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1986-02-25 第104回国会 衆議院 予算委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年二月二十五日(火曜日)     午前十時一分開議  出席委員   委員長 小渕 恵三君    理事 中島源太郎君 理事 浜田 幸一君    理事 林  義郎君 理事 原田昇左右君    理事 渡辺 秀央君 理事 稲葉 誠一君    理事 岡田 利春君 理事 二見 伸明君    理事 吉田 之久君       相沢 英之君    伊藤宗一郎君       石原健太郎君    石原慎太郎君       上村千一郎君   小此木彦三郎君       大西 正男君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    倉成  正君       砂田 重民君    住  栄作君       田中 龍夫君    戸塚 進也君       葉梨 信行君    原田  憲君       三原 朝雄君    武藤 嘉文君       村山 達雄君    山下 元利君       井上 一成君    上田  哲君       大出  俊君    川俣健二郎君       佐藤 観樹君    多賀谷眞稔君       松浦 利尚君    池田 克也君       近江巳記夫君    神崎 武法君       坂口  力君    河村  勝君       木下敬之助君    永江 一仁君       瀬崎 博義君    正森 成二君       松本 善明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         法 務 大 臣 鈴木 省吾君         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         厚 生 大 臣 今井  勇君         農林水産大臣  羽田  孜君         通商産業大臣  渡辺美智雄君         運 輸 大 臣 三塚  博君         郵 政 大 臣 佐藤 文生君         労 働 大 臣 林  ゆう君         建 設 大 臣 江藤 隆美君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 江崎 真澄君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      平泉  渉君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長         兼内閣総理大臣         官房審議室長  的場 順三君         内閣審議官   海野 恒男君         内閣法制局長官 茂串  俊君         人事院総裁   内海  倫君         人事院事務総局         給与局長    鹿兒島重治君         総務庁長官官房         審議官     百崎  英君         総務庁人事局長 手塚 康夫君         総務庁人事局次         長         兼内閣審議官  吉田 忠明君         総務庁行政監察         局長      竹村  晟君         総務庁統計局長 北山 直樹君         経済企画庁調整         局長      赤羽 隆夫君         経済企画庁総合         計画局長    及川 昭伍君         経済企画庁調査         局長      丸茂 明則君         法務省刑事局長 岡村 泰孝君         外務大臣官房審         議官      福田  博君         外務省アジア局         長       後藤 利雄君         外務省経済局長 国広 道彦君         大蔵大臣官房総         務審議官    北村 恭二君         大蔵省主計局長 吉野 良彦君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省理財局長 窪田  弘君         大蔵省銀行局長 吉田 正輝君         大蔵省国際金融         局長      行天 豊雄君         国税庁次長         国税庁税部長         事務取扱    塚越 則男君         厚生大臣官房総         務審議官    北郷 勲夫君         厚生省保健医療         局老人保健部長 黒木 武弘君         農林水産大臣官         房長      田中 宏尚君         農林水産大臣官         房総務審議官  眞木 秀郎君         農林水産大臣官         房予算課長   鶴岡 俊彦君         通商産業大臣官         房審議官    松尾 邦彦君         通商産業省通商         政策局長    黒田  真君         通商産業省貿易         局長      村岡 茂生君         通商産業省産業         政策局長    福川 伸次君         資源エネルギー         庁長官     野々内 隆君         中小企業庁長官 木下 博生君         運輸大臣官房国         有鉄道再建総括         審議官     棚橋  泰君         郵政省貯金局長 塩谷  稔君         労働大臣官房長 岡部 晃三君         労働大臣官房審         議官      中村  正君         労働大臣官房審         議官      稲葉  哲君         労働省労政局長 加藤  孝君         労働省労働基準         局長      上粥 義朗君         建設大臣官房長 高橋  進君         建設大臣官房総         務審議官    佐藤 和男君         建設大臣官房会         計課長     望月 薫雄君         建設省住宅局長 渡辺  尚君         自治大臣官房審         議官      持永 堯民君  委員外出席者         参  考  人         (全日本電機機         器労働組合連合         会中央執行委員         長)      藁科 滿治君         参 考 人         (日本銀行総裁)澄田  智君         予算委員会調査         室長      大内  宏君     ————————————— 委員の異動 二月二十五日  辞任         補欠選任   橋本龍太郎君     戸塚 進也君   矢野 絢也君     坂口  力君   大内 啓伍君     永江 一仁君   小平  忠君     河村  勝君   藤木 洋子君     正森 成二君 同日  辞任         補欠選任   戸塚 進也君     橋本龍太郎君   坂口  力君     矢野 絢也君   河村  勝君     小平  忠君   永江 一仁君     大内 啓伍君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和六十一年度一般会計予算  昭和六十一年度特別会計予算  昭和六十一年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 小渕恵三

    小渕委員長 これより会議を開きます。  昭和六十一年度一般会計予算昭和六十一年度特別会計予算昭和六十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  本日は、税制財政問題について集中審議を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。原川昇左右君。
  3. 原田昇左右

    原田(昇)委員 集中審議に臨みまして、自民党を代表して質問させていただきます。  まず第一に、新聞、テレビによりますと、フィリピン情勢が大変な大きな変革のときに来ておるようでございます。政府のこれに対する対応といいますか、感想をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  4. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本フィリピン友好親善関係を今まで維持してまいりましたし、今後もその考えには変わりはございません。アジア隣邦として大切な国であると考えております。我々はフィリピンに対して今まで経済協力等行ってまいりましたが、しかしこれは、前から国会で申し上げてますように、一政権を支持するためにやってきておるのではないのであって、フィリピン国家あるいはフィリピン国民全体、そういうものを対象にしまして、その福祉やあるいは安定のために積極的に熱意を持って経済協力してきたので、フィリピン国民及び国家を相手にそのようにしているということは今も一貫して変わりがないというところでございます。  現在の事態におきまして、政府としてやはり大事な関心在留邦人の安全でございまして、相当数在留邦人あるいは観光客がマニラその他におるわけでございます。そういう意味において、この在留邦人の安全ということを念頭に置きまして、我々は言動等についても非常に慎重に行っておるということでございます。  それから、最近の情勢につきましては、アメリカと緊密な情報交換を行っております。きのうもシグール大統領補佐官が参りまして私といろいろ意見交換も行いましたが、その中におきまして、ともかく武力衝突を起こさないように、流血の惨害を起こさないように、平和的に事態収拾されることが最も望ましい、そういう点においては意見が完全に一致いたしまして、その平和的な事態収拾というためには情報交換しつつよく緊密に協議をしていこう、そういう考えに立っております。  もとより、フィリピンの問題はフィリピン国民がみずからお決めになることでありまして、我我が外からとやかく内政干渉がましいことを言うべきことではございません。特に、アメリカ日本立場は若干違う立場がございます。アメリカは去る第二次大戦の際にはフィリピンを助けた国でございまして、我々はむしろフィリピンに大きな惨害を与え、迷惑をかけた国でございまして、そういう意味においてアメリカ立場日本立場は違いますし、また我々は同じアジア人として、しかも隣邦として大事な国で、末長くおつき合い願わなければならぬ大事な国であるわけでございます。そういう意味におきまして、フィリピンの問題に対する我々の発言というものは冷静かつ慎重であらねばならない、そう思っております。  しかし、最近の情勢を見ますと、フィリピンの国内に新しい一つ流れが生まれつつあることは、事実として我々は認めざるを得ないところでございます。しかし、どういう体制が生まれてくるのか、その点は全く予断を許しません。先入観にとらわれたりなんかすることは極めて危険でございます。やはり国際法上からも、国民の大多数が支持するということ、それから統治能力が全国土に及ぶというようなことは、やはり国際法的にも我々が重大な関心を持って眺めるポイントであるだろうと思います。  いずれにせよ、これらのことはフィリピン国民がみずからお決めになることであって、我々は内政干渉がましいことは一切慎んでいくべきであると思いますが、しかしそういう新しい流れについても我々は大きな関心を持ちまして、そして先ほど申し上げましたように、平和的な収拾が行われるように強く念願をして見守っておるという状態でございます。
  5. 原田昇左右

    原田(昇)委員 ありがとうございました。万全の対応をとられるように望みます。  そこで、主題の財政税制についてでございますが、まず、野党から共同修正要求が出てきておるわけであります。実は、これにつきまして与野党間で討議の機会を持ちたいものだというように考えておりましたわけでございますが、我々は機会が得られなかったわけでございまして、まことに残念でございました。しかしながら、資料はいただいておりますし、いろいろ検討させていただいております。そこで、今回はこの資料に基づきまして私自身が意見を述べながら、政府に私の意見並びに野党側共同修正要求についての意見を聞かせていただきたいと思うわけであります。  まず、野党案を概観いたしますと、所得税減税二兆一千三百億を含んで総額二兆六千五百七十億の歳入の減と、公共事業費の追加、これは六千億でございますが、それから地方公共団体向け補助金カットを撤回しろ、これは一兆一千七百億に及びますが、これを含む歳出増二兆四千百二十三億との合計額総額で五兆七百億円に対しまして、その財源として歳入増四兆一千六百四十五億と歳出カット九千四十八億円、合計五兆七百億を見込んでいるわけであります。ここで、野党案防衛費とかODAに対して修正要求が全然ございません。これは特筆すべきことだと思います。これは、野党我が国国際的責務について十分認識していただいたものと、私はむしろ高く評価しておるわけでございますが、その他の点については極めて問題が多いわけであります。  そこで、この問題点についてこれから逐次論じていきたいと思うわけでございますが、まず個々の問題に入る前に、政府のこれに対する、野党案に対する全般的な感想を聞かせていただきたいと思うわけであります。大蔵大臣総理から御答弁を。
  6. 竹下登

    竹下国務大臣 野党予算修正問題につきましては、現在与野党間で話し合いがなされておる、このように前提を置いて申し上げます。  いずれにしても、六十一年度予算というのは、財政運営に責任を持たなきゃならぬ与党と歳入歳出両面にわたって野党から出ております修正要望にあるすべての論点、これらを含めて十分な協議を行った極めて濃密な作品であります。濃密な検討を続けて編成した作品国会に提出して、今御議論をいただいておる。したがって、それを提出した内閣としましては、まさに現在の状況下行財政改革趣旨を踏まえて編成し御審議を願っておる最善のものであるというのが、私どものお答えになろうかと思います。
  7. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大蔵大臣が御答弁申し上げたとおりでございまして、この厳しい財政状況のもとに政府としては最善を尽くして編成した予算でございます。特に、社会保障その他の面におきましても、老齢福祉年金の増額、婦人の健康診断がん対策等健康増進対策にも相当力を用い、特に難病対策あるいは交通遺児育英資金の充実そのほかについてもきめ細かい措置をやっておるのでございまして、大蔵大臣が申し上げたとおり、修正すべきものではないと考えております。
  8. 原田昇左右

    原田(昇)委員 政府の全般的な御意見を伺ったわけでございますが、私は、個々の問題につきまして野党案について所見を述べながら御質問申し上げたいと思います。  まず、所得税減税についてでありますが、もとより、野党案のように所得税住民税減税するということは私たちも本当にいいことだな、これはもう我々も望むところなんです。特に、出費の多い中堅サラリーマン重圧感が強いということも事実であります。しかしながら、こうしたところだけを取り出して部分的な手直しを図ろうとしても、それは税体系全般骨格と密接に結びついているわけでありますので、部分的な手直しで済ませるわけにはいかないのではないか。税体系全般改正が現在税調審議されているわけでございますが、この審議の過程を十分見守りながら、この結論が早く出てもらって、そして全体の体系としてどうするのかという結論が我々としては早く欲しいわけであります。十分な検討を経ないままに部分的な結論を引き出すことは大変危険だと思います。税調におけるスケジュールも既に決まっておりまして、ことしの秋には税制全般にわたる大改正が行われるということに了解いたしておりますし、その広範な検討を待って二十一世紀の展望を踏まえた安定的な税制を確立すべきだと私は考えておるわけでございますが、いかがでございますか、御意見を伺いたいと思います。
  9. 竹下登

    竹下国務大臣 御指摘のとおり、今現在税制調査会においてまさに抜本見直し、精力的に審議をされておりますし、その総理大臣から税制調査会諮問された考え方の底には、今御指摘のありました中堅所得層重圧感とか、そういうものが十分底辺に存在しておったからこのたびの抜本的な答申をいただくような諮問となっておるわけであります。したがって今度は、これに先立っての税制骨格を動かしたり部分的な修正を行ったりすることは抜本見直しとの間にそこを来すおそれがあるということからして、このたび御審議いただいております税法改正はいわば根幹には触れないということを前提としたものであります。  しかしこれに対しては、なぜもっと早く税調諮問しなかったか、このような意見も時にはございますが、私どもといたしましては、一昨年の暮れに六十年度税制あり方についての答申をいただいて、その際、抜本的な改正を論議すべき時期に来たという御指摘をそれぞれいただき、その背景を踏まえて、去年の国会いっぱい税制議論国会でいろいろやっていただいて、それを整理し、夏に税制調査会先生方に御説明申し上げ、それをもとに九月二十日からいわば抜本審議が始まった。したがって、時期としても、国会議論を十分に聞くというタイミングをもとった諮問の時期ではなかったかというふうに考えております。
  10. 原田昇左右

    原田(昇)委員 おっしゃるように、我が国所得税体系あり方につきましては、累進構造とか各種所得間のバランス等をしっかり検討すべきだと思いますし、特別に何か野党案のように課税最低限の引き上げというように、これだけをつまみ食い的に要求されるのはなぜか、理解に苦しむわけであります。ちなみに我が国課税最低限は、諸外国に比べて最も高いと言われております。さらに大幅にこの控除額を引き上げることによって、現行税制に対する重圧感が解消されるとは到底思えないわけであります。これについて、大蔵大臣見解を伺いたいと思います。
  11. 竹下登

    竹下国務大臣 これは御意見にありますとおり、課税最低限ということになりますと、我が国先進国の中で行われておる所得税課税最低限の中では最も高いし、そして個人所得に対する所得税負担割合は最も低いという状況にあることは事実でございます。したがって、課税最低限の問題がいつも議論になりますのは、大体は、課税最低限というのがこれだけ高い位置づけになっておる、しかもその最低税率は一〇・五%、イギリスなんか三〇%ですから。だから国民納税意識を高めるためにも、むしろ薄くして広い範囲に課税をするのが妥当ではないか、こういう議論がありましたり、あるいは所得税はさておこう、しかし応益主義的な住民税は、少なくとも広く住民意識を持つためにも課税最低限はむしろ低きにあって低い率であるのがいいじゃないか、こんな議論も現実行われておるわけでございます。  したがって、今一番大事なことは、不満感重圧感というのはどこにあるか。それは生活の実感からくる税負担累増感が強いということ。あるいは給与所得者源泉徴収ですから、自分所得税課税標準と税額を計算して納入しない、そこで実態として水平的な不公平感というものが出てくるんじゃないか。あるいはまた、クロヨンという言葉に象徴されますように税負担感が、非常に所得が明らかになるからというようなことでサラリーマンの方にそういう感じが強いではないか。そういうような中で、これから税調において審議していただくわけでございますから、本当に所得税負担あり方というような根本にまでさかのぼった議論が現在なされておる段階であるというふうに考えております。
  12. 原田昇左右

    原田(昇)委員 これにつきましては、総理アメリカ税制改革にも触れられて、所得税累進税率をもう少し段階を縮めて少し緩和したらどうだというお話をされておったと思うのでございますが、それについて何か御所見がございましたらお聞かせいただきたいと思います。
  13. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 減税、特に所得税法人税等減税については、国民皆様方の非常に強い御要望もありまして、私もぜひ大幅減税をやらしていただきたい、間に合えば六十一年度からもやりたいというぐらいの念願に駆られておるのでありますけれども、しかし六十一年度予算編成に際しましては、非常に厳しい財政状況のもとに、そういう思い切った大幅なものをやる余裕がございません。やはりしっかり準備をして、そしてかなり思い切ったものをやらざるを得ない、そういう結論になりまして、まことに残念ではございますが六十二年度からやらしていただきたい、そういうスケジュールで今進んで、税調に対して非常に大規模な、根本的な改革案諮問している最中でございます。そういう中途でもございますので、ことしはまことに遺憾ではございますが見送らさしていただいておる、こういうことでございます。  その中で、諮問のときにも税調皆さんにお願いしたわけでありますが、シャウプ税制以来の重税感とかひずみとか不公平感とか、そういうものをまず直すということが大事だ、国民が一番欲しているところへまずさわるというやり方が一番大事だ、そういうことで今鋭意検討していただいて、春にはその点に関する中間報告をいただこうと思っております。  その中でも、一つ所得税につきまして、やはり子持ちの、そして子供の教育やローンの返済が一番かかってきている、重圧感のある層というものを我々は重要視しなければならぬわけであります。それが、金額的に見るとどの程度の所得層かと見ますと、やはり三百万、四百万、五百万、六百万、それぐらいのところがピークじゃないかと考えておるわけです。あるいは八百万ぐらいまでも及ぶかもしれません、相当所得水準も上がってきておりますから。ですから、その三百万から八百万ぐらいまでが非常に重要なポイントではないかということを意識して、税調の方でも作業してくだすっておる。また、レーガン税制もそういう線も考えてやっておるようでございます。  それから、非常に単純化する必要がある。十五段階というものを、かなり思い切って数段階にまでこれを単純化する、そういうことも大事で、税の申告について一々税理士さんの皆さんのところへ頼みにいかなければ申告できないというような、そういう複雑なやり方でなくて、自分でどんどん申告できる、そういうようなわかりやすい税制にするということも非常に今大事である、そう考えておりまして、そういう点、税調皆さんにせっかく御努力を願っておるところでございます。
  14. 原田昇左右

    原田(昇)委員 今おっしゃったような趣旨をぜひ六十二年度の税制改正において実現していただけるように、我々としても大いに期待申し上げたいと存じます。  さて、次に政策税制減税についてでございますが、政策税制の安易な拡大というのは、今総理のおっしゃった公平、簡素の基本的理念に照らして極めて問題が多いのではないかと思います。  野党住宅減税教育減税等々、御要望があるわけでございますが、住宅減税につきましては、これは同じく野党から、ちょっとこの考え方と反対の意見が出てきておるわけであります。私の記憶では、二月二十日の衆議院の本会議租税特別措置法改正案に対する質疑におきまして、野党のある議員から次のような趣旨発言があります。今回の減税の目玉である住宅取得促進税制の新設は、内需拡大の柱である住宅建設促進にどれだけ寄与するのか、現在の鎮静化した住宅着工には何ほどの効果もないではないか、特に最近の大都市圏では地価が高騰を続け、高所得者でなければ持ち家ができない、持ち家を取得できる高所得層のみが恩恵を受けるという意味では不公平を助長するものであると言える、抜本的な地価抑制がなければ持ち家推進は図れないとして、政府見解を求めておるわけでございますが、私も、この点は確かに傾聴に値するところが多いのではないかと思います。これについて大蔵大臣はどうお考えでございますか。
  15. 竹下登

    竹下国務大臣 政策税制というものは、私はこれをすべて否定する考えがあるわけでは全くございません。ただ、税の理論から申しますと、租税歳出とかいう言葉が使われます。すなわち、払うべき税を払わないということは、逆にそれだけの歳出補助金をもらったと同じことじゃないか、だから税制でもって政策を行うよりはやはり歳出の中で政策は行うべきであるというような、租税歳出論というようなことがあるわけであります。したがって、特定の者だけがその恩典に浴するという意味におきましては、それは不公平であり、税制としての複雑さを伴うということは事実でございます。したがって、いわゆる政策税制あるいは租税特別措置というのにはおのずから限界があるということが言えると思います。  そこで、これを仮に住宅税制に当てはめてみますと、そのような議論をすれば、言ってみれば住宅取得促進税制によります税額控除限度額二十万円というものは、要するに年収四百七十五万円の夫婦子二人の給与所得者の年間所得税額にも匹敵するだけの恩典ではないか、こういう議論がそこに出てくるわけであります。したがって、現実、今度の住宅減税というのは、私はお願いしておるのが限度ではなかろうかというふうに考えるわけでございます。  ただ、先ほど御意見にもございました、要するに土地政策というものをやはり基本的に考えなければいけないではないかという議論は、確かに私どももいつも念頭に置くべき議論であると思っております。それは税制の問題もございましょう、あるいは各種規制緩和、そういうものによってある程度解決する問題もございましょう。政策選択の重要なるポイントとして、今後も検討を続けるべき課題であるというふうに考えております。
  16. 原田昇左右

    原田(昇)委員 住宅に対しましては、ここでかなりの議論がありました。例えば住宅建設関係税制上の優遇措置が、我が国は諸外国に比べて著しく低いという指摘もありました。果たしてこれが事実であるかどうか、これも伺いたい。  さらに次に、教育減税についてでございますが、特定の家計支出をとらえて減税するということが果たして公平の観点からいいかどうかということも、あわせて考え決めなければならぬ問題ではないかと思います。確かに教育にお金がかかる、これはわかりますけれども、税金を納めてない家庭の父兄は一体どうなるのか。それから、高校に入学できないで、家庭の事情で中学卒で働いている若者に対してはどうなのかとか、いろいろな問題があると思うのですね。この辺もどう考えていったらいいかということを十分検討の上で減税措置決めていかなければならぬのじゃないかと思います。これについて大蔵大臣の御意見を伺わせていただきたいと思います。     〔委員長退席、中島(源)委員長代理着席〕
  17. 竹下登

    竹下国務大臣 住宅建設関係税制の諸外国との比較でございますが、御指摘は、我が国の住宅関係減免税額の対歳出比率が〇・二%と、いわゆる先進諸国中最も低くなっておるということが仮に試算の念頭に置かれた一つ議論ではなかろうかというふうにも思います。この問題は、非常にデータのとり方に問題がございます。結局、例えば住宅であろうと何であろうと、アメリカの場合は利子というものは全部控除されていくというような仕組みになっております。それから西ドイツは、連邦税でなく州税の減免措置も計算の中に含まれておる。逆に、我が国の居住用財産の譲渡についての三千万円の特別控除等の特別措置による多大の減収額が計上されていないというようなことでございますので、この比率のとり方によっては〇・二%は三%というとり方もできますので、その数字から見る必要もありはしないだろうか。しかしいずれにせよ、住宅税制のみを取り出して比較することは大変難しい問題でございます。  それから次の問題は教育減税、これは今御指摘がありましたように、昨年も各党間の税の専門家の先生方でいろいろ議論をちょうだいをしました。結局そこで使えるのは、やはり例えて言う。ならば二百三十五万七千円のいわば課税最低限以下の方々の子供さんも高校へ行っていらっしゃいますが、それには何の恩典も及ばないじゃないか。あるいは先ほどの例示に出ましたように高校以上の教育費でこれを見ますと、義務教育だけで社会に出て働いておって既に税をお納めになっておるという方から見れば、自分よりできない子供の親が、何でおれが働いて税金を納めているのに税の恩典に浴するかなというような素朴な意見もあるということは、これは与野党間でも随分議論したとであります。  したがって、結果としてこれは大原則でいえば、今おっしゃったとおり個別の事情を税制上しんしゃくすることはおのずから限界がある。やはりそうなると、教育に対する財政助成のあり方というのが基本ではないかというようなことから、種々相談して苦労をしまして、六十一年度予算でいわゆる父母負担の軽減ということから私立高校助成について配慮することによって、そして都道府県が行います私立高校に対する経常費助成の財源措置についてはまだ地方交付税の中へ含めさせていただくとかというようなことでもって、結局教育減税言葉としてはよくわかりやすい言葉でございますが、実態としては教育財政助成の中でそういう措置をとることにある種の合意をしたという経過もあることは御指摘のとおりでございます。
  18. 原田昇左右

    原田(昇)委員 全く同感であります。  さて、野党案歳入の増加の方を見ますと、これが財源対策の重要な柱になっておると思うわけでありますが、これの増税増収策につきまして果たして現実性があるかどうかという点が極めて問題ではないかと思うわけであります。  根拠もわからないところがたくさんございますが、二、三感想を述べていきますと、まず有価証券取引税の適正化についてでございますが、有価証券取引税は最近十年間で三倍も引き上げられておるわけでありまして、資本取引の国際化時代、国際的視野からこれを見ていかなければならないと思うわけでございます。果たしてこれがさらに大幅に引き上げができるのかどうか、大変問題ではないかと思います。  次に、「租税特別措置等の見直し」として四千億も計上してありますが、これは企業関係の租税特別措置による減収額が現在四千億に上っておりますから、四千億計上するということは、全額企業関係の租税特別措置は撤廃しろということではないかと思います。果たして妥当かどうか。例えばこれに関連して申し上げますと、野党案の減少分の二に「設備投資減税の拡充」というのがあります。設備投資減税の拡充というのは恐らくこの「租税特別措置等」の中に入るわけでございますので、これが全く矛盾することになるわけであります。租税特別措置を一方で全廃しろと言いながら、片方で拡充するということはどういうことかよくわからないわけであります。いずれにいたしましても、私は特定の政策目的を達成するために誘導措置は必要だと思います。必要最小限の中小企業等の租税特別措置は残しておかなければならぬわけではないかと思いますが、大蔵大臣の御見解を伺いたいと思います。
  19. 竹下登

    竹下国務大臣 一つは有取税の問題でございますが、有取税は御指摘のとおりにここ十数年間に税収の大宗を占める株券の税率が三倍強になっております。それから資本取引の国際化時代にあって国際的視野からその検討を行うべきであるという御指摘につきましても、実証的な観点から種々詰めるべき点はございますが、十分考慮に値することであろうと思います。  それで一度、五十九年度税制のときは実は税制調査会等の議論は、引き下げるべきだ、余りにも高過ぎるという議論の方が大宗を占めておった。そしてそれがいろいろ変化してきておりますが、これこそまさに税制調査会における今後の検討の中で議論していただく重要な一つの課題だと思っております。  それからいわゆる四千億、租税特別措置の全廃によっての増収を計上されて、一方設備投資の租税特別措置の拡充を求められておるわけでありますが、政策税制というのは、先ほども申しましたように私はこれをすべて否定しようということを毛頭考えておりません。しかし、本当は社会経済情勢の変化に応じて絶えず必要な見直しを行っていくべき性格のものでございます。だから、すべてをこれを否定するという考え方は全くございません。これも私ども結局それぞれときどきに応じた特別措置の必要なものが皆無であるとも思えませんし、すべて否定すべきものだとは思いませんが、それは特定なものを対象にした税制であるだけに、いわば租税歳出というような物の考え方をとった場合、絶えざる吟味の対象になるべきものであるというふうに考えております。
  20. 原田昇左右

    原田(昇)委員 時間が余りありませんので、次に進ませていただきます。  歳入のところに「最気浮揚による税収確保」として五千億計上されておりますが、これも私どもとしては公社債増発及び減税前提にして景気がよくなるから五千億の税収がある、こういうように椎諭したと考えられるわけでございますが、根拠がよくわかりません。いずれにしても、全体として長期にわたり財政状況をマイナスにする効果が公債発行、建設国債の発行にはつきものでありますので、これは特例債の誘発をもたらすわけであります。したがって、この点については我々としてはどうも納得しかねるというように思うわけであります。  それから次に、外為特会からの一般会計繰入額の増額に四千億を計上しておられるわけでございますが、これも現在の予算で既に本予算案に二千六百億を計上しておってさらに四千億、果たして外為特会が運営できるのかどうか、この辺も伺いたいわけであります。  以上簡単にひとつ、時間がございませんので、大蔵大臣から御答弁をいただきたいと思います。
  21. 竹下登

    竹下国務大臣 これは仮に特例債を発行することを前提とした減税ということで議論をいたしますならば、それは消費の拡大を通じて税収に何がしかの影響をもたらす、これは事実でございますが、その短期的な経済効果に限られるのに比べまして、それこそ一兆円が三兆七千億という後世代へのツケ回しになる。言ってみれば、後世代への負担で今日の我々が減税に浴するという基本的な財政立場に立つ我々としては、これに対しては非常に厳しい対応をして、六十五年に何とか工夫して脱却しようという努力目標を旗をおろさないのもそれかあるがゆえであります。  それから外為特会からの問題でございますが、これは海外高金利によって生じた特別な利益のすべてを受け入れたものでありまして、当面特会の運営に支障が生じない範囲でのぎりぎりのものでございますので、この外為特会というものは、それこそ為替介入とかいろいろな問題について大事な、極めて専門的に議論をしながらいわゆる歳入として取り上げるべきものでございますので、これ以上この特会に支障が生ずるおそれのあるような行為はとれないというのが素直な現実であります。
  22. 原田昇左右

    原田(昇)委員 ざらに野党の案で、建設国債の発行一兆三千百七十億、それが歳出の公共事業費の追加六千億と見合うと思うわけでございますが、公共事業を六千億追加してこれを建設国債で賄うという考え方、これは、公共事業はたとえ増川できても建設国債の発行によって大変なマイナス効果が財政に出てくるということではないかと思うわけであります。公共事業については、今度の我々の審議しておる本予算案におきましては、多少前年比マイナスでありましても、財投その他の活用によって事業費を四・三%増額しておるわけでありまして、これが本予算の内需振興の一つり柱になるわけではないかと思います。我々としては、現時点で早くこの予算を成立させて実行するということこそ我々がなすべきことではないかと思いますが、いかがでございますか。
  23. 竹下登

    竹下国務大臣 御指摘のとおり、この事業費では確かにいろいろ工夫をしていただいて、それだけ今御指摘のように事業費は伸びておるわけでございます。これは確かにおっしゃった、まさに本予算の柱の一つあるいは目玉の一つという表現もあってもいいかもしれませんが、そういうような考え方に立っております。  財源問題について、安易に建設国債の増発というのがよく論議されますが、私はいつでも思うのでございますけれども財政法上の建前で赤字国債と建設国債が非常に厳しく仕分けされておるのは、我が国財政法とそれから西ドイツでございます。ほかはいわば公債、すなわち財政赤字というのはみんな一諸になっております。したがって、そのことは私はやはりいいことだなと思います、その区分があることは。しかし、区分があることがいいことだけに、これは資産が残るからといって安易にそれに飛びつきがちになるという気持ちは抑えなければいかぬではなかろうか。いずれにしても、残高として残った場合はこれは赤字国債と同じものになるわけでございますから、それがやはり財政の基本にあらなければならない課題ではなかろうかと思っております。
  24. 原田昇左右

    原田(昇)委員 次に、老人保健法の改正と高率補助金の引き下げの撤回要求、この二つはまさに我々の予算案において財政再建を目指す柱になっておると思うわけであります。これを否定することは、いわば行財政改革を目指す政府案の性格を抜本的に、根本的に変更することになると思うわけでありまして、これについて大蔵大臣の御意見を伺いたい。  さらに言えば、そのようなことで修正要求に織り込まれた「行財政改革の推進」という欄で九千四十八億が浮いてくる、こういうことになっておるわけでございますが、そのようなことで野党案の言うようにこの九千四十八億円の行財政改革が果たして実行できるのかと疑問に思わざるを得ないわけであります。あわせて大蔵大臣の御意見を伺いたいと思います。
  25. 竹下登

    竹下国務大臣 六十一年度予算に当たって財政改革をさらに推進するために、既存の制度、施策を根本にまでさかのぼっていろいろ節減、合理化に努める、その大きな考え方のもとに老人保健制度が存在しておるわけであります。これはやはり将来に備えて、いわば老人保健制度の基盤を強化して長期的な安定というものを図っていくための制度改正であるというふうな基本的考え方であります。  そうしてこの補助率の見直し等につきましては、これはいわゆる社会保障を中心に事務事業の見直しを行いながら行ったものでございますので、したがって、それによって生ずるマクロベースにおける地方財政計画については、これは支障が生じないようにきちんと措置をしたということでございます。したがって、この施策というものと、そして地方に対していろいろお願いをし、そして講じた地方財政対策というものも、これもまさに六十一年度予算の重要な一つの柱ではなかろうかと考えております。
  26. 原田昇左右

    原田(昇)委員 老人保健法の改正につきましては、この制度が長寿社会への移行の中で安定的かつ有効に機能するようにしたいとの意図のもとに、一部負担の見直しとか加入者按分率の見直しを行ったものと理解しておりますが、しかし他方で、お年寄りが負担が急激にふえるという指摘があります。事実私どもは老人クラブに行っても、一体どうなるのだと大変不安に思っておられる方方がおる。ひとつぜひ厚生大臣、これは大事なことでございますので、お年寄りにわかりやすいようにここでその辺について御説明いただきたい。
  27. 今井勇

    ○今井国務大臣 まず最初に、大変我が省の問題につきましていろいろ御配慮を賜りまして、厚く感謝を申し上げる次第でございます。  お説のように老人保健制度でございますが、だんだん人口が高齢化をしてまいります中で、とにかく非常に老人医療費がふえてきておりますので、これを一体どのように適正なものにするか、それからもう一つ国民がどれを、どうしてこれを公平に負担するかという問題が極めて大事な問題ですから、そんなことから老人保健法の一部改正をお願いしているわけです。この問題は、何といっても健康に対します自覚とそれから適正な受診という観点からお願いしておるものでありますが、御案内のように現在の一部負担の額というのは、マクロ的に見ますと老人医療費の一%台でございます。やはり世代間の負担の公平という観点からも、これは極めて重要な問題でありますので、少しアップをお願いできないかと思っているわけでございます。  そこで今度の改正は、おっしゃいますように老人の方が払いやすいようにするためには、やはり定額制というのは変えるわけにはいくまい。それからまた外来については月の初めに一回払っていただければあとは何回受診してもいいわけでありますから、現在のそういう制度をやはり維持することを基本としているわけであります。  ただ、今おっしゃいますように、外来、今度は一月千円、入院は一日五百円ということでお願いしているわけでありますが、その額につきましても、例えば老齢福祉年金、今度新しくなりますと二万七千二百円になるわけでございます。あるいは高齢者世帯の所得の平均、現在は七十歳以上が多分一人当たり十一万ぐらいになるだろうと思いますが、そういう実態から見まして、何とかこれはお願いをできるものではないだろうかと思っております。  ただし、いずれにせよ今度の改正は、次の世紀を見通して今後やはり安定した老人保健制度を確立しようということのために必要なものでありますが、皆さんの御理解がなければなりませんので、よくひとつ皆さんにこの趣旨を御説明をして御理解を得たいというふうに考えているものでございます。
  28. 原田昇左右

    原田(昇)委員 ぜひひとつ理解の得られるように、大いに誠心誠意説明をしていただきたいと思うわけであります。  それから次に、補助率の見直しにつきまして、一部の批判にあるように、一律カットをして負担を地方に押しつけたというように言われておりますが、決してそんなことじゃないはずであります。これについては事務事業の見直しを行ったはずでありますし、また地方財政に対する配慮も十分に措置したと私どもは理解しております。その点自治省、そういうことかどうか、一言でいいから答えてください。
  29. 持永堯民

    ○持永政府委員 このたびの補助率の見直しにつきましては、御指摘趣旨のようなことで見直しをしたわけでございます。今後、地方団体に対しましても、地方債なり地方交付税なり適切な措置を講じまして、地方団体の財政運営が困ることのないようにしてまいる所存でございます。
  30. 原田昇左右

    原田(昇)委員 財政再建の目標につきまして、六十五年度の特例債脱却のためには毎年一兆三千億もの減額を図っていく必要があるということになってまいったわけですね。そこで、これは難しいんじゃないかという指摘がなされておることも事実であります。しかしながら、ここで財政再建の旗をおろすことは各種支出増の要求を一挙に惹起させることになりまして、これまでの財政再建努力が水泡に帰することになりかねない、そういうことから、私はこれは絶対に反対であります。あくまでも六十五年度脱却に向かって最大限の努力をすべきであろうと思いますが、いかがですか。これは総理にも伺いたいと思います。
  31. 竹下登

