○志苫裕君
日本社会党を代表して、地方
税法と
地方交付税法等の一部
改正案及び六十一年
度地方財政計画に関して若干の
質問を行います。
まず、
質問通告になくて大変恐縮でありますが、神奈川県逗子市では、池子弾薬庫跡に米軍
住宅を建てたいという国の政策とのかかわりにおいて住民のリコール運動が展開され、これを推進する議会のリコールが成立し、
反対の立場に立つ市長のリコールは不成立となりました。地方自治の本旨にかんがみ、住民の意思はあくまでも尊重さるべきであるが、まず
総理の
見解を求めます。
さて、
昭和六十一年度の地方
財政は、六十年度に続き、国庫補助
負担率の引き下げがなければ収支が均衡するとされております。しかし、さまざまな事情を抱えた全国三千三百の自治体の収支見積もりが差し引きゼロになることが現実問題としてあり得るでしょうか。
実態は、このような奇跡が二年も続いたのではなく、自治省が作為を加えて収支とんとんの奇跡をつくり出したのであります。紛れもなく地方
財政計画の策定作業の中で歳出削減が行われた結果なのであります。
そもそも地方
財政計画とは何のために策定されるのかといえば、地方財源を保障する目安を
政府に与えるためのものであり、その収支見積もりにおいて
財源不足が生ずるときは、原則として
政府が補てん
措置をとるべきものとされております。
措置をとるべき
政府が意図的に歳出をあらかじめ削減抑制してしまったのでは、財源保障の目安という計画の持つ使命は果たされようはずもありません。地方
財政計画は
政府による財源保障の目安ではなくして歳出削減の目安となったのか、地方
財政計画は、地方ではなくして国の、いや分権ではなくして集権のための計画に変質、堕落してしまったのか、まさに地方自治にとって重要な転換点と
考えます。
総理並びに自治大臣の所見を求めます。
ところで、高率補助
負担金の一律引き下げによる地方自治体
財政への転嫁は、一年限りの
措置であったはずであります。一律という手法に政策理念の入り込む余地はなく、かつ生活保護のように
特定地域に
影響が大きくあらわれるといった不公平があります。一年限りという意味には、理不尽な自治体への
負担転嫁を正すとともに、補助
負担制度のあり方の
見直しを含んでいたはずなのに、
政府の検討はこの合意には全くこたえず、三年間という一律削減を継続して行う道を開いたばかりか、行きがけの駄賃のように六十年度の倍額の
負担転嫁を行うとは何事であるか。
その穴埋めに抜き打ち的な
たばこ消費税の値上げが決定されたが、自治省や地方団体がこれにより
反対の矛先をおさめたことも問題である。このような
対応からは、国による地方への
負担のツケ回しを正すことはできない。とまれ、六十一年度の引き下げは今後三年間の
措置となったが、六十年度の約束がほごにされたことを勘案をすれば、三年限りという保証もまだない。なぜ三年であるのか。逆に言えば、三年間は補助
負担制度の
見直しはできないということにもなるが、それでよいのか。
総理大臣並びに
大蔵大臣、自治大臣の所見を伺います。
総理は、来年度に向けて大幅な
税制改正を行いたい旨表明されておりますが、その中に
法人税の
減税を含めたい意向があると聞いております。常々の例であるが、
政府は、勝手に
税制をいじくって、その結果発生する地方税の減収についてはとんとむとんちゃくであります。私は、もはや国と地方間における税源の再配分、すなわち国税の一部地方税への移譲が必要な時期に来ていると
考える。そこでこの際、
法人税減税を
実施される場合の地方税の手当て、税源再配分について
総理の所見を伺っておきたい。
また、
大蔵大臣に対しては、
税制改正における
法人税問題について現時点においてどのような検討
課題があるのかをお示し願いたい。
さらに、自治大臣には、国と地方の税配分についての自治省としての
考え方を示していただきたいと存じます。
さて、
中曽根総理は、軍事力による国家の防衛と、人が国に命をささげる国家の形成を目指して戦後政治の総決算を提唱し、国家行政組織の再編成を政権の存在
理由にも位置づけておられる。
総理は、かつてこの行革について、突き詰めて言えば、官から民へ、中央から地方へ仕事の流れを変えるものだと表現をし、
地域の自立自助をうたいとげました。しかし、せっかくだが、
総理のやろうとしていることは、ことごとく自立にも自助にも反するものばかりであります。
政府が法案として用意しており、今大問題となっておる職務執行命令訴訟
制度の
見直し、いわゆる実質的な裁判抜き代執行
制度のどこが自立自助につながるのでありますか。確かに首長の罷免
制度は廃止になりますが、これはかねてから公選首長の罷免などは違憲ではないかという疑問が呈せられていたほどのものであり、遅きに失したものにようやく手がついたにすぎず、評価になど値しません。
自治体がみずからの住民福祉と行政秩序維持のために判断を下すときに、国が慎重に検討を重ね、これに対し訴訟で対抗するというのが定着した理解である。言うことを聞かなければ強権発動、文句があるなら自治体が訴訟を起こせというのは本末転倒であります。訴訟に持ち込まれるケースは国と地方士の力
関係からいって希少でありましょうから、裁判抜きと言われるのは至極もっともであります。一体この条項の
