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1986-02-21 第104回国会 衆議院 予算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年二月二十一日(金曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 小渕 恵三君    理事 中島源太郎君 理事 浜田 幸一君    理事 林  義郎君 理事 原田昇左右君    理事 渡辺 秀央君 理事 稲葉 誠一君    理事 岡田 利春君 理事 二見 伸明君    理事 吉田 之久君       相沢 英之君    伊藤宗一郎君       石原健太郎君    石原慎太郎君       上村千一郎君   小此木彦二郎君       大西 正男君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    倉成  正看       砂田 重民君    住  栄作君       田中 龍夫君    葉梨 信行君       橋本龍太郎君    原田  憲君       三原 朝雄君    武藤 嘉文君       村山 達雄君    山下 元利君       井上 一成君    上田  哲君       大出  俊君    川崎 寛治君       川俣健二郎君    佐藤 観樹君       松浦 利尚君    池田 克也君       近江巳記夫君    神崎 武法君       岡田 正勝君    木下敬之助君       小平  忠君    経塚 幸夫君       瀬崎 博義君    藤田 スミ君       松本 善明君 出席国務大臣        法 務 大 臣 鈴木 省吾君        外 務 大 臣 安倍晋太郎君        大 蔵 大 臣 竹下  登君        文 部 大 臣 海部 俊樹君        厚 生 大 臣 今井  勇君        農林水産大臣  羽田  孜君        通商産業大臣  渡辺美智雄君        運 輸 大 臣 三塚  博君        郵 政 大 臣 佐藤 文生君        労 働 大 臣 林  ゆう君        建 設 大 臣 江藤 隆美君        自 治 大 臣        国家公安委員会        委員長     小沢 一郎君        国 務 大 臣         (内閣官房長官後藤田正晴君        国 務 大 臣        (総務庁長官) 江崎 真澄君        国 務 大 臣       (経済企画庁長官)平泉  渉君        国 務 大 臣        (環境庁長官) 森  美秀君        国 務 大 臣        (国土庁長官) 山崎平八郎出席政府委員        内閣官房長官 唐沢俊二郎君        内閣審議官   海野 恒男君        人事院総裁   内海  倫君        人事院事務総局        給与局長    鹿兒島重治君        臨時教育審議会        事務局次長   齋藤 諦淳君        公正取引委員会        委員長     高橋  元君        公正取引委員会        事務局取引部長 利部 脩二君        総務庁行政監察        局長      竹村  晟君        経済企画庁調整        局長      赤羽 隆夫君        経済企画庁国民        生活局長    横溝 雅夫君        経済企画庁物価        局長      斎藤 成雄君        経済企画庁総合        計画局長    及川 昭伍君        環境庁大気保全        局長      林部  弘君        国土政務次官  白川 勝彦君        国土庁庁官官房        会計課長    斎藤  衛君        国土庁計画・調        整局長     星野 進保君        国土庁大都市圏        整備局長    山本 重三君        国土庁地方振興        局長      田中  暁君        法務省刑事局長 岡村 泰孝君        法務省入国管理        局長      小林 俊二君        外務大臣官房審        議官      福田  博君        外務省アジア局        長       後藤 利雄君        外務省北米局長 藤井 宏昭君        外務省欧亜局長 西山 健彦君        外務省中近東ア        フリカ局長   三宅 和助君        外務省経済局長 国広 道彦君        外務省経済協力 藤田 公郎君        局長        外務省条約局長 小和田 恒君        外務省国際連合        局長      中平  立君        外務省情報調査        局長      渡辺 幸治君        大蔵大臣官房総        務審議官    北村 恭二君        大蔵大臣官房審        議官内閣審議        官       門田  實君        大蔵省主計局長 吉野 良彦君        大蔵省主税局長 水野  勝君        大蔵省理財局長 窪田  弘君        大蔵省銀行局長 吉田 正輝君        大蔵省国際金融        局長      行天 豊雄君        国税庁次長        国税庁税部長        事務取扱    塚越 則男君        文部大臣官房長 西崎 清久君        文部大臣官房会        計課長     坂元 弘直君        文部省初等中等         教育局長    高石 邦男君        文部省教育助成        局長      阿部 充夫君        文部省高等教育        局長      大崎  仁君        文部省高等教育        局私学部長   國分 正明君        文部省学術国際        局長      植木  浩君        文部省体育局長 古村 澄一君        厚生省生活衛生        局長      北川 定謙君        農林水産大臣官        房長      田中 宏尚君        農林水産大臣医官        房予算課長   鶴岡 俊彦君        農林水産省農蚕        園芸局長    関谷 俊作君        農林水産省畜産        局長      大坪 敏男君        農林資産省食品        流通局長    鴻巣 健治君        農林水産技術会        議事務局長   櫛渕 欽也君        食糧庁長官   石川  弘君        通商産業大臣官        房審議官    松尾 邦彦君        通商産業省貿易        局長      村岡 茂生君        通商産業省産業        政策局長    福川 伸次君        通商産業省生活        産業局長    浜岡 平一君        資源エネルギー 野々内 隆君        中小企業庁計画        部長      広海 正光君        運輸省地域交通        局長      服部 経治君        運輸省海上技術        安全局長    間野  忠君        運輸省航空局長 山田 隆英君        郵政省郵務局長 高橋 幸男君        労働省労働基準        局長      小粥 義朗君        労働省職業安定        局長      白井晋太郎君        建設大臣官房会        計課長     望月 薫雄君        自治大臣官房審        議官      小林  実君        自治省行政局長 大林 勝臣君        自治省行政局選        挙部長     小笠原臣也君 委員外出席者        建設省都市局下        水道部長    中本  至君        参  考  人       (日本銀行総裁) 澄田  智君        予算委員会調査        室長      大内  宏君     ————————————— 委員の異動 二月二十一日  辞任         補欠選任   小平  忠君     岡田 正勝君   藤田 スミ君     経塚 幸夫君 同日  辞任         補欠選任   岡田 正勝君     小平  忠君   経塚 幸夫君     岡崎万寿秀君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和六十一年度一般会計予算  昭和六十一年度特別会計予算  昭和六十一年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 小渕恵三

    小渕委員長 これより会議を開きます。  昭和六十一年度一般会計予算昭和六十一年度特別会計予算昭和六十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。近江巳記夫君。
  3. 近江巳記夫

    近江委員 まず初めに、外交問題からお伺いしたいと思います。  まず第一点でございますが、御承知のようにイラン民間航空機イラク軍に撃墜された、こういう報道がされておるわけでございますが、これを政府として承知されておるかどうかということが一点。  それから、まとめてお聞きしますが、戦争中であるといいながら、民間航空機が撃墜されるということは極めて重大な問題だと思います。私は、この地域におきます、日本を含めまして第三国の民間航空機が今後撃墜される危険性があるのじゃないか、こういう心配をするわけでございます。こうした行為は国際的に不安をもたらす非常に重大な問題であると思うわけでございます。今回の事件を通じまして、ますますイランイラク戦争深刻化、事態の深刻化というものをもたらしておる、こういう非常に心配をするわけでございます。そういう中で、日本政府としましては今日、イランイラク戦争終結外交努力を払ってこられたわけでございます。  そこで、今回の事件にどう対処されるか、また、イラクに対して厳重な抗議をすべきじゃないかと思うのですが、この点、外相見解をお伺いしたいと思います。
  4. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 イランイラクの紛争が依然として続いておる、戦闘も激化の兆しもあるということで大変心配をいたしております。我が国としても、イランイラク平和的解決のための環境づくりにこれまでも努力をしてまいりました。それなりにイランイラク政府日本努力を評価をいたしておりますが、しかし解決は依然として難しい状況にある。そういう中でイラン航空機が撃墜をされたということでありまして、相当の死者も出ているようですが、今その内容につきましては情報を集めておりまして、とりあえず近ア局長から答弁をいたさせますが、私としましては、この戦争に対してイランイラク両国とも自制をすべきであるという立場から、実は報道官談話でもって両国に対しまして自制を求めてまいりました。また、きのうもイランの大使、ちょうどイランに帰るということでございましたので会いまして、イラン側にも実は自制を求めるとともに、平和回復のための努力要請をいたした次第でございます。  今の航空機撃墜問題につきましては、局長から今入っておる情報をもとに答弁をいたさせます。
  5. 三宅和助

    三宅政府委員 事実関係を申し上げます。  イラン国営通信によりますと、二十日正午ごろでございますが、イランアセマン航空がチャーターした  どこがチャーターしたということは言っておりませんが、チャーターしたフレンドシップ機イラク軍機によりイラン国内アフワズ付近で撃墜され、搭乗者四十七名が死亡した旨報じております。また、同通信によりますと、犠牲者の中には数名のイラン国会議員のほか、革命ガードホメイニ師の名代でありますマハラチ師などが含まれているというイラン側発表でございます。  また、イラク側発表によりますと、当初C130輸送機を撃墜したということでございましたが、その後訂正いたしまして、軍用輸送機を撃墜した、この中にはイラン議員など若干の要人が搭乗していたということをイラク国営通信がラジオで発表しております。  なお、我が方のイラン大使館によりますと、その中には在留邦人は、現在のところ調査中であるけれども、含まれていないという電話連絡は受けております。  なお、既に大臣が御答弁いたしましたが、今後の対応につきましては、まだ事実関係を十分我々として把握しておりませんので、把握した上でいかなる対応をするか、検討してまいりたいと思います。
  6. 近江巳記夫

    近江委員 民間航空機ということであれば、これはゆゆしき問題でございますし、今後政府としても二度とこういう民間航空機の安全が脅かされることのないように努力していただきたいと思いますし、また、両国のこの終結に向けて一層外交努力を展開していただきたい、このように思います。強く要望いたしておきます。  次に、総括質疑のときに私取り上げた問題でございますが、これはSDIの問題であります。  私は、総理外相の御答弁をお聞きいたしておりまして、非常に相違が見られると思うわけでございます。外務大臣は、慎重に検討しており結論を出す段階ではないという認識でございますが、総理は、いつまでも無責任にほっておくわけにいかないとお述べになって、早期態度決定の意向を示しておられるわけでございます。この点で総理外務大臣では見解が異なるのではないかと思うわけでございますが、安倍大臣見解を承りたいと思います。
  7. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 基本的には異なってはいないと思います。SDIについてアメリカから研究参加要請を受けておりまして、これに対しまして日本として今いろいろと検討調査を進めておるわけでございます。  やはりSDIそのものが御承知のように非常に長期的な計画で、非常に膨大な、また非常に複雑な、非常に技術的な構想でございますから、これをマスターをして結論を出すにはなかなか時間がかかるわけでございまして、ここで時間の歯どめをされても困るわけでございまして、その点はアメリカもそういう立場ではないように思いますので、これは日本にとっても国益上非常に重要な政策決定でございますから、私はやはり納得がいくまでは日本自身研究をしなければならぬということで、いつまでと言われてもそれは困るのだ、とにかく慎重にやって、そして自主的に最終的には決める、こういうことを表明をしておるわけでございます。したがって、いつまでもというわけにはもちろんいかないと思いますけれども、しかし、今それじゃ日にちを限ってこれを決めると言われても、これはちょっとそういうふうにはできない。とにかく慎重にやって、そして結論が出ればこれを政府決定として持っていきたい、こういうふうに思います。
  8. 近江巳記夫

    近江委員 米国のシュナイダー国務次官が、西ドイツも三月中旬にも正式に調印するであろう、また日本、イタリア、イスラエルもこの夏ごろまでに参加決定することになるだろう、こういうように述べておることは御承知のとおりであります。そこで、何か早期態度決定という、そういう状況がもう生まれてきているのじゃないか、こういう危惧をするわけでございますが、数日来の国会答弁等聞いておりますと、政府態度にそういう変更があったのじゃないか、そういう感じがするわけであります。もう一度重ねてお聞きします。
  9. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 政府態度変更はありませんし、ヨーロッパでもイギリスとかあるいはフランス等方向がはっきり出ておるわけですが、ドイツはまだアメリカとの間で交渉が残っておりまして、私はこれはなかなか難しい交渉だろうと思います。それから、イタリーも決めてない、こういうことでございます。順次アメリカ参加要請した国々の方針が出つつあることは事実でございますが、日本日本なり立場で慎重に検討してまいる、この考え方は不動であります。
  10. 近江巳記夫

    近江委員 この問題に関しまして、安倍大臣総理とじっくりと話し合われましたですか。
  11. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 別にじっくりと話し合ってはおりませんけれども、私は私なりにいろいろと調査団報告等も受けまして、研究検討いたしておるわけです。
  12. 近江巳記夫

    近江委員 もう一度お聞きしますが、従来の考えというのは、研究理解であり、慎重に検討しております、急いで結論を出す必要はないという、この考えに変化はないと理解してよろしゅうございますか。
  13. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今の状況で別に期限を切って急いで結論を出すという筋合いのものではない、こういうふうに思っております。
  14. 近江巳記夫

    近江委員 政府としてはこれまで二回にわたる調査団派遣しまして、伝えられるところ、四月ごろ研究参加に関心のある民間企業を含めて第三次の官民合同調査団派遣を決めたというようなことが言われておるわけでございますが、そういう事実はあるのですか、計画はあるのですか。
  15. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 官民合同調査団派遣するという方針は今決めておりませんが、しかし今後とも調査は続けていかなきゃなりませんから、そういう中でどういう形でこれから進めるかは今研究はしておることは事実でございます。
  16. 近江巳記夫

    近江委員 研究を進めておるということは、その方向で動いておるということなんですね。それで、今回で三回目のそういう調査団派遣、そういう研究を今進めておるということでございまして、こういうことから考えますと、意思を表明するタイミングを何か見計らっているような段階のように思うのです。この点についてはどうかということと、また日本参加を見合わせる余地が残されておるかということもあわせてお伺いしたいと思います。
  17. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 別に時期を見計らっているわけではなくて、日本考え方政府としての考え方が決まってないということであります。  それから、何だったですか。
  18. 近江巳記夫

    近江委員 日本参加を見合わせるという余地を残しておるかどうか。
  19. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この点も含めて、今全体的に調査を進め、そして検討を進めておる、こういうことです。
  20. 近江巳記夫

    近江委員 もしも日本参加するというようなことになった場合は、民間参加ということも言われておるわけでございますが、この点については外相はどのように思われますか。
  21. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはまだ何も結論を出しておらないわけですから言う立場にはないわけでございますが、各国の参加の形態を見ておりますと、政府が直接参加する場合、あるいはまたSDIそのものには参加しないが民間は自由に参加させるという立場、あるいはまた政府間で取り決めをして民間参加をする、こういう方式と、いろいろと態様があるわけでございまして、そういう態様をもちろん我々の検討の中に含めてこれから調査するとともに、勉強してまいりたい、こういうふうに思っております。
  22. 近江巳記夫

    近江委員 このSDI参加問題につきましては、非常に多くの疑問であるとか不安が残されておるわけでございます。そういう点で、これまでの経緯からかんがみましても、いわゆる国会了解をなくして参加に踏み切ることはしないということを約束していただきたいと思うのです。これにつきまして、大臣から御答弁いただきたいと思います。      ’
  23. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 SDI研究参加ということになった場合は、挙げてこれは政府責任で行うべき決定でございますし、政府責任を持って行う。同時にまた、この問題はもちろん国会に報告しなければなりませんし、あるいはまた批准を求める案件が出れば批准は求めていかなければならぬことは、これはもう議会政治立場から当然のことであろう、こういうふうに思います。     〔委員長退席、林(義)委員長代理着席
  24. 近江巳記夫

    近江委員 大臣の御答弁を聞いておりますと、確かに仕組みとしてはそのとおりでございますが、要するに政府責任を持って決定をする、その前に少なくとも国会のそういう了解を得るべきである、極めて重要な問題であるということを申し上げたいと思います。もう一度お伺いしたいと思います。
  25. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはあくまでも政府が決めるべき決定であろうと思います。もちろん国会に報告し、国会理解あるいはまた協力を求める、あるいはまた場合によっては批准を求めるということも出てくるかもしれませんし、この辺のところはこれからいろいろ、参加するしないというものも含めて検討する中で、政府部内でもまだ何も煮詰まっておりませんので、議論してまいりたい、こういうふうに思います。
  26. 近江巳記夫

    近江委員 極めて重要な問題でございますので、あくまでも我々国会のそういう了解を得る、こういうことを前提としていただきたいということを重ねて強く要望いたします。  次に、日ソ問題でございますが、この二月十三日、ソ連外務省スーヒン新聞部次長はモスクワでの記者会見におきまして、さきの日ソ共同声明について「平和条約交渉を行うとの合意は確認された。しかし、いわゆる領土問題で交渉を行うということではない」このように述べておるわけです。また「「日本政府高官やマスコミがいっていることは知っている。しかし、その発言見解は実際と一致していない」と説明した。」このように伝えられておるわけでございます。日本政府説明におきましては、領土問題を含む交渉を行ったとしておるわけでございまして、また今後領土問題を話し合うことを拒否しないとのソ連立場が示されたものと、このように受けとめてきたわけでありますけれども、こういう一連の発言を見ますと、明らかに日本政府説明ソ連側認識が異なることになるわけでございます。これはどういうことなのか、御説明を願いたいと思います。
  27. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 少なくとも私の交渉相手ソ連政治局員であり、なお外交責任を持っておりますシェワルナゼ外相であります。その外相との間で領土問題を協議をいたしまして、そしてその結果として共同声明の中で明らかにいたしておるわけでございますし、なお、領土問題を含めた日ソ間の平和条約交渉は今後も継続して行うということを私とソ連責任者であるシェワルナゼ外相との間で合意をしたわけでございますから、それがすべてでございます。
  28. 近江巳記夫

    近江委員 両国外相合意した、にもかかわらずこういう発言が行われておるのですね。そうしますと、こういうことを放置しておいていいんですか。これは我が国にとって非常に不利益なことだと思うのです。そういう点から、こういう発言に対して我が国として何らかの外交措置をとるべきだと私は思うのですが、いかがでございますか。
  29. 西山健彦

    西山政府委員 お答え申し上げます。  スーピンソ連新聞部次長のみならず、在京ソ連大使館アブドラザコフ参事官もいろいろと本件については発言を行ったことが伝えられております。  いずれの場合にも、我が方といたしましては、直ちにソ連課長在京ソ連大使館参事官を招致いたしまして、その真意を含め事実関係を照会し、把握すると同時に、反論すべき点は厳しく反論して、我が国立場を改めて明確にいたしております。
  30. 近江巳記夫

    近江委員 もう一つは、在日ソ連大使館アブドラザコフ参事官が去る二月十八日の記者会見におきまして、ソ連側として一九五六年の日ソ共同宣言が、六〇年の日米安保条約改定を経て変質し、効力を持たなくなったとするソ連側認識は今日も一切変わっていないと言明したということが伝えられておるわけです。これは極めて重要な問題であると思います。ソ連側は一九五六年の日ソ共同宣言は無効であるという認識ということになるわけです、この発言でありますと。もしこれが事実であるならば、日ソ関係も北方領土問題もその根拠とすべき条約的基礎を失うことになるのじゃないかと思わざるを得ないわけでございます。  そこで、改めて大臣にお伺いしたいと思いますが、ソ連側日ソ共同宣言効力なしという見解なのか、あるいは効力あるという見解なのかどうか、一点。  第二点として、そしてこのことはさきの外相会談で確認されているのかどうか、第二点であります。  第三点、もし明確でなければ正式にソ連側に確認を求むるべきではないかと思うわけでございます。  この三点につきまして、安倍外相見解を賜りたいと思います。
  31. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 一九五六年の日ソ共同宣言は、これは両国の最高首脳によって合意され、発出された宣言でありますし、同時にこれは両国批准も経ておるわけでございまして、両国の厳粛な国家としての約束事でございます。その結果に基づいて、日ソ間の戦争終結をして、そして国交が回復をされたわけでありますし、また国連加盟その他の問題もそれによって進んだわけでございます。したがって、日本立場は明快でございますし、ソ連においてもこの日ソ共同宣言批准をされて、その結果として日ソの国交回復その他行われておるわけでございますから、日ソ間において条約に等しい共同宣言、これを否定する根拠は何らないわけでありますし、そうした条約と同じこの共同宣言について確認する必要もない国家間の厳粛な約束事である、こういうふうに私は考えておるわけでございます。  ただ、領土の問題については、その後六〇年のソ連のフルシチョフの書簡その他によって彼らの政策を変えてきておるということは、これは御承知のようなこれまでの経緯であるわけでございます。日ソ共同宣言は、厳然として両国間に存在しておる約束事であるということは今さら言う必要はないわけで、今さら言う必要もない両国家間の合意であるわけです。
  32. 近江巳記夫

    近江委員 外務大臣の今お話ありましたように、この日ソ共同宣言は厳然として効力はある、明確な御答弁でございます。  ところが、先ほどから私が挙げておりますように、スーヒン氏あるいはアブドラザコフ参事官等の発言というものは、これは全然外相答弁とは違うわけですね。そういうことでこの両氏の発言から見ますと、これは日ソ共同宣言効力を認めないとする発言なのです。そうなってきますと、これは条約の不履行という重大な問題にならざるを得ないと思うわけです。この点について、大臣はどのように思われますか。
  33. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 条約は、この宣言というものは、日ソ間の厳然たるこれは国家間の約束でありますし、それに基づいて、先ほど申し上げましたように戦争終結、そして国交が回復をされたわけでありますし、そしてまた、国連加盟等のことも共同宣言に基づいて実現を見たことは、これは明らかでありますし、ソ連が正式にこうした日ソ共同宣言を否定するというふうな見解を出しておることは一度もないわけであります。
  34. 近江巳記夫

    近江委員 じゃ、もう一度お聞きしますが、この日ソ共同宣言効力を認めないということになれば、これは条約の不履行ということでしょう。なりますね、認めないとすればですよ。両氏のこの発言は認めてないのですから。だから、外務省首脳は一応そのように抗議したと言っていますが、こういうような発言に対して大臣はどう思われるのですか。
  35. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 そうしたいろいろなサイドからのソ連側発言に対しましては、日本としても間違っている点はソ連にただして抗議もいたしておるわけでございます。同時に私は、私のカウンターパートであるソ連外相との間で十分領土問題についても今回話し合いをして、そして今後話し合いを続けて平和条約交渉を行おうという合意を見て、その結果として共同声明を出したわけでございますから、それが両国責任者の正式な合意といいますか、正式な発言であるわけでございます。国を代表した発言であるということでありますし、私はその点については毫末も疑問を持っておりません。今度も平和条約交渉を行ったということは共同宣言に明らかにいたしておりますし、今後とも継続して領土問題を含めて平和条約交渉を行うという両国責任者合意には変わりはないということであります。
  36. 近江巳記夫

    近江委員 ソ連側のこういう発言というものは非常に国民の対ソ不信を招くと私は思うのですね。一連のソ連のこういう対立姿勢あるいは日ソ漁業交渉でもそういう厳しい姿勢というものを見ますと、ソ連側日ソ関係の前進、改善に本格的に取り組もうという熱意がないのじゃないかと思わざるを得ないわけです。外務大臣としてはどのようにお考えでございますか。
  37. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ただ領土問題については、御承知のようにソ連発言はその後いろいろと変わってきておることは事実であります。これは六〇年のフルシチョフ書記長の書簡も出ておりますし、さらにまた七三年の田中・ブヒジネフ共同声明というもので、領土問題を含めた未解決の問題を今後平和条約交渉の中で解決していくという合意も見たわけでございます。さらにその後のソ連態度は、領土問題は存在はしない、領土問題は解決済みだという姿勢をとって、我々の呼びかけに対して平和条約交渉のテーブルにも着こうとしない、そういう状況が今日まで続いたことは、これはもう事実でございます。  そういう点について、我々はソ連のあり方、行き方というものは間違っておる、約束が違う面もあるのじゃないかということを強く主張して、そして今回の日ソ外相会談になって、ようやくとにかくテーブルに着くということについてはお互いに合意を見たわけでございます。しかし、ソ連はその際においても依然として、領土問題についてはソ連側の姿勢、政策、方針は変わってないということを言い続けておるわけでございます。その点については、ソ連の姿勢というものに対して我々は極めて残念に思っておりますし、このソ連考え方というものを変えさせなければならない、これが日本のこれからの対ソ外交の最も大きな基本である、こういうふうに思っておるわけです。
  38. 近江巳記夫

    近江委員 外相の領土問題に対する熱意というものは非常に感じました。今後一層努力をしていたたいて、こういうような発言ということにつきましては厳重に抗議もして、日本政府のそういう立場というもの、また国民の立場というものを鮮明にやっていただきたい、このように思います。重ねてもう一度お伺いします。
  39. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今回の日ソ外相会談におきましても、日本立場は歴史的な経緯を踏まえながら明確に主張をいたしましたし、今後ともその主張に基づきまして、日ソ外相会談を通じましてこの日本の基本方針を貫くために全力を尽くしてまいる決意であります。
  40. 近江巳記夫

    近江委員 日本も国連参加をいたしまして三十年を迎えるわけでございます。まことに記念すべき年を迎えたわけでございますが、日本も国連中心主義で来ておるわけでございますが、私は、国連において非常に残念なことがある。それは何かといいますと、第一点は、国連憲章百七条におきまして、いわゆる敵国条項でございます、これは御承知のように日本、西ドイツ、イタリアなどを指しておるわけでございますが、この条項の対象に日本がなっておるということは非常に問題ではないかと私は思うのです。  国連に加盟をいたしまして三十年も経過するわけでございますし、日本の国連の分担金を初めとして拠出金等も今や大変な地位になっておることは安倍大貝も御承知のとおりでございます。そういう大きく寄与しておる我が国がいまだに敵国条項になっておるということは、我々としては本当に放置できない問題であると思うのです。こういう敵国条項の対象のままになっていることを大臣は適当と思っていらっしゃるのでしょうか、どうですか。
  41. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 おっしゃるように敵国条項が国連憲章の中に依然として存在をしております。憲章第五十二条、また第百七条がこれに当たるわけでございまして、私は、今日日本が国連に加盟をして、そして平和国家として国連中心の平和外交を展開しておる、そして国連に対して大きな貢献をしておる、そういう今日の立場からいえば全く不適当な条項である、こういうふうに思っております。従来も、政府もそういう立場に立ってしばしば国連の場におきまして、あるいはまた国連加盟国に対しまして、敵国条項の改正、再検討要請して理解を求めてまいってきておるわけでございますが、残念ながら、国連憲章の改正そのものが手続的に大変困難な問題であるわけでございまして、今の状況の中にあって敵国条項削除ということはまだ依然として難しいと言わざるを得ないわけでございます。  しかし、国連に参加しておる大方の国は、そうした敵国条項はあるとしても、今日の世界における日本の役割あるいはまた日本の平和国家としての国連への貢献というものについては、これはもちろん十分なる理解が存しておるということは我々は確信を持っておるわけであります。
  42. 近江巳記夫

    近江委員 外務大臣はそれだけ強い認識をお持ちなんでございます。ところが、この問題につきまして、昨年の国連演説におきましては総理外相もお触れになっていない。そういう点、それだけ強いお気持ちをお持ちであるならば、三十年というこの佳節でございますから、当然強くアピールすべき問題だったと私は思います。その条項を変えるということは非常に難しいということは私も承知いたしておりますが、さらに日本の置かれた今日のそういう立場もございますし、三十年を契機として今後積極的な展開をするべきであると思います。今までと違ったどういうアクションをとられるか、行動をとられるかということをお聞きしたいと思うのです。  また、この五月におきましては東京サミットがございますし、先進国の首脳がお見えになるわけでございます。各国外相も当然出席されるわけでございます。この問題を安倍外相が提起されて、少なくともこういう主要国の同意を得られることが非常に大事だと思います。この点につきまして、二点にわたってお伺いしたいと思います。
  43. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この問題は、我々としては国連憲章に現在も存在することは全く不適当だと考えておりまして、これまでも努力を続けてきたわけでありますし、今後とも努力は続けてまいりたい、こういうふうに思っておるわけでございます。どういう形でやるかということについては、いろいろな情勢等も踏まえながら進めてまいらなければならない問題であろうと思っております。しかし、この敵国条項ではドイツ問題等もあるわけでございまして、今の状況から見ますと、声を大にして国連憲章の敵国条項削除ということを主張しても、これが果たして確実にそういう方向に進むかどうかということについては、我々としては努力はしますけれども、なかなか困難なことになってくる、こういうふうに思わざるを得ませんし、やはりそうした状況等も踏まえながら懸命に努力をしていくということが日本の道ではないだろうか、こういうふうに思っておるわけでございます。  世界は既にそうした敵国条項の中での日本という存在はもうすっかり乗り越えて、日本の今日の平和国家としての存在、役割というものを大きく認め、評価をいたしておるわけでございますから、その点については私は、敵国条項そのものがあったとしても、これが今日の日本の国際的社会における地位をいささかも傷つけるものではない、こういうふうに考えておるわけです。しかし、とにかく努力は重ねていかなければならぬ、こういうふうに思います。
  44. 近江巳記夫

    近江委員 今後強く働きかけて、実現できるように努力していただきたいと思います。  今日までの三十年間の我が国のそうした努力というものは当然非常に評価されているわけでございますし、そういう点からいきますと、国連の常任理事国になってもおかしくはないわけです。これは何も遠慮せずそういう働きかけもするべきでございますし、この常任理事国についてどういう認識をお持ちかということが一点。  それから、今年十月、第四十一回総会で、我が国といたしまして安保理事会の非常任理事国に立候補することは決まっておるのかどうか、この二点についてお伺いしたいと思います。
  45. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは御承知のように国連そのものが戦後の新しい国際的な仕組みの枠組みとしてできたわけでございますし、そういう中で常任理事国という一つの形は決まっておる。だから今ここで、確かに日本が国連の中で大きな存在になっておる、協力もいたしておるわけでございますが、これはまさに日本が主張するというよりは世界がそれを求めるという状況になったとき初めて可能になるわけであって、この点は機が熟するということを待つのが適当じゃないか、私はこういうふうに思います。  なお、非常任理事国につきましては、日本もこれまでその地位を何回か得てきておるわけでございますし、今後ともその地位を得るために努力はしていかなければならない、そういうふうに思いますし、今度の場合もアジアの支持を得るということが非常任理事国に当選する最大の前提でございますから、そうしたアジアの理解あるいは支持を得られるかどうかということを見きわめた上で非常任理事国への立候補は決めてまいりたい、こういうふうに考えております。私たちは積極的な非常任理事国立候補の気持ちは持っておりますが、一番大事なアジアの支持というのがその基本になっておるということも我々は考えながら進めていかなければならないと思っております。
  46. 近江巳記夫

