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1986-05-13 第104回国会 参議院 大蔵委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年五月十三日(火曜日)    午前九時六分開会     —————————————    委員異動  四月二十五日     辞任         補欠選任      杉元 恒雄君     福岡日出麿君      上野 雄文君     鈴木 和美君      菅野 久光君     赤桐  操君      安永 英雄君     竹田 四郎君  四月三十日    辞任          補欠選任     太田 淳夫君      桑名 義治君  五月六日    辞任          補欠選任     村沢  牧君      上野 雄文君  五月七日    辞任          補欠選任     吉川  博君      沖  外夫君     上野 雄文君      村沢  牧君     栗林 卓司君      伊藤 郁男君  五月八日    辞任          補欠選任     宮島  滉君      大木  浩君     村沢  牧君      瀬谷 英行君     近藤 忠孝君      安武 洋子君     伊藤 郁男君      栗林 卓司君  五月九日    辞任          補欠選任     大木  浩君      宮島  滉君     沖  外夫君      吉川  博君     瀬谷 英行君      村沢  牧君     安武 洋子君      近藤 忠孝君  五月十二日    辞任          補欠選任     赤桐  繰君      稲村 稔夫君     鈴木 和美君      高杉 廸忠君  五月十三日    辞任          補欠選任     稲村 稔夫君      赤桐  操君     高杉 廸忠君      鈴木 和美君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         山本 富雄君     理 事                大河原太一郎君                 藤野 賢二君                 矢野俊比古君                 竹田 四郎君                 多田 省吾君     委 員                 伊江 朝雄君                 岩動 道行君                 梶木 又三君                 河本嘉久蔵君                 中村 太郎君                 藤井 孝男君                 藤井 裕久君                 宮島  滉君                 吉川  博君                 稲村 稔夫君                 高杉 廸忠君                 村沢  牧君                 鈴木 一弘君                 近藤 忠孝君                 栗林 卓司君                 野末 陳平君                 青木  茂君    国務大臣        大 蔵 大 臣  竹下  登君    政府委員        大蔵政務次官   梶原  清君        大蔵大臣官房総        務審議官     北村 恭二君        大蔵省主計局次        長        保田  博君        大蔵省主税局長  水野  勝君        大蔵省関税局長  佐藤 光夫君        大蔵省理財局長  窪田  弘君        大蔵省銀行局長  吉田 正輝君        大蔵省国際金融        局長       行天 豊雄君    事務局側        常任委員会専門        員        河内  裕君    説明員       経済企画庁物価       局物価政策課長   斉藤 寿臣君       厚生大臣官房政       策課長       岸本 正裕君       通商産業省産業       政策局物価対策       課長        殿岡 茂樹君       中小企業庁計画       部下請企業課長   高梨 圭介君       労働省労政局労       政課長       澤田陽太郎君    参考人        日本銀行総裁   澄田  智君     —————————————   本日の会議に付した案件理事補欠選任の件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和六十一年度の財政運営に必要な財源確保  を図るための特別措置に関する法律案内閣提  出、衆議院送付)     —————————————
  2. 山本富雄

    委員長山本富雄君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨十二日、赤桐燥君及び鈴木和美君が委員辞任され、その補欠として稲村稔夫君及び高杉廸忠君選任されました。     —————————————
  3. 山本富雄

    委員長山本富雄君) 次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 山本富雄

    委員長山本富雄君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事竹田四郎君を指名いたします。
  5. 山本富雄

    委員長山本富雄君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和六十一年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案の審査のため、本日の委員会に、日本銀行総裁澄田智君を、また明十四日の委員会に、国債募集引受団代表富士銀行頭取荒木義朗君、名古屋大学教授水野正一石及び東京国際大学教授大川政三君、以上三名の方々をそれぞれ参考人として出席を求め、御意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 山本富雄

    委員長山本富雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  7. 山本富雄

    委員長山本富雄君) 次に、昭和六十一年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案議題とし、政府から趣旨説明を聴取いたします。竹下大蔵大臣
  8. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ただいま議題となりました昭和六十一年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  御承知のとおり、我が国財政を取り巻く環境には一段と厳しいものがあります。このため、政府は、引き続き財政改革を一層推進することとし、昭和六十一年度予算編成におきましても、特に歳出の徹底した節減合理化を行うことを基本とし、あわせて、歳入面についてもその見直しを行い、これにより公債発行額を可能な限り縮減するよう最大限の努力を払ったところであります。  まず、歳出面におきましては、既存の制度、施策の改革を行うなど徹底した節減合理化を行い、全体としてその規模を厳に抑制することとし、その結果、一般歳出規模は前年度に比べ十二億円の減に圧縮されております。これは昭和五十八年度以降四年連続の対前年度減額であります。  他方、歳入面におきましては、税制について、その抜本的見直しとの関連に留意しつつ、税負担公平化適正化を一層推進する等の観点から必要な見直しを行い、また、税外収入についても、可能な限りその確保を図ることといたしております。  しかしながら、これらの措置をもってしてもなお財源が不足するため、昭和六十一年度においては、特例公債発行を行うこととするほか、国債費定率繰り入れ等停止などの措置をとらざるを得ない状況にあります。  本法律案は、以上申し述べましたうち、特例公債発行等昭和六十一年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置を定めるものであります。  以下、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、特例公債発行についてであります。  昭和六十一年度の一般会計歳出財源に充てるため、予算をもって国会の議決を経た金額の範囲内で特例公債発行できることとしております。  第二に、国債費定率繰り入れ等停止についてであります。  昭和六十一年度における国債の元金の償還に充てるべき資金の一般会計から国債整理基金特別会計への繰り入れについて、国債総額の百分の一・六に相当する金額繰り入れ及び割引国債に係る発行価格差減額年割額に相当する金額繰り入れは、行わないこととしております。なお、昭和六十一年度においては、単に定率繰り入れ停止したままでは公債償還財源が不足するという事態に立ち至るので、別途国債整理基金残高等を考慮した必要最小限予算繰り入れを行うこととしているところであります。  第三に、政府管掌健康保険事業に係る繰り入れ特例についてであります。  昭和六十一年度における一般会計から厚生保険特別会計健康勘定への繰り入れについては、健康保険法に規定する国庫補助に係る額から千三百億円を控除して繰り入れるものとするなどの措置を講ずることとしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。  なお、本法律案は、その施行日を、「昭和六十一年四月一日」と提案しておりましたが、その期間を経過しましたので、衆議院におきまして「公布の日」に修正されておりますので、御報告いたします。
  9. 山本富雄

    委員長山本富雄君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  これより直ちに質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  10. 竹田四郎

    竹田四郎君 まず最初に、根室市の花咲港の問題についてお伺いしたいと思います。  今開港されているのは、根室市は根室港だろう、こういうふうに思います。しかし、最近、根室から太平洋へ出る珸瑤瑁水道というのがソ連の境界線によって分断されている、あるいは浅瀬が多いというようなことで、かなり窮屈な航行を余儀なくされているし、それから、冬季は流氷等根室港はほとんど埋まってしまうというようなこともありまして、地元根室市から、ぜひ花咲港をひとつ新しく開港してくれないか、こういう要請が大蔵省の方にも出ているだろう、こういうふうに思います。  確かに北洋漁業の最近の状況からいいまして、いろいろ困難がこちらの方に出ているとは思いますけれども、これらの問題については既に政府相当対応をなさっているようでありますけれども花咲港の開港ということになれば、これは港の施設もいいし、また冬の港としての環境もいいわけでありますから、何とかその辺は御検討をいただいて、開港ができれば、そうした地域太平洋へ冬も開いているというような形ができればいい、こういうふうに思っておりますが、どんなふうなお考えでしょうか、お伺いをしておきたいと思います。
  11. 竹下登

    国務大臣竹下登君) この花咲港の開港という御要望につきましては、たびたび私も関係方面からお話を承っておりますが、幾らか地理的な問題もございますので、この際事務当局からまずはお答えさせていただきます。
  12. 佐藤光夫

    政府委員佐藤光夫君) ただいま竹田委員質問のとおり、また大臣が答えましたとおり、私ども花咲港の開港につきまして種々地元からの要望があることは承知をいたしておるわけでございます。  開港と申しますのは、一々税関長の許可なくして自由に外国貿易船が入港できる港のことであることも申し上げるまでもないわけでございますが、それだけに、そこには税関官署を設置いたしまして税関職員を配置することにまた相なるわけでございます。したがいまして、それにふさわしいと申しますか、それに足るだけの外国貿易量があるかないか。具体的に申し上げますと、外国貿易船の入出港の隻数がどうであるか、あるいは輸出入の状況がどうであるか、港湾施設状況がどうであるかというようなことをチェックいたしまして開港の是非を決めさせていただいている、どういう状況でございます。  そうした基準から見ますと、残念ながら、現在のところ、この花咲港は私どもの目から見まして開港に指定するに足りるほどの外国貿易量が十分あるとは申し上げにくい状況であるわけでございます。御指摘のような北方領土問題等もあるわけでございますが、それらを考慮に入れましても、なかなか十分な貿易量が既に存在するというわけにはまいらないような状況であることは事実でございます。したがいまして、私どもといたしましては、この花咲港の開港の問題につきましては、今後、今申し上げましたような貿易の実態がどうなっていくか、その推移を十分見きわめながら検討させていただきたい、かように考えておるような段階でございます。
  13. 竹田四郎

    竹田四郎君 大蔵大臣、これは確かに今そういうような問題もありますけれども、しかし、今までのような、魚をとるという地域から、市の方でも今度は水産加工あたりを中心にお考えのようではございますから、確かに北側と南側ではいろんな条件がかなり違うわけでありますし、特に加工ということになれば冬などもやはり利用が多くなると思いますから、これはぜひひとつ御検討をいただきたい、こういうように思いますが、今後検討を続けていただけるでしょうか、どうでしょうか。
  14. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今後の情勢の推移を見ながら十分検討をさせていただきたいというふうに私も思っております。
  15. 竹田四郎

    竹田四郎君 きのうあたりからまた一段と円高になってまいったわけでありますけれども、ついに百五十円台に突入をするという事態でありますけれども、これに関連して、どうなんでしょうか、けさ既に閣議があったわけでありますが、この間から総理も、必要があれば協調介入を申し込むというような答弁もあったわけでありますけれどもけさ閣議では何かこれに対して御決定になったんでしょうか、どうでしょうか。
  16. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今の閣議でございますが、実は大蔵委員会の時間も迫っておりましたので、一般案件が終了いたした後一応閣議を閉じまして、それから閣議のそのままの席で三塚運輸大臣から御発言がありました。総理もたびたび言っておられるように、今日の状況は急激に過ぎる、こういうことを言っておられる。それぞれの閣僚がその立場に立って十分な対応もしていかなきゃならぬと思う。いわゆる為替相場自身の問題は、これは閣議で論じるべきことでもないであろう。しかし、今後のいわゆる円高中小企業対策を初めとするもろもろの対策については経済企画庁でおまとめになっておることに我々も協力にやぶさかでないから、可能な限り急いでそういう作業を進められるように希望する、こういう発言がありまして、それを受けて内閣官房長官から、自分も急ぐべきだという考えは持っておりますと。それから総理がそれを引き取られまして、サミット前からそういう指示をして、私も様子を見ておるが、作業もかなり今詰まっておるようであるから、可能な限り早くと言われましたか、経対協、経済対策閣僚協議会を開いて議論をしなきゃならぬと思っておる、というところでこちらへ上がってきた。  後藤田さんから僕にちょっと個人的に話がありまして、大分進んでおると思うが、きょう我々は国会だけれども大蔵省事務次官と通産省の事務次官経済企画庁事務次官とを呼んで様子を聞かれたらどうですか、こういうふうに申して、そしてここへ来たということでございます。
  17. 竹田四郎

    竹田四郎君 日銀総裁もきょうはお見えいただいたわけでありますけれども、一般的に円高傾向といいますか、余り細かい話はなさる必要はなかろうとは思いますけれども、一般的に円高傾向というのはどういうふうになっているんだろうか。非常にその辺が国民にとってよくわからない点でありますけれども、どんな方向にどんなふうに向かっていくかということについて日銀総裁からもお話をいただきたいし、経企庁はお見えになっておりませんか党もし大蔵省でわかれば大蔵省でも結構でございますが、その辺の見通しをこの辺で明らかにしていただきたいなと、こういうように思います。
  18. 澄田智

    参考人澄田智君) 為替相場見通し、現状もそうでございますが、殊に見通しというようなことにつきまして、私のように市場に直接関係している立場においてこれを述べるということ、これは市場に不測の思惑や憶測を生ずる、それで相場が動くというようなことが非常に多いわけでございまして、したがいまして、見通しというようなものにストレートにお答えするということは御容赦願いたい、こういうふうに思うわけであります。  ただ、最近の相場基調には思惑的な要素が非常に多い、そして非常に不安定で急速にすぎる、こういうふうに考えております。長い目で見た円高基調というものは対外不均衡是正の上において望ましいことであるというふうにこれは常々申しているわけでございますけれども、当面の動きというのは余りに急激でございまして、これは対応するという意味においても極めて困難なことでございます。したがいまして、何としても安定をするということが最も望ましい、かように考えておる次第でございます。
  19. 竹田四郎

    竹田四郎君 総裁は、我々の前に来ると為替相場のことについては言っちゃいけないと、こういうようにおっしゃっているんですが、ところがほかではぼんぼんおっしゃっておられるわけですね。この間も、新聞紙上でしか私ども知りませんけれども、百六十五円なら日本経済は耐えられるという御発言新聞は書いてありました、これは真意がどうか私わかりませんけれども。それをおっしゃった途端に六十二円ぐらいになっているわけですよね。  私はきょうもあえて、日銀総裁ともあろう方に為替見通しはどうだなんて聞くつもりは本来はないんです。しかし、どうも最近は、あなたを含めて首脳と言われる人が為替相場についていろいろ、上がるだ下がるだ、上げ過ぎだ何だかんだということを言い過ぎるんじゃないですか。こういう発言が、大蔵大臣もそうでありますけれども、大変投機的だとか思惑が走っていると言うんですが、そういうものをむしろ積極的におっしゃっているのは首脳と言われる方じゃないでしょうかね。私はいつもこれ最近不愉快に実は思っているわけです。ほかの関係のない方がおっしゃられることであればこれはまあいいと思うんですけれども、そういうことに非常に影響のある方々お話しになっているというのはどうも、その方がむしろ乱高下を呼び込んでいるというふうに思うんです。  大蔵大臣どうなんですか。あなたも時々いろんなことを言われる。総理に至っては、経済を知っているのか知らないのかわかりませんけれども、相当勝手なことを言われる。こういうことでは、もう為替相場の安定などというものはもともと政治が突き崩している、こういうふうにしか私は思えないんですが、この辺はどうなんですか。日本財政経済の大元締めであるお二人にこのことをはっきり聞いておかなければ、ますます乱高下相場へ行ってしまうんじゃないか、こういうふうに思うんです。
  20. 澄田智

    参考人澄田智君) まず私から御指摘の点についてお答えをさせていただきます。  御指摘の点は、これは先週の五月七日の記者会見における私の発言が記事として報道されたものを指しておられると思うわけでございますが、この報道は私の本意を正確に伝えていなかったということで、私も遺憾に存じている次第でございます。  私が申しましたことは、相場がファンダメンタルズを反映しているものである場合、しかもその相場が安定をしているというようなことであるならば、内需への転換やあるいは構造改善といった、そういった努力を伴いながら日本経済全体としてはこれに耐えていくことができると思う、こういうことを言った次第でございます。質問も、日本経済は耐えられるのか、こういう質問でありましたので、そういうふうに答えた次第でございます。これは私としては常に申している一般論を申したわけでありまして、もとより特定の具体的な数字を示しての相場水準ということについて触れた答えではなかったわけでございます。  この点は当時の状況を申し上げさせていただいた次第でございます。
  21. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私自身も非常に感じておりますのは、為替相場に関する質問があったときには一切お答えを御遠慮するという方がむしろいいんじゃないか、こんな感じが、これはこの間のサミットのときの大蔵大臣会議のときにも私からそのように話ししてみました。そうしたらみんなが、そう言っても、安定が大事だというのはだれも思っているんだから。安定といいますと、今の価格で安定かと、こういう今度はまた質問になりますので、したがって、これから為替相場市場がお決めになることですから、やはり私どもはそれに言及はしないことに国際的な約束をしておりますというふうにお答えした方が一番いいんじゃないかというような話をしてみましたが、それは単なる話で終わりました。  したがって、きのう見ましても五十九億ドルぐらいでございますから、ノーマルのときの倍ぐらいとでも申しましょうか。したがって、大変な膨大の量が動いておるときに、我々が言い過ぎるのか、あるいはそういう少しの動きに投機が反応し過ぎるのか、どっちかな。  例えて申しますと、話が長くなって申しわけありませんが、きのう百五十九円九十九銭、一時的に瞬間で出ましたら、それでいいかといいますと、百六十円から見れば一銭の話ですけれども、私もふと反省してみまして、ニューヨークで一月でございましたか、二百一円のときに、百九十九円になったらどうするかという話があったから、それを一つの刻みを決めて議論すべきものじゃなくという話をしましたら、それが百九十円台許容発言、こういうふうにとられる。だから、きのうの場合も、瞬間的に百五十九円九十九銭があったときにも、もう今度は相手の方で、一銭、二銭の話ですから聞くのもいかがかと思いますけれども、しかしどう思いますかというようなことになりますから、結局一切お答えしないということにしましょうというのでやっと合意に達した。  こういうことでございますので、我々の発言はあくまでも、国会でも十分、遠慮しながらというか、いろんなことを配慮しながら聞いていただいているぐらい本当はみんなが良識を働かせているときに、関係者発言は特に慎重であるべきである。したがって、可能なことならば、会見等においては相場観は一切言わないことが一番いい、こういうふうな発言にしようかなと思ってかれこれ考えておるところでございます。
  22. 竹田四郎

    竹田四郎君 日銀総裁、今のお話真意のほどはわかったんですが、しかし新聞に百六十五円というのがぽんと出ているわけですね。今の総裁発言には百六十五円なんという数字は出ていないわけですよね。あの当時はもう少し、私は七円か八円ぐらいのころじゃなかったかと思うんですよ。そのときにぼんとそれより上へ出ちゃう、高い値段が出るというのはどうもよくわからないんですね。もしそういうことがあったら、もう少し発言を訂正させるなり何なり強い態度でいかないと、それは何か新聞記者の方が悪いというような発言ですけれども新聞記者新聞記者である程度想像質問もなさるだろうしするんですから、その辺はもう少し私は慎重であってほしいと思います。  それから、大蔵大臣の御発言ですが、確かにそれはそうですが、もう少し円高をとめていくというような具体的な対応がないから私は結局そういうことになっちゃうと思うんですね。思惑にどんどん片方は乗っていっちゃう。だから対応する政策というものをもっとぴしっとしっかりしたものを早くつくる、このことがどうしても今必要じゃないですか。そのために例えば前川さんを座長にして経構研の報告をつくらせたり、あっちこっちでそういうものをやっているということは、円高対応する対策を早く打ち出すという、それがどうも欠けているんじゃないでしょうか。  例えば、総理にしても、経構研の報告は私の個人的に受けた報告でありましてといって、すぐアメリカへ持っていってしまって、細かいやつを、固めというのか根回しをしっかりやってない。個人的なものに還元されている、それが思惑を呼んでいる、そんなふうに私は思うんですけれども、もう少しそういう点では政府為替相場に対する具体的な経済財政政策というものがなければ、どんどん思惑だけが走っちゃうということになりませんか。どうですか、その辺は。
  23. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに過剰反応といいますか、反応のし過ぎといいますか、そんな感じは私も持っております。  前川レポートというのが出ました。こうなりますと今度は国会では、八条機関でもないものをあたかも金科玉条のごとくと、こういう質問を受けますし、また党内に行くと、各部会その他の手続が終了していないのに私的諮問機関のものがひとり歩きするということに対してはいかがかということになりますと、外目に見ると何だかトーンダウンした、こういうことでございます。これは実態がそうであると思っております。  したがって、きょうの三塚君の発言にありましたのが、今竹田さんおっしゃったのと考えの土台は別として大体同じことを言っているんじゃないかという感じで今承っておりました。せっかく前川さんのレポートを参考にしてこれの推進会議というのができた。そうなれば、それがもっと動かないことには、いわば思惑のみが先行して反応が過剰になってくる。これは私も同感でありますので、たまたまけさ、土台の違いは仮にあったといたしましても、同じような鞭撻を受けたんだなというふうな感じで受けております。
  24. 竹田四郎

    竹田四郎君 これは私ども新聞で見るしか情報はないわけでありますけれども、この間のサミットでも、必要があれば協調介入をするということを再確認した、こういうことで、中曽根総理は、その時期がもう来ているんじゃないか、こういうことですが、せっかくサミット前からの動きでも、それから竹下さん、澄田さん、去年の秋から大変御苦労されて、G5とかというような会合も行われてきたわけでありますし、あるいはOECDの会合等もあったわけですけれども、去年の九月の約束というのはこれはどういうことだったんですかね。今の日本には適用しない、そういうG5の会合だったんですか。今度G7というのをつくるそうでありますけれども、それはちょっと違うにしても、日本というのは対象外になっているんですかね。  私どもはこの前、まあ私もあのときにヨーロッパへ行ってG5の結果は大変驚きましたけれども、とにかく介入して安定するということがG5の一つの話し合いではなかったかという気がするんです。そのG5が二回ぐらいはワークしたように私も思いましたけれども、それ以後はちっともワークしていないような気がして、むしろ円だけが孤立され、日本だけが何か孤立してしまってどうにもならないというような感じがするんですが、G5というのはこういうときには余り役には立たない話し合いですか。
  25. 竹下登

    国務大臣竹下登君) G5というのは、本当これは難しい話でございますのは、大体G5というのは公式にはないという建前のものがたまたまあった。まあ表現はちょっと適切でないかもしれませんが。一つだけありますのは、ベルサイユ・サミットのところで、五カ国がSDRの構成国だから、したがって時に集まってサーベーランスをやりなさい、これはあります。しかし、サーベーランスをいろいろやりましても、当然出てくることは、その中に為替の問題等も議論として出てくる。これがやや顕在化してきましたのは、最初は五カ国でやりますとわからぬようにできたのでございますけれども、ボルガーさんが七尺ぐらいある人ですから、あれが世界じゅう歩くと物すごい巨人が一人来るというのでわかるようになってしまいまして、それで本格的にわかったのが去年の一月のG5でございます。  その際は、どちらかといえばヨーロッパ筋からドル高に過ぎるではないか、こんなような発言がございました、我々もそうでございましたが。それで結局その後いろいろアメリカも考えられて、そして九月のG5になって、あのG5の決まったのを読んでみますと、今竹田さんがおっしゃいましたように、今のドル高は必ずしもファンダメンタルズを反映していないということですから、あそこで話し合ったのは、いわゆるドルの独歩高に対する共同行動の話をしたわけです。しかし、それ以前にウィリアムズバーグ・サミットの中に、一般論として、どの通貨を指したという意味でなく、いわゆる協調介入あるべしという申し合わせがあるわけであります。  したがって、先般のサミットの場というのはそこのところは複雑でございまして、私もいろんなことをPRしようと思いましたけれども、PRするのもまた必ずしも適当でないと思いましたのは、したがって、サミット政策調整、そしてウィリアムズバーグ・サミット以来の申し合わせ、これは確認ができるわけですけれども、個別の通貨についての話ということになりますと、これは実際中央銀行さんと一緒で話した場合でないと率直に言って全く機能をしないという性格のものでございますので、サミット為替通貨の安定は議論されますが、いわゆる相場の行く末というものが議論される環境に本当はサミットはないわけでございます。  したがって、あそこで決まったことは、これからサーベーランスをやりなさい、それは七カ国でやりなさい、しかしSDRの通貨国だから五カ国でもやりなさいということが、すなわちG5もある意味においてオーソライズされた、こういうことになったわけでございますので、その後のG5というのはまだもとより行われておりませんが、G5とはあくまでも五カ国大蔵大臣、中央銀行総裁の集まり、こういうことで、これからどういうふうな形で運営するかを近々代理会議で相談をしてもらおうと、こういうところまでが現在の状態でございます。  しかし、ウィリアムズバーグ・サミット以来、またことしで見れば、一月のロンドンG5以来、通貨当局あるいは我々緊密に各国と連絡をとるという状態にはありますし、連絡はとっておるところでございます。
  26. 竹田四郎

    竹田四郎君 これは御両者に伺いたいんですが、総理協調介入をこの間も言われているわけですが、そういう時期か時期でないかというようなお考えはどうなんですか。価格は別として、乱高下の問題というのは私あると思うんですよね。その辺は国民もいらいらしているし、恐らく今後の日本経済にも非常な大きな影響が乱高下の問題はあるだろうと思うんですが、その辺の安定化について何か申し入れるというようなことはないですか。  きょうの新聞を見ますと、ロン・ヤスの関係だから、ロンの方も何かするだろうなんという楽しそうな記事も実は出ているわけでありますけれども、その辺はどうなんですか。
  27. 澄田智

    参考人澄田智君) 介入書体につきまして、協調介入もそうでございますが、単独介入につきましても、私ども、介入をしたとか、どういう段階でどういうふうに介入するとか、そういうふうなことについては、これまた市場との関係がございますので申し上げられないわけでございますが、ニューヨークG5以前も連絡は十分にとっておったわけでございますが、とりわけニューヨークG5以降各国の為替市場状況、それに対する対応というような点につきまして、毎日極めて緊密な連絡をとってきておる次第でございます。そういう連絡などの間に、為替市場の不安定というような状況等についてはお互いに認識をいろいろ話し合う、こういうような状態を続けておる次第でございます。
  28. 竹田四郎

