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1986-03-25 第104回国会 参議院 農林水産委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年三月二十五日(火曜日)    午後一時一分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         成相 善十君     理 事                 浦田  勝君                 北  修二君                 星  長治君                 菅野 久光君                 刈田 貞子君     委 員                 大城 眞順君                 岡部 三郎君                 熊谷太三郎君                 坂野 重信君                 坂元 親男君                 高木 正明君                 谷川 寛三君                 水谷  力君                 山田  譲君                 塩出 啓典君                 下田 京子君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        農林水産大臣   羽田  孜君    政府委員        農林水産大臣官        房長       田中 宏尚君        農林水産省構造        改善局長     佐竹 五六君        農林水産省畜産        局長       大坪 敏男君    事務局側        常任委員会専門        員        安達  正君    説明員        公正取引委員会        事務局取引部景        品表示指導課長  黒田  武君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○農林水産政策に関する調査  (畜産物等価格安定等に関する件) ○土地改良法及び特定土地改良工事特別会計法の  一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付  )     —————————————
  2. 成相善十

    委員長成相善十君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  農林水産政策に関する調査のうち、畜産物等価格安定等に関する件を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 菅野久光

    菅野久光君 畜産物価格がいよいよ決められる、そういう段階を迎えまして、政府は、今後を見通しても円高などで急激に値上がりする情勢にないことから、ことしの畜産物価格は全く上げ要素がない、むしろ計算上では全畜種の生産費が引き下がるとか加工原料乳保証価格ども配合飼料価格引き下げ、一頭当たり搾乳量増加労働生産性の向上などで、計算上は、現行の保証価格キロ当たり九十円七銭を下回り、価格下げになる、また二百三十万トンの加工原料乳限度数量も、バターを中心とする乳製品過剰基調を見れば確保は微妙などとほのめかしておられるようであります。さらに本日の朝日新聞では五%の引き下げ諮問へなどというふうに報道されております。  審議会酪農部会にかける以前から、何かそういう雰囲気がつくられていて、もっと言えば、何かそういうことで世論操作をしているのではないかというふうに思わざるを得ないわけでありますが、本年度の畜産物政策価格決定に当たってどのような方針を持っておられるのか、まず初めにお伺いいたしたいと思います。
  4. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) 六十一年度の畜産物価格、特に保証価格、あるいは限度数量、これにつきましては、三月二十七日、酪農部会において御審議をいただくということであります。  今、私の手元にも、朝刊で朝日新聞の「加工原料乳保証価格五%下げ諮問へ」というのが手元にございますけれども、今、生産費調査をちょうど出していただいたところでございまして、こういったものを踏まえて、あるいはその他の需給事情、こういったものを総合的に考慮いたしまして、私どもの方で諮問しようということで、今、生産費調査等を精査し、そして需給事情等について検討を今しているところということでございまして、まだ今どうするということについて私どもから申し上げたことはないわけであります。
  5. 菅野久光

    菅野久光君 これはただ単に畜産物価格だけではなくて、今までも米価等も含めて、何か事前にそういったような、何というんですか、考え方といいますか、そういったようなものが、あるいは当局から流しているのではないかもしれません、報道関係者がいろいろ推測しながらやっているのかもしれませんが、何か余りにも事前にそういうような状況というものがつくられ過ぎているのではないか。その辺は一体どうなんでしょうか、ちょっとお伺いしたいと思うんです。
  6. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) これにつきましては、およそ飼料穀物というのが値下がりしていることは、これは報道関係者の皆さんはおわかりになっておりますし、また金利等についても、このところ低金利が続いておるというようなことでございますから、いろんな要素をあれしますと、大体生産費はどのくらいじゃないかなということのおよその見当はつかれ、そういう中でよく計算されるんじゃないか。私どもも今まで、それこそ米価ですとか、その他の価格のときにも、いつも何か新聞で報道されてしまって大変窮地に立ったこともしばしば実はあるわけでございます。
  7. 菅野久光

    菅野久光君 意図的に流しているのではないかという推測をせざるを得ないわけでありますけれども、よもやそんなことはないだろうというふうに思いますが、よくよく今後の農産物価格の問題についても、ひとつ部内を含めて慎重な対応をしていただきたいということをまず申し上げておきたいと思います。  何といっても農業は自然を相手に生産が行われるものでありますから、自然条件の変化によって大きく経営が左右されるわけであります。このような農家経営不安定性を是正していく、そして安定的な営農が行われるような見地から政策価格が定められているんだというふうに思うんです。このために米とか麦、大豆、サトウキビ等政策価格引き下げられたことはない。繭のみが大幅な需要の減少と一年分に及ぶ在庫のため引き下げられただけなんですね、今日まで。農家経営意欲等を配慮して安定的に価格決定され、政策価格については農家経営の安定を第一に決定すべきであるというふうに思いますが、政策価格決定あり方についてどのように考えておられるかお伺いいたします。
  8. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) 生産価格につきましては、それぞれ計算方式といいますか、算定方式というものがあることはもう御案内のとおりであります。ただ、私どもといたしましては、コストを下げて、できるだけ低廉で、しかもいい品質のものを、安全なものを消費者に提供しなければならない、こういった義務というものがあるわけであります。そういう意味で再生産というものが確保されなきゃならぬということが第一であり、そして第二の点は、もし何かメリットがあるとするならば、ある部分消費者にも還元しなければならないというふうに考えておりますけれども基本的には、先ほど申し上げましたように、算定方式というものにのっとりながら適正に価格を決めていく、この方針を私たちは基本として進めていきたいと思います。
  9. 菅野久光

    菅野久光君 今大臣お答えになったようなことを基本にしてということでありますが、先ほど来からいろいろ言われておりますけれども加工原料乳保証価格が、飼料費が下がったというようなことを含めて、いろいろ新聞報道等によると、何か引き下げられるのではないかというような感じがあるわけでありますが、仮にこれが引き下げられるとすれば、これは政府支持価格は直接農家収入減につながるわけですね。こうした支持価格引き下げは、先ほども言いましたが、農産物価格史上初めてのことでありまして、飼料価格の大幅な引き下げがあったとしても、政府農畜産物価格に対するこれまでの据置姿勢から大きく転換することになる。他の農産物価格にも影響するのではないかというふうに危惧いたしますが、そこのところはどのようにお考えですか。
  10. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) 昨日、牛乳生産費調査の結果が発表されたわけでございますが、確かにその中におきましては、先生指摘のように、流通飼料費飼育管理労働費、資本、利子等々におきまして前年度を下回る額となっているわけでございます。この額につきましては、今まで、例えば流通市場で申し上げれば、当然高く買っていた飼料を安く買うということになるわけでございますし、そういった意味におきましては、先生指摘のように、この生産費自体が示す数値が農家所得の減に直ちにつながるというふうには考える必要はないんじゃないか、かように考えております。
  11. 菅野久光

    菅野久光君 本当に農家所得の減につながらないですか。そんなばかな話はないんじゃないかと思うんですが、それは本当に間違いない答弁ですか。
  12. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) 今えさの例を申し上げたわけでございますが、配合飼料につきまして、購入単価が下がっている事実は客観的にあるわけでございまして、したがって、その客観的事実が正確に反映したものであれば、決してそのことをもってして、それを具現いたしました生産費によって所得が減ずるということはない、かように考えております。
  13. 菅野久光

    菅野久光君 飼料価格関係だけ正確に反映されていれば所得が低くなることはない、そういう答弁でありますけれども保証乳価格の問題について、正確に反映しているというその正確ということが極めて問題で、これは生産者団体計算あり方なんかについても今まで随分いろんな意見を申し出ておるわけですが、そのことについては取り入れられていないものがほとんどですね。  例えば労賃の問題なんかは最たるものではないかというふうに思うわけですよ。片方では物財費だとか、そういうものが上がっていく、そういう状況があるわけですね。ですから、経営というのは、ただ単に乳価と購入する飼料価格、それとの関係だけではないわけです、農家経営というのは。そういう意味からいくと、片方では物財費が上がっていく、しかし物財費は見ているんだ、あるいは労賃関係についても見ているんだということは言われておりますが、生産者団体が要求している当然こうあるべきというものとは違う計算の仕方をしているわけですね。  そういう意味で、私は、必ずしも飼料の問題だけを正確に計算して、それを価格の上に反映したとしても、農家所得が変わらないというような、減らないというような、そういうようなことにはならないというふうに私は思うんですよ。そこのところはいかがですか。
  14. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) ただいま先生が御指摘の点は、例えば家族労働費をどう評価するかという問題で、例えば飼育管理労働費につきましては、私ども五人以上の製造業労賃をとって評価しているわけでございますが、全中等団体側の要請としては、それを全国の五人以上の労賃評価すべきであるという御主張があるわけでございまして、評価自体になりますと、私どもが従来から使っております評価の仕方と全中等団体の御主張とに懸隔があることは事実でございます。  ただ、私が申し上げておりますのは、同じ私ども統計情報部の中でやっております生産費の中で、同じ定義で、同じ概念で調査したもの同士を考えてみた場合に、例えば流通飼料費等につきましては明らかに低減をしているというふうなことを申し上げている次第でございます。
  15. 菅野久光

    菅野久光君 いや、ですから、単純に言えば、飼料価格の下がった分だけを価格に反映すれば、その分では所得は変わらないといいますか、減らない、そういうことは言い得るけれども、しかし反面、物財費だとか、さっき言ったような労賃の面では、今までも何回もこれは言われているわけですけれども、その面については一向に改善、私どもからいえば改善しようとしていないわけです。同じ労働をしながら、片方はこちらの方の労賃、そしてこれはこっちの労賃ということで違うわけでしょう。同じ労働をしていて、どうしてそういう違う労賃をやらなければならないのか、私はどうも不思議でたまらないんです。同じ人間が一日働いて、片方はこちらの労賃を使う、そして別な方はこちらの労賃を使うという、そういうのは、これはだれが考えてみても私は不自然ではないかというふうに思うんですよ。  ですから、そういうところも改善していかないということからいって、乳価が下がって、そして農家所得は変わらない、それは飼料部分だけを正確に反映するからだという言い方は、私は一般的には理解ができない。この問題だけについて言っているわけにはいきませんから、そういうことを申し上げておきたいというふうに思います。  今、畜産物価格の問題は、大きく輸入問題にかかわっているというふうに思います。特に円高国際貿易上、輸出力を弱めて輸入を促進するわけであります。  ドル高是正をめぐる昨年の先進五カ国蔵相会議での合意直後の九月二十四日、東京外為市場での円の終わり値は一ドル二百三十円十銭、それから六カ月後の昨日、三月二十四日、これはニューヨークでありますが、百七十九円五十五銭から六十五銭と、実に五十円以上の高値となっているわけであります。一時は五十円ところか五十五円以上も高くなったときもあるわけであります。  特に、農畜産物輸入にかかわって最近著しい動きを見せているのが乳製品なんですね。一体、この畜産価格を決める上で、国内でどれだけの需要があって、そしてこの不足分はどのぐらいあるのか、そういったようなことが私はこういう食糧の輸入にかかわる一つの大事なことだというふうに思うんですね。不足するものを輸入して足らざるものを補う、これが原則になっておるわけですが、そういう意味で、例えば牛乳一つとってみて、国内における総需要量政府はどのように押さえておられますか。
  16. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) 牛乳乳製品需要につきましては、牛乳並びに乳製品別に過去の需要伸び係数等を利用いたしまして、それを一定の方式に具現いたしまして推測をしているわけでございます。
  17. 菅野久光

    菅野久光君 端的に、牛乳国内における総需要量生乳換算輸入される量、その差が国内ということになるわけですね。それぞれその数量を示していただけませんか。
  18. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) ちょっと年次が違うのでございますけれども、まず手元にあります国内生乳生産につきましては、五十九年度を見ますと約七百二十万トンでございます。これに対しまして、年次は一年ずれますが、六十年度の乳製品輸入量は、生乳換算で申し上げますと、二百六十万トンと相なっております。
  19. 菅野久光

    菅野久光君 これは擬装乳製品もこの中に含まれておりますか。
  20. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) 入っております。
  21. 菅野久光

    菅野久光君 とにかく六十年度で約二百六十万トン輸入されているということは、これは北海道における生産よりも多いということになっているわけですね。  御承知のように、もう北海道でたしか二%は生産抑制、いわゆる食紅を入れて赤い乳で飲めない、普通に売れないようにしているわけですよ。片方生産抑制をやりながら、片方では二百六十万トンもの輸入をやっているのが現状です。これは六十年度ですから円高基調が九月からずっと入ってきていますね。そういうことからいえば、ことしはもっと円高基調によって輸入をふやすような方向になるのではないかというふうに思うんですが、ここのところは、今回の畜産物価格決定に向けて輸入の問題が非常に大きな問題になっているということからいって、ことしはなおその危機感農家の方々は強めている、生産者団体は強めている。そのことについて政府としてはどのように考えておられますかお伺いいたします。
  22. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) まだ私ども完全な来年度の需給推算を作成し切ってないわけでございますが、最近の円高傾向は確かにございますが、乳製品輸入に関しましては特段顕著な動きはございません。したがって、来年度の輸入につきましてもそれほど大きな伸びはない、おおむね横ばい程度のものかというふうに今のところは考えております。
  23. 菅野久光

    菅野久光君 今のところは、この円高になってから乳製品が以前よりもふえて輸入しているというような兆しは見えないということですね。  ではIQ品目についての輸入割り当てについては、これは政府がやるわけですから、今のこの二百六十万トンという大変な量の乳製品輸入するという中で、政府としてこの乳製品輸入割り当てについて相当思い切った措置をしない限り国内酪農を守るということにはならないのではないかというふうに思うんですが、この点についてはいかがでしょう。
  24. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) 六十年におきます乳製品輸入についての状況でございますが、八千トン畜産振興事業団脱脂粉乳輸入しておるわけでございますが、これは専ら国内需給調整用として買い入れておりまして、これは保管中のものでございます。これは八千トンでございます。さらにまた学校給食用脱脂粉乳として九千トンの輸入を認めております。また家畜の飼料用脱脂粉乳として七万六千トン輸入を認めているわけでございます。最近これはやや増加傾向にございますが、その主たる要因は、子豚の増加、子豚用えさとしての輸入がふえておるという実態でございます。また沖縄本土復帰に伴う際の経過措置として、特別に沖縄用バターとして特別の輸入割り当てをやっております。これが千七百トンでございます。そういったものにつきましては特別の割り当てをやっておるわけでございますが、これ以外につきましては輸入割り当ては今のところ行っておりません。  したがいまして、先ほど生乳換算で二百六十万トンと申し上げましたが、以上申し上げましたIQで入れておりますのは約六十万トン、したがいまして、その他のものが二百万トンということに相なっておるわけでございます。
  25. 菅野久光

