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1986-03-05 第104回国会 衆議院 予算委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年三月五日(水曜日)委員長の指名で 、次のとおり分科員及び主査選任した。  第一分科会皇室費国会裁判所会計検査  院、内閣及び総理府所管経済企画庁、環境  庁、国土庁を除く)並びに他の分科会所管以  外の事項〕    主査 大村 襄治君       小渕 恵三君    浜田卓二郎君       稲葉 誠一君    岡田 利春君       二見 伸明君    大内 啓伍君       瀬崎博義君  第二分科会法務省外務省及び大蔵省所管)    主査 伊藤宗一郎君       中島源太郎君    平沼 赳夫君       大出  俊君    近江巳記夫君  第三分科会文部省及び自治省所管)    主査 大西 正男君       石原健太郎君    原田昇左右君       川崎 寛治君    池田 克也君       梅田  勝君  第四分科会厚生省及び労働省所管)    主査 葉梨 信行君       野上  徹君    橋本龍太郎君       林  義郎君    井上 一成君       神崎 武法君  第五分科会総理府環境庁)及び農林水産省  所管〕    主査 武藤 嘉文君       柿澤 弘治君    倉成  正君       井上 普方君    佐藤 観樹君       草川 昭三君    小平  忠君  第六分科会総理府経済企画庁)及び通商産  業省所管〕    主査 上村千一郎君       田中 龍夫君    長野 祐也君       渡辺 秀央君    多賀谷眞稔君       松浦 利尚君    古川 雅司君       吉田 之久君  第七分科会運輸省及び郵政省所管)    主査 相沢 英之君      小此木彦三郎君    久間 章生君       上田  哲君    東中 光雄君 第八分科会総理府国土庁)及び建設省所管〕    主査 住  栄作君       浜田 幸一君    森田  一君       川俣健二郎君    木下敬之助君     ————————————— 昭和六十一年三月五日(水曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 小渕 恵三君    理事 中島源太郎君 理事 浜田 幸一君    理事 林  義郎君 理事 原田昇左右君    理事 渡辺 秀央君 理事 稲葉 誠一君    理事 岡田 利春君 理事 二見 伸明君    理事 吉田 之久君       相沢 英之君    伊藤宗一郎君       石原健太郎君    石原慎太郎君       上村千一郎君   小此木彦三郎君       大西 正男君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    倉成  正君       砂田 重民君    住  栄作君       田中 龍夫君    葉梨 信行君       橋本龍太郎君    原田  憲君       三原 朝雄君    武藤 嘉文君       村山 達雄君    山下 元利君       井上 一成君    上田  哲君       大出  俊君    川崎 寛治君       川俣健二郎君    佐藤 観樹君       多賀谷眞稔君    松浦 利尚君       池田 克也君    近江巳記夫君       神崎 武法君    大内 啓伍君       木下敬之助君    小平  忠君       瀬崎 博義君    東中 光雄君       松本 善明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         通商産業大臣  渡辺美智雄君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 加藤 紘一君         国 務 大 臣         (科学技術庁長          官)      河野 洋平君  出席政府委員         内閣官房長官 唐沢俊二郎君         内閣法制局長官 茂串  俊君         内閣法制局第一         部長      工藤 敦夫君         国防会議事務局         長       塩田  章君         防衛政務次官  北口  博君         防衛庁参事官  瀬木 博基君         防衛庁参事官  古川 武温君         防衛庁参事官  千秋  健君         防衛庁参事官  筒井 良三君         防衛庁長官官房         長       宍倉 宗夫君         防衛庁防衛局長 西廣 整輝君         防衛庁教育訓練         局長      大高 時男君         防衛庁人事局長 友藤 一隆君         防衛庁経理局長 池田 久克君         防衛庁装備局長 山田 勝久君         防衛施設庁長官 佐々 淳行君         防衛施設庁総務         部長      平   晃君         防衛施設庁施設         部長      宇都 信義君         防衛施設庁建設         部長      大原 舜世君         防衛施設庁労務         部長      岩見 秀男君         経済企画庁調整         局長      赤羽 隆夫君         科学技術庁研究         調整局長    内田 勇夫君         国土政務次官  白川 勝彦君         国土庁長官官房         会計課長    斎藤  衛君         国土庁地方振興         局長      田中  暁君         外務省アジア局         長       後藤 利雄君         外務省北米局長 藤井 宏昭君         外務省経済協力         局長      藤田 公郎君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      中平  立君         大蔵省主計局長 吉野 良彦君         国税庁次長         国税庁税部長         事務取扱    塚越 則男君         国税庁調査査察         部長      日向  隆君         通商産業省通商         政策局長    黒田  真君         通商産業省貿易         局長      村岡 茂生君         通商産業省産業         政策局長    福川 伸次君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      大内  宏君     ————————————— 委員異動 三月五日  辞任         補欠選任   石原慎太郎君     平沼 赳夫君   奥野 誠亮君     柿澤 弘治君   砂田 重民君     長野 祐也君   原田  憲君     久間 章生君   三原 朝雄君     野上  徹君   村山 達雄君     森田  一君   山下 元利君     浜田卓二郎君   正木 良明君     古川 雅司君   矢野 絢也君     草川 昭三君   松本 善明君     梅田  勝君     ————————————— 本日の会議に付した案件  分科会設置に関する件  昭和六十一年度一般会計予算  昭和六十一年度特別会計予算  昭和六十一年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 小渕恵三

    小渕委員長 これより会議を開きます。  この際、分科会設置の件についてお諮りいたします。  昭和六十一年度総予算審査のため、八個の分科会を設置することとし、分科会の区分は  第一分科会は、皇室費国会裁判所会計検査院、内閣総理府(ただし経済企画庁環境庁及び国土庁を除く)並びに他の分科会の管以外の事項  第二分科会は、法務省外務省大蔵省所管  第三分科会は、文部省自治省所管  第四分科会は、厚生省労働省所管  第五分科会は、総理府環境庁)、農林水産省所管  第六分科会は、総理府経済企画庁)、通商産業省所管  第七分科会は、運輸省郵政省所管  第八分科会は、総理府国土庁)、建設省所管 以上のとおりにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小渕恵三

    小渕委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、分科会分科員の配置及び主査選任、また、委員異動に伴う分科員補欠選任並びに主査辞任及び補欠選任につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 小渕恵三

    小渕委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次いで、お諮りいたします。  分科会審査の際、最高裁判所当局から出席発言要求がありました場合は、これを承認することとし、その取り扱いは、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 小渕恵三

    小渕委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  6. 小渕恵三

    小渕委員長 昭和六十一年度一般会計予算昭和六十一年度特別会計予算昭和六十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  外交防衛問題について集中審議を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上田哲君。
  7. 上田哲

    上田(哲)委員 再開に当たって、野党統一要求に対する政府・与党の御回答は甚だ不満でありますが、こうした回答につきまして総理はどのように誠意を尽くして実行されるのか。お考えをまず承っておきます。
  8. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 与野党間におきましていろいろ作業していただき、御労苦を煩わせまして一定の合意ができたことを非常に高く評価をし、また感謝もしておる次第でございます。政府といたしましても、あの合意をそのままいただきまして、実行していきたいと考えております。
  9. 上田哲

    上田(哲)委員 外交防衛集中審議でございますから、外交防衛に絞って、その他の問題はこの後の審議にゆだねることにいたします。  まず、当面の問題を承っておきたいのでありますが、フィリピン問題について若干お伺いをいたします。  政府アキノ政権承認されたわけでありますが、それはマルコス治世下法体系の中で主権を確立された政権として承認されたのでありますか。マルコス政権施政下の外で、法体系の外で確立された主権アキノ政権、つまり革命政権承認されたのでありますか。
  10. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは事実上、アキノ政権マルコス大統領の失脚によりまして生まれたという事実を踏まえまして、私の外務大臣談話ということで実際上の承認ということにいたしたわけであります。今お話しのように、純粋に法律的にこれを解釈するという立場になかったわけであります。とにかく国民の圧倒的な支持を得てアキノ政権が生まれたというこの事実というものを踏まえて日本としての立場をやはりはっきりしなければならぬということでありまして、いわゆるアキノ政権フィリピン憲法の枠内においてマルコス政権の後を受けて継承された形で生まれたのか、あるいは憲法枠外において生まれたのかということは、これは今もいろいろとアキノ政権内部でも議論もあるようでございますが、どういう手続を踏まれるかはこれは新政権の問題であろう、こういうふうに思っております。日本としては、とにかくとりあえず実際上の承認を与えた、こういうことにいたした次第でございます。
  11. 上田哲

    上田(哲)委員 大変不明確でありまして、マルコス治世下法体系のもと、つまりこれまでの憲法下で成立した主権政権なのか、そうでないのかということ。つまり、もっと端的に言えば革命政権であるのかどうかという認識をしっかり承っておきたいのであります。
  12. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この点については、実際上の承認をいたした段階においては明らかでなかったわけでありまして、例えばマルコス氏が脱出、亡命するに当たりましてアキノ政権との間にどういう話が行われたのか、話は行われたんじゃないか、しかし自分の後を継承してやってほしいというような形になっておるのかどうか、その辺のところは必ずしも明確でなかった。それから、議会が少なくともマルコス大統領を選んだわけですね。その議会手続が今後どうなっていくのかということも、これは現在に至るまでも明らかになってないわけですから、フィリピンアキノ政権がどういうふうに手続が踏まれるのかは新政権の問題であろう、こういうふうに思っておるわけであります。しかし、とにかく少なくとも実際的にはフィリピン国民意思を代表する唯一政府であるということは間違いないわけですから、その実態というものを踏まえて我々として実際上の承認に踏み切った、こういうことであります。
  13. 上田哲

    上田(哲)委員 なお不明確でありまして、旧憲法に基づくか新憲法をつくるかはフィリピン政府の問題ではありますけれども、そうしますと日本側としては、その憲法がこのままの憲法でいくのか新しい憲法をつくるかによって革命政府であるかそうでないかを決めるということですか。
  14. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはきのうの情報とか報道等によりましても、フィリピン議会追認措置をとるということも言っておりますが、一面においてはラウレル首相は、憲法枠外において成立した新政権である、こういうことも主張して、新しい憲法をつくるんだということも言っておられるわけで、挙げて、フィリピンの新政権がどういうふうに今後この新政権の形を決められるかということにかかっておるんじゃないだろうか。日本はとにかく今のアキノ政権というものがフィリピン国民フィリピンを代表する唯一政権であるということははっきり認識をいたしまして、その上に立った実際上の承認を与えた、こういうことであります。今後手続がどういうふうにとられるかは、これはフィリピン国民あるいはフィリピン政府の問題であろう、こういうふうに思っております。
  15. 上田哲

    上田(哲)委員 そうしますと、ラウレル氏が言うように九十日以内の所定の手続をとって新憲法が施行された場合には、改めて承認をするという手続が必要になるわけですか。
  16. 小和田恒

    小和田政府委員 ただいま外務大臣が御説明いたしましたところを若干法律的に補足してお答えしたいと思います。  外務大臣がお答えをしておりますように、新しい政権ができたときに国際法上、政府承認という行為が行われることになるわけですが、その政府承認と申しますのは、新しい政府国民の非常に広範な支持を得て実効的な支配をその国に及ぼしているというふうに一般的に認められるような状況において政府承認ということが行われるわけであります。そこで、今度のフィリピンにおける事態は事実関係においていろいろ複雑な面がございますし、私どもに必ずしもまだわかっていない部分がたくさんございますけれども、実態論として見れば、今度の政権交代アキノ大統領に対するフィリピン国民の広範な支持を背景として成立をした、こういう基本的認識がございまして、そういう認識に基づいて、政府としてはこれをフィリピンを代表する政府であるというふうに認め、これと正常な外交関係を維持していく、こういう決定をいたしたわけでございます。その決定を具体的には外務大臣談話という形で発表をしたわけです。  そこで、この外務大臣談話というものが、先ほど来外務大臣が申し上げておりますように、これは実際上承認をしたものであるというふうに考えていただいて差し支えないわけでございますけれども、法的な意味政府承認という行為を行うかどうかということになりますと、革命クーデター等、国の基本的な政体の変更が憲法枠外で行われるというような場合に政府承認というような明示的な行為を行うわけでございますけれども、今回の政権交代につきましては、先ほど申し上げましたような実態を踏まえまして、我が国としては新政権フィリピン国民を代表する、フィリピンを代表する政府であるというふうに認めて、これとの間の外交関係を維持発展させるということを決めたわけでございますけれども、その具体的な政権交代手続フィリピン国内法上どういう形で行われたか、あるいはこれからどういうふうに行われそれが追認されるかという問題は、これは基本的にフィリピン国内法の問題であるわけです。  そこで、フィリピン側がそれについてどういう態度をとるか、どういう法的な立場をとるかということは、基本的にフィリピンの新しく成立した政権議会等との関係におきましてどういうふうに成立するかという問題であるというふうに理解しておるわけです。日本に関します限りは、先ほど申し上げましたような実態を踏まえましてこれがフィリピン国民を代表する政府であるという認識を明らかにした、そういう意味でこれは実際上承認をしたものであるということを申しておるわけでございます。
  17. 上田哲

    上田(哲)委員 大事なことを答えてないのです。だから、新憲法がもしできるとすれば新たな承認行為が必要とされるのかということを聞いているわけです。イエスかノーか、ちゃんと答えてください。
  18. 小和田恒

    小和田政府委員 先ほど申し上げましたように、日本としては既にそのことに当たる行為を行っているわけでございますから、新憲法が成立したり、あるいはフィリピン国内において今後どういう法的手続がとられるかということによって我が国として新しい法的な行為を行う必要はないというふうに御理解いただきたいと思います。
  19. 上田哲

    上田(哲)委員 総理に御質問いたしますが、承認というのはこうした政権の異常な移行があったことによって行われるものですか。これはやはりクーデターだと私は思うのであります。したがって、これは革命政権承認されたということでなければそもそも承認手続は必要としないのでありますから、今回は革命政権承認されたのだ、したがって、向こう側国内手続としてどういうように法体系を改めようともそれは関係ないのだ、こういうことで今の説明と一致するのだろうと思うのです。御見解はいかがでしょう。
  20. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国際法上、外国にいろいろな変動があった場合にその承認との関係については、私は、国際法上はやはりその国民を代表して、領土、領空、領海を実効的に支配して、そして日本との関係においては、その国際条約を遵守する、そういう意思を表示し、かつ実効的支配を持続し、国民を代表すると認められる国民支持がある政権になってきた場合には、これを事実上あるいは実際上あるいは法的に承認するということがあり得ると思います。それが内部的に、法的にどういう正当性やら継続性を持っているか持ってないかという問題は、その国内でその国民議会政権が決めることであって、外にある我々といたしましては、そういう有効な実効的支配とかあるいは国民を代表する統治能力意思とかあるいは国際条約の遵守とか、そういう構成要件が整っておれば、これを黙示あるいは実際的な承認をする対象になり得るものであるのです。そういう点で、今回のフィリピンの変化に対しましては実際的にこれを外務大臣談話をもって承認した、そういうことをやっておるわけで、それがフィリピン国内においてどういう位置づけが行われるかということは、フィリピン国内でいずれ解釈されあるいは決定されるだろうと思います。ある場合には国会が、ある場合には最高裁判所やそのほかの、あるいは国民投票という形が行われるかもしれません。これはフィリピン国内で将来行われる問題で、その経過と新政府が行う見解を我々は見守っておって、そして、それが出てきた場合にこれをどういうふうに評価するかということはまた我々は別個に考えますけれども、実際的に承認しているという事実は動かすものではありませんから、それ以上の行為は必要ではないと考えております。
  21. 上田哲

    上田(哲)委員 それ以上の行為は必要でないことはわかりました。  それで私は、国際法上また日本外交立場としての御見解を、御認識を確認しておきたいのであります。承認という手続が行われなければならないのはある種の異常な政権交代があったからでありまして、したがって、今回の政変というのはやはり形態としてはクーデターであると思います。クーデターであるのではないか。そして、国際法上の認識としてはやはり革命政権である、それは向こう側憲法を変える変えないの問題ではないのだ、これは今の御見解でありますが、もう一遍繰り返しますと、向こうがどういうふうに、フィリピン自身がどのように法体系を改めるかどうかはフィリピン自身の問題だが、こちら側の外交上の認識として、国際法上の認識とあわせて、これはやはりクーデターであり、革命政権と見るのではないでしょうか。
  22. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 上田さんがそういうふうに解釈なさることは御自由であり、あるいは国際関係において相当数の学者や専門家はあるいはそういう解釈をなさるかもしれませんが、国家間における法的行為としての立場は今申し上げたとおりであります。
  23. 上田哲

    上田(哲)委員 それはいいのです。総理認識を承っておるのです。これは革命政権なのでしょうか、そうでないのでしょうか。
  24. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これはフィリピン政府あるいは国会あるいは裁判所等の結論、意思表示を待つで我々が考えべき問題である、内政干渉をすることは差し控えたいと思っております。
  25. 上田哲

    上田(哲)委員 そうしますと、フィリピンあり方から見るのだというあり方は、憲法を改めるか改めないかということが基準でありましょうか。
  26. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 フィリピン政府あるいは裁判所あるいは国会の正規の機関あるいは手続によってどういう措置がとられ、解釈が表明されるかということにかかっておるのでありまして、悪法云々という問題にはかかわりません。それは、大統領が交代して、今までの憲法を改正するという大統領もあり得ますから、正常な場合においても憲法改正ということはあり得るわけでありますから、そういうことのみによって判定すべきものではないと思います。
  27. 上田哲

    上田(哲)委員 そこで経済援助でありますが、明日からワシントン日米次官級の会談が行われます。ここでアーマコスト国務次官から明らかにフィリピンに対する日本援助増額を求められるということがもう打ち出されているわけであります。従来もアメリカ三八%に対して日本四五%、大変な援助をしているわけであります。この援助増額、これは椎名さんがお帰りになって、カンフル的援助ということも進言されたようでありますが、フィリピンのこの実情に対して援助増額ということはお考えの中にございましょうか。
  28. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今度ワシントンで行われますアーマコスト次官と我が方の梁井外務審議官協議はいわゆる次官級協議でありまして、日米間の外交全般について話し合うという定例的なものでございますが、しかし、その中で一環としてフィリピン問題が協議されることは、これはもう当然のことであろうと思いますし、両国ともその点については合意をしておりますから、議論は行われると思います。そういう中で援助問題も今のフィリピンの直面している非常に困難な経済状況から見れば当然議題になる、こういうふうに思っておりますが、それに関してアメリカアメリカ援助やり方がありますし、日本日本援助やり方があるわけでございますし、その点について我々としても日本立場十分説明をしたいと思うし、また、フィリピン経済の困難を解決するためにフィリピン政府要求に対しまして今後我々としてもこれに対して協力していくという姿勢で対応をしていかなきゃならぬ、こういうふうに考えております。具体的にどうだこうだというところまで議論が進むとは思いません。まだフィリピン政府自体ができて間もなくて、またそうした問題を話し合う態勢ができ上がっておらないわけですから、そういう状況が生まれたとき、日本日本なりに日比間で話し合いをしたいと思いますが、全体の大枠についてのそうした議論はして日本立場は伝え、それなりに表明をしなきゃならぬ、こういうふうに思っております。
  29. 上田哲

    上田(哲)委員 これはやはり前向きに考えるというふうに受け取ってよろしいわけですね。
  30. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 何としてもフィリピンは我々の友好国でありますし、そして経済はまことに苦しい状況でございますから、アジアの一国としての日本は当然フィリピンに対しまして積極的な協力はしなきゃならぬ、こういうふうに思っております。
  31. 上田哲

    上田(哲)委員 四五%という第一位の援助国が、今回の政変を眺めると、この援助というのは一体フィリピンの本当の役に立っていたのかどうかというのが大きな反省になっているわけでありまして、どういうふうな反省を今後され、そして今後どのような改善をこの援助の中で実施されていくのか。
  32. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 フィリピンに対する援助は我々として積極的にやってまいります。大体、開発途上国の援助の中では四番目ぐらいになるのではないかと思っておりますが、この援助は確実に続けてまいりましたし、私は、その援助フィリピン経済の安定あるいは国民生活の向上のためにはそれなりに裨益したものである、こういうふうに考えておるわけでございます。  しかし、今日なお状況は非常に厳しいわけでございますから、フィリピン政府と十分話し合って、日本のこれからの援助をどういうふうな形で行うことが最もフィリピン経済の安定、国民生活の向上に資するかという点を基本的に踏まえてこれから話し合いをしてまいりたい、こういうふうに思います。
  33. 上田哲

    上田(哲)委員 これまでのやり方にかなり反省があるというふうに受けとめて、せっかく御努力をいただきたいと思います。  SDIでありますが、慎重に対処すあというお話がずっと続いておりましたが、このところ慌ただしく、いよいよ日本も民間主導の形ながら参加の意思表示をするのじゃないかというふうに伝えられているわけでありますが、これは総理、そのような御意向でございますか。
  34. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 SDIにつきましては、前から申し上げますように理解を示しておきましたが、二次にわたりまして調査団を派遣いたしました。しかしまた、さらにもう少し研究、調査を必要と思っております。そういう意味におきまして、近く、でき得べくんば民間人等も入れた調査団を出したいと思っております。それらの結論、意見等もよく踏まえまして引き続いて検討していきたい、そう考えております。
  35. 上田哲

    上田(哲)委員 これは従来の御答弁から大変進んだ印象を私どもは受け取るわけでございます。早ければ三月中、今月中に調査団が出る。三回にわたる調査団ということになれば、かなり本腰ということになるわけですし、伝えられているところでは、それを受けて、ある段階で外務大臣からワインバーガー国防長官に書簡が伝達されるというふうに言われております。そのような心組みでいらっしゃいましょうか。
  36. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 調査団を派遣いたしましていろいろな検討をした上でそれは考うべき問題で、まだ白紙の状態で、決まっておりません。引き続いて検討しているという状態で、新聞記事を見まして、どうしてこういう記事が出たのかなと思いました。
  37. 上田哲

    上田(哲)委員 昨年の三月二十七日、ワインバーガー国防長官から十八カ国に、六十日の期限つきで参加の要請がございました。実際にこたえかのは目下イギリスだけでありますから、若干の交渉中の国々はございますが、まあ事実上これは六十日という数字から考えても自然消滅をしたものだというふうに思っておるのでありますが、この現状認識、そして、もし何らかの書簡を出されるとすれば、これに対する返書なのかあるいは別なものなのかという点はいかがでございましょうか。
  38. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 六十日という一応の期限つきでワインバーガーさんから私に対しまして手紙が来たわけでございますが、何といってもSDI自体が非常に長期的な課題でありますし、日本としても十分まだまだ検討しなきゃならない点があるわけでございますから、六十日と言われてもそう簡単にはいかないということについてはアメリカ側にもその旨も伝えまして、アメリカ側もその辺は十分承知をいたしておるところでございます。したがって、アメリカもそうですし、我々も六十日という一応の期限にはとらわれないで、その後、日本日本なりに検討を進めておるわけでございますが、一応回答は求められておるわけですから、六十日はとうの昔に過ぎましたけれども回答としてはそれはしなきゃならない、それがいつになるかということは日本なりに方向を決めた段階においてやればいいんであろう、こういうふうに思っております。
  39. 上田哲

    上田(哲)委員 未定だというのが基本のお考えのようでございますが、まだ調査団三回目は未定であって決まっておらぬと言われたのに比べると、はっきり、近く出す、そしてまた消滅されていたと思われた十八カ国への六十日以内の要請もやはり消滅していなくて、何らかの形でこたえなきゃならぬというふうなお二人の御答弁を承ってみると、やはりこれまでのニュアンスよりはかなり進んでいるな、これは率直に受け取るところであります。したがって、私は国会の答弁は大変大事だと思いますので、再々お伺いする機会がないから、未定であると言われれば、ひとつ懸念をしっかり晴らしておきたいといいましょうか確認しておきたいので、未定というのがいつまで未定なのか、今直ちに参加の意向がないのだという意味の未定であられるのなれば、総理、例えばサミットまではそうした意思表示はあり得ない——私どもは基本的に反対でありますけれども、サミットまではそういうことがないのだというようなことでもないと、きょうの未定はあした未定でなくなるということになっては大変国会論議は意味を持たない。非常に重要な問題でありますから詰めて伺いますが、例えばサミットまでは未定という状態が続くであろうというような見通しは承れるのでありましょうか。
  40. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 前にも申し上げましたように、別に期限は切っておりません。要は、こちらの調査が完了するかどうか、そういうことにかかってきておると思います。
  41. 上田哲

    上田(哲)委員 これは私は非常に不明確だと思うのであります。つい先目まで、三回目の調査団も行かないだろう、行くとは決まってないと言われていたのが突如行くことになる。このまま国会審議の中で末定だと言われて、時間を経ずして急に決まったということになっては論議がむだになるのであります。少なくともある時期までは、期限とは私は申し上げませんし、また私どもは賛成ではありませんけれども、今決まってないということは、国会論議の神聖さからしても、例えば俗に言われている東京サミットまでに決めるんじゃないか、そういう懸念はないのでしょうか、明確にしていただきたいのです。
  42. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 期限も切ってませんし、今おっしゃったこともまだ未定の状態で、ともかく調査団を派遣して、よく詰めて、いろいろ疑問の点やあるいはアメリカ側の将来の考え方等もよく確かめた上で判定をしなければならない、今そういう検討を続行中である、このようにお考え願いたい。別に期限を切っておるわけではございません。
  43. 上田哲

    上田(哲)委員 期限が切れないのは大変残念であり不安でありますが、そうしますと、今までの文脈をたどると、返答もしない、すべてスケジュールは決まっていない、今後の検討にゆだねるということの中からだんだんニュアンスが変わってきた今日としては、期限を切って、どうもサミットまでに何らかの意思表示をされるのではないか、民間主導だという形であるにしても、政府の何らかの取り決めが必要だと言われている常識からすると、今の総理の御答弁は、どうもやはりこれまでよりはぐっと強く参加の方向に傾いた、こういう印象を持たざるを得ないのでありますが、いかがでしょうか。
  44. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 従来も調査をやっておりまして、いろいろ内容はどうなるんだろうかとか、あるいは技術的な問題点とか、あるいはそのほかの、例えばドイツの場合では、所有権あるいは特許権、そういうものはどういうものになるのだろうとか、もし参加した場合のいろいろな問題点をドイツはきわめておりますね。日本はまだそういうようなこともやっておらぬわけです。そういう意味におきましてももっといろいろ検討すべき項目がございまして、それらについてもっとよくきわめた上で最終判定をしようというので、いつまでにやろうというような期限を切っておるわけではありません。
  45. 上田哲

    上田(哲)委員 大変くどいようでありますけれども、それでは話を逆さまにいたしまして、それでは、何らかの決定をするためにはどんなことを今後考えなければならないか、どれくらいの期間がなければならないか。いかがでしょうか。
  46. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは、今後また調査団を出した上で、どういうような調査の結果が出てくるか、そういうものを見た上で判定すべきものでありまして、今から予断を持って、いつまでにどうするかというようなスケジュールが決まっておるわけではございません。
  47. 上田哲

    上田(哲)委員 大変くどいようでありますが、そうしますと、私は、総理のお答えのニュアンスとしては、これまでよりは相当強く参加の方向に傾いておられるという印象をやはり受けざるを得ないのでありますが、そのような印象は誤りですか。
  48. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 前よりは研究、調査は進んでいるわけでありますから、調査団二回も行っているわけですから、ですから一年前、半年前よりは調査、研究も進めておられる、そういうことは言われますけれども、私は非常に慎重な態度を持しておりまして、検討を続けておると、そういうことを申し上げて、これはもう一貫して申し上げているので、あなたは何か非常に切迫したような印象をお持ちかもしれませんが、私の御答弁は前とちっとも変わっていない、そう思います。
  49. 上田哲

    上田(哲)委員 御答弁は大変変わっているのでありまして、これ以上は水かけ論になりましょうが、印象論で申し上げているつもりはありません。私どもはSDIの参加は反対でありまして、そのために国会の論議が誠実にくみ上げられなければならない、国会の御答弁は慎重であり、そしてある日突然ということが決してないように強く求めておきたいと思います。  さて、せっかくの集中論議でありますから、私はできるだけ基本的な問題について総理の御見解を承っておきたいと思います。  今日の日本の軍事体制というのは、私は大変大きないわば跳躍点といいましょうか、国民にとっては大変大きく考えなければならない時点に立っていると思います。一次防から四次防まで列強を目指してひた走りに進んできた時期、それから自前の防衛力構想といいましょうか基盤的防衛力構想の大綱を設定した時期、そして今、日米軍事体制の本格段階に入ろうとする時期、幾つかに分けることができますけれども、極めて簡単に詰めて言えると思うのは、いよいよここへ来て日本の軍備体制は大綱を超えるところへ来ているんだ、大綱をしっかり守るんだと言われますけれども大綱を超えるところへ来ているんだ、もっと砕けて言えばこれから先どこまでいくのだろうかという国民の不安だろうと私は思います。これは大綱によって、言うならば限定・小規模、日本列島守備隊論が完成をしたというふうに説明される一方で、実はそれよりも日米軍事体制の本格化、もっと言えば北西太平洋の共同軍事体制に踏み込んでいく、こういう形がぐんぐん進められております。現にこの国会、予算委員会が進んでいる間でも、例えば北海道上富良野で陸上自衛隊と米軍、瀬戸内海の周防灘では海上自衛隊と米軍、新田原では航空自衛隊と米軍の共同訓練が進んでいる。また二月二十四から二十八日には統合指揮所演習、これは初めてのものでありまして、統幕議長と在日米軍司令官がそれぞれ統括をして、四百名に余るこうした指揮官が防衛庁本部や在日米軍司令部あるいは第七艇隊司令部も含めて初めての大規模な指揮所演習をやっている。さらにこれから先も、例えばリムパック86、これはイギリスも参加するNATO型になります、あるいは航空自衛隊は月に一回の戦闘機戦闘演習も行う、さまざまこれまでにない段階に踏み込んでいるというのが今日の姿であります。  この中で、特に今国会に向かって特徴とさるべきものは、政府防衛論争についての拡大解釈をぐんぐん進めていく。例えば非核三原則についての事前協議、随時協議の発議権がない、あるいは軍事技術供与の枠外し、あるいは軍事情報、一千海里の米艦護衛の問題、どんどん集団自衛権の枠を踏み外して拡大解釈をしていく、これが第一。もう一つは、それに対して非常にかたい秘密主義、統中、統長あるいは年防あるいは日米共同作戦計画、シーレーンの共同研究あるいは先ほど来申し上げた指揮所訓練、統合指揮所演習などという初の内容の深いものについても全く私たちには知らされることがない。  私は総理に申し上げたいのだが、こういう形というのはまさに国会のシビリアンコントロール機能が全く失われてしまう、これは非常に危険なことだと思います。場合によってはいわゆる軍独走ということを許してしまう懸念もなしとしない。シビリアンコントロールとは国会の論議だと私は思うのでありますが、国会はこの激しい拡張解釈と秘密主義の中ではまともに論議の場がないわけであります。シビリアンコントロールが大変閉塞状況にあるということを心配したいのでありますが、総理はその見解、いかがでございましょう。
  50. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 シビリアンコントロールは十分効いていると思います。シビリアンコントロールの第一次は政府及び国防会議、そういうもので厳重にチェックしておりますし、それから根源的には国会というところで、最終的には国民、こういう幾段階かをもちましてシビリアンコントロールは行われておる。特に国民の場合におきましては、日本のジャーナリズムは非常に発展、発達して情報も詳しい状況でございますから、国民にもかなり知らされている面もあると思います。  政府といたしましては、防衛庁内部において、それから政府全体としても、逸脱しないように厳重に監督もしておるところでございます。  国会との関係におきましては、行政府と立法府という関係でございまして、行政府としては執行上の細目についてまでも全責任をしょってやっておるわけでございますが、執行上の細目や具体的事項というものの中には機微な機密を要する部分もかなりあるわけでございます。そういう面から公表できない。これは、国会に公表できないのみならず政府内部においても公表できない、知らしてはならない、そういうものも多々あるわけでございまして、そういうものについてはこれは御容赦願わざるを得ない。それ以外許す範囲のことは国会の皆様方にも御要求に応じて提示申し上げている次第で、それはシビリアンコントロールは十分に働いておる。まず第一に予算統制という面が一番大きな力を持っているのではないか、そう思います。
  51. 上田哲

