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1986-02-15 第104回国会 衆議院 予算委員会公聴会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年二月十五日(土曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 小渕 恵三君    理事 中島源太郎君 理事 林  義郎君    理事 原田昇左右君 理事 渡辺 秀央君    理事 稲葉 誠一君 理事 二見 伸明君    理事 吉田 之久君       石原健太郎君    尾身 幸次君       大西 正男君    加藤 卓二君       上田  哲君    大出  俊君       川崎 寛治君    佐藤 観樹君       多賀谷眞稔君    近江巳記夫君       神崎 武法君    大内 啓伍君       木下敬之助君    小平  忠君       梅田  勝君    瀬崎 博義君       松本 善明君  出席公述人         東京大学教養学         部教授     佐藤誠三郎君         TKC国会会         長       飯塚  毅君         株式会社東京銀         行取締役頭取  井上  實君         明治大学商学部         教授      山口  孝君         一橋大学経済学         部教授     石  弘光君         横浜国立大学経         済学部教授   岸本 重陳君  出席政府委員         内閣官房長官 唐沢俊二郎君         経済企画政務次         官       熊谷  弘君         環境政務次官  小杉  隆君         国土政務次官  白川 勝彦君         外務政務次官  浦野 烋興君         大蔵政務次官  熊川 次男君         大蔵省主計局次         長       小粥 正巳君         大蔵省主計局次         長       角谷 正彦君         文部政務次官  工藤  巖君         厚生政務次官  丹羽 雄哉君         農林水産政務次         官       保利 耕輔君         運輸政務次官  亀井 静香君         郵政政務次官  田名部匡省君         建設政務次官  中島  衛君         自治政務次官  森   清君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      大内  宏君     ————————————— 委員の異動 二月十五日  辞任         補欠選任   上村千一郎君     加藤 卓二君   住  栄作君     尾身 幸次君 同日  辞任         補欠選任   尾身 幸次君     住  栄作君   加藤 卓二君     上村千一郎君     ————————————— 本日の公聴会意見を聞いた案件  昭和六十一年度一般会計予算  昭和六十一年度特別会計予算  昭和六十一年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 小渕恵三

    小渕委員長 これより会議を開きます。  昭和六十一年度一般会計予算昭和六十一年度特別会計予算昭和六十一年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会を開きます。  この際、御出席公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございました。昭和六十一年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただくようお願い申し上げます。  なお、御意見を承る順序といたしましては、まず佐藤公述人、次に飯塚公述人、続いて井上公述人順序で、一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、佐藤公述人にお願いいたします。
  3. 佐藤誠三郎

    佐藤公述人 東京大学佐藤でございます。  私は、外交、防衛問題、さらにひいては日本対外関係の処理のあるべき姿について、私の意見を申し述べさせていただきます。  昭和四十年から五十年までの我が国一般歳出伸びを見てみますと、全体としては一九・三%平均伸び率を示しておりますが、その中で一番伸びたのは食糧管理費でございます。二四%。第二番目に伸び率の高いのは社会保障関係費で二二・五%。そして第三番目が経済協力費、二一・七%でございました。これが昭和四十年から五十年の数字でございます。  それに対して、その次の十年間、昭和五十年から六十年はどうなっておりますかというと、第一位が食糧管理費ではございませんでエネルギー対策費、ちょうど石油危機エネルギー危機が二回にわたって起こりまして、これが二一・七%の伸びを示しました。第二が経済協力費で一一・八%、第三番目が社会保障関係費で九・三%でございます。  これは、国政の大きな力点の置き方がどういうふうに変わってきたか、昭和四十年代と五十年代でどう変わってきたかをよく示しておりますが、最近の数年間、特に厳しい財政事情のもとでゼロシーリングが厳しく施行された昭和五十八年度予算から見ますと、やはり最も伸びている注目すべきものは経済協力費防衛関係費でございます。昭和四十年代、防衛関係費平均をはるかに下回る伸びしか示しておりませんでした。全体の平均が一九・三%に対して、防衛関係費伸び率は一六・〇%にすぎなかったのでございます。ところが最近は、全体がほとんど〇ないし一、二%という伸びの中で、防衛費は六%を超える伸び経済協力費は七%を超え八%近い伸びということになっておりますし、六十一年度予算案におきましても、経済協力費防衛費はそれぞれ六%を超える伸び率を示しております。これに対しまして一部の新聞その他では、世論の中、一部には防衛費突出というような批判もございます。しかし私は、それは二重の意味で間違っている。  第一は、突出というのは余り正確な表現ではない。絶対額で言いますと日本防衛費は現在でも、この六十一年度予算においても社会保障関係費の約三分の一にすぎません。これは防衛費社会保障費関係において世界で決して高い方ではない、むしろ非常に低い割合になっております。日本国政全体の力点は依然として社会保障その他に大きくかかっているということが数字であらわれております。  第二は、やはり国際的に比較いたしまして、日本経済協力及び防衛関係の費用というのは例外的に少額でございます。絶対数で申しましても、先進国の中で、経済協力費は絶対額でこそアメリカに次いで第二位でございますが、GNPないしGDPとの比較においては、先進国中、下から数えた方が早い。恐らくDAC加盟十七カ国中十三位程度の位置を占めているにすぎません。防衛費に至っては、絶対額で八位でございますが、そのGNPに対する比率で申しますと、世界主要国の中で比較を絶して低い水準、最低の水準にあるということは皆様よく御存じのとおりであります。  日本世界の平和と繁栄が十分に保障されているならば、世界情勢がそれほど恵まれた好ましい状態にあるのならば、予算の配分が内政、民生関係に非常に重点を置かれるということは大変好ましいことでございます。しかし、国際情勢は現在大きく変わっております。国際経済関係は、第二次世界大戦後の自由貿易体制が今大きく動揺し、IMF・ガット体制が大きな変容を迫られております。  それから第二番目に、東西軍事バランス西側に不利な形でこの十年ないし十五年間変化をしてまいりました。その背後にアメリカ経済力軍事力の相対的な後退という厳しい事実があることも皆様御存じのとおりでございます。  しかも、日本世界経済で既に一二%を超える地位を占める経済大国でございます。それだけでなく、世界最大黒字国であり、恐らくことしじゅうには世界最大債権国になります。我が国貿易黒字GNPに対する比率は三%をはるかに超えております。これは、アメリカが第二次世界大戦後あのマーシャルプランという野心的な計画を出し、膨大な海外経済援助をし、西ヨーロッパ我が国あるいはその他の途上国経済回復発展に大きく貢献した、あのアメリカ最盛期アメリカが示した貿易黒字GNP割合においてほぼ同じ程度でございます。現在我が国は、世界経済における影響力という観点から見ますと、最盛期アメリカにも近いような影響力を少なくとも貿易関係においては持っているのでございます。  このような世界的に大きな比重を占めるに至った我が国が、世界の平和と繁栄のためにこれまで以上の、あるいはこれまでよりも質的に大きな貢献をしなければ、我が国世界の中で厳しい批判にさらされることは不可避であります。単に我が国世界の中で孤立をするたけでなくて、我が国がどのようなことをするか、またはしないかに世界繁栄と安定が大きくかかっているというのが世界現実でございます。そのために、世界繁栄と安定を維持するために我が国は何をしなければならないか。  まず経済の面から申し上げますと、世界経済の安定と発展のためには、我が国はもちろん経済協力が必要なことは申し上げるまでもございません。そしてその点で、今年度予算案が厳しい条件のもとで最大限の努力をしていることを私は高く評価いたします。もちろん経済協力だけで問題が解決される、ないしは我が国責任が果たされるわけではございません。我が国は幾つかの大胆な手段をとる必要がございます。  第一は、国内市場の思い切った開放でございます。  これは、関税に関しましては我が国は今や世界で最も低い国になっておりますが、我が国の長い間の制度慣行に基づいてさまざまな、少なくとも外国から見ますと非関税障壁と思われるような慣行我が国には依然として残っております。そういう諸外国から見て非関税障壁と思われても仕方のないような慣行制度を思い切って見直す。それは決して容易なものではございません。それはさまざまな既得権益と抵触いたしますし、そのために経済的な不利益をこうむる人々も決して無視できないと思います。しかし、我が国は、我が国自身繁栄世界経済の安定のために、そのような出血的努力をあえてすべき立場にございます。そのような広い意味での市場開放を思い切って行う、これが経済協力と並んで我が国がしなければならない第二の課題でございます。  第三の課題は、言うまでもなく内需拡大でございます。  貿易バランス国内における貯蓄、投資バランスとの間には、御存じのように密接な関係がございます。そこで、貿易黒字の削減のためには単に市場開放だけでは極めて不十分でございます。そのためには思い切った内需拡大策が講じられるべきである。ただし、この内需拡大というのは、現在の日本経済がこれほどまでに高度化した状態を考えますと、単に伝統的な制度慣行の枠組みをそのまま維持したままで大規模公共投資をするというのではとても実現できない。この内需を拡大するためにも思い切った制度、施策の改革、いわゆるデレギュレーションが不可欠であろうと思います。  第四番目には、我が国は、かつてアメリカマーシャルプランでやったような、大規模かつ野心的な国際的な経済発展のためのプログラムを至急に策定し、それを実行すべきではないか。我が国の置かれている立場は既にそのようなものであるというふうに私は考えます。  引き続きまして、軍事的な側面における我が国の果たすべき貢献について申し上げます。  第二次世界大戦後、我が国平和憲法を持ち、そして専守防衛、非核三原則等々の原則を堅持してまいりました。これは基本的に正しい方針であると私は確信いたします。我が国が主として果たすべき役割経済側面においてであり、決して軍事のそれではございません。しかしながら、我が国世界の平和のために、軍事的な安定のために何らの努力をしなくてもいいということをそれは意味するものではございません。国際政治現実は現在なお軍事力を全く無視していいほど恵まれたものではございません。我が国はこの点で、とりわけ二つのことをすべきであると思います。  第一は、東西の厳しい対立の中で、西側の一員として、軍事バランス我が国及びその周辺において適切に維持するということでございます。特に最近は米ソの核がほぼ均等の状態に達しておりますので、その条件のもとで通常兵力によるバランスが極めて重要性を増しております。西ヨーロッパにおいても核による抑止のみでなく通常兵力による抑止、いわゆるコンベンショナルディターレンスが新しい、そして切実な課題として提起されております。それは東アジア、我が国周辺においても同じでございます。  そしてこの通常兵力におけるバランス維持において、我が国はなさなければならない、そしてなすことのできる多くの余地を持っております。とりわけ我が国防衛力の場合、三つの点が弱点として指摘されると思います。  第一は、いわゆるC3Iの弱点でございます。つまり、通信指揮、統制及び情報活動弱点でございます。第二は、防衛力における抗堪性の欠如、つまり相手側からの攻撃に対してどこまでそれが保存、維持できるかという抗堪性の欠如。第三は、継戦能力の不足でございます。  この点で、六十一年度の予算案におきまして注目すべき改善の努力が払われようとしております。私はこの点を高く評価するものでございます。  より具体的に申し上げますと、対戦車ヘリコプターを初めて購入することが予算案に盛られております。これは予想される相手側上陸作戦に対して極めて有効な防衛的能力を発揮するものと思われます。さらにP3Cを十機、F15を十二機買うことになっておりますが、これらは通信指揮情報活動強化及び継戦能力強化において注目すべき役割を果たす。同じことは新しい地対空ミサイル・パトリオットの導入においても見られると思います。  このような努力は、まだまだ不十分でございますが、基本的に正しい方向を向いていると思います。もちろん軍事バランス維持だけで我が国の平和が、ないしは世界の平和が保たれるわけではありません。世界は切実に軍備管理軍縮を必要としております。我が国はこの点でも十分な努力をしなければならないと思います。  ただし、厳しい東西対立の中で、どのようにすれば軍備管理軍縮への道が切り開かれてくるか、この点について我々は幻想を抱くことは許されません。従来の歴史が示すところでは、ソ連との間に意味のある軍備管理軍縮が実現されるためには二つ条件が満たされることが不可欠であります。  第一は、西側が明確に団結をしているということであります。そして、その団結の上に立って西側から決してソ連を攻撃する意思はない、ただし、ソ連軍拡を続ける以上西側軍拡、それに対応する努力をする決意があるという断固たる意思を示すことでございます。  以上の団結決意前提とした上で誠実にソ連との間に軍備管理軍縮交渉をするべきである。そのような努力を続けることによって初めて意味のある軍備管理軍縮交渉が行われると思います。  ですから、軍事力通常兵力の極めて限定された範囲できちんと整備することと軍備管理軍縮への努力をすることとは決して矛盾するものではないと私は確信しております。むしろ矛盾するどころではなく、そのようなきちんとした整備の努力を続けることこそが軍備管理軍縮への基本的な前提を満たすことにもなるのだというふうに私は確信しております。  以上で、大変簡単でございますが、私の公述を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手
  4. 小渕恵三

    小渕委員長 どうもありがとうございました。  次に、飯塚公述人にお願いいたします。
  5. 飯塚毅

    飯塚公述人 私は、ただいま御紹介をいただきました飯塚毅でございます。TKCという会計人約六千名の全国会会長、並びに公認会計士税理士職業をやっております。非常に時間が制限されておりますから簡単に申し上げます。  まず、予算問題に関する総論を申し上げます。  さすがに熟練し切った竹下大蔵大臣指揮のもとに、官僚中の官僚と言われ、天下の秀才を集めた大蔵官僚を動員して編成された昭和六十一年度予算案は、その網羅性とその綿密性において、一般国会議員諸公をして長嘆息せしむるほどのできばえであり、特に政府支出を前年度比で二・六%にまで絞り込んだ点は、まさに名人芸とも申すべきであり、その御努力に対し衷心から敬意を表するものでございます。  しかしながら、これを税理士公認会計士という職業会計人立場から見れば、中曽根内閣成立以来既に満三年を超えておるにもかかわらず、我が憲法第十四条における国民の法のもとの平等原則の貫徹を税金についてよくもまあ先送りに先送りして、ついに「戦後政治の総決算」を叫ぶ中曽根内閣をしてその任期中に財政改革を実行せしめず、満四年の任期を終わり、五年後の何びとかによって、つまりニューリーダの台頭ですね、何びとかによってこれを行わんとするのは、国民を愚弄する予算であり、国民を欺瞞する予算であると断ずるほかはありません。したがって、私は反対であります。  各論に移ります。  第一に、今や国民全体の中には税の重税感不公平感等が、これをあらわすトーゴーサンピン嘆き声が満ちあふれております。ピンというのは政治家租税負担率をいうとされております。なぜピンなのか。それは政治家政治資金規正法の逆手をとって、政治資金規正法の言う「国民の浄財」を政治だけには使わず、私的に流用して税負担を免れているからであります。ピンというのは一ということであります。国民は、政治家租税負担率実質所得の一割程度だと直観しているのであります。  なぜピン現実に可能になるのか。それは政治資金規正法第十四条の政治資金収支のいわゆる会計監査人職業会計人とはなっていないということ及び罰則を定めた第二十四条には、この監査人監査意見書に虚偽を記載しても処罰の対象とはならないようにされているからであります。人類の先輩、これは孔子でありますけれども、「本立ちて道生ず」そう教えました。政治家がまず襟を正してこそ、国民はこれに従う次第であります。この改正案は、大蔵省主税局の一月に発行した予算説明書には入っていないのであります。これが反対理由の第一であります。  第二に、大蔵省申告所得税納税人員見込み数を七百七十四万人といたしております。これはインチキ数字であります。なぜインチキか。我が国所得税法その他の法律には、国が行政上の責任として申告所得税納税資格者の数を進んで確定すべき基礎となる法律条文を欠いており、単に申告相談実施要領と称する内部通達によってつくられた課税の台帳によって申告書を送付するという仕組みになっているだけだからであります。  これは政府が、憲法で定めてある租税法律主義原則、すなわち憲法三十条、八十四条を政府みずからがぶち壊していることを示すものであり、国家自己破壊活動と断定すべきであります。政府はすべからく、法治国家らしく、法律によって納税資格者範囲を確定する必要があります。大蔵省主税局説明書では「昭和六十年の課税見込み基礎として」としか言っておりません。根本の考え方は去年と同じだよ、こう言っているわけであります。改革の意図が読み取れません。これが反対理由の第二点でございます。  第三に、商法第三十三条は、会計帳簿には「取引其ノ他営業上ノ財産ニ影響及ボスベキ事項整然且明瞭ニ記載スルコトヲ要ス」と定めてあり、さらに商法第四百九十八条一項十九号には、百万円以下の過料の処分に処する、その対象として会計帳簿記載すべき事項記載せずまたは不実記載をしたときはと定めております。言いかえれば、会計帳簿網羅性真実性とを要求する商法第四百九十八条は、百万円以下の過料を伴う強行規定であります。皆様の中には弁護士の先生もいらっしゃるわけですから、そのくらいのことはとっくにおわかりのはずです。  申すまでもなく、商法は民法とともに国民生活の根本的なあり方を定めた基本法であります。これを特別法である税法が勝手にぶち壊して、記帳を勝手な任意事項とし、不実記帳脱税の未遂犯ともしていません。こういう脱税奨励税法を持った国が先進文明国のどこかにありますか。あるなら教えてください。どこにもありません。これが反対理由の第三であります。  第四に、所得税法第百二十条は、納税者自分所得計算と税額の計算自分でできるものだ、そういう空想的仮定に立ってつくられた条文であります。冗談じゃありません。国税庁の発表によれば、毎年の税理士試験のうち所得税法受験者は七千名前後、合格者は約九%にしか当たらないとのことであります。所得税法に精通している者が国民の中で余りにも少ないではありませんか。この現象は、政府税法の立案に当たって他国との比較税法学的な配慮を全く払っていない証拠であり、納税という国家の重大問題を納税者の主観的で勝手な判断に一任していること、つまり膨大な脱税者群政府みずからが製造していることを意味します。  さらに、申告納税制度意味については、大蔵省シャウプ勧告の第四巻四ページに書いてある定義申告納税とはという定義、これをとんちんかんに曲解してしまった結果であります。シャウプ勧告申告納税制度定義をこう言っております。納税者所得を算定するに必要な資料が自発的に提出されることを申告納税という、原文はこうなっております。「ザ ネセサリー ボランタリー ザブミッション オブ ザ データ リクワイヤード ツー メジャー タックスペイヤーズ インカム イズ コールド セルフアセスメント」これはシャウプ勧告の第四巻の四ページに、たった一行この定義が与えられております。政府はいつまでこういう間違った曲解を続けていくお考えであるか。なぜ直さないのですか。これが反対理由の第四点でございます。  第五に、元国税庁長官磯辺律男先生のお話によれば、現在、法人の年間の実地調査率は約九%、個人企業のそれは約四%であるとのことであります。とすれば、法人は十一年に一回、個人企業は二十五年に一回しか調査されないということになります。これは、コンピューター会計に関する法律を今もってつくらない政府の怠慢の事実と相まって、無制限脱税者をつくっていくことを意味しております。どうして財政再建などということができましょうか。税調会長たちは口を開けば財源がない、財源がないと世論に訴えています。インチキ発言もいいところです。レーガン大統領のように、税負担公平原則を綿密に徹底すれば、財源はあり余るほど出てきて、サラリーマン初めまじめな経営者税金は現在の半分以下になると確信します。これが反対理由の第五点です。  まだまだ反論すべき問題点は山ほどありますけれども、時間の制限もございますのでここらで打ち切りまして、あとは質疑応答に譲りたいと考えております。  終わります。(拍手
  6. 小渕恵三

    小渕委員長 どうもありがとうございました。  次に、井上公述人にお願いいたします。
  7. 井上實

    井上公述人 東京銀行頭取井上でございます。  六十一年度の予算案につきましては基本的に私は賛成でございますが、本日は、最近の為替相場動向につきまして公述の機会をお与えいただきましてありがとうございました。  本論に入ります前に、我が国経済の置かれました国際環境につきまして、四点だけ簡単に触れさせていただきます。  第一は、我が国経済世界経済に占めるシェアが著しく上昇した今日におきましては、為替相場の問題も常に世界経済全体との関連で幅広く理解し、対応することが必要になっているということでございます。  自由経済圏に占める日本経済シェアは、ただいまも佐藤公述人がおっしゃいましたように、約一二%に上っております。これはアメリカの三六%に次いで大きく、また、EC諸国全体としてのシェア約二二%の半分を上回っている次第でございます。  自由経済システムのもとでは経済の国際的な相互依存関係が強まりますが、我が国もこれだけ大きな経済になりますと、いろいろ外から影響を受けるのみならず、我が国の動向が世界経済全体に影響を与えることも多くなってきております。商品あるいはサービスのみならず、資金や資本の供給力におきましても非常に我が国は大きな力を持っている次第でございます。  第二は、日米間の貿易収支の五百億ドル、十兆円に上る不均衡に象徴される異常な現在の事態でございます。  すなわち、昨年のアメリカ貿易収支は、ドル高によりますアメリカ産業の競争力の低下を反映いたしまして、アメリカの通関統計によりますと千五百億ドルという大きな金額となっておりますが、結果的にはそのおよそ三分の一は我が国との取引で生じているということでありますために、とりわけ日米間の不均衡是正という問題が大きな問題となっております。  その遠因は、アメリカ側について申しますと財政収支の大幅赤字、これによります高金利の定着、これによりますドルの過大評価、これによります輸入の増大、輸出の伸び悩みという問題でございます。また、日本側について申しますと、輸出依存の経済成長、国内過剰貯蓄の対外吐き出しという問題を擁している次第でございます。  第三に、累積債務を抱えました発展途上国の動向も気がかりな問題の一つでございます。  これらの国の多くは、第一次、第二次石油危機に伴ういわゆるオイルダラーのリサイクリングによりまして経常収支の赤字を埋め得ただけではなく、さらにインフラストラクチャーの建設、工業化、資源の開発などの面でかつてない大きな経済発展を遂げることができたのであります。  しかしながら、一九八二年から三年にかけまして、メキシコ、ブラジルなどの債務国で流動性危機が表面化いたしまして以来、IMFの条件つき融資や国際銀行団の支援措置を受けまして、これらの国では厳しい調整政策が続けられております。その成果は徐々にあらわれてきてはおります。しかしながら、文字どおり発展途上にあるこれらの国は、ある程度高い経済成長を続けませんと、政治的、経済的に安定を失ってまいりますので、昨年十月のIMF・世銀総会でアメリカの財務長官より、今後は成長を適して債務国の支払い能力を高めることを重視しようという提案がなされております。このベーカー提案と申しますのは、非常に現実的な考え方でございまして、私も基本的に賛同しておる次第でございます。  発展途上国グループの成長というものは、世界経済全体の安定のために不可欠でございまして、我が国アメリカに次ぐ経済大国として途上国の窮状打開のため大きな責任を負っていると思います。アメリカが赤字に苦しみ、我が国は大きな黒字を抱えているということから判断いたしますと、我が国はその分一層大きな役割を果たす必要があると思われます。  このベーカー提案を成功させるためには、私ども民間銀行も、IMFや世銀などの国際機関と協調いたしまして債務国に新規資金を供与する必要がございます。ただ、これを可能にし、円滑化するためには、関係先進諸国の政府が問題解決のための長期的な環境づくりに積極的に取り組むということが重要であると思っております。  最後に、第四でございますが、最近の石油価格の急落という問題も注意深く見守る必要があると思っております。  この動きの背後には、エネルギー需要面での量的、質的変化はもちろんでございますが、供給面においてOPEC諸国による世界石油市場におけるシェア奪回のねらいがございますだけに、かなり大幅な下落となお可能性がございます。これによって、メキシコなどの産油国の資金繰りの影響が非常に懸念される次第でございます。  我が国のような石油輸入国の場合は、石油の価格の下落はそれだけ私どものコストの節約になりまして、物価も下がりますのでプラスが大きいのでございますが、石油輸入額の減少により経常収支黒字がますます大きくなるということは、実は喜んでばかりはおられない現象でございます。  御存じのとおり、我が国の昨年の経常収支黒字はおよそ五百億ドルという巨額に上っておりまして、かつてのOPECの黒字と比較されるほどの規模となっております。これがさらに大きくなりますと、黒字国としての責任というものが厳しく追及されるということが予想される次第でございます。かつてOPECは石油価格を大幅に引き上げることによって石油輸入国の所得を吸い上げた次第でございますが、我が国のこの大幅な経常収支黒字も、同じように諸外国所得を吸収しているわけでございまして、ギブ・アンド・テークの考え方からいたしますと、別途私どもは大幅に輸入をふやしまして、外国の生産活動のために自国の所得を提供するということが必要とたってまいる次第でございます。  さて、以上四点を申し述べまして私どもの国際環境というものの点検を終えまして、本論に入らせていただきます。  このような状況のもとで、昨年秋以降、外国為替市場には大きな変化が生じております。昨年の円ドル相場の動きを振り返ってみますと、年初は前年からの円安地合いを受けまして二百五十二円近辺で取引が始まりましたが、二月の中旬、ちょうど今ごろでございますが、二月の中旬には二百六十三円四十銭というところまで円安となりました。年間最安値となったわけでございます。これは、実は引き続いてアメリカの景気が強く金利が高水準であったために、日米間の金利差というものが五%近くまで拡大いたしまして、我が国からの長期資本の流出が非常に強く大きく続いたからでございます。その後、三月の中旬以降はアメリカ経済の減速が明らかとなりまして、ドル金利も低下し始めましたので、ゆっくりとドル高修正傾向に入りました。そして、九月二十二日のG5の合意の時点では二百四十円前後という水準になっておりました。  日本の経常収支黒字の拡大という基調にもかかわらず、なかなかこの円高・ドル安の方向に相場が展開しなかった、動かなかったというのは、国際収支統計上はおおむね経常収支黒字を大きく上回る長期資本の流出が続いていたからでございます。  しかし、九月二十三日から実施されました主要国外国為替市場への協調介入は、ドル高是正の動きに大きな弾みをつけることになりました。円の対ドル相場はその後およそ五カ月間に三二%近く上昇しておりますが、ほかの主要国通貨の対ドル相場も、ドイツ・マルクが二一%、フランス・フランが二二%、スイス・フランが二〇%とそれぞれ上昇しております。  今回の協調介入が劇的な成功をおさめました理由といたしましては、次の三点を私は指摘したいと思います。  第一に、既にアメリカの景気がスローダウンしておりまして、貿易収支の赤字も年間千五百億ドルという規模に達して、アメリカ経済はもうドル高の重圧に耐え切れなくなってきたという見方が広がっていたことであります。  第二は、この五カ国蔵相会議合意の形態で主要五カ国が中長期にわたる共通の政策理念を明確に打ち出し、しかも各国が財政赤字の削減、市場の開放内需の拡大等、それぞれの政策分担を公約したことでございます。つまり、各国の成長率や金利や物価上昇率がかけ離れた動きをしないように、各国の経済政策を極力調整しようという約束でございました。  第三は、その上でアメリカが為替市場への介入に対する基本方針を大きく転換いたしまして、ドル高是正のための協調介入に踏み切ったという事実でございます。  このようにいたしましてドル高是正の動きが進展し始めたのでございますが、一定水準まで円高が行き着きますと、日米間に引き続き大きな金利差があります限り、再びドル建て証券投資の動きが活発となり、またドル相場が上昇するのではないかという懸念は消えうせたわけではございません。しかしながら、先ほど申し上げましたように、市場でドルの過大評価はもう既に浪界に近づいたという見方が広がったことに加えまして、主要国の通貨当局が協調してドル高是正に取り組む姿勢を鮮明にしたことで、明らかにドルの相場観には水準調整が生じたわけでございます。ここ数日、今週でございますね、ここ数日の状況ではドルの下落が異常に加速されておりますので、やがて自律反転となる可能性もあるかと私は思っております。  なお、昨年九月以降も我が国居住者によります対外証券投資は続いております。ただ、これは為替リスクが大きいため、円資金でドル建て証券を購入する取引は減っておりまして、短期のドル資金を調達しまして、それを原資として長期のドル建て証券に投資するという取引が多いのであります。この種の取引は市場で新規のドル買い要因として働いておりませんということをここでまた付言させていただきます。  このようにいたしましてドル高是正が進んだことによりまして、日米間の経常収支の不均衡は徐徐に改善に向かうものと見られます。ただ私は、幾つかの理由からこれが短期的に目覚ましい改善を期待することは難しいというふうに考えておる次第でございます。  理由は、第一に、貿易取引というものは半年先あるいは一年先まで契約した上で取引を続けておりますので、ドル高是正の効果が実際にあらわれるまでにはどうしても時間がかかるわけでございます。しかも一時的現象ではございますが、不均衡が一時一層拡大する局面も技術的にはございます。  第二に、不均衡が縮小する方向に両国の産業構造が調整されるまでには、少なくとも三年—五年はかかると見られることでございます。例えば、現在我が国からアメリカに輸出されております各種の部品、それからOEMの輸出、これはアメリカ企業の生産販売体制に既にすっかり組み込まれているのでございます。したがって、急に輸出をストップする、日本からの輸入をストップするということはできないわけでございます。そういう意味で、ドル高が是正され、内外での価格競争力の関係が変化し、アメリカ国内での生産がふえてくるという事態に至るまでにはかなりの時間がかかるというふうに私は考えております。  さて、日米間の経常収支不均衡をより効率的に解消するためには、一ドル百七十五円ぐらいまで円高にする必要があるんじゃないか、あるいはそれ以上に円高にする必要があるといった議論もアメリカでは一部に行われております。また、この数日間見ておりますと、現実の相場もこのところかなり急速に円高に進んでおりますが、本来、為替相場による調整プロセスというものは時間をかけてやることが望ましいのでありまして、余りに急激な相場の変動は、双方にとりまして犠牲のみ大きいというふうに考えております。  我が国の場合は、急激な円高というものは国内景気に大きな打撃を与えます。輸出は減ります。またそれによって輸入も減ってまいります。また、これによって世界景気にもマイナスに作用するものと見られます。アメリカの場合もまた問題は非常に深刻でございまして、急激なドル安というものはインフレ再燃につながるおそれがございます。これによってドル暴落という事態だって考えられるわけでございます。また、先ほど触れましたとおり、余り急速にドルが下がり底値が見えてまいりますと、再び金利差をねらった資本流出が生じて、相場の流れが反転するという可能性も生じてまいると思います。  いずれにいたしましても、為替相場の調整だけで日米間の経常収支不均衡を解決しようというのはもともと無理な話でございまして、今後重要なことは、この五カ国蔵相会議の合意に沿いまして、あるいは日米間の個別協議の合意に従いまして、各国がそれぞれ役目を果たすということであろうかと考えております。  アメリカの最大の課題は、申すまでもなく財政赤字の削減でございます。また、産業レベルでも一層の輸出努力が望まれる次第でございます。  我が国課題は、市場開放の促進、内需の拡大でございます。市場アクセスの改善につきましては、昨年来政府も意欲的に取り組んでおられますが、なお外国企業の不満というものは残っておる次第でございまして、引き続いて官民を挙げて工夫し、努力する必要があろうかと思っております。内需拡大につきましては、我が国の場合、財政面に制約があるというのはやむを得ないことだと思います。しかし、先ほど申し上げましたように、日本OPEC論というようなものが飛び出すような状況では、輸出依存型から内需主導型に日本経済の体質を変えていくことは、世界第二位の経済大国として、世界経済との調和ある発展という見地から真剣に取り組まなければならない課題となっているのでございます。  次に、金融政策の面では、世界景気の落ち込みを防ぎ、発展途上国の利払い負担を軽減するために、主要国が協調して金利引き下げに努めることが重要であると考えております。そうした意味で、先月末に我が国通貨当局が率先して公定歩合の引き下げを決定されたことは、まことに意義深いことだと思っております。石油価格の下落によりまして世界的に一段と物価が鎮静しつつあることから判断いたしますと、早晩、アメリカやヨーロッパでも金利引き下げの動きが生じまして、我が国では再度の公定歩合引き下げが実現する可能性も十分あろうかと期待している次第でございます。  それでは最後に、円高が国内景気に与える影響につきまして所見を申し述べてみたいと思います。  一般論といたしましては、円高が進みますと輸出の数量の伸びが鈍化し、また輸出関連業種で設備投資も鈍化いたしますから、景気は悪くなります。一方で、円高は輸入物価を引き下げ、ひいては物価水準全般を押し下げますので、家計の実質所得や企業収益が上向きまして、究極的には個人消費や設備投資もふえることになるわけでございます。  差し引きどちらの効果が大きいかということは、円高の進み方、内外景気の状況などによって違ってまいりますが、今回の円高では、石油価格下落によるプラス要因を加味いたしましても、なおデフレ効果の方がかなり勝っているというふうに見ております。殊に今回の場合、円安の基調がここ数年続いていて、ここ短期間で急激にこれが修正されたこともございまして、現に個々の業界、企業レベルでは非常に深刻な打撃を受けているわけでございます。したがいまして、一定の期限を区切って、政策的に円高への対応を多少でも容易ならしめるような支援措置が実施されるべきであろうというふうに考えております。  一方、長い目で見ますと円高にはよい面がございます。身近なところでは、物価が一段と安定することになりますほか、円の値打ちが国際的に高まりますので、より安く外国製品、外国のサービスを手に入れることができるわけでございます。旅行もできるようになるわけでございます。  日本経済全体について考えて見ますと、円高克服の企業努力を通じてより付加価値の高い製品分野への転換を進めることができれば、我が国の産業構造は一段と高度化することになりましょう。冒頭で述べましたとおり、世界経済の相互依存関係が深まる中で、我が国はますますハイテク産業分野の比重を高め、伝統的産業分野では徐々に輸入がふえるという形で世界経済との調和ある発展が望めるのではないかというふうに考えております。  どうも御清聴ありがとうございました。(拍手
  8. 小渕恵三

