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1986-10-17 第107回国会 衆議院 外務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和六十一年九月十一日)(木曜 日)(午前零時現在)における本委員は、次のと おりである。    委員長 山口 敏夫君    理事 浦野 烋興君 理事 奥田 敬和君    理事 北川 石松君 理事 塩谷 一夫君    理事 中山 利生君 理事 土井たか子君    理事 玉城 栄一君 理事 永末 英一君       石原慎太郎君    小川  元君       大石 正光君    鯨岡 兵輔君       坂本三十次君    椎名 素夫君       竹内 黎一君    武村 正義君       中山 正暉君    村上誠一郎君       森  美秀君    山下 元利君       井上 晋方君    河上 民雄君       嶋崎  譲君    高沢 寅男君       神崎 武法君    鳥居 一雄君       渡部 一郎君    岡崎万寿秀君       松本 善明君 ────────────────────── 昭和六十一年十月十七日(金曜日)     午前十時二十九分開議  出席委員    委員長 山口 敏夫君    理事 甘利  明君 理事 浦野 烋興君    理事 奥田 敬和君 理事 北川 石松君    理事 塩谷 一夫君 理事 中山 利生君    理事 高沢 寅男君 理事 土井たか子君    理事 神崎 武法君       小川  元君    大石 正光君       坂本三十次君    椎名 素夫君       竹内 黎一君    武村 正義君       中山 正暉君    村上誠一郎君       森  美秀君    江田 五月君       岡田 利春君    河上 民雄君       鳥居 一雄君    伏屋 修治君       木下敬之助君    岡崎万寿秀君       松本 善明君  出席国務大臣         外 務 大 臣 倉成  正君  出席政府委員         外務大臣官房審         議官      斉藤 邦彦君         外務省アジア局         長       藤田 公郎君         外務省北米局長 藤井 宏昭君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省経済局次         長       池田 廸彦君         外務省経済協力         局長      英  正道君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      中平  立君         外務省情報調査         局長      新井 弘一君  委員外出席者         総務庁行政監察         局監察官    竹内 幹吉君         外務大臣官房審         議官      久米 邦貞君         外務委員会調査         室長      門田 省三君     ───────────── 委員異動 九月十一日  辞任         補欠選任   玉城 栄一君     伏屋 修治君 同月十二日  辞任         補欠選任   井上 晋方君     岡田 利春君   嶋崎  譲君     佐藤 観樹君 十月十七日  辞任         補欠選任   山下 元利君     甘利  明君   土井たか子君     江田 五月君   永末 英一君     木下敬之助君 同日  辞任         補欠選任   江田 五月君     土井たか子君   木下敬之助君     永末 英一君 同日  理事玉城栄一君九月十一日委員辞任につき、そ  の補欠として神崎武法君が理事に当選した。 同日  理事塩谷一夫君同日理事辞任につき、その補欠  として甘利明君が理事に当選した。 同日  理事土井たか子君同日委員辞任につき、その補  欠として高沢寅男君が理事に当選した。     ───────────── 十月七日  千九百八十六年の国際小麦協定締結について承認を求めるの件(条約第一号) 同月八日  核トマホーク積載艦船日本寄港反対等に関する請願外一件(大原亨君紹介)(第一二四号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  国政調査承認要求に関する件  千九百八十六年の国際小麦協定締結について承認を求めるの件(条約第一号)  国際情勢に関する件      ────◇─────
  2. 山口敏夫

    山口委員長 これより会議を開きます。  理事辞任の件についてお諮りいたします。  理事塩谷一夫君から、理事辞任申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 山口敏夫

    山口委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  ただいまの理事辞任及び本日までの委員異動に伴い、理事が三名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じますが、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 山口敏夫

    山口委員長 御異議なしと認めます。  それでは、理事に       甘利  明君    高沢 寅男君    及び 神崎 武法君 を指名いたします。      ────◇─────
  5. 山口敏夫

    山口委員長 次に、国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  国際情勢に関する事項について研究調査し、我が国外交政策の樹立に資するため、関係各方面からの説明聴取及び資料の要求等の方法により、本会期中国政調査を行うため、議長に対し、承認を求めることにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 山口敏夫

    山口委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ────◇─────
  7. 山口敏夫

    山口委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。  この際、外務大臣より発言を求められておりますので、これを許します。外務大臣倉成正君。
  8. 倉成正

    倉成国務大臣 私は、九月十四日より二十日まで、ガット閣僚総会出席のためウルグアイのプンタ・デル・エステに滞在し、さらに、引き続き二十一日から二十五日まで、第四十一回国連総会出席のためニューヨークに滞在、二十六日に帰国いたしました。  ガット閣僚総会においては、私は開会式において仮議長としてサンギネッティ・ウルグアイ大統領及びイグレシアス同国外相を紹介するとともに、新ラウンドウルグアイ・ラウンドと呼ぶことを提唱し全参加国の賛同を得ました。また、日本代表としての演説中では新ラウンド発足重要性を強調いたしました。  今次閣僚総会においては、サービス等の新分野及び農業が大きな争点となったほか、特に我が国にとっては、利益均衡問題の取り扱いが難航いたしました。  サービス等の新分野については、新ラウンドでこれを交渉対象とすることが不可欠とする米国と、ガットの枠内での同分野交渉を行うことに強い懸念を有するインドブラジル中心に最後まで調整努力が行われ、その結果、新分野を新ラウンド交渉で取り上げることにつき合意が得られました。  農業については、輸出補助金撤廃を求める豪州等農業輸出国と、域内共通農業政策の根幹に触れることはできないとするECとの間で意見の対立が見られましたが、粘り強い調整の結果、双方立場がともにある程度反映される形で妥協が得られました。  EC貿易収支均衡の是正を交渉目的に追加するよう提起した利益均衡問題については、我が国は、かかる考え方管理貿易体制を志向するものであり、ガット基本原則に全く整合しない等これに強く反論し、各国に対しても理解を求めました。その結果、利益均衡については宣言には含まれることなく、双方主張の要点が、議長による宣言主要点説明一環として言及されるにとどめられました。  私は、田村通産大臣とともに、我が国の国益を踏まえつつ新ラウンド開始という最大の目的を達成すべく努力をいたした次第であります。具体的には、サンギネッティ大統領イグレシアス総会議長ダンケルガット事務局長米国、カナダ、アルゼンチン、チリ等出席閣僚との個別会議主要先進国閣僚を招待したワーキングランチにおいて種々意見交換を行うとともに、インドブラジル首席代表閣僚とも会談サービス取り扱いをめぐり調整努力を払いました。また、EC委員会及び英国出席閣僚との個別会談においては利益均衡問題についての我が国考え方を伝え、さらに、アジア太平洋諸国を招待した朝食会でも同問題についての我が国立場理解を求めました。  多くの困難を伴った会議ではありましたが、コンセンサスにより新ラウンド開始を決定し得たことは高く評価されます。我が国としては、今後とも、ウルグアイ・ラウンド交渉成功に向けて積極的な貢献を行っていくことが極めて重要であると思われますので、引き続き関係各位理解と御協力を切にお願いする次第であります。  なお、さきに言及した二国間会談においては、二国間の問題についても適宜言及しましたが、特にサンギネッティ大統領との会談では、二国間関係の促進を中心に率直な意見交換を行い、同大統領が六十二年度以降双方の都合のよい時期に訪日されるよう招待いたしました。  国連総会においては、私は二十三日、一般討論演説を行い、加盟三十周年を迎えた我が国国連協力の姿勢を主題に、国連機能強化必要性を強く訴え、また国連平和維持機能強化に関し、我が国積極的立場を述べるとともに長崎出身政治家として核廃絶達成を初め軍縮の推進を訴えました。同演説は、日本立場が明快に述べられたものとして各国理解と共感を呼び、特に、国連行財政改革主張機能強化という積極的側面に結びついている点がその評価の原因であったと思います。  また、私はこの機会デクエヤル国連事務総長チョードリ総会議長シュルツ米国務長官シェバルナゼ・ソ連外相の他中国、西独、メキシコ、ネパール、イラク、英国EC議長国韓国、オマーン、ポーランド、ジョルダン、スリランカ等数多くの外相会談し、レーガン米大統領主催外相会合に出席し、また、アジア大洋諸国招待晩さん会アフリカ諸国外相招待午さん会及び主要国外相非公式会合を主催いたしました。  これら一連の会談では、率直かつ実り多い意見交換を行うことができましたことは、特に私にとって感慨深いものがございます。特に、シュルツ米国務長官との会談では、日米経済関係を総覧するとの立場から意見交換するとともに、グローバルな日米協力関係についても話し合い、同長官との個人的信頼協力関係を確立することができたと信じております。ソ連のシェバルナゼ外相との会談では、私から北方領土問題を初めとする日ソ関係全般について我が国基本的立場を述べました。また、ゴルバチョフ書記長訪日については、先方は訪日を希望するとしつつも、時期については、年内は無理であるが、目下明年の主要な行事について計画をつくっており、一定の時期を経て日本側訪日時期を通報したい、今回、時期を通報することができない主要な理由は、米ソ関係の推移が見通せないからである旨述べておりました。  南アフリカ問題に関しましては、国連演説、二国間会談アフリカ諸国外相との午さん会機会において、九月十九日に発表しました対南ア追加措置を含め我が国の南ア問題に対する基本的立場説明しましたところ、関係各国より適切な対応をとっているとして評価をいただきました。  五日間という短い期間ではありましたが、私は国連の場を利用して、我が国立場国際社会に強くアピールし、我が国外交の幅を一層広げる上で成果を上げ得たものと考えておる次第でございます。  以上御報告申し上げます。     ─────────────
  9. 山口敏夫

    山口委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高沢寅男君。
  10. 高沢寅男

    高沢委員 私は倉成外務大臣にこうして御質問を申し上げるのは初めてであります。大臣、まことに御苦労さまでございます。どうか質問趣旨に対して大臣から十分な見解の御表明をいただきますように、まずよろしくお願いいたします。  初めに、突然出てきた問題でありますが、日米統合演習に対して在韓米軍参加するという問題が出てまいりました。在韓米軍参加は初めてのケースであるわけでありますが、こういうことが一体あっていいのかどうか、このことについてまず大臣の御見解をお尋ねいたしたいと思います。
  11. 倉成正

    倉成国務大臣 お答えいたします。  事実関係のこともございますので、政府委員から説明させたいと思います。
  12. 高沢寅男

    高沢委員 大臣、初めから政府委員ではちょっとあれですね。大臣の御見解があって政府委員の補足があるかと思います。
  13. 倉成正

    倉成国務大臣 事実関係のこともございますので、まず政府委員から御報告をいたすと申しておる次第でございます。
  14. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 日米合同演習が十月二十七日から三十一日まで開かれるということでございまして、参加人員日本側自衛隊側が約六千名、米側が七千名ということでございます。その中で、今御指摘通常韓国の水原に展開しております米軍航空機A10、OV10が参加する予定というふうに承知しております。その理由といたしましては、A10は類例の少ない近接航空支援戦闘機でございまして、またOV10は非常に狭いところでの比較的小規模な戦闘に適しているという低速度の偵察機であるということで、これらの航空機を使用して効果的な空地作戦が実施し得るということで参加する予定であるということでございます。  この通常韓米軍に所属しております飛行機日米共同訓練参加しますのはこれが初めてでございますが、フィリピンとかあるいはハワイ等各地から、今回もそうでございますけれども、通常参加しておるわけでございまして、これは安保条約上全く問題はないというふうに考える次第でございます。
  15. 高沢寅男

    高沢委員 今、政府委員から事実関係説明がありましたが、私はそのことの評価についてぜひ外務大臣の御見解をお願いしたいと思います。  安保条約上問題がないということでありますが、こういうやり方が進行していくと、日本防衛個別的自衛権から集団自衛権、殊に日米韓という関係に拡大するのではないか、これは多くの心ある人が心配しているところであります。このことについて、大臣いかがお考えですか。
  16. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいまの高沢委員お話でございますが、我が国が他国に加えられた武力攻撃を排除することを内容とするいわゆる集団的自衛権行使日本憲法上許されておりません。このことはよく承知しております。我が国に対する武力攻撃を排除するための個別的自衛権行使は当然許されているところでございます。自衛隊はそのために設けられた唯一の実力部隊として平素より教育訓練し、充実し、精強な部隊を育成する必要があると思うのであります。  自衛隊米国を含む第三国の軍隊共同訓練を実施するとしても、これらの訓練は当然のことながら個別的自衛権行使が必要となる事態に備えてのものであり、したがってこのような訓練を行うことは決して日米安保取り決めとして間違いでないと信ずる次第でございます。
  17. 高沢寅男

    高沢委員 私の記憶によれば、これは昭和五十年のことでありますが、当時の我が党の岡田春夫委員質問に対して、当時の防衛局長丸山氏から「自衛隊立場で在韓米軍訓練をするということはできないというふうに判断しております。」こういう答弁がなされております。これは大臣いかがお考えですか。
  18. 倉成正

    倉成国務大臣 御指摘政府答弁は当時のいわゆる三木・フォード共同新聞発表第三項の議論の一端の中で行われたものであることは御承知のとおりでございます。  すなわち、当時の質問者は右第三項に言及して、これは日米間の軍事関係をもう一歩発展強化させたものではないか、あるいはこれが米韓相互防衛条約日米安保条約とが連動して韓国の平和のために作用を及ぼすということを明確にしているのではないか等の点を指摘しながら、自衛隊と在韓米軍との共同訓練の是非をただしたのに対しまして、政府より否定的見解を述べたものでございます。  したがいまして、このように御指摘政府答弁は、かかる文脈の中で、政府としては韓国防衛を前提とするような在韓米軍との共同訓練を行うことができないとの趣旨を述べたものでございます。もとより自衛隊といたしましては、防衛庁設置法第五条第二十一号に基づき、自衛隊戦術技量の向上を目的としていわゆる在韓米軍を含め外国軍隊共同訓練を行うことは法的に可能であります。  なお、いずれにせよ政府としては、目下在韓米軍との共同訓練について具体的計画を有しているわけではございません。
  19. 高沢寅男

    高沢委員 今回のこの在韓米軍参加の問題について、政府側は、参加する在韓米軍日本へ来れば在日米軍指揮下に入る、したがって集団安全保障ではないんだ、こういう見解をとっているわけであります。  しかし、これは演習ではあっても実際の戦争事態を想定しての演習であるわけでありますから、そういたしますと、日本防衛のためということで在韓米軍参加することになったときに、その相手側は今度はその韓国にある米軍基地を攻撃することも当然作用反作用で出てくる。そういうことになるときに、日本防衛という目的が今度は韓国をも日本がともに防衛するということに連鎖反応で発展する。これが集団安全保障ということになるんじゃないか。そういう判断というものを大臣はどのようにお考えですか。物事は作用反作用なんです。
  20. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 このA10という飛行機は、先ほど申し述べましたように対地攻撃飛行機でございますが、日本にもし一たん緩急がありました際には米軍日本自衛隊に対する来援に来るという事態を想定いたしますと、その米軍ハワイあるいはフィリピン等からも日本来援に来るということでございまして、通常韓国に駐在しておりますA10につきましてもその来援一環としての想定でございまして、したがいましてその対地慣熟日本の地形などについてあらかじめ慣熟するということがこの演習目的一つというふうに了解しておりまして、A10につきましての目的一つというふうに了解しておりまして、したがいまして、これは日本の、あくまで日本防衛の問題でございまして、韓国防衛とは全く関係のないことでございます。
  21. 高沢寅男

    高沢委員 これも大臣にお尋ねします。  今の政府委員説明では、A10はそうした地上攻撃というふうな対地戦目的飛行機であるということで、だからいいんだ、こういうお話ですが、すると在韓のF16、こういうものは、この立場に立てば日本演習参加することは断じてあり得ない、こういうことになると思いますが、いかがですか。
  22. 倉成正

    倉成国務大臣 高沢委員の御質問でございますが、一般的な問題については私からお答えいたしますが、詳細の法律論につきまして、政府委員条約局長等参っておりますから、政府委員からお答えさせたいと思います。
  23. 小和田恒

    小和田政府委員 先ほど外務大臣及び北米局長からお答えをいたしましたように、問題は、基準はあくまでも我が国防衛のために何をするか、こういうことでございます。  今回問題になっておりますケースは、韓国防衛のためということとは何ら関係のない、専ら我が国防衛するために我が国自衛隊共同訓練を行う、こういうケースでございます。個々の具体的なケースにつきまして、どういう武器あるいはどういう状況のもとであるならばそういうことであるかというようなことにつきましては、具体的な状況に応じて判断しなければならないかと思いますが、一般論として申し上げますれば、先ほど北米局長お答えいたしましたように、自衛隊の場合に、我が国防衛のために必要な限度において共同訓練をするということは、法的には何ら問題はないということでございます。
  24. 高沢寅男

    高沢委員 我が国防衛のためというそのにしきの御旗を使えば何でもできる、結局そういうお話ではないかと私は思います。藤井アメリカ局長説明からすれば、戦略爆撃機性格を持つF16、これの参加は当然あり得ない、こう私は考えます。  で、その立場に立ってもう一つ、先ほど言いました在韓米軍日本演習参加する、そのときは在日米軍指揮下に入る、この論理ですね。これは、裏返せば、今度は在日米軍が仮に韓国戦争に、仮にアジア戦争出動していく、一歩日本から出れば、これはもう在日米軍指揮下から外れます、こういう理屈になりますと、あの安保第六条の事前協議の規定は全く無意味になるということにもなるかと思いますが、この点はひとつ大臣、あなたの見解を聞かしてください。いかがですか。大臣、あなたの見解ですよ。これは一番重要な問題ですよ。政府委員の問題ではなくて、大臣、あなたが日本の国の運命の問題としてどう判断するか、これを私はお聞きしているのです。今の問題はぜひ大臣答えてください。
  25. 倉成正

    倉成国務大臣 我が国としては、日本国憲法、また日米安保条約、また日米間の取り決め、この範囲内でのことを十分踏まえて対処するつもりでございます。
  26. 高沢寅男

    高沢委員 これは、残念ながらとても答えにはなっていないと言わざるを得ないですね。例えば、人の物をとる泥棒をやってはいけません、人を殺すような殺人の罪を犯してはいけません、こういうことに対して、大臣お答えは、私はいい人間になります、こういうようなことで答えているというふうに私は言わざるを得ないと思うのです。  こういう答えは、これは要するにはぐらかしの答えであって、今言った在日米軍が、では日本の領域の外へ出たときにその性格が変わるということにならぬか、なるとすれば、安保第六条の事前協議は無意味ではないか、こういうことに大臣どう考えますかと言っているときに、あなた、さっきの答えは、あれは答えじゃありませんよ。もう一度答えてください。
  27. 倉成正

    倉成国務大臣 私の答えが正確でなかったかもしれませんが、移動についてはこれは当然のことでございますが、戦闘行動については事前協議対象になる、そういうことを申し上げたつもりでございます。
  28. 高沢寅男

    高沢委員 それは出動することが事前協議対象になっているのですよ、出動が。このことを大臣どうお考えですか。戦闘をやるやらぬ、それは、まさに危機一髪の状態のときに、出動それ自体はもう戦闘につながるという性格を持ちます。ですから、出動が、これが安保第六条の事前協議対象になるのです。このことを、向こうから入るものは在日米軍指揮下だ、今度はこちらから出るものは在日米軍とは別です、こんなそのときそのときのごまかしの理屈ではこの事前協議は全く無意味である、それに大臣、あなたはどう考えるかということをお尋ねしているのですよ。  それは、条約集を見るよりも、あなたの政治的判断ですよ。
  29. 倉成正

    倉成国務大臣 日本国から行われる戦闘行動ということを申し上げておる次第でございます。
  30. 高沢寅男

    高沢委員 いや、それはいいんですか悪いんですか。許されるんですか。事前協議との関係でどうですか。それを答えてください。
  31. 小和田恒

    小和田政府委員 安保条約の運用に関する若干技術的なお尋ねでございますので、私からお答えさせていただきたいと思いますが、高沢委員の御質問が、先ほど大臣お答えをいたしましたように、我が国から行われる戦闘作戦行動ということであるならば、これは第六条の実施に関する交換公文上、事前協議対象になるということは御承知のとおりでございます。他方、そういう戦闘作戦行動になるような事態でなしに、在日米軍が単純な移動をするというようなケースにつきましては、これは移動の問題であるということは、従来から政府が御答弁しているとおりでございます。
  32. 高沢寅男

    高沢委員 小和田さん、あなたは三百代言だよ。ベトナム戦争を思い出してください。ベトナム戦争のときに、在日米軍が現に出動しましたよ。そのときに何と言ったか。日本から出た米軍は一度沖縄に寄ります——沖縄はまだ施政権返還の前。沖縄から行ったんだから、これは第六条とは別です、事前協議とは別です、こういうさんざんのごまかしをやってきた。これをあなた、小和田さん、またやる気ですか。このことをしっかり答えてください。
  33. 小和田恒

    小和田政府委員 私が申し上げておりますのは、先ほどもお答えをいたしましたように、個々のケースにつきましては個々の具体的な状況判断をしなければいけないと思いますが、安保条約第六条の実施に関する交換公文上の事前協議対象になっておりますのは我が国から行われる戦闘作戦行動であるということを申し上げているわけでございます。他方、典型的なケースとして、単純に部隊移動するというケースはそういうものには当たらないということも従来から政府お答えを申し上げているとおりであるということを申し上げているわけでございまして、具体的な状況の中でどういうことが起きるかということについては、当然その具体的な状況において判断をすることになるであろうと思います。
  34. 高沢寅男