    竹田四郎君 経企庁でおつくりになった経済見通しというのはたしか二百四円くらいだったと思うんですがね。それから比べますと、どこで安定するかわかりませんから何とも言えないわけですが、少なくとも百六十円台ということであろうと、こう思うんですが、この百六十円台、まあ真ん中をとって百六十五円というくらいにしますと、現在の情勢で、その後に総合経済政策があって、それが幾らかGNPを引き上げたと、こういうふうなお話ですが、百六十五円ぐらい、どんな計算されているかわかりませんけれども政府見通しですね、名目五・一、実質四・〇ですか、これは大体達成できるんですかどうですか。  それは六十一年度の税収にも関係するし、いろいろな財政問題にもその見通しいかんによっては対応を迫られることにもなるわけでありますが、その辺はどうなんでしょうか。
  29. 竹下登

    国務大臣竹下登君) あるいは総務審議官からお答えすることになろうかと思いますが、確かにあれをつくりましたときは、竹田さん御指摘のとおり二百四円ということでございます。  その数字をどういうふうにしてどこのところへインプットするかという技術は私は不敏にして理解しておりません。が、その後のたび重なる経済対策等をやり、そして具体的に出たのが先日の前倒し率七七・四ということ。それから、恐らくあしたかあさってに為替差益還元でございますか、電気、ガスが出るだろうと思います。それと原油価格が、これも端数わかりませんが、二月末が二十七ドルで、二十二ドル台が三月末で、十六・八か何かがきのう発表になった四月末。今はどうも十四とか五とかになっているようでございます。  そういうものも加えてどういうふうに計算するかということになりましょうが、私の感じ方では、原油価格の下落とかいう問題の企業収益への影響等から考えますと、四%というものはまず妥当な線ではなかろうか。いわゆる内需が四・二で、外需で三角〇・二にして四・〇というのでございましたから、OECDの分を見ますと、四・二五ぐらいに内需を見て、そのかわり一・〇外需の三角見たりしておられますが、まあ急激な変化がありますものの、大筋の傾向としては四%というのは今のところ下方修正をするという状態にはないじゃないかな、こう思っております。  少し専門的なインプットの仕方なんかわかりませんので、総務審議官の方がお答えをした方が適当だと思います。
  30. 北村恭二

    政府委員(北村恭二君) 全体の経済の動向とそれに対する最近の円高傾向ということにつきましては、基本的な考え方は今大臣お答え申し上げたとおりでございますが、この円高経済に及ぼす影響というのは非常に複雑な面がございまして、当面いわゆる輸出等に大きな影響があるということは事実でございまして、これがいわゆる円高デフレということで現象がいろいろ出ているわけでございますけれども、ただ、これマクロの全体の経済ということで、かつ若干の時間を見て全体の影響ということを考えますと、いわゆる円高価格効果というものがございまして、これがいわゆる実質所得の増ということで経済のプラスに働くという面があるわけでございます。経済企画庁で若干試算いたしましたようなことで、価格効果年間三・五兆円といったような試算などもいろいろ前提を住いて考えますと出るわけでございます。  そのほか、今大臣等お触れいただきましたように、いろいろとそのほかに、円高以外で、いわゆる原油価格の低下の問題あるいは再三にわたる公定歩合の引き下げに伴う全体の金利水準低下の問題といったようなことがございまして、こういったものがプラスに働くということがございます。  したがいまして、年度を通じて見ましたときに、それが全体としていわゆる円高のデフレ効果というものをどの程度打ち消す、あるいはさらにそれを上回るほどの効果があるかどうかということは今後のいろいろな経済動向によって左右されるとは思いますけれども、そういったプラスとマイナスの両方の問題ということを考えますと、全体として見ますと、当初考えました四%という成長、いろいろとそのもとになっております前提が変わってはおりますけれども、総体として見たときにはその程度の成長にはなるんじゃないかというのを現在もなお見込んでいるところでございます。
  31. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今ちょっと数字を少し漠然と申しましたので。  原粗油の価格が、ピーク時の昭和五十六年平均は三十七・二九ドル、今言いました二月の平均が二十七・五七、三月が二十二・三七、四月が十六・八なんと言いましたが、四六でございました。それで下旬は十四ドル台ということのようでございます。これは正確に訂正させてもらいます。
  32. 竹田四郎

    竹田四郎君 何か今の北村総務審議官お話ですと、大分円高のメリットの方でプラス要因が大いに働く、こういうふうにおっしゃっているんですが、机の上で計算すればなるほどそのとおりになるでしょうね。計算機で計算してもそうなると思うんです。しかし現実には、円高のメリットが国民の間に分配されてそれが消費を拡大をしているとか、あるいはそのメリットによって新しい民間の設備設資が始まっているとか、そういうようなもの、まあ一部にあるでしょう、非製造業なんかの、例えばレジャー産業なんかの一部にはそういうものがあると思いますが、どうも全体として私はそれほど感じられないし、これはそんなに小さな、まあ設備投資、額にして多いというのは中小企業が一番多くなると思います、一つ一つは小さくとも数が多いわけですからね。そういうものも余り感じられないんですがね、いろいろな人に会いましても。  これはむしろ、一体この円高がどこでとまるのか、輸出が一体どうなるのか、本当に内需はどんな内需をやったならば内需転換が確実にできるのかということは、まだみんな迷っていてどちらにも手がつけられないというのが私は現状じゃないかと思うんですよ。だから、余った金はアメリカの債券買ったりよその国の債券を買うという金融的な投資、悪口で言えばマネーゲームのような形で動いている、こういうふうにしか私は思えないんです。この辺はどうなんですか。まあ中小企業が動き出すか動き出さないかというのが、設備投資も、その辺が非常に大きな流れになるかならないかの私は境ではないかと思うんです。通産省ではそういう中小のあたり動きというのはどういうふうに見ているんですか。  私どもがいろんな金融関係の中小企業金融公庫とかあるいは国民金融公庫等の統計を見ている限りでは、どうもそんな動きというのは感じられないわけで、そうしたところでの調査のインデックスなんかを見ましても、むしろ先は暗い、投資もむしろ控え目である。気迷いぎみがかなり感ぜられるわけですけれども、その辺は通産省の方はどんなふうにごらんになっているでしょうか。
  33. 高梨圭介

    説明員(高梨圭介君) お答えいたします。  円高のもとにおきます中小企業の状況でございますけれども、まず景況からちょっと申し上げますと、御承知のように、企業マインドは停滞感が一層強まっているということでございまして、例えば商工中金の景況判断指数で見ましても、これは五〇が平均になるわけでございますけれども、四月の数値で見ますと四二・七ということでございまして、予測値につきましてもかなり低い数字が出ておるわけでございます。  それから中小企業の生産でございますけれども規模別の生産指数で見ましても、例えば三月、前年同月比でマイナスになっておりますし、それから円高関連倒産につきましても、帝国データバンクの調べでございますけれども、かなり増加してきているという状況でございます。  こういう中で、一番影響を受けます中小企業の輸出産地の状況でございますけれども、これは円高が非常に急でございますので、電話などで産地の中小企業の組合等にヒアリングを行ったところ、輸出向け新規成約がストップしている企業がかなり見られる。それから大多数の企業が赤字受注をしている。さらには操業短縮、休業、廃業等を行っている中小企業もある。それから一部では他のNICS、例えば韓国のウォンなどの安からそういった商品に市場を食われているというふうな状況でございまして、下請中小企業に対する影響につきましても、円高の影響を、下請単価の引き下げとかあるいは値引きといったような形で下請中小企業にしわ寄せしている疑いがあるケースがかなりございまして、これはちょっと古いデータでございますけれども、ことしの一月から二月にかけて中小企業庁で一万一千社の中小企業を対象に調べたところでは、一四・五%の下請中小企業がそういった形の要請を受けているというふうなことでございます。  特に、今御指摘のありました設備投資につきましても、企業マインドにこういった停滞感が見られるわけでございまして、円高の影響がかなり浸透してきたことを反映いたしまして減速傾向になっておりまして、実績はまだそれほど、ごく最近の実績は出ておりませんけれども、例えば法人季報で見ましても、昨年十−十二月期にはマイナス五・六%というふうなことで、設備投資意欲もかなり減少してきているのではないかというふうに考えております。
  34. 竹田四郎

    竹田四郎君 北村さん、今のような話ですよね。  まだ円高が進むのかどうか、あるいはもっと円安の方向に向かうのか。どうも円安の方向に向かいそうもないような気がするんですが、大体六十円台で推移するだろうというふうに思いますと、どうもあなたの説明と天と地の違いがあるように思うんですけれども、どうしても四%で通すんですか。機会を見てそれは修正するんですか。四%で通すということになりますと、恐らく税金も過酷な税金を取らざるを得ない、こういうところまで私はいっちゃうと思うんです。もう少しその辺は素直にやられた方が後で困らないだろうと思うんですが、どうですか。
  35. 北村恭二

    政府委員(北村恭二君) 最近の円高が大変急速に進んでおりまして、これが中小企業等に実質的にもいろいろ成約難といったようなことで影響が出ているし、またその他にも一般的に、急速な動きがあるということで非常に企業マインド等にも大きな影響が出ているということは御指摘のとおりだと思います。  したがいまして、今後こういった動向がどういうふうに続いていくかということでございますが、先ほど来ちょっと申し上げておりますことは、企業の景況感には大変影響が出ているわけでございますけれども、マクロで見た経済的な分析といたしまして、円高の影響というのが、いわゆる物価の安定ということを通じまして経済全体にプラスの効果を持つといったような点が期待されるということでございまして、成長率自体がどの程度のものになるかということは、今後ともよく経済企画庁等とも情勢を分析しながら検討してまいりたいと思っております。現在のところ、そういった全体の今後期待されるプラス面ということも含めてそういう考え方を申し述べさせていただいたわけでございますが、なおよく関係省庁と検討してまいりたいと思っております。
  36. 竹田四郎

    竹田四郎君 日銀総裁、片方ではこんな形で工場もふえない。個人消費も恐らく私は余り伸びていないだろうと思いますよ。それでいながら、東京の山手線内の土地の価格というのは年々倍増になっているそうですね。もうえらい価格だそうですね。  それを反映していると思うんですが、株式もダウ平均を見ていますと毎日のように史上最高、史上最高という表現が多いですね。そして今度は中小企業のところへ行きますと、今なかなか金が借りられないんですね、率直に言いまして。私も何回か折衝ししてみておりますけれども、国民金融公庫あたりの貸出対策などを見ましても変わっていますね。非常に選別的な対応になっていまして、今までなら借りられたのが、なかなか貸してくれないというのが実態ですよ。  そうなってみますと、使うべきところに金は使われていない。片方には何か、過剰流動性と言っていいのかどうなのかわかりませんけれども、そういうようなものが出てきている。ゴルフ権も、私はゴルフの会員権知りませんけれども、人の話に聞きますとこれもまたえらい暴騰だ。ちょうど昔の、昭和四十七年ごろですか、過剰流動性が動いていた、列島改造論の当時の、あのときはまだ列島改造の仕事があったわけです。今はもう仕事は余りなして、金だけは動いている。これは日銀のマネーサプライ政策に問題があるんじゃないか。きのうの発表でも、マネーサプライ九%、三月の実績で九%という御発表がありましたけれども、それはそもそも多過ぎるんじゃないのか、こういうふうに思うんです。下手をすると私はこれはやっぱりインフレへの引き金になる可能性が全然ないとは言えないような状況だと思うんです。今のお話では非常に物価が安定している。なるほど外から来る物価は安定しているんですけれども、そういうインフレ要因がどんどんたまってきている、そんな感じもするんですが、一体どうして片方ではそんなべらぼうに価格が上がっているのか。この辺はどうなんですか。
  37. 澄田智

    参考人澄田智君) 私どももマネーサプライの動きには最も注目をしているものでございます。  マネーサプライの動きは恥プラスCDという、いつもそれでとらえるわけでありますが、それによりますと、前年比の伸び率、御指摘のように現在まだ九%、前年に比べて九%増、こういう状況でございます。ただ昨年の秋は九%を超えておりました。そうして、当時に比べますと、現在の足取りといたしましては若干伸び率も下がりぎみである、こういう状況ではございますが、まだ九%を割るに至っておりません。高目であるということは確かでございます。ただ、これには金融の自由化に伴いまして大口定期預金金利の自由化などその影響が響いているという、そういう特殊の要因もないわけではございません。  また、今お話しの都心部の地価の上昇あるいは株価の動き等、そういう点についていろいろ動きがあることはそのとおりでございますが、それぞれにやはり固有の事情がないわけではない。例えば都心部におきましてはビルの需給の非常な逼迫というような、そういう事情を背景としているというようなこともございます。  このため、私どもといたしましては、現在のマネーサプライの動きをもって直ちに危険であるというような意味で警戒視しなければならないというほどまでには考えておりませんが、金融は既に十分に緩和されている状況でございます。金利水準も歴史的に見ても非常に低いところに来ているわけでございます。それだけに、金融緩和の今後の動向につきましては一段と注意を払って考えていかなければならない、マネーサプライの動向について十分注視をしていかなければならない、かように考えておる次第でございます。
  38. 竹田四郎

    竹田四郎君 大蔵大臣、どうも先ほどの北村審議官のお話でも、何か最後になると自信がないようなお話になって、経企庁とよく相談してと。経企庁は確かに経済見通しの主管庁でありますからそれはそうでしょうけれども、結局私は、これだけの円高になっていくとすれば、通産省の方が御報告になったのが実際の実態であろう。そうなってまいりますと、本年後半から来年のGNPというものはやはり下がってくるだろう、そう思わざるを得ないわけですよ。ですから、それが下がってくれば後は税収に響いてくるわけでありますから、もう既に三千億だ四千億だというような形で税収欠陥が出るという話はあちこちから出ているわけです。それは私は全くうそではないだろうと思うんです。そうしますと、円高対応して日本の財政を見ていく、あるいは国内における雇用の問題等々を見ていくということになりますと、当然何らかのここで措置をしなければならない、こういうふうに思うわけです。  既に国会でも補正予算はどうだとかいうお話も出まして、中曽根さんは、補正予算を必要があれば組む、こういうこともおっしゃっている。しかし竹下さんはなかなかそこまではまだおっしゃられないようでありますけれども、そういう方向か、あるいは金利をさらに引き下げをしてもっと仕事をさせる、こういう方向に行くか、このどっちかしか私はないように思うんですけれども、これは今日ではそういう判断はつきかねるんですか、どうなんですか。どっちかの道だろうと思うんです。どうも日銀筋は補正予算を組めというふうに考えているのではないかということでありますし、大蔵省側は金利の引き下げをしたらどうだというふうに考えているらしいですね。これは新聞報道ですから本当のところはわかりませんけれども。  どうなんでしょうか、その辺は恐らくどっちかだろうと私も思うんですけれども
  39. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 補正の論議というのは、これは竹田さんの長い経験の中で、今年度の予算財源確保をどうするかという法律を今まさに審議してもらっておるときに、補正という言葉を、せめてという表現が適切でありますか、大蔵大臣だけは補正を言うことはこれは不見識じゃないかというふうにいつも思っております。したがって、恐らく総理考え方というものは、下期の状態等を見ながらまさに総合的な施策を行わなきゃならぬ、こういうことだろうと思います。  したがって、補正ということになりますと、トタで結びつくのが公共事業、建設国債、こういう話がすぐ結びついてくる。が、従来やってまいりましたのは、いわゆる債務負担行為の追加、俗称ゼロ国によって事業費ベースで六千億でございますか、昨年の補正が、例えばそういう手法もそれはあるかもしれません。あるいは財政投融資というものの活用は五〇%の弾力条項もございますし、それらの使用もあり得るかしらぬというようなことを、まさに総合的判断で、その時点のそれこそ景況感等を見ながら判断すべきであろう。  ただ、私もこの間浜松、その前は多治見に行ってまいりましたが、それはいわゆる産地の、なかんずくNICSカントリーにまさにシェアがそのまま移ったという感じでございますから、アメリカの輸入量は変わらぬにいたしましても、日本からのものが韓国、台湾に移った。そういうようなところのお方は、みずから貿易摩擦を起こされたことは一遍もございませんし、アメリカでつくらないものをおつくりになっているわけですから、競争力が弱くなって大変だという感じは、これは率直に私もいたします。が、さてといいましても、いわば環境整備したり事業転換に対する金利、これはやれます。そして事実下げることを八日に決めた。しかし、さあそれならば買い上げということになりますと、撚糸工連のさなか、ちょっと余りいい環境にはないなという感じもしてみましたりしながらこれには対応しております。  それから、今御意見の中にありましたように、例えば輸出が、いわばインドとかパキスタンとか東南アジア向けに出ておるところを円建てでやっておりますが、円がドルに対して強いのみで、ドルがまだその国の通貨に比しては強いわけでございますから、そうすると当然今度は円ベースの値下げを要求してくるでございましょうし、そういうところはまことに混沌としておる状態であるなどいう、具体的にはそういう感じを私も深くしております。  それから、意見にもございましたように、したがって、企業は待ったなしてございますから、あるいは部品とかいろんな調達先を海外へ求めれば雇用不安も国内で幾ばくかのものが出てくるかもしらぬ。そういうようなことを総合的に、これは、これこそ責任回避じゃございませんが、経済企画庁の方で整理してもらって対応していかなきゃならぬなというふうに考えておりますので、財政の出動の範囲というのは非常に選択の幅は狭いと思いますが、可能な限りあらゆる手段を尽くすだけの少なくとも心の準備はしておかなきゃならぬ。いわゆる補正とか建設国債の増発とか、そういう意味におとりいただくといけませんけれども、総合的に財政というものの役割というものも心していなきゃならぬ課題だという問題意識は持っております。  ただ、金利の問題につきましては、大蔵省がどうぞ金融の方で、日銀さんの方がどうぞ財政の方でと、別にこうおっしゃっているわけではございませんが、金融のことは日銀総裁からお答えをなさると思っております。
  40. 竹田四郎

    竹田四郎君 大蔵大臣予算関連のことをお願いしているときに補正予算のことを言うのは不見識だと言うんですが、それは世の中が静かなときは私はそのとおりだと思うんですよ。ドルと円の関係も余り変わらない、大体経済も正常に、余り乱高下なしにいくときは私はそれでいいと思うんです。今こういう時代にそういう考え方というのは非常に官僚的な発想じゃないですか。変えていっていいんじゃないですか。国民はそれを望んでいるんじゃないですか。そのかわり、大蔵省はちょっと予算の編成の見積もりを誤ったろうとかなんとか、そういう話があるでしょう。あってもこれはしようがないじゃないですか、世の中が変わっているんですから。  あのとき二百四円で計算したのを、百六十円で予想していた者はだれもいなかったはずですよ。我々だってこんなに円高になるとは予想していないんですから。そういう事情がばっと出たときには、そういうものにこだわっているというのは非常に官僚的な、何か枠にとらわれて、責任を追及されると困るというようなことではやっぱりいけないんじゃないですか、竹下さん。あなたは今度ニューリーダーですから、その辺では、変えるところはどんどん変えていくという思想にならなければいけないんじゃないですか。どうですか。
  41. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは、竹田さんと同じように、私も過去からの反省で、今のような御意見ちょうだいしてもいいという意識に立つことも間々ございます。しかし、やっぱり民主主義の手法というのは時間のかかることでございまして、四十七年度予算のときに、為替レートを何ぼにするかというので、途中で為替レートが違ったら予算書を書き直してこいというようなことがございました。それから五十五年度予算のときがまた一つのエポックでありまして、途中で公定歩合上げたから予算書を書き直してこい。そのときは野党の先生が、公定歩合の操作によって予算書の書き直しを云々するのは知性と教養の乏しき者の質問だと言っていただいて、ありがとうございますと申し上げまして、出し直ししなくて済んだ。それから為替レートの場合は、海外の旅費と人件費の問題での議論がありました。  それで、この間、総理の補正発言というものが小柳先生の質問に対してあった。そうしたら衆議院で今度は財確がとまってしまいましてね。だからまだやっぱり国会の体質の中にも幾らか残って、いや私を含めてですね、だからそういうのが自然に展開していくというのが、民主主義というのは若干時間がかかるものだな。私も、お役所勤めしたこともございませんし、国会の問答というのは、きょうみたいな問答をするのは大変いいことだと思っておりますが、大蔵大臣さんとなってみますと、それは竹田さんと僕との間ではその議論が通用いたしたといたしましても、それじゃこの財源確保法の建設国債の上限、赤字国債の云云、やっぱりこれは出し直してこいと、この論理も全然むちゃな論理じゃないわけですから、したがって官僚的といえば官僚的になりますが、結局、やや時間がかかって、今のようなフランクリーな話ができるようになるんじゃないかなというように感じております。ちょっとお答えにならなかったかもしれませんけれども
  42. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうだと思うんですよ、私も。だから国会の方もそれはもう少し弾力的に物を考えていかないと、これだけ世の中が動く時代に、予算を組むときは、もう一年半ぐらい前、二年ぐらい前の材料で予算を組んでおるわけですから、もう変わるのは当たり前なんですよ。そういう意味で、この前も、もう少し物を考えて、財政法も、その辺は今までのような窮屈な財政法じゃなくて対応できるような新しい財政法を考えたらどうだと言ったら、それにも余り御熱心じゃなかったようでございますけれども、そのくらいのことを考えるべき時代に私は来ていると思うんですがね。  そこで、日銀総裁もお忙しいでしょうから、いつまでもここへとめておくわけにはいきませんから解放したいと思うんですけれども、今まで見ていきますと、利下げをした後に余計為替相場は上がっているんですよね、大体。協調利下げをやったら、第一次のときですか、これは横ばいだったですが、後は大体円高にどんどん進んでいっているというのが今のグラフだと思うんです。ただ、利下げが果たして内需拡大になるかどうか私はちょっと疑問だと思うんです。  先ほどもお話がありましたけれども円高差益にいたしましても、国民に還元されないでどこかでそれが金融資産となって、一番大きいものはアメリカへ行っちゃっている、こういうのが実態だと思うんですよね。それから、片方では、今利下げをされれば、金利生活者というのは多くなっていますよ。老齢化の社会になっていますから金利生活者が多くなっている。最近の新聞を見ても、何日かに一回ぐらいは、日銀総裁様、金利をこれ以上下げないでくださいという年寄りの訴えというのが出ていますよね。私はまことにそうだと思うんですよ。そういう意味で、どうなんですか、利下げをされるときにはそういう面は何らかの意味で考慮してやらなければ、片方は円高でメリットでうんともうけてこうやっている人たちもいるわけですよね。それで片方では、中小企業のように、この叫びは通産省が聞いてくれるからいいですよ。年寄りの叫びは一体だれが聞いてくれるか。だれも聞いてくれない。  こういう事態ですから、ただ単に経済政策だけで金利を下げる、それにはやっぱり特例というものを考えながらやっていかないと国民は承知をしない、こう思うんです。金利をすぐ下げるか上げるかという話は、あなたは口を閉ざして言わないでしょうから、それは聞きませんけれども、そういうことで、金利政策だけで内需の拡大をするということはなかなかそううまくいかないだろう。もしどうしてもやらない場合には、そういう面への考慮を払いながらやっていく措置を、これは日銀だけではできないかもしれませんけれども大蔵省とその辺は協議してやっていかないといけないんじゃないかと思うんですが、どうですか。
  43. 澄田智

    参考人澄田智君) 御承知のように、既に本年に入りましてから三回にわたって公定歩合を相次いで引き下げてまいりまして、その結果、諸金利、預貯金の金利を含めまして現在歴史的に非常に低いところに来ている次第でございます。これまでの金利低下の効果、これはこれから出てくる、こういうふうに思っております。したがいまして、政府がとられました総合経済対策とあわせて内需拡大に資するものというふうに期待をしているわけでございまして、当面、全く、公定歩合をさらに引き下げるということは考えておりません。  ただ、今御質問の点でございますけれども、これは第三回目の公定歩合引き下げのときには、預金金利につきまして〇・五%そのまま連動ではなかったわけでございます。それから、福祉定期預金等に対する配慮ということも行われたわけでございます。こういうような配慮はこれは当然にとられなければならなかった配慮である、そういうふうに考えておる次第でございます。
  44. 竹田四郎

    竹田四郎君 じゃ総裁結構でございます。  それで、これは大蔵大臣の方に聞きたいと思うんですが、こういうふうな円高の情勢になって石油税の税収というのは相当下がったと思うんですが、これは一体どうするつもりなのか。これはもうしょうがないと思うんですね。円高で下がる、石油価格の下落で下がるということですから、相当下がると思うんですが、これはどのくらい下がる見通しですか。それから法人税などはどんなふうな見通しですか。先ほどから申し上げていますように、少ないので二、三千億の税収減が出るだろう、多い人はもっと出るだろう、こう言っているんですが、その辺の見通しはどうなんですか。
  45. 水野勝

