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1986-03-07 第104回国会 衆議院 予算委員会第五分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年三月七日(金曜日)     午前九時開議 出席分科員   主 査 武藤 嘉文君       柿澤 弘治君    倉成  正君       小林  進君    佐藤 観樹君       佐藤  誼君    田並 胤明君       広瀬 秀吉君    吉原 米治君       草川 昭三君    春田 重昭君       小平  忠君    田中 慶秋君    兼務 五十嵐広三君 兼務 上原 康助君    兼務 兒玉 末男君 兼務 沢田  広君    兼務 永井 孝信君 兼務 渡辺 嘉藏君    兼務 宮崎 角治君 兼務 滝沢 幸助君    兼務 西田 八郎君 兼務 瀬長亀次郎君    兼務 中川利三郎君  出席国務大臣         農林水産大臣  羽田  孜君  出席政府委員         農林水産政務次          官       保利 耕輔君         農林水産大臣官          房長      田中 宏尚君         農林水産大臣官          房予算課長   鶴岡 俊彦君         農林水産省経済          局長      後藤 康夫君         農林水産省構造          改善局長    佐竹 五六君         農林水産省農蚕          園芸局長    関谷 俊作君         農林水産省畜産          局長      大坪 敏男君         農林水産省食品          流通局長    鴻巣 健治君         食糧庁長官   石川  弘君         林野庁長官   田中 恒寿君         水産庁長官   佐野 宏哉君 分科員外出席者         警察庁刑事局保          安部公害課長  上野 治男君         大蔵省主計局主          計官      竹内 克伸君         大蔵省主計局主          計官      涌井 洋治君         運輸省地域交通          局交通計画課長 荒井 正吾君         海上保安庁警備         救難部警備第一         課長      垂水 正大君         建設省都市局都          市計画課長   伴   襄君         建設省都市局公          園緑地課長   坂本新太郎君         自治省行政局公         務員部公務員第         一課長     紀内 隆宏君         自治省行政局選         挙部政治資金課         長       中地  洌君         環境委員会調査          室長      綿貫 敏行君     ————————————— 分科員の異動 三月七日  辞任         補欠選任   井上 普方君     小林  進君   佐藤 観樹君     清水  勇君   草川 昭三君     春田 重昭君   小平  忠君     田中 慶秋君 同日  辞任         補欠選任   小林  進君     奥野 一雄君   清水  勇君     田並 胤明君   春田 重昭君     草川 昭三君   田中 慶秋君     小平  忠君 同日  辞任         補欠選任   奥野 一雄君     広瀬 秀吉君   田並 胤明君     佐藤  誼君   草川 昭三君     斉藤  節君 同日  辞任         補欠選任   佐藤  誼君     吉原 米治君   広瀬 秀吉君     岩垂寿喜男君   斉藤  節君     吉浦 忠治君 同日  辞任         補欠選任   岩垂寿喜男君     加藤 万吉君   吉原 米治君     佐藤  誼君   吉浦 忠治君     草川 昭三君 同日  辞任         補欠選任   加藤 万吉君     井上 普方君   佐藤  誼君     野口 幸一君 同日  辞任         補欠選任   野口 幸一君     佐藤 観樹君 同日  第一分科員五十嵐広三君、上原康助君、中川利  三郎君、第二分科員渡辺嘉藏君、第三分科員宮  崎角治君、瀬長亀次郎君、第四分科員兒玉末男  君、永井孝信君、第六分科員沢田広君、滝沢幸  助君及び第八分科員西田八郎君が本分科兼務と  なった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和六十一年度一般会計予算  昭和六十一年度特別会計予算  昭和六十一年度政府関係機関予算  (農林水産省所管)      ————◇—————
  2. 柿澤弘治

    柿澤主査代理 これより予算委員会第五分科会を開会いたします。  主査所用のため、その指名により、私が主査の職務を行います。  昭和六十一年度一般会計予算昭和六十一年度特別会計予算及び昭和六十一年度政府関係機関予算農林水産省所管について、昨日に引き続き質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小林進君。
  3. 小林進

    小林(進)分科員 限られた三十分でございますから、なかなか濃密な質問をするわけにはまいりません。そこでまず大臣に申し上げる。私の言いたいことは全部、「日本農業は、いま。」というこの本の中に、私の主張が全部入っているのであります。ところが、自分のことを言ってはなんでありまするが、大変この本は評判がよろしいのでありまして、今全国で相当反響が出てまいりまして、よくこれだけ勇気を持って言ってくれた、だれも言いたいことが言えなかったというような意見から、おまえの主張は全く賛成だという、特に学者に多いですね。それから知識人。案外麦でおまえの言うことには賛成しかねるなんというのは、私の所属している社会党の農民運動担当者など。しかし、表を出て裏へ行きますと、背中を抱いて、先生のおっしゃること、まことにもっともでございます、我々は心から敬意を表するが、表向きはそうも言われません、選挙区の事情もあります、こういうことを言われているのでございます。私は農水大臣御就任になったときにも農水大臣にこれを心から贈呈をいたしました。お読みいただけましたでしょうか。
  4. 羽田孜

    羽田国務大臣 私が就任いたしましたときに、先生のお部屋でこれをちょうだいいたしまして、それこそ何回か、実は読ませていただきました。先生は若いころにまさにその農民運動をおやりになり、今日まで農政活動議員としてされてこられた。そういう中で現状を非常に子細に掌握され、問題点を見事に露出されているなというふうに考えております。
  5. 小林進

    小林(進)分科員 お読みをいただきまして、しかも御理解をいただいて大変ありがとうございました。  おっしゃるとおり、私は百姓の生まれであると同時に、戦後、政治運動に志を立てた後は農業、農民問題を取り上げた。私がその時に傘下にはせ参じたのが平野力三先輩。その傘下に入って、そして国会議員と同時に農民運動もやったのでありますが、平野さんが私の新潟県へ私の応援に来ているときに、後ろからすぱっとけさがけに切られて農林大臣を首になった、そういう歴史的な行事の中から私は農民運動関係をしてきた。ところが、三十年、三十五年たつうちに、運動をやりながらだんだん私は迷い出してきている。こんなことで一体日本農業の将来はもてるのかということから悩みかつ苦しんできた、その三十有余年の所産がこういう形であらわれたわけであります。  私はこの中で七つの提言をいたしておるのであります。第一番目には、これは農林大臣もなかなか専門家でいらっしゃるから議論したって議論の余地もありませんけれども、第一番目にはやはり主食ですね。四つの海に囲まれている日本ですから、主食だけは少なくとも七割の自給率日本国内生産力で持たなければならない。その理由はここにも書いてありまするけれども、何も戦争のために備蓄しなければならぬというのじゃなくて、平時の場合、食糧ほど天候に支配されるものもないし、また食糧ほど相場に左右されるものもないし、しかも戦略的に利用されるものもないんだから、あらゆる場合を想定して、平時の我が日本では少なくとも七割ぐらいはちゃんと自給率を持たなければならない。今主食は大体三割前後じゃないかと私は思っておりますが、この点について農水大臣の御所見をまず承っておきたい。イエスかノーでよろしいのでございます。
  6. 羽田孜

    羽田国務大臣 まさに総合食糧自給率、これは一応七十数%というものを確保しております。ただ問題は、食生活が非常に大きく変わってきたということで国内でなかなか確保することができない飼料穀物、これの輸入が非常に多いということで穀物自給率が三二%ぐらいになっておるというところに問題があるんじゃないか。しかし、その原因としては大きく食生活が、戦後世界にこれだけ大きく食生活が変わった例というものはなかったんじゃないかなというふうに感じます。
  7. 小林進

    小林(進)分科員 食生活の変化に基づいて食糧の内容も変わってくるというお言葉はそのとおりでありますが、原則としては、ある程度どんな場合になっても日本で間に合うという体制だけは農政基本に置いていただきたいと私は思うのです、大臣。  それから第二番目といたしましては、我が日本穀物生産技術は、すべての面において世界水準から見ていかがですか、どの程度にいっておりますか。  私も最近韓国へ行って隣国を見てきたり中国へ行ったりしておりますが、米の生産量などというものは今や北や南の朝鮮にむしろ適い抜かれているのじゃございませんでしょうか。いかがですか。かつては水稲における日本生産量は、一反、十アールですか、一反というのは古いですがね、一反生産量世界一だと言ったんだが、今はもう隣の国にもどうも追い抜かれているのではないかと思うのでございますが、いかがでしょう。
  8. 羽田孜

    羽田国務大臣 韓国にはまだ私ども追い抜かれているというふうには承知しておりません。ただ、オーストラリアの、水の管理をあれする中でのオーストラリア生産高というのは非常に高いと聞いております。
  9. 小林進

    小林(進)分科員 いずれにいたしましても、今食糧生産技術というものは生命工学とあわせて非常に長足の進歩を遂げているというのが世界の情勢でございます。その中に、これは農水省のあるいは研究所等でおやりになっているかどうかは私はわかりませんが、筑波かどこかに研究所がございますな、あそこら辺では近くコンピューターを使って農業生産の情報をとりながらやっていこう、あるいはロボット農業ロボットでもって水温だとか水圧だとかそういう方まで全部やりながら生産を充実しようかという、まずそういう近代的な技術農業に取り入れようという研究を今盛んにおやりになっている。  私は農水省のそういう面における研究は決してアメリカやEC諸国におくれているとも考えておりませんが、しかし、それを実用化する面においては日本は大変おくれているんじゃないか、せっかく研究されても活用の舞台が日本にはまだないんじゃないか。そういう意味において、穀物生産力国際水準まで引き上げていくためには、どうも現在の日本農業のこういう基盤中心とするあり方ではやがて世界から置いていかれるのではないか、穀物生産国際水準まで引き上げていくという、そういう面から農水大臣は一体どういうアイデアをお持ちになっているか、お伺いしておきたいのであります。
  10. 羽田孜

    羽田国務大臣 アイデアというものではありませんけれども、基本的には基盤整備というものをきちんとするということ、それから今先生から御指摘がありましたように、新しい技術というもの、これの開発と同時に、これを普及していかなければいけない、またそういう担い手を育てていかなければいけないということだと思います。  そして、特に今お話がありましたバイオテクノロジー、これはちょうど先生のこの本の後ろの方に書かれておりますけれども、バイオテクノロジー等研究開発、特に米についてはある程度の技術というものはもう定着しているというふうに私は思っておりますけれども、しかしこれからまだ研究することがありますし、特に小麦ですとか大豆ですとか、そういったものについても、より生産性を高めなければいけないというふうに考えております。
  11. 小林進

    小林(進)分科員 大臣はまだお若いのですし、あなたの後ろの方に農林官僚というのがたくさんおりますが、大体世の中官僚ほど封建的で反動的で、世の中進歩に対して、悪く言えば反動的なんですが、いい言葉で言えば非常に慎重といいますか、石橋をはたきながら、渡ってくれればまだいいけれども、渡らぬという性格が官僚の本然の姿なんです。ほとほと手をやくくらい困ってしまうのですけれども、大臣政治家ですから大いにひとつデザインを描いてもらわなければ。政治家というのは夢を描く、デザインですから、理想をつくり上げるのが政治家の任務だ。その政治家デザインに柔順についてそれを推進していくのが官僚でなくてはならぬけれども、せっかくデザインを描いてもなかなか進まない、これが今の日本の図、特に農水にはその点明らかなんです。ひとつ官僚諸君も橋をはたきながら大臣アイデアを積極的に推進するように教育をしていただきたいと思います。  私は、三番目に特に申し上げたいことは、日本の今の穀物中心にする食糧世界一高いという問題ですよ。これは鶏卵だとか豚肉等あるいは国際水準に近づいているものも一部ありまするけれども、総体的に穀物、特に国民が生きていく米だとか小麦だとかあるいは大豆だとかという面に至っては国際場裏において問題にならぬ。こういうことをどうしても解決をしようとする意欲がどうも見えないのだ。私は残念でたまらないのです。そしてそれらの諸君を過保護で守り抜いて現状を維持していこう、これは嘆きの言葉もないような状態ですね。この点は官僚だけじゃありませんよ。我が党にもあるんだ。これは私は我が党の中でも堂々と言った。もう米価統制はやめたらよろしい、こんなむだなことをやったって将来我が日本農業にプラスになる面なんか一つもないから。私は堂々と党内で言って、私も声が大きいものですから、面と向かって対抗してくる者はおりませんでしたけれども、みんなそっぽを向いちゃった。先ほども言いましたように、一人になると後ろから背中をはたいて、先生のおっしゃることは賛成ですなんて言うのが出てくるけれども、表はそっぽを向いたが、私はそう思っています。  この世界一高い価格をこのままにしておいていいということはありません。これをどうするか、これは消費春の側から見たって了承できませんよ。それで、国家財政の面からだってそうでございましょう。そのために補助金を出している。二重価格制度なんて、だんだん解消しつつありまするけれども、これをどう解決するか、ひとつ大臣アイデアをお聞かせ願いたいと思います。
  12. 羽田孜

    羽田国務大臣 確かに土地利用型の農業、これは日本農地が狭隘であり、また人口も多いということもございまして、施設園芸ですとかあるいは今御指摘がありましたような鶏卵ですとか養鶏、こういったものに比較して非常に高いというのは現実であります。これは決して狭いからいつまでも高くていいんだということじゃないのであって、規模を拡大し、そして中核農家というものが本当に育っていく、そういう中でコストが下げられていく、こういう努力というものはしていかなければいけないんじゃないかというふうに思っております。  そういうことで近年では、お米にしても今年度は据え置きになり、しかも乳価についてもこのところずっと抑えられてきておるということで、比較的欧州なんかにも近いものに今なりつつあるんじゃないかと思っております。そして、これはアイデアということではなくて、そういう現実というものを見詰めながら私どもとしてもでき得る限りの努力というものをしていかなければいけない。今農業者関係皆さん方も、ただ価格闘争というより、価格と言うと同時にやはり生産性を上げなければいけないんだ、コストを低減しなければいけないんだという運動が今続けられておりまして、私はやはり現状を認識した活動というものが民間の組織の中にも今着実に生まれつつあるというふうに確信をいたしております。
  13. 小林進

    小林(進)分科員 大臣のおっしゃること、総括的に私も賛成でございますが、ただしかし、どうも進み方が少し遅過ぎるのだ。そのうちに世界に置いていかれるのではないかという心配があるわけです。  そこで、この問題でいま一つ申し上げますけれども、日本農業現状現実ということを大臣おっしゃったが、そのとおりです。現状だけを認識してみれば、一ヘクタール以下の農家というものは農業収入にはちっとも依存をしていないのですよ。この一ヘクタール以下の農家を私は小零細農と位置づけているが、この小零細農というものは、今の日本農家四百五十万戸と仮に言って、その中で一体何割を占めているか。七割でしょう。七割以上を占めているこの一ヘクタール以下の農家というものは、何も生活農業に依存していないのです。だから私は、これを土地持ち労働者という新しい言葉で呼んでいるのだ。  この人たちの、一ヘクタール以下の農家の一年間の所得がここに細かく書いてありまするけれども、大ざっぱに言って五百万円といたしますると、その五百万円の一家の家計費の中で占めている農業所得は一〇%も行ってませんよ、一割も行っていない。あと九〇%は皆農業以外の収入勤労所得収入であったりあるいは商人として商業の収入であったり、特にしかも農村においては〇・五ヘクタール、一ヘクタールの半分ですから〇・五ヘクタール、アールにすると五十アールだ、五十アール以下の零細農家が今日本農村では一番富農なんです。主査もよく聞いてくださいよ、あなたは農業のこと知らないでしょうから。これが富農なんですよ。一番収入が多くて、これが一番生活が豊かだ。自家用車を持っているのは一番零細農家なんだ。その零細農家の中で、役場へ勤めたとか銀行へ勤めたとかあるいは県庁の役人をやっているとか農協の職員だとかいう、いわゆる一定の定着した職業についている人たち、これが一番富農なんだ。こういうことを、現実に即してこれに解決のメスを入れなければ日本農業の将来なんかあり得ない。  私は言っているのです、これだから農業者という位置づけを農水大臣、やめてくれと言っている。これを土地持ち労働者というふうに位置づけて、これは私は、今やめました山口労働大臣にも言った。これを全部調査して労働省の所管にむしろ入れろ、そしてこの農業を統制してやりたまえと言って、一度調査を依頼したことがありますけれども、その調査をやってくれたかどうかわかりませんが、こういう諸君が今の日本農業の発展を阻害していると言っては一つ言葉が言い過ぎでおしかりを受けるかもしれませんが、何でこの諸君は一割も占めないのにもかかわらず農業を放さないかというと、資産として土地を放したくない。この土地は税金が安いのです、農地だから。固定資産税は安いし、そして農業者といって農林省からあらゆる恩典を受けられるのです。農業者としての恩典を受けられる、そしていられるものでありますから放さぬ。  放さないが、今また我が日本において、大臣、限られた農地だとおっしゃったが、この限られた農地を、一番粗末にしているのはこの諸君なんです。これくらい農地を粗末にしている者はない。なぜかといえば、ほんの申しわけ的に稲を植える、稲を植えるだけなんです、植えれば農家という資格がそこで生まれるから。後は管理もやらなければ、投げっ放しなんですよ。ましてこの耕地から生産を高めようとか、収入を高めて生活の糧にしようという頭がないのですから。ただおれは農家だという資格を保持するために日曜日か土曜日か、朝か晩かにぱっと穀物を栽培をして、そして秋の収穫にはちゃんと収穫するといいますから、だから草は生えている、管理はやらない。だから学者はみんな言っています。農村に行ってみても歩いてわかる、これは土地持ち労働者の家だな、これはまじめにやっている専業農家中核農家だというのはあぜ一本でわかる。こっちは草も生えているし育ちも悪いし手入れもしないし、こっちの方はちゃんと伸び伸びと水稲が伸びている、このくらい画然としている。こういうような人たち農政の対象にしてやったって成功するわけじゃありません。そこに現在の農水省農政あり方に非常に私は疑問を持っていますよ。  先ほど大臣もおっしゃったけれども、やはり土地集約です。そして規模を大きくしてその諸君をひとつ育成をしていく。私は、今四百五十万戸ある農家のうち、せんじ詰めれば五十万戸でいいと言っているのですよ。ところが、大臣、五十万戸にすると農村失業者ができる、全然ありませんよ。今も言いましたように、第二種兼業農家はみんな安定したところに職業を持っているのですから。そしてその中から、自分たち収入の九割はそっちの方から得ているのですから。だからその第二種兼業の一ヘクタール以下の農家から土地を仮に取り上げたとしても、失業者なんというものは決して農村から出てこないというのが今の農村構造です。けれども私は取り上げるとは言いませんよ。言いませんが、そこを新しい農水大臣がひとつ知恵を絞っていただいて、いわゆる賃貸契約でもよければ請負契約でもいい、実情に即したやり方で農地集約をひとつやって、基盤整備をして、そこへどっと近代的な技術アイデアを入れるような農政に転換をしてもらいたいということなんですよ。ところが、今も言うように、農地資産として持っている諸君はなかなか放したがらない。そこに農政のネックがあると私は思う。これは大臣アイデアですよ。あなたの後ろにいるような官僚なんかは頭がかたくてそういうアイデアを持ち得ないのだ。それをひとつ大いにやって、そのかわり農政基盤整備だとか技術の革新だとか、農水大臣、そういう方向へひとつうんと予算を出していただきたい。ことしの予算は、あなたはもうできた後に来たから無理だけれども、来年の予算はひとつそっちの方へ大きく力を入れて、農業近代化を大きく進めていく、私はこれを第二の農地改革と言っているのですよ。第二の農地改革だから、第一の方式で行けと言うのじゃないですけれども、方式をひとつ近代化してやっていただく、これはあなたにお願いして、私はあなたに期待しているのですよ。大臣、これは期待しておりますから、ぜひひとつお願いしたい。  第二番目は、今の食糧管理なんです。私は、実は食糧管理法を廃止せよという論者ではないのですよ、ちょっと言葉は過ぎましたけれども。第一番は食糧管理制度を保持しながらも徹底的にそれを改革をしてもらいたい。第二番目に言いたいことは、農業基本法農水省はやったのですよ。基本法は私は絶対支持しているのです。できたのは三十七年かな(「三十六年です」と呼ぶ者あり)三十六年にできて、あれは実にいいし、農業基本法でよろしいと思うけれども、それが今日、二十五、六年の歳月が経過したが、農業基本法一つも実施されていません。農業と他産業との比較で言えば、調整を保つとかあるいは農業従事者を他の職業従事者水準一つにするとか、何もできておりません。むしろ格差は開くだけだ。農業だけに専従している者は実に他産業に従事している者の、今三五%とか、この中に書いてありますけれども、もう三分の一くらいしか収入がない。そこで、余りひどいからあなたのところの部下を呼んで聞いてみたら、いや、農業収入も他産業収入水準はやや近づいています。何を、言うか。それは農家収入であって、農家にいても、農業と呼びながらほかの職業から得ている、総合収入においては他の職業と変わりがないだけの話であって、純粋の農業だけの収入を見れば三分の一も行っていません。格差はだんだん大きくなってきている。ですから、農業基本法がある以上は、大臣がこれも実情に即していないから廃止するとおっしゃるなら別だけれども、私は、これを存置しながら、やはり農業基本法の精神に近づくような、現実にこれができ上がるような農政をひとつやっていただきたいと思います。これはお願いしておきます。  それから食糧管理制度、実際はどこまで一体実施されているのか。私なんか家で食べている米を買ってきますけれども、全部これはやみ米です。この中で一体食糧管理法に基づく配給米を食っている人がどれだけいますか。そういう実情に即していない食糧管理制度、これも時間がありませんが、これを言うと皆さん方、うそだとおっしゃるだろうけれども、これはNHKのテレビが言っているんだ。一年間で約一千万トンできる米の中で、二百万十トンから三百万トンはやみに流れているだろう——いや、さっきから言うように、あなた、うそだとおっしゃるだろうと前ぶれしたけれども、流れている、そういうわけなんだ。それはどうですか、食糧管理法は今のままでよろしゅうざいますか、このままで。どうですか。
  14. 羽田孜

    羽田国務大臣 確かにこのところ米が豊作であったということが二年間続いた、そんなことのために、それから売買逆ざやというものが縮小されたということで多少そういった方面に流れたということは事実でありますけれども、二割とか三割というものであるということはあり得ない、ほんの一%か、それははっきりつかめるものではありませんけれども、本当にわずかなものがいろいろと報道されているというふうに私は理解しております。ただ問題は、やはり豊作のときにもそんなに価格が下がらない、そういう中で再生産が確保されていく、あるいは不作のときも決して米が上がらなかった、これもやはり食管制度が機能しておったということじゃなかろうかと思います。ただ、今先生からお話しのように、やはりいろいろ多様なニーズというものが出できたということがございますから、そういった市場の要求するもの、こういったものにできるだけ的確に対応できるような食管制度の運用を図っていかなければならない、私どもも十分そういったことを頭に置かなければいけないというふうに思っております。
  15. 小林進

    小林(進)分科員 時間がないので残念ですけれども、一言聞いておきますが、去年から自主流通米の奨励金を若干引き下げをおやりになりましたが、その効果は一体どうなりましたか。影響はありませんか。それから、今年度もまたこの問題は出てくる問題ですけれども、今年度は自主流通米奨励金、どんなふうに持っていくお考えか、これをちょっとお伺いしておきたいと思います。
  16. 羽田孜

    羽田国務大臣 この効果につきましては、六十一年産からでございますから、まだ効果の発現というのは出てこないわけでありまして、ですから、今まで少し多くなり過ぎた良質米、これがこの次の作付のときに一体どんなふうにあらわれてくるかということで、まだその効果というものは出てこないというふうに思っております。なお現在、団体は良質米の作付面積を少し控え目に指導しておるということであります。
  17. 小林進

    小林(進)分科員 それは農村の傾向ですね、傾向が控え目にしているということですね。なるほどそういう効果があらわれてきた。今、自主流通米と政府の管理米との比重はどれくらいいっていますか。
  18. 石川弘

    ○石川政府委員 直接政府が買っておりますのは六割でございまして、自主流通で流しておりますのが四割でございます。
  19. 小林進

    小林(進)分科員 余り差がありませんね。それは二、三年停滞していますね、落ちついていますね。どうですか。
  20. 石川弘

    ○石川政府委員 実は四年連続不作の中では自主流通の比重がどんどん高まってまいりました。その高まる度合いが五十九年にちょっと急速に大きくなりまして、これがまた豊作で一〇八でございましたが、そこでいわばどちらかと申しますと売る側の農業サイドでは出し過ぎ、それから買う方は豊作で潤沢になってまいりましたので買い控え、そういうことから値段も停滞する、物によっては次の年まで持ち越すというようなことになっておりまして、そこで奨励金の水準を若干下げましてバランスのとれた需給にしようということでございます。
  21. 小林進

    小林(進)分科員 時間が来ましたから、時間は守らなくてはいけませんから私はこれでやめますが、ただ最後に、くどいようだが、今日本の貿易格差の問題や食糧の輸入問題等格差の問題、非常に国際問題化しつつあるわけですね。ECからは乳製品だ、アメリカからは何やかやとこれも買えあれも買え、こういう情勢ですから、この外圧の中でも農水大臣農政をおやりになるのに大変私は苦しまれるんじゃないかと思いますが、しかし農業問題はそう一時にぱらっと全部自由経済というわけにはいきません。おっしゃるとおりアメリカだってある程度保護している、ECだってみんな保護しているのですから。  けれども、私は今の日本農政のように余り過保護で、国際情勢とは無関係にこれをひとつ守り抜こうという、もうそういう時代ではない。これは私は特に大臣に申し上げておきたい。やはり広く国際社会を眺めながら、国際水準に近づきながら、そういう過保護から嵐の中といいましょうか、冷たい社会の中に農業を投げ出すくらいの構えでもってやっていただかなければ、他の国内の経済にみんな影響しますから。日本も収拾のつかないような状態になってくると私は思いますから、ひとつ農水大臣、本当にあなたの若さとあなたの実力で思い切って、国際社会を見ながら日本農業を大幅に改革、前進せしめるという方向へ御奮闘を賜ります。私も微力でありまするけれども大臣を御支援いたしますから、どうぞ御奮闘をひとつお願いいたします。  私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
  22. 柿澤弘治

    柿澤主査代理 これにて小林進君の質疑は終了しました。  次に、田並胤明君
  23. 田並胤明

    田並分科員 先輩の小林先生のオーバーした分、私の方で調整をいたしますので……。  まず大臣、最初に我が国農業現状と将来展望についてお伺いをしたいと思っているのです。  我が国が工業立国でありまた貿易立国であるというところから、戦後急速に残念ながら農業の衰退を招いてきているのではないだろうか。例えば農産物の輸入の状況を見てみても、穀物で三十五年から五十七年、この二十二年間の間に約五・六倍の輸入増。さらに飼料穀物に至ってはこの二十二年の間に約十三倍、こういう状況であります。したがって、そういうようなこともいろいろ反映をされて、食用農産物の自給率というのが昭和三十五年から五十七年の二十二年間で残念ながら、総合自給率でありますが、九一%から七一%というふうに低下をしている。穀物自給率を見ると、これまた昭和三十五年のときの八三%から昭和五十七年で三一%というふうに急激に落ち込んでいるという数字が、これは政府の資料でも明らかなわけであります。  一方供給熱量ベース、大体総供給熱量というのが二千五百九十二キロカロリー、大体二千六百キロカロリーぐらいというのが人間の場合は標準のようでありますが、現在の日本自給率から見た供給熱量というのは残念ながら千三百八十二キロカロリーくらいしかない。まさに必要とするキロカロリーの約二分の一という状態に今落ち込んでしまっている。果たして我が国の農水省として食用農産物の自給率というのはどの程度が望ましいのか。  今盛んに国際分業論なんかが出て、そういうものはなるべく外国から輸入をして賄う、安定的に輸入ができれば何とかなるんじゃないかというような考え方が一部あるようですし、しかも諸外国から貿易摩擦に絡んでかなり食糧穀物類等々の加工品も含めた食糧の輸入が強く迫られているという状況にあるわけですが、少なくとも日本も独立国ですから、将来とも安定的に輸入が確保されるかどうかというのは、非常にこれからの世界的な人口の規模の拡大から考えてみるとそう簡単なものではないんじゃないだろうかというふうに考えますと、この時点で我が国の将来展望として食糧自給率というのを、熱カロリーの観点から見てもどの程度の自給率を我が国としては確保すべきなんだろうか、そういう目標があるのかないのか、ちょっとお聞かせを願いたいと思います。
  24. 羽田孜

    羽田国務大臣 先ほど小林先生にもお答えを申し上げたわけでありますけれども、日本の戦後の食生活の変化というものは、御案内のとおり肉ですとかあるいは酪農製品、こういったものを非常に多く摂取するようになりました。そういう中で飼料穀物、これは国内生産するということは大変割高になってしまうということで、これはどうしても輸入せざるを得ないということでございます。そんなことで自給率が、確かにカロリーの面におきましても、特に穀物自給率につきましても落ち込んでおるというのが現状であります。  ただ私どもとしては、一番の主食である米というものはこれは完全自給するということ、それから野菜はこれもほぼ完全自給しております。また果実につきましても、これは国際的にも相当高い自給率を示しているんじゃなかろうかというふうに理解をいたしております。そういう意味で、あとは小麦ですとか大豆、これは日本めん用ですとか大豆は食用、これを中心にして、油とかそういったものについてのあれは輸入するということで今日まで進めてきておるわけでございます。  ですから私どもとしては、そういった自給率を上げるということになりますと、飼料穀物なんかを急にあれしなければならぬということですが、これはなかなか難しい。ただ、いざというときに日本の国がきちんと食べていけるということのための自給力だけはやはり整備しなければいけない、常に整備しておかなければいけないということで、基盤整備ですとかあるいは中核農家中心的な後継者たちを育成するということ、それから先ほども話があったバイオテクノロジーのような、将来に向かって相当生産性の高い農業が営めるような体制をつくっていくということは常にしていかなければいけないというふうに考えております。
  25. 田並胤明

    田並分科員 大臣、今の一般的な話はわかるのですが、私の聞いたのは、将来とも我が国の食用農産物の自給率というのはどの程度考えたらいいんだろうかということです。
  26. 羽田孜

    羽田国務大臣 実は、もうこれはお持ちだと思いますけれども、食糧自給率現状と見通しというのがございますけれども、昭和六十五年における見通しとその考え方というものがあります。その中でも全体のあれとしましては、今申し上げたように米は完全に自給する、それから小麦については、今一二%のものがおよそ一九%ぐらいになるであろう、あるいは、細かいもの全部は申し上げませんけれども、野菜、果実、これについてはほぼ自給していくという体制にあります。それから牛乳・乳製品、牛肉、これは私どもは穀物はある程度輸入しなければなりませんけれども、自給率は現在七二%であるものが七一%ぐらいになってしまうんじゃないか、肉の場合には七一%、酪農製品の場合には八九%と、少しこれは上がるようになるというふうに思っております。
  27. 田並胤明

    田並分科員 先ほどの大臣の答弁の中でも、中核農家の育成であるとかあるいは基盤整備であるとか、これらが順調に進んでいかないと日本農業というのはだめになってしまうという、そういう感じなんですが、特に農業就業人口をずっと見てみますと、我が国の場合は先ほど申し上げましたように工業立国、貿易立国というようなことから、かなり農村人口が工業人口の方に流出をしておるというのが実態だと思うのですね。これも農林省の方の調査あるいは国土庁の調査ではありますが、昭和四十八年に六百二十六万人おった農業就業人口が五十八年には四百六十三万人になってしまった。しかも、「国土庁が長期展望 「食糧供給SOS」 四全総で警告へ」というのがあるのですが、これを見ると、一九八〇年に六百九十七万人を数えた農業就業人口は、このままの状態でいくと二〇〇〇年には三百四十三万人に急減をするんじゃないか。そうすると、中核農家の育成とか、いろいろ方針としては立てられても、外国からも批判をされている今日までの輸出主導型の日本経済の中では、どうしても人口流出というのが出てくると思うのですね。逆に内需拡大あるいは農業振興、農業でも十分やっていける、もちろん規模拡大等もあるでしょうが、あるいは価格の面もあるでしょうけれども、そういうことできちっと農業でもやっていけるんだという状態を日本農業の場合づくっていかないと、幾ら方針を立てても農業人口の減少というのは食いとめられないんじゃないだろうか。したがって、今日の農業就業人口の減少の原因とその対策をどうお考えになっているか、ぜひひとつお聞かせを願いたいと思うのです。
  28. 羽田孜

    羽田国務大臣 御指摘がございましたとおり、農業から他の産業に流出しておる、これは現実でありますし、また農村地域におきましても工業というものを導入をしたり、あるいはそこに地場産業としての発展なんかもございまして、そういったところに就業していることの原因というのがあると思います。これが一番大きな原因じゃなかろうかと思っております。  ただ、今先生のお話の中にもありましたように、規模の拡大をするということは、そこに離農する方が出てくるというふうに思っております。そういう意味で、これがただ都市へ流出してしまうのじゃなくて、やはり農村にとどまっていただくということで、農村の中に安定して就労する機会というものを確保する。その反面、本当に生産性の高い農業を営む中核農家というものをこれから真剣に育成していかなければいけないんじゃないか、私どもはかように考えます。
  29. 田並胤明

    田並分科員 この規模拡大の関係でちょっとお伺いをしたいのですが、これは確たる資料ではないので、私のよく読んでいる本に出ていたのですが、規模拡大をしようと思ってもなかなかできない現実がある。それはいわゆる人口過密の地帯と過疎地帯との差はあると思うのですが、例えば水田を十アール借りた、この小作料が約五万円だというわけですね。ところが、水田十アール当たりの収益が四万円だ。そうすると、実際に借りて規模拡大をしようと思っても、米価が余り上がらないし、生産コストもそんなに下がらないところから逆に逆ざやが出てしまって、規模拡大をしたくてもできないというような実態もあるというのですね。これは日本国内全部じゃないと思うのですが、現実にそういうところもあってなかなか規模拡大が進まない、このような話を聞くわけですよ。そうすると、せっかく農水省の方で規模拡大等を推進しようと思っておっても、それらの問題がネックになって規模拡大ができない、こういう事情もあるのではないだろうか、こういう気がしますので、そんなような状態があるのかないのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  30. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 我が国の農業を取り巻く条件が非常に多様化しております。その中で全国一律になかなか論じがたい点がございますが、しかし、主要な生産力地帯である例えば宮城とか新潟とか佐賀とか、そういう米作地帯では、時間がございませんので数字に即して詳しくは申し上げませんけれども、大規模農家の収益から物財費、自家労賃を差し引いて、利潤と地代になるわけでございますが、その利潤と地代の水準が、零細兼業農家が耕作いたします所得、これは物財費だけを粗収益から引いたものでございますが、これを上回るような状況が出つつございます。したがいまして、そのような地帯では比較的規模拡大が進んでおります。  しかしながら、一方、問題となりますのは自家労賃の評価の問題でございまして、御案内のように日曜日だけあるいは若干休暇をとってやれば二ヘクタールぐらいまでは耕作できるという事実がございます。そうすると、そういう農家にとってみれば、自家労賃の評価を都市の勤労者の賃金等で評価していないわけでございまして、そうなりますと、自分でつくった方がいい、体のためにもなるというようなことでなかなか流動化が進まない、こういう実態がございますので、そのような意味で先生が今御指摘されたような事態というのも特に近郊地帯ではあるということは否定できないところでございます。
  31. 田並胤明

    田並分科員 時間の関係がありますので次に移らせてもらいます。  最近、円高・ドル安ということで、主に電力料金だとかガス料金の円高差益の問題が論議になっておりますが、農業生産資材の中にも飼料、これは直接輸入が多いわけですが、また石油の二次製品として生産をされるものとして肥料等があります。これらの円高差益についての調査というものがやられているのかどうか。  それと同時に、恐らく円高差益が出ていると思うのですが、生産コストを下げる意味で、飼料の価格の指導だとか肥料の円高差益に伴う価格の値下げであるとか、こういうものについて農水省としてはどういう対策を立てられているか、お聞きをしたいと思います。
  32. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 私の方からは配合飼料価格につきましての円高問題についてお答え申し上げたいと存じます。  先生御案内のように、配合飼料価格につきましては原則的には半年単位に価格を改定しているわけでございまして、その際には、私の方では飼料穀物の国際価格の動向とかフレート等々のほかに、為替相場の変動がありました場合はこれらを適切に反映させまして、適正な価格形成が行われるように全農等関係業界の指導を行ってまいっているところでございます。  最近の配合飼料価格でございますが、飼料穀物の国際市況が軟化しております。これに加えましてまた円高も進んでおりますこと等から、一昨年の七月以降ことしの一月にかけまして連続五回にわたりまして値下げが行われているわけでございまして、この一年半ばかりの間の値下げ総額は、トン当たりで申しますと一万四千八百円となっておりまして、率で申しますと約一九・一%の値下げということになっているわけでございます。  特に、昨年の十月以降急速に円高が進んだわけでございますが、これに対処いたしましては適切に円高差益の還元が行われますように強く指導してきておりまして、この結果六十年の十月−十二月期におきましては期中改定といたしましてトン当たり三千円の値下げが行われましたし、またこれに加えてこの間トン当たり千二百円、これは配合飼料価格安定基金というものへの積み増しを行ったということでございまして、さらにことしの一月から六月までの期間に関しましてはトン当たり二千七百円の値下げが行われたということでございます。  私ども引き続きまして為替相場には十分注目をしながら、先生指摘の円高差益が配合飼料価格に適切に反映するように業界の指導に当たってまいりたい、かように考えている次第でございます。
  33. 田並胤明

    田並分科員 肥料の方もほぼ同じような形で行われていると思うのですが、特に私の住んでいる埼玉県の県北の方は畜産農家の非常に多いところですし、畜産、それから野菜、それから水田と、総合的な農業によって、都市近郊ということもあってまあまあの農家が非常に多いわけでありますが、いずれにしても、今後とも円高差益に伴う今申し上げた生産資材のコストの引き下げについては一層の努力をひとつお願いをしたいと思います。実際に畜産農家が使用する段階まで具体的に指導してもらいたいと思います。流通経路がかなりあると思うのですが、上の方でやってもそれが下までなかなか恩恵が受けられないという実態のないように、そういう実例も聞くものですから、ぜひひとつそういう指導もあわせてやってもらいたい、このように思います。次に、日本農業をさらに発展をさせるために重要な施策として農業基盤整備というのがあるのですが、この農業基盤整備の中で特に我が県の埼玉県の問題、ちょっと地元問題をやらせてもらいたいと思うのです。  基盤整備の進捗状況というのが全国規模で見ますと大体四〇%ぐらいいっているのでしょうか。ところが埼玉県の場合には、この基盤整備という全体のとらえ方をしますと三〇%程度で終わっているわけであります。確かに埼玉県というのは五日八十万から五百九十万ぐらいの人口になるとこつですから余り農業がないんじゃないかというふうにお考えかもしれませんが、特に県北地帯はまさに穀倉地帯でありますし、そういう意味では私の地元は相当基盤整備を促進をしている地区でございます。  しかし、そういう地区にあっても全国ベース、関東ベースでいくとややおくれが目立っている。今日まで農水省の方でもかなり真剣に基盤整備のための施策をやっていただきまして、テンポとしてはまあまあ年々伸びておるのですが、それでもなおかつ全国ベースでいきますと、あるいは関東ベースでいつでも、水田の場合に全国が四一%、関東ベースで四〇%、我が埼玉では三〇%。それから畑地かんがいが全国ベースで五七%、関東が二二%、我が県は関東全体から見ると二六%と伸びているのですが、全国ベースでいくとややおくれが目立っている。しかも最近の公共事業の停滞というのでしょうか、あるいは高率補助の引き下げ等々によって県費だとか市町村費の持ち出しが非常に多くなってきている。そういうために、当初七、八年でもって完了する予定だった基盤整備、かんがい排水も含めて畑地のかんがい排水あるいは水田の基盤整備、これは全部総合的にひっくるめて見てもおくれが目立って、実際に事業をやる農家人たち生産意欲が減退してしまう。これはいつになったらできるのだろうか、困ったものだ、国の方では一生懸命農業振興をやれということでやって、我々も熱心に仕事を始めたけれども、実際に計画がこれだけおくれてしまったの。では大変だというので、県の方としても予算の少ないのに加えて国の方の公共事業のおくれ等から頭を痛めている。  これを何とかしないと、本県はもちろんのこと全国的な農業振興に大きな影響が出てくるのではないか、こういう心配があるので何とかひとつ基盤整備の促進方について強く求めてほしい、今日までの農水省努力については高く評価をするけれども、一層の努力をひとつ頼みたい、こういう強い要請がありましたので、この辺の現状とこれからの見通し等についてひとつお聞かせを願いたい、このように思います。
  34. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 農地基盤整備現状につきましての先生の御指摘の数字はほぼそのとおりでございます。埼玉の場合には戦前、耕地整理法等によって比較的整備が進みまして、そのために新しく事業をすることについて農民の皆様方がそれほど緊要性を感じなかった。例えば十アールの区画、戦前の耕地整理でございますが、これが全国では二〇%に対して埼玉は四〇%ある、そういう意味では埼玉は先進県であったわけでございますが、そのことが逆に戦後の基盤整備にはややマイナスの作用をした、こういうことではないかと思うわけでございます。  事業が全体として非常に延びているということにつきましてはまことにそのとおりでございまして、二倍、ひどいのになると三倍近い工期がかかっていもわけであります。五十五年以降の公共事業の抑制が主な原因でございますけれども、その中で私どもとしては、国費を一定にしてかつ農民負担もふやさないで工事を促進させるように、国営事業の施行方式の改善、今回法律を御提案申し上げました。それによって浮いた国費は附帯する県営、団体営事業にも使えるようにいたすというように、若干ささやかな努力だがしているわけでございます。その他、こういう時期でございますので、やはり新規採択は少し抑制ぎみにいたしまして、従来は、五十五年以前は大体一〇%近い伸びがありましたので新規もとりながら継続も促進できたわけでございますが、こういう時期でございますので継続事業の促進に重点を置く、その他なるべく経済的な効率的な施工をやるように工夫していく、そういうことでできるだけ御要望にこたえ、私どもの事業に対する信頼をつないでいきたい、かように心得ております。
  35. 田並胤明

    田並分科員 大臣の方も、この基盤整備については、非常に重要な農業生産の向上のための仕事でございますので、国の財政事情の厳しいことはわかりますが、一層のひとつ努力をお願いしたいと思います。  ちなみに、高率国庫補助率の削減によって、本年度予定をされる例えば埼玉県のいわゆる県費の増というのは一億一千三百万でございます。また市町村に直しますと、今度市町村がそれ以外に五千六百万の負担。要するに県営の例えば圃場整備だとかかんがい排水とか畑地総合土地改良だとか、これらの事業費の中で、本年度恐らく一億一千三百万は補助金が削減されるだろう、さらに市町村がやっている団体営の場合で五千六百万円、合計本県だけでも一億六千九百万円基盤整備に要するお金で国から来るのが少なくなって、それだけ県、市町村で負担せざるを得ない、こういう地方財政に対する圧力もあるわけです。それが余計にこういう基盤整備事業の促進にブレーキをかけてしまう、こういう実態もあるということを御理解願って、一層のひとつ御努力を心からお願いしたいと思うのです。  時間がございませんので、次に森林・林業の振興対策について最後にお聞かせを願いたいと思うのです。  一つは、三月四日に野党四党の共同修正要求によります与野党の書記長・幹事長会談が開かれまして、その五項目に「森林、林業の健全な育成と国有林野事業の経営改善方策については、財源措置を含め、昭和六十一年中に結論を得るよう最善をつくす。」こういう一定の確認がされておるわけであります。  御案内のように、特に国有林野事業について触れさせていただきますと、林業全体が不振であるということは大臣も御承知のとおりでございます。国有林野事業の方も御多分に漏れず前から財政事情が非常に悪化をして、第二の国鉄になるのじゃないかというような話までされるような状況でございます。そのために林野庁の方では、事業の縮減、機構の統廃合、要員削減、これでもって乗り切ろうとしているわけでありますが、これが余りにも進みつつあるものですから、地元雇用対策あるいは地元の経済、こういうものにかなりの影響が出てきそうな状態であります。  しかも若年労働者が国有林野事業においては非常に少なくなってきている。昨年も言ったのですが、秩父の国有林の方へ私は毎年一回ずついろいろと勉強させてもらいに行くわけであります。昨年の場合に御指摘をした前の台風の被害がそのまままだ残っているという状態は、ことし一年の間に大分改善をされまして本当によかったと思っておるのですが、若年労働力の不足あるいは山が荒れてくるという状態も散見されるわけでございます。  したがって、山林というのはもう私が申すまでもなく、水の資源であり、また自然を守って国民生活に非常に大きな影響を持つ森林でございますから、国としてもこの書記長・幹事長会談の中の約束のとおり、財源措置を含めて、場合によれば公共的観点のものについては一般会計資金の導入あるいは長期借入金の利子補給等を積極的に行って国有林野事業の発展というものを図るべきではないか、このように実は思うわけでございます。ぜひひとつこれについての御所見をお聞かせを願いたいと思うのです。  最後に、今埼玉県では林業の振興のために大変大きな西秩父横断林道事業というものに取り組んでおります。いよいよ本年度、昭和六十年度から始まりまして、昭和七十年度を完成目標にして事業費六十八億で始めたわけでございます。実際に受益する面積が四千ヘクタールということで、大体奥秩父のかなりの部分を林業振興のために有益な仕事ができるのではないだろうか、効果が発揮をできるのではないだろうかというふうに考えますので、ぜひひとつこの辺の国の積極的な援助というもの、助成というものも考えていただきたい。このことを申し上げて、回答をいただいて私の質問を終わります。
  36. 羽田孜

    羽田国務大臣 今お話がありましたとおり、まさに森林というのは単に材を生産するというだけではなくて、国土保全という非常に重要な役割というものを持っております。  確かに、今全体的に林業の経営というものが非常に不振であるという中で、山の荒れというものが目立ってきておるというのが現状です。その中でまた国有林が大きな借金を抱えながら苦しい経営を強いられておるというのが現状でありまして、厳しい中にありまして、私は、やはり今お話ありました公共的なもの、こういったものについてはある部分について一般会計の方から資金を導入することなんかも進めてきておりますし、それと同時に、確かに厳しいことでありますけれども、国有林自体の合理化というものも進めていただくということとあわせて、今一般会計の導入なんかも図っております。いずれにしましても、現在、林政審議会、ここで御審議をお願いしておりまして、財源問題も含めて御答申をいただくということに実はなっておるところであります。  先日の各党の幹事長・書記長会談の御指摘といいますか御示唆、こういったものも我々よく頭に置きながらこれから対応していきたいというふうに考えます。ありがとうございます。
  37. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 お話のございました路線につきましては、埼玉県の関係市町村で構成しております秩父広域市町村圏協議会が昭和五十六年に策定いたしました同圏域の振興計画の中にある路線ではないか、たしか昭和六十年に県の方で調査をしております西秩父横断林道であろうと考えます。  五十七キロに及ぶ規模の、構想の大変大きな路線計画でもございますので、国の助成の可否あるいは助成の程度につきましては、それぞれの区間ごとに申請が出されました場合に、全部じゃなくてその区間ごとが出されるものと思われますので、採択基準に照らしまして判断することになるわけでございますけれども、そういう申請がございましたら十分慎重にお伺いをいたしまして、適切に対応してまいる考えでございます。
  38. 田並胤明

