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1986-01-31 第104回国会 参議院 本会議 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年一月三十一日(金曜日)    午前十時一分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第四号   昭和六十一年一月三十一日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第三日)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、裁判官訴追委員辞任の件  一、裁判官訴追委員等各種委員選挙  以下 議事日程のとおり      ―――――・―――――
  2. 木村睦男

    議長木村睦男君) これより会議を開きます。  この際、お諮りいたします。  鈴木省吾君、古賀雷四郎君から裁判官訴追委員を辞任いたしたいとの申し出がございました。  これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 木村睦男

    議長木村睦男君) 御異議ないと認めます。  よって、許可することに決しました。      ―――――・―――――
  4. 木村睦男

    議長木村睦男君) つきましては、この際、  裁判官訴追委員、  検察官適格審査会委員予備委員各二名、  国土審議会委員、  日本ユネスコ国内委員会委員各一名の選挙を行います。
  5. 藤井孝男

    藤井孝男君 各種委員選挙は、いずれもその手続を省略し、議長において指名することの動議を提出いたします。
  6. 浜本万三

    浜本万三君 私は、ただいまの藤井君の動議に賛成いたします。
  7. 木村睦男

    議長木村睦男君) 藤井君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 木村睦男

    議長木村睦男君) 御異議ないと認めます。  よって、議長は、裁判官訴追委員石本茂君、平井卓志君を、  検察官適格審査会委員予備委員安孫子藤吉君の予備委員として小島静馬君、八百板正君の予備委員として海江田鶴造君を、  国土審議会委員中村太郎君を、  日本ユネスコ国内委員会委員柳川覺治君を、それぞれ指名いたします。      ―――――・―――――
  9. 木村睦男

    議長木村睦男君) 日程第一 国務大臣演説に関する件(第三日)  昨日に引き続き、これより順次質疑を許します。峯山昭範君。    〔峯山昭範君登壇、拍手〕
  10. 峯山昭範

    峯山昭範君 私は、公明党国民会議を代表して、さきの施政方針演説並びに当面の政治課題について、総理並びに関係大臣質問をいたします。  質問に先立ち、新潟県能生町の雪崩災害で亡くなられた方々の御冥福を心からお祈りし、被災者救済政府全力を尽くすよう求めるものであります。  さらに、米国スペースシャトルの不慮の事故犠牲者に対し、心から哀悼の意を表します。宇宙開発人類の夢をのせた七飛行士の功績は、全人類の心中に生き続けるものと信じます。  初めに、政治姿勢についてお伺いします。  中曽根総理、あなたが長年の念願であった首相の座について三年を経過しました。田中派の丸抱えでスタートしたと言われた中曽根内閣でありましたが、歴代の自民党内閣の中では高い支持率を保ってきています。これは、あなたの外交面における活躍が国民に評価され、特にその内容よりも演出のうまさにあると巷間言われてきました。しかし、その外交面も、靖国神社公式参拝をめぐっての中国並びASEAN諸国との関係や、防衛費GNP一%の問題をめぐってのレーガン大統領との関係にもかげりが見え始めております。また、内政面においても、防衛費突出だけが目立ち、行政改革とは名ばかりで、その内容は、社会福祉の後退、地方財政への押しつけ、国民負担急増、借金のつけ回しが横行し、公約であった昭和六十五年度赤字国債脱却も不可能となってまいりました。総理は、この三年間を振り返ってどのように反省しておられるのか、お伺いしたい。  次に、定数是正についてお伺いします。  衆議院の定数是正は、最高裁の判断も示されていることでもあり、これを是正することは緊急の課題であり、国民の世論でもあります。現行定数三ないし五の中選挙区制は、大正十四年以来、我が国に定着している制度であり、この原則に従って是正案を提案すべきであります。また、参議院選挙区についても、六十年の国勢調査速報値による最大格差が六倍以上というのは、明らかに憲法の要求する選挙権の平等に違反していると言わざるを得ません。総理の御見解をお伺いしたい。  次に、外交問題についてお伺いします。  昨年十一月の米ソ首脳会談によって、国際社会は従来の厳しい東西対立から脱却し、デタントへの方途を見出したとの感があります。しかしながら、真のデタントと国際平和への道は依然として多くの難問を抱えており、その緒についたばかりであると言わなければなりません。私は、ようやく芽生えた対話交渉の機運を定着、本格化させることが何よりも重要であると思うのであります。こうした国際政治の流れの中で、懸案であったソ連外相の来日による八年ぶりの日ソ外相会議も開かれたのでありますが、今ほど我が国が自主的な平和外交を展開すべきときはないと思うのであります。  そこで、総理並びに外務大臣にお伺いします。  第一に、ことしは国連で定めた国際平和年でありますが、日本政府は具体的にどのような取り組みをしようとしていますか。  第二に、総理は、平和と軍縮推進するとしているのでありますが、言葉だけでなく、どう推進するのか、そのプログラムを国民の前に示すべきであります。また、米ソ軍縮交渉見通しをどのように見ているのか。近年激しくなっている日本をめぐるアジア地域での米ソ軍拡競争に対する認識と、これを阻止するための方策を伺いたい。  第三には、米ソ交渉での最大の焦点となっているSDIに対し、既にイギリス、西ドイツは参加の意向を示しているのでありますが、我が国としてはどういう所存なのか。もし参加するようなことになれば、我が国の平和諸原則は崩され、また、日ソ関係にも大きな影響を及ぼすことを懸念するのでありますが、総理見解はどういうものか。少くとも、当分の間、参加するつもりはないと理解してよいのかどうか。  第四には、日ソ関係でありますが、今回の外相会議において、最大懸案である領土問題はどのような話し合いが行われたのか。また、両国首脳相互訪問見通し、さらには、北方領土への墓参は実現の見通しなのかどうかを明らかにしていただきたい。  次に、防衛問題について伺います。  GNP一%枠とは、現憲法を擁護しつつ、防衛力整備一定の歯どめを与え、平和を守ろうとする国民的合意であり、かつ不戦の誓いとともに、日本国政府がみずからを律する平和意思の表現であり、日本の重要な平和原則一つであります。しかるに、本国会に提出された六十一年度防衛予算では、例年計上給与改善費は本年は計上しておりませんので、これを加えると防衛費伸び率は七・〇四%になり、昨年度の六・九%を上回る突出であり、今年度の人事院勧告考えると、今年じゅうに一%枠を突破することは必至であります。  そこで総理、次の三点について明確な御答弁をいただきたい。  第一に、昭和六十一年度の防衛予算については、秋の補正予算段階をも含めて、一%枠を堅持する決意であるかどうか。  第二に、新中期防衛力整備計画実施に当たっては、専守防衛の理念に徹し、現行防衛計画の大綱についてもこれを見直さないと約束できるかどうか。  第三に、今回の安全保障会議設置は、シビリアンコントロールの機能強化に名をかりて、有事法制の確立、民間防衛体制整備等、いわゆる戦前の国家総動員体制を意図するものではないかとも言われていますが、総理の真意を伺っておきたい。  次に、昭和六十一年度の経済見通しについてであります。  来年度の経済見通しについて、民間機関は、円高緊縮財政等により、実質経済成長率を二から三%台と厳しく見ております。これに対して政府は四%と際立った高い見通しとしております。総支出の内訳も、実質民間最終消費支出三・六%、民間企業設備投資七・五%と高い伸び率となっており、通常経済見通し方式では理解困難なものとなっております。また、政府昭和六十一年度予算案では、政治的に華々しくとも、直ちに内需に結びつかない内容が多く、四%という高い成長率を実現することは困難と考えますが、これらについて三点伺いたい。  第一に、この成長率四%は、東京サミットに向けて正常な値より高目に設定されたという観測もありますが、その達成の責任を負う数値なのか、それとも、単なる見通し数値であり、結果として誤差が出ても当然という甘い認識により出されたのか、明確にしていただきたいと思います。  第二に、この成長率に無理があったとしても、一たん発表された以上は国際公約の性格を持つものであります。政府我が国の名誉にかけてこれを実現しなければならないが、そのためには思い切った内需拡大追加措置が必要と考えますが、どうですか。  第三に、昨年に引き続き、ことしも五百億ドルを上回る経常収支の黒字が見込まれるにもかかわらず、六十一年度が内需主導型経済と主張する根拠は何ですか。  次に、円高日本経済に与えるデフレ影響について伺います。  今回の大幅な円高は、日本経済減速局面に入った段階で起きたため、輸出企業採算悪化輸出数量減少などを中心企業活動は急速に冷え込んできております。このため、円高デフレによる総需要減少が五兆円に達するという見方もあります。円高による輸入増などによる需要増の約一兆五千億円を差し引いても三兆円を超えるデフレ圧力があるとする見方は、各界の支持を得ていると思われるのであります。また、我が国の大幅な経常収支黒字を縮小するためには、円高と相まって十分な内需拡大が不可欠であります。これらについて四点伺います。  第一に、政府円高デフレ影響をどの程度と見ていますか。政府判断に甘さはありませんか。円高プラス面を過大評価していませんか。主要産業別にどのような被害をこうむると見ていますか。具体的に御説明願いたい。  第二に、今回の急激な円高は、輸出依存度の高い燕の洋食器、瀬戸の陶磁器、大阪の自転車、敷物、眼鏡類人造真珠、ねじ、鋼索類などの中小企業を直撃し、休業や倒産の危機に追い込まれております。このような深刻な影響を受けている中小企業に対し、具体的な救済策並びに今後の対応をお伺いしたい。  第三に、この円高デフレ需要減に対し、これまでの内需拡大策は不十分であると思います。政府は、六十一年度予算案に盛り込んだ内需拡大策による需要拡大をどの程度と見ていますか。  第四に、円高後の資本流出の変化をどのように判断していますか。流出抑制効果を上げるための対策をどのようにお考えか、伺っておきたい。  次に、財政問題についてお伺いします。  中曽根内閣最大政治課題である財政再建は、国債累積残高百四十三兆円、年度予算の約三倍、国民総生産のほぼ半分、そして利払いは一般会計予算の約二〇%、どの指標一つをとっても前内閣時代に比べ改善されたものは見当たりません。六十一年経済悪化の際に財政が何ら有効な手を打てない、この事実こそが財政対応力強化言葉のみに終わったことの証左であります。まさに中曽根財政は失敗に終わったと言わざるを得ません。  そこで、総理に伺います。  第一に、財政再建のため毎年の赤字国債発行を一兆円ずつ減額するという計画が、六十一年度においてもできず、七千三百四十億円にとどまり、さらに六十年度の補正予算で四千五十億円の赤字国債が増発されることを見ますと、六十五年度赤字国債脱却はできないと思いますが、その政治責任国民に対する公約をいかがしますか。  第二に、一般歳出削減の見せかけ的な財政再建はほころび、今やこの方式を継続することはできないと思いますが、いかがですか。再建方式の再検討の必要に迫られているのではありませんか。  第三に、操作とやりくりの圧縮型予算づくりの犠牲で、昨年の国会で約束した六十年度限りの地方への負担転嫁を拡大した上、今後三年も続けることにしましたが、この公約違反責任をどうとられますか。  第四に、このように破れ傘となった財政再建にしがみつき過ぎて、六十一年度に財政が果たさなければならない公共投資拡大減税等内需拡大策が放置されたと思いますが、いかがですか。  第五に、無理な歳出抑制のツケを公共料金の一斉値上げで家計に押しつけることにしたことは許されません。これは政府責任放棄ではありませんか。総理責任ある答弁を求めます。  次は、税制改革について伺います。  総理は、就任以来、「戦後政治の総決算」をうたい、税制においてもシャウプ勧告以来の大改革、抜本的改革を再三再四表明してこられました。総理が提唱された公正かつ簡素な税制づくり国民は大きな期待を持ちました。さらに、総理が約束した所得税法人税等減税を待望してまいりました。しかるに総理は、税制改革を六十二年度以降に先送りし、本年度はたばこ消費税増税等をやってのけました。六十一年度こそ景気回復のための大幅所得税減税を断行すべきであり、不公平の解消、各種税制見直しを行うべきであります。  そこで、総理に伺います。  第一に、なぜ昨年の減税公約実施しないのか、その責任をどう考えておられるのですか。  第二に、所得税法人税相続税と、昨年打ち上げた減税税目別検討経過を示してください。  第三に、最近の総理の言動は、減税増税の抱き合わせを示唆するように思われますが、昨年の総理減税公約実施方式を変更するのですか。  第四に、総理はもはや、減税のために増税を行い、国民の立場から見て直接税と間接税負担の置きかえにすぎないようなやり方は決して考えておらないと思いますが、この際明確にしていただきたい。  第五に、政府大型間接税導入のねらいが濃厚といった論調が強まっておりますが、総理から、導入しないとの言明をいただきたい。  次に、パート労働者並びに家内労働者処遇改善についてお伺いいたします。  女子労働者が圧倒的多数を占めるパート労働者は、近年急増を続け、全国で四百六十万人を超えると言われております。そのような中で、パート労働者一般労働者と比較して、賃金社会保険等の適用、雇用労働条件面でも極めて低くなっています。また、現在百五十万人を上回っている家内労働者は、その八〇%が女性で、劣悪な労働環境と低賃金家内労働者生活と健康を脅かしております。  そこで、総理に伺います。  第一に、公明党は、パートで働く人たち生活の安定と、雇用労働条件改善を図るため、一昨年の通常国会パート労働法案を提出しましたが、速やかに制定すべきであると思いますが、いかがですか。  第二に、家内労働法昭和四十五年に制定以来そのままであり、その内容現状にそぐわないものとなっております。最低工賃の引き上げ、労働環境整備等を図るため、家内労働法改正を行うべきであります。  第三に、所得税法改正を行い、パート労働者については現行の九十万円を百二十万円に引き上げるべきであります。  第四に、家内労働者収入税制上、雑所得扱いを受け、三割の経費を入れても課税最低限は四十七万円にしかならず、不公平感が強まっております。家内労働者課税最低限度額パート労働者と同じ扱いにすべきであると思いますが、総理の誠意ある御答弁をいただきたい。  次に、教育問題についてお伺いします。   教育の荒廃は、叫ばれて久しいのでありますが、今、国民の間で教育改革に対する関心期待は大きくなってきております。教育改革は国家百年の計に立って断行すべきことは言うまでもありません。国民期待と要請にこたえるためには、慎重にすべきであると同時に、機を逸することのできない問題であります。  我が党も、早くから教育改革必要性を痛感し、この数年間、地道な調査と論議を重ね、教育現場にも数多く足を運び、その実情の把握と教育改革への方途を探ってまいりました。昭和五十八年三月には、「校内暴力に関する緊急提言」を、次いで同年五月には、「いきいきした教育のために-八つ提言-学校教育改革学習社会建設」を、さらに同年十一月には、「生命が躍動する教育を 経済成長を超え人間成長へ」を我が党の調査の結果をまとめ発表してまいりました。  また、国民合意形成のため、各界各層との対話運動へと、昭和五十九年一月に、党教育改革推進本部設置し、全国各地で、「母親と教育考える会」、「親と教育考える会」、「明日の教育考える会」等を精力的に開催し、現場の人々とひざを突き合わせての教育論議を展開してまいりました。それらの現場からの生の声を集大成し、昨年五月には臨教審のメンバーとの意見交換の場を持つなど、精力的に問題解決のために力を注いでまいりました。  我が党の教育改革推進本部が、東京を初め全国十一都府県で昨年「親と教育考える会」を開催し、アンケート調査を行った結果、親が今一番関心を持ち、悩んでいる問題は、しづけについて三一・一%、親と家庭について三〇%など、家庭内教育のあり方に著しく高い関心が示されております。近年の青少年非行の頻発から、家庭教育、しつけが改めて見直されていることの反映と思います。  そこで、次の二点について伺います。  第一に、私たち調査でも、親に対する教育、親の相談、親に対するアドバイス等対策を具体的に考えていかなければ教育の成果は実効が上がらないということが明らかになってまいりましたが、この点について総理所信を伺いたい。  第二に、生徒、父兄の先生に対する期待と要望も多種多岐にわたっております。これにこたえるためには、どうしても教師の資質の向上が急務であります。教師の養成、研修、採用について具体的にどう改善していかれるつもりか、お伺いしたい。  次に、社会保障問題についてお伺いします。  行財政改革の名のもとに最も大きな打撃を受けているのが社会保障予算であり、その編成は全く綱渡りで、長期的展望を欠いているのであります。すなわち、六十一年度も、五十七年度以降、引き続き厚生年金国庫負担の繰り延べ三千四十億円、六十年度限りの約束を無視した高率補助削減強化で二千三百億円、六十年度に引き続いて加入者意向を無視した政管健保の国庫補助減額千三百億円、老人保健制度見直しで千九百六十三億円の国庫負担減額等に見られる国庫負担削減案が図られているのであります。  特に、弱者しわ寄せの典型を老人保健制度見直しに見ることができます。現行一月四百円の患者負担を千円に、入院の一部負担を一日三百円を五百円に引き上げるとともに、現行は二カ月を限度としていたものを期限制限のない制度とし、この患者負担増だけで六十一年度八百八十七億円の国庫負担減額を図っているのであります。今後、高齢化社会を迎えるに際し、このような長期的見通しのないその場しのぎ糊塗策に終始する政府予算編成態度には、国民は大きな不満と将来に対する危惧の念を持っているのであります。  こういった現実を踏まえ、以下三点についてお伺いします。  第一に、高齢化社会の進展により、年金、医療を中心に、当然増経費一定の割合で生ずることは避けられないと思いますが、この際、国民の不安を払拭するためにも具体的な長期計画の策定が必要だと思いますが、いかがですか。  第二に、こういった社会保障予算危機的状態に対し、厚生省は社会保障財政一般会計別建てとする社会保障特別会計設置構想を示しておりますが、その内容並びに国民にとってどのような利点があるのか、また、財政当局はこの構想に対しどのようなお考えであるのか、厚生、大蔵両大臣より明確な答弁を伺いたい。  第三に、年金積立金自主運用についてであります。厚生年金国民年金積立金は六十一年度末には五十八兆円に及ぶと見込まれております。一%有利な運用がなされれば、年間五千八百億円に達する運用収入増が得られるのであります。将来の保険料負担の増をでき得る限り低いものとするためにも不可欠のことであります。来年度は、年金福祉事業団を利用して三千億円程度自主運用を認める方向にあるようですが、この程度の額では到底加入者の納得の得られるものではありません。この公的年金制度充実の根幹にかかわるこの自主運用の問題についてどのように対処していかれるのか、明確なる御答弁を求めます。  次に、国鉄問題について伺います。  国鉄再建国民が最も注目する課題であります。国鉄は毎年二兆円を超える赤字を抱え、危機的な状況に陥っており、一刻も早くメスを入れなければなりません。政府は、国鉄再建監理委員会の「意見」に基づいて分割民営化国鉄改革推進を着々と進めておりますが、国鉄改革国民生活と密接に関連している関係上、国民の理解と合意を得つつ進めていくことが必要不可欠と言わなければなりません。  そこで、以下三点についてお伺いします。  第一は、政府分割民営化国鉄改革に対する考え方とスケジュール、国民合意の進め方についてお伺いします。  第二に、国鉄再建監理委員会は、処理すべき長期債務三十七兆三千億円のうち、十六兆七千億円について国民負担処理する考え方を示し、その処理政府にゆだねておりますが、その処理について具体的に御説明願いたい。  第三に、余剰人員対策は昨年末に基本方針を決定していますが、公的部門受け入れ数が明記されておりません。具体的計画をお伺いしたい。  次に、国際化情報化時代を迎え、日本経済首都圏集中の問題についてお伺いします。  総理は、施政方針の中で「中央地方の格差は平準化している」と述べておりますが、実態は、人口産業経済等すべての面で首都圏への集中が加速されております。そのために首都圏の地価の高騰を招き、庶民のマイホームの夢を奪っております。私は、首都圏に過度に集中した社会経済等の諸中枢機能分散を図り、大都市圏が相互に補完、連携し合う新しい大都市圏政策を確立する必要があると思います。特に大阪都市圏については、その豊かな蓄積とすぐれた特性を生かし、経済、文化を中心我が国中枢として位置づけ、国土双眼構造の一翼を担わせることが、我が国の均衡ある発展のためぜひ必要であると考えます。  そこで、総理にお伺いします。  第一に、このような首都圏集中現状について、総理はいかなる点にその原因があるとお考えか。第二に、大阪中心とした関西圏我が国中枢とする双眼構造についてどうお考えか。第三に、そのために中央省庁機関国立研究機関等地方への分散考えるべきであると思うが、総理所信をお伺いしたい。  最後に、緑の保全について伺います。  自然破壊、とりわけ緑の喪失は、我が国のみならず、全世界の緊急かつ重要な課題であります。現在、地球上では毎年六百万ヘクタールが砂漠化し、二千万ヘクタール、すなわち日本の本州に匹敵する面積の森林が消えていくと、アメリカ政府の「二〇〇〇年の地球」では報告しております用地球上の人口が増加している中でこのように緑が失われていくことは、干ばつ、水不足を招き、アフリカの飢餓の原因一つでもあり、今世紀最大課題とも言えます。  一方、国内においても、山村の過疎化外材輸入による木材価格の低迷により、我が国森林はまさに崩壊の危機にあると言っても過言ではありません。森林は、単に木材の生産のみでなく、国土保全、空気の浄化、さらには、人間にとって必要不可欠な水をためる緑のダムであり、地すべりや雪崩事故を防止する自然のとりでであります。しかるに、森林が放置され、その機能を失うことは我が国にとってゆゆしき問題であります。私の住む大阪におきましても、関西国際空港や関西学研都市の建設、花と緑の博覧会など大阪活性化を目指し、全力で取り組んでおりますが、水と緑の確保は、前提となる重要課題であります。  私たち公明党は、昨年一月、「ジャパン・グリーン会議」を中央及び各県に設置し、森林の保護、都市緑化世界の緑の喪失停止のために調査活動研究会関係者との意見交換を行い、精力的に取り組んでまいりました。経済大国と言われている我が国は、軍事大国を目指すのではなく、このような緑の保全という人類課題全力で取り組むことが必要であります。  第一に、総理外務大臣施政方針演説でこの問題について一言触れられておりますが、我が国の努力はまだまだ不十分であります。御決意のほどをお伺いしたい。  第二に、開発途上国の重要な森林資源を保全し、維持管理するために、「世界森林保全条約」の提唱と締結を我が国が率先してやるべきと思うが、外務大臣のお考えをお伺いしたい。  第三に、危機にある国内森林保全のためには、制度税制面も含めて抜本的改革が必要と思いますが、総理のお考えをお伺いしたい。  緑に覆われた地球、そして特に春夏秋冬の四季の変化を持ち、山紫水明の我が国人類が永遠に生存できるものとして後世代に残すことは、我々に課せられた大きな責任であります。このような課題の解決の方向も見出せないままでは、総理の言う「戦後政治の総決算」はないことを申し上げ、私の代表質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
  11. 中曽根康弘

