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国務大臣(
中曽根康弘君) 黒柳議員にお答えをいたします。
まず、対比援助の問題でございます。
政府といたしましては、対比援助を正規の手続に従って今まで処理してきており、その実施は適正に行われていると信じておりますが、これに
関連して疑惑やうわさも伝えられております。真相究明のためにはできる限り
努力してまいりたいと思い、改善すべき点があれば改善に努めてまいりたいと思うのであります。
第十二次商品借款の問題でございますが、
我が国はフィリピンに対し、同国の国際収支の悪化情勢にかんがみ、先方の
要請を踏まえまして、五十九年四月、商品借款を供与いたしました。これは、工場がとまってきて失業者が相当出てくるというので、原料、資材が欲しいというので商品借款を与える、そういう形をとったわけでございます。この供与に際しましては、交換公文において相手国に借款の適正使用を義務づけているほか、調達対象品目についてあらかじめ相手国
政府と合意する等不正使用されることがないよう必要な措置を講じておるものなのであります。対比商品借款についても正規の手続に従って処理しており、その実施は適正に行われていると信じておりますが、もし具体的な疑惑があれば、しかるべく調査検討を行う考えでおります。
いわゆるマルコス文書の問題でございますが、我々といたしましても、本件真相究明のためにできる限りの
努力を行うことは前から申し上げているとおりであります。
政府としては、このいわゆるマルコス疑惑というものが
日本の
法律に違反をして、そして汚職等の疑惑が濃厚である、そういう場合には、相手国
政府に対しまして
協議をし、資料も要求するということもあり得ますけれども、現段階におきまして、まだそういうことが的確にあるという
状況ではありませんので要求を行わない、こういう段階にある次第であり、今後の情勢の
発展もよく検討しておるところでございます。
次に、衆参同時選挙の問題でありますが、解散は考えておりませんと前から申し上げたとおりであります。
次に、いわゆる
経構研報告に関する御
質問でございますが、前から
委員会等でも申し上げておりますが、
経構研というものは
総理大臣の
私的諮問機関でありまして、国家行政組織法上における八条機関ではない、これは明確に認識してやっておるわけです。私も十九回の
会議の中十八回出まして、皆さんの
意見を直接お聞きしてきたところでございます。これらに対する取り扱いにいたしましても、これは参考
意見として、そして
政府・
与党が
責任を持って主体的に
政策を練っていく、こういう手続と経路をとっておるところでございます。ただし、先般の
政府・
与党の
会議におきましては、これは
経済対策閣僚
会議でございますけれども、
政府・
与党首脳部が出てやっておる
会議であります。
ここにおきましては、この
経構研の
報告というものは、時宜に適した、貴重なものであり、適切なものであると評価いたした次第であります。そして、
政府・
与党で独自にこれを参考にして
政策を立案していくということを決定いたしまして、そのために
推進会議をつくりまして、官房長官を中心にして
関係閣僚及び
政府・
与党の
首脳部が集まって、できるだけ早い機会に、どういう対象を選ぶか、どういう段取りで進めるか、当面、中期、長期にわたるそういう段階に分けて、それらを仕分けしていこうということを今これから始めようとしておるところでございます。
もう一つ追加の御
質問で、円高に対する
協調介入は困難であるかどうかという御
質問でございますが、今回の円高は、ドルの全面安、それに対するマルクや円が高くなってきたという現象でございます。これらの通貨
関係につきましては、IMFの暫定
委員会が先般行われまして、これは長期的に安定することが望ましい、そのために各国は
協力しようと、そういう合意は形成されておるわけで、原則的にそういうことは各国とも意識しておるわけでございますが、当面どうするかということは、各国が主権の
もとに国立銀行その他が処理することでありますから、当面の問題については言及しておりません。しかし、
日本の立場といたしましては、急速な乱高下があるという場合には介入を辞せず、そういう考えで一貫して立っており、今日もそういう立場にあると申し上げる次第であります、
次に、
経構研報告は
国際公約ではないかという御
質問でございますが、先ほど申し上げたような次第で、これは対外公約というような問題ではございません。
次に、この
報告の実施と
国内産業の問題でございますが、
我が国は今後中長期にわたって一層内需中心の成長を図り、
国民生活の水準を高め、
世界経済の
発展にも寄与していかなければならぬと思っております。
経構研報告というようなものは、この
政策立案の一つの参考資料として我々はこれを援用し、参考にしてまいりたいと思っておる次第でございますが、内需の振興あるいは輸出
輸入の適正なバランスの回復等につきまして積極的に
努力してまいるつもりでございます。
次に、
政府・
与党で乱れがあったのではないかという御
質問でございますが、先般の
経済対策閣僚
会議等におきましても、先ほど申し上げましたように、これは時宜に適し、貴重であり、かつ評価する、そういうふうに
一致いたしております。そうして、具体的なやり方についても今のような
推進会議を設けて実行することに