    菅野久光君 今お話しのようにIQ品目だけで六十万トンの輸入があるわけですね。で、二月の二十日に中央酪農会議で、二十一万七千トン余を今回ごとしは減産するということが決められたわけであります。こういったようなことからいくと、IQ品目だけでも三倍ぐらいあるわけですね。だから、ここの部分を何とかもう少し政府として考えられないのか、考えるべきではないのか。そうしなければ農家限度数量を上げることもちろんできない。例えば価格が若干低くても、限度数量が多くなれば、ある程度農家の手取りというのは多くなるわけですね。ところが、例えば価格引き下げる、さらに限度数量もふやさない、あるいはそれよりも下げるというようなことになったら、いよいよこれはどんなことになるんでしょうか。酪農はやっていけない、そういうような状況を生み出すことになるのではないかというふうに思うんです。ですから、こういった畜産物価格とのかかわりでは、この輸入の問題が非常に大きな問題だ、そこが非常に大きく影響しているというふうに言わざるを得ないわけであります。その辺本当に農林水産省日本酪農を将来を見越してずっとやっていくということになれば、ここのところの考え方というものをしっかりして、いろいろな外圧があったとしても毅然たる姿勢でやっていかなければならないのではないかというふうに思うんですが、その辺についてのお考えはいかがでしょう。
  26. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) ただいま申し上げました輸入割り当てを行いまして輸入しております、主として脱脂粉乳でございますが、例えば事業団輸入しておりますのは、専ら国内に不足した場合に放出するためのいわば需給調整用としての在庫とするものとして輸入しているものでございます。さらに飼料用脱脂粉乳につきましては、まさしくこれは農家の御希望にこたえまして、本来国内脱脂粉乳で代替できるわけでございますが、価格的に対抗できないということから、安い、これは無関税にいたしておりますが、安い海外脱脂粉乳輸入して畜産農家が子畜の保育に使われておるという、そういったものでございます。また学校給食用脱脂粉乳につきましては、これは数量では九千トン程度でございますが、これは学校給食用パン等に使用するということで特別の配慮のもとで輸入を認めている。これも国内産を使いますとPTAの負担が増加になるということから、どうしても安価な海外脱脂粉乳に依存しておるという実態があるということでございます。また沖縄等につきましては、沖縄復帰等経緯がございまして、これはまた特別に海外からのバター輸入を認めておるということでございまして、それぞれ今IQのもとで輸入を認めておるものにつきましては、いろいろな経緯、いろいろな目的等によって行われているものでございまして、にわかにこれにつきましてどうこうすることはいかがなものかと、かように考えております。
  27. 菅野久光

    菅野久光君 いろいろな今までの経緯もあって、それは六十万トン全部がだめだなんということを私は言っているのではないわけです。このIQ品目についてもそれなりの節度といいますか、そういったような国内の厳しい状況などを見きわめながら、この量については決定をしていくということが、これは厳しくやっていくということが必要だというふうに思うんです。と同時に、ココア調製品だとか、あるいはカゼインだとかといういわゆる擬製乳製品ですね、これがどんどんどんどん伸びてきている。これもまた大きく国内需要を伸ばすのに障害になっている。輸入にかかわってはそこのところが非常に問題だと思うんですけれども、その辺についての対策といいますか、そういったようなことをどのようにお考えですか。
  28. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) ただいま御指摘調製用油脂あるいはココア調製品につきましては自由化している品目でございます。またこの用途につきましては、菓子原料とか、そういったものに使われているわけでございますが、最近ではやや落ちついておりましたけれども、一時的にふえたという時期もございましたものですから、調製用油脂につきましては、輸入制度といたしましては事前確認制をとっております。さらにまた菓子業界等に対しまして輸入自粛をお願いする、あるいは輸出国に対しましても輸出自主規制を求めてまいっておるわけでございます。またココア調製品につきましては、機会をとうえて実需者を集めまして、国内乳製品需給事情を詳細に説明しながら、輸入自粛を求めるというふうなことをやっているわけでございますが、基本的には自由化した品日であるということでございますので、これを余りにも極端なことを行政指導のもとでやりますと、これはまた新たな問題を惹起しかねない 問題でございますので、そういったことも念頭に置きながら、関係者に対する自粛指導を行っておるというのが現状でございます。
  29. 菅野久光

    菅野久光君 これだけ国内産業が大変な状況になっている中で、自由化している品目だからということだけで野放しということは私はやっぱり国として考えねばならないことではないか。これはただ単に牛乳乳製品の問題だけではなくて、魚の問題を初め、どうも農林水産省かかわりのあるものは皆そういうような関係になっておるわけで、自由化だからといって、何か野放しになることが国内における産業にとって非常に大きな影響を与えているわけでありますから、そういう点では、いろいろ考えそれなり国内酪農を守るというような意味を含めて、ひとつ特段の政府としての努力を私はお願いをいたしたいというふうに思います。  次に、牛肉輸入割り当てについてでありますが、五十九年にアメリカとの間に高級牛肉を二万七千トン、オーストラリアとの間には六十二年を目標に十二万七千トンを約束したわけですね。この割り当てについての政府考え方は今どのようになっておりましょうか。
  30. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) ちょっと基本的なことだけ申し上げます。  基本的に、この問題につきましては、アメリカあるいはオーストラリアと交渉いたします際も、私どもが腹の中に持っておりましたことは、日本のこれからの食肉の需要というのが一体どの程度伸びていくのか、それに対して我が国の国内生産を刺激しながらどこまで持っていくことができるのか、この間に不足する分、この乖離する分を各国から日本が購入するという基本的な考え方を持って臨んでおります。
  31. 菅野久光

    菅野久光君 先ほどから申し上げておりますように、今日の畜産問題は市場開放問題と切り離しては考えることができない、そういう状況になっております。まさに密接にかかわり合っているということだと思います。五十九年の日米農産物交渉の決着に当たって、当時の山村大臣が、「妥結の期間は四年間だけでございます。四年に至りますと、私はますます厳しい農産物開放要求が来るのじゃないかと思うのです。その間には何といっても日本の農業の体質の強化、足腰の強い農業という方に向かって農林水産省としても政策的にも全力を挙げてまいりたいと思っております。」、このように、これは五十九年の四月十日の本院の農林水産委員会で、我が党の村沢委員の質問に対して答えられたわけであります。  そこで、この四年間というのはもう来年であるわけですね。体質の強化とか足腰の強い農業に向かって政策的にどのようなことを立案されてこられたのか、予算面で十分な額を確保できたのか、その辺のところをお伺いいたしたいと思います。
  32. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) 畜産物全体を通じて見ますと、需要につきましては鈍化の動きがあるわけでございますが、その中で牛肉だけはなお安定的な需要伸びが期待できるというふうに見ているわけでございます。  そこで、これに対応いたしまして牛肉生産の増強を図る必要があるということから、私どもといたしましては、まず基本的には規模拡大を通ずる生産性の向上を図っていきたいというふうに考えておるわけでございますし、また肉用牛生産の中で特に飼料費労働費が非常にウエートを占めるという面がございますので、この点に着目いたしまして、採草地なり放牧地をつくっていく、そういった採草地、放牧地の造成利用を通じましてコストの低下を図っていく。さらにまた資源の確保の意味で、事故率を低下させるとか、あるいは分娩間隔を短くすることによりまして生産率を上げていくとか、さらにまた、現在、先生御案内のように、肉用牛の場合は繁殖経営と肥育経営が分離しているわけでございまして、肉豚の場合には既に七五%以上が一貫経営になっているわけでございますが、肉用牛につきましてはまだ数%という状況でございます。これはまた繁殖経営、肥育経営自体を非常に不安定なものにしておるということもございますので、私どもこれから地域内あるいは経営の一貫経営を進めてまいりたい、かように考えている次第でございます。  また、昨今の状況から見まして、消費者の嗜好もサシから赤身への志向も見られるわけでございますので、肥育期間を短縮いたしまして、むしろ濃厚飼料ではなくて粗飼料を多給する、私ども経済肥育と申しておりますが、そういった経済肥育を定着していこうというふうなことも考えている次第でございますし、さらにまた中長期的には、バイオテクノロジーを活用いたしました受精卵移植技術の活用によりまして、双子生産とか体外受精とか、そういった面での新しい技術開発と応用化につきましても積極的に取り組んでまいりたい、かように考えている次第でございます。
  33. 菅野久光

    菅野久光君 今いろいろ述べられましたけれども、四年間しかないという中で、足腰の強い農業、体質の強化、こういったようなことを当時の大臣が言われて、それに向かってそれなりの努力をしてきたわけですね。しかし、その努力が果たして、来年で四年目ですから、それでもう万全の態勢はとれた、どんな外圧が来てもびくともしないぞと胸を張って答えられるような状態になっているとお考えでしょうか。
  34. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) 先生が今おっしゃったような意味での万全の態勢がどうかにつきましては、率直に申しまして、そういう態勢になっているとはなかなか言いにくい面があると思いますが、もともと肉用牛自体サイクルの長い生産でございますので、とにかく即効性のあるもの、例えば分娩間隔を短くしていくとか事故率を減らすということは、これはかなり即効性のあるものでございますから、そういったものについてはもう積極的に展開しているわけでございますし、草地造成等につきましては、これは当然時間もかかることでございますが、そういった短期、中期、長期に分けながら対応を進めてまいっているところでございます。
  35. 菅野久光

    菅野久光君 いろいろ施策を立てられる場合には何としても予算が必要ですね。足腰の強いそういう農業をつくっていくためにいろいろな施策を考えられる、その場合に、その伴う予算ですね、これは大体満足のいくような形で今までつけられているというふうにお考えですか。
  36. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) 現下の厳しい財政事情のもとでございますので、私どもが思っていますような予算の獲得はなかなか困難な事情にあるわけでございますが、来年度の施策といたしまして、実は法案の御審議をお願いすることにいたしておりますが、農業改良資金の中に畜産振興資金というのがございまして、これにつきまして、来年度におきましては、一般会計からの繰り入れに加えまして、中央競馬会から百五十億円の特別納付をしていただきまして、それを財源にしながら、畜産振興資金について申し上げれば、六十年度の融資枠が九十億でございましたのを百八十億に倍増するという計画にしておりまして、その倍増した資金については、主として肉用牛の生産面の改善とか、そういった面に重点的に使っていきたい。これの内容は御案内のように無利子の資金でございますが、肉用牛の振興のために重点的に使っていきたい、かように考えている次第でございます。
  37. 菅野久光

    菅野久光君 現下の厳しい財政事情のもとでということを言われましたけれども、実は五十九年の四月十日の先ほど申し上げました本院の農林水産委員会で、アメリカから帰ってきたばかりの山村大臣が次のようなことを言っていることはお忘れではないと思うんです。  私は、今回の日米農産物交渉に当たりましては総理大臣から全権委任を受けたわけでございますが、その際に申し上げましたことは、今後のいわゆる牛肉そしてかんきつに対する、はっきり申しますと、予算そのほかの措置というものはこれは破格なものにしてもらわなくてはこの交渉はできないということを言いまして、その約束はとってあるつもりでございます。 こう言っています。そして閣議がありまして、戻ってきてからまた質問に答えて次のように言っています。  今ちょうど閣議が開かれる前に懇談の席で、総理、大蔵大臣一緒でございましたので、今参議院の農林水産委員会で村沢先生から質問を受けました、私は、総理がおっしゃいましたように、全権委任を私が受けるときには、心配のないように予算措置をすると言ったことを私は委員会で答弁してまいりました、総理よろしいですねと言ったら、はい、そのとおりです、大蔵大臣忘れないようにということで言ってありますので、これはひとつ御安心いただきたいと思います。 こう大臣が言っているんですよ。これはちゃんと会議録に残っているんですよ。ですから現下の厳しい財政事情なんということは、これは理屈にならないんです。そんなこと言ったら、厳しくなかったときがあったのかもしれませんけれども、いつでもそういうことを言いますね。  だから、日本の農業を守るという意味では、財政事情が厳しいなんということは理由にならないということを申し上げて、これから予算交渉やるときに、特に大蔵省にはこの会議録をしっかり見せて頑張ってくださいよ。我々も大蔵省に向かって、総理と大蔵大臣が農林水産大臣に約束したことをしっかり守るように、それを守らぬような役人だったらやめてもらった方がいい、極端なことを言えば、そういうふうに思うんですよ。だけれども、私どもが大蔵省に行きますと、まず農林水産省よりも大蔵省の方がいろいろなことを先に言うんですね。全く私はけしからぬと思うんです。当該の担当する省庁を横に見て、担当の主計官が勝手なことを言っているんです。私はけしからぬと思うんです。ああいう態度といいますか、そういう態度をさせておくような今のシステムが悪いのかどうかは別にして、私は許せない態度だなということを常日ごろ考えておるわけであります。  時間も余りございませんから、最後に農家の負債問題について申し上げたいというふうに思うんです。  畜産局長の畜産振興審議会に対する報告では、大分いいような状況に向いてきているというふうに言われております。しかし、農林水産省があるいは統計的にそういうふうに思われているのかもしれませんけれども実態はそういうような状況になっていないわけであります。  北海道の酪農家経営内容分布、これでAランク、農家所得で家計費、償還元利金を賄うことができる農家というのはこれは四七・一%、それからBランク、農家所得で家計費、利息は賄えるものの、償還元金支払いには不足するもの、これが三四・一%、Cランク、農家所得で家計費は賄えるものの、利息の一部及び償還元金は支払えないもの、これが一八・三%、農家所得で家計費を貯えないもの、これがDランクで〇.五%、こういうような状況になっております。  そしてまた、きょうの日本農業新聞では、「融資返済肩代わり増える 畜産が約六割 経営苦境浮き彫り」、これは農業信用基金協会のことですけれども、そういう形で出ております。  こんなような状況になっていても、何か経営改善されてよくなっているというふうに農林水産省は思っておられるのかどうか、そこを伺いたい。
  38. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) ただいま先生御紹介になりました資料は、たしか全中の資料ではないかと思うわけでございますが、確かに私の手元にも今先生がお述べになりましたことが記載されたものがあるわけでございますが、この調査自体どの程度の対象の農家についてどの程度の規模でやったかというのがわかりませんので、何とも申し上げかねますが、私どもの方では別途先生御案内のように経済調査というのを実施しているわけでございます。  この経済調査で見る限り、例えば全国平均の一頭当たりの負債額を見てみますと、五十六年度が五十八万四千円ということでピークだったわけでございますが、五十九年度にはほぼ前年並みになっておる。一方、一頭当たりの資産額につきましては、むしろ最近では順調に増加しておりまして、五十九年度には二百三十一万円になっているというふうなデータが統計情報部が実施しております農家経済調査においてあらわれているわけでございまして、また先生御案内のように、酪農経営につきましては、私ども五十六年から五カ年計画で酪農経営負債整理資金制度を設けまして負債対策を実施しているわけでございまして、この面から見ましても収益性、生産性は向上し、効果を上げてきているというふうに私どもは認識しているわけでございます。
  39. 菅野久光

    菅野久光君 確かに酪農負債整理資金が一定の役割を果たしたことは私どもも認めますよ。しかし、今農家は、酪農負債整理資金を活用しているところで、経営改善合理化計画というもので乳量についてある一定の、例えば毎年五ないし一〇%ずつ増産することになっているわけですが、この保証価格の据え置きまたは切り下げがあって、さらに昨年暮れからの生産制限で計画自体が狂って資金償還を困難にしている。まさに農業経営を危機に追い込んでいるわけであります。だから、その酪農負債整理資金は一応役割を果たしていることはわかっていますけれども、それでもなおかつ今申し上げたような状況になっている。これを今何とかしなければならぬのだということなんですよ。だから、決して局長が言っているような、経営改善されて何か所得も上がって上向きになっているような、そんな甘い状況ではないというようなことだけはしっかり認識をしていただきたいと思いますし、仮に円高とかなんとかということで飼料の値段が下がるので価格を下げるということであれば、この農家の負債のせめて利子分だけでも何か先送りするとか棚上げするとか、何らかの措置を講じてあげなければ、私はこういったようなCランクだとか、あるいはDランクという酪農家を救うことはできないのではないかというふうに思うんです。  いろいろ申し上げたいことございますけれども、時間が参りましたので、あとの質問は山田委員の方に譲りたいというふうに思います。
  40. 山田譲