    上田(哲)委員 全く事実はそうでないのでありまして、最後に言われた予算統制こそ一%の問題であります。私は、中期防衛力整備計画というもの、そしてそれが北西太平洋の日米共同軍事同盟体制の本格化というもの、そしてそれをどうしても遂行していくために一%というのが全く踏みにじられていくという状況こそ問題だと思っているわけでありまして、まず第一は、予算統制であるとおっしゃる一%をそれならば何よりも守るべきであります。一体どこへこの軍事体制が進んでいくのか全くわからない。国会は十分論議ができるとおっしゃるが、本当に資料が全く出なくなってしまっているという今日の状況はかつて見ないものであります。一%というのは、そういう意味で私たちは非常に大事にしてきた唯一の、最後の数量的規制である、このことを申し上げているのだが、全く言葉じりとコンマ以下の小数点の問題に歪曲化されているということを私は残念に思います。  今回の与野党交渉の中でも、「一%枠を守ることに最善を尽くす」というようなわけのわからぬ言葉でありまして、私どもは、このことは、日本語の正当な感覚からいえば、多分守らないぞというふうに訳すのが本当ではないか。私どもがそこに向かって懸命に攻め寄せていく数字上の問題は、一円超えたら軍事大国化になるという極めて低次な表現によって打ち返されてしまう。したがって、水かけ諭になるということを避けざるを得ないのであります。  私は観点をかえて一つ伺います。数字の問題や水かけ論はやめます。河野大臣に伺いたいのです。  私は率直に申し上げて、将来を誠実に語り得る友人としてあえて御答弁をいただきたいのでありますが、もはや一%問題、軍備膨張の基本的な危険の問題は、理性的な論議であるよりも力関係の結果であるにすぎないところへ来ています。そういう意味で言えば、あなたの新自由クラブが、そちら側ではなくてこちら側に立たれれば変わるのであります。  先般、新自由クラブの大会において、党首であるあなたが、「(中曽根首相の)政治手法には時として米国の影響が色濃くにじみ出たり、戦後、営営として築いてきたわが国の平和国家路線が変わりそうな不安を国民が抱くこともあり、そうした懸念に歯止めをかけなければならない」ということを大会で宣明をされたのであります。そのためには、非核三原則や武器輸出三原則、防衛費の国民総生産、GNP比一%枠の堅持等々が非常に重大な問題だということも言われた。それを閣内で歯どめしていくと言われた。私は、力関係の結果としての一%突破という実情を見るならば、あなたが閣内ではできないのではないか、あえて閣外に出ででも、その問題を大事にされるならば、政治力学を変えられることが正しいと思うのですが、閣内で歯どめをされるということは一体どのようにされるのか、伺ってみたいのです。
  52. 河野洋平

    ○河野国務大臣 先ほど来からの上田議員の御発言を伺っておりまして、上田議員が今の国会論議に多少のむなしさみたいなものを感じておられる、そんなふうに私は受けとめたのですが、私は決してそうではないと思います。  野党の方々のこの国会における論戦が、先ほど総理からもお話がございましたように、国防会議を初めとして政府部内においても、防衛問題に対する議論の中にやはり影響を与えているというふうに私は思うわけでございます。もし国会での野党のこの問題に対する十分な御発言がなかったら、じゃ一体どうなっていたかということを考えますと、国民のかなりの支持を担っておられる野党の方々がこの予算委員会を初めとして国会の中で議論をしておられるその議論が必ず政府議論の中に反映されている、その反映の度合いがどれだけあるかということはいろいろあると思いますけれども、私は反映されているというふうに思っているわけでございます。上田議員と私との多少の考え方の違いがあるとすれば、野党の側に立ってここで議論をすることがより多く反映されるか、閣内に入って少なくとも閣議に列席して、そこでいろいろ話を聞き、発言の機会を得ることの方がより多く反映されるかという判断の問題であろうと思います。  多少長くなって御無礼をいたしますが、私どもは新自由クラブとして、かつて野党で皆さん方と同じ席に座っていたことがございます。その当時、野党の中におる新自由クラブの発言権は、野党の社会党の発言権に比べれば野党の新自由クラブの発言権はじゃどれだけあったか。野党統一要求を言うときにも、新自由クラブとしての要求野党統一要求の中でじゃどの程度に扱われていたか、野党内の議論の中で。ということを考えますと、野党統一要求の中に、野党としての新自由クラブがこういうことも要求してもらいたいと言ってお願いをしたときと、今閣内に入って我々が主張をするときと、どちらが新自由クラブの考え方をより大きく政策その他に反映をすることができているかというと、私は現在の方がより大きいという判断をしておりまして、上田議員の先ほどの御質問にお答えをさせていただけば、閣内において、私は、これから党の考え方をしっかりと背中にしょって発言をさせていただくという覚悟で、閣内に今入っているということを申し上げたいと思います。
  53. 上田哲

    上田(哲)委員 私はむなしいなどとは思っておりません。我なくんば大変危険なところへ行く道を精いっぱい防いでいるという自負を持って闘っておりますから、その点は御友情には感謝いたしますが。お答えいただきたいのは、新自由クラブの立場をあえて云々するつもりはありません。あなたが新自由クラブという政党を責任者として背中に負いながら、一%を守るということを言っておられるのは間違いではないか。一%は、守るならば外に出るべきだ、中にいて守るということは、結局一%突破に力をかしていることにしかならないではないかということを私は申し上げているので、中にいて歯どめができるということはあり得ないだろう、私はそう言いたいのです。  もう一遍繰り返しますが、未来を語り得るあえて友人として、私は誠意あるお答えをいただきたい。あなたにとってやはり未来の言葉としてこれがつながる答弁であると思います。しからば一言、一%がどうしても大事だ、他のいかなる問題に比べても第一義的に大事だと言われているあなたが、一%が中曽根内閣によって、自民党内閣によって突破されるときには閣内にとどまられるべきではないと考えるのですが、いかがですか。
  54. 河野洋平

    ○河野国務大臣 自民党の議員の方々の中にも一%問題を非常に重要に考えておられる議員の方々が大変多くいらっしゃるということは、上田議員も感づいておられると思います。私も、自民党の方々とお話し合いをして、非常に一%問題を重要に考えておられる方がおられるということを確認をいたしております。したがって、そうした方々ともより多く語り合いながら、この問題を大事にしていくということが必要だというふうに思っておるわけでございます。  で、上田議員から非常に端的なお尋ねがございましたが、一%問題というのは、私にとってと申しますか、新自由クラブにとりましても非常に重要に考えておるわけでございます。したがいまして、昨年来もこの問題が政府・自民党周辺でいろいろ語られたときにも、私は誠意を持って、この問題は大事にしてもらいたいということを連立与党の一員として自民党の皆さん方にも申し上げて、まあそうしたことが決定的であったかどうかはいろいろ評価は分かれると思いますけれども、私どもの力としては精いっぱいの主張をして、昨年のああした議論はクリアされたというふうに私は考えているわけでございます。これから先も私は、自分の能力の最大限、この問題については申し上げていきたいというふうに思っております。(上田(哲)委員「閣内にとどまりますか」と呼ぶ)閣内にとどまるか、とどまらないかはそのときの状況があると思います。この問題が唯一最大の問題であるのか、あるいはその他さまざまな状況というものも考えなければならないというふうに思います。
  55. 上田哲

    上田(哲)委員 総理総理は戦後の総理の中で一番色鮮やかな総理だと私は思うのです。大変意見を鮮明にされるという点では出色だと思います。戦後の総決算ということには私どもは賛成ではありませんけれども、さまざまなごまかしと言ったら言葉は間違いでありますけれども、あいまいさというものを整理されてきたという点があります。  私は、今その点の一つとして、自衛隊は今や堂堂たる軍隊ではないのか、この点をはっきりさせていただきたいと思います。専守防衛であるとか、あるいはどの国でも国防軍と言うのでありまして、攻撃軍とか侵略軍とか言っている国はどこにもないのであります。専守防衛というようなことが軍隊であるかそうでないかの区分にはなりません。いろいろな定義がありますから、そんな定義を全部出すことはありませんが、やはり私がずっと調べてきた中で言うと、一番妥当だと思われるのは、宮沢俊義さんの定義がございますから、これを仮に取り上げますと、「軍隊とは、外敵の攻撃に対して実力をもって抵抗し、国土を防衛することを目的として設けられる人的および物的手段の組織体をいう。」大体これは私は正しい定義だと思います。もっと言えば、「軍隊にふさわしい内容」というのは、「その組織体の人員(数が多いか少ないか)・編成方法(階級的秩序の性格と程度)・武器(ピストル・大砲・飛行機そのほか)・訓練ないし教育(外敵との戦闘行為のためのものかどうか)および予算などの諸要素」による、これは私は大体正しいと思います。こういう定義や考え方に立ては自衛隊は当然軍隊ではないか。なおかつこれを軍隊と呼ばないのでしょうか。
  56. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 自衛権を保障するに足る一種の組織的防衛力である、そして現在の自衛隊は限定・小規模、非核の事態に対して独力で対応できる、そういう力を整備しつつある防衛力であって、日本憲法における軍隊、「陸海空軍」というものに相当するものではない、日本日本で独特にそういう組織的防衛力を持っている、そのようにお考え願いたいと思います。
  57. 上田哲

    上田(哲)委員 今私が持ち出しました極めて妥当な定義に自衛隊はぴったりはまっていると思うのです。はまってないということですか。
  58. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これはもう長い間の論争がございまして、憲法ができて、それから吉田内閣のころいろいろ大論争がございまして、そういう経過を踏まえ、また最高裁判所の判決もございまして、そういうものによりましてもある意味においては認められておる組織的防衛力である、そういうふうに考えております。
  59. 上田哲

    上田(哲)委員 今回もまた余り色鮮やかではありません。名前だけ軍隊と呼ばないということになりますか。
  60. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国際的にどういういろいろな性格のものがあるのか存じませんが、日本に関する限りは、戦後におきまして新しいそういう組織的防衛力をつくりまして、国民合意のもとに今それに当たってもらっている、そういうことでございます。
  61. 上田哲

    上田(哲)委員 私は、軍隊が、実はこれはいかなる定義にもあるのでありますけれども、政権維持の機能。外敵云々ではなくて、例えば、さまざまな定義がありますけれども、一般的なものは、軍隊は国家統制権の権力の中枢組織体であって、古代から現代に至るまで国家の実力的基礎をなしている、それは武器を持つ人間の組織として物理的強制力により国家秩序の維持、統制に当たる、これが定義だと思うのです。自衛隊は明らかにそういう任務を果たしていると思います。  フィリピンの今回の政変が軍事力の移動によって行われたことは衆目の見るところであります。私たちが評価するのは、その奥にピープルパワーがあったということでありますが、軍隊の移転ということが政権を大きく動かしたということから見ても、やはり日本の自衛隊はもはや軍隊として政権維持能力、その重大な要素になっているという点はいかがでしょうか。
  62. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 フィリピンの政変を見ますと、あれはやはり国民の力というものが非常に大きな力をいたした。それから、やはりテレビの力というものが非常に大きかったと思うのです。時代がそういうふうに変わりつつあると思いましたですね。軍隊の力も多少はあるでしょうけれども、ああいう決定的な瞬間に軍が動かなかったあるいは動かせなかったというのは、やはり人民の力、国民の力、あるいはそれを媒体として伝えたテレビの力というものが働いておるので、時代は非常に変わりつつあると思うのです。  日本におきましては、自衛隊は厳重なシビリアンコントロールのもとに置かれまして、そして外国におけるような状態、一部の外国におけるような状態とはまるきり違う、政府及び国会の厳重な管理下に置かれている独特の存在であると考えております。
  63. 上田哲

    上田(哲)委員 じゃ、もう少し各論に入ります。  非常に拡張解釈が目立っているわけでありますけれども、その一つは、先般、二月十八日当委員会で総理がなすった大綱別表の問題であります。大綱の別表を少しいじったからといって大綱の見直しにはならない、こう言われているわけでありますが、この大綱というのは本文と別表から成っておりまして、本文は防衛構想を述べている、別表は装備体系と数量の水準を明記したものでありまして、これは極めて一体のものであります。これを数量を動かしてもいい、こういうことにはならない。数量を動かせば当然大綱の変更になる、これはもう総理、常識だと思います。いかがですか。
  64. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 この大綱の持つ性格と、それから別表等につきましては、従来から多くの答弁があるわけでございますが、かつて中曽根総理大臣も申しておりますように、大綱というものは幾つかの弾力性を前提といたしておるということで、その中で質の弾力性の問題がございます。それからもう一つは装備体系の弾力性というものがあろうと思います。  その別表のそばに書いてございますけれども、現在の数量というのは現在の装備体系を前提としたものである、そういう限りで考えるとこういう数字でございますよ、こう書いてあるわけですが、それ自体、大綱というのは装備体系の変更によっては数量が変わり得るものだということを弾力性として内在しているものだと思います。ただ、その別表を仮に幾つかの部分で数量を変えたとしますと、それは当然のことながら正規の国防会議、閣議等の手続を経なければならないという、そういう整理ではないかな、こう思っております。  結論からいいますと、大綱というものは別表等につきましての幾つかの弾力性を前提としている、しかし、それは正規の手続を踏まなければやっていけないことだということであります。ただ、一つだけここでお断りしておきますのは、この種の話は現在その仕組みのお話として御議論いただいているのであって、現在私たちがその数量、別表等の変更を考えているというものではございませんので、そこは確認させていただきたいと思います。
  65. 上田哲

    上田(哲)委員 大変苦しい答弁で、先回りして穴をふさいでおくから、中は何であっても構わぬ、これは非常に苦しい言い方であります。総理が一遍言ってしまったらしようがないというのではいけない。総理が先般の答弁でも、大綱自身の中で別表変更が予定されておる、これはとんでもないことでありまして、今、長官の答弁は非常に苦しい。つまり、その大綱の変更予定だと言われるところは、本文の六の「方針及び留意事項」のところで「質的な充実向上に配意しつつこれらを維持することを基本」とする、こうなっている。「質的な充実向上」ということは量的ではないのです。量的なことは書いてないのです。質的には例えば四百三十機、十八万、六十隻、こういう数字というのは明記されていますから、これは一体のものですから、これを技術の革新に応じていろいろ変えていくということはあるだろう。質的にはということは従来議論されておりますが、量的にはなんということはどこにもないのであります。量的規制が別表の意味であり、それが本文と一体となっているのですから、これは今、長官の認められたように量的にいじるということはただごとではないのです。しかし、それが予定されているなどということは絶対にありません。これははっきりしておかなければなりません。  もう一つ、別表についている文章は、「この表は、この大綱策定時において現有し、又は取得を予定している装備体系を前提とする」、ここのところをとらえようとしているのでありますが、これはまた大綱の中にある「目的及び趣旨」の中にはっきり、「前記のような構想にたって」、「前記のような構想」というのは基盤的防衛力構想です。「規模的には、その構想において目標とするところとほぼ同水準にあると判断される。」これはすなわち装備体系は基盤的防衛力構想と相対するものだ、こういうことになっているのでありまして、ここのところ量的に動かすということになれば、これは明らかに基本的な防衛力構想、基盤的防衛力構想、すなわち限定・小規模実力排除という線を超えるということになってしまう。これははっきりしておきます。絶対に大綱の中には量的に変更などということは予定していない。装備体系を変えるということは基本的な構想を変えることになる。これはもう疑うべからざる解釈であります。いかがですか。
  66. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 私たち、例えば現在の別表では陸上の師団につきまして十三個師団、そして、その中で機甲が一個師団で、通常の普通の師団というものを十二といたしております。今後いろいろな自衛隊につきましての合理化、効率化を考えて、仮にここの部分を二対十一に直したならば、これが完全にもう大綱の改定になるのだろうかという議論がございます。それから、現在ナイキとホークに分かれておりますけれども、これが最近の技術の発達によって、パトリオットの場合には上空も見られるし、中空、低空も見られるといった場合に、それではこれが分かれていることが本当に予算の効率的な使用のためにいいのだろうかという御議論もあろうと思います。しかし、これは完全に別表の中で高射隊の数については書いてあるわけでございまして、それを若干将来変えた場合に、大綱の全部の見直しになるのかといった議論もあろうかと思います。したがって、それを仮にやったとしても大綱そのものの見直しにはならぬのじゃないか、そういうのが私たちの考え方でございます。
  67. 上田哲

    上田(哲)委員 これは非常に苦しいです。大綱の中には量的な変更というもの、これは予定されていない。これははっきりすべきです。私は、総理は先般のちょっとしたオーバーランは、やはり引っ込められるのが正しいと思う。そのことと、そしてもう一遍確認しておきたいのは、当面そうした変更は考えているわけではないという二点は、総理からぴしっとお答えをいただきたい。
  68. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大綱を変えようということは、今考えておりません。それから別表の問題にしても、あれを変えるという場合には国防会議や閣議の決定を必要とする、そう考えております。しかし、大綱の内容団体に、技術の変化、科学技術の変化等々によりまして、質的な変革というものは十分認められておると思いますし、また、大綱の精神の範囲内におきまして、その枠組みの変化と申しますか、いろいろな間の壁の取り払いぐあいとか、そういうようなものは認められているんだとこの前申し上げたとおりであります。
  69. 上田哲

    上田(哲)委員 半歩後退されたというふうには理解しておきますけれども、やはり私は非常に危険なことだ、これが、別表は本文と切り離すことができる、一体のものではないという考えや、量的にもこれを変更することが予定されているんだという考えに立ては、まことに野方図な、どこまででも行ってしまうということになるのでありまして、それはすなわち本文にある限定・小規模に独力対処という構想自体を覆すことになります。私は、半歩後退されたという認識に立って、少なくとも今当面そうした問題を変更しないということを確認できたことをもって先に進まざるを得ません。  重要な問題のもう一つは、OTHであります。OTHについて、先ごろアメリカ側から運用方針について、ソフトの問題等々提示があったとの報道もございますが、そのようなことがあったでしょうか。
  70. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 OTHにつきましては、その導入も含めて現在考えておりまして、その運用につきまして現在細かく議論している段階ではございません。  先ほどある一部の報道に、かなり運用につきまして日米の間でいろいろやりとりがあって、なおかつ、それによれば、我が国はOTHレーダーを設置するだけでそのデータを直には見られずに、外国のソフトにかけなければ、アメリカのソフトにかけなければ、それは我が国としても使えないものだというような報道がございました。間違いでございます。そんなことはございません。OTHレーダー自体は、現在まで私たちが得ている情報によりますと、それをレーダーでスキャンいたしますと、それ自体で航跡が見えるわけですから、それ自体が私たちの日本の情報になります。あの報道は、確認いたしましたけれども間違いでございまして、仮に情報収集のそういったOTHにいたしましても、ほかの設備にしましても、我が国がとって我が国がその情報を使えないような装備を私たちは持ちません、持つつもりはありません。
  71. 上田哲

    上田(哲)委員 確認しておきますが、アメリカ側からそうした提示はなかったのですね。
  72. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 運用につきまして、現在米側と詰めているわけではございませんし、なおかつ、米側のソフトを使わないと私たちはデータを何も読めないような話が米側から来ているということは誤報でございます。
  73. 上田哲

    上田(哲)委員 誤報であると言われるのですが、私はやはり状況からいって、甚だ懸念を消せないところがたくさんございます。  一般に、軍事情報の提供についてはケース・バイ・ケースであるというのが、これまで政府見解でありました。そして、先般の委員会でも防衛局長から、軍事情報提供が集団自衛権に触れないためにということで、三点が指摘されていると理解いたします。第一は、他国から依頼されての情報収集をしないこと、第二は、直接の具体的な武力行使を誘導しないこと、第三は、日本の国益によって提供すべきかどうかを判断すること、これが三点だと思います。念のためですが、それでよろしいですか。
  74. 西廣整輝

    西廣政府委員 今申された点は、私は必ずしも集団的自衛権の行使に当たる、当たらないの基準として申し上げたつもりはございません。集団的自衛権に当たるか当たらないかということは、あくまでその行為日本としての個別的自衛権であるか、ともかく自衛権の行使、武力の行使に当たるかどうかということがまず中心点でありまして、それがないものについて集団的自衛権に当たるというようなことは起き得ないだろうと思います。私は、先ほど先生が申された三つの点は、情報交換について留意すべきといいますか、そういう点について申し上げたつもりでございます。
  75. 上田哲

    上田(哲)委員 つまり、一般情報についてはこういうことが大事だということなんです。  そこで、私はOTHの問題に絞るのですが、OTHはこうした留意事項に全部触れてしまうわけであります。アメリカ側からどういう連絡があったかどうかということは別にしても、まさにアムチトカ島とグアム島に設置されるアメリカのOTH、そして南西諸島にこれと三位一体をなす日本のOTH、この三つはそれぞれがリンクしなければ意味を持たないものであります。つまりそのことは、他国から依頼を受けた場合、常時依頼を受けて動くということになるわけでありまして、日本側だけが単独でいかにその情報を持っていたとしても意味がないという点からいって、これは常時依頼。もう一つは、個々の事例に即して判断するといっても、一般情報と軍事情報の区別なく主情報で相手に連絡する、提供するということになるわけであります。第三に、国益に照らして判断すると言うけれども、これはまさに千島列島やシベリア内部、ソ連太平洋艦隊の基地であるウラジオストク、こうした地域を完全に精査するものでありますから、これによってリンクされるアメリカの軍事行動は極めて即時的に誘発されざるを得ない。つまり、完全にアメリカの対ソ戦略の中に組み込まれてこそ意味を持つのでありますから、そういう意味では日本の国益云々の意味もなくなってしまう。まさにOTHというのは、こうした今までの留意事項のすべてを超えて集団自衛権の行使そのものに当たる施設ではないか。これはどう反論するのでしょうか。
  76. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 私たちの国は大きな防衛力を持っているわけではございませんので、情報の収集につきましてはしっかりやらなければならない、こう思っております。OTHレーダーの導入にいたしましても、我が国に対する経空脅威の増大というものに対処するために、我が国防衛の観点から行うものでございます。それを本当にやるとすればそういう観点で行うわけで、現在、それが我が国にとって本当に有益かどうかの検討をいたしておるわけでございます。  今先生御指摘の、それによって得られた情報をどういうふうに処理をするのか、米側との関係ということにつきましては、運用につきましてまだ検討いたしておりませんから、今ここでとやかく申し上げられる段階にはございません。しかし、情報交換一般について申しますならば、私たちの国としてはその情報を相手に与えることにつきまして、我が国の国益の立場からその都度自主的に判断いたしていきたい、こう思っております。それが集団的自衛権の行使に当たるかということにつきましては、情報交換一般と集団的自衛権の論議といたしまして、先ほど防衛局長が答弁いたしましたように、集団的自衛権の原則に背馳いたしますのはいわゆる実力行使というものになった場合であって、どういったケースがそういうものに合致するのかということは、今のところケースとしてはなかなか難しいことが多いのではないかな、こんなふうに思っております。私たちは、情報交換一般がいわゆる集団的な自衛権の行使に当たるというふうには思っておりません。
  77. 上田哲

    上田(哲)委員 これは大変な答弁なんですよ。たくさん申し上げたいけれども、リンクしなければ意味がないでしょう。日本の南西諸島に設置されるというOTHレーダーが、アムチトカ島やグアム島のOTHと全くリンクしないで一体意味を持ちますか、意味を持たないでしょう。そこはどうなんですか。
  78. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 詳細には防衛局長から答弁いたしますけれども、我が国防衛のためにOTHレーダーを設置し、経空脅威の根源というものを早期に、OTHですから仮に少しぼんやりとした形でもとるということは、我が国防衛上非常に有益なことになるのではないかということで検討いたしておるわけで、それと米側との情報交換というのは次の別個の問題であろうと思います。OTHレーダーそのものの情報が、我が国にそれ自体として有益になるということでやっておるのでございます。
  79. 上田哲

    上田(哲)委員 あるのではないかというぐらいのことしか、首をかしげながら言わなければならぬことですよ。こんなもの意味ないじゃないですか。リンクするからこそ意味がある。絵をかいてみればすぐわかることです。  それから、判断するのだとおっしゃるけれども、これは全く生データが自動的にどんどん行くのです。どこでチェックするのですか、とめられるのですか、とめられるはずはないではありませんか。
  80. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほど来防衛庁長官がお答え申し上げているように、OTHレーダー、これは検討中でございますが、以前お答え申したと思いますけれども、仮にOTHレーダーを置いて、我が方の本土防空なり洋上防空に役立つ地域が監視できるようにしようと思えば、南西諸島なりあるいは小笠原、硫黄島といったような島嶼部に置くことによって、我々が見たい、知りたいと思う地域の情報が得られるのではないかというのが現在の検討の結果であります。したがって、我々が仮に置くとすれば、それによって相当部分といいますか、我々が知りたい、情報を得たい地域というものが、それでカバーできるというように考えているわけです。したがって、今先生が申されるように、米側の他の地域に置いたOTHレーダーとリンクさせなければそれが意味がないということでは全くないと思います。
  81. 上田哲

    上田(哲)委員 完全にそれは詭弁でありまして、OTHの問題は、シーレーン海域で日本平時の場合にも米艦護衛ができるかどうか、発砲できるかどうかなどという、いわばパズル的な問題とは違うのです。既にもう明らかに、八六年にはアメリカ側のテストが終わって八八年には装備調達、九〇年代には双方動き出すという目標を目指しているわけでありますから、これは全く現実の問題なんであります。明らかにOTHというのは設置することによって、全くもうチェックすることなく生データがリンクされて動いてしまう、こうなってしまうので、内容についての何の判別、分別、チェックもできないというところに基本的な問題がある。集団自衛権の行使そのものだというところにポイントがあるわけです。  それを覆すために、何と驚いたことに、軍事情報は武力行使ではないという奇妙な論理をつくってきた。軍事情報を、今度国会に提出されてまだ審議されていませんが、防衛二法では、通信施設を武力をもって守ることということが入っているじゃありませんか。まさに通信データというものが、軍事情報が武力行使の一端であることを政府自身が認めておるのです。そのことを何とかして論理的に覆したいために、軍事情報というのは武力行使ではないという奇妙な論理を立てられた。水かけ論になって、答弁は当然わかっておりますから、これ以上は私の言いっ放ししかありませんけれども、こういう危険な姿というのはおかしい。OTHというのは、これを撤去する以外には集団自衛権の行使になることを排除する道はない、こういうことになります。  そこで、手続的に一つだけ念を押しておきます。今日まで、こうした軍事情報の米軍への提供についてはレーダーサイトを対象として、一九五三年一月十三日の岡崎・マーフィー交換公文、一九五九年九月二日の松前・バーンズ協定、これも内容は十分に明らかにされておりませんけれども、こうしたもので運用されておりました。今日のように、OTHのように常時持続的な提供ということになれば、少なくとも最低限、この松前・バーンズ協定の改定なり新協定の締結ということがなければ、全く日本主権というのはあり得ないのじゃないか、自衛隊の独自性というのはあり得ないのじゃないかということになると思います。改定あるいは新協定の必要についてはいかがですか。
  82. 西廣整輝

    西廣政府委員 ただいま申された岡崎・マーフィー書簡なり松前・バーンズ協定というのは、日本側が米側に日本の本来主権の中である、警察行動である領空侵犯措置、それについて状況によって米側に依存するというものの根拠でありまして、そういう領空侵犯措置アメリカにやってもらうことあり得べしという根拠になっておるのであって、情報交換の根拠になっているというようには私は必ずしも考えておりません。  ただ、今申されたように、常時米側が状況によって日本の領空侵犯措置に当たるという任務を持っておるということから、レーダー情報については、航跡情報については米側に、松前・バーンズ協定によりまして米側から連絡員というものがしかるべきADCCなりADDCに配置をされておって、それを通報しているということになっております。
  83. 上田哲

    上田(哲)委員 よくわからないですな。新協定の必要はないということですか。
  84. 西廣整輝

    西廣政府委員 したがいまして、情報交換そのものについて何らかの協定がなければならないということでは必ずしもないというように考えております。
  85. 上田哲

    上田(哲)委員 極めて大変な御答弁でありまして、もう軍事情報の提供は全く歯どめがない、どこまででもいく、そのことによって日本平時の場合にもまさに米ソ戦そのものが勃発することはあり得る、やむを得ない、こんなばかげた論理で進められては困る、私はそのことを強調しておきます。  最後に、三宅島の問題であります。  三宅島には法的な強制力は発揮しない、また札束でほっぺたをなぶるようなことはしない、こういうお話でありましたけれども、二月の十五日には藤尾政調会長以下が何と七百億円と言われる見返り事業の提示に行かれた。七百億円というのは一体どんなものだろうか。四百億円の空港建設費に対して七百億円のいわゆるあめ玉、これはいかに無理難題かということを如実にするものでありまして、三宅島ではむしろ反対の声が強まっているということを率直に申し上げておくのですが、私は念のためにこの七百億円の中身をただしてみました。各省庁、全くわけがわからぬ、どこにも具体論はないのであります。  昨日、東京都の都議会会議でこの問題について鈴木都知事は、事業計画も資金計画も聞いていないからわからぬという答弁であります。そして、東京都の例えば農業構造改善事業等々で振り分けてみますと、七百億円二十二項目のうち六項目以外はみんな既に挙がっているテーマでありまして、新しいというのはヨットハーバー、自動車教習所、温泉供給、ゴルフ場、溶岩台地の買い上げと商工会館、全く思いついたようなものばかりか並んでいるのであります。それやこれや全部含めて調べてみますと、例えば農業の高度化のための用排水路、ため池などの水源の整備、これは深層地下水がないために実現できません。上水道の整備については、島が発展して観光客がふえるだろうから、水道利用者が現在の二倍になったということで計算するそうであります。そのために、海水の淡水化施設と配管などで三十数億円の工事か必要でありまして、この場合、工事費の地元負担が八億円であります。  総理、聞いてください。島の税収は二億円であります。地元負担が八億円であります。また、この淡水化施設が稼働し始めると、維持管理費は年間二億円かかります。村の税収全部を使って、こういうことになります。利用者負担の場合も、三宅島の世帯数が今千八百三十七ですから、これが二倍にふえたとしても、淡水化施設の維持管理費の分だけで一世帯当たり年に五万円払わなきゃなりません。溶岩台地の買い上げ、これは跡地を公園にするということが条件ですから、この場合国の補助率は五〇%であります。買収費用が十八億円、九億円を村が負担しなきゃなりません。できるでしょうか。農業センターの建設でも国の補助金が四〇%。農業センターについても補助は五〇%、残りは東京都と地元の負担になります。いずれにしても、税収二億の村に負担し切れるものではありません。どういうことか、東京都もさっぱりわからぬと言っている。商工会館なんていうのはどこでやるのか、全然、幾ら探してみても担当する省庁がありません。まさにこれはでたらめと言うしかない。全部のデータを申し上げるにも値しないのですが、抜き出してもこんな程度であります。札束でほっぺたをなぶるといいますけれども、例えば悪いけれども、これじゃにせ札じゃありませんか。  こんな形で島民に対して、いかにも空港建設ということが島のためになるような話をされる。これは全くけしからぬ話だと思う。私はこういうやり方、少なくとも今この全く中身のないと百億円という空虚な提示というものは、党総裁としても直ちに撤回されるということを求めます。
  86. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 藤尾政調会長を初め党のかなりの方々が、三宅島問題につきまして大変な御心配をいただきまして、今、島の将来について考えてくださっております。その際には役所の方をも呼びまして、そしてどういった事業が考えられるか、またその際に、どういった障害点があるかをかなりの点まで詰めておられますけれども、まだ行政ベースに具体的に細かなところまで上がっているものではございませんというふうに聞いております。  ただ、我が党の場合には、幾つかの政策につきましては党の主導で、与党と政府との間でかなり二人三脚でやるところがございまして、防衛庁としましては、党の政調会長がいろいろなイニシアチブをとっていただくことは、通常ではなかなかできないことが可能になるケースが非常に多いのではないかな、こんなふうに思っております。  いずれにいたしましても、島としてはどういった振興計画をした方がいいのか、そして私たちとしては、できるだけ生業につながるもの、村の将来に無理なく、なおかつそれによって若者が村に残っていけるような施策というものを考えていきたい、そのためにも村の人々と話し合いたいわけでございます。確かに空港ができますと、従来から比べては御迷惑をかける部分がふえます。ふえますからこそ、私たちは精いっぱいのことをしたいと思っておりますので、ぜひ村当局の人々、それから反対派の人々、必要ならば私が直接出かけてお話し申し上げても結構でございます。ですから、ぜひその話し合いに応じていただきたい、こう思っておる次第でございます。
  87. 上田哲

    上田(哲)委員 そんなことを聞いていませんよ。質問の趣旨にしっかり答えてください。話し合いもくそもないじゃありませんか。七百億円なんていうのは自民党の三役、政調会長が言ったのです。総理、自民党の政調会長が言っておるのです。九人も国会議員が出かけて都会議員の皆さんも行って、七百億円というのは、もっと全部細かく申し上げていいのだけれども、どこにも具体性がないです。地元負担が、目玉だ目玉だと言っている例えば上水道でも、地元負担は八億円ですよ。一世帯、年に五万円ですよ。税収が二億円の村でそんなことができますか。全部計算したら、村でいったら七百五十年たたなきゃ、地元負担がだめなんですよ。こんなばかげたことが、まともな提案の話し合いの内容になりますか。先般、東京防衛施設局長が島へ行かれて、村当局に話をされた。村長ははっきり断った。島の自立は島が働いてやる、そんな意味のない札束計画で持ち込まれては困る、これが意思表示じゃありませんか。一生懸命自分たちの力で生きていくと言っている村に、四百億円の空港を七百億円、しかも中身が全くない、こんなものを持っていくということは、そもそも非常に私は不誠意であると思う。  総理、少なくとも現在ただいまこの七百億円、何なら一千億円もと言われたそうだが、こんな金は国家予算のどこにあるのですか。こんなもの、直ちに撤回するということを私は要求しているのであります。総理からはっきりお答えいただきたい。
  88. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは党の政調会を中心にして、地元の御要望あるいは各省庁の意見等も踏まえてまとめて御提示したものでありまして、党側としてはこれを責任を持って遂行したい、こういう要望を申し上げている次第で、撤回する考えはないと思います。
  89. 上田哲