一致しております。問題は、最近の円高に対する
対策等につきまして議論がございましたが、それらについても今後
協力して対処するということで
一致しておるわけでございます。別に乱れはございません。
日米の構造
対話の問題でございますが、
首脳会談におきましても、
日米構造問題対話を行うことを確認いたしましたが、この
対話においては、
日米双方の構造的問題を扱う、例えば
アメリカにすれば財政赤字あるいは金利の問題等を
日本側からは指摘しておるわけであります。
両国の構造的問題の
関係について、
相互の認識を深めることを旨として、新たな合意や結論を求めて交渉を行うというそういうものではないのである、これははっきりしております。本件
対話のために新たな機構を設けることはしないで、既存のフォーラムを活用する。例えば
日米高級事務レベル
会議の場を利用する、こういう点についても
一致しておるところでございます。
次に、
貿易の不
均衡に対する米側の
責任でございますが、確かに今までの
状況から見れば、高い金利と高いドル、
アメリカの財政赤字、こういうものが基本で
アメリカの
輸入が増大した、輸出が減少したということはあり得るわけであります。言いかえれば、あの高いドルと
アメリカの高い金利によって
世界じゅうのものが
アメリカに吸い込まれた、積極的輸出
努力よりもむしろ吸い込まれたという現象の方が強いのではないかと思うのであります。
アメリカもそれに気がついて、昨年九月二十二日のあのような
会議に入り、そうして金利低下にも
アメリカは
努力してきた、そういう結果であると思うのであります。
黒字の削減については、我々は今後とも
努力してまいりますが、当面は、石油の値下がり等によりまして、
日本は約二億キロリッター弱
輸入しておりますが、一バレル一ドル下がると十二億ドル
日本は払う分が減るわけであります。ですから、十ドル下がれば百二十億ドル減るわけで、その分だけ
日本の
貿易収支については今までよりはプラスになってくるわけであります。そういう面と、Jカーブ効果がありますので、黒字が当面減るということは考えられない、これは
アメリカ側もよく認識しておるところであります。しかし、中長期的観点から考えれば、今のような高い円相場で
中小企業はこれだけ悲鳴を上げてきて、大企業ですら困難を感じてきているという状態でございますから、輸出は困難になりつつある。したがいまして、秋ごろまでにはさま変わりがするであろうと、私は一ドル百八十円のときに大体そういう感想を漏らしたのであります。いわんや今日のような状態になれば、輸出
産業は非常に苦しい立場に来ておるのでございまして、秋にはさま変わりがすると私は考えておるわけでございます。
次に、四%の成長の問題でございますが、諸般の総合
経済対策の推進等によりまして四%の成長は可能であろうと私は考え、そのことを先方にも見通しを言明してきたところでございます。
昭和五十三年にやはりこのようなことがありました。円が非常に強くなったことがあったわけでございます。このときも、秋口になりますと景気はずっと上昇に向かってきております。あのときは石油が高くなって
日本のお金が外国にみんな取られてしまったわけであります。今度は、石油は下がって、
日本は出すお金を
日本の
国内にとどめておけるという現象が出てきているわけですから、これらを活用すれば内需の振興は十分可能であり、規制緩和そのほかによりまして全力を振るって内需の振興に努めてまいる、そういう考えに立っております。
次に、カリブ海の問題等であります。
今次
首脳会談では、
開発途上国の
経済状況の改善のための
日米それぞれの
貢献の
必要性を確認しました。
我が国は、
相互依存と人道的考慮を基本理念として、
開発途上国の
経済社会開発、民生の安定、福祉の向上に
貢献するために積極的な援助をしております。この点は中米カリブ海諸国に対する援助についても同様でありまして、
米国の援助に組み込まれるということはございません。
我が国の独自の主体的立場に立って、民生安定と福祉の向上のために
世界の国々に対して適切に行っておるものであります。
SDIにつきましては、
レーガン大統領との
会談において、私より、先般来の調査団に対する
協力に感謝をする、同時に
我が国の
対応を、これらの調査団の
報告等も徴し、
政府部内で慎重に検討していく旨を
表明したにとどまっております。
リムパックの問題は、
アメリカの第三艦隊が計画する演習でありまして、外国艦艇等の参加を得て実施しております。これは戦術技量の向上を
目的とするもので、集団的自衛権の行使というものには当たらないものであると考えております。
シーレーンの問題でありますが、
米国は従来から千海里までのシーレーン防衛能力の早期達成を含む
我が国の一層の防衛
努力を強く
期待する一方、地域的な軍事勢力に
日本がなることがないように望んでおるということは一貫しております。いずれにしても、
我が国の自衛権行使の地理的範囲については、
我が国領域内に限られず、公海及びその上空にも及び得るところでありますが、具体的にどこまで及び得るかは、
我が国に対する武力
攻撃の態様等によって異なり、一概には言えませんが、
我が国を防衛するために必要最小限度の範囲にとどまるべきことは当然でございます。
以上で答弁を終わらせていただきます。(
拍手)
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