    政府委員水野勝君) 税収といたしまして現在まで判明いたしておりますのは、六十年度分で三月末までのものでございます。全体として見ますと、三月末では、補正後予算の七八・八%まで来ておりますが、これは前年同期が七九でございますから若干下回ることにはなるわけでございますが、六十年度の特殊性といたしまして、たばこ消費税を六十年度から導入いたしておりますが、これが年二回収納という特例がございますので、その点を調整しますと、三月末では七九、四%ということになりまして、前年同月を上回っておるわけでございます。ただ、これからの税収といたしましては、三月決算法人が五月末に大量に納付されるのが例年のことでございますので、これを見ませんことには六十年度の税収の動向ははっきりしたことは申し上げられないわけでございます。  その中におきまして、一つ石油税でございますが、石油税といたしましては、六十年度分は、二月までの分が六十年度の税収になるわけでございます。先ほど大臣からお答えがございました、二月までの石油の価格は二十七ドル台でございますので、六十年度の石油税の税収としてはおおむね予算どおりに収納されるのではないかと考えておるわけでございます。これが六十一年度となりますと、全くのこれからの動向でございます。確かに原油価格の低下はかなりなものが現在はあるわけでございますが、原油価格の低下の分が輸入数料等にどういうふうに響くのか、また年度を通して原油価格がどう推移するかということもございますので、六十一年度の石油税収の動向としては現在確たることを申し上げられる段階にはないわけでございます。  また法人税につきましては、六十年度につきましては、三月末まで先ほど申し上げましたようにあるわけでございまして、三月末までの分でございますと、六十年度の税収といたしましては六三%まで来ております。これを去年の六二%と比べますと、五十九年度に対しましては上回っているという状況でございますが、この点は、先ほど申し上げましたように、三月決算法人の五月収納分というのが非常に大きなウエートを占めておりますので、この動向いかんでございますので、六十年度の法人税がどうなるか、これがひいては六十年度税収全体をどう左右するかでございまして、全く確たることはまさに五月末収納、これが明らかになりますのは七月上旬でございますけれども、そこの時点までは法人税収につきまして明確なお答えはまだできる段階ではないわけでございます。  六十年度法人税収を基礎といたしました六十一年度の法人税でございますが、この点につきましては、六十年度の当初予算額よりも一千億円近い低い金額を見積もるようにいたしまして、私どもとしては適正な見積もりをいたしておるつもりでございます。  円高につきましては、先ほど来お話のございますように、メリットもありデメリットもある。経済全体あるいは税収につきましてもプラス、マイナス両面があろうかと思いますので、現時点におきまして、法人税収がどのように推移するか、まだそこまで申し上げられる段階にはやはりないわけでございますことを御理解いただきたいと思います。
  46. 竹田四郎

    竹田四郎君 大蔵大臣、損しているのもあれば、もうかっているのもあるわけですよね。もうかっている方はこうやっているわけですよ、みんな。それで、できたらほかへこれをうまく運用してというので外国へも金を持っていったりなんかしているわけですよね。そういう意味で、もうかっている人というのは私は全く不労所得でもうけていると思うんです。ほかの人の犠牲でもうけているんですからね。こういうところでもうけているのはひとつ徹底的に私は追って税金を取ってほしい。それでないとこんな不公平なことないと思うんですよ。ますます国民が政府の施策から離れていく、こういうことになりますから、総理大臣になっているでしょうから、その辺はますます厳しくひとつやってほしい、こう思います。それはお答え要りません。  それから、次の総理大臣になって次を担当されるわけでありますから、六十一年度末は公債発行残高が百四十三兆というふうになるというんですが、これどうしますか、本当のことを言いまして。あなたも公債発行残高については全然無責任じゃないはずです。こんなに大きくなったものを一体どう処理をなさろうとしているのか。どうもこれが国民に一番よくわからない。国民の方は、大蔵省の方からそれ国債買え国債買えというので今のところは一生懸命買っておりますけれども、この国債費というのは一体どうなるものか。今のままで返せるのかどうか、返すとすればどのくらいの年限をかけなければならないのか。考えるだけで頭が痛いんですが、大蔵大臣どうですか、どういうふうにお考えになっているんですか。大体の、細かい数字なんてとてもできませんし、六十五年度特例国債発行ゼロというあの計画だって今全然信用のない計画になっちゃっているわけですから、余り具体的な計画は要りませんけれども、大まかにどうするんですか。
  47. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これが夜な夜なのまさに悩みの種でございまして、一般的な計画からいっても、借りれば、建設国債の場合六十年という今償還ルールでございますから、子、孫、ひ孫の時代にまでツケを回さなきゃいかぬのだな、それが財政を握る者としては、生きとし生ける時代のものを何でひ孫までが返さなきゃいかぬかな、いや資産があるから幾らかはいいじゃないか、いろんな議論がございますけれども、財政法の原点に返れば、本当は、まさに必要な場合に発行して平素は発行すべきものでないという体制にいつの日か返していかなきゃいかぬ。  それにしても、今度は残高というものを抱えた財政、現実問題として、そうすると、よくこれは国会でも御議論いただきますが、償還のための財源等については、一定の期間を限って、永久国債のような形で、いわば減債制度のいささか根幹に触れる問題になりますけれども、そういう提案もあったりする。それから、少し古い話になりますが、日本社会党の御提案の中にはいわゆる土地再評価税、法人に限ってでもやって、法人税の前取りだと言えばそれまでかもしれませんけれども、そんな提案もあった。そんなことを思い出しながら、この間フィリピンへ行って、あなたのところ財産税やったらどうだという冗談も言ってみましたけれども、それはそれとして。  したがって、かれこれ考えてみますと、今度は税の問題がございます。税の問題がございますと、これは今諮問申し上げているのは、レベニュー・ニュートラルでございますから、これは増収を目的としたものではない。が、政策選択の場合は、結果として増収になるようなことも政策選択としては考えなきゃならぬかもしらぬということも頭の一隅にもちろんないわけのものではございません。そういうものをかれこれ問答しておる中で国民の理解が得られていく、そのタイミングをどこでとらえるかということではないか。  六十五年脱却の問題、もう不可能だろう、現行制度、施策そのままだったら確かに不可能と言わざるを得ない。しかし、そこにまた変化をもたらしていけば、非常に便宜的に考えれば、今、六十五年に赤字公債発行体質から脱却するのと、一方に公債依存度を下げていくという二つの目標を掲げておるわけですが、一方を仮に、六十五年脱却のための手法として、例えば減債制度を漸次考え直したり、あるいはいろんな特定財源を一般財源化してその分を建設国債に依存するというような形をとれば、一つの目的は帳面づらでは達成するかもしれません。しかし、一方の公債依存度を下げるという方は必ずしもこれは目的に合致しないようになる。それの後からが今度はその残高をどうするかという順番で今考えておるわけでございますが、残高問題を考えますと、ある時期は、公債を抱えた財政、たくさんの残高を背負い込んだ財政というものである期間組み直しをしてみなきゃならぬのかな、そういうような気持ちもあるわけでございます。  だから、いずれにせよ、やっぱり国民の理解と協力が得られなければ成ることじゃございませんし、国民の皆さん方の中にも、負担するのも国民だし受益者も国民だという意識は本当にだんだん徹底してきたという感じもいたしますので、時間をかけながら毎年毎年の予算の中で理解と協力を得ながら進んでいくしか基本的にはないということにいつも帰着しておるわけでございます。  いろんなことを考えながら、私の答弁のように、最後は何だかわけのわかったようなわからぬような、そんな感じがいつもして、最終的に毎年毎年の予算でやっていかなきゃドラスチックなことはなかなかできるものではないというふうに考えておるというのが素直な実感でございます。
  48. 竹田四郎

    竹田四郎君 とにかく、私も昭和五十年から特例債の創立には携わってきているわけですが、毎年毎年同じようなことを結果的には言っているわけですよね。しかし、とにかく百四十三兆円という公債発行残高を目の前にして、これから竹下さんとこういう議論もできなくなってくるということになると、一体竹下さんどうするつもりなのか。今のような大ざっぱな話では、ちょっとまたここへ来てしゃべらなくちゃならぬような形になってしまうんですがね。私はもっとはっきり、もうこれは増税をやらざるを得ないと。そうでしょう、百四十三兆というのを少しずつ返すようになるかどうかわかりませんけれども、恐らく今だってまだ政府の計画どおりいってないんですからね。その辺はもう少し明確におっしゃられたらどうですか。それでないと、国民は率直に言って増税されるのは嫌ですからね。私もたくさん増税されるのは嫌ですからね。やっぱり安易につきやすいと思うんですよね。  ですから、どうなんですか、これを埋めるにはどうしても増税しなくちゃだめですよということをはっきり言うか、それでなければ、元金は返しませんよ、金利だけはお払いしますが元金はもう絶対返しませんよというような目標を何か与えないと議論にならないんじゃないですか。あなたの方で問題を投げ出さないで、国民の合意を得るというだけではこの問題は解決していかないんじゃないですか。  それで結局なさることは何かというと、なるべく国債発行額を少なくするために、ツケ回ししたり、ほかへの負担を転嫁したりというようなことでやっているわけですね。このツケ回しだっていつか返さなきゃならぬ金でしょう。そのうちカットしちゃうんですか。どうしてもあれは払わないというふうになさるわけにもいかぬ問題もあるでしょう。これだって、これは私どもの方の計算ですが、やっぱり十兆円近くのものはあるわけですからね。実際は百四十三兆プラス十兆というのが政府が負っている債務だと思うんです。だから、その辺はもうそろそろはっきりさせる時代じゃないですか。
  49. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 一つは、増税という問題になりますと、今臨調路線という、増税なき財政再建という縛りの中で仕事をしておる。それも、確かに増税なき財政再建というかんぬきがなかったら歳出削減をここまでできなかったかもしらぬと思います。この委員会で、例の中小企業の直近一年の繰り戻し勘弁よとか、たばこの値上げを税調が済んだ後から頼みましたが勘弁よとかいうようなことを答弁しながら来たわけですから、もう成立させていただきましたので、反省を込めて申しますならば、相当いろいろな窮屈なことをしたものだなと思っております。  さはさりながら、増税なき財政再建というのはやっぱりかんぬきとしての相当な役割を果たしたんじゃないか。例えばことしのたばこのように、よく幹事長と冗談話でしますけれども、おまえ、一円で、三千億であれだけいじめられたなら、一遍に倍にすれば三兆入ったのにななんて冗談言いますが、たばこをそうすれば半分ぐらいやめるぞと言ったら、いやおれはもうやめたからいいなんて、これは冗談話としまして、例えばそんな安易なところへ手をつけておったかなというようなことからいたしますと、かんぬきとしての役割は私は相当あったんじゃないかなというふうに思っております。  そこで、レベニュー・ニュートラルといわれるいわゆる基本の型が仮に今度できたとしますと、選択肢の中では、私は、それが結果として増収につながるというようなことも、時間をかければ国民の皆さん方の理解も得られることではないかなというふうな気持ちも持っております。  それから、残高減らしに当たっては、いわゆる電電株というのは大変な魅力がございます。いろいろ御議論いただきまして決めていただきましたので、きのう国有財産審議会へ正式に諮問しました。ここのところ数日の会で、そういう諮問文を読み上げに出ましたが、一番気持ちのいい——気持ちのいい会といいますか、先明りのするような会に出たわけでございます。  そこで、やっぱりもう一つ注意しなきゃならぬのは、サミットでありましょうと、新G7でありましょうと、G5でありましょうと、大蔵大臣同士集まりますと、公共支出を厳に抑制し、財政の秩序を守りというのは必ずまくら言葉になるわけでございます。大蔵大臣で赤字財政をやるやっといったらそれは落第でございますから、そういう文章が書かれるわけでありますが、議論しておるうちに、あるいは私の心の葛藤の中にもあるのは、ちょうど竹田先生や僕たちは、わずかは関係があったとしましても、戦時国債を買っておりません。おやじは買ったと思います。
  50. 竹田四郎

    竹田四郎君 買いました。
  51. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 先生わずかな期間お買いになったんだろうと思いますが、敗戦というショックの中で、あれが超インフレでパアになったということが、パアになったことより以上に敗戦のショックが大きかったんじゃないか。したがって、えてして、うんと借金しておいてもインフレにでもなればまた元も楽なものだしというような議論をなさる人がございますが、私どもの年齢にもその体質があらへんかな。西ドイツがあれだけインフレに厳しいのは、あれは二回負けておりますから、一遍のときのショックは大きくて、二度また同じようなショックを体験したから、今日この状態にあっても日本よりなおインフレ率が低いというのを誇って、そのかわり失業率をうんと出してでも頑張っているわけですから、やはりインフレ志向というのだけはこれは孫子の代を考えてみるときにきちんとしていかなきゃならぬということを考えながら、株式売買、あるいはこれからほかの株も、東北開発株式会社の株も諮問をしたのでございますけれども、あるいはそのほかのことも将来念頭に置きながら、そういうものででも残高減らしにどれだけのそれが効果が上がっていくだろうかというようなことも期待をしながらこれからもやっていかなきゃならぬ。  それから、おっしゃいましたとおり、制度間調整とか、今直ちに要らないんだからというので繰り入れをやめたりしておる期間不特定の借金があるわけです。こういうものに対してもやっぱりその存在だけは意識しておかなきゃいかぬぞ、さらに十六兆七千億と俗称言われる国鉄の累積債務の中で、いろいろな工夫をされたとしても、幾ばくかのものは背負い込まなきゃいかぬということも出てくるでございましょう。そういうものを総合勘案しながら、国民の理解と協力を得ながら、可能な限り、資産の売却もしながら、後世代へのツケ回しというものだけは減していかなきゃならぬ。しかし、なかなか乱暴な資産再評価税という富裕税みたいなのを取れる環境にもちろんあるわけじゃございませんし、難儀なことだなということを、私もこれで五回予算を組みまして、みずからを振り返りながら総括して感想を申し上げたわけでございます。
  52. 竹田四郎

    竹田四郎君 余りよく確信できないわけでありまして、何だか竹下さんの漫談を聞いているようなもので、後に残るものはちょっとないわけでありますけれども、NTTの株式だって全部の百四十三兆を補うわけにはいかぬだろう。まあごくわずかをやるだろうと思うんですが。  そこで、現実的には、新聞報道で漏れてくる話では、結局は永久国債の方向を考えているようにしか私は思えないんですが、現実にどうなんですか、本年度の建設国債で満期到来債というのはどのくらいあるんですか。そのうち、今までは六分の一は現金償還するという約束で集めたわけですよね。現金償還が一体どのくらいになるのか。  それから、特例あたりももう十年になるわけでありますから、これは建設国債と同じ扱いをするようにたしかなったと思うんですけれども、そうなるとその特例債の部分も、全部ではないけれども、少なくともどのくらい返すのか。六分の一になるのか、あるいは十分の一返すのか、二分の一返すのか、その辺も実はまだ明確に私ども聞いておりませんけれども、十年で全額を償還するということではないようでありますけれども、その辺は一体金額的にどうなって、どう対処するつもりなのか、その辺もちょっと明らかにしてほしい。
  53. 保田博

    政府委員(保田博君) 本年度におきまする、償還期の来る国債の額並びに償還額、それから借りかえ額についてのお尋ねでございますが、数字で申し上げますと、建設国債特例公債を合わせまして満期の到来額は十三兆一千四百十五億円。そのうち、六十年償還ルールによりまして借りかえをいたしますものは十一兆四千九百二十四億円、差し引きネットの償還額は一兆六千四百九十一億でございます。  建設国債は、御承知おきのように、かねてから六十年償還ルールということでやっておりました。特例債につきましては、発行以来全額これを現金で償還するということでやってまいりましたが、五十九年度の財確法におきまして借りかえを認めていただきました。これにつきましても、六十年償還ルールということで、建設国債と同じような借りかえをし、差し引き額をネットで償還する、こういうことにさせていただいておるわけでございます。  先ほどの数字は、特例債につきましても建設国債と同様の償還ルールで一部借りかえをし、一部償還をする、そういう計算で先ほどの数字ができ上がっておるわけでございます。
  54. 竹田四郎

    竹田四郎君 大蔵大臣、ことしから、年度も越えて短期国債発行して、一番条件のいいときに借りる、その短期国債で得た金で回していく、こういうことになりますね。そうすると、この前も議論があったと思うんですが、帳簿の上では建設国債特例国債をどれだけどれだけというのは分けられますけれども、現実に流通する国債は、これは建設国債でございます、これは特例国債でありますというようなことはなくなっちゃいますね。それからまた同時に、今満期になって現金償還するのが一兆六千億だという話があって、借換債が十一兆四千九百億だということですけれども、これも現実に、短期国債が中に介在することによって、これは六十年で返ったものだ、これはいついつ返ったものだということはだんだん言えなくなってくるんじゃないですか。ですから、六十年で償還しますなんて今次長おっしゃっているんだけれども、現実には六十年で償還できたのかどうなのかわからぬじゃないですか。ある部分は返るんだけれども、ある部分は六分の一返ってきた、これわからなくなると思うんですね。  今公然とそういうことをおっしゃっているんだけれども、その辺だってわけのわからぬ、ごたごたになってしまって区別つかなくなるんじゃないですか。何が六十年償還ですか。永久国債と同じ形になるんじゃたいですか、全体的に見ますと。一部分は返ってくるでしょう。これはマクロの話で、個別の話にはならぬじゃないですか。この辺をそのままにしておくとやがていろいろな問題がまた起きてくるんじゃないか。  これはこの前も、二年ぐらい前の大蔵委員会で随分これが問題になって、特例国債と建設国債とずっと分けるようにしろというような議論もたしかあったと思うんです。その辺がまるっきりわからなくなる心配が私はあるんですが、これはどうですか、大蔵大臣。その辺をぴしっとしていかないとまたいろんなことが出てくると思うんですよ。それこそ今までと同じような、やりくりやりくり、最後になったらわけがわからぬ。だから、いついつ借りた国債が残っているんですか、残っていないんですかと言われたって、大蔵大臣、そのときには返答できませんよ。そうなりませんか。うまいぐあいに、短期国債のところは借りかえをうまくやろうとしているんですが、現実にはそういう問題が出てきませんか。私は出てくるだろうと思うんですよ。帳簿上はなるほどわかりますが、現実にはわからなくなる。
  55. 窪田弘

    政府委員(窪田弘君) まず短期国債でございますが、これは減債が年度の単位でやっておりますので、短期国債でありましても年度をまたがって償還されるものについては、六十年償還ルールに基づく一年分の減債を行うという計算をいたしております。例えば、六十一年度では収入金で一兆円の短期国債の満期が到来いたしますが、借りかえは九千八百二十五億円、五十七分の五十六で計算をいたしているわけでございます。  それから、確かに借りかえるたびにはっきりしなくなるのではないかという御指摘もございますが、借換債が満期に来たときに発行する国債は、そのときどきの情勢に応じて弾力的に発行いたしますので、事前にこの国債をこれに借りかえたということは特定困難でございますが、年度が終了した後で満期到来債と借換債との間の対応を事後的に行っておりまして、当該年度に発行されたそれぞれの借換債がどの銘柄の満期到来債の借換債であるかということを関係づけまして債務管理を行っているところでございます。
  56. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今窪田局長からお答えしたとおりでございますが、もちろん手元を離れますと、市中に出回ればそれは竹田さんおっしゃったとおりでございます。だから、残高になったらもう建設国債であろうと赤字国債であろうと同じ性格のものになる。そこへ短国が入ってまいりますから、が、元帳といいますか、年度の残高で見ますれば、それは元帳では私は区別のつく問題だということは言えるんじゃないかなというふうに感じます。今私も窪田局長に教わった話を、今の答弁を聞きながら復習しながらの答えでございますけれども、そういうふうな理解の上に立っております。
  57. 竹田四郎

    竹田四郎君 元帳じゃわかるんですよ、確かにおっしゃるように。元帳じゃわかるけれども、実際問題わからなくなってくる。こういうことになってまいりますし、一番初めの発行回数とかなんとかというものも途中の短期国債によって動かされてきますから、なかなか連続性はない。元帳じゃなるほどこの分はこれだというのでわかりますけれども。そういう形でこのままにしておくと、どうもその辺が、初めのうちはちゃんと気を入れてやりますけれども、だんだん気を入れなくなってくるということになると、結局は永久国債、その心配が大いにある。それなら永久国債にしちゃえばいい。金利はちゃんと払う、あとは借りかえる。  それからもう一つは、現金償還ということの六分の一というのはこれから必ずやっていきますか、毎年毎年。それができなくなるということはないですか。その点はどうですか。それができなくなってくればもうまさに永久国債、宣言せざる永久国債、こういうことになると思うんです。満期の来たものは、六十年償還でありますから六分の一ずつは必ず現金で返していく、それは絶対ほかのことはしない、借りかえをするということは絶対しないという約束ができますか。
  58. 保田博

    政府委員(保田博君) 先生御指摘のとおり、国債償還のための財源確保するということが大変難しい状況になっておるわけであります。一つには、過去の累積国債償還期が束になって来ておるということ。それからもう一つは、過去五年間にわたりましてい減債制度の基本とも言われた定率繰り入れを五年間にわたってこれを停止してきた。そのために国債整理基金の残高がいよいよ枯渇をしてきたという、その両面から国債償還財源確保が大変難しいという状況になっておるわけでございます。でございますけれども、我々としましては、できるだけ国債に対する国民の信頼をつなぎとめるという意味からも、減債制度の基本はこれを維持しなければならないという考え方で予算編成に当たってきたわけでございます。  今後ともこの基本的な考え方はこれを維持しつつ、さはさりながら、毎年度の予算編成におきまして、税収その他歳出面も含めました財政の全体の姿がどうなるか、それから国債整理基金の状況、先ほど大臣がちょっとお述べになりましたけれども国債償還についてのいわば支えともなるべき、一つの支えと我々も考えておるわけですが、NTTの株の売却収入が今後どういうふうになるのか、そういった事情を財政全体の姿を検討しながら対処していかなければならない。しかし基本は、減債制度の基本、これをできるだけ維持しつつ毎年度の予算編成においてぎりぎりの努力をしていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  59. 竹田四郎

    竹田四郎君 言葉ではそういうことを言う以外にないだろうと思うんですね。しかし現実に、ことしだってそうでしょう、国債費の大部分というのは利払いでしょう。元金の償還に充てるものはないわけですよ。それで、今度の法案でもそうですけれども定率繰り入れをやめる。しかも、ことしは国債費の方が国債発行額より多いんですよね、既に。こういう状態というのはこれからどんどん続いていくと思うんです。もっと多くなる可能性もあると思うんです。  そうなってみますと、本当に六分の一の現金償還分の金が出るかどうか。これはよほど減債基金をしっかり積んでおかないと私はそういうことは言えないと思うんです。減債基金は積まないでおいて、NTTがある、こういうようなことで六分の一分は払えますというのは大変危ないと私は思うんですがね。この辺、大蔵大臣本当に約束してくれますか、これからずっと。満期になったら六分の一ずつは現金償還をします、借りかえでは一切やりませんと、ここで約束してくれますか。
  60. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 結論から申しますと、六十二年度予算編成のときにぎりぎりの汗を絞って考えてみなきゃならぬ課題だというふうに私も問題意識としては持っております。率直に言って、今も保田次長から申しておりましたNTT株の問題は確かにございます。そういう問題等で、今のところ、減債制度の基本はこれを維持しなさいというのが財政審の、言ってみれば我々の政策範囲の縛りになっておるわけですが、その基本を維持しつつも、どういう仕組みで六十二年度対応していくかというところはまさにぎりぎりの相談事になるんだろうというふうに私も思っております。
  61. 竹田四郎

    竹田四郎君 そのときには、今言った六分の一の現金償還のこともそのときになってはっきりするということですか。
  62. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 六分の一の問題、ちょっとよくわかりませんでしたが、そのことをも含めてぎりぎりの汗かいて考えなきゃいかぬ課題だというふうに思っております。
  63. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうするとここでお約束できないということですね。
  64. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 減債制度の基本を維持するという枠組みの中でぎりぎりの汗をかかしていただくということで、どういうふうな手法かについては今後の課題でありますので、きちんと国債整理基金へまた積みかえでもしてやりますということは、きょうお約束するわけにはまいらないと思っております。
  65. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうしますと、今までの公債政策というのはここで大転換を今大蔵大臣は宣言をした、こういうふうにとってもいいわけですね。  六分の一がお約束できないということになれば、これは現実には永久国債だと私は思う。それは永久国債の定義の仕方にもあると思いますけれども、全体とすれば借換債でいってしまうわけでありますから、そのことを前提にしておりますから、今御返事できない、お約束できない、こういうことでありますから、ことしの六十二年度予算編成のときにぎりぎりの問題になるときはそこで決める。そこで今のような経済情勢の中で決められるかどうか、恐らく非常に困難だろうと私は思うんです。そうするとその瞬間から永久国債への道が開けていくと思うんですが、どうですか。
  66. 竹下登

    国務大臣竹下登君) その提言が、よきにつけあしきにっけございます。その都度私もその提言——提言というのは、いわゆる永久国債というものの提言がございますが、それと減債制度の基本の問題をどう調和さすかということに対しては、判然たる私も結論を今持っておるわけではございません。  したがって、私も考えたことがございますのは、補助金の法案をことし三年の暫定期間で通していただいた。そうすると、補助金の法案で、大体委員会等を含めますと十五、六回御審議いただいておる。五十九年のときの公債政策のあれも大転換でしたね。随分竹田先生と議論しました。いわゆる赤字国債も建設国債と同じような当面いたしますという大議論をいたしました。ああいう議論をもう一遍来年するようになるとしたら、補助金で一年一年やらぬで、三年だけやらなくて済むという、大蔵大臣の労働日数——労働日数は表現悪うございますが、委員会審議日数がそれによって肩がわりするようなことになるのかなというような気持ちでおったこともございますが、今のところ、まだこれからの財政状態等、NTT株等を見ながらぎりぎりで判断させていただくというお答えが今日の時点では限界ではないかなというふうに考えております。
  67. 竹田四郎