    竹下国務大臣 全くそのとおりであります。したがって、私どもはかたくななまでにもその趣旨を繰り返しておるというのが現状であります。
  32. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 六十五年赤字公債依存体質脱却に向かって全力を尽くしていく所存でございます。
  33. 原田昇左右

    原田(昇)委員 また、これに際しまして、歳出カットの努力については、制度の根幹に踏み込んでやっていかなければならぬと思います。これが何といっても基本であろうと思いますけれども、しかし、金のないときには知恵も出さなければならぬということで、例えば今回、在位六十周年を記念して金貨を発行するという話がありますね。伺いますと、大変いいことだと思うんです。しかし、どうもこれは大変な人気を呼ぶんではないか、一千万枚ぐらいなら、売り出したら一挙になくなってしまって、行き渡らない人に大変な不満感が出るんではないかと思います。そういう事態になれば、どうしてもこれはむしろ追加発行をたくさんしていただいて、そして財政再建にも役立たせていただいたらどうか、みんなに行き渡るようにしていただかなければならぬのじゃないか。ぜひひとつこれを積極的に考えていただきたいとも思うのですが、いかがですか。
  34. 竹下登

    竹下国務大臣 今回の記念貨幣は御在位六十年の御慶事をお祝いするためのものでございまして、できるだけ国民の手に行き渡るよう配慮する必要があります。したがって、金貨で一千万枚、銀貨幣で一千万枚、白銅貨幣で五千万枚、計七千万枚の記念貨幣を発行することとしております。  追加発行、いろいろ御議論がございますが、まず一つは、御在位六十年をお祝いする記念貨幣がその次の年になってはいかぬ。すなわち、一定の期間という制約が一つございます。それから造幣局の製造能力というものが一つあります。それから三つ目には地金の調達、こういうことがあるわけでございます。しかし、随分御要望がありますし、またこれから法律案の御審議も賜るわけでございますが、それらの点を十分に留意して対処していかなきゃならぬな、こんな感じで今受けとめております。
  35. 原田昇左右

    原田(昇)委員 大蔵大臣、その年に発行しなくても、予約を受け付ければいいんじゃないかと思うのですよね。確かに一年間の能力は一千万枚しかないということかもしれませんけれども、予約を受け付けることによって、製造に二年ぐらいかかったってこれはやむを得ない。そういうことも考えていただいて、ぜひひとつ国民に広く行き渡るように追加発行のことも取り組んでいただきたい、こういうように思いますが、いかがですか。
  36. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる学識経験者といいましても、そう経験者がおるわけじゃございませんので、学識というよりも識者の方々に集まっていただいております、それは芸術関係の方、評論家の方、労働界の方、それのいろいろな御議論をいただいております中にも、今のような御指摘もあっておったことも記憶いたしております。国会議論、またそういう識者の方の議論等をこれからも参考にして対応してまいりたいと思います。
  37. 原田昇左右

    原田(昇)委員 前向きにやっていただけるということでございますので、期待申し上げます。  総理、ところで、財政再建に金貨の発行とか電電株の放出とか、非常に大きな増収材料もあるわけでございますので、ぜひともひとつそういうところも知恵を大いに出していただいて、制度の根幹に踏み込んで歳出カットに全力を尽くしていただき、国民の期待にこたえていただきたいと思うわけでございます。よろしくお願いいたします。  それから最後に、内需振興の問題について触れたいと思います。  先般、政府・与党でも御議論があったと聞いておりますが、その内容について私、新聞でちょっと拝見しただけでございますが、大蔵大臣、いかがですか。
  38. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる財政再建の範囲内でということをきちんと踏まえながらどういうことを内需振興でやっていくか。第一弾、第二弾ができた。そして公定歩合の引き下げてその効果が、きのうから財投金利等も下がっていくということで出ていくということにおいて、内需の振興という点についてはこれを着実に進めていくということである。しかし、まずはやはりこの予算の早期の成立をお願いをしなければならぬということが大前提にありますが、そういう前提のもとに立って、また国会議論等を通じながら、執行面でどういうふうな対応をするかというようなことも、予算が成立するや否やまたこの方針を決めなければならない課題ではないかというふうに考えております。
  39. 原田昇左右

    原田(昇)委員 私は、全く今お話しのとおり内需振興につきましては、この予算を早く成立させるということが最大の課題だと思いますね。これをまず、我々がやらねばならないと思います。  それから第二に、この予算に盛り込まれた公共事業費、四・三%増になっておりますから、これを大いに活用していただくということが眼目ではないか。  それから第三に、民活、いわゆる民活法も近く国会に上程される、こういう段取りになっておると聞きますが、この民活による需要喚起ということをぜひやっていただかなきゃならぬ。  同時に、これに関連して、金融面の機動的、弾力的な措置が必要だと思うわけであります。公定歩合をこの間引き下げていただいたということは大変評価するわけですが、やっと預貯金金利が下げたのがきのうだ。一カ月近くも公定歩合を下げてからかかっておる。これもお話に聞きますと、だんだん能率は上がってきたんだということでありますけれども、それでも機動的、弾力的にやるんだという機動的の中に、公定歩合を引き下げてから預貯金金利が一カ月もかかって引き下げられるというのは、機動的と言えるのでしょうかね。この辺はぜひ政府の御見解を伺いたいことでございます。  それから第四に、やはり消費の拡大ということもぜひ考えていかなければならぬのじゃないか、こういうように考える次第であります。景気振興策について積極的に、手をこまくねことなく機動的、弾力的にひとつやっていただくということを要望しておきたいと思います。
  40. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる経済対策の点について御激励をいただいたわけでありますが、何でもとにかく経済対策の場合、よく機動的、弾力的にやります、こういう答弁が返ってまいります。ところが機動的、弾力的が公定歩合の場合、例えば今御指摘のように財投金利が決まるまでに二十六日がかったではないか。このことは確かに私どももある程度の日にちがかかるというのはやむを得ない。しかし、前回が七十五日かかりまして、それで今度いわば郵貯金利と民間預金金利が同時に引き下げられた事例では、二十六日というのは、歴史以来といいますと昔のことはわかりませんが、ないことだ。総理の指導のもとに郵政、大蔵それぞれ協議しながらやった。しかし、おっしゃるように弾力的、機動的とは、スピードが伴うものであるという物の考え方は根底に持たなければなりません。また消費の拡大につきましても、円高メリットというのがある種のタイムラグを置いて必ず出てくることを私どもは今期待をいたしておるところであります。
  41. 原田昇左右

    原田(昇)委員 財政再建と内需拡大、これはまさに今我々に課された国民的課題だと思うのですね。この二つは相互に矛盾しないでやっていけるはずであります。ぜひひとつその点で各大臣いらっしゃいますので御意見を伺いたいわけでございますが、特に民活あるいは金利の問題、それから電力等による設備投資の増加ということも大いに期待していいんじゃないかと思います。また消費の拡大等についてもいろいろ御検討のことと思います。郵政大臣、経済企画庁長官、それから最後に総理からお話を承りまして、質問を終えたいと思います。
  42. 佐藤文生

    佐藤国務大臣 先ほど大蔵大臣がお答えになったとおりに、二十六日間で郵便貯金の金利の引き下げの決定を行いました。今後とも十分に機動的に、そして的確に処断するように考えていきたい、こう思っております。
  43. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 おっしゃるとおり、日本経済を今内需中心で、しかも経済の成長速度を、本来の潜在的能力を十分に確保した成長を確保するための経済政策を総合的に動員しなければならないという御指摘はまさにそのとおりでございまして、一生懸命努力をする所存でございます。
  44. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 内需の拡大等につきましては、経企庁長官大蔵大臣から申し上げたとおりでございます。政府としては、円高の動向にもかんがみまして、懸命に総合的、機動的政策を実行してまいる所存であります。
  45. 原田昇左右

    原田(昇)委員 ありがとうございました。
  46. 中島源太郎

    ○中島(源)委員長代理 これにて原田君の質疑は終了いたしました。  ただいま参考人として全日本電機機器労働組合連合会中央執行委員藁科滿治君の御出席をいただいております。  藁科参考人におかれましては、佐藤委員質疑に対し、どうか忌憚のない御意見をお述べいただくようお願いいたします。  それでは、佐藤観樹君の質疑を許します。佐藤観樹君。
  47. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 きょうは税制財政問題の集中審議でございますので、私は主に、サミットに向かって日本の経済運営がこのままの状態で果たしてサミットは成功するんだろうか、そのための経済運営として内需拡大ということは言いますけれども、一体それに相応するような手だてというのはできているんだろうかということを中心にして、集中的に質疑をさせていただきたいと思うのであります。  きょうは本来ですと、そんな課題でございますので、内需拡大について大変関係が深いベースアップ問題についてもお伺いをしたいということで、日経連の方にも御出席をいただいて、ひとつ忌憚のない御意見をお伺いしたいということでございましたが、残念ながら御出席いただけませんでした。今御紹介がございましたように、電機労連の委員長藁科さんに来ていただいて、いわば組合としての社会的な立場から、内需拡大に向けてのこれからの運動の進め方について少し御意見をお伺いしたいと思っております。お忙しいところありがとうございました。  さて、きょうは総理以下関係をいたします大蔵大臣、通産大臣、経企庁長官、後ほど総務庁長官あるいは外務大臣にもお入りをいただきますけれども、言うまでもないことでございますが、日本経済はたくさんの課題を持っております。今総理が言われましたように、六十五年度赤字国債ゼロという財政再建の問題、あるいはいろいろとひずみが問題になっております税制あり方の問題等もありましょうけれども、まさに世界から袋たたきに遭おうとしている日本経済が持っている最大の課題というのは、私は五百億ドルに上る貿易黒字、これをどれだけ縮小していくか、そのために内需の拡大をどうやっていくか、また円高デフレをどうやって防いで日本の経済というものを支えていくか、この点に集中する、いわば内需拡大に集中すると言ってもいいのではないかと思っております。この基本的な問題点について総理以下関係の御当局の御意見を、簡単で結構でございますので、そのポイントだけお伺いしたいと思います。
  48. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やはり基本的にはインフレなき持続的経済発展、新しい言葉で言いますと新しい成長を推進するということ、それから国際経済摩擦を速やかに解消していく、その二点が非常に重要である。それらの方法といたしまして、民活であるとかあるいは大幅減税であるとか、そういうことを今推進せんとしておるわけであります。
  49. 竹下登

    竹下国務大臣 基本的には、やはりずっと継続して存在しておるのはインフレなき持続的成長ということであろうと思います。それから経済摩擦の中で先進国同士の問題もございますが、やはり今年は債務累積問題というのが大きな課題になろうかと思います。
  50. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 ちょっとまだ途中で……。
  51. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 いいです。通産大臣。
  52. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 内需拡大の問題につきましては、これは各省みんな手分けをいたしまして、一カ所だけでやるというわけにもちろんいかぬわけでございますから、手分けをしてやろうということで、江崎大臣のところで総まとめをやっておるわけであります。通産省は通産省といたしまして、例えば電気、電力の問題にいたしましても、公共事業の前倒しというようなことを一般にやるわけですから、電気会社なども予定した事業についてはこういうのを前倒しでひとつやってほしいというようなことで、こういうことを取り決めるとかいろいろなことを考えておるわけであります。
  53. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 どうも失礼しました、まだ質問を聞いていなかったものですから。  内需の拡大については……(佐藤(観)委員「まだちょっと、個別の問題はまた後であれします」と呼ぶ)ああそうですか。
  54. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 ちょっと余り前に行かれてもいかぬので、その点については後ほどお伺いさしていただきます。  そこで藁科委員長、労働界側も特に国民生活を支えるという立場から、今日本経済が抱えている問題、長期的底流としてはいわばインフレなき持続的な成長ということだと思いますけれども、そのためにも、財政再建もそうでございますし、税制改革もそうでございますが、一番当面とにかく対処しなければいかぬ問題、これはそう簡単に対症療法だけでできる問題ではないと私は思っておりますが、この円高からくるところの、もとはといえば貿易黒字が世界から見れば余りに多過ぎるじゃないかというこの課題、そしてそれに伴うところのデフレを防ぐところの内需拡大、ここの解決ということが最大のいわば課題ではないかというふうに思いますけれども、いかがでございますか。
  55. 藁科満治

    藁科参考人 発言機会をいただきましてありがとうございます。  現在の日本状況、特に課題につきまして、私どもは特に次の二点を考え、大変深刻に受けとめております。  その第一が日本経済の不均衡の問題でございます。それを象徴するものが、今御指摘ありましたように、六十年度の経常収支が五百億ドルを超える見込みがあるわけでございまして、これは我が国経済が減税の見送りや政策対応のおくれなどによって構造的に需要不足を招き、結果的に外需依存体質に頼る、そして最終的には貿易摩擦を今日のような危機的な状態に持ってきたということでございます。  第二は、ただいま指摘いたしました第一の状態を修正する立場から、政策意図的に現在進行しております円高の状況についての影響でございます。輸出関連産業を中心に収益面、生産面に大変な影響を現在及ぼしつつありますし、さらにまた設備投資の手控えなどを含めまして、言うなればデフレ傾向が非常に強まっております。格段私どもは中小零細企業の状況について深刻に受けとめているわけでございます。  しかし、このような我が国の経済の現状、問題点につきましては、率直に申し上げまして政労使の認識にそう食い違いはない、基本的に共通的な認識に立っているというふうに私は判断をいたしております。しかし問題は、春闘を今直前に控えまして、これらの我が国における経済運営の軌道を今後どういう方向に修正していくか、どういうレールに乗せるか、そういう面に関しましては残念ながら労使間にかなりの隔たりがある、このように指摘をせざるを得ないわけでございます。私たち労働界は現在の事態を脱却し、内需そして外需、均衡のとれた経済成長を安定的に引き出すためには、積極的な内需拡大と実効ある市場開放が不可欠の条件であるというふうに考えておる。我々のそういった主張はごく常識的なものである、このように確信をいたしております。昨年末答申されました経済審議会のリボルビング、私もこの審議会の委員として討議に参画をいたしておりますが、そしてまた最近報告されました産業構造審議会の答申の基調など、よくよく読み直しますと、私ども労働側の主張と基調的には何ら変わりがない、このように判断をしているところでございます。  特に本年は、総理機会あるごとに強調されておりますように東京サミットの年でございます。そういう面では、我が国内需拡大策というものが昨年以上にこの東京の場で厳しく追及をされる、問われるという年でございます。そういう意味で相応の賃上げ、これは国民総生産の六〇%を占めておるわけでございますが、相応の賃上げと減税によって内需拡大の基盤を固めるということがぜひ必要であるというように考えております。そしてあわせて、政府が先ほど触れたように、実効ある市場開放と内需拡大に向けての財政金融など、有効なる総合政策を緊急に展開することがぜひ必要である、このように考えておるわけでございまして、私ども労働界も政府のそういった角度の政策展開を心から期待をしたい、このように考えております。
  56. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 今藁科参考人から極めて先の話まで、全体的なお話をいただいたわけでございますけれども、いずれにいたしましても関係していらっしゃる皆さん、この国際収支の均衡と申しましょうか、それから波及してくるもろもろの課題について、最終的には言葉としては内需拡大をしなければいかぬということになってくるわけでありますが、そこにいく前にちょっと関係の大臣にお伺いしておきたいのでございます。  大体、為替の話あるいは公定歩合の話というのは、幾らというのは今まで言わないのが大体常識だったわけでございます。私も五十三年の円高のときにも随分大蔵委員会でいろいろと議論をしたわけでございますけれども、あのときと今度とは違うと私は思っているのです、基本的に。幾らくらいが適当だということは各関係大臣の方は言われておられませんけれども、しかし一方では、これでは高過ぎるのではないかという御発言がある。  それで、もう一つ私は別の角度からお伺いしたいのは、総理もいろいろな機会に、そんなに一挙に結果は出ませんよということを言われている。あるいは通産大臣の場合には、半年かまあ秋ぐらいになれば少し結果が貿易収支に出てくるんじゃないでしょうかということも言われている。その頭の中は、その結果を言われているというのは、まあ人によっては百八十円を切って、いわゆる百七十円も切るのじゃないかという方々もいらっしゃる。そこまで恐らく皆さん方思っていらっしゃらないと思いますが、いずれにしろ皆さん方の頭の中では幾らが適当だと——竹下大蔵大臣日本の経済は百八十円まで持てる力があるのではないかという趣旨のことを言っていらっしゃいますけれども、一体その百八十円なら百八十円というのは、年末までずっとこの一年間続くという想定で経済の運営全体を考えられていることなのか、ある程度それによってもし結果的に貿易収支というものがだんだん減ってくれば、為替でございますから上下するのが本来の趣旨でございますが、一体竹下大蔵大臣が昨年九月にG5に出られて、そこまで綿密に大体幾らぐらいで、どのくらいの期間とは決めてこられないと思いますけれども、今後の経済運営を考えるときには、やはり何かそのくらいのことが少し頭にないと経済運営できないんじゃないでしょうか。あるいは各大臣が、いやいや幾らぐらいじゃ高過ぎるから大体このくらいにしろとか、あるいはいつごろにはこういうことが解決してくるんじゃないかと言わぬ限りは、百八十円や百八十二円になろうと百七十八円になろうと、それは私は別の問題だと思いますが、大体日本経済は今後ともずっと、来年もずっと大体百八十円なら百八十円のところでいくように経済運営をなさろうとしているのか、それとも一定のところまで、五百億ドルが三百億ドルぐらいになればまた為替が自動調整をしてもとに戻る、まあ二百四十円まで戻るかどうかわかりませんけれども、というように考えていらっしゃるのか。いわば今度は五十三年と違って人為的にある程度つくった市場である限り、為替はあるいは株は市場に聞けという言葉だけでは今回は通じないのではないか。一体経済運営、皆さん方が幾ら幾らでは高過ぎるとか、いつごろには幾らかめどがつくだろうと言われている頭の中には、例えば百八十円は大体いつごろまで、いや日本経済はずっと百八十円体制でいこうということなのか、一定のところまでは百八十円ぐらいというふうに考えていらっしゃるのか。ちょっと問題、質問が難しいかもしれませんけれども皆さん方の御発言の端々にそういうことが出てくるものですから、一体その辺はどういうふうに考えていらっしゃるのか、どなたからでも結構でございますので、少しお答えいただきたいと思います。
  57. 竹下登

    竹下国務大臣 私が百八十円ということを必ずしも正確に言ったわけじゃございませんが、かつて今佐藤さんおっしゃった五十三年の円高のときも、とにかく日本の労使はこれに耐えてきた、それだけの能力がある、こういうある種のエンカレッジするために言ったような気がいたしておりまして、場所としてよかったかな、悪かったかなという反省も持っておるわけであります。が、やはり今おっしゃったように、為替は市場に聞けというのが原則であろうと思います。  しかし、さて日本経済全体から見た場合に、それぞれの産業が、それぞれの企業がおのずから一つのゾーンを置いて採算性を計算しておられるわけでございますので、一概にこれを適正なものがどれぐらいだということは、それは難しい問題だと思います。しかし中長期といいますか、あるいは半年と言う人もございますし十五カ月と言う方もございますけれども、為替が安定した形で続くということは、いわゆる経常収支の改善にも利するであろうという考え方は持っております。が一方、私自身、為替だけの立場から見ますと、原油の値下がりがそれに対してまた逆の作用を及ぼすことがあるなというある種の心配とでも申しますか、そんなことは感じておりますが、これらはまた国際会議等では比較的説明のしやすい問題ではないのかな、こんなことを考えておるわけであります。ただ、幾らか私自身の感じとして、安定することは好ましいが、そのスピードが急激に過ぎたではないかと言われる方の議論に対しては、私も絶えず同じような認識を持っておるということではなかろうかと思います。
  58. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 もう大蔵大臣の説明で尽きておりますが、やはり高くなるにしろ安くなるにしろ、急激であることが一番困るのですね。業界というのはそれなりにヘッジしたり対応策を考えるわけですが、二百三十円台、四十円台だったものが昨年の十月以降にわかに二〇%も高くなる、また最近は一〇%も高くなる、こういった乱高下、特に今度は高くなる一方だったわけですが、こういうことが非常に業界としては困るわけで、それはやはり対応に私は慎重でなければならぬ。一体幾らくらいが適当かということは、これはやはりこういう席で申しますことはスペキュレーションを招きますし、決していい結果をもたらしませんから、特に私ども国際経済に関係する者がとやこう言う場面ではないと思いますが、しかしおおよそ乱高下しないような対応策を今後講じていくことは必要だと思います。  そういう意味では大蔵大臣せっかくグループ5の有力メンバーでもあるのですから、それなりの時にコミュニケーションも深まっておりますから、相手方に日本はこの程度でどうであろうかとか、いろいろな言い方もあろうと思いますし、また私たち国際経済を担当する者から言うならば、この円高のときにこそ本来は円が、輸入ですよ、輸入の場合にたった三%程度しか使われないというようなことではそういうスペキュレーションや乱高下を招くもとにもなるわけですから、このときにこそ円をもっと国際化する努力をする。輸出の場合は、近隣諸国などをひっくるめまして、これもしかし四〇%弱ですね。日本の円の価値から、国際力からいって、実力からいって、こんなことがいわゆるスペキュレーションの対象になる。こういうことを今この場面でこそ私は財政当局によく考えていただきたい問題だというふうに考えております。
  59. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 何か答弁の方がどんどん広がっていっちゃうものですから、この問題の焦点が絞れなくなって、ちょっと総理と通産大臣に簡単にお伺いしたいのであります。  総理も、これはそう深い意味で言われたんじゃないと思いますが、大体そう結果は急がないでくださいというようなことをインタビューで言われているわけであります。そこに至るまでには総理総理なりに、例えば今百八十円という思わぬ二五%も九月から上がるというようなことになったわけでありますが、総理の今後の経済運営として、余りにも急激過ぎたけれども、百八十円ぐらいというのはずっと中曽根内閣時代は大体そのくらいでなっていくというふうに考えられていらっしゃるのか、あるいは貿易収支の適正な量というのは、これも言葉で言うことは簡単ですが、数字はなかなか難しいのですが、総理の頭の中ではどんなふうに考えていらっしゃるのですか。
  60. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 為替相場については長期的安定が望ましいと思っております。やはり乱高下ということが一番貿易にも支障を来しますし、国民経済の波乱要因になってきている。したがいまして、物事は、経済現象というものはすべて漸進的に、そしていわゆるソフトランディングで移行してくるのが賢明なやり方でありまして、そういう点から見ると最近の円ドルの関係というものは急激に走り過ぎてきている、そういう感を禁じ得ません。そういう意味において、我々はこれが長期的、持続的、漸進的に安定の方向へ向かうように努力していくべきであると思っております。  それから、水準をどの程度にするかということは、これは公定歩合と同じで言うべきものではない。自由経済下におきまして、これはそのときの市場の実勢等によって行われるものであると考えております。
  61. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私がお伺いしたかったのは、今度は単純に市場だけでできた円高じゃないわけでありますから、一応G5以降各通貨当局がいろいろと話し合って、もちろんその枠を超えたものもありますけれども、やったわけでありますから、一体その先はどういう絵をかいてやろうとしているのかということをお伺いしたかったのでありますが、どうも適切な答えがないので、時間がありませんから、先へ進ませていただきたいと思います。  そこで、冒頭お伺いしましたように内需拡大ということが最大のポイントになるわけでありますが、今までの質問の中にも随分出てきましたけれども、今度は名目五・一、実質四%成長させようということで経済見通しを立てていられるわけであります。そこの中で、私から少し話させていただきますと、構成比から言いますと、民間住宅が四・七、企業設備が一六・五、政府支出が一六・二、海外余剰が一四・三、個人消費が五八・八という数字になるわけですね。それで民間住宅、いろいろと生活のあり方として頑張ってもらわなければいかぬと私も思いますが、これは残念ながらウエートはそう高くないですね。それから企業設備も、後から時間があればお伺いしますけれども、電力を除いては大分横ばい傾向になりつつある。これも余り期待できない。政府支出一六・二%の構成比、大変な財政赤字でありますから、そんなにはこれもふえるわけがない。海外余剰の一四・三の構成比でございますけれども、これもむしろ予想以上にふえてもらっては今の状態ではちょっと困るということになってくると、何といっても一番期待をしなきゃいかぬ、いわば内需拡大ができるかできないかという、経済見通しが名目五・一、実質四%の成長ができるかどうかのかぎというのは、私はこの約六割を占めます個人消費というところに最大のかぎがあるのではないかというふうに思いますけれども、ひとつ経済企画庁長官、そして総理のお考えをお伺いしたいと思います。
  62. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 おっしゃいますとおりの構成でございますが、民間住宅などはなるほど六十年の構成比は四・六、名目でございますが。ただ、かつてを見ますと、趨勢的には七%あるいは八%、五%、こういうときもございますわけで、むしろ趨勢的に少し最近下がり過ぎていると思います。そういう意味からいいますと、私どもとしては、やはり国民の現実のニーズから考えて住宅投資のかさ上げということが非常に必要である、そういうことでこのたびの税制改正におきましても特に民間住宅のための施策を講じておる。それから、確かにおっしゃるとおり財政制限がございますけれども、そういう中で公共工事の事業量をふやす、こういうことも努力をいたしております。おっしゃいますとおり民間の消費支出をふやすということも、もちろんこれは極めて重要なことでございます。
  63. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やはり消費というのは非常に重要を期すべきものになってきつつあると思います。それから、やはり民間設備投資あるいは住宅、こういうようなものも力を入れべき分野ではないかと思います。
  64. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 昨年九月あるいは十一月にアクションプログラムということをやっていらっしゃいますが、そのことも詳しくお伺いしたいのですが、時間がありませんので。アクションプログラムでは経済効果が約三兆円だということをはじいていらっしゃるわけですね。しかし、これは経済専門家から言わせると、まあ三兆円は出ないのじゃないか。一生懸命皆さん考えていらっしゃるけれども、ならない。ところが、今度の経済見通しては、個人消費が九兆円ふえるというふうに見通しを立てていらっしゃるわけですね。そうなってまいりますと、私は、あらゆる格好で個人消費をふやすということにかけていくことがこの政府の経済見通しを達成する道だと思うのであります。よく経済運営として公共事業の前倒し、前倒しと言いますけれども、前倒しをすればあとがなくなるわけですね。しかも、毎年六割、七割やっておるものですから、前倒しも業界から見ればいわば通常になっちゃいまして、これはそういう意味では余り心理的効果もないのですね。そういう意味で私は、今国民の生活実感、とりわけ実質可処分所得が六年ぶりにマイナスになるというような状況の中では、この個人消費をふやす、それがいわば内需拡大の大きな中心的な課題であるというふうに考え、その方策をこれから論議したいと思うのでございますが、藁科委員長、その考えはいかがでございますか。
  65. 藁科満治

    藁科参考人 先ほどもちょっと触れましたけれども国民総生産の六割を占める最終消費支出、これにインパクトを与えるのは個人所得でございますから、この影響が日本の経済の成長の基盤を固めるというふうに私ども考えております。  きょうは日経連がおられませんので、相手がいないところで批判するのは少し心苦しいのですけれども、日経連が主張しております生産性基準原理というのは、御案内のように賃上げを実質GNPの範囲、厳密に言えばそれに雇用の増加率をプラス、マイナスするわけでありますが、その範囲におさめるという考え方でありまして、これに沿うことになりますと、どうしても民間の最終消費支出がふえない、こういう実態が経過的に明らかになっておるわけであります。過去十年間の数字を当てはめてみますと、実質GNPは約四〇%伸びております。年率で四%に当たるわけであります。これに対しまして、税負担がこの間実に三・五倍になっておる。こういう事情もございまして、実質可処分所得はわずか一〇%、年率で一%の伸びにすぎないわけであります。これは国民生活白書でも指摘されておりますように、住宅、教育費など、そういった負担の層のところではむしろマイナスに、なっているという状況でございます。  いずれにいたしましても、日本経済の全体を安定的に成長させるためには、この実質可処分所得、それによる最終消費支出のインパクトが決定的な影響力を持つ、このように私ども考えております。
  66. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そこで経企庁長官、ちょっとお伺いしたいのですが、物を比べるときに名目と実質とを比べて、そしてその実質の方が高いというような結論を出すということは、経済をやる者から言うとこれは比べることにならないのじゃないか。この生産性基準原理というのも、要するに実質成長率から雇用のふえた分だけ引いてそれ以下に名目賃金を抑えると。実質経済成長率を使って、結果は、春闘あるいはベースアップというのは名目でございますから、その名目に当てはめるというのは、これは比べものにならないのじゃないかと私は思うのですね。  ここに、ことしも労働問題研究委員会の報告があるわけですけれども、八ページにグラフが書いてあるのです。これを見ますと、賃金と生産性が比べてあるわけでありますけれども、ここで言うところの生産性というのは、あくまで就業者一人当たりの実質国民総生産なんですね。それに対して賃金というのは、言うまでもなくこれは名目でもらうわけでありますから、実質でもらうわけじゃないんで、結果的には実質になりますけれども名目でもらうわけですから、これを比べて、やれ去年とおととしだけが生産性基準原理に入りました、これは永遠の理想です、こういうようなのはおかしいのじゃないか。これは生産性基準原理そのものを批判をするということと私は思っていますが、長官の立場からはそうは言えないかもしれませんが、いずれにしても名目と実質とを比べてこちらが高いとか低いとか言うのは私はおかしいと思いますが、いかが思いますか。
  67. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 賃金決定の理論として非常に難しい問題もございますので、政府委員からももし御必要であれば答弁させますが、基本的には物価の上昇率というものをどう考えるか。結局、幾ら賃金が上昇しても物価の上昇が起こるようなことであっては実質的な賃金の上昇がないのじゃないか。経済をインフレなき経済の成長でなきゃならぬという非常に厳しい議論からいいますと、実質の賃金を主体に考えるという賃上げ政策が出てくるわけでございましょう。今我が国の物価上昇率は、卸売物価下落傾向、消費者物価の上昇率は極めて低くなってきておりますので、私どもはその辺の状況も十分労使双方に御理解を願って、我が国の経済の安定を期してまいりたいと思っております。
  68. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私は今そういうことを聞いているのではなくて、この生産性基準原理という考え方自体、名目と実質とを比べるという、極めて経済理論としてもおかしいものではないか。今長官が言われた後半の問題は、それはそれなりに私も一部理解をするところがありますけれども、この生産性基準原理自体が、ここに、グラフに書いてあるように、賃金と生産性を比べて、生産性の方は実質でやって、賃金の方は名目でやって、やれ賃金の方が今までは高かったが、これからはやっと生産性の方が賃金より高くなったと言って自画自賛なさっているというのは、私はおかしいのじゃないか、経済理論としておかしいのじゃないかという(とをお伺いしているので、もう一回お答えいただきたい。
  69. 赤羽隆夫

    ○赤羽政府委員 生産性基準原理というものについて、私どもの理解は次のようなものでございます。  まず、名称に基準原理という名称がついておりますけれども、この名称が示唆するような規範的な意味を持つ関係ではない、こう思います。まずこの生産性基準原理、したがいまして名称にやや問題がある、こういうふうに思いますけれども、この原理が述べておりますものは、賃金の上昇率と生産性と物価の三者の関係をあらわす関係式ということでございます。したがいまして、名目の賃上げ率と実質の生産性を比べておるわけでありますけれども、その際には物価が上がらない、そういう形で名目の賃金上昇率が実質の生産性上昇率に等しくなる、こういう考え方でございます。  この関係というのは、極めて単純化された関係でございます。したがいまして、現実へもう少し近づけるためには、消費者物価とそれ体ら一般物価、GNPのデフレーターと申しましょうか、そういうものの相対関係でありますとか、あるいは産業別の生産性の格差の問題でありますとか、そういったような具体的な個々の要因をさらに実証的に深めることによって現実接近が可能になる、こういう関係ではないかと思います。
  70. 藁科満治

    藁科参考人 ただいまの件では、労使もかねがね厳しく論争しておるところでございまして、今もお話ございましたように、日経連が理想論として生産性基準原理というものを掲げることはそれは御自由でございますが、しかし日本の経済の実態というものを前提に置いた場合には、国際的に見て超安定物価傾向ということを言われておるわけですが、それにしても二%程度の物価は厳粛にあるわけでございます。こういうものを前提にして論議しなければ、これは労働側は絶対に納得できない、こういうことになるわけでございます。そういう意味では、せめて我々としては、最低限、生産性基準原理プラス消費者物価の上昇ということであれば論議の土俵に乗ることができるのではないか、このように考えております。
  71. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そこで、長官が先走って少しお答えになりましたけれども、今度の国際収支のこれだけの黒字、確かに表面的にはアメリカ財政赤字あるいはドル高というようなこともいろいろありますけれども、その中でも日本がこれだけの貿易黒字を出してきたという背景には、私はそれなりのものがあったと思うのであります。  私は、この前の予算委員会の中で、この袋たたきに遭っている状況をいわば奇貨として、つまりこれをいいことにして、日本の経済の体質のあり方、あるいは生活のあり方自体を変えるいいチャンスにすべきじゃないか。かつて原油が大変高くなったときに、それを境にして日本は省エネというものに大変な力を注ぐようになったように、私はこれを奇貨とすべきだと思うのであります。  そこで、少しこの背景というのを関係各位及び藁科さんにお伺いしたいのでありますけれども、確かにこの労働問題研究委員会報告にも書いてあるわけでありますけれども、オイルショックになって、今長官が言われたように、労働側はいわばホームメードインフレを阻止をするためにそれなりに自粛したと私は思っているわけであります。そしてずっと自粛をして今日まで来てしまったというところであって、その間に、企業の方はむしろ、資本準備率にいたしましても、その他いろいろ財務内容を見ますと、内部留保も大分厚くなってきたし、開発費も大変かけるようになった。企業の方は大変力がついてきた。ところが、労働分配率の方は、いろいろ少しぎくしゃくはありますが、だんだんだんだん下がってきた。したがって、企業の方はマル金になったけれども働く側がマルビになった。したがって、どんどんどんどん国内では購買力がなくなってくるものですから、その分は海外に出ていく、こういう構造的な図式になってきたというのが、そのうみが今の貿易収支大幅黒字あるいは円高という結果を招いたのではないかというふうに私は見ているわけでございますけれども、その点について経済企画庁長官、それから、いろいろな企業の活動に関係もございますので、ひとつ通産大臣にもお伺いし、また藁科さんに、こういう構造的な経済の体制というのが今の結果を招いてきた大きな原因ではないかと思いますが、いかがでございますか。藁科さんからお答えいただくのがいいかな。
  72. 藁科満治

