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1986-05-14 第104回国会 参議院 大蔵委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年五月十四日(水曜日)    午後二時一分開会     —————————————    委員異動  五月十四日     辞任         補欠選任      鈴木 和美君     山田  譲君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         山本 富雄君     理 事                大河原太一郎君                 藤野 賢二君                 矢野俊比古君                 竹田 四郎君                 多田 省吾君     委 員                 岩動 道行君                 河本嘉久蔵君                 中村 太郎君                 藤井 裕久君                 宮島  滉君                 吉川  博君                 赤桐  操君                 村沢  牧君                 山田  譲君                 鈴木 一弘君                 近藤 忠孝君                 栗林 卓司君                 青木  茂君    政府委員        大蔵政務次官   梶原  清君        大蔵省主計局次        長        保田  博君    事務局側        常任委員会専門        員        河内  裕君    参考人        国債募集引受団        代表        富士銀行頭取   荒木 義朗君        名古屋大学教授  水野 正一君        東京国際大学教        授        大川 政三君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和六十一年度の財政運営に必要な財源確保  を図るための特別措置に関する法律案内閣提  出、衆議院送付)     —————————————
  2. 山本富雄

    委員長山本富雄君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、鈴木和美君が委員を辞任され、その補欠として山田譲君が選任されました。     —————————————
  3. 山本富雄

    委員長山本富雄君) 昭和六十一年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、参考人として、国債募集引受団代表富士銀行頭取荒木義朗君、名古屋大学教授水野正一君及び東京国際大学教授大川政三君、以上三名の方々の御出席をいただいております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございました。委員会代表いたしまして厚く御礼申し上げます。参考人方々から忌憚のない御意見を承りまして、法案審査参考にいたしたいと存じます。  これより参考人方々から御意見をお述べ願うわけでございますが、議事の進行上、最初参考人方々からお一人十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じますので、よろしく御協力をお願いをいたします。  陳述いただく順序は、お手元に配付してございます参考人名簿記載順でございます。  それでは、まず荒木参考人からお願いいたします。
  4. 荒木義朗

    参考人荒木義朗君) ただいま委員長から御指名をいただきました国債募集引受団代表富士銀行荒木でございます。  本日は、昭和六十一年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案等に関しまして、私ども意見を述べよということでございます。  そこで、まず昭和六十一年度予算についてでございますが、予算編成をめぐる諸情勢を振り返ってみますと、日本経済は、昨年後半以来輸出の急速な鈍化を主因といたしまして景気拡大テンポが鈍ってまいりました。加えて、円高が大方の予想を上回る進展をいたしてまいりました結果、積極的な財政運営を求める声が一段と高まってまいりました。このような情勢の中で、財政再建路線を踏まえつつ行われました予算編成は、例年になく難しいものがあったであろうというふうに思うわけでございます。  六十一年度予算を拝見いたしますと、歳出総額から国債費地方交付税交付金を除いたいわゆる一般歳出は、五十八年度以来四年連続して横ばいに抑えられております。地方に対する高率補助金の見直しなど歳出の削減に努め、引き続き財政再建路線を堅持されました財政当局の御努力並み並みならぬものがあったと存じます。  こうした中で、国債新規発行額抑制も図られたのでありますが、六十年度当初予算に対する減額幅は七千三百四十億円にとどまっております。なお、そのうち特例公債減額幅は四千八百四十億円となっております。財政収支改善のための関係各位の御努力には十分敬意を表するものでございますが、望むらくは、前年度に示されました財政中期展望に沿って、特例公債について一兆円程度減額をぜひ実現していただきたかったところでございます。  また、六十一年度におきましても、国債整理基金への定率繰り入れ停止されておりますが、これにより五十七年度補正予算以来五年連続で停止されることとなるわけでございます。このため、国債整理基金余裕金残高は、六十一年度末はわずか四千億円にとどまるという見込みになっております。現在の厳しい財政事情考えますと、やむを得ないことであろうとも申せましょうが、将来の国債償還のための財源をあらかじめ積み立てて確保するという減債基金制度の趣旨を尊重することが望ましいと思うのでございます。  ここで、財政全般について、今後の展望も含めまして申し述べたいと思います。  国債大量発行により国債残高が累増した結果、利払い負担が急増しており、六十一年度予算における利払い費歳出総額の約二割を占めるに至っております。利払い負担増加により、財政に本来期待されている機能の十分な発揮が困難になっているのが現状ではないかと存じます。そこで、国債発行額圧縮を通じて国債残高増加抑制することがまずなされるべきであろうと考えられます。そうした意味から、六十五年度までに特例公債依存体質から脱却するとしております財政再建基本路線は、今後も堅持していただきたいと願うわけでございます。  以上、昭和六十一年度予算並びに法律案に関しまして意見を述べさせていただきましたが、せっかくの機会でございますので、私どもの若干の要望等も交えまして、国債全般についての考え方を 述べさせていただきたいと存じます。  まず、国債消化の問題でございますが、最近は国債市中消化は総じて順調に進んでいると申し上げてよろしいかと存じますが、その背景としては次の二つの点があろうかと思われます。一つは、御高承のとおり、金融緩和政策の継続、大幅な経常収支黒字累積、昨年来の景気拡大テンポ減速等背景とした企業資金需要の鎮静などにより、我が国金融が緩慢のうちに推移しているということでございます。また、いま一つ背景といたしまして、国債発行条件市場実勢に沿って機動的、弾力的に改定されるようになったこと及び国債発行流通市場整備が進められたことも、国債の円滑な消化に大いにあずかっているものと考えております。  国債市場整備について申し上げますと、金融機関に対しまして五十八年度に窓口販売を御認可いただき、五十九年度以降、ディーリング業務を認めていただきました。また、六十一年四月に金融機関が保有する新発憤の売却制限期間の短縮が図られましたが、これも国債市場整備するという方向に沿った措置考えております。  次に、国債の円滑かつ安定的な市中消化を将来にわたって確保していくという観点から、ここで二点ほど要望を申し上げさせていただきたいと存じます。  第一に、国債発行条件の決定に関しまして、引き続き市場実勢の尊重をお願い申し上げたいと存じます。最近の機動的、弾力的な発行条件の改定には、基調として金利低下局面にあったことが影響しているとも思われます。今後金融情勢に変化が生じました場合においても、同様に市場実勢を十分尊重した発行条件の設定をぜひお願い申し上げたいと存じます。  要望の第二といたしまして、流通市場の一層の整備拡充のための諸施策の実施をお願い申し上げたいと存じます。昨年十月に債券先物市場が発足するなど、国債流通市場は逐次整備拡充されてきたわけでございますが、今後ともこれを一層推進していく必要があろうかと存じます。国債募集引受団の中には、債券先物取引充実拡大あるいは国債に対する有価証券取引税撤廃等要望する声がございます。こうした要望に十分御配慮いただきまして、我が国流通市場が一層円滑に機能するよう適切な施策の実行をお願い申し上げたいと存じます。  ここで、国債につきましてやや基本的な問題について申し述べさせていただきたいと存じます。  一つは、国債発行額圧縮についてでございます。財政がその本来の機能を十分に回復するためには、まずもって国債発行額圧縮が必要であることは改めて申し上げるまでもございません。また、このまま国債大量発行を続けてまいりますと、将来、経済金融情勢いかんでは、いわゆるクラウディングアウトやインフレの懸念も生じてまいります。このような観点からも、国債発行額圧縮をぜひ今後とも続けていただきたいと考えております。  基本的な問題の第二は、資金運用部による国債の引き受けについてでございます。  国債発行額圧縮に最大限の努力を払いましても、借換債を含めますと、国債大量発行が続くことは避けられないのではないかと存じます。その結果、金融情勢いかんにかかわらず、国債を円滑に消化するためには、資金運用部に適正な額の国債を引き続きまして引き受けていただくことが大きな意味を持っていると考えるのでございます。  最後に、第三の問題といたしまして、国債募集引受団参加メンバー資金調達力の強化について申し述べさせていただきたいと思います。  私ども国債募集引受団は、国債募集引受手といたしましてこれまで極めて重要な役割を果たさせていただいてきたものと自負いたしておるところでございます。将来におきましても引き続き同じような役割を果たさせていただくためには、国債募集引受団各員の資金調達力を強化することが不可欠でございます。このような観点からも、民間金融機関資金吸収阻害要因となっております郵便貯金肥大化抑制することが特に望まれるところでございます。  以上、いろいろと申し述べさせていただきましたが、私ども要望につきまして格段の御配慮をお願いいたしまして、私の陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  5. 山本富雄