    竹田四郎君 わかりました。そうすると、その辺は今後非常に変わっていく可能性を含めつつある、今後の国債政策が場合によれば大きな転換をするんだ、こういうふうに理解をしておきます。まあそのときまた在野でどういう政策をとられるかじっくりと拝見をしていきたい、こういうふうに思っております。  それから、これも来年のことになりますけれども、既に減税に関する政府税調の中間報告というものが出たわけでありますけれども、これはどうして中間報告であって中間答申ということにならないのか、この辺が私よくわからない。小倉税調会長もこれについては、ただ特別部会の報告であって、税調全体として議論をしてないんだ、だから報告だと、こういうふうに言われるわけでありますが、どうして報告であって答申にならないのか、この辺よくわかりませんが、御説明いただきたいと思います。
  68. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これも、今小倉会長の御発言をお取り上げになったとおりでございますが、そもそもが諮問のときに、いわばひずみ、ゆがみ、痛みがどこにあるかというところから議論に入ってくださいという手順をも含めてお願いをして諮問をした。そこでその手順に従っておやりになって、そうして小倉会長を初めとして、正式答申というのは総体的に出すべきものであって、減税部分と増税部分といいますか、そういうものを分けて出すべきでないというお考え方もあったと思います。したがって、手順としてお願いしたその手順に従ってやっていただいた今の時点の中間報告をいただいた、これもどっちかといえばお願いしていただいた、こういうことに尽きるんじゃないかなというふうに思っております。
  69. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうしますと、小倉会長もこれはおっしゃっているわけでありますけれども、減税とそれからその財源とを別個に答申を出すなどというのは、これは私ども考え方じゃちょっとおかしいと思うんですがね。それは中曽根総理が彼の趣味でやったかどうか知りませんけれども、あるいは党利党略のためにこういうむちゃなやり方をやったのかどうかわかりませんけれども、これは小倉会長のその後の談話でも、こういうように別個にやったということで、財源が決まらないのに減税が決まるわけじゃない、私は大減税をやると言ったことは一回もございません、だからこの中間報告よりももっと規模は小さいもの、規模といいますか、内容は小さいものになるかもしれませんと、こういうようなことをおっしゃっているわけですね。  そうすると、今出された中間報告というのは、最終答申との関連で大いに変わってくるということがあり得るわけですね。どうなんですか、その辺。変わることは絶対ないわけですか。
  70. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 御案内のとおりに、あの中間報告というのは定性的なものが出ておりますので、それが私は大きく変化するというふうには思っておりません。税調で御審議いただくわけでございますけれども、中間報告の定性的な部分が大変化して出てきたというようなことにはならないだろうと思っております。
  71. 竹田四郎

    竹田四郎君 それにしても、細かい点などが今度の中間報告では必ずしも書いてないわけですよね。そうすると、そういう細かい部分についてはそのときの財源との関連で変わってくるということがあり得る。同時に、これは小倉会長ですから、大蔵大臣とはちょっとそこが一枚違うわけですよね、同じ人格じゃございませんので。税調会長はまたどういう答申出してくるか。今おっしゃられたとおりの答申が出てくるなら余り税調というのは意味ないんですけれども、違って出てくる可能性というのはあるわけですね。それはないと見ていいんですか。
  72. 水野勝

    政府委員水野勝君) 先般四月二十五日に特別部会の中間報告が出されたわけでございますが、その際小倉会長の談話といたしまして、「この際、これらの中間報告を対外的に公表することとし、これを契機に、税制改革についての国民の理解と関心が一層高まり、各方面で活発な論議が展開されることを期待するものであります。」というふうな談話を付して公表をされたところでございます。この部会の中身につきまして大いにこれから国民の皆様、納税者の皆さんに御議論をいただき、それによって議論がさらに前進されるということを小倉会長としては期待して公表された、そういうことではないかと思うわけでございます。したがいまして、これが論議のいわば一つのたたき台と申しますか、一つの方向として御議論をされると思いますので、その世の中の御議論、これからの展開でございますから、そこはどういうふうになるかということはあろうかと思うわけでございます。  しかしながら、先ほど大臣から申し述べられましたように、これはあくまで部分的、定性的なものでございまして、その定性の点につきましては、専門小委員会の議論を中心に十分詰められたものでございますので、これが大きく変わるということは私ども余りないのではないかと思っているわけでございます。  ただ、委員の御指摘のように、細かい点については余り触れられていない点もございますから、そうした細かい点は、なおいろいろ国民の皆さん方の御議論を踏まえながら今後詰められると思うわけでございます。詰められる段階でいろいろ部分的には問題も出てまいったりすることもあろうかと思いますが、基本的には、先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、方向としてはこういったもので大きくは進んでいく。その詰めの段階でいろいろ細かく具体化されあるいはさらにニュアンスがはっきりされる、そういうことはあろうかと思いますが、大きな筋としてはこの方向で恐らく御論議が進められるのではないかと思うわけでございます。
  73. 竹田四郎

    竹田四郎君 この前ここへ租税特別措置法の最後のときに中曽根総理が来て、私は選択ということを実はお尋ねしたわけですが、選択は、一つの税制が決まってその中での選択なのかどうかと言ったらば、そのときは、答申自体も国民が選択できるように出しますということをおっしゃっていたんです。答申自体を国民が選択できるというのは、答申の内容が違うということですね。答申の中で、一、二、三、さあこの中で一つ国民の方でお選びください、こういうことだというふうに私は理解した。しかし、今度の答申というのはそういう答申じゃないですよね。今定性的というふうなお話がありましたけれども、これは選択のできるような形では私はないと思う。  この辺は、総理の選択ということを含めての答申だというんですが、そういうものが今後出てくるんですか。それとも、あとは財源問題の答申が出てきて、若干の修正があって総括ということになるんですか。どうなんですか、それは。
  74. 水野勝

    政府委員水野勝君) 先ほど申し上げましたように、小倉会長の談話といたしまして、これを契機に国民の御理解、関心が一層高まって活発な論議が展開されるということを期待するものでございますと申しておるわけでございます。  一つの方向として、定性的なものとしてお出しをいたしました。したがいまして、総理お答えになりましたように、A案、B案、C案といったものを御提示して、その中から御選択をいただくという形にはなってございませんが、例えば累進構造の問題にしても、最高税率をこの程度に下げるというその方向自体、それ自体としていいのかどうか、あるいはあそこにある、六割程度というのがございますが、そこらまで下げるのがいいのか、もっと下げるべきなのか。今後、「活発な論議が展開されることを期待するものであります。」という、まさに小倉会長の談話にございますような、あれが一つの出発点となって御論議がなされる。その中には、全くああいう方向としてはおかしいという御議論もあるかもしれませんし、あの程度でということもあるかもしれませんし、もっと推進させるべきだという方向の御議論もあろうかと思いますので、その意味におきましては、総理がここで申し述べられました、選択をこれでもってお願いをするというものでもあろうかと考えるわけでございます。
  75. 竹田四郎

    竹田四郎君 それから、今度の税制に関連するんですが、今のような円高で、国民の全体の国内における、外国の物を買おうが国内の物を買おうがいいんですけれども、国民の購買力を高めていくということがやっぱり今度の税制改革で私は必要だと思いますし、そういう形で国民生活を高めるとか、あるいは賃上げをもっとやれというのがことしの春闘の大きな特徴だと思うんですね。  日商の会頭の五島さん、これはたしか中曽根さんのブレーンの一人だと思うんです。この人も賃上げをやれと言っているし、サントリーの社長で大阪商工会議所の会頭さんも、賃上げをやれ、今の労働組合が賃上げができないようじゃどうかしているというような御発言もありましたし、あるいは経構研のレポートの中でも、国民生活のあり方を直していけ、こういうふうに言われております。それから経済審議会の昨年の答申でも、個人消費の拡大を図り、そして技術革新や経済発展の成果を賃金や労働時間に還元をしていく、こういう発表もありますし、通産省の産構審レポートの中でも、それに似て、賃金の拡大を図れ、これは政府に対する勧告ですけれども、その辺は全然政府はやってないんです。  労働省さんがお見えでしょうからちょっと伺いたいんですが、その辺はどうなっているんですか。賃金それから労働時間、これはむしろ生産性基準よりも下がっているという最近の状況じゃないですか。簡単に頼みます、時間がありませんから。
  76. 澤田陽太郎

    説明員澤田陽太郎君) 今先生御指摘のように、私どもも、中長期的に経済成長の成果を賃金にも適切に配分することは、労働者生活の向上という観点だけではなくて、当面求められております内需中心の均衡ある成長という観点からも望ましいことだと認識しております。  ただ、賃金問題あるいは労働時間問題は労使が自主的にお決めになるということでございますので、私どもとしては、それをめぐる環境を整備したいということで、具体的には、賃金の問題につきましては、労使の首脳と学識経験者で構成しております産業労働懇話会、こうした場を通じて、成長の成果が賃金にも適切に配分されるよう労使間のコンセンサスを図っていきたいというふうに考えております。
  77. 竹田四郎

    竹田四郎君 ありがとうございました。労働省もうよろしゅうございます。  それで、今度の税制改正で余りはっきりしていないところは、ブラッケットを少なくしてカーブを緩やかにする、できたら生涯のうちで二つかせいぜい三つぐらいのブラッケットになるようなのが望ましい、こういうような見解も言われているんですが、そういうことをしますと、結局は下を上げる、上を下げるためには下を上げる、こういうことにならざるを得ない。今度の中間報告でも余り明確でない点は、課税最低限をどうするか。これを引き下げろという議論もあるようであります。それから、最低の税率を引き上げなければこのカーブは緩やかにならぬわけでありますから、これを引き上げるという議論もおありのようでありますが、その辺は一体どう考えるのか。  特に、こうした国債に抱かれた財政の中では、国債そのものの金融資産としての国民間におけるところの所得の再配分という問題が一つ加わってきた、こういうふうに考えてみますと、財政、税制の持っている役割である所得の再配分というのは、このままでいけばその機能というのはなくなってしまう。むしろ今は、もしそういうことをやるとするならば、社会保障なり何なりをさらに充実した上でやっていかなければいけないことでありましょうし、今度のこの税制改革でもその辺は一体大蔵大臣としてどう考えるのか。  あるいはまた、最近の報道でありますけれども、自営業者に対してはむしろ課税強化になる。例えば事業主や家族従業員の給与所得控除、これはサラリーマンの六割にしろとか半分にしろとか、こういうような議論もされておるようでありますが、そういうことをなさるとますます所得再配分機能というのが税制でも失われてくる、財政で失われ税制でも失われてくる、こういうような心配がこれから出てくると思うんですけれども、その辺に対する御答弁をなるべく簡単にやっていただきまして、私の時間あと一分ぐらいでございますから、簡単にやっていただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  78. 水野勝

    政府委員水野勝君) 御指摘になりました累進カーブの問題、それから給与所得控除の問題等々ございますが、累進構造の点につきましては、御指摘のように、生涯余り変わらないようにする、そういう一つの方向としてはまさに出しておりますが、それを上を下げ下を上げてやるのか、今の全体を動かさないでなだらかにするのか、そこらの具体的な方向はまさに今後の議論にゆだねられておりまして、こうした方向をよしとされるのであれば、具体的な下げ方と申しますか、平らにする方法は今後詰められるということではないかと思うわけでございます。  それからまた給与所得控除の問題につきましても、この中にもございますように、一つの方向として実額控除的なものとかいろいろ出されておりますが、それはあくまで本来のサラリーマンを重点に置きましてこうした点を言っているわけでございまして、その周辺の問題、例えばみなし法人でございますとか青色専従の問題とか、こういったものは、まさに中心となる給与所得控除といったものをこういうふうにしていくという方向はございましても、その周辺問題としてそこらをどうするか、これらはなお、この答申にもございますように、今後引き続き検討を行うということが適当とされておるわけでございますので、そこらの方向についてはなお国民の皆さん方の、まさに先ほどの会長談話にございましたように、国民の皆さんの中の御議論を踏まえながら今後詰められてまいる、こういうことではないかと思うわけでございます。
  79. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今局長からも答えましたが、要するに、給与所得者の方の重税感、ひずみ、ゆがみ、そういうものがまずは議論をされた。それが定性的なものが出て、そして事業主等等は今後の課題である。  総合して申しますときに、国債をたくさん抱いた財政は、それだけの部門、ある意味において資源の再配分、富の再配分の機能の外で硬直化する要素になるわけでありますが、税は、全体を考えて、所得の再配分機能というものは果たしつつ安定した歳入の確保ということを役割として果たさなければならぬものであろうというふうな考え方は私も持っております。
  80. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は初めに、円高不況問題で大蔵大臣にお尋ねしたいと思います。  東京サミット円高進行に歯どめがかけられなかったことは、国民は大変失望しております。中曽根総理、また竹下大蔵大臣が、欧米諸国に対しまして為替相場に対する協調介入の合意を得られなかったということにつきまして、サミット最中から円高が急速にまた進行して連日のように最高値を更新してきたわけでございます。そして昨日は一時的にせよ百五十円台にまで突入したわけでございます。このような事態大蔵大臣としてどのように考えておられるのか。  それからもう一点、九日の参議院本会議におきまして中曽根総理は、アメリカや欧米諸国に対しまして為替相場に対する協調介入を要求すると答弁なさいましたけれども、その後どのようなアクションを起こされたのか。  この二点をまずお尋ねしたいと思います。
  81. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず、東京サミットが通貨安定のための協調介入について合意が得られなかったということに対する失望感が大変強いということに対する見解いかんというのが第一点でございますが、本来私も十分気のついておったことでございますけれども、いわゆるサミットは、一つだけ簡単に申し上げますと、各国の通貨当局者、すなわち中央銀行の総裁、政治的には中立な立場である中央銀行の総裁の御参加はないわけであります。したがって、為替の安定が大事であって、ウィリアムズバーグ・サミット以来の、いわば政策の調和をとって、必要とある場合は介入するという原則が確認されるのが、その会議の持つ性格からして限界である。しかし、そこにG7、G5というようなものがいわばオーソライズされまして、今後サーベーランス、相互監視によりまして政策の協調をするという方向が出たということに尽きるではなかろうかというふうに思っておるわけであります。  それから二番目の、中曽根総理協調介入云々の問題でございますが、有用と認められるときは協調して行動をとるということは合意されておりますので、通貨当局間におきましては絶えず連絡は密にしておるというところでございます。しかし、いついかなる場合、過去、将来を含めてやるとかやらぬとかということは、これは差し控えるところに介入というものの市場に与える影響というものが存在しておる、こういうことになろうかと思います。
  82. 多田省吾

    ○多田省吾君 日銀総裁にお尋ねします。  サミット後の急速な円高進行に対しまして日銀総裁としてどのような御見解をお持ちなのか。協調介入の合意が得られなかったために、アメリカはもちろん西ドイツ等も協調介入はしていないようでございまして、日本のみが逆介入を時たまやっておるようでございますが、ほとんど効果がないという状況でございますが、この点どう考えておられますか。
  83. 澄田智

    参考人澄田智君) 為替相場の現状、そして将来の見通しというような点につきまして私ども立場から申し上げますことは、これは為替市場に不測の思惑や憶測を呼ぶことにもなりますし、相場に影響を与えるというようなことで差し控えさせていただいておるわけでございます。  したがいまして、今の御質問につきましても特にそういう点について申し上げるわけにはまいらないわけでございますけれども、最近の状況におきまして、為替市場の動向として思惑的な不安定な要素が非常に強いというふうに判断をいたしております。そして現状におきましては、相場が安定することが何よりも望ましいことである、こういうふうに思っております。
  84. 多田省吾

    ○多田省吾君 日銀総裁に重ねてお尋ねいたしますが、アメリカの産業界あるいはベーカー財務長官等の政府筋では、なお一層の円高ドル安を歓迎しているような口ぶりでございます。また一方で、少数派でございますが、ボルガーFRB議長等がドルの暴落を懸念している話を若干やっております。ドルの一層の下落がアメリカへの資金流入の停滞をもたらすとか、こういった関係でドル安局面からドル暴落へという事態に至ることも心配される、こういうこともアメリカの一部にございますが、日銀総裁としては、アメリカの現状はどのような考えであると認識されておりますか。
  85. 澄田智

    参考人澄田智君) アメリカ経済及び国際経済全体に与える影響から、ドルの暴落といったようなそういった急激な為替相場の変動、これは回避しなければならないという点は主要国に共通の考え方でございます。アメリカの通貨当局はもとよりその点について最も神経を使っているところでございます。現在の状態におきましては、まだそういった、最もその点について懸念を有し注意をしている立場の者におきまして、ドルの暴落というような懸念はない、こういうふうな判断がされている状態である、こういうふうに見ておる次第でございます。
  86. 多田省吾

    ○多田省吾君 大蔵大臣にお尋ねいたしますが、当然大蔵大臣は現在円が高過ぎると判断されていると思いますが、また協調介入の必要性も感じておられると思いますけれども市場への為替介入のみで円が安定の方向に向かうとお考えなのか。どういう対策考えておられるのか、お伺いいたします。
  87. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわゆる最近の為替相場動きは急激でありまして、したがって、私どもとしては、経済にこれが悪影響を及ぼすということについてサミット等でも主張いたしますと同時に、為替相場の安定の重要性を強調したところでございます。  そこで、具体的に相場そのものに限定してお話をいたしますならば、やっぱり基本的にはファンダメンタルズを適正に反映するという形で、いわば市場主義と申しますか、市場が神様であるわけであります。しかし、間々神様とて行き過ぎとかいうことがある場合、G5で従来行われたような共同した行動というものがとられてきたという一般論を申し上げるべきでございまして、今直ちにどういうふうな具体的な手法が為替相場の中でとられるかということを申し上げることは、これは短期的なとらまえ方としてはお答えしにくい問題ではなかろうかというふうに思っております。もとより、中長期的なサーベーランスの強化等によるいわゆる政策の協調というようなことが基本的には最も大切なことであろうというふうに考えております。
  88. 多田省吾

    ○多田省吾君 今度の東京サミットの合意によりまして、G5にカナダ、イタリアの二国を加えましてG7のもとで各国の経済運営を相互監視する、今大蔵大臣のおっしゃったサーベーランス機構の強化ということも打ち出されておりますけれども、各国から早速経常収支の大幅黒字の是正とか、こういった問題を要求されると思います。一層内需拡大をやっていかなければならないという事態だと思いますが、大蔵大臣のお考えはどうですか。
  89. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今御指摘なさいましたとおり、いわゆるサーベーランスが行われますと、とにかくそこに経常収支の問題でございますとか、インフレ率の問題でございますとか、金利の問題でございますとか、失業率の問題でございますとか、成長率の問題でございますとか、およそ九項目あるいは十項目とも言えますが、そういう指標等が我々の議論に使わせていただくものとなろうと思っております。  その場合当然目につきますのは、日本と西ドイツのいわゆる経常収支の黒字の大きさ、こういうことでございましょう。そうすれば、それに対応する策としての内需拡大策ということになろうかと思うわけであります。政府としては、持続的な成長を確保するために、それこそ三次にわたる内需拡大策や公定歩合の引き下げというような措置を講じて今日に至っておる。さらには原油価格の低下、先ほど申しましたように、二月に二十七・五七ドルのものが四月が十六・四六ドル、下旬は十四ドルでございますから、二月から見ると約半値ということになるわけであります。そういうもののいわばメリットが徐々に出てくるであろうというふうに考えておるわけであります。  したがって、内需拡大の方策につきましては、さらにきめの細かい注意をしながらこれからも対応していく。できたものとしては、前倒しの決定をしました。それから、恐らくあしたごろ消費者に原油価格等の問題につきますところの消費者還元の具体策も行われてくる。さらに経済企画庁を中心として今いろいろな作業を行っておるというのが現状でございますが、ただ財政の出動、こういうことになりますと、サミット経済宣言の一番最初の方に、これは大蔵大臣が集まればそのとおりだとみんながよく言うのでありますが、いわば節度ある財政政策で公的支出を極力抑制し、こういうことが共通の文言として入っておりますので、財政の出動ということになりますと、おのずからその出動のあり方について限界があるではなかろうかというふうに考えておるところであります。
  90. 多田省吾

    ○多田省吾君 G7による調整というものがいつ行われるかわからない。G7に調整を任せるというようなあいまいな形にしたことによって円の先高感がますます強くなったとも考えられます。このG7の時期が明示されなかった理由、またG7の時期が検討されているのかどうか、その辺お伺いします。
  91. 竹下登

    国務大臣竹下登君) G7というものは確かにECを除きますと、ECには中央銀行もございませんし、いわば独立国ではないわけでございますから、セブンという国が参加しておるわけであります。したがって、従来行っておったいわばG5、すなわちSDR構成国という形のものも別途オーソライズされたわけでございますが、G7というものに、サミットに参加していらっしゃるイタリー、カナダで見れば、G7がなかったら何か先進国にまたA組とB組とあるような、まあ国威の問題もございましょう。したがって、この問題で長い時間を費やしたわけでありますが、決まったということは事実であります。  したがって、その日程等につきましては今後の問題でございます。恐らく私の予測では、可能な限り近い機会に代理の方の会合をやって、そこで進め方を協議していくということになるのではなかろうかというふうに思っております。
  92. 多田省吾

    ○多田省吾君 その時期はどうなりますか。
  93. 竹下登

    国務大臣竹下登君) その時期も含めてでございまして、書いてあることは年一回は必ずやろう、こう書いてあるのでございますが、適当な時期として考えられるといたしますならば、九月にお互いが寄る機会があるいはあろうかというふうなこともひとつ予測の国際日程の中で考えられることでございますが、今のところ明確に決まっておりません。
  94. 多田省吾

    ○多田省吾君 日銀総裁にお尋ねいたしますけれども、この急激な円高進行によりまして、輸出関連産業、地場産業等、中小企業から大企業に至るまで円高デフレに苦労しておりまして、景気停滞等が非常に心配されるのでございますけれども日銀総裁としてこの景気動向をどのように見ておられるのか、今後の見通しはどうなのか、お伺いしたいと思います。
  95. 澄田智

    参考人澄田智君) 景気の現状につきましては、輸出が既に、数量ベースで見ますると一−三月は前期比に比べてかなりのマイナスになるなど、減速傾向が一段とはっきりしてきております。つれまして、生産も昨年末以来減少ぎみになるなど、景気拡大テンポは鈍化傾向にあるわけであります。このように、現状は円高のデフレ効果がいわば先行的に出てきているわけでありますが、しかしながら、非製造業の設備投資とかあるいは個人消費等を中心に内需はなお底がたく推移しているので、当面のところ、景気の落ち込みが深刻化してくる、あるいは景気が底割れをするというような情勢ではないと思っております。  もちろん、今も御指摘のように、ミクロ的に見ますると、円高が急速でありましただけに、輸出関連産業等にあってはそれに対する対応が著しく困難になってきているという先も出ていることは私どもも十分に承知しているところでございます。そういう点からいっても、最近の円高のテンポは急過ぎるように思われますので、当面は円相場が安定した動きになることを衷心期待をしているわけでございますが、いずれにしても、私どもといたしましては、円高経済全体にどのような影響を及ぼしてくるか、マイナス面、プラス面含めて引き続き注目をしてまいる所存でございます。
  96. 多田省吾

    ○多田省吾君 先ほども指摘されましたけれども日銀総裁が、日本経済は百六十五円でもやっていけるというような御発言をなさったと報道されましたけれども、またただいまの答弁をお聞きいたしましても、まだ深刻なお考えではないように思います。  次に、第四次の公定歩合の引き下げに対してどのようなお考えをお持ちなのか、またアメリカの金利引き下げの問題、これも含めて御答弁いただきたいと思います。
  97. 澄田智

    参考人澄田智君) 既に、日本銀行は本年に入りまして三回にわたって公定歩合を引き下げております。この結果諸金利はかなり低いところまで、歴史的に見ても低い水準になってきているわけでございます。こうした金利低下の景気に対する効果、企業の資金コストを引き下げるというような効果、こういった効果はこれから出てくるものと見られるわけでありまして、政府経済総合対策とあわせて内需拡大に資するものと期待をしているわけでございます。  日銀といたしましては、当面公定歩合をさらに。引き下げるということは全く考えておりません。  それから、アメリカの公定歩合のお尋ねがございましたが、これは他国の政策運営にかかわることでありますので、私の立場からコメントをすることは差し控えさせていただきたいと存じます。しかし、いずれにいたしましても、我が国の政策運営につきましては、そのときどきの情勢によって総合的に判断をする、そして自立的に決定をしていくべきものである、かように考えておる次第でございます。
  98. 多田省吾

    ○多田省吾君 大蔵大臣にお尋ねいたしますけれども昭和六十一年度の成長率についてどうお考えなのか。急激な円高と原油価格の低下で当初の見通しは大幅に修正すべきものと一般的には思われます。実質経済成長率あるいは経常黒字、また円相場、原油価格、また卸売物価が相当予算編成時とは隔たりがございます。今すぐ見直しをしないとしても、この見直しの時期、また格段の隔たりの生じたこういった数値についてどのような御見解をお持ちでございますか。
  99. 北村恭二

    政府委員(北村恭二君) 最近の急速な円高の進展ということがございまして、輸出を初めといたしましていろいろ我が国経済に影響が出ていることは御指摘のとおりでございますし、また企業の景況感にもかなりの影響が出ております。ただ、全体として、経済の動向、先行きを見てまいりますと、物価が極めて安定しております中で、個人消費もなお底がたいものがございますし、また非製造業等における設備投資などもまだ増加基調にございまして、全体として見ますと、今のところまだ内需中心の拡大の局面というものが続いているというふうに見られるわけでございます。  申すまでもなく、御指摘のとおり、いろいろとミクロ的には輸出産業を中心といたしましてその対応に苦慮しているといったような事態もあるわけでございますが、やはり全体の今後の年度間を通ずる経済推移ということを考えますと、先ほど来申し上げておりますような円高のいわゆる交易条件の改善効果ということが、例えば物価の低下ということを通じまして個人消費に影響を与えるとか、それから再三にわたりまして講じられております内需拡大策の効果が出てくることを期待する。あるいは公定歩合の引き下げということもプラスに働くでありましょうし、また原油価格低下のメリットということもあるわけでございます。  したがいまして、現在のところは、当初予定しておりました前提とは若干いろいろ変わっている面があるわけでございますけれども、全体として見ますと、そういった効果が徐々に発現するということであれば、我が国経済というのは当初考えていたような安定成長路線を持続するという過程の中にあるのではないかというふうになお考えでいるところでございます。
  100. 多田省吾

