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1986-05-13 第104回国会 参議院 農林水産委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年五月十三日(火曜日)    午前十時開会     —————————————    委員の異動  五月十一日     辞任         補欠選任      稲村 稔夫君     赤桐  操君      中野  明君     藤原 房雄君  五月十二日     辞任         補欠選任      谷川 寛三君     出口 廣光君      坂元 親男君     上田  稔君      赤桐  操君     稲村 稔夫君   出席者は左のとおり。     委員長         成相 善十君     理 事                 浦田  勝君                 北  修二君                 星  長治君                 菅野 久光君                 刈田 貞子君     委 員                 上田  稔君                 岡部 三郎君                 熊谷太三郎君                 小林 国司君                 坂野 重信君                 出口 廣光君                 初村滝一郎君                 水谷  力君                 稲村 稔夫君                 山田  譲君                 塩出 啓典君                 下田 京子君                 関  嘉彦君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        農林水産大臣   羽田  孜君    政府委員        農林水産大臣官        房長       田中 宏尚君        農林水産大臣官        房審議官     吉國  隆君        農林水産省経済        局長       後藤 康夫君        農林水産省畜産        局長       大坪 敏男君        林野庁長官    田中 恒寿君        水産庁長官    佐野 宏哉君    事務局側        常任委員会専門        員        安達  正君    説明員        大蔵大臣官房企        画官       保坂 篤郎君    参考人        農林中央金庫理        事長       森本  修君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付) ○農林中央金庫法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付)     —————————————
  2. 成相善十

    委員長成相善十君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  農林中央金庫法の一部を改正する法律案の審査のため、本日、農林中央金庫理事長森本修君を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 成相善十

    委員長成相善十君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 成相善十

    委員長成相善十君) 農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する法律案及び農林中央金庫法の一部を改正する法律案、以上両案を便宜一括して議題といたします。  両案につきましては、既に趣旨説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  5. 山田譲

    山田譲君 二つ法律審議に入る前に、非常に関係の深いことでありますから、それをまず大蔵省の方にお伺いして、その後に法案の審議に入りたいと思いますから、よろしくお願いします。  それは、最近言われておりますように、この二つ法律説明のところでも言われておりますけれども、いわゆる金融自由化ということがよく言われていますね。ある程度のことはわかるような感じもするのですけれども、多少細かくいろいろ調べていきますと、難しい問題がいっぱいあるようなんです。そこでまずお伺いしたいのは、一体金融自由化というのはどういう内容があるのか。簡単じゃないと思うし、いろいろあると思うのですが、こればっかり審議しているわけじゃありませんからある程度で結構でありますが、まず俗に言われている金融自由化とは何であるか、こういうことをまず最初にお伺いしたいと思います。
  6. 坂篤郎

    説明員坂篤郎君) 金融自由化と申しますものの中には、ただいま先生おっしゃいましたように、いろんなものが含まれておりまして、一言で申しますのはかなり難しいのでございますが、具体的に申し上げますと、例えば大蔵省で一昨年出しました「金融自由化及び円の国際化についての現状と展望」というパンフレットというか、基本的な政策を述べたものがございますけれども、例えばその中の項目で見てみますと、「金利」というのが一つございまして、それから「金融資本市場」、つまり市場という観点でとらえた措置についてでございまして、それからあとは「業務内容」、これは金融機関業務をどういうふうに緩めていくかという問題でございます。そういうのがございまして、それからあと業際制度問題」と言われているものがございます。また、同じ時期に出ました円・ドル委員会報告書というのがございますが、これを見ますと、例えばやはり「金融資本市場自由化」という項目でございますとか、それから外国金融機関参入、円・ドル委員会の方は特にアメリカとの関係でございますので、外国金融機関参入日本市場へのアクセスといったようなこと、あるいはそのほかにユーロ円の話、外国為替法関係、そういうのが載っております。  今申し述べましたような項目に大ざっぱに分けることができるのだろうかと思いますが、その中の一番中心的なものと言いますのは、一番最初に申し述べました金利関係ではなかろうかと思っております。この預金金利自由化につきましては、基本的な我々の発想といたしましては、信用秩序に大きな混乱をもたらすことがないようにしていかなくてはならない、そのためには大口金利をまず最初自由化いたしまして、それから順次小口金利の方に移行していく、自由化をだんだん進めていくというふうにやっていこうということで、基本的な方針を持っておるわけでございます。  このような考え方に基づきまして、既にただいま譲渡性預金というものがございますが、これは既に昭和五十四年に導入されたものでございまして、当時は十億円だったと思いますが、大口のものにつきましてかつ譲渡性のある、普通の定期預金というのは譲渡性がないわけでございますが、譲渡性のあるものにつきましては金利が自由である、ただしその期間でございますとか、あるいはその発行枠とかいったものに枠を設けた。また若干違いますが、昨年の春には市場金利連動型預金というのも導入されました。これは御承知かと思いますが、五千万円以上のものにつきましては、ただいまちょっと御説明いたしました譲渡性預金金利に連動した金利をつけるというやり方でございます。これらにつきまして、その後導入されてから数回にわたりまして発行枠を広げるとか、あるいは最小預入単位を下げてまいりますとかいうふうなことをやってまいりました。さらに、昨年の十月には預入単位十億円以上の大口定期預金金利、これは今CDとかMMC譲渡性預金とか市場金利連動型預金と違いまして、要するに定期預金でございますから銀行の一番標準的な商品でございますが、それの非常に大口のものにつきましては、金利を自由にしてつけてよろしいというふうにいたしました。この四月には十億円を五億円まで下げまして、さらに秋には三億円ぐらいに下げるというようなことを考えているわけでございます。  このようなMMCでございますとかCDでございますとか、あるいは大口定期預金最小発行単位を小さくしていくとかいったようなことで、順次大口預金金利についての自由化を進めまして、六十二年の春ぐらいまでにはほぼ大口預金金利については自由化を完了しようというふうに考えているわけでございます。  また、小口預金金利につきましては、これは預金者保護の問題でございますとか、あるいは郵便貯金とのトータルバランス環境整備を図りながら具体的諸問題について検討を進めまして、大口に引き続いて自由化を進めていこうというふうに考えている次第でございます。  これが第一番目の金利について概要を申し上げたわけでございますが、第二番目に、いわゆる金融資本市場という観点からどのようなことがあるかということでございますけれども、ただいま御説明いたしました譲渡性預金というのは、例えば譲渡性でございますから売買されるわけでございまして、これは譲渡性預金というものを導入して、かつそれがだんだん大量に発行されてまいりまして、そうなりますと、いわば今までなかった短期金融市場一つできるということでございまして、これ自身短期金融市場整備拡充のかなり大きな要因の一つになったわけでございます。また、そのほかにも昨年の六月に円建てBA市場というようなものも創設いたしました。さらに短期国債発行も、これも短期国債市場ができるという意味で、短期金融市場整備拡充につながるというようなことがございます。また、今後とも短期金融市場の一層の整備拡充を図っていこうということを考えているわけでございます。  第三番目の問題でございますが、業務自由化というのがございまして、これは例えば金融機関が、昔でございますと、いわゆる定期預金普通預金とかというふうに決まったものしか商品として出していなかったわけでございますけれども、最近は御承知のように、いろんな組み合わせ商品でございますとか、あるいは預金にいたしましても、外貨預金でございますとか、いろんなものをそれぞれ多種多様な商品金融機関が出すようになっておりまして、こういう新商品につきましては、大蔵省といたしましては、基本的には顧客のニーズにこたえようとしている経営者の自主的な努力というか、アイデアでございますとか努力、そういったものを尊重することにいたしております。そういうのと相まちまして、このごろは先ほど申し上げましたように、非常にさまざまな新商品が出てきているわけでございます。  また、業務の問題につきましては、業際問題あるいは制度問題といったようなもの、業際問題というのは、一番よく申しますのは、例えば銀行証券業際問題といったようなことがあるわけでございますが、それとも関連するものでございますけれども国債ディーリング金融機関がやるようになったという問題でございます。これにつきましては、例えば昨年の三月にディーリング認可対象金融機関の範囲の大幅な拡大をやりました。また、ことしの三月にも拡大をまたいたしたところであります。また他方証券会社に対しましては、先ほど申し上げました譲渡性預金CDの流通、取り扱いを認めることを昨年の三月に決定いたしました。現在は証券会社もやっておる。このようないわば相互乗り入れみたいなことが大分進んでいるということがございます。  金融自由化というのは非常に広いものでございましていろんなのがあるんでございますけれども、かいつまんで申し上げますと以上のようなことかなというふうに思っております。
  7. 山田譲

    山田譲君 非常に詳しくお話をいただきましてありがとうございました。いろいろあると思うんですけれども一つ聞きたいのは、そういう自由化をするということは一体何が目的かということなんです。その目的はどうなんでしょうか。
  8. 坂篤郎

    説明員坂篤郎君) 一番大きな目的は、金融自由化をいたしますといわば市場原理に基づいた競争が活発化いたしますし、他方市場原理に基づきましていわゆる資源配分がうまくいく。そういう問題が根底にあるわけでございまして、端的に言いますと、我が国経済効率化発展に資するものではないかというふうに考えているわけでございます。また同時に、私どもといたしまして、金融自由化我が国世界経済発展に貢献していく上でも有意義なものではないかと考えておりますが、他方、やみくもに進めるようなことがありますと、信用秩序維持でございますとか預金者保護とかいうことに問題を生じてもいけませんので、信用秩序維持あるいは預金者保護等につきましては、環境整備他方で進めつつ金融自由化を着実に進めてまいりたいというふうに考えております。
  9. 山田譲

    山田譲君 そうすると、金融自由化というのは、一つ国内的にいろんな自由化をして、そして国の経済発展に役立たせようということと同時に、もう一つは、国際的に自由化を迫られているというか、国際的に見てどうにも自由化をせざるを得ないというふうな情勢もあるんじゃないかと思うんです。そうすると、どちらが必要性が強いか。現在やらなきゃいけないという理由、アクションプログラムなんか自由化ということを言っていますけれども、そういうのを見ると、これは国内というよりも、国際的に海外からの圧力というか、そういう面からいって自由化しなきゃいけない、こういうことがあるように思うんですけれども、その二つのどっちなんですか。
  10. 坂篤郎

    説明員坂篤郎君) どちらかと申されますとなかなか難しい問題でございますけれども、幸いなことにと申しますか、諸外国からも、特にアメリカ、ヨーロッパから金融資本市場自由化を非常に強く求められておることは事実でございまして、そのような要請にこたえる必要というのも私どもとしても感じているわけでございますが、非常に幸いなことに、もともと我が国自身のために金融資本市場自由化というのは有意義であると考えておりまして、それが両方とも方向がちょうどうまく合っているということでございまして、特にどちらのためにということではないかと思いますが、基本的には、そういう意味では、いずれにしましても、国益の観点から結構なことではないかというふうに私どもとしては考えているわけでございます。
  11. 山田譲

    山田譲君 それは国際的にうまくいけば国内的にも当然よくなるだろうと思うんですけれども、さしあたり自由化して外から有力な銀行がどんどん入ってくる、こういう場合に、そういった銀行国内的にも自由化されていませんというと十分に活躍ができないというふうなことで、外国の強い銀行が入ってきた場合に、日本金融というふうなものは、どちらかというと、今まで温存されていたものがそういう荒波の中にほうり出されるような格好になりますから、相当な打撃を受けるんじゃないかと思うんですけれども、そういうことは心配されませんか。
  12. 坂篤郎

    説明員坂篤郎君) 少なくとも今までのところ見てまいりますと、我が国におきまして、外国金融機関の存在というのは余り大きなものではございません。そうかといって、大蔵省あるいは政府外国金融機関を差別しているとか、そういうことは一切ございませんで、完全に平等に扱っているわけでございますけれども、ある面では平等以上に扱ったりしているところがあるのでございますが、それでもそれほどの大きなシェアとかいうものを持っておるわけではございませんで、我が国金融機関の能率と申しますか競争力と申しますか、あるいは金融市場全体の効率性と申しますか、そういうのはかなり高いのではないかというふうに私ども思っております。当面のところ、少なくともこれまでのところ、外国金融機関による我が国金融機関に対する打撃でございますとか、そういうことについては、特に憂慮しておるということは余りございません。
  13. 山田譲

    山田譲君 そうすると、すごい外国銀行日本に来て、あるいは完全に自由化されたとしても、日本金融機関というものはそれに十分に対抗し得る、それは日本国内でもいろいろな強弱の差はあるでしょうけれども、全体として見た場合にはそう心配はないんだというお考えですか。
  14. 坂篤郎

    説明員坂篤郎君) おおむね御指摘のような感じを持っております。
  15. 山田譲

    山田譲君 そうすると、その次に国内の問題として、国内的にも割と弱いというか弱小の金融機関というものはたくさんあると思うんですけれども国内的にはどうですか。
  16. 坂篤郎

    説明員坂篤郎君) 国内的には金融自由化が進めば競争が激化するというようなことがあろうかと思っております。その中で経営がだんだん難しくなるというか苦しくなるというか、あるいは経営者としてもさらに御苦労されるようなことというのも、それは出てくることもあり得るかというふうに考えております。
  17. 山田譲

    山田譲君 これは今言えと言っても無理かもしれませんけれども、そういうスピードが余り急激にやりますと、国内的に特に小さい金融機関が非常な打撃をこうむる。こういうことだろうと思いますから、大蔵省としてはそう急にやるのじゃなくて、徐々にやっていこうというお考えのようですけれども、大体のめどとしていつごろ、何年ぐらいでもって完全に日本国内金融機関自由化をされよう、こういうふうに考えていらっしゃるか。もしお考えがあれば聞かせていただきたいと思います。
  18. 坂篤郎

    説明員坂篤郎君) 私ども基本的なやり方としまして、割合近く講じようとしている措置につきましては具体的にいつというようなことを発表しているわけでございますけれども、やや遠いこと、やや中期的なことにつきましてはその方向だけを示しまして、具体的な内容でございますとか、あるいは措置とかということにつきましては、歩きながら若干考えるという面がございまして、やや中期的なことにつきましては、私どもといたしましても固まった案も持っておりませんし、また当然のことながらそれも発表もしてないというふうなことでございます。  実は、ただいま御質問のいつまでに完全に自由化するのかという問題につきましては、すぐそばというわけではございませんので、まだ私どもといたしましても具体的にいつといったようなことは持ってない状況でございますが、ただ、例えば大口預金金利につきましては、六十二年、来年の春までに自由化を完了するというようなめどは持っております。
  19. 山田譲

    山田譲君 しかし、将来の方向としては、完全に自由化をしていこうということは大体もう決めてあるわけですか。
  20. 坂篤郎

    説明員坂篤郎君) 実は小口預金金利につきましては、自由化をするという方向は既に決めておるわけでございますけれども、じゃ具体的にどういうふうにするか、あるいは最終的な形として小口預金金利につきましてどういう姿を想定するか、そういうような問題も含めまして、ただいま金融問題研究会大蔵省諮問機関でございますが、そこで研究をしていただいているところでございますので、まだ確定的な最終的な姿、つまり完全にすべて自由化してしまうのか、あるいは何か多少のあれが残るのかといったようなことにつきましては、まだ確たるものは持っていないというところでございます。
  21. 山田譲

    山田譲君 今お話に出てくる大口とか小口ですね、これはどのぐらいをもって大口と言うか、どのくらいから小口と言うか、その問題をお聞かせ願いたいということ。  それから聞くところによると、私よくわかりませんけれども日本専門的な金融機関が非常に多い。そういうものがこの自由化によってだんだんその専門性が失われていくというふうな傾向がありはしないか、こういうことはいかがですか。
  22. 坂篤郎

    説明員坂篤郎君) 実は、大口小口と申しますのは若干漠然とした概念でございまして、幾らというようなことは特にないんでございます。と申しますのは、一つには、先ほど申し上げましたように、大口に引き続きまして小口についても自由化を進めるというふうになっておりまして、いわば続いていくような状況にあるものですから、特に何千万円とか何百万円とかというふうに決めたものはないわけでございます。したがいまして、人によって随分いろいろ違いがあろうかと思います。  私ども内部でもここまでが大口というようなことは特にないわけでございますが、例えば大口定期預金につきましては、ただいまは五億円がその最小預入単位になっておりますが、これをことしの秋に三億円にいたしまして、さらに来年の春には例えば一億円とか、それくらいまでには下がっていくのじゃなかろうか、これはまだ決めておりませんが、そんなような感じでございます。それからCDにつきましては既に今一億円が最小単位になっております。それからMMCにつきましては今五千万円というふうになっておりまして、そういったような数字から何となくイメージが出てくるといったようなことかと思います。  それから二番目の御質問でございますが、いわば専門金融機関制度とでも申すんでございましょうか、そういうものはどうなっていくのかということでございますけれども、御承知のとおり、我が国金融制度はいわゆる普通銀行、例えば都市銀行と地方銀行でございますが、そういうもののほかに長期金融専門機関中小企業専門機関、というのは例えば相互銀行でございますとか信用金庫でございますが、そういったものが存在しておりまして、いわゆる専門金融機関制度といったふうに呼んでおりますけれども、これが御指摘のように経済環境変化でございますとか、あるいは運用面変化でございますとか、かなりだんだん業務の質が似通ってきている、同質化してきているのではないかということは確かにあるようでございます。今後の金融自由化が進みますと、そういう同質化みたいなのもだんだんまたさらに進んでいくということも考えられるわけでございますけれども、特に行政の仕切りから言うと、だんだん似てくるということがあるわけでございますが、こういう専門制度がどうあるべきかにつきましては、これから預金金利自由化でございますとか、国際化でございますとか、あるいはその業務がどういうふうに変わっていくかとか、そういったことを見ながら、またそういう制度がどうあるべきかという観点からも検討を行ってまいって、十分見きわめていく必要があるんではないかというふうに考えております。  このような観点から、現在金融制度調査会というのがございますが、金融制度調査会の中に、制度問題研究会と言っておりますが、専門委員会を設けまして、ここで幅広く基礎的な勉強、検討をしていただいておるということでございます。
  23. 山田譲

    山田譲君 今の例えば五億まで下げたとかいうことになりますと、なったその結果ですね、どうでしょうか、今五億以上については自由であるということになりまして、その結果として各金融機関がそれぞれ自分の特色を生かして自由に金利をいろいろ決めていくとか、そういうことは実際に出てきているわけですか。
  24. 坂篤郎

    説明員坂篤郎君) 定期預金につきましては、五億円以上につきましては金利は各金融機関が自由につける。自由につけると申しましても、相手のあることでございますから、お客さんとの間でいわば交渉して決めるというようなことになろうかと思いますが、現実に金融機関によりまして多少金利の違いなんかもございますし、あるいは日々によって、その日その日あるいは一日のうちに変わることもございますし、また一時、あれは昨年の秋でございましたか、十億円からスタートしたんでございますが、その直後にはある会社金融機関をみんな呼びまして、あなたのところはどういう金利を出すかという、いわば入札みたいなことをやったとか、いろんなケースがあるようでございまして、そういう意味では、大口のところにつきましては、いわばお客さんとの間で自由に決まるというふうには既になっております。
  25. 山田譲

    山田譲君 金融自由化というのは、今の場合についていえば、A銀行B銀行金利に差があるということばかりじゃなくて、同じA銀行の中でもお客さんによってみんな差が出てくる、こういうことですか。
  26. 坂篤郎

    説明員坂篤郎君) そのようなことも場合によってはあり得るかと思います。
  27. 山田譲

    山田譲君 大体わかりましたけれども、私が特に今心配しますのは、これからいろいろ審議します金融機関の場合は、大体小口が多いわけですね。ですから、先ほど何を大口と言い、小口と言うかまだよくわからないというふうなお話でしたけれども、ある程度の、このくらいは小口だ、この程度は大口だというふうなことを早くお示しいただきたいような気もするわけですね。ただ相対的に、十億から五億になりました、そうすると従来は十億以上を大口と言ったやつが、五億になれば今度は五億以上が大口になる、五億以下が小口の部類に入っていく、こういうふうなことではなくて、弱小信用金庫であるとか信用組合、あるいは農協というふうなところが扱うようなのは大体常識的に小口だと思うんですけれども、その辺の見当、目安、そういったものについての何かお考えは全然出てこないものでしょうか。ただ相対的に五億と決めれば五億以上が大口だというのじゃなくて、ある程度絶対額として、このぐらいのものは大体小口と言うのじゃないかというふうな、そういうお考えというものはないものでしょうか。
  28. 坂篤郎

    説明員坂篤郎君) 実は、大口小口という分け方はやや便宜的に分けておりまして、と申しますのは、小口につきましても、大口に引き続きまして、アクションプログラムに書いてあることなんでございますけれども小口預金金利につきましても大口に引き続き自由化を進めるというふうになっておりまして、やや連続的に基本的にはいくということがございますので、どこでとまるというものでも必ずしもないものでございますから、したがって、ここで大口とは幾ら、小口というのは幾らというのをきちんとぱちっと決める必要も必ずしもないのかなというふうに考えておりまして、したがいまして、特に私どもとしても幾らが大口で、幾らが小口というのもはっきり持っているというわけでもないというような事情でございます。
  29. 山田譲

    山田譲君 では最後に、参考までに外国においていわゆる先進国と言われる国で日本のような、護送船団方式とかなんか言うようですけれども、ああいう自由化でない金融制度を持っている国というのはほかにありますか。
  30. 坂篤郎

    説明員坂篤郎君) 私も外国のことは余りよく実は知らないんでございますけれども、例えば短期金融市場の規模といったようなもの、いわば市場がどれくらい発達しているかというような観点から申しますと、アメリカというのは非常に発達しておりまして、それからイギリスも非常に発達しておりますが、ヨーロッパの国の中では必ずしもそう大きな短期金融市場を持っている国ばかりではございませんで、そういう意味では日本というのはかなり金融発展している国というか、あるいは自由化もかなり進んでいる国というふうに言ってよろしいかと思います。
  31. 山田譲

    山田譲君 じゃ、どうもありがとうございました。  金融自由化の問題は、まだいっぱいいろいろあると思うんですけれども、そちらの方もそう簡単に全部を説明するわけにいかないと思います。まあ大体のことはわかりましたので、どうぞお引き取りいただいて結構です。  それでは、農林中金の問題に入っていこうと思いますが、まず最初に名前です。この前の機構のときも名前にかなりこだわったんですが、あのときに名は体をあらわすということで、大事なことですから、全部を包含するような名前にするためああいうわけのわからぬような名前にしましたと、こういう話でしたけれども、農林中央金庫というのは非常にわかりやすいんで、漁業が抜けているけれども、これはどういうわけですか。
  32. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 農林中央金庫という名称につきましては、実は発足当時は、大正十二年に産業組合中央金庫ということで発足いたしたわけでございまして、昭和十八年の農業団体法改正に伴いまして、産業組合中央金庫という名称から農林中央金庫という名称に改称いたしたわけでございます。この改称の際に、既に漁業系統団体も構成員でございましたので、かつて農林水産省が農林省というふうに名前を持っておりましたと同じように、特に漁業関係団体を排除したとか軽視したということではなくて、農林という言葉の中に一次産業全体が含まれている、そういうことでこういった名称にいたしたものだろうというふうに考えております。  実は、昭和五十三年に農林水産省というふうに農林省の省名を変えましたときに、農林中央金庫という名前も変えたらどうかというような議論が一部にありましたことは事実なんでございます。その際も、今申し上げましたようなことから特に改称をいたしませんで今日に至っているわけでございます。  今回の法改正におきましては、農林中央金庫の基本的な性格を変更しないという前提に立って考えておりますし、何分にも昭和十八年に産業組合中央金庫から農林中央金庫に名前を改めて以来この名前を使っておるものでございますから、系統内部においてもこれが非常になじまれ親しまれて、特に支障も生じていないということに加えまして、この名称を変えるということになりますと、簡単に申しますと、看板の書きかえから印刷物、あるいは紙に印刷しております名称、もちろん登記その他、組合原簿とか、そういうものも全部直さなければいけない。それにかかる多大な労力なり費用というようなこととのバランスも考えまして、名称変更をあえてすることはしないというふうなことで、特に名称についての変更を行わないまま御提案を申し上げているわけでございます。
  33. 山田譲

    山田譲君 名前はそれぐらいにしておきまして、その次に今度の法律改正のきっかけというんでしょうか、改正しなきゃならないということになったのは、直接的には臨調の答申というものがあると思うんですね。  で、臨調の考えについてお聞きしておきたいんですけれども、臨調は、この「農林中央金庫については、自立化の原則に従い民間法人化する。」というふうなことを言っておりますね。その前に臨調が言うのは、「自立化の原則」ということで、「特殊法人等は、政府資金等に依存する体質から脱却し、自立的に経営を行うよう努めなければならない。」。「自立できることとなった法人は、民間法人化することを原則とする。」、こういうことを言っているわけですね。  ですから、臨調の考え方というのは、現在百幾つかあります特殊法人そのものをいずれは政府資金等に依存する体質から脱却して自立的にやるようにしなければならない、自立的にできるようになったら、今度は民間法人化しなければならない、こういう一般論がありまして、その中でたまたま農林中央金庫の場合はほとんど自立的に経営を行っている、ですから民間法人になってよい、こういうことを言っているわけです。  それで私がお伺いしたいのは、一般論として、臨調の考え方というのは、そうしますと、いわゆる特殊法人というものをいずれは全部民間法人化していきなさい、こういうことなのかどうか。これは後藤局長に聞いてもちょっと無理がとも思うんですけれども、もしわかっていたら教えてもらいたいんですが、そこのところはどんなものでしょうか。
  34. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 臨調の最終的なお考えは、私からお答えするのは適切でないかもしれないと思いますけれども、確かに臨調の最終答申が五十八年の三月でございましたか、出ました中には、特殊法人等は極力自立化し、活性化していきなさいということが書いてございますけれども、特殊法人と申しますのは、それなりの政策的な要請、そしてまたその中で国がみずから予算なり組織を持ってやるよりは、特殊法人という形態で弾力的にやった方がよろしいという要請に基づいてできている、ほとんどそういうもので構成されているわけでございまして、将来、特殊法人というものを全くなくしてしまうというところまでお考えになっているわけではなかろうというふうに私どもは受けとめております。
  35. 山田譲