    藁科参考人 現象的に見ますと、一面におきまして、貿易黒字というものが労働側に全く寄与しないというふうには私ども考えておりません。しかし、日本の現状のように異常な経常収支の黒字ということになってまいりますと、国際的にも大変厳しい批判、糾弾を受けるわけでありまして、それは結局、最終的には大きな犠牲を強いられる、マイナスに作用するという事態も起きてくるわけでございます。まさに現在はその一つの局面ではないか、このように考えております。  そこで、今御指摘のありました外需依存の経済構造の中で、労使の取り分が最近十年ぐらいどういう状況になっているか、その推移を簡単に振り返りますと、次のような状況でございます。これは日銀の主要企業、それから大蔵省の法人企業、さらには通産省の工業統計などなど、幾つかの分配率の指標がございますが、それぞれ共通して、十年前の一九七五年に比べまして、現在の数字は著しく低下をいたしております。  参考までに申し上げますと、日銀統計で五三・四が四七・四、大蔵省統計が六六・六が六二・八、そして通産省の関係が四〇・一が三四・〇、こういう傾向でございまして、こういう状況を裏づけるように、残念ながら人件費率も約二%程度この十年間で低下をいたしております。しかし、この責任の一端は労働側にもありということを我我は反省いたしております。
  73. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 外需依存ということにつきましては、確かにこの数年、ことにレーガン政権の第一期目の経済政策がだんだん効果をあらわしましてからは、我が国の場合、輸出がどんどんふえてくる、こういう傾向がふえております。しかし、この問題はやはりアメリカの政策とも非常に関係があるわけでございまして、私は、日本の経済の構造が、今のような五百億ドルのような黒字が経常的に出る状況日本側の責任だけであるとは思わないわけでございます。その意味で、為替の調整ということも非常に重要な役割を演じてくるのではあるまいか。  そういう意味で、ただ今先生がおっしゃいますように、これを奇貨として、これをいいチャンスとして日本の経済をもっと内需向きの経済構造に変えるべきであるとおっしゃる点はまさにそのとおりでございまして、いずれにせよ、世界経済に波乱を巻き起こすような体質が少しはあるのではないか、これは私ども全くそのように思っております。その意味で、日本経済の構造改善のための大きな努力をしなきゃならぬということが一つ我我の大きな目標でございます。  また同時に、内需のための調整ということの中では、日本の経済の構造を改善するという中では、日本の経済の執行、いろいろな職種転換とか産業構造の転換というような非常に出血の多い大きな問題を抱えておるわけでございまして、そういう点では企業全部が非常にもうかっておるというわけでもない、非常に難しい中小企業、零細企業の問題も含んでおるわけでございまして、その全体を考えながら私どもは運営をしていかなきゃならぬと思っておるわけでございます。
  74. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 フィリピンのアキノ女史の大統領就任式が始まったようでありますので、外務大臣がお急ぎのようでございますので、ちょっと二点だけお伺いして、外務大臣は仕事に——これも仕事ですが、退席していただきたいと思います。  一つは、アキノ女史は本来現地時間九時に就任式という話だったのですが、それが延びたようであります。延びて今ですから、向こうが九時ですから約二時間おくれの就任式ということのようであります。それからマルコス大統領の方が——大統領と言わないのか、マルコス氏の方が一時から就任式ということになっていたようでございますけれども、これは非常に微妙な問題かと思いますけれども、ひょっとすると二人の大統領が生まれるということになる。そうなってくると、政府としては政府承認をどうするかという問題がその後発生をしてくるのじゃないか。あるいは先進国、ドイツ、フランスにいたしましても、マルコス氏に対して混乱を避けるために退陣をというようなことを言っておりますけれども日本政府はそういう行動は起こさないのか。この二点について、簡単で結構でございますので、ちょっとお伺いしたいと思います。
  75. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 どうも情報が実は入り乱れておりまして、完全に掌握しているわけじゃありませんが、アキノ、ラウレル両氏は別々に宣誓をしたということでありまして、まずラウレル氏がちょうど十一時四十六分ごろ宣誓中だということであります。同時にまたアキノ女史も、恐らく場所は違うんじゃないかと思いますが、宣誓をしておるこいう状況なようでございます。これは、アキノ女史の住んでおられる周辺で銃撃戦があったということ、またアキノ氏側の報道によりますと、エンリレ国防相とマルコス大統領との間で話し合い行われた、こういうこともあっておくれたということでございますが、今の状況では両方ともそれぞれ宣誓を行ったということであります。マルコス大統領の方が宣誓を午後行うということになっておりますが、この点についてはまだはっきりしておりません。予定はそういうことになっております。  政府としては、いろいろな情報を目下集めてその対策、対応をしなきゃならぬわけでございますが、これは総理もさきに述べられたように、フィリピン情勢が非常に動いておりますし、一つ流れが出ておるということは客観的に言える、こういうふうに思うわけでございますが、政府としてはきょうのこの激動の状況を冷静に見詰めながら、的確に情報を把握しながら判断をしてまいらなきゃならぬ、こういうふうに考えております。
  76. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 これは仮定の話でございますので、またどういう情勢になっていくかわかりませんから難しい話でございますけれども、二人の大枚領ができるということになりますと、日本政府対応も非常に難しくなってくるのじゃないか。きのうの委員会での総理あるいは外務大臣の御答弁というのは、いわば国民の支持のあるという言い方をなさっていらっしゃる、これはアメリカ言葉をかりてのようでございますけれども。一体、まあ情勢は刻々と変わるし、いろいろな問題、複雑な問題は含んでおりますけれども政府承認ということはいわば日本政府の問題でございますので、そのことについて何か具体的に考え始めているのでございましょうか。
  77. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私はまだ時間が残されておると思いますし、両陣営でも話し合いもしておるということでありますし、また日本政府としましても、両陣営に対しましてとにかく話し合いによって平和的に解決ができることを強く求めております。武力に訴えないで衝突を避けて解決できるように要請をしておりますし、アメリカもそういう立場で強く訴えておるわけでございます。確かにそういう面では多少部分的な戦闘はありますけれども、しかし全面的な衝突というのはまだ起こっておりません。そういう状況でございますから、まだまだ私は解決の道が残されておるのじゃないか、こういうふうに判断をしておりますし、早計に今仮定で物を言うということは政府として慎みたいと思っております。まだまだ時間が残されておる中で、情報を集めて、そういう中でひとつ政府の態度、政府の判断を決めてまいりたい、こういうふうに思います。
  78. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 もう一つだけ外務大臣に本論の方を御質問しておきたいのでありますが、五月の四日、五日、六日とサミットを迎える。私もずっといろいろ勉強してみて、このサミットはいわばさんざんなサミットになるのじゃないだろうか。つまり、何にも結果が出てない中で迎えざるを得ないのではないかということを大変危惧をしているわけであります。別に中曽根内閣の延命を私は願っているわけじゃありませんけれども日本にとりましてもこれは大変なことじゃないか。  と申しますのは、予算は恐らく四月の初旬に通過をする。しかし、これは執行にはまだいろいろな意味で時間がかかってまいります。公共事業の前倒しということがありましょうけれども、具体的にそれが数字に出てくるわけではない。あるいは内需拡大ということで東京湾のトンネルをつくるとか明石大橋をつくるとか出てまいりますけれども、しかし、これもまたその段階では全くの計段階ですね、ペーパープランの段階で進めているわけであります。これも結果が出てきているわけがない。それから貿易収支も、これも時間があればちょっとお伺いしたいのでありますけれども、恐らくまだJカーブがあって、しかも、原油がどうなるかわかりませんが、輸入の方もむしろ減って、これもまた貿易収支というのはさらに黒かふえているという状況ではないだろうか。それから、今議論しております内需拡大に大変関係の深い、個人消費に関係の深い春闘も、後からお伺いしますけれども、どうも政府の方もより積極的に前に出るような状況にないということ。週休二日制についてもあるいは時短についてもしかり。それから、恐らく経済構造調整研究会の提言というのがそれまでに出るのでありましょうが、これもいわば提言ですね。  そうなってまいりますと、五月の初めに出てくる結果というのは、いろいろな提言をしたりこれからこうしますということはあるだろうけれども、数字にあらわれてすぐ、日本はG5以降半年間にこれだけ具体的に努力をして具体的にこれだけ成果が上がりましたというものはどうもないのではないか。そういう意味では、世界の首脳に集まってもらって、日本は何をやっていたのだと集中攻撃を受けるサミットになるのではないかということを私は大変危惧をしておるわけでありますが、外務大臣としてはどういうふうにお考えでございますか。
  79. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 確かに世界経済の状況は相当厳しい面も出ていることは事実だと思います。ヨーロッパにおける失業の問題も依然として残っておりまして厳しい状況でありますし、アメリカの高金利であるとかあるいはまた財政赤字はそれなりに問題があるわけです。日本日本で、今お話しのように、G5の結果は円が強くはなっておりますが、黒字はふえてきておる。特に、原油が安くなるということは影響が今すぐ出てはおりませんが、これから出てくることは間違いがない。むしろ黒字がふえるという方向で作用するであろう。円高がこんなに急速に進むということはデフレになる可能性を含んでおる、こういうふうに言わざるを得ませんし、また開発途上国で、やはり特に開発途上国の産油国は深刻な影響、この累積赤字問題はますます深刻になってくる、一次産品も非常に低迷しておる、こういうことでなかなか世界経済は難しい状況になっておりますが、反面また、円ドルのこうした状況というものも経済にはそれなりのいい面も影響も出ておりますし、アメリカアメリカ財政赤字克服の努力が続けられておる。また、アメリカの経済も我々が見ている以上に、見ているよりはもっと経済の力は出ておるような感じもいたしておるわけでございますし、日本の市場開放もそれなりに進めてきておるわけでございますが、そういう中で行われるサミットでございますだけに、主催国日本としましても非常に大きな責任があるわけでございますが、何としてもこれは先進工業国七カ国が集まって、そしていいサミットの場でありますから十分議論をして、そしてこれからの世界経済の持続的な安定成長のために何らかひとつ明るい方向を打ち出していかなければならぬ。どうしてもこれは成功に導くための一つのサミットに持っていかなければならないと思いますし、また開発途上国に対する南北問題という面から、やはり先進国としての役割を積極的に果たしていく、こういう一つ意味を持ったサミットにならなければいかぬ。私は今準備を進めておりますし、そういう方向で何とかサミットを導くために努力をし、またその道は開けてくるのじゃないか。決して今の状況は手放しで安心できるような状況でないことはもう御承知のとおりでありますが、全力を尽くして、とにかくサミットによってこれからのひとつ明るい世界経済の方向が打ち出せるように全力を傾けてまいりたい、こういうふうに思っております。
  80. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 できる限りそれを目指していくわけでありますが、今私が具体的に挙げましたように、どうも具体的な結果としてあらわれることが何もないのではないかということを私は大変危惧をしているわけでありまして、なるがゆえに、ちょっと話をもとに戻しますけれども、今度の春闘と申しましょうか、賃闘と申しましょうか、これは非常に重要だと私は思っているわけであります。  そこで、お伺いしておきたいのでありますけれども、今のように、日経連が言われますように、円高だから非常に企業業績が厳しいので我慢しろということになってまいりますと、これはますます輸出関連のところは円高のデメリットが出てくるものだから、ますます頑張って輸出をする、輸出がふえちゃう、玉突き現象が起こるということになりかねない。今まで過去の日本経済というのはそういうところがあったわけでありますので、そういった意味では、この際ひとつこういった悪循環を断ち切るべきではないかというふうに私は思っておるわけであります。今度の春闘ほど、外から、あるいは各社の社説が日経連もひとつ理解を示すようにという、大変流れが変わった春闘、応援団が多い春闘はないのではないか。確かに、外から見ますと貿易黒字五百億ドルの経済大国日本というイメージだけで、もう日本国民一人の生活実感からいうとそれから大変かけ離れている。これは私は先ほどちょっと触れましたように、企業マル金、働く者はマルビというところに影響が出てきている。これはもうそろそろその悪循環を断ち切らなければいかぬのじゃないかというふうに思っておるわけでございますけれども、もう時間がありませんので、ことしの春闘ほどそういった意味で、確かに企業から見ると厳しいけれども内需拡大という面からいいますと、この際はひとつ、我慢の哲学の方は働く方ではなくて企業の方が少し我慢して少し上げてもらうということを政府は誘導しなければならないのではないかと私思うわけでありますが、この考え方について藁科委員長にお伺いをし、それから経済企画庁長官、そして総理のお考えをお伺いしたいと思います。
  81. 藁科満治

    藁科参考人 既に強調さしていただきましたけれども、過去十年間の経済の実質成長が四〇%、それに対して実質可処分所得が一〇%、こういう状態でありますから、どうしても外需依存の経済に、こういうことになるわけでありまして、結局また円高そしてデフレという悪循環を繰り返しておるわけであります。したがって、結論的に、私どももインフレを巻き起こす賃上げということは慎みたいと思っておりますが、相応の賃上げということを言っておるわけでございまして、財界すべてではございませんが、一部に我慢の哲学を強調されておりますけれども、しかし、まだ日本の場合には充足すべき要素がたくさんあるというふうに私どもは認識をいたしております。  その一つは住宅問題であろう。そして、下水道は先進国の中では最低でございます。三六%の普及でありまして、さらにまた、今問題になっております高齢化の受け皿、こういう社会的な資本はほとんど脆弱でございます。そういう意味では、日本の経済がこれから成長し充足すべき要素はたくさんある、こういうふうに考えておるわけでございまして、そういう意味で、私ども財政事情を心に置きながら中程度の安定的な成長がぜひ必要である、こういうことを強調しておるわけでございまして、そういう観点から相応の賃上げと減税を要求しておるわけでございます。この春闘で、最終的には賃金はミクロの交渉で決まるというのは我々も十分承知をいたしておりますが、政府におかれましても、そういう環境づくりをするあるいはいい意味で安定的な成長を誘導するというような観点の政策展開をぜひ期待申し上げたい、このように考えております。
  82. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 昨年の末におきますリボルビング報告におきましても、労働生産性の上昇分というものはそれを労使の間で十分協議をして適切な賃金と労働時間に配分されなくてはならぬ、こういうことを経済審議会で報告をいたしまして、それを閣議で報告をいたしておる、そして政策に十分反映されなければならぬ、こういうふうになっておるわけでございまして、私ども政府としましても段々のお説の趣旨を十分体しまして、我々としても日本経済のインフレなき成長のために頑張ってまいりたいと思っております。
  83. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 企画庁長官が申し上げたとおりです。
  84. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 企画庁長官の言われていることは大変すばらしいことでありまして、もちろん私たちもホームメードインフレをつくろうなどということは、今藁科参考人も言われたように、思っているわけじゃない。しかも各個別企業で赤字で倒れそうなところをどうしようということを言っているわけじゃない。しかも、それは総理がたびたび言われているように、いわば基本的には労使の話でございますけれども、しかし、経済運営が特にこういう難しい中で一番大きなウエートを占めるところでございますから、ここをどうしてくださるか、今藁科委員長言われたように、環境づくりというのはやはり政府がすべきものだと私思うのであります。したがいまして、実質四%成長を達成できるかどうかのかぎはここが握っているわけでありますから、今総理経済企画庁長官のお言葉をそのまま言われましたように、ぜひそういう方向で進むために、二月の五日に経済企画庁長官は、「勤労国民所得の向上が個人消費を伸ばし、また内需拡大につながるんだ、そういうお立場で経済団体などとお話しになるということでよろしゅうございますね。」という山口委員の質問に答えて「そのとおりでございます。」というお答えになっている。何か経済団体とお会いになって少し、もちろん経済団体の方といっても個々の企業の代表というよりも経済団体全体の代表でございますから、それで直ちにということにならぬと思いますが、やはり今度の中で非常に重要な要素だと思っておりますので、それは一体いつごろ、どういう形で経済団体とお会いになるようなおつもりがあるんでございますか。
  85. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 とりあえずあしたの早朝、産業労働懇話会というのが開かれるわけでございます。これには、政府側からは私、それから労働大臣が御出席になるわけでございまして、私ども、こういう機会にも、我が国経済の現状につきまして政府側が考えておるところ、また見ておるところは十分に討議し、また意見を交換してまいりたいと思っておるわけでございます。
  86. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 今のところはそれぐらいでございますね。  それで総理、もう一言確認をしておきたいのであります。これはいわば総理の直接的なことではないけれども、しかし、今度の経済運営をうまくするためには、今度の賃上げと申しましょうかベースアップというのはでき得るならば高い方が望ましいあるいは好ましいと考えていらっしゃる、それは総理の直接的な権限じゃないことは私もよくわかっておりますが、高い方が望ましいし好ましい、できる限りそういう方向でいっていただきたいと思っていらっしゃるというふうに理解しておいてよろしいですね。
  87. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私が上下を論ずる立場にはないのでありますが、労使協調のもとに適切な配分が行われることを期待しております。
  88. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それは、先ほど経企庁長官がせっかくお答えになったのをそのとおりと言われたのと後退だと私は思いますよ。  それでは総理、日経連の方ではことしのベースアップはせいぜい三%じゃないかというふうに言っていらっしゃるわけですね。そのとおりになるかどうかわかりませんよ、言っていらっしゃる。経済企画庁長官、三%のベースアップで九兆円の個人消費というのは、もちろん雇用者所得だけじゃありませんけれども、雇用者所得皆さん方の方では一人当たり三・九とはじいていらっしゃいますね。これを三%ということで、一体雇用者所得が九兆円もふえるんでしょうか。民間最終消費支出が十兆六千億も、皆さん方が計画なさったように、三%などという低いベースアップでできるとお考えでございますか。
  89. 赤羽隆夫

    ○赤羽政府委員 私どもは特定の賃上げ率というものを想定して雇用者所得の見通し、それから個人消費の伸びの見通しというのをつくっているわけではございません。私ども考え方は、まず経済活動が活発になることによって実質所得がふえる、さらにそれに加えまして、いわゆる交易条件と言っておりますけれども、円高及び石油等の一次産品価格の低下、これが実質所得のプラスアルファをもたらす、こうしたことで、経済活動の結果として消費は伸びてくる。よく内生変数といったようなことを専門家は申しますけれども、消費については内生変数として理解をする、こういうことでございます。  また、賃金の見通しということに関連するわけでありますけれども、名目の雇用者所得、一人当たりの雇用者所得は必ずしも春闘と関係のない部分というのがかなりございます。そういうことで、一義的に春闘と一人当たりの雇用者所得の伸びを比較していただくのは、過去の実績から申しましても適切でないと考えております。
  90. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私もずっと経済をやってきて、十何年やっているから、それは大体どういう数字が出ればどういう感じになるかという過去のものを調べて物を言っているわけですから、今赤羽局長が言われることの細部についてはわからぬわけではないのですが、ただ、雇用者所得の伸びを三・九とはじかれて、日経連が言うように三%のベースアップでこれがそのまま皆さん方の経済見通し、しかも個人消費というのは先ほど言いましたように約六割あるわけですから、それがこういう形でふえるというふうに仮定することは私は不可能であると思っております。  しかも、物価が安くなるから消費は伸びると言いますけれども、それは相対関係だけで言うわけで、じゃ安くなったからより物を買うか、それはそう限らないと思うのですね。同じ金額のものが例えば二五%も安くなったから二五%減らしてもそれは生活には困らない、したがってそれによって消費がふえるかといったら、それは皆さん方の計算上で言っているだけの話であって、金額として伸びるかどうかは、私は必ずしもそうならないと思っているのです。  そういう意味からいいますと、総理が本当にみずから政権をかけて、そしてこのサミットを前に一番重要な内需拡大の大きな柱であるところのこの個人消費をふやしていこうというためには、まあ総理が直接この春闘にかかわるわけではありませんけれども、経済運営の方向としては、やはり払える企業があればできる限り払ってもらいたいなぐらいの環境づくりを——景気も気なんですよね。気分なんです、これは。これも気分の一部なんです、景気というのも。みんながだめだめだめと言うと何となくだめになっちゃうんで、景気も気なんでありますから、総理としては自分の経済運営上、でき得る限り払える力のあるところは払ってもらいたいということぐらいは言えるんじゃないでしょうかね。それの方が好ましいということは言えるんじゃないでしょうか。
  91. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 労使の間で決まることで労使協調、そういうふうに申し上げたんでありますが、もし払えるところがあればできるだけ豊かにしていただくということは政府念願をしておるところであります。心も生活も豊かになることを切に念願いたしております。
  92. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それから、時間がなくなりましたので、最後にもう一つこのサミットを前にして重要なことは、私もこの前触れましたけれども、時間短縮、そして週休二日制の問題であります。これはもう本当に私は重要なことだと思っているわけであります。まさに総理が、ゆとり、金だけじゃなくて心のゆとり、それはやはりなるべく労働時間も短くして、そして今いじめの問題も起こっておりますけれども、親子の対話をする時間をなるべく豊かにするということではないかと思うのであります。  これももうまとめて質問しちゃいますが、労働問題研究委員会の報告の中に、時間短縮だけがひとり歩きをしているんじゃないか、日本は発展途上国、日本近隣の国々に追われているんだからということで、日本の近隣諸国、韓国、タイ、台湾、シンガポール、マレーシア、フィリピン、香港、日本ということで労働時間の比較がしてあるわけでありますけれども、これはちょっといただけないのではないか。今非常に重要なことは、先進国、欧米との貿易摩擦が起こっているわけでありまして、しかも諸外国からは、言うまでもなく日本は働き過ぎではないか、こう言われているわけでありまして、日本は余りにも働くものだからこれだけ製品をつくってきて自分の国に失業を輸出するじゃないかということで、問題になっているのは欧米との比較の問題なんであって、その意味では、この日経連の指摘というのはおかしいんじゃないか。  もう一つ。確かに私たちのところにも中小企業はたくさんありますから、発展途上国にいろんな条件で追われているということはわかります。しかし、それじゃそれをいつまでも頑張っていたら、発展途上国は行くところがなくなっちゃうわけですね。まさに、どなたかが言われましたように、発展途上国でできる、日本の近隣でできるお仕事はだんだん譲っていって、そして日本もだんだん産業の高度化をしていくということで譲り合って国際分業をしていかなければ、発展途上国は入っていくところがないと思うのであります。そういう意味で、この労働問題研究委員会の報告の時間短縮、週休二日制の問題については、極めて大変おくれた時代錯誤の指摘だと私は思っているわけであります。  特に、労働側で五団体でございますか、この週休二日制、時短につきまして統一的な要求をつくられたようでありますが、その件と、それから時間短縮、週休二日制の問題につきましてひとつ御意見藁科委員長からお伺いをし、労働大臣、私、この前もこの点について指摘をしましたけれども、どうも余り積極的でない。何かこの報告書では、いわば労働攻勢じゃなくて労働省攻勢だなどと、いかにも褒められているように書かれているけれども、そんなに労働省が一生懸命やっているとは私は失礼ながら思えないので、本当にこの報告書に書いてあるように、労働攻勢にかわって労働省攻勢が出てきていると言われるくらいひとつやっていかないと、労働省というのは何のためにあるのだ、行革されてしまいますよ。労働省が本当に林労働大臣になって大いに前進をしたということになるように、ひとつ労働省、より前に出ていただきたいと思うのであります。  そして最後に総理に。まさに心のゆとりのことを総理が言われたわけでありますから、週休二日制自体の取り組みの意欲をひとつ最後にお示しをいただきたいと思うわけであります。
  93. 藁科満治

    藁科参考人 我が国の労働時間が国際的に見て余りに長時間労働であるということは、もう論議の余地はないというふうに私ども考えております。そして今御指摘がありましたように、日経連の報告書の中では、これから追い込まれる開発途上国の問題を提起しておるわけであります。その事実を私どもはすべて否定しようとは思いませんが、今我が国の長時間労働が問題になっておる対象は、先進国の中でどのような責任を果たしているが、使命を果たしているかということでございます。  改めて言うまでもなく、日本の経済力はGNPで見ましても世界第二位でございます。それにふさわしい使命と責任を果たしているか、それにふさわしい国際的な公正労働基準を確立しているかということが今問われているわけでございまして、東京サミットでも、そういう観点から日本の経済の指摘が行われると思いますし、その前段行われる労働側の首脳会議におきましても、そういう視点から日本の責任が問われるわけでございます。私もこの労働側の首脳会議に参加する一員でございますが、そういう観点から我々の立場を明らかにしていきたい、このように考えております。  あわせて、最近一部に、日本の労働界の時間短縮の要求はややもすると国際的な要求や批判から出てきたのではないかという意見がございます。しかし、これは私は明らかに誤解だと思います。そういった背景も一面にあることは間違いありませんが、それよりも国内の主体的な理由がもっと重要な問題で登場しておるわけであります。  その一つは、技術革新の進行と減量経営の徹底によりまして、労働負荷が質、量ともに大変重くなっております。したがって、各労働団体の調査でも明らかなように、生活意識調査あるいはメンタルヘルス調査などによりまして、健康と休養を求める声が非常に強まっているわけです。そういう面からの労働時間短縮というものが、今非常に厳しく問われているわけでございます。  それからもう一つは、経済審議会、さらには産業構造審議会で強調されておりますように、この時間短縮によって生活を豊かにして、それを内需拡大に連動させる、こういう視点が極めて重要でございます。  こういう国内外の背景というものを我々は考えながら、労働時間の短縮について大胆な取り組みが必要ではないか、このように考えております。
  94. 林ゆう

    ○林国務大臣 労働時間の短縮につきましては先生御指摘のようなことでございますが、何よりもまた先進国としてよりふさわしい労働条件というものを考えていかなければならない、このように思うわけでございます。そういった中におきまして、労働省は昭和六十五年を目標といたしまして二千時間あるいは休日を十日ふやすといったようなことをただいまやっているところでございますが、二十一世紀に向けて、長期労働政策ビジョン懇談会というものを設置いたしまして、二十一世紀に向けて労働時間の問題をどうすればいいかというような御提案ももらいたいというようなことをいたしているわけでございます。労働省といたしましては、決して労働時間の短縮あるいは週休二日制の定着というようなことに手を抜いているというようなことではございませんで、精いっぱいの努力を今続けているということを御理解いただきたいと思います。
  95. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 一般論といたしまして、労働時間の短縮の問題については政府は前向きに努力してまいりたいと思って、またやっておるところでございます。しかし、日本の就業の状況を見ますと、やはり残業とか超過勤務が非常に大きい。普通の労働時間というのはアメリカあたりとそれほど大して変化はないが、超過勤務や残業でがたっとふえてきている、そういう現象が目につきます。これはやはり日本一つの生産形態を意味しておる。特に、中小企業そのほかの場合には残業や何かでやって、それが不況になるとレイオフにつながってくる、残業をやめる、そういう形の経営効率の問題もあると思うのですね。しかし、そういうような面も漸次改良していくべき対象ではないかと私は思います。  それから、週休二日の問題につきましても、政府は直接労使関係には介入できませんが、できるだけそれを広げていくように積極的に努力してまいりたい。しかし、当面すぐやれる問題が一つあると思うのです。それは有給年次休暇をできるだけ消化していただく。これは私、昨年からも、山口労働大臣のときからも積極的に、君、展開しろよ、そう言っておるのでありますが、日本が平均して大体十日前後ですね。ところがアメリカあたりが二十日、ドイツあたりですかになると三十日くらいになっておる。この大きな差をできるだけ早く縮める。やはりこれが一番手っ取り早い方法でありまして、労使ともに、あるいは官庁におきましても同じでありまして、年次有給休暇をできるだけ消化する方向でまた積極的に努めていきたいと思います。
  96. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 大変全般的な意味から総理から前向きな答弁をいただきましたので、労働省においてもぜひそういう線に沿って……。ただ、先ほど労働大臣からお話がありましたが、例えば審議会の委員の方をもう少し開明的というか、もう少し先を見れる方をあれしてもらって、労働基準法の改正で週四十五時間というので、週休二日にはするけれども、一日の時間を延ばすというようなあれではいかぬと私は思うので、そういう意味で人選についてもひとつお願いをしておきたいと思います。  藁科委員長、参考人として大変長時間ありがとうございました。  これで私の質問を終わります。
  97. 中島源太郎

    ○中島(源)委員長代理 これにて佐藤君の質疑は終了いたしました。  藁科参考人におかれましては、御多用中のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  この際、暫時休憩いたします。     午後零時二十八分休憩      ————◇—————     午後一時五十八分開議
  98. 小渕恵三