    田並分科員 どうもありがとうございました。積極的にひとつよろしくお願いします。  終わります。
  39. 柿澤弘治

    柿澤主査代理 これにて田並胤明君質疑は終了いたしました。  次に、春田重昭君。
  40. 春田重昭

    春田分科員 国際花と緑の博覧会が我が国で昭和六十五年四月一日から九月三十日の約半年間開催されると伺っておるわけでございますけれども、農水省として、この花博についていかなる計画また構想を掲げ、成功させようとしているのか、まずお伺いしたいと思います。
  41. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 国際花と緑の博覧会につきましては、先生今御質問の中にございましたような計画で既に準備に着手しているわけでございますし、今国会に既に関係の法律案も提出されておる次第でございます。  農林水産省としましては、この博覧会の開催の役割というものが、国民の花と緑の役割に対する認識、知識の向上を図るとか、花と緑の生産、流通技術水準の向上等を図る、またさらに、花と緑に対する需要の増進、あるいは関係産業の活性化、そういうもろもろの効果が期待されます似で、私どもとしましても建設省と御相談をしながら積極的に取り組もう、こういうことで、当面昭和六十一年度におきましては博覧会の開催準備の。ための各種調査、これを農林水産省で行いますとともに、国際花と緑の博覧会協会が行います開催準備に要する経費に対しまして、建設省と一緒に関係補助金を計上するということで、所要の予算を要求しているわけでございます。  なお、私どもの園芸緑化関係団体等を糾合しまして花と緑の普及促進協議会というものを設立しまして、この博覧会への出展、催し事、そういうものへの専門的な協力を行う体制も整備しているところでございます。
  42. 春田重昭

    春田分科員 この花博は各省にまたがっておるわけでございますけれども、担当大臣といいますか担当省といいますか、これはどこの省ですか。
  43. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 いわゆる所管大臣ということになりまと——農林水産省、通産省、建設省、外務省、こういうような主として関係四省でございますが、先生のお尋ねの中にございました担当大臣という問題につきましては、これはいずれ決定をするわけでございますけれども、全体としましては、やはり国外への対応、体制整備上は担当大臣は一人に絞る、こういうことが適当であろうということで、建設大臣を担当大臣といたしまして、農林水産省その他各省がこれに積極的に協力する、こういう政府内の体制が整えられる、こういうことになっている次第でございます。     〔柿澤主査代理退席、佐藤(観)主査代理着席〕
  44. 春田重昭

    春田分科員 それで、建設省の方にお伺いしたいと思いますけれども、この開催期間中の入場者数はどれくらいを想定されておるのか、お伺いしたいと思います。
  45. 坂本新太郎

    ○坂本説明員 今のところの試算でございますが、大体二千万人程度というふうに考えております。
  46. 春田重昭

    春田分科員 過去、日本で国際博覧会は三回開かれているわけでございます。日本万国博覧会、それから沖縄の海洋博覧会、そして昨年行われました国際科学技術博覧会と三回あるわけでございますけれども、それぞれの入場者数を御説明いただきたいと思います。
  47. 坂本新太郎

    ○坂本説明員 大阪万博はたしか六千四百万人、沖縄海洋博におきましては三百五十万人程度、先般の国際科学技術博では約二千万人余というふうにお聞きをいたしております。
  48. 春田重昭

    春田分科員 沖縄海洋博は、場所が沖縄ということでございますので、遠隔地であるということでおのずと入場者数も制限されたと思いますけれども、吹田・千里で行われた日本万博、また茨城の国際科学博、それぞれの催しは人を呼ぶにふさわしい内容であったかと私は思うのです。  ところが、この六十五年に行われる花と緑の博覧会というのは、果たして花と緑だけで御年配の方々から小さい幼児まで呼び寄せるだけの魅力があるかといえば、一抹の不安があるわけであります。二千万と想定しているということでございますけれども、それぞれ今後いろいろな企画、いろいろなそれなりの努力をなさると思いますけれども、目標を達成されるのは大変だろうと私は思うのです。これは大臣どうですか。  それから、農水省としてもかなり内容面においては深くかかわるわけでございますので、担当大臣は建設大臣でございますけれども、いざ中身になれば農水省中心になるわけですから、その点の御自信、決意といいますか、その点お伺いしたいと思います。
  49. 羽田孜

    羽田国務大臣 まさに御指摘のとおり、これは花と緑でございますから、私ども農林水産省が直接かかわりのあることでございます。そういう意味で、二十一世紀に向けてより潤いのある豊かな社会をつくり上げていきたいということの中で、我々農林水産省が果たす役割というものはこの博覧会の中で非常に大きなものがあるということでありまして、この基本的な計画の段階から私どもも建設省初め各省に対して積極的に協力をしながらこれを成功に導いていきたいと考えております。
  50. 春田重昭

    春田分科員 花というのは生き物でございまして、おのずと寿命があるわけですね。その寿命がある花、これを六カ月、約百八十日でございますけれども、もたそうと思ったら大変な努力が必要だと私は思うのです。現在いろいろな団体があろうかと思いますけれども、六カ月間長期に花をもたせるだけの供給が大丈夫かどうか、その辺のお見通しをお聞かせいただきたいと思います。
  51. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 まさに先生のお尋ねにございました花、緑、そういうものを長期の間適切に出展というか並べる、見ていただくということがこの博覧会の一番難しいポイントであろうかと思います。これは現在花と緑の博覧会協会が発足をいたしまして、今年、六十一年度になりましたら、この辺の問題について精力的に、開催の仕方またそれに対する出展、それから花と緑の供給、それからさらに外国からの展示、こういう問題について取り組んでいただくわけでございますが、これはその段階で具体化することでございますが、恐らく六カ月間ということになりますと、やはり幾つかの花や緑を組み合わせて出展をするとか、あるいはいきなり持ち込むのではなくて、どこか周辺に一種の供給基地のようなものをつくって、そこから絶えず供給していく、こういうようないろいろな工夫が必要であろうかと思います。  その辺が、従来の博覧会のようなパビリオン的なもの、あるいはハード中心のものとは違いまして、生き物が中心になる博覧会だけにこれから準備において大変工夫を要する点でございましょうし、また、恐らく供給体制の整備ということになりますと、一年というよりはもう少し長い期間の前からその辺の準備体制を発足させなければいけないのではないか、こういう問題も含めてこれから検討してまいりたいと思っております。
  52. 春田重昭

    春田分科員 この会場建設費また公園の整備費等につきましては、国並びに地方自治体、大阪府や大阪市その他衛星都市等の地方団体等の費用、それから民間団体からの協力といった考え方が過去の例からしても考えられるわけでございますけれども、この国庫補助の問題でございますが、いわゆる筑波の科学博の場合は、地方一に対して国二の割合の国庫補助があった。ところが、いわゆる大阪で行われる花博につきましてはかなり国庫補助が厳しくなっている。割合からいえば大体一対一程度だ、こう聞いておるわけでございますけれども、その理由はなぜなのか。科学博並みに一対二の割合ができないのかどうか。この辺、大蔵省の方を呼んでおりますけれども、見えておりますね、お答えいただきたいと思います。
  53. 涌井洋治

    ○涌井説明員 先生御承知のとおり、大変厳しい財政事情の中でこの国際花と緑の博覧会の開催申請をすることになったわけでございます。そういうことでございますので、昨年九月に開催申請についての閣議了解を行ったわけですけれども、その中で、政府としては、現在、最優先課題として財政再建に取り組んでいることにかんがみ、博覧会の開催に当たっては、民間資金の導入等民間活力の積極的活用を図るとともに、それ以外の部分については、国と地方公共団体とが同率で負担をすることとされたわけでございます。  そういうことで、国の財政事情が非常に厳しいという中での博覧会の開催でございますので、この国の負担割合をもっと高めたらどうかという先生の御意見でございますけれども、国の財政事情からこれで御理解いただきたいと思います。
  54. 春田重昭

    春田分科員 大阪市に花博を導入するに当たってはいろいろな経緯があったことも私も聞いております。しかし、一たん決定した以上、また国際博覧会と名がついた以上、国としても、大蔵省としても、はた迷惑なようなそんな考え方を持たないで、ひとつ積極的にやっていただきたいと思うのです。これは大臣のしゃれじゃないんですけれども。  大蔵省がおいでになっておりますので、ついでに。私は大阪市の隣の守口市に住んでいるわけでございます。この会場は鶴見緑地で、この地域は百五ヘクタールでございますけれども、そのうちの五十ヘクタールは守口市に属しているわけです。約四五%に当たると聞いております。守口市としてもこの花博に対しましては当然いろいろな入り口や出口等々の検討も必要だろうと思うのです、相当の面積ですから。それからまた周辺の整備等も必要になってまいります。そういった面で、大阪府、大阪市はかなりの財政力もあるわけでございますけれども、守口市はそういう小さな都市でございますからおのずと財政力に限界がある、そういった面で、この花博成功のために当然先ほど言ったようないろいろな整備が必要になってまいりますので、これは地元負担がそうかからないように国としても積極的に助成を考えていただきたい。この点を要望するわけでございますけれども、どうでしょうか。
  55. 涌井洋治

    ○涌井説明員 この博覧会の関連公共でございますけれども、関連公共の整備につきましてどのようなものを補助事業でとっていくかというようなことにつきましては、現在建設省等を中心関係省庁が検討を進めているところでございます。大蔵省といたしましても、関係省庁と協議しながら適切に対処してまいりたいと思います。
  56. 春田重昭

    春田分科員 建設省と協議してという話がございました。大蔵省は金を出す方でございますけれども、建設省の方は、先ほど言ったようにそういう整備を万全にしなかったならば成功しないわけでございますので、その点ひとつ守口市に対するいろいろな援助等十分考えていただきたいと思うのです。建設省の決意をひとつ聞かしていただきたいと思います。
  57. 坂本新太郎

    ○坂本説明員 御指摘のとおり、この博覧会の関連公共施設いろいろあるわけでございますが、現在建設省といたしましては、関連公共施設につきまして地元の地方公共団体等と鋭意調整を進めているところでございます。  守口市につきましても、これら一連の調整の中で適切に定めまして対処してまいりたい、かように存じておる次第でございます。よろしくお願いいたします。
  58. 春田重昭

    春田分科員 ところで、運営費の捻出はどう考えているんですか。
  59. 坂本新太郎

    ○坂本説明員 博覧会協会とも今後詰めてまいらなければならないわけでありますけれども、現在博覧会協会が発足した直後でございますが、その段階で事務的に考えております案といたしましては、入場料収入等をもって充ててまいりたいというふうに存じておる次第でございます。
  60. 春田重昭

    春田分科員 まだ決定はしてないということでございますが、入場料は大体どれくらい事務局としては想定しておりますか。
  61. 坂本新太郎

    ○坂本説明員 博覧会の事業内容その他もまだ決まっておるわけではございませんわけで、博覧会の入場料につきましては今後定めていくということになるわけであります。  ただいま申し上げましたように、事業内容ですとか入場者の予測、先ほどおおむね二千万人程度と申し上げましたが、これもまた博覧会協会が正式に定めたわけではございません。あくまで事務的な考え方でございますが、そういった点などもございますので、今後のそういった予測を勘案し過去日本で開催されました博覧会の入場料等も考え合わせながら、今後設定してまいるということになろうかと存じておる次第でございます。
  62. 春田重昭

    春田分科員 ここに一応資料が出ているわけでございますけれども、要するに事務的な考え方としては、入場者数は大体二千方人、会場運営費が大体三百四十億くらいかかるだろうということになれば、大体一人平均が千七百円、こういう計算になってくるわけでございますけれども、こういう考え方でいいのですか。
  63. 坂本新太郎

    ○坂本説明員 あくまで一般的ないし概括的に、しかも事務的に何らかの検討資料が要るということでつくりました程度のことでございますので、今後博覧会協会がお決めになることだというふうに存じておる次第でございます。
  64. 春田重昭

    春田分科員 いずれにいたしましても、科技博の入場料が一つの参考になるのではなかろうか、こう思っておるわけでございます。もし仮に千七百円となった場合、科技博と比べてどうか。先ほど言ったように内容面において相当な工夫、努力が必要であろうと私は思うわけでございますし、そういった面で千七百円というのは花と緑だけでは非常に高いのではないかという感じも現時点では持つわけでございます。科技博では一応黒字が出たとも聞いておるわけでございますし、そういう点も十分考慮しながら、期間が六カ月と限定されておりますけれども、この辺も延ばすことができれば若干延ばしながら、極力入場料は安くするようにひとつ考えていただきたい、こう思っております。  次に、運輸省の方がおいでになっておりますのでお伺いしたいと思いますが、先ほどから出ておりますように、入場者数の目標を大体二千万人と想定しているわけでございます。この入場者二千万人を確保しようと思ったならば、何といっても交通アクセスの整備が必要になってくるわけです。日本万博の千里とか、沖縄とか、それから筑波という会場等はそれなりの広さがありまして、また隔離されておりまして、その輸送等において大変だった面もありますけれども、そう混雑等はなかったと私は思うわけであります。ところが、この花博が開催される鶴見緑地という場所は、人口が集中している住宅地域なんですね、現地にも行っておられると思いますけれども。すなわち、都市の真ん中にあるいわゆる公園で開催される花博、こうなるわけです。したがって、バスとか自家用車だけでこの入場者数を確保しようと思ったならば、大混乱を来すわけです。  したがって、先ほどから言っているようにこの地域は人口急増地域でありますし、交通対策上及び市民生活向上のためにも、将来のためにも地下鉄の建設が不可欠になってくる。この花博だけでなくして将来のことを考えてみても、いわゆる鉄軌道の必要性は当然起き上がってくるのではなかろうかと私は思っておるわけでございますけれども、運輸省としてはどうお考えになっておりますか。
  65. 荒井正吾

    ○荒井説明員 このような大きなイベントに対しましてその利用者の方のアクセスを確保するというのは非常に重要でございまして、その点は、従来からの万博、科技博等について運輸省といたしましてもそれ相応の配慮、努力をしてきたつもりでございます。  この今度のイベントの会場になりますのは、近隣の鉄道網といたしましたら、京阪電鉄、国鉄片町線の間に挟まれた区域でございまして、現在バス輸送によりまして地域住民の足が確保されている状況にございます。この会場へのアクセスを確保するのは一つ大きな問題でございますが、先生今御指摘されましたいわゆる鶴見緑地線、地下鉄の特許の申請が去る一月三十一日大阪市長から出されております。まだ大阪府で現在審査の段階でございまして、運輸省及び建設省には届いておりませんが、概要等は承知しておるところでございます。建設費が約千億というふうに伝え聞いております。なかなか建設費のかかるプロジェクトでございますが、申請が本省に用いた段階で十分審査させていただきまして処理させていただきたいと思います。
  66. 春田重昭

    春田分科員 大阪市から大阪府の方に一月三十一日提出されたということでございまして、現段階では大阪府でとまっているわけですが、大阪府から国に上がってくる予定は大体いつごろとお聞きになっているのですか。
  67. 荒井正吾

    ○荒井説明員 数カ月といいますか、遅くも一、二カ月の間には出てくると思います。
  68. 春田重昭

    春田分科員 いずれにいたしましても、この地下鉄は花博だけでなくして、先ほども言っているように将来のいわゆる市民生活向上のためにも必要になってくるわけでございますから、ひとつ十分対応していただきたいし、当然この花博に間に合うような着工、完成を目指していただきたい、前向きに取り組んでいただきたいということを要望しておきます。  それでは、時間もそうございませんので最後になりますけれども、農水省にお伺いします。  ヨーロッパ各国で花博に近いいろいろな園芸博というのが行われているわけでございます。この園芸博というのは、どちらかというと庭園と園芸に関する要素を色濃くしておりまして、このようなコマーシャルベースだけでは成功しないと私は思うわけでございますが、BIEとの関係等もあろうかと思いますけれども、成功させるためには民間の大規模な出展や催し物、こういった必要もあろうかと私は思いますけれども、どんなお考えでしょうか。
  69. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 御指摘ございましたように、主にヨーロッパが多いようでございますが、従来の世界各国の園芸博の状況を見ますと、先生のお尋ねがございましたように、いろいろ花の品種、庭園を中心に見本市的な要素を持っております。ややコマーシャルベースというか販売的な面もございますけれども、反面、そういう園芸の非常に長い歴史、伝統に培われた一種の交歓会的ないい面も持っているというふうに私ども思っております。  今回の花と緑の博覧会は、こういう園芸博という系列でも考えなければならないし、そういうことになっておるわけでございますが、同時に、先生のお尋ねにもございましたし、私どもも考えております、全体として花と緑についての国民の関心を高める、また都市づくりという面でもその花と緑を位置づける、こういう言ってみればいろいろな公共的なと申しますか期待もかけられているわけでございますので、こういう両面を考えまして、先ほどお答え申し上げましたような関係諸団体の連絡協調、それによります出展の面での積極的な協力、さらに従来の博覧会にございますようにいわゆる民間企業も含めた幅広い民間活力の活用、こういう面も含めまして、私どもこれから博覧会の構想を固めるに当たりましては十分検討してまいりたい、かように思っております。
  70. 春田重昭

    春田分科員 この花博では商取引というのはどうなんですか、禁止されているのですか。
  71. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 厳密な意味での売買というのは恐らく博覧会の中で行われるにはふさわしくないというふうに考えますけれども、ただやはり出展者、これは外国もそうでございましょうし日本も同じでございますが、そういう機会に自分たちのつくっているものあるいは販売しているものの知識を広めてもらうというのも、これも一種の民間活力活用の刺激になるわけでございますので、先生のおっしゃいましたような取引それ自身をする場ではもちろんないと思いますが、こういう意味での、自分たちのいいものをみんなに見てもらう、こういう意欲をかき立てるような運営の仕方は必要であろうかと思っております。
  72. 春田重昭

    春田分科員 非常に微妙な言い方でございますけれども、BIEの関係等もありますので、ここはそれまでにしておきたいと思います。  それでは最後に大臣にお伺いしますけれども、この開催に当たりましては、先ほどから言っているように大阪市が相当な努力をされて日本誘致に持ち込んだと聞いているわけでございます。したがって、花と緑の万博をただ単なるショーとして終わらせるのでなくして、関連企業の活性化にもこれを契機として大いに役立てる、これも一つの大事な役目ではなかろうかと私は思っておるわけでございまして、農水大臣の決意をお伺いしたいと思います。
  73. 羽田孜

    羽田国務大臣 御指摘のとおりでありまして、単なるショーに終わらせることは、やはりこれだけの国費を投じながら、またいろんな方の御協力をいただくことでありますから、それはすべきではないと思います。そういう意味で、技術の向上ですとか、あるいはまさに関連産業の活性化、これをこの機会に増進させること、このためにも私どもも意を配してまいりたい、かように考えます。
  74. 春田重昭

    春田分科員 以上で終わります。
  75. 佐藤観樹

    佐藤(観)主査代理 これにて春田重昭君の質疑は終了いたしました。  次に、永井孝信君。
  76. 永井孝信

    永井分科員 限られた時間でありますから、ずばりと問題に入っていきたいと思うのです。  国営土地改良事業が全国で行われておるわけでありますが、そのうち兵庫県の加古川西部地区の糀屋ダム問題についてお伺いをしたいと思うわけであります。  まず初めに、この糀屋ダムの完成は一体いつなのか、受益面積は現在どうなっているのか、農家の負担は完成時においてどの程度と見込まれているのか、この三点について御質問をしておきます。
  77. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 加古川西部地区の完成の時期でございますが、現在段階ではおおむね六十五年度ごろになるのではなかろうかと考えております。五十九年十月十九日でございましたか、御質問いただいた際には六十二年度完成を申し上げましたが、その後事業内容を精査した結果、さらにおくれることになったことにつきましては大変申しわけなく思っておる次第でございます。  次に、受益地面積でございますが、事業発足当初に比べまして農業用用排水関係では約六百七十ヘクタールの減で三千九百ヘクタール、農用地造成では百八十ヘクタールの減で約百ヘクタール、合計四千ヘクタール、全体として約八百五十ヘクタール程度の減となる見込みでございます。  次に、農家負担でございますが、農家負担につきましては、既に御案内のように現行制度では国は県から徴収し、その徴収条件は政令で定めてございますが、県が受益者に賦課する賦課の仕方は条例で決めることになっております。したがいまして、その条例がまだ決められておりませんので確定的なことは申し上げられない段階でございまして、現在、計画変更の作業と並行いたしまして農家負担について兵庫県さらに関係市町村とも相談している段階でございます。  仮に、幾つかの仮定を置きまして、県が特段の上乗せ負担をしないということを前提にして数値を試算いたしますと、総事業費を約三百五十億と推計いたします。受益面積は、先ほど申し上げましたように四千ヘクタールというふうに見込みます。国の負担が五八%、県負担が二一%、地元負担が二一%というふうに前提を置きまして単純に計算いたしますと、十アール当たりの平均地元負担額は約二十六万円となります。年償還額で申しますと約二万八千円程度となるわけでございます。ただ、この数字につきましては今後の物価変動等の要因は一切織り込んでおりませんし、また、通常各地区で行われている地方自治体の負担軽減措置は考慮しておらない、あくまで試算であることを御理解いただきたいと思います。
  78. 永井孝信

    永井分科員 大臣、これは驚きですね。私がこの前五十七年に質問したときは、大臣は当時の農水委員長だったけれども、そのときに、昭和四十二年に工事が始まって、もう一遍繰り返しますが、七カ年計画で国営事業としてこれを実施に移したわけですね。そうして、そのときの受益面積は今言われましたように旧田補水、畑、未墾地開拓を含めて四千八百五十ヘクタール、そして、当時の想定された工事費がざっと五十五億円だと見て、農家の十アール当たりの負担額は、元金が一万七千九百四十一円、金利が八千十四円、合わせて二万五千九百五十五円ということで、農家に全部了解をしてもらってこの工事が始まった。  ところが二十年近くたってもいまだに完成をしない、工費はどんどん上がっていく、農家の負担はふえていく、受益面積は減っていく。だから当時、同じやるなら、大切な税金をむだ遣いしないように集中的にやることを考えてみたらどうか、七カ年計画のものが二十年近くたっていまだに完成しないのはけしからぬ、だから集中的に予算をつけて一日も早く完成を目指せと私は要求しました。農水省からは、できるだけ早期に完工を目指して予算も拡大していきますという答弁をもらって、そうしてきょうを迎えたわけです。  そうしたら、工期を早めるどころか、その当時六十二年には完成させますと言ったものがさらにおくれて六十五年になる、これは一体大臣どういうことなんですか。これはまさに驚きとしか言いようがないわけですけれども、農家はいつになったら水が使えるのかわからない、負担金だけふえていく、このことについて国の農政に対する農民の不信感は高まるばかりだと思うのですが、大臣どうですか、お答えいただけますか。
  79. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 まず事務的に多少言いわけをさせていただきますと、中国縦貫道の開通に伴う居地補償問題への影響、二度にわたるオイルショックによる物価騰貴、それから五十五年度以降の公共事業の抑制、そういう理由はあるにせよ、確かに先生指摘になられましたように二十年というのは余りにも長いわけでございまして、深く反省はしておるわけでございます。事務的に、私ども構造改善局として国営事業を遂行していく上で深く反省している次第でございます。
  80. 羽田孜

    羽田国務大臣 今局長からその背景の事情についてお話ししております。もちろん先生もそれはよく御存じであるわけでありますけれども、それにしましても、確かに国営事業を初め土地改良事業が全体的におくれておるというのが現状でございまして、今度も特別会計制度を改正いたしまして、少しでも事業の進捗を図ることが少しでも負担の軽減につながっていくのじゃないかということで、私どもといたしましてもこれからこういった問題について真剣に考えていかなければならないと考えております。
  81. 永井孝信

    永井分科員 工事の進捗を図ることが工事費のむだを省くことになる、大臣の言われたとおりなんですよ。しかし、その工事を進捗したいと言ってきて、国会で質問するたびに完成の目標がずれていくわけだ、一体これはどういうことなんですかね。七カ年計画が今度は二十三年だ。果たして六十五年に本当にできるのですか。確答願います。
  82. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 そのように最大根努力いたします。  糀屋ダムの導水を可能にするための下流水利権者の補償が済みました五十八年度以降は、全般的に公共事業が抑制されている中で、五十八年度一一八・三%、五十九年度一〇八・二%、六十年度一一一・七%、六十一年度は一一八・二%、一般公共事業の方は五十七年度から六十一年度まで約九六・五%ぐらいに全体に減っているわけでございますが、この加古川西部については一六九・一%と伸ばしてはきているつもりでございますけれども、何せ多くの地区を抱えておりまして、集中投資するにいたしましても限界がございます。理由にはならないと思いますけれども、もう既に二度も御指摘をいただいておるわけでございますので、今後技術陣営挙げて六十五年度完成には努力いたすことをお約束したいと思います。
  83. 永井孝信

    永井分科員 参考までに、昭和四十二年当時の米の買い上げ価格、そして昭和六十年度の米の買い上げ価格、今すぐわかりますか。ちょっと調べてくれますか、後で質問しますので……。  なぜ私がこれを聞くかと申しますと、今局長から御答弁があったように、農家の十アール当たりの負担は一応二十六万円と想定される、もちろんこれは国が五八%、県、地元が二一%ずつという負担割合で農家の負担額は二十六万だ、こう言われました。実は昨年農政局の幹部に来ていただいて現地で地元の農家と懇談をしたときは、二十八万円と言われているわけです。それよりは安いわけですから結構なことですが、二十六万円と言われている。これが農家の負担として果たして持ちこたえられる負担だろうか。  しかも、この負担というのは国が進めている基幹事業に対する負担でありまして、実際に水を使おうとすれば、支線の工事から、あるいは今進めている基盤事業から、全部別に負担しなくてはいけない。私どもが計算しました内容では、今言われたダムに対する、基幹事業に対する十アール当たり二十六万円という負担以外に、基盤整備を含めまして十アール当たり七十万から百万近い負担を農家は求められていくわけです。実際農業はこれで成り立つのだろうか。  だから私は五十七年の質問のときに、農家の負担の軽減について何とか政府は努力してもらいたい、考えてもらいたいということを強く要求いたしました。  そのときに問題になりましたのは、一つは、この糀屋ダムの水の使用割合は、農水として使用するのは約六〇%、工業用水として使用するのは四〇%、この基本的なスタンスは変わってないと思うのです。ところが事業費の負担割合というのは、農水は八四%、工水は一六%なんですよ。だから農家からすれば、負担額がどんどんふえてくればくるほど農水と工水の負担割合の不公平に我慢がならない、こういうことになっていくのです。  ところが、今言われたように二十三年もかかるということになりますと、実は当時了解をした農家の責任者といいますか、この人と今現に農業をやる人と代がわりしているところが随分出てきているのです。おやじが約束して判を押したとしても、当時十アール当たり二万六千円程度の約束だった負担額が十倍以上にもなった、おれはそんなもの知らぬと言いかねない状況にあるのです。だから私は、農家の負担の軽減について農水省は一体これからどう対応されるのか、ここで改めてお聞きしておきたいと思うのです。  参考までに申し上げますが、私が五十七年に質問しましたときには、政府は、農家の負担を軽減できるように努力をしたい、県当局とも十分に話し合いをしたい、アロケーションの変更についても検討したい、こう答弁しているのです。ところが、五十九年に参議院の決算委員会でこの問題が取り上げられたときに、当時の農水省の幹部は、今度はメンバーが変わっておったわけでありますけれども、今の局長の前の局長ですが、その局長の答弁を議事録で見ますと、農家は、その内容において、いわゆる作物をつくることについてかなり多様化してくるので負担できるはずだ、だから負担すべきものは負担してもらうと言い切っているわけです。これは五十七年当時の政府の約束と全く違うじゃありませんか。  この政府の態度の変更、答弁の変化とあわせて、農家負担の軽減問題について農水省基本的な考え方をお聞かせください。
  84. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 私どもも速記録を見ましたところ、確かに五十七年の段階で先生の御質問に対し玉沢政務次官からお答えがあり、それから五十九年段階で本岡先生の御質問に対して私の前任の局長から御指摘のような答弁があったかと思います。恐らく、私は両方矛盾してはいないのではないか、前任の局長の答弁は、営農計画が変わるとすれば払えるということを事務的な説明をしたのだろうと思うわけでございます。  問題は、私どもは最終的に計画変更について農家の御同意をいただかなければ仕事が完了しないわけでございます。御同意をいただくとすれば、一体払えるか払えないかということは受益農民の方の最大の関心事であろうかと思います。したがいまして、私どもは、私どもが考えているだけではなくて、農家の方々に具体的に御納得いただかなければならないという責任があるわけでございまして、そこで、先ほども申し上げましたけれども、この具体的な償還条件につきましては県の条例で決まることでもございますので、県あるいは地元市町村ともいろいろ御相談して負担の軽減を図ってまいりたいという姿勢は一貫して農水省として変わっているところではございません。  さらにまた、国といたしましても将来の維持管理について何らかの公的な関与ができないかとか、当地域の水需要、現在は経済情勢その他からすぐに相手は見つからないようでございますけれども、播州平野は水不足地帯でございますので、将来そのような新規水需要の開拓とか、ほかにもまださまざまな方法はあるかと思いますけれども、国も国なりに努力をする、それから関係県、市町村もそれなりに努力していただくというような中で、何とか受益農家の方々に御納得いただけるような水準に持っていきたい、かように考えている次第でございます。
  85. 永井孝信

    永井分科員 米価の関係わかりましたか。
  86. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 着工年次の四十二年産米価につきましては七千七百九十七円、それが六十年産で一万八千六百六十八円で、約二・四倍になっております。
  87. 永井孝信

    永井分科員 農家が米を生産してそれを政府に買い上げていただく、当たり前の話だけれども、四十二年の工事が着工された当時、農家が十アール当たり二万六千円という負担で水を確保しようということで了解し合ったときの、その買い上げていただく米価が七千七百九十七円、二十年たった現在は一万八千六百六十八円ですか、ざっと二・四倍だ、こう言われる。ところがその間に農家の負担は十倍を超えているのです。これはちょっと政策上整合性がとれてませんね、そうでしょう。  では、一体農家はその二十年間どうしてきたのか、私の地元でありますからよく知っているのでありますが、実は、この二十年間、水がなかったために米がつくれなかったことは一回もないのです。ダムがなくても米は十分にとれているわけです。水はあるにこしたことはないけれども、生産者米価がわずか二・四倍しか上がらないのに、農家の負担だけは十倍以上になるような水はもう要らぬというのが率直な農家の気持ちですよ。だから糀屋ダムの工事をやめると言っているのじゃないのですよ。農家のそういう気持ちを考えた場合に、一日も早く完成をさせて負担がこれ以上ふえていかないようにすることがまず第一でしょう。  農家がこの計画について同意を与えた当時、農家としては納得するための三つの受けとめ方がありました。一つは、七カ年でできるということと十アール当たり二万六千円の負担金で済むということ。二つ目には、万が一のときに水が確保できるならいいではないかということ。三つ目には、国がやることだから間違いないだろう。この三つなんです。ところが、一番目はもう裏切られてしまった。二番目は、二十年たったけれども、その間に水不足は一回もなかった。去年なんかも雨がなかったのですけれども、十分に米はとれた。三つ目には、国がやることだから間違いあるまいと思ったけれども、これは間違っておった。ここまで来たら抜き差しならぬ農政不信が渦巻いているわけですね。  そして、この計画変更でありますけれども、実はこの計画変更はまだ農家の手元には何ら届いていないのです。これは一体いつ届くのですか。計画変更が土壇場になって届いたときには、今言ったように代がわりもあれば、受益面積が減ったこともある、いろいろなことがあって、そんなことは了解できないということになるのじゃないですか。それはどうですか。
  88. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 本事業につきましては、着工以来さまざまな条件変化の中で今御指摘のような事態を招来しておりまして、事業の施行の任に当たった者としてまことに遺憾に考えております。  ただいま御指摘の計画変更でございますけれども、現在、変更計画書案の作成作業をほぼ終えまして、土地改良区の理事会には御説明いたしまして、理事会で御審議をいただいておるところでございます。理事会の審議の模様にもよりますけれども、今後計画変更の内容についてできるだけ早く、そう二カ月も三カ月も先ということではなく、地域の代表者である区長、大体集落段階の代表者のレベルまでおろして説明をいたし、引き続き集落代表者を通じて各農家の方々に御説明してまいりたい、かように考えているわけでございます。それと並行して県、市町村等とも協議を進めてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  89. 永井孝信

    永井分科員 この計画変更については、五十七年の農水委員会の私の質問当時から地元と協議をされているわけですね。まだこれから二、三カ月先だ、こういうわけです。この六月か七月ごろには参議院選挙が決まっているわけです。日にちこそ決まっていませんけれども、もうやることは決まっているわけです。農政に対して、国政に農民の意見を反映させるという立場からすると、少なくとも参議院選挙で国民の審判が下される前に、この計画変更についても農民の皆さんにわかるようにすべきじゃないですか。私は、これは政府としてとってきた政策を国民の皆さんに御審判を仰ぐためにとるべき一つの義務じゃないかと思うのですが、どうですか。
  90. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 事務的な手続といたしましても三月中下旬にでもできればやりたい、理事会の審議の結果、地元、さらに下の段階におろすにはもうちょっといろいろ検討してくれというような御意見が出ればちょっとまた別でございますけれども、事務的には三月中下旬にも集落段階までおろしたいというふうに考えております。それからすれば、恐らく先生の今の御質問に対してはおこたえできるのではないかというふうに考えております。
  91. 永井孝信

    永井分科員 時間がなくなりましたので先を急ぎますけれども、大臣、香川用水というのを御存じだと思うのですが、この香川用水を私ども、この前にも視察をしてまいりました。この香川用水方式でいきますと、負担の問題について、今言われたように国が五八%、県が二一%、地元が二一%という負担割合について、農家に大きな負担とならないように県が一一%負担を上乗せする、残った一〇%、これを地元が負担をする、肩がわりをするということなどを含めて、多くの自治体において農家の負担は全くゼロという状態をつくり出してくれました。二%程度負担した自治体もありますし、六%程度負担した自治体もありますが、これはごく限られておりまして、ほとんどが国や県や自治体の話し合い、努力の積み重ねによって農家の負担はなくなっているのです。  こういう香川用水のような方式を何とかこの糀屋ダムの関係でもとることを考えることができないか。今、局長が言われたように、地元とも十分相談しているという中に、この香川用水方式の取り入れなどについても御検討願いたいと思うのですが、どうですか。
  92. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 確かに香川用水につきましてはそのような方式がとられております。それから、香川用水以外でも、オイルショック前後の物価の急上昇を挟んだ時期に施行いたしました国営事業は、大変遺憾ながら、かなり負担額が、当時私どもが受益者に対して御説明した金額と違っているというようなこともございまして、各都道府県は大変苦しい財政事情の中でもそれぞれ応分の負担をしていただいた例がかなりございます。  香川用水方式どおりやるということで兵庫県あるいは関係市町村とお話し合いするかどうかは別にいたしまして、他の地域でも同様に自治体がそれぞれある程度の御負担をいただいているわけでございますから、これは私どもとしてはやはりお願いということでございますが、私どもはそのかわりに、施行後の維持管理等につきましてはまたいろいろな制度もございますので、そのような面で考えていきたいということも考えておりますので、香川用水の方式も、一つのやり方としてそういうものもあるということも御説明しながら、県、市町村に対応してまいりたい、かように考えております。
  93. 永井孝信

    永井分科員 大臣、今申し上げたように、繰り返して恐縮ですけれども、これは非常に農政の大切なことですからあえて言うのですけれども、農家生産したお米の値段が二・四倍で、負担が十倍以上になっていく、まだこれから完成時にはどれだけ膨れ上がっていくかわからぬという状況を踏まえて、この農業を、これからも食糧自給体制ということを踏まえながら発展させるために、農家の負担を軽減させることを一つ基盤に置きながら農政を進めていくという立場での大臣の御見解、決意をひとつ短くお答えいただけますか。
  94. 羽田孜

    羽田国務大臣 ただいま局長からもお話し申し上げましたように、確かに今、農家負担というものの軽減に対し、我々としても何らかの措置をとらなければならぬということであります。  いずれにしましても、この地域のあれにつきましては、中国縦貫自動車道、こういったものができることによって、工業団地など、いわゆる公共用のものにあれされた、それによって受益者面積が減ってきたということがやはり農家負担に大きくつながっているということもございます。  そういう意味で、私どもといたしましても、今、先生にお示しいただきました方式等も含めながら、県並びに地方自治団体、そういったところともこれから十分話し合いをし、農家の負担軽減を図るために話し合いを続けていきたいというふうに考えております。
  95. 永井孝信

    永井分科員 最後に、これはちょっと糀屋ダムの問題と違うのですが、一つ質問しておきたいと思うのです。  いわゆる同和対策のための地対法、この地対法が制定されて四年たっているのですが、法制定当時見込んだいわゆる残事業というものは、現行法の期限の中ですべて消化できるのかどうなのか、農水関係でいいますと。また、その後、新たな要望事業がどんどん出てきておると思うのですが、これに農水省としてどのように対処する考えなのか、ひとつこれを明らかにしてもらいたい。  時間がありませんからやりとりできないと思うので、全体の問題を含めて、ひとつ積極的に日本農業を立て直すぐらいの気概を持って大臣関係者も頑張ってもらいたいということを最後に要望して、今の質問だけお答えいただけますか。
  96. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 いわゆる地対法を制定するに際しまして、私ども農林水産省といたしましては必要事業量を把握したところ、その当時の予算規模のおおむね三年分であったわけでございまして、この事業量を基礎にして各年度における諸物価上昇率や要望事業の緊要性、妥当性を勘案しながら、従来まで必要な予算の確保に努めてまいったところでございます。したがいまして、実施予定事業量三年分に対して法の期間が五年ということから考えますと、当初見込んだ事業につきましては六十一年度をもって大部分実施済みかまたは実施見込みになるというふうに考えておるわけでございます。  しかしながら、今先生がお話しございましたように、その後、追加地区指定に伴う新しい事業要望とか、あるいはいろいろ権利関係が錯綜して出てこなかった事業が、それが調整がついて追加事業要望が出てくるとか、あるいは法の期限切れを前にして要望が急にふえてくるというようなことが現にあるわけでございまして、私どもその実態を把握することに現在努めておるわけでございますし、また、それぞれ十分内容を吟味しなければなりませんけれども、地元に真に必要な事業については周辺地域との一体性ということにも配慮しながら効率的に実施していく必要がある、こういうふうに考えておるわけでございます。
  97. 永井孝信

    永井分科員 これで終わります。ありがとうございました。
  98. 佐藤観樹

    佐藤(観)主査代理 これにて永井孝信君の質疑は終了いたしました。  次に、田中慶秋君。
  99. 田中慶秋

    田中(慶)分科員 冒頭に、都市農業問題について質問をしたいと思います。  最近の都市農業兼業農家が非常に多くなってまいりました。ということは、やはり農業経営では食べられない、こういう問題があるからだ、こんなふうに思うわけであります。そういう点では、都市農業政策という問題を今農水省として真剣に考えていただかなければいけない時期であろうと思います。同時に、後継者問題というものも絶えず頭痛の種でございまして、そういう点では、その問題を含めて都市農業はいかにあるべきかということを、まず冒頭に大臣の方からその所信をお伺いしたいと思います。
  100. 羽田孜

    羽田国務大臣 都市農業につきましては、都市の住民に対する野菜などの供給、または都市に対する緑ですとかあるいは空間の提供、こういった大きな役割を果たしておるというふうに考えております。また、私どももしばしばお会いしたりいたしますけれども、都市地域にはやはり農業に対して大変意欲を持っている農家の方あるいは若い青年たちもおられるというふうに私どもは見ております。そういう意味で、都市近郊の市街化区域、調整区域につきましては、優良農地というものを積極的に農用地区に指定するなど農業施策を講じておるところでございます。  なお、市街化区域内の農業につきましては、その基盤となる農地が都市計画制度上、都市施設整備の進展などによりまして次第に宅地などに転換される性格のものもございます。そんなことで、土地改良事業等効用が長期に及ぶものは実施しないということになっておりますけれども、都市施設整備のテンポなどと関連もございまして当分の間農業が存在するというものにつきましては、野菜等の施設ですとかそういったものについて、私どもとしてもおこたえをしてきておるということであります。
  101. 田中慶秋

    田中(慶)分科員 そこで、お伺いしたいのは、農水省あるいはまたそれぞれ農業団体、農協を含めてでありますけれども、私も農家ですからよくわかるのですけれども、背は、農業後継者育成あるいはまた農業経営に対する指導というものが、技術者を含めて大変積極的に行われていたような気がいたします。しかし、昨今ではそれぞれの技術者も少なくなり、あるいは農協等についても、最近のニーズがそうなったのかもわかりませんけれども、本来の農業経営の技術者といいますか指導者というものが非常に少なくなり、むしろ金融的なところに力を入れている、こういうことも実態ではなかろうかと思うのです。そういう点では、基本的に農業振興というもの、あるいはまた農業を守る、あるいはまた農業で経営が立つという問題を考えたときに、私は、技術者や指導者の養成というものは急務ではないかと思うのです。ところがそれが、今どちらかというと比較的重点施策の中に入れられていない、こういう問題が感じられるのですけれども、この辺はいかがでしょう。
  102. 羽田孜

    羽田国務大臣 おっしゃるとおり、私ども一番大切なことは、生産基盤整備することと、生産に従事する農薬者、ここにしっかりした人が必要であるということで、私どもとしては重点的な施策の一つであるということを申し上げることができます。特に、都市農業の場合には施設園芸といったものが非常に大きく広まっておりますので、さらに技術の高い後継者が必要じゃないかなというふうに思っております。そんなことで、農業大学校等における実践的な研修教育の充実ですとか、あるいは孤立、分散しております農業青年たち、こういった人たちが本当に仲間づくりができる、そしてお互いに話う合うことによって啓蒙されていく、そんなことについても助長を図るために手当てをしておるということでございます。  もちろん、先ほどお話がありましたように、施設等相当お金もかかりますので、金融的な問題についても配慮をいたしておりますけれども、しかし、そういった問題だけじゃなくて、技術の向上、またいろいろな情報なんかもきちんと分析できるような農業者がこれからは育っていただかなければいけないということで、そういった面でもこれから積極的にそういうことをしなければいかぬし、それと局時に、農業者団体なんかもそういった問題についてさらに力を入れてほしいというふうに私も考えております。
  103. 田中慶秋

    田中(慶)分科員 この後継者問題というのは私は非常に重要な問題だと思うのです。確かにそういう点では、時代が金融とかそういう問題で実際に実のある方向に走りがちでありますけれども、地味でありますけれども、ぜひ農業団体等についても指導者養成というのは心がけていただきたいと思うのです。  例えば、今ちょうど入試時期ですね。そうしますと、農業高校とか、あるいはまた農業高校の中に園芸部門とかあるわけですね。本来農家の人が入って、それで農家の後継者として学はなければいけないわけです。ところが、今こういう時代ですから、そこに行きたくても、そして農業を今から自分がやりたいという意欲があっても、それぞれ実力によって入れないという問題が現実に出てきているのですね。ですから、園芸部門が非常に大きな社会的なブームになってまいりますと、農業後継者じゃない人たちがそれを圧倒的に占めてしまう。ですから、そういう点では農水省が文部省といろいろな協議をして、まず優先的には農業後継者の人たちがそこで技術あるいはまたいろいろな形で勉学をするようなことも必要ではないか、こんなふうに思うのですけれども、その辺はいかがでしょう。
  104. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 今お尋ねのような事態、確かにございます。現実には、農業高校を出て農業に就農される方の比率が既に全国で一割を割っておる、そういうような状況もございますので、私ども今二つのことをやっておりますが、一つは、農業高校に入る方たちの農業への関心を高めてもらうことと、それから、私どもがやっております協同農業普及事業の中で、農村の青年の中から農業を一生懸命やっていただく方を育てていく。具体的には、各県に農業者大学校というのをつくっております。神奈川県の場合にも、五十九年で大体四十人の卒業者を出しております。こういう方たちの就農率は七二%ぐらいで非常に高うございます。そういうこともございますので、やはり一般的な高校教育と一緒に、普及事業とかそういうものの中で、例えば神奈川県の立地条件にふさわしい農業を育てていく、こういうことでやっていきたいと思っております。  なお、普及事業の方では、協同農業普及事業の実施に関する方針というのを各県で決めておりますが、特に神奈川県について見ますと、神奈川県にふさわしい都市型農業をつくり出す、それから生鮮食料の安定供給、自然環境の保全の役割を果たすということで、先ほど大臣もお答え申し上げましたようないわゆる後継者の間の仲間づくり、組織化を進めるとか、地域ぐるみの活動を促進する、こういうことで、これからも大いに地域農業振興のために後継者を育てるように努力してまいりたいと思っております。
  105. 田中慶秋

    田中(慶)分科員 実は私も、この後継者問題というのは重要だということで、他府県との交流も若い人たちの間に入って進めているわけでありますが、やはり技術の交流だけではなくして、農業の同じ悩みを持つ若人たちの交流というものも必要ではないか、こんなことを考えておりますので、そういう点も含めて、それは要望でありますが、ぜひ何らかの形の中で進めていっていただきたい、こんなふうに思っております。  そこで、後継者問題の悩みのもう一つは、実は相続税の問題が出てまいります。私もことしも幾つかの相続税問題で相談を受けておりますが、例えば農地に対する相続税猶予の問題があるわけです。農家というと農地だけではございませんで、山林その他の問題がございます。そういう点では、山林等について比較的多く持たれている人たちは逆に税の問題で大変困ってしまう。こういうことを考えたときに、今、森林というものも当然こういう問題では相続税の猶予あるいはまた何らかの形の中で対応がされなければいけないのではないかなと思っておりますが、この辺についてはどのようなお考えを持っていらっしゃるでしょうか。
  106. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 林野庁といたしましても、林地に対します相続税制につきましては、農地並みの納税猶予制度を設けることが緑資源の維持のためにも望ましいというふうに考えておりまして、昨年の昭和六十一年度税制改正におきましても要望いたしたわけでございまして、その実現に努力はいたしたところでございますが、なかなかクリアできない点もございまして、残念ながら実現はいたしておりません。  御存じのこととは存じますが、農地と林地とでは大分権利や転用に対する規制の差もございます。また、農地改革を経ない林地の所有構造の問題でありますとか、また林地はそれなりの納税猶予制度も林業並みにある、あるいは相続税全般に係る問題とか、私どももいろいろ勉強し、これからそういう問題をクリアしていかなければならない点がございます。しかし、林業関係はまた大変環境が厳しくなりまして、森林資源の維持という観点からも、この問題につきましては今後さらに検討を深めてまいりたいと考えているところでございます。
  107. 田中慶秋

