実は昨年我が党の参議院の野田哲氏から質問をされて、それ以降今度はこの祭神名票の中の合祀という文字を取り除いた。こういうふうに国会論議のあり方でいつも動揺しておる。これが一番確信のないやり方だということが言えるわけで、そこでなぜこんなばかばかしいことを繰り返しているのか。  要は、なぜ憲法論議がこれほど激しく闘わされているのかというと、結局戦争で死んだ方々を何とか祭って国民がこれを参拝したい、そういう心情と、そして宗教と政治、政教分離のこの憲法との間にどう調和をとったらいいのかという、そういう立場で考えた際、どう考えてもこれはなかなか調和のとれる問題ではないわけです。なぜならば、靖国神社そのものが宗教法人なんです。  そこで、こんなことを繰り返すならば、国会の合意でもいいし、国民合意のもとに国民英雄墓地というようなものを全然宗教と関係なくつくって、そして堂々とこれに公式参拝できるようにしたらいいじゃないですか。なぜそういうことを考えられないのです。こんなことをやられておったら、英霊だって迷惑だと私は思いますよ。こんなことで平和祈願ができますか。国論が分断されて、そうして宗教団体が皆反対しておる、こういうやり方をやるところに今の大きなファシズム的な問題が潜んでいるのですよ。これについてはどうです。
  138. 的場順三

    ○的場政府委員 宗教色を払拭した施設をつくって、そこで戦没者の追悼をすべきでないかという御議論、これはかつていろいろ御議論がございましたし、それから、昨年公式参拝を実施するに当たりまして有識者の意見を聞きました靖国懇の場でも出た問題でございます。今後、将来国民がそういう方向で望んでおられるということであれば、検討すべき課題だと思います。  ただ、一つ申し上げておきますと、昨年の靖国懇でも議論が出たわけでございますが、靖国神社の公式参拝を行いましたゆえんは、靖国神社が戦没者追悼の中心的施設であって、その靖国神社に公式参拝することを遺族や国民の多くの方々が強く望んでおられる、そういう国民の要望にこたえる道を探るという意味で、昨年、宗教色を払拭し、憲法に抵触しない範囲で行ったという事実がございますので、先生の御指摘の点については、将来の課題として、国民のそういう要望が一つの方向にまとまりますようであれば、政府部内においても検討する必要があろうかと思いますが、そういった事情があるということもまた御理解いただきたいと思います。
  139. 渡部行雄

    渡部(行)委員 遺族の方はそれを望んでいるとあなたは言われたけれども、私だって遺族なんですよ、私は望んでませんよ。憲法違反までして、国民に憲法違反の疑問を与えるようなやり方でお参りされたって、そんなことありがたくないですよ、遺族からしてみれば。——そういう人も中にはいるだろう。しかし、全部がそれではないわけですよ。だから私は、国民に本当に合意されたそういう上にこそこの英霊というものを祭るべきではないか、こういうことを言っているのです。  時間が来たようですから、これは今までの答弁を決して私は承知したわけではありません。これには非常に不満がありますから、今後また機会を見てやることにいたしまして、一応きょうはこれで終わります。
  140. 堀之内久男

    堀之内委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十一分休憩      ────◇─────     午後三時二分開議
  141. 堀之内久男

    堀之内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。草川昭三君。
  142. 草川昭三

    草川委員 公明党・国民会議草川昭三でございます。  まず最初に、午前中も少し出ておりましたけれども、会計検査院文部省義務教育国庫負担金経理が不当と認められたものという指摘があるわけでございまして、これが毎年というよりも、ここ最近ずっと繰り返されておるわけでありまして、上積みというのですか、事実と相違をした過大報告をしていると指摘をしておるわけであります。これを見てまいりますと、小中学校児童生徒数の減少傾向に伴っていろんな地方の市町村では苦労しておるわけでありますから、勢いこういうことになると思うのでございますが、それにしても毎回繰り返されることはいかがなものか。  特に、私学振興財団に関してこれを絞って見てまいりますと、私学振興財団の場合は、五十年度から出ておりますけれども、大体その支出をした補助金の一割から二割程度の数字が出てきているわけであります。例えば五十年の場合は三億に対して一億七千五百万、あるいは五十一年度の場合でも約五億、四億九千九百万に対して二千万というように、ずっと同じような比率で毎年のように出てまいりまして、五十二年の場合は三十三億に対して一〇%近い三億三千万ということになっておるわけでございまして、これも非常に重要だと思うのでございますが、午前中たしか局長の答弁では、少し柔軟な対応を図りたいとおっしゃった答弁があったやに聞くわけであります。その柔軟というのは、都道府県に対して柔軟なある程度の幅を持って申請をしろということを言っておみえになるのか、文部省が柔軟な対応を基本的に考えたいと言っておみえになるのか、お伺いしたいと思います。
  143. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 確かに、毎年事務的なケアレスミステークで会計検査院から何件か御指摘を受けておるということは、私どもとしては大変遺憾に考えているところでございます。私どもとしましては、こういうような事態に対しまして、常日ごろから、私学振興財団に出す補助金申請の基礎的な数字については、十分各学校法人で確認をして提出するようにというふうに指導をいたしてきております。  今後ともその指導を徹底してまいりたいというふうに考えておりますが、同時に、そういう事務処理上の極めてケアレスミステークであっても、会計検査院から不当事項として指摘された学校法人につきましては、その翌年度、特別補助の一部をカットするなりして、私学、学校法人の注意を喚起しているところでございます。  毎年、事務的なケアレスミステークで数件の指摘を受けておることは大変遺憾に存じておりますが、今後とも十分指導を徹底してまいりたいというふうに考えているところでございます。
  144. 草川昭三

    草川委員 午前中の局長の答弁の質問を今再質問しておるわけですが、柔軟な対応をするとおっしゃったと思ったのですが、それはどうだったんですか。
  145. 加戸守行

    ○加戸政府委員 午前中に私どもの方から、いわゆる義務教育国庫負担金に関しまして児童生徒数の水増し報告の件につきまして、そういうことが起こらないように、今後、いわゆる学級編制の認可あるいは教職員の配置等の問題につきましては弾力的な対応を指導しているということを申し上げたわけでございます。それは義務教育国庫負担金に関しての件でございます。
  146. 草川昭三

    草川委員 ここでちょっと大臣にお伺いをいたします。  今、義務教育と私立大学と二つの質問をしたつもりでございますが、私立大学の方に移りますが、今私が指摘したように、いろいろと補助金の問題が出ておるわけでございますが、実は私立大学側にしてみれば私立大学としての言い分が随分あるわけでありまして、国公立大学と私立大学の教員一人当たりの学生数は、国公立の場合は十・四、私立大学の場合が二十五・四、倍に近い。あるいは、少し古い資料になりますけれども、かつてOECDが教育調査団というのを日本に派遣をしたことがございますね。このOECDの教育調査団のレポート等を見てまいりますと、日本の大学というものについての問題提起があるわけです。「私立大学と国・公立大学との区別の解消があげられよう。」というような言い方がございますし、また、大学の管理運営等で、「国立大学を自律性をもった法人組織に改め、現在の私立大学と同格に近いものに」したいという、こんなような提言もございますし、前の藤尾文部大臣も就任のときに、ぜひ私立大学の補助金を見直していきたいというようなことも言っておみえになります。  このような点について新大臣はどのようにお考えになられるか、お伺いをしたいと思います。
  147. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 まず申し上げたいことは、OECDの調査、その報告がありましたのは、たしか一九七〇年、昭和四十五年だと承っております。あれから見まして十六年経過しております。その間に国としては、私立大学に対する助成というものを含め、教育投資というものを相当数努力してまいりました。しかし、昭和五十六年度以降、総予算の伸び率よりも教育投資の方が下回ってきておることもまた事実でございますが、これは、予算の組み方がシーリングという枠組みの中で運営されるためにこういうことになってまいった、非常に残念に思うております。しかし、そういう中にありましても、私立学校に対する助成は着実に伸びてまいりました。最近におきましては、これもシーリングの影響がございまして額が低下してきておるのは事実でございますけれども、私学助成に関しましては、総予算の伸びが四十五年から今日に至ります伸びに比べまして、かなりな伸び率で来ておると思うております。  ところで、御承知のように、日本の大学教育の中に占めます私学のウエートは、他の国に対しまして非常に高いのが一つの特徴でございます。したがって、これは教育熱心だということもあると思うのでございますが、今後の我々の努力としては、この私学の助成をもう少し厚くして、国公立に対し十分対抗し得るような素質に仕上げていくということが重要な課題ではなかろうかと思うておりまして、文部省としては、私学助成につきまして、六十二年度予算では重点事項としてこれに取り組んでまいりたい、こう思うております。
  148. 草川昭三

    草川委員 また少し話が飛びますが、今度は私学の話ではなくて、昨日、授業形態の大幅な弾力化と習熟度別の指導、あるいは週休二日制、小学校学年の生活科の登場等教育課程審議会の中間のまとめ、報告、そういうものが発表されております。私ども、この報告を報道機関等で読んだわけでございますけれども、非常に重要なことを御相談なすっておみえになるのでございますが、本当にこれで学校はよみがえっていくのかどうか、減った時間がゆとりに回るのかどうか、塾に行く時間がかえってふえるのではないだろうか、あるいは副読本という話も出ておりますけれども、それについての基準がまた必要になってくるのではないか、あるいは今回の一つの中間のまとめを延長した場合に、受験教科の時間増や能力主義、差別教育というのですか、そういうものがかえって深まるのではないかという心配があるのですが、ひとつ大臣に、きのうの見解についてどのように判断を持っておみえになるか、お伺いしたいと思います。
  149. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 申しわけないのですが、私はそういう教育課程の中身について余りに勉強もせず大臣になってしまいまして、目下急いで教育課程の過去からの経過をずっと勉強しつつあるところでございます。  ところで、今回の中間の取りまとめを見てまいりましたら、低学年のところには生活ということに十分配慮してある、私はこう思うております。一方、高学年、特に中学校高等学校に行きますと、本人の特性を生かすために選択をふやしてきておる、こういうことを今度の中間まとめから感じておるのでございます。  何か、選択科目がふえることによって受験競争にドライブがかかるというようなことが一部の新聞に出たりしておりますが、そういうことではなくて、個性を生かすという観点に立って教育課程審議会の委員の方々が議論されたことであろうと思いますし、そうすると、選択をどうとるかということは、担当の先生が個々の学生と十分相談してもらって、その中で選択を決めてもらえば教育課程審議会が志向しておられる目的が達せられるのではないか、私はこのような期待を持っております。
  150. 草川昭三

    草川委員 積極的な評価というように今の答弁を聞くのか、なかなか難しい御答弁でございましたけれども、受験戦争というものを根本的に解決しない限りは、どのようなことになってもかえって児童に負担が多くなるのではないかという意見もあるし、どちらかと言えば、私もそういう感じがするわけでありますが、この問題はきょうの主たる議論でありませんので……。  一言だけ、藤尾前文部大臣と新大臣との違い。今、用意していなかったというような御発言もございましたのでお伺いするのですが、前文部大臣は、臨教審というものに対して、法的には臨教審の答申は尊重しなければいけないけれども、向こうがおやりになったことを私はまた別の考え方でいくというような趣旨の発言が大臣就任時にあるのです。ついでながら新大臣は、臨教審に対してどのようなお考えを持っておみえになるのか、お伺いしたいと思います。
  151. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 藤尾前文部大臣からこの問題について詳しいお話も聞いておりませんし、打ち合わせもしておりません。しかし、私は藤尾前文部大臣と深い交遊、おつき合いがございまして、あの大臣の人柄、考えておられることは私も十分に推測できるのでございますが、あの表現の中でも、要するに臨教審の答申の趣旨は尊重するということはやはり言っておられるのです。けれども、それを実行する場合に、できることとできぬことがあるではないか、そういうことについては、私はというよりも文部省としては、できることとできぬことをやはり選別して、できるだけその趣旨は尊重するけれども、そこには限界があるような意味合いで言っておられると私は解釈しております。  私自身といたしましても、大体同じような考えと申しましょうか、臨教審で言っていただくことは、社会人から見た現在の教育改革に対する御意見だ、非常に示唆に富むものもあるし、また我々が気づいてなかった点も多々あるように思います。こういうことは、その答申の中身、特にその議論が大切だと私は思うのです。答申が出るまでの議論が大事だ。そういうものを十分に参考にさせてもらって、できるものあるいは気づかなかったもの、こういうものはできるだけ早くやっていったらいいと思うのです。しかし、臨教審の答申だといいましても、これを教育行政のベースに乗せるとか、あるいはそれに対しては大変な財源が必要であるというようなことにつきましては、十分に検討させてもらわなければ、答申がございましたから早速いたしますというわけにはなかなかいかない。けれども、すぐにできるものはやっていったらいいじゃないか、こういう取り組みでおるわけであります。
  152. 草川昭三