    小渕委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。岡田利春君。
  99. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 総理は、新しい年を迎えて、ことしはとら年でありますからトラにちなんだ話が随分多かったわけであります。しかし、今年のとら年は戦後四回目のとら年であります。過去三回のとら年はどういう年だったか、総理は御存じですか。
  100. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 よく存じておりません。     〔委員長退席、中島(源)委員長代理着席〕
  101. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 戦後初めてのとら年は、昭和二十五年、朝鮮戦争の勃発した年です。そしてその次は昭和三十七年、フルシチョフとケネディがキューバ危機で本格的にミサイルを撃ち合うかという、キューバ危機の年です。そして昭和四十九年、オイルショックであり、また田中さんが内閣を退陣された年であります。過去三回のとら年の事件を考えますと、ことしは大変波乱方丈だ。しかし、米ソの会談も行われておるのだから、戦争が勃発するような危機はないのではないか。しかし、あとの内閣の交代とかあるいはまた経済の大きな変動期、そういう点は今年のとら年の場合にも当たるのではないかな、こう思うわけであります。そういう意味で私は政治的に経済的に今年は極めて重大な転換の年である、分水嶺の年である、こんな認識をするのでありますけれども、いかがでしょうか。
  102. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 元日に申し上げましたように多事多難の年であると思っております。
  103. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 本論に入って質問いたしたいと思いますけれども総理総理大臣に就任して以来、私的諮問機関の設置についてしばしば国会でも問題になったところであります。昨年の十月の十五日でしょうか、ちょうど五つ目の総理諮問機関をつくられたわけであります、いわゆる経済構造調整研究会という諮問機関。今日の国際的な状況にいかに協調していくか、そういう点について、三つの点について諮問をされて、前日銀総裁の前川さんが座長になって今作業を取りまとめておる段階だ、こう承知をいたしております。恐らく、私的諮問機関でありますから、これまでの過程においても総理の会合に出席をされたか、あるいはまたメンバーの人々と懇談をしたのか、いろいろ意見の交換が行われておるだろうと思うのです。今、聞くところによりますと、作業委員会六名が指名をされて、加藤さん一名だけが民間人であとの五名はすべて過去の官僚出身の方々が起草委員会のメンバーになっておると私は承知をいたしておるわけであります。  そこで私がここでまずお聞きいたしたいのは、十月末に会議を始めてもう十回、今度十一回目の会合を終える、こういう審議の経過を聞いておるのでありますけれども総理は一体どこまでこの私的諮問機関の皆さん意見の交換をしてきたのか、同時にまた、今指摘をしたように作業委員会が設置をされておるわけでありますから、この答申はいつごろ総理のもとに届けられるという見通しなのか、承っておきたいと思います。
  104. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、時間の許す限り、ほとんど朝出席するように努めております。ただ、私は、議論するんじゃなくして、皆さんが何をおっしゃるか黙ってじっと聞いておるだけで、発言したことはございません。それは、皆さんの自由な御論議をそのままお聞きすることが大事であると思っているからで、今後もそうするつもりでおります。  いつごろまでにまとめるかということでございますが、この研究会は、一つには世界経済、世界情勢に調和する日本の産業、社会経済構造のあり方、改革するとすればどういうことが必要であるか、それから、日本が貿易収支等においてどの程度の見当を持っておったら一番いいと思うのであろうか、経済摩擦解消に関する問題、それから第三番目が、通貨体制についてどういうような通貨体制というものが望ましいものであろうか、大体この三つを中心にしていろいろ御論議願っておるので、恐らく結論が出てくるのは三月下旬ぐらいではないか、そう思っております。
  105. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 総理は昨年十月に訪米をされて、レーガン大統領と会われていろいろお話をされた中で、今回のこの研究会の設置について触れてレーガンさんに説明をされたと承知をいたしておるわけです。この総理の説明に対してレーガン大統領は、不均衡の是正につながるように私はその設置された委員会の成果を期待をしたい、こういう旨の発言総理にあったように私は承知をいたしておるわけであります。たまたま総理の訪米日程、四月中ごろといいますか、そのころにはサミットの準備の画的も含めて訪米をされるという外交日程が伝えられておるわけであります。前回のレーガン会談とつなぎ合わして考えますと、三月末に答申されたこの内容についてあなたはレーガン大統領に説明をするお考えですか。いかがでしょう。
  106. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 研究会の報告がいつごろ出てくるか、その結果を見まして、もし必要あらば、大体こういうような調子のものが出てきておるということがあり得るかもしれません。またしかし全然決まっておりません。
  107. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 この委員会の任務から判断しまして、当初は国際通貨の問題を一義的に取り上げる、恐らくそういう態勢で前川さんが座長になられたと私は思うのです。しかし最近の審議状況は通貨問題よりも、これが大分後退をして、いわば産業構造調整、産業構造の改革という点について随分真剣に時間が費やされておるのではないか、こう私は仄聞いたしておるのであります。そうしますと、どうも伝えられてくるいろんな内容を総括しますと、総理の意向というものがやはり非常にドラスチックに強烈に入っているんじゃないか、こんな感じが私はするのであります。総理は「新しい保守の論理」の中で、百三十三ページに「産業構造の変革とその条件」ということで記されておるわけでありますが、今の作業の動向を見ますと、全くここに書かれている総理の意向に完全に沿って作業をされている、このように私は理解をいたすのであります。私のそういう理解の仕方は総理の意図と合致をするのかどうか、伺っておきたいと思います。
  108. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、前から日本の産業構造というものは世界の潮流に合致したものであり、あるいはさらに時代を見抜いて、そして先導的性格を持ったものでないと日本は生きていけない、そういう考えを持っておりましたから、同じような気持ちを今でも持っております。そういう面から見ると今日の日本の状態は、かなりの経済摩擦を起こしておりまして、それは輸出入関係のアンバランスからきている点もございまして、そういう意味においては社会経済体質の改善を必要とするものありと考えて、そこで今研究をお願いしているわけですから、そういう方向で研究が進んでいるということは、当然私が考えても期待している方向でやってくだすっている、そう思っております。
  109. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 問題は、三月末になるのか、この答申をされた場合、総理は一体この答申をどのように扱うかということに極めて我々は注目をいたしておるわけです。答申を受けられて総理が今度訪米されたときに、去年の十月のレーガンさんとの話し合いから見れば、そのままストレートに我が国のこれからの経済の運営やあるいはまた貿易摩擦の解消、こういう施策として説明されるとするならば、私は極めて重大問題である、こう思うのであります。  あるいはまた、総理の私的諮問機関であります。それぞれ法によってこれに類似する、あるいはまたその部分を担当しているいろいろな審議会が今日設置をされて活動をいたしておるのであります、総理の私的諮問機関と法によって定められた各種の審議会との関係、これも私どもは極めて重大視するからしばしば総理の私的諮問機関というものが問題になってきたのであります。だがしかし、総理としては、言うなれば各省の縄張り、そういうものを超えてむしろドラスチックな方向でまとめてほしいという旨のことも非常に強くハッパをかけられておるということも漏れ承っておるのであります。そういう意味でこういう各種の審議会とそして総理自身が一体この答申をどのように扱われておるのか、基本的な考え方を述べていただきたいと思います。
  110. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これはどういうものが出てくるかまだわかっておりませんから、いただいたときによくそれを拝見してよく検討を加えて、それからどういうふうな扱い方をするか研究してみたいと思っております。いずれこれはしかるべき党あるいは内閣等において内容によりましては検討される内容ではないか、そう考えておりますが、ともかくいただいてからよくその処置を検討してみたいと思っております。
  111. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 だが、しかし、総理自身の諮問している問題は経済の構造改革でしょう。極めて基本的な問題です。基準・認証制度の改善、そして貿易摩擦に対する市場の開放の問題、貿易摩擦の解消の問題なんです。そしてまた国際通貨の問題、通貨制度のあり方。対外援助の問題もこれに含まれている。こうするともう我が国の内外政策の基本論について極めて幅広く、言うなれば普遍的な課題について諮問いたしておるわけです。ですから、普通の今までの諮問委員会とは違うのですね。安保の関係だとかあるいは官房長官の靖国問題の私的諮問機関とか、そういう内容と違うと私は思うのです。極めて国政の基本的な課題について触れられておるのですから、この答申が出されたとすれば、扱い方をどうするのかというのは大問題になると私は思うのですね。  少なくとも、従来諮問委員会の答申について国会指摘をされているように、この問題については慎重な上にも慎重に、しかもそれぞれの手続、ルールを経て発表するなら発表する、あるいはまたそれに基づいて施策を政府として、総理として進めていく、こういうことを約束していただきたいと思うのですが、いかがですか。
  112. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは、私のお願いに対する私的な研究会の報告というようなものであり、意見の表明であるというようなものでございますから、あくまで私的なものであります。  しかし、最近の日本をめぐる経済摩擦等の状況等を見ますと、外国側の関心は非常に強いようで、またある意味においては期待も強いようであります。そういう意味におきましても、出てきた研究報告については十分よく精査をし、検討を加え、そしてその扱い方についてはしかるべく適当な方法で実行していかなければならぬ、そう思っております。
  113. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 例えば、この研究会で取り上げている一つの問題として、我が国の貯蓄優遇税制の問題についても触れられておるわけです。いわゆるマル優制度。こういう税制については、消費を拡大していくという面からいっても、この税制の見直しをしてこれに課税をするという方向の意見がほぼまとまったとも言われておるわけです。そうするとこの分だけ税調が飛び出してきて、減税が先にありきじゃなくて、増税が先にありきということになってしまうのですね。こういう問題も出ておるわけであります。  あるいはまたドラスチックなのは、毎日新聞がすっぱ抜いておるのですけれども、経済構造改革の一つの例として我が国の石炭産業の問題を取り上げて、そして第八次の政策が今通産大臣から諮問されておりますけれども、これを半減撤退をして、第九次には全面撤退をする、そういう点についての検討、研究をされた一つの結果というものか提起をされる。大変ショッキングな話であるわけであります。装置工業と違って、資源産業といつのは我が国の生命産業である農業と同じようにいろいろな多くの問題を抱えておるわけでありますから、そういうものに一つの、私が今説明したようなインパクトを与えるというのは大変な波紋を描くと思うのです。そういう問題も提起をされてきておるのであります。  この延長線上には、三月から、農産物の非自由化品目である十三品目について、あるいはまた我が国の輸入割り当ての問題等について今厳しい交渉を開始しようとしている。経済、産業の構造改革というのはそういう意味でしばしば我が国の農業についても問題になってきておるのでありますから、同様な方向の手法というものがとられるのではないか、こういう心配を非常に今国民に与えておることも事実であるわけであります。特に一次産品の問題や資源産業の問題というのは産業政策からいえば極めて慎重に扱わなければならない問題だ、私はそう思うのであります。そういう点が、総理は知らないと言うけれども、研究している内容というのは既に国民の中に漏れてくるわけですね。総理は知らないはずがないと思うのです。総理自身は、いや知らない知らないと言いながら、陰では、ドラスチックな方向を期待しているとハッパをかけておるから、こういうことになるのではないかなという感じもするわけです。そういう意味で、総理諮問機関、その位置そのものが極めて問題だし、答申された内容が一体どう具体化されるか、これ自体も問題だ、私はこう思うのであります。  私が今指摘したような点について、これはまだ答申も受けてないから全然知らないという答弁でこの場を過ごしますか。
  114. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今その研究会でやっていることは、もっとマクロの一般論的な方向あるいはプリンシプルの話が中心でありまして、個々委員言葉の中にはそういうものが部分的に触れられることもあったかもしれませんが、そういうような一つ一つの問題をどうするかというようなことが研究会の重要な主たるアイテムにはなっていないのです。やはり私がこういう研究をお願いしたいと申した三つの大きな方向、プリンシプルについていろいろ議論がなされておるということなのでございます。したがいまして、恐らく研究会の報告の方も割合にそういう大きな方向づけというような意味が表へ出てくるのではないかと予想しておりますが、とにかくこれは見た上でないと確実なことは申し上げられないと思います。方向はマクロな、プリンシプルな、そういう問題であると考えています。
  115. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 マクロな、プリンシプルな方向を期待しておるとは言うけれども、やはりそういうことをまとめるのには基礎的な検討がなければ自信を持ってまとめられないものなんですよ。だから結局、例えば石炭的なそういう一つの政策の中身は一体何なのか、こういうものは必ず議論されるのは極めて常識であって、総理の答弁はごまかしだ、残念ながらこう言わざるを得ないと思うのであります。そこで私は、そういう意味で、まず、今の研究会の答申の内容について、また扱い方について、我々は重大な監視をしますし、注目をしているということだけは明確に念には念を入れて申し上げておきたい、私はかように思います。  そこで、これに関連して一つお聞きいたしたいのでありますけれども、急速な円高、急落しつつある石油価格の動向の中で、国際収支の問題、特に貿易収支の問題はますます難しくなってきておることは御承知のとおりであります。だが、この調整は、従来の手法ではこの貿易収支の問題を解消する、縮小するということはなかなか難しいと言わざるを得ないと思うのです。要するに貿易収支の均衡化を一体どう図るのか。そうすると一定のターゲットを決めて、目標を決めて、それはもちろんある程度緩やかなものでしょう、しかし、これは前進をするためには目標を決めて、均衡化目標といいますかそういうものを決めて、そしてその実現の方向に着実に積み重ねていく、こういう手法がなければならないのではないか、こう思うのであります。そこまで今来ているのではないか、こういう感じがするのでありますけれども、このような手法について総理はどういう御所見をお持ちですか。
  116. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 我々は社会主義経済のような統制や計画的なことはやっておりません。自由経済を信奉しているものでございますから、そういう意味のターゲットゾーンあるいはターゲットライン、そういうようなものを設定するという考えは持っておらないのであります。
  117. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 しかし、目標なき航海は羅針盤のない船がさまよってどこに着くかわからないというものであります。したがって、やはり何らかのめどがなければいかぬわけでしょう。江崎さんにこの機会にちょっとお聞きいたしますけれども、貿易収支、これはもちろん我が国は黒字である、それでもやはり節度が求められるわけでありますから、そうすると、大体国際的に容認をされる我が国の貿易収支、GNPで見ればどの程度が想定されますか。
  118. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 ちょっとGNPについては事務当局から御答弁させますが、私は、アクションプログラムというのは相当評価されていいと思うのです。これは宣伝不足もありますし、欧米諸国の理解の不足もありますから、これをフォローアップして、あのことを着実に行えば。相当な思い切ったことをやっておりますからね。これがまず第一点。それから、今後とも各種の規制、デレギュレーションの問題、これはもっともっと見直しをして着実に行っていくこと。それから、特定品目にかかわる急激な輸出というものを調整する、これは例えば自動車を二百三十万台に通産大臣が先手を打って抑えたということ、これなども重要な役割を果たしております。それから、今度のサミットで恐らく多角的な貿易交渉が行われるであろう、これも重要課題で、そういったことが今後の貿易摩擦を解消していく上に大変大事な問題だというふうに私は思います。  長くなりますが、私は、この円高のときにこそと言いまして、さっき佐藤さんにお答えしかけて、きょうは各委員会かけ持ちで三つも四つも歩いておるものですから、話が中途でやまったのですが、それは、円高のときに何もドル建てで、安く買えるものを高く買う必要はないわけで、しかしそういうことを続けておれば、買い手市場で輸入がたった三%しか円が通用しないというようなことは不当ですね。だから、円高のときに高く買うということはつらいことであるけれども、円高だと言って喜ぶ者があり、一方では塗炭の苦しみに陥る中小企業があって振り回される、こういうものをもっともっと国際化して、そしてバランスのとれるようにしていくのが今後の対策でなければならぬ。  それからもう一点、私、念のために申し上げておきますが、これはきのうも今の大統領の特別顧問にも申し上げたのですが、だんだんアメリカとの間には水平分業のような形が顕著になっておるのですね。それは五十九年、まだ六十年の統計が通産省で出ておりませんので申し上げられません。が、これは米社が日本の技術、勤勉意欲、こういうものを求めて、独自の立場で来ておるものが向こうへ逆輸出されるのが二十億ドル、それからOEMと言っておりますが、アメリカのブランド商品で合弁であるもの、これが五十億ドル、それからアメリカが完成品にするために不可欠の部品、これが八十億ドル、アメリカに出ていっておるわけです。それからVTRを初めアメリカでは全く生産をされていない、しかし消費者ニーズに合った商品が四十億ドル、そうするとこれは百九十億ドルですね。五十九年の統計で大変恐縮ですが、いわゆる六百十三億ドルの総輸出のうちの完全に三〇%というものは水平分業になっておる。これはもっと話せばアメリカ側もだんだんわかってくる話ですし、そういう形でアメリカとの産業は密接不可分である。こういうような点をよく徹底させていけば、私は話はわかるというふうに思っております。
  119. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 昭和六十年の上期の場合、貿易収支の黒字をGNPで見ますと、大体GNPの三・五%くらいになるのですね。先ほど総理は否定をされましたけれども、もしターゲットラインで一定の目標を定めるとすればGNPの何%、このあたりが一番妥当ではないのか。日本の場合にはほぼ二%ぐらいを目標にするのが一番いかがなものか、国民の理解と協力を得てそういう努力をする、こういうような説もあるわけです。そういう点については総理、何かお考えありますか。
  120. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 経済雑誌等を読みますと、一・五だ、二だ、三だ、三・五だ、いろいろそういう数字が出ておるようでありますが、そういうような先ほど申し上げたようなターゲットライン、ターゲットナンバーというものは自由経済下において出す考えは持っておらないと前から申し上げておるとおりです。
  121. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 この研究会でもやはり貿易摩擦の問題が相当大きなウエートを占めて議論されておるようでありますが、その中で特に、労働関係、労働時間の問題とか賃金の水準の問題、あらゆる角度から取り上げられておる、競争条件としてそういうものを整備しなければならない。  同時に、もう一つ、先ほど申し上げましたように、貯蓄優遇税制の問題が既に議論されていまして、税制についても、法人税あるいはまたかつては輸出優遇税制というものもありましたし、今度は国内消費優遇税制あるいは投資優遇税制、いろいろなものがあるわけでありますが、そのことも貿易摩擦を生む一つの要因である。そういう意味で、税制上も競争の条件というものをお互いにそろえてフェアな競争をしよう、そういう努力が必要であるという傾向も強まっていることは御承知のとおりであります。  この研究会でも、私の承知しておるところでは、税制について問題を取り上げて、言うなれば我が国が主導権を持って税制サミットを提唱する、そういう中で税制の問題についても各国間が話し合って協調の方向を求め合っていく、こういう積極的な姿勢も議論されておると思うのですが、こういう方向については、総理は、これもそこまでやる必要はないというお考えでしょうか。
  122. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 税制サミットというようなことが論ぜられたということは私は聞いておりません。恐らくそういうことはないんじゃないでしょうか。いまだ聞いてないから、そういう話はなかったんじゃないかと思います。  税の問題については、アメリカでは既にレーガン税制が議会で論議されて、いろいろ対象になっておるようですし、サッチャーさんも所得税減税そのほかも今やろうとしておるところですし、大体各国おのおのの構えが今決められつつある。我が国も今税調で大減税をひとつやってくれと頼んで勉強しておるところです。だから、税制サミットというようなものが、どうしてそんな発想が出てくるんだろうかと私は疑問に思っておるんで、多分そういうことはないんじゃないかと思っています。
  123. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 先ほど佐藤議員の方からもいろいろ円高問題については質問されておるわけであります。しかし、それぞれリーダーがこの円レートの問題について発言されるということは極めて注目を浴びますし、また重要であると思うのであります。総理国会では物を言わないのですけれども、仲間内になると非常に胸襟を開いて話をする、自分たちの仲間ですから結構でありますけれども。大体最近の円レートは底値の感じがする、いわば大体一ドル百八十円、しばらくそういう状態が続く、底の状態に来ている、底入れ感がするというようなことをさらっと述べるわけですね。今でも変わりありませんか。
  124. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 予算委員会というのは公の機関で非常に大事なところで、言葉を慎まなければならぬものですから、そういう数字に及ぶようなことは厳に戒めておるわけであります。ただ、申し上げられると思うのは、乱高下はいけない、それから急速な変動は回避しなければならぬ、そして長期的安定が望ましいものである、そういうふうなことははっきり言えると思うのです。
  125. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 日本語の解釈って難しいのですね。乱高下というと上がったり下がったりというのが普通じゃないでしょうか。急騰する、乱高のみするというのはこれはやむを得ぬですかね。これもやはり乱高下という意味に入るのですか。何か変動がなくても急速に上がるということもいけない、こういう意味でしょう。
  126. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 乱高下の次に、急速な変化と申し上げておるとおりです。
  127. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 江崎さんは大胆にこの問題について触れられておるわけですね。との点はやはり今の産業調整という面から見て、また我が国の経済運営のある程度の安定的必要な条件というものがありますから、そういう角度から素直な発言であったのではないかなと、こう私は思うのですけれども、そういう私の理解、どう御発言でしょうか。
  128. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 余り大胆に発言した覚えはありませんが、大体二百円程度というようなことを私は申し上げたことはございます。これはよく常識的に言われる範囲ということであって、総理が言われるように、上がるにしろ下がるにしろソフトランディングしていくことが大事でございまして、急激なことが大変な大騒ぎを起こすということですよ。ですから、やはり私は円の国際化をもっと進めるべきだ、そして余り円高であれば、ドル建てで案外もうかるといって一時的には喜んでもその次にはまた悲しみが襲う、また混乱が襲う、だからそういうゆとりのあるときに対策をしなければならぬ、これは財政当局として考えてもらいたいということを申し上げておるわけです。
  129. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 日銀総裁、大蔵大臣もこの点についてはなかなか、数字の問題については触れられておりませんけれども、しかし共通して触れられておることは、当面の相場が安定していることが望ましいということを言っているわけです、当面のですよ。当面の相場が安定することが望ましいということは、大体百八十円程度が安定していることが望ましい、素直にとれば。だから百八十円程度が相当期間安定する、このことを期待しているということになるわけですね。そういうぐあいに理解するのですけれども、日銀総裁は当面の相場が安定することが望ましいという御意見は、そういうぐあいに解釈してよろしいんでしょうか。両方御答弁願いたいと思います。
  130. 澄田智

    ○澄田参考人 私ども繰り返し申し上げているわけでございますが、特定の為替相場の水準を、これは数字でもって示すような水準でございますが、それを念頭に置いて申し上げているわけではないわけでございます。ただ方向といたしましては、対外不均衡の是正というような、そういう意味からいって円高基調ということ自体は望ましいことである、しかし、当面におきましては為替相場が安定的に推移することの方がより望ましいと考える。これは円高に対する産業界の対応といったような問題もございますし、当面においてはそういうふうに安定的に推移することの方がより望ましい、こういうふうに申し上げている次第でございます。
  131. 竹下登

    竹下国務大臣 きょうの前場の引きが百八十一円とか、あるいは午後の寄りつきが百八十円八十銭とかいうように毎日、時間ごとにいただいておるわけでございますが、今、日銀総裁のお答えというのが非常に正確だというふうに思います。
  132. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私は日銀総裁また大蔵大臣が、ニューヨークのG5、その後ロンドンにおけるG5、こういう経過があるわけですが、このG5の経過の中で認識が変わっておるんではないかなという感じがするのですね。というのは、ニューヨークのG5が終わってロンドンのG5の会議に臨む前までは、大体円の調整も順調に、当初思ったより進んで二百円どまりかな、この辺で当分安定をするということが望ましいな、そういうところへ落ちつくのではないか、こういう感じがやはりあったんだと思うのですね、これは後から聞きたいと思うのですけれども、ところが、ロンドンのG5の会議に臨んだところが、どうもそうではなくしてそれ以上の円高をアメリカ側が強く期待をしている、そういう点が明らかになって多少のショックも受けて、二百円以上の円高誘導にある程度の介入を含む管理相場の方向を目指さなければならない、こう決意を固められてロンドンから帰られた。そしてその後百九十円台、百八十円台、突風的に百七十円台の円レートに乗ったということではないかと思うのです。  同時にまた、アメリカ側の財務長官や金融筋の関係のそれぞれの発言等も総合する場合に、結局今の百八十円台も踊り場論ではないのか。安定が望ましいということも踊り場論であって、やはりそれ以上に円高は管理され、そして円が高目に推移をしていくという方向は避けられない。問題は、従来の急速な円高上昇というものを多少踊り場論的に安定的な面を置いて、そしてその後はまたさらに円高の傾向は続く、こういうことを、私ばずっといろいろな情報を読んで、またいろいろ人からお話を聞いて総合すると、そういう判断に立たざるを得ないのです。  ですから、やはりそういう移り変わりがあったということは情勢判断が甘かった。財務当局あるいはまた金融筋の判断は、ニューヨークのG5その後の状況、そしてロンドンのG5その後、こういう点で、私は認識のそういう指摘をした違いがあったとすればやはり甘さがあった、こう指摘をせざるを得ないと思うのですが、この点について大蔵大臣、日銀総裁、いかがでしょうか。
  133. 竹下登

    竹下国務大臣 ロンドンでお互いの共通認識として決まりましたのは、九月二十二日のG5以来とった行動は間違っていなかった、そして非常に安定的な傾向にあるから後戻りすることはやめようや、これが一つです。それからもう一つは、インフレが鎮静しておるから利下げの環境が整っておる、これは中央銀行の方でいろいろ御協議なさるだろうという、この二つが大体の合意であったと思うのであります。  今の岡田さんおっしゃいますのは、そういうことを、我々の間ではございませんが、言う人は確かにプロの中におります。恐らく計画的にある種の台を続けておって、その間産業界がそれに対応する準備があって、そうしてそれが済んだらまたいま一歩ドル安傾向とでも申しましょうか、そういう方向に行くというような管理的な行為をG5が底意に持っているのじゃないかと。が、それはございません。やはりこれは、市場の実勢があくまでも尊重されるべきものであるというこの筋の上に立って、またG5というのが、そこのところは難しい問題でございますが、そもそもがインフォーマルな非公式な会でございますよね、どこかの国際条約で決まっているというものじゃないわけですから。したがって、そういう踊り場を一つずつつくりながら、そういう方向へ誘導していこうというような考えは全くありません。
  134. 澄田智

    ○澄田参考人 ロンドンのG5におきましては、ただいまも大蔵大臣もおっしゃいましたが、ニューヨークのG5以降の為替面における成果というものを後退させない、後戻りさせないという合意はできました。その合意の結果、市場ではどう受けとめられたかと申しますと、市場の心理といたしましてはドル高方向、円安方向ですね、それに対しては、ロンドンのG5において合意ができているということによって壁ができた。したがって、市場の動く方向は円高方向、ドル安方向であるというような、そういう市場心理がロンドンのG5以降できたと思います。そこへいろいろ要因ございますが、昨年度のアメリカの大幅赤字、日本の大幅黒字、さらに石油の価格が大幅に値下がりするということで日本の黒字はさらに増大するであろう、こういうようなことが重なりまして、市場心理として円先高というような市場心理ができまして、ロンドンのG5以降、一月下旬以降一段と円高が進んだ、こういうふうに理解をいたしております。  したがいまして、今もお話にありましたように、これは市場がそういうふうに動いて、それがロンドンのG5を一つの契機にして動いた、こういうような感じがいたしておる次第でございます。
  135. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 本委員会でもしばしば指摘をされておるように、昭和五十三年に一ドル百七十五円の円高の時代に、いろいろそのとぎの情勢と今日の情勢の判断の仕方について議論も行われておるわけであります。ただしかし、今回の円高、六カ月の間に二五%も急上昇したという、スピードがこんなに速い状態ではなかったということははっきり言えると思うのです。また景気自体も、かつてはそのときには上昇局面でありましたけれども、今は横ばいの状態にあるという状況。それと、競争相手の条件が非常に変わっている。かつての中進国の場合は相当差がありましたけれども、最近は中進国の産業発展が目覚ましいものがあって、もうアメリカ市場なんかでもすぐ代替していく、こういう状況がある。そして我が国の景気は、依然横ばいが続いているという状況であります。  ですから、こういう状況であれば、例えば短期金利なんかを引き上げて、いわば誘導するという施策を日銀はとったのでありますから、そういう手法でもって介入をいたしたのでありますから、そうすると今後急上昇に円が上がる場合には、逆介入するという場合があっていいのではないか、管理フロートですから。そう私は判断するのでありますが、そういう場合にはそういう用意があるのかどうか。それともドルが急落をする、暴落をするというような局面、そういうおそれがあってアメリカが要請しない限りは、日本の場合介入するということはないのだ、アメリカの要請がある場合にのみ介入するのだというようなことなのか。この点はある程度お話しできるのじゃないでしょうか。いかがでしょうか。
  136. 竹下登

    竹下国務大臣 これは、ウィリアムズバーグ・サミット以来続いておることは、有用と認めた場合には共同した行動をとろう。それでは、その有用と認める範囲は、基準はどうかというと、それはないわけですよね。したがって、ウィリアムズバーグ以来、数年後の先般のニューヨークG5というのは、結果として有用と認める合意ができたというところに、非常にドラスチックと申しましょうか、そういうことであったではなかろうかというふうに思っておりますから、有用と認めるときにはいつでも介入というものは残された手段としてあり得る。しかし、どこが、どういうときが有用か、こういうことになりますと、これはまたちょうどドルの適正レートを通貨当局が発表すると同じようなことになるんじゃないか、こういうことであります。
  137. 澄田智

    ○澄田参考人 いつ、いかなる場合に、いかなる介入を行うかということにつきましては、どうしてもやはり当局者の口から申しますれば、それは当然に市場にいろいろの憶測を起こします。無用の憶測を招くおそれがございます。したがいまして、介入につきましてコメントを申し上げることは差し控えさせていただきたいと存じます。御了承いただきたいと思います。
  138. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 アメリカのベーカー財務長官とか、あるいはまたボルカー連銀の総裁、なかなかしかし味のある証言をいたしておりますよね。竹下さんと日銀総裁にそういう味のある答弁を期待したのですけれども、難しいようですね。しかし、味がなければ経済運用もうまくいかないのでありますから、少し味をつけてぜひお話を願いたいものだということを期待をしておきたい、かように思います。  そこで、円高デフレの影響についてこの機会に承っておきたいと思うのであります。  いろいろ経済企画庁は経済企画庁で調査もされているようでありますし、また通産省は通産省でもいろいろ調査をされています。その認識が今後の政策を決める、私はこう言っても差し支えないと思うのであります。この円高デフレの影響というものは、もちろんこれに油の価格が急落をしているという状況も現在の情勢はつけ加えられておりますけれども、いわば経済学的に見て、数量的に見てこの円高デフレのマグニチュードの値はどの程度のものなのか。これは経済企画庁長官でしょうか。
  139. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 インターバンクの対ドルレートの変遷ぶりをずっと見ておりますと、ちょうど去年、一年前、六十年の二月が二百六十円二十四銭、ちょっと一年間でこれだけ大きな変化があったわけでございますから、現在の状況、百八十円台の初頭というような状況を見ておりますと、三五%近い円高が一年間に起こった、こういうことでございます。殊に、ことしになりましてから相当激しい状況でございましたので、我々としては、先ほどから累次大蔵大臣、日銀総裁からもお話がございますように、取引の安定という点から考えましてこういう急激な円高というものは、殊に弱小中小企業に相当の広範な影響が出ておるのではあるまいか、こういうことで現地の調査もいたしまして、話も十分承っておるわけでございまして、先般国会で御審議をいただき、成立をいたしまして、本日から公布しております中小企業業種転換等特別措置法の適用、こういったことを迅速に行う必要のある場合には行わなきゃならぬと考えておるわけでございます。  他方、このような円高は、当然それに伴う交易条件の改善で十分なメリットも期待できるわけでございまして、この面も十分我々は見てまいりたいと思っておるわけでございます。
  140. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 国民の側からすれば、こんなに円が急騰して、それじゃ貿易収支の関係では、アメリカではそういう円高の効果というものはぴちっと出ているのかどうか。また日本の場合に、これは実感として、二五%も円が高くなったのに生活実感としてどうなのか。アメリカの方も余り出ていないと、こういうのですね。一〇%ぐらいじゃないか、こういうのでしょう。ところが、日本の場合はまるきり感じないわけですよ。一体そんなに円が高くなったか。名目的におれらの給与、所得が高くなっている、アメリカ日本の労働芸の賃金の差がぐっと縮まった、しかし、何も生活は変わらないのであります。  そうすると、やはり何かをしなければいかぬですね。いろいろ政府は去年からやっているけれども、さっぱりだめですね。それぞれ農林省は農林省でやっているし、大蔵省では酒をどうするとが、通産省は特に消費財を中心にしてやっているわけでしょう。余り効果が出ていないわけです。私はこの機会に、消費を進めるならば、思い切って我が国に輸入している特に生活消費財の関係を中心にして、この品物はアメリカで、あるいはまたロンドンで、あるいはまたパリで幾らで売られていますというぐらいの情報を流したらどうか。そうすると私は自然に——もちろん関税もかかるし、それから輸送料もかかるし、適正マージンも入るわけでしょう。しかし消費者としては高いかどうかという判断はつくのですよ。でなければ、もう消費者は判断つかないわけでしょう。その程度の情報をこの情報化時代に流すということは、中曽根さんが何か百ドルを買いなさいとかなんとかという宣伝をするよりもずっと効果があるのじゃないのか、ぜひやるべきだ、こう思うが、この点についてどうかというのが一つ。  それから通産大臣に、通産大臣は非常にわかりいい財政説明なんというので有名な、ミッチー節で非常に有名な話術の上手な方なんですけれども、やはり円高を還元するということをわかりやすくやったらいいんですよ。わかりづらくやるべきじゃないんですね。わかりやすくするにはどうしたらいいかというのは、毎日家庭でたいている灯油の値段が下がるということですよ、車に入れるガソリンが下がるということですよ、そして電気料金が、油が高くて円が安い場合にはぐんと五〇%も上げたんですよ、だから下げるということですよ、今までの分を還元するということですよ。この私の言ったことをやらぬと、これは参議院選挙はわからないですよ。自民党は後退するんじゃないでしょうかと言う人の心配もあるのですけれども、わかりやすいことを今やるべき時期なんですね、今の貿易収支の関係から見ても、内需を拡大するという面からいっても。アクションプログラムにいろいろなことを書いているけれども、さっぱりこれは行動計画ではなくて、いつでも目安なんだ、目標なんだ、ターゲットラインなんだ。だから、そういうことをやる、やるべきことをなぜやらぬのかと私は不思議でしょうがないのですね。この点についてお答え願いたいと思います。
  141. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 わかりやすくやるつもりなんですが、どういうようなやり方が一番わかりやすくて一番効果があるか、今各党挙げて内需の拡大をやれとみんな言っているわけでしょう。内需の拡大をやるにはどうするか。公共事業をやれとか減税しろとか金利を下げろとか、いろいろなことを言っている。一番皆さんから要求の強いのは公共事業。一番強いのです、これが。どういうようにやったらいいのか、皆さん意見も聞きながら、国民経済に一番役立つようなことで、景気の後退にできるだけ歯どめをかけて前向きになれるようなこと等を、皆さんの知恵をかりながら目下勉強中であって、そう長いことはかからぬわけですから、五月の末までにはわかりやすくやりたいと思っています。
  142. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 参議院選挙前にはやる、こういう何か強烈な感じがします。  総理、今私ちょっと言ったのですけれども、どうですか、あなたは先頭に立って消費の勧めをやったわけですから、外国で総理の買われたネクタイは幾らぐらいで売られている、あるいはこういう品物はパリのデパートではこの程度で売られているというぐらいの情報を国民に提供したらいかがでしょう。やるお気持ちはありますか。
  143. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 輸入品についてはいろいろな苦情やら論議もありまして、この間もテレビを見ていたら、ウイスキーについて一万円はひどいじゃないかといったら、いや、下がった場合でも上げやしないんです、常時安定しているということが信用力を増すもとなんです、そういうようなことを言っていましたですね。しかし、今電力の問題についてもこういういろんな問題が起きているわけでありまして、やはり円が強くなったら国民が納得するような措置を輸入業者もしてくれれば、信用がますますついて売れるんじゃないか、そういう気がいたします。ただ、日本の場合はソールエージェントの問題がありまして、代理店の独占、価格の独占、そういう気がなきにしもあらずで、こういう点は通産省からできるだけ監督してもらいたい、そう思っておるのです。
  144. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 通産大臣も、公共投資とかいろいろ、わかるんですよ、考えておられることは。例えばケーブルを埋設するとか、今度議論になったでしょう。それは後回していいのですよ。もちろん、ある程度のものを先にやるというのですから、そして、その次の段階の中で考える。一番先に考えるのがそのこと、それから次にそういうことを考えたい、こういう順序を考えられた方がいいと思いますね。  そこで、ひとつ時間がありませんから、この機会に油の問題について承っておきます。  ヤマニさんがきょう日本を訪れているようですね。今後の国際市場の石油価格がどうなるか、石油最大消費国として最大の関心事だと思います。これもやはり乱高下はいかぬわけですね、ある一定の上下はいいですけれども。非常にその点についてこれをどう見きわめていくか、問題であります。特に、産油国と消費国あるいはまたOPECと非OPEC、この対話もなかなか進まない。しかし、このままで済まないことは明らかだと思うのですね。そうすると、我が国は最大消費国であるけれども、消費国の立場として、特にこの国際的な石油市場の動きに対して、我々の基本的な考え方をやはり明確に示す立場に必ず立たされると思うのですね。この機会に、基本的な立場をひとつ明確にしていただきたい、かように思います。
  145. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 石油が急激に上がったために世界経済を混乱に陥れたことは事実なんです。石油が下がるということは、日本経済にも世界の経済にもある意味では大変役立つと私は思います。しかし、作用があれば反作用が必ずこれはあるわけですから、そこで、急激に下がる、これも程度問題。そしてまた上がるというようなことになると、世界の経済はむしろ混乱をいたします。したがって、ある程度下がるのはいいですが、歓迎すべきだけれども、これは安定的なものでなくちゃならぬ、そういうふうに考えておるわけです。先ほど石油のメリット還元みたいなことを言われましたが、これは市場を通じまして自動的に還元をされるという仕組みになっておるわけであります。
  146. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 内需拡大の問題について二、三承りたいと思うのですが、その第一点は、建設大臣もお忙しいようでありますから、私どもは今度の予算要求の中で、特に住宅減税の問題について強く訴えておるわけです。当面、税額の控除の額を住宅ローン残高二%相当に引き上げてほしい、そして適用期間も延長し、そしてまた適用対象も拡大してほしいという予算要求を我々四党がいたしておるわけであります。この総額は二千億に達するわけであります。これは住宅税制の問題についても議論されておるわけでありますけれども、私はぜひこの点は一歩も二歩も進めるべきであると、こう思うのであります。アメリカの場合には、住宅ローンの金利の控除、本人分だけだというのがレーガン提案でありますけれども、もうセカンドハウスも認めているわけです。もちろん、アメリカは住宅に投資することが景気刺激になるわけですから、多少日本とは違うでしょうけれども日本も住宅水準が低いことは明らかでありますから、これを引き上げなければならない。  そして今日、若干の住宅減税が行われたわけでありますけれども、これも焼け石に水だと思うのであります。何といっても、毎月長期にわたる住宅ローンの金利というものは大変な負担になるわけです。残念ながら、この点もまだ住宅金利の引き下げについて大蔵省と建設省が依然対立をしている、こう伝えられておるわけであります。やはりここまで内需拡大という問題が注目をされれば、また常識的に次の第二回目の公定歩合の引き下げが、時期はいつかは別にして、近く行われるというのはもう世間一般の常識でしょう。もう経済界の常識になっているわけですから、そういう情勢を判断する場合に、この問題は速やかに決着をつけてしかるべきではないのか、こう私は思うのであります。ぜひ五・五%の金利の引き下げあるいはまた六・四%の金利の引き下げについては、今日的情勢からいえば大蔵省としても踏み切ってこのことを決定をすべきではないか、こう私は思うのでありますけれども、どんぴしゃりその判断の決断をこの機会に答弁してほしい。初めに建設大臣から一言お聞きしたいと思います。
  147. 江藤隆美

    ○江藤国務大臣 この前から申し上げましたように、住宅減税は今回公的ローンにまで及ぼすようにした、それをもっとやれ、それから三年を五年にせい、これは多々ますます弁ずでいいわけでありますが、ことしの減税五百億のうちの三百九十億は住宅減税で頑張ってきたわけでありますから、まあこれでひとつ様子を見させていただこうと。それから、住金の融資枠の拡大あるいはまた融資条件の緩和等も行ってまいりまして、ただいまお話のありました公定歩合〇・五%の引き下げに伴う分につきましては、つい先日のこの予算委員会でも議論のあったところでありますが、大体大蔵省と話がつきまして、五・五%分につきましては七年目にして初めてこれを五・四%に、六・四%分については五・九%に、六・八五%分については六・四%にそれぞれ引き下げをする、こういう合意ができたわけですが、施行令の改正等もございますから、これから若干のそういう手続を踏みましてなるべく実効ある施行を行いたい、こう考えておるところでございます。
  148. 竹下登

    竹下国務大臣 住宅税制についてはお話がありまして、それから月曜日から財投の預託金利が決まったのを受けての両省の折衝は話がついたばかりでございますが、今建設大臣から御発表があったとおりでございます。
  149. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 建設大臣、もう一つ承っておきますけれども、先ほど民活の問題で東京湾の横断道路の大演説を聞いたわけです。しかし、民活、民活と言いますけれども、民活というのは限定されるわけでしょう。といいますのは、これはどうしても資本のあるところ、集積メリットの多いところなんですよ。これは関西空港についても明石架橋にしても全部そうなんです。そしてまた、一極東京圏集中化を奨励する政策でもあるわけです、残念ながら。今は分散の時代なんですね。これを集中化する、今やもう三大圏じゃなくして、東京一極集中だ。北海道であれば札幌市一極集中化が進んでいる。こういう傾向が全国的にあるわけです。だから、そこの金を活用してそこでもって民活をやるということは、さらにそういう集中を促進することにもなるんだという常に反省をしながらやらなければならない問題だと思うのであります。  ところが地方には民活というのはないわけでしょう。地方の過疎地帯、小さな都市にはないわけた。できないわけですよ。やはり国か、あるいはまたそれぞれの県段階、あるいは市町村段階の公共事業、こういうものが主体にならざるを得ないわけですね。それが相まって初めて民活が生きてくる。ところが従来の公共事業は、従来のベースで配分して、そして集積メリットのある地帯、そういう負担能力のあるところでは民活が行われる。またそういうところと地方との格差は拡大するわけですよ。そうしますと、結局公共事業というものはそういう民活も考えながら思い切った配分をしないと、全国的な景気回復、こういう方向に行く軌道には乗らないわけですね。これは建設省が一番配慮すべき問題だ。宮崎もそうですけれどもね。私のこの主張に対していかがでしょう。
  150. 江藤隆美