    ○多田省吾君 大蔵大臣にお尋ねいたしますが、昨年秋からのいわゆる円相場に対する政治介入が今日の結果を招いたのでございまして、大臣総裁は、発言を慎重にということで、動向を見守るというような御答弁に終始しておりますけれども、それも一面ではやむを得ないと思いますが、総合対策というものは非常に時間がかかるわけでございます。  ところが一方、円相場というものは昨日も百五十円台に突入したように刻々と変わってまいります。その間に被害を受ける輸出関連の中小企業の方々等は、もう日一日と数多くの倒産を数えておるわけでございまして、パンチを続々と受けているわけです。ですから、やはり対応といたしまして、長期的に対応すべきもの、中期的に対応すべきもの、短期的にすぐさま対応すべきもの、この三つに分けて対応を確実にしていかなければならない、このように思います。特に、アメリカを初めとする欧米各国に対する協調介入の要求等はすぐしなければならないはずのものであるのに、時期を見てとか、総理は本会議で答弁したにもかかわらずまだやっていない。こういう実態ではますます円高の再高値というものが日ごと更新するという事態になりかねません。  そういう意味で、大蔵大臣はどのようにこの問題を考えておりますか。
  101. 竹下登

    国務大臣竹下登君) おっしゃいますとおり、いわゆる通貨の安定というのは、短期的、中期的、長期的総合対策というものが必要であろうと思っております。  そこで、長期的に見ますと、それはいわゆる経済構造というものが、あるいは国際分業も含め、正常な形で生々発展していくことであろうと思います。そして中期的な課題といたしましては、当面私どもがいろいろな指標を持っておりますが、それらの指標が可能な限り国際間でサーベーランス等によっていわば調整される、政策の調和がなされるということであろうかと思います。そして短期的な問題につきましては、かねて私どもが逐次行っておりますところの、例えば先般決定した前倒しとか、あるいは明日ぐらい決定されるであろうと言われております為替差益の還元であるとか、そういうような具体策を着実に実行に移していくことではなかろうかというふうに思います。  さらに、御意見にもありました、超短期的と申しましょうか、いわば介入というようなものを含めての御議論でございますが、この問題につきましては、介入というものは、絶えず通貨当局でお互いの意見交換をしておりますが、どういう場合、いつ行われるかというようなことは差し控えるところにその効果があるではなかろうかというふうに思っております。
  102. 多田省吾

    ○多田省吾君 日銀総裁にお尋ねいたしますけれども、九日の参議院本会議で中曽根総理は、折を見て、時期を見て協調介入を要求すべきときは要求するんだ、アメリカや欧米諸国に対して協調介入を要求するんだ、こういう御答弁がございましたけれども、それは御存じだろうと思います。日銀総裁といたしましては、その中曽根総理の御答弁に対してどういう見解をお持ちでございますか。
  103. 澄田智

    参考人澄田智君) ただいま大蔵大臣も御答弁されましたように、介入につきましては、これは市場に対して直接接するような立場にある私どもの口から、介入の内容、あるいは協調介入を含めて、いかなるときにどういうふうに行うかというような点について申し述べることは、これは厳に差し控えさせていただきたいと思います。  ただ、ニューヨークG5以降特にそうでございますが、通貨当局間において緊密な連絡をとりまして、市場状況等について、またそれに対する対応について密なる連絡をとりつつある、こういうふうな状況であるということだけ申し述べさせていただきたいと思います。
  104. 多田省吾

    ○多田省吾君 大蔵大臣も先ほどおっしゃったんですが、円高の差益還元の問題で、企画庁とそれから通産省にただしておきたいことがございます。  報道によりますと、企画庁、また日銀の分析でも、仕入れ価格の低下が十分に販売価格にはね返らないで、むしろ円高収益が蓄積されているということでございますけれども、さきに総合経済対策価格調整に頼るということがあったわけでございますが、大変これは方針としては弱いと思うんです。値下げ指導を含めたものにしなければならないと思いますが、その点経済企画庁あるいは通産省ではどのように考えておられますか。
  105. 斉藤寿臣

    説明員(斉藤寿臣君) お答えいたします。  四月三十日に発表いたしました輸入消費財価格動向調査によりますと、円ベースの輸入価格の動向は概して低下傾向をたどっております。また小売価格の動向を見ますと、過半の品目が価格が低下してございまして、円高の効果が総じて小売段階に波及しつつあるというぐあいに考えております。ただ、円ベースの輸入価格が低下しているにもかかわらず、一部につきまして小売価格が低下していないものもございます。一般的に小売価格は需給動向等市場の動向に非常に左右されますので、そのような円高による輸入価格の低下がそのまま小売価格に反映されない場合もあることも事実でございます。  経済企画庁としましては、今後とも輸入消費財の価格動向等につきまして注視することが必要であると考えております。関係者の一層の努力を期待しておりますが、先般決定されました総合経済対策におきましても、必要に応じまして関係業界に対して要請を行うというぐあいに書いてございますし、それを受けまして、物資を所管しております関係省庁におきまして、関係業界に対しまして要請を行っておるというぐあいに聞いております。
  106. 殿岡茂樹

    説明員(殿岡茂樹君) 通産省におきましては、輸入消費財につきまして、国民生活に関連の深い二十品目について価格動向調査を実施いたしたところでございますが、この調査結果によりますと、円高によるメリットが着実に小売価格に反映してきている状況にあると考えられるところでございます。しかしながら、なお一方でまだ効果があらわれていないというものもございます。  通産省といたしましては、円高メリットが一般消費者に対しまして一層均てんされるということが重要であるという観点から、主要百貨店あるいはスーパーに対します円高活用プランの策定指導でありますとか、さらには、五月九日付におきまして、三十九の輸入関係団体、それから十五の流通関係団体に対しまして、円高による輸入品価格の低下の効果が小売価格に反映されるようにという趣旨の通達を発したところでございます。
  107. 多田省吾

    ○多田省吾君 私はまだまだなまぬるいように感じます。  次に進みますが、衆議院予算委員会大蔵省から提出されました国債の所有者別構成比についての資料がございますが、この中で日米間の比較が出ております。特に見過ごしにできないのは、海外の所有という点で一九八四年の年度末を比較してみますと、日本が三・八%に対しましてアメリカは一三・六%と非常に大きな差が出ているわけでございます。  日銀総裁にお伺いいたしますけれども、これらの数値が示す諸要因は幾つか挙げられますけれども、日米間の比較で何といっても最大要因というものは金利差から来るものと考えられますが、この点総裁はどのように認識しておられますか。
  108. 澄田智

    参考人澄田智君) 今も御指摘のように、諸要因がこれにあるということでございますが、何といってもやはりドルが基軸通貨であるという事情が基本にあると思います。これに加えまして、アメリカの政治情勢が安定をしている、あるいは総合的な経済力が強いというような点も働いているわけでございますが、さらに、金利も相対的にアメリカの金利が高水準で推移しているというような事情ももちろん反映をしている、かように考えております。
  109. 多田省吾

    ○多田省吾君 総裁が今おっしゃったように、ドルが基軸通貨であるという点も要因の一つである、これはこのとおりだと思います。しかし、アメリカの国債の消化のために我が国の資金が大量に流出しているという事実がありまして、これはどうしても見過ごしはできない問題だと思います。  総裁にもう一度お尋ねいたしますけれども、一九七八年ごろから一九八四年まで、アメリカの国債の消化に占める我が国に対する依存度というものがどうなっているのか、金額を含めてできる限り御説明をいただきたい。こういう異常事態についてどういう認識をお持ちなのか、打開の方途はいかがなのか、お答えいただきたいと思います。
  110. 澄田智

    参考人澄田智君) お尋ねの点でございますが、残念ながら、アメリカの国債の海外の所有の比率というのはわかっておるわけでありますが、その内訳、すなわち我が国がどれだけのウエートを占めているかという点についての資料が発表されておりません。したがいまして、公表されているものはございませんが、しかし、海外への依存度のうち我が国がかなりなウエートを占めているということだけは言えるのではないか、かように思うわけでございます。  このように、我が国の資本がアメリカを中心にこういう形で流出しているということは事実でございますが、一方において我が国は大幅な経常収支の黒字が続いているわけでありますので、したがって、こういう反対に資本が流出するという形をとるのもやむを得ない点もございます。また、アメリカの財政赤字の円滑なファイナンスにこのような資本の流れが寄与しているというプラスの面もあるわけでございます。  いずれにいたしましても、我が国といたしましては、国内貯蓄の有効活用を図るためには、可能な範囲で可能な限り内需の拡大を図っていくことが肝要でございまして、またそういうことが対外不均衡の是正にもつながっていく、かように認識をいたしている次第でございます。
  111. 多田省吾

    ○多田省吾君 この問題で最後に大蔵大臣にお尋ねいたしますけれども日本の資本流出がもう九百何十億ドルと大変なものがある。やはり内需拡大あるいは総理の言う民活、これを早急に進めなければならない、こういうことでございますが、大蔵大臣はどのようにお考えですか。
  112. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 総裁からもお答えがございましたように、アメリカの財政赤字のいわば資金提供国というふうな感じすら抱けるような状態になっておることも事実でございます。今や金融の自由化、国際化のことでございますので、場合によってこの金利差に着目してそういう状態も、これは国際化、自由化の中でございますから出ていくというのは一つの流れであろうと思いますが、可能な限りその貯蓄が国内の施策に使われていく、それがためにいわゆる民活というのがいろんなことで考えられていくわけでございます。  すなわち、郵便貯金とかそういうことは財政投融資等の原資になるわけでございますが、民間貯蓄におかれても、これが例えて申しますなちば、法律を通していただいた東京湾等々の問題につきましても、いわば割引債とかそういう形でもって個人貯蓄が吸収され、それが活用されていくというのも一つの手法であろうかと思うわけでございます。なお、そうした対象プロジェクトを、これは草の根民活をも含め環境を整備していくことによって貯蓄の流れが、その投資がそちらの方へ向いていくように誘導することは目下の大きな政策の主要課題ではなかろうかというふうに自覚をいたしておるところであります。
  113. 多田省吾

    ○多田省吾君 財確法案の質問に入りたいと思います。  旧銀総裁ありがとうございました。  我が国の長期債務残高を対GNPで見ますと、本年度末で五〇%にも達するわけでございます。他の先進国では、統計は少し古くなりますが、アメリカが六十年度で三六・五%、西ドイツで二〇・三%、イギリスは四七・二%。したがって日本はイギリスと並んで深刻な状況にございます。  六十一年度の特例公債発行額は五兆二千四百六十億円となりまして、財政当局として大臣が目指しておられた減額幅一兆円以上というものが大きく下回ったものとなっております。どのような理由でこのような大幅な後退となったのか、まず御説明いただきたいと思います。
  114. 保田博

    政府委員(保田博君) 長期債務残高の対GNP比の国際比較、この数字は先生が御指摘のとおりでございまして、我が国は最も高い水準にあります。そのために利払い費を中心とする国債費が歳出の約二割を超えるというような事態になっておりまして、そういう意味では最も先進国の中で財政状況が深刻であるということでございます。  イギリスが我が国に近いわけでございますけれども、実は制度の違いがございまして、イギリスの場合には、公的企業や地方団体に対する貸付原資を調達するために国が公債発行しているといったようなものがございます。そういうものを含めまして四七・二という高い水準になっておる。そういう意味で、我が国の五〇%と比べる場合には相当割り引きをしていただくべきものではないかと思うわけであります。  なお、英国は第二次大戦直後にはこの数字は一八〇を超えておったわけでございますが、長年にわたりまする努力によって先ほどのような数字まで下がっておるということは、我々として、もって他山の石とすべきものではないかというふうに考えておるわけであります。  それからお尋ねの第二点、六十一年度予算での国債の新規発行額の減額が予定どおりいかなかったではないかという御指摘でございます。  御指摘のとおりでございまして、特例公債減額は四千八百四十億円、四条債の減も含めまして七千三百四十億円の減にとどまったわけでございます。我々としては、これは非常に残念ではございますけれども歳出面におきまして既存の制度、施策を根本的に洗い直しをいたしまして、歳出面で非常に大きかったのは、補助率の引き下げといったようなかなり思い切った施策を講じたわけでございますけれども、それらを含めまして一般歳出は四年間引き続き前年度を下回るという水準におさめたわけでございます。歳入との関係で言いましてその差額が先ほど申し上げたような状況となったということでございます。財政改革への努力を怠ったということではございませんので、御理解をいただきたいと思います。
  115. 多田省吾

    ○多田省吾君 中曽根総理竹下大蔵大臣も、六十五年度特例公債依存脱却の旗をおろしておりません。もしこれを完遂しようといたしますと、六十二年度以降毎年度少なくとも約一兆三千億円の減額が必要となるわけでございます。ところが今回もどうも税収の落ち込みがあるので、補正予算を組んで特例公債の追加発行というようなことも考えられまして、ますます要調整額というものが大きくなるわけでございます。  六十五年度脱却はこれはやっていただきたいし、やらなくちゃいけない問題ではありますけれども、現状においてはどうもだれが見てもできそうもないということでございますが、六十二年度以降のプログラムを大臣として考えておられるんですか。
  116. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず、御指摘のように、努力目標の達成は容易ならざる課題であるという問題意識は持っております。しかし、ながら、やっぱりなし遂げなければならない国民的課題でございますので、今後とも全力を尽くしてこれに対して取り組んでいかなきゃならぬ。  六十二年度以降の具体的予算編成の見込みについて現段階で申し上げることは大変困難なことでございますが、それでも、毎年、前年度の中期展望に示されました巨額の要調整額を最大限の努力を払って解消して今日に至って、そうして前年度同額以下というような予算を連続して組ましていただいた。したがって、最終的に申し上げる言葉といたしましては、今後とも、毎年度の予算編成過程において歳出、歳入両面にわたって徹底的な行財政改革の旗印のもとに対応していかなきゃならぬということであろうと思っております。  歳出面については、これは国、地方を通ずる行財政の見直し等々、補助金の問題等、先般御審議いただきましたが、既存の制度、施策の改革、こういうのはなおなおやっていかなきゃならぬ課題だ。現状の制度、施策をそのままの前提とした場合、これは全く成ることじゃございませんので、それについて対応していかなきゃならぬ問題であると思っております。  そして、税制も抜本的見直しのための検討が今行われておりますが、これにつきましても、いわば安定的な歳入構造を確保するという点からも取り組んでいかなければならないわけでございます。  だから終局的に申しますと、経済見通しというのが自由主義経済の中でなかなか難しいように、その一部であります財政につきまして定量的な見通しを申し上げることは困難でございますが、やがて参ります六十二年度予算に当たっても、本当に毎年毎年の厳しい姿勢でもって対応していかなきゃならぬだろうということを覚悟いたしておるところであります。
  117. 多田省吾

    ○多田省吾君 政府が先日決定いたしました経済構造調整推進要綱の文書に、特例公債脱却目標時期が欠落しているわけでございます。これは現在の緊縮財政から軌道修正するとも受け取られますけれども、この点について大臣のお考えをお伺いしたいと思います。  それからもう一点は、建設公債について、その発行は弾力的に行うべきだという考え政府・与党にあるようでございますが、この点どう考えておられるか。あわせてお伺いいたします。
  118. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 経済構造調整推進要綱というものをつくったわけでございますが、「財政政策の運営に当たっては、赤字国債依存体質からの早期脱却という財政改革の基本路線は維持すべきである」ということでございますから、私は軌道修正されたものだというふうには考えていないところでございます。仮に、これを若干でもイージーに考えまして、六十五年度という目標を先延ばしにしてそれを特例公債の増発によって賄ってきた場合は、結局はいわば長期にわたっての負担が増大するわけでございますから、硬直化というものを一層もたらすということになると同時に、今まで一生懸命やってきましたのが水泡に帰すというようなことになってはならぬというふうに思っておるところでございます。  それから建設公債の問題でございますが、これは脱却目標はございません。が、対象期間中に、特例公債依存体質の脱却と公債依存度の引き下げに努め、財政の対応力の回復を図る、こういう二本立てのいわば財政再建に当たる基本的な考え方を示しておるわけでございますから、したがって、公債依存度ということからいたしますならば、やはり両方を含めたものが減っていかなきゃならぬという論理に帰着するわけでございます。  それで、いつも申し上げますように、赤字公債と違って幾ばくかの資産が残るじゃないか、そのとおりでございます。しかしながら、現実問題としてそれは、この一兆が三兆七千億と、こういういわば後世の納税者にその負担を転嫁する、こういうことは財政当局としては基本的には耐え切れない。だからやっぱりイージーになってはならぬということをいつも考えておるところでございます。  確かに、税収、一兆円仮に建設公債発行いたしまして上手に使って、余り土地代等にかからぬようなところででも上手に使ってまいりますと、恐らく四千億以上の増収としてはね返ってこようと思います。しかしながら、その一兆円はそのまま三兆七千億として後送りされていくというところに、公債というものの発行には、財政法の本当は基本的な精神にさかのぼって気持ちは締めてかからなきゃならぬ課題だというふうに思っておるところでございます。
  119. 多田省吾

    ○多田省吾君 来年度の問題でございますが、来年度も歳出の抑制ということは考えておられるようでございますが、今までのようなシーリング設定の方法をおとりになるのか、それとも全面洗い直しの方法をおとりになるのか、どちらでございますか。
  120. 保田博

    政府委員(保田博君) まだ五月でございますので、来年度予算編成の具体的な検討に入っているという段階では実はございません。ではございませんが、五十五年度以降、歳出削減を中心とした財政再建を進めているわけでございます。  先ほど来大臣の御答弁にもございましたが、歳出面におきまして国、地方を通ずる行財政の守備範囲の見直しを進める、既存の制度、施策についてあらゆる分野にわたってその改革をさらに進めていくということは当然のことでございます。その際、従来から、翌年度の概算要求に当たりましては厳しい要求基準の設定を行ってまいりました。特にここ三年間は原則としてマイナス一〇%の枠を設定してまいりました。その枠内におきまして各省庁がそれぞれの担当しております行政施策を根本的に洗い直して、ようやくこの概算要求の枠内におさめて大蔵省へ持ってきておるということでございまして、この基本的な概算要求の設定、それからその枠内で各省庁によって徹底的な歳出抑制の努力をしていただくという基本は、来年度もこれを変えるということにはならないと思います。
  121. 多田省吾

    ○多田省吾君 国債は本年度末で荷四十三兆円の累積高を数える予定になっております。これが経済の供給面に与える影響でございますが、経常収支は大幅黒字だ。逆に労働分配率は低下の一途をたどっている。ある大企業内には内部留保も強まっている企業もある。このように考えますと、大量に発行をされ累積した国債というものが、財テク対象資産として吸収されて経済のマネーゲーム化を強めるのではないかということがございます。これは経済の供給面に中長期的な影響を与えることは十分考えられるわけでございます。こういう状況政府はどう見ておられますか。
  122. 北村恭二

    政府委員(北村恭二君) 最近の企業の収益の状況でございますけれども、五十八年度、五十九年度大幅に増加いたしました後、六十年度に入りますと非製造業の収益が順調に推移しておりますけれども、製造業等におきましては、先ほど来のお話にもございますような円高の影響というものもございまして、減益に転ずるということも見込まれますので、全体としては若干減益といったような傾向が続いているのではないかと分析しているわけでございます。  そういった中で、いわゆるそういった企業の内部留保といったようなものが、金融資産の増大ということを背景といたしまして、最近かなり資産運用ということにつきまして企業が関心を持って収益性を重視した運用をするということになってきているわけでございまして、全体としてこういう動きをどう評価するかというお尋ねかと思いますけれども、企業といたしますと、やはり一つの余裕資金ということであれば、ある程度それを収益性を目指した運用ということで運用いたしますことは経済合理性ということから見ても当然考えられることかと思いますし、また、やはり企業でございますから、そういった資産を運用しながら、一定の時期にはやはりこれをまた設備投資といった方に振り向けていくということもあろうかと思います。ただ、御指摘のように、非常にそれが何か投機的な形での債券投資ということになりますと、これはやはり我が国の経済の健全な発展という観点からは適当ではないというふうに見ているわけでございます。
  123. 多田省吾

    ○多田省吾君 公債依存度について今年度とうなっているか。それから、将来の見通しをあわせてお答えいただきたいと思います。
  124. 保田博

    政府委員(保田博君) 公債依存度のお尋ねでございますが、過去さかのぼりますと、最も高いのが昭和五十四年度予算でございまして、当初予算で三九・六でございました。実績が三四・七であったわけですが、財政改革を進めることによりまして漸次この率が下がってまいりまして、六十一年度予算ではこれが二〇・二ということになっておるわけでございます。  この公債依存度が将来いかに推移するかというお尋ねでございますけれども、これはまさに今後の財政改革がいかなる形で進展するかということにかかわるわけでございまして、現在、ここで一義的に申し上げられる段階ではございませんけれども公債依存度が高いことによりまして公債が累増する、そのことが結局利払いの増にはね返りまして、政策的経費に充てられる財源がなかなか確保することが困難であるということになっておるわけでございますので、できるだけ利払い負担を将来にわたって軽減するために、この公債依存度を極力下げていきたい、こういうふうに考え財政改革を進めていく、こういうことでございます。
  125. 多田省吾

    ○多田省吾君 御説明いただいたように、確かに数字の上では昭和五十四年度が最高ですか、昭和五十七年度から若干ずつでも公債依存度は改善されているようでございます。しかし、大蔵大臣もよく御存じのように、これは歳出予算の先送りとか、特別会計や財投の利用とか、そのほかいろいろの予算編成技術を使いまして、形だけ、数字だけの公債依存度抑制となっているように思われるのでございます。  このたびも、厚生年金、政府管掌健康保険への国庫負担繰り延べが四千三百四十億円、国庫補助率引き下げによる地方への負担転嫁が五十九年度ベースで一兆一千七百億円、国家公務員ベースアップ予定額の当初予算の計上取りやめ、これは一%相当で七百八十億円、国債費定率繰入停止が二兆七百三十八億円、それから国民年金国庫負担金の平準化による後年度繰り延べが千九百十七億円、住宅金融公庫への利子補給金の一部繰り延べが一千八十四億円、さらに、将来の税収を先取りする効果を持つ法人税の欠損金の翌年度繰越控除の一時停止二千二百三十億円など数多くございます。これらの措置によって公債依存度が引き下げられることが果たして財政再建なのかどうか、健全な財政運営と言えるのかどうか、この点大臣の明確な御答弁をお願いしたいと思います。
  126. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに今御指摘がありましたとおり、いわば厚生年金国庫負担繰り入れ特例措置、まさにこれは政府として一段と厳しい財政事情のもとでぎりぎりの努力、工夫ということで御理解をいただくほかはございません。それから政管健保の国庫補助特例措置にいたしましても、いわば特例的に会計間の繰入調整を行うということになるわけであります。したがってやむを得ざる措置というふうに考えております。国庫補助率の引き下げについては、先般この法律を通していただきましたが、補助金問題関係閣僚会議の決定に基づいて、いわば地方と国の費用負担のあり方、そして機能分担ということからやらしていただいた。あるいはもう一つ挙げますならば、給与改善費の一%計上もことしはやっておりません。それから定率繰り入れという問題の停止もございます。さらに今おっしゃいましたようなもろもろの問題点もございます。税制上の問題では、直近一年のものを対象にし、あるいはたばこを一年限りの臨時異例の措置としてやらしていただく、そういう大変な苦心が施されておるのは事実であります。  これらを本当はやらないでやれるような財政体質を取り戻すというのがまさに財政改革そのもののあり方でございますので、これからも国会の問答等を参考にしながら、長期的には財政体質の、いつでも財政が出動し得るところの体力を回復するという方向で厳しく対応していかざるを得ないというのが偽らざるお答えになろうかと思うわけであります。
  127. 多田省吾

    ○多田省吾君 本年度の税収見通しについてお伺いしておきたいと思います。  政府の六十一年度経済見通しは実質四・〇%、名目が五・一%と、民間のどの調査機関のそれよりも大幅に高い成長率の見通しを立てているわけでございます。もしこれが民間の見通し並みの実績に終わるとすると、かなり大幅な税収不足が生ずるわけでございます。六十年度の実績見通しをごらんになり、またこの六十一年度の見通しについて、政府は強気な答弁をなさるとは思いますが、どのように考えておられるんですか。
  128. 水野勝

    政府委員水野勝君) まず六十年度でございますが、現在まで判明しておりますのは三月末の税収でございます。三月末の税収でございますと、補正後予算に対しまして七八・八%までまいっております。これは前年同月の七九%に比べますと若干下回ってございますが、ただ、六十年度はたばこ消費税というものを新しく導入した年度でございまして、初年度でございますので納付の方法がやや異例になっております。その点を調整いたしますと、本年度の三月末の進捗割合は七九・四%でございまして、これは前年を若干上回っているということになるわけでございます。ただ、六十年度税収につきましては、非常にウエートの大きい三月決算法人の納付がこの五月末でございまして、それが判明いたしますのは七月上旬になろうかと思うわけでございます。したがいまして、このような大きなウエートをなお残しておりますので、六十年度税収といたしましてはなお楽観を許さないと申しますか、予断を許さない段階にあるわけでございまして、明確にお答えをできる段階にはないわけでございます。  六十一年度につきましては、年度といたしましては既に二月目になっておりますけれども、五月末までの分につきましてはほとんど前年度税収になるわけでございますので、実績はまだないと申し上げるべき段階でございます。したがいまして、実績に基づきましたところでの六十一年税収につきましては申し上げられる段階にはないわけでございますが、六十一年度といたしましては、もろもろの課税実績、それからまたもろもろの経済諸指標等を基礎といたしまして、極力適正なものとするように見積もったつもりでございます。もちろん見積もったのは昨年の末でございます。その後円高等の新しい状況はあるわけでございますが、この円高等につきましても、先般来いろいろ御議論のございます、経済あるいは法人収益に対しましてプラス、マイナス両面もあるわけでございますので、この段階で予測を明確に申し上げられる段階にはないわけでございます。  もちろん、いろいろ御議論のございます石油税について申し上げれば、完璧に従価税をとってございますので、原油価格為替レート等の状況によりましては大きなマイナスも出てくるということも予想されるわけでございますが、一方、そうした価格動向、為替レート等によりまして数量等がどう変化するかということによってもまた変化するわけでございますので、こうした点を含めまして、なお六十一年度につきましては具体的に申し上げられる段階にない、今後の経済状況等の推移を見守ってまいる段階にあるということで御理解を賜りたいと思います。
  129. 多田省吾