    委員長山本富雄君) ありがとうございました。  次に、水野参考人にお願いいたします。
  6. 水野正一

    参考人水野正一君) ただいま御紹介にあずかりました名古屋大学水野でございます。ただいまから財源確保法案に関連いたしまして私の意見を申し上げたいと思います。  まず、この財源確保法案につきましては、特例公債発行国債費定率繰り入れ等停止一般会計からの厚生保険特別会計健康勘定への繰り入れ減額、この三つを内容とするものでありますが、いずれも異例措置でありまして、財政制度をゆがめることになりかねないものである重要な内容を含んだものでありますけれども財政再建を進めている過程におきまして、財政運営に必要な財源確保を図るためにやむを得ない措置であるというふうに考えます。  しかし、国債費の定率繰入停止につきましては、昭和五十七年度から五年も続くことになりまして、減債基金制度の根幹の維持にかかわる重要な問題であります。できるだけ早く定率繰り入れを実施できるような財政事情に回復することが望まれます。  これに関しまして、国債償還について六十年償還制限を撤廃するとか、あるいはもっと進んで、英国におけるような永久公債というようなものの発行を認めるといったような、国債発行償還に関する制度を根本的に変革するという考えもございます。しかし、このようなことは公債発行に関する歯どめの一つを失わせることになりまして、安易な国債発行につながるものであることに留意する必要があろうかと思います。ただ、国債発行償還減債基金制度につきまして、この際検討を行うことは必要ではないかと思います。  そこで、本日の主題については以上のとおりでありますが、この機会に、今後の財政運営について私の考え方を少し申し上げてみたいと思います。  私が申し上げたい点は二つありまして、一つは当面の円高デフレ財政政策のあり方の問題、それからもう一つ中長期的視点からの財政運営についてであります。  まず、最初の当面の円高デフレ財政政策について申し上げたいと思います。  まず結論を先に申し上げますと、内需拡大のために減税及び公共事業拡大を中心とする財政政策を安易に発動して、これまでの財政再建努力を無にしてしまうということのないようにすべきであります。円高の急速な進展によりまして輸出産業及び関連諸産業打撃を受けまして、経済デフレに波及することを懸念いたしまして、財政再建を一時的に凍結し、大幅減税及び公共専業費等財政支出拡大内容とする積極財政への転換によって内需拡大を図る必要があるとする意見が最近産業界、政界及び学界の一部から出てきております。しかし私は、このような、財政赤字増大に必然的につながり、財政再建に逆行するような積極財政への転換論に対しては強く反対であります。  その理由について、以下少し申し上げたいと思います。  第一に、本来、本日の主題となっております財源確保法のような異例措置を講じなければ予算が組めないような厳しい財政事情におきまして、大幅減税とか公共事業費増大などの財政政策を発動する余地は全くないと考えられます。もしこのような財政事情もと内需拡大のために積極的財政政策転換するとしますと、公債増大を余儀なくされまして、昭和五十五年以来毎年血のにじむような財政当局の御努力によりまして公債 発行減額に努めてきた財政再建が水泡に帰し、もとのもくあみに終わることになることは明白であります。一方で内需拡大のためとして湯水のように財政支出をしながら、他方財政再建のために歳出抑制努力をするといったことは、自己矛盾も甚だしく、そもそも不可能なことであります。景気がよくなればまた緊縮財政に再転換すればよいという意見もありますが、財政という大きなずうたいのものを簡単に左から右に転換できるものではないと考えます。一たん手綱を緩めますと再びそれを締めることがいかに難しいかは、既に経験済みのはずであります。  第二に、円高問題に対しましては、円高マクロ経済にどのような効果を及ぼすかにつきましてもう少し見定めた上でその対策を講ずべきでありまして、円高デフレ積極財政政策といった考え方は、少々短絡したものではないかと思います。円高輸出を不利にし、輸出不振からデフレ要因になることは確かでありますが、他方では、輸入財価格低下によりまして製品コスト低下及び消費財価格低下による消費増大によって内需拡大に有利に働く面もあります。現在のところ円高メリットの面がまだ余り出ないために、デフレ効果のみが強調される嫌いがあります。いずれメリットの面もあらわれてくるものと考えられましても、もう少し円高マクロ経済に及ぼす効果というものについて見定め、その上で対策を講ずべきだと考えます。  第三に、円高デフレが生じたとしても、よほどの事態に陥るのでなければ、財政再建の崩壊に導くような積極財政に安易に転換すべきではないと考えます。そもそも円高は、我が国の大幅の貿易黒字という貿易均衡によってもたらされたものでありますし、また、これによって貿易の不均衡が是正され、国際経済摩擦問題の解決に資すると期待されるものであります。そのためには、多少のデフレ効果が生ずることはもとから覚悟しなければならないことであります。みずから犠牲を払うことなしに貿易収支の不均衡の是正とか国際経済摩擦の解消が図られると考えるとすれば、それは虫のよい考えだと思います。基本的には、じっと我慢をし、自助努力によって苦境をしのぎ、自律反転の機を待つべきでありまして、直ちに政府対策を求めるべきではないと思います。  そうはいいましても、円高進行が余りにも急激過ぎるとか、あるいはその影響によりまして不況が進行し憂慮すべき事態が予想されるといった場合には、政府の適切な政策が求められることは言うまでもありません。しかし、その場合でも積極財政への転換ということに直ちにつながるものとは考えられません。  投機的円高に対しましては、政府は適時適切に外国為替市場に介入する必要があります。また、円高デフレ効果といいましても、すべての産業あるいは企業が同じように悪くなるわけではありません。産業間、企業間でその影響がまちまちでありまして、まず打撃をこうむる程度の大きい産業、あるいは中小企業等に対して救済の手を差し伸べるといった差別的な対策を講ずべきであります。  さらに、デフレ効果が全般的に浸透すると予想されるに及んで、マクロ的景気対策としての金融財政政策を発動すべきだろうと考えます。しかし、その場合でも財政政策については十分に慎重であるべきであります。  財政政策効果につきましては、全面的にそれを信頼することはできなくなっておりまして、むしろその弊害の面が懸念されるようになっております。それは一種の麻薬のような性質を持っておりまして、一度これを用いますとだんだん強い方策を用いなければならなくなり、また薬が切れると禁断症状を起こすといった性格のものであります。アメリカ経済がうまくいかないというのも、積極財政政策の乱用によるところが大きいものだと考えられまして、我が因が何もこういう悪い例を見習う必要はないというふうに考えます。我が国財政現状としては、積極財政を行う余力は全くないと考えられます。このような財政状態にしたことにつきまして、昭和五十三年における景気浮揚のための行き過ぎた拡大財政政策に大きな責任があることをこの際想起すべきではなかろうかと思います。当面財政の出動がどうしても求められるといたします場合には、まず、公共事業前倒し施行促進とか財投の活用といったところに着目すべきだと考えます。  次に、第二の問題の中長期的視点からの財政運営について申し上げます。  中長期的視点からの財政運営については、財政再建が最優先課題であるということを再認識し、いささかもその手綱を緩めるべきではないと考えます。これに関して若干のことを申し上げます。  第一に、中長期的に我が国経済安定的成長を持続し、国民の多様な、かつ増大していく公的欲求を満たしていくことができるためには、財政を健全な姿にし、財政力を回復することが基礎条件でありまして、そのためには財政再建が最優先課題とされなければならないと思います。この際、改めてこのことを再確認する必要があります。  第二に、財政再建目標年度内に着実に進めていくためには、まず、増税なき財政再建はもはや限界であることを認識しまして、その転換を行うべきだろうと考えます。  ここ数年の財政再建状況を見ますと、つくづく増税なき財政再建は、もはや限界であるという感を強くするものであります。財政当局並み並みならない努力による歳出抑制によりまして公債発行減額を行ってきておりますが、率直に言いますと粉飾決算ならぬ粉飾予算であると言わざるを得ません。すなわち、国債整理基金特別会計への定率繰り入れ停止とか、厚生保険特別会計健康勘定への繰り入れの一部停止特例公債の借りかえ等の異例措置によりまして、辛うじて国債発行減額を行っているわけでありまして、これらの特例措置を講じなければ逆に公債発行の増額となっております。  また、補正予算公債発行をせざるを得なくなる場合も多くありまして、さらに、国鉄の累積長期債務等の隠れた公債も巨額に上っております。財政の実態は、その収支の面から見ますと再建とは逆の方向へ歩んでいるという見方もできるわけであります。このことは、何よりも増税なき財政再建がもはや限界であり、これを転換しなければならぬことをはっきりと物語るものであります。  本来、財政再建は歳入と歳出の両面の方策によって達成さるべきものであります。歳出面のみの方策では財政再建を大幅におくらせるのみならず、その達成を危うくするものであると考えます。また、財政構造税制のゆがみをますます大きくし、財政対応力低下させることになります。例えば今回のように財政の出番が求められるとしても、その余力がないということになるわけであります。  第三に、これに関連しまして、現在税制調査会におきまして審議を進めている税制改革についても、それが中長期的視点からの税制改革である以上、財政再建とのかかわりは避けて通れない問題であることを特に指摘しておきたいと思います。去る四月二十五日に中間報告が出されまして、本格的審議はむしろこれからでありますが、レーガン米大統領税制改革案の例に倣って、税収中立考え方に立ち、財政再建との関係を避けようとする気配が感じられます。財政再建とのかかわりを否定する税制改革案では、中長期的見地からの税制改革案とはなり得ません。財政再建のみを目的とするものであってはならないことは言うまでもありませんが、同時に、財政再建をその目的一つに加えた税制改革を望みたいものであります。  以上で私の意見陳述を終わります。御清聴ありがとうございます。
  7. 山本富雄

    委員長山本富雄君) ありがとうございました。  次に、大川参考人にお願いいたします。
  8. 大川政三

    参考人大川政三君) 大川でございます。  時間の制約もございますもので、公債発行というのは、近代国家収入調達形態からいえば、ど ちらかというと異例、例外的なやり方なんですが、その例外的な公債発行でも、ある条件の場合には公債発行の方がいいんだ、あるいは望ましいんだというケースもないわけではないんです。そういうように公債発行が一方において便益、便利だとする場合があるんですが、しかし、すべて物事は便利なことばかりで終わるのでなくて、やっぱりそういう公債発行という手段をとった場合に、その反面においてデメリットもあるということでございまして、そのメリットデメリットとの間の相対的な比較の上で、ある最終的な判断をすべきであろうというふうに思うんです。  まず最初に、それでは公債発行に依存すべき、あるいは公債発行に依存した方がベターなんだという状況はどういうケースであろうかということを幾つかのケースについて考えてみますというと、四つ、五つ挙がろうかと思いますが、第一のケースは、緊急の必要のために多額の収入を短期間に徴収しなければならない。こういうケースの場合には、租税に頼っている時間的余裕がないという場合に過去においてもしばしば公債発行がとられた。これは戦後においては余りそういうケースはないかもしれませんが、かつては戦費を調達するような場合が非常に典型的なケースでありますけれども、戦後にはこのケースは余り当てはまらないと思います。これが第一。  それから第二の、公債発行を有利とするケースというのは、財源として大規模経費が必要であり、その大規模経費を支出した結果、長期にわたって国民にある長期的な便益を与えるとき、こういうようなケースの場合には、公債発行という形で賄っておいた上で後で租税収入で元利償還する、こういうことがベターだと言われておる。  そのベターである根拠としては、世代間の公平ということがよく言われるんですが、もう一つ長期便益を与える場合には、むしろやるべき仕事をやるという意味での効率性という観点からも、一部公債に依存した方がベターなんだ、こういうことがあるわけです。一般に新聞なんかでは、世代間の公平論だけで言っておりますけれども、もう一つ、やっぱり資源配分の効率性という点からも、公債依存度がそういう長期便益を与える場合にはベターだというケースもあるわけです。これが第二のケースです。  それから第三のケースは、一方において今後政府がやらなければならない仕事が非常に多く、国民もそれを望んでいるときに、一方では租税収入の自然増収が余り期待できない、あるいは増税に対して非帯に抵抗があってやりにくい、こういうような場合には、社会的必要度の高い経費を賄うためにはやむを得ず公債発行というものに依存するということがあろうかと思います。これが第三の場合です。  それから第四のケースは、政府がやる仕事の場合でも、収益を上げ得るような、あるいは料金を取り得るようなそういう事業もあろうかと思います。これは、いろんな公共投資的なあれでも、収益的な事業の場合にはその財源公債に仰ぐことも悪くはない、あるいはむしろベターかもしれません。そういう収益を上げて元利償還がその収益で賄い得る、そういうような場合には租税収入よりは公債収入の方が有利かもしれません。それが第四のケースです。  それから第五のケースとしましては、先ほどもお話があったと思いますが、投資資金需要に対して、貯蓄オーバーが期待される。貯蓄がオーバーするということは投資需要が不活発であるということなんですが、そういうような場合に、遊休資金を活用するという意味から政府経費公債発行で賄うというようなことが許されるケースもあろうかと思います。  今五つばかりのケースを挙げたわけでありますが、これは公債発行をよしとするようなケースを挙げたわけでありますが、そういう便益を得る反面においては、公債発行に伴うデメリットあるいは公債発行の費用というものを考える必要があろうかと思います。  ではそれはどういうデメリットでありコストであるかということを考えてみますと、第一は、やはり公債発行というような収入調達方法を許しますと経費の膨張を安易化する。言葉をかえて言えば、財政赤字を恒常化し拡大する可能性を含むという点がデメリットの第一である。  それから第二は、せっかくのあるべき税制改革への努力を減殺する、そういうデメリットがあろうかと思います。また、言葉をかえて言えば、納税意欲を低下させかねないというデメリットが出てくるだろうと思います。  それから、第三の費用としては、便益は受けるけれども費用は負担しないという、いわゆるただ乗り意識を国民の間に芽生えさせる。あるいはそういう考え方を強化する。それは民主主義国家における財政としては多少憂うべき状態になるわけでありますから、これはややもするとそういうフリーライダー意識を持たせるということが第三のデメリット。  それから第四のデメリットとしては、今まで指摘されたように、公債発行累積することによって利払い費増加し、これが他の重要な経費の伸びを圧迫する、いわゆる財政の硬直化であります。公債発行というのは、一見すると何か国民に負担を与えないで割合便利なような感じがしますけれども、こういう財政の硬直化というような形で新規政策の実行を困難にする。これが公債依存政策の重要なコストであろう、そういうふうに考えます。  それから最後に、デメリットとしては、これも既に指摘されたように、今のような財政の硬直化を避けようとして新しい政策を実行し収入を調達しようとすれば、インフレ型の公債発行をするような状態に追い込む可能性が大きい。そういうような点が指摘できるかと思います。  時間を多少お許しいただければ、最後にちょっと簡単に追加させていただきます。  他の参考人方々も既にお触れになりましたように、円高不況との関連で、最近、内需拡大ということで財政の積極的な出動を期待する声が徐々に強まっておるようでありますけれども、私は、テレビとか新聞なんかで拝見する限り、円高不況の回避のためには内需拡大である、内需拡大するためには政府需要を拡大すべきだ、政府需要の拡大のためには公共事業費拡大すべきだ、公共事業費財源を得るためには建設公債である、こういう非常に短絡的といいますか、余りにもストレートに結びつける嫌いがあろうかと思います。私は、そういうストレートに結びつける場合に、その中間で幾つも選択肢があるのではなかろうかということで、一つ一つの選択肢を踏まえながら、やっぱり先へ進んで考えるべきじゃなかろうか。  その内容についてはちょっと時間の制限がございますので、一応陳述をこれで終わらせていただきます。
  9. 山本富雄