    草川委員 私がなぜ今その話を聞いたかといいますと、きょうは決算委員会でございますが、必ずしも予算上の問題でなくて、行政上の過去のあり方を我々はこの場で議論をしながら新しい世代に受け継いでいくという役目がこの決算委員会にはあるわけでございまして、決算委員会の機能がフル稼働するならば臨調だって要らないわけですよ。でございますから、政治家である大臣に、臨教審というのですか、せっかく各大学の先生なりいろいろな有識者の方々にお願いしたわけですから、しかもそれは法的に裏打ちがあるわけでありますから、もっと高い評価を素直に受けとめられるのが政治家としての受けとめ方ではないだろうかと思うのです。  もちろん、行政は抵抗しますよ。国鉄再建が今行われておりますけれども、国鉄当局だってどれだけ抵抗しているかわかりません。それを政治的な判断の上に分割・民営ということにいくわけです。大学の今持っている財産だとか、大学の行政上の資産等を含めまして、国鉄以上にメスを入れなければいかぬ時期が来るのですよ。そういう意味では、私は今の大臣の答弁には甚だ不本意でございまして、せっかく新大臣になられたわけですから、ひとつ高い次元で、政治的な判断から臨教審の御意見を受けとめて対処するというふうにぜひ言っていただきたい、こう思うわけであります。これは要望でございます。  さてそこで、第三番目の問題になりますが、実はきのうの新聞でございます。きのうからきょう、国体のあり方について随分いろいろと行政監察の問題が出ておるようであります。私はそのことがいいとか悪いとかじゃなくて、文部省に対してお伺いをするわけでありますが、国体は来年の沖縄開催で全国を一巡することになります。開催県にいろいろな無理が強いられていることは、たびたびいろいろと議論に出てきておるわけでありまして、選手強化の対策だとか、学校教育行事との兼ね合いだとか、開催県がいつも天皇杯を獲得するのが恒例になっている、あるいはスポーツ選手を特別の枠で受け入れる、いろんなことがあるわけでありますが、確かに私は問題提起だと思うのです。  これを今直ちにということは別の問題といたしまして、少なくとも担当する文部行政として、担当と言うかどうかは別でございますが、今の国体というものをどのように今後対応をなされるのか、大臣からこれもお伺いしたいと思うのです。
  153. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 国体が戦後直ちにこれが新設されまして以降、これで大体来年の沖縄県の開催をもちまして一巡いたします。この国体が全国持ち回りで毎年開催していったということは、その地方の文化、スポーツの振興に非常に重要な意味があった、そしてまた、その功績は非常に大きかったと私は大きく評価いたしております。  仰せのように、開催県が自分の開催県のメンツにかけてもとにかく優勝するんだという力んだところがあったことは、これは確かにございましたし、できるだけそういうことではなくして、スポーツ精神というものは、自分の実力を全部素直に発揮することがスポーツ精神である、そういう点から見まして、ちょっと行き過ぎな点があったと思うのでございますが、これは何も山梨県だけの問題じゃなくして、長年にわたってこういうことが一つの慣行的にとられてきておるということは、私はいいことではないと思うております。しかし、これがそういう監察の対象になり得るということが一部の新聞にしろ出たということは、これが一つの警告となって、今後開催県の方々は、みずからの力でこれをちゃんと正常な格好と申しましょうか、要するに余り過熱して非難を受けないような、そういう程度で、しかもその中で萎縮することなく、十分な力を発揮してくれるように努力してくれるものと私は期待をしております。
  154. 草川昭三

    草川委員 原局の方は、大臣に続いて文部省の体育局になると思うのですが、こういう一つの指摘があったわけです。実際は行政監察をするとかしないとかは別として、そういう動きがあったことを踏まえて、今後体育局としてはどういう御指導をなさるのか、お伺いします。
  155. 國分正明

    ○國分政府委員 基本的には大臣がただいま御答弁申し上げたようなことに尽きるわけでございますが、私ども、今までいろいろの指摘がある都度、やはり国体の本来的なあり方という観点から、開催県の実情あるいは特性に応じて弾力的に開催するようにという指導に徹してきたわけでございます。  今後の国体のあり方につきましては、ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、沖縄で一巡するわけでございます。また京都から二巡目が行われるということでございますが、体協、日本体育協会におきましても先般来検討を進めておりまして、現行以上に広く国民各層を対象とした国体を目指す、あるいは準備運営に当たってはより一層簡素合理化に努めるというような基本方針を定めておるわけでございますので、私どもも今後ともいろいろな御指摘をいただきながら改善に努めてまいりたい、かように考えております。
  156. 草川昭三

    草川委員 ぜひ、開催県の今いろいろと出ている問題点を考えられて、第二巡に当たっては抜本的な再検討をお願いをしたいと要望しておきたいと思います。  そこで、同じく体育問題でございますけれども、実は戦前に、いわゆる日本統治時代に韓国人の方々が日本国籍のもとでオリンピック記録をそれぞれ樹立をした経過があるわけであります。例えば、日本統治時代の韓国人オリンピック入賞者は、一九三六年にベルリン・オリンピック、これは第十一回大会でございますが、マラソン第一位に孫基禎さん、これは韓国名で言いますとソン・ギジョンさん、この方が第一位でございまして、それから第三位に南昇龍さん、それから一九三二年の第十回大会でロサンゼルスでは、マラソンで第六位に金恩培さん、こういう方々がお見えになるわけでございますが、これは既に西ドイツあるいはアメリカ等においては韓国籍というように公式記録の国名変更がなされているわけでありまして、問題は日本はどういうような対応をするのか、これは外務省、文部省、JOC、体育協会等々あるわけでございますが、どのようなお考えになられるのか、私は国籍変更すべきだという立場からこの問題を提起したいわけでございますが、外務省からお伺いしたいと思います。
  157. 渋谷治彦

    ○渋谷説明員 ただいま委員指摘のように、いわゆる日本統治時代に日本選手団の一員としてオリンピックに出場し入賞された三名の朝鮮半島出身の方々の記録の表示につきましては、これらの方々が現在韓国に居住されている、もっともこのうちの一名の方は既に亡くなられておりますけれども、韓国に居住され、かつ韓国籍を有しておられるということにもかんがみ、その国籍等の表示をでき得る限り実態に即した形に書き直すことはできないかというような考え方が以前よりあったということはございます。  このようなことを踏まえまして関係団体が、例えば国籍につきましては現在韓国ということがよくわかるような書き方、名前の発音につきましても韓国語読みに変更するということが可能か否か、こういった点を中心にして現在検討しているものと承知いたしております。  政府といたしましては、この問題は関係団体が自主的に判断すべきものと考えており、当面その検討を見守っていく所存でございます。
  158. 草川昭三

    草川委員 今外務省の方から、関係団に協力方というのですか、検討方を依頼しておるというお話がございましたので、関係団体である文部省所管の各団体あるいは文部省の見解を問います。
  159. 國分正明

    ○國分政府委員 御指摘の孫基禎氏を初めといたします御三方のいわゆる国籍問題でございますが、この問題は、ただいま外務省からも答弁がございましたように、直接にはIOCあるいはJOCの問題であるわけでございます。しかし、文部省といたしましても、今後はコリアの出身者の記録であるということがわかるような表示方法というものはないものかということで、国内の関係団体、具体的にはJOC並びに体協等に検討方を依頼したところでございますので、その結論を待って対処いたしたい、かように考えております。
  160. 草川昭三

    草川委員 そうすると、その場合は、念のために申し上げますが、韓国という言葉をコリアという出身で表現をしたい、こういうことでございますか。
  161. 國分正明

    ○國分政府委員 その点につきましては、外務省等のアドバイスも受けながら、それらも含めて検討してまいりたいと思っております。
  162. 草川昭三

    草川委員 日韓の新しい本当の意味での双方の友好親善ということもあるわけでありますし、過去の歴史的な経過というものを十分踏まえて我々も反省するということを総理みずからもいろいろと御発言をなすっておみえになるわけでありますし、非常に重要な時期でございますから、私はぜひ今申し上げた点の国籍変更を明確にするよう申し上げておきたい、こう思います。  次に、現在の教育現場におきます学校器材の問題、あるいはコンピューターあるいは家庭用テレビゲームが家庭の中で子供にどのように影響を及ぼすかという問題を提起したいと思うのです。  昭和五十四年に初めて本格的なパソコンというのが販売をされまして、急成長を遂げておるわけでありますし、パソコンだけでも五百万台以上生産、販売をされているということが言われております。さらに、家庭用のテレビゲームというのも、御存じのとおり爆発的な普及をしておるわけでありますし、ことしの予算委員会でもこのテレビゲームについて総理の御発言もあったわけでございますが、テレビも見る道具から遊ぶ道具に変わってきておるわけであります。  そこで、ひとつまずそれは置いておきまして、教育現場における学校器材のコンピューターの利用状況について問いたいと思いますし、日本は外国に比べてまだまだ足らないのかどうか、特にフランスと日本だけ比べてもいいと思うのでございますが、これは通産省になりますか、文部省になるか、どちらでもいいですからお答え願いたいと思います。
  163. 西崎清久

    ○西崎政府委員 学校教育におけるコンピューターの利用状況、整備の状況でございますが、情報化社会の進展に伴いまして、学校教育でコンピューターをどのように利用するか、大変大きな課題でございます。  ただ、その整備の状況は、現在日本におきまして、小学校で申しますと設置校数は五百十二校、二・一%、それから中学校では千四百五十校、一三・八%、それから高等学校はかなり進んでおりまして、三千六百六十二校、八〇・六%、こういうふうになっております。特に小中学校では整備はこれからという段階でございまして、先生御指摘のフランスとかアメリカ、イギリス等のコンピューターの設置状況は、相当進んでおるというのは御指摘のとおりでございます。  ただ、私どもは、これから学校教育でコンピューターをどのように利用するかにつきまして、特にソフトウエアの問題、これが大変大事でございます。それから、それを指導する教員の問題も欠かせませんので、ソフトウエアなり教員研修の問題を中心としまして、ことしも研究指定校を設けたりしてやっておるわけでございますが、今後もこれらの面を含めて整備を進めてまいる必要があろうか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  164. 草川昭三

    草川委員 それで、学校の教育現場における稼働状況というのですか、利用頻度というのは非常に悪いという指摘があるのですが、それはどのように把握をしておみえになるのか、お伺いをします。
  165. 西崎清久

    ○西崎政府委員 ただいま申し上げました設置の状況としましては、二・一%、五百十二校、例えば小学校で申し上げましたけれども、これらにつきましての設置状況は、学校別に見ますと一、二台とか二、三台とか、教室ごとに各児童生徒が利用できるような状況ではございません。したがいまして、それら一、二台あるいは二、三台置かれている学校においては、先生がそれらを利用してどのように今後児童生徒の教育に役立てていくかについて、若干まだ研究段階、手探り状態というふうな意味での稼働状況というふうに私どもは承知しておりまして、それにつけましても、やはり全体のソフトウエアの問題を私どもの立場で十分研究し、そして現場にもそれを流して、設置された暁には十分稼働できるようにというふうなことを私どもの努力としてやっていくことが必要だ、こういうふうな認識で現在おる次第でございます。
  166. 草川昭三

    草川委員 そこで、今お話ありましたソフトウエアの問題でございますが、文部省がどういうソフトを開発し、どのように利用させるかという受け入れ態勢があるかどうか。例えば、各教育現場にどういう機種の機械が納入されているか、値段が一体幾らで納入されているか。我々、地元を初めいろいろと調べてまいりますと、何と驚くなかれ、学校のコンピューターというのは定価のマイナス八割引きですよ。八〇%引きですよ。二〇%ですよ。こんなものは、言っちゃ悪いですけれども、完全に原価を割っておるわけでしょう。これは本来ならば公正取引委員会に聞かなければいかぬ事件でございますけれども、原価を割って売っちゃいかぬわけでしょう。ところが、学校現場にはマイナス八〇%で売られているわけです。もし同様なコンピューターを中小企業が買おうと思えば、頑張ったって二割から三割でしょう、引くのは。  どうして学校現場にマイナス八〇%のコンピューターが入るかというと、一たん器材を入れれば、あと今おっしゃいましたソフト、もろもろの関係が全部そこへ行くから、メーカーはもうめちゃめちゃなダンピングをするわけですよ。だから、学校というのは今一番メーカーにねらわれているところなんです、予算を持っておりますから。これは東大だったですか、あるどこかの大学でコンピューターの購入についていろいろな問題がございましたね。これは小中でも同じだと思うのです。これはメーカーの所管は通産省でございますが、通産省はこういう状況をどのように把握してみえるのですか、お伺いしましょう。
  167. 近藤隆彦