    近江委員 最近、ユネスコにおきます米英の脱退という出来事がございまして、国連のあり方というものが問われておるわけでございます。米国におきましては、各国の分担率に見合う投票権、いわゆる加重投票権を認めるかあるいは行財政改革で成果を上げない限り、米国八七年会計年度以降二五%の国連分担率を二〇%に減らすという法律、御承知のとおりカッセバウム法が成立しておるわけです。  そこで我が国として、これだけの応分の負担をしておるわけでございますし、この加重投票について我が国としてはどのように考えておるか、この点についてお伺いしたいと思います。
  47. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今我が国は、分担金、拠出金を合わせますとアメリカに次いで第二位ということになって、国連の運営については最も大きな貢献をいたしておりますし、これは我が国の戦後のあり方、今後の日本の将来というものを考えるときに、国連への協力はこれを堅持していくということが私は日本の平和外交という立場からは正しい姿勢である、こういうふうに思っておるわけでございます。そういう中で、アメリカにおいて国連に対する批判の声も議会等で出ておりまして、国連の分担金等についてこれを削減するという動きも出ておることは事実でありますし、また、国連の関係機関、ユネスコ等からアメリカが脱退する、イギリスも脱退する等、そうした動きが出ておることは事実でございます。これは非常に私は残念なことであると思っております。それはそれなりに一つの理屈もあるわけでございますから、そうしたことも踏まえて、アメリカその他の支持を得るために改革すべき点は改革していかなければならぬ、こういうことで日本は中にとどまって、実は改革という方向努力を重ねております。その成果も徐々に出てきておるわけでございまして、私は、やはり今後とも日本外交の基本というものは国連というものに一つの大きな中心を置かなければならぬ、そういう立場アメリカ等とも話し合って、国連への協力体制を盛り上げていかなければならない。私は実は国連でも賢人会議を主張して、ようやくこれが発足する運びになったわけでありますし、そうした私の主張の背景も今申し上げたところにあるわけでございます。  なお、投票権の問題については、これは今の状況から見ますと、日本が第二位になったからといってその第二位に応じた投票権をよこせということは、これはIMFなんかはそういうことになっていますけれども、国連はやはり一国一票主義でありますし、その基本を変えるということはなかなか困難であろうと思いますし、日本としてはそういう方向はとるべきではない、こういうふうに思っております。
  48. 近江巳記夫

    近江委員 PKO、国連の平和維持活動、これに対する自衛隊の参加問題です。それからまた、国際災害救援隊構想が実現の運びとなっておるわけでございますが、これに対して自衛隊をどうするかというようなことがいろいろ問題になっておるわけですが、外相としてはどのようにお考えでございますか。
  49. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 国連の平和維持活動は、個々の事例によりましてその目的、任務が異なりますので、自衛隊のそれへの参加の可否を一律に論ずることはできませんが、当該平和維持活動の目的、任務が武力行使を伴わないものであれば、自衛隊がこれに参加することは憲法上許されないわけではないと考えております。しかしながら、現行自衛隊法上は、自衛隊にそのような任務を与えておりませんので、これに参加することは許されないというのが政府の解釈でございます。  いずれにしましても、現在自衛隊の派遣検討していないことは、既に総理初め私から述べておるとおりでございます。
  50. 近江巳記夫

    近江委員 官房長官等の時間もございますし、多少質問が出入りしまして恐縮でございますが、論議を進めたいと思います。  御承知のようにこういうすごい円高でございまして、中小企業は特に壊滅的な打撃を受けてきておるわけでございます。また片や対外的には、アメリカ、ECを初めとした貿易摩擦、大変な問題でございまして、いよいよこの五月の東京サミットを控えまして、恐らくこのままで推移すれば日本は袋だたきになるだろう、こういうことが予想されるわけでございます。  そこで、安倍さんそれから官房長官の時間もありますから、そういうことを踏まえまして、まず外交日程ですね。安倍さんはこのサミット前に地ならしとして西欧諸国の訪問あるいはまた四月ごろ総理とともに訪米される予定であるかどうか、まずその予定をお聞きしたいと思います。
  51. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は既に、サミットを踏まえてアメリカも訪問し、イギリス、さらに西ドイツ等も訪問して意見の交換をしてまいりました。さらにまた、国会で許されればOECDの閣僚理事会等もありますから、そういう際に参加をしてフランスあるいはイタリーの外相等ともサミットの成功のための協議をいたしてまいりたいと思っております。  なお、今度はアジアで行われるサミットでございまして、アジア諸国は大変重大な関心を持っておりますので、日本もアジアの一国としまして、アジア諸国、特にASEAN諸国の考え方、あるいはサミットに対するいろいろと要請があると思います。そういうことも事前にやはり聞いておく必要がある、こういうふうに思いまして、これらの諸国に対しましては特使を近く派遣したい、こういうふうに思っております。  なお、総理の訪米、あるいはまた私の訪米については、まだ何も決まっておりません。
  52. 近江巳記夫

    近江委員 今回のサミットで議題とされるテーマはいろいろ検討されておると思うのですけれども、これにつきましては安倍大臣それから官房長官、サミットの議題、特に今頭に置いていらっしゃる点につきましてお聞きしたいと思います。
  53. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 サミットの議題につきましては、いわゆるPR会議というものがありまして、首脳の個人代表が一回、二回とこれまで会合を重ねまして議題等の整理をいたしております。三月に行われる会議等でさらにこれを詰めるわけでございますが、最終的にはまだ確定していないということでございますが、いずれにしても今度のサミットは、これまでのサミットの方式に従って国際経済を中心に進められるわけでございます。同時にまた、これは首脳の参加するサミットでございますから政治問題等も議論されることになることは、これまでのサミットの状況から見て当然であろう、こういうふうに考えております。
  54. 近江巳記夫

    近江委員 先ほども申し上げましたように、このまま推移すれば我が国としては非常に苦しい立場に立たされる。ただ苦しい立場に立たされるということだけじゃなくして、やはり日本の国際的な責任の上において今後そういう批判を浴びない努力をしなければならぬわけです。また片一方、中小企業、地場産業等は壊滅的な打撃を受け、苦しんでおるわけでございます。  そこで、対外相の江崎さんを初め、きょうは政府の代表の官房長官もお見えでございますし、まず政府の取りまとめてある官房長官は、かかる事態に対して緊急の経済対策を今後ぜひやらなければならないわけですが、今どういうことをお考えになり、実施しようとされているのですか。
  55. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 御案内のように、昨年の九月にG5があってその後円高基調に転換をしたわけでございます。したがいまして、当然のことながら、国内の主として中小企業に対する影響等も配慮しなければならぬ、こういうことに相なるわけでございます。そこで昨年の暮れに特別融資制度、金利五・五%、融資枠三千億という処置をとりあえず決めたわけでございます。なお一月に入りましてから、これまた急激に円高になっておるわけでございます。そういったさなかに特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法、これが二月十五日に国会の御理解のもとに早急に成立をさせていただいた、そして同時に二月十五日に補正予算も成立をさせていただいた、こういう機会でございますから、主として中小企業に対する影響等をも考えながら、こうしたときには政府としては関係各省が多いわけでございますので、統一的な勉強をしていただかなければならないわけでございます。  そこで、先般私は総理の御了承も得まして、経企庁を中心に大蔵、通産等関係の省庁が専門的な立場でどういう対応策を進めるべきであるかということの意見を交わしながらひとつ検討してもらいたい、こういうお願いをいたしたわけでございます。もちろん私は素人でございますから、そこでいつまでとかあるいは具体的な内容をどうするかといったようことは専門家の諸君がひとつ勉強してくれ、こういうことでお願いをしたのが筋道でございます。したがって、具体的な問題についてはそれぞれ関係の省庁からお聞きをいただきたい、かように思うわけでございます。
  56. 近江巳記夫

    近江委員 いろいろな経済問題がたくさんあるのですけれども、これは皆さんの時間もあるから要点をお聞きしたいと思うのですが、一つは金利の再引き下げ、公定歩合の再引き下げは私は絶対必要だと思います。これは時期的には情勢としてはこれだけ物価も安定しておるし、私はもう本当にタイミングとしては絶好の状態だと思うのです。この問題につきまして、本当にきょうは政府のトップの方ばかりお見えになっているのです。大蔵大臣それから江崎さん、それから、安倍さんは外務ですから、渡辺通産大臣、三人からちょっとお伺いしたいのです。それから経企庁長官と。
  57. 竹下登

    ○竹下国務大臣 公定歩合が下げの宣言をされましてから二十六日目が来週の月曜日二十四日でございます。したがって実際、財投金利もこれで連動して〇・五%下がるわけでありますから、本当の実効は来週から出てくる。心理的な問題はもちろん別でございますけれども。  それで、G5で我々が合意しておりますのは、とにかく今おっしゃったとおりインフレがこれほど鎮静しておるときはないんだから、ほかの国は日本に比べればまだ高いような気がしますけれども、共通認識です、だから金利下げの環境は整っておる、それから先の問題は中央銀行の総裁同士でよく協議してくれというところまでが合意になっておるわけです。そこで日本は一度やりまして、それが二十四日から効果が出て、〇・五%の金利下げがそのとおり連動して〇・五下がっていくわけですから、短期プライムレートも。だからこの効果がどう出ていくかというのを今は見守るときではないか。それで耳下げ、公定歩合は日銀の専権事項でございますが、したがってまずは来週の月曜日から出てくる実態の効果を見定めて、そうして景気動向をいろいろ考えなすって適切な判断をされるであろうというふうに私は思っております。  もう一つ大事なことは、今度は〇・五が〇・五丸々連動しておりますが、従来は丸々連動しないケースが多いわけでございます。だからそういうことも念頭には置かなきゃいかぬなというふうには思っております。
  58. 近江巳記夫

    近江委員 今、各大臣にお聞きすると言いましたけれども、並行して常任委員会も開かれていますし、大臣もできるだけ出してあげたいと思いますし協力したいと思います。まだ出ていいとは言いません。そのように協力したいと思いますので、全部お聞きしていますと時間が物すごくなりますので。大蔵大臣、要するに今回の政府予算を見ましても財政が主導で内需を引っ張っていくというような力がないわけです。民活が案内になるとおっしゃって非常に民間に期待をするというようなことでございますし、これは非常に政府として金がない中で確かにつらい立場はわかりますが、やはり知恵を出してもらわなければいけない。  そこで、野党四党で修正の要求案を出したわけです。御承知のように二兆三千億になる減税を含む、また六千億の公共事業の追加、一兆一千七百億の地方に対するそうしたカットとかいろいろ盛り込んでおる、これは大蔵大臣も御承知のとおりです。私は内需喚起をするためにはどうしてもこれは大事な問題だと思うのです、本当に。このくらいの修正でこれが大きなまた推進力になるということはすばらしい知恵だと私は思うのです。それにつきまして大蔵大臣、ぜひこれを推していただきたい、実行していただきたい。財布を握っていらっしゃる大蔵大臣に私は強く要求したいのです。いかがでございますか。
  59. 竹下登

    ○竹下国務大臣 政府としては今の状態の中で最善のものなりとして予算の審議をお願いしておる、一方、委員会の中では修正案が提案されておる、これをやはり区分けをしておかなければならぬと思うのであります。  私どもの考え方で言いますと、減税問題はいずれにせよ、やっと五十四年からいろいろ苦労しながら税調へ持ち込んだ、したがって六十二年度に本格的な問題が出てくるであろうから、今年度はこの根幹にさわってはならぬという考え方の上に立っております。  それから公共事業の問題につきましては、これはよく言われますが、減税を五兆円やると輸入が大体七億ドルふえるだろう、それで公共事業を三兆やれば十二億ドルふえるだろう。いずれにしても、いわゆる輸入がふえるということからすれば本当は余り大きな影響はない。一兆円の公共投資の輸入拡大効果が約四億ドル、我が方は千三百六十五億ドル輸入しておるわけでございますから。それは確かに買うものがないということがもう一つの理由ではありますが。したがって今の場合やはり建設公債を結局は財源としなければならぬというと、確かに一兆円やれば三年間で四千億ぐらい税収で返ってくるだろう、が、しかし一兆円は一兆円として六十年間にわたっての三兆七千億の後世代への負担を残すことになるということになりますと、慎重たらざるを得ないということでございます。
  60. 近江巳記夫

    近江委員 それでは外務大臣と官房長官、お時間を言っていましたので、どうぞ。  そこで、政府が今そういうように各省庁に官房長官の方から指示をされて公共事業の前倒しであるとかいろんな検討に入っておられるわけでございますが、特に非常に影響を受けておるのは中小企業なんです。先般来お話ございましたそういう特定中小企業者の事業転換対策等臨時措置法が今回成立したわけでございますが、考えてみますとやはりこれだけの今日の厳しい状況でございますし、特に政府がこの中小企業に対して調査もやっておりますのは、中小企業庁の調査は昨年やりまして、経企庁が今回やっておる。このときも円がちょうど、昨年はたしか二百十円ぐらいのときだったんですね。経企庁がやったときは二百円から百九十円の時点です。今やもう百八十円、百七十円台、御承知のように百七十八円でしょう。ですから、さらにその影響というものは深刻化してきておる。したがって、さらに第三次の、もう本当に業種別の実態調査なり、地場産業の調査は当然でございますが、それをぜひやるべきだと私は思うのです。通産大臣、いかがですか。
  61. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 御意見ごもっともだと思います。
  62. 近江巳記夫

    近江委員 御意見ごもっともだと思われたわけでございまして、それは実行されますか。
  63. 広海正光

    ○広海政府委員 これまでも累次、産地等の調査を実施しておりますが、また現在調査を実行しておりまして、さらに三月に入りますと中小企業庁の各幹部が各現地に参りまして調査をするという予定でおります。
  64. 近江巳記夫

    近江委員 それはぜひやっていただきたいと思います。  それから、この法案が成立したわけでございますが、五・五%などということは、それは政府としては配慮はしていますけれども、それでは要するに本当の救済になりませんよ。これはただでくれる金じゃないのです。五・五%という金利がついて、先の契約のめどもない中で金を借りるわけでしょう。また、それを借りて一体どうするかという深刻なそういう問題が起きているわけです。自殺者も出ているわけです。今までの政府の対策を見てみますと、金利二・七%、集団化事業、商店街近代化事業、小売商業店舗共同化事業、一般共同施設事業、施設共同利用事業、公害防止施設共同利用事業、特別広域高度化事業、構造改善等高度化事業等、これ二・七%ですよ。そうでしょう。あるいは無利子のものがある。特定高度化事業について、工場共同化事業とか特定共同施設事業、知識集約化共同事業、設備共同廃棄事業、特別広域高度化事業、構造改善等高度化事業、災害復旧高度化事業等、これ無利子ですよ。こういうように制度的には幾らでもやっておるわけですよ。ですから利子補給をして——何もこれは法律事項じゃないのですよ。幾らでもこういうものは政令においてできるわけです。ですから、再度調査をなさるという答弁が今あったわけでございますし、そういうことに基づいて、法律は整えているわけですから、あとは、法律事項で国会にかけなくてもいいのですから、機動的に金利を下げるとか、これは絶対に利子補給をしてやるべきだと思うのです。これは通産大臣だけの管轄だけじゃいかないと思いますし、通産大臣と大蔵大臣、ひとつお答えください。
  65. 竹下登

    ○竹下国務大臣 全般的な、民間金融機関の貸付金利、これは自主的な判断で決められるべきものでございますが、金融緩和基調のもとで漸次低下傾向をたどってきて、そこで先般の公定歩合引き下げによって金利全体の低下が促進される中で金融機関も短期プライムレートを、それこそ二月二十四日からこれが引き下げられるということが決定されたわけであります。したがって、民間金融機関の中小企業向け貸付金利というものも一層の引き下げが行われる環境にあるではないかと思っております。政府関係機関は、資金の量、これをいつでも手当てのできる状態に置いておくのがまずは一番急務ではないかというふうに考えております。
  66. 近江巳記夫

    近江委員 非常に時間がないものですから走っていきますが、円高また原油の値下がりで、私が計算した資料もあるのですけれども、原油を二十八ドルから約八ドル値下げして二十ドルとした場合、それから円相場について、現在百八十円ぐらいまで来ておるわけですが、百八十円、そう踏んだ場合、何と石油業界で四兆三千五百億、電力業界で一兆四千二百億、ガスで千六百三十億出るのです。これはいろいろな計算、皆さんもあると思うけれども。  そこで渡辺大臣、この還元について、決算を待ってやるんだとおっしゃっていますが、設備投資とかいろいろなことはそれは結構でございましょう。しかし、これだけ大きな差益なりが出てまいりますと、また原油の値下がり等がございますし、一般国民の感情としてはそれだけでいいのかということがあるのですね。ですから、各家庭に還元するということも含めて強く、国民が納得するそういう還元の方法ということをぜひ考えるべきである。各個人にも還元を含めて検討する、しますか。
  67. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 今勉強しておるのは、円高がどこで落ちつくか、それから石油の値段がどこまで下がるのか、特に石油の値段の方はよくわからぬわけです。スポットがうんと安いからといって全部安いわけじゃないし、したがって幅がわからない、そこに問題がございます。仮定の計算はいろいろできます。したがいまして、もう少し時間をかしてもらいたい。その幅によるわけですから、その幅によってどうするかはその時点で決めたい。ということになりますと、やはり五月末ぐらいに、一番いい、国民経済にとって何が最優先事項であるか、どうすれば内需拡大や景気の維持につながるか、倒産防止になるか、何を優先するかという問題等を考えまして検討させていただきたいと思っております。
  68. 近江巳記夫

    近江委員 それじゃ通産大臣、結構です、一応またやっておられますから。  じゃ江崎さん、簡単に。サミットを目前にしてやはり対外的な、今後急に輸入がふえるわけでもないし、なかなか、非常に難しいと思います。特に一番大きい問題は、やはり内需喚起だと思うのです。それにつきまして後藤田さんからも発言がありまして、それを当然お受けになって努力されると思いますが、特に江崎さんとして力を入れたい、公定歩合の引き下げ、公共事業の前倒し、それから今回の私たち四党が出しておる予算修正、これについてどう取り組まれるか、簡潔にひとつお答えください。
  69. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 私は、やはり異常な円高というのは決して放置すべきものでないという論者です。ですから、きょうの月例報告のときにもしきりに発言をし、大蔵大臣にもきのう以来お話をしておるわけです。円高基調を守っていくことはやはり国際経済担当としては必要ですが、百九十円台が百七十八円になって、百八十円になってそれで定着するというようなことになったら、さっきの官房長官の対策にもなるわけですね。ですから、これはG5というコミュニケーションの場ができたのですから、やはり日本銀行の総裁なり大蔵大臣なりしかるべきところで、もうドル安も限界だよ、これはボルカーが言っているくらいですから、そういうような注意喚起をすることも必要だと思います。  それからもう一つ、アクションプログラムというものを割合評価していただけないのですが、あれを着実に実行に移せば、これは関税も皆さんの御協力で安くしていただいて千八百四十九品目、あとは四月一日からブドウ酒も入れれば千八百五十二品目ですね、とにかく世界で一番安くなったのですし、あとは規格基準・認証の問題でしょう。これも全部総ざらいで今、三月までに規制緩和の実施が本当に行われておるのか、日本市場へのアクセスがどうなっておるのかと言っているわけです。  もう一つ、時間がないようですから、みんなが比較的気がつかない点で私は内需喚起ができると思っておるのはコミューターの問題です。これはそれぞれの飛行場から、今までは五・七トンというのですからせいぜい十八人ぐらいでした。これを今度六十人にふやそう。それで滑走路は八百メーターでいいですから、この緩和を早くすれば、相当な地域にコミューターができて八百メートルの滑走路ができて、これを第三セクターでやれば相当な、横断道路はもちろんのこと、明石海峡はもちろんのこと、相当隠れた掘り出しができるのではないか。  それから、都心にある工場が郊外に向けて移転をする構想を相当持っています。これらについても今総ざらえをするようにということで、三月末を目途に、各通産局そしてまた商工会議所、これに行政監察局がみんな出先を持っておりますから連絡をとって、そういうものを促進する。  まだお答えしたい話はいっぱいありますが、時間の関係もあるようですからこの程度にして、もし御質問があれば重ねてお答えをいたします。
  70. 近江巳記夫

    近江委員 どうも済みません。また今度、一遍機会を見て話していただきたいと思います。きょうはお約束している大臣も呼んでいますので……。  それでは次に、民活元年と政府はおっしゃっておりまして、明石架橋であるとか東京湾横断道路であるとか、大プロジェクトをなさっているわけでございますが、その第一号は何といいましても関西空港だと思うのですね。ところが、御承知のように今や漁業権の問題で完全に膠着状態に入っておる。本年度も七百五十億の予算編成をしておるわけでございますが、どうなるか皆目わからない。これは漁業権という問題について政府は非常に甘く考えておったのじゃないか。やはり漁民の心情を考え、本当に心のひだに入って解決努力しなければならない。運輸大臣は大阪府知事に話をしているということをおっしゃっているわけですが、これは民活第一号として本当に漁民の皆さんの協力を得て立派に成功させなければならない、それは少なくとも政府首脳が本当に身を乗り出してこそ解決し得る、このように私は思うのです。その三塚大臣の決意をお伺いしたい。これが一つです。  時間の関係でまとめて申し上げます。  第二点は、いわゆる地域整備計画政府において決定いたしました。これは国土庁を中心にされたわけでございます。ところが、その後、整備計画は出たけれども後をどうフォローしてくれるんだという不安がある。したがって、今後その関係閣僚会議あるいはまた局長クラスの編成における会議等、しっかりとフォローアップした体制がぜひとも必要である。これをぜひやってもらえるのかどうか。  第三点。地域整備の中で、何といいましてもアクセスが最も大事です。これについて建設大臣の決意をお伺いしたいと思います。  あといろんな問題があるのですが、第四点として、民間増資の比率をぜひもっとふやしてほしい、こういう要望が強い。民活の第一号という性格から見て、それについてどのようにお考えか。  以上四点について、時間の関係で簡潔にひとつ関係大臣、お答えいただきたい。
  71. 三塚博

    ○三塚国務大臣 関西新空港につきましてたびたび御鞭撻をいただいておりますが、御案内のとおり、大変難航いたしております。彼我の額に懸隔があり過ぎます。よってしかし、このままでよろしいかというと、相ならぬわけでございますから、私自身も再度大阪府知事にお会いを申し上げながら、ぜひこの解決のためにごあっせんの労をおとりいただくように働きかけなければならぬと思っておるところであります。私自身、竹内社長を初め、会社首脳陣に対しましては、本件について合意を得べく昼夜を分かたず努力をするようにお願いを申し上げておるわけでありまして、これがずれますことが計画がまた大幅にずれるということになります重大なポイントでありますので、全力を尽くして注意力を持ちながら対応してまいりたいと思います。  また、私に関する第二の問題は、民間が二百億という割り当てに対し二・五倍程度の応募がございまして、関西新空港に対する熱心の度合いがそこに出ておるわけでございます。先生御案内のように一二%——八、二、二、こうなっておりますので、地方団体との比率等も考慮しながら、やはり民活という今日の時流もありますし、特に地元反間会社のこれに対する期待が極めて大であるわけでありますから、参加という、協調という、こういう点でできるだけこのことがその中に取り入れられますように、全力を尽くし指導してまいりたい、このように考えております。
  72. 江藤隆美

    ○江藤国務大臣 空港の関連事業はおおよそ二兆五千億と言われておりますが、建設省が受け持つ分が大体二兆一千四百億くらいになろうと思います。住宅、下水道、公風、それから道路が約一兆七千八百億と考えております。したがいまして、近畿自動車道和歌山線、それから先般国幹審で建設を取り決めをいたしました、一月二十一日に決めたわけでありますが、国際空港線、これは何としても六十八年の春、いわゆる六十七年度末には何とかして完成をさせたい、こういうふうに思って精力的に取り進めてまいります。  それから、もう一つの大きな問題は湾岸道路でございまして、これはかなり金を食うわけでありますが、ことしは泉大津から南伸部を新たに着工することにいたしました。六十八年度の春には若干間に合わないかと思いますが、少なくとも七十年には遅くとも完成をする、そういうことによっていささかも交通の渋滞を来すことがないようにいたしたい、こういうことで積極的にこれは最重点的に取り組んでいきたいと思っておるところでございます。
  73. 山崎平八郎

    ○山崎国務大臣 お答えいたします。  国土庁といたしましても、空港の関連施設整備が整備大綱に基づきまして、空港建設の進捗に対応して計画的に進められますように、既に、毎年概算要求前及び予算政府決定後等におきまして、関係十省庁で構成されております連絡調整会議を開催しておりますので、今後も所要の連絡調整を十分に図ってまいる所存でございます。
  74. 近江巳記夫

    近江委員 そういう体制をしっかりしていただきたいと思います。また、建設大臣、今出られたわけでございますが、この湾岸道路の完成についても必ず間に合わせていただきたい。重ねて御要望しておきます。  次に、消費者をめぐる問題でございます。非常に時間がなくなりましたので、私の方からポイントを言いますので、簡潔に御答弁をいただきたい。  一つは、消費者行政の中でいろいろ輸入という問題もあるわけでございます。特に、食糧品の輸入という問題でございますが、これは農産物殺虫剤、EDBの問題でございますが、これは発がん性があるということで米国内では既に禁止をしておる。こういう実験結果を承知我が国としてはいまだにこれを入れさせておりまして、これはあらゆるフルーツに使っておるわけです。これについて農林省、厚生省はこういう基準をそのままにして、また働きかけも、非常に微々たる働きかけしかしておらないということはまことにけしからぬと私は思うのです。したがいまして、この問題につきまして、農林省はこの輸出国に対してどういう対策をとるか、薬をかえるとか、これが一つです。そしてまた厚生省も、店頭のそういうフルーツを一斉点検をして、残留性があればすぐに、〇・一二ppmと決定しておるそういう基準値の見直しをすべきである。まずこの二点につきまして、時間の関係がございますから、簡潔にお願いいたします。
  75. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 簡潔に申し上げます。  薬剤の残留につきましては、まさに人の健康にかかわる問題でございますので、安全性の確保、これについて私どもとしても十分対処していかなければいけないというふうに考えております。このような観点から、農林水産省としましては、米国におけるEDB剤の規制措置に対応しまして、一昨年来、本剤を使用しております関係各国に対しまして、在日各国大使館及び外交ルートを通じまして、EDBにかわる消毒方法をぜひ開発してもらいたい、これは実は強力に要請してきておるところでございます。これに対しまして、代替の施設、そういったものはなかなか開発が困難であるということがありますけれども、例えばフロリダのグレープフルーツにつきましては、低温処理等による消毒方法が開発され、一部もう導入が進められております。なお、ハワイのパパイヤにつきましても、既に蒸熱処理の方法が開発されまして実用化の段階にございます。さらに、フィリピンのマンゴーにつきましても、我が国によります技術協力の成果として蒸熱処理が今開発をされておるところであります。いずれにしましても、代替処理方法の早期の開発が極めて重要であるというふうに考えておりますので、今後とも強力に各国に対して働きかけをしてまいりたい、かように考えております。
  76. 今井勇

    ○今井国務大臣 簡潔にお答えをいたします。  かんきつ類の輸入の場合ですが、EDBの暫定基準、これは御案内のようにこれをきちっと守らせることとしておりまして、これが守られてさえおれば、消費者に渡ります段階で、EDBというのは極めて揮発性が強いものでございますから検出限界以下になるものだ、私どもはこう考えております。  しかしながら、これは非常に大事な問題でありますから、私どもは、安全性を確認するために店頭におきます抜き取り検査、これを実施をいたします。そして、申し上げた検査の結果を踏まえまして、必要に応じて基準値の見直しということについても検討していきたいと思いますが、その前に、まず輸入するときにきちっと守らせる、店頭でもそれをきちっと検査をして、それで私どもが抜き取り検査をやるということをまずやらしていただきたいと思います。
  77. 近江巳記夫

    近江委員 よく両省、両大臣が連携をおとりになって、今大臣から御答弁があったのですから、どうかひとつそれを実践していただいて国民の健康を守っていただきたい、このように思います。  次に、特に公取委にお聞きしたいと思うのですが、いわゆる消費者が区別がつかないような表示が野放しになっておるということですね。  例えば牛乳におきましても、牛乳にも三種類あるということを御承知でない人も案外多いのですね。例えば牛乳には、牛乳、加工乳、乳飲料とあるのです。ところが、消費者が買うときにその区別がわかるかというのですね。加工乳にしたって小さく書いてある。そうすると、本当に普通の牛乳と同じように国民はとってしまうわけですね、特に、きょうもいろいろ伝えられておりますが、牛乳の生産が落ち込んだ、これは酪農農家にとってはゆゆしき問題でございます。こういうことも、この表示の中から選択が国民に非常にわからなくて消費が落ち込んでおるということの一因じゃないかと私は思うのです。ですからこれは、私は一例を挙げておるわけでございまして、牛乳のそういう表示について公正取引委員会は今後どういうようになさるかということが一点。  それから、もう一例申し上げたいと思いますが、それはしょうちゅうの問題です。しょうちゅうが非常にブームになってきて、特に若い人の間ではしょうちゅう党がふえておるわけですが、何々しょうちゅう、何々しょうちゅう、何々しょうちゅう、もう本当にようこれだけしょうちゅうができるなというぐらいあるのですね。そうすると、どんなものが入っているか全然わからないわけですよ。このしょうちゅうブームの中でこの表示を一体どのようにするのか。  この具体例を通じて、私は消費者を守るための行政を充実していただきたい。まず、この二つの具体例を挙げたことについて御答弁いただきたいと思います。
  78. 高橋元