    委員長山本富雄君) どうもありがとうございました。  以上で参考人方々の御意見陳述は終わりました。  これより参考人方々に質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  10. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 参考人の皆さんには、お忙しい中を我々の委員会参考意見を拝聴させていただきまして大変ありがとうございます。  お三人の方の御意見は、国債発行についてはかなり厳しい御意見であるように思います。必ずしも明確でない点があるんですけれども荒木参考人も、財政再建は堅持しろ、減債基金制度は堅持しろと。それでいて、今の円高不況というものについては適切な政策をとれとおっしゃられている。水野先生も、前提は、国債発行をしなくてもいいような中期的な税制改革をやれというのがまず頭にあって、それから公債政策をお述べになっているような気がいたします。  しかし、これも歴代総理大臣、私非常に無責任だと思うんですけれども国債の方は発行して、残高は百何十兆になるというのに、それの解消の方針というのは見せていないというのは私は無責 任だと思うんです。しかし、それが民主主義の政治の一つかなと思うこともあるくらい実は無責任でありますけれども、このままでいけば、公債発行デメリットというようなものがこれから出てくるんじゃないだろうかということが感ぜられるわけであります。大川先生も大体同じような御意見で、やっぱり税金なりいろいろな選択肢という言葉で、時間が不十分のようでございまして具体的には述べられませんでしたけれども、その辺のことをお聞きして、具体的にどうすべきか。  私どもも、実際今のこの円高不況にぶつかって、ここで急に税金を取るなどという弾力的な、しかも機動的なことはこれはとてもできないわけでありますから、そういうふうに考えてみますと、その辺は一体どうすべきか。短期的には、やっぱり国公債政策によらざるを得ないんじゃないだろうかということも感ぜられるわけですか、特に荒木参考人水野先生は、むしろ増税をこの際思い切ってやれ、こういう御意見のように拝聴をしたのですが、この点は少し誤っているんですか、どうなんですか。その辺のことをひとつお聞きをしたいと思います。  それから水野先生。これは荒木さん、水野さんともに減債基金価度は置けと、こう言われているわけですが、定率繰り入れは御承知のように五年もやられていないし、ことしはベースアップの財源だという理屈をつけて決算剰余金の全額減債基金繰り入れもしない。きのうもここで竹下大蔵大臣は、六十二年度の予算編成の際は、減債基金側度とかあるいは六十年というこの枠で完済するというやり方、これは検討を迫られるという御発言が実はきのうここであったわけであります。そう考えてみますと、先生方のおっしゃっている点と現実の財政政策とはかなりすれ迷っちゃっているような感じもするわけであります。その辺についてお三方の御意見なり御感想なりをひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  11. 荒木義朗

    参考人荒木義朗君) ただいまの竹田先生の御質問に私の考え方を述べさせていただきます。  現在の置かれております環境というのは、非常に厳しいことも十分認識をいたしております。新聞紙上あるいはまた一部財界の中からも、この際公共投資を中心とした、あるいはまた場合によりましては、赤字国債はいけないけれども建設国債ならいいんじゃないかというふうな御意見が出ておることもよく承知をいたしております。  私が考えますのに、一時的に財政によりまして景気の底上げということは可能かもしれませんけれども、現在政府が既に打たれました総合経済対策というものが出ております。御承知のとおり、金融政策の問題から公共事業の執行の促進、いわば前倒しの問題から、あるいは円高あるいは原油の値下がりの差益の還元、その他一応私ども考えます施策としましては、この中に十分盛り込まれているんじゃないかというふうに考えております。公定歩合も既に三回引き下げられておりまして、いずれもこれらの施策と申しますのは、今すぐその施策が打たれたから直ちに効果があるというものではございません。どうしてもある程度のタイムラグは生ずるわけでございますが、やはり今現在では、これをやれば直るというふうな起死回生の策もないように私は考えておりまして、言いかえますと、政府の総合対策の具現というものを見ていくということが一番必要じゃないかというふうに考えている次第でございます。  したがいまして、この減債基金の問題につきましても、今年度は緊急措置としてやむを得ないというふうに考えておりますが、この趣旨だけは、この基本姿勢だけはぜひ捨てないでいく姿勢が必要じゃないかというふうに私は考えているわけでございます。  したがいまして、先生の御指摘の、増税を前提とするというふうな気持ちは私は現在持っておりません。
  12. 水野正一

    参考人水野正一君) 円高デフレに対する対策でありますけれども、これは私、まだ実態というか、その効果が必ずしも十分つかめてないんじゃないかという気がするわけです。すなわち、一部の中小の輸出産業あたりのところでは深刻な問題が生じておりますけれども経済全体としてはどうなのかという点がまだ一つはっきりしないわけでありまして、他方では、電力会社とかガス会社その他の石油を原材料に使う産業におきましては、逆に円高差益で非常にもうかっているということもあるわけで、全体としてどうなのかという点がいま一つ把握できないわけで、直ちに公共事業拡大あるいは建設公債発行というふうなところへいくのは、まだちょっと飛躍じゃないかという気がして、その前に打つ手は、先ほど大川先生も言われましたが、幾つもいろいろ手があるというふうに考えます。  それと、一点そういう打撃を受ける部分がありましても、そういうものに対する公共事業拡大による内需拡大というようなものはいわば一般的な対策でありまして、逆に言いますと、円高で非常に潤っているところにも恩恵がいくという、ますますよくなるという面がありまして、そういった一般的な効果を持つ対策が果たして妥当かどうかという点も疑問でありまして、さしあたってはどうしても困るというようなところ、まずそこに対策を講ずるという必要があるのじゃないか。全般的な不況というものが進行いたしまして、ほうっておくと経済全体が大変なことになるというような場合は、これはまた緊急にいろいろと対策を講じなきゃいけませんが、現在のところはそういうところまではいってないんじゃないかという気がいたします。  それとともに、円高そのものが日本経済産業構造についての大きな転換を迫っているわけでありまして、そういう転換の過程である程度の犠牲、こういうものは出ざるを得ないというふうな、むしろそういう対策というよりも、産業あるいは日本の企業全体として、もっと自力でもってまず取り組むことが先決だというふうに考えます。  それから、財政再建のための増税をやれというのかということであります。私は、これも直ちに増税というようにすぐ言っているわけではありませんで、例えば六十五年までに特例公債の依存から脱却するというのであれば、それに対するもっときちんとした方策というのを示す必要があるわけでありまして、現在のように歳出抑制一本やりでいくということには、もはや限界でいろいろ無理がきているということで、ですから、税制も含めて財政再建のあり方というのを考えなきゃいけない。その結果どうしても増税が必要だというのであれば、またそういうふうな方向転換すべきであるということを申し上げたわけであります。それと、この見方は、さしあたってもしそういうことだとしても、こういう時期には直ちに増税を行うということは非現実的でありまして、中長期的な観点からの財政再建の座り方というものを申し上げたわけであります。  それから、減債基金制度につきましては、減債基金制度そのものは古くからできた制度でありまして、これについての見直しというものはあるいは検討は必要だろうと思います、ただ、そういう検討の結果どういう結論になるかということは、必ずしもまだ自分自身はっきりしていないわけですけれども、現在のところ、感じとしては、やはりこういう減債基金の制度というものを簡単に放棄するということについてはいささかためらいがあるということで、いろいろもっと財政制度あるいは財政現状、将来の姿、こういうものを考えた上で結論を出すべき問題だろうということであります。
  13. 大川政三