    ○江藤国務大臣 ここで東京湾道路の話をするのはどうかと思いますけれども、一応東京に集中するものをあそこで、北海道から東北、北陸を通って高速道路が延びてくるのを、東京湾を通して壮大な一つのバイパスにしよう。これは岡田さんも御承知のように、高井戸の高速道路一つとっても十年かかりましたね。それから東京の環状道路あるいは外郭の連絡道路をつくろうと思ってもなかなかできない。ですから、ひとつそういう意味日本国土の全体のバイパスという考え方をしておるわけであります。     〔中島(源)委員長代理退席、原田(昇)委員長代理着席〕  それから民活も、元年と言われておるから、これは中央で大プロジェクトができればそれでいいという問題ではありませんで、今全国で、これは北海道もあるのです、一応挙がってきておるのは五十八ありますが、これは私がなったときにもう既にあったものです。しかし、それではだめですから、これはやはり省を挙げてやろうということで、先般来、大臣を座長として建設省の内部でひとつしっかり練り上げよう、そして、小さなものの方が地域社会に密着するのですから、そういういわゆるプロジェクトを拾い上げていこう、それを成功させるためには一体公共事業、我々政府が何をなすべきかということも一つ一つ細かにやっていこうということで今そういう推進会議をつくりましたわけで、これからそういう皆さん方の、この東京湾の問題を境として地方開発をやるべきではないかという御意見がたくさん出てくると思います。そういう御意見を承りながら、公共事業の配分等についてもそれは当然でありまして、都会、三大、四大都市圏においてはやはり隆路の打開、地方においては地域開発。景気回復という大きな役割を持つわけですから、そういうことを念頭に置いて弾力的に予算の配分、執行等をやっていこう、こう考えておるところでございます。
  151. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 総理に大分時間を与えましたから、総理に質問をいたしたいと思うのです。  最近政府も余暇の経済学に非常に注目をされて熱心になりつつあるなという感じが私にもするのであります。そこで私は、ここで総理考え方を聞いておきたいと思うのですが、労働時間の短縮とか週休二日の問題、あるいは先ほどは有給休暇の問題についても総理は触られておるわけです。  しかし、この問題は建前論ではなくして本当に本音論で今進めなければならぬ段階に来ていると思います。まず公務員は先憂後楽、こう言うけれども、この問題を解決するためには、これこそ公務員が先楽後憂でいかなければならない、もう民間のベースでは二七%週休二日制が実施をされておるわけでありますから。そうすると、公務員の完全週休二日をまず実施する、そして金融機関の週休二日を実施する、そしてさらに週休二日が広まっていく。中小企業の場合になかなかそう簡単にいかない、これにはある一定の時間を置かなければならぬでしょう。これこそターゲットラインでやるべきじゃないのか、国民的目標を設定すべきだ、そういう段階に来ている、そういう決意がなければいけないと私は思うのであります。幾ら自由主義だって労使の関係があるといっても、公務員ならできるわけでしょう。そのことによって誘導できるわけですから。そういう意味でこの問題についてはぜひその点を考えてほしいというのが一点と、同時に、私はこの機会に、伝統的な我が国民の勤労観、今我々に望まれる日本国民の勤労観、こういうものについて、文化を非常に説かれる総理の基本的な考え方をこの際に、承っておきたい、こう思うのです。
  152. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 一言で言えはよく遊び、よく学べ、それが一番わかりやすくはっきりしたことなんで、岡田さんも小学校のころ私と同じように学ばれたのではないか。年をとってからもこれを実践するように努めていきたいと思っております。
  153. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 今、公務員から週休二日をやるべきだ、そういう時期に来ているという認識はいかがですか。これも国民的目標を決めてやるべきじゃないですか。そこまでもう世論も国際環境も、主体的にそういう状況になっているのじゃないでしょうか。幾ら企画庁で言ってもだめなんですよ。そういうポリシーを持ってしっかりリーダーシップを発揮すべきだと思うのですね。いかがですか。
  154. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 公務員はやはり先憂後楽が正しい。(岡田(利)委員「この点は先楽後憂でいいですよ」と呼ぶ)いや、この点でも先憂後楽だと思います。  ただ、私が先ほども申し上げましたように、有給休暇をともかく余り残さないように、みんなで一、二、三でやろうじゃないか。今までの日本の役所の風習だと、課長補佐とか課長とかそれぐらいになると、同僚が休まないと自分も休めない。目くばせして一緒に休むということをなかなかやりませんね。これをみんな安心してお休みなさい、そういうふうにしていけばこれはいけるだろうと思うのですね。ですから、とりあえずはこの夏休みぐらいから有給休暇をできるだけ消化するように、去年でももう二日ぐらい平均的に延ばしたらどうだ、そういう議論もあって、山口労働大臣に積極的にやりなさい、そう言ったのですけれども、結果を見るとそれほど芳しくないようでした。やはり一番手っ取り早いのはこれじゃないか。ほかの問題は人事院勧告を必要とします。そういうような面で人事院が独立にいろいろ判断……(岡田(利)委員「目標だよ、ターゲットだよ」と呼ぶ)いや、人事院に強制することは我々できません。人事院の総裁以下人事官というものがあるのですから、それらの方々の判断にも従う、そういうことであると思います。
  155. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 総理というのは非常に建前と本音の使い分けがうまいのですね。対米配慮なんというのは建前論が非常に多いですね。本音はまた別にあって、なかなかついていけない。私は三年間ずっと見ていまして、非常に建前諭も、しかも先手を取って、時をぱっと選んで、あとはもうどうなるか余り考えないでやる、そういう手法が非常に上手だ。感心しているのですよ。だけれども、政治はそれだけじゃ困るのです。やはりこういう点なんかは、今有給休暇の話が出ましたけれども、大体十五・何ぼでしょう。八・六か七じゃないですか、消化しているのは。では総理は、労働基準法でこれを改正して、有給休暇は経営者はとらせなければならない、このように定める方が望ましいと思いますか。ある国の憲法ではそう書いているのですよ、これは資本主義の国の憲法で。総理がそこまでおっしゃるのなら、そのくらいやらなければいかぬですよ。この点いかがですか。
  156. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やはり世の中というものは調和がうまくいくということが大事なんで、しかし、有給休暇に関してみますと、外国と比べてみて著しく消化不足である。で、一番手っ取り早いのはこれではないか。有給休暇については人事院勧告なんか要らないのですから、上司がしっかりやればいいのですから。ですから、そういう形でひとつ実行したらどうかと思うのです。
  157. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 労働組合がないことを誇りにする経営者がまだ非常に多いという我が国の企業の実態、しかも企業とか法人が二百万あるのですから、こんな国ないですよ。何でも法人ですから。二百万人の社長さんがおる国なんてないですよ。アメリカでもないでしょう。そういう実態をやはりよく分析をして考えなければいかぬですね。  労働大臣、総理は今そう言いましたけれども、労働政策を預かっている労働大臣として、週休二日、時間短縮をやる。一定の目標を定めてやらなければならぬですよ、国民的目標を定めて。そして人事院勧告の中でもそういう努力をする。また、民間はやっているのですからね、労働省はそういう指導をしているのですから。今の延長線上ではだめなんですよ。もうそういう時期じゃないわけですよ。有給休暇だってそうでしょう。今総理はきれいごとをおっしゃいますけれども、我々は実際よく知っているわけでありますから、だからむしろ第一段階としては与えなければならない。与えるだけではなくて、とらせるように最大限の努力をしなさい、それから完全にとらせなさい、こういう方向でいかなければだめだと思うのですよ、今日の段階は。この点いかがですか。
  158. 林ゆう

    ○林国務大臣 労働時間の短縮というものは今大変大事な国民的課題になっている問題でございますが、確かに先生おっしゃるとおり、ただ単に労使の問題だけでなく、消費者も含めた国民生活全般にかかわる問題であろうかと思います。そういった意味で、国民的目標が必要であるということは先生御指摘のとおりであろうかと思います。  その国民的目標と申しますと、長期的なものと、あるいはまた当面行政を通じて進められるべき目標という二通りがあろうかと思います。  それで、その中で労働省といたしましては、当面の目標といたしまして、昨年十月の経済対策閣僚会議で決定されました内需拡大に関する対策、あるいは昨年十二月に経済審議会から閣議に報告されましたリボルビング報告の趣旨を踏まえまして、昭和六十五年までに十日ぐらいの休日の増加とあるいはまた年間二千時間、こういったようなことを積極的に今進めているところでございます。また、内需拡大に関する対策といたしましては、金融機関が週休二日制をことしの八月からふやすというようなこと、こういったものを一つの戦略といたしまして、周知徹底というようなことにやってまいりたいというふうに思っておるわけでございます。また、大企業につきましては所定労働時間はほぼ欧米並みでございますけれども、その一方で、さっきも先生御指摘のように、年次有給休暇の消化とか所定外労働時間についてはまだまだ問題が残っておるように思うわけでございます。そういったことで、労働省といたしましては、年次有給休暇の完全消化とかあるいはまた連続休暇というようなことも含みまして今指導をしているようなことでございます。  また長期的な部分につきましては、労働省で先般、長期労働政策ビジョン懇談会というものをつくりまして、長期的にこういったような問題もいろいろ御提言をいただき、そしてそれを具体的に取り上げてまいるような方向に進んでいくというようなことを今話しているところでございます。
  159. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 総理、よく学べ、よく遊べも結構ですが、一番よく学びよく遊ぶ、よく働いてよく遊んでいるのは経営者かもしれませんね。ゴルフをやったり料理屋へ行ったりして三兆六千億も使われているわけですから。だからよく遊んでよく働いているという象徴かもしれません。しかし、それだけではもう通らないのですね、やはり我々の子供の年代は生活価値観が違うのですから。ですから、本当に誘導するならば、そういう新しい生活価値観というものを、我々は方向性といいますか課題を常に与える、こういう姿勢で進めていかなければならない問題ではないかな、こう思います。  そこで、時間がありませんので税制問題をちょっとお聞きいたしますけれども、もう総理は、税調会長も言われておりますし、この春には減税、本格答申は増税、こういうことをおっしゃらないのだと思うのですね。私は以前に有力メンバーの一人に会いましたら、こう言っていました。総理官邸は相変わらず御熱心だけれども、そんなことができるはずがないし、そういうことはすべきでもない、そういう考え方は既に世論である、こう言っておりました。名前を挙げてもいいですけれども、相当有力な方が既にもうそう言っていますね。この点はもうかぶとを脱いだらいかがですか。
  160. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 かぶとを脱ぐも脱がないもないので、そういうふうに諮問がしてあるのでその諮問にお答えいたしますと税調会長以下申されておるのですけれども、私は、お願いしているようなやり方で物事は成就してくる、そう考えております。
  161. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 総理は随分強情な人ですね。そうは言っておるけれども緩やかに、真剣にシャウプ以来の税制改革なんだから、そういう希望もあるけれども自由にやりなさいというくらいこの段階で言わなければ後世に名の残る総理とは言えないのじゃないかな、こう思うのですが、これはまあいいでしょう。  そこで、随分発言が、初めは二百万から八百万くらいの重税感の強い階層を特に中心にして大減税を、思い切った減税をやりたい、その後四百万という表現に直されているのですね。四百万というのは恐らく、源泉徴収の納税者で大体二四%が四百万ラインですから、そのことを意識されてそう言ったのだと思うのです。しかし、どうも経過を振り返ってみますと、我が国の今までの十五段階累進税率、これを総理の言うように六〇%、六段階くらいに整理をするというのは、フラットにすることは非常に難しいということを総理もそろそろお気づきになっているのじゃないかなと思うのですね。これは下手すると金持ちが大減税になって、中間層の方は、別な財源というものを考えてみますと、そう余り恩恵に浴さない、ある中間所得層では増税になるなんということも出かねないおそれがあるのであります。  そういう意味で、この点についてもやはり今までのこの日本の伝統的な税制という中で非常に慎重を期さなければならない問題がある、私はそう思うのであります。所得の少ない者の方が増税、アメリカの場合そうですね。そして中間所得層の方が多少増税、ほとんど減税がなかったというのがレーガンの税制改革であって、トータルとして所得税は七%減税になった、こういう意味ですね。ですから、総理のねらいを貫徹するためには多段階を余り少ない段階にしてしまうということは避けなければいかぬではないか、こういう気がするのでありますけれども、そういう点について、総理はいかがお考えですか。
  162. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 税目やそのほか率等についてはすべて今税調で御研究でございますから、我々の方でとやかく申すべき段階ではないと思います。この議会で行われたいろいろな議論は、大蔵省を通じて税調皆さんにはそっくり御連絡申し上げている次第でございます。
  163. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 租税の原則というのは、公平の原則、普遍の原則、十分の原則、この三大原則が租税の原則としてはあるのであります。そういう面から考えて、特に総理発言で気にかかるのは、法人税も減税する、こう言っているのですね。総理はこの法人税というのをどこまでとらまえているのか。我が国の法人の負担は非常に重いと思われているのかどうか。私は、やはり法人の場合には法人税、法人関連税、引当金もいろいろありますね。それから社会保険の負担も加わるわけですね。これは、トータルしてやはり負担というものは考えなければ、下手に、総理が言うように法人関連税を含めて大減税をするなんといったら、これは貿易摩擦になりかねないですよ。ゆゆしき問題になるんじゃないですか。ですから、総理の言われる認識は、我が国の法人は、しかも先ほど言ったように二百万法人があるのですからね、そういう特殊な条件があるわけですから、そういうことを考えられて負担が多いという認識、だから減税をするという、こういう委員会における説明になっているのではないかな、私はこう思うのでありますけれども、この点についての認識について伺っておきたいと思うのです。
  164. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 我が国が法人が多いということは私もよく存じております。そのうち半分が赤字法人だ、そういうことも、ちょっと常識で考えられないぐらいなことであると思います。  いずれにせよ、今、例えば四三・三%というようなものは外国と比べてみると、地方税まで入れるとかなり重い、そういうことが言われておるのでありまして、重税感やねじり、よじり、そういうものの一つの中にも入ってくる、そう思います。
  165. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 アメリカの場合には間接税、大型間接税を取り入れておりませんけれども所得税が七%減税になって、法人課税は九%増税になっているのがレーガンの税制大改革である。そういう面で私は、これはいずれ論争になりますけれども、いわゆる法人のトータルした負担、このものから見れば、日本の負担というものは決して高いものではない。ですから、所得税減税もやって法人税も大幅に減税なんという論理は到底通らないものであるということを、むしろそういう私の考え方を申し上げておきたいと思うのです。  同時に、今総理が言われたように法人で三分の一も赤字である。小さい会社ではもう半分以上ですよ、五割五分がそうだということですね。そして、残念ながら、租税の弾性値をずっと見ますとどんどん弾性値は低下をしている。ところが所得税は、これは昭和四十一年から四十八年二・〇一に対して、五十五年から五十八年まで一・七八なんです。したがって、八八・五五というウエートですね。余り落ちてないのです。法人税の場合には三九・二六、一・三七の弾性値が〇・五三なんですよ。間接税は〇・八五から、これまたぐっと落ちまして〇・三四、四〇%。一体この原因はどこにあるのかということですね。  これは大蔵大臣に伺っておきたいのですけれども、この弾性値がこのようなアンバランスで所得税、法人税、間接税、八八・五五、三九・二六、四〇%、どこにそういう要因、原因があるとお思いですか。
  166. 水野勝

    ○水野政府委員 所得税につきましては、これは基礎控除その他かなりな額のものを人的控除として引いておる。その上の課税所得、上回ります部分を課税所得として課税をいたすという仕組みでございますので、そうしたものがあります以上、当然弾性値は一から二に近いものになるわけでございます。控除なしの、すべて比例でもって課税をいたす場合には、これは弾性値が一になりますが、現在のような、世界どこの国もそうした仕組みでございますが、そうしたところでは所得税の弾性値というのはかなり高いものになるのは性格上当然ではないかという感じがいたすわけでございます。  法人税につきましては基本的には比例税率が採用され、部分的には一部軽減税率もございますか、基本的には比例でございますと弾性値が一で前後するはずでございますが、しかし、法人というのは景気に対してかなり鋭敏でございますので、そうしたことから、ある年には非常に伸びて弾性値が高くなり、場合によっては今度は逆に非常に収益が低下して、むしろ弾性値がマイナスになるという非常に大きな変動を示すのがこれまでの実情でございます。間接税につきましては、これは個人消費支出と申しますのが全体のGNPに対する割合は低く、また必ずしも限界の消費の動向もGNPに連動いたす程度が少ないわけでございますので、どうしても性格的には弾性値は一より小さくなる。また、我が国の間接税と申しますのがかなり酒、たばこ、ガソリン、こういったものに偏っておる、そういうところからいたしましても、やはりどうしても弾性値は小さくならざるを得ない。  これは私どもからの技術的な説明でございます。
  167. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 技術的な説明、結構ですけれども、時間がありませんからあれなんですが、やはり余り落ち過ぎるということ、経過としてずっとこう見ますと、相対的に比較しますと弾性値が下がり過ぎるということが問題なんです。実際徴税実行の部分にまでわたって検討しなければならぬ問題があるということを指摘しておきたいと思います。  そこで、きのう私も聞いておったのですが、同僚の稲葉議員が税制改革について、多年度一括方式の問題について大蔵大臣に質問されて、大蔵大臣から答弁がありました。そこの答弁を聞きますと、ちょっと食い違っているのじゃないかなという感じもあるわけであります。なぜかならば、多年度一括方式というのは単に実行段階というよりもやはり一つの税体系というものをきちっと示す。それで、もちろんそれには増税になる部分もあるし、新設する部分もあるし、減税になる部分もあるということになって、それはもうきちっと示して、そしてプログラムをきちんと示すということがまず基本でなければならないと思うのであります。そして、それを二年でやるのか三年でやるのかというのが多年度一括方式だ、私はこう思うのであります。その点についてちょっと大蔵大臣の認識が不鮮明ではないかなという感じを、私自身が聞いておって感じたわけであります。  ですから、これには綿密なやはりプログラムを組まなければなりません。所得税、そして法人税との関係、これを多年度というなら二年か三年でもって段階的に引き上げていって、特別措置も多年度で外していく、こういうことが当然並行的に伴わなければならないわけです。そしてまた、非課税貯蓄の問題とかあるいは間接税の扱い方とか、こういうものをそれに合わせて一体どう組み立てるのか、大改革の問題であれば、これはやはり相当時間を置いて国民に説明し、納得を得なければならぬという問題だと思うのです。ですから、多年度一括方式というのは、まずそういう税体系をきちんと示されて、そして実行するプログラムが明確に同時に示される、このことが基本である、かように思うわけであります。  こういう認識については、大蔵大臣の説明は、ちょっと何か説明したときにすかっと受け取れなかったものですから、私の今の理解でよろしいかどうか、承っておきたいと思います。
  168. 竹下登

    竹下国務大臣 私が答えましたのは、確かに岡田さんのおっしゃっている筋でございます。少し私も新聞を見て整理しておきまして、税制の抜本的な改革に当たってはレベニュー・ニュートラルを前提としており、また全体を整合性のとれた体系とするため包括的、一体的な改革案を同時に策定し、法制化する必要がある。で、この改革案は、所得税を初めとし税制全般を見直すものであるから、個々の税の性格上、実施のタイミングについては必ずしも一致しないこともあり得るかもしれない、その実施の段階を少し前面に出し過ぎてお答えしたかの感がございます。全体的な展望を示すためにも、やはり法制化は単年度において行っておくという必要がある。  いずれにせよ、これは税制調査会において審議中の問題でありますので、実施の時期について、これはこうだとかいうことを云々するわけにはまいらないというような考えでございますので、法案作成の時期を数年間にまたがったらいいという意味ではございませんから、大体稲葉さんの意思も、それから岡田先生の今のことも、私と一致しておるということであります。
  169. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 総理大臣、今聞いておったらわかるでしょう、大蔵大臣がそういう見解を示しておるのですから。減税だ、後から増税だ、そんなものじゃないのですよ。  時間がありませんから最後に、中曽根内閣というものは昭和五十七年暮れに誕生しまして、第四回目の予算編成をされた。私なりで見ますと、国債費ではこの四年間四四・七%の増です。経済協力費は三二・二九%、−防衛費は二九・二九%、そして社会保障は八・二五%、文教費はマイナス〇・〇六%、恩給関係費もマイナス二・二九%、公共事業もマイナス六・四九%、中小企業対策費はマイナス一七・九二%、これが四年間の財政関係流れであります。  歳入の面で見ますと、租税及び印紙の関係は一〇・七五%プラス、そして総体では八・八七という、こういう経過をたどっています。  四年間の国民負担率はどうか。これは租税、社会保障を含めてプラス二・一、三四から三六・一に高まっておるわけであります。特に社会保障費は〇・九高まっておる。国民負担は四年間、従来のテンポよりも速まってふえておるという状況です。  経済の運営はどうか。外国の、アメリカの好景気に支えられたものであって、経済政策についてはどうも見るべきものがない。いわゆる行政改革と財政再建が先にあって、個性的ないわば経済の運営について問題があるのではないのか。特に内需、外需で見ますと、外需の場合に平均年率〇・五の伸びの計画に対して一・四です。内需はどうかというと計画三・五、年率ずっと見ますと三・五ぐらいのペース、それに対して三・一三。ですからもう完全な外需依存型で今日の貿易収支のああいう大黒字をつくり、跛行的な産業経済の状況をつくり出している。残念ながらそう指摘をしなければならないのであります。  ここまで来ると、やはり当面は何をすべきか、昭和六十一年度の経済運営をどう一体まともにこれを動かすか、ここに集中しなければなりません。既に前倒し論が出て、いや七割だ、八割前倒しをする。前倒しをするということは、既にもう補正予算を組まなければならないという意味です。あるいはまた、ベースアップについても一%外しておるということは、予算の単年度主義、既に補正予算を予見しているということになる。いろいろな多くの問題がある。赤字解消の計画、これもおくれている。その先には、繰り延べの負担を次には開始をしなければならない、こういう問題も抱えている。  ですからひとつ、我々野党予算修正要求を出しておりますけれども、私は、この修正要求を出しているという点について政府自体も謙虚になって、少なくとも当面、六十一年度の経済の運営、先ほどから指摘しているように多くの問題を抱えておる経済の運営に積極的に、機動的に対処する、このことが必要だと思うのですね。補正予算も組まなければならぬですよ、もう。補正予算を組む意思ぐらい——まあ予算通っていないから言えないでしょうけれども、そういう積極的な気持ちがなければ今年、経済の運営は難しいのではないか、こう思うのでありますけれども、その心構えについて伺って、質問を終わりたいと思います。
  170. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 予算折衝につきましては、野党の案も拝見いたしておりますが、与党も野党とよく協議いたしまして、その結果どういう結果が出るか、今お待ちして見ておるところでございます。
  171. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 終わります。
  172. 原田昇左右

    原田(昇)委員長代理 これにて岡田君の質疑は終了いたしました。  次に、坂口力君。
  173. 坂口力

    坂口委員 昭和六十一年度予算案、現在審議中でございますが、我々四野党の方、六十一年度予算修正共同要求なるものを出させていただきました。その内容または背景等を見ながらひとつ質問をさせていただきたいと思います。  まず最初に、実は先日書店に参りまして、「行動計画 アクション・プログラム」なる書物を購入をしてまいりまして拝見をいたしました。随分厚いものでございますが、中は日本語と英語と両方ずつ書いてございますので、読ませていただきましたらそれほどの多くの内容ではございませんでした。  この内容を拝見をいたしますと、基本認識といたしまして、保護貿易主義というのは単に近年の世界経済の停滞によって生じたものではなくて、構造的な問題を背景として、それは根深くそして深刻であるという書き出しから始まっているわけでございます。ここで特に指摘されておりますのは、諸外国からの我が国の対外経済対策に対するいろいろの批判について触れてありまして、そして、できる限りその批判にこたえていかなければならないということが書かれているわけでございます。  その一つは、内容的に小出しであり、そしておくれがちであるという指摘、それからもう一つは、いろいろたくさん書かれてはいるけれども、重点的に何かということがわかりにくいというのが二番目。そして三番目には、行政の裁量の余地が大きいために、約束をされたことも実際にはそれが果たされないことが多いということが三番目。そして東南アジアからは、欧米偏重ではないかという意見が出ている。この四つのことに対しても十分にこたえていかなければならないということが書かれてございます。  総理は、それに先立ちまして、昭和六十年、去年の四月の九日に、対外経済対策に関する内閣総理大臣談話なるものを出しておみえになります。そこで、対外経済問題諮問委員会からの報告を受けられまして、市場アクセス改善について、原則自由、例外制限の基本的立場に立って、例外の内容もできるだけ少なくしていく必要があることを述べられ、そしてこのアクションプログラムを制定をしてそれを遅滞なく実施をします、こういうふうにここで述べられているわけでございます。  そこでまず、このアクションプログラムの中にいろいろなことがございます。厚生省、通産省、農林省、それぞれ細かな問題、関税の問題、いろいろございますけれども、多岐にわたっております。そこで厚生省の方から先へお聞きを、大臣お見えですから、じゃ、大臣からお聞きをしたいと思います。  厚生省関係の、基準・認証それから輸入プロセス、こうしたものの中に厚生省関係のものがたくさん実はあるわけでございますが、現在までに既に決定をされてそして実行に移されているものはどれとどれでございますか。
  174. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 厚生省関係で既にやっておるものでございますが、医薬品の関係で申しますと、外国の臨床試験データの受け入れ、それから医薬品あるいは医療用具、化粧品の承認に際しての標準的な事務処理期間の設定、それから医薬品、医療用具の輸入手続の簡素化、それから食品を輸入する場合におきましての事前届出制の採用、こんなようなことを既に実施しております。  細かいことはまだございますが、大きなところではそんなことが既に行われておるところでございます。     〔原田(昇)委員長代理退席、委員長着席〕
  175. 坂口力

    坂口委員 続きまして農林大臣から、関税関係はたくさんございますし、これはもうわかっておりますので、関税は別で結構でございますが、それ以外のもので農林省で既に決定をし、実施に移されているものがございましたら、ひとつお述べいただきたいと思います。
  176. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 私ども農林水産省の方は全部で二十四本ほどございますけれども、その中で既に実施されておりますものは、六十年の十二月、告示を改正しておりまして、「肥料の公定規格の技術基準のうち、造粒促進剤等の原材料に関する制限を緩和する。」というのをやっております。  それから、「動物用体外診断薬及び医療機器について、外国企業等の臨床試験データを原則として受け入れる。」ということをやっております。  それから、特にあれいたしますのは例えば植物防疫の点でありますけれども、オランダからちょうど季節によって切り花が輸入されております。これについて、やはり現地でチェックをした方が速やかでよろしいであろうということで、六十年六月、告示を改正いたしまして、九月から検査官を現地の方に派遣をいたしております。  大きな、特に目立ちますのはそんなところだというふうに思います。
  177. 坂口力

    坂口委員 それでは、続きまして通産省、ひとつお願いいたします。
  178. 黒田真

    ○黒田(真)政府委員 通産省関係の基準・認証の関係でございますが、既に先国会で消費生活用製品安全法あるいはガス事業法における自己認証制度というものの導入の法律をお認めいただいております。  また、JISの対象品目を削減するということの計画が立てられておりますが、その第一弾は昨年十一月に実施をしている。  その他、共通項目として基準・認証制度に係る標準的事務処理期間の設定、公表、あるいは基準・認証の制定、改正に係る審議会等への外国関係者の参加等についての指針を決めるというようなことについては、既にこれを着実に実施しておるところでございます。  その他、電気用品取締法における政府認証品目を自己認証品目に移行する。ないしは電気用品取締法上の安全基準の国際規格との整合化を図るというような点につきましては、今年度中を目途に実施するということでございますので、現在ほぼ手続を終了いたしまして、三月中にはこれを実施に移すということができようかと思っております。  また同様に、外国の検査データの受け入れ等に係る諸措置についても、同様の準備を進めて、年度内にはこれを実施に移すことができるかと思っております。  なお、アクションプログラムに関連して、私どもは輸入の促進という点についても大きな責任を持っておるわけでございますが、これらの点につきましては、従来から国民一般に対します輸入拡大の啓蒙運動、あるいは企業に対する輸入品の購入の要請、それに対しまして、輸銀、開銀等における輸入促進金融というようなものについては従来から着実に実施してきておるところでございますが、これに加えまして、機械の輸入を促進するという意味におきまして、中小企業新技術体化投資促進税制及びエネルギー基盤技術高度化設備投資促進税制というようなものについて、特に輸入機械を取得する場合にこれを割り増しをしようという点については、現在、政府提案の法律の中で御審議をいただきまして、これを六十一年度からぜひ実施に移すようにお願いをしたいということで進めておるところでございます。
  179. 坂口力

    坂口委員 このアクションプログラムの中にございます項目は随分多うございまして、中には非常に専門的なものもございますので、我々見せていただきまして、これが早くできるものなのかそれともいろいろ事情のあるものなのかということは、正直言ってよくわかりません。ただ、全体的に見ましたときに、もう少し早くできるのではないかと思われるものにつきましても、三年以内とか、そういう期限のついたものがかなりございます。これは特に、例えば農林省関係でありますとかそれから厚生省関係の中にそうしたものがございまして、そしてそれは、早くすることによって国内のいろいろの産業に影響を与えるというところからそうなのか、そうではなくて本当の手続上のものなのかということもよくわかりませんが、しかし、拝見をいたしますと、もう少し早く決着がつくのではないかなというものも、実は中にはあるわけでございます。  農林大臣、農林省のも随分たくさんございますが、大体三年以内とかなんとか制限がついておりますけれども、その中でこれはもう少し早められるものというのはございますか。一言だけで結構でございます。
  180. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 今ここで、これは早められるだろうということを申し上げるのは——ちょっと私も今チェックをしておったところなんですけれども、しかし、私どもとしましては大分早めようということで、例えば今私申し上げたのはほんの一部を申し上げただけで、六十年にもう法律をあれしまして六十一年の三月から始めるとか、そういうことで相当早めるようには努力をいたしておりますし、これからそういった問題をよくチェックしてまいりたいと思います。
  181. 坂口力

    坂口委員 例えば厚生省の関係でも、医療用具なんかでも「医療用具百三種類のうち、今後三年間で三十三種類につき承認を不要とする。」こういうところがございますし、それから化粧品なんかにつきましても「三年間でマニキュア、ヘアリキッド、香水等十五種類の化粧品について基準を作成し、これにより化粧品全体の許可件数を三年間で六割程度減らす。」こういうものもございますし、三年もかかるかなという感じが実はしないでもないわけでございます。  それで、総理、御意見を賜っておきたいわけでございますが、対外経済対策に関する内閣総理大臣談話の中でも、アクションプログラムなるものを制定をして、そしてできる限り遅滞なくこれを実施していくというふうに総理は述べておられるわけでございます。現状、各省庁とも一生懸命おやりはいただいているようでございますけれども、しかし、もう少し一生懸命やれば進められるのではないかなと思うものも中になきにしもあらずでございますが、ひとつその件につきましての御意見を承っておきたいと思います。
  182. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 担当の私の方から先にお答えをいたします。  アクションプログラムにつきましてはやはり一刻も早く、しかも着実に実行していこう、これは国際公約ですから、これはやはりフォローアップしていかなければなりません。そこで、フォローアップ実行推進委員会、こういうものを設けて既にやっておるわけですが、私ども総務庁におきましても、この規格基準・認証という点について一層厳にこれを監察していこうということで、アクションプログラムというのは、もっと徹底すればいろいろな効果が上がるわけでありまして、本当に輸入のために役立つように検査手続なども簡素化されたのか、実際苦情処理に当たってうまく実行されておるのか、こういった具体面を今フォローアップしておるところであります。これが実際に行われれば相当な効果は上がる。特に円高を背景にして私は効果が必ずあらわれるものであると、確信して申し上げられます。
  183. 坂口力

    坂口委員 農林大臣、ありがとうございました。  いよいよ本論に入るわけでございますが、このアクションプログラムと並行いたしまして、昨年の八月七日に内需拡大に関する作業委員会の設置がございました。この委員長には経済企画庁長官がおなりになることになっておりますし、内閣官房副長官及び経済企画庁の事務次官を副委員長といたしまして、その他各省庁の事務次官を委員とする、こういうことになっているわけであります。     〔委員長退席、林(義)委員長代理着席〕 昨年の十月十五日と十二月二十八日におまとめになったものを発表になっておるわけで、現在の経済企画庁長官が就任される前にやられたことではあろうと思いますが、その内容をつぶさに拝見いたしますと、かなり字数の多いものでございますが、しかし、内容は実はそれほど多いものでもないわけでございます。例えばその中に「個人消費の喚起」というのがございますが、三項目書いてこざいまして、一つは「金融機関の自主性を尊重しつつ、消費者金融への積極的な取組みを要請する。」これが一つでございます。それから「金融機関の週休二日制の拡大との関連にも配慮しつつ、現金自動支払機(CD)の毎土曜休業日の稼働を行う」というものが二番目。それから「カラーテレビ及び自動車について、割賦販売標準条件の緩和等を図る。」というのが三番目。個人消費の喚起というのはこの三つだけなんですね。  個人消費の喚起が非常に大事なことは言うまでもございません。けさからもいろいろな議論のあったところでございますし、我々も今回のこの予算修正要求の中に、どうしたら個人消費を喚起することができ得るかということで懸命にいろいろの考え方を模索して織り込んでいるわけでございます。政府の方も一生懸命おやりいただいたのでしょうけれども、この小委員会でまとめられたもの、どうも個人消費の喚起についてはいささか物足りない感じがしないでもないわけでございます。  そんなことも含めて、経企庁長官、長官が就任されましたときには既にでき上がっていたものではございますけれども、どんな御感想をお持ちになっているか、ひとつ聞かせていただきたい。
  184. 赤羽隆夫

    ○赤羽政府委員 昨年の八月に内需拡大に関します委員会が設置されまして、そのもとに具体的な作業をする委員会が設けられました。そこで各省協議をいたしまして十月十五日に内需拡大策第一弾を打ち出したという点は既に御案内のとおりでございますけれども、その内需拡大策は、当面早急に実施できる項目とそれから中長期的に実施をすべき項目、こういうふうに分かれております。  ただいま御質問のございました消費のところは、当面早急に実行すべき項目の一つでございますけれども、確かにそこに並んでおります項目は、例えば第一項目であります住宅あるいは都市開発の促進とか、あるいは第四項目でございます公共投資関係の項目とか比べますとかなり見劣りがすることは事実でございます。それは私ども、その当時も御説明申し上げたわけでありますけれども、全体をパッケージで考えていただきたい。  例えば余り適切かどうかわかりませんけれども、自動車を走らす場合、肝心な部分というのはエンジンでありますし、またあるいはトランスミッションといったようなところにあろうかと思います。しかし、そうはいうものの、フェンダーミラーがなければやはり自動車は安全に動かない、こういうことで、一つだけを取り出してみますとフェンダーミラーだけで自動車が走るはずではない、本体ではないということでありますが、そういうことでできるだけのことをしようということで、個人消費関連の項目として、確かに今御指摘のようにそれほど大きな項目ではないながらも、パッケージの一環として挙げたという事情がございます。  基本的に消費に対します私どもの理解は、まず経済活動、生産活動が活発になることが必要だ、それによって家計部門、個人部門の実質所得がふえる、それに応じてふえるのが消費である。そういう意味で言いますと、消費というのはやや、能動的というよりは受動的な性格の需要項目である、このように考えております。したがいまして、内需拡大策の主体というのは、やはり設備得資でありますとか住宅建設、公共投資、あるいはそうしたものの条件を整備する、こういう観点から規制緩和等の項目、こういったようなことを進めるべきだ、こういう理解になっておるわけでございます。  そういうことで、個人消費と銘打っております項目だけにつきましては、先ほど申し上げたような評価があるいはできるかと思いますけれども、全体で考えていただきたい、こういうことでございます。
  185. 坂口力

    坂口委員 我々は景気対策、社会資本整備の充実のために七千五百億の要求をしているわけでございますが、今経企庁の方からお話をいただきました。決してわからないことはありません。わからないことはありませんが、しかし、お話はお話ながら、たくさんいろいろ書いていただいてある割に大事なところが余り少な過ぎるではないか。先ほどの外国の批判ではございませんけれども、いろいろたくさんあるけれども重要なところが少な過ぎるという外国の批判が実はわかるような気もするわけでございます。  それで、これはどうするのかと思って見ておりましたら、先日ニュースに総務庁長官のお話が出ておりまして、規制緩和も行政監察をするというお話が出ておりました。これはどういう趣旨でもっておやりになるのかよくわかりませんが、何となくいろいろのことが進んでいかないことに対するいら立ちから総務庁長官はそういう行動に踏み切られたのかどうか、その辺ひとつお聞きをしたい。
  186. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは御承知のように、規制緩和につきましては、行革審の答申を受けまして昨年の九月の閣議で決定をいたしております。それは金融、運輸、都市開発等々十の分野にわたって二百五十八項目、非常に大きなものです。したがって、民活をどう引き出すかということにも直接影響の多いものがいっぱいあります。それはさっきの貿易摩擦で言うなら、規格基準。認証が本当に行われておるか。それから国内的にも、官庁の介入過剰のためにできるものができないというようなこともある。その簡素化もある。そういった二百五十八事項について鋭意実行中であるわけですが、それが本当に実行されておるかどうか。これは年度内に、行政監察機構を持っておりますから、監査に付して実効の上がるように、そして民間活力が引き出せるものなら大いに貢献してもらおう、こういうことで、それも期待しながら既に閣議で決められたことを継続して行っておる、こういうことでございます。
  187. 坂口力