    高橋(元)政府委員 時代の嗜好に従いまして新しい製品がたくさん出てまいりますが、一方で製品の分化と需要の多様化ということが起こりますと、今お尋ねのございましたような、消費者が正しい選択ができるかどうかということが大変問題になってくるわけでございます。  今御例示のありましたのは、まず第一に牛乳でございますけれども、牛乳につきましては、牛乳と言うことができますのは、例えばミルクとかそういう言葉を含めまして牛乳と言っていいというようになっておりますのは、牛乳と特別牛乳と乳脂肪分三%以上の加工乳ということになっておりますけれども、それ以外に、例えばローファットミルクとよく店頭にありますけれども、これは低脂肪乳とかいう乳の字を使うことができることになっておりますし、脱脂乳でありますとノンファットミルクと書いてもいい。それから、乳飲料でも八%以上無脂乳固形分があり乳脂肪分が三%以上あれば、牛乳、乳という字を使ってもいいというようになっておって、容易にわからない。しかも、それが容器の上で牛乳と書いて牛乳でない、実はこれは乳飲料なんですという打ち消し表示が必ずしもはっきり見えない、認められない。  そこで、主として牛乳のメーカーが集まってつくっております飲用牛乳公正取引協議会という自主規制団体があるわけでございますけれども、そこを指導いたしまして、消費者が種類別名称を容易にわかるようにするために種類別、それから例えば加工乳でございましたら加工乳、乳飲料と書くわけですけれども、その活字の大きさを決めまして、パックを見れば大体間違いなく認識できるように改めるということにいたしまして、これはことしの一月でございますか、そういう公正競争規約を改正をして認定をいたしました。したがって、現在あります在庫の容器類がなくなりますことしの四月ぐらいから、今お尋ねのございましたような表示上の混乱というものはその分だけ片づいていくかというふうに考えております。  それからしょうちゅうにつきましても、私は今ここに持っておるのですけれども、例えば北九州三県で、ニンジンだ、ゴマだ、大豆だ、コーヒーだ、紅茶だ、お茶だ、ベニハナだ、クズだ、それから小麦の胚芽、ハトムギ、ヒシ、ジャガイモ、ピーナツ、ソバ、シイタケ、トウモロコシ、小豆、ギンナン、ピーナツ、ワカメ、レンコン、ワカメ、ホウレンソウ、ナツメヤシ、ソバとか、いろいろな材料を使ってそういうしょうちゅうというのができているわけです。これで果たして本当にしょうちゅうとしてどのくらいの風合い、風味というものが保存されておるかということは消費者の間で当然問題になるわけで、一昨年の秋からこれについて生産者の間でも、もっと秩序立った表示の方法を考えようじゃないかという動きが強くなってきまして、たしかことしの一月でございますけれども、酒造組合中央会というのがありましてそこから、公正競争規約、表示についての規約を定めまして、例えば原材料をはっきり書く、それから砂糖を加えたものは砂糖ということをはっきり書く、ソバしょうちゅうと言うからにはソバが最大の使用の原料でなくちゃいかぬとか、そうでない場合には含有量を書けとか、そういうようなことを含めまして今認定を求めてきております。私どもの方では、消費者なり関係の官庁ともその規約について認定していいかどうか相談をしておりますので、できるだけ早くそういう表示上の混乱を取り払って消費者の間違いがないようにしていきたいというふうに思っております。
  79. 近江巳記夫

    近江委員 今私は二つの具体例を出しまして、改善をして消費者がよき選択ができるように努力をするという御答弁があったわけです。これは国民が見守っているわけですから、めり張りのきちっとついた、そういう行政指導というものをやっていただきたいということを特に公取委員長に申し上げておきます。  経企庁長官、遅くなりましてどうも。そこで最後に一点、御承知のように経企庁長官中心で、悪徳商法の問題で、現物まがい商法であるとかあるいはマルチまがい商法、サムライ商法等々のこうした悪徳商法について取りまとめをしていただいておるわけでございますが、この取りまとめを早急にされて、いつごろ提出されるか、またその中身についてどういう検討をしておるか、これをお伺いして私の質問を終わりたいと思います。     〔林(義)委員長代理退席、委員長着席〕
  80. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 ただいま御質問のございました現物まがい取引に対しましては、昨年六月以来、経済企画庁、公正取引委員会、警察庁、法務省、大蔵省及び通産省による関係六省庁会議を設けまして積極的に対応してきております。昨年十一月の消費者保護会議におきまして、法制度の整備も含め検討を進めることを決定いたした次第でございます。さらには本年の一月十四日の関係六省庁会議におきまして、今後の取り組みとして、捜査の進展状況も踏まえ米国への調査団派遣、啓発活動の推進、産業構造審議会における被害の再発防止策のあり方の検討開始等について合意したところでございます。  本年一月、早速これを受けまして米国へ調査団派遣し、米国における悪質商法に対する規制の実情等につき調査を行い、また現在、産業構造審議会特殊取引問題小委員会において、この種の取引による被害の再発防止策について検討が行われているところでございます。さらにこの二月十九日、国民生活審議会約款適正化委員会におきまして、消費者保護の観点に立ち、いわゆる現物まがい商法への対応のあり方についての意見が取りまとめられたところでありまして、関係省庁と密接な連絡をとりつつ、その趣旨が適切に実現されるように努めてまいる所存でございます。
  81. 近江巳記夫

    近江委員 それじゃ経企庁長官、取りまとめを早急にやっていただきまして、どうかひとつそうした被害が出ないように努力を一層していただくことを強く要望して、時間内できちっとこれで終わらせていただきたいと思います。
  82. 小渕恵三

    小渕委員長 これにて近江君の質疑は終了いたしました。  次に、岡田正勝君。
  83. 岡田正勝

    岡田(正)委員 冒頭に、官房長官と自治大臣に対しまして、定数是正問題について若干のお尋ねをいたしたいと思うのであります。  第一この一般質問で、発言をされた総理が出てこないのですから非常に残念なんでありますが、しかし懐刀、かみそり後藤田と言われた官房長官がお見えでありますから、大いに意を強くしておるところであります。  また、小沢さん、大臣御就任おめでとうございます。何か話に聞きますと小沢さんというのはすばらしい人なんだそうですね。同志の農水大臣になったあの羽田さんと二人がペアで大臣になるのでなければおれはならないよと言ってはばからなかったということをエピソードとして聞いているのですがね。大変立派な人で、私はもう本当にほれ直しておるのであります。そういう人でありますから、回答の方もひとつ水際立った回答をよろしくお願いをいたします。  さて、お尋ねいたします第一の問題は、中曽根総理はことしの年頭の記者会見におきまして、定数問題の処理につきましては今国会一この国会の三月半ばぐらいまでにはひとつ解決をしてもらいたいものだとおっしゃっております。話の内容をよく吟味してみますと、この定数是正というのは国会責任、議長の責任、立法府の責任である、したがって立法府が構成する各党の話し合いにゆだねるのだ、これを静かに見守るのである、こういうような意味のことをおっしゃっておりますが、その態度は現在でも変わりはないのであろうか。これは官房長官の方からお答え願います。
  84. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 私は総理に確かめたことはございませんので、私のこれからの答弁は私の推測である、こういうことでお聞き取りをいただきたいと思います。  御案内のように、選挙法の改正の問題というのは、各党各派それぞれの議員の方々に至大な影響を及ぼすものであり、やはりルールづくり、各党各派の。したがって、各党各派に御協議を願って、そして妥当な結論が出る。もちろん政府はそれに対して最大限の協力をするというのは当然のことだろうと思います。そういう立場で昨年の国会で御案内のような経過をたどったわけでございます。各党から御意見が出て、結局まとまらなかった。その上で議長の見解が出され、そして衆議院の御決議があった。その両方の中にいずれも、速やかに是正に努めるべし、こういうことになっておるわけですね。という意味合いは、やはり違憲状態が長く続いているということは、政治に対する国民の信頼、こういう面から見て適当なことでない、ならばやはり違憲状態は速やかに是正する必要あり、こういうことだろうと思いますね。  さて、そうすると速やかというのは何や、こういうことになるわけでございますが、これはやはりできる限り早くなければならぬという社会通念で理解をせざるを得ない。ならば、国会の会期を考えればそこらが一つのめどで、各党でぜひひとつ御協議を願って、そして衆議院議長の見解に沿って何とかこの国会で一日も早く是正をしていただきたい、それを総理としては念願をしておるんだ、こういうことではないでしょうか。私はさように理解いたしております。
  85. 岡田正勝

    岡田(正)委員 では重ねてお尋ねをいたしますが、前国会におきましても、制度改正、いわゆる選挙区制度の改正、二人区をとるべきか、中選挙区制の三人から五人というのを守るべきか、六十年の歴史を貫くかという問題で合掌建てになった、それで廃案にいった、議長見解が出た、御承知のとおりでございます。  さてそこで、制度改正ということを自民党総裁である中曽根さん、いわゆる総理である中曽根さんの方から提案をされたということは、私どもは、それは制度の改正であって定数の是正ではない、こういって主張しておるのであります。  そこで、その制度改正を主張される限りにおいては、制度改正だけではありませんが、定数是正も含めて、政府はこれを見守るという傍観者的な態度でいいのであろうか。私は、ちょっときついことを言いますが、最高裁で違憲の判決が出た段階政府はなさなきゃならぬことがあったはずであります。それは何かと言えば、もう既に早くから出されておりますけれども、昭和三十六年に法律でできております選挙制度審議会、三十人以内の定数をもって行うというのがございますが、これは今委員も任命されておりません。開店休業でございます。そういう審議会があるのにかかわらず、全然それに委員の任命もしようとしなければ、付議しようともしない。  今までの公職選挙法の改正の案というものは、ほとんどすべてが政府提案であります。であるのにかかわらず、最高裁が違憲判決を出したのに政府は拱手傍観、もう一切を国会の中で各党でやってくれと言わんばかりの態度で終始一貫していらっしゃる。それで、何かといえば口を開くと定数是正を早くやれ、定数是正をやらなかったら解散だ。それならやったらどうなるんだ。定数是正をやったら、にしきの御旗ができるから解散だ。どっちに転んでも解散。これはまあ中曽根さん一人が言える寝言でございますから自由に言ってもらえばいいのでございますが、私ども衆議院議員というのはだれ一人として、立候補するときから解散を恐れて出るような者はおりません。みんな解散ということは予想してなければ衆議院議員にはなれるものじゃありませんから、そんなことでこけおどしにおびえるわけじゃございませんが、制度があるのに、審議会があるのになぜそれを活用なさらないのか。これは政府のサボタージュじゃないか。中曽根さんは何をしておるか、こう言いたいのですが、おらぬですから、官房長官いかがですか。
  86. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 その点は、先ほど申しましたように、定数というのは各党各派の消長に影響することですわ。グラウンドルールづくりなんですね。だからこれはやはり各党各派で御協議を願って、立法府で一日も早くその解決をしていただきたい、こういうことでございます。  それで、なるほど確かに選挙制度審議会というものは、現行法律のもとに制度はあるが人はない。最近の実情は、これは後で自治大臣にお聞きしていただきたいと思いますが、私の承知している範囲では、率直に言って、なり手がないのです。というのは、何回あそこで論議をして結論を決めましても、これは政府から出しても成立しない、こう言うのですね。そうすると、なかなか任命しようとしても引き受け手がないというのが現状なんですね。だから、やはりああいう制度を生かそうとすれば、あそこで決まったことは国会社最大限これを尊重するということでないと、何しろああいう立派な方ばかりお願いするものですから、そういったことであの機能が十分に活動ができないというのが現状で、これは私自身も当時の状況から見まして大変残念に思っております。  そこらを踏まえまして、これも一つの理由、そういうことで、やはり今回の緊急措置として、緊急措置ですよ、緊急措置として違憲状態の解消を図るための定数の是正については、何とかひとつ先国会からの経緯もこれあり、国会で立法府でひとつぜひ御解決をしていただければありがたい、これが私は総理の真意ではなかろうか、かように考えます。
  87. 岡田正勝

    岡田(正)委員 選挙制度審議会が結論を出しましてもなかなかそれが成立をしないのでもう嫌気が差しておるということで、なり手がおらぬのですよということは、過去の説明としてはわかります。だが、最高裁の違憲判決が出てからその作業をやったかと言えば、やっておりません。一切やっていません。ですから、過去のお話としてはわかりますが、その点は私、口が悪うございますが、政府努力をしていなかったということはお認めいただかなきゃならぬと思います。  そこで、同志愛に燃える自治大臣にお尋ねをするのでありますが、自治大臣は当面の責任者でございますので。今暫定是正だ、抜本是正だとよく言われますね。そういう点につきまして、政府考え方としては暫定是正がいいのか、暫定是正をやったら抜本是正なんてとんでもない、そんなことをやるようだったら国会の中はもう煮えくり返るようになるから、これはもう暫定だけで終わっちゃって、あと十年くらいはそのままほおかぶりで、暫定是正ということでつまみ食いをしていくがよかろうというようなお考えでしょうか、いかがでしょうか。
  88. 小沢一郎

    ○小沢国務大臣 先生はもう選挙法の問題につきましてはすべて知り尽くしておられる先生でございますので、僕が申し上げるまでもないのですが、前国会の議長見解、そして各党の党首が共産党を除きでございますが御参集なさいまして、それで議長見解をお互い理解して、そういう経過のもとに今国会が引き継いでおると思います。議長見解の中には、まずとにかく違憲状態を至急に解消しなきゃいかぬ、そしてその後さらに抜本改正を検討すべきではないか、そのような御趣旨であったと思います。したがいまして、そういうことに基づきまして各党間でまず第一義的には協議していただくという、それが先行すべき問題ではないかと思っております。
  89. 岡田正勝

    岡田(正)委員 非常にはっきりしたお答えでありまして、議長見解のそのとおりだ、それが政府見解と同じだというようなお話でございました。ということになりますと、まず暫定是正をやって、それから抜本是正、こういう二段ロケット方式をとるべきではないかと政府考えておるようでございます。  さてそこで、その暫定是正というのは、時間がありませんからこっちの方で勝手に言いますが、恐らく議長裁定の中にある三倍以内の格差是正ということでいくのではないか。そういたしますと例えば十増・十減というようなことに相なってまいりますが、その十増・十減の暫定措置をやったらどんな現象が出てくるかということになりますと、実は今お手元にお配り申し上げておりますが、その中をごらんになってもわかりますように、これ全部を言っておったらもう持ち時間がなくなっちゃいますから簡単に申し上げます。  例えば、その真ん中辺に神奈川県、北海道との対比がありますね。神奈川は七百三十四万人で、十増・十減をしたら神奈川県全体で十九人が二十一名にふえます。北海道は五百六十八万人いて約百五十万人も人口が少ないのに、現在二十二名が一名ふえて二十三名と相なりまして、百五十万も人口が少ないのに定数は二人多くなる。こういうような、これはたくさん例があるものですから時間がないので乱筆ですが書きましてお配りしたのですが、かくのごとく、もうめったやたらに逆転現象が出てくるのです。  こういう逆転現象が出てくるということがわかっておるのに、これから出てくるかもしれないであろう暫定是正でそれでよしとできるのでしょうか。その点を伺いたいのであります。自治大臣、いかがですか。
  90. 小沢一郎

    ○小沢国務大臣 いわゆる速報値に基づく、今国会におきましては各党のいわゆる案が案としてはまだ正式に出ておらない状況でございますので、それがその十増・十減という形になるのかあるいは違った形になるのか、それは各党間の協議でもって出てくる問題であろうと思っております。  ただ、御指摘のように、この間の案を例にとって考えてみますと、野党統一案もそれから自民党の六・六案も、例えば石川と富山の逆転とかそういう問題が事実として出てくることはそのとおりであろうと思います。ただその反面、これは先生の方がお詳しいと思いますが、かなり現行法において逆転しているのが直るところも出てまいりますけれども、いずれにいたしましても、官房長官もお話しなさいましたが、とにかく緊急に違憲状態を是正しなきゃならない、そういう状況の中での各党の案であり考え方であると思います。したがいまして、そういう状況も十分勘案しながら各党間で御協議、お話しいただくということではないかと思います。
  91. 岡田正勝

    岡田(正)委員 官房長官のお時間の関係もありますので、この定数是正の問題はこれをもって打ち切らせていただきますが、非常に問題点が残るなということは今のメモでおわかりいただけたと思うのであります。これは県の単位で比較をして出しましたけれども、はっきり申しまして県が隣り合わせになっておった場合、人口がおれのところの方が多いのに何でおれのところは定数が少なくなるのだ、ばかにするな、国会は何しているんだ、暫定的な是正といってもこれは余りにもお粗末ではないかという非難を浴びるかもしれませんよ。だから、この逆転現象という問題については特に注目をしていただきたい、こういうふうに思うのであります。  最後に官房長官に一言。あと一分残っていますからお願いをいたしますが、二人区制度、自民党が言われる二人区制度をとった場合、どういう政党が有利な立場に立つと判断されますか。
  92. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 その点は各党でひとつ御計算をいただきたい、かように思うわけでございます。
  93. 岡田正勝

    岡田(正)委員 自治大臣いかがでございますか。以下同文ですか。
  94. 小沢一郎

    ○小沢国務大臣 はい、同じでございます。
  95. 岡田正勝

    岡田(正)委員 ありがとうございました。まあそう言わざるを得ないと思いますが、事ほどさように問題は複雑怪奇でございます。どうぞひとつ国民の納得できるような立派な案が一日も早く成立をして、国民の皆さんに褒めてもらえるような結果を生み出したいものと私も考えておりますので、せっかくの御努力をお願いをいたします。どうぞ官房長官、結構ですから。ありがとうございました。  ちょっと資料を配ってください。これから北朝鮮にいらっしゃいます日本人妻の里帰りの問題につきまして質問をさしていただきたいと思うのであります。  ただいまお手元に三部資料をお配りしたのでありますが、そのうちのこのたくさん枚数がある「世にも不思議な物語り」というやつは、実は不肖岡田正勝がつくった歌でございます。これは大変人道的な問題であり、しかも二十七年間もほったらかしになっておるような問題でありますので、この問題を理解してもらうのに、これを一見していただけば数字も歴史もすべてがわかるようにと念願をして書いたものでございます。二十七年三カ月前の昭和三十四年十二月十四日に新潟港を船出をいたしまして北鮮に行かれたきり、今日までただの一人毛里帰りをしていないという六千六百七十九人の日本人並びに日本人妻、この問題について、これから政府にお尋ねをしたいのであります。  この問題は、昭和三十四年八月十三日のカルカッタ協定に始まっておりまして、この協定というのは、在日北鮮人の人たちが当時北鮮に帰りたい、祖国に帰りたいという願望を持っておりましたが、当時も今も国交がありませんので、そのことを人道問題としてとらえた当時の藤山愛一郎外務大臣がこれを閣議でお取り上げになりまして、閣議決定によって、人道問題だからひとつ送り帰してあげようではないかということになりました。それによって弾みがついて、両国の赤十字の間で帰還協定の締結に至り、帰還業務が始まったのでありまして、三十四年十二月十四日から五十九年七月二十五日までの間、第百八十七次船までで九万三千三百四十人の人が北鮮に行かれました。そのうち日本国籍の人は六千六百七十九名であり、そのうち当時の日本人妻は千八百三十一名でございました。だがしかし、二十七年三カ月、ただの一人も今日まで里帰りをしません。  それでは、国交がないから全然行き来ができないのであろうか。そうであるならば納得がいきますが、その歌の中にも、資料に書いてありますが、北鮮から日本に来られてまた北鮮に帰っていくという人たちが、これが年間約二百名づつ、今日まで三千八百十二名の人が行き来をしております。そして、日本にいらっしゃる在日の北鮮人の方々が祖国に訪問をしたいというので、祖国に行って帰ってこられる人、これが年間約三千人を超えております。それで、その合計は二万九千九百九十名に至っております。日本人であって、北鮮に用事があって行って日本にまた帰ってくる、こういう人だけでも一年間に八百八十九名という状態であります。でありますのに、それだけ自由に往来をしておるのにかかわらず、日本人妻は一人も帰ってこない。一人毛里帰りがない。これは一体どういう現象なんでしょうか。だからこそ私が今お手元に配ってある「世にも不思議な物語り」と言いたくなるのであります。こういうことが現実にこの世界で起こっておるのであります。  さらに、今お渡しをいたしました資料の中に三枚つづりのこういう手紙があります。これは最近の手紙であります。これを全部読んだら時間がありませんから、その一枚はぐって二枚目の真ん中の丸印をしてあるところをごらんいただきたいと思いますが、本当に涙なくしては読むことができません。いかに生活に困窮しておるかということがよくわかります。  この国ではまだまだ生活が大変で、私も年をとり、主人が今では寝たり起きたりの状態です。子供たちがよく頑張ってくれるのでどうやら暮らしていますが、お姉さんには想像もできないことと思います。自分が選んだ道なので、だれにも言えない立場ですが、年をとるほど肉親が恋しくて涙に暮れる日が一日や二日ではありません。   姉さんからのお便りを受け取り、姉さんにしか泣き事を言える人がいないのですが、皆さんの着古した物を送ってくださいませんか。高価なものは何も要りません。子供たちも孫も八人皆大きくなったのに人並みに着せられず、胸の痛いことがしばしばあります。と書いてあります。  着る物にも不自由をしている様子がこの行間を通してしみじみとうかがえるのでありますが、さて、向こうに行かれた日本人妻のほとんどの方がそういうことで困っていらっしゃるのではないかと私は大変心配をしておるのであります。  そこで、郵政大臣にお尋ねをいたします。  まず、郵便物の関係でありますが、これは手紙とか荷物ですね。これが確実に本人の手に届くという手段がないものでしょうか。この点について、実は五十三年の十月十八日に逓信委員会で我が党の青山丘という議員が、当時の服部大臣に質問をいたしております。そういう関係もありまして、もう既にあれから随分の日にちがたっておりますので、大いに検討すると約束されておりますので、どう検討されたのか、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  96. 佐藤文生

    佐藤国務大臣 私も岡田先生と同じように、昭和三十年代に地方の県会議員をしておりまして、北朝鮮にお帰りになるということで私の大分県でそういう方々のお世話をいたしました。久しぶりに先生のお話を聞きまして、その当時の思い出がよみがえってまいります。  北朝鮮に対するところの郵便物についての心温かい御配慮の質問がございましたのでお答え申し上げます。一応、今の原則だけ申し上げまして、それから現況について申し上げます。  北朝鮮は、万国郵便連合にやはり加盟してございまして、その万国郵便条約に基づいて郵便物の交換を行っております。しかし、直行便がございませんので、航空郵便物は中国及びソ連を経由して、それから船便の郵便物はソ連経由でもって送達をいたしてございます。そして現在、不着の事故が多いということはございません。さらに、万一不着の場合においては、御本人が請求をしまして、そして私の方がお世話いたしまして相手国に調査請求をする、こういう手段もございます。さらに、配達の事実を差出人に通知する方法として受取通知という制度も国際的にございます。  こういう原則に立ちまして、昨年一年間の東京国際郵便局の調査をいたしました。その結果、発送した四万四千通のうち、調査請求が出されたのは三通のみでございました。そこで直ちに調査しました結果、配達済みという返答が返ってございます。  こういうようなことでございますので、さらに細部につきましてもしも御質問がございますれば、政府委員に細部を説明させます。
  97. 岡田正勝

    岡田(正)委員 ありがとうございました。  五十三年の十月からいろいろと長年月をかけていただきまして努力をしていただいた結果が、今非常に成果が上がっておる。東京だけのことを考えても、四万四千通のうち三通が着いてないということであった、それも後で本人の請求があって調べたら全部届いておったということであって安心をしておる、こういうことでございますから、非常に安心をした次第でございます。今後もぜひひとつ、弱い立場に立っておる人たちでございますから、十分に目を光らせていただきまして援護をお願いしたいと思う次第でございます。  続いて郵政大臣にお尋ねいたしますが、このお金を送る保証ですね。これはちょっと郵政大臣、見てください。郵政大臣のところへ今差し上げました分、それをごらんになっていただきますとわかりますように、それはごく最近の例でございますが、今北朝鮮の方からどうなりこうなりやってくる手紙の中では、ほとんどが生活の苦労を訴えて、とにかく日本円というのは非常に強いのでお金を送ってくださいませんかということの訴えが非常に多いのです。この二、三年の傾向です。それより前は古いシーツを送ってくれとかハンカチでもいいというようなことを書いて、随分貧相な要求でありましたが、このごろはお金を要求してくるようになりました。そこでそのうちの一例でありますが、今お手元にありますように、これは大阪市にあります朝銀の大阪信用組合というところを通しまして二万円のお金を送りました。二万円、ここに書いてあるとおりです。ところが何と、手数料、電信料その他で五千七百円も取られるのですね。手数料的なものを五千七百円、二万円で。これは送る家族にとってはなかなか大変なんです。御承知だと思いますが、もう二十七年もたっているのですから、当時二十歳の人が行っておったとしても四十七歳ですよ、日本人妻は。こちらへいらっしゃるお父さん、お母さんというのはもちろん七十、八十ですよ。そしてほとんどいい生活をなさっていらっしゃらない人が多いのです。中には老人ホームに入っています。そういう人たちがお小遣いをこつこつとためて、もう二万円の金を送るのでも大変なんですね。それがこんな大きな手数料を取られるというのでびっくり仰天をした。  いま一つは、その金目も大きいのでありますが、送った金が本当に着いたのかいなと、全然これがナシのつぶてでわからぬのです。だから、どこかで消えてなくなっておるのか届いておるのかわからないのです。その点を何とかひとつ送金の保証をしてもらえないだろうかという訴えがありますが、どうお答えになりますか。
  98. 佐藤文生

    佐藤国務大臣 非常にこれは大切なことでございますので、郵務局長に具体的に答弁させていただきます。お願いします。
  99. 高橋幸男

    高橋(幸)政府委員 お答え申し上げます。  現在北朝鮮におきまして郵便で送れない物品、これは先ほども大臣答弁もございましたように、北朝鮮もUPU、万国郵便連合に加盟しておりますので、その万国郵便連合の条約によりまして、各国で独自にその政策によって決めるということになっております。それで、郵便で送れない物品を各国が定めました場合には、それぞれの国に通報するという形になっておりまして、私どもに届いておる通報によりますと、北鮮におきましては、郵便物に通貨、お金でございます、それから宝石などの貴重品、これを入れてはならない、私ども郵便禁制品と申しておりますが、そういう取り扱いになっております。したがいまして、今の制度でまいりますと、北朝鮮に住んでおられる方に対しまして郵便物を差し出す際に、通貨あるいは宝石を入れますと向こうのいわば法令違反ということで、私ども取り扱えないという建前になっております。  なお、どういう物品を郵便で送れないものとするかというのは、先ほど申し上げましたように、各国それぞれの独自の政策で決めるということでございますので、私どもの立場といたしまして、この問題につきましては非常に慎重な態度をとらざるを得ないということでございます。
  100. 岡田正勝

    岡田(正)委員 そうすると、重ねてお尋ねしますが、郵便物では、今のような通貨とかあるいは宝石とか貴重品は入れてはいけませんよ、こういって各国が独自にその品目を決めることができる。北鮮はその中に通貨が入っておるから送ることはできません。これは非常に明快でよくわかりました。ありがとうございます。  だが、そこで、今私が大臣にお見せしました大阪市内にあります朝銀大阪信用組合というようなところを通して送るんなら、これは北鮮は構わないのですか。
  101. 高橋幸男

    高橋(幸)政府委員 お答えいたします。  私が申し上げましたのは郵便による送達でございまして、それを銀行あるいはその他の金融機関による為替、振替、そういう手段によってどういうふうな取り扱いになっておるか、郵政省の所管でございませんので私の立場から御返事できません。申しわけございません。
  102. 岡田正勝

    岡田(正)委員 それは大変失礼をいたしました。  それでは外務大臣、大変失礼ですが、担当の窓口といたしまして、留守家族の皆さんが大変困っておる問題の一つに今の送金の保証、どうやれば送れるのか、どうやれば着いたということが明確になるんだろうかというのが、乏しい金でありますけれども、それだけに血のにじむような金ですから、どうすればいいのかということをぜひひとつ調査を促進してもらいたいと思います。  それから、大蔵大臣いらっしゃいますので、金融機関はもう大臣の管轄でございますので、この問題について、今大変な手数料、これは手数料はまけろ、まけぬというようなことでおさまってしまいますが、しかし、これが届いたか届かぬかということを調べるという方法は大蔵省としてはないものでしょうか。
  103. 行天豊雄

    行天政府委員 お答え申し上げます。  通常、コルレス関係にございます銀行の間で送金をいたしますときに、まず、送金をなさいますときには銀行が確かにそういうお金を依頼者から受け取ったというのは当然写しがお手元に渡るわけでございます。ただ先方に、支払い先が確かにそのお金を受け取ったかどうかということは、果たしてその銀行を経由して直ちに確認できるかどうか、ちょっと私、現時点ではお答え申し上げられないので申しわけございませんが、これは早速調査いたしまして後ほどお答え申し上げたいと思います。それでよろしゅうございますか。申しわけございません。
  104. 岡田正勝