    国務大臣(中曽根康弘君) 峯山議員にお答えをいたします。  まず、政権担当三年になりますが、また、皆様方の多大の御支援、御協力をいただいておりますが、なすことも少なく、まことに申しわけない次第であります。この上は、全力公約を実行いたしまして、さらに駑馬にむちうって努力するつもりでおります。  次に、選挙区制の問題でございますが、既に先般の臨時国会におきまして衆議院議長見解が示され、また衆議院本会議の決議もなされたところでございます。今国会におきまして、各党間の協議、協調によりまして、できるだけ速やかに本問題を解決すべく期待をし、また努力もいたしたいと思います。  参議院の定数の配分につきましては、これが衆議院と違いまして、半数改選制であるとか、地域代表的な性格もまた非常に強いとか、そういういろいろな問題がありまして、その格差については衆議院と違った判断がなされております。昭和五十八年四月二十七日の最高裁判決では、参議院議員の五・二六倍の格差について合憲と判示されておるわけでございます。しかし、参議院議員の定数是正問題も私はやはり重要な問題の一つではないかと思っております。この問題については、総定数を一体何人にするのがいいのか、あるいは半数改選制や地域代表的性格等もよく考えて、各党で十分御論議していただくことが適当ではないかと思います。  平和と軍縮のプログラムでございますが、広島、長崎の惨劇を受けました我が国といたしましては、核の廃絶あるいは通常兵力の軍縮を目指して懸命に今後も努力してまいりたいと思います。この現実の厳しい国際関係の中で、いかにして実現可能でかつ実効性ある具体的な措置を一歩一歩進めるかということが政治課題でございます。米ソ間におきまして軍備管理交渉が進展をし始めつつあります。我々は、これをさらに促進するように側面的に努力すると同時に、核不拡散体制を維持強化していきたい、あるいはさらに核実験の全面禁止、これがための検証制度推進、あるいは化学兵器禁止問題、これらの促進等についても努力してまいりたいと思います。  米ソ交渉とアジアでの軍拡問題でございますが、ともかく、いよいよ第二回会談が行われる予定でございますから、さらに一歩の前進がお互いの間で模索され、前進するように期待をいたします。しかし、極東地域におきましては、ソ連は近年一貫して軍事力を極めて増強しつつあります。特に、我々の北方四島に対する軍事力の増強については、我々も重大な関心を持たざるを得ないのであります。こういうような考えに立ちまして、やはりソ連に対しましても、先般シェワルナゼ外相に対して、極東における軍事力増強、特に北方四島における軍事力増強あるいはSS20の削減問題等について、この点についてはアジアを犠牲にしないように私はアメリカに申し入れ、西欧にも申し入れているが、ソ連にも改めてこの点は申し入れをすると、そういうことも申しておきました。このような考えに立ちまして、極東を平和と軍縮の地帯に逐次前進させるように努力してまいりたいと思います。  SDIに対しましては、目下、これがどういうような内容を持つか、将来どういう発展性があるか等々も含めまして、慎重に検討中でありまして、結論を出すに至っておりません。  ソ連首脳との相互訪問につきましては、今回、外務大臣間の定期協議あるいは首脳間の相互訪問というものが約束されましたことは、一歩前進で あると評価しております。今後の情勢につきましては、まず外務大臣の定期協議を正常化する、そしてこれを早く行うということが大事であると思います。私につきましては、先般来申し上げましたように、その後が原則であり、ソ連に対しては、日本総理大臣が四回も行っているのにまだ先方からは一人も来ていない、したがって今度はそちらがおいでになる番であると、そのことを強く申し上げておる次第であります。  北方領土の墓参につきましては、ソ連が実現を約束したわけではありませんが、今後、外交ルートを通じて具体的に折衝してまいりたいと考えております。  防衛費GNP一%の問題については、いずれにせよ、三木内閣の防衛関係費に係る閣議決定について、これを守っていきたい、尊重していきたい、そのように念願をいたしております。  次に、防衛計画と大綱の問題でございますが、政府は、先般来、防衛計画の大綱水準の達成を目指して鋭意努力すると申し上げてきたとおりでございまして、その際においても、平和憲法のもとで専守防衛に徹していくということはもとより当然でございます。現在、防衛計画の大綱を見直すということは考えておりません。  安全保障会議設置の問題でございますが、これは国防会議の任務を引き継ぐほか、例えばミグ25の事件とか、あるいはダッカにおけるハイジャック事件とか、あるいは大韓航空機の事件のような緊急時の極めて重大な問題に対する対策をも含めて行えるように、今回設置を行わんとするものでございます。  次に、経済見通しの問題でございますが、内需の着実な増大を重要視して図っておるところでございます。経済の状況は、日本におきましてはまだ緩やかな拡大を続けておると思っております。しかし、最近の円高の傾向等々も踏まえまして、内需をできるだけ速やかにこれを増進させるように今懸命の努力をしておるところであり、これらの成果をもちまして四%程度の実質成長は期待できると考えておるのであります、そのためには、やはり円レートの動向をよく見据えながら、機動的かつ適切な財政及び金融の政策運営をやる必要があると思います。また、民間活力の発揮も必要でございます。先般、かかる意味におきまして公定歩合の引き下げをやりまして四・五%にいたしました。これらも内需喚起に相当貢献するであろうと考えておるところであります。  今回の予算におきましては、特に一般公共事業の事業費の拡大、大体昨年に比べまして、去年が三・七%でございましたが、四・三%程度であると思いますが、このように拡大をしていく。特に、住宅減税、設備投資促進のための税制上の措置、あるいは民間活力増進のための所要の措置等々をさらに力を入れて実行してまいりたいと思っております。この四%という数字は見通しでございまして、国際公約ではございません。  さらに、経常収支関係考えてみますと、六十年度は円に直して十一兆五千億円程度でございます。六十一年度は、円高の傾向もありまして十兆四千億円程度、約一兆円ぐらい減る見込みでありますが、円高の傾向の結果、ドルベースにおいてはほとんど変わらない数字になるであろうと予想されております。六十一年度におきましては、内需、特に消費であるとか設備投費等についても力を入れ、そして公定歩合引き下げ等の効果も考えまして、着実に見通しを実現するように努力する考えでございます。  円高に対する影響というものについては、一般に輸出数量減少考えられますが、一方においては物価の安定を通じて実質所得の増加が考えられます。それと同時に、原価の減少から企業収益の増大という面も一面において考えられますが、しかし、一面においてはまだ、円高によって輸出が停滞するという産業も出てきております。結局、原材料の輸入依存度の高い産業、これについてはプラスでありますが、輸出依存度の高い産業についてはマイナスの効果があります。そういうところも勘案しまして、輸出型中小企業の中においては、成約価格の低下あるいは受注残の減少、あるいは受注の停滞、そういう現象が見られますので、努力してまいりたいと思うのでございます。  特に、昨年十二月初め、政府中小企業金融三機関等による特別融資制度の創設を行い、さらに本年一月には、同特別融資の金利を六・八%から五・五%に引き下げました。また、事業転換の円滑化等のために特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法案を提出する予定でおります。  さらに、内需に関しまする効果がどの程度になるであろうかということを定量的に測定することは実は困難であると思います。しかし、一定の前提のもとに試算を行いますと、波及効果を含めまして、六十一年度の名目GNPが約一兆六千億円程度増加するであろうと計算されております。  資本流出の問題でございますが、我が国の長期資本収支、特に資本の流出というものは、対外債券投資を中心に大幅に今行われております。昨年九月以降、円高の進行によりまして多少変化もありますが、やはりその傾向は続いております。しかし、それがために流出規制を行うということは考えておりません。対米関係の金利差が縮小するにつれて、このような状態も鎮静化していくのではないかと期待しております。  六十五年度赤字公債依存体質からの脱却は、これはあくまで貫徹する決心で今後も努力してまいります。なかなか厳しい状況でございますが、しかしこの旗を下げるということは、これは歳出増大、予算の膨張等の誘因にもなる危険性もございます。我々は、厳しい中においても、引き締めて努力してまいるつもりであります。  今後の財政改革の推進は、我が国経済社会の安定と発展を図るために、ぜひともこれは基礎を構築して、そして将来の財政対応力を回復するという意味からも、今は歯を食いしばっても努力しなければならぬところである、そう考えておるところであります。五十八年度以降、四年連続で一般歳出を前年度以下に圧縮させていただき、多大の御迷惑をおかけしている向きもございますけれども、同本の置かれている財政の厳しい状況を見ますと、為政者としてはそのようにお願いせざるを得ないのでございます。  補助率の引き下げにつきましては、先般来、補助金問題関係閣僚会議の決定に基づき、補助金問題検討会の報告の趣旨を踏まえて、社会情勢を見据えまして、今回、事務事業の見直しを行い、補助率の全般的な見直しを行ったところでございます。なお、見直しに当たりましては、所要の地方財政対策も講じておりまして、地方財政の運営には支障がないようにいたしております。  さらに、公共料金の問題でございますが、昭和六十一年度予算においては、公共料金については、経営の徹底した合理化を前提として、受益者負担原則に立って、物価及び国民生活に及ぼす影響等も十分考えまして厳正に扱うという観点から、適切な見直しを行っておるところでございます。  減税問題については、先般来申し上げますように、シャウプ税制以来のゆがみ、ひずみ、重税感というものを直す必要があり、今税調に諮問しております。その結果を得まして、秋には総合的な税の体系をつくりまして、そしてこれを法律化していく準備をしていきたいと思います。  その際に、いわゆる大型間接税をどうするかという御質問でございますが、税調の諮問による研究につきましては、聖域は設けていないのでございます。したがって、税調といたしましては、自由な立場に立って幅広く検討いたしておると承知しております。しかし、政府としてどういう態度をとるかということは、税制調査会における結論及び従来国会等におきまして私や大蔵大臣答弁いたしました線を踏まえまして処理していきたいと考えておるところであります。  パート労働法の制定の問題でございますが、パートタイム労働者についても一般労働者と同様に労働関係法令が適用されます。その履行確保を図るとともに、パートタイム労働者の労働条件改善雇用の安定等の見地から、昭和五十九年末に策定したパートタイム労働対策要綱に基づく行政指導を強く推進してまいりたいと思います。  家内労働の問題につきましては、労働条件の向上を図るために、家内労働法にのっとりまして、最低工賃の設定、安全衛生の確保などの施策を進めており、今後とも法の履行確保に努めてまいるつもりであります。  パートや内職の問題でございますが、所得税における配偶者控除等の所得要件の水準は、この制度が少額不追求の観点から設けられている趣旨から見ても、既に相当高い程度になっております。現在、税制調査会においていろいろ検討を進められておりますが、パート及び内職の問題についても、配偶者控除のあり方や課税単位といった所得税制の基本的な仕組みのあり方との関連において検討が行われており、その検討の結果を見守っておるところでございます。  家庭教育の重要性については、全く御指摘のとおりでございまして、子供の人間形成を図る上で家庭教育は極めて重要でございます。このため、幼児期相談事業など家庭教育の学習機会や相談機会の充実に努めております。  教員の資質向上は教育改革の基本の一つでございます。教員の養成、採用、研修、総合的に見直し改善を図る必要があると思っております。現在、臨時教育審議会で検討中でありますので、その答申を見守っております。  次に、社会保障に関する御質問でございますが、本格的な高齢化社会に向けて、社会保障制度については、長期的に安定し、かつ有効で国民が信頼して頼れる、そういう制度をつくっていく必要があるのであります。急速な長寿社会の到来という面からいたしまして、昨年七月、これらを含めて長寿社会対策関係閣僚会議設置いたしました。本年半ばを目途に長寿社会対策大綱を策定し、総合的かつ効果的な政策を推進してまいりたいと思っております。  年金積立金自主運用の問題でございますが、年金財政の長期的安定とともに財投の運営という両方の面から見る必要があり、この点については厚生、大蔵両省間で検討、協議しておるところでございます。  国鉄改革の手順でございますが、まず、昨年十月に閣議決定した基本的方針に基づいて関係法令の立案をし、今国会に提出をいたします。同時に、余剰人員対策長期債務対策等の適切な処理を図りつつ、昭和六十二年四月に新経営形態に移行するように全力を注ぐつもりであります。これらにつきましては、国民や各党の御協力、御理解を賜りたいと思っております。  長期債務処理の問題については、国鉄改革上の重大問題であります。新会社の健全な経営に支障が生じない範囲内で清算等のための組織である旧国鉄に財産その他は一部残しておりますが、自主財源を充ててもなお残るものについては、最終的には債務は国において処理するということにいたしております。具体的な処理については、その段階で歳入歳出の全般的見直しとあわせて検討、決定いたします。  公的部門での余剰人員の受け入れは、我々は懸命に努力をしなければなりません。国、地方団体そのほか、今、ともに手を携えて努力しておるところです。政府としては、新事業体における要員計画内容等がまだ必ずしも十分確定してはおりませんので、今回の基本方針には規定せずに、官房長官談話において、国等の公的部門における採用目標数は三万人とする、このように表明をいたしておるところでございます。六十一年の秋までに策定する国鉄余剰人員採用計画、これで確定いたしまして、努力してまいりたいと思うところでございます。  首都圏への集中問題については、やはり集積の利益を求めてどうしても首都圏集中しがちでございます。近年においては、東京の国際中心都市としての機能の高まり、それから金融、情報等の機能集中が見られますが、人口あるいは工業等の集中は鈍化傾向にございます。できるだけ機能分散を行うということは私は適当であると考えて、今後も努力してまいるつもりでおります。  さらに、近畿圏につきましても、古くから文化や産業や学術研究等の非常に豊かな蓄積を有しており、首都圏と並ぶ主要な中枢であると考えており、さらに機能の整備を実施してまいります。研究学園都市の建設等についても政府は協力しておるところでございます。  中央省庁等の地方への分散という問題についても、国土政策上非常に重要な課題でありますが、一つ機能や能率の問題、それから地方への分散の問題という両方面から慎重に検討をいたして、もし適切なものがあれば地方分散を図ってまいりたいと考えております。  緑の保全の問題については全く同感でございまして、人間のふるさとである大自然を尊重し、尊敬して、そして人間がその中で共存するという考えに基本的に立脚すべきであると考え、そのような自然環境の保全を我々の義務として、今後も積極的に努力してまいりたいと思います。政府は、昭和五十八年に政府内に緑化推進連絡会議設置して努力をしておりますが、さらに、国際協力を推進しつつ、地球森林資源の保全涵養についても積極的に努力してまいる決心であります。  この森林を守り育てるためには、一面において、木材需要の拡大あるいは林業生産基盤の整備など、いわゆる林業振興ということが片方で大事であり、森林・林業の復活のために、森林・林業、木材産業活力回復五カ年計画に基づく緊急対策推進しておるところでございます。なお、水資源の涵養のための森林整備等の重要性にかんがみ、その税財源のあり方等については引き続き今後も検討してまいるつもりでおります。  残余の答弁関係閣僚からいたします。(拍手)    〔国務大臣安倍晋太郎君登壇、拍手〕
  12. 安倍晋太郎

    国務大臣(安倍晋太郎君) 峯山議員の御質問にお答えを申し上げます。  まず、国際平和年についてでございますが、ことしは我が国が国連に加盟して三十周年に当たる年でありますので、この機会に、国際の平和と安全の維持という国連の所期の目的を想起しながら、平和に対する国民認識を深めることは極めて有意義であると思っております。このために、外務省としましては関係方面と協力して、国連加盟三十周年・国際平和年連絡事務局を省内に設置すること、国際平和年記念切手の公募あるいは記念論文の出版、各種講演会等の開催を積極的に検討しておるところであります。  次に、米ソ軍縮交渉につきましてでございますが、これについては総理大臣から詳細にお答えがあったわけでございますが、まだ米ソ双方の主張とも相当、軍備管理、軍縮交渉等において基本的な相違もあるわけでございまして、今後なお相当な紆余曲折があるのではないかと考えております。  次に、日ソ関係につきまして申し上げますが、先般、来日いたしましたシェワルナゼ外相と、特に領土問題を中心にいたしまして三時間以上にわたりまして交渉いたした次第でございます。私は、我が国が北方四島の一括返還を求める歴史的、法的根拠、日ソ間の交渉の経緯、領土問題についての我が国民の考え方等につきまして詳細に説明するとともに、領土問題を含む平和条約交渉の再開を強く求めた次第であります。これに対してシェワルナゼ外相は、両国間の国境には一定の歴史的、条約的基礎があるとして、領土を変更する必要はない等、従来の厳しい立場を述べたわけでございますが、交渉の席に戻ることについてはこれに応じたということでございます。  なお、日ソ両国首脳相互訪問につきましては、今後、私の訪ソ結果などの諸般の情勢を見きわめながら、外交ルートを通じましてソ連側と話し合っていくこととなる次第でございまして、今直ちにその見通しを立て得るような状況ではございません。  北方墓参につきましては、私より強く実現方を要請いたしました。これに対しましてソ連は、まだ実現を約束したわけではございませんが、感じとしては積極的な対応を見せた、こういう受けとめ方をいたしておるわけでございます。今後とも、この実現のために全力を尽くしてまいりたいと思います。  次に、緑の保全に関しての国際協力についてお答えいたします。  開発途上国の経済、社会開発における環境保全の重要性についての認識は、近年国際的に深まっております。我が国は、こうした認識を踏まえて、従来より、緑化、砂漠化防止、森林保全等の分野を初め、さらには我が国のこれまでの経験を生かすことのできる公害防止分野等において、資金の供与、専門家の派遣、研修生の受け入れ等による協力を行っております。さらに我が国は、昨年のボン・サミットの後、いわゆる「アフリカ緑の革命」構想を取りまとめるなど、国際的にも積極的に対応してきてまいっておるわけでございますが、なお、フランスのミッテラン大統領の提唱によるところのヨーロッパの森林枯渇及びアフリカの砂漠化防止のための国際会議にも積極的に参加することといたしておるわけであります。  最後に、「世界森林保全条約」の提唱をされたわけでございます。これについて考え方を申し上げますが、御指摘の森林保全条約につきましては、これは一つの貴重な御意見といたしまして、この分野における今後の我が国の協力を行う上で重要な参考にさしていただきたいと考えております。森林保全のための具体的措置等につきましては、既に、国連食糧農業機関、いわゆるFAO等の場で検討を進めてきておりまして、今後とも我が国もこれに積極的に参加してまいる考えでございます。  以上でございます。(拍手)    〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕
  13. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 私に対する御質問は、いわゆる社会保障特別会計設置構想ということでございます。  前厚生大臣であります増岡さんが、いわゆる個人の資格とでも申しましょうか、私案として発表なさった社会保障特別会計構想というものがございます。それからそのほか社会保障勘定、あるいは財源としての福祉目的税導入、これらが学者の方々やあるいは現代総合研究集団等々からそういう構想が出されておることは事実であります。確かにこれらの提言は、今後高齢化の進展等に伴いまして社会保障関係費の増加が予想される中で、今後の財政再建の具体的な進め方、それから社会保障に対する負担のあり方、これらの検討を進めていく上ではまことに示唆に富んだ考え方であるというふうに基本的には受けとめております。  これをいろいろ議論してみますと、また社会保障関係費がある意味において聖域になっていく。その聖域とは、時には限界を示したり、あるいは無限に延びたり、いろいろな方面からの議論がございます。それから、言ってみれば予算の中の別枠ということで国民全体の納得が得られるかどうか、こういう問題もございます。したがって、こうした提言も含めた各界意見を承りながら、これから歳出歳入構造のあり方、そして受益と負担関係等について引き続き検討を重ね、財政改革の推進に努めてまいりたい、基本的にはこのように考えておるところでございます。  我が国世界一の長寿社会になるということは国民一般の認識として定着してきた。がしかし、給付と負担対応関係等々、いろいろ具体像というのが明確でないというような御意見から御提案されたものでございますので、非常に示唆に富んでおるということは言えますが、具体的な議論ということになりますと、私はそれこそ各方面いろいろなこれは議論のある問題であろうというふうな問題意識を持っておるところでございます。(拍手)    〔国務大臣今井勇君登壇、拍手〕
  14. 今井勇

    国務大臣(今井勇君) 今回、厚生大臣に就任いたしました今井勇でございます。何とぞよろしくお願いを申し上げます。  ただいまの社会保障特別会計構想についての御質問にお答え申し上げたいと思います。  社会保障予算につきましては、高齢化の進展や年金制度の成熟化などによりまして相当規模の自然増が避けられないという性格を持っております。こういった社会保障予算につきまして、一般会計から切り離して、社会保障に関する給付と負担関係を明確に示すということは一つ考え方でございます。一方、この問題は、国の財政構造全体にもかかわる問題でありますので、厚生省といたしましては、この考えを含めまして、今後の社会保障予算のあり方につきまして十分検討していかなければならないものだと考えておる次第でございます。(拍手)     ―――――――――――――
  15. 木村睦男

    議長木村睦男君) 上田耕一郎君。    〔上田耕一郎君登壇、拍手〕
  16. 上田耕一郎

    ○上田耕一郎君 私は、日本共産党を代表して、総理施政方針演説に対する質問を行います。  総理演説には、国際平和年参議院選挙を意識してか、「平和と軍縮」、「新しい地球倫理」、「共存の哲学」など、これが不沈空母発言で高名をとどろかした同じ人物かと思わせるような美辞麗句がにわかにちりばめられました。しかし、国民にとっての問題は、リップサービスにはなく政府の行動にあり、以下、具体的事実に即して、総理の真意を問いただしたいと思います。  第一は、核兵器廃絶か、日本の核戦場化かという問題であります。  去る十五日、ソ連のゴルバチョフ書記長は、今世紀中に核兵器を廃絶する具体的提案を発表し、レーガン米大統領も、「一九八三年日本国会で私は核兵器の完全廃絶を呼びかけた」ことを想起して、新提案を歓迎しました。一昨年十二月の日ソ両党共同声明に結実したように、核戦争阻止、核兵器廃絶のために全力を挙げてきた党として、我が党は、三十数年ぶりに核兵器廃絶を世界政治日程に上せた歴史的提案として、ソ連の提案を評価し、十五年といわず、できるだけ早くその日を実現させるために奮闘する決意です。  その段階的プログラムの内容検討すべき問題を含んでいますが、驚くべきことに総理は昨日、「ゴルバチョフ提案の三段階は、抑止と均衡に基づくもの」と述べ、ゴルバチョフ提案を総理の抑止と均衡論の合理化に利用しました。しかし、抑止と均衡論が、とめどない核軍拡しかもたらさなかったのは歴史的事実ではありませんか。核兵器はこの瞬間にもふえつつあります。昨年十一月、参議院に参考人として出席した西堀直弘前国連大使も、「抑止力の均衡と言う以上、これは長靴の泥みたいなもので、行き着く先は限りなき軍拡のエスカレーションだ。抑止力の均衡を言っている限り、とても軍縮は望みがない」と、四年間の国連におけるその体験から述べました。総理はあくまで抑止と均衡に固執し続けるのですか。まずお伺いしたい。  昨日の衆議院で総理は、我が党の不破委員長の質問に対し、共産党は勉強してほしいなどというまことに無礼な態度をとった上、幻想的廃絶論だとやゆ的に答弁しました。昨年十一月の米ソ首脳会談に続いて、今回、米ソともに核兵器廃絶の方向を打ち出すという情勢の新たな展開を迎えて、世界でただ一つの被爆国日本の国際的使命が、核兵器廃絶の国際協定締結の提唱者、推進者として行動することにあるとあなたはお考えにならないのですか。  なお、チャレンジャー号の爆発はまことに痛ましい惨事でした。この悲劇は軍事優先によって生み出されたことが指摘されています。スペースシャトル計画は、米ソ交渉の争点の一つであるSDI、戦略防衛構想と一体のものであります。こうした教訓からも、当然、核軍拡競争を宇宙に拡大するSDIへの日本の技術協力は行うべきでないと思うが、いかがですか。  ところで総理は、核兵器に固執し、日本の核基地化に協力する態度をとっています。ソ連は、五〇%削減の「互いの領土を攻撃可能な核兵器」の対象の中に青森・三沢米軍基地のF16を挙げています。乗組員は既に核使用訓練を受け、核模擬爆弾投下を天ケ森射爆場で行おうとしています。また横須賀は、昨年米原子力潜水艦の入港が戦後最高の三十回となり、その中のラホヤ、ヒューストンなどは既に明白な核トマホーク積載艦なのであります。総理の言う「平和と軍縮」に一片の誠意があるならば、非核三原則を毅然として守り、アメリカ政府にF16の撤去と核トマホーク積載艦の寄港中止を申し入れるべきでしょう。今夏の寄港が報道された戦艦ニュージャージーの問題も含めて、態度表明を求めるものであります。  トマホーク問題が重大なのは、一月のハワイ事務レベル協議の日本代表団筋が、ことしの秋まとまるシーレーン防衛の日米共同研究の四つの有事シナリオの中に、「米軍が核巡航ミサイル・トマホークを使用することを想定したケースも含まれている」と語ったことにかかわります。総理は、アメリカの核使用を排除できないと昨年重大答弁を行いましたが、日米共同作戦研究に公海での対ソ核使用を含めるつもりなのか。アジアで核戦争を開始し、日本を核戦場にするという民族の命運にかかわる重大問題ですから、端的に見解を述べていただきたい。  神戸市の十年にわたる核積載艦入港拒否の経験がヒントになったニュージーランド政府の非核政策を、日本政府自身が採用すべきときが来ています。既に国内では九百十三の地方自治体が非核平和都市宣言を行い、その人口は六千九十九万人と、全人口の過半数を超すまでになっているではありませんか。なぜ自民党大会は、国民運動本部の活動方針に「まやかしの「非核都市宣言」運動を排撃」としたのか、自民党総裁として理由を明らかにしていただきたい。  あなたの内閣がこうした日本の核戦場化政策をとり続ける限り、我が党は、国民世論を結集して、核兵器の緊急廃絶、非核三原則の厳守など五項目に基づく、非核の政府の樹立が国民課題となっていることを強く呼びかけるものであります。  第二は、軍備拡張か軍縮が、安保条約の強化か廃棄かという選択の問題であります。  軍縮は、文字どおり世界の各国人民の切実な共同の課題となっております。いわゆる双子の赤字、二千億ドルを超す財政赤字と一千億ドルを超す貿易赤字の増大で六十六年ぶりに昨年債務国に転落したアメリカでは、十二月十二日、財政再建を法律で義務づけた財政均衡法、グラム・ラドマン法が成立しました。ニューズウイーク日本版の創刊号は、「アメリカの軍備増強は事実上終わってしまった」とまで書いています。その当否は別として、レーガン政権の大軍拡政策の経済的破綻は明らかで、そうであればあるほど、レーガン政権は今や世界最大の債権国となった日本に対する肩がわりの軍拡要求を激しくしています。  こういう情勢のもとで、野村総合研究所の報告書が、十年後には世界GNPの一五%を占めるであろうと予測した日本の動向は、軍拡から軍縮への国際的な政治経済の動向を左右するほどの重みを持つに至りました。軍拡から軍縮への転換に先駆的イニシアチブを発揮し、「軍事費を削って暮らしと福祉、教育に」という国民の声にこたえる決意があるのかどうか、お答えいただきたい。  日本共産党は、六十一年度予算案に対し、三兆三千四百三十五億円の軍事費から、正面装備費、日米共同演習費、米軍への思いやり予算を中心に一兆六千億円以上削減することを要求します。総理答弁を求めます。  総理が、事実上GNP一%枠をも突破する、物価上昇を含めると総額二十三兆円もの新防衛計画の実行に固執する根源には、明らかに日米軍事同盟、安保体制があります。その安保体制は、今や専守防衛の枠や政府自身の憲法解釈まで踏み越え、米ソの軍事対決で戦略的役割を演ずる危険な体制に変貌させられつつあります。一月中旬のハワイ事務レベル協議では、日米が相互に補完する形で太平洋の三カ所にOTHレーダー、四千キロ先を監視しようとする超地平線レーダーを設置する計画が明らかにされました。  防衛庁は昨年、私の質問に対して、情報提供は実力行使ではないとして、OTHレーダーによるソ連のバックファイア爆撃機などについての監視データの米軍への提供を、集団自衛権の行使ではないと答弁しました。けれども、現代戦で情報活動の比重は極めて高く、米ソ対決の際、日本の対ソ軍事情報の米軍提供がアメリカのための集団自衛権発動と直結していることは余りにも明白なことであります。総理は昨日、衆議院で、米軍との軍事情報交換は当然だと答弁しましたが、集団自衛権にかかわる憲法解釈について総理見解を伺いたい。  昨年末の内閣改造で加藤防衛庁長官が留任した際、新聞は「留任条件は三宅島」と報道しました。アメリカの空母ミッドウエーの艦載機は、F4ファントム戦闘機から超高速で核攻撃のできるF/A18ホーネット攻撃機に来年五月交代し、ます。総理が強権的に三宅島に押しつけようとしているものは、耐えがたい爆音だけでなく、核戦争の訓練基地なのであります。日本の安全、世界の平和のために、厚木から三宅島へというNLPはもちろん、空母ミッドウエーの横須賀母港化を拒否すべきではありませんか。  私どもは、総理が進めてきたアメリカの戦争への参戦体制と、それに伴う反動化を「日米軍事同盟体制国家づくり」と名づけています。昨年の臨時国会で世論の怒りがついに廃案に追い込んだ国家機密法案はその一環でした。その第一次と第二次の案をまとめた自民党の有馬議員は、「七八年に日米が防衛協力の指針を決めた。それ以降、濃密な日米共同防衛体制を組むことになった。だから、スパイ立法が必要になった」と述べ、ガイドラインに基づく米側の要請があったという真相を新聞で証言しています。  政府が今国会に提出しようとしている安全保障会議設置法案は、廃案になった国家機密法案と同じような重大な危険が含まれています。昨年七月、行革審の内閣機能についての答申によると、緊急重大事態発生の際、「可能な限り、既存の法制あるいはマニュアルに従って行う」が、「総理大臣が必要と認めた場合には、対処措置等を語る」として、いざとなれば法の定めがなくとも超法規的措置を行い得るというのであります。国民の自由を抑圧する有事立法に直結しているではありませんか。  さらに中曽根内閣は、四月二十九日に天皇在位六十年祝賀式典を行うことを決めました。このうち戦前の二十年は主権在君、そのうち十五年は天皇陛下万歳、聖戦、八紘一宇の押しつけで、三百万人の日本国民と二千万人のアジア諸国民の命を奪った侵略戦争の十五年でした。昨年の戦犯を祭った靖国神社公式参拝に続く今回の天皇在位六十年祝賀は、無反省な戦犯の美化と今日の憲法の平和、民主条項への挑戦であり、戦前あの侵略戦争に反対し抜いた党として絶対に黙視できません。第二次大戦終結四十周年に当たり、ナチズムの暴力支配と侵略戦争に透徹した反省を述べて内外に大きな感動を呼んだ西ドイツのワイツゼッカー大統領の演説総理は読まれたかどうか、もし読まれたのなら感想をぜひお聞かせいただきたい。  日本共産党は、我が国の自由と民主主義のファッショ的圧殺を企てる国家機密法案の再提出、安全保障会議設置法案の提出を行わないこと、天皇在位六十年の祝賀行事を取りやめることを強く要求するものであります。  以上に指摘した諸問題は、日米軍事同盟の存在が、我が国の独立、平和、民主主義と両立できない極めて危険なものとなっていることを如実に示しています。総理施政方針演説で、「二十一世紀に向けて」という言葉を九回も繰り返しました。しかし、本当の意味で、二十一世紀に希望をもたらし得る日本の選択とは、この危険な日米軍事同盟の解消、日米安保条約の廃棄による独立、中立、民主の日本への進路以外にないことを私は重ねて強調したいと思います。  第三は、当面の経済財政政策における民間活力導入か、国民の購買力の拡大かという選択の問題であります。  国民生活の問題でも、日米貿易摩擦を口実にしたレーガン政権の市場開放要求にたちまち屈服する中曽根内閣の自主性放棄と、犠牲を勤労国民に負わせて大資本に奉仕しようという民間活力導入政策が、国民生活と営業に深刻な影響をもたらしています。経済財政政策では、自主的立場を確立し、軍拡と財界奉仕の聖域化をやめ、真の内需拡大を図ることこそ重要であるという我が党の主張の真実性と緊急性は、事態の展開そのものによって立証されてきました。首相自身の諮問機関である経済審議会の「展望と指針」の昭和六十年度報告でも、内需拡大には賃上げと時間短縮など労働条件改善が必要だと述べてあります。  真の内需拡大、すなわち国内消費の六割を占める個人消費を拡大する具体的計画の第一は、大幅賃上げであります。そのために、ことしこそ人事院勧告とその完全実施が必要です。予算案になぜ公務員の給与引き上げが計上されていないのか、明確な答弁をお聞きしたい。  第二は、減税であり、我が党は二兆五千億円の所得減税を要求しましたが、政府は反対に大型間接税の導入を策す始末であります。政府・自民党は六十二年度税制改革なるもので大幅な企業減税を財界に約束したと伝えられていますが、事実ですか。こうなると、結局、あなたの言う税制改革とは、減税は大企業、高所得者のために、増税国民負担でということになります。そうでないと言うのなら、税制改革の具体的内容を、抽象論でなく、明らかにしていただきたい。  第三に重要なのは社会保障の充実であります。  中曽根内閣のもとでの無残な福祉打ち切りによって、八三年度から八六年度の社会保障関係の当然増経費は、実に八割、三兆一千五百億円が切り捨てられました。これは八六年度GNP見通しの約〇・九四%、民間最終消費支出の約一・六%に当たる大きな規模のものであります。政府の社会保障制度への相次ぐ攻撃は、その所得再配分機能を失わせるとともに、内需振興の機能をも大きく損なってきたことは明らかであります。ところが、六十一年度予算案は、社会保障を充実させるどころか、お年寄りが一年間入院した場合、現在一万八千円の入院費を何と十倍の十八万円にするというような老人保健法の再改悪を初め、保育所、老人ホーム、障害者施設措置費に対する国庫負担率の二分の一への切り下げ、生活保護国庫負担率の引き下げの継続、児童扶養手当地方負担の拡大などなど、一層の攻撃が加えられています。  高齢化社会の問題は今最大関心事となっています。六十五歳以上の高齢者世帯は全世帯の四分の一に当たる九百四十万世帯となり、寝たきり老人は五十万人、老齢年金受給者の七割は月わずか三万円という現実を見て、老人医療費の無料制度復活、年金の大幅引き上げこそ、高齢化社会のためにも内需拡大のためにも役立つと思いますが、総理見解を伺いたい。  中曽根内閣は、以上のような真の内需拡大策をとらずに、民間活力導入と称して、都市再開発や東京湾横断道路などなど、至れり尽くせりの優遇策を講じた大資本本位の新列島改造政策に重点を置いています。  総理全力を挙げるとした国鉄分割民営化は、こうした国民犠牲、大資本奉仕のやり方が行き着く果てをむき出しにしたものにほかなりません。総理が二十一世紀を言うのなら、将来の新しい交通システムの準備のためにも、輸送効率、エネルギーの節約、無公害安全性など、国鉄のすぐれた特性を発展させることこそ必要なのであります。田中内閣時代の、途方もない長期投資計画の三倍化を初め、国鉄赤字責任が挙げて歴代自民党政府にあるにもかかわらず、その責任を事もあろうに国民国鉄労働者にかぶせ、国民の貴重な財産としての国鉄を財界に売り渡す分割民営化に対し、我が党は断固反対し、国民本位の国鉄再建を行うことを主張します。ヨーロッパ諸国は国鉄の公共性を重視し、手厚い財政措置を行っているではありませんか。  そこで、二点質問したい。  一点は、国鉄関係法案がまだ上程もされていないのに、国鉄当局が分割民営化を既成事実とみなして転退職希望をとり、さまざまな不当労働行為を行っている問題であります。国会審議を待たずに走り出している国鉄当局のこれらの暴挙を直ちにやめさせるべきであります。もう一点は、二十八日の閣議で分割民営化に伴う長期債務のうち十六兆七千億円を政府責任処理すると決めたことであります。これは結局、国鉄再建税の新設や増税などで国民負担をかぶせるものとなるのではありませんか。  臨教審の問題もあわせて質問したい。  総理は昨日、いじめの問題について、第一に学校と教師責任を指摘しました。昨年、九人の自殺者まで出したいじめの問題の解決は緊急の共同課題となっておりますが、原因の探求がその解決の前提となります。  その点で、第一に、勤評以来の管理主義教育の強化、そこから生まれた体罰指導、第二に、学習指導要領の改悪による詰め込み教育、そこから生まれた大量の落ちこぼれ、第三に、行き届いた教育を困難にする過大学級、過大学校、第四に学歴社会と受験地獄、第五に子供から遊び場を奪った都市環境の悪化などが原因になっていると考えませんか。いずれも教師、学校というより、歴代の自民党政府責任がある問題であり、総理も昨年訪米して、一クラス平均二十人という学校を視察した際、「これじゃ、いじめが発生する余地はないだろう」と述べているではありませんか。  ところが、教育改革を叫ぶあなたが総理となってからは、文教予算はふえるどころか、何とマイナス〇・二七%です。しかも、こうした問題を放置したまま、臨教審は審議概要(その三)で、初任者研修制度など管理主義教育をさらに強化しようとしており、西側の一員論に基づく新国家主義教育国際化、情報化に対応をした財界の求める人づくり教育を目指そうとしております。これもまた総理の言う「戦後政治の総決算」路線なるものが、父母と教師、子供たちが協力してから取ってきた戦後の平和・民主主義教育の総否定であることを示しているではありませんか。総理見解をお尋ねしたい。  最後に取り上げたい問題は、今国会最大課題一つとしての定数是正問題であります。  同本共産党は、一人が二票以上を持つことは許されないという議会制民主主義の根本原理に立つ格差一対二未満の定数是正法案を既に衆議院に提出いたしました。総理は、一人三票までは合憲とした議長裁定をどういう根拠で支持するのか。また、今回の国勢調査で、格差一対六以上となった参議院の定数是正についてどう考えるのか、明確な見解をお聞かせ願いたい。  さらに、一月四日、司法のオーバーランという総理発言は、首相の解散権なるものを絶対化し、憲法上確立している三権分立の原則をわきまえず、司法権の独立をも侵害して、今国会定数是正が成立しなくとも衆議院解散総選挙を行って有効と強弁しようとする総理の底意が透けて見えできます。選挙が意味を持つのは民意を公正に問うからであり、その民意が公正に反映しない定数のまま、解散権は神聖だなどと言い、みずからの三選のために衆議院解散をねらうというに至っては、そのような首相は、文字どおり憲法も民意も眼中にない天上大我唯我独尊的独善と思い上がりに陥ったものと言わなければなりません。  国会を構成するすべての党が、党利党略を捨て、衆議院の定数是正に当たっての原則協議のためテーブルに着くよう重ねて提案して、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
  17. 中曽根康弘