    参考人大川政三君) 減債基金の点については、もう既にお二方お答えになっておりますし、私も別に異論はございませんもので、ある程度省略させていただきますが、今最初に御質問いただきました、増税についてどういうふうに考えるか、その辺に少し時間を使わせていただきます。  先ほど言いましたように、公債発行は割合国民の目からするとさしあたっては負担がないように思われる。それで、一方景気がよくなるとか公共事業が進められて大変いいことだ。負担の方は余 り当面感じられないということで、大変公債発行はその限りにおいては重用される傾向があるわけであります。しかし、その公債発行におきましても、先ほど言いましたように、公債発行累積してくると利払い費増加によって、国民としては本当にやってもらいたいこともやってもらえないという形での国民にとっての負担、費用というのはそういう形で加わってくるわけで、そういう利払い費負担の増加ということでじわじわとやってくる。公債発行の負担というのはこれはもう非常に目に見えてきた負担でございまして、公債発行ということであれば国民は負担がないという余り安易な考えは避けなければいけない。  それに対して、租税という、税金を強制的に徴収するとなると、本能的に納税者の立場においては忌避する傾向にある。税金そのものが、税金を払ったからといってすぐにそれに対応する便益国民が得るわけではないということで、大変税金がふえるということについてはちゅうちょする。いわゆる税金がふえるということは割合目に見えやすい負担である。公債発行ですと、ちょっと一見目に見えない形で負担がじわじわと出てくる。それに比べると租税は、はっきりとあしたから所得税が上がるというような形で、あるいは間接税が上がるというようなことで、はっきりと目に見えてくる負担である。それだけに増税に対する忌避傾向は強いわけなんですが、今言ったような強制的に何か目に見える形で負担が出てくるということは確かに租税という方法に頼ることのデメリットですけれども、しかし、そういう税金をふやすということにも他面においてメリットがあるじゃないかということもあわせ考える必要があろう。  そのメリットと言えば、やっぱり税金の方が、税金の払い方はふえるけれども、一方において社会保障費をふやす財源が出てくるとか、それこそ公共事業費をふやす財源が出てくるという形で国民の方に利益が還元してくるわけで、その利益の還元の仕方がちょっと一般的だということで租税はやや忌避されるわけですけれども、そういう租税も決して国民、納税者にとって悪いことばかりじゃないんだ。結局、公債発行に頼った場合の先ほどの便益と費用との関係、それから税金という手段に訴えた場合の便益と負担、そういうのもやっぱりあわせ考えて最終的に判断する必要がある。税金が最初からもうだめなんだ、国民に迷惑をかけるんだということは、ちょっと余りにも短絡的過ぎるといいますか、世間の、新聞論調はどっちかというとそういうような論調が多いわけでありますが、そういうことももう一度お考えをいただければという気持ちを私は持っております。  先ほど水野さんもお触れになりましたように、アメリカのレーガンが税制改革を抜本的に考えておる。日本でもそれを追っかけるように考えておるようでありますが、レーガンも日本の場合でも、税収の中立性ということを言っておるわけです。これはやはりかなり納税者の反対を意図した上で中立性、増収額と減税額をプラス・マイナス・ゼロというような形で考えているんだということをおっしゃっておるんですが、これは私、やはり租税というものの役割という点からいえば、経費を賄うその基本的な機能を税金に果たさせるという意味ではちょっと腰が弱いんじゃないか。アメリカのレーガンの場合でも、あれだけ大きな財政赤字を抱えておきながら、税収の中立性というようなことを言っておられる状況であるのかどうかということを何かほかに書いたこともありますが、そのように、増税ということがただ悪いことばかりだというような立場には私はないわけであります。  それからもう一つ円高デフレのような状況がある中で増税などというのはとんでもないではなかろうか、やっぱりここでは公債発行によるべきだろうというような御指摘だろうと思いますけれども、これは、内需拡大する方法として赤字財政を組まないと内需拡大しないのか、こういうやや誤解があろうかと思います。経済理論の上でも、均衡予算の乗数効果ということが言われておりまして、均衡予算を維持した状況もとでも内需拡大することはあり得る。ただ、内需拡大効果は確かに赤字財政ほどはありませんけれども、先ほど私、内需拡大すなわち公債発行というように短絡的にしないようにと言ったのは、内需拡大するために均衡予算を維持する状況もと経費増大するならば、その経費増大に見合うだけ税金がふえるような形のことを組み合わせたって内需拡大するわけなんです。その点をどうも余り御注目いただけないような嫌いがあろうかと思います。  そのふえる経費とふえる税収をとんとんにするような形でも、現実のやり方としては、まず最初に大蔵省証券なんかを発行して、ある程度有効需要をつけて、それで一回りかなり所得が増大したところで税金の網で吸い上げて税収がふえるというような形が現実にはとられると思うんですね。まず最初に税金をふやして、それで経費の増額に充てるということは現実には余りないんで、やっぱり最初はある程度通貨供給量の増加を伴うような形でまず潤した上で税収の増加を図る、こういうような形を現実にはとるはずなんで、その場合には、いわゆる赤字をふやすようなことをしなくても十分内需拡大効果はあるはずである、そういうことをひとつ御指摘させていただきたいと思います。
  14. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 ありがとうございました。  先生方のおっしゃっていることはわからないわけではないんですけれども、しかし、現実の政治の中で考えてみますと、財政均衡を今図っていくとして、どこが一番その犠牲になっているのか、こう見てみると、やっぱり老人保健法あたりが負担を多くさせられている。あるいは内需拡大をしていく層の可処分所得というものは必ずしも多くなっていない。  恐らく、財界の人が、消費拡大のために努力しろとか、あるいは所得をふやせとか、そういうことを財界の首脳が言われたという例はことしが初めてだと思うんですね。今までは、とにかく削れ削れと、賃金はなるべく生産性に見合ったもの以下にしろという意見がはるかに多かったと思うんですね。ことしはその辺は大分気配は違っているけれども、実際労働組合の賃上げというのは去年よりも下回った。  こういうことを考えてみますと、これは私どもが悪いのかもしれない。もっと暴れて賃金も拡大をし、社会保障ももっと確立をするようにストライキでも打って大暴れに暴れたらあるいはそういう事情が出て、みんなの嫌っている税金をふやさなくても、おっしゃられたような建設国債にしろ特例国債にしろ、私はどっちでも同じだと思っております。どっちにしたって、今区別がなくなってきていることも事実でありますから、区別すること自体が余り意味ないというふうに私は思います。  確かに、先生方のおっしゃるような公債発行によるデメリットというのは私も痛いほどわかるわけであります。先ほども大川先生ちょっとおっしゃっておられたと思うんですけれども、そういう手当でなしに増税があったり、あるいは国債発行がどんどん進められていくということになると、デメリットが私は非常に出てくるだろうと思うんですが、その辺が今の政治の、紙の上どおりいかないという苦しみを私ども感じて、時たま、それならば臨時的に緊急的に建設国債発行して、五年もとにかく伸びていない建設関係に少しは潤いを与えて、それが呼び水になってもいいじゃないか、こういう感じであります。  今大川先生のおっしゃられた、少し資金を供給しろ、こういうふうにおっしゃられているんですが、これは荒木先生、私は今ちょっと金の方は余っているんじゃないかという気がしているんですね。それが、もういろんな都内の土地の暴騰とか株の暴騰とかゴルフ会員権の暴騰というようなところにあらわれているような気がしますし、恐らく去年の十月末の短期金利の高目誘導以来マネーサプライというのはふえちゃっていると思うんですね。三月の統計を見ても九%ということで、実際はこれはそういう意味では今金は余り過ぎてい る。だから、金をばらまいても現実に実体資本の方に実際金が行ってない。マネーゲームの方に金が回っちゃっているというのが現実だろうと思うんですね。そうすると、ただ金だけばらまいてもそれが回って実体経済を大きくしていくんじゃないような気が私はするんですね。  大きな企業というのは今ある意味でトヨタ銀行と言われるほど貿易でもうけている。いろいろなもうけ方していらっしゃるだろうと思うんですけれども、大きな企業というのは銀行から今金を借りないそうでありまして、自己融資を、自分で現先を使って融資しているとかいうようなことでありまして、そういうのがどんどん実体経済の中へ行くんじゃなくて、むしろ金融資本として、産業資本家が金融資本として動かしているというような私は実態ではないだろうか、こういうふうに思いますと、やっぱり内需拡大をどこからやっていくか、どこから手をつけていくかということで、公債発行のところへ行くのか、あるいは減税論というのも、この金のないのに、財源もないのに減税しろという減税論も非常にあるわけであります。そういうところ、結局力関係、最後は力関係のような気もするんですけれども、どこから手をつけていったらいいのか。  大川先生のお話もわかりますけれども、本当に要るところに金が行っているような気しないんですね。財テクのうまいところへ金が行っていて、本当に金の要る中小企業のところなんかには余り金が行っていない。こんな感じすら私は持っているわけでありますけれども、そういう点で、先生方のおっしゃられることは非常によくわかるけれども、どこから手をつけていくのか。  ここで確かに私も減価基金制度というのは維持すべきだと思いますけれども、これを維持するためにはどっかでうんと削らにゃいかぬということになると、社会的に弱いところへ削るものが行ってしまうというのが私は現実じゃないかと思うんですね。それは先生方のお考えになる財政経済よりも、むしろもっと政治的な問題というふうに言ってもいいんではないだろうかと私は思いますけれども、そういうことを言いながら、片方では百四十三兆という怪物が暴れ回っているという、いつ暴れるかわかりませんけれども、暴れる要素というのは持っているわけでありますから、そういうものに対する解消のめどというものも全然ついていない。  今大川先生おっしゃっていたように、あるいは水野先生かもしれませんけれども、増減税がとんとんだ。今度の税制の抜本改正というのもニュートラルでいくということをきのうも大蔵大臣はおっしゃられているわけでありますから、そういうものを、国債の大きなものを削っていくというようなことも、恐らく余裕は今のところないと思うんですね。その辺がどうも私どもわからないし、その辺を具体的にどう吹っ切っていけるかということで、私ども野党ではありますけれども、その辺は非常に、与党の人ももちろんそうだろうと思うんですけれども、出口をどこに探っていくかというような問題ですらあるような気がしているわけでありますが、その辺をお教えいただきたいというふうに思います。
  15. 荒木義朗

    参考人荒木義朗君) ただいま竹田先生からお教えをいただきたいというお話、全くそんなふうなものを持っておりませんけれども、実は先生のおっしゃいました、今金が余っているんじゃないかというお話ございました。確かに昭和四十六年−四十八年は過剰流動性の時代でございまして、一億総不動産屋なんということが言われた時代がございました。最近でも御指摘のとおり都心の土地が非常に上がるとか、一月以降ゴルフ場の会員権が上がるというふうな動きが出ていることも事実でございます。また、公定歩合が非常に下がりましたために、預金金利も下がっております。そういう点で、より有利な金融質産を求めていくという動きというのは当然あるというふうに私考えております。  しかし、四十六年−四十八年のときのように、実物資産にもう集中的に行ってしまうというふうな状態では現在ないというふうに考えておりまして、その意味では、低金利時代にはとかく実物資産に目が向けられるというふうなことは事実でございますので、そういう点につきましては、決して現在黄色信号とか言うふうなつもりは持っておりませんけれども、どこかで、望遠鏡でもいいですから、遠くにそういう芽生えが多く出るのをウォッチしていく、見守っていくということが非常に必要じゃないだろうかというふうに、私は実はその点はそういうふうに考えております。  今何からやったらいいかという竹田先生のお話でございますけれども、私は、現在では、九月のG5以降極めて急激に円高に推移をいたしておりまして、この点につきましては、中小企業のみならず大企業もまさに対応にとまどっているという現状でございます。したがいまして、今一本調子で円高が進みました極端な状態というのは、これをやれば直るというものでは私はないように思います。  しかし、為替相場のことでございますから、先はわかりませんけれども、私は、やはり今の為替相場と申しますのは、いわば過剰反応と申しますか、オーバーシフトしているというふうに考えておりまして、現に昨日アメリカのベーカー財務長官がちょっと言いますと途端にきょうはもう百六十四円ぐらいになっている。こういうふうに、だれかが言いますと急激に反応するということは、為替市場がやはり円高ドル安の行き過ぎに対しまして非常に敏感になっているという一つの証拠じゃないかと私は考えておりまして、その意味では、このままの状態で推移いたしますと非常に問題がございますけれども、いずれは私はこの点は底を打つとかあるいは反転するということもあろうかと考えております。そういう意味では、今の急速な円高の目先の問題ではいろいろと問題点があるように思いますけれども、やはりもうちょっと長い目で、今打っておられる施策の出てくる点もございます。  確かに、金利が下がりましても、現在設備投資をするとか、あるいは在庫投資をふやすという企業のビヘービアは少のうございます。少のうございますけれども、それじゃ今後とも起こらないかというと、決してそうではなくて、金利が下がっておりますから企業の利子負担も減っております。やはり将来に生き残ろうということをみんな各企業考えておりますので、そういう意味では、公定歩合が下がって、いろいろ市中金利も下がってきたということは、それなりにまた企業の収益の底支えにはなるという点もございますし、また、昨日発表になりました電力料並びにガスの円高差益の還元というふうなものも逐次やはり時間をかければ浸透してくるというふうに思っております。  もうしばらく今打たれている施策を待つのが適当じゃないだろうか、そういうふうに施策をもう少し見てもいいんじゃないだろうかというふうに私実は考えているわけでございます。
  16. 水野正一