    ○山田譲君 いろいろ細かいお話も含めて、今の菅野委員の方からも話がありました。私の御質問も場合によるとダブるようなことがあるかもしれませんけれども、ひとつお許しをいただきたいというふうに思います。  いよいよあした、あさってですか、審議会に諮問されて、そして牛乳の値段あるいは数量あるいは牛肉、豚肉の値段が決まるわけであります。その諮問の内容は恐らくまだお示しいただけないと思いますけれども、農林大臣にお伺いしたいのは、この諮問に当たっての、特にことし考えていらっしゃる基本的な態度あるいは基本的な方針というふうなものは一体どういうことであるか、具体的に年とか豚とか、限度数量乳価というふうに分けてもし大臣のお考えが聞ければありがたいと思うんですが、それをお願いします。
  41. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) 今もお話ありましたように、これにつきましては、二十六日、二十七日と諮問をいたしまして、畜産振興審議会で御審議をいただくことになっておりますから、具体的に今どうこうということは申し上げかねるわけでありますけれども、六十一年度の指定食肉の安定価格決定に当たりましては、長期的な視点に立ちまして肉畜の経営の健全な発展を図るために、飼料価格の値下がり等による生産費が低下しているということがひとつあれできると思います。それから規模拡大等により生産性が向上していること。また豚肉につきましては、六十年度に大幅な生産過剰となりまして、昨年暮れからは母豚の淘汰及び調整保管、これを実施いたしております。こういったものをいろんな角度から勘案しながら諮問をしなければいけないというふうに思っております。  また、加工原料乳保証価格決定に当たりましては、酪農経営の健全な発展を図るということが基本でございまして、その中で飼料価格の値下がり等による生産費がどんなふうに動いているか ということ。それから規模拡大をし、一頭当たりの乳量の増、こういったものがどんなふうに今生産性というものが上がっているかということ。こういうものを検討しながら私どもとしては諮問していきたい、そして審議会で御審議の上、決定してまいりたい、かように考えております。
  42. 山田譲

    ○山田譲君 そういう方針で諮問をなさるんでしょうけれども、私は基本的に何といっても、畜産を振興させようというからには、畜産農家あるいは酪農農家の方々が元気を出して、そして頑張っていこうというふうなものでないといけないと思うんです。それはいろんな理屈があるんでしょうけれども、何しろ今までだって上げなきゃならないというときに上げているわけじゃないんです。そういうことを考えますときに、飼料代が値下がりした、生産性が上がったというふうなことをもって値段を下げるというふうなことは、これは理屈はともかくとして、農民に与える精神的な影響というのは非常に大きいんじゃないかと思うんですけれども、その辺はどうお考えですか。
  43. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) 確かに生産者の気持ち、それから農業というのは、やろうという意欲というものがやっぱり一番大事でありますから、意欲をそぐようなことはやるべきじゃないというふうに考えます。  ただ、先ほどから申し上げておりますように、生産性を高めてコストを下げていく、そういうことにそれぞれ努力していただかなければならない。そういう中で例えば国がいろんな助成をしたりしております。こういったことについて本当に向上されたときにはそのメリットというものを消費者の方へ還元しなければいけない、こういうことも一つでありましょうし、また外因的な要素として金利が下がるとか、あるいは飼料がある程度下がって農家経営にいい影響を与えていく、そのうちの少しの部分は、例えばメリットとして還元していく、こういったことも考えなければいけない。そういったために、そういうことがよく理解されるような体制も、また環境も整備していかなければいけないなというふうに思っております。
  44. 山田譲

    ○山田譲君 私も群馬で、できるだけ農村地帯を歩いて農家の方と話すような機会を多く持っているわけでありますけれども、そういういろいろな話し合いを通じて感じることは、今いみじくもおっしゃったわけですけれども農家の方々が張り切って、元気を出して農業にいそしむというふうな気持ちになっていないんじゃないか、もちろん全部とは言いませんけれども、全体の雰囲気としてそういう感じがしてならないわけです。  特に、私はこの間も話し合いをして愕然として驚いたんですけれども、いろいろ細かい話を農家の方々としているうちに、終わりころになりましたら、山田さん、何だかんだと言っても、はっきり言えば、おれたちは大きな公共事業、道路をつくるとかダムをつくるということをやってもらって、そしてそれで自分の土地を売って、そのかわりに例えばモーテルを経営するとか、あるいはレストランをつくるとか、そんな方が楽だというふうな気持ちにはっきり言ってなっているんですよということを言われた。私はそういう気持ちの人が全部だとは思いませんけれども、何となくそんな雰囲気になっている。これでは農業が発展するわけはないと私は思ったんです。ここまで農家の人たちの心を荒廃させてしまったものは何かということをしみじみ自分で考えざるを得なかったし、私自身も責任を感じているわけであります。  あるいはまたある青年でありましたが、この人はかなり一生懸命に畜産をやっておる男ですけれども、この人に、おまえ借金幾らあるんだと聞いてみたら、大体五千万円くらいあると言うんです。それにしてはおまえ随分のんきな顔をしているじゃないかと言いましたら、いや、これはもう開き直りですよ、もうどうにでもなれという気持ちでしかないんだ、だからこんな顔をしているんだというふうなことを言っていた。何か自暴自棄みたいな調子でもって農業をやっている。  こういう情勢じゃ農業の将来は非常に嘆かわしいことになるんじゃないかという気がしてならなかったわけですけれども、そこら辺大臣どうお考えですか。
  45. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) 確かに個別農家の中にはいろんな階層というものが確かにあることは事実だと思います。  ただ、私どもこの価格をあれするときに、再生産というものがある程度確保できるようにということを基本にしながら、例えば価格をずっと据え置いておるといいましても、その据え置いている場合には当然生産費調査等をしながら、据え置いても大丈夫だというときに据え置く。あるいは非常に過剰に今なってしまっておるというときに抑えなければならないというような政策の進め方というものをしなければならないと思うわけでありますけれども、私どもとしては、農家の方々が規模を拡大するとか、あるいは飼料の給与の仕方、そういったものに対して工夫をするとかいろんな中で、コストを低減していくという中で利益を上げていただけるような農業というものをつくり上げていかなければいけないなというふうに考えております。
  46. 山田譲

    ○山田譲君 それで、この価格なるものは、私は必ずしも理屈じゃなくて、少しでも上げてくれたというふうなことによって政府はおれたちのことを考えてくれたんだというふうな気持ちになる。そういうものが一つの刺激になって一生懸命やってやろうかという気持ちが起きてくるんじゃないかと思うんです。  それと逆に、こういうような状態の中で価格を逆に下げますということになりましたら、少なくともさっき私が言ったような雰囲気で今いるところの農家の人たちは、ますますもってやる気を失うんじゃないかというふうな気持ちがするわけですけれども、その辺どんなものでしょうか。
  47. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) このところ、今この価格についてどうするということにつきましては、きょう、あしたぐらい本当に精査した上で諮問をしたいと思いますけれども、ただ、先ほども申し上げましたように、飼料穀物というのは、これは他動的な要因によって外国の飼料穀物が値下がりしてきた、あるいはまだ余り反映されておりませんけれども、これからまた円高というものがきちんと反映されてくるということになりますと、飼料穀物というのはもう少しまた下がるであろうということがございます。それとあと、副産物なんかについても、ここのところ割合と高く売れておるという状況、こういうもの。それから牛肉については比較的価格も上位で安定しておるということ。こういうものを考えたときに、飼料穀物が下がってきたということについて、それじゃ農家だけがそのメリットを享受していいんだろうか。今私ども予算委員会その他でも審議の過程で、こういったものについて消費者にメリットを還元すべきじゃないか、そういう御質問が各党の皆さんからも実は出されておるところでございます。そういうことで、農業といえども国民の本当の理解というものを得なければいけない。そして私どもは農業生産というものを少しでも高めるために、いろんな意味で一般会計からお金を持ってきながらやっておる。ということになりますと、どうしてもメリットの還元ということは消費者に対してもある程度してあけなきゃいけないというふうに考える。そういう中でまた需要が拡大されていく。そしてまた農業者もその中で生産を拡大することができる、そういうことが私は最もいいことじゃないかなというふうに思います。
  48. 山田譲

    ○山田譲君 円高の影響というふうなものは、当然それは全国民に均てんさせるべきものだとは思います。だけれども農家の方も、飼料が下がったこと、あるいは円高によってさらに安くなるんだということは知っていまして、これは助かった、いわばほっとしたような気持ちでいるところに、それがまた値下がりさしてしまうということになると、そこでもって、何だ、おれたちはちっとも円高の恩恵をこうむらなかったんだというふうな気持ちになるんじゃないかと思うんですね。だから、そういう意味でも今度、価格については相当慎重に考えてやっていただきたいと、こういうふうに思います。これは要望だけでございます。  その次に問題なのは、私、歩いてみて感じることは、後継者が非常に少ない、なり手がほとんどないという状態であります。人に聞いてみますと、もうこの仕事はおれのせがれには継がしたくないというようなことを言う人が残念ながら非常に多いわけです。こういうことを言うのは確かに農業が一番多いんじゃないかと思うんですね。あるいは例えば政治家にしても、大臣はお父さんが立派な大臣であった、政治家だったんですね。私も長野県にいたからよく知っています、子供の時代から。そういうときにやっぱり、ああ、おやじはいい——おやじと言っちゃ悪いけれども、お父さん、いいなあ、おれもなろうとして頑張ってなったんじゃないか。そうじゃありませんか。
  49. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) 全然違う。
  50. 山田譲

    ○山田譲君 大体二世というのはみんなそんなもので、農業と大分違って、農業はおやじの方は子供に継がしたくないと言うけれども、政治家の方はぜひ息子にもやらせようと。現に中曽根総理なんかも息子さんが非常にいい会社にいるのを引っ張ってきて、今度は群馬から出させようとしている。それが当たり前だと思うんですよ。お父さんの職業はいいなあと思って、お父さんの跡を継ごうというような気持ちを起こさせるのが本当だ。ところが、残念ながら農業については、おやじの方は継がしたくないと言うし、子供は子供で継ぎたくないというふうな、こういう状況でありますから、これは相当のことをやらないとなかなか農業の発展ということは望めないんじゃないか、そう思いますけれども、どうかこの辺ひとつお願いします。
  51. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) 前段の部分のあれは、間違いなく、私やる気がなくて、もう嫌だ嫌だと言ってついに一回は立候補を取りやめたわけであります。しかし運命で、やむを得ざることとして今こういう立場にあります。  ただ、先生がおっしゃったことは、本当にまじめに考えまして、船業、これは畜産とか酪農とか、そういうことに限らず、農業に後継者がなかなか生まれてこないということ、これは非常に問題であります。私も政務次官を昔やりましたときに、それ以来十年間、私どもも何とか後継者のいるような農村というものをつくらなきゃいけない、農業をつくらなきゃいけないということでいろんな手当てを次から次とやってまいりましたけれども、大臣になりました現在、もう一度こうやって振り返ってみて、いまだに実は後継者がなかなか生まれてこないというのが現状であります。  ただ、何というんですか、私も当然農村をしょっちゅう歩いているわけですけれども、しかし中には、相当の多くの人、大半の人たちは、厳しいかもしれないし、あるときにはつらいかもしらぬけれども、今農業にいそしめることに喜びと誇りを持っているんだという話をされる方が割合と多いんじゃないか。そして最近では若い人たちが、特に酪農とか畜産あるいは施設園芸ですとか果樹ですとか、そういった中で、厳しいながらも創意工夫されてそこで自立されていく方たちというのがだんだん私は生まれてきているんじゃないかなというふうに思っております。  ただ問題は、確かに農業というのはどうも天候が相手だということがありますでしょうし、最近では外圧のような外的な要因というものがあります。それと同時に、どうも食べる人たちも、例えば豚肉なら豚肉と言ったと思ったら、途端に今度は、お医者さんが何か一言言うとまた変わってしまうというようなことで、生産というものが需要というものをとらまえるのが非常に難しい時代になってきて、情報が過多になればなるほどその辺が難しくなってきておるということで、農業経営というのは非常に難しいなというふうに思っております。  ですから、そういったものに対応できるような足腰の強い農業ということで基盤をしっかりさせることと、新しい技術というものを国の機関としてもできるだけそういったものを進めていくということ、もう一つは、そういったものをきちんと自分のものにして、そして対応できるような後継者というものを教育していく必要があるんだなというふうに思います。  それと同時に、農業に携わる人たちには東京とかあるいはサラリーマンなんかにない空間というものがあるんだということ、あるいは土を相手にしながら仕事ができるという、お金にかえられないまたほかのよさがある。こういうものについてもっともっとみずからが知る必要もあるんじゃないかなというふうによく私も感じております。
  52. 山田譲

    ○山田譲君 そういう確かに若い人なんかでも非常にまじめに一生懸命やろうと思っている人もたくさんいるわけです。だから、そういう人たちに対して価格が下がったなんと言うと、ちょっと出ばなをくじかれるような、そんなことにならなければいいと思うんですけれども、その点をぜひ配慮していただきたいというふうに思います。  その次に、この畜産あるいは酪農について現在の実情がどうなっているか、そしてまた今後どういうふうにことしあたりしようとしておられるか、これについて詳しく畜産局長の方からお伺いしたいと思うんです。それぞれ牛、豚あるいは酪農に分けましてお願いしたいと思うんです。
  53. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) 最近の畜産の詩情勢でございますが、需要の面で申し上げれば、消費水準が相当に高くなってきておること等を反映いたしまして、需要伸びに総じて鈍化の傾向が出ております。    〔委員長退席、理事北修二君着席〕 そういった意味でややもすれば生産過剰になりやすいような、そういう状況に立ち至っていると思うわけでございまして、そういう意味から今後の畜産経営あるいは畜産政策につきましては、需給の動向に十分注意しながら、注意深く需給動向に配慮しながら生産対策を進めていく必要がございますし、さらにまた今後の生産対策としては、量的なものよりもむしろ質的な面に重点を置いて対策を講じていく必要があろうかと考えるわけでございます。  酪農についてでございますが、酪農につきましては、先ほど来から出ておりますように、需給関係で申し上げれば、本年度におきましては、夏場において飲用牛乳の消費が前年を下回るという十一年ぶりの事態が発生したわけでございまして、その反面、生産が順調であったということから結局、加工がふえまして、バター在庫の累増という事態に立ち至っているわけでございます。  そこで、私ども当面の緊急な課題として、政府だけじゃございませんで、生産者、従業者、販売業者含めまして、官民一体で飲用牛乳バター等を中心とする牛乳乳製品の消費拡大を展開していく必要があるだろうと考えておりまして、それにつきましては、関係者が集まった勉強会を開いておりまして、その具体案を練っているところでございます。いずれにいたしましても、畜産は非常に厳しい環境にあるわけでございますので、経営面におきましても、より徹底した生産性の向上対策、口絵飼料基盤の強化等々についての対策を強化していく必要があろうかと考えるわけでございます。  また、肉用牛につきましては、先ほども御質問あったわけでございますが、畜産物の中では唯一と申しましょうか、牛肉につきましては需要伸びが期待できる分野でございます。それにもかかわらず、生産が十分に対応し得ていないという実態があるわけでございますので、北海道とか東北とか九州のような地域につきましては、なお草資源も豊富な地域があるわけでございますので、そういった地域におきまして重点的に肉用牛の振興を図っていく必要があるだろうと考えておりまして、肉用牛の振興につきましては、短期、中期、長期に分けながらせいぜい適切な対策を講じていくということではないかと思うわけでございます。  また、養豚につきましては、ここ四、五年来卸価格が堅調であったということに加えまして、最近におきます配合飼料価格が相次いで値下がりしたということもございまして、生産が刺激され、今や過剰生産基調に入っておるというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、何としても過剰な生産状態の解消を図ることが緊要でございますし、そういったものを通じまして、需給の均衡を図っていく。同時にまた経営面につきましても、かつての肥育、繁殖経営の分離から、一貫経営が相当進んでまいっている実態がございます。そういった意味で、より一層の一貫経営の推進と規模の拡大等を通ずる生産性の向上ということが今後とも必要であろうかと、かように考えている次第でございます。
  54. 山田譲