    山田譲君 私も当然そうだと思うんですけれども、この言い方を見ていますと、特殊法人等はとにかく政府資金に依存する体質から脱却してということを見ますと、これはすべての特殊法人というふうな考え方がこの中にあるんじゃないかと思うんですがね。これ以上はこれをあなたに聞いても無理だと思うんですけれども、その臨調の考え方は、私はちょっとおかしいんじゃないか。特殊法人の中にもいろいろな法人があるんですからね。すべて自立できるようにしろといっても、それは無理じゃないかという感じがするわけです。  とにかく、そういう臨調のお考えに基づいて、少なくとも農林中央金庫につきましては、これは完全に近い状態で自立しているから、もう民間法人化していいんだ、しなければいけないんだ、こういうことだと思うんですけれども、この民間法人化することについて、臨調の考え方はわかりましたけれども、農水省はこの考え方について、今度の法改正に当たって、臨調が言うからやるんだというのか、それとも農水省としてこれが必要だというふうに考えてやられるのか。そこのところはどういうものですか。
  36. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 臨調の答申で、特殊法人等は極力自立化しなさい、自立化できる法人については民間法人化すべきであるという方針が出されたわけでございますが、この臨調での御議論の際にも、農林水産省も何回かヒアリングという形で意見を聴取されておりますし、私どもの意見も述べております。そしてまた答申が出ました後も、私どもとしてこれにどう対応するかということを農林水産省としての検討もいたしております。  そういう中で、私どもといたしましては、昭和三十四年以来、政府出資がなくて民間出資のみで運営が行われてきている。特に近年、農協とか信連等の所属団体の資金が非常に充実しているという実態がございますし、また系統団体の意見もいろいろお聞きをいたしました。前回の改正、四十八年改正のころは、系統の中でもいろいろなお考えがあったやに私ども承っておりますけれども、現時点、近年におきましては、系統団体におきましても、農林中央金庫を民間法人化し、そして民間法人の要件を満たすことによりまして、いわゆる特殊法人に係る諸規制をむしろ廃止するということで結構ではないか、こういう系統団体の意向でもございましたので、この臨調答申を受けまして、農林水産省としても、今回のような農林中央金庫の民間法人化の措置をとることが適切であろうという判断を下して、法案を御提案申し上げているところでございます。
  37. 山田譲

    山田譲君 この提案理由説明を見ますと、「政府といたしましては、このような状況を踏まえ、農林中央金庫について、農林漁業者の組織する協同組合等に対し金融上の便益を供与することを第一義的使命とする基本的性格を維持しつつ、民間法人化のために必要な措置を講ずる」、こういうことを言っているわけですね。これで言っていることが多少矛盾があると思うんですけれども、あくまでも農林漁業者に対して便宜を供与するんだ、これを第一義的使命とする、こういう基本的性格を維持しつつということと、完全に民間法人化したということは、これは矛盾する面がありはしないか。つまり完全に民間法人であれば、それは民間法人ですから何をやろうと勝手だ、極端に言えば。そういうことになるはずですけれども、完全に民間法人化させておきながら、なおかつ従来のような農林漁業組合等に対する金融上の便益を供与することが第一義的な使命であるというふうな、こういう基本的性格というものをずっと持ち続けさせていこうというところがちょっと矛盾するんじゃないかと思うんですけれども、その辺はどうでしょうか。
  38. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 民間法人化というふうにここで申しておりますのは、臨調答申でも言われておりますような要件ということで、一つ政府またはこれに準ずるものから出資というものが実態上も制度上もないこと、それから役員の選任が自主的に行われていること、それから三番目には経常的な経費について国の補助等に依存していないということ、この三点ということでございます。  それで、農林中央金庫の場合には、法律上出資資格者に政府というものが残っているということ以外は既にその要件を満たしておったわけでございまして、逆から申せば、その法律上の規定がございますために、特殊法人としてのいろいろな監督規制を受けている、こういう状況にあったわけでございますので、それをこの際改めるということでございまして、農林中央金庫が構成をしております農林漁業関係の団体に対する金融上の便益を供与することを第一義的な使命とするということにつきましては、農林中央金庫法業務に関します規定、これをごらんいただきますと、その中でまず第一に所属団体に対して貸し付けその他の業務を行うということを第一にしておりまして、なおかつそれをやりました後におきまして、資金上の余力があるという場合に、関連産業でございますとか、あるいは農林水産業の発達のための施設を行う法人でございますとか、そういった所属団体以外に対して、所属団体に対します業務に支障を生じない範囲内においてそういうことができるというふうに、農林中央金庫の業務に関する規定の仕方自身でそのことははっきりと規定されておるわけでございまして、その点については今回は何ら変更を加えないということでございますので、民間法人化をいたしますといいましても、農林中央金庫は農林中央金庫法という特別の法律に基づいて設立をされております単一の法人でございます。そういう意味での特殊な性格を持った専門的な金融機関であるという性格は何ら変わるものではない。その点は両者必ずしも矛盾するものだというふうには私は考えておらないわけでございます。
  39. 山田譲

    山田譲君 そこで、さっき大蔵省からいろいろ聞いた金融自由化の問題が出てくるわけですけれども、そういう法律制度としては従来の基本的性格というものを維持するようになっているといっても、その制度そのものが果たして維持していくことが今後できるか。つまりそういう特殊性というふうなものを発揮しようとしても、金融自由化というような事態になってきますと、そう特殊性ばかり生かしていたんじゃ、金融機関そのものがやっていけなくなるというふうな事態が今度来るんじゃないかと思うんです。さっきもちょっとお話ありましたけれども、いわゆる専門的な機関みたいなものがだんだん専門性が薄れていくということ、それはとりもなおさずそれぞれの金融機関最初つくったときにはそれなりの目的があって、そういう特色を生かしていこうとしたんでしょうけれども金融自由化というような事態になりますと、そのこと自体がもう難しくなってくる。ですから、農林中金はいつまでも今までのように第一義的な性格はこうなんだ、それを維持するのはどうだといっても、現実問題というのはなかなかそうはいかなくなるんじゃないかという感じがいたします。  実態につきましても、私いろいろ問題があると思うんですけれども、これは後でお話しするにしても、とにかく考え方として金融自由化というものをどういうふうに理解しておられるか。その中でもってここで言っているように基本的性格を維持しながらいくんだということを貫き通す自信があるかないか。それはいかがでしょうか。
  40. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 確かに金融自由化が進展いたしてまいりますと、金利自由化されてまいりますだけではございませんで、例えば金融証券と申しますか、を初めとしまして、いろいろな業態間の垣根もだんだんなくなってくる。そういう中で、全般的に金融上の競争が激しくなってくるということで、同時に中央金庫の専門的な金融機関としての役割を果たしてまいります上でのいろいろな困難なり、あるいはまたそういった事態に対する適応努力を迫られるだろうということにつきましては、山田先生の御質問になっておられるお気持ちは私どももわかるわけでございますけれども、先ほども申し上げましたように、農、林、水の協同組合的な団体の全国レベルの金融機関であるという重要な役割というのは、私どもとしてもぜひ維持してもらいたいというふうに考えているわけでございます。  さらに農林中央金庫は二十兆円を超えるような相当大きな資金規模を持った金融機関でございますので、国民経済の健全な発展に寄与するという公共的な責務も負っておりますし、また系統の最終的な資金調整の観点から、系統資金と外部経済との接点としての機能を持っている。かつては資金が不足していた場合には、国庫を通じて外部から農林漁業に資金を取り込んだり、現在は御案内のような資金事情でございますので、むしろ系統の中での需要にこたえまして、残った資金というものをいわば効率的に運用して、系統団体にその利益というものをいろいろな形で還元していくというふうなことも一つの役割になっているわけでございますので、そういった使命を十分果たしていけますように、今回の法改正では単に民町法人化を図る。そのための規制緩和ということだけにとどまりませんで、そういった競争関係が非常に激化してまいる、あるいはまた金融業務というものも非常に多面的、多角的になってきておりますので、この際、農林中央金庫の業務規定につきましても所要の見直しを加えて、必要な業務機能の整備とか充実を図るということをあわせて御提案を申し上げているわけでございます。もちろんこういった改正をした後におきましても、農林中央金庫としてのいろいろな経営努力を払っていただくということは必要であろうと思いますけれども、私どもとしましては、先ほど申し上げましたような使命を十分達成してもらいたいということを農林中央金庫に対して期待いたしておるわけでございます。
  41. 山田譲

    山田譲君 私は、この提案理由に書いてあることは間違いないし、このとおりだと思うし、ぜひそうあってもらいたいと思うんですね。ですけれども、先ほどの金融自由化というふうな事態が、そのスピードはどうなるかわかりませんけれども、それが将来の方向として出されているからには、その中でこの使命を貫くということはなかなか難しくなってくるんじゃないかという気がしてならないわけです。じゃ、おまえ、どうすりゃいいんだと言えば、私も名案ないけれども、例えばまあこれはちょっと違いますけれども、生協というものがありますね。いろいろ物を売ったりしています。私もかつて生協の理事長をやっていたからわかるんですけれども、協同組合原則というふうなものはもちろんあるんです。協同組合の精神というものがありますけれども、そんな甘っちょろいことを言ってたら、現在のスーパーあたりがどんどん出てくればみんなつぶれちゃうんですよね。だから、理想としてはわかりますけれども、現実問題としてそれに対抗して打ち勝っていかなきゃいけないということは、これは相当に努力が必要になってくる。場合によっては小さな協同組合が合併するとか、そういうことを実際にやらざるを得ないような状態が出てくるわけです。  そういうことだけに、農林中金もこれからはなかなかその経営が難しくなっていく、楽じゃないんじゃないかという気がしてならないんですけれども、そこのところはどういうものでしょう。もう一遍聞かしてください。
  42. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 御指摘のとおり、金融自由化が進展してまいりますと、利ざやの縮小でございますとか、あるいはいろいろシェアの競争というものが非常に厳しくなってまいりますし、いろいろな仕事の上でのリスクもふえてくるというようなこと、いろいろなことがあるわけでございまして、御指摘のとおり協同組合あるいは協同組合的な組織におきましても、経営効率化あるいは競争力を十分につけるための努力ということについては今まで以上の努力を傾けてまいる必要があるだろうというふうに私ども考えております。  そういう意味で、協同組合系統の信用事業に限らず、にも言えることでございますけれども、協同組合系統の経営というものにつきましても御指摘のような一段の努力が必要だろうというふうに私どもも思っておりますし、そのために必要な私どものいろいろな側面的な協力とか、あるいはまた必要に応じての規制緩和というようなこともこれから考えていく必要があろうというふうに考えております。
  43. 山田譲

    山田譲君 また、一つの方針として、補助から融資へというふうな農政の方向がかなりはっきりと出てきているときに、そういう農政の一つの拠点として農林中金を活用していくというふうなことがどうしても必要になってくると思うんですね。そうすると、ある程度政策的なものを農林中金を仲介させてそれを通じてやっていくというふうなことが私は非常にいいと思うんですけれども、そうなりますと、ただ民間だからというばっかりも言っておられない面も出てくる。それだけに、さっきから何回も言っていますように、経営の難しさというものが非常にそこに出てくると思うんですけれども、その辺ひとつ大臣、いかがでしょうか、今後の金融自由化に備えて農林中金の経営の仕方についての基本的な大臣のお考えをここでお伺いしたいと思うんです。
  44. 羽田孜

    ○国務大臣(羽田孜君) 今先生がずっと御議論いただきましたように、今度の法改正によりまして農林中金が民営化していく、そういう中で所期の目的であるまさに第一義的と私どもが申し上げております目的が薄れてしまうんじゃないか、しかも金融自由化と言われると同時に、また一方では補助金から金融へと、そして農業者自身も自立的な経営を営んでいく、そのためにむしろ金融というものを十分活用していただかなきゃいかぬというようなことを私どもも実は申しておるわけでございまして、そういうことを考えたときに、何というんですか、この第一義的なという私たちが言うもの、これをきちんと助長するものでなければいけないというふうに考えております。そういう意味で、政府の方といたしましても、私どもといたしましても、これからの金融制度、しかも個々のいろいろな問題についても十分検討していかなきゃいけないんじゃないかなというふうに思っております。
  45. 山田譲

    山田譲君 ここでひとつ森本参考人にお伺いしたいわけです。  今まである程度特殊法人だということで政府のいろんな介入、介入というか、指導監督みたいなものがいろいろあったわけでしょうけれども、それは考えようによっては、そういう監督があったことは、政府がそれだけ責任を持ってその経営を助けていってやるということにもなると思うんです。ところが、これから民間化されていってそういう政府から一応切り離される。考えようによってはそれだけ自由にできるということですけれども考えようによってはそれだけ責任も重くなるし、運営が大変だということになると思うんですね。そういうことについて、参考人として、これからこういう方針でこういう考え方でやっていくんだというような決意のほどをお伺いしたいと思うんです。
  46. 森本修

    参考人森本修君) 御指摘のように、私ども農林中央金庫を初め系統金融機関、非常に厳しい金融環境の中でやっていかなきゃならぬということでございまして、改めて身を引き締めてその運営の強化を図っていきたいと思っております。  特に、農林中央金庫としましては、先ほど来お話がございますようにいろんな役割を背負っておりますが、一つは系統信用事業、つまり単協なりあるいは県の連合会なり、そういう金融事業の体制の整備あるいは機能の強化、運営全般について支援をしていくということがございます。  それからもう一つは、私どもの仕事といたしまして、系統組合間の資金を調整する。それから貸出業務等を補完する、あるいは系統団体のいろんな金融上のニーズにこたえていくというような役割がございます。さらに、最近におきましては、御案内のように、系統の内部におきます資金がかなり潤沢になってまいりまして、それを調整いたしました帳じりといいますか、それを外部の金融市場との間に接点として活動をしていく。端的に言えば、資金の運用を効率的にやっていく。おおよそこういった三つの役割を果たしていかなきゃならぬということでございます。  で、何といいましても、先ほど来お話がございますように、私ども農林中央金庫としては、他の金融機関との激しい競争に耐えていかなきゃならぬということでありますから、できるだけ他の金融機関との競争条件において劣らないようにしていきたい。それには私ども自身いろんな機能を強化していくという努力も必要でありますが、また先生御指摘のように、行政の分野におかれましても、規制の緩和といいますか、業務、機能の付与といいますか、そういう面についても十分御配慮いただきたいということを従来から要請してまいったわけであります。その要請が大部分今回の法律改正によって実現するというようなことになっております。  したがいまして、今後私どもは、こういった与えられました業務、機能を十分発揮できるように人材の養成なりあるいは専門的な能力の開発なり、またいろんな資金の運用体制その他金庫の中の体制を整備してやっていきたいというふうに思っております。なお、先ほど来お話がありますように、金融自由化になりますと大変リスクも増加してまいります。したがって、経営の健全性の確保ということが金融機関として非常に大事なことになってまいります。そういう観点から貸し付けについての審査あるいは資産の管理、そういうことの強化をいたしまして資産の健全性に十分留意していく、また自己資本なり内部留保を充実いたしまして、多少の危険に対してもみずから耐え得るような経営体質を確立していくというようなことについても、従来以上に配慮し努力をしなければならぬと思っております。
  47. 山田譲

    山田譲君 今お話を伺ったことで結構だと思うのです。文字どおりこれからの大変な金融情勢の中で農林金融の特性を生かしながら、しかも自由化の波を越えていかなきゃいけない。こういう両方の非常に御苦労があると思うのですけれども、そこのところは頑張ってやっていっていただきたい、かように思います。  それにつきまして、今お話も出ましたけれども、それから提案理由でも言っていますけれども、「農林中央金庫をめぐる金融環境の変化」、こういう言葉を使っておられる。これは一体具体的にどういうことを考えておられるかどうか。それからまた農林中央金庫の業績に対する所属団体その他の取引先のニーズも多様化してきているということも言っていますけれども、これも具体的にどういうことなのか。そこをちょっと説明していただきたいと思います。  参考人、結構でございますから、どうぞお引き取りください。
  48. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 一言で申せば、一つ金融自由化というものが進展してまいってきております中で、今まで農林中央金庫法の中で、他の一般金融機関銀行等に比べまして、向こうはできるけれども農林中央金庫では法律上できない業務、あるいはまたやれるといたしましても、当然農林中央金庫の性格からいたしまして、相手方に制限がございますけれども、その制限というものが最近の金融事情からいたしましてなかなか合わない、例えて申しますと貸し付けを行っているものに対してこれこれの業務ができるというような規定がございましても、実際の金融実務としては貸し付けをまだ現にやっていないけれども、むしろ債務保証でございますとか、そういうものについては、まずそういうことをやりながら、その後で貸し付けをしていくというようなケースも非常にふえているわけでございまして、そういう意味での相手方の拡大というようなものも含めまして、他の金融機関業務の機能という点において劣後しないと言いますか、そういう業務機能の整備を図ってほしいという御要請が非常にございます。この点につきまして一つ一つ検討いたし、また共管の大蔵省とも協議いたしまして、他業態の調整も図って、今回御提案申し上げているような業務規定の改正をいたしたいということでお願いを申し上げているわけでございます。
  49. 山田譲

    山田譲君 それではその次に、民間法人化するということですけれども、この法改正によって民間法人化をかなりするけれども、全然民間法人と違うのだというところがまだかなりあるかとも思うのです。それはたくさんあるかと思いますが、主なところはどんなことですか、民間法人とは違うという点ですね。
  50. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 民間法人化と申しますのは、先ほど申し上げましたが、三条件を満たしているということでございまして、特別の法律に基づいて設立された単一の法人という意味での特殊な性格、専門的な性格というのは変わらないわけでございます。  今お尋ねの点は、恐らく一般金融機関業務と比べて、それでは改正後の農林中央金庫法で認められる業務というものとの間にはどの程度差があるのか、こういうことであろうかと思います。その点につきまして業務自体を比較いたしますと、銀行と比べてみますと、銀行が行い得る業務のうち定期積み金の受け入れ、それから信託業務、それから金銭の収納その他金銭に係る事務の取り扱い一般、こういったものは、農林中央金庫においてはなし得ないというふうになっておるわけでございます。しかし銀行は定期積み金は抑制的に取り扱われているところでございますし、それから信託業務につきましては、信託分離政策というものがずっととられておりまして、信託銀行についてのみ認められているということになっておりますし、金銭の収納につきましては、農林中央金庫は株式の払込金等の取り扱いでございますとか、あるいは公益事業法人の業務代理というようなことで行い得る部分が多いわけでございますので、実態的に差は改正後においてはほとんどないというふうにお考えいただいてよろしいかと思います。  ただ、先ほど申し上げましたような所属団体への金融上の便益の供与を第一義的な使命にしているということでございますので、業務機能としては銀行と大差のない機能を備えておりますけれども、その相手方につきまして制限があるということにおきましては、銀行とそこが大きく違うわけでございまして、広く一般大衆を相手にできる、あるいは一般のいかなる法人でも対象にできるという銀行と相手方の制限があるという点が、農林中央金庫は異なっておるということでございます。  この点は、他方におきまして、そういった特殊性に基づきまして農林債券の発行が認められるとか、あるいはまた税法上の優遇措置も認められているというようなことが業務対象の制約というものの反対側の一つのいわば恩典と申しますか、特別の配慮というものが行われておりますので、そういうものを総合的に勘案いたしますと、銀行との実態的なバランスというものは、まあまあとれる状態になっているのではないかというふうに考えておるところでございます。
  51. 山田譲

    山田譲君 さっきもちょっと触れましたように、いろんな専門的な金融機関があるし、その中の一つ農林中金だと思うのですね。だから金融自由化になっていきますと、なかなかそういう特殊性を生かしていくことが非常に難しくなるということは何回も申し上げているとおりでありますし、大蔵省あたりもそんなことを言っているわけです。ですから、今度の法改正によっても、今局長が言われたように、まだまだ例えば税法上の優遇措置とかある、片方ではある程度まだ制約が金庫の性格上残さざるを得ないというふうなものがある。両方バランスとって、大体普通の金融機関と一緒に競争していけるというふうなことになるんじゃないかと思うのです。  そこで、私はここで少しく金庫の運営の実態に触れていきたいと思うのですけれども、実態を見て非常に気になりますのは、いわゆる預貸率の問題ですね。この預貸率がどうなっているか、こういうことなんですけれども、この点はどうですか。
  52. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 農林中央金庫の預貸率は、昭和六十年三月末現在で見ますと、貸出金残高が九兆四百十八億円、預金残高が十五兆六千三百二十二億円ということでございますので、比率としては五七・八%というふうに相なっております。
  53. 山田譲

    山田譲君 普通の一般の金融機関はどのくらいになっているんですか、平均して。
  54. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) ちょっと手元に数字を持ち合わせておりませんが、一般の金融機関に比べまして預貸率は低い状態になっているというふうに認識しております。
  55. 山田譲

    山田譲君 金融機関というのは、とにかく人から金を預かってそれを利子を取って貸して、その差額で運営していくというのが基本でしょうから、預貸率が低ければそれだけ経営は苦しくなると思うんですね。どうしてそんなに低いのか。恐らく一般の金融機関は八〇%くらいいってるんじゃないかと思うんですけれども、こういう五〇%台というふうに、労働金庫なんかも非常に低くて困っているようですけれども、どうしてそんなに低いのか、その原因は那辺にあるかということについてはどうですか。
  56. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) その一つは、御案内のような農林水産業をめぐります環境条件が近年非常に厳しくなってきておりますので、構成をしております農協でございますとか、漁協でございますとかいうふうなところの組合員の方々の投資意欲というものが一般的に非常に慎重であるというような状況が一方でございますし、農協、信連の資金事情が非常に近年潤沢になってまいってきておりまして、農林中央金庫に対します借り入れ依存度と申しますか、こういうものが急速に今低下してまいってきておるということの結果であるというふうに認識をいたしております。
  57. 山田譲

    山田譲君 資金が潤沢というといかにも聞こえはいいけれども、要するにお金がダブついて困っていますということなんであって、さっきから聞いていると、えらい潤沢、潤沢といって喜んでおられるけれども、これは喜ぶべき現象じゃないと思うんですね。だから、極端な話、銀行に金なんかない方がむしろいいと思うんです、僕は。  この資料を見ましても、五十年から五十九年までのその状況がずっと出ておりますけれども、貸出金はどんどん減っている。そのまた内訳を見ると、これはまた問題かと思いますけれども、所属団体の方がどんどん減っているわけですね。そのかわり関連産業の方が、大きく変わってはいませんけれども、非常に大きな数字を占めて、三六%に対して所属団体の方が六%しかないというふうな状況なんです。  そうしますと、先ほどからずっと言っております構成団体に対して便益を供与することを第一義的に考えるといっておられるけれども、実態を見ますと、関連産業、これは恐らく員外の人だと思うけれども、こういう員外の利用が物すごく多いという状況、ずっとそういう傾向をたどってきているようなんですね。そうすると、何のことはない、農林中金は関連産業の方に一生懸命になって奉仕しているんじゃないか、こういうことになるわけです。その辺はどうですか。
  58. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 先ほど申し上げましたような資金事情によりまして、系統の信用事業というのは三段階で構成されておりますわけでございますが、そのいわば資金の収支のしりが集中して農林中央金庫にあらわれてくると、こういう形になるわけでございまして、業務運営としては、あくまでもこれは制度的にもそうでございますし、それから農林中央金庫当局としても、所属団体に対します貸し出しというものを最優先にいたしておるわけでございますが、確かに所属団体について見ますと、五十九年度末での貸し出しが一兆三千五百七十億円ということで、五十年度末に比べまして増加は千八百五億円という程度にとどまっておりまして、所属団体以外のものへの貸し出しが五十九年度末において七兆六千八百四十八億円ということで、五十年度末に比べまして五兆六千九百五十億円の増加というふうになっておるのと、数字としては、かなり大きな対比を示すような数字になっております。  これは先ほど申し上げましたような資金事情のなせるところでございまして、私どもも先生御指摘のとおり、金融機関でございます以上はできるだけ貸し出しを多くする、そして有価証券運用よりも貸し出しが伸びた方が、金融機関経営としてよろしいことは間違いないわけでございまして、そういう考えは持っているわけでございますが、一方におきまして、農林中央金庫の本来の使命というようなものがございますので、所属団体の貸し出し以外の貸し出しにつきましても、関連産業でございますとか、あるいは単位組合、あるいは連合会段階で対応できないような農林水産業者に対します貸し出してございますとか、あるいはまた系統に関連をいたします例えば系統団体が出資をしております共同会社でございますとか、あるいはまた農林水産業関係で中金の所属団体の発達を図るために必要な有形無形の便宜供与を行っている法人、いわゆる施設法人と呼んでおりますが、農地保有合理化協会でございますとか、日本木材備蓄機構でございますとか、そういったできるだけ所属団体の発展なりあるいはまた業務に関連のありますところに貸し出しをいたし、そしてまたなおかつ残るところにつきましては有価証券での運用をやる、こういったことが農林中央金庫の業務の実態になっておるわけでございます。  業務運営の基本的な姿勢なりあるいはまた制度といたしましては、所属団体を最優先するということではございますけれども、現在の資金事情からそのような運営の実態になっておるというふうに御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  59. 山田譲

    山田譲君 今言われましたように、いろいろの資金の事情あるいは所属団体の実情というふうなものから考えていってなかなか借り手がふえない。それに比べて関連産業の方はかなり多くありますと、こういうことで、そう借りろ借りろといってもなかなか借り手がなければ、それは無理だと思いますけれども、この辺はその内訳をもっともっと詳しく分析する必要があると思いますが、時間もありませんからこの辺でやめておきます。とにもかくにも余りにも所属団体の方が関連産業に比べて少な過ぎるということについてひとつ十分配慮していただきたい。そうしなきゃ本当に言っていることと、やっていることが違うじゃないかということを言われてもしようがないと思うんです。そこの難しさがあると思うけれども努力して頑張っていただきたいと、こういうふうに思います。  時間になりましたから、最後に一つ二つ聞いておきたい。  最近の農協の信用について。青年たちが非常に農協離れしている、農協を利用する青年が非常に減っているという事実があるようですね。年寄りになるほどこの農協を利用している。こういう実情にあります。それから農協はほかのところよりも利息が高いとかあるいはその他の優遇制度があるわけですけれども、こういうことについてアンケートの結果なんか見ますと、二十代の人というのは極端に知らない、あるいは利用してない、この事務所にだって一回も行ったことがないというふうな青年が毎年ふえていっているわけですね。こういうことになりますと、今の金庫の一番下の大事な構成団体であります農協がますます衰微していくんじゃないか、特にその信用の問題について。若い人たちは格好いい市中銀行かなんかへ金を預けちゃう、あるいは社内預金に回してしまうというふうな傾向が非常にありありと出ている数字がありますけれども、そういう状況をどう認識していらっしゃるか、どうしようとしておられるか、そこら辺をお聞きしたいと思うんです。
  60. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 御指摘のような若い人が農協離れをしているということは、私どもも、また系統組織自体におかれましても、最近大きな問題であるというふうに認識をいたしているところでございます。確かにアンケート調査などを見ますと、若い人ほどどうも農協になじみが薄くなってくるという傾向はうかがわれるわけでございまして、特に、非農業部門に就業している農家子弟などの若年層の農協離れが進んでおりますし、農業者の方々の中にも金利選好の高まりと同時に、一般の市中銀行とか郵便局などが農家に積極的に接近を試みてきているということ等があろうかと思っております。  こういった事態につきまして、昨年の十月の全国農協大会でもいろいろな議論が行われまして、そこで決定をされました経営刷新方策なり、あるいはまた生活活動基本方針というようなものの中で、若年層の農協離れにつきまして、青年部とか婦人部とか、あるいは生活・文仕組織などの育成強化を図っていく。それからまた、これは行政で特に指導しているわけではないわけでございますけれども、一般的に一戸一組合員制ということが全国的に、一部例外がございますけれども、行われております。これが若者の農協離れというものをよく父親の方は稲作をやり息子さんが畜産とか果樹をやっているというような農家があるわけですけれども、二人とも農業者であり、そして農協をよく利用しているんだけれども、どうも一戸に選挙権を持った人が二人いるのは何となく不平等だみたいな感じがありましてやっておりましたけれども、そういったことも必要に応じて見直していく。それからまた、いろいろ農協の事業の有利性に対するPR、それからまた各種のローンを開発し普及していくというようなことを通じて、農家を、若い人も含めて、しっかりつかまえていくための運動を展開しなければいけないという方向が打ち出されておりまして、私どももそういった努力がこれからますます必要ではないかというふうに感じております。
  61. 山田譲