    国務大臣(中曽根康弘君) 上田議員にお答えをいたします。  まず、抑止と均衡の問題でございますが、核廃絶はゴルバチョフさんが言ったからみんな言っているのではないので、日本人はそれよりも先に、また私もそれよりも先に言っているわけであります。日本共産党も言っているわけであります。特に、広島、長崎の惨劇を受けた日本人は、全人類の中でも先駆けて核廃絶を叫び続けてきておるのでありまして、政府はその意を体して今後とも真剣に努力してまいりたいと思いますし、今、しておるところなのでございます。  ただ、廃絶に持っていくためにどうするかという点については、やはり現実の認識論としては、抑止と均衡で平和が維持されている、戦争を起こさせないのは抑止と均衡によって辛うじてそれが行われているのだと、そういう認識に基づいてやっておる。現にゴルバチョフさんが紀元二〇〇〇年までかかるような三つの段階に分けて廃絶まで持っていこうというのは、今すぐできないからであります。その間に何をしなければならぬかということを三段階に分けて言っているわけです。その中でも、最近特に大きく言い出したのは検証の問題であって、お互いが現場へ行って見合おうじゃないか、安心し合う体制をつくろうじゃないか、そう言っておるので、それでこれが一歩一歩前進し出すという形になるのであります。  私は、ソ連ですらも、そのように抑止と均衡の上に立って安定を乱さないようにしつつ、これをレベルダウンして、だんだん低くして廃絶に持っていこう、そういう戦略をとっているので、私の考えとほとんどよく似ている、こう思っておるのであります。  これは単にソ連共産党だけじゃなくて、フランスのミッテランさんも同じように、国会演説したときもやはり三つの原則を持っていると演説されました。一つは力です。フォルスと言いました。二番目は均衡です。エキリーブルと言いました。三番目が連帯であると。これは恐らく独仏連携を頭に置いたのではないかと思いますが、ソリダリテと、そう言っておる。やはりフランスの社会党ですらも、均衡と抑止ということによって核兵器すら持っておるのであります。こういう世界の現実に目覚めて、日本政治家も同じように、現実的に一歩一歩国民が安心できるような形で戦争を起こさない形を維持していきたい、そう考えておるわけで、御了承願いたいと思うわけであります。  核廃絶協定を推進せよというのも、今御答弁申し上げたとおりで、一歩一歩安心できる措置をつくり上げていくということがその手続であると思うのであります。  SDIにつきましては、前から申し上げているように、今慎重に検討しておる最中でございます。  非核三原則につきましては、日米安全保障条約を堅持した上で、その中でもまた非核三原則我が国としては独自に持っておる、そういう立場で今後も堅持してまいります。  さらに、日米共同作戦上における核使用の問題の御質問でございますが、私が国会答弁いたしましたのは、日本が侵略されている、そういう非常事態の状態で日本防衛のために米軍が救援に来る、そういう場合の公海上における行為についての私の発言でありまして、これは前に申し上げたとおり変わっておりません。それは個別的自衛権の範囲内であると考えておるのであります。  非核都市宣言の問題でございますが、地方自治体が地方自治の本旨に基づいていろいろ御決議なさることは自由であり、政府はそれは参考にするということは申し上げております。ただし、そういうような非核都市宣言を発するという中には、非常に純粋な気持ちでそういうことをお出しになる向きもあり、あるいはそういうことをやろうという一部の中には、やはり自由世界を分断しようとか、あるいはそのほかの意図に基づいてそういう提案をなすという向きもあるから、それは十分注意してほしい、そういう意味で自民党が地方に対してそういう注意をしたということなのであります。  次に、軍縮我が国の防衛努力でございますが、これは両立するものであります。我が国の平和と独立を守り、国民の生命財産を保障するのは政府の厳粛な責任でございます。また、憲法の認めておるところでございます。その中でも、我が国は御存じのように最も節度のある防衛力を整備するというやり方でやっておるのでありまして、世界的にも我が国のこの立場は顕著な立場であると思います。こういう立場に立って世界に向かってさらなる軍縮を要請するということは、決して矛盾しているものではないと考えるものであります。  防衛費の削減につきましては、これは今回の予算におきまして特に中期防衛力整備計画の一環としてやっておるわけでございますが、装備の更新近代化、練度の向上、隊員の処遇改善、基地周辺対策等々を重視いたしまして最小限の経費を計上したもので、削減の意図はありません。  それから情報の提供関係でございますが、日米安全保障体制下において、日米が平素から、日本防衛の目的のために軍事情報を含め必要な情報交換を行うということはこれは当然でありまして、憲法上認めているところであり、これは個別的自衛権の範囲内である、こう考えておるわけであります。  NLPとミッドウエーの関係でございますが、空母艦載機の夜間着陸訓練は、空母艦載機パイロットの練度の維持向上、ひいては日米安全保障体制の効果的運用のために必要なのであります。この艦載機が着陸する、特に夜間着陸するということは非常に微妙な難しい技術でありまして、これが三日とか一週間とかやらないでおるというとどうしても勘が狂う、それで非常な危険性が出てくる、そういう意味で常にパイロットの能力を維持しておくということがやはり防衛上必要であります。そういう意味において、ミッドウエーが横須賀に入った場合に、これが訓練ができないということになるとパイロットの練度が非常に落ちる。そういう意味でやむを得ずあのような夜間発着訓練をやっておるわけでございます。しかし、今までのあの辺の地帯の皆様の御迷惑を考えまして、三宅島が適地であると考え政府は懸命の努力をして、今、三宅島の皆さんの御理解を得べく努力しておるところでございます。  次に、国家秘密法の問題でございますが、日本はスパイ天国であると前から申し上げているように、こんなに開放されている国はないのでございます。しかし、その中にありましても、国民の基本的人権とか、知る権利とか、情報公開という点も十分考えつつ、必要最小限の国の防衛秘密等についてはやはり守る措置を講じなければならない。こういう考えに立ちまして、国民の皆さんの声をよくお聞きし、野党のお考えも承り、特にジャーナリズムの皆さんのお考えを承りまして、そして適正な案を国会に御提出すべく、政府がやるか、党がやるか、今検討しておる最中でございます。  安全保障会議設置は、国防会議の事務を引き継ぎ、さらに例えば大韓航空機やミグ25や、あるいはダッカのハイジャック事件のような緊急事態が起きた場合に備えるものでございまして、法案は今国会に提出する考えでありますので、十分御審議を願いたいと思います。  天皇御在位六十年の問題でございますが、天皇陛下には、本年が御在位六十年目となり、あわせて昨年七月十三日には歴代天皇中の最長寿をお迎えになったのであります。陛下の御在位六十年をお祝い申し上げるということは、我が国の歴史においても極めてまれなこの天皇の長期の御在位と、それから天皇の御長寿を素直な気持ちでお祝い申し上げようという自然な気持ちの発露であって、これに疑問を抱くということは不自然な人たちではないかと私は申し上げておるのであります。  ドイツのワイツゼッカー大統領の演説でございますが、ワイツゼッカー大統領の演説は私も記憶しております。これは昨年四十周年についてやった演説でありますが、やはりユダヤ人に対する追悼、戦没者に対する追悼を申されまして、特にヒトラーのナチスの残虐行為に対する糾弾を行いまして、そして今ぐらいドイツが自由な世界にいるときはない、そう言って自由民主主義のドイツを謳歌した演説であります。私は非常に共鳴をもって読んだ記憶がございます。  二十一世紀の日本の選択でございますが、二十一世紀と何回も使ったとおっしゃいますが、それほど二十一世紀に向かって関心を持っているという、そういう表明であると御認識願いたいと思うのでございます。やはり政治家の一番大事なことは、子孫のことを考えておくということではないでしょうか。そういう意味において、二十一世紀というものを真剣に考えておるのであります。  給与の改善費については、給与改善費は公務員給与改定に備えるための給与改定の財源措置でありまして、給与改定の目安とするものではないのであります。したがいまして、人事院勧告制度を尊重するという基本姿勢はいささかも変わっておりません。また、来年度以降においても、人事院勧告の完全実施に向かって誠意を持って努力をいたしたい、そう考えておるところでございます。  税制の改革につきましては、全国民の御要望にこたえまして、公平、公正、簡素、選択、活力、こういう理念に基づいて、特に重税感の解消とひずみやゆがみを是正する、そういう考えに立って行わんとするので、一部の大企業や一部の方々のためにやらんとするものではございません。サラリーマンの重税感の声を皆様もお聞きでございましょうが、我々も同じように聞いて何とか解消したい、そう考えて行わんとしておるものなのでございます。  老人医療の問題につきましては、世代間の負担の公平を図って、この制度が永続的に安心して続けられるような措置としてやむを得ず行うものでありまして、御了解をいただきたいと思います。  国鉄につきましては、不当労働行為というようなものが起こるべきものではないと思うのであります。そのような行為が起こるかどうかは、結局は公労委等の権限ある機関でこれは判断さるべきものであると思います。  長期債務処理につきましては、前に申し上げましたように、最終的には国において処理する、こういうふうに申し上げておるところでございます。  いじめの問題については、やはり教師のあり方、学校の教育の仕方、あるいは受験競争の過度、あるいは学歴偏重社会、こういうようないろいろな原因があると思うのであります。しかし、第一に、学校で起こったことは学校の先生が責任を持つべきである、また家庭の親たちも同じように、これは自分たち責任とも考えなければならぬし、社会も協力しなければならない、そういうふうに考えまして、まず全教師が一致協力して学校において解決される、そういう決意を持っていただくようにお願いいたしたいと思うのであります。  この教育について、新国家主義であるとかなんとか、軍国主義というような気配のお話をされましたが、決してそういうものではございません。やはり民主主義あるいは人格主義、基本的人権の尊重、国際協調主義、そういう健全な教育基本法にのっとる精神に基づいての教育の改革ということを考えて、第二次答申をお待ちしているということでございます。  それから衆議院議員の定数の問題につきましては、先般の衆議院におきまして決議が行われ、議長さんの御見解のお示しもありましたので、今国会におきまして速やかに各党の協調によって解決いたしたい、我々は第一党として応分の協力をしなければならぬ、そう考えておるところでございます。  三権の問題については、立法、司法、行政おのおのが調和を持って、十分なる機能をおのおのが発揮するように行うことが望ましい、そういう意味で例示として申し上げたのでございます。決して御心配をなさる必要はございません。  次に、参議院の定数是正の問題につきましても、これは総定数を一体何人にしたらいいのかとか、半数改選制とか各選挙区の有する地域代表的性格とか非常に重要な基本的問題もございますので、特に参議院の各党において十分御論議いただくことが適当であると考えております。(拍手)
  18. 木村睦男

    議長木村睦男君) これにて午後一時まで休憩いたします。    午前十一時四十八分休憩      ―――――・―――――    午後一時一分開議
  19. 木村睦男

    議長木村睦男君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。  国務大臣演説に対する質疑を続けます。中村鋭一君。    〔中村鋭一君登壇、拍手〕
  20. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 私は、民社党・国民連合を代表いたしまして、総理施政方針演説並びに関係大臣演説に対しまして、我々の意見を加えながらお尋ねをさせていただきます。  その前に、去る一月二十六日の新潟県能生町におきます雪崩事故に遭遇してお亡くなりになりました十三人の方々を心からお悔やみ申し上げるとともに、被害を受けられた皆様にお見舞いを申し上げます。  政府におかれても、今後このような災害が二度と起きないように万全の策を講ずるとともに、被災者の救援には手落ちやおくれのないようにくれぐれもお願いを申し上げます。  また、去る二十九日にはアメリカのスペースシャトル・チャレンジャーが爆発事故を起こしまして、七人のとうとい命が成層圏に散りました。心からなる哀悼の意を表するとともに、この事故が宇宙にかける人類の壮大な夢を挫折させることがないように祈るものであります。  さて、中曽根内閣も既に三年余りを経過いたしました。中曽根内閣の特色はその高い人気にあります。歴代内閣の中で、内外ともにこれほど高い人気を維持し続けている例は極めてまれでありましょう。それは、総理が、行政改革など今日我が国が抱えます諸課題に対し勇気を持って端的に問題を提起し、国民に呼びかけたことと同時に、対外的には、我が国の国力の増強を背景といたしまして、自信を持って外交に臨まれているからでありましょう。これについては率直な敬意を表するにやぶさかではございません。しかし、政治家にとって本来評価さるべきは、人気ではなくて実績であります。問題を提起するだけではなく、実際に問題を解決することであります。この点における中曽根内閣の特色は、その高い人気に比べて実績が乏しいということでありましょう。  日米協調を外交の基本としながら、貿易摩擦の激化という形で日米関係は逆に危機的な状況を招いております。幾らロンと呼べばヤスとこたえる個人的親密感はありましても、それは友情の域を出るものではないでしょう。内閣の看板であります行政改革も、電電や専売の民営化など派手さは目立ちますけれども、今日の行政の根本に迫る本来の行革は遅々として進んでおりません。逆に、社会保障費がこの三年間でおよそ一一%も減少をしておりますように、国民の福祉は後退しつつあります。増税なき財政再建公約も、経済原則無視の緊縮財政の結果、今や一片のほご同然であります。  総理、このままでは、中曽根内閣は人気はあれど実績のない内閣との酷評を受けかねません。これでは総理はアイドル歌手ならぬアイドル総理であります。総理、この批評をはね返すために、あなたが戦後政治見直しと題して提起された諸課題について、残された任期の中でどの課題についてけじめをつけ、どの課題を後の内閣に託す方針であるのか、それとも、幸いに国民の真の支持があれば、ことしの秋以降も総理としての重責を担う意思があるのか、まずお伺いをするものであります。  次は、衆参両院の選挙制度についてであります。  総理は、三権分立の見直しあるいは司法のオーバーラン発言に見られますように、衆議院の定数改正が進まず、解散権が実質的に制約されていることへのいら立ちを隠し切れないように見受けられます。しかし、国民の投票価値の平等を図ることは、国民の一人一人が持っている固有の権利であり、最高裁の判決をまつまでもなく、立法府及び行政府が当然果たすべき責務であります。むしろ、定数是正の努力を怠り、最高裁から違憲の判決を受けたことこそを厳粛に受けとめ、みずからの努力の足らざるを深く反省すべきでありましょう。オーバーラン等々の総理の発言は軽率であり、厳に慎むべきであります。私は、この観点から衆議院の定数是正の早期実現を強く期待するものでありますが、同時に、参議院選挙区の定数是正をも強く訴えるものであります。  昭和二十二年の参議院創設以来、格差是正のための定数改正は全く行われておりません。その結果、昨年暮れの国勢調査の速報値によれば、最大格差は鳥取選挙区と神奈川選挙区とで六・〇三倍、一票の格差は衆議院以上に拡大をしております。参議院の定数是正は、むしろ衆議院以上に喫緊の課題であると言うべきでありましょう。総理、私は参議院選挙定数是正のための各党間の協議を早急に行うべきであると提案するものでありますが、この点についての御見解をお伺いいたします。  次は経済財政問題であります。  私は、政府の緊縮財政路線は、今日、完全に行き詰まっただけではなく、資源配分、公正な所得配分、そして経済の安定という財政機能を失わしめ、我が国経済を深刻な事態に陥れたと判断し、その速やかな転換を求めるものであります。  政府の緊縮財政は、政府自身の公約であります「六十五年度赤字国債発行ゼロ」という目標を事実上不可能にいたしました。この四年間で税収が四〇%も増加し、四年続けて一般歳出を前年度以下に抑えているにもかかわらず、六十一年度赤字国債減額は四千八百四十億円、目標の一兆円の半分にも達しておりません。政府公約実現のためには、赤字国債を今後毎年一兆三千億円以上減額することが必要でありますが、これは、これまでの政府の施策でありますとか今後の経済情勢を考えれば、到底不可能であります。また、実質国民支出に占めます輸出の割合は五十九年度で二二・七%と、この十年間で八・七%も上昇し、これが我が国経済の輸出依存傾向を促進し、今日のまさに国難とも呼ぶべき貿易摩擦問題の激化を招いたのであります。  さらに、公共事業が財政難から機械的に抑制された結果、社会資本の計画的な充実がおろそかにされてしまったのであります。政府は口を開けば民活民活とおっしゃいますが、基幹的部門の社会資本の充実はまさに政府責任であり、それなくしては民活の効果はなく、逆に資源配分をアンバランスにし、乱開発を招来しかねないのであります。加えて、本格的な減税を行わず、酒税等の間接税の相次ぐ増税を行った結果、中堅サラリートンを中心に税負担の増大と負担の不公平を拡大し、税制のゆがみをひどくいたしました。まさに「苛政は虎よりも猛し」であります。このように政府財政政策は既に破綻をいたしました。もはやその政策の継続は許されない状況にあります。  そこで私は、総理並びに大蔵大臣に対しお尋ねをいたします。  第一は、財政投融資へのツケ回しや地方への負担転嫁など、多くの無理と粉飾を重ねて、一般会計予算ではいかにも財政再建が進んでいるかのポーズをとり続けることは民民への欺瞞であり、やめるべきであります。政策の誤りを素直に認めて、民社党がこれまで主張してまいりました拡大均衡型経済路線に勇気を持って転換を図るべきであります。もし政府の政策が誤りでないとなさるならば、どのような手法によって六十五年度赤字国債発行ゼロを達成するのか、具体的に示すべきであります。政府見解をお求めいたします。  第二は、行財政改革の徹底と拡大均衡型経済政策への転換によりまして増税なき財政再建は可能であり、政府増税なき財政再建公約を守るために大型間接税の導入は絶対にしないとお約束をいただきたいのであります。  また、政府は、政府税調に対し、この四月に減税部分のみの報告を求めようとしておりますが、それは税制改革を単に大向こう受けをねらった選挙の道具とするものであり、許すわけにはまいりません。総理は、国民の熱望するところから先に手をつけると衆議院での質問にお答えになりましたが、その財源措置を後回しにするのはいかにもやり方がずるい。手品師でも、ハトを出すにはあらかじめハトを隠し持っているのであります。のど元過ぎれば熱さを忘れる、参議院選挙が過ぎれば、総理国民の熱望をお忘れにならないか心配であります。したがって、このようなやり方は初めからおやめになっていただきたい。これら諸点についての見解を求めます。  さて、その減税についてでありますが、内需拡大一つの決め手は個人消費の拡大であります。今回の政府予算案では所得税減税が見送られたために、サラリーマンは累進税率によって実質増税となっております。これでは個人消費が伸びないのは当然であります。大幅な賃上げを実現するとともに、所得税減税によってサラリーマンの可処分所得をふやすことが内需拡大の根本であります。  さらに、不公平税制は徹底的にこれを是正すべきであります。私は、この内需拡大とサラリーマンの税負担の公平化の見地から、およそ二兆円の所得減税を断行するとともに、最高税率の引き下げや税率構造の簡素化などを図り、世界にもまれな我が国所得税の超過累進税率構造を抜本的に見直すべきであると考えます。また同時に、およそ三千億円の投資減税実施すべきであると考えますが、この点についての御見解をお伺いいたします。  第四は、所得税減税方式についてであります。夫の収入の半分は妻の内助の功であることを正当に評価をいたしまして、夫の所得を夫婦で二分をいたしまして、それぞれに税率を掛け、税額を算出するという、いわゆる二分二乗方式の導入を図るべきであります。この方式によりますと、特に重税感の強い中堅サラリーマンの負担の軽減が図られまして、奥さん方の内助の功が社会的に評価されるなどの大きな効果があります。公平、公正、簡素、選択、活力は何遍もお伺いをしておりますので、できれば別の言葉で実のある御答弁をお願い申し上げたいのであります。  第五は、減税と並行して内需拡大を図るため、公共事業費を増額いたしまして、社会資本の計画的な整備、それによる民間活力の喚起を図れということであります。この点に関し、政府の今回の公共事業による内需拡大効果はどれくらいか、経済の成り行きによっては公共事業を前倒し実施することがあるのかどうか、伺いたい。  あわせて、関西新空港、明石海峡大橋、あるいは東京湾横断道路などの大型プロジェクトにつきまして、全体の資金計画、民間への成果の還元方法、関係者への補償等が不明瞭であります。このままでは民間活力に結びつかない心配もござい童すから、これらの諸点をはっきりすべきであります。この点について政府見解を求めます。  第六に、急激な円高によって著しい経営不振に陥りました輸出関連の中小企業、産地の救済は緊要の課題であります。このため、我が党は、金融、税制等総合的な対策から成る特別立法の制定、並びに昨今の為替相場で中小企業が新たな活路を切り開いていくための抜本的な国の対策を提唱してまいりましたが、これに対する政府の対処方針をお伺いいたします。  次は、行政改革であります。  中曽根内閣は行革の断行を看板として発足されました。以来三年有余、電電、専売両公社の民営化等一部前進は見られるものの、今日の硬直し切った行政機構を抜本的に見直し、二十一世紀に向けた活力ある福祉社会の基盤を築くという行革本来の課題にはほとんど手がつけられておらず、極めて残念に思います。総理は、行革内閣にふさわしく、本来の行革断行に蛮勇を振るうべきであります。  したがって、まず補助金の抜本的な整理合理化を図るべきであります。単に補助率を引き下げ、負担地方国民に転嫁するのでは行革とは言えません。民間の調査によりますと、補助金にかかる膨大かつ複雑な申請手続を簡素化するだけで、公務員は国、地方を合わせまして三十五万から七十万人、金額にいたしまして一兆七千五百億円から三兆五千億円も削減できるのであります。国の補助金が一般歳出の四〇%強を占めることを考えれば、その削減効果は絶大であります。このため、奨励財政援助金の大幅カット、人件費及び公共施設等に対する補助金の地方一般財源化、そして公共事業関係補助金を地方に一括交付する第二交付税制度の創設など、抜本的な措置を講ずべきであります。  また、行政機構や事務事業を定期的に見直し、あるものはこれを廃止し、時代の要求するものはつけ加えるというシステムを制度化することであります。このため、行政機構や事務事業にそれぞれ存続期限を設けまして、期限到来ごとに国会の評価に基づき存続の有無を決定するといういわゆる日没制度、サンセット制度を創設すべきであると考えます。  以上につきまして、総理並びに大蔵大臣、総務庁長官の御見解をお求めいたします。  あわせて、この六月に期限切れを迎えますいわゆる行革審をどうするのか、新たな行革推進機関をつくるのかどうか、お伺いをいたします。  さて次に、国鉄再建は今や国民のすべてがその成り行きをかたずをのんで見守っております。古詩にもいわく、「駅長嘆くなかれ、一栄一楽これ春秋」とあります。国鉄分割民営化は今や天の声であります。総理国鉄改革についての基本認識をお伺いいたします。  かかる国鉄の民営・分割という歴史的な回天の大事業を円滑に進めるためには、六万一千人に及ぶ余剰人員対策と十七兆円に及ぶ長期債務について、政府が明確に方針を持ってこれを着実に実行していくことが不可欠であります。この観点から、政府は余剰人員のうち国、地方公共団体等公的部門における採用目標数を三万人とされました。一方、国鉄関連企業におきましても二万一千名の就職が確保されたとのことでございますが、現時点での余剰人員受け入れ状況と今後の計画見通しをお示しいただきたい。また、国、地方とも行政改革推進のため定員の削減計画推進中でありますが、この計画と余剰人員の受け入れ計画とをどう調整される方針か、運輸大臣並びに総務庁長官にその決意のほども含めてお伺いをするものであります。  さらに、およそ十七兆円の長期債務処理のため政府はどのような財政措置を講ずる方針か、大蔵大臣にお伺いをいたします。  次は、教育問題であります。  教育国家発展の基礎です。私は、充実した教育の中から、連帯感と個性を持ち、豊かな創造力とすぐれた国際感覚を身につけた青少年が育つことを期待するものであります。この観点から二、三質問をいたします。  まず、自分が生まれ育った祖国を愛することは人類普遍の原理であり、愛国心の涵養を唱えられます総理意向には大いに賛成、同感の意を表するものでありますが、総理の言われる愛国心の内容と、その涵養をどのように具体化されるおつもりか、お伺いいたしたい。  さらにまた、総理が靖国神社にお参りになることや、既にお約束の二月十一日の建国記念日の式典に御出席なさることは、総理のおっしゃいます愛国心と関連があるかどうかもお尋ねをさせていただきます。  次に、学制改革、特に中高一貫教育必要性であります。  心身ともに不安定なこの時期が中学と高校とに短く分割されておりますことは、生徒の精神状態を一層不安定にしていると同時に、教育上深刻な問題を生んでおります。生涯の友をつくるべき時期、自由に山野を跋渉して大いに心身を鍛えるべき時期に高校受験に直面をしてしまう。すなわち、進学コースとそれ以外のコースに分けられ、進学コースから漏れた生徒は放置され、生徒は孤立し、教師への信頼感をなくし、これがいじめにつながっている一因とも言えましょう。これを改めるために、中高一貫教育を実現し、生徒がゆとりを持って学べるようにすべきであると考えますが、文部大臣の御見解をお伺いいたします。  さらに、臨時教育審議会の審議概要によりますと、大学の入学時期を四月と九月の二学期制にすることが検討されておりますが、九月入学制は国際化を進めるに当たって不可欠であり、大いにその実現を期待いたします。また、臨教審が同じ概要におきまして、教員資質向上策として初任者研修制度の創設を導入したことを評価するものであります。その趣旨をより生かすためには、初任者研修の過程の中で教師としての適格者が採用されるような制度にすべきであると考えます。既に大阪市の教育委員会はこの方法を行っているやに聞き及んでおりますが、文部大臣のこの点についての方針をお伺いするものであります。  次に、日ソ関係と北方領土の問題についてでありますが、今回、八年ぶりに日ソ外相の話し合いが行われ、その中で両国首脳相互訪問への道が開かれました。また、外相協議の継続が確認されたことを一応評価はするものであります。しかし、北方領土返還へ向けた本格的な交渉はこれからでありまして、安易な楽観は絶対に許されるわけにはまいりません。  そこでお尋ねをいたします。北方領土の返還につきまして、私は、あくまでも我が国原則を貫き、我が国固有の領土である歯舞、択捉、国後、色丹四島の一括返還を徹底的に粘り強く求め続けるべきであると考えます。この問題につきまして総理の御決意をお伺いいたします。  次は、緑なす日本列島についてであります。  日本経済の驚異的な高度成長によって、私たち生活はそれなりに豊かになりました。その反面、私たちは多くの物に囲まれて便利な暮らしをしながらも、何か人間らしさの失われた生活をしていると感じているのではないでしょうか。私は、その原因が、静けさや、それらをやさしく包む緑に代表されるような環境が失われていることにあると考えます。鳥歌い、魚が群れ遊ぶ緑濃い日本列島は、我々の先人が注意深く恋しんで、これを今日に伝えてくれたものであります。我々は、これを損うことなく、二十一世紀の世代に伝えていかなければなりません。国民は、人間らしい生活環境、いわゆるアメニティーを切実に求めております。これにこたえる政策を打ち出すのもまた政治の務めと言えるでありましょう。  そこで、総理にお尋ねをいたします。  まず第一は、幸いにして今、国土に残る緑をいかにして守っていくかの根本方針であります。  具体的には、国内林業を活性化し、赤字に苦しむ国有林事業を再建するなど、山の緑を守る体制をいかに確立していくのか。また、公園の増設や緑地の拡大で都市の緑をいかに育て広げていくのかについての政策をお伺いいたします。また、昭和六十五年に大阪で開催されます「花と緑の万博」を全国民的な国土緑化運動の先兵として位置づけてくださるようにお願いを申し上げるものであります。  第二は、総合的な環境政策の調整、立案の必要性についてであります。  現在、公害規制等は通産省と環境庁、国立公園行政は環境庁、都市公園行政は建設省、そして森林行政は林野庁と、それぞれの省庁に分かれておりまして、それらを環境行政という観点から総合調整する機構が存在していないと思われます。私はかつて脚光を浴びておりました環境庁が今こそその任に当たるべきであると考えますが、総理の御見解をお伺いするものであります。  最後に、戦後の四十年は、いわば物の豊かさを求める四十年でありました。社会は豊かになり、ますます便利になりました。しかし、世の中には金で買えないものがあります。それは、親子兄弟の情、愛し合う男女の情、烈々たる友情、そして郷土を愛し、日本の国に生まれてきたことの幸せをしみじみと思う心の働きであります。今我々は、物と心のバランスのとれた社会を回復しなければならないと思います。そして、政治もまたそれを要求されているのでありましょう。この認識の上に立って、自由と民主主義のたんたんたる大道を手をとり合ってともに歩みたい、私はそれを心から念願するものであります。幸いに総理がこの認識を共有してくださり、我々の今申し上げました提案を受け入れられ、かつそれを実行し、人気だけではなく、審績のある内閣として青史にその名をとどめられんことを大いに期待いたしまして、私の代表質問を終わるものであります。ありがとうございました。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
  21. 中曽根康弘