    ○山田譲君 農水省の方でおつくりになった「農産物の需要生産の長期見通し」というのがありますけれども、これを見ると、大体その見通しの線に沿ってそのとおりに需要供給関係が動いている、傾向としてそう言えるんじゃないかと思うんです。これで見ますと、まだまだ肉全体については供給が需要に追いついていないというふうなこともわかるわけであります。牛肉についてもそうですし、豚についても大体そんなことが言える。そうしますと、これからはもっともっと畜産を振興して肉の供給をふやし、あるいは牛乳をふやしていくということが必要になってくると思うんですけれども、全体として、長期的に見た場合に、その辺についてはそのつもりでこれからやろうとなさるのか、その辺はどうですか。
  55. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) 少なくとも畜産物全体を通じまして、需要伸び自体はかつて実現したような高い伸びは今後は期待できないんではないかというふうに考えているわけでございまして、当面は今先生指摘の長期見通しのラインで進んでいくかと思いますけれども、それ以降の動きにつきましては、さらに検討をする必要があろうかと思うわけでございます。いずれにいたしましても、長期的な伸びといいましても、短期的には、ことしにおきますような牛乳のような需給関係の超緩和ということもあるわけでございますので、需給の動向に十分注意を払いながら、むしろこれからの政策の力点は量的拡大よりも質的拡大に力点を置いたそういった政策運営が必要であると、かように考えている次第でございます。
  56. 山田譲

    ○山田譲君 現実にこの需給関係を見ますと、この表にも出ていますが、例えば牛にしても国内生産量が三十七万七千トン、輸入が十四万九千トン、これは五十九年でありますけれども、かなりやっている。豚についても、輸入が十八万三千トン、国内生産の方は百万トンちょっとある。こういうことですから、まだまだ、六十年のことはよくわかりませんが、五十九年まではそういうことで、どうしても輸入しなきゃならないような状態だったと思うんですけれども、その辺はどうですか。
  57. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) 牛肉に関して申し上げますと、どちらかと申しますと、現在の我が国の生産の方は需要伸びに対応し得ていない。したがいまして、先ほども御質問ございましたように、日米、日豪間の交渉を経まして、一定量の輸入の取り決めをしたわけでございまして、現在のところ牛肉につきましては、国内生産が七、輸入が三、そういった割合でここ十年ばかり推移しておるという状況でございます。ただ、豚につきましては、本来的には国内で相当、量的だけで申し上げれば、国内自給できる性格のものであると理解しているわけでございます。  ただ、消費形態、日本の消費構造に特異性がございまして、ヨーロッパでございますと、大体豚の消費は、ほとんどがハム、ソーセージ等の加工品で消費されているという実態でございますが、日本の場合は約半分は、いわゆるテーブルミートと申しましょうか、生肉として利用される、残りがハム、ソーセージ等の加工品に回っているという実態があるということがまず一つ。  それから生肉につきましての消費でございますが、これもややもすれば、ヒレとかロースとか特別の部位に消費が集中する。したがいまして、ももとか肩みたいなところには需要が余りございませんで、非常に値が安くなる、極端に値に差が出てくる。また加工面で申しますと、ハムについて申し上げますと、ロースハムが中心でございまして、まず国内でできますロース部位につきましては家庭消費でまずロースを消費する。次いで加工に回ってくるものはどうしても少なくなるということになりますと、ロースハムの製造メーカーから見ますると、国内にロースハムの需要がある限りは、何としても手当てをしなくちゃならないということになりまして、外国からロース部位を中心とした輸入を行うという、そういう構造になっているわけでございます。    〔理事北修一君退席、委員長着席〕  したがいまして、私ども今後の対応といたしましては、まず一般の消費者の家計消費といたしまして、ヒレとかロース等の特定の部位のみに集中しないような、その他の部位についても消費を伸ばしていくという方策、さらにまたロースハムの原料でございますロース部位につきましても、どうも日本の豚の改良自体が、生肉需要にマッチしたものとしての改良が行われてきたという実態があるわけでございますので、今後の加工需要考えた場合、豚の改良につきましても、ロース部位の生産にマッチした、そういった豚に改良していく必要があるだろうというふうに考えておりまして、この点につきましては、二、三年前からそういった実験に取りかかっているところでございます。やや時間はかかると思いますが、そういった国民の豚肉の消費構造を変えていくという面と、豚の改良面、そういったものを経ながら国内生産の増を図り、国内生産によって国内需要を賄うという、そういった体制づくりを進めてまいりたいと、かように考えておるわけでございます。
  58. 山田譲

    ○山田譲君 時間がないですから、余り長く説明してくれなくても結構です、簡単にお願いします。  少なくとも牛肉については、この見通しからいっても、あるいは実績からいっても、まだまだ供給が足りないということですから、私が聞きたいのは、なぜ供給が足りないのか。大臣の所信表明にもありましたけれども国内でできるものは国内でつくるんだと、こう言っていますから、だからもっと供給をふやしていいんじゃないか。私は悪く勘ぐれば、外国から輸入しなきゃならないやつだけ供給量から差っ引いて、そのあとを国内で賄うというふうなことを細工していらっしゃるんじゃないかというふうなことさえ考えるんだけれども、その辺はどうですか。
  59. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) 私どもといたしましても、肉用牛資源の増強というのが当面の最大の課題と考えておるわけでございますが、御案内のように牛といえども一年一産でございます。そういう基本的な限界があるわけでございます。かつまた、現在の繁殖経営は、最近は子牛価格が高騰しておるという関係から収益が好転しているわけでございますが、どちらかというと、収益性に劣る部門でございます。そこで、資源的な数を確保するためには繁殖経営をふやしていく、頭数を拡大していくという施策が必要でございますが、そのためには、どうも繁殖経営のみによってはなかなか難しい面もございますので、耕種部門との複合経営を進めながらそういう中で繁殖経営をふやしていく、そういうことも進めてまいりたいと思いますし、先ほど申しましたような生産率を上げるようなことも飼養管理技術の向上としてやってまいりたいと思いますし、さらに未経産のまま肥育に回っていく牛につきまして一産だけは子供をとる。大体十数万頭が未経産のまま肥育に回って肉として食されているわけでございますが、これらにつきましても、一産だけはせめて子供をとって出すとなりますと、十数万頭の子牛の増になるわけでございますし、そういったきめの細かいことも考えながら、資源の増強には今精いっぱい努力をいたしているところでございます。
  60. 山田譲

    ○山田譲君 次に酪農の方ですけれども、さっきもちょっと同僚委員から話がありましたが、計画生産と言っていますけれども生産調整の一つだと思うんですね。国内でそういうことをやりながら外国から酪農の製品をいっぱい輸入している。 ナチュラルチーズであるとかあるいはココア調製品という話もありました。こういうものについては毎年むしろふえているんじゃないかと思うんですね。国内生産調整をやって外からどんどんそういったものを輸入していく。これがむしろふえているということは、これはどう考えても実際の生産農家にとってはやりきれないことだと思うんですけれども、その辺どうですか。
  61. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) 乳製品輸入に関しましては、基幹的なものにつきましては、畜産振興事業団による一元輸入ないしは輸入割り当て制をとっているわけでございますが、最近増加しておるのは、むしろ自由化しておりますナチュラルチーズ中心の乳製品輸入増でございます。そこで先生おっしゃいますように、一方で生産調整をしながら一方で輸入がふえているというものについての問題につきましては、生産者団体におきましても、ナチュラルチーズ、これもかつてはプロセス原料としてのナチュラルチーズの輸入が多かったわけでございますが、プロセスチーズ自体の需要が落ちている中で、むしろ直接消費用のナチュラルチーズの輸入がふえておるという、そういう実態もあるわけでございますので、このナチュラルチーズについて国産化できないかというふうなことが北海道を中心に生産者団体の中で真剣に御議論が行われているわけでございます。確かに私どもも、日本人の嗜好に合った国産ナチュラルチーズの生産振興は、今後の酪農乳業の発展のためにも有力な手だてというふうに考えられるかと思うわけでございますので、私どもとしても重大な関心を持って見守っているというところでございます。
  62. 山田譲

    ○山田譲君 今ナチュラルチーズの話が出ましたけれども、私もそのとおりだと思うんですね。だからナチュラルチーズの振興策として具体的に今どういうことをなさろうとしているか、あるいはやっているか。ただ見守っているだけではなくて、実際こういうことをやりますということをやらないと、なかなかナチュラルチーズというものは輸入がふえていく一方じゃないか。国内的にもいいやつをどんどんつくるような振興策を考えていかなきゃいけないと思うんですけれども、その辺どうですか。
  63. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) 本件については甚だ恐縮でございますが、こういった場での発言が国際的にいろいろ反響を及ぼすわけでございますので、私ここで重大な関心を持って見守っていると申し上げるにとどめさせていただいたわけでございますが、私どもとしてもこういったものが実現できるような方向で私どもなりにできることについてはいたしたいと、かように考えております。それ以上の発言は差し控えさせていただきたいと存じます。
  64. 山田譲

    ○山田譲君 何か自衛隊の軍事機密か何かならともかく、ただチーズを食うか食わないかというような問題でそんなに慎重にやらなきゃいけないというと、何か裏でよっぽど悪いことをやっているんじゃないかと思われるわけだけれども、それ以上物を言えないんですか。
  65. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) 今の国際関係の中で、EC、豪州、ニュージーからチーズが入ってきているわけでございますが、その輸入を排斥するような国内生産の増強について政府が直接手をつけているということは、これは重大な問題になる可能性があるわけでございまして、この点につきましては、私ども関係の方とは慎重に連携をとりながら、意見を聞きながら慎重に対応しておるという状況でございます。その間につきましてはひとつ何とぞ御理解賜りたいと存じます。
  66. 山田譲

    ○山田譲君 すぐに理解できないんですね。それはさっきも言いましたように、大臣の所信表明でも国内でできるものは極力国内でつくる、こう言っているんですからね。それを言ったからって何もそんなにECが怒るほどのことはないと思うんですよね。それ以上言いたくないと言うなら、それ以上しようがありませんけれども、私はナチュラルチーズあたりはもっともっと振興をさせて、そして輸入を減らしていくように努力をしていっていただきたいと、こういうふうに思います。  最後に、もう時間になりましたけれども、例の牛乳表示の問題で公取の方にお伺いします。  牛乳の表示をできるだけはっきりさせる、加工乳であるか、あるいはその他の飲用乳であるかというふうなことについて表示をきちんとしろという動きは前からあるわけですけれども、何か最近規約を改正したとかなんとかという話がありますが、そこら辺のところ、経過を説明していただきたいと思います。
  67. 黒田武

    説明員(黒田武君) お答えします。  ただいま御指摘のありましたように、昨年来飲用牛乳につきまして、いろいろと牛乳、加工乳、乳飲料の関係がおるいは消費者に誤認を与えるとか、あるいは生産者団体の方からは需要の拡大という意味のことがありまして、関係者から飲用乳の表示につきましてもう少しわかりやすい表示にしていただけないかということをいろいろと私どもに要請がありまして、それで今回関係者間で適切な表示というのはどうあるべきかということをいろいろ話し合っていきましたんですけれども、なかなか容易にコンセンサスが得られませんでしたので、とりあえず昨年七月の食品衛生法に基づく乳等省令の改正にかかわる事項を重点にいたしまして規約と規則を直しております。しかしまた他方で、いろいろと関係者から指摘のありました種類別名称の明確化とか、それから乳飲料の原材料表示などについては改善を図るように、全国飲用牛乳公正取引協議会で運用基準を定めまして表示の改善を図っております。
  68. 山田譲

    ○山田譲君 結局、具体的には表示がどういうふうになるということですか。
  69. 黒田武

    説明員(黒田武君) お答えします。  例えば加工乳とか乳飲料に○○牛乳と書いていたわけなんです。ところが、○○牛乳と書かれることによってそれが加工乳なのか乳飲料なのかわかりにくいというお話があったわけなんです。それで加工乳とか乳飲料という一つの種類別名称ははっきりと大きい文字で書きなさいということを今度の改正の中で定めたわけです。
  70. 山田譲

    ○山田譲君 それはメーカーには大分徹底したんですか。
  71. 黒田武

    説明員(黒田武君) 一月にこの運用基準を制定しておりまして、一応施行までの猶予期間を六月まで置いております。しかし早いものにつきましては四月ごろから新しい容器で市場に出回る予定でおります。
  72. 山田譲

    ○山田譲君 もしメーカーたちがあなた方の言うような改正をしなかったとした場合に、どういうふうになるんですか。
  73. 黒田武

    説明員(黒田武君) 公正取引協議会の中では一応こういう罰則規定を置いてやっておりますので、それに従わない場合はそういう規約違反ということも考えられますけど、その前に私どもの方も、公正取引協議会というところを監督しておる官庁としまして、十分業界団体に周知徹底していくように指導してまいりたいと思っております。
  74. 山田譲

    ○山田譲君 せっかく規約をそういうふうに改正して一歩前進したわけですから、ひとつ厳重にやっていただきたいというふうに思います。  次に、今度それに対して、生産者の人たち、あるいはまた消費者の方、そういう人たちはどういうふうにその規約改正を評価しておられるかどうか、そこのところはどうですか。
  75. 黒田武

    説明員(黒田武君) 今回の改正につきましては、消費者団体、それから生産者団体の方々にはこの内容を御説明しております。そうしまして、今のところ私どもの方としては、今言いましたように、加工乳とか乳飲料等の区別を表示上で明らかにし、しかもそれが実際に市場に出回ってくるのが四月から六月ごろになりますので、その改善された表示に対する消費者の意識など、また反応を見ました上で、今後さらに表示上の対策を検討する必要性が出てきた場合には検討しようかということでお話をしてございます。
  76. 山田譲

