○
国務大臣(
中曽根康弘君) 太田さんの
意見は部分的には了解もでき、納得もできるのでありますが、我が国の現在の内外の情勢全般を見るというと全面的には承服しかねる、そういう面がございます。
これは日本だけじゃなくて、アメリカにおいてももう膨大な財政
赤字と貿易
赤字、いわゆるツインデフィシットというのに悩まされて、アメリカ議会、アメリカの
予算自体も硬直性を持って動きがとれない。そういうことで大手術をして、議会のグラム・ラドマン・アクトというものによって年間五百億ドルぐらいの財政カット、強硬手術を始めているわけですね。これ自体がもう財政的にかなり動きのとれない情勢になりつつある証拠であります。
イギリスにおいても、フランスにおいても、ドイツにおいても同じように財政の健全さを回復させるということで、今懸命になって社会保障費やそのほかにまで手を伸ばして削減をやっておるという状態になってきておる。したがって、各国の財政
担当者の話し合いにおきましても、自分たちが担当しているまず第一の足元を固めるということに一生懸命努力しておるので、日本もその一人であり、その立場は各国ともよく理解されておるところなのでございます。それで、日本が
要求されている大きなことは輸入をもっとふやせ、あるいはアクセスを改善しなさいということなので、輸入をふやすという意味において、そしてまた輸出力をある程度減殺させるというために内需拡大ということを言っておるのであります。みんなそれは貿易関係から来ておるわけでございます。
そういうようないろんな面から考えてみますと、我々の方はともかく財政というものの機動力を回復するということが第一で、これはやっぱり放棄するわけにいかぬ。そこで何をやっているかというと、民活であるとか財政投融資の活用であるとか、そういう面で今全力を振るってきておるところで、この面で私はかなりの大きな分野が開けるであろうと実は見ておるんです。なぜならば、日本にはこれだけ膨大な貯蓄があるわけでございますから、この貯蓄をうまく誘導して、そしていろいろな事業に回せるようにできたら、小さな財政資金を使うよりもはるかにこれは大きな
影響力を持って連鎖反応が大きくなります。
そういう意味において、まだまだデレギュレーションというのは行革的意味で実はやってきたという反省で、今度は経済政策的意味でデレギュレーションというものを本格的に取り上げる
段階に来た、そう私は思っているんです。さもないと、六十五年までの
赤字の累積状態というものを考え、要調整額というものを考えてみると、どんな人が天下をとったってそう財政を使うわけにはいかぬということはもう明らかになってきつつあると思うんです。そういう意味から、残された広大な分野はデレギュレーションによる日本の民間貯蓄をいかに活用するかという面、これの大きな面が開けてくるのでございまして、そちらの方で我我は努力していく。
〔理事
桧垣徳太郎君退席、
委員長着席〕
それから、国際関係においては、去年以来ずっとアメリカは高い強いドルをエンジョイしておったような要素がありますが、アメリカ自体が反省しまして、それが変わって今のような状態になってきた。これはやっぱり貿易関係に大きな変化を今与えつつあります。したがって私は、ことしの秋をごらんなさい、必ず風景は変わっていきますよということを申し上げておるのであります。
そういう意味において、この国際通貨調整という面は大事な点であります。しかし、だからといって、じゃ、今言った固定相場だとかあるいはターゲットゾーンがいいかというと、これもまたそこまではいけない。しかし、ああいうふうにG5みたいに何年かに一遍とか、ある期間を置いてがばっとやるという場合には効き目がある。つまり、各国が協調して一つの政治意思なり政策意思で団結した場合は強いということが明らかに出てきておるのであります。この経験を生かして常時使うという意味ではなくして、どういうふうにしてこのフローティングシステムの中に政策調整という要素を織り込んでこれを効果的に必要なときに行うか、その必要なときの判定とか実行する
方法とか、そういう問題が議論される問題に登場してきつつある、そう思っておるわけであります。