    近藤説明員 おっしゃいますとおり、現場ではかなり値引きが行われておるというふうに聞いております。これは機種の間に互換性がなくて、一たん入れますとそれをずっと使い続けなければならないといったような事情も一部にあるわけでございますので、それがメーカー側からしますと、最初に導入しますとそれでかなり勝負が決まったということで、最初の売り込みに大変力を注ぐといった面があると思います。  それで、さらに先生方がこのようなコンピューターを使っていただくためには、使いやすいものでありますし、かつ豊富な、ソフトウエアとしまして教育用に適したものがどんどん開発されることが必要でありますけれども、こういった問題につきましてもやはり互換性の問題がありまして、なかなかいいソフトウエアというものが出回らないのは、機種が変わりますとソフトウエアが使えなくなったりするものでございますから、それから機種によりまして操作が違ったりするものですから、先生方も勉強されまして一たん覚えましても、学校が変わったりしますと、またメーカーが新しいタイプのものを持ってきますと、使えなくなったりする面がございます。したがいまして、このような点につきまして互換性の問題、機種が変わりましても使い方が余り変わらないとか、あるいはソフトウエアが使えるとかいった問題につきまして、これから鋭意研究しまして標準的なハードウエア、ソフトウエアといったものを使っていただくようにしたいということを考えておりまして、現在研究を進めておるところでございます。
  168. 草川昭三

    草川委員 先ほど局長は答弁で、互換性のあるソフトウエアの開発とまではおっしゃってないですね。互換性のあるソフトウエアを、今の通産省の答弁を踏まえた上で、文部省は独自にやられるとおっしゃっておみえになるのですか、どうですか。
  169. 西崎清久

    ○西崎政府委員 現在ソフトウエアの開発につきましては、文部省もこれから作業をいたさねばなりませんし、それからもう一つ申し上げたいと思いますのは、日本教育工学振興会と申しまして、社団法人を私ども所管で持っておりますが、この社団法人でソフトウエアの開発を、これは団体助成を私どもいたしておりまして、そこでもソフトウエアの開発をやっていただくことが一つ。  それから、通産省と私どもの共管でやはりコンピューターの教育利用に関しましての財団法人をつくりまして、そこでもソフトウエアの開発をしてまいろうというふうなことをやっておるわけでございます。  行政と財団法人、社団法人、三つの経路でこれからソフトウエアの開発を本格的に取り組むわけでございますが、現段階では先生お示しの互換性の問題までは、まだこれから検討の段階ということで、そのようにはっきりいたそうというふうな方針はまだ立てておりません。
  170. 草川昭三

    草川委員 ですから私が言いたいのは、今おっしゃったとおりだと思うのです。それは特別にVANのようなものが突如として学校教育に出るわけではございませんのでそうだと思いますが、しかし、学校現場全体では、コンピューター教育ということになりますと、勢いやはり器材は選ばなければいけない、それなりのことをしなければいかぬということは、結果として対応がおくれるということになるし、混乱を招くのではないか、これが私は言いたいわけであります。そういう意味の趣旨を申し上げたわけであります。その話は、今度また、これで終わります。  そこで問題は、今パソコンというのは先ほど言いましたように各家庭の中にも入ってまいりましたし、それからいわゆるテレビゲームというのも圧倒的に家庭の中に入り込んできておるわけです。これはもう予想外におもしろいわけです。我々でもときどき子供さんなんかが持っているテレビゲームなんかをやりますと、ついつい熱中をしてしまう。  これは私の体験でございますけれども、つい最近、各所から父兄の方から電話が入ってきまして、中には直接お会いをする方があるのですが、草川君、パソコンゲームというのは今本当にもう家庭の中に入り、そしていわゆるソフト、その中にアダルトポルノというのですか、いわゆるかなりえげつないものが入り込んできている。それを子供が競い合って買おうとする。だから、例えばテレビゲームの場合だと、入れるカセットというのですか、ソフトというのですか、四千円から五千円するわけです。それをたくさん持っておることが子供の世界の中で非常に優位性を持つことになる。お金がないから万引きをするという例がある。とにかくこれを取り上げてくれ、こういう要望でございます。  実は、私ここにたくさんの本を持ってきたのですが、こういうパソコン用のいろいろなゲームの内容紹介なんですが、袋とじになっておりまして、それをはさみで切ると、私が今申し上げるようなのが出てくるわけですよ。  例えば「強姦体験は、ドキドキだ 期待に、思わず胸と下半身が膨らむ、お楽しみソフト」、こういう見出しですね。それで「177」というタイトルになっているのです。「177」というタイトルのゲーム、ここはもう後で警察庁にお伺いしますが、これは非常に警察庁がばかにされていると思うのです。「刑法177条の強姦罪をもじってつけただけあって、そのものズバリの強姦ゲームだ。家路を急ぐ女性との追いかけっこで始まり、女性の服をすべてはぎとって押し倒せば、次はお待ちかねの、あのシーン。ここで一生懸命、腰を動かして、彼女を」云々、こういうことになるわけですが、そうすると「和姦成立という次第だ。さて、どこまで、男性の欲望を満たしてくれますか?」というようなことを、実は小学校中学校の生徒が読みながら打ち込むわけですよ。  ですから、親としてはもうどうなっておるか、こういうことです。その親の心配は非常によくわかるし、町の本屋に行けばこのような本がたくさんある、袋とじになって、開けますと今の例以外にもいわゆるいかがわしい絵があくさんありまして、それがパソコンゲームなりテレビゲームの題材になるわけでございます。  これは非常に重要だと思うのでございますが、通産省、ちょっとこれはこじつけになるかもわかりませんが、このような業界に物が言えるのかどうか、まず通産省からお話をお伺いしましょう。
  171. 近藤隆彦

    近藤説明員 今先生御指摘の「177」に代表されますような児童の教育上好ましくないと思われますものが、一部出回っておるのは事実でございます。それで私ども、業界に自粛の要請とか、年齢の制限の問題をきちっと、はっきりとわかりやすく書くとか、できるだけの指導をしてまいりたいと思っております。この業界は、パーソナルコンピューターの関係で独立の団体を持っていますので、そういったところを通じましてできるだけの指導をしてまいりたいと思っております。
  172. 草川昭三

    草川委員 警察庁に、ついでながら百七十七条の解説を含めて見解を問いたいと思います。
  173. 根本芳雄

    ○根本説明員 今のアダルトゲームということですが、大変ゲームをおもしろくするということで、そういった非常に好ましくないような形のソフトをいろいろ考えてきている、こういう大変憂慮するような動向だろう、こういうふうに思います。  ただ、先生御指摘のように、大変この問題難しくて、警察として法令的にどういうことができるかということですが、一つは刑法に当たるかどうか、あるいはそれまでいかないとすれば、例えば幾つかの県には青少年保護育成条例、こういうものがございますので、こういったもので有害指定をしていくとか、そういうことになろうかと思います。ただ、基本的には、中身をよく検討して、果たしてそういった法令に当てはめることができるかどうか、こういう作業が前提になって、ゲームをいろいろ、幾つか私も拝見させてもらったのですが、なかなか難しい局面もあるようです。そういうことで、今通産省からもお話がございましたけれども、基本的にはそういったソフトはできるだけ避ける、子供向けにはつくらない、それから売り方についても自主規制をしていただく、こういったことを原則にして、そして中身をよく見させてもらった上で、法令に違反するものはきちんと私どもで対処していく、こういうことになろうかと思います。  ただ、この問題はどんどん進んでいくことが速いので、先生御指摘のように若干対応がおくれぎみになってしまった、こういうことだろうと思います。ただ、私どもとしては、全力を尽くしてそういった子供たちに対する問題がないように努力をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  174. 草川昭三

    草川委員 実は、ソフトを打ち込むというのは、やろうと思えば簡単にできるわけですね、一つのストーリーをつくって。よく聞いてみますと、大学生が多いというのです、アルバイトで。ですからいい小遣いで、十五、六万から二十万ぐらいで、少しでも興味のある人ならこういうソフトをつくって、それを業者に渡す。あっという間にコピーができるわけですから、それがある日突然、いろいろな紹介雑誌等を通じて出る。出たときには、わっといってしまう。親が気がつくのは遅い、我々が気がつくのはもっと遅い、こういうことでございますので、よほどこれは慎重に、私はただ取り締まれということを言っておるわけではなくて、周辺の問題として対応を急がなければいかぬ。  これはやはり子供の教育でございますから、文部省、どのようにお考えになられるのか、お伺いしたいと思います。
  175. 澤田道也

    ○澤田(道)政府委員 まず、具体的に申し上げますと、業界の今一番大きな団体、これは通産省さんと協議をしながら相談をしておるわけでございますが、日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会という団体がございます。この中でも、ある程度自主的にそのような問題について自制措置を考慮されておるようでございますが、実際はこの規制のらち外におられる中小の、今先生がおっしゃったような簡便につくるソフトが出回るということをどうするかという問題がございまして、非常に困難でございますが、まず業界の方につきましては、それにしましても、私どもの方から連絡をとりまして改めて御注意を喚起するということが一つ。  それから、各地域の側では、これはこういうコンピューター物に限りませんけれども、PTAを含めて地域ぐるみで、そういうものについて親が、地域がどう取り組むかということについて、ひとつ社会教育の活動を通じて注意を喚起してまいりたいと考えております。
  176. 草川昭三

    草川委員 非常に歯がゆい答弁ですが、大臣、今の話を聞いておみえになって、どういうようにお考えになられるのですか。
  177. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 これは、私もそういう被害を訴える父兄の声を聞きまして、何とかこういうようなものを取り締まるというか、自粛さす方法はないのだろうかというふうに思うのですけれども、一方から言うたら、これはまた表現の自由で保障されておるじゃないかというようなへ理屈が出てまいりますし、そうすると、これはもうそういう制作する人が自粛をしていただくということがまず第一。それと同時に、やはり大人、親なり一般の関係者が絶えず注意をしていくよりしようがない問題かなと思うたりいたします。何としても業者の自粛以外にないという感じがしております。
  178. 草川昭三

    草川委員 業者の自粛をするような誘導というものが、これまた政治の立場から必要だと思うので、特に文部省のそういう態度を求めていきたいと思います。  時間が大分過ぎてしまいましたので、大学附属病院の問題を提起したいと思います。  大学附属病院というのは、国立大学、あるいは文部省管轄では私立大学、私立医科大学あるいは公立大学等があるわけでございますが、そこの病院で薬を購入をするわけです。薬価でございますけれども、この薬価の価格の協定が非常におくれておるわけでありまして、そのために卸、メーカーが大変な苦しい現状にあるという問題を、この際取り上げてみたいと思うのであります。  まず、全国で三百床以上の大病院というのがあります。これは必ずしも全部大学附属病院とは限りませんけれども、そういうところで一体幾らくらいの薬を年間使っているかという試算を私してまいりました。ただいまのところの総医療費が約十六兆八千億。これは厚生省の統計資料でございますが、その中の薬剤費の割合が大体三〇%でございますから、アバウトな話、五兆円であります。その五兆円の中で、三百床以上の病院というのが大体三〇%でございますから、一兆五千億の薬価というものがその三百床以上の大きい病院で健康保険組合、共済組合に請求をされることになる。ところが、実際にその一兆五千億の薬価で薬を買っておるわけではなくて、二割引き、三割引きで購入をしておるということになるわけです。こういう前提で話をするわけであります。  そこで、ことしの薬価が決まりましてから、いまだ国立大学で薬価が決まっていないというところがあるのかないのか、あるいは私立大学、対象病院数四十八でございますが、どの程度購入薬価が決まったのか、これを文部省からお伺いします。
  179. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 薬剤の購入の件でございますけれども、国立大学におきます薬剤の購入につきましては、昭和六十年度、六十一年度の医薬品の購入につきましては、それぞれ各年度の当初に関係の業者との間に合意を見て契約を行い、そして医薬品を納入した後、適法な請求書を受理をいたしました日から三十日以内に支払うということで、国立大学についてはそのように行われておるものと考えております。  私立の大学につきましては、これは各学校法人と民間業者との契約にかかわる問題でございまして、そこまで文部省としては把握をしておらないところでございますが、私立医科大学協会に状況を聞きましたところによりますと、各大学の諸事情もございまして、一部の大学で医薬品の契約がおくれているというケースもあるけれども、現在それぞれ妥結に向けて鋭意努力中であるというふうに聞いておるところでございます。
  180. 草川昭三