    高沢委員 この答え方以外は絶対にしないとかたく決意して同じことを繰り返しているようですから、この問題だけで時間をとりますと、またあとお尋ねしたいことが時間がなくなりますから、この問題は一応これでおさめます。しかし、将来また必ずやりたいと思います。  レイキャビクの米ソ首脳会談が不調に終わりました。全世界の人たちがここで核軍縮の話し合いがまとまることを非常に強く期待しておった。もちろん、被爆国民である我々日本の国民も非常に強く期待したわけでありまして、それが最後の段階で不調に終わったということは、まことに我々は大きな失望を感じているわけでありますが、この経過について、いろいろの人がそれを論評したりコメントをされておりますけれども、私、残念ながら、倉成大臣がこのことでコメントされたのをまだニュースで拝見しておりませんので、きょうはひとつ十分聞かしていただきたい、こう思います。  まず、中距離核あるいは戦略核、この削減の問題についてはレーガン大統領ゴルバチョフ書記長がもうほとんど合意するところまで事実上いっていた。ところが、それが最後の段階で物別れになってしまった。この原因は一体何であったと大臣考えでしょうか。大臣お願いします。
  35. 倉成正

    倉成国務大臣 レイキャビクの会談で米ソの両首脳が世界の軍備管理、軍縮について率直な意見交換を行った、そしてまた三回に及ぶ会談が四回に及んだ、またある時期におきましては、御承知のとおり両首脳の会談を専門家にゆだねて徹夜をして朝の六時半までかかって問題の整理をして、そしてそのペーパーをもとにしてまた会談に臨んだということで、私は両国の首脳が非常に精力的にこの問題に取り組んだことを高く評価している次第でございます。そして、お話しのとおりいろいろな面において大きな前進があったと思います。  しかし、最後の段階になってSDIをめぐる問題、ABMの解釈というようなことでこの問題が不調に終わったということでございますけれども、私は、その後ブラッセルにおけるアメリカ側の説明あるいは特使として参りましたアメリカの大使からの説明を聞いたり、また諸外国から参ります方々の御意見等いろいろ伺っておりまして、またカピッツァ外務次官が近く日本に参りまして先方のお話をお聞かせいただくということでございますから、総合的な、私の最終的な判断をここで申し上げる立場ではございませんが、しかし、両国の首脳が真剣にこの問題について話し合った、そして両国の首脳もまたその後のいろいろな声明の中においていろいろなことを申しておりますけれども、少なくともこの問題についてさらに真剣に考えていこうという趣旨のことを申しておることを考えますと、私はこの会談は意義があったというふうに思っておる次第でございます。
  36. 高沢寅男

    高沢委員 私もこの会談は非常に意味があった、実は同じ考えであります。それは中距離核、戦略核の削減についても事実上もう両首脳の見解が一致するところまでいっていた、そういう意味においては、このときこそ人類の悲願である核軍縮が実現するという最高のチャンスであった、こう思うのですが、その最高のチャンスまでいったのに壊れた原因が今大臣言われたSDIの問題である、こういうふうに見るとすれば、一体このSDIというものを大臣はどういうふうにお考えですか。SDIとはそもそも何ぞや、これについての大臣の所見をお聞きしたいと思います。
  37. 倉成正

    倉成国務大臣 SDIは、御承知のとおりレーガン大統領が非核の手段によって最終的には核兵器の廃絶を目指して、矛と盾の関係で申しますと盾をつくろう、近代技術の粋を尽くしてやろうという計画でございます。したがいまして、SDIという名前をつけておりますが、研究計画の段階が現在の段階でございます。また、この問題に関しましては、SDIという名前をつけるかつけないかは別としても、ソビエトにおいてもこれと同様の研究がされておることは御承知のとおりでございます。  そういう関係でございますから、やはりこの軍縮、またいろいろなこれらの交渉というのは極めて技術的、専門的、また自国の安全保障に関する問題でございます。検証の問題にしてもそうでございます。したがって、私はレイキャビクの会談が不調に終わったことは非常に残念に思っておりますけれども、それほど難しい問題である。両首脳が、よし、わかったというような形で解決される問題ではない、そういうふうに思っておるわけでございますから、やはりこの会談がさらに一歩でも二歩でもなるべく早く前進するように私は両国の首脳に対して強く日本立場を述べたいと思っておる次第でございます。
  38. 高沢寅男

    高沢委員 最後にSDIのために合意ができなかった、こういうふうに考えてみると、よくレーガン大統領自身も言います、また世間の人も言うわけですが、SDIは核軍縮を進めるためのてこである、こういう言い方をされるわけです。ところが、今度のレイキャビク会談の現実の姿は、SDIは核軍縮を実現させるのを不可能にした。核軍縮を実現するその条件の前にこのSDIを乗り越えなければ、この問題を乗り越えなければ核軍縮ができない、こういう性格のものだということが私ははっきりと浮かび上がってきたと思います。  そうすると、SDIというものは核軍縮を進めるてこであるという見方ではなくて、SDIは核軍縮を困難にさせる、あるいは不可能にさせる、そういう一つの障害物になっておる、こういうことではないかと思いますが、大臣見解いかがですか。
  39. 倉成正

    倉成国務大臣 せっかくの高沢委員の御見解でございますが、私は全然反対の意見を持っております。  昨年以来の米ソの軍縮交渉の経過、再開の交渉その他を見ておりますと、今次首脳会合の開催というのは米国のSDIの研究というものがやはり一定の役割を果たした、これが一つのてこになっておるということは一つの事実であると思います。その証拠には、御案内のとおり、これこれのことについてということでいろいろな交渉が行われて、ある程度のことの合意が見られた。しかし最後の段階で、SDIの問題についてのつばぜり合いと申しますか、双方の合意ができなかったということだと思うわけでございまして、SDIがあったからこれは全然だめだということではなくて、むしろSDIというものが両方の国がこういう問題について話し合う一つのきっかけにもなったという見方がある、また私はそういう立場をとっておるということを申し上げたいのでございます。
  40. 高沢寅男

    高沢委員 このレイキャビクで物別れになった米ソ両首脳がなるべく近いうちにまた会談をやって、そしてひとつ核軍縮を合意を達成してもらいたい、みんなそう思っております。思っておりますが、また会談をした、そして核軍縮で話は事実上詰まった、またSDIで対立したということで流れることになる心配はありませんか。それまでにこのSDIについてレーガン・ゴルバチョフの両者でこの障害を乗り越える何らかの方法ができておればいいですよ。そうでないとすれば、また今度と同じように核軍縮は話が詰まったがSDIで話ができぬ、まとまらなかった、それでまた流れる。レーガン大統領はSDIで絶対に取引しない、こう言っています。取引しないと言っている以上は、逆のゴルバチョフがレーガン大統領のSDIの見解をそのまま認める、これ以外にないでしょう。しかし今度はゴルバチョフが認めるかといえば、それは認められないと言っているわけです。そういう意味においては、このSDIというのは、核軍縮をこれがあったから会談ができた、こう大臣言われましたが、むしろこれがあったから会談が壊れた、こういう評価大臣いかがお考えか、もう一度聞かせてください。
  41. 倉成正

    倉成国務大臣 せっかくの御意見でございますけれども、御案内のとおり、この会談の後に、レーガン大統領のみならずゴルバチョフ書記長もこれから会談をやろうと言っておるわけですから、もう全然見込みのないことを会談をやろうなんということをゴルバチョフ書記長が申すはずはないわけです。したがって、やはり検証の問題、いろいろな問題について専門家を交えてひとつ話し合っていこう、そういう熱意が両国の首脳に——世界の人類の運命をかけて期待しておるわけでありますから、SDIがあるから、そしてこの問題は絶対に会談はうまくいかないのだという予断をするのはいかがなものだろう。ぜひひとつ両方の方で合理的な話し合いをしていただいて、そして両首脳が合意に達することを、日本は唯一の被爆国である、広島、長崎——長崎を最後の人類の核の被害地としたいという日本国民の、また世界人類の希望を両国の首脳がひとつ果たしてもらいたいというのが私の気持ちでございまして、ただいまの御意見の御趣旨はわからないではありませんけれども、両国の首脳がそういう熱意を持っているということを既にいろいろな機会に言っているという事実というのは私は重く受けとめておる次第でございます。
  42. 高沢寅男

    高沢委員 今度のこの米ソの首脳会談を実現させた大きな要素としては、さっき大臣はSDIがあったからそうなった、そういうことを言われましたが、私は今度のこの会談を実現させた一つの大きな要素としては、ソ連が御承知のとおり、昨年夏以来核実験——空中とかあるいは水中とか地上とか、こういう核実験はもう部分核停条約で禁止されております。あと地下核実験、これは米ソそれぞれやってきたわけであります。その地下核実験をソビエトは一方的に凍結をする、やりませんということできているわけでありますが、こういうことが今度の米ソの会談を実現させるように進めた、国際情勢を緩和させる、核軍縮の方向へ世論を進める、そういう要素になっておる、こう私は思いますが、大臣、これは御所見はいかがですか。
  43. 倉成正

    倉成国務大臣 私はSDIが米ソ首脳会談一つのきっかけであるということを申し上げたのでありまして、SDIがすべてであるということは申したつもりではございません。人類を何回も、何十回と殺りくするような核兵器を米ソ両国で持っておる、したがってこういうばかげたことをぜひやめてもらいたい、そしてこれはソビエトの経済にとっても、アメリカの経済にとっても、あるいは世界の経済にとっても、こういう軍事費が大きなウエートを占めておるということは我々は大変残念なことに思っておるわけです。  したがって、米ソ両国がいわゆる全人類の希望と申しますか、そういう期待を込めて、そういうことを受けて会談に臨まれたと私は思うのです。しかし、SDIも御承知のとおりその重要なきっかけの一つであるということを申し上げたわけでございますから、誤解のないようにお願い申し上げたいと思います。
  44. 高沢寅男

    高沢委員 SDIはその一つである、それは結構ですよ。と同時に、先ほど私がお尋ねしたのは、ソビエトが核実験を一方的に凍結してきた、このこともその一つではないのか、これをお尋ねしたわけです。
  45. 倉成正

    倉成国務大臣 核実験のいわゆるモラトリアム、実験を停止するということ、その時点だけから物事を考えると、一般的に聞きますと、一方が停止するのだから一方やめたらいいじゃないかということになるわけですけれども、専門家の高沢委員が御承知のとおり、モラトリアムのことを、核実験停止を決めましてからもそれが実際破られたという実績が過去におきましてあるわけですね。そういういろいろなことがありますから、やはりこれは一国の安全保障に関する問題でございますから、地下核実験の検証であるとかいろいろな問題についてやはり専門家が確信を持たなければ、この問題は一方がやったから一方はすぐやめるというわけにいかないというところに難しい問題があるのじゃないでしょうか。そういう意味で専門家がそれぞれ知恵を絞って、そして検証の問題を含めていろいろ話し合いをしたということではないかと思います。単純な問題ではない。もうこれは十分御承知の上で御質問なさっておると思いますけれども、あえて申し上げる次第でございます。
  46. 高沢寅男

    高沢委員 過去におけるモラトリアムは、これはフルシチョフ時代にありましたね。しかし、フルシチョフ時代はモラトリアムを宣言し、そしてまた、再開するときは再開するでそれを世界に声明して再開しているわけです。今度のモラトリアムは、これも天下に我々は一方的にその凍結をするということを宣言して今日に至っておる。このことが、先ほど言いました、それに対してアメリカはどうかということ、これはまた別途お尋ねしますが、そうではなくて、このソビエトのモラトリアムの中で実は隠れてひそかにやっておるというようなことを、大臣お持ちですか。ちょっとお尋ねします。
  47. 倉成正

    倉成国務大臣 私は、専門的に軍事衛星、偵察衛星等持っているわけではございませんから、隠れてどうしている、こうしているということは、高沢委員は御承知かもしれませんが、私はそれを知るすべもございません。「ミリタリー・バランス」であるとかいろいろな情勢、軍事関係の問題については読ましていただいておりますけれども、これは一方的に私がここで断定をし、そしてここで申し上げる立場にはないわけでございます。  したがって、モラトリアムについて御提案されたということも、それは一つのきっかけと言えばきっかけでしょう。しかし、それが非常に大きなきっかけであるという判断はいたしていないと私は申し上げておるわけです。あらゆることが総合してやはりこういう会談になったということであって、一つのことがこの会談のきっかけになったとは思っていないということを申し上げたかったわけでございますから。
  48. 高沢寅男

    高沢委員 すると、これがとにかく今度の会談一つの要素になっていることは、大臣もお認めになるわけですね。私の心配は、今度物別れに終わった、こういうところからそれでは米ソがまたやりたいほうだいにやろうというようなことにもしなって、そしてモラトリアムをしてきたソビエトが、その間アメリカがずっとやっているわけですから、ソ連の方がおれの方もまたやるぞということで、また核実験を始めるというふうなことになったら、これは大変だ、私はそういう考えを持ちます。大臣、そのことについてそれはそれでしようがないとお考えなのか、そうはなっては困るとお考えなのか、いかがでしょうか。
  49. 倉成正

    倉成国務大臣 軍事関係というのは、相互のバランスの問題で物事は判断すべき問題だと思います。したがって、米ソの首脳が専門家を交えて専門的にお互いに納得いく形で合意が得られるということが必要だと思うわけでございまして、米ソの首脳は何とかしてひとつこの会談がまとまるということを、レーガン大統領のみならずゴルバチョフ書記長もこれを望んでおると思うのです、これは全人類の希望ですから。そういうことを考えますと、委員の御質問の御趣旨が私は那辺にあるかわかりませんけれども、これはもう全然だめになってしまうのだというような悲観的な見解を私は持っておりませんで、どうなるかということもまたこれ、なかなか予想はできませんけれども、私としては祈るような気持ちで、米ソ首脳会談が早く実現して、そして両国の合意ができることを期待しておるということを申し上げておるわけでございます。
  50. 高沢寅男

    高沢委員 まあ祈るような気持ちで、あるいはまたまあ何とかいくだろうというふうな気持ちでおられたのでは、私は大臣としてはいかぬだろうと思います。
  51. 倉成正

    倉成国務大臣 何とかいくような気持ちでとかいう、私はそういういいかげんな気持ちで思っておりません。真剣に考えております。真剣に米ソの首脳が本当に人類の運命と、そしてこれからの世界の平和を願ってやっておると思うのです。真剣勝負でやっておると思うのです。そういう意味で申し上げておるのですから、そういう気持ちは毛頭ないということだけははっきり申し上げておきます。
  52. 高沢寅男

    高沢委員 今の大臣の非常に強い決意の表明は、さすがに長崎の御出身というふうに高く評価いたしますが、そこで、何とかなるではなくて何とかする、これも私は日本外務大臣の当然とるべき立場だ、こう思うわけです。  そこで、何とかするということの大きな一つは、この次に米ソの会談がもし行われるときに、今度こそ成功する、そのための前提条件を日本としてあるいは日本外務大臣としてつくるために、あなたも何とかする、何かをするということでなければいかぬと私は思いますが、そのことはいかがですか、大臣、そういう決意おありですか。
  53. 倉成正

    倉成国務大臣 米ソ両国の首脳が真剣にこの問題を考えておるということは私はいささかも疑っておりません。日本としても最大の努力をしたいと思います。しかし、御案内のとおり、日本がやり得ることということについてはおのずから限界もあろうかと思います。しかし、日本の外交としてやれる範囲のことは最大の努力をあらゆる機会をとらえていたしたいと存ずる次第でございます。
  54. 高沢寅男

    高沢委員 そこで、私は、大臣がひとつこういうことをしたらどうかということを御提案申し上げたいと思います。  それは、恐らくゴルバチョフ書記長考えは、SDIは弾道ミサイルをすべて撃ち落とす、一〇〇%防御できる、こういう盾であるということをレーガン大統領は言っていますね、もし本当にそういうものとしてSDIができ上がったときに、アメリカから見れば、さあこれでもうソ連が何を撃ってきてもみんな落とせる、一〇〇%落とせる、こういう状態になったら、今度はアメリカは、ソビエトからの報復攻撃の心配なしに、今度はソ連を攻撃できるわけです。これは私は、例えて言えば、かつて塚原ト伝という日本の剣豪がおりました。この塚原ト伝に相手の剣士が打ちかかってきた、そのとき塚原ト伝は少しも騒がず、おかゆを煮ていたなべのふたをとってぱっとふたで受けた、そして、しかしそのときに、今度はト伝は右手でみずからの太刀を持って相手を打った、こういうことがありますね。私はSDIというのは、もしその言うとおりに本当に一〇〇%弾道ミサイルを防御できるというものであるとすれば、これはちょうどなべのふたであって、しかしこのなべのふたで受けたときは、今度は次はこちらが打つという、これはもう当然出てくる。これをゴルバチョフは大変恐れておる、心配しておるということではないかと私は思います。  そういたしますと、ゴルバチョフがその心配なしにSDI問題でレーガン大統領と話がつく、それによって核軍縮の話がまとまるというふうに進めるためには、私は、一つの方法は、今までソビエトなりあるいは中国なり核保有国は、自分の方から先に核は使わないということを宣言しているわけです。御承知のとおりです。そして彼らは、アメリカもそういう宣言をしたらどうか、アメリカも先に核は使わないということを宣言したらどうか、これはいつも、国連総会でも核不使用協定の問題でいつもいつも議題になっております。残念ながら我が国は、前は反対、今は棄権、こういうことでありますが。  私は、アメリカがみずから核を先に使わない、こういうことを言えば、このSDIに対するゴルバチョフ書記長の心配というものは非常に取り除かれるということになるんじゃないか。今度、大臣は十二月に訪米されるそうですが、そのときに、この先制使用はしないということをアメリカにはっきりとそういう立場をとったらどうだということを求められたらどうですか。アメリカの国内でも、ジョージ・ケナン氏とかマクナマラ元国防長官とか、それら非常に有力な人たちも、アメリカは先制使用をしないということを明らかにすべきだ、こういう態度をと、国内からも出ているわけです。これは大臣いかがですか。
  55. 倉成正

    倉成国務大臣 高沢委員承知のとおり、SDIについてはいろいろな、科学者の中におきましても、政治家の中においても、アメリカの国内においても、ヨーロッパにおいても、日本の国内においても意見があることは私も十分承知しております。また、私も科学技術のことは多少興味を持っておりますから、このことについてはいろいろ勉強さしていただいておるわけでございます。しかし、御承知のとおりSDIは、米国大統領と議会が将来の弾道ミサイルの防御システムを開発し配備することについての是非を判断するための材料を得るための研究計画、そういうふうに伺っておるわけでございまして、まさに技術的に可能であるか不可能であるかを研究するのがSDI研究計画だと私は理解しておるわけでございます。  したがって、仮にSDIが相手のミサイルを一〇〇%落とせない、おとりのいろいろなものが来たり、あるいはいろいろな技術上の問題等から考えまして一〇〇%落とせないと仮にいたしましても、塚原ト伝のお話がございまして、私も剣道のことは、試合はよく見ますけれども、ト伝の映画で見た程度で、あるいは小説で読んだ程度でしか知らないわけでございますけれども、一〇〇%でなくても相当部分であれば、SDIが防御について、やはり先方の先制攻撃を著しく不確実にすることができる、抑止力を高めることができるというふうに考えるわけでございます。  そして、後段の御質問でございます。これは、先制攻撃をしないということを一方的にアメリカが宣言すればそれで事柄が解決するかということでございますけれども、そのような単純なものではないということは御承知の上で御質問されていると思うわけでございまして、現状は御承知のとおり、残念ながら核の抑止力、核の均衡、余り申し上げたくない言葉でありますけれども、恐怖の均衡、相手が撃ち出したらそれに対して壊滅的な打撃を受けるというようなことで今の平和が保たれているという現実を考えますと、一片のそういう宣言でこの問題が解決するものではない。  私も長崎でございますから、平和祈念日ごとにいろいろな平和宣言が行われます。また国連の憲章を読みましても、平和という問題が憲章の中に強くうたわれております。にもかかわらず、戦後四十一年の間に百五十の紛争が世界各地で行われているということを考えてまいりますと、平和に関する宣言、あるいはいろいろなことが、ペーパーがありましても、それが直ちに平和に通ずるものではない。やはり一つ一つ貝体的に血のにじむような努力をしていかなければ平和というものはやってこないというのが私の信念であります。したがって、小さなことであっても一歩一歩平和に近づく努力をしていかなければならないということでございますので、委員の御意見一つの貴重な御意見でございますけれども、私とは残念ながら見解を異にすることを申し上げる次第でございます。
  56. 高沢寅男