    岡田(正)委員 それでは、それはひとつ研究をお願いいたしたいと思いますが、これは本当に切実な話ですから、大蔵、外務両省におきまして、本当に前向きにひとつ何とか前進ができるよう調査と促進をお願いいたしたいと思うのです。また、その結果を後ほどで結構でありますからお教えいただきたいと思います。  さて、そこで、今お手元に配付をいたしました三つ目の資料、向こうからの非常に短い便りでございますが、北鮮の中で実は新しい動きが出ているのですね。これは日本政府の御努力、それから留守家族の皆さん方の「鳥よ翼をかして」などというような大型の映画等による、日本語、英語等による世論の喚起、そして地方自治体等におきます千六百を超えるいわゆる里帰り促進の決議、これは三千三百二十五のうちの千六百何ぼですから約半分ですよね。これだけの熱意、そして国会においては実は我が党の永末副委員長が一番最初に発言をしまして以来、私がきょうやることで四十五回目です。これはむなしい質問であったかもわかりませんが、しかしその積み重ねがやがて相手の方にも聞こえておるのでありましょう。  これはごらんのとおり、こういう実にうれしい話が載っておるのであります。「私達にもうれしいお話があります。この度日本人の女性達が故郷に一度、日本へ行って来る様な調べがありました。それでみなさんの住所を調べて行きました。どうかこんな様なお話があって調べる時には責任を持つと言って下さい。責任ない人達は行く事が出来ない様です。」ちょっと日本語が怪しくなっておるところがあります。要するに、あなたは日本へもし帰るとしたら日本で受け入れてくれる者がおるのか、それがなければだめだよというようなことがあるらしいので、もし調査があった場合は、よろしい私のところに、家にひとつ引き受けましょう、日本滞在中は引き受けましょうというようなことを言ってください、それをおれは知らぬよなんて言わないでくださいという訴えの手紙です。新しい、本当に最近の動きです。  もう一通来ておるのでありますが、「北鮮の母より昨年の十一月の末に出した便りが届きました。日本の親兄妹の住所を書いて出すようにと役場から来たそうです。」と書いてあります。これは確かに今までなかった動きでありまして、これはいいチャンスではないか、里帰りを実現させるのにもってこいのチャンスではないかと私は思うのであります。  そこで外務大臣に、そして御列席の大臣の皆さん方にも御協力をお願いしたいのでありますが、今まで昭和五十六年の七月十七日の閣議で奥野前法務大臣が、これは見るに見かわた、もう一方的な日本のリップサービスばかりで一人毛里帰りがないなんていうのは異常だよ、これは里帰りを実現するようにみんなで力を合わせてやろうじゃないかと御提案になった。当時外務大臣は出張中であったので、宮澤官房長官が外相代理としてそのまとめをしたのは、金日成首相が五十五年にAA研の代表に言った言葉のとおり、相互主義でこの問題はひとつ促進をしていこうではありませんかと締めくくったのであります。だが、しかし、残念ながら閣議決定ではないのです。  それで私は、この際、こういう二十七年三カ月たっても一歩も前進をしないこの問題を取り扱うのに、この昭和三十四年に帰還船が十二月に第一船が出るに至った、カルカッタ協定を結ぶに至った原動力は何かといったら、当時の閣議決定だったのです。国交はないけれども人道問題じゃないか、これは帰りたいと言う人は帰してあげようじゃないかという閣議決定があったから動き始めたのです。カルカッタ協定もできたのです。ということになると、問題の発端は閣議決定だったわけです。閣議決定はそれほど重たいものです。例えばGNPの一%の問題でも、一たん閣議で決定したら、今日に至るまで一%、一%と言って、ほかのことは知らぬのかというぐらいにみんな言うでしょう。これほど閣議の決定は重いんですよ。だから、閣議の中で雑談が出たというのではなくて、この問題を促進させるために、こんな新しい動きが出ているのですから、日本の毅然とした態度を閣議決定でお示しをいただけませんか。ひとつ外務大臣、お答えをいただきたいと思うのです。
  105. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 岡田委員のたび重なる北朝鮮における日本人妻の里帰り問題についての熱心な御質問に対して、非常に私も感銘を受けております。  我々も、北朝鮮における日本人妻の方たちが相当苦労しておられるということについてはいろいろの資料で承知をいたしておりますし、この里帰りのために努力をしていかなければならぬ、こういう思いでございます。  ただ、御承知のように、日本と北朝鮮の場合は国交がないわけですから、政府間のルートを通じて行うということはできない。そういうことで日本赤十字社にお願いをしまして、赤十字が中心になって、北朝鮮に対してしばしば国際会議のときとかその他を通じまして訴え続けておるわけでございますし、同時に、政府としても何らかの形で努力をしたい、こういうことで、例えば国会議員が、日朝議員連盟の方たちが北朝鮮を訪問される際には、この問題を取り上げていただくようにお願いもいたしておりますし、また、先般日ソ外相会議が行われました際も、シェワルナゼ外相日本からソ連に帰られる途中で北朝鮮にお寄りになるということを聞いたものですから、私からシェワルナゼさんにぜひともひとつ北朝鮮政府に伝えてもらいたい、これは多くの日本人妻が今向こうにおられてなかなか里帰りができない、外交ルートで我々残念ながら話ができないので、どうかひとつ日本政府としての気持ちを、そしてこちらに残っておられる家族の皆さんの気持ちをぜひともひとつ北朝鮮政府に伝えていただいて、里帰りの道を北朝鮮側で開いてもらいたいということをぜひひとつ伝えていただきたいということを、シェワルナゼさんにお願いをいたした次第でございます。恐らくシェワルナゼ外相も、外相会談の私の正式な要請でございましたからお伝えをいただいたものであろう、こういうふうに思っております。  最近、南北の対話も進んできておりますし、緊張も緩和する方向に時代が動いておるわけでございますので、状況としては私はいい方向になりつつあるのじゃないか。今いろいろと最近の情勢についてお話しいただきました。大変喜ばしいグッドニュースだ、こういうふうに思っておるわけでございますが、問題は北朝鮮側の態度であろう、政府態度であろうと思います。北朝鮮側が日本人妻を里帰りさせるという方向を決めていただければこれはもう何もほかには問題はないわけでございまして、政府としても、国交はありませんけれども、確かに先般の御質問等も踏まえまして、窓口を実は外務省で北東アジア課に設置をいたしましたり、こういう場合の受け入れ態勢等についてはいろいろとお世話ができる、こういうふうに思っておりますし、お世話をしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  閣議決定というのがどういう形の閣議決定というのか。今、さらにこれを進めるためにいろいろと政府努力をしていく、いろいろのルートを通じまして努力をしていくということは、これはもう我々としては毫末もその基本姿勢は変わっておりませんが、閣議で決めるということはどういうことを決めていくのか。そういうことが必要である、閣議決定が必要な事態になれば、これはもう大切な人道問題でございますからもちろんしなければならない、こういうふうに思っております。ちゅうちょはせずに、しなければならないと思っておりますが、この辺のところはこれからの北朝鮮側の姿勢を見ながら我が方として対応を決めてまいりたい、こういうふうに思います。
  106. 岡田正勝

    岡田(正)委員 安倍外務大臣のときにこの問題に大変深い関心をお示しをいただきまして、五十八年でありましたか、北東アジア課をもって窓口とする、それで今も懸命に頑張っていただいていることには心から感謝をしております。感謝をしておりますが、今大臣の善言葉によりますと、さあ、閣議決定とはいいますが、国交はありませんし、問題は、北鮮が帰すよと言えばもうそれで窓口はあるのですからいつでも受け入れます、そういう状態なんですが、閣議決定が要るんでしょうかねというような、ちょっと迷ったような御発言でございます。  実は安倍外務大臣のそのお答えを聞きながら、私はだんだんちょっと怒りが出てきよるんですよ、怒りが。しかし、ここは日本国会の予算委員会だから、下手に感情を表に出してはいかぬぞと思ってぐっと抑えながら私は今発言をしているのですが、それならば大臣、これはどうなんですか。国交がないのに、韓国と昭和四十年に国交を正常化したから、北鮮の方から来ることも、どうぞおいでなさい。何も国交がない、向こうの政府と何も接触がないはずの日本政府が、北京の大使館という政府機関を使って渡航証明書を出して、毎年毎年二百人からの人が来ているじゃないですか。なぜ日本だけがそんな一方的なサービスをしなければならぬのですか。なぜ北朝鮮にそれを求めないのですか。それが相互主義ですか。ゼロですよ。我が日本は毎年二百人近くの人を北鮮から受け入れておるじゃないですか。そして在日の、日本にいらっしゃる北鮮系の皆さんが国へ墓参りに行きたい、お父さんやお母さんに会いたい、病気だから帰らしてくれという人道的な問題については年間三千人を超す人を、文句なしに、渡航証明書一枚をもって、一回限りではありますが、旅券を発行しておるじゃありませんか。毎年三千人ですよ。そして、我が日本人妻は一人も帰らない、ゼロですよ。こんな一方的な外交の姿勢があっていいんですか。私は情けないよ、本当に。こんな相手の国の顔色ばかり見て。  それはなるほど、北鮮との間にも一年間に約五億ドルを超す貿易があります。そういう御商売をなさっている人については、政府が毅然とした態度を示すことによって一時は影響が出るかもしれない、しかしながら、そういう商売のことよりは、わずか五億ドルほどの商売よりは、千八百名を超す日本人妻の安否すらわからない。今までわかったのは十四名しかわからぬじゃないですか。五十六年に九名、五十七年に五名、合わせて十四名。そのうち一人はもう死にました。何年前に死んだ、十二年前に死にましたと書いてあるだけ。あとの人は元気です、元気です、元気です、電報よりもっと短い。そんな安否調査しか来てない。ほとんどわからぬに等しいじゃないですか。日本の国籍を持った人間が外国におって、その安否すらもわからない、里帰りもできないという状態にあるのに、相手の国の人間だけはどんどん毎年二百人も受け入れて、日本におる北鮮の人は毎年三千人も墓参りに行かしておいて、我が日本人妻だけはなぜそれが例外なんですか。それは政府関係がないからとどうして言えるのですか。北京の大使館は外務省じゃないのですか、あれは。あれは某国の機関ですか。日本大使館じゃありませんか。政府がタッチしておるじゃないですか。受け入れておるじゃないですか。そんなことをやっておるのになぜ閣議の決定ができぬのですか。閣議の決定というのは人道問題は扱っちゃならぬという何か規則があるのですか。情けないよ、私は。もう一遍返事をしてください。
  107. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いや、これは人道問題です。閣議の決定であるとかないとかいうのは別にして、日本としましては、その北朝鮮が北朝鮮における日本人妻を帰すということになれば、それは日本政府としてもできるだけの便宜を計らいます。これは当然のことなんですよ、それは今までだって皆やっているわけですから。ですから、そういう点について我々は何もちゅうちょをいたしませんし、そういうことで閣議の決定が必要なら閣議の決定もしますけれども、閣議の決定をしなくとも、向こうの、里帰りを求めてこられれば、日本政府としては、これは人道問題ですから、挙げて政府も関与して受け入れ態勢はつくりますよ、できるわけですから。  ただ問題は、やはり北朝鮮が帰すか帰さぬかという問題にかかっておるものですから、これは政府として北朝鮮政府と正式に残念ながら国交がないですから話し合いができないということで、赤十字を通じまして、政府としても赤十字を通じまして全力を挙げて今日までやってきておるし、赤十字はそれなりの努力は続けてきておるわけでございます。残念ながら大きな成果が今まで上がっておりません。しかし私は、赤十字は非常に熱心にやってきていると思います。相手があるわけですから、一生懸命やってきておりますし、その他国会の皆さんとかいろいろな外交その他の間接的なルートを通じまして我々としては全力を挙げておるわけで、いつでも日本政府としては受け入れる姿勢はこれは明らかでありまずし、これはしなければならぬということは当然のことだと思っております。  問題はやはり、先ほど申し上げましたように北朝鮮が踏み切ってもらわなければできないわけですから。今、お話によりますとそういう方向が徐々に出てきておるということでございますから、これに対しては我々としては非常に歓迎をしたい、こういうふうに思っておるわけであります。
  108. 岡田正勝

    岡田(正)委員 私は、今の外務大臣答弁は甚だもって不満です。甚だ不満。相手があるんだから、当たり前ですよ。しかも、国交がないんだから、政府機関の接触はできぬのだから、それならやめちゃいなさい。北京大使館における取り扱いはあしたからやめなさい。そして、日本におられる北朝鮮の人が毎年三千人も向こうに行くのはやめたらどうですか。何のために法務省は、外務省はそんなサービスをするのですか。相互主義でいきなさいよ。何で日本人だけが、日本国だけがそんなお人よしにならなければいかぬのですか。あの北朝鮮が態度を決めてくれたらいいのですよ、北朝鮮が帰すと言ったら、それは外務省は受け取りますよ、荷物みたいなことを言いなさんな。手荷物じゃないよ。血の通った日本人ですよ。それを帰してくれぬのじゃないですか、今まであらゆる手を尽くしていますよ。この自由往来の会の人たちはほとんど婦人です。その中の池田文子さんなんという会長は、いとこが行っておるというだけで、自分の家の家財を傾け尽くして、あの国連にも、そして国際赤十字にも、そして中国にも、そして韓国にも、そして三十八度線紙一重のところで、そこまで、板門店までも、そして日本国じゅうは沖縄から北海道まで、朝から晩まで、きょうも長崎に行っています。一生懸命になって努力している。だが、相手の国が帰してあげるよと言わなければ外務省はやりようがないじゃないですか、それまであなた、ほっとくのですか。ほっときゃおかぬだろうが、いろいろな日赤等の手を使うでしょうけれども、それは留守家族からいわしたら、ほったらかしにされておると一緒だ。北鮮におるあの気の毒な日本人妻からいったも、日本政府から温かい手が差し伸べられないのと一緒ですよ。手を差し伸べたとは言えないじゃないですか。どうしてそれが言えないのですか。  閣議決定をするのに——私が言っているのは、閣議決定をすれば、これだけ機運が出てきた、北鮮の中でも住所を調べ出したという手紙が二通来た。今チャンスだ。こういうときに、日本政府が閣議をもって、北鮮におる日本人妻の里帰りを相互主義で一日も早く実現できるようにしてもらいたいということを閣議決定をするのに、だれに遠慮が要るのですか。中曽根さんがいかぬと言うのですか。「戦後政治の総決算」だなんて大たんかを切っておって、何だ、これは。どうして閣議決定に持ち込むように努力をすると外務担当大臣は言えないのですか。もう一遍言ってください。
  109. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は別に岡田さんと気持ちはちっとも変わってませんよ。それは向こうの方が帰して——向こうが方針を決めなければならないんですから。そのために政府は正式なルートがないわけですから。外交ルートがないわけです。しかしそれでも、これは人道問題ですから、あらゆる手を使ってやっていることは事実なんです。それはもうお認めいただけると思います。今もやっていますよ。ですからこれは、政府間で直接話ができないときは北京政府も使いますし、あるいはまたソ連にも要請をしまして、あらゆる角度からやっておるわけです。ですからあとは、やはり北朝鮮政府にそういう気持ちになっていただいて、あくまでも人道主義ということで里帰りをひとつ向こうで許していただきたいということは、これはもう日本政府としてはここでもはっきり、神聖な国会の場ですから私ははっきり申し上げます。ですから、これは政府の正式な見解として、北朝鮮政府にはそれはあくまでも人道主義の問題としてお願いをしたい、こういうふうに思うわけです。  同時にまた、今そういうことで何か閣議決定というものが決定的である、それは確かに一%問題とかなんとか国政上の問題については、閣議決定というのは非常に重きをなしておりますが、これでもって、ただそれでは直ちに道が開かれるかということになりますと、それは私は必ずしもそういうものじゃないだろう、こういうふうに思います。しかし我々は、この国会を通じても申し上げておりますし、日本政府の正式な見解としては、北朝鮮にはっきりわかるように、あくまでも人道上の問題としてできるだけ早く、これだけの国内的な世論も盛り上がっておるわけですし、ひとつできるだけ早く道を開いてくださいということは言い続けておるわけですし、この姿勢は毫末も変わってないわけで、私は岡田さんの気持ちとちっとも変わってないと思います。  何か我々は消極的であるとかなんとかということでなくて、ただ国交がないというところに、我々は残念ながら正式な政府交渉ができないという、非常に残念な今の気持ちは持っておりますけれども、しかしそれは、あらゆる手を使って人道上の問題として要請をし続けておりますし、今後ともこれは要請をしたい、これは政府としての正式な見解であります。
  110. 岡田正勝

    岡田(正)委員 くどいようでありますが、私は、二十七年三カ月かけてきたこのいわゆる悲願とも言うべき問題の解決に、外務省は日赤を通しいろんな運動をやってくれています、窓口もつくってくれました。だがしかし、事態は一歩も進展しません。しかるにかかわらず、北鮮からはどんどん人を受け入れ、日本におられる北鮮の人はどんどん祖国往来を許しておいて、我が日本政府が我が日本人の権利を守る、我が日本人の生命財産の保護をするということを、何ら手を差し伸べられないままほったらかしになっている。私はこのことを、国交がないから閣議決定したってそれはスカタンみたいなものだとおっしゃるのかもわからぬが、日本は今世界の超大国の中に入りましたよ。日本が閣議でどういう態度決定をしたかということは、大きな世界のニュースになっていきますよ。安倍さんお一人が言っていることよりは、閣議で決定をしたげな、はあ、そんな問題があるんか、世にも不思議なことがあるんだなということを全世界に教えたらいいじゃないですか。それだけのことをやる。銭は一銭もかからぬのよ。お金は一銭も要らぬのですよ。その閣議決定がなぜできぬのですか。もう一回、性根を据えて返事をしてください。
  111. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 政府の姿勢というものは閣議決定のいかんを問わず、この問題、閣議決定というまあ我々が言っています。そういう中に入るのかどうか、これは検討してみなければならないと思いますが、政府の正式な姿勢というもの、態度方針というものははっきりしておるわけで、これは内外を通じて明快であると思います。あくまでも人道上の問題として我々は努力をしておりますし、これは努力しなければならぬ責任があるわけですから、国境を超えた問題ですから、国交とかそういうものを超えた問題ですから、それは我々としてははっきりしておるわけでありますし、この気持ちは今後ともあらゆる機会を通じまして、またあらゆるルートを通じましてやっていかなければならない、北朝鮮に対して示していかなければならない、こういうことはもうはっきりいたしておるわけであります。  閣議決定についてそれが、私自身も今初めて承ったわけですけれども、この辺については、これが促進という一つの方向になればこれは十分検討しなければならぬ、こういうふうに思います。何も閣議決定をしないとかいけないとか、そういうことを言っているわけじゃなくて、そういうことによって何らかこれが人道上の問題として前進するということならば、これは何もそういうことに私はちゅうちよしているわけではない、検討させていただきます。
  112. 岡田正勝

    岡田(正)委員 くどいようでありますが、もう一回お尋ねをします。  これは人道上の問題として政府態度ははっきりしております、ともかく一日も早く帰してもらいたい、問題は北鮮の出方一つである、ここまではわかりました。これは今まで言い続けてきたことです。だが、それで進展をしないから、何をアクションにしたらいいのかと考えた結果、国連にも訴え、国際赤十字にも訴え、そして向こうの赤十字にも訴え、北京政府にも訴え、ソ連にも訴え、ありとあらゆる手を使っても進展をしないとなれば、日本政府は、閣議としてこの人道の問題をほってはおけません、日本人妻の問題はほってはおけない、日本人の問題だ。それを守るのは政府として当たり前のことだ、誠意を持って対処してもらいたいということを、相手から返事があるかどうかは別問題として、全世界の百六十の国に知らしめることというのは、私は非常に有効な手段である。閣議決定をするのに何にも障害がないはずである。閣議の中でその問題を取り上げて提案しなければならぬ立場にある外務大臣が今のように、言葉は悪いがへっぴり腰じゃ、いつまでたったって閣議決定はできぬのじゃないかと私は心配しているんです。次の総理・総裁をねらう人でしょう、あなたは。そんな軟弱な態度でこの日本が背負えますか。もう一遍、ひとつ返事ください。
  113. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 何もへっぴり腰じゃありませんよ。この問題については、我々も腰を据えてやっているわけですから。これは今いろいろの動きもありますし、やはり政府としての努力はそれなりにやっているわけですから。いろいろなルートを通じてだけじゃありません。いろいろとこれからの状況等を踏まえてこれはやらなければならぬ、こういうふうに思っておるわけでありますし、私はこれからその問題が、今の里帰りの問題も可能性としていい方向に行くのではないか、こういうふうに思っております。その間に何か我々政府としてやるべきことがあれば、それは十分検討をしましてやらしていただきたい、こういうふうに思います。
  114. 岡田正勝

    岡田(正)委員 外務大臣、私はもう本当に怒ったですよ。それが外国におる我が日本国胞を守るべき立場にある政府責任者答弁ですか。私は情けない。もっと前向きな、私と同じ考えを持っていろんなら、口だけじゃなくて腹から持っていろんなら、総理を動かして閣議の決定に持ち込みたい、私もあなたと同じ考えだ、努力をしてみるというぐらいのことを言ったって罰は当たらぬでしょうが。罰は当たらぬでしょう。何でそれぐらいのことが言えぬのですか。  私は、この日本人妻の問題でもっと質問をしたいんだけれども、あなたのような同じところへとまっておる、一つのところをぐるぐる回っておるような答弁しかしないような人は、私は残念でかないません。まあひとつ、これ以上申し上げませんから、私と同じ考えであるんなら、ぜひとも閣議決定に持ち込めるよう、それが世界の世論を動かす一番大きな原動力になるんだと私は信じておりますので、ぜひひとつせっかくの御努力をお願いをします。これは本当に本当に頼むよ、安倍さん。泣いて頼む。六千六百の日本人がどうなっているかわからぬのに、相手がどう出るか、それによってしか手が打てぬという、そんなことは私は情けない。本当に情けない。頼む、安倍さん。頼むよ。日本を背負って立つような人じゃないですか。考えていただきたいと思います。この問題はそれ以上申し上げません。  次に、今申し上げたように金日成さんが、御承知のように五十五年の九月、AA研の自民党の皆さんに対して、それはもう北鮮におる日本人妻が日本に行くのも、日本におる留守家族が朝鮮に来るのも結構な話だ、それは実現をすることがいい、具体的なことはひとつ事務当局と話し合っていただきたいと言われて、早くも六年たちました。せっかくそれほど金日成さんがいいことを言ってくれたのに、六年、事態は発展しません。しかも、言われた言葉の中に、お互いに相互主義でいきましょうやと言われている。であるのに、我が日本だけがリップサービスをして、一人の日本人妻も帰らぬということが情けない。だから、相互主義でひとつ問題の解決を急いでいただきたいと思います。これは安倍さん、失礼な言葉になりましたが、ぜひお願いします。留守家族の立場に立ってお願いします。  それから次は、日本人妻の留守家族の人が向こうへ行きたいのです。現在、日本人が向こうへ行ってこっちへ帰ってくるのが、五十九年だけで八百八十九人いらっしゃったといいます。留守家族の人が向こうへ行かしてもらえるのでしょうか。ところが、渡航趣意書を出しなさいというので、渡航趣意書というのを、これがありますね、こういう簡単な文書があります。この渡航趣意書を出せというから出せば、受け入れがない、相手から招聘がないから行かれぬと言うのですよ。ほかの日本人は、堂々と北鮮に行ったり帰ったりできるのに、日本人妻の関係者の諸君は行こうにも行くことができない。もう甚だしく一方的じゃないですか。こういう問題もぜひひとつ解決をしてやっていただきたい。そして、向こうに行きたい、会いたい、会いたいと考えておる留守家族の人がもし向こうに行った場合、こんなことはこの席上では適当でないかもしれませんが、世界を騒がしたラングーン事件日本海のアベックの拉致事件、こういう問題が灰色の霧のように疑いがこもっておるところであります。もし、会いには行ったが帰ってこれなんだ、どこへ行った、国交がないからわからぬ、消えた、そんなことにならぬように、会いに行けたら必ず帰れる保障がほしい、こう言っておるのであります。これも相互主義です。この点については、外務大臣いかがでしょうか。
  115. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先ほどの里帰りの問題につきましては、私も先ほどから申し上げたとおり、岡田さんと同じ気持ちです。政府としまして何ができるか、これからひとつベストを尽くして、これからできるものについて検討をさせていただきたいと思います。  これは具体的に旅券等の問題ですから、私、お答えができませんけれども、しかし、全体的にはやはり北朝鮮側も今の日本立場、里帰りそして家族の北朝鮮への受け入れというものに対しては、人道的な立場から配慮してもらいたいと思いますし、そういう点でいろいろこれからも努力をしなければならぬ、こういうふうに考えております。これまで確かに今のような事態が個々の問題で起こっておるということは、私はそれなりに想像はできるわけでございまして、大変残念ながらそういう状況であろうと思いますが、この事態の改善のためにできるだけ努力は重ねてまいりたいと思います。
  116. 岡田正勝

    岡田(正)委員 これは最後の質問になりますが、これは大臣のところから出た書類です。今大臣のところにお手渡しをいたしましたが、外務省の北東アジア課が窓口になっておりますので、課長さんが大変苦労いたしまして、六十年、昨年の四月にこういう文書を出しました。  その文書の中を簡単に要約をいたしますと、外務省といたしましては、日本人妻の人たちが安否が判明をして通信が確保された段階で、さらに双方が再会、会いたいなという希望があれば、その実現に向けて努力してまいりたいと思います、したがって、添付の用紙にそれぞれ各項目に記入をして御返事をいただきたいと出した。千六百八十の家族に出した。ところが、返ってきたのは九十余通である。寂しいことですと、こう課長さんは言っておる。なるほど寂しいことです。千六百八十人近くおって、なぜ九十通しか返ってこぬのだろう。  これは第一ここに書いてあるように、「安否が判明し、」いっても、安否がわからぬのですよ。どうするのですか、これを。そして「通信が確保された」、通信が確保されてないのですよ。そして、両方が会いたいといっても、片方死んでおるのやら生きておるのやらわからぬのに、双方が会いたいからって、どこでその合意を、あんたも会いたいか、あんたも会いたいか言って、日本海の真ん中で両方へ電話がけるのですか。やりようがないじゃないですか。  こういうような調査をするときに——本当にありがたいと思うのですよ。思うのですが、なぜ、日本人妻自由往来実現運動の会というものがあって、それが毎月毎月なけなしの金を出し合って運動をしておる団体があるのに、その家族が全家族加入しておるのに、なぜ北東アジア課は、外務省は、こういう調査をしたいと思うがどうだろうか、こういうのを出そうと思うがどうだろうかというぐらいの相談はあってもいいじゃないですか。まことに私は親切味がないと思うのですよ。やったことはいいのです。私は感謝します。だがしかし、抜けちゃおりませんか、肝心なことが。何でそれを、全家族を掌握しておる日本人妻の里帰り実現の会に協力要請しないのですか。そしてその人たちと話し合って、こういうことなら答えてくれるからというので、同じ封筒じゃ外務省の権威が落ちるというなら別の封筒でもいいから、外務省からこういう調査が行くが速やかに返事を出していただきたいと、なぜその会を動かすようなことを考えぬのですか。  もっと親身になって考えてくださいよ。ただ窓口を設けた、ただ一年に一回こういうことをしたというだけじゃだめですよ。もっと親身になってやってください。日本人が、六千六百人が生きているか死んでいるかわからぬのです。こんなことをほっておいていいのですか。私はそれを要望いたしまして、言葉がきつうございました、水もこぼしました、まことに済みません。だけどしかし、私は本当に怒ったのです。それだけは理解してください。よろしくお願いしたいと思います。ありがとうございました。
  117. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今いろいろな御意見等も踏まえまして、外務省としましても北東アジア課が連絡をいたすために、外務省でそのために責任を持たしたわけでありますから、御意見等を踏まえて、十分ひとつ実情に即した努力をこれから重ねていきたい。よく指示をしておきます。
  118. 岡田正勝

    岡田(正)委員 どうも安倍さんありがとうございました。くれぐれもよろしくお願いします。  それから、実はこれから造船不況の問題を訴えたいと思うのであります。  御承知のとおり日本の造船界というのは、世界の造船量の半分を占めるほどの造船王国でありました。今でもその量は、半分はつくっておるのでございますけれども、しかしながら御多分に漏れず、例えば石油一つの問題をとってみましても、今まで一年間に三億トンも石油を運んでおったタンカーが、省エネの関係で二億トンでよろしいということになれば、たちまち石油だけでも一億トン船は余ってしまうわけでございます。そういうことで、世界の船腹が過剰になったものですから、そのしわ寄せが来まして、今瀬戸内海、九州、これは全国にありますけれども、そういうところの造船所がある城下町というのは大変な騒ぎになっておるのであります。この問題につきまして、私は、造船産業再建連絡会議というようなものを設置していただけぬかなというふうに訴えたいのです。  私の訴えというのは、構造不況でございますから、そのためには造船産業を中心として、そこに働く人たちの雇用の確保はもちろんのことでありますが、その地域産業の発展、安定ということも考えないといけないときにもう来ていると思うのです。そういうことを考えると、非常に幅広くその対策を講じていただかなければならぬので、まことに恐縮でありますが運輸省が中心となりまして、通産省、そして地方自治体に関係のある自治省、そして労働者に関係のある労働省、こういう各省がお寄りいただいて、何とかひとつ造船産業再建連絡会議というものをおつくりいただいてお願いできぬものかな。  そして、それについて銭こが要るぞということになったら、大蔵大臣はこれまた次の総理・総裁を目指す人ですから、こんなときに、造船所で二十七万からおった人間が十六万人に減ってしまうような、そんな大変な犠牲を出しておる造船産業がさらにまた四割カットしなければいかぬ。十六万人をさらに四割カットしなければいかぬ。国鉄、大変な御苦労ですが、その人数は国鉄どころじゃないのですよ。物すごい人数が造船所からあふれていっているのです。こういう大変な時期に、大蔵大臣も見て見ぬふりをするはずはない。そんな人だったら、次の総理なんて言わぬ方がいいと私は思っておるのでありますが、この連絡会議の設置についていかがでございましょうか。各大臣の決意をひとつお願いします。     〔委員長退席、中島(源)委員長代理着席
  119. 三塚博

    ○三塚国務大臣 御指摘のとおり海運、造船、深刻な局面に来ております。私も就任いたしましてから、国鉄が国家の大事な改革のテーマでありますけれども、同時に海運、造船がそれに相匹敵するだけのウエートを持つ問題である、かように実は受けとめておりまして、関係局長を督励をしながらこの対策を練っておるところであり、また、解決のための法律も間もなく提出をさせていただくつもりであります。よって、海造審にも審議をお願いいたしておるのでありますが、しかし、恐らく政府は審議会ばかりというような御批判もあってはならぬ、それは真剣に御審議をいただいておるのでありますが、相並行しつつ、必要があることでありますれば、御案内のとおりやり抜くものはやらなければならぬ、このように思っております。
  120. 小沢一郎

    ○小沢国務大臣 私どもといたしましては、いわゆる構造不況産業対策という面とは別に、いわゆる企業城下町的な色彩を持っている地域は非常に影響が深刻でございますので、いわゆる地域経済対策、活性化対策、そういう面からとらまえて対処していかなければならない。先生の今御提案の件につきましては、十分念頭に置いて、各省庁で協力して協議していきたいと思います。
  121. 林ゆう

    ○林国務大臣 お答え申し上げます。  労働省といたしましては、従来から船舶製造・修理業を特定不況業種と指定いたしまして、いろいろと手当てをしてきたわけでございますが、こういった先生のような御提案、関係省庁と十分に協議をいたしまして、十分な対策、対応ができるようにしたいと思います。
  122. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 今度の新しい特別立法等の適用その他について、業種指定等につきましても、運輸省から要請があれば十分検討してまいりたいと存じます。
  123. 竹下登

    ○竹下国務大臣 六十一年度予算にも補給金等はございますが、本質的には担当の運輸省でいろいろなお考えが出るでございましょう。それと十分相談をさせていただきます。
  124. 岡田正勝