    小渕委員長 どうもありがとうございました。     —————————————
  9. 小渕恵三

    小渕委員長 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。加藤卓二君。
  10. 加藤卓二

    加藤(卓)委員 私は自由民主党の加藤卓二でございます。本日は、公述人のお三方の先生には大変お忙しいところをわざわざお出向きをいただきまして、大変貴重な御意見をお聞きできまして、大変ありがとうございました。今後はこれを予算審議のいろいろ参考にさせていただきたいと思います。  この際、大変少ない時間ではございますが、私なりの質疑先生方にさせていただきたいと思います。  初めに、佐藤先生に一言お願いしたいと思います。  国際政治で一番評価されているものの中に日本のODAがありますが、東南アジア及びアフリカ等の発展途上国に対して、総理はもとより、外務大臣、大蔵大臣、党の理解、協力により、大変効果が上がり、評価を十二分に受けていると思いますが、これは国民税金をもってなされるものであるので、援助先の国々で正当に使われているとか、あるいはどのような効果があるとか、またどのように評価されているとか、ぜひひとつこの際先生の御意見をお聞かせ願いたいと思います。  なおまた、派遣されている専門家や青年協力隊の皆さんが帰国後にどんな身分保障がなされるのか、そんなようなことをひとつお聞きしたいと思います。  また、それに先立ちまして先ほど防衛問題に関しては大変うんちくのあるお話で、非常に参考にさせていただきましたので、きょうはその問題に触れると時間がないと思いますので海外援助の問題に触れさせていただきましたが、よろしくお願いいたします。
  11. 佐藤誠三郎

    佐藤公述人 確かに、御指摘のとおり、対外経済援助というのは非常に重要であること、そして意義のあることについてはどなたも御異存がないと思いますが、実際には非常に多くの問題を含んでおります。それが必ずしも有効に使われない、ないしは、極端な場合には腐敗した政権を事実上サポートする、支持するという効果も持つことさえ起こりかねません。  しかし、公平に見まして、我が国のODAは極めて厳格な審査、まず現地側からの要請、現地要請主義に立脚いたしまして極めて公平、厳正な審査が行われ、そしてその結果についてのフォローアップも丹念に行われております。さらに、我が国の対外経済援助は、それぞれの被援助国の基盤的な経済力を強める、特に社会的、経済的なインフラストラクチャーを整備するというところに大きな重点が置かれております。したがって、地味ではありますが、それぞれの被援助国の経済的、社会的発展のために少なからざる貢献をしているものと考えます。したがいまして、我が国のODAは、さまざまな問題がもちろんございますが、全体としては、国際的比較においてかなりすぐれた評価を受けてしかるべきものと私は判断しております。  また、我が国では、非常に理想に燃えた青年たちが、青年協力隊その他の形で途上国に渡り、さまざまな困難の中で現地の人々とともに働いて、その現地の発展のために尽くしております。その人たちの帰国後の処遇については、必ずしもこれまでの施策が十分であるとは言えないと思います。この点は、国会におきましても、さらに十分な、より積極的な手厚い配慮が加えられることを私としては強く望みたいと思います。
  12. 加藤卓二

    加藤(卓)委員 青年技術者の海外派遣の問題が今出ましたが、日本から大変多くの青年技術者が海外に送られておりますし、技術援助をしておられますが、彼らにとっては言葉の壁が大変厚いんだということをいつも行くときに聞かされるわけです。それと同時に、海外での家族の問題、学校の問題とか大変いつも出ておりますので、こういう問題にひとつ国民の関心が大きく集まるように御配慮願いたい。  同時に、日本の技術者が海外で大変援助して効果を上げている割合には、日本留学の外国人、外国学生が大変少ないんじゃないか、それは日本語の大きな壁が、語学の問題が壁になっているんだと考えます。  そこで私は、日本でも、高等学校だとか大学だとか、こういうふうな場所で英語、フランス語、スペイン語等で教育ができる施設をつくられたらどういうものか。そして外国人が日本外国語で勉強できてもいいんじゃないか。そしてその勉強していくうちに、彼らが学校が終わる時分には大変日本語も上手になって帰られるでしょう。そうすると、技術的な問題に関しても大変効率がよくなるし、日本を理解していただく機会も多くなるだろう。  私が特に印象に残っているのは、外務大臣それからまた文部大臣と海外を歩かしていただいたことがございますが、ユタ州のソルトレークシティーにあるブリハムヤング大学の教授連中、大変日本語が上手でして、むしろその数が非常に多いのにびっくりした。ですから、アメリカじゅうはもとより世界各国から学生さんが集まって、ソルトレークシティーは学園都市として大変大きく発展なさっているのを見ているわけで、日本はそういう意味では、日本国内に開発援助を受けなければならないところがいっぱいあるのじゃないか、特に大学問題に関しては。日本外国の優秀な先生方や、そして日本人で海外で教鞭をとっている先生方が非常に多いのですが、日本へ帰ってきて働く職場が非常に少ないやに聞いておりますので、これらの世界的な国際交流を図り、政治経済、文化に対して貢献度を上げるためにも、大学をつくってほしいという国民の要望はもとより、総理を初め教育畑の政治家の皆さんから、大学への関心が非常に高くなっておるわけでございます。  そのような考えから、私、現在自分の選挙区に学園都市をつくろうじゃないかという計画を、一生懸命県及び国の皆さんの御了解をいただきながらやろう。これは西武線だとか東上線だとか、ちょうど一時間半ぐらいの距離のところに、埼玉の県北、秩父や寄居がございますが、サンフランシスコの郊外のスタンフォード大学、そしてボストンの学園研究都市、ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学なんかが、大変日本の企業から研究費を受けている。それが何百億という金額であるやに聞いておる。フランクフルトの郊外にもすばらしい大学、学園都市がある。これらの地理的条件にちょうど適している私の選挙区で——自分の選挙区の話をするのは大変恐縮でございますが、これは地の利がいいので勘弁していただきまして、そして国及び県の理解を得ている最中でございますが、学園研究都市をつくろうということを、市長を初め地元の人たちは大変大きく叫んでおる。そしてそれを計画しておる。一流企業も大変それに興味を示し。理解を示しておるわけでございます。  とにかく秩父地域は、養蚕農家や機屋さんという、非常に過疎で悩む、大きな家屋や何かもあるので、これを学生寮に使うとか、非常に具体的な話にまで進んでおるのですが、大学の先生の御意向をちょっとお聞かせ願えれば……。時間がもうないようでございますので、非常に簡単にひとつ。
  13. 佐藤誠三郎

    佐藤公述人 大変結構な御計画だと思います。特に我が国の場合、日本語というのが残念ながら英語のような世界語でございません。そこで、日本の歴史、日本の社会、日本の文学等を研究する外国人の学生にはぜひ日本語に習熟していただかなければ困りますが、例えば技術、医学あるいは経済学等々の学問を身につけるというためには、必ずしも日本語での講義に完全に対応できるほどのレベルの日本語を要求する必要はない。その点で私たちは、従来の教育、日本人のための日本人による教育という非国際的な発想を根本から変える必要があるというふうに思っております。  さらに、学校法人に対する寄附その他をもっとやりやすい形にして、研究教育機関の発展に民間活力が大規模に使われるように施策が講ぜられるべきであると信じます。
  14. 加藤卓二

    加藤(卓)委員 次に、先ほど井上頭取さんからお話がございましたので、ぜひひとつお聞きしたいと思うのですが、円相場や何かの上昇はほぼ大体天井じゃないかというような感じに受けとめましたが、昭和五十二年から五十三年のドル危機のときには、円ピークは一ドル百七十六円に近づいているし、今回、大幅な貿易赤字を持つアメリカが、借金国になった上にドルの相場が大変下落しているにもかかわらず、なかなか赤字が縮小しないというような問題。一部に取りざたされている、ドルはまだ大きく暴落するのじゃないかというような心配に対して、本当に簡単でございますが、百五十円まで下がった場合はどんなことになるのだろうかとか、いろいろ言葉少なく御説明をお願いしたいと思います。
  15. 井上實

    井上公述人 質問にお答えいたします。  私は、今の状況は、先ほども申し上げましたとおり、非常に急落しておりますけれども、暴落の状態ではないと思っております。暴落というのは、アメリカに入りました資本がアメリカから相当逆流するとか流出するとか、あるいはアメリカの居住者の金が海外に逃避するとか、そういうことによってドルの価値が大幅に下落する、ドルのファンダメンタルズ自体が失われるという事態だと思います。現状、急落はいたしておりますけれども、数字的に申しますと、G5以前に比べまして六十円、この一年間で八十円という急落でございますが、実はこの間、別にインフレは進んでおりません。むしろ石油価格の引き下げなんかもございまして、今後の見通しとしましては割にその点の心配もない。それから、御存じアメリカのグラム・ラドマン法なんかに見られますように、財政収支の赤字削減問題というのにも、アメリカは官民挙げて努力しております。そういう意味で、アメリカ自体のファンダメンタルズがそう大きく悪化するということもないと思います。また、G5の為替相場に関する政策協調ということが去年の九月できたわけでございますから、今後ドル暴落がもしあるとすれば、それに対しても協調してこれに介入するということもあり得ると思います。  私は、今の金の動きを見ておりますと、金はこのところドルタームでもさっぱり上がっておりません。そういう意味で、資本が逆流したり、あるいはドルからどこかへ逃げていくという事態はまだ起こってないのじゃないか。また今後も、日本の資本市場、金融市場の規模というものは、合わせますと大体アメリカの四分の一ぐらいの規模しかございませんので、経済大国日本の円と申しましても、円に流れ込んでくる、あるいはそのほかマルクに流れ込んでいくという流れ込むべき、逆流すべき場所がありません。むしろ日本はごらんのとおり貯蓄過剰で困っておるという状態でございますので、なかなか逆流すべき行き先がないという意味でも暴落はあり得ないのじゃないか。私は、どちらかというと先ほども申し上げましたとおう、売り買い両方の要因が、今ドルの底値というものを模索しつつある状況である、いずれ新しい相場水準を市場が発見いたしまして、そこに大体落ちついていくのじゃないかというふうに考えております。  以上でございます。
  16. 加藤卓二

    加藤(卓)委員 昨年の暮れの経済紙を見ていると、まるで真珠湾攻撃に遭ったみたいだと思わず叫んだ銀行のトップがいるという見出しで、私、G5ショックが九月の下旬、為替相場への介入、協調介入というのですか極秘のうちに行われて、先進五カ国蔵相・中央銀行総裁会議で取り決められたときの話をそんなふうにお聞きしました。それを契機にドル安、それで円高ということになるわけでございますが、都市銀行が一つ引っ越すような、十数兆円の証券投資を去年何かしていたようにお聞きしますが、その為替差損は四兆とも五兆とも言われているのです。銀行だとかはドルドル、ドル建てでやっておったとか、生保に関してはその枠組みが非常に厳しかったというので、比較バランスのいい投資になっているのでしょうが、ものようないろいろな締めつけのなかったところの分野で、これだけの金額がどんなふうに投資されて、また、あれされたのか。その辺のところ、心配は要らないものでしょうか。  時間の都合上、いろいろ一遍に話しておきたいと思うのですが、今度の円高の問題で、石油価格が急落すると電気、ガス業界では大きな差益が出るのだ。通産省の試算でも、為替相場が百九十円でオイルの原価が一バレル当たり二十ドルで推移した場合でも、電力業界だけでも一年間に一兆三千億というから、今の場合でいえば二兆円近くになるのでしょうか、そうした為替差益が出るのですが、これは国民の利益としてあれする場合でも、これを一世帯当たり還元しても大したことないんじゃないか。むしろこういう問題は、電線の地中化、共同溝をつくるとか、設備投資で内需拡大筆を図るのが賢明じゃないかというような考え方。  いま一つ、貿易摩擦で大変な、二十兆近い、十七兆とかという外債を買っていても、これは資本収支が赤字になるだけで、貿易摩擦には何らのメリットもない。材木を買おうといっても関税が大変だし、そういう場合だったら、仮に外国の、アメリカの山を買ったらどうでしょうかとか、備蓄の難しい大豆や小麦、農産物を買わなければならないんだと言われるんだったら、農場経営だとか牧場経営に協力していくとか、日本経済の活路を見出すようなことを考えられてはいかがか。これは民間では工場を向こうへつくるとか、要するに自動車工場も向こうへ移るとか、電機工場も移るというようなことがなされているわけなんです。  この他いろいろお聞きしたいのですが、この辺のところに絞って、円高のメリットが日本経済にどんなふうに影響するとか、中小企業の大変な苦痛を味わっている者に関しての施策に関して御助言をいただきたい。時間がございませんようですので、ひとつ簡単によろしくお願いします。
  17. 井上實

    井上公述人 時間の制約がございますので、加藤先生の御質問たくさんございましたけれども、一、二点お答えいたします。  まず第一点の投資の問題でございますけれども、これはもう非常に大きな金額、証券投資だけでネット去年が六百億ドル、その前が四百億ドルという大きな数字が出ております。これは私は、今の自由経済のシステムのもとでは、日本にこれだけの黒字がたまっておりますとどこかに吐き出さなければなりませんので、当然のことだと思います。それでその場合に、私は、為替の、ドルの値下がりによりまして評価損は相当出ているかと思いますけれども、大体大きな機関投資家というものは長期にこれを保有するという前提でやっておりますので、財務的には評価損は起こりますけれども、長期に持っておりますれば、高い金利差を享受した投資になって返ってくるということでございます。それからまた、多くの場合、企業段階でもどちらかと申しますと余裕金を投資しておりますので、そういう意味で、そう慌てて持って帰ることによって為替差損を起こすということはないのじゃないかと私は思っております。  それから、次に先生おっしゃいました為替差益の活用の問題でございますけれども、これは私も新聞なんかで拝見しておりますと、原油の価格下落、それから為替の差益、そういうものをどういうふうに使っていくかということがいろいろ論じられているようでございますが、例えば電力の場合でも、おっしゃいましたようなことで、むしろ前向きに使っていくということは結構なことじゃないかと思っております。  それから中小企業の問題。これは先ほども私、陳述の中で申し上げましたとおり、中小企業だけではございませんけれども、経済全体、個々の企業、個々の業界、非常に深刻な影響を受けております。これをどうやって切り抜けていくのか。これは、先ほど申しました次の私どもの体質改善と申しますか、輸出主導型の体質から内需主導型の体質に切りかえるための一つの非常に苦しい試練でございますが、個々の問題につきましては、例えば中小企業庁なんかでもいろいろ法案を用意されまして御研究いただいておるようでございますが、そういう個々の対策を立てていただくということ以外にはないのじゃないかと思っております。  以上でございます。
  18. 加藤卓二

    加藤(卓)委員 どうもありがとうございました。
  19. 小渕恵三

    小渕委員長 次に、川崎寛治君。
  20. 川崎寛治

    ○川崎委員 佐藤飯塚井上の三公述人の先生方には、土曜日の大変大事なときに、やぼな国会においでいただき、大変貴重な御意見を拝聴いたしましてありがとうございました。心からお礼を申し上げたいと思います。  ところで、まず最初に飯塚公述人にお伺いをいたしたいと思いますが、大変高い志に立った職業会計人としての立場から、今日の税制のあり方、税法の運用の仕方、そういうものについての大変厳しい御意見がございました。申告納税人員の見込み数を七百七十四万人としたのはインチキだ、こういう断定をされておるわけでありますが、そうしますと、西ドイツとかそういうところはどうなっているのかということを伺わしていただきたいということ、つまり社会正義を貫いていくための税法のあり方、つまり税法の整備、そういうものが実際にはしり抜けになっているのではないか、こういういろいろな御意見もございましたが、それらについてまずお伺いいたしたいと思います。
  21. 飯塚毅

    飯塚公述人 お答え申し上げます。  西ドイツの例を言えということでありますが、西ドイツの場合は国税通則法という法律があります。さらに、ゲベルベオルドヌングといいますから、営業法とでも訳しますか、そういう二つ法律がありまして、業者が開業した、または転業した、または廃業した、または転居した、そういうふうないろいろな事業上の変化があるたびごとに、一カ月以内という確定期限つきで、登記所と市町村役場それから同時に税務署と三つに届け出を出さなければならないことになっておる。したがって、もう逃げられない。特に、営業法という法律には罰則規定がありまして、その届け出を出さなかったという場合に一番重いのは一年以下の懲役、それから軽いものになると一千ドイツ・マルクまでの罰金を科すということになっておりますので、ここで完全に納税者は捕捉されてしまうということなんですね。そういうことだから、ドイツではほとんど脱税がないということになってしまうわけなんです。  なお、先生ただいま租税正義というものを貫くためにはどうしたらいいかというお話があったように心得ますが、これはなかなか難しい問題でございますけれども、簡単に言えば国民が公平に税負担を受ける、そういう状況をつくってしまうことだと思うのです。それをやっていない。だから、日本国じゅうに脱税者があふれておる。それは政治家も例外ではない。きのう、おとといも政治家のことが新聞に載っておりましたけれども、事ほどさように国民全体が、要するに脱税になれっこになってしまっている。それに対しては、例えばドイツの場合、悪質な場合は懲役十年です。そういうものをきちっとかけていますから、脱税やった場合には十年。十年刑務所に入れられたんじゃ、もう人生成り立ちませんよ。そういうふうに厳然とやっている。そこがポイントだと思うのです。公平を貫くということがポイントだと思うのです。政治家として一番重要だと思うのです。どうかお願いいたします。
  22. 川崎寛治

    ○川崎委員 申告納税制度の問題についてお触れになっておりますが、ここでは「納税者所得を算定するに必要な資料が自発的に提出されることを申告納税という」、こういうふうにシャウプ勧告を引いておられるわけであります。そういたしますと、先ほどドイツのことを言われましたけれども、イギリスとかアメリカとかフランスとか、そういうところでは実際にどうなっておるのか、じゃ日本においては所得税法をどういうふうに変えたらいいのかという点について、飯塚公述人の御意見を伺いたいと思います。
  23. 飯塚毅

    飯塚公述人 お答え申し上げます。  実は、シャウプ勧告の思想というのは、今先生がおっしゃったように、所得計算に必要な資料をみずから進んで全部政府に出すということなんですね。ところが、そのことは実はアメリカだけじゃないのです。私は、イギリスもアメリカもドイツもフランスも、申告書を取り寄せて調べておりますけれども、みずから所得計算し、みずから税額を計算するという法制になっている国は全然ない。世界には百六十六カ国ぐらいございます。私はそのうちわずか二十数カ国の税法しか調べておりませんけれども、もうすべて同じです。あなたは税額を出す必要ないよ。それで私は、ドイツの税理士に聞いたんです。じゃどうするんだと言ったらば、いや、非公式に幾らになるんだということは、税理士はちゃんと協力し元金額は出してやる、しかし申告書面では全然ない。あなたは自分所得額及び税額は自分で決める必要ないんだということが書いてある。皆そうなっています。
  24. 川崎寛治

    ○川崎委員 次には、不公平税制というものを改めれば、サラリーマンやあるいはまじめな経営者というものは税金を半分にできる、こういうふうに言っておられるわけですね。これも、今税金に対する不満、国民の中に満ちておるわけでありますし、国会としては我々も大変大きな責任を感じ、税制改革というのは本委員会における大きなテーマでもあるわけでありますけれども、法人の実調率が九%、それから個人企業のそれが四%だということは、昨年大蔵委員会においても飯塚公述人においでいただいて、これらの問題についてお話を伺いました。また、大蔵委員会なりあるいは当予算委員会なりでも、この問題は絶えず議論になってきておるわけです。  そしてこれは、小渕委員長が大蔵委員長のときにも、税法の改正には附帯決議がついたわけでありまして、税務署職員をふやしてほしい、こういう決議もいつもついているわけですね。なかなかふえないのです。二人とか三人とか五人とか、こういうことで来ておるわけでありますが、サラリーマンやまじめな経営者税金を半分にすることができる、それは実調率を上げるということが何といっても必要なわけですからね。そういたしますと、それは税務職員をふやせばよいのか、あるいはほかに何をやればいいのか、その点についての飯塚公述人のお考えを伺いたいと思います。
  25. 飯塚毅