    坂口委員 総理にお聞きしたいと思いますが、アクションプログラムについてもそうでありますし、それから内需拡大の小委員会の結果についてもそうでありますが、非常に手順よく始められてはいると思うわけであります。しかしながら、手順よく始められてはおりますけれども総理の本意というものが十分に、シナリオどおりに進んでいないのではないかな、そんな感じがいたしますが、総理の御見解をひとつ賜りたいと思います。
  188. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 私、担当で、また今交特委へ呼び出しがかかっておりますから申し上げますが、やはり規制をどう緩和するかということは、閣議決定のさっきの二百数十項目にも及ぶ点の査察か常にやりながら、やはり合理的にしていくことが必要です。そして内需喚起、おかげで相当な効果が上がってまいりまして、明石海峡それから東京湾の横断道路、そのほかいろいろなプロジェクトが数々ありますが、これは時間の関係で省略しますが、間もなくこれは通産省、そして運輸省、郵政省、建設省、この四省庁間で話し合いをいたしまして、通産省は新産業基盤の施設を中心に施設しよう。それから港湾空き地等の高度化を、港は随分持っておりますから、横浜の「みなとみらい21」といったようなああいうものを全国的に見直して洗い出してこれをぜひやろう。それから、郵政省はそれにテレコミュニケーションを上乗せする。それからまた、今の建設大臣の方はそれらについて公共施設を施設すると同時に便宜を図ろう、アクセスの道路網等についてもやろう。これは各省庁でばらばらにやっておりましたのでは効果が上がりませんので、一本の法律にまとめるように官房の方から我々特命事項担当室に依頼がありました。幸いようやく結論を得つつあるところでありまするので、間もなく皆様方の御審議に供することができる。これは相当有望な民間活力を引き出すことになる、確信を持って申し上げることができるわけであります。もちろんこれは民活方式でやろう、八〇対二〇というようなあの東京湾の横断道路の方式を取り入れたい、こう思っております。
  189. 竹下登

    竹下国務大臣 やはり一番私として総理からの御指示を受けておって国会の協力を得てやれたなと思うのは、年末の国会で関税の前倒し執行ですね、一月から。協力して成立さしていただいた、あれが私は一番ティピカルなものではなかったか、こういうふうに思います。
  190. 坂口力

    坂口委員 総理、また後で伺いますが、大蔵大臣、昨年協調介入がございました。その後に六十一年度の予算編成がございまして、それが編成をされました。この協調介入とそしてその後の内需拡大の小委員会の結果を踏まえながら、そして六十一年度予算に結びついてきているわけですね。そのいわゆる協調介入の結論、そして内需拡大委員会のその結論というものが、六十一年度の予算を見せていただきます限り、そこにうまく連動しているのかな、協調介入で非常に円高になって、そして円高デフレというところまでは行っていたか行っていなかったかは別にいたしましても、大変な事態になってきている、そのことが六十一年度予算の中にも反映されたかなということを一番疑問に思うわけでありますが、その点大蔵大臣どうです。
  191. 竹下登

    竹下国務大臣 やはり一番六十一年度の予算の中のいわゆる内需関係の目玉としては三つあるのかな。一つは、厳しい財政事情の中で、国費ベースでは三角になっておりますが、公共事業費全体はこれを大きく伸ばした、こういうことではないか。それから二番目は、やはり住宅税制ではないかというふうに思います。それから三番目は、民活プロジェクトの環境整備、あるいは先ほど来言われております東京湾等の具体的な問題の前進とでも申しますか、そういうことではないかというふうに考えております。
  192. 坂口力

    坂口委員 一番最初に挙げられました公共事業費ですね、これはいわゆる予算といたしましては前年度比でマイナス二・三%であります。一・一%伸びたとおっしゃいますが、それは財投を含めてのことでございます。財投予算拡大をしてそしてそれを回したからとおっしゃるわけなんですが、この財投予算拡大のかなりの部分は一般会計から都道府県に対する補助率の引き下げをカバーするために回されたものであって、有効需要を高める効果があるかどうかということは非常に疑問だと思うのですね。これが一つ。  それからもう一つ、二番目に住宅のことを挙げられました。確かに住宅促進税制入っております。私たちも、政策税制といたしまして四党の予算修正要求の中に住宅減税の問題がございます。これは、税額控除の額を住宅ローン等の残高の一%相当額に引き上げるということで、二千億円追加を言っているわけなんですが、現在の政府の案でありますと一%で、額も最高二千万ですね。ですから、最高二千万残っていた人が、その一%ですから二十万控除されるわけでしょう。例えば、年収五百万ぐらいの人がその控除を受けたといたしましたら、実際の受ける額というのはどうですか、四、五万じゃないでしょうか、五万ぐらいじゃないでしょうか、年間控除される額というのは。年収五百万くらいの人、大体そんな見当ではないかと思うのですね。そういたしますと、家を建てて五万円少なくなるから、よし家を建てようという気持ちになるかどうか。そこは私は、政府のこの住宅促進税制なるものは非常に不十分だと言わざるを得ないですね。  それから、民間プロジェクトにつきましては、いろいろ先ほどからお話ございましたし、これは進めればそれなりの効果はあるだろうと思いますが、しかし、これもそのあります地域はよろしいですが、そこから外れたところは何も来ないということで、各地域にもこれは広げられるのかどうかということも一つここでお聞きをしておきたいと思いますが、これは大蔵大臣の範疇であるかないかちょっとわかりませんけれども……。  先ほど三つの目玉だというふうにおっしゃいました公共事業費も、額でいけばマイナス二・三%だし、財投があるけれども、それは先ほど申しましたように、財投は地方の補助金の引き下げをカバーするためのものであって、有効需要という問題では問題がございますし、それから住宅の方も、先ほど申しましたように、いささかこれによって勇気づけられて家を建てようかというところまではいきにくい。民間プロジェクトは先ほど申しましたとおり。そういうところで、果たしてこれで内需拡大ということができるだろうか、率直に言って疑問を持ちますが、いかがですか。
  193. 竹下登

    竹下国務大臣 今の問題に具体的にお答えいたしますと、一般公共事業の事業費については、おっしゃいますとおり財政投融資等の活用によりましていわゆる四・三%増を確保した。そこで、それが有効需要かどうか。これはいわゆる国費と地方の負担によって行われる事業に対する起債措置等もございますが、やはり有効需要の喚起ということになりますと、これはいわゆる道路公団、それから本四架橋公団、阪神公団、そういう公団関係の圧倒的な伸びとでも申しましょうか、それは有効需要そのものにつながっていく大きな要素ではないかというふうに思います。それから、住宅減税の実施のほかに、住宅金融公庫の貸付戸数の増加と条件緩和というものがございますが、やはり住宅減税の問題は、四百七十五万円の人は二十万円税金ちょうだいしておるわけですから、四百七十五万円の人で二千万円お借りになっているとしましたら税がなし、こういうことになりますから、これはやはり税体系の中で見ると相当なものだな、金額の多寡の議論は別としまして。ただ、五百万円で五万円というのがちょっと私わかりませんので、あるいは担当からお答えさすのが適当かと思いますが、その限りにおいては相当なものだな、こういう感じでございます。  それから、例の五分五乗方式なんかの問題につきましても、さらに所得限度とそれから中古になる場合におきましてもこれの範囲を拡大をしたというようなことが相当なものである上に、いわゆる公定歩合の操作が行われて、政令はこれからすぐつくりますけれども、住宅金融公庫の貸付利子そのものを下げるようなことができたということが、やはり効果のあることではなかろうかと思います。  それから、民活は、確かに東京湾、これは六%の金利に仕組んだ仕組みをつくって、まさに民活。明石海峡の場合は、民間活力を大いに活用しますが、施行主体は本四架橋公団ということになりますけれども、この問題かもちろんありますし、それで、今おっしゃいました地方民活、草の根民活とかいろいろ言われておりますが、私は、これは区画整理それから地方の都市計画というようなものが地方の民活が起こる環境整備のために役に立ってきたではなかろうかなというふうに思うわけであります。  その背景でもう少し申し上げますと、物価の安定が続いておりますので、いわゆる輸出産業等が手控えするという傾向はありましても、全体としての設備投資というものもまだなだらかながら拡大を続けておるということがございます。それから、公定歩合の引き下げの効果は今後本格的に出る。それから、これは経常収支のためには別の議論がございますが、原油価格の値下がりというのも、これはやはり内需拡大に大きく寄与するということが言えるというふうに思います。
  194. 坂口力

    坂口委員 私ここに、昭和五十二年、五十三年と、それから六十年、六十一年と、いろいろの経済指標をちょっと整理をしてみたのです。御承知のとおり、五十三年は平均いたしまして約二百十円でございました。昭和五十二年にも少し下がり始めまして平均で二百六十八円ですが、年末には少し下がりました。そして昭和六十年が平均して二百三十八円、ことしは御承知のとおりでございます。  事務の方、ちょっと大臣に見せてください。  五十三年とそれから六十一年とを比較をしてみますと、当初予算額、これは租税、印紙収入で見たものでございますが、そういたしますと、五十三年では一七・六%で、当初予算で随分な伸び率を示しておるわけで、今回に比べて非常に大きい。公共事業費に至りましては、このときには二七・三%伸ばしたわけですね。補正後で見ますと一六・四%ふえているわけでございます。固定資本形成の伸び率の数字で見ると一三・四%、ことしは一・一になっておりますが、このときとは随分な違いがございましたし、それから減税の後の余波と申しますか、それも五十二年にございましたのが、平年度で見ますと三千億円まだ残っているというようなこと、それから租税負担率はこのときは二〇・六%でございましたが、現在は二五・一%になっております。  こういう五十三年それから六十一年を比較をして見てみますと、六十一年のこの数字で、まあ同じ数字でありましても、財政の規模が違いますから同じというふうにはこれは申せませんが、しかし、これで実質GNP四・〇果たしていけるのかなという大きな危惧を抱かざるを得ないわけでございます。  この問題、もう少しお聞きをいたしますが、経企庁長官、もしこの百八十円、これはこれから続くかどうかわかりません。しかし、このままでことしずっとこの百八十円でいくといたしましたら、GNP及び個人消費というのは大体どのくらいになりますか。
  195. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 計量的に出すことはちょっと困難でございます。私ども、見方としては、円高ということはそれはそれなりに当初輸出が減るということで、GNPの上からいうと少し下がってくる要因に、なりますが、今度は、他面、実質所得の増加ということで消費が伸びる、あるいは設備投資が大きくなってくる、そういうことで、また今度はGNPを上げる要因にもなる、そういうことで、ちょっと私ども今明確に計量いたすことはできかねる状況でございます。私どもとして、四%成長については確信を持っておるということだけは申し上げておきます。
  196. 坂口力

    坂口委員 現在百八十円になりましても、四%大丈夫というのですか。
  197. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 そのとおりでございます。
  198. 坂口力

    坂口委員 この数値を出されたときには二百四円ですね。二百四円でこの四%の計算をされたわけでありまして、その後いろいろ政策を加えていかれれば四%にすることは不可能だとは申しませんが、現在の打ち出されております政策で、そして一方におきまして二百四円が百八十円に下がりましたら、これは四%でいけないことは当然じゃないでしょうか。これから新しい政策を加えればそれは別ですよ。だけれども、今出されております同じ政策で、二百四円のときと百八十円のときと同じ四%成長になるというのはちょっとおかしい。そうでしょう。
  199. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 もとより、私どもは絶えず情勢を見ながら政策的にもどんどんいろいろとできる限りの手は加えてまいりますし、その努力をすべきものであると考えておりますが、おっしゃいますようにある一定の円ドル換算のレートというものと一定の経済成長ということが結びつくとは私ども考えておりません。
  200. 坂口力

    坂口委員 大蔵大臣、こういうふうに多少数字の出し方に、いろいろ出し方がございますので、比較をするのにしにくいものもございますが、大体その当時の情勢というものはおわかりいただけると思うのですね。  それで、五十二年、五十三年にはこういう予算を組みながら、なおかつ五十二年それから五十三年ともに総合経済対策というのをそれぞれの年で発表しておるわけですね。そして財政金融上の措置、公共事業はもちろんのこと、住宅促進、金利の引き下げ、民間需要の喚起、いつでも同じことでございますが、おやりになっている。やはり五十三年にも同じように総合経済対策を発表になりまして、公共投資等の推進、住宅建築の促進、それからエネルギー関係投資の促進、こういうことをおやりになっておりまして、五十二年におきまして総額で約二兆円の事業規模の追加を行っておみえになる。五十三年におきましても約二兆五千億円の事業規模の追加をしておみえになるわけであります。  これだけ予算を伸ばし、公共事業を伸ばし、減税も行い、そしてこの当時は福祉もかなり進んできたときでありましたから、そうしたことも加えますと、現在に比べますと非常に環境はまだまだ恵まれていた。経済も発展途上にありましたから、それも大きくなり切っていなかったときでありますからまだゆとりがあった。ところが、今はそのゆとりもなくなっているというこの中で、果たしてこのままでいいのであろうか。これはだれが考えましても、これは何か引き続いて手を打たざるを得ないというのは、もう十人が十人の意見ではないかと私は思うわけです。経企庁長官、四%えらい固執しておっしゃいますけれども、これは公定歩合だとかなんとかその辺の点もありますから、変化によって四%それはいけないことはないと思いますが、しかしほかの条件を今と同じにしたらそれはできないことは当然でありまして、できるというその計算はおかしいわけでございます。  そういたしますと、六十一年、当然前倒しとかいろいろのことはあるんでしょう、あるんでしょうが、しかしこれで乗り切れるのか。やはり五十二年、五十三年にございましたように、早々に総合経済対策を出してはっきりとさせないことには乗り切れないのではないかと思いますが、いかがですか。
  201. 竹下登

    竹下国務大臣 これは経済企画庁長官からのお答えもあろうかと思いますが、私ちょっと拝見さしていただきまして感じましたことは、公共事業費のいわば国費ベースの対前年度比が出ておりまして、財投、なかんずく公社公団関係のものがこれには書かれてありません。それからもう一つ、これを見るときに私いつも感ずることでございますが、そのときの公債依存度が予算の中でどうであったかと申しますと、五十二年が二九・七、五十三年が三二・〇、それで六十年が二二・二で、ことしが二〇・二、こういうことでございますので、今もおっしゃいましたとおり予算の総体の規模の問題が一つはあります。したがって、また円レートの問題というのは、いわば技術的に直近一カ月のですか、十一月の平均で二百四円、予算は二カ月の平均で二百九円で決めるわけでございますけれども、そういうことはいわば円とドルとの関係であって、米国経済と日本経済の相対関係でこのレートは決まっていくわけでございますけれども、このレートそのものは私は余り比較して経済の実態が議論できるものではないな。といいますのは、時間、時間で違いますけれども、デメリットといま一つメリットというものがございますだけに、私はそんな感じで今この御勉強なすっております数値を見させていただいたわけであります。  したがって、私どもといたしましては、過去二回にわたって決めました内需振興策、それにかてて加えて公定歩合操作のメリットがまた新たに出てくるわけでございますから、それらを総合した場合に、私はこの四%というものはまあ大変実現不可能な数値ではないというふうに考えております。
  202. 坂口力

    坂口委員 日銀総裁ちょっと、長くお待たせいたしましたので、先にお伺いをしておきたいと思います。  現在の円高というものは、一つは協調介入後今日の数値を迎えておるわけですが、これは日銀総裁がお考えになりました大体範囲内の値なのか、それともお考えになっていたものよりも少し進んだものなのかということが一つ。  それから、もう一つお聞きしたいのは、先ほど議論しておるように、昭和五十三年に公定歩合が最低三・五まで下がったのですね。このときには目録総裁でございませんでしたからあれでございますが、非常に下がっておりました。この五十三年のときのもろもろの環境と現在とを比較をしましたときに、公定歩合の幅というのは大体どんなものなのかという御感想を聞かせていただきたい。
  203. 澄田智

    ○澄田参考人 最初のお尋ねの、最近の円高といった事態はあらかじめ想定の中に入っていたか、こういうようなお話だと思いますが、この点につきましては、特定の為替相場の水準というものをあらかじめ念頭に置いて対処してきたわけではございません。これはニューヨークのG5の合意そのものもそうでございますが、特定のターゲットのようなものは持っておらないわけでございますが、為替レートが各国のファンダメンタルズをよりよく反映するものであるべきである、こういう観点で合意の精神が成り立っているわけでございまして、私どももそういうようなつもりで今までずっとやってきております。したがいまして、現在の水準というものは、これは想定というようなもの、もともと想定というものはなかったわけでございますので、そういうものとは関係がない、こう申し上げざるを得ないわけでございます。  それから、二番目の御質問の点でございますが、出かに五十三年当時は、公定歩合は三・五%になった時期がございます。現在私どもは一月三十日に五%から四・五%へと〇・五%の公定歩合の引き下げを実施いたしておりまして、また昨日からは、それに伴って同幅で預貯金の金利あるいは短期プライムレートの引き下げというものが実施されているわけであります。これからその効果というものを十分見定めてまいりたい、こういうふうに思っておりますので、当時の水準自体をある時点をとって比較をするというよりは、経済の流れの推移の中で物を見ていかなければならない、こういうふうに考えている次第でございます。
  204. 坂口力

    坂口委員 総裁の立場としてはっきりはおっしゃいませんが、ここで総理にひとつ御答弁をいただきたいと思います。  総理に御答弁をいただきたいのは、この委員会で本日、またこれ以前にも、景気を持続させますために予算の前倒しをやります、そして様子を見ます、こういう御意見もあったのですね。しかし、これは以前と今回とは私は情勢は違うと思うのです。と申しますのは、今まではいわゆる自由な円レートの動きの中で来たわけですが、昨年九月以降はいわゆる政策的に協調介入をして、またもしも仮に二百四十円の方に戻っていくようなことがあれば、これは協調介入をされることははっきりしているわけでありますから、そういたしますと、先ほど円レートに、一方の方に壁をつくるということを総裁おっしゃいましたけれども、そういう状態の中で現在の運営というのは進んでいるわけでございます。だから、以前と今とはその面で非常に違うわけであります。  ですから、ことしの後半の問題を考えますときにも、そういう財政的な措置を前倒しでやりましたら、それでどうなるかを様子を見て今まではやるというふうに言っておみえになったわけですけれども、少なくとも円レートではそういう歯どめが一つかかっておるわけでありますから、おのずからことしの後半の様子というものを想像することは、今までよりもより想像しやすい環境にあるわけだと思うわけであります。  そうした意味で、私は、この五十二年、五十三年、これだけ多量の予算を組み、そして補正額をさらに組み、そしてその中で大きな公共事業費を組んで、なおかつ減税をしてというような環境の中で進んでも、なおかつ維持できにくかったわけでありますから、ことしあたりはさらにそれが厳しいことは覚悟をしなければなりませんし、五十二年、五十三年にも総合経済対策ということでさらに追加をしておみえになる。こういう状況でありますから、これは政府の方といたしましても、現在のこの予算が進行中でございますから、これが例えばでき上がりまして、そして実際に事業が各都道府県に行きますのは六月ごろと思わなければなりません。そういたしますと、今から六月までというのは一つのブランクがあるわけですね。それから六月から前倒しで一生懸命やりますと、また後半にブランクができる。こういう中で景気対策というものをどういうふうにしていくかというのは大変難しいことだというふうに思いますが、私はやはりそうした総合経済対策というものを、後半のことがはっきり予想がされますだけに早目にしておかなければならない問題だというふうに思いますので、この点について総理のお考えをお聞きをして、税制の問題に移りたいと思います。
  205. 竹下登

    竹下国務大臣 総合経済対策の問題をお答えになります前に、ことしの下期を考えたりしたら難しい経済運営だな、こういう御意見に対して私は水を差す考えは全くございません。が、一つは五十二、五十三というのは、いわゆる日本とドイツに機関車になれというようなことで、それが結果として今度はどうであったかというと、五十五年に公定歩合を予算審議中に二回も上げなければいかぬような物価の問題になって、それが大きな反省になってサミット全体でインフレのない持続的成長をやろうや、こういうことが大前提にあるわけでございます。今いろいろ御懸念の向きがございましたが、やはり今度は、あれは五十六年からやりましたいわゆる債務負担行為の追加、この間補正予算で通していただいて、それで事業費にして六千億ぐらいあります。それがなだらかな下支えになっていくことは間違いないだろう。いわゆる将来の契約に対して、それが下支えになって、いわば継続的な契約ができるであろうというふうに私は思っております。が、その執行につきましては、いずれにせよ、国会議論等を聞きながら、そのときの経済事情を見て、この予算が通過、可能な限り早い時期に決めるということでございます。     〔林(義)委員長代理退席、中島(源)委員長代理着席〕  それから、円レートの問題につきましては、いわゆる後戻りはだめよ、これはお互いの合意になっておるわけでありますが、言ってみれば背中の壁ができた、金額で壁ができたということは必ずしも言えないかもしれません。そういうことをかれこれ考えながら弾力的な対応をしていくべきであるという問題意識は私どもも持っておるところでございます。
  206. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 円ドルのレートの問題は、私の感じでは、確かにG5というものによって協議をして、そしてある成果を生もうと思って政治的意思で合意がなされて、それでこういう結果になりましたけれども、しかし今から考えてみても、それは無理につくったというのではなくて、もう表面張力であふれるばかりになっておった、そこへそっとさわった、そのタイミングがよかったのでさあっとあふれた、そういう自然の現象で実態に即した経済に移行してきた。要するに、いわゆるファンダメンタルズを反映する形に物は移行してきた。そういうことで、嫌がるのを無理やりに力ずくで物事をここまで持ってきたというものではない、そういうことはやはり認識すべきだろうと思うのです。さもなければ、また二百三十とか四十に戻っているはずですよ。戻らずにこれだけ円が強くなって、まだ強くなるような気配が時々あるというようなことは、やはりファンダメンタルズが反映されてきたのだ、そう思わざるを得ないと思うので、政府に責任があるというふうに言われると、そういうことも少しは申し上げたくなるということでもあります。  それから、景気の現状はなだらかなやはりまだ拡充発展をしつつあると思うのです。しかし勢いはどういうものであろうか、注意を要する、そう思っております。しかし、去年の十月の政策、それから十二月の政策等が次第次第に今効いてきておりまして、去年でも相当な予算外国庫負担契約をやっておるわけです。そういうものがやはりじわじわ効いてきつつある、そう思うのであります。しかし、私は今のような円ドル関係等も考えてみると、決して手を緩めてはいかぬ、そう思っておりまして、大蔵大臣並びに企画庁長官に対して、この予算が成立したら、この予算を執行する上について内需を振興し、そして景気の落下を防ぐ、そういうようなための諸般の政策をひとつ研究してみておいてくれ、党の方にもまたあわせてそういうふうにもお願いをしてあるわけであります。ですから、予算成立直後に、やはり当面行うべき予算執行に関するいろいろな諸般の内需振興あるいはそのほかの政策をやろう。江崎長官にも民活その他やることがかなりあると思いますから、お願いをしておるわけで、政府一体になって、やはり努力してまいりたい、そう思っておるわけです。
  207. 坂口力

    坂口委員 先ほども申しましたように、たとえ予算がきちっと通ったといたしましても、実際都道府県段階にそれがおりまして、そしてその事業が始まるというのは六月以降なんですね。それから前倒しがもし行われたといたしましても、そうしますと、九月、十月ごろまでになりますか、冬ちょっと前ぐらいにはまた予算が切れてくるということがあり得る。したがいまして、非常に冷え込んでまいりましたときに、六月までの間これでいいのかという問題が一つあるのと、それからもしも前倒しで全部八〇%分ぐらいやられるということになれば後半どうかということと、二つあるだろうと思うのです。  総理が今おっしゃいましたのは、そういたしますと、一応名前はどうにいたしましても、総合的な対策というものについて、これは予算の執行とあわせてですが、しかしこれはやはり心配をしていかなきゃならない、準備をしていかなきゃならないというふうにお考えになっているというふうにとらしていただいてよろしいか。
  208. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そうです。総合的な対策というものを各省よく協調しつつ研究してもらいたい、そうお願いしてあるわけです。
  209. 坂口力

    坂口委員 それは、そうしますと、この春の問題になりますか。
  210. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 予算が四月の上旬ごろ成立するだろうと予想しておりますが、それ以降の諸般の景気の動き等もよく研究しつつ今から十分対策を講じておきたい、そう思っているわけであります。
  211. 坂口力

    坂口委員 それでは、時間を随分とってまいりましたので、あと時間がなくなってまいりましたから、急ぎたいと思います。  個人消費の問題、これを見てみますと、個人消費を見ましても民間住宅を見ましても、中曽根内閣ができましてから五十八年、五十九年、六十年、六十一年、この四年間を見ますと、当初の見込みの数字とそれから実績との間にはかなり開きがあるわけでございます。五十八年は個人消費は三・九が三・一、それから五十九年は四・一が二・六、そして六十年は四・一が、今見込み中でございますけれども、これが三・〇、こういうふうになっている。六十一年は個人消費三・六という数字を挙げておみえになるわけでありますが、どうもこの三年ほどずっと見てみますと、初めの数字はすべて実績では落ちている。また民間住宅も同じようにして落ちている。  これは経企庁長官、どこか計算の方法に誤りが——計算の方法というかその過程におきます何か条件のとり方に問題があるのか、それとも現在の社会全体がそれほど対応しにくくなっているのか、これはどういうふうにお考えになりますか。時間がありませんので、ひとつ簡単に。
  212. 赤羽隆夫

    ○赤羽政府委員 御指摘のように過去三年ぐらいを見ますと、個人消費あるいは住宅建設において実績が見通しを下回ったというのは事実でございます。  私どもは、この大きな原因といたしましては、やはり世界経済が私どもの見通しと比べましてむしろ停滞した、こういうふうなことがあったのではないかと思います。米国の高金利の影響を受けて、我が国も、米国よりは金利は安うございましたけれども、金利が高いといったようなことも影響があったものと考えております。  ただ、五十八年度以降確かに当初見通しの方が高過ぎたということでありますが、五十七年度におきましては、当初見通しが三・九、実績が五十年基準で見まして四・六と実績を上回ったときもございます。いろいろな条件が重なっておるものと理解をしておりますけれども、いずれにいたしましても、このところ少し当初見通しが高過ぎたという点は、なお見通し作成技術において、これからさらに研さんをする、研究をして向上させる必要があるものと反省をしております。
  213. 坂口力

    坂口委員 そういたしますと、ことしの三・六というのも、この二、三年と同じ計算方法で来られたということになると、これはちょっとなかなか難しい数字かなということでございますか。
  214. 赤羽隆夫

    ○赤羽政府委員 今年度につきましては、必ずしもそういうふうに考えておりません。と申しますのは、先ほどから申し上げておりますように、内需拡大策の効果が出てきて、経済の活動というのが景気の落ち込みを避けながら維持されるだろう、それに伴う実質所得の増加、それに加えまして交易条件改善に伴う実質所得の増加、こういったようなものが個人消費の伸びを支えるものと考えております。  それに、最近私どもの調査局の専門家がそういうふうな研究をしておるわけでありますけれども、耐久消費財、それから住宅もいわば大型の耐久消費財ということになりますけれども、耐久消費財にはサイクルがございます。このサイクルにおきまして、最近この耐久消費財のサイクルがやや回復局面に来た兆しがある、こういうふうな研究もございます。  そういうことで考えますと、現在の時点で三・六が過去二、三年の例に倣ってだめだというようなことは毛頭ないものと考えております。
  215. 坂口力

    坂口委員 総理、数字がいつも出るわけでございますが、この個人消費にいたしましても民間住宅にいたしましても、大体この三、四年、こうしてその数字が満たされていない。今も、事務的にそして技術的にお話しになりましたように、どこかにやはり問題なしとしないという状態だろうと思うのです。ですから、現在出されております数字をそのままうのみにして、そして経済運営をやられることは、そういう落とし穴に陥る可能性があるわけでありますので、私ども政府から示されましたこの数字が毎年毎年落ちていくものですから、この数字を本当に信頼をして、そうして対応していったらいいのかどうかという戸惑いを実は感じているわけでございますので、どうかその辺も十分念頭に置いた上で、総合経済対策をお決めをいただくときには万々おくれのないようにひとつ御努力をいただきたいと思います。
  216. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 数字は一介の数字にすぎないので、一つの見積もりですね。しかし、経済は生き物でありますから、これはまた数字とは別のことはあり得ると、やはり一応は考えざるを得ないので、生き物を相手にして、こっちも生きた目玉で見つつ生きた政策を実行していきたい、そう思います。
  217. 坂口力

    坂口委員 時間がないものですから、はしょらせていただきます。  税制問題につきまして一つお伺いをしておきたいと思いますが、租税負担率の問題でございますけれども、この租税負担率はだんだんと高くなってきておりますことは、今さら申し上げるまで人ありません。昭和五十七年から見ましても一・八ポイントほど寄与度で上昇をいたしてきております。租税負担率が上がっているその内容を見ますと、所得税負担率の上昇が租税負担率上昇の二五・四%、四分の一は所得税負担率の上昇によって上昇しているわけでございます。  そこで、所得税の負担率が上がってきておりますために、このことがかなり個人消費というものと関係をしているのかな。各個人の租税負担率が上昇をしてまいりまして、そのことが個人消費というものを抑えているのかなというような見地からいろいろ数字を見てみますと、その辺も十分にうかがうことができ得ますが、あわせてもう一つここで問題になりますのは、契約的、義務的貯蓄と申しますか、例えばローンでありますとかあるいは保険でありますとか、契約、義務的貯蓄、これが昭和五十五年には四三・五%でありましたが、五十九年には五四・九%、これは家計の黒字の中に占める割合でございます。非常に上がってきているわけでございます。所得税での負担率が上がり、そして契約的、義務的貯蓄が上がる、こういう状態になってきておりますことが非常に個人消費を上げることに難しい状態になっているのではないか。  ちなみに五十九年、減税がございましたときの状態をちらっと見てみますと、数字は心なしか消費の方が伸びているわけであります。実収入の伸びよりも消費の伸びの方がよろしいわけでございます。五十八、五十七は、逆に消費の伸びよりも実収入の伸びの方がよかったのですけれども、五十九年は逆になっているというようなことを考えますと、やはり所得税減税というものがかなり大きな個人消費というものに役割を果たすということが数字の上からも言えるだろうというふうに思うわけでございます。  そういう面でひとつ、これは時間がございませんので大蔵大臣にずばりでございますが、我々所得税減税を要求いたしておりますが、これに対するずばり御回答をいただいて、あともう一問だけお聞きをしたいと思います。
  218. 竹下登

    竹下国務大臣 五十九年に本格所得減税がありました。その見返りとして、当時財源としては法人税等々の見合いのものを行ったわけでありますが、その後のいろいろな議論を中心として税制調査会にまさに持ち込んだ。したがって、その税制調査会の抜本答申を受けた後、この減税にかかるべきものである。したがって、六十一年度予算においては所得減税というもので今御審議をいただいておる状態にはない、こういうことでございます。
  219. 坂口力

    坂口委員 我々は、一方におきましては内需拡大、個人消費の拡大、そうしたものをどういうふうにして進めていくことができるかということを考えながら、その手だてとしては減税というものもどうしても避けて通れない、これはどうしてもやらざるを得ない問題ではないだろうか、そういうことを申し上げているわけでございますが、あわせまして、もう一つ国が行いますものの中に、そのときそのときの景気にも大きな影響を与えますものの中に、やはり将来に対する安心感というものがあろうかと思います。  ことしは老人医療費も、自己負担というものも増加をするというような法案も実は現在出てきているわけでございます。例えば老人医療費なら老人医療費というものが上がりますよ、こういう雰囲気の中でございますと、これは将来また大変になるのだ、そういうふうな気持ちの中からなかなか個人消費というものが進んでこないということも、十分これは数字の上から見ましても起こり得るわけでございます。  たまたま今アメリカが上院におきまして税制の改革の問題をやっておりますけれどもアメリカ税制を見せていただきますと、アメリカの下院におきましてレーガン大統領が提案をした案、それから下院を通過した案、これらを見ますと、難しい中ではありますけれども、いろいろの配慮をいたしております。  それからもう一つ財政収支均衡法を拝見いたしましても、この中を見ましても、非常に大変な法案でございますが、その大変な決意の中でも、一律削減の例外項目というのがございます。例外項目。その例外項目の中に老人保健年金、医療扶養費、児童扶養費、婦女子等の栄養費、食糧切符、児童栄養費、退役軍人保障費及び年金、利払い費、それからその中に老人医療保険、こういったものも実は含めているわけです。  アメリカにおいてもと申しますと、アメリカは大変怒るかもしれませんが、こういう厳しい中ではありますけれども、ここだけは守らなければならないぞという配慮がやはり必要だと思うわけです。老人保健も、先ほどの議論をお聞きいたしておりますと、長期に老人保健というものを見たときにこうせざるを得ないんだというお話でございましたけれども、しかし、それじゃ長期にわたって今から十年先、二十年先を見て、今回上げたらもうこれで上げなくてもいいんだというそこまで見たものではなくて、これは当面の中から今回の老人医療費の一部負担の問題は出てきたんだろうと私は思うのです。ずっと将来、年金のように十年、二十年先を見ての話ではないんだろうと私は思うのです。先ほど大蔵大臣から、将来を見ての話のようなお話がございましたけれども、私はそこまで考えた話ではないんだろうと思うのです。厳しい中ではございますけれども、我々は老人医療費の一部負担引き上げの撤回を要求いたしておりますが、将来にわたっての中長期的な話をすれば、これはどうしても将来こういう部分だけは、これ以上はいたしませんよと。アメリカにいたしましても、老人保健を全体の二%以上削減はいたしません、こういう一つの限界を示しているわけですね。やはり現在の政策と同時に、中長期的にもこれ以上のことはいたしませんという限界をきちっと示すということは、国民に対して安心を与えることになると思うわけであります。その辺につきまして、ひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  220. 今井勇

    ○今井国務大臣 今の話は老人保健等の一部負担の限度だと思いますが、これは御案内のとおり、人口もだんだん高齢化してまいりますから、特に最近のように老人医療費が急騰してまいりますと、やはり何とかこれを補わなければならぬということでございます。そして増大します老人医療費をすべてじゃ若い世代が負担するのかというと、これもまた問題がありますので、やはり世代間の負担の公平ということが基本原則であろうと私は思います。そのような考え方に立ちまして、現在は一%程度でありますが、今度お願いをしておりますのは、六十一年度で医療費の三・七%程度にひとつ一部負担の引き上げをお願いいたしたい、こう考えておるわけでございます。     〔中島(源)委員長代理退席、原田(昇)委員長代理着席〕  今後の一部負担について、一体じゃどのぐらいになるんだというお話でございますが、今のところ医療費の今後の動向や老人の所得の実情などを勘案して、しかもまだ世代間の負担の公平などを基本原則として検討すべきものでございまして、幾らぐらいだというふうにまだきちっとした答えが出ているものではございませんが、今のような引き上げ程度のもので果たしていけるんだろうかということの疑問は大いにございます。
  221. 坂口力