    上田(哲)委員 島はそんなこと求めていませんよ。求めていないのに、求めているというような形で持っていかれることは甚だ迷惑でありますから、いかにこれが空虚なものであるかということをしっかり国民の前に明らかにしていきたいと思います。  もう一つ。実は、何でここにこういう空港をつくるのかということには、軍事的な要素が非常に強い。二月初めにレーマン海軍長官が、これからのアメリカ戦略の中心として北西太平洋に空母の増派ということを明らかにしました。今日、アメリカの航空母艦十五隻のうち、ほかの国に母港を持っているのは我が横須賀だけであります。こういう状態のところへ、もう一つ、複数母港化ということを計画をしている。  これは古い話でありまして、七八年六月の金丸・ブラウン会談から、その後七八年十月のヘイワード海軍作戦部長の発言、七八年十二月のアメリカ議会予算局が報告いたしました「米海軍力=平時におけるプレゼンスの使命」、七九年四月に至る山下・ブラウン会談、七九年十月のマンスフィールド談話、八〇年のロング太平洋司令官の米上院での証言などなどをずっと経まして、二月五日のレーマン海軍長官の発言にたどりつくわけでありますが、明らかにアメリカの航空母艦群をもう一つ北西太平洋に増派する、その母港化を図る。この母港化をミッドウェーにあわせて横須賀に考えるということになれば、厚木が二十万を超える住民が生活の支障を訴えているとか、ネオンサインがあって十分な訓練に適さないとかということではなくて、そのような要素がないとしても、アメリカの空母複数化の要求に対しては厚木ではその用を賄えないのであります。だから、厚木の今の二機の訓練、これを四機にふやし、二千メートル、四十五メートル幅の大きなNLPを、どうしても首都東京、つまり横須賀から百五十キロ範囲内の三宅島にもつくりたい。軍事要求がそこにあるわけであります。こういう軍事要求から、是が非でも三宅島にこうした空港設置をする。これは厚木にも迷惑でありますが、厚木が迷惑だから云云でもなければ、島にはそうした騒音の被害が少ないからというような条件の問題でもなくて、基本的にアメリカの軍事要請の問題がある。  私は、基本的にこうした軍事増強体制というものを日本側から唯々諾々として受け取らないという形をとることが、この問題の根底にあることだと思います。ぜひ話を聞いてくれみたいなことばかりを長々とお話しになるのではなくて、こうした背景についてきちっとお答えをいただきたい。
  90. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 現在、複数空母基地化の問題があるわけではありません。その前に、ずっとここ数年前から厚木の問題が、地域住民の方々との関係で大変問題になっておることは委員御承知のとおりでございまして、そしてそれは米軍にしましては、ある意味では厚木でもいいのかもしれません、ある程度ネオンサインの部分を我慢すれば。しかしそれは、私たち日本政府ないし私たち防衛庁の方が、あの厚木の場所ではいかぬからどこかに移さなければならぬというのは、私たちの判断でございます。米軍にどこの、三宅というようなことを言われてやっておるのではなくて、私たちが厚木の問題を解決しなければならぬといって、関東地区を必死になって探してみて、そして一番全国民的な判断からいって御迷惑をかけることか少ないのが三宅なのではないかという、私たちの判断であることをぜひ御理解いただきたいと思います。全アメリカの軍事戦略の中の大きな波の中から来るみたいなおどろおどろしい話ではなくて、厚木の方々の騒音をどうするか、そして三宅についても御迷惑をかけるけれども、それを私たちがどう補っていくのか、そういった観点で議論いたしております。  したがって、東京七島新聞というあの地域に流れております権威のある新聞がありますが、そこの中に寺沢村長が銃剣、カービン銃、鉄条網、そしていわゆる風紀の乱れ、戦後の沖縄みたいなことをお書きになっておられますが、それを読みまして、あっ、これはかなりの誤解があるな、こういった村においてはかなり流れておる新聞の中に村長がこういう誤解をされておる言葉が流れては、やはり説明を聞いていただかなければいかぬなという気持ちになっている昨今でございます。
  91. 上田哲

    上田(哲)委員 言葉だけで言ってもらっては困る。島民は、本当に歴史と生活をかけているのです。あなたの今の御答弁の中に非常に無責任な言い方は、厚木でもいいのだという言葉がありました。  もうちょっと、ひとつ防衛庁、行って勉強してから御答弁いただきたいのだが、アメリカの軍事戦略のニーズからすると、厚木ではネオンサインがどうあろうとも、周辺の住民の迷惑の問題を別にしても、これは軍事要請にたえないのです。そういう問題を別にして、軍事要請の問題をネグレクトするということは、私は大変不見識であると思います。明らかに二空母態勢ということを前提とする、現在でもミッドウェーの要請にたえ切れないのです。いいですか、現在でも、ミッドウェー一隻の要請にたえ切れない。飛行機二機しかできないじゃありませんか。向こうは四機と言っているじゃないですか、旋回が。今でもできないのだが、それを何としても理由にして、もっと複数母港化の情勢に対応するために新しいところが欲しい、大きいところが欲しい、できれば将来駐機の態勢もとりたい、こういうことで言っているということが問題なのであります。これはよく勉強してしっかり答えていただきたい。今の言葉はしっかりとらえておきます。  もう一つ。藤尾さんが向こうへ行かれて、めどをつけたいと言われている。総理は、アメリカ側との約束のめどはないとおっしゃった。国会の発言を私は大事にいたしますけれども、めどというのは何ですか。めどというのは、四月三日のワインバーガー来日、五月のサミットまでにめどというものはないと私は総理から承っているが、総理、めどというのは何ですか。具体的に明らかにしていただき、私は断固としてそのようなものは許せないということを申し上げておきます。
  92. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 総理大臣がこの間ここでお答えになりましたように、特に例えば四月とかサミットだとか、そういうデッドラインを決めているものではございません。ただ私たちとしては、厚木の現状等から見ましてできるだけ早くこの問題を解決したい、こう思っておるわけでございます。
  93. 上田哲

    上田(哲)委員 めどというのは何ですかと聞いている。めどという中身は何ですか。
  94. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 めどという言葉の意味がどういうところでお使いになったのか、ちょっとわかりません。
  95. 上田哲

    上田(哲)委員 藤尾さんが言っているのです。答えてください。
  96. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 できるだけ早くというのが政府立場でございます。藤尾さんは、例えば説明会をできるようにしたいとか、それから一歩でも誤解が解けるようにしたい、そういった総合的なお言葉でお使いになったものだろうと思います。
  97. 上田哲

    上田(哲)委員 それではめどというのは、総理、最後に答えてください。藤尾さんが現地へ行って、四月のワインバーガー来日、東京サミットまでに何らかのめどは立てたいとおっしゃった。私は、総理がここでお答えになった、めどはないということを確認をいたします。また、めどというものの内容は、特に特定しているものはないという二点をしっかりお答えをいただきたいと思います。
  98. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 SDIについては、前から申し上げたとおりであります。そして、三宅島の問題については、政府としては、官民協調して島の発展のために、福祉の向上のために今後とも積極的に努力していきたいと思いますが、党としていろいろな考えをまとめ、島に御提示申し上げ、島の皆さんがそれに対してどういうお考えを持っているか、よく承って、直すところは直し、あるいは修正すべきところは修正し、追加すべきところは追加して、島の皆さんの合意を得てこれを推進するように努力してまいりたいと思っております。
  99. 上田哲

    上田(哲)委員 めどはないということですよ。めどはないということを確認しておきます。
  100. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 三宅島の問題でも、島の皆さんの御理解をいただくということが大事でございますから、それに全力を注いでまいるつもりで、いつまでに何をどうしなければならぬという入学試験のようなものがあるわけではありません。
  101. 上田哲

    上田(哲)委員 終わります。
  102. 小渕恵三

    小渕委員長 これにて上田君の質疑は終了いたしました。  午前零時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時三十五分休憩      ————◇—————     午後零時三十三分開議
  103. 小渕恵三

    小渕委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。大出俊君。
  104. 大出俊

    大出委員 中曽根さんの内閣が今日まで進めてまいりました防衛問題に関しまして、総理の口癖の総決算をぼつぼつさせていただかなければいかぬと思っておるわけでありまして、そういう意味でこういう質問通告をいたしたわけです。  そこで防衛庁長官に承りたいのですが、シーレーンの防衛に関する研究がその後進められておりますね。新聞の報道によりますと、「今回の研究では、シーレーン防衛に関する有事のシナリオとして四つのケースが想定され、この中には、米軍が核巡航ミサイル「トマホーク」を使用することを想定したケースも含まれているという。」これは、この前の私の質問でニュークリアケーパブル、総理が能力だとおっしゃいましたが、見解が違いますが、つまりそういう想定も含まれている。「また、脅威の分析、日米の投入兵力の見積もり、共同作戦の実施要領などが検討されている。」こういうことでしょうな。
  105. 西廣整輝

    西廣政府委員 シーレーン防衛研究につきましては現在幾つかのケースについて研究しているわけですが、具体的なシナリオは御勘弁いただきたいのですけれども、いずれにしましても洋上だけでいろいろ問題が起きる場合と、あわせていろいろな、例えば陸上部分についても侵攻が行われる場合とか、そういったような組み合わせで考えております。
  106. 大出俊

    大出委員 西廣さん、あなたとは防衛庁生え抜きだから随分長いおつき合いなんで、そういうことをおっしゃらぬでちゃんと答えてくれないと困る。私が昨年の臨時国会で一%問題で質問をいたしまして、日米共同作戦計画、ティシエ司令官と渡部統幕議長で調印したじゃないか、出してくれ、統長、統中出してくれ、こう申し上げた。これは皆さんがお持ちになったのだ。お持ちになって、実は私はこれは御説明いただこうと思った。ところがこの説明に三十分かかると言われたのでは、私の質問時間八分しか残っていないのだから、そんなむちゃくちゃなことがあるか、いただきますが説明結構だと申し上げた。この中に書いてある。いいですか。「日米共同作戦計画の研究」、必要ならば私ここに印刷したものを持ってきておりますから差し上げてもいいけれども、十部ぐらいここにありますが、この中にちゃんと書いてある。珍しいのだが四項目お出しになったでしょう、私に。この中に「研究の骨子」、一番最後です、「前提となるシナリオの設定」「脅威の分析」「日米の対処兵力の見積り」「日米の共同作戦要領の検討」、四項目きちっと書いてあるでしょう。同じことじゃないですか、今度のシーレーンの共同研究だって。そうでしょう。そのくらい認めなさいよ、あなた出したんだから。防衛庁に初めから今までおいでになって、長いおつき合いなんで——あなたにこっと笑ったけれども、四項目のあることくらい認めなさいよ。どうですが。
  107. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほど来申し上げておりますが、申すまでもなく作戦研究でございますからシナリオを設定する、そのシナリオそのものが幾つかあるということを申し上げたわけですが、その際に相手の、使うであろうもろもろの装備によって脅威の態様が変わってくるというようなことで、それについていろんな組み合わせがある……。
  108. 大出俊

    大出委員 そんなことを聞いていない。私が聞いているのは、前提となるシナリオ、それから脅威の分析、日米の対処兵力の見積もり、日米の共同作戦要領の検討、この四項目あるんでしょうと聞いている。
  109. 西廣整輝

    西廣政府委員 今申されましたのはいわゆる作戦研究の方でございまして、シーレーンの防衛の場合若干違うのですが、やや似通ったものであることは間違いございません。
  110. 大出俊

    大出委員 それはシーレーンとなりますと多少の違いがあるのはわかります。しかしおおむねということをおっしゃいましたからそれでいいですが、確かに陸あるいは海、そういう意味のシナリオがある、当然でございます。そうでなければできない。  そこで、ひとつここで念を押しておいて具体的に承りたいのでありますが、中曽根さんに承りたいのです。  私はここに議事録を持っておりますが、ギン前在日米軍司令官の証言を取り上げまして、「日本だけが攻撃され、単独で対応しなくてはならないような事態はあり得ず、日本へのソ連の限定攻撃は、米ソの世界的対決の中だけであり得る」、これを私取り上げまして中曽根さんの御見解をただしましたら、総理はこう答弁している。「アメリカとしてはやはり同時多発を予想している向きが非常に多いと思います。日本だけをソ連が攻撃して侵略してくるというようなことは、アメリカの計算としてはまず少ないこういう答弁をなさいました。これは五十八年二月三日の総理の答弁でございまして、ここにございます。これはお認めになりますね、御自分でお答えですから。
  111. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そういう記憶がございます。
  112. 大出俊

    大出委員 そこでもう一つだけ触れておきますが、最近の「プロシーディンクス」、「海洋戦略」というんでしょうね。ここに、前にもちょっと出ていたようでありますが、ワトキンズ米海軍作戦部長が米海軍研究所の雑誌「海洋戦略」、「プロシーディンクス」というのですね、この一月号に一つの文書を発表した。「同作戦部長は、これは大変重要なことなんですが、「対ソ通常戦に際しても、ソ連の戦略核ミサイル原潜をたたく」という、これはいろいろな論文がありますとあなたお答えになっておりますが、一貫してアメリカの戦略というのは——この文章というのは三年間練られたアメリカ海軍の戦略であると断っている、読んでみると。ここに全文ありますけれども。そして、「ワインバーガー長官の了解を得て発表する」と、こうなっている。これはもう前から、ここに八六会計年度米国防報告の中の必要な部分を訳したものがありますが、似たようなことを言っております。つまり前方戦略、フォワードストラテジーですね、前方戦略。なぜ一体オホーツク海のソ連のミサイル原潜をたたく、こう言っているかといいますと、あそこに、デルタ型原潜十五隻と言われておりますが、射程八千キロの米本土をたたくミサイルを持っておるから、そこをとりあえず何とかしないと成り立たない。時間があれば後から申し上げますが、たくさんの人がそういうふうに説明しています。  さて、そこで、この前方戦略、これに基づいてまず承りたいのは、さっき中曽根さんが記憶があるとおっしゃったとおりに、日本だけがぽかりとたたかれることはない。アメリカの計算上も少ない。アメリカ考えているのは、同時多発だ、その中で日本がということがあり得る、こういうことですね。欧州で米ソ戦争が起こったと仮にする。蓋然性という問題が出てきますが、全くないことではない。あるとすれば大変に蓋然性は高い。そうすると、同時多発という意味の報復戦略、日本の周辺でも起こりかねないわけでありまして、そこで、日本は攻撃されていない。いないのだが、アメリカの空母機動部隊や航空機やあるいは原潜、潜水艦ですね、千島、樺太、カムチャツカ、オホーツク海あるいはウラジオということで、前方戦略、米軍が出ていった、日本は攻撃されていない、しかし北の方に大変にぎやかな状況が出てくるのだけれども、これは防衛庁は黙って見ている、こういうことですな、日本が攻撃されていないのだから。まずひとつ答えてください。
  113. 西廣整輝

    西廣政府委員 ただいまのような状況でございますと、日本本土も日本の船舶も特に攻撃されているということではございませんので、自衛隊が行動するということはございません。
  114. 大出俊

    大出委員 次に、宗谷海峡をソビエトの艦船が、潜水艦を含めて続々ペトロパブロフスクに向かって出てくる、太平洋に抜けてくる、こういう状況が目の前で起こる。この場合に、日本は攻襲されていない。通峡阻止はやりませんね。
  115. 西廣整輝

    西廣政府委員 自衛権行使の三要件に該当しませんので、行使することはございません。
  116. 大出俊

    大出委員 これ、出て行ってから通峡阻止をおったって意味はないのですけれども、今のように、やらない。やれないですね。  米軍が通峡阻止をやってくれ、これ言ってきたらどうしますか、この時点で。
  117. 西廣整輝

    西廣政府委員 通峡阻止については前々お答え申し上げておると思いますけれども、我が方の防衛のためにやる場合はあるけれども、米側から頼まれたといって直ちにやるものではないことは前々から申し上げておるとおりでありますが、状況日本防衛に極めて関連が深いという場合にあり得る場合もあるということはお答え申し上げたと思いますが、今申されたような状況でするかしないかということはちょっと即断できないところであります。
  118. 大出俊

    大出委員 日本は攻撃されていない。だが、米軍はソビエトと戦争状態に入った。ソビエトの艦隊があるいは潜水艦が宗谷海峡をペトロパブロフスクに向かって抜けていく、太平洋に出てくる。だから、日本は攻撃されていないんだから黙って見ている。アメリカが通峡阻止をやってくれと言ってきた。その場合には状況いかんによってはやることもあり得るというふうに前にお答えをした、しかし、今の時点でどうするかということについてはこれは明確にできない、こう。つまりここに一つ問題がある。  これは中曽根さんに承りたいのですが、私はあなたに統一見解を求めた。昭和五十八年三月八日であります。これ、あなたにかわって後藤田官房長官がお述べになった。読み上げられた。この中に、つまり一言で言えば、日本が攻撃されていない、アメリカが通峡阻止をやってくれと言ったらノーですと、日本が攻撃されてないから。「しかし、理論的な可能性の問題として、わが国に対する武力攻撃は発生していないが、わが国の船舶が国籍不明の艦船等により甚大な被害を受けている場合等わが国に対する武力攻撃が非常に緊迫性を持っている場合において、そのような米側の要請に応ずることがわが国自身の安全の確保のためぜひとも必要と判断されるような可能性も完全には排除されない」、つまりあり得るという今の答弁ですね。これ、中曽根さん、間違いないですな。
  119. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ええ、そういうことでございます。
  120. 大出俊

    大出委員 ここではっきりさせていただきたいのでありますが、これ、五十八年の三月の八日でございますが、五十八年のこの後に、中曽根さんになって初めての防衛白書でございましょうね、防衛白書が出た。この白書の中の九十一ページに、「仮に米国からの要請があっても、自衛隊が通峡阻止のための実力行使を行うことは、憲法上認められずあり得ない。」こう書いてある。統一見解をお出しになったんだが、その後の中曽根内閣が初めてお出しになった防衛白書に「憲法上認められずあり得ない。」こうなっている。「憲法上認められずあり得ない。」が本当なんです。なぜかというと、日本は攻撃されていない。周辺の状況は幾ら緊迫していても、忍耐が要る、日本が巻き込まれないためには。手を出せば巻き込まれるんだから。憲法は集団自衛権を認めていない。稲葉誠一さんの質問等に基づいても公式に文書でお出しになっている。日本が攻撃されていない、相手の国と一緒になって戦うということは集団自衛権の行使になるから憲法上許容していない、こうなっている。だから、日本が攻撃されていない、国籍不明の艦船に海上で日本の船が攻撃されたことがあっても、あるいは脅威が感ぜられても、日本が攻撃されていない限りは専守防衛の原則に基づいて、これは憲法に基づくわけですが、あり得るなどという答弁が出てくることはない。ここに書いてありますとおり「憲法上認められずあり得ない。」  さて、これ決着をつけていただきたい。中曽根さんの内閣防衛問題の総決算を願いたいと申し上げましたが、これはこの「憲法上認められずあり得ない。」というふうにこの統一見解をお直しいただきたいのですが、いかがですか。あなたの内閣が出した防衛白書です。
  121. 西廣整輝

    西廣政府委員 ちょっと私の申し上げ方が正確でなかったかもしれませんが、我が国に対して武力攻撃がない場合において我が国自身が行うことはまずあり得ない、憲法上あり得ないというのは、これは前々から申し上げているところでありまして、もう一つ、それでは米国自身が行うことについてどうかという二重のお問いになっておりまして、それに対して我々としては、たとえ要請があっても通常はこれに応ずることが我が国自身の安全の確保に必要と判断されることはないので、原則的には拒否をします、しかしながら、米国自身が行うことについて、理論的な可能性として、我が国に対する武力攻撃が非常に緊迫性を持っている、そういった場合に我が国自身の安全確保のために米側の要請に応ずる、米側が封鎖をすることに応ずるという理論的な可能性を排除しないということを申し上げたわけでありまして、白書に書いておりますのは我が国自身が封鎖をする場合であり、もう一方は米側がやることについてどうかということについて可能性を排除していないというお答えでありますので、その点御理解いただきたいと思います。
  122. 大出俊

    大出委員 だから申し上げたのだが、いいですか、シーレーンの共同研究のシナリオの中に、これがガイドラインに基づくものならば、日本憲法に抵触するようなものは全部除くことになっている。そうでしょう。ここで通峡阻止という問題は日本憲法では認められていないから、憲法違反だからあり得ない。あり得ないものをアメリカがやるということで研究するのですか。お認めになるの、それを。
  123. 西廣整輝

    西廣政府委員 シーレーン防衛研究の方は我が国有事の際の問題として研究をいたしておりますので、これは先ほど申したように、我が国が現に攻撃されていない、そういう事態については研究いたしておりませんので、その点は分けてお考えいただきたいと思います。
  124. 大出俊

    大出委員 あなた方は研究の中身を一切出さないでおいて、都合が悪ければそういうことはやっておりません、こう言う、これは詭弁ですよ。いいですか。今私が申し上げている状況で、アメリカに宗谷海峡封鎖を認めた場合には日本は巻き込まれます、これは。日本憲法が明確に禁じている、だからあり得ない、こういう見解をお出しになっているにもかかわらず、アメリカがやると言ったら認める。これはとんでもない間違い。この間私が質問したワシントン条約なんかでもそうですが、相手の国が禁止しているものをやみで持ってくる、だから大騒ぎになって返すようになった、そんなことはあり得ないじゃないですか。後からこの点はもう一遍触れます。  さてそこで、ここで通峡阻止をやるとなれば、これはどういうことになりますか、ソビエトと日本関係は、認めるとなれば。いかがですか。
  125. 小和田恒

    小和田政府委員 恐縮ですが、御質問をもう一度繰り返していただけませんでしょうか。
  126. 大出俊

    大出委員 小和田さんが聞いてなくて西廣君が聞いていたのでしょうけれどもね。つまり、憲法上禁ぜられていてあり得ないという通峡阻止を、これは日本がやる場合だと言うけれども、アメリカが通峡阻止をやると言ったら認める。認めると、日本は攻撃されていないのだから、ある意味アメリカの作戦に協力をしたことになる。OTHレーダーなんかの問題も後から出てきますがね。少し詳しく聞きたいのだが。そうなると、日本は戦争に巻き込まれる、当然ですよ。そこを聞いているのです。攻撃されてもやむを得ぬでしょう。日本の領海なんだから、領海を封鎖することを日本が認めるとなれば、これはそのことを理由に攻撃されることはあり得ることになる。当然でしょう。
  127. 小和田恒

    小和田政府委員 失礼いたしました。  お答え申し上げます。  先ほど防衛庁の防衛局長から御答弁いたしましたように、政府統一見解の第二段と申しますのは、我が国自身がやる場合ではなくて、米国が日本に対して自分がやるから認めてもらいたい、こういう要請をしてきた場合でございます。その場合に、原則としてはそれは認めないのだけれども、この統一見解にありますような例外的な状況におきましては、全く例外的な措置として我が国に対する武力攻撃が緊迫しておる、我が国の安全保障を確保する上で緊要であるというような事態においてはアメリカが通峡阻止を行うということも理論的には排除されない、こういう統一見解になっておるわけでございます。その場合に、ここで言っております通峡阻止と申しまのは、我が国の領域内、すなわち領海を含む我が国の領域内における問題を言っておるのではございませんで、公海上の問題を取り上げているわけでございます。
  128. 大出俊

    大出委員 これは初めて聞いたんだけれども、あれだけ議論したんだが、そんな答弁は当時一つも出てこない。なるほど。宗谷海峡というのは、宗谷岬の突端、ここから、宗谷岬の一番てっぺん、ここからサハリンの西能登呂の岬まで二十二海里ある。双方十海里ずつ領海をとると真ん中が二海里ばかり公海になる。つまり、その公海や向こう側のソビエトの領海を封鎖する、こういうわけですか。日本の領海は手をつけない、アメリカが封鎖する場合は。そういう解釈ですか。そうなるじゃないですか。
  129. 小和田恒

    小和田政府委員 あくまでも理論的な問題、あくまでも国際法上の問題ということで申し上げますけれども、我が国に対する武力攻撃が発生していないというときに、我が国の領海内において外国による実力の行使を認めるということは、原則として我が国としてはやるべきではないことでございますので、それを排除いたしまして公海部分において、しかし海峡に隣接する海域あるいは海峡の中の公海部分というようなことにつきまして米国がある種の行動をとる、通峡阻止の行動をとるということがあり得るであろうということを理論的な問題として従来から御答弁しているわけでございます。
  130. 大出俊

    大出委員 理論的な問題だけで済まない。今の話ならば、日本の領海十海里あいているんだから、二十二海里のうちで半分近くあいている。向こうを封鎖したって、ソビエトの艦船が日本の領海を通れば、日本は攻撃されてないんだから、交戦中じゃないんだから、平気で通れるじゃないですか。そんないいかげんなことを防衛問題を論議するときに言うんじゃないですよ。お聞きになったらわかるでしょう。ばかみたいな話になってくる。ここまでの話が出てくるとは夢にも思わなかった。外交折衝じゃないんですよ、これは。まあいいでしょう。お聞きになっておわかりのとおり、そういういいかげんな考え方、答弁というのは、日本という国の安全を守る立場からすれば認めがたいですよ。  次に参りましょう。珍しい話を聞きましたね。  さて、問題は米軍の艦船、航空機、空母、潜水艦、今度はソビエトに出かけていくんだから、ソビエトに攻撃をされている。これは空母、機動部隊というのは大変な打撃力を持っていますけれども、基地がいっぱい並んでいる。国後、択捉には天寧、東沸の基地がある。サハリンには昔の大泊、コルサコフから始まってユジノサハリンスク南、大韓機はここから飛行機が出て落とした。ユジノサハリンスク北、ノボアレクサンドロフスク、ドリンスク、ソコル、ずっと並んでいる。だから逆にアメリカが攻撃されて、アメリカの艦船が沈むことだってある。すぐ日本の目の前、米艦船が攻撃をされて危ない。バックファイアも出てくるかもしらぬ、ベアも来るかもしらぬ、バジャーが来るかもしらる、ミグが来るかもしらぬ、スホーイが来るかもしれない。そのときに日本は攻撃されていない。空中戦も行われているかもしれない。見ていますね。何もしない。よろしゅうございますか。
  131. 西廣整輝

    西廣政府委員 私ども。米ソがそういう形で戦うということは非常に想定しにくいわけでございますが、仮にそういうものがあったとした場合に、我が国自身全く攻撃を受けてない状況において米側を守るというようなことはできないというように考えております。
  132. 大出俊

    大出委員 そんなことはとおっしゃるが、先ほど申し上げたように、同時多発報復戦略をお認めになっているじゃないですか。あり得るじゃないですか。蓋然性としては、この間の質問よりもはるかに高いじゃないですか。  そこで、日本のP3C、三沢にもありますがP3C、F15、F4あるいはE2C、空中給油機に何を持ってくるか知りませんが、何種類かありますけれども、そういうものについて米側が共同対処をやってくれと言ってきたらどうなりますか、そういう場合に。
  133. 西廣整輝

    西廣政府委員 御存じのように、日米安保条約日本が有事の際に米側が支援をするということでありまして、日本側から支援をするということはありませんので、そういうことはアメリカから要請してくるということは考えられないというふうに思っております。
  134. 大出俊

    大出委員 そうなれば、当然これは四条協議というのは随時両方から協議ができるんだから、この間みたいにとんでもないところに四条協議が出てくるんならあり得ることであって、そういう場合には明確に断る、これでいいですか。
  135. 小和田恒

    小和田政府委員 先ほど来申し上げているところでございますけれども、大出委員の御質問は非常に理論的、仮定的な事態を想定しておられるわけでございますけれども、実際問題として、我が国の施政のもとにある領域に対して武力攻撃があったという場合以外に今のような事態が生じてくるのはなかなか想像しがたいところであろう、つまり、我が国自身がそういう形でそこで巻き込まれてくるという事態は想像しがたいところであるというふうに私ども考えております。いずれにいたしましても、理論的な問題だけとして申し上げますれば、我が国に対する武力攻撃ということがあって、我が国が個別的自衛権を行使し得るという事態以外において我が国が実力行使に入るということはあり得ないところであるというふうに考えます。
  136. 大出俊

    大出委員 念を押しておかぬと、ころころあなた方は変わるから、ひとつ念を押したいのですが、さて、ここで加藤防衛庁長官の言っていたシーレーン有事と絡んでまいりますが、アメリカの艦船が日本のすぐ目の前で非常に危ない状況になった。あなたは鹿島灘の話をしていますね。領海というのがある。茨城県ですか。あなたは岡崎君の質問に答えているじゃないか、議事録ここに持っているけれども。まだ議事録出されてないが、速記を起こして持っていますが、目の先に、領海というものはわずか、短い。十二海里だ。一八五二を掛ければメーターで出る。飛行機で行けば一分だ。そこで日本の船が攻撃されていれば七十六条の発動はあり得るということを言ったんだが、そこで二つ問題があるんだけれども、そういう米ソが戦争に入っている、日本の領海、すぐ先で。北太平洋上の状況というのはそういうことですよ。その場合に、ここではっきりさしていただきたいのは、あなたの見解は、日本の船がそこで攻撃されていた、巻き込まれていた、まず一つ。茨城の鹿島灘の、あなたの論法でいけば七十六条の発動ができると言う。シーレーン有事と施政権下有事と、有事は二つしかない。本土は攻撃されていなくても、見ていてすぐ目の前でやられたら七十六条の発動ができるとあなたは答えた。西廣防衛局長はかつて、特定の海域において特定の国から日本の艦船が攻撃をされたら、その場合七十六条の発動はあり得る、こう答えたことがあると答弁している。そこで、この答弁のまず確認をしておきたいのと、次に、シーレーンというのはどういうときに設けるんですか。二つ。
  137. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 私がこの間岡崎委員の質問に対しお答えいたしましたのは、シーレーンで我が国が攻撃されるということはないんじゃないかというような御指摘でございまして、そしてそれはこの間の矢野質問に関連したものでございました。一般的に、例えば我が国がハワイの沖、公海の場で攻撃されるようなことが大分御議論になっておりますけれども、いわゆるシーレーンと申しましても、その領海外の部分というのは、十二マイルでございますから、ごくごく目の前に見える地域であります、そういった地域で我々の日本国の艦船が激しい攻撃を組織的、計画的に受けたときに自衛隊が看過することはないでしょうということを申し上げたのでありまして、そういう意味で七十六条の発動はそういった地域にあり得ると思います。ただ、今大出委員御指摘の、米ソが北西太平洋でいろんな紛争をしているというようなかなり仮定的な御議論であるわけでございますが、その際に、我が国の艦船が好きこのんでその場面に行って存在するということはまずあり得ないと申していいのではないかと思います。
  138. 大出俊

    大出委員 もう一歩突っ込んで聞きましょう。あなたが言っている答弁は、施政権下有事と、それから、我が国の船団等が攻撃されるいわゆる領海を除いたシーレーン地域における有事というのがあると思います、その二つが有事でございます、そうでしょう。シーレーン有事、本土は攻撃されていない、いないんだが、鹿島灘で見ていたら目の前でやられた、七十六条、シーレーン有事と、こう言う。そうなると、シーレーンというのは一体どういう状況で設けるんですか。それをお答えになっていない。答えてください。
  139. 西廣整輝

    西廣政府委員 ただいま御質問で、シーレーンはどういうときに設けるかという御質問があったのですが、私ども、シーレーンというのはいわゆる海上交通の保護そのものを指しているというように前々から御説明申しておると思いますが、航路帯を設けるということであればどういうときに設けるとお答えできるわけですが、シーレーンというのは海上交通保護のことを私どもは総称いたしておるつもりであります。  なお、それじゃどういう場合に我が国に対する攻撃とみなすかということは、先ほど来防衛庁長官がお答え申し上げておりますけれども、我が国周辺の公海上におきまして特定の国から我が国の船舶が頻々と攻撃をされる場合、これが我が国に対する攻撃であるかどうかという判断は、従来から申し上げておりますように、相手方が我が国の船舶であるということを十分認識をして、そして我が国の船舶を意図的にかつ計画的、組織的にやっているかどうか、そういったことを総合的に判断をして、それによってその船舶に対する攻撃が我が国に対する攻撃であるという判断をするべきであるというように従来お答えしておるところであります。
  140. 大出俊

    大出委員 そういういいかげんな答弁じゃ困るんで、じゃ私の方から言いましょう。矢崎前防衛局長——うちの上田委員が、シーレーンというのは一体どういうときに設けるんだと質問をした。これに対して、これは有事におきまして——明確にしているのですよ。「有事において適宜判断をして設けていくということでございますので、これは固定的に考えているわけではございません。」しかし、有事において——もう一つその次にまた重ねて、「これは有事におきまして海上交通の安全を確保していくための手段の一つとして」、有事において、ここで言う有事は施政権下有事しかないじゃないですか。当たり前でしょう。そうすると、シーレーンが設けられるのは有事において設けられる。初めからシーレーンがあるのじゃない。そうでしょう。はっきりしているじゃないですか。  さてそこで、有事とは何だ。夏目前々防衛局長——有事というのは一体どういうときですか、岡田さんという方が聞いている。「有事とはどういうときですか。」夏目政府委員「有事についての定義というのは必ずしもはっきりはしておりません。ただ、私が防衛庁の部内において考えます場合に、自衛隊法第七十六条によるところの防衛出動が下令されたときというのが考え方だろうと思います。」有事とは防衛出動が下令されたとき、そして「防衛出動不令のときというのは、御承知のように二つに分かれる。」その一つは、まさに攻撃をされた有事と、もう一つはおそれのあるときと説明をしている。つまり、七十六条下令、これが有事なんです。そこから先は、攻撃されているとき、おそれのあるときとに分かれるけれども、七十六条下令が有事である。そうすると、矢崎答弁のように、シーレーンは有事に設ける、はっきり答えている。そうすると、七十六条が発動されているときに設ける。つまり、本土有事のときに設ける。施政権下有事のときに設ける。となると、延々と何遍も同じことを繰り返している加藤長官の答弁、本土は平時である、シーレーンだけが有事である。本土平時のときにシーレーンなどというものは設定することになっていないじゃないですか。シーレーンを設けるというのは、本土が有事である。有事とは何か。七十六条の発動である。このときにしかシーレーンは設けられていない。本土が何でもないのにシーレーンが勝手に有事、そんな論理が成り立ちますか。これは訂正していただきたい。
  141. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 矢野発言につきましての私たちの答弁は、矢野発言の状況設定の言葉に合わせたものですから、シーレーン有事という言葉を使いましたが、正確に言えば、我が国の施政権下以外が有事の場合と言うのが正確であろうと思います。その後、条約局長がその辺を条約的に法律的に整理して答弁いたしましたけれども、それが有事についての正確な表現ではないかと思います。  私たちが御議論いたしましたのは、矢野質問の設定の中に、施政権下有事の場合についての考え方についてでございます。そして、それじゃその施政権下以外のいわゆる一般の公海におきます我が国の自衛権とその地理的範囲の問題は、かつて矢崎局長が、その自衛権発動の地理的範囲、防衛力整備の地理的範囲、また有事作戦行動の地理的範囲という三つの原則で整理いたしておりますが、それでお考えいただきたいと思います。
  142. 大出俊