    参考人水野正一君) 余り具体的なお答えはできないんですけれども、基本的考え方といたしまして、竹田先生は政治家ですから、こういう経済が苦しいときとか、いろいろ問題が起きたときに何とかしなきゃいかぬというふうな発想で、それは当然だと思いますけれども、私は経済学やっておりますが、この自由経済の世界というものは、やはり基本的には経済の自律性というものにゆだねるのが基本だと思うんです。それで、余り政府政策的にすぐに手をつける、ちょっと怪しくなるとすぐする、また右あり左ありというふうなこと、要するに我々から見ると経済をいじくり回す、政治的にいじくり回すというふうなことをやりますと、当面は何かよくなったように見えるわけですけれども、長い目で見るとやはりだんだんおかしいひずみというものが累積していきまして、結局おかしいわけですね。  それで、何にもしない方が結局いいという、これはアメリカでもずっとそういう考え方が有力になっておりまして、大体一九四〇年あたりぐらいからケインズ経済学の影響で、私はケインズ経済 学自身はそれほど行き過ぎてないと思うんですけれども、ケインズ経済学を実際に政策面で適用する人たちの責任だと思うんですが、先ほども言葉を使われた、乱用といいますか、余りにも安易にそういうものを乱用し過ぎる。その結果おかしくなる。そういうことに対する批判が、例えばフリードマンとかあるいはハイエクというようなかなり偉い、かなり偉いというよりは非常に偉い学者がそういうものについての批判を投げかけております。  例えばフリードマンあたりに言わせますと、通貨供給量さえきちんと適正に抑えておけば、そのほかのことは余り政府はやるな、やるとかえって悪くするという考えなんですね。私はそこまでは極端に考えないんで、やはり政府役割というのを、あるいは介入というのは認めますけれども、それも余り行き過ぎると必ずよくない。経済には常に自律的に、悪くなってもまた自動的にそれが反転して上向きになるという一つの作用がありまして、基本的にはそれに頼らざるを得ないわけで、政策的にどうのこうのというのは限界があると思うわけですね。基本的にはそういう考えを持っております。  それから、アメリカのことに先ほど触れましたが、アメリカがまさにケインズ経済学の悪用といいますか、これで余りにも政策的に経済、特にマクロ的にいろいろな政策を常にくるくると変更、それも一貫した政策をとるのならいいんですけれども、大統領がかわればまた政策が変わるというふうな、それもかなりドラスチックな政策変更をやる。これがアメリカ経済を私がなりだめにしていると思うんですね。それで、その結果として大きな財政赤字なりあるいは貿易赤字、あるいはそれが現在のドル安につながるという形。これが小さな国であればいいけれども、アメリカのような大国になりますと世界じゅうに大きな影響を与える。特に、その一番とばっちりを受けるのは我が国でありまして、そういう点を考えますと、もっと政策の発動というか、こういうものは慎重である方がよみしいという考え方が基礎にあります。  そういう点からいいますと、私は、現在の日本経済というのは、急速な円高で非常に大変だという気はいたしますけれども、まだまだ経済の基調というのはそう悪くはないんじゃないかという気がいたしておりまして、そういうものに対する内需拡大、こういうものについても、やはり基本的には経済の自律性というものにゆだねるのが一番であって、政策というものはそれを引き出す、助けるものだという基本的なところが肝心だというように思っております。  したがって、先ほどのような円高対策にいたしましても、余りあわててやらない方がいいというのが基本的考え方です。
  17. 大川政三

    参考人大川政三君) 公債発行財源として、例えば公共事業拡大というような形での内需拡大政策が、短期的にはといいますか、即効効果があるということについては私も否定するものではありません。多分、現在のように過剰貯蓄が存在し資金が遊休化している段階においては、公債発行しても直ちにインフレの危険はないであろうし、それから、政府公共事業拡大し、いろいろな建設業関係に発注すれば建設業界は潤うであろう。そういう工事の結果、橋ができ道路がよくなり住宅が建ちということになれば、またその便益を受ける人も多数あるでしょう。そういう意味で、短期的には公債発行によって政府景気拡大することはだれにも迷惑をかけないじゃないか、みんなに尊ばれるじゃないかということは一つあろうかと思います。  しかし、私が先ほど指摘しましたように、即効的であり非常に喜ばれやすいがゆえに、少し長い目で考えるとかなりとげが出てきますよと。そういう長期的な視野で見た場合の負担なり費用といったものもあわせ考えた上で公債発行内需拡大を決めるべきである。無制約的に、不況であるから内需拡大しろ、公債をふやせということを一本調子でいくのではなくて、その過程においてやはり費用になるようなものも含んでおるんだと。もし長期的に膨大な規模で建設公債にしろ赤字公債発行を続けていった場合には、これは遠い先かもしれませんけれども、インフレの可能性が出てきた場合、インフレこそ低所得層に大きな負担を与えるものはないわけで、インフレによって国民に負担を与えるほど不公平な負担はないわけであります。  増税について、いろいろ増税の仕方についてあれこれ不公平だとかなんとかありますけれども、インフレによって購買力を低下させて、国民一様に負担を強いる、これこそ最大の好ましくない負担のさせ方、そういう可能性はあるんですよということを踏まえた上で、もし即効的な手段に踏み切るならば、そういうような費用を踏まえた上で決断してほしいという趣旨であります。  それで、竹田先生御指摘していただきましたように、政治の立場というものがあるんだというような御指摘であります。私たちは、どちらかというと経済的効率性といいますか、経済の立場で確かに考えていることは事実で、政治の立場でどういうふうに御決定になるかは、これはまあ政治家の方々役割であり、私たちがそこまで踏み込む理由はないわけでありますが、ただ、私どもとしてぜひやらなければいけないことは、政治家の方々に政治的な判断で最終的には決めていただくんだけれども、その場合の、ある政策をとった場合の効用の反面費用もあるということを御考慮いただいた上でやってほしい。  したがって、我々としては、いいことは皆さんおっしゃるけれども、それに伴う費用を私どもとしてはぜひやっぱり申し上げておいた上で、それである政策をとった場合の国民に与える便益とそれに伴う費用、この費用とか国民に対する負担というのは、どちらかというと政治的には余り国民には言いにくいことかもしれませんが、私どもとしては、そういうことを申し上げるのは、経済学の立場からぜひそうすべき義務があろうかと思ってやっておるわけで、その点我々が申し上げているようなことをどの程度政治の立場でどういうふうにごしんしゃくいただけるかの判断は、これは政治の立場で御活躍なさっている方にお願いしたいわけであります。  こういうような問題について、先ほど水野さんもおっしゃいましたように、ひところ国会でも話題になったと思いますが、ジェームス・ブキャナンという人が、「デモクラシー・イン・デフィシット」、赤字に埋もれているのがデモクラシーなんだよと、そういう赤字に埋もれたデモクラシーというような表題の書物を書いておりますけれども、同時に、ブキャナンも経済学者ですから、政治家の方々に望むらくは、ある政策をとった場合の費用をはっきりと言える勇気を持ってほしいというようなことを経済学者の立場から言っておるわけでありますが、私もそういう意味で、十分そういう政治的な効用に対して経済的な立場で見た費用というものはあるということをお考えいただきたい。そして、そういう縦済的な立場で見た費用というものを余り無視されると、かえってより大きな政治的なマイナスも出てくるのではないかということも十分御考慮いただきたい。  水野さんもおっしゃったように、今の円高という問題も、もともと経済の論理から出てきたことですね。やっぱり経済の論理を何か人為的にばかにしたり、否定すると、非常に大きな反対の打撃が出てくるわけでありまして、そういう意味で、政治家の皆様方のお立場からいうと、長期の問題は余り考えることないというような言葉も我々としてはわかりますけれども、また同時に長期的な経済的な費用を余り無視されると、かえって大きな政治的なマイナスになることもあるのではないかということをちょっと申し上げ、大変差し出がましいことで失礼いたしました。
  18. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 大変ありがとうございました。  私の時間がもう切れてしまいましたから、もう少しいろいろ教えていただきたいと思いますけれども、断念せざるを得ませんので、またの機会にひとつよろしくお願いします。
  19. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 荒木参考人最初にお伺いしたいと思っていたんですが、お話の中で、一つはいわ ゆる国債の引受団の方のメンバーの資金調達力を強化したいというお話がございました。これから先のことを思うと、第四次の公定歩合の引き下げはあるかないかわかりませんが、あり得るということも想定しなきゃなりません。  そうなりますと、一番何といっても銀行にとって大きいものは小口の預金でございますが、そういうことで、自由化がだんだん進んでまいりますと、やはり郵貯と何でもかんでもイコールフッティングというわけにはいかないかもしれませんが、私は、金利を下げるに伴って、どうしても小口の自由化をしなければそれらの預金獲得ということもとてもできない。一様に決められて、今度は〇・三二じゃあれだから、もうちょっと減らして〇・一五にしようかと言われてやられても、実際に資金が欲しいとなれば、私のところは若干、いろいろあるでしょうが、サービスしてということになろうかと思います。  そういうことから、同一の金融商品を今郵貯と一緒に扱っているわけじゃございませんから、同じものを扱っていれば簡単なことですけれども、そうでないということから、一つは、現実的な問題として、郵貯と金融機関との基本的な解決方法ですね、問題の、これをお伺いできればと思いますのと、早くこれから先、もうタイムリミットが来ているような気がしますが、小口の自由化をしなければ、資金調達力の強化といっても無理ではないかということが一つございます。  それから、同じように、荒木参考人がおっしゃったのは、例のクラウディングアウトやインフレの懸念も将来あるということを言われておりますが、衝動的に建設国債大量発行ということになれば、こういうこともそれはあり得るだろうし、次の年が租税がまた少なくなるとなればどうしても国債依存が多くなる、こういうことの御懸念をなさったのかどうか私わかりませんのですが、今のところはそういう心配はないだろうと思うんですが、こういう御懸念があるからには、何かこういう情勢のときというのがおありだろうと思いますので、この点を例えればと思います。  それから、これは水野参考人大川参考人、また荒木参考人にお伺いしたいんですが、何といっても今回の国債整理基金の問題でございますが、減債基金というものをつくっておく必要があるかどうか、この減債制度というものが必要でなくなってくるんじゃないか。現在のように、もうずっと実際問題として繰り入れ停止されていますし、これから先、一説によれば全額借換債にしようかというような話がございますと、これは事実上の機能停止と見なきゃなりません。そうすると、外国債、外国に国債を買ってもらったのであれば、それを返すための基金も必要かもしれませんが、そうでなければ、この制度より、一般会計の中に全部入れてしまって、そして国民の税負担において行っていくというようなことを、きつく出された方が私は国民も納得するし、これは一般会計として処理していくというやり方の方が、解決の道としては一番いいんではないかという気がするんです。  荒木参考人は、この理念といいますか、そういう基本的なものは変えないでもらいたいというお話がございました。その意味はよくわかるんですが、それを残したままでそういったことに変えられた方がいいんではないか。特に、減債基金について検討を加えよと水野参考人おっしゃっておられましたが、そういう点から見ると、もう行き着いているところはそういうものか。もっとドラスチックなことを言えば、今度の借換債は表面金利ゼロにしてしまえとかということになるわけでございますけれども、そういうことのような提案というようなものは、これから後の問題になると思いますのですが、その辺についての御意見をお三人から伺えればありがたいと思います。
  20. 荒木義朗