    坂口委員 総理大臣、最後にお聞きをして終わりにしたいと思いますが、この老人保健の問題でも、これは一体どこまで切られていくんだろうという心配がお年寄りにはあるわけですね。これからだんだんと高齢者、まだふえるわけですから、この高齢者がふえれば、同じ一人当たりの医療費であったといたしましても、全体の医療費がふえることは当然でありますから、これからふえてくる。ふえてくると、さらにその分だけまた自己負担をその都度ふやされていくんだろうかという非常に大きな心配があるわけです。そうしたことが、やはり現在の高齢者だけではなくて、若い中年の皆さん方に対しても影響いたしまして、そして個人消費を抑えるということにかなり大きな影響を与えていくと思わざるを得ないわけでございます。  それで、この一%とか二%とか〇・五%とか、パーセントは別にいたしまして、やはり中長期的に医療費に対しましても、特に老人医療に対しましては、将来これ以上のことはしませんという政府としての一つの歯どめ策と申しますか、そうした姿勢を示すということは、非常に私は有意義なことではないだろうかというふうに思いますが、それに対する総理の御見解をお聞きをして、終わりに、させていただきたいと思います。
  222. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ここ一、二年の間、現内閣は年金あるいは健康保険、そういうような問題をいろいろ手入れをいたしまして、いろいろまた御迷惑をおかけしているところでございますが、これは臨調答申も受け、あるいは財政改革ということも考え、そしてこの制度を長期的に持続的に安定をさせ、しかも世代間の不公平が起こらないように、そういう意味で、多少きついこともあり、御迷惑をおかけすることもありますけれども、今ここでだれかがやっておかぬと、制度自体が非常に大きな災害を受ける、そういう歴史的な自覚もありまして、少しいろいろ御無理もお願いしておるところもあるわけなんでありまして、こういうものは何回もさわるべき問題ではないのであります。  そういう意味で、我々は一つの使命感に燃えまして、御迷惑をおかけしているような点もありますが、できるだけ早く安定させて、長期持続の体制がとれるように今後とも努力していきたい。今度の改正というものも、そういう意味を込めて、まあ見方によっては非常に深度の深い改正に手をつけたなと言われるかもしれませんが、そういう気持ちもあるということをぜひ御了知願いたいと思う次第でございます。
  223. 原田昇左右

    原田(昇)委員長代理 これにて坂口君の質疑は終了いたしました。  次に、河村勝君。
  224. 河村勝

    河村委員 財政経済関係の問題を御質問するのですが、その前に一言だけフィリピン情勢についてお尋ねをいたします。  このフィリピンの国内紛争の結末については、日本としては望ましい方向はおのずから明らかでありますけれども日本が何ができるかということになりますというと、限界があってなかなか難しい問題だと思います。しかし、日本は、他の国と違っていろんな意味で深い関係がありますから、最後まで見物をしておって、それで自分の行動を決めるというわけにはいかないであろうと思います。  今、刻々と情勢が動いているようであります。総理はそこで座っておられるから、あるいはおわかりにならないかもしれませんが、外務大臣、お見えになりましたね、いよいよ何か二人とも大統領に就任をしたというように聞いておりますが、ここまで来ますというと、いよいよ我が国としても、単に話し合いで解決をしなさいというだけでは、これはもう済まされない。それだけでは日本の意思というものが全く通じないわけですから、何らかの意思表示と行動をしなければならぬ事態になっているんだと思います。一体どういう情勢であり、かつ、今どのような行動をとろうとしておられるのか、まず外務大臣から伺います。
  225. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 フィリピン情勢は、時々刻々といろいろな情報が入ってきております。なかなか整理も難しい段階でございますが、きょうの午前十一時十五分ごろ、御承知のようにマニラのクラブ・フィリピーノでアキノ、ラウレル両氏による正副大統領就任式が行われました。ラウレル副大統領が首相を兼任、エンリレ国防相、ラモス参謀総長がそれぞれ任命をされたことは御案内のとおりであります。午後一時ごろより、マルコス大統領の就任宣誓式が行われました。その席にトレンチノ副大統領が出席したかどうかは、今まだ確認ができておりません。なお、この状況については、テレビの放送が途中で中断したということもあって、状況が完全につかめてないということでございます。  また、ちょうど今テレビの第二チャンネル、第九チャンネル、第十一チャンネルの放送局、これが一つの建物にあるわけですが、この建物をめぐって銃撃戦が行われております。二と九のチャンネルは放送が今ストップしておるという状況で、目下私が来る途中で銃撃戦が行われているということで、この帰趨はまだつかめてない。また、マラカニアン宮殿付近では、マルコス支持派とアキノ支持派がお互いに小競り合いをしておる、石の投げ合い等が行われているようでございます。町は、比較的、全体的には平静のようですが、人出は非常に少なくなっておる。多くのオフィスは事実上、開店休業あるいは閉店という状況であります。  軍の方は大分エンリレ・ラモスグループにマルコス派の軍部が移っていっているということで、例えば空軍であるとか、その他レンジャー部隊とかいろいろ移っているようでございまして、まだはっきりつかめませんけれども、半分あるいはそれ以上の勢力になっているかもしれない。エンリレ国防相は八、九割は掌握したと言っておりますけれども、この辺のところもまだ明確につかんでおりません。しかし、相当やはり動揺があることは事実のようです。  なお、マニラの空港は、今エンリレ・ラモス派が掌握したということで、実は日本航空がマニラに飛んでおります。  いろいろと情報はありますけれども、これは今後どうなるのか、とにかくだんだんとアキノ派が有利になっておるという状態は、これはもう御案内のとおりであろうと思います。  そういう中で、二人大統領、アキノさんも大統領の宣誓式をやった、マルコス大統領も宣誓式をやったということで、現在では実は二人の大統領がフィリピンには存在したということになるわけですが、しかし、極めて流動的な状況でありますし、なおかつ軍と軍の正面衝突というものは避けられておる状況であります。したがって、そういう中でいろいろな動きが出ておると思いますし、まだ私は、大きな武力衝突にならないでこれが解決できる時間的な余裕もあるし、また道も残されておるのじゃないか、こういうふうに思っておりますし、そういう状況ですから、今、日本としましても、あらゆる情報を実はキャッチしながら、日本としてのこれからの対応を進めてまいりたいと思っております。  まず一番大事なことは、やはり大きな武力衝突が起こらないということ、そしてそのことによって、武力衝突を避けながら事態が解決されるということであろうと思っておりますし、我々のフィリピンにおける角谷大使を中心としまして、両陣営に対しましても実は重ね重ね武力衝突を避けて、流血の惨事を避けて、平和的に解決するように強く訴え続けておるということでございます。
  226. 河村勝

    河村委員 この問題で時間をとるつもりはございませんが、ただ両陣営に対して武力衝突を避けろと言うだけでは、これは何ら日本の態度というものは表明されないわけですね。悪く言えば日和見です。一体この辺でもってもう一段と進めた日本の態度をとろうという意思は、総理としてはございませんか。
  227. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この問題は、フィリピン皆さんがみずからお決めになることであって、内政干渉がましい、その誤解を受けるようなことは、一切日本は厳に慎まなければならぬのであります。  私は、何回も国会で申し上げているように、アメリカ立場日本立場は違う。アメリカは第二次世界大戦のときにはフィリピンを助けた方であった。我々はフィリピンに大きな惨害を与えた方なので、しかもアジア隣邦である。そういう関係にある。立場が若干違うということも認識しなければならぬ。アメリカはまた軍事基地を持っておって、相当な軍事経済援助もしておるという国だけれども、我々はそういう関係にはない。そういうような彼我のステータスの差を十分意識して、アメリカ日本が同じようなことをやると考えたら大間違いである。日本はもっと謙虚になっていなければならぬ国なのであります。それをまず第一に肝に銘じて、政府としては厳格に持するということをまず言っておるわけです。  しかし第二番目に、やはり流血の惨というものは絶対防がなければならない。そういう意味において両陣営の皆様方に、許す範囲内において我々の期待、希望を表明しておるわけであります。しかし、外交というようなものは、特に国際関係の場合には、表では仕事はしていなくても、内面的にはあらゆる充実した活動をしていなければならぬことがあって、一手間違うというと後でえらいことになるということがよく出てくるわけです。むしろそういうときには行動を起こさない方が賢明な場合が多いのであります。そういう意味において、外務省に事務次官を中心にするタスクフォースをつくりまして、あらゆる情報を集め、あらゆる適当な国と連絡をとりつつ、対処すべき方法をまさに真剣に検討しつつあるのでありまして、何にもしないということではないのであります。  そういう日本立場を十分御認識していただきまして、我々がやるべきことについて積極的に野党皆様方から助言をしていただけば、我々も十分考えて、もしそれが適当であれば、やるにやぶさかでないと考えております。
  228. 河村勝

    河村委員 この問題はこれで終わります。  けさほどから、急激な円高不況と対外不均衡の問題が議論されております。総理は、きょうだけでなくて、他の委員会あるいは本会議においても、今までとってきたいろいろな施策と、それから、この予算案が成立をすれば、四%成長は十分できるであろうと、非常に楽観的な答弁をされておられます。今度の四%というのは、従来の経済指標の四%と異なって、私は、非常に重要な意味を持っていると思います。というのは、もしここで実質四%の成長ができないようであれば、国内経済も非常に深刻なものになりますが、同時に、対外的にも経常黒字の幅が拡大をして、現在、六十年度の経常黒字の見込みが五百十億ドル、それで六十一年度の見込みもまた五百十億ドル、ぎりぎりですね。これ以上ふえるようなことがあれは、日本としては大変困るわけですね。  ところが、こうした急激な円高による不況をそのままにしておきますと、なるほど円高によって輸出は、Jカーブ効果があっても、だんだんと減っていくでしょうけれども、それ以上に輸入が減ります。輸入の名目価格が減るのは当然としまして、不況によって経済活動が沈滞すれば輸入はそれ以上減りますから、もしこれが三%あるいは二%の成長ということになれば、経常黒字の黒字幅というのは大きく広がるであろう。そうなれば、日本の国際的立場というのはとてもやっていけなくなるだろうと私は考えております。その辺は、総理はどのように認識をして、その上で本当に四%成長を確保するためにやれることはすべてやるという決意がおありかどうか、それを伺いたいと思います。
  229. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 四%成長は可能であると考えております。  一方、海外を見ますと、アメリカの景気は悲観論がありましたけれども、しかしやはりまだ非常に根は強い、腰は強い、そういう状況でありますし、ドイツもイギリスも、大体景気は上昇のラインの方へ来ております。  日本の場合も、いろいろ悲観論、楽観論こもごもありますけれども日本の現在の諸情勢を分析してみた場合に、この予算をもってやれば四%は可能である、そう考えております。しかし、私が国会でも御答弁申し上げておりますように、財政的に、金融的に必要な手はどんどんやっていく、そういうことを申し上げておるので、もちろんそういう意味において四%確保のための手段もこれから大いに積極的に努力してやっていくということでもあります。先ほども坂口さんにも御答弁申し上げましたが、この予算が成立したら、この予算執行にも関して思い切った内需の振興、そういうような手を打つように、今企画庁やあるいは大蔵省に研究をお願いして、江崎国務大臣にも民活を思い切ってさらに前進させる方途を今研究してもらっている、そういうことでもあります。  貿易のバランスシートにつきましては、輸出の量はずっと減退してきている、おっしゃるとおり。しかし、Jカーブによりまして、私の方に来た情報の一つには、大体輸出の六割方が一〇%程度値上げができている、そういう状況だと言っておりました。その値上げをやっているという影響からも輸出額は減らない。しかし、それもやはりある程度の段階になると、だんだん減少してくるだろうと私は思います。  しかし、一番大きな問題は、おっしゃった石油の問題でして、これも私の記憶にある数字では、一バレル一ドル下がると約十二億ドル下がると言われております。そうすると、十ドル下がった場合には百二十億ドル、それだけお金が要らなくなるわけですから、支出が減るわけです。その分だけ上乗せになりますから、そうすると、五百十億ドルという計算だとすると六百十億ドルになりますですね。石油の値下がりというのは、今そういう蓋然性が非常に多いわけであります。二十八ドルのものが今大体二十ドル前後になっているのじゃないでしょうか。  そういう点を見ますと、バランスシート自体を見ますと、これは日本の責めに帰すべからざる理由によるものでありますから、結果的にはそういう危険性もなきにしもあらずで、これからの経済の動向については最大限注意をしつつやっていきたいと思いますが、日本の責めに帰すべからざるもので出てきたものについては、これはある程度しようがない。しかし、蓄積しつつあるものについては、やはり国際経済で循環が行われるように我々としては努力して、行うべき手は尽くしていかなければならぬ、そう思っております。
  230. 河村勝

    河村委員 日本の責めに帰すべからざる理由であれば仕方がないでは済まないわけですね。そこに大変な問題があるのであって、言われるような経常黒字が原油安によって六百億ドルを超えるようなことになれば、これはやはり大変なことです。いわんや日本がそれに対応して内需の拡大を十分にやって、それで輸入をふやしていくという努力がなければ、これはもう集中砲火を浴びるここは間違いないわけですね。  ですから、今総理は、予算が通ったら執行の段階でとおっしゃったけれども、執行の段階になって、それでやれることというのは限りがあるでしょう。今予算審議中だから、それで野党修正要求を出しておりますが、それに応じて内需拡大策をやってこそ十分な効果が出るのであって、執行段階でもってできることというのは、一体何があるのでしょうか。江崎長官、どうですか。    〔原田(昇)委員長代理退席、中島(源)委員長代理着席〕
  231. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは、今御指摘もありましたが、十月十五日、十二月二十八日、四%実質成長を積算したいろいろな内需振興対策を講じたところです。  それから円高については、これは御承知のように円の流通が悪いために、先ほど来ここでもしばしば繰り返しましたから繰り返しませんが、動揺か起きるわけです。非常に不当利得を得る業界、不当な被害を受ける業界、しかし円高そのものは決して悪いことではない。そして円高のあった年の下半期というのは、国民消費も、これは今までの例によりますと、必ず伸びておるのです。(河村委員「それは伺ってない。執行段階で何ができるかということです」と呼ぶ)わかりました。  執行段階は、これはもう各種の規制の見直しかどんどん進めております。それからアクションプログラム、これはもっと評価してもらいたいのです。これを我々査察しながら、またこれは委員会でも、内閣でも見直しをやっておりますから、これを実行して、そして輸入を容易ならしめる、これももちろんやります。特定品目については、御承知のように、自動車を初めもう既に通産省では早手回しに自主規制の設定をしたところであります。それから多角的貿易交渉にも入っていく。それから、先ごろ大蔵省がとりました公定歩合の引き下げなども、それなりの効果があるでしょう。それから、今予算段階の積算には加えておりませんが、これは絶えず前進させるという意味で、例えば政令都市の中の工場などで、市外に新たに工場をつくって出ていきたい、そして都市の再開発をすべきだというところについては、通産局それから我々の行政監察局、地方の商工会議所、こういったところが相談をしながら、これは民活を引き出すような措置に出ておりますから、次々と新たな手を打って、何としても四%を達成したいというのが私ども考え方であります。
  232. 河村勝

    河村委員 伺っておりましても、いわば瑣末なこと——瑣末なことの積み上げも大事かもしれませんが、本当に決め手になるようなものが一つもないと思います。  外務大臣、あなたは二十一日の月例経済報告を受ける閣議で、このままの経済実態で推移していけばとても四%成長はできない、それではサミットにとても対応できないという趣旨発言をされたと、新聞報道で聞いておりますが、どういうふうにおっしゃったのですか。
  233. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 経済月例報告で私も発言をしましたが、経済月例報告によれば、日本の指標はしっかりしておりますし、とにかく設備投資も順調に進んでおることは事実です。同時にまたアメリカの経済も、予想した以上に力強いものがあるし、ヨーロッパも、ドイツを初めとして経済の成長はそれなりに進んでおるわけでございます。  しかし、今お話がありましたように、円ドル関係で円が非常に高くなり過ぎた。大体四%の見通しをつけたときは二百四円ということでつけたわけですが、それが二百八十円。このままの状況でいきますとやはりデフレの効果が出てくるわけでございまして、そういう状況から見ますと、よほどこれは政策的にもしっかりやらないと、四%の確保というのは、これはいわば国際的にも非常に注目されておりますし、サミットを迎えるに当たっても、非常にこれは諸外国の注目の的になるわけでございますから、どうしてもやらなければならぬ。残念ながら今民間の指標等を見ると、大体三%、そこまで行かないようなところもありますし、OECDなんかも四%は到底難しいだろうと言っておりますが、日本としては四%どうしても確保していかなければならぬ。それにはやはり予算が通った段階において、さらにその他の経済運営、経済政策等をあわせていろいろと勉強して、やはり政府としては四%を確保する努力をここでしなければならない。そういう段階になる可能性はあると私は考えておりますし、これからが勝負どころじゃないか。そして四%は何としても確保することが政府としての責任であろう、こういうことで私は意見を述べておるわけであります。
  234. 河村勝

    河村委員 あなたのお話も、やはり四%はなかなか到達が大変であろうということまでは認識が確かだと思いますけれども、その対策はやはり予算が通ってから執行段階でやろうということですから、結局大したことはやらぬというのと同じことになってしまいますね。  一体経済実態がそんなに、今月例報告でもしっかりした基調だというお話だったけれども、本当にそうなんでしょうか。例えば景気の一番顕著な指標とも言える民間設備投資、ことしの民間設備投資は七・一%の伸びを見込んで、それでGNPを押し上げるいわゆる寄与度、内需で四・一%のうちの一・四%を企業設備投資に期待しているわけですね。ところが、十二月の企画庁で出しておられる法人企業の動向調査報告、これで見ますと、六十一年度上半期の設備投資計画は、対前年マイナス〇・二%、これは企画庁の報告ですね。ですから、七・一%の伸びではなくて、逆にマイナス〇・二%ですよ。GNP四%に寄与度一・四%であるにもかかわらず、それがマイナスであるというような状態で、それで一体正常な基調でもって経済が動いていると言えるのでしょうか。企画庁長官、いかがです。
  235. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 ちょっと修正させていただき寺すが、二百八十円ではなくて百八十円の間違いです。
  236. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 最近の設備投資動向を見ておりますと、中小企業では製造業の動きが鈍い、大企業では非製造業を中心に底がたい動きを示しておりまして、総じて着実に増加をいたしております。六十一年度につきましては、非製造業は内需関連業種が好調に推移するものと見込まれております。製造業は円高による投資計画の手控え等の動きもありましょうが、現在の投資には研究開発投資、技術革新投資、更新投資等の短期的、循環的要因から独立的な投資のウエートが高く、これらの投資意欲は旺盛であることから、全体としては底がたく推移するものと考えられます。なお、技術革新関連投資は、各産業における情報化、エレクトロニクス化等の構造的な変化が進む中で、業種を問わず極めて多くの分野で活発に行われるものと見込まれております。  これらの諸点を総合勘案しまして、民間設備投資は昭和六十一年度は引き続き堅調で、実質七・五%というふうに読んでおるわけでございます。
  237. 河村勝

    河村委員 それは一体何ですか。大体私が今しゃべりましたのも企画庁の調査ですよ。法人企業の設備投資計画というのは、従来大体当たっておるのですよね。それがマイナス〇・二%で、それが非常に立派に動いているというのは一体どういうことなんですか。どう考えても私にはわからないのです。
  238. 赤羽隆夫

    ○赤羽政府委員 ただいま委員が御引用になりました設備投資調査は、私どもの経済企画庁の調査局で調べているものでございますけれども、これは予測調査ということで、必ずしも一〇〇%そのとおりになるということではございません。ただいま大臣からお答え申し上げましたのは、この調査以外の調査等も含めまして、あるいはさらにこれに加えて、これからの経済の動きなどを予想した上での見通しを申し上げた次第でございます。製造業につきましては、この円高のいわゆるデフレ効果が出ておりますような段階におきましては、ややその影響を受けましてこのマイナスの動きもあるわけでありますけれども、非製造業を中心に現在投資が比較的活発な動きを続けている、こういうことで、六十年度に引き続きまして六十一年度も七%前後の設備投資が行われるだろう、こういうふうな質的な判断、見通しを大臣が述べられたということでございます。
  239. 河村勝

    河村委員 まあ、今とても四%はだめだというような数字は企画庁としては出せないでしょうからいろいろメーキングをおやりになったのだろうと思うけれども、私が申し上げたのは、これは正直な設備投資計画そのものの数字ですから、これからそんなに大きく乖離をして今言ったような数字が出るというのは、私には信じられない。  それから公共事業費ですけれども、先ほどから大蔵大臣は、ことしの公共事業費予算の目玉、柱だというふうなことをおっしゃいましたね。国費ではマイナス二・三%、財投その他地方の助けをかりて事業規模では四・三%の伸び、こういうことですね。しかし、これだって景気に対して中立とまでいかないでしょう。名目成長率はことしの目標が五・一%でしょう。名目成長率をはるかに下回っているのですよ。これで一体内需拡大の効果があるとお考えになるのか。四%達成にこの公共事業費が寄与するとお考えになっているのか、いかがです。
  240. 竹下登

    竹下国務大臣 四・三%、実質が四・一%、先生おっしゃるように確かに名目で計算してこのプラス・マイナスを出す場合が多うございますが、私どもはこの四・三%の伸び率というもの、これは公共事業費に、もう一つは住宅を入れておりません。それから民活をカウントしたものではございません、四・三というのは。かれこれ総合いたしまして、私はこの企画庁の見通しの寄与度にはなり得るではないかと思っております。
  241. 河村勝

    河村委員 私、通産大臣に伺うのを忘れてしまったのですけれども、さっき私が申しました民間設備投資の全体の企業の設備投資計画と、あなたが実際に産業を預かっていて、実態面を見ていて、一体この設備投資計画の数字にあらわれる傾向というものを、実際どういうふうに感じておられるか、それを聞かしてほしい。
  242. 福川伸次

    ○福川政府委員 先生御指摘のように、円高のデフレ効果ということは確かに出てまいろうかと思いますが、私どもも昨年の十月に内需拡大策を決め、電力の設備投資あるいはガスの設備投資の繰り上げというようなことを実施をいたしました。さらにまた、設備投資減税というのも拡充延長という措置をお願いをいたしております。また、近く民間活力の活用によりまして新しい産業基盤の施設の整備を図る、こういった政策努力もございます。また、金利の低下ということも設備投資の回復にも役立つ、かように考えておるわけでございます。  特に、電力を中心にいたしました第三次の産業の設備投資というのは、私どもも堅調に推移するものと思っておりまして、来年度の設備投資の動向については、経済企画庁と同様に考えております。
  243. 河村勝

    河村委員 どうも実際に出てきた数字と説明とは完全に食い違っているのですね。どう考えても、私どもの実際に現地で見、あるいは具体的な数字を見た限りにおいては、そううまくいくとは思われないのですよ。  そこで、今おやりになっている内需拡大対策の一つとして、公共事業の前倒しというのを一つの目玉にしておられるようですね。大蔵大臣はどこかでおっしゃったようだが、あと公定歩合の再引き下げと公共事業の前倒し八〇%くらいやれば、大体それでもっていけるんだというようなことをおっしゃったようですが、そういうような認識ですか。
  244. 竹下登

    竹下国務大臣 まず一つは、公定歩合の再引き下げということは、私ども口が裂けても言ったことはございません。あくまでも公定歩合は日本銀行の専権事項でありますが、機動的、弾力的な金融政策が好ましいという以上のことは言わないように、みずからにも絶えず言い聞かしております。  ただ、公定歩合の引き下げ効果が、心理的な影響はございますけれども、短プラに確実に連動したのはきのうからでございますから、その効果は出るだろうと言ったことはたびたびございます。  それから、公共事業の前倒しの問題につきましては、私も言葉を整理して申しておりますのは、この間通していただいた補正予算の中で六千億ほど債務負担行為ができるようになった。それでもう概に都道府県議会で、——この間聞いたのは道議会の話でございました。都道府県議会を臨時で一日開いてそれに伴うところの裏打ちをしていただいておる、こういうことでございますので、かねて準備をしておりましたからこの債務負担行為の契約が相当なスピードで進むではないか。そうしますと上期の切れ目はないようになるじゃないか。それで、前倒しにするかどうするかというその率につきましては、国会議論等を聞いて、国会予算を通過させていただいたまさにアズ・スーン・アズ、翌日にでもやるか、こういうのがやはり普通ではなかろうかと思っております。  ただ、もう一つございますのは、公共事業の一般財源分こそ先ほど申しましたようにいわゆる債務負担行為でつなげますが、財投に関しましては、今度、その措置を必ずしも今行っておらないわけでございますので、私は、これはいろいろな消化能力の問題もあるようでございますけれども、かなり準備おさおさ怠りなく恐らく建設省当局を初め各種公共事業担当省において行っていただいておるであろう。五十五年のときまでは公共事業執行に関する閣僚会議の議長は大蔵大臣でございましたけれども、今はそういう会議を必ずしも設けておりませんので、あるいは想像の域も出ないお答えもあったかと思いますが、各省庁で準備おさおさ怠りなくおやりになっておるであろうと思っております。
  245. 河村勝

    河村委員 公共事業の前倒しというのは大変効き目があるような印象を受けるのですけれども、実際は実績的にはほとんどないのですね。なぜかといいますと、なるほど前倒しをやれば契約は早くなるでしょう。しかし請負から着工になって、それから建設資材の手当てをするという段階でだんだんと前倒しの効果がなくなってしまって、結局最後は同じになってしまうのですよ。別段前倒しをしなくたって、過去十年くらいの契約率を見ますとわずかな例外を除いてほとんど七二%上期で契約しているのです。ですから、前倒しをするしないといっても同じことなんですよね。だから、これを景気対策に使おうというのは私は大間違いだと思う。  現に経済企画庁で、経済企画庁はなかなかエコノミストが政治にかかわらず正直な報告を出すのがありますが、五十七年に前倒しをやったときのそれの効果を検討したのがございますけれども、結局「公共事業の前倒し執行はそれのみでは限られた景気浮揚効果しか持ち得ず、むしろ、公共事業の絶対量の増加を前提としてその円滑な消化を図り、民間投資を誘発してはじめて十分な効果を発揮し得る」要するに、ちゃんと量がなければだめなんで、それは仕事をする方は前倒しでどんどん資材の手当てをやって、後半ががらあきになってしまったらこれは商売が成り立たないのですよ。ですから、資材の手当てなんかやりませんよ。だから前倒しというのは気分だけ、契約だけ早くやりましたからいい気持ちになっておるだけ、の話であって、実際は何もない。だから、やろうと思ったら下半期は公共事業費を積み増しますという約束でもすれば、これはあるいは効き目があるかもしれないけれども、そうでなければ役に立たない。  いかがです、建設大臣は、もっともまだおなりになってから間もないから無理でしょうな。企画庁長官、そういう分析があるのを御承知かな。
  246. 赤羽隆夫

    ○赤羽政府委員 不勉強にして、どの文書にありましたのか私どもつまびらかにしておりません。
  247. 河村勝

    河村委員 つまびらかにしていなくても事実は事実です。いずれ後でもって差し上げましょう。  ですから、やはり公共事業費は本当に有効に使えば、使おうと思えばこれは公共事業費拡大するしかないのです。ですから、減税問題はきょうは私は申しません、言ってもむだだから。じきゼロ回答が出るのでしょうから。ですけれども公共事業費については考えるべきじゃありませんか。なるほど、財政苦しい折から大蔵省としてはなかなか難しいということはよくわかります。しかし異常な年なんですから。皆さん割と気楽に大丈夫、四%成長できて経常黒字の幅もそんなには拡大しないぐらいのことをおっしゃっているけれども、決してそんな事態ではないと私は思います。  そこで、OECDが昨年つくりました日本経済に関する報告というのがあるのです。これは今年度向けのものですけれども、それに日本財政計画についてのコメントがあります。非常におもしろい中身ですから、ちょっと拾い読みしますから聞いてください。  「国際的かつまたは国内経済の動向にかかわりなく中期的財政計画に厳格に固執するならば、貯蓄過剰が増加し、経済活動が抑圧され、経常海外余剰に新たな増加圧力が加わることとなりうる。」その前段には、もちろん「財政の不均衡是正のため中期的に一貫した政策を追及することの必要性に十分な注意が払われるべきであるがこと言って、今大蔵省がやっておられる六十五年度までに赤字を解消するという中期財政計画は決して意味のないことではないと言って褒めているのです、一応評価はしているのです。しかし、一九八六年のような異常な事態になったならば、そこでは厳格にこの計画に固執していれば、貯蓄過剰が増加をして、それで不景気になって経常海外余剰がふえる、これは経済の論理として当然ですね。  そこで「こうした状況下では財政の自動安定化機構の作動が妨げられるべきではない」これはえんきょくでちょっとわかりにくいのですけれども、「また何らかの裁量的な、しかし一時的な財政措置も、節度ある財政政策の枠組の中で必要となろう。」大変いいことを言っているのですね。ですから、中期財政計画は極力お守りなさい、ですけれども、こういう異常事態なんだから一時的な財政措置をおとりになったらどうだ、こういうことなんですね。  ここだと思うのですよ、私は。全部今六十五年度までの計画をおやめなさいということは言わないつもりです。我が党の拡大均衡路線はここでは申しませんけれども、ことし限り。実際問題として、ここにも書いてありますように、貯蓄過剰がこれだけ大きくて投資が不足しているときには政府がその貯蓄の中からお金を借りて仕事をするというのはこれは当然のことなんですね。ですから、その結果、決して今の状況でインフレが起こるわけでもないし、またクラウディングアウトが起こるわけでもない、国民経済的には正常に動いていくのですから、来年もということは言いませんが、ことしだけは少なくとも六千億ぐらいを積み増しをしまして、それで名目成長率を若干上回るくらいの公共事業の伸びにしなければ、到底この大事な時期は乗り切れないと私は思いますが、いかがでございますか。
  248. 竹下登

    竹下国務大臣 あるいは企画庁からお答えになろうかと思っておりますが、今先生おっしゃった確かにOECDの対日経済調査報告、あれは前半の方はまさに我が意を得たりというと少し表現がオーバーになりますが、ある種の評価をしていただいておるとでも申しましょう。そうして、今おっしゃいましたように後段において、「しかし一時的な財政措置も、節度ある財政政策の枠組の中で必要となろう。」こういうことが指摘されておることも事実であります。  そうしてまた、今河村さんおっしゃいましたので、いわゆるISバランス論の中で、貯蓄が超過しておるときには民間がそれを必要としなければ政府がそれを借りてという経済政策というものも、私も今までも興味を持って勉強させていただいておるわけでございますが、一つ大きな問題がありますのは、少なくとも名目伸び率の公共事業費は確保すべきだという主張は、絶えずございます、民社党の主張にも。そうして、今の状況がいわゆるインフレにつながってクラウディングアウトを起こすような状態ではないではないか。私も、現状そのものは金融の緩みからしてそうであろうと思われますが、現実問題として一つありますのは、一遍臨時的な措置でやったといたしますと、それは非常に既得権化しやすい。五十二年、五十三年の日本と西ドイツに課せられた機関車論の反省というものが、やはりそれが既得権化してしまう、一遍ふやしたら減らせない、これが私は一番の問題ではないか。そうして累積をふやすこと、債務累積そのもの、すなわち国債残高そのものをふやすことが、結果としては、今の局面を見た金融情勢は別として、それによって伸びてくるところの後年度負担と残高そのものは、やはり極端に言えばクラウディングアウトにつながる危険性を持っておるものだということは絶えず見ておかなければならないではなかろうかと思いますので、四・三というのは、がけから飛びおりると言っては失礼でございますが、私どもとしては事業量そのものを確保するための本当に精いっぱいの措置であったということ。  それから、前にも一遍そういう御意見を聞かされたことがございますが、前倒ししてもいわば後の仕事がないと、仕事をちんたらちんたらやるという表現はおかしいのですが、自分の企業の経営計画の中へ合わせて仕事を持っていくので現実としての効果がないという話は先生の持論の一つだと思うのでありますが、そこで、この財政の枠組みを崩さないでやった措置というのが、いわば六千億の債務負担行為をこの補正でやっていただいて、それを来年度へつないでいくというのが、財政の中で許される一つ措置ではなかったかというふうに御理解をいただきたいというふうに私は考えております。
  249. 河村勝

    河村委員 一遍公共事業を増発すれば既得権化する、それは確かにその心配はあります。そういう政治風土が現在日本にあることも承知をしています。ですけれども、これだけみんなが心配して議論しているのですから、与野党ともに。ですから、今度のものはことし限りという合意だってできるのですね。実際、だんだんとインフレの心配ということもございますが、私も大蔵省の資料を見ておりまして、やはり国債残高のGNP対比の率がどんどん上がるようでは困ると思っていたのです。ところが、どうやらことしで頭打ちといいますか、大体限界に来るようですね、大蔵省の計画で試算しますと。後は、GNP対比でいいますとむしろ債務残高は下がっていきます。ですから、私は十分にその対応の可能性はあるんだと思っているのです。  時間がなくなってしまいましてこれ以上議論はできなくなったのですが、住宅のこともちょっと申します。  先ほど、これも住宅減税の問題に関連をしまして、日本住宅減税の歳出総額に占める割合が〇・二だ、世界じゅうで一番貧弱だという説もあるが、データのとり方であって、とりようによっては〇・三%になるんだということをおっしゃいました。仮に〇・三にいたしましても、これまたやはり一番、抜群に少ないということは変わりはないのですね。日本を除いて一番低いのがフランスの一・八、それに対して、〇・三としても。減税だけで考えるのはおかしいとおっしゃいましたが、それなら住宅対策費を含めた歳出総額に占める割合、これを計算をしましても、日本は一・七。一番少ない。その次、下から二番目が西ドイツの四・七なんですね。どっちをとっても異常に少ないということだけは間違いがないのですね。ですから、さっき住宅減税、かなりのものだという御説明がありました。私もそうかと思います。しかし、住宅に頼る、当てにしている分もことしはかなり大きいはずで、また、住宅建設というのは非常に波及効果が大きいので、そういう意味で私は重大だと思います。  住宅減税はことし六・何%でしたかね、かなり大きな割合の増加を見ておりますが、とても今の程度の住宅減税と住宅金融公庫の二億円融資枠を広げるというだけではこれはちょっと難しいし、せっかくこういう大事な時期なんですから、日本の名誉のためにも少しここでもって住宅減税拡大して、せめてローンの残高の一%を二%に上げて、五年くらい保障するというくらいのことをお考えになったらいかがなんですか。    〔中島(源)委員長代理退席、渡辺(秀)委員長代理着席〕
  250. 竹下登

    竹下国務大臣 住宅減税につきましては、率直に申しまして、四百七十五万円の所得の人で、いわゆる住宅ローンを二千万借りておれば税金を納めなくてもいい、結論からいうとそういうことになるわけであります。そうすると、それなりの相当な規模と言えるのではないかというふうに考えております。それと、きょう決まったことでございますが、住宅金融公庫そのものの金利が、公定歩合が下がりましたので、いわゆる利子補給を増加しない範囲内においてそれぞれ引き下げられたということも一つの効果になるではなかろうか。ただ、私も先生と議論しておっていつも感じますように、住宅問題というのには本当はもう一つ土地問題というのがあるということは承知をしておりますが、今名案が必ずしもあるとは思わぬ。恐らく規制緩和でございますとかそういうことを積極的にやっていただける環境が、今熟したのではないかというふうに考えております。
  251. 河村勝

    河村委員 いろいろ申しましたけれども、本当に私は、四%成長ができるかできないかというのはことしの日本の対外均衡、対内均衡に大きな影響を及ぼしますから、何としてでもこれを達成できるだけの手当てをやってほしいと思っているのです。しかし、今まで伺った範囲では、結局、何しろ予算を通すことに夢中で、すべて予算が通ってから、あとは執行の段階でやります、こういう話ですから、これでは何にもできないですよね。私は別段サミットのことだけ心配しているわけじゃないけれども、それすらも心配になりますよ。  総理は、もしこれで三%成長なんということになって、それで対外均衡、対内均衡ともにさらに悪化をするというような情勢になったら一体どう責任をおとりになるつもりですか。いかがです。
  252. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 四%の成長は可能であると考えておりますから、また、それを実現するために全力を注くつもりで、責任は果たせると思います。
  253. 河村勝