    山田譲君 時間になりましたから、最後に一つだけちょっと変わった問題を聞いておきたいと思うんです。  最近の学者なんかによっては農協がいわば地域独占みたいな、つまりA村の人はAの農協に入る、B村の人はBの農協へと、こういうふうなことに限定されているから、農協間のいろんな競争がなくていかぬのだと。むしろB村の人でもAの農協へ入れるとかAの人でもBの農協の方がいいと思えばそっちへ行けるとか、こういうふうにした方が農協がお互いに競争して一生懸命やるようになるんだというふうなことを言いますけれども、この辺に対する農水省の考え方を聞いて質問を終わりたいと思います。
  62. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) この問題、近年、時たまお尋ねのある問題でございますが、総合農協、信用事業を行っております農協の設立につきまして、特に法令上ゾーニングの規制といいますか、地区が重複するような農協をつくってはいけないという規制が法令上あるわけではないわけでございますけれども一つは総合農協ということになりますと、農村地域の中核になる協同組合として重要な位置づけを持っておりまして、事業なり経営の健全性の確保ということが系統団体はもちろん農政上も大事だというようなことと、もう一つは、農協というのは事業運営ということのほかに、一つの農協運動というような側面も持っております。そういうことになりますと、そういう総合農協同士で競争するということについての抵抗感というようなことも当然あるわけでございまして、系統におきましても、何となく総合農協は地区が重複しないというのが通常のことであるというふうに考えられてまいりましたし、法令上の根拠はございませんけれども、行政の姿勢についてもそういった設立認可等の場合に、都道府県において単協の設立認可をいたします場合に、地区の重複というようなことについては慎重な審査が行われているというのが実態であろうかというふうに思っております。  私ども、これは法令上そういうことを特に強く規制しているということではないわけでございますけれども、ただ競争原理との関係について申しますと、今もお話し申し上げましたように、総合農協同士の競争は仮にないといたしましても、銀行でございますとか、いろいろな流通業者でございますとか、あるいはまた郵便局でございますとか、そういう他業態との競争ということは非常に近年激しくなってきておりますので、競争上の刺激ということをねらいにしてどんどん総合農協の地区を重複させていくべきではないかという必要は必ずしもないんではないかというのが私どもの現在の考え方でございます。
  63. 山田譲

    山田譲君 終わります。
  64. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 御答弁をいただきます都合の関係もありますので、私は今まで山田委員がいろいろと質問をされましたことの中の基本的な問題につきましては後の方に回させていただきます。これは大臣からまたいろいろと聞きたいと思いますし、参考人にもお願いしたいと思っております。  そこで、まず法案の内容についての若干のお伺いから申し上げたいと存じます。  最初に、今度の改正案についての総則の部分についてでありますけれども、ここでは政府の出資資格を削除したということに相なるわけであります。事実上は今までも政府の出資はなかったと、こういうふうに言っておられますけれども、しかし四十八年の改正のときに本委員会でやりとりがいろいろとあったはずであります。そこで中身としての出資は今はしていなくても、こうした政府の出資の権利というものは入れておくということが大事なんだということをそこでは政府の側も考えておられたと思うんであります。それが今度は削られたというその間の事情といいましょうか、考え方の変化といいますか、それについて御説明をいただきたいと思います。
  65. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 確かに御指摘のとおり、四十八年の法改正におきましてこの政府出資規定をめぐる御議論があったことは事実でございますし、そのとき農林中央金庫の性格づけにつきましては、農林中央金庫が系統金融の全国機関として単なる協同組合の連合体とは異なる広い金融業務を営む特殊法人として設立されたものであるという経緯、それからさらに農林水産業なりその関連産業を担当する一般金融機関とすることについては系統金融のあり方として問題があるのではないかということ、また系統内部におかれましても、当時は両様の議論があったというふうに私ども聞いておるわけでございますが、そういったことを踏まえまして、四十八年の改正の際には政府出資規定を残しまして特殊法人としての位置づけをそのままにいたしたわけでございます。  その後、先ほど来昭和五十年から五十九年にかけてのいろいろな資金事情の変化というようなことも数字を挙げて御説明を若干申し上げましたように、農林中央金庫の資金が一層充実いたしまして、政府出資の必要性が生じないのはもちろんのこと、むしろ資金としては一層充実の方向をたどってまいってきているということが十年余りの実績として積み上げられてまいってきておりますし、もう一つは、五十八年の三月の臨調の最終答申におきまして、特殊法人の中でも自立化できる法人は民間法人化して活性化を図るべきであるという方針が出されたというような事情の変化があったことを踏まえまして、系統団体の御意向も聴取いたしまして、臨調答申に基づいて政府出資規定を削除するということにいたしたわけでございます。
  66. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 今森本参考人にお入りいただきましたけれども、大変恐縮でございますが、後で基本的な問題で大臣と参考人にそれぞれいろいろと伺いたいというふうに思っておりますし、今法案の内容の中の方に入っておりますので、少し待っていただくということで、恐縮ですが、よろしくお願いいたします。  そうしますと、臨調答申ということを踏まえてという一つの政治的な側面というのは、これは別にいたしましても、そうすると、経済的な主たる理由ということで資金的にもう完全に自立することができると。だから、仮に臨調答申がそういう政治的な配慮ということをしなかったといたしましても、農林中金はもう自立してやっていけるし、そうすると、やっていった方がいいと、こういうふうにお考えになっているということですか。
  67. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 臨調答申がございましたことは事実でございますので、一つは、系統の農林中金の資金が前回改正以降一層充実の度を加えてきたという経済実態、それから臨調の答申、そしてその両者を踏まえて系統団体の御意見も伺った上で今回こういう改正にいわば踏み切ったと、こういうふうに御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  68. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 これは基本的な問題とも絡むものです。まだよくわからないんですが、じゃちょっと違った聞き方しましょう。  今の金融自由化方向の中では、むしろこうして政府出資の資格などというものは外して、もう完全自立をしてやってもらう方がよろしいと。いろいろとどこの答申があったとか、どこの皆さんの意見がどうだったとかというようなことも総合的な判断の中には入るでしょうが、政府としては、農林水産省としてはそういう総合判断をしておりますと、こういうことですか。
  69. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 臨調の答申をひとまず横に置いてというお尋ねでございますれば、ここ十年余りの農林中央金庫の資金事情及び業務運営の実態というものを考え、一方で今後の金融自由化等の競争の激化、あるいはまた業務の弾力的な運営を図っていく、そして組織そのものを活性化してまいるというようなことを考えました場合には、事実上働いておりません政府出資規定というものを削除いたしまして、あわせて、それがございますために特殊法人としてのいろいろな規制というものも受けておるわけでございますが、それもあわせて外していく、そういうことによって、農林中央金庫の活性化を図った方がベターではなかろうかという判断をいたしたというふうに御理解していただいてよろしいかと思います。
  70. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 まだすとんといかない。随分いろいろとたくさん言われるからわからなくなる部分があるんですがね。それはいいでしょう、大臣がお見えになってからもう一度基本的な問題との絡みの中で伺うということにいたしまして、    〔委員長退席、理事北修二君着席〕 次に進ませてもらいます。  出資者の有すべき出資口数の制限というものを農林水産省令で総口数の百分の五というふうに定めておられるわけで、これは今回の改正では変更しないということになっていると思うんですね。この変更しない理由という理論的根拠、百分の五と定めている理論的根拠についてはどういうことになりましょうか。
  71. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 五条二項で確かに出資口数の制限を行っておりますが、所属団体の出資の口数というものを無制限に認めるということになりますと、所属団体の間の権利の平等の原則というものが事実上崩される結果を招くおそれがある。特に、農林中央金庫は金融業務を営んでおりますので、少数者による事実上の支配というようなことが起きてはいけないというような考え方が一つ。  それからもう一つは、出資口数の多い所属団体というものが存在をいたしまして、その団体が脱退するというようなことになりますと、払い戻し請求によりまして業務の円滑な遂行が困難になるおそれもあるというようなことから、農林中央金庫の業務を今後円滑に、また支障なく行わせるために必要な制限として行っているものでございます。  百分の五の理論的な根拠とか算式とかいうことになりますと、なかなか実はここでお答えしにくいわけでございまして、そしてまたこの百分の五ということでは必ずしもないほかの例えば商工中金につきましては百分の一、あるいは信用金庫につきましては百分の十というふうなあれがございますので、これは構成しております団体の範囲とか数とかというものとの相対関係で決まってまいってきているものではなかろうかと思っております。  百分の五ということにつきまして長いこと定着いたしておりますし、この制限につきまして特段改正の要望もございませんので、私ども今回もこの点につきまして特に改める考えは持っておらないわけでございます。  ただ、これは「命令ヲ以テ定ムル口数ヲ超ユルコトヲ得ズ」ということでございますので、今後何か事態が変化するというような場合に、将来とも百分の五というのは絶対的な真理であるということで全く動かし得ないものだというふうには必ずしも私ども考えておりません。
  72. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そこの辺のところ、今回の改正ではこれを変えなかったという理論的根拠を伺いましたのは、一方では、先ほど山田委員質問に対してお答えになっている中で、資金が潤沢になってきているとか、いろいろこういうふうに言っておられます。もう一方では、今の制限を設けた理由というのは、言ってみれば、出資者というか、構成員の平等の原則にもとるという観点からだと、こういうふうにも言われています。そういたしますと、私は、政府出資の権利を今度は削除されるということにも一つの理論的根拠についての若干の疑義が残るんです。要するに、言ってみれば、出資口数の制限をどう動かしていくかということで資本そのものの総体にもある程度の影響が出てくる。構成員の数が変わらなければ、そうなりますでしょう。要するに、構成員の数が仮に同じだということにいたします。制限を例えば百分の一なら百分の一にすると、今まで百分の三とか四とかというものが仮にあったとすれば、そういうものが百分の一に制約をされれば資本金は減っていきますね。それから百分の十なら十に引き上げていったときに、今まで百分の三だとかなんとかで今度は新たに百分の十ぎりぎりまで出資しようとすれば、その構成員の数が同じ中でそういうものがふえてくれば資本金はふえますね。  そういう面なども考えていきますと、一つには、出資者の今の経済状況というんですか、ここの中金でいけば、信連であるとか単協ですかね、そういうところの預金量というものがかなりふえてきて、それが出資に見合ってもっといっぱい出してもらおう、中金にもっと出してもらおう、そういう考え方というものはここにはなかった、こういうふうに理解していいんだろうか。  それから政府の出資というものを一定程度場合によっては確保することによって、こうした出資のあれを少し減らしていくというようなことを考える必要はなかったんであろうか。こんなことなどもいろいろと疑問として残りますので、今そんな御質問を申し上げました。  他の金融機関というか、類似金融機関とのかかわりでいって、どうも片一方では百分の一があり、片一方では百分の十がある、その百分の五というのがどうも私にはまだよく理解ができないものがあるという中で今伺っております。  さらに、それはずっとみんな関連してくるのでありますけれども、次の質問の方に入らせていただきますと、産業組合法の条文というのが中で生かされているわけでございます。    〔理事北修二君退席、委員長着席〕 産業組合法の条文というのが現在生かされているということも、ちょっと私は不思議な感じがするんでありますけれども、これは法律上のあれがいろいろあるんでありましょう。この産業組合法の条文、第八条だったですね、かなりずっと羅列されておる。これが残っております理由についてはどういうふうに御説明いただけるでしょうか。
  73. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 農林中央金庫に関します法制度につきましては、長い歴史の変遷をたどってきたわけでございますけれども、法人の運営に関しましては引き続いて産業組合法の規定を準用してまいってきたものでございます。  確かに古い法律でございますし、本体そのものは働かなくなっている法律でございますけれども、この長い歴史の中で産業組合法の規定の準用によりまして農林中央金庫が長年にわたって特段の支障がなく運営が行われてきたということが、一つ実態的な問題としてございまして、この特に定着した産業組合法の規定の準用を改めるという実態的な必要性に乏しいということが一つ。  もう一つは、もともと産業組合法自体は協同組合原則を基礎とした制度でございますので、特殊法人的な性格を持たないものでございますので、今回の民間法人化に際しても十分整合性を保ち得るというふうに判断いたしましたのと、実はもう一つ、法技術的にもこの点は法制局ともいろいろ御相談を申し上げるような性格の問題でございますけれども、前通常国会におきまして制度改正を行いました商工組合中央金庫法におきましても、引き続き産業組合法を準用するということで法案を提出いたし、既に成立を見ているというようなことがございまして、その準用を継続することにいたしておるものでございます。  ただ、条文を子細にお読みいただくとおわかりいただけると思いますけれども、今回、民間法人化ということになりましたので、いわば法人についての基本的な事項、定款記載事項でございますとか、あるいはまた名称の使用制限、農林中央金庫以外の者が農林中央金庫という名称を用いてはならないとか、そういった法人としての基本的な事項に関する規定につきましては、これまでの産業組合法の準用ということではなくて、農林中央金庫法の中に明文の規定を新設する、そういうことによりまして多少農林中央金庫法をお読みいただく場合にわかりやすくなる、そしてまた民間法人化した後の農林中央金庫の基本的な性格というものも、準用規定をあえて練らなくても本法の中に規定しているというような改善は加えたつもりでございます。
  74. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 今まで古い法律の一部を生かしてきて別段それで支障もなかったということ、それから商工中金のときにもこれは織り込まれているので、そういう意味では横並びできたということ、そしてその中の一部のものについては新しい時代に即するように変えましたと、大体こういう意味の答弁だったと思うんですね。  私、ここにこういうふうなのを持ってきました。これは古色蒼然たるものなんですが、産業組合法が引用されているものですから、産業組合法とはどんなものだろうと思って見ると、こういう古色蒼然としたものを見なきゃならぬわけですよね。そしてその中を開いてみますと、私は旧制の最後の方でございますからどうやら読めるんでございますけれども、今の新しい人ですとどうか。私も字を拾ってみてびっくりしたんです、びっくりというよりも改めて感心した、うなったんです。例えば権利の權、関するの關とか、承継の繼とか、負担の擔であるとか、総会の總もそうですし、それから欠けるの缺もそうです。手続の續、弁済の辧、あるいは予告の豫にしても、変更の變にしても、そういうような形で、新しい人だったら読めないだろう、場合によっては。そういう文字も随分並んでいるわけです。表現も片仮名で、もちろん仮名遣いも昔の仮名遣いですから、何というんでしょうか、今の近代的な感覚には全くそぐわない、そういうものである。法の精神とかなんとかというものは私は大事だと思うんですよ。だから、その精神をないがしろにしろと言っているのではない。その精神に基づいて今ここで中央金庫法というのを今の時代のあれに合わせて変えていこう、こういうことなんでありますから、そういうときには、私は文言とかそういう細かいことにとらわれるようで恐縮でございますけれども、その産業組合法の内容のここで生かしていくものは、その考え方を生かして新しい法律の文章にされるということが必要なんじゃないかと思いますね。私は、差し支えなかったからとか、あるいはよそがそうしていたからうちもというふうな、言ってみれば、消極的な姿勢ではなくて、もし即応して法律を改正しようとするのであれば、その辺のところをぜひ積極的な展開していただきたかった、そう思うわけであります。今後何か機会があったときはそういうことをお考えいただけますか。
  75. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 片仮名の法律であり、いろいろ年を経るごとに読みにくいものになっていくという御指摘は、確かに御指摘のとおりだろうと思いますけれども、もう一つ、先ほど申し上げませんでしたけれども法律と申しますのは、できるだけ短く簡潔に書くという原則がございまして、準用ということは一つの法技術として必ず法案を作成する場合にとられる手法でございます。  その中で、では産業組合法以外の戦後の片仮名でない農協法等の協同組合に対する法律制度の準用でやれないのかということが一つあろうかと思うわけでございますけれども、農林中央金庫が、先生も御存じのとおり、農業、林業、漁業それぞれの協同組合等を所属団体にいたしまして、それらの法制度を踏まえたメンバーシップの法人というふうになっております関係もございまして、いずれかの協同組合法制度を準用するということはなかなかこれは適当でない。そういった事情もございまして産業組合法の準用を継続いたしておるわけでございます。  そういう意味合いからいたしますと、現時点で今後機会を見て何か別の規定の仕方を工夫できないかというお尋ねにつきましては、お尋ねのお気持ちは非常によくわかるんでございますけれども、今の法律というものの書き方のいろいろな基本原則というようなもの、それからまた農林中央金庫につきまして先ほどとただいま申し上げましたことを考えますと、積極的なお答えと申しますか、そういう方向検討いたしますということはなかなか申し上げにくいというのが私の偽らざるところでございます。
  76. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 一応偽らざるお気持ちをお聞かせいただきましたが、私も偽らざる気持ちを申し上げますと、産業組合の果たしてきた役割は大きく評価できるものがあります。しかしその産業組合のあれには、大きなプラスを果たしてきた面とそれからマイナスの面として評価しなければならない面と、これは両方あるわけでありまして、そのことが、戦後の組合、新しい農協というものに発展してきた一つのまた理由にもなるわけでありまして、ということがありますだけに、そのまま引き継いでいる部分があるということについて私は疑義を抱いておりますので、そこのところは局長ひとつ、今ここでこの問題を取り上げて、この法案に対してそのことで賛成とか反対とかということにはなりませんが、今後の問題として、これは多分これから先、私が農林水産委員会に所属していて同じようなことが議論になるときには必ず出てくるであろう、こんなふうに思いますので、心に置いておいていただきたいと思います。  次に業務についてちょっと伺いたいと思います。  「貸付又ハ手形ノ割引」を認める者のうち、第十四条ノ三の二の二で「経済社会ノ発展ヲ図ル見地ヨリ貸付ヲ為スコトガ適切ト認メラルル法人」、こういうふうに、これは農林省令で定めるということになっておりますけれども、これは関連産業ということに限定されているということで理解をしてよろしいんですか。
  77. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) このお尋ねの法人につきましては、経済社会の発展を図る見地から農林中央金庫が貸し出しを行うことが適切と認められる法人、私ども俗称特別貸出法人というような呼び方で呼んでおりますが、これは農林中央金庫法の施行規則の第四条の三に列挙いたしておりますような地方公共団体、公社、公団、電力会社等の公益事業法人等を指しておるものでございます。
  78. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そして、今度の改正法では証券業者に対して貸し付けが行われる、こういうことにもなるわけでありますが、これは何か問題点はございませんか。
  79. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) この証券会社への貸し付けにつきましては、農林中央金庫からも特に御要望がありまして改正の中に織り込んだ点でございますが、農林中央金庫が証券会社を通じまして農林債券の販売を行っておりますけれども、これを円滑に進める観点から、証券会社が農林中央金庫から農林債券を仕入れて販売をいたします間の在庫資金等の当座の運転資金の借入需要にこたえ得ることにしたものでございます。したがいまして、改正後のこの規定の運用に当たりましては、証券業者に無限定、無制限に貸し付けを行うということではなくて、貸し付け対象者を農林債券の募集の委託を受けた証券業者または新たに発行されます農林債券を売り出しの目的をもって取得した証券業者に限りまして、貸し付けも短期貸し付けに限定をするというようなことで指導してまいる考えでございます。
  80. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そうすると、これは証券業者を加えたけれどもこの貸し付けについては制限をいたします、それは、今お話しのあれでは、農林債券の取り扱いをやる証券業者、そしてそれは短期に限る、こういうことだということですね。  それでは次に、農林債券または国債等の所有者に対し貸し付けができる、こういうことになっているわけでありますけれども、これはどういうことですか。
  81. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) これは農林中央金庫の農林債券や国債等の所有者に対します貸し付けの問題でございますけれども、農林債券を所有している音あるいは農林中央金庫の国債等の窓口販売あるいはディーリング等の業務の相手方になって、国債等を現に所有している方、こういう方たちが一時的な資金需要を生じました場合に、中途解約をするあるいはまたその債券を売るということが時期によりましては非常に不利になる場合がございますので、そういう場合に一時的な資金需要を生じましたときに、むしろ中途解約にかえましてその債券を担保とする貸し付けで対応するということの方が、農林債券や国債等の販売業務等の円滑化に資するという観点で認めることにいたしたいと考えておるものでございます。したがいまして、これは農林債券とか国債等の販売業務に付随して行う業務でございますし、債券の販売と申しますのは相手方の制限が本来ない性格のものでございますので、貸し付けの相手方としては確かに限定がないという問題がないとは言えないと存じます。しかし、そういうこともございますので、運用上はこの同一人に対します貸し付け限度額というようなものを設けまして、こういった貸し付けが不当に拡大しないよう指導したいというふうに考えておるところでございます。  なお、商工組合中央金庫法におきましても、農林中央金庫法と同様に、国債または農林債券の所有者に対する貸し付けということでございますので、当然のことながら相手方の制限はないものとして法律上規定されておるところでございます。
  82. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そうしますと、農林債券あるいは国債、これは中金から国債を買った者ということになるわけですか。  そうすると、その所有者に対して貸し付けをする。それには貸し付けの限度額というのを運用の中では考えていく、こういうお話なんですけれども、じゃ農林債券とか国債を中金から買うことができる者はどういう人たちで、そして買う量については制限があるんですか。
  83. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) どなたでも無制限に買うことができます。
  84. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そうすると、例えば銀行なんかへ行きますと、債券ではないので預金なら預金をする、定期預金をいたします。そのかわりに貸し付けをいろいろと受けますというのと構図としては似たことができることになりますか。債券を買います、債券を買ってそれで今度は貸し付けを受ける、こういうことができるんですか。
  85. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) そういうことは可能でございます。
  86. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そうすると、ここの部分では、農林水産関係の者とそれから公益法人というんですか、そういうものという制限はここの部分では外れるわけですわ。
  87. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) はい、そのとおりでございます。
  88. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 時間の方が経過しておりますので、内容についてのことはこの程度にさしていただきまして、大臣もお見えになりましたので、少し基本的なお考えについていろいろとお伺いをしたいというふうに思っております。  いろいろと今までの山田委員との間に交わされた議論を伺い、あるいは私も若干合法案の内容等について伺いながら、なおすとんとこないものがございます。それはなぜ今法律を改正しなければならないか、そういうことについてもでございます。農林中央金庫がこれまで果たしてきた役割というものは一体どのようなものであったんだろうか。これは設立のとき、大正時代にさかのぼって、産業組合中央金庫が設立されたそのときと今日では随分違いがあると思いますけれども、それぞれのところで果たしてきた役割というのがあろうと思いますが、しかし、かなり設立時と今日とでは基本的な違いがあるのではないかというふうに私は思っているんです。  そこで大臣にお伺いしたいのは、農林中央金庫がこれまで果たしてきた役割というものを大臣としてはどう理解しておられるでしょうか。農業を取り巻いている現在の情勢というものと、それから今後への見通しというものを含めて、今後の見通しというのは今後農林中金というものはどういうふうになっていったらいいと思っているかということでございます。そういうことを含めまして基本的なお考えをお伺いしたいと思います。
  89. 羽田孜