    参考人荒木義朗君) ただいま鈴木先生の御質問でございますが、まず小口金利の問題のお話がございました。  現在、金融の自由化の一つの側面でございます金利の自由化という面では、先進諸国がそうでございましたと同じように、我が国でも大口預金の自由化の部分から進んでおりまして、逐次、これはスケジュールが決まっておりまして、当然小口預金の自由化という問題が出てくるわけでございまして、現在、大蔵省の銀行局長の諮問機関でございます金融問題研究会でもその問題が検討されております。私どもも、金利の自由化の一つの大きな側面といたしまして、やはり小口預金の自由化というものにどう取り組むかということについて現在いろいろ研究もいたしております。その場合、一番やはり問題になってまいりますのが、既に個人預金の三二%を占めております、また百兆を超えております郵便貯金との関係をどうするかという問題がどうしてもその面から出てくるわけでございます。  先ほど、郵便貯金とのイコールフッティングという点で、何か解決策についてどうだというお話がございましたが、よくイコールフッティングというふうに我々も申しますし、いろいろと言われておりますが、イコールフッティングと申しましても、官業と民業という意味で全く決算処理法も違いますので、完全にイコールフッティングとなりますと、それは非常に難しい問題でございます。しかも、シェアも非常に多くなっておりますので、私どもといたしましては、少なくとも郵便貯金が、我々の民間金融機関から見て好ましくないとか、目の上のたんこぶとかいう意味じゃなくて、むしろ、もっと国民経済的立場の上でどうあるべきかという点、そういう点から申しますと、やはりこれ以上肥大化は、何とか肥大化しないようにしていただきたいという気持ちが非常に強うございます。  それにつきましては、たまたま先日出ました行革審の小委員会の答申にも、商品性の見直しということとか、あるいは会計処理の方法とか、いろいろと細かく答申が出ておりまして、私どももぜひ今回の行革審の総会で最終答案が出ました場合には、少なくともそれだけは何とか実現できるように政府の機関の方々にもお願いをいたしたいというふうに考えておりまして、頭から郵便貯金を否定するものではないわけでございます。  しかし、やはり今後自由化を進めていく上においては、どうしても避けて通れない問題であるということを申し上げたいというふうに考えているわけでございます。  それから、クラウディングアウトというお話がございましたけれども、現在は非常に金融が緩和されておりまして、貿易収支であれだけの黒字という点では、結局は相手国から所得が日本に移転しているわけでございますから、当然資金が余剰となっております。しかも、国債発行条件につきましても、非常に金融が緩和でございますから、発行条件も市場に合った形で出ておりまして、そういう意味では全く現在クラウディングアウトというふうな動きはございません。  しかし、何と申しましても百四十三兆円というふうな巨額の残高でございますから、今後国内の方の金融情勢が変わってまいりまして、資金需要ができたような場合には、何と申しましても残高が多うございますから、そういう意味では、やはり民間の資金との競合と申しますか、そういう問題が出てくるおそれを多分に内蔵しているというふうに私ども考えているわけでございます。  それから、国債整理基金の問題でございますけれども、これは水野先生、大川先生の御専門で、私門外漢でございますけれども、やはり昭和四十年から国債発行になりまして、その後五十年以降急速に巨額に上っているという点でございます。私は、オイルショック以降日本とアメリカの場合は、やはりこのショックを和らげるために財政で相当てこ入れをいたしまして、財政によって非常に早くそれをうまくショックをクリアしたと思っておりますが、言いかえますと、そのときのツケというのが今に重くのしかかってきているというふうに考えておりまして、ヨーロッパの諸国の場合は財政での底上げと申しますか、依存というのが日本よりアメリカが少なかった。したがいまし て、逆に言いますと、失業も随分多くて時間もかかったということが言えますけれども、そういうふうな違いというものがあるように思います。  そういう意味では、国債というのは確かに、先ほど大川先生おっしゃいましたように、いろいろとメリットデメリットございましょうけれども国債につきましては一つの、特に赤字国債その他につきましては、やはり減債基金というふうな、逐次ためていくということで早くそれを脱却する、そして将来に財政政策の機動的な余力を早くつくり上げる、今のような余力のない姿から早く立ち直るという意味では、この精神は今後とも残していただくのが妥当じゃないだろうかと実は私考えているわけでございます。
  21. 水野正一

    参考人水野正一君) 減債基金制度の問題でありますが、私は、ずっとここ十年以上のような大量の国債発行が続いている中では、建設公債、あるいは特例公債もそうなりましたが、仮に六十年の償還期限というのを設けておりましても、償還期限が来たときに、それを償還する財源は結局はまた国債発行して償還するという、ただそれが償還か借りかえかという形式の違いで、実質的には国債発行償還されているわけで、そういう形だけのものであれば、そんな賞還というようなものじゃなくて、借換債の発行ということで一般会計の負担からは外してしまった方がすっきりするじゃないかという、そういう気は確かにおっしゃるように私もするわけです。  ただ、こういう定率繰り入れ制度その他償還期限があるというのは、こういうことがあるのとないのとでは、現在のような大量の国債発行が続いている中では実質的な違いは出てきませんけれども、これがもし仮にこういう制約がないとしますと、やはり財政再建への努力といいますか、インセンティブというのは非常に違ってくると思われます。こういうものは、現在では形式的なそういう役割しか果たしていないけれども、これが財政再建へのイニシアチブになりますし、また国債発行についての大きな圧迫といいますか、負担感ともなりまして、それなりの役割を果たしているんじゃないか。ですから、そう簡単にこういうものを外すのはどうかなという気はいたします。  ただしかし、先ほども私申し上げましたが、この制度はやはり古い制度でありまして、財政についての考え方、こういうものは長い間に変わってきておりますし、また将来を展望したときに、やはりこれを変えなきゃいけないものであるかもしれないというふうに思います。ただ、そこのところ、私現在のところはどういうふうにしたらいいかという結論、はっきりした考えはまだまとまっておりませんが、そういう意味で、これを検討した上で結論を出すのがよかろう。先ほどのように、今すぐこれを事実上有名無実になっているから外してしまったらどうかというわけには、ちょっといかぬのじゃないかという気はしているわけです。
  22. 大川政三

    参考人大川政三君) 国債整理基金の現実の効果がなくなってしまっているような状況では、国債の元利償還、そういったものはむしろ一般会計の責任においてやるようにした方が名実が合うんじゃないかという御指摘だろうと思いますが、この国債整理基金を設けておる意味が現在なくなってきておるその原因は何であろうかということを考えますと、公債発行を節度あるようにしなくて、割合毎年かなりな規模公債発行を続けてきている結果がこの整理基金の現実の効用をなくしてきてしまっておる、そういうふうに私は見たいと思うわけでございます。国債整理基金をして意味あらしめるためには、大もと国債発行そのものを少し秩序あるようにすべきであるというのがまず基本的な対策であります。  それから、仮にそういうことを言ったって、急に大規模公債発行を一挙に減らすわけにはいかないということで、当面やはり建設公債にしろ赤字公債にしろ現状程度公債発行は続くものとした場合に、その元利償還確保し、元利償還確保するということは公債の信用、価値を維持する効果があるわけでありますが、そういう元利償還資金を確保公債の価値を安定させるためには、一般会計の負担に持ち込んでいってしまった方がむしろ名と実が合うであろうということなんですが、一般会計に持ち込んでいった場合、元利償還費に繰り入れる法的制約をなくして一般会計に移した場合、一般会計では言うまでもなくいろんな経費と競合するわけであります。社会保障費もあれば公共事業費もあれば教育費もある、その中で競合しながら元利償還費を計上するといった場合に、果たして元利償還費の計上が確実に期待できるのかどうか。この点が、私としてはちょっと心配になるのではないか。他の経費のむしろ圧迫で、かえって元利償還費が大きく計上しにくくなる心配があるのではないか。これは他の経費との関連でありますから、他の経費を削ってでも元利償還を確実にするということが保証されれば一般会計に移してもいいわけでありますが、もしそういう一般会計に移した上で元利償還費の計上が十分にできない、結果的に全額借りかえ借りかえでやっていくような傾向が出てくるとすれば、これは雪だるま式に公債残高が膨れ上がる。  そういうようなことからすると、最終段階には、そんな雪だるま式の膨張の結果は、借りかえの責任を中央銀行が引き受けるようなことにもなりかねないというような危惧を感じております。
  23. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 どうもありがとうございました。もっと聞きたいと思ったんですが、この程度にいたしておきます。
  24. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 最初荒木参考人にお伺いしますが、銀行の国債窓販の状況であります。個人保有がふえているといいますが、その状況、そして個人保有は所得階層別に見てどういう状況か。これ資料などありましたらそういうのを含めて端的に答えていただきたいと思います。
  25. 荒木義朗

    参考人荒木義朗君) ただいま近藤先生の御質問でございますが、国債の個人の金融資産の残高の推移でございますけれども国債の保有は、これは日本銀行の資金循環勘定の資料でございますが、五十九年度で国債が十五兆六千億円、全体のシェアのうち三・一%でございます。昭和五十年度で見てまいりますと、その五十年では一兆一千億でございまして全体のシェアが〇・六%でございましたですから、この間に、約九年間の間にシェアでも約五倍、残高では十五倍ぐらいにふえているというふうな状況になっておりまして、個人の金融資産の中に国債の保有も相当ふえてきているということが事実でございます。  それから、先生の御指摘の保有の層につきましてでございますけれども、これは総務庁の資料でございますが、貯蓄に占めます債券のウエートという点で見てまいりますと、年収にいたしまして七百五十万以上の富裕層というのが多うございますが、それ以下の各層におきましても、いずれも三・五%から六%前後というふうなことで、階層別にはほとんど余りこの線には差異がございません。
  26. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 銀行が各種手数料の引き上げを大分行われる計画があるというぐあいに聞いておりますが、その計画の概要、それを引き上げる根拠。そして、その中で問題と思われます例えば銀行CDの七時まで延長、これについて一回百円程度の手数料を取ろうという問題ですが、これは利息制限法違反などの問題が出てきやしないかというんですが、この辺についてはどうお考えですか。
  27. 荒木義朗

    参考人荒木義朗君) 今の手数料の御指摘でございますが、手数料につきましては、私、全銀協の会長もいたしておりますけれども、これはあくまでも各銀行の個別の問題でございます。したがいまして、全銀協としても全くこの点は関与していないわけでございまして、あくまでも各銀行の個別の判断に基づいて行われているわけでございます。  確かに、手数料につきまして、最近新聞記事でも見ましたけれども、一部の金融機関で上げたところもあるように理解をいたしております。今後金融機関といたしましても、お客様のニーズが非常に多様化をいたしておりますし、また海外との 関係その他非常に金融機関としましても今まで以上にお客様のニーズにおこたえをしていくという、したがいまして、新しいサービスを提供していくということがやはり今後非常に必要じゃないかと考えておりまして、そういう意味で良質なサービスを提供するということに努めてまいる。したがいまして、そういう意味での良質サービスについて手数料という問題が出てくる傾向にあると私は全体では考えております。  これは全国銀行の表でございますけれども、経常収入収入に占めます手数料のウエートでございます。これは現在五十九年までしか出ておりませんけれども、全体で三%ちょうどでございまして、このところ十年ぐらいほとんど余り大きな変化はなく推移をいたしております。しかし、先生の御指摘のように、今後新しい良質のサービスというものに対しまして手数料というふうな問題が出てくる傾向にあるというふうに私は理解をいたしております。
  28. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 次に、公定歩合引き下げに伴う預金金利の引き下げ問題、〇・三八%という超低金利ですが、ことしに入って三回にわたって連続的な引き下げで、預金者に相当な損失になっていると思うんですが、その辺、金額はどれくらいになっているか、これおわかりですか。  それから、少額の普通預金の金利はこの際ゼロにしたいという要求もあるように聞いていますが、その点どうか。  それから、公定歩合引き下げに伴って大口の預金、CDの金利動向はどうなっていますか。  この三点についてお答えいただきたいと思います。
  29. 荒木義朗