    大出委員 もう一遍答えてください。いいですか。シーレーン有事というのが単独にある、あなたの答弁によれば。施政権下有事が一つ、シーレーン有事が一つ、有事は二つだとあなたは明確に答えている。速記録に残っている。これはないというのだ、私は。いいですか。今までの答弁からすれば、シーレーンはいつつくる、有事のときに設ける、こうです。そうでしょう。有事とは七十六条下令のとき、はっきりしているじゃないですか。七十六条下令されていないときにシーレーンというのはあり得ないのです。明確にしてください。
  143. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほどお答えしたことと繰り返しになって恐縮でございますが、シーレーン防衛と私ども言っておりますときは、海上交通の保護という意味でシーレーンという言葉を使っておりまして、今先生のおっしゃいました、有事にシーレーンを置くというようにおっしゃいましたけれども、恐らく矢崎局長あるいは夏目局長時代お答えしているときは航路帯という言葉を使っていると思います・航路帯とシーレーンを私ども使い分けておりまして、航路帯というのは、有事、比較的そこを航行するのに安全な海域というものを設定をしてそこに我が方の船舶を通らせるという意味で、それは有事に比較的安全な海域というものを設定をするために置く、有事に置くように考えておりますけれども、シーレーン防衛と申す場合は海上交通保護そのものでございますので、有事に設定をするというものではないというように御理解をいただきたいと思います。
  144. 大出俊

    大出委員 それではっきりしてきましたが、つまり、今までの経過をたどれば、塩田防衛局長というのが、航路帯一千海里、その上空は守れない、こう言ってきた。ところが、アメリカの側からその上空も守れと言ってきた。さらに、航路帯ではだめだ、面でいけ、三角水域、フィリピンからグアムに至る、こう言ってきた。この時点で、あなた方が出した防衛白書のシーレーンの解釈が変わってきた、シーレーン防衛という言葉をつけて。そうなると、いつの間にか、シーレーンというものは有事に設けるんじゃなくて、いかなる平時の場合であっても日本の周辺何百海里かはシーレーンである、その防衛考えている、海上交通の保護である。しかも、あなた方の防衛白書によれば、冒頭からアメリカとの共同対処が前提になっている。だから、これが今回のあなた方のシーレーンの共同研究のシナリオなんだ。だから旧来の解釈をここで明確に変えたんだ。あなた方のシーレーン防衛問題、これは六十年の防衛ハンドブックだけれども、ここで「日米共同対処によりわが国に対する武力攻撃が発生した場合」は云々ということで、頭から共同対処。本土有事も何もない。だから私はさっきの設問をしている。この解釈でいけば、目の前で米艦が撃沈されそうになったらこれもシーレーン有事なんだ、日本の船がどこかそこにいて、いないという蓋然性という問題であれだけの答弁をするなら、全くないとは言えない。そうなると、それについてはこの研究でいけば黙っていられないはずなんだ。そこのところをはっきりしてください。
  145. 西廣整輝

    西廣政府委員 二点お答えしたいと思いますが、まず、シーレーンの解釈が変わったのではないかということでございますが、私先ほどからお答え申しておりますように、シーレーンというのは海上交通保護そのものであるということは、五十八年の五月の答弁主意書で政府としてお答えしていると思いますが、シーレーンという言葉はいわゆるシーレーン防衛との関連で用いているものであり、シーレーンの防衛は、国民の生存を維持しあるいは継戦能力を保持する観点から、港湾、海峡の防備、哨戒、護衛等各種作戦の組み合わせによる累積効果によって海上交通の安全を確保することを目的とするものであるというように申し上げておりますので、航路帯とは違うという点は従来からそうであることを御理解いただきたいと思います。  もう一点、公海上で他国が戦闘しておる、米国が危険に瀕しておるということは、先ほど来申しておりますように、我が国の船舶が組織的、意図的にやられている状況とは全く異なりますので、我が国有事には該当しないというふうに考えております。
  146. 大出俊

    大出委員 時間がなくなりますから、改めて時間をつくったときにやりましょう。  ここではっきりさせておきたい問題がもう一つありますので、そちらを先に聞いておきたいのでありますが、米ソ戦争という形が目の前で行われている、そういう設定で物を考えますと、先ほど質問がございましたOTHレーダー、これは今アメリカと一緒になって場所を決めていて、喜界島、馬毛島、受信、発信の基地をつくる。そうすると、アメリカ側は一元的運用をやる、だから、雑音その他を除去する解析のためのコンピューターのソフトウエアは極めて重要だから日本には渡さない。横浜の上瀬谷の通信基地、ここに生データを集中をして解析をして日本に必要なものだけ上げる、それでいいじゃないか。つまり一元運用であります。アラスカ、アリューシャンのアムチトカ、グアム島、それと喜界島、二つ必要でございますから馬毛島になるのですか、一元運用をやる、日本にはやらない。運用はだから日本がやる、だがデータはすべて一括上瀬谷の通信基地。  ここで明らかにしておきたいのは、ここに地元の新聞がございますが、大騒ぎなんですよ、昨年来。ここでまず在日米海軍通信本部、横須賀、ここから横浜施設局に対して、協力をしてもらいたい、上瀬谷の米通信施設を大きく拡張をする、アンテナポールその他を十数本建てる、鉄柱を建てる、こう言ってきた。これは防衛施設庁の傘下の施設局から課長以下五人ばかりで、説明会をやりたい。民有地にまで鉄柱を建てる。大騒ぎですよ。新たにアンテナ十基、ここに大きなのがあるでしょう。当時、私は防衛庁からも外務省からもデータを出していただきましたが、とりあえずこの年は予算が通っていない。だが、ここに集中しよう、はっきりしている。この場合に、集中運用、一元運用をやっている、米ソ戦争が起こっている、日本のレーダーが動いている、日本のOTHが動いている。これは明確に集団自衛権にかみ合ってしまいますね。いかがですか。
  147. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 昨日かその前の一部の新聞にOTHレーダーとその日米の運用の話がございましたけれども、その報道は一番重要な部分で間違えていると思います。  まず第一に、我が国はOTHレーダーの導入を今検討中でございまして、その結論がまだ出てない段階で日米との間の運用の話は具体的にいたしておりません。  それからまた、OTHレーダーそのものといたしましてある種のソフトにかけなければその情報の解析ができないというものではありません。そして、そのソフトをアメリカからもらわなければ、我が国がOTHレーダーを持ってある部分を情報収集しても、そのデータが何も日本側に見えないということではありません。仮にそういうものであったならば、日本側としては持つべきものではありません。そのOTHレーダーというものは、見ることによってすぐ航跡がわかり、そしてそれが即情報になるものであるということを御理解いただきたいと思います。
  148. 大出俊

    大出委員 見解が違うようでありますが、OTHの性能を議論している時間は残念ながらない。OTH・B、バックスキャター、大変な長距離に及びますから、雑音の除去をしなければ、私が調べた限りでは情報を得られない。だから、どうしてもソフトが必要である。これは日本にはない。アメリカからその提供を受けなければならない。昨年六月十日に加藤防衛庁長官アメリカに行ったときに、洋上防空を重視する、OTHの導入をしたい、だから基礎データをもらいたい、こういう話をなさっている。私も調べてみましたが、このコンピューターがかかわるソフトの部分の入手がなければ解析ができない。ローターというかローテルといっていいのかわかりませんが、海軍は結局船には積まぬことになりましたが、そちら側のやや小型なものを使うとしても同じこと。英国にもう一つOTHがございますが、恐らくこれは使わぬだろうと思うのだが、どれを調べても同じことであります。あなたが幾らそう言ってもそれは通用しない。  そこで、一元運用で動くとすると、アレクセイエフツカなるバックファイアの海軍の基地、ここまで千五百キロ、ベラヤなる空軍の基地、ここもバックファイアでありますが、ここまで三千五百キロ、硫黄島近辺から。もう一つ、最近はザビチシスクというところで、もとこれはバジャーだとかベアの発着地でありますけれども、最近はバックファイアが見られるというので基地が一つふえたのではないか、これも千六百キロくらいでございましょう。全部入ってしまう。それをそれぞれのデータ、六十四度ぐらいのデータが、アラスカから、アムチトカから、グアムから、喜界島から、馬毛島に絡んで全部動いている。日本は攻撃されていない。これは明確に、相手方から見れば日本は米ソ戦争の片翼を担ったことになる、我々からすればこれは集団自衛権の行使になる。だから、一元運用しか方法がないものだとすれば、そしてアメリカが生データを全部収集するんだとすれば、日本はそういうOTHは設置すべきでないということになるのだが、そこのところはいかがですか。
  149. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 繰り返しになりますけれども、我が国としては、そのOTHレーダーを設置し、それによって我が国の経空脅威増大に伴う新しい状況に対処するための防衛情報を集めるという意味で、我が国のために有益なるものだと思っております。また、そういうことではないかと思って、今導入を検討いたしておるわけでございます。で、その一元運用をしない限りそれは全く生のデータで我が国に対しても何の意味もないものというそういう前提で大田委員の御議論が行われておるわけでございますけれども、その点につきましては、私たちはそう理解いたしておりません。
  150. 大出俊

    大出委員 せっかくだからもう一つここでつけ加えておきますが、あなた方が一番最初に、これは伊藤さんのときだと思うけれども、アメリカがこのOTHについては日本の土地提供を求めているのですね、私行って調べてきましたが。アメリカ側が設置するから土地を提供してくれ、ところがその後、日本があわせてつくってくれればよりベターである、こう変わってきた。この時点の、九月二十四日、これは粟原防衛庁長官のときです。これは朝日新聞が一つ書きましたが。これは周知の事実だから新聞名を挙げてしまいましたが、トーキングペーパーをあなた方は持たしている。このトーキングペーパーによりますと、もしOTHレーダーを日本が設置をする、その場合にこれは一元運用にならざるを得ないんだ。かみ合ったりしますが、性能がそうなんだ。そうすると、これは集団自衛権の行使ということで大変に問題があるということで、一生懸命日本側は逃げてきている。ここにあるじゃないですか。明確なんだ、これは。本来そういう性格のもの。だから、これを今の答弁で日本側でと言ってみたって、結果的に日本側になりはしませんよ。稚内のエリント、コミントだってみんなそうじゃないですか。三沢だってそうじゃないですか。大韓機のときを見ればわかるじゃないですか。こっちがとった情報がひとり歩きしたと言って制服の方は嘆いていた。同じことになるだけじゃないですか。こういうところは防衛議論をしているんだから、表面の口先合わせで物事を処理したのではだめなんだ、これは。だから、一元運用されるので、こちら側で運用できないものであるとすれば、明確なんだから、そういうOTHレーダーを置くべきでない、こう申し上げているのです。もう一遍答弁してください。あなた方の経緯から見ればそうじゃないですか。
  151. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 我が国にとってその情報が意味を持つかということと、それから、その情報をほかの国と交換することが国益に合うのかという二つの問題だろうと思います。今大出委員の御指摘は、OTHレーダーというものは単独で処理しても何の情報価値のないものという見解には、私たちはそう思っておりません。
  152. 大出俊

    大出委員 もう一遍言っておきましょう、問題だから。要するに、これはもう衛星でもそうだ、フランスのブラックボックスを使った、日電がつくればいいのに。これはあっさり消えてしまって騒ぎが起こる、機能を果たさなくなる、中身はどうなっているか。日本によこさないから、その部分はフランスのを使っているから。同じことであります。今度の場合のOTHを調べてみても、大変にこれは解析が難しいのです。長距離にわたりますからね、電離層を反射していくわけだけれども、返ってくるわけだけれども。だけれども、大変な雑音処理その他をしなければならない。日本の技術でコンピューターを使って解析をする、雑音処理その他のソフトがなければできない。できないから、そのソフトをアメリカに言っている、事務当局の間で。アメリカはそれを認めない。だから、上瀬谷に一元処理機構をつくる。だから、在日米海軍から施設庁に申し入れが来ていて、上瀬谷で今動いているんじゃないですか、現実に。そうでしょう。ここに生で全部集めている。生で集めれば一元運用じゃないですか。そうなれば、日本は攻撃されていない、さっき私が設定しているように米ソ戦争が進んでいる、その場合に、情報の方はアメリカが一元運用している。動かしているのは日本なんだ、一つは。それでは集団自衛権に踏み込んでしまうじゃないか、日本が攻撃されても仕方がないじゃないか、そうなるじゃないか、こう言っているんです。あなたはその真ん中のところを答えていない。日本で本当に単独で解析できるんですか。
  153. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほど来防衛庁長官お答えしていることの繰り返しになりますが、私どもが得られておる米側から提供された資料によりますと、我々に提供されるかもしれないOTHレーダーというのは、そのレーダーで捕捉したものがそのまま情報化されて我が方で利用できるということでありまして、その生のデータをどこかに送ってそこでソフトで何らかの処理をしないと情報化されないというものではないというように聞いております。
  154. 大出俊

    大出委員 私どもは私どもなりに調べているんです、たくさんの新聞関係の方もいるんでね。そういい加減なことを言っても……。  アメリカ側はだから上瀬谷に——上瀬谷通信基地は私の足元でよくわかっているけれども、一つは海洋監視センター瀬谷分遣隊というんだ、あれは。例の三沢の象のおり、あそこにアンテナ、レドームというのが五つできている。これは何をやっているかといえば、ジェーン年鑑等見るとホワイトクラウドと名がついているけれども、三つの海洋監視衛星が動いている。緯度、経度を含むソビエトの艦船をレーダーで今この時点にどこにいる、毎分わかっている。国家安全保障局に上瀬谷の通信基地を通じて全部行っているじゃないですか。大韓機のときだってあそこから行ったじゃないですか。潜水艦のものもあそこに全部入っているじゃないですか、SOSUSがみんな海底にあるんだから。しかもあそこはP3Cの司令部でしょう。ここに集中運用する、当然あり得ることで、だからアンテナをつくると言っているじゃないですか。だから我々はもう一昨年から調べているんです、これは。OTHレーダーの生データの集積所ですよ。大変重要なアメリカの基地機能がふえていくわけです。  その中で出てきているのは、日本はそのソフトをもらってこなければ解析はできない、向こう側もそう言っている。それを渡さない、こう言っている。やれ、とこう言われている。必要なものは日本にやるというのです。そういうものを設置するというのは、日本防衛という意味で私どもの見地からすると非常に危険だ、こう言っているんで、今のその焦点、もらえると思っているじゃ困るんで、間違いないですか。
  155. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほど来お答えしているように、我が方が仮に設置することになった場合、そのOTHレーダーで得られた情報を米側に一回渡して、そこで情報化してもらうということは必要がないというように理解をしております。(「聞いているから理解になった」と呼ぶ者あり)
  156. 大出俊

    大出委員 今度は聞いているから——本当に答弁が変わりましたな。理解しているじゃこれは話にならぬじゃないですか。  それじゃ、あなた方が聞いているあなた方の理解にならなかったら、解析部分、解析に必要なソフトというものをあなた方に提供しないということになったら、これは皆さんが幾ら隠したってわかりますから、そうしたらそういうものは設置できませんな、そういう仮定に立ったら。いかがですか。妙なところで時間を食ってしまったから、先の方はしょってその点はっきりしてください。
  157. 西廣整輝

    西廣政府委員 これまた先ほど防衛庁長官がお答えしたとおりなんでございますが、我が方が設置をするもろもろの装備というものは我が国防衛に役立つものをつくるということでございまして、それが一回米側の手を経て、向こうの判断によって提供されたりされなかったりするというものでありますと、それは我が国防衛に直ちに使い得るかどうかわからないものでありますから、そういうものは設置をいたしません。
  158. 大出俊

    大出委員 はっきりしてくれれば結構で、私どもが調べた限りで言えば、今日日本に解析のためのソフトウエアはアメリカにとって国家的機密だから渡せない、こういうことです。だから、今そういうものであるとすれば設置しないと言うんですから、決着がついた気がいたします。  そこで、今度のシーレーン共同研究のシナリオの中に、新聞には核トマホークを使用した状態の中におけるシーレーン防衛の共同研究、こういうことなのですが、そこで実はこの間私がアメリカ議会の議事録その他によっていろいろ申し上げましたが、横須賀、佐世保両方ですが、昨年三十五隻も、本来ならこっちへ来ないはずの西大西洋にいる大西洋艦と言われる船まで入ってきている。合わせて三十五隻。過去べらぼうに、最高。当然、だからさっき私が申し上げましたワトキンズ海軍作戦部長の述べておるのは、米ソの間の通常戦争が起こってもソ連の戦略ミサイル原潜をたたく、デルタ型、八千キロのアメリカ本土をたたける原潜がオホーツク海に沈んでいる、十五隻と言われている。たたく。  何でたたくか、もちろん最後はハンターキラーになるかもしれませんけれども、まず横須賀基地からトマホークを発射しますとウラジオストクまで千六十六キロ、あっさり届いてしまう。さらにハバロフスクまで飛ばしてみても千六百六十キロくらい。そうすると、米ソ戦争が起こっている、トマホークが積載可能な原潜がたくさん入っている、終始入ってきている、先ほどの共同研究と絡むんだけれども、これがトマホークを発射する基地が横須賀だ、こういうことになると、日本が攻撃されていなければ、発射するとすれば二つ問題がある。  核であれば事前協議、直接戦闘作戦行動であればこれまた事前協議、核ならばノーでしょう。直接戦闘作戦行動にはイエスとノーがありますか。
  159. 小和田恒

    小和田政府委員 従来からお答えしておりますように、イエスの場合とノーの場合とございます。
  160. 大出俊

    大出委員 三沢にF16があります、一飛行隊、来年もう一飛行隊ふえる、横須賀には空母機動部隊がある、原潜がある、三沢に米軍のP3C、E2Cがあります、岩国、嘉手納がありますが、日本が攻撃されていない、これは一切、直接戦闘作戦行動ならノーですな。念のために聞いておきます。
  161. 小和田恒

    小和田政府委員 御質問の趣旨を、私、正確に理解したかどうかわかりませんが、先ほど申し上げましたように、一般的に日本の施設、区域から行われる作戦と作戦行動についてはイエスの場合とノーの場合があり得る、それはそのときの状況によるということでございます。
  162. 大出俊

    大出委員 これを詰める時間がなくなりましたから改めて質問をいたしますが、ここでひとつフィリピンの問題、時間がなくなりますから、承っておきたいのであります。  いろいろなことがフィリピン問題では表にも陰にも出てきておりますが、日本フィリピン問題の調査を、マルコスの隠し資産などと言われるものについて明確にする必要があると私は思っております。なぜかといいますと、こんなべらぼうな世界一の経済協力、経済援助をしている国はないわけでありますから、ここにデータがございますが、これは大変なものでございまして、一つは有償資金協力が四千六百六十七億三千九百万、それから無償資金協力が五百四十六億六千九百万、技術協力が三百八十一億二千二百万。これは五千五、六百億になりますか、外務大臣。私が今申し上げたのは五十五年度から六十年度まででございますが、随分いろいろなものがございますが、ここに大型のプロジェクトがずっと並んでおります。七百社も日本から進出している企業がございます。  この間、幾つか表に出ておりますように、フィリピン大使館の跡地の売却をめぐりまして、これはマルコス大統領の座を追われたわけでありますから未成立てはあります。未成立てはありますけれども、ニツダ前大統領補佐官という方、直接当たった方がおいでになるようであります。これを見ると、この五%に当たる百二十五万ドル、二億七千万円もの金が、いわゆる集金機関といつも言われている、いつも出てくるマルコス・ファンデーション、基金、ここに、支払われている。今一つだけ申し上げたこれは成立していません。しかし、この方法が常にとられていた、たくさんのこの情報がございます。  しかも、イメルダ夫人が来られて、日本の商社の中で突出したフィリピン関係のある商社にみずからおいでになっている。しかも、そこに絡むいろいろな方の話を聞いてみますと、具体的な名前を挙げるのはまだ少し早うございますけれども、資金プール係である。このたくさんの大型プロジェクトに日本の企業や商社が絡んでおいでになる。そして、フィリピン側から言われるいわゆるリベートをプールをしている、資金プール係。それぞれのフィリピン側からの指示、連絡によってタックスヘーブンを通じてどこへ行く、すべてその商社なら商社のルートを使って流している、日本国内に隠し資産がないとは言い切れないという話まで出てくる。極めて近い将来にアメリカの新聞に載るという情報も入ってきている。ここまでのことになると、アキノ政権になった、何とかせぬといかぬ、これはわかる。わかるけれども、国民の税金ですからね。そうでしょう。五千五、六百億になりますか、これは国民の税金ですから、安倍さん。  そうすると、ここまで話が入り乱れて流れてくると、まずやはり国会の場で国民に対する責任という意味で明確にすべきです。世界各国がいち早くアキノ政権支持なんというふうになっていったのも——今、年度のフィリピンの貿易赤字、恐らく三兆円ばかり、マルコスの資産が見つかれば半分は埋まってしまうだろうと言われる。こういう状態を、現に未遂ではあってもここまで明らかになっている、フィリピン大使館の売却問題。しかも、これは通産省の所管でしょう、商社というのは。大変なシェアを持ってフィリピンに進出している。イメルダ夫人が来れば寄っていく。資金プールをしたんじゃないかと言われるなんてところがある。そういう状態を放任はできません。したがって、外務大臣、新しい政権ができた、かつての日本との歴史的関係もある、だから援助しよう、わからぬわけではないけれども、じゃ国民の感情はどうするか。  ここに社説が一つありますが、私はここで言っているとおりだと思うのです。この社説、経済協力というものは、日本は平和国家という名において一生懸命やってきた。政府開発援助、ODAというものは五十九年実績で四十三億一千九百万ドル、アメリカに次いで世界第二位になった。ここまではいい。しかし、証拠はないけれども——日本フィリピンに対して六十年までに累計四千六百六十七億円の借款と五百四十六億円の無償資金協力、三百八十一億円の技術協力をしている。特に五十五年度からふえている。にもかかわらず、同国の経済は困難に陥っており、失業率も高い。我が国経済協力は一体どういう使われ方をしたのか、まずもってこれははっきりしてもらいたい。当たり前。これは国民の声です。そうでしょう。  そこで、外務大臣に物を言っていただく前に、この種のリベートを必要悪だと国税庁長官はお考えかどうか。必要悪だとお考えかどうか。かつてインドネシアにもありました、ストーさんの時代に。私もLNGの問題でここで質問したことがございます。だが、そのときに国税庁長官の答弁は、人は違うが、リベートである限りは課税対象だと明確にされた。今でもその考えは変わりませんか。リベートであるとわかっていれば課税対象にする。それならば、このフィリピン大使館の跡地の売却、その当の企業の責任者の方がフィリピンに関しては五%ぐらいをマルコス・ファンデーションにいかなるものかは知らぬが入れなければならない、そういう歴史的慣行があるから、いたし方ないそうしたので、悪気はなかったと言う。それが明確にリベートならば課税対象でしょう。この筆法ですべて行われているでしょう。ならば国税庁はほとんどみんなせっかく調査をされているのだから、わかっている。国税庁にいろいろ取材に行った方々の話も耳にする。そこのところ、リベートなら課税対象。ならば今まで払っていたリベートというものは調べ上げて全部課税対象にしていただきたいのだが、いかがでしょう。
  163. 日向隆

    ○日向政府委員 一口にリベート等といいましても、売上割り戻し、支払い手数料、これは適正なものに限りますけれども、そういったものにつきましては、これは正当な損金として認められますが、それ以外の不正な支払い手数料、取引先への謝礼、贈与等につきましては、それぞれ今委員がおっしゃいましたように交際費ないしは使途不明金、場合によりましては寄附金として課税されることになっております。
  164. 大出俊

    大出委員 だから、これは成約は未遂ですけれども、マルコス政権が続いているとすればニツダさんという前大統領補佐官に対しても巨額な金が行くことになっている。そうでしょう。これはマラカニアン宮殿のところ、後から出てきた、つまり書類の中から見つかったんでしょう、これは。聞いてみたが間違いない。マニラヘ行った皆さん方にも聞いてみたけれども間違いない。そうだとすると、これが行われているとすれば今のケースに当てはまる。明確に向こうの方に対する謝礼でしょう。こういうケースが、マルコス・ファンデーションというものだって幾らか慈善事業式なものをやっているけれどもほとんど全部だ、こう言われているぞしょう。これはどうですか、外務大臣総理。これは一遍調べてみる必要があると思いますが、外務大臣、いかがでございますか。私は私なりに調べ始めてはいるが、いかがでございますか。
  165. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本の借款とかあるいは無償援助がどういうふうに使われておるかということについては、これはおっしゃるように日本の税金ですから、やはりその国の民生の安定とか経済の開発のために確実に使われていなければならぬし、その辺は日本としてフォローアップしていかなければならぬし、それはそれなりに外務省としてもこれまで調査もいたしておりますし、いろいろと努力もいたしてきておるわけでございますが、その政府がやるところの事業に絡んでこれが日本の企業とどういうふうな関係になっておるかということは、それは外務省として立ち入って調べる権限もありませんし立場にもないわけでございまして、これは今国税庁がお答えになりましたように、日本の企業は、そうした金銭の出納についてはこれは国税庁の仕事だろうと思いますが、外務省としては、今の借款とか無償援助とか技術援助が確実に相手の国の経済の安定に生かされておるかどうかというのは、これはやはり調査をすべきことはしなければならぬし、それは現実にしておるわけでございます。
  166. 大出俊

    大出委員 「わが国の対フィリピン経済協力実績(二月十五日現在)」というので、これは私、資料をいただきましたが、こんなにたくさんみんな金額がついておりますが、これはべらぼうな額のものがたくさんある。ひとつこれにかかわった商社、企業、建てたりつくったりしておりますけれども、その全部の表をきょうは、経済協力基金、企画庁の方にも来ていただいていますし、通産省の方だって、あそこに局長のお顔は見えるけれども、商社は傘下なんだから、どこがどうかかわったかなんということは知らないわけがない、明確に日本援助したのだから。ひとつリストを全部出していただきたいのですが、いかがでございますか。
  167. 赤羽隆夫

    ○赤羽政府委員 経済企画庁よりお答えを申し上げます。  経済協力基金がお金を貸しております円借款は、基金と相手国政府との間で締結されます借款契約に基づき特定の事業プロジェクトのために必要な資金を供与するものでございまして、これは相手国政府と基金の間の関係でございます。その特定事業をいかなる企業が注文を受けるかにつきましては、先方政府と当該企業との間の問題である、こういうことでございまして、我が国政府としても、また政府機関の一つとしての基金としても、円借款に係る受注企業名を公表する立場にはないというのが私どもの考えでございます。
  168. 大出俊

    大出委員 そういう答弁を今までしてきているのでは困るので、この際総理に承りたいのだが、こんなべらぼうな援助をしている。すべて国民の、税金です。歴史的関係もありましょう。だが、このプロジェクトそれぞれにかかわった商社、企業、わかっているのでしょう。これはやはり出していただいて、できれば私はこの国会なら国会に調査機関をつくるべきだと思っているのですが、これは。そうしなければ国民に対して責任を負えぬじゃないですか、さっき例を幾つか挙げたけれども。しかもまだ実は具体的に言う段階じゃないから我慢している点もあるのだけれども、やはりそこらのところは責任を負ってもらいたいのです、これだけの五千何百億にもなる金を。そうでしょう。だから総理に承りたいのだが、今国税庁が三つばかり例を挙げてそれは課税対象だとおっしゃったが、課税対象であるものがそれっきり流れていたのじゃ困るのだから。いかがでございますか。資料をお出しをいただきたいのだが、総理にひとつ聞きたいのです、ここは、国民のために。
  169. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 円借款につきましては、ただいま経企庁調整局長からお答えいたしましたけれども、委員も御承知のとおり、我が国経済協力は相手国政府の行っている事業をお助けするという自助努力を尊重しながら協力をするという立場でございます。したがいまして、経済協力によりまして円借款でございますとか、無償資金協力も同様でございますが、交換公文によりまして特定プロジェクトに一定の限度額の資金を供与いたします。それを使いましてその援助政府、現在の場合フィリピンでございますけれども、フィリピン政府がそれをいかに有効に、入札等を行って契約を結び使っていくかということは、これは相手国政府の責任においてなされることでございまして、相手国政府と役務、生産物を提供いたします企業との間の契約というものは私ども日本政府が当事者ではございませんので、これを公表する立場にはないというのが私どもの今までお答えしてきたところでございます。
  170. 大出俊

    大出委員 そんなことはわかり切っているんだが、これだけ国際的に大騒ぎになって、アメリカ議会の追及でレーガン氏も姿勢を変えたでしょう。我が国も姿勢を変えなければいかぬ、そういう意味で、我々調べてここで問題にしてからじゃうまくないじゃないですか、調べてないわけじゃないんだから。  通産省にもひとつ承りたいんだが、出していただけませんか。いかがですか。わかっていて出さぬという手はないでしょう。
  171. 黒田真

    ○黒田(真)政府委員 確かに私ども商社をいろいろな意味で監督する立場にはございますが、今先生が御指摘のような個々の契約内容等、必ずしもすべて承知している立場にはございませんし、また、それらを発表するべきものとも考えていないわけでございます。
  172. 大出俊

    大出委員 それは一遍相談していただけませんかね。だめならだめでまた考えますが、いかがですか、委員長
  173. 小渕恵三

    小渕委員長 理事会で検討いたします。
  174. 大出俊

    大出委員 それではあと二、三点申し上げて、御回答いただいて終わりにいたしますが、一つはAEGIS艦の日本配備ということで、相当これは詳しい中身が載っているわけでありますが、AEGIS艦、これはこの間、私、申し上げましたが、ニュージャージーが入ってくるときにAEGIS艦を連れてくる、こういう情報も入っています。バレイフォージというこの艦はタイコンデロガ型の四隻目の艦だと思いますけれども、これは横須賀を母港にする、これはアメリカ側と日米首脳協議の前段という意味での打ち合わせをやっているところでアメリカから打診が行われたと、こうあります。日本側は、抑止力という意味で正式に話があれば受け入れたい。これはどこまで本当でございますか。ひとつ承りたい。  それからもう一つ、これは外務大臣の発想で、コロンビアの火山爆発その他をめぐって、緊急救助隊ですか、大平さんが外務大臣のときから問題が起こりまして、ずっと自衛隊の海外派遣、議論をしてまいりましたが、総理の答弁その他を見ましても、外務省に自衛隊の方を籍を移してというようなことを検討する。ちょっとこれは問題がありまして、自衛隊法に任務はない。前からこれは私、何遍か取り上げた問題でございますが、またまたこれが出てくる。というルートに自衛隊を乗せるというのは、これは私は許しがたいと思っているわけでありますけれども、防衛庁の見解も出ているようではありますけれども、念のために、これは一体、十億ですか、予算組んであるのは、外務大臣。十四省庁連絡協議会ですか、やっておられますね。これはどういうことになるのですか。そこのところをひとつ承りたいのであります。  最後に、空中給油機は幾つか種類がありますが、これ、どれをお考えになっているのか。例えばKC10ならK10、まあKC135というのはもうラインがない。KC10、これもやがてなくなるけれども、これはDC10のラインを使えるということですから、これはやろうと思えばできる。あとはちょっと、これは中古でも買わない限りは新しいものはできないと思うのでありますが、空中給油機はどう考えておいでになりますか。  三点だけ聞かしてください。
  175. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 第一点のAEGIS艦の日本への寄港につきまして、まだ私としまして何も聞いておりません。  それから、国際緊急援助隊につきましては、これはコロンビアとかあるいはまたメキシコ等のあの災害、大変な災害に当たりまして日本としては非常な援助をしたわけでありますが、しかし、やはり緊急にその災害に適応したような形で援助をするということは各国でもやっておりますし、日本はただ資金だけ出して後でいろいろと協力するということじゃなくて、もっと日本なりに、これだけの日本も災害国でいろいろのノーハウを持っていますから、そういう点でお役に立てるのじゃないかというふうに思いまして、また実際そういう相手の国もそれを期待しているというふうに判断をいたしまして、実は援助隊構想をつくったわけですが、しかし、御承知のように、これはもちろん外務省だけでできるわけではありませんし、関係の十四省庁でいろいろと協議をいたしまして、そうして、JICAで十億円の予算を要求して、これを確保いたしまして、いよいよ体制は一応確立したわけですが、その際、自衛隊の協力を得るかどうかということについてもいろいろ議論がございましたけれども、しかし、これは今後長い将来においては、いろいろとこれから実際具体的にやった場合に検討はしなければならぬと思いますけれども、現実問題として自衛隊に協力を求めるということになれば、自衛隊法の改正その他も絡んできますから、なかなかそう簡単にもいかないのじゃないかということで、現在の体制では、防衛庁は除きましてその他の関係の十四省庁でこの体制をつくりまして、これを進めるということで今やっておるわけです。
  176. 西廣整輝