    ○国務大臣(羽田孜君) 基本的には今度の法改正というのは、臨調の答申等も踏まえまして、先ほどから御議論がございましたように、農林中金を民間法人化していくという中で、出資資格者から政府を削除するということ、そして金融情勢の変化に応じて公的な役割を果たし得るよう業務運営に対する規制の整備合理化、これを図るため、これが基本であります。  そういう中で今先生から御指摘がありましたように、始まった当初と今日との役割が一体どうなのかということでございますけれども、先ほどもちょっと申し上げましたように、これから日本の農業というものが新しく発展していくために、単に補助金だけではなくて、むしろ自立経営をしていくという中で、今現在も制度資金等がございますが、こういうもの等を拡充しながらそういったものにこたえていく、そういう体制というものをつくっていくということが新たな一つの使命じゃないか、これから特に必要なことじゃないかというふうに考えます。
  90. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 それでは設立をされた当時の農林中央金庫というのは、どういう役割を果たすために設立をされたというふうにお考えになってますか。
  91. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 大正十二年に産業組合中央金庫として設立されまして以来、基本的な性格というものは維持されているというふうに私ども理解いたしておりますけれども、具体的な業務運営なり機能ということになりますと、設立当初は所属団体の資金が総じて不足いたしておりましたし、そして資金需要の方がむしろ旺盛であったということから、主として所属団体間の資金の地域的、季節的な調整、それからまた外部経済からの資金調達による所属団体への供給というようなものが主な役割になっておりましたし、そういうこともございまして、発足当初は政府出資ということでいわゆる特殊法人としてスタートしたという経過があるわけでございます。  しかし、先ほど来申し上げておりますように、現在では所属団体の資金の著しい充実ということがございまして、農林中央金庫への借り入れの依存度が低下していることから、本来の所属団体への金融上の便益の供与をいたしました後におきましても、系統全体の資金の収支じりというものが農林中央金庫の段階で集約されて、それが資金としては余裕が出てくるという状況になってまいっておりますので、外部経済との接点に立ちまして、系統資金の効率的な運用を図り、その収益を所属団体に還元していく、あるいはまた、そういった収益というものを元にしまして要綱融資というような形で系統独自の低利の資金の供給を行うというようなことも含めまして、そういった外部経済との接点に立った資金の効率的な運用というような役割が実態的にはウエートを増してきているというふうな業務運営上の実態の変化があるというふうに認識をいたしております。
  92. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 私は、業務運営上の変化ということだけで何かとらえられていることに非常に不満があるんですよ。といいますのは、そもそも農林中央金庫というのは、産業組合運動の中で資金需要が必要だということで中央の金庫が設立された、そういう経緯があるわけですから、そうすると、これは産業組合というものとの関係で物を考えなければならないということになると思うんですね。その産業組合というのは、言ってみれば、協同組合思想に基づいてということになると思うんです。  しかし、その協同組合思想そのもの、これは後でまたいろいろと伺いたいというふうに思っておりますけれども、協同組合思想というものの系譜というものをたどっていったときに、我が国の産業組合というのは、そもそもの協同組合の発足というんでしょうかね、まさに自由経済の体制のただ中にあったイギリスであるとかなんかとは事情が違っておりましたし、またそれを引き継いだドイツともいろいろと違っておりました。そのドイツの中でも大きな流れが二つあった。その大きな流れが二つあったうちのどちらかといえば、ライフアイゼン系と言われる、ユンカースを中心にした、地主を中心にした、農民の零細な出資だけではなくて、融資であるとかその他外部からの資金の援助を集めてやるという方向の協同組合、そういうあり方というものを追求しながら、我が国ではそういうあれもまだうまくいかないということで、言ってみれば、官主導型で、よそから集める分を政府が金を出してやる、こういう形で出発したと思うんですね。もう一方のドイツで起こっていた系列というのは、言ってみれば、経済合理性を求めながら、構成員の出資を中心にした信用組合の行き方という形になった。それを一緒につきまぜた形を一時産業組合ではとってきたと思いますけれども、いずれにしても、そうした一つの流れとして、外国からずっと来て始まった協同組合思想の流れを我が国が引き継いで産業組合というものが政府の主導によって結成された、こういう格好になっているわけですよね。そういう中で、資金需要の関係でということになってきた。  その経緯というものを考えていきますと、私は、ずっと産業組合運動というのは協同組合思想に基づいていけばある程度いびつな形をとってきたと思うんです。ということは、政府の出資というものの援助、常にそういう形をとってきていました。そこで今度、設立当初からそういういびつな形をいろいろととってきてはいたけれども、いよいよ資金も潤沢になるという形になってきて、今やそういう自助の精神にのっとって、言ってみれば、ライフアイゼン系というよりもハース系とかいろいろ言われているもう一つの信用組合的な、そういう行き方ができるような状況に現在の農村がなったというふうに理解しておられるのかどうか。これは協同組合運動としての観点からの基本的な問題の一つでありますから、その辺のところのお考えを聞きたいと思います。
  93. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 確かに御指摘のとおり、産業組合が設立されました当時の我が国の農山漁村の状態あるいはまた組合の状態というものに比べますと、戦後、特に三十年代以降、戦後の農協制度が発足いたしましてからも、当初は農業協同組合も再建整備その他、大変な経営上の困難を経てまいってきておるわけでございますけれども、三十年代の半ば以降と申しましょうか、だんだん経営基盤も漸次充実してまいりまして、協同組合としての経営基盤というものが往年に比べれば格段に充実してまいった。そのことがまた農林中央金庫が昭和三十四年以降政府出資なしで運営され、そしてまたその中で累次の改正を経まして農林中央金庫の業務規定につきましてもいろいろな拡充が加えられた。そしてまた役員選任の方法などにつきましても、かつての政府任命から総代会、出資者総会におきます自主的な選任というふうに変わってまいったということが流れとしてございまして、そういう意味におきまして、戦前の産業組合と戦後の、特に高度経済成長期以後の農業協同組合というものとの間には、経営基盤の点におきまして大きな改善なり変化が見られたというふうに認識をいたしております。
  94. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 今の後藤局長の御認識に私は若干まだいささか疑問が残るんであります。それは協同組合思想に基づく信用事業、単協、系統農協がやっている信用事業、そういうものの性格等についてもいろいろと私は今疑問があったり問題点があるというふうに思っております。ですから、単純に協同組合思想が生かされた形で今発展的にいい状態になってきてここで政府出資をしなくても済むようになってきている。つまり流れからいえば、少しこういういびつな形であったライフアイゼン系のそういうものから新しく本当に経済性、自助ということをもとにしたそういう協同組合の方にうまいぐあいに流れているというふうには必ずしも言えないと思っています。その辺のところはまた後で時間がとれれば触れたいというふうに思っております。  しかし、たまたまそういう議論になってまいりましたので、そこで中金の理事長に伺いたいのであります。ともかく協同組合思想というものは中金の運営の中でも生かされているはずだと思うんですね、考え方として。ロッチデールの先駆者組合の掲げた精神というものは、それは国際協同組合の旗印が七つになったり六つになったり、幾つにも変化していきますけれども、しかしそのロッチデールの考え方というようなもの、協同組合思想の流れというものは私はずっと引き継がれてきているというふうに思うんです。  そういう流れの中で、一つの信用組合運動の頂点として中央金庫の存在というものがあるわけだと思うんです。その辺のところで、現在の運営の中でどんなふうに協同組合思想というものは生かされているというふうにお考えになっているでしょうか。その辺をちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  95. 森本修

    参考人森本修君) 先ほど来の質疑を聞いておりまして、産業組合中央金庫なり、農林中央金庫は日本の協同組合を中心とした協同組織に対して金融上の利便を提供するということでつくられておるわけですけれども、組織的には協同組合の全国連合会ということにはなっていないわけであります。そういう意味では、組織、役割は必ずしも協同組合なり協同組合の連合会と同じであるというふうには従来からも構成されておりませんし、現在時点においても、そういった全国連をやや超えた公共的な役割なり使命を負わされた一つの特別の金融機関である、こういうふうに私は理解しておるわけであります。ただ、構成員は大部分協同組合であります。それ以外にも農林漁業団体が入っておりますが、主たる構成員が協同組合である、そういう団体でありますから、運営に当たってもできる限り協同組合原則を生かしていくというふうなことになっておると思っております。  釈迦に説法ですが、協同組合原則はいろいろありますが、例えば加入脱退の自由、あるいはまた議決投票等について平等である、また出資の配当は制限されておる。それから利益金の処分についても、単に出資金に対する配当ばかりではなしに利用に応じた配当、私ども特配と言っておりますが、そういうもの。いろんな協同組合の原則がございますが、ほぼそういうふうな原則にのっとった運営なり、またこれは法律上の一つの枠組みがございますが、そういった法律上の枠組みの中で協同組合原則に沿った運営がなされておるというふうに思っております。したがいまして、特別の金融機関でありますけれども、そういう意味では全く協同組合と同じであるかというと、それを超えた要素がありますが、できるだけ協同組合原則にのっとった運営をするように従来から努めてきたと言っていいと思っております。
  96. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そこで、協同組合と全く同じでないことは私も承知しているわけでありますが、これをお伺いいたしますのは、構成員の大半が協同組合であり、そしてまた協同組合運動の中からその必要性が主張され、誕生してきたという歴史的経緯というものもあります。というようなことの中で、そういう思想が生かされているということが非常に大事だと思いますので、そのように確認をさせていただいたということが一つと、さらにそういう協同組合原則にのっとった運営をしていきまして、今金融自由化と言われる時代を迎えているわけであります。  そこで、こうした金融自由化の波の中で、今後そうした協同組合原則を守っていくということの形で今の農林中金というものが、ちょっと適切な言葉が今見つからないでいますが、もっと発展していくということができるんだろうか。それとも逆に、協同組合原則ということが制約になって、それで金融自由化の中で大変苦しい競争を強いられるということになっていくのであろうか。その辺はどんなふうにお考えになっていますか。
  97. 森本修

    参考人森本修君) 協同組合といいますか、相互金融ということで、できるだけ農林中央金庫の業務が農林漁業の協同組合なりあるいは団体の利用を中心にしてやっていくということに、制度的にそうなっております。  ただ、先ほど言いましたように、資金等がかなり潤沢になってまいりましたから、協同組合なりそういった構成員の資金需要に応じてなおかなり余りがあるという状況でありますから、現在はそういった余裕のある資金は、先ほど言いましたような基本的な業務に支障のない限度において必要な道に活用するということで、私ども指導監督をされてきたというふうに思っております。そういうふうな業務の実態の中で、私どもとしては、俗な言葉で言えば、利用していただく、あるいは取引していただく方々の範囲、それは農林中金の性格からいいまして限定されるということは性格上やむを得ないと思います。もちろん不必要な限定はなるべく外していただいて、できるだけ必要最小限度の限定に限っていただくという希望は持っておりますけれども、基本的には他の金融機関と違っておるのはそういう点だと思います。しかし、取引ができる相手に対してどういう手段方法をもって取引をしていくか。いわゆる金融機能の面におきましては、同じ土俵の中で他の金融機関競争するわけでありますから、先ほどもちょっとお話を申し上げましたけれども、できるだけ均等な競争条件のもとで仕事をさせていただきたいと、こういうふうに思っております。そうでなければ、手段方法が劣っておれば、同じ土俵の中で競争する際に競争に負けるわけでありますから、そういうふうなことにならぬようにぜひお願いをしたいというふうに思っておるわけであります。  そういう意味で今回の法律改正に盛られております事項、これは私どもとしてはぜひとも実現さしていただきたいということで従来から要望してまいった次第でございます。
  98. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 時間だけ経過をしていって、もっといろいろと伺いたいと思っていたのでありますけれども、時間が足りなくなりました。ですから、ちょっと飛躍して議論を絞っていかざるを得ません。  今までいろいろとお伺いしても私は基本的な性格についてますますわからなくなってきているんです。といいますのは、要するに系統が行っております信用活動、これは農家、農業、農民というものを守っていくという運動の一環である、そういうものが協同組合思想に基づいてこれが行われてきている、そういうことになる。それで今、言ってみれば、金融自由化という波の中でその系統の信用事業も大変厳しいところにさらされている、こういう格好になってきているわけであります。そういう中で、先ほど山田委員からも出ましたけれども、生まれてきている現象は、貸し付けを希望する農家がだんだんと減ってきて、そして預金が今度は逆の方向へ、少し汚い言葉で言えば金がだぶついてきたという格好になってきている。結局、それを今度は外部の者にうまく貸し付けて運用をうまくやるの妙でもって農民に返す。確かに言葉としてはそういうふうにうまくできているんですけれども、また違う言い方をすれば、そういう農民の小さな金融を集めたものをうまく運用してと言いながら、結局、農林水産業以外の者の利用にいろいろと使わせていく範囲が拡大していく。こういうことになってきますと、結局、一面では吸い上げるパイプになるということにもなっていくんじゃないですか。  先ほど私が業務のところでも伺いましたけれども、今度貸し付けをされる対象の中には、現実には債券を買うとかなんとかという形の中で、農民以外の一般の者がだぶついている金に目をつけてそれを利用するということが可能になってくる、極端な言い方をすればですよ。そういうことになってきます。私は、この農林中央金庫というのは、それでいて、今の理事長お話のように、自由化の中ではできるだけそういう運用をうまくやらなきゃならぬ、こういうお話が出てくると、それがだんだん進んでいけば、農業を守るための、自衛のためのそういう信用事業というものが結局は農林中金によってもうまく救われないというような結果にならないとも限らぬ、こういうのが今の金融自由化というものの中にさらされている現状じゃないだろうかと心配するんですよ。  ですから、私がわからなくなると言うのは、こういう専門的な金融機関としてのものをもっともっと専門的に強化する、そういう方向がとれないんだろうか、いや、むしろ、こういう金融自由化などと言われていろいろと苦しければ苦しい時代だけに、そういう方策が模索をされなきゃならない時代なんじゃないだろうかというところで、確かに生き延びるために必要なことだとしていろいろとやられていることはわかるけれども、それだけでいいんだろうか。むしろ守るという面をどういうふうにしたらやれるんだというその歯どめのところ、これをきちっとつくり上げていくような努力をされなければならぬのじゃないか。そんなふうに私は思えてならないんでありまして、その辺のところは特に大臣、これからのこうした農業の厳しい状況の中でそうした金庫のあり方というものは、そういう専門的なものとして農民のあれを防衛するという、農業を守っていくというそういう観点を貫いていくということになりますでしょうか。それとも、どうしてもある程度は対応しなきゃならぬから、員外利用をうんとふやして、今、中金だと員外と言わないんでしょうが、そういう外部の利用をふやしてということで、結局、一般金融機関化の道をとらざるを得ないというふうにお考えなんでしょうか。その辺のところのけじめをちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  99. 羽田孜

    ○国務大臣(羽田孜君) 先ほど来先生から、産業組合の設立された当初の問題から説き起こされながら、これからの農林中金の果たすべき役割、こういったことについてお話があったわけでありますけれども、確かに金融自由化という中で多様化してくるニーズにこたえる、あるいは資金余裕というものを十分に活用していかなきゃ、またこの金庫というものの運営ができないということがございますので、そういった面で幅広い活動というものをしていかなきゃならぬというふうに思います。しかし、そうかといって、私が先ほども申し上げましたように、私どもとしては、何といっても基本的には、第一義的な農林水産業を振興するためにあるんだということ、これを踏み外すこと、これは私はあり得ないというふうに思います。その意味で私ども農林水産省といたしましても、現在も農業近代化資金ですとか、漁業構造再編整備資金ですとか、その他の資金等を整備しておるわけでありますけれども、こういったものを十分また活用しながらさらに本当に農林水産業を振興できるように、また農林水産業に携わる人たちがこの農林中金に頼っていけるような体制、これは私ども政府としても常に考えていかなければいけないというふうに考えております。
  100. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 せっかく御答弁いただいてもまだひっかかるんであります。それは農業の今の状況の中から私はかなり農業の厳しさというものを感じていますだけに、本当に協同組合として貫いていけるんだろうか、協同組合活動の一環として貫いていけるんだろうかということについて、そしてそうするためにはどうしたらいいんだということをみんなで模索しなきゃならないんじゃないか。そういう考え方がありますので、今の大臣の御答弁でまだ、一部は答えていただいていますけれども、満足できないということになりますが、これは今後の問題です。  時間が迫ってまいりましたけれども、最後に、法案はもう一つあるんでありまして、もう一つの法案を取り上げなければならない。——中金の理事長さん、どうもありがとうございました。  もう時間がありませんから一点だけ伺います。新たに預金の支払い停止をしなきゃならないような農協が生まれたときには、合併によって救済するという方法を考えられているようでありますけれども、これは現実の問題としてはなかなか困難なんではないだろうかというふうに私は思うんであります。というのは、例えば新潟県の私のいます三条の農協と、それから星先生のおられる宮城のどこかの農協と、どっちかの農協がぐあいが悪くなったから合併するかといったら、できないんですよ、こんなことはね。そうすると、大体周りの農協というのはみんな似たような状況に置かれている。その似たような状況の中に置かれている中で、合併で一人で救済というのはなかなか困難じゃないだろうかなというふうに思います。そうすると、いろいろな手だてを考えてやらなきゃならないんですが、どうしてもここで救済の金を払って何とか助けてやるというふうな方法は、結局は今度限度額を改正したりいろいろされる、そこの部分で何とかしようということにならざるを得ないと思いますが、それにしては今度は全体の資金量というのが随分少ないんではないか。幾つかの農協がパンクしそうだというようなことになったら、それで終わりになってしまうんじゃないか。中金さんから無制限に貸し出しをしますというなら別でありますけれども日本銀行が幾らでも貸しますというなら別でありますけれども、何かその辺のところ、資金量も足りないんではないか。こんなことも気にいたしますが、その辺、どのようにお考えになっておりますか。
  101. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 確かに、合併と申しますのは、協同組合の場合は現実問題として隣接組合でないと難しいという点が一般金融機関と非常に違っているわけでございまして、そのために私どもの方の協同組合の貯金保険制度におきましては相互援助制度を経由する資金援助業務というものを設けているわけでございます。  御指摘のように、保険機構の資金援助のための財政基盤というのと比べて本当に大丈夫なのか、機能は発揮できるのかという点でございますが、私どもは貯金保険制度が存在するからといって、行政上の指導監督については、最後の保険があるからということでおろそかにするということであってはいけないと思っておりますし、農協なり漁協の経営不振が多発するような事態が起きないようにまず努めなければいけない、それからまた今度の相互援助制度を通じます資金援助の場合に利子補給の姿、形を考えております。例えば十億の原資を毎年使うということでございますれば、一%の利子補給であれば一千億の系統資金の活用が可能になるということでございますので、そういう意味から申しますと、利子補給という姿で系統の資金そのものは量としては不足はいたしておりませんのでかなりの金額を動員ができるのではないかと考えておりますし、基金の残高も、保険料率を激変緩和しながら、段階的にでございますが、関係団体でも引き上げを考えているようでございます。数年後の基金残高が約五百億円近くになるということが見込まれますと、それと今回の法律改正で農林中央金庫なり日銀からの借り入れ限度の引き上げも考えておりますので、両々相まって貯金保険機構として不測の場合に対応できるだけの基盤なり仕組みは一応できるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  102. 成相善十

    委員長成相善十君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時四十三分休憩      —————・—————    午後一時三十一分開会
  103. 成相善十

    委員長成相善十君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する法律案及び農林中央金庫法の一部を改正する法律案、以上両案を便宜一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  104. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 私は、きょうは法案の問題に先立ちまして、昨日決算委員会で本当は大臣にお尋ねするはずだったテーマなんでございますけれども、昨日大臣がお忙しくて決算委員会にお出ましになられなかったものでございますから、その続きを聞かせていただきたいというふうに思いますので、ひとつよろしくお願いいたします。  昨日私は決算委員会の総括で、チェルノブイリの原子炉事故についてお尋ねをしたわけでございますけれども、その中に農林水産に関する諸問題がありましたものですから、そのことについてお伺いをいたします。  御存じのとおり、昨日ですか、ソ連アカデミーの発表では、事故現場は鎮静化に向かっているという発表がございました。こうした発表をすると同時に現場の写真なんかを送っておられるわけで、ある部分のものがこの事故については見えてきたということが昨日も科学技術庁の方からの答弁でございましたけれども、依然としてわからない部分も多いということが現状であろうというふうに思います。そこでお伺いをするわけですが、事故地点から八千キロ離れている我が国がどのような被害を受けるかということについては、事故を報道された直後から我が国でも大変な関心となってきたわけでございますけれども、四月三十日の報道では、いわゆる放射能物質の汚染をいささか受けるのではないかというような大々的な報道があり、そして五月二日には放射性物質の飛来なしというような報道がありまして、その直後の五月四日に我が国の各地域から汚染の状況が出てきた。その状況は、数値から言えば、決して大きなものではございません。しかし何らかの形で影響を受けているということは確かでございまして、私は昨日決算委員会で、例えば野菜は洗って食べるべしとか、あるいは天水は木炭でろ過して飲むべしというような発表を新聞が盛んにいたしましたし、それから牛乳は汚染なし、洗濯物も心配なしというような発表をしたわけでありますけれども、そういうことが情報として大きく報道されるに従ってこの種のものに対するパニック状況が出てくることを私は逆に心配をいたしまして、科学技術庁に対して報道の一つのルールづくりというか、そういうことをむしろするべきであるということを申し上げました。しかし一方で検査、調査は徹底的にしていただきたいということを申し上げたわけでございます。我が国の科学技術庁が中心になって、厚生省、環境庁等も一生懸命この汚染の状況調査を合しておりますし、依然としてその体制をつくっておるわけでございます。  私が昨日知った状況ですと、大臣、京都府のある店から売っておった市販の牛乳から百六十ピコキュリー出たという。今までの数字からいきますと百六十ピコキュリーは大きな数字です。市販の牛乳からそんな数値が得られたというような発表がありまして、依然としてこの種のことについて農林水産省としても私はチェック体制をとっておいていただかなければならないというふうに思うんですけれども、この点お伺いいたします。
  105. 羽田孜

    ○国務大臣(羽田孜君) チェルノブイリの事故につきまして対策本部が実は設けられておるわけでございますけれども、その中で鋭意検討され、また今お話しのとおり調査が行われておるところでございます。この結果、現時点では牛乳ですとか野菜につきましても十分安全が確認をされておるということでありまして、国民の皆様方に不安をいただくことはないというふうに私どもも確信をいたしております。  この調査につきましては、科学技術庁の方も四月三十日から実際始めておりますし、私どもの方も五月四日の日から今日に至るまで、連日各試験場におきまして調査をいたしておるというのが現状でございます。そういうことで私どももこの関係の各省庁と十分連絡をとりまして、放射能レベルが一体どの程度にあるのか、これをきちんと把握し、そして国民の皆さん方に食糧について安全であるということをきちんと申し上げられるような体制をこれからも続けていきたいというふうに考えております。
  106. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 それからもう一つは、今回事故が起きました地域を中心にして——皆さんよく御存じのとおり、これはソ連でも大きなウクライナ穀倉地帯といわれるような地域で、大変に穀物を多く産出するところで有名なわけですね。そういう地域が大きく汚染をされたであろうことはだれも疑う余地のないところでございますけれども、そういう状況で既に世界の穀物市場、シカゴ市場あたりでも値が上がり、大幅な動きというようなことで影響を受けているというような話を耳にいたしております。そして、ソ連がやがて世界の国々に対してこうした穀物の援助を求めてくるのではないかというような話もいろいろあるわけですね。私はそういうふうな世界の食糧事情に対しても大きな影響が出てくるのではないかということ、あわせて、いろいろ今憂慮されておりますアメリカの干ばつの事情なんかもいろいろ論議が出てきておりますので、そうした問題との絡みでこれから穀物を中心とした世界の食糧事情等に何らかの影響が今後出てくるのではないかということを憂慮するわけでございますけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  107. 羽田孜

    ○国務大臣(羽田孜君) この事故によりましてどんな影響が出てくるかということについては、私どもが知る範囲では十分な情報が得られておらないということでまだ明らかではございません。ただ、今お話がありましたように、キエフ市の北方地帯、これは沼沢地が多くて酪農を主体とする地域のようであります。その南方のウクライナ地方は、まさに御指摘のとおりソ連の主要な穀倉地帯であるということでありまして、そのために、この事故の結果ソ連邦の方が何か買いに出るんではないかというような予測があったようでございまして、四月の二十九日あたりから穀物相場が急騰してきて、五月一日、二日、三日、五日あたりまではまた下がったわけでありますけれども、その後六日、七日、八日、九日と、このところ実は上がってきておるというのが現状であります。それは、今御指摘がございましたように、この乱高下といいますか、これがありますのは、チェルノブイリの影響もありますでしょうし、それともう一つは、アメリカの主要な穀倉地帯が干ばつであるというようなことで、その影響、ことしのできにいろんな不安を持つ材料があるんじゃないかと思っております。  ただ、方々で今、例えば、これは本当に情報といいますか、明確なものかどうかわかりませんけれども、ソ連が相当な量の物を買いに出たというような話があり、いや、それは間違いであるというような情報が非常に行きかっておるものですから、多少その仕手筋ですとか、そういったものも動くものがあるんだというふうに思っております。  いずれにしましても、もうしばらく、今度の放射能の状況によってどんなふうに穀倉地帯に影響が出ているのかということがつかめませんと、まだ本当のことが言えないと思いますけれども、ただ問題は、御案内のとおり、このところずっと各国とも豊作であったということで供給過剰であったということがございます。そういうことで、何というんですか、大分山積しておる穀物があるという現状でありますから、ある程度のものには耐え得るんだというふうに私どもは確信をいたしております。もし大きく買いに出ても、それには耐え得るものなんだということを確信いたしております。  ただ、我が方としては、我が国としましては、米国、カナダ、豪州、こういったところから輸入をいたしておりますから、畜産の飼料ですとか、そういったものについては不安はないと思いますけれども、そして価格等についても多少落ちついてくれば安定してくるんじゃないかなという予測もいたしますけれども、我々もこういった状況がどうなっていくのか、日本の食糧である小麦にも影響ありますし、あるいは飼料穀物にも影響あることでありますから、十分これからも注意していきたいというふうに思っております。
  108. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 よろしくお願いいたします。  食品、食糧を所管する省として大臣に御責任があると思いますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。  それでは、本論の方に入らせていただきまして、私は午前中からずっと同僚委員の討議を伺っておりまして大変勉強になったわけですが、今回の新しい改正後に出てくる中金の性格づけみたいなものがもうひとつつかめないものの一人でございますので、その辺のところをさらに私もちょっと一遍伺ってみたいなというふうに思うんですね。  先ほど同僚の委員の中からも、四十八年の改正当時の精神、論議が何であったかということがいろいろ出ておりましたけれども、話はどうもそこに戻るようになってしまうのではないかというふうに思うわけでございます。  端的に申し上げまして、先ほど局長は、この中金の性格というのはいずれにしても変わっていくものではないんだというふうにおっしゃっておられたわけでございますけれども、基本的には一般金融機関を目指す方向に一歩大きく踏み出すということに基本的になるのか、それとも、ただ従来の形の本来一義的に中金法で位置づけもれている機能としておさまるのか。その辺のところをもう一度伺わしていただきたい。
  109. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 今回の法改正によりまして民間法人化をする、これは一般民間金融機関になるということではございませんで、近年におきます中金の業務の実情あるいは資金事情というものを一方で踏まえ、他方で臨調答申によります民間法人化により活性化を図れという御指摘もありまして、政府出資の規定を法律上、これは三十四年以来眠っておる規定でございますが、これを削りまして、あわせて特殊法人としての監督から除外するということが民間法人化に直接関連する規定の修正でございます。それに伴いまして幾つかの規制緩和をやっておりますけれども、そういう意味におきまして、民間法人化をいたしましても、協同組合的な農林漁業団体の全国金融機関として、そういった所属団体に対する金融上の便益を供するということを第一義にするという本体の業務のあり方というものにつきましての基本的な性格は変わるものではない。ただ、金融事情が大分変わってきておりますので、相手方の制限等は残りますけれども、いろいろ金融情勢の変化に対応しました機能の充実整備ということについては今回の改正の中に盛り込んで御提案を申し上げている、こういうことでございます。
  110. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 そこで伺うんですが、農林中金法は、その法律の総則の中に中金の性格ないしは目的をうたっていない、明文化されてないということがあるわけですけれども、これはどうしてですか。
  111. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 農林中金法にその目的規定というようなものを特に置いてはございませんけれども農林中央金庫法の規定をごらんいただきますと、所属団体に対してこれこれこういう業務をやりますということが業務の規定のところに冒頭書いてございます。その後にそのような本来の第一義的な使命である業務を妨げない範囲内において次のような業務ができるというふうな規定のいたし方をしてございます。そしてまた所属団体というものは限定的に列挙いたしておりますし、役員の選任につきましても、出資者総会あるいは総代会での自主的な選任ということになっておりますので、そういった業務規定なりあるいは法人の運営に関します規定、その中にはけさほど御議論のあった産業組合法の準用というようなものも入りますけれども、そういうものを全体としてごらんいただければ、農林中央金庫の性格とか本来的な使命というものはおのずから明らかである。  そういうことで、今日ただいま新しく農林中央金庫法というようなものをつくって新しく法律を定めるということになりますと、戦前に比べますと、最近は法律も書き方が非常に丁寧になっておりますから、目的規定を書くというようなことがあるいはあるかもしれませんけれども、私ども今回も特に目的規定を置くというようなことをいたしませんでしたのは、法律全体の規定から、その性格とか業務内容、こういうものはおのずから明らかであるというふうに考えまして、特にそういった点についての改正まで考えなかった、こういうことでございます。
  112. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 「農業六法」の隣に書いてあるのでのぞいてみると、金融公庫法なんかはちゃんと目的から法人格というふうに法律の中でうたってありますよね。法律のスタイルとしてはなぜこういうふうなのかなという疑問が当然出てくると思うんでお伺いいたしました。  森本参考人にお伺いをするわけですが、先ほど来同僚の委員の中からも御質問がありましてそれに答えられて、おのずと自由化といっても規制はある、しかし取引のできる相手とは競合していかなければならないのだ、できるだけ均等な条件をそのためにつくってほしいというようなことを先ほどおっしゃっておられました。  これからの農林中金の性格づけというのを私は先ほどから伺っていたわけですけれども、一体どういう性格づけになっていくのか。それからまた、できるだけ均等な条件をつくることによって競争のできる相手と競争していくというような業務方向づけというようなことも含めまして、これからの中金ということでお伺いいたします。
  113. 森本修