    高沢委員 我々は何事も、何かを天下に声明する、宣言する、そしてそれを実行する、こういう形で世界の政治なり日本の政治は発展していくんだと私は思いますよ。中曽根総理だってあれでしょう、何かやるときは、私はこういうことをやりますよということを宣言をし、声明をし、そしてそれを実行するというふうに現にやっているじゃありませんか。ですから、この宣言というものの重要性というものを私は強調したいと思うのです。  そして、これがこの核軍縮を実際やるときは、恐らく話がまとまれば、レーガン大統領も中距離核戦力はヨーロッパからゼロにすると宣言するでしょう。宣言してからそれを実行するでしょう。ソ連だってSS20はヨーロッパからゼロにすると宣言して、そして実行するでしょう。その実行のやり方を検証する、これも最近では空から見るのみならず、その現場も検証することをやりましょうというところまで話が現に来ておるというふうな、まさに核軍縮の条件は確かに一歩一歩今前進しつつあるというこのときに、アメリカが自分は先制攻撃はしませんよということを宣言することはまことに大きな意味がある、こう私は考えるわけです。しかし、これはもう時間の関係で、私の見解を表明してあれしましょう。  ただ、先ほどの地下核実験のモラトリアムに戻りますが、アメリカはソ連のモラトリアムの間に十八回やっています。そのやっているのは、軍事専門家によれば皆SDIのためだというのですね。つまりSDIというのは、空の衛星からあるいは地上からレーザー光線を発射して、それで飛んでくるミサイルを落とす、こういう仕掛けでしょう。その飛んでくるミサイルを落とせる光線、レーザー光線というのは物すごい大きなエネルギーの光線でなければできない、そういうエネルギーの光線を発射するもとは核分裂でなければできない、それをアメリカは十八回も地下核実験でやっている、こういうことですね。  そうすると、SDIは非核の手段であるということ自体が、これでそうではないということが証明されるわけです。こういうSDIの核と不可分の関係、つまり今SDIはアメリカの総合的核戦力の中のもう不可分の一環になっておる、この存在の性格というものについて、大臣いかがお考えですか。
  57. 倉成正

    倉成国務大臣 お答えしたいと思います。  レーガン大統領はレイキャビクの後に、SDIは非核である旨を明確に申しております。そして、ただいまの御質問はエックス線レーザーのお話に関連してのお話だと思いますが、SDIの研究計画は、もう釈迦に説法で高沢委員十分御承知のとおり、多くの分野がございますけれども、大体五つの分野、SATKAから始まりましていろいろな五つの分野がございます。そして、エネルギーの分野については運動エネルギーとそれから指向性エネルギーの二つの分野、この指向性エネルギーの場合にはビーム兵器とそれからレーザーということになっておりまして、その中の一つがエックス線レーザーであるということでございまして、全体の大きな計画の中の一つの部分であるということでございます。そして、ソビエトがいろいろこの問題について研究をしているということに対していろいろなことが言われておるわけでございますから、私は全体として見ると、このSDI計画というのは非核の手段によって盾をつくろうという計画であるというレーガン大統領考え方を支持している次第でございます。
  58. 高沢寅男

    高沢委員 科学技術の進んだ大臣にこんなことを言うのは恐縮ですが、レーガン大統領の非核というのは、相手のミサイルを落とすのにこちらが核ミサイルでぶつけて落とすのではなくて光で落とす、光線で落とす、だから非核だ、こういうふうに言っているわけであって、その光線のもとが核分裂であるということは、これはもう明らかなことなんです。そういう立場からして、このSDIは我々の非核の日本の国の立場からすれば研究に参加するというふうなことは当然あってはならぬ、私はこういう立場に立つわけですが、それにしても政府はこれに参加するということを決められて、十月二十八日ですか、今度はワシントンでこの参加の具体的条件についてアメリカと政府間の話し合いをされるというふうなことが報道されているわけですが、この二十八日からの話し合いの中では、どういう内容を話し合いをされるか、どういう取り決めを結ぶお気持ちであるか、予定であるかということをひとつお尋ねをしたいと思います。
  59. 倉成正

    倉成国務大臣 SDI計画につきましては、我が国の企業等が現行の制度、汎用技術については特別な制限がございません、武器技術供与についてはアメリカとの間の取り決めがあることは御承知のとおりでございます。したがって、現行の法律また現行の取り決めの範囲の中で民間の企業等がこれに参加する場合に円滑に行われるように、そういう問題を先方とひとつ話し合いをするということでございます。  もう少し具体的に申しますと、例えばこういう計画参加しまして、宇宙については非常にわからない点がたくさんあるわけでございますから、科学技術の進歩に貢献する、しかし、その成果について今度はなかなか得られないというようないろいろな問題があろうかと思います。したがって、日本の企業にとってできるだけ有利な条件ができるように、これは相互の契約で決めることで、それがいやだと言えば参加しないわけでございますから、そういう参加する場合にそういうものが有利な条件であるようにということで交渉に臨むということでございます。また、先方とよく話し合いをするということではないかと思います。
  60. 高沢寅男

    高沢委員 新たな秘密保護法の制定をするのかしないのか、これも一つの問題なんですね。それから、共同研究の中で一定の技術的成果が得られたときに、その技術的成果を活用するその所有権といいますか、これはアメリカ側が独占的に持つというようなことにならないのかどうか、こういうふうなこともこれまたこの関係の中で非常に大きな問題です。大臣、この辺はいかがお考えですか。
  61. 倉成正

    倉成国務大臣 お話しのように、確かにある部分について秘密を要するような問題があるかもしれません。また企業においても、いろいろな先端技術について発表したくないという問題もあるわけでございます。したがって、現時点において具体的にいかなる措置によって秘密保護を担保するかということは明らかでございません。  しかし、いずれにせよ、政府としては、関連する現行法規の中で、また日米間の取り決めの範囲内でこの問題を処理したい、そう考えておる次第でございますし、また、先方が何をこれから日本の技術について求めてくるのか、企業とどういう取り決めをしたいのかということについては、まだこれからの問題でありますから専門家の間で十分話し合いをすべきである、そしてそれが我が国にとってプラスになるということであれば参加もしましょうし、それはどうも困るということであればそれは困りますと言うことになろうかと思う次第でございます。
  62. 高沢寅男

    高沢委員 だめ押しですが、現行法規の中でと大臣が今言われたということは、新たな秘密保護立法はしない、あるいは必要ない、こういう立場で臨まれるというふうに考えていいのですね。  それから、その技術の成果の活用の仕方については、もしアメリカ側が非常に一方的なことを出すならばこの場合は妥結はあり得ない、こういうふうに考えていいわけですか、いかがですか。
  63. 倉成正

    倉成国務大臣 現行の法規の中でやるということは委員の御指摘のとおりでございます。  あとの問題は、これからの交渉ですから、企業と米国政府側とどついう交渉をするかという交渉事ですから、お互いにいろいろな交渉があろうと思います。ですから、今これを予断してこの場合はそれはもうだめだとかいうようなことを政府立場で言うことは、私としては差し控えたいと思います。
  64. 高沢寅男

    高沢委員 交渉事の腹のうちをあらかじめ言わないことはわかります。しかし、交渉に臨むときはだれでも、ここまでならいい、これ以上ならだめだということを持って臨むのが私は当然だと思いますから、それはそれで結構です。  最後に、藤尾文部大臣の、今はもう文部大臣じゃありませんが、あの発言のことで日韓関係、これについてひとつお尋ねをしたいと思います。  大臣は、九月十日の日韓定期閣僚会議韓国外相に対して藤尾発言について遺憾の意を表明された。この遺憾の意というのはどういうことに対して遺憾の意を表明されたのか、これをまず最初にお尋ねしたいと思います。
  65. 倉成正

    倉成国務大臣 お答えいたします。  藤尾前大臣の発言は、全体として、我が国がさまざまな機会に表明してきた過去への反省と、その上に立った平和への決意はもとより、近隣諸国との友好的かつ良好な関係の維持強化を図るという我が国の基本政策について無用の疑惑を生じせしめたものと認識しておる次第でございます。しかし、個々の箇所について論評を申し加えることは誤解を呼ぶおそれもございますから、これを差し控えたいと思うわけでございます。  いずれにいたしましても、そういう意味で、非常にセンシティブな感情を持った被害を受けた近隣諸国の感情を配慮して、そういう感情について私は遺憾の意を表明したということでございます。
  66. 高沢寅男

    高沢委員 大変失礼ながら、今、大臣何を言われたのか、私はちっともわからぬです。  この文芸春秋十月号の藤尾さんの「大いに吠える」、これを拝見しますと、例えば、まずアメリカの極東裁判、あれがどうだこうだ、こういう問題を述べていますね。それから南京虐殺ということを言われているが、これがああだこうだ、いろいろ述べておられますね。あるいはまた靖国神社のA級戦犯がどうだこうだ、こういうことを述べておられる。あるいは日の丸と君が代、これはこうなければならぬといろいろ述べておられる。こういうことであなたは韓国外相に遺憾の意を表明したということはないだろうと私は思う。  そうすると、そのほかに韓国関係では、日韓併合、このことについて藤尾大臣が述べている。そして、それは日本が一方的に押しつけたのじゃない、この合邦は侵略じゃないのだ、相手だって同意したのだ、相手にも責任があるのだという部分が、この全体の藤尾さんの発言の中でここがつまり韓国に関する。そして、あなたは韓国外務大臣に遺憾の意を表明した。とすれば、要するに、この部分が遺憾の意を表明したところではないか、こう思いますが、いかがですか。
  67. 倉成正

    倉成国務大臣 いわゆる日韓併合条約についての御発言だと思いますが、日韓併合条約は一九六五年の日韓基本条約によりもはや無効であることが確認されておる、その評価については日韓間の問題としては既に決着済みである、そういうことを申し上げておるわけでございます。これが私どもの認識でございます。
  68. 高沢寅男

    高沢委員 もはや無効であると日韓基本条約でなっている。あなたはこのことで韓国外務大臣に遺憾の意を表明したのですか。どうですか。
  69. 倉成正

    倉成国務大臣 先ほど申し上げましたように、藤尾発言の個々の意見そのものというよりも、全般として韓国国民の感情を非常に傷つけたと申しますか、そういう韓国国民の気持ちというものをいろいろ配慮してこれは遺憾である、日本政府としては遺憾であるということを申し上げたわけでございまして、個々の問題というよりも、全体としてこれはやはり不適切であるというふうに判断した次第でございます。
  70. 高沢寅男

    高沢委員 それじゃ、今の藤尾さんの発言のこの部分について倉成さん、あなたのお考えいかがでしょうか。日韓併合条約は相手にも責任がある、韓国側にも責任があるんだ、こういうお考えか、あるいはこれは全く日本が押しつけたものであって日本の侵略であった、こういうお考えか、どちらでしょう。あなたも長崎ですから、朝鮮はすぐお隣ですよ。
  71. 倉成正

    倉成国務大臣 いずれにしましても、いわゆる日韓併合条約は——お答えしております。正確にお答えしております。  いずれにせよ、いわゆる日韓併合条約は一九六五年の日韓基本関係条約によりもはや無効であると確認されておりまして、その評価については日韓の間の問題としては決着済みであるということを申し上げる次第でございます。
  72. 高沢寅男

    高沢委員 それは答えではないです。もはや無効になったその日韓併合条約は、相手も同意して結んだと見るのか、我が方が押しつけて結ばしたと見るのか、どっちかと聞いているのです。大臣、もはや無効はよくわかっております。そこをちゃんと答えてください。
  73. 倉成正

    倉成国務大臣 何回も申し上げておりますように、既に日韓併合条約は一九六五年の日韓基本関係条約によって無効であることが確認されておるわけでありますから、その評価については日韓関係の問題としては決着済みであるということでございますから、これ以上のことを申し上げる立場にはございません。
  74. 高沢寅男

    高沢委員 私は、こういう大臣答え方は承服できないです。まるでテープレコーダーみたいに同じことを、何を言われてもこれしか言わぬという態度であなたは答えている。もう時間切れだ、あと二、三分これでしのげば終わりだ、こんな見解じゃだめですよ。  外務委員長、私は、こんなやりとりで外務委員会が進むとは思いませんよ。私の聞いていることをはぐらかして、私はこのことを聞いているのに、こちらのずっと横の離れたことを二度も三度も繰り返して、これで済まそうなんて、大臣、それはだめですよ。あなたも日本の歴史を勉強されているでしょう。朝鮮の歴史を勉強されているでしょう。その歴史の中のあの日韓併合条約はどういう性格のものか、それをあなたはどう見るか、これが藤尾発言の核心なんです。私はそれを、あなたの見解を聞いておる。答えてください。
  75. 倉成正

    倉成国務大臣 何回も申し上げておりますように、既にこの条約は一九六五年の日韓基本関係条約によって無効であるということが確認されておるわけでございますから、これ以上のことを私から申し上げる立場にないということを申し上げておるわけでございます。
  76. 高沢寅男

    高沢委員 どうもあくまでこれで押し通すつもりのようですね。こうなりますと、これからの外務委員会の運営を私も考えなければいけません。こんな答弁でせっかくの我々の貴重な質問時間を終わらせるようでは、これは一種のペテンですよ。私の聞きたいことを大臣はわかっているはずだ。それに答えないで、きょうのことを聞いているのにあさってのことを繰り返し繰り返しやっておる、こういうやり方は誠意ある質疑応答ではないですよ。こんなことでもって、それじゃ時間が切れたからやむを得ないというようなことは私は承服できない。もう約束の時間が来ますから、これから本会議になるからこれはこれでしますが、外務委員長、このことはひとつ外務委員会理事会で、こんなやり方でいいのかということをしっかりと論議してもらいたいということを私は要求します。  大臣、こんなことではだめですよ。私は初めてあなたに質問して、そしてあなたの答え方がそういう誠意のないごまかしのあさってのことを繰り返し言うというようなやり方では、私は到底これからの外務委員会の運営に責任を持てないということを言いますよ。大臣、しっかり反省してくださいよ。
  77. 倉成正

    倉成国務大臣 私は誠意を持ってお答えをしているつもりでございます。また、高沢委員、至らぬ点がありましたらいろいろ御教示を賜りたいと思います。
  78. 高沢寅男

    高沢委員 終わります。
  79. 山口敏夫

    山口委員長 この際、暫時休憩いたします。     午前十一時五十分休憩      ────◇─────     午後二時二十七分開議
  80. 山口敏夫

    山口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。浦野烋興君
  81. 浦野烋興

    浦野委員 倉成大臣には、七月、我が国外務大臣に御就任以来、厳しい現下の国際情勢の中で大変な御活躍をされている、私は大臣の労を多とするものであります。  午前中に社会党の高沢委員から質問がございました。あるいは私の質問の中に重複する点もあるかもしれませんけれども、確認の意味もございますし、与党の立場としてお尋ねを申し上げたいと存じます。  本委員会の冒頭におきまして、大臣からガット閣僚総会あるいは国連総会の帰国報告を承ったわけでありますけれども、まずガット閣僚会議についてお尋ねをしたいと思います。  この会議は、発展途上国における初めての開催であるというわけでありますが、倉成大臣はこの会議の中で仮議長としてのお立場で、この会議を、この新ラウンドウルグアイ・ラウンドとすることを提唱される、このことは途上国の心情等酌み取られて、またこうした中で大変難しい問題もあったやに承っておるところでありますけれども、これが全会一致で新ラウンド開始宣言する成果をおさめた、こうした点についても大臣は御活躍をされたと伺っているところであります。  このウルグアイ・ラウンドにつきましては我が国としてもこれまで多くの貢献をしてまいったところでありますが、これからの具体的な交渉に当たっても、引き続いて我が国として積極的な役割を果たしていかなければならぬと考えるわけでございます。この点につきまして政府として今回のウルグアイ・ラウンドというものをどのように評価され、今後どのような決意をもって取り組んでいかれるかお尋ねをしたいと思います。
  82. 倉成正

    倉成国務大臣 浦野委員お答えをいたしたいと思います。  今度のウルグアイ・ラウンド、英語ではユルグアイ・ラウンドと申すそうですが、このウルグアイ・ラウンドがいずれにしましてもいろいろ難航いたしましたけれども、サービスの問題、農業問題、また日本と非常に関係の深いBOB、バランス・オブ・ベネフィットという耳なれない言葉でありますけれども、日本中心とする貿易の不均衡の問題、そういう問題を含めまして種々論議をいたしまして、最後の日は徹夜になるというような大変厳しい状況でございましたけれども、我が国の代表団、各省庁一致団結いたしまして、また各国の代表もそれぞれ広い立場から御協力いただきまして、このウルグアイ・ラウンドが成功したことを喜んでおる次第でございます。  御案内のとおり、ガットというのは自由貿易体制のいわばルールでございまして、そのルールづくりのウルグアイ・ラウンドが成功したということは、今日台頭しつつある保護主義を抑えることができた、そういう意味で、我々は自由貿易主義を守っていこうという一つの大きな決意で参加国意見が一致したということで意義があると私は思っておる次第でございます。  しかしながら、BOB、いわゆる利益均衡という問題、貿易が非常に大きなインバランスがあるという問題、これをマルチの、全体の交渉の場であるガット宣言の中に入れることは理論的にも正しくない、黒字の国もあれば赤字の国もある、そういうことであるべきではないか考えまして私どもこれには反対したわけでございますが、バイで考えて、二国間で考えると非常に大きな貿易のインバランスがあるということになりますと、これはやはり相手国の立場に立って考えると、もう少し自分の国の品物を買ってくれていいじゃないか、そういう素朴な感情が出てくるということは、特に貿易の赤字が非常に多い国、財政が苦しい国において出てくるのは、私は当然のことではなかろうかと思うわけでございます。  そういう意味から申しますと、今、日米間、日欧間あるいはASEANの諸国間等におきまして日本の貿易のインバランス、日本の貿易の黒字がかなり多額に達しているということを考えてまいりますと、我々はこのウルグアイ・ラウンドの成功とともに、みずからなすべきことにつきましては果断にこれを実行して関係国の理解協力を求めていくことが大切ではないかということでございまして、これからがいよいよ本番と申しますか、産業構造の変革を含めて我々が新しい問題に取り組んでいかなければならない、さように考えている次第であります。
  83. 浦野烋興

    浦野委員 大臣にはもう一つ国連総会に出席されたその御報告もあったわけでありますが、我が国としての国連政策あるいは国連の改革等につきましてお尋ねをしたいと思います。  本年は我が国国連に加盟して三十年、この記念すべき年に大臣は総会に出席されたわけでございます。そして、これまた真情を込めた演説をされ、各国の共感、理解を得られた、このように私は耳にいたしておるところであります。また、きょうの新聞、あるいはきょうの本委員会の前の理事会でも政府から報告があったわけでありますけれども、我が国国連において五年ぶりに安保理の非常任理事国に選出されて、いよいよ我が国国際社会において果たす役割は大きくなっていくはずであります。そうした中で今後我が国国連に対してどのような姿勢で臨むか、また現在の国連につきましては各国から行財政改革が要望されておるということも承知しておるわけでありますが、このことについても大臣のお考えはどのようなものであるか、お尋ねをしたい。
  84. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいま浦野委員お話しのとおり、国連は成立いたしましてちょうど四十一年目に当たります。日本国連参加してちょうど三十周年に当たるわけでございまして、国連が成立して十年後に日本はやっと国連参加できたわけでございまして、いわば記念すべき年であるわけでございます。その点は御指摘のとおりでございます。  申すまでもないことでございますけれども、国連は創設以来、世界の平和維持に加えまして、経済、社会、人権問題等多岐にわたり国際協力の場として重要な役割を果たしてまいりました。難民の問題、UNCTADの問題、食糧援助の問題、医療援助の問題、非常に地道でありますけれども、いろいろ重要な役割を果たしてまいりました。しかし、御承知のとおり、国連の機構が大変肥大化してきている、また能率が悪くなってきているということも否定できない事実でございます。したがって、かなり多くの負担金を出している国々にとってみると、そういう肥大化し、また能率が悪いところは直さなければいけないということで、日本の安倍外務大臣も提唱いたしまして賢人会議をつくりまして国連改革の結論が出た次第でございます。  一方、御承知のとおり、世界の平和維持ということに国連がどのような役割を果たすことができるかということが国連の機能の中心的な課題であると思うのでございます。しかしながら、この点に関して申しますと、御案内のとおり戦後百五十の紛争、戦争がこの四十年間に起こっておるわけでございまして、その間に国連の事務総長あるいは関係国それぞれ努力をしてまいりましたけれども、この解決に当たって国連が十分な役割を果たすことができなかったということも事実でございます。これは御案内のとおり米ソの二大超大国の対立ということが大きな原因の一つであったと思いますし、またそのほかにも民族的な事情であるとか国境線を長く接している地域の問題であるとかいろいろな過去の歴史、文化その他複雑な事情が介在しておりまして、なかなか国連が本来の機能を果たすことができなかったということでございまして、国連の責任のみを問うということはいささか酷ではなかろうかと思うのでございます。  したがって、私は国連の改革は徹底的にやらなければならない。賢人会議ではかなりドラスチックなその改革案を出しております。例えば飛行機に乗る場合にはファーストクラスに乗れるのは事務総長だけである、ほかは一切ファーストクラスには乗れないというような程度までいろいろ大きな改革案を出して、財政を切り詰めて職員を切り詰めるというような案を出しておるわけでございますが、国連の改革は思い切ってやらなければならない。  しかし、人類の、世界の平和維持という問題、先ほど申しました、もろもろの機能を持っておる、総合的な、世界における唯一のと言ってよい国連を平和国家日本として考えてまいりますときに、この国連というものを大切に育てていかなければならない、支持していかなければならないと考えているわけでございます。デクエヤル事務総長も、病気上がりでございますけれども、病を押して大変な努力をしておられるわけでございますので、事務総長を中心とする事務当局の努力並びに国連傘下の諸国の方々と十分打ち合わせをしながら、国連が本来の機能を発揮できるように、日本はその推進力になりたい、そういう考え方を持っておる次第でございます。
  85. 浦野烋興