    田中(慶)分科員 国際緑化年とか、あるいはまた森林の維持とかということも大変重要な課題にされているわけでありますし、来年何か税制改正の問題について抜本的に見直し検討をする、こういう話も聞いておりますのでぜひ……。  大臣、これは本当に必要だと思うのです。ということは、はっきり申し上げて、森林というか林業その他はそれぞれ短期的な収入がないわけです。せいぜい五十年サイクルとかそんな形でありますから、収入がないところに相続税、こうなってくると、全然意欲もなくなってまいりますし、またそれが原因で転売されてしまう。それでは山を守れない、こういう形式になってまいりますから、私は、ぜひ今度の税制改正の中で、山林も含めて猶予というものを農水省の方で頑張っていただきたいし、またそのことが日本の国の緑を守ることになるのではないかと思っておりますので、これらに対して見解を述べていただきたいと思います。
  108. 羽田孜

    羽田国務大臣 今の先生からの御指摘、私も全く同感でございまして、私自身林政調査会長等でやっておるときにも、この問題について同様の主張をいたしまして、何とか軽減を図れるように訴えてまいりました。  ただ、今お話しのとおり、税制全般にわたって来年度に検討し直そうということでございますので、そういう中で、収入は今まだそうきちんと入ってこない、そして林地はどんどん売って税を払うということになったら、またこれが非常に効率が悪くなってくる。しかも転売した先が、いろいろな例を見ましても残念ながら余り山に対して関心を持っているのではなくて、むしろ山というものを財産としてただ置こうということで、なかなか手入れもされないというところに問題もあるということも私ども現実に目にいたしております。そんなことも含めて、この税制のあり方について私どももこれから勉強していきたいというふうに考えます。
  109. 田中慶秋

    田中(慶)分科員 一般的には、緑を大切にするとか緑を守るとか非常にかっこいいんです。しかし、今言ったように、裏においては税制面とかそういうことを含めて大変厳しい環境にあるわけです。今大臣が言われたように、転売され、その人が山を好きで持たれるならいいのですが、そうではなくて、投資的に持ったり、やがて一つ開発がというようなささやかな望みで持ったり、こういうことでありますので、やはり緑とか山を守るためには、今大臣の言われたような形でぜひ税制改正のときにやっていかないと、日本の緑というのは侵されてしまいますし、特に都市の緑なんというのはなくなってしまいます。そういう点では、ぜひ頑張っていただきたいと御要請を申し上げたいと思います。  そこで、実は市街化調整区域の問題で、これは今、農水、建設両方にまたがる問題であります。  昭和四十五年六月十日、新都市計画法の線引きがスタートされたわけでありますが、この時点で、五年ごとの見直しとか、あるいはまたこの線引きに対する啓蒙や説明が足りなかった、そういう点では、今の相続税問題が起きるときにやはりここにも大きな問題が出てくるわけであります。調整区域と市街化区域を多少バランスをとって持っていれば、少し市街化区域を売って調整区域を守ることができるわけですが、今言ったように、山林との問題とかいろいろな形の中で大変営農意欲を失うこともあるわけであります。そういう点では、今の線引きの見直しを五年ごとにするといっても、これはほとんど微調整程度で抜本的な見直しはできない。そういう点では、この線引きのときに一つの物差しがなかったところに大きな問題があると思うのです。  ですから、これは私の持論みたいなものなんですが、例えば、駅から十キロの間の市街化調整区域はもう都市化されてもしようがないじゃないか、あるいはまた、国道とか県道とかの沿線内三百メートルくらいはしようがないじゃないか、そういう物差しがないわけです。ですから、五年ごとの見直したというと、その時期になってまいりますとそれぞれ、自分たちはできるかできないかわからないけれども、やたらとむだな労力で陳情合戦をしたり署名運動をしたり、いろいろなことをされているわけであります。そういう点では、逆線引きもあるでしょうし、また、今言ったような形の一つの物差しができることによって、新しい町づくりというものができてくるような気がするわけです。そういう点で、これは建設省、農水省がお互いにその辺の物差しづくりをしてもらいたいということを私は思うのです。そういう点で、きょう建設省の方もお見えいただいているわけですけれども、まず農水省としてお答えをいただき、次に建設省としての見解を承りたいと思うのです。
  110. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 合理的な土地利用、都市的利用、農業的利用ともにでございますが、合理的土地利用を図るためには何らかの土地利用計画が必要であることはどなたも否定できない、私どももそういうことを前提にやっているわけでございますが、基本的な問題としましては、市街化区域内に編入された場合と調整区域内、特に農用地区域に編入された場合とで地価に十倍近い格差が出てしまう。そういう中で数多い零細な地権者の方々がいろいろな意向を持っておられる。その中で私ども建設省も農水省もともにここ十数年いろいろ苦労してきたわけでございますが、やはりおのずからある程度のルールは確立されておるわけでございまして、私ども農水省の立場から言えば、おおむね二十ヘクタールを超え、かつ生産性の高い集団的優良農地とか、農業投資が過去大体八年以内ぐらいに行われたとか、あるいは今後行われる計画が具体的にあるようなところにつきましては、極力市街化区域からは外し、私どもの農振法の農用地区域に編入するという運用をしているわけでございます。  現在確かに、随時変更も含めまして微調整しか行っていないじゃないかという御指摘がございますけれども、これは恐らく建設省としても御異論ないところだろうかと思いますが、既往の市街化区域内の人口密度、都市施設の整備等が、人口度もそれほど高くない、それから都市施設の整備も十分進んでいないというような事態もございますので、かなり具体的な計画が確定したようなところを編入する。もちろん、将来確実にそういうものが起きるところは保留地みたいな形の制度も設けて弾力的な運用を図っておりますが、そのようなところから来ているわけでございまして、今後とも、先生指摘のルールにつきましては、そういうものが必要であることは間違いないところでございますので、土地利用の客観的な合理的な仕様の策定ということについては私どもも努力してまいりたいとは考えております。
  111. 伴襄

    ○伴説明員 お答え申し上げます。  先生指摘のなるべく明確な基準でもって市街化区域の編入を考えたらどうかということでございますけれども、私ども極力明確で公平な運用ができるような基準をつくりたいと思って努力しておるところでございます。ただ、先生例にお出しになりました鉄道駅とか幹線道路から一定の距離ということでやってはどうかというお話でございますけれども、これも各都市の個別事情がかなり違いますので、なかなか一律にというわけにはいかない面があるのではないかと思います。例えば地形上の問題だとか、あるいは駅の乗降客の数によってかなり影響する範囲も違うでしょうし、あるいは計画開発の見込みはあるかどうか、道路等のその他の公共施設の整備はどうかとかいうようなこともあろうと思いますので、いろいろ個別事情が異なると思いますので画一的な基準というのはなかなか難しいと思います。  ただ、駅に近いかどうかというのは市街化区域に入れるときの非常に重要な要素だと思っておりますし、現に、駅に相対的に近い区域につきましては見直しに際しては極力編入を検討するとか有力な候補に挙げるとかということをやっております。それから、これは農林省さんとよく打ち合わせて通達を出しておるわけでございますが、鉄道新駅ができますと、その鉄道新駅と一体的、計画的に市街地開発を図るところは飛び市街化区域になっても面積要件を緩和するとか、そういうような措置を講じておりまして、個々具体に駅に近いかどうかあるいは幹線道路に近いかどうかというようなことを十分配慮しながら市街化区域の編入を図っていきたいと考えております。
  112. 田中慶秋

    田中(慶)分科員 それぞれ制度上は五年ごとの見直しという制度があるわけです。しかし、今それぞれの御答弁をいただいておりますけれども、みんな思惑で、それぞれの線引きというものが期待をされてみたりいろんなことをされているわけですね。だから、そういう点では、反面においては農地を守る、反面においては適正な良好な町をつくるということでは一つの物差しが必要であろうといつも私は思っております。線引きのスタート時点が物差しがなくてスタートされたものですから、そういう点で混迷をされているのが実態だと思うのです。そういう点で、例えば、それは全国的なレベルで話す場合と、あるいはまた首都圏のような場合とおのずと違ってくると思うのです。私申し上げるのは、極端なことを言えば、首都圏のようなときにおいてそういうものはぜひ見直し対象の物差しというのが本当に必要ではないか、こんなふうに思うのです。  よくそういう問題を議論されてまいりますと、必ず、まだ市街化の中に農地があるんではないかという話をするわけですね。しかし、市街化の中における、俗に言う、税制の問題でもありましたね、宅地並み課税とかいろんな問題があるわけですけれども、それはそれぞれの地権者の人たちが、自分たち農業意欲といいますか、あるいは、自分はある年齢に来てから線引きされた関係自分が元気なうちはまだ農業をしたいということで、なかなか農地——市街化における宅地並みといいますか、宅地のような状態で課税をされておる問題もありますけれども、そういう点では、まだまだ市街化の中における農地があるんではないかという論法が当てはまらないところがたくさんあるわけでありまして、私は、少なくとも逆線引きをしてみたりいろんなことを含めて検討に値すると思うのです。だから、そういう点でこれから、いずれにしても五年ごとの見直し、一方においては住宅政策や土地政策の中において規制緩和とかいうことを含めて内需拡大の問題を、片方においては建築を中心として、住宅を中心として内需拡大する、そういう点では、今言ったような逆の面においてはそういう規制があってなかなかできないということもありますので、ぜひいろんな形で検討されて、物差しをつくってほしいという要望をしておきたいと思うのですが、いかがでしょう。再度両方からお答えをいただきたいと思います。
  113. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 先ほども申し上げましたように、一つの線引きによって両者の地価に十倍の開きができるわけでございます。にもかかわらず地権者にその線引きを納得させるためには、先生おっしゃるような合理的な物差しがあって、だれもが納得するというようなことができなければならないわけでございます。  ただ、実際にやることになりますと、建設省から御答弁のございましたように、技術的に大変難しい要素がございますけれども、基本的な考え方といたしましては、私ども先生の御指摘はごもっともだと思うわけでございます。では直ちに、何年後にどういうものを出せるかというほど自信を持った御答弁をできるだけの用意はございませんけれども、御趣旨は十分理解できるつもりでございますし、今後の行政運営にもそのような理解に立って当たってまいりたい、かように考えております。
  114. 伴襄

    ○伴説明員 お答え申し上げます。  私どもも極力客観的な明確な基準ができるように努力をしたいと思っております。
  115. 田中慶秋

    田中(慶)分科員 そういう点で、ぜひ一つの基準というものを明確にしていただきたい。  時間の関係で最後になろうかと思いますが、最近二百海里の問題、沿岸漁業の問題等として、漁業問題も発想の転換が求められているような気がいたします。そういう点では、遠洋漁業から近海漁業あるいはまた栽培漁業というような形の問題が最近検討されているわけであります。  私は実は出身が福島ということでありますので、私の出身地もやはり同じような栽培漁業を中心としてサケの問題が盛んに行われているわけでありますけれども、そういう中で幾つかの問題が最近出てきているわけであります。一つには漁港整備の問題、あるいはまた漁港整備に対してもランクがありまして、一種、二種、三種等の問題があるわけでありますが、その二種から三種に対する格上げということが要求されているわけです。ということは、三種になりますと県外船もそこに入られて、経済的にもあるいはまたいろんな形の中で大変有利な問題も出てきているわけでございますので、こういう点にちょうど、福島県双葉郡浪江町請戸港というのがあるわけですけれども、今、国からの助成のもとに漁港の整備は行っておりますけれども、そういう点で、格上げの問題を含めてどのようにお考えになっているか、あるいはまた具体的にどのような検討をされているのか等を含めて質問をしてみたいと思いますが、この辺に対する御答弁をお願いしたいと思います。
  116. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  第二種漁港と第三種漁港の区分けの中で、一つの重要な基準として、地元漁船以外の利用漁船の隻数というのがございまして、これが七十隻以上、また千六百トン以上であるということが基準になっております。ただいま先生が例示的にお挙げになりました港の場合には、この地元漁船以外の利用漁船の数が第三種漁港の基準に満たないという現状でございます。それで、たまたまこの港につきましては、現在外港の整備を行っておりまして、それが六十一年度で完成をするという見込みになっております。これができますと、よその船のこの港を利用したいという御希望も当然ふえてくることが予想されますので、そういう事態になりますれば、当然第三種漁港の基準の適用上問題になっておりました点も解消するのではないかと考えられますので、その段階で見直すことができると考えております。
  117. 田中慶秋

    田中(慶)分科員 あの地区は、ちょうど海流も交差する地区でございまして、魚種といいますか資源が非常に豊富でありますから、そういう点では、漁港の整備を御協力をいただいてやっておりますけれども、また今の格上げの問題等についても前向きに検討していただきたいということを御要請を申し上げて、ちょうど私の質問時間が終わりましたので、終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  118. 佐藤観樹

    佐藤(観)主査代理 これにて田中慶秋君の質疑は終了いたしました。  次に、五十嵐広三君。
  119. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 きょうは陳情と激励みたいなものでありますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。  日ソ漁業交渉が二カ月半ほど中断している。このために、私は北海道なんですが、北海道の北転船、沖合底びき網、沿岸底刺し網など、操業不能ということで大変に憂慮すべき事態に陥っていることは御承知のとおりであります。関係の漁業者だけではなくて、非常にすそ野の広い関連の企業がいずれも深刻な状況に陥っているわけであります。そこで、この際、強力な漁業外交が望まれるということは言うまでもないのでありますが、まず、その交渉再開の見通しであるとか、あるいは早期妥結に向けての政府側のお考えについてお伺いをいたしたい。
  120. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 日ソ漁業委員会は御案内のとおり二月十四日から中断をいたしておりまして、ようやく今月の十七日からモスクワで協議が再槻をされることになりました。大変御心配をかけておりましたが、ようやく協議再開という運びになったわけでございます。  中断をいたします直前の時点での日ソ双方の対立点は、底刺し網でございますとか着底トロールでございますとか、着底漁具の使用についてソ連側が大変厳しい態度をとっておるということが妥結に至る一番の障害でございました。再開後の協議におきましては、まずこのソ連側の主張をいかにして突破するかが再重要の課題であると認識をいたしております。どうもソ連代表団の発言を聞いておりますと、この着底漁具の問題につきましては、ソ連側としても資源保護の立場から並み並みならぬ決意を持ってこの問題を提起しておるように見受けられますので、交渉の前途については容易ならざるものがあると認識をいたしておりますが、我が国の漁業者の中でソ連水域に依存している皆様方は大体この着底漁具をお使いになっておられますので、殊に死活にかかわる問題として、この点を最重要課題と心得て局面の打開に当たるつもりでおります。
  121. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 一応三月十七日に再開の見通しがたったということは、ほっとしたことには間違いないのでありますが、しかし、とにかく三月十七日ですから遅いという感じがしますね。事実上一体どういうことになるんだろうかということで、御案内のように腹に卵の入っているうちでなければいかぬわけですから、そういうことからいうと非常に苦慮している中で再開されるということになろうと思うのです。したがって、やはり再開後早期に妥結することが絶対に必要なことだと思われるわけでありますが、顔ぶれは以前の顔ぶれがそのままということになりますか。
  122. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  ソ連側の主席代表は、従来と同様、ソ連漁業省漁労局長のグリコリエフであります。こちら側も前回同様、私どもの海洋漁業部長をしております京谷君にやってもらうことになります。
  123. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 短期間に決着をつけなければいかぬという点からいうと、従前のメンバーでそういう状況になれば一番好ましいことでありますが、場合によっては、事柄の重要性からいって大臣等の出馬もあるのかないのか、あるいは御決意だとか——しかしそれは見通しのない中で軽々と動くわけにはいかぬわけでありましょうが、さりとてここはとにかくせっぱ詰まったところですから、大臣、いかがですか。
  124. 羽田孜

    羽田国務大臣 御案内のとおり、また先ほどから御答弁申し上げますとおり、ともかく一月から今日までずっと漁ができないという中で、これが余りおくれますと、スケトウを原料としたかまぼこですとかその他の製品の需要期を逸してしまうということで、私どもとしましても、被害を少しでも食いとめなければいけない、そういうことで、一日も早い妥結をしなければいけないというのは私たちの本当に率直な気持ちであり、漁民の皆さんや加工業の皆さん方の今の状態というものについて本当に私たちも憂慮いたしております。その意味で、私が出かけることによって打開されるというものであるならば、その気持ちというのは実は十分あります。しかし、もう先生はよく御存じのとおり、この漁業交渉というのは日ソ地先沖合漁業協定、これに基づきまして漁業委員会で実務者レベルでずっと話し合いをしてくるという長い習慣が実はございます。そういうことで、私どもとして本当に今私が行くことによって打開ができるんだというものであればいいのですけれども、そういう状態の中に今あるものですから、私としてもその気持ちは常に持ちながら、ソ連邦の真意が一体どこにあるのか十分検討しながら、これから交渉に当たらしていきたいというふうに考えております。
  125. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 ぜひひとつ、場合によっては乗り込む、まあ行って空戻りも大変だということには違いないことだし、あるいは後に悔いを残すような決め方はこれまた絶対にいかぬことにもなるわけですから、そこら辺はわかるわけでありますものの、しかし、事柄の重要性からいって、場合によってはひとつぜひ乗り出して、早期解決を図ってほしいと強く要望しておきたいと思います。  そこで、北海道のいわゆる水産都市と言われるところを中心にどこも大変な状況になっているわけでありますが、この前二月の二十四日からですか、水産庁の水産加工対策室の森指導係長さんだと思いますが、あるいは道の水産部担当者なんかも一緒に、稚内で前処理工場だとかあるいはすり身工場なんかを調査をなさってこられたようであります。そういう現地の状況に立っていろいろ対策を講じておられるんじゃないかと思いますが、これらにつきまして御説明を賜りたいと思います。
  126. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 現在のところ、私どもは関係の地方公共団体あるいは信漁連等の金融機関、そういうところに御相談をいたしまして、当面の関係者の金繰りの問題はつなぎ融資で対応をしていただくようにお願いをして、そういう方向で少なくとも二月までのところは処理されてつながってきておるというふうに認識をいたしております。これから先の話につきましては、十七日から再開される協議を可及的速やかに決着をつけるということで臨む、そういう考え方でおります。
  127. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 殊に、僕らがいつも見ているのは稚内なんですが、ここも例えばこの間加工屋のお話なんかが非常に強くあったのですが、平均操業率で今北海道全体でいうと三七%ぐらい、稚内は一八%ぐらいというのですね。全道で約二百ぐらいの加工工場があって約四万人ぐらいの女工さんらが働いているということなんですが、そういう労働市場の悪化というものは大変な状況に実はなっているわけです。それだけでなくて、自動車運送業だとか、あるいは木箱製造業であるとか、あるいは漁網の製造であるとか、包装資材であるとか、船舶関連のいろいろな企業だとか、あるいは冷凍倉庫だとか燃油販売だとか、実に幅の広い影響が深刻化しているわけです。いろいろ市長さん方も陳情に来るのでありますが、町ぐるみ地域経済が完全に参っているというような状況でありますから、これらの対策についてはひとつぜひ、もちろん道あたりと協議しながらということだと思いますが、万全を期してもらいたいと思うのであります。  そこで、水産加工経営改善強化資金の償還延期などについてやはりこの間要望が来ておりましたけれども、この辺なんかも御検討は一応いただいておりますかな。あるいは今お手元になければ今後の課題で結構だと思います。
  128. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 特定の資金種類について個別具体的にどうこうということは、私どもと金融機関との関係でなかなか難しいところがございますが、一般的に既貸付金の償還条件を緩和することによって関係者の資金繰り上の窮迫を緩和していただくように、関係の金融機関には協力を要請をしておるところでございます。
  129. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 まあ何といったって十七日からの再開で早期妥結することが一番望ましいことなんでありますが、おたくの方で、今のところ北海道あたりで影響を受けている影響額といいますか、損失額といいますか、この間何かにちょっと出ておったようではありますが、大体推定している数字なんかはございますか。
  130. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 これは残念ながら大変難しいところがございまして、なぜ難しいかということを若干言いわけをさせていただきますと、例えば北海道の洋底船の中で、オホーツクを別にいたしますと、太平洋側でも日本海海域側でも全く操業がストップしてしまったという船はそう多くはないわけでございます。多少はおやりになっている。ただ、実際問題として、あるいは沿岸漁業との競合上余り自由に操業できないとか、あるいは日本海の場合ですと漁場の形成が悪くて思うようにいかなかった、そうすると、それが当たり前に操業していたときに比べてどの程度落ち込んでおるのであるかということが、日本の二百海里内で操業しておりますときには、外国の二百海里で操業するときのようにきちんとその漁獲報告をその都度出しておるわけでもございませんので、なかなかしかとわかりにくい。それから羅臼だとか噴火湾周辺だとか、あのあたりでは沿岸漁業のスケソウダラの漁獲量というのはことしは非常によかったというようなことがございまして、洋底船などの漁獲の減少がそのままストレートに加工業者の原料減に直結しているわけではない。それがどの程度であるかということもまたなかなかあれでございますので、具体的に金額として何億というふうにはちょっと申し上げにくい。ただ、事態は深刻であるということは重々認識をしておるつもりでございます。
  131. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 ぜひひとつ十分に御検討をいただいて万全を期してほしい、こういうぐあいに思います。この間、我が党の武藤副委員長がソ連共産党大会に出席の折にも、石橋委員長の書簡を持っていくなど、社会党としても全面的に早期妥結の努力をいたしているところでありますので、大変なことだとは思いますが、どうかひとつ、また佐野長官、特に頑張っていただきたい、こういうぐあいに思う次第であります。  そこで、別の問題になりますが、例のポスト三期のことなんであります。これはきょうは特に地元の陳情のポイントだけ申し上げておきたいと思うのです。  北海道が全体として大変減反率が大きいということは改めて言うまでもないわけでありますが、現在都府県の転作率が一八・四%、北海道の転作率が四四・一%、これは昭和六十一年見込みなんですが。特に北海道の中でも私らのいる旭川周辺、上川なんでありますが、上川の転作率は四九・八%、ちょうど半分というところなんですね。上川管内の水田面積といいましても、北海道全体の約四分の一、二五・二%に及んでおりまして、北海道稲作の中核地帯とも言えるところなんですが、これが半分の転作率です。この上、ポスト三期でまた大幅な転作の強化ということになってまいりますと、それはもう実際どうにもならぬ。それじゃ何をつくるかといったって、現状はもうよく御承知のとおりつくるものがないということでありまして、ポスト三期に関してはこういう傾斜配分についてぜひ再検討してほしい。これは、半分を超えて、しかもまだこの地域に率が割り増しで強化されるというようなことは、地元の農民としては全くどうにもならぬ。最近、農民の集会なんかありますと、そういう点では大変に不満が噴き上がってきているわけです。もっと公平にやってほしい、そのことをこの機会に強くお願いしておきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  132. 羽田孜

    羽田国務大臣 水田利用再編対策につきましては、全国の農業者の皆様方の理解そして御協力をいただきながら今日まで進めてまいったところであります。私どもといたしましても、これの配分に当たりましては、農業生産の地域の特性ですとか産米の品質でございますとか、そういったものを配慮し、また特定作物への転作の可能性ですとか、こんなものを総合して判断してまいったということであります。  そして、ポスト三期についてどうするのかというあれでございますけれども、私どもこの間、転作を進めると同時に米の消費拡大ということも進めてまいりました。しかし、残念ながら現在、需要というものは少しずつでありますけれどもまだ減っておるということでもありますし、これからもまたこの水田利用再編対策というものについて将来とも続けなければならないというふうに考えております。  こういうものを検討する中にありまして、今先生から御指摘がありました問題、公平に平等にというお話、道知事さんからも、あるいは道議会の皆さん、また農業団体の皆様方、こういった方々からも非常に強い御要請があることは、実は私自身もお受けしておるところであります。いずれにいたしましても、今これは農政審議会の中でも御議論いただいておりますし、また、私ども農林省といたしましても、農林水産省としての最重点課題の一つとしてこの秋に向けて検討を進めておるということでございます。私どもいろいろな角度から十分検討していきたいと考えております。
  133. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 ある程度の、低い率程度の段階ならともかく、やや半分なんというところでさらに傾斜してこれに加わるということではどうにもならぬということは、大臣もよくお感じいただけるのじゃないかと思うのですね。そういう点では、そういう傾斜配分をさらに強化することについては、検討課題といいますか、検討が必要だというようなお感じはないですか。
  134. 羽田孜

    羽田国務大臣 今の先生の御意見、そういったものも十分お聞きしながら私ども結論を出していきたいと考えます。今私の立場でこれをどうこういたしますというコメントをすることはまだ適切じゃないと考えます。
  135. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 ぜひひとつ御配慮いただきたい、このように思います。  それから、最後に、これは大臣から御決意だけ承れば結構なんですが、この前、予算修正にかかわる与野党の書記長・幹事長会談で一定の合意ができたわけであります。その中の一項で、これは従前ないことで僕は非常によかったなと思うのでありますが、与野党ともそのことに非常に強く関心を持っていたということがこれで確かめられた感じで非常に心強く思うのです。つまりこういう一項があるわけです。「森林、林業の健全な育成と国有林野事業の経営改善方策については、財源措置を含め、昭和六十一年中に結論を得るよう最善をつくす。」こういうぐあいにあるのですね。恐らく大臣としても同じ心境ではないかと思うのですが、せっかくこういう合意ができたのでありますから、この際、大臣に積極的な政策立案を願い、ここで明記されているように財源措置を含めて積極的な対応をしてほしい、こういうぐあいに思うのです。この際、その決意とそれからそれに対するお考えでもございましたらいただきたいと思います。
  136. 羽田孜

    羽田国務大臣 この問題につきましては、ただいま林政審で国有林の経営改善につきましていろいろと御論議をいただいておるところであります。そして、先日の幹事長・書記長会談におきましてこの問題につきまして今お話がありましたような話し合いがあったということは、私どもも承知をいたしております。いずれにしましても、国有林の現状というのはこのまま放置すれば非常に問題があるということでございますから、経営改善に対して、自主的な努力というものを中心にしながらも幅広く、今先生から御指摘のあった点についても私どもも検討してまいりたいと考えております。
  137. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 どうもありがとうございました。
  138. 佐藤観樹

    佐藤(観)主査代理 これにて五十嵐広三君の質疑は終了いたしました。  午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十八分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  139. 柿澤弘治

    柿澤主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。宮崎角治君。
  140. 宮崎角治

    ○宮崎(角)分科員 長崎一区選出の公明党の宮崎でございます。  今回、分科会での質問の時間を与えていただきまして、私は百一国会よりずっとシリーズ的に今回まで、長崎県の水産関係、漁業振興問題について取り上げ、大きな問題を抱えております長崎県周辺海域における外国漁船の取り締まり強化及び国内漁船の安全操業の確保について、毎回水産庁、海上保安庁には私の質問に御答弁を煩わしておりますが、ひしひしと死活問題として迫ってまいっております外国漁船による侵犯操業等の取り締まり強化とともに、国内漁船の安全操業の確保を図るために、長崎、佐世保両海上保安部に三十メートル型高速巡視艇の常駐配備といいますか、さらに、水産庁監視船の長崎県周辺海域への増隻配備とその充実を図るために、水産行政に関する要望というのは日増しに漁民の大きなうねりとなってきていることは、もう水産庁並びに海上保安庁におきましては御認識のことだと思うわけであります。  表題に申し上げましたこういった本県の周辺海域における外国漁船のいわゆる領海侵犯等々と相まって、どれくらい事案を認識されているのか、またその検挙については今日までどういった歩みで来られたのか。さらに、私はこのデータをもとにして、海上保安庁の皆様方の御労苦と相まって、安全操業への大きな一里塚としていきたいがために、今回また、本日御質問をするわけであります。まず、その点から答弁を求める次第であります。
  141. 垂水正大

    ○垂水説明員 長崎県周辺海域におきます外国漁船の取り締まりについてでございますが、海上保安庁といたしましては、違反のおそれのある海域、虞犯海域と称しておるのですが、そういうところに常時巡視船艇を配備いたしますとともに、状況に応じまして航空機を哨戒させましてその違反防止に努めますほか、特に悪質な違反外国漁船に対しましては検挙という方針で現在まで行っているわけでございます。  この結果、特に韓国漁船でございますが、昭和五十二年の海洋二法施行以来、本年二月末までの累計でございますが、長崎県周辺の領海内操業違反ということで七十一隻、また対馬周辺にございます漁業専管水域内での違反操業ということで百三十六隻を検挙しております。  また一部、長崎県の男女群島及び五島列島周辺海域でございますが、ここで台湾漁船の、特にサンゴを中心とした密漁がございまして、この関係で、領海内操業違反ということでやはりこれも本年二月末までの累計でございますが、五十一隻を検挙しております。  我々としましても、今後ともこのような外国漁船の違反に対する監視、取り締まりにつきましては、万全を期すように努力してまいりたいと考えております。
  142. 宮崎角治

    ○宮崎(角)分科員 今トータルで二百五十八隻になるのかと思いますが、私の方も、これはこの管区の海上保安本部調べになりますか、韓国漁船の日本専管水域侵犯状況で、五十八年一年間を通しまして百九十六隻というのがあろうかと思います。このうち三十隻が検挙ということになりますと一五・三%。昭和五十九年でいきますと百七十一隻、それで検挙が三十六隻、二一・一%。六十年は二百四十九隻の検挙三十二隻で一二・九%、ことしに入って五十七隻が現認されて四隻が検挙、七・〇%ということに相なるわけであります。年を追うに従って多くなっているといいますか、あるいは月別に見てもかなりいろいろな変動があるわけであります。  今御答弁をいただきました中で、常駐配備している、また空からとかそういったことで違反防止に努めていらっしゃるその姿に対しては敬意を表するわけでありますが、今日まで、五十二年から二百五十八隻という数字を今挙げられたわけでありますが、今私が申し上げました皆さん方のこの検挙については、なぜ一割ぐらいしか検挙ができないか。非常にスローモーというのか、あるいはそういった違反船団に対するこちら側の対応が不備というのか、あるいは向こうがスピードアップして追い越し切らないというのか、さらには旗国主義といった原則にのっとった隘路があるのか。この点について、長崎県周辺、対馬周辺の人たちの死活問題となって、無人島になるのではないか、もっと極端に言うと我々の生活はどうなっていくのか、そういったことが国に対する強い要望となって噴出しているのじゃないかと思いますがゆえに、今、五十八年から六十一年の先々月までのデータを申し上げたわけでありますが、この辺についての解明をひとつしかと承っておきたいのであります。
  143. 垂水正大

    ○垂水説明員 うちの巡視船艇等で、特に漁業専管水域で韓国漁船を相当の数確認しておるわけでございますが、基本的に検挙に結びつくものは、相当悪質な違反を行って、それも違反状態を現認できているものについて検挙に結びつくということでございます。確認できたものについては、巡視船艇等を派遣しまして立入検査等を行うわけでございますが、最終的に悪質な違反ということで検挙に結びついた数は先ほどのような少ない数になるわけですが、その他のものにつきましては誓約書をとったり、それから警告退去と我々称しておりますけれども、水域外に追い出すというような処置を講じております。
  144. 宮崎角治

    ○宮崎(角)分科員 皆さん方の出先といいますか、第七管区の海上保安本部の厳原海上保安部というのですか、ここには陸の職員の方を含めまして九十五名の方々が今、日夜こういった方面に頑張っていらっしゃるわけです。私も先般こちらの方を御訪問いたしましたときに、ビデオを見て非常に感動いたしました。向こうの船団をいわゆる圏外に出すために、あるいはまた違反防止の大きな一つの抑止策として乗組員の方々の御労苦というものがビデオを通して私はわかったわけであります。こちらは三十メートル近い三十ノットの船、向こうは漁船である。しかし、逃走は物すごく素早く逃げていく。波高き、その波に合わせて接舷をして乗り込んでいって停船を命じて、そして船長を逮捕、検挙というこの御労苦に対して、この席をかりて私は敬意を表し、御労苦と働きに対する敬服をしてやまないのであります。御労苦に対して、絶賛に値することを申し上げておきたいと思うわけであります。  そういった中で、現地と相まって、ひとつ課長、今後の対応として、この辺の抑止策、あるいは外交ルートに乗せていかなければならないのか、あるいは二十年前からもう既に日韓漁業協定ということがあって、年に一回のそういった連絡協議会等々も行われているやに仄聞するわけでありますが、そういうものと相まって今後の対応策についてもう一度定かにあなたの御答弁を求めたいのであります。
  145. 垂水正大

    ○垂水説明員 先ほどもお話ししましたけれども、今後の韓国漁船の違反取り締まりにつきましては、単なる厳原にございます巡視船艇だけではございませんで、周辺の船艇等の派遣も含めまして万全な体制を講じて対処したいと考えております。  また、外交ルートの関係でございますけれども、我々としてもこういう韓国漁船の違反船舶につきましては韓国へも連絡し、国内的に処分できるものは処分してもらうということで、再発防止といいますか、そういうものの防止も韓国側へさらに今後とも働きかけをしたいと考えております。
  146. 宮崎角治

    ○宮崎(角)分科員 大臣、今私の質問に対する答弁がございましたが、いろいろと漁業協定が存続しておりますし、また恒例のこういった外交ルートと相まって、大臣としての今後の対応策についての御見解、御所見をひとつ承っておきたいと思います。
  147. 羽田孜

    羽田国務大臣 先ほど来お話があったわけでありますけれども、日韓の漁業関係につきましては、近年、韓国漁業の進展に伴いまして韓国漁船の不法操業が我が国の漁業者との間にトラブルを起こしておる現実がございます。そういう問題につきましては、農林水産省としまして、海上保安庁と連絡をとりながら韓国にその都度善処方を厳しく要請しておるところであります。そういうものが、韓国側の方でも割合とこの問題につきましてはまじめに受けとめてくれまして、ある程度の成果は上がっておると思います。  しかし、つい先ごろ私のところにも、先生の地元の皆さんだと思いますけれども、漁民の皆さん方がお見えになりまして、実際に現実にまだトラブルがあるんだという話で、もう本当に我々としてはこれからの操業というものが続けられるんだろうか、ここの漁業は大丈夫なんだろうかという現実の悩みというものを訴えられております。  そういうことで、私どもはそういった現実というものを踏まえまして、円滑な日韓の漁業関係というものを構築するために、これからもその折々に韓国に対して申し入れすると同時に、これからも日韓の話し合いの場がありますからここできちんと申し上げ、双方のいい関係をつくり上げていくために努力していきたいというふうに考えております。
  148. 宮崎角治

    ○宮崎(角)分科員 ぜひひとつ実を上げられるように、大臣のただいまの御答弁に期待をしておきたいと思うわけであります。  次に申し上げたいことは、大臣の許可制になっておる問題かと思うわけでありますが、もう既に今を去る四十年前からの問題だと思うわけでありますが、沿岸漁業者の育成につきまして、私はここに表を持ってきたわけでありますけれども、ちょっとびっくりするような、私も初めてこういったところの実態というのを見たわけであります。  例えば、海区を決めるわけですね。A海区という一つの名称がございます。これは対馬東部の海域の一覧でございますが、操業期間が六十一年十月一日から六十二年三月三十一日までとしてございます。このA地区、A区域と言った方がいいのですか、「長崎県上県群三島燈台を通る経線と東経百三十度の線との両線間における海域のうち、同燈台から島根県簸川群日御碕燈台に至る線以南の海域。」がA海区というふうになっております。  私はこのA海域に限って、三県にまたがる非常に大きな問題かと思いますがゆえにお尋ねするわけでありますが、このA海域の設定についてどういったプロセス、経緯があるのか、また、今日までのプロセスの中で、省としてあるいは大臣のお耳とか御賢察の中で問題点として浮上してきたのが何があるのか、その辺についてひとつお尋ねをしておきたいと思うわけであります。
  149. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 御指摘のA区域、対馬の東部の海域ですが、この海域の沖合底びき網漁業の操業をめぐりまして対馬の沿岸漁業者の間から、殊にこの水域で操業しております沖合底びき網漁業の漁船の違反操業に関する苦情がいろいろと提起されております。これは私自身直接御陳情も承りましたし、それから大臣のところまで行ったくらいですからよく事態は承知をいたしております。  それで、この水域につきましては、そういう心配が元来ございますので、夜間操業の禁止でございますとか、隻数を二十六隻に制限するとか、そういうことをやっておるわけでございますが、沿岸漁業者の皆様方の言い分ですと、ルールを守ってやってくれればそれはそれとして、現実にA区域からさらに沿岸側へ接近してきていろいろなことをやられるので困るという苦情を述べ立てておられました。私どもといたしましても、九州の漁業調整事務所を督励いたしまして、厳正な取り締まりをしなければならないと思って、九州の漁業調整事務所に対してはそのように指示をいたしておるところでございます。
  150. 宮崎角治

    ○宮崎(角)分科員 これはどうなんですか、福岡県と山口県のいわゆる漁船団が十三統ですか、そういった底びき網を許可しているのでしょう。違いますか。ここは全国有数のアマダイとかレンコダイとかという大変な漁場なんですね。だから農水省として資源確保のために同海域での夜間操業は禁止しているのでしょう。夜間操業は禁止しているにもかかわらず、そういったいわゆる密漁的な違反、ルールに反したところの行為が行われているがゆえにまた大変なトラブルというものも出てきているというわけですから、これはどうなんですか、今後撤廃の方向に行くのでしょうか。それともこういったのは守るためにあるのか、守らせるためにあるのですか。結局設定しておって守られぬから、じゃ、どう対応していくのかという、こういった問題に帰するわけでありますが、この辺のところをもう少しつまびらかに答弁してもらわないと、ちょっと納得がいかない問題でございます。いわば条件つきで底びき網がなされているわけでございますから。この点についてもう少し的確な答弁をいただきたいのでありますが、よろしく願います。
  151. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 この水域は、先ほど申し上げましたように二十六隻に隻数を制限いたしております。だから十三カ統。現在この水域で操業することを認められておりますのは、山口県の船が二十四隻、福岡県の船が二隻ということでございます。  それから、私どもといたしましては、このA区域につきましては隻数制限を守らせ、夜間操業の禁止を遵守していただいて、かつ区域外にはみ出さないように操業していただくというつもりでございますので、そういうことで違反のないように厳正に取り締まりを行うということで対処をしていきたいと考えております。
  152. 宮崎角治

    ○宮崎(角)分科員 ひとつ成果が上がるような行政指導をしてもらいたいと思いますね。例えば常駐とか、四六時中ちゃんと巡視していると言うけれども、そこの合間を縫って韓国船、国内船というものの密漁が出てきているという現実を直視したときに、非常にまだなまぬるい行政じゃないかと思いますので、お願いいたします。  もう時間が六分くらいしかないので、最後に私は新しい沿岸漁業の構造改善事業の推進についてお尋ねしたいのですが、今日までずっと国の全国的な立場の中で水産県長崎の大きな方向を維持するために鋭意努力していただいている皆様方に敬意を表するわけでありますが、その地域を指定し、そして今まで八年の期間というのが五年間に短縮されたり、あるいは非常に短縮されてきましたために、さらにそれが終わったら既にもう仕事ができない、いわゆる構改の事業というものはもう上がったりなんだということになってきている。極端に言いますと、非常に短くして、仕事は相当あるのにもう後ができないというようなていたらくになっているのじゃないかと思いますが、その地域及び広域沿岸漁業の構造改善事業の補足整備事業を新たに創設していくというおつもりがあるのかどうなのか。また、実施回数の増加についてどのようにお考えなのか。また、関連地域振興事業の実施期間の延長についても冒頭に申し上げましたような問題があろうかと思うわけであります。  私の県下では、今のA海区にまつわる上対馬、対馬方面あるいは五島列島方面、こういった沿岸の問題でありますが、もう既に五十八年では六地区が終了し、あるいはまた今回は五地区が終了しまして、六十二年度から何も事業ができぬような問題になってきている。とにかく漁業県の非常に泣きどころというか死活問題になってきている問題がかなり多うございまして、新しい創設への御見解なり御抱負なり方途について答弁を求める次第でございます。
  153. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  新沿構につきましては五十四年度から実施をしているところでございますが、完了した地区数というのは五十四年の指定地区のうち五十四年即着の地区だけが現在完了地区になっているわけでございまして、そういう意味では、完了地区というのは現在のところまだ全体から見ればごく少数であるという段階でございます。そういう事態でございますので、この段階で新たな補足整備事業を実施するということはどうも難しいのではないかなというふうに思っておりますが、ただ新沿構につきましては今後順次完了地区が出てくるわけでございますので、そのことと、漁業者のニーズも変化をしてきているそういう事態を勘案いたしまして、今後の沿岸漁業の構造改善対策のあり方について検討をさしていただきたいというふうに考えておる次第でございます。
  154. 宮崎角治

    ○宮崎(角)分科員 大臣の御答弁とかまた長官の御答弁にありましたように、そのプランについては御説明のとおりに理解するわけでありますが、毎回こうして御答弁を煩わしております大変なつらい気持ちもあるわけでございます。現実現実でありますので、どうかひとつ大臣、今のような長官の答弁とかあるいは漁業振興の問題とかあるいは日韓、国内の問題とか、そういった死活問題の配慮について最後に大臣の御決意を聞いて終わりたいと思います。
  155. 羽田孜

    羽田国務大臣 日韓問題につきましては、先ほど申し上げましたようにきちんとしたルールに基づいてお互いが操業できるような体制、これをつくり上げるために私どももさらに努力をしてまいりたいと考えております。  なお、今の新沿構の問題あるいはこれからのつくり育てる栽培漁業、こういった問題につきましても、ともかく二百海里問題というのがここまで定着し、各国がそれぞれの専管水域というもの、主権を主張するという今日の状態でございますから、そういう中で我が国の漁業というのはどうあるべきかということを私たちも十分頭に置きながら、みずからの二百海里水域内の魚の量といいますか、それをふやすための育てる栽培漁業、こういったものを懸命にやっていかなければならないというふうに思っております。そんな意味で、マリノベーションですとかあるいはフォーラム21というような施策も今度の予算の中で実はあらわしておるわけでございまして、厳しい予算の中ではありますけれども、そういう事態というものを私たち頭に置きながら今から対応していきたいというふうに考えております。
  156. 宮崎角治

    ○宮崎(角)分科員 大変どうもありがとうございました。終わります。
  157. 柿澤弘治

    柿澤主査代理 これにて宮崎角治君の質疑は終了いたしました。  次に、上原康助君。
  158. 上原康助

    上原分科員 大変限られた時間ですので、逐次具体的なことについてお尋ねをさせていただきます。  最初に羽田農林水産大臣に、最近の我が国の農業をめぐる課題というのは大変厳しい環境にあり、特に日米、日欧間の貿易摩擦等々も重なって、農畜産物の自由化問題、そういう面でいろいろ難問を抱えているわけです。そういう中でも農水省としてもいろいろな御努力をしていることに敬意は表しますが、特に沖縄農業についてどういう御認識を持たれ、また第二次振計、そういう過程における農業の位置づけというものをどうお考えになっておるか、まず所信をお伺いしたいと思います。
  159. 羽田孜

    羽田国務大臣 私どもは、沖縄県を我が国唯一の亜熱帯性気候地帯という位置づけをいたしまして、その特性を十分に生かした農業の発展というものが必要であろうということで、今日までもいろいろなその手だてをしてまいったところであります。  そういう中で、例えば農用地及び農業用水の確保、これはたしか地下にもダムをつくるというようなことで進めましたり、あるいはサトウキビ、パイナップルにしましてもまだ基盤が非常に脆弱であるというようなことから、確かに復帰が遅かったということがありまして全体の事業もおくれておるところへもってきまして、サトウキビなんかも大変おくれているということがございまして、今日までその基盤整備については相当力を入れて進めてまいったと私は考えております。  そのほか、豊かな太陽エネルギーを有効に利用した野菜、花卉の生産拡大を進める、そしてこれの輸送等についても順調に行えるような手だてについてもいろいろと御相談に応じてきたところであり、またそれなりに相当の成果を上げておるというふうに、私自身現地を訪れ、現場の皆さん方とお話し合いをしながらそのことを感じておりますし、さらにこれからもそういうものを進めていかなければいけないと思っております。加えて肉用牛、これもたしか草地開発ですか、それをしまして進めておりますけれども、こういった面につきましても、やはりこれからも沖縄の農業の中の中核的な存在になっていくであろうと考えております。
  160. 上原康助