    参考人森本修君) 先ほど来政府委員からもたびたびお答えがありましたように、今回の法律改正によりまして農林中金の基本的な性格なり役割なりは変わらない。つまり系統組織の中央金融機関、そういうものに金融上の利便を提供する。また、あわせて系統と外部の金融市場との間のつなぎ目の役割を果たすというようなことは変わらないと思っております。  ただ、情勢その他が変わってまいりますので、そういった役割を果たすために農林中央金庫がどういった機能なり活動をしなきゃならぬかということについては、環境の変化に対応したあり方といったものが必要ではないかと思っております。  今回の法律改正によって、いわゆる民間法人化ということになるわけでありますが、これは政府と農林中金との関係におきましてはできるだけひとり立ちしろ、俗な言葉で言えば、自分の責任で経営をやれ、こういうことだと思っております。そういった経営をやってまいりますのに、先ほど来いろいろお話がございましたように、金融環境としては自由化が行われてくる、そういう中では一つ競争が非常に激しくなってくる。したがって、私どもも許された取引相手との関係におきましては、他の金融機関との競争が今までよりも激しくなるということを覚悟しなきゃならぬと思います。  そういう意味では、できるだけ競争するために必要な手段、方法、機能、そういうものは他の金融機関に劣らないようにしてもらいたいということを、たびたび繰り返しておりますが、言ってまいったわけであります。  そういうことでありますから、農林中金の性格、役割は変わらないけれども、環境に応じた活動のための機能あるいは運営のやり方というものをできるだけ適合するように我々はやってまいらなきゃならぬ。そのためには、私どもみずからの努力が先決問題であります。しかしまた制度的あるいは法制的な面においても、私どものそういった努力をできるだけ支援していただくような考え方でお願いをしたいということを従来から繰り返し申し上げてまいったところでございます。
  114. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 通告してあることと違うことを聞いているなと思っていらっしゃるようなので、済みませんが、お伺いいたします。つまり金融自由化が進むと、いやでもそれに応じていかなければならないし、そのための力をつけていくというのがただいま参考人の御答弁だというふうに思うわけでありますけれども、大変なことにさらされていくであろうことは御覚悟だというふうに思うんですね。したがって、それに適したあるいは応援をする形の環境をつくってほしいということなんですが、先ほど来話がありましたように、大口預金金融自由化がまず進められていく中で、この小口金融機関に対する自由化も漸次検討されている段階であるんだということだというふうに思うんですが、山田委員お話にもあったように、この系統金融の対象というのは確かに小口金融ばっかりであるわけですよね、その大部分が。そうすると、小口金融にその自由化が進んできたときにどんな状況が出てくるのかということは大変に憂慮されるわけですが、それにしてはということが私の質問の中身としていろいろ書いてあるんじゃないかというふうに思うんです。  例えば最近の農村における農協離れのことが書いてありましたり、あるいはまた〇・一%金利が高く設定はされているけれども自由化になってしまえばそのメリットもなくなってしまいますよというようなことも含めまして書いてある、御通告申し上げてあるというふうに私は思うんですが、こういうことの中で、しかし努力をしていくという具体的な努力の中身についてお伺いをしてみたいというふうに思うんです。  ここで、私が拾ったあれによりますと、最近農村の中金あるいは農協あたりが大変厳しい状況に置かれていることの第一の理由としては、農家の兼業化が非常に進んできたという状況があるというふうに言われています。給与なんかが黙って銀行から振り込まれてくるというようなことになると、これは今まで農協がすっぽりもらってたはずのものがなかなか手にとれなくなるというようなことですね。  それから銀行等を含めたところのものが農村という社会に大変働きかけをしてきているということ、それによって大変な影響を受けている。その銀行なんかの状況を見ますと、オンライン化とかというふうなことですが、事務機器の進展したことが挙げられるというふうに言われていますね。こういう種類のこと、つまりエレクトロニクス化ですか、というふうなことが今後農協金融あたりでやっていけるのか、あるいは中金を頂点とした系統でやっていけるのかどうなのかというようなこと。それから新商品の開発というようなテーマもありますね。  で、私は、参考人に大変恐縮なんですが、具体的にわかりやすく、そういうことを教えていただきたいんです。ということは、こういうことに本当にいけるのかどうなのかということを具体的に心配をしておりますからです。お伺いいたします。
  115. 森本修

    参考人森本修君) 非常に最近の実情に触れたお尋ねだと思うんです。最近の金融業務というのは一般に言われておりますように総合サービス業である。したがって、ただ預金をお願いする、あるいは資金を借りていただく、そういうことだけをお願いしてもなかなか皆さんにはアピールしない。お金に関するあらゆるサービスを提供してそういうサービスの提供を通じて預金をしていただく、あるいは貸し付けに応じていただく、そういう形になってきておるわけでございます。今御指摘がございましたように、お金を送ったり、あるいは受け取ったりということについても、銀行の口座を通じてやるというようなことになってきております。私どもも数年来他の金融機関に機能的に劣らないようにと。これは別段法律上の問題ではありませんで、我々の自己努力によってやらなきゃいかぬことですが、そこで、一、二年前に全国の銀行と同じネットワークで、例えば年金を農協の口座に振り込むというようなことは銀行と同じネットワークで我々もできるように完成したわけです。それにはいろんな体制の整備が要りました。コンピューターをそろえるとか、あるいは全国の農協を全部そういうふうにするにはかなりな時間と労力がかかったわけですが、そういう意味では他の金融機関に負けないような状態に実はなっております。  それから金融商品はどうだというお話がありました。金融商品にも貯蓄の方の商品と貸し付けの商品と両方あります。両方につきましても、貯蓄の商品については他の金融機関とほとんど同じような格好になっておる。ただ、我々はもう一つ、農協というのは御案内のようにいろんな仕事を一緒にやっておるわけです。総合経営で、販売、購買もありますし、それから保険ですね、共済といっておりますが、そういう仕事もやっておる。だから共済の仕事と金融の仕事を一緒になったような形で連結したような商品も開発しておる。これはほかの金融機関では保険と一緒に仕事はしておりませんからなかなか難しいことでありますけれども、私どもはできるだけ自分たちの特色を発揮するような商品をつくりたい、あるいは、わかりやすく言えといいますから、お米の販売と配達と貯金というようなものを結びつけたような商品も開発してやっております。一口に言いますと他の金融機関に負けない、あるいはそれ以上に農協らしい独特の金融商品も開発して努力しておるというのが最近の状況であります。
  116. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 これは参考人のところの調査部研究センターでお出しになっている資料のようなんですが、預貯金以外の金融商品の所有状況というのを、お調べになっているデータがありました。ただし古くて五十八年六月の分ですが、ありました。それを拝見させていただきますと、「現在持っている」預貯金以外の金融商品で一番多いのは、この対象は農協の組合員とその家族と書いてありますが、一番多いのは国債です。中期国債ファンドも含むと書いてありますけれども国債を一番たくさん持っています、一〇・三%ですね。それから株式が多い。株式が一六・二%。それから株式投資信託、貸付・金銭信託、割引・金融債、あるいは財形貯蓄といった形で持っているんですね。「これから持ってみたい」という段階になりますと、これが今の順でいけば二一・九、一〇・八、五・四、一〇・五というふうにふえているんです。つまり農村は都市に比べてタイムラグがあるにしても、漸次こういうものが農村地域のニーズとして当然出てくるであろうということは言えるんですね。こういう形にどう対応していかれますか。
  117. 森本修

    参考人森本修君) 言われましたように、農家にしてもあるいは農村の人にしても、お金を持っておればそれをどう運用するかということになりますと、昔は貯蓄ということで貯金が非常に運用の大きな分野になっておったんですが、最近は、今言われましたように、国債等の有価証券あるいは株式とか、そのほか保険のようなものもややそれに近いような形で考えられておる、運用についてもいろんな種類がございます。したがって、昔のように貯金一本で資金の貯蓄なりあるいは運用をやっておるという時代はだんだん過ぎてきつつある。しかもそれが都会から農村へというふうに漸次広がりつつあるということは私どもも十分承知をしております。  したがって、先ほど申しましたように、農協の信用事業としても単に貯金だけ預かっておるのではなしに、そういった有価証券あるいはその他の資産の運用についていろいろ相談に応ずるということが一つ。それから相談の結果こういうものにしたいという希望が利用者にあれば、それに対して極力こたえられるようにその仕事をしていくということが非常に大事じゃないかと思っております。そういう点で農協の窓口における機能も私どもとしてはもっと多様化し高度化していかなければならぬであろうというふうに思っております。
  118. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 金融自由化なんかの話が出てきたのは、国債発行なんかが多発してきて一つのインパクトを与えていると私は考えるんですけれども、その国債の扱いについても、これは法律の中にも出ているようですが、中金しか扱えなくて、そして系統あるいは農協あたりでは扱えないわけですね。そういうことに対する参考人の御要望はありませんか。
  119. 森本修

    参考人森本修君) 我々としては金融と、先ほど大蔵省から話がありました証券、こういう二つの仕事の分野があります。これがだんだん相互に境界が低くなってきている。銀行証券業務がやれる、それから証券業界もやや銀行類似の仕事ができる、こういうふうに重なってきつつある。ところが、銀行行政あるいは金融行政としていろんな機能をどの銀行にも同時にいっときに与えるというふうな形には実はなっておりません。だんだんと金融業界にしてもそういう体制が整い、それからそれにふさわしいような銀行の方から漸次全体の金融機関に及ぼしていくというような形で、いわゆる相互乗り入れが一挙に行われるんじゃなしに漸進的にやられていくというようなことで、これは主として大蔵省の行政の分野でございますが、そういうふうな形で行われてきているわけです。  そこで、国債についていえば、農林中金がまずその機能を認められた、それから市中銀行はもちろん認められておる、ところが信金あるいは信組等においてもだんだんと、全部じゃなしに、漸進的に認められつつある、信組はまだ認められていないといったような段階を踏んでそういう機能が認められてきておるというのが現状であります。そこで、私どもとしては、最終的には農協に対してもそういった国債窓販、国債が売れるような機能を与えてもらいたいという希望は強く持っております。それが一体どういう段取りを踏んでどういうテンポで認められていくかは、今後行政が判断をされることだというふうに思っております。そこで、つなぎとして、私ども国債を売る機能を持っていますから、農協が、お客さんが来たときには取り次いでいただく、あっせんをしていただく、こういうことを今やっているわけです。お客さんが来ても何も言えないんじゃまずいから、こういうふうなところへ行けば国債が買えますよというようなことは、相談なり取り次ぎの仕事ができるようなことをやって今その機能をつないでおる、暫定的に。そういう段階でございます。
  120. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 今森本参考人からお話がございましたように、現在国債のいわゆる窓販につきましては、農林中央金庫が機能を認められておりますので、農林中央金庫への紹介方式といいますか、お客様が農協の窓口あるいは信連の窓口でそういう要望がありましたときに農林中央金庫に話をつないでという形での対応をやっておりますのと、先ほど新商品の開発の話がちょっと出ておりましたが、五十九年の初めに系統におきましても国債利金複利運用総合口座、これは農林中央金庫への国債の紹介方式によります国債の取り扱いと期日指定定期預金を組み合わせた新商品でございますが、こういうものの開設、販売を認めておりまして、これによって農協の系統信用事業としても、他の金融機関に伍して国債組み合わせ商品の発売が可能になっておるところでございます。  ただ、今森本参考人からもお話がございましたように、農林中央金庫に話をつなぐということだけではどうも機敏に対応ができない。農業協同組合なり信連なりでも直接国債の窓口販売をやらせてほしいという御要望がありますことは私ども承知いたしております。  総論的に申し上げまして、金融自由化、そしてまたいろいろ一般の国民の方々の金利選好といいますか、そういうものも非常に高まっているという中で、私どもが系統金融関係につきましても、いろんな規制緩和を経営の健全性とか安全性ということにも十分留意しながら漸進的に進めてまいってきておるわけでございまして、その一環として国債の窓販の問題も取り上げられているわけでございますけれども、農協系統の取り扱い体制なりいろんな制度上の問題がございまして、今そういった実態上あるいは制度上の問題につきまして検討を行っておるという段階でございます。
  121. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 それから農林債券のことで伺いますけれども、これも私、素人的な考え方で、大変わからないものですから伺うんですが、先ほど来、平易な言葉で言えば、金がだぶついているというふうに言われているわけですね。それなのに、この債券の発行による資金の調達といいますか、これは依然として行われているということで、五十九年末で三兆五千億ということになっているわけですが、債券発行というのはどうしてやるんですか。
  122. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 農林中央金庫は長い歴史を持っているわけでございますが、系統資金の調整機能を果たす中央金融機関として、農林漁業のための長期低利の資金とか不測の災害時におきます応急救済資金等の需要に対応していく必要があるわけでございますが、農林漁業の特殊性から、所属団体からの預金としての受け入れには季節変動がかなり多うございます。かつて特に資金が比較的乏しかった時期におきましては、米の代金が入ってまいりますようなときは一挙に潤沢になりますけれども、そうじゃないときには資金がなかなか行きかねるというような状況もございました。それからまた金融債の発行によります資金というのは、五年とか十年というかなり長期のものでございまして、普通の定期預金などよりも長期な資金調達源であるという質の面もございまして、安定的に金融業務を行うための補完的な資金調達手段ということで債券の発行機能が付与されているということでございます。  もう一点、農林中央金庫は自主流通米の仮渡資金等の政策協力資金を融資いたします際に、これは自主流通米制度に対する協力というような意味合いもございまして、その原資の一部としまして、資金運用部による農林債券の引き受けをしてもらいまして、それで原資の安定的な、そしてまた低利な資金供給ということを通じまして、自主流通米がうまく回っていくようにというような仕組みを持っておるわけでございます。  近年、資金事情から申しますと、量的には非常に資金が潤沢になってまいってきておるわけでございますが、今自主流通米の仮渡資金のことを申し上げましたけれども、そういった質的な面での農林中金の経営安定への寄与というようなこと、あるいはまた現時点で見ますと、資金調達コストという面でも農林債券の方が若干コストが低いというようなこともございますし、今後いかなる事態にも対処しまして農林中金の使命を達成いたしてまいります上で、複数のいろいろな多様な資金の調達源を持っているということが必要であろうということで、農林債券の発行は引き続き農林中央金庫の重要な機能なり機能として維持をしてまいる必要がある、こういうふうに考えておるわけでございます。
  123. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 つまり預金コストよりも債券発行による調達コストの方が安いということですか。
  124. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 農林中央金庫の預金の大宗は信連からの一年定期預金でございますが、金利は、約定金利として、日銀のガイドラインに〇・七五%を上乗せした水準が設定されておりまして、それから協同組合的な運営ということと県段階の信連との安定的な利用関係を確保するということで、そのときどきの金融情勢等を勘案して奨励金をつけるというようなことになっておるわけでございます。  他方、農林債券の方は、五年物の利付債と一年物の割引債がございますけれども、近年おおむね半々ぐらいの発行量になっておりますが、割引債の利回りは、日銀ガイドラインに連動しておおむね一年定期預金金利の水準でございますため、現時点で申しますと、その利回りは信連預金よりも低い状態になっております。  利付債につきましては、長期金融市場金利に連動しておりますので、期間の異なります一年定期物の信連から預っている預金と直接に単純比較は非常にしにくいわけでございますが、最近時点で見ますと、新規発行の利付債の利回りと信連預金の利回りを比較いたしますと、利付債の利回りの方が若干下回っている、こういった状況にございます。
  125. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 もう少し伺いたいんです、保険の方もあるので。いろいろ自由化に対応する今参考人のこれからの御努力とか、それから行政側の方の支援の体制とかいうふうなことを伺いましたので、これによってその金融自由化にさらされても、なおかつ力強く進んでいけるという状況になりましたというふうには何か言えないものがまだありまして、もうちょっといろいろ伺いたいんですけれども、時間ですので次に移ります。  保険法の方についてですけれども、この協同組合貯金保険制度は、四十八年の成立以来一度も発動されたことがなく今日に至っているということですね。今後、金融自由化の進展に伴って金融機関経営環境が一段と厳しくなることが予想されるから、だから今回のような措置をとったということになるんだと思うんですが、保険事故が発生する可能性というようなことをどういうふうに見込んでおられますか。
  126. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 確かに制度発足以来、これは一般金融機関の方につきましても保険事故の発生というのはまだ起きておらないわけでございますが、この農水産業協同組合関係につきましては、いわば貯金保険と申しますのは、貯払い停止に至りました場合の最後の救済の手段でございますが、それの一歩手前で、そういうおそれのあるような組合に対しまして、県段階の信連、そして中央の農林中央金庫、これが単位組合と一緒になりまして一種の相互援助制度というものをつくっておりまして、それによりまして経営が危なくなりました組合に対して貯払いのための緊急融資をして不安を起こさせないようにする、そしてまた経営を再建するために五年間ぐらいの経営再建のための資金の手当てをするというような仕組みがございまして、これによりまして本格的な事故の発生というものを防止してきたという経過がございます。  今後、保険事故の発生の可能性はどう見るかということでございますが、今後におきまして、金融自由化が急速に進展してまいってきておりますので、競争も非常に激しくなってくる。そういう中でそれに打ち勝って仕事をしてまいるためには、それなりにリスクも増大してくるということが当然考えられますので、これまでよりもこの事故発生の可能性が高まっていくであろうというふうに考えておるわけでございます。  ただ、それでは具体的にどの程度の確率でというようなことになりますと、これは保険数理で計算のできる性格のものではございませんので、なかなか確率的な物の言い方はできないわけでございますが、むしろ私どもは、今度は貯金保険機構の中に業務拡充をいたしまして、経営困難に陥りました組合に対する資金援助をやる、組合による信用不安を生じさせないための資金援助をやるということにいたしましたのは、貯払い停止の発生という望ましくない事態を回避するための資金援助措置を設けることによりまして、その発生の可能性がふえてくるのに対して予防措置の方をまず強化しまして、そしてなおかつその貯金保険の事故が発生しました場合の対応につきましても、これは法律事項ではございませんけれども、限度額とか仮払いの制度とかいう形での充実もあわせて図っていこうと、こういうふうに考えているわけでございます。数字としてはちょっとなかなか申し上げにくいわけでございます。
  127. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 手厚く保護していくということになるんだろうと思うんですが、それだからというのでしょうか、保険料率の引き上げのことが予定されているわけですね。現行の十万分の六から十万分の十へという算定があるわけですね。これは一般預金保険制度の保険料率と差があるわけですが、これはどういう算定から出てきているものなのですか。
  128. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 一般金融機関を対象とします預金保険と私どもの貯金保険と、いずれもほぼ同種の金融商品を取り扱っておりますし、両々相まって我が国信用秩序維持するということでございますし、保険限度額についても足並みをそろえるということでやっておりますので、料率につきましては基本的には一致させるべきものというふうに考えておりますけれども、実際保険料率を決めるに当たりましては、基金の基盤の充実の必要性の程度なり、あるいは対象金融機関経営に及ぼす影響、中には零細な組合、特に漁業協同組合なんかの場合には財務基盤の必ずしも強くない組合もございます。それからまた一挙に引き上げますことによります激変というものを緩和する必要があるということがございまして、段階的に激変緩和を考えながら、しかし考え方としては、将来的には一致させていくのが望ましいのではないかと私ども考えておりますし、関係の団体におきましても、そのような線で段階的な保険料率の足並みをそろえるための検討が行われているというふうに承知をいたしているところでございます。
  129. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 それから、これは先ほど稲村先生の方からも話が出たんですけれども、農協等の合併の問題です。地域経済が冷え込んでくれば、どこの地域における農協というのもみんな同じ状況下に置かれるわけですね。それが合併することになれば、まずは先ほど言われたように合併がスムーズにいかないだろうということが一つあります。あるいはまた万が一合併したとして、それが救済策につながっていくのかどうなのかという素朴な疑問を持っておりますけれども、この点伺っておきます。
  130. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 私ども合併も、例えば経営の健全な合併、組合との合併を通じて信用不安の解消なり信用秩序維持に寄与する場合があるというふうに考えております。  ただ、合併と申しますのは、なかなか当事者だけの話し合いますだけでは、その実現に十分な見通しが得られないとか、時期を失してしまうというようなケースも現実にはあるものでございますから、知事によるあっせんというような仕組みも入れているわけでございますけれども、こういったあっせんも基本的には強制力のあるものではございませんし、それからまた実際問題として、合併といっても隣接以外のところは考えにくうございますので、私どもの方の貯金保険におきましては、一般金融機関を対象とします預金保険の場合と違いまして、単独再建と申しますか、合併なりの営業の譲渡というような形ではなくて、その組合のままで再建をする、相互援助制度を通じて再建をいたします場合に、それに対する資金援助を機構がやるという仕組みも取り入れて、そのいずれかの方式でもって対応ができるような仕組みを考えておるところでございます。
  131. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 それから改正案のところの相互援助の取り決めのことですけれども、これは六十二条関係の分ですが、この中で相互援助の取り決めについて全国農協信用事業相互援助制度と、それから全国漁協信用事業相互援助制度が予定されていて、しかしそれは財務内容が不良だと組合に加入することができないということが言われているんですけれども、そうですか。
  132. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 農協につきましては特にそういう制限を設けておりませんが、漁業協同組合の場合には経営内容が農協に比べますと非常に区々であるということもございまして、一定の条件を満たすものについて相互援助に加入しているという形になっていると承知しております。
  133. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 漁協ほど援助制度が欲しいんじゃないの。財務内容が不良だとその加入が認められないというのは、私にはその辺よくわからないんです、何か納得できないんですね。ただし、みんなできるだけ加入を勧める、加入率を高めるというのが一番ごく自然でしょう。それは財務内容が悪ければ加入をさせられないというのは少々おかしいんじゃないでしょうか。それを伺って終わります。
  134. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 漁協につきましての相互援助制度の加入条件でございますが、一つは貯金総額が年間平均残高で三千万円以上、これはある程度以上の預金規模を持っているところがこういう信用秩序維持のための相互援助の必要も高いであろうという趣旨であろうと思います。ただ、あと三つほど条件がございまして、信用事業資産の他事業への運用額が貯金総額の三〇%以内であること、それから固定化債権が自己資本の範囲内であること等の条件がついております。これはある程度の同質性を持った組合の集まりということにしたいという趣旨に出るものだと思っておりますけれども、今回こういう貯金保険機構の仕組みの改正もいたす、業務の拡充もいたすわけでございますので、できるだけ現行の相援制度に加入してもらうように努力する、充実していく。それから今の形にそのままはなかなか諸般の事情によって入れないという場合につきましては、現行の相援制度に準ずる制度を設けるというような形で、この機構の業務の拡充に対応した相援制度の方の整備が図られることが望ましいというふうに考えております。
  135. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 ありがとうございました。終わります。
  136. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それではまず最初に、農林中央金庫法の一部を改正する法律案に関連してお尋ねをしたいと思いますが、まずいわゆる金融自由化が農協、漁協の経営にどのような影響を及ぼしているのか、こういう点についてお尋ねをいたします。  特に金融自由化は、一つには金利自由化、そういうことで、午前中からもいろいろ御答弁ございましたように、大口預金から徐々に金利自由化がなされてきておる、そういう点から言いますと、都市銀行に比べれば農協、漁協等は比較的小口預金が多い。そういう比較論から考えますと、影響の度合いというものは都市銀行に比べれば少ないんじゃないかなという、そういう感じもするわけであります。例えば利ざや、金融機関においては利ざやというのは非常に問題になるようですが、農協における利ざやというのは他の金融機関と比べてどのような変化をしてきておるのか、傾向をお尋ねしたいと思います。
  137. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 今お尋ねの中にもございましたように、金融自由化の影響と申しますのは、むしろ今後小口預金金利自由化が、これはまだいつという明確なタイムスケジュールは明らかにされておりませんけれども、出てまいった段階で具体的に出てまいるのではないかというふうに考えておるわけでございますが、農協の利ざやについての推移について見ますと、最近の約十カ年における推移は趨勢的には低下傾向になっております。五十一年度で見ますと一・三%でございましたものが、五十九年度は〇・八七%というようなことでございまして、この傾向は他の金融機関についてもほぼ同様でございます。  他の金融機関との比較につきましては、統計におきます利ざやの算出方法が金融機関ごとに異なっておりますので、詳細な比較は難しいわけでございますが、五十九年度につきまして都銀なり地銀と同様の方法によりまして農協の利ざやを試算いたしてみますと、農協が〇・四一%、都銀が〇・二%、地銀が〇・二五%ということで、農協が一番高いものになっております。  これが要因といたしまして、農協が兼営しております経済事業とか共済事業等が貯金獲得を補完する役割を果たしているために間接費が比較的低い、それから貸し出しの方は長期かつ小口でリスクが高いものが多いということから、他の金融機関よりも高目になっているということによるものというふうに考えておるところでございます。
  138. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 今、農協預金のシェア、全国全部の金融機関の中に占める農協預金のシェアというものは私のいただいた資料では低下しておる、徐々に相対的に低下しておる。あるいは農協の個人向けの貸し出しも非常に低下しておる。あるいは農村向けのいわゆる貸し出し残、こういうものもだんだん減って、一般の都市銀行の農村への貸し出しはふえておる。あるいは貯貸率の低下ですね、貯貸率等も農協の場合は五十九年度が三二・二%で最低であった。県段階の信濃連においても一三・二%で、昭和五十年度の四六・五%に比べれば急速に低下しておる。こういうような状況が見られるわけでありますが、こういう点は自由化関係はないのかどうか、どのように御認識でございますか。
  139. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 今申されましたような現象というものを、どれが金融自由化の影響、どれがそうでないかということはなかなか申し上げにくいと存じますけれども金融自由化の中に、多様な商品開発でございますとか、それからいろいろな業態の垣根を低くしていくとか、そういうことを通じます競争が強まってくるというようなことまで含めて考えますと、今御指摘のあったような現象の中に金融自由化の進展ということがやはり影響しているというふうに私ども認識をいたしております。
  140. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 今私はこういう状況を見ておりますと、農協、漁協というものがだんだん押されておるんじゃないか。今まで農協というのは経済部門は赤字で、こういう信用部門でその赤字を補い、そして中央会のいろいろな指導事業もやってきたという、そういう中で一番の大事な信用事業というものがこういうようにだんだん圧迫されてきておるという事態は、農協にとりましては私は大変な問題じゃないかなというような感じがするわけですけれども、そういう点の農水省としての御認識はどうなのか、そういうものを打開して信用部門を強化していく、そのためにはいかなる方策を考えておるのか、これをお尋ねしたいと思います。
  141. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 総合農協におきまして、近年若干改善されてきておりますけれども、御指摘のように収益構造が信用事業、共済事業部門にかなり大きく依存しているということは事実でございまして、そういう意味から申しますと、金融自由化がコストアップとか、あるいは利ざやの縮小というようなものを通じまして、信用事業のみならず、農漁協の経営基盤にもいろいろ大きな影響を与えてくるという可能性は十分考えられるところでございます。  こういった問題につきまして、昨年の十月に開催をされました第十七回の全国農協大会におきましても、金融自由化に対する対応というものをどうしていくかということが最重点課題の一つとして提起されまして、経営体質の強化なり事業運営の効率化ということ、それから第二には組合員との結びつきといいますか、紐帯を強化して、事業体制なり機能の整備をしていくということ、それから第三には資金運用力、収益力の強化、この三点、三本の柱のもとに当面の諸対策を立てまして、組織を挙げてこれに取り組んでいくということが決定されたわけでございます。  私ども、何と申しましてもこういった経営の問題でございますから、組合自体の創意工夫なり努力というものがまず基本になるべきものと考えておりますけれども、行政の側といたしましても、最近のこういった状況の推移なり変化に対応いたしますために、系統金融機関の資金運用範囲の漸次拡大でございますとか、各種の規制の緩和も漸次図ってまいってきているところでございます。それからまた、今後のこういった金融環境が厳しくなります中で、総合農協としての原点に立ち返った農協のメリットを発揮できるための経営努力に対します私ども農林水産省としてのいろいろな支援とかお手伝いということにつきましても、これから努力をしてまいらなければいけないというふうに考えております。
  142. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 先ほど森本参考人からも、農協のオンライン網を活用するとか、いろいろ今後の対応についてお話もございましたが、これは五十八年三月実施の農村金融研究会調査等によりますと、農協への関心、農協との結びつきというものが六十代、五十代、四十代、三十代、二十代とまさに急速に低下しておる。例えば「最も利用する金融機関」として五十代の人は八二・一%が農協を利用するが、二十代の人は二七・七%、これは農家の家族を対象にしているわけですけれども、その他いろんなデータが出ておりますが、いずれにしても、若い層になりますと農協離れが非常に大きいわけで、ちょっとやそっとではこういう情勢はなかなか取り返せないんじゃないか。こういう点でいろいろなことを言われていますけれども、なかなかこれは大変じゃないかなというような気がするんですが、このあたりはどうでしょうか、森本参考人。農林中金はそういう農協の健全な経営の上にこそ健全に発展するわけで、これらはやがて農林中金の経営にも私は大きな影響を及ぼすと思うんですが、その点についてはどのようなお考えでございますか。
  143. 森本修