    河村委員 これ以上言ってもしようがないからやめます。  本当はきょうは国鉄の問題を少し伺いたかったのですが、あと五分ぐらいしかなくなってしまいました。ちょっとポイントのところだけ総理と運輸大臣に伺っておきます。  我々は、御承知のように国鉄改革、民営・分割を基本とする改革に賛成であります。それで、それ以外に方法はないと思っておりますから成功をさせたいと思っています。  しかし、問題はその中身ですね。余剰人員対策、それから長期債務の処理、これが片づくことが前提でありますが、それと同時に、でき上がる新しい事業体が自主性を持って、独立して成り立つようなものにならなければいけないですね。だから、それを妨げるような中身の制度などができるようでは、これは認めるわけにはまいらない。これから法案が出てくる段階ですから確定的なことは申せませんけれども、かなり心配な問題がございます。  あと一点だけ運輸大臣に伺います。  ですから、そういう見地に立って新しい事業体が、労使が本当に一生懸命やったら将来展望が開けるというそういう条件を妨げるような制度その他ができるようであったならば、その場合には、政府が提案したんだから何でも通すというのでなしに、総理大臣にも十分に検討していただいて、そこを柔軟に応じてほしいし、そうあるべきだと思いますが、いかがでございます。
  254. 三塚博

    ○三塚国務大臣 御指摘のとおりでございまして、新しい事業体は自立自主能力に富んだものでなければなりませんし、せっかくの分割。民営体が拘束をされてその力を発揮し得ないということであってはならぬことは御指摘のとおりであります。  さような意味におきまして、総理からも、法案作成に当たりまして十二分にその点に留意をしつつ関係者との調整をするように、こういうことでありますので、鋭意そのラインでただいま検討、努力中であります。
  255. 河村勝

    河村委員 それじゃ、一点だけ運輸大臣に伺います。  私が当面一番心配しているのは、新幹線保有機構というものです。法案は、私はまだ自分では手に入れておりませんが、新聞でほとんど確定的に近いような中身のものが出ております。多分そうじゃないかと思う。総理は御存じかどうか知らないが、要するに、本州を三つに分けますと収益がでこぼこになるのです。そのでこぼこ調整のために新幹線を全部保有機関に持たせて、リース料で地ならしをしようというわけですね。これは監理委員会の最初の説明では単なるペーパーカンパニーであるという話であった。ところが、お役所でいじっている間にだんだん太り、巨大になってきまして、今見る限りにおいては、理事長、理事以下何人という大特殊法人が出て、しかも、リース料をただ電子計算機ではじいて出すだけのことではなくて、いろいろいじって二年ごとに見直しをして配分を変えるとか、あるいは災害工事をやらせるとか、だんだん尾ひれがついてくるのですよね。行革と全く背反するばかりでなくて、新しくできた事業体に経営介入のおそれが非常に強い。こういうようなやり方であれば、私らには絶対認めるわけにはまいらない。  それについて、いずれ法案ができてからということになるのですけれども、できることなら法案になる前にそういうものは直しておくべきものかと私は思うので、きょう一言それが聞きたかったのです。これについて答弁してください。
  256. 三塚博

    ○三塚国務大臣 新幹線保有主体について先生御指摘は、災害等の工事を付与することはいかがか、こういうことも一つあるでありましょうし、それから二年見直しというのはいかがなものか、こういうことだと思います。  この二年見直しというのは、基準を明確に打ち立てまして、その基準に沿いましてバランスをとってまいる、こういうことでありますので、逆にこのことは本州三会社が平均した負担の中で効率的な運営をせしめることに相なるのではないだろうかという趣旨であります。  それと、大規模災害工事を付与するということは、当然保有主体が、災害が起きた場合におきましてそれを復旧いたしますことは、これは事業の範囲内でございまして、かえってそのことの方がこれまた大型災害の場合均てんをして、これがバランスをとることに相なる道につながるのではないだろうか。もちろん、想像を絶します全国的な大災害という場合はまた別な次元でこれを考えてまいるということは当然であります。
  257. 河村勝

    河村委員 時間が参りましたから、いずれ改めて議論をしますが、そういう余計なことをやらせてはいけないのです。ちょっとやそっとの調整などをやらせるよりも、一回決めた枠の中でそれぞれの事業体は自分で努力して一本立ちになればいいんです。そんな変な調整をやることになれば、それはお役所の常で、常に会社に干渉をします。それから、災害のことなんかは別段そんな法人にやってもらわなくてもいいんです。この保有機構の理事長以下の給料というのはどこから出るのですか。事業体から巻き上げた——巻き上げたは言葉が悪いですが、要するにリース料から払うんでしょう。ですから会社が負担するんですよ。そういうものをつくるのは、これは総理、いずれ問題になりますから、頭に入れておいてください。弊害多き特殊法人をまた新たに一つつくる、こういうことになるのですから、御注意をいただきたい。それだけ申し上げて、質問を終わります。
  258. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員長代理 これにて河村君の質疑は終了いたしました。  次に、正森成二君。
  259. 正森成二

    ○正森委員 我が党は、二月十七日付で、一九八六年度予算に対する組み替え要求を発表いたしました。これは、中曽根自民党内閣の軍備拡張、財界奉仕、国民生活破壊の予算に反対して、福祉教育国民生活優先の税制財政への転換を求める内容であります。  御承知かと思いますが、国税において一兆八千億円、地方税で七千億円、総計二兆五千億円の減税、そしてその財源は、軍事費の削除と大企業に対する不公平税制を是正することなどを内容としております。  これにつきまして、予算委員会の理事会でいろいろいきさつがあったようでありますが、結局のところ、本日、政府・与党と我が党の国対委員長会談が開かれて御協議願えるようであります。  私はこの席であえて、私どもは残念ながらまだ少数党でございますから私たちの案がすべて採用されるというようなことは考えておりませんが、少数党であるがゆえに聞く耳を持たないというのでは、そもそも予算委員会での審議、またこの集中審議意味そのものをも失わしめるものであるというように思っております。ですから、聞くべきところは聞くという姿勢で各閣僚の真摯な答弁を最初にお願い申し上げておきたいと思います。  そこで、まず最初に伺いたいと思いますが、総務庁長官に伺いたいと思います。  総務庁では、統計局で詳細な家計調査を行っておられるようであります。特に、五年ごとに行われるものは非常に大規模な、五万世帯にも及ぶような調査と承っております。その調査によりますと、昭和六十年の十二月二十日過ぎに発表になりましたが、全国の消費の実態調査によりますと、五年間に〇・二%しかふえておりません。五年間であります。これでは国民の消費支出が上がらないというのは当然でありますが、この同じ資料を見ますと、昭和三十九年から五年ごと、五十四年までの数字が出ているようであります。そしてその数字では、国民の消費支出は、最近の臨調行政改革と言われました五年間とはさま変わりに一定の伸びを示しておったというように出ておると思いますが、御答弁を願います。
  260. 北山直樹

    ○北山政府委員 お答えいたします。  先生お話しの調査は全国消費実態調査だと思いますが、この調査によりますいわゆる全国全世帯の一世帯当たりの消費支出、これは今先生お話しのように、昭和三十四年から三十九年までは五年間で実質で三四・五%の伸び、以下ずっとこうしまして、四十九年から五十四年までは一〇・一%、五十四年から五十九年までは〇・二%、こういう格好になっておるわけでございまして、これは御承知のように、日本の経済が昭和三十年から四十年代の高度成長からその後安定成長へ移行した、こういうことによるものと思っておりますが、なおこの調査では別途耐久消費財の保有状況等を調査しておりまして、その結果によりますと、多くの耐久消費財が既に非常に高い保有率になっておる、こういうようなことも消費の伸びが少ない原因じゃないかと思います。  なお、今先生お話しの結果というのは、これは一世帯当たりの結果、こういう格好でございまして、そうしますと、世帯人員が減りますと消費が伸びない、こういうようなことも影響しているんではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  261. 正森成二

    ○正森委員 いろいろ言われましたが、同じ資料の中で、なぜこういうように消費が伸びないかということも分析されております。それはその報告の十八ページと二十ページに書いてありますので、長官に御答弁願うのも失礼でございますし、局長が出てくるのは時間かかりますので私が申しますと、五十九年には実質で五・七%しか勤労者の実質収入は伸びていないわけですね。それが同報告書によりますと、四十九年までは二〇%から三〇%の大幅増加を示し、五十四年でも一五・四一%も伸びておった、それが三分の一以下の五・七%である、こう出ております。  同じように実収入から税金やあるいは社会保険料、こういう非消費支出を差し引いた可処分所得は幾らになるかと言えば、これは実質でわずか二・八%で、五十四年までの一〇ないし二〇%台に比べ低い伸びにとどまったというのが総務庁の報告であります。私が今言いました数字に間違いがありませんか。
  262. 北山直樹

    ○北山政府委員 お答えいたします。  報告によりますと、そのとおりになっております。
  263. 正森成二

    ○正森委員 今の政府の大規模な調査によっても明らかなように、この五年間は著しく消費が伸びておらない。それは結局、実収入がふえないで、ふえない上にわずかばかりふえたものも税金と保険料に取られてしまう、それが消費支出がふえない原因であるということを政府自身も認めざるを得なかったというように思うわけであります。  で、同じように、総理諮問機関である経済審議会が六十年の十二月に、「一九八〇年代経済社会の展望と指針」のリボルビング報告を出しております。その中で三十五ページに、個人消費の拡大が大事であるということを触れた点がございますが、この点についてどういうように報告がなっているかお答えを願いたいと思います。
  264. 及川昭伍

    ○及川政府委員 御指摘の箇所は、「GNPの約六割を占める個人消費の拡大を図るため、技術革新など経済発展の成果を賃金と労働時間短縮に適切に配分すること等を通ずる可処分所得や自由時間の適度な増加、物価の安定等を図る。」という報告になっております。
  265. 正森成二

    ○正森委員 私が申しましたことでも明らかなように、政府の正規の諮問機関等が、あるいは調査が私が最初に述べましたことを裏づけしておるわけであります。そしてこのことは、賃上げ、労働時間の短縮と同時に、政府としてなし得る減税が極めて大事であるということを示していると思います。  私はお許しを得て資料を配付いたしましたが、その資料の1を見ていただきますと、これは一九七五年と一九八四年を調べたものでありますが、資本金十億円以上の企業の経常利益は、一九七五年を一〇〇といたしますと五三四と五倍であります。これに対して名目賃金は一七六、実質賃金ではわずかに。一一四であります。このことは結局、先ほどの総務庁の調査結果やあるいはリボルビングでの政府側の主張がやはりこういう事実を背景にして言われているということを示していると思います。  そこで、他の委員もお聞きになりましたが、念のために申し上げたいと思います。総理もそのうちに質問が回りますからお聞きを願っておきたいと思います。  賃上げについては、これは労使の間の問題であるという答弁が再々行われますが、公務員については、これは労使という一方の使用者は政府でございますが、他の委員も聞かれましたが、五%の物価上昇がなくても必ず人事院総裁は人事院勧告を行う、そしてそれを政府は尊重するということを、これらの資料ですね、総務庁の調査あるいは経済審の報告というようなものを踏まえて、それを当然反映しなければならない政府としての答弁をごく簡単にお願いいたします。
  266. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これはこの席でもしばしば申し上げておりますとおり、人事院勧告があれば、昨年十一月の官房長官の声明のとおり、やはり俸給というものは勤労の基礎的条件でありますから、尊重の決意であります。
  267. 内海倫

    ○内海政府委員 御案内のように、人事院の勧告というものは労働基本権の制約のもとで行われるものでございます。在来も五%を切った場合にも勧告をいたしておりますし、またその際に、前の総裁もいろいろ意見も申し述べております。  いろいろな事情を総合勘案し、かつ調査結果がどう出るかということがやはり大事な問題ですから、今直ちに私ここで勧告を申し上げるということを言うのには、まだもう少し資料が整わなきゃいけないと思いますが、やはり基本的に人事院勧告というものの法律上の性格を考えますと、私は、その調査の結果によって積極的に考えたい、こういうように思っております。
  268. 正森成二

    ○正森委員 総理に伺いたいと思います。  総理は、一月の六日の夜、NHKで「総理にきく」という番組にたしか出られたと思います。御記憶ございますか。
  269. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 出たような気がいたします。
  270. 正森成二

    ○正森委員 確かに出ておられます。私も拝聴をいたしました。それで、そこでおっしゃったことを念のためにもう一度聞きましてここに持ってまいりました。御記憶を喚起しながら聞いていただきたいと思いますが、そこで総理は磯村氏の質問に対してこう答えておられます。「減税考えておるわけです。ですから、ことしは四月までに大減税法案をつくってもらいますよ。政府税調及び党の税調で。相当思い切った所得税、法人税あるいは相続税その他の減税案をつくってもらう。」というようなことを言われまして、引き続いて、「そして秋に今度はそれに見合う財源の法案をつくってもらう。秋に両方一緒にした大減税法案をつくって国会へいよいよ提出する準備をする。」云云、こういうように言っておられます。思い出されましたでしょうか。
  271. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そういう趣旨のことはこの国会でも申し上げております。
  272. 正森成二

    ○正森委員 そこで、総理、私が率直に聞かしていただきますと、総理の言われるのは、減税の案と財源とは別々にして、減税は四月ごろだ、そして財源を含めたものは秋ごろだ、こういうことを今まで言ってこられたわけで、私ども政府税調への諮問もそういう基本的なスタンスになっておることは承知しております。しかし、私が疑問にたえないのは、ことしは四月までに大減税法案をつくってもらいますよというのは、これはそのとおりであります。ところが、秋に今度はそれに見合う財源の法案をつくってもらう、こう言っておられます。財源の法案というのは減税に見合うだけの増税案じゃないのですか。したがって、秋に両方一緒にした法案というのは、増税、減税のプラス・マイナス・ゼロのものを出すということではありませんか。  ところが、あなたのNHKの「総理にきく」では、秋に両方一緒にした大減税法案をつくって国会へいよいよ提出する、こう言っておられるのは、何も知らない国民に、なるほど財源を含めたものも大減税法案なのかという印象を与える、NHKというものを利用したマヌーバーではありませんか。私は聞いておりまして、総理はなかなか話術はお得意だけれども、これはミスリードするなと思ったのですけれども、フェアな態度だと思われませんが、いかがですか。
  273. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この国会でも申し上げ、また今のテレビのときにも申し上げたように、春には減税の方策、秋にはそれに対応する財源措置、そしてあわせて一本として来年の通常議会に出したい、そういうスケジュールで進み、またそういう意思で言っておるわけであります。
  274. 正森成二

    ○正森委員 総理の内心の意思はわかりましたが、NHKに放映された限りでは、秋には財源も含めた大減税法案ということになれば、秋にも減税だけが行われるというようになる誤解を招くことがあると思うのですね。  総理は漢籍が非常にお得意なそうですが、朝三暮四という言葉を知っておられますか。
  275. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 昔漢文の先生から聞いた覚えがあります。
  276. 正森成二

    ○正森委員 私も漢文の先生から習いましたが、これは荘子(そうし)——荘子(そうじ)と読む人もありますが、出てくる言葉ですね。内編の中に出てくる言葉で、中国の狙公という人がおる。その人が猿を飼っておった。そこで、その猿にトチの実をえさに朝は三つやる、夕方は四つやると言ったら怒り出したのですね。そこで、それなら朝は四つやる、夕方は三つやると言うたらそれで納得したという有名な故事であります。総理の、四月には減税をやって秋には財源を含めて、しかもそれが大減税法案であるというのは、中国の狙公よりもまだもう少したちが悪いのじゃないですか。(発言する者あり)いや、本当の話。私は率直に言って、非常に誤解を招くおそれのある言葉であるというように思わざるを得ないわけであります。  そこで、総理にお伺いしたいと思いますが、続いて総理は「これはまだ試案ですけど、学者が私に、私が頼んで作ってれた試案があるんですけど。」と、これは相手がある語り言葉でございますから、二度重複して言っておられることがございますが、それによって所得税なんかも六〇から五五%にしたいとか、法人税も下げたいとかいうことを言っておられます。ここで言っておられる、学者に頼んでつくってもらっている総理の試案というのは具体的には何を指すのでしょうか。
  277. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは全く個人的に私の友人に、大体あなたのアイデアではどういうものがいいですか、参考に私にも教えてくれ、そういって本当にプライベートにつくってもらったものです。
  278. 正森成二

    ○正森委員 ここに、総合研究開発機構、略称NIRAというのがあります。これは学者が五人ぐらいで作成されたものですが、これが総理の念頭にあるブレーンと言われますか、学者に参考のためにいろいろやってもらっているといううちの一つではありませんか。
  279. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私が言う学者というのは、それとまるっきり別です。それは全く私の身近におる、親しい少数の学者でございます。
  280. 正森成二

    ○正森委員 それでは、大蔵大臣に伺いたいと思います。  大蔵省は、この総合研究開発機構、NIRAの結論は、この九月ごろに政府税調に対して、これをひとつたたき台の資料にするように、あるいはしてくれということで政府税調に出しているんじゃないですか、主税局長
  281. 水野勝

    ○水野政府委員 政府税調におきましては各委員の中から、こういった資料を配ってほしいという御要望あるいは要請書、そういったものを、お話があれば適宜会長の判断でお配りすることがございます。
  282. 正森成二

    ○正森委員 今の答弁で、配っているということを事実上お認めになったと思います。しかもこのNIRAに出てくる減税の案は、自民党の中で村山調査会というのがあって、鋭意勉強しておられるようですが、その提起しておられる内容に極めて近く、しかもポイントを、あるいは提言のポイントとして出しておられるものは、もっと大胆に税率段階等について述べておられるわけであります。  その骨子は、まず第一に所得税を二兆円減税する、法人税を一兆円減税する、総計三兆円である、その財源はEC型付加価値税を導入する、それでプラス・マイナス・ゼロであるという内容であります。  そこで伺いたいのですが、大蔵大臣、まだ政府税調資料として出しただけだと言われるかもしれませんが、村山調査会でも検討されているようでありますが、これを率直に評しますと、まず第一に家計部門だけをとってみますと、EC型付加価値税で家計部門は三兆円増税になる。その中かり自分自身のところへ所得税減税で二兆円返ってくるが、自分のところで増税になったうちの一兆は丸々法人部門に対して減税に振り向けるといつ内容であります。今、それでなくても私が指摘しましたように消費が低迷しているときに、そこから三兆円取り上げて、財テクその他で金が余って非常にもうかっている企業もある法人に対して一兆円追加減税をするというようなことは、日本経済の将来のためにとっても決してよくないのではないか。  しかも、それぞれの所得税の部門あるいは法人税の部門でどうかということを考えてみますと、これは所得税は最高六〇%までにして六段階に区切るということになっておりますから、所得の高い方の人に対してこれは減税になるということは非常にはっきりしております。法人税の減税はどうかといえば、複数税率を基本税率に一本化しし、それを三五ないし三六%程度まで引き下げる、こう言っております。そうだとすると、今中小企業の軽減税率の三一%から見れば約五%高くなり、大きな企業に適用されている四三・三%でしたか、から見れば六、七%減税になる。それでは家計部門は増税だけやられて、もうかっている法人税の方へ持っていく。所得税の方はどうかといえば、収入の高い方が減税になり、法人税の中でも中小企業部門は高くなる、こういうことにならざるを得ないのではないかという危惧を抱くわけであります。     〔渡辺(秀)委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、時間がなくなってまいりましたので、資料の2以下をごらんいただきたいと思います。  資料の2に、NIRAというのは総合研究開発機構の略称であります。資料2−3を先に見ていただきます。これは、こういう税制が導入されたとしたら家計部門にどうなるかというのを、上に第一から第十と書いてありますのは所得の階層分位であります。第十の方が所得が多い。それから左を見ていただきますとこの説明が入っております。まず第一に可処分所得が幾らになるかということを出しまして、それがCです。それから消費支出Dというのは、消費性向がありまして、これは総務庁の調査に基づいて、第一分位から第十分位までがどれだけ消費に出しているかというのを、最近の数字で正確に出しました。そして、NIRAによれば食料品と医療サービスと教育は除くとなっておりますから、支出の中でそれは除きました。ただし外食と補習教育は入れております。二重課税排除で、酒、たばこ、ガソリンは従前のままであるというのでその分も除いております。そうすると課税対象Gが出てまいりますかう、五%掛けて、HがNIRAによる間接税の負担額であります。その中からさらに砂糖消費税、物品税、電気税・ガス税は、これはEC型付加価値税の中に入りますから、これを引かなければ不公平であるということで引いております。そうしますと新聞接税額のJが出ます。さらに見ていただきますと、四人家族と見た場合に、現行法による所得税額がL、NIRAによる所得税額がMであります。そうしますと減税額は幾らになるかということが出てまいりますが、最終的には現行負担額はLプラスI、NIRA負担額はJプラスMということで、結局増減税額はどれだけになるかというのが次に出ております。それを見ていただきますと、第一分位は逆に四万八千三十七円の増税になる。そして右の方へ移行するほど負担が軽くなりまして、第十分位では三万六千三百八十六円の減税になるということであります。  それを資料の2−1ないし2に数字として負担率をあらわしてみました。そうしますと、ごらんいただいてもわかりますように、太い線の方が現行の負担率でありますが、NIRAの場合にははるかに低所得者に重くなって、第九分位ぐらいのところで逆転をいたします。第十分位というのもせいぜい九百万までの所得でありますから、それを五千万、一億、五億円ならどうなるかというのが資料2−2であります。これを見ていただきますと、明らかに所得が上がるごとに負担が非常に軽くなるという結論が出てまいります。もちろん所得の高い人の消費傾向等については第十分位を参考にして一定の仮定を行っておりますが、こういう数字はまず疑いのないところであります。  総理あるいは大蔵大臣、私は一応国民の御参考のために試算をしたわけで、もちろんこれは私どもの試算であります。しかし、そこから一定の傾向が出てまいりまして、それが総務庁の家計調査や、あるいは経企庁等の「八〇年代経済社会の展望と指針」のリボルビングとか、そこに出ている皆さん方のお考えと逆に反する方向になるんではないかという危惧を持たざるを得ないわけであります。御答弁をお願いします。
  283. 竹下登

    竹下国務大臣 大体、村山調査会の報告にいたしましても、それからこのNIRAの問題にいたしましても、このように国会で正森さんからこれを取り上げられた。私、それぞれ参加しておる方はそれなりの学識のある方だと思っております。したがって、国会で行われる議論を正確に税調にお伝えするように、要求があればこれは提出してさしあげる、提出するということは私どもの仕事だろうと思っております。これらのものをそれこそお集めになって、今まさに濃密な議論を行っていただいておるという現状ではないかというふうに御認識を賜りたいと思います。
  284. 正森成二

    ○正森委員 私は一つ総理にお願いがございますが、今年度の予算編成の最後に、地方に対する負担金、補助金のカット問題で一兆一千七百億円、財源が非常に難渋いたしまして、やむを得ないこととしてたばこ消費税の値上げが行われて二千四百億円調達しました。これは異例のことでありますが、党税調にもかからない、政府税調にもかからない。大蔵省が案を考え、根回しをしまして大方の了承を得てから、党税調政府税調に事後に了承をもらったという異例の措置をとりました。  このときのことを報じた新聞が出ております。大臣は御存じだと思いますが、総理に聞いていただきたいのですが、このときに、政府税調はこれでは権威がなくなっておるんじゃないかと言って小倉政府税調会長に新聞記者が聞いたんですね。そうしますと、権威は以前から相当失墜していると、小倉会長あきらめ顔で言うたというのが新聞に出ているわけであります。総理政府税調に聞いて聞いてというか、答申を得て得てと言われますが、党税調あるいはいろいろな私的な諮問機関などで世論をどんどんつくっていかれますと、結局、政府税調は権威はもう相当失墜しておるということで、それに追随するということになりはしないかというように私は思いますが、いかがですか。
  285. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まず、先ほどのNIRAの案に対していろいろ論評がありましたが、あれはまだ政府が採用するとか党が採用すると決めたものではないので、いわんやEC型付加価値税を実行するなんということはまだ全く白紙の状態であるので、そういう先入観を入れるおそれがありますから、ここではっきり、そういう前提は今のところはまだ白紙である、そう申し上げておきます。  それから、政府税調は一生懸命やっていただいておりまして、我々がいよいよ税制をつくるという場合にはやはり非常に貴重な助言をしていただいております。今回のたばこ消費税に関する問題は、地方団体との折り合いの問題で随分析衝が長引きまして、ついにその期間に間に合わなかったという異例中の異例の事態としてやむを得ず事後承認をいただいた、そういうことで御了承いただきたいと思います。
  286. 正森成二

    ○正森委員 時間がなくなってまいりましたが、労働時間の点について申し上げます。  この経済審の報告書を見ますと、労働時間を短縮することによってこれが内需拡大にも向かうということで、昭和六十五年までに二千時間、あるいは休日十日増加ということを言っております。それから、「二十一世紀産業社会の基本構想」産構審、と言われているものを見ますと、二十一世紀に向けてこれは千九百時間にしなければならぬという意味の提言をしております。  そこで、労働大臣に伺いたいと思いますが、こういうような報告が出ている場合に、具体的な措置をとらなければなりません。それが労使間で決められることだと言っておったのでは、これは十分ではないんですね。労働法規自体を変えなければならないと思います。それに対して、フランスなんかでは、これは労働時間を短縮するために割り増し賃金を五〇%にふやすとか、あるいは一定以上残業すれば代償休暇をとるとかいうようなことが設けられております。あるいは労働省でお調べになった東南アジアを見ましても、時間外の割り増し賃金というのは大抵五〇%で、二五%というようなところはありません。それで、簡単で結構ですが、労働基準法関連法規をやはり変えていって、こういう答申なり提言にこたえていく必要があるというように思いますが、御答弁を願います。
  287. 林ゆう

    ○林国務大臣 労働時間の短縮は、労働者の生活の充実という観点から、また消費機会の増大を通じての内需拡大の観点ということから、大変重要なことだと私どもは思っているわけでございます。  そこで、企業規模によりまして労働時間というのはかなりの差がございますが、中小企業におきましては生産性等の経営面の差がございます。そういったようなものを反映いたしておりまして、かなり長い時間が来ておりますけれども、このような実態を無視して一律に時間の短縮というものを取り上げようとしますと、中小企業の経営というものに対しまして大きな雇用不安とか、そういったものを引き起こすおそれもあろうかというふうに思っております。  そして、先ほど先生おっしゃいましたような労働基準法の改正というものにつきましては、いろいろの審議会の御意見ども伺いまして、そういった御意見を踏まえまして慎重に検討して対処してまいりたいと思います。
  288. 正森成二

    ○正森委員 結局総理、今伺っていると、積極的なアクションはとらないで、二千時間にするとかあるいは千九百時間にすると言っておって、これでは実効が上がらないのではないかというようにも思うわけですね。  通産大臣、お待たせいたしました。そこで、通産大臣に伺いたいと思いますが、通産省では、仮に週休二日制ということになって労働時間が短縮されれば、それは三兆円の内需拡大に匹敵するというような見解をお持ちのようであります。  それから、非常に失礼ですが、時間がなくなりましたのであわせて申し上げますが、円高差益の還元問題について各党からお聞きになりました。それについて昨日ある新聞にも載っておりますけれども、単に設備投資に向けるというようなことだけでは本当の還元にはならないんで、一律の値下げあるいは三段階料金制や特別料金制度、それからまた新規設備に対しましては割り増し料金になっておりますが、円高不況で困っている中小企業などではこれを何とかしてほしいという声が非常に強いのですね。私どももそういう企業についてはその必要性を認めておりますが、そういう具体的な問題について今までたびたび御答弁がありましたが、私が聞いておりますところでは、五月末になれば案を出すということで、もう一つ新聞に出ておるようなことさえおっしゃらないという嫌いがありますので、ここで言える範囲内で国民にお示し願いたいと思います。
  289. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 一つは休暇、労働時間短縮問題、これは中長期的な展望でございますから、海外投資をするとかいうことになれば当然に雇用に影響がございますし、それから老齢化社会になればそれは全部年金だけで遊ばせておくというわけにもいかない。ということになると、職場のこともある。そういうようなことなどがあって、好むと好まざるとにかかわらず、将来労働時間は短縮をされるべきものである。また、それが消費との関係で、ある試算によれば今言ったような程度の消費拡大になるだろう、それは通産省としてはマクロ的な見方として支持できる案であるということであります。  それからもう一つは石油の問題ですが、それは要するにどれくらいの幅になるかということは石油そのものの値段がわからないというと幅が出ないわけですよ、金額が。円レートは大体この辺で落ちつくのかどうか、ここらのところがわからない。多少時間をかけまして落ちつき幅というものを見て、それで金額が今度は想定されますから、その金額によってどういうふうにやるかということはおのずから出てくる。したがって、新聞にも出ているし、皆さんからいろいろな意見もあるし、そういうものを全部聞きまして、それでそこらの、五月ごろの段階に一回にやるか、二回にやるか、そういう問題もありますから、そういうものを含めて結論を出したい。  したがって、あなたのおっしゃったようなこともそれは頭の中には全くないわけじゃないですよ。それはやはり一つの参考意見でありますから、十分検討の対象にしたい、そう思っております。
  290. 正森成二

    ○正森委員 それでは、大蔵大臣に伺いたいと思います。  先日、平和相互銀行と住友銀行の吸収合併が行われました。平和相互銀行というのは相互銀行の中でも大手でありまして、大体二位から六位ぐらいの間を上下しておるという銀行であります。ところが、いろいろ報道もされておりますが、私も確認いたしましたら、これは大変な乱脈で、融資保証も含めた融資総額が大体一兆円を超えておる。一兆一千億円のうちに完全に回収不能という第四分類と言われるものが百三十億円余り、近い将来回収不能となり償却する必要が出るおそれの強い第三分類が大体千七百億円ぐらいということで、それだけで約一八%。これはもう異常なんですね。要注意の第二分類を入れますと、これの倍以上の額になるということであろうと思います。  大蔵省としては、一兆円以上の預金者の利益ということを考えますと、こういう問題についてなぜもっと早く気がつかなかったのかというように、あるいは措置ができなかったのかというように思わざるを得ません。  そこで、私どもも調査いたしましたら、昭和四十九年に相当詳しい調査をされて、それで問題があるということで、私どもの知っておるところでは決算承認銀行になる。決算承認銀行というのは配当はできないというわけじゃないのですけれども、配当する前には大蔵省にいろいろと決算書類を出して承認を求めなきゃならないということなんですね、実際上は配当は行ったようでありますが。  そういうところだったのが、昭和五十二年に、G・Nという検査官がおります。この人は、昭和五十五年に上席検査官で退官をしたようであります。私がG・Nと言いますのは、Nという人物が当時二人おったからであり、間違えないために下を入れてG・Nと言います。名前もわかっておりますから申し上げてもいいのですが、個人のことを予算委員会で申し上げるのもお気の毒だと思いますので、法務大臣等、後でお名前が必要でございましたら言っていただけば申し上げます。  この人が調査に行きまして、そして問題がないということで決算承認を免除あるいは解除するというようなことを行ったと言われております。そして、それだけではなしに、こういう不正なことをやって退官してから、御承知のように国家公務員法の百三条で二年間は自分関係のあるところへは天下りできないということになっておりますから、二年たったところで故小宮山会長の遺志であるということでみずから売り込んで、そして取締役になっておって現在も取締役である、こういう事実があるのですね。私も確認してみましたけれども関係者の複数がこういう証言をしております。  法務省、来ておられると思いますが、こういうように必ずしも正当でない検査を行い、その結果退官した後で地位の提供を受けるということになれば、刑法百九十七条の三の第三項の事後収賄の疑いさえ起こるのではないでしょうか。この点についてまず法務省の見解を伺いたいと思います。これはあくまで理論的な問題としてであります。
  291. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 お尋ねの件でございますが、具体的な事実関係がはっきりいたしませんので正確なところは申し上げかねるわけでございます。  ただ、御指摘のありましたように、刑法百九十七条の三の三項という規定がございまして、公務員であった者が在職中に請託を受けて職務上不正の行為をなし、または相当の行為をなさざりしことに関してわいろを収受するなどをいたしますと、事後収賄が成立する、こういう規定があるわけでございます。
  292. 正森成二

    ○正森委員 事実は、これはいろいろこれから御検討になるでしょうけれども、そういう性質のもので、昭和五十七年に地位についたとすると、時効は五年ですから、時効はまだ完成していないのですね。  大蔵大臣、平和相互銀行についてはいろいろございまして、昭和五十五年にも社会党の目黒委員だったと思いますが、物持と決算委員会で質問をされております。ここに議事録を持っておりますが、そこでも当時の中小金融課長が、平和相互銀行には経営上全く問題がないという答弁をして、それから半年ぐらいたったら諸新聞にばあんといろいろなことが出て、当時の銀行局長が取り消しの答弁をしておるというようなことで、我々が見まして、大蔵省は非常に甘いのではないか、あるいは厳正な措置をしていないのではないかという疑いがないとは言えません。もしそうだとすると、一兆円を超える預金者に対してもとんでもないことでありますし、大蔵大臣なり関係局長の答弁と今後の態度についてお聞きしたいと思います。
  293. 竹下登

    竹下国務大臣 まず私から一言申し上げます。  金融機関の検査というのは要するに信頼関係で行う、可能な限りの情報で行う。したがって、令状を持っていくとか、そんな性格のものではもとよりありません。しかし、情報等で、二年程度の間隔で平和相銀に対してはやってまいりました。経営姿勢、融資体制、与信構造、大口信用集中等の問題点について改善を求めてきた。ただし、その対応が遺憾ながら十分ではなかった。したがって、今回は十分時間をかけて深度のある検査をした。やはり金融機関に対する検査、指導は今後とも公正、厳正であるべきだという考え方を持っております。  それから、天下りの問題については、ちょっと申しわけありませんが、事務当局からお答えをさすことをお許しいただきたいと思います。
  294. 吉田正輝

    吉田(正)政府委員 ただいま大臣が申し上げましたとおり、私ども、金融検査につきましては、そのときのアベーラブルな資料を駆使いたしまして全力を尽くして検査して、公正かつ厳正にやっているつもりでございます。ただ、大臣が申しましたように、金融検査は金融機関から提出される資料に基づき、信頼関係に基づいて実施しておりますので、おのずから種々の制約があることも事実でございます。それで、この点につきましては、平和相互銀行の対応が十分でなかったことは極めて遺憾であるということをまず最初に申し上げさせていただきたいと思うわけでございます。  それから、御指摘のG・Nという検査官のことでございますけれども、私どもの調べているところでは、まだなお調査中ではございますけれども、当時、後進に道を譲ってもらいたいと同氏に退職の勧奨を行っておったわけでございますが、そのときに先輩、知人、上司、その他いろいろと、これは就職する場合には個人としてはいろいろ相談することも事実だろうと思いますが、その結果、ある会社に就職いたしました。その会社自身は、この本人が生まれて育って、そのそばの高校にも通った場所の会社でございます。そこへ参りまして、二年勤務したわけでございますけれども、その一定の期間を経た後この平和相互銀行へ就職したというふうに聞いておりますが、いずれにいたしましても、金融検査官が検査したところへは一定期間を経ないで参るようなことはないというふうにただいまのところお答えさせていただきたいと思っております。
  295. 正森成二

    ○正森委員 それでは、時間が参りましたので終わらしていただきますが、大蔵省には、いやしくも疑われることのないように李下に冠を正していただきたい。法務省には、もし時効になっていないのなら、やはり調べるべきところは調べていただきたいということを要望いたしまして、質問を終わらせていただきます。
  296. 小渕恵三

    小渕委員長 これにて正森君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、税制財政問題に関する集中審議は終了いたしました。  次回は、明二十六日午前十時より開会し、外交・防衛問題について集中審議を行います。  本日は、これにて散会いたします。     午後六時五十三分散会