    飯塚公述人 お答え申し上げます。  実調率を法人九%、個人四%にしたままでおるというのは、政権党である自民党の巨大なる怠慢であると私は考えております。これはもう許されない。だから、いたずらに脱税者ばかりできちゃう。これはいけない。  そこで、税務官吏をもっとふやせという議論があるわけでございます。附帯決議をやっても余りふえないというお話でございますが、であるとするならば、イギリスの一九七六年会社法の十九条のごとく、あるいはイギリスの去年の、一九八五年会社法の二百三十七条のごとく、つまり監査人に税務官吏と同じ質問検査権を与える、つまりすべての会計資料を監査に当たって企業側から要求できる、さらに真実に関する説明を求めることができる。今日本所得税法の二百三十四条によりますと、単に質問するというだけになっている。それじゃだめなんで、実は真実の説明を求めるという権利及び会計資料の全部を監査人に提示させるという法制になっていれば、そのギャップは防げると思うのです。そう思います。  どうか先生方、先生方は国の運命を決する立場の方ですから、そういうことだけは間違いなくやっていただきたいと思います。
  26. 川崎寛治

    ○川崎委員 これは大変厳しい御指摘でありました。国会の我々の責任でございますし、与党の皆さんも十分聞いておられると思いますので、これから大いにひとつ検討させてもらいたい、こう思います。  それからなお、昨年も大蔵委員会でも御主張になっておられたのでありますが、コンピューター会計の問題ですね。これは、そのときたしか政府税調の会長もあの大蔵委員会には参考人としておいでになったと思う。そのときに、検討という話も出ておったと思うのですよ。ところが、今御指摘のようにできてない。当時、ここにお見えの角谷さんはたしか主税局の審議官だったと思うのでありますが、これらの点はなかなか進まずに残念に思うわけでありますが、この点についての御意見を伺いたいと思います。
  27. 飯塚毅

    飯塚公述人 お答えを申し上げます。  それは政府・与党及び大蔵省の怠慢の結果であるとしか言いようがありません。といいますのは、今御承知と思いますが、日本の一番大きな企業から町の中小企業に至るまで、ほとんど全部がコンピューターを使っております。コンピューターの普及状況は、日本アメリカに次いで世界で二番目であります。非常な勢いでコンピューターが普及しております。  ところが、租税債権、租税債務を確実にするためのソフトウエアというものを規制する、そういう法律日本には一本もありません。御参考までに、西ドイツの場合には連邦政府だけで四十七本あります、コンピューターのソフトウエアに関する法律が。日本は一本もないのです。しかも、それどころじゃない。世界先進文明国の中で、コンピューターのソフトウエアを完全に規制して、第三者がたれが見てもわかるようにしろ、文書化しておけという条文さえもない。何ですか、これは。国会議員諸公は本当に財政再建、考えているのですか。  我々民間から見ると、彼らは国民をだましだましだましながら逃げちゃおうとしか考えていないというふうにしか私には思われません。何となれば、大企業から中小企業に至るまで、すべてがコンピューターで財務計算をやっているのに、その財務計算の基準となる法律が何にもない。これは日本一カ国だけですよ。これは国会議員諸公は国権の最高機関を預かる者として、みずから恥じていただきたい。こんな状態で、日本は文明国と言えるのかというふうに私どもは考えております。
  28. 川崎寛治

    ○川崎委員 それでは、次に井上公述人にお尋ねをいたしたいと思います。  今日のG5以後の為替の動きについて大変的確なお話を伺いまして、ありがとうございました。アメリカのヤイター通商代表が百七十五円が適当と、先ほどちょっとお触れにもなっておりましたけれども、そうしますと、やはりそこまでいくというふうにごらんになっておるのか、どこの水準までいくというふうにごらんになっているのか、それが一つですね。  それと、大変乱高下している。このことはつまり国家が、お互いが介入調整をしているわけですから、急速な為替の変動、こういう相場の変動というのに今春き込まれているわけであります。そういたしますと、これがさらに急速に円高にいくのか、そういう見通しがあるのかどうかというのが一つと、もう一つは、じゃ、モデレートに持っていくにはどうしたらいいのか。レーガン大統領の方も国際通貨会議の提案をいたしておるわけでありますけれども、それらについて井上公述人のお考えを伺いたいと思います。
  29. 井上實

    井上公述人 ただいまの川崎先生の御質問にお答えいたします。  二点あったと思いますが、一つは相場がどこまでいくのかという問題でございますが、これは神のみぞ知るでございまして、当局も私どもも、また市場もこれはわからないと思います。ただ、おっしゃいましたように、米国の、これは連邦準備当局ではございませんけれども、学者とかあるいは政府の一部の方に百七十五円ぐらいまでいっていいんじゃないかとか、まだまだ円高は足りないよというような発言が目立っております。一方また、ドルの暴落を心配する声もアメリカの中にございます。どこまでいくのかということに対しましては、私はちょっと立場上お答えできない、そういう能力もございませんし、お答えできないのでございますけれども、今の売り買いの状況を見ておりますと、まだ底は見え切っていないんじゃないか。  これはいろいろな見方がございます。もうここら辺で大体底をつくんじゃないかという見方もございますし、いろいろございますけれども、どうも私の個人的な感じでは、やはり相当な売り玉というものが天井にかぶさっておりまして、これが相当なドルの下げ要因に働いているんじゃないかというふうに考えておりまして、どこまでいくかということは、百七十五円はいつか来た道でございまして、七八年の十月の末に、一度百七十五円五十銭にいっております。これは何ら合理的な意味はございませんので、また地合いも、先ほどちょっと触れましたように、インフレ基調その他考えますと一九七八年の事態とは情勢が違っておりますので、何とも申し上げることはできません。そういう意味で、私は第一問に対してはちょっと数字を申し上げかねる次第でございます。  それから第二問の、今の相場は非常にフローティングのもとで急変している、乱高下している、また一方、レーガン大統領の御提案の国際通貨システムについてのいろいろな研究もするという話についてどういうふうに評価するかという御質問だと思いますが、一九七一年のニクソン・ショックの後、七三年から変動相場制に移行いたしまして、現在まで続いておりますこの変動相場制は完全自由変動相場制だと思います。これで私どもが経験してきましたことはやはり幾つかの欠点がございます。  まず、先生御指摘のとおり、非常に乱高下が激しい。それから第二点は、やはり経済のファンダメンタルズと遊離した、オーバーシューティングという言葉をよく言いますけれども、これぐらいでとまるべきものがずっと突っ込んじゃって、例えば百七十円でいいものが百五十円になるとか、二百六十円でいいものが二百八十円になるとか、そういう意味での、何と申しますか、実勢から考えて、実勢が何かということは難しいのですけれども、過大に、過剰に反応するということが一つの問題点だと思います。  それから三つ目は、本来変動相場制の一番の考え方は、自由な資金の移動、自由な商品の移動、そういうものを前提としまして、そこでマーケットフォースで、ディマンド・アンド・サプライで実勢相場は出てくる。そこで、相場が成立いたしますと、それがいずれは各国の国際収支の自動調整作用というものがあるんだ、それが変動相場制の一番の真髄なんでございますが、実際には必ずしも、さっき申し上げましたJカーブエフェクトとかいろいろな問題がございまして、なかなかきくのに、例えば円高になって日本の輸入がふえ日本の輸出が減りとか、そういうときに来るまでのタイムラグというのが非常に長いのでございます。そういう意味で、必ずしも国際収支の調節作用というものが右から左にファンクション、機能してこないという問題がございます。しかし、これは時間をかけますと必ず機能するわけでございます。  しかしながら、また一方私どもの経験で考えてみますと、一九七三年以来これで、七三年の秋の第一次オイルショック、それから七九年の第二次オイルショックを経験いたしております。それで、その間やはり変動相場でなかりせば、あるいは固定相場であったならば恐らく切り抜けてこれなかったであろうような、いわゆる国内均衡を犠牲にした国際為替相場維持というようなことで、国内経済を犠牲にしてしまうという事態は発生しなくて済んだわけでございますね。そういう意味で、変動相場制自体はやはりその意味での成功はありまして、この二、三年ドルの過大評価という問題がございましたけれども、これはむしろ変動相場制の罪ではございませんで、いつも言われるとおりアメリカ財政収支の赤字拡大、それに基づく米ドルの金利高、それに基づく米ドルの過大評価という問題でございまして、これは変動相場制の罪にするには変動相場制に対してかわいそうだと思います。  ただ、おっしゃいますように、実績を見てみますといろいろ問題が出てきておる。これで、七三年以来の十三年間にわたる経験に基づきましていろいろな検討がなされておりまして、各国関係政府当局でも、去年の六月の十カ国蔵相会議におきましてもこれが非常に大きな論題になりまして、研究されております。  で、私は、非常にわかりやすく申し上げますと、一番左の極に固定相場、金本位から始まる固定相場、その次にいわゆる目標圏の相場制度、ターゲットゾーンですね、その次に管理フロートと申しますか、それから一番右の端にフローティング、完全フロートという四つの段階、いろいろニュアンスの差はございますけれども、大きく分けて四つあると思います。現状は、極端に申しますと、七一年までの固定相場の一番左の極から七三年に一番右の極のフローティングに移行しちゃったわけです。そういう意味で、非常に極端から極端に走っちゃったわけなんでございますけれども、これに対していろいろ私どもの経験、反省がございまして、やはりそこで何らかの手を打ちたい。弊害を矯めていいところを伸ばしていけないかというのが今の各国関係者の立場じゃないかというふうに考えております。  それで、いわゆるターゲットゾーンというのは、頭の中で考えますと非常にいいんでございますけれども、一体何をもってターゲットと考えるのか、そこら辺もなかなか、いわゆる適正相場、昔みたいに購読力平価みたいなものが今の世の中ではなかなか考えられませんで、そういう意味で、何をもって適正相場と見るかということ自体にも既に問題がございますし、それからやはり、一定のゾーンの中で維持しようと思いますと、相当な資金の移動とか資本の移動とか、そういうものに対するコントロールを導入しないとできませんので、これはまた、人類と申しますか国際社会がやっと到達できました今の自由な資金、資本の流通という前提を崩すことになりますので、これはなかなか難しいと思います。  それで、そういうことで現実的にはG5の考え方、この九月のG5の考え方にも一部それが導入されていると思うのですけれども、やはりフローティングを前提としながら、関係国が協調しながら相場を管理していく、管理という言葉はちょっときついのでございますけれども、世の中で管理フロートなんて言葉がございますけれども、ある程度一つのものを、どこがいい理想的な水準であると言うことは難しいのでございますけれども、大体常識的にどこら辺に落ちつくべきかということを見ながらみんなで協力して、適時適切に介入を続けて、相場の乱高下その他による不要の損害あるいは不要の弊害を取り除いていこうという方向にあるんではないかと思います。そういう意味で、私は、レーガン大統領がそういう問題についての検討を命じられたということは非常に有意義ではないかというふうに考えております。
  30. 川崎寛治

    ○川崎委員 管理されたフロートというお話だと、どういう管理の仕方になるかという、これはまた国際政治上の力関係その他の問題があります。それをやっておりますと、あと五分しかありませんので、これはまたの機会にお願いをしたいと思うのです。  ベーカー提案賛成だ、こういう御意見でございました。そこでお尋ねをしたいと思うのですが、日本アメリカの要望に従って随分累積債務国に対する援助もやってまいりました。これは国際機関もそうですし、また日本の民間銀行もそれぞれ御苦労してきたと思うのです。今、累積債務国に対する、これは共産圏も含めまして、日本の民間銀行の融資額というのはどれくらいあるのか。まあいろいろなことが言われておりますが、大体それを東銀さんの方ではどういうふうにごらんになっているのかというのが一つ。  それから、南米ではやはりやけどをしたと私は思うのです。過熱をしまして非常にやけどをしたと思うのです。これは大蔵委員会でもかつて少し、竹下さんといろいろ御質疑をしたこともあるわけでございますが、乱高下のこういうときにベーカー提案賛成だ、こう言われましたが、じゃどういうふうな形でこれに対応していくのか。そういうものの判断はどこでするのか。銀行間で何かするのか、あるいは日本政府の間と何かそういう検討をする機関というか、そういうものがあるのか、どういうふうな御判断でこれに出ていくのか、それを伺いたいと思います。
  31. 井上實

    井上公述人 ただいまの川崎先生の御質問、二点あったと思いますが、第一点は、日本の銀行のこれら債務国に対する貸し出しは幾らあるのかというお話でございますが、私、これは数字は憶測の域を出ませんのであれでございますけれども、大ざっぱに申しまして、さっき日本は債権大国と申しましたけれども、大体日本の銀行の対外債権というものが六千四、五百億ドルあると思います。それはすべて、先進国その他を含めまして六千四、五百億ドルあると思います。これはまさに、世界一でございます。アメリカは四千億ドルぐらいかと思いますが、世界一でございます。  しからば、その中で累積債務国に対する貸し出しが幾らあるのかということでございますが、これは累積債務国というものの定義自体が非常に難しゅうございまして、今度のベーカー提案でいきますと、十五カ国を選んでおりまして、これは必ずしも私どもの考えでいる問題国と範囲がきっちり合いませんのですけれども、そういう対象もございますし、私は、いわゆる発展途上国で、七三年以降オイルダラーのリサイクリングによって潤ってきて、工業化ができ、インフラストラクチャーができ、また資源の開発ができてきた国という意味で考えますと、これは大体私の、今ここで憶測でございますが、日本の貸し出しが八、九百億ドルあるのじゃないかと思っております。  それから第二点でございますが、これは私、先生の今御質問の趣旨を間違えておりましたら御訂正いただきたいのでございますが、ベーカー提案のもとで、日本の銀行はどういう条件であれば新規の貸し出しにも応じていけるのか、協力していけるのかという御質問と私は伺いましたが、これは私、先ほど陳述の中で申し上げましたとおり、基本は、やはり今の累積債務国の問題は非常に深い、深いと申しますか、一言にして言いますと、第一次オイルショック以降のいわゆるオイルダラーを吸い上げたものを、これは恐らく三千五百億ドルであったと思いますけれども、それをいわゆるユーロダラーの形で、日本とかアメリカとかイギリスとかドイツの銀行がこれらの諸国に、経常収支の赤字の埋め合わせだけでなくて、むしろ進んで中期の金にして、彼らのインフラストラクチャーの資本形成とか工業化とかあるいは資源開発とか、そういうものに用立てた次第でございます。  そういう意味で、彼らの経済発展は非常に高い段階まで来ておりまして、工業化も進んでおります。例えばブラジルですと、もう既に輸出品の五割以上が工業製品でございます。そういう段階に達しておりまして、これを生かすも殺すも、これからどういうふうにしてこの経済発展をここで挫折させないでロールアップさせていくかということでございますので、そういう意味で私どもは、さっき申し上げました国際社会の一員として、また第二の世界大国といたしまして、個々の銀行の問題はもちろん、株主との関係とか商法上の関係とか銀行法の関係とかいろいろございますけれども、大ざっぱに申しますと、やはりこれを何としても回転させていって、そしてできるだけ今までの積み上げた基礎を活用させて伸ばしていく、それが第一の私どもの務めだと思っております。したがって、これに対しては私どもも、国内でもいろいろな技術的な問題がございまして、大蔵省当局その他にもお願いしておりますけれども、その問題、私どもが働きやすいようにしていただきたいということをいろいろ陳情しているわけでございます。  以上でございます。
  32. 川崎寛治

    ○川崎委員 佐藤先生には大変失礼しました。米ソ首脳会談以後の大変大きな動き、あるいはそういう中での日ソの外交関係の進め方、そういうこともお伺いしたかったのでございますが、時間を超してしまいましたので、大変申しわけございません。厚く御礼申し上げます。三公述人、本当にありがとうございました。
  33. 小渕恵三

    小渕委員長 次に、神崎武法君。
  34. 神崎武法

    ○神崎委員 公述人の先生方には、大変お忙しい中を本委員会に御出席をいただきまして、貴重な御意見を開陳いただきましたこと、大変にありがとうございます。  まず私は、飯塚公述人にお尋ねをいたしたいと思います。  先生は、昭和六十一年度予算案反対する立場から、大変示唆に富む御発言をされたわけでございますけれども、その中で、申告納税制度の根幹に触れる御発言がございました。この点に関しまして二点ほどお尋ねをいたします。  まず、所得税法百二十条の申告納税制度につきまして、納税者所得計算と税額の計算自分でできるんだ、こういう擬制の上に成り立っている、空想的仮定の上に成り立っているのだ、こういう御指摘がございました。  まず、こういう申告納税制度ができた背景と申しましょうか、この点について先生の方から御説明をいただきたいと思います。
  35. 飯塚毅

    飯塚公述人 お答え申し上げます。  先生のおっしゃったのは所得税法の百二十条のことだと思うのです。それはまさに空想的仮定の上に立った条文なのです。どうしてこういう条文ができたのかということを、最近まで関税局長をやって、もう退官なさった、前に東京国税局長をやっていた矢沢富太郎さんという方がいらっしゃる、その方に私は突っ込んだんだ。何でこういうばかばかしい条文をつくったんだ、こう聞いたら彼いわく、国民というものは性善である、我々は、国民が性善であるという立場でこういう条文を持っているんだ、こう言うわけなんだ。私はそれに対して、日本人ぐらい生き馬の目を抜くような敏感なやつはいないんだから、単に性善というのは困る、そうじゃなくて、性善説でもなく性悪説でもなく、国民に対してニュートラルな中立性を持った条文にしなければだめじゃないか、これじゃまるで政府脱税者を大いに製造している、大いに脱税しなさいと言うのと同じだ、こう言ったんだ。それに対しては、いや全くそのとおりですと言っただけで、彼は東京国税局長から関税局長になって、さらに退官してしまった、こういうわけでございます。
  36. 神崎武法

    ○神崎委員 この申告納税制度につきまして、シャウプ勧告大蔵省が曲解したのだ、こういう御発言もございました。そういう先生の御理解からいたしますと、税理士法の一条で、税理士の使命につきまして、「申告納税制度の理念にそって」というふうにうたわれているわけでございますけれども、そうしますと、その条文というのはどういうことになるのか。そんなものは意味がないのだから削除してしまえ、こういうような御主張になるのかどうか、その点をお尋ねいたします。     〔委員長退席、中島(源)委員長代理着席〕
  37. 飯塚毅

    飯塚公述人 お答え申し上げます。  申告納税ということを最初に言い出したのはシャウプでありますけれども、シャウプ先生の言っている申告納税というのは今の日本の言っている申告納税制と全然違う。だから税理士法の第一条の「申告納税制度の理念にそって」などという文言は明確に削除すべきである。日本の立法当局、国会議員諸公を含めていかに程度が悪いかということが世界に宣伝されているようなものになってしまいますから、この「申告納税制度の理念にそって」というものだけは削除していただきたいと思っております。
  38. 神崎武法

    ○神崎委員 ありがとうございました。  続きまして、井上公述人にお尋ねをいたします。  最近の円高・ドル安の基調の中で、この基調というものが我が国が現在進めております円の国際化、金融の自由化にどういう影響を持つかという点であります。これが果たして加速原因になるのか、あるいは減速要因になるのかという点であります。  と申しますのは、日米円ドル委員会が発足した当初の経過からいたしますと、アメリカ側は、ドル高・円安を是正するために我が国の円の国際化、金融の自由化が必要である、こういう主張をしていたわけでございます。その後、我が国の国際的責任を果たせ、こういうように主張が変わってきたわけでありますけれども、最近の円高・ドル安の基調からいたしますと、そもそもの、当初のアメリカの主張は論拠を失ったのじゃないか、このようにも思われるわけでございます。その意味においては、我が国が進める円の国際化、金融の自由化の減速要因に最近の為替相場の動向がなるのかどうか、そこら辺のところをお聞かせいただきたいと思います。
  39. 井上實

    井上公述人 ただいまの御質問にお答えいたします。  結論から申し上げますと、私は、円高は円の国際化、自由化にむしろプラス要因というふうに考えております。御指摘のとおり、円ドル委員会のときのアメリカの考え方は、円安が、実は先ほど来申し上げておりますとおり、アメリカの方に問題がありまして、それがアメリカ財政収支の赤字、それからドルの金利高、それからドル高ということになった次第なのでございますけれども、向こうの考え方は、日本市場開放あるいは円の国際化を怠っているから円が割安になっているのだという解釈だったわけでございます。いずれにしましても、おととしの五月の円ドル委員会の結論に従いまして物事は進んでおりますけれども、その結果出てきたものは、むしろ日本の資本輸出と申しますか、国内に過剰貯蓄があったせいでございますけれども、日本の資本輸出の方に、この円ドル委員会の円の国際化とか自由化とかという問題はそちらの方にきいてきておりまして、むしろ円安の抑制にはきいてこなかったということが言えると思います。  それで今後、現状を実際、例えば二百六十円だったあるいは二百四十円だったドルがだんだん百八十円なりになったということは、ドルの価値が下がり円の価値が上がったわけでございますから、したがいまして、非居住者にとりましては当然円を保有するという問題が、従来よりは円は強い通貨である、したがって円を保有したいという保有する意欲は出てくると思います。現に今の売り買いを見ておりますと、そういう意味で円の保有残高はまさにふえているわけでございまして、あとは、それを受け入れていって、ここで滞留するような市場が日本に十分発達するかどうかという問題に帰すると思います。  現状は、日本の国債の大量発行のおかげで長期資本の市場というものは立派なものができておりまして、日本世界第二位の立派な市場ができております。国債だけで百三十三兆円という大きなバランスでございまして、これは流通市場もしっかりできておりますけれども、まだ短期の市場の方は、どちらかと申しますと、先進国としてはまだ未発達の状態にございまして、殊に非居住者がここに入っていけるという意味ではまだまだ時間がかかると思いまして、そういう意味で少なくとも、例えば去年から行われておりますような銀行引受手形の市場を創設するとか、あるいはまた、今緒についております短期国債の発行とか、そういうことによって東京市場に円を保有する人が、また運用の道が開けてくるということができてまいりますと、やはりそこで円の保有がふえてくる。ということは、非居住者のいろいろな利息選好とか金利選好とか、そういうものがこの市場で出てまいりますので、むしろ円高というものはそういう意味で国際化、自由化の促進要因である。どちらかと申しますと、円は今まで外国人にとって借りる通貨として非常に有効な、有用な通貨として過去三年、四年機能してきたわけでございますが、これからまた日本の円を保有する、また日本の金融市場に投資する、日本の金融資産を保有するという意味で、むしろ貸す通貨、預ける通貨としてもだんだん成長していくかと思います。そういう意味でこの円高という問題は促進効果があるというふうに私はお答えしていいのではないかと思います。いろいろな税制の問題なんかもございまして、それはまだ今後解決すべき問題だと思いますけれども、基本的にはそういう流れだと承知しております。  以上でございます。
  40. 神崎武法

    ○神崎委員 もう一点お尋ねをいたしますけれども、今回東京オフショア市場が創設されることになりました。私は昨年の予算委員会におきましても、ロンドン型の、銀行業務と証券業務ともに行い得る市場あるいは内外一体の市場にすべきだという主張をいたしたわけでございますけれども、どうも今回創設されますオフショア市場はニューヨーク型の、銀行業務だけを行う市場というふうに伺っております。  井上公述人にお尋ねをいたしたいわけでありますけれども、今回の創設されますオフショア市場をどういうふうに評価されているか。先生としては、将来ロンドン型の市場にまでオフショア市場を持っていくべきであるというふうにお考えであるかどうか、その点を含めてお尋ねをいたしたいと思います。
  41. 井上實

    井上公述人 ただいまの御質問でございますが、先生の御意見、ロンドン型の市場にすべきではないかということでございますが、実は私もこの問題につきましては本来は、筋としましては、先生のおっしゃいますとおり、オフショアではなくてオンショアという言葉をよく使うのでございますけれども、本当に東京市場自体がロンドンと同じように、オンショアの、自由な非居住者が内外一体となって機能できる、活動できる市場になるということが目標だと思います。と申しますのは、日本の場合は大変な日本国という大きな立派な国力を持った国でございますし、また太平洋地域全体を考えてみましても、日本経済的な実力、地位というものは非常に大きな役割が約束されておりまして、そういう意味で東京市場を内外一体となった市場にできるということは最も望ましいことだと思います。  ただ問題は、今、今度の東京オフショア市場と申しますか、東京IBFと申しますか、この市場の考え方は、やはりそれに至る一つ前の過渡的なプロセス、段階ではないかと思います。と申しますのは、やはり日本先進国でありながら、実は諸外国よりも若干為替管理法の緩和とか撤廃なんかもおくれておりまして、イギリス、あの問題の多い国が一九七九年に思い切って撤廃したのでございますけれども、日本はその翌年の一九八〇年十二月にやっと新外為法というのができまして、従来の原則不許可、原則要承認という制度から大きく自由化の一歩を進めたわけでございますが、まだそれから五年ちょっとしかたっていないわけでございます。そして、まだ国内にはいろいろな税制上の問題とかいろいろな問題が残っておりまして、それからまた金融制度あるいは金融政策上もまだまだ解決すべき——今の自由化の過程というのは、まさにそういうことを解決するための一つの過程だと見ることもできますけれども、まだまだやるべきことは残っておりまして、今の段階で全部取っ払って内外自由にやるというような段階には達していないと思います。  それからもう一つは、ロンドン型と申しますけれども、私自身ロンドンに勤務して存じておりますが、ロンドンは今や昔とすっかり変わっておりまして、英国の通貨でございますポンドというものは、国際性と申しますか、決済通貨、準備通貨としての機能も地位も失っておりまして、どっちかと申しますとだんだん地方通貨と申しますか、そう申しちゃいけませんが、国際通貨でございますが、やはり昔とは地位がすっかり変わっておりまして、そういう意味でロンドンは内外一体になって、そのスターリングポンドとドルの間もどれでもどういうふうにでも交換自由であるという前提でございますけれども、ロンドンがオンショアで成功しておりますのは、もうスターリングのものは国内の要するに通貨として機能しているだけで、おおむね大宗はユーロダラー市場の地主さんとしての機能なのでございまして、そういう意味でそこで七千億ドル、八千億ドルの外国通貨というものがリンクされている。そこで預けられ、あるいは貸されているという意味で大きな市場になっている。これに内外、英国人も外国人も自由に参画して税法上不利もなくて自由に活動できる。  そういう意味でのロンドンのオンショア市場でございまして、日本がオンショア市場をつくったときには、それじゃロンドンと同じようにいくかと申しますと、そうはいかないと私は思います。と申しますのは、円の国際通貨としての地位がさっき申し上げましたようにだんだん向上しております。そういう意味で、日本国内の金融政策とか金融制度とか、そういうものとの関連は非常に難しいものでございまして、これは今申し上げました金融の自由化、円の国際化を通じて一つのプロセスを経た上でそういう目標に達していくという道をたどるべきであり、またたどるのではないかというふうに私は考えております。  以上でございます。
  42. 神崎武法