    岡田(正)委員 大変気持ちのいいお話をいただきましてありがとうございました。多くの造船労働者並びに会社の皆さんは、力強く思っておることと思うのであります。  次に、同じような趣旨になるかもわかりませんが、中小造船の人たちの困難を救うために、構造転換のための特別な臨時特例法のようなものをおつくりいただけぬものでございましょうかという訴えてあります。それは、中小造船というのは物すごい数があります。だが、非常に基盤が弱いです。第一とにかく金がない。こういう状態でございまして、技術力も低いということがありますから、この造船不況の波にもろにやられるとこれは大変なことになるので、その中小造船の構造転換をするために、長期、低利の資金融資の問題あるいは構造転換に伴う特別の税の優遇措置とか、あるいは技術が全く違ってしまいますから、政府機関によります技術面の指導とか訓練とか、そういうことをやっていくのに必要な特別な臨時措置法というようなものはおつくりいただけぬものでありましょうか。これは大蔵大臣と運輸大臣の両方にお尋ねしたいのであります。
  125. 三塚博

    ○三塚国務大臣 先般御審議をいただいて成立をいただきました転換法、緊急措置法がありますので、それで業種指定をいただきながら十二分に対応してまいりたいと思っております。
  126. 竹下登

    ○竹下国務大臣 恐らくこの間上げていただいた法律の適用で、私は、先生のおっしゃっている趣旨はかなえられる中身を備えているのではないかと思っております。
  127. 岡田正勝

    岡田(正)委員 ありがとうございました。  それでは時間の関係がありますので、大変恐縮ですが、日銀の総裁お見えいただいておるそうで、どうもありがとうございました。遅くなって申しわけございませんでした。  今、国内は大変急激な円高で、みんながびっくり仰天しているのです。それで、竹下大蔵大臣が昨年の九月、G5の会議に行かれて、日銀総裁も御一緒だったと思うのでありますが、そこで五カ国の協議ができたと言ったら、見る見るうちにどんどん円高になるわけですね。(「自治大臣、運輸大臣たちはもう……」と呼ぶ者あり)ありがとうございました。結構です。後は大蔵大臣と日銀総裁、お二人で結構です。経済企画庁長官、ちょっと時間が一分でもあれば、ひとつよろしくお願いします。  それで、こういうような急激な円高になってくれば大変なことはみんなが承知のとおりでありますけれども、一体どこまで続くぬかるみぞという歌の文句がありますように、大体お二方の腹のうちは、一体このレートはどの辺でやめにすべいということを考えておるのですか。できるところまで言ってください、お二人とも。
  128. 竹下登

    ○竹下国務大臣 日本の大蔵大臣日本の中央銀行総裁があるターゲットを仮に申し述べますと、世界じゅうに混乱が起きる要因になります。これは私が力があるのじゃなく、日本全体に力がついたからでございますが、したがって、その問題は申し上げられない。  そして、今日の状態は、円高基調が自律的に定着しつつあるという評価はしております。
  129. 澄田智

    ○澄田参考人 ニューヨークのG5以降、いつも繰り返して申し上げているわけでございますが、特定の為替の水準というものをターゲットとして持っているというようなことはございませんで、各国の経済の基本的な諸条件、いわゆるファンダメンタルズ、それをより適切に反映したもので為替相場はあるべきである、こういうことでやってきておるわけでございます。  最近、殊に二月に入りましてからの円相場は、非常に速く円高の方向に行っております。速過ぎるという面は確かにあると思うわけでございます。そうして私といたしましては、円高基調というのは望ましいことではございますが、しかし当面におきましては、より円の相場が安定する、円高方向で安定するということがよりさらに望ましいことである、こういうふうに思っております。
  130. 岡田正勝

    岡田(正)委員 時間が切れたようでございますから、最後に経済企画庁長官にお尋ねを一問だけさせていただきます。  現在の時点におきまして、東京サミット以前に新たな貿易摩擦解消策をお打ち出しになる予定でございますか、それだけ聞かせてください。
  131. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 今我々は予算の審議をお願いをいたしておりますので、まずこの予算が一刻も早く執行できる状況になるということが私、非常に重要なことだと思います。  他方、今大蔵大臣及び日銀総裁からもお話がございましたが、最近の外国為替市場の動きは殊に速度が非常に急激であるということから、特に地場の中小企業で輸出に非常に重点を置いておる企業あたりに広範に影響が出てきておるということを私ども大変憂慮いたしておりまして、時期を問わず我々としては絶えずこの問題に対する対策を立てていかなければならないということで、予算の執行を早くお願いをできるようになりたいということが一つ。第二番目には、きめの細かい対策を立てていかなければならぬということで意見が一致しております。
  132. 岡田正勝

    岡田(正)委員 ありがとうございました。これをもって終わります。
  133. 中島源太郎

    ○中島(源)委員長代理 これにて岡田君の質疑は終了いたしました。  この際、暫時休憩いたします。     午後一時三分休憩      ————◇—————     午後二時十四分開議
  134. 小渕恵三

    小渕委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。佐藤観樹君。
  135. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 きょうはお手元に一般質問の項目を配らせていただきましたけれども、「六十一年度の経済運営について」、一ドル百七十円、あるいはそれを割るのではないかというような新しい時代に入った日本経済の運営について、日経連の大槻文平会長あるいは日本商工会議所の五島昇会頭等にもおいでをいただきまして少し議論してみたい、内需拡大も第二弾、第三弾が必要なのではないかと言われているときでございますので、その経済運営問題について経済企画庁、大蔵省含めて少し議論をしたいと思ったわけでございますが、何分お忙しい方でもあり、また御都合がつかなかったものですから、これはまた後日、集中審議に譲らせていただきたいと思います。  それから二番目に、いわゆる「徳洲会の選挙違反」という項目が書いてございますけれども、これも諸般の事情がありますので、やめます。  それから、役所側の、大臣側の他の委員会での御都合もございますので、四全総の目標について少しお伺いをさせていただき、また、私は愛知県の出身でございますので、ひとつ中部圏のあり方について運輸大臣等にお伺いをしたいと思います。  そこで、まず四全総でございますけれども、もちろんこれはまだ本当に素案ができた程度でございますので、本格的にはさらにこれから各地域の意見を聞いたり、あるいは関係する役所の意見もなお一層詰めていくということになると思います。その素案だと思うわけでございますが、今後の国づくりにとりまして大変重要な指針でございますので、方向性でございますので、ひとつ最初に国土庁の方にお伺いしたいと思うのでございます。  その前に、五十二年から始まりました三全総でございますね、ちょうど日本経済自体も低成長に入ってきたときに組まれた三全総でございますので、なかなか資金的余裕というのがなかったわけでございますが、しかし三全総が目指した一定のものの成果というのはあっただろうし、また必ずしも三全総で期待をしたのと違う方向性のものも出てきたように私は思います。  三全総の成果、まだ完全に終わったわけではございませんが、三全総の成果というものは、一つは数字的と申しましょうか、達成率のような面から一体どんなことになったのだろうか。あるいは、三全総の目指していました理念と申しましょうか、国づくりの考え方としてはどのくらいまで達成できたというふうに国土庁の方ではごらんになっていらっしゃるか。その点からお伺いをさせていただきたいと思います。
  136. 星野進保

    ○星野政府委員 数字のお尋ねでございましたので、私の方からお答え申し上げさせていただきたいと思います。  まず、人口でございますが、計画では、東京圏、大阪圏といういわゆる大都市圏につきまして基本的には人口を抑制いたしまして、相対的に地方圏の人口をふやそうというのが一つの数量的目標になっておりました。その成果でございますが、計画で、昭和六十年の計画値は三千百二十四万人というのが東京圏、それから大阪圏が千七百二十三万人という計画でございますが、最近の実績、六十年の暫定数字でございますが、三千二十七万人東京圏、それから千六百五十三万人大阪圏ということで、計画考えていましたよりも人口の増加数が小さくなっておるということでございます。これは三全総の目標からいいますと成果が上がった方でございます。  それから、社会資本関係で若干の数字がございまして、三全総で、例えば平均居住専用面積につきまして計画昭和六十年に一戸当たり八十三平米ということでございますが、最近の実績は八十六平米ということで、これは計画を上回っております。  他方、例えば都市公園面積でございますが、計画では六十年六平米と言っておりますけれども、これはちょっと数字が古いのでございますが、最近の実績といたしましてまだ六平米にはちょっと達してないのじゃないかということでございます。  それから、高速道路供用延長も若干達成しておりませんで、計画で四千五百キロメーターから五千キロメーターということを申し上げておりましたが、最近の実績、六十年度末で三千七百二十キロメーターということでございます。  どうも全体といたしまして、人口に対しますいわゆる大都市抑制、地方振興という形での成果はまあまあ上がっていつつあったのではないか。中に社会資本整備等で若干ばらつきが見られるというような感じかと思います。ただ、あとは定性的には三全総は基本的に地方の自主性を踏まえた地方振興、みずからの地方の整備ということをうたいとげたわけでございますが、そういう方向は例えば一村一品運動とか、その他のいろいろな最近の地方での動きを見てまいりますと、かなり質的には三全総の趣旨に沿った動きが出ているんではないかというふうに理解しております。
  137. 山崎平八郎

    ○山崎国務大臣 お答え申し上げます。  ただいま計画・調整局長から数字的な例を挙げまして御説明申し上げましたが、理念といたしまして私から御説明申し上げます。  ただいまの三全総策定後の今日に至るまでの動向を見ますと、人口が大都市へ集中しておるということは、一応ただいまの現状としては鎮静化の傾向にございます。したがいまして、人口の地方定住という問題が非常に進展しておるわけでございます。具体的な一例として挙げますと、一村一品運動などの地域の創意や工夫を生かしたいわゆる地域づくり、これが盛んになるなど、三全総の目指しました方向地域づくりが活発化しておるわけでございます。  一方、御承知の国際化、情報化の中で高次諸機能が東京圏に集中する傾向にございまして、地方においても中枢、中核都市に人口、諸機能の集中傾向が見られるなど、注目すべき現象が惹起しております。したがいまして、四全総策定作業におきまして、これらの問題への対応を十分に検討する所存でございます。  以上であります。
  138. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 ちょっと局長の方にお伺いしておきたいのでございますが、これは三全総の計画ではおおむね十年で二百四十兆の公共投資。これは政府の資本固定ベースでの話でございますけれども、二百四十兆円。ところが、五十年と五十五年と価格が違いがございますので、最近の実績としての百七十兆だけれども、それに五十五年価格を掛けて、さらに土地の面積の関係がございますので、私の計算した限りは二百五十兆ぐらいになるわけですね。五十五年価格に直すために百七十兆に一・三を掛けまして、さらに用地の補償比率、一五%ぐらいといたしまして一・一五を掛けまして二百五十兆ぐらいになる。そうすると、この計画の二百四十兆円というのは、これは計画の数字自体の基礎が違ったのか。今御説明がございましたように、数字的には高速道路にしてもその他のところにしても未達成のところがあるわけですね。しかし、金額だけ見る限りでは六十年計画、三全総の予想した金額よりはふえているわけですね。このあたりちょっと、簡単で結構でございますから。
  139. 星野進保

    ○星野政府委員 今の先生御指摘の数字でございますが、三全総で言っている、いわゆる私どもIgベースと言っておりますが、それの五十年価格でもって二百四十兆円という言い方をしておりまして、それに対応するものとして、これは六十年は入っておりませんが、私どもが計算したところによりますと五十年−五十九年で約百七十兆円であるということでございまして、そのデフレーター、つまり価格を割り引きするところを同じ年次でとらえますと、二百四十兆が百七十兆であるということでございます。したがいまして、オイルショックその他の影響もありまして、財政再建の時期でございますので、どちらかというと公共投資が私どもが考え計画のペースよりも若干抑え込まれているというのが実態がと思います。
  140. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 ちょっと私の理解が悪いからかもしれませんが、その百七十兆を要するに五十五年価格ベースで割り戻すというのでしょうか、掛けて、それから今度土地を買わなければいけませんので、その土地の比率等も入れて計算してみると計画より大きいのじゃないかと思いますが、ちょっと数字の問題ですので、これは後で結構でございますので精査してみてください。  それで私は三全総——今長官からお話がございましたが、私も定数是正という問題をやっていて、つくづく日本の過密過疎というのがいかに国づくりにとりまして、むだという言い方は正しくないかもしれませんが、大変国民経済にとってみても財政的にもむだが多い。例えば、過疎のためにはいろいろな手当てを予算上して何とか食いとめようとしている。過密の方では、例えば国鉄につきましても常磐線を複線化にしなければいけないとか、つまり過大投資をどうしてもさせられるという問題がございまして、過密過疎という問題は、私は大変本当に中心的にとらえていかなければならぬ問題だと思うのであります。そういう意味では、三全総が理念的に目指したこの狭い国土をなるべく平均的に、しかも特色ある歴史を生かしつつつくっていこうという、そういう発想自体は極めて重要なことだと思っているのであります。  ただ、今長官言われましたように、一つはやはり東京圏にどうしてもそれでも集中する。県別に見ますと、どうしても県庁所在地ですね、あるいはもう少しの中規模な都市にどうしても県の中を見ても集中するということがございまして、これはまたちょっと四全総とも絡んでくる問題なんでございますけれども、この東京に一極集中する。後で四全総の中でもさらに国際的機能、金融的機能といいますと、ますます東京集中するということが出てくる。三全総の中におきましてもそういう傾向があるわけでございますが、この辺のところはどういう質問の形にしたらいいか、ちょっと表現が難しいのでございますが、三全総の当初の予定でもある程度はこれはやむを得ぬと考えていたのか。そしてそれ以上やはり都市集中あるいは東京集中、東京圏主言った方がいいかもしれませんが、集中というのは予想以上だったというふうに考えていらっしゃるのか。あわせて、それに逆行する格好で四全総というのはつくっていかなければやはり国土の均衡ある発展という形にはならないのじゃないかと思いますが、その点について長官の方から何かお考えがございましたらお聞かせいただきたいと思います。
  141. 山崎平八郎

    ○山崎国務大臣 お答えいたします。  先生のお説、まことにそのとおりでございます。三全総は、御承知のように二回の石油ショック後つくられまして、定住圏構想を中心として進めてまいった考え方でございます。しかしながら、御承知のように時代はまた次の時代に進んでまいりますが、二十一世紀をにらみまして、結局は、簡単に申し上げますと、やはり東京中心、東京過大という問題に確かに問題は事実上なっております。しかし、地方にもそれぞれ中核になる都市がございまして、またその周辺の地域を一緒に流通の中に織り込む、また地域地域の中核のものをまた東京と結びつける。そういったような流通という問題を今後いろいろな通信あるいはまたその他の交通機関その他もしっかり発展させまして、一体となってお互いが流通し合うという問題を定住圏構想にさらに加えるというのが今度の四全総でございまして、先生のおっしゃるとおり、過大な首都をつくろうと考えているのではございません。
  142. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そこで少し前に進みたいのでございますけれども、一体これからっくろうとする四全総というのは、この三全総で大体一定の方向を目指してそれなりの成果が上がった、ただし投資額につきましては、低成長に入ったときでございますから、数字的には若干達成率等は下がっているところがあるわけでございますが、一体これから四全総に向かって、しかもこれはずっと全総から始まって新全総、だんだんだんだん計画が長くなってくるわけですね。四全総に至っては二十一世紀、十五年間を見ようという大変壮大な計画であるわけでございますけれども、そういう中でこの四全総というのは、ある意味では三全総の延長する部分もあるだろうし、新しい理念を三全総の成果を踏まえて入れていかなければいかぬ部分もあるだろうし、今もありましたように、それでもなおかつ都市集中、東京圏集中というようなことになってしまうことについて、もう少しこれをばらしたい、平均化したいということもあるだろうし、一体四全総というのは三全総のどういう部分を理念的に延長、発展をさせ、それからまた、人間の意識も大分変わってまいりますから、二十一世紀に向けてどういう新しい理念をこの四全総の中に入れていくべきだ、どういう方向だということについてちょっと御意見を賜りたいと思います。
  143. 山崎平八郎

    ○山崎国務大臣 今お話しのとおり四全総は長期計画でございまして、二十一世紀をにらんでこれから十五年間着々と進展させる必要がありますが、もちろんこの総体の全総そのものはこの秋までに策定するということで今着々と進んでおります。ごく近年の社会の状況、また動向をいろいろ見てみますと、人口の地方定住、これはまあ進んでおります、三全総がそのねらいでございましたので。ところが、地域間とまた国際間、この相互依存関係がだんだんと強まってまいりますので、それらおのおのの交流がここに新しく必要になってまいります。したがいまして、四全総が考えております策定の目標、これに当たりましては、もちろん先ほど申し上げましたとおり定住圏構想の理念そのものはあくまで継承してまいりますが、交流の増大という新しい問題、これに円滑に対応するにはいかようにしたらいいか、そしてまた、その上にひとつ個性のある地域づくりを図るためのもろもろの諸施策を今鋭意検討中でございます。
  144. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 大臣も建設委員会ですか、時間のことがあろうかと思いますので、今大臣からお話があったように、これから四全総の中で、いわば拠点と拠点とをいろいろな格好でつなぐという交流に、今までだって交流があったわけでありますが、非常にウエートを置いて、新しい交流という理念が入ってきたと思うのであります。それで、今長官からお話がありましたように、そういう意味で、定住をしつつもなおかつ地域地域の交流を深めていこうというのが新しい地域づくりの一つのテーマになりつつあるわけであります。  そこで、そろそろ運輸大臣にお伺いしたいのでございます。総括的なお話でございますけれども、今ありましたように、今までだって当然交流はあったわけだけれども、今度交流ということのウエートが非常に大きくなっている。それは鉄道があり、航空があり、船がある。船はちょっと、もちろん物という面におきましては物流という格好でありますけれども、この場合には空と陸ということだと思うのであります。  それで、運輸大臣として、まだ四全総自体は秋に向けていろいろ固めていくわけでありますけれども、計画部会に出されましたこの四全総をざっとごらんになって、特に運輸部門というのは大変ウエートが大きいわけでございますけれども、その点についてどういうふうに全体的にお読みになったか、ひとつその点からお伺いしておきたいのです。
  145. 三塚博

    ○三塚国務大臣 四全総の中における国内航空の位置づけ、これは当然陸上交通との関連があります。長距離航空路としての位置づけが一つあるわけでございますが、それと、昨今コミューターという地域航空という問題も一つあります。そういう中で運輸行政としての、国土計画の中にどのように今後位置づけていくかということでありますれば、こういう社会的、経済的な要望にこたえた形の中で策定をされていくことが大事であろうというふうに実は思います。  それと、既に御案内のとおり、新東京国際空港、さらに東京国際空港、今の現大阪空港、特に羽田、大阪はキャパシティーが飽和状態に相なってまいりました。そういう意味で成田の第二期工事への展開が要望されるでありましょうし、羽田沖展開がピッチを上げて取り進めていただかなければならぬ。こういう中における国内拠点空港の位置づけというのも極めて重要なテーマに相なってくるわけでございまして、陸上交通と相まち、空の航空路の整備というのは我が国経済社会の発展にとりまして欠くことのできないこれからの重要な要素である、このように認識をいたしております。
  146. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そこで、私も愛知県の出身で、特に全体的に見ますと、私のところは東京圏と関西圏というちょうど間に入って、頭越しにいろいろなイベントを東京と大阪でやるということで、中部は大変地盤沈下をしている。そういう意味では国際性に欠ける。いまひとつ活性化をしていかなければならぬのじゃないか。ただ、中部圏というのは大変大きいのでありまして、何か四年後に近畿で国際花と緑の博覧会というのをやるのだそうでございますけれども、実は花の出荷額というのは愛知県が日本一なんですね。緑といえば、長野県があることもございますけれども、中部圏というのは森林面積が一番大きいというようなことで、花と緑で大阪、こう言うけれども、実は本当は中部の方が一番適したところなんでありますけれども、イベントは大阪でやる。御承知のように、工業出荷額は第一位が愛知県ということでございまして、愛知県、中部圏というのはそれなりにウエートがあるわけでありますが、今までそういった意味ではちょうど東京圏、関西圏の間にすっぽりと、一ランク下になっていたということなわけでございますけれども、今度これから四全総を発展をさしていく、詰めて発展をさしていくという中で、言葉としてそのまま使わしてもらえば「多極分散型」、の国づくりということになってくるわけでありまして、そういった意味では中部というものについての位置づけというのは大変重要になってくるのではないかと思っておるわけでございます。  そこで、もう大臣の耳に入り、また大変理解をいただいているわけでありますが、中部国際空港の問題があるわけでございます。私たち地域におる者から見ますと、国際化と活性化のシンボルであるというふうに考えているわけでございますけれども、今大臣から全体的な、日本全体見ましたときの航空のあり方ということについて御答弁をいただいたわけでございますけれども、ちょっと地域の問題に限って恐縮でございますけれども、既に地域におきましても調査会をつくりまして進めているというようなこともございまして、これはぜひ、何分空港というのは懐妊期間が長い話でございますので、そういう意味でひとつ、四全総の中にも、例示とはいうものの中部国際空港の話が二十一世紀に向けてはっきりと明記をされるようになってきたわけでございますが、この点について大臣の御所見を伺いたいと思います。
  147. 三塚博

    ○三塚国務大臣 中部国際空港の構想というのは、伊勢湾を中心に新国際空港を建設しようというかねがねの運動、また、調査会を昨年つくられましてスタートを切られておる、こういうことどもを承っております。  もともと国土が狭隘な我が国、密集をいたしております住居環境の中で、海上空港というのは我が国の航空政策の中で求められる一つの位置づけであろう、こんなふうには思います。そういう中でかねがね、今御主張がございましたとおり、首都圏、近畿圏、中部圏——中部圏は我が国の歴史の中でまた覇を唱えた時代もあり、歴史の中心になった時代もあるわけでありまして、現代におきましても可能性の富んだ地域でありますことは間違いがないと思います。  そういう意味で、今後この国際空港のあり方をどう見るのか、こういうことでありますけれども、御案内のとおり、名古屋小牧空港が現在稼働をいたしておりましてそれなりにキャパシティーはまだ十二分にある、こういう状況が航空需要の中で、また飛行場の中であるわけでありますけれども、海上空港、こういう二十一世紀を展望してまいるという形の中ではそれは一つの行き方であります。さような意味で、運輸省としてもまさにこのことはこれからの課題として十二分に検討、勉強していかなければならぬ問題だ、こういうふうに受けとめております。     〔委員長退席、中島(源)委員長代理着席
  148. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 ちょっとこれは事務局の方でも結構なんでございますが、第五次空港整備五カ年計画がございますね。これが六十一年から六十五年まで五年間、総額一兆九千二百億円ということでなっているわけでございますけれども、空港整備事業が一兆一千五百億円、民間出資の関連事業が六千五百億円、調整費等で千二百億円となっているわけでありますが、これはどのくらい精査といいましょうか、その中におきます中部国際空港というのはどういう位置づけになっているのか、ちょっとお答えいただきたいと思います。
  149. 山田隆英

    ○山田(隆)政府委員 お答えいたします。  第五次空港整備五カ年計画につきましては、ただいま先生御指摘ございましたように総額で一兆九千二百億円ということで近々政府におきまして閣議了解をいたしたいというふうに考えております。その中で中部国際空港の位置づけと申しますかどういうふうに扱われているかということでございますが、これから各個別の事業等につきましては航空審議会あるいは関係各省と詰めまして検討してまいりたい、かように考えております。
  150. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 これだけは言っておきたいのでございますけれども、四全総の資料の中でも、これから中部圏から外国に出る方々が今の大阪空港の発着人数ぐらいまでいくのではないかという数字が出ているわけであります。私たちから見ますと、実は外国へ出るのに東京まで出てきて成田空港から乗るかあるいは大阪へ行って乗るかという、大変実は地元としては不便をしている。しかも、統計上はそれが東京と大阪の統計に入って、小牧空港というのはそういうことがあるものですから比較的小さな数字にしか出ないということがございますので、そういう意味では、まだまだこれも緒についたばかりでもございますし、また、小牧空港がキャパシティーの問題から、今大臣言われましたようにきょうあすということではないけれども、しかし大阪でもこれは話が始まってから十五年、まだ漁業補償の問題が予算委員会でも大臣答弁がございましたように、なかなかこれも大変な問題だということになってまいりますと、何分とも懐妊期間が長いだけに、ひとついろいろな数字を駆使をして二十一世紀に目がけてやっている全体的な国づくりの計画でございますから、その辺のところも踏まえて運輸省としても対処をしていく必要があるのではないかと思いますが、最後にその点について御答弁をいただきたいと思います。
  151. 三塚博

    ○三塚国務大臣 十二分に今の御指摘を踏まえながら中長期に展望を見つつ、また地元の御熱心なそういう動きもにらみながら、また時に御連携をいただきながら取り組んでまいりたいと思っております。
  152. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 次に、NTTの株の売却問題についてお伺いをしておきたいと思います。  御承知のように、これは国民的に大変関心のある話なるがゆえに極めて公正を必要とする問題だと私は思っているわけであります。特に私の発想は、ずっと大蔵委員会で証券問題をやってきて、ディスクロージャーということが、何もNTTの株に限らず、その企業の内容が国民大衆にでき得る限り開示をされるということが非常に重要な要素であるというふうに証券行政を勉強してきた限り思っているわけでございます。  そこで今、言うまでもありませんけれども、一体どういう形でこの値段をつけていくか、いつから売り出すか、そういったことにつきましては大臣の手元で電電株式売却問題研究会ということでやっていらっしゃるようでございますけれども、これは私の聞くところでは何か四月いっぱいで大体結論を出すというようなお話でございますが、その答申をいただきます範囲というのは、一番難しい値づけの問題のやり方、つまりそれは公募価格方式にするのか、あるいは公開入札にするのか、公開入札した後、一体公開入札を百九十五万株のうちのどのくらいの株数やるのか、それからその後、残りの株の売却をどのくらいの期間を置いてやるべきなのかというような問題もございましょうし、あるいはその売り出し自体をいつごろやるかということもテーマの一つじゃないかと思いますが、その答申をいただく範囲とそれから今後のスケジュールについてちょっとお伺いしておきたいと思います。
  153. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これはかなり関心のある問題でございますので、理財局長から中身の話をいたしますが、今私の手元で言えることは、やはり権威づけるためには国有財産中央審議会、これに諮問をしてそして答申をいただくということにした方がいいとまず思いまして、そこで、今おっしゃいました専門家さんのいわゆる電電株式売却問題研究会も中央審議会に了承をとってそれでつくったわけでございますから、それの意見が今おっしゃっだように大体四月をめどに意見の取りまとめをしていただいて、それを今度研究会の意見を参考としてやはり国有財産中央審議会に諮問をしてそして答申をいただく、こういう手順です。  それでもちろん、ディスクロージャーのお話がありましたが、これは投資家保護の観点から考えても決算内容が公表されているということは、これはやはり前提として必要なことであろうと思いますので、初年度の決算の確定後、売却体制を整備した上で、そして今度はやはり株式市況を見て慎重にやる、こういうことになろうかと思いますが、今の議論の中身、どの辺がされておるかということも関心があろうかと思いますので、理財局長から補足して詳しくお述べいたします。
  154. 窪田弘

    ○窪田政府委員 電電株式売却問題研究会は九月二十四日以降現在まで八回会合を開いていただいておりますが、昨年は主として証券界、金融界あるいはNTTの労使の御意見という参考人の御意見を伺いまして、暮れには予算の計上問題を御審議いただきました。ことしに入りましていよいよ売却に関する主要検討事項を順次卸討議いただくということにしておりますが、今のところの予定で申しますと大きな柱が五つぐらいになるのではなかろうか。  第一は、基本的な考え方と申しまして、売却に当たって基本的にどのような点を配慮すべきか。例えば公正な価格による売却でございますとか、広く国民に購入の機会を提供するような売却方法というのはどういうものであるかというふうな基本的な考え方を御検討いただく。  第二に、売却の方法でございます。これは一般競争入札とか売り出しとかあるいはそれをいろいろ組み合わせるといういろんなやり方がございますが、そういうものを順次検討していただこう。  第三番目には、入札予定価格とか売却価格の算定方法でございまして、これも類似会社の比準方式とか純資産の価額方式あるいはこれらの組み合わせというようないろいろなやり方がございます。こういうものについて御意見を伺いたいと思っております。  第四が先ほど御指摘のありました上場あるいはディスクロージャー等の問題でございまして、どのような準備や対応が必要であるか、あるいは広く国民に売却するという観点からは入札、売り出し、さらに上場に際して現行の法令、規則を踏まえてどのようなディスクロージャーを行うことが適当か、そういうことを御検討いただく。  第五は、その他もろもろの問題があろうかと思うのです。例えば従業員持ち株の問題でございますとか、六十二年度以降の売却のスケジュールの問題等々を御検討いただきたいと思っております。  こういう五つの柱で今後御研究をいただきまして、先ほど大臣からのお答えにありましたように、四月をめどに御結論をいただきたいと思っております。
  155. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それで、これは今電電株式売却問題研究会で議論しているところでございますから大臣もお答えにくいと思いますが、ただ国会という国民を代表する立場で物を言っていかなければいかぬ点、また常識的にさもありなんという点だけやはり踏まえて発言をしていかなければいかぬと思いますので言わせていただくわけでございますけれども、今大臣からも御答弁ございましたように、私、このディスクロージャーの問題というのは実は電電の法案を逓信委員会でやるときにいろいろ疑問を呈したわけでありますけれども、今まで公社会計でやってきた、それが今度初めて商法上の会計になるわけでございます。したがいまして、公社会計ということになりますと、必ずしも商法上の会計にぴたりのってないものがある。ことしの三月が来て初めて一年分の商法上の帳簿が、決算が三月末に処理をされるということになるわけでありまして、その後三カ月以内のつまり六月末に株主総会がある。このときに貸借対照表なり損益計算書が出されてくる。いわば商法上の初めてのものがこれで出てくるわけでございます。そしてその後、恐らく七月末ぐらいになろうかと思いますが、有価証券報告書が作成されるということで、専門家に言わせますと、貸借対照表なり損益計算書だけでは本当の意味での開示にならぬじゃないか、有価証券報告書が出て初めて国民の皆さん方に、NTTの営業内容あるいはその実績というものはこういうものだというのが出てくるのじゃないか。本当はもう一年待って、せめて二年ぐらい比べてその企業の内容を投資家に知ってもらうというのが私は本当のあり方だと思うのです。上場基準自体が利益を上げて三年というふうになっておりますのも、やはりそういう観点だと思うのであります。しかし私は、そのことは必ずしもこだわりません。これは国の財政の問題でもございますし、民営化ということでございますから。その限りにおいて条件が整えば売却していいのではないか。その際には上場基準を、東京証券取引所だと思いますが、変えてもらうということだと思うのであります。  しかし、いずれにしろ七月末に有価証券報告書が出て、そして証券アナリストによっていろいろな分析がなされる、そして初めて買っていただく方々に、NTTの内容は一般的にある民間企業の商法上の経理のやり方からいくとこういうふうなものですというようなことがわかってから、私は株の売却というのはやるべきであろう。したがいまして、早くても秋以降ではないか。しかも、これは専門家に言わせますと、先ほどちょっと触れましたけれども、例えば公開入札をやる場合に、公募価格方式、つまり大蔵省とNTTがいろいろなしんしゃくをして値段を決める。しかし同業、同規模の企業がないだけに値段を決めるということは非常に難しいと私は思っているわけであります。これは研究会の方でやってもらえばいいのですが、こう思っておりますので、そういう意味では公開入札をミックスした格好というのでありましょうか、やはりある意味での専門家、大口投資家、このあたりが専門的に見ていただいて公開入札をして値段を決めてもらう、それから大衆的に売り出すというのが一番いいのではないかと思うのであります。先ほど言いましたように、百九十五万株のうち公開入札を一体どのくらいの数やることが、また余り小規模ならばこれは残りの方に影響があるでありましょうし、それから余り多くては、これもまた非常に難しい問題を含んでおりますので、そういった意味からいいますと、ある専門家に言わせますと、今言ったように証券アナリストのいろいろな分析が出て国民の皆さんにわかった後のことはもちろんだけれども、百九十五万株はなるべく六十一年度末に近くやった方がいいのじゃないか。それで、六十二年度以降の分は四月、つまり新しい年度を迎えたら百九十五万株の——三年分を本当は一挙に売却した方が流通価格の問題やその他の問題からいくと余りはね上がったりなんかしないのじゃないかという意見の方もいらっしゃいます。これはなかなか難しいことでございますから、そのことはこれから研究会でさらに詰めていただければいい。大変難しい問題だと思います。しかも、流通価格は一般の会社なら最初の売り出した価格よりも落ちてもこれはしょうがありませんけれども、NTTの株が売り出した価格より下がるということになると、これもちょっと問題でしょう、恐らく。まあ問題ということはない、一般民間ではあり得ることだから構わないかもしれませんが、余りそういうことにしたくない。さりとて最初買った人がまた大変な利益を得るということでは——できれば私は、国になるべくでき得る限りの利益が入るべきだというふうに思っておるわけでありますから、そういう意味からいいますと、この値づけというのは投資家のいろいろな思惑、考え方が全部集約されて入ってくるんだと思いますので、そういう意味では、例えば百九十五万株を公開入札なら公開入札をどのくらい、いつやって、六十二年度分をいつやるかというようなことはなかなか難しい話でありますが、しかし今申しましたように、公社会計から商法上の企業会計原則にのっとって有価証券報告書が出されて、その分析が国民の皆さん方にある程度わかってから、株の売却というのは——今申しましたように後の問題、つまり公開入札にするかあるいは公募価格方式にするか、そういういろいろな問題がありまして、六十二年度を目がけてどうするかという問題もございますけれども、しかし、いずれにしろ商法上の有価証券報告書、一年でやるわけでありますから、その意味で私は有価証券報告書が出されてからかなり民間でいろいろな分析がなされた後、このNTT株の売却というのはされるのが至当ではないかと思いますが、いかがでございますか。
  156. 竹下登