    ○山田譲君 それでは時間ですから最後にします。  もうお聞きのとおりですけれども、そういうことについて農水省としてはどうお考えですか。
  77. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) 現在、この飲用乳の表示問題につきましては、公取の御指導のもとにおきまして関係者間で話し合いが進められているわけでございますが、私どもといたしましても、昨今の牛乳需給事情から見ますと、飲用牛乳の消費の拡大ということは非常に望ましい方向でもございますし、またひいては生乳全体の需要拡大にも結びつくようなことでもございますので、こういった方向で話し合いが進み、関係者間で円満な話し合いがつくことを期待しているわけでございまして、私どもとして何らかやることがあるかどうかにつきましては、公取の事務局と御相談しながら必要ならばそれなりの対応をしていきたい、かように考えております。
  78. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 質問をさしていただきます。  私は、今お二人の同僚委員がいろいろ御質問なさいましたので、時間もお互いにない中でございますので、重複を避けまして、通告分を少し外して御質問さしていただくことになると思いますが、よろしくお願いいたします。  我が党といたしましても、現在の畜産酪農を取り巻く情勢は非常に厳しいという現状認識に立っております。生産農家が計画生産を余儀なくされている中で、畜産物需要は停滞し、減少傾向を示している。一方で輸入圧力は一段と厳しさを増しているということでございますので、こうした現状を踏まえるならば、六十一年度の畜産酪農にかかわる政府価格及び関連施策の決定に当たっては、政府生産者の立場に立って十分な配慮をしていかなければならないであろうということで、私どもは後日細かい部分に当たって申し入れをさせていただくことになっておりますので、この細かい点についてはまだ後ほどにいたします。  私はまず、先ほど来お話も出ておりましたが、大臣に伺いますのは、最近の畜産経営ということの中で一番厳しいのは、暗い状況というのは負債の問題が一つ下敷きにあろうかというふうに思います。こうした北海道を中心にした大型の固定負債、そしてまた先ほどのお話では、この負債の状況がいい方向に向いている、資産形成が進んでいるというふうな答弁先ほどありましたけれども、私どもの調べた限りにおきましては、畜産農家全般の状況からまいりますと、健全経営としては三六・一%、残り六三・九%は何らかの形で経営上の問題を持っているというかなりアバウトな資料ではございますけれどもございます。こういう実情が出てきた原因というものはどこにあるかというふうに大臣お考えでいらっしゃいますか。
  79. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) 先ほどからの御審議の中でもあったわけでありますけれども、負債が確かに多いという現況、これは私どもの方としては酪農経営状況の、単一経営ですか、この方たちを対象にしながら調査をいたしております。これは五十九年のあれでございますけれども、五十八年に比べますと少し負債は確かに多くなっております。しかしそれ以上に貯蓄ですね、こちらの方はさらに多くなっているというのが現状でございまして、経営全般としては、割合といい方向に向かっているんじゃないかなというふうに思え、そして先ほど御質問ありましたように、いわゆる負債整理資金、こういったものを用意することによってこういうことを救うことができた、ある程度救っているんじゃないかというふうに思っております。  ただ問題は、今御指摘のとおり、実際にまだそういう問題があり、その原因がどうなっているのかということであります。これは個別農家農家によって違うものですから、一概にそれを申し上げることはできないと思うんですけれども、一番のあれは、新しく近代化していこうということの中で相当大きな投資をされている面もあるのかなということを今思うところであります。
  80. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 これは私どもの山口県のメンバーによる聞き込みアンケート調査でありますけれども、山口は北海道経営なんかとはおよそ違ったものでありまして、これは割合に小規模な健全経営をしたスタイルをとっておるわけですけれども、そしていわゆる畜産粗生産額というのは米に次いで二位だというところまで持ってきている県の実情なんです。山口県は、御存じのとおり、割合健全経営をしているというふうに私も認識しているんですが、その山口県でさえもその事情を聞いてみると、一番悩みなのは何といっても乳価、半価の安いということが一番問題だというふうに言っております。二番目に借入金の増加ということを中国地方でも言っているんですね。こういう点についていかがでしょうか。
  81. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) 個別経営の借り入れ、つまり負債ないしは資産につきましては、地域別あるいは経営別、さらには当該農家経営力、技術力、資金力等々によって差があるかと思うわけでございますが、私どもよく耳にする例では、経営規模を急速に拡大する、同時にその拡大の際にかなり設備投資相当にお金をかける、そういった経営、さらには肉用牛関係で申し上げれば、素畜でございます子牛価格でかなり変動があるわけでございますが、その素畜が高いときに購入した経営、これは数年後に肥育経営として見れば非常なダメージを受けるというふうなこともございまして、私どもは、今大臣が御答弁申し上げましたように、全体としては経営改善の方向に向かっているとは思いますが、地域によりましては、また個別経営によりましては、また個別経営の技術力、経営力等によりましては、まだまだ問題を残している農家が多いと思うわけでございます。こういった農家に対しまして、私ども、一般的な対策というよりもむしろ個別対策として、先生御案内のような自作農維持資金の中の経営再建整備資金等も活用しながら対応しているという状況でございます。
  82. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 その五十六年からの酪農経営負債整理資金制度は、これは六十年度を最終年度とするということになっておりますけれども、この継続はなさるんですか、いかがですか。  それから肉用牛経営合理化資金制度、こういうのも十分に機能させられていますか。
  83. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) ただいま先生指摘のように、酪農経営負債整理資金につきましては、五十六年度から五年間ということで発足したわけでございまして、本年度は最終年次に当たるわけでございます。そこで、本年度におきますこの資金の運用でございますが、当然のことながら、本年度に償還期が来ましてその償還が困難な借入金につきましては、これを長期低利資金に借りかえさせることは当然でございます。しかしながら、また一方、同時に今後六十五年度程度を見込みまして借入金の返還、六十五年ごろまでに返済期の到来する借入金の中で、どうしても償還困難ではなかろうかと見込まれるものがあるわけでございますので、それらにつきましては、本年度内に合わせて前倒しで借りかえをさせるというような措置を講ずることによりまして、一応五年間ということで発足いたしましたこの酪農経営負債整理資金につきましては、ことしてもって幕を引きたいと考えております。
  84. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 肉用牛の方は。
  85. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) 肉用牛資金につきましては、これはことしから始めたものでございまして、一応三カ年計画として始めたものでございまして、ことしたしか資金枠は二百億、来年、再来年は百五十億ずつということで始めたばかしてございます。これにつきましても、所期の目的どおり効果的な運用を図られますように関係県を督励いたしまして、現在、審査、貸し付け実行に当たっているところでございます。
  86. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 何と申しましても、畜産経営を論ずるときは、この固定負債ないしは農家が、生産者が抱えている負債の問題がまず一番最初に考えられなければならない問題だと思います。次には、先ほど来お話が出ております輸入の問題ですね。生産は幾分か過剰ぎみである。しかし輸入もふえているではないかという先ほどからのお話があるわけでございますけれども、これもダブらないようにして豚肉についてもうちょっと伺いたいんです。  先ほど大臣からの御答弁もありましたように、母豚の整理までしていわゆる価格維持をしていこうということで生産調整をやったわけですね。それなのに、それほど国内でやっているのに、しかし輸入がふえている。これは農林水産省畜産局の資料だから一番確かだと思うんですけれども、これを見ても六十一年一月の段階で前年度比一二四・四。いかがでしょう。
  87. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) 確かに、豚肉自体過剰生産の中で調整保管の実施、さらには生産者の手によります子取り用雌豚の淘汰という、そういったことを行っている中で輸入が必ずしも減ってないという事態があることも事実でございます。  ただ、この点につきまして御理解賜りたいのは、専ら輸入されておりますのは、ロースハム用の原料のロース部位、さらにベーコン用のベリーと申します部位でございます。と申しますのは、先ほどもちょっと申し上げたわけでございますが、日本人の豚肉の消費の形態というものが、外国と異なりまして、半分程度は生肉、いわゆるテーブルミートとして消費される。テーブルミートとしての消費も、主としてヒレとかロースに集中する。ももとか肩は余り消費されないという偏った消費が行われている。また加工面におきましても、ロースハムあるいはベーコン等に需要が集中するということでありますと、どうしても特定の部位でございますロース部位等は、全体として見れば過剰な中にも不足をするという、そういう特異な現象が生じてまいるわけでございまして、したがって確かに生産が過剰で、生産調整が行われ、かつまた調整保管が行われるさなかであっても、輸入がなかなか減らないというのは、そういった消費形態、輸入形態というものが現存するからであろうと私どもは理解しているわけでございます。
  88. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 部位志向が強いというのも私聞いてはおりますけれども、結局、国内のどこかにそれが回るわけでしょうね。生産もたくさんある、そして輸入してきたのもあると。どこかの部位だけが少し余計出回っているけれども、総量としては非常に多くなっているということだけは確かですよね。またこの部位志向については、これは流通の問題にも絡んでまいりますので、これはまた改めてさせていただくことにいたしまして、酪農の方の関係乳製品輸入のことです。  先ほどナチュラルチーズの問題も出ていましたし、乳製品輸入が非常に多くなっている、北海道の総生産量、生乳換算をすれば、それと同じぐらい輸入されていると、さっき同僚議員からありました。そのとおりだと思うんですね。  私は農水省の資料を大変丁寧に見させていただきまして、優等生だと思っております。しっかり読ませていただいたんですが、百二十一ページ。かつて牛肉・オレンジのときにもやはり問題にし、みんなで話し合いをしたはずのものなんです。つまり輸入先のアメリカ及びEC諸国において農産物のいわゆる国境措置とかを含めたこういう手厚い保護があるかないかという話をいたしました。アメリカにも聖域があるんだという話なんですね。特にそれが酪農に非常に強固であるということが言われております。そのことをまさしくこの百二十一ページに書いてくださったと思うんです。このことについては私、特別に申し上げておかなかったかと思いますけれども、表を見れば一目瞭然わかるんで、「市場開放度」というところを見ていただきますと、ECではチーズは二・九%の市場開放度、アメリカではチーズの市場開放度は六.〇%、我が国は八一・三%。大変わかりやすくいい資料をつくっていただいてあります。価格支持制度、そして国境措置、仕組みと関税率の問題まで丁寧に書いていただいて、私はこれを見て大変に考えることが多かったんですが、これはいかがですか。
  89. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) 農産物全般でもそうかと思いますが、畜産物の中でも牛乳乳製品につきましては、それぞれその国で置かれている酪農なり乳業の事情に応じましてそれぞれ国境措置がとられておるということを感じる次第でございます。
  90. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 置かれておるところでございますというのを表につくってくださったわけよね。私はこれを読んで日本もこの種のことを考えてもいいのではないかというふうに思うのです。消費者代表としての私がこんなことを言うのはおかしいとお思いになるかもしれませんけれども生産者が生産意欲をなくしてしまうような農業の体制というのは得策ではないと思います。これは消費者も願ってはおりません。だから、そういうことからいくと、生産者が生産意欲を持って、そして喜んで生産に当たる仕組みをつくっていただくこと、これは消費者の立場からも強調したいことだというふうに私は思うんですけれども、この国境措置及びこの価格支持制度というようなものについて、我が国の状況と比較してどんな御感想を大臣はお持ちですか。
  91. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) 今局長からお話ししましたように、農産物あるいは畜産物、そういったものにつきましては各国ともそれぞれ国境措置を持っていることであって、我が国としてよく、アンフェアだとか、いろんなことを言われますけれども、しかし私は決してアンフェアだというふうに思いません。ただ問題は、こういったECとアメリカと並べてあるんですけれども、両方ともどちらかというと輸出国なんですよね。その辺の事情というのは多少日本とは違うんじゃないかなというふうに考えます。ですから、一概にこれをただちょっと比較してというのはなかなか言いにくいんじゃないかなというふうに思います。
  92. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 それで、今回のこの畜産物価格を論ずるに当たって一番テーマになるのはこのチーズの国産化ということ、国産化振興ということが先ほど同僚委員からも出ていましたけれども、こういう数字を見るにつけても、これは生産者の側からも当然出てくる話になってくるわけですよね。それについては答えられないというふうにおっしゃっていましたけれども生産者とメーカーが手をつないでそして同じ土俵の上に上がっているんだけれども、それに対して政府がなかなか仕切りをつけないということが、今こういう話が進展しないという事情になっているやにあっちの方で伺ってきましたけれども先ほどの御発言の中でこれ以上は言えないというふうにおっしゃったのは、財政負担が出てくるというようなこともありますでしょうけれども、もう一つは、今これだけのものを外国から輸入しているという日本の国際的立場を考えてなかなか言いにくいんであろうということは私も何となく察しがつきます。けれども、これは今回の価格決定問題のとても大事な具体的なテーマだと思うんです。これはいかがでしょう。
  93. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) 今御指摘がございましたように、酪農製品の中でこれから相当大きく伸びるであろうというのはナチュラルチーズであろうというふうに思っております。今までは、どちらかといいますと、各国からの輸入というのはあくまでもプロセスをつくる原料として輸入しておったわけでありますけれども、最近の輸入状況を見ておりますと、これをいわゆる生食で食べる、そういうものが割合と輸入されておるというふうに思っております。  そういう意味で、まさにチーズというのは一つの嗜好といいますか、そういったものでありますから、デンマークの、あるいはフランスのもの、いろんなものを好む人があるでしょうし、それよりはなおもっとフレッシュな、日本でつくったものを食べたいという人も私は多くあるというふうに思います。いずれにしましても、これからナチュラルチーズは相当伸びていくものであろうというふうに考えますので、ここに目をつけられるというのは私は大変いいことだと思う。ただ問題は、これも数年前から実はこの議論があったんですけれどもなかなかこれが軌道に乗らなかった。しかし民間の中では間違いなく、この前もちょっとお話し申し上げましたように、地方のあちこちのところで、個人経営ですとか、あるいは町が中心になってやっているものですとか、そういったものはもう既に生まれつつあるわけですね。ですから、あとはもっと大きく今度はこれによって需要を拡大しようということでありますから、こういったことも、組織ですとかいろんなところで創意工夫されながら進めるものを計画していただく、これに対して私どもとしても当然いろんな面から応援していきたいというふうに考えております。
  94. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 それから大家畜のことにまた戻ってしまうような感じなんですが、牛の生体輸入がふえているという話が出ていますね。こういうことについて農水省はどんな御見解を持っておられますか。
  95. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) 確かに最近におきまして牛の生体輸入がふえていることは事実でございます。六十年を見ますと、頭数は約一万四千頭という数字になっておりまして、かつて五十四年から五十六年にかけまして輸入されたのが、年間一万四千頭程度だったのがピークでありましたから、そのころに匹敵する輸入が行われているということかと思うわけでございます。  その要因といたしましては、何と申しましても、最近における牛肉価格が比較的堅調に推移しておるということ、それに子牛価格が回復に向かっていること、さらにまた円高が進んでおる、そういった要因でもってこのように過去五十四、五、六年に見られたような水準でございます一万四千頭程度輸入になったというふうに見ているわけでございます。
  96. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 これは生産者にどんな影響を与えますか。
  97. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) この生体牛の輸入でございますが、内容的に見ますと、一つは種畜がございます、それから子牛がございます、それから三番目として直接屠場へ行きます牛、肉となる牛がある。その三つの形態があるわけでございますが、種畜につきましては、家畜の改良という面から見ますと、これは必要なものでございますし、子牛につきましては、最近子牛価格が高騰しておるという中で、中には肥育経営の中で子牛が欲しいという農家も出てまいっているわけでございまして、こういった農家に対する供給として子牛の輸入が行われているというふうに見ているわけでございます。  なお、屠殺牛でございますが、これにつきましては、数量的に申し上げますと、昨年で大体七千五百頭程度でございまして、この数量自体、年間の牛肉生産の中では〇・四%程度でございますので、全体の牛肉の需給なり価格に及ぼす影響は極めて小さいものと理解しております。
  98. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 余り影響がないというふうにおっしゃるんですか。
  99. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) 数字で申し上げます限り、国内生産されます牛肉の中に占める割合は〇・四%程度でございますので、需給なり価格にはほとんど影響がないと、そう言っていいんじゃないかというふうに考えております。
  100. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 昨日も予算委員会で竹下大蔵大臣ともちょっとあれしてみましたけれども、円の相場というのはまだどこまでどう発展していくかわからないという状況にありますよね。そうすると、うまみとしてはこういう商法というのはまだどんどん進むんじゃないか。こういう予測があるわけで、〇・四%、〇・五%程度であるというふうにはおっしゃっても、これは何かの形で農水省が歯どめをかける必要はないでしょうか。
  101. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) 生体牛が輸入される場合は、私どもの出先でございます動物検疫所へ行きまして検疫を行うということになっているわけでございますが、この検疫につきましては、場所、施設、人員等におきまして制約がございまして、最近の事情で申しますと、チェックできるものは年間約一万五千頭程度であるというふうに考えております。
  102. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 検疫がいいストッパーの役になるというふうにおっしゃっておられるようですけれども、手をかえ品をかえしながらいろんな形の輸入がふえていること、さっきのカゼイン、ココア調製品あるいは擬装品、ナチュラルチーズなんか、前はこういう形で入ってきたわけじゃないですよね。だから、そういうことから言いますと、何らかの形でこういう輸入製品が入ってくることを農水省としても監視しなければいけないんじゃないかというふうに思います。  まだこの種のことについては申し上げたいことがたくさんあるんですけれども、今回の畜産物価格を論ずるに当たっては、何といってももう一つのテーマは、今度は消費拡大を何とか積極的にやってもらわなければ国内としてももう大変だというのがありますわけですね。その分になりますと、私なども一翼を担わなければならない分になるわけですけれども、国の政策として、消費拡大というのはどんなふうに具体的に考えていますか、先ほども学校給食云々いろいろ出ていましたけれども、これはいかがでしょう。
  103. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) 特に、最近の状況考えますと、牛乳乳製品の消費拡大が私どもにとりまして最大の課題であるというふうに考えているわけでございまして、現在、生産者団体、乳業者団体、さらには販売業者団体等の代表から成ります懇談会を開いておりまして、そこで具体的な消費拡大の方策について御検討をお願いしているわけでございます。私どもといたしましては、そういった検討の経緯を見ながら、かつまた検討の結果を踏まえまして、効果的な消費拡大対策を打ち出していきたいと思うわけでございますが、消費拡大と申しましても、これは決して政府だけが行うものじゃございませんで、生産者、乳業者、さらには販売業者それぞれのお立場でお考えいただく、言うなれば官民一体で行う方向でこの問題を進めていきたい、かように考えております。
  104. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 消費拡大が今後の日本畜産物生産の方向を大きく変えていくということになるわけですけれども牛乳乳製品等で見てみますと、六十年で、総務庁の家計調査では、これは減っているわけですね。これから今おっしゃった懇談会等でいろいろ討議をするというふうに言われますが、これが減っている理由は何ですかと聞いても何とも言えないだろうと思うんだけれども、そういうところを押さえないとまた逆に拡大ということの方策が出てきませんからね。そのことをどんなふうに把握していらっしゃるのかなということが一つ。  消費拡大というのは政府だけでやっていくのではないというふうにおっしゃっておられたけれども、まさにそのとおりで、日本のあらゆる科学技術等を含めて、何しろ月に飛べるような科学を持っている我が国でありますから、そういうものを駆使して、消費者ニーズを吸収した新しい商品開発というようなことまでやっていっていただきたい。こういうふうに思いますけれども、消費拡大についていかがですか。
  105. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) ただいま先生指摘のように、消費拡大を進めるにつきましては、ことしのような飲用牛乳の消費の低迷の原因は何かと、そこからスタートしなくちゃならぬわけではございます。この点につきましても、先ほど申しました懇談会でもいろいろ御議論願ったわけでございます。  その中で出ました意見を集約して申し上げますと、一つは、牛乳の消費自体が、日本人の食生活から見ると、既に相当の水準に達しているという見方があるんではないかという見方。さらに昨年の場合は、特にウーロン茶とかスポーツドリンク等競合する飲料が大量に出回ったというふうなこと。さらに日本人の生活様式として外食機会が増大していった。さらには栄養食品でございました牛乳乳製品に対する価値観も変化してきた。そういった牛乳をめぐる環境、条件に相当変化が出てきているんではなかろうか。そういう点から、今後の対応としては、今先生指摘のようなそういった状況に対応した新製品の開発なり、あるいは宣伝、PRの必要性を考えなければならないんじゃないかというふうなことがこの懇談会において議論されたようでございます。  そこで、具体的な対応につきましては、現在まだ検討している段階でございまして、アイデアにすぎないわけでございますが、簡単に御披露さしていただきますと、例えばテレビで料理番組を提供する。そのことによりまして、牛乳乳製品の料理の方法等の普及を図っていく。さらにまた牛乳は特に食生活で不足がちなカルシウムの供給源としてすぐれている等々の牛乳乳製品の栄養上の正確な知識を普及していくこと。次にLL牛乳を活用し、現在牛乳が売られていないような駅の構内とか列車内、行楽地等で新たな販路を開拓していくというふうなこと。そういったことをいろいろ現在検討している段階でございまして、なるべく早い機会に具体化をし、それぞれの立場でそうした対策を実行するという、そういう方向に持っていきたい、かように考えておるわけでございます。
  106. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 ぜひよろしくお願いをしたいと思います。  あと、長期展望に立ったお話になるかというふうに思いますけれども、足腰強い農業ということで先ほども話が出ました。ついこの間、牛肉・オレンジを通して日米農産物交渉で日本の農政はあおりにあおられた。昨年は、今度は東南アジアからのボンレスチキン等を含めて大変脅かされた。ことしは円高影響による飼料穀物等の値下がりが、いろいろまた生産農家に憂慮をもたらすというふうなことを考えますと、日本の農政というのは、いつもそうした外因によって何か影響されているように思うんですけれども、そうしたものに一々影響されない、我が国のそれこそ足腰強い農業ですね、そういうものをつくっていくことは今まさに問われている急務ではないかというふうに思います。これはもうここ数年来言われてきておることでございますね。しかし依然として、こういう一つ一つの問題が出てくるとそのたびにそれに脅かされているというのが実情であろうと思うんです。先ほど答弁を同僚委員の方にしておられましたけれども、もうちょっと具体的にその辺について、足腰強い農業というのは、一体農水省が具体的にどんなことを考えながら現に手だてをしてきたのか、しているのか、しようとしているのか。この点はどうですか。
  107. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) 特に畜産、例えば一つの肉を例に挙げましても、今、牛肉等についてはオーストラリアあるいはアメリカ、こういったところからも輸入しております。しかし先生方もよく新聞等でも御案内のとおり、一番の大供給国でありますオーストラリアの肉生産というのは割合と不安定でございます。割合と乾燥が激しいということで、火事になりましたりなんかしますと牛が死んでってしまう。これを新たに戻すためには相当な時間がかかるというような実情がある。  そして、そういう中で肉の貿易というのはどうかというと、海を越えての量というのは、数字はほぼ間違いないと思いますけれども、百万トンぐらいしかございません。そのうちアメリカが六、七十万トンを買っておる。そして日本が十五万トンぐらい。そして韓国が、年によって振れますけれども、十数万トンということでありますから、もうこれで実は百万トンになっちゃうわけです。そのほか、シンガポールですとか、そのほかのいろいろな国が輸入しておるわけでございまして、こういうものを考えますと、例えば牛肉というものを一つとったときに非常に不安定なものであるということです。ですから、日本がだんだんだんだんみんなが肉を食べるようになってきた。そして、輸入にだけ頼っているということになったら、どこかで何かがあったときに、今度は日本には肉を売ってくれない。一時、オーストラリアで、日本に肉を売るからオーストラリアの肉は値段が上るんだなんていうんで、労働組合の皆さん方も反対したという情報が新聞報道でもあったぐらいでございますから、そういうものを考えたときに、主たるものは国内生産するということを基本考えなければいけない。そういう中で足腰の強い農業、畜産というものを考えなければいけないということであります。  そのためには基本的には飼料が一番問題でございますので、これは農用地開発公団等によりまして草地開発というものもしておりますけれども、そういうことをやって自給飼料というものを高めていくということ、これがまず第一であろうというふうに思います。  それから担い手の方も、本当の畜産経営をやっていく、そのためには飼料を投与する、これも相当技術が必要じゃなかろうか。よくむだな飼料を投与してしまっているという部分なんかもございますんで、適正なものをやり、そうして例えば泌乳量なんかも多くやったから多くなるわけでは決してないのであって、その辺のところを十分管理できるような担い手というものをこれから養成していかなければいけないんじゃないかと思っております。  それから負債の問題。そういうことを言うとまたおしかりを受けることもありますけれども、どうも農業というのは、一軒のうちでやっているということで、どんぶり勘定になってしまったりなんかしていて、経営という面について相当厳しく、どれだけのものを借りた場合にはどれだけの生産を上げていかなきゃいけないんだということ。それは他からの要因というものもありますからなかなか思うようにはいかぬでしょうけれども、それだけに経営管理ということについてきちんとできる担い手というものが必要じゃなかろうかというふうに思います。  それから家畜がきちんと増体できるように、あるいは泌乳量が多いものに、そういう家畜の能力というものを向上させるということも必要でありましょうし、最近成功しております受精卵移植、こういう新技術の開発、あるいはそういったものを民間の中にも普及していく。こういう態勢が必要じゃないかということで、今日までもそういった努力を農林水産省として続けてきておりますけれども、またさらに私たちもそういったものをこれからも一層助長する必要があろう。そういう中で足腰の強い農業、酪農、畜産というものを、今度の審議の中で、形成していきたい、かように考えております。
  108. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 局長どうですか。補足をすることありますか。
  109. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) 特にございません。
  110. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 これは畜産局長の報告の要旨なんですけれども、その中に「飼料」のところがあります。「粗飼料」のところで、今言われたように、自給飼料をふやしていくということをおっしゃっておるんですけれども、草地の開発、既耕地の作付転換等によって年々増加してきてはいるけれども、五十八年以降転作の緩和や他用途利用米制度の導入によることで作付減、そして六十年には前年比〇・八%減って、それで百一万九千ヘクタールというふうに書いていらっしゃるわけですね。これは六十五年までには百五十五万ヘクタールまでふやすという当初の予定がありましたよね。これはいかがですか。
  111. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) 確かに先生指摘のように、草地なり飼料作物の作付の増につきましては、四十年代は家畜飼養頭数の増に伴いまして、畑を中心、さらには草地造成を中心としてふえてまいったわけでございますが、五十年代に入りましてからは、水田転作という中で、水田に転作作物として飼料作物が植えられてきたということで順調な推移を見てまいったわけでございますが、最近におきましては、水田転作におきましては、他用途米の導入とか転作面積の緩和等もございまして、水田につきましてはやや停滞ぎみ。一方、畑の方は増加しておるわけでございますけれども、水田につきましては停滞ぎみ。また一方、草地造成につきましては、どうしてもだんだん適地が奥地化するということもございまして、工費がかかるとか、あるいは権利関係の調整が厄介などもございまして、やや伸びに鈍化が見られるわけでございます。  そこで、確かに先生指摘のように、六十五年にはより多い面積の見込みを持っておるわけでございますが、現在のところまだそこに至るまでの確実な見通しを持ち得ない状況にございますが、今大臣も御答弁ございましたように、農用地開発公団事業等、各般の草地造成関係の手法を持っているわけでございまして、そういったものを駆使しながら、極力その長期見通しのラインに沿った飼料作物ないしは草地造成を強力に進めていきたい、かように考えているところでございます。
  112. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 それからこの自給飼料生産については、これはずっと前から毎度言われていることで、先ほど同僚委員からも出ておりましたけれども、自給飼料生産の場合、所得及び労働報酬の問題で、結局、他の飼養部門との差が非常に大きいということから作付増産の意欲が減退していくというのが一番基本的な問題だと思うんですけれども、そういう自給飼料をふやしていく、そして草地をふやしていくというようなことを考えているのだったら、やっぱりその基本に、先ほど菅野先生の方からも出ていました、基本的なこういう部分のところを確保しないと具体的には政策というのは進まないんじゃないかと思う。これはいかがですか。
  113. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) ただいまの先生の御意見は御意見として承りたいと思いますが、ただ私どもの理解では、家畜を相手とした飼育管理労働の質と、草地の管理造成とは労働の質において極めて差があるというふうに考えているわけでございまして、したがいまして、私どもはこれまで保証価格を算定する際の家族労働費評価といたしまして、飼育管理労働の面におきますのと飼料作物の面におきますのとは違った扱いをしてまいっておるわけでございます。
  114. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 結局、まあ悪い言葉で言えば、割に合わないということでこれは進まないのと違いますか。私はそういう見解を持っておるものだから、いつもそういうふうに思うんです。  それからもう一つ、今回この草地開発事業に三百五十九億という、ほぼ前年並みの予算を確保したというふうに書いてありますね。これは全国にばらまくと、どのくらいの地域に割り当てられるんですか。
  115. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) 一応その予算額は全県に及ぶことは当然かと思いますが、それぞれ事業の種類に応じまして地区の大きさも違いますし、かつまた工法も変わってくるということで、各県に行きます予算額自体は相当の振れがあろうかと思います。
  116. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 じゃ、さっきの反論の方、首を振っていた反論の方、算定の仕方が違うとおっしゃった方。
  117. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) 何と申しましても、飼育管理労働は生きた家畜を相手にいたしまして、家畜の世話、搾乳等の労働に従事するわけでございますので、ある程度の熟練度を要するかと思うわけでございます。かつまた場合によっては危険性もある。一方、飼料作物につきましては、決して労働自体をべっ視するつもりはございませんが、労働の質として見た場合、作付、収穫、調整、乾燥等の作業でございまして、これは生きた家畜を相手とするいろいろ複雑な労働とは労働の質において異なるというふうに理解いたしておるわけでございます。
  118. 下田京子