    ○神崎委員 どうもありがとうございました。  佐藤公述人には時間の関係で質問ができませんでした。どうも済みませんでした。
  43. 中島源太郎

    中島(源)委員長代理 次に、木下敬之助君。
  44. 木下敬之助

    ○木下委員 三名の公述人の皆様方は、お忙しい中本当に御苦労さまでございます。心からお礼申し上げ、質問をさせていただきたいと思います。  まず、飯塚先生先生のお話で、先ほど政府や自民党等が言っておりますように財源がない財源がないというのはインチキであって、財源はあるんだ、こういうお話でございましたけれども、先生の税務と会計の専門家としての真意をお聞かせいただきたいと思います。
  45. 飯塚毅

    飯塚公述人 お答え申し上げます。  真意を言え、こういうことなんで、これは飾りっ気なしに言わなければならぬわけでございますが、政府税調並びに自民党税調の先生方が、財源がない財源がないと叫んでいるのは、あれはインチキそのものです。  例をアメリカにとります。一九八一年、アメリカの内国歳入庁は、我が国脱税されている資金は九百六十億ドルであるということを発表した。ところがその直後に、アメリカ公認会計士協会が発表したのは、ふざけるんじゃない、アメリカで現在脱税されているのは国家予算とほぼ同額であるということを公式に発表した。それはロンドンの市立大学のダーリック・ウォールズという教授の論文に載っかっております。それで、八二年に慌ててレーガンは大改革を始めたんです。そういうことなんです。  だから、本音を言えということになると、実は今ほとんど国家予算と同額に近い脱税資金が町にあふれているということでございます。
  46. 木下敬之助

    ○木下委員 重ねて伺います。  そういうことで、その国家予算規模ほどの脱税を、どうすれば脱税させずに国庫の収入として取ることができると先生はお考えでございましょう。
  47. 飯塚毅

    飯塚公述人 お答え申し上げます。  先生方は百も御承知だと思いますけれども、憲法第四十一条には、国会は、国権の最高機関であり、国の唯一の立法機関であると書いてある。したがって、国会の先生方が、あっ、ここに穴があったと気がついてくれればいいんですよ。そして、これをどうするか。この脱税を防ぐということに対して、日本の国会、日本政府あるいは日本大蔵省は余り研究していない。世界各国は、どうやって脱税を防ぐか、もう夢中になって研究している。  先ほど申し上げたように幾つものやり方があります。例えばフランスの場合は、各家庭、各世帯ごとに必ず申告書が送られてまいります。それからカナダの場合は、大蔵大臣は赤ちゃんにまで申告書を送るということになっております。それをやらないと処罰の対象になりますから。そういうことなんです。そういう研究というか、それが足りないということでございます。
  48. 木下敬之助

    ○木下委員 わかりました。我々も研究いたしますが、先生もまた、ここに穴があるというようなことはぜひ御指導をいただきたいと思います。そして、先生が言われますように、税を取ろうという方は研究していないのに比べて、脱税の方は大変な研究をしているように見えます。  先ほど御発言ありましたように、コンピューター等も今は自動的に二重帳簿になるというか、自動的に脱税ができるようなプログラムも研究されているように聞いておるのですが、先生はこの点どうお考えになり、またどういう法律を考えておられるか、その点もお聞かせいただきたいと思います。
  49. 飯塚毅

    飯塚公述人 お答え申し上げます。  先生の御発言どおり、実は、日本では現在コンピューターの会計に関する法律が一本もありませんので、したがって、脱税をやりほうだいということでございます。これは上場会社のトップから魚屋、肉屋さんまで、もう町の商人に至るまでみんなミニコンを持っていますから、大きな企業になると大型コンピューターを持っていますから、結局脱税は思いのままなんですよ。  じゃ、それをどうするか。一番簡単な方法は、一九六四年の二月につくられたアメリカの内国蔵入法の六千一条に附属する施行令をつくっちゃうことです。つまり、あれをそっくり翻訳してしまえばいいのです。そうすると、ちゃんとそれに書いてある。  特に先生方にお訴えしたいことは、つまり、例えば取引の仕切りとか送り状が来る。その送り状から決算書までどうやってたどっていけるか。決算書の数字からまた原始記録までどうやってたどっていけるかということがはっきりとわかっていなければならないということ、さらにコンピューターのソフトウエアを専門家でない普通の税務官までも自国語で読むことができるということが必要だということを書いてある。単に読めるというのではない。一九六四年のアメリカの施行令によると、ビジブル・アンド・レジブルという言葉を使っておる。単に読めるというだけではだめだ、つまり読みやすい記録にしておかなくちゃいかぬ、こういうことになっている。そういうことが日本では全然行われていないんですから。したがって、自民党を初め各党の先生方は、一致団結して脱税を促進しているというふうにしかわれわれには見えないということでございます。
  50. 木下敬之助

    ○木下委員 先生、もう一点お伺いいたしたいと思います。  先ほどの話の中に、税務の実地調査ですね、この率が大変低くて、結局それを換算してみると、法人の場合十一年に一回、個人だと二十五年に一回、こういう感じになる。たしか時効の満期が七年ぐらいだったと思うのですが、これじゃまるっきりざるという感じがするのですが、先生はどのようにお考えですか。
  51. 飯塚毅

    飯塚公述人 それはただいまの先生の御指摘のとおりであります。時効は国税通則法の七十条によって、あれは脱税の場合といえども七年なんです。ところが、七年というのは、つまり法人の調査はとにかく十一年に一遍ですから、個人企業は二十五年に一遍ですから、全部脱税の時効期間過ぎちゃってから、のこのこと調査に行くわけですよ。それでは、もう一致団結して脱税の促進をやっているとしか我々には思えない。  そこで、じゃどうするのかということでございますが、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、立法例がございます。つまり、例えば所得税法の二五三十四条の質問検査権というのがありますね、税務官吏に。あれを税務官吏にだけ与えておくという理由はない。例えばイギリスの場合、それは一九七六年の会社法の十九条に書いてある。それだけじゃない。さらに今回またつくった。一九八五年のイギリス会社法の二亘二十七条にも書いてある。「会計を監査する者は会計に関する資料のすべて及びその真実の説明を求めることができる。」と書いてある。それに違反した場合は、代表取締役以下関係者は二年以下の懲役または四百ポンド以下の罰金に処すという規定がある。  これはさすがにイギリス人の知恵です。そういう知恵は国権の最高機関を構成する先生方も学び取りくださいまして、そうして脱税がないように。そうすれば、大型税なんて導入は全然必要ない、そういうことでございます。
  52. 木下敬之助

    ○木下委員 どうもありがとうございました。  それでは、井上先生の方にお伺いいたしたいと思います。  先ほどのお話の中にもございましたけれども、昨年のG5以降ドル高は著しく修正されておる、このように思いますし、これは主要五カ国の協調介入が非常に大きな効果を果たした、このように言われております。これが今後ともこういったようなやり方で為替相場の安定を維持していけるのだろうか、このように考えますが、先生のお考えをお伺いいたします。
  53. 井上實

    井上公述人 お答えいたします。  私は、結論的に申し上げますと非常に難しいというふうに思っております。陳述の際申し上げましたとおり、たまたま今度の場合は非常にタイミングもよかったと思いますし、それからアメリカの腰が非常に入っておりまして、そういう面でもよかったと思いますし、またもう一つは、米ドルを売って安くするという操作なもんですから、米ドルはアメリカにとって無限に持っている通貨でございますから、そういう意味でもやりやすかったと思います。  介入というのは、先生おっしゃいましたとおり、協調というところに意味がありまして、一国がローカリーにやってみてもなかなかうまくいかない。ですから、介入は協調でなければいけないと思いますけれども、何しろ今世界の為替市場と申しますのは一日千五百億ドルぐらい売り買いが成立しております。そういう中で通貨当局が幾ら総動員してやってみても、流れに逆らうようなことをやってはとても成功しないのですね。介入自体の大きな効果というのは、やはりアナウンスメント効果と申しますか、こういうふうにして政府が協調して介入したよという事実が将来の相場の期待の上に大きな影響を与える、あるいはそれによって金融市場の通貨の調節を通じて大きな影響を与えるというところに意味があるのでございまして、何といってもこれは短期的な政策でございます。ですから、長期的には、結局は各国の間のマクロの経済政策の調整ということが最初であり最後であって、それに行く一つの橋渡し、いわゆるブリッジングオペレーションとよく言われますが、その橋渡しとしての意味があるというふうに思っております。  以上でございます。
  54. 木下敬之助

    ○木下委員 井上先生、もうちょっと聞かせていただきたいのでございますけれども、先ほどのお話の中にもございまして、円高が起こることは、これはプラスの効果、マイナスの効果いろいろございまして、総合的にどう判断するかは、急激であるか緩やかであるかとか、こういったことだというふうに先ほど言われたと思います。この五カ月間で三二%上がったという日本の今回のこれは、そういう目で見ると先生はどのようにおとらえになり、また、支援が必要な部分が出てくるという話もありましたが、何かこういったことだとか、こういったところが特に気になるとか、もしございましたら、なければ結構ですが、あったときは教えていただきたいと思います。
  55. 井上實

    井上公述人 お答え申し上げます。  私は、円高の三二%という数字は、きのうのニューヨーク市場のクロージングから拾った数字でございますが、これは九月二十二日以前の数字との比較でございますから、五カ月間でこれだけの相場の変化があったということは大変な急落だと思います。そういう意味で、相当大きな相場水準の変更というふうに考えております。それだけに、さっき私は陳述の場合にも申しましたけれども、一番の問題は、過去四年、五年、円安に日本経済自体が非常になれてきておった。その円安が本当に日本のファンダメンタルズと申しますか、国力に相応した円安ではなくて、ドルの過大評価から起こった裏っ側に生じた円安だったものですから、それになれてきたというか、それのもとですべての企業とか全体の採算なんかもでき上がっておりましたのが、わずか五カ月間で三割も下がる、円が上がるということになりましたものですから、非常に大きな衝撃だというふうに感じております。  それから、それではその対策でございますけれども、私は、陳述で申し上げましたとおり、やはり日本はこの円高——従来の相場水準というのは架空的な米ドルの過大評価の裏側の相場であって、真実の相場ではなかったのであって、やはりここで、相当国としてはつろうございますけれども、何が適正相場かという問題は非常に難しゅうございますけれども、私どもいろいろはじいておりますと、一九八〇年、八一年ぐらいは、日本アメリカの経常収支が大体均衡しておりまして、そこら辺を基準にはじきますと、いろいろ物価の調整その地やってみますと、今の値段が百九十円ぐらいが、一つの数字が出てまいりました。決してこれが適正相場ということを申し上げておるわけではございませんけれども、そういう数字もございます。  しかし、いずれにせよ、そういう適正な相場になることが、円高になることは加工貿易型の日本としては、やはり原料を安く買って、外国のサービスを安く買って、そして高く売れるという交易条件の改善という意味で、長期的にはもう非常に有利な、私どもの懐も、苦しゅうございますけれども、いずれはまた所得の増加は出てくるというふうに考えて、歯を食いしばってみんなで何とかこの苦境を抜けていく。そのための過渡的な措置とかあるいは例えば転廃業の措置とか、そういうものについてはいろいろ措置を講じていく必要があるという趣旨を申し上げた次第でございます。
  56. 木下敬之助

    ○木下委員 どうもありがとうございました。  佐藤先生申しわけありません、時間がなくなりまして……。
  57. 中島源太郎

    中島(源)委員長代理 次に、梅田勝君。
  58. 梅田勝

    ○梅田委員 日本共産党・革新共同の梅田勝でございます。きょうは、お忙しい中をお越しいただきまして御意見を承り、ありがとうございました。御意見を拝聴いたしました順番で質問をさせていただきますので、御答弁の方は、時間の関係上ごく簡潔にお願いを申し上げたいと思います。  まず、佐藤公述人のお話でございますが、外交、防衛上の問題で御意見を伺ったわけでございますが、私ども今回の予算を見ておりますと、一口に言いまして、その特徴は軍事費と大企業奉仕の予算には聖域化して手をつけない、むしろこれはふやす。そして国民向けに対しましては予算をどんどん減らす。いわゆる国民犠牲、そういう形の予算になっておると思うわけでございます。  先生は、かなりさかのぼって予算の変化をお述べになったわけでございますが、中曽根内閣が四年間予算をどのように扱ってきたかと申しますと、一般会計予算におきましては、この四年間で八・九%の伸びがあるわけでございますが、その中で軍事費は二九・三%、経済協力費は三二・三%、エネルギー対策費は一一・八%。ところが、社会保障費は八・三%というように全体の伸び率を下回っているわけであります。文教予算になりますと〇・四%のマイナスであります。中小企業対策費は一七・九%と大幅なマイナスであります。先生が最初、食糧管理費が多いというのが以前にあったことをお話しになりましたが、この方は実に三九・八%のマイナスになっているわけであります。  非常に軍事費がふえておるというのが目立つわけでございますが、この根底には一九八一年五月に鈴木・レーガン会談がございまして、いわゆる日米の新しい同盟関係というものが発展をしていく。その後中曽根・レーガン会談におきまして、いざというときには日本列島不沈空母化計画、日米運命共同体、こういった考え方が示されてきて、そしていわゆる中期防衛力整備計画などが膨大な予算で計画されるようになってきた。こういうことになりますと、我が国の平和と安全という問題が、アメリカの考え方でいった場合、核戦争がもし起こった場合一体どうなるかとなりますと、これは元も子もなくなるんじゃないか。  昨年の九月に国際学術連合環境問題科学委員会というのがございまして、米ソ三十カ国が入りまして約三百人の科学者が研究をいたしました。核戦争の結果どういうことが起こるかというお話の中におきましては、例えば六千メガトンが使われただけで、北半球におきましては一年後約十七億人しか生き残ることができない。我が国について言えば五千八百万人しか生き残ることができない。こういう驚くべき数が発表されておるわけですね。  ですから、我々は防衛だ防衛だと言いますが、そして軍事力強化だと言って金をたくさん使いますが、その結果戦争が起こって元も子もなくなってはこれはどうにもならないわけでございまして、今緊急に求められておりますことは、このような危険な軍事同盟関係、これをなくするということ。それから、何よりも核戦争を起こしてはならない、核戦争阻止、核兵器を廃絶する。それから、被爆国民といたしましては、三つ目の願いとして被爆者に対する完全援護法を制定する。この三つが悲願になっておるわけでございますが、先生のこの三つの問題についてのお考え方、お伺いしたいと思います。
  59. 佐藤誠三郎

    佐藤公述人 お答えいたします。  第一は、我が国防衛力我が国だけではなくて西側先進諸国の防衛力というのは、基本的に抑止のためにある。防衛力の観念が第二次世界大戦後根本的に変わりました。今の軍事力というのは、戦争をするための軍事力ではなくて戦争を防ぐための、つまり抑止のための軍事力である、それが第一点でございます。しかも、既に申し上げましたように、現在の国際関係というのは、残念ながら軍事力なしに平和が保たれる、安全が保たれる、一国の主権が保たれるという状態にないことは、ほとんど例外なく世界のすべての国が軍事力をそれぞれの条件に応じて備えているという事実からも証明されると思います。以上が第一点でございます。  第二点、日米の軍事同盟を廃棄すべきであるという御意見でございますが、私は、日本軍事力が国際的に見てこれほど低い段階にある、低い状態にあり得るのは、アメリカとの同盟があるからである、アメリカとの同盟なしに我が国の安全を守ろうと思ったら、現在よりもはるかに巨額の防衛力を持たざるを得ないというふうに思います。  それと関連いたしまして、御質問の中に、防衛費の増強は国民犠牲のものであるという御趣旨のことがあったと思いますが、私は、戦争を防ぎ一国の独立を守るということは、国民のためにまず政府がやらなければならない最も基本的な責任の一つであるというふうに考えております。ですから、防衛費の増強は国民を犠牲にするものであるというお考えには、私は賛同しかねます。  それから第三番目に、核戦争が起こったら元も子もなくなる、私もそう思います。ですから、核戦争阻止のために最大限の努力が払われるべきであると思います。しかし、どのようにすれば核戦争を阻止できるのか。直ちに西側が同盟関係を廃棄した場合に、それが核戦争を阻止できるのか。それは、西側が完全に核を放棄すれば、核戦争は起こらないかもしれません。そのかわり、我々が今享受している自由と民主主義の体制そのものが根底から失われることになるということは否定できないと思います。  ですから、核戦争を阻止する一番いい方法は、既に申し上げましたように、西側がしっかりと団結をし、そしてソ連との間に着実な粘り強い交渉をすることであって、一方的な同盟関係軍事力の放棄は、戦争を誘発する危険を高めることはあっても、戦争を防ぐ効果はないというふうに私は考えております。  それから最後に、原爆の被災者でございますが、原爆の被災者に対して十分な手厚い援助が与えられるべきであるということは御指摘のとおりでございますが、戦争による被害者というのは原爆以外にもさまざまにございます。それを全体のバランスの中で考えるべきであるというのが私の意見でございます。  お答えといたします。
  60. 梅田勝

    ○梅田委員 抑止と均衡の理論に基づいて今日の核開発競争が来たわけでありますから、私が言っておりますのは、核戦争を阻止する、核兵器を廃絶する、そのための有効な手段として、例えばソ連からも提唱がありましたが、核兵器を廃絶するための国際協定を結ぼう、こういう動きがあるわけでございますから、先生はそういう協定を直ちに結ぶという問題についてはいかがですか。もう時間がございません、簡単に。
  61. 佐藤誠三郎

    佐藤公述人 確かに、昨年の後半からソ連軍縮軍備管理に関する態度に若干の変化が生まれ、好ましい変化があるように思われます。しかし、それではなぜそうなったのか。それは私の考えるところでは、西側が十分なる努力をし始めたからである。西側の軍備整備についての努力なしに、ソ連がジュネーブその他における軍縮のテーブルに着いたとは到底考えられない。ソ連自身がその前の態度を変えて軍縮のテーブルに着くようになったのは、そのような努力の結果であるというふうに思います。ですから、事実が示すとおり、軍縮に至る一番適切な方法は、西側団結し、十分なる抑止力を備えることであるというふうに思います。
  62. 梅田勝

    ○梅田委員 一昨年、我が党とソ連共産党との間で核兵器廃絶の問題についての共同声明を出して、そして著しく発展をしているわけでありますから、決して西側団結をしたからそんな問題が起こったのではないということだけを申し上げて、時間がありませんので、次に行きたいと思います。   〔中島(源)委員長代理退席、委員長着席〕  飯塚さんにお尋ねいたしますが、税制上の問題ですね、確かにいろいろ大きな問題があると思いますが、私どもは、不公平税制ということが言われますが、これが一番大きな問題だ。  我が国は、御承知のように百八十二万の法人企業がございますが、その中で資本金十億円以上の大企業というのは二千四百五十八社なんですね。ところが、経常利益を調べてみますと、このわずか〇・一三五%にすぎない企業が全体の五三・七七%の収益を上げている。ところが税収の方は、実際としては勤労者に依然重くのしかかっている。こういう状態を改善することが緊急に求められているのじゃないか。  そういう点で、受取配当益不算入でありますとか価格変動準備金、退職給与引当金、貸し倒れ引当金あるいは大企業法人税率、いろいろ廃止をしたりあるいは改善したりしなければならない問題がございますが、この点についてはどのような御意見をお持ちでしょうか。
  63. 飯塚毅

    飯塚公述人 お答え申し上げます。  先生がただいま御指摘になった価格変動準備金は、今回の予算によると廃止のような見解ですね。ですから、それはなかなかいいことだと思うのですけれども、要するに、先生のおっしゃった不公平感をなくす、絶対的に憲法の、国民の法のもとにおける平等、この平等原則というのをとことん貫いていくということが現段階における国会議員諸公の最大の任務ではなかろうか、そう思っております。その意味で私は、先生の、不公平を是正するということについては大賛成であります。
  64. 梅田勝

    ○梅田委員 最後に、井上公述人にお伺いをいたします。  円高と国内経済との関係につきましていろいろ御意見を承ったわけでございますが、確かに円高が急激に進行しておりますので、輸出関連におきましては非常に大きな被害が出ておるわけでございます。きのうの新聞で帝国データバンクの調査が出ておりましたが、一月の倒産件数が、一千万円以上におきまして千二百八十五件、負債総額が二千四百八十七億円というこどでございます。はっきりとした円高倒産というのが一月で十二件だ、十月以来二十六件、四百十五億三千七百万円、従業員が千五百一人というように出ておりまして、だんだんといろいろな産業の業種に影響が広がっていっておるということが書かれております。  そこで、いろいろ政府も緊急措置をしなければならぬということで、特別融資の枠なんかが出てきておるわけでございますが、利率は五・五%なんですね。それで、御承知のように災害融資の場合は三%ですよ。それから、大企業に対していろいろな研究開発ということで援助がございますが、例えば航空機開発の場合には無利子なんですね。それから、基盤技術センターから融資されます技術開発融資というのは五年間は無利子なんですね。かつて山一證券が倒産しかけたときにいわゆる緊急融資をした、非常に優遇をやったわけですね。今、円高という極めて政策的なことによって起こっている現象に対して零細企業は困っている。これは緊急に無利子の融資を手当てするということをやっていいんじゃないかと思うのでありますが、いかがでしょうか。
  65. 井上實

    井上公述人 ただいまの御質問にお答えいたします。  今の円高、たびたび申し上げますとおり大変に急進しておりまして、そのほかに実は市場開放がございますし、それから、もっと私どもひしひしと感じておりますのは、発展途上国の輸出攻勢と申しますか、円が強くなりまして彼らの通貨はむしろ非常に安い通貨になりますので、輸出しやすくなるということで、円高の採算だけでなくて、今度は輸入がどんどん急増して——急増と申しますか、輸入が入ってくる、競争力が入ってくる。それから、例えば今度の円高・ドル安で、随分発展途上国経済は潤うのじゃないかということが一部言われておりますけれども、産油国以外は非常に潤ってくると思います。  そういう意味で、日本の場合は、先生おっしゃいましたとおり、円高の問題は政策的な問題、その他はその結果生ずる私どもが負担しなければならない大きな重荷なんでございますけれども、これに対しては、例えば中小企業なんかにつきましては、中小企業庁も非常に詳しく調査を進められまして、その対策法案も用意しておられるようでございますけれども、やはりいろいろな形で臨時措置その他救済措置というものが必要だと思います。  ただ問題は、この場合、日本経済の全体のマクロの立場から申しますと、やはり輸出依存型の経済体質から内需依存型の経済体質に切りかえていく、その犠牲は個々の私どもにとっては非常に大きいのでございますけれども、これはどうしても渡らなければならない一つの橋でございまして、このために、例えば転業とかそういうためのいろいろな措置等も必要と思いますし、また、先生おっしゃいましたような金融措置も、そのためであれば、これは国際的にも認められるというふうに考えております。ただ、円高の損を——損と申しますか、期待利益の喪失とか窮乏を救うということは、国際的な問題につきましては、これは円高にせっかく政策的に持ってきたわけでございますから、それを台なしにする結果になりまして、なかなか難しい問題だと思っております。  以上でございます。
  66. 梅田勝

    ○梅田委員 残念ながら、時間が参りましたのでやめなければなりませんが、電力とかガスとか石油というのは、一方で約一兆円ほどの差益が生まれておるというわけでありますから、これをいかに国民に還元するかという立場でやっていくとか、あるいは賃上げをもっとやって内需を拡大していくとか、あるいは予算の組み方を変えてもっと中小企業に、あるいは周辺に金が行き届くようなそういう対策であれば、私は改善できるのではないかと思いますが、残念ながら時間が参りましたので、終了させていただきます。
  67. 小渕恵三

    小渕委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  午後一時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十八分休憩      ————◇—————     午後一時三十分開議
  68. 小渕恵三

    小渕委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、御出席公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございました。昭和六十一年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただくようお願い申し上げます。  なお、御意見を承る順序といたしましては、まず山口公述人、次に石公述人、続いて岸本公述人の順序で、一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、山口公述人にお願いいたします。
  69. 山口孝