    ○竹下国務大臣 大体私どもが頭の中でいろいろ考えておるのを今みんな言っていただいたような気がしまして、本当にみんを言われたようなことを我々もどうしたものじゃろうかと思って議論しておるところでございます。  まずは、私も思ってみますと、商法上のこの体系にきちんとしなければならぬわけですから、なるほどなと思いましたのは、NTTの方からまず顧問に税の詳しい人をということでございました。それはなるほど今まで税金を納めたことのないところでございますから……(佐藤(観)委員「納付金はある」と呼ぶ)納付金はうんとちょうだいしておりますが税金を納めたことはない。したがってなるほどと思って、元国税庁長官に顧問になってもらってやりました。それだから最近は、今度は証券局長経験者がだれか顧問に行かな付ればならぬじゃないかというような話もしたりしながら、今ああでもない、こうでもないということを自分の頭の中でも行きっ戻りつしておりますが、それは確かに量をどれぐらいということになりますと、これもまた新株のおよその年間の消費量というものの今までの経験も踏まえてみなければいかぬし、そうして、ただおっしゃるように、前から逓信委員会で御議論いただいておるときから佐藤さんは、とにかく可能な限りディスクロージャー、国民に知らしめることだという考え方は、基本的にも私もそれはそのとおりだと思っております。だから、きょうの今のお話と同じようなものが私の頭の中で行きつ戻りつしておる。  さらに、今のお尋ねに対しまして、私よりは少し理財局長の方が整理がついておると思いますので、お答えをさせます。
  157. 窪田弘

    ○窪田政府委員 特に補足するほどのまだ勉強も進んでないわけでございますが、確かに決算が六月に確定をいたしまして、国有財産審議会の答申が恐らく七月中旬以降になろうかと思います。それからいろいろな準備をいたします。先ほど御指摘の有価証券届出書、これは効力を発生するまで三十日かかる、あるいは入札をいたしますとそのための準備もかなりございます。  そこで、先ほどお話のありましたように、どうしても秋以降ということにはなろうかと存じますが、ただ、暮れ、正月にかかりますとまたそれが適当な時期なのかどうか問題がございますし、この間の研究会の中間報告でも、余り少な過ぎますと過熱するおそれがある、そうかといって出し過ぎると、これは大事な国の財産でございますから、なるべく高く売るという要請もございますので、そこで六十四年度までに売却可能な四分の一という客観的な数字がよかろうという実は中間報告をいただいているわけでございまして、今後具体的にさらにどうするか、いろいろ御意見を伺いまして、実際にはそのときの資本市場の状況とかそういうものをにらみ合わせて慎重にやりたいと思っております。
  158. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 大体私が思っていることだと思うのです。  それで、もう一つだけこの点をぜひ考えていただきたいと思いますのは、物が電話という、いわば国民が苦しい間に債券を買ってつくり上げた、いわば情報通信の国民の共有財産、日本電信電話公社の生まれ変わりの株であります。そういう点もございますし、また極めて本当に国民生活に身近な、電話だけじゃございませんけれども、商品であることもございますし、そういう大衆商品的なものでもあるし、またこれからは資金調達はなるべく大衆からということもあるし、また大きな会社は国民の皆さん方になるべくモニターになってもらっていろいろな意見を聞こうということをむしろ意識的にやっていらっしゃるわけでございますので、そういう面からいいますと、やはり私はこのNTTの株は国民の皆さん方にできる限り持ってもらうということを考えるべきではないか、つまり個人株主優遇と申しましょうか、個人株主をどうやってふやしていくかという方法の視点でこの売却方法というのは考えるべきではないかというふうに思っているわけであります。特に、証券界の中でも、三〇%を割りました個人株主をなるべくふやそうと随分いろいろなことをやったが、結局今二八%ぐらいですか、個人株主がなかなかふえない。そういう意味では今財テク時代などと言われて、恐らく大蔵大臣よりも財テクについては主婦の方がよく知っているというような時代になりつつあるわけでありますので、そういう意味ではなるべく物が物だけに個人株主というのを多くする方法というのをいろいろな意味で考えるべきではないか。日本の人口がざっと一億二千万、三千八百四十六万世帯、ざっと三千八百万世帯。株が、全部発行済みの株が千五百六十万ですから、二世帯に一株ぐらいですね、感じといたしましては。買いたいと言っても二世帯に一株ぐらいしか、当面のところは、この五年間はないというものでありますから、そういう意味ではなるべく大口投資家、機関投資家に集中するというようなことじゃなくて、個人株主を物が物だけに私はなるべく多くふやす必要があるのじゃないかと思うのであります。  これは幾らになるかわからないからどういうふうになるかわかりませんけれども、例えばイギリスの場合には、これはBTの株を三回分割払いしたというようなこともございますわけですね。そういう意味では一体何株ぐらいまで最小単位として認めるのか、何株単位で売るのか。例えば一株五十万ということになると、一株単位でいいじゃないかということもあろうかと思うのです。その辺のことも十分踏まえて、ひとつ売却方法というのは考えていただきたい。  ただ、一言だけつけ加えておきますと、そんなに株主がふえて株主総会どうするのだねという問題が起こってくるわけです。しかし東京電力の例とか、その他いろいろ勉強してみますと、まあ何とかやっているようでありますから、百万人ぐらいの株主総会になってもいいのじゃないかというような話もございますけれども、東電が三十七万人ですか、アメリカのATTは株主三百万人いるそうですから、新しい株主総会のあり方というようなことで考えるのでありましょうが、そのことは別といたしまして、冒頭言いましたようになるべくこれからこのNTTという非常に大衆的に近いものの株の売却でございますから、個人株主優先という売却方法というのを考えるべきだと思いますが、いかがでございますか。
  159. 窪田弘

    ○窪田政府委員 その趣旨のことは大臣からもたびたびほかの機会に御答弁をされておりまして、私どももそういう考え方でやっていきたいと思っております。
  160. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それでもう一つだけ聞いておきたいのは、株は買ったがすぐ売れないということじゃ困るわけですね、これは。それで流通価格がどうなるかということ、そういうこともいろいろな問題がありましょうけれども、これは上場はどういうふうにしようとしているのですか。これも研究会でその後の上場のあり方についても研究するという範囲の中に入っているのでしょうか。株は持ったけれども、いざ売却しようと思ったら、いやそれは一年は持っていなければだめですと言われたのではこれも困るでしょうし、そのあたりはどういうふうになっていますか。
  161. 窪田弘

    ○窪田政府委員 上場は、これは証券取引所と会社との関係の問題でございますので、その関係にお譲りをするわけでございますが、私どもとしては、なるべく早く上場していただくのが適当ではないか、そのために役所として何かすることがあればできるだけ御援助をしたい、こういうことでございます。
  162. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 確かに基本的にはそうなんですけれども、浮動株が最初はないわけでありますので、その辺のことでスムーズにひとつ事がいくようにやっていただきたいと思うわけであります。  その次に、医師税制の問願について触れておきたいのでありますが、この問題も実は長いこと私も大蔵委員会でおつき合いをさせてもらっているわけでございますけれども、今度医療法の改正が成りまして、医師一人でも医療法人を認めるという形になったわけでございます。  そもそもいわゆる医師優遇税制などと言われておりますけれども、これをいびつにしたのは歴史的には政府、あれは池田勇人大蔵大臣当時だと思ったわけでございますが、その意味では実は政府の方がこれはねじ曲げてきたことが事の発端なんでありますが、あそこでああいうことがなければ、もう少し国民の皆さん方にも理解されやすい制度になったんではないかと思うのでありますが、その除去のために昭和二十九年に議員立法で例の社会保険診療報酬課税の特例に関する租税特別措置二十六条ができたわけでございまして、これが社会保険診療報酬の適正化ができるまでの暫定的な措置ということでずっと来たわけでございます。いろいろな議論が税調でもあり、国会の中でもあったわけでございますが、五十四年には五段階控除逓減方式というようなことで、経費率を七二%から五二%までの五段階でするということになったわけでございますけれども、非常にこの問題特殊的な要素がございまして、一つは、言うまでもありませんが、社会保険診療報酬自体が国が定めてくると申しましょうか、法定されるといいますか、自由価格ではないという、いわば入りの方はそういう意味での自由価格ではないという一つの問題があるわけであります。  それともう一つ大きな税法上の基本的な考え方の問題というのは、いわば個人開業医にとって医業を継続するための所得と院長個人が全く費消するところの院長の個人所得、家計というものとが未分離になっているというところに、基本的に、水揚げが二億、三億でも個人の所得として計算をされるという、そういう問題があるがゆえに、いろいろな意味で、二八プロから始まって特別措置がなされてきたわけでありますが、私はかねてからこれは社会保険診療報酬も適正化をして、国も出すものは出す、そのかわり開業医側もあるべき医師税制というものの中で当然税金を納めるべきは納めるという両方の問題を解決をしなければ、これがすっきりとした医師税制にならぬではないかということで一人法人問題というのをずっとやってきたわけであります。これが今度医療法の改正で一人法人ということが認められるようになったわけでございますが、またしかし、医療法ではそうなっても、税法上果たしてそれによって一人法人というものが実現をするかどうかということになりますと、これはまだまだいろいろ問題があると思っているわけでございます。  そこで、ちょっとお伺いをしたいのでありますけれども、一人法人をつくった場合に、お医者さんがその法人に現物出資をする土地とか建物とか、こういったものはそれを法人に現物出資した場合でも譲渡所得税がかかるわけであります。自分のものを新たな医療法人に出した場合に譲渡所得税がかかる、これは間違いないですね。
  163. 水野勝

    ○水野政府委員 お話しのように、現物出資されればその時点において譲渡所得課税が行われるというのが所得税の考え方でございます。
  164. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 きょうはちょうちょっとやる時間もありませんけれども、この医師税制の場合には、医業の公共性という上に立ってすべてが処理をされてきたわけであります。したがいまして、私たちも随分、農業の営業を続けるという場合には、例えば相続税の猶予等々、そういう制度をつくりましたし、あるいは農業生産法人に現物出資した場合の納期限の特例というようなことをしてきて、いわば公共性のあるものにつきましては、事業が継続されやすいようなというような方式ということを随分考えてきたわけであります。そういう面で今後、医の公共性という面からいいますならば、この譲渡所得税のあり方についてもひとつ考えていく必要があるのではないかと思うのであります。  それともう一つは、一人法人にした場合に、二八%の税金を納めます特定医療法人と一般的な医療法人がございますけれども、一体、新たにできる一人法人というのは、医業の公共性との関係で軽課税率二八%を使うのか、一般的な税率を使うのかという問題があろうかと思うのです。  それから、持ち分の定めのある医療法人にかかる相続税の特例の問題、その評価の問題というのも実は解決をしなければならないと思っております。純資産価額方式でやるのか、あるいは払い込み済みの資金額を評価額としてやるのかというような、まだまだ周辺整備をいろいろとしていかなきゃいかぬのじゃないかと思うのであります。  ただ、財政がこういう事情でございますから、なかなか非常に難しい問題があろうかと思いますが、医療法の改正によって一人法人というのができた。しかし、そのベースに乗って私が考えております。あるべき医師税制というものにはその辺の周辺整備が必要だと思いますけれども、その辺についてはいかがでございますか。
  165. 水野勝

    ○水野政府委員 まず、譲渡所得課税の特例につきましては、先生お話しのように、社会保険診療報酬課税につきましては措置法の二十六条という、確かにかなりな公的な性格があるそういったものに対応するものとしての課税の特例がある。これは大体年間で一千億円ぐらいの減収額が計上されるような、かなりな特例措置であるというふうに言われ、また、その是正につきましてたびたびいろいろまた御議論があるところでございますので、さらに現物出資等の場合におきますところの譲渡所得の課税の特例等を設けるということにつきましては、なかなかどうも難しい点があるのではないかという気がいたすわけでございます。  それから、一人法人の点につきましては先般、十二月の末に医療法の改正で一人法人も存在し得ることとなったわけでございます。ただ、この実施につきましては、まだこれから時期が決められるところのようでございます。御指摘のように、特定医療法人の軽減税率の特例が租税特別措置法にございますわけでございますが、これにつきましては、その医療法人が公的に運営されることにつきましての条件が満たされている場合の特例でございます。お医者さんが一人になった、それからまた、その一人の医療法人につきましては理事が三人未満でもいいというような場合も今度できるようでございますが、そうしますと、理事が二人とか一人、そうしたものにつきまして公的に運営されるという従来からの要件が、どのようにされたら満たされるようになるのか、そこらの点につきましてはなおよく検討をしなければいけない点があるのではないかという気がいたすわけでございます。まさに先生の御指摘のように、まだこれからいろいろ詰めるべき点はあろうかと思いますが、この現行の制度の趣旨を踏まえながら勉強をさせていただきたいと思うわけでございます。  それから、評価の点につきましては、この点につきましては、昭和五十八年度の税制調査会で、一般に相続税の中におきますところの中小法人の株式の評価につきましていろいろ研究が行われ、その結果、小さな法人につきましては専ら従来純資産価額で評価をいたしておりましたのを、収益性も加味いたしまして、類似法人の株式の評価額を一部その要素に取り入れるということにいたしたわけでございますが、その翌年の昭和五十九年に医療法人につきましてもこうした方式を、その以前は専ら純資産価額のようでございましたが、一般の中小法人と同じように五十八年度の改善された方式によるということにされたわけでございまして、いろいろ改善措置を講じさせていただいているところでございます。
  166. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 今局長から御答弁いただきましたように、これは長い長い歴史を持った税制の沿革を持っているわけでございますし、また公共性の上に成り立っている医師のあり方、それに伴うところの税制の問題というのはいろいろな議論があったところでございますので、大きな節として一人法人というのが医療法の改正によって認められるようになったということでございますから、今後もう一歩進めて、いろいろな他との均衡、比較の問題もございますけれども、あるべき医師税制、なるべく国民の皆さん方に納得をいただけるような格好で解決がするように、私もなおこれから研究もし、また皆さんの方にも検討もしていただきたいと思います。  終わります。
  167. 中島源太郎

    ○中島(源)委員長代理 これにて佐藤君の質疑は終了いたしました。  次に、川崎寛治君。
  168. 川崎寛治

    ○川崎委員 文部大臣、御苦労さんです。文部大臣が一番早くお見えになりましたから、後の方でしたが一番最初にまず……。  先般、総理に対する総括質問の際に、私、四十人学級の問題、ニューヨークの問題と一緒にあわせていろいろ議論しました。これはちょっと私も詰め方が不足でいけなかったなと反省しているわけですが、いじめの問題と四十人学級は別なんだ、総理はちょっとそういうニュアンスのことを言われて、何か四十人学級というのは違うんだ、そういう認識ですが、これは国際的に見ますと少し問題だと思います。教師の、教員のあり方、あるいは今学校の中で非常に目に見えにくいいじめという現象を教員が非常に敏感に把握できないでおるというところには、私は、これは戦後の文教行政その他いろいろあって、学校の中でみんなが手をとり合って一体になって取り組んでいくというのが崩れておる、それは確かにあると思うのです。だから、それをこれからどうしていくかということは大変深刻な問題だと思います。  いじめの問題は、やはり根源的にはまず子供の問題、そして教師であり教員であり学校の問題、そして親の問題、こういうふうに子供、親、学校、こう私はいくと思うのです。ところが総理は、いじめ、教員とこうきた。そうすると、それは管理体制の強化という方向に行きがちな総理の発想じゃないか、私はこういうふうに思うのです。ですから、その点は一度整理し直さなければいかぬ、こういうふうに思いますが、文部大臣見解を伺いたいと思います。
  169. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 川崎先生と総理のこの間のやりとりを私も今思い起こしておったのですが、総理の言われること、結局、社会も学校も家庭もいろいろ複雑に絡み合っておる問題ではあるけれども、発生する場所がいじめの問題は学校で起こっておるので、学校では第一義的に、児童生徒に触れていただく教師の皆さんに手を差し伸べてもらって救える者は救わなければならぬし、また力を合わせて解決できる問題は取り組んで解決してもらわなければならぬ、こういう角度でお答えをなさっておったと私は伺っております。  私自身も、いじめの問題についての対応を率直に申し上げますと、やはり家庭にも学校にも社会にもいろいろな複雑な背景があることは、これは御指摘のとおりでありますけれども、どこに問題がある、だれが悪い、どこがどうだという責任の探り合いとかなすり合いのようなことをしておってもこの問題は片づきませんので、まさにおっしゃるように、子供の立場に立ってこのいじめを片づけるにはどうしたらいいかという点で問題を考えてみますと、ずばり、短絡的になるかもしれませんが、起こっておる学校の現場で、それが起こらないようにするにはどうするかというと、まず教師の皆さんに、児童生徒との心の通い道を開いて、どんなことが行われておるのか、どんな状況が現にあるのかということをきちっと把握していただくのがまずこの問題を解決する突破口になるのではないか、こう考えましたので、きょうも全国の総点検の結果をまた都道府県教育委員会へ通告を出したところでありますけれども、私の談話も出して、全国の先生にいま一回我がこととしてお取り組みをいただきたいというお願いをしたわけであります。
  170. 川崎寛治

    ○川崎委員 その点では私も異議はありません。ですから、そういう点での詰め方というのは、これからどう本当に話し合っていくかということが必要だろう、こういうふうに思います。  ただ、今ちょっと冒頭に言いました、総理が四十人学級の問題どこのいじめの問題を切り離そうとしたということは私は問題だと思いますから、その点についても文部大臣に伺いたい。
  171. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 お言葉を返すようでまことに恐縮ですけれども、たしか三年前に町田市の忠生中学校というところで、これはいじめ、自殺ではございませんでしたが、暴力によって大変学校が荒廃した代表的な例として報道されたことがありました。ところがあの学校は、規模の変更じゃなくて、校長先生以下全職員、教職員の皆さんが取り組んで、一致協力して学校の蘇生に当たっていただいた結果、最近の報道では、教師、町ぐるみの一致した取り組みによって解決した、こういう報道もございますので、四十人学級ができれば直ちにいじめがなくなってというような短絡的なものではないだろうという受けとめ方はしております。  ただ、自由民主党としては前から、教育環境の整備のためには、それはできれば四十人学級を達成することがより望ましいということで、他の政策との整合性もありますけれども、六十六年度に完成するという目標で、一歩前進二歩改革の努力を続けておるさなかでございます。
  172. 川崎寛治

    ○川崎委員 そこで次に補助金の問題に入りますが、義務教育費国庫負担の問題は今大変揺れているのですね。これは財政上の理由で揺れておるわけであります。臨教審なりが制度の問題として検試して出てきたというのではなくて、財政制度審議会の方から「増税なき財政再建」という財政上の理由で、この国庫負担、これはこの間細谷委員からも補助金全体の問題の議論がございましたが、今揺れておるわけであります。  去年の大蔵委員会における補助金一括削減の法案に対しましては、当時の松永文部大臣並びに御出席になりました中曽根総理一致いたしまして、学校の教育体制というのは、教壇に立つ教員だけではなくて事務職員、栄養職員、みんなが一致して調和のある体制ができてこそ学校教育は円満に発展するんだ、こういうふうに松永文部大臣は大変熱っぽくお答えになり、そしてまた中曽根総理も、そのとおりだということでそういう御意向をお述べになったわけであります。  しかし、昨年暮れの六十一年度の予算編成においては、これはぎりぎりまで実はむめました。私はやはり、今学校運営ということを考えますときに、そういうことがいつまでも続いちゃいかぬと思うのです。財政だ、財政だということで同じことを続けちゃいかぬ、こういうふうに思います。ですから、昨年の予算編成で、今後はもうこういうことはないと。  そこで、まず第一には、海部文部大臣の主体的な考え方として、学校教育の運営においては教員、事務職員、栄養職員というのが一体になって学校運営に当たれる、そういう体制を貫かなければいけないという前の松永文部大臣見解を海部文部大臣も引き継がれますかどうですか、そして今後の決意というか、そのことを伺いたいと思います。
  173. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 学校の運営は、おっしゃるように教員だけでできるものではなくて、やはり職員の皆さんが全部基幹的な職員として力を合わせて児童生徒に目を向けて運営をしてもらうことが望ましいということは、私も同じように考えております。
  174. 川崎寛治

    ○川崎委員 亡くなりました、自殺しました廃川君ですね、この間民放を見ておりましたら、廃川君の足跡というのをずっと追跡しておりました。そうすると、十一月、十二月、一月と、こういうふうに動いているわけですね。十二月でしたか、になると頻繁に養護室に行くのですね、月に八回も行くとかということで養護室に非常に行っている。これはアメリカの場合にはカウンセラー制度というのがありますね、そういう肉体の相談ではなくて心の相談のためのカウンセラー制度があるわけですが、日本ではない。これをどうするかというのはこれからひとつ検討してもらわにゃいかぬ問題でしょうが、今は健康の相談に応ずる養護の先生のところにまず、つまり駆け込み場所として行っているのですね。それは鹿川君のずっと足跡のテレビを見ておって私は痛感をしたのです。ですから、それは養護の先生方というのが、また自分たちでもそういう心理学を一生懸命勉強してこういう問題に対処しようという取り組みもしております。養護だけではなくてほかの先生もそうですが。でありますから、そういたしますと、養護の先生方がそういう今役割を担っているということをどう理解されるか、そして定数の配置ですね、そういうことについてひとつ十分やってもらいたい、こう思いますが、いかがですか。
  175. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 欲を言えば、受け持ちの先生にそういった心の悩みなんかも素直にお話しできるような雰囲気、環境があれば望ましいなと私は願いますし、また教師の皆さんにもそういった対応をぜひ心がけていただきたいと思っておりますが、具体的御質問の養護教諭の先生には、やはり健康のことだけじゃなくて、そういう話しやすい雰囲気があるいはあったのかもしれません。あればそれを受けてくださって、そこへ行って話をしておれば自分の気持ちも静まるということがあったのかもしれません。そうであるとするなれば、私はそういったこと等を全部含めて学校の中で教育的効果を上げていくならば、まさに教職員一丸となった取り組みというものの一つの例にもなるわけでありますから、やはり他人事だと思わないで、みんなそれぞれ学校教育に関係する人が心を開いて児童生徒に触れていただくことが本当に願わしいと思うわけです。  そこで、具体的な養護教諭の配置の問題は、これも今定数改善計画の中で取り扱っておりまして、何とかこれは全校配置になるように努力目標をつくって六十六年までに努力を続けてまいります。
  176. 川崎寛治

    ○川崎委員 大蔵大臣にお尋ねしますが、去年あの補助金一括法案で繰り返し繰り返し議論を、質問もされたし、またお答えにもなってきておるわけでありますが、大蔵大臣だけが最後のところ、どうしてもきちっとした答えをせぬで逃げてきたわけですね。  私は、やはり義務教育国庫負担の問題は、学校現場に混乱を起こさせないようなそういう運営を財政責任者としてはしてほしいと思う。でありますから、昨年の松永文部大臣、中曽根総理、そしてまた今海部文部大臣もお答えになりましたが、今後予算の編成に当たって、この事務職員、栄養職員の問題をいじるということのないようにひとつぜひ要望したい、こういうふうに思いますが、大蔵大臣のお答えを伺いたいと思います。
  177. 竹下登

    ○竹下国務大臣 結局、地方と国とのいわゆる負担のあり方等につきまして議論をいたしまして、したがって、昨年先生御質問ありましたときに、私一人が、それは文部大臣の言うとおりですということを言わなかったわけですが、それで結局、六十一年度予算の際にも、この問題について、義務教育国庫負担制度の対象となる経費のうちのどれをということで議論をいろいろいたしまして、御案内のとおり、共済費の追加費用と恩給費について暫定的に国庫負担率二分の一から三分の一に引き下げるという特例措置で話がついたわけでございます。が、やはり私どもといたしまして、いわゆる国と地方との業務分担、費用負担のあり方という問題は、そういう角度からは、費用負担のあり方についての角度からの議論というのは、なお私どもとしては毎年毎年の予算編成の中でやはり議論をすべき課題ではないかなと、そういう角度から見ますと。  今川崎さんのおっしゃいました角度の議論は私にも理解できますが、費用負担のあり方という問題については、もうこれで一切終わったという考え方には私の立場からは立つわけにはまいらないということであります。
  178. 川崎寛治

    ○川崎委員 これは補助金一括法案、いずれまた大きな法律として大蔵委員会で議論になりますので、そこでまた議論になりますが、その前の教育の現場の問題としては十分理解をしてもらうことを要請をしたい、こういうふうに思います。  で、通産大臣も忙しいところをありがとうございました。ただ、ちょっと文部大臣が先に入りましたので、文部大臣の方、終わりたいと思いますが、これは、農林水産大臣がおくれておりますので、農林水産大臣と一緒に御質問したいと思っておった問題ですが、農業が大変今厳しい状況にあります。  そこで、農業が厳しい状況にある中で、バイオという問題は新しい時代を開く問題として今大きく取り上げられ、関心も持たれてきておるところです。これは産業としてもあるいは農業自体の将来の問題としてもいろいろあるわけです。大学や研究機関あるいは企業においてもそれぞれ努力が進められておりますが、なかんずく私は、まあ払いつも言っているように鹿児島で、大変な農業県ですね、農業県が、後ほど畜産の問題もやりますが、畜産だ、オレンジだ、今度はまた骨なし鶏肉だ、こうやられっ放しで来ているのですね。もうどこに行けばいいのかという、まあ過疎問題も後ほどやりますが、そういう中でやはりバイオというのは一つの希望ですよ。そうしますと、バイオの研究が進んでも、このバイオの研究が進めば進むほど、今度は担い手というか、バイオの技術者というのが非常に必要になってくるわけです。そこで、農業高校の教育のあり方というのは、新しい時代の中で私は検討されなければならない、農業高校というのを希望のある高校教育の中の一部としてぜひひとつ発展をさせなければいかぬ、こういうふうに思います。  文部省として、これらの問題にどういうふうにこれから取り組み、進めようとしておるのかを伺いたいと思います。
  179. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 ただいま農業高校と言われますものが全国で四百六十九校ございます。御承知のように、生徒数は全体のただいまは三・一%というところになっておりますが、御指摘のように、バイオテクノロジーの関係の分野の研究が進んできて、就職率がよくなったり、人気がだんだん出てきておりまして、ちょっと二、三の新聞を見ましても、こういう大変大きな見出しで、農業高校の志願者の競争率もどんどん上がってきた、こう言われております。  我が国の農業を将来夢のある、活力のある新しいものにしていくためには、このバイオテクノロジーのいろいろな教育課程というものを組んでいかなければならぬことは御指摘のとおりでありますが、現在もそれぞれの農業高校において、シンビジウムとか菊とかカーネーションとかカトレアとか、ここに数え上げれは切りのないほどの特別研究等も設けてやっておりますし、さらに、最近では、そこのところをもう少し総合的に具体的にどのように改革していったらいいかということで、全国から今いろいろな専門家に集まっていただいて、教育課程の研究の成果の報告をいただいております。これを受け入れまして、さらに農業高校というものの教育内容が将来の変革に相即応したものになって、生徒が喜んで勉強できるような内容になっていきますように、これからもその方向に指導をしていきたい、こう思っております。
  180. 川崎寛治