    浦野委員 ぜひ頑張っていただきたいと存じます。  次に質問いたしますのは、高沢委員からもあったわけでありますけれども、先般のレイキャビクでの米ソ首脳会談であります。  この会談は、昨年の第一回のレーガン・ゴルバチョフ会談で合意を見たところのゴルバチョフ書記長のアメリカ訪問の準備を両国の最高レベルで行うという意味で、世界の関心、注目を集めていたわけでありますが、その結果は、新聞、テレビなどの報道機関で伝えられましたように、長時間にわたる討議の中にあって、多くの歩み寄りがあったにもかかわらず、数少なくも、しかし重要な相違点によって全体としての合意を見ることなく散会してしまった。しかしその後、両国の首脳並びにスポークスマンあるいは外務大臣等から、対話は続けるのだ、この会談は有益であった、こういうような声が出ているわけでありますけれども、この会談について外務大臣としてはどのような評価を持っておられるか。また、ただいま申し上げましたように、この会談の後、両国の動きに対してどのように受けとめておられるか。また、今般の首脳会談というのは、期待された軍備管理分野での具体的合意ができなかったわけでありますけれども、これからの軍備管理交渉の見通し、この点についてどのように見ておられるか。
  86. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいまお話しのように、レイキャビクの米ソ首脳会談というのは世界の注目の的でございましたし、特に日本にとってもこの会談の成功を本当に心から期待をしたわけでございます。しかしながら、御案内のとおり、レイキャビクの会談におきましては、米ソ首脳が合計十時間余、そしてまた専門家の徹夜に及ぶいろいろな問題点の整理等を加えますと、本当にもう寝食を忘れてのいわゆる白熱した会談であった、両首脳とも、またそのスタッフも、本当に真剣にこの問題に取り組んだと私は思っておる次第でございます。  そしてこの会談におきましては、戦略核あるいは核実験、人権問題、また地域問題、二国間問題等広範な問題について話し合いが行われたものと承知しておる次第でございます。特に、軍縮面において合意が至らなかったものの、極めて大きな歩みが見られたことは積極的に私は評価すべきだと存ずるわけでございます。  一方、同会議が、ABM制限条約に関連するSDI問題につき米ソ間の立場の大きな相違がありまして、最終合意が得られないで散会に至ったということはまことに残念であると存じておる次第でございます。  しかしながら、ただいま浦野委員もお触れになりましたように、レーガン大統領は帰国後のスピーチで、今後アメリカはソ連側の用意が整えばジュネーブでの交渉の場において、今回の首脳会合が終了した時点を開始点としてさらに前進する用意があるということを述べております。またゴルバチョフ書記長も、提案を取り下げはしないということを述べるなど、両国とも、ともに今次会合で見られた進展を踏まえ、対話の努力を続ける用意がある旨を宣明しておるわけでございますので、その意味におきまして、私は極めて有意義なものであったと存ずるものでございます。我が国としましては、今後各種の場を通じまして、米ソ関係の協議が進展してまいりますことを心から期待している次第でございます。  また、この間のいろいろな情報につきましては、アメリカ側からはブラッセルで日本の代表に対して説明をいただきまして、その都度詳細な報告をいただいておりますし、またアメリカからは、実は十四日の夜七時ごろ、もう少し早く来る予定であったのですが、飛行機の都合で少しおくれたようでございますが、ロウニー大使がレイキャビクからニューヨークに行って、そのまま成田に来て、成田から直行して我が外務省にマンスフィールド大使とともにおいでいただきまして、レイキャビクのこの会談の件について御報告をちょうだいした次第でございます。  なお、ソ連側からは、十九日にカピッツァ外務次官がおいでになってこの問題についての御説明をいただくことになっておるわけでございます。また、その間、世界の国々の外務大臣、首脳が日本を訪れておられますので、それぞれの事情についてどういう御意見をお持ちであるかということをいろいろ伺って、情報を収集して判断をしたいと思っておるのが現状でございます。  私は、我が国としましては、レーガン大統領が、西側同盟諸国の立場に十分配慮を払いつつ真摯な姿勢を貫いて話し合いを行われたことを高く評価するとともに、引き続き東西関係解決に向けて米国努力を支援してまいる所存でございます。
  87. 浦野烋興

    浦野委員 今回レイキャビクで行われた米ソ首脳会談に絡めて、ゴルバチョフ書記長訪日がとかく報道機関で伝えられるところでありますけれども、倉成大臣もおやりになったわけでありますが、日ソ外相定期協議が本年二回にわたって行われ、これが定着化しておるわけであり、そして領土問題を含む平和条約交渉が再開、継続された、このことは大変評価すべきであると思います。  この中で、最高首脳レベルを含めての政治対話を一層強化していく、この合意を見ている中で、このゴ書記長の訪日について現在両国で折衝が行われている、このことも耳にいたしておるわけでありますが、現時点におけるゴ書記長の訪日の時期、あるいはもしも来日をした場合にどのような話がなされるか、その点について。
  88. 倉成正

    倉成国務大臣 先般九月二十四日、私はニューヨークにおきまして、ソ連のシェワルナゼ外相会談をいたしました。でき得ればこの機会ゴルバチョフ書記長の来日の時期を確定したい、御返事をいただきたいという気持ちを正直のところ持っておったわけでございます。しかしながら、ソ連外相会談した際に、先方は、米ソ関係の懸案も残っていることを主たる理由にしまして、現在ことしじゅうはちょっと無理だ、なお、いつ日本を御訪問するかということについては、日本には行きたいけれども明示するわけにはいかないという御返事でございました。したがって、いわばボールを先方に投げておる立場にあるわけでございます。  したがって、今お話しのアイスランドにおける米ソ首脳会談という問題、すなわち、米ソ関係がなかなか日本訪問の日程を決めることができない一つ理由に挙げられたわけですから、これが何らかの影響がないとは申しませんけれども、しかし、ゴルバチョフ書記長来日の、日本に来たいという御希望は、私は変わっていないと思っておる次第でございますので、いずれにしましても、私がシェワルナゼ外相に申し上げましたのは、とにかく日本立場ははっきり申しました。すなわち、日本は政経分離を絶対にすることはしない、日本には北方領土という問題がある、この問題の前進なくしては日ソ関係の安定的な、そして長期的ないろいろな関係というのは考えられない、したがって、日本の国民感情を代表して領土問題が進展することを特に要請する、そしてそのことを踏まえて御来日いただきたいということを繰り返しシェワルナゼ外相に申し上げた次第でございます。  したがいまして、いつ来られるかということにつきましては、今のところまだ私の方に確たる御返事をいただいておりませんけれども、会談を実りの多いものにするためには、やはり準備期間が要ります。双方でどういうアジェンダで、どういう項目をどういうふうにやろうかということをやはりある程度詰めておく必要があるわけですから、急にあした来たいからというわけにはいかないわけでございますから、実りのある会談にするためには、できるだけ早く御返事をちょうだいしたいということを申し上げておる次第でございます。  したがって、ゴルバチョフ書記長が来られたときにどういうお話になるかという問題でございますけれども、もちろん、私が最初から申し上げておりますように、北方領土問題、これは避けて通ることのできない問題である、これは当然この問題について日本側としては申し上げる立場にあるし、また先方に対しましてもそのことの前進のあるようにということを強く申しておるわけでございますから、これは当然議題になることでございましょう。  また、いろいろな国際情勢アジアの情勢等について率直な意見交換を中曽根、ゴルバチョフ両首脳の間でするということは極めて有意義なことだと思うわけでございますけれども、会談の細目、どういう項目についてどういうことをするかということは、これから来日の時期が決まり次第、両方の外交ルートを通じまして少し精力的に詰めて実りのある会談にいたしたいと思う次第でございます。
  89. 浦野烋興

    浦野委員 時間が参りますので、私は答弁をお願いするつもりはありませんが、実は、我が国の今後の外交姿勢あるいは外交強化の中で、私はこの選挙の後大洋州諸国を回ってまいったのですが、これらの国々が我が国に対して大きな期待を持っておる。そして、そうした小さな国々というのは、資源、国土あるいは人口、こうしたものに恵まれておりませんし、インフラの点でもまことに未熟であります。しかし、こうした地域にソ連は南下を図っております。漁業問題締結等を口実にして出てきておるわけでありますが、こうした国が我が国に対して非常に大きな期待を持っておるという点からいたしましても、我が国アジア・大洋州の一国として大いに貢献をしていく必要があろうかと思っております。  こうした点につきましては、倉成外務大臣も、承るところ大変御関心を持っているやに承知しておるところであり、今後こうした国々に対しての大臣の心配りをひとつお願いしたいと思います。  以上をもちまして、質問を終わります。
  90. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいま大変力強いアジア・太平洋地域についての御関心をお示しいただきまして、私も全く同感でございます。  私、政府といたしましても、アジア・太平洋地域に関する島嶼国は我が国にとっても重要な国と考えておる次第でございまして、フィジー、西サモアあるいはソロモン、パプアニューギニアあるいはその他の地域、また信託統治にかかわっている地域等々の島々、私もアジア・太平洋の島々の地図を毎日眺めながら勉強さしていただいておる次第でございまして、浦野委員の御質問、まことに同憂の士があるということをこの席で知りまして、力強く考える次第でございます。ありがとうございました。
  91. 山口敏夫

    山口委員長 江田五月君。
  92. 江田五月

    江田委員 本日未明、国連日本安保理事会で非常任理事国に選ばれました。本当にどうも、お互いですが、おめでとうございます。  責任重大というわけですが、しかし、どうも投票の結果というのはなかなか日本に厳しいものがあったと言わなければならぬと思うのですね。百五十四票中のザンビア百四十四、アルゼンチン、イタリア百四十三、日本は百七とぎりぎり。一体、なぜこういうぎりぎりということになったのか、安保理事国としての所感はいろいろおありでしょうが、そのことではなくて、この投票の結果についての反省といいますか、原因についてのお考えをまずお聞かせ願いたいと思います。
  93. 倉成正

    倉成国務大臣 今、江田委員お話しのとおり、百五十四票の中の三分の二以上の得票がなければならないということで、日本は百七票とったわけでございます。ちなみに西ドイツがやはり百十一票ということで、日本と大体同じくらいの、日本よりちょっと多かったわけですが、余り芳しくない票であったと聞いておる次第でございます。  実は、御案内のとおり安保理事会の非常任理事国になります際に、ネパールあるいはバングラデシュとの話し合いというのがなかなかいろいろ交渉がございまして、ことしの日本ということについては賛成があったのですが、来年、再来年、何とか確定したいというようないろいろな経過がございましたが、いずれにしましても最後まで難航したわけでございますが、幸い日本アジアからエンドースされたわけでございます。しかしながら、御案内のとおり一部のアフリカの諸国が西独及び日本の対南ア政策について制裁措置が不十分だという不満、非常に急進的なグループがございまして、これらのグループの方々が組織的に日本やあるいは西独に対する反対票を投じられたという点があろうかと思います。  それからまた、ちなみにスウェーデン、アイルランドが両国合わせて三十票の票をとられるとか、あるいはいろいろ統一候補以外での国で、インドが非同盟の代表として三十六票というふうに、国連は御承知のとおりいろいろなグループのお集まりでございますから、それぞれのお立場でそれぞれのグループが一つの結束と申しますか、そういうことをされたというような結果であろうかと思うわけでございますが、さらに日本国連外交をもっと積極的に推進して、そういう立候補をしたならば全会一致で日本を御推薦いただくように最善の努力をこれからいたしたいと思う次第でございます。
  94. 江田五月

    江田委員 大臣から念の入った御答弁をいただいたわけですが、私もそう思いますね。やはり立候補すれば全会一致で推されるような、それだけの外交における日本のリーダーシップというのが確立しなければいけない。今確立しているだろうか。ちょっとまだ、発展途上国とか第三世界とか非同盟諸国とか、そういう国々から日本は十分な信頼をかち得ていないという点がやはりあるのじゃないかという気がしてなりませんね。南ア制裁問題もそうしたことのあらわれではないかと思うのですが、私はやはり、確かに今国連にアメリカに次いで大変な拠出をしているということ、そして同時に経済力においても日本が非常に大きな力を持ってきた、そういうことで世界に責任を果たさなければならぬ日本になってきている、そのことを認めながら、しかし責任の果たし方というのは恐らく従来とは大分違ってこなければいけないのではないか。  パクスアメリカーナから次の時代へというようなことが言われるわけですが、その次の時代というのは、日本がアメリカにかわって力で世界を抑える、そういうやり方じゃなくて、法と正義といいますか、ジャスティスとエクイティーというか、そういうような一つの理念あるいは世界秩序の倫理あるいは道理、こういうものを日本が真っ先に立って主張していく。世界の国々が、そうだ、日本の言うような世界をつくっていこうじゃないかという、そういう日本主張というものが今後日本外交の中に出てこなければいかぬと思うのですね。  先ほど浦野委員お話アジア・太平洋地域、島嶼諸国と日本との関係のことを言われまして、私もそのとおりだと思うのですが、これら島嶼諸国、アジア・太平洋地域、これが今大国の覇権の的になりかねないようないろいろな動きがあるやに聞きますが、そういうことでなくて、本当に平和なアジア・太平洋地域をつくるためにも、やはりこれらの小さな小さなアジアの島国がそれぞれ自立して、お互いに信頼し合い、助け合える、そういうものをつくっていかなければいけない。そのためにも日本の外交の主張といいますか、これから質が問われる時代が来ているのだ、こういう気がするのです。  私は、そういう基本的な観点に立って、幾つかやはり日本の外交に気になるところがある。その一つがこれからお尋ねをしようとする東チモール問題に関する日本の態度なんですが、その前に、今私が申し上げたような外交の基本的なあり方について、なるべくひとつ手短に大臣の所見を伺います。
  95. 倉成正

    倉成国務大臣 先ほど私が全会一致でということを申し上げましたけれども、御案内のとおり国連加盟の百五十九カ国、やはりそれぞれの国がそれぞれの御意見をお持ちになっているということでございまして、手短にとおっしゃいましたけれども、一言御参考のために申し上げておきたいと思います。  インドが三十六票、スウェーデンが十六票、アイルランドが十四票、ボリビアが三票、その他アンゴラ、ベルギー、ベリーズ、キューバ、フィンランド、ギリシャ、レソト、マレーシア、メキシコ、オランダ、セネガル、スーダン、それぞれ一票ずつあるわけでございまして、やはりそういう御意見が全然ないということもかえっておかしい。全会一致と言ったのは私の理想を申し上げたわけでありまして、多少意見の異なるところがあるのがやはり国連ではないかと思いますので、その辺のところは御理解賜りたいと思います。江田委員の言われました理想と申しますか、日本が本当に、経済大国としてだけではなくして、世界の中でなくてはならない国でなければならないという理想と申しますか外交は全く同感でございます。  なお、一つ付言させていただきますと、実はアフリカの外相を御招待しましたら、四十カ国参加していただきました。そのとき口々に、日本は経済大国で日本の経済援助が欲しいとか、あるいは日本の技術がすばらしいというお話がございましたから、私は、一つだけアフリカの皆さん方に申し上げたい、経済は手段にすぎない、経済というのは世界の平和あるいは人類の幸せのための手段にしかすぎない、日本はたまたま技術の波に乗って、皆さん方よりも多少その面で進んだ点があるかもしれないけれども、文化とか歴史とか宗教とか、それぞれの面でそれぞれの国が誇るべきものを持っておるから、我々もアフリカの皆さん方に学ばなければならない多くの点があると思う、また同時に、日本も古い伝統と歴史と文化とを持っておるということをお忘れないようにということを申し上げた次第でございます。
  96. 江田五月

    江田委員 私は今の日本外交の理想の追求という点について、我々お互い国会議員だれも皆ポケットに持っておる国会議員の手帳に憲法がちゃんと印刷してある。憲法の前文にすばらしい私たちの指針が書いてあると思って、きょうは実はそれを読み上げてみようかと思ったのですが、もう時間がありませんのですぐ次へ参りますが、日本インドネシアの東、オーストラリアの北西にあるチモール島の東半分、ポルトガル領の東チモール、この地域の帰属といいますか帰趨といいますか、この問題に関して国連で一九七五年から八二年まで東チモール自決権決議に一貫して反対をしてまいりましたね。  どうもこれは全く納得のできないことだと思うのですが、その東チモールの問題、ことしの三月十一日、参議院の予算委員会で安倍外務大臣が、実効的にはインドネシアが一応支配をしておる。しかし、旧宗主国であるポルトガルが主権を要求いたしまして、今インドネシアとポルトガルの間で主権の存在をめぐって交渉が続いているから、それを見守っておる、こういう答弁がある。あるいは土井たか子議員の質問主意書に対する内閣の答弁では、東チモール地域がインドネシア共和国政府により効果的に統治されているとの事実認識に立つ、帰属については、インドネシアとポルトガルの間で話し合いが進められている、こういう記述があるのですが、東チモールの問題というのは、外務省の認識はポルトガルとインドネシアの間の紛争である、こういう認識なんですか。
  97. 倉成正

    倉成国務大臣 東チモール地域に関する我が国の基本的な態度は、同地域の帰属について今国連の事務総長の仲介によりまして行われている関係当事者間の話し合いを見守っているという態度でございまして、事実関係その他につきましては政府委員からお答えを申し上げたいと思います。
  98. 藤田公郎

    ○藤田政府委員 ただいま委員が引用なさいました文書及び答弁等に申し上げておりますように、「東チモール地域がインドネシア共和国政府により効果的に統治されているとの事実認識に立つ」というのが我が国考えでございまして、その帰属については、現在行われているインドネシアとポルトガルとの間の話し合いを見守るということで、我が国として判断を下す立場にはないという態度でございます。
  99. 江田五月

    江田委員 私が聞いたのは、安倍外務大臣の言われるように、インドネシアが一応支配している、しかしポルトガルが主権を要求しているというのでインドネシアとポルトガルとの間の紛争だというふうに一体外務省は理解をしているのかどうか。  実はそうじゃないでしょう。インドネシアとポルトガルの間の紛争ではないんで、インドネシアは一体なぜ関係当事者になってくるか。この東チモール地域というのは何百年にもわたってずっとポルトガルが植民支配をしていた。さらに、西チモールからインドネシアのその他の島々はオランダが植民支配をしていた。長い植民支配によって、この東と西とは異質の生活様式であるとか文化であるとか言語であるとか宗教であるとかということになってきているわけです。  そしてこの一九七五年十一月あるいは十二月の初めごろまでといいましょうか、その間一九七四年にポルトガルで政変が起きて植民地の独立という方向が出て、この東チモール地域で、東チモール人民の中で、この植民地の独立の方向がずっと進んでいたじゃありませんか。その年の十一月の十一日のNHKの特派員報告で、日本全土にわたって、東チモールという地域が今こういうふうになっているということが、まさに平穏に状況が放映されているという事態があるわけです。そのことはお認めになりますか。その間、インドネシアというのはこの地域について正当な領有権を主張するような立場にないということはお認めになりますか。
  100. 藤田公郎

    ○藤田政府委員 今委員が御指摘のとおり、七四年にポルトガル本国の、宗主国の政局の変化を契機に東チモール内部でのいろいろな動きがございまして、そして七五年十一月に東チモール独立革命戦線の独立宣言等が行われ、それに対するインドネシア義勇軍の支援を受けたチモール民主同盟及びチモール住民民主協会との抗争が激化をいたしまして、結局、十二月初めごろから情勢が安定化に向かいまして、七六年の七月にインドネシアに併合された。これが事実関係の経過であろうかと思います。
  101. 江田五月

    江田委員 事実関係についての認識が、それはかなり違うと思いますね。どういう資料からそういう事実関係を認識されているのかわかりませんが、だって、一九七八年の八月、九月、十月、十一月ごろ、もうそれこそ東チモールにはたくさんのジャーナリストもいっぱい入っている、その皆さんが着々と自決権の実現に向けて東チモールが歩んでいることを認識しているわけです。同時に、その当時その地域に統治権を行使していた勢力というのは、ポルトガルにも一日も早く戻ってきてひとつ最後のけじめをきちんとつけて自分たちの独立をスタートをさせてくれということを言っているわけです。ところが、七五年の十一月から十二月にかけて、そして十二月七日がクライマックスになるわけですけれども、インドネシアがここに全面進攻して、インドネシアの正規軍、政府軍の監視のもとにインドネシアの言うなりになる政府を格好だけをつくり上げて今日に至っている。  そういう事実は恐らく日本ではどうも余り知られていない。しかし、世界はこのことを知っているのです。そういうことに目をつぶりながら日本がやたらインドネシアの情報だけを意識的にうのみにして国連インドネシア支持の行動をするということになると、こういうふうにして自決権が軍靴によって踏みにじられることを日本がそのまま認め、それに手をかすというようなことをしていると、今回よく非常任理事国に当選できたというふうにさえ私は思うわけでして、その辺については、外務省、国連の代表部は国連総会で辛らつな議論をしてはかえって事をこじらせるだけだということをおっしゃっておりますけれども、そうでなくて、やはり正すべきところはきちんと正していくというこの正義主張日本はいつもしていくのだということをぜひやっていかなければならぬと思うのです。  どうも時間がさっぱりありませんで要領を得ない質問になってしまいましたが、その他、効果的な統治というのは一体何なんだろうか、本当に効果的に統治されているのだろうか、効果的に統治されておれば果たして自決権は踏みにじられてもいいのだろうか、あるいは先ほど外務大臣は事務総長のもとで関係当事者が協議しているというふうにお答えになりましたが、関係当事者の一番関係する当事者は東チモールの人民なんですけれども、これが協議の中に入っていないので、これでは協議自体が大きな瑕疵を持った協議になってしまっているじゃないかとか、いろいろ申し上げたい点があるので、今後いろいろな機会を通じて皆さん方にお尋ねもしお教えもいただき、私どもの意見も申し上げたいと思いますので、最後に、そういう正義にかなった行動をとってくださいという私の要望について外務大臣はどのようなお考えを持つかをお聞かせいただいて、私の質問を終わります。
  102. 倉成正