    参考人森本修君) 今言われましたような実態であろうと思います。若い人々の農協に対する関心が薄くなっておる、そういった結果、農協の利用率も年齢階層別に見れば、年配の人に比べて若い人の利用の程度が少ない、こういうことになっております。御指摘のように、これは長い農協の将来を考えますと、我々としては重大に受けとめてその対応に努力しなければならぬというふうに思っております。  そこで、一つは、若い人がなぜ関心が薄い、あるいは利用度が低いのか。大体、現在の農村では若い人は外へ働きに行っている人が多い、兼業家が非常に多くなってきている、そういうことがありまして、農協との結びつきが非常に低くなってきている。逆に、市街地へ出てまいりますから、金融事業であれば、他の金融機関との接触の度合いも多くなる。そういう形になっておるのがかなり大きな原因ではないかと思います。  そういうことから、農協としては、協同組合は御案内のように人的な結びつきで成り立っておる組織でありますから、もう一度若い人たちを農協の事業なりあるいは運営にどう参加してもらうかというようなこと、要するに組織問題としてこれを検討していくということも基本的には大事ではないかということで、まずそういった若い人たちと農協との関係をどういうふうに再構築していくかという問題について、現在全中の総合審議会というのがございますが、そこを中心にして検討しております。  一つの発想としては、今まで農協の組合員になっていただいておりますのは、大体高齢の人が多いわけでありますが、それで一戸一組合員ということになっておりまして、ほかの若い人、婦人が余り組合員になってもらっていないというような実態もございます。そういう点をさらにひとつ見直していくべきではないかというようなこと。またいろんな部会等をやって、若い人たち、婦人の方々と非常に結びつきがうまくいっている例もございます。そういう例にならいまして、いろんな形の会合なり部会を設けて、できるだけ若い人たちの希望を農協の運営に反映させていくというようなことも一つ根本的には考えなきゃいかぬのじゃないかと思っております。  なお、そういった人たちの例えば信用事業なら信用事業に対しますところの需要、これまた年代によってかなり違ってきておりますから、そういった若い人たちの需要に合うような金融業務の展開をやっていくということ。それは先ほど来お話がございましたように、為替なりあるいは送金の業務といったようなこともできるだけ機械化して便利にいくようにする。あるいは金融商品も若い人にアピールするような商品考えていく。あるいはまた最近は利便性ということを非常に皆さん高く買っておるわけでありますから、自動機器をつけるといったようなことで、できるだけ便利に利用していただくようなことも考えていく。そういったことをあわせまして、若い人たちを農協につなぎとめるということに今後全力を尽くしてまいりたいというふうに思っております。
  144. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 この農協の信用事業をどうするかという、こういう問題については、もうこれにとどめますが、都市銀行にいたしましても、地銀にいたしましても、あるいは証券会社にしても、生保業界にしても、お互いに攻め合いの中で、かなり強烈な戦いを挑んできておるわけで、そういう中で農協としても、全組合員にとっては自分たちの参加している企業ですから、もっと農協に対する愛情を持って、そしてみんなでそういう打ちかてる農協にするように、これは本当に抜本的な大旋風を起こすように努力してもらいたい、私はこういうことを要望しておきます。  そこで、今回の農林中央金庫法の改正の問題でございますが、今までの御答弁で農林中央金庫の本来の目的は変わらない、このようにお聞きをしておるわけであります。農林中金のずっと過去を見てみますと、例えばかなり政府の出資比率が高いときには、もう七割以上も出資をしておる。この出資は、昭和三十四年からもう出資がゼロになっておるわけであります。私の理解しているところでは、そういう高い出資比率の上に政府出資に対する配当免除とか、こういうような規定を設けて、いわゆる対人信用による低利資金の融資、こういうことを農林漁業者に非常にやってきた、このように理解をしておるわけであります。本来、農業あるいは林業、漁業というものはほかの企業に比べて収益性の高いものでもございませんし、そういう意味で低利、長期の資金が要るという、それにこたえるために農林中央金庫というものができた。その目的が変わらないのであれば、そうすると今回の法改正というものは、この目的との関係はどうなのか。例えば政府出資の規定を削るということは、そういう目的に逆行するんではないか。目的は変わらないと言いながら、内容は逆行する方向に変わっているんじゃないかなという、こういうように感ずるんですが、その点はどのようにお考えでしょうか。
  145. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 農林中央金庫に対します政府の出資規定でございますが、三十四年以来、実態として、政府出資がなくて民間出資のみで運営が行われてまいっておりますし、近年、所属団体の資金が非常に充実してきているということがございますし、また先ほどお尋ねの中でも出ておりましたような農林債券の発行機能というものも有しておるということでございますので、今回、この出資規定を削除いたしましても、農林中央金庫の運営に何ら支障はない。むしろこの規定を削除いたしまして、民間法人の要件を満たすことによりまして、特殊法人に関するいろいろな諸規制を廃止いたしまして農林中央金庫の活性化を図ろうというものでございまして、所属団体に対しまして金融上の便宜を提供すみのを第一義とするという使命の変更がございませんでも、昭和三十四年以来、三十年近くいわば眠った規定になっておりますものを削除しても、それによって使命の達成に支障を来すことはないという判断で、今回のような改正を考えたわけでございます。
  146. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは森本参考人にお尋ねをいたしますが、先ほど政府の御答弁がありましたように、現在でもだんだん厳しい状況に置かれてきておる。しかも金融自由化という点は、金利の面からいえば、これから小口の方へ行くわけですから、そういうような状況の中で、本来、農林中金がより低利な資金を供給することが、現在与えられている条件、農林中金の場合は、預金準備率が低いとか法人税が安いとか、あるいはまた金融債の発行ができるとか、こういうような条件、また今回、いろんな業務整備拡充によって今までの制限がとれていくわけですが、そういうことで本来の目的を果たしていくことには支障はないのか。その点はどうなんでしょうか。
  147. 森本修

    参考人森本修君) 先ほど来いろいろお話がありましたように、農林中央金庫が発足いたしました、つまり産業組合中央金庫が成立をいたしました当時は、産業組合なりあるいは農村の資金関係が非常に窮迫をしておるというようなこと、その結果、系統の資金も潤沢でないというようなことでありましたので、政府の方で出資する、あるいは財政資金といったようなものもたしか流れたかと思うんですが、そういうふうな形でてこ入れをしてまいりました。終戦後もやや似たような状況であったと思いますが、それが漸次状況が変わりまして、御案内のように、昭和三十四年に政府出資が事実上返還になるというようなことで、それ以来ほぼ三十年近くそういう形で実質上政府出資がない状態で運営をしてまいりました。そういうことでありますので、その間何か支障があったかというと、必ずしも大きな支障があったというふうには私は聞いておりません。そういうことでありますので、今回臨調の答申また政府の方針によりまして、政府出資は実質上ないし、形式上も法律上から資格を削るというようなことになりましても、運営の実態に対する影響というものはほぼないのではないかというふうに思っております。私どもとしては、そういった体制のもとで大変厳しい金融、農業環境の中でありますけれども、できるだけひとつ精いっぱいの努力をしなければならぬかなと、こういうふうに思っている次第であります。
  148. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 現在、農林中金のいろいろな融資条件というものは、民間金融機関あるいは都市銀行等の融資条件に比べてどの程度有利なんですか。これは一概には言えないと思うんですが、一般的に言えばどうなんでしょうか。
  149. 森本修

    参考人森本修君) ちょっと比較がなかなかしにくいのでございますが、私どもとしては、系統団体に対しましては、できるだけ資金のコストその他も勘案をしながら、また他の金融情勢ともにらみ合わせながら、非常に抽象的な表現で恐縮でありますけれども、できるだけ有利な条件で資金を提供するということに努力しているつもりでございます。
  150. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 けれども、今現に系統金融の中に都市銀行等がだんだん割り込んできているわけですね。そういう比率の方が増大してきているわけです。まだ全体から見れば数は少ないかもしれませんけれども。  それともう一つは、三十年近くは出資金がなくてもよかったという、これはわかると思うし、それは関係者の御努力は多とするわけですが、しかし今金融自由化という問題、一方では外圧により農業においても開放を要求されてきているわけで、そういう金融機関も、その金融機関が対象とする農業もあるいは林業も、過去三十年にはない、ここ数年の激しいそういう競争に立たされているわけですね。そういう点考えると私は、三十年間よかったからいいんだという、そういう自信があるのかなと思う。もちろん、この農林中金法はもう五十年以上続いてきたわけですし、森本参考人もいつまでも永久に中金の責任者というわけではないし、あなたがやめた後もこの農林中金は存続してもらわなくちゃ困るわけで、そういう意味で私は、この点御答弁は要りませんけれども、非常に心配である、こういうことを申し上げたいと思います。  それと先ほど刈田委員から質問もありましたが、いわゆる農林中金の目的の件でございます。今後政府出資もなく、いろいろな国のコントロールが外されて民営化にさらに前進するわけですけれども、そういう民間になればなるほどこの農林中金が本来の目的を離れて採算だけを考えていくようになれば、これは一般の民営機関と一緒になっちゃうわけで、そういう意味業務内容というものは今後も自由に農林中金で変えていくようになるわけでありまして、そういう点からいうと、この目的というものをこの際はっきり明示すべきではないか、このように考えるわけですが、その点どのようにお考えでしょうか。
  151. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 臨調の言っております民間法人の要件は、今回の改正によって満たすわけでございますが、特別の農林中央金庫法という法律に基づきまして存立をいたしております単一の法人としての農林中央金庫、そしてまたその業務につきましては、農林中央金庫法に詳細な規定がございまして、その中で所属団体への金融上の便益供与が第一義的な業務である、同時にまた金融機関として国民経済の健全な発展に寄与するというような公共的な責務なりあるいはまた系統の信用事業の最後の資金調整をする場であり、そして所属団体等を通じて集積されました資金を外部経済との接点に立って運用するというような公共的な役割も持っているということは、農林中央金庫の業務に関します規定の中できちんと書かれておるわけでございまして、    〔委員長退席、理事北修二君着席〕 政府出資の規定を削り、特殊法人としての監督から除外されるにいたしましても、こういった農林中央金庫法の規定に基づいて業務が行われ、またそういった農林中央金庫の専門金融機関としての業務運営につきまして、農林水産大臣と大蔵大臣も引き続いて農林中央金庫法に基づいて指導監督をいたすわけでございますので、これが一般民間金融機関と同じようになってしまうという心配はないものと私ども考えておりますし、またそのようにしないように私どもも当然しかるべき指導監督をいたすという考えでございます。  目的規定ということにつきましては、農林中央金庫法全体をごらんいただければ、その中でおのずから明らかになっておりますので、これまでの累次の改正の際と同様、特に目的規定を置くということは今回においてもいたさないという考えで御提案を申し上げているわけでございます。
  152. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 農林大臣に最後にお尋ねをいたしますが、今回改正が行われるということは、農林中金が競争に打ちかつ体制をつくる、そういう意図があるんじゃないか。そして、そういう民間の活力を生かした農林中金として、そして本来の目的を達成していく、こういうところにあるんではないかと思うわけでありますが、それにしても、農林中金がこの発足以来持ってきた使命を果たすには、農林中金としても今までの考えを改めて、もちろん農協関係者も含めていかないと自由化の流れには勝てないんじゃないか。そういう意味で、この法律が成立することを契機にそういう活性化というか合理化というか、そういう点へ抜本的に努力をすべきじゃないかな、こういうように私は思うわけですが、農林大臣のお考えをお聞きしておきたいと思います。
  153. 羽田孜

    ○国務大臣(羽田孜君) 先ほど来先生御討議をいただいてまいりましたように、この農林中央金庫法という特別な法律に基づいて設置された金融機関であるというこの第一義的な使命というもの、これを忘れることは許されないと、いうことであり、またそのためにあるんだということを自覚しながらやっていかなければならぬと思います。  しかし、今お話がありましたように、また御討議の過程の中にもありましたように、今農協離れですとか、あるいはこういう金庫から離れていく、そういった動きもあり、また一般金融機関も農村地帯にも相当入ってきて、相当競争が激化されるという状況でございます。  そういうことで、新しい法律に基づいて活性化というものは図られていかなければいけない。活力を持ったものでなければいけない。また農業者自体が要求するそういった品ぞろえといいますか、そういったものなんかについても十分配慮しながら対応していかなければ、せっかく民間化いたしましても、機能というものを十分発揮できないのではないかというふうに思っております。  ですから、そういう意味で、いずれにしましても、今度は民間としてのあれですから、まず自立ということでありますけれども、私ども農林水産省といたしましても、そういった目的というものはきちんと貫徹されるように適宜指導助言をしてまいりたい、かように考えております。
  154. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 次に、林業関係でございますが、農林中金はもちろん林業も含まれるわけで、近年御存じのように林業の環境が非常に厳しい状況にあるわけであります。  私のふるさとは愛媛県でございますが、先般ふるさとへ帰りまして林業関係者といろいろお話をいたしました。林業組合は預金は扱っていないようですが、農林中金等からお金を借りて林業経営者に融資をする、なかなか返済も厳しい。このままいくと返済不能に陥っていくんではないか、こういう声がたくさんございます。なかなか森林だけでは担保価値がない。だから、林業組合自身が農家の人にお金を貸す場合に、山林以外に添え担保というほかの担保を出せと、こういうことを言っておるわけですね。だから、担保価値のないような山に大蔵省は相続税をかけるなんてけしからぬと、こう思ったわけでありますが、今こういう林業関係への融資状況、この返済状況というものは順調にいっているのかどうか、そういう点に心配はないのかどうか、その点はどうなんでしょうか。
  155. 田中恒寿

    政府委員田中恒寿君) まず融資の状況でございますけれども、先生お話にございましたように、最近の大変な不況の影響がありまして、いろいろ経営活動が停滞をしてまいっております。そのために短期の運転資金であります国産材産業振興資金、これにつきましては、所要額が伸びているという状況はございますけれども、設備資金を中心としました農林漁業金融公庫資金、あるいは林業改善資金につきましては、いずれも前年度を下回るというふうな停滞の傾向を融資状況は示しておるわけでございます。  返済の状況につきましては、これはまことに幸いなことにと申しますか、現在までのところ、それが滞りましていろいろ森林組合なり、あるいは融資機関に御迷惑をかけでおるといった例は、現在のところは目立っては出てきておりません。これからのことにつきましては、いろいろ林業振興策を展開することによりまして、気をつけなければならないと自戒をいたしておりますが、現在のところはまだ幸いにそう出ておるという状況ではございません。
  156. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 林業経営というのは息の長い話ですし、そういう経営の苦しさもじわじわきているようで、いろいろ聞いてみると、まさに一歩手前というか、こういう状況でございますので、林野庁としても、ただ返済金が入っているからといって安心するのではなしに、その裏がどういう状況であるのかという、こういう点も私はつかんで対応を立てていただかなくてはいけないんではないかと思います。  広島等では、この数年の間に七、八件倒産をして、一億八千万円ぐらいの倒産も出ておるわけであります。それで、林業に対する資金にしても、この資料によりますと、農林中金の比率、それから政府金融機関の比率、それから一般金融機関の比率から見ますと、一般金融機関から林業への貸し出しは徐々にふえておる、こういう状況でございますが、これは農林公庫の業務統計年表等によりますと、こういうように一般金融機関の貸し出しがふえておる。こういう点は、非常に採算のいいところが結局、都市銀行等に食われちゃって、採算の悪いところばっかりが結局、残るんじゃないか、こういう傾向があるんじゃないかなという、そういう心配があるんです。そういう点はございませんでしょうか。都市銀行の山林に対する融資がふえているというのはどういうところにあるんでしょうか。
  157. 田中恒寿

    政府委員田中恒寿君) 一般銀行からの融資につきましては、ほとんどが一時の運転資金でありまして、造林とか林道等の設備資金はこちらの政府系のがほとんどでございますので、今のようなことが傾向ではないんではないかと思いますが、ちょっとそこまで詳しくは私の方で把握いたしておりませんので、御了承いただきたいと思います。
  158. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 その点につきましてはまた調査されまして、別途御報告いただきたいと思います。  それから次に、農協、漁協の不正事件の問題であります。私の住んでおる広島県におきましても、県漁連の組合長等がいろいろ解任になったり刑事事件になったり、これは経営の破綻に一つの因があったようであります。あるいは組合長が不正融資をするとか、そういうような事件が非常に多いように思うわけでありますが、こういうことは本当に残念なことでありますが、こういう不正事件とか経営破綻というものの最近の状況はどうなのか。また、こういうものの防止のためには農水省としてはどういう対策を講じているのか、これをお尋ねいたします。簡単で結構です。
  159. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 農漁協の不正事件が後を絶たないという点につきましては、私どもも大変残念に思っておりますし、またそういうことを防止するための努力もしてまいらなければいけないと思っておりますが、農協につきまして過去十年間における不正事件の発生状況を見ますと、発生件数は五十年度をピークに減少傾向にございまして、五十九年度に三十四件になっております。また金額的にもほぼ減少傾向にございます。発生部門は、従来から信用部門が御指摘のとおり多いという実情になっております。  経営破綻という問題にどの程度発展するかということでございますけれども経営破綻の原因は必ずしも不正事件にのみあるというわけではございませんで、不正事件一件当たりの平均額で見ますと一億一千六百万程度でございますので、その程度の額で直ちに組合が破綻をするという場合は平均的には少ないと考えられるわけでございます。  経営破綻を相互援助制度の発動件数でとらえてみますと、最近十年間で毎年一件ないし三件というような状況でございます。  それから不正防止の問題につきましては、何といいましても、貸出業務につきまして審査体制を確立して融資の適正化を図るということと、内部管理体制を見直して業務執行について自己点検機能を強化するといいますか、そういうことが必要でございますし、また不正の未然防止のための内部牽制機能の強化を図るというようなことが基本的に重要でございます。こういった点につきまして、私ども過去にも通達を出し、また農協の常例検査なり、あるいはまた特定の事業規模以上を持っておりますような単位農協につきましての特別検査というようなものも実施しながら、不正事件の防止に努めているところでございます。    〔理事北修二君退席、委員長着席〕
  160. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 次に、水産庁が非常に負債の多い漁協に対してその対策を講じてきておるわけでありますが、その実施状況と効果はどうなのか。  それともう一つは、漁協の貸出金が、昭和五十九年度において初めて貸出残高が減ったわけですね。このように、これは日本銀行の経済統計月報にあるわけですが、貸出残高というのは借りる方からすれば借金ですから、借金が減るということですから、これは喜んでいいのか、この点はどうなんでしょうか。  この二点についてお尋ねをします。
  161. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) お答えいたします。  前段の不振漁協対策でございますが、六十年度から漁協信用事業整備強化対策事業という名前で始めておるところでございます。六十年度は事業実施初年度でございましたので、基本方針の策定あるいは信用事業実施漁協の類型化の段階までにとどまった県が多くて、要整備漁協についての整備計画及び財務改善計画の樹立というところまで進んだ県は少なかったのでございますが、各県から一応お伺いしているところによりますと、六十一、六十二年度におきましては、漁協の類型化基準によりまして要整備漁協についておおむね計画に沿った整備計画及び財務改善計画の樹立が行われるものというふうに見込んでおります。  この事業は、効果が発揮するまでにはかなり時間がかかるところでございまして、そういう意味では気長に成果を見守っていただかなければいけないというふうに思いますが、私どもとしては、信用事業を実施しております漁協の体質改善に着実に寄与することを期待しているところでございます。  それから後段の貸出残高が減っておるという点についてのお尋ねでございますが、これは殊に長期貸出金が低迷しておるということに由来しておるものでありまして、長期貸し出しの低迷の根底にあるものは、漁業者の設備投資意欲の減退ということであるというふうに考えておりますので、決してうれしい事態であるというふうには言いにくいように存じております。
  162. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 最近、漁業者は、輸入水産物の値段は下がるけれども油の値段はなかなか下がらない、しかも中国地方では韓国船の進出とか、そういう点で大変厳しい状況に置かれておるわけでありますが、水産庁におかれましても、そういう対応に今後とも努力していただきたいことを要望しておきます。  最後に、これは規制緩和の問題でございますが、県信連等からは、国債の窓販などの規制緩和の要請が強いわけであります。また農協にしても、信用事業が競争に打ち勝っていくためにはそういう規制を撤廃してもらいたい、こういうような要求もあるわけでありますが、こういう規制の撤廃という点については、今後どういう方向でどういう順序で臨まれるのか、この点をお尋ねをいたします。
  163. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 今お尋ねの、どういう順序で進めるかというところの順序というところがちょっとよく理解しがたいところがございますけれども、私どもこういう金融環境の変化に対応いたしまして、農協なり信連の資金運用につきましての諸規制の緩和ということにつきまして、これまでも順次進めてまいってきております。  考え方としましては、一つは、経営の安定性、健全性というものをにらみながら、そういった態勢に応じて規制の緩和をしていくということが一つございますのと、もう一つは、何といいましても、協同組合の信用事業でございます。そういう意味で、協同組合の信用事業としての本来の役割というものを阻害しない範囲内で必要に応じて規制の緩和をしてまいる。そういった二点で、詳細を申し上げるのは省かせていただきますけれども、従来も信連、農協につきましてそれぞれ規制緩和を段階的に進めてまいってきているところでございますし、今後につきましても、ただいまお話のありました国債の窓口販売というような問題も含めまして、今申し上げましたような点を念頭に置きながら、検討を進めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  164. 下田京子

    ○下田京子君 農林中央金庫法の改正について質問いたします。  今回の改正というのは大きく言って柱が二本。一つは農林中央金庫の民間法人化と一もう一つ金融自由化という金融情勢に応じた農林中金の業務の整備を図るのだということにあると思うわけです。  そこで、まず確認したい点なんですが、業務関係規定の整備の問題なんですけれども、所属団体及び取引先のニーズの多様化にこたえるための措置なんだということで四点挙げられていると思うんです。  一点は、金銭債権の取得や譲渡を行うことができるようにする。二つ目に、債務保証の範囲を拡大していく。三つ目、出資もしくは株式の払込金の受け入れや配当金の支払いの取り扱いのできる範囲の拡大をする。四つ目に、債券の募集の受託や担保付社債信託法による信託業務ができるようにする。この四点挙げられている中で、所属団体のニーズにかかわるものは何なんでしょうか。
  165. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 所属団体からのニーズといいますか、御要望というふうな点で申しますと、金銭債権の取得または譲渡、それから出資もしくは株式の払込金の受け入れまたは配当金の支払いの取り扱いを行うことのできる範囲を貸し付けをなし得る者まで拡大する、この辺も御要望があったところというふうに聞いておるところでございます。
  166. 下田京子