    ○川崎委員 これは農林水産大臣に後ほとお尋ねもしますが、鹿児島はしょうちゅうの国なんですよね。ですから、しょうちゅうというのは発酵ですから、高農なり鹿児島大学なりというのは発酵学という面については大変先進的ですし、そういう面では、ぜひ農業高校の面にもひとつ大きな展望を与えてもらうように文部大臣に特に御要望しまして、文部大臣の方は終わります。御苦労さまでした。  通産大臣、まず最初に、貿易収支の異常な黒字、異常ですね、この異常な黒字というのが特にこの三、四年間急速にたまってしまった。なぜこうなったのか、通産大臣のお考えを聞きたいと思います。
  181. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これはもういろいろたくさんの原因があると私は思います。それは、アメリカの高金利の問題、それに従った円安の問題、それから、アメリカ自身の経済の国際競争力がだめになってしまったというようなこともあり、また、アメリカの経営者が、目先の利益だけで業績を上げようというために、国内でつくるよりは外国に投資をしたり発注をしたりやった方が安いものが手に入るというようなこと、いっぱいあると私は思いますよ。日本の人は逆に非常に勤勉で、国際競争力のあるいい品物をつくっている。いろいろな原因で出てきたんだ。特に、アメリカがここ二、三年景気がよかったものですから、やはり消費者その他、外国からでも何でも買って消費するというような点などが加速したというように私は思っております。
  182. 川崎寛治

    ○川崎委員 そうしますと、日本は今のような貿易大国、さらには債権大国、そういうものを目指して通産行政というのを進めてきたのでしょうか、どうでしょうか。
  183. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 今までは、日本は資源のない国ですから、非常にたくさんの石油等も買わなければならない、したがって、そのお金は貿易で稼ぐ以外にないというようなことで、長い間輸出ということに非常に力を入れてきた。ジェトロなども、輸出のためにいろいろな市場調査をやったり、いろいろな便宜を与えたり、長い間そういうことをやってきたことは事実でございます。  しかしながら、現在のような状態になりますと、ジェトロなどもがらっと今度はもう使命を変えまして、輸入のために大半の費用を、輸入のあっせん、市場の紹介その他に使っておりますし、通産省といたしましても、やはり集中豪雨的な輸出というものはその国にいろいろな迷惑をかける、失業者をこしらえたり。したがって、そういうような点にも自主的な規制を図っておるものもございますし、また国内では輸入の促進ということで、総理の号令もこれあり、通産省としてもできるだけ外国製品で輸入できるものは輸入するようにということを大企業などにもお願いをして、輸入の促進ということをやっておるわけですから、大きく姿勢が変わっているということは御理解いただきたいと思います。
  184. 川崎寛治

    ○川崎委員 質問には答えていないのですが……。これは本当はきょうは、ニューリーダーと言われるような竹下さんやそれから安倍外務大臣渡辺さんや、そして大先輩の江崎先生やと、こういう方々がみんなそろったところで、時間をかけて日本の債権大国論というのを実はやりたかったのです。やりたかったのだけれども、大臣がみんな小刻みに出てきて帰ってしまうものですからなかなかできませんが、今の通産大臣答弁は私の質問には答えていない、こういうことをまず申し上げておいて、これは、お三人残られますから、この日本債権大国というのが、つまり、今、目指したのか、目指したのでないのかということには答えていないわけですからね。それは日本の経済政策、経済運営全体の問題と、その債権大国として、私は、パクスジャポニカではなくてパクスニッポニカだ、こう言うのですが、そういうものが果たしてどうなっていくのかということの議論も後ほどしたいと思います。しかし、通産大臣は忙しいので、肝心かなめの問題にまず入ります。  この間も日本撚糸工業組合連合会についてお尋ねしましたが、新聞の報道によりますと、岡山の備中撚糸工業組合というのでまた事件が起きまして、今度は理事長が副理事長を恐喝で告訴、こういう記事が出ておりました。この撚糸工業組合というのは、ねじれているだけに、これはねじれというのは本当は戻すのかどうするのか、撚糸工業組合の仕事というのもいろいろ繊維のためには大事なあれなんでしょうが、一番前提としてね。そのちゃんとした繊維をつくるのじゃなくて、ねじる方ばかりやっているものですから。  これは、全国に幾つこういう地方の組合があるのですか、まずお尋ねします。
  185. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 撚糸もさまざまのねじり方がございますものですから、二十九府県に単位組合が存在をいたしておりまして、全国に約一万強の企業が存在をいたしております。
  186. 川崎寛治

    ○川崎委員 それでは法務省にお尋ねをしますが、告訴されておるのですが、今告訴されている中身がどうなっているのか、あるいは、ある新聞によりますと、株の仕手戦も一生懸命やっているようでありまして、会計検査院から警告を発せられた後、またこんなことを何か大変大々的にやっておるようなんでございますが、それらの点とういうふうにお調べになっておるのか、伺いたいと思います。
  187. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 告訴されておりますのは、先ほどお話がございました岡山地検の件でございますでしょうか。(川崎委員「はい」と呼ぶ)  これにつきましては、一昨十九日、岡山地検で告訴事件を受理いたしております。告訴いたしましたのが藤原といいます備中撚糸工業組合の代表理事でございます。告訴されておりますのが大橋という人でございます。  告訴の要旨でございますが、被告訴人の妻らが、制限保有台数を超えまして撚糸機を保有していたことが日本撚糸工業組合連合会の調査によって発覚いたしまして、連合会に対し違約金などを支払うという成り行きになったことに因縁をつけまして、被告訴人が告訴人をおどかしまして、告訴人から現金百万円と額面金額一千二百万円相当の小切手など二通を恐喝した、こういうものでございます。
  188. 川崎寛治

    ○川崎委員 ひとつ徹底的に捜査をしてほしいと思うのですね。  通産大臣にお尋ねをいたしますが、前回、会計検査院長がここで報告をされました。そうしますと、その事件の後、通産省の中に、この問題について調査をする、そしてこういう構造汚職が再び起きないようにするための対策を立てる、そういう意味での機関をつくったのか、あるいはどういう調査をしてきたのか。つまり、ぐるみですからね、ぐるみですから、そういうのをどういうふうに調査をし、襟を正すことが行われてきたのか、伺いたいと思います。
  189. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 前から長く担当している専門家の方に答弁させます。
  190. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 前回も申し上げたかと思いますが、五十二、四年の問題と今回の問題の間にはかなり差がございまして、今回はかなり意図的という要素もございまして、私ども大変ショックを受けておるわけでございます。  五十二、四年の事件につきましては、ある程度ケアレスミステーク的なファクターもあるわけでございますけれども、当時私どもといたしましては、直ちに問題の調査のためのグループをつくりまして問題解明に取り組みました。問題金額につきましては繰り上げ償還をさせたわけでございます。また、事務処理の適正化、それから手続の適正化と申しますか、そういう点につきましては全面的なレビューをいたしまして、昭和五十五年十二月には事務処理適正化のための通達等も局長名で発しておるわけでございますが、結果的に御指摘のようにまた問題を起こしておるわけでございまして、まことに全身から冷や汗が出る思いでございまして、申しわけないというぐあいに思っておるわけでございます。
  191. 川崎寛治

    ○川崎委員 それじゃひとつ改めて、こういう事件がどんどんどんどん出てくるようで、これは次々に広がるんじゃないかという感じが漠然とですが、しております。どうかひとつ通産大臣はこの際徹底的な、通産省としても調査機関をつくって、そしてこの種の、特に私は、財投の問題あるいは中小企業事業団の資金のだぶつき、そういうものの面からこういう問題が起きておる一因でもあろう、こういうふうに思いますから、ぜひひとつ機関をきちっとつくって、この問題、構造汚職を根絶をさせるための通産大臣としての決意を伺いたいと思います。
  192. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 結論から言えばこういうことを二度と起こしてはいかぬわけですから、どうしたら起きないようになるのか、制度そのものに問題があるならば、制度の存廃も含めまして私は検討する必要がある。ところが、こういうことは非常に重要なので制度は残してほしいという人の方が多い。しかし、今までのように自分が、役人がそんなに数いるわけないわけですから、現実的にその機械というものは何万錘もあって、そいつをつぶすかつぶさぬかということの立ち会い等は全部役人が必ずやってないのですね、これはとてもできない。そこで、連合会や何かに権限を委譲するというかお任せしてやらした。ところが倉庫番に泥棒を雇ったようなもので、そこでこういうような問題が私は起きてきたのじゃないか。ですから、本当に残念至極なことであります。ですから、制度を温存するとすれば、仕組みその他、もっと内部チェックの方法とか何かもう少し、余り信頼しないで、信頼しないでと言うとしかられるのかもしらぬけれども、そこはチェック機能がもっと働くようなことを工夫をしてまいりたいと思っております。一遍、国会でも終わり次第、これは総点検をやってみようかと思っております。
  193. 川崎寛治

    ○川崎委員 そういうひとつ強い決意で取り組んでいただきますことをお願いします。どうぞ通産大臣……。  特命大臣、大変お忙しいところをありがとうございました。急にお願いしまして恐縮です。  今も通産大臣に、ちょっと異常な黒字、ばあっとたまっちゃった、私はやはり異常だと思うのです。そして、これはアメリカの政策、日本の政策、いろいろなものの交錯した中でこういうのが生まれてきておるわけですから。そうしますと、貿易摩擦の解消という問題も、今の五百億ドルをどうするかということだけでやりますと、つまり外圧でやろうとしたら私はもう日本国内のいろいろなところは、ばたばたいくと思います。今円高で参っているのが異常だとは私は思わないのです。何が異常なのか、何が正常なのかということ自体もこれは議論しなければならぬ問題ですからね。世界経済全体の中で考えなければいかぬ問題です。  そうしますと、今の貿易摩擦を解消していくというときに、どうも中曽根総理、この間、少し政治姿勢議論に終わりまして、大事な時間、まあしかしそれも大事だと思ったからやったわけですけれども、この国際国家日本という問題の本質を、少し貿易摩擦も含めましていたしたいと思ったのですが、それができませんでした。しかし非常にそういう意味では、総理が例えば一人百ドル買いなさい、こういうテレビでやるやり方、確かに、あっ、気がきいたことを言っているなと思うと思うのです。しかし、これは私はリップサービスに終わったと思うし、むしろまた摩擦を大きくしていくということになってきている、こう思います。これは後ほどどこかに聞きますが、効果はほとんどなかったんじゃないかと思うのですけれどもね。  そうしますと、今貿易摩擦を解消していく特命大臣として特にどうすればいいのか、円高不況の問題もあります、貿易摩擦の問題もあります、特命大臣として今一番御苦心になっている点、伺いたいと思います。
  194. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これはやはり今までの不当な円安、そうしてドル高、これが因をなした大きな要素であることはお認め願えると思います。それからもう一つは、日本の商品がやはり安価で、しかも堅実で、堅牢で、アフターサービスもよろしい、これも数えていい点ですね。ところが外国からは、失業を送り出してくる。日本は御承知のように、アメリカ一国を数えても二十万人の雇用に貢献する企業が昨年までに進出しております。しかし先方は、日本の貿易インバランスによって百七十万人の失業者を生じた、まだ百五十万人貿易超過のためにひどい目に遭っているんだということで、議論は平行線をたどるし、ついに三百七十億ドルは五百億ドルになってしまった。どうすればいいのか、これはなかなか簡単な問題じゃないと思いますが、まず今の円高が定着をしてくれる。これはにわかの円高ということが非常にショッキングだったわけですね。これは中小企業にも大変日本としても迷惑を及ぼしたし、大企業もマネーゲームをやっているうちに実はヘッジをする暇もなかったというようなこともありました。しかし、あのショックがいい意味では私はアメリカの高金利に向けての簡単な投資というようなものにブレーキをかけることに役立ったことは事実だと思います。  それから、時間の問題もあるようですから要点だけをお答えしたいと思いますが、とにかく円高をまず定着させること。これは二百円から百九十円ぐらい。今の百八十二円だとか百七十八円、ちょっとこれは高過ぎますね。それからまた、これがにわかに来たということも、私、日米経済一つをとってみてもいいことじゃないと思います。どうするのかとおっしゃれば、やはり日本としては、ここで特定品目を集中豪雨的に出さないように、自主調整ということも本来自由貿易の原則には反するわけですが、これはもう既にとってきておりますように、節度ある協調性を保ちながらの輸出、これはやはり大事だと思います。  それからもう一つ、何よりも大事なことは内需の振興。ではどうして内需を振興するのか、こういう議論になってまいりますね。財政事情は、GNPでいけば、御存じのように日本は中央、地方をまぜれば四九%ぐらい、中央だけでも四三%ぐらいの赤字ですね。アメリカが四〇%ぐらいですか。そうすると、アメリカの財政事情より日本の方がはるかに悪いという結論になります。それじゃ何があるかといえば、我が方は貯蓄率が一八%であり、かの国は五%である。そこで減税の問題なども出てまいりましょうが、残念ながら財源が今のところは見当たらない。「増税なき財政再建」に迫られておる。  そこでどうするのかということで、今内需振興にいろいろ工夫を凝らしまして、もう御承知のとおり横断道路から明石海峡から関西空港からいろいろやっておるわけですが、こういうことと同時に、やはり緊急避難的な措置としては七十四億ドルの年度内買い付け、これはアメリカだけではありませんが、百三十四社に向けて緊急輸入をコンスタントの貿易量に増すというような措置もとったり、それからジェトロに大活躍をしてもらうとか。  それから、アクションプログラムというものは外国でも余り評価されない、これはジェトロなど、もう通産省を挙げて、外務省を挙げて大宣伝をしておりますが、なかなか思うような効果が上がらない。これは私は本当に残念に思います。     〔中島(源)委員長代理退席、原田(昇)委員長代理着席〕 しかし、あれは相当思い切ったことをしておるわけです。ですから規格基準・認証という面においても皆さんの御協力で思い切ったことをやりましたし、千八百四十九品目の一月一日からの減税もやはり世界一、数値的には関税率の一番低いところ、しかも問題になっておる半導体などは本体も周辺機器もゼロというようなことでアメリカ対応しておるわけですから、今の円が定着すればそんなに  すぐ効果はあらわれませんが、現に機械製品、鉱工業製品の輸入は昨年に比して活発化しておりますし、輸出はだんだん減速をしております、Jカープもありますが。しかし一通りこの円高の定着、これがまだやはりちょっと上がり下がりが多いから、きょうも大蔵大臣ともいろいろお話し合いをしたことですが、そういうことをやりながらやはり内需振興をする。それは、アクションプログラムを的確に実施して、そうして日本市場にアクセスを求め、そうして外国製品が買いやすいように、入りやすいようにすることが何よりも大切である。  これは概論的に考えを申し上げたわけですが、どうぞ各論があれば御質問にお答えしたいと思います。
  195. 川崎寛治

    ○川崎委員 それじゃ、経企庁長官も何か大変お急ぎのようですので、これは経企庁長官から先か大蔵大臣から先か、ちょっとあれなんですが、「増税なき財政再建」が今日の異常な債権大国をもたらした。「増税なき財政再建」、今も江崎大臣も言われましたし、前の渡辺通産大臣もそう言われたのですね。つまり、弱いカーター・ダラーから強いレーガン・ダラーになったわけですね。そのレーガンの政策というのが財政赤字、高金利、ドル高、貿易収支の赤字、こうなってきたわけです。そこに日本側が「増税なき財政再建」をやる、そうして公共投資は落とした、人事院勧告は凍結をした。だから「増税なき財政再建」がアメリカのその政策とフィットした、結んだわけです。だから今日の異常な黒字という、そして異常な、スペイン、ポルトガルあるいはイギリス、アメリカとこう来た覇権国家というか、パクスブリタニカとかパクスアメリカーナとか言われたそういうものと比較したとき、今の日本というのは決してそれにはふさわしくない。しかし、それでいながら世界からはいろいろな要求が今来ているわけですし、摩擦の解消の問題も来ているわけですね。私は、だから「増税なき財政再建」ということが今日の異常な債券大国というのをもたらした、こう思います。大蔵大臣、いかがですか。
  196. 竹下登

    ○竹下国務大臣 確かに、今おっしゃる議論の中で、いわゆるレーガノミックスといいますか、強いアメリカ、強いドル、そういうのは参考にすべきか、あるいは前車の轍と思うべきかという、私も時々自己矛盾の、反復して分析をすることがございますが、やはり私は、財政という点から考えた場合は、財政改革の方向を志向してきたというのは間違いではないというふうに思っております。できるだけ安上がりの政府にしようという考え方は間違いがない。アメリカの場合は、確かにショッキングな減税もあった。しかし、それが今ある意味において裏目に出ておるということも言えるのではなかろうかなと思っております。だから、やはり我々がいつでも財政が出動できる対応力をまず介しておくという必要があるのではなかろうかというふうに思っております。  いわゆる貿易摩擦の問題はこれは今江崎さんからもお話があっておりましたが、私の分野で言えば、関税率は確かに世界で一等低いし、それから、やいのやいのと言われたかもしらぬけれども、いわば金融資本市場の開放ということはどこも評価をしておるではないか。ということになりますと、財政金融政策というのは、私は今の路線を貫くべきものではなかろうかと思っております。ただ、今江崎さんのお話にありましたように、貯蓄率はまあ三倍以上でございましょう、ほかから比べてみますと。したがって、金利のつかない金は少ないが、金利のつく金がいっぱいあるというのが日本でございますね。したがって、その金利のある金をどうして活用していくかというのが、いわば江崎さんが担当しておられる民活ということに志向していくべきではなかろうかというふうに思っております。
  197. 川崎寛治

    ○川崎委員 経企庁長官、大変済みません。私今ずっとおっていただけると思っておったものですから大変失礼しましたが、経企庁長官はどういうふうにお考えになりますか。やはり「増税なき財政再建」という中曽根内閣が進めてきた財政運営、経済政策、それが今言ったアメリカのその政策とたまたま合ったわけですよ。「増税なき財政再建」が結果的にまたアメリカの政策とフィットして、そして日本が異常な債権大国になった。だから、債権大国を目指したのかどうかというのが一つ。それから「増税なき財政再建」が日本を債権大国にしたという点、いかがですか。
  198. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 大変一つの御卓見だと思うのです。理論的には貯蓄と投資のアンバランスが経常収支の黒字になるわけでございますから、結局投資が不十分である。その投資が不十分だというのは、政府投資が不十分なのか民間投資が不十分なのか。いずれもあり得るわけでありますから、政府投資というためには政府がまず増税で吸い上げなきゃならぬ、それが行われない。他方、民間投資が不十分である、そうするとその部分が経常収支の黒字になるのだ。これは理論的にわかる話でございます。  ただ、我が国の経済の現実においてそれがそのような状況であるかということになりますと、今度の貿易黒字について私もちょっと統計を見てみますと、一九八二年はドル建てで二百一億の黒字、一九八三年は三百四十五、八四年が四百四十、八五年が五百八十、こうなっておりまして、我が国の最近の五百億ドルとか四百億ドルとかという異常な貿易黒字というのは実は割合最近の現象でございまして、レーガンの第一期の経済政策というものと先生がおっしゃるとおりまさにマッチをいたしておる。  その意味からいいますと、私どもの分析では、レーガンの経済政策というのがやはり景気を非常に高揚させる、そしてまた高金利を招く、そういうことから一つは景気、一つは為替のレートが変わってくる、こういうことから異常な、アメリカにとっては赤字、日本にとっては黒字。ただ、アメリカの赤字というのは、単に日本だけじゃございませんで、ECに対してもNICSの諸国に対してもほとんど全面的に赤字になっておるわけですね。ですから、やはりレーガノミックスといいますか、レーガンの経済政策が貿易の結果にあらわれてきているということは否めないと思うわけでございます。  先生がおっしゃいますように、我が国の経常収支、貿易収支は基本的に黒字傾向を示してきておるわけです。それが過去がなり、特別なオイルショックの時代を除きますと相当長く続いておりますから、それを債権大国を目指しておるか、こういう御質問になりますと、我が国の現在の労働力の質、労働人口の状況、それから我が国の経営能力というようなもの、技術能力を勘案いたしますと、ある程度の経常収支の黒字、貿易収支の黒字というものは存続するのではあるまいか、今のような異常な状態が前提されておるわけではございませんが。  そうなれば自然に、それじゃその黒字をどのようにして還元するか。やはり世界のリクイディティーを循環させなければなりませんから、その意味からいえば、やはり我が国は世界経済の持続的な、安定した成長ができるように十分その資本を役立てていく、そういう意味の対外的な経済活動が期待される。それを債権大国と表現するか、これは別といたしまして、経常収支の黒字国の一つの世界的責任というものは、我々の経済政策で十分考慮に入れていかなければならない問題だと考えておる次第でございます。
  199. 川崎寛治

    ○川崎委員 やむを得ません、どうぞ。  「二十一世紀産業社会の基本構想」におきましても、「日米両国のマクロ経済の構造的相違」というところで「家計部門、政府部門の支出は伸び悩み、一九八三年実質成長率三・四%のうち四六%に相当する一・六%ポイント、八四年についても成長率五・八%のうち三五%に相当する二・〇%ポイントを外需が占め、更に、設備投資も輸出に誘発されている面が強く、典型的な外需依存型の景気」となっておる。ですから、公共事業を抑える、人事院勧告を凍結する、あるいは農業もそうですね、そういうことが今のこういう実態をもたらしたわけです。そのことについては御異論ありませんね。
  200. 竹下登

    ○竹下国務大臣 確かに今おっしゃった、設備投資も輸出に誘発されたじゃないか、その傾向はあります。したがって、いわば内需主導型に転換を図ることによって、内需主導型の設備投資の方向へ誘導していかなければならぬという考え方に今立っておるわけであります。  ただ、今も経済企画庁長官からもお答えがありましたが、この問題を議論いたしますと、本当は最終的にいわゆるISバランス論、要するに貯蓄と投資の問題でありますが、これを投資不足と言うのか貯蓄過剰と言うのか、これは見方があると思うのであります。  貯蓄というものがあったから第一次石油ショックも第二次石油ショックも大量公債発行が消化できたと私は思うのですよ。その意味においては貯蓄は悪だという思想には私は立ちませんけれども、その貯蓄をどういうふうにして活用していくかということで、それをやたらと政府がいわば公債の形で吸い上げるべきものではないという議論をしますと、今度は、では税で吸い上げるべきだ、こういう議論にまたなってきますし、事実、国民負担率にしてもヨーロッパは五五ぐらいでございますと、日本は国民負担率をもっと高くすればいいじゃないか、こういう議論にもなりかねませんので、私は、やはり今の姿勢で貫き通すべきだと思っております。
  201. 川崎寛治

    ○川崎委員 建設大臣が急いでいるようですので、飛び飛びになるのですが……。  だから結局過剰貯蓄、過少投資ということが問題になるわけです。  債権大国になった。しかし、総理自身も住宅小国だ、あるいは下水道最小国だと、最小国というのを大変威張って言っておられたので、これは恥があるのかなと思って実はびっくりしたのですが、私は、四十人学級の問題はやはり教育小国ということが環境の問題としては言える、こういうふうに思うのですね。それから、公園小国ですよ。緑の小国ですよ。労働時間は長国だ、こういう状況になっているわけです。労働分配率も少ない方ですからね。     〔原田(昇)委員長代理退席、委員長着席〕  そうなりますと、特に下水道ですね。下水道の問題は、内需拡大の中でもやはりこれまでの間にもっときちんとすべきであったのではないか。しかしないがしろにされてきた、こう思います。まあ、ないがしろと言うと建設大臣はお怒りになるかもしれませんが、これはやはり後回しにされておったと思うのです。公共下水道というのは、これは用地費が要りません。  国際的に見ましても、あのイギリスが、パクスブリタニカ、そういう時代にちゃんと公共下水道は九七%やっておるわけですし、あの広大なアメリカで七〇%を超しておる。西ドイツ、フランスその他と比較をしましても、経済が大きくなったんだ、大きくなったんだ、こう言いながらも、そういう暮らしの社会資本の面を見ますと非常におくれておる。これは本委員会でも繰り返しいろいろ、特に住宅減税の問題等これまでも議論になってきておるわけですけれども、私はやはり、今過剰貯蓄の問題でお話がございましたが、公共下水道というものにはなかなか民間の金がいかぬのですね。非常に難しい問題があるということは十分わかります。しかし、企業が輸出力をうんとつけちゃって、輸出をして、そしてさらに債券投資をしている、こういう状態が今の異常な状態になっておるわけです。  そうなりますと、やはり国内で、政府資金と同時に民間資金が公共下水道の建設の方に回るという道筋はやはりつけねばいかぬ、水を引かねばいかぬと思うのですね。そういうことをやはりやってきていないわけですよ。後世代に、子孫に云々、こう言われますが、この公共下水道についていえば、後世代の人に担ってもらえると私は思うのですね。ヨーロッパを回って欧米と比較をしてみて、住宅のウサギ小屋というのと垂れ流しというのはやはり何としても早く克服をしなければいかぬわけです。  そうしますと、大変張り切っている建設大臣として、今の債権大国の中のうら悲しい日本の実態というものを考えますときに、この公共下水道を積極的に推し進めていくことについてどういうふうに考えておられるのか。私は、事業団債なりは大いにやるべきだ、こういうふうに思います。いかがですか。
  202. 江藤隆美

    ○江藤国務大臣 公共下水道がおくれておるということは、もう抑せのとおりであります。しかし、私考えてみるのですが、先生の鹿児島でも、宮崎でも、我々の小さいころは、公共下水道の何のと言わぬで、し尿処理でも実は畑へ持っていっておったんですね。それから、やはり川もあったし、海もあった。ですから、やはり日本は歴史的に見て、例えばイギリスやらフランスのように三百年も五百年も前から公共下水道をやらなければならぬというのは、やはり社会環境や何かでそういうことがおくれたのかなという感じを受けるのです。  しかし、それにしてもいよいよ日本も近代国家になって、そういうことを言っておれぬわけでありまして、苦しい中ではありますが六十一年度は約一兆七千七百億ほどの予算を実はいただきまして、伸び率はすば抜けて一二%の事業費の伸び、こういうことにはしていただいておる。ただ、根っこが小さいですから、そんなことを威張ってみましても六十一年度が終わってもなおかつ普及率は三六%にしかならぬし、十二兆二千億をもらって全部消化して五カ年計画を達成しても、わずかに四六%の普及率にしかならぬ。こういうことですから、心を新たにして、やはり近代国家としてのていをなすものはそういう見えないところの環境整備だということを痛切に感じますので、これからも、一部今度はいわゆる汚泥処理の、広域汚泥処理について財投資金を入れるということをことしから認めていただいたわけでありますから、それらのことも今後もう少し工夫をしてまいりたい、こういうふうに思っております。
  203. 川崎寛治

    ○川崎委員 下水道事業団の方の事業団債の問題はどうですか。
  204. 江藤隆美

    ○江藤国務大臣 下水道事業団の事業というのは、先生も御承知のようにあれは終末処理の一番根っこの部分だけやるわけでありまして、途中の、何といいますか、下水道をやるわけじゃありませんで、一兆七千七百億の事業費の中の、これは間違っておったらごめんなさい、多分一千億程度の事業に当たると私は思っておるのです。ですから、そういうところから考えますと、今のところ特に下水道事業団が原資に不足をしておるということではないので、その肝心の下水道がおくれておることですから、こちらに力を尽くしていくのが本筋ではないか、こういうふうに思っております。
  205. 川崎寛治

    ○川崎委員 この国会に法律改正が出るんじゃないの。事務局、どうだい。
  206. 中本至

    ○中本説明員 下水道事業団の方で法律改正、主目的ではございませんけれども、今さっきの債券発行の項目が入っております。
  207. 川崎寛治

    ○川崎委員 だから、ひとつ積極的に進めてください。  それじゃ、六十五年に四六%、こう言うんですね、今の状況の中でこれは達成できますか。
  208. 江藤隆美

    ○江藤国務大臣 五カ年計画を達成するための一番の条件は、いわゆる調整財源を事業費の中に組み入れて、そして残さないことだと私は思っています。これからこうしたいわゆる円高基調等が続いて著しく経済情勢が変わっていく中において、また外国からの経済摩擦等での圧迫がこうして厳しくなるときには、これからの財政運用で何としてもこの十二兆二千億の五カ年計画は満額達成する、それでなかったら、今までのように、五カ年計画が済んでしまった、いや達成率は八〇%でございました、また次の五カ年計画でございますよというような無責任な政治はやるべきではない、私はこう思っておるところでございます。
  209. 川崎寛治

    ○川崎委員 あとは大蔵省の問題だろうと思いますから、ひとつ大いに頑張ってください。  日銀総裁、お忙しいところ早くから大変恐縮です。ありがとうございました。  変動制十三年ですが、やはり変動制の一つの変わり目に来たと思うのですね。今度のボルカー議長やベーカー財務長官あるいはヤイター通商代表部の発言、勝手な発言をそれぞれやって、澄田日銀総裁はきのう、通貨関係者は余り言っちゃいかぬのだとこう言われたんだが、アメリカの方では勝手気ままにそれぞれが思い思いを言って、乱高下させたわけですよ。私はこれを見ておって、G5というのはどうなっているのかな、そのときの約束がちゃんと守られているのかな、こういうふうに思うのですが、これはどっちからお答えしていただいた方がいいのですか。
  210. 竹下登

    ○竹下国務大臣 ヤイターさんの場合は、通商代表ですから、どちらかといえば産業資本のことがいつも念頭にあるでございましょう。ボルカーさんの場合は、これはまさに金融資本の方に頭が向いておるわけでございましょう。幸い、けさのニュースでございますけれども、ヤイターさんもボルカーさんの考え方と一緒だという趣旨の証言をされた、正確にはまだ入っておりませんが。そこで、まあ大体落ちついてきたなという感じを持っております。  それで、いろいろな発言、我々も注意しておりますが、今のところ、集まった十人は別段大それた発言はそうしてないんじゃないかなというふうに思っております。ただ、片言隻旬と申しますか、それにも注意しませんことには、例えば私がロンドン・サミットの後アメリカへ寄りましたときに、二百一円でございました。百九十九円になったらどうするかと言うから、それは市場の自律性でそうなっていけば別にどうこうというべきものじゃないとこう言ったら、百九十円容認発言なんて宣伝が飛びましたり、それから、きょうもちょっと、本日午後三時前、中国機が韓国へ亡命したところ、それがソウル攻撃と誤報されてドル買いが起こって、一時百八十四円五十銭までいきましたが、誤報とわかって落ちついて、今百八十三円で引けました。  そういうような問題がしょっちゅうありますが、我々集まった十人がえらい口先で介入するようなことは考えないように注意しておりますから、それは御心配ございません。
  211. 澄田智