    草川委員 文部省が把握しておみえになりませんから、これは文部大臣、よく聞いておいていただきたいのです。大学の影響は大きいのでね。  国立大学で、対象病院四十四のうち、決定しているのは四十二です。九五・五%。ただし、決まったといっても、それは四月分だけしか決まってないのですよ。五月、六月、七月、八月、例えば三月先とか半年先は全然決まっていないのですね。これは東大病院、阪大、京都大学、それぞれそういう程度でございます。それから私立大学、対象病院四十八、決定病院数、一部どころではなくて、たった四です。だから、決定率わずか八・三ですね。  これはやはり薬価を決めずに薬だけは使うわけですから、その分一体支払いがどうなっておるのかという問題があるわけです。一銭も払わないとは言いませんけれども、せいぜい前年度実績で八とか七でしょう。これをもし中小企業庁に訴えたとするならば、中小企業庁は中小企業をいじめるなということで文句を言ってくるんじゃないですか。  こういう実態でございますが、さらに公立大学で、私、名指しで非常に悪い大学が一つあるということを言いましたが、文部省からこれは答えていただきましょう。公立大学、どこがあるかということ。
  181. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 公立大学につきまして、全体の大学のそれぞれがどういう状況であるかというところまでは、私ども現段階で把握をいたしておりません。
  182. 草川昭三

    草川委員 私は、政府委員室を通じて大阪市立大学病院の状況を調べてもらいたいということを申し上げておいたのですが、これはどういうことになっておるかというと、今でも未決定でございます。未決定でございまして、ずっと薬の支払いが停止をされております。ただし、これは四月から六月納入分が今でも支払い停止でもらっていないという現状なんですね。公立の市立大学病院等が薬価の決定がおくれるということは、それなりの理由があると思うのでございますけれども、薬代を払わぬというのはいかがなものかと思うのですね。だから、これは自治体ではございますけれども、地域社会に対する影響力も多いわけでございますし、私は少し検討していただきたいと思うのですね。  それから、私立大学をさらにずっと読んでいきますと、未交渉、未交渉、未交渉というのが全部なんです。ほとんど薬価の交渉をしていないわけです。これは一流中の大学ですよ。一流大学は全部未交渉で、いまだ薬の値段について決定をしていない。こういう現状というものは、卸の立場からいうと、当然薬は納入をしなければいけない、お金はもらわない、価格も決定されない、それで値引き交渉が始まる、薬価調査をすれば薬価が下がる、アリ地獄ということになるわけです。だから、現在の私立大学病院の薬の購入という問題は、私は文部省としても放置をするわけにはいかぬと思うのです。  名前を全部挙げてもいいのですが、私、持っていますから。しかしこの大学の中には、さる有名大学ですけれども、大学としては薬代を払ったと言うのですね。ところが教室、大学の先生ですよ、教室はそのお金を卸に払わないというところがあるのです。その金をどこかに寄附金のような形で受け入れるというような例もあるのです。私、名前を挙げて申し上げませんけれども、そういう全く問題の多いことがいつまでも続くかどうか、これが今日の医療界でかねがね白い巨塔として我々も追及しておるところでございますけれども、これは本来はまさしくこの決算委員会になじむべき問題でございますが、影響力が大きいから、しかも有名な大学の先生が多いし、有名大学がずらずらと出てくるので、あえて名前は申し上げませんけれども、このような現状について局長、どういうように指導するのか、あるいは文部大臣、特に大臣になられて大学病院に対する影響力は極めて大きいわけでありますから、そこら辺のことまでは大臣も今まで御指摘なすっておみえにならぬと思うのですが、どういう態度をとられるのか、お伺いしたいと思います。
  183. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 私立大学の附属病院の関係につきましては、先ほどもお答えいたしましたように、事柄が学校法人と民間業者との間の取引の問題ということにも相なりますので、これについて個々具体に文部省が介入をするというようなことは大変難しいということは、ぜひ御理解をいただきたいと思うわけでございます。  ただ、御指摘をいただきました件につきましては、国会の場でこういう御指摘があったということを少し詳しく、関係の医科大学協会もございますので、そういうところにお伝えをして、先生の御指摘の趣旨が各大学に通じるようにいたしたい、かように考えます。
  184. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 大学病院の薬剤は、薬剤購入委員会でそれぞれ協議し、計画を作成して、それに基づいて薬剤部長が購入しておる、そういう流れになっておると聞いております。  今お聞きいたしましたら、薬は入れさすわ、お金は払わぬわということは、私は大学として何かそこに事情があってそうしておるのかどうか、今お聞きして私、判断に苦しんでおるのでございますが、この委員会の後、よく関係の者と相談いたしまして、そういう大学に対し注意を喚起するというか、こういう質問の内容を伝えて、それに対してあなたの大学はそういうことはないだろうなという、そういう意味における注意の喚起というものをやっていきたいと思うております。  もしそういうようなのが公開できるようでございましたら、やはり教えていただくこともそういう問題の処理に非常に貢献をすると私は思いますので、よろしくお願いします。
  185. 草川昭三

    草川委員 今私立大学ばかり言いましたが、国立大学、一〇〇%に近い決定だと言いましたが、例えば大阪大学の場合は、四月から五月分は決まっているのですが、六月から先は決まってないのですよ。だから統計をとると、国立大学は決まったという数字が挙がってくるのですが、六月から先は決まってないのです。それから京都大学でも、今一四%の値引き交渉をやっておりますけれども、これもことしの十月から先は決まっていない、こういうわけですね。  だから、国立大学が先頭でこういうことをやっておっては、私立大学がまねしないわけがないですね。だから悪いのは、そういう国立大学の姿勢が悪いと思うのですね。これはリーディングヒッターというのですか、業界のリーダーですからね、業界というのですか、交渉の。だから、東大、京大、大阪大学、ここら辺は少し本気を入れてメスを入れてやるならやるで、私は次の物価問題委員会で全部名前を出します。きょうはここではあれですから、どこか物価問題等の委員会で名前を全部出して警鐘乱打をしてもいいと思っております。  時間が来ましたので、あともう十分しかございませんので、教科書の販売について、これは文部省公正取引委員会にお伺いをしたいと思うのですが、実は教科書の供給については、教科書取次供給業務を新しく行う、例えば申し込んでもなかなか難しいという苦情が全国で非常に多いわけです。極端なことを言いますと、学校の門前の本屋さんには教科書がない、こういうことなんです。いわゆる指定店というのがございまして、そこでないと手に入らぬということになるわけです。  かつて戦後、非常に古い事件でございますけれども、教科用図書特約供給所の問題について、公正取引委員会が一回、それは違反をするというようなことを言ったことがございますけれども、現在でも全国で同様のいわゆる苦情というのが実はあります。でございますから、これは一般論で結構でございますが、どこどこのどういう事例ということではなくて一般論としてお伺いをいたしますが、独禁法上今の教科書のこの特約供給所等のあり方は問題があるのではないか、こう思いますのでお伺いをしたい、こう思います。
  186. 菊池兵吾

    ○菊池説明員 お答えいたします。  一般論として申し上げますと、教科書供給につきましては制度的な特殊性等がございますので、その供給ルートが固定する傾向があるのかもしれませんが、仮に公正かつ自由な競争を阻害するような形で取次店の新規参入を不当に阻害するということがございますれば、独禁法上の問題が生じるのではないかというふうに考えております。
  187. 草川昭三

    草川委員 ありがとうございました。  じゃ、今のような公取さんの態度を踏まえて、文部省は現状をどう指導されるのか、お伺いします。
  188. 西崎清久

    ○西崎政府委員 先生御案内のとおり、教科書の供給につきましては、教科書発行臨時措置法で発行者が供給義務を負う、これが法律上の建前でございます。そこで、発行者の協会であります社団法人と大取次と申しますか特約供給所の集まりである社団法人が契約を結びまして、特約供給所が発行者に対して完全供給の責任を持つ、そして特約供給所が取次所を選んで、そして各学校に配付する、これが現在の姿で、先生御承知のとおりでございます。  御指摘の点は、取次所と申しますか、いわゆる小売店がその特約との契約において排他的で入り込めないとかあるいはその選定が固定化しているとか、いろいろ過去、戦後、昭和二十六年ごろでございましたか、公取でもいろいろ審査があった経緯は私どもも承知しております。  私どもの現在の考え方でございますが、やはり特約供給所が完全供給の義務を負っておるという関係から、その小売店を選ぶ場合に、小売店の能力と申しますか、いろいろな供給体制の問題とかそういうことを勘案しながら小売店を選定するということは、これは特約供給所としての立場であろうかと思うわけでございます。しかし、これが余りに排他的になってはいけないということは先生御指摘のとおりでございますので、そのような事例がもし起きた場合には、私どももそのような趣旨を踏まえて、特約供給所の社団法人等ございますので、そういう組織を通じての指導はやってまいりたい、こういうふうに考えております。
  189. 草川昭三

    草川委員 この問題はきょうは詳しく触れませんけれども、実に戦前からの非常に大きな影響力を持っておる方々がリーダーになっておるわけでありまして、この出版の流通という問題は非常に問題がございます。今の局長の答弁を踏まえて、ぜひかかる新規参入の方々が泣かないように、あるいはまた一般国民の方々、最近移動が非常に大きいわけですから、転入転出があるわけでありますから、そういうことで泣かないようにしていただきたいと思います。  最後になります。  これは要望でもございますが、研究者養成のための援助で特別研究員制度というのがございます。現在、採用期間は二年間で、約二百四十名程度だと言われておりますが、これは頭脳流出を防ぐ意味でも日本にとって非常に重要な制度でございまして、これは革新の方からもいろいろな要望が出ておるわけでございますので、ぜひこの制度の充実、それから拡大を図っていただきたいというのが一つの質問であります。  それから二番目に、博士論文の問題ですが、これも時間がないので問題点だけ申し上げておきますと、博士論文はそれぞれの大学でそれなりの審査があるわけでございますが、今日のように非常に研究が大型化をしてまいります、あるいはバイオのように非常に複雑な研究になる、それを複数の研究者が学位論文で申請をすることができるのかできないのか。実際はそれぞれの大学に似たような形のテーマで名前を変えて申請をなすっておみえになるわけです。だから、ときにはこれはダブル申請じゃないか、おかしいというので批判される場合もあるのです。批判される例を私は持っておるのです。文部省にも、これは事前に、ここらは一体どうだ、こう言ったことがあるのですが、専門家でないから非常に難しいとかどうのこうのと言いますけれども、そういう問題が現実に出てきておるわけです。だから私は、それがけしかるとかけしからぬということ以前に、そういう場面はこれからもっとたくさん出てくるだろう。だから数人で、こういう面から見た場合はこうだ、こういう面から見たらどうだということを明らかにして、そしてそれぞれの大学なりあるいは同一大学でそれを審査なされたらいかがなものか、こういう問題提起をしたい、こう思うのであります。  この二点を質問をして、私の質問を終わりたい、こう思います。
  190. 植木浩

    ○植木政府委員 まず第一点、お答え申し上げます。  今先生がおっしゃいましたように、若手の研究者を育成、確保するということは、日本の学術の振興にとって大変肝要な課題でございます。そういうわけで、一定期間フェローシップを支給いたしまして、自由な発想のもとで研究をさせるいわばニューフェローシップ制度、特別研究員制度を六十年度からスタートさせたばかりでございます。現在、これに対する希望者が大変多うございまして、先生御指摘のように、私どもとしてはぜひこれを積極的に充実をしてまいりたい、このように考えております。
  191. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 学位の点についてのお尋ねにお答えさせていただきたいと存じます。  古い制度におきましては、博士の学位というのは、独創的な研究によって新しい領域を開いたというような定義で定められておったわけでございますけれども、昭和四十九年に学位規則の改正を行いまして、博士というものは、その専攻分野について研究者として自立した研究活動を行うのに必要な能力を有する云々というような形に改めました。非常にアバウトに申しますれば、従来のように非常にハイレベルということでは必ずしもなくて、一人前の研究者としてスタート地点につくということを能力的に認めるというような種類のものとして学位というものを位置づけたわけでございます。  各大学では、それに基づきまして、それぞれの研究者の能力がそれぐらいの能力であるかどうかということを判定するという建前になっておるわけでございますが、御指摘のように、近年いろいろ共同研究等が増加をしてまいりました。その実際の学位授与に際して従来のような感覚が若干残っているような点もございますので、いろいろ認定に苦しむようなケースもあるいはあるのかと思っておりますけれども、こういった共同研究という場合につきましても、要するに、個々の申請者についてそういう能力があるかどうかということを判定するというのを各大学が自主的にやっていただくという仕組みであるわけでございます。また、そういうように今後指導もしてまいりたいと思っております。  ただ、この大学院問題、御指摘の学位の問題まで含めましていろいろな課題がこれからあるわけでございまして、先般臨教審からも、大学院については大いに検討すべしという指摘もいただいておりますので、文部省内で今後種々検討していきます場合の一つの問題点として十分意識にとどめてまた検討等もしていきたい、かように考えます。
  192. 草川昭三