    上原分科員 今総論的といいますか総体的にお述べになりましたが、我々も位置づけとしては大体そういう課題を重点的に今日まで努力してきているわけです。  そこで、今農業基盤整備の問題等に触れられたわけですが、確かに復帰後一時期は第一次振計等々で第二次産業中心型の振興開発を目指した面もあったわけです。しかし、実際問題やってみて、海洋博以降、やはり沖縄の亜熱帯性を活用したところの第一次産業を着実に充実していかなければいかぬということで、一次振計後半からは農業振興というものが非常に重点的に取り上げられて、今大臣指摘のような方向にきているわけですね。  これは数字的に見ましても、例えば昭和五十五年を一〇〇として、五十八年には農業生産指数でいいますと沖縄が一一一・七に対して全国は一〇四・三と大きく上回っているのですね、この比重性という面では。もちろん細かいところではいろいろなばらつきもありますけれども、そういう面とか、あるいは五十八年の農業生産額にしても約一千百億になっておって、復帰直後の四十八年の二・五倍くらいに伸びてきているわけで、いかに農水産業分野が重要であるかということは、こういうトレンドを見ても、動向性を見ても明らかだと私は思うのです。  そういうことで、今おっしゃいましたサトウキビそれから畜産、野菜、花卉園芸等々がウエートとしては高いわけで、同時にまたその中で地域特産とも言われているパイナップルの問題等も引き続き重点的に位置づけてやっていかれなければいかぬと思うのですね。これに対してどうお考えなのか。  いま一つは、農業振興の面で最も重要なことは、品種改良とかいろいろありますけれども、かんがい排水施設の整備ということなんですね。特に干ばつが周期的に来るということと亜熱帯地域であるというようなことからしますと、農業用水の確保は極めて重要なんですが、これも農水省やあるいは開発庁等の御協力、御配慮でいろいろ進められてはいるのですが、現在のところは八重山の石垣の宮良川地域と名蔵ですね。それから最近になって羽地大川地区と宮古の皆福ダム、地下ダムが国営かんがい排水事業として進められてきているわけです。そのほかに南部地域も農業生産地域としては非常に高い水準を占めている。沖縄本島では南部が一で、北部そして中部、宮古、八重山というふうに地域的にはなっているわけで、このことについては今後どういうふうに計画を進められようとするのか、もう少し具体的にお聞かせをいただきたいと思います。
  161. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 先にパイナップルの問題につきましてお答え申し上げます。  パイナップルの産業が沖縄で地域産業として大変大事な部門であることは申すまでもないことでございまして、生産面につきましては、今お話しになっております基盤整備それから特に省力機械施設の導入、この辺を中心にしてコストの低減をいたしますとともに、加工工場の近代化、企業の合理化を進めていく、こういうようなことで対応してまいりたい。またパイナップル缶詰につきましては、一種の需給の調整ということで大変大事でございますので、これにつきましても今後とも十分注意しながら進めてまいりたい、かように考えております。  なお、沖縄のパイナップル産業につきましては、今般施行されました特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法の指定業種としまして、経営安定のための低利資金の融通、税制上の優遇、これらの措置の対象にすることにいたしておるところでございます。
  162. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 沖縄における農業基盤整備につきましては、御指摘のように全国的な水準から見て大変おくれているわけでございまして、五十十八年三月末時点で全国的な整備率が三六%に対して沖縄は一七%と、半分以下の状態でございます。既に先生の御指摘もございましたように、農業振興を図るためには水源の確保それから圃場の整備等、基盤整備が何よりも必要でございます。したがって、従来からこの沖縄と全国とのギャップを是正するために、採択基準、補助率それから予算の確保についても特別の優遇措置を私どもとしても講じてまいっている所存でございます。  また、六十一年度からは特に国営の特別会計事業のやり方を改善いたしましてさらに事業の推進を図ることとしております。六十一年度予算案におきましては、農業基盤整備費全体が対前年比九八・八%でございますが、沖縄におきましては対前年比一〇二・八%、総額二百三十八億九千万円と、重点的な予算確保に努めております。今後とも沖縄農業の振興を図るため、水資源の確保、農地整備等を重点に各種の基盤整備事業を精力的に進めてまいりたい、かように考えている次第でございます。
  163. 上原康助

    上原分科員 パインについては後でもう少し具体的に要望を含めてお尋ねいたしますが、まず基盤整備の件で、確かにこの農業関係予算が全国のパーセンテージよりも高いということは私も否定しません。その点では関係者の皆さんの御努力を多といたしますし、また引き続きこれは継続をしていただかなければいかぬと思う問題なんですね。ようやくUターン現象、若い青年諸君もやはり沖縄で農業に従事をして、この農業生活基盤を樹立していこうという意欲が相当出てきているわけですね。私は、これは離島を含めて大変大事なことだと思うのですね。それはなぜかというと、やはり農耕地の確保にしても、基盤整備ができて現代の生活リズムに、まだまだ達しないけれども努力をすればそこに行けるという目標が立てられつつあるからこういう方向が出てきているわけで、それをより向上させていくためには、やはり今の基盤整備であるとかあるいは農業構造改善関係事業というものは積極的に進めていかなければいかぬわけですね。その点はひとつ大臣も各関係局長も職員の皆さんも十分な御配慮を賜りたいと思います。  これについてもお考えを聞きたいわけですが、農業用水確保の面でさっき私が言いましたように、確かに八重山地域というのは、宮良川地区とか名蔵地域というのは川もあるし、お金をかければダムもできるし、いろいろな圃場整備を含めて地域としては利便がいいわけですね。宮古の皆福ダムもせっかくできてもまだ実用化されていない。これもいろいろ事情はあると思うのですが、こういう面をもっと促進をしてもらいたい。同時に、今回からでしたか、予算化された羽地大川地区の問題とか、さっき指摘をしました南部地域の農業用水確保の計画というのはどういうふうにしていくのか、こういう面については御答弁ありませんでしたのでお考えを聞いておきたいと思いますし、これはもちろん沖縄県なり関係団体からもそれなりのまた提案なりいろいろ要望がないと進まない点もあろうかと思うのですが、農水省の考えを聞かしておいていただきたいと思います。
  164. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 特に水源確保が沖縄農業の発展のための決め手になるというふうに私ども認識いたしまして、現在事業実施地区の国営土地改良事業地区といたしましては、宮良川地区、名蔵川地区それから羽地大川地区、それぞれ工期は、宮良川地区については六十五年まで、名蔵川地区については六十六年それから羽地大川地区については六十九年を一応予定しております。  それから、全体実施設計地区といたしましては宮古地区でございまして、これは五十九年に全体設計にかかりました。工期は今後もう少し細部、調査、設計を詰めませんとまだ判断できませんが、現在鋭意事業に取り組んでおるところでございます。  その他、調査地区といたしましては、今お話のございました沖縄本島南部でございますが、これは糸満市、具志頭村でございまして、受益面積千四百二十ヘクタール、畑地かんがいを目的といたしまして百億余の事業費を予定し、五十七年から調査にかかっておるわけでございます。その他西表東部地区でございますが、これについては竹富町で受益面積千百五十ヘクタール、事業目的としては用水改良と畑地かんがいでございまして、百四十億程度の事業費かと思います。現在五十八年から調査にかかっておる、かような次第でございます。特にこの宮古、それから沖縄本島南部につきましては、地下ダム方式によって事業を行うという非常にユニークな方法を考えておるわけでございます。
  165. 上原康助

    上原分科員 南部地域についても地下ダム方式で今調査検討中だということですが、将来それは事業化して開発しますね。
  166. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 現在調査中でございますけれども、おおむね調査に着手したところは事業化されているわけでございます。
  167. 上原康助

    上原分科員 ぜひそれは積極的に進めていただきますことを強く要望を申し上げておきたいと思います。  そこで、パイン問題についてお答えがあったわけですが、私は、この問題ではしばしば直接お願いもしてきましたし、また取り上げてきたつもりなんですが、円高・ドル安西とも重なって、重なるというか関連をして、また沖縄県産パインに大変大きな影響が出てきているわけですね。いろいろな事情についてはわからぬわけでもないわけですが、最近農水省から県農水部に指示あるいはアドバイスかと思うのですが、パイナップル缶詰の需給安定という指導通達というか、そういうものをお出しになった。六十一年度の県産缶詰は百万ケースの二割減の八十万ケースを目標としというようなことのようですが、その真意についてもう少し明らかにしていただきたいと思いますし、今のパインをめぐる状況についてどういう対処をしていかれようとしているのか。先ほどもお答えはあったのですが、もう少し全体的な面を明らかにしていただきたいし、その全体像の中に沖縄問題、沖縄のパインというものをどう位置づけておられるのか、お答えを願いたいと思います。
  168. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 パイナップル缶詰の需給の動向でございますが、現在、五十九年に至りますまで総体としての需要量は逐年減少してまいりまして、五十九年が大体二百三十五万ケースというところでございます。その中で最近、先生もお話がございました円高の影響もありまして冷凍パイン缶詰、冷凍パインを使用しました缶詰の生産量が若干ふえることもございまして、需要の減退、それから冷凍パイン缶詰の増加、こういうことでなかなか需給状況は厳しくなっておりますし、その関係で在庫についてもかなりふえる状況になってきております。  こういう中で、今ちょっと先生のお話の中に。さいました通達等の問題につきましては、こういう状況でございますので何らかの意味で需給の面で対応しなければいけない、一方、いわゆる輸入農産物の交渉の中でのパイナップル缶詰の取り扱い、こういう問題もございますので、今、今後の方針につきまして地元沖縄県及び関係の団体ともいろいろ相談をしている段階でございます。お話のございましたような通達を出して指導するというような段階にまではまだ来ておりませんけれども、いずれにいたしましても、こういう需要の低迷と、一方冷凍パイン缶詰の増加という中でどうやって国内生産を安定的に推移させていくか、また輸入についてもどういう方針で対応していくかということについて、今関係の方面とも協議をしながら、できるだけ早く今後の方針を立てまして、一緒になってこのパイナップル缶詰の生産の安定に取り組みたい、かように考えている段階でございます。
  169. 上原康助

    上原分科員 では、端的にお尋ねしますが、検討している、そうしますと、従来どおり沖縄のパインの生産を保護育成というかやっていく、あるいはまた国内消費についても優先的に取り扱っていきたい、百万ケース、五万トン生産目標という基本方針は変えていない、こういうお立場ですか。
  170. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 百万ケースという目標については従来どおり方針は同じでございます。ただ、最近の生産動向を見ますと、栽培農家数、栽培面積いずれも減少しておりまして、実際、五十九年の生産量は八十万ケースを少し上回るくらい、こういうような関係になっておりますので、こういう生産動向の中で今後の需給安定のためにどう対処していくか、こういうことについて今検討しているようなところでございます。
  171. 上原康助

    上原分科員 そこで、それは私も生産量がなかなか目標に至らないという面、百万ケースに至っていないという点はわかるわけですね。しかし、政府の従来の方針に変更があったかどうかが基本的な問題なんです。そうしますと、二〇%減というのは、八十万ケースをベースにした二〇%減なのか、従来の百万ケースを基準にした二〇%減なのか、どっちなんですか。
  172. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 百万ケースという目標につきましては変えておりません。ただ、先ほど申し上げましたような最近の需給動向を見て、当面の生産をどういうようなところに現実の指導をするかということについて今検討しているところでございます。
  173. 上原康助

    上原分科員 大体わかりました。ちょっとすっきりしないところもありますが、問題は、優先消費という面がなかなか徹底していないということと冷凍パインの取り扱いですね、大臣。これをどんどん関税も下げて、たしか三五%から七%下げたのだったかな、二八%に下げたわけでしょう。そういうこともあって、かつドル安というものが重なってどんどん今冷凍物がふえてきている。この抑制をどうするかということを考えないと、政府が沖縄パインの振興を図るその基本は変えていないと言っても、八重山においては沖縄製缶が倒産したわけでしょう、実際問題として。これも大きな問題なんですよ。そういうことも含めて政策的にあるいは行政的に配慮していくということでないと、この問題はまた大きな社会問題というか政治問題に発展する可能性があるわけで、大臣、ここいらについてはどうなんですか、どのように沖縄パインの保護育成というか、振興を図るという立場から、今局長お答えになったのですが、時間もありませんから、ぜひひとつ前向きの振興策を引き続きやっていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  174. 羽田孜

    羽田国務大臣 現実は今局長の方からも御答弁申し上げましたように八十万ケースになっております。ただ、私どもといたしましても、沖縄におきますところのパイナップル産業というのは、やはりそこに就業の機会も提供しておるという地域の一つの基幹的な産業であるというふうに理解をいたしております。そういう意味で、今先生からお話がありましたことなんかも含めまして、これからもてこ入れといいますか積極的にこういったものがきちんとしっかりとした体質を持つように指導をしたり、あるいは基盤整備等の推進も図っていきたい、かように考えております。
  175. 上原康助

    上原分科員 ぜひそのように特段の御配慮をいただきたいと思いますし、同時に、けさの新聞に出ているのですが、冒頭の大臣のお答えとも関連するのですが、また何か、中曽根首相の私的諮問機関、国際協調のための経済構造調整研究会というものに諮問をしたら、農産物は原則自由化ということを報告する。そうすると、パインも十三品目、IQ品目になっているから四月ごろ結論を出すのですか、原則自由化ということになると余計に問題が複雑化し、厳しくなると思うのです。そういうことに対しては農水省としては十分に対応していきますね。
  176. 羽田孜

    羽田国務大臣 今私ども、新聞に「農産物は原則自由化」という記事を、実はきょうまだ私は内容を全部読んでおりませんけれども、この記事が出ていることは承知いたしております。ただ、従来から農業というものは各国ともやはりいろいろな保護措置をとっているということからいって、原則自由化するという性質のものではないというふうに私自身も実は考えておるところでございます。しかも、この問題につきましては、今ガットでどう対応をするかということについても検討を始めておるところでありますので、そういう中で、私たちもやはり積極的に参加しながら、言うべきことはきちんと言っていくという姿勢をとり続けていきたいと思っております。
  177. 上原康助

    上原分科員 さすがニュー・ニューリーダーだけあって、ぜひその意欲で頑張っていただきたいと思います。  時間がもうなくなりましたので、もう少しパインの問題でも聞きたかったのですが、あとは、さっきもお答えもありましたが、同時にサトウキビの振興について、価格もなかなか上がらないで、サトウキビ振興の問題は今後とも力を入れてもらいたいということ、これも品質改良その他いろいろあります。あるいは省力化の問題と収穫期をどうするかということ。いま一つは、何といっても、先ほどもここで議論をしておられたのですが、沖縄の場合も四面海であるということと栽培漁業の振興寸最近、県段階でも県営栽培漁業センターができて、去年の十二月にはまた石垣市に国営栽培漁業センターもできたわけですが、今後のサトウキビ振興とこの栽培漁業の振興策について、ひとつ御見解を聞いておきたいと思います。
  178. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 先にサトウキビの問題についてお答え申し上げますが、これはやはり沖縄にとって耕地面積の三分の二を占める最大の基幹作物でございます。そういうこともございまして、その地域の条件に応じた生産振興ということでございますが、やはり基本になりますのは土地基盤整備、それから特に収穫作業省力化のための機械施設の導入ということで、今収穫過程の機械につきまして従来の大型の機械のほかに、中型の機械も含めました土地基盤整備と機械施設の導入一緒になりました営農団地の整備事業、こういうようなことも進めております。  なお、サトウキビ種苗の優良な品種の開発とか生産、配付につきましては、引き続き国の仕事としまして、優良な種苗供給の仕事につきまして取り組んでまいりたい、かように考えております。
  179. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 つくり育てる漁業の推進につきましては、従来から種づくりの栽培漁業、それから畑づくりの沿岸漁場整備開発ということの二本立てでやってきているわけでありますが、種づくりの方の側面につきましては今、先生御自身でお話しになりましたが、畑づくりの方は五十七年度から六十二年度までの沿岸漁場整備開発の計画がございます。その中で培養殖場造成事業というのが、約五六%を占めます千九百億ということでございますが、そのうち沖縄県では事業費ベースで四十七億、十七カ所の培養殖場を造成するということで取り組んでおりまして、そういうことで沖縄の亜熱帯の環境の中でのつくり育てる漁業ということを、今後私どもも精いっぱい応援していきたいと思っておるわけでございます。
  180. 上原康助

    上原分科員 時間ですから終わります。ありがとうございました。
  181. 柿澤弘治

    柿澤主査代理 これにて上原康助君の質疑は終了いたしました。  次に、西田八郎君。
  182. 西田八郎

    西田(八)分科員 先日の予算委員会で、羽田大臣と、農村出身でもあるし農林漁業関係に非常に深い御造詣を持っておられるので、うんちくのある議論をさせていただこうと思っておったのですけれども、残念ながら私は関連質問に立ったものですから、持ち時間が非常に少なくて十分なお話を聞く機会がなかった、きょうもまた三十分しかありませんので、まず聞きたいことを先に聞いてから、後でひとつ大臣日本農業に対する考え方等をお聞かせいただきたいと思います。  そこで、まず最初にお伺いするのは、今進めておられます水田再編対策、これは六十一年度で第三期が終わるわけでありますが、ことしじゅうにそんなに大きく米の需給関係が変わるとは思われません。そうしますと、ポスト第三期対策というのはどういうふうにしていくのか、その辺のところを農政当局としてどうお考えになっておるか、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  183. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 ただいまの水田利用再編第三期対策の後の対策でございます。これは今私ども、いわば農政の最重要課題として取り組むという大臣の御指示のもとに、農政審議会の議論もしていただきながら、関係方面とも協議しつつ、この秋までに決めたいと思っておりますが、やはり一番大きな問題は、全体として見ますと、米の需給関係から見るとある意味では現在よりもっと大きい目標を掲げた転作に取り組まなければならないのではないか。その場合にどういう作物に取り組むかということ、この辺を中心にしまして検討しなければならないわけでございますが、あわせて行財政改革の中で奨励金への依存から早期に脱却をしていくということで、従来進めてまいりました他作物の転作の定着化という成果に基づきまして、できる限り効率的な対策を仕組まなければならない、こういう課題も担っているわけでございます。  いずれにしましても、こういうことでございますので、非常に農政基本的な分野をなします対策の枠組みにつきましては、十分議論をしていただきまして、早期に将来に向けました米の需給均衡化、また日本農業の需要に応じた再編成という方向で発足をしたいと考えております。
  184. 西田八郎

    西田(八)分科員 ということは、現状よりも大幅に転作面積をふやさなければならぬかどうかということが一点。  今何か奨励金が行革の中で大変問題になっているということですが、これは奨励金のよしあしというか是非については議論のあるところでありましょうが、少なくとも日本農家経済を安定させるためには、大幅な奨励金のカットというのは問題があるというふうに私は思うわけです。この間も予算委員会大臣にお伺いしたわけですけれども、農業に出されておる補助金そのものが果たして一般的な補助金というふうに理解していいのかどうか。日本の国土を保全するための農業であるということを考えますならば、農業そのものが国土保全対策としての役割を持っておるということを一方においてはもっと国民の皆さんに知っていただく必要があると私は思うのですね。  ジャーナリストや経済学者なんかは米が高いからということをおっしゃるけれども、米が高いかどうかということは、これは、私はもう数年前のここの分科会でも言うたと思うのですけれども、私の家は代々大工をしてわるわけですが、私の子供のころは大工の手間が米五升分と言われたのです。そして左官、手伝いというふうにしてだんだんとそれが五合削られ三合削られという形になっておったわけなんです。そうすると、今大工の手間が一万五千円とするなら、米五升分ということになれば、逆算したら幾らになるかということですね。そうすると、一万五千円を五で割れば、一升三千円という計算が出てくるわけです。一俵四斗ですから、掛けたら三、四、十二万円という数字が出てくるわけです。  私は今の経済情勢の変化を考えますけれども、そういう点から考えても非常に苦しい立場に立たされておる。奨励金があっても農家経済は安定してないのですね。農林省が発表されておる統計によりますと、北海道を除いて、もう全国の平均が農外収入で飯を食っているというのが実情なんです、生活しているというのが。そういうときに奨励金を削るということが果たして適切かどうか、行政改革という立場に立った点だけで判断するのは少し早計ではないか、もう少し何か方法があるのではないかと私は考えるわけです。  それから、転作する作物の指定ですけれども、大豆小麦や菜種といろいろ決められておるわけですけれども、そうしたものの需給関係等に対してもある程度の見通しを持っておられるのかどうか、面積は拡大されるのか、いわゆる転作の面積がふえるのかどうか、奨励金はどうするのか、それと一体転作作物の指定をふやすのかふやさないのか、その辺のところを聞かしてください。
  185. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 第一点の転作目標面積でございますが、現在は御承知のように六十万ヘクタールを基準にして実施しております。今後の問題としましては、米の需要は若干ずつでございますが、従来よりは緩やかにしても減っていくという中で、生産能力の方は、水田自身は少しつぶれていくわけでございますが、一方単収はかなり着実に伸びていくという傾向にございますので、全体を見ますと、単年度だけの米の需給で考えますと、現状の六十万ヘクタールよりもさらに十万ヘクタールくらいは多い目標になるのではないかという考えが一つございます。  それはどういうことかと申しますと、現在六十万ヘクタールやっておるわけですが、このときに毎年四十五万トンの在庫造成をするということになっておりまして、それが面積で十万ヘクタールある。六十二年以降この年間四十五万トンの在庫造成は要らなくなるような在庫水準にもしなったとすれば、この十万ヘクタールが六十万ヘクタールに乗ってくるのじゃないか、こういう需給の見通しが一つございまして、そういうことでどうも、確実に七十万ヘクタールというわけじゃございませんけれども、かなり厳しい面積増を覚悟しておかなければいけないのじゃないかというのが第一点でございます。  二点目の奨励金につきましては、これは第二次臨時行政調査会の段階から、今後の問題として転作の定着化を図る、それから米と転作作物の相対収益関係を是正する、いわゆる価格的な問題、そういうことを進めながら奨励金依存から早期に脱却するという方向が出まして、政府としても方向はそういうことであろうというようなことになっておるわけでございます。  そういう中で、一方、財政的な問題もございまして、昭和四十六年以来、正確には今回の対策、五十三年からでありますが、かなり長期にやっている中で、奨励金もいつまでも同じ水準じゃなくてだんだん圧縮されていってしかるべきじゃないか、そこに従来の施策の定着の効果を見込むべきじゃなかろうか、こんな議論がございまして、私ども転作をお願いする立場からすると大変つらいことでございますけれども、こういう問題についてどうしても取り組まなければならないのではないかというのが第二点でございます。  次に、作物でございますが、これは現状では昭和六十五年の農産物の需要と生産の長期見通しというのがございまして、これに従いますと、麦、大豆等も含めてもう少し生産をふやしていくような目標、見通しがございます。ただ、この六十五年見通し自身もいろいろな意味で改定をするというか見直す時期になっておるわけでございますが、具体的に考えますと、今までやってまいりました果樹とかあるいは野菜とか、そういうものについてはどうもこれ以上転作で面積をふやすというのはむしろ需給の関係からは問題じゃなかろうかということになりますので、麦、大豆、飼料作物、この辺がやはり転作の内容としては従来どおり主体を占めるのじゃないか、こういうことでございまして、これ以外に何か新しい転作先の作物を見直すと申しましても、最近多少新しい作物ももちろん出ていないわけじゃございませんけれども、これだけ大きな面積との比較で考えますと、特別新しいものはなかなか考えにくい、こういう情勢でございます。
  186. 西田八郎

    西田(八)分科員 先ほど私は、農業に対する補助金は他の補助金と一緒に考えてもらっては困る、これは国土保全費を含んでいるということを若干申し上げたわけですが、同時に、補助金を出すなら出すて、やはり日本農業のあるべき姿というものを早く出すべきだと私は思うのですね。  現在の姿は、徳川とは言いませんが、明治時代から続いてきた小作農の形がそのまま自作農に変わって、そして機械化されているというだけの姿ではないかと思うのです。ですから、これは全国平均でいけば一ヘクタールくらいになるだろうと思いますけれども、私は滋賀県ですが、滋賀県ですと一戸当たり五反に満たないのですね。それで、仮にとったとしても五十俵しかとれない、二万円で売ったって百万円なんです。それを兼業でやるということになりますと、どうしても休日、日曜、祭日というものを使わなければならない、それにはやはり機械化せざるを得ないということで、機械化貧乏ということが最近非常によく言われておる。特に滋賀県の場合は、統計にも出ておりますように機械化の方は全国でもトップのクラスにある、相当高水準にあると思うのです。名神高速だ、新幹線だ、あるいは琵琶湖総合開発だという国の公共事業が大変多かったので出稼ぎに出る。出稼ぎといったって、他府県に出るわけじゃなしに県内で就職する場所がたくさんあったからそれは維持できたと思うのです。  しかし、これからの日本経済というものを考えてみると、内需拡大で公共事業もふやしていただけるようですけれども、そう大きな期待ができないということになると、農家の自立、自立農家の育成ということについてもっと抜本的な農業政策の転換というものを行わなければならぬのじゃないか。しかし、依然としてやはり農家土地に対する執着というものは非常に強いものがございますから、それを手放せと言ったってなかなか手放さぬ。また、農地法等があってそういうものに対しては制約がかかっておる。したがって、この辺で日本農業あり方というものに対する抜本的な方策というものを出され、土地は所有するものにあらず、利用するところに価値があるということをもう少し大々的に打ち出されて、そういう利用度、利用の仕方というものに対する手法というものを変えていくときに来ているのじゃないか。  例えば部落の集落農業を進めるとか、あるいは生産法人を、今の農協は肥大化して大きくすることばかり考えていますけれども、本来農協の目的というのは、農業経済を支えていくために一体どのような農業をやっていくのか、それを共同でやっていこうというところにやはり農協の精神があると思うのです。したがって、昔の村別、字列にあった農協というものを、生産法人としての、今そういう資格も与えられておるわけですから、もう少しそういうものに対する認識を高めて、そして規模の拡大を図るということでなければならぬと私は思うのです。  バイオテクノロジーの時代に入って種子の改良等が行われておって、アメリカのハイブリッド等は相当な単収があると言われておりますけれども、やはり米というのは日本人には主食であります。ただ単に余計どれたらいいというものではないと思うのです。     〔柿澤主査代理退席、主査着席〕 それには質と味というものが伴わなければならぬと思うのです。  ですからそういう点で、農業の抜本的、構造的な改革というものと現在進めておる水田再編対策というものが、ここがうまくドッキングすることによってその成果を上げることができると私は思うのです。そういう点、ひとつ大臣からできましたらうんちくのあるところを聞かしていただきたいと思うのです。
  187. 羽田孜

    羽田国務大臣 まさにお話ありましたように、我が国の農業というのは非常に零細であるというところにいろいろな問題があることは事実でございます。  そういう中で、しかし全体を見たときに米のように過剰しているもの、そしてまた不足するもの、こういうものがあるわけでございますから、水田利用再編対策、そういうものの中で本当の意味での農業の再編成というものを行っていかなければいけない。その場合に、日本の国土というのは非常に長いということ、そして地形あるいは気候というものが違うということでありますから、こういうものをうまく活用してその地域に合った農業を進めていかなければいけない。そして、基本としては土地の改良、いわゆる基盤整備をきちんとしながらできるだけ規模を拡大するということが必要であります。そして、それと同時にバイオ等、これはバイオというだけじゃありませんけれども、先端の技術あるいは新しい農業というものをそういう中に展開していくことが大切であろうかと考えております。  そんな意味で、今先生からも御指摘がありましたように、私どもといたしましても水田利用再編対策なんかをこの機会をとらまえながらそういった方向に進めていく、そのために私たちも相当強力な姿勢で取り組んでいかなければいけないのじゃないかと考えております。
  188. 西田八郎

    西田(八)分科員 ぜひひとつその点取り組んでいただきたい。  先端技術だとかバイオテクノロジーだとかいろいろ言われておりまして、日本の経済力というのは今や貿易摩擦を引き起こすほど強くなってきておるわけですけれども、一番おくれておるのは私は農業だと思います。それは、何とかなるわ何とかなるわということでやってきたんですけれども、もう何とかなる時代じゃないのです。だんだん農村青年は農業を離れて、そして都会へ出ていく。早い話が、自分の娘を農家に嫁入りさせたくないという母親が嫁探しをしているというような、こういう矛盾が起こっているわけです。そうすると、私はこれから後継者というのはとてもじゃないが育たないような気がするのです。  農業というものが近代化されたいわゆる食糧生産する産業としての位置づけがはっきりされて、そこで使命感とそして働きがいを持って活動するようになれば、日本人の持っておるこの律儀さと頭脳、また技術、そういうものを駆使するならば、世界でも負けるような農業じゃないと思うのですよ。やはり農業がそういう面では一番おくれているのじゃないだろうか。したがって、もうこの際思い切って政策の転換を図られて、そして近代農業への脱皮ということを考えていく必要がある。  私も、大臣も一緒ですけれども、毎年米価闘争になると農協の大会に呼び出されて演説するわけですよ。そこで米価を必ず守るとか演説をするわけですけれども、その中で私は数年前に、今のままの日本農業では、いかに飽食の時代と言われたって、輸入食糧ばかりが飽食であって、この日本食糧自給率は低下する一方だ、そういう中で日本農業は守れませんよ。しかし、だからといって今のままでほっておいたら農業をやる人はおらぬでしょう、この辺で意識の転換を図りなさい、そして、もっと集団で成果を上げる近代化した農業というものに取り組まなければいけませんよと言って演説したのです。そうしたら当時は、おまえは労働組合の幹部だから、都会のやつだから、無責任なことを言うといって随分しかられました。ところが、昨年農協が出されました米価闘争と我々の農業政策転換要求のパンフレットの中には、集団で経営する規模拡大を図っていこうということが出てくるようになってきた。それはそれだけ意識が変わってきたということだと思うのです。ですから、今がチャンスだと思うのです。  物事にはチャンスがありまして、国鉄が失敗したマル生運動があのまま進んでおったら、また国鉄は変わった姿になっておったと思うのです、結果論ですけれども。私は昭和三十六年に生産性向上運動の勉強のために五十日間アメリカ各地を回ってまいりました。あのときに日本があの生産性向上運動生産性本部を通じて取り組んでいなければ、今日の日本の高度生産技術を駆使する経済体制というのはできていなかったと思う。やはり一つの節目というかチャンスだと思う。  今、二十一世紀へ向けてそれに取り組む一番大事な時期じゃないかと私は思うのですが、そういう点についてひとつ大臣からお伺いをいたしたいと思います。
  189. 羽田孜

    羽田国務大臣 もう先生が今御指摘のそのとおりでございまして、まさに農業一つの転機に来ておることは間違いございません。  ですから、先日来の今度の価格等につきましての農業団体の取り組み方も、ただ価格を、もちろん価格を何とか上げたいというあれはありますけれども、しかしまずコストを下げることだという政策要求が前面に打ち出されておるということ、これも、一つの時代の大きな流れの中で農業という産業をきちんと位置づけていきたい、そういう意欲のあらわれが農業団体の中にも出てきておるのではなかろうかというふうに考えております。  そうでないと、先生から今お話がありましたように、嫁がなかなかやってこない、あるいは後継者ができないという話がありますけれども、私も十年前に政務次官をやったときから、ともかく嫁さんが来るような農村をつくらなければいかぬということで、ハードの面では相当いろいろなことをやってまいりましたけれども、それでもなおかつ、今、新聞その他で報道されますように、村で幾らかのお金を出してお仲人さんに幾らかずつ出すとか、あるいは外国にもお嫁さんを探すためのツアーをするとか、また農業後継者がなかなかつかめないという問題が実はいまだに残っておるわけでありまして、それは、農業という産業に対する魅力といいますか、本当に苦労すればあしたがあるのだというものがまだ薄れているのかなという感じを、私自身も政務次官をやめて以来ずっと農政に携わってきた人間でありますから、大きな責任を感じておるところであります。  これはただ農業に限らず、林業にしましても、ちょうど昨年は国際森林年ということもあり、その前あたりから、本当に林がおかしくなっているという中で、林業を活性化しよう、山を守ろうという国民の声が上がってきております。水産も、ちょうど二百海里が定着したということで、今日非常に難しい交渉をしておりますけれども、それだけに農林水産全部が、私どもの省を挙げて、難しいときでありますけれどもこういったときをきっかけにしないとなかなか新しい展望は開くことができないのじゃないか、そんなことを私ども今考えておるところでありますので、これからもいろいろな面で御指導いただきたいと思います。
  190. 西田八郎

    西田(八)分科員 そういう意味で、農林水産省は、食糧のすべてを生産し、需給の調整を図り、いろいろな面で研究をし指導しという立場にあるわけでありますから——他の通産省あたりは、確かに技術開発なんかにも寄与してこられました、あるいは原子力発電等についても相当な寄与をしてこられたと思いますけれども、しかし、それはそれなりに企業がやったわけですね。電力会社が研究をし、あるいは家電メーカーが需要家のニーズに応じて、低コストの安くて便利で、そして見よいテレビ、使いやすいパソコンというふうにして研究を進めてきた。しかし農業は、一つの環境だけでそれを研究するというような、それだけの、能力がないとは言いませんけれども、非常に難しい問題だと思うのですね。したがって、そういうものを研究開発し、そして御指導されることが大事じゃないかと考えるわけでありまして、今後一層の御努力をお願い申し上げたいと存じます。  次に、たまたま今出たわけでありますが、後継者対策、これは農業基本をはっきりしなければなかなか後継者は出てこないと思うのですけれども、当面の嫁御対策です。これも農協の婦人部の方々と話をすると、一番最初に出てくるのが、何とかいい嫁さんはないだろうかということなんです。これは去年だったか、私がこの分科会で言っためですが、私の関係する繊維関係の労働組合では婦人の組合員が多いわけです。年若き婦人が非常に多いので、何とか交流させてあげようと思って、工場へ来てもらうかあるいは農薬の開発センター等へ行ってもらってそこでいろいろ交流させようとするのですけれども、もう自分たち農家の出身なものですから、どうしても嫌がるのですね。それで、まだ一件も成約されたものがないので私も責任を感じておるのですが、こういう問題について何か当局の方でも考えておられるのかどうか。その辺、もし妙案があったら聞かせてくれませんか。
  191. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 いわゆる嫁対策、対策というのは変な言い方ですが、ということになりますと、私ども役人というか役所のベースでいいますと、これは個人的な問題であるということで非常に取り組みにくいわけでございます。ただ私ども、農村の青年の方たちの今後の農業への生きがいというか、そういうものを持っていただく上で大変大事だということで、役所の仕事でございますから大変名前がかたいのですが、農業後継者地域実践活動推進事業、こういうような事業の中で若い人たちの交流をやっていただく。農業青年グループの交流とかそういうことをやっていただいたりする中で、こういう若い人同士が将来を誓い合うというようなことも生まれてくるのではないか。また、一種の相談活動というような形で取り組んでいくことも、全体の地域実践活動の助長の中でいろいろ考えておることでございます。  なおこのほかに、私ども、この問題について県なり市町村なりでどんな取り組みをしておられるかということを昨年三月に調べたものがございますが、これを見ますと、何らかの意味で配偶者対策に取り組んでおられるという県が二十八県ございます。大体、実施主体は県とか県の一種の外郭団体的なもの、こういうところで実施しておられるわけでございますが、その辺の仕事の内容も大変参考になるものがございまして、例えば交流会を開催するとか、候補者の名簿をつくって配るとか、あるいは結婚相談員の関連情報の提供とか、そういう相談活動、さらに進みますと、いわゆる伸人ですね、結婚を成立させてくださった方に、表彰したり謝金を支給する、その他、結婚祝い金の贈呈、こういうように、かなり工夫をされて取り組んでおられるというふうに見ております。市町村段階でも大体今申し上げたような形でのいろいろな取り組みがされておりまして、私ども、こういうふうな地域での自主的な取り組みに対して、国としてもできるだけそういう活動がうまくいくように、いろいろな形で御援助申し上げるということがいいのではないかと考えております。
  192. 西田八郎

    西田(八)分科員 この問題は、幾ら周りが騒いでみたところで本人がその気にならなければどうにもならない問題だと思いますけれども、たまたまこの間テレビを見ておりましたら、若い人たちのアンケートをとった結果が発表されておったのです。農村へ嫁に行きたいという人もいることはいるのですね、率は低いけれども。問題は何かというと、生活が果たして安定するかどうか、そういう心配がかなり強いように言われておりました。したがって、何といってもそうした細かい後継者問題、まあ重要な問題ですから細かいというとおかしいですが、後継者対策やら嫁さんの問題やら、そういうものを総合的に解決するためには、NHKの放送ではありませんが、やはり明るい農村にして、働きがいのある、生きがいのある、そういう農村にしていくことが大事ではないかと思うのですね。  したがってそういう面で、それはなかなか一朝一夕に、全国一斉にというわけにはいきませんけれども、私はやはりモデル県——農政面で非常に力を入れておられるような県とタイアップして、モデル的なケースでそうしたことを実践し、その成果を全国の農家人たちに聞いてもらうということにすれば、もっと普及のテンポが速まるのではないかと思うわけであります。  そういう点をお願いしておきまして、時間のようでありますから質問を終わります。どうもありがとうございました。
  193. 武藤嘉文

    ○武藤主査 これにて西田八郎君の質疑は終了いしたましだ。  次に、瀬長亀次郎君。
  194. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 私は、沖縄のパイン産業の問題に絞って質問したいと思います。  現在の円高・ドル安の関係で、沖縄パイン産業は非常に大きい打撃を受けておりますが、去年の同期に比べてことしの三月末で在庫が三十万ケースに達しておる、これは倉庫料も加えると大変なことになるというので、県でも非常に大きい問題にしております。  この問題について最初にお伺いしたいのは、大臣はこの前の農水委員会でその所信を表明された中で、「諸外国からの市場開放要求が依然として絶えない状況のもと」「国民に食料を安定的に供給するためには、国内生産可能な農産物は極力国内生産で賄う」と述べられましたが、これは当然のことだと思います。国内でパインを生産しているのは沖縄だけなんですよ。だから沖縄もその配慮の中に入っているのじゃないかと思いますが、それでいいですか。どうぞ。
  195. 羽田孜

    羽田国務大臣 パイナップル産業、私も現地を視察しましたり、また現地の皆様方おいでになってお話し合いをする機会がございます。これはもうお話のとおり、まさに沖縄における就業の機会も提供しておるわけでございまして、地域の産業として非常に重要なものであるというふうに考えております。  ただ、実際に今冷凍パイン等が入ってくるという中で、なかなか厳しい、また特に缶詰については甘み離れなんということがありまして、需要もまた減っているという中で、この数年間を見ましても、百万ケースから八十万ケースくらいに減っておるというような現象がありまして、私どももこれを憂えているところであります。  いずれにいたしましても、このパイナップル産業というものが沖縄の中で何とかひとつ安定して進んでいくことができますように、加工のための近代化等、こういったものについてもこれから私どももてこ入れをしていきたいというふうに考えております。
  196. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 沖縄のパイン産業をどう振興させていくか、大体基本的には三つくらいあると思うのです。一つは外圧なんですよ。今申し上げました円高・ドル安の問題、これは外圧と見なければいかぬ。もちろんこれは政策とも関係しますから、単なる外圧じゃないです。これともう一つ、指導上の問題があると思うのです。指導上の問題というと、今大臣がおっしゃったように、冷凍パインをどうするかという問題、これがある。もう一つは、サトウキビと同じようにではなくて、価格の問題、パインの価格、あれは法制化されてないのですよ。してないだけに、これは何とか予算化、予算措置がないとできないという、三つの基本的な問題がある。  その中で最初にお伺いしたいのは、五十六年の危機のとき、やはり冷凍パインの抑制を行った。これはその際農水省の指導のもとで、関係三者で沖縄に需給安定懇談会が発足した。これがここ数年一定の効果を上げたことは私も認めております。ところが、冷凍パインの場合、これは今つくれば安くできるという状況があるわけなので、五十五万ケースを大幅にはみ出して、八十万ケースも製造することが予想される事態と現在なっておる。それが沖縄パインを圧迫する原因の一つとなっておる。  結果として農水省の行政指導が十分行き届いているのかどうか、私はこの問題をまず先に当局から聞きたい。これは、先ほど認めているように、国民の消費が全体として非常に停滞しているのですよね。この中で、これは三者の紳士協定ですから、この紳士協定を守るように冷凍パイン業界を適切に指導してほしい、こう思いますが、これは大臣でなくていいから、当局の方からひとつ。
  197. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 冷凍パイン缶詰の問題でございます。  これは六十年度でございますが、生産量見込み八十万ケースというようなことになってまいりまして、生産量の推移から見ますと大変大きくなっております。そういうこともございまして、今御質問の中にもございましたが、去る一月二十二日にパイナップル缶詰需給安定懇談会を開催しまして、そこでこの冷凍パイン缶詰の生産量の抑制の指導を行っております。  これを受けまして、既に、冷凍パイナップルの缶詰工業組合がございますが、ここで製造業者に対しまして生産量の抑制について努力を行っているわけでございますが、我々としましては、冷凍パイン缶詰工業組合の抑制の方向としましては、大体過去三年平均というような感じでまいりますと六十万ケースくらいになりますが、少なくともそのくらいまでは抑え込むような指導を組合としてもしてもらい、我々もそういう方向で指導していくということで、何とかこの異常な増加傾向にブレーキをかけたい、こういうことで現在取り組んでいる次第でございます。
  198. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 次に、沖縄パイン産業の危機に対する具体的対策についてお伺いしたいのですが、まとめて四つの点をお伺いしたいと思います。時間の関係がありますから四つにまとめます。  一つは、国内需要について沖縄の業界では二百十万ケースしかないと予測している。農水省の指導案、もう出ている指導案、私、まだ見ておりませんが、向こうではそう受け取っている、この指導案によると二百三十万ケースと予測する。業者と行政側の見解に非常にずれがあるのですね。これは二十万ケースくらいのずれがあるが、これについてどうお考えか。これは需要の問題ですから、そんなに需要があると、指導上の問題からいって結果において非常に危機を来すおそれがある。これが一点です。  もう一つは、農水省関係団体に指導しているいわゆる指導案に基づくと、冷凍業界への六十一年度割り当ては六十万ケースで、六十年度の当初製造計画五十五万ケースより多い。沖縄物は六十年計画の二割削減、すなわち百万から八十万に削減しているのに、なぜ冷凍物は六十年計画よりも多いのかはっきりされたい、これは当然生まれる疑問なんですよ。なぜ沖縄物は二十万減で冷凍物はそうじゃないのかといったような疑いが出ている、それに対してお答え願いたいと思います。これは沖縄産と同率の削減を求めることを具体的に約束してほしいというのが県の業界の要望なんです。  三番目は、輸入物について私が通産省に聞いたところ、六十年度の発券分でまだ輸入していないものが四十七万ケースもある。当然六十一年度の輸入物の輸入可能分は、これにプラスしますから百三十七万ケースになるわけなんですが、政府として輸入物についてどう取り扱うのか、輸入枠は抑えられるのか、それとも発券の時期をずらしてやる方向で指導されるのか、どれだけ発券するのか、こういった問題。これはおくらせばおくらすほど沖縄物がその間に売れるわけなんで、これは非常に重視しなければいけない問題です。  第四番員に、三業界の指導以外に農水省として考えていることがあるか。この前通りました、簡潔に言えば中小企業事業転換法、この中でとりわけパイン産業の問題などをお考えになり得るような法的な措置が講ぜられているのではないかと思いますが、そういった問題を含めてひとつ見解を承りたいと思います。
  199. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 四点お尋ねでございました第一点の需要全体の規模でございます。これはお話の中に、農林水産省は二百十万ケースぐらいのところを考えているのではないかというお話もございましたが、私どもとしましては、今全体の推移を見ますとやはり若干減少ぎみの傾向でございますので、二百十万ケースというのは少な過ぎるような感じがしまして、二百三十万ケースあたりのところが当面期待し得る需要の規模ではなかろうかという感じを持っております。  それから、二番目の冷凍パインのいわば規模でございますけれども、これはこの前の御答弁で申し上げましたように、六十年度八十万ケースという生産量がございますけれども、急激なふえ過ぎがございまして、今冷凍パイナップルの缶詰工業組合を通じまして生産量抑制の努力をしてもらう、私ども指導するというところで考えておりますのは、大体過去三年平均の六十万ケースぐらいのところまでに抑え込めないか。これは確かにかってございました五十五万よりは若干多いわけでございますけれども、最近の動向を見ますと、この辺あたりまで抑え込むのが当面一つの目標ではなかろうかと考えているわけでございます。  一方、輸入の関係につきましては、今入っているのは四十七万ケースということでございますので、何か随分余っているような感じでもございますけれども、例年に比べますと、時期的に見まして大体同じぐらいの水準の消化状況であるということであります。なお、これからの割り当てということになりますと、いずれにしましても従来の消化状況から見ますと、六十一年上期七十万ケースというのは、六十一年度になりまして発券をするということでいいのではないかと思っていますが、その時期につきましては、またよく在庫状況等も見ながら慎重に考えたいと思っております。  ただ、いわゆる日米交渉につきましては、この六十年度までが約束の二年間でございますので、もちろんこれから四月にかけてございますいわゆる十三品目交渉の中で、冷凍パイン缶詰の問題も議論……(瀬長分科員「ちょっと聞こえないのですが」と呼ぶ)これは室内マイクじゃないそうでございますので、私の声があるいはお聞き取りにくかったかと思いますが、今の最後の点だけ繰り返します。  割り当てにつきましては、四十七万ケースというのは例年から見ますと必ずしも遅いということはございませんで、大体例年と同じぐらいの消化テンポである。これからの輸入につきましては、六十一年度上期、従来のベースでいいますと七十万ケースになりますが、これは在庫の状況、需給の状況を見ながら決定をいたしたいわけでございますけれども、その前に四月までで今回の六十年度までのアメリカとの十三品目交渉の期限が参りますので、輸入パイン缶詰の割り当ての問題も含めましたアメリカとの交渉がこの間に入るわけでございます。
  200. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 余り声が小さくてよくわからなかったのですが、今、圧迫要因の一番大きいのは冷凍パインですよ。冷凍パインが三者の紳士協定に基づいて、違反とは言いませんが、これは農水省の指導の方針を私まだ見たことがないのですが、向こうではそういった方向で受け取っているのですね。沖縄物は百万から八十万ケースに、冷凍物は五十五万から六十万ケースに、グローバル物は九十万、九十万と同じなんですが、公平、平等にやるのだったら、沖縄物は百万から八十万になり、それから冷凍物は六十万ですからむしろふえているのだが、沖縄としては、いわゆる冷凍物は四十四万ケースにしてほしい、これが公平ではないか。この点は無理な要求じゃないと私は思うのです。どんなものですか。指導方針がそうでなければいいんですが、そう受けとめているから私は聞いているのです。  もう少しはっきり申し上げますと、六十年度計画は沖縄物は百万ケース、冷凍が五十五万ケース、グローバルが九十万ですね。それから農水省指導が、沖縄物が八十万ケース、冷凍物が六十万ケース、グローバルが九十万ケース。これをはっきり公平、平等にやってほしいという要求ですよ。別に沖縄物をもっと大きくしろとかいうのじゃなしに、冷凍物をその比率によってやると四十四万ケースぐらいになる。六十万ではなくて四十四万ケースにしてほしいというのが沖縄業界の要求なんですよ。これは決して無理な要求じゃないと思うのですが、どうですか。
  201. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 実績を申し上げますと、冷凍は五十八年が五十七万七千ケース、五十九年が七十万一千ケース、六十年見込みが八十万ケースという状況でございますので、過去の五十五万から見れば大分ふえているわけでございまして、そういう意味で抑え込むわけでございますが、先ほど来申し上げておりますように、冷凍については大体三年平均ぐらいの感じで六十万ケースを組合を通じます生産の抑制の目標としてはどうか、こういうことで六十万ケースということを申し上げておるわけでございます。私どもとしてはその辺のところまで抑え込むのが現状では限度であろう、こういうことでございます。  一方、輸入については御承知のような九十万ケースという水準がございますので、それが九十万ケースとしてこれからも続くとした場合、国内物については全体が二百三十万ケースとしますと大体八十万ケースぐらい、こういうような感じになるわけでございまして、こちらの方は過去の生産の減少傾向とか見ますとやはりどうしても八十万ケースくらいのところになってくるような感じを持っております。しかし、今この辺の需給の数字について県庁及び関係団体と私ども話し合いを進めているところでございます。
  202. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 この冷凍物六十万ケースというのは、固定したものじゃなしに今四十四万にしてくれと要求しているのですね。そこら辺まで近づいておるのですが、もう六十万に決まっておるというふうに指導しておるのですか。
  203. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 これは別に法律上六十万ケースを決める根拠はどこにもございません。ただ、何度も申し上げておりますように、現在の生産状態から見ますとことし八十万ケースぐらいつくるようなことでございますので、今後抑え込むとしたら大体六十万ケースぐらいに抑え込む、これが限度ではなかろうかと考えて指導してまいりたいという私どもの指導の方針でございます。
  204. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 この問題は、紳士協定もあるわけだから公平、公正にしてほしいということであって、無理を言っているのじゃないのですね。この点、大臣も政治的配慮を少ししてもらって、六十万を固定しないで例えば五十万にするとか——圧迫要因の大きいものの一つは冷凍なんですよ。これは説明するまでもない、御承知のようですが。大臣、もう少し政治的配慮についてお考え願いたいと思うのですが、どうでしょうか。
  205. 羽田孜