    ○山口公述人 明治大学の山口です。  大学の方では、会計学と経営分析論というような講義をやっておりますので、今回の予算案につきましてもそういう専門の立場から私の意見を申し述べさせていただきたいと思います。  まず、六十一年度予算の全般的な特徴について私の御意見を申し上げ、あと若干その他の問題に関連して意見を申し上げたいと思います。  まず歳入の部なんですけれども、租税及び印紙収入は約二兆円の増収とされておりますが、これは五・二%、いわゆる六十一年度の国民総生産の増加見込み五・一%にほぼ等しいものが予定されているわけです。中身としましては所得税の源泉分が約十三・五兆円、それから申告分が三・三兆円を増加させておりまして、比率からいっても国民の負担は厳しいものがある、こう考えざるを得ません。  これに対して法人税の方の増収が一二・七兆円で、前年度比で比べますと、所得税の源泉、申告に比べて伸び率は少ないわけであります。しかし、巨大企業の今の所得は非常に大きいわけであります。特に輸出産業であります自動車、それから精密機械、電気機器、こういう輸出御三家を中心にしてその収益力が大いに高まっているわけであります。  例えば、これは大蔵省法人企業統計年報などを見ますと、資本金十億円以上というのは一応巨大企業、一番最高の階層でありますけれども、これが二千四百五十八社、これは全体の〇・一四%にすぎない企業でありますが、これの五十九年度の経常利益、これは一応企業の業績を最も正直にあらわすと言われている段階の利益でありますが、これが約十一兆円であります。一方、全法人これは百八十二万法人というふうに出ておりますけれども、これの経常利益は二十・六兆円であります。したがってこれを比較しますと、わずか〇・一四%の巨大企業が全企業利潤の五三・八%にも及ぶ利潤を上げている、こういう状況は十分御承知と思います。この巨大企業を率であらわします。これは幾つかの率のあらわし方がありますが、投下資本に対する先ほどの経常利益という形で見ますと三・三%つまり百億に対して三億三千万の利益を上げている。ところが資本金一千万円というような小企業百五十万社では一・八%でありますから、半分以下の利益率しか上げていないわけであります。  今のは総資本に対する経常利益でありますが、売り上げ高に対する経常利益、これが巨大企業が二・一、百億に対して二億一千万、これに対して小企業はわずか九千万、〇・九%にすぎない、こういうようなことでありまして、小企業が存続できる条件は、辛うじて回転率でありまして、少ない資本で長時間働くことによって売り上げをふやす、そういう中で利潤の量をふやす、こういう努力をしておるわけでありまして、小企業の総資本に対する売り上げは一・九六倍であります。これを一・九六回といいます。これに対して巨大企業は一・五九回にしかすぎません。そういうことで総資本に対する売り上げという点では小企業の方が高くて、しかし資本に対する利益あるいは売り上げに対する利益は非常に低い、こういう状況であります。  さらに、過去の利益の蓄積を見てみますと、これを総資本で割りますと、巨大企業が総資本のうちの約一〇・八三%の利益を蓄積をしております。これに対して小企業は八・二三%、それからさらに、ここで後で展開いたします資本準備金つまり株式プレミアムあるいは各種引当金、こういうものを留保利益に足しまして計算しますと、巨大企業の総蓄積率は一八・九七%であります。総資本の約二〇%近い部分がこの収益からの蓄積であります。これに対して小企業は一割、一〇・二九%になる、こういうような状況であります。  例えば個別に言えば、トヨタ自動車株式会社、このものを同様に計算しますと、総資本に対する利益の割合は一七・七%、売上高に対する割合は九・五%、回転率は一・八六回でありますが、なかんずく利益の純蓄積は五四・九二%であります。つまり、全体の資本の半分以上が過去の利益の蓄積で占められている。それからこれに資本準備金と引当金を足しますと、実に六五・三二%というような巨大な収益からの蓄積が行われているわけであります。  こういう大企業は、本来の営業活動から利益を稼ぐだけではありませんで、御承知のとおり、いわゆる今はやりの財テクで稼ぐ、こういう状況になっていることも御承知のとおりです。私が調べましたところで、トヨタの六十年度末、直近の貨幣性資産であります現金、預金、それから有価証券あるいは貸付金、投資有価証券、長期貸付金、長期預金、こういうものの合計は実に一兆六千億円になるということであります。この貨幣資産の大きさは、私は有価証券報告書その他で銀行のどこに当たるかを調べてみたんですが、東北六県の地方銀行の預金量が大体八千億ぐらいでありますから、それを超す二倍くらいの貨幣量を持っておる。まさにトヨタ銀行にふさわしいわけでありまして、そこから稼いだ純金利、つまり支払い金利を差し引いた受取利息、割引料、受取配当金は一千百八億円になる、こういう状況であります。これは我が企業の最も優良会社の例でありますけれども、巨大企業が非常に稼いでいる、こういうことであります。  しかし、それにもかかわらず、御承知のように経済界、事業団体から、御承知の四三・三%のうちの三・三%は暫定部分だからもうやめろ、こういう御意見もありますし、退職給与引当金についてかつて五〇%を四〇%に引き下げ、さらに引き下げたいという要望があっても、彼らはする、事業団体がする、こういうこともあります。あるいは政府の方で、貸倒引当金もそんなに倒産もないしもう少し引き下げていいだろう、こう言っても反対をする、こういうことがあるわけであります。私はやはり巨大企業の現在の膨大な蓄積、収益力の高まり、こういうようなものを見たときに、やはりある程度巨大企業に対する課税強化していいんじゃないか、そういうことを申し上げたいわけであります。  これに対して小企業の収益は絶対量としても非常に小さいわけでありますし、率からいっても非常に低い、こういう状態になってきているわけであります。しかも小企業は、恐らくあの昭和四十九年の時期にはかなり率がよかったのですが、それからほぼ連続して利益の量あるいは利益率を下げてきている、こういう点で小企業の税負担能力は著しく弱まっている、こう考えざるを得ないわけであります。  さらに私が申し上げたいと思いますのは、巨大企業のそういう巨大な利潤というのはどこから得られているかということであります。これも皆さん御承知のとおりだと思うわけでありますけれども、これは今申し上げた三種の神器、つまり自動車とか精密機械とか電機機器、こういうものをつくっているような巨大企業の外注依存率が現在非常に高いわけでありまして、大体七〇%前後であります。私が調べましたトヨタと日産自動車の外注依存度は六十年度で七〇%に達しているわけであります。そしてその外注会社は、もちろん日本電装とかそういう大きな優良企業がありますけれども、第二次、第三次というような外注企業は、これは小零細企業、家内工業、こういうふうになっているわけであります。  そこで働くいわば従業員の給与が非常に低いわけであります。同じく法人企業統計から算出しますと、資本金二百万円未満という零細企業の年間給与は実に百九十三万円であります。つまり月額十六万円なんです。これに対して十億円以上の巨大会社の給与は年額四百四十八万円、月額三十七万円。つまり零細企業の十六万円、巨大企業の三十七万円、これを比較しますと、零細企業の二・三二倍の給与になっている、こういう状況であります。これはいわゆる直接の給与であります。これ以外に間接給与であります福利厚生費を比較しますとさらに大きな差になるわけでありまして、零細企業の福利厚生費が二十一万円である、これに対して巨大企業は八十四万円、ここでは四倍ぐらいの差が開く。つまり、巨大企業では賃金、給与という形でも大きいのですが、それで出せない部分はいわば寮をつくってやるとか、その他の現物給与、こういうようなもので補う、こういうことが大きいわけであります。さらに言えば、ここにあらわされていないパートや内職の方々の低賃金、強労働、これはさらに論をまたないわけであります。こういうことからも、ぜひ小企業及び勤労者の税負担の軽減をお願いしたい、こう思うわけであります。  そのようなことから、具体的に申し上げれば、現在、不公平税制というような言葉で呼ばれております受取配当金の益金不算入問題とか、支払い配当軽課措置、あるいは大電力企業の渇水準備金とか、原子力発電工事償却準備金、こういうようなものについては撤廃していいんじゃないかと考えますし、あるいは先ほど申し上げた貸倒引当金、退職給与引当金の繰入限度額、これはもう少し引き下げてもいいだろうし、あるいは株式払込剰余金、プレミアムに対するある程度課税、あるいは先ほども申し上げました法人税に対するいわば累進課税、あるいはそれが厳しければ段階的な課税率の引き上げ、こういうことも検討されてよろしいのじゃないか、そんなふうに考えるわけであります。  時間がございませんから、歳出の部について申し上げるわけでありますが、この蔵出の部は三つに分かれるというふうに考えております。一つは六十一年度に著しく歳出部分のふえたものと、それから停滞的なものと、減少したもの、こうなることは御承知のとおりであります。  著しく突出したのは公債費であります。さらに防衛関連費、それから経済協力費、これが突出しております。これに対して社会保障費、恩給関係費、エネルギー対策費、文教及び科学振興費、これは停滞をしております。さらに中小企業対策費、食糧管理費、公共事業関係費は減少する、こういう特徴があるわけであります。  時間がありませんけれどもごく簡単に申し上げれば、やはり国債費の激増というふうなことがあります。ほとんど十兆余りの国債費は利子の支払いである、こういう状況で、百三十三兆円にも及ぶような国債残高があるわけでありますが、これは主として考えれば、公共事業費その他乏しい歳入の中でいわゆる経済を拡大をする、景気浮揚をするということから出たものでありますけれども、これはどちらかと言えば、私から考えて、大企業がいろいろと公共事業をやっていく上で随分プラスになったものでありますから、こういうこともやはり巨大企業の責任ではないだろうか、巨人企業に課税するというようなことでお返しをもらっていいんじゃないか、そんなふうに考えざるを得ません。  それから国防費、防衛関連費、これは毎年ふえるわけであります。大きくふえるわけであります。六・六%ふえる、こういう状況になって、GNP一%に迫っている、実質的にはそれを超すかもしれません。私はこれについてはぜひ社会福祉の方に回してほしいと思うわけでありますが、特に御承知の円高の進行という状況がありまして、私がおととい計算したところでは、二百四十円から百八十六円というのは二三・三%程度円高になっていますから、アメリカから航空機その他を買う、これはすべてを買うわけじゃありませんが、この場合には安く買えるわけですから、この差額が浮くはずでありますから、その辺の部分ぐらいは防衛費を減らしてもいいんじゃないか。私の計算では、例えば航空機購入費三千四百四億円すべてを外国から買うということはないとしても、これ一つを買ったとして二〇%を差し引いても六百八十億円ぐらい浮くのじゃないか、こういうようなこともぜひ御考慮を願いたい、そう思うわけでおります。  経済協力費も、これはどうしても必要だと言われているのですが、有効利用ということが必要だと思います。これが発展途上国へ行きまして、そして本当に民生用に経済発展のために使われるかどうか、途中で随分消えてしまう部分が多いというようなことがあるわけでありますから、十分注意して活用しなければいけない、余り大きくしない方がよろしい、そう考えるわけであります。そんなようなことがありまして、突出部分について多くの考慮をしてほしいわけであります。  さらに、社会保障費や恩給費、文教及び科学振興費は当然増というような形でどうしてもふえていかざるを得ない部分が非常に多いわけでありますから、これを停滞させるということはかなり厳しい予算になっているだろうと思いますので、この辺にいろいろと配慮をしていただくのがよろしいのではないだろうかと思います。  さらに、公共事業費が二・三%減っているわけでありますが、私どもの会計の概念からいえば、公共事業費の多くは資本的支出でありまして、経費的な支出でないわけでありますから、これについて前年度並みという概念を当てはめないで、不必要な公共事業費はばっさり削る、こういうことができるはずでありますから、そうしていただいて、そして国民のために本当に必要な予算部分だけをつけるという、そういう重点的ないわば予算配分をしていただいて、できればこれを圧縮していただく、こういうことが望ましいのではないだろうか、こう考えているわけであります。  あと私に許された時間が数分になりましたけれども、三分か四分いただくということで、最後に、政府関係機関中の国有鉄道の問題について少し触れたいわけであります。  御承知のとおり日本国有鉄道の分割・民営化というのが日程に上っております。私から考えれば、何か異常な形でこれを進行させようとしていると考えざるを得ない。つまり、国鉄再建監理委員会の答申も大変ずさんで、不十分なままで、例えば貨物などについては何も数字を埋めないような監理委員会答申で、それを受けて今度具体化をする、こういうことがなされているわけであります。  そこで、簡単に申し上げまして、一体国鉄の赤字と言われるもの、あるいは長期債務と言われるもの、現在二十二、三兆円が長期債務、こういうふうに言われておりますし、毎年ほぼ一兆八千億ぐらいの赤字が出る、こういうことでありますけれども、この赤字の原因は御承知のとおりであります。これは私が調べてみてびっくりしたわけでありますが、ごく最近まで鉄建公団を含めまして数年間にわたり一兆円を超す設備投資を借金でやっている。このことによって借金による支払い利息及びこれに基づくところの減価償却費が非常に膨大であります。ですから、五十九年度のいわゆる赤字と言われる部分も、そのほとんどは一兆円を超す支払い利息及び減価償却費、これをなくすればほとんどなくなる、こういう状況であります。そんなようなことで、赤字の原因は借金による設備投資にあるわけでありますから、このことについてはむしろ政府責任を持つべきである。  あと二分ぐらい、ちょっとまとめさせていただきます。  次に、なぜ急いだのか、私にとってわからない点が幾つかあります。  一つは、本来ああいう分割というような大きな計画をする場合には国鉄の現在の財産について精査をする、詳しく調べることが必要です。あるいは鉄建公団、本四公団の財産内容を調べる必要がありますが、これが全然やられていない、こういうことであります。ここのところにやはり問題がある。そして結局、分割をしてすべてが黒字になると言われておりますが、その黒字になる原因は、いわゆる債務のほとんどの棚上げをする、三分の一ぐらいを本州の旅客会社に当てるだけで三分の二は国民負担として棚上げをする、このことによって減価償却費が三千億程度、つまり三分の一以下に減るということ。それから、国鉄労働者が多いというような形でほぼ三人に一人削る、このことから赤字がなくなるわけでありまして、このことは結局国民の負担をふやし、それから国鉄労働者に幾つかの苦痛を与える。しかも、特定地方線区と言われている地方ローカル線は、これは前と同じように第一次、第二次交通線を切る、こういうことでありますから、地方の住民に対して不利、不便を与える、こういうことでありますので、ぜひこの辺については考慮を願いたい。つまり慎重に、私は国鉄の公共性が今なお残っていると思いますので、公共的な性格を維持するような形で全国一元の鉄道を守っていただきたい、そう思います。  あと貨物鉄道会社についてお話をしたかったのですけれども、時間がありませんので、私の公述を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手
  70. 小渕恵三

    小渕委員長 どうもありがとうございました。  次に、石公述人にお願いいたします。
  71. 石弘光

    ○石公述人 御紹介いただきました石でございます。  今、山口先生の方から予算項目にわたるまで細かい御説明がございました。私は、どちらかと申しますと、マクロの政策運営との関連で六十一年度予算がどうか、あるいは今後どういう予算編成をしていったらいいかという視点から議論を展開いたしたいと思います。  まず最初に、六十一年度予算をどう見るかという基本的な立場から御説明申したいと思います。細かく見ればいろいろ問題点はあると思いますが、しかし、現状におきましては、大筋このような予算にならざるを得ないのではないかという意味において、原則賛成でございます。そういう意味で、支持する立場から幾つか論点を整理いたしたいと思います。時間の制約もございますので、以下三つの点に絞って私の見解を述べさせていただきます。  最初は、内需拡大論との関係において、今回の予算の性格をどう考えるかというのが第一点でございます。それから第二点は、財政赤字の削減、いわば財政再建路線というのがあるわけでございますが、これをどういうふうに見たらいいのかという点でございます。それから第三点は、六十一年度予算に限らず、もう少し中長期的に視野を拡大して、今後我が国財政運営というものをどう考えるべきかという点。この三点に絞って、以下議論を整理いたしたいと思います。  内需拡大論の必要性があるかどうかという是非の問題が第一点でございますが、これはひとえに景気の見通しいかんに依存する問題だと思います。最近ではよく官高民低と申しまして、政府の見通しが高く民間の見通しが低いということでございまして、今年度も、経済企画庁から出されました見通しによりますと、六十一年度実質で四%の成長が達成できるという見通しがあり、これに対して民間の方は三%台そこそこというのが大方の意見のようでございます。また、政府の見通しといたしましては、財政の再建と抵触しないで景気の拡大はほぼ図れる、つまり財投を中心といたしました民活でとりあえずやっていこうという、いわば両者そう抵触しない形での見解が出されておりますが、民間の方はやはりどっちかとらないとうまくいかないのではないかという目標の選択の問題があるような感じがいたします。  私は、現段階におきましては、今申しました財投、民活路線、それから公共事業の前倒しというようなことも考えられておりますので、そういう形でとりあえず対処しつつ、今後の景気の推移を見守って、次の段階が必要ならば出るべきであると考えております。問題は、海外からのプレッシャーがどのくらい強くなるかであります。場合によっては、効果がないというのを知りつつも何か内需拡大策をとらなければいけないということもあるのかもしれません。また、国際協調の面から重要な視点になってくる可能性もございます。あるいは後半になってもっと景気が落ちつけば、補正予算等で本格的な景気調整の機能を財政に持たせる時期も出てくるかもしれません。恐らくそういうときには税制改革との絡みで、例えば貯蓄を優遇しているのはもう見直すべきではないかという議論、あるいはもっと抜本的にやるんだったら、恐らく公共事業を建設国債でという議論も出てくるかと思いますが、これは事態を十分慎重に見ての議論だろうと思います。ある程度財政面からの出動は後手後手に回ってもいたし方がないのかという感じがいたします。  と申しますのは、財政はなぜ今刺激の方に向かわざるを得ないかというときの論点をどうもはっきりしにくいからでございます。例えば国内均衡の面から見ますと、少なくともインフレと失業という二つのマクロ的な指標においてはさほど大きな問題はまだないように見えます。円高のデメリットが今盛んに言われ、不況色が表に出ておりますが、年度の後半からはやはり円高のメリットの方もかなり浸透してくると思われますので、その辺の推移というのは今後重要な論点になろうかと思います。  といたしますと、国内均衡より対外不均衡のためにマクロ的に財政を使えということになりますと、果たして財政がどれだけ、今大幅に出しております経常収支の黒字を是正するのに役に立つか、財政赤字の幅との兼ね合いでコストベネフィットの計算が必要になろうかと思います。私はそこそこ効果があると思いますが、今膨大に出ております経常収支の黒字を、財政を中心とした内需拡大で物事が解決するとは思っておりません。後からもう一回申しますが、中長期的に見た産業構造の変革であるとかそういった構造的な変革がなくてはやはり問題は再度出てくるというふうに考えております。これは第一点でございまして、財政内需拡大は慎重にやるべしというのが私の論拠でございます。必要なときには出なければいけないと思いますが、それも景気の推移との関連であるという点が私の最初の申し述べたい点でございます。  第二は、財政赤字というものをどのぐらい慎重に、累積をどう見るかということでございます。  御承知のように、国債残高は、六十一年度予算で見ますと百四十三兆円に達しております。GNP比率でも四〇%を超しているわけでございます。将来この国債残高が二百兆円ほどになるという推計が出ておりますし、借換債も今盛んに新たに発行され出しているわけでございます。財政赤字に関しましては、アメリカでも大変問題になっております。アメリカ経済学者も日本経済学者も最近は財政赤字に対していろいろな意見を述べておりますが、押しなべて申せば、楽観派から悲観派までさまざまなタイプがあろうかと思います。私は、超楽観もいたしておりませんし、それから超警戒もしていないという意味では、ほぼ中ほどの立場あるいはもう少し財政赤字に対しては警戒色が強いのかもしれませんが、そういう考え方を常日ごろ持っております。  一言で申しますと、ケインジアンタイプのマクロ政策を主張する人、お役所で申しますと、例えば政策官庁であります通産省とか建設省あたりは、財政赤字を使って景気回復という点に主眼を置くいわゆる内需拡大派かと思います。そういう意味では、財政赤字に対する楽観というのはある程度強いと思いますが、それに対して財政学者なり財政当局、財政再建派と申しますか改革派と申しますか、やはり財政赤字に対してはでき得る限り削減したい、そういう意味では警戒的な観点を持っているわけであります。  私は、財政学を専攻し、財政というものについて常日ごろいろいろの面から見る立場から申しまして、やはり財政の赤字というものは機会があれば極力削減する方向で対処すべきであるという立場を一貫してとっております。  その理由は、幾つかございますが、二、三まとめますと、次のようなことでございます。マクロ的に見まして、財政赤字が今猛烈なインフレを我が国経済に及ぼすとか、あるいはクラウディングアウトといったようなそういった現象を起こしてない、そういう意味では、アメリカよりははるかに良好な状況であるとは思いますが、しかしよく見てみますと、潜在的にはかなりいろんな面で危惧すべき状態が既に出ていると思います。  第一点は、財政は破綻型、つまり財政赤字は発散型になっているということでございます。よく言われますように、国債の利子率が名目成長率の伸びを上回りますと成長経済におきましてはどんどん利回りが高まり、国債残高も一定水準に収束しない、対GNP比率で収束しないということでございます。来年度の名目成長率の見通しは五・一%であります。今国債の利子率というのは六%以上でありますから、当然こういう心配される状況があるわけであり、かつ過去数年間こういう状態が続いております。そういう意味では、今このままでいけば、これがどのくらい続くかわかりませんし、あるいは短期間に直るのかもしれませんが、しかし現実においてあるいは過去数年間の経緯においてはこういう状態でございまして、やはり財政赤字というものが持つ財政の中のウエートの増大あるいは国民経済におけるウエートの増大というのは、大いに心配すべきことであろうと思います。恐らく潜在的には、絶えずインフレなりクラウディングアウトの心配というのをしておくべきであろうと思います。  それから第二点は、財政の中身を見てみますと、国債の利払い費が来年度の予算では十・六兆円、これに対して社会保障費は九・八兆円でございますから、恐らく国民的に見て一番重要だと思われる社会保障費を上回った分の利払い費が年々出ておるということは、やはり財政の資源配分機能から申しますと非常な問題がある。かつ、国債費が十一・三兆円出て、新発債が十・九兆円というのは、要するに、新発債の大半以上、大半というか、新発債以上の国債費というもの、つまり過去の借金の元本の償還と利払い費に充てておるという点、何のための公債かという点がまた問題にされようかと思います。そういう意味で、財政の内部から見ても幾つかの大きな問題がある。  さらに第三点といたしましては、景気が回復し完全雇用になってもこの赤字は消えないという意味の完全雇用赤字というものがここずっと続いているわけでございまして、経済成長を高目に持っていって、それでその赤字が消えるという循環赤字ではございませんで、構造的な赤字であるという意味で、やはり財政赤字というのは、それなりに事あるたびにこれを減らしていくというスタンスが重要ではないかと考えております。そういう意味では今回、緊縮財政という性格を帯びてはおりますが、六十一年度予算の性格というのはこの点を配慮したという意味では、それなりに評価ができるのではないかと思います。  第三は、六十一年度というもののみならず、もう少し中長期的に見たときにどういうことをしなければいけないか、あるいはそれに備えて六十一年度予算あるいは六十一年度の中の財政運営はどうすべきかという点に話を持っていきたいと思います。  御承知のように、過去数年、四、五年間、ゼロシーリングとかマイナスシーリングで歳出カットに努めてきたわけでございます。これはひとえに行政改革イコール財政再建という形で、財政面からの緊縮のムードを行革に反映させ、財政の肥大化をとりあえず防ぎ、むだを省きたいということのあらわれであり、そういう意味では、第一期というような言い方をしてもいいかと思います。この第一期においては、マクロ的にかなり日本経済を需要不足にしたという面のマイナスはあったかもしれませんが、いろんな意味で国鉄を中心としたあるいは社会保障制度を中心とした改革が進んだという意味では、ある程度の成功をおさめたのではないかと思います。  ただ問題は、この第一期のままで今後対応し切れるかという点、そういう意味では、新しい局面という意味で、今後第二期という面が恐らく財政再建なり行革には出てこさるを得ないのではないかと思います。と申しますのも、従来のやり方では、確かにメリットはあったわけでありますが、デメリットの面が次第に顕在化してきた、つまり功よりも罪が次第に目立ってきたという点に大いに関心を寄せるべきであります。  例えば、先ほど申しました国債費あるいは地方交付税の主要財政費等々を除いた一般歳出というのがマイナスあるいはゼロで抑えられているということは、本来あるべき財政の資源配分機能というものからいろいろ憂慮すべき点もございますし、かつ、そういう一般歳出ゼロにするという予算編成上の技術によっていろんなテクニックがどうも使われている。どうも俗に言われます見せかけ上の歳出カットというものもないことはないわけでありまして、いろんな俗に言われますツケ回しのこともあるでしょうし、それから公的年金制度からいろいろ借りてきているものもありましょうし、定率繰り入れを中止したという点もありますし、そういうこともございます。それから、歳出面よりは税制面の方でいろいろ施策を要求する声が強くなって、税制の本来の姿がどうもゆがめられておるという面も、やはり罪として考えるべきであろうと思います。そういう面が次第に顕在化してきたという意味で、従来型の緊縮一本、いわゆる歳出削減一本でどれだけ対応できるかという心配が出てきたということであります。  しかし、その一方で、国民の側から見ますと、まだまだ行財政改革は不十分でないかという声も事実あるわけでございます。そういうわけで、こっちの面もやはりやってもらいたいというのが恐らく継続して、第二期と私が定義いたしましたここから数年先の時期の財政改革なり財政再建あるいは財政運営一般の問題になってこようかと思います。何と申しましても、まだ財政構造の仕組み全体に、いろいろな昔の高度成長期につくられた制度がそのまま残って、必ずしもうまく機能していない面もあると思います。例えば補助金の機構というのも、ことし大分改革はされましたが、まだまだ国から地方に行くところのパイプとして、それが果たして本当にいいのかどうかという点の見直しも必要だろうと思います。それから地方は地方で、まだ特に見られます高水準の給与といったような問題も、これまた大きくマスコミをにぎわせているという点がございます。そんなことも踏まえまして、やはり構造的あるいは機構的にまだ直すべき点もあろうと思いますので、こういう点を配慮しつつ、中長期的にいろいろ考えるべきだろうと思います。  さてそこで、二、三論点といたしまして議論しておかなければいけないのは、六十五年度の赤字国債脱却というのを果たして今捨てるべきかあるいは維持すべきかという、そういう問題だろうと思います。  私は、これを外しましても五十歩百歩であり、今の状態というのが先送りになるだけであって、問題はちっとも解決しない、こういう感じがいたしております。と申しますのは、やはりこういうターゲットが年々の財政運営に当たって必要だということ、と同時に、これにかわるべきものがないということであります。そういう意味では、一応の努力目標としてこの六十五年というのを一つターゲットに持っておくのは、あながちむだではないという気がいたしております。恐らくかわり得るターゲットとしては、GNPに対します国債残高の比率がふえなきゃいいだろうという点があろうかと思います。これは経済的にそれなりに意味はあると思いますが、やはり利払いの累積といったような問題もあり、すぐさまこれに乗れるかどうかは若干わからないところであります。  海の向こうのアメリカでもかなり財政赤字削減に対して神経を払っておりまして、御承知のグラム・ラドマン法みたいなのが出てきたわけでございます。こういう措置が日本ではなかなかとれない。つまり、革命的な手法によって、革新的な手法によってこういった財政赤字を一挙に片づけようというようなことがなかなかとれないという我が国の実態を見れば、やはりスロー・アンド・ステディーで赤字削減というのを年々着実に減らすという努力が必要ではないか、このように考えております。  そう言いますと、じゃ、今の円高不況が深刻化し、内需拡大というのを一方的に退けるかということでありますが、私の考えは、短期的に何かこういうことがあるたびに内需拡大という形で財政手段をさまざま使うには、どうも問題があり過ぎる。つまり、中長期的な構造改革というものしか抜本的な対策はないのではないかと思っております。つまり、短期的に外圧が強くて、内需拡大を仮にしてその効果があっても、構造的な問題を残存させておいては、またもとのもくあみになるだろうということであります。ここで構造的問題と申しておりますのは、まさに産業構造を国際的な水平分業に持っていくとか、産業構造自体を改めるとか、あるいはオープンドアのポリシーをもっともっと進めるとか、金融、財政、税制あるいは国対地方の税の仕組み、そういうものをやはり今抜本的に見直す時期ではないかと思います。そういう意味では、構造的に今我が国の仕組みを変えていきませんと、今後のさまざまな問題に対応し切れない、こういうことでございます。——あと一、二分で結論をつけます。  そこで、今何が一番必要かということでありますが、恐らく歳出の方の面も、一応の努力としていろいろ削っていくということが必要だと思いますが、やはり税制の問題だろうと思います。これから高齢化社会が来ますし、それから国際的責任も増大する一方でございまして、恐らく中長期的には国民の負担増は避けられない、私はこう考えております。そういう意味で、短期的には税収の中立性という形で、増収を目指さないにいたしましても、それなりに将来に備えた税負担のあり方というのを税制改革の中で考えるべきである、このように考えております。  やはりもう一点重要な点は、社会資本というのをこれからやはり充実させる方向で、いろいろ考えていかなければいけないだろうということでありまして、そのためには、税制改革とひっかけてさまざまな財源調達の問題というものを十分に考えていく必要があると思います。そういう意味では、私は少額貯蓄制度の、俗に言う優遇税制というのは、もう見直していい時期だと思っておりますし、それから、消費税のウエートを高めるという意味での大型間接税の検討ももう時期に来ていると思いますし、そのかわりに所得税とか法人税とかいうのをとりあえず、今いろいろなひずみあるいはゆがみという不平がありまして、それを解消する意味で減税するといった意味のいろいろな考慮を払うべきであろうと思います。  まだちょっと言い足りないところもございますが、御質問のときに改めてお答えいたしたいと思います。終わります。(拍手
  72. 小渕恵三

