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参考人(長
竹成吾君) 私たちが一番
同意をする際に問題にしておりますのは、
放送秩序の問題でございます。
ちょっとくどくなりますけれ
ども、従来
放送の
区域というものがどういう考え方で決められてきたかということをちょっと御
説明させていただきますけれ
ども、まず、
テレビジョン放送は、開始当時
チャンネルをなるべく有効に利用するというような見地から、電波の到達する範囲を
放送局のエリアにしてきたわけでございます。この考え方から、関東、東海、近畿という
地域については、広域
放送が実施されております。それから、そのほかでも岡山、高松とか下関、門司というようなところは、行政
区域が違うけれ
ども、一つのエリアとして扱われた例があるわけでございます。ところが、テレビがだんだん
発達しまして国民生活に浸透してくるに従いまして、
放送区域と行政
区域は一致する方がよいというような考え方が出てまいりました。これは政見
放送との
関係なんかも考えられたように仄聞しておりますけれ
ども、そういう考え方で四十二年に岡山と高松を分離いたしました。それから四十三年には関門を下関と北九州に分離いたしました。それから四十五年には近畿、東海のNHKの総合を県域に分割しております。ただし、岡山、高松につきましては五十八年に再び一つの
地域になっているわけでございます。こういうふうに行政方針では、
放送区域と行政
区域の一致を強く推進してきているわけでございます。
CATVの
区域外再
送信を無秩序に許すということになりますと、このようにせっかく進めてきた行政方針が烏有に帰すというおそれが生じてまいります。もちろん
CATVは、今までもお話が出ましたように、現時点では極めて小さなエリアで行われておりますので、
放送秩序を
基本的に混乱させるというのはちょっとオーバーにとり過ぎているきらいもあるわけでございますが、行政当局は現在テレトピア構想というのに基づきまして
CATVの普及を推進しております。これは先生御
指摘のとおりでございますが、将来は
CATVもかなり大きな媒体に成長するのではないかというふうに思われるわけでございます。今回のこの有テレ法の
改正はこの
CATVを推進する一環として出てきているように思われますので、
CATVの普及というものはやはり私たち真剣に考えていかなくてはならないというふうに思うわけでございます。
こういうふうに全国の主要
都市が有線
都市化してまいりますと、電波系の
放送については厳しいエリアの制限がある中で、有線
放送系の
放送についてはそういう制限にとらわれずに全く自由な
放送が可能になるということになります。これが
放送が
区域外というものを非常に重要に考えているということの一つの
理由でございます。
それから、さらに幾つかの問題が
CATVの
区域外送信についてはありますけれ
ども、その点ちょっと申し上げますと、まず、
放送局の多局化が現在次々に進められておりまして、近い将来にはほとんどの
地域が四局化するという行政方針が推進されております。
CATVには巨額の投資が伴うわけでございますけれ
ども、せっかくそういう投資をしましても、全国的に四局化されたときにはせっかく投資をしてやってきた
CATVの
区域外再
送信がむだになってしまうという問題が一つございます。
視聴者は有料の
CATVから離れて無料の
放送の方に移ってしまうのじゃないかというふうに思われるわけです。
それから、
放送局の置局は経済基盤のある
地域から進めるというような行政方針に従いまして、経済力の豊かな
地域の多局化が先に進められてきたわけです。したがいまして、経済力の豊かな
地域の住民は無料の
放送を享受できるのにかかわらず、経済力のない
地域の住民は高い料金を払って、高い投資をして
CATVによって多様な
番組を享受しなくてはならないというような不合理が出てきているわけでございます。
それからもう一つは、
番組是正について二つありますけれ
ども、一つは多局化によって
地域間の
格差をなくすということでして、これは今次々に進められているわけです。それからもう一つは置局された
地域の中の
番組格差の是正をするということで、これは
放送事業者の
努力によりまして、辺地の住民にも
都市部と同じように
放送番組を行き渡らせるということでサテライト局の建設を次々に進めております。ところが
CATVによりまして、
CATVは経済力のある
地域に恐らく
施設されるようになると思いますけれ
ども、そういう
地域内の一部に
番組の多様化が
CATVによって進められますと、せっかく我々がその
地域内の
放送番組の均てんということを考えているにもかかわらず、さらに
地域内での
番組格差が増大してくるという結果が生ずるわけでございます。
こういうふうな
区域外再
送信にはいろいろの問題を含んでいるということをひとつ御認識いただいて、この法案の
審議に当たっていただきたいというふうに希望するわけでございます。
以上でございます。