    草川委員 以上で終わります。
  193. 堀之内久男

  194. 大矢卓史

    大矢委員 大阪第一区から、自民党の湯川議員の死去に伴いまして補欠選任をされて出てまいりました大矢卓史でございます。  まず、郷土の先輩塩川文部大臣の御就任を心からお祝いを申し上げたいと思います。  湯川先輩も同じ決算委員会に所属しておられまして、私、お亡くなりになりましたときに、湯川議員の分までも大阪のために働かせていただきたいという決意を申し上げました。塩川先輩もいらっしゃることでございますので、文部行政の一端につきましても、そのような私の意をお酌み取りいただきまして、前向きの御答弁をちょうだいできればと思っておる次第であります。  早速、堀之内委員長の運営方針につきましていろいろとお伺いをいたしました。私も地方議会で十二年間こういう決算のことに携ってまいりましたけれども、私の考えておりましたのとはやはり少し違うようであります。地方議会でございますと、一定の期間に一定のものを承認、不承認ということで、ちゃんとスケジュールを組んで審議をやっていくわけでありますけれども、今日までの状態を見ておりますと、五十八年度決算が五十九年十二月二十一日に提出されながら、付託されたのが六十年十二月二十四日だ。そこへもってきて、またその審議の最中に五十九年というものが提出をされ、付託をされてくる。五十八年、五十九年を突っ込んで審議をしていくということであり、そしてまた、これが最終的にどういうふうになりますのか、それすらも見通しがつかない。その中で堀之内委員長、大変精力的にこの決算委員会のあり方について決意を述べていらっしゃいました。  本来でございますと、内閣を代表する官房長官等に基本的にお伺いをし、この決算を通じて審議をされたことを内閣が次の予算にどのように及ぼしていくのかということもお聞きをいたしたいのでございますが、御出席がないようでございますので、内閣の大きなかなめになっていらっしゃいます塩川文部大臣に、まず国務大臣として、こういう決算一般について今日までのあり方、またこれからどうあるべきであるか、そしてそれをどのように次の予算に反映をしていくのか、お伺いをいたしたいと思います。     〔委員長退席、熊谷委員長代理着席〕
  195. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 冒頭、私事でございますが、大矢先生の亡くなられたお父さんなりあるいはまた湯川先生の遺志を継いで、立派な政治家に成長していただきますことを私たちも期待いたしております。  今お尋ねの決算についての問題でございますが、決算審議が実は以前においては相当年次のおくれがございましたけれども、最近におきましては、決算委員会で取り扱われます決算は非常に近年次のものになってまいったということを、私は国会活動の中で感じておるものでございます。そして、やはり決算はできるだけ新しい決算年次のものを審議していただくのが、それが生々しく、次の反省への踏み台になっていくと思うております。  今回当文部省に対し指摘されました事項につきましては、もう既に文部省内におきましてこれの改善についてあらゆる角度から努力をしておりますが、なおこういう問題が再び起こらないようにするということが、指摘事項を解決していく一番大事なことだと思いまして、そういうことを鋭意心得て将来に向かっての資料にいたしたい、こういうつもりでございます。
  196. 大矢卓史

    大矢委員 それでは、他の省からの御出席もいただいておりますので、まず、去る十三日に大阪で、青少年によりますエアガンで野宿者を襲うという事件がございました。そのことにつきまして、早速大阪府警では捜査一課を含めまして、いろいろな問題を抱えておる大阪府警であるにもかかわりませず、大きな捜査陣をつくっていただきまして、非常なスピード検挙で解決をしたということをお聞きいたしておりますが、今日までこういうエアガンで起きました事件等も含めて、事件発生から解決までの経過の御説明をちょうだいいたしたいと思います。
  197. 西崎清久

    ○西崎政府委員 先生御指摘の大阪の事件は、去る十月十三日に、夕方でございますが、私立高校の二年生と中学の二年生二名でございますが、サバイバルゲームということで出かけたプロセスで、四天王寺境内におきまして野宿していた人たち四人にエアソフトガンを発射し、そして一、二週間の負傷をさせたという不祥事でございます。その後、今申し上げました高校生と中学二年生という生徒の実情は警察当局でいろいろと調査をしておるという段階で、本日段階で私どもは詳細はまだ承知しておりません。  ただ、この事件は市の教育委員会も深刻に受けとめております。やはり児童生徒の生徒指導の問題、いじめとか校内暴力が過去にずっと何年か起きて、教育委員会学校が全力を挙げてその対策に苦慮しておった暁の事件ということでございまして、この点につきましては、やはり心の荒廃と申しますか、生徒指導をなお一層強化しなければならないということで、大阪市の教育委員会は、本日付で管下の学校に対し、この事件を契機としてさらに生徒指導に関しての指導の徹底を図るべしというふうな通達を出したようでございます。詳細これらの子供たちの学校における適応状況その他を調べました上で、市の教育委員会は適切な対応をとりたい、こういうふうに現在は聞いておる次第でございます。
  198. 大矢卓史

    大矢委員 今回の事件に使用されたと言われておりますエアガンにつきましては、大阪府の府青少年育成条例で有害玩具として指定になっておると聞いておるのでありますが、通産省の方でこのような有害玩具について今日までどのような業界指導をしてこられましたのか、お伺いをしたいと思います。
  199. 松倉浩司

    ○松倉説明員 先生の御質問にお答えさしていただきます。  通産省といたしましては、従来からエアソフトガンにつきましてはその適正な使用が図られるように業界を指導してきたところでございまして、従来メーカーにつきまして二つの団体に分かれていたわけでございますけれども、それが本年七月には日本遊技銃協同組合ということで統合されたわけでございまして、エアソフトガンの危険の防止を図るために、その自主基準を統一、整備したところでございます。  現在、その組合におきましては、業界外の専門家を加えた研究会におきまして、さらに精緻な自主基準の作成に向けて検討することとしておるわけでございまして、通産省といたしましては、現在の自主規約要綱の遵守とともに、あわせてエアソフトガンの適正な使用を図るために、その正しい取り扱い方あるいはマナーについて周知徹底するように、その組合を通じて業界に対し指導を行っているところでございます。今後ともこのような玩具につきまして正しい使われ方が行われますよう最大限の努力を払って業界を指導してまいりたい、このように存じております。
  200. 大矢卓史

    大矢委員 このエアガンにつきましては、非常なブームのようであります。そして、これにつきまして、大阪府は十八歳未満の青少年には販売をすることを禁じておるわけであります。しかし、こういうものを求めますときには通信販売、先ほどの御質問ではございませんけれども、通信販売を中心にしてこれが購入されるようであります。そうなりますと、一つの府県でもってこれが禁止されておりましても、通信販売という中で対象が十八歳未満であるというようなことがわからないわけであります。  聞くところによりますと、ほとんどの府県でこういうことが禁止をされておるということも聞いておるわけでありますけれども、こういう中で、今課長さんが御答弁になりましたようなことだけで、果たして今後この問題が解決をするのであるかどうか。業界を指導し、また業界保護の立場に立つといいましても、もしこのような状態で、このままの形でまいりますと、やはり業界そのものが、こういうエアガンのこれからの世論による規制によって成り立つことが難しいのではないか。そういうことも含めて、いま一度通産省の今後の、この事件を踏まえての、従来の指導とは違った意味で、もう一歩踏み込んだ意味でのお考えをお聞かせを願いたいと思います。
  201. 松倉浩司

    ○松倉説明員 お答えさしていただきます。  ただいま御指摘ありましたように、エアソフトガンにつきましては、都道府県の条例におきまして、青少年の健全な育成を図る観点から、青少年を相手とした販売、貸し付け等を禁止している例というものが幾つかあるということは承知しているわけでございます。これに対応いたしまして、業界におきましては各都道府県の条例による規制を尊重いたしまして、先ほど申し上げました業界の自主規約要綱において、エアソフトガンの威力についての基準を条例のうちで最も厳しい基準に合わせ、それを超えるものの製造を自粛しているところでございます。  通産省といたしましては、安全な玩具の製造及びその適正な使用が図られるよう、この組合を通じ従来から指導してきたところでございますけれども、今後ともこういう指導につきまして十分努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  202. 大矢卓史

    大矢委員 こういうような状態の中で、東京の新聞では小さく報道されておりますが、大阪におきましては毎日毎日大きなスペースで報道されておりますことでございますし、また、これが青少年がお互いの遊戯の段階、子供同士の遊びだけでなくして、そういう無抵抗者に対して銃を向けられた、そして大きなけがをさしたということに大きな問題があるのではないか、そういうことの今後エスカレートしていくことを私は大変憂えるものでありますが、文部当局の御所見を承りたいと思います。
  203. 西崎清久

    ○西崎政府委員 今回の事件は、野宿していた方々、いわゆる弱者に対していわれなくソフトエアガンを発射したというふうなところで、やはり基本的人権の問題とかあるいは生命尊重の問題とか、弱者へのいたわりとか、そのような児童生徒の基本的な資質の問題と大きくかかわるところでございます。その意味では、私どもとして道徳教育の充実に一層努めなければなりませんし、先ほど申し上げました生徒指導という面は一層に努力しなければならないというふうに考えております。  これらの事件のプロセス、生徒諸君の生い立ちと申しますか、学校への適応状況と申しますか、そういうものがだんだんとわかってまいりますので、これを一つの契機として、私ども自身としてもこれらの問題を深刻にとらえて、各都道府県への対策等については今後指導してまいりたい、こういうふうに考えております。
  204. 大矢卓史

    大矢委員 大変な問題だと思いますので、今後こういうことが起こらないように、各関係の皆さん方の御協力をお願いいたしたいと思います。  先ほど大臣からお述べ願いましたように、この決算委員会での審議の状況を後々予算上に改めていくということでございますけれども、会計検査院指摘をされました国立大学における授業料の免除についての合理的な基準による実施、そういう意見が出されておりますが、このことにつきましてどういう改善がその後なされたのか、お答えを願いたいと思います。
  205. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 昨年会計検査院の御指摘によりまして、国立大学の授業料の免除、これは現在その運用を、学生の実態をよく知った人がやる方がいいだろうということで、各大学の学長にお任せをしているわけでございますけれども、各大学がそれぞれが大変まちまちになっていて、公平を欠くのではないかという御指摘をいただいたわけでございます。  文部省といたしましては、直ちに本年の三月に、とりあえず昭和六十一年度の運用についてのいわば共通的な基準のようなものを定めまして、運用指針という形でこれを各大学に指導いたしたわけでございます。例えば家計基準の適用につきましては育英会の基準を全部の大学が使うようにというようなたぐいのことを内容とするものでございますけれども、これはそれに基づきまして、本年度の運用はかなり改善をされ、実施をされつつあると考えております。  なお、六十二年度以降の問題につきましては、六十一年度分のただいま申し上げました運用指針が、六十一年度だけのとりあえずの暫定指針として決めたというようなことでもございますので、六十二年度以降につきましては、現在関係の大学の関係者等の御意見等も伺いながら、恒久的なと申しますか、翌年度以降ずっと使うような基準という形での検討をいたしておるわけでございますが、近くそれもまとめまして、会計検査院の御指摘の趣旨が今後生きるように、各大学に対して的確に指導をし、実施をしてまいりたい、かように存じておるところでございます。
  206. 大矢卓史