    ○多田省吾君 本会議でもお尋ねいたしましたが、国債整理基金の資金枯渇という事態理由に現在の国債償還ルールを変更いたしまして、全額借換債の発行による国債償還という構想も政府部内で検討中であるという報道がなされております。これは国債に対する国民の信頼を根本から揺るがすという点で断じてそういう措置はとるべきではないと考えますけれども大蔵大臣の御所見をさらにお伺いしたいと思います。
  130. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに中長期的に見て極めて厳しい状況に財政事情がそもそもあるわけでございます。引き続き歳入歳出両面に対して極力努力する。  そこで、具体的な今の御指摘についてでございますが、減債制度の基本は維持してまいりたいという考え方をとっておるわけでございます、今日。したがって、六十二年度以降の取り扱いについては、電電株の売却収入がどうなるかなどの問題もありますので、このような、すなわち減債制度の根幹は維持するという考え方を踏まえて、そしてさらに特例公債減額を進めていく道がないものか、ぎりぎりの汗と知恵を絞っていかなきゃならない大変な工夫を要する問題であるというふうに今考えております。  いずれにせよ、よく言われます、イギリスでかつてとっておりましたような永久国債、こういうようなものではないにいたしましても、実際、根幹を維持しながらというところにどういうふうな調和点を見出すかということが難儀な難儀なこれからの作業になるだろうというふうに考えておるところでございます。
  131. 多田省吾

    ○多田省吾君 国債整理基金の定率繰入停止、本年度もなさろうとしておりますが、この累計は本年度末で八兆円を上回るものとなるわけでございます。五十七年度から五年間連続で定率繰入停止がなされるわけでございます。そうしますと、政府は減債制度そのものを変更されようとしているのではないかと考えられますが、これはいかがですか。
  132. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは、五年間停止して、しかしながらというので、四千百億円のいわゆる予算繰り入れ、それからNTT株式の売却で得られる収入、それで国債整理基金の円滑な運営に資することとしたわけでございますので、まさにこれは今年度のぎりぎりの措置であったというふうに考えております。  したがって、今後の問題、先ほど申し述べましたように、減債制度の根幹はこれを維持しつつどういうふうに六十二年対応していくかというのは、まさにぎりぎりの知恵と汗とを伴う政策課題であろうというふうに問題意識を持っております。
  133. 多田省吾

    ○多田省吾君 ここで、本委員会でたびたび論議されておりますNTT、電電株の売却についてお伺いしておきたいと思います。  さきに電電株式売却問題研究会から意見が出されたわけでございます。政府はこの意見をもとに具体的にどうされようとしているのか。この意見に述べております、入札、売り出しの組み合わせ方式でいくのか、現在売却方法について決定したものがあるのか、またさらに委員会をつくって論議していこうとするのか、この辺の事情を御説明いただきたいと思います。
  134. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず、昨日国有財産審議会に御諮問を申し上げたところでございます。今までの経過の問題もございますので、七月中を目途に答申が出されるという予定でありますので、具体的な売却方法等については、この答申をいただいた上で決定するという建前になるわけでございます。ただ、売却問題研究会等々がございましたので、今多田さんの御指摘になりましたような問題についてのお答え事務当局からいたさすことにいたします。
  135. 窪田弘

    政府委員(窪田弘君) 電電株式売却問題研究会は、四月の二十四日に御意見をいただきましたが、先ほど御指摘のありましたように、基本的には、入札と売り出しの組み合わせ方式によって行うという基本的な考え方がよかろうという御意見をお示しをいただきました。しかし、この場合でも、一体どのぐらいを入札にかけるのかとか、あるいは売り出しの場合、どういう方法によるべきか、具体的な問題がいろいろございます。今大臣の御答弁にありましたように、こういった細かい問題をこれから国有財産中央審議会で御検討いただいて、七月中に御結論をいただき、それに基づいて実際の売却を始めるということになろうかと思います。
  136. 多田省吾

    ○多田省吾君 最終的に売却方法も決まっていない段階で、収入金のみを先取りして予算計上しているということは大変おかしいと思うんです。ですから、こんなにも早急に放出するというのは、単に国債償還財源確保することのみのためではないか、このように考えられます。電電株は国の大事な資産でございます。放出そのものも国民に納得していただかなければならないものだと私ども考えております。  私は、やはり今の段階でも安易に過ぎるのではないか、このように考えますが、大蔵大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  137. 竹下登

    国務大臣竹下登君) そのような御意見もいただいたこともございますが、元来NTT株式は国民共有の資産であって、その売却収入は国民共通の負債である国債償還財源に充てるのが適当だという判断をしていただいて、そこで売却可能分を国債整理基金特会に帰属させるものであるということを決めていただいた。  さて、今おっしゃいましたのは、もう少し様子を見てからでもいいではないか、いかにもことしの国債整理基金が空っぽになるのを防ぐためにわざわざやったではないか、こういうような御懸念もあろうかと思いますが、元来、民間になったとしたならば、可能な限り多くの人に株式を所有していただくのが本来の姿でございますので、やっぱり売るべきであるという結論にまずは到達したわけでございます。その後、されば予算上どういう計上の仕方をするか、こういうことになりまして、いわばあらゆる角度から検討して、予測、予見を引き起こさないということで計上をさせていただいた。したがって、この問題は、国債整理基金空っぽありきということよりも、まずは民営移管ありきというのが最初の考え方に存在しておったということは私は御理解をいただきたいものだと考えております。
  138. 多田省吾

    ○多田省吾君 せっかくの御答弁でございますけれども、もしも、減債基金制度の基本でありますところの定率繰り入れ停止をしないで、それでNTT株式の売却益を国債償還財源に充てるというのであれば、まだ少しは納得できる面もあるわけでございますが、今回はそうじゃないわけですね。定率繰り入れ停止した上で、さらにこのNTT株式の売却益を国債償還財源に充てるという姿になるわけでございますから、どうしても私どもは納得できない。  次に、政府管掌健康保険事業に係る一般会計からの厚生保険特別会計健康保険勘定への繰り入れを六十年度に引き続いて本年度も減額する、これが今回の法案の骨子の一つでありますけれども、健康保険勘定の収支状況に二年間も繰り入れ減額する余裕があるのかどうか、この辺をまず御説明いただきたい。
  139. 保田博

    政府委員(保田博君) 御指摘政府管掌健康保険の財政状況でございますけれども、五十九年度にいわゆる健保法の大改正をさせていただきまして、本人の一割負担を導入するということをいたしました。それから、累年にわたりまして医療費の適正化等の経営努力を進めてまいっておりまして、ここ数年かなり大幅な黒字を計上いたしておるわけでございます。  ちなみに数字を申し上げますと、五十六年度、五十七年度、五十八年度は六百億から七百億程度でございましたけれども、五十九年度決算では二千四十億円、それから予算編成時におきまする六十年度の見込みでは千八百七十二億円の黒字が見込まれるという状況にあったわけであります。  したがいまして、六十一年度予算編成におきましては、そのうちの一部を政管健保の運営に支障が生じない範囲内ということで千三百億円の繰入減額をさせていただいたということでございます。通常の計算をいたしますと、国庫補助額は七千百億程度必要であったわけでございますが、千三百億円の繰入減額を行いまして、差し引き予算計上額が五千七百九十六億円ということになったわけであります。この数字は大体六十年度末の政管健保の積立金の約三分の一に相当する金額であるというふうに考えておるわけであります。繰入調整をさせていただきましたけれども、なお現在の健康保険財政は、最近になりましてかなり医療費の増が根強いものはございますけれども、当面財政運営には支障が生じないというふうに考えております。
  140. 多田省吾

    ○多田省吾君 この健康保険勘定には巨額の累積赤字が存在しているわけです。ですから、私は会計全体では決して余裕のある状態にはないと思います。  そこでお伺いいたしますけれども一般会計からの繰り戻しについてはいつ実施されるのか、またその間の利子相当分でございますか、これはどうするのか、これをあわせてお伺いしたいと思います。
  141. 保田博

    政府委員(保田博君) 政管健保の国庫補助特例措置、今回法案を御提案申し上げておるわけでございますが、これによって繰入調整をさせていただきました金額につきましては、将来政管健保の財政が悪化をいたしまして、その適正な運営を確保する必要が生じた場合には、当然繰り戻しを行うということにいたしております。  なお、利子はどうなるのかというお尋ねでございますけれども、先生が念頭にございますのは、恐らく厚生年金の負担特例にかかわるものと比較してのことではないかと思うわけですが、この医療費にかかわる政管健保は短期保険でございますから、積立金から生ずる利子というものが収支の上で非常に大きなウエートを持つというようなものではないわけでございます。ただしかしながら、将来健保の財政が悪化をいたしまして、その適正な運営を確保する必要が生じたような場合には、繰入減額分の繰り戻しを初めとする種々の方策を講ずるということになっておりまして、その際必要があるとすれば利子相当額の繰り入れ検討する場合があろうか、そういうふうに考えておるわけでございます。
  142. 多田省吾

    ○多田省吾君 公債依存度について別の観点からもう一つお伺いしたいと思います。  それは、新規財源国債以外の公共債の増発がかなりのものになっているということでございます。借換債だけでも十一兆四千九百二十四億円もあるわけでございますが、そのほかにどのような新規財源国債以外の公共債発行が予定されているのか。地方債も含めてお伺いしたいと思います。これらは総額でどの程度の伸びになるのか。
  143. 窪田弘

    政府委員(窪田弘君) 六十一年度の新規財源国債、十兆九千四百六十億円のほかに、御指摘の借換債が十一兆四千九百二十四億円、政府保証債が二兆九千五百億円、公社公団等が発行する債券で政府の保証がないものが一兆七千八百八十二億円、地方債が七兆九百二十億円、合計これらが十一兆八千三百二億円でございまして、新規国債、借換債その他の公共債合わせまして合計の公共債全体では三十四兆二千六百八十六億円を予定をいたしております。
  144. 多田省吾

    ○多田省吾君 その額は非常に多いわけでございまして、その伸びがどの程度になっているのか。こういうことで公債依存度を抑制したと言えるのか。この二点お伺いいたします。
  145. 窪田弘

    政府委員(窪田弘君) 伸び率でございますが、国債以外の公共債の伸び率は五・六%でございます。また新規財源債を除きましたそれ以外の公共債、借換債も含めますと伸びは一五・七%になります。また公共債全体で申しますと七一六%の伸びということに相なります。  先ほど来お話がありましたように、新規財源債は、非常な努力をいたしまして、これは六・三%のマイナス、三角六・三%となっておりますが、その他につきましては、借換債は期限の来たものがふえているわけでございますし、地方債につきましては、地方の投資的事業の推進等の要請に基づくものでございます。また政府保証債等につきましては、民間活力の導入等の要請で民間資金を活用いたしておるものでございます。いずれもこれらは、市中消化というような要請を十分考慮いたしました上で適切な発行規模を設定したというふうに考えている次第でございます。
  146. 多田省吾

    ○多田省吾君 最後に大蔵大臣にお尋ねしたいと思います。  六十一年度の予算における国債発行は一つの重要な転機になったと思うんです。というのは、国債費が、新規財源国債の収入金を三千七百三十五億円も上回ったわけです。国債費が非常に大きくなったということです。結局、新規財源国債の収入金を上回ったということは、国債発行というものが新規財源調達としての機能を失ったということでございまして、大変な事態だと思います。そのことで大蔵大臣にとっても忘れることのできない意味があると思いますけれども、今後の国債減額の決意とあわせてお考えをお尋ねしたいと思います。
  147. 竹下登

    国務大臣竹下登君) おっしゃいますように、国債政策というのには一つ一つ切れ目があって、まずは四十年度補正予算で二千億でございましたか、発行したときが一つのエポック。それから五十年の予算でいわゆる特例公債発行したということが一つのエポック。それから次は、五十九年に特例債をも借換債の対象にしたということが一つの切れ目。それから、制度の問題とは別に、ことしの場合における、いわば調達する新規財源債の方よりも利払いが多い、こういう状態でございますから、普通の企業でありますならば、新規に苦労して借りたものはただ利払いに充てておるだけである、利払いのための金を借りる、こういうことになっておりますので、私は一つのやっぱり大きな転機だなというふうには思っております。  少しでも気が安らぐとすれば、依存度が若干下がったということが気が安らぐ一つかなというような感じでもって予算編成の際も臨んでおったわけでありますが、基本的には、利払いがふえていくというのは、新規発行債を可能な限り落としていくということからまず始めていかなきゃならぬではなかろうか。厳しい道でございますけれども、今後この百四十兆円という残高を背負い込んだ財政運営の中で、この狭い狭い政策選択の幅の中で、あらゆる工夫をして、国民の理解も得ながら財政の運営に当たっていかなきゃならぬというふうに考えておるところでございます。
  148. 多田省吾

    ○多田省吾君 大蔵大臣に最後にお尋ねいたしますが、非常に矛盾するような質問になりますけれども、私どもは、内需拡大あるいは景気回復、早急にやっていかなければますます日本経済もまた財政もじり貧に陥っていくのではないか、このように思うわけでございます。緊縮財政、緊縮予算ということを唱え過ぎて、赤字国債を減らすのは結構でございますけれども、そのために公共投資が非常に減額になる、あるいは福祉、教育等に対する予算減額される、こういうことになりまして、そしてその結果景気が沈滞いたしまして、財源も枯渇する、法人税等も少なくなってしまう、最後にまた補正予算で赤字国債を補てんしなければならない。こういうことの繰り返してはやはりじり貧経済、じり貧財政と言わざるを得ないのでございます。  やはり、私どもが主張するように、大幅所得税減税とか公共投資の拡大とか、また思い切った内需拡大等をここで強く図りまして、そしてそれによって法人税等は大幅に増収できるわけでございます。こういった景気回復の伴った財政こそがこれからの日本の財政を好転させる唯一の道ではないか、このように思うわけでございますが、これからも内需拡大あるいは大幅所得税減税あるいは公共投資の拡大、こういった方向に向かって考え直すお考えがないのかどうか、これをお伺いいたしまして、私の質問を終わります。
  149. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 内需拡大、そうして産業構造もそういうふうに変化せしめなきゃいかぬ、これは私も基本的に先生の御意見を否定する何物もございません。ただ、私は、拡大均衡の経済の中で財政の果たす役割というのは、可能な限り緊縮した均衡の姿でそれをどういうふうな組み合わせでやっていくかというのが、今後のこの狭い政策選択の幅の中で我々が努力していかなきゃならぬ課題だというふうに考えておりますので、今後とも御鞭撻のほどをお願いをいたします。
  150. 山本富雄

    委員長山本富雄君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後四時まで休憩いたします。    午後零時五十五分休憩      —————・—————    午後四時開会
  151. 山本富雄

    委員長山本富雄君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和六十一年度の財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  152. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 午前中の議論にもありましたように、国債発行について大臣から四つの転機があるということで、その都度エスカレートしてまいりまして、国債費の一般会計に占める割合が六十一年度予算で二一%、そのほとんどが金利の支払いということで、それは主に高所得者層に分配される、いわゆる所得の逆再配分が一層強化されているわけであります。この問題に絞ってきょうは質問をしたいと思います。  歳出面でのこの国債費の急増、それから社会保障予算のカットなどで歳出面の逆所得再配分機能が強まっている一方で、歳入面でも、所得税の累進緩和で所得再配分を弱める方向が今回の税制改正で出ているわけであります。大蔵省はその理由として、所得分配が平準化したことを挙げておりますが、その根拠は何か、これをお答えいただきたいし、またその前提として、平準化は結構なことじゃないかと思うんですが、それについて大臣の御見解を賜りたいと思います。
  153. 水野勝

    政府委員水野勝君) 今回の税制調査会が審議を始めるに当たりまして、去年の九月新たな総理からの諮問に基づきまして、十月から一般的な経済社会情勢なりから審議をいただいたわけでございます。  その中での数字等によりますと、例えば所得水準、昭和二十六年と五十九年とを比べると、第一分位と第五分位との一カ月当たりの平均実収入、これが昭和二十六年当時では五・八倍、これが昭和五十九年では二・七倍とその格差の倍率が半分以下に低下している、こうした数字でもって平準化が進んでいる、こういうふうに審議が進められたように思うわけでございます。  また、これが例えばアメリカの場合でございますと、昭和二十六年当時は一分位と五分位が九・五倍であった。これが、現在と申しますか、これは五十八年の数字でありますが、アメリカは依然として九・一倍である、こういう数字があるわけでございまして、その倍数自体もアメリカとかなり格差がある。またこの三十年間ぐらいの間にその格差の倍率も半分以下になっている。こうした数字でもって平準化が進んできているというふうな状態を頭に置いて審議が行われたのではないかと思うわけでございます。
  154. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 果たして平準化しているかどうか、これから具体的に質問していきますが、その前に大臣、平準化いいんじゃないかと思うんですが、どうですか。結構なことだと思うんだけれども
  155. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 平準化の取り方というのがありますが、そういうことをやめて、その議論は別にして、いわゆる根拠ですね、その議論を別にして申しますと、基本的な考え方の相違というのは、努力と報酬の一致という概念がもう一つございますね。その努力と報酬の一致というものがいわば自由主義経済理論の根底にありますので、したがって、そのこともまた大切なことであるというふうに考えております。
  156. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 先ほど主税局長の言われた問題と、もう一つはジニ係数の問題があると思うんですね。このジニ係数も実際税調では御利用もしておられると思うんです。これは、昭和三十七年以降ジニ係数が次第に小さくなっている、また国際比較でもそうだというようなことも根拠のように思うんですが、そこでこの具体的な中身についてただしてまいりますと、まずジニ係数です。所得の分布状況をあらわすいろいろな方法があると思いますが、ジニ係数はこれを最も簡単にあらわすものとして国際的にも使われております。結論から言いますと、このジニ係数を時系列的に調べてみますと、高度成長期に一時所得格差が縮まったものの、その後横ばいないし拡大傾向にある。特に最近著しい拡大傾向があることが示されているわけであります。  そこで厚生省に質問しますが、我が国において独自の調査に基づいてジニ係数を計算しているのが厚生省の所得再分配調査でありますが、これは三年ごとに調査が行われております。最近では五十九年度に行われておりますが、その結果はどういう数字ですか。
  157. 岸本正裕

    説明員(岸本正裕君) 昭和五十九年の所得再分配調査の結果につきましては、現在鋭意取りまとめ中のところでございまして、先生の御要求もあったのでございますけれども、まことに申しわけないわけでございますけれども、最終的な結果についてはもう少し時間をいただきたいと思います。ただ、先生の御質問のポイントであるジニ係数につきまして、私どもこれを取り急ぎまとめたものがございますので、御説明をいたしたいと思います。  当初所得とそれから再分配後の所得に分けて、それぞれの係数を例年出しているわけでございます。五十九年度現在の数字でございますけれども、当初所得のジニ係数も五十六年のときに二通り出しているわけでございまして、私的給付を含まないものと、それから私的給付による調整後の数字と、当初所得につきましても二通りの数字があります。ちょっと二通りの数字を申し上げますが、まず初めに私的給付を含まない数字でございますが、五十九年度で〇・三九九七という見込みでございます。私的給付を含んだものといたしましては〇・三九七五という数字を見込んでおります。これは五十六年の調査の結果では、私的給付を含まない場合には〇・三五一五でございまして、それから私的給付を含んだものとしては〇・三四九一という数字でございますので、これと比較いたしますと高い値となっているわけでございます。  それから再分配後の所得のジニ係数でございますけれども、これは私的給付を含まない場合には〇・三四九六、含んだ場合には〇・三四二六という数字でございまして、これはそれぞれ五十六年の数字、〇・三一七七と〇・三一四三よりも大きな値になっていることは事実でございます。  しかし、当初所得と再分配所得との間の改善度といいますか、これは一三・八%に上っておりまして、前回の一〇%を上回っておる。この改善度は過去の調査の中で最高の値になっているわけでございます。  そして、当初所得のジニ係数が増加した原因でございますけれども、これはいろいろな要因があろうかと思いますが、考えられるものとして、一つは、高齢者世帯の比重が高まってまいりまして、年金だけで生活する世帯が増加をしてきているということがあるのではないかと思います。今回と五十六年の調査を比べてみてみましても、高齢者世帯が全世帯の中で占める比率は、五十六年の場合には五・四%でございましたが、今回の五十九年度では八・一%というふうになっております。  それから世帯における有業者数の動向なども関係があるのではないだろうか。そして、これは必ずしも調査だけで明らかではございませんけれども、女性の社会進出のようなことが起こるということで、専業主婦の世帯と共稼ぎ世帯との格差の拡大とか、そういうこともあり得るのではなかろうか。  それからもう一つ考えられることといたしましては、労働省の調査で毎月勤労統計調査というのがございますが、ここでも最近の賃金の動向を見ますと、企業規模間における賃金の格差の拡大というような傾向も出ているわけでございます。  そういうことでいろいろな要因があって、こういう数値になっているのではないかというふうに思います。
  158. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 大臣、今の数字をお聞きになっておわかりのとおり、平準化していないところか逆行していると思うんです。大蔵省、またこれは政府税調もそうですが、前回の五十六年度の調査結果のジニ係数をもとにして所得分配は平準化したという判断、この判断がもとになって税制改革の方向が出ているわけですね。  今まで大蔵省政府税調が基調にしたものは、昭和三十七年に当初所得で〇・三九〇四、四十七年〇・三五三八、五十年〇・三七四七、五十三年〇・三六八五、五十六年〇・三五一五と、ずっと低くなっているから、そこで平準化しているんだという根拠なんですが、今の厚生省の数字ごらんいただければわかるとおり、昭和三十七年段階、ここで言うと一番大きな数字、だからそれはやっぱり格差が拡大しているということになるんだと思うので、となりますと、大蔵省のこの判断、先ほど主税局長は半分しか言わなかったけれども、これはジニ係数が基礎になっていることは間違いないわけですよね。となりますと、そういう判断、平準化しているという判断の基礎が崩れているんじゃないかと思うんですが、どうですか。
  159. 水野勝

    政府委員水野勝君) ジニ係数につきましては、今回の税制改革の出発点といたしております昭和二十年代の数字がとりにくいということはございませんわけでございます。それから、まさに今先生御指摘のジニ係数、三十七年以来をとりましても上がったり下がったりしている、こういった点もございまして、税制調査会の総会の提出資料として御説明させていただいたのは、先ほど申し上げました一分位、五分位の格差でもって御説明をさせていただいたわけでございます。  先生御指摘の方のは専門小委員会の方の数字ではないかと思います。この専門小委員会の方では、一分位、五分位の係数の関係と、それからジニ係数のも資料として出されているわけでございますが、まさに、ただいま申し上げましたジニ係数が昭和三十七年以来のものであるということ、それからまた変動しているということから、シャウプ勧告当時のものと比較するのはなかなか難しいということから、総会の資料としてはちょっとそれは使うのは控えまして、総会全体としての資料としては、基調的な認識としては一分位、五分位の実収入からとらしていただいているということでございます。  このジニ係数が昭和二十五、六年のものがとれますと比較になっていいわけでございますが、これがないということ、それから変動している。これはただいま厚生省の方からの御説明ございましたように、女性の就業状態がどうでございますとか、高齢化している割合がふえてきているとか、そうなりますとそこらの点からのいろいろの移動もあるようでございますので、専門小委員会の方では使わしていただいているようでございますが、総会ベースの方ではちょっとなかなか使いにくい数字だということから落とさしていただいているわけでございます。
  160. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 私の手元のは専門小委員会の資料なんですが、それは使わなかった、総会では。しかし、今の厚生省の答弁からいいますと、むしろ逆に使わなきゃいけないんじゃないか。というのは、昭和三十七年、この専門小委員会で示された一番高い数字になっていますね。となれば、明らかに五十六年のこんな古い数字の段階じゃなくて、むしろ五十九年、これでやっぱり見るべきだったと思うんです。しかも、厚生省の今の答弁は私の独自の計算結果からも一致するんです。  まず、総務庁の全国消費実態調査に基づいてジニ係数を算出してみます。この全国消費実態調査は五年ごとに調査が行われて、対象は約五万人と大変多いわけです。五十九年度調査からは農漁業世帯も含めるなどかなりしっかりした調査であります。  この調査によって五分位階級別で年間収入、ジニ係数を算出してみますと、これは厚生省にも大蔵省にも私の計算の根拠を示してありますが、四十四年で〇・二六四〇、四十九年〇・二七六八、五十四年〇・二五三七、五十九年〇・二六二九となって、五十四年調査を除いてジニ係数は大きくなる傾向にある。要するに所得分布は拡大の方向にあることが明らかだと思います。特に五十四年調査に比べて五十九年調査でジニ係数が上がっていること、これがやっぱり最近の傾向をあらわすものとして注目する必要があると思うんです。より正確を期するために、十分位階級別のデータから算出したジニ係数も、五十四年〇・二六六八、五十九年が〇・二七六〇、はっきり最近の格差の拡大傾向を見ることができると思うんですが、この資料をごらんになって、どうですか、厚生省、大蔵省それぞれお答えいただきたいと思います。
  161. 水野勝