    国務大臣(中曽根康弘君) 中村議員にお答えを申し上げます。  まず第一に、新潟県の能生町の災害に対しましては、私も重ねて哀悼の意を表する次第でございます。  スペースシャトルにつきましても、河野長官を派遣いたしまして、お見舞いを申し上げておる次第でございます。  戦後政治見直しの問題でございますが、まことに三年間たちましてもなすところ少なく、申しわけない次第でございます。もう残り時間も少ないわけでございますから、公約を実現いたしまして、実りのある成果を期する次第でございます。  いわゆる三権の調和、機能という問題につきましては、立法、司法、行政それぞれがおのおのの職分を守り、責任を十分果たして調和を保っていこうという考えで申し上げたのでございます。別に特定のことを目指して申し上げたものではございません。  参議院の定数是正につきましては、先ほど来申し上げましたように、参議院は衆議院と違った独自性を持っております。総定数を何人にするのか、半数改選という制度はどうあるべきか、あるいは各選挙区の有する地域代表的な性格というものをどう保存するか、そういうような重要な問題があるのでございまして、これらは参議院の各党において十分御論議願うべき問題であると思います。  六十五年度赤字国債依存体質脱却という目標は、あくまで堅持して努力し続ける考えでおります。これは、厳しい財政状況を考えてみまして、国民の皆様方には大変お願い申し上げにくいような財政環境でございますが、歯を食いしばってやらなければならない、政治家にとって大きな責任を持っている事態であると考えております。  大型間接税の導入の問題については、いわゆる課税ベースの広い間接税の問題と受け取っておりますが、これらは一応税調の検討領域に入っております。聖域を設けないで自由に御論議願いたいと申し上げておるからでございます。結果がどういうふうに出るか注目してまいりたいと思っておりますが、私がここでいろいろ言明しておきましたこれらに関する発言、あるいは国会の決議というものは守ってまいりたいと考えておるところでございます。  次に、税制改革というものは、これは国民の要望にこたえて手順あるいはスケジュールをつくっておるのでございまして、慎重にかつ国民全体の要望を広く取り上げるような考えに立ちまして進めておるのでございまして、選挙とは関係がないものでございます。  内需拡大につきましては、昨年十月、十二月の決定によりまして、公共事業費あるいは住宅減税等々の組み合わせ、民活あるいは公定歩合の引き下げ、これらの諸政策の総合的な効果によりまして、大体六十一年度の名目GNPは一兆六千億円程度増加する見通しでございまして、四%達成は可能であると考えております。  なお、公共事業費の使用につきましては、五十九年、六十年度においては自然体で執行いたしましたが、六十一年度につきましては、経済の情勢等もよくこれから見詰めまして、慎重に検討してまいりたいと考えておりす。  関西国際空港の第一期工事の事業費は約一兆円を見込んでおります。その資金調達については、国、地方公共団体及び民間からの出資金のほか、国からの無利子貸付金、財政投融資、民間からの借入金等の借り入れを予定しております。昭和五十九年十二月から漁業者との漁業権の交渉に入っておりますが、できるだけ早期に解決をお願いいたしたいと念願をしております。  明石海峡大橋につきましては、本州四国連絡橋公団により実施をいたしまして、その建設資金は、出資金、財投資金あるいは縁故債によるものでございます。明石海峡大橋につきましては、地域への大きな経済効果をもたらすものであると考えておりますが、この両橋とも採算ベースに合うようにいろいろな面で工夫をいたしておりまして、そのような考えで順調に建設が進むことを期待しております。特に、用地買収とか漁業、海事関係者への補償等については、両事業とも公団が実施して、誠意を持って対応できるようにいたしております。  中小企業に対する円高対策につきましては、昨年末に三機関に対する特別融資制度をつくり、本年一月、六・八%を五・五%に金利の引き下げを的貢献、この二大目標に向けて行革が推進されております。従来、厚生年金、共済年金などの公約年金制度の改革を行い、さらに行政機構の整理再編成、事務事業の見直し、公社、特殊法人等の改革などを着実に前進さしてきたところであります。今後は、国鉄の改革、地方行革の一層の推進、それから内閣機能の強化など、これからまさに正念場に入るわけでありまして、不退転の決意で前進してまいります。  サンセット方式については、私も原則として賛成であり、各項目について具体的に検討してみたいと思います。  行革審の将来については、総務庁長官からお答えしていただきます。  国鉄改革につきましては、国鉄は今やまさに倒産寸前にあるとすら言い得る危機的状況にございまして、どうして存続させるかということがまず 第一であります。それには、従業員の問題や長期、債務の問題等基本的な問題も手をつけなければならないし、余りにも膨大であったために管理能力が手が回り切れないという面もあったわけでございまして、ここで民営・分割というやり方で、民間の私鉄等との競争関係に打ち勝つようなきめの細かい弾力的な機動的な対応と運営ができ、モータリゼーションに十分対応できる機能的な改革が必要なのでございます。そういう意味で思い切った大改革をこれからやろうとし、その中でも人員対策長期債務対策には努力しているところでございます。  愛国心に対する御質問でございますが、私は、共同体に住む者が自然に持つ素直な、自分の住んでいる地域に対する自然的愛情。あるいは歴史に対する愛着、これがやはり愛国心というものであると思うのであります。ある意味においては、歴史に対する自覚と、それから自分の住んでおる地域に対する連帯感というものが大事であります。そういうものが、例えばオリンピックが行われた場合に、日本勝て、あるいは中国勝て、韓国勝て、みんな自分の国を応援して、そしてメダルをとり国旗が上がる場合には、自然に何となしに涙ぐみます、人間は恐らく各党の皆さん、みんな涙ぐむのだろうと思うのであります。これが自然の感情で、愛国心という、そのものではないかと思うので、こういうものは涙を流せといって流せるものではありません。そういう自然の感情というものを十分はぐくむような心の豊かな子供たちをつくっていかなければならない、私はそう思う次第であります。  靖国神社に対する参拝は、戦没者の追悼と平和に対する祈願、誓いという意味で行いました。  建国記念日に対する出席は、この国民の祝日に関する法律に基づき、建国をしのび、国を愛する心を養う、こういう精神で出席いたしまして、ことしも出席しようと思っております。  日ソ関係改善につきましては、日ソ関係をさらに長期的な、安定的な真の信頼関係に持っていくために、北方領土問題を解決して平和条約締結へ向かわん、そういう基本線を貫いて粘り強く交渉していく考えでおります。  首脳間の往来につきましては、ゴルバチョフ書記長も、シェワルナゼ外相が語ったところによりますと、日本国民に会うことに対して大きな希望を有しているということを言っておりました。私は書記長がこのようなお考えを持ったことを歓迎するものであります。しかし、私の訪ソにつきましては、先日来申し上げましたように。既に四回日本の首相が行っておりまして、今回はソ連がおいでになる番である、私がもし行くというようなことがあれば、日本国民が喜んで、そうして意味のあると、そういう場合には考慮しても結構である、こう考えておる次第なのであります。  北方領土については、四島一括返還。これを堅持してまいります。  緑の保全につきましては、御指摘のとおり、現在生きている我々が、子孫に対する大きな責任でございまして、我々も重点的に政策を推進してまいります。  特に、森林は、水資源の涵養とかあるいは国土保全とかさまざまな意味を持っております。ヨーロッパにおいては酸性雨、アメリカにおきましても酸性雨に非常に苦労しておるようですが、我が国においては早目に環境庁をつくって公害対策をやりましたために今ありませんが、しかし十分注意して今後もいかなければならない、そのように考えております。林業のためには、活力回復五カ年計画実施いたしまして、御期待に沿うように充実さした政策を実行いたします。  公園の増設による都市の緑の育成につきましても、第四次都市公園等整備五カ年計画を策定いたしまして、これを推進してまいります。  大阪の「花と緑の万博」につきましては、まさに時宜を得た催し物であると考えるのであります。これが二十一世紀へ向けての日本民族の自然を愛する気持ち、あるいは情勢によってはバイオというものもここで大いに取り上げていただいて、新しい緑を中心にする科学に対する関心、こういうものを私は活発化させるように期待をしておるわけであります。  環境行政の総合調整は、健康と文化を守るために環境庁の仕事は非常に重要でございまして、今後とも力を入れてまいるつもりであります。  自由と民主主義を守って、二十一世紀に向かってよりよい日本をつくって子供へ渡していくというお考えには全く同感であります。  残余の答弁関係大臣からいたします。(拍手)    〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕
  22. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) まず、税の問題でございますが、租税特別措置は、特定の政策目的を実現するため、税負担の公平その他の税制上の基本原則をある程度犠牲にして講じられたものでございます。したがって、常時、個々の政策目的と税制の基本原則との調和を図る見地から、そのあり方につきましては吟味を行っていかなければならぬと考えております。このため、昭和六十一年度税制改正におきましても、特別償却制度等につきまして全体として相当程度の縮減合理化を図ることとしておりますが、今後とも、いわゆる税負担の公平確保という観点から、社会経済情勢の変化に対応して必要な見直しをやっていくという姿勢を持ち続けるべきであるというふうに考えております。  それから、いわゆる所得減税等に対しての御意見を交えての御質問でございました。  これは、公平、公正、簡素、選択並びに活力、こうしたことから、シャウプ税制以来の抜本的見直しの審議がまさに税調で行われておる最中でございます。きょう御指摘がありました所得税における累進構造の問題、また二分二乗方式等の課税単位の問題、これらを含めて、今まさにその検討が進められておるということでございますので、検討結果を踏まえて適切な対処をしてまいろう、このように考えております。したがって、いわゆる抜本的改革の中途の時期でございますので、そこにはおのずから税制改革の限界というものが六十一年度にはあったということを御理解いただきたいと思います。  投資減税につきましては、その中で、内需拡大ということに資するために、いわゆるメカトロ税制、これの対象設備の拡充を行った上でその適用期限の延長を行う、またエネルギー基盤高度化設備投資促進税制というものを創設する、このようなことを、厳しい財政事情のもとにありますが、精いっぱいの措置としてこれからまた御審議をお願いしようと考えておるところであります。  それから次が円高の問題に関する御質問でございます。  既に昨年十二月初めから、政府中小企業金融三機関等によります特別融資制度の創設を柱とします緊急対策実施してきたところでございますが、さらに一月、この特別融資の金利引き下げ、これを行ったばかりでございます。さらに、信用補完の特別措置を講ずるほか、法人税において欠損金繰り戻し還付につき所要の措置を講ずることといたした、このような措置をとっておる次第であります。  それから補助金問題につきましてのこれまた御意見を交えた御質疑でありました。  これは補助金問題関係閣僚会議、これに基づきまして、そして補助金問題検討会というものをその中につくって、この報告の趣旨を踏まえまして、政策分野の特性に配慮しながら、社会保障を中心に事務事業の見直しを行いながら補助率の総合的見直しを行ったものでございまして、ただ単に地方負担を転嫁したという筋合いの措置ではございません。  それから補助率の見直しを含めまして補助金等の御指摘の整理合理化、これにつきましては今後ともより一層積極的に取り組んでまいりたいと思っております。なかんずく、事務手続の問題について言及がありましたが、これはいわゆる補助金等適正化連絡会議、こういうものをつくりまして、そして各省庁で執行面でさまざまの工夫をお願いしておるという状態にございます。  それから奨励財政援助金、これらのものでございますが、補助金等の整理合理化の一環として、いわゆる奨励的補助金につきましては、行革審意見等の指摘を踏まえて見直しや補助対象の縮小あるいは縮減、これらに努めてきております。また一方、人件費補助を含めて、地方に既に同化、定着したという事務事業等の一般財源化を図ったというのが今度御審議いただく予算案内容にもあるわけでございます。  それから国鉄長期債務の問題でございます。  これは、この二十八日に国鉄長期債務等の処理についての基本方針、これを閣議決定したばかりでございます。国鉄改革に伴い最終的に国民負担を求めざるを得ない長期債務等の額は、国鉄再建監理委員会意見によりますれば十六・七兆円程度とされておりますが、用地売却の上乗せ等によりまして極力その額を圧縮することとして、最終的な要処理額の見通しが得られるまでの間は、当面、旧国鉄において用地の売却、借り入れ等を行って、債務の償還、雇用対策等を実施するものとしております。  旧国鉄において自主財源を充ててもなお残る長期債務等につきましては、最終的には国において処理することとしておりますが、本格的な処理のために必要な新たなる財源措置につきましては、雇用対策、用地売却等の見通しのおおよそつぐと考えられる段階で、歳入歳出の全般的見直しとあわせて検討、決定することになるという方向で閣議決定したばかりでございます。(拍手)    〔国務大臣江崎真澄君登壇、拍手〕
  23. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) また閣僚に任ぜられましてお世話になりますが、よろしくお願いをいたします。  中村さんの私への質問は三点あったと思います。  御指摘のサンセット方式、これは行政需要の変化に対応した簡素で極めて効率的な行政を実現していく上に大変必要な措置だと思います。一定の期限を設けて定期的な見直しを行っておるところであります。政府は、臨調答申の趣旨を踏まえて、組織の新設及び事務事業の開始に当たり、定期的見直しなどのサンセット方式のなじむものはその適用を積極的に推進しております。  なお、この方式を一律に行政組織及び事務事業に適用をいたしますと、行政の安定性確保、こういった点で疑義を生じないわけでもありません。そこで、よくその内容検討しまして、例えば調査諮問的なものでもう不要になったものとか、あるいは審議会など不要なもの、有用なもの、そのあたりをよく検討して、そしてサンセット方式を取り入れていくことにいたしたい、かように考えております。  なお、六月に行革審の期限が来るが、一体今後どうするのかと。  これは御承知のように、行政改革は中曽根首相が政治生命をかけた大仕事と位置づけて、非常に熱意を傾けてこられました。かつまた、皆様方の御協力によって着々と成果を上げてきておるところであります。しかし、何といってもこれからという国鉄の改革、それから地方行革の一層の推進、内閣の総合調整機能の強化など、今後にもなお多くの課題が残されており、引き続いて行政改革推進をすることは最も重要な課題であることに間違いはございません。  仰せのように、行革審の設置期限は六月二十七日に到来をするわけでありますが、今、行革審においては、最後の総取りまとめ、いわば総結集といいましょうか、大学でいうならば卒業論文といったような総まとめの意見を精力的に審議をされ、そしておまとめになっておるところであります。また、政府としても、当面する改革課題推進全力を傾けておるという現況などから見まして、今後この機関をどうするかということについては、まだ時期もありますので相談をいたしておりません。これはいましばらく時間をおかし願いたいと思います。  ただ、行政改革というのは、やはり絶えざる監視を怠ってはならない、合理化を実行に移していかなければならない。やはり民主政治というものはサービス業務が多くなるものでありますが、それは大変結構でありますものの、ややもすればそれが大変膨れ上がったり、むだが多くなったりするということがありますから、簡素にして能率的な、その根本精神を体して今後とも推進をしていく決意でございます。  なお、国鉄の人員を政府機関が採用する、地方自治体が採用を分担してくれる、これはどうであるかという今のごもっともな御質問であります。  これは、各省庁の事務事業の厳しい見直しを行いまして人員整理をしておることは御存じのとおりであります。ところが、国鉄の改革は、今後の行政改革の中でも、これが再就職ができるか、また本当に役所を生涯の任地である、自分こそこれを天職と心得ておる、こういう考え方であえて役所を求める人たちがあるとするならば、それに誠意を持ってこたえていくことは、これは既に閣議で決定をしたとおりでございます。  先ほど総理からもお話がありましたように、モータリゼーションの発達、それから道路事情の変革、発達、こういったことによる一面からいえば犠牲者であるということも言えないわけではありません。中には例外的な人たちもないわけではありませんが、大部分は極めてまじめな、一分一秒違わない、世界の水準にまさるとも劣らないというこの国鉄マンのあり方というものに、私は本当に親愛の情を持って就職口を見つける、これを政府が引き受ける、これは当然なことである。今後とも、我々は相互扶助の精神を持って、この実施に努力をしてまいる決意であります。(拍手)    〔国務大臣三塚博君登壇、拍手〕
  24. 三塚博

    国務大臣(三塚博君) 中村議員にお答えを申し上げます。  高い見地から国鉄改革の持つ重要性に言及をされつつ、この達成こそが国家政治にとりまして重大事であるという御指摘、また、推進をいただく御決意の御披露を賜りつつ、御質問をいただきました。昨日の衆議院本会議におきましても、塚本委員長さんから同趣旨の高い見地からのサポートをいただき、御質問をいただいたところでありまして、政府として、担当相として深く敬意を表するものであります。  既に総理及び江崎長官からもお話しでありますが、改革にとりまして長期債務、そして雇用対策最大重大事でございます。よって、大蔵大臣からも言及されましたとおり、万般の処置を講じてまいらなければなりませんことは御案内のとおりであります。既に両閣議におきまして決められておるわけでございますが、政府として、この余剰人員に対する特別措置法、さらに先取りをいたしまして、長期債務の部分につきまして五兆円余にわたる棚上げ分を一般会計にこれを移転することの措置の了承をいただく法律、これも提出をさせていただく、さらに、希望退職いただく方についての特別の退職手当等を講ずるの道をいたしております特別措置法についても、今国会に提出をし、御審議をいただくことに相なっておりますので、成立につきまして格段の御指導、御鞭撻を賜りたいと存じます。  さらに、雇用対策見通しでございますが、実は休憩中に日本民鉄協会の会長、理事長が参られまして、民鉄傘下十六社で三千五百六十名の余剰人員についての受け入れの御答弁をちょうだいいたしたわけでございます。大変深く敬意を表したところであります。私鉄十六社、バスを抱え、大変苦しい経営状況の中にあるのにもかかわりませず、同じ鉄道マン、公共輸送を担当する者として見るにたえない、国鉄総裁及び運輸大臣の要請に、政府の要請に最大限おこたえをさしていただくと。こういうことで、六十一年から六十四年度、東急、相模鉄道については六十五年度まで、営団もそうでありますが、引き続き御採用いただくということで三千五百六十名の御決定を賜りましたことは、本計画を進める上において大変ありがたいことであると考えておるところであります。  さらに、国家公務員グループ、地方公務員グループについて行革との関連でいかがかと、このような御指摘であります。  江崎長官からのことで御理解をいただいたとは思いますが、地方団体、三島四知事にお会いをいたしましたときにも同様の懸念を表明されたのでありますが、国鉄改革国家改革の最大のポイントであり、我が内閣の重大事であることについての御理解を実は御要請を申し上げたところであります。四知事からは、本件についての理解をいただいたわけでありまして、行革を進めるさなかではあるがベストを尽くしてまいりたい。私からは、五名採用のところでありますならば一名御採用をいただけぬかと、行革は自然退職に見合う新規採用を手控えて進んでおるわけでございますから、採用される人員の二分の一あるいは十分の一、さようなことでお取り組みをいただきますならば、これらの要望に十二分におこたえをしていただけるのではないだろうかというふうに考えております。中村議員の御趣旨を踏まえつつ、今後も誠心誠意対応をしてまいる決意であります。(拍手)    〔国務大臣海部俊樹君登壇、拍手〕
  25. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 私に対する御質問を三つに整理してお答えをさせていただきます。  最初の中高一貫教育についての御指摘でありますけれども、個性を伸ばし、ゆとりのある教育をしていくという観点からいきますと、これは大切な御指摘でありまして、臨時教育審議会がそのような趣旨に立って単位制高等学校と六年制中学校の制度を提言しましたことは御承知のとおりと思います。例えば体育系の中学校とか芸術系の中学校を設置いたしますと、個性に応じた教育がそこでできる、選択の幅が広くなるということも言えますし、同時に、先生御指摘のように、非常に重要な青春の一時期に三年ごとに試験の関門がある。それが芸術系の学校やあるいは体育系の学校やそういったところで一段階抜けるということになりますと、これはその意味において個性を伸び伸びと伸ばすことができるという効果もあり、また半面、中高一貫教育にも資すると思いますので、私としては、これは有意義な提言であったと受けとめ、これからも検討を続けていく課題だと思っております。  二つ目の教員の資質向上の問題は、おっしゃるように極めて大切な課題でありますし、文部省も、既に初任者の研修とか五年経験された教師の研修とかあるいは海外の研修旅行とか、いろいろ資質の向上のためには政策を行っておるところでありますけれども、先生がここで御指摘のいわゆる採用前の研修というのは、教員生活の円滑なスタートを期するために採用前において行うものでありますから、これは任命権者である都道府県において自主的に御判断されるべき問題でございます。ただ、数県において近年行われておることはよく承知をいたしております。  最後になりましたが、国際化の観点から入学の時期を九月に考えることはどうかという御指摘もございました。  国際化時代ではありますが、入学時期を直ちに変えるということは、社会的にもいろいろな影響のある大きな改革でございます。しかし、九月入学の問題は、御指摘のように不可欠な面もございますので、文部省といたしましては、既に学校教育法施行規則の中でそれが行われるような措置をとり、まだ部分的でありますけれども、十の大学で帰国子女とか留学生関係を対象に九月入学の制度を既にスタートしております。それなりの評価も与えられておりますから、臨教審の審議、指摘等を待って今後検討を続けていきたいと考えております。(拍手)     ―――――――――――――
  26. 木村睦男