    羽田国務大臣 今局長からもずっとお答えしてまいったわけでありますけれども、この冷凍パインは今自由化されておるということであります。そういうことで、実際にこの部分について需要が相当大きいということでありますから、放置しておきますと相当な量が入ってきてしまうということで、これは行政が介入するということにはいろいろと議論のあるところでありますけれども、しかし、この沖縄の農業のパインの需給というものを私ども考えまして、行政指導という形で実はやっておるわけであります。ですから、この前のときの量で同じようにしなさいということはなかなか難しい。うんと大きく伸びるところを、この辺で我慢しなさいよということで実は私どもで行政指導しておるということでありまして、これからも沖縄のパイン産業に悪影響を何とか与えないために、私どもとしてきめの細かい指導をしていきたいと思っております。  それと同時に、これは余計なあれでございますけれども、何といってもやはりパインというものの需要が大きくならなければいかぬということでありますから、この面についても需要拡大のためにひとつさらに関係者と話し合いながら進めていきたい、このことを申し上げておきたいと思います。
  206. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 一番の原因、大もとは貿易の自由化の問題だと思います。私は貿易の自由化には反対なんですが……。  この面で冷凍パインが入ってくると、やはりこの円高差益もそういった面では相当あるわけなんですね。それで、これは圧迫の一番の要因なんです、冷凍パインが。しかも六十万ケースでしょう。これをもっと配慮して五十万ケースにするとかいうふうにしてほしいというのが県の業界、また農民の要望ですから、この点は大臣の方でも検討されて、それに近づけるように努力してほしい、こう思います。  それで、次は大臣にお聞きしたいんですが、これは大臣が最初の農水委員会で言われたものとも関連しますが、沖縄は産業といえばサトウキビとパインしかない、それと観光収入くらいなんですが、サトウキビについては価格の安定法その他がありまして、価格問題は制度としてこうするんだとあるが、パインはないんですよ。そういう意味で、今度は約十四億、計算すると差損金が出ておるのですよ。差益じゃなしに差損、沖縄パインについては。  私はこの点は別に十四億計算して向こうに全部やれ、これはできるものじゃないわけですから、パイン農業もたくさんいるし、そういうことを言っているんじゃないが、この差損金の問題を含めて、沖縄で特別に黒砂糖というのがあるのです、含みつ糖。離島がたくさんあるでしょう、離島では分みつ工場をつくれぬものだから、結局含みつ糖しかつくれぬ。この含みつ糖について、三年くらいかかりましたかな、含みつ糖の価格補助金の問題、助成の問題、これを検討して、沖縄振興開発計画とも関連して、この価格の差損金をそれじゃ含みつ糖についてはやろうということになって、今度の予算にはもちろん組まれています。  こういったこととも関連させ、今の差損金との関連もありますが、この面で沖縄パインについても何らかの形で価格助成の問題を配慮できないか。大臣の方でひとつ、難しい面もあるかもしれませんが政治的な検討をしてほしい。今の差損金の問題もある、それから黒糖に対する価格補助金制度ももうできておるというふうなことと関連して、沖縄パインについても政治的に配慮してほしい、これをぜひ大臣に考慮願いたいと思いますが、どんなものですか。
  207. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 原料パイナップルの現在のような需給関係、また制度的な状況のもとで、御質問のございましたように原料パイナップルの価格安定措置あるいは所得補てん措置というような御提案でございますけれども、制度的にも財政的にもなかなか制約がございまして、一つの御提案ではあろうと思いますけれども、なかなか実現はしにくい、難しいのではないかということでございます。
  208. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 これは大臣に政治的な配慮についてのお願いをしたわけなんで、ぜひ方向としてそれを検討するという点だけは——円高の差損金も出ておる。これは向こうに与えるということじゃないんですよ。そういった価格政策の問題とも関連して、ひとつ沖縄パインについてもそういう面での合理的な考慮をお願いしたいと思いますが、大臣の御意見を伺っておきたいと思います。
  209. 羽田孜

    羽田国務大臣 今の先生のお話のようにあるいは新たな価格安定制度といいますか、価格安定といいますか、価格保障ですね、こういった制度みたいなものをこのパイナップルにもとれないかというお話なんですけれども、これは今私ども検討しますということを申し上げても、ただぬか喜びにしてしまうんじゃないかというふうに思うのです。  ただ、今円高によりましてパイナップル業界、産業というのは非常に厳しい状況がございますから、こういったものに対して、先ほどもちょっとお話ししました特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法、こういったものの指定というものは私どもしてまいりたいと思いますし、それから、これからもそういったものと競争ができるような体制をつくるための工場の近代化あるいは原料をつくるための基盤、こういったものを整備することについては、やはり私どもはパイナップルというのは生産の面においても工場の面においても沖縄の非常に基幹産業一つであるというふうに認識しておりますので、そういった面ではこれからも積極的にお手伝いを申し上げていきたいと考えておりますことを率直に申し上げさせていただきます。
  210. 瀬長亀次郎

    ○瀬長分科員 もう時間が参りましたのでこれで締めますが、せっかくできた中小企業振興対策の問題、大臣も言われたんだが、これと相関連し合って価格問題その他について配慮をお願いしたい。  これでもって私の質問を終わります。
  211. 武藤嘉文

    ○武藤主査 これにて瀬長亀次郎君の質疑は終了いたしました。  次に、渡辺嘉藏君。
  212. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)分科員 昨年の三月八日にやはりこの分科会で、私は岐阜市の合渡土地改良区の不正、不当な組合運営について質問をいたしたわけですが、当時の佐藤大臣から、局長からよく調べて返事をする、こういう答弁をいただいたわけでございます。あるいはまた局長からも、本件については数点の指摘事項について調査をして指導、善処する、こういうふうな御答弁をいただいておるわけですが、その後どのような調査、指導をされたか承りたいと思います。
  213. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 昨年の本分科会におきまして先生から御指摘いただきまして、早速岐阜県の担当官を招致いたしまして事実確認に努めるとともに、法律的に問題がある部分についてはそれを是正するように指摘し、かつまたできるだけ早期にかつ適正かつ円満な解決を図るように指示したところでございます。
  214. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)分科員 それでは、次に聞きますが、調査をして適切にそれぞれ指導してきた、こういう御答弁ですが、本当ですか。なぜかというと、私あのときにも聞いたのですが、じゃまずもう一遍聞きますが、あの合渡土地改良区に特別会計を設けて十億数千万円の残金がある。これは全組合員の金だと思うかどうかという質問に対して、当時の井上局長は、これは「土地改良区の金であり、これがまた全組合員のものである」と答弁いただいておるわけですね。とすれば、これの処分につきましては、同じく答弁で、改良区組合員の全体の意向に従って処分されるべきである、こういう答弁もいただいたわけです。  ところが、組合総代会では、この残金につきましては全員に配分をする、こういうふうに六十年の三月の総代会で議決をいたしておるわけです。ところが、その十アール当たり二十万、そして三十万というこの大きな金が、これが一部の者に払われて一部の者には払われない、こういうことで問題はこじれ始めたのですね。ですから、的確な調査と指導があればこういうことにはならなかったんじゃないか、こう思うのですが、どうですか。
  215. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 まずその法律的な側面から申しますと、そもそもそのような保留地処分に類似した行為を土地改良区がやることは、特に四十七年法改正以前においては認められていなかったところでございます。ただ、事実問題といたしまして、特に岐阜、愛知のように非常に地価の高い土地で区画形質を全面的に変更するわけでございますから、それに伴いましてさまざまな公共施設用地等を捻出するということが実態としてかなり広く行われていたことは事実でございます。しかしながら、それは非常に慎重な法的な配慮を要して、違法にわならないように措置する必要があったわけでございますが、本土地改良区の場合のように特別会計を設けるというようなことは、これは土地区画整理法による区画整理と土地改良法による区画整理とでは法的性質が違いますのでできないわけでございます。そこで昨今では、土地改良区側は、これは土地改良区の金ではないということを主張しているようでございます。むしろ部落の任意の者の、関係者の金をたまたま土地改良区が事実上預かってあるというような主張をしているようでございますが、その辺私どもも、例えばその金の預金名義者がだれであったかとか、その他金銭の出入りがどうであったか等まだまだ細かく詰めなければならない点がございますけれども、今のような点は、昨年御答弁申し上げた際いわば土地改良区の金であることを前提に御答弁したようなことがございますが、それはさらに法律的に詰めますと今申し上げたようなことになるわけでございまして、御質問に従ってお答えしてまいりたいと思いますけれども、やや最初からボタンがかけ違っているような問題だろうというふうに私はこの問題について聞きましたとき感じているわけでございます。
  216. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)分科員 ボタンがかけ違っておるという表現は実にうまいと思うのです。私もそう思うのです。最初から間違っておるのです、やっておることが。まして四十七年以前の、法改正以前のこの土地改良区としては、こういうことはできぬはずなんです。ところがこれが堂々とできておる。そうして、この十億数千万円の金が岐阜市合渡土地改良区理事長鷲見善市、こういう名前で保管されておるんです。保有されておるんです。そして、これが昨年の三月三十日の総代会にもきちっとこういう文書で提出をされておる。こういうことになりますと、今おっしゃったようにボタンがかけ違っておるものだから今さら直せない。私も現実的な解決を望む立場の一人だけれども、しかしそれならば、やはりかけ違っておるならそれを直していかないといけぬのじゃないか。このままかけ違ったままで押し切って、いつの間にか解散してしまおうということになると、本当に不正も不当もやみに葬ってしまう、こういうことになったんでは、当初の目的である土地改良、農業振興のためにやる土地改良が区画整理と間違えてやってもらったんじゃ、補助金出したらおかしくなっちゃうんですね、これ。そういうような意味で、これをその後しからばこれからどのように調査と指導をもっと具体的におやりいただけるかどうか。
  217. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 本土地改良区には、まあこれは私自身、岐阜県の担当者から話を聞いておりません。しかも非常に複雑な事実関係がある問題のようでございますので、余り軽々に判断することはいかがかとは思いますけれども、五十九年三月三十一日に換地計画の認可がされてしまっているようでございます。換地計画の認可があればこれは権利関係が全部その点で確定してしまうわけでございまして、それから既に二年余を経過しているわけでございまして、その上にさまざまな権利関係が形成されてくるだろうと思うわけでございます。法的安定性ということから考えまして岐阜県知事がどういう判断でこれを認可したかはまだ私自身聞いておりませんけれども、少なくとも認可した事実というのは否定できません。これを覆すことは、法的な安定性から見て著しい混乱を招くだろうと思います。しかしそのことと、それぞれの担当者がやったことの責任をきちっとけじめをつけるということとは全く別問題でございまして、それはきちっとやらなければならないと思います。そうしませんと、事実関係さえつくってしまえば後はどうなってもいいというような、これは私どもの法律運営にとって重大問題でございますので、その辺は私自身、担当課を指揮いたしまして事実関係をきちっと確認した上、それぞれの責任の所在を明確にしたいというように考えております。
  218. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)分科員 前の局長は私に対する答弁で、「必要な調査をいたしまして、また県の方とも相談する必要があろうかと思います。その上で適切な指導をしてまいりたいと思います。」こういうふうにきちっと御答弁いただいてから一年あるのです。私はその間に十分やられたと思っておる。ところが、事態は悪い方へ悪い方へ今転がりつつある。最初のかけ違いがそのまままた、最初に一ミリの違いが、今はまさに何十メートルという誤差になりつつあるのです。  しからば、まず聞きますが、昨年の四月三十日に、先ほどおっしゃった五十九年三月三十一日換地計画を認可されたときにはその地目は田んぼとなっている部分が現在道路になっておる、だからこれは農業振興で農地をつくるのが目的で出しておる土地が現在道路になっておるので、これは田んぼに戻してほしいという市の農業委員会に対する要請書が出たことは御存じですか。
  219. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 そのような事実があるように聞いております。
  220. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)分科員 そうすると、その市の農業委員会はこれを指導あっせんしたけれども不調に終わった、だからこれを県に出しましたということで、六月に県にそれの指導監督方を要請したことは御存じですか。
  221. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 時期は確認しておりませんが、岐阜県に問題が上げられたということは私どもも承知しております。
  222. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)分科員 そうすると、それは岐阜県に上がってから現在どうなっておるのか。少なくともこれでもう半年以上たっているのです。事態はますますこじれているのです。六月に出したのです。ですから、もしそのときに解決しておれば問題は起きなかったのです。ところが、三月の総代会で決めた十アール当たり二十万ないし三十万ずつ配分しますという予算書どおりに行われれば問題はなかったのですが、七月に、一部には払い、一部には払わないという差別的な配分をした。そこで余計問題がこじれてきたわけですが、県はしからば何をやっていたかということが一つ。まずそれを聞きましょう。
  223. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 私自身この問題について県から説明を聞いておりませんので、県の現在の考え方についてはつまびらかにしておりませんが、いずれにしても最終的な結論は岐阜県としてもまだ出していないというふうに聞いております。
  224. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)分科員 先ほども話がありましたように、五十九年三月三十一日に本換地が認可された。それ以前にも何回も調整に入りまして、何回も解決しそうになったが、それができないので不幸な事態になったことは私も非常に残念に思っておるのです。  しかしながらここに、県が五十九年三月三十一日付で認可をした同日に、その以前に異議の申し立てをしていた人々に対して異議の申し立てを却下して、認可しておるわけですね。その却下した文書の中には、この十メートル道路がこの土地改良区の中でできたもので、ですから農民の中には、おれたちはそういう区画整理をやるのではないのだからそのような大きな道路は要らないという意見と、つくってもいいじゃないかという意見と二つに分かれた。しかしながら、土地改良区としては強引にこの十メートル道路をつくってしまった。そうすると、県の認可した土地改良事業の計画書には六・八メートルにしかなっておらない。するとその差額の三・二メートル、四千メートルに及ぶ長さを持った三・二メートルの幅員がだれのもので、どういうふうに捻出したのかということがいろいろ問題になってきたのです。ところが、土地改良区に言わせるとこれは共同減歩した、こうおっしゃる。だから、共同減歩ということが果たしてできるのかどうかと私は昨年質問したら、それはできませんとおっしゃった。私も当然だと思うのです。ところが土地改良区は、これは共同減歩だという一点張りでいまだにおるのです。こういうことは正しいのですか。どうですか。
  225. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 区画形質の全面的な変更をいたします圃場整備に際して、せっかくやるのだから、例えば農業的観点は若干離れるけれども市町村道の整備も兼ねて拡幅するというようなことは間々行われているわけでございます。その場合には、市町村がその分だけ買収費に相当するものを事業費の助成という形でやっているわけでございまして、これは、法律的にはいろいろ細かい理屈をつけなければなりませんが、共同減歩ではございません。そのような取り扱いがなされることはわかるわけでございますが、いずれにしても、その場合には全員同意ということでございます。これは土地改良施設、あるいは五十九年で若干改正されましたが、みんなに受益するものについては共同減歩かけることは、法律の論理からいっても、地区内の農地がそれだけ価値が上がるわけですから、みんながその分だけ面積が減ることを我慢しよう、これは法律でも認められているところでございます。  しかし、それを農業目的以上に拡幅しようということになれば、それは別途の法手続を複合させていかなければならないわけでございまして、これは四十七年改正以前は、土地改良法自身にはその手続はなかったわけでございます。  さようなことからして、私どもも、その事実の説明の仕方については、岐阜県が一種の路線価方式による評価をやっているのだから、道路沿いの土地所有者に対する配分面積は少なくても照合原則に反しないという説明をしているやにも聞いております。これは必ずしも共同減歩という論理が無理であるからそういう説明になるのだろうと思うのでございますが、いずれにいたしましても、最初に私、ボタンのかけ違いと申し上げましたのは、まずその辺から法律の基本的な考え方に対する理解が欠けているのではないか。もっともこれは、それぞれ担当者土地改良区、それから指導いたしました岐阜県から話を聞いた上での結論ではないわけでございますから、その意味では留保をつけますけれども、今先生が御指摘された限りでは、どうも法律の理解にやや問題があるのではないか、かように考えます。
  226. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)分科員 県の却下文書によりますと、今申し上げたように、その地先の人々にこれは田ですよということで換地がなされた。それで登記がなされた。しかし現況は道路だ。だから田に戻せ、こういう異議の申し立てに対する却下文書に、こういうことが書いてある。「換地計画と工事計画は一体であるとの原則から、現況が道路であっても換地明細書における地目は田とせざるを得ない。」これはおかしいと思うのです。換地計画というものは、現況をきちっと把握し、そしてかくあるのだということで換地計画を認可しなければいけない。しかし、工事計画と換地計画とは一体の原則だというと、今度はこの十メートル道路の工事計画も土地改良区の工事の一体になってしまうのです。これはそう理解していいんですか。
  227. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 これは事実関係を詳細に見ないとわかりませんが、農地法違反の農地転用の問題も出かねないわけでございます。そういう意味で、法に定められないそういう手続を圃場整備と合わせて一緒にやる場合には、細心の注意を払った上で、関係者の全員の御納得の上で進めなければならない性質のものであったわけでございますが、私が知り得た範囲内では、どうもそのような進め方がなされていないようでございまして、これは大変遺憾であります。  それからなお、先ほどの岐阜県の異議申し立てに対する裁決については、私どもはその内容について相談にあずかってないものでございますから、その内容の是非について今ここではちょっと申し上げられませんが、ただいま申し上げましたようなことが、先生から御指摘を受けた限りでは考えられます。
  228. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)分科員 私もこの文書を読んでちょっとびっくりしたのです。こんな文書を出して、そして一体感を出したら、これは土地改良区の事業として認めてしまったことになりはしないか。ところが、土地改良区では別工事がやれるかどうか、幾ら法を調べてもそれが旧法にはないのですよ。  ところが、この工事を行うに当たって工事契約を結んでおるのですね。その工事契約を見てみますると、三つの工事契約に分かれまして、そして四千万円近い、正確には三千七百九十万円、延長三千八百七十五・四三メートル、これを五十三年の十二月に契約をして、工事に着工して完成をしていらっしゃるわけですね。そして、これの工事の発注人は、岐阜市合渡土地改良区理事長市川一、こうなっておるのですよ。これで発注したということになると、もう土地改良区の事業としてやっちゃったんですね。  そして今度は、この特別会計の金はどこから入ってくるかというと、ここにもあるのですが、剰余地処分として出てくるのですね。そして、この剰余地を処分した金をこの特別会計に寄附行為ということで入れて、その剰余地処分をした金で払っていらっしゃる。それで、現在それが十億余っておる、こういうことなんですね。  こういうことになってくると、この支出は、土地改良の特別会計と名前をつけようとどうしょうと、これはもう土地改良区の金だと私は思うのですね。そして、剰余地処分ということが平気でうたわれてくるのです。そしてまた、一部分はその剰余地をいまだに理事長名義でそのまま持っておる部分もかなりあるのです。こういうことはいいのですか。
  229. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 先生の御指摘いただいた事実の限りでは、疑問の点が数々ございます。ただ、私といたしましては、やはり仮にも知事名の認可をし、それから異議申し立てに対する裁決処分もした岐阜県担当者の考え方も聞かないうちは、最終的な判断は申し上げられませんが、先生から御指摘のあった事実に関する限りは、現在の土地改良法で想定している事業のあり姿とはかなりかけ離れているということが言えるかと思います。  若干申し上げさせていただければ、恐らく公共用地を確保するために同じような手法を使ってやられている事業というのはほかにもあっただろうと思いますけれども、それにしては、先生から伺った限りでは、手続的な処理が極めて問題が多いのではないか。土地改良区のそれぞれ理事者の方々は、ほかのところでもやっている話であるからというふうなお考えかもしれませんが、事務的には、もうちょっときちっとやればそれを合法でやることはできないことはないわけでございます。それからまた特に、そのような法律に書いてないことをあわせてやるわけでございますから、全員納得ずくでやっていただく必要があったのではなかろうか。先生からのお話を承った限りでは、そういうふうに私どもは判断いたします。
  230. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)分科員 もう一つ重ねますけれども、同じことをもう一遍聞きますが、本換地のときに換地計画を認可した、五十九年三月三十一日、そのときに今申し上げたようなそういう剰余地処分をして、それを今、理事長鷲見善市の名義で岐阜市曽我屋四丁目百三十番地にかなりの土地をいまだに持っておるわけですが、こういう換地ということはいいのですか。
  231. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 先生から今お話を承った限りでは、ちょっとその事実関係が理解しにくいのでございますので、ちょっと判断は保留させていただきます。
  232. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)分科員 じゃもう一遍申し上げますが、剰余地として出た土地を今度は五人の役員の名前で本換地のときに登記を受けたのですよ。そして、四人の分は、先ほど申し上げたように、これをある建設会社へ売却して約六千万円ほどの、五千数百万円ですが、その収入金の全部じゃありませんけれども、いろいろなものを引いた残りがこの特別会計へ入って、そして今、理事長の分はいまだにそのまま理事長の名義のままで保有していらっしゃる。こういう換地計画というものはいいのかどうか、こういうことを聞いておるわけなんですがね。
  233. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 先生も既に御承知のように、現行土地改良法では保留地処分は認められておりません。その保留地処分と類似の行為が四十七年法改正によってはできるようになった部分もあるわけでございますが、そのような場合も常に土地改良区の名義になるべきではないか。ちょっと私も、もう少し詰めて考えてみませんと即答はできないのでございますが、いずれにしても、個人の所有地に配分されるということになると、これは照合原則その他、それから清算の関係がどうなるか、いろいろ問題をもう少し詰めてみないと判断できないのではないかと思うのでございます。
  234. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)分科員 私も土地改良区の名義になるべきだと思うのです。それがそうでないから問題がある。そしてそれを特定の建設会社に売却をする、こういうことが行われておるわけです。その他今申し上げたとおりなんですが、重ねてもう一遍局長に聞きますが、この場だけ、調査して善処します、指導しますだけじゃ困るのですね。正しくない、不当であるとするならば、これはもう農林大臣あるいはまた知事は土地改良区に対して指導もできるし検査もできるんです。それで是正させることができるんですよ。なぜこれをやらないのか。一年間本当の調査がなされておらぬように私は思う。口先だけのことでなしに、これからどういうふうにおやりいただけるか。  それから、こういうことが実態としてあるということを踏んまえて、これは大臣そのものに聞いておきたいのですけれども、こういうことを臭い物にふたをして通してしまう、それで三月には解散しようじゃないか、事消えてしまう、こういう動きもあるのです。私は旧悪を暴くとかそういうことでは全くないのです。ただし、正しく農民の方々が納得するように、全員が納得するように、公共事業のためにし尿処理場をつくったり道路用地、ほかの道路用地ですね、県道などの道路用地、あるいはまた天王川の用地、こういうものはみんなが納得して出したんです。これはいいんですよ。ところが、こういう乱暴な手法で特定の道路をつくってそして特定のことをやるということは決して好ましくない。こういうような意味で、大臣、ひとつこれに対して最後に御所見を承りたい。まず局長から承り、それから大臣から承ります。
  235. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 土地改良区の解散については知事の認可が要るわけでございますので、事態があいまいなまま解散するというような事態はあり得ないわけでございまして、私どももそこはよく岐阜県にあらかじめ注意を申し上げたいと思います。  それから、大変複雑な事実関係と法律関係の入りまじった問題でございますので、結果的に先生に今御指摘されたような事態を招いていることは大変遺憾でございますが、改良区に対する一次的な検査権限は県にございますが、私どもも土地改良区に対しては検査権限を持っております。岐阜県から事情を聴取し、県の考え方も聞いた上、さらに要すれば私ども自身も検査することも当然考えなければならぬ、こういうふうに思っております。
  236. 羽田孜

    羽田国務大臣 今ずっと御論議を聞いておりまして、大変長いことこの問題についてあいまいなものが進んでおるというところに問題がある。こういうことをあれしておりますと、やはり土地改良そのものに対するあるいは行政に対する不信というようなものになってきてしまうと思っております。その意味で、今局長からも御答弁申し上げましたように、私どもといたしましても県当局と十分相談させて一日も早い解決を図るように努力させていきたいと考えております。
  237. 渡辺嘉藏

    渡辺(嘉)分科員 終わります。ありがとうございました。
  238. 武藤嘉文

    ○武藤主査 これにて渡辺嘉藏君の質疑は終了いたしました。  次に、滝沢幸助君。
  239. 滝沢幸助

    滝沢分科員 委員長御苦労さまです。大臣御苦労さま、皆さん御苦労さまです。  農水に対する質問、なかなかいい質問がない、したがってなかなかいい答えもない。つまりは今日、日本農政が置かれている立場、農家の皆さんが苦労されている立場というものは、起死回生の妙薬、ペニシリンはない、救命丸もない、こういうことだと私は思いまして、それにはやはり気の長いいろいろの工夫を複合的にしていく以外にないのだな、こんな理解をしながら、以下二、三の愚問を申し上げさせていただきますから、お答えの方は愚答じゃなくてひとつ賢答の方でお願いしたい、このようにお願い申し上げて、二、三のことを問わさせていただきます。  ところで、私は、今申し上げましたように、日本農業の実態、農村現実というものは非常に複合した困難に直面しておりまして、いわばある意味で歴史上かつてない受難のときと思うのでありますが、そういうときに私は、ややもすれば農家の希望されるもの、農家の意識、農家の悩み、これが如実に行政にあらわれてはいない嫌いなしとしないと思うのでございます。そこで、私は農家の意識調査のようなものをもうとっくにやっておありだろうと思うのですよ。そして、農家は一体何に悩み、何におびえ、何を求めているか、このことの資料が農水省には持っていていただいておる、こういうふうに思うのですが、そのようなことがあったでしょうか。ありましたらその結果等をお示し願いたいと思います。
  240. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 農政を進めるに当たりましては、農家の考え方がどうであろうかということを把握することが一番大切でありまして、先生御承知のとおり、地方農政局という組織を我々は持っておりますので、そういう末端組織に常日ごろ農家の方々の考えなり将来に対する不安、こういうことも把握さしているつもりでございます。ただ、全国一斉的な調査というような形で農家の意識調査をしたということは、農林水産省自体では実はやっておりませんが、例えば総理府で昭和五十九年九月に「食料及び農業農村に関する世論調査」というのを一斉にやっておりますし、NIRAと称する総合研究開発機構でも「現代農業者の意識像」という調査をやっていただいております。これらの調査で、いろいろなアンケート項目がございますので余り多くは紹介できませんけれども、例えば、一番最初申し上げました「食料及び農業農村に関する世論調査」という総理府の調査では「苦労が多いわりにはもうからない」というふうに答えましたのが最も多いわけでございますけれども、ただそれにすぐ次ぎまして、「作物を育てる喜びが味わえる」というような農業に対する非常な親密度合いというものを表現なさっている答えもあるということで、両一的にどちらという結果にはなっていないようでございます。
  241. 滝沢幸助

    滝沢分科員 一番多いのは「苦労が多いわりにはもうからない」、二番目は喜びもある、こういうどこかの週刊誌の今の若い方々に対するアンケートのような形ではなくて、もっと切実な具体的な農民の意識の吸い上げというものがないものでしょうか。例えば、農家は本当の意味で借金を平均どのくらい持っておりますか、そして基盤整備事業にかける願いはどうなのか、ないしは補助金等に対する要求はどうなのかというようなことを、さっきおっしゃったような抽象的な調査ではなくて、もっと親身に迫る調査農政局等はやっているのですか、やってないのですか。
  242. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 農家の経営状況でございますとかあるいは借金の実情、こういうものにつきましては、農家経済調査でございますとかあるいは全国的に一斉にします五年ごとの農業センサスというような形で、農家なりあるいは農業経営、こういうものの実情につきましては相当精密な調査はもちろん行っております。
  243. 滝沢幸助

    滝沢分科員 私は東北、特に会津でございますが、それによりますと、どのような具体的な苦悩、具体的な問題を抱えて、何を目指しているのでしょう。
  244. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 調査の性格上、農家がどう考えているかということではなくて、いろいろな経営状況でございますとか、資産状況でございますとか、こういうような経済的な数値から農家の悩みということを推定するより調査としてはしようがないわけでございますけれども、それら等見てみますと、やはり兼業化が非常に進み、それから老齢化が進んでいく、そういう中で借金というものも地域によってはかなり多い、それからあとは、先ほどちょっと先生から御指摘いただきましたように農家の後継ぎ自体が高齢化し、場合によってはお嫁さんがなかなか見つかっていないということがそういういろいろな経済的な指標から推定されるところでございます。
  245. 滝沢幸助

    滝沢分科員 大臣、いろいろの調査をやっておいでなんだろうけれども、いわばかゆいところに手の届かぬ嫌いなしとしないと思うのです。  そこで、大臣たびたびおかわりになりますから、前の大臣がおっしゃったことをここで申し上げてもそれは不渡り手形になっておりまするけれども、実は私は昨年の農水委員会でいろいろと申し上げました。そうしましたら、佐藤大臣さんの認識とは随分と違っております。私は、今日の農家は非常に追い詰められている、その証拠には農家に花嫁がないじゃありませんか、農家に若い人の後継ぎがないじゃありませんか、このように申し上げました。今も調査の中でお嫁さんのことをおっしゃっていただきました。そうしましたら前大臣は、はあ、それは滝沢さんのところと私の方は随分と違うものですね、私の方はとにかくちょうだいする招待状が農家の結婚式で、全く忙しくて、農家の花嫁はたくさんございます、こうおっしゃっておるわけです。そこで私はやや頭に来まして、いろいろお伺いしても農林省のお答えはもう大丈夫でございますという御返事なものだから、ちょうどそこには食糧庁長官も見えておいででした、そこで、農林省のお役人さん、お偉い方々よ、そのように今日日本農政に前途の希望があっていいことになっていろんならば、とかくの批判を受けながら退職のときに天下りをしなさらないでみずから農家をやってみなさったらどうですか、六十歳そこら辺で定年になりなさったら、今農家の働き手はまさに七十代が、特に私のごとき会津の過疎地におきましては七十代が田んぼに出ている主力でございますから、あと十年がほど、私が役所におって三十数年間求めていた、奨励していた、叫んでいた農業経営はこれだよというふうにやってみなさったらいかがですか、こういうふうにお伺いしました。そうしましたら、あのお部屋の中で一番偉いお役人さんは食糧庁長官でしょうか、大臣は違いますからな、そこで立ってお答えされていわく、いや私は本当にそれをやりたいのでございますが、実は私が今退職金をちょうだいしまして、数字は忘れましたが、おおよそ幾らになります、しかし三町歩ぐらいの田んぼがありませんと理想的な農業経営はできないものでありますから、田んぼを買いかつ資材等を買うにはなお足りないものでありますから、やりたいけれどもできないのでございますと言いますから、私は、ばかをおっしゃるな、冗談というものは休み休みおっしゃい、ここは議会の委員会ですぞ、そうならば、私の方においでなされば二町歩でも三町歩でも田んぼをその半分はおろかただでも差し上げる方がたくさんありますから、どうぞひとつ農村が今荒廃、滅亡しようとするときにあなたがいらしてやってちょうだい、こう申し上げたのでございます。  そこで大臣大臣農林大臣に御就任あそばしまして、若き前途を目指す政治家として多くの期待を全国の農家から寄せていただいていらっしゃるわけでありますが、今の前大臣との問答を含め、今の農家の状況というものをどのように御判断あそばしておられるか、お伺いしたいと思います。
  246. 羽田孜

    羽田国務大臣 今農村にお嫁さんが来ないという問題、実はこれは私は相当長いこと問題意識として持っております。と申しますのは、私が農林政務次官に就任いたしましたのはたしか今から十年ほど前でございました。そのとき農協婦人部の大会に出まして、そのときに、たしか藤田三郎会長さんだったと思いますけれども、訥々として農村現状についてお話しになり、嫁が来ないという話をされたものであります。そのことが頭にありまして、私どもとしても、なぜ嫁が来ないのかということで、嫁が来るような、後継者がどんどん農業に入っていけるような農村をつくらなければいかぬということでいろいろな議論をいたし、そして農林水産省も、そのときも進めておりましたけれども、さらに積極的に進めてまいりましたのが農村の、例えば話し合いの場所であるとか運動の場所であるとか生活の場所であるとか、そのほか生産基盤整備というものも、厳しい予算の中でありますけれども重点的にその問題について取り組んできました。そして、十年たって私が改めて今農林水産大臣に就任したわけでありますけれども、この一年ぐらい前、そして最近、つい一カ月ぐらいの間にも、嫁の問題について幾つか新聞に出ております。これは、ある村におきましては結婚のあっせんのために紹介をした場合には十万円を差し上げましょう、ある村は二十万円、その話をしましたら、いやおれの村は三十万円というお話も実はあったわけであります。それだけですとあれでありますけれども、鉛その他で海外にお嫁さんを求めるツアーを組んでおるという実態もございまして、今までいろいろなことをやってきたけれどもまだこういう状況であるということに対して、実は暗たんとした気持ちを持っておるというのが率直なところであります。  ただ、あるいは先生と御意見がそこであれするかもしれませんけれども、それじゃ農村というのはもう本当にだめなんだろうかということを考えますときに、確かに厳しい場所もございます、またある程度明るい展望を持てるところもある。私がこの間行った農村といいますか農家あたりは、法人をつくりながらやっておりました。夫婦二人ずつ、全部で十四人でやっておりますけれども、一人当たり五十万円、一軒が百万円ほどの給与という形でもらっておるという実態が七家族の中にございました。そういうものを見たときに、決して広いものじゃありません、それを新しい水耕栽培とかいろいろなものを取り入れながらやっておるわけですけれども、やはり地域の特性なんかを生かしながらやっている人たち、あるいは田んぼそのものは小さいかもしれないけれども複合経営をやっておる農家の方たち、こういった人たちの中に相当大きな成果を上げておるという実態を私たちは見るわけでございます。  やはり、農業というのはだめなんだ、だめなんだということで、お嫁さんに来てもらうためにこんなことあんなことというのを余りやると、いよいよもってだめなものだというようなあれになってしまう。むしろ、私は、これから規模の拡大ですとか新しい技術の展開ですとか、そういったものを取り入れていくことによって、日本農業は決してだめなものではないんだということをお示しすることが必要なんじゃないかなと思います。ハードは必要でありますけれども、ハードだけではだめなんで、ソフトのそういった面、農村のよさというもの一確かに大学を出て東京のサラリーマンになるあるいはお役人になれば、ある程度の給与をもらえますけれども、ではその人たち生活している家というものは一体どうなんだと見たときに、そこにはほとんど空間がない。子供たちも、ちょっと走り回ったらもう下の部屋から怒られてしまうというような現状もありまして、農村というのは、農業というのは決して悪いものではないんだということをこれから私たちは本気で考え、そういったものをみんなで示せるような話し合いとかそういったこともしていく必要があるんじゃないかなということを今実は感じております。  もちろん、私ども十年間やってきながら、私たち自身にも責任があるわけでございますけれど、そういう経験を踏まえながら、これから先生方ともお話し合いしながら、お嫁さんが来る、しかも後継者が喜んで参入できる農業というものをつくり上げていかなければいけないと考えております。少し長くなりまして恐縮でございます。
  247. 滝沢幸助

    滝沢分科員 今花嫁を見つけてきた仲人さんに助成金というのですか御礼というのですか、こういうものを出していらっしゃる町のお話がありました。けたは違いますが、会津のある町も一万五千円ずつ下さるというので、大変苦労されているんだな、これだけの苦労を農協ないしは町村長さんにさせるほど今の農家の花嫁の問題は深刻なんだなと受けとめたわけであります。  私の村落のごときも、六十世帯でございますが、五十代の人が三人おります。四十代は四人も五人もおります。これが農家の長男なるがゆえに花嫁の来手がない、こういうことでありまして、この青年、青年でなくなりましたが、この人たちが一番憂うつにしていたたまれないのがお盆でございます。弟、妹が皆家族連れでふるさとに帰ってきますね。そのときこそ長男が一番やるせない思いに浸されるときでございます。そのような意味では、今農家が置かれている立場は非常に厳しい、厳しいという言葉以上に厳しいと御理解いただいてよいであろう、私はこういうふうに思うわけであります。  そこで、その厳しい現実をあらわすものとして二つのことをお伺いさせていただきます。  一つは、まことに簡単なことであります。特に農業科と申し上げれば一番いいのでありますが、ほとんど農業科もなくなってしまったのですが、新卒の、高校を終わった青年は果たして何%が就農しているのであろうかということが一つであります。これはまことに簡単な数字であります。  ところで、もう一つ農業者年金のことであります。これは先ほどの年金法の改正等によりましていろいろと工夫が凝らされていることでもありますが、現実には——きのうも役場の担当の方から、君は農水部会で質問をするそうだけれども、このことを訴えてくれと電話をいただいております。それは、最近農業者年金の加入の促進ということを上から、町村にしたら県なんでしょうが、強く言われる。しかし一方からいうと、支給の状況等が、決めつけと言っておりました、決めつけなのか締めつけなのか知りませんが、非常に厳しくなってきております、こう言っておりました。特に妻に対する移譲が全然認められない。奥さんが十歳若ければ、ましてや十五歳若ければ、お父さんが相当の年になってもなお数年間は持ちこたえることができるということでありましょうか、それすらも認められない。第三者というのだけれども、第三者などというものは、お隣の田んぼを引き受けて農業をしようなんという者はいない、こう言っておりました。そのときにこの人は、六十五歳になるまで全然恩典に浴することができないのであろうか、これでいいんだろうか、自分が窓口で役場におってこの仕事をしながらも、この制度の矛盾と非現実的なことに悩んでいる、こう言って訴えておりましたけれども、こういうことについては大臣、何かいい工夫はないものでしょうか。     〔主査退席、柿澤主査代理着席〕
  248. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 若干事務的な側面もございますので御説明させていただいて、大臣から後のど御説明いたします。  農業者年金制度は、先生も御案内かと思いますけれども、各種公的年金を一元化する年金政策の仲でほとんど唯一の例外として、構造政策の推進という観点から農業者に対してのみ認められた政策年金でございます。したがいまして、当然のことながら年金支給が構造政策の推進つまり経営の規模拡大あるいは近代化に役立つという一定の使命を負わされておるわけでございまして、まさに加入を促進される立場からいうと大変やりにくい面があろうかと思います。特に昨今農家数の減少、それに対して農村の社会の高齢化が進みまして加入者が伸び悩んでいるところに支給額がふえてくるということで、将来の年金財政が非常に憂慮されるところであるわけでございまして、このような観点からかなり加入促進をやっているわけでございます。  配偶者についてなぜ認められないかということは、私どもも強い御要望を聞いておりますけれども、先ほど申し上げましたように、本制度が構造政策の推進に役立つという目的を持っている以上、本当にこれを認めることは難しい事情も御理解いただきたいと思います。さらにまた、第三者移譲でございますけれども、確かに今日本の内地、各地でいろいろ事情が違います。確かに山村地帯では耕地を引き受けて耕作しようというそういう受け手がいないというような事態があることは私どもも率直に認めますが、また別に、主要な生産力地帯ではどんどん拡張をしようという意欲に燃えた人たちもいるわけでございまして、たまたま先生のところにお電話された担当者の方の実情にはそぐわない面もございますけれども、非常に日本各地、実態がさまざまであることも御理解いただきたいと思います。  なお、私どももできるだけ現地に担当者が赴きまして実態も認識し、いろいろ実際にお仕事に悩んでおられる方からの御意見も聞いて、制度の運用の改善を、厳しい枠の中ではあるわけでございますが、その中でやってまいりたい、かように考えております。
  249. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 今のお尋ねの前段の就農率の問題でございます。これにつきましては、私ども把握しておりますのは、中卒以上の学卒の農家子弟、これで就業した者が六十年三月の場合にはおよそ十七万六千人ございます。そのうちに自家農業に就農した者が四千二百人ということで、就業した者のうちの自家農業に就農した人の割合でございますが、二・四%でございまして、いわゆる就農率は二・四%ということになるわけでございます。
  250. 滝沢幸助

    滝沢分科員 大臣、お聞きのとおりであります。ですから、日本じゅうを一元的に考えるところに農業者年金の、いわゆるさきに申し上げましたかゆいところに手の届かぬ部面があるわけです。そこで、どんどん拡大する可能性のあるような地区と、もうどんどん過疎となり——私の出身の会津の金山町のごときは、このほどの国勢調査で一四%、一五%という減少率でございます。そんなことを思うときに、ほとんどの子弟はうちにはいない、東京にないしは会津若松市にというときに、これは役所をごまかさなければ農業者移譲年金はちょうだいできない。仮に役場に就職をしている息子があったならばこれはできる。みずから建設業を経営しているないしはそこの従業員というものは何とかできよう。しかし、公務員を何とか移譲年金をもらうためにだけでもひとつ自分の町に、学校の先生だったら近くの先生に一年でも来て移譲の手続だけをさせてくださいなんということをお願いされる現実であります。そこら辺のところも御理解いただきまして、何かもっとひとつ工夫がないかどうか、大臣から最後におっしゃっていただきまして、終わらせていただきたいと思います。
  251. 羽田孜

    羽田国務大臣 工夫といいましても、なかなかこれ、確かに難しい問題で、みずからが、その父親なら父親が入る、そして年金、これは農業を移譲するという実は年金でございますから、そういう意味でその親が入ったときに子供が受け継ぐであろう、しかし、それを支払う人が今度ほかの作業の方に行ってしまってこちらの方には掛金は払えないという中で今実は大きな問題があります。それからもう一つは、農業というものにどうも希望がないということで、自分としても入っても将来また離れてしまうであろうというようなことで入っていただけない方がまだ相当あるということで、今この問題については工夫というよりは、知恵というよりは努力をしながら今呼びかけ等を行っておるところでございまして、年金の制度そのものについてもこの間相当厳しい制度改正もせざるを得なかったということでございまして、そう確たる知恵というものはなかなかないと率直に申し上げたいと思います。
  252. 滝沢幸助

    滝沢分科員 いろいろ意に満たない点もございますが、時間でもございますし、それほど簡単にこの答えが出てこないのが農家のまして農政現実だと思いまして、今後に多くを譲りまして終わらせていただきます。  大臣、どうも御苦労様、ありがとうございました。
  253. 柿澤弘治

    柿澤主査代理 これにて滝沢幸助君の質疑は終了いたしました。  次に、佐藤誼君。——速記をとめておいてください。     〔速記中止〕
  254. 柿澤弘治

    柿澤主査代理 速記を起こしてください。  佐藤誼君。
  255. 佐藤誼

    佐藤(誼)分科員 それでは、養豚経営について質問してまいりたいと思います。  昨年の十月以降、豚肉の卸市場価格が安定基準価格六百円を下回ることになりまして、養豚経営農家にとっては大変な事態が続いているわけです。そこで、最近の豚肉の卸市場価格の推移についてどうなっているのか。それから、昨年の十一月から実施した畜産振興事業団の助成による豚肉の調整保管の状況は今どうなっているのか。この二点について尋ねたいと思います。
  256. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 まず、豚肉の価格の状況でございますが、昨年の九月以降、安定基準価格でございます六百円を下回る水準で推移しておりまして、これに対しまして、ただいま先生の御指摘ございましたような対策の一環といたしまして、畜産振興事業団の助成による調整保管事業を実施しているところでございます。  最近における価格の動向でございますが、例年一—三月は豚肉の不需要期ではございますけれども、調整保管等の効果もございまして、豚肉価格は着実な回復傾向を示しておりまして、最近ではキロ当たり五百六十円から五百七十円の水準に回復するに至っております。  なお、調整保管の実施状況でございますが、買い入れ場所は卸売市場十七カ所、産地食肉センター二十九カ所で実施しておりまして、買い入れ頭数は約八万頭ということに相なっております。
  257. 佐藤誼

    佐藤(誼)分科員 今市場価格が五百六十円から五百七十円ということを言われました。確かに回復はしてきていますね。しかし、安定基準価格は六百円なわけですからね。牛肉などは上位価格の方を推移しているようですが、農家の皆さんからいうと、まあ六百円にまだ満たないのだから、そのために行われた調整保管の頭数を、今八万頭と言われましたけれども、枠としてはたしか二十九万頭あるわけですから、やはりもう少し調整保管をして安定基準価格に豚肉の市場価格を近づけるように、こういう希望がかなりあるわけですけれども、その辺はどうなっているのでしょう。
  258. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 今回の豚肉の価格の要因でございますが、これは何と申しましても、ここ数年来需要が停滞的に推移しているということでございますが、生産につきましては、まさしく需要を超えて、いわゆる過剰生産の状態が続いておる。いわばこの過剰生産がこの価格の低落の要因であるというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、私ども実施しております調整保管事業のほかに、生産者団体におきましても、需要に見合った生産を進めるという観点から、先生御案内のように昨年の十一月から十二月にかけまして母豚の淘汰を実施したということでもあるわけでございます。  そこで、私ども、調整保管を実施するにつきましては、確かに大量かつ急速に行うということも一つの考えかと思うわけでございますが、急激に価格を回復させることはかえって過剰の基調を固定化してしまう、あるいは慢性化してしまう、そういうおそれもあるわけでございますので、調整保管を実施するに当たりましては、計画生産の浸透ぐあい等々も十分見きわめながら段階的に価格回復を図る、そういう方向で実施をしているということでございます。
  259. 佐藤誼