    政府委員水野勝君) 先ほど申し上げましたようなことで、正面からジニ係数はとってはいないわけでございますが、今御指摘のジニ係数、先生の数字で拝見させていただいても、昭和五十四年と五十九年で〇・二六六八から〇・二七三と若干上昇しているというような数字は見られるわけでございますが、このジニ係数を横にとってみますと、日本はヨーロッパ、アメリカ諸国に比べてかなり小さいわけでございます。  したがいまして、昭和三十七年という先ほどの数字ございましたが、高度成長を経ましたところでかなり所得水準が上昇し、平準化をした。その後におきましては、先ほど厚生省からの御説明がありましたように、就業構造、家庭の中での主婦がどの程度共働きで外へ出られるのか、全体としての世帯がどの程度高齢化したのか、そこに年金、恩給その他の移転所得がどの程度のウエートを占め、大きくなってきているのか、そこらによって変動いたしますので、最近の数年間の動きを見ればそれぞれ御指摘のような変動はあろうかと思いますが、全体として所得水準が戦後シャウプ勧告のころに比べまして上昇をし、平準化した中で、最近はいろいろな社会的な変動が生じておる、このように私ども考えたらいかがかと思ったわけでございます。
  162. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 今国際比較の話があったので、そのことに限って申しますと、税制の違いやデータの性格の違いを無視して、データの表面的、形式的な国際比較によって、日本の所得分布は世界一平等であって、所得税の累進度は世界一高い、こういう議論を進めることは妥当でないというのは、私が言うんではなくて、私もそう思いますけれども、これは竹内啓という東大教授で、統計学の権威なんですが、はっきり言っていますよね。だから今の主税局長の答弁はやっぱり当てはまらぬと思うんです。  これを前提にして、それについてはまた答弁いただきたいんですが、私が申し上げたジニ係数は別の調査でも裏づけられるんです。総務庁の貯蓄動向調査、これをもとに年間収入のジニ係数を出してみますと、三十六年〇・三二三六、四十年〇・二七九三、四十五年〇・二六六九、五十年〇・二七四二、五十五年〇・二八〇五、五十八年〇・二八八八、五十九年〇・二七二七、六十年〇・二七八五となっていまして、四十五年以降ジニ係数は次第に大きくなる傾向にあるというふうに読み取れると思うんです。ただ五十九年若干下がっていますが、一番新しいデータである六十年にはまた上がっている。これは最近の所得拡大の傾向を示すもので、これは先ほど述べた全国消費実態調査の数字とあわせて注目すべきではないかと思いますが、この点主税局長に伺いたいと思います。  厚生省からは、二つの点まとめて答弁いただきたいと思います。
  163. 水野勝

    政府委員水野勝君) ただいま委員指摘の全世帯年間収入、こちらの数字でございますと、これはまさに年金の世帯とか、そういうふうに勤労者でなくて、高額所得世帯であったり中低額世帯であったりする世帯もかなり含まれてこようかと思います。その点につきましては、今回の検討が主として給与所得者と申しますか、勤労者をとってまいっておるというところから、全世帯というのも一つの参考資料かと思いますけれども、勤労世帯として見る場合、これはまたいろんな数字もあろうかと思いますが、そうした、全世帯がいいのか勤労世帯がいいのかというような点もあろうかと思うわけでございます。  また、今御指摘のように、年によって最近変動している。この点につきましては国民生活白書でも、もろもろの社会的な変動によって少しずつ変わってきているという指摘があるようでございまして、そういったものを私ども頭に置かしていただいているわけでございます。
  164. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 国際比較どうですか。
  165. 水野勝

    政府委員水野勝君) まさに御指摘のような、ジニ係数は、国際的に比較するというのは、なかなか一律に平板的に比較するというのは危ない面があるということは御指摘の点もあろうかと思います。したがいまして、先ほど申し上げましたように、マクロ的に見るときに参考にするという点はあるとしても、それからまたもう一つ、二十年代のものがございませんので、正面からは私ども資料としては用いなかったということでございます。
  166. 岸本正裕

    説明員(岸本正裕君) 先生がおつくりになりましたこのジニ係数の計算表を拝見いたしているわけでございますけれども、率直に申し上げまして、私はまだこれをよく勉強しておりませんで、御意見を申し上げられる程度に理解をしていないというところでございます。今後検討をさせていただきたいと思うわけでございます。ただ、私どもの調査とこの数字のレベルがかなり違っているなということが気がつくわけでございます。  それから、貯蓄動向調査、勤労者世帯は家計調査、こちらの方の、今先生のおっしゃられましたような三十六年から六十年までの傾向につきましては、少し厚生省の調査とその波の打ち方が違うなという感じがいたします。
  167. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 それは基礎にするデータが違っているから違うんですが、ただ傾向としてはやっぱり拡大しているというところは私は一致するし、その点が大事だと思うんです。  それから、主税局長、国際比較はあなたがそう言ったから私が言ったので、その点は一致するわけですので、余りそういう余計なことを言わない方がよろしいんじゃないかと思うんですね。  そこで、先ほど主税局長の答弁にありました、もう一つの主張である、第一階級の所得に対する第五階級の実収入の倍率についてであります。先ほどのような二・七倍と小さくなっているというんですが、私が計算した結果も、昭和四十九年以降この十年間ずっと大体二・七倍ぐらいを維持しているのは事実だと思います。しかし、ここでも注目すべきことは、一番最近の調査である六十年の調査では、この倍率が二・九倍と逆になってきている。  そして、勤労者世帯だけでなくて全世帯の状況を見るために、これは貯蓄動向調査の年間収入を使用してみますと、第五分位の第一分位に対する倍率を見てみますと、五十五年四・一、五十六年四・二、五十七年四・一、五十八年四・三、五十九年四・六、六十年四・七。これは傾向的にはやっぱり格差が広がる方向が読み取れるわけですね。これを十分位階級別に見てみても同様で、五十五年六・二、五十六年六・五、五十七年六・三、五十八年六・七、五十九年七・二、六十年七・三。一貫して格差が拡大しているんです。大蔵省のこの数字は古いし、また都合のよい数字だけ引っ張り出して、むしろこれは結論を強引に導いていると言わざるを得ないんですが、これはどうですか。
  168. 水野勝

    政府委員水野勝君) 先ほど申し上げましたように、今回、シャウプ税制以来の基本的な見直しということで出発いたしておりますので、先ほど申し上げましたように、昭和二十六年は五・八倍であった。これが、昨年の九月の時点で新しく審議を始めましたときの最新の数字としては五十九年の二・七倍があったということでございまして、その時点としての最新の数字を使い五・八と二・七を比較したわけでございます。  いずれにしましても、シャウプ税制当時に比べれば倍率格差は半分程度になっておる。また、それに比べましてアメリカはほとんど九倍前後で動かないということはマクロ的には言えるのではないかと思うわけでございます。
  169. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 私が事前にお渡しした所得の分布について、今言った第五分位の場合と第十分位の場合ですね、先ほど私が指摘した数字、これは間違いないでしょう。どうですか。
  170. 水野勝

    政府委員水野勝君) 第五分位、第一分位におきますところの昭和四十年代後半から現在までの時点では、おおむね二・六、七、八、このあたり推移してきている。これは、先ほど申し上げました、高度成長なり二回のオイルショックを経た後では大体動いてはいない、こういうことではないかと思います。やはり昭和二十年代後半から三十年代半ば、あるいは三十年代後半までので大きく動いている。しかし、税制といたしましては、昭和三十年代後半以降からはどうも余り動いていないというあたりから、昭和二十年代からの数字を見させていただいているわけでございます。
  171. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 昭和二十六年といえば今とは全然時代の違うときですよね。大事なのは、ずっと安定してきて、そして一定の方向が出ている、そしてやっぱり最近の数字で見るべきだと思いますね。しかも、勤労世帯だけでなくて、私が指摘した全世帯を見るための貯蓄動向調査、私二つの数字言いましたね、これはやっぱり間違いないでしょう。五十五年以降は第五分位で見ても第十分位で見ましても、もう明らかにこれは格差が広がる傾向がある。むしろそのことが大変大事じゃないか。こういう傾向大蔵省は客観的に把握して、これをどう見ていくのか、これが大事だと思うんですが、その点どうですか。古い話はもうよろしいんです。
  172. 水野勝

    政府委員水野勝君) 昭和二十五年のシャウプ税制で、最低税率二〇%から五五%という税率構造ができた。それが昭和三十年代に現在のような数字になっておる。やはり出発点としては、今回の税制改革としては、シャウプ税制からの数字を出発点にとり、また真ん中の四十年あたりをとり、そして現時点をとるという大体この三段階をとらしていただいておるわけでございます。  それから、五分位階層あるいはジニ係数等につきましての全世帯の数字というのもありますし、給与所得者、勤労者世帯というのもございます。従来は給与所得者を中心としての税制改正、重点をそこに置いてまいりましたのでそうした数字を用いてきておりますが、今後は全体としての所得税のあり方を、先ほど申し上げましたように、定性的なものを肉づけをしてまいるときには、給与所得者、勤労者世帯に限らず幅広く見ていく必要があろうかと思いますので、勤労者世帯の数字、さらには全世帯の数字も今後は検討してまいるのが適当ではないかと思うわけでございます。
  173. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 昭和二十六年なんといえばあなたも私もまだ学生だったでしょう。そんな時代のことを言うのじゃなくて、最近の数字でやっぱり見るべきだと思うんです。  具体的に数字を示したように、客観的に見てみれば、所得格差は拡大しているというのはこれは事実だと思うんです。それを無視して逆の方向を進めるというのは、大臣、間違ったことをすることになりはしないか。これが第一点です。  それからもう一つは内需拡大ですが、内需拡大が進まない最大の原因の一つにやはり所得の不平等があると思うんですね。なぜなら、所得格差の現状のもとでは高所得者層ほど貯蓄率が高い。ですから、一般的な内需対策では、内需の中心である消費需要に余り影響を与えないんではないか。結局貯蓄に回され財テクを活発にする、そこにいってしまうんではないか。したがって、内需拡大を効果的にやるためには、今私ずっと指摘してきましたそういう数字から見ましても、所得再配分を基本にした政策がどうしても必要ではないか。これなしには、幾ら内需拡大を言いましても効果は余り期待できないんじゃないかということで、今出かかっている税制改革の方向についてやっぱりもう一度見直してみる必要があるんじゃないだろうか。この点についてお答えをいただきたいと思います。
  174. 水野勝

    政府委員水野勝君) 今回の所得税を中心といたしました税制改正は、シャウプ税制以来三十五年間の社会経済情勢、この変化に対応して税制がどうあるべきか。その間に生じたゆがみ、ひずみ、こういったものをどのように合理化していき、給与所得者を中心とした負担感、重圧感を解消するか、ここらが中心的な視点とされておりますので、現時点まで続けられてきております税制改革作業はそうした観点からのものではないかと思うわけでございます。  当面の内需拡大その他につきましては、もちろん今回の税制改正も、公平、公正、簡素、選択並びに活力という観点もございますので、若干のと申しますか、関係はないことはないかと思いますが、あくまで重点は社会経済情勢の変化に即応した税制のあり方ということを視点に置いておりますので、直接的には内需拡大という観点と今の時点では結びついてはいないのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  175. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 大臣の答弁を聞いて終わります。
  176. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ジニ係数、これは、私も勉強一遍しましたが、本当は正確には理解しておりません、感覚的には大体わかっておりますが。しかし、いわゆるシャウプ勧告以来の税制、私は、シャウプ勧告そのものは案外いいことを言っているなと今でも思っておりますが、むしろ我々が、私も含め、いろんなゆがみ、ひずみをつくってきたんじゃないか、こんな感じもしないわけでもございませんが、やはり基本的に、その間に生じたゆがみ、ひずみ、今だれが、どの層が一番重税感を持っているかというようなところから、もちろん数字も必要でございますが、感覚的にとらまえていただいてそれで議論が進んできた。だから全員が学者であるわけでももちろんないわけです。だから、基本的に、努力と報酬の一致とか、勤労意欲を阻害する限界とか、事業意欲を阻害する限界とかいうものは、私は自由主義体制下においてはあってしかるべきものではないかというのが一つでございます。  それから、いつも議論いたしますときには、よく戻し税をやるときに、それじゃ税を払っていない人は何のメリットもないじゃないかというようなときに、税を払っていない人にまでは消費支出が及ばないという議論もいつも出るわけでございますが、その辺の問題も含めていろいろな議論はこれからもまだ続くだろうというふうに私は見ておるところでございます。
  177. 栗林卓司

    栗林卓司君 何をお尋ねするにしましても、現在の円高を抜きにしてちょっと将来の絵がかけないものですから、まず円高問題についてお尋ねをしたいと思います。  サミットが終わりましてから、いかにも東京サミットからお墨つきをもらったような感じで円の急上昇が始まったような印象を受けているのでありますが、そもそも、東京サミットの後でなぜこのような円の急上昇が起こったのか、この点について御所見をまず伺いたいと思います。
  178. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは私からお答えすることにいたしますが、一つは、サミットというものの性格に対する、本当は私どもも言いたかったんですけれども、弁解じみておりますから言うこともないし、また、批判を受けることによってこっちが緊張して政策対応すればいいんですから。本当はサミットというところは私は為替相場そのものが議論される場所ではないという問題意識をまず持っております。  それで、先生御存じのとおり、きょうも澄田さんとこうして並んでおりますが、これは日本国会だから割にこういうことがあるのであって、特に政権交代が激しい国は、中央銀行というものの中立性あるいは独自性、これはまさに侵されないというような立場にもあるわけでございます。御案内のとおりです。余り日本は中央銀行と大蔵大臣とが仲がいいような話をしますと、政治の恣意に左右される開発途上国のようなものかというような質問がときにある。したがって、中央銀行というものが、中立性、独自性を持っているものが参加しない場合に、具体的な為替相場というのは私は議論の対象の外になって、政策調整の大局約話しか行われないというのが、本当はサミットはそうだろうと思うのであります。  そこで、急上昇しましたことについては、ところがG5というのが間々誤解されて、中央銀行の総裁なしに五人会って何か話をしたらああなったという非常にドラスチックなものがあったことが、投機筋にはここで何か出てくるんじゃないかという感じが大いにあったんじゃないか。きょう、終わり値の百六十円九十五銭というのがきましたけれども、最近見てみますと、私が大蔵大臣になって、十五億とか二十億ドルでございますね、一日が。ところが今五十億ドルだの六十億ドルが毎日トータルすると動いておる。そうすると、そういういわゆる思惑というものがやはりかなり影響しておるな、こういう感じが一つあります。それから、連休でございまして、ほかの国にも若干連休みたいなものが、ちょうど集中しておりますから、一挙に大量なものが出たということも幾らか影響があるんじゃないかなというふうに思っておるわけであります。  いずれにせよ、急激過ぎるという基本認識は持っておりますので、それともう一つは、またきょうがら出てくるようですが、米国経済が期待されるほど好調でないといういろんな指標があのころ出たということ、きょうからまた出るので心配しておりますけれども。そういうようなことと、それから基本的には、もう一つは、貿易のインバランス問題がちょうどあのころ数字が出た。そうすると、依然として解消されていないんじゃないかということに対する思惑。それからもう一つは、よく言われます、これは冗談話みたいな話ですが、二百円まではいわば各国の政策協調が効いたじゃないか、それから先は、ちょうど石油が半分になっているじゃないか、石油でレートが動いているんじゃないか、こう言う人もございます。私も定かな分析をしたわけじゃございませんが、感想として申し述べればそんなような要素があったんじゃないかなと思っております。  少し長くなりました。
  179. 栗林卓司

    栗林卓司君 サミットと通貨問題を考えますと、その下敷きになっていたのがG5ではなかろうかという感じがするんです。  両者踏まえましてちょっと私の感じを申し上げてみたいんですが、あのサミット経済宣言を拝見しますと、非常に印象にとまりますのは、こう書いてあるんです。「経済の基礎的諸条件をよりよく反映するような為替レートの顕著な変化があった。」と書いてあるんです。したがって、ここで書いてある意味というのは、最近の為替レートの変化というのは、基礎的諸条件をよりよく反映しているという意味では評価し得る変化である、そういう感触でこの文章が書いてあるんです。ちょうどサミットの前後というのは一ドル百七十円前後でしょうか、ちょっとそれじゃいかにもと言っておったんですが、しかし、サミットに集まった欧米の人たちの目から見ると、いやいいところではないか、結構いい線いっておるよ、こういったぐあいにここは読めるんです。  いい線いっているよといって読めるその人たちが、G5でどういうコミュニケを採択したか読んでみますと、そのコミュニケの中で、「為替レートが対外インバランスを調整する上で役割を果たすべきであることに合意した。」これはいささか問題のあるコミュニケでして、インバランスを解消するためにいわば道具立てとして為替レートを使うべきなんだというコンセンサスが本当にあったかどうか知りません。しかしコミュニケを拝見しますと、いわば日本貿易黒字とまさにつながった格好で、あれが円高に結びつくよ、それが結果して日本貿易黒字をやがて縮小させる方向にいくのではあるまいか、こういう印象をG5のコミュニケは外部に与えるんです。しかも、全般としてG5でどういったことを考えたかといいますと、為替レートというのは、「ファンダメンタルズを一層改善するよう実施され強化されるべきであり」としながら、実はアメリカのドルとの関係を見たところ、いささか問題ありではないか。  そこで、今文章読むんじゃなくて私は記憶をたどって申し上げますけれども、非ドル通貨はむしろ強くなるべきではないのか、そういった形でG5の合意が成り立った。これがG5の後一斉にドル安、円高、マルク高、これが広がっていった私は原因だと思うんです。当時日本では、あのドル高状態ではにっちもさっちもいかぬわいという気持ちがあったものですから、G5以降の変化はそうけげんな思いもなしに受けとめてまいりましたし、当時大蔵大臣が、一ドル百九十円ぐらいであればまあいいところであるとおっしゃっても、だれもおかしいとは思わなかった。その後で円高が加速されてきて、加速された姿そのものを実はとらえて、基礎的な諸条件を反映するような非常に顕著な変化があった、こう言われますと、今の円高というのはお墨つきであるかのような印象を与えかねなかったんではないんだろうか。  もっと一番注目すべきことは、こういう通貨の変化がありますと、協調介入でしのいでいこうではないか、こういった話になるんですが、協調介入といった場合に、それを受けるような条件が欧米にあるんだろうか。そこで、もし有用であれば介入をいたしますということを書いてありますけれども、問題は、もし有用であれば、有益であればと言っている言葉の真意なんです。非ドル通貨は強く、そういった方向はこれは有益な変化である、そのためには介入もあり得る、これがG5と東京サミット経済宣言を通して基本的に底に流れている私は発想みたいな気がするんです。そこで、日本がこれはとても高くなってしようがないから協調介入してくれと言っても、いやそれは話は別だ、それはいたしません。いたしませんということをどう書いてあるかといいますと、「ウィリアムズバーグ・サミットにおける約束を再認識しつつ、是正努力は、何よりも基礎となる政策要因に焦点をあてるよう勧告する。」まさにここに今次東京サミットの一つのハイライトがあったと思うんです。  サーベーランスというのは実はG5のころからやっておりましたし、別に新しいことじゃないんだけれども、それにはっきりと脚光が当たってきたというのが今度の東京サミットの特徴だと思うんです。そのときに、円が高くなった、日本は悲鳴を上げている、何とかしてくれというときに、じゃここで協調介入に乗り出そうかといって、ではそれができるような政治的な条件がアメリカに、あるだろうか、あるいはヨーロッパにあるだろうか。特にアメリカということを考えますと、そんな協調介入するような政治的な条件というのはとてもないと私には思えてならないんです。そうすると、基礎的な諸要因に焦点を当てるよう勧告する、そこでおまえさんどうするんだというように向こうから言ってくるに決まっている。では一体我々として基礎的な政策要因のどこをどう変えようとするんだろうか。またそうしないと、このままいきますと、今日銀も一生懸命介入しているんだろうと思うんですが、為替市場で動いている資金量というのは日銀の単独介入でどうなるほどちっちゃなけたではないようでありますから、やはりG5なりG7なり、それら主要国が、よしこの際は為替レートのレベルはこうするんだという意思を見せない限り、とてもこれは私は動いてこないんではあるまいか。しかも、協調介入というのはなかなかしてくれるような政治的な背景はない。  日本ではどうするかということになりますと、これからが実は一つの判断として承りたいのでありまして、大蔵大臣がこの種問題についてこういったことを言ったということはいささかもって発言してはならないことでありますから、私の意見だけ申し上げます。  従前と違って、円安には反騰しないんではないか。この円高がどこまで一本調子でいくかわかりませんが、かつては、ある日円安に反騰していったということがありましたけれども、どうも今回は円安には反騰しないんではないか。適正な円ドルレートの水準がどの辺にあるのか、これはだれも知りません。知らないけれども、我々はどうやら今の円高と長く同居することになりそうだ。同居しないで円安にしようと思って協調介入を求めようと思うと、基礎的な政策諸要因に文句が言われて何かを直さなきゃいかぬ。端的に言えば、日本の貯蓄率なら貯蓄率、それをこう直すんです、あるいは公共事業の額をこれだけふやすんですなどということを言わなきゃいかぬし、やらざるを得ないんです。そうしないとなかなかもって今の円高基調というのは動かないんじゃないか。  以上、私の感じですからお答えは要りません。  そこでお尋ねしたいのは、問題は、もし仮に一ドル百五十円台でしばらく居座りますと、これは日本経済には相当深刻な打撃を与えることになる。そうなると、今御提案の財確法と、またその前にある財政の中期展望にしたって、しょせん全部絵にかいたもちでありまして、そうすると我が大蔵省として一体どういう政策手段をもってこの苦境を乗り切っていくんだろうか。私がお尋ねしたいのは、仮定を含めての御質問になるんですが、今大臣も言われましたけれども、どうもアメリカの経済は思ったほどよくないらしい。この間までは結構アメリカは元気いっぱいやっているんだと言っておりましたが、どうやら中を見るとうまくいっていないらしい。これが経済指標とともに明らかになりつつあります。そこでアメリカの連銀はどうするか。当然それは公定歩合の引き下げをしてでも景気浮揚策をとらざるを得ない。もし連銀が公定歩合の引き下げをした場合に日本の中央銀行は黙って見ているか。とてもそれはできません。それは協調利下げをどうしてもせざるを得ない。そこで日本銀行は公定歩合をさらに一段下げる。場合によってはさらに一段連銀は公定歩合を下げるかもしれない。日本銀行はまた協調利下げをせざるを得ない。私がお尋ねしたいのは、そのときに預金金利を払う余地が残るんだろうか。  私はここで大臣にお尋ねしたいんです。例えば少額利子優遇税制を撤廃するということがいろいろ言われているんですが、この議論にしても、日本の貯蓄比率を何とかしろと海外からも非常に目くじら立てて言われている。この問題に手をつけていくと、零細な貯蓄者に対してその金利収入から税金を取るのかという話が反対論として出るんですけれども、このままずっといきますと、まともな預貯金利子も払えないような低水準にとどのつまり預金者は追い込まれてくる。そうするとどの道を選ぶか。今、預貯金について少額利子優遇税制はこれはもう撤廃です、こういうドラスチックな変化を日本政府がやったということをアピールすることによって、今の円高基調の中にいる日本を抜け出すような処置をしていくのか。私はこういったことをこれから考えていかざるを得ないのではないか。  それからもう一つなんですが、どうやら相当低金利の時代に我々は住んでいるようでありまして、低金利ということになると、国債発行についてもう少し考え方を変え始めてみてもいいんではないだろうか。今日本では社会資本の投下が急がれております。なかなかこれは民活といってもできません。だったら、せっかく利子が安くなったんですから、特例債と四条債をごちゃごちゃにするわけにはいきませんから節度は必要ですが、公共事業については思い切ってふやしていったらどうなんだろうか。長期的に考えますと、いずれ我々は大増税を覚悟せざるを得ません。ただこれは中期的には困難です。長期的には考えていくとしても、中期的にはとにかく公共事業をふやしていく。片一方では預貯金利子に対する税制も変化をさせなきゃならぬ。外から見て、日本というのは確かにこれはまじめにやり始めた、そういった印象を外為市場の人たち、あるいはその市場に参加しているのは世界の多数の市民でもあるわけですから、そういった人たちに周知徹底させることが今一番必要なんではないのか。  これだけの円高でとても耐えられないと思いますが、それは協調介入で抜け出そうと思ってもなかなか抜け出せないということを、東京サミットもG5のコミュニケにしても、読めば読むほどそう書いてあると思うんです。  この間中曽根さんがアメリカに持っていった経構研の構想にしたって、あれはいい作文ができたというんで置いていくわけにはとてもいかない。何かある大胆な一歩が私は必要な気がするんです。六十五年赤字公債依存体質からの脱却、これは到底外すわけにはまいりません。とはいうものの、それと四条債は別だ、何かそんなことを考えられないだろうか。しかも、四条債は、金利が上がったからどんどん出していいなどとは私は申しません。恐らく長期的には大増税を覚悟して設計をしていかざるを得ないんでしょうけれども、中期的にはとても無理でありまして、しかも中期的にも、今の一ドル百五十円が仮に続いたとしたら、ちょっと日本経済はへたってしまうと思うんです。したがって、この際はよほど腰を据えた大胆な対策が急がれるように思えてならないんです。  以上勝手にこちらで申し上げましたが、御所見を承りたいと思います。
  180. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず、ありがたい御所見承りましたが、私も感じておりますのは、今御指摘なさいましたとおり、G5のときの最後のところで、「ファンダメンタルズの現状及び見通しの変化を考慮すると、主要非ドル通貨の対ドル・レートのある程度の一層の秩序ある上昇が望ましいと信じている。」そこで「密接に協力する」。だから、あのときの申し合わせはドル対非ドル通貨。全般的にどの通貨もちょっとおかしいときに共同して行動をとろうというのはG5の話ではないわけです。それがあるのは、ウィリアムズバーグ・サミット一般論があるわけです。したがって、サミットでは私はウィリアムズバーグの一般論を確認するのはこれは限界だ、こういうふうに初めから思っておりましたが、おっしゃるとおりの気持ちは私も抱いております。  そこで、今度はサミットに移ってまいりますと、したがって、去年のサミット以来いろいろなことが行われたことの中の一つとして、端的に言えば、G5の効果が出たことは評価する、こういうことでございます。それともう一つは、ここのところは書きにくくもあったわけでございますけれども、G5は、元来はインフォーマルのものがあのときどだいどでかいものになっちゃった。そうしますと、カナダ、イタリーで見れば、おれたち国威をかけてでもG7にしてもらわなきゃ困る。しかし、それは議論しているうちに、ある国の貿易統計か何か見ておったら、別に密輸の分がありますというようなのが統計資料に出るようじゃこれは問題にならぬ。だから、やっぱりG5というものがあって、SDR構成国であることは間違いないですから、これもオーソライズされ、両方がオーソライズされた。  したがって、これからは政策協調の場で、今おっしゃいましたように私ども考えました、言葉の使い方も。いろいろな数値を出します。そうすると目立つのは日本と西ドイツのいわゆる経常の黒でございます。それだけが攻撃目標になるような感じのサーベーランスだったら好ましくない。しかし、今までないしょでやったサーベーランスというのは、いろいろな数値がオーソライズされたものではないにしても出てくると、我々としても主張しやすいし、相互監視がしやすい。だから私は数値があってもいいと思っておりましたが、それに、いわば政策主権というものがあるから、余り拘束されちゃいかぬというふうには今でも思っております。したがって、そのことを、アグリーメントをアンダースタンディングに直して、そういうような苦労をいたしましたが、やっぱり政策協調そのものが一番基礎ではないか。  市場は神様だという考え方の人というのは、本当に介入はダーティーだという感じもございますね、率直に言って。そういう中で、ウィリアムズバーグの宣言を確認することによって、一応の基調として、5なり7なりがこれからサーべーランスということで集まれば、そこでおのずからいろいろな話ができるのじゃないか、こういう流れで終わったわけでございます。  今度は、具体的な今おっしゃいましたもろもろの点でございますが、ほかの国の金利のことを論議するのは——一般論として申し上げて、例えば、今いわば為替レートにリスクを感じて、流入しておるのが引き揚げられはしないかとか、あるいはこれ以上流入しなくなるんじゃないかというような議論もアメリカのコミュニストの議論としてございますね。そうすると、これらはむしろ金利を上げる志向の議論も行われておるではないか、こういう感じがします。しかし、今のところは、アメリカも原油の価格が下がりましたことで、インフレ率は、日本ほどじゃもちろんございませんけれども、低下しているから、お互いが金利下げの環境は整った、そこまでは行っておるわけです。  金利というのはこれは反転することもございますから、私も実際五十五年に、大蔵大臣しているときは公定歩合を国会中に二回も上げさせてもらっているんです。今度は下げさせてもらった。私が下げたわけじゃありませんが、日銀がそうなすった。だから、完全に低金利時代に行くということは断言はできないんじゃないか。しかし、傾向としてそういう時代というものは私どもも意識していなきゃならぬではなかろうかというふうに考えるわけであります。  そうなると、今度はいわゆる公債政策の問題にまたなってまいりますが、この間電電の方に、電電の方がたくさん電話公債を抱えていらっしゃる、今あれを借りかえてみんな繰り上げ償還したらいいじゃないか。ところが市中に出回って相場がついているものを借りかえるというわけにもいかぬ。国債もそれと同じ性格です。したがって、今までのを全部低金利のものに借りかえるということはできないにしても、金利というものを念頭に置いて短期国債等の際も弾力的に出せるようにこれはしてもらった。それで、さらにそれをされば建設国債にまで一歩踏み込むか。完全にそうなると、いい国債と悪い国債の区別を本当にこれは政策決定してしまうかどうか。今は感覚的にあるだけで、残高になったら同じじゃないか。  ここのところが、二つの目標であります、一つは六十五年に赤字公債の脱却体質と、もう一つはいわゆる公債依存度を下げるという、二つの約束といいますか、目標を掲げておるわけですから、その二番目の公債依存度の分を政策決定して外してしまうんだ、一つだけ旗を立てておいて、そこまで議論することになりますと、これは実際問題として大議論になっていく課題だということは私も問題意識としてわかります。  それといま一つは、建設国債というのは、二つだけ私いつも感じますのは、一つは、いわゆる川地費率がここまで高くなると本当の経済効果がどこまで出るかということが一つ。それから第二番目は、一遍出しますとそれが、たばこ屋が二十六万、建設業界は五十二万で、たばこ屋の倍あるわけですから、それらに仮に行き渡ったとしたら、それが縮小されることに対する脅威といいますか、したがって、歳出圧力が物すごく続いていって二度と再び減額することができなくなるんじゃないかという、これは経験上のことでもございますが、それだけこっちがきちんとしてやればいいと言えばそれまででございますけれども、そういうところに疑問を感じております。  それから金利の問題は、もう一つ、先生今御意見の中におっしゃいましたように、実際問題、この間も考えましたけれども、〇・五そのまま連動すれば普通預金はゼロになるわけですから、まあ完全連動しないわけでございますけれども、本当に預け賃を出さなきゃいかぬような、手数料を払って貯金するというような環境が単純論理としては存在するわけです。だから、ドイツの場合は今日本と同じように三・五に下がっておりますが、金利の自由化の中で日本よりは市中金利は少し高目のところに置かれておる。日本はまだ完全自由化じゃございませんから、その辺の、なれとでも申しましょうか、習慣もならしていかなきゃならぬ課題だ。  私もいろいろ考えてみても、どこかで働いている、着物なんかいっぱい持って働いておる人が、冬物が要らなくなったから、ちょっと三菱倉庫へ預けておいて、冬が過ぎだから巻物をまた引き出してきて、ナフタリンでまた冬物になる。だから、自分の資産を預けるときには預け賃を出すんだから、貯金にも預け賃があってもいいじゃないかなんて言った人が冗談でこの間おりましたけれども日本の金融常識の中で、いわゆる手数料を払って預金するという体制にはない。  しかし、私も思いつきのような答弁になりましたが、御意見は大変貴重に聞かしていただきまして、ありがとうございます。
  181. 栗林卓司