    議長木村睦男君) 赤桐操君。    〔赤桐操君登壇、拍手〕
  27. 赤桐操

    ○赤桐操君 私は、日本社会党を代表して、中曽根総理大臣並びに関係大臣に政策の基本問題について質問をいたします。  総理は、就任以来、一貫して「戦後政治の総決算」を唱えてまいりました。今回の演説でも繰り返されましたが、与党内の批判を意識し、微妙に中身をすりかえられております。しかし、重要な政治問題が山積し、その解決がおくれている今日、中曽根政治こそ戦後政治に先立って総決算されるべきであると私は考えますが、いかがでありましょうか。  私は、主として経済及び財政政策を中心に、以下御質問申し上げます。  中曽根総理三年間の政治の特徴は、多くの問題提起にもかかわらず、解決と結びつかず、実績が上がっていないことであります。特に経済政策や財政問題については、完全に失敗であったと言わなければなりません。この点で三年間の総決算の答弁総理に求めるものであります。  経済政策失敗の最たるものは、対外経済摩擦の激化であります。  総理が政権を担当した昭和五十七年秋以来、経済課題は、過度な外需依存からどのようにして経済内需主導に転換させるかでありました。自乗、政府経済見通しはもちろん、総理自身も常に経済内需拡大を約束しながら、実績は逆に外需への大幅な依存を繰り返し、内外に不信を与えてまいりました。総理は、行動計画等の対策を発表され、また、みずからもテレビ出演される等、対外摩擦解消を説く姿勢だけは示されたのでありますが、経常収支黒字中曽根総理が摩擦解消策を強調するごとに膨れ上がり、五十八年度二百四十二億ドル、五十九年度から六十年度に及び五百十億ドルとなっております。  アメリカを中心にほうはいとして起こっている日本に対する国際収支黒字累積の批判と対外摩擦の一層の激化は、中曽根総理三年間の経済政策の基本的失敗に起因するのではありませんか。それとも、総理の盟友でいらっしゃるレーガン大統領の政策の不手際から来ているものでありましょうか。お答えをいただきたいと思います。    〔議長退席、副議長着席〕  昨年九月以降の急激な円高は、輸出型産地中小企業に大きな打撃を与えつつあります。輸出成約のストップ、他方、大企業による単価切り下げ等のしわ寄せを受けておるのであります。政府円高に苦しむ中小企業にどのような救済策をとるのか、さらに具体的にお伺いいたしたいと思います。  最近の景気は自律的減速過程を迎え、すなわち下向き方向にあり、次第に下降線をたどりつつあります。昨年初め、一〇%を超えた鉱工業生産活動も逐次低下し、今や〇・四%程度の上昇にとどまり、稼働率も前年水準をやや上回るにすぎません。内需の中で唯一、輸出で誘発されていた民間設備投資も、今後次第に減少することが政府及び日銀自身の調査によって明らかにされております。さらに、為替調整は円高デフレをもたらし、経済の一層の減速を招きつつあり、不況への突入さえ危惧されておるのであります。経済の成長を過大な輸出に依存し、内需拡大への政策転換を怠ってきた政府責任は重いと思いますが、総理見解を伺います。  政府は、昭和六十一年度実質経済成長率を四%と見込んでおります。既に批判されておりまするように、四%達成が可能との見方はごく一部の、それも政策を大きく転換した場合との条件つきにすぎないのであります。五十年代に入っての政府見通しは、五十九年度を除き、すべてが過大となっております。その上、中曽根政権下の悪い習慣である民需の水増しと外需の意図的圧縮で、見せかけの内需主導型経済の達成を宣伝されてまいりましたが、それを実現し得る政策の保証はどこにもないと判断されますが、総理の御見解を求めます。  政府内需主導による四%成長は、五月の東京サミットを通じ、今日の世界経済状況からすれば国際公約と受けとめられ、仮にその達成が不可能な場合には、諸外国からの一層の不信を招くばかりか、日本に不利な形での市場開放策や極端な為替レートを強要される危険性はありませんか。  四%成長の達成には政府の積極的な内需拡大策が必要であります。その柱は個人消費の喚起でありますが、所得税減税が見送られたため、ほとんど期待できなくなりました。公共事業についても、総事業費をふやしたとしても、土地代等を差し引いたGNPベースでプラスとなる保証はなく、現に五十八年度以降のGNPの公的資本形成は大幅マイナスを記録いたしているのであります。景気の自律的減速、円高デフレ、対米摩擦の三重のデフレを回避し、経済の潜在成長力発揮と国民生活の安定を図るには、我が党が主張いたしておりまする大幅な所得税減税国民福祉に直結する生活環境投資充実の政策に転換すべきではないかと思うのであります。総理の御意見を伺います。  次に、財政問題について伺います。  まず、財政再建の問題であります。  財政再建に失敗し、政治責任をとった鈴木総理の後を継いだ中曽根総理は、引き続き土光臨調による「増税なき財政再建」を貫きながら、新たに「六十五年度赤字公債脱却」の目標を約束されました。しかし、今や「増税なき」の公約はまさに絵にかいたもちにすぎないのであります。五十九年度以来の各種の増税、そして今回の突然のたばこ消費税の追加増徴は増税なきに反することは明白であり、この公約違反総理の御答弁を求めたいと思うのであります。  しかも、これら増税策を重ねたにもかかわらず、六十五年度赤字公債発行ゼロの公約はむしろ不可能な状態に陥っております。すなわち、財政の再建を達成するには、五十八年度以降、毎年度約一兆円の赤字公債を減額する必要がありながら、いずれもその額に達しておりません。六十一年度は、中曽根内閣計画では赤字公債発行額を約四兆円にすべきであるにもかかわらず五兆二千四百六十億円で、六十二年度以降、毎年一兆三千億円を減額しなければなりませんが、総理のもとでの三年間の赤字公債削減額は年平均二千九百十二億円にすぎないのであります。残された三カ年で五兆円余の削減は不可能だと思いますが、どうしたら計画達成が可能であるのか、削減方法を具体的にお示しいただきたいと思います。  自由民主党の宮澤総務会長は、現在の財政再建は実体がないと喝破されておりますが、総理は、赤字国債の六十五年度脱却はできませんと、国民にその責めを明らかにすべきではありませんか。中曽根総理大臣の率直な見解をお伺いいたします。  自民党の村山調査会は、税制改正の名のもとに、かつて国民に否定され、国会決議で葬られた一般消費税まがいの大型間接税の導入を提案、公表いたしております。総理は再三にわたり大型間接税導入を否定してまいりましたが、与党がどう言おうと総理のお考えは変わらない、今後も導入しない、このようにお約束いただけますか。  一方、政府税制調査会でも税制の抜本改革の検討を続けておりますが、今まで、何を、どこまで検討されましたか。また、昨年の通常国会税制論議をその審議に反映させる旨の大蔵大臣の約束がどのように実行され、税制調査会の見解はどうであったか、あわせて大蔵大臣答弁を求めます。  我々日本社会党も税制改革を望んでおるのであり、その方向は、従来放置されてきた資産課税や大企業を過度に優遇する法人税や、あるいはまた租税特別措置の見直しであり、株転がしの利益に税が課されないで、パートのわずかな賃金に課税されるということは税制の矛盾ではありませんか。税制改革は、国民多数の利益にかなう方向の検討を強く要求するものであります。  次は、六十一年度予算について伺います。  財政再建を柱とする中曽根内閣最後の予算にもかかわらず、六十一年度予算は極めて異常な姿をさらけ出しております。まず、人事院勧告による公務員給与改善費の未計上という欠陥とあわせ、経済成長率の過大見通しで税収見積もりに穴のあく危険があることであります。六十一年度は、名目成長率〇・四%の低下で税収は四千億円余の落ち込みであり、五十七年度税収欠陥の二の舞に陥ることがないのか、総理大臣、大蔵大臣の御答弁を求めます。  財政対応力を示す国債費が予算の二割を超え、福祉、文教等国民生活関連経費が軒並み抑えられる中で、防衛費だけは六・六%と異常突出いたしております。中曽根内閣により以前にも増しての防衛費優遇は、国民の多くがその増額に反対しており、国民の意思を踏みにじるものであると言わなければなりません。しかも、三兆三千億円余のこの予算以外に、将来の財政負担を先取りする後年度負担約一兆三千億円が新たに認められております。何ゆえ老人医療費を削ってまで防衛費をここまでふやしていかなければならないのか、中曽根総理の弁明を求めるものであります。  財政再建が進んでいるかのごとく見せるために、六十一年度予算は無理に粉飾を重ねております。補助金の抜本的見直しを名目に補助率を引き下げ、地方自治体への支出減額したのは、明らかに地方に対する国の財政負担の押しつけではありませんか。また、本来一般会計負担すべき分を後送りや特別会計へのしわ寄せ処理等を行っており、これらは財政再建の名のもとに一般会計の収支バランスだけを取り繕うごまかしであり、将来の返済を要するやみ借金で、その額は六十一年度で十兆円に達しようといたしております。かかる措置は財政再建に寄与するどころか、逆に財政構造にゆがみをもたらすものであり、改めるべきではありませんか。大蔵大臣見解を伺います。  厳しい歳出削減で例年にも増して国民負担はふえ、生活は圧迫されようといたしております。予算の削減を賄うための国鉄運賃、消費者米価、たばこ等の公共料金の値上げがメジロ押しのほか、老人医療に対する一部負担の強化等家計に対するしわ寄せが強められております。その家計も近年、所得が伸び悩む一方、税金、社会保障費等の支出急増いたしております。収入に対するこれらいわゆる非消費支出の割合は、五年前に比べ二割以上も増大をいたしております。最近では収入の約一七%が非消費支出に振り向けられているのが実態であります。国がみずからの政策で招いた失敗を、財政による受益も国民負担国民とする竹下大蔵大臣流の説明で、苦しい国民の家計にツケ回すことは許されないと思うのでありますが、大蔵大臣の所見を伺いたいと思います。  高齢化社会に対する中曽根内閣対応について伺います。  高齢化社会の到来に対し、国民の老後生活に不安のない福祉政策を実行していくことは喫緊の課題であります。しかし、社会保障に対する中曽根内閣対応は福祉切り捨ての思想で貫かれております。財政再建を理由に年々福祉予算の削減が強化され、医療、年金の給付水準が引き下げられるとともに、利用者負担という言い方で保険料の引き上げや自己負担支払いへのしわ寄せがされているほか、老人ホームや介護等の公的福祉施設の機能を民間施設や家庭に切りかえ、老人の行き先さえ奪おうといたしておるではありませんか。自立自助を声高に叫んで福祉に対する政府の役割を回避し、個人や家庭負担を転嫁しようとする意図が明らかであります。  二千億ドルを超える財政赤字を抱えるアメリカの財政収支均衡法でさえ、一律削減の対象から社会保障を省いているのであります。中曽根内閣とは雲泥の差であります。中曽根内閣は、福祉切り捨ての民活福祉から、政府が老後生活を保障する真の福祉政策に転換すべきではありませんか。  次に、東京湾横断道路建設についてただしたいと思います。  民間活力の活用という言葉がひとり歩きして、これだけの大事業の実行着手にしては余りにも拙速に過ぎるのではないかと心配されております。かけがえのない東京湾の自然保護や環境保全、そして大型タンカー等の航行安全対策等、建設の前提条件について政府はどのような調査を行い、どんな結論をお持ちか、まず伺いたいと思うのであります。  次に、横断道路の建設では関係自治体の全面協力を仰がなければなりませんが、建設に対する千葉、神奈川両県の見解、評価等は必ずしも一致していないとも聞いております。政府はどのような態度で臨まれるのか。加えて、この大型プロジェクトの建設が単なる景気対策として取り上げられているように思われますが、直接関係する南房総の開発はもとより、広く首都圏全体の地域開発との関連及び経済的、文化的な有機的結合の役割を考慮すべきだと思いますが、横断道路の役割、機能をどのようにお考えになっておられますか。さらに、横断道路建設の所要見込み年数及び民間活力方式による採算性について、政府見通しを伺っておきたいと思います。  最後に、海上自衛隊下総基地の問題でただしたいと思います。  防衛庁は、対潜能力強化を目的にP3C対潜哨我機を下総基地に配備することに伴う滑走路の強化改修工事を六十一年度に行う計画というけれども、どうでありましょうか。この工事の裏には、米空母艦載機の夜間離着陸訓練に同基地を使うことと、さらに、P3Cの戦術情報処理システムを使って、直接米軍の対潜水艦作戦に連動一体の形で有事の際の出撃基地に使うという二つのねらいがあるのではないかと、関係自治体及び住民は大変憂慮をいたしておりますが、真偽のほどを明確にされたい。  なお、防衛庁は、下総基地は教育訓練用のためのものであることを従来言明してきたことにかんがみ、万一、米軍艦載機の使用基地及び日米共同作戦基地に変質するようなことになれば、大きな背信行為で、地元住民の反撃によって基地の存廃にまで発展しかねないことを十分留意し、この改修工事計画は見直すべきではないかと思います。防衛庁長官の答弁を求めて、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
  28. 中曽根康弘

    国務大臣(中曽根康弘君) 赤桐議員の御質問にお答え申し上げます。  まず、貿易摩擦の問題でございますが、日米あるいは日欧等々の不均衡が出ていることは甚だ残念で、これが解消に懸命に努力しておるところでございます。最近の統計によりますと、アメリカの対日関係は、アメリカの資料によりますと四百九十七億ドルの経常輸出超過、日本の輸出超過、日本の統計によりますと三百九十五億ドル、こうなっております。この差は、基準の差であるとか、あるいは時日のずれであるとか、先々年度のものがずれ込んできているとか、そういう統計の差にもよるものでございますが、ともかくかなりのものが出ております。  しかし、最近の情勢を見ますと、輸出超過の理由は自動車が非常に大きいようです。三十億ドルぐらいが自動車である。もう一つは、Jカーブによりまする円が非常に強くなってきた、そのために上がってきた、そういう面であります。もう一つは、一次産品の下落によりましてアメリカからの輸入品が値が下がってきた、こういう相乗効果をもちまして差ができてきておるようでございます。しかし、我々の計算によりますと、六十年度においては、円に直しまして大体十一兆五千億円ぐらいの超過でありますが、来年度は十兆四千億円ぐらいに減る、約一兆近く減る見込みでございます。これは円が非常に強くなってきたという情勢にもよります。  最近、アメリカの貿易統計の発表がありましたが、アメリカに対しましては日本だけがふえているのではないので、むしろアメリカに対する流入の増高ぶりは、例えばカナダであるとか台湾であるとかECであるとか、そういう国々の方がはるかに率からいえば多い状況なので、日本はむしろアクションプログラムやその他によりましてかなりブレーキがかかってきているという状況でございます。したがいまして、この円・ドル関係の変化を基調にしまして、さらに市場開放等を促進して、これらの問題の解決に向けていきたいと思います。大体半年ぐらいは前の契約の残がありますから続いていくわけでありますが、半年ぐらいたてば、現在、契約が停滞している部分もかなり中小企業等にもありまして、私は、傾向ははっきり出てくる、そう見ておるのでありまして、この不況対策に十分の注意を払いつつ努力してまいりたいと思っておる次第でございます。  次に、四%達成は可能であるかといえば、私は可能であるとお答えをいたすのでございます。これは内需振興の諸般の手を打っております。その上に、先般、公定歩合の引き下げ等もやりまして、これらの相乗効果によりまして四%の目標達成は可能である、このように考えておる次第でございます。  減税につきましては、シャウプ以来の税制のゆがみ、ひずみを是正する、そういうことで今調査を依頼しているわけでございますが、昭和六十一年度抜本的改革の中途の時期でありまして、減税は行わない、そういうことにした次第でございます。なお、住宅対策や防災安全対策、あるいは国民生活充実の基盤である社会資本の整備等にも配意をいたしておるところでございます。  さらに、増税なき財政再建でございますが、非常に厳しい環境にあることは御指摘のとおりでございます。しかし、いろいろな政策を組み合わせまして、一面においては、財政上の節減あるいは税外収入の確保、あるいは政府保有財産、電電とかそのほかの売却とか、そういういろいろなものの組み合わせによりまして、ぜひともこの六十五年赤字公債依存体質脱却ということは前進せしめていきたいと考えております。  また、たばこ消費税等の措置は、これは補助金等の整理合理化に伴う地方財政対策の一環として臨時異例的にお願いをしておるものでありまして、以上のような歳入歳出面での方策は、従来とってきました増税なき財政再建の趣旨の線に沿っているものと考えております。  次に、財政の中期的な展望の問題でございますが、例年のとおりによりまして、皆様方の御検討に資するために、中期展望及び仮定計算例を国会にお示しすべく今努力しておるところでございます。  大型間接税につきましては、先ほどもここでお答えを申し上げましたが、税調の検討領域には入っておるわけでございます。それは、我々が聖域を設けないで自由に御議論くださいとお願いをしておるからでございます。しかし、答申がどう出てくるか我々は見守っておりますが、従来、国会における決議や私の答弁等も十分踏まえて考える所存でございます。  企業の優遇税制の問題については、税負担の公平確保の観点から、社会経済情勢の推移に応じて必要な見直しを行ってきておるところであります。資産課税についても、種々議論があるところでありますが、いろいろな御議論を踏まえましてこれからも検討してまいるつもりでおります。いろいろ税については皆さんの幅広い御意見等もありますから、虚心坦懐に耳を傾けまして、国民の要望の存するところを酌み取ってまいりたいと思う次第でございます。  六十一年度の税収については、政府経済見通しの諸指標を基準にしまして個別税目ごとに積み上げてできておるものでありまして、過大な見積もりではないと考えております。  防衛費につきましては、本年度予算におきましても社会保障関係が九兆八千億円、防衛費は三兆三千億円、こういう情勢を見ますと、やはり全体としてのバランスは維持されている、このように考えております。しかし、今後におきましてもできるだけ節約いたしまして、効率的な節度のある防衛力の整備に努めてまいりたいと思います。  今後の福祉政策につきましては、本格的な高齢化社会に備えまして、長期的に安定し、かつ有効に機能するような合理化、効率化に努めてまいるつもりでございます。社会保障に対する国民のニーズは非常に多様に最近広がってきておりますが、基本的なニーズについては公的制度により、また、それを超えるニーズについては民間の創意工夫を生かして良質なサービスが適用されるようにすることが好ましい、そのように考えております。  残余の答弁関係大臣からいたします。(拍手)    〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕
  29. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) まず、税の問題でございます。  今までどこまで検討したか、こういうことでございますが、まず一番最初に行いますのは、国会審議過程における主要な討議事項、これを私が正確にまとめまして、税制調査会へ報告をするわけでございます。調査会におかれても、その報告書を十分御承知の上で議論が始まってまいります。そこで第一特別部会、第二特別部会、第三特別部会、こういうふうなものを設けまして、いわば基本問題、それから所得税問題、それから法人税問題というようなものがそこで議論をされておる。したがって、さらに今度は専門小委員会を設けましてこの議論を進めていくということでございますので、まだまとまったものの報告、こういう段階には至っていないというのが事実でございます。  それから次は、税収欠陥の危険性があるという御趣旨でございます。  これは総理からもお答えがありましたように、課税実績、政府経済見通し、そういうものを基礎としながらも個別税目ごとの積み上げを行って、適正に見積もって過大な見積もりとならないように、こういうことを心得てやるわけであります。したがって、六十一年度税収見積もりの土台となります六十年度税収につきましては、今度の補正でお願いしておるように、四千五十億円の減額補正の計上をお願いする、それがまた土台になったものとして積み上げさしていただいておるということでございます。  次が、いわゆるいろいろなやりくりをやっておる、こういうことでございます。  確かに、いろいろなことを工夫しておることは事実でございますが、人によっては、やりくりでございましょうし、また見方によっては、あるべき姿に落ちついた、こういうことも言えるかと思うのでございますが、いずれにせよ制度、施策をめぐる状況を十分に検討しまして、経費の節減効率化にぎりぎりの努力をしております。  補助金につきましても、補助金問題関係閣僚会議、この決定に基づいて、補助金問題検討会の報告を踏まえて、そして社会保障を中心に事務事業の見直しを行いながら、補助率の総合的な見直しを行って御審議をお願いするということになっておるわけでございます。  それから受益者も国民負担するのもまた国民と、これは確かにそのとおりでございます。したがって、まず歳出歳入両面にぎりぎりの努力を払って、歳出面においては、今後の高齢化社会の進展あるいは社会経済情勢の変化、そうしますと今の施策が少なくとも長期的に安定して機能するような状態にならなければならぬということから、老人保健等につきましても制度、施策の改革を行いますとともに、食糧管理費の節減合理化、これをさらに推進するなど、あらゆる分野において徹底した経費見直しに努めてまいったところであります。歳入面におきましても、税制について抜本的見直しとの関連、これにはまず留意しなければなりません。が、公平、適正化を一層推進する観点から所要の改正を行いますとともに、今も御指摘ございましたが、たばこ消費税の引き上げ、これはまさに地方財政対策の一環として、臨時異例の措置としてこれをお願いすることにしたということでございます。今後とも、引き続き財政改革を強力に進めていかなければならないというふうに思っておるところでございます。  以上でお答えを終わります。(拍手)    〔国務大臣江藤隆美君登壇、拍手〕
  30. 江藤隆美

    国務大臣(江藤隆美君) 赤桐議員には、中曽根内閣がいよいよ取り組もうとしております民活導入の大事業であります東京湾横断道路の建設問題につきまして、答弁の機会を与えていただきましてありがとうございます。  東京湾横断道路の建設につきましては、自然環境の保持、あるいは大型タンカーが随分多いところでございますから、この安全運航等について細心の注意を図っていかなければならないということは当然のことでございまして、約十年間にわたりまして道路公団をしてこれらの環境問題の調査をしてまいったところでございます。今国会におきまして法案が成立いたしました暁におきましては、閣議決定に基づく環境影響調査をさらに進めまして、万全を図っていきたいと考えております。  また、船舶の航行につきましては、学者グループによるいわゆる経験者の皆さんからこの問題を種々御検討いただきまして、昨年、十五キロのうちの川崎寄りの十キロ部分につきましてトンネルにしようということに計画をいたしましたわけであります。したがいまして、これによってタンカーの航行等については随分と安全性が図られるものと考えますが、さらにこうした航路帯の、非常に頻繁に船の通る地帯でありますから、今後の安全対策については、さらに検討を進めて遺憾のないようにいたしたいと考えております。  千葉、神奈川両県についていろいろと地元の評価その他において違うようであるがというお尋ねでありますが、いやしくも千葉、神奈川両県はもちろんのこと、関係の川崎あるいは横浜、木更津、その周辺都市の地域発展に役立つ横断道路建設でなければならないというのが基本であろうと考えております。したがいまして、さまざまな要請が地方自治体からもあるわけでございますから、それらに十分耳を傾けましてこの建設を取り進めてまいろうと考えております。  横断道路については、ただ景気対策だけではだめで、いわゆる首都圏全体あるいはまた南房総地域の経済発展、文化発展に役立つものでなければならないではないかという御指摘でありますが、同感でございます。建設省の幹部、道路公団の幹部を連れまして、先般来、二時間にわたって私はヘリコプターでこの湾岸一帯の視察をさせていただきました。そういたしますと、ひとり横断道路をつくるということだけではなくて、これを機会に東京湾全体、首都圏の開発というものをどう進めていくかということが非常に大きな問題になってくると私は考えます。したがいまして、千葉県側もあるいは神奈川県側も、湾岸道路の早期の建設ということが大きな課題となってまいります。また、南関東-木更津線の早期の完成、あるいはまた川崎縦貫道路の建設、あるいは東京の外郭環状道路の建設などなど、これにかかわるいわゆる関連事業というものが行われなければ、せっかくのこの大プロジェクトも意味をなさないのではないかと私は思っておるところです。  同時に、ひとり道路をつくるというだけではなくて、今度はさらに地域の開発、いわゆる新しい産業の創造、あるいは生活空間の造成、あるいはまたレクリエーション基地等の開発等を行いながら、地元の皆さん方の御意向も承り、特に南房総、千葉県側の開発については格段の留意を図ってまいりたいと思っておるところでございます。  どれぐらいかかるのかというお尋ねでありますが、およそ着工いたしまして十年間を見込んでおります。十年間を見込みまして、昭和七十年度には完成の日を迎えたいと考えておりますが、これらの建設費はおおよそ一兆一千五百億を見込んでおります。したがいまして、資金コストを六%と見ましたときに、およそ三十年間程度で償還ができるのではないかという計画を持っておるわけでございます。今国会に、この壮大な一大プロジェクトを完成させるために、特別立法をお願いするための手続を改めていたしたいと思っておりますので、その節にはよろしく御審議のほどをお願い申し上げる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣森美秀君登壇、拍手〕
  31. 森美秀

    国務大臣(森美秀君) 赤桐先生に環境庁の立場でお答え申し上げたいと思います。  東京湾は、先生御承知のように、海上交通あるいは漁業、大変に高度に利用されております。特に、首都圏の住民にとりまして、水面や水辺のレクリエーションを提供している自然環境としても、かけがえのない土地でございます。このために、東京湾の適切な保全を図ることが重要な課題であると思います。  殊に、先生や私のように房総半島に生まれ育った者にとりましては、いささかも環境を現在より悪くするわけにはまいりません。したがいまして、東京湾横断道路の建設に際しましては、適切な環境アセスメントを実施して十分な措置を講ずるなど、環境保全に万全の配慮をしてまいりたいと思います。  この計画に関しまして、事業者が行う環境アセスメントに際し、環境庁としても、東京湾の水質や大気環境の保全、自然の保護といった観点から適切に対処してまいりたいと思います。(拍手)    〔国務大臣加藤紘一君登壇、拍手〕
  32. 加藤紘一

    国務大臣(加藤紘一君) 千葉県の下総基地の問題についてお答えいたします。  防衛庁は、海上自衛隊の下総基地の滑走路、誘導路等の施設整備を昭和六十一年度に行う計画をいたしております。これは、昭和六十二年から、下総基地にP3Cを配備いたしまして、パイロット及び搭乗員などの教育訓練を実施するために必要な工事でございます。いろいろ赤桐議員御指摘のような米空母艦載機の夜間着陸訓練基地として利用することを含めまして、米軍のために使用することを目的として行う工事ではございません。この点は、防衛庁にいろいろ地元の方がおいでになったときにも累次申し上げているとおりでございますけれども、今後とも、私たちとしては、地元住民の方々の御理解を得られますように引き続き努力してまいりたいと思います。(拍手)
  33. 阿具根登