    佐藤(誼)分科員 今答弁にありました急速に市場価格を上げていくということはかって経験した過剰生産に拍車をかけ、あるいはそれが安定、固定化してしまう、こういう危惧は、私は答弁として理解できないわけじゃないけれども、やはり厳しい養豚経営をやっている皆さんからいえば、御案内のとおり安定基準価格という法律上の建前からいっても、これはやはりその額を下回って指定食肉の価格が低下を招かないようにという建前になっているわけですね。ですから、私の立場からいえば、ちょっと八万頭ではまだ足りないのじゃないか、二十九万頭あるわけですから、安定基準価格に上げるような方向でもう少し調整保管の頭数をふやすべきだというふうに考えますので、この点は全体を見ながら、農家の経営の厳しい皆さんの期待にこたえるように、十分今後配慮していただきたい、このことを強く申し上げておきたいと思うわけであります。  なお、次の質問に移りますが、かつて昭和五十四年ごろに大変厳しく、その後割合に安定的な経営が続いて、昨年の十一月から大変な事態になっていったわけですが、そういう一つの波はあるわけでありますけれども、最近の養豚の経営の実態をそういう波、波長の流れの中でどのように押さえているのか。また、最近、養豚経営を含めて、畜産経営の固定化負債が増大をして、倒産も含めた厳しい局面に立たされている農家が地域によっては相当見られるのです。したがって、その辺の対策をどう考えているのか、また、どう対応しているのか。これは地域によってかなり違いがあるものですから一律にとらえるわけにいかぬと思いますが、私は山形県の海岸の庄内地方というところに住んでおりますが、農協によってはかなりあるのです。したがって、その辺についての考え方と対策について、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  260. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 養豚経営一般について申し上げますと、先ほど申し上げましたけれども、この数年、豚肉の価格は堅調に推移したわけでございます。また、飼養規模の拡大が順調に進んでおるということ等もありまして経営自体は極めて収益性等において順調である、かように考えているわけでございます。また、こういうことが逆に生産を刺激いたしまして今回の過剰生産を来したというふうにも考えるわけでございます。したがいまして、その収益性も、昨年の九月以降卸売価格水準が安定基準価格を下回るという事態も出てまいりましたので、その意味では収益性が六十年に限って見ますれば前年を下回るということもあろうかと考えますが、これもことしに入って漸次回復をしてきておるという意味では、さらに改善の方向にあるのではないかというふうに考えておるわけでございます。  したがいまして、養豚経営の負債一般について申し上げますれば、例えば統計情報部で調査しております農家経済調査で見る限り、全国平均で見ますと養豚農家二月当たりの負債は五十九年度末で約八百万という数字になっております。これに対しまして資産額は五千六百万、また貯蓄額は千六百万ということになっておるわけでございまして、負債額は資産額、貯蓄額いずれをも下回っておる、そういう実情にあるわけでございます。したがいまして、私ども現状におきましては、一般的に特別の対策を講ずる必要はなかろうかと考えておるわけでございますが、ただいま先生指摘のように、中には一部の地域あるいはまた特定の農家につきましては固定化した負債を抱えておるという農家もないではないようでございますので、この点につきましては農家実情をよく調べた上で、先生御案内のように自作農維持資金制度がございまして、その中で再建整備資金もあるわけでございますので、この辺の資金の円滑な融通をもって対処していきたい、かように考えております。
  261. 佐藤誼

    佐藤(誼)分科員 負債額が貯蓄を下回るという一般的な経営状況の中で、特別の対策をするというのは特殊な地域とか状況の中だ、こういう趣旨のことを言われましたが、私はその答弁が不満だとか事実に即さないということを言っているわけじゃないのだけれども、しかし地域によってはかなりそういう地域があるということを認識していただきたいと思うのです。  ちなみに全中の調査などを見ますと、今問題にしました固定化負債が、少しある、かなりあるというのを合わせますと八〇%と出ているのですね。ただ、その中に、少しあるというのは六六%ですから。山形県のある一部の養豚、あるいは養豚だけじゃないけれども、畜産団地なんかを見ますと、二十七戸のうち倒産に追い込まれたというのが七戸もあるというようなことで、農協からそういう資料なども出てきている。それかも、これまた全農畜産事業部の調査ですけれども、昨年の五月基準ですが、負債額に対して延滞額がどのくらいあるかといいますと、大体負債額の四〇%が延滞額だという数字等も出ているのですよ。ですから、この辺は統計する主体なり対象でかなり違うと思いますけれども、この間山形県のしかるべき地域で、養豚経営危機突破というときに、今の価格の問題やら調整保管の問題等も出た中で、負債の問題なりこの累積している固定化負債をどうするんだ、こういう声がかなり出ているので、この辺はそれなりの精査をしながら、今いろいろ対策の話も出されましたけれども、ぜひその辺は適切な対応と指導をしていただきたい、このことを申し上げておきたいと思いますが、重ねてその点はどうですか。
  262. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 ただいま先生指摘の点、山形県の地域あるいは全農等のデータ等につきましては早速調べまして、特段の対策を講ずる必要があるかどうかにつきましては十分吟味した上、適切な対応をいたしたいと考えております。
  263. 佐藤誼

    佐藤(誼)分科員 養豚経営を中心とした畜産の問題の質問はこれで終わりますが、農林大臣、先ほどから質問しているように、ようやく豚肉の卸売価格が上昇してきたとはいいながら、まだまだ厳しい局面を脱していないわけです。えさ代が下がりましたけれどもね。ですから、そういう状況で長期的に見た場合に、この養豚経営、広い意味では畜産経営をどういうふうに持っていったらいいのか、悩み多い課題ではありますけれども、基本的なこれからの持っていき方の大臣の考え方を最後にお聞きしておきたいと思いますが、いかがでしょう。
  264. 羽田孜

    羽田国務大臣 畜産経営の中でも大型の畜産といいますか、牛の方は割合と安定して価格もいいところに来ておると考えておりますけれども、確かに豚の場合あるときにはまた養鶏、採卵といった小型の畜産の場合には非常に問題があるということは私どもも承知をいたしております。ただ、このところ飼料価格が、いわゆる円高によりまして、あるいは飼料が各国ともなかなか豊作であったというようなこと、こういったことはいい影響に働くはずのものであるわけでございまして、ただそれが少し安くなったからといって急激にまた生産をふやしてしまうということになりますと、全体に価格が低迷してまた農家の経営を圧迫してしまうということでありますから、その辺の調整を私どもも十分見きわめながら振興していかなければならないと考えております。
  265. 佐藤誼

    佐藤(誼)分科員 養豚、畜産関係は以上で終わりまして、水産業関係について質問したいと思います。  端的に聞きますが、最近の漁業経営を取り巻く情勢の特徴をどうとらえているか、端的にお答えいただきたいと思います。
  266. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 我が国の漁業経営は、ちょうど高度経済成長の時期におきましては、国民所得の伸びに伴います需要の増加で魚価も堅調に推移いたしました。その当時は燃油の価格も安定いたしております。漁場という面から見ますと、当時はまだ公海漁業自由の時代でございますから、そういう条件に恵まれて順調に推移をいたしておったわけでございますが、燃油価格につきましてはオイルショック以来、それから需要の面につきましては高度成長の終えん、安定成長への移行に伴い、それから漁場面につきましては二百海里時代の到来ということで、漁場の面、燃油の面あるいは消費の停滞に伴う魚価の面ということで、言うなれば三重苦と言われるような状態に陥っているわけであります。こういう中で我が国周辺漁場への依存の度合いがどうしても強くなるわけでございますが、特に日本海等におきましてはこれに加えて資源事情も悪化をしてきておるというようなことで、さらに一層その方面の水域では漁業経営が苦しくなっておる、そういう事態と認識をいたしております。
  267. 佐藤誼

    佐藤(誼)分科員 概要を言えばそういうことだと思うのですが、私はさらに具体的に突っ込みまして、日本海の漁獲高の変化等からそのことについて関連して質問したいのですけれども、日本海の漁獲高を私の手元にある資料で言いますと、昭和五十年と五十九年、つまり五十年というと石油ショックの直後ですね。それを比較しますと、漁獲総額で五十年が二万一千九百八十七トン、五十九年が一万四百九十六トン、そして動力船の船舶数が五十年が千二百六十七、五十九年が千三百九十一ということで、漁獲量が半分になって、動力船はむしろふえている、こういう状況なんですよ。したがって、一そう当たりで見ますと、五十一年が十七・三五トン、五十九年が七・五五トン、一そうの漁獲量が大変減っているわけです。これは大変な状況だということはすぐおわかりだと思いますし、加えて重油の価格を比較をしてみますと、五十年にキロリットル三万一千円ですかに対して、五十九年が六万一千円ということで約倍になっているわけです。ですから、漁獲量が大体半分ぐらいになって重油が大体倍の値段になるというこの事実を見ても、大変だということが、日本海の中でも地方によって違うと思いますけれども、こういうことが言えると思うのですよ。  私も山形県の海岸、つまり庄内海岸に住んでそれをつぶさに見ておりますが、そういうことが具体的な姿で目に映るわけです。まさに漁獲量が少なくなった、油が高いということで漁業経営は成り立たず、漁業従事者生活ができない。加えて漁業従事者は石油ショック以来例の累積債務がたまりまして、倒産寸前にあるという業荷が非常に多いのですね。加えて、海岸で言えば、しけか何かによって船が出れないことがありますから、ごく最近などほとんどしけですから、こういうものが加わりますと収入がないのです。したがってこういう事態を、これは地域によって違いますけれども、どうとらえ、どう対応するか極めて重要な課題の一つだと私は思いますので、その辺の見方、とらえ方、考え方、この辺どうなんでしょう。
  268. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 先ほども申し上げましたように、我が国の漁業、総じて燃油価格の高騰と魚価の低迷ということで板挟みになっておるということは押しなべてそうなんですが、日本海水域におきましては殊に資源面の状況から見ても甚だよろしくない。そういう意味で一般論で解消し切れない独特の難しさが日本海の漁業にあるということは先ほども若干言及したとおりでございます。特に北部日本海におきましては、ハタハタとかそういう従来主要な漁獲対象資源であったものが殊に資源状態が悪化してきておりまして、通常の意味での省エネ、省力化ということでは対応し切れないような事態であるというふうに私どもも認識をしております。  それで、山形、秋田の両県で殊にお困りになっていらっしゃる小型底びき網漁業の関係の皆様方が、まさに今先生の御指摘のような漁獲努力量と漁獲量との間のアンバランスということを問題視をされまして、自主的に減船計画を作成をなさってその間のアンバランスを解消して経営の改善を図ろうということで今取り組んでおられるというふうに私ども伺っておりますので、水産庁といたしましてはそういう計画を十分検討させていただきまして、要すれば私どもはそういう事態に対処する助成の仕組みとして特定漁業生産構造再編推進事業という事業を持っておりますので、この事業にのせてそういう計画に対応さしていただきたいというふうに考えております。
  269. 佐藤誼

    佐藤(誼)分科員 それについて重ねて質問したいと思いますけれども、先ほどから述べているようなことで、簡単に言えば、魚は一定量限られていますから、しかも二百海里で締め出されて、漁船の数は多い、油は高い、しかも魚価は低迷、しかも石油ショック以来の固定化負債がずっとたまっている、こういう局面を打開していくということになりますと、やはり当面は何といっても生き延びなければなりませんから、経営の立場からいえば金融面の手当てが必要ですね。ただしかし、長期的に見ると、重要なことはやはりいかにして漁獲資源をふやすかというこのことと、それから同時に資源を確保しあるいは育て、そしてそれを共有のものにしていくという意味でのそういう共同管理型の漁業とでもいいましょうか、そういうものを追求していかないと、その場当たりの対症療法だけでは何ともならぬ状態に来ているのじゃないか。特に今、日ソあるいは日米というああいう漁業交渉も思うとおりなかなか進まないということになりますと、勢いやはり沿岸、沖合ということに漁師の皆さんも入ってきますからね。そうなりますとこれは大変な事態になるということを考えたときに、この辺の中長期的な展望を持った施策というものが必要ではないかと私は考えますので、その辺について長官は専門的な立場、それから大臣は全体これからどう日本の漁業を進めていくかという観点で、それぞれからひとつ御答弁いただきたいと思います。
  270. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 私ども全くただいま先生指摘のとおりの考え方をいたしております。  それで中長期的な観点からの問題といたしましては、沿岸漁場の整備開発、栽培漁業の振興等、つくり育てる漁業を推進する、沿岸、沖合域の総合的な整備開発をやるいわゆるマリノベーション構想の推進あるいは民間の活力を活用した沿岸域開発のための新技術開発、これを積極的に展開するマリノフォーラム21の関係の施策、こういうものを逐次展開しておるところであります。  こういう中を通じまして、先ほど具体的に北部日本海の水域の底びきの場合について申し上げましたように、何と申しましても漁獲努力と資源との間の適切なバランスを維持するような、そういう資源管理型漁業と申しますか、そういうものに向かっていかなければいけないわけでございまして、私どももそういう方向を志向する試みといたしまして、一つは沿岸域の漁業管理適正化方式開発事業、これは資源管理を、最適持続生産量水準で資源を管理するにはいかなる手法を用いるべきかというものを開発しようということでございます。それともう一つは、資源水準に見合った適正な操業水準が維持されるような漁業者集団の話し合いを通ずる計画営為、これを推進するための営為計画づくり、こういう仕事を進めていくことによりまして、ただいま先生が提起されましたような課題にこたえていきたいと考えておる次第でございます。
  271. 羽田孜

    羽田国務大臣 先ほど長官の方からもお答え申し上げましたように、今二百海里の時代というのが定着してきた、そういう中で各国がそれぞれの水域に対して主権を主張するようになってきたというのが現状でございまして、そういう意味で遠洋の漁業というものはなかなか厳しい状況になってきております。しかも、さあそれじゃ沿岸はということを見たときに、今局長からもお話がありましたように資源そのものが大分乏しくなってきておる、あるいは潮の関係がある、いろいろな理由があるのでしょうけれども、そういった状態というものが出てきておるということも私どもやはり真摯に見詰めながら、その中で今先生からもまた局長からもお話がありましたように資源というものを管理し、そしてこれを大切にすることが第一であり、第二の問題としては、種からそしてつくり育てる魚礁に至るまで私どもとしては注意を払いながら、新しい沿岸漁業というものをつくり上げていかなければならない、今非常に重要な大切なときであると考えておるところであります。
  272. 佐藤誼

    佐藤(誼)分科員 時間が迫りましたが、考え方はわかりました。確かに私も海岸に住んでいまして漁家の経営の方々、漁師の方々を見ていますけれども、一口に言えば大変厳しい環境にあるのです。これは統計にはあらわれない地域的それぞれの特色もありますから。私が住んでいる日本海、特に山形の沿岸の庄内海岸なんというのは全く砂浜にすぐ海ですから、先ほど言ったように漁獲量が大変少なくなって、船の数は多い、油は高い、こういうことで漁協自体も、それから個別的な漁家の経営自体も大変厳しくなっている。ですからその辺水産庁としても十分つぶさに調査、把握されまして、それに適した適切なる指導、助言、アドバイス、援助をいただきたい、このことを最後に申し添えながら私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  273. 柿澤弘治

    柿澤主査代理 これにて佐藤誼君の質疑は終了いたしました。  次に、中川利三郎君。
  274. 中川利三郎

    ○中川(利)分科員 私は、農業団体などの、ぐるみ選挙についてまずお聞きしたいと思います。  今、私の手元に、新潟県の農業会議会長、農業委員会各郡市協議会会長連名で各市町村農業委員会長殿にあてました昭和六十年七月十五日の公文書があります。この表題は「大河原太一郎氏の再署名運動について(依頼)」ということになっておりまして、この文書の中を拝見いたしますと、要すれば「四月二十二日開催の農業会議第五十六回常任会議員会議の支援決定にもとづき、四月二十六日開催の農業委員会各郡市協議会事務局長会議において、管内各市町村ごとの取まとめを依頼いたしました。」云々とありまして、「しかし、この結果は、期待の署名数に至らず、誠に恐縮ですが再度の署名運動を依頼いたしたいと存じます」云々と、こうあるわけですね。これがたまたま社会的に知られることになりまして、大問題になったのですね。各新聞にも、これはまさに農業委員会のぐるみ選挙じゃないかと。県議会の中でも大変な問題になりまして、まあ泡食ったでしょうね。  そして、この七月十五日のこういう依頼文書の後に、それから約二カ月後に、昭和六十年九月九日付で新潟県農業会議が常任会議員殿あてに、今度は奇怪にも「大河原太一郎氏の署名運動に関する謝罪について」という公文書を出しております。これは何と書いてあるかというと、この前段申し上げました「七月十五日付けの文書に記載致した、」云々のことをちょっと書いてありまして、「この点についても、虚偽の文書を作成配布したことについても、重ねてお詫申し上げます。」こう書いてあるのです。そして「本九月九日役員会を開催し、事務局職員に対し、厳重注意すると同時に、事務局長並びに組織部長については、減俸の処罰を致しました。」  こういうことでもおわかりのとおり、大河原太一郎さんという方に対する農業団体ぐるみ選挙の実態が明らかにされまして、それが世間に騒がれたものですから、これはぐあいが悪いということで、あれは全くない文書だ、虚偽の文書であったのだ、よってその虚偽の文書をやった職員については減俸その他の処分をしたのだ、こういうことで一件落着させたという経緯でございますが、こういう奇怪な問題について農林水産省は承知しているのかどうか、承知しているとするならばどのような御見解をお持ちなのか、お聞かせいただきたいと思います。
  275. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 先刻私どもの担当の職員に対しまして、ただいまの問題につきまして新聞報道等もお示しいただきながらお話ございましたが、何分にも早々のことでございまして、私、詳細な事実関係をまだ十分に承知をいたしておりませんので、明確なコメントは差し控えさせていただきたいと思うわけでございます。
  276. 中川利三郎

    ○中川(利)分科員 明確なコメントは差し控えるということでございましたが、私が今お話ししましたように、その担当の方が誤って公文書を出したからこういう結果になったということで一件落着をさせたということでありますが、これは単に七月十五月の文書、このことを取り消せば済むというものではないという中身なのですね。  どういうことかといいますと、そのずっと前の、例えばここにこういう公文書があるのですが、昭和六十年二月六日付で、「署名簿の取扱等について」という文書ですね。昭和六十年二月六日ということは、よほど前、去年の最初ですからね。ここには「最近の情勢について」だとか、署名簿の集約は第一次、第二次、第三次でやるのだ、署名の目標については農業委員の数の一三〇%にするとか、あるいは署名簿の紹介者その他については原則として当該農業委員会の名前にするとか、「署名簿の送付先は、新潟県農業会議組織部宛とする。」とはっきり書いてあるのですね。あるいは次の、当時の一括した文書には「大河原太一郎後援会会員確保目標市町村一覧表」というものがついている。そして、新潟県の各市町村全部ここに網羅してありまして、その中で農業委員の数がこう、確保目標数がこう、総計はこうならなければいかぬ、わざわざその下に「新潟県農業会議」というちゃんと印刷したものがあるわけです。これはそれのコピーでありますけれども。  まさにこういうものがつながっているだけでなくて、先ほど言いましたように、七月十五日付の、私最初申し上げました公文書というのは、いわば、前段ずっと続けてきたけれどもその数集まらなかったというのですね。だからもう一回ひとつやり直してくれという二回目のお願いなんですね。それがうその文書だから取り消すなんということは、これは明らかに不当なものというか、私は決して、この日の文書を取り消したところで、ぐるみ選挙の実態は消えないということを言いたいわけであります。しかも、暴露されたからトカゲのしっぽを切ればいいということになっておりますけれども、しかし、しっぽの根っこは残っておるわけでありまして、明らかにこのことは、コメントできないと申しましたけれども、私は、これが事実だとすれば不当なものだ、こういうふうに考えますけれども、いかがですか。
  277. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 都道府県にございます農業会議は、農業生産力の発展なりあるいは農業経営の合理化を図りまして農民の地位の向上に寄与することを目的として設立されております法人でございます。その設立の目的の達成に必要な限りにおきまして政治活動を行いますことは、政治資金規正法等の法令に違反をしない限りは許されるというふうに考えております。したがって、その範囲でどのような活動を行うかというようなことは当該団体の判断の問題であろうというふうに考えておりますけれども、先ほど先生が冒頭読み上げられました文書の中にございますような、例えば農業会議の正式の場でそういうふうなことを決定をしたというようなことがもし事実であるとすれば、それは本来農業会議の正式の会議の議題になるべき事項ではなかろうというふうに思っております。
  278. 中川利三郎

    ○中川(利)分科員 政治活動一般のことを聞いているのじゃないのですよ。こういうふうにまさにぐるみ選挙でやっているという問題について私お伺いしているわけでありますが、さらに問題だと思うのは、このような一連の動きが、ただ単に新潟県の農業会議がこうしたというだけじゃなくて、全国農業会議所の一体的な指令の中に行われている、そう疑われることが指摘できると思うわけであります。  というのは、私の手元に六十年一月二十九日付の、ずっと前です、去年の初めですね。栃尾市農業委員会会長業務報告、この会議録を私持っておるのですよ。新潟県の栃尾市の農業委員会の会長業務報告です。何と書いてあるか。会長の業務報告ですよ。肝心なところを読ましていただきますと、「それで、全国農業会議所としても、この後援会作りについては全面的に応援をするということで、また県段階においても、自民党の党籍ではありますが、党派を超えて、協力していただきたいと、かような申合せがあった訳でございます。」こういう報告があるのですね。  次は、やはり会長の報告ですが、「結局、全国農業会議所といたしましても、また県段階におきましても、まあ、農業問題については、この代議士に大変お願いをしているし、また、格別に活動していただいているということで、農業会議として、推薦申し上げるという結果であったように受け止めてきた訳であります。」この人は恐らく田舎のおっさんでしょうから、参議院議員を代議士と言わないわけでありますけれどもそういう表現をしておりますね。それからやりとりがここに出ております。おかしいじゃないか、農業会議にはいろいろな人がいるのじゃないか、それをただ超党派でやれといったって納得できないというような質疑応答もここに書かれておるのです。そのとき振るっているのは、この会長さんがおっしゃるにはこう言っているのですよ。「私としましても、この参議院議員大河原さんか、この後援についても実際初めてでございまして、名前も初めて聞いたような訳でございますが、いろいろ県段階において、そういう説明のもとに、農業団体として支援するということであれば当農業委員会としても御協力を申し上げなければならんと、かような気持ちで参った訳でございましてこれは何の話です。完全に一体として、しかも農業会議が直接指導してやられたものだということを客観的に証明するものじゃありませんか。全国農業会議所というのは直接おたくの指導監督下にあるものだと思いますが、いかがでございますか。
  279. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 全国農業会議所、都道府県農業会議は私ども経済局で所管いたしておる団体でございます。先ほど申し上げましたように、一定の目的を持って設立された団体でございますが、政治資金規正法等の法令の許す範囲内で一定の政治的な活動を行うことは許されておるというふうに考えております。  ただいまお話がございましたことにつきましては、私、ただいま初めて伺ったことでございますので、そのような事実関係について私どもの判断を申し上げるということはしにくいわけでございますが、農業者の利益の増進というものを一つの目的にしております団体、目的が同一でありますだけに、たまたまその関係者が同一の方向に向いて政治的な活動をされるということはあり得ることであろうと思っております。
  280. 中川利三郎

    ○中川(利)分科員 だから農林水産省もみんなぐるだと言われているのですよ、そんな答弁では。私、今いっぱい資料を持っておりますけれども、その程度の答弁で何としてそうですかと言えますか、あなた。政治活動一般を否定するのではないのです。このやり方の特殊性について私は皆さんにお聞きしているわけであります。  しかも、自治省来ておると思いますが、ちょっと自治省にお聞きしたいわけでありますが、この七月十五日の文書、さきに読みましたように「各郡市協議会事務局長会議において、管内各市町村ごとの取まとめを依頼いたしました。」なんということがありますね。つまり、農業委員会の事務局長が下働きさせられているということなんです。それだけでなくて、六十年九月の県議会でありますが、県議会でこれが問題になった際に、県の農林水産部長の答弁があるのですね。どういう答弁をしているかというと、こういう答弁の箇所が非常に重要だと思うのです。農業委員に対する依頼の方法については、会長が直接農業委員に依頼したもの、何カ町村、会長が個人的に対応したもの、何カ町村、事務局職員が処理したもの、何カ町村、調査した結果の報告としてこういうふうに答弁しているのですね。これで申しますと、農業委員会の事務局職員がそれで下働きしたり動いているということです。御承知のように市町村の農業委員会の事務局職員というのは地方公務員なんですね。事務局長は市役所で言えば幹部職員ですよ。しかもこれが支援署名を集めるということは直接後援会づくりにつながるわけでありまして、当然地方公務員法の第三十六条ですか、政治活動の制限にひっかかろうし、また、事務局長が事務局職員をそうして働かした、命令したとなれば地位利用に当たるわけです。この点、いかがですか。
  281. 紀内隆宏

    ○紀内説明員 お取り上げの案件につきまして具体的な詳細な事実を私存じておりません。しかしながら、一般的に申し上げますと、お話にございましたように地方公務員法の三十六条というのは一般職の地方公務員につきまして一定の政治的行為について制限をしているところでございます。そうである以上、職員がみずからこういう法令に抵触するような行為をすることはもちろん、第三者が職員をしてそのような行為を起こさしめるということもあってはならないこと、このように存じます。
  282. 中川利三郎

    ○中川(利)分科員 今聞いたとおりですね。そういうことを全然恥じらいもなく、結局は農民の利益増進につながるし、皆さん方の自主的なあれでだれそれをどうしたなんというようなことでほおかぶりできるかということですね、こういう状況について。  言えば切りがありませんけれども、またさらに私の手元には新潟県農業協同組合中央会の文書があるのですね。「農協集計」というものです。「大河原太一郎氏の支援対策メモ 六十年四月十八日」、ばっちり写真もついていますし、わざと関係者のところは消しておきましたが、署名した方の名前もあります。これを見ますと「期間・期限六十年五月末日まで」あるいは「対策事項(目標)」「後援会確保数」何ぼ何ぼと全部書いてあるのですね。「党員の確保数」何ぼ何ぼと全部書いてある。御丁寧にちゃんと新潟県農業協同組合中央会になっているんだ。これは一体何ですか。これもさきのような状況で皆さん説明できるのですか。まさに特定政党、特定候補一体の特定団体と結びついた癒着の事案、そういうことになろうかと思うのでありますが、時間の関係もございますので次の問題へ進ませていただきます。  次に私は、土地改良区のぐるみ選挙の問題でお聞きしたいと思うわけであります。  今私の手元に「秋田の土地改良」という機関紙があります。これは秋田県土地改良事業団体連合会が出しているものでありまして、これの昭和六十年十一月二十五日付を見ますと、一番トップの見出しで「昭和六十年度秋田県土地改良事業推進大会十一月六日開催される」云々と書いてあります。中を拝見いたしますと、こう書いてあるのですね。「会場から緊急動議として」「明年の参議院選挙の候補者として「比例代表区、岡部三郎先生」「秋田選挙区、佐々木満先生」を本推進大会の名において夫々推薦したい旨が、能代市産物土地改良区理事長小林富義氏から提案され、満場の万雷の拍手をもって賛同し、動議は可決された。引き続いて岡部三郎先生及び佐々木満先生より夫々推薦に対する謝辞があり、」云々とあります。これは土地改良法の趣旨に照らしてどういうものかということですね。今までこういう問題を追及した場合は、いやそれは政治連盟がやったことでしょうと逃げておった。これは大会でストレートなんだ。政治連盟でないんだ。これは一体どういうことですか。どういうふうに理解すればよろしいでしょうか。
  283. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 土地改良区及び土地改良事業団体連合会は、土地改良事業の円滑な実施のために農業者等が自主的に組織する団体であり、その活動の範囲は法令、定款の定める範囲内で、組合員または会員の総意により自主的に決定されるべきものであると考えております。したがいまして、土地改良事業団体がその設立の目的を達成するために、その事業内容に反しない範囲内において、法令に違反しないことはもちろんでございますが、節度を持って政治活動を行うことは同団体の自主的な判断によるべきことではないかというふうに考えておるわけでございます。  先生指摘の秋田県の土地改良事業推進大会は第百八回秋田県種苗交換会の一環として、秋田県土地改良事業団体連合会の主催のもとに開催されたものであります。  なお、岡部、佐々木両議員の参議院選挙の候補としての推薦決議は、当初から予定されていたものではなく、緊急動議として提案されたものだというふうに聞いております。
  284. 中川利三郎

    ○中川(利)分科員 土地改良法の趣旨からいってこのようなことが妥当かどうかということです。あなた一番御存じのとおり、土地改良というのは公共性が非常に強いものですね。再三大臣の答弁でも、国会でも、公平でなければならない、そういうものが運営上求められるということを言っておるのですよ。それなのに、政治連盟の隠れみのを使うわけでもなく、ストレートにその場で堂々と、緊急動議が出されたからしようがなかったなどということで済むのですか。しかも、その場にだれが居合わせておったかというと「秋田の土地改良」によれば「農林水産省構造改善局須藤良太郎次長をはじめ、」云々と書いてある。須藤さんがここにいるのですよ。黙って見ているのですよ、こういう現場を。ここに官政。団体の今の救いがたいあれがあると思います。  それが単に秋田県だけじゃないんです。第八回全国土地改良大会が六十年十月十六日午後一時から神戸市のワールド記念ホールで開かれました。これは農林水産省、兵庫県が後援ですよ。ちょっと読んでみますと「議事に入り、梶木兵庫県土連会長を議長に選任し、須藤構造改善局次長より「土地改良事業報告」があり、」云々として、「ここで茨城県関井会長より「大会の名において岡部三郎氏を次期参議院議員選挙比例代表候補として推薦したい」旨の緊急動議が提案され、満場の拍手をもって採択された。」これは全国のあれですよ。あなた、同じ構図ではありませんか。こんなことは言いたくないのですけれども、土地改良というのはどれだけ法律で拘束を受け、どれだけ国の金が入っているものであるかということは、皆さんには釈迦に説法でありますけれどもね。  しかもこの方々は、どういうわけか政治家は自民党以外は絶対に呼ばないのです。土地改良区の中にはいろいろな人がいるわけですから、実態として大変不満が広まっているわけですね。いわば自民党だけの仲間意識、身内意識が、いつの間にか、政治連盟に切りかえる、そんな面倒くさいこと要らないんだ、どうせ身内じゃないかということでこういうところまで進行しているということですよ。  毛針問題、今問題になっておりますけれども、最も露骨な毛針のなれ合い集団の現状があるということですよ。私いろいろ実例を持っておりますけれども、これは土地改良だけでなくて、農業共済組合連合会にしてもそうなんですね。選挙が始まれば連合会がわっとある特定候補の選挙事務所になるというのですよ。これは一般に指摘されていることなんです。こういうことがのほほんとやられていることについて全く痛痒を感じないのかどうか、私はこの際、農林水産大臣からひとつお心得のほどをお聞きしておかなければいけないと思っております。
  285. 羽田孜

    羽田国務大臣 今先生の方からそれぞれ現場の例を挙げられながら、農業委員会並びに土地改良区の大会の模様等についてのお話を伺ったわけであります。先ほど来それぞれの担当の局長さんから御答弁申し上げておりますように、その一つの設立の趣旨を達成していこうという中で、法令に基づいてこういうあれが行われたということ、それは一定の政治活動は私は認められるべきであると考えております。  なお、最後の秋田県のあれにつきましても、緊急動議という形で出されたということ、そして今先生が読み上げられた中に、万雷の拍手の中でこれが認められたということであって、もし反対があるとすればなかなか進められないだろうと思いますし、もう一つは、この該当される方は、こういった問題についてこれを本当によりよく進めるために今までも相当努力されている方であろうというふうに私は考えております。  ただ問題は、今先生から御指摘がありましたように、確かに非常に大きな公の関係のあるものであり、そういったことを考えたときに、いろいろな面で配慮し公正に扱っていかなければならない、このことについては私もそう理解いたしますけれども、前段申し上げたような考えであることをお答えを申し上げたいと思います。
  286. 中川利三郎

    ○中川(利)分科員 万雷の拍手だとか緊急動議したということはみんなが納得したんじゃないか、それはまさに形式論でありまして、いろいろな農業団体がありますけれども、今土地改良区は権力構造の中に、まさに典型的な利益誘導と結びついた状況がこういう格好になって、しかも仲間意識が、恥ずかしげもなく全然反省もなくなっていることのあらわれと見なければ、あなた方が指導する場合に本当のポイントを射た指導はできないと私は思うのです。単なる政治活動だとか一般論じゃなくてですよ。  しかし、時間の関係がありますから次に進みますけれども、羽田さんの政治献金の問題で一つお聞きしたいと思うのです。  あなたを材料に引き合いに出すのは大変恐縮でございますが、この機会でありますから、特に農業関係について若干調査させていただいたわけであります。昭和五十四年の衆議院選挙、長野県の県報を拝見いたしますと、あなたは長野県農協中央会から五十万円の献金が入っていらっしゃいますね。それから、この前の昭和五十八年の衆議院選挙では全国養蚕農協連から五十万の献金が入っていらっしゃるのですね。私は、ここでそれはけしからぬと言って追及することが趣旨ではありませんけれども、あなたが大臣になる前のことですし、代議士時代のことでありますが、今大臣として、また政治家としても、農協の本来的な立場、目的からいってやはり私は問題が残るのじゃないかと思うのです。道義的にもまずいことじゃないかと思うのですが、そのことについてはどうお考えですか。
  287. 羽田孜

    羽田国務大臣 大変恐縮でありますけれども、その具体的な団体とか金額とかについて今つまびらかにいたしませんので、これについてのコメントはあれいたしますけれども、農政関係の私の同志の方々は相当な数がありまして、そういった組織の中から私の地元の後援会あるいは政治結社の方に献金されたものじゃなかろうかというふうに考えております。当然、これは政治資金規正法に基づいたものであるというふうに判断いたしております。
  288. 中川利三郎

    ○中川(利)分科員 あなたの事務秘書や事務局がいつどういうふうに献金を入れたかあなたは全然わからない。しかし、寄附した人の心根をいたわるという気持ちもなくて、いざ何かあれば、そういうことがあったか、それは秘書がやったなということでは私は非常におかしいと思うのです。  それはそれといたしまして、実は今回この質問を兼ねていろいろな調査をしたら、出てくるわ、出てくるわ。それで一覧表にしてみましたが、時間がありませんからこの次の機会に譲りますけれども、農業団体の違法な献金は、全国農業会議所関係も相当あります。ここは毎年度農業委員会費補助金だとか、いわば業務費の半分が直接国から出ている団体なんです。それから、各県の農業共済組合連合会がございます。ここからも相当の金が出ておりまして、ここにも共済の掛金だとか事務費の国庫負担はもちろん、家畜共済損害防止事業交付金などを受けている団体ですね。それからこういうのがいっぱい出てきて一覧表にしてありまして、これはきょうは名前は出しませんけれども、やっぱりこういうのは、自治省にちょっとお聞きするわけですが、政治資金規正法で国政選挙の献金が禁止されていると思うのですね。そういった点について、まさに違法献金になると思うのですけれども、最後に自治省から御見解を承って、私の質問を終わらせていただきます。
  289. 中地洌

    ○中地説明員 ただいま御指摘の事実につきましては全く確認してないわけでございますけれども、一般論といたしましての政治資金規正法でございますが、政治資金規正法の第二十二条の三第一項及び第四項でございますけれども、国から補助金等の交付を受けた会社その他の法人は、交付決定の通知を受けた日から一年間、国会議員等に対して政治活動に関する寄附、これをしてはならないという規定がございます。しかしながら、当該補助金が試験研究調査あるいは災害復旧、そういうもの、その他性質上利益を伴わないもの、こういう場合にはこの限りではないというふうに規定がございます。
  290. 中川利三郎

    ○中川(利)分科員 終わります。
  291. 柿澤弘治

    柿澤主査代理 これにて中川利三郎君の質疑は終了いたしました。  次に、吉原米治君。
  292. 吉原米治

    吉原分科員 中海・宍道湖淡水化試行について質問をいたします。  同じ問題で昨年もこの分科会でやりましたけれども、ちょっと一年たちました今日は情勢が変わってきておりますので、その点を特に申し上げたいと思うわけでございます。  昭和五十九年の八月に農水省が公表されました試行に関する中間報告書に基づいて、島根、鳥取両県では助言者会議にこれを委嘱をいたしまして慎重に検討を重ねてきておったわけでございますが、過日、二月の二十五日に大阪において最終会議が開かれまして、一年半にわたる検討結果をまとめ、両県に対して答申をしておるわけでございます。このことは農水省も既に御承知のところでございます。そこで本日は、余り時間もございませんが、この淡水化試行に関連をして数点についてお尋ねをしたいのであります。  その第一は、水利権の問題についてお尋ねをいたします。淡水化試行中であっても取水するという方針がどうも建設省との間で進められておるように聞いておるわけでございますが、こういった暫定的といいますか、あるいはまた、新しい用語でございますが水質転換水利権なんというものが河川法の中で一体認められておるのかどうなのか、この問題についてまず最初にお尋ねをしておきたいと思います。
  293. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 淡水化の試行は、湖内の生態系の環境の急激な変化を避けるために、徐々に塩素イオン濃度を下げ、水位、塩素イオン濃度、水質、生態系の変化等内外の状況を調査研究、検証しながら、本格的な淡水化の準備段階として実施するものでございます。 目標の塩分濃度につきましては、中海で一〇〇〇ppm、宍道湖で三〇〇ppmとしておりますので、両者とも計画上最終的には二〇〇ppmを予定しているわけでございますが、宍道湖では三〇〇ppmであれば農業用水としての利用も技術的には可能なわけでございます。  もちろん淡水化の試行は、先ほど申し上げましたような目的で実施するわけでございまして、農業水利権の取得は本格的な淡水化後になるわけでございますが、ただ試行の段階でも、仮にの想定でございますが、試行をお認めいただいて実施した場合に、周辺で干ばつ等のような事実が出た場合には、これは特に宍道湖の段階では技術的にはかんがい用水としての利用も可能なわけでございますので、暫定的にその水を利用するというような事態が出ないとも限らないわけでございまして、そういうことを想定して暫定的な取水についてもあらかじめ建設省と協議を進めることといたしたいと考えておるわけでございます。
  294. 吉原米治

    吉原分科員 私が尋ねておるのは、現行の河川法に基づいてこういう暫定的な水利権とかあるいはまた水質転換水利権というようなものは合法的なものなのかどうなのかということを尋ねておるんです。
  295. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 これは河川法の解釈の問題でございますので、私どもとしては確定的な御回答を申し上げるべき立場にないわけでございますけれども、一般的に、本格的に水利権を設定する前にどうしても緊急に取水しなければならないような場合に暫定水利権というようなものが設定されることは、たしかそういう事例はあるのではないかというふうに思うわけでございまして、いずれにいたしましても、今後建設省と協議いたしまして、建設省側がそういうものをお認めいただけるかどうか、これはまさに建設省河川局が——河川法上の解釈の問題でもございますので、私どもとしては、希望としては先ほど申し上げましたようなところから暫定的にでも水利権を取得できれば万一の場合にはベターではないか、かように考えているわけでございます。
  296. 吉原米治

    吉原分科員 今あなたは何か過去に例があるような話なんですが、建設省の河川局の水利調整室の話によりますと、過去に例のない水利権を考えておる、農水省と細部詰めたい。過去に例がないのですよ。あなた何か時々例があるような話だし、河川法の解釈上の問題だなんて、解釈上で適当にこの解釈ができるような話だけれども、そんな簡単なものじゃないんでしょう、この水利権なんというものは。どうですか。
  297. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 水利権につきましては、一般河川等におきまして旧来の農業水利権等を統合いたしまして新しく合口して取水するような場合は、本格的な水利権取得までには非常に長い詰めの時間がかかります。その間に緊急に事態が生じたような場合に暫定的に認めていただくという例はございます。  ただ、それはもちろん先生指摘のように、中海・宍道湖のように湖の水質を淡水化する、しかもそれを試行実施するというような例はまず今までないわけでございます。そのような意味ではまさに御指摘のとおりでございまして、初めてのことになるわけでございます。
  298. 吉原米治

    吉原分科員 農水省としては淡水化がなかなか遅々として進まない、したがって河口周辺等々で暫定的な取水ができるように建設省と協議中であることは事実ですか、どうですか。
  299. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 正式な文書で協議をしているわけではございませんけれども、現場の段階でそのような相談を開始していることは事実でございます。
  300. 吉原米治

    吉原分科員 後ほどまたこの助言者会議の大阪会談の結果に基づいてお尋ねをするわけでありますが、水利権の問題は、まだ淡水化試行が決まらぬうちの話でございますから、地元で一部混乱が起きておるようでございますので、あえて質問をさせていただきました。後ほどまた、大阪会談の結果に基づいて質問をしたいと思います。  質問の二点目は、淡水化によって、周辺既耕地を含めて八千万トン余の農業用水が必要だと当初から言われておるわけでございますが、きょうは時間がございませんから、八千万トンが必要だというその計画の概要を御説明願いたい。
  301. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 中海干拓事業におきます。水計画の大要でございますが、干拓地千九百六十二ヘクタールの畑作営農と中海・宍道湖周辺の既耕地七千三百ヘクタールに対するかんがい用水を確保することといたしております。事業計画上これに必要な用水量は八千十四万九千トンでございます。これを淡水湖に依存する計画となっております。  なお、現在までの事業の実施過程におきまして受益面積の一部に変更等を生じておりますが、淡水湖への依存水量に大幅な差異は生じないのではないかと考えている次第でございます。
  302. 吉原米治

    吉原分科員 そうすると、約八千万トンという数字は今後も変わらないということで確認してよろしゅうございますか。
  303. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 若干動く可能性がないとは申せませんけれども、基本的には変わらないと考えております。
  304. 吉原米治

    吉原分科員 そうしますと、過般出されました中間報告書によりますと、異常事態の発生の場合には云々というくだりがあるわけでございます。昨年のこの委員会で質問をしましたのも、そういう点を質問をして、異常事態というのはどういう状況下に来た場合に異常事態と見るのか、何を物差しにするのかという基準値が明らかにされたわけでございますね。今度、その基準値をとった場所の数値が示されて、それも一カ所じゃなくて何カ所もとってある。ですから、異常事態の発生という判断をする場合には、一カ所でもその数値を超えておれば異常事態と見るのか、その異常事態の発生というのは、恐らく地元知事ということになりますか、その判断をだれがするのか、そして、どういう事態になったときに異常事態と見るのか、これをお答え願いたい。
  305. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 先生ただいまお話ございましたように、警戒体制に入る場合はどういう場合であるかという基準については、測定地点も含めまして具体的な数値で示してあるわけでございますが、そのような警戒体制中において異常事態が発生した場合にどうするか、これは具体的には樋門の操作に絡むわけでございましょうが、そういうことをだれがどういうふうに判断するかというのは、今後詰めるべき問題であろうかと思います。これはまさに試行実施でございますので、やってみなければわからないというところもございますが、その時期において関係者が協議をいたしまして決定するような性格の問題ではないかと考えるわけでございます。機械的に、こういう数値が出れば異常事態と判断するには、まだ余りにもデータが不足しているのではないかと考えております。
  306. 吉原米治

    吉原分科員 いや、私が尋ねておるのは、一カ所でも——それじゃ、今局長がおっしゃったような考え方なら、数値はどうでもいいということに受けとめざるを得ないのです。せっかく数値を示して、これを超したら一応警戒体制といいますか異常事態、樋門も早速上げなければならぬということになるだろうと思いますが、異常事態というのはその数値を超える箇所が何カ所以上あるとか、具体的におっしゃってもらわぬと、抽象なことでは、異常事態というのは人間が判断することですから、感覚的に、アオコだけが発生したら異常事態だ、さあ大変だということになるのかどうか。それから、関係者が協議してということですが、どういう機関が協議の対象になる機関ですか。
  307. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 生態系の変化の問題でございまして、申し上げましたように、まだまだわからないことが非常に多いわけでございます。  一方、樋門の操作に関連づけて考えてみれば、樋門をあげれば、これは当然のことでございますが、塩分濃度が上がってかんがい用水としては利用できなくなる。特に、恐らくアオコの大発生等が、その可能性の大きいところは渇水年であろうと思います。そうしますと、その周辺の関係農民にしてみればこれは非常に貴重な水である。そういうことになりますと、将来データが徐々に蓄積されてくれば、あるいは先生のおっしゃるように、この地点とこの地点でこういう数値が出ればあと何日間かすればアオコが大発生することが確実に予測できるかもしれないと思います。  確かにそういう可能性が全然ないとは申しませんけれども、まさに試行実施ということでございますから、最初からそのように客観的に何か指標を決めることはどうも難しいのではないかということから、もちろん県も入りますし、私どもの事務所も入りますし、受益農民も入るのではないかと思いますが、関係者が集まって協議して決めていくことになるのではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  308. 吉原米治

    吉原分科員 どうも極めて具体的なお答えではないので、どういうことになったときが異常事態だということが、数値なんというものは測定機ではからないとなかなか肉眼で見えないので、アオコが発生した、たくさんの魚が浮き上がったというときには肉眼で確認できるわけだけれども、そのときには既に遅いわけでありまして、だから、せっかく数値が出されたとすれば、十カ所測定地点があるとするなら、少なくともそのうちの三地点で数値を超えた場合には一応の警戒体制といいますか、そのことによる樋門の操作等にもまた影響が出てくるだろうと思いますけれども、そういう何か一つの物差しでしの異常事態だという点を判断しないと、だれもが毎日あそこの周辺で見ておるわけじゃないのですから、だから計画的に測点で数値を定期的に測定しながら、どうもこれは最近おかしいぞという判断をしないとだめなんでございましょう。  そういう点で私は、異常事態はこういうときに初めて異常事態だというもっと具体的なものを、試行はまだ当分できませんから、ゆっくり、どういう場合が異常事態だという定義づけをきちっとしておいてください。  次に、どういう条件が具備された場合に淡水化の試行に踏み切るのか。試行への同意条件、どういうときに初めて試行をやることになるわけでございますか、それをお答えください。
  309. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 再三申し上げておりますように、私どもはこの施行実施の要件としては関係県知事の同意を要件としているわけでございます。  その趣旨は、生態系の変化については学問的にもまだわからない部分が非常に多いわけでございまして、水質の悪化を非常に心配される方々がおられる一方、また、水が早く欲しいと言われる方もおられるわけでございまして、その両方を勘案して、地元の住民を代表する者として知事さんの御判断を尊重したいと私ども考えておるわけでございます。
  310. 吉原米治