    大矢委員 今御答弁ございましたように、国立大学というのは、それだけの国費を使いまして国の人材を養成するということで、せっかくのいろいろな便宜も与えておるわけでありますが、それが会計検査院から指摘されるような予算の行使をしておるということについては非常に残念でございまして、今後こういうことがないように、十二分にその趣旨を生かしていただきたいと思うのであります。  それにも増しまして、私どもも私学の出身者でございますけれども、私学助成ということが毎年問題になっておるわけです。しかし、この行革という中で、近年国の税金でもって私学の助成をしていく、それがふえていくという状態というのはなかなか望めないことであるのです。このいろいろな基準についても時間がありましたらお尋ねいたしたいのですけれども、なかなか時間の制約がございます。  私学につきましては、やはり建学の精神がございます。それにのっとってそのおのおのが、国の補助に頼ることももちろんでありますけれども、やはりみずからの努力によって将来大きく国の大学教育というものを支えていってもらいたい、このように考える者の一人でありますけれども、それにつきましても、国が税金から出すか、また寄附等によって行われますその寄附に対する税金上の優遇措置をするか、その二つのうち、今申しましたように国の補助金が伸びないということになるならば、大いに母校を思い、また進学のために協力をされる人々の浄財によって学校が運営されていくということが非常に望ましいことであると思う。  そういうことで、個人的にもそういう寄附の問題について資料をちょうだいいたしましたところが、所得控除というのがございまして、総所得の金額の二五%が寄附金控除の対象になるという制度があるようである。よく言われておりますように、政治資金が寄附金の控除が二五%だ、非常に優遇されておると言われておりますけれども、やはり一個人にとりましては百五十万円。個人が寄附をされる方につきましては、総額で八千万円の四分の一でございますから二千万円までというような個人の枠がございますけれども、この私学に対します寄附金については上限のない制度のように説明をお聞きをいたしましたが、そういうことでございますか。
  207. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 確かに先生御指摘のように、私学の経営をやっていく場合に、まず第一義的には私学自身の自主的な御努力というのに期待せざるを得ないわけですが、同時に、私学が学校教育に占めております大きな役割にかんがみまして、国としましても、大学について昭和四十五年度から、法律補助は五十一年度からですが、経常費助成を行って今日まで充実を図ってきた。しかし、ここ数年の財政が非常に厳しいということもございまして、やや前年度と同額というようなところで抑え込まれてきておるわけでございます。  したがって、私どもとしましては、国から入る補助金につきましてはそういう形で抑えられている限り、私学が自主的に民間から集める寄附については税制上もっと優遇措置を講じてしかるべきではないかということで、大蔵省とここ数年来折衝を続けてきておるわけでございます。しかしながら、先生今御指摘のように、個人が私学に指定寄附金として寄附をした場合には、寄附金限度額、いわゆる足切り額と称しておる額が、所得額の二五%マイナス一万円ですが、所得額の二五%と見て差し支えないと思いますが、所得額の二五%しか足切り額がない。むしろそれは青天井にして、寄附をしたら寄附をしたもの全体について所得控除すべきではないかというのが私どもの要望の趣旨であります。一方、財政当局がここ数年、逆にその足切り額を毎年、もっと二五%より低くする、控除額を低くするというようなことで原案をつくって私どもに投げかけてきておるというのが実情でございます。  そこで私ども、やや防戦的ではありますが、私学に対する寄附に対する税制上の措置につきましては、今後ともそれがさらに拡大されるように努力を鋭意していきますけれども、今の段階で申し上げますと、少なくとも今以上に税が重くなるというようなことは絶対阻止しなければならないということで、大蔵省、財政当局とも去年も折衝しておりましたが、ことしもぜひそういうことで努力をしていきたいというふうに考えているところでございます。
  208. 大矢卓史

    大矢委員 ただいまの御答弁の中で、何か指定寄附金という説明がございましたけれども、私の聞いておりますのは、指定寄附金だけでなくして、試験研究法人に対するもの全部ということでございますが、いかがでございますか。
  209. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 ちょっと説明を落としてまことに恐縮でございますが、今私が御説明しましたのは、試験研究法人とそれから指定寄附金を含めたものでございます。
  210. 大矢卓史

    大矢委員 足切り制度があると言いますけれども、私はこういう制度そのものを不敏にして知らなかったわけであります。  今申しましたように、政治資金が一番優遇されておるように言われておりますけれども、それ以上に、上限がない、二五%でございますので、もっともっと私は利用されたらいいと思う。利用される度合いも非常に少ないようにも考えておりますので、これをもっともっと皆さん方に知らしめていただいて、私学にはどんどん寄附をしていく、そういう風潮でもってみずからが卒業した学校がよくなるように、また社会にこれから人材を送っていただく学校にどんどん寄附していただくように、そういうPRの点も含めてもっともっとやっていただかなければならぬと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
  211. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 もちろん、私学には寄附ということが非常に大事なことでございまして、一般の方々がそういうふうに目覚めてくれることを希望しますが、しかし現在では、不幸にして、自分の子供の入学に有利だったら寄附しよう、そういうことが先入観としてある。それをそうではなくして、その学校を愛するということで寄附をしていただく、その気風をつくることが大事だ。それにはその寄附金の税制上の問題は非常に重要だろうと私は思いますけれども、先ほど坂元部長が言ってましたように、財政当局といいましょうか主税局は、これをできるだけ抑え込んでいきたいというのが実情でございます。したがって、私たちはより以上の拡大は望むものでございますけれども、現状を切り込まないようにするということが今のところでは精いっぱいのような感じがしてならぬ。しかし、おっしゃるように私学の財源に一般の善意の寄附というもの、これは非常に重要なことだと思う。私は、日本がそういう社会になってくれることを強く望むものであります。
  212. 大矢卓史

    大矢委員 時間の関係がございますので、次に進ましていただきたいと思います。  大臣、非常にお忙しくて、昨晩大阪におきまして社団法人浪曲親友協会の設立の場でございましたが、大臣の代理で秘書の方が祝辞を言っていらっしゃいました。  大阪にもいろいろな文かの関係での活動が活発に行われておるわけでありますけれども、私、非常に残念に思いますことは、毎年毎年行われております文部省と申しますか文化庁が主催をいたしましております芸術祭、これについては、東京へ来て公演をするというもの以外は章の対象にならないということが現状のようであります。これについて、私どもは従来から、大阪のすぐれた芸能と申しますか地方におけるすぐれた芸能、これらが当然国の賞の対象になってもしかるべきだ。  毎年行われます芸術祭に参加ができない、東京のみに限るというような、政治の中心は東京だと言われておりますけれども、経済もまた文化も東京だけが中心であって——すぐれた文楽等大衆芸能は、言うならば全国において東京よりもすぐれておるということ、このことは、もう私ども大阪びいきということをのけても、これはやはり皆さん方がお認めにならざるを得ないことだと思います。それについて、東京だけでなければ参加できないというようなこのことについての御意見を承りたいと思います。    〔熊谷委員長代理退席、委員長着席〕
  213. 久保庭信一

    ○久保庭政府委員 芸術祭についてお尋ねでございますが、芸術祭、戦後行われましてから既に昨年で四十年、国民の生活の中にもようやく溶け込んで行われておるわけでございますが、この内容は、主催公演、協賛公演、参加公演と三種類のものに分かれておりまして、主催公演と協賛公演は、これは我が国一流の芸術を国民に鑑賞していただこうということで主催をし、また協賛をいただいて実施するものでございますが、もう一つの参加公演と申しますのは、やはり立派な内容を国民に味わっていただくわけですが、その参加の仕方が、みずから我はと思う方が御参加をいただくということでやっておりまして、その参加していただくないようにつきましては、その実施後に審査をいたしまして芸術祭賞を差し上げる、こういうような仕組みになっております。  コンクールになるわけでございまして、コンクールになるということになりますと、同じ審査員の目ですべてを見なければならない。芸術祭の期間は十月いっぱい、三十日でございますが、その間行われます公演を同じ方が全部見ていただくということになりますと、どうしても時間的に、地理的に制約されたことになるわけでございまして、戦後ずっと東京を中心に行ってるわけでございまして、審査員の方々は毎日行われます公演をごらんをいただいて、最後にそれを総合評価して芸術祭賞を出す、こういう仕組みになっておりまして、地方で行いますということは大変困難なことでございます。  昨年から実は、芸術祭四十年たちましたので見直しをいたしまして、東京だけで芸術祭を行って、東京の方が芸能を見ていただくということでなしに、地方でも行おうということで地方公演を昨年から始めまして、昨年は熊本、ことしは札幌ということで行いますが、地方公演を引き受けていただきます都市におきましては、参加公演だけはだめというわけにいきませんので、審査員の日程、また審査員がそこで審査をできるような条件、これが整いました場合には、地方公演の開催地におきまして参加公演もできるようにしたいと思っておりますが、なかなか条件が折り合いませんで、昨年もことしも実は地方での参加公演はできないでおるということでございます。
  214. 大矢卓史

    大矢委員 その事情については私、承知いたしております。承知をいたしておる中でなぜできないのかということをお聞きをいたしておるのであって、その審査員につきましても東京の人だけがなっておって、御承知のように私どもは、今申しましたように、大阪の大衆芸能といいますか演芸といいますか、それは日本を代表するものだと考えております。いろんな種目がございますから、すべて今直ちに大阪でもということにはいきませんけれども、少なくとも芸能部門については大阪の方が中心である。その大阪の審査員が一人も入っておらない。そして、その審査員が東京だから東京の方が便利がいいんだ。私は、非常に失礼でございますけれども、参加をしていらっしゃる内容を見まして、決して十分なものではないと思います。  時間がございませんので、今後また機会を見てこの問題——毎年毎年東京ということでなくして、ことしは大阪、来年は東京というぐあいに交互にでもいいですから、少なくとも演芸部門だけは大阪で参加ができるようにやっていただいて、そのときには大阪の審査員を委嘱願えますならば、必ず私は今まで以上の大きな成果が得られると思っておりますので、そのことも踏まえて、時間がないようでございますので、大臣にお答えをお願いいたしたいと思います。
  215. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 芸術祭は、御承知のように開催する期間が一ヵ月と短いことと、それから劇場の利用という、そういう場所的な制約もあります。したがって、どうしてもこういう東京のように施設があって、そして審査員がそろうておるところということになってきておると思うのですが、しかしお尋ねの、その審査員の中に大阪の者が一人もおらぬ、こういうことでございますが、やはり優秀なそういう審査員を大阪で発掘するように、今後も私たちも努めていかなければいかぬと思うております。  その芸術祭が大阪で開かれないのはなぜかということ、それをカバーする意味において、国民文化祭という持ち回りの、先ほど説明いたしておりましたが、そういうことをやるということでございますが、しかし私は、例えば春なら春、大阪、京都、奈良、こういうところの古典芸術もございますし、そういうようなものが組んでやるべきだ。私は、芸術とか芸能というものは、余り政府や何かの公の力がごちゃごちゃ入ってくることがかえってよくないと思うのです。民間の活力で、いいものはやっぱりいいのですから、うそはないのですから、ひとつそういう気概を持ってやってもらいたい。私、大阪、京都、奈良、兵庫、こういう関西が固まって一つのそういうものを春なら春に開催されて、それこそ地から生えた、根っから生えてきた芸術の力というものを発揮できる、私はそういう気概も同時に持ってもらいたい。自分の持っているいいものがあれば堂々と発表し、力を出して発揮してもらったら、一般の国民はそちらにも目を向けると私は思うのです。  保護を受けるだけということは、私は芸能の関係で余り好きじゃないものですから、私は浪花節が好きで、浪曲やら応援していますけれども、あれは自分で練習して自分でうたいよるものでいいのであって、あれはお師匠さんについて保護されてきたらどうかなと私は思うたりもする。そういう点についてちょっと先生と考え方が違うかもわかりませんが、最後に言えることは、関西の力を結集してそういう古典芸能で一回やってみたらどうだろう、そういうことを私はかねてから思うておるのです。
  216. 大矢卓史

    大矢委員 時間がないのでまことに申しわけございませんが、しかし、やはり制度としては四十一回やってまいりましたこの芸術祭参加の行事そのものを、根本的に見直して文化庁がやめていくというなら別ですけれども、これをやるということになりますと、演芸部門だけでは、私は関西を中心にしたものが日本を代表するものだということをあえて言っても差し支えないと思うのです。それに賞を与えるという制度がある限りにおいては、審査員もまた、大阪の審査員というのは立派な方ばかりでありますから、それらを含めてこのことについて再検討していただかなければならぬ、そういうことを申し添えまして、私の質問を終らせていただきます。  ありがとうございました。
  217. 堀之内久男