    ○副議長(阿具根登君) 斎藤栄三郎君。    〔斎藤栄三郎君登壇、拍手〕
  34. 斎藤栄三郎

    ○斎藤栄三郎君 きのうのこの議場で、同僚である上田議員が一般問題について詳しく質問いたしましたから、きょうは私は、自由民主党・自由国民会議を代表して、経済問題を中心にして中曽根総理及び関係閣僚に御質問をいたします。  中曽根総理世界平和のために十五回にわたり首脳外交を展開し、日本の国際的地位を向上させたし、今後もこれを継続すると承っております。その御努力に対し、心から感謝と敬意を表するものであります。  かつてイギリスの外務大臣パーマストンは、イギリスには永久の敵もなければ永久の味方もない、ただ、あるのは国家永遠の利益のみと答えたのであります。総理が首脳外交を展開するに当たり、日本の利害と諸外国の利害とが相矛盾する場合、いかなる対策をおとりになるか、その点をまず第一番にお伺いしたいと思います。  第二は、ことしはとら年で、円高デフレだという見方の方が多いのであります。戦後、日本は三回、とら年を経験いたしました。第一回目が昭和二十五年、ドッジ・デフレ、だが朝鮮動乱によって我が国は特需収入を得、経済回復の端緒をつかんだのであります。第二回目が昭和三十七年、池田内閣の高度成長政策であります。今日の発展の基礎がそこで築かれました。第三回目が昭和四十九年、オイルショックであります。一バレル二ドル五十セントだった油が一挙に十ドルに上がりました。狂乱物価となりましたが、そのときに日本人の英知が働いたのです。石油からの脱出、見事それは成功しました。当時二億八千万キロリッターの油を買っておった日本が、去年は二億キロリッターで済むようになったのであります。私は、政策いかんによっては災いを転じて幸いとすることができるということを証明したものだと考えます。  このとら年の経済処理するに当たり、中曽根総理大臣にどういう経済運営方針を持って臨まれるかをお伺いしたいと思うのであります。  次に、経済問題に移りますが、特にこれも四つに限ります。貿易摩擦、内需拡大税制改正、それから農業政策の問題であります。  まず、先ほども総理がおっしゃったように、去年は四百九十七億ドルも輸出超過となっております。恐らくことしは、ますます経済摩擦の問題で日米間には難しい問題が発生するであろうと考えます。私はこう思いますが、いかがでしょうか、通産大臣にお答えを願います。  製品輸入をもっとふやさなければだめだということです。我が国は、一年間に四億二千万トンの原材料を輸入し、これを製品にして九千五百万トンの輸出をやっておるのでありまするけれども、この際、製品輸入がなぜ必要かというと、アメリカの全輸入の中に占める製品の割合は七一%です。日本の方は三一%にすぎない。これをもっとアメリカの方に近づける努力をすることが日本側としてやるべきことの第一であろうと思います。  次に、同じく通産大臣にお伺いいたしますが、日本はこれから資本輸出国にならなければだめだということです。明治の時代には人を輸出し、移民。戦後は商品を輸出して摩擦を生じ、これからは日本は資本輸出をすべきだと思います。そうしてアメリカで工場をつくり、向こうに雇用の機会を与えるということが摩擦緩和の根本ではないでしょうか。  摩擦の根本にあるものは失業問題だと思います。我が国の失業率が二・九%であるのに対し、アメリカは六・九%です。ことしの十一月の中間選挙を前にして、アメリカの国会議員が回ると、そこにぶつかるのは失業問題、その失業の原因日本にありと、こういう短絡的な話から保護立法となるのだと考えます。過去三年間に、日本が資本を出してアメリカに工場をつくり、五万二千人のアメリカ人に雇用の機会を与えました。これから三年間で十万人のアメリカ人に雇用の機会を与え得るのであります。したがって、これから政府としては大いに資本輸出を奨励すべきであろうと考えます。  このまま進んだら、非常に心配なのは情断であります。情断というのは情報の遮断であります。日本に対する情報が流れなくなってしまう。それでは日本経済の発展はとまってしまいます。したがって、現地に工場をつくり、現地の人たち雇用の機会を与えるということが摩擦緩和の第二の手段であろうと存じます。  以上、二つを通産大臣にお願いいたします。  第三に必要なことは何かと申しますると、発展途上国との摩擦は累積債務の問題が根本だと思います。  現在、累積債務は八千六百億ドル、その利子の支払いだけで年間千三百億ドルです。ところが、一次産品の値下がり、これによって利息さえ払えなくなっております。こういうときに、アメリカの財務長官ベーカーさんがいわゆるベーカー構想というものを発表しております。この点について大蔵大臣の御答弁をお願いいたします。  そのベーカー構想というのは、中南米十五カ国に対し、日本とアメリカとヨーロッパが協力して二百億ドルの追加融資を行おうというものであります。果たして、そのベーカー構想に対し、大蔵大臣はどういう態度を持っておられるか、また、それで一体発展途上国の累積債務問題が解決できるかどうか、お答えをいただきたいと思います。  第四番目は、江崎国務大臣に対する御質問であります。  江崎さんは、自民党の国際経済対策特別調査会の会長として長い間御苦労なさいました。本当に御苦労であったと思います。今、内閣に列し、御自分の手でこの問題を処理する立場にあられます。長い御経験から、どういう対策をとったらよろしいとお考えか、率直にお漏らしいただきたいと考えるのであります。  以上、四点が貿易摩擦についての私の質問です。  次は、通産大臣にお願いをいたします。  今、政府は金がない。もう御承知のように百三十三兆の公債を出し、とても政府は金なんかありはしません。そこで、金はどこにあるかというと、民間にあるのです。今、日本の一人頭の貯蓄高は三百五万円です。スイスが世界一で二百七十三万円。この金を自由に動かせたら随分景気はよくなるはずです。なぜ動かないかということになりますると、根本は、日本には現在五千七百の法律があり、とれて十重二十重にその動きを抑えている。先ほどから総理大臣がもっと規制を緩和するとおっしゃった、その点、私は大賛成であります。実は、この問題について江崎国務大臣から答弁を得たいと思っておりましたが、先ほどの民社党の御質問に対し、丁重に、丁寧に、詳しく答弁しておられますから、私は答弁は要らないと申し上げます。  通産大臣にお伺いするのは、円高で海外から輸入するものが安くなっています。特に、一番値下がりの激しいのが油でありまして、去年のお正月には一バレル二十九ドルだったものが現在は十七ドルであります。この原油の値下がりの利益をどうやって国民に還元するかということが大きな課題であろうと存じますから、通産大臣から御意見を承りたい。  次に、通産大臣にお願いしたいのは、行動計画によって関税が大幅に下げられつつあります。私は賛成です。しかし、現実には小売価格はまだ下がっておりません。小売屋に聞くと一半年前に仕入れたものだから、一月から関税が下がってもすぐは下げられないという回答です。そこで、通産省及び通産大臣にお願いしたいのは、この行動計画によって下がった分だけは末端価格を下げるように行政指導をなさることが肝要かと思いますが、通産大臣の御所見を承りたいと思うのです。  第三番目に通産大臣にお伺いしたいのは、どうも日本中小企業は恵まれておりません。今、日本中小企業は全企業の九九・四%を占めております。全企業の数は六百二十三万事業所です。六百二十三万の九九・四%を占めているのに、中小企業対策費は全予算のわずか〇・四%にすぎないのです。これで一体十分な中小企業対策ができるかどうか。特に、今後の円高によって大打撃を受けるのは中小企業でございます。その対策として今国会に用意されておりますのは特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法案でありますが、よほど通産省は頑張りませんと事業転換がうまくいかなくなってしまうのではないかと懸念いたします。それは過去十年間の体験から言えることで、過去十年間に通産省が認可した転換は二百九十でありますが、実際うまく成功したのはその半分にすぎないのであって、よほど頑張っていただかないといけないと思いますが、通産大臣の御所見を承りたいのであります。  第四番目の質問は、通産大臣として四極通商会議に御出席なさった。その内容を差し支えない範囲内でお漏らしいただきたいと思いますが、特に最近のように円高ドル安でありますから、アメリカの輸出を伸ばすには絶好のチャンスなんです。ところが、我々外部から見ていると、残念ながらアメリカの輸出は余り伸びていないように思います。この際むしろドル安を利用して大いに輸出を伸ばすように、通産大臣としてはアメリカに忠告したらいいのではないかというぐあいに僭越ながら考えるのであります。  以上、通産大臣に対する質問を終えます。  次に、農林水産大臣にお願いをいたします。  農業は国のもとである、農業は生命産業であるとは中曽根総理のお言葉でありますが、私も全く同感です。農業は、空気を保ち、清浄なる水を供給する健康産業であることは事実でありますが、残念ながら国際競争力が全くなくなってしまっております。これからの農業政策の方向は、私はまずバイオテクノロジー農業に持っていかなければだめだと思うのです。  その理由は、国土日本は狭い。日本の農家は平均耕作面積が〇・九ヘクタール、アメリカは八十ヘクタールです。八十分の一の耕地でアメリカと対等の競争をすることは不可能である。しかし、それをバイオによって必ず打ち勝つことができると思うのです。ところが、昭和六十一年度の農水省バイオ予算を見ると、わずか二十五億円にすぎない。私は、これでは二階から目薬程度の効果しか期待できないのではなかろうかと懸念をいたします。  第二は林業です。これもこの議場で随分論議をされた問題でありますが、我が国が使う木材は一年間に一億立方メーター、その七割が外材です。日本の林業というものが国際競争力を全く失ってしまったということが端的にあらわれていると思います。そこで大事なことは何かと言えば、林道開発のために重点的に金を使うべきだと考えます。ところが、昭和六十一年度の林道建設費を見ると四百四十八億円、延長キロ数わずか千四百キロ。私は、少なくともこの予算を倍額にしていくならば、十年後には日本の林業というものは完全に国際競争力を回復できるであろうと確信をいたしますが、農林水産大臣の御所見はいかがでしょうか。  今、農林水産大臣、頭が痛いだろうと思いますのは、北洋漁業においてアメリカとソ連から挟み打ちであります。その御苦労のほどはよくわかりますが、この難問をどのようにして打開するつもりか、その苦衷のほどを伺いたいと存じます。  以上で農林水産大臣に対する質問は終えます。  次は、大蔵大臣であります。  竹下大蔵大臣は、この財政窮乏の折から四回にわたって大蔵大臣の要職を占められ、非常な御苦労をなさっておられることに対して心から敬意を表します。  ことしの大蔵大臣の一番の難しいところは税制改正であろうと思います。そこで大蔵大臣にお伺いしたいのは、今税制調査会で審議中の由でありますから内容は承りませんが、この程度のことは大蔵大臣としても言えるだろうと思います。それは、一体租税の負担率を最高どれくらいが適当だとお考えかということです。日本は、昭和四十年の租税負担率、これは国税と地方税合わせて一八%だった。それが今二五%です。これに社会保障費を含めたものを国民負担率と申しますが、今三六%であります。これ以上重くなることは国民は容易に耐えがたいと思いますが、一体最高税率をどの程度が適当とお考えか、竹下蔵相のお考えをお伺いしたいと思います。  次は、直間比率の是正が税制改革の大きなねらいであります。  今、日本の直接税は七四%、間接税が二六%であります。一体直間比率の是正とは、この直間の比率をどれぐらいにすることが目的であられるのか、それをお教えいただきたいと考えるわけであります。私はぜひとも減税をやっていただきたいと思いますけれども、物事には順序がありますから、まず税制を正しくして、その上に立って減税を行うべきものだと考えます。手っ取り早く減税ばかりやりますと、つまみ食いになってしまいまして税制体系が崩れてしまいますから、この際は腰を据えてシャウプ税制以来のひずみを直すことに全力を注がれるその態度に私は同感の意を示すのであります。  将来、税制を改革するときにぜひお願いしたいことが二つあります。  一つは、自己資本の蓄積ができるような改正であります。日本の企業の自己資本はわずか一七%です。アメリカの自己資本は六二%です。この開きが日本の企業の倒産が多い原因なのです。アメリカの場合は自己資本が六二%もある。したがって、どんな景気変動にも耐えられます。ところが日本の場合は、自己資本が一七%しかありませんから、すぐ倒れてしまうのです。アメリカの株式会社は日本の十倍あるのです。ところが、企業の倒産件数はアメリカと日本とが同じで、一カ月平均千五百社です。なぜ一体日本の倒産がアメリカより多いかといえば、自己資本の有無であると結論づけたいと思う。そういう意味において、ぜひとも税制改正に当たっては自己資本の充実ができるような税法にしてもらいたいと思います。  そのときに参考になるのがフランスがやっている制度で、フランスは企業の新設及び増資の場合に配当する配当金はこれを経費として認めるのです。したがって、経費として認められますから、借入金をしないで増資をするのです。自己資本というのは払込金、積立金、当期利益金の三つが自己資本なんですから、自己資本の充実ができるような措置を講ずべきだろうと感じます。  第二は、機械の耐用年数を圧縮しなければなりません。この問題については、民社党の井上議員も何回も熱心に主張しておられるのでありますが、今の日本の機械の耐用年数は最低二年、最長二十五年、平均十年です。しかし、技術革新の今日、十年持てる機械なんかないのでありますから、少なくともこれを五年ぐらい短縮することを大蔵大臣にお願いをしたいと考えます。  次に、きのう公定歩合の引き下げをやったばかりで、今そこにまた触れることはちょっと軽率のそしりを免れませんけれども、景気振興、内需振興という観点から見れば、〇・五%の引き下げでは力は弱いと思います。回答は必要ありません。御答弁を求めません。お立場上答弁できないだろうと思う。私はしかし、もう一回公定歩合を下げなければ内需振興に十分なる効果は発揮できないということだけ、私見として申し上げておきたいと思います。  最後に大蔵大臣にお伺いしたいのは、為替相場がきょうは百九十一円八十五銭であります。大体二百円に安定するであろうと見られる。そこで、一部のジャーナリズムでは、デノミネーションをやるのではないかということを大きく取り上げておりますが、一体竹下大蔵大臣はデノミをどうお考えになっているか、御意見のほどをお知らせいただきたいと考える次第でございます。  以上で大蔵大臣に対する質問を終え、結論に入りたいと考えます。  日本の一人頭GNPは一万四百ドルであります。アメリカの一人頭GNPは一万四千ドルです。その差三千六百ドルです。このままでいけば、十年ぐらいで日本の一人頭GNPはアメリカを凌駕するであろうと考える。あの廃墟の中から立ち上がった日本がよくぞここまで来たものだと思うし、本当に自由が保障され、豊かになった日本だと思います。天平六年、海犬養宿禰はこう歌いました。「御民吾れ生ける験あり天地の栄ゆる時に遇へらく思へば」、本当に今日の私の心境です。言論の自由が保障され、豊かな国になりました。しかしながら、残念ながら衣食足りて礼節を忘れ、道義は退廃の一途であります。今日必要なことは道義の高揚でなければならないと思いますが、中曽根総理大臣の御所懐をお述べいただきたいと考えます。  総理大臣は最近、色紙を書かれるときに、「不惜身命」という文字をよくお書きになる。これは法華経の中にある、一心に仏を見奉らんと欲して身命を惜しまず、これを現代的に言えば、平和のために身命を投げ捨てるという御意思であります。何とぞその決意を持って道義確立のために御努力くださるようお願いすると同時に、総理大臣政治哲学を拝聴して、私の結論といたします。ありがとうございました。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
  35. 中曽根康弘

    国務大臣(中曽根康弘君) 斎藤議員にお答えを申し上げます。  まず、首脳外交に関する御質問でございますが、私は、最近の外交のあり方、国際関係というものは非常に変化していると思っておるのでございます。もちろん内政も変化しております。つまり、政治、国際関係というものに非常なリズムとスピード感というものが出てきております。そういうリズムやスピードに合うような調子で政治なり外交が進められていかないと、国際関係の調和もうまくいかないし、国民のフラストレーションもたまる。そういう意味において、首脳同士が問題が起きれば直ちにできるだけ接触して、首脳同士で意見を交換し合って解決していく。昔ですと、事務当局がまず話し合って、事務当局の間で話が詰まったら上が出ていく、そういうのが今までのやり方ですが、今やそういうリズムとスピードに合わなくなってきている。したがって、首脳外交というものが非常に積極的に行われるようになりました。  もう一つは、情報が非常に多くなり、多様になってまいりますと、首脳がどの情報を信じていいかわからなくなってきているわけです。結局、自分が相手の親玉に会ってみて、目玉を見て、そして自分で確かめ合って、この人はこういうことを考えているに違いないと自分の確信を持って出ていく。外務大臣は先方の外務大臣に会って同じように確かめ合う。大蔵大臣は先方の大蔵大臣に会って、経済政策を本当に腹の中で何を考えているか確かめ合う。そういう時代になってきたので、つまり時代のテンポとリズム、それから情報の非常な多様性というものが新しい国際関係や外交、政治のやり方を生み出しておると私は思っております。  そういう意味におきまして、先般シェワルナゼ・ソ連外務大臣が来日されまして、外務大臣や我々が会ったということは非常に有益であったと思います。あるいはレーガン・ゴルバチョフ会談というものも、実りはすぐは出てきませんけれども、必ずや会ったときの影響というものはじわじわ、じわじわ出てくるものである、そう考えておるのであります。要するに、外交は今や手づくりになってきた、そういう考えに立ちまして私は外交を進めてまいりたいと思っております。  しかも、日本は今や国際的にアメリカに次ぐ経済大国になりまして、我々が国内考えている以上に日本影響力は大きくなり、かつ大きく評価されているということです。これを同本の国民の皆さんは案外知っていない。これは無理もないことであります、外へ出ていらっしゃらないのでありますから。そういう意味において、日本がこれだけ大きな存在になり、影響力を持ってきたということを国民の皆様方によくお知りを願う、そしてこの国際関係に調和する日本の行動をとるようにお願いをするということが、実は国際、国内両方の間に挟まっておる政治家の責任になってきて、これが非常に大きな要素になってきております。これはアメリカ大統領といえども同じです。議会と外国との間に挟まれておるわけであります。イギリスの総理大臣も同じであります。そういうような最近の時代の変化に調和するように日本政治、外交というものを引っ張っていくべきであると思っております。  その場合に、やはり正しい国益を中心に我々はこれを主張すべきであると思っています。間違った国益を言っても、結局は破れます。そういう意味において、正しい国益を中心に、相手ととことんまで話し合って対話を進めていく、こういう態度は大事でありまして、相手の正しい主張に対しては当方も耳を傾けるという虚心坦懐の態度なくして日本のような経済大国の外交はあり得ないのであります。一方的に国益ばかりを押しまくるという態度ではもう通用しなくなりつつあります。そういう地位にまで日本が来たのでございますから、相手の正しい態度には我々も謙虚に耳を傾ける、こういう態度でまいりたいと思っております。  経済外交にいたしましても同じことでございますが、特に大蔵大臣外務大臣総理大臣というような、対外関係を主にしております、最近は通産大臣もそうでございますが、やはり日本経済界あるいは労働者が働いて、そうしてその働いた結果が正当に評価されるように、そして日本の商品が適正に受け入れられるような環境をつくり出すということが非常に大事であります。日本の会社や企業、労働者の能力というものは世界抜群であります。したがって、ほうっておいてもどんどん、どんどん伸びていく力を持っております。政治が介在する大事なポイントは、その自由に伸びていく力を、障害をなくしてあげる、そして日本が受け入れられるような環境をつくり上げていく。言いかえれば営業政策みたいなものであります。そういうような立場に立ちまして、日本経済外交を担当している閣僚、我々ともども、日本の正しい資本主義あるいは労働者の声が外国に正当に評価されるように私たちは努力していかなければならないと思うのであります。  政治につきましては、私は、前から申し上げておりまするように、政治というものは権力を得るためにあるのではない、文化に奉仕するためにあるのだ、そういうことを申し上げておる。これは、私は政治家になって以来一貫して考えている考え方であります。でありまするから、戦後四十年たちまして日本人は偉大なピラミッドをつくったと私は申し上げましたが、そのピラミッドに何があるだろうかと自分でもいろいろ模索しておる。  学問の世界で我々は四十年間に何を世界に誇るべきものを持ったか。ノーベル賞が何人出たか。しかしこれは、外国と比べて何人対何人であるか、イスラエルよりも少ないじゃないか。あるいは音楽の世界でどういうすばらしい音楽が出てきたのか。日本と外国の音楽を調和している新しい音楽家が出ておりますが、その音楽家がどういうふうに評価されているだろうか。日本の絵画はどうであろうか。日本国内では非常に評価を受けているけれども、これをパリやニューヨークに持っていった場合に、そのとおりの評価を受けているだろうか。案外冷たい評価を受けている場合が多いです。そういうわけで、日本の文化全般を見まして、国際的比較というものを考えないといけない。  日本の学問もしかりです。外国から翻訳してきて、それを大学で教えるのが精いっぱいだったのが今まででありました。そういう意味で、日本国内的な結束はかたい、そのために国内的な自分自体の価値をお互いでつくり合って、外国に通用しないような国内的価値だけで満足して生き合ってきたという気がなきにしもあらずであります。今や、もう市場開放と同じように、芸術や文化の世界においても開放されて、そうして世界に通用するようなものにしていかなければ本物の日本にはならぬ、そう私は感じております。  そういう意味から、戦後日本の文化として誇るべきものは何があるか。あの二重橋の中にあります皇居というものは、外国人が賛嘆いたします。大統領でもあるいは国務長官でも実に賛嘆をいたします。私は、あれは確かに建築としては戦後の傑作であると思っておるのです。しかし、あれに匹敵するような音楽がどこにあるだろうか、絵画がどこにあるだろうか、彫刻がどこにあるだろうか。そういうようないろいろな面から見まして、やはり冷厳な反省をしながら、一歩一歩日本の文化価値を高めていきたい、そのように考えておる次第でございます。  残余の答弁関係大臣からいたします。(拍手)    〔国務大臣渡辺美智雄君登壇、拍手〕
  36. 渡辺美智雄

    国務大臣(渡辺美智雄君) 今回、通商産業大臣を任命されました。前回同様、どうぞよろしくお願いを申し上げます。  斎藤先生は経済の専門家、エキスパートでございまして、七問質問されておりますが、要約をいたしまして簡潔にお答えさしていただきます。  一つは、まずアメリカの完成品をもっと輸入をしなさいということでございます。全くごもっともなお話であります。今まで日本は、資源が足りなかったりあるいは製造業が非常に優位にあるというようなことなど、いろいろ原因があって輸入が少なかったわけでございますが、今後極力政府といたしましても外国企業の輸出努力等を側面から応援をする、そういうようなことをやっておりますし、また、主要な日本企業百二十四社に対して、ぜひとも外国製品、特にアメリカ品を買ってやってくださいとお願いをいたしました。そういうようなことで、これも効果を生んでおります。また、六十一年度からは新たに機械の輸入促進のための税金の制度ができますので、こういうものが輸入促進の関連金融の拡充などと相まってお役に立つものと、そのように考えております。今後とも努力いたします。  第二番目は、資本の輸出をもっとやれということでございますが、先生御指摘のように、最近アメリカに対する投資は大変進んでおりまして、八〇年度と八四年度、四年間ぐらいの間に約二・三倍ぐらい実は投資がふえておって、十四億ドルが三十三億ドルぐらいになっておりますから、かなりいいペースでいっております。したがって、雇用も三年間に五万人ふえたじゃないか、全くそのとおり、それ以上ふえております。今二十万人ぐらいアメリカで日本企業が雇用しておりますから、これは大変ありがたがられています。  それから米国の全輸出に占める割合も一一・四%というように、日本企業がアメリカに行って、アメリカのためにもかなり実は働いておるわけであります。これを奨励するために、政府といたしましても、これは民間がやることでありますが、いろいろ先生からお話があったように、民間に対して情報の提供、これは政府の方がいろいろ情報を持っていますから、それを民間の方に情報を提供したり、調査団を派遣したり、海外の投資セミナーをジェトロでやったり、そういうようなことを今後も続けまして、極力正しい情報を与えて、正確な知識を持ってアメリカに企業が進出できるように今後も指導してまいりたい、そう考えております。  第三番目は、石油が一バレル二十九ドルが二十ドルにも下がって、これを国内内需振興に役立たせなさいというお話で、これも全くごもっともなお話であります。原油が値下がりすれば、結論的にはこれは物価を引き下げ実質所得の増加につながり、私は非常に結構なことだと思っておるわけであります。しかし、直ちにこれをどういうふうに公共料金その他に反映をさせるかという問題につきましては、まだそういう事態の起き始まったばかりでありまして、これらにつきましては事態の推移を見守りながら、一番国民のために役立つ、これがいいというようなことをひとつ考え出していきたい、そう思っておるわけであります。  それから、せっかく関税を下げたのだが末端の方までうまくいってないのじゃないかというお話ですが、確かに関税等は思い切って下げまして、私は、先進国の中では工業製品は一番低い関税だと、そういうふうに思っております。コンピューターなどは一月二十日から本体も部品も周辺機器も全部ゼロ関税です。そういう国は私は余り聞いておりません。したがって、これらのことも、向こうにも教えてあげますが、さらにそれらが末端でうまくいってないかどうかよく注意をしながら注視していきたい、そういうことのないように指導をさしたいと思っております。  それから円高による関連企業対策、この問題は再三今までも質問に出ておるところでございますが、特定中小企業者事業転換法だけでは足らぬじゃないかというお話でございますけれども、法律もさることながら、きめ細かいあの手この手いろいろ組み合わして、中小企業問題については万遺漏のないように極力努めさしていただきます。  それから四極会議内容を少ししゃべれということでございますが、これは大体新聞に出ているようなことで、別に隠してあるものはないのです。一月十六日から十八日までやりましたが、その中では新ラウンドを中心に話し合いをしたのです。もう一つは、自由貿易を守っていこう、守っていくためにはどうすればいいのか、保護貿易にさせないようにするにはどうするかということでいろいろ意見の交換をしました。そして、私どもとしては、新ラウンドの進め方と、新ラウンドで何を議題に話をするかということで話をいたしましたが、新ラウンドをやろうということは大体一致したわけです。  それから日本は知的所有権の問題を新ラウンドで議題にしてくれということを言いました。まだこれははっきり決まったわけじゃありません、各国いろいろなことを言っていますから。そこで決まったことは、新ラウンドの準備委員会が七月半ばまでには意見をまとめて、九月の閣僚会議をまず成功させるために四極で努力しよう、二番目は、四月のOECD閣僚理事会、五月の東京サミットでも新ラウンドを取り上げてもらおう、ぜひともその推進を図っていこう、サミットでもひとつ取り上げてもらいましょう、これは一致をしたということであります。  あとは、個別的にそれぞれの大臣と話をしたのですが、日本は本当にやってくれるのかと、そこだけです、もう最後になると。そこで我々は、これもしました、あれもしました、これもやります、あれもやりますと言ったのですが、やるやると言っていてさっぱり数字の方へ出てこないじゃないかというので、それは時間がかかりますから、法律を通すのにも十二月いっぱいかかったのですよと。あなたの方も議会があるけれども、こちらだって議会があるのだから、議会で成立しなければだめなのです。一月一日から実行するものがたくさん出てきた。だから、あるいは半年、一年かかるかもわからぬが、着々とこれはやっているのですから、大いに皆さん方も売り込みの努力をやってください。ただ、アメリカで売れるから日本で売れると思われても困るので、皆さんも一生懸命売り込みの努力をやってくださいよということはもうちゃんと言ったのです。  それで、私は、ソニーの工場をサンジエゴで見たのですが、千七百人のうち日本人が四十人、同じアメリカの中でも非常にこれは生産性が上がっておる。聞いてみたら、そういう工場が日系企業の中では各地にたくさんあると。同じアメリカ人が働いておって、できるじゃありませんかというようなことで、そういう点を例に挙げまして、それを強調しておきました。ですから、努力をしてくださいということは、仰せのとおりちゃんと言ってあります。  以上であります。(拍手)    〔国務大臣竹下登君登壇、拍手〕
  37. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) まず最初のお尋ねは、開発途上国の累積債務問題に関するベーカー提案等の問題でございます。  ベーカー提案につきましては、私は、ソウルにおきましてのIMF・世銀総会の際、そのイニシアチブを評価して今日に来ておるということにございます。その後、各国の金融機関がそれぞれそれらの提案に対して応分の協力をしていこうという申し合わせをしたり、そして先般のロンドンにおけるG5におきましても、そういう機運が熟したということはお互い確認をしたところでございます。  しかし、私があえてその上に私ども先進国のやるべき役割というものを主張しておるところでございます。それは、経済摩擦が厳しさを加えたために、先進国同士はそれの摩擦の方に目を奪われて、ともすれば南北問題の意識が希薄になってしまうではないか、こういう問題意識があるからでございます。したがって、もとより先進国が持続的経済成長を遂げる、それからまた、先進国の金利水準が下がっていくということが、これはやはり開発途上国については先生今御指摘なさいました利払い等にも大変効果があることでございますので、そういう努力をしなければならぬ。  それからまた、いわば金融・資本市場の自由化をしまして借りやすい環境もつくって差し上げなければいかぬ。さらには、やはり国際開発金融機関への資金協力、日本の場合はいつでも増資等については国会の総意が積極的でございますので、そういうありがたい環境を持っておりますし、また、先般来いわゆるODAの総額四百億ドル以上、これを七年間、こういうことも決めておりますので、そのような先進国の果たすべき役割もあわせながら、これにはケース・バイ・ケースで粘り強く対応していかなければならぬ。確かにこれといった決め手はございませんけれども、このことは大変重要な問題だと認識いたしておるところでございます。  それから租税の問題につきまして、今の進みぐあいは答えをする必要もないが、租税負担率とか直間比率とか、そういうものに対する値ごろをどれくらいに心得ておるか、こういう御趣旨と外します。  結局、この租税負担率というのは、要するに国民が必要とする公共負担、それと裏腹になりますので、最終的には国民の選択によって決まるということでございましょう。したがって、あらかじめ固定的に考えることは適当でないという意見もございます。やはり今、先生も御指摘なさったように、租税負担率プラス社会保障負担率、このことで議論をするのが適切であろうと思っておりますが、臨調答申、これは五十八年の答申でございますが、よく申し上げることでございますけれども、「現状よりは上昇することとならざるを得ないが、徹底的な制度改革の推進により、現在のヨーロッパ諸国の水準よりはかなり低位にとどめることが必要である」、こういうことを今日までもお答えの文句の中心に置いておったわけでありますが、これの問題につきましては、今おっしゃいましたとおり国民負担率、日本の場合大体三六・一%、こういうことでございます。  したがって、この問題、ヨーロッパよりもかなり下回ると申しましても、ヨーロッパはもう五五を超したところがございますので、それこそ国会の議論等を聞きながら、最終的に国民がどう判断するか、そこを見きわめていく難しい問題だと思います。御教導をこれからもお願いいたします。  それから直間比率の問題でございますが、これは私は、あらかじめ特定の目標を設定するというものでは必ずしもないではなかろうか、やはり直と間の比率は結果として出てくるものではないかという考え方を持っております。しかし、今回の税制調査会の第三特別部会等でいろいろ御議論をいただけるようになっておりますので、その議論の推移を見てみたいというふうに思っております。  その際、また注文がございました自己資本充実のための税制、今まで過去にやりましたのは、実は失敗とでも申しましょうか、効果に疑問があるということから廃止してきたりしております。しかし、国会における税制の議論は正確にこれを税調にお伝えするということになっておりますので、またフランスの一九七七年から一九八七年までの特別な税制等もこれは当然勉強の課題になることでございますので、その意見は正確に税調の方へ伝えますとともに、私どもも部内で勉強さしていただきたいと思います。  耐用年数、これもいわゆる物理的寿命と経済的陳腐化、これだけ技術革新の時代においては、その陳腐化というのが十年というのはもう古過ぎるじゃないか、こういう御意見を交えての御質疑でありますが、これらはまさに今税制調査会の審議そのものの対象になっておる問題でございますので、その方の検討を待っておるということであろうかと思うわけであります。  それから、これも御意見としてなさいました公定歩合の問題につきましては、特に答弁はできぬだろうということでお尋ねがありましたが、金融政策の運営に当たって、一般論としては、内外経済の動向、国際通貨情勢等を注視しながら、適切かつ機動的にいつでも対応しなければならぬ課題であると、一般論だけを申し上げておきます。  それから最後に、デノミを実施する考えはないか、こういうことでございます。  ちょうど今、三時現在で為替は百九十二円六十銭、こういうことになっておりますが、大体デノミといいますのは、その実施に伴う経済的反響はもちろんでございますが、恐らく先生は、今物価が落ちついているからデノミというのを純粋に行うための環境としては一番いい状態じゃないか、こういうあるいはお考えが背景にあるかもしれません。そういう経済影響というもの、環境ももちろんでありますが、国民に十分理解され、そしてその実施に伴うもろもろの不安感がぬぐい去られておるかどうか、社会的また心理的な問題も含めた判断を要する問題であります。  そして、よく言いますが、私や斎藤先生の年齢の者は、三けただ四けただといいますと、何か国威発揚の点から大変恥ずかしいような感じがかつてはしたことがありますが、今二十以下の諸君に聞きますと、いや百九十円とかそういうのが使いなれておってもういいというような話もありますので、なかなかこれは難しい問題でありますが、現段階においてデノミを実施する考えはございませんということを申し上げておきます。(拍手)    〔国務大臣江崎真澄君登壇、拍手〕
  38. 江崎真澄