    小渕委員長 どうもありがとうございました。  次に、岸本公述人にお願いいたします。
  73. 岸本重陳

    ○岸本公述人 私は、経済政策全般というような見地から、六十一年度予算案についての意見を率直に申し上げさせていただきたいと存じます。経済政策全般という見地と申しましたが、端的に焦点を絞りますと、内需拡大財政を通じていかに実現していくかあるいは達成していくかという問題に絞りたいと存じます。  内需拡大というのは、このごろのはやり言葉といいましょうか、念仏みたいになっておるのでありますけれども、よくよく考えてみますと、何のために内需拡大しなければならないのかという点で、少なくとも三つのポイントがあろうかと思います。  一般的に申しまして、内需が需要の大きなというか、圧倒的に大きな構成要素であります。現在の日本で申しますと、日本の総需要の中で九七%は、国内需要がこれを支えている。外需依存型経済と諸外国から批判を受けますけれども、総需要の中における構成自体からいいますと、わずか三%しか外需は占めていないというわけでありますから、需要が増大しなければ経済発展がない。その需要増のためには、内需を何よりも拡大しなければいけない。そういった意味で、経済成長一般経済発展一般にとって内需が決定的に重要であるということを、しっかりと押さえておくことが第一の問題かと思います。  しかし第二に、もう一つ強調いたしたいと思いますのは、全般的な経済発展と申しましても、実際は生きた経済、その中にでこぼこがございます。大きく伸びる部分もあれば停滞的な部分もある。そういった経済の体質を前提として考えてみますと、経済成長率が高い方が、社会の中でしばしば不利な地位にいらっしゃる方々、底辺の方にいらっしゃる方々の場合も向上が期待できる。成長率が低ければ、国民の一割とか二割とかという部分がゼロ成長もしくはマイナス成長。国全体が経済成長をしていても、国民の中にはゼロ成長、マイナス成長の部分というものが、成長率が低ければ低いほど大きくなるという関係にございます。そういたしますと、やはり成長率をできるだけ高くしていくことの方が、もちろん分配政策を通じて事を解決すべき側面があるわけでございますけれども、しかし、成長率が高ければ高いほど格差の是正、少なくともゼロ成長やマイナス成長になる部分を残さないという意味では、格差の是正あるいは分配の公正に寄与する面がある。そういう意味で、格差是正と公平確保のための内需拡大の必要性、こういう観点が第二に必要かと思います。  第三には、昨今、これこそ内需拡大の最も緊要な理由であるとして指摘されているところのいわゆる経済摩擦解消のために内需拡大が不可欠だ、こういうことでございます。後で申しますように、経済摩擦解消のための内需拡大というのは、なかなか難しい問題をはらんでおるわけでございまして、巷間言われているいわゆる内需拡大、摩擦解消のための内需拡大がむしろそれと逆行する側面さえ持っている、それくらい問題が難しいと私は思うのでありますが、ともかく、以上、全般的な経済成長のための内需拡大、格差の是正あるいは公正推進のための内需拡大経済摩擦の解消のために寄与する内需拡大、こういった三つの目的を持つ内需拡大が今こそ最も求められているときだと思うのであります。  先ほど石公述人は、財政がその財政支出を通じて内需拡大の方に機能できる余地は余りない、そうおっしゃいました。財政の機能というものを非常に局限してとる場合には、石公述人のおっしゃることにも私は同意をしたいと存じますが、財政というものをもう少し広く考えた場合には、財政が今やらねばならぬし、やれることが多々ある、そう思うのであります。  そういう財政に対する課題遂行を要望したい見地から申しますと、端的に申し上げて、六十一年度予算案内需拡大のための気迫に欠けた、内需拡大のための気迫を欠いた、あるいは気迫を盛り込もうとしていない、そういう予算案ではなかろうかと言わずにはいられません。大蔵省は、御承知のとおり、予算案を発表しますときにごろ合わせをいたします。ごろ合わせも発表して楽しませてくれるわけでございます。六十一年度予算案につきましては、五四〇八八六、こういう数字に当てまして「いい世を早く迎える予算」と、編成の任に当たられ大変な御苦労をなさっただけに、自賛の辞をお述べになって、自賛の辞としては大変よくできた、近来まれな傑作と私は思っております。  私は毎年、批判的な立場から、私自身もごろ合わせを発表することにいたしておりますので、不謹慎とおしかりを受けなければ御披露申し上げますが、私の場合は、五四のところを「こうして」と読みまして、〇八のところを「銭は」、八六のところを「ぱあっとむだ」と、「こうして銭はぱあっとむだ」というふうに当てております。もちろん五十四兆からのお金全部むだ遣いされているとは私毛頭考えません。しかし、内需拡大のために気迫を込めた予算になっているかどうかという観点から申しますと、一般会計五十四兆、これがそれにふさわしいようには支出構成されていないではないか、こう結論的には申し上げたいのであります。  その結論を支えるために、まず歳入面から申しますと、私は確かに現在、国債の発行額を減らしていっていわゆる財政再建を達成するというために財政がかなりな制約を受けていることは、そのとおり認めざるを得ないと思いますが、しかし財政再建といいますのは、単に赤字国債の発行額をゼロにすれば財政再建成れりというものではありません。過去の赤字国債の累積残に対する処理見通しが確立されて初めて、財政再建のめどが立ったと言うべきでありまして、そういう観点から申しますと、赤字国債の発行額を減少していくためにのみ財政の歳入構成を考えていくというのであれば、極めて長期にわたって財政は手足を縛られるということにならざるを得ない。むしろやはり積極的には、一見財政収支構造が苦しくなるように見えますけれども、減税を通じて積極的な経済展開を図るというようなことをやる方が、中長期的には財政再建に効果をもたらす、そのように私自身は考えているわけであります。  したがいまして、六十一年度予算案においても、少なくとも二兆円程度の減税が不可避であると私は考えます。国民一人当たり年間二万円の減税というものは、どうしてもなければならないのではなかろうか。そういう減税を抜きにいたしますと、大体政府経済見通しの推定からは、政府が大体雇用者一人当たり三・九%、ほぼ四%の賃上げを想定しているのではなかろうかと思われるのでありますが、その四%程度の賃上げでは恐らく、所得税、住民税の増大、それから社会保険料の負担の増大、これによって可処分所得の増大というものが望めない、したがって、賃上げあるにもかかわらず、消費の増大なしという帰結に至るのではなかろうかと思われます。民間最終消費支出、大体これを個人消費と考えてよろしゅうございますが、これが日本の需要構造に占めるウエートは五八%に達しておるわけでして、この需要の過半を占める個人消費が伸びないというようなことになれば、日本経済はこの一九八六年度、八〇年代に入って最低、あるいはやや言葉を強めて言えば、この十年間において最低の経済成長率を記録するに至るであろうと思われます。  来年度の昭和六十一年度に入ってから、昭和六十二年度に実施すべき所得税減税についての検討を始め、昭和六十二年度には所得税減税を実施したい、ただしその場合、他の増税を考えて、国家財政としては税収中立型でいきたいという議論が、この委員会でもどうやら表明されているように新聞、テレビ等で承知いたしております。私は、昭和六十二年度にできることが昭和六十一年度から実施できないわけはないと考えております。昭和六十一年度には、つまりこの四月からは実施できがたい状況が、来年四月からは実施し得る状況に変わるというような状況変化が、経済全体の動きの中に見出せるとは思っておりません。六十二年度にできることなら六十一年度からもできるはずである、そして、六十一年度にやることがタイミングを失しない重要な要素である、こう思っております。状況認知のタイムラグ、認知した状況に従って適切に政策を形成する上でのタイムラグ、その政策を実行する上でのタイムラグ、そういったタイムラグが日本経済の成長可能性を大きくそぐことになりはしないかという点を私は心配せざるを得ないのであります。  そうしてまた、もう一言この面でつけ加えますならば、税収中立型というのは、政府財政にとってはそうであっても、恐らく今想定されているような税収申立型の所得税減税プラス何らかの増税という方策は、低所得層にとっては、あるいは中位以下の所得属にとっては、税収中立型ではあり得ない、絶対に増税型にならざるを得ないものだ、そう思っております。  そうして他方また、少額貯蓄まで含めていわゆる貯蓄優遇税制なるものが廃止されますとなりますと、国民は、ためて罰せられ、消費にお金を使って罰せられというふうな状況になりはしないか。もちろん税金をペナルティーとのみとらえることは間違いであります。しかしながら、いわゆる貯蓄優遇税制、私はこれを貯蓄優遇税制だとは思っておりません。つまり、この税制あるがゆえに人々は、特に低額あるいは中位所得層が貯蓄に励んでいる、そちらに誘導されているとは毛頭思っておりませんので、貯蓄優遇税制とは思っておりませんが、いわゆるそう言われているもの、これを廃止して、貯蓄すれば税が取られ、そしてまた消費すれば税が取られるというようなことであっては、ますますかえっていわゆる貯蓄の方に国民の支出が向かうであろう、そう私は懸念いたしております。なぜならば、貯蓄の効率が一層悪化するから、その貯蓄性向を高めることによってのみこの効率悪化に対応しようというビヘービアが引き起こされるに違いありません。  私は、当面の貿易摩擦解消のための内需拡大というものは、恐らく長期的に見て日本経済を健全な発展軌道に乗せるための、つまり先ほど申し上げた言葉で言えば、全体的な経済成長のための内需拡大方策とドッキングしていなければ成功しないだろう、こう強く思うのであります。  当面のその貿易摩擦解消のためには、輸出を減らして貿易黒字を縮小するか、あるいは日本の輸出はその輸出で稼いでいる産業にとって極めて必要なものでありますから、その線まで輸入を高めるか、簡単に言えばそのどちらかが、両モデルであります。もちろんその中間型で、輸出はある程度抑え、輸入をある程度ふやすという折衷型もあり得るわけでございますが、私は、輸入を現在の輸出規模まで引き上げて、つまり貿易黒字五百億ドルに該当するところまで輸入をさらに増大せしめて当面の貿易摩擦について解消を図るという方策は、著しい内需の減退を引き起こし、かえって国内需要の隘路に当面した企業あるいは産業は、打開策を輸出に求めていくといった玉突き現象を引き起こすものと考えております。  当面、相手国の産業を脅かすところまで来ている、あるいは脅かしていると相手国が主張している諸産業に関しては、輸出をモデレートなものにしていく、緩やかに減少させていくということが不可欠でしょう。しかし、そういった産業が不況に陥らないためには、そして恐らく、そういう産業が不況に陥れば日本全体が不況に陥るでありましょうから、そういうことを避けるためには、それら輸出産業の製品を国内で受けとめていくという、いわゆる内需転換が必要であります。その見地で申しますと、貿易摩擦解消のための内需拡大とは、まずさしあたって内需転換でなくてはいかぬわけであります。しかし、この内需転換がいかにして可能であるかということになりますと、産業によって大きく違いますけれども、例えば自動車産業のようなものは、日本の道路や住宅や都市やあるいは農村の態様やそういったものを長期にわたって改変し、改革し、自動車と日本人の暮らしとがもっともっと調和的なものになっていくということが不可欠であります。  私は、国が持つ財政の力というのは、そういった中長期的な課題を年度、年度の財政支出をつなぎ合わせながら解決していく、そういうしっかりした展望のもとで組まれるべきものと考えるわけでございます。そういう観点から申しますと、今回の予算案は、当面の貿易摩擦の解消のためにも、あるいはそれと連動する中長期的な内需の拡大のためにも、やはりすべきことを怠り、むしろすべからざることに多くの財政資金を回しているというふうに思うのであります。  こういった批判点が、本委員会の審議を通じて改善されますことを私は希望して、終わります。(拍手
  74. 小渕恵三

    小渕委員長 どうもありがとうございました。     —————————————
  75. 小渕恵三

    小渕委員長 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。尾身幸次君。
  76. 尾身幸次

    尾身委員 本日は、公述人の先生方におかれましては、大変に御多忙中のところ御苦労さまでございます。  私は、財政及び経済の非常に権威でございます公述人の石先生に、日本経済及び財政の問題について御意見をお伺いしたいと思う次第でございます。  先ほど来いろんなお話がございましたように、我が国経済課題は、一方では財政を再建することでございますし、他方では海外諸国との貿易摩擦を解消するために五百億ドルにも上ります黒字を何とか縮小しなければならないということでございます。そういう中におきまして、私は現在の厳しい財政事情のもとで、六十一年度予算の原案は政府提案のような超緊縮型であるということもやむを得ないと考えている次第ではございますが、それと同時に、この予算原案で先ほど来お話がございますようなGNP四%の成長が本当に実現できるのかどうか、それからまた、貿易摩擦を解消するに必要な内需の拡大に対して効果を持っているのかどうか、この点をまず最初にお伺いしたいと思います。
  77. 石弘光

    ○石公述人 今的確なポイントを御指示いただいたと思いますが、その点にまさに六十一年度予算あるいは経済見通し、その論点が集約されようかと思います。  結論から申しますと、四%の実質成長というのは不可能ではないけれども難しい面もある、このように思います。と申しますのは、円高のメリットが後半どれだけ出てくるかということにかなり依存してこようかと思います。円高というのは、最初はどうしてもマイナス面で響いできます。特に中小企業であるとか輸出産業の方にどうしても出てまいりますから、その不況感というのがかなり今出ていると思いますが、これから輸入の方、それからまた最近の原油価格の値下げといったようなものも踏まえまして、輸入面の方でかなりメリットが出てくることがありますので、一方的に悪いところばかりではなくて、そういうものを少し長い目でバランスをとって眺める必要があろうかと思います。それから、先ほど申しましたように、五百億ドルに上るような経常収支の黒を、私は単年度の内需拡大のみによってとても解決できる問題ではないというふうに考えておりますのでそういう視点から見ますと、今回の予算におきましてはこれに対応できる手段というのは限られているのではないか、こう考えております。
  78. 尾身幸次

    尾身委員 この内需拡大のためにいわゆる財政面で十分なてこ入れができないというお話、先ほど来ずりとございましたが、しかし、逆に考えてみますと、貿易摩擦を解消するためにはどうしてもある程度内需拡大をしていかなきゃいけないという問題があるわけでございまして、その問題の解決のためにはいわゆる民間活力を発揮させていく、そしていろんな民間プロジェクトを推進するとともに、これに対する財政投融資の面やあるいは税制面からのてこ入れをしていくというのが政府の施策でございます。私は、これは非常に必要なことであると思っておりますが、これに加えまして、特に各種の規制緩和が必要であると考えているわけでございます。  現在、建設省関係では都市計画法、農林省の関係では農業振興地域整備法というようなものがございまして、いわゆる市街化調整区域や農振地域におきまして住宅や工場などの建設が極めて厳しく制限され、ほとんどできないような状態でございます。これに対します不満の声が、私どもの地元の群馬県あたりでも多くの人々から上がっているわけでございます。これらの土地利用に関します厳し過ぎる規制を、もっと現実に即した観点から緩和することがぜひとも必要であると私は考えているわけでございます。この土地利用の規制緩和によりまして地域における住宅や工場の建設、立地が一層促進され、財政資金によらなくても、お金を使わなくても民活による内需の拡大が大いに期待できるんじゃないかと思うわけでございます。こういう問題につきまして、石先生の御意見を承りたいと思う次第であります。
  79. 石弘光

    ○石公述人 財政面からのてこ入れが不十分であるというのは、まさにそういう面があろうかと思います。先ほどから申しておりますように、いろいろ例約が大き過ぎるということでございます。不況色が最初に出てきましたとき、過去数年来国からの財政資金によって地方にいっていた分が大分細るわけでございますから、したがって、地方に対する不況色というのは恐らく公共、パブリックセクターに依存する割合の多い地方ほど響いてこようかと思います。  そういう意味で、どういう形でこういうものに対処するかというのは、今尾身先生のおっしゃられました規制緩和という視点が非常に重要であろうと考えております。財投中心の民活型と申しましても、かなり期待が過大な面もございます。やはりこれを一層促進するためには、アメリカあたりでもかなり注目をされておりますが、土地利用を中心とした規制緩和という点が一番重要になってこようと思います。どうも民活と申しますと、東京湾の橋の問題とかあるいは四国の架橋とかいう大きなところに目がいきがちでございます。地方の方にはそういうものが恐らく余りないと思われますので、その点を補う意味で地元で何か積極的に、民活とは言わないまでも、規制緩和を通じていろいろなことがやられるという意味では、土地を中心としたそういった面での制度の見直しという視点が、やはり構造的な面も踏まえ、最近の内需拡大といった面にも対応するという意味で重要ではないかと考えております。
  80. 尾身幸次

    尾身委員 私は、ただいま先生のおっしゃったとおりであると思っているわけでございます。そして今、御存じのとおり、この大幅な円高によりまして日本列島全体の中小企業が極めて厳しい経営状況のもとにあるわけでございます。これを解決するためには、何といっても外需依存型経済から内需依存型経済へ転換をしていかなきゃならない、そういう時期に現在来ているわけでございます。  そういう中にありまして、先ほどの民活による内需拡大、これが非常に重要な課題であると私は考えているわけでございますが、政府は、御存じのとおり、今民活内需拡大策といたしまして特に二つの大きなプロジェクト、東京湾横断道路の問題と明石架橋の問題を計画をしているわけでございます。私は、これらのいわゆる民活ビッグプロジェクト、これを推進することは非常に必要であると思っている次第でございます。  しかし、別の観点から考えてみますと、この二つのプロジェクトとも、いわゆる日本列島の中では中央部に偏り過ぎているんじゃないかという感じが非常に強くいたします。今、先ほど申し上げませんでしたが、日本経済の大きな課題の一つは、やはり中央と地方の格差是正ということにもあると考えているわけでございまして、こういう二つのいわゆる二大ビッグプロジェクトだけに頼りまして内需拡大策を推進していくということになりますと、例えば私のふるさとの群馬県のごとき地方は、内需拡大の政策の谷間になって、いわゆる置いてきぼりを食ってしまうおそれが多分にあると思っているわけでございます。  そこで、こういう問題に対応するためには、予算の執行に当たりまして、地域の経済を活性化するという観点、それからまた日本列島全体のバランスのとれた発展を図るという観点から、財政面での公共事業の配分におきましては、特に大きなプロジェクトのない地方に重点的に配分をしていただきたい。それによって地方と中央の格差をなくし、円高によって非常に困っている中小企業にも潤いを与えるということができるわけでございまして、そういう点を私はかねがね強く希望しているわけでございます。  最後に、これについての石先生の御意見を承らせていただいて、質問を終わらせていただきます。よろしく。
  81. 石弘光

    ○石公述人 第三点の御質問でございますが、どうも非常に難しい問題であろうと思います。公共事業を中心として財政が大幅に膨らんだとき、これはかなり国から地方の方へ多くの資金が流れ、地域の格差は是正されたと思います。恐らく五十四年度くらいまで、私は推計したことがございますが、そういう傾向でございましたが、財政再建、緊縮財政が始まりまして、そのことがまた次第に格差が広がるような方向にどうもいっているような数字が出てくると思います。  そこで、それをどうするかということになりますと、限られた財源でどうするか、非常に難しい点、それから先ほど冒頭御指摘ございました外需型から内需型にするといった点も踏まえて、実は私、これといった知恵は今なかなか具体的には持っておりません。恐らく地域活性化というのは非常に重要な視点だろうと思いますが、そういう意味で公共事業というものが少しでもそちらに余計回るといったようなやり方も必要でしょうし、それから、特に地域ごとに固有の規制緩和というメリットを享受させるような方法もあるとは思います。  残念ながら尾身先生の直接の問いにお答えするだけの手段がないのでありますが、問題の重要性は十分に承知しているつもりでございます。今後いろいろな形で内需拡大がされるときに、その点の配慮というものも十分必要である。何か具体的にお答えするすべがないので申しわけございませんが、そういうことでございます。
  82. 尾身幸次

    尾身委員 どうもありがとうございました。
  83. 小渕恵三

    小渕委員長 次に、佐藤観樹君。     〔委員長退席、林(義)委員長代理着席〕
  84. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 三人の公述人の皆さん方には、きょうは土曜日の午後というときでございますが、大変御苦労さまでございます。  最初に、せっかくきょうは石先生にお越しをいただきましたので、少し税制問題についてお伺いをしておきたいと思うのであります。  一つ目は、先生は、これから負担増を求めるとすれば、それは所得にかけるよりも消費にかける方がいいのではないか、日本の消費にかける率というのがヨーロッパに比べてむしろ低い、また時系列的に見てもだんだん低くなっているということで、これからの場合にはむしろ消費に負担を求めるべきではないか、こういうことを、これは「貯蓄と経済」の昨年の九月号でございますが、先生の御持論でございますから、改めてそう、どこに載っているものでもいいのでございますが、シャウプ勧告にも確かにこういう考え方は出ているわけですね。ただし、消費の方についてはやってこなかった。シャウプ勧告の問題につきましては、後でちょっとお伺いしたいと思うのでございますが、一つお教えをいただきたいのは、所得と消費というのは、ある意味では物事の表と裏という言い方が正しいかどうかわかりませんが、先ほど岸本先生が言われましたように、まさに貯蓄とそれから消費に両方にダブる、これも後で少しお伺いしたいと思うのでありますけれども、少額貯蓄の非課税問題について、ちょっとお伺いしたいと思いますが、どうも消費と所得の両方にかけていくということは、一体税体系としてどういうことになもだろうか。いわば完全に税務執行当局に所得が把握されているという前提に立ては、所得のところで全部つかまえてみて、そして累進税率をどうするかは別といたしまして、するということでいいのではないか。そこでの調整ということで、財源が足りない場合にはどうするということを考えればいいのじゃないか。今度は所得の税引き後の消費にもう一度かけるということは、体系としてはこれは一つのものを二回税金を納めるという体系になってこないのかということが私は少し疑問があるのでございますが、その点いかがでございますか。
  85. 石弘光

    ○石公述人 ちょっとテキストブック的なお答えになって申しわけないかと思いますが、恐らく税をどこでかけるかというのは、これは非常に難しい問題でございます。一つの段階、つまり生産があり所得の稼得があり消費があり流通があり等等、財、サービスは生産から最終消費までいろいろ回っていくわけでございますが、単一段階でかけるという学説も昔からございます。そういう意味で、今佐藤先生もおっしゃいましたように、どこか、所得か消費かどっちかでかけて十分ではないかという御主張も前から実は学説としてあるわけでございます。それに対して、複数でかけてもいい、つまり生産の段階でもいいし、消費の段階でもいいし、所得稼得の段階でもいいし、いろいろの段階で複数でかけても一向構わぬじゃないかという説も片やあるわけでございます。  そこで、今一般的に申しますと、多段階——多段階というのは、今申しました流通経路に幾つかのチェックポイントを設けてかけていくという方が実は一般的でございます。と申しますのは、単一段階でかけますとどうしても課税ベースが狭くなりますから、税率が高くなって、したがっていろいろな弊害が出てくる。と同時に、漏れがどうしても単一段階では、大きくなったときにその後の捕捉ができない、そういう意味であります。そういった意味所得にかけ、それから消費というところで間接税体系としてかけるという考え方は、幾つか理由があろうかと思いますが、一たん漏れても次の消費段階で徴収できるという点と、それから今申しましたように、税率を低くして課税ベースを広くするといった点から申しまして、十分に租税理論の上では説得的に承認されている学説ではないかと思います。そういう意味で、私は、所得でかけ消費でかけ、つまり所得税と間接税で分けてかけるということには十分に意味があろうかと考えております。
  86. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 確かに現在も個別消費税は物品税を初めやっているわけでございますが、これはこれなりに特別な担税力という背後にあるものを見てかけているんだと私は思うのですね。それを今度は延べに消費にかけるということになると、これは本当に一つのものを両面からつかまえてしまうというふうに考えられますと、そのあたりで税体系としてどういうことになるのかということに大変私は疑問を持っているものですから、ちょっとお伺いしたわけでございます。  あわせて、少し先へ進めさせていただいて、昭和二十四年のシャウプ勧告との関連の問題なんでございますけれども、中曽根さんがシャウプ勧告以来の税制改革だなんて言ってから、また改めてシャウプ勧告というものに焦点が当てられてきたわけでございますけれども、内容的にはシャウプ勧告というのは大変なレベルの高い、しかも世界的に見ましても、これだけの税制改革が実現をしたものはないのではないかと言われるような内容のものでありますが、ただシャウプ勧告以来の税制改革というけれども、実はシャウプ勧告自体を真正面から日本の税制というのはやってこなかった。例えば租税特別措置にいたしましても例外を設け、資本蓄積なりその他経済政策に非常にウエートを置いたがために、シャウプ勧告自体の本来のものがおかしくなってしまった。ただ、一体日本の戦後の資本主義の発展の中に租税特別措置というものはどう位置づけられるべきかということは、これはまたいろいろ議論があると思うのです。議論があると思いますが、シャウプ勧告に言うところの総合課税主義とか、私はシャウプ勧告というのは非常に重要だと思いますのは、先ほども私触れましたように、シャウプ勧告自体が一つの税の体系をなしていて、したがって、どこかだけは採用するけれども、どこかは採用しないというようなものではいけませんとシャウプ博士自体が言われているわけですね。ところが、日本の実際に行われました体系から考えますと、いいとこ取りというのでしょうか、やりやすいものだけはやった。  したがって、シャウプ勧告自体が換骨奪胎というか骨抜きになっちゃったということで、例えば所得税の総合課税方式も利子配当の分離課税というようなことでいびつになってまいりましたし、あるいは有価証券の問題でもキャピタルゲイン課税というのは有価証券取引税に変形になる、あるいは富裕税も実際には事実上行われなかった、わずかで廃止になってしまったということがありましたし、等々考えてみますと、もう一度、むしろ総合課税化という中でシャウプ勧告へ戻れという声があるわけですね。このあたりで、一体シャウプ勧告の再評価というものについて先生はどう見ていらっしゃるか。
  87. 石弘光