    吉原分科員 そこで知事の判断でございますが、冒頭申し上げたように、農水省側が発表されたこの淡水化に伴う中間報告をめぐって、各大学の水質の専門学者が十四人も一年半もかけていろいろ検討した結果、二月二十五日の大阪会談で最終結論が出ました。地元紙では大きな見出しで「淡水化に否定的見解」、こういうをのが出ておるわけでございまして、その中では、中間報告では少なくとも現況の程度をほぼ維持できる、こう判断をされておりましたけれども、この水質浄化効果、すべて否定的な見解になっておる、また、検討が不十分な点ということで四点ばかり指摘をされております。水質予測シミュレーション、アオコの発生量予測、微弱密度流、こういった点を挙げておりますけれども、こういう問題については試行をしなくても回答が得られるという判断をしておる。つまり、かなり積極的に問題提起といいますか、警戒警報を発令したような学者の最終答申になっておる。  この答申は既に皆さんの手に入っておるわけでございますから、これを見られた限り、これはもう大変なことだ、軽々に淡水化はできないということに相なろうかと私は思いますし、この問題が集中的に今、県議会で取り上げられて論議が活発にやられておるわけでございますが、結果的には農水省にも照会をして判断を仰ぎたいということを地元知事も言っておるようでございますね。そういう意味では、自分たち学者を集めてつくった中間報告書を出して、そして該当の県に検討してもらった。そうしたら同じように助言者会議なんてもので検討されて、かなり否定的というか全面的に否定をするような学者意見が出てきた。さてどうするかということになると思うのですね。この島根県、鳥取県両県で委嘱をしました助言者会議の結論を農水省としては今どうお考えになっていらっしゃるのか。
  311. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 両県の助言者会議の最終結論を私ども三月三日に入手しております。県の担当部長さんから私どもの干拓事務所長あてに送付されまして、これについての意見を聞きたい、かような照会を受けているわけでございます。したがいまして、まだその内容を詳細に検討しておりません。事柄は自然科学の大変高度の技術的判断を要する問題でございまして、まあ余り印象的な判断を私どもの立場からするのは問題があろうかと思いますが、一読した限りで、確かに先生指摘されましたように、私どもの中間報告に対してかなり厳しい御批判をいただいている点があることは事実でございます。  今後私どもとしては、その内容について私どもがお願いしました研究会の先生方の御意見も聞きまして、我々なりに疑問点を解明すべく努力してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  312. 吉原米治

    吉原分科員 それはいつごろまでに大体疑問点を解明される予定ですか。
  313. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 できるだけ早急にやりたいと思いますけれども、事柄の性質上、ただいまはっきりとその期間を申し上げるだけの内容に対する判断力を私、持ち合わせておりませんので、私どもの気持ちとしてできるだけ早く意見を申し上げたいということだけ申し上げておきます。
  314. 吉原米治

    吉原分科員 少なくとも、三年間の試行なんということはとんでもない話だ、恐らく完全に心配のないようにするためには十年はかかるだろうと言われておるのですね。できるだけ早く解明をして淡水化試行に踏み切りたいという気持ちを農水省は持っていらっしゃると思いますが。  ここで大臣にちょっとお尋ねするわけですけれども、今まで聞いていらっしゃったように、中海・宍道湖、膨大な面積の言ってみれば湖のような河川のような感じのする場所でございます。これを淡水化することには、両学者グループ、真反対の意見が出てきておる。にもかかわらず、干拓事業と付随をして淡水化をしなければ干拓の効果は上がらない、そういうことになっております。新年度、六十一年度予算も、私は百億ぐらいかと思ったら、干拓事業に四十八億の予算措置がして狩るようでございますが、こういう状況下であえて淡水化試行を強行されるのかどうなのか、その辺ちょっと大臣の考え方を聞いておきたい。
  315. 羽田孜

    羽田国務大臣 淡水化計画について今さら私から申し上げることはないと思いますけれども、良質な水を必要とするという要請の中にこの計画が進められましたけれども、時の移ろいの中に、水質汚濁に対する、また環境が変わるということに対する心配が両県民の中にあるということを私も承知しておりますし、また、助言者会議の皆さん方が両県に対しまして新たな考え方というものを提示されておるという問題がございます。  こういった問題は、ただ政治的にとかなんかで物事を進めるべき話ではないので、やはり県民の理解というものを得なければならないこと、また将来に禍根を残さないことというのは非常に大事なことであろうと思っております。その意味で、我々が見切り発車するとかなんとかというような、強行するというような気持ちは私どもありません。これからも県御当局、関係者の皆さんと十分な話し合いを進めながらこれらを進めてまいりだい、かように考えております。
  316. 吉原米治

    吉原分科員 非常に時間が少なくて残念ですが、住民としては、非常に心配な点、自然が破壊されてしまう、そういう立場にある。仮に県知事か、せっかくですがもう淡水化は地元県としてはあきらめました、ですから新たな農業用水の水資源については別の方法で考えます、だから、今まで進めてもらった農水省の淡水化事業はこれでストップしてほしい、こう言ってきたら、農水省はどうされますか。
  317. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 せっかくの御質問でございますが、私どもは何とか御理解をいただきたいということで今せっかく努力中でございまして、その段階で、同意がなかったらどうこうということについては私どもの立場からは今お答えできないということもひとつ御理解いただきたいと思うのでございます。
  318. 吉原米治

    吉原分科員 だんだん時間がなくなりましたから、そこで大臣、これだけ難航しておる、言ってみれば地元関係者にしてみれば大半は喜ばない仕事ですね。そうでなくとも財源が乏しい状況の中で、関係者が喜ばないことに、今日までで何十億の金、昭和六十三年まで、完成予定で大体八百六十五億くらいの金が投資をされるわけでございます。六十一年度でも四十八億ばかりの予算措置がしてあるわけでございますが、こんな関係者が喜ばないことに何十億の財源を使うということよりも、農業関係で農民の皆さんがもっとやってほしいと国に要請しておる課題はまだたくさんあると思うのです。そういう関係農民に喜んでもらう方向に、せっかくの財源ですから有効に使ってもらいたい。  それと同時に、この干拓事業がおくれればおくれるほど、反当たりの最終的に農民がいただくときの単価が、今の計算で大体百六十万くらいと言われておるのですが、これがおくれればおくれるほど三百万とか四百万とかいう単価に上がっていくわけです。したがって、そういう点も考慮されて、農業用水の本当に欲しい人については別の手法によって考えるということで、この淡水化の試行問題についてはひとつ慎重に、かつ、今申し上げましたような助言者会議の意見も出ておるわけでございますから、場合によっては路線変更もあり得る、したがって淡水化は強行しない。もちろん強行はしないのですが、場合によっては路線変更はあり得るというふうに、大臣は短時間の間ですから御理解いがなかった点があると思いますが、これからの問題についてひとつ見解を表明しておいていただきたい。
  319. 羽田孜

    羽田国務大臣 今まさに助言者会議の方からもそういった科学的な調査、皆様方の一年半の成果というものが県の方に寄せられ、そして今農林水産省の方にもそれをちょうだいいたしておるところであります。ただ、一方では、やはりこれを進めてほしいという要請が私どものところにも実は来ておるというような現況でございますので、今こうこうこうなるんじゃないかということを予断しながら私の立場でお答えするということは差し控えさせていただきたいというふうに思います。ただ、強行するとかそういったことはあり得ないということだけを申し上げておきます。     〔柿澤主査代理退席、倉成主査代理着席〕
  320. 吉原米治

    吉原分科員 時間が来ましたから、終わります。
  321. 倉成正

    ○倉成主査代理 これにて吉原米治君の質疑は終了いたしました。  次に、沢田広君。
  322. 沢田広

    沢田分科員 引き続いてで皆さん御苦労さまでございます。  幕がとんとんとんとんかわっていくから、舞台がかわるように大臣も頭の切りかえがなかなか大変だろうと思うのでありますが、そのために事前レクチャーも幾らかやっているわけですから、その点ひとつ御理解いただきたいと思います。時間はなるべく詰めまして、あわせて、後の人に迷惑がかからぬようにしていきたいと思います。  大臣も農林の方は専門の、いわゆる大ベテランでありプロなんであります。きょうも法務大臣にも言ったのですが、法務大臣も農林のベテラン、さすがやはり水を治める者は天下を治める者になるんだなということを感じたのであります。  大臣に私が聞こうとしていることは、主として土地改良に関連する案件であります。  そこで、関連するものとして、二、三前提として、今の下水道計画は、言うなら汚水だけ、いわゆる分流方式が施行されております。この点はどういうふうに考えておられるか、一言お答えいただきたいと思います。
  323. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 市街地の人口密度の非常に多いところでは合流式、それ以外では汚水と雨水は分離して排出する分流式、このような仕組みがとられていると思います。特に最近、郊外地帯に下水道整備の必要性が高くなるに従って、それらでは、農業用水路等、雨水を排出する水路断面は十分あるわけでございますので、工事費を節約する意味からも分流式が多くなるのではないか、このように考えます。
  324. 沢田広

    沢田分科員 多くなるとかそういう抽象的な言葉でなくて、今、日本全体の下水道を進めている大部分が分流方式ではないですか。言葉じりをつかむわけじゃなくて、下水道が分流方式でいく、ほとんどがそういう方式で進んでいるというのが現状である、その認識をまず大臣にしておいてもらいたかったから聞いたので、これは政治家の話ですから、事務当局の者じゃなくて、認識の問題ですから、それで大臣に聞いているんです。まあ、それはいいです。あなたが非常に熱心だということは、その努力は認めます。     〔倉成主査代理退席、柿澤主査代理着席〕  そこで大臣、そうなると雨はどこへ行くか、こういうことになるわけなんであります。雨は結果的には汚水と分流をいたします。汚水は汚水で下水道で流す。そうすると、土地改良区の排水路なり用水路なりは、一般は田んぼに入ったり畑に入った水を排水をしていくというのが土地改良事業の主たる目的でもありますし、その主要な計画の基礎でもあるわけであります。  そこで、雨は国の機関としては果たしてどういうところが管理をし、そしてだれがこれを処理するようになっているかという質問なんであります。先生はどうお考えになりますか。
  325. 羽田孜

    羽田国務大臣 私の認識では、一応一般の雨というのは今、下水道で建設省が管理しておるというふうに思っております。
  326. 沢田広

    沢田分科員 と考えると間違いが起きてくるわけなんで、例えば農地の中にある水路は土地改良の水路である、そのために余剰廃水を禁止する法律もつくられた、だから予定外廃水は禁止するけれども、一般的に自然に流れてくる水は、民法上、流れてくるのでやむを得ないというのが従来の判例を含めての法的解釈であります。  そこで、大雨が降ってきた、付近に人家がたくさんできる、そういうようなことになりますと、従来は湛水は三日湛水ぐらいが許容の限度である、この間の判決では床下までは許容受忍限度である、こういう判決も出ております。しかし、いずれにしても湛水現象が生じる。米の場合なら三日とかはまあ我慢できる限度であるというのが従来の排水の基準であったわけです。そういう理解の上に立っていわゆる土地改良区は自然に流れ込んでくる水を排除していかなければならぬ義務を負うわけであります。その点は理解していただけますか。——首を縦に振っておりますから、記録上そういうふうに表現してとどめておきたいと思います。是認をしたということになる。  そうすると、それは他動的にその土地改良区は予定外の雨量を排水しなければならなくなるということになりますね。結局雨が自然に流れ込むわけですから、通常の排水以上のものを背負っていく、理論的にこういうことになるわけですね。今、下水道は、念のためですが、これは私が演説していたってしようがないのですが、大体毎秒五十ミリをもって標準としてつくられているのが都市下水路の基準であります。ですから、それ以上の雨量が来れば、これも開渠なら開渠の中に入ってくることは必至なんであります。そうすると、この雨があふれれば住民からも農地からも苦情が出る。それは当然改修していかなければならぬ。改修しないで済むと思いますか。どちらでしょう。
  327. 羽田孜

    羽田国務大臣 とは思いません。
  328. 沢田広

    沢田分科員 直さなければならぬ、そういうことですね。そうしますと、水路を広げたり——私は関東平野先生のような高い勾配のあるところでないのでありますが、簡単に言えば埼玉ですから、海抜で四メーターくくらいのところです。一番高いところがせいぜい海抜で十五メートルくらい。ですから、それを距離一万メートルとしての勾配の中を流れておる、三千五百分の一くらいの勾配しかないのであります。そういうようなのがいわゆる東京、埼玉あるいは千葉というものを含んでいる地形上の状況です。  そこで、本論に入って、簡単にやっていきますが、土地改良法の四十八条というのがありまして、今言ったように、他動的であれ何であれ土地改良の改良事業を変更をした、例えばポンプの大きさを大きくするあるいは水路を拡張する、ブロック護岸を矢板護岸に変える、こういうようなことで、勾配がありませんから御承知のとおり拡幅以外に量をふやすわけにはいかないわけで、そうしますと、土地改良の改良事業計画、こういうことになって、一々住民の三分の二の署名をもらう。これは議会のリコールだって二分の一なんですね。首長を首にするのだって三分の一の要請でできる。最後は投票で半分ですが。それなのに三分の二の判こを——判こはもう要らないようにときょうはほかの分科会で言ってきたのですが、判こが要らないというのはこの話とは別ですよ、誤解しないでください。——それをとらなければならぬ。これは大変なことだ。  だから、農民の負担が著しく増大するとか特別の場合以外には、これは特に「重要」と書いてありますが、ポンプが増大したり川幅が広がったりあるいは河床を下げたりというようなものは、当然、他動的なものから地域の住民あるいは農民を守る行為であり、農民に著しく損害なりを与えない限りそれは一々三分の二の署名を求めるものではなくてよい、こういう解釈だ。重大な変更がある場合だけに限定されるというふうに理解をしているわけでありますが、これは構造改善局長に一言言ってもらって大臣に答えてもらいます。
  329. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 まさに御指摘のとおりでございまして、管理事業について申しますと、この管理事業の事業内容で農民の受益の具体的な内容が決まるわけでございますので、それに影響を及ぼすような場合には当然三分の二の変更の同意が要るわけでございますが、そういうものに影響がない場合には、目的論的に解釈いたしまして不必要であるというふうに解釈できる余地は十分あるわけでございまして、そういう解釈が成り立つと思います。
  330. 羽田孜

    羽田国務大臣 局長の答弁しましたとおりであります。
  331. 沢田広

    沢田分科員 ですから、わざわざそういうせきをポンプに変えたりというような場合におきましても、それは四十八条の土地改良事業計画の変更というものには該当しない。言うなら今までの負担が、反当負担といいますか平米負担というものが三倍とか、それこそ議員の定数変更じゃないけれども、三倍にも膨れ上がるというような場合はそれはそういうことになるかもしれぬけれども、農民の負担には影響なかった、例えば都市サイドの責任であるから都市サイドでそれは負担したということであったような場合には、土地改良の改良事業計画の変更には当たらない、こういうふうに解釈するのが妥当だというふうに思いますが、念のため、今の場合も含めてお答えをいただきたいと思います。
  332. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 ただいま先生三倍という事例を引かれましたが、それじゃ二倍ならどうかという話もございます。  ただ、いずれにいたしましても、受益者の負担に軽微な影響しか与えない場合あるいはその施設の変更によって具体的な水利用上の地位に影響を与えないような場合、こういうような場合には軽微な変更として三分の二の同意手続をとる必要のない場合があり得るということは御指摘のとおりでございまして、これは具体的事実に即して判断すべき、計画変更手続の目的に即して判断すべきものであろう、かように考えます。
  333. 沢田広

    沢田分科員 あえてもう一回言いますと、ここをなぜこうしつこく言っているかというと、例えば三トンのポンプを五トンに変えた、あるいは五トンを加えたというような場合に、土地改良事業計画の変更だという解釈が成り立ては会計検査院は通らなくなるんですね。それに例えば農林資金を投資したとすれば、それは不当な投資ということになってくるわけですね、通らないとすれば。だから私は、ここは厳しく解釈をしていかないと、国会の立法府で解釈をきちんとしないと、会計検査院から見たらそれは三分の二の署名をとるんだという解釈が成り立つようなここで余韻を残しておくことは非常に重大なことにつながるわけで、だから三倍とか二倍とかということは別としても、要するに定款で定める範囲内において許容される限度、通常の常識において許容される限度においての範囲内においては、特に重要な変更がない限り三分の二の署名は必要とするものではない、こういうことで仕事は進められるんだということを担保として保障してもらいたい、こういうふうに思います。  そういう意味で、私の言っているような意味でいいかどうか、イエスかノーかで結構ですから、これ以上ダブらせないで、言うとまた行ったり来たりすると嫌ですから、大体そのことぐらいの解釈でこの四十八条の解釈はいいんではないのかというふうに思いますが、いかがです。
  334. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 先生の御趣旨も十分わかりますので、一般論としてそのような解釈は妥当であろうというふうに思います。
  335. 沢田広

    沢田分科員 さっき申し上げたような場合を考慮して私もあえて言っているわけでありますから、全国の土地改良区がこのことで泣きを見ないようにひとつ善導してもらいたい、よろしくお願いをいたします。  続いて、管理規程がどの程度普及されたかということでちょっとお伺いをいたしたいと思いますが、お答えいただけますか。
  336. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 実は土地改良区の管理責任の具体的内容を明らかにするという趣旨で、四十七年改正で特に管理規程と予定外廃水のリンクをしたわけでございますけれども、まことに遺憾ながら、具体的にその予定外廃水に結びつくような形で管理規程を設けている事例がないわけでございます。
  337. 沢田広

    沢田分科員 ここでなお追い詰めようとはしません。私の方では、公告をして、知事はいまだに認可をしてくれませんね。せっかくできた法律でも、知事が認可したというのは全国で恐らくないんじゃないかと思う。  それで、これは大臣も改めて——そういう農民を守るという権利が保障されているものがあるんだ、都市サイドにだけ遠慮しちゃって、農民がずたずたに、言うならば切りさいなまれる、こういう状態をつくらないためのこの管理規程であるわけです。知事が例えば否認をしてもあるいは黙っていても、公に公告をして、そしてみずからの総会で決定をすれば第三者に対抗する条件は、裁判をやれば勝つか負けるかわかりませんけれども、そういう公告をしてやれるような体制をそれぞれの土地改良区に与えるように指導をしてほしい。ここはもうそれだけ言っておきます。  そういう方向で権利を守ってやってほしい、そういうことですが、どういうふうに回答するかわからぬが、とにかく全然ないというのは、法律をつくってあなた方実行しないというのはよくないことだから、もう一回答えてみてください。
  338. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 まさに御指摘のようなことを踏まえて、社会経済的条件の変化の中で土地改良区が都市化の進行に伴い維持管理に非常に苦労しておるという実態を私ども認識しまして、あの規定を入れたわけでございます。  ただ、土地改良区は、三条資格者、農民だけの組織でございますので、やはり第三者である知事の判断がなければそれを社会的に有効に機能させるわけにいかないということもございますものですから、あのような仕組みになっておるわけでございます。
  339. 沢田広

    沢田分科員 それから、管理規程に定められる範囲もぜひひとつ検討していただきたい。例えば、占用問題でもそうですし、工場排水もそうでありましょうし、浄化槽排水も同じであります。あるいは水路の上を利用するということもある意味において管理規程の中に定めていくべきものだと思います。そういう意味では、私の関係するところでも今駐車場にしまして、二百台ぐらいで年間八百万円ぐらい、賦課金よりも多く入ってくる、こういうこともありますから、ぜひ管理規程を強化してほしい、こういうふうに思います。  続いて、これは円高差益の還元という言葉ではないのですが、私も、仏の顔は三度といって、今度四度目になりましたけれども、牛肉もそろそろもう一回肉安売りデーをつくったらどうかということで再三提言をしてきました。二十九日だけでは、二月にはない。肉の日でニクらしい、こう言って、二、九、十八はどうだろうと提言もしたわけでありますが、牛肉屋さんどうですか、下げていただくような配慮はその後どういうふうに御検討なさったかひとつお聞かせ願いたい。
  340. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 肉の日につきましては、かねてから先生からたび重ねて御指摘を受けてまいっていたわけでございますが、私どもといたしましては、現行毎月一回の肉の日につきまして、四月以降拡大する方向で現在検討を進めております。
  341. 沢田広

    沢田分科員 十八日にこだわるわけじゃありませんが、大体どのころを選んでおられるのですか。上旬ですか中旬ですか下旬ですか。下旬はもう二十九日があるわけでありますが、大体の考え方として、四月以降、月の前か真ん中か後ろかぐらいのことは言っていただきたいと思うのです。
  342. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 なるべく上半の方を選んでみたいと思います。
  343. 沢田広

    沢田分科員 大臣、四回目でこういうことが実現へ一歩進んだということは、内需拡大の上にもプラスになりますし、健康の上にもプラスになるだろうと思いますし、我々には遠かりし牛肉でありましたが、幾らかでも近づいたということは結構な話だと思います。  続いて、米の表示の問題でこの前お願いをいたしました。いわゆる不当表示にならないように指導をしてほしい、いい米はいい米として食べたい、こういう願いで表示の適正を求めたわけですが、お答えいただきたいと思います。
  344. 石川弘

    ○石川政府委員 御承知のように、必要的記載事項でございますと原料玄米等が入るパーセンテージもはっきり書いてやっているわけでございますが、御指摘の任意的記載事項のいわば三点セットと言われているものの中で、例えばササニシキとかコシヒカリとかいうようなものが五〇%以上入っておりますと、その表示だけをして、ただしそれ以外のものが入っていることは入っているのですが、それだけを表示しているものについていろいろな誤解を招くのではないかというお話が先生からあったと思います。  私どもは、その他のそれ以外に入っているものもそこにはっきり書かせる、例えばコシヒカリが五五%、その他の米が何%か入っているのならそれも書かせるということで、誤解がないように、要するに中身がはっきりわかるように指導していくつもりでございます。
  345. 沢田広

    沢田分科員 前向きにお答えをいただきまして感謝をしますが、素人ではなかなかそれが確認できない。だからたまには食糧事務所に、いろいろ行革の問題もあるでしょうけれども、適宜、中を点検してもらって、それが事実に反するかどうかを監督をしていただきたい、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  346. 石川弘

    ○石川政府委員 大型携精工場でやっております小袋詰めにつきましては、工場自身を検定機関が検定をいたしておりますので間違いがないと思っておりますが、店頭精米等につきましても、原料がどのように使われているかというようなことを私どもの出先あるいは都道府県が点検をいたします。  そういうことで、今お話がありましたように表示と中身が違わないように、今までも相当やってきているつもりでございますが、ぜひこれからもそういう表示と内容を確かめるための調査なり指導をやるつもりでございます。
  347. 沢田広

    沢田分科員 さっきので申し落としましたが、維持管理計画は、先ほどの答弁で——要すれば出発当初につくった維持管理計画の数字ですね、例えば延長が幾ら、護岸が幾ら、ポンプが幾らあるいは面積が幾らといろいろある。面積が著しく変更した場合これは入れてもいいのですが、そうでない細かい数値については、耐用年数がたてば滅却措置も生じます。ですから維持管理計画は、総会で決めれば三分の二の署名をとらないでも滅却もできる、耐用年数が三十年たったというような場合は当然、それは護岸もそうですが、二十何年たてばそれは滅却措置ができる、例えばそれを変えた場合にも三分の二の署名は要らないものだ、こういうふうに私は解釈をしますが、それで異存はないでしょうね。
  348. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 維持管理計画というのは、先ほど申し上げましたようにそれによって水の利用の仕方が決まって受益者の利益の具体的内容が決まるという構成をとっておりますので、先生指摘のように、例えば延長が少し変わるとか物理的な形状の変更の場合に一々やれということはございませんけれども、維持管理計画をすべて三分の二の同意が要らないということは、これはちょっと言えないということになるわけでございます。
  349. 沢田広

    沢田分科員 だから、先ほど述べた重大な影響の範囲内以外のものは、昔つくったままでなくやはりそれぞれの総会を経て順次改善をしていく、それが現実的な対応ではないのかという提言をしているわけでありまして、あなたのおっしゃる著しい変更はもちろんそうだとしても、これでも若干不十分なんですが、それぞれの総会で改善をしていくということをもってその追認をするということでそれぞれが合意をしたというふうに解釈しますが、いかがですか。
  350. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 今の土地改良区の置かれている厳しい条件の中で、なるべく常識が生きるように解釈、運用するのが法律を持っている者の責任だと思います。先生の御趣旨もそういうことだろうと思いますので、できるだけそういうふうな常識が生きるような法の解釈、運用に努めてまいりたいと考えております。
  351. 沢田広

    沢田分科員 大臣、今言われてきたことは、先ほど述べたように農民の人たちが、会計検査院や何かに、ある程度そういうことがわからないためにいろいろ指導されたりする例なしといたしません。ですから、やはり今言われた常識の線でひとつ的確な指導がされるように強く求めまして、私の質問を終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  352. 柿澤弘治

    柿澤主査代理 これにて沢田広君の質疑は終了いたしました。  次に、広瀬秀吉君。
  353. 広瀬秀吉

    広瀬分科員 今、世界的に林業問題というのが非常に重視をされているわけです。ヨーロッパでもあるいはアメリカ大陸でも、そして日本でも森林が非常に荒廃しつつある。これは大きくグローバルな立場からいえば地球の砂漠化現象が非常な勢いで進行しているということですし、そういうことが事実である以上、これは森林の持つ公益的機能、緑のダムだと言われ、水を貯水して絶えざる供給、不断の供給を確保するのに大変な役割を果たしている。空気もきれいにするし、また農業用水あるいは工業用水として欠くべからざるその源をなすものだ。これを羽田農林大臣の前で説教をるる申し上げるつもりはありません。大変な公益的機能というものを果たしていも、まさに人類生存にかかわる、こういう立場で大臣と共通の土台で物を考えたこともあるわけでありまして、そういう意味から、ここで改めてあなたにどうこう質問するのもどうかと思うのですが、きょうは、今衰退しつつある林業全体、そしてまた活力が失われつつある林産業というようなものを、ここらで何とかしなければなるまい、こういう立場で、これは建設的な大臣のお考えもひとつ聞きたいし、それからまた、林野庁としてもここで真剣に対処しないと悔いを千載に残すことになるのではないか、そんなふうに思いますので、言うならば林業問題についての最も強力な応援団のつもりで質問をしたい、そんなつもりでございますから、どうぞ言葉を濁さずに、ごまかさずに——ごまかすという言葉は不適当でございますけれども、そういうつもりで正直に本当の姿を見きわめながら、やはりこれから何とかしなければならぬなという、林業をたくましく振興させよみがえらしていくという方向での議論をしたい、実はこう思っているわけです。  最初に、林野庁長官に森林、特に日本の国有林の現状について、また若干その他の一般の民有林関係にも触れていただいて、林業の現状、私が固頭に申し上げたような角度を踏まえて、今日あなたが今の森林の状況についてどの程度の御認識を持って心配をされているかなということを、余り時間をとられますと三十分なくなってしまいますから、要領よく簡潔に、しかも今日の状況を余すところなくお聞きしたいと思います。
  354. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 森林・林業が世界的にいろいろ問題をはらんでおるということにつきましては、先生のお話のとおりでございますが、日本におきましても同じような傾向がやはり取り巻く条件としてあることと存じます。  国有林のことに関してでございますが、国有林の会計制度、大体五十年ごろまでは基本的には収支の償う健全な形が続いておりましたが、五十年代に入りましてから財政傾向は赤字基調となってまいりまして、その改善に取り組みましたのが五十三年からでございます。前の改善計画によりますいろいろな改善努力も、それなりの効果を上げつつまいりましたが、なかなか十分な成果をおさめ得ない点もございまして、五十九年からは、それを改定いたしました新しい改善計画によりまして、さらなる努力を現在傾注いたしておるところでございます。  その中では、事業運営の能率化とか要員規模の縮減、組織機構の簡素化等の減量案、さらに販売対策を強化する、それから自己収入を増大させるための林野土地関係の売り払いを促進するなどの数々の自主的な努力に取り組んでおるわけでございますが、またそれに加えまして、いろいろ所要の財政措置も講ぜられているところでございます。  そのような努力にもかかわりませず、林業を取り巻く現在の大きな景況の不況が続いておりますことと、それから、国有林内部におきましては大変資源的な制約がございまして、伐裁量をなかなか増加させ得ない事情もございます。また、内部的には利子償還金が増高しておることなどもございますし、あるいは、大きな国有林組織の内部におきましては、事業運営上まだいろいろ改善を図らなければならない点もございまして、結局、内部的な経営の原因と林業を取り巻く外部原因との相乗効果が経営の悪化に作用いたしておりまして、現在の収支は大変苦しい状態になっております。  今日これに対処するためには、現在の改善計画を確実に推進することは当然でございますけれども、さらに、これをどのように深めていかなければならないか、その方策について真剣に検討をいたさなければならないと考えているところでございます。
  355. 広瀬秀吉

    広瀬分科員 そういう状況ですね。これはやはり国有林の問題としてあるいはまた日本全体の林業の問題点として、ほとんどの問題点指摘したと見ておりますが、そういう状態の中で、どうも国有林財政も非常に苦しくなっている。間もなく、四月の初旬には六十一年度の予算も通る。通りますと、大蔵省もすぐサマーレビューに入るようなことも考えておるようです。  今長官がるるおっしゃったように、山の木を切りそれで収入を得る、これは今の独算制の建前からいえば一番有力な財源ができることでありますが、それが望めない。価格はもう五十五年ごろから逆に三割ぐらい減っている、あるいは半分近くにも減っているというような、ほかの物資には見られないような、価格の低迷どころか値下がり、そういうものが見られるということですから、収入のふえる道をどうやって探すかということが大変問題ではないか。  林野庁は、苦し紛れということもあったかもしれませんが、水源税構想を出されたけれども、川下の皆さんがなかなか理解してくれなくてこれもつぶれたという状況にある。そうすると、やはり林業をここらで何とか前向きにしないといかぬというのだが、今長官がおっしゃったように、どんどんしぼんでいってしまうというか衰退していってしまう状況をどうやったら活性化させ、前向きに振興という方向に持っていけるのかということが何よりも大事な時期に直面している、こう思うのです。  それで、その逃げの一手で林野を売っ払おうじゃないか、これはなるほど予算面でも際立ってふえているのです。それからまた、不要の土地もどんどん売却してしまえ、これは一回限りなんです。売ったらもうそれは戻ってきませんから、そういうことではだめなんです。それで、やはり確実な財源をどこからか見つけてこないといかぬだろうと思うのです。  今、国鉄問題が国会にもかかろうとしておるわけでありますが、これも、国鉄は国鉄であった時代長い年月、お客さんを運び荷物を運び貨物を運ぶという以外に何事もできなかったのです。そういうふうにがんじがらめにしておいて、しかも借金をしてでも新線を建設する、新幹線まで勢いよくつくっていく、それが皆高い利息だ、その高い利息がまた元利をふやしていくというようなことで、今や完全にサラ金財政、もはやどうにもならないところへ来て改革法案が出される、そういう状態になっているわけです。第二の国鉄のような形にしないために、もっと二十年先ぐらいにも、今度の法案の中に出ておるように関連業務ももっとやってよろしゅうございます、附帯業務もやってよろしゅうございます、やはり金を稼ぐということをやっていいんだというようなことも、この辺のところで国有林の行政を通じてあるいは林業問題を通じて、そういうものもやはり国有林の収入源として考えて、かなりトラスチックな形ででも考えていくくらいの踏み切りをしないといけないだろうと思うのですが、そういう前向きの問題について、何かしなければならぬという御決意があるかどうか、この辺のところを農林大臣にひとつ承りたいと思うのです。
  356. 羽田孜

    羽田国務大臣 御指摘がございましたように、国有林を含めて日本の山というものが実際に非常に難しい状態にあるというのが現状であります。  殊に、国有林の場合に、五十九年六月に策定していただきました改善計画に基づきまして自主的な努力をしておりますけれども、それでも実際には、例えば水源地なんかも大変な状態であるということでありますし、また現在、ちょうど材価の低迷しているという話もありましたし、またなかなか伐採が適期に来ておらない木というものが実は非常に多いということでありますし、そのためにも今手入れをしておかないと、山の保全あるいは次の時代に相当な収入になるであろう木も失ってしまうということになるわけでございまして、やはり今こそ山の管理というものに対して私たちも適切な対応をしていかなければいけないという考え方を持っております。  そういうことで、先ほど先生の方からは、川下の方の反対があってついえてしまったというお話があったわけでありますけれども、ただあの法案といいますか、税の問題について訴えましたときに、どなたも山は大事であるということは認めていただくことができたわけでありまして、その意味で、これからそういうドラスチックな新しい考え方によるところの財源というものは果たして得ることができるのかどうかということも、これは私どもは別にまだあれを引き下げたものではありませんで、この次も検討していただけるということで一応まだ残しておるわけでありますけれども、税というのはなかなか難しいということ、困難であるということも私どもはよく承知しております。そういう中で、指摘にもありましたように、もちろん私どもといたしまして自主的な改善努力というものはやはりしなければなりませんけれども、しかし、なかなかそれもすぐ即効を上げることはできないということで、今度も森林の活力回復五カ年計画というものもお願いをし、ある程度のものを確保したというふうに考えております。しかし、これは国有林の方には適用するというものではございませんので、我々としては自主的な努力を続けながら、その中でまた所要の財源についても御理解を得ていくように進めていきたいと思っております。いずれにしましても、林政審議会の方で経営改善につきましてまた今御検討いただいておりますので、そういったものも踏まえ、これから対処していきたいというふうに思っております。
  357. 広瀬秀吉

    広瀬分科員 長官、土地なんかだってこれは無限にあるわけではありませんね。林野ということになると、これは相当な面積になりますけれども、それも利用しやすいところからばたばた払い下げちゃう、売っ払っちまうんだということは、身を削ってみずからを小さくだめ方向に衰退させていく。これは最大の、よく売り食いという言葉がありますけれども、自分の一部分を切り売りしながら生きていくというのは、本当の生活に値しない表現としてそういう言葉もあるぐらいですけれども、そういう状態になったら、これはまさに公益的機能も云々も何もへったくれもないということにもなってしまうわけだと思うのですね。そういうことを私ども非常に恐れておるし、これはまさに人類生存の根源にかかわる問題だということですね。  最近、いろいろな緑を守るべきであるということを、そして緑と人間というのはまさに共存しなければ新しい国づくりはできないのだというようなことは、多くの識者、学者もあるいは実務家も言っているような時代を迎えていると思うんですね。そういう立場で、例えば間伐材なんかも百九十万ないし二百万ヘクタールくらいすぐにも間伐しなければならない。やはり太陽の光が地表にまで届くようなふうにしておかないといかぬわけですから、その木自身もひ弱に、もやしのようにしか育たないということだし、その下に健全な次の世代を育てる土壌をまたはぐくむような潤葉樹ができるというような、そしてそこに草も生えるというような状況で山が育っていかなければならぬ。最近針潤混交ということがもう一遍見直されてきた。これは大変結構なことだけれども、いずれにしても、そのうち間伐に対する補助金等も、これは我々が思い切った要求をしているわけですけれども、なかなか財政難の折からということで非常に渋ちんでしか予算もとってもらえない。  一方、中国は非常に今住宅建設、しかも木材を使いたい、日本の間伐材を使いたいという、そういうものが非常に要請が強いようですね。大体一億三千万というのが、当面の五カ年計画ですか十カ年計画ですかその辺のところではっきりはしませんけれども、少なくとも計画的に一億数千万と言われるような木造住宅を建設したいという、そのためには、日本の間伐材、杉、ヒノキのたぐいを、あるいは松のたぐい——松は余りないかもしらぬけれども、杉、ヒノキのたぐいをどんどん輸入したいという気持ちがあるようですね。もちろん、これは国際取引でもありますから、価格の問題が非常に向こうの言い分とこちらのコストの問題と折り合わない面があるかもしれぬけれども、しかし、日本の山を守る、そして本当にすばらしいあすの、三十年先、五十年先にすばらしい木材を、資源を生み出すためには、どうしたってやらなければならない間伐なんですね。そうして、その出た間伐材はそういうところにはけ口だってある。また、いろいろな研究も進んでおりまして、非常に小さな板片にして、それをかみ合わしてすばらしい剣道場やなんかをつくる、そこで足をすりむかないような立派なハードな木材もでき上がるという、そういう研究なんか進んでいるのですね。そういうようなことなんかももうどうしてもやらなければならない。やることによってすばらしく森林がよみがえるということです。そして、そこから排出されるものについての利用はやはりいろいろ考えればあるだろう。  向こうと価格の折り合わない面については、これはやはり輸出補助金などといってアメリカからは大分たたかれるかもしれないけれども、中国には日本はまだ賠償金というものを出してないですね。これは、蒋介石さんが恨みに対して恨みをもって報いないというようなことで、何もやってないはずですね。経済援助は若干国交回復後はやったけれども、賠償というような形ではやってない。そういうような面も考えながら、ある程度のそういう中国の木材建設に対して、木材建築をどんどん伸ばそうというものに対してやはり日本が援助をする、大きくグローバルな経済援助というような形にしてそれがそこに流れるというようなことは、話し合いで幾らだってできるだろうと思うのですね。そのくらいのことはやって、向こうにも、どんどん幾らでもいいというくらいにあれなんですから、それをまた全部応じたらこっちの山がはげ山になってしまうくらい切ったって追っつかないでしょうから、少なくともそういう状況で一定の規模は早くやりたいというものがあるわけですから、その限度内での話になりますけれども、そういうことすらもやはりこれは大臣としては、総理に直接そういう方向でというようなことも意欲を示していただくというようなことも考えていただいたらどうかな、こんなふうにも思うのですが、日中の関係についてちょっと簡単に、そういう可能性があるということを認識していますが、よろしく状況を教えていただきたい。
  358. 羽田孜

    羽田国務大臣 話はちょっと違った面から申し上げますけれども、きょうの新聞でしたか、きのうの新聞でしたか、日本の商社が何社か中国に、アメリカ材でございますけれども、米材をたしか輸出しているという話がありました。ただ、問題は、中国の方からそのうちの一〇%でしたか二〇%分、向こうでつくった合板ですとかあるいは机ですとかいすですとかその他製品を日本の方で逆輸入してほしいという話があります。そしてこれに対しては、日本の方で実は今まで指導協力してきた案件でありまして、そういったものが果たして完全に熟しているかどうか、本当に市場に出せるものかどうかということもまだ問題は実はあるわけですけれども、これをひとつぜひ買ってほしいというあれがありました。ということになりますと、とても薄利の中で、これを日本で今度は引き受けてそれを売らなければならないというときに、果たして採算が合うだろうかという中で、今撤退を考えているなんという話が実はございます。  そういうことで、そうかといって、今先生からお話があった問題については、現在、高知あるいは宮崎県、ここらあたりが一生懸命になって道を開こうとして、実際に送っていることは事実であります。しかし、今冒頭先生からお話がありましたように、価格の点が非常に安いということがありまして、そう大きく伸びるものじゃないということであります。しかし、向こうは確かに今言った大変な数のものをつくろうとしている、これはもう間違いない現状があるわけでございますし、また中国はそれにたえるだけの木材を生産しないということから考えたときに、我々としては、これはやはり一つの需要拡大、今我々が苦労している中で、そういう需要があるのだということをやはり念頭に置きながら、それが本当にさらに大きくすることができるのかどうか、これは私たちとしても検討していきたいと思っております。  なお、先ほどのパーケットですか、敷物といいますか、床材ですとかあるいは大断面集成材ですとか、新しい建築に要するそういったものが生まれてきておりますし、また、木というものを飼料にとかあるいはその他にという、今いろいろなバイオの技術なんかも使いながら開発されておるということでありますから、こういった面についても我々としても積極的に進めていきたいというふうに考えております。
  359. 広瀬秀吉

    広瀬分科員 三十分という非常に限られた時間なものですから、これはいろいろやり出したら切りがない多くの問題があるのですけれども、もう残り時間を考えますと、そればかりに時間をとっていられないものですから。  予算書を見てみますと、元利の支払い分として五千六百三十五億の予算の中で千六百二十八億を国債整理基金特会へ振り込んで元利の支払いとしていかれる。こういうことをちょっと計算しても大体二七、八%くらいになる。もう三〇%になんなんとする借金払いである。予算、歳入歳出の総額の中で、大体三割は借金払いですよ。これでは到底経営が成り立つはずはない。しかもそういう状況に今日ある。それをまたほっておけば、今度は利子を払うためにまた借金をせざるを得ない。今やもう一兆五千億近くまで長期債務が累増をしておる、そういう状態にあるわけですから、これはもう加速度的に元利償還分というのがふえていくわけですね。まさに第二の国鉄への道を急ピッチで歩んでいる、そう言わざるを得ないわけですね。  きのう大蔵大臣にもこの点ただしたのですが、ことしは書記長・幹事長会談で野党の共同予算修正要求、その中でまさに林業問題が初めて顔を出してきた。これは私ども党内でも非常に強く要求をしまして、それで各党の政審会長さんにも、野党の政審会長さんにも働きかけをしたりして、これは大事な問題だからこれをひとつ顔を出してくれというようなことでやってまいりましたが、「森林、林業の健全な育成と国有林野事業の経営改善方策については、」云々、こういう項目もようやく入ったわけですね。したがって、問題の認識としてはここまできているということですから、そのためには、林野事業というのは、少なくとも植えつけて、投資を行ってから七、八十年先にしか収入が得られない、そういう投資の懐妊期間がべらぼうに長い特性を持っているわけですから、そういうものに六・八%から七・数%の高い金利ではこれはやっていけるはずはないのですね。したがって、もっと金利を一般会計で利子補給をするというようなことで、少なくとも民有林並みの三・五%くらいまで下げられる程度のものにしていく。それから据置期間、償還期限というようなものもかなり大幅にやっていただかないと……。今間伐などもしっかりやっていけばやがて立派な木材資源として収入の道も得られるというようなことも、木材は人間の生活上使わなくなるのだというようなことでも来ない限りは、もう一遍見直される時期は必ずあると私は確信をしています。  ですから、そういうことだとするならば、今が本当のなべ底のどん底だということなんですから、この間をうまくしのいでいく、しのげるような方策は大臣が本当に先頭に立って頑張っていただかなければならないと思うのです。そういう意味で、貸付の利子補給の問題、あるいは償還期限等の延長の問題、据置期間の問題等についてひとつ農林大臣としてどのようにお考えになり、また来年度予算編成に向けてどういう決意でその辺のところを処理されようとしているか、お伺いをいたしたいと思うのです。
  360. 羽田孜

    羽田国務大臣 今先生から利子の問題について民間並みにというお話があるわけでありますけれども、規模の相違ですとかそういった問題なんかもあります。それから、全体に民間の場合には一般の金利なんというのは相当高いものを使っているが、こちらの方は財投資金を使うということでございますから、そういったところを合わせますと、一概に国有林の方が下がっているということはない。また、国有林だけを優遇するというのは非常に難しいという実際技術的な問題がございます。  ただ、私どもの方も、今先生が御指摘のとおり、林というのは将来だめになってしまうのではなくて将来になればある程度の稼ぎをしてくれるであろうということで、やはり将来に相当のものを託しているということもあります。ですから、ここを何としても乗り切らなければならないという気持ちがありますので、今林政審の方でももう一度改善計画について御検討いただいておるということもありますし、また、与野党の書記長・幹事長会談でもこの問題について特に取り上げられまして検討するようにというお話もございます。こういったものを踏まえながら、私どもとしても、本当に国有林というものはこれからも健全に進んでいくような方途をあらゆる角度から考えていきたいと思っております。
  361. 広瀬秀吉

    広瀬分科員 時間が来たようですからこれでやめますが、今が一番林業問題にとって大事なときだ、こんな大事な時期はいまだかつてなかった、そういう認識を持っているのですね。しかも、だめになるか、振興させる方向にいくかという、今まさに岐路に立っていると思うのです。そういう意味で、林業を振興させるということが人類生存を限りなく健全に確保できる国づくりの基本である、その観点に立って、さらにひとつ、今までも林業の問題には特に造詣の深い農林大臣でもありますから、そういう意味で大きな期待を寄せて、私の質問を終わらせてもらいます。
  362. 柿澤弘治

    柿澤主査代理 これにて広瀬秀吉君の質疑は終了いたしました。  次に、兒玉末男君。
  363. 兒玉末男

    兒玉分科員 最初に、佐野水産庁長官にお伺いをいたします。  今回のアメリカ並びにソ連の漁業交渉で非常に苦労されましたことに心から敬意を表する次第でございます。御苦労さまでした。  二、三御質問したいわけでございますが、私の宮崎県の漁業関係で特に今カツオ・マグロ減船の問題が大変な課題になっているわけでございまして、これからこの対応についてどのような措置を考えておられるのか、まずお伺いしたいと存じます。
  364. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 近海カツオ・マグロ漁業につきましては、一つは、この漁業の操業水域になっております南太平洋諸国の二百海里規制、それに基づきます漁場の制約という中で漁獲量も減少傾向にあるということで、経営が大変悪化しておりまして、苦しい状態になっております。それで、こういう事態を打開するために近海カツオ・マグロ漁業の業界の皆さん方が御相談をなさいまして、やはり漁船の隻数を縮減していかざるを得ない、そうすれば残存漁船の生産性も高まり経営の安定化につながるであろうということで、六十年度から三年間で合計百五十隻の不要漁船の処理をするという三カ年計画をおつくりになりまして、六十年度がそのうち初年度分四十一隻ということになっております。これにつきまして、私どもの方で持っております特定漁業生産構造再編推進事業という補助事業に基づきまして四十一隻分に対する国庫負担約十二億六千万を今年度に手当てをいたしまして、六十一年度には四十五隻、六十二年度には六十四隻ということで、三カ年計画で構造再編を推進していくということにいたしております。
  365. 兒玉末男

    兒玉分科員 このマグロ関係の減船は、南郷町の中野会長等は以西底びき網の影響が非常に大きいんだということを再三言ってこられて、結局その影響は大だというような見解を述べておられるわけですが、その辺の御見解はどうでございますか。
  366. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 私ども、特定の業種をこれが加害者だというふうに特定をすることははばかりますが、一般的に最近のカツオ・マグロの業界が全体として需給が失調ぎみであるということの中での一つの犠牲者である、そういうふうには認識できるだろうと思っております。
  367. 兒玉末男

    兒玉分科員 現在特にマグロ類の市場関係、それからかなりの量が保管されているということも聞いておりますが、それを含めて現状はどういうふうな状況になっておるのかお伺いしたいと思います。
  368. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 昨年の五月以降マグロ類の在庫が大幅にふえてまいりまして、特にメバチ、キハダが著しかったのでございますが、昨年の十一月にはピークで四万四千トンという数字になりました。ちなみに、この数字は対前年比で一九五%という大変な数字でございます。そういう事態でございますので、メバチを例にして申し上げますれば、つれて価格も前年同月比で約四〇%下落というふうな事態になったわけでございます。  私どもも、こういう事態を憂慮いたしまして、昨年の十月以来韓国、台湾に対して我が国の現状を説明をいたしまして、日本への輸出を自粛してもらうように働きかけております。それから、一方国内では生産、流通、消費、それぞれの段階での関係団体の御協力をいただきまして、赤身マグロを中心にした需要増進、消費拡大のキャンペーンをいろいろやってまいりました。そういう成果もございまして、年末以降在庫もだんだん減ってまいりまして、最近の在庫はピーク時に比べると約一万トン以上減少しておりまして、価格も若干上向きぎみになってまいりました。ともかく荷物は動いておるという状態になってきております。  ちょっと数字を申し上げますと、キハダの場合ですと、昨年の十一月キロ四百三十五円でありましたものが、ことしの一月では五百四十三円、それからメバチが昨年の十一月が七百八十一円でございましたが、一月では九百十五円ということで、若干戻してきております。私どもといたしましては、小成に安んずることなく、今後とも需給動向をよく見きわめながら随時適切な措置をとってまいりたいと考えております。
  369. 兒玉末男