    国務大臣(江崎真澄君) 大変簡にして要を得た御質問に敬意を表します。したがって私も簡単にお答えをいたします。  国際経済摩擦の回避というのはなかなか大変な問題でありまして、短時間で御説明はできにくいわけでありますが、いずれにしろ、アメリカが今度千五百億ドルの貿易赤字があります中で、我が国一国との間で、まあ百億ドル程度の積算の違いはあるとはいいながら、四百九十七億ドル、五百億ドルを計上しておるということは、これは単なる経済問題というより、もはや政治問題でありまして、容易ならざる事態だと思っております。しかし、我が方の対応としても、あのアクションプログラムというのは、中曽根首相が本部長になりまして、政府・与党が一体になってつくり上げた精いっぱいの努力の成果であります。この徹底がなかなかなされておりませんが、既に税額においては、通産大臣も申しておりましたが、工業製品ばかりではありません、平均して日本の関税率は世界一低いわけであります。  それから日本の市場へのアクセスにつきましても、これは日本の競争が激し過ぎるということに原因がある。これはこの小さな一カリフォルニア州より狭いところに一億二千万人もが生活をしておるというこの競争原理、これがなかなか外国の人にわかってもらえない。しかし、それはジェトロを初めOTOとかいろいろな機関でよく御説明をしましょう、また苦情があれば承りましょう、どんな御相談にも乗りましょう、こんな親切な輸入国というものは、そう私は世界を見ても日本以外にあるとは思いません。そういうわけで、できるだけの努力を今後も続け、そして非関税障壁を少なくしていくのが私の任務だ、責任だというふうに考えております。  それから御指摘のようにアメリカへの企業進出、これはもう大変歓迎されております。まさにアメリカ側から、アメリカの雇用に二十万人貢献してくれたと、大変な感謝です。数字の点において非常なそこに差があるわけですが、ただ、残念ながら日本の輸出のために百七十万人が失業するのだ、これが我々政治家としては耐えられぬのだ、こう言われると、どうも途端に困ってしまうわけであります。しかし、既に日本とアメリカとの間におきましては相当な水平分業が進んでおることもお気づきのとおりだと思います。それは、アメリカが日本の技術力、それから勤勉、意欲、こういったものに着目して単独でIBMを初めどんどん進出しておりますね。これらは日本市場でも相当売れております。IBMは御存じのとおり大型コンピューターでは世界めシェア七〇%ですから、とにかく二十億ドル程度アメリカに逆輸出しておるのです。こういうものを全部合わせると百九十億ドル、これは八四年の統計でありますが、恐らくこれは三〇%ですね、総輸出額の。  こういうことを考えますと、私はもっと政治レベルで、少なくともアメリカ政府と話し合いをして、日米の間で、アメリカの経済的な風速が弱まっておる間は日本との間においてぜひひとつ水平分業をやりましょう、こういう話を積極的にすることも効果があると思っております。それからお示しのようにODAを計画的に進めることも必要でありましょう。大型の製品輸入も必要だと考えております。  以上、御答弁をいたします。(拍手)    〔国務大臣羽田孜君登壇、拍手〕
  39. 羽田孜

    国務大臣(羽田孜君) ただいま斎藤栄三郎議員の方から御質問のございました農、林、水、三点についてお答えを申し上げたいと思います。  今日の農業の置かれておる状況につきましてはもう細かく申し上げません。非常に厳しいところがございます。こういったものを脱皮するために新しい技術、これを活用するようにということであります。ただ、基本的には、私どもは足腰の強い農業、これを実現する。このためには、まず何といってもやはり規模の拡大、このための努力をしなければいけないと思います。あわせて、生産基盤の整備、こういったことも地道に進めてまいりたい、かように考えます。  加えまして、バイオテクノロジー等の先端技術の開発及び普及がやはり重要であろうと思っております。ただ問題は、確かに新しい技術というものは、なかなかこれだけに頼るということは許されないと思います。しかし、多くの可能性を秘めておることでありますし、将来の生産性の高い魅力ある農林水産業、これを実現する上で極めて重要と考えております。このため、産官学の連携強化によりまして総合的なバイオテクノロジーの開発を行うこととし、研究体制の整備、各種プロジェクト等の研究の推進を進めるとともに、殊に研究の基盤となる農林水産ジーンバンク、これの整備等の措置を今進めておるところであります。  今後、さらに二十一世紀を見通し、バイオテクノロジーの育種への活用を計画的、総合的に推進するとともに、民間におけるバイオテクノロジー等を含む研究を幅広く推進するための支援体制を強化拡充することとし、あわせて普及、そしてそれに対応できる後継者の育成ということも努めていかなければいけないと思っております。いずれにいたしましても、新技術の開発等を進めながら、非常に困難な農業の現状でありますけれども、そういった中に活力ある産業として育てるために鋭意努めてまいりたい、かように考えております。  それから林道についての問題でございますけれども、林業生産コストを低減させ、国産材の市場における競争力の強化に資するとともに、間伐や保育を推進する上でも林道は非常に重要な施設であると認識しております。このような林道事業の重要性を踏まえまして、厳しい財政事情の中ではございますけれども、六十一年度において、公共事業として七百八十八億円の予算を計上し、各般の林道関係事業を行うほか、林業構造改善事業、間伐促進総合対策等においても林道、作業道の整備を積極的に推進しておるところでございます。今後とも、林道事業の充実を図ることによりまして我が国の林業の活性化を図ってまいりたい、かように考えております。  終わりに、日米、日ソ、この漁業交渉でございます。これはいまだ解決を見ておりませんで、関係の漁業者の皆さん方あるいは加工業の皆さん、そして魚食民族である国民の皆さんの中にもいら立ちがあることを私どもも感じております。  日米間のサケ・マス問題につきましては、いまだ日米双方の主張に隔たりがありますが、伝統的な我が国北洋サケ・マス漁業の実態につきまして米国の理解を求めつつ、妥結のため鋭意努力をしておるところであります。また、対日漁獲割り当てにつきましては、サケ・マス問題とは別個の問題として、年初の一万トンの割り当てに引き続く今後の割り当て実施を米国に対して強く要請を申し上げてまいる所存であります。  なお、日ソ漁業委員会第二回会議につきましては、ソ連側が従来とは全く異なった新しい枠組みに基づく提案を行ったことなどから日ソ間で合意を見るに至らず、日ソ双方の漁船は一月六日以降操業を中断いたしております。現在交渉中でございますけれども、見通しは極めて厳しく、予断は許さない状況にあります。政府としては、関係漁民の切実な要望を踏まえ、今後とも我が国漁船の安定的な操業確保のため、早期妥結に向け、引き続き最大限の努力をしてまいります。  なお、昨日もアブラシモフ・ソ連大使を私ども役所の方にお招きをいたしまして、日本の漁業者の状態あるいは加工業の皆さん方の状態、これを率直に申し上げました。そして、本国の方にこのことをぜひとも報告していただきたい旨を申し上げたところであります。日本漁船が昨年どおりの操業条件で操業できるようにこれからも私どもは交渉を続けてまいりたい、かように考えております。  以上であります。(拍手)     ―――――――――――――
  40. 阿具根登

    ○副議長(阿具根登君) 本岡昭次君。    〔本岡昭次君登壇、拍手〕
  41. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 私は、日本社会党を代表して、中曽根総理並びに文部大臣に対し、特に教育と人権の問題に絞って質問を行うものであります。  総理は、行政改革財政改革と並んで教育改革に特別の熱意を示しておられます。しかし、総理の熱意にもかかわらず、教育をめぐる現実を見るとき、事態は何ら改善されておりません。今日、学校の実情と子供たちが置かれている環境の深刻さは、もはや一刻もゆるがせにできないものであります。  まず第一に、高等学校入試の問題であります。  文部省の調査では、五十九年度における高校中途退学者の総数は十万九千百六十人、そのうち公立高校は六万七千九人であります。一年間に百校近い学校が消滅しているのと同じ数であります。これらの中途退学者の多くが学校生活、学業への不適応を理由に自主退学という名の強制退学をさせられているのを見るとき、私には、偏差値教育による選別のシステムの中で不本意な進学コースを歩まざるを得なかった生徒たち教育行政への失望の声が聞こえてきます。偏った受験能力だけを問題にする教育、コンピューターで人間としての能力や価値を一方的に選別する教育や、社会に適合できない少年少女たちのうめき声が私には聞こえます。総理や文部大臣には聞こえるでしょうか。  現代の青少年が置かれているこのような現実をまず改善するという視点に立つならば、ほんの一握りの生徒を対象にした六年制中等学校の構想や、学校間格差を残したままでの複線化、多様化コースなどには何も期待できません。大学のあり方とその入試制度の改革を急ぎ、あわせて高校入試制度の改革が必要ではありませんか。学校の数だけ学校間格差が存在する高校の現状を打破するためには、やはり地域と結びついた小学区制の再評価が必要であります。そして、高等学校教育が既に準義務教育化している今日では、それにふさわしい入学方法と高等学校網を整備すべきであります。総理並びに文部大臣はどのようにお考えでしょうか。  総理は、既に幾度も偏差値教育の是正を強調してこられました。極めて正当な御意見でございます。しかし、大学共通一次テストを初め、偏差値教育を進めてきた自民党の文教政策の責任はどうされますか。その偏差値教育の弊害を除去するため、総理は今後どのような措置を考えておられるのか、あわせてお答え願いたい。  第二は、いわゆるいじめの問題であります。  警察庁の資料によると、いじめに起因する事件は五十九年度中五百三十一件、六十年は十月までに五百件となっています。水面下では全面的に無数のいじめが生起しております。いじめに起因する少年少女の自殺も、五十九年七人、六十年は九人に上っております。実に痛ましいことであります。いじめなどを原因とする小中学校の登校拒否児は三万百九十二人に及び、この十年間に何と三・五倍と激増しています。さらに重要なことは、この子供たちの中に、病気でもないのに一般の精神病院に強制入院させられているという事実もあります。総理政府責任でこうした問題をとめていただきたい、子供たちの人権を守ってやっていただきたいのであります。  また、日本青少年研究所による日本とアメリカの中学生の意識調査によれば、学校が楽しくないということの理由にいじめを挙げる生徒はアメリカの六倍であります。いじめへの対応では、アメリカの四割がいじめがあればとめに入ると言います。しかし、日本では見て見ぬふりをするのが一番多いのであります。純真な子供社会からさえも小さな正義や小さな勇気が消えようとしております。いじめの内容では、相手の欠陥や弱点をしつこくいたぶる、そして仲間外れにするのが一番多いのであります。他人の人格や人権を大切にするという根本のところが欠落していると言わざるを得ません。  このままでは、日本の民主主義の基盤が揺らいでしまいはしないでしょうか。これは決して、国家意識とか愛国心とかいうたぐいの道徳の問題ではございません。これはまさに、政治においても、社会全般の風潮においても、弱者切り捨てのあり方が根強く、人権尊重の社会的、道徳的ルールが確立されていない我が国の現在の反映ではないでしょうか。総理はいかが思われますか。  今の意識調査は、日本の中学生の四人に三人は友達と遊ばないという驚くべき勉強中心生活に追い込まれていることも指摘しています。子供社会が崩壊し、幼児から塾産業とかかわり、高度情報化社会に生きる子供たちは、ばらばらにされ、孤立化させられて、受験勉強に駆り立てられております。これはまさに子供たちに対する社会全体によるいじめの構造と言わざるを得ません。ゆがんだ知育第一主義の中で、人間としての根本的な属性においてスポイルされた次代の国民を今私たちが育てているのであります。子供たちをこの過酷な現実から解放し、遊びやゆとりを取り戻させるため、今こそすべての力を合わせるべきときであります。臨教審で論議されている学校五日制も、この見地から私は歓迎いたします。また、子供の側に立って、その悩みの解決を助ける専門的なカウンセラーを大規模校からでもいいから配置することを始めてはいかがでしょうか。  第三は、教職員の資質の問題であります。  昨日、総理は、いじめの問題に対して、まず学校で先生がしっかりせよと言われました。しかし、社会のさまざまな矛盾を背負って学校にやってくる子供たちを前に、時には無力感に耐えながらも、教職員は、今日の教育の荒廃と言われているいじめや校内暴力など、そうした現実に必死に立ち向かっております。今の教育における困難や不満を、安易に教職員をいけにえにするような方向におしかぶせてはなりません。今は、教職員の努力を信頼し、励ますべきであります。その専門職としての自主性と創意を尊重すべきであります。総理、いかがでしょうか。  臨教審が論議している教員の向き不向きを見るという初任者研修制度や教職適性審議会などは、臨教審が改革を求めている教育の硬直化、画一化という問題を逆に強めていく有害なものと言わざるを得ません。資質の向上を言うのであれば、十分に自己研修ができる勤務条件を保障すべきであります。さらに例えば、今臨教審の中で論議されております自己啓発のための研修用の一年間の有給休暇制度一定の勤務年数を満たしたすべての教職員に適用すべきだと考えますが、いかがですか。  私が強調したいのは、教育を決して行財政改革の問題と同じに扱ってはならないということであります。  何よりも四十人学級の早期完結を急ぎ、三十五人学級を手がけるべきであります。本年度生徒減による教員定数自然減は何と八千六百七十五名になっております。この八千六百七十五名をもとにした財政運営をすれば実現は直ちに可能であります。今なお多く残っている、中学校で免許状がないのに免許外担任をさせられているこの現実を直ちに解消すべきです。子供たちの心身の正常な発育のために養護教諭を全校に配置し、大規模校には複数配置してやるべきです。学校事務職員や学校栄養職員を義務教育国庫負担法の枠外などにしてはなりません。小学校、特に大学級規模の学校に専科教員増が必要であります。こうした教育諸条件の配慮の上でこそ、個々の教職員の責任と自覚を私たち政治が求めることができるのではないでしょうか。総理並びに文部大臣に伺います。  なお、総理は昨年秋、ニューヨークのブロンクスビルの小学校を視察されております。そのとき、アメリカの個人差に応じた教育指導や、地域の教育評議会制度に感心された旨の報道を私は興味深く拝見をいたしました。日本でも、高度情報化社会の進展は子供たちの個人差を拡大、多元化しており、それに応じた個別教育を必要としております。もはや四十人学級でも対応できない状態であると私は思っております。学級規模、教育委員会制度など、日本教育との関連で御意見を具体的に御披露いただきたいのであります。  第四は、教育地方分権であります。  本来、地方分権主義は憲法の基本理念の一つであり、教育行政の基本であります。これは総理も御異論はないと思います。現行教育中央集権の象徴である教育長承認制度の廃止を初め、教育委員会制度発足時の初心に返り、公選制も含めた活発な教育委員会改革論議が必要と考えます。総理の御見解を伺います。  第五は文教予算についてであります。  昭和六十一年度文教、科学振興予算は四兆八千四百四十五億円、対前年比わずか〇・一%増であります。かつて文教予算は予算全体の一一%を占めていましたが、今年度ついに八・五%となりました。しかも、文教予算の八割近くが人件費でありますから、昨今のように一律削減が続きますと、六十八年度あたりで文教予算の事業費がゼロとなるように言われております。事実、既に私学助成を初め、地方自治体に対する人件費や施設費補助の削減、授業料の値上げなど、地方自治体や父母の負担増をもたらす予算となっております。年々子供の教育費がふえ、家計を大きく圧迫している事実を総理が御存じないはずがありません。一方、防衛費だけが六・五八%と突出している予算について国民は納得するものではありません。文教予算に対する基本的理念、増大する教育費の父母負担について総理のお考えを伺いたいのであります。  教育問題の最後に、総理みずからの使命と自覚されている教育改革について申し上げたい。  教育改革は、政治理念や時々の国家的必要によって論じられるものであってはならないと思います。あくまで今日の教育の現実と、その中の青少年像を深く正しく認識し分析することから出発すべきであります。さらに、今私たち論議している教育改革中心課題は、少なくとも二十一世紀における日本の国のあり方、また、それを担う人間をどのように育成するのかということであります。それは、憲法教育基本法の理念を正しく踏まえ、短期的でないトータルイメージについての国民的合意をつくることと教育改革は深く結びついています。  したがって、教育国家百年の計という見地から見て、場当たり的で拙速な教育改革は厳に慎まなければなりません。総理が戦後政治総決算の一つとして教育改革を自分の任期中に決着をつけるような問題ではございません。いま一度、以上の観点に立ち戻り、より広い国民的合意に基づくものとして完成させることが重要なのではありませんか。総理所信を伺いたいのであります。  次に、人権問題について伺います。  総理施政方針の中で、「自由と人権を基調とする市民社会の確固たる基盤が構築された」と述べておられますが、これは果たして事実でありましょうか。私たちの身の回りを見てください。障害者差別、部落差別、外国人差別、男女差別など、まさに深刻な人権侵害が山積しているではありませんか。先ほど述べた子供のいじめも、受験教育体制が生み出した差別構造による人権侵害であります。  わけても、一昨年、国の内外で耳目を集めた宇都宮病院事件などは、これが先進国の出来事かとの衝撃を与えました。国際批判にさらされた政府は、来春、精神衛生法を改正すると昨年秋の臨時国会予算委員会で言明をいたしました。しかし、事件に関する基本的な反省に基づき、国際人権規約及び国際最低基準となるであろうダエス報告、さらに、第三者による精神病院に対する指導監督機関の確立などに合致する改正を行うのかどうかいまだに不明であります。法改正の基本方向と内容についてお伺いします。  また、学校を卒業する精神薄弱児の雇用保障など、卒業後の公的な対応がほとんどなされておりません。親たちが深い悲しみに耐え、必死に頑張っていることに総理は思いをはせたことがおありでしょうか。総理、この子供たちの労働と生活の場をせめて中学校区単位にでもつくることを強く求めます。  次に、部落問題について伺います。  地域改善対策特別措置独に基づくこれまでの施策で、環境改善面を中心一定の前進を見ています。しかし、いまだに部落地名総鑑が出回るなど悪質な差別事件が後を絶たず、部落問題の根本的な解決にはなおほど遠いものがあります。生活、健康、教育という面での実態の改善は、これから本格的に取り組まれる必要がございます。一九六五年の同和対策審議会答申を踏まえて、この問題をどう解決されるのか、総理の決意をお聞かせ願いたい。  いま一つは、在日朝鮮人を初めとする在日外国人の人権であります。  外国人登録証の大量切りかえを迎えた昨年、外登法改正を求める世論が大きく盛り上がり、地方議会の決議は昨年十二月現在千二十五に及んでおります。この際、内外人平等の原則に立ち、指紋押捺義務、登録証の常時携帯義務の撤廃など、外登法の根本的な改正をすべきであります。総理の御見解を伺います。  総理は、国連加盟三十年、国連外交をさらに強化すべく決意を新たにすると言われております。アジア地域における国際人権B規約選択議定書加入国の数を御承知でしょうか。この際、我が国の国際的地位にふさわしい選択に立ち、速やかにこれを締結されるお考えはありましょうか。また同時に、経済活動のみに偏らず、真にアジア諸国との友好関係を築くために、同地域での人権擁護活動を支えるアジア人権センターの日本での設支援助をもお考えいただけないでしょうか。  最後に私は、我が国が、総理も言っておられる国際国家として真に誤りなき発展を遂げるためには、これまでの科学技術、経済偏重ではなく、人間の尊厳を承認し、同時に、平和と民主主義の土台でもある人権の重視こそが肝要であると思うものであります。人権先進国日本を目標に懸命の努力を続ける日本の姿こそ、世界から真の尊敬と信頼を受けることになるのではないでしょうか。総理の誠意ある答弁を望んで、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
  42. 中曽根康弘