    西廣政府委員 救助隊につきましては、今外務大臣がお答えになりましたので省略させていただきますが、給油機でございますが、空中給油機能について、例えば要撃機能にどういうように役立つかとかあるいは今後洋上防空等の研究をいたしますが、そういう際に空中給油機能がどういう役割を果たすかというような研究をぼちぼち始めているということでございまして、機種そのものをどうするかというような具体的な問題まで入っておりません。
  177. 大出俊

    大出委員 加藤さん、さっきの例の緊急救助隊の件だけ長官から答えてください。
  178. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 先ほど外務大臣の御答弁のとおり、私たちとしてはいわゆる武力の行使を伴わない自衛隊の派遣というものは憲法上禁止はされていないと思いますが、現在の自衛隊法上その任務は規定されておりません。したがって、仮にそういうことをやるとするならば、自衛隊法上幾つかの問題点を解決しておかなければしっかりとしたものはできないのではないか。今後の検討課題であって、現在のところ考えておりません。
  179. 小渕恵三

    小渕委員長 これにて大出君の質疑は終了いたしました。  次に、二見伸明君。
  180. 二見伸明

    二見委員 私は集団的自衛権に関して、いわゆる情報交換であるとか、それから米艦護衛であるとか、それから極東有事における便宜供与のあり方などについてお尋ねをしたいと思います。  二月六日の衆議院予算委員会における我が党の矢野書記長の質問に対して、軍事情報の交換あるいは米艦護衛等についての政府側の答弁というのは、私は見過ごすことのできないいろいろな問題点を含んでいると思います。冒頭に総理大臣に確認をさしていただきます。二点ございます。  第一点は、集団的自衛権について政府は今までこういうふうに見解を述べられております。我が国国際法上集団的自衛権を有しているが、「憲法第九条の下において許容されている自衛権の行使は、わが国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであって、憲法上許されない」、これが政府の今まで述べてこられた見解でございます。  さらに、これと同じ意味合いになりますけれども、例えば昭和五十八年四月一日の参議院の予算委員会で、角田法制局長官は、「個別的自衛権の場合でもその自衛の枠を超えるものは無論できないわけであります。いわんやその集団的自衛権、なぜできないかというのは、いま申し上げたような自衛の枠を超えるからできないわけですから、一たん武力攻撃を受けた後でも、そういう集団的自衛権が自由に行使できるというようなことはあり得ないと思います。」と答弁されているわけでございます。この二つのことについて、これはこのとおり今でも変わらないのかどうか、まず最初に確認をさせていただきます。
  181. 茂串俊

    ○茂串政府委員 ただいまの御質問についてお答え申し上げます。  集団的自衛権というのは、委員も御指摘のとおりに、自国と密接な関係のある他国が武力攻撃を受けた場合に、自国が攻撃されていないのにかかわらずこれを実力をもって排除する権利であるというのが、我々いつもお答えしている御答弁でございます。したがいまして、この集団的自衛権というのは、本質的にと申しますか、内容として武力行使を内容とする概念であるということでございます。  それから、それがなぜ我が憲法上持てないかということにつきましては、これもいつもお答え申し上げておりますように、憲法九条の解釈といたしまして、憲法九条というものは、もともと我が国に対して急迫不正の侵害が起こったような場合、したがってまた、それによって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるというような事態に対処して、国民のこれらの権利を守るためのやむを得ない措置として初めて認められるものでありまして、またその措置は、このような事態を排除するためにとられるべき必要最小限度の範囲にとどまるべきものであるというふうに考えられるわけでございます。したがいまして、他国に加えられた武力攻撃を実力をもって阻止するということを内容とする集団的自衛権の行使は憲法上許されないというものでございまして、結論的に申しますれば、委員御指摘のとおり、憲法九条の解釈として我が国は集団的自衛権を持てないということでございます。  それから第二の御質問でございますが、その点は先ほど御指摘がありました角田答弁のとおりでございます。私もそのとおりと心得ております。
  182. 二見伸明

    二見委員 集団的自衛権の中身は武力行使という御答弁でございますけれども、果たして武力行使だけでもっていいのかというのはこれからやはり検討しなければならぬと思います。     〔委員長退席、中島(源)委員長代理着席〕  二月六日の矢野質問に対して加藤長官は、いわゆる情報交換は個別的自衛権の原則に抵触するものではない、こう述べられた。そして「日本が発見し」要するに、たしか極東有事、シーレーン平時というケースだったと思いますけれども、「日本が発見しそして米国に通報する、そして米国がそれにいかなる行動をとるかというのは米国の問題」だ、こういうふうに答弁されました。  翌七日には、社会党の上田委員に対して、集団的自衛権の行使として禁じている憲法解釈は武力の行使であり、情報の交換はそれには一般的に当たらないという答弁がありました。  情報交換は個別的あるいは集団的自衛権とはかかわりはないんだということは、平時であればそれはそのとおりだと私は思います、例えばきょうとかあしたとかという今この時点であれば。しかし、矢野委員が提示した極東有事、シーレーン平時というそうした状況のもとで情報交換は集団的自衛権には当たらない、個別的自衛権とも関係がないというようなことが言えるのかどうかですね。  情報というのは、例えばP3Cが発見した情報を米軍に流す、その情報によっては直ちに米軍が実力行動に出る、そういう情報もある。しかし、直ちに実力行動に出ないであろう情報もある。借報というのはいろいろあるわけです。それを全部十把一からげにしてしまって、情報は武力行使ではないから集団的自衛権に当たらないんだという、そうした考え方はおかしいんじゃないか。米国が直ちに実力行使に出るであろうと予測される情報を提供すれば、それはそのまま集団的自衛権にかかわってくるんじゃないか。情報を提供して何でもないなら別ですよ。情報を提供すればアメリカが間違いなく特定国の例えば潜水艦を攻撃するであろうということが予測されるような情報を提供する、そのこと自体は集団的自衛権の行使ではないとは言い切れないのじゃないか。どうですか。
  183. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 集団的自衛権の行使というものの概念は先ほど法制局長官が述べられたとおりであろうと私たちも思っております。それが政府の統一的な見解でございますし、私たちもそう思っております。  そして、私たちが得た情報というものをどう処理するかにつきましては、そのときどきの情勢において私たちの国益、それからそのときの状況等によって判断いたしますけれども、私たちは一般的に情報交換というものはいわゆる集団的な自衛権の行使を禁ずる原則に背馳するものだとは思いません。
  184. 二見伸明

    二見委員 要するに、集団的自衛権の行使の具体的内容が武力行使である、典型的な例として私は武力行使はそのとおりだと思います。では、武力行使でなければすべて集団的自衛権ではないのだ、情報というのは武力行使ではないから集団的自衛権ではないのだとすべて言い切っていいのかどうか。情報によっては、今あなたは国益に従って判断すると。ということは、国益というより、国益に従って判断するということは、一つにはこの情報を提供することが集団的自衛権の行使と相手側に理解されるようなこともあり得るという判断が働くからではないのですか。どうなんですか。やはりあくまでも情報はどんな情報であってもそれは集団的自衛権の行使ではないのだとすべての情報を言い切ってしまうわけですか。どうですか、長官
  185. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 私たちとしては、情報というものはそれぞれその段階で私たちが国益に基づいて判断いたしますけれども、しかし一般的には集団的自衛権の行使にも当たらないし、なおかつ、我が国と安保上のお互いに共同対処し合う国のアメリカとの間にその情報交換があるのはごく自然の流れではないかな、こう思っております。
  186. 二見伸明

    二見委員 私は、日本アメリカの間で情報交換があるというのは自然の流れたということは理解できるのです。そのとおりだと思う。特に日米安保条約という条約関係にあれば情報交換が絶えず行われるであろう。有事であろうと平時であろうとあるだろう。ただ、日本が全く平時でいるときに情報交換する、それは一般的には集団的自衛権に当たらない、それはわかる。しかし、情報の内容によっては集団的自衛権の行使と言われてもしようがないものも出てくるんじゃないかと思うのです。そのことを聞いているわけです。何から何まで全部、情報そのものは集団的自衛権の行使ではないのだと言い切ってしまえないのじゃないか。限りなく実力行使に近い情報もあるわけでしょう、情報の中には。  それではお尋ねしますよ。今、国益に従って判断するとおっしゃられたけれども、では、国益に従ってこの情報は流す、この情報はアメリカには通告しない、この判断はどなたがおやりになるのですか。総理大臣ですか、それとも防衛庁長官ですか、外務大臣ですか、どなたですか、この判断は。判断するのはだれですか。
  187. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 ケース、ケースによってそれはもちろん違うと思いますけれども、非常に難しい判断の場合には、私たち防衛庁で得た情報であるならば私たち防衛庁ないし防衛庁長官でありますし、また外交上いろいろ考慮しなければならないときには、その際には当然のことながら外務大臣と相談をする、そして最終的には総理の御判断を求めるケースというものもあり得るものだと思っております。
  188. 二見伸明

    二見委員 それではもう一点重ねてお尋ねしますけれども、国益という場合に、この情報、例えば外務省がおとりになった情報になるのか、あるいは防衛庁がおとりになった情報になるのか、それはいろいろありますけれども、例えば長官がこの情報を見た。これをもしアメリカに通報したならば、間違いなくアメリカは直ちに攻撃をするだろう。攻撃をした結果、攻撃をされた相手国は、日本が余計な情報を流したからやられたんだと日本に報復をするかもしれない。アメリカに報復をするのではなくて、情報提供者である日本に報復するかもしれないというような判断があった場合には、これは情報を提供しないこともあるというふうに理解してよろしいですか。
  189. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 先ほど申しましたように、情報を提供するかどうかというものは、そのときどきの状況に応じて国益の観点から判断していくものだと思っております。
  190. 二見伸明

    二見委員 もう一度聞きますからね。同じ答弁だったらもうその質問はしないけれども、ちょっと答弁を変えてもらいたいのだけれども。国益の中に、それはいろいろな国益があるのだろうと思う。この情報を提供することによってアメリカが間違いなく特定国の、例えば潜水艦なら潜水艦を直ちに攻撃をするということを長官が判断したとするんですね。いろいろな情報があるから何とも言えないけれども、例えばそういう情報があって、その場合に要するにアメリカの相手国、どこだかわからないけれども相手国が日本に、おまえが余計な情報をアメリカに流すから我が方は攻撃を受けたじゃないか、そういって日本に報復してくるおそれが十二分にあるようなときは、それは国益に入るわけですね、国益を守る方に。どうなんですか。
  191. 西廣整輝

    西廣政府委員 今先生の例示された、この情報を与えれば、アメリカでもどこでもいいのですが、その国が確実に武力行使に及ぶという場合、どういう場合があるかいろいろ考えてみるわけですが、一番端的な例は、ある国に一つ別の国が奇襲をかけようとしている。それを知らせてやれば確実に応戦をすると思いますけれども、そういう点では武力行使をすると思います。それを知らせてやることが国益に反するかどうかという話だろうと思いますが、この話は前にちょっとお話ししたことがあると思いますが、知らせてやれば、知らせてもらった方はそれによって応戦するという場合がありますし、知らせなければ、奇襲をかけようとする国は武力行使が非常に成功するということで、どちらに転んでも日本はどちらかに加担をするというような形になるわけですが、その辺を国益に照らしてどうするかという判断をすることになるのではないかというように申し上げているわけであります。
  192. 二見伸明

    二見委員 この議論はどうもエンドレスになりそうですのでちょっと話を変えますけれども、私は集団的自衛権の行使を武力行使に限定する必要はないのではないか、もう少し幅広く解釈した方がいいのではないかというふうに思うのです。これはあるいは外務大臣の方にお尋ねすることになるのかとも思いますけれども、集団的自衛権の定義については先ほど法制局長官が述べられたとおりでございますけれども、昭和五十七年四月二十日の参議院の外務委員会で、粟山条約局長はこういうふうに言われているのです。  国際法上の集団的自衛権について、ただ、全く武力の行使だけに限定された概念であるかということになると、これは国際法上いろいろな学説があり、武力の行使以外のものが集団的自衛権として理解あるいは説明されないかといえば、それは必ずしもそうではないと思うと述べているわけです。  典型的な例は武力行使だということは私もよくわかります。武力行使以外のものはすべて集団的自衛権の行使ではないんだ、そう言ってしまうのは余りにも大ざっぱ過ぎるのではないか。武力の行使以外のものが集団的自衛権として理解あるいは説明されないかといえばそれは必ずしもそうではないと思う、武力行使以外のものでも集団的自衛権として理解されるものもあり得るんだというのが粟山さんの答弁だったというふうに私は思うのですけれどもね。どうですか、一般論としてこの点は。
  193. 小和田恒

    小和田政府委員 二見委員が御指摘になりましたような答弁が、昭和五十七年四月二十日の参議院外務委員会において条約局長からなされていることは、そのとおりでございます。  一言、一般論として、国際法上の集団的自衛権というものはどういうものであるかということについて簡単に御説明をして答弁申し上げたいと思います。  先ほど法制局長官からも答弁がありましたように、国際法上の理論的な考え方から申しましても、それから集団的自衛権という概念が国際法上成立してきたその成立経緯から申しましても、集団的自衛権という概念の中核にあるのは武力の行使あるいは実力の行使であるということは、二見委員も御承知のとおりだと思います。  御承知のとおり、国連憲章の第五十一条で初めて集団的自衛権という概念が明示的に使われたわけでございますけれども、それは相手国から武力攻撃があったときに、非常に緊密な密接不可分の関係にある国相互において、直接攻撃の対象になっていない国であっても実力の行使をもってそれに共同して当たることができる、これが集団的自衛権の起源と申しますか、明示的に出てきたわけでございます。  そういうことから申しまして、実力の行使、つまり武力の攻撃があったときにそれに対抗する措置ということで考えられておりますので、実力の行使ということがその概念の中身、内容であるというふうに一般的に申し上げられるかと思います。  他方、粟山条約局長が五十七年に答弁をいたしましたのは、これは学説的にどういうことがあり得るかということで申し上げているわけでございまして、その前に昭和三十五年に林法制局長官の答弁も同じ問題についてございますけれども、その考え方と申しますのは、学説的、理論的に整理をしたときに集団的自衛権であるかどうかというような問題が生ずる行為というものがあり得る。そこで林法制局長官の答弁は、これはいずれにしても憲法九条との関係において問題のないような措置というものがあり得る、それを集団的自衛権の問題として処理するかしないかということは学説に任せていいことである、こういう答弁がございますが、その辺のことを踏まえまして行った答弁でございまして、ただいま問題になっておりますような実力の行使に至らないような行為憲法第九条で禁止されておる集団的自衛権であるかどうかということとの関連で申しますと、先ほどの法制局長官の答弁が政府見解であるというふうに御理解いただきたいと思います。
  194. 二見伸明

    二見委員 戦争というのは、現場でやる実力行使だけではなくて、まさにいつの時代でも総合戦であります。戦国時代には忍者を使って情報を入手するようになった。実力行使を優位に展開するために必要なのは、武器弾薬ももちろんそうだけれども、それ以上に的確な情報が非常に大きなウエートを占めている。しかし、情報というのは、情報だけでは確かに武力行使でもなければ実力行使でもない。だから集団的自衛権ではない。日本が的確な情報を提供する、それは集団的自衛権ではない。果たしてそう言い切っていいのであろうか。私は、むしろ情報提供というのは事実上の他国防衛であり、日本が直接攻撃されていないにもかかわらず実力をもって阻止することと同じくらいのウエートを持っているものだと思うのです。ですから、情報提供というのは非常に重要な意味合いがある。その点では、長官も国益に従って判断するという御答弁があるのだけれども、むしろ私は情報提供というのは慎重の上にも慎重を期さなければならない大きな問題だと思うのです。  総理大臣、大変お疲れのところ申しわけないのだけれども、情報交換についてはそのくらい、特にこれからの近代戦争においては今まで以上に大きなウエートを持ってくる。集団的自衛権に何らかかわりはないのだと一蹴してしまう易しい問題ではないと私は思うのですけれども、この問題についての総理大臣の御答弁を改めてお伺いをしたいと思います。
  195. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国際法上集団的自衛権をどういうふうに解釈するかという問題、それからその国際法解釈された集団的自衛権というものをどういうふうに運用するかという問題と二つあるので、あなたのおっしゃるのは後の場合の注意をいろいろ念達しておっしゃっているのだろうと思うのです。  国際法上集団的自衛権と言われるのは、これは自衛権でありますから、個別的自衛権でありあるいは集団的自衛権というのは自衛権でありますから、これはやはり正当防衛とか緊急避難、国家に対する正当防衛は緊急避難と同じなので、やはり実力行使ということが出てくるわけですね。我が身を守るということはそういうことであります。実力で守る、そういうことでおりますから。ですから国際法上はそういうものであると私は思っております。つまり、法制局長官の答弁のとおりであると思っております。  したがって、原則的に国際法にのっとって我々は行動する権利を持っておるし、またやるべきであると思っていますが、個々のケースに対する判定というものは、これは国益を踏まえて日本が自主的に行うべきものである、そう考えています。
  196. 二見伸明

    二見委員 さらに集団的自衛権の問題を、ちょっと全く別のことと関連してお尋ねをしたいと思うのですけれども、いわゆる米艦護衛の問題で矢野委員が幾つかのケースを挙げて指摘をいたしました。  私は、米艦護衛も情報提供と同じようにあいまいなことにしておくと、集団的自衛権とのかかわりから面倒くさいことになってしまうのじゃないかなということを思っているわけであります。  それで、先日の矢野質問に対する答弁というのは、私は今までの米艦護衛に対する政府側の答弁と照らし合わせてみてやはり一歩踏み出したなという感じがいたします。  例えば、五十年八月には丸山防衛局長は米艦護衛というのは結果として守るという答弁があった。五十八年の二月には、たしかこれは我が党の矢野質問に対する答弁だったと思うけれども、いろいろなやりとりがあって、同部として守るというふうに総理は答弁されたわけです。それで、結果として守るのと目的として守るのとは同じか違うかというので大分議論があった。総理は、いや、結果として守るも目的として守るも同じなんだというようなことでたしか論議があったように思います。しかし、そのときに法制局長官は、では目的として守る、ではどこいら辺の範囲だということになったらば日本近くまで来た米艦、ハワイ沖とか向こうの方じゃなくて日本の近くまで来た米艦というふうになったわけです。さらにその年、五十八年三月四日の衆議院の第一分科会でやはりこの日本の近海というのはどこいら辺がという議論が楢崎弥之助委員から提起されて、そのときに夏目防衛局長は近海とはシーレーンだ、要するに周辺数百海里、航路帯を設ける場合は千海里、要するにその範囲を日本近くまで来た米艦というふうに理解してもいいのではないかという答弁があったのです。ですから、最初は結果として守る、目的として守る、ではどこら辺まで自衛艦が出ていくのかといえば日本の近海、ではその近海はどこかといえばシーレーン、こういうふうに制限があったわけですね。  ところが先日の答弁では、日本来援の目的を持って行動している米艦はシーレーン以遠であっても自衛艦が守れるという答弁があった。これは今までいろんな議論の中から距離が設けられてきた、この距離の概念、距離の制限まで長官は取り払ってしまったのじゃないか。こういうことになれば、世界じゅう、地球上どこにいる米艦船であっても、日本に来援に来るという目的さえあれば日本の自衛艦は地球の果て、地の果てまで出ていって、地の果てじゃない海の果てだな、海の果てまで出ていって守れるということにもなってしまう、私は先日の答弁をそういうふうに解釈をいたしました。これは長官の答弁だったと思いますので、改めて答弁をしていただきたいと思います。
  197. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 矢野委員の御質問は、かなり多くのケースにつきましてかなり重要な点についてかなり口速に御質問をされたわけでございます。時間の制約もありまして、幾つかの前提を申し上げて答弁をすべきことであり、また追加御質問をいただくべき部分がそのときはなかったわけでございますが、私たち自衛隊の自衛権の行使という場合には、従来から答弁しております。ある種の地理的範囲の限界というものがございます。それで自衛権の行使という意味であれば、これはいわゆる領土、領海に限られるものではない、公海、公空に及び得るものであるけれども、それは自衛の範囲で一定の限界があるものと、自衛の範囲で最小限に考えるものという答弁をしていると思います。それから自衛力整備の地理的範囲という概念を何度か答弁いたしておりますが、これは当然のことながら能力的に限界がございます。そして、海上についていえば、いわゆるシーレーン防衛の概念の範囲に入るわけでございます。それから自衛権行使の際の作戦行動の限界というものは、必ずしもシーレーンに限られるものではないということにいたしておるわけでございますけれども、私たちがその行動を、米艦護衛をし得るものは当然のことながらこの種の限界に従っていかなければなりません。それから、いわゆる行動の範囲につきましてもおのずと限界があるもの、こう言っておるわけでございます。  そういった従来の答弁と、それから矢野質問に対する私たちの答弁を聞いていただければ、とんでもない大西洋の中で米艦護衛を我々がすることが現実的にあり得るかどうか、そういうことは当然のように答えが出てくるのではないか。従来の答弁のように、我々の及び得る範囲のものということでありますから、防衛力整備という意味から、いわゆるシーレーンと言われる数百マイルないし航路帯の場合には千海里以上のところには今までのところ力が及び得ないわけですから、おのずと限界があるものだと思っております。
  198. 二見伸明

    二見委員 その問題は二点あるのだけれども、現在の自衛隊、自衛艦の能力ではできないから、能力の外だからできないとおっしゃるのか。もちろん、そうなんだろう、一つはそういうことがあるのだろう。能力があってもやってはいけない、一千海里の外、かなり遠くまで出かけていくことは、たとえ能力があったとしてもそれはやってはいけないのだ、出ていけないのだということなのか。出ていくことは自由なんだけれども、どこまでも行けるのだけれども、ハワイ沖であろうと、向こうのサンフランシスコ沖であろうと何でも出ていくことはできるのだけれども、能力がないから千海里周辺のところまでしかやらないのですよということなのか、これはどうなんですか。能力だけですか。
  199. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 先ほど申しましたように、私たちが自衛権行使をする際に、その作戦行動というものはおのずと限界があるということを、従来から答弁いたしてきておるわけでございます。したがって、どこまでも行き得るというものではありません。  それから、米艦護衛につきましては、従来から答弁がありますように、米側が我が国有事に際し、我が国を守るために共同対処するという条件のもとに来ている場合で、そして我が国がその自衛行動の一環をして米艦を守るものという幾つかの制約がついているわけでございまして、そこからもおのずと限界が出てまいると思います。
  200. 二見伸明

    二見委員 そうすると、改めて確認いたしますけれども、矢野質問に対しては、距離については何も言わなかったけれども、要するに今までの答弁は、例えば近海とはシーレーンである、作戦行動に出る範囲内はシーレーン、この範囲内だというふうに、今後とも米艦護衛で作戦行動に出るわけでしょう、何かの場合には。その場合の行動半径というのはシーレーン、いわゆるシーレーンの範囲内でございますというふうに理解してよろしいですか。そうじゃなくて、能力的にはともかく、どこまでも行けるのですよという判断ですか。もう一度そこをはっきり、そのシーレーン、その範囲の話をはっきりしてください。
  201. 西廣整輝

    西廣政府委員 お答えいたします。  初めにお断りしておきたいのですが、米艦護衛で言いますと、米側を守るために我が方が特殊な行動をしているように往々にしてとられがちなんでございますが、これは先ほど来申し上げているように、日本防衛のために日本と米国が共同の対処行動をしている、その際にお互いに守ったり守られたりする場合があり得るわけで、そういうことができるかできないかというようにお考えいただいた方がいいと思います。  なお、その行動の範囲につきましては、一に状況によるわけでございまして、一般的に申せば、我が方の力が足りないから米側が支援をしてくれるわけでありますから、その支援をしてくれる米側をさらに我が方が支援をするといいますか、守るというような余裕が我が方にないというのが一般的な常識だろうと思います。  ただ、こういう場合、非常に遠くに行く場合を考えますと、一つの例を考えますと、我が方が弾薬が枯渇をした、そういうことで日本の商船と日本の護衛艦何隻かでアメリカまで弾をとりに行った、それを護衛して日本が帰ってくる際に、日本の護衛部隊が少ないので向こうも一隻、二隻追加をしてくれるというような場合が仮にあり得るとしますと、そういうときは共同の対処行動といいますか、商船を守ってくる行動をとっているわけでありまして、それに対して何らかの攻撃があったときにお互いに守ったり守られたりすることがあり得るというようなことも考えられるわけでありまして、地理的範囲が我が国の地先海域にとどまるのかあるいはかなり遠くまで行く場合もあるのかということは、やはりケース・バイ・ケースであろうかと思うわけでございます。
  202. 二見伸明

    二見委員 今の答弁、ちょっとひっかかる点はあるのですけれども、先に。進みましょう。  では、こういうケースはどうなりますかね。かなり突出したというか極端過ぎる例示で申しわけないのだけれども、例えば日本来援を目的とした米艦船が他国の領海内にいて、それで攻撃を受けた、何とかアメリカからSOSが日本に来たという場合には、自衛隊がその相手国の領海内に入って米艦を護衛するということは、これはできるのですか。これはどうでしょう。
  203. 小和田恒

    小和田政府委員 二見委員がおっしゃいましたように、余り仮定の議論、条件を設定して、それに一々お答えするというのは、こういう問題を扱うときに必ずしも適当ではないというふうに思いますが、整理して申しますと、先ほど防衛庁の方から御答弁がありましたように、事は我が国がどういう場合に我が国の個別的自衛権を発動できるか、こういう問題であるというふうに御理解いただけばいいと思います。  したがいまして、我が国の個別的自衛権が発動できる条件というのはどういうことかと申しますと、我が国に対する武力攻撃があった場合である。我が国に対する武力攻撃と申しますのは、我が国の領域が攻撃された場合もございますし、あるいは我が国の船舶、航空機等が多発的、計画的、組織的に攻撃を受けるというようなケースもあるわけでございます。そういうときに、我が国我が国自身を守るために個別的自衛権を行使しておる。それを助けるために米軍が一緒になって行動をするときに、我が国我が国自身の個別的自衛権の行使として、我が国自身を守る行為の一環として米艦船を守るということがあり得るということを理論的に申し上げておるわけでございますので、余り極端なケースをお考えいただくと、ちょっと混乱するかと思います。
  204. 二見伸明

    二見委員 確かに極端過ぎる例だから、条約局長も答えにくいのだろうと思います。でも、どうですか、具体的に例示したんだから、答えにくいだろうけれどもちょっと答えてみませんか。理論はわかるのです、よく。理屈はよくわかっている。今みたいなケースの場合はどういうことになるのですかと聞いているのです。
  205. 小和田恒

    小和田政府委員 純粋に仮定の理論的な問題として考えますならば、自衛権の行使というのは、特に我が国の場合、我が国の領域だけではなくて、公海、公空にも及び得るということは政府が前から申し上げているところでございます。しかし、他国の領域にある艦船との関係におきまして我が国の個別的自衛権を行使するということは、一般的に申しますと非常に異常な事態であろう、こういうふうに考えられます。もちろん、一般国際法上の問題として申しますと、自衛権の行使について他国の領域内において行使をしたケースというのは、古典的なケースとしてはございますけれども、通常のケースにおきましてそういうことはなかなか考えにくいであろうというふうな感じがいたします。
  206. 二見伸明

    二見委員 それから、先ほど大出委員だったか上田委員も同じような質問をされておりましたので、これは重複するかもしれないのだけれども、日本有事の場合、米軍は主としてやりの役割を果たすことになるというわけですけれども、これもまたちょっと極端な例だといっておしかりを加藤長官から受けるかもしれないのだけれども、例えば日本有事の際、日米共同対処しているわけですね。そして米空母機動部隊が敵地を攻撃するために敵地に接近をし、向こう側から攻撃を受けている。アメリカにしてみれば、日本を守るためにはまず敵地をたたけという作戦上からそういう行動に出る、当然これはあり得るケースだと思うのです、こういうことはね。その場合に自衛隊は、ゆとりがあるかどうかは別として、米空母機動部隊を援護しに行くことが許されるのかどうか、この点はどうですか。
  207. 小和田恒

    小和田政府委員 これも非常に仮定の問題でございますので大変お答えしにくいわけでございますが、日本が攻撃を受けておる、安保条約第五条の事態が発生しておって、我が国自身が個別的自衛権を行使し得る状況にあり、アメリカが安保条約第五条に従っての共同対処行動をとるという状況にあるということを前提にして考えました場合に、全く一般論として申し上げますと、これは我が国の自衛権の行使、個別的自衛権の行使ということで考えますと、我が国防衛のために必要最小限度の範囲内に限られる、こういう憲法上の制約があるわけでございます。この必要最小限度の範囲内に限られるという制約は、安保条約第五条のもとにおいて日米が共同対処をしておるというケースについても同じでございます。  したがいまして、その必要最小限度の範囲にとどまるかとどまらないかということを具体的な状況に当てはめて判断をするということになると思いますが、今二見委員が御指摘になったような状況設定では、そこの点がまだ具体的に十分そのケースが、このような私が申し上げましたような条件に当たるかどうかということが必ずしも明確ではないと思いますので、個々のケースに当たって、その状況で判断をするということになろうかと思います。
  208. 二見伸明

    二見委員 実は、これに対しては角田法制局長官の答弁があるのです。これは参議院の安保特の答弁なんです。一般的に言って、米艦護衛についても日本防衛に必要最小限度の範囲内に限るという憲法上の制約がある、個別的自衛権の範囲内において許される典型的なものとは言いにくい、こういう答弁が法制局長官の答弁としてあるのです。ということは、個別的自衛権の範囲内において許される典型的なものとは言いにくいということは、かなり難しいということなんじゃないでしょうか。これはケース・バイ・ケース、いろいろケースで判断しなければならぬと言うけれども、現実的にはそういうケースで日本が、能力の問題は別として、米艦護衛にはせ参ずるということは、この答弁から考えてもかなり難しい行動なんじゃないかというふうに思うのですけれども、これはどこですか、外務省ですか、防衛庁ですか。
  209. 小和田恒

    小和田政府委員 昭和五十八年の五月十六日に安全保障特別委員会で、二見委員が御指摘になったような角田法制局長官の答弁があるということは御指摘のとおりでございます。私が先ほど申し上げましたのも、基本的にはそういう考え方を考え方として踏まえて申し上げているわけでございまして、角田政府委員は、今委員が御指摘になった答弁の後引き続いて、「私はそういう問題については、やはりいろいろな具体的な条件、態様に応じて検討すべきものだと思います。」ということを答弁しているわけでございますが、そういうわけで、その具体的な状況というものを十分考慮に入れないと、一概に委員が御指摘になった御質問に答えることは大変難しいというふうに考えております。
  210. 二見伸明

    二見委員 非常に判断の難しい問題だろうとは私も思います。  それでは、さらに米艦護衛について二、三確認をさせていただきますけれども、米艦護衛の場合、自衛隊というのは米軍の指揮下に入るのですか、それともどういうことになりますか。
  211. 西廣整輝

    西廣政府委員 日米が共同の対処行動をする際の指揮権につきましては、五十三年のガイドラインにおきまして日米合意しておりますが、日米それぞれの指揮でやる、二元指揮でやるということになっております。
  212. 二見伸明

    二見委員 現実的にはアメリカの指揮に入るのでしょう。わからないものね、日本の自衛艦が駆けつけていったって。だから、お互いに話し合うという建前にはなっているけれども、現実的にはアメリカの指揮下に入らなければ具体的な行動はとれないんじゃないですか。だから、それは悪いなんて、ここで審議をとめたりなんかしないから、言ってください。
  213. 西廣整輝

    西廣政府委員 一つの作戦においてそれぞれの二元指揮でやっていくということはなかなか難しゅうございまして、そういうこともあって、例えばリムパック等に我が方は訓練に参加しておりますが、その際も二元指揮でやるということで、その間の調整、コーディネーションをどうやるかというようなことを常々訓練を重ねておるわけでございます。したがいまして、一元指揮でなければ作戦ができないということではないというふうに考えております。
  214. 二見伸明

    二見委員 そうすると、リムパックでの日米合同演習というのは、こういう場合には大変効果的なトレーニングになるというふうに理解してよろしゅうございますね。それはまた改めて別のところで議論させてもらいますけれども……。  それと、この点はどうなるのですかね。極東有事でシーレーン平時の場合、日本周辺で米艦船が攻撃を受けた、米側から安保四条による随時協議が提案されて日本側に来援を求めてきた場合、こういう場合は日本側としてはイエスとかノーとかという判断をするのですか。それとも、こういうことはアメリカが提案はしないということになるのでしょうか。どうなんでしょう。
  215. 西廣整輝

    西廣政府委員 御質問のような場合は、日本に対して武力攻撃がなされておる場合ではございませんので、米側はそういう要請をしないと思いますし、たとえあったにしても、我が方がそれに応ずることはあり得ないというふうに考えております。
  216. 二見伸明

    二見委員 これは五十八年二月二十二日の我が党の市川委員の質問に対する答弁と全く同じでございますので、これはこれで結構でございます。  それから、やはりもう一つこだわりたいのは、有事における日本の便宜供与について、これもやはりある程度明らかにしておきたいと思うのです。私は、戦争とかあるいは紛争を有利に展開するためには、先ほども申しましたけれども、武力行使のみではなくて、武力行使を成功させるための物資、弾薬などの補給あるいは給油、的確な情報、こうしたものが総合的に整備されていなければ、武力行使というのは有利なる展開は望めないのだと思います。  それで、極東有事の際、日本が米軍に対して行う便宜供与のあり方について現在日米間で研究中でございますけれども、いわゆる物資、弾薬等の補給あるいは給油、情報提供、こういったことに対してはどのような意見が出ているのか、お述べいただきたいと思います。
  217. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 お答えいたします。  昭和五十七年一月、第一回の研究グループを開きまして以降、随時研究をしておりますけれども、いまだ研究の極めて初期の段階にございます。さらにその内容につきましては、米軍の行動その他を明らかにすることになりますので、残念ながら詳しく立ち入ることは遠慮させていただきたいと思います。
  218. 二見伸明