    ○下田京子君 出資もしくは株式の払込金の受け入れ云々というのは、これは要望があったけれども、実態的には中金そのものの話だと思いますよね。  次に、金融機関としての機能の整備であるとか、あるいはまたその他旧規定の整備等あるわけですけれども、特に確認したい点は、末端の協同組合にかかわる点での直接的な整備という点はどこかといえば、その他旧規定の整備等にかかわる部分の貸付期間制限を廃止する、こういう件にのみあるというふうに理解してよろしいですか。
  167. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) ただいまお話のございました貸付期間の制限の撤廃、それからまた公益事業法人の業務代理、公共料金の徴収など所属団体、農漁協等の金融上の利便に資するところが改正の内容だというふうに理解しております。
  168. 下田京子

    ○下田京子君 今の部分は、特に料金等の取り扱いというのは全農中心になるかと思うんですよね。末端はもうやられているというふうに理解しています。  今回の農林中央金庫法の改正に伴ってなんですが、大事なことは、農林漁業の協同組合を基本構成員にして成り立っているのがこの農林中金ですね。そうしますと、これら協同組合に金融上の便益を供与するんだということが第一義的な使命だと思うんですが、その点から見まして、今回の法改正というのは、もっとそこに焦点を当てた形での整備というものが必要ではなかったのではないか。この辺どう思いますか。
  169. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 私が先ほど申し上げましたような点が所属団体なり、農漁協に直接関連のいたすところでございますが、農林中央金庫の法律上の規定におきましては、既に従来から所属団体につきましての各種の直接的な金融上の便宜供与についての規定は相当程度整備されておったところでございます。今回御提案申し上げております中身は、最近の金融情勢の変化に伴いましていろいろ生じてきましたニーズに対する業務規定の整備を図るということで幅広く考えておりますので、御提案申し上げているような内容になっているわけでございます。
  170. 下田京子

    ○下田京子君 いずれにいたしましても、所属団体、特に末端の農林漁業協同組合のニーズにこたえているかどうかという点では、何よりも現在の中金の構造を見てみればわかると思うんですね。業務内容を見てみますと、預金の方はどうかといえば、五十九年度末十五兆六千三百二十三億円中、所属団体は十三兆八千二百二十三億円で、実に八八・四%、約九割占めています。五十年度時点では約八割でしたから、預金の方で見ますと所属団体のウエートが非常に高い。一方、貸し出しの方はどうかといいますと、五十九年度末で九兆四百十八億円中、所属団体は一兆三千五百七十億円で、その占める割合というのは一五%、五十年度末では三七・二%でありました点から見ますと、大変急激な落ち込みになっております。ですから、貸し出しに余裕金等加えて総合運用額で見ますと、五十九年度末二十一兆五千百四十八億円で、この総運用額に占める所属団体貸し出しというのは、何とわずか六%なんですね。これがかつて五十年度末には二二%を占めていたという点で、この総合運用額の点でいつでも大変な落ち込みで、異常なテンポで農林漁業離れが起こっている。これは決して好ましい事態じゃないと思うんです。そうですね。
  171. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 御指摘のとおり、所属団体貸し出しにつきましては近年伸び悩み傾向にございます。それに対しまして所属団体以外への貸し出しが増加しておるということも事実でございます。このことは、一つは、農家等の資金需要が最近の農林水産業をめぐります状況が厳しいということで投資意欲が全般的に低下している、停滞しているということに加えまして、近年、総じて信濃連、農協等の所属団体の資金が充実してきているということで、農林中央金庫への借り入れ依存度が低下しているということが主な要因になっているというふうに考えております。
  172. 下田京子

    ○下田京子君 大変恐縮なんですけれども、時間が限られていますので端的にお願いしたいんです。  続けますと、いろいろ理由はあると思うんですけれども、好ましい状態でないということはお認めだと思うんです。  問題は、今回の改正で一層サービスが拡大される、それは一体どこなのかといいますと、関連産業への貸し出しじゃないかと思うんです。特にこの関連産業への貸し出しは総運用額の中でどのくらいの貸し出しがあるか、この点でのシェアは、五十年度末でも三八%で、五十九年度末も三六%で、ほぼ横ばいなんですけれども、特にこの関連産業にどういった基準で貸し出しているのか、選定基準は何なのかということなんですね。それらの要綱等についていただきましたところが、関連産業法人の範囲の基準というものは一応定められておる。そのときどき恐らく厳しく査定もされていると思うんですけれども、数回にわたって改正がなされ、品目の拡大をし、流通業者を入れるなどとにかく対象を拡大してきたというのは事実ですね。
  173. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 簡潔にお答えをいたします。事実でございます。
  174. 下田京子

    ○下田京子君 ありがとうございます。  それで、資料をちょっとごらんいただきたいんですけれども、上場会社、五十九年度末ですけれども、五百六十三社のこの大手企業に対しまして融資額合計が一兆八千三百六十七億円貸し出しております。これは農林漁業の所属団体貸し出し一兆三千五百七十億円をはるかに上回っているんですね。ですから、貸し出しの実態から見ますと、まさに農林中金は大手企業の専門融資機関というふうに言えるような傾向になっているんではなかろうか。どうですか。
  175. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 私、この数字について特段異を唱えるつもりはございませんけれども、関連産業貸し出しと申しますのは、農林漁業の生産資材の生産流通でございますとか、農林水産物の加工品の製造流通でございますとか、こういう法人に対して一定の基準のもとに貸し付けを限定して認めているというものでございまして、その中で資材の生産なり、あるいは農林水産物の加工といった企業の中には当然相当数の上場企業も入っているわけでございますので、この数字をもちまして直ちに大企業向けの融資機関に成りかわっているというふうに断定することはいかがかというふうに思っております。
  176. 下田京子

    ○下田京子君 評価は分かれるところですが、事実が物語っていると思いますのは、資料にも書いておきました。金融ビジネスより私いろいろ拾いました結果なんですけれども、同じような性格であります商工中金の場合と比べまして、関連産業への貸出割合というのが農林中金の場合では二〇・三一%ですね。ところが、商工中金の場合ですと、その率はわずか一・二七%という状況なんです。ですから、問題を投げかけているということは事実だと思います。  特に次の資料を見ていただきたいのは、基準を決めて厳しくチェックなされているとおっしゃいますけれども、一体その基準なるものがどうなのかということを問われるものではないかと思うんです。総合商社九社に対する融資状況です。ずっとごらんいただければおわかりだと思うんですけれども、五十八年度トップは伊藤忠商事で六百一億八千七百万円貸し付けております。五十九年度になりますと、これも同じくトップが伊藤忠で五百七十一億一千六百万円貸し出しております。トータルでもってこの大手九商社だけで実に五十九年度は二千四百八十一億四千万円、これだけの貸し付けをしておるわけですね。  一方、いつも私ども指摘しているんですけれども、こうして農林漁業者から集められた資金を借り受けて、いろいろ世界的に商活動をなされている総合商社九社の中で、五十九年度自民党の政治団体である国民政治協会には三億五千百九十四万円の献金がなされている。新自由クラブ、民社党への献金もなされておりますが、こういう状態である。  それから、もう一つの資料をごらんいただきたいのが丸紅でございます。この丸紅の融資状況がどうかという点で、私は特に融資条件の問題を指摘したい人ですね。五十年度からの融資額をずっと書いておりますけれども、五十九年度末で三百四十一億八千五百万円、丸紅に融資しております。条件は担保なしですね。多くの農林漁業者が担保物件がないというようなことで非常にあえいでいる中で、これは債権取り立てで問題がないということでやられたかに思いますけれども、道義的に見ていかがなものなのかというふうな大変問題がまた指摘されるわけです。  こうした事態についてもちろん承知されておると思うんですが、承知されているか、いないかだけ。
  177. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 御指摘のありましたような総合商社は、飼料穀物の輸入でございますとか、農機具、農林水産物の販売等の業務を営んでおりますので、これらの業務が生産資材なり農林水産物の流通に該当することから、関連産業貸し出しとして農林中央金庫が融資しているものでございます。この場合、法人の事業全体のうち、今申し上げましたような当該業務の占める割合が一定の率以上となっていることを貸し出しの要件にいたしておりまして、融資金額につきましてもこの関連金額を限度として扱っております。  担保の徴求等につきましては、私どもよりもむしろ中金の方からお答えをいただいた方が適当ではないかというふうに思います。
  178. 下田京子

    ○下田京子君 どういう理由で担保なしだったのかという理由は今問いません、これは事実なんですから。  それで、今一定の基準の中での取り扱い割合があれば、その基準に基づいて貸し付けているということなんですが、その基準さえ満たしておれば、一体高利回り運用ということであればだれでもいいのかということになるわけです。かつて問題になったと思うんですけれども、サラ金会社にも融資していて社会問題になりましたね。それに類似した形で非常に問題を持っているのが日本信販であるとかオリエントファイナンスへの融資ではないかと思うんです。これも資料をごらんいただければおわかりかと思うんですけれども、これらの企業から農民が高い金利で借りておるわけです。つまり農林漁業者から集めた資金がこういうオリエントファイナンスや、クレジット会社ですね、日本信販などに融資される、これらの企業が年率一一・七五%ないしは一四・二五%という高金利でもってまた農民のところに個別品目をあっせんして手数料をいただいてくる、利子をいただいてくる、こういう仕組みになっております。ですから、考え方が違うといえばそれまでなんでしょうけれども、直接どうして農民にこたえるような形での対応ができないんだろうか。どうでしょう。
  179. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) お話の前の方に出ておりました信販とかクレジット、リースを営む法人に対する融資でございますが、信販、クレジットの業務を営みます法人は、農業者の農機具の購入でございますとか、一般消費者の食料品とか、木工家具の購入等々に当たって信用供与を行っている、またリース業を営む法人につきましては食料品店に対する冷凍とか冷蔵機器なり、あるいはいろいろな加工器具の賃貸業務を行っているというようなことから、関連産業貸し出しとして一定の基準のもとに貸し出しを認めているものでございます。  それから系統の所属団体あるいはまたその構成員に対しての融資の努力が足りないのではないかというのが一番最後のお尋ねであろうかと思いますけれども、その点につきまして、今系統の内部におきまして、従来から要綱融資というような形での独自の低利融資の資金の制度ども自主的におやりになってきておられますけれども、これを一層整備して、所属団体あるいはその構成員に対するサービスの充実を図ろうという検討も、現在系統組織の中で、中金あるいは農協中央会というようなところで現在なされているところでございまして、そちらの方につきましても、私どももちろんこれからも指導もし、またそういう中金を初め、系統組織の努力に対する支援、指導もしてまいりたいと思っておるところでございます。
  180. 下田京子

    ○下田京子君 できるだけ農林漁業者のそういうニーズにこたえるものを要綱融資という形でやっているという御説明がありました。そこが大事なことなんですね。  指摘したいことは、農協信用事業の資金調達原価及び運用利回り、これを見ますと、調達原価は五十八年度の場合に六・六八%であります。運用利回りの方は七・六三%、ですから利ざやが〇・九五%となっておるわけですけれども、この運用利回り中、貸出金利は八・三七%と平均運用利回りよりも高いんですね。ですから、信連に預金するよりも貸し出しをした方が有利な運用になっているということを証明しているんです。そういう点からも重要だ。そうですね。
  181. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 信用事業としましては、御指摘のとおり、利回りという点につきましても、貸し出しをなるべく伸ばしていくというのが最もいい道だというふうに一般的に言えようかと思っております。
  182. 下田京子

    ○下田京子君 そうしますと、繰り返しになるようなんですけれども、ここは指摘だけにしておいて、あと大臣にお答えいただこうかと思います。  農家のニーズにこたえる融資という点では、確かに商品としてはいろいろおやりになっているんですよね。特に、最近は、農協の用途別貸し出しの残高状況を見ますと、生活関連で三四・五%とトップでございます。特に、対前年比で五十八年度末残高で見ますと、農協住宅ローンあるいは教育ローン、こういうものが大きくなっております。こういう拡大は当然やるべきだというふうに思いますし、この点で、国また中金が援助していくべきだと思うんです。  大臣、いいですか。事例を御紹介したいんですけれども、青森県の下田町農協というのがございます。この農協は地域とのかかわりを強化していこうということを重点目標の一つにしております。特に、ことしから高校生に無利子の奨学資金の貸付制度を発足さしたんですね。そのねらいというのは、農協の信用事業は銀行とは違う、ここにあるんです。特に小中学生を対象に入学おめでとう大会なんというのもやりまして、地域のお母さん、子供さん、一緒になって農協にお呼びして、若妻会の皆さん方が地域でとれた農産物でもって食事をつくって、そしてバイキングでもって楽しみながらいろいろとまた地域の農業を子供たちに教えていく、こういうこともおやりになっているんですね。こういう地域農業との生きた触れ合い、それに基づいた形での資金対応、それに対する中金や国の援助というものが今検討されてしかるべきではないか。  その点でもう一つ御紹介したいのが、これは静岡県の場合なんですけれども、県信連がことしの七月から農協青年部向けの生活資金をつくりまして、金利が四・六%の低利で百万円限度なんですね。これは用途自由ということでのカルチャー資金なんです。県信連は農協に年利一%の利子補給を行うということなんです。  ですから、さっきから何度もいろいろお話しになっておりますが、言葉だけの農林漁業者のための金融機関だとおっしゃっていても、現実がそうなっていないというところは強く反省して、正すべきは正して、国がやるべきはやっていただきたいという点での大臣の決意を聞かしてほしいわけです。
  183. 羽田孜

    ○国務大臣(羽田孜君) 国といたしましても、そういったニーズにこたえるためにいろいろな制度というものを拡充していく、この努力というものは必要だと思います。それと同時に、こういった現地で自主的な創意工夫、そうしてみんなそれぞれの機関の努力によってこういうことがなされていること、これは大変いいことだなというふうに考えます。
  184. 下田京子

    ○下田京子君 いいことだなあととどまらないで、国もおやりになるということを最初にお述べになっているところを私も改めてまた指摘しておきます。逆であったらよかったと思います。  次に、水産金融の問題について御質問します。  具体的に日ソの漁業交渉に関連して機敏な資金対応ということでもって皆さんいろいろと首を長くしてお待ちになっております。四月十一日、日ソ漁業交渉が大筋合意してもはや一カ月でしょう。交渉の妥結のおくれによって一月以降の休漁等による経済的打撃、これは細かく言うまでもなく長官はよく御存じのことと思うんです。特に漁業者、加工業者等の関連業者に対して、北海道、青森、ここではつなぎ資金が実施されておりまして、宮城も間もなくつなぎ資金が実施されるというふうに承知しておるんですが、問題は国の方の対応なんですね。  つなぎ資金出せよ、金融機関よろしく頼むと、こう言ったんですが、つなぎですから一体どこにつなぐのかという点で、一つは、漁業者の場合に国際規制の関連経営安定資金、これはいつ発動できるんでしょう。それから条件の緩和等は検討されているかどうか。  二点目。加工業者向けの水産加工経営改善強化資金のうち、国際規制関連経営安定資金について、既に昨年カニ、ツブの特例措置を行いましたけれども、おくれおくれで実態がなかなかうまくいかなかったということもあるわけで、そういう特例つきの措置等をいつおやりいただけるのか、その辺の見通しをお聞かせください。
  185. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) お答えいたします。  一つは、漁業者に対する国際規制関連経営安定資金の方でございますが、実はこれは出漁遅延によって生じました漁業者の経済的な損失を後年度の漁獲でカバーするように繰り延べていくための資金、そういう性質の資金でございますので、この発動を決めます前提としては、今度の交渉の妥結結果に対する漁業者の皆さん方御自身の身の振り方をどうなさるかということについての御判断、あるいはどの程度のインパクトを受けておるかということについての見積もり、そういうことが前提になりまして資金の発動ということになりますので、この点、そういう手順がかかるということを御理解いただきたいと存じます。ただ、つないでいただいている以上は、今後も生き残っていかれる方につきましては、国際規制関連経営安定資金の方へつながってまいりますし、それから減船のやむなきに至る漁業者につきましては、また減船のやむなきに至る漁業者についての対策を講ずることにいたしますからそちらにつながっていくことになる、そういう性質のものであるというふうに考えております。  それから水産加工経営改善強化資金、これにつきましては実情を精査の上、できるだけ早く融資をするようにいたしたいというふうに考えております。  それから水産加工関係の業者の場合には、この問題もございますが、一つは現在出しておりますつなぎ資金を借りるに当たって、授信力が不足しておって、思うように金融機関に信用してもらえないから借りられないという問題がございますので、この点につきまして中小企業信用保証の特例措置をできるだけ早く動かすようにしたいというふうに考えまして、通産省にお願いしているところでございますが、通産省の方でも前向きに財政当局と今も相談してくださっておるというふうに承知をいたしております。
  186. 下田京子

    ○下田京子君 考え方が示され、早期に実現するようにということの努力の姿勢は示されたわけでございますけれども、基本的にいかがなものかと思いますのは、長官も大臣も、どんなに切実であるかということは皆さんよく御存じだと思うんですね。ですから、それだけに業界に石を投げたままで、あなたたちが行って、どういう身の振り方するのか決めてこい、それから対応するというやり方ではなくて、遠洋にあっても、沖合にあっても、沿岸にしても、日本のこれから二百海里時代の中でどう生きていくかというような抜本的な方策とあわせながら、当面やれる部分ではこういう対応がある、その中で皆さんどうなのかという、一定のそういう方向づけというものを示さなきゃいけないと思うんです。そういう対応でぜひお願いをしたいと思います。よろしいですね、この点は。
  187. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) お答えいたします。  難しい問題がございますのは、例えば沖合底びきでございますとか小型の底刺し網のような場合でございますが、こういう場合には、ソ連二百海里水域のほかに、我が国の二百海里水域の中でも操業水域を持っておりますから、したがいましてソ連の二百海里水域の中で今度出てまいりましたような規制の強化がどの程度減船という事態につながるのであるかということにつきましては、必ずしも一義的に決まってくるわけでないという面がございます。  それから沖合底ひきの場合には、例えば東樺太の水域におきます中ソ・トロールの操業ということについて業者の皆さん方がどの程度の胸算用をお持ちになるかというようなことも、これも減船隻数が決まってくる過程での重要な要素でございます。  今申し上げましたように、私ども行政の側だけでえいやと判断して検討するということにちょっとなじみにくい要素がいろいろございますので、ただいまのようなことを申し上げたのでございますが、物事が決まっていく過程におきまして、当然私ども行政の側で決断していただく過程でお手伝いしていくべきことはしていくということでなければいけないと思っておりますので、投げっ放しとは思っておりません。
  188. 下田京子

    ○下田京子君 話が前後しますけれども、さっきの加工業者に対するつなぎ資金の話で、中小企業信用保険法の倒産関連保証の指定、そういうことで考えているということをおっしゃいましたが、これを早期にやってほしいといいますのは、加工業者に対するつなぎ資金は北海道のみが実施しているんですよね。融資枠が三十億ありながら、実績は四月末で二億九千九百万しかない。つまり、それは何かというと、借りようにもすべて担保に入っていて借りられないというような状態であるということ。御承知だと思いますが、念のために指摘しておきます。  それから漁業者のつなぎ資金の方なんですけれども、これは飛んじゃったから戻りますが、北海道の場合に金利がどのくらいかといいますと、五・七五%なんです。宮城県は五%になっておりまして、いずれも国際規制関連の経営安定資金の三%よりは高いんですね。そういうことをよく承知していただいて対応してほしい。  それから特に沖合い底びきなんですけれども、どのぐらいまで面倒見てくれるかという話ですね。北海道一千五百万で、宮城の場合に二千五百万なんですが、八戸の機船組合で具体的に資料もいただいてお聞きしてきたんですが、休漁していても乗組員の給与等支払わなければなりませんので、一カ月ざっと七百万、四・五カ月分にしますと三千百五十万円にもなるということなんです。ですから、問題は、こういう漁業者の影響調査をきちんとなすべきだということ。それから、できたら休漁補償という格好で別途、今のような融資という格好ではなくて、新たなものを検討してくれと、そういう要望も出ているということを御承知一の上で早期に種々検討いただきたいと思うんです。
  189. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) 私どもモスクワから帰ってまいりましてすぐ、大臣にお供して北海道へ、現地へお邪魔をいたしまして、つぶさに実情は伺ってきたつもりでございます。こういう大変難しい事態でございますので、関係の漁業者あるいは水産加工業者の皆さん方のお気持ちにできるだけ即するように努力してまいりたいと思っております。
  190. 下田京子

    ○下田京子君 もうちょっと実態をこちらで申し上げたいのは、加工関係の方々が今どういう状況かということなんですけれども、日ソの妥結による影響、二百海里時代における影響と同時に、円高というダブルパンチで大変な状態になっているんですね。そういう点で調査をもっともっときめ細かくやっていただかなければならないと思うんで、八戸の水産加工連で資料もいただいて御説明を聞いてきたんですけれども、まず売り上げ額の減少率はもう大変なんですね。昨年一−四月期とことしの六十一年一−四月期を比較しますと、ミールで四九%売り上げダウン、練り製品で四〇%のダウン、すり身で三八%、缶詰で五四%、一般加工前処理関係で六九%もダウンしております。そういう中にあって、操業率がダウンし、休業ということになりますから、婦人中心に雇用の方も容易でなくて、一千六百人もこの八戸市だけで仕事を失っているという実態。そして業者の不況対策資金の借り入れの希望をとりましたら、もう三十億円ありまして、条件は低利、長期、そして今のような状況の中で金利も低下しているので、もうちょっと新たな形での低利の融資というものを別途考えてくれ、こういう御要望も出されておりますので、円高、北洋関連あわせた対策ということで、大臣、取り組んでいただけますか。
  191. 羽田孜

    ○国務大臣(羽田孜君) 円高の方につきましては、漁業だけではなくて、ほかの関係もございますけれども、私どももこういうものもあわせて、今の地域の窮乏というのは私どもよく存じておりますので、できるだけ早い機会にいろんなその対応をしていきたいというふうに考えております。
  192. 下田京子

    ○下田京子君 先ほどちょっと長官がお述べになりました、今後の二百海里時代にあっての漁業のあり方論の抜本問題は別途、私、質問する機会を持ちたいと思うんでそのときに申し上げたいと思うんですが、基本となるのは皆さんおっしゃっていましたけれども、加工業者も中小漁業者もともに生きる道というものを真剣に考えろということでした。大手商社に原料を依存しておりますと中小加工屋さんというのはもうどうにもならないと、こうおっしゃっておりました。  その点で申し上げたいのは、輸入原料の割り当ての問題なんですが、一つは大手メーカーの市場支配という格好にならないようにもう少し実需者に割り当てをしてくれ、こういう御要望が多いです。全国水産加工連あるいは全蒲連、こういう実需者割り当てをふやしてくれ、これが一点。それから日本水産経済新聞にも載っておりますけれども、こうした中で大変円高の不況を受けて、一般加工屋さん、漁業者は大変なんですが、大手商社というのは結構利益を上げているんですね。三菱商事水産部の売り上げは横ばいなんですけれども、むしろ利益は大幅に回復している。それから丸紅の場合には、北洋関係の商科、エビが大変よかったということで前年に比べて大幅上回る。こういう報道があります。そんな中で日本の大手水産加工会社、マルは、日水、この二社がアラスカ州で冷凍すり身工場建設、そして生産に入るというような状況も報道されております。確認いたしましたら水産庁でも承知しているということなのです。問題は、日本の漁獲割り当ての影響がどうなるんだろうか、中小加工業者の輸出に大きな打撃が出てくるんではなかろうかということを思いますと、こういう大手メーカーの市場支配という格好で野放図にしていったら大変なことになるんだということを肝に銘じて指導いただきたい、よろしく。
  193. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) お答えいたします。  私どもは先生御指摘のように、加工関係の実需者の立場というのは十分気をつけて今後の事態に対処してまいりたいと、こう考えます。
  194. 下田京子

    ○下田京子君 いずれにしましても、私は忘れられないのが石油危機のときなんですよね。石油メーカーが千載一遇のチャンスだということで、むしろ便乗値上げをやってきたというようなことになりませんように。  最後に、この関係参考人、理事長質問したいのは、今……
  195. 成相善十

    委員長成相善十君) 最後ですね。
  196. 下田京子

    ○下田京子君 最後じゃないです、もう一つあります。  ただいまお話しのように、これらの資金というのは中金から原資の手当てが必要なんですね。そういうことをよく考えた上で対応いただきたい。特に近代化資金などという形で政府とリンクしているものは重要な役割を中金が果たしているわけです。その点で御答弁いただくこと。  あわせて、これは長官に聞きたいんですが、その関連でいいますと、一月にも長官にお願いしていたと思うんですけれども、沿岸漁業者の負債問題というのも深刻なんです。特に私は山形県の漁協のイカ釣り漁民の皆さんと一緒にお願いにも行きましたし、私もまた行きましたが、その負債問題、延滞利子がかかるという格好で大変苦労しておりますし、これは山形県だけでなくて、秋田県の北部漁協の場合ですと、漁協の信用事業整備強化対策の事業と相まって、むしろ大型負債漁民切り捨ての方向というようなことも心配されるわけなんです。そういうことになりませんように、六十一年度予算でせっかく創設されましたこの漁業経営の再建資金の弾力的運用という格好で長期的に見てこうした漁業者の救済を図ってもらいたいという点でお二人に御答弁を求めて、質問を終わりたいと思います。
  197. 森本修

    参考人森本修君) 系統資金の中央金融機関としまして、必要な資金の供給、特に今御指摘がございました近代化資金の原資等の供給につきましては十分気をつけて対処してまいりたい、かように考えております。
  198. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) お答えいたします。  漁業経営再建資金でございます。今先生が言及をなさいました二つの件ですが、一つ山形県の方は、これは九月の補正で用意してくださって県の方もつき合ってくださるようでございまして、漁業経営再建資金は本年から動き始める予定になっております。それから秋田県の方は、その前から始めました漁協の整備強化対策、あちらの方をやるのが先だということで、六十一年度は差しあたり漁協の整備強化対策の方に取り組まれるという、そういうお心組みであるというふうに県庁からお話を伺っております。いずれにいたしましても、今回、漁業経営再建資金をつくりました私どものねらいは先生の御高承のとおりでございますので、そういう目的は十分生かされるように県庁をよく指導してまいりたいというふうに考えております。
  199. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私、一部改正法案に対してぜひこの席で確かめたい、こういう考え方で十二、三の問題を拾ってありますのでそのようにお願いします。森本事長さんも御出席でありますのでひとつよろしくお願いいたします。  最初に、農林中央金庫法の一部改正の法律案をめぐっての問題点、これを大臣に基本的なことにもなるかと思いますのでお尋ねいたします。  今回の改正の中心は、何と申しましても、臨調の指摘を受けて行うということ、そして農林中金の民間法人化である。したがいまして、今回の改正の是非を見る上で、政府は一体農林中金の使命、役割をどのように考えておられるのであるか。そして、今回の改正に当たって中金の基本的性格を維持するように考えておられるのか、また今回の改正に当たって中金の基本的性格を維持すると明示されておるわけですが、今後も維持されるという基本性格をどのようにお考えであるのであるか、その点を最初に明らかにしていただきたい。
  200. 羽田孜