    ○澄田参考人 ニューヨークのG5の折に、各国とも特定の為替相場の水準を決めてそこへ持っていくということで共同して介入をする、そういうような申し合わせをしたわけではございません。そして、経済の実態、貿易収支とか物価とか、そういうような実態を為替相場がよく反映するように、ファンダメンタルズをよりよく反映するように努力をする、こういうことになったわけでございます。したがいまして、特定の為替の水準をめぐっていろいろ発言をするというようなことは、G5のメンバーあるいはメンバー国としては、努めてそういうことで為替市場に無用の憶測を起こすことのないようにしていかなければならない、かように心得ている次第でございます。
  212. 川崎寛治

    ○川崎委員 G5の後に六十一年度の予算を編成——その前に今の中国機、韓国の問題ですね。大蔵大臣、これはやっぱり緊張が激化すればドルが上がるというのを端的にあらわしておると思うのです。そうしますと、これ、円高・ドル安というか、ある程度の安定をしたものにしていくというためには、やっぱり平和でなくちゃならぬ、私はつくづく思いますね。そのことはお互いに腹に据えてやらなければいかぬのじゃないかな、こう思うのです。  西ドイツのシュトルテンベルク蔵相は、ドルのこれ以上の下落は好ましくない、こういうふうに言っております。それから、先ほど江崎大臣も二百円から百九十円ぐらい、こういうふうなお話だったわけですが、G5の後政府としてはどこに持っていこうと考えておったのか。それは予算で言えば一ドル二百九円で考えているわけですね。経済見通しは二百四円。そうしますと、大体そこで向こう一年間を、G5の後は見ていた、判断をしていた、政策の基礎に置いておったというふうに理解をしてよろしいのですか。
  213. 竹下登

    ○竹下国務大臣 予算の二百九円というのは、あれは直近のレートの平均値といういわば技術的な問題、予算編成技術的なとらまえ方ですから、それが年間を通じてのいわばあるべき姿を予測したものじゃないというふうに、これは理解をしていただきたいと思います。  これは、昔は、昭和四十七年予算をつくりますときには、いわゆるドルの免換制が停止された直後ですから、仮にそれが、見通しが誤ったら、途中で予算書の書きかえをしなきゃいかぬようになるのじゃないかというような議論をした昔もございますが、今の場合は直近のレートの間の平均値ということでございますから、これは予算編成の技術だというふうにお考えいただいて結構だと思います。  経済見通しの二百四円も予算同様の考え方であるそうでございます。
  214. 川崎寛治

    ○川崎委員 さっきちょっと言いかけておった、西ドイツの蔵相がこれ以上のドル安は望ましくない、こういうふうに言っておるわけですね。それから乱高下、こうあるわけです。先ほど江崎特命大臣も百九十円、二百円というようなことを言われたわけです。そうしますと、こういうときは介入調整ということですね。それを必要とするのか、あるいはしばらくこれの動きを見ていくのか、その辺はいかがですか。
  215. 竹下登

    ○竹下国務大臣 介入というのは、もともとがどういうときに介入するのか、いつやるのかわからないところに介入の効果もあるというのが定説の一つでございます。だから、この間のG5の場合はみんなが今は正確なファンダメンタルズを反映しておるとは言えないというところへ合意したわけですから、したがって、非常に効果があったということでありますので、私は今現在やはり介入という問題は議論の外にある問題ではなかろうかな、よく言われる逆介入あるいはドルの買い介入とでも申しますか、そういう環境に今あるとかないとかいう議論は、やっぱり外に置くべきじゃなかろうかと思っております。
  216. 川崎寛治

    ○川崎委員 通貨の問題は、通貨制度の改良、こういうレーガン大統領の方の提案もあるわけですね。それから中曽根総理も何か考え方を出してきたわけですよ。このサミットで、こういうことのようですが、変動相場制の十三年目で一つの節目に来ておるということは確かにそうだろう、私はこういうふうに思うわけです。  それから、今度のそういう通貨責任者の一言一言で敏感に乱高下する、こういう状況は、私はいろいろな企業家にとっても大変な不安な状況だろう、こういうふうに思います。そうしますと、変動相場制の管理ということは具体的にどういうことを言うのか。  それから、この間も、目標相場圏の制度の問題については今度の東京サミットでも問題にならぬのじゃないかというふうな見方のようですし、今は適切じゃない、今というか、適当じゃない、こういう御見解のようでございましたが、変動相場制の管理ということで、つまり安定をした為替相場を維持できるのかどうか、その点はいかがですか。
  217. 澄田智

    ○澄田参考人 変動相場制は、経常収支の不均衡が為替相場によって調整される機能がそこにあるということが期待されておったわけでございますが、近年、為替相場の変動要因として資本の流出入の影響が非常に大きくなってしまった。こういうようなために、機能が十分に働かない、これは事実でございます。また、今お話しのように相場が乱高下するというのは非常に影響が大きく、またこれがいろいろな意味で混乱を起こすもとになるということも事実でございます。  ただしかし、変動相場にすぐかわる制度というものは、これは今までのG10レベルの議論におきましてもそういう制度は見出しがたいというようなことになり、結局ニューヨークのG5以降の経験、これは為替調整に関する各国の共同行為、こういうようなものがとにかく成果を生んできているということであろうかと思います。各国のファンダメンタルズをよりよく反映するように各国は協調していくということが、今度の経験で、今後の管理された変動相場というようなものの一つの姿を示している、これを手がかりにして今後さらに検討を加えていくということではないかというふうに思うわけでございます。  また、そのもとに、為替相場の安定のためには各国ともそれぞれ経済のパフォーマンスをよくするように各国が常に努力をする、そういうことで、各国ともそういう態度をとるということで為替相場が安定するような環境ができていくということが望ましいというふうなことになるかと考える次第でございます。
  218. 川崎寛治

    ○川崎委員 にわかな、急速な円高、こういうことで、それから乱高下、ありましたね。そうすると、変動相場制の管理ということがG5以後うまいぐあいに機能してきたのかどうか。そこはどうなんですか。
  219. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは、難しいところでございますのは、G5というのは大体どこか国際機関で相談したものじゃございませんよね。したがって、インフォーマルにやるという性格のものであったわけですが、その効き目が余りにもあったから、何かG5が管理しているという印象、ある意味における管理の機能を果たした。それでG7にしろというような意見が今出てみたり、いやG10というものがあるじゃないかという意見が出ておるわけでありますが、今ロンドン・サミットのところまで、お互いが評価したのはよかったな、後戻りするようなことはやめようやという評価はしておるわけです。それと、インフレが鎮静しておるから利下げの環境が整ったな、だが、これはやはり中央銀行さんで相談してもらおう、こういうところまでがコンセンサスになっております。それで、その後の円高基調を見ましても、私は、G5で行われたことがきっかけになった今日の動きというのは間違っておったとは思いません。
  220. 川崎寛治

    ○川崎委員 今澄田日銀総裁が、いろいろ考えながら進めていくのだ、こういうことなんですが、そうしますと大体百九十円、二百円ぐらいというところを政府は見ているなどいう感じ、先ほどの百九十円ぐらいですかね、思うのですが、そういうのをずっと安定をしてやっていけるのか、あるいはこれからもっとまた乱高下ということについてはしようがないというふうにお考えになるのですか。総裁いかがですか。
  221. 澄田智

    ○澄田参考人 ロンドンのG5におきまして、従来の成果より後退をさせないということで、ドル高の方向に行くのには為替市場の心理として一つの壁ができて、結局方向としてはどちらかというとドル安の方向に為替相場を動かす、そういうような傾向が市場に見られたことは事実だと思います。昨年のアメリカの対日の大幅な赤字でありますとかあるいは石油価格の値下がりによって、日本あるいは西ドイツ等の貿易黒字がさらに拡大するというような予想、そういうようなものが流れて、そうしてとかくドル安・円高の方に市場が大きく動いた、そういうことも事実だと思います。しかし、当面といたしましては円高基調そのものが定着する、そうしてより安定的に相場はそういうふうな形で落ちついていくということが当面最も望ましいところである、こういうふうに考えておる次第でございます。
  222. 川崎寛治

    ○川崎委員 石油の急速な価格の低落もありますし、それから来ます、同じ先進国の中も、日本とドイツというのとイギリスと、こういう大変分化してきましたね、二極分化になっている。一方、ボルカー議長は、これ以上のドル安は怖いというか非常に神経質になったわけですが、いろいろと取りざたもあるし、アメリカの財政赤字の、財政収支均衡法のいろいろな先行きというのを見ますと、これは余り成功しないで失敗するんじゃないか、日本の財政再建の失敗の二の舞をしそうな感じもしておるわけですが、そういう中でドルの急落ということも一面では非常に懸念されているわけですね。その点については澄田総裁はどういうふうに御判断になっていますか。
  223. 澄田智

    ○澄田参考人 ドルの急落ということがもし万が一にもありますれば、それは非常に影響の大きいことでございます。そういう意味におきまして、ボルカー議長はもとよりでございますが、アメリカ政府もドル急落を防ぐということにおいては完全に一致をしていると思います。のみならず、世界全体にとりましてもこれは望ましくないことでありますし、そういう意味合いにおいて、この点については最大の注意が払われていかなければならない、こういうふうに思うわけでございます。  現在の状態、ドル安の方に振れやすいような地合いがありましたが、しかし一方、ドルの底値というようなことの警戒感も市場にも出ているわけでございます。それが最近のいろいろな発言によっていろいろ動く市場の背景にはあると私は思うわけでございまして、そういうことを考え合わせますとドル急落等のおそれというものは全くない、こういうふうに思うわけでございます。
  224. 川崎寛治

    ○川崎委員 総裁、どうもありがとうございました。  そこでまた前に戻りまして、最初に、「増税なき財政再建」が、つまり異常な貿易収支の黒字をもたらしたという点について私は触れたわけでありますが、そうしますと、内需の拡大という問題は大変深刻な問題だと思います。  そこで、ではどこで内需を拡大していくのか。結局、GNP需要項目の景気を引っ張る度合いというものを見ますと、これは輸出、設備投資、個人消費それから公共投資、住宅投資と大体五つですね。そうしますと、先ほど来議論ございますように、黒字をなくさなければいかぬ。こうなりますと輸出は急速に落ちていく。現に落ちていますね、いろいろな統計、輸出の数値というのは落ちているわけです。それから設備投資もこれは急速に落ちると思います。元来、先ほども大蔵大臣も触れられましたが、設備投資というのは半分は輸出促進、輸出力になっているわけです。そうしますと、五百億ドルの黒字という問題からここも少し抑えて、現実には落ち込んでいる。こうなりますと、輸出が落ちる、設備投資が落ちる。そうしますと、今まで引っ張ってきた−これは先ほど私が読み上げましたリボルビングもそうですし、「二十一世紀産業社会の基本構想」の中における「マクロ経済の構造的」云々という中でも言われるわけなんですが。  そうなりますと、今の五つの中でどこをふやせばいいのか。内需拡大、内需拡大という場合に、輸出が落ちる、設備投資が落ちる。そうなれば、伸ばさなければいかぬところは何か主言えば、個人消費そして公共投資。公共投資は東京湾の横断道路だとか明石だ、こう言われますね。民活だ、こう言われる。しかし、これは結局、力のある者しか支えられぬわけです。だから国全体のものを引き上げるということには余り寄与しない。住宅投資は今一生懸命やろうとしておりますが、どうしてもやはり個人消費と今まで以上に公共投資というものをふやさざるを得ない。私は内需拡大という問題はそこに来ておる、こういうふうに思います。いかがですか。
  225. 竹下登

    ○竹下国務大臣 まず消費を可能なだけ伸ばす、あるいは住宅投資を伸ばすとか、それは私は決して間違っているとは思いません。が、問題は、仮にそれは是認したといたしまして、それじゃ、消費を伸ばすために賃上げと減税と両方ありますから、そうすると、賃上げというのは労使双方の問題であって、仮に横に置くと、政府としてなし得ることと言えば減税という問題が出てくる。その減税という問題につきましては、それはよく言われるように貯蓄の方へまた行ってしまうじゃないかとかいう議論もありますが、この問題は、首尾一貫しておりますのは、五十四年以来いろいろ議論してやっと税調に持ち込んだ、だから六十二年以降の問題だ、したがって、今この手法はとらない、こういうことを言っているわけです。しかし、いわゆる根本に触れない問題は今度でもやりましょうというのが設備投資とあるいは住宅減税と、まあこういうことになっておると思うわけであります。  それで、公共投資の点は、これは私も本当のところ、近く計算してみようと思っておりますが、事業費では伸びておりますわね、地方へ負担をお願いしたりいろいろして。そうして、六千億がいわば債務負担行為で、この間補正予算を通していただいたから契約してくる。しかも、その事業費は伸びておるから私はこれはかなりの効果が期待できるものじゃないかというふうに思っております。で、住宅も減税をやることによってこれは刺激していこう。  それから、設備投資の問題も、例えば、これは例は余りよくありませんが、いろいろな郊外に、まあレストランとかそういう投資は確かに合ふえておりますよね。だから、輸出をふやすためのまた投資というものよりも、そういう方の投資はなだらかながら今設備投資はふえている、順調にふえていると見ていいんじゃなかろうかと思います。  それから、一つだけ私は感心して聞いておったのがあの下水道の問題ですけれども、あれは昭和四十五年、お互い若いときに、その当時下水道を始めようといったときに、私も今でも議論したことを覚えておりますが、フランスはあれはなだらかな川の流れたから、必要があってジャン・バルジャンは下水道へ逃げ込んだんだと。で、日本はちょうど真ん中に山があって、太平洋と日本海へほどよく雨がちょうど面積当たり倍降りますから、ほどよく流しておったから、必要がなかったからおくれたんだと、これも一つの理屈かなと思って、私四十五年ごろに聞かされたことがございますが、したがって、ピッチは上げておることはまあ事実でございます、これはおくれておりますし。その当時、明治二十三年がいわゆる三千九百九十万ぐらいな人口のときからの議論だそうでございますから、今一億二千万おりますから。それで、ただ、見ていただきますと、対GNP比で言いますとほかの国の倍やっているわけですよ、公共投資を。そして、ただそれが土地代に吸収されるということに対するいわば宿命的な、まあ土地の狭隘さというものは本当は悩みの種であると。などなど今のお話を聞きながら感じたことを率直に申し上げます。
  226. 川崎寛治

    ○川崎委員 結局、しかしまあ今言われたいろいろな御答弁からいってみても、急速なこの円高で大体五十円から六十円こう上がっていくということになりますと、一%以上のGNPマイナスと、こう私は思いますね。その点はいかがですか。
  227. 竹下登

    ○竹下国務大臣 合いわゆる円高のデメリットの方だけが出ておると。で、何せ原料、資材はまあ全部輸入するわけですから、これも安くなるわけですから、そうして交易条件が改善されることによって実質所得が上がっていって消費がまた伸びていくということが期待できるが、その円高メリットのところが今日に見えていない。が、必ずこれは私は出てくるものだ。人によっては三四半期って言いますがまあ九カ月、私は時々十五カ月なんということも言っておりますけれども、必ずこのメリットの方が徐々に出てくるということも期待できることだというふうに考えております。
  228. 川崎寛治

    ○川崎委員 これはきょうはちょっと、あと農林大臣もおられますので、なかなか次まで時間がないんですが、累積債務の問題とか一次産品の問題、石油価格の低下という問題、そういうものから世界経済全体が非常に厳しくなってくるんですね。そうしますと、円高メリットの方だと、これは私はそうは言い切っておれない非常に深刻な問題があると思います。だから、その点で円高メリットを過大に評価するのは間違いだと思うんです。  そこで、そういうふうに、先ほど来申し上げておりますようなGNP需要項目の景気牽引の要素からいたしますと、私はことしこそ減税をやるべきだった。去年から、もうこの二、三年減税、減税と言ってきているんですね。で、なぜことしできなかったか。日本がこれだけの債権大国になった、黒字国になったという国際的なそういう責任の上からいっても、私はことし減税すべきであった。来年ということじゃなくて、ことし本当にやるべきだった。それは痛切に、今日の世界経済の動きなり日本経済の今の実態なり展望なりというものの中から私はそう思います。いかがですか。なぜことしできなかったか。やるべきであったと、ことしやっておけば、世界からも、ああ、日本はよくやったなと評価されたと、こういうふうに私は思います。いかがですか。
  229. 竹下登

    ○竹下国務大臣 この減税問題というのは、やっぱりこれは財源を考えずして減税に手をつけるわけにはいかぬと。それは、極論する人は、赤字公債発行したって日本はこれだけの貯蓄率があるからその金利が物すごく上がるなんということはないじゃないか、まあそういう議論もございますけれども、しかし、私は財政という面から考えた場合に、いわば税の議論はニュートラルな議論としてやってもらいますけれども、財源を検討せずして減税を行うという環境にはない。やっぱり抜本的なあるべき姿をニュートラルな形で答申してもらって、それに基づいて対応すべきものだというふうに考えます。したがって六十二年度以降と、まあこういうことを申し上げておるわけであります。
  230. 川崎寛治

    ○川崎委員 まあ、国民参加のもとにこの税の議論をと、こういうことでございますね。今の御議論については、不公平税制の改め方、その他いろいろございます。しかし、これは、もうきょう時間がございませんので、別の機会にまた譲らざるを得ませんが、しかしそうだといたしますと、春に減税ということについては当然中間報告を国会にお出しいただけますね。あの臨教審も経過を公表しているわけです。ですから、これは国民が大変大きな関心を持っているわけですから、この税制調査会の中間報告というものを国会にひとつぜひ出してほしいと、こう思いますが、いかがですか。
  231. 竹下登

    ○竹下国務大臣 春までに大体どこに重圧感があり、どこにゆがみ、ひずみがあるかということを大体おしまいにしてくださいと、まあこうお願いしておるわけです。したがって、中間報告というものになるかならぬかというのは、これはまあ税調の審議にお任せしよう、こういうことになっておりますので……。  それと、もう一つは中間報告というものは、要するに重圧感、ひずみの存在のところを指摘するにとどめられるのか、まあ額まで示すことはなかなか難しいのでしょうが、その辺、その中間報告の中身が全く今わかりませんので、可能な限りお知らせしなきゃならぬと思いますが、中間報告という形でまとまるかどうかということは、まだ税調の御意見は聞いていないと言わざるを得ません。
  232. 川崎寛治

    ○川崎委員 ぜひ税調とよく話し合っていただきたいと、こういうふうに思います。  人事院総裁、本当に申しわけありません、長いことお待たせしたようで申しわけなく思います。ありがとうございました。  次には、昨年の暮れ共済年金法の審議の際に、これは十一月の二十九日でございますが、竹下大蔵大臣は衆議院の大蔵委員会で沢田広君の質問に対しまして  質問というか修正要求ですね。職域加算千分の一・五を千分の二に引き上げてほしいと、こういう修正要求に対しまして竹下大蔵大臣は、今国会における審議の経過にかんがみ、職域相当部分の水準等のあり方については、人事院の意見等を踏まえ、一両年中に検討を行い結論を出しますと、こういうふうに答弁をされたわけでございます。そこで、また、衆参の大蔵委員会における附帯決議も、衆議院の大蔵委員会においては「今回の改正における職域相当部分の根拠、水準が必ずしも明瞭でないので、この点につき、人事院等の意見もふまえ、引き続き研究を行うこと。」それから衆議院の地方行政委員会では「今回の改正における職域相当部分の根拠、水準が必ずしも明瞭でないので、この点につき、人事院等の意見もふまえ、見直しに関して検討すること。」こういうふうに附帯決議がついております。その附帯決議に、誠意を持って努力いたします、こういうふうに大蔵委員会では大蔵大臣はお答えになっておるわけです。  そこで、人事院にお尋ねをいたしますが、この附帯決議に対して人事院は調査を実施されるのだと思うのです。ことしのその御計画はどういうふうになっているか、伺いたいと思います。
  233. 内海倫

    ○内海政府委員 ただいま御質問いただきましたように、大蔵大臣からも御答弁がございましたし、両院のまた附帯決議もございますので、人事院といたしましては、職域部分というものは公務員にかかわる点、極めて重大な点もございますから、御趣旨に沿いながら調査研究を各関係の問題についていたしたい、かように考えております。どの程度までできるか、あるいは一両年というふうな期限内にこれができるか、まだ私どもも十分な確信を持つには至っておりませんが、いずれにしましても趣旨に従って全力を挙げて調査研究いたしたい、かように思っております。
  234. 川崎寛治

    ○川崎委員 それは六十一年度中に調査を行うということになりますか。そういうふうなテンポで調査に入れますかどうですか、いかがですか。
  235. 鹿兒島重治

    ○鹿兒島政府委員 附帯決議をいただきましたのが昨年の暮れでございます。目下私ども、事務的にいろいろと内容を検討いたしているわけでございますが、若干具体的に申し上げますと、職域年金部分に限らず、共済年金の問題を調査研究いたします場合には、例えば企業年金の動向がどうなっているとか、あるいは退職した公務員の生活実態がどうなっているとか、そういう調査がやはり必要だろうと思います。  企業年金につきましては、実は退職手当法に関連いたしまして、五十七年あるいは五十八年についてそれぞれ五十八年、五十九年に調査をしたということもございますし、それからまた生活実態につきましても、これまで若干はやっておりますけれども、やはり問題の性質上かなり大がかりなことをやらざるを得ないんじゃないか。そうなりますと、事務的に考えます限りは、若干の時間をいただきませんと具体的な調査の結果というものがなかなか出てこないのではなかろうかということで、六十一年度から調査はいたしたいと思っておりますが、時間が若干かかりそうだということを申し上げておきたいと思います。
  236. 川崎寛治

    ○川崎委員 それは当然、十一月の二十九日というと概算要求の後で、もう予算、ぎりぎりのところに来ておるのですが、調査費はついているのですね。
  237. 鹿兒島重治

    ○鹿兒島政府委員 国家公務員法に基づきまして、私どもは常時、共済制度につきましても調査研究をするということでございますので、いわゆる通常の分としての調査研究の費用はございます。
  238. 川崎寛治

    ○川崎委員 ぜひひとつ早急に御調査いただいて、大蔵大臣が御答弁になったような方向で前向きに解決していただきますことをお願いをしたい、こういうふうに思います。  人事院総裁、大変お待たせして恐縮でした。ありがとうございました。  農水大臣、長い時間お待ちいただきまして、本当に済みません。  過疎対策の方から入ろうと思いましたが、時間が大分せっぱ詰まってまいりましたので、まずカーギル社の問題をお尋ねをしたいと思うのです。  日本にやってきて社長やらも大分いろいろと発言もしておるようですが、この問題はやはりなかなか難しい問題だと思います。といいますことは、貿易の自由だ、資本の自由だ、だからいいじゃないかと言うのですが、ただ畜産の問題というのは、日本農業全体が深刻ですが、自殺者も出ておりますし、そして鹿児島県は特に牛も豚も鶏も日本一の畜産県なんですね。そして牛肉枠は拡大をされまして、幸いに消費は少し伸びてはおるのですが、豚とか鶏というのは非常に悪いわけですね。そして骨なし鶏は今度しゃにむに関税も引き下げられ、しかもドル安、こういうことで二重三重に鹿児島なり宮崎なりの骨なし鶏も打撃を受けているわけです。そういう環境の中に、そういう地域に世界最大の穀物会社が入ってくるということは、影響が大変大きい。特にえさの問題というのは、畜産の生産計画というものとあわせて農水省が指導してきているわけです。このカーギル社の問題については、当然慎重に検討し、そして日本の畜産行政の将来も展望しながらやらなければいかぬと思うのです。先ほど申し上げたように、異常なドルの問題については、アメリカの政策の失敗というか、アメリカの政策の結果、それから日本の「増税なき財政再建」、そういうものがあって急速に過剰なドルをつくっているわけですね。そうしますと、この産業構造をそういう外圧で急速に変えていくということをやりましたら、これはもう本当に息が絶えちゃうわけです。ですから、そこのところはやはりきちっとして、自主的な対処があってしかるべきだ、こう思います。  貿易摩擦だ、非関税障壁だ、こういういろいろなことを今言われておりますが、そういう中でこのカーギル社という問題については、特に私は、今農水省の姿勢というのが解せないのは、土地を造成をした、そして土地を割り当てる、鹿児島県、おまえの方で決めなさい、これは私は酷だと思うのです。だからちゃんと、農水省がきちっとした方針に基づいて、長期の畜産行政なりえさ行政なりを展望しながら指導すべきだと、私はこう思いますが、いかがですか。
  239. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 ただいまお話がございました株式会社カーギル・ノースェイジア社、これの進出でありますけれども、志布志湾の臨海工業地帯ですか、これの用地の公募をされた、その中の、七社ほどあれした中の一つであるというふうに承知しております。  そしてもう御案内のとおり、昨年、五社ですか決定されまして、今あとどうするかという状態であるということでございまして、これは今先生からお話がありましたように、私どもといたしましても、当然これからの畜産の状況、九州、あの地帯一帯の状況というものを見きわめつつ、それに対して飼料の需給状況、こんなものも見定めながら判断をしていきたいということで、この用地についてどうするかということについて、これはまさに鹿児島県みずからが今判断されるちょうど段階にあるのじゃないかというふうに私どもは理解をいたしております。
  240. 川崎寛治

    ○川崎委員 そうしましたら、畜産行政の一環としての御判断ですが、県の側とはよく話し合っておられるのか。認めなさいという方向で少しやっているような感じもいたしておりますが、いかがですか。
  241. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 現在、まだ農林水産省の方からこうこうこうしなさいという段階よりは、県の方としてこの分譲——これは公募された中の一件であります。そういうことで、まず用地をどうするのかという判断が先に来るのじゃなかろうかという理解であります。
  242. 川崎寛治

    ○川崎委員 ひとつ慎重な配慮をし、御指導をいただきたい、こういうふうに思います。  最後に、過疎地域の農業とかあるいは過疎対策ということを伺いたいんですが、この間もちょっと総理がおられるところで申し上げました。薩摩半島の端っこの方は、昭和二十六年に分村しますときに一万二千五百の笠沙町が、現在五千です。それから、大浦町は八千だったのが三千六百五十ですね。そして高齢化率は二八・二%です。そういたしますと、私、大体成人式、これは正月三日ごろに毎年早くやるんですが、参りまして接触もしておるわけですが、高校を卒業したら、もう九十何%町を出ていっちゃうのですよ。ですから、このままですと、どんどん崩壊をしていくんです。  そこで、そういう高齢化をし過疎化をしていく中の過疎対策はどうあるべきかというのが一つ。例えば、半島振興法などに対する期待も非常に大きいんですね。半島振興法で何とか歯どめがかかるんじゃないかという期待も持たれちゃっているんです。これは、私は、国土庁長官の役割は大変大きい、ですから、羊頭狗肉にならぬようにするためにはどうしたらいいかという問題もあろうかと思いますが、そういう急速な高齢化と過疎化をしているところへの過疎対策、そういう地域での農政という点についてお尋ねをいたします。
  243. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 今先生から御指摘がありましたように、先生のあそこの半島の地区ですか、ずっと拝見いたしますと、本当に大変なあれで過疎化が進んでおる、まだ現在、そんな状況であるということを拝見しております。そういう中において、これからそういった地域をどう活性化させていくのか、これはやっぱり政治の重要な仕事であろうというふうに思っております。  私どもとしましては、そういう人口が減っているという中にありまして、やはりまず一番考えなければならぬことは、規模の拡大ということをしながら、それぞれあそこは畜産ですとかその他がございます。こういったものをより足腰の強いものにしていく、これが一番のことであろうと思っております。そのほか、これはまた時間のかかるあれでございますけれども、バイオテクノロジーですとかニューメディア等の先端技術、こういったものの普及を通じまして体質を強くしていくことであろうと思います。それと、かつてそういった地域に対して工業導入促進法なんという法律をつくって、現在でも実はございますけれども、やっぱり兼業の方々なんかもいらっしゃる、そういった働く場所というものも提供する必要があるんじゃないかなというふうに思っております。特に地場産業の育成というものについて、これはやはり地域の創意工夫、こういうものを生かしながら進めていく、また、そういったものを助長するために私たちがどうお手伝いできるかということが一番のあれじゃないかなと思っております。  ちょうどきょうは、実は私、役所へ先ほど帰りましたのですけれども、熊本県が、消費者の室、ここに今出てきておりまして盛んにあそこの産品の宣伝をされております。そこには婦人会ですとか、あるいは改良普及、生活改善の皆さん方がつくった産物があるのですけれども、ここへみんな見に来る人たちが、これはどこで買えるんだ——ちょうど地下で何か少し販売しているものもありますけれども、そういうものなんかも相当大きなものに発展しておるそうでございまして、そういう地域の特性を生かした地場産業というものを育てていく必要があるんじゃないかなというふうに考え、そういうものを進める中で村の活力というものを回復していく、これが大切なことではないかというふうに考えます。
  244. 田中暁

    田中(暁)政府委員 昨年末の六十年国調の結果を見ますと、過疎地域全体で五年間の減少率が三%ということで、その前の五年間が三・七%でございます。  いわゆる高度成長時代の一二%前後という数字に比べますと、一応人口流出は相当低くなってきたということは言えると思いますけれども、内容を見てまいりますと、先生御指摘のように非常に自然条件等々が厳しい地域は依然減少を続けておりますし、また内容を見てみましても、高齢化が非常に進みまして、全過疎市町村の四割はもう既に自然減少という状態になっているわけでございまして、このまま放置いたしますと第二の過疎現象を起こしかねない、こういうことでございます。  この地域の振興を図るということは国土政策としても大変重要なことでございますし、そのためにはすべての政策を分散型の社会なり、分散型の国土に変えていくというための努力が必要だろうと思いますけれども、さしあたって具体的な対策といたしましては、今農林大臣がお答えになったような線でやっていくべきものではないかと思っております。
  245. 川崎寛治

    ○川崎委員 ちょっとこれは時間を過ごして恐縮ですが、大蔵大臣、次のトップリーダーとして、日本列島ふるさと論で今の過疎問題をどういうふうに大蔵大臣はお考えになるか、最後に一言伺っておきたいと思います。
  246. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私自身がかなり有名な過疎地帯の出身でございますので、それなりに構築したふるさと論なんというのは、本当はそういうものが原点になっております。  ただ、この間、宇宙飛行士候補者の内藤さんというお嬢さんと話しましたら、竹下さんだめだ、やっぱりアメリカの