    国務大臣(中曽根康弘君) 本岡議員にお答えをいたします。  まず、高校中退の問題でございますが、これはいろいろな理由がありますが、中退の生徒がふえてきていることはまことに遺憾でございます。やはり能力の問題とか適性の問題とか、自分たちの進路の問題とか、こういう点について十分行き渡った指導が行われることが大事であると思っております。ついていけないというような理由が中退の大きな理由になるのですが、なぜついていけないかということを分析する必要があります。それは本人の能力がそういう理由であるのか、家庭に理由があるのか、教え方にまずいのがあるのか、向かない者を強制している面があるのか、そういうきめ細やかな指導が私は必要ではないかと思うのであります。  大学のあり方につきましても、やはり第二次答申で今やろうとしておりますが、学部とか講座とか、教授のあり方とか大学院とか、あるいは大学間の協力であるとかあるいは国際化であるとか、こういう点について大学についても十分検討すべき面がございます。  それと同時に、入試制度の問題についても今検討しておるところでございますが、共通一次テストというものは一応やめて、そして共通テストということにしておりますが、私は、これはあくまで任意テストでなければならない、そう言っておるのであります。それと同時に、試験科目を減らすとか、あるいは試験科目の内容自体についてもいろいろな改良を加えるとか、あるいは受験機会をさらに増加させる、一回について三大学ぐらい受けられるようなチャンスをつくってあげなければいけない。しかも、前期、後期というような場合に、いろいろな大学をうまく組み合わせて入れてあげるという必要がございます。そういう諸般の問題について、今大学改革のためにいろいろ努力しておるところでございます。  高校入試については、偏差値の問題とかあるいは過熱した受験競争とか、そういうような面をめぐっていろいろ入試問題があるわけでありますが、学力偏重を改めるということ、あるいは選抜方法の多様化を行う、選抜尺度の多元化を行う、そういう意味において、都道府県がその改善に努めるように国としても指導しておるところであります。高等学校教育につきましては、特に能力とか適性、そういうものに応じて教育が行われるような学区制等についても配慮が必要であると考えております。  偏差値問題とかあるいは過熱した受験競争というものは、生徒の人間形成に好ましくない状況が出てきていることは歴然であります。そういう意味において、文部省をして通達を何回か山さしめまして、今その是正について全力を尽くしておるところでございます。  さらに、登校拒否の児童に対する精神病院入院の問題でございますが、医療上精神病院入院の必要性のないにかかわらず、登校拒否を理由ということで小中学生を精神病院に入院させることがあるとすれば、これは重大な問題であります。こういうことがないように精神病院等に対する指導を強化してまいりたいと思います。  いじめの原因については、やはり思いやりとかいたわりとか、心の大切さというものが見失われがちな教育内容やあり方が問題であります。政府としても、これらの点について、人権尊重というものを小さいときからはぐくむように学校教育を改革していかなければならないと思います。  その一つとして、子供の人間形成にとって自然との触れ合い、あるいは友人との交わり、あるいは興味を追求する努力とか、そういう点が非常に大事で、それがゆとりをつくるもとになると思っております。私たちは小さいときは原っぱでよく遊んだものでありますが、近ごろは遊ぶ原っぱもない。魚をとったりあるいは鬼ごっこをしたり石けりをしたというそういう原体験が子供には非常に重要であって、それが大きくなったときの直観力を養う基礎になっていると私は自分の経験で思います。そういう意味において、野外、自然に親しむ機会をできるだけふやすように学校教育の中に取り入れさしていきたいと考えております。  それからカウンセラーの問題は、私も大事であると思っております。今の先生方についても、教育相談に乗ってあげる方が必要でもあります。  それから週休二日制に伴いまして、学校教育についても、学校五日制というものも今教育課程審議会で検討しておりますが、それらの結論を見て我々は処理していきたいと思っております。  教員の自主性というものは非常に重要であります。教育ということは、やはり生きている人間同士のことでございますから、教える方の先生の人間性、その人間的な重量感、愛情というものが子供に影響して教育というのは成立すると思います。そういう意味において、校長のリーダーシップ、あるいは教員室における融和、協力、こういうようなものが実際は生き生きした教育をつくる上に大事でありまして、単に一片の通達でこういうものができるわけではない。そういう生きた教室なり教員室をつくっていくということが我々のねらいでなければならぬと思っております。  初任者研修につきましては、臨時教育審議会で検討中でございます。その答申を待とうと思います。  研修有給休暇制度につきましても、これは臨時教育審議会でいろいろな方策の中の一つとして検討しておるところでございます。  四十人学級の早期実現についても賛成でございまして、たしか昭和六十六年までにこれを完成するという予定で着実に進んでいると考えております。  さらに、アメリカのブロンクスビルの学校参観の所見でございますが、私が参りましたのは富裕地帯の学校であったせいもありますが、非常にゆとりのある教育でございました。教室の広さも先生の数も、非常にゆとりのある教室で、ちょっと日本と比較できないような感じがいたしました。しかし、やはり一人一人の子供について教師がその性格なり家庭をよく知っていて、そしてちょうどカルテを持っている病人を診ているように教師責任を持っているという姿は、非常にこれはうらやましいと思った次第であります。しかし、また一面において私たちは、子供のころを考えると、大勢の同級生がうんといて、そして芋を洗うようにがちゃがちゃ、がちゃがちゃやっているうちに、非常に好きなやっと嫌いなやつが出てきたり、集団的な陶冶というものがされていく、そういう面もあるので、余り少ないのもまたどうかという気も実はしたわけであります。  教育委員会については、教育行政の中枢でございまして、これがややもすれば硬直化しマンネリズム化していると私は思うのであります。これを生き生きしたものにする。教育長あるいはその事務局の組織、運営等についていろいろ工夫を凝らす必要があると考えております。  文教予算については、ともかくこれはできるだけ努力している分野でございます。防衛費との比較がございましたが、大体一般歳出に占める割合は一四%ぐらいです。防衛費がたしか六・何%ぐらいです。そういう意味におきまして、やはり教育に力を注いでいるということは御認識願いたいと思うのです。しかし、教育については父兄の現実の負担ということを考えなければいけないと思います。塾の費用であるとかいろいろな費用がかかっております。そういう面に対する配慮も我々は総合的に考えていく必要があると思います。  教育改革については国民全体の合意が必要であるということは、全く同感でありまして、いろいろ公聴会の開催とかあるいはヒアリングを行うとか、そういう面で幅広く意見を聞く必要があると思います。  精神衛生法につきましては、特に同意入院を中心としていろいろな問題が指摘されておりますが、国際的な意見もしんしゃくしつつ、入院患者の人権面の規定をよく見きわめまして、幅広く各方面の意見を踏まえて法改正に取り組んでいく考え方でおります。  精神薄弱児に対しては、在学中から綿密な職業指導を行って、各種の雇用助成制度を活用していくということは賛成であります。また、障害者による工場就職という面も各地で今行われて、私も数カ所見学したことがございますが、極めてこれは成績を上げております。そういう意味において、障害者のこれらの生産工場をふやしていくように、経済界ともいろいろ話し合って努力してまいりたいと思います。  同和問題につきましては、地域改善対策特別措置法の期限があと一年有余でございますが、かなり成績を上げていると私は思います。国民各層に対する差別解消のためにも、またその啓蒙のためにも今後努力してまいります。  外国人登録法の改正の問題は、これは韓国との関係その他でございますが、長期的かつ自主的な立場に立ち、かつ内外の諸情勢を見きわめながら自主的に検討を加えてまいりたいと思います。  人権B規約等の問題につきましては、アジア地域でB規約選択議定書の締約国は現在のところございません。また、個人の通報に基づく国際的な検討制度が有効に機能するかどうかは疑問な点もございます。しかし、国会の附帯決議も踏まえまして、今後締結に向けて努力してまいりたいと思います。  アジア人権センターの問題でありますが、人権を重視し、アジア諸国との友好を考え我が国としては、なかなか複雑な地域的情勢がありますけれども、貴重な御示唆と承って検討してまいりたいと思います。  我が国自体の人権擁護につきましては、民主主義の基本であり、一人一人の人権が確立するように今後とも努力してまいります。  残余の答弁関係大臣からいたします。(拍手)    〔国務大臣海部俊樹君登壇、拍手〕
  43. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) 総理大臣から大変行き届いた御答弁がありましたので、私は重複することを避けますが、文部省の立場で二、三補足的な答弁をさせていただきます。  高校の中退の問題につきましては、やはり中学校における進路指導と高校におけるきめ細かい個別指導に当面は配慮しますが、今年度予算で、中退者がその後どのような進路をとっていらっしゃるかを調査する必要もあろうと思いますので、予算措置を講じ、その調査をして、これを参考に施策を進めていくつもりでございます。  高等学校のあり方は、御承知のように九四%の同世代年齢が進学しておるのですから、いろいろな資質や個性や能力を持った生徒が集まってまいります。それぞれの適性に応じた行き届いた教育をしなければなりませんので、高等学校教育の問題は幅を広くしていくということも大切な要素だと思います。  入試の改革については、総理大臣のおっしゃったとおりであります。  また、御指摘の初任者研修制度、教職適性審議会につきましては、その趣旨は、新任教員に対して実践的な指導力を持って当たっていただきたい、それがねらいでありまして、私は、あらゆる段階で教員が資質を高める努力をする、その研修には意を用いていくつもりでありますから、御指摘の在籍教員の研修につきましても、文部省はただいま海外研修とかあるいは大学院の研修とかいろいろなことはやっておりますけれども、さらに具体策は別として、自発的な教師の研修の機会は与えるように考えていきたいと思っております。  最後に、第五次改善計画をただいま実施しております。先生御指摘の五種類について、四十人学級は六十六年度までに達成するつもりで全力を尽くしております。中学校の免許外担任、小学校の六学級専科教員の設置の問題は、今年度予算の要求のときに初めてその措置をとりました。これも六十六年度までに解消すべく努力をいたしますし、養護教諭の全校配置の問題は、極めて小さい学校を除きますと、この計画の終了年次には九八%の配置となるわけでありますし、最後に御指摘の学校事務職員や栄養職員につきましては、学校の根幹的な職員であると我々は大切に考えておりますから、いろいろな経緯はございましたが、明年度予算においても国庫補助の対象にするということで結果として措置をいたしております。御理解をいただきたいと思います。(拍手)
  44. 阿具根登

    ○副議長(阿具根登君) 高木健太郎君。    〔高木健太郎君登壇、拍手〕
  45. 高木健太郎

    ○高木健太郎君 最後の質問者としまして、私は、公明党を代表し、かつ国民会議の立場から、総理並びに関係大臣に若干の質問をいたします。  最初に、愛国心及び総理の言われる新国家主義についてお伺いをいたします。  総理は、よく愛国心あるいは国家という言葉を口になさいます。終戦後、新憲法のもとで自由と人権が重視されましてから、この言葉を口にすることはタブーと考えられたこともございます。しかし、愛国心とはもともと一つの感情的な言葉でありまして、肉親や郷土に対する愛情と同じように自然発生的なものであって、それ自身は美しいことであり、何らタブー視すべきものではないと考えます。ただ、郷土愛や祖国愛も、余りに強く偏狭に過ぎますと特殊的、排他的なものになりまして、他国に犠牲を強いるおそれが間々あることであります。日本人は、右脳の優位、すなわち情緒的に流れやすいと言われておりますからして、走り始めたらばやまないというようにならないように、総理は取り扱いをひとつ慎重にしていただきたいと思うのでございます。    〔副議長退席、議長着席〕  ソクラテスにとりましては、祖国というものは生みの親でありまして、絶対の権威としての存在でございました。しかし、今の大方の若者にとりましては、祖国も両親も祖先ももはやこのような絶対的な権威的な存在ではありません。その権威を無視し、あるいは愚弄することさえもあります。それだけ、真に心から畏怖し、あるいは敬愛する対象を失ったようにも見えます。  総理は、このような状態を憂慮されて、我々はともすれば国そのものを意識の外に置こうとしているとして、国家と遊離した個人の人権はないことを主張されたり、あるいは依拠すべき国家意識を目覚めさせようとしたり、あるいは個人の権利が国家の価値や要請と共存できる健全な民主主義国家建設に取り組むというような個人と国家関係との理想像を描かれ、また、日本人は軍国主義者たちのつくった超国家主義を否認したとき、同時に国家の概念も捨ててしまったとして、新しい価値体系を見出したいと思うというように言っておられます。ユダヤのことわざに、赤ん坊を洗った水を捨てるとき、赤ん坊も一緒に捨てたということがございますが、そのようにお感じになったのだろうと思います。  一方、総理のこのお気持ちに対しまして、総理を伝統回帰型の、あるいはまた戦前回帰型の新国家主義者と類型化する人がおられます。総理の言われる新国家主義とはどのようなものでしょうか、この際率直に御説明を願います。もし総理の言われるように、「私権は国益の優先のもとに制限し」とか、「伝統的な家族性国家建設」とかを目指しておられるとするならば、それはまさに古い国家主義であり、誤解を受けることになると考えますが、いかがでしょうか。  私は、今もお国自慢とかスポーツの国際試合とか、あるいは海外にあって日本を眺めたときに我々の心に去来するあの感情とかから考えまして、若い人々の間にも愛国心は案外の形で十分定着しているのではないかと考えるのであります。若者は若者なりに考え世界の中の日本を理解しているのではないでしょうか。愛国心を高揚するための無理な施策は、かえってアジアの諸国民の誤解を受けるだけであり、心証を害するだけであり、軍拡化を懸念させることになり得ると思うのですが、いかがお考えでしょうか。  このことに関連して、靖国参拝のことをお伺いいたします。  昨年、総理は、靖国神社の公式参拝に踏み切られました。戦没者の霊を慰め、平和を願う国民感情を代表する行為であったと総理は言っておられます。しかし結果は、中国国民の感情を強く害することになりました。日中両国の間にせっかく芽生えかけた友好感情を害したことはまことに残念なことでありました。中国にとっては、日中戦争は中国に対する日本の犯罪行為であり、その責任に対して日本政府が果たして真に反省しているかどうかという疑問が残っているように思います。一昨日、胡耀邦総書記は、総理が昨年秋の例大祭への参拝を中止したことは見識ある行動だと評価して、靖国問題は一応解決を見たということは両国にとって幸せなことでありました。今後も引き続き、総理はすべての靖国参拝を中止されますか、お伺いいたします。  また、日本の外交的配慮は欧米に偏りがちであるとのアジア諸国からの批判があります。今後、中国を初めアジア諸国への援助、貿易を含む国際協力に対する総理及び外務大臣の御方針をお伺いいたします。  次に、シャトルの件ですが、今回のシャトルの爆発事故世界に大きな衝撃を与えました。まず、米国民に対して皆様とともに深い哀悼の意を表するとともに、悲しみの中にも冷静にその原因の探求とさらに安全なる宇宙の開発に取り組もうとするアメリカのフロンティア精神に深甚な敬意を表します。  シャトルを初め、現代の航空機あるいは原子力利用等の平和科学技術は、まず多くの科学者の地道な創造的、長期的な研究を経て初めて巨大科学技術として完成いたしました。最初の研究者、関係スタッフは極めて慎重でありますが、成功の積み重ねとともに安易に流れる傾向は否むことができません。日航の事故もその一つであると言うことができます。巨大科学技術の発展の陰に潜むこのような危険な因子を防止するために一定制度設置が必要と思いますが、総理の御見解をお伺いいたします。  次に、生命倫理に関するもののうち、主として脳死と臓器移植についてお尋ねいたします。  一昨年、私が、医学の進歩に伴って従来の生命倫理に関する概念の再検討を要求したことに対しまして、時を置かず、生命と倫理に関する懇談会及び脳死に関する研究班を設置されたことに対しては高く評価いたします。研究班は、慎重で広範な調査と研究の結果、昨年十二月、最終報告を厚生省に提出いたしました。これによって脳死判定を誤りなくすることができるようになりましたが、脳死を個体死とするということには触れておりません。  昨年末の世論調査によりますと、お医者さんの八割は脳死は死としてよい、一般の人も四割程度がそのように認めております。また、心臓移植を認めてもいいではないかという人は、一般の人の六割があります。このように割と多いわけでございますけれども、しかし一部の医師の中には強い反対もありまして、昨年脳死状態で膵臓と腎臓の移植手術をしました医師は、殺人罪で告訴されたまま、まだ解決されておりません。  ここで私、誤解を解くために、一言脳死の概念について申し上げたいと思います。  脳死の概念は、皮肉にも医学の進歩によってもたらされまして、最近の交通災害等による死亡例の増加によりまして実際上の問題となってきたものでありますが、全死亡例のわずか一%にしかすぎませんので、残りの九九%の人はこれまでどおり心臓死で亡くなるということになるわけであります。また、脳死は植物状態とは全然違います。フランク永井さんは初めから脳死ではなかったのであります。さらに、たとえ脳死に陥りましても、医師は一方的に脳死を決定するということではなくて、遺族に十分時間をかけて説明をして、納得を得た上でなければ死というふうに決定をいたしませんし、遺族の希望があれば心臓の停止に至るまで人工呼吸を続けるのでございます。これまでの脳死による死の決定も、すべてこの手続によって行われております。また、脳死と臓器移植とは全く別個のことでございまして、本人や遺族の承諾があったときに限り移植を行うものでございます。  以上のような前提条件のもとに、次のことをお尋ねいたします。  国民のコンセンサスを得ると厚生大臣は言われておりますが、しかし実際問題として、合意とは国民の何%をもって合意とするのか、国会において十分討議をするとしても、何%の合意があればよいと、問題がないとするのか。また、国民合意が得られないままに、脳死状態での移植に踏み切らざるを得ないということが多いと思われますけれども、その際、嘱託殺人とか自殺幇助として告発されることも絶無ではないでしょう。その判決の幾つかが出るまではこのまま放置されるかどうか。正常状態における本人の生前の意思があれば、その人の死ぬ権利を認めるのかどうか。以上、幾つかの点につきまして厚生、法務両大臣の御所見を承りたいと思います。  コンセンサスが得られて新しい死の概念が定着することは望ましいことですけれども、立法化の場合と同じ工うに、自由な研究や医療の発展が阻害されるという反論もございます。そうすると、結局、死の決定や移植の可否は従来どおりケース・バイ・ケースに医師の判断に任せた方がよいとお考えでしょうか。しかし、それによって起こる混乱にはどのように対処されますか。以上のように種々の問題はあっても、現時点においては、少なくとも心臓・肝臓なども移植できるように移植法を改正されること、現在何の規定もない臓器の摘出から移植に至るまでの費用の分担、組織適合反応の検査やコーディネーターの人件費の問題は早急に解決すべきものだと考えますが、厚生大臣の御所見をお伺いいたします。  人間にとりましては、死というものは避けることのできない現象でございます。病院で死ぬことが多くなってから、ますます多くの人は死を知らなくなりました。欧米においては、既に早くからサナトロジー、いわゆる「死の教育」というものが中高教育において行われていますが、それは不意に来る死の現実と悲しみに耐える、そのような教育をするのが目的でございます。生命倫理懇の最終報告におきましても、生死に関する国民のイメージを変える着実な方法は生命や死についての教育であると言っておられます。教育現場の荒廃が叫ばれる時代に当たりまして、生死の教育は道徳教育の基本としても重要であると思いますが、文部大臣の御所見を承りたいと思います。  医の倫理の問題は、医学の進歩とともにますます複雑になりまして、通常の講義ではもうとても追いつけなくなりました。そして、大学や医療機関におきましてはそれぞれ別個に倫理委員会をつくっておりますが、その方の横の連絡は全くございません。これに対して政府は連絡会議等を設けるおつもりはございませんか、お伺いを申し上げます。  また、現在、医歯学の年前卒後教育の中に医の倫理の教科が全然ございませんが、それはお置きになる気持ちはございませんかどうか。生命倫理懇においては、延命だけを目的としたこれまでの終末医療の見直しということを強く求めております。アメリカやオーストラリアの幾つかの州におきましては、安楽死が既に州法によって認められております。差し迫る高齢化社会に対しまして、倫理面の上からも、医療費の面からも真剣に検討されるようにお願いをいたしたいと思います。厚生大臣の御所感を承りたいと思います。  老人医療に対しましては、自己負担の分がふえるというような提案がされております。このことは、老人診療の抑制につながると思いますし、特に外来の負担をふやすということは初診物療をおくらせることになりますので、疾病を慢性化させて、政府提案の目的とする医療費の節減にはならずに、一文惜しみの可知らずというようになるのではないかということを心配するのでございます。少なくとも初診料だけは思い切って下げてやるというふうにした方が医療費の節減にもつながるのではないかと思うのでございますが、厚生大臣、いかがお考えでございましょうか。  以上をもちまして私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
  46. 中曽根康弘

    国務大臣(中曽根康弘君) 高木議員にお答えをいたします。  非常に専門的な深い学殖のもとに御質問をいただきましたので、お答えになるか、十分であるかどうか甚だ疑問でございますが、お答えをさせていただきます。  私は、新国家主義という言葉を自分で言ったことはないのであります。私の言動をとらえて、ジャーナリズムがそういうふうにつけているのであります。この点は誤解のないように。私は新国家主義者というふうに考えておりません。また、そういう表現が適当であるとは思っておりません。仮に名前をつけるとすれば、国民主義者という方がまだいい、そう思っておるのであります。  要するに、国家というのは自然的な文化的な歴史的共同社会であり、それに対する愛着、自然の愛情というものが愛国心である、そう考えています。そういう共同社会を構成するにはいろいろなやり方が歴史上ございましたが、基本的人権を中心にする自由主義、民主主義というやり方が今までの経験から見てやはり最善のものであろう、ただ、これも運用の仕方いかんにかかってきている。そういうように考えておりまして、日本が過去において、戦争前におきまして犯したいろいろな過失については、よく反省もし、また将来我々がこの国家をさらに経営していく上についての戒めとしていかなければならない、そう考えておる次第でございます。  それから我々の愛国心というものを言うことがアジア諸国に対する軍拡の懸念や何かを呼ぶのではないかという御疑問が一部ありますが、そういう御心配は今はないと思っております。それは、日本の防衛に関する我々の政策をかなり丹念に各国に御説明申し上げ、その後日本国内における民主主義の発展、あるいは文民統制の確保されている状態、ジャーナリズムの発展、こういうようなものを見まして、東南アジア、アジア諸国における誤解や偏見は非常に薄らいできて正常化している、今のような防衛の政策、原則を貫いていけば心配はない、そう考えております。  靖国神社に対する参拝も、これは戦没者を追悼する中心施設に対して、私は総理大臣として、宗教色をとらないで、そして追悼し、かつ平和を誓ったと、そういう素直な、すらっとした気持ちでやっておるのであります。この点はぜひとも御理解をいただきたいと思う次第でございます。  残余の答弁関係大臣からいたします。(拍手)    〔国務大臣安倍晋太郎君登壇、拍手〕
  47. 安倍晋太郎

    国務大臣(安倍晋太郎君) アジア諸国を重視する外交を進めるべきであるという御意見でございます。  まさにそのとおりでございまして、私も、今回の外交演説におきまして、まさにアジア外交は一つの転機としてこれをとらえて重点的にこの外交を展開したいということを申し上げたわけでありまして、我が国はアジアの一員でありますから、アジア諸国との友好協力関係を増進させて域内の開発途上国の発展に協力することは、我が国外交の積極的展開の大前提であります、主要な要素である、こういうふうに考え推進をしなければならぬと思います。  また、これまでも、実は我がアジア外交はいろいろと成果は出てきておると私は思っております。こうした成果を踏まえながら、さらにいろいろな面で反省をしながら、ただ経済協力といった経済面からの協力だけではなくて、人と人とのつながりであるとか、あるいは心と心のつながりといったものを大事にした協力をしていかなければならぬと考えております。また、やはりアジア外交を考えるときに、その歴史と教訓に学ぶという我が国の対アジア外交の原点を踏まえた平和友好の促進を重視しなければならないということを強く感じておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣今井勇君登壇、拍手〕
  48. 今井勇

    国務大臣(今井勇君) 私に対します四つの御質問につきましてお答えいたしたいと存じます。  まず、脳死の問題についてでありますが、脳死をもって人の死とすることができるかということにつきましては、国民の生命観や倫理の問題に大きくかかわりますので、この問題に関します国民的合意につきましては、広範な見地からの論議を尽くした上で、国民に十分な理解がなされているかどうかということを判断する必要があると考えます。したがいまして、それまでにおきます御指摘のような死にかかわります諸問題につきましては、その時点におきます国民合意のもとで対応するべきものと考えております。  また、死ぬ権利の問題につきましても、人間の根源的な感情や倫理観に大きくかかわる問題であり、法的な問題等もありますので、慎重な検討が必要であると考えております。  次に、臓器移植についてでありますが、心臓、肝臓等の移植につきましては、その摘出が生命にかかわり、脳死をもって人の死とすることができるかという問題に密接に関係をいたしますので、脳死についての国民的な合意が得られることが前提であると考えております。  また、臓器移植に関する費用等の問題につきましては、現在、腎移植などに医療保険を適用しておりますが、その他の臓器の移植につきましては、その実施についての国民的合意の確立を待って医療保険の取り扱い等を検討してまいりたいと考えております。  次に、終末医療についてでありますが、そのあり方については、近年の医学の進歩、高齢化の進展に伴って医療の重要な問題となっていることは十分認識しております。この問題は、国民一人一人の価値観にかかわるものであり、医学的な判断とともに、倫理的にも法的にも極めて難しい問題をはらんでおりますので、慎重に対処してまいりたいと考えております。  最後に、老人医療についてのお尋ねでありますが、今回の一部負担の引き上げは、健康への自覚と適正な受診、世代間の負担の公平などの観点から、必要な受診を抑制しない範囲でお願いをいたそうとするものでありまして、ぜひとも御理解いただきたいとお願いをする次第でございます。(拍手)    〔国務大臣鈴木省吾君登壇、拍手〕
  49. 鈴木省吾

    国務大臣鈴木省吾君) 先般法務大臣に任命されました鈴木省吾でございます。皆様方の格別の御指導をお願い申し上げる次第でございます。  高木議員の御質問にお答えいたしますが、ただいま厚生大臣からおおむねお答えがあって重複するわけでございますが、法務省という立場から若干補足をさせていただきます。  脳死の問題につきましては、私はやはりこれは基本的に医学的な問題だというふうに考えております。医学的に合意が得られた上で判断をしなければならない。ただ、臓器移植等について訴訟も起きておるわけでございますが、そういう問題をそのままにほうっておくのかというようなお尋ねも含まれておると思いますけれども、これもやはり医学の分野で十分な御論議が尽くされまして、大方の合意ができまして、その上で自然に国民考え方が決まったところで対処していった方がよかろう、こういうふうに実は考えておる次第でございます。  また、そういうことに関連いたしまして、立法問題も含めて何らかの措置をする必要がないのか、こういうお尋ねでございましたけれども、これもさような観点から慎重に国民合意を得た上でと、こういうふうに考えております。  なお、個人の死ぬ権利についてのお尋ねがございました。  これは刑事法から見れば、先ほどもお触れになられました人工心臓等を取り外した場合に、延命治療を打ち切った場合に犯罪になるのかどうか、こういうお尋ねでございますが、この問題は、医療行為のあり方として社会の通念上許される限界と関連する問題でありますから、このような限界は、いろいろな事情を総合的に判断いたしまして、御指摘のような御本人の意思はそのような事情の一つとして考慮されるというふうに申し上げておきたいと思います。  以上でございます。(拍手)    〔国務大臣海部俊樹君登壇、拍手〕
  50. 海部俊樹

    国務大臣(海部俊樹君) お答えいたします。  生と死の問題は、人間存在の根本にもかかわる非常に次元の高い哲学的な大切な問題だと私も受けとめておりますので、文部省といたしましては、小学校、中学校、高等学校、それぞれの児童生徒の発達段階にふさわしい、そういった考え方で道徳教育の中で生命の尊厳について指導していくようにただいま取り組んでおりますけれども、先生の御指摘のように、一層の充実が大切である、このように私も考えております。  医の倫理の問題につきましては、医学、医療の急速な発展によりまして、医の倫理の問題をしっかりと御検討願わなければならぬ場面が出てきておると思います。文部省は各大学に御指摘のように倫理委員会の設置を要請いたしまして、多くの大学でこれにこたえておってくれますが、医学界全体の問題として、さらに学会等を通じて議論が掘り下げられ、深まっていくことを私は期待をいたしております。  なお、医学教育の中に医の倫理に関する教科を入れてはどうかという御指摘でありますが、ただいま医学教育全体の中で医の倫理についての教育には各大学は配慮しておりますし、医師としての人格の陶冶に努めることも肝心だと思います。また、多くの大学では医学概論等の中で特に医の倫理について教育を進めておると聞いておりますので、さらに一層の徹底を要請してまいるつもりであります。(拍手)
  51. 木村睦男

    議長木村睦男君) 答弁の補足があります。中曽根内閣総理大臣。    〔国務大臣中曽根康弘君登壇、拍手〕
  52. 中曽根康弘

    国務大臣(中曽根康弘君) 答弁漏れがありまして失礼いたしました。  巨大科学技術推進上の留意点に対する御質問でございます。  まず、米国のスペースシャトルの今回の事故に対しては、改めて哀悼の意を表したいと思います。  科学技術の進歩は人類に大きな福祉を与えたわけでございますが、施政方針でも申し上げましたように、科学技術が文化を覆い尽くすのでなくして、文化の一部分として科学技術を位置づけなければならない、これが基本であると私は思っております。しかし、この科学技術を推進する上には、今までの歴史から見ましてもこれは失敗の連続の上に成り立ってきているものであります。この失敗を恐れては科学技術は前進しないという状況であると思います。なぜなれば、未知の分野に新しい知識を求め、発見をし続けていくのが科学技術の道であるからであります。そういう意味において、湯川さんも科学技術者は孤独の旅をするということをおっしゃっておったのを思い出した次第でございます。  しかし、最近はコンピューター等の発明等によりまして、ややもすればそのようなハイテクの機器に人間が頼り過ぎるという危険性なきにしもあらずだと思います。特に、医学の分野におきまして非常に機器が発達してまいりましたので、よく検査づけとか何か言いますが、そういう面に頼り過ぎるうらみはないか、そのほかの科学技術につきましても、コンピューター万能の幻想に取りつかれてそれに頼り過ぎはしないか、そういう点を我々は大いに恐れなければならぬと思うのであります。  そういう意味におきましては、これらに対する研究管理、それから技術チェックというものをそれほど万能であると信用しないで、何重にも、そして何回も重ねて繰り返し繰り返しやる必要があるのではないか。成功すればするだけ安心感が出てまいりますので、それだけ危険性があると思います。これは、原子力についてもあるいは新幹線についても、あらゆるものについて言えるところでございまして、事故がないからといって安心してはならない、そのように戒めてまいりたいと思う次第でございます。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)
  53. 木村睦男

    議長木村睦男君) これにて質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十三分散会      ―――――・―――――