    兒玉分科員 価格は上向いたということはいいことでございますが、現在の一般消費者の好みといいますか、それは大体どういうふうな傾向に向いているのか、これは非常に関係が深いので、わかっておったらお教えいただきたい。
  370. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 正直に申しまして、マグロ類に対する消費者の需要の中には、俗に申しますトロ偏重の傾向があることは歪みがたい事実でございます。ただ、同時に、最近消費者が脂肪を忌避するという傾向があることも事実でございますから、赤身マグロの栄養食品としての価値を再評価していただいて消費増進を図る機会は十分あると思っておりまして、そういう意味では、まず最近非常に値段が安くなっておるわけでございますから、そういう低廉な栄養食品であるという特質を十分に生かして消費拡大に努めれば、それなりの効果は十分期待できると考えております。
  371. 兒玉末男

    兒玉分科員 減船の場合、国庫補助と地方自治体あるいは業者等の関係はどういうような比率になっておるのか、お伺いしたいと思います。
  372. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  減船計画の中で行われます事業は、一面では減船に伴いまして要らなくなります不要漁船の処理、それから、残存漁業者が減船をする漁業者に共補償を支払うということになっておりまして、それで不要漁船処理につきましては国庫助成が二分の一つくことになっております。共補償につきましては、共補償に要する資金につきまして農林漁業金融公庫から融資をするということにいたしております。
  373. 兒玉末男

    兒玉分科員 カツオ・マグロの関係が非常に深刻な状況を控えて、私の方の選挙区でもカツオ・マグロ漁業者が、四名でしたか自殺をするという非常に異常な事態がありまして、もちろんこのカツオ・マグロというのは非常に強力なたんぱく資源である、こういう点からも最大の御助力をお願いしたい。この際、ひとつ大臣においても諸事情を十分踏まえて御協力をお願いしたいと思いますが、大臣の見解を承りたいと思います。
  374. 羽田孜

    羽田国務大臣 ただいま長官からも御答弁を申し上げてまいりましたように、この事態に対応して私どもいろいろな手だてをもちろん進めていかなければいかぬと思いますし、それと同時に、今長官の方からもお話がありましたように、どちらかというと、マグロといいますとトロ偏重といいますかそういった傾向がありますけれども、しかし、私ども学生時代あれしたネギマなべというのは大変に私どもは今でも好んであれするものなので、改めてそういった観点から消費の拡大のための活動なんかもして、需要拡大ということを私どももう一度懸命にやってみる必要があろうというふうにも考えております。
  375. 兒玉末男

    兒玉分科員 水産庁長官にお伺いいたしますが、御承知のとおりフィリピンでは今回マルコス政権が倒れてアキノ政権に生まれ変わったわけでございますが、私たちが地元関係の業者を含めてフィリピン海域の漁業というのが今まではなかなか思うようにいかなかった、そういうことでございまして、政権が変わりましたのでこれからかなり漁業の範囲も弾力性があるのじゃないかというふうに理解をするわけでございますが、フィリピン海域における漁業等の展望といいますか、今後の見通しといいますか、そういうことについて、もし御理解いただければその状況についても御見解を承りたいと存じます。
  376. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 フィリピンにつきましては従来から、かなり前でございますが、二百海里を宣言はいたしておりました。ただ、どの程度実効的に二百海里水域についての取り締まりが行われておるかというのはやや疑問な点がございまして、二百海里宣言後もある程度操業が行われておったというふうに認識をいたしております。それで、そういうことではなくてきちんとした形で入漁をできるようにするということがもちろん望ましいわけでございますが、フィリピンにつきましては実は大変厄介な問題が二つございます。  一つは、御承知のようにフィリピンは大変な多島国家でございますから、二百海里を宣言するにつきましては、例の群島理論に基づいた二百海里の線引きをいたします。それから、しかもフィリピンの場合は歴史的な経過がございまして、単純な意味での群島理論に基づいた基線をベースにして線を引くのではなくて、その外側にさらに張り出した基線がございまして、そこをベースにして二百海里を宣言しておるという事態がございます。  それで、日本政府として、こういうなかなか承認しがたいような基線をベースにして二百海里を主張しておられる国と政府間の入漁協定を結ぶということは大変困難な問題がございまして、従来、気にはなりながらも手出しができずに来ておったような状態であります。  ただ、今度先生の御指摘のように確かに大政変があったわけでございますから、新政府のもとでのフィリピンの漁業水域についてのお考えというのを確かめながら、もしできることであれば安心して操業していただけるような取り決めができるにこしたことはないわけでございまして、私どもは、いましばらく注意深くその可能性の有無を見守ってまいりたい、そういう心境で今おります。
  377. 兒玉末男

    兒玉分科員 これは非常に政治的問題でございまして、今までも日本漁船がかなり理不尽な取り扱いを受けて、そして、とにかく一言でいえばやることがなっていない、そういうこともあったわけです。だから、これからは日本とフィリピンとの関係で、正常な漁業と同時にやはり不合理な二百海里制限はやめるべきだ。もちろんこれは一気にはいかないけれども、この際、重要な海域でもありますから、政治的にもまた日本、フィリピンの関係においても今後積極的な取り組みで正常な形で漁業関係ができますことを、私はぜひ大臣にひとつ頑張っていただきたい、このことを要望申し上げ、見解もお尋ねいたします。
  378. 羽田孜

    羽田国務大臣 このフィリピンの海域につきましては、今長官の方からも申し上げましたように、非常に複雑な様相というものがあることは私ども承知しております。しかし、新しい政権もできたことであり、これがまた、この政権がある程度落ちつかないと複雑であるだけになかなか難しいと私ども思っておりますけれども、しかし、フィリピンと日本との友好といいますか、そのきずなをあれするためにも、私どもとしてもぜひとも話し合いをしてまいりたいと思いますし、また、フィリピンでも今漁業に対して大変関心を持っておるということもありますから、その面での協力なんかもしながら、私どもとしてもそういったことで話し合いを進めることができればというふうに感じます。
  379. 兒玉末男

    兒玉分科員 水産庁長官もひとつぜひ頑張っていただきたい。では、長官結構です。  それから、畜産関係についてお伺いをしたいと存じます。  宮崎県、鹿児島県というのは、もう御承知のとおり畜産を主体とする農業県であります。ところが、最近、奇病といいますか、牛に関する病気が流行しておるようでございますが、聞いておりますとなかなかその原因がわからぬということでございます。先般、農林水産の上西君もこの問題を取り上げておるようでございますが、現在の発生状況についてはどういうことになっておるのか、それからその原因についてはどの程度把握をしているのか、この二点についてまずお伺いしたいと存じます。
  380. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 ただいま先生指摘のように、最近南九州におきまして牛の奇病が発生しているわけでございます。これは新生の子牛が虚弱であるとか盲目であるとか、あるいは神経症状を呈するという症状を持った子牛が産まれるという例が発生しているわけでございまして、鹿児島県を中心といたしました九州地方におきまして、私どもにことしの二月末までに報告がございました件数は約千七百頭でございます。  この原因でございますが、私どもの家畜衛生試験場が中心となりまして、関係県とも連携をとりながら、異常産を行いました牛の病性鑑定に努めているわけでございます。現在のところ、今回の発生事例につきましては、病理組織の検査から見ますとウイルスの感染を思わせる変化があるというところから、現在のところは本病につきましては何らかのウイルスが関与しているのではないかというふうに見られているわけでございます。そこで、現在私どもの家畜衛生試験場の総力を挙げまして異常産牛からのウイルスの分離を試みているわけでございますが、現在のところまだその分離に成功いたしておりません。  また、並行的に文献等によりまして、異常産に関与すると言われておりますウイルスあるいは最近我が国で分離されました新しいウイルスで病原性等が不明なもの約五十数種類あるわけでございますが、これを使いまして、免疫学的方法によって今回の異常産との関係があるかどうかにつきましても検査を行っているという状況でございます。しかしながら、残念ながら現在のところ、免疫学的方法によりましてもアカバネ病ウイルス等十二種類のウイルスにつきましては本病の原因であることは否定されておりますので、今後さらに残りの種類のウイルスにつきまして免疫学的検査を継続して実施してまいりたいと考えておりますし、さらにまた、同時に、異常産牛からのウイルスの分離につきましても全力を挙げて取り組んでいきたい、かように考えているところでございます。
  381. 兒玉末男

    兒玉分科員 今局長の話では、病原体の原因がはっきりつかめないということでございますけれども、やはりその病気にかかった牛の状態というものから判断して、これからその傾向はますます広まるおそれがあるんじゃないかということを考えますけれども、今後、蔓延対策についてどういうふうな処置をとるとか、あるいは免疫性を有する注射を打つとかいろいろな手段があると思うのですが、その辺の関係はどのような措置をとっておられるのかお伺いしたいと思います。
  382. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 ただいま申し上げましたように、今回の異常産につきましては原因究明に至ってないわけでございますので、本格的な防疫措置につきましてはいまだ見出し得ないわけでございます。そこで、当面の対応といたしまして、まず発生状況をよく調べてみようということと、もう一つは、九州地域の発生事例をもとにいたしまして防疫対策を検討してみようということから、実は昨日、私ども家畜衛生試験場の専門官と関係四県、鹿児島、宮崎、大分、熊本でございますが、この関係四県の家畜衛生担当者の出席を求めまして、今回の牛の異常産に関する防疫対策検討会を開催した次第でございます。  この会議で協議した結果といたしましては、今回の異常産につきましては、母牛には何ら異常が認められないということ、さらにウイルスによる疑いが極めて強いこと等、部分的にはアカバネ病に似ているというふうなことではないかというふうに見られるわけでございますので、そこで関係の各県におきましては、それぞれアカバネ病の場合に準じまして吸血昆虫の駆除等環境の整備を行う、さらに、異常子牛出産母牛の再種つけを行う等々を当面指導していこうじゃないかということを申し合わせた次第でございまして、こういったことで当面の対策を講じていくということになるのではないかというふうに考えております。
  383. 兒玉末男

    兒玉分科員 畜産局長、今アメリカ等からの輸入飼料というのがほとんど肥育時期から生育時期まで使われているわけですね。だから、私は、この輸入飼料の関係ということもひとつその原因について洗ってみる必要があるんじゃないかということでございますが、それらについてはどのような検討をされているのかお伺いしたいと思います。
  384. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 現在のところ、私どもの専門家の判断といたしましては、輸入飼料でございますれば全国的に蔓延しているはずでございますけれども、今回の場合は南九州にかなり地域が限定されているということから、輸入飼料が原因というふうに断定するのにはやや疑問がある、かように考えておるようでございます。
  385. 兒玉末男

    兒玉分科員 それから、今人工授精でございますけれども、種牛関係にも何らかの発生の原因はないのかどうかということでございますが、それはいかがでございますか。
  386. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 現在、先生の御指摘の雄牛の系統につきましても調査をしておるわけでございますが、現在のところ、雄牛につきましての問題は発見してないという状況でございます。
  387. 兒玉末男

    兒玉分科員 大臣並びに畜産局長にお伺いするわけでございますが、とにかくこの原因の解明に全力を尽くしてこれの再発防止にひとつ一生懸命頑張ってもらいたい。特に大臣、宮崎、鹿児島は特に畜産の盛んな県でありまして、それがもう大半の収入源にもなっておるわけでございます。そういうことから、飼料を含めてあるいは種牛、それから現地のいわゆる飼料ですね、使っている飼料ですね、輸入じゃなくて、そういうもの等を含めてひとつ万全の対策をぜひとっていただきたい。同時にまた、畜産農家が安んじて生産に参加できるということについて、もう一遍両方の御意見を承りたい。
  388. 羽田孜

    羽田国務大臣 先ほどから局長から申し上げておりますように、今この病性についての鑑定を懸命にやっておるところでございますけれども、御指摘のとおりあらゆる角度から病因の究明を進めていきたいというふうに考えております。
  389. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 私ども家畜衛生試験場の総力を挙げまして、かつまた関係県との密接な連携をもちまして、一日も早い原因究明と、これに基づきます防疫措置の実施に万全の体制で臨みたいと思っております。
  390. 兒玉末男

    兒玉分科員 南九州はこれが畜産にすべてをかけているわけでございますから、ひとつ一層の御健闘をお祈り申し上げて、質問を終わります。
  391. 柿澤弘治

    柿澤主査代理 これにて兒玉末男君の質疑は終了いたしました。  次に、草川昭三君。
  392. 草川昭三

    草川分科員 公明党・国民会議の草川昭三でございます。  まず最初に、前川委員会についての対応をお伺いをしたいと思います。  御存じのとおり、昨年の暮れに、国際協調のための経済構造調整研究会というのが総理の私的諮問機関として発足をいたしました。これは私どもも関心を持っておったわけでございますが、実は海外の方々の方が私どもより非常に深い関心を持っておみえになるというのがだんだん私自身としてもわかってまいりまして、個人的にも総理府にいろいろとお伺いをしてきたところでございます。これは言うまでもなく総理の私的諮問機関でございますから、一切この討議内容というのは外部には発表しない、三月の末ぐらいには報告があるだろうという程度の報告でございましたが、それでも二、三、新聞紙上等にも大体の骨格というものが伝わってくるようになりました。  これはきのうも私、ほかの委員会でも申し上げてきたわけでありますが、例えば円高差益というものを消費者にどのように還元をするのか、こういう議論よりも、この前川委員会では逆に円高差益の国際還元というようなことが議論されてくるようでございまして、差益還元の問題そのものも、これは国際的に大変関心が持たれているところであります。  同時に、最近では、いわゆる農業の国際化というものを提案しようとするような話も出てきております。そしていわゆる原則自由化で、これに対応できる農業構造の改善というようなことも出てきておるわけでございまして、私はこの国際協調あるいは国際分業というように、非常にドラスチックなものも出るやに聞いておるわけでありますが、まずこの経構研そのもののいろいろな議論に対して、ただいままでのところ農水省としての基本的な見解はどうか、お伺いしたいと思います。
  393. 羽田孜

    羽田国務大臣 今御指摘のございました経構研につきましては、この研究会の発足の趣旨が、自由貿易体制維持のためには、これまでの輸入拡大努力、内需拡大努力等に加えて、中長期の観点から日本の社会経済構造の体質を国際経済に調和するような形で調整する必要があるということで私的研究会がつくられたということでございます。その意味で、確かに外国の皆さん方はこの会議の動きというものに対して関心を持っているということであります。     〔柿澤主査代理退席、主査着席〕  ただ、この研究会の方で具体的にどうであるという議論につきましての、答申というものじゃありませんけれども、そういったものはまだ寄せられておらないということで、総理あるいは総務長官なんかも出席しながらここで議論されておるということで、まだはっきりしたものを私どもはつかんでおりません。  ただ、農産物の問題について原則自由化をしようということが言われたというようなことが報道されておりますけれども、これは各国とも農業についてはそれぞれ特殊性を持っておりますし、またそれなりの保護措置というものもしております。そして農業というものは、これは私が今細かく申し上げるまでもなく、ともかく、ただ農産物を提供するというだけではなくて、国土保全という非常に大きな公益的な意味も含んでおるということから、安易な、原則的に自由化するというようなことはすべきではないと思っております。  いずれにいたしましても、私どもとしましては、アクションプログラムに示されておることに従いまして、ガット農業貿易委員会、ここにおきまして、新たな貿易づくりというものに対し積極的に私どもも参加しながら今論議しておるところでございますから、そういう中でガットの新ラウンドの進捗、こういうものを見きわめながら、我々はどう対処するか、そしてそれによって我が日本の農林水産業というものがどんな影響を受けるのか、こういうことを十分見きわめながら対応していきたいと考えております。
  394. 草川昭三

    草川分科員 一般的ないろいろな委員会なり私的諮問委員会等もあるわけでございますが、それなりの報告書というものが出れば議会でも議論になる、あるいはまた政策にそれが反映をする、予算にも反映をする、いろいろなことになっていくわけでございますが、今回の場合は、先ほども触れましたように海外からの注目が非常に大きいということが一つあります。それと同時に、我が国でサミットというものが開かれる、わざわざ諸外国から大統領、トップのメンバーが日本にお見えになるわけでありますから、当然のことながら日本での議論なり日本での対応というものは、一種の提言としてこれは大きな柱になるわけです。  ですから、別に私的諮問機関に重い、軽いというものはないと思うのですが、今回のこの前川委員会の報告というものは、一たん出されてしまいますと、少なくともこれは世界に報道される、世界に大変関心を持たれるわけですから、その提言を後で——うまく表現ができませんが、その提言に対して満足な実績というものができないとなると、これはサミットに対する不信感にもなりますし、日本の将来において非常に重大な国際的な不信感を買うのではないか。でございますから、私はこの前川委員会というものは、できたら事前に議論をして、そしてある程度日本国内における合意というものが基盤になって、それをサミットで政府として提言をする、そして納得する。あるいは向こうの方からも日本に対するもっと強い要望があるならば、その要望を受けて提言をするということにしないと、伝え聞くところによりますと、それは三月末から四月になるだろう。では、その四月にどういうものが出るか。非常にドラスチックなものになって出てまいったら、後でその報告書を見てそれぞれの関係者が反対をするということになりますと、これはまさしくサミットに対する影響も大きいわけでございますから、前川委員会が今のような形で少数のトップの方々に議論をお任せするのはいいけれども、情報が伝えられてこない、結果だけが大きいものが出てくる。さあそれで、例えば農水なら農水、あるいは他の産業産業で結構でございますけれども、それにこたえられればいいわけですが、それにこたえられないときの問題が私は重大だと思うのです。  きのう、私は物価問題特別委員会で、電力料金の差益の問題あるいは油の差益の問題で議論をしました。通産省は、例えば原油が安いから、それをどのように捕捉するかわからないけれども、それを捕捉をして国際還元をするということになるならば、これは産油国としても問題が出てくるのではないだろうか、産油国の今の原油が下がるような状況から考えると、簡単に国際還元と言ってもなかなか聞こえませんよという議論も少しあるわけです。同じようなことが、今の大臣の御答弁のように、農作物は原則自由化、これは今の日本にとっては、サミット向けに答弁をするならば原則自由化ということは相手側に日本の姿勢が非常に高く評価されるかもわかりませんが、国の安全保障、あるいは今おっしゃられましたようなことになりますと、そうはいかぬと思うので、事前に何かアクションを起こすことが必要ではないか、こう私は提言をしたいと思うのですが、その点はどのようにお考えになられますか。
  395. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 研究会の性格からいいましてなかなか我々も情報はとりにくいわけでございますが、いろいろなチャンネルを通じまして情報収集に努めているところでございます。  それから、ただいま先生から御指摘がありましたように、やはり対外的にも影響の大きい報告書になると思いますので、我々としてできるだけ実行可能性のある提言をと、あれだけのメンバーでございますので、そうはみ出したことのないものと期待していろいろな活動をしているわけでございます。
  396. 草川昭三

    草川分科員 私が伝え聞くところによりますと、農水省からOBというと言葉は悪いのですが御参加をなされる方は、議論には参加をなさっておみえになるようですが、提言の現実的な作文をつくるポジションからは離れておるようで、本当にそういうことが反映できるのかどうか、私は老婆心ながら申し上げておるのですが、農水省の置かれている立場はかなり厳しいものがあると言わなければならぬ、こう思うのですけれども、その点はどうでしょう。
  397. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 その辺も定かでないところがございますけれども、確かに御指摘のとおり起草委員と称されている方々の中には、農林水産省のいわゆるOBという方は入っておりません。しかし、起草委員の方の中に今まで農業に関しまして我々といろいろと議論を深めてきた方もいらっしゃいますし、それから起草の方々も、自分たちだけではなくて、全体の委員からいろいろな意見聴取ということを積み重ねながら起草なさるようでございますので、そういういろいろな場面で我々の意見が反映されるような努力を積み重ねてまいりたいと思っております。
  398. 草川昭三

    草川分科員 以上でこの問題は終わります。  二番目に、地元の問題でございますが、実は名古屋に名古屋商工会議所というのがあるわけです、言わずもがなの話でございますが。そこの食料部会が、世界グルメ・フェスティバル・ナゴヤ’88という、これは仮称でございますが、構想案を持っておりまして、今いろいろと勉強会をしておみえになるわけであります。  この問題は今からもう少し御説明を申し上げますが、このグルメフェアを議論している中で、農水省が計画をしている食べ物の、食の博覧会、こういうものがあるわけでございますが、これとうまくドッキングをしたらどうだろうというような意見が出てきておるのです。これもまた御質問しますが、とりあえず、まず最初に、農水省が計画をしている食の博覧会というものは一体どういうものかお伺いをします。
  399. 鴻巣健治

    ○鴻巣政府委員 お答えをいたします。  六十一年度予算で新しく認められたものでございますが、私ども、主な地方中核都市で食を通じて農業あるいは食生活、食文化、そういった万般について国民に御理解をいただくということを考えております。実際やりますのは六十三年度からと考えておりますが、六十一、六十二はそのための内容の検討、それから開催の仕方その他について検討して、六十三年から数県の地方中核都市でやりたいというように考えておるところでございます。
  400. 草川昭三

    草川分科員 現在、かなりの地方から立候補というのですか、その意思表示があるというのですが、今どの程度申し込みが来ておるのでしょうか。
  401. 鴻巣健治

    ○鴻巣政府委員 六十三年度にやりたいという御希望の県あるいは地方都市、合わせまして十一を超えております。
  402. 草川昭三

    草川分科員 農水省の六十三年の目標でございますが、基本的なテーマは何になりますか。
  403. 鴻巣健治

    ○鴻巣政府委員 私どもとしては、柱としては、今申しましたように地球的な規模での食と緑、食文化あるいはバイオテクノロジーとか世界のグルメとか日本食生活とか、各般にやっていきたいと考えておりますが、具体的な内容は六十一年度と六十二年度にやります推進協議会の中で詰めていただこうと考えております。
  404. 草川昭三

    草川分科員 ぜひその推進協議会で御検討願いたいと思うのですが、私の方から申し上げます名古屋商工会議所の食料部会が計画をしておりますグルメ・フェスティバルというのも、基本的には大体その構想に合うようなものではないかと思うのでございます。名古屋市制百周年記念事業というのが予定をされておりますので、それの事前の、プレイベントとして市民の参加を得てひとつ世界的なスケールでグルメ・フェスティバルをやろう。それでグルメ・レストラン、世界一流の調理師を集めるあるいは各国の郷土料理というようなものを幅広く集めて一大レストラン街の設営をするとか、国際ホテル・レストラン・ショーをするとか食品展・バザール、こんなことも計画をする、あるいは国際料理コンクール、食糧サミットというようなものをやろう、非常に幅の広いことも考えておるわけでございます。  実は過年度、八三年に大阪で国際グルメフェア世界料理コンクールというのもやられているわけです。この中心になりましたのは、社団法人の全日本司厨士協会というのが主催をされたわけでございますが、世界にも司厨士連盟というのがございまして、二年ごとに総会を開く、それで四年ごとに大総会といいまして国際会議が開かれる。それでこの国際会議の時期に料理展示会だとか世界料理オリンピック、こういうものを開催いたしまして、四年に一回、世界のひのき舞台というのですか、一堂に集まるところで加盟国の一流の料理人、シェフが集まりまして料理オリンピック大会をやる、こういう実績があるわけですね。ですから、私ども地元の一員といたしましては、たまたまオリンピックも失敗をしたことでもございますので、イベントを次から次へ打ち出していこうというような計画も一生懸命立てられておるわけでございますので、私どももそれは非常にすばらしいことだということで計画を大いにバックアップしようと言っておるわけでございます。  この食の博覧会とは別に世界グルメ・フェスティバルというようなものが計画をされておるのでございますが、私は、ぜひ農水省も積極的に御支援賜りたい。これも今申し上げましたように関係する点が多いと思うので、その点どのような御見解が、承りたいと思います。
  405. 鴻巣健治

    ○鴻巣政府委員 地域地域の特色を出しながらそのグルメフェアを開催するということを御検討なさることは大変結構だと思っております。私ども、今のお話は食の博覧会とは別に後援したらいかがかというお話でございますが、なかなかそういう余裕もございませんので、これから名古屋で御検討なさいます。そのグルメフェアの内容を十分伺って、ほかの土地区のこともヒアリングをして、そして開催地域、あるいはどこでどんな形で食の博覧会として応援できるかということを検討させていただきたいと思っております。
  406. 草川昭三

    草川分科員 この問題の最後になりますが、これは要望でございますが、せっかく食の博覧会という形で言っておみえになりますし、今全国で十一が各地方から立候補しておる、こういう話でございますが、名古屋の方も、市長さんのお話によりますと、こういうものとドッキングできるところがあるならばぜひドッキングをしたい、あるいはまた幅広く拡大をしていけるところはしていきたい、こんなようなことも言っておみえになるようでございますし、関係者の方々も食の博覧会に大変関心が寄せられております。ぜひこのグルメ博と一体になって農水省の方としても地元の熱意にこたえられるように、強く要望しておきたいと思うのです。その点、大臣からも一言激励の御答弁を願いたいと思うのですが、どうでしょう。
  407. 羽田孜

    羽田国務大臣 まさに食生活と健康ということは非常に大切なことであるし、またそれぞれの地域また世界各地に根づいている食糧というもの、日本はどっちかというと雑食民族だなんてよく言われますけれども、それぞれのルーツが一堂に集まるということも大変楽しいことであり、また健康のためにもいいんじゃないかなというふうに思います。  そこで、私どもが今計画しております食と緑の博覧会、これとドッキングすることはどうだろう、そして名古屋も手を挙げるよというお話でございます。とにかく名古屋がこれに対して大変関心をお持ちであるということを私どもも頭に置きながら、これからいろいろと皆様のお話をお聞きしていきたいというふうに思います。
  408. 草川昭三

    草川分科員 第三番目の問題に移りますが、コーヒーの値上げの問題についてお伺いをしたいと思うのです。  私は、ことしの一月二十四日に「暴騰するコーヒー相場に関する質問主意書」というのを議長に提出をいたしました。言わずもがなの話でございますけれども、円高でございますから輸入をするコーヒー豆というのは下がるであろうと一般庶民は思っていたわけであります。ところが、現実にはコーヒーの国際相場というのは約二倍に暴騰いたしました。この影響を受けました喫茶店業界、私どもが日々利用するこの業界は大幅な価格改定を迫られたわけでありますし、一部は値上げをいたしました。その原因というのは、世界最大のコーヒー生産輸出国であるブラジルで干ばつがあった、そのために良品質のコーヒーの入手が困難になった、こういうことだったと言われておりますし、一部ではシカゴの国際投機筋が、すずだとか天然ゴム等の相場の低迷あるいは投機資金がだぶついたというのでしょうか、そういう資金がコーヒー豆の買い付けに走ったというようなことが言われておりまして、我が国は大変コーヒーをたくさん使うところでございますので、末端では影響が大きかったわけであります。  私が今さらコーヒー店のPRをするまでもありませんが、昔と違いまして、今コーヒー店というのは、朝は市民の社交場になります。早く言うならば大工さんや左官屋さんが意見交換をする場であり、そこで仕事の手割りをする、こういうのでどこの喫茶店も朝はにぎわいます。それで昼になりますと、一般の作業をなされておみえになる方々が食堂の兼用で喫茶店を使う、午後は家庭の主婦等もいろいろな会合の帰りに使う、夜は若い人たちの憩いの場所になるというようなことで、市民生活の中に喫茶店というのは非常に大きく定着しております。こういうところでコーヒーの値段というものを三十円なり五十円なり値上げをするということになりますと、コーヒー離れというのが始まることになりまして、業界の方々も大変心配をしておみえになるわけです。  そこで、私は今のような質問主意書を出したわけでございますが、一体農林省としては、これは国際的には国際コーヒー機関というのがあるようでございますけれども、いろいろな手だてを打たれたようでございますが、ひとつ今の点について具体的な御答弁を願いたい、こう思います。
  409. 鴻巣健治

    ○鴻巣政府委員 私ども、コーヒー店十六万二千軒ございますが、大体一年間の一店舗の平均の売り上げが約一千万強ということでございますから、そういう中でのコーヒーの値上げがコーヒー店に与える衝撃というものについてはかなり心配もいたしておるわけでございます。  コーヒーの国際価格は、二月十九日に輸出割り当てが御承知のとおり解除された後も、一ポンド当たり二ドル四十セントないし二ドル五十セントというように比較的高い水準で推移いたしておりまして、解除されてもその効果が顕著にあらわれていないと見ざるを得ないと考えております。これはやはり輸出割り当て解除後も、例えばコロンビアといったような主要な輸出国の流通事情などで急に輸出がふえるということが期待できない状況にあるということだと思っております。  私どもといたしましても、こういったような国際価格が高騰いたしまして、レギュラーコーヒー、特に業務用、それから家庭用といったものについても影響が出始めておりますので、関係する商社あるいはコーヒー関係業界から事情聴取を行いまして、状況の把握に努力をいたしておると同時に、また、円滑な流通が行われるように指導をいたしておるところでございます。
  410. 草川昭三

    草川分科員 具体的にお伺いをいたしますが、ことしの二月の十八日まではいわゆる輸出割り当てというのがあったわけですね。これが二月の十九日になくなったわけですね。停止をされた、こういうことの表現になると思うのですが、そうしますと買おうと思えば幾らでも買える、こういうことですね。その十九日以降の実績は今の御答弁では必ずしも明確な御答弁ではなかったのですが、日本としては非常に強気で押せば買うことができる、あるいは国内の業者に対しては相手側も十分あるんだから安心をしろというような宣言ができないものかどうか、そう思うのでございます。その点はどうですか。
  411. 鴻巣健治

    ○鴻巣政府委員 確かにコロンビアなどを見ますと、国際コーヒー機関の資料、これは一月二十日付でございますが、八五−八六コーヒー年度の期初の在庫は約一千三十二万袋というようになっているわけでございます。本当はそういう数量がかなり輸出されるといいんですが、港湾施設等が必ずしも十分じゃないということからどうも輸出がなかなか円滑に出てこない。それが基本的な要因になってニューヨークの相場価格というものが、先ほど申しましたように、残念ながら解除後になってもなかなか下がらない、むしろ高値で推移しているという現状にあると考えております。
  412. 草川昭三

    草川分科員 国際投機筋というのも非常にいるわけでありますし、そう思うように手付が打てないかもわかりませんが、ひとつ流通段階で投機的な行為がないように、流通の円滑化ということについて十分関心を払っていただきたい、こういうように思います。コーヒーの問題は以上で終わります。  そこで、今度は国鉄の融資に関して、いわゆる農林省関係の金融、融資が今後どのように行われていくのかということをお伺いしたいと思うのです。  今、国鉄関連法案というのが発表をされておるわけでありますし、いわゆる来年四月からの国鉄の新しい体制、分割をして民営化するわけであります。従来の鉄道法に基づく国鉄に対して農協は一部融資をしたこともございます。最近はしてないようでありますが、農林中金は融資の実績があるわけです。この農林中金の融資残高は一体幾らになっておるのか、あるいはそれが今後どのようになっていくのかという問題を少し聞きたいわけです。  私どもは選挙区にお百姓さんもおみえになりますし、いろいろな形で農協を通じ農林中金なんかにもいろいろな意味で金が流れていっておるわけですが、それが従来国鉄というものに融資をされていた。担保が本当にあったのかないのか、あるいは新しく分割をする場合にどういうことになるのだろうかという関心は十分あるわけです。そこで、まず現状について、農林中金というのは国鉄にどういう融資条件で融資をしているのか、お伺いをしたいと思います。
  413. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 私どもの関係で国鉄への融資ということになりますと、現在融資残高を持っておりますのは農林中央金庫のみでございます。個別の金融の取引の問題でございますので、残高が幾らという明確な数字を申し上げるのはちょっと控えさしていただきたいと思いますが、農林水産関係の協同組織の全国的な金融機関ということでございますが、所属団体に対します貸し付けその他本来の業務を害しない範囲内におきましていわゆる公社等の特殊法人に融資ができるということに制度上なっておりまして、融資を実施いたしておるところでございます。
  414. 草川昭三

    草川分科員 私は実は三年前から毎年国鉄再建の問題を含めまして、この問題は国鉄側に対してどこから金を借りるのかという議論をしておりますので、毎年レクチャーでは農林省の金融課の方にもおいで願って今の議論をしておるわけです。それで六十三年三月の残高が一体どうなるのかということ。六十三年ではございませんが、五十九年十二月時点の貸付残高が約千三百億ぐらいあるということも私どもは承知いたしております。  そこで、いずれにしても、これは今度その債権が全部旧国鉄に残るのか、あるいは新国鉄にどのように負荷されるのかというのは今まさしく議論しておるわけですね。  それはそれでいいのですけれども、新会社になったときに担保はとるのですか、とらぬのですか、どうですか。ただいまのところは、今おっしゃいましたように公社、法人に融資ができるわけでありますし、鉄道法によって担保はとれないでしょう。だから担保なしで貸しておるわけです。国鉄は赤字だけれども、まさかつぶれることはないから、我々も安心してお金を貸したということを黙認しておるわけですね。ところが今度分割になるわけですから、ちょっと今までと条件が違いますね。やはり我々としては、お貸しするならば担保をとられるのですかと聞かなければならぬわけですが、その点はどうなんですか。
  415. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 この国鉄改革に関連をいたしまして、現在農林中央金庫が融資をいたしております債権債務関係がどういうふうに承継されるのかという問題とあわせまして、今先生おっしゃいましたように、国鉄が新会社に移行した場合の融資がどうなるのかということ、二つ問題があろうかと思います。  後者のお尋ねにつきましては、私どもが承知しております限りにおきましては、新会社は、いわゆる特別の法律に基づいて直接に設立された法人、あるいは特別の法律に基づいて特別の手続で設立された法人に該当するかみなされるというふうに承知いたしておりますので、農林中央金庫の貸付対象として適格性のあるものということで残るであろうと考えております。  今先生指摘のとおり、農家あるいは漁家の預金を原資にした金融機関でございます。したがいまして、そういう零細な預金をもとにいたしました貸し出してございますので、債権保全という点については十分留意をしてまいる必要があるというふうに一般論としては考えております。ただ、では実際にどういうふうな債権保全のやり方をするのか、担保をとるかとらないかというようなことになりますと、いずれにしましてもこれは新会社と農林中金なりその他の金融機関との、当事者間で個別に決定をされてまいるものと考えております。
  416. 草川昭三

    草川分科員 これは新国鉄の責任者なりの方々の今後の折衝になりますが、私どもが国鉄側といろいろお話をしておりますと、新会社は従来どおりの形で融資を受けていきたい、そういうことが認められておるのだというお話でございます。例えば今電力が分割をされておりますが、それぞれの電力会社等についても担保を必ずしもとっておるわけではない。それに見習うのではないかと言われておりますが、電力会社と新国鉄とはまた条件も違ってまいりますし、あるいは新国鉄の会社の中でも、では保有機構はいいのか、技術集団をとる機構はいいのか、全部条件が違いますね。そういう条件を個別にどこが審査するのか、それはローカルが審査をするのか、中央一本で審査をするのか、大変難しい問題が農林中金側の方にもあると私は思うのです。  そういうことを含めて、零細な、善良な国民である農漁民の債権保全には十分な対応を立てていただきたいということを要望して、本件も終わりたいと思います。  最後になりますが、農薬関係の問題についてお伺いをしたいと思います。  私は昨年パラコートの問題を取り上げまして、特にパラコート犯罪の対応なり管理をもっと強化してほしいということで、警察庁の御意見と農水省の御意見、それぞれのお考え方を聞いたことがあるのでございますが、それを少しフォローアップする意味でお伺いしたいと思うのです。  そこで、まず警察庁に、パラコート犯罪のその後の管理なり対応はどうなっているのか、お伺いします。
  417. 上野治男

    ○上野説明員 お答えいたします。  昨年十一月、パラコートの不正使用問題がマスコミで連日騒がれておったことがあるわけでございますが、そのときに先生からも環境委員会で御質問いただき、いろいろ御意見を賜り、御指導を賜ったわけでございます。  そういったものを参考とさせていただきまして、警察としてもう一度諸施策を見直してみたいと考えておりまして、まず第一番目に、実態調査をもう一度やり直してみようということで全国に調査方を指示したわけでございます。その結果、パラコート中毒死亡者は昭和五十九年には五百九十四名、昭和六十年は千二十一名と予想以上に多く、前回、昨年十一月の際は五百三十数名と申し上げたわけでございますが、それよりもはるかに上回る数字で、さらにその増加の傾向が極めて著しいということがわかったわけでございます。  さらにその際、保管場所につきまして、かぎのかかるところに保管するようにということを繰り返し指導されているわけでございますが、実態を見てみますと、納屋を含めてかぎのかかるところに保管されておったものが八・三%、その他のものは、多くの場合は縁の下ですとか庭先とかあるいは田んぼ等の出先の物置のようなところ、あるいは家の中ですと台所ですとか玄関とかいったようなだれでもが手に触れられるところに置く者が非常に多く、また亡くなった方の遺族から事情聴取しましても、そもそもそういうものがどこにあったのか全然わからないとか、そんなものが家にあったなんということは全く知らなかったというような者が三五%あるというような形でもって、今申し上げておりますのはパラコート中毒、死亡したケースでございますが、死亡者の場合についてはその保管、管理が極めてずさんであるということがわかっておる次第でございます。  さらに購入の実態について調べましたところ、本来これは農家が除草の目的で購入すべきものでございますが、中毒死亡者の約三九%は農家と全く関係のない人たちでございます。また購入の場所については、これは農協で買うのが大半でございますが、雑貨のようにだれでもが自由に買えるところで購入しているものも数例あった次第でございます。  こういうことでもって問題はかなり深刻であるというふうに感じまして、警察としましても今までの施策を基本的に見直してみようと考えております。そういう面で、私どもとしまして警察の立場だけで考えることがないように、メーカーですとか農協等の農業関係者等の意見も聞き、あるいは関係行政機関とも打ち合わせをしまして、とりあえず本年の二月に、シーズンの前にキャンペーンを行おうという趣旨で、全国的にパラコートの使用に関する指導月間を設けまして、各県におきまして、販売業者だとか大口の使用者あるいは農業普及員というような方を招致しまして安全管理研修会というものを開催しております。私どもに報告がありましたもので全国で百四十七カ所開催し、約二万人の人に出席していただいております。  こういったことで、さらにその過程で、悪質な違反者については、先般の御質問の際にもこれからは厳しく検挙していくということを申し上げたと思いますが、その方針に従って悪質な無登録販版者については厳しく検挙しておる次第でございます。今後ともこのような方針を繰り返し行っていきたい。特にことしの六月の使用時期には、農薬危害防止運動というのを農水省中心に行われますし、その時期にも合わせまして私どもとして所要のキャンペーンを進めていきたいと思っておる次第でございます。そしてその過程で、さらに実態を踏まえて関係の行政機関あるいは農業団体、農薬のメーカー等につきまして警察として物を申すべきものについては申ませていただきたい、こういうことで考えております。  私どもが今までやりました実態調査あるいは取り締まり、啓蒙の月間を通じまして感じましたのは、農薬としてパラコートは確かに便利なものではございますが、どんな便利なものであっても毒は毒なんだ、もっと厳粛な気持ちを持って取り扱ってほしいということを痛感しておる次第でございます。
  418. 草川昭三

    草川分科員 前年の実績よりも、六十年の場合は千二十一名の死亡者が出たというのは確かに深刻な問題だと思います。ただ、最近自販機等のそういう犯罪がございませんので一安心ではございますが、やはりこれは管理という問題もさることながら、もう一つパラコートそのものの粒剤化、粒状化というのですか、粒にするということです、これもたしか昨年警察庁の方からそういう御提言があったやにお伺いをするわけでございますが、ひとつこの際農水省の方にお答えを願いたいのですが、パラコートの粒剤化についての検討状況はどのようになっておるのか、今の警察庁のいろいろな評価を含めてお考えを答えていただきたいと思います。
  419. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 ただいま御提案というか御質問のございました第一点のいわゆる安全管理、こういう面につきましては、先般もいろいろお答えをしているわけでございますが、私ども六十年十一月二十日に県に指導通達を出しまして、これは内容いろいろきめ細かくわたっておりますけれども、販売業者の把握、確認とか取扱責任者の設置とか、今警察庁の方からお話のございましたような農家における保管場所の問題、さらにパラコート除草剤の販売をする際に農業使用者へ限定していく、こういうようなことを徹底させるということを行っております。  またさらに、本年一月警察庁の方から「毒物・劇物の管理の適正化について」という御要請をいただきまして、二月を一つの指導徹底の月間として一緒にやっていこう、こういう御要請もございましたので、これに基づきまして二月の月間の指導を行った次第でございます。  なお、こういうことに関連しまして、第二点のお尋ねになりますいわゆる剤型の改良を通じますこういう被害防止、こういう面で当面粒剤化の問題についての検討を進める必要があろうというように考えております。現在のところは、国内のある会社の方で検討されて試作品もできておりますが、これは食品添加物を主体とする増粘剤を含む成分を加えまして粒剤化するものでございまして、まだ技術的には確立いたしておりませんけれども、ただ、これはもちろん粒剤に水を加えますと粘土状になりますので、いわゆる誤飲等の事故は防止するわけでございますが、反面まだ粒剤が少しもろい、壊れやすいということで、本当の粉状になりますので、これを扱う際に農民等がかなり高濃度の粉末を吸収するおそれがあるのではないか、あるいはこれは農業側の問題でございますが、散布機の細かい目のノズルに目詰まりを生ずる、こういうような問題もございますが、当面危険防止の点でまだまだ剤型の物性の改良を必要とする、こういう段階でございますが、とにかくこういう方向で国内でも取り組んでおる次第でございます。
  420. 草川昭三

    草川分科員 今おっしゃいましたように、確かに、使うということになりますと噴霧機なり散布機というものは要るわけですから、粒状になるとなかなか使いづらいという不便はあるんでしょうね。それはわかります。わかりますけれども、問題は、今警察庁の方から答弁がありましたように、便利なものだけれども毒は毒じゃないかという点、こういう矛盾点を解決をする以外に国民の安全性というのは守られないわけですから、ひとつ知恵を出して、色彩というんですか色をつけるとか、粒状以外にも私は何らかの方法はあると思うのです。そういう点についてはぜひ督励をしていただきたいということ。  そしてまたこの保管場所については、確かに便利さということが優先をいたしまして、農家の方々が必ずしもかぎをかけるというようなところに保管をするということはついついない場合もあるわけでありますし、それから、私ども家庭園芸等で園芸店等から買う場合にも、従来はかなりずさんなメモ書き程度で販売店から除草剤を買うというようなこともあったわけでありまして、管理体制を一段と強化をしていただきたい、こういうようにお願いを申し上げておきたいと思います。  時間も大変遅くなりましたので、最後にこの一問で終わりたいと思いますが、いわゆる日本で使用禁止をされている農薬の輸出は全面的に禁止をすべきではないかというのが私の意見であります。これは従来何回か他の委員会で私は問題提起をいたしておりますが、東南アジア等で日本で認められていない農薬というのが随分使用されている。例えばフィリピンのバナナのステーションにおいてもそのようなことが行われているのではないかということを繰り返し提起をしてまいりました。現在、農薬の取締法というのは一九七六年の改定でございますか、「農薬を輸出をするために製造し、加工し、又は販売する場合には、この法律は、適用しない。」という項目があるわけでございまして、その年にこれが加わったんですか、十六条の三というんですか、それで輸出専用の農薬というのはフリーパスになっておるわけであります。ところが国連の決議は、一九八二年に「健康及び環境に有害な製品の輸出規制を求める決議」というのがあるわけでありますし、また、八五年には「消費者保護のガイドライン」というものが決議をされておるわけでございまして、私は、農薬の輸出については少なくとも日本で禁止をされているものについては我々はそれを避けるべきではないか、こう思うのでございますが、その点はどうでしょうか。
  421. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 我が国の農薬取り締まり制度におきまして、今御質問の中にございましたように、輸出については適用されずに専ら国内の問題として対応しているということは事実でございます。  ただ、こういう状態がそのままいいというわけではございませんで、先進国では禁止されているようなBHC剤等につきまして、開発途上国等ではまだこれを禁止してないということがございまして、どうも企業の方ではこういうものを製造して輸出するということになりがちでございます。この点、制度上は直接禁止をする道はないわけでございますが、我々としては、やはりこれは指導によりまして輸出はしないようにしようということにいたしておりまして、現在までのところ販売禁止農薬で輸出をしているものは一切ございません。特にBHCにつきましては、四十六年にこれら国内販売の禁止後、公害輸出にならないようにということで、東南アジアを中心に輸出をしておりますものを全部とめよう、こういうことで我が国としてはこれらの禁止品、禁止農薬を輸出しないような指導は今後とも続けてまいりたい、かように考えております。
  422. 草川昭三

    草川分科員 今の点でございますが、私、昨年環境委員会で、日本からは出てないけれども、第三国で日本と現地法人が他の国からそれを購入してBHCに関連するものをつくっておるのではないかという点を指摘したわけであります。今繰り返しては申し上げませんが、国連決議というのがあるわけでありますから、せっかくのそういう決議があるならば、指導だけではなくて、きちっとこの法律について、この法律を適用しないという条項を外すべきではないか、これが今とるべき農水省の態度だ、私はこう思うわけであります。ひとつそういう点について格段の御判断をお願いしていきたいと思います。  特にフィリピン等につきましては、新しい政局になってまいりまして、日本の輸入バナナ等も、私、昨年、現地の農業労働者の手と足の、非常に危険な禁止をされておる農薬を労働者の皆さんがまく、そのために手や足がもうかぶれてしまって、非常にひどい惨状の写真を環境委員会で見せまして、フィリピンのバナナステーション等の状況にも、有害な農薬が使われておるから、日本の企業がそれの経営に参加をしておるわけですから、気をつけろということも言ってきておるわけであります。そういうような立場から、今度は、新政権になりますと余計に現地の労働組合の方々の要求も強くなってくるわけでありますから、日本は、他の国のことだといって無関心にはできません。一体、日本の商社がどういう扱いをしながら現地でバナナを生産するのか、あるいは農薬が日本から輸出をされてないとしても、第三国を経由して日本では認められていない農薬を使う場合もあるわけであります。  いろいろな問題もございますので、この農薬の取り扱いについては、我が国だけのことではなくて、日本企業が関連をするという場合もありますし、あるいはまた、直接ではないにしても何らかの形で関与する例もあるわけでありますから、ひとつぜひ慎重な配慮をお願いをしたいということを強く要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。  以上で終わります。
  423. 武藤嘉文

    ○武藤主査 これにて草川昭三君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして農林水産省所管についての質疑は終了いたしました。  これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  分科員各位の御協力により、本分科会の議事を滞りなく終了することができました。ここに厚く御礼申し上げます。  これにて散会いたします。     午後七時五十三分散会