    ○国務大臣(羽田孜君) まず、今度の改正は今御指摘がありましたように臨調からの指摘、これと同時に、あわせて時代の要請にこたえるということで法改正をするということであります。  その基本的な考え方でありますけれども、農林漁業の団体を主として構成員とする協同組織体の全国金融機関でございます所属団体への金融上の便益供与を第一義の使命とするということでございます。さらに農林中金は金融機関として国民経済の健全な発展に寄与すべき責務を有していること、そして最終的資金調整の観点から系統資金と外部経済との接点としての機能を持っているというふうに考えております。こういう考え方から、所属団体への金融上の便益供与の業務のほか、系統資金と外部経済との接点としての資金運用業務などの公共的役割、これを担っているものであるということを申し上げることができると思います。
  201. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 今基本的な問題点を述べていただいたんです。  次に、農林中央金庫が単協、信連の頂点に立つ系統金融の全国機関であると、こう言えると思うんです。そうすると、零細な農林漁業者の経済的、社会的地位の向上を図ることを目的とすると、こう言えると思うんです。それだけにその目的達成に当たっての政策性の強い組織の存立をそのために昭和四十八年の改正においても担保する見地から、政府出資規定を残すという特殊法人としての位置づけがされてきたものであると理解いたします。このようないきさつにもかかわらず今回政府出資規定を削除し、民間法人とすることの意義は一体どこにあるんだろうか、改めて確かめてみたいと、こう思うんです。
  202. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 前回の改正が昭和四十八年に行われましてから今回が次の大きな改正になるわけでございますけれども、前回の改正の際にも、昭和三十四年以来政府出資の実績がないということで、この出資資格者のところの政府を残すかどうかということも議論の対象にはなったようでございますけれども、その当時におきましては、系統の組織の中におきましても議論が分かれたところでございます。また私ども政府の側といたしましても、農林中央金庫の基本性格というふうなことから考えて、あえてこの際政府出資の規定を削るというところまではしないということで特殊法人としての位置づけをそのまま残したわけでございます。  しかし、その後既に十数年を経まして、その後も農林中央金庫の資金需要はぎらに一層充実を加えてまいった、そしてもう昭和三十四年から数えますと三十年近く政府出資を要さずして円滑に業務を遂行してきたという実績が積み重ねられてまいってきております。加えまして、臨時行政調査会の答申におきまして、特殊法人等は極力自立化できるものは民間法人化すべきだという方針が打ち出されまして、これを機会に私どもも種々検討いたし、そしてまた系統団体の御意見も伺ったわけでございますが、そういった中で、基本的な使命なり性格というものは変更しないけれども、この際むしろ形式的に残っております政府出資資格というものを削除いたしまして、あわせて総務庁の行っております特殊法人としてのいろいろな規制なり監督の対象からも除外するということで農林中央金庫の活性化を図ろう、その方がベターであろうという判断に立ちまして、今回民間法人化のための所要の改正を御審議をお願いしたという次第でございます。
  203. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私があえてこれを聞きましたのは、民間法人という建前からしますならば、当然民法や商法等の法律によって設立されるべきが普通であると、こう私、理解しておったからであります。ところが、農林中央金庫法によって改正されるその真意が一体どこにあるんだろうかという疑問を持っておったわけでありますが、今の御答弁で一応わかったような気もいたします。  ところで、今さっきの問いの裏表にもなると思うんですが、農林中央金庫が今回の改正法によって民間法人としての自主的業務運営体制を整えることとされておる。しかしながら農林中央金庫法の一部改正によって処理しておる。ところが基本は依然として特別の法律に基づき設立された法人のままである。だから法人としての性格がよくわからないような気がいたしたものですからあえて聞いたわけですが、もう一遍その点をはっきりさせていただきたいと思います。
  204. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 民間法人化という言葉の意味でございますけれども、臨調の答申にいわれております意味合いで私ども使っているわけでございますが、これは三つの条件がございまして、政府またはそれに準ずるものからの出資が実態上も制度上もないことというのが第一でございます。それから第二は、役員の選任が自主的に行われていることというのが第二でございます。それから第三は、経常的な経費について国等からの援助に依存してない、俗な言葉で申しますれば、自前で飯を食っているといいますか、その三つの条件を満たすものが民間法人であるという定義になっておりまして、農林中央金庫がこれに適合しないのは、制度政府出資の可能性が法律で残されているという点だけであったわけでございます。  今回その点、出資資格者から政府を削除するという措置によりまして民間法人の要件に合わせるということだけでございまして、農林中央金庫は、先ほどから申し上げておりますように、農、林、水にわたりまして協同組合的な組織団体の全国レベルの専門的な金融機関として公共的な性格を持っておりますので、今申し上げましたような意味合いにおきます民間法人化を行いましても、決して一般の銀行とか、こういうものと同じになるわけではございません。特別の法律に基づいておる専門的な金融機関であって、農林中央金庫法という単一の法律によって具体的な機能と責務が与えられている、そういう点においては改正前も後も変わるところはないわけでございます。そのことをひとつ御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  205. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 といいますことは、結局、結論的にはその方が実を上げるためにはいいんだと、こういう意図のもとでということなんですね。
  206. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) はい。
  207. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次の疑問は、最近の農林中央金庫の所属団体の貸付状況を数字的に見てみますと約一兆三千億円であるんですね。ところが、所属団体以外への貸し付けは約七兆七千億円と、こうなっておりますね。そうすると、この所属団体へのものがむしろ逆であるべきではないかという疑問を持つわけですが、非常に少なくなっておる、また近年においてもだんだん減少する傾向にあると聞いておりますが、これはどうしてだろうかということを考えてみた場合に、農林中央金庫が資金運用の効率化のみを追求するいわゆる業務運営性によるものではないだろうか。そうすると農林中央金庫の本来の使命を考えた場合にそこに問題はないのか、問題は起こらないだろうか、こういう疑問を持つわけなんですね。ずばり言いますならば、金融の利益追求に走って、そして本来の農業者を守るための目的から逸脱する嫌いはないか、そういう方向にいっておるのではないか。こういう疑問も抱かざるを得ませんが、どうでしょうか。
  208. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 御指摘のとおり、所属団体貸し出しが伸び悩んでおることは事実でございます。これは農林漁家の投資意欲と申しますのが、最近の厳しい状況を反映しまして停滞しているということに加えまして、近年総じて信連でございますとか農協等の所属団体の資金が充実してまいってきておりますので、農林中央金庫への借入依存度が低下しているということが主な要因になっているものというふうに考えております。かつては系統の内部でむしろ資金が不足いたしておりまして、農林中央金庫がいわば外から資金を農林漁業部門に入れてまいる窓口の機能を果たしておった時期もあるわけでございますが、最近は農林中央金庫に系統組織全体の資金事情の帳じりが集中してあらわれてくるわけでございますが、系統の内部の資金の需要よりも下から上がってくる資金の方が多いという状況になっておりまして、むしろそういった系統内部の貸し出しを行いまして、なおかつ余裕のあります資金を外部経済との接点に立って運用する、あるいは農業なり農村に関連の深い一定の法人等に貸し出しを行う、そしていわば収益を系統の内部に、あるいは奨励金という形で、あるいはまたそういう利益をもとにいたしました独自の低利融資というようなものを通じて系統の中に還元していく、そういう運用の実態になっているわけでございます。  私どもとしましても、系統貸し出しにつきましては、できるだけその推進を図りたいということで、農業近代化資金等の利子補給あるいはまた信用保証制度等を通じましてその推進を図っているところでございますし、系統としても農協、信連、農林中央金庫各段階を通じまして独自の要綱融資等を設けて系統貸し出しの伸長に努めているところでございます。  現在のような姿が農林中央金庫の姿として非常に自然なものであるというふうには、私どもも必ずしも考えているわけではございません。今のそういった資金の需給事情がもたらした一つの姿というふうに考えているところでございますし、また系統の内部におきましても、いろいろ最近の農業事情に応じました地域農産物高度利用のための資金などを今までの要綱融資に追加しまして、農業振興資金といったようなものをつくるようなことの検討でございますとか、あるいはまた、いろいろ専門家によります経営診断を含めまして農家指導を行う、農協を支援するための機構をつくって、これと関連して補完的な負債整理のためのいろいろな仕事もやろうじゃないかというような検討も現在進められているやに聞いておりますので、私どもそういう方向でできるだけ系統の内部での貸し出しの促進なり、それがまた末端の農林漁家にも利益が及ぶような方向での努力が助長されるように私どもの方も指導してまいりたいというふうに思っております。
  209. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 お尋ねしたいことがまだありますので、ひとつ御答弁は簡潔にお願いします。ぜひお聞きしたいと思うことがまだございます。  次に、業務関係規定の改正です。見ますというと、非常に幅広く多岐にわたっておりますね、業務規定の改正が。そこで、この内容を見まして抱く疑問は、農林中央金庫の性格上極めて問題ではないだろうか、一体真意はどこにあるのか、業務規定の改正内容が非常に幅広く多岐にわたっておるが、これは必ずしもメリットだけではないのではないかという疑問を持つわけなんですが、どうでしょうか。
  210. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 農林中央金庫の所属団体あるいはまた農林水産業の発展のための業務につきましては、制度としては既にかなり整ったものになっておりまして、現在例えば預け金に対しましては、一般金融機関を上回る預金金利のほかに、奨励金というような形あるいは特別配当というような形で還元も行っておりますし、貸し付けにつきましても、優遇金利でありますとか債務保証、為替、保護預かり、有価証券委託売買等の金融サービスの提供を行っているところでございます。また、いろいろ農林中央金庫自身も国が利子補給等を行っております制度融資も扱っておるところでございます。  今回の法改正におきましては、所属団体の事業活動の円滑化を図りますために、貸付期間の制限、貸付区分でございますとか、そういうものの細かい規制を撤廃いたしましたとか、あるいは金銭債権の取得または譲渡の業務でございますとか、公益事業法人の業務代理というようなことも所属団体の要望にこたえまして、業務上の規定の整備を行っておるところでございます。決して今回の改正によりまして、所属団体に対するサービスなり業務が忘れられるというようなことはないと思いますし、またそういうことがないように私どもの方も気をつけて指導もしてまいりたいと思っております。
  211. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それじゃ全部はお尋ねできそうにありませんので、次は協同組合貯金保険法の一部改正についてお尋ねいたします。  まず、これは大臣にお尋ねします。  貯金保険制度は、従来銀行等を対象とする預金保険制度と同内容のものとして設けられていたわけであるが、今回の改正に当たってはどのような点で農漁協の特殊性に配慮しておるのか、こういった大事な点が何かぼかされておる。と言いますのは、この農漁協の特殊性に配慮しておるという明確な点がぼけておるように思いますが、その点ひとつ明確にしていただきたいのですが。
  212. 羽田孜

    ○国務大臣(羽田孜君) 主として次の二点でございまして、預金保険制度と相違した制度としておるわけです。まず、貯金保険機構が相互援助制度を経由しての資金援助を行う場合の対象として、合併のほかに信用事業再建措置を加えております。これは農漁協につきましては、経済事業などを兼ねて経営しておるというようなことから、現実的には隣接の組合以外との合併は見込めません。それから制度的に異業体との金融機関との合併の道もないということでございます。そういうことで、単独再建の必要性が高く、また銀行などに比べまして相互援助制度が従来から充実しておりまして、そういうことでこのようなことを設けたわけであります。  また、資金援助を受けるための手続でございますけれども、適格性認定を行う者を主務大臣じゃなくて都道府県知事といたしております。このことは農漁協が地区制の協同組合であること、またその資金規模が銀行などに比べまして比較的小さいことなどから、都道府県知事が経営実態などの把握を行うことが最も適当であろうというふうに考えられてこういう措置をとっております。
  213. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次の点は、今回の法改正の中心は資金援助業務の創設という柱が大きな中心だと、こう理解いたしております。ところが、現行の保険業務に加えて、資金援助業務を行うこととしたという、今までなかったこの柱が入った大きな理由は一体何でしょうかということなのです。
  214. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 昨年の六月に金融制度調査会から「金融自由化の進展とその環境整備」という問題につきまして答申が出されたわけでございますが、まさにその金融自由化の進展に伴う環境整備ということでございまして、自由化が進展してまいりますと、利ざやの圧縮でございますとか、あるいは競争が激しくなる、それからまたリスクも増大するという傾向にあると考えられますので、従来に比べまして貯払い停止というようなおそれが生じる可能性も高くなってきている。一方、貯金保険機構の持っております財源とか今後の保険料率の引き上げの可能性というようなことを考えますと、保険事故が発生したときに保険金を払うという現行の仕組みだけではなかなか信用秩序維持が不十分になっていく心配がある、むしろその保険事故の発生を防止するということも含めて貯金保険制度考えていくのが適当であろう。そういう判断のもとに今回、経営困難に陥った組合の合併なり経営再建というものに対しまして、一定のルールに従って貯金保険機構から資金援助ができるという仕組みを新たにつくることを御提案申し上げているわけでございます。
  215. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次の疑問は、今回の保険金額を預金保険に並んで一千万円とすると保険料率が十万分の十に引き上げられることになっておる。ところが、この保険料率の引き上げは保険金額が引き上げられたことに伴うものであると考えられるわけなんですね。ところが、この料率の引き上げは、私、思うのに、零細脆弱な農協信用事業にとってはかなり負担が過重じゃないか、負担となることも予想される。  それで、農協貯金の実態を見ると、一農家平均が五百三十五万円となっておる。特に、払いつも沖縄の例を出すんですが、沖縄においては四百十万円なんですね。他県が五百三十五万円、沖縄は四百十万円となっておる。そうしますと、こういう状態で今すぐ一千万円に引き上げる必要があるだろうかどうだろうかという疑問を持つわけなんです。  そこで、言いたいことは、農協貯金の実態または農協信用事業基盤の脆弱の実態から、限度額に段階をつけて、差をつけて、料率もそれに応じた区分をつくってしかるべきじゃないか、その方が実際的である、こういうことを感ずるわけですので、それを今問うておるわけなんです、いかがでしょうか。
  216. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 喜屋武先生の御指摘の点は、確かに一つの議論としてはそういう御議論はあり得ようかというふうに私も存じます。しかし、今回保険料率を引き上げるということにいたしております理由は、限度額を一千万円に引き上げるということだけではございませんで、金融自由化の進展によりまして従来よりも経営困難が生じる可能性がこれから高まってくるだろうというような要素、それからまた保険機構で資金援助業務が創設されるということ、こういったことを総合的に勘案して引き上げるということになっているという点もひとつ御理解をいただきたいということがございます。  また、貯金者保護あるいは信用秩序維持ということの最低限度の必要を満たすということで、この保険制度は当然加入の公的制度として設けられておりまして、普通の民間の保険でございますと、保障の大きさに応じて掛金が決まってくるということになりますが、当然加入の公的な保険制度というのは、例えば自賠責などが典型的でございますけれども、これは大体全国普遍的な性格を持っておりまして、限度額なり料率について一律にこれを適用されるというのが、当然加入あるいは強制保険の場合の基本原則になっているということもございます。また実際問題として、金融機関の業態ごとに限度額が異なるということをした場合に、貯金者の側でいろいろ混乱が起きやしないかというようなこともございますので、確かに一つの御議論ではあろうと思いますけれども制度としてそういうふうに刻みをつけて仕組むというのは、なかなか難しいんではないかというふうに率直なところ私ども思っております。  それから保険料率が定率でございますので、当然のことでございますが、貯金高が大きい農協は保険料の額も大きくなりますし、貯金高が小さい農協は保険料の負担も少なくなるということでございますので、その点もあわせて御理解をいただければと思うわけでございます。
  217. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 関連した疑問でありますが、こういう場合がまた気になるんです。一般の金融機関を利用している者は二つの、例えばAの銀行、Bの銀行としておきましょう、Aの銀行、Bの銀行というふうに幾つかの金融機関を利用しておることも多いと考えられます。そうであれば、今度はAの一千万円、Bでの一千万円、いずれも保証されるが、地方農村では、都会と地方を考えた場合に、農協の利用率が全国の場合五〇%と聞いておりますが、沖縄の場合は七〇%なんです。農協の利用率が高いわけなんですが、そうすると将来、このことを考えた場合に、非常に矛盾といいますか、アンバランスが考えられぬだろうか、困ることはないだろうか。このことなんですが、どうでしょうか。
  218. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) 確かに、農家経済調査などで農家の預貯金に占めます農協貯金のシェアを見ますと、全国平均で約五割でございますが、沖縄県では六八・七%というふうに農協貯金のシェアが高くなっております。したがいまして、確かに理論的に申しますと、喜屋武先生おっしゃいますように、特定の金融機関に集中して預貯金が保有されている場合には、複数の金融機関に分散して保有されている場合に比べて、もらえる保険金の額に差が出ることもあるじゃないかということは、理論的には確かにあるわけでございます。  しかし、現実には複数の金融機関について同時に貯払い停止が起きる、両方とも複数の金融機関が全部貯払い停止になってしまうというようなことは、まずそう考えられないところでございますし、この制度そのものが、今度は特に資金援助業務というようなことも入れまして未然防止措置も含めた制度になっておりますので、そのようなケースが具体的に起きるということは考えにくいのではないかと思っております。  それから三百万円の限度を今度一千万円に上げるということになりますと、この措置によりましてほとんど九九%以上の貯金者がカバーされます。一千万円に上げると申しますのは、ほとんど青天井に近い状態に平均的にはなると思いますので、その点からいたしましても、確かに喜屋武先生おっしゃるようなことは理論的に考えられないことはございませんけれども、現実問題として、矛盾と申しますか、アンバランスが起きるということにはならないものと考えております。
  219. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 もう一つ、資金援助の方式についてお聞きしたいんですが、資金援助のあり方には金銭贈与と資金貸付等の方法がある。またもう一つは、相互援助制度を経由する方法と直接資金援助をする方法がございますね。そうすると、そのいずれの方式を中心とするという見通しなのか、そのことをひとつお聞きしたい。
  220. 後藤康夫

    政府委員(後藤康夫君) この資金援助の方式につきましてはいろいろな方式があるわけでございますが、どれを選択するかということになりますと、実際には経営困難に陥りました原因は何か、また当該組合の事業の見通し、あるいは組合員なり地域の特性、さらには保険機構の財務に及ぼす影響等々個別案件ごとに検討されるべきものだと思いますけれども、非常に大まかな運用方針として申し上げれば、一つは、適切な合併の相手がある場合は合併の方が効果的であろうと存じます。ただ、相互援助制度を通じるものと、そうでないものがあり、合併の方式をとれないケースの方がどちらかといえば多いんではないかという気がいたしますが、そういった場合に、相互援助制度を通じて利子補給方式で経営の再建を図ってまいるということが多額の貯払い資金を供給する上で、例えば一%の利子補給の場合は、十億円の資金がございますれば一千億の系統資金が動員できるわけでございますので、相援制度を通じます利子補給方式を用いることが有効ではなかろうかというふうに考えております。
  221. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 よろしいです、時間ですから。     —————————————
  222. 成相善十

    委員長成相善十君) この際、委員の異動について御報告をいたします。  谷川寛三君及び坂元親男君が委員辞任され、その補欠として出口廣先君及び上田稔君が選任されました。     —————————————
  223. 成相善十

    委員長成相善十君) 他に御発言もないようですから、両案に対する質疑は終局したものと認めます。  これより両案について討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  224. 下田京子

    ○下田京子君 私は、日本共産党を代表して、農林中央金庫法の一部を改正する法律案に対して反対の討論を行います。  反対の第一の理由は、本法案による業務整備拡充が農林中金の農林漁業離れを一段と促進するものだからです。  既に農林中金は、昭和四十八年改正を一つの契機として、資金運用面で農林漁業者の協同組合等所属団体貸し出しのウエートが激減し、総運用額の六%にまで落ち込んでいます。その反面、今日の財政破綻をもたらした政府国債増発の受け皿として、国債引き受けを急増させました。また、質問で明らかにしたように、関連産業貸し出しとして大手総合商社や大手信販会社などへの融資を増加させ、上場企業向け融資額の方が所属団体融資額を大きく上回る実態になっています。  今回の改正は、証券会社貸し出しを新たに認めるとか、余裕金運用の範囲を拡大するなど、農林漁業を対象とする専門金融機関として著しくゆがんでいる農林中金の現状をさらに加速させるものです。  さらに、金融環境の変化に対応して一般金融機関と同じレベルでの競争を追求するという方向は、大企業への大口融資とか利回りの高い有価証券運用に一層傾斜し、低生産性部門でコストもかかる農林水産業貸し出しの縮小につながるものです。  反対の第二の理由は、農林中央金庫の民間法人化の具体的措置である出資資格者から政府を削除する問題です。  これは臨調・行革路線の自立、自助の名による国の農林漁業に対する保護政策の後退を意味するものです。現実に政府出資がなされていないとはいえ、出資規定が残されていることは、必要なときに政府が政策的なバックアップをするということを担保する意味を持っています。工業等に比べ本来的に不利な産業である農林水産業を対象とする金融に対して、国が一定の保護、助成を行うことは当然必要なことです。今後農林漁業金融の思い切った拡充を図るためには、農林中金に対する政府出資も当然検討すべきであり、この点から出資規定を外すことには賛成できません。  なお、そのことと農林中金が協同組合原則に基づく運営を一層徹底することとは矛盾するものではありません。役員選出規定を所属団体の意見がより反映されるよう改善されることには賛成です。むしろ今回の改正では、理事会の互選で理事長を選ぶという協同組合一般の役員選出のやり方と比べ、不徹底なものと言わざるを得ません。  我が党は、農業を国の基幹的生産部門に位置づけ、食糧自給率向上の方向に農政を根本的に転換すること、この中で、農民の投資意欲や農業への資金需要を積極的に引き出すことが基本的に重要であると考えます。  同時に、農林中金や系統信用事業が農林漁業者と生産、生活両面でしっかりと結びつき、その要望にこたえた事業を積極的に展開することこそ、今日の厳しい金融情勢のもとで農林中金が抱えている矛盾を打開する道であることを強調し、私の反対討論を終わります。
  225. 成相善十

    委員長成相善十君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより順次両案の採決を行います。  まず、農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する法律案について採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  226. 成相善十

    委員長成相善十君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  刈田君から発言を求められておりますので、これを許します。刈田君。
  227. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 私は、ただいま可決されました農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合及び二院クラブ・革新共闘の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   近年急速に進展している金融自由化は、系統金融に対しても重大な影響を及ぼすものと懸念される。   よって政府は、農山漁村における農協・漁協等の果たす役割の重要性とその信用事業の実態を踏まえ、系統信用事業の基盤の強化と効率化の推進に努め、また、その本来の使命に沿った適切な運営が確保されるよう指導するとともに、本法の施行に当たっては、系統金融における貯金者等の保護と信用事業の信頼性を確保するため次の事項の実現に万全を期すべきである。   一 農水産業協同組合貯金保険機構の基金基盤の健全性を確保するとともに、保険料率の算定、資金援助の実施等本制度の運営に当たっては、預金保険制度との整合性の確保を基本としつつ、農協・漁協等の信用事業の特殊性に十分配慮すること。   二 資金援助業務の対象となる合併のあっせんに当たっては、組合員の意向が十分尊重されるよう指導すること。   三 農漁協系統組織による相互援助制度の充実を図るとともに、本制度に現在未加入の農協・漁協等に関しても相互援助制度の活用に係る資金援助業務の対象となるよう適切な方途を検討すること。   右決議する。  以上であります。  何とぞ委員の皆様方の御賛同をお願いいたします。
  228. 成相善十

    委員長成相善十君) ただいま刈田君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  229. 成相善十

    委員長成相善十君) 全会一致と認めます。よって、刈田君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  次に、農林中央金庫法の一部を改正する法律案について採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  230. 成相善十

    委員長成相善十君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  菅野君から発言を求められておりますので、これを許します。菅野君。
  231. 菅野久光

    ○菅野久光君 私は、ただいま可決されました農林中央金庫法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び二院クラブ・革新共闘の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     農林中央金庫法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   我が国農林水産業をめぐる情勢には誠に厳しいものがある。このため、農林水産業における経営体質の強化と生産性の向上、農山漁村の活性化等を図ることが強く求められており、補助から融資への政策転換が図られる中で、農林中央金庫を中心とする系統金融の果たす役割は益々重要となっている。   よって政府は、本法施行に当たっては、農林漁業の協同組合等の中央金融機関としての基本的性格を踏まえ、その使命が十分果たされるよう次の事項について適切な措置を講ずべきである。   一 金庫の業務運営については、所属団体への貸付業務の停滞等の実情にかんがみ、今後とも、金庫本来の使命に即した適正な貸付等の実施が図られるよう十分指導するとともに、組織強化、事業拡大経営体質の刷新に努め、農林漁業・農山漁村の実情と組合員の資金需要に応じ、系統独自の低利融資の強化等で農林漁業融資の活性化を図ること。   二 金融環境の変化、自立化要請への対応等金庫をめぐる新たな情勢に的確に対応するため、金庫の性格や役割に即した適切な執行体制が確保できるよう努めること。   三 系統金融機関については、金融自由化の急速な進展等に対処するため、自己資本の充実等による経営基盤の強化及び資金コストの引下等による事業の効率化に努めるとともに、系統資金が系統金融の各段階で有効に活用されるよう十分指導すること。    なお、他の金融機関との競争条件を確保するなど系統金融機能の拡充強化を図るよう努めること。   四 金融自由化の進展等に伴い金利変動が激しい時代を迎えており、近代化資金等の制度資金についても、その基準金利、末端金利のあり方などを検討し、円滑な資金融通を図ること。    右決議する。  以上であります。  何とぞ委員の皆様方の御賛同をお願いいたします。
  232. 成相善十

    委員長成相善十君) ただいま菅野君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  233. 成相善十

    委員長成相善十君) 全会一致と認めます。よって、菅野君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの両決議に対し、羽田農林水産大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。羽田農林水産大臣
  234. 羽田孜

    ○国務大臣(羽田孜君) ただいまの両法案に対する附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上、善処するよう努力してまいりたいと存じます。ありがとうございます。
  235. 成相善十

    委員長成相善十君) なお、両案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  236. 成相善十

    委員長成相善十君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時七分散会