    栗林卓司君 大臣に御質問申し上げますと、非常にやりづらい御答弁でお受けになるものですから、いつも感心しながら伺っております。  確かに公共事業をふやした場合の後始末というのは、私も痛感しています。公債発行比率が三割になって、超えるか超えないかとえらい議論を、当時あれは福田大蔵大臣のころでしたでしょうか、やりまして、私なんか予算委員会でふやせと言ってやったんですが、なに、その後になったら、減らすものだとばかり思っていたら全然減らないんです。それが今に及ぶこの惨たんたる財政事情の一つの原因ですから、なるほどふやせばいいと思うだけじゃ単純にいかないな、つくづく日本の政治的な決定の弱さというものを痛感しましたから、おっしゃる意味もよくわかります。  また、仮に公共事業をふやしたとしまして、それはその地域の業者あるいは日本の業者が全部受注していいかというと、決してそうはならないんです。だから、明石架橋にしたって、あれは考えてみたら全部英国の業者が受注したんだと。これが普通の姿にならないといけないんで、本当は、公共事業をふやせ、ああそうかだけでは済まない議論なんです。しかし、これも我々は覚悟をして新しい時代に入っていかないととてもだめだと思うんですね。だから、いやこれからはもう貯金したら手数料要るよということになるのかもしれません。それもこれも国民的な議論を引き起こしていかないことにはだめだと思うんです。  したがって、私が申し上げたかったのは、この際は勇気を持って一歩、二歩と進んでいかないと、今までの、きのうの続きがあしたになるよというやり方では、とても今の時代は切り抜けていけないと思うんですね。したがって、これは与党も野党もないんでして、野党だって、伺うからには、じゃ一体どうするんだというものぐらい胸に持ってしておかなきゃいけないので、私が建設国債出していいじゃないかと言ったときには、それは長期には増税と申し上げたのはその意味でありまして、この議論がないんだったら、こんな無責任な議論はない。  そのときには、おっしゃるように、発行比率は厳しくその時点で議論しなきゃいけませんけれども、将来これは増税をもって担保するんだということになれば、それは政策論としては十分あり得るんですね。だって今国民の方がどっちかと言えばお金を持っているんです。そのときにはしばらくお借りする格好で、それを公共事業として興していくのは、そしてやがて将来は税でいただく、これは十分成り立つ政策ではないんだろうか。またそうすることが、よく言われる日本の社会環境にしても住宅にしても、これは十年、二十年たったらこんなによくなったじゃないかと、そのときにやっぱりみんな喜ぶんじゃないか。そうなってくれれば、やがて大増税が来たとしても納得してくれるんじゃないか。そこまでの大きな絵を今かく時代だと思うんです。  特に今度円高で、いろいろ経済宣言並びにG5のコミュニケを読んで痛感したものですから、意見として申し上げました。
  182. 青木茂

    ○青木茂君 現在の日本経済が置かれた状況は大変な非常事態だ、経済国難と言っていいぐらいの非常事態だと思います。  大体、問題は三つある。一つは国債に抱かれた経済、財政ですね、それと財源なき減税、第三点は円高不況。これはいわば現在の日本経済が置かれましたトリレンマです。このトリレンマをいかにして解決していくか。これは、小手先の政策というのか、小手先の技術だけで解決できる問題ではない。ちょうど昭和五年当時の金解禁、あの当時の日本が置かれた状況に非常に酷似していると思います。一歩誤まれば本当に国がつぶれてしまうというような状況じゃないかと思っております。あの金解禁のときに、井上準之助大蔵大臣ですか、全日本に叫ぶという極めて悲壮な、悲痛な声明を出されて、本当に国民に危機を訴えられたという歴史的事情がございますね。まさに今そういう状況の中に日本の政治は追い込まれておる。  私は、ニューリーダーというのは、ポスト中曽根という意味のニューリーダーではなしに、ニューエージですね、非常に暗いシナリオしか書けそうもないニューエージの僕はリーダーだと思います。大蔵大臣はそういう意味のニューリーダーの一人でいらっしゃるわけです。だから私はきょう、中曽根内閣下の大蔵大臣ということよりも、ニューエージのリーダーのお一人としての竹下さんに、この日本経済の置かれたトリレンマというものをどう処方せんを書いていただけるのかということを、これはもう揚げ足を取るとかそういう問題でなしに、本当に我々はこれからの日本の将来というものを憂えるという立場で思う存分ひとつここで語っていただきたい。もう私の持ち時間全部入れて語っていただいても結構でございます。そこから問題は出発するんですよ。変な数字の操作だけの問題でこれは済む問題じゃないということですね。  ニューエージのリーダーのお一人でいらっしゃる竹下さんにひとつ御見識をここで伺いたい。私の持ち時間全部差し上げますから、どうぞお願いします。
  183. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 最初は国債を抱いた財政だったと思うんです。今は、国債がいわゆる金融商品としての価値も出て、まさに国債に抱かれた経済になって、国債を抱いた財政から国債に抱かれた経済、こういう認識は私もございます。それから、減税論議が各方面から行われる。ところが間々、されば財源はというと、不公平税制の是正という表現におおむね集約されて、具体的な実現可能な議論がなかなか浮かんでこない。それから三番目は円高不況、こういうことの間に今あるわけです。  それで、ニューエージのリーダーと、こうおっしゃいましたけれども、我が自由民主党も人材山のごとく、雲のごとくあるし、それから総理大臣候補者は、国会議員であればいいわけですから、まさに厳密に言えば七百六十三名の内閣総理大臣有資格者がおる。そこへニューリーダーを数を少なくして特定するというのは、私は本当は余りいいことじゃないと思っております。がしかし、その問題、結局私どもがそのようなことをマスコミ等で言われるのは、ただいたずらに馬齢を重ねたといいますか、国会議員歴等が長い、こういうことに尽きるんじゃないか。  ただ、違うというと失礼でございますが、あの井上準之助先輩がまさに日本に叫ばれたというときと、今日の日本人がいわば民主主義というものにいい意味においてなれてきた、適応してきたということと、それから全体的な知識水準の高さというのは、私は、あのころも読み書き、そろばんはよくできた日本と言われようとも、高等学校進学率にしても九四・五%で世界一であって、そういう点から見ると、そういういわば全体の水準というのは大変高くなっておる。その全体の水準の高さというものが、あの大変であったと思います昭和四十六年のドルショックも、そして第一次石油ショックも、第二次石油ショックも、結局、日本人の知恵とでも申しましょうか、理性とでも申しましょうか、そういうところでこれを脱却した。私は、そのときの政策選択が、我々がとった政策選択がよかったんじゃなく、日本人の全体の対応の仕方がよかったからほかの国よりも一番早く脱却し得たのではないかという考えをいつも持つものでございます。  したがって、私の性格もございますが、青木博士もそうですが、同じぐらいな世代で、意外と戦前を若干知り、戦中を知り、戦後を知り、そして鉄砲玉がわりに兵隊に行って帰ってきて、あの焼け跡、やみ市、食うに精いっぱいという中から、現状に対する適応性というのは我々のゼネレーションは大変にあるんじゃないか。しかし、それだけに気宇壮大性がない。したがって、国民がここまで水準が高いときに、おれはかく思う、国民の皆さんついてこい、これは私は終わったんじゃないか。むしろコーディネーターとして、最大公約数がどこにあるかということを、時間をかけても問答しながらコンセンサスを求めていくというような意味の議会制民主主義に、変質といいますか、真のあり方に近づきつつあるではないか、私はこういう感じがしておるわけでございます。  したがいまして、この三つの点の具体的なお答えをするだけの私も準備はございませんが、円高不況というのも、メリットがこう出るとかいろいろな問題もございましょうけれども、これが今度雇用の場において、企業は待ったなしてございますから、あるいは部分品とかいろいろなものを諸外国に求めていくかもしらぬ、そういう場合の雇用問題がどうなっていくか、それが三次産業でどのような吸収をされていくか、そういうことを考えれば、当然のこととして、いわゆるワークシェアリングの問題、労働時間の短縮も含めて出てくるではなかろうか。したがって、円高問題については、もちろんいろいろメリットも出てまいりますが、しかし、それが、今の契約がなくなる、だから構造改革して転換しようというだけでなく、日本が相当な競争力を持っておる企業の中から雇用問題等が招来してくるというようなことも考えのうちに入れておいて対応しなきゃならぬ課題だろうというふうに思っております。  それから、財源なき減税ということになりますと、この間、大蔵省に新人が二十五人入りまして、それで歓迎会で寸劇をやりました。そうしたら、最初は、百姓体操というので、田んぼを耕す体操をし、田植えをする体操をし、台風が来た体操をして、それから今度は稲刈りをする体操をして、そして実りの秋になって、肩車組んで、まあおみこしを担いでいる体操をするという簡単な劇でありました。そうしたらそこへ代官さんがあらわれてまいりまして、その代官さんが、百姓、御苦労だったのう、ところで、臨時異例のことだが、ことしは米をもう一俵ずつ出してもらえぬだろうかとその代官さんがおっしゃる。臨時異例の措置である。そうしたら、その平身低頭しておる百姓が、代官さま、あなたは減税をするとおっしゃったではございませんか。今減税は政府税制調査会で審議してもらっているからしばらく待て。そうしたら百姓が、それでもあなたは増税なき財政再建とおっしゃっているではないですか。最後に、私がおりましたから、しかし代官様はふるさとのことを考えてくださるからまあ勘弁してあげましょうというのでその劇は終わりました。  頭のいい劇を仕組んだものだなと思っておりましたが、そのときに、増税なき財政再建や政府税調に目下諮問中であるということのくだりを聞いたときに、ああ本当におれ毎日そればっかり言っているんだなという、本当にある種のうつろなるものを感じて、と同時に、若い諸君がああいう寸劇がすぐでもできるというところに、ああおれたちは死んでいってもまだ日本人は大丈夫だ、こういう大変気持ちをエンカレッジされました。  まさに、長い話をしましたけれども財源なき減税問題というふうなものは、それこそ税調でしっぽりとこの秋までに結論を出してもらわなきゃならぬ課題だと思っておるところでございます。  それから一番目へ返りまして、国債に抱かれた経済ということも、確かに現実そうなのでございますから、本当に、四十年に初めて二千億出しましたときに、それがどれだけインフレにつながるかという物すごい議論でした。そして今度は九兆七千億ぐらいになりましたか。そして五十年に赤字公債に踏み切ったときなんかは本当に国賊みたいな環境の中で踏み切った。だんだんそれになれてしまって、五十九年には赤字公債も借りかえを許すとかと変質してしまった。財政法の原点というものは私は今でも間違っていない。その狭い政策選択の幅の中でこれから苦心してコンセンサスを見出していかなければならないというのが今の現状ではなかろうか。  したがって、本当に長い話ばかりしまして、何ら結論めいたことを申し上げなかったわけでございますけれども、結局、これだけ国民の知識水準が高くなった今日、世界一ですから、やっぱりそのコンセンサスが那辺にあるかということを求めながら、国民と一緒にというか、あるいはせいぜい半歩前を歩んでいくというのがこれからのあるべき姿であるのかなと、こんな感じを持っております。  頼りないお話をいたしました。
  184. 青木茂

    ○青木茂君 私が伺いたかったのは、新しい時代、本当に暗いシナリオしか書けない新しい時代、それに対して、おれについてこいという、国民が本当にこの人は頼りになるという迫力ですね、迫力が私は欲しかった。あるところではございましたけれども、あるところでは大臣一流のユーモアによって何となく問題がやわらかくなってしまった。今はやわらかい問題ではないということ。それをあれしまして、時間いっぱいしゃべっていただけなかったから私続けます。  国債政策に対してお伺いを申し上げますけれども、今まで何回か出たお話でございますけれども、六十五年度赤字国債依存体質をゼロにする、脱却するということは、政治的な意味は残っておるかもしれないけれども、どう考えてみたって無理なんですよ。これは長期的な視点で目標を設定し直した方がむしろ僕は国民に対して親切なんじゃないか。かんぬき論はわかります、それは。わかりますけれども、さびついたかんぬきよりも新しいかんぬきを私は新たにつくってはめた方がいいんじゃないかと思いますんですけれども、この点については大臣はどういうふうにお考えでございますか。
  185. 竹下登

    国務大臣竹下登君) かんぬき論というのは、確かにそれがあったから本当はやっぱりみみっちい予算編成ができたと思うのであります。実際、投資的経費で五%、そして一般的なので一〇%、これで俗称シーリングを敷いて、その中で各省ごとに優先順位を決めてきてください、こんな手法でございますよね。したがって、増税をしないからそういうことでやりましょうというので、かんぬき論があってここまで来て、幾ばくかのぜい肉は切り去られたかもしれません。がしかし、もちろん完全なものだとは思っておりませんが、ただ、二つのことを申し上げておる。一つは六十五年に脱却します、一つは公債依存度を下げていきます、こう言っているわけです。仮に二番目のを外したとしますと、それは現行制度、施策をそのままでなくして変えていけば、私は、そこのところが国債政策をこれからどう見ていくかでございますが、赤字国債依存のことだけは脱却できるかもしらぬと、実際問題として思います。  これは本当に例の話でございますけれども、例えばの話でございますけれども、各種特定財源を全部一般財源にして、それだけは建設国債にして一般財源化するとか、あるいはいろんな手法がそれはあるかもしれません。あるいは、きょうあたりも議論しております、いわゆる減債制度の基本を維持しつつも、当面減債制度を妥協していくやり方をすればまた財源があるかもしれません。しかし、それは一番日だけがそれでやれて、二番の公債依存度の方はそれで対応できぬのかな。そうしますと、これは不可能だとは私は言えないのではなかろうか。  ただ、そもそも五十九年に掲げておったわけでございますから、それで、五十五年にまず一兆円の減額ありきというので一兆円減しました。幸い五十五年はそれで突っ張れたわけでございますけれども、それは五十四年の当初が三九%までいきましたから、四割も公債依存しちゃ大変だという気持ちがあったからでございますけれども、まず一兆円の減額ありきというのでやりましたが、結局あれは、五十六、五十七というのは世界同時不況の中で三兆も六兆も歳入欠陥が出たのでございますから、それは私はやむを得なかったと思って、政策そのものが誤りであったとは私は思いたくございません。これはたまたま私大蔵大臣でなかったわけでございますけれども鈴木内閣でございましたが、同時不況で大変な対応をされたなと思っております。  そこで、今度は六十五年、まだ時間があります。が、いわゆる円高不況という、あのときの世界同時不況以上の日本の国にとっては大きな衝撃かもしれません。そうしたものがあったとしても、今そこの路線を変えるというのは私はやっぱりちゅうちょせざるを得ない。そして、円高だけでなく、一挙に噴き出す財政歳出増加圧力、余り抑え過ぎだから一挙に噴き出してきた場合に、それに対応できるだけの体力が個人にあるかどうか、こういうようなことも考えると非常に慎重たらざるを得ないというのが率直な私の現在時点における心境でございます。
  186. 青木茂

    ○青木茂君 大臣のおっしゃいますことわかります。それは確かにわかりますけれども、もう六十五年は無理だということは、それは無理でないという学者は一人もいないんじゃないかというような状況に既になってしまっておる。自然増収はこれは望めませんよ。そうでなくても歳入欠陥の方がむしろ問題になっているんだから、自然増収はもうちょっと望める状況じゃない。それから歳出カットといっても、これは各論反対の大合唱ですよ。これは日本の政治の一つの構造ですね。歳出カットは各論反対の大合唱で、これも大きな成果が期待されるとは私は思えない。それでその次は、残るものは、増税というのは負担増ですね。負担増というものも、やりたい意思はあっても果たしてできるのかということになりますと、これも私は現実問題としては難しいと思います。そうすると、国債を減らす三つの要因であるところの自然増収もだめだ、歳出カットもなかなか難しい、負担増もこれはまた難しいといったら、どうしても袋小路へ入ってしまっていると私は思うんです。  これは財政法との関係がございますから非常に乱暴な提案になる、それは私はもう百も承知でひとつ御提案を申し上げるんですけれども、例えば六十五を七十にする。七十にして、七十年度目標で赤字国債の依存体質をゼロに持っていく。そしてその七十年までは建設国債の返済を凍結してみたらどうですか。そのかわり建設国債償還開始は、赤字国債の依存体質がゼロになった七十一年から改めてスタートをする。これは現在の財政法ではもちろんあれですけれども、そこらあたりまで思い切った踏み込みをやらないと、本当に僕は、国債円高、もうどうしようもないところまで日本経済は追い込まれて、追い込まれてしまってからは何をやっても、下手すると僕は革命が起きるんじゃないかと心配をしておるわけなんですよ。  そこら辺の蛮勇というものを、ニューエージリーダーのお一人でいらっしゃるところの、私に青木博士と言われたから、お返しすれば竹下博士ですな、にひとつ御決意をいただくというか、御見解を承るというか、お願いをしたいと思います。
  187. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 革命という問題になりますと、それは私はそういういろんなことを考えてみましても、井上準之助さんの時代には、こじきがおって、こじきは例外なくやせておった。今は浮浪者の方は時々いらっしゃいますけれども、例外なくお太りになっておる。いわば本当に飢え死にする環境がないというのがあるいは激変にも耐えてきたことの一つであるのかな、革命が起こらなかった一つでもあるのかな、こういうことを常日ごろ思っております。  もちろん財政法を改正しなきゃいかぬわけですが、仕分けして言うならば、赤字公債の依存体質からの脱却、そして一方、建設国債というのは期限を切った永久国債にしろというわけですよね、借りかえ借りかえで。持っておる人にまで、イギリスでかつてやったように返しませんというわけにはいかぬ。その返す財源をも借りかえの中で消化していくということの考えの一つであるのかな。よく私どもも議論するわけでございますけれども、そうすると既存の減債制度というものが、この点は完全な改革をやらなきゃいかぬ。そこまで踏み切るだけの現在心の準備はございません。  だから、いつも言うように、これもまた代官さんが言うような話になりますけれども、電電株の売却益もあるではないかというような安易なところへやっぱり物の目が行きがちだという反省をも加えて、御鞭撻として受けとめさせていただきます。
  188. 青木茂

    ○青木茂君 減債制度は形式的には残っておりますけれども、僕は実質的には崩壊していると思うわけなんです。とにかく現実というものを真っ正面から受けとめまして、ここで全くもって新しい発想の転換をやった方が知識水準の高い国民は私は納得すると思いますよ。おっしゃるように、確かに日本の国民の知識水準は高い。それからまた九割の人が中流だと思っております。それはもう世界どこの国よりもすぐれた日本の特性だし、お世辞言うわけじゃございませんけれども、戦後何十年かのそれは自民党さんの政治の成果であったという事実は否定はいたしません。否定はいたしませんけれども、知識水準が高いだけに、六十五年赤字国債依存体質ゼロにするというものを非常に冷ややかな目で見ますわ。それでだんだん信用しなくなってしまうんですよ。知識水準の高い人ほど無理があるということはもう見抜きますからね。  先ほど申し上げましたように、六十五年度が可能と考えている恐らく経済学者は一人もいないであろうというふうに申し上げましたように、とにかくだれが考えても無理というものを余り大丈夫だ大丈夫だと言ってしまうと、僕は本当に国民の政治不信というのかな、政治家は夢を語ってくれないじゃないかという考え方が国民の中に蔓延する。それが最高限に高じてくれば、私は非常に大きな民主主義とやや違うような形の変革というものが起きる余地が出てくるんだと、非常にそこらを心配をしておるわけなんですよ。だから知識水準の高い国民に納得してもらえるだけの新しい施策、まさにニューエージリーダーの僕はそれは任務じゃないかと思っております。  これはどうも議論になりませんから、三分余していますけれども、これで終わります。
  189. 山本富雄

    委員長山本富雄君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十九分散会      —————・—————