    ○下田京子君 まず最初に、加工原料乳保証価格について質問いたします。  既に新聞等、そしてまた大臣、局長答弁も、やれ、えさ価格が下がっている、金利も下がっている、だから引き下げ要因が大きいような話だけをなされております。一番大事な部分が欠落していると私は申し上げなければなりません。  なぜか。この論議の前提になっているのが、昨年の算定方法がまさに正当であるというところから出発しているんですね。私はここに問題があると思うんです。これまでも保証価格の推移を見てみますと、いろいろありましたけれども、五十二年度にはキログラム当たり八十八円八十七銭だった。その後四年間も据え置き、五十七年度にわずか五十銭のアップをした。それから五十八年度には七十銭のアップをした。ですけれども、また五十九、六十年二年間据え置いてきているんですね。この間に据え置くために算定方法をいじっているというのは事実なんです。  で、私は一つ確認したいんですけれども、六十年度の乳価、この算定方法を五十五年度の保証乳価と同じような形で計算した場合に幾らになるだろうか。キログラム当たり九十一円八十一銭と、実際に昨年に比べて一円七十四銭アップになります。間違いございませんね。
  119. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) ただいま先生がおっしゃられました前提で計算をいたしますとそのような金額に相なります。
  120. 下田京子

    ○下田京子君 そこで大事なことは、先ほど来議論にもなっておりますけれども労賃をどれだけ適正に評価するかということだと思うんです。意欲をそぐようなことはしないとか、再生産の確保がなされるようにだとか言われております。とすれば、大事なことは何といってもその労賃をいかに適正に評価するか。  この六十年度の乳価の算定方法の中で現在やられているようなものでない形で評価していったらどうなるか。現在は飼育労働費は主要加工原料乳地域ということで北海道製造業五人以上規模の平均、これを採用していますね。労働に質の差はないんだと言いつつも、飼料作物費の方は同じ北海道でも今度は農村雇用労賃を採用しています。そもそもこの飼育労働費と飼料作物費を不当に差別しているというところに私は問題があると思う。同一経営で同一人物の労働を適正に評価すべきだ。しかも全国の製造業五人以上規模の平均という形で計算しますと、六十年度の乳価はキログラム当たり九十七円五十三銭となるはずです。それに酪農経営も非常に高度化しております。研究会にも出席しなければならない、いろんな帳簿もつけなきゃならない、そういう企画管理、この労働をきちんと見ますと、乳価はキログラム当たり九十八円七十一銭と、昨年度乳価に比べまして八円六十四銭アップになります。そして昨年の保証加工限度数量の二百三十万トンですね、ざっと掛けてみますと、何と百九十八億七千二百万円、約二百億円も算定方法が変えられているという中で値切られているという実態が明らかになっているわけです。計算上そうなるだろう。考え方の違いははっきりしましたから、事実を確認してくださ
  121. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) ただいま先生が前提とされましたことで計算をいたしますと、おっしゃいますように保証価格試算値が九十八円七十一銭になることは、そういうことになるというふうに考えております。
  122. 下田京子