    二見委員 冗談言っちゃいけない。私は米軍の行動を明らかにしろなんて言ってない。日本側がどういうことができるのか、どういう意見があるのかを明らかにしろと言っているのだ。いいですか。極東有事で、アメリカがどこかと戦争しているわけだ。それに対して日本が武器、弾薬などの補給ができるのか、あるいは給油ができるのか、情報提供がどうなるのか。これはまさに、戦争というのは現地でドンパチやっているだけじゃないんだから、むしろそうした紛争の後ろにあるものが大事なんでしょう。それについて明らかにしない。私は米軍の行動を明らかにしろなんて言ってない。日本側の態度を明らかにしろと言っている。もう一回言ってください。
  219. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 ただいまお答えしましたように、この研究につきましてはまだ極めて初期の段階でございます。したがいまして、どのような便宜供与が考えられるかということにつきまして、具体的な内容まで現在立ち入るような段階にはないということでございます。
  220. 二見伸明

    二見委員 外務大臣、補給とか給油というのは直接の実力行使ではないのです。しかし、実力行使をより有効ならしめるという点では、まさに集団的自衛権に大きにかかわってくる問題だと私は思うのです。議論の初期の段階だから言えない。アメリカの行動を明らかにするから言えない。今の局長の答弁でもって、はい、さようでございますかと言って私は座るわけにはいかぬ。今初期の段階で言えないなら言えないでも結構です。ある程度話が煮詰まった段階、明らかになった段階で国会に内容を報告してくれますか、どうですか。
  221. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 少なくとも日本のできる行動というのは、個別的自衛権の範囲内でしかできないわけですから、そういう中にあってどの程度までできるかというのを今検討しておりますし、そういう点が明らかになれば、それは御報告することもあり得る、こういうように思います。
  222. 二見伸明

    二見委員 総理大臣、要するに、極東有事における日本の便宜供与というのは、その中身が日本の平和とか安全にとっても大きな影響を持ってくるものだと私は思うのです。日本が実際にやれるのかどうかわからないけれども、補給とか給油とかこうした便宜供与というものの重要性あるいはその持つ危険性、それについては総理大臣としてはどういう御認識を持っておられますか。
  223. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やはり、一つは国際法、もう一つは安保条約におけるあれは第四条の問題でございましたか、第五条とは峻別さるべきである、そういう立場に立って、国益を踏まえてよく判断をして慎重に行う、こういうことだろうと思います。
  224. 二見伸明

    二見委員 私はこの集団的自衛権の問題について約一時間ほど議論をしてきたわけでありますけれども、私は、集団自衛権ではないということでいろいろな行動が許されてしまうんではまずいという判断をしているわけです。  改めてお尋ねをいたしますけれども、これは二月七日の本委員会で、総理大臣は社会党の上田委員に対して、「例えば日本アメリカは同盟国ですけれども、それによってアメリカの力が著しく減衰する、日本防衛が心配になってくる、次に日本に来る危険性もある、そういうようなことも考えれば、当然その場合には情報をやって日本防衛を全うするということは私は成り立つのだろうと思う」と答弁している。これはたしかOTHに絡む議論だったように私は記憶をしております。この考え方を延長いたしますと、日本防衛のためには自衛隊が米軍に補給や給油もできる、米軍に対してはどんなことでもやっていけるというようにこの議論は発展していく可能性があると私は思うのです。  私は、言葉をかえることによって実態を覆い隠していくということは好ましくないと思っているんですけれども、例えば、もう一つ総理に確認をしたいんだけれども、政府昭和五十六年五月二十九日に、これは稲葉委員の質問主意書に対する答弁の中で、「憲法第九条の下において許容されている自衛権の行使は、我が国防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであって、憲法上許されないと考えている。」私は、これはこのとおりだと思うのです。  ところが、これを裏側から考えるとこういう解釈も成り立つのかな。今後、必要最小限度の範囲内であれば集団的自衛権の行使も可能だというような、そうしたひっくり返した解釈は将来できるのかどうかですね。必要最小限度であろうとなかろうと集団的自衛権の行使は全くできないんだという明確なものなのか、必要最小限度の範囲内であれば集団的自衛権の行使も可能だという解釈も成り立ってしまうのかどうか、この点はどうでしょうか。これは総理がよろしいでしょうか、長官ですか。
  225. 茂串俊

    ○茂串政府委員 お答え申し上げます。  先ほども申し上げましたが、我が国憲法第九条におきましては、個別的自衛権の行使は認められるものの、集団的自衛権の行使は許されないという解釈をとっておるわけでございまして、ただいま委員の御質問のございましたように、必要最小限度の範囲を超えるような集団的自衛権というものはあり得ないということでございまして、その根拠につきましては、先ほどるる御説明申し上げたところでございます。
  226. 二見伸明

    二見委員 ちょっと今聞き漏らしちゃったんだけれども、集団的自衛権というのは、すべて必要最小限度の範囲を超えるものだというわけですか。必要最小限度内の集団的自衛権の行使というのはないということですか。どうなんですか。必要最小限度の範囲であろうと範囲の外であろうと、集団的自衛権の行使はないということなんですか。
  227. 茂串俊

    ○茂串政府委員 若干答弁が重複しますので便宜省略をさせていただいたために、おわかりにくいところがあって大変恐縮でございましたが、もう一遍それでは先ほど申し上げた点を重複はいたしますが申し述べますと、我々は憲法九条の解釈としましては、九条というものは、自国の平和と安全とを維持してその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じていないというふうに解しておるわけでございますが、それは無制限に許されるわけではなくて、あくまで、外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるというような急迫不正の事態に対処して、国民のこれらの権利を守るためのやむを得ない措置として初めて認められるというふうに考えているわけでございまして、そしてこの措置は、このような事態を排除するためにとられるべき必要最小限度の範囲にとどまるべきである、そういう筋道を申し述べたわけでございます。したがって、その論理的な帰結といたしまして、他国に加えられた武力攻撃を実力をもって阻止するということを内容とする集団的自衛権の行使は、憲法上許されないということを従来から明確に述べているわけでございます。
  228. 二見伸明

    二見委員 それでは、もう一点お尋ねをいたします。  やはり情報の問題ですが、OTHの話がさっきありましたけれども、大出委員上田委員の質問とはダブらないように簡単にお尋ねしますけれども、例えばアメリカの空軍は、アメリカの本土の大西洋岸、それから太平洋岸、それから南方だとかアラスカの方に十二基のOTHレーダーの配置をする、そういう計画がありますね。それから海軍の方では、頭とおしりにRのくっついたROTHRかな、そういうのを二基、これはグアムのところとそれからアリューシャン列島のところに配備する計画になっていますね。  今度日本は、洋上防空の立場から有効ではないかということで、防衛庁は今検討をしておりますね。これは恐らくアメリカの海軍が利用するものを日本に持ってくるのではないか。あのレーダーというのは、六十度の角度でもって約三千キロ遠方の物体が見えるわけですね。動いているとか、船であるとか飛行機であるとかなんとかわかるようになっている。しかし、この足元のところはちょうど映らないのですね。千キロくらいのところは映らない。千キロから先三千キロくらいまで映る。そうすると、もし防衛庁がそれを採用するということになると、どこら辺をやるかというと、まさか南の方は見ないでしょうから北の方だと思うのだな。サハリンからウラジオストク、沿海州、それからシベリアの一部が入りますね。要するに、その範囲内を日本としてはカバーすることになるんじゃないですか、カバーエリアというのはそういうところでしょう。どうですか。
  229. 西廣整輝

    西廣政府委員 OTHレーダーを仮に設置するといたしますと、我が国の本土防空なりあるいは洋上防空に役立つところに置きたいということでございまして、仮にどこにでも置けるのであれば、それなりの一番いい場所というのは選定できると思いますが、壁地の上に置かなければなりませんので、今申し上げた本土防空及び洋上防空に最も役立つところがどこかなということを当たってまいりますと、日本本土そのものに置いたのでは遠くが見え過ぎてしまって余り役に立たない。したがって、本土から少し離れた、もっと南に下がったところに置くことによって日本海なりあるいは日本の洋上防空の対象になる太平洋の海域が見れるということになりますので、どうしても小笠原諸島なりあるいは南西諸島といった島嶼部に置く必要があろうかというふうに考えております。(二見委員「カバーするエリア」と呼ぶ)  カバーするエリアは、そうなりますと、角度にもよりますけれども、一部沿海州等の陸上から、我々が見たいと思う海域が入るというように考えておりますが、OTHレーダーというのは、その特性上、並行して動いているものについては余り見えないということでございますので、角度によって、できるだけ直角にレーダーに向かって向いてくるものがよく見えるということになりますから、そういう点もあんばいをして配置を考えるということになろうかと思います。
  230. 二見伸明

    二見委員 アメリカの空軍が十二基OTHレーダーを配備するのてすよ。アメリカの海軍の方は二基配備するのです。それで世界じゅうを照らすわけですね。日本防衛庁がもし設置をするということになれば、そのカバーするエリアというかカバーリンクエリアというのかな、それとアメリカの十二基プラス二基でもってカバーするエリアというのは、部分的には重複するところもあるだろうけれども、やはりそれはそうはならないのでしょう。アメリカがカバーしているエリアと日本がカバーするエリアというのは、全く重複するということにはならないのでしょう。周辺で重なるところはあるかもしれないけれども、そういうことになるのでしょう。どうなんですか。
  231. 西廣整輝

    西廣政府委員 米側の配置がどこにどちらを向いた角度で配置されるかということは、明確につかんでおりませんが、少なくともOTH・Bについては米本土防空用でございますので、これと重なり合うということはないのじゃないかというように考えております。一方、米側のROTH、海軍用のものでございますが、聞きますところ、アリューシャンのアムチトカとかあるいはグアムとかいう話がございますが、それもどちら向きにどういう角度で配備をするかということについて、私ども知り得る立場にありませんのでわかりませんが、仮に我が方が見たいと思っているものと同じ方向にグアムなりアムチトカに置いた、そして、できるだけ我が方が見ているところと近い方にそちらが角度を向けたとすれば、若干重なり合う部分も出てくるのじゃないかと思います。
  232. 二見伸明

    二見委員 私は、原則として重ならないのだと思います。ただ、機械がやることだから、ぴっと線を引くわけにいかないから、部分的には重なるのだろうけれども、原則として重ならないように配置をするのだというふうに思います。そうでしょう。原則として重ならないように配置はするのでしょう。部分的に重なる場面があるとしても、原則としては重ならないのでしょう、西廣さん。
  233. 西廣整輝

    西廣政府委員 かなり相対関係の位置が離れておりますので、そう重なり合う部分はないように思っております。
  234. 二見伸明

    二見委員 としますと、日本の国益上、防衛上必要な情報をとる。私は、情報をとるということは大変大事なことだと思うのです。相手国にしてみれば、おれは三百六十五日、一日二十四時間見張られているなというのは嫌な気持ちだし、また逆にそれが一つの、だからうっかりしたこともできないなという抑止にもなるのだろう。情報を収集するというのは、私自身は非常にそういう面で有意義なものだなというふうに思っているわけです。しかし、それが客観的に見るとどういうことになるかというと、アメリカの十二基のOTHレーダー、二基のOTHR型、B型とR型が配置される。ダブらないような範囲でもって日本のOTHが配備される。この日本のOTHとアメリカの十六基のOTHは、お互いに自由に情報交換が行われる。行われますね、これは。まさか行われないということはないと思う。当然行われる。そういうことになりますと、第三者の目から見れば、これは日本がOTHレーダーを設置するということは、日本立場から見れば日本の専守防衛だということになるんだけれども、客観的に見ると、これはアメリカの対ソ情報システムというかな、そういうことに日本も組み込まれたなと受け取られてもやむを得ないなという認識をするのですけれども、加藤長官どうですか。
  235. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 累次お答えいたしておりますように、私たちのように憲法の精神から、また「防衛計画の大綱」の定めるところによりまして、非常に節度のある、規模は小さいけれどもしっかりとした防衛力を持とうというような国にとりまして、情報というものは二見委員御指摘のように、非常に重要な国だろうと思います。それで、多くの飛び道具は持たないし、諸外国を攻撃するような装備は持たないけれども、しかし耳だけはしっかり持っておくということは重要であり、その長い耳を持つことが私たちはいろいろな意味での抑止力にもなろうと思います。そして、情報がしっかりとれれば、それに伴って、それ以前に外交活動によって我が国の自由と安全を守れるような行動もとれるわけでございますから、私たちとしてはできる限り情報は多く、そして幅広くとるべきではないかな、こう思っています。また、国民の意識からいいましても、我が国というのは、戦後、そう大きな防衛力を持たないようにしたのだから、なおかつ、ハイテクの非常にすぐれた技術を持っている国だから、それを利用して、しっかりとした通信体系とか情報体系は持つべきだというような気持ちもあろうかと思います。  今度のOTHレーダーでございますけれども、私たちとしては、これによってできる限りの情報をとるという、我が国防衛のため有益であるかどうかの判断をいたしているのでございます。したがいまして、先ほど大出委員の質問に対し防衛局長ないし私も申したのですけれども、もしそれがアメリカのソフトを通じてでなければ解析できないし使えないというものでしたならば、私たちは持ちません。私たちの国の情報としてすぐ使えないというものであるならば、私たちは、それは意味のないことであろうと思います。したがって、あくまでも私たちの国の防衛のための情報として役立つかということを考え、そして、その観点からやっていくものでございまして、それからアメリカとの情報の交換というものはまた別個の話であろうと思っております。
  236. 二見伸明

    二見委員 それはOTHあるいは偵察衛星、いわゆる情報をとるためのいろいろな手段がありますね。ありていに言いまして、我が党にもいろいろな意見がある。そういうものを持つべきではない、それはまさに集団的自衛権とのかかわりから好ましくないという強い意見がかなり公明党内にはあります。中には、公明党の少数意見なのかどうか、私がこれから申し上げることは、それで公明党の意見が固まっているわけではなくて、いろいろな意見がある一つの例で、私自身の意見なんです。私も加藤さんと同じなんです。  やはり日本は武力を持たない、武力を持たないというか、他国を攻撃しない、専守防衛に徹するということになれば、動物に例えれば、ウサギかキリンみたいなものだから、首を長くして、耳を長くして、ありとあらゆる情報を集めておくということは、日本防衛にとって本当に大事だと思うのです。そう思っている。しかし、それが逆にソ連——ソ連と言ってはまずいんだな、別に敵視しているわけじゃないからね。ある特定の国から見れば、耳を長くし、首を長くして情報を日本は集めてはいる。日本日本の国益のために、日本防衛のためにやっているんだと言ってはいるけれども、そういう部分はもちろんあるけれども、その日本が集めた情報はアメリカの方にずうっと筒抜けになってしまって、言うならば、アメリカの対ソ情報システムに組み込まれてしまっている。そういう面では、ある特定国にとっては、日本のそういう情報収集活動というのは好ましくないという印象を当然与えることにもなるだろう。ある程度そのくらいの危険も覚悟しなければいかぬのかなというふうに私自身は思っているわけですけれどもね。改めて長官はどう思いますか。
  237. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 それぞれの国が自国の防衛のためにできる限り情報を集めるということは、当然それぞれの防衛政策者が考えることではないでしょうか。そして、その情報の収集によって、繰り返しますが、的確に対処することによって、そして、それによって武力紛争が回避されることとか、それから国民の損害ができるだけ少なくなるようにするということは、近代国家にとりまして、防衛政策者が当然考えるべきことなんではないだろうかな、こんなふうに思っております。だからといって、私たちの国がいろいろなところに、人の領域に入っていくというような話ではございませんので、そのハイテク・メカを使いまして情報収集するということは、長い耳、そしてキリンの長い首というような意味において、私たちは当然努力すべきことではないだろうかと思っております。
  238. 二見伸明

    二見委員 長官、別の議論をいたしましょう。  これはやはり矢野委員が指摘した件でございますけれども、いわゆるシーレーンですね。何回も何回もここで議論されて、お互いに耳にたこができるぐらいの嫌になっている話なんだけれども、やはり改めて確認したいのだけれども、例えば米艦護衛の話もした。また、米軍に対する便宜供与の議論もあった。そんなことを踏まえてシーレーンの問題を考えてみると、確かに今まで政府は、海上交通の安全を確保することを目的とするものであって、線とか面とかといった一定の、特定の海域自体を防衛することを目的とするものではないというふうになっているんだけれども、私はどうもこのシーレーン防衛というのは、例えば航路帯を設けるということだけではなくて、政府の本音は千海里の面の防衛、面というより、より正確に言えば海域の防衛、それが政府の本当のねらいなんじゃないかなという気がするんですがね。特に洋上防空だ、海空重視だということになってくると、これは航路帯の安全を確保するという単純なことだけではなくて、千海里、例えばコンパスで千海里ずっと円をかく、そうした海域全体を防衛したいというところに本音があるんじゃないかと思うのですが、長官どうですか。
  239. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 先ほど防衛局長が答弁申しましたように、私たちの国の生存を確保するために、有事の際に海上交通の安全を確保できるということが最大の目的であります。仮に、そういう有事のときであっても、いつか防衛局長が申したと思いますが、例えば日本から三百海里ほど離れたところにどこかの国が爆弾をぼんと落としたからといって、別に日本は痛痒を感じないわけでございまして、やはりそこに、日本に継戦能力維持のための物資を輸送したり、国民の生存確保のための物資を輸送したりするものの安全を確保するという、そういう機能、そういう役割というようなものに着目して考えていただきたいと思います。
  240. 二見伸明

    二見委員 長官、シーレーン防衛というのは——シーレーン防衛というのはずっと議論があるんだけれども、シーレーン防衛というのは、いかなる事態が発生したときに、どのような手続でもって行われるのでしょうかね。どんな事態が発生したときに、シーレーン防衛ということが——今は関係ないわけでしょう、今は何でもないんだから。どういうような事態が発生したときにシーレーン防衛ということになるんですかね。
  241. 西廣整輝

    西廣政府委員 御質問が、シーレーン防衛のために自衛隊がどのようなときに、どういう行動をとるかというような御質問であるとしますと、自衛隊がシーレーン防衛のために行う各種の作戦行動としては、哨戒とか護衛、あるいは港湾なり海峡等の防備とか、各種の作戦があるわけでございますが、いずれも、そういう防衛行動そのものであれば、七十六条の防衛出動命令が下命をされて、しかも、そのときの海上交通に対する攻撃の態様に応じて、どの部分を強化するかということになろうかと思います。したがって、一概に、例えば航路帯を設けるのがいつの時点とか、そういうことを申すことはできませんけれども、通常的にはまず、哨戒密度を濃くして監視をするということであり、かつ我が方の被害の状況等見ながら、それに最も対応できる作戦行動をとっていくということになろうかと思います。
  242. 二見伸明

    二見委員 そうしますと、例えば日本有事の場合は、自衛権発動の三つの要件がありましたですね。我が国に対する急迫不正の侵害がある、これが一つです。もう一つ、この場合に他に適当な手段がない。三つ目が、必要最小限度の実力行使にとどまる。これが自衛権を発動する場合の三つの要件で、これは政府の統一見解になっていますね。シーレーン防衛というか、シーレーン有事という場合には、この三つの要件だけで自衛権が発動できるのか、シーレーン有事ということになると、これにさらに何か要件を加えなければいけないのか、その点はどうです。
  243. 西廣整輝

    西廣政府委員 ただいま申されたのは、自衛権の発動の要件ということでございまして、シーレーンを防衛するために発動する自衛権の行使についても、同じような要件で発動されるというふうに思っております。
  244. 二見伸明

    二見委員 今の三要件でいいわけですか。——我が国に対する急迫不正の侵害があることというと、例えば日本本土が攻撃されてなくて、最初にシーレーンに来た場合がありますね、いろんな関係があるんだけれども。その場合は、要するに、我が国に対する急迫不正の侵害があることに当たらないから、発動できなくなりますよ。
  245. 西廣整輝

    西廣政府委員 これまたたびたびお答え申し上げていると思いますが、我が国に対する武力攻撃、あるいは我が国に対する急迫不正の攻撃というものには、二種類あるというように申し上げておりまして、それは我が国の領域に対する攻撃もありますし、我が国の領域外、公海上における我が国船舶に対する組織的、計画的あるいは意図的な、総合的に我が国に対する武力攻撃と判断し得るような攻撃もあり得る、二つの態様があるというように前々から申し上げておるところであります。
  246. 二見伸明

    二見委員 航路帯については、防衛庁は、南西航路と南東航路ですか、これを一応念頭に置いておりますね。それで、海域だとか幅については脅威の様相に応じて変化していくものだというふうになっているわけでありますけれども、先日の矢野委員の質問のときに、矢野委員の方から、例えば、アラスカ原油の話があって、北東航路も航路帯に指定することもあるのかという議論がありました。これに対しては答弁はなかった。答弁を求めるような質問でなかったのかもしれない。そうすると、北東航路というものも航路帯にすることもあり得るわけですか。それから、この航路帯を設けるというのは、だれが、いつ、どのようにして航路帯を設けるのか、その手続もあわせてお答えをいただきたいと思います。
  247. 西廣整輝

    西廣政府委員 航路帯を、例えば南東航路、南西航路というようによく申しておりますけれども、どういう海域に設けるかということについては、一に日本に対する武力攻撃の態様、例えばどこの国が日本に対して攻撃しているかによって、要するに航路帯というものは最も安全な海域に設定すべきものだと私どもは考えておるわけでございます。したがって、固定してこの海域に設けるというふうには、必ずしも考えなくていいのではないかというふうに考えておりますので、一に状況によるものだと思っております。  それから二番目の御質問の、航路帯を設ける際にどういう手続かということでございますが、私どもは特段の手続というものが要るとは思いませんが、我が国船舶が安全に航海をするために、この航路を通ることが一番安全であるよということを何らかの方法で連絡し、しかもそれが外に漏れないように知らせることによって、そういう情報を与えることによって比較的安全な航行が確保できるというふうに考えておるわけでございます。
  248. 二見伸明

    二見委員 そうすると、例えば北東航路というのは、一番最短距離を使いますね。ソ連の潜水艦や船や何かごちゃごちゃいるところになりますね。あんなところには設けにくいわけですね。安全なんだから、こういうふうになるわけですね、もし設けるとすれば。
  249. 西廣整輝

    西廣政府委員 先生の御質問は、特定の国を一応念頭に置いておられるのじゃないかと思うのですが、それによりまして、やはり北の方は比較的危険であるとか、南の方が安全であるとか、そういうことが攻撃の態様によって生じてくるというようにお答え申し上げておるわけでございます。
  250. 二見伸明

    二見委員 では、もう一点聞きますけれども、いわゆるシーレーン有事の認定ですね、これをどんなときに認定するのかということなんだけれども、例えば、特定国により意図的、組織的、計画的、多発的に日本の船舶が攻撃された時点でシーレーン有事という判断をするのか、あるいはおそれのある場合も有事の判断をするのか、この点はどうでしょう。また、日本本土が攻撃された時点ではもうシーレーンも有事、シーレーンが何でもなくても、シーレーンは有事という判断を下すのか、この三つについてまとめてお尋ねをいたします。
  251. 西廣整輝

    西廣政府委員 シーレーン有事というようなお言葉をお使いですが、要するに判定というのは、我が方が七十六条の防衛出動を下令するかしないかという判断であろうかと思います。したがいまして、これは判断の中には、我が国が現に攻撃されておる場合とおそれのある場合と両方あることは重々承知しておりますが、シーレーンといいますか、海上における我が国船舶の攻撃について、おそれがある場合という判定というものは極めて困難であろう。例えば陸上に対する攻撃であれば、攻撃準備で兵力が集結しておるとか、あるいは上陸用舟艇が集結しておるとか、そういった目に見えた状況というものが現出すると思いますけれども、船舶の攻撃に対してそのような攻撃準備がなされておるという判定は、非常に困難ではなかろうかというように考えております。
  252. 二見伸明

    二見委員 それから、加藤さんにお尋ねしますと、千海里を超えた場所で、例えばマラッカ海峡とかロンボク海峡とか、さらにインド洋等で、特定国により意図的、組織的、計画的、多発的に日本の船が攻撃され、かつ引き続き攻撃され得る状況がある。ちょうどシーレーン有事の状況が遠く向こうにある場合は、シーレーンの千海里じゃなくてマラッカ海峡とかロンボクだとかというところで日本の船がそういう状況下に置かれた場合、この場合は政府としては、自衛艦がそこまで出ていって護衛をすることになるのか、それともそれはアメリカとの間のいわゆるシーコントロール、千海里から遠いところはアメリカのシーコントロールに期待するという今まで答弁がありますね。アメリカのシーコントロールの方に期待することになるのか、そういうことについての研究なり、考えたことはございますか。
  253. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 我が国が攻撃されるという、いわゆる防衛出動をしなければならないような状況というものは、必ずしも領域、領海内にとどまらず、公海、公空にも及ぶということは申し上げておるところでございますから、日本から物すごく離れたところで我が国の船舶が組織的、計画的、意図的に攻撃されるということは、理論上はあるのだろうとは思うのでございますし、そういうときにはそれなりに対処が必要になってくるということは、理論的にはあり得るのかもしれませんが、インド洋の中でそういうような事態が本当にあり得るのかというようなことは、余りないんじゃないか。そういった状況のことでいろいろ御答弁申し上げるのは適当なのかどうかという感じがいたします。
  254. 二見伸明

    二見委員 今までは、そういう状態のときには米国のシーコントロールに期待するというのが、今まで政府側の答弁だったのです、たしか私の記憶では。インド洋で攻撃がない、マラッカ海峡で攻撃がない、そんなことは理論的にはあっても現実的にはあり得ないのではないかということ、そんなことは限らないんじゃないですか。ですから私は、原則としてこれからそういう遠いところは、アメリカのシーコントロールに期待する以外にはありませんというのならそれでいいのです。いや、アメリカのシーコントロールに期待はするけれども、一〇〇%期待もできないので、状況によっては自衛艦が出ていって護衛しなければならない場合もあり得ますというならそれはそれでいいわけです。どっちかしかないんだ。
  255. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 先ほどの場合には、御質問は、我が国の船団がずっと遠いところで攻撃されて、それによって防衛出動の下命とか自衛権の行使というケースがあり得るのかという御質問でございましたので、ああいう答弁をいたしましたが、我が国が有事の際にその海上交通路の安全を確保するために、どういった対処をするかといった今の御質問につきましては、いわゆるシーレーンの際に私たちが申しております。辺数百海里、それから航路帯の場合千海里というものを超えた範囲につきましては、米側にそれの対処をお願いするというのが従来の立場でございます。
  256. 二見伸明

    二見委員 最後に、やはり確認をさせていただきますけれども、私は千海里シーレーン防衛に一つのこだわりを持っておりますのは、南西航路、南東航路千海里、これは航路帯である、こうなっていましたね。航路帯だ。では、この幅はというと、そのときの状況だとか、それから科学兵器の発達によってこの幅は変わっていくのだというのが、今までの一貫された答弁だと思うのです。議論になってきたのは、それは航路帯という帯ではなくて、帯だ帯だと言うけれども、実際にはずっと平面の面なんだろうというのが、我々野党側が絶えず指摘した点であります。私は、まさにシーレーン防衛というのは航路帯で、例えば幅百マイルとか二百マイルとかという幅のあるこういう帯ではなくて、現実的には南西航路と南東航路が限りなく近づいてきて、幅が広がってくるほど限りなく近づいてきて、事実上面としての防衛ということになる得るのじゃないかという危惧を持っているわけであります。  それで、もう時間もありませんので最後にお尋ねを、これは総理大臣にもお尋ねをいたしますけれども、いわゆる海域分担という議論が何度がこの予算委員会でもありましたね。海域分担はできるのかできないのかということになると、海域分担はできないというのが、例えば五十六年四月七日の衆議院決算委員会における当時の大村防衛庁長官の答弁であります。日米による海域分担というのはできない。この海域分担はできないということについては、将来にわたっても海域分担はできないということなのか、また、海域分担ができない理由というのはどういうことなのか、この点について加藤防衛庁長官と、最後に中曽根総理大臣の御意見を承って、質問を終わりたいと思います。
  257. 西廣整輝

    西廣政府委員 シーレーン防衛と申しますのは、たびたび申し上げておりますように、ある海域について排他的にそこを支配するというものではございませんし、仮に、防衛について海域を全部我が方が分担をしてそこを守るというような考え方に立ちますと、我が国防衛のためでないものについてまで我が方が守るといいますか、分担をするというようなことになりますので、それは場合によっては集団的自衛権にもなり得るということで、そのようなことはできないというようにかねがね申し上げているわけでございます。
  258. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 防衛局長の答弁したとおりでございます。
  259. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 個別的自衛権に触れる危険性がありますから、やれないし、やらない、そういう考えだろうと思います。
  260. 二見伸明

    二見委員 私は、海域分担というのは、これは防衛庁長官がどこかで演説された言葉をそのまま引用させてもらいますけれども、あなたはこう言われた。これは、昨年の四月二十一日の日米委員会の総会であなたが講演された。「北大西条約機構諸国は」いわゆるNATOですね、「海域を分担してシーレーンを防衛しているが、日本は集団的自衛権の行使を禁止しており、同じようなことはできない。」私は、これは大変明確な発言だと思います。海域分担というのは集団的自衛権の行使に当たるからこれはできないという長官のこの総会での発言は明快だと私は思います。したがって、海域分担は将来でもできない。総理大臣、今、個別的自衛権と言われたけれども、個別的自衛権に違反するおそれがあるから海域分担はできない、こういうことですね。わかりました。  以上で質問を終わります。
  261. 中島源太郎

    ○中島(源)委員長代理 これにて二見君の質疑は終了いたしました。  次に、吉田之久君。
  262. 吉田之久

    吉田委員 ちょっと質問通告にはしておりませんけれども、加藤防衛庁長官御自身が大変熟知なさっております問題でございますので、初めに、過日の増岡東部方面総監の発言とその処分に関しまして若干の質問をいたしたいと思います。  まず質問の最初は、増岡総監はだれが処分したのかということであります。
  263. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 陸上幕僚長でございます。
  264. 吉田之久

    吉田委員 防衛庁長官は方面総監を処分する立場にありますか。
  265. 友藤一隆

    友藤政府委員 お答えいたします。  自衛隊法の規定によりまして、長官またはその委任を受けた者は懲戒権を行使するということは可能になっております。
  266. 吉田之久

    吉田委員 それでは、その処分の内容それから理由、またその処分の程度、この辺につきまして簡単に御報告をいただきたいと思います。
  267. 友藤一隆

    友藤政府委員 今回の処分につきましては、東部方面総監の職にございます増岡陸将の二月二十四日付の週刊誌上におきます対談におきます発言につきまして、方面総監の地位にある者として、部外に対する意見の表明に当たりましてその表現等の一部に遺憾な点がございましたために、二月二十七日、陸上幕僚長が訓戒を行ったものでございますが、この訓戒と申しますのは、いわゆる正規の自衛隊法上の懲戒処分ということではございませんで、懲戒処分に当たらない程度のものでございましても、不問にすることが適当でないものについて、訓令上の処置として、陸上幕僚長がその懲戒権者としての立場に立ちまして行ったものでございます。
  268. 吉田之久

    吉田委員 この際伺っておきたいと思いますが、制服自衛官がいろいろ他に出て発言をしたりあるいはコメントをしたり対談をなさったりする機会は大いにあり得ると思います。こういう場合にどのような手続によって行われることになっているか、また、増岡総監のこのたびの発言はそういう手続に則したものであったかどうか、お伺いします。
  269. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 お答えいたします。  雑誌でございますとかそういった種類のものに記事を書きますとかインタビューをするとかいう場合におきましては、それぞれ所属の長まで、いつ、どういう依頼によってどういうところに寄稿をするということにつきまして届け出をすることになっております。増岡さんの場合につきましては陸上幕僚長に届け出ることになっておりまして、インタビューの前に届け出は済んでございます。
  270. 吉田之久

    吉田委員 それでは、一応の手続を踏んでこうした対談をなさったものと思いますが、その対談の内容が処分に値するかどうか、この点について私どもは多分な疑問を感じております。  さて、それは別といたしまして、後で問題にいたしますけれども、先ほどの御答弁によりますと、処分の最終的な権限は長官にあるようでありますけれども、しかしあの場合に、処分の二日前に長官みずからが記者会見でこれは断固処分しますと発表なさっておるのは、いかにも私どもにとりましては奇異に感ずるわけでございますが、長官の御心境はいかがでございますか。
  271. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 これは、質問がありましたので、記者会見でどういう方針ですかということを聞かれましたので、私は防衛庁の立場を御説明申し上げました。それは、火曜日の閣議後の記者会見でありました。それで、私たちがこの増岡問題を部内で討議いたしましたのは、その前の週の木曜日からでございまして、金、土には方針が決まっておりましたので、陸幕長からもその方針を聞いておりましたので、私が記者会見でその旨を明らかにいたしました。
  272. 吉田之久