    参考人荒木義朗君) お答えをいたします。  現在の預金金利は、公定歩合も非常に下がっておりますので、最近では相当低い数字になっていることはもう事実でございます。これは、やはり同時に物価の上昇率も非常に低い状態でございますので、現在、この五月の十九日から引き下げられます一年定期預金で見てまいりますと、今度の金利が四・一三になるわけでございまして、そういう意味では消費者物価の指数がどれぐらいになるか、まあ多分一%ちょっとだろうと思いますので、そういう意味では確かに金利は下がっておりますけれども、実質金利につきましては確保されているというふうに考えております。もちろんこれは、大口預金の重複された部分というのは市場連動いたしておりますが、今後私どもも大口預金に対します小口預金という意味につきましては、やはり自由化をすべきだと考えておりまして、そういうふうな点では特に預金者が不利益をこうむっているというふうには、私ども考えていないわけでございます。  それから、CDの動きにつきましては、これはあくまでも市場の金利の連動でございまして、市場の方のCDの動きという点を見てまいりましても、ことしの一月以降で見てまいりましても、私の記憶ではほぼ公定歩合と同じだけ下がっているというふうに見ているわけです。
  30. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 次に、大川参考人にお伺いしますが、先ほどもちょっと竹田委員の質問についてお話があった政治的選択と経済的選択の問題ですね。先生の著書「日本の財政政策」、これを拝見しますと、予算編成についての選択原理についてということでかなり力を入れて書いてあるんですが、その中で、経済的原理を優先させるべきだという点を強調されておりますが、そのことに関して御意見があったら伺いたいと思います。
  31. 大川政三

    参考人大川政三君) 経済的選択ということは、簡単に申しますれば、ある仕事をやる場合の効用と費用とを比較する。ある政策目的を達成する場合に、Aという手段もあればBという手段もある、Cという手段もある。政策手段は幾つかあるわけで、その複数の政策手段それぞれについて、その個々の政策手段のよさ、効用とそれに伴う費用とを比べてみた上で、その上で一番最適なものを選択する。これがいわゆる、格好をつけて言わなくても、我々が現実によくやっている経済行為というのは、そういう選択を日常の生活の上においてもやっておることなんであります。だから、そういうようなことを、それと同じようなことを政府予算編成の中にもなるべく導入することによって、社会的な利益というものを最大にするような方向政府予算の編成の中にも持ち込んでいってほしいというのが希望の内容です。  ところが、先ほどのお話にもありましたように政府予算を編成し決定している過程の中で、そういうコストと費用と便益を比較するような形で審議が行われているのであろうかというような、たとえば外野から見てみると多少気がかりになることであります。どちらかというと、ある政策目的を達成するためにAという手段がある。そのAという手段、そのほかにも手段があるんだけれども、余りそのほかの手段と比較することはしない。ある政策目的を達成するためのA手段である。そのA手段にはこういうメリットがある、よさがある。その場合に、そのよさとコストになるようなものの比較は余りなさらないというか、あるいはそういうことが国民の目に知らされるような形では公表されてないと思います。  そういう形で、余り経済的選択原理が政府予算の編成においては生かされてない実情があるのではないか。しかし、政府が金を使い、資源を使うということはやっぱりこれは経済行為なんで、限られた資源なり限られた資金をいろいろな目的に最大に利用効果があるように分ける、これは、政府のやることであれ、やっぱり経済原則の枠内に入るべきことであるわけですから、その意味経済的選択原理を政府予算の編成の中にも導入する必然性、必要性があるのではないかということを強調したものであります。  そういうような経済的選択の手法を、アメリカ連邦政府ではかねがねそういう努力を続けてきて、その具体的な成果がPPBSというような、これはかつての、何といいますか、ちょっとど忘れしましたが、民主党政権のときに、アメリカ連邦政府の国防予算を効率化しようというようなところで連邦政府が取り入れた手法であります。それが最近共和党政権になってからはどういうような形かといえば、それはよくZBBという、ゼロ・ベース・バジェッティングというような形でやられておるわけですが、この趣旨は、まさに経済的選択原理を連邦予算の編成に持ち込もうという趣旨でやっておるわけです。しかし、現実にアメリカの連邦議会あるいはアメリカの官僚なんかからいうと、そんな経済的原理なんて持ち込む必要ない、これは政治の段階ですべて決めることだということです。余り評判がよくないようで、余り実効が上がっているとは思いませんけれども、しかし、連邦政府では余り評判はよくないんですが、昨年も、ちょっとアメリカの州政府なんか見てみると、州政府段階ではかなりそういうようなZBBというような経済的手法が州予算の編成審議に活用されておるという実況を見ておりますので、まだ私もあきらめないで主張を続けたいと思っております。  以上です。
  32. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 時間が来ましたので、これで終わります。
  33. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 まず荒木参考人にお尋ねをいたします。  今の公債発行規模ですけれども、マネーサプライの動向を考えますと、そろそろ警戒水域に近づきつつあるのではあるまいかと私は思っておりまして、したがって、野方図にふやしていいとは全く考えてないんです。  ちょっと見方を変えまして御所見を賜りたいのですが、貿易黒字との関係で、日本の貯蓄水準の高さがいろいろと批判を受けているわけですが、その論議を伺っていますと、いや貯蓄水準の高さそれ自体が悪いのではないのだ、高さに見合った投資機会の提供がないのが実は困るんだという御意見もあるようでありますし、私もそうだと思うんです。  そういった意味で、一応建設国債を頭に置きながら私は申し上げておるんですが、国債発行というのは、投資機会を提供しているという意味で は積極的に評価できる面があるのではないだろうかと思ったりするのですが、その辺はいかがでございましょうか。
  34. 荒木義朗

    参考人荒木義朗君) 栗林先生の御質問でございますが、今時にアメリカあたりからも、日本の貯蓄率の高いことにつきまして、それが貿易黒字の原因だというふうな指摘を受けておりますが、私はこれはどうも主客転倒の議論じゃないかと考えておりまして、やはり貿易収支の黒字によりまして相手国から所得が日本に移転をしているわけでございますから、当然その移転した所得につきまして結果として貯蓄率が高くなってくるというふうなことだろうと私は考えております。  特に日本の場合に貯蓄率は高うございますけれども、非常に急速に高年齢化をいたしておりまして、貯蓄の内訳を見てまいりますと、いわゆる預貯金というのはむしろ減りつつございまして、そのほかの金融資産がふえている。いろんな社会保障の問題もございましょうが、やはり高年齢化で自分に備えていくという点においては、貯蓄というものは決して人為的に抑え込むべきものでなくて、むしろ将来の発展のために奨励をしていいものだというふうに私は考えております。  先ほども一つの御指摘でございますが、投資機会がないんじゃないかというお話でございますけれども、私、手元に持っておりますもので見てまいりますと、確かに日本は貯蓄率が高うございますけれども、投資、純投資という面でもむしろ日本はアメリカに比べましても高うございまして、貯蓄率の高さ、投資の高さという点では、西ドイツよりも、両方ともやや高いというふうに私は理解をいたしております。そういう意味ではこの貯蓄率が高いということ、これがやはり願わくは産業内需振興とかあるいは在庫投資とかいうふうに逐次回っていくことが最も望ましいことというふうに考えているわけでございますけれども、特に投資機会が極めて日本の場合少ないというふうにも実は私考えておりません。
  35. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 日本が投資機械が少ないということを申し上げたんではなくて、いつでもよく国債性悪論で、余りよく言われたことがないんですが、考えてみたら、建設国債として限ってみるとある役割を果たしているという評価もできるのではあるまいかという御質問なんです。
  36. 荒木義朗

    参考人荒木義朗君) 冒頭でも申し上げましたけれども国債消化が非常に順調にいっているということが栗林先生の御指摘を裏づけるものだろうと思います。そういう意味では、現在非常に金融も緩和いたしておりますし、いろいろな発行条件、市場も整備されておりますので、非常に順調にいっているというふうに理解をいたしております。しかし、これがまた、先ほど御指摘のとおり、もし非常に金融環境あるいは経済事情が変わりました場合にはむしろネックになってくるという、両面あるというふうに私は理解をいたしております。
  37. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 大川参考人にお尋ねします。  お尋ねしたい内容は、取りとめのないことなんですが、建設国債も特例債も見た目は全く同じでありまして、国の借金という意味で何の変わりがあるわけではない。とはいうものの、これを分けて考えるというのは間違っているんだろうか。  なぜこんなことを申し上げるかといいますと、先ほど減債制度のお話が出ました。定率繰り入れを何とかしたい。ところが、特例債は発行しておきながら定率繰り入れができるか、これはどう考えてみましてもナンセンスそのものなんです。したがって、定率繰り入れができるためには特例債の発行をゼロにしないといかぬ。いかにも特例債と建設国債とは扱いが分かれてまいりまして、六十五年がどうかは別にして、まず特例債をゼロにすることがすべての出発点ではないかということでまず扱いが変わってくる。  建設国債はどうかといいますと、困りますのは、例えば建設公債で橋をつくったとします。問題は、公債発行にかかる費用というのは橋のコストになるわけですが、この橋というのはある便益を提供しているわけですね。したがって、その地方から便益に見合った税金をよこせなどというトラスチックなことを私は申し上げているんじゃないんですが、建設公債である公共事業をやって、当然その見返りとして便益に見合ったものを税金としていただく。それから、特例債の方は便益はないわけですから、これはあくまでも別途の税源で埋めなければいけない。  こう考えてまいりますと、これから日本の国債の管理をしていく場合に、どうも余り正面切った議論がなかなかしにくいのですが、どうも考えれば考えるほど、特例債と建設公債というのは分けていった方がいいのではあるまいか、こんな気がするんですが、こういった見方というのは間違っておりましょうか。ひとつ教えていただきたいと思います。
  38. 大川政三

    参考人大川政三君) 特例債とか建設公債とか、そういう分け方で日常行われて、割合疑問なしに我々も使っておるわけでありますが、基本的に言うと、赤字公債というのはあってはならないものなんですね。原則的に言えば、やっぱり経常的な経費は経常的な収入である租税で賄うべきだということで、赤字公債というものは私は余り認めることはしたくない。本来あるべきじゃないんだけれども、しかし、ごく短期、臨時的なことでどうしても租税収入が足りないという場合には、経常赤字を賄うための赤字公債というものをやむを得ず出すんだ、これはなるべく早く切らなくてはいけない、なくさなくちゃいけない、これが原則なんで、そうすると公債発行としてやや根拠のあるものは建設公債だけであるという私は考え方なんです。  ですから、建設公債特例公債それぞれに分ける考え方ということ、私はそういう分類を認めるということは、何か特例公債にもそれなりの理由があるようにちょっと受け取られますので、そういう意味で、私は、公債として発行すべきものだったら、建設公債的な、あるいは公共事業なり、あるいは収益事業なり、あるいは将来償還される可能性のあるようなそういう事業に限っては、先ほどの世代間の公平という理由からも公債発行が正当化されるでしょう。それから、長期間にわたって便益のあるような橋とか建物、その経費を全部税金で賄えということになると、そんな将来にわたって便益のあるものを今の世代だけで負担する必要はないということで、本当に必要な橋も十分な財源が貯えないようなおそれがありますから、そういう必要な橋とか建物をつくる、これを円滑にするためにも、そういう長期便益を与えるような財源公債を認めることが正当である。先ほど申し上げたように負担の公平性ということから、それともう一つ資源利用の効率性という観点から、建設国債というような名の公債発行は認められる。しかし赤字特例公債はこれは早急に解消させるべきだということで言えば、財政再建路線を決して見失ってはならないということになろうかと思います。
  39. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 ありがとうございました。
  40. 青木茂