    ○下田京子君 そこで大臣に御答弁いただきたいんです。いいですか。現在、今、酪農家がどういう状況に置かれているのか大臣はよく御存じだと思うんです。輸入乳製品は増大しています。そして需要は大変低迷しております。そういう中で全国的にも三・一%今度削減という、二十一万七千トンの削減量を余儀なくされるというような状態にあるわけですね。つまり乳は搾るな、価格引き下げだというふうな格好になりましたら、一体その負債をどうやって返していくんですか。どうやってその意欲をそがないような酪農経営をやれと言われるんですか。大変これは矛盾した話であって、到底納得が得られないと私は思います。  ですから、今大事なことは、さっきも申し上げましたが、同一経営、同一人物の労賃を異なった労賃評価するというやり方は改めるべきです。そして酪農民の労働を正当に評価すべきです。それが最も重要なことだと思うんです。そうでありませんと、先ほどから言っている局長答弁等で矛盾する点がある。例えば副産物の問題ですけれども、コストから控除される厩肥の労働についてはどうですか。飼育労働と同様の労賃評価しているじゃないですか。まさに考え方がばらばらなんです。ですから矛盾したやり方を改めて、同一経営、同一人物、きちっとした労賃評価する、これが今必要だと思います。いかがですか。
  123. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) まず、前段の輸入酪農製品が相当ふえているというお話でありますけれども、これは先ほどから局長、また私からも御答弁申し上げましたように、輸入量そのものは確か に数字の上では少しふえていることは事実でありますけれども、そんなに大きなふえ方じゃないということ、これは申し上げておきたいと思います。  なお、今、作業によって同一人物がやることについて問題があるんじゃないかというお話でございますけれども、これは先ほど申し上げましたように、労働といいますか技術の差とか質というもの、こういうものがあるということで、別に同一人物がやっていることで仕事そのものをべっ視しているということじゃないということ、これはぜひ御理解をいただきたいと思うんです。たしかほかの価格なんかの中でも、作業によってその評価というものが異なっているというものが他にもあるというふうに私は思っておりますけれども、いずれにしましても、決して、何というんですか、この考え方で今日まで理解をいただきながらやってきたということについてもぜひ御理解をいただきたいと思います。
  124. 下田京子

    ○下田京子君 御理解をと言われても、私だけが理解できないという立場ではないと思うんです。  なぜかと言えば、さっきも私が指摘しましたでしょう、例えば厩肥の労働の見方もばらばらだって。大臣、厩肥、つまり家畜の排せつ物でつくる肥料、そのときの労働費は飼育労働で見て製造業労賃評価する。ところが、そのつくられた厩肥をまく、肥料を畑にまいて飼料作物をつくるときには農村雇用労賃なんです。理屈に合ってないんですよ。納得できるわけないじゃないですか。御理解をなんと言いますけれども、まず大臣の方がきちっと御理解をいただきたい、それだけを申し上げておきます。  次に、輸入の問題につきましては最後にお話ししますけれどもえさ円高差益の還元問題です。労働評価を適正にした上で、えさが安くなった。そういうことできちんと生産費計算して、そして結果として価格引き下げられる、こういうのでしたら当然だと思うんです。ところが、労賃をさっき言ったように不当な形で評価を変えているという上で、えさが安くなった、金利が下がった、だから値下げするんだというようなことは全く納得できない。  そこで、現在のえさ価格の問題なんですけれども、先般質問いたしましたカーギルの鹿児島への進出問題のときにも言いましたが、地元農民の方の中には、カーギルが出てきたらえさが安くなるんでないかみたいなことを期待している方もあるのは事実なんです。  そこで、えさがどのぐらい下がるかということなんですけれども、本当にえさが安いかどうかということを見る際には、原価を公開して配合割合がどうなのかということまで見ないとわかりませんけれども、単純に見ても、全農の方に聞きましたら、トン当たり一円円高になれば配合飼料の方は約八十円引き下げることができると、こういうふうに言われておりました。ですから、全農が一月価格を設定した際に為替レートは一ドル二百五円であったと思うんです。現在は百八十円まで割るというような事態ですけれども、仮に百八十円とした場合に、その差二十五円ですから、八十円掛ける二十五でいきますと、ざっと二千円引き下げできますねという話をされていました。そうお考えですか。
  125. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) えさ配合飼料価格の改定につきましては、通常でございますと一—六月、七—十二月と二回に分けて半年ごとに改定されているわけでございますが、確かに先生おっしゃいますように、ことしの一月から六月の間の価格として改定いたしました際の円レートは、二百円をやや上回る水準であるように私も承知しておりますし、確かに先生おっしゃいましたように、それ以降急速にまた円高も進行しているという状況の中では、この円高の落ちつきぐあい、一方ではまた飼料穀物の相場の変動も見なくちゃいかぬわけでございますが、そういったことを勘案しながら、私どもとしては十分注目しながら、適正に円高配合飼料価格に反映されるように指導してまいりたいと、かように考えておるわけでございます。
  126. 下田京子

    ○下田京子君 円高差益還元がなされるように指導したいということなんですが、円高だけでなくて、今全農の方の試算でいつでもトン二千円ぐらい下がるだろうという話ですよ。そのほかにも大幅引き下げが可能なんです。なぜそうかといえば、シカゴでのトウモロコシの相場がどうかといいますと、十二月平均で、これは一ブッシェル当たり二ドル四十七セント、ところが現在は二ドル三十セント台に今下がってきている。それから積み出しから港までの経費も下がっていますし、それからまた海上の運送費も下がっているんですね。  細かくは申し上げませんけれども、一月八日付の貿易日日通信というものを見ますと、積み月二月、この際に商社の手数料等を除いた、C&F価格と言われておるそうですが、これで百二十五ドル五十八セント、それが三月十三日付では、積み月が四月の場合で百十三ドル二十八セントと、約一割、一〇%下がっております。こういう点で、これらの値下がり分とさっきの円高差益のその結果下がる分とを合計いたしますと、これも細かな計算はしておりますけれども除いて、ざっと四千二百円程度値下げができる、そういう可能性がある。この数字、間違いございませんね。
  127. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) にわかな御質問でございますので的確なお答えはいたしかねますが、私ども常々飼料穀物の国際相場の動向、フレートの動向、円高の動向等も注目しているところでございまして、必要に応じまして適正な価格形成が行われますように関係者に対して指導してまいりたいと、かように考えます。
  128. 下田京子

    ○下田京子君 にわかな質問かどうかって、さっきうなずいてたじゃないの、シカゴの相場がこれだけ下がっている云々で。そして本気になって指導しようと思ったら、今ぐらいのこと、わかってないなんというのはおかしな話じゃございませんか。これは計算すればできることですよ。きちっと計算してくださいね。よろしいですね。
  129. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) 少々お時間をかしていただきたいと思います。
  130. 下田京子

    ○下田京子君 そこで大臣にこれは聞きたいんですけれども局長は、円高差益分とその他の要因も含めて値下げの方向で指導していきたいと、こう言っているわけです。指導していただくのは当然のことなんです。ただし、それがどのくらい本気になって考えられて、今また政府みずからが具体的に内容等を検討しているかというのは、今の答弁聞くと非常に不安でございます。  私、改めてこちらから御紹介したいんですけれども、東洋経済の十二月発行で「会社四季報」というのがございます。これは三月にも発行されておりますけれども、特に円高差益の状況が各社ごとに詳しく載っておるのがこの十二月発行の「会社四季報」なんです。  そこで、具体的に見てみますと、日本農産工の場合には円高一円で月千三百万円のメリットを受ける、一円で月に一千三百万円のメリットがあると、こう書いているんです。それから日本配合飼料の場合、一円の円高でトン当たり百円弱のコスト安になる。これはさっき言った全農の場合のトン当たり一円で八十円よりもっと下げられるという話ですね。それから昭和産業の場合です。値下げ還元で円高差益の大半が相殺されたと、こう言っておりますが、上半期、つまり六十年六月から十一月までで十億円の差益が発生した、ちゃんと報告しているんです。結果として各社ともことしの三月あるいは五月決算で大幅な経常利益が見込まれるということで予想しております。  その予想によりますと、日本農産工の場合には、六十年の五月決算で二億九千六百万円の赤字だったんです。しかし六十一年五月の、ことしですね、五月の決算期には一転して黒字、十三億円の経常利益が見込まれる、こう書いております。日本配合の場合にはどうか。六十年三月決算で三億百万円、それが六十一年三月で十億五千万円と三倍増です。しかも協同飼料の場合には、六十年三月決算で十億二千四百万円、それがことし五月 決算で二十億円と二倍。そして昭和産業の場合には、六十年五月六千百万円だったものが、ことしの五月になると三十三億円で何と五十四倍。こういう形で大手メーカーが大変円高によって経常利益がふえるということをきちっと報告されているわけなんです。三月に出された「会社四季報」、これによりまして若干の数字的な上下はございますけれども、傾向としては変わってないんです。つまりこれだけ大手メーカーは利益を上げるというような見込みですから、差益はきちっと還元すべきだという点で大臣の決意を聞かしてください。
  131. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) 今はその四季報を私はまだのぞいておりませんのでわからないんですけれども、ただ御指摘のように、確かに私ども過去にずっとさかのぼりましても、五十九年七月以降五回にわたって実は値下げしておりまして、その飼料穀物動きというものに対しては非常に敏感に一々チェックしております。そういうことで、今日までも何回か値下げしてきております。そういうことで、いよいよこれからの円高の差益というのは、私はむしろこれから本格的に出てくるんじゃないかなというふうに考えておりますので、そういった点は十分注意しながら、またそのようなことで相当各企業の方も利益を上げるような状況でありますなら当然値下げというものを指導していく、これはこれからも進めていきたいと思います。
  132. 下田京子

    ○下田京子君 その事実関係について見てないとおっしゃるなら、それは調べて、それだけの幅があれば還元するという態度をとっていただきたい、そういうことでおやりいただけるということで御理解させていただきます。  次に移りますけれども牛乳のあるいは乳製品の消費拡大問題なんですけれども先ほどから御議論になっておりました輸入規制ですよね。この輸入問題でいつも議論になるのは、輸入国だから輸入先にありきという論理で物を考えてはいけないということなんです。足りないもの、不足したものを輸入するというんだったら、その姿勢をきちっと貫くべきなんだということを申し上げておきます。  さっきも申しましたけれども、二月二十日ですか、中央酪農会議が史上初めて生乳の三・一%、つまり二十一万七千トンの生乳の減産を打ち出したわけですね。これはどういうことかといいますと、輸入量生乳換算で見ますと二百六十三万三千トン、六十年の乳製品輸入量。五十九年に比べまして、十五万トンふえているんですよ。しかもこの二百六十三万三千トンという輸入量は、国内加工原料乳、五十九年度二百七十六万四千トンとほぼ匹敵するものでしょう。国の補給金の対象になる限度数量から見れば、それを上回っているんです。ですから、牛乳とか乳製品の自給ということを考えていったときに、何よりも大事なことは、乳製品輸入をきちんと規制しなきゃならないということだと思うんです。特に私が申し上げたいのは、バターが過剰といいながら、バターまがいの調製食用油脂、これが対前年比七・七%増です。生乳換算で十八万トン輸入しています。脱粉のまがいもの、ココア調製品、前年対比で四・二%増、生乳換算で二十三万トンも輸入しているんです。こういう擬装乳製品輸入について私はたびたび質問してまいりました。いろいろと自主規制等も要請していると、こうおっしゃっておりますけれども、これだけ国内生産調整で苦労しておきながら、その指導の結果が増というのは一体何なのでしょうか、きちっとした対応をしていただきたい。
  133. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) いわゆる擬装乳製品と言われております調製食用油脂についてでございますが、輸入制度といたしましては、事前確認制をとっているわけでございまして、それと合わせまして、マーガリン工業会に対しまして自粛指導を行い、かつまた輸出国に対しましても輸出自主規制を求めてまいっておるわけでございます。またココア調製品につきましても、チョコレート、ココア協会等関係者に対しまして、機会をとらえまして輸入自粛指導を行っておるということでございます。
  134. 下田京子

    ○下田京子君 輸入自粛指導していると言いながらその指導の結果ふえているということは、一体どういう指導をしているんだと私は質問したんですよ。非常に問題だということですよね。  時間がございませんから、国産ナチュラルチーズの振興問題については、今いろいろと検討されているということなので、これは抜本的な対策を私も要望しておきます。近々なされるだろうと期待もしておきます。  最後に大臣から答弁いただきたいのは、大臣は輸入規制ということになると何か障害の方を先に言われて、消費の方になるとそうだと、こうおっしゃられるんですけれども牛乳消費拡大の問題で私が非常に本気になって考えてくれているんだろうかなと思うのは、学校給食用牛乳の補助金の単価の引き下げなんです。四十五年から五十五年の間は五円八十銭の補助がありました。それが五円二十銭に削られ、五円に削られ、四円に削られて、六十一年の四月からは三円五十銭と、これだけ引き下げている。こういうやり方が、さっき局長が言いましたように、消費拡大も官民一体でだという言い分なんだろうかと思って、私は非常に腹が立つ思いでございます。それは指摘だけです。  具体的に対応していただきたいと思いますのは、特に保育所なんかで六十年度から飲用の促進奨励金を交付していただいて、保育所にも牛乳が普及されております。普及率は今四六・七%なんです。全国で今なおかつ一万四千七百十九カ所の保育所が輸入税粉を使用しております。六十年度三千三百五十三トンという格好になるんですね。地域の新鮮な牛乳を子供たちにというのは、決してこれはどこからしかられるものでもないと思うんです。それとあわせて、保育所のみならず、養護施設、精神薄弱児施設、救護園、肢体不自由児施設、虚弱児施設、重度心身障害児施設、それから情緒障害児短期治療施設、盲襲児施設、こういうところには今言ったような事業が対応されてないんです。ぜひこれは検討いただきたい。  御検討いただける御答弁を期待いたしまして、質問を終わります。
  135. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) ただいま御指摘の箇所の実情等につきましては、詳細承知してないわけでございますが、早速に調査をいたしまして、私どもとして対応できるかどうかについて検討いたしてみたいと思います。
  136. 下田京子