    吉田委員 いかにも一般社会に与えた影響は、この種のことで長官が異常な大げさな構え方をなさったように我々は感じました。このことが今後、自衛隊の最高の指導の任に当たるべき長官として、自衛隊そのものあるいは国家国民に対してどういう影響を与えるであろうかということを、私どもは依然として大変懸念しているわけでございます。  我々民社党はこの「月曜評論」誌上の増岡発言を精査いたしましたけれども、その諭旨は自衛隊の現状を憂慮し、何とかして自衛隊をより精強なものにしたいという至情のあらわれであって、何ら処分の対象になるものではないと当時判断したわけでございます。したがって、これを処分前に長官に伝えたいと存じまして、二十七日の正午過ぎ、長官に連絡をとりましたけれども、やっとその日の午後二時に会談がセットされまして、長官に我々の見解を伝えたわけであります。したがって、処分後我々民社党が抗議に行ったものではないという事実関係だけは、この際はっきりとしておきたいと思う次第でございます。  さて、長官の自衛隊への指揮は陸幕長を通じて、制服の高級指揮官を通じて行われる。したがって、長官が制服の高級指揮官を信頼し、愛情を持って接することが長官の指揮統率の要請であると私どもは思うわけでございますが、この点はいかがですか。
  273. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 自衛隊の最高の指揮官は総理大臣でございます。そして、私はそのもとで自衛隊の統率の責任を負っておるわけでございまして、当然のことながら二十五万人の自衛官、それにはトップの幹部もおりますし、曹士もおります。そのすべてに愛情を注ぎながら、そして精いっぱいやってもらえるように士気の高揚に努めるのは防衛庁長官の当然の責務であろうと思います。
  274. 吉田之久

    吉田委員 同時に私どもは、自衛隊の現状を国民により正確に知っていただくことが、国民に支えられる自衛隊をつくるために最も重要だと考えておるわけでございます。そのためには、制服自衛官の発言はできるだけ自由にさせることが必要だと私どもは考えます。長官はこの点はいかがお考えでございますか。
  275. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 制服自衛官といえども、もちろん発言の自由がございますから、例えば我が国防衛の基本政策にのっとるような部分で私たち防衛政策当局者の意見と違うようなところがあったら、これはちょっと配慮してもらわなければならないし、その発言にはそれなりの制約がございます。例えば、私たちが国会で論議をし、政府、国防会議等で決定しました防衛政策と違う発言をした場合には、それは当然のことながらシビリアンコントロール上問題になります。しかし、自衛隊の現状であるとか装備が不十分であるとかいうようなことは、私はそれはある程度のことは、制服自衛官がその責任の範囲の中で言っても、とやかく言うべぎことではないと思っております。かつ、増岡総監がそこで述べられております、装備が古いとか、それからその他いろいろの現状のことをおっしゃっていますが、これはほぼ私たちが防衛白書なんかでも累次指摘し、また国会答弁で私たちが予算審議のときなんかで、私自身の口から申し上げていることでございますので、私たちが問題にしているのはその部分ではございません。
  276. 吉田之久

    吉田委員 では、どの部分を問題にされたのですか。
  277. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 東部方面総監といいますのは、陸幕長の次に重要な地位でございます。そういう地位の人間は、やはり隊員に対し士気の高揚に努めるような統率をとっていただきたい。そういう際にいろいろな表現の使い方はあるのですけれども、自衛隊に来る人間が落ちこぼれが多いとかというようなことでは、末端で現実に働いておる隊員たちに本当にどういう士気を与えるのかという感じがいたします。自衛隊員は、それは学校の成績が各自全部トップなんぞという人間が集まっているわけではございません。しかし、隊に来ましたら必死になって作業をし、そして必死になって訓練に励んでいる人間でございます。そういう人間に対して落ちこぼれという表現は、最高司令官に近い人間としてどういうことだろうなというような問題点など、ほかにも幾つかございます。
  278. 吉田之久

    吉田委員 私どもはまさにその点を問題にしているわけでありまして、確かに増岡総監はこの対談の中で落ちこぼれ発言をいたしておりますけれども、その落ちこぼれは、彼自身が今日の自衛隊はそんな落ちこぼれた人たちによって構成されているということを肯定した発言ではないと思うのです。自衛隊に反対する人達の表現をかりれば、落ちこぼれが自衛隊に来ると言われておるけれどもと、こういう表現を使っております。必ずしもこの表現が適切であるかどうかは別といたしまして、この文脈をずっと後を読んでまいりますと、増岡総監が自衛隊に反対する人たちにこんなことを言われるのが残念だという合意が十分含まれての発言だと、私どもは好意的に解釈できます。したがって、何ら処分の対象にならない。今まさに長官自身がおっしゃったように、今日の自衛隊の現状を憂える点では、まさに長官総理と同じように、その隷下におられるこの総監が、多少の表現の巧拙はあるとしても、そういう現状を憂えて語ったことではないかというふうに感ずるわけでございます。  ちなみにその後の発言を受けましても、「学校の先生が、「自衛隊に行け。国の防衛に従事するのは男として一番尊い仕事だ」なんて一人でも言ってくれるでしょうか。私はこれじゃ困ると思う。」と言って、まさに慨嘆しているわけであります。こういう発言をとらえて、いかに軽度な処分であるとしても処分をされるということは、私どもとしてはどうも納得しがたい。まして、新聞紙上等であらわれた長官のいろいろなコメントなどが余りにも多過ぎやしないだろうかという点を感ずるのでございますが、総理、この辺はいかがお感じでございましょうか。
  279. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 統率は長官に任じておりまして、長官が不適切であると考えて相談に来ましたから、結構である、そう言っておきました。
  280. 吉田之久

    吉田委員 私は重ねて長官総理に御質問いたしたいのでございますけれども、ともかく有事に国を守ろうとする自衛隊であります、その幹部たちであります。この人たちが絶えず胸を張って誇りを感じて、かつ自由闊達に申すべきものは申す、もちろんそれが防衛の基本に反するような発言は、これは断じて認められるべきではありませんけれども、やはりそういう活気みなぎる自衛隊であり幹部でなければ、有事のときに本当に国家の防衛に値する集団となり得るのであろうかということを絶えず懸念するわけであります。  この種の例は余りにも多過ぎまして、何かこういうことが続きますと、物言わぬ自衛隊、ともかく萎縮して、そして自己保身にきゅうきゅうたる自衛隊の幹部だけができ上がった場合に、我が国防衛はどうなるだろうかという点を懸念せざるを得ないわけであります。  最後に、この増岡総監に対する処分はこれですべて終止符が打たれたものかどうか、それから私が今申し上げましたような、そういう自由なる気概、特に西欧諸国におきましては、軍部の指導者といえども大変自由な発言が保障されているように聞きます。何か暗い影の自衛隊にしてはならないと思う私たちの懸念に対して、総理はどうお考えでございますか。
  281. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 総理の御発言の前に、私たちの現在の状況を御説明いたしますが、処分はこの間終わりまして、これですべて終わりでございます。  それから、自衛官に対しての発言の自由というものが制約されるのではないかということでございましたけれども、この間JAL事故の際に、自衛官がいろいろ技術的なことにつきまして発言をこの同じ「月曜評論」の場でいたしました。国会でも、発言させ過ぎではないかということでございましたので、私たちは、そういうようなことについて発言させて、シビリアンコントロールにもとるような自信のないことはしておりません、それは堂々とこういう問題については発言させてもいいのではないかと思っておりますということを答えました。  ただ今回の件は、自衛隊の現状について述べているものであっても、私は、当人が司令官であるという意識というものを十分に持ってないという部分について問題があると思っておりましたし、陸幕長も私が言う前に、これは問題であるといって持ってこられましたので、私はその処分でいいだろうということを言いました。その中には、例えばいわゆる隊員の訓練がなってないというようなくだりもございます。しかし、これは隊員の訓練をする師団長の最高責任をこの間まで務めておられた方でございますし、東部方画総監としても、今当然陸幕長に次いで責任のある方でございます。それから、隊員がばたばた倒れるとかいろいろな言葉がございますが、そういったことの訓練を責任を持ってやっていただかなければならぬ立場でございまして、一尉とか司令官でない人たちが言う発言ならば私たち問題にいたしませんが、やはりその責任にある人が評論家風におっしゃるのは統率上私はかなり問題があろうと思って、陸幕長の処分をいいのではないかと申し上げたような次第でありますので、その辺につきましては統率上の問題として御理解をいただきたいと思います。
  282. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 防衛庁長官が申し上げたとおりであります。
  283. 吉田之久

    吉田委員 この質問はこの辺で終わりますけれども、同じ自衛隊の幹部で、一尉まではこういう発言はいいとか、一佐以上はこういう発言を慎まなければならないとか、なかなかそういう限界、区分の引き方というものは言うべくして容易ではないと思います。若干、人間のことでありますから言い過ぎや失言や適当でない例示等もあり得ると思いますけれども、今ここで必要なのは、そういうことも大いにこれは長官みずからが教育訓練され、そしてそういう一つの気風というものを、秩序というものを確立されるべきではありますけれども、同時に、この辺の処方せんを間違うことによって、角を矯めて牛を殺すというようなことになってはならないという私どもの懸念だけはどうか篤と御認識をいただきたいと思うわけでございます。  次に、順序を変えまして、大蔵大臣がお急ぎのようでございますから、岩国基地沖合移設の問題について先に質問をいたします。  岩国基地の問題につきましては、かねて防衛庁、施設庁等におきましてもいろいろと御検討を煩わしてまいりました。また、安倍外務大臣初め山口県の政治家の方々も、いろいろ地元の重大な関心事として対処してきていただいておることを承知いたしております。  さて、私どもが考えますのは、この基地問題、そして米軍に提供いたしております基地、それはまさに日米安保条約の根幹にかかわってくる問題だ。したがって、今、基地の問題が各地でいろいろ問題を起こしております。特に、逗子のダブルリコールの問題でありますとかあるいは三宅島の問題でありますとか、下手をすればこの重要な基地問題がデッドロックに乗り上げてしまうような気配を感じざるを得ないわけであります。こういうことのよって来る遠因がどこにあるかということも、お互いにこの際政府は真剣に検討しなければならないと思います。同時に、その中にありまして岩国基地は、この基地は存続しよう、市民の多くの方々が、市長初め各団体のほとんどの方々がこの基地は存続しよう、しかし、現にある基地を沖合に千メートル移設してもらいたい、そのことによっていろいろ現に発生しております事故、騒音、危険性、そういうものが除去されるではないか、こういう意思表示をしておるわけでございます。この意思表示は、極めて注目すべき一つの傾向だと私どもは判断いたしております。  岩国基地の沖合移設について閣議決定を急ぐべき段階に来ているのではないかというふうに私どもは考えますけれども、この点についていかがお考えでございましょうか。
  284. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  岩国基地の沖合移設の現状でございますが、御承知のように五十七年の七月二十六日、防衛施設中央審議会で沖合に一キロ滑走路を移設することが適当であろう、工事的にも技術的に可能であろう、こういう結論が出まして基礎調査等を行ってまいりましたが、六十年までに基礎調査及び基本計画の策定を終わりまして、六十一年、現在御審議いただいております予算を初年度といたしまして、総額八億四千万、初年度二億一千三百万でございますが、これによって試験埋め立てを百メーター四万やって、その結果を将来の沖合移設工事に生かそう、こういうことで、この予算をお認めいただきましたならば試験埋め立てを実施したい、かように考えております。
  285. 吉田之久

    吉田委員 今お話しのとおり、既に試験施工、試験埋め立てをしようということで全体額として八億四千万円、この六十一年度の予算計上額は二億一千三百万円、ここまで来ておりますことは、大変それなりに前向きに対応しておられる事実であると私どもは評価をいたしております。  さて、この百メートル平方、したがって一ヘクタールのこの土地の埋め立ての試験、これはまずは成功するだろうと思います。成功しなければ話は別でありますが、仮に成功する。しかし、成功するためには八億四千万円の金がかかるわけでございますから、二年や三年で成功しそうには、我我常識上考えられません。  さて、三年、五年の間によしんばそれが成功したとして、成功したからそこから先どうするんだということで、私たちははたと一つの疑問、心配を感ずるわけなんでございます。普通、常識上、沖合に移設するこの岩国の基地、そのことにかかる経費、それは約三千億円程度はかかるのではないだろうかと言われておるわけでございます。こうした費用の捻出について、防衛庁長官はあるいは大蔵大臣は、その見通しをお立てになることができるのでありましょうか。
  286. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  防衛施設庁の予算のシェアは大体一〇%前後でございまして、六十一年度三千二百八十三億をお願いしておるところでございます。現実にこういう枠の中で大きなプロジェクトをいろいろやるわけてございますが、そのときどきの財政事情あるいは米側と協議をいたしました優先順位、こういうものを勘案しながら着実に取り組んでまいりたいと考えております。
  287. 吉田之久

    吉田委員 佐々施設庁長官としてはそこまでしかお答えできないと思うのでございますし、これ以上は佐々長官にお聞きするよりも政府閣僚の方方にお聞きしないと、答えが全然出るはずはないと思うのでございます。  総理、お聞きのとおり、この施設庁の予算は今問題の我が国防衛費の約一割でございます。三千二百八十二億円と承知いたしております。それで、その中で米軍の基地に勤務する人たちに対するいろいろな思いやり予算あるいはこういう施設を移す等にかかる経費、これをリロケーションと呼ぶようでございますけれども、そのリロケーションの経費は六百六十五億円であります。この程度の額を、今後どこに使うかは別といたしまして、そういう財政処理の延長線上で、時に三千億円必要なこういう沖合の移設等のような大プロジェクトは消化できるのかどうか、この辺お尋ねせざるを得ないのでございますが、ちょっとお答えをいただきたい。
  288. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 いわゆる米軍の施設リロケーション等も従来から防衛費の中で考えてきておるわけでございまして、そういった経費をGNP一%の中から除外して考えていくべきではないかというような御議論も時々いただきます。特に、それぞれの設備、整備が予算的に非常に窮屈なものでございますので、そういった問題を抱えている地域の方々からはかなり強くそういうお言葉をいただきますけれども、私たちはやはり防衛庁、自衛隊設立以来この問題は防衛費という中で、枠組みで考えてきておりますし、国民の皆さんもそう考えてこられますので、ですから、これからはそういう枠組みを外すという問題よりも、より多く財政当局の御理解、国民議会の御理解を得て、この予算の獲得のために努めていくのがこれからの方向ではないだろうかな、こう考えております。
  289. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは今加藤長官からお答えがありましたが、必要不可欠な防衛施設等を拡充するためには、よく先生の御議論にもございましたことがありますが、いわゆる一般会計から支出した場合に、防衛費一%という問題があるがゆえに機動的に対応できない、したがって特別会計を設けたならば、中にはまさに公共事業みたいなものもございますし、その方が防衛費としての厳密な区分ができるではないか、こういう御趣旨の御質問もよくあるわけでありますけれども、まあ問題は、特別会計の設置ということになりますと、「国が特定の事業を行う場合、特定の資金を保有してその運用を行う場合その他特定の歳入を以て特定の歳出に充て一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある」、こういう原則からいいますと、特別会計というものにこの防衛施設庁関係予算というのを持っていくのは財政法上問題がある。やはり私は、加藤長官からもお話がありましたように、その都度日米安保条約あるいは我が国防衛全体を考えて具体的に対応すべき問題ではなかろうかというふうに考えます。     〔中島(源)委員長代理退席、委員長着席〕
  290. 吉田之久

    吉田委員 現行の財政法上の延長線上で、今申しておりますような重要な基地の整備が逐一整っていくものでありますならば、これは大いに結構なのでございます。しかし、総理初め責任ある皆さん方が内心御心配いただいているのは、それではとても、まあ百年河清を待つといいますか、今世紀が終わって二十一世紀のどの辺でどの飛行場がどうなるのかなとか、そんなことでいいほどのんびりした基地の整備であるならば、私はそれはそれで結構だと思うんでございますよ。  しかし、まあ決して今の我が国の置かれている状況、整備しなければならないもろもろの問題点、そういうことから考えれば、日米安保の基本、根幹にかかわるこの辺の問題を、そう、いつかできるときに少しずつやりましょうかということで通り切れるものなのであろうか。それから、実際上こういう大きいプロジェクトを、じゃ年にまあ百億ずつ出しますということで処理できるのか、そんなことをしたら埋め立てためになっちゃいますね。やっぱり一気にやる時期やらなきゃならない、そういう必要があるのではないか。しかし、先ほど長官がおっしゃいましたように、いろいろこの種の施設にかかわる経費、もちろんその中には防音工事でありますとか道路を広げることでありますとかあるいは地元のために市民会館をつくることでありますとか、およそ常識から考えれば、果たしてこれが正面装備などの防衛とどのようにかかわってくるんだろうかなと若干首をかしげたくなる経費もただいま問題のGNPの一%枠内の防衛費の中に含まれておるわけでございます。だといって、これを外すとなればこれはまたどこまで外すんかということでより大きな問題点を残すと思います。  だから、こういうものも現行の一%の枠内に含めながら、なおかつ必要欠くべからざる施設の改善等は対処していかなけりゃならない。そこで一つの苦肉の策として私どもは考えるわけなんでございますが、例えばこの飛行場を一キロ沖合に移設する、そうすると現在の飛行場が要らなくなる、それを市に払い下げるのか公共用地に使うのか、これは政府の判断でございましょうが、よしんばこれを売却するとするならば幾ばくかの金が国庫に入ってくるはずでございます。その経費を、例えば私どもで考えまして、不用になるべきはずの土地が二百八十万平米ある。これを仮に坪一万で売ったって二百八十億になるわけでございます。十万で売れれば二千八百億になるわけでございます。恐らくまあその辺の中のどこかに入るんだろうと思いますけれども、そういうものが国庫に入ってくる。  一方において基地を整備していく、それは防衛費の中で動いている金でございますね。これをしも形式的に、入るものは国庫、一般歳入の中に入る、出るものは断じて一%の枠内でなければならない、この方針を堅持されるならばそれで結構でございます。我々は、その辺のところを何か真剣にお考えになるべき時期が来ているのではないか。特別会計をつくるということは、大蔵大臣の御答弁もありましたが、大蔵省の権威から申しましても建前から申しましても余り好ましいことではないと思うわけでございますが、国家の防衛のために必要、妥当なものは、国民の理解を求めながらそういう措置もあえて講じなければならない局面が出てくるのではないか、この私どもの心配に、重ねて大蔵大臣と総理はどうお答えになりますか。
  291. 竹下登

    ○竹下国務大臣 先ほどお答えいたしましたように、これは、特別会計をつくることによって、いわゆる防衛施設庁の財産を仮りに売却したら、それをもって特定財源のように使うというのはやはり財政法上問題があろうと思います。しかし、今吉田さんがおっしゃったように、国家の安全のため、あるいは日米安全保障条約上これは絶対に必要なものであるというような問題につきましては、やはりそれの重要性の判断と選択の問題であって、それは私は特別会計には必ずしもなじむものではないが、吉田さんの考え方のようなものを私どもの背景に置いてその都度対応していけばいいというふうに考えます。
  292. 吉田之久

    吉田委員 どうぞお帰りくださいませ。ありがとうございました。  まあ、いろいろ総理長官お聞きのとおり大変難しい局面にだんだん近づいてきておると思うわけでございます。私どもがここで財政法上どうしろというようなおこがましいことは何ら申しませんけれども、しかし国民とともにこの辺のところを憂えておるということを御認識いただきたい。同時に、この辺の問題がきちんと進んでいくことによって、そしてそういう推移を全国民が見ておるわけでございまして、そういう政府みずからの住民との対話の中で、よりよき環境のもとによりよき防衛基地を確立していくということが納得できることが、いろいろ他に問題を起こしております。そういう各基地を中心とする世論にもいろいろと微妙な影響を与えるのではないだろうか。ともあれ、この基地の問題ということは大変重要であります。このまま少しばかりのお金を振り分け振り分けてやっていくことにはならないと思うんでございますが、その点、外務大臣はいかがお考えでございますか。
  293. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 岩国基地の沖合移設の問題につきまして吉田委員から御提起をいただきまして、私も地元の議員として心から感謝をいたしております。  我々も何とか岩国市民の要望にもこたえ、また基地の安保条約上の効率的な運用確保という面からこれは推進しなきゃならぬということで努力を重ねておるわけでございますが、なかなか財政上思うようにいかない。今お話しのように、ことしわずかばかり予備費がついた、調査費がついたということであっても、三千億ということになりますと非常に先の遠い話になります。今の日本の財政から見ても防衛施設庁の予算から見ても、これはお話しのように百年河清を待つようなことでありますけれど、我々は何とか、岩国の市民が、とにかくあの岩国の基地には非常に協力をしていただいておるわけであります。それだけにあの市民の皆さんの要望にこたえて、何とかあの沖合への移設は実現をしたいものだと、特別な方法でもないものかということをいつも考えておるわけであります。  これは安全保障条約を効率的に運用していくという点から見ても当然でありますけれど、同時に今の基地と市民との関係が非常にうまくいっておりますし、また米軍も移転等につきましては非常に積極的であるというふうに聞いておりますので、これは我々、まあ欲張った考えですが、特に山口県の議員の一人でもありますし、何らか特別の方法があればぜひやってもらいたいというのが私どもの考えでございますが、今御指摘のありましたように、そうした今の基地を処分して新しい基地の財源になるというようなことになれば、それは大変いいことであるし、それは思い切ったことができるわけですから、これについて、今竹下大蔵大臣の答弁を私も真剣に聞いておったわけでございますが、重要性によってはそういうことも考えられぬわけでもないというふうな印象の答弁でもありましたし、これは非常にこれから岩国だけじゃなくて、これからの米軍施設あるいは基地を確保していくという点から見ましても、大変重要な課題であると私も思っております。  そういう点で、いろいろと財政上、その他問題はあることはありますけれども、何とか年来の、これは一年や二年じゃなくて、長い間の実は宿願でございますから、これを実行、実現するために、私たちもひとつ力を尽くさなければならない、こういうふうに思っておるわけでございます。今後ともひとつ力を尽くしまして、実現のためには努力を重ねてまいりたい、こういうふうに思っております。
  294. 吉田之久

    吉田委員 総理、お疲れでしょうが、お聞きのとおり、私どもはこういう基地の問題、急ぐならば、それだけに急ぐ対策をそろそろ、やはり総理みずからが御決断なさらなければならないんじゃないか。急がないことであるならば、それはよろしゅうございますよ。  それから、安倍外務大臣からも御答弁ありましたけれども、確かに岩国の市民の方々は、いろいろ問題を抱えている基地の中でも、特段好意ある対応を示して今日に至っておる。だからといって、この市民の今日の心情にいつまでも甘えちゃいけないと思うんですね。おいらがどれほど努力したって、これはいつのことかわからぬわ、協力したって政府は誠意を示さないじゃないかということで希望を失ってしまえば、そして岩国のこの希望の灯が消えれば、私は日本の基地全般に及ぼす影響はかなり深刻になりはしないかと思うわけなんです。したがって、米側から見て、あるいは我が国防衛庁自身から見て、その優先順位が三沢が先なのか、あるいは横須賀港のしゅんせつが先なのか、池子の住宅が先なのか、三宅島が、いろいろあると思うのです。  それもさることながら、やっぱりこの岩国の市民の心情に対しては真剣にこたえていく姿勢を、今ここで国家が示さなければならないのではないかと思うわけなんです。大変重要な一つのサンプルになってきていると思うのでございますが、そういう点で総理、この岩国基地の沖合移設の問題を閣議で正式にお取り上げになるお気持ちはございませんでしょうか、総理
  295. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 防衛施設庁関係の予算、特に周辺基地対策等については、我々も非常に関心を持っております。各地におきましてこういう問題が出てきていることもよく承知しておりますが、これが扱いにつきましては、内外に対する影響もありまして慎重に検討してみたいと思います。
  296. 吉田之久

    吉田委員 それじゃそれぐらいにいたしまして、次の問題に移ります。  安全保障会議の設置についてであります。  この件につきましては、我々民社党も、多年国防会議にかわるさらに権威ある安全保障会議を設置すべきであるということを提言してまいった次第でございます。政府におきましても今度法案を出されることになりまして、それは大変評価しているわけでございます。  そこで、総理にお伺いいたしますが、我が党内でも、やはりこの際、国家安全保障会議と、きちんとそういう名称をつけることの方が、国全般の安全にかかるシビリアンコントロール、あるいは重要な決定に対処していくためによりふさわしい呼称なのではないかという考え方も持っておるわけなんでございますが、なぜ国家という字を外して安全保障会議設置法ということになさったのか、何か意味があるのでございますか。
  297. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今回の法案の提出は、行革審の提案等を受けてやったものでございますが、その名称につきまして、国家という名前をつけるという案がもとあったのであります。しかし、いろいろ検討してみて、国防会議の仕事を大体引き受けると同時に、それ以外にも緊急のいろんな諸問題等もありまして、いわゆるナショナルセキュリティーという狭義のものでなくして、広義のものに転化してきた。例えばハイジャックであるとか、あるいは大韓航空機の事件であるとか、そういうものもあるものでございますから、国防会議というものから多少前進した幅広いものになったという意味において国家という名前はとってもいいんではないか、そういう議論がありまして、そのようにした次第でございますで
  298. 吉田之久

    吉田委員 ちょっとやっぱり本末転倒のお答えじゃないかと思うのでございます。もともと国防会議というのは国家防衛に関する会議なんでしょう。そういうものが改組され充実されていく中で、その国家という呼称がなくなる、安全保障、それは大体国家の安全保障のことであることはおよそ常識ある人間としてわかりますけれども、やはり例えばハイジャックの問題でありますとか、あるいは関東大震災に類似するような大事故が起こりますとか、いろんなことがもしもあったときに、そういうことにも十分対応できる安全保障会議、それはまさに国家国民のためでありまして、国家安全保障会議という呼び名の方がより正当であり、ふさわしい、本来の精神が十分に盛り込まれた表現にならないかと思うわけでございますが、お変えになる気持ちはありませんか。
  299. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 かなり幅の広いものにもなって、非常に緊急事態に対応できるという構えを持っておるものですから、国家安全保障会議というと非常にいかめしく感じまして幅の広さというものが失われる、そういうような配慮もあって国家をとったのでありまして、今のところ、名前を変える考えはございません。
  300. 吉田之久

    吉田委員 私どもの杞憂は、何か国家と構えるところにいかめしさを国民に余分に与えはしないだろうか、少しでも問題の抵抗を少なくする意味でというような気持ちがもしもありとするならば、その気持ちは一面においてわからないではありませんけれども、事の本質を将来見失うおそれがある。やはりこの辺のところははっきりと国民に現状を理解、納得、協力してもらう、そういう基本的な姿勢というものは絶えず堅持されていいのではないかと思いますがゆえに、あえてこの種の質問をしておるわけなんでございます。  いま一つは、この政府の設置されます安全保障会議の構成員、議員でありますけれども、その中に経済企画庁長官が入っております。これはまあ経済関係閣僚の右代表だという意味でお入れになったのだろうとは思いますけれども、それはそれとして、戦時であるかないかは別として、いよいよ国家有事の場合に一番重要なのは運輸大臣、これはかなり国家の安全にかかわる重要な立場におられる大臣ではないか、海上保安庁もこの運輸大臣の隷下にあるわけでございます。運輸大臣を加えるべきであるというのが私どもの考え方の竹子にあるわけでございますが、いかがお考えでございますか。
  301. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国防会議の構成員の中にも運輸大臣はなかったのでございまして、必要に応じて関係大臣は集まってもらおう、そういう考えに立ちまして除いておるわけでございます。そういう異常事態の大事なときという場合には、通信なんかも非常に大事になることもございます。そういうようなことで、できるだけ数は少なく簡素にして、必要に応じて集まってもらう、そういう考えに立ったわけであります。
  302. 吉田之久

    吉田委員 次に、洋上防空将にOTHレーダーの問題についてまず質問をいたしたいと思います。  先ほど来他党の委員の方々もこの問題に触れていらっしゃいましたけれども、改めて一、二、はっきりお聞きしたいことがあります。  まず、OTHレーダーを導入しようとすることは、既に防衛庁ではその方針を決めておられると思うのでございますが、その設置の場所は今日現在依然として硫黄島であるのか、あるいは南西諸島に置かれるものか、その辺はきちんとはまだ決まっているのかいないのか、この辺を御答弁いただきたいと思います。
  303. 西廣整輝

    西廣政府委員 置き得る条件のある島は幾つかございますが、まだどこというように決めておりません。
  304. 吉田之久

    吉田委員 決めてはおらないけれども、どちらにするかという検討はなさっておるのでしょう。
  305. 西廣整輝

    西廣政府委員 置き得る島がこことここにあるという候補となり得る島については絞っております。
  306. 吉田之久

    吉田委員 硫黄島に置くか、あるいは南西諸島に置くか、そのことによっていろいろ長所、短所があるのだろうと思います。想定される技術上あるいは戦略上というのでしょうか、そういうことでのいろいろな価値判断はどうなさっておりますか。どちらの島でもいいということなんでしょうか。
  307. 西廣整輝

    西廣政府委員 本土防空及び洋上防空からしますと、日本列島の地理的条件からいいまして、硫黄島方向の方がよりすぐれておるというふうに考えております。
  308. 吉田之久

    吉田委員 そこで長官にお聞きいたしますけれども、先ほども二見さんもお触れになっておりましたけれども、アメリカはアムチトカ島に置いてオホーツク海、樺太それから北海道を大体かばう覆域を持つレーダーを持つ。それからいま一つは、グアム島に置く、これは大体カムラン湾の近くから、あるいは中国大陸の南部沿岸をかすめて韓国あたりをカバーして、日本列島も当然その中に入る、こういうことになりますね。そこに改めて硫黄島に置かれる考え方も強いようでありますが、その辺に我が方のOTHレーダーを置く、それは当然独自のカバーするエリアを持つわけであります。それは日本海全域をその覆域の中におさめます。  ここで私たちが感じますことは、先ほど来、いやアメリカはどちら向いてリサーチなさるのかそれは存じません、我々は大体日本海が重要と思ってそちらの方をにらみます、情報の交換は何も積極的にする意思はありません、またなるべくこの覆域はラップしないでしょう、こういうお話であります。しかし、私どもの考えから申しますと、このドップラー効果を利用して相手の軍艦や飛行機なんかの動きを捕捉する、しかもそれは我が線上に直進してくるものは全然捕捉しがたい、横に動くものだけがわかる、こういうことになってまいりますと、東から見るレーダーと、あるいは南から見るレーダー、当然ラップする部分があってこそ、情報を交換し、こちらから見たら一点にとどまっておるけれども、そちらから見たらどうなんだとか、あるいは逆に問われることもあると思うのです。絶えずそういう交換がなされてこそ初めてこのOTHレーダーというものは意味を持つのではないか。全然個々ばらばらにあさっての方を向いて、それぞれが電波を送っておるだけでは本当の意味は出てこないというふうに考えるわけなんです。  だから、この情報をソフトの面で我が方自身がいろいろと解読する能力を持たなければならないとおっしゃる長官の気持ちは当然でありますけれども、その解読した情報というものを、時に応じてはお互いの精度を確認する意味でも確かめ合うというようなこと、これは別に集団的自衛権にもかかわってくる問題ではない。むしろOTHレーダーを置くとするならば、その効果を高める意味で極めて重要な一つの作業なのではないかというふうに考えますけれども、いかがですか。
  309. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 先ほど私たちが他の委員の方々に申し上げたのは、情報をとって、それが我が国防衛のために有益なものでないということであるならば設置はしません、そしてまた、その情報自体が我が国が処理できずに、その情報価値がわからずに他国のソフトに入れてもらわなければ何の意味もないというものであったならば、私たちはそういうものを持つつもりはありませんとお答えしたのでございまして、そういうものではないと私たちは理解しております。  そして、そうやって得られました情報をいかに処理するかでございますが、その情報の価値を私たちが判断し、また国益の観点から、特に米国のような国とはいろいろ情報交換することは当然あり得るし、またそれが集団的な自衛権の原則に背馳するものだというふうには私たちは思っておりません。
  310. 吉田之久

    吉田委員 今の長官の御答弁でほぼ姿勢はわかってきたように思いますけれども、ともかく、もともと有益でないものを設置される、そんなことはあり得ないことであります。そんなことに国民や我々が了承するはずはありません。当然我が国防衛のために有益なもの、かつそれは、我が国自身がいろいろとソフトを通じて中身を判断してできるものでなければ、全くアメリカの下請的な部分品を日本が提供するだけでは意味がないわけであります。それは日本の自主性が問われるゆえんであると思います。  この辺の姿勢はわかりますけれども、だからといって、これはアメリカに知らしてはひょっとして問題になるから黙っておこうとか、そんなことを一々気を使って、平時において、ただじっとその情報を秘匿しておるだけでいいのだろうか。そういうことでは、せっかくつくったものがかえって無益なものになりはしないか。先ほど来もお話がありましたけれども、我々が軍事大国にならない限り、すこぶるすぐれた情報網を絶えず持っておるということは国家防衛のために非常に大事であります。こういうことの新しい展開の中で、必要以上におっかなびっくりのいろいろな姿勢を示されることはかえって意味を失うのではないか。何も、どんどんそれを国際緊張を高めるために使えというような気持ちは毛頭ありませんけれども、およそ情報というものは、我々お互いに信じ得る側においては十分に知り尽くしても決して知り過ぎることはない、それが世界平和のためだ、こういう考え方をきちんと持っていただきたいと思うのです。  それから、シーレーンの問題につきましていろいろ論議が出ておりますが、一向にはっきりいたしません。国民は大体シーレーンというものをどう概念として持っていいのか、それぞれ人さまざまでございます。それはやはりきょうまでの政府の答弁が大変その辺に明確性を欠いておるからそうなると思うのでございます。私はシーレーン防衛あるいは洋上防空、それが今直ちにどこまでできるかは別として、できるとするならば、将来我が国が守るべきシーレーンの構想というものはこういうものでありますということをもう少し明確になさった方がいいと思うのです。  例えば、ここにシーレーン防衛と海峡封鎖ということで、ある雑誌社が一つの絵を提供いたしております。これを見ますと、これが当たっているかどうかは別として、ああシーレーンというもの、そういえばなるほどボウリング場のレーンみたいなものだなという感じが浮かびます。あるいはそういうものであるかもしれません。そういうものであるとするならば、南東シーレーンはこういうものなんだ、南西シーレーンはこういうものなんだ。ちなみに、この資料によりますと、南東シーレーンは一千海里、その長さにして千八百キロメートル、しかもそのレーンの幅は二百四十海里、四百三十二キロメートル、一応そういうものを想定しておるわけであります。とは申せ、南西シーレーンの場合には八百四十海里、千五百十二キロメートル、幅にして百五十海里、二百七十キロメートルと書いてあります。こういうものがシーレーンだとおっしゃいますか。このとおりであるとは言いませんよ。大体ほぼ、今日本防衛庁長官が、総理大臣が考えていらっしゃるシーレーン、それがどこまで、今直ちに守れるかどうかは別として、この辺までは守りたいという考え方をお持ちなのかどうか。まずこの辺からはっきりしていただかないと、我々はシーレーンや洋上防空について、一体日本防衛というのはどこまで実は言葉をいろいろと変化させながら広げていくんだろうか、大変懸念を感じると思います。限りなく増大していくものであるならば、それはもう反対しようという声が大きくなってくると思います。この辺は大事なことだと思いますが、いかがですか。
  311. 西廣整輝