    倉成国務大臣 東チモールについて大変御造詣の深い江田委員からお話がございました。参考にさせていただきます。  いずれにいたしましても、今、国連事務総長が大変誠実な方で、そしてこういう問題に一生懸命積極的に取り組もうという姿勢を示しておられるわけでございますから、私がニューヨークに参りましたときは時間の関係で二回ほどの会談しかできませんでしたけれども、デクエヤル事務総長ともまた今後とも連絡を密にしながらこれらの問題の解決に当たりたい、また、私はあちこち歩いておりますけれども、不幸にして東チモールには行っておりませんで事情がよくわからない点もあろうかと思いますが、いろいろ先生の御意見等もお教えいただく点はひとつ御教示賜りたいと思います。
  103. 山口敏夫

  104. 神崎武法

    神崎委員 初めに、南ア問題からお尋ねいたします。  ただいま江田委員からも質疑がございましたけれども、昨日の安保理の選挙の結果、我が国が非常任理事国に当選したわけでありますが、当選五カ国のうち最低得票という結果に終わったわけでございます。その理由について、一つは、我が国の対南ア政策に対するアフリカ諸国からの不満があったのではないかという点も言われておりますし、あるいはさきの総理の知識水準発言の影響というものもあったのではないか、こういう見方もあるわけでありますけれども、その理由についてどう感じておられるか、伺いたいと思います。
  105. 倉成正

    倉成国務大臣 先ほどからしばしばお話ししたとおりでございますので、余り繰り返しは避けたいと思いますけれども、我が国は南アのアパルトヘイトの問題に関しては速やかに解決すべきであるという立場をとっておるわけでございまして、ボタ外相日本に参りましたことについていろいろ批判があったことも承知しております。一時間の会談のうちで約四十分、私は、南アのアパルトへイトの問題について適当でない、とにかくいろいろなお話の御説明の中に、それでは具体的にこの点はどうでしょうかというところまでいろいろお話をいたしました。そして、暴力に訴えたり、この問題で解決が遅いということになると制裁を強化いたしますという警告を発しました。これに対しまして、南アのボタ外相はるる説明をいたしまして、一時間の会談説明に二十分ぐらい延びまして、向こうも四十分ぐらい本当に真剣にいろいろな説明がるるありました。しかし、最終的な締めくくりとして、あなたがいろいろお話をいただいたけれども私は納得できません、やはり実行でお示しいただきたいということでお答えしたような次第でございます。  したがって、南アの問題について四十カ国の外相と、ちょうど国連総会の私の演説の直前であったものですから時間がちょっと短かったせいもございましたけれども、私の演説の後、夜、私の主催するレセプションにはアフリカの外務大臣にかなり出席をいただきまして、私の演説に対する評価をちょうだいいたしました。そういうことでございますけれども、一部の急進分子と申しますか、そういうグループもございまして、この際、ひとつ固まろうということもあろうし、先ほどるる御説明申し上げましたように、インドが何票、もう数字は繰り返しませんけれども、それぞれ一票ずつとるというような国々もあったということがあるわけでございまして、私は総理の発言がこれに影響したというふうには考えておりません。やはりこの南アの問題というのが一つの問題点であったのではなかろうか。ということは、御承知のとおり西ドイツが百十一票ということで日本よりはちょっと多いわけですけれども、ほとんど日本と変わらない票であったということを考えればそう判断してもおかしくないのではないか、さように思っておる次第でございます。
  106. 神崎武法

    神崎委員 我が国としては、先月の十九日に官房長官談話の形で対南アの経済制裁措置を発表しているわけでございますけれども、その後十月二日にアメリカの議会で石炭やウランの輸入禁止を含む大変厳しい対南アの制裁法が成立したわけでございます。それを踏まえまして我が国としても第三次の経済制裁措置の検討をしたけれども、最終的に追加措置は当面見送ったのだ、こういう報道もなされているわけでございますけれども、その経過はいかがでしょうか。
  107. 久米邦貞

    ○久米説明員 今回十九日の官房長官談話で発表いたしました我が国の第三次の対南ア措置につきましては、従来よりEC米国その他の主要先進諸国と十分協議をしてまいりまして、かつ、これらの措置のもたらします効果、それからまたこの措置が南アの黒人に与える影響、あるいは我が国の国益といった諸種の観点を総合的に勘案いたしまして決定いたしました措置でございまして、当面この措置を変更する考えはございません。
  108. 神崎武法

    神崎委員 ただいまの外務大臣の御発言の中でも、今回の投票結果に我が国の対南ア政策に対する一部諸国の不満というものが大きな原因となっているという御発言がございましたけれども、そういう状況を踏まえて我が国として第三次経済制裁措置を再度検討する必要がないのかどうか、あるいはアフリカ諸国から我が国が対南ア制裁措置として実効ある措置をやってないじゃないかというような非難が出ないような方策を考える必要があるのじゃないか、そのように思うわけですけれども、その点はいかがでしょう。
  109. 倉成正

    倉成国務大臣 御承知のとおり、アフリカには五十カ国の国がございますね。その五十カ国の中でかなり急進的な御意見を持った国々があった、そこが結束したというのが一つ理由だということを御説明したわけでございますが、我が国の南アに対する政策については日本独自でいろいろ決めてもいいじゃないかという御意見も一部にはございましたけれども、私は、この問題はなるべく速やかに決定した方がよろしいということが一つと、やはりこれは国際社会の問題であるから、できればヨーロッパやアメリカの動向も見きわめながらやって同一歩調をとるのがしかるべきではなかろうか、そういう見地で、ヨーロッパ諸国の対応が大体決まりましたものですから、これと同様の措置をとった。その後、アメリカの政府は御案内の御意見を、同様の考え方でございましたけれども、拒否権がオーバーライドされたという結果でございますが、アメリカ政府はヨーロッパがとりました態度をとっておるわけでございますから、日本のとっておる態度はちょうどいいところではなかろうかと思っておる次第でございます。
  110. 神崎武法

    神崎委員 次に、米ソ首脳会談についてお尋ねをいたします。  この問題については午前中からいろいろ議論がなされたわけでございますけれども、この米ソ首脳会談交渉決裂の原因がSDIであるということのようであります。アメリカはSDIを取引材料にはしない、ソ連はSDI阻止が主目標である、こういうことになりますと、近い将来米ソ首脳会談の再開は大変難しいのじゃないかという気もするわけでありますけれども、年内の米ソ首脳会談の再開の可能性をどう見るのかという点を含めまして、今後の米ソ関係がどういうふうに展開すると外務当局としてはごらんになっているのでしょうか。
  111. 倉成正

    倉成国務大臣 大変難しい御質問でございまして、これはレーガンさんとゴルバチョフさんに聞かないとわからないことでございます。日本政府としては一日も早い両首脳の会談が行われることを、今回はワシントンに行ってという合意がされているわけですから、それが実現されることが望ましいわけですけれども、その予備会談としてレイキャビクでの会談が行われて、これが合意に達しなかったということでございます。したがって、私がこれが年内に行われるのかあるいはいつ行われるのかということを予断したり意見を申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますが、私といたしましては、一日も早くこの会談が実現をすることが世界の人々の希望であり、また平和国家日本の国民の希望であるということを申し上げたいと思う次第でございます。  ちなみに、この会談は決着を見ませんでしたけれども、レーガン大統領もあるいはゴルバチョフ書記長も、それではもう全部やめたのだということではない、前向きの御発言がされておるということを考えますと、この会談はそれなりに意義があったというふうに私は評価しておる次第でございます。
  112. 神崎武法

    神崎委員 特にこの米ソ首脳会談の中でINFの削減交渉が大変な関心事になったわけでありますけれども、欧州地域では全廃、アジア地域では各百個で仮の合意がされたということも伝えられるわけでございます。当初INFの削減交渉では米ソともに欧州地域だけの削減ということでアジア地域は入っていないということが言われていたわけでありますけれども、我が国等のいろいろな働きかけ等もあってアジア地域も交渉対象の中に含まれたと思うわけでありますけれども、我が国としてどういう働きかけをしたのかという点、特にこれは我が国独自で働きかけをしたのか、あるいはアジア諸国と連携の上で働きかけをしたのか、こういう点をお尋ねしたいと思います。
  113. 倉成正

    倉成国務大臣 御承知のとおりINFにつきましては移動性があるということでございますので、欧州だけの削減ではやはりアジアの安全にとって影響があることでございますから、やはりアジアについて日本としても重大な関心を持っているということは種々の機会を通じて伝えておったところでございます。  それでは、アジアのどの国とどういうふうな話し合いをしたかという御質問でございますけれども、我々はアジアの友好国と国際情勢全般についていろいろな機会お話を申し上げておることは事実でございます。そして、軍備管理等について当然いろいろな話を各国外相あるいは関係外交ルートを通じての話をしているのは事実でございますけれども、特定の国と個々の問題についてどういうことをどうしたということを申し上げる立場ではございません。したがって、特にどの国と相談をして決めたということではなくして、日本がやはりこのINFの問題についてはアジアの安全に重大な影響を及ぼすものであるということを申し上げて、欧州の対応のみでは足らないということをいろいろな機会主張したという事実を申し上げている次第でございます。
  114. 神崎武法

    神崎委員 INF問題で当初ソ連が現状を凍結するという考え方だったのに対して、その後削減に応じたということが言われているわけでございますけれども、それが事実かどうかということと、そういうふうに変わったといたしますと、その理由、背景というものは一体どこにあるのかという点でありますけれども、これも新聞によりますとアメリカの政府筋として二つの点が指摘されているということが言われているわけであります。一つはICBMやアジア地域を照準にした戦術核を配備しているので——ソ連の方ですね、中距離のSS20の軍事的意味が薄れてきたんだという理由と、ゴルバチョフ書記長訪日を控えての対日外交政策として削減に応じたのではないかということも言われているわけです。その理由も含めて、この点についてお尋ねをいたします。
  115. 倉成正

    倉成国務大臣 最終的に合意に至らなかった例のレイキャビクの米ソ首脳会談において、INF問題に関してグローバルシーリングを百弾頭とし、ソ連はソ連アジア部に米国米国にそれぞれ百弾頭を保有する、そういう話し合いがあったということは承知しております。ソ連は従来の米ソ間の交渉の過程においては、御承知のとおり昨年十一月の米ソ首脳会談だったと思いますが、合意で、その交渉の過程で中距離の核兵器については防御・宇宙の分野と切り離すことに既に合意済みであったにかかわらず、今回の首脳会談においては中距離の核兵器をSDIとリンクさせたと考えられておるわけでありまして、この点は我が方としてはまことに遺憾に思っておる次第でございます。  いずれにしましても、我が国としてはINFに関してアジアの安全保障に適切な配慮がされた形で、最終的には全廃ということを目指してできるだけ低いレベルでグローバルな均衡水準が図られることを期待しておる次第でございます。
  116. 神崎武法

    神崎委員 なぜソ連がそういう削減に応じるに至ったのか、その理由についてもう一度ちょっと明確にしていただきたいのですが。どういうふうに考えているのか、外務省当局として。
  117. 中平立

    ○中平政府委員 ただいま大臣が言われましたように、このレイキャビクのINFに関する討議で日本立場をレーガン大統領が十二分に勘案されて頑張られたというふうに我々は承知しているわけでございまして、その間の経緯は先ほど大臣が言われましたロウニー大使が来られて我々も説明を受けたわけでございますが、委員が今言われたような説明ぶりということは、私たちはそういう話は特に聞いておりません。しかし、詳細についてはこの席ではちょっとコメントをするのを控えさせていただきたいと思いますが、他方、SS20というのはいわゆる政治的武器であるという側面もあるわけですね。そういう意味合いもあるので、ソ連が、レーガン大統領がえらく頑張ったときに、そういう今言われたような相互にアジア地域及びアメリカ本土に百弾頭を持つというような立場に変えたのかなということは推測されるわけでございます。他方、ゴルバチョフ書記長訪日の関連もあって態度を変えたんじゃないかというのは、そこまで言うのはちょっと、こじつけといったらおかしいですけれども、余り関係がないのじゃないかという感じがいたします。
  118. 神崎武法

    神崎委員 本年版の防衛白書「日本防衛」を見ますと、極東におけるソ連軍の「地上軍部隊は、フロッグ、SS−1スカッド、SS−12などの核、非核両用の戦術ミサイルを装備しており、このうちSS−12は、新型のSS−22に更新されつつある。」こういう指摘をしているわけでございます。  そこで、私はなぜ先ほどの質問をしたのかと申しますと、ソ連側の現状凍結の主張が削減に応じたその背景として、いわゆる戦術核をアジアの方では重視してきた。SS20のような中距離核よりも戦術核を重視しているから軍事的意味合いが薄れた、そういう分析があるとするならば、やはり、ソ連軍がアジア地域で重要視している戦術核、ここに我が国としても焦点を当てるべきではないか、そういう観点から先ほどの御質問をしたわけでございます。  ここでお尋ねしたいわけでありますけれども、アジア地域を照準としたソ連の戦術核の配備状況についてどのように外務当局として把握されているのか、それから、今回の米ソ会談に対してこの戦術核の削減というものを米国に働きかけたのかどうか、この点についてお尋ねしたい。
  119. 西山健彦

    ○西山政府委員 戦術核という概念は相対的なものでございまして、何が戦略核で何が戦術核かというのは、これはそのこと自体が一つの問題でございます。運用の方法論によりまして、同じものでも両用に使えるということがございます。したがいまして、一義的にこれが戦術核と申し上げるのは難しいわけでございますけれども、いわば常識的に短距離の核ミサイルを指して戦術核と言うということでございますと、既に先ほど委員から御指摘がございましたように、射程七十キロのフロッグ7、あるいは射程三百キロのSS1スカッドB、それから射程八百ないし九百キロメートルのSS12、この三種類がアジア地域、なかんずく中ソ国境地帯に配置されているというふうに我々は聞いております。アメリカ政府の「ソ連の軍事力」によりますと、そのうちSS12は四十基、スカッドBが百基、フロッグ7は二百十五ということと承知しております。ただ、具体的にどこにどうという詳しいことは我々は存じておりません。  それから、後半の御質問でございますけれども、この問題はすぐれて米ソ間の広範な軍備管理問題にかかわりますので、当然我々としては関心は強く持っておりますけれども、戦術核の段階にまで立ち至っていろいろと言うということはいたしておりません。
  120. 神崎武法

    神崎委員 私はこの戦術核についてもぜひとも削減ということを強く日本が米ソ両国に働きかけていかなければいけないだろうと思うわけです。  今後、日ソ関係の改善という中で、この中距離核の削減も、当然のことながらこの戦術核についても強力に日本側として削減を求めるべきだと考えますけれども、外務大臣いかがですか。
  121. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいま政府委員からお答えしたとおりでございますけれども、御案内のとおり、戦術核まで入ってまいりますと交渉を非常に複雑にする。そして、移動性その他から考えまして、この検証の問題というのは非常に難しいことがあると思うのですね。ですから、これは軍事専門家がお答えした方がいいと思うのですけれども、我々素人が考えましても移動性が非常にあるし、そしてまた検証という問題になると、大変難しいものについて、これを合意する前に、やはり戦略核なりINFについても、ショートレンジではなくて、少なくとも五千キロぐらいのものから考えていく、SS20というようなものからちゃんと考えていくというのが順序じゃなかろうかというわけでございまして、そういう問題が片づいた後でそういう戦術核についてもいろいろ考えていくということが交渉の順序としては普通ではなかろうかと推測しているわけでございますけれども、しかし、両当局がいかなる考えでそうなったかは私も詳細は承知しておりませんが、常識的に考えれば大体そういうことじゃなかろうかと思います。
  122. 神崎武法

    神崎委員 今回の米ソ首脳会談の結果が今後の日ソ関係にどのような影響をもたらすのか、ゴルバチョフ書記長訪日予定がどうなるかというのは大変これまた我々の関心事であるわけでございますけれども、基本的に外務当局としてはこの米ソ関係と日ソ関係というものは連動する仕組みになっているんだ、そういう認識に立たれているのか、あるいはこれは全く連動しないんだ、こういう認識に立っているのか、その基本的な認識をお伺いいたします。
  123. 倉成正

    倉成国務大臣 日本がアメリカと日米安保条約を結び、かつ西側の一員であるという立場は一貫して日本のとっておる立場でございます。したがって、米ソの交渉が全然ゴルバチョフの来日と関係がないかということになれば、これは関係がないとは言えないと思うわけでございます。しかし、日本ゴルバチョフ書記長に対しまして、少なくともことしの十二月か来年の一月中においでいただきたいと招聘をいたし、さらに先月の二十四日に私がニューヨークにおきましてソビエトの外務大臣に対しましてそのことの確認を求めたわけでございまして、その後いわゆるレイキャビクの問題が起こったわけでございます。  したがって、ボールはソ連側にあるわけでございまして、日本立場は十分伝えながら、かつゴルバチョフ書記長日本に来たいという意思は持っておられるということはシェワルナゼ外相と私との会談の中でも確認をしたわけでございますから、ボールはソビエト側の手にあるわけでございますから、そのボールがどういう形ではね返ってくるか。一月に来るということをおっしゃれば我々として十分歓迎をし、そして実りのある会談にしたいということを考えておる次第でございます。しかし、とにかく準備のためにはかなりの期間がかかるわけですから、なるべく早く御回答をちょうだいしたいということはしばしば先方に申し入れている次第でございます。
  124. 神崎武法

    神崎委員 最近のソ連のアジアあるいは我が国に対するアプローチの仕方というものを見てみますと、一面で極東ソ連軍の増強という軍事面での変化があるわけでありますけれども、他面、平和攻勢という面もあるわけでございます。この我が国に対するソ連の軍事面と平和面のアプローチを外務当局としてはどういうふうに認識しておられるのか。
  125. 倉成正

    倉成国務大臣 御案内のとおり、客観的な事実として申し上げますと、近年、極東のソ連軍が増強を続けておるということは事実でございます。これは非常に顕著なものがございます。また、北方領土、我が国の固有の領土につきましても軍備が強化されておる、これが確認されておる次第でございます。その行動は、政府としてはソ連軍の動向を潜在的な脅威として判断をいたしておるところでございます。  一方において、ウラジオストク演説その他を考えますと、極東、また日本に対する関心を示しておられるということでございますから、いわば硬軟両方の立場をとっておられるのではなかろうかと思うわけでございまして、特に最近のソビエトの外交姿勢としては微笑外交というか、そういう態度が見られるわけでございまして、シェワルナゼ外相と私との会談におきましても、いろいろな提携ができるではないか、こういうことができるではないか、いろいろお話がございました。私はそのことは十分認めますと。また、ソ連から超一流の芸術家が来たりあるいは音楽家が来られるということについても、また北方の墓参が実現したことについても評価します。  しかし、戦後四十一年間にわたって、隣国であり、移転することのできない日本とソビエトで平和条約がないということは異常の事態である。あなたがいろいろなことをおっしゃったけれども、平和条約は三つの基本的な条件がある。御案内のとおり、一つはいわゆる戦争の終結、二番目には賠償、三番目には領土問題、この領土問題が片づいていない。したがって、この問題を避けて、我々は経済だけの問題あるいはその他の問題について長期的な、安定的な日ソ関係を築くわけにはまいりません。いろいろおっしゃったことは大切なことではあるけれども、我々が考えている基本的な条件のほかの条件——決してそれが小さいこととは申さないけれども、基本的な問題をまず解決するように、それについて前進があることを日本の国民は期待している。現に本日衆参両院におきまして御決議をいただきました北方領土の問題等につきまして、全日本国民が超党派でそういう気持ちを持っているということを先方にお伝えしているような次第でございます。
  126. 神崎武法

    神崎委員 ただいま大臣も、本年七月二十八日にゴルバチョフ書記長がウラジオストクで行った演説について触れられたわけでありますけれども、このウラジオストク演説について外務当局としてどのような評価をされておられるのか。特にソ連のアジア外交、対日外交の上で変化があったんだ、そういうような画期的な演説と見ておられるのか、あるいはこれは単に交渉のスタイル、アプローチが変わったにすぎないんだ、そのようにごらんになっているのか、その評価についてお伺いいたします。
  127. 倉成正