改正意図はどこにありますか。地方自治法施行後四十年近い歳月においてとりたてて問題となったこともないにもかかわらず、突如の
改正は、
総理の脳裏に有事に備える危機管理体制の構想があるのではないか。改めて
総理の存念を伺うところであります。
また、自治大臣には、
改正を予定している地方自治法の
改正条文第百五十一条の二における「放置することにより著しく公益を害することが明らかであるときは、」云々という、この「著しく公益を害する」とは具体的にどのようなことを指しておるのか、お示しを願いたい。
今国会において、福祉四法のように、補助率を引き下げるから機関委任事務から団体委任事務に変更するというものもあり、この限りにおいて自治権は強化されたように見えますが、
負担金の削減と
取引材料にされる性格のものでは断じてない。また、機関委任事務を監査
対象に加えると言いながら、ふたをあけてみたら
対象除外があって、その
内容は今後各省と相談をして政令で定めるとしておりますが、これは、各省がみずからの所管
事業を監査
対象にされるなどとんでもないと抵抗した結果だと聞く。
地方六団体の国に対する意見提出権の問題も、いかにも実現するような説明をしておいて、いざとなったら国の
施策推進の邪魔になると言わんばかりに葬られました。
総理の言う国から地方へ、地方の自立自助の
実態はことごとくこのようなものであります。監査
対象に除外を設けるべきではない。そして
総理は、先ごろ国鉄の雇用問題などについて地方六団体に改めて協力要請を行ったりしておりますが、地方六団体とそれだけ協力
関係をつくりたいというのであれば、何ゆえに地方六団体の国に対する意見提出権を認めないのか、
総理並びに自治大臣の
見解を問います。
次に、国鉄問題について伺います。
総理は、自治体に国鉄職員の再就職に協力しろと言われます。この問題についての我が党の
基本的
見解は既に明らかにされておりますが、そのことはひとまずおくとして、六十一年度の採用については千人を
期待すると言っておるようであります。ところで、何か忘れてはいませんか。去年の国会でも大激論となった年金の問題。いつ、どのような方法で当該職員分の積立金及び共済追加費用を補てんするのでありますか。既に問題が発生
していることでありますから、この場ではっきりと方法と時期についてお示しをいただきたい。また、自治省事務次官通達においては、さんざん自治体に協力を要請しておいて、最後に、この要請は従来の行革による定数
適正化と同時並行でやれとも言っています。一体、やれというのか、やらぬでいいというのか、適当につき合えというのか、これでは実質的に国鉄労働者の雇用安定は図れない。私は、もしこういう方法で雇用
対策をとろうというのであれば、定数については特別枠で処理し、必要な地方
財政計画上の
措置も講ずるというのが前提である、
政府がそうした決意を持って初めて雇用不安の解消が図れると
考えるが、
総理並びに自治大臣の所見を伺います。
最後に、少し本題をそれるが、今、内外の注目を集めているフィリピンのマルコス前大統領の不正蓄財に
関連する問題についてぜひ
総理の所見を伺っておきたい。
私は、去年の七月、同僚議員とともに、民衆の側から見たODAのあり方についてフィリピンの現地調査を行いました。そのレポートは若干の提言とともに
政府筋にも届けてあるから、あるいは
総理の目にとまったかもしれないが、その際予見したことの多くがフィリピンの政変に伴ってあらわれたことにいささかの自負を感じています。
政府は、
予算上特別待遇を与えられておるODAについて多くの批判や疑惑が寄せられておることにもかかわらず、一切問題はない、相手国の
国民生活や経済再建に役立っておると言い張ってきましたが、マルコス政権の崩壊によって、ODAが独裁者を太らすという仕組みの存在が証明されました。報道によると、日本の円借款の使途、受注をめぐり契約額の一五%のリベートが不正蓄財の相場になっていたようだが、これによれば、第十二次円借款までに日本
国民の血税は六百億円を下らない額が独裁者とその週辺につき込まれたことになる。こうしたことについて、
政府は
国民にどのような説明をし、どのような
責任をとるのか。日本の政財界へのはね返りもないとは言い切れないようだが、身を切るような徹底究明を
政府はみずから行うべきである。
また、こうした円借款は、つまるところフィリピン
国民の負債でもあります。日本のODAは、独裁政権を支え、延命に手をかして民衆を苦しめ、その上、返済の
負担をも同
国民に強いることになったわけだが、フィリピンの
国民に対しても日本
政府の反省が示されてしかるべきである。私は、従来の円借款について、贈与への切りかえ、金利等の減免などの
措置を講じてフィリピン経済の再建に寄与するとともに、現在進行中または計画中の円借款については抜本的な
見直しと再協議を行うべきであると思う。特に、マルコス政権末期に供与された政治的色彩の強い第十二次、第十三次円借款は、新
政府の希望を十分に聞いて、また、
国民、住民の参加と協力が得られるものに再編成すべきであります。
以上、適切な対処を求めて私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣中曽根康弘君
登壇、
拍手〕