    西廣政府委員 今御質問にありましたシーレーン、これまた従来私ども申しておりました航路帯を置く場合の航路帯と同義語にお使いになっていると思いますが、再々申し上げて恐縮でございますけれども、私どもはシーレーンの防衛ということは海上交通の保護そのものを指しておるというふうに考えておりますので、今先生の御質問のシーレーンと言われたのは、私どもが言っている航路帯を設ける場合の航路帯というように理解をさせていただいてお答えをさせていただきます。  私ども海上護衛作戦、いわゆる船団護衛なり航路帯を設けて海上交通の保護を考える際に、かつては南東航路というものを中心に考えておった時代がございます。これは昭和三十年代ごろでございますが、当時の輸出入量の大部分は日米間で行われておったものでございますが、その後石油の輸入等が非常にふえてまいって、そちらの方のルートは主として南西航路いわゆる南西列島線に沿った航路帯で行われるようになったというようなことで、今我々が通常頭に描いておりますのは、南東航路帯と南西航路帯というものを一応主たる海上交通保護の際の海域というふうに考えております。その際、どういう幅でやるかということはいろいろな態様がございまして、オペレーションのやり方としてもいろいろあると思いますが、例えばP3Cのような対潜航空機、そういうものを使ってソノブイをある等間隔に置いていって、そこでソノブイの音が聞ける、聴音できる範囲には相手の潜水艦がいないというような海域というものが設定できるわけであります。その海域を航行する船舶に知らせてそこを通らせれば比較的安全であるというような考え方が航路帯の考え方でございますが、今先生のお示しの図は少し幅が広過ぎるといいますか、とてもそんな広いものについてそのような措置はし切れないのではないかなというような感じがいたします。
  312. 吉田之久

    吉田委員 今の答弁が動かないものであるとするならば、それなりに一つのシーレーンに対する考え方が国民の中にだんだん距離を狭めて定着してくると思うのですが、しかし長官、今までの答弁、かなり権威ある雑誌でさえ、これがシーレーンだと思っている。あるいは、中にはシーレーンというのは昔の制海権だ、シーコントロールの一番でかいやつだと考えている人たちもある。今の防衛庁の答弁では、それはむしろ線というよりも点なんだ。しかし、絶えず対応する点の集団なんだというふうにもとれないわけではない。なかなかこの辺の概念がはっきりしませんと、政府答弁自身が非常に絶えず幅があって動いております。大体シーレーンというのは動いているものだと言えばそうかもしれませんけれども、これは国民としては理解しがたいと思うのです。  そういう点で総理、いろいろ我が国防衛は重要な段階に来ておりますが、しかし、我々は憲法の精神に従い、断じて諸外国に脅威を与えるそういう備えを持たない。したがって、核兵器は絶対に持つことがない。航空母艦も断じて持つことがない。戦艦ももとより持つはずはない。戦略爆撃機も持たない。そういう守りに徹した中で、憲法の精神とGNPの一%の範囲内においてどうするかということを今真剣に考えて、あらゆる知恵を絞っているんだ、こういう一つのきちんとした気構えと申しますか、構想と申しますか、まさにアウトラインですね。大綱はアウトラインと翻訳するそうですが、その辺は国民にきちんと今説明される必要がある。あらぬ誤解や反対はそういうことによって逐次理解に変わってくるのではないかと思うわけでございますが、いかがでございますか。
  313. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まさに同感に思います。国民の皆様方にわかりやすいように今後とも御説明申し上げて御理解を深めていきたいと思います。
  314. 吉田之久

    吉田委員 私の質問を終わります。
  315. 小渕恵三

    小渕委員長 これにて吉田君の質疑は終了いたしました。  次に、東中光雄君。
  316. 東中光雄

    東中委員 最初に、通産大臣にお伺いしたいのですが、通産大臣の三月一日の福岡での発言についてでありますが、内容を私たちが承知しておる限りでは非常に重要な二つの問題についての暴言だというふうに私たちは考えております。  第一点は、「働かない老人がいっぱいいつまでも生きよって、二十一世紀は灰色の世界だ」「稼ぐことのできない人が税金を使う話をする資格はない、最初から」、こういう趣旨のことを言われたということであります。これはたまたま言われたというのではなくて、日ごろの持論を言われておるようなふうにも私たちは承知をするわけですが、経済閣僚でありながら福祉を敵視するあるいは老人福祉を敵視するというふうな、そういう老人福祉を否定するということになりかねないような発言は非常に重大な問題である、こう思っております。  それからもう一点は、「毛針で釣られる魚は知能指数が高くない」、野党の毛針ということなんでしょうが、「うちの党はちゃんとえさをつけている。毛針で釣られる魚も多くなったが、過半数になると国家はだめになる」「愚か者がふえると国が滅びる。愚か者退治が我々自民党の仕事だ」、こういう趣旨のことを言われたということでありますが、野党支持者はあるいは国民は大体釣り上げられるものだということが前提になっておるようでありまして、自民党はえさをつけておるが、野党の毛針で釣られる国民というのは、これは知能指数が高くない愚か者だ。これがふえてくるというのは国をだめにするんだ。まさに国民なり野党なりあるいは野党の支持者なりを愚弄するといいますか、大変な重大な発言だと思うわけでございます。  この二つの点におきまして、いずれも現職の国務大臣の資格にかかわるような重大な暴言だというふうに我々は考えておるわけでありますが、渡辺通産大臣の御所見をまず承りたいと思います。
  317. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 ただいまの御質問につきましては、議会運営委員会で取り扱うことになったと聞いておりますので、答弁は差し控えさせていただきます。
  318. 東中光雄

    東中委員 議会運営委員会というものは日本国会にはございません。議院運営委員会の理事会には私も、オブザーバーでありますが出席をしております。本日、あす本会議が設定されて、政府の方から発言要求があれば、その通告があれば、国会法七十条に基づいて、その通告に応じた発言がされるであろうという日程の設定は合意されましたけれども、議院運営委員会においてそういう指示があるから、だからこれについては一切言わないというのは全くいかがなものか、こう思うわけであります。私が議院運営委員会の理事会で、予算委員会で私はこのことについて質問するかもしれない、それはそのことを拘束するようなものではないだろうなと言うたら、それは当然だという趣旨の、自民党の理事さんもそういう発言。やったらいいですよ、そういう発言さえありました。こういう経過でありますから、この発言についてもう一回重ねてお伺いします。
  319. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私は、議運の委員会で取り扱うことになりました、そういうように聞いておりますので、その結果に従いましてある時期に表明をいたしますから、本日は答弁をそういうことで差し控えさせていただきます。
  320. 東中光雄

    東中委員 憲法六十三条を引っ張り出しますけれども、国務大臣は議会に出席をし答弁をする義務が憲法上の義務でもあります。今のは私の質問に対して答弁になっていないというふうに私は思います。  もう一点、私が先ほど申し上げましたこの働かない老人問題について言いますならば、これと同種の発言というものが今まで渡辺通産大臣になられる前の発言として何回か重ねておられるところが特徴であります。私たちの承知しております範囲では、一九八三年の十一月の二十三日に、これは福井県の丸岡での発言でありますが、老人について、「お金を支払いたくなければ、さっさと死んでください」「そんなにお金をかけたくないなれば、さっさと死んでください、そうすればお金はかかりません」、こういう発言をされたということで当時報道もされ、問題になりました。そのときにあわせて、「何も知らない者が不平不満を振りまいて国を滅ぼす結果になる」「何も知らずに共産党、社会党に投票するばかがふえれば国がおかしくなるんですよ」、こういう発言をそのとき一緒にされております。今度の発言と同系列のことが言われておるわけであります。そして老人問題について言いますならば、一九八三年の十一月二十四日、これは東京のニューオータニでの発言として報道されたわけですが、「乳牛は乳が出なくなったら、と殺場へ送る。ブタは八カ月たったら殺す。人間も働けなくなったら、死んでいただくと、大蔵省は大変助かる。経済的にいえば、一番効率がいい」、こういう発言をされたということで当時新聞に報道され、問題になっております。続いて同じ年の十二月三日、栃木県の西那須野町での演説会で、「お金をかけたくなければ早く死ぬほかないんじゃないのかと言ったんだよ、やっぱり言ったか、本当のことだもの、しようがないよ」、こういう趣旨の発言をされたと報道をされております。昨年もまた秋田で一月二十四日、「長生きにはコストがかかる、ただで長生きするったって無理だ、出したかない人は早く死んだ方がよい」、こういう趣旨の発言をされております。昨年の六月四日には東京の墨田で、「老人医療無料は親不孝奨励金だ」という非常に、何といいますかスローガンのような、しかしとんでもないことを言われた。私はその一環に今度の発言があるように思うわけであります。単なる失言ではなくて、これはまさに暴言であり、そしてこれは閣僚の資格が問題になるような暴言であるというふうに私は考えております。  そういう点で、閣僚の任命権を持っておられる中曽根総理に、こういった経過を踏まえて、今通産大臣は答えないという態度をとっておられますけれども、私はそれは許されないことだと思いますし、任命権者である中曽根総理がそういう場合には罷免をされる、そういうふうにやられるべきだと我が党は考えるわけでありますが、いかがでございましょうか。
  321. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今、東中さんが御指摘になったことは、私またよく知りませんが、果たして一部分だけを引用なすってほかのところは引用なさらないのではないかというような感じもいたします。いずれにせよ、しかし今回の発言につきましては各党間でも問題になりまして、そしてきのうもその話が各党間でも行われまして、いずれ議運においてこれが取り上げられる、そういうことでありますから、その間は本人が自粛自戒をしておるということでありまして、議運がどういう結論を出すか待っておるということでありますから発言は差し控える方が適当であり、私も同じそういう立場にあると思います。
  322. 東中光雄

    東中委員 こういう問題について議運が結論を出すということはあり得ません。議事日程にのせるかのせないかということを審議するのが議運であることはこれはもう御承知のとおりであります。私もそこに出席をしておりましたわけですから、こういう点についてはそれは我が党としては大変な暴言であるというふうに考えております。単なる失言ではない。この二点についてはいずれも非常に重要な問題であるというように考えますので、総理はそれをどういうふうに評価をされておるのか。そして私たちは当然罷免さるべきだ、それでなければこれを容認するそういう中曽根内閣の姿勢であるというふうに考えざるを得ないのですが、重ねてそれについての御答弁をお願いしたいと思います。
  323. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ただいま申し上げたとおり、自粛自戒をしておる最中であります。
  324. 東中光雄

    東中委員 自粛自戒をしておると言って答弁を拒否する。これこそまさに自粛自戒をしていない何よりの証拠だと思うのです。私はそういう点でこういう姿勢は断じて許されぬということを申し上げて、我が党の立場をはっきりと申し上げる以外にないということであります。
  325. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 去る三月一日の私の発言につきましては、先ほど答弁したとおりこれは議運で取り扱うというふうに聞いておりますので、今答弁は差し控えさせていただきたい。  それから、二年前に私が何でもないとき選挙演説等で言ったことについて、その一部分、前後がなくて、選挙演説で私言っているのですから、その前後を抜かして赤旗に書いてあることをあなたがおっしゃったというように理解をいたしております。
  326. 東中光雄

    東中委員 私が言っているのは、過去のことは過去のこととして、それで今度の暴言というのは失言じゃなくてまさに暴言だということの裏づけの意味で申し上げたのであって、もうそれについての議論はしません。はなはだ遺憾である。そして改めて総理に罷免の処置をとられるように要請をしておきたいと思います。  では、本来の審議に入りたいと思います。  この前の岡崎議員の一般質問でも出ておりましたが、アメリカの海軍研究所発行の月刊誌「プロシーディンク」の一月号付録に載せられたあのワトキンス米海軍作戦部長の論文「海洋戦略」、それからP・X・ケリー米海兵隊司令官の論文「水陸両用戦戦略」、同時にジョン・レーマン米海軍長官の論文「六百隻海軍」というのが収録されておりまして、防衛庁長官も一読をされたということを答弁されておるわけでありますが、この中で言われておる「海洋戦略」あるいは「水陸両用戦戦略」というのは、ケリー米海兵隊司令官によれば、「海洋戦略」は三年前に米国の国家軍事戦略の遂行の中での海軍力の役割を「海洋戦略」としてまとめたもので、当時は秘密だったが、今は公表された公式のアメリカの戦略なんだということを言っております。「水陸両用戦戦略」もその「海洋戦略」の一構成部分としてつくられたもので、やはり同じように公式のものであり、海軍作戦部長、海兵隊司令官が公開を認めたものである、こういういわば公式のアメリカの現在の戦略であるということになっておるのです。  それで、それとの関係でお伺いするのですが、中身を言えば“「海洋戦略」はソ連とのグローバルな通常戦争において海軍力の行使のための計画及びベースラインを規定しているというふうに言っておりますが、御承知のように四段階に分けて事態を記述をしております。強度の低い紛争の段階と、それから第一段階といいますか第一局面といいますか、抑止または戦争への移行の段階。そして第二段階、イニシアチブの確保。第三段階、敵に対し戦いを挑む、決戦というそういう段階に分けておりますが、ここで私、お伺いしたいのですけれども、「水陸両用戦戦略」あるいは「海洋戦略」における第一段階では、米ソの間の危機の発展を想定して、緊張が深まり、ソ連の全面攻撃の準備の可能性の最初の兆候に対して米国と同盟国、日本を含むわけですが、の海軍戦力は母港から大挙出動する、可能な限りソ連の近くまで前進配備する。それから空母戦闘群、攻撃型潜水艦は戦争時最も有利になる海域に位置を占めるよう努める、こういう図式がかかれています。  そこで、ソ連が全面的攻撃を可能にする準備に入ったということを察知をした段階で、日本アメリカは一緒になって母港を出港するという戦略を、そして展開をするというふうに公言しているわけですが、そういう方向に日本は参加をしていくのかいかないのかという点についてお伺いをしたいのであります。
  327. 西廣整輝

    西廣政府委員 アメリカのもろもろの戦略なり作戦構想というものがアメリカにとって最も警戒すべき国であるソ連を中心に物を考える、米ソ戦を中心に考えるということは、それはそれなりに当然のことだと思いますが、私どもの防衛戦略、防衛構想というのは、米ソが最も戦争しないだろうという前提に立って、その段階で起きる問題について我々はもろもろの防衛戦略といいますか、防衛構想というものを練っておるわけでございまして、米ソ戦が始まった段階でどうするかというような、米ソ戦から事が始まっているというような状況の構想に私どもが参加をするとかあるいはそういうものについて検討しているということは全くございません。
  328. 東中光雄

    東中委員 検討しているかしていないかをお聞きしているのじゃなくて、ソ連が全面攻撃の準備の可能性の最初の兆候が認められる、あるいは、言い方をどう言ったらいいのか知りませんが、ソ連が全面攻撃を可能にする準備に入ったというそういう段階で、米国と同盟国の我が国が一緒になって母港を出港して展開をするということをやるのかやらないのかということについて聞いているわけであります。
  329. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほど来申し上げておりますように、我が国に対して何も攻撃がない事態に作戦行動に類するものを我が国がとることはないということは累次申し上げているとおりでありまして、今申されたような想定がどういう形であるかということを私ども十分全般状況がわかりませんが、我が国に対して既に攻撃等が行われておるのかどうかその他がないと、今申されたような状況がどういう状況で起きているかということを十分私ども知りませんけれども、アメリカ側からその種の相談を受けたこともございませんし検討したこともございません。
  330. 東中光雄

    東中委員 そういう事実があったかどうかと聞いているのじゃないのです。先ほど来の論議でも、ケースを設定して、そういう場合に日本はどういう行動ができるのかということが問題になっているわけでしょう。例えばシーレーン有事という名においての防衛庁長官の言う非常に緻密な意図的、計画的、組織的そして多発的日本船舶に対する攻撃があった場合はどうなんだ、こういうことでしょう。そんなこと起こるか起こらぬかは蓋然性の問題じゃない、そういうことが起こった場合はどうなんだと言ったわけでしょう。ところが、ここで今言っているのは、蓋然性の問題から言えばアメリカは世界に向かってこういう「海洋戦略」でやりますと言っている中身が、ソ連においてそういう緊急の事態が起こってくるというふうに判断した場合は、アメリカは同盟国と一緒に母港を出撃をして展開をするのだ、最も有利な場所に展開をするのだということを言っておるが、そういう場合は日本はもちろん攻撃されていない、極東でも有事でも何でもない、そういう兆候があるということになればそうしますと言っていることについて、日本はそういうことにはかかわらない、一切そういうことはできないということなのか、作戦準備に入るということでいくのかどうかということを聞いているわけです。ガイドラインでは作戦準備行動に入る段階というのがはっきりと書かれていますね。そういう点で言うならば、アメリカが公表しているこの「海洋戦略」に基づいて日本はどうするのか、そういうことは一切関係ありません、やりませんというならそれでよろしいです。そういう想定で日本はどうなんだと聞いているわけであります。防衛庁長官、それは、その想定というのはわかっているでしょう、あなただってこれを読んだと言うのだから。
  331. 西廣整輝

    西廣政府委員 何度も申し上げるようでございますが、「海洋戦略」の想定に基づいて私ども考えたことはございませんので、戦争が切迫している事態というものがどういうものかよくわかりませんのでお答えできにくいのですが、我が国だけについて申し上げれば、状況が厳しくなってくればそれなりの警戒行動なりあるいは情報活動なりを強化するということもあるでございましょうし、さらに日本に対する直接侵略のおそれが非常に濃厚であるということになれば防衛出動を下令されることもあるということで、それは現在の自衛隊法に基づいてそれぞれ措置されるということでありまして、今御質問の「海洋戦略」の想定というもの自身が詳しいことが私どもわかりませんので、どういう状況であるかということは判断できかねるということを申し上げているわけであります。
  332. 東中光雄

    東中委員 ガイドラインの「日本に対する武力攻撃がなされるおそれのある場合」の自衛隊及び米軍がそれぞれ効果的な作戦準備を協力して行うことを確保することができるようないろいろな準備をする。両国政府はそういうガイドラインに言うおそれのある事態が起こったときには、警戒から移動、展開、後方支援についてもそういう作戦準備行動を起こすということになっていますね。この「日本に対する武力攻撃がなされるおそれのある場合」、ガイドラインで言っている場合ですね、これは自衛隊が米軍と一緒に行動を起こす、戦闘行動ではないけれども作戦準備行動を起こすということなんです。その準備行動を起こすきっかけになるおそれのある段階というのは、ではどういう段階を想定してこういうガイドラインの二条の一項がつくられているのですか。防衛庁長官、どうです。
  333. 西廣整輝

    西廣政府委員 ただいまの御質問、ガイドラインについての御質問でございますので、これはあくまで我が国に対して武力攻撃のおそれのある場合というとらえ方をしておりまして、ガイドラインに言います「武力攻撃がなされるおそれのある場合」というのは必ずしも七十六条の言う「おそれのある場合」とは同質のものではないということで、より広くとらえておりまして、そのための警戒監視なりこちらの待機の状況等を変更していく、そういったものも含めた幅広いものとして考えております。
  334. 東中光雄

    東中委員 だから、七十六条の段階ではないことは、これは今までから答弁のあるところでありますし、それから七十七条の「防衛出動待機命令」が出される段階よりもまだ前になるということがあり得るんだという答弁も、大分前になりますが私の質問で当委員会で明らかにされています。その段階は一体いつなのかということを言っておるわけであります。早いということだけはわかっているけれども、攻撃は何もされていない、いわゆる極東有事でもなければあるいは日本有事ではない、それよりも前の段階だ、待機段階に入るよりもまだ前の段階だということは言われておるけれども、行動を起こすきっかけになるのは何なのかということについては、まだガイドラインの立場からいって一つも明らかにされていないわけです。その点について今明らかにされたい。ただ一般的なことを言っているだけではだめですということを言っているわけです。
  335. 西廣整輝

    西廣政府委員 いつなのかとお尋ねになっても大変困るわけですが、要するに状況に応じて、これは現在でも自衛隊の場合に、状況が厳しくなってくればそれなりの情報収集のための強化をするとかあるいは外出どめをするとか、そういった段階があるわけでございますけれども、そういったものについては一に状況を判断して決定をしていくということでありまして、それをいつと言われますとお答えのしようがない、具体的な状況に即して決めていかざるを得ないということでございます。
  336. 東中光雄

    東中委員 私の言っているのは、出撃準備のためのあるいは戦闘準備行為としての母港からの出港、それから展開。前にも申し上げましたが、太平洋戦争のときに戦争準備態勢に入ったのは実に一年前ですね。そして具体的行動を起こしたのは、太平洋戦争の作戦準備段階の最初は一九四〇年の七月二十七日です。大本営政府連絡会議、あそこでの決定が米国への作戦準備開始の決定であります。そして、四一年の九月六日の御前会議で戦争準備を完成するということを決定した。そして十一月五日の御前会議を経て、十一月二十二日から連合艦隊は択捉へ向かって出動する。しかし、これは戦争状態ではない。戦争準備段階だったわけです。今言われているのは、その前からやるということはあり得る、いつになったらやるのかというのはその情勢を見てやるんだ、その情勢は、アメリカの「海洋戦略」で言っておる、こういった同盟国と一緒に出動すると言っておる情勢があったらやるのかやらないのかそれについてはわからない、しかし情勢によっては行くんだ、だから有事でなくても、有事でない段階で一方的に決めて、そして作戦準備行動ということで出動する。アメリカは「海洋戦略」ではっきりと、母港を出て、そして戦争時に最も有利な地点に展開をするということを天下に明らかにしておるんじゃないですか。その点について一切実質的な答弁をしないで、事態が起これば勝手にやる。法律に何にもそんなことは規定がないのです。自衛隊法上に、防衛出動が出されていないけれども防衛出動準備行動に入る、出撃をし展開をするというふうなものはどこにもないです。  そういうことについて全く明快にされないというのは、これは自衛隊の最高の指揮監督権者である総理大臣にお伺いしておきたいのですが、ガイドラインによる作戦準備行動に入るのはだれが決めてどの段階で行くのかということについて、最高の指揮監督権者としての総理見解を承りたいと思います。
  337. 西廣整輝

    西廣政府委員 ただいまの御質問を聞いておりますと、どうも自衛隊が出動する、いわゆる行動をとるというような御質問のようでございますので、その点でございますれば、防衛出動命令が下令されないとそういう形はとれないというようにお考えいただきたいと思います。
  338. 東中光雄

    東中委員 作戦準備行動として母港を出て、移動をし展開をする、そういう行動の開始の時期を言っているのです。戦闘行動に入る時期を言っているのじゃないのです。質問に対してまともに答えてください。
  339. 西廣整輝

    西廣政府委員 作戦を前提として出動すること自身が私どもは防衛出動下令後になろうというように申し上げておるわけであります。
  340. 東中光雄

    東中委員 作戦準備行動で出撃をするということはないということですか。
  341. 西廣整輝

    西廣政府委員 防衛出動待機命令が出た段階で、ある地域に待機をするという形はございますけれども、作戦行動というものを前提として出動するという形のものはございません。
  342. 東中光雄

    東中委員 出ていくことを出動と言うのであって、出動することはない、あるところで待機するというのは、待機するところまで行くんでしょう。それを出動と言うのですよ。(「わかっていたら聞かなきゃいいじゃないか」と呼ぶ者あり)そのわかっていることさえごまかそうとするそういう自衛隊の態度こそ問題なんです。浜田委員はそういうことについてわかっておって茶化すようなことを言うのは、これは全く悪質なやじですね。  いずれにしましても、作戦準備行動に入るということは——だって太平洋戦争のときだったら一年前に大本営政府連絡会議で決めているのです。そういう性質のものなんですよ。それでアメリカの「海洋戦略」では、同盟軍と一緒にキューバ危機のような状態が起これば出動するんだ、展開するんだとはっきり言っているのです。ワトキンスはそう言っています。そういうのに対して日本政府はまともに答えようとしない。黙って動くんだということなんでしょうか。隊法上はそういう規定は何もない。だから、作戦準備行動に入るのは一体どうなんだということを聞いているわけですから、総理大臣、いかがでしょう。
  343. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 戦争前とは憲法も違い、防衛体系も違い、シビリアンコントロールも違っているので、昔と同じような類推は当てはまらないと思います。
  344. 東中光雄

    東中委員 作戦準備行動というのはガイドラインに書いてあるのですよ、戦後の。七八年に日本外務大臣防衛庁長官がサインをされたあの共同対処のガイドラインに書いてあるのですから。そのことについてだれが決定するのかということは、この前の答弁のときは、まだ決まっておりません、研究しておきます、こう言っていた。それからもう数年たちますが、まだ全く明らかにしないままで、とにかく非常に危険な「海洋戦略」なんかの線に進んでいっているとしか言いようがない。非常に緻密なような論議を一方でしているようですが、一方では部隊が行動作戦準備に入るか入らぬかというようなことについてどうするのかということもはっきりさせることをしようとしない、私はこれは非常に重要な問題だと思います。  ついでにもう一つ、時間が余りありませんがお伺いしたいのですが、この第二段階でイニシアチブの確保ということで「海洋戦略」は、中部ヨーロッパで全面戦争、米ソ戦争が始まった場合は、アメリカは、米攻撃型潜水艦は素早く、クイックリーにソ連海軍戦力と交戦をする、それから米空母戦闘群はソ連水上、航空戦力絶滅または非戦力化のために戦う、同盟国の対潜水艦戦力はソ連の潜水艦部隊を探し出し破壊する、こういうふうに書いています。同盟国日本の対潜水艦戦力といえば、百機体制になるP3C、対潜ヘリ、増強されています。護衛艦、攻撃型潜水艦、これ全部いわゆる対潜戦力、対潜水艦戦力であります。  この戦略によれば、アメリカの空母群が極東においても行動を起こす、アメリカの攻撃型潜水艦はソ連の核原潜を一挙にやってしまうということで行動を起こす、同盟国日本もソ連の潜水艦部隊を探し出し破壊する、こういうふうに書いているのですけれども、そういう戦略に同盟国日本が組み入れられていることにこの文面ではなるわけですけれども、防衛庁長官どうですか、そういうことをやりますか。
  345. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 アメリカの戦略と申しますのは、御承知のように、かつてはスイング理論とかそれからホリゾンタルエスカレーション理論とか、それから今回の各種のいろいろな論文がありまして、そのときどきいろいろそのセオリーは違っております。私たちの方は日本防衛原則に従って、そして集団的自衛権の行使に当たらないような原則に基づいて戦後ずっと首尾一貫いたしておりまして、そのときどきの理論に巻き込まれるのではないかというような議論は私たちはとらないところでございます。  私たちの理論は私たちの原則に従ってやるのでございまして、そして今委員がおっしゃいましたのは、米ソが戦うという前提の中で日本が巻き込まれるのではないかという前提で御議論なさっておりますが、私たちが防衛出動を下令するかしないか、自衛権を行使するかしないか、それのおそれの場合はどういう状況で認定するのかというのは、我が国に対する武力攻撃の脅威の存在またはそのおそれという観点から判断するものでございまして、それは米国の理論に全部一致するというようなものではございません。そういった意味で、私たちは原則を将来においても有事のときにおいてもしっかりとして守るという自信がございますので、その点は十分御理解いただきたいと思います。
  346. 東中光雄

    東中委員 ということは、同盟国日本が中部ヨーロッパで全面戦争があったからといって、「海洋戦略」で言っておるような対潜水艦戦力をもってソ連の潜水艦部隊を探し出し破壊するというふうなことをするものではない、別の観点から考えるものだ、こういう趣旨だと思うのです。  そこで私、聞いておきたいのですが、アメリカは中部ヨーロッパで戦争が始まったら、同盟国はそうすると言っているけれども、そうしないならそれでいいのですけれども、いいというか、そういう事態はあり得ると思うのだけれども、アメリカの攻撃型潜水艦は日本周辺、オホーツク海とか日本海とか太平洋とか、北西太平洋でソ連の潜水艦部隊をやっつける作戦をとる、同時に米空母戦闘群、特に太平洋に派遣するのは最大のものにするということが、アメリカの軍事委員会でもそういう答弁があります。そういうものが、日本の周辺海域でソ連と戦争状態になったという場合にそれは安保条約の適用があるのですか。あるいは、いわゆる極東有事ということになるのかならないのか。極東において、ソ連軍に対してアメリカが撃滅するための戦闘行動に入った、日本に対しては直接的な攻撃は何にもないという状態で、それは安保条約に言ういわゆる極東有事ということになるのかならないのか、その点、これは外務省に聞いた方がいいのかもしれません。外務省、いかがでしょう。
  347. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 お答え申し上げます。  米軍とそれからどこかの国が極東におきまして戦闘状態に入るという状況がありますれば、それは極東において戦争が起きたということになるわけでございます。
  348. 東中光雄

    東中委員 極東において戦争が起きたという、それは戦争したら戦争が起きたのは当たり前なんで、国語の問題じゃないのですよ。安保条約で言っておる、安保条約六条で言ういわゆる極東有事、あるいは安保条約四条で言う随時協議の、後段のいわゆる安保条約適用のその極東有事ということになるのかならないのかということを聞いているわけです。なるのですか、ならないのですか。
  349. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 日本の近海におきまして、すなわち極東におきまして米軍とその他の国が戦闘状態に入りました場合には一つの極東有事というふうに概念される場合かと存じます。
  350. 東中光雄

    東中委員 もう時間がありませんから、最後の質問にいたしますけれども、中部ヨーロッパで米ソ戦になって、アメリカ軍が極東でも展開をする、そして、さっき言ったような「海洋戦略」に基づいてソ連の潜水艦部隊をやっつける、あるいはまた航空部隊をやっつける、こういうふうになった場合に、それが日本の安全に脅威を与え、あるいは極東の平和と安全に脅威を与える、そういう事態である、安保条約の適用がある、そして随時協議もやる。アメリカがこっちへ戦闘に来れば日本は極東有事になっちゃう。アメリカが来なければ、ソ連からやってくるのではなくて、アメリカが来なければ安保条約の適用にはならない、来たら、なると、こういうことを言われたことになるので、私は非常に大変なことを言っておられると思うのですが、それでいいんですか。
  351. 小和田恒

    小和田政府委員 東中委員の御質問にはいろいろ前提がございます。その前提は当然のこととして先ほど北米局長が答弁したわけでございますが、日米安全保障条約というのは、御承知のとおり第一条で締約国、つまり日本と米国といずれも国連憲章で禁止されているような武力による威嚇あるいは武力の行使は一切やらない、そういう前提がございます。その前提のもとで、日米両国が安全保障条約のもとにおいて行動をするのは、日本あるいはアメリカが集団的あるいは個別的な自衛権を行使して、国連憲章上認められる自衛権の行使としての防衛行動として行動する場合だけを問題にしているわけでございます。そういう前提の中で第六条は、日本国の安全と、それから極東における平和と安全の維持に寄与するために米国が日本の施設、区域を利用することができる、こういうことになっているわけでございますので、当然、東中委員が御指摘になっております事態の私どもが前提としておりますのは、米国が何らかの武力攻撃の対象になって、米国自身が自国の自衛権の行使として行動をするようケース、しかし、日本自身が第五条に基づいて武力攻撃の対象にはなっていない、こういう事態を想定しておるわけでございます。  これは極めて理論的な問題でございますけれども、そのような場合において、米国が自国の自衛権の行使として行動する限りにおいて、その事態が極東における国際の平和と安全を脅かす、あるいは日本の安全にとって非常に重要な事態であるということは理論的にはあり得るであろうということを北米局長は御答弁したわけでございます。
  352. 東中光雄

    東中委員 質問を終わりますが、ただし、そうだと事前協議が発動されていく、日本はその戦争に参加をしていく、在日米軍が行動を起こすということを認める理論になってくる。これはもう大変な、日本を戦争に巻き込んでいく理論だということだけを指摘しておきたいと思います。  終わります。
  353. 小渕恵三

    小渕委員長 これにて東中君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、外交防衛に関する集中審議は終了いたしました。  明六日からは分科会の審査に入ります。  本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十一分散会