  218. 野間友一

    野間委員 限られた時間の中で、いわゆる教科書検定とスポーツと、二点ばかりについて質疑をいたしたいと思います。  まず、教科書検定に関してでありますが、既に御案内のとおり、日本を守る国民会議がつくりました教科書である「新編日本史」、これに対する文部省の検定作業を見ておりますと、特に現行の教科書検定制度の是非、運用のあり方をめぐって改めて大きな問題を残したと私は考えます。私ども共産党は、現行の教科書検定制度については、学問の自由、表現の自由を侵し、憲法、教育基本法に違反し、教育に対する官僚統制を強めるものであると一貫して言ってまいりました。いみじくも、今度の問題についてこの指摘が証明されたと思います。  そこで、質問に入る前に、この「新編日本史」の評価と申しますか、位置づけですけれども、内容的に見ましても、天皇統治の正当性、永遠性をうたうとともに、近代の朝鮮、中国などへの植民地政策、侵略戦争を肯定した記述に終始し、戦前の教科書の復活を思わせるもので、憲法、教育基本法の精神に反する内容だというふうに考えております。  そこで、そういう内容のあるこの「新編日本史」についてお伺いするわけですが、まず、検定をめぐる事実経過の確認を先に求めたいと思います。  検定申請がなされたのが六十年八月二十九日、それから教科用図書検定調査審議会第二部会で原稿本審査で条件つき合格の答申をしたのが六十一年一月三十一日、この中には修正意見が二百四十一、改善意見が四百七十八、合計七百十九の検定意見がつけられております。その後、所定期間内に見本本が出されまして、文部大臣が内閲本審査結果通知を発行者であります原書房に出したのが六十一年五月三十日、こうなっていますが、まず事実の点について確認を求めたいと思います。
  219. 西崎清久

    ○西崎政府委員 原書房高校日本史の検定プロセスとして、今先生おっしゃいました文部省への検定申請の日付、検定調査審議会第二部会で審議された日付、内閲本審査終了の原書房への通知の日付、この三点につきましては、いずれも御指摘のとおりでございます。
  220. 野間友一

    野間委員 教科書検定について、その記述内容についての審査、これは内閲本の審査結果通知で終わって、あとはいわゆる本としての体裁を見る見本本審査、これで検定作業が終わるわけです。したがって、出版社とか執筆者にも幾人かお聞きしましたけれども、内閲本の審査結果通知を受けることによって事実上の検定合格と受けとめておる、これが通例だと聞いておりますが、間違いありませんね。
  221. 西崎清久

    ○西崎政府委員 教科書検定につきましては、教科書検定規則を定めておりまして、通常の手続として私どもが従来実施しておりますのは、今先生御指摘のとおり、内閲本審査終了の通知におきましてほぼ全体の検定の実質的内容は終わる。ただ、審査通知をした後、制度的な意味での字句の内容に若干わたる部分もありますが、訂正関係を著者側と協議して御連絡したという例は、原書房にかかわる日本史の教科書以外にも過去に若干ある、こういう経緯でございます。
  222. 野間友一

    野間委員 そこで、お聞きするわけですが、六十一年五月三十日に内閲本の審査結果通知が出されておりますが、これは今局長が言われた規則の十三条一項、二項に基づいてなされたものと思いますが、いかがですか。
  223. 西崎清久

    ○西崎政府委員 五月三十日金曜日の内閲本審査終了につきましては、先生御指摘の規則に基づいて通知をいたしております。
  224. 野間友一

    野間委員 そうしますと、この十三条によりますと、修正意見に従った修正が行われた、文部大臣が認めたから十三条の二項によって申請者に通知がなされた、こういうふうになるわけですね。
  225. 西崎清久

    ○西崎政府委員 本件教科書につきましての内閲本審査終了の通知は、ただいまお答えいたしましたように、五月三十日付で原書房に通知しておる、事実経過としてはそのとおりでございます。
  226. 野間友一

    野間委員 ですから、この十三条の二項によりますと、条件つき合格ですから、原稿本に修正意見が出された、それに従った修正が行われた、こういうふうに文部大臣が認定したから内閲本の審査結果の通知を出された。規則の十三条の二項はそうなっておりますね。そのとおりでしょう。
  227. 西崎清久

    ○西崎政府委員 そのとおりでございます。
  228. 野間友一

    野間委員 文部大臣は、当時は海部さんですけれども、そういうように認めたわけですね。ですから、通常は十三条の二項で中身については——だって、修正意見が出されて、そのとおり修正が成ったから通知したわけですから、終わっているわけですね。ところが、本件「新編日本史」の場合を見てみますと、これはいろいろな報道がありますし、雑誌にもございますね。これは局長も御案内のとおり、審査結果通知を出した後、六月八日に五項目、これは南京事件等ですね。この検定意見を出しております。それから七月二日に四十項目出しておりますね。これは規則上どういう根処に基づいてやったのかということと、この意見は、A意見なのかB意見なのか、修正意見なのか改善意見なのか、この点についてまずお伺いしたいと思います。
  229. 西崎清久

    ○西崎政府委員 本件教科書につきましては、先生御案内のとおり、五月末の段階でございますが、私どもが検定審議会に審議として付しております前に新聞等の報道がありまして、内容が一部明らかにされてきたという経緯がございます。それに基づきまして、中国、韓国から強い関心表明が行われたというふうな経緯がございます。  今先生が問題にしていらっしゃいますのは、検定規則とのかかわりの問題でございます。私どもとしては、この点に関しましては過去に、五十七年でございますが、官房長官談話に基づき、教科書検定については、近隣アジア諸国との国際協調、国際理解の精神に基づいて教科書検定を行うという趣旨があり、そしてそれに基づき、文部省としては検定規則を変えまして、それを一項目入れておるわけでございます。そのような趣旨に基づいてこの教科書を見直す必要を生じたという別個の問題が生じたわけでございまして、その後の問題として、私どもは、この教科書につきましては文部大臣はまだ最終検定を行っていないという前提で、さらにより深めて、検定規則なり官房長官談話の趣旨に応じた検定を見直しとして行っていくという立場をとったわけでございます。  そういうことによりまして、先生がおっしゃいますいろいろな私ども文部省からの修正意見等につきましては、必ずしも従来の通常の手続の検定規則にはよっていない、特別の措置であるということになるわけでございます。
  230. 野間友一

    野間委員 規則というのは守らなければならぬ。文部省は特にそうなんですね。しかも手順をずっと定めてあるわけですね。これはずっと発展していくわけですね。最初は見本本、そして検定合格、ここまでいくわけでしょう。しかも、申し上げたように、十三条の二項では、既に七百十九の修正意見が出されて、それについて審査をして修正意見が取り入れられておると認めたからやったものでしょう。今の局長の話によりますと、何かその後、いわゆる外圧というふうに聞こえたわけですけれども、そうなりましたら、一たんつくった文部省の規則が、つくりながら、その後のいろいろな条件、例えば外圧か内圧かよくわかりませんけれども、これによっていかようにでも中身について変えられると言ったら、これは規則あってないに等しいわけですね。これは超法規的な措置だと思うのですね。  そこで、私が聞いておるのは、五項目なり四十項目、これはA意見なのかB意見なのか、どうなんですか。
  231. 西崎清久

    ○西崎政府委員 ただいま先生お話しの点で、私どもが意見を五月三十日以降出しました内容につきましては、三段階ぐらいに分かれておるわけでございます。  第一段階、第二段階の意見につきましては、従来原稿本審査のときに付しました修正意見のフォローアップとして出しておるわけでございます。それから、世の中では三次修正とか四次修正とか言われておりますが、私どもとしては、第三段階で出しました修正意見、改善意見につきましては、従来原稿本審査のときに付しました修正意見とは別個の問題として、検定規則には手続はございませんけれども、それに準拠して検定審議会の各委員に持ち回りで意見をお見せして御了承をいただき、そして修正意見及び改善意見として著者側にもお伝えをした、こんなふうな経緯でございます。
  232. 野間友一

    野間委員 文部省も大概いいかげんなものですな。みずから規則を決めて、規則に従って審議会を開きまして、第二部会で十分審議をして一月に出しておるわけでしょう、原稿本を。これで修正意見を七百十九も出した、AとBと合わせまして。それを審査して、そして修正意見を出したわけでしょう。出して、それを満たすから文部大臣がこれでよろしいとお墨つきを与えたわけですよ。ところが、その後A意見、B意見、新たな時点、十三条二項以降にこういうものをまたぞろやっておるわけです。そうなりましたら、我々から言いますと、これはいわゆる法的安定性と言いますけれども、こういうような規則をつくりながら何らの役にも立たない。それが文部大臣の権限で、見本本の最終の検閲まで何でもできるということになるわけですか。
  233. 西崎清久

    ○西崎政府委員 教科書の検定の趣旨は、最終的には、客観的で公正で、しかも教育的配慮に基づいた教科書が文部大臣の検定として終了する、これが最終的な目標でございます。  本件教科書につきましては、確かに検定プロセスの問題といたしましては、先生御指摘のように、検定手続のプロセスで終了したかに見えた時点で、中国、韓国から強い関心表明等があったという特別の事態が起きた。そこで、文部省といたしましては、最終的には文部大臣の権限としての検定を終える前の段階でございましたので、責任ある立場においては客観、公正、そして教育的配慮という教科書を出す責任がある、その判断に立てば、必ずしも手続にはよらない点があるけれども、特別の措置としてさらに修正あるいは改善について著者側に申し上げるということがより文部省としての責任を果たすゆえんである、こういう判断に立ったわけでございます。  ですから、先ほど申し上げましたように、必ずしも検定規則によっていない、これは御指摘のとおりでございます。特別の措置であるということも事実でございます。しかし、特別の措置をとるにつきましては、できるだけ手続に準拠して、持ち回りではございますが検定審議会にお諮りをするというふうな措置はとったわけでございまして、こういうプロセスがあったということをひとつ申し上げたいと思う次第でございます。
  234. 野間友一

    野間委員 私は、今言われたことに二つ大きな問題があると思うのですね。  一つは、言っておりますように、六十年八月に申請が出されて、それで六十一年一月三十一日、条件つき合格でしょう。この間、修正意見が二百四十一、改善意見が四百七十八、七百十九という膨大なものが出されて、しかも、それを満たしたからといってオーケーを出しておるわけですよ。ですから、一つの問題は、その時点で審議会を開いてやっておるわけですから、七百十九にも上る全く異例の意見を出した、それでもなおかつこれは意見が不足しておったということになるわけで、審議会というのはそんなずさんないいかげんなものか。普通なら、これだけクレームというか意見があれば、全部今まで不合格ですよ。ですから、いろいろなことはありながら、何とかしてこの教科書を救いたいということで——私は韓国や中国からクレームがついたのは当然だと思うのですね。そういうような中身を持ったものを、膨大な七百十九という意見、これを満たしたということでオーケーを出したというところに、恣意的な検定の中身が、密室の中で調査官が審議する、調査する、私はここに一つの大きな問題があると思うのです。これが一つです。  それから二つ目は、申し上げておるように、それにしても、一たん認定しながらその後いかようにでも、今聞いたら、この中には新たな時点での修正意見もあったわけでしょう、それがずっと最終的に検定合格するまでいかようにでも書きかえられるなんて、こんなことがまかり通ったら、これは検定の手続なんというのは一体何なのか、こういうことになるわけです。これが許されたら、これは通常の場合だってみんなそうやられる危険性がある。十三条二項を踏んだ後、これは本件に限って特別にやったものなのか、こういうものは通常あり得ない、今後もないというふうに言われるのか、あるいはいやこういうものも常時あるのだ、規則なんて関係ないのだ、こんなものあってもなくてもやれるのだというような考え方に立つのか、そのあたり教えてください。
  235. 西崎清久

    ○西崎政府委員 二点先生からお尋ねの点の第一点でございます。  第一次の教科書検定調査審議会でのいろいろな修正意見、改善意見等の内容につきましては、もちろん近隣アジア諸国への配慮という問題も含めて、これらの意見がつけられておったことは事実でございます。ただ、文部省と申しますか、検定審議会における配慮に基づくそのような内容と、それから諸外国の立場における意見と申しますか関心の申し出は、やはりスタンスが違いますので、一から十と申しますか、一〇〇%全部そういうことを見越しての検定審議会の修正意見であったかどうかということにつきましては、必ずしもそうではなかったということは結果としては言えるかと思います。それがゆえに関心表明意見が提出され、いろいろな経緯があったということでございますが、検定審議会は検定審議会として、専門家の先生が十分に意見を闘わし、意見を出したということは申し上げておきたいというふうに思うわけでございます。  それから第二点で、この措置はどういう性格の措置であるかということでございますが、この措置は確かに特別の措置でございます。通常の手続、検定が検定規則に基づいて行われるべきこと、これは当然のことでございます。それがゆえに検定規則が設けられている。その検定規則が内外に示されて、発行者も著者もほぼこの手続に従えば検定が順調に進行する、そういう意味合いが規則にはありますし、文部省もこれを守るべきだということは、当然私どもも今後も遵守する努力義務がもちろんあります。そういう意味から申しまして、このような事態が常に起こるということを私どもは予測しておるわけではございませんし、今回の事態は非常に特別な事態ではないかと私どもも思っております。こういう事態が今後起こらないように努力するということは、私どもの責任であろうかというふうに考えております。
  236. 野間友一