    ○青木茂君 お三人の先生方に共通的な御質問を一項目と、それぞれ違ったお尋ねを一つずつお願いをしたいと思います。ただ、この共通の御質問は私が質問する直前に実は栗林さんの方で出ちゃったので、大川先生は結構でございます。  国の借金として全く同じで、実質的にはもう国民はわからないですね、建設国債、赤字国債。それをいろんなところで建設国債と赤字国債を峻別するメリットデメリットというようなものを、大川先生以外のお二人の先生にちょっと御意見を承りたいということが一つでございます。  それから大川先生には、先ほど積極財政の肯定論、否定論の中で五つずつメリットデメリットをお挙げになりました。その中でメリット一つデメリット一つ、先生が一番大きなものだとお考えになるものを一つずつお教えをいただければありがたいと思います。  それから水野先生には、もう増税なき財政再建限界だという御指摘がございましたけれども、それならば一体どうしなければならないんだろう かということで御見解をお教えいただければと思っております。  それから荒木先生には、これは富士銀行の頭取さんとなるとちょっとジェントルマンシップ過ぎてしまってあれなんですけれども、先生のお言葉の端々には郵貯に対する恨みというものがかなり出ていたと思います。もっと激しく言った方がいいんじゃないか。特に非課税貯蓄論、これなんかが、郵貯が聖域であるか伏魔殿であるかわかりませんけれども、私もそこら辺のところを、イコールフッティングというんですか、同じ扱いにしなければこれは税制として極めて不公平である、郵貯に対して税制のメスが入る、マル優的なもののメスが入るとすれば。案外水野先生は増税なき財政再建可能になったとおっしゃるかもしれない。そこのところをもっとはっきりとひとつ御見解をお述べいただきたいと存じます。
  41. 荒木義朗

    参考人荒木義朗君) ただいまの青木先生の御質問でございます郵貯の問題でございますけれども、私ども決して郵貯憎しという、民間との競合というだけじゃなくて、もっとやはり広い意味で郵貯のあり方について考えていただきたいということでございます。  私は、現在の日本の金融システムと申しますのは、昭和二十二年から二十六年にかけてでき上がったものでございまして、戦後の復興には非常によく働いた機能でございますが、もう既に世の中の情勢が随分変わりまして、民間の方の資金も充実してまいりましたし、そういう意味では官業は民業の補完に徹するという基本だけはぜひ守っていただきたいというふうに考えているわけでございます。  それからまた、金利の決定につきましても、民間の方でも大口預金から逐次小口預金の自由化が進んでまいりますが、自由化と申しますのは、やはり一つの側面は、市場性原理の導入ということだろうと思います。それからもう一つの側面は、自主性の尊重並びに自己責任原則を追求するということに尽きると私は考えておりまして、そういう意味では、金利の決定につきましても民間に追随していただくというふうなこともぜひやっていただきたいと思っており、ます。  それからまた同時に、商品の違いで、定額郵便貯金の問題につきましても、とても民間の論理ではできない商品でございます。こういうふうなものの見直しもぜひお願いをしたいと思っておりますが、特に先生のお話しございました少額貯蓄非課税問題につきましては、私どももいろいろ委員会その他で少額貯蓄非課税制度の見直しをというふうな、見直しを前提としたようないろいろな御意見出ていることも承知をいたしておりますが、何と申しましても、国民あるいは庶民の心の中に税に対します不満と申しますのは現にあることはもう事実だと思います。  そういう意味で、三百万円の非課税貯蓄についてぐらいはぜひ残してもらいたいという声が非常に強うございますし、私の自宅にも随分投書が参ります。新聞の読者欄見てもそういうような感じがいたします。そういうふうな国民のニーズがあるものにつきまして、私どもはそれについて十分こたえていかなきゃならぬという意味におきまして、ぜひこの非課税貯蓄制度につきましても、廃止を前提とするんじゃなくて、存続を前提として広い意味での御検討の中でお願いをいたしたいというふうに考えておりまして、できればぜひ残していただきたいと実は今でも考えております。  私は、税の問題につきましては素人でございますけれども、少なくとも税制というものは金融資産間の中においてはニュートラルでなきゃならぬというふうに考えておりまして、そこにニュートラルでない場合には税制に伴う金融資産のシフトが起こる。それはやはり避けるべきじゃないかというふうに考えている次第でございます。
  42. 青木茂

    ○青木茂君 建設国債
  43. 荒木義朗

    参考人荒木義朗君) 建設国債につきましても、先ほど栗林先生のお話もございましたけれども、確かに社会資本の充実には非常に、プラスになっている点もございます。現在、社会資本の充実について見てまいりますと、まだまだ西欧諸国に比べて少ない点がございますから、これはもう非常に大事な財産としてじっくりステディーに、確実に伸ばしていくということが必要だろうと思います。そういう意味でも、やはり今後の財政の出番を早くつくり上げるために、今はここでそう安易な増発をすべきじゃないというふうに私は考えているわけでございまして、非常に大事な、しかも今後非常に必要なことだというふうに考えております。
  44. 水野正一

    参考人水野正一君) 建設公債特例公債の区別でありますが、これは法的な根拠の違いによるわけですけれども、実態的には、先ほど大川先生がお答えになりましたことに同感でありまして、特に負担の世代間の公平という観点からしますと、建設公債の場合は、それによって何らかの公共資本ができる。それの便益というものが将来長期にわたって便益が生ずる。将来にわたって、長期にわたって生ずる便益に対してそれの建設の負担をその現代世代、そのときの人たちだけで負担するよりも、公債というものを発行して、そしてその公債の利払いあるいは将来にわたる償還、それを通じてその便益を受ける期間にわたっての世代がそれを負担していくというのが、負担のあり方としては非常に合理的な負担の形態であります。  特例公債の方は、これは経常的な支出、したがって、現在生ずる便益というものの負担を逆に今度は将来の人たちにもその負担をさせるということで、負担と便益の対応という点からいくと不合理な性格のものである。負担と便益の対応という観点からいきましてもそういう区別ができまして、建設公債にはそういう合理性あるいは妥当性というのがありますが、特例公債にはそういうものが逆にないということが言えます。ですから、同じ公債発行というものについて、一概にこれは不健全でというわけにもいかないわけで、建設公債についてはそれを逆に是認する、あるいは積極的に建設公債公共事業とか資本的支出についてはそれを建設公債で賄うのが本来の財政のあり方だという、こういう考え方もあり得るわけであります。  これは負担と便益の対応の観点からですが、公債発行の問題は、そのほかマクロ経済的な観点であるとか、そのほか財政の硬直化の問題とか、そのほかにもそれを判断する観点というのは幾つかありまして、そういう総合的な立場から公債発行の是非論というのは考えなきゃいけないわけでありまして、負担と便益の対応から建設公債が妥当性があるということから、直ちに建設公債発行してやるべきだという結論にはならないと思うわけです。しかし、一応両者は区別して考えるということについては十分理由があるというふうに考えます。  それから、増税なき財政再建の問題でありますが、私は昨年の衆議院の予算委員会でも、そのときにもう既に申し上げたわけであります。しかしどうもその後政治情勢その他を見ておりますと、私の言っているようなことは一種の机上の空論のようなもので、余り現実性のない意見だというので、大分自信を失って言うのをやめようかと思っていたんですけれども、どうもしかし、財政のその後の動きを見ておりますと、逆にさらに自信を持ってきたという感じもするわけで、また、政治的にはこういうものが非現実的な意見であろうとも、私は大学におりますので、そういう者の立場として、やはり言うべきことは言った方がいいというので申し上げているわけです。  それで、具体的にはこれは、やはり財政再建というのは、特に特例公債からの脱却でありますが、それを目標年次をいつに置くかによってかなり違いますけれども、さしあたり、政府が公約しているような六十五年という目標を置いて考えたときには、それともう少し先の展望考えましても、歳出削減だけでやろうと思えばできないことはないけれども、かえって財政の姿としては望ましくない。歳出削減は今までのように十分努力するけれども他方でやはり増税という手段で歳入 の方の道を講じて、その両者で相まって着実に財政再建特例公債から脱却していくべきだという考え方をとっております。ただ、それがなかなか難しいということは十分承知しているわけですけれども
  45. 大川政三

    参考人大川政三君) 私への質問は、先ほど公債発行便益と費用の両方に分けて五つばかりずつ挙げたが、一体その中でどれが一番重要と判断するのかというような御質問と思いますが、正直なところその個々の効用なり個々の費用についてどの程度重要性を判断するかは、実は先生方にお返ししたいような性質の問題ではあるんです。  ただ、重要かどうかということを離れて、今公債発行メリットとして目につきやすい、理解されやすいものは何だというふうにもし変えてお答えさしていただければ、公債発行を是とするような理由としては、もう既に問題が出ておりましたように、長期にわたって便益を与えるようなそういう経費を賄う場合には、その負担を長期にわたって分散させる意味公債をひとまず発行し、その元利償還は後々の世代にも分散させる、そういうようなケースの場合であれば公債発行も承認されるであろう。ただし、今水野さんおっしゃったように、かといって、建設的な経費に充てるんだったら無制限公債発行ということになると、これは公共事業費がなんかをふやせばふやすほど公債発行がふえますから、それにはやっぱりまた別な原理からの抑えが必要かと思います。  そういう意味で、もし是とする方の一つだけわかりやすいのを挙げるとすれば、今の問題ですが、ただ、長期便益にわたるものを公債発行によって将来世代にも負担させる、これは公平だということがまた割合簡単に説明されているような嫌いがあります。それは本当に将来の世代にわたって公平な負担になるかどうかは、その公債消化の仕方いかんによるわけでございまして、現在のように幾らか遊休資金があって割合公債発行市中消化がスムーズにいくような場合は、これは将来世代との間に割合負担が分散すると思いますけれども、もしそういうようなことが実現されなくて、インフレ的な方法で公債発行が賄われていくようなケースが出てくれば、これは将来世代の負担にならないんですね。もうまさに現在世代が負担することになるんですね。インフレという形で購買力をどんどん落とすような形で公債が出ていきますね、この場合は、公債発行して賄ったからといって決して負担の公平にならないですね。その点、公債発行消化の仕方いかんで公平かどうかも分かれてくるということも一つちょっとついでに補いたいと思います。  それで、それはわかりやすい便益はそうなんですが、じゃ、わかりやすい費用ということであれば、一番わかりやすくいえば、最近のような公債発行残高、このように累積した結果財政は硬直化し、利払い費負担、これが歳出項目で最大の歳出項目になっていることですね。社会保障費をも上回るほど構成化が高まっておる、こういうようなことは大変国民にとってもマイナス。政府にいろいろやってほしい、先ほど言ったように、いろんな要求があるのが、それが公債発行を積み重ねた結果これだけの、そういうことが遮断されて国民の要求が賄えない。これが今本当に目に見える形で出てきておるものですから、この点をまた特に強調したいと思います。
  46. 山本富雄

    委員長山本富雄君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々には、御多忙中のところ御出席をいただき、貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。委員会代表して厚く御礼を申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十六分散会