    倉成国務大臣 大変難しい御質問でございます。  私は長崎の出身でございますから、原爆の祈念日ごとに平和宣言あるいはいろいろな催し、平和集会等が行われるわけでございますけれども、その宣言やあるいは集会によってすぐ平和が来るとは思っておりません。したがって、ソ連の外交の評価をするに際しては、言葉ももちろん大切である、したがってウラジオストク演説においていろいろおっしゃったことについて、これは結構なことである。しかし、実際の行動がこれからどのような形であらわれるかということを見守っておるというのが現在の日本政府立場でございます。
  128. 神崎武法

    神崎委員 このウラジオストク演説の中で、一つアジア太平洋諸国安保会議の開催の提唱がなされているわけでありますけれども、この点については我が国としてどういう対応をお考えになっているのでしょうか。
  129. 西山健彦

    ○西山政府委員 ゴルバチョフ書記長がこの演説の中で言っておられますこの会議の構想というものは、ヨーロッパにおきまして一九七五年に開催されましたいわゆるヘルシンキ全欧安全保障協力会議に似たものを今後アジアで開催していきたいという御趣旨と思います。  もしもそうだといたしますと、そういうものが可能となります前提として、まずこの地域の第二次大戦後の国境というものが凍結というか固定されないと、その上にそういうものは立てないということであろうと思います。これは、ヨーロッパの場合には、その前に御承知のとおりのドイツの東方政策というのがございまして、第二次大戦後の国境線はいわば決まっていた、固定化していたわけでございます。しかし、アジアの場合にはそういう条件がまず第一にございません。特に我が国のように北方領土の問題を抱えておりますと、当然のことながら、そういう前提に立って物事を考えることはできないわけでございます。それが第一でございます。  それから第二には、この会議の目指すところが、結局は、現在存在しております安全保障のさまざまな取り決めというものを解体すると申しますか、それが究極的な目標であるように思われます。つまり、外国軍隊の撤退であるとか、その他いろいろなことがそこからうかがわれるわけでありますけれども、そうだといたしますと、日米安全保障条約の上に立って我が国の安全保障を守ることを基軸にしております我が国としても、そういう考え方にはついていけないということになるわけでございます。ただ、ゴルバチョフ書記長も、この考え方は何も一年や二年ということではなくて、十年、二十年と時間がかかってもいいんだというふうに言っておられるわけでございますが、我々としては、今申し上げたような考え方を踏まえた上でこの構想に対応していきたいというふうに考えております。
  130. 神崎武法

    神崎委員 大臣も、日ソ関係についてはボールがソ連側に投げられておるんだ、ソ連がどう対応するかという段階だという認識のお話をされたわけでありますけれども、ソ連はこの一、二年、米国だけでなくてフランス、イギリス、西ドイツ、イスラエル、中国日本と、そういう一定の目的を持った外交と思われますけれども、こういう多様な外交を展開して、各国もそれぞれ独自に対応しているように思われるわけでございます。  例えばミッテラン・フランス大統領は一昨年訪ソ、ゴルバチョフ書記長が昨年訪仏、さらに本年七月にミッテラン大統領がモスクワを訪問、それからサッチャー首相も、ことしの七月に訪英したシェワルナゼ外相から正式に訪ソの招待を受けて、これを受諾して来年訪ソの予定、こういうように各国がソ連の外交に対して独自の立場から対応しているわけでありますけれども、我が国としても、この米ソ首脳会談の経過、決裂といった事態があったからといって、米国の意向にこだわることなく、独自の立場で対ソ外交というものをやるべきだろうと思うわけであります。  日米の協調外交というものが我が国の外交の基軸であるということは踏まえつつも、その点、単にソ連の方にボールは投げているんだから後はソ連の出方次第だということだけじゃなくて、独自の対応というものを積極的にすべきだと考えるわけでありますけれども、その点いかがでしょうか。
  131. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいま委員の御質問の御真意が、私、ちょっとよく理解ができないでおるわけでございますけれども、御承知のとおり、日本は、ソビエトに対しましては北方領土の問題について最大の懸案として、政経分離はしないという基本的な態度をとっておるわけでございます。一方において、今英仏等のいろいろなお話がございましたけれども、日本は平和憲法を持っておりまして、日本の安全保障は日米安保条約というものによって支えられていることも厳然たる事実でございます。  したがって、このことを頭の中の考慮の中に入れておく、西側の一員であるということを入れておくということはやはり考えなければならないことではないか、そのバランスをどのような形でとっていくのかということがこれからの課題ではなかろうかと思う次第でございまして、一方的にアメリカの言うなりに日本がなるというものではございません。したがって、ゴルバチョフ書記長が御来日になるということになれば喜んで御歓迎するということを申し上げておる次第でございます。
  132. 神崎武法

    神崎委員 ゴルバチョフ書記長の側の対応を待つということだけじゃなくて、いろんな方策でこの日ソ関係の改善ということについてもやはり我が国として努力していかなければいけないだろうと思うわけであります。新聞報道によりますと、ゴルバチョフ書記長の来日を前に、日米の首脳間でどう対処するか協議することも検討しているということも伝えられていたわけでございますが、このゴルバチョフ書記長訪日というものがいまだ決まってないわけでありますし、先送りになる可能性もあるかもしれません。そういった場合でも、来年一月の総理の訪米ということが言われているわけでありますけれども、訪米ということはお考えになっておられるのでしょうか。
  133. 倉成正

    倉成国務大臣 現在のところ中曽根総理の訪米の予定はないと考えております。
  134. 神崎武法

    神崎委員 今回の米ソ会談決裂の主原因がSDIにあるということでございますが、このSDIについてひとつお尋ねをしたいわけであります。  このSDI研究参加の枠組みづくりのために政府代表団を米国に派遣して本格的な対米交渉に入るということが言われておりますけれども、その時期と協議事項はどういうふうになっておるのでしょうか。
  135. 倉成正

    倉成国務大臣 政府といたしましては、しばしば申し上げましたように、我が国企業等のSDI研究計画への参加を円滑にするために、所要の具体的な措置について米側と協議を行いたいということを考えておる次第でございます。したがって、今後の米側との協議の内容については、現段階では具体的に申し述べることは困難でございますけれども、例えば情報の伝達、秘密情報の取り扱い、研究成果の利用等の問題等が一応挙げられるのじゃないか。そのほかいろいろあるかと思います。  代表団の米国派遣の時期については今鋭意検討中でございますが、これは各省間の調整もございますので、十月末あたりを目途といたしておるのが現状でございます。
  136. 神崎武法

    神崎委員 外務大臣が九月二十三日にニューヨークでシュルツ国務長官会談をした際に、SDI研究参加の枠組みを定める二国間協定の締結に強い意向を示したということが報道されているわけであります。また他方、政府筋によると、この日米交渉に臨む基本方針として、取り決めは協定とはしないで現行協定の枠内で交換公文とか覚書ですかによって処理するとか、研究参加によって得られた新技術の利用権、所有権は、非軍事的かつハイテク産業に転用できる成果については我が国にも帰属することとする、こういうことが軸になっているのだということも伝えられてきているわけであります。  外交交渉に臨む基本方針は一体どういうものか、また二国間の取り決めとしてどういう形式をお考えになっておるのか、協定をお考えになっておるのか、交換公文その他をお考えになっておるのか、その点、いかがでしょうか。
  137. 倉成正

    倉成国務大臣 シュルツ国務長官とは朝食を挟んで一時間四十分くらいお話をいたしました。せっかくの時間ですから食事をしておっては時間が惜しいものですから、朝食を半分くらいで、大体話の方を中心にしたわけでございますけれども、ただいま委員お話しになったような問題、細かいというと恐縮ですが、技術的な問題についての話し合いはいたしませんでした。これははっきり申し上げておきます。  したがって、むしろシュルツ長官はこれからいろいろなお話し合いをしていく私のカウンターパートでございます。したがって、相互の信頼関係をつくり上げる、そして相互に知り合うということが大事だということで、率直な意見交換、その個々の問題についてここで申し上げる筋でございませんけれども、グローバルな、基本的な問題についてお話し合いをしたということでございまして、極めて友好的な雰囲気でありまして、シュルツ国務長官は私に対して、いついかなるときでも時間がつき次第お目にかかりましょうということを申してくれました。そういう意味において、一回の会談でありましたけれども、シュルツ国務長官との間に信頼関係とこれからのパイプを築くことができたと私は確信をいたしておる次第でございます。
  138. 神崎武法

    神崎委員 対米交渉に臨む基本方針はどうかという点と、この取り決めの形式の点についてまだお答えがありませんけれども。
  139. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 これからアメリカと協議に入っていくわけでございますけれども、先ほど大臣が御指摘になりましたように、秘密の保護の話、それから成果の帰属の話などが主になるかと思います。  もちろん基本の方針といたしましては、秘密の保護につきましては、累次国会におきましても申し上げておりますように、既存の日本の法律の枠内及び日本とアメリカの協定の枠内で行うということでございます。  それから、成果の利用につきましての基本的な態度は、できるだけ成果の利用を自由にしていきたいということでございますけれども、当然一定の限界はあるというふうには存じておりますが、その中で、できるだけそれを自由にしていきたいということが基本方針かと存じます。
  140. 神崎武法

    神崎委員 取り決めの形式について。
  141. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 先ほど神崎委員が御指摘になりましたように、日本の報道に、取り決めの形式が協定ではなくて交換公文でございますか、そういうような報道がございまして、私自身これはどういうことかなと首をかしげておるわけでございますが、いずれにいたしましても、この協議の結果は何らかの文書になるという公算がもちろん大きいと思いますけれども、その文書の呼称がどういうものであろうかということまで現段階で考えているわけではございません。
  142. 神崎武法

    神崎委員 昭和四十九年二月二十日の当委員会におきまして、大平外務大臣は、「憲法第七十三条三号に基づき、その締結につき国会の承認を経るべき条約の範囲は何か、及びその他の国際約束のうち、一定のものについては国会に報告すべきではないか」という点についての政府の統一見解を明らかにしているわけでございます。そして、国会承認条約として一つは、「法律事項を含む国際約束」、二つは、「財政事項を含む国際約束」、三つ目は、「法律事項または財政事項を含まなくとも、わが国と相手国との間あるいは国家間一般の基本的な関係を法的に規定するという意味において政治的に重要な国際約束であって、それゆえに、発効のために批准が要件とされているもの」を挙げているわけでございます。  そこで、お尋ねしたいわけでありますけれども、SDI研究参加取り決めは、今文書の形式はまだわからないということでありますけれども、その取り決めは秘密保護法等の新たな立法措置をとらない方針というふうに先ほども御答弁があったと思いますけれども、そうしますと、この法律事項を含む国際約束ではない、こういうふうに理解してよろしいでしょうか。
  143. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいま委員からお話のありました昭和四十九年二月二十日の衆議院の外務委員会における大平外相答弁のことはよく承知をいたしております。  我が国のSDI研究計画参加の問題に関する政府の方針は、先般九月九日官房長官談話で述べておるとおりでございまして、我が国からのSDI計画参加は現行の我が国の国内法及び日米間の取り決めの枠組みの中でこれを処理することが適当である、したがって従来からの防衛分野における米国との技術交流と同様の立場で、企業等が自主的判断に基づいてこれに参加を希望する場合には、かかる参加が円滑に行われるように所要の具体的措置を講じたい、これについて米国政府と協議をするという立場をとっておるわけでございます。したがって、我が国としてはSDI研究計画のために新たな立法は考えてないというのは先ほどから申し上げたとおりでございます。  また、政府としては、我が国参加について——その後の問題、ちょっと聞き落としましたので、恐縮ですが、もう一度。
  144. 神崎武法

    神崎委員 同じく、今考えているこの取り決めは、新たな財政支出義務を負わない取り決めである、このように理解してよろしいでしょうか。
  145. 倉成正

    倉成国務大臣 大変失礼いたしました。  米国と何らかの取り決めを行う現時点でいろいろなことを申し上げるわけにまいりませんけれども、いずれにしましても我が国が財政支出義務を負うような取り決めを結ぶ考え方はございません。
  146. 神崎武法

    神崎委員 例えばSDIの研究に政府職員が、政府機関に所属する者が参加するような場合、その費用を日本側で持つといった場合は、これは財政支出義務を伴う国際約束ということになるわけでしょうか。
  147. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 この点は国会におきましても累次御答弁申し上げておりますけれども、政府といたしましては、SDI研究の参加に当たりまして政府の研究費を使うということは考えてないわけでございます。  ただ、今御指摘のように、例えば政府の研究機関が何らかの形でこれに関与する場合があったといたしましても、その場合にその政府の研究機関の一般行政費というようなものの枠内で何らかの国費がその関連で使われることは全く排除されないこともあり得るかと思いますけれども、いずれにいたしましても、研究費という形で新たにSDIの参加のために政府が予算をお願いするということは考えていないということでございます。
  148. 神崎武法

    神崎委員 それから、政治的に重要な国際約束、これは形式は批准、受諾、承認、署名等で、当然国会の承認を経るべき条約に当たるのではないかと思うわけでありますけれども、先ほどの統一見解ですと、批准を要件としているものが当たるんだ、そういう解釈かなと思っているわけでありますけれども、もしこれは形式いかんによるということになりますと、例えば政治的に大変重要な国際約束であっても、形式を受諾とか承認、署名に落としてしまうと、国会の承認が要らなくなる、こういうことになるわけですね。その点はどうなんでしょうか。
  149. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいま委員お話しのとおり、SDIの研究計画参加については、官房長官談話で御説明申し上げましたとおりに、現行の我が国の国内法及び日米間の取り決めの枠内で処理するということにしておりますから、これは何らかの文書の取り決めを作成することになろうかと思います。しかし、これをいたしたからといって、これを国会の承認事項の性格であるかと申しますと、現段階ではそのような必要はないと思っております。  しかし、一般論として言えば、およそ外国との間で、委員が御指摘のとおりに、国会の承認を内容とするような国際約束を締結した場合には国会の承認を得ることは当然のことでございますし、またいろいろな取り決めをした場合に、速やかに国会に御報告を申し上げるということは考えている次第でございます。
  150. 小和田恒

    小和田政府委員 ただいま外務大臣お答えしたとおりでございますけれども、神崎委員の御質問の中で、若干技術的な説明を要する点があるかと思いますので、補足させていただきたいと思います。  先ほど御指摘になりました昭和四十九年の大平外務大臣答弁は、どういう条約を国会の承認を求めなければならないかということについての基準を示したものでございます。その第三のカテゴリーとして、先ほど委員から御指摘のあったケースがあるわけでございますが、この第三のカテゴリーと申しますのは、本来、法律事項を含むとかあるいは財政事項を含むとかいうようなことの結果として行政府限りで処理することは適当ではない。立法府の関与を必要とするというような内容を含む条約については国会の承認をお願いする、こういう考え方であるけれども、そういうものを仮に含まないものであっても、政治的に特に重要な基本的な関係についての約束というものはその例外としてあるということを申し上げたわけでございます。  この第三のカテゴリーというものは、我が国と相手国との間あるいは国家間一般の基本的な関係を法的に規定する、そういう意味で非常に政治的に重要であるから、そのゆえに批准条約になっておる、こういう条約がございますので、そういうものについては国会の承認をお願いする、こういうことでございまして、先ほど外務大臣お答えいたしましたように、今度のSDIの関連につきましては、現行の国内法及び取り決めの枠内において処理をするということでございますから、仮にその話し合いの結果、何らかの文書が出てきたといたしましても、それがここで申し上げているような種類の国会の承認を要するような文書になるというようなことは、現段階ではちょっと想定できないところではないかというふうに考えているわけでございます。
  151. 神崎武法

    神崎委員 このSDIの研究参加問題は、宇宙の平和利用に関する国会決議との関係でも問題があるわけでございますし、米ソ首脳会談がSDIをめぐって決裂したという点に見られますように、世界の将来、日本の将来を決する上でも政治的に極めて重要な問題でございますし、SDI研究参加に関する国際約束というものは、やはり国会の承認を要するレベルの国際約束として扱うのが当然じゃないかと私は思うわけでございますが、その点については今御答弁がありましたから外務当局の御見解は伺いましたけれども、私自身はそのように思うわけでございます。  最後に一点だけ。一%問題で外務大臣の御見解をお伺いしたいわけでありますけれども、この防衛費の一%問題について、安倍前外務大臣昭和五十九年十一月九日の当委員会におきまして、軍事費のGNPに占める割合を一%以内に抑えるということがアジアの国民をして日本が軍事大国にならない決意をしている一つの象徴、あかしでもあると思っている、こういう趣旨の発言をされているわけでございます。  ところが、最近栗原防衛長官のGNP一%程度論、こういう議論も出てきているわけでありますけれども、外務大臣としてどうお考えになっておられるのか。前外務大臣同様一%以内に防衛費を抑えるということが、アジアに対して日本が軍事大国にならない決意をしているあかしであるというふうにお考えになっておられるのか、あるいは最近一部閣僚が言うような一%程度論にくみされているのか、この点について最後にお尋ねをいたします。
  152. 倉成正

    倉成国務大臣 我が国は、専守防衛に徹し、近隣諸国に脅威を与えるような軍事大国にはならないという基本方針を持っておることは御承知のとおりでございまして、必要最小限の防衛力を整備することとしております。かかる方針については、我が国周辺の諸国より理解を得ているものと心得ておる次第でございます。今後のGNPの推移及び防衛関係費の動向については、不確定な要素がありまして、防衛関係費の対GNP比が具体的にどのようなものになるかについては見通しを述べることは困難でございますけれども、防衛費が実際にGNPの一%という数字の中におさまるか否かを直ちに我が国が軍事大国になるかならないかということに結びつける議論はいかがなものであろう、こういう趣旨であったと私は思うわけでございます。  また、防衛努力について重要なことは、安保条約のもとで防衛のために自衛隊が負う役割を十分に果たすことができることが必要でありまして、かかる観点に基づいて中期防衛力整備計画を着実に実現していくことが我が国安全保障のために必要であると考えておる次第でございます。  しかし、いずれにいたしましても、中曽根総理、栗原防衛長官よりも繰り返して表明されているとおり、政府といたしましては、昭和五十一年の三木内閣の閣議決定を尊重し、守りたいと考えており、私自身も同様の考えでございます。
  153. 神崎武法

    神崎委員 終わります。
  154. 山口敏夫

  155. 木下敬之助

    ○木下委員 時事の問題でいろいろと重なった質問が多いようでございます。角度やニュアンスを変えて聞くようなことになろうかと思いますが、まず余り重なってないところから先にやろうと思います。  ODA等の行政監察について総務長官が御発言なさっておられるようです。外務大臣は、総務庁長官のODAに対する行政監察発言をどう受けとめておられるのか、お伺いいたします。
  156. 倉成正

    倉成国務大臣 平和国家としての日本は、御案内のとおり、経済協力、ODAを通じて世界の平和と繁栄に貢献していくことが我が国外交の大きな柱になっておるわけでございます。したがいまして、この点については我々は国民の血税を使うわけでございますから、真剣に対応していかなければならないというのが基本的な考え方でございます。  我が国のODAについて、私は御案内のとおり、今私が外務大臣として、JICAの問題に端を発しまして、JICA自身にも外務大臣命令を発しまして、いろいろな問題について早く改革の結論を出せということで命令をもってその回答を督励しておるところでございまして、これは鋭意作業して、近く私に報告が来ることになっております。一方、私自身も内部だけのものでは十分でないということで、有識者の方にもお願いいたしまして、外から見たら、率直に見て一体どういうお考えがあるかということも、私もいろいろな見識を持った方にお伺いをいたしておるような次第でございまして、結論から申しますと、まずODAに携わる者は使命感を持つことが大事である、それからモラルを持つことが一番大事なことであるということが言われました。  それからまた、具体的なこととしては、例えば同じ場所にいると、専門的な知識が要るわけですから同じところにいた方がなれるわけでありますけれども、しかし、ある場合には、これを異動させて同じ場所にはそう長くはいないようにするというような建設的な御意見もございました。  いずれにしましても、私自身が外務大臣でありますから、外遊の機会がございまして国内にいる機会がございませんでしたけれども、私自身が今責任を持って真剣にこの問題に取り組んでおるわけでございますから、私自身にお任せをいただきたいというのが私の偽らざる心境でございます。  ちょうど昨日も、ホンジュラスにおける青年協力隊員の方が事故に遭いまして四名のうち三名の方、二人は女性、一人は男性の方が亡くなって、一人は負傷ということで、私もその葬儀に参列したわけでございますけれども、こういう南米やアフリカの僻地において真剣に頑張っております専門家や、あるいは青年協力隊の諸君の士気を阻喪しないように、私は最善の努力を尽くしたいと思っておる次第でございます。
  157. 木下敬之助

    ○木下委員 総務庁長官が行政監察を年度内に実施する、ここまで言っておるように新聞の報道が出ておるわけですが、それに対して外務省の方は自分の方でと、全く食い違ったまま、このように理解してよろしゅうございますか。
  158. 倉成正