    野間委員 五十七年に、おっしゃるように、基準の中に「近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がされていること。」これが加えられた、こういうことを言われましたけれども、この教科書の修正意見をあれした。こんなものあろうとなかろうと、当たり前のことを書いてあるのです。  しかももう一つは、仮に百歩譲ってこれへ入ったということになっても、これは本件の検定のときには既にあるわけですよ。基準になっておるわけでしょう。これに基づいて修正意見を出して、文部大臣はオーケーを出しておるわけですね。これは物すごく不安定な検定状況を続けてきておるわけですね。密室でこういうことをやるから、こんなことになるわけですよ、実際の話。そんなにまでかばいながら膨大な意見を出さし、しかも意見どおり修正させ、なおかつ、これは単に改善意見だけではなくて、修正意見をさらに十三条二項の後にも出してきた。修正意見といいますと、これは実際、意見どおりしなければ不合格でしょうが。そういうものを全く規則がないにもかかわらず、これまで使ってきた。これは全く根拠がないわけですね、実際の話。これは実際、こうまでして、おんぶにだっこでこの教科書を日の目を見させなければならぬのか、私は非常に不思議に思うわけですね。  しかも問題は、この書き込み検定というのは、記者会見で国民会議の方から言っておりますよね、その第三次の意見のときには、通常の口頭によるこの箇所ということでなくて、書き込み検定がなされたと。記者会見の中でいろいろ配っておりますね。私も持っております。書き込み検定をやったのと違いますか。これはまさに国定教科書じゃありませんか。
  237. 西崎清久

    ○西崎政府委員 教科書検定のプロセスと申しますが詳細は調査官と著者との間で行われるということでございますが、基本原則といたしまして、国側が文章をこのとおり書いてほしいというふうな、いわゆる俗に言われる書かせる検定ということは行われておりませんし、その点では今回も同様でごさいます。  趣旨と申しますか、修正意見の趣旨、改善意見の趣旨につきまして、それを例えばもし具体にあらわせばこういうふうな趣旨になろうかという文章が、物によりましては示されたことがあるかもしれません。このとおり書いてほしい、そうしなければ不合格であるというふうな、いわゆる書き込み検定ということを本件についてやった覚えはございませんし、そういう事実はございません。
  238. 野間友一

    野間委員 しかし、国民会議の方では記者会見して言っておる。これは御存じでしょう。いろんな資料があるでしょう。だから、こんなことが許されたら、検定を通り越してまさに国定教科書、戦前に戻るわけですよ。復古調の教科書を国定でつくる、こんなとんでもないことまで文部省が今の手続の中でやっておるとしたら、とんでもないことだと思うのですね。  しかも問題は、この国民会議の記者会見の中での報告とか、あるいは書き物を見ますと、この相談相手は規則では申請者、これは発行者なり執筆者となっていますが、全く関係のない例えば村尾次郎氏、かつての主任調査官、こういうところにあなた自身、西崎さん自身が電話をかけて、何とかならぬかと。これは七月四日の午後です。それから、わざわざあなたはその事務所まで行っておるでしょう。これはまさに検定作業を大きく逸脱していますよ。「月曜評論」の六十一年八月二十五日号にちゃんと記述が、テープを起こしたまま、村尾さんのしゃべったことが書いてありますよ。違いますか。
  239. 西崎清久

    ○西崎政府委員 教科書検定の具体の作業は、先生も御案内のとおり、教科書調査官と著者側でやるというのが原則で、この教科書につきましてもその原則は守られているわけであります。したがいまして、私どもの局の教科書調査官と著者側とが、それぞれ教科書の文章について、いろいろと修正意見をめぐって内容確定について努力をした、こういう経緯でございます。  そして、今先生御指摘の村尾先生、監修者というふうなお立場のようでございますが、私どもは村尾先生と修正箇所の具体の問題についてとやかくということでお話をしたことはございません。ただ、この教科書の検定の期限が、見本本の審査というのが十日という日付がございますので、検定がおくれ、作業がおくれれば時間的な切迫のために非常におくれるというふうなこととか、問題点あるいは理解をめぐっていろいろと難航している状況とか、そういうふうな点について村尾先生と電話等でお話をしたり、あるいは先生の事務所でお話をしたりというふうな経緯はございますが、あくまでこれは教科書検定自体の作業とは別の問題として、私の立場で行った経緯でございます。
  240. 野間友一

    野間委員 これは全く異例な出来事ですよ、実際に。あなた自身も思うでしょう。だから文部大臣、ある新聞の社説でも、執筆者を出したり文部省を出させたり、この両方が寄って至れり尽くせりの修正作業をした、そして出したというような社説すら出ております。  それから、中曽根総理も、自分は今度の教科書を全部初めから終わりまで読んだ、あの教科書は大変いい教科書だと思う、何とかしてあの教科書を世に出したいと、これは伝聞ですけれども、加瀬俊一さんのそういう文章もあるわけですね。  文部大臣、ずっとお聞きになって、あなたのときじゃないのですが、異例の出来事ですよ、最初から最後まで検定の手続そのものが。こういうことがあってはならぬことが実際にあったのですよ。一言簡単に所見を伺いたいと思います。
  241. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 教科書は、公正、中立、不偏性と教育的効果というものを十分に配慮してつくるべきだと思いますし、その基本方針に基づいて文部省は教科書作成に当たっておるものだと思うております。
  242. 野間友一

    野間委員 時間がありませんので、この問題についてはこれだけで終わりますが、最後に一点だけ指摘しておきます。  著者名のところに、四名の著者名を書いて、「他九名」と書いてありますね。この「他九名」、これはそうでなくて「等九名」ならいいのですけれども、「他」なら、これは五名と書くべきなんですよね。これはまさに間違いでしょう。これだけ一つ質問しておきます。
  243. 西崎清久

    ○西崎政府委員 この「他九名」という表記は、御指摘のとおり間違いでございます。これは恐らく、供給が来年四月に行われるときには、ちゃんと正誤で直った本が生徒に届くようにする、こういうふうにいたしたいと思います。
  244. 野間友一

    野間委員 いまだにまだ間違いがあるわけですね。わかりました。  それじゃ、スポーツの問題についてお伺いしたいと思います。  大臣、よく聞いてくださいよ。午前中にもありましたけれども、ソウルでのアジア大会が終わりましたが、別にメダルに固執するわけじゃありませんけれども、日本は非常に成績がよくなかった。このままの状態なら、二年後のソウルのオリンピックではメダルがゼロになるのじゃないかというふうに危惧する人も実際にあるわけです。  大臣は午前中の答弁で、頑張ったけれども相手が強かったとか、競技の種目が多かったんだとか、あるいは気迫がなかったとか、幾つか挙げられましたけれどもこれはまさに皮相的な見方ですね。相手が強かったって、相手があっての競技でしょう。それから競技種目が広かったって、そんなのどこだって同じですよ。日本だけじゃありませんね。そういう見方は私は軽薄だと思うのですね。気迫がなかった、皆、怒りますよ、実際に。  私は思うのは、国際的な競技水準からの後退、これは、国は口ではスポーツ施策の二本足の一つに国際競技の向上策を言いますけれども、予算関係を見ても、これはずっと減っておるわけですね。五十七年度が二百八十五億、六十二年度が、要求ですが二百十八億ですね。これは体育スポーツ関係予算です。減っておるわけですね。  問題は、単に金だけじゃないのです。総合的、体系的なスポーツ行政が欠如しておるわけです。私はまさにスポーツ後進国、こういうふうに言っても過言ではないと思うのです。大臣もよくごらんになったと思いますけれども、いろんな専門家が書いておるでしょう。このままだとメダルが危ないと書いておるわけでしょう。実際そうなんですよ。  スポーツ振興法の十四条を見ますと、「スポーツの水準を国際的に高いものにするため、必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」こうありますね。そのためには私は、第一線級のコーチあるいは選手、非常に苦労されておる、この人たちが一体どんな実情にあるのか、よく知ってほしいと思うのです。  朝日新聞社のアンケートによりますと、欧米に比べて経済的に恵まれていないというのが七九・七%、競技生活を終わった後、将来に不安を感ずるか、これはコーチも含めてですが、感ずるが五六・八%。そうなんですね。だから結局、国に頼れぬということで、エスビーの瀬古さんとかダイエーの中山さん、あるいは三段跳びのNECの山下さんですね、結局企業マンの道をたどるというのが非常に多いでしょう。だからこれじゃだめなんで、やはり企業には限界があるんですね。いいときはいいのですけれども、下り坂になってPR効果が薄くなると、これはいろいろ問題が出てきます。  したがって、私は大臣に要求したいのは、選手、コーチについての何らかの身分保障あるいは条件整備を具体的に今まさに検討する必要がある、これは中期、長期にやらなければならぬと思うのですね、二年先に間に合いませんけれどもね。それから、国による有給コーチ制、これをやはり確立する必要があると私は思いますが、この点についていかがですか。
  245. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 今度のアジア大会で、ただ一言で言ったら根性が足らぬ、これは当然なのですけれども、その前に私は、日本のアマチュアリズム、この問題を検討すべきではないか。他の国を見ておりましたら、これは一体アマチュアなんだろうかというような疑問を持つものもたくさんあります。ところが、日本はかたくなにアマチュアリズムというものを何か規定している。それが美しいことだというふうに思うておる。私は、これは誤解だと思うのです。ですから、アマチュアの限界というものを一回日本のスポーツ界において考える必要がある、私はそう思うておる一人でございます。そうでない限り、先ほど野間さんがおっしゃった会社でどうのこうのという問題も、あるいは身分保障の問題も前進いたしませんよ。そういうところに根源があると私は思うのです。これが一つ。  それから、見るスポーツからもっとやるスポーツでなければ、本当はスポーツではないのです。日本は皆見て楽しむスポーツになって、したがってスポーツが非常に振興されておるように見える反面、参加する層はちっとも伸びてないように私は思うのです。やはりすそ野を大きくしなければ、選手も強化されないし、いい選手も出てこない。私は、今度のソウル大会で反省すべき点はその二つだろうと思うております。  しかし、といって、選手があれだけ一生懸命やっているのに、選手がだめだとは言いにくいと私は思うのです。やはり一生懸命やっておったと思うのです。そういう意味において、私は私なりに相手方が強かったんだ、こう思うておるわけであります。
  246. 野間友一

    野間委員 いろいろな統計がありますけれども、オリンピックにしたってアジア大会にしたって、メダルだけ言うんじゃありませんよ、ずっと下がる一方なんです。それは御存じのとおりなんですね。  時間がありませんから最後に、まだお答えになっておりませんけれども、今申し上げた国による有給コーチ制の確立とか身分保障、この点についての検討を始めてほしいということが一つ。  それから、スポーツ振興法の十七条に、「国は、医学、生理学、心理学、力学その他の諸科学を総合して、スポーツに関する実際的、基礎的研究を促進するよう努めるものとする。」とありますね。国際的に見ましても、世界のトップ水準にある国、これは社会主義だけでなくて資本主義でもそうですね、たくさんありますけれども、みんな国立のスポーツ科学研究所あるいはトレーニングセンターを持っているのです。ないのは日本だけなんですよ。こういう点で総合的、体系的なそういうものをやる必要があるのですよ。  保健体育審議会の「スポーツ技術の水準向上について」という文部大臣への答申があります。これは三十四年九月十二日付です。これを見ましても、「国は、スポーツに関する系統的総合的研究機関として、国立のスポーツ科学研究所を設置する」、こうあるのです。さらに昭和五十八年、国立総合体育研究研修センター(仮称)、これができていまして、これに関する懇談会報告を見ますと、三つの柱、これは研究、研修、情報とあるわけです。スタッフが四十名、東京教育大学の体育学部ですか、この跡地、場所まであるわけですね。だから、こういうことをちゃんと専門家が言っておるわけですから、きちっとやるべきことはやる。これは塩川さんもスポーツ大臣としてぜひやってほしい。いかがですか。
  247. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 午前中にもそれと同じような御質問がございまして、私はお答えしたのですけれども、スポーツをもう少し科学的に、そして生理学の原理に沿ったような運動行動をとる、そういうことが日本の場合はおくれておる、これは事実であります。他の国では事実、科学的に技術の錬磨というのをやっておる。したがって、そういういろいろな答申が出てきておりますので、現在あります科学研究所、そういうようなものも強化しながら、私はこういう面における整備というものは当然やっていかなければならぬと思うております。しかし、だからといって、こういうことは全部国の責任でやれというものではなくて、やはり国民が広く参加するような形で進めていくということもあわせて考えていきたいと思います。
  248. 野間友一

    野間委員 終わります。
  249. 堀之内久男

    堀之内委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十五分散会