    ○下田京子君 大臣。
  137. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) その点につきましては、厚生省の方ともよく連絡をとりながら、実情について私も調べて、それに対してどう対応できるか考えたいと思います。
  138. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私は、大臣にまず日本の農政の根本問題について、二つの点お尋ねしたいと思います。と申しますのは、この総理の所信表明にいたしましても、各大臣の所信表明にいたしましても、私はその所信表明の持つ重さ、責任はまことに重大であると信じております。であるがゆえに、その一言一句正しく理解を深めるということが最も大事であると思っております。そういう基本的な考え方に立って、大臣が述べられたその所信が政策にどう結びついておるのだろうか、このことが最も大事であると、こう思ってお尋ねするわけです。  まず、羽田大臣もまた歴代の農水大臣も一貫して述べられておることは、国内において生産可能なものは極力国内生産で賄う、こう述べておられます。しかし、このことをつぶさに解明して自分なりにしてみた場合に、国内において生産可能なものは極力国内生産で賄うということが、我が国農業の実情と実態と結びつけて考えた場合に、何かそこにちぐはぐを感ずるものがあります。それは輸入によって国内生産が絶えず抑制されてきておる、こういうことであります。国内生産が可能なものという内容は、その意義は一体何でありましょうか。これが第一点。  それから第二点は、農政の基本として足腰の強い経営の育成ということをよく聞くし、強調しておられます。一体足腰の強い経営とは具体的にどういうことを意味しておられるのであるか。この二つの点、大臣にきちっと日本農政の基本的な柱から伺いたい。
  139. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) まず、私どもとして、国の基本のあれとして、国内生産可能なものは極力国内生産で賄うこと、これを基本に据えてということを確かに私も所信の表明の中で申し上げております。このことは、先ほどもちょっと触れましたけれども日本の国を取り巻く環境というのは、食糧というのはそんなに安定し、しかも豊富にあるという環境じゃ決してありません。日本に相当安定して供給できる国というのは、大変皆遠い国であるということ、しかもかつて大豆でも経験しましたように、先ほど豪州の肉の問題でもちょっと私が触れましたように、残念ですけれども、よその国の生産というものが振れますと日本に対する供給というのは減少してきて、しかも価格というものは大変高騰してしまうという現状にあります。そういうことを考えたときに、私どもとしては、いろんな難しい条件の中でありますけれども、その条件を整備しながら国内で主要な農産物についてはそれを確保していく、これを基本に据えなければいけないであろうというふうに考えております。  そういう中で、ただそういったときにいつもあれしますのは、どうも自給率が下がっているからということ、日本は供給がぐっと落ちているんじゃないかという指摘があるんですけれども、しかしよく考えてみますと、主食である米というのはもう完全自給どころか、これはもうオーバープロダクトするだけの力を持っております。それから野菜も特別に価格が高騰したりなんかしたときに入れることがありますし、また最近では珍しい中国の野菜ですとか、台湾の野菜ですとか、いろんなものがあります。こういうものが珍しいものとして入ってくることがあります。しかし、これはもうほぼ完全に自給しております。それから果実につきましても、これは何というんですか、珍しい果物についてオレンジですとかあるいはバナナですとか、日本で余り生産しないものについては入ってまいりますけれども基本的には日本の中で自給ができておるというふうに考えております。ただ麦ですとか、特に小麦なんかの場合に、あるいは大豆の場合に、これは大分減っておるわけでありますけれども、しかし大体食用の日本のめん、これに対応するものはもう国内生産がある程度私は確保できてきたというふうに思いますし、また納豆ですとか、みそですとか、豆腐ですとか、そういったものの大豆についてもある程度確保できているというふうに思っております。  ただ問題は、飼料穀物については、もう御案内のとおり、どうしても日本の倍以上の面積の中でつくられているものが今日本の畜産のために使用されているということ、これが一点でありますし、それからさっきからお話があります酪農製品の輸入という中でも、たしか二十数%のシェアを占めると思いますし、しかも昨年も九%ぐらい、ことしですか、ふえておりますけれども、これは飼料用、要するに、えさにする脱粉というものがふえているというのが実は現状でございます。そのほか先ほどの豚なんかにしましても、どうしても日本人の嗜好というのが、トンカツだとか、そういったものにして食べるものから、ハムとかそういったものにだんだん嗜好が変わってきている。いかも、そのハムなんかもだんだん上位のものを要求するようになってきておるということになりますと、今日本でつくっている豚の場合に、まだどうしても必要とする例えばロースの部位なんというものが不足しておるというようなことで、これも輸入せざるを得ないということでございまして、そういったことを考えたときに、私は基本的には私たちの考え方というものはそんなに振れているものじゃないんだと。確かに、いろんな外圧なんかで大きな声が上がりますけれども、しかしそれによって生産というものが相当追いやられてしまっている現状にはないということは言えると思います。  ただ、先日先生と議論をいたしまして、先生の方から御指摘があったパイナップル等につきましては、確かに円高なんというものがありまして、いろんな問題を起こしているなということは私ども認識をいたしております。  それから足腰の強い農業をということですけれども先ほども刈田先生の方にもお答えしたわけでありますけれども、いずれにいたしましても、私どもは何といっても生産性の高い農業をする、あるいはまた請負耕作なんかを進めていくということを考えたときに、何というんですか、基盤整備というもの、これはもう欠かすことのできない基本考え方であろうというふうに思います。それと同時に、農業というものは今、日進月歩、非常に大きく、私はよく知識集約型の産業と言うんですが、労働集約型から知識集約型へ変わってきたということを申し上げておりますけれども、非常に高度な技術というものが必要になってきますし、また新しい技術が開発されるとか、あるいは新しい種子ですとか、そういったものが開発されたときにそれをいち早く取り入れ、それをきちんと管理していくということになりますと、それだけの知恵、ノーハウというものが必要になってくるということ。そういう意味で、単に担い手というより、きちんとそういうものを兼ね備えた担い手というものが必要であろうというふうに思います。そういったものの上に、上にといいますか、新しいあれとして、技術の開発というものなんかも相当力を入れていかなければいけないんじゃないかなというふうに思っております。  ざっと申し上げましたけれども、以上二点について申し上げます。
  140. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 国土開発という立場から、国土の狭い、耕地の狭い日本であればあるほど、もっと政府が先見性を持って先取りしていくという、こういう姿勢を持たない限り、いつも実際の生産農家の後追いをしていくように思われてならないのです。例えば米の減反政策をとりながら一〇〇%今自給に達しているのは米であると。減反政策をとりながら削減した畑はどうするか。転作の面で、もっと裏表にして転作奨励の切りかえのことについても先取りしてやることによって、狭い耕地が、国土が生かされてくるわけであります。極端に言うならば、田んぼを減反してつくるなら褒美をやろう、怠け者を奨励するような皮肉も出てくるわけであります。こういう点で私は、何かそこに政府がもっと先見性を持って時代におくれぬような、そして生産農家をリードしていくような、こういう指導性を強力に発揮すべきではないかと、こういうことを感じてなりません。これは私の所見であります。  次に、一、二具体的な問題に触れたいと思うのでありますが、例えば食肉安定価格は五年、加工原料乳保証価格は八年実質的に据え置かれております。ところが、ことしは引き下げる方向への心配もある。ところで、このようなことでは諮問に当たっての試算価格について疑問を抱く一人でありますが、畜産農家が多額な資金を投入して規模拡大、そして生産性の向上に努めた努力は一体どういうことになるのか、生かされていないと思われてならない。むしろ価格引き下げに作用してきておる。このようなことでは一体足腰の強い経営が育成できるであろうかという疑問も持たざるを得ません。その点についてどういう見解を持っておられるか伺いたいと思います。
  141. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) 先ほどの前段の点についてちょっと申し上げたいと思うんですけれども、確かに水田利用再編対策、こういうことをやるときに、やらない、また耕さない、そういった農家に対してそれを助長させるようなことはおかしいじゃないかというお話があったのですけれども、かつて昭和四十五年でしたか、から始まったときは、まさに休出奨励金といいますか、そういったものを実は出したことは事実であります。そういったものに対して私たちもこれではおかしいということを言いながら、第二期の過剰のときに水田利用再編対策で、まさにその余る米から不足するものに転作していただきたい、そういった何にもしないのはだめですよというやり方をしてまいったわけでございまして、これは先生の御指摘は私たちもよく頭に置きながら、これからもそういったものに対してきちんともうちょっと先取りしながら物事をやっていくことを考えたいと思います。  なお、今御質問のありました点につきましては、私どもも、畜産農家、酪農家というのは農業経営の中において中心的な役割を果たしている方たちだというふうに認識をいたしております。そういう意味で、こういった皆さん方が生々と農村の中の中核農家としてこれからも伸びていっていただきたい、との気持ちは全然私たちも変わりません。ただ、そういう中で、今度のように他動的なよそからのあれによってもし利益があるとすれば、その一部分はやっぱり消費者にも還元をしていただいた方がいいのかなということを実は考えておるところであります。  ただ、今、価格をどうこうするということについては、私どもは今ちょうど生産費が出てきたところで、今慎重に精査いたしておるところでありますけれども、今先生からお話があったことも私どもよく頭に置きながら対応していきたいというふうに考えております。
  142. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 常に農水の問題になりますと、立ちおくれておる沖縄の問題をどうしても避けて通るわけにはいかない、この気持ちは十分察していただけると思っております。  そこで、沖縄における畜産の中心は養豚、肉用牛生産、そして最近特に、飼養の規模からしましても、北海道、愛知に次ぐ勢いで今ぐんぐん振興しつつある、酪農の面でも振興しつつある、こういう状態の中であるわけです。そこで今後県外需要に対応して生乳生産を拡大していくことが大きな課題になっておるわけなんです。しかし、我が国の酪農をめぐる情勢は、去年の生乳需給事情によっていまだかつてない減産を強いられる厳しい事態に直面してきておる。その過剰原因は、よく言われておりますIQ品目でありながら、ところで次が私が指摘したい問題点ですが、北海道生乳生産量に匹敵するぐらいの二百六十四万トン相当の輸入がなされておる。このような事態を考えてみますときに、農政のあり方が政策面からも一体これでいいのかと、どうしてもこういうことが思われてならないんです。このことは原点に返って、国内自給の原則に照らして一体どう結びつくのであるか、これをどう解明しようとしておるのであるか、そのことについて見解を伺いたい。
  143. 大坪敏男

    政府委員大坪敏男君) 乳製品輸入につきましては、先生御案内のようにバター脱脂粉乳等の指定乳製品につきましては、畜産振興事業団が一元輸入しておりますし、それ以外の主要な乳製品、例えばプロセスチーズ等につきましては、輸入制限品目として輸入をコントロールしているわけでございます。  そこで、ただいま先生おっしゃいました乳製品輸入生乳換算数量でございますが、確かに六十年におきましては約二百六十万トンと相なっておるわけでございます。ただこの中を子細に眺めてみますと、事業団需給調整用として輸入いたしまして保管中の脱脂粉乳が入っておりますし、また畜産農家が家畜のえさ用として給与している脱脂粉乳が入っておるわけでございますし、さらにまた学校給食用脱脂粉乳、さらには沖縄本土復帰に際します特例としてのバター輸入等、そういった特殊なものがございますわけでありまして、これらを除きますと乳製品輸入量生乳換算で約二百万トンと相なっておるわけでございます。その二百万トンの中もよく見ますと、これはナチュラルチーズでございます。このナチュラルチーズもかつてはプロセスの原料として入ってきたという経緯があるわけでございますが、最近の特徴といたしましては、プロセスの需要が減退する一方で、直接消費のナチュラルチーズの輸入がふえておるという実態があるわけでございまして、そこで先ほど来御議論がございますように、今後の酪農の振興の一つの方向といたしまして、日本人の嗜好に合ったナチュラルチーズをどのように振興していくかということがこれからの課題でありますし、これの円滑な解決ができれば輸入問題の大半は解決し得る、さように考えているわけでございます。
  144. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 詳しいことのやりとりは控えたいと思うのでありますが、私がずばり言いたいことは、角を矯めて牛を殺すような、こういった政策であっては、いつまでたっても日本農政の本当にあるべき姿、農は国のもとであると歴史的に伝統的にどなたも言われることは——これはみんな指導者の立場、生産者の立場からも信じておる。ならば、そのことが名実ともに国民の豊かさにつながっていかなければいけない。どうかひとつ、私が言いたいことは、農が国のもとであるならば、角を矯めて牛を殺すような、このようなことになってはいけない。指導者の基本姿勢というものが原点を見失って側圧に翻弄されておったんじゃ結局、元も子もなくなってしまうんじゃないか、こういうことを私は言いたいわけなんです。  それじゃ最後にもう一点。  沖縄農家生産額のうち畜産部門の五五%を占めるのが養豚になっておりますが、昨年国内生産量が大幅に増加している。そして豚肉の卸売価格が安定基準価格を大幅に下回り、繁殖雌豚の高騰、畜産振興事業団の助成による調整保管が実施されておることは御承知だと思います。このような厳しい状況のもとで何とか経営を維持してきた。この力はどこにあったか、原因はどこにあったか。何とか経営を維持してきたのは、申し上げるまでもなく、飼料費の値下がり、えさの値下がりであったと思います。だのに、これを生産コストの低減要因として生産価格を抑制することはどんなものだろうか、疑問を持つものであります。このあたりの実情を踏まえて豚肉生産価格決定に向けて一体どういう判断を下して結論を出すということになるだろうか、このことについて大臣の御見解を伺って、時間が参りましたので終えたいと思うのであります。
  145. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) 輸入問題につきましては、先ほど来お話し申し上げておりますように、今日本国内で、何といいますか、需要のあります部位、そういったものをこれからつくるように、これは生産者の皆さん方も、また農林水産省としましても、これから考えていかなければいけないのじゃなかろうかというふうに考えております。  そして今、価格につきまして、あるいは特に養豚というのが維持されてきたのは、飼料価格というものが少し下がってきた、そういったものによって支えられているのだということの御指摘がありましたけれども、私どもも、そういった問題も含めて価格決定に当たって適正に対応していきたい。そしてこれが縮小経営とかそういったものに、将来、養豚だけではなくて全体の畜産あるいは酪農、こういったものが縮小経営になる、そんなことのないように、頭に置きながら対応していきたいというふうに考えております。
  146. 成相善十

    委員長成相善十君) 本件に対する質疑は、本日はこの程度といたします。
  147. 成相善十

    委員長成相善十君) 次に、土地改良法及び特定土地改良工事特別会計法の一部を改正する法律案を議題といたします。  政府から趣旨説明を聴取いたします。羽田農林水産大臣
  148. 羽田孜

    国務大臣羽田孜君) 土地改良法及び特定土地改良工事特別会計法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  土地改良事業につきましては、農業生産の基盤の整備及び開発を図り、農業の生産性の向上、農業構造の改善等に資することを目的に、農政の最も基礎的な施策としてその積極的な推進に努めてきたところであります。  しかしながら、近年、土地改良事業をめぐりましては、工期の延伸、完了の遅延等の事態が生じており、現下の諸情勢のもとで一層効率的な土地改良事業の推進が必要となっております。  この法律案は、このような状況に対処して、国営土地改良事業のすべての工事についてその事業費の財源として借入金を活用し得るよう制度を拡充し、国の財政資金の効率的な使用による土地改良事業の進度の促進を図ろうとするものであります。  次に、この法律案の主要な内容について御説明申し上げます。  第一に、土地改良法の一部改正により、借入金をもってその財源とすることができる国営土地改良事業の工事の範囲を拡大することであります。すなわち、国は、国営土地改良事業のすべての工事について、その事業費のうち都道府県に負担させる費用につき借入金をもって財源とすることができることとしております。  第二に、特定土地改良工事特別会計法の一部改正により、土地改良法の改正に対応して、特別会計の経理の対象を国営土地改良事業のすべての工事及び受託工事等に拡大し、経理に関する規定の整備を行うとともに、その名称を国営土地改良事業特別会計に改めることとしております。  以上がこの法律案の提案の理由及び主要な内容であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いを申し上げます。
  149. 成相善十

    委員長成相善十君) 次に、補足説明を聴取いたします。佐竹構造改善局長
  150. 佐竹五六

    政府委員(佐竹五六君) 土地改良法及び特定土地改良工事特別会計法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を補足して御説明申し上げます。  本法律案を提出いたしました理由につきましては、既に提案理由において申し述べましたので、以下その内容を若干補足させていただきます。  まず、土地改良法の一部改正について御説明申し上げます。  第一に、国営土地改良事業のすべての工事について、その事業費のうち都道府県に負担させる費用の全部または一部につき借入金をもってその財源とすることができることとしております。これによりまして、都道府県に負担させる費用の全部につき借入金を財源とする従来の方式に加え、新たに都道府県に負担させる費用のうち事業参加資格を有する者の負担部分を除いた部分につき借入金を財源とする方式を実施することができることになります。  第二に、申請により開始される国営土地改良事業等について、都道府県に負担させる費用のうち、事業参加資格を有する者から徴収すべき費用等につき借入金をもって財源とするには、当該事業の施行を申請した者等の申請に基づかなければならないこととしております。  次に、特定土地改良工事特別会計法の一部改正について御説明申し上げます。  第一に、本特別会計の経理の対象を国営土地改良事業のすべての工事、受託工事及び直轄調査に拡大することとし、その名称を国営土地改良事業特別会計に改めることとしております。  第二に、国営土地改良事業の工事に係る事業費のうち都道府県に負担させる費用の一部につき借入金を財源とする方式の実施等に伴い、都道府県に負担させる費用の一部に相当する金額を一般会計から繰り入れること、その繰り入れられた金額に対応する都道府県の負担金等を一般会計に繰り入れること等経理に関する規定の整備を行うこととしております。  第三に、本特別会計の歳入歳出決定計算書については、その簡素化を図ることとし、歳入歳出予定計算書の現行の区分と同一の区分により作成することとしております。  最後に、本法律案の施行期日につきましては、昭和六十一年四月一日としております。  以上をもちまして、土地改良法及び特定土地改良工事特別会計法の一部を改正する法律案の提案理由の補足説明を終わります。
  151. 成相善十

    委員長成相善十君) 本案に対する質疑は後日に譲ります。本日はこれにて散会いたします。    午後四時十六分散会      —————・—————