    倉成国務大臣 私は、国民の血税を使うODAについて真剣に考えるようにという意味で、それぞれの方の御意見があってしかるべきだと思うわけでございますけれども、私自身は外務大臣として全責任を持ってやらしていただいているんだから、ぜひ私にお任せいただきたいという意見を申し上げておるわけでございまして、本当に国民の血税を使うんだから、これについてしっかりやれと御激励の意味で承っておるわけでございまして、その基本的な考え方については食い違いがあるとは考えておりません。
  159. 木下敬之助

    ○木下委員 外務省が一生懸命やられておることですから我々もそれは応援したいと思っております。ただ、そういう判断のほかにも、ODAを行政監察するということは相手国の主権ということもございますので問題があろうかと考えますが、こういった点については外務省はどう考えておられますか。
  160. 倉成正

    倉成国務大臣 今、木下委員がいみじくもお話しになりましたように、我が国の経済協力は相手方の自助努力を支援する基本的な考え方に立っておるわけでございます。したがって、例えば我が国の資金協力は、相手国が主体となって行う事業に資金を供与する形をとっておることは御承知のとおりでございます。したがって、このように相手国が主体的に行うものについて、当然相手国の立場、権利を尊重すべきであり、我が国が関与し得ることにはおのずから限界があるというふうに考えておる次第でございます。かかる観点から考えますと、ODAの行政監察については慎重に対処すべきと考えており、特に相手国の援助実施機関に対し、我が国が行政監察を行うようなことは不適当であると思っております。
  161. 木下敬之助

    ○木下委員 総務庁からもおいでいただいておると思いますので、総務庁のお考えをお伺いいたします。
  162. 竹内幹吉

    竹内説明員 ODAは国際社会への積極的貢献を目標といたします我が国にとりましても重要政策の一つでございます。また、年々この厳しい財政の中で予算も増額されております。国民の期待に沿いながら、こういった国際的責務を果たしていくということのためには、このODAについては適正かつ効果的、効率的な実施というのが必要かと思います。したがいまして、総務庁におきましては、六十二年度の監察テーマといたしまして現在検討中でございます。現在、その範囲、内容、方法等について検討しておる段階でございます。  御承知のように、ODAの手続につきましては、外務省やあるいはJICA等の実施機関あるいはそれらのそういった機関の現地機関で実施いたしておりますほか、被援助国においても一部実施いたしております。したがいまして、我々が監察を実施いたすに際しましては、被援助国を対象としないということは当然でございまして、こういった被援助国の主権を侵さないよう十分配慮しながら慎重に実施してまいりたいと思っております。
  163. 木下敬之助

    ○木下委員 外務大臣は、責任を持ってお任せをと、自分のところでやられるように言われております。しかし、かつてマルコス疑惑等があって、そういう中でODAのあり方の改善策をまとめていく、こういう御発言であったと思います。この改善策を検討するとしておったODA研究会と言われたと思います、この作業はどのようになっておられるのか、どうやっていつごろまでにまとめてくるのか、お伺いいたしたいと思います。
  164. 英正道

    ○英政府委員 ODA研究会は、外務省がODAの実施にかかわる諸問題について検討を行うに際し、参考となるような有識者の御意見を伺う、こういうことで六十年四月から外務大臣のもとに開催しているわけでございますが、これはいろいろなテーマを扱っていただいております。  それで、御案内のように昨年の十二月に研究会の一つの研究の結果を取りまとめた報告書が出ているわけでございます。私どもとしてはこの研究会における意見交換が非常に有意義だと思いますので、引き続き今年度も随時開催して援助の効果的、効率的な実施のために具体的な検討を行っていただく、それから報告で指摘された意見のフォローアップのために二、三の点については部会をつくりましてさらに検討を進めているということでございます。こういう場でいただきました貴重な御意見を体してODAの実施にかかわる諸問題については積極的に役立てていく、そういう所存でございます。
  165. 木下敬之助

    ○木下委員 それでは、さきに行われました米ソ首脳会談について御質問いたします。  いろいろ言われておりますが、今回の首脳会談は、別れ際の様子等を見ますと、やはり決裂に終わった、このように思いますが、いろいろな評価も出ておりますが、政府としては、端的に言ってどう評価なされておられますか。
  166. 倉成正

    倉成国務大臣 先ほどからしばしば申し上げておりますとおり、軍縮・軍備管理、またこれに関連して戦略核の問題等々の問題は極めて困難かつ非常に難しい問題でございます。  この問題に関しまして、レイキャビクにおきまして米ソの首脳が十時間以上にわたって、また専門家の討議を入れますと、本当に三回の会談を四回に延ばしていろいろな検討をされた、そして相当な部分においてその前進が見られた、最後において、御案内のとおりSDIをめぐっての研究段階、実験というような問題についていわゆる決着を見なかったということでございますけれども、レーガンのみならずゴルバチョフさんも、これについて、これでおしまいだということを言ってないのでありまして、これからもやろうということを言っていらっしゃるわけですから、それがいつどうなるかということはまだはっきりしておりませんけれども、私は、一日も早く両首脳がこの二日間の討議を一つの基礎にしてさらに前進をしていくことを心から期待いたしておる次第でございます。
  167. 木下敬之助

    ○木下委員 間違いなくそのとおりで、話し合われたことは大変評価すべきことでありますし、当然のことなんですが、しかし、具体的にこのレイキャビクの会談ということに限ってそれをどう評価するかというのは、具体的に評価できることがあるのかないのか、こういう判断であろうかと思います。  私、二つほどお聞きしたいのですが、一つは、今後の米ソ首脳会談の見通しというものが、これがぼんやりとは大体あった、それが決裂ということならば全く見通しが立たなくなる、もしくは大体話の内容等の中からまた会えるような状況がことしとか来年一月ぐらいに起こり得るとか、そういったことにかなり可能性があるような別れ方であるととるのか、それともこれはこの次は相当遠のくという印象であるのか、これは一つ評価するためのポイントであろうと思います。そのことを、これは銀座の占い師に聞かないとわからないとか、当然これは二人が決めることですから、どうかわかりませんけれども、私がお伺いしたいのは、現実にどうなるであろうということ、同時に、今どのように、印象と受けた評価、この会談評価になるかということですから、大体このくらいで行われそうなぐらいの会談であったと言えることがどう評価しておるかになるんだろう、このように思います。言いにくいでしょうけれども、見通しについてこの会談評価できるような見通しであるのかどうか、そういうふうに一点お聞きしたいと思います。  それからもう一つは、先ほども言われました、途中でいろいろな合意があって、最後はああいう形になったと言われました。その合意を、どういった点の合意があったと確認なさるのか、そしてその合意自身、これから継続されていくものなのかどうか、特に米の方は文書化したいというような報道も出ております。ソ連の方はパッケ−ジ、全部一緒だというふうにも言われておりますが、この合意を、評価という意味で、今ちょっと合意もあったと言われましたが、その途中ではあったけれども、結局は全くなくなったととるのか、やはりあったととるのか、お伺いいたしたいと思います。
  168. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 両首脳がこの会談におきまして示しました態度、これは先ほど大臣が御説明なさったとおりでございますし、会談の中、それから外におきましてその後述べておりますことから見まして、米ソ両首脳とも今後問題点を煮詰めまして、できればさらに会談も行っていきたいという意思があるということは明らかと思います。しかしながら、問題はいろいろあるわけでございます。SDIの問題が中心にあるわけでございまして、今後のいろいろな展開の中でどのように会談を決意していくかということにつきましては直ちに早急な判断はできかねると思います。いろいろな分析、いろいろな意見があるわけでございます。  それから、今回の首脳会談の全体を通じまして合意があったのかという点でございます。これは、形式的に見ますれば明らかに合意は存在しないということが言えるかと思いますけれども、前進、歩み寄り、それから個々の問題、例えばINF、戦略核等につきまして、その問題についての両者の考えの一致と申しますか、そういうものはその過程において存在したということが言えるかと思います。  それでは、一応形の上では最終的な合意が形成されなかったから、過程におけるそのような個々の問題についての両者の前進あるいは意見の一致というようなものが全くなくなってしまったのかと申しますと、その事実は厳然として残るわけでございますし、さらにその後の両首脳の発言、例えばレーガン大統領が述べておりますように、我々の提案はすべてテーブルの上にある、レイキャビクで起こったことから今後進めていくんだという発言、それからゴルバチョフが述べておりますように、我々の提案は引っ込めないという発言等から見まして、その事実は厳然としてあるということかと存じます。
  169. 木下敬之助

    ○木下委員 最終的に決裂した原因はやはりSDIをめぐる対立であった、このように思いますが、この点は外務省はどう認識されておられますか。  そして、ソ連の方は軍縮の障害となっているのがSDIである、こういうふうにPRすると思いますし、アメリカの方は、同じようにこのSDIは大事なことで一歩も譲れないのだ、こういう形で、私の最初の印象では、片方はSDIは絶対しなければならないという主張、そして片方はそれがあるから阻害だという形で両者ともはっきりとなっていくと思ったのですが、その後、はっきりそうとばかりも言えない、ある意味ではSDIというのは取引の一つであるのかなという印象も少しは受けるし、いろいろな意味でこのSDIに関して同盟国内、米国内等にも動揺があると思います。こういった点をどのように考えておられるか、もう時間が少ないので、簡単にお答えをお願いいたします。
  170. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 会談の最後におきまして、SDIの問題、すなわちABM条約において、ソ連は実験室における研究、実験のみが許されるという主張をいたしまして、レーガン大統領はその主張はのめないということで、最後の段階でその問題をめぐりまして応酬がございました。その結果、全体の合意が成立しなかったということは事実でございます。  ただ、その背景といたしまして一点御指摘しておきたいことは、ソ連は今回INFの問題、核実験の問題等すべての問題をこのABMの解釈の問題にリンクさせてきたわけでございますが、御存じのように、今回の会議が始まる前におきましては、INF問題あるいは核実験の問題というものはリンクはしていなかったわけでございます。いずれにしましても交渉事でございますが、今回の会議について言えばそういう次第で、SDIとABMの関係におきまして会談が決裂と申しますか合意が成立しなかったということでございます。  それから、御指摘の第二点の西欧諸国の反応等でございますが、会談を終わりましてシュルツ国務長官がNATO外相会議で報告をいたしました。その報告の結果、NATO諸国はアメリカ政府の態度を支持するという非常に強い支持の表明がございまして、シュルツ国務長官もNATO諸国の支持に対して大変に勇気づけられたということを述べている次第でございます。
  171. 木下敬之助

    ○木下委員 そういうことで、このSDIは今や世界平和の本当の焦点ともなるようなものになっておる。当然こうなってくるのはわかっておったわけです。私もここ何年間かSDIについていろいろと質問をしてまいりました。そんな中で政府は、まだどんなものかわからない、学習、勉強、検討も進んでいない。それが済んだときには、済んだ結果でこうだったからという説明等も何もないまま閣議決定で参加を決めておる。こういうやり方は、こんな大事な問題で本当におかしいと私は思うのですね。国民がこのSDIというものをどんなふうに理解していいのか、また政府がそれに対してどういう姿勢であるのかを理解するのが本当に難しいと思うのです。きょうは時間がありませんけれども、まさにこの点は、外務大臣にもよくわかるように腹を割って教えていただきたいと思います。  幾つか問題点がありまして、全部やっていると時間がないのですが、私が包括的に一番申し上げたいことは、レーガン大統領が話しておるSDIというのを突き詰めて私どもが理解すると、とにかく相互確証破壊というような形ではなくて、裏にはまさか自分のところも全滅するようなことはしないだろうという不確定な心理の読みのようなものをもとに、攻撃されないだろうと安心しているような抑止、それよりも現実に飛んでくるものを現実に撃ち落とせるという状態の中で安心したい、こういうあらわれから出てきたものであるというふうに理解するとかなりわかりやすい面があるのです。ただ、そのときには宇宙をどういうふうに利用するとかではなくて、とにかく手段を尽くしてそういう道を探したいと思っておると言うと、これは我々非常にわかりやすいのです。ところが、中曽根総理の口をかりまして、また外務大臣、あなたもそんなふうに言われておりますけれども、これは非核の防御兵器で核廃絶につながるのだ、こういうふうに言われますと、どうしてもその論議は、非核かそうじゃないのかとか、こういうところにいきます。ところが、レーガンさんとゴルバチョフさんが話し合ったときには非核三原則なんか二人の間にはないのですし、レーガン大統領も考慮の中にないでしょう。  もう一つ、極論を言いますと、中曽根総理は五条件を言われた。あの条件の中で国民に説明してこられると、日本はあの条件を満足しないときにはやめるとか、支持を支持じゃないようにするとか、理解理解しないとかいうこともあり得るような次元で我々は聞いてきておる。ところが、現実にはそんなことは起こり得ない。そういう制限なんか何もない。とにかくどうやって核戦争で地球が消滅するようなことがないようにしようかという発想なんだという、この辺の違いみたいなものをどこかではっきりと、レーガンさんの考えておられるものはこんなものだと率直に国民に知らせるべきである。そこで国民の合意、そして西側の一員として安保条約がある中で日本は何をすべきか、ここに置かないと、我々はこれはかなり大事な問題だと取り組んでおるのですが、やりとりしている間に反感ばかり残ってくるのですよ。これは困るのですね。ぜひとも大臣、その辺は風穴をあけて本当の論議ができるようにしていただきたいと思います。  たくさん用意してあるのですが、時間がないので、具体的なものは一つだけ。閣議決定で参加ということを言われたですね。その前は私どもは、理解するという段階をずっと聞いておりました。それから参加にいったのですが、途中でほかの国は支持するとか、いろいろなものがあったのですね。だから、参加決定したということは支持して参加する、こういうふうにとっていいというふうに御理解なさっておられますか。
  172. 倉成正

    倉成国務大臣 前段の問題はお答えを要求されておりませんけれども、私もやはりSDIなるものを、国会の神学論争でなくて国民にもっとわかりやすくした方がいいという気持ちは、木下委員と同じ意見を持っております。五つの研究分野についてももう少しわかりやすくいい方法——先ほど塚原ト伝がかまのふたで防いで、そして木剣でという話がありましたけれども、盾であるとか矛であるとか、そういうことになると余り単純過ぎるかもしれませんけれども、もう少しわかりやすく説明をできないものかというのは私も同じ意見でございます。したがって、どこまでできるかわかりませんけれども、努力してみたいと思います。  あとの問題の、SDIへの参加の問題でございますけれども、政府が決定いたしましたのは、SDI研究計画参加の問題でも、従来からの防衛分野における米国との技術交流と同様に、現行の国内法と日米間の枠組みの中でSDIの問題を取り扱う。つまり、SDIだからといって新たに規制するようなことはしない、行わない。そして第二に、企業等が参加を希望した場合に、その参加が円滑にいくようになるように必要な措置を米側と協議する。そういう意味で理解という意味と参加という意味は考えておる次第でございます。
  173. 木下敬之助

    ○木下委員 その辺で最初の米ソのことに……。このSDIがもとでああいう形に決裂をしておる。日本はこういうものだと限定して理解しておる。そして、従来どおりのもので参加をする。これでは、SDIそのものに対してどういう姿勢なのか。国民は、もうとっくに参加すると決めたのなら支持だろうと思っている人もいますね。もうそれは既成事実のように思っている人もいる。その辺の確認というのをぜひもっとわかりやすく、これもわかりやすくやってください。
  174. 倉成正

    倉成国務大臣 御案内のとおりSDIは、SDI研究計画でございますね。ですから、その研究、これからいろいろな広範な問題についての研究、その一部に日本の企業等が参加することを円滑にさせるということでございますから、SDI計画そのもの、これからそれをどういうふうに配備し、どうするということになってくると、これはソ連ともまた協議する、あるいは同盟国とも相談するということになるわけでありまして、研究の一部に日本の企業等が参画するということを円滑にさせるということでございます。
  175. 木下敬之助

    ○木下委員 私のお伺いしたい点は、この米ソ会談のレーガンの姿勢を西側は評価する、支持する、この支持にはSDIを支持するということが入っていると思うのですね、そういう形で。日本立場としてそういう形なのかどうなのか、そこがお伺いしたかった。
  176. 倉成正

    倉成国務大臣 核廃絶を目標として非核の手段によって、このいわゆる恐怖の均衡というような形でなくて、ひとつSDIなるものでそういう核廃絶に最終的な目標を掲げていくという立場を支持しておるということでございまして、ソビエトの場合でも、SDIという名前は使っておりませんけれども、やはり同じような研究が行われておるということは、もう専門家の木下先生御承知のとおりでございますから、どういう名前をつけようともひとつそういう研究というものの一部に参加するということでございます。
  177. 木下敬之助

    ○木下委員 もう時間が来ましたけれども、そういう形で何かこう、こういうものだと理解しているからというのでは、やはりこういった問題の理解点には達しないんじゃないかということをもう一度申し上げて、質問は終わりたいと思います。ありがとうございました。
  178. 山口敏夫

  179. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 初めに、外相アジア外交の基本姿勢についてお伺いしたいと思うのです。  今発売されています雑誌「世界」十一月号に、西ドイツの前首相のシュミット氏の「友人を持たない日本」という論文が出ています。外相、読まれたかどうか知りませんけれども、この中に次のようなことが書いてございます。   ドイツ人は、その最近の過去と、また未来について、厳しく分析する必要があると痛感した。つっこんだ自己検証を行い、その結果、自己の非をきちんと認めるに至った。ヒトラーの支配に苦しめられた近隣諸国にも、そのことをだんだんとわかってもらえた。しかし、日本がこうした自己検証をしたとか、それ故、今日の平和日本を深く信頼して受け入れるとか、東南アジアではそんな話はまるできかない。西ドイツのナチスに対する態度と日本の戦前の軍国主義侵略戦争に対する態度とがまるで違うということを、前の西ドイツの首相自身が日本の雑誌にこのように語っているのであります。  最近、朝鮮支配とかあるいは日本の侵略戦争とかを美化、合理化するような発言が相次いでいますし、藤尾発言等はその最たるものでございますけれども、こういうことを見た場合なるほどとうなずけるものがあると思います。中曽根首相も、中国に関しては、「状態全般を考えてみた場合に、やはり侵略的事実は否定することはできない」、これは九月十六日の衆議院の本会議で言われた言葉ですが、このように認めているわけです。  そこで、外相に聞きたいのですが、中国とのかつての戦争、これは日本の侵略戦争であったということを認めるかどうか、この辺率直にお願いしたいと思います。
  180. 倉成正

    倉成国務大臣 今、残念ながら「世界」の論文を私読んでいないわけでございますけれども、恐らくドイツが戦争中にとりましたいろいろな政策についての反省について述べられたものではなかろうかと思うわけでございまして、一般論として申し上げますと、アジアにおいて日本が過去にとった政策についてどう思うかという御質問理解してお答え申し上げたいと思います。  我が国は過去においてアジアの国々に対する多数の人々に多大の苦痛と損害を与えたということは深く自覚いたしておる次第でございます。また、さきの戦争における我が国の行為について侵略であるとの厳しい国際的批判を受けてきていることも事実でございます。政府としては、この事実を十分認識する必要があると考えておる次第でございます。我が国としては、このようなことを二度と繰り返してはならないとの反省と決意の上に立って平和国家としての道を歩んでまいりたいというのが私のアジア外交に対する基本的な姿勢でございます。
  181. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 侵略であるという国際的な批判、これを深く考えるということでございますが、それは、かつての日本の行った中国その他への戦争が侵略戦争であったということを率直にお認めになったということでよろしゅうございますね。
  182. 倉成正

    倉成国務大臣 私がただいまお答え申し上げましたとおりに、さきの戦争における我が国の行為については、侵略であったとの厳しい国際的批判を受けていることは事実である、政府としては、この事実を十分認識する必要があるということで御理解いただきたいと思います。
  183. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 それはほかの国が言っていることを認識するというだけでしょう。日本の国はどう思うのか。中曽根さん自身だって、中国に対する侵略的事実を認められているのですよ。外相がこれを認めませんか。
  184. 倉成正

    倉成国務大臣 九月十六日の衆議院本会議で中曽根総理が、その全文は時間の関係上省略いたしますが、先生がおっしゃったのは、太平洋戦争、「これはやるべからざる戦争であり間違った戦争である、」中国に対しては「侵略的事実は否定することはできないと」考えていると答弁をされておることは承知しておりますが、今私の述べた考えは、基本的にこの総理の考えと変わるものではございません。
  185. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 侵略的事実と戦争そのものが侵略であったということとはちょっと距離があるように思うのですね。外相自身は外国が侵略であったというふうに批判していることについては認識するとおっしゃる。しかし、政府自身は、あるいは外相自身はこの事態を侵略と認めるのかどうか、このことをお聞きしたいのですね。それ以上答弁できませんか。
  186. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいま申し上げたとおりのことでございます。
  187. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 かつて、これは小川文部大臣でしたけれども、衆議院の文教委員会で、昭和五十七年八月六日でございますけれども、そこではっきりと「侵略であったと申し上げます。」と文部大臣もこう言っているのですよ。  アジア外交を重視される倉成外相が侵略であったということを率直に言えないというのは考えなければいけないと思うのですよ。侵略であったということを、小川文相並みに言ってみてはどうですか。
  188. 倉成正