    ○石公述人 大変重要な御指摘をいただいたと思います。シャウプ以来と言ったときの意味合いがいろいろ人によって違うのだろうと思いますが、私はこれにつきましては次のように考えております。  確かに今御指摘のとおり、理念は理念としてあったんだけれども実態の場でつまみ食いされてしまって、戦後の日本の税制はいかにもシャウプに依存しているがごとき様相を呈したけれども、実態は違うんだという御認識、そのとおりであろうと思います。そこで、ではもう一回シャウプに戻るのかという点が一番大きな問題になろうと思います。私は、シャウプの税制体系というのは非常に理論的にすぐれており、誇るべき内容のものだろうと考えております。ただ、今シャウプさんにここに来て、もう一回シャウプ使節団というチームを編成して四カ月ほど日本の実態を見てもらって調査してもらったら、恐らくあれと同じものは出てくるとは思わないわけでございます。と申しますのは、恐らく基本的理念として公平を重んじ、今御指摘のとおり、税制は一つのものであってつまみ食いはいけないよといったような、そういう形の答申は出てこようかと思いますが、具体的な税目の選び方とか、あるいは今おっしゃられました総合課税のまとめ方とかいうところには、当時の状況と今が違いますので、変わった面が出てこようかと思います。  例えば、恐らく僕はシャウプさんが来たとき、やはりスモールガバメントということを考え、これほど政府のやる仕事がふえるであろうということは予想しないそういう税制をつくったと思います。特に福祉関係のものの政府のウエートがふえたあたりが、恐らくシャウプさんが考えていた税制の前提とは違ってきたと思います。ただ、総合課税あるいは利子配当、キャピタルゲインをよくかけるんだ、十分にかけるんだという点はシャウプさん自身みずからまだ言っておるわけでございまして、私もこれについては賛成でございます。そういった意味で、もう一回所得税をよくする。今所得税は大分穴があけられまして、修復しなければいけない。そういう意味で、シャウプに戻れという意味は、所得税をもう一回見直してちゃんとした本来の姿に戻すべきである。ただ、戻し方もシャウプが言っていたところまでは僕は恐らく今大分いきにくいと思います。  というのは、一つ申しますと、それは恐らく金融面の変革が急速に進んでいる、金融も含め、証券・資本市場を含めて。その辺が一番シャウプ税制の所得税の総合課税主義にぶつかるところが非常に多いと思いますね。その点やはり現代風にアレンジするという意味で、現実的に言うなら例外的な分離課税の存在なんというのもあるのかもしれませんが、やはり建前はあくまで建前として所得課税をとりあえずトライしてみる、総合課税方式をトライしてみるという基本的理念というのは残し、その後でやはり現実的に少し妥協しなければいけない面というものはそれなりのことをするという視点でシャウプをもう一回再評価して、その基本的な理念を現実の中に生かすべきだ、こう私は考えております。
  88. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 その次に、所得税の改正問題についてちょっとお伺いしておきたいのでありますが、先ほど岸本先生も言われましたように、この五、六年というものはベースアップがあってもほとんど可処分所得に結びつかない。これはきつい累進税率の問題だと思うのであります。そこで、私たちも内々には、今十五段階かな、これを五段階くらいに変えたらどうかというのは思っているわけであります。例えばアメリカを例にした場合に、御承知のように一五、二五、三五というパーセンテージに、三段階に変える案を出したわけでございます。  そのときに、二つ問題があると思うのですね。一つは、一五%にした低い方の人は、一一%が一五%になるわけでありますから、これは低所得の方が非常にきつくなるという問題。それから、高い方は、これは今日本のは少し高過ぎると私は思っているのです。これはちょっと高過ぎる、地方税も含めて。そういう意味では、下げる方はいいけれども。上げられる方は少しきついのじゃないかという問題をひとつどういうふうに考えていらっしゃる年あるいは国民に説得力があるかどうかという問題。  もう一つは、確かに三段階なら三段階にするということは、税の負担の金額はふえますけれども率はふえないわけでございますから、そういう意味でのある意味での合理性は当然あるわけでありますが、今度は何というのですか、マージナルというのでしょうか、変わるところですね、つまり一五%から二五%に変わる限界点が必ずあもわけで、私は申告のときに自分所得税の申告書を書いてみると、あの一覧表でああことしはこの段だった、こうやるわけですが、その変わるところのマージナルな問題というのは、別の面の矛盾と申しましょうか、問題点が残るんじゃないか。これはどういうふうに考えたらいいのか、御意見がございましたらお聞かせいただきたいと思います。
  89. 石弘光

    ○石公述人 今御指摘の点が、アメリカ日本を含めまして税制改革の焦点ではないかと思います。御指摘の点は、累進税率をフラット化の方向に持っていったときの問題をどう考えるかということだろうと思います。  そこで、今十五段階あります累進税率の体系をどこまで持っていくかというのはこれから大きな問題になると思いますが、シャウプさんのころは八段階でありましたから、八からさらに行くのか、つまり五とか六に行くのか、あるいは八を行き過ぎて十にするのか、それはこれからの議論だと思いますが、今おっしゃられました二つの点、つまり最低税率を上げ、最高税率を下げるときのいろいろな問題をどう考えるかというのは、まさに重要な問題でございます。仮に十五段階というのをスタートにしたときには、今一〇・五くらいにある人をどうするかという問題がございます。現にアメリカもその問題に直面いたしましたが、考え方は課税最低限で調整するほかはないだろうということだろうと思います。あるいはフラットタックスというのを一五とか二〇ぐらいで広い幅で持っておいて、一〇・五とか一一を例外的に残すといったような形で、少し刻みを例外的に残すというようなこともあり得るかと思いますが、基本的には、全体の一番低い人がネットで増税にならないためには、いろいろな意味課税最低限をいじるほかはないだろう。  それから、最高税率を下げるということは垂直的公平の面から問題があり、かつ恐らく高所得者優遇という点も問題になろうと思いますが、これは資産所得を中心とした課税ベースを広げて課税対象を広げるということによってかなり調整が可能になるし、そうしなければいけない。  第二点は、もっと重要な問題を御提起になりました。つまり、フラット化していきますと、仮にアメリカで申しますと一五、二五、三五でございますが、その階段、つまりこれはクリフ、がけと申しておりますが、これに上るときが非常な重税感になるのではないか、そのように御指摘だと思います。確かにその面があろうと思いますが、ただ、フラット化といったときにはいわゆる小刻みに上がるわけではなくて、かなり長期間ある一定の所得階層にとどまれるというメリットも、これまたあるわけであります。  例えて申しますと、五%の名目所得の上昇があったら年じゅう上の層につかまえられるというのか、それとも数年たってやっと上の層につかまえられるか、これは恐らく個人個人の重税感の感触の違いによって変わってくると思いますが、昔は恐らく小刻みに上がった方が納税者に対して親切やあると考えておるわけでありますが、今は考え方が変わりまして、数年くらいは同じインカムブラッケットにとどめた方が親切である、こういう考え方のようでありまして、それは一理あると思います。  もう一つ重要な点は、所得税にインデクセーションという物価調整条項をつけるのは非常に難しい。そういう意味では、今言ったフラット化にして一定の階層にとどまれる期間なりとどまれる所得の幅を長くするというのは、インフレに対して所得税を強くする、強くというか抵抗力を強くするという意味で重要な視点ではないかと思いまして、私はフラット化というのが必要ではないかと考えております。
  90. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 次に、石先生と岸本先生にお伺いしたいのですが、お話がございました少額貯蓄の非課税の問題でございます。  これはいろいろ長いこと議論がございまして、これも物事の考え方は両面あるんじゃないかと思うのです。五十九年の三月でとらまえてみて、個人貯蓄残高が四百二十兆、非課税貯蓄が二百四十五兆、非課税貯蓄率五八・五というかなり高い率になっているわけですね。  確かに、今問題になっております貿易摩擦の観点からいうと貯蓄が高過ぎるではないか、こういうことで、金がないと言っているのに税制で貯蓄を優遇する必要はないではないかという議論は、当然経済政策として起こってくるんだと思うのであります。確かに今、例えば夫婦子供二人を考えて、奥さんが働いていないといたしますと、御主人は財形を含めて千四百万、それから奥さんが九百万、子供二人が九百万、九百万でありますから、四千百万は非課税ですよという数字になるわけでありまして、これは平均的な貯蓄から見ますと決して低い数字ではないと私は思うのです。そういう観点からいくと、少し何か是正をしなければならぬのじゃないかという議論が起こってくるのは一面ではわからぬわけではありません。  ただ問題は、マクロ的にはそうであっても、今度はミクロの立場ですね。いわばレーガノミックスあるいはサッチャーではございませんが、今のこういった自助努力をもって老後の生活も頑張りなさいという精神に立っている経済政策をやっているときに、自助努力とは何ぞやといえば、やはり貯蓄をするか年金で蓄えておくか、何かしなければいかぬというわけですね。ミクロの方からいきますと、それなりに病気になったときとか子供の学校のためとか老後の生活のためとか、ミクロのためには日本人は大変いい性格を持って一生懸命倹約して貯蓄するわけですね。そういう観点から考えますと、先ほど岸本先生のお話ではございませんが、所得の方も取られ、貯蓄しても税金をかけられ、それから消費してもかけられるというような体制でいかなる段階でもかけられるというのは、これもまたなかなか説得しにくいのではないか。どうも私は、このマクロの観点とミクロの観点という両方がある程度合致をする答えがなければいかぬのじゃないかと思うのです。  私たちもいろいろ考えてみて、あのグリーンカードというのはそれはそれなりに意義があったのではないか。夫婦子供二人四千百万が多いか少ないかはいろいろ議論があるかと思いますが、本当に国民ひとしく一定の額だけは非課税貯蓄になるということでしたらこれはまたある程度納得できるかと思いますが、そこで必ずしも正確にやられているのかどうかという問題が残りますし、これはよく考えてみますと、四千百万というのは、今申しましたようにかなり所得があって貯蓄がある人は満杯までいきますからメリットはありますけれども、一千万とか五百万しかない人が四千百万の枠をもらったって何にもならないわけですね。そういうことから考えますと、むしろある意味ではこれは高額所得者優遇の制度でもあるわけですね。こういうことを考えてみますと、石先生の言われるように、利子所得がざっと十二兆か十五兆になりますか、これは金がないときでもあるし、優遇する必要はないのじゃないかということでささっとこの制度をなくしてしまえというふうにどうも我が党としてはならないのでございますけれども、石先生と岸本先生にちょっと一点お伺いしたいと思います。
  91. 石弘光

    ○石公述人 マクロとミクロと使い分けなければいけないという御指摘、まさにそのとおりだと思います。  そこで、私はそもそも税制によって貯蓄がどれだけ刺激されているか、どれだけ優遇措置になりているかということについてはかなり懐疑的でございます。つまり、税というのは貯蓄形成の中の、僕は一つのマイナーとまで言わないにしてもそれほど決定的なあれではないだろう、有力なる推進役になっていないと考えております。これは実証的にいろいろやってもなかなかいい結果が出てこないということも反映しているわけでございますが、貯蓄形成のもろもろの動機を見ますと、最近でこそ金利選好が強まりましたけれども、やはり税以外の要素が大きいと思いますので、仮になくしてもそれほど決定的ダメージは起きないだろう。逆に言えば、そういうものを残しておくがゆえに、今御指摘のとおり高額所得者の方が利用度が高いという点から見て、どうも高額所得者の方が有利になっているのではないかという感じがいたしておりまして、私は、マクロ的にも優遇の効果はないし、残しておくとかえってそういった意味の不公平税制のもとにもなっているし、かつ、もろもろの限度額管理等々から出てきます不明朗な話もどうもあったりいたしまして、見直す時期ではないかというのはかねて主張しております。平均の世帯の貯蓄率というのは七百万円でありまして、この七百万円というのは平均でございますから、実は本当は大半の人はもっともっと低いわけですね。それに対して、今御指摘のように四千百万ぐらいまでできるという税制自体を残すのは、マクロ的には僕は非常に問題があると思っております。  さて、問題はミクロ的な問題でございまして、確かに自助努力等々は貯蓄でやる、あるいはビッグガバメントが嫌いならスモールガバメントだけれども、自分で老後の面倒はより見る方でいくよという点になりますと、貯蓄が恐らくどうしても問題になってこようかと思います。ただ私は、貯蓄優遇の税制がなくなっても貯蓄は減らないとは思っておりますが、心理的にはいろいろ影響を与えるのだろうと思いますね。そういう意味で、シルバー貯蓄というのですか、高齢者の方に特に枠をつくる等々の話は恐らく必要だろうし、非課税限度額を少し縮めるという話も必要だろうし、あるいは残すけれども一定の割合をそこに低率分離みたいな形でかけるというのも必要だろうし、いろいろ選択があると思いますが、何らかの形でやるけれども、ミクロ的な配慮というのは若干は残さなければいけないなという点におきましては全廃主義者ではない、若干の妥協は必要であろうと考えております。  以上です。
  92. 岸本重陳

    ○岸本公述人 先ほど申し上げましたように、私は、税制が貯蓄を刺激したり、あるいはこれを逆刺激しまして貯蓄額の増減にそれほど影響を与えるとは思っておりません。それは今、石公述人もおっしゃったとおりでありまして、特に貯蓄動機という点ではそういうふうに考えるべきだろうと思います。しかし、先ほど私が申し上げましたとおり、少額貯蓄にも課税するという方式をとりますと、貯蓄の効果に対しては大変重要な影響を及ぼすわけですね。いわゆる貯蓄優遇税制と言われておるけれども、刺激としてはそう機能していないのだから優遇税制と言うべきではない、しかし結果として見た場合には、これの撤廃は明らかに貯蓄の効率性を損なう。佐藤委員御指摘のように、四千方を超えるものが非課税にできる。しかし、石公述人がおっしゃったように、現実には大多数の国民にとって貯蓄額は一千万にも達していないのでありまして、現実にそのわずかな貯蓄に自助努力のすべてを託している、その努力の成果をいわゆる貯蓄優遇税制撤廃でもって奪ってしまうというのは大変な問題だろうと思います。もちろん、このことは逆に、何も四千百万まで非課税の限度をとる必要はないという議論になり得るわけでありまして、私もその点ではもう少しこの限度を下げていいんじゃないかと思います。しかし、その場合の基準をどうするかというのが次の問題でございます。  御承知のとおり、貯蓄の四大動機というのは、簡単に申しまして病、住、教、老でございまして、病気もしくは万一の支出に備える、住宅の頭金をつくる、あるいは第三に子供の教育、結婚資金を用意する、そしてやっと最後に夫婦の老後を支える貯蓄がスタートできる、それも大体日本の場合、平均的に五十歳前後のところから始まる。それで後、定年五十五歳ならそれまでの五年間、定年六十歳でもそれまでの十年間のうちに老後資金を蓄えねばならぬといった大変きつい状況に置かれているわけでありまして、基礎年金制度の発足等々と絡めて実際にどれだけの老後貯蓄が必要か。少なく見積もっても老齢者一人につき一千万円の貯蓄は必要でしょう。夫婦なら二千万円の貯蓄は必要でしょう。どんなに少なく見積もってもそれが基礎年金プラス必要な貯蓄額と思われます。そこの貯蓄額に達するまでの部分、あるいはそこに達した貯蓄額を使う場合においてそれらに税が課されるということは甚だしいペナルティーであって、私は、さような制度には合理性が欠けると強く思っております。
  93. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 今岸本先生からお話があったように、私たちも、経済政策を実行する政治の舞台の中において庶民感情というのもかなり無視できないものがございまして、そういう意味では、今お話があったように平均七百万、もっと少ない方の利子まで税金をかけるという、そういう庶民感情もまた政治の中で無視できないという観点を忘れてはならないと思っているものですから、いろいろと難しい問題になってくるのだと思っているのであります。  最後に、三先生にお伺いをしたいのでございますが、私も今お話がございましたように、今貿易摩擦の問題というのは、当面の政策と中長期の政策とを分けて考えなければいかぬ。いわば糖尿病にかかっているみたいなものでございまして、前から悪かった、それが一番ひどく出てきたのがことしであって、糖尿病自体を治さないと健全な経済体質にはならないということだと思うのであります。その意味では、二十一世紀に向けてそんなにのんびりしていられないと思いますが、世界的な分業なり日本の雇用はもちろん守らなければいけませんが、国際収支がある程度で落ちつくような格好の貿易立国をつくっていかなければならぬということだと思うのであります。それは大体先生方と一緒なのでありますが、そうしますと、アメリカの場合には、双子の赤字だという財政赤字と貿易赤字を持っている。幸い日本の場合にはスタンダールで、国内財政は赤で貿易は黒ということでございますから、この赤と黒とを結びつける道というのが何かないのだろうか。当面、貿易黒字世界批判されるのを抑えようと思ったら、自動車じゃございませんが、政策としていいか悪いかは別として、これは自主規制という道しかない。ただ、これが例えば半導体みたいにアメリカで使うものを自主規制ということになりますと、これは経済同体がいろいろな意味でいびつになってくるという問題はありますが、当面ということになれば、一つは私は自主規制しかないのではないか。いい悪いはまた別でありますが、格好をつけようと思えば、数字上の収支を償おうと思えばこれしかないのではないか。  もう一つ赤と黒とを結びつけるやり方というのは、これも余りいいことじゃありませんが、輸出課徴金のような格好でやる以外にないのではないか。ただ、これでもアメリカ国内で全然つくっていないものもあるわけですね。これにそういうものをかけた場合には、今度はドル表示になりますとますますふえていくということでありますから、これも簡単ではないし、今度は相手側に輸入課徴金をということの言質を与えてしまうということにもなりますので、これもなかなか難しいのではないかということで自問自答しているのでございますが、何とかこの貿易黒字財政赤字の二つをバイパスをつくってうまくやる道というのは、頭のいい先生方にはいい知恵はないものでございましょうか、そのことをお伺いしたいのです。
  94. 山口孝

    ○山口公述人 今のお話で、私は、やはり巨大企業に対する課税をいろいろな意味強化する、そういうことをやることが大事だ、そのことはやはり巨大企業の所有している利益を結果的に言えば減らしていく、そのことによって多少財政赤字を減らしていくことになる、それから貿易の黒字という面にもそれは微妙な形で影響を与えていくだろう、そんなふうに考えているわけなんです。  それからもう一つは、下請企業その他のいわば下請納入価格なんかをできるだけ上げさせていくというような形で内需をふやしていく、こういう方向もやはり必要ではないか、こんなふうに考えております。
  95. 石弘光

    ○石公述人 いや全く難しい質問を出されたという意味で、もしかこれが試験問題に出たら私はとても答えられる自信はないのでありますが、既に今の御質問の中でお答えをお出しになっていたと思いますが、そういう輸出課徴金であるとか自主規制であるとか、恐らく可能性としてはそういうこと。それからもう一つは、山口先生がおっしゃった税を少し使って、まあ巨大企業というお話でございましたが、どこにかけるかはいろいろ議論が分かれるところだと思いますが、そういった点。ただ、競争力の問題等々がありますから、長い目で見なければいけないと思いますね。短期的に急に何か特効薬のように効くようなものではっとやるという手は恐らくあるとは思いますが、その持つ後遺症みたいなものもやはり考えるということになると、全く申しわけありませんが、私は抜本的に今これぞという知恵はどうも出てこない。しばらく考えさせていただきます。何かありましたらまたお答えしたいと思いますが、とりあえず何か妙薬はない。ただ、さっきから申しますように、やはり中長期的には構造政策とかなんか地道にやらないと、この問題は短期に創業を使って治してもまた戻ってくる問題があると思っておりますので、そういう意味で、中長期的視点から日本経済の体質をじっくり変えるという方向をいろいろな方面からやっていかなければいけないのかな、こう考えております。これは五十点ぐらいの回答で、どうも済みません。
  96. 岸本重陳

    ○岸本公述人 私の場合は多分三十点ぐらいの点にしかならぬと思いますが、輸出課徴金のような考え方はできないかという御質問でございました。私自身は課徴金という言葉を使わないで、これは何となくペナルティー的な感じがしますのでふさわしくないと思っておりまして、輸出税というのを昨年四月段階で提唱したことがございます。それは、佐藤委員御指摘のように品目を慎重に選定しなければいけませんけれども、当面摩擦の焦点となっている品目について輸出税をかけ、その分輸出価格は高くなりますけれども、それでもなおかつ輸出が伸びていくということであれば、それは価格競争力のみならず、品質競争力においても諸外国から求められているものであるというふうに考えることができ、フェアネスがそれなりに主張できるのではないかと思うわけであります。そして、その輸出税というふうに私が呼んでおりますものの性質は、これを先ほど申しました当該品書の内需転換、輸出で売れているものを国内で売れるようにしてやるために使う、そういう性格のものでなければいけないと思います。  それから、佐藤委員政府財政の赤、貿易の黒、赤と黒というふうに文学的に表現なさいましたが、現在の赤と黒はスタンダール時代よりもやや複雑でございまして、もう一つ家計の赤というのがあるわけでございます。貿易の黒が家計の赤を引き起こしているということは、貿易黒字でもうけていらっしゃる分が国内の勤労所得の向上に還元されていないというわけでありまして、ここに財政の赤と貿易の黒とが両立せしめられてしまう一つのチャンネルがある、私はそう考えております。
  97. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 ありがとうございました。  今岸本先生も最後にお話があっておりますように、きょうの公述の中にもございましたように、内需の六割を占めております個人消費の拡大、ここで、政府自身も経済審議会なり国民生活審議会なり何なりでも、週休二日制、時短あるいは成長の範囲内での高目の賃金というようなことをかなり言い出してきている。私はそこが根本じゃないか。これが結構、特効薬にはならないけれども、しかしじっくりと効いてくる漢方薬のような役目を果たすんじゃないかという気がしているわけでございまして、今後とも今の先生方のお話を参考にしながら、またそういう観点で残された予算委員会での質疑に参考にさせていただきたいと思います。本日はありがとうございました。
  98. 林義郎

    ○林(義)委員長代理 次に、二見伸明君。
  99. 二見伸明

    ○二見委員 公明党の二見でございます。きょうは大変貴重な御意見、ありがとうございました。  最初に、山口先生にお尋ねいたします。  先ほど法人税のお話がございました。私たちも予算修正要求で所得減税などを要求する場合には、安直に法人税の関係の引き上げをやるわけです。退職給与引当金の圧縮とかですね。私は、昨年法人諸税の引き上げで、今私は簡単に言うのだけれども、いろいろ勉強しながら、余り単純な発想ではまずいのじゃないか。というのは、逆に法人税を引き下げた場合に、設備投資を促し、日本経済水準を高くするという大変プラスの効果もあると思います。それから円高不況ということが言われて、円レートが百八十円台になってきてデフレ要因がありますね。そういうときに、果たして法人税を短絡的に引き上げることがマクロの日本経済を考えた場合好ましいのかどうか、我が党内でもいろいろな議論がありますので、これは我が党の議論ということではなくて二見伸明個人の意見として聞いていただぎたいのでありますが、若干そういう感じを持っております。その点についての山口先生のお考えを教えていただきたいと思います。     〔林(義)委員長代理退席、渡辺(秀)委員長代理着席〕
  100. 山口孝

    ○山口公述人 先ほどのお考え、わからない点もなくはないわけです。つまり、私も大企業の経営分析をやっておりますと、税引前利益が出ますとこれに対して四三・三%、それから、その所得見合いの地方税その他で大体半分から五一%ぐらい税金で持っていかれる。そこのところが企業の経営者にとっては、せっかく稼いたものの半分を持っていかれる、これは大変だ、そういう気持ちがあるわけです。そういうようなことが、これからますます累進課税とか段階的課税でふえたらたまらぬ、だから行革だ、こういう考え方があるわけなんですね。そこのところは私も分析していてわかるわけであります。ただ、やはり利潤量としては実に巨大な利潤を上げてきている。特に御承知の昭和四十八、四十九年の石油ショック以後の安定成長、こういう時期になりましてはっきりと見られるのは、大企業の方で利潤がずっとふえまして中小零細企業の方では利潤がふえない、それから勤労者の賃金も上がらない。こういう中でひとり利潤がふえ続けているのは一握りの巨大企業なものですから、やはりそこから課税強化して取って、それを恵まれない方に回すという方向以外に方法はない、こう考えておりまして、経営者や資本家のやっていることを、それはその立場で見ると、これがなければもっと投資もできるし、いろいろとできるということがあると思います。しかし客観的に見ると、やはりそこに金が余っているからそこに課税せざるを得ない、私はどうしてもそう考えざるを得ないのです。
  101. 二見伸明

    ○二見委員 石先生にお尋ねいたしたいと思いますが、先ほど税についての御意見をいろいろ伺いました。ちょっと税から外れて、財政赤字の問題で最近いろいろな論文を散見するわけでございますけれども、いわゆる財政を圧迫している要因は、移転支出である社会保障関係費が多い。ですから、これを一般会計から外して別枠にして、特別会計にすればいいではないかという意見を最近よく目にするわけでございます。その方が収支も明らかになるし、場合によれば国民の負うべき負担も明らかになるからいいではないかという議論もありまして、それはそれなりに私、整合性のある理論だと思います。ただ、そうなった場合に、これはちょっともろ刃の剣で、保険料とかそういう形での負担増がもろに出てくるのではないかということもありますが、そうしたいわゆる社会保障関係費を特別会計にするといういろいろな意見については、先生のお考えはいかがでしょうか。
  102. 石弘光

    ○石公述人 恐らくその問題は、仮にでありますが、課税ベースの広い間接税なんという議論が出てきたときに福祉目的税という形、したがって、使途もはっきりしておいた方がいいという意味で、社会保障特別勘定といったような一連の関係で議論されるものかと思います。かつ、これはかなり有力な意見として今後登場してくる可能性は十分あると私は考えております。  そこで、財政学の立場から申しますと、税というのは全部一つのつぼに入れて、そこで査定をして出していくのがベストであるというのが伝統的な考え方であったわけでありますが、最近は政府のやる仕事も大分大きくなりまして、特に、個人個人の個別の便益と申しますか利益につながる経費項目がふえてまいりましたもので、広く税という形で取るよりはやや料金的な色彩を兼ね備えてもいいじゃないかという考え方も出てきたわけでございまして、これが目的税ということだろうと思います。こういう説明は不必要だと思いますが、そこで、私は次のように考えております。  恐らく今後高齢化社会が進み、社会保障範囲がどんどん広がる、これが恐らく財政を圧迫する最大の要因になると思います。そのときに保険料で負担してもらうか、あるいは税金で負担してもらうかという選択はあろうかと思いますが、やはり社会保障というものが将来の最大の眼目になるのは間違いない。したがって、何らかの形で協力を得るとすれば、やはりリンクする考え方というのはあり得るだろうと思います。私は積極的には賛成いたしませんが、セカンドベストとして目的福祉税的なもの、あるいは保険料でも結構なんですが、社会保障勘定というふうにくくるという考え方は検討の余地は十分あるだろうと思っております。ただ、どんどんそのために税負担も重くなり、保険料も重くなるという心配はあろうかと思いますが、今十兆円ほど社会保障がございます。仮に大型間接税を入れるとしても三兆円とか四兆円でまだ大分差があるので、その辺を制度的にどうするかという問題は議論しなければいけないと思いますが、理論的には十分あるだろう。私は決定的にこれをやるというまでまだ自説を固めておりませんが、十分検討の余地はあるだろうという意味で話題にすべきではないかと考えております。
  103. 二見伸明

    ○二見委員 岸本先生にお伺いいたしますけれども、先ほど内需転換ということをおっしゃられて、私も確かに内需転換の時期だと思います。当然、内需転換というのは産業構造の転換と同じことにたらざるを得ないだろうと思います。日本は円高不況ということで大騒ぎしておりまして、中小企業対策をやれという業界からの圧力もあり、国会でもそういう議論がございます。実はそうした円高不況に対する日本政府の中小企業対策でアメリカが最も注目しているのは、円高で輸出が厳しくなった、そのためにあと半年なり三月なり一年なり我慢をしろ、今雨が降っているけれども曇ってくればまた輸出ができるんだぞという意味合いでの中小企業対策、つなぎ資金を出すとかということはアメリカとしては我慢がならないという感じを持っているようであります。そういう場合には、むしろ輸出に不利な産業なんだから、制度資金を出すのも将来輸出に備えるための資金ではなくて、むしろ産業を日本国内で商売ができるような方向に転換させるべきではないかという意見アメリカにかなり強いというふうに思っております。そういう意味合いで、そういうアメリカの意向などを考えながら、円高不況下における中小企業対策というものに対してはどういうふうにお考えになるのか。先ほど内需転換ということもおっしゃられましたので、それとの絡み合いの中からどうお考えになるのかお教えいただきたいと思います。
  104. 岸本重陳