    倉成国務大臣 先ほどからるる申し上げたとおりでございます。
  189. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 それでは、それ以上言えないということでございますので、まあいいですよ。じゃ、先に進みましょう。  あなたはことしの十月三日の衆議院予算委員会で、アジアの諸国は過去において日本の国とのいろいろな不幸な関係にあったということを述べられましたね。不幸な関係というのは戦争関係にあったということなんでしょう。  そこでお聞きしますけれども、この戦争はどこから攻めていったのか。向こうが攻めてきたのか、それとも日本が攻めていったのか。この歴史的な事実についてはどのように認識されますか。例えば中国、例えばベトナム、フィリピン、東南アジア諸国を挙げてみて結構です。——そんなのは小学生だって知っているでしょう。
  190. 藤田公郎

    ○藤田政府委員 今の御質問につきましては、ただいま外務大臣が御引用になりました総理の本会議での御答弁に尽きているかと思いますけれども、時間もございますし、余り繰り返すことを避けますが、総理が御答弁のとおり、大東亜戦争、太平洋戦争はやるべからざる戦争であった、間違った戦争であったということを言っておられる、それ以上つけ加えることはないんではないかと思います。
  191. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 藤田さんに聞いたわけじゃないのですよ。外相に聞いている。これからアジア外交を担当される外相自身がどうお考えになっているのかということです。  なぜ聞くかといいますと、かつてのファシズムや軍国主義、この侵略戦争に対するきっぱりとした否定、これが戦後の国際政治の出発点であったと思うのですよ。そういうことをはっきりと踏まえていらっしゃるかどうかをお聞きしたいわけですね。ですから、あいまいにしないではっきりと答えてもらいたいと思うのです。不幸な関係というのは戦争関係でしょう。だれが攻めたかといえば日本が攻めていったでしょう。侵略の事実ははっきりしていますよ。  それで朝鮮の問題に進みますけれども、先ほども午前中、随分ありましたね。一九六五年の日韓基本条約が結ばれたので、それでもはやかつての併合条約等についてはこれは無効であると確認されているし、決着済みだということを繰り返し言われて、高沢さんも随分怒っていましたけれども。そうしますと、過去の日本の朝鮮に対する植民地支配と、私あえて言います。これについては何の反省もないのですか。不問に付すということですか、どうでしょう。藤田さん、時間がないから直接外相に聞いているのですよ、政治的答弁を。
  192. 藤田公郎

    ○藤田政府委員 その件につきましては、日韓国交正常化の際に、我が国政府の態度というのは非常に明らかにしておりますし、ただいま委員が若干触れられましたけれども、最近の発表でも、例えば官房長官の談話等に見られますように、過去の歴史的事実に対する反省というものを出発点にしているということが申せるんじゃないかと思います。
  193. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 外相、どうですか。外相見解を……。
  194. 倉成正

    倉成国務大臣 もう先ほどから午前中の委員の御質問にしばしばお答えしていることでございまして、繰り返して恐縮でございますが、御指摘の点につきましては、昭和四十年の日韓諸条約国会審議の際、日韓併合条約は大韓民国独立のときである一九四八年八月十五日に失効した旨答弁しているところでございます。
  195. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 それは答弁になっていませんよ。そんな答弁で外務委員会をごまかしちゃだめですよ。やはりしっかりした答弁をお願いしたいと思います。委員長に要求します。  それで、日韓条約の調印者であった椎名外務大臣も、仮調印で行った六五年二月十九日にも、朝鮮の植民地支配については、抽象的でありましたけれども不幸な歴史と反省するというふうに弁明されていますし、あなたも今そう言ったのですね。  そこで、今度の藤尾発言問題で外相は遺憾だったということを言われました。朝にまた聞いたところ、その辺がどうもあいまいでした。どの部分が遺憾であったかということをお聞きしたいのですけれども、今読みますから、これは間違いありませんね、文芸春秋のいわゆる藤尾発言の部分です。  「“放言大臣”大いに吠える」、この中で、「日韓の合邦にも、少なくともそれだけの歴史的背景があったわけでしょう。」「形式的にも事実の上でも、両国の合意の上に成立しているわけです。」飛ばしますが、「韓国側にもやはり幾らかの責任なり、考えるべき点はあると思うんです。」この部分について朝鮮国民の側が大変憤慨している、そういう国際的な関係考えて遺憾だとおっしゃったというふうに言われたと思いますが、この部分でございますね。
  196. 倉成正

    倉成国務大臣 先ほど私の言葉が舌足らずでございましたけれども、過去の一時期、日韓両国民の間が非常に不幸な関係にあったということはまことに遺憾であり、深く反省をしておるというのが政府立場でございます。かかる立場に基づいて日本政府はこれから対処していくということでございますが、藤尾前文部大臣の発言は全体として、我が国がさまざまな機会に表明してきた過去への反省とその上に立った平和への決意はもとより、近隣諸国との友好な関係の維持強化を図るという我が国の基本的な政策について無用の疑惑を生ぜしめたものと認識しておるわけでございまして、その発言の個々の箇所について一々論評を加えることは誤解を招くこともございますし、これを差し控えたいと思います。
  197. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 併合条約が朝鮮側にも責任があったということを韓国の国民は怒っているのですよ。その感情を考慮してとおっしゃったのでしょう。だから、正直に言った方がいいと思います。  そこで問題になるのは、この併合が日韓の合意であったという、こういう見地なんですね。これは日韓基本条約締結者だった椎名外相が六五年三月十五日、参議院の予算委員会で発言していますけれども、「両国の間にお互いにこれが生きていく道であるという合意のもとにさような併合条約が行なわれたものと考えております。」これが生きていく道であるということをお互いに考えた合意であった、まさにこれは藤尾発言と同じ発言です。これを参議院の予算委員会で時の外務大臣が言っているわけです。外務大臣はこういう見地なんですか、今でも。
  198. 藤田公郎

    ○藤田政府委員 当時の日韓諸条約の審議に際しまして、ただいま委員が御指摘になりましたような御説明も含めまして政府側が種々答弁をし、かつ条約の成立に至る過程での韓国側の立場とか我が方の立場について御説明はいたしております。  しかしながら、いずれにせよ結論として日韓双方で合意したところのものは、先ほど来外務大臣が御答弁申し上げておりますように、この日韓基本関係条約によりましていわゆる日韓併合条約はもはや無効であるということが確認されておりまして、それに至るまでの間いろんな議論があったということは事実でございますけれども、その評価については、日韓間の問題としてはもう決着をしているというのが当時政府答弁した立場でございますし、現在もそのような立場に変わりないというのは、先ほど来外務大臣が御答弁しているとおりでございます。
  199. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 大臣答弁しておるとおりのことをあなたが時間をとって言う必要はないですよ、端的に言ってもらいたいのです。椎名外相が、これは日韓両国の生きる道であった、合意であった、こういう見地を参議院の予算委員会で述べているけれども、同じ立場かどうかということを聞いているのです。藤田さん、あなた出なくたっていいのですよ、外相です。
  200. 倉成正

    倉成国務大臣 私は、しばしばお答えしておりますとおり、いずれにせよ、いわゆる日韓の併合条約は一九六五年の日韓基本関係条約によりもはや無効であることが確認されておるわけでありまして、その評価については日韓の問題としては決着済みであるということを御認識いただきたいと思います。
  201. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 口では深く遺憾を言い、反省すると言いながら、中身については触れようとなさらない。ここにやはり戦後の出発点としての侵略戦争あるいは植民地支配に対する反省のあいまいさを強く指摘せざるを得ないわけですけれども、これがいかに朝鮮民衆の自由の意思を踏みにじった合併であったかということは、もう幾つもの例がありますが、例えば一つだけ挙げておきますと、これは韓国の財政顧問部、さらに王室の官吏という経歴を持った、朝鮮研究会を主宰された、大変朝鮮問題について詳しい青柳南冥という人の著書です。かつて日本の総理であった高橋是清、加藤高明、この二人も序文入りで紹介しております。大正十二年の発行なんですね。  「朝鮮統合論」この中には、「(併合)当時を回顧すれば、併合反対の韓人は非憤極度に達し、慷慨激越暗雲全鮮を蔽ふて容易ならざる現象を呈し、」「表面平穏にして傍観せし者、決して之併合に無関心に非ず、勢ひの不可なるを以って沈黙せんのみ」、こんなふうに書いてあるわけで、こんなのが自由意思であるとか両国民の生きる道であるという合意でやったとか、とんでもないですよ。こういう事実をもってしても、あるいは当時これに反対する義兵運動というのが起こっておりますし、その数だけでも大変なものです。これは、日本の朝鮮駐箚軍司令部の発表したあれによりますと、この結ばれた数年間だけでも衝突した回数は二千八百五十二回、義兵の数は十四万八千百十八人を数えて、朝鮮全土に広がったというわけですね。  こんなに朝鮮の民衆が反発をし、そしてノーと言った。これが何で合意です。合意じゃなかったということをどうして言えないのです。どうして前の外務大臣が言ったことについて、今の、深く反省しているという見地に立つならば、私はそういう見地をとりません、そう言えないのですか。
  202. 山口敏夫

  203. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 また、藤田さん、あなた、時間つぶしするなよ。困るな、そういうことでは。
  204. 藤田公郎

    ○藤田政府委員 ただいま先生が御紹介になりましたような国民感情が一方においてあるということを考えまして、大臣が先ほど来御説明しておりますように、日韓間ではこの併合条約評価というものは定まっているわけでございますので、それ以前のいろいろな立場について改めてここでいろいろの御発言をするというのは、いたずらに韓国の国民感情を刺激するのではないかというのが私どもの考え方でございます。
  205. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 外相、同じですか。
  206. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいま政府委員答弁したとおりでございます。
  207. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 こういう戦後政治の基本理念とも言える、かつての侵略戦争に対して深く反省する、そしておわびする、そういう見地をはっきりしないような態度というのはよくないと思います。これが今、中曽根さんの言っている戦後政治総決算、口では平和とか軍縮とか言いながら、実際上はこういう問題についてはあいまいにしたままアジア外交を重視すると言われているけれども、こういうことでは本当のアジア外交はできないというふうに思うのです。外相、ここは真剣に反省してもらいたいというふうに考えます。  時間が大変少なくなったので、米ソ首脳会談について突っ込んで聞きたかったのですけれども、核実験禁止問題についてのみに絞ってお聞きしたいというふうに思います。  かつて安倍前外相はこの委員会でもよく言っておりました。日本はステップ・バイ・ステップで核実験の全面禁止に向けて努力するんだ、障害になっているのは、ソ連が査察を受け入れないことにある。ところが、今度の米ソ首脳会談で、ソ連はその査察について、いかなる検証も受け入れるという態度を表明したわけですね。  大臣に聞きます。それでは、核兵器全面禁止の方向に何が障害なのか。これまで障害だと言われた査察問題がソ連のその態度表明によってはっきりと基本的には解決がついたわけです。今、何を障害だというふうにお考えでしょうか。ほかの人は答えないで、大臣にお願いします。
  208. 倉成正

    倉成国務大臣 今、検証の問題について、すべて解決ついたと委員はおっしゃるわけでございますけれども、専門家同士の間で相互に納得のいく、それぞれのいろいろ検討すべき問題があろうかと思うわけでございますから、私は、やはりこの軍備管理・軍縮の問題というのはいろいろな複雑な問題をはらんでおると思うわけでございます。そして、真剣に両首脳が検討し、なおかつ専門家がその問題を整理してこれを諮ったわけでございますから、端的にただ、先生のおっしゃるように、これがもう片づいたから全部すぐ合意に達してしかるべきだと一方的におっしゃるのはいかがなものだろう。これはいかに複雑な問題であるかということについては、専門家の先生がもう十分御承知の上で私に御質問いただいておると思いますので、これ以上は申し上げませんけれども、私はさように考えております。
  209. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 政府自身、安倍さんもちょいちょい言っていました、査察問題。中曽根さんも言っていました、検証問題があるんだと。いかなる検証も受け入れるというのが今度のゴルバチョフ・ソ連書記長の提案なんですよ。その見地に立つならば、少なくとも核実験の全面禁止ということは日本政府が言っているような方向に進むはずじゃありませんか。  そこで、これに対する新しい障害ではないかというふうに私は考えてお聞きするわけですが、シュルツ国務長官が、核抑止力に依存する限り何かしらの方法で核実験を行わなければならない。つまり、核兵器廃絶を実現するまでは核実験を続けるということなんですね。その核兵器廃絶というのは極めて遠い究極的な目標にしていますから、そういう点で言うならば、いつまでも核実験は続くということになるわけです。日本のこれまでの安倍外相その他の言われたことでは、核兵器廃絶のために早く核実験の全面停止が必要だということを言われておりました。日本と逆なんですよ。わかりますか。シュルツ国務長官の場合は、核抑止力、つまり核兵器を完全禁止するまでは核実験は続けなくちゃいけないと言うのですよ。日本はそうじゃなくて、核兵器完全禁止のためにもこの実験を完全に、早くストップさせなくちゃいけない。まさに違う立場ですね。こういう現状においてかつての主張外相は続けられますか。
  210. 倉成正

    倉成国務大臣 専門家の委員の御質問としては、非常に問題を単純化して御質問なさっておるわけでございますけれども、御案内のとおり、核実験の一々について、その内容、目的について明らかにしないというのが恐らく米ソの両方の立場ではなかろうかと思うわけでございます。  確かに一般論として申しますと、米国は信頼性の確証実験、兵器の効果の試験、兵器化の試験、高等開発の試験、実験的試験等の目的で核実験を行っているということは承知しておるわけでございますけれども、必要最小限においてそういう問題があり得るということは、やはり軍事的な立場として考え得ることではないでしょうか。このことはしかし、軍事専門家の方々が専門的にお互いに話し合うべきことではないかと思いますので、レイキャビク会談におきましても、それぞれの軍事専門家が現地に参りましてかなり突っ込んだいろいろなお話をし合ったと聞いております。カピッツァ外務次官も十九日に来ることでございますから、よく伺ってみたいと思います。
  211. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 外相は、問題は複雑だ複雑だと言って、結局何も答弁しないということなんですよ。日本外務大臣としてどうお考えになるかということを聞いているわけなんです。  安倍外相はこう言っていますよ。これはことしの四月十一日の当委員会での答弁ですが、「日本といたしましては、核実験の全面禁止というのはこれまでの日本の長い主張でございますし、核廃絶のためには全面禁止を行わなければならぬ。」いいですか、「核廃絶のためには全面禁止を行わなければならぬ。そのためにも、ステップ・バイ・ステップ方式をとろうという提案を現実的に軍縮会議でいたしておるわけでございまして、」こういう見地をこれからもおとりになるのですか。こういう見地を続けられますか。
  212. 倉成正

    倉成国務大臣 お答えいたします。  日本立場は変化ございませんが、一言申し上げておきますが、米ソの間でやはりいろいろな問題について具体的な内容、手続等について十分話し合いが行われたわけではないというふうに聞いております。したがって、双方にとって信頼のできる、満足のいく形でやはり査察とかそういうものがやられることが必要じゃないかと思っておる次第でございます。
  213. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 いかなる査察も受け入れると言っているじゃありませんか。何がどうだか全然意味がわかりませんですね。  しかし、少なくとも従来の方針は続けるということをおっしゃいました。それならば、シュルツ国務長官とかスピークス副報道官の言っている核兵器を廃絶するまでは核実験は続けなくちゃいけないというのとは矛盾するんです。違うんですよ。それは違ってもいいでしょう。しかし、被爆国日本国民として核兵器完全禁止、そして実験の全面禁止という、そういう立場に立ってこういうふうに新たな障害を設けて——これまではソ連が査察問題で入れないから、だから、なかなか核実験の全面禁止ができないんだと言ってきた。ソ連の方は、それなら受け入れましょう、いかなる査察も検証も結構ですと言った。そうすると、新たに、これは抑止力だから核兵器が完全になくなるまでは実験を続けなくちゃいけない、新しい障害をつくったんですよ。そういうことについて日本政府としてはっきりと、それは困る、核実験の全面禁止ということは核兵器の全面禁止に向けても一日も早くやるべきである、これは日本の態度であるということをはっきりと表明されますか、どうですか。
  214. 倉成正

    倉成国務大臣 先生は、私がお話ししていることを、意識的であるかどうか知りませんけれども、いささか誤解しておられるような気がするわけでございます。それは、査察にいたしましてもあるいはその他にいたしましても、双方が信頼し得る、そして満足するような査察を実現することが必要だということを申しておるわけでございますから、一方が査察でも何でも受け入れるから全部相手もそうしろという、相手がやっぱり満足するようなものでなきゃならないということは当然のことではないかと思うわけでございます。  それからまた、核実験の問題について申しますと、恐らく今ソ連が核エネルギーをいわば指向性エネルギーの中で、エックス線レーザー等の問題になりますと、当面これはいろいろ新しい技術が開発されつつありますけれども、核エネルギーが大きなエネルギーを出すということは常識的になっておりますから、そういう問題について核エネルギーを利用したレーザー兵器を開発した場合に、かかる兵器がSDIの有効性に及ぼし得る脅威、影響を見きわめる点で、そういう点で実験が行われるということはあり得ると思っておる次第でございます。したがって、核実験をやることを奨励しているとかいうことは考えておりませんで、全面的にこれは禁止すべきであると思いますけれども、さればといって、全部何でも相手方があることでございますから、それぞれのことについてそれにおのずから対応していくということは当然のことではないかと思うわけでございます。  軍事的な知識については先生の方が私よりお詳しいと思いますから、いろいろまた教えていただく点があれば謙虚に承らしていただきたいと思います。
  215. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 時間が来ましたのでこれで終わらざるを得ないのですけれども、今の中でSDIとのかかわりで核実験をやらざるを得ないという言葉をちょっと言われましたけれども、これは重大問題ですね。もしそうでなければ、はっきりとここでそうじゃなかったと、言い間違えたというふうに言ってもらいたいのです、実際はそうなんですけれども。私はそこを言っているのです。結局、核兵器の完全禁止までは実験を続けるというのがアメリカの態度なんですよ。それは今のSDIとのかかわりから来ているわけです。それは日本のこれまでとった態度とは違うのだから、それでは困るということを日本政府として申し入れなさいということを言っているわけです。それについては少しも答えずに、ちらっと事実の部分を言われた。これは重大問題です。そのとおり認めますか。
  216. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 アメリカが核実験を行っております理由は、現在アメリカは核兵器の抑止に頼っておる、その核抑止を行っていく以上は、そのために、その核の有効性を保つために必要であるということでございまして、SDIとは必ずしも直接の関係はございません。  それから、先ほどの御指摘の点でございますけれども、シュルツ国務長官が言っておりますのも、これは記者会見の質問答えてでございますけれども、一歩一歩核実験をなくしていく、それから核の廃絶に近づいていく、その過程の中で核実験とそれから核の廃絶を行っていくということであって、核兵器の抑止に頼っているという時点においては直ちに核の実験を停止することはできないという趣旨を述べたもので、その関連を述べたものでございまして、その話し合い全体の中に、今回の米ソ首脳会談におきましても交渉開始するということがその過程におきまして合意があったようでございますけれども、その交渉の中でどういうふうにこの核実験の禁止、廃絶ということを行っていくかということは、核兵器全体の削減との関連におきまして行われていくものであるというふうに了解しております。
  217. 倉成正

    倉成国務大臣 もう既に委員が御承知のとおり、現在の世界の緊張が核の問題であり、同時に現在の平和が保たれているのが、嫌な言葉でありますけれども、恐怖の均衡と申しますか核の報復能力によって保たれている。核と安全保障とは密接に結びついているということは悲しいことでありますけれども、これは現実の事実でございます。したがって、安全保障を求める方法を確保しつつ進むことが必要であるという意味で申し上げておるわけでございます。したがって、究極的な核廃絶については、私も長崎の出身として先生に劣らず熱意を持っておる、また国連でもこのことを訴えた次第でございます。
  218. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 終わりますけれども、究極的だから困るのですよ。今度の米ソ首脳会談を見ても、核兵器廃絶という課題を前面に掲げてこそ核実験全面禁止といった課題も実現していく、このことを改めて証明していると思うのです。きょうは時間がございませんから、そのことを強調して終わります。     ────◇─────
  219. 山口敏夫

    山口委員長 次に、千九百八十六年の国際小麦協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。  政府より提案理由説明を聴取いたします。外務大臣倉成正君。     ─────────────  千九百八十六年の国際小麦協定締結について   承認を求めるの件     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  220. 倉成正

    倉成国務大臣 ただいま議題となりました千九百八十六年の国際小麦協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  昭和四十六年に作成されました千九百七十一年の国際小麦協定は、小麦貿易規約と食糧援助規約とから成っておりますが、両規約は昭和六十一年六月三十日に失効することになっておりました。昨年来新協定作成作業が行われておりましたところ、本年三月にロンドンで開催された国際小麦理事会議において、小麦その他の穀物に関する情報交換等について定める小麦貿易規約が採択され、また、同じく三月にロンドンで開催された食糧援助委員会特別会議において、開発途上国に対する食糧援助について定める食糧援助規約が採択されました。千九百八十六年の国際小麦協定は、これら二つの規約により構成されるものであります。  この協定を締結することは、小麦その他の穀物の貿易に関する国際協力の促進が期待されること、開発途上国の食糧問題の解決に貢献することになること等の見地から、我が国にとり有益であると考えられます。  よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  221. 山口敏夫

    山口委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  本件に対する質疑は後日に譲ることといたします。  次回は、来る二十四日金曜日午前十時十分理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十四分散会