    ○岸本公述人 大変難しい問題だと思うのです。と申しますのは、内需転換は当面のところは、例えば輸出が落ち込んでその安企業収益が落ち込む、あるいはその販売高が落ち込む、そしてそれが国内不況につながる、そういったことを避けるために、できるだけ従来輸出に出ていた分を国内需要で受けとめるということが内需転換と私が申した場合の直接の意味でございますが、しかし、それが将来的にはこうした円高の進行の中で国際分業の現状の変更を促進することになり、今までは輸出で食べていた産業がやがて国内需要を当て込んだ産業へとまるきり異なった、例えば場合によっては製品をつくる産業へと変身を遂げねばならぬ、そういう場合もあろうかと思います。しかし、すべての産業がそういった変身を一気に遂げられるわけではございませんし、そういった変身は同時に、例えば労働力の移動とかあるいは地域立地の移動とか変化とか、そういうものも必要になる場合が間々ございます。したがいまして、そう短期的にそういうことが行えない。当面、何とかそれらの企業が変換し得るだけの資金的な余裕を与えつつ、しかしそれが御指摘のようにアメリカ等が恐れている、いずれまた雌伏一年国際市場、特にアメリカ市場に乗り込んでくるといったふうなことだけを時間稼ぎさせる、そういうのでない方向、展望を持たせるようなそういった政策でなければいけない。方向づけは御指摘のとおりだと思うのです。問題は、それをどのくらいのタイムスパンの間に、例えば発展途上国の追い上げ等も考慮しつつやっていくかという点に難しさがあろうかと思います。どうもお答えにならなくて済みません。
  105. 二見伸明

    ○二見委員 ありがとうございました。  以上で終わります。
  106. 渡辺秀央

    ○渡辺(秀)委員長代理 次に、木下敬之助君。
  107. 木下敬之助

    ○木下委員 三人の公述人の先生方、大変きょうは御苦労さまでございます。民社党の木下でございます。それでは早速質問をさせていただきます。  石先生、先ほどの話を聞かしていただいておったのですが、そんな中で、たしか財政が後手でも仕方がないというお考え、建設国債を増発するようなことには否定的なお考えのようにあったのですが、私どもは、建設国債を発行して、下水とか道路とか住宅とかおくれているものを公共事業でやるということはいいのではないか。よく子孫にツケを回すと言われるけれども、その子孫もそういう公共の施設は使うわけですから、使う人が負担するのは当たり前じゃなかろうかという観点で我々は申し上げておるのですが、先生のお考えをお聞きいたしたいと思います。
  108. 石弘光

    ○石公述人 まさに理論的に申しますとそのとおりでございまして、建設国債が赤字国債と違うのはその点だと思います。  ただ、これは予想になるのですが、実は将来増税ができるかできないかにひとえにかかっていると思います。私は政治家ではありませんので気軽に言える立場ですから、どんどんやれということを言ってもいいとは思いますが、しかし、過去の経緯を見ていますと、恐らく増税というのは至難のわざでありまして、したがって、後世代がそういう建設国債からつくられた物的資産のサービスを受けるから負担して結構だ、それは理屈ではそうでありましょう。しかしその負担を、例えば利払いは増税でというのがロジックの先にある話だと思いますが、そう簡単にいかないというのがこれまた過去のデモクラシーの中での議論でございますので、それを十分に入れますと、やみくもにこのルートを大いに楽観して使えるかどうか。  例えばアメリカの州のある地方だと、地方債を発行する、ただ、その償還計画として十年の間にこれこれの増税をしてといったことをつけて承認を得るというようなことをやっていればまだしも、そういうことは我が国では考えられないものですから、増税の将来の可能性という点で私は悲観的に見る方でありますので、その点からやや消極的だ。ただ、やるときはやらなきゃいけないとは思いますが、そう思っております。
  109. 木下敬之助

    ○木下委員 増税の話も出ましたので少しわかりやすくなってきたのですが、先生、六十五年の赤字国債発行ゼロという、これは外しても外さぬでも五十歩百歩で、自分としては外さない方がと言われておる。今の調子でいきますとまずこれはできないと我々は思いますし、政府自身が出されておる計画でも、ある程度のいろいろなものを享受していこうと思ったら、そしてなおかつ六十五年を達成しようと思うと、大変な調整額が要る。この調整額みたいなものを先生はどんなふうにお考えになり、しかも今増税はやれないという見通しという御発言をいただきまして、ぜひお考えをお伺いしたいと思っております。
  110. 石弘光

    ○石公述人 この間大蔵省からたしか国会に出されたと思います中期試算でございますが、「財政の中期展望」あるいは「仮定計算例」というのがあったと思いますが、あれを見ましても、今御指摘のとおりかなりの要調整額が出ております。これは額だけ出ておりまして、一体どうやって中身を解消するかということは、実はまだどこでも議論していない。これは大いに国会あたりでやっていただかなければならない問題だと私はかねがね思っております。  そこで、チョイスは三つしかないんだろうと思います。一つは、公共サービスというものを引き続き下げるという形での負担を国民に我慢してもらうのか。もう一つは、僕は増税はできないと申しましたが、しかし、やむを得ざるときはやらなきゃいけないのかもしれません、増税ということ。それから、六十五年というものを別に守ることはないじゃないか、のんびり行こうという形で先に延ばす。いずれの形も非常に僕は難しいと思いますが、六十五年を先に延ばすという、確かに御指摘のとおり延ばさざるを得ないと思います、延ばさざるを得ないとは思いますが、それを今取っ払って、さてフリーハンドだよということで今までせっかくやってきたいろいろな努力というものが無になるのも、これまた問題だろうと思います。  したがって、恐らく何らかの形で負担増ということを、先ほどちょっと議論が出ましたけれども、福祉とリンクさせたような形で間接税を高めるといったような形で、国民の理解を得つつやるということが一番最初に努力すべきことではないか。と同時に、公共サービスの方もまだまだ少し問題の点もあると思いますので、そういう意味で、他方面に少し接近するという意味で租税負担を引き上げることも考えつつ歳出もカットする、できるだけ六十五年までにターゲットを置きつつ努力するということしかないのかなという感じがいたしております。
  111. 木下敬之助

    ○木下委員 石先生最後に。先生は中長期的な構造改革の必要性のようなものを訴えられた。簡単に具体的に言いますと、特にこの構造改革というのはどういった点をどうするのだと端的に何か言えることがあったら教えていただきたいと思います。
  112. 石弘光

    ○石公述人 仮に貿易摩擦とかそういった国際面での摩擦が問題になるとしますと、やはり第一次産業といったものに対して課されているいろいろな意味の保護、そういった面を市場の原理によって整理するどいった問題が恐らく一番の大きな問題ではないか。さらに、垂直的分業から水平的国際分業にするといった点をやはり少し国内的に摩擦が伴ってもやらない限りは、構造的な問題解決にならないと思います。  それから、あと幾つかあると思いますが、金融の自由化もそうでありましょう。それから国と地方の財政関係で補助金の問題も恐らくその問題でしょうし、それから社会保障の問題もそうでしょうし、何かいろいろな意味で従来持ってきました構造的なしがらみと申しますか、そういう面について大胆なメスを加える必要があるだろうということでありますが、今申しました産業構造の問題が一番大きいのではないかと考えております。
  113. 木下敬之助

    ○木下委員 どうもありがとうございます。  それでは、岸本先生にお伺いいたします。  先生は、財政のやれることとは何か、そして気迫を欠いた今回の予算である、やるべきことはあるということですが、どういったことを今回やるべきであるというふうに思われますか。
  114. 岸本重陳

    ○岸本公述人 先ほど申し上げましたように、歳入面でいったら減税がどうしても必要だと私は思います。そしてこれはやれると思います。六十二年度にやれるのなら六十一年度にもやれます。  それから、歳出面で申しましたら、例えば今国民が一番気にしているところ、公共サービスの中で一番気にしている部分というのは、一つは教育でございますね。それからもう一つは、広い意味で言えば福祉ですが、医療問題並びに老後保障の問題ですね。  例えば、時間がございませんので、一つだけ教育に例をとれば、義務教育の学級の生徒数をできるだけ減らしていく。公共サービスの部分でそれができますならば、例えば現在塾にお金を払っていて——まだ塾に行っていない子供の方がはっきり言って少数派でございますね。そういう子供たちに対しては未塾児というニックネームがついているようでございますが、そういった塾費用のようなものが真っ当な消費支出に回る、これは全体としての日本経済の活性化につながっていくはずであります。そういったことを私は考えております。
  115. 木下敬之助

    ○木下委員 重ねてお伺いいたしたいのですが、先ほどたしか二兆円規模の減税ということですが、この減税の対象は具体的にどういうことですか。
  116. 岸本重陳

    ○岸本公述人 減税の対象としては所得税それから住民税、両方必要だと思います。
  117. 木下敬之助

    ○木下委員 そして、先ほども六十二年にやれるのなら六十一年でやれると我々も考えておるのですが、今政府の考えており、また税調に答申をもらうようにしておるその答申が、参議院選の前にまず減税の部分だけ出てきて、その後増税の部分が出てきて両方一緒にして六十二年度、こういう感じなんですね。そういうことに対して先生はどんなふうにお考えになっているか。また減税、増税組み合わせてということを、またそういう組み合わせ方の中で大型消費税みたいなものがまた出てくるのかとか、その点もお伺いしておきたいと思います。
  118. 岸本重陳

    ○岸本公述人 端的な申し上げ方をお許しいただきたいと思うのですが、選挙前に減税論議だけが先行し、そしてその後から政府財政を守るためにはどうしても増税が必要だといって増税論議が出てくる、そういった議論のステップのとり方はやはり大変まずいやり方だと思いますね。と申しますのは、恐らくいかなる増税が行われるのかという点の詰めを欠いては、前段の所得税の減税というものの規模や、それからどの辺をねらった、どの所得層をねらった所得税減税をやるかということも本当は詰まらないはずなんですね。ですから、減税論議だけが先行するというのは、選挙対策上の考慮は別として、あるべき税制改革の進め方としては私は適切を欠くと存じます。  それからもう一つの御質問は何でしたか。(木下委員「大型消費税のような……」と呼ぶ)私は、先ほど申しましたように、恐らく税収中立型の税制改革をやるということであれば、大型間接税というものが従来の議論の流れからいって登場してくるのは必至だ、こう見ております。しかし、大型間接税の実施は恐らくこれは確実に中低所得層により多くの負担を課すことになり、そのことは私は日本経済全体にとって決して望ましい活力の培養にはつながらないと否定的であります。
  119. 木下敬之助

    ○木下委員 岸本先生、最後にもう一点。先ほどのお話の中で経済摩擦解消のための内需拡大、これは経済摩擦解消に逆行することもあるというふうな御表現があったと思います。ちょっとどの辺を言われておるのか教えていただきたいと思います。
  120. 岸本重陳

    ○岸本公述人 それは、内需という言葉の使い方でございますけれども、経済摩擦を解消するためにとして国内日本人の財布からより多くのお金を外国製品への支出に向けさせる、例えて言えば一人百ドル外国製品を買いなさい、あるいは通産省に代表的企業をお呼びになって輸入の拡大計画を出しなさいというふうなことを去年おやりになっておりますね。そういうふうなことで、国内製品に向かうべき需要を無理やり輸入増という格好で外国製品に向けさせるならば、その分必ず国内メーカーの製品に対する需要が落ち込むわけですね。それは今までの例でいいますといわゆる輸出ドライブを喚起することになり、輸出に見合うところまで輸入増をさせようとしましても、その輸入増のゆえにかえって輸出増が起こり、そのギャップがなかなか埋まりにくいという現象が生じるであろう、そういう意味で申し上げたのでございます。
  121. 木下敬之助

    ○木下委員 時間が少のうございますので、山口公述人、一問お伺いいたします。  先生お話しの中に、かなり何度も巨大企業ということで言われた。これは巨大であること自体に問題があるというかその辺わかりませんが、諸外国のことも比較してみられて日本の巨大企業にどういったお考えを持っておられるのか。我々はある意味では、は大企業の蓄積ということも先生言われましたが、そういった蓄積が国際企業間の競争力に影響したり新技術開発等、どうしてもそれだけのものが必要である部分もかなりあるのではないかというふうにもとっておるのですが、諸外国との関係でお伺いいたしたいと思います。
  122. 山口孝

    ○山口公述人 戦後日本の企業が廃墟の中から立ち上がったということで、御承知のとおり昭和三十年、四十年時代はいわゆる銀行から借金によって高度成長を遂げる、こういうようなことがありました。したがって、日本の大企業の海外先進諸国の企業に比べた特徴は、非常に借金が多くて自己資本が少ない、こういう状況で来たわけでありますが、それが四十年代の後半から五十年代になりますと、例の証券市場からの時価発行増資ということができまして、いわゆる資本金、資本準備金が著しくふえてくる、こういうことがあったことは御承知のとおりだと思います。それと同時にかなり利潤もふえてまいりまして、これの蓄積もふえてくる。私のかなり感覚的なことで申し上げれば、優良企業というのは自己資本がほぼ五、六〇%、しかもその自己資本の中で利益の内部留保が五、六〇%の会社、こういうふうに考えておりまして、そのことは、アメリカのいわゆる優良企業がそういう財務構造を持っていたわけです。そこには三十年代、四十年代の前半は届かなかったわけですが、次第に、今トヨタを申し上げましたが、それ以外にも多くの企業が自己資本比率が五〇%を超す、それから内部留保が半分以上になるこういう企業が出てまいりまして、そういう財務構造からも国際的競争力がついた、こう考えたわけであります。と同時にまた日本のすぐれた特徴は、第一位、第二位、第三位という下請が、日本の勤労者の勤勉なのと技術が高いということで非常にすぐれていて、しかもそれが系列化している。ここから精度のいいすばらしい部品を購入して、アセンブリーラインでそれをはめ込むことができる、こういう構造で非常に強くなっておりまして、私は、巨大企業がここで多少税金が大きくなっても十分国際的に競争力が持てる、こんなふうに感じておりますので申し上げたわけであります。
  123. 木下敬之助

    ○木下委員 時間が参りました。ありがとうございました。
  124. 渡辺秀央

    ○渡辺(秀)委員長代理 次に、梅田勝君。
  125. 梅田勝

    ○梅田委員 日本共産党・革新共同の梅田勝でございます。二人の先生方にはお忙しいところ本当にありがとうございます。  まず、山口さんにお伺いをいたしますが、予算全般につきましての特徴とか、国鉄問題につきましても、赤字の主要な原因が過大な投資にあった、そのために借金の返済が大きい、減価償却が大きいといったような点、あるいは国鉄再建監理委員会の答申が非常に急いでやられたために、貨物関係につきましては運輸省でひとつ答案を書いてほしいというような極めてずさんな問題があると言われましたような点は、非常に私も同感でございます。  そこで一つは、先生、時間がちょっと足りませんで貨物関係のお話がほとんどなかったので、なぜ再建監理委員会がみずからの答案を書かなかったのか。     〔渡辺(秀)委員長代理退席、委員長着席〕 そして、今度出てきましたものによりますと、旅客会社の施設を言うなればただ乗りするというようなものになってきている。それから人員も四分の一に縮小する。貨物駅も約七割に減らしていく。非常に大変な内容になっているわけですね。この点についての先生のお考えをまず第一点お伺いしたいわけでございます。
  126. 山口孝

    ○山口公述人 貨物問題なんですけれども、私は、監理委員会答申が出ましてびっくりしましたのは、貨物について抽象的な言葉はありました。その抽象的な言葉はこういうことだったと思います。つまり今後の貨物は、いわゆる存在価値があるのは大量の長距離輸送なんだ、こういうことなんです。そのことにつきまして、大量のというようなことでは、要するに石油、セメント、石灰、こういうようなものを運ぶということ、それから両端にトラック、運輸業者が入る、そういう大口の輸送の人やトラックあるいは運輸業者とよく相談をしてやりなさいということが書いてありまして、あとは数字が全然入っていない。なぜ入っていないようなものができたのか、そう思っておりました。これはたしか十一月中に運輸省でそのあり方を示せ、こういうことになっておりまして、十二月二日ごろに出ました。これを見ましてびっくりしたことは、一つは、数字は収支の見通しとかそういうものはありましたが、どうもバランスシートに類するようなもの、資産、負債、資本がどうなるかということについて必ずしもはっきりした内容が示されていませんでした。しかも、先ほど梅田代議士がおっしゃったように、それは要するに従来のいわば貨物部門が負担していたようなコストを著しく軽減するようなやり方をするんだ。今度の民営・分割の特徴は、民営化して独立した新しい株式会社をつくって、民活をやるんだ、こう言いながら、貨物部門につきましては従来のレールとか軌道のいわばコストの配分方式ではなくて、いわゆる回避可能原価、つまりその貨物がなくなればなくなるような費用というのが回避可能原価で、それだけをつける。ですから、要するにレールとかレールに伴うところの利子とか減価償却費、これは全部旅客会社につけておいて、そして貨物会社はそれを負わなくていいという独立した会社をつくる。だから、これは民営化して、逆に旅客会社におぶさる心本来そういう回避可能原価、回避不能原価という概念は、一つの会社の部門間のコストの配分の問題で、イギリスで行われた。これを今度は独立した会社にそういう概念を適用して、著しく貨物会社のコストを下げて利用する、こういうことになりますから、これはやはり大企業の利用しやすい貨物会社をつくるということで、どうも民活ということと反するようなやり方をしているのじゃないか、そう考えたわけであります。
  127. 梅田勝

    ○梅田委員 私は昨年国鉄の問題で諸外国がどうなっているかということで、欧米の国鉄の状況も視察をさせていただいたわけでございますが、そこで感じましたことは、今政府がやろうとしております日本の国鉄の分割・民営化という方向は世界の大勢とは余りにもかけ離れているのじゃないかと思うのですね。  特に私が教訓的に日本におきましても取り入れていく必要があると思いますのは、一つは公共鉄道網としての国鉄、この線路だとか駅だとか、いわゆる某礎建設部分、これは当然国の出資でやる。それから二つ目に政策割引というのがございますね。学生の割引でありますとかあるいは品物によりましては農産物の割引であるとか、そういう政策割引、それからどうしてもその地方にとって必要なローカル線の維持、こういったものに対しての公共的な補助を制度として確立する必要がある。それから三つ目に、単年度それでも赤字が出ました場合には、国なり地方自治体で補償していくという制度、赤字を累積させない、この三つはどうしても必要だと思うわけでございます。  日本の国鉄の資本金が現在四千五百十一億ということで非常に少ない。昭和二十四年の発足のときに、現在の日本国有鉄道法によりますると、第五条によりまして、資本金というものはそのときの資産をもって評価をしているという経緯があるわけでございますが、四十二年まではほとんど八十九億という形でふえなかったわけでございます。その後若干の時期に急速にふやしたわけでございますが、しかし五十年以降はふえていない。ところが、現在二万一千キロと言われております営業キロ、ここでいろいろ学者先生方の御意見なんかを聞きますと、私鉄と同様に資産評価をすると約十二兆円ぐらいはあるだろうと言われているのですけれども、資本金をそのような感じで評価することが必要なのではないかというように私思っておるわけでございますが、いかがなものでしょうか。
  128. 山口孝

    ○山口公述人 最初におっしゃいましたヨーロッパの先進諸国のいわば会計制度のあり方、これは大いに見習わなければいけないと思います。御承知の西ドイツでは区分会計というのをやっておりまして、企業的領域、日本で言えば新幹線、これは企業として競争させる。それから地方ローカル線のような公共的な領域についてははっきりと区分を設けて国が補助をしていく、これは公共性を持ったものだということでやります。それから最後に国家的領域として、今おっしゃいましたインフラストラクチャーといいますか、基礎的施設については国が出資をしてやる。こういう形で、このやり方でいわば内容を発表すれば、新聞社もあらゆる人の共感を得て非常によかった、こういうふうに言っているわけでありますが、それが日本の場合には、すべてこれが民営化されていくということで自民党で今回法案ができるということは非常に残念で、やはり今なお公共的な領域もありますし、国家が道路と同じようにやらなければいけない領域もあると思いますが、これがすべて民営化ということは非常に残念だ、こんなふうに考えております。  それから後段でおっしゃいました過小資本の問題は御承知のとおりでありまして、戦後発足時の資産が資本金になっている。その後若干出資がありますが、ほとんど微々たるもので、あとは多分昭和三十二年に資産再評価をしまして、これが資本準備金という形で積み立てられている、こういうようなことだけで、あとはない。で、政府、運輸省、国鉄が考えましたのは、もうかったときにそのもうけを造成資本という形で資本に入れていけばいい、こういうことでありましたが、それができない形で、梅田委員がおっしゃったとおりであります。  そこで、一体十一兆円か十二兆円かということですが、これはもう御承知のとおり、国鉄の資産は非常にたくさんありますし、今回新幹線保有主体をつくるというときに、現在の取得価額で評価がえをすると膨大ないわば資産になる、これを資本に直していけば当然十二兆円、十三兆円は出てくるわけであります。重要なのは、こういう膨大な含み資産、これは土地だけではありませんで、そういう路線とか軌道とか施設、これも含めて、あるものを、三島については簿価、それから関連事業については負債もつけないで無償で分けてしまう。それからいわば本州の三会社についても簿価でいく。そういう資産再評価ということをやらない形で分割されるというのは、国民の財産である国鉄を経済界、財界のいわば食い物にしてしまうということで、非常に残念だと考えております。
  129. 梅田勝

    ○梅田委員 最後の御質問でございますが、石先生、岸本先生にも同じ質問についてお答えをいただきたいと思うわけでございますが、今も明らかになっておりますように、国鉄の含み資産というのは七十兆、八十兆とも言われておりまして、正確にはわからない。確かに、一方で二十二、三兆の借金がある。今後三十七兆三千億にまで膨れるというお話があるわけでございますが、いずれにしても、まだ相当の資産を持っていると言われておりますものを非常に安く分割・民営して、いわゆる民間に払い下げていく、いわゆる民活論によって立て直そうというものでありますが、これについてどのようなお考えを持っておられるか。  また、ことしの予算で、従来凍結をされておりました大規模プロジェクト、整備新幹線も東北延長の問題もございますし、北陸や九州の調査費等もつけるということで、百七十八億ばかりのお金が予算化されてきておるわけでございますが、かつてそういったことを野方図にやってきて、財政赤字をつくり出して国鉄のかぎ括弧つきの「破産」というものが生まれてきておるわけでございますが、同じ轍を踏むのじゃないか。そういう点で、今回予算の中で組まれたような、整備新幹線だけじゃございませんが、東京湾横断道路もございますし、本四架橋の明石大橋の問題もございますし、そういった問題ですね、いわゆる民活を口実というか民活といううたい文句で実は大企業奉仕の工事を進めていく、最後のツケだけは国民に回ってくる、こういうあり方についてお考えを三人の先生方に順次お願いしたいと思います。
  130. 山口孝

    ○山口公述人 私に質問が集中しましたので簡単にしますが、やはり国鉄はもう百年以上を経過する。長い間国民の国鉄として機能して、国民がいわば路線、駅に住みついてきた。そういう中で巨大な財産があるわけでありますが、これをいわゆる民活ということで分割をしてしまって、それが二十四の会社に分割されますが、貨物会社を含めた七会社が中心でありますが、これに渡ってしまう。これは地方の財界あるいは不動産、建設業者にとってはもうけの機会を大いに与えられるわけで非常に喜ばしいことなんですけれども、それで国民に残ったのは十六・七兆円というような負債であります。それから労働者は三分の一削られる、こういう大変な苦痛のもとで財界が喜ぶ、こういうようないわば分割・民営化はすべきでない、全国一元の公共国鉄を守るべきだ、こう考えております。
  131. 石弘光

    ○石公述人 私、国鉄の専門家ではございませんのでどのような御返事ができるかわかりませんが、素人として考えていることを一、二述べさせていただきます。  国鉄の資産の計算の仕方がずさんであるという点はあるのかもしれません。また再評価すればうんと出てくるなら、それだけ国民の負担がかえって少なくなるわけでありますから、その辺はもっと明るみに出していろいろ計算をされたらいいと思います。  ただ、資産を持っているから国鉄の再生というのができるかどうかということになりますと、私はかなり懐疑的でございます。つまり、過去の国鉄のいろいろな経営の仕方等々の破綻というのがいろいろな組織面から出てきたのだろうと思いますし、結論的には私は分割・民営は賛成でございます。いろいろな組織の再活性化ということに対してはかなりいろいろな荒療治も必要と思いますし、やはりある程度の最低規模というものが組織の維持には必要でございますし、あるいは経営規模にも必要でございまして、そういう意味ではやはり分割しておのおの競わせて、そして民営という形の血を入れるのは必要でございます。国鉄の最大の問題は公共性というものに対してあぐらをかき、放漫的ないろいろなことがあったということに尽きていると思いますので、そういう意味からは、このような非常手段とも思われるようなことをとらない限りはちょっと私は再活性化は無理であると考えております。  それから、大型プロジェクトが復活していろいろな問題が出るというのはまさに私も心配している点でございまして、どこまで新幹線網をこの狭い日本に張りめぐらすのが必要かというのはじっくり考えてみなければいけないのではないか、そういう意味ではこの辺について私は甚だ消極的であります。
  132. 岸本重陳

    ○岸本公述人 簡単にお答え申し上げます。  私は、大型プロジェクトよりはもっと地域に密着した小さなさまざまな計画の方がかえって効率がよく、経済的に意味のあるものになるのではなかろうかと考えております。内需拡大のためにもその方がいいと強く思っております。  それから国鉄問題でございますが、国鉄をここに至らしめた根本的な諸原因の剔抉なしに分割・民営を図ってもそれは問題の解決にはならない、むしろかえって災いを残すのではないかと思います。  日本が国有鉄道を持つべきか否かを明治の初めに議論しましたときに、賛成派の大隈重信に対して反対派の岩倉具視がかように申したことがあります。鉄道という字をよく見てみろ、かねへんに失うと書いて金を失うの道である、よってかようなものをつくる必要はない、こういう反対論が出たことがございます。私は日本国有鉄道が長い歴史を通じて金を失ってきたとは思っておりませんが、今度の分割・民営を通じて、今度は国民の側がさまざまな利便を奪われて国民の側が金を失うことになりはしないかと深く恐れております。
  133. 梅田勝

    ○梅田委員 どうもありがとうございました。  以上で終わります。
  134. 小渕恵三

    小渕委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  以上をもちまして公聴会は終了いたしました。  次回は、来る十七日午前十時より委員会を開会し、総括質疑を行います。  本日は、これにて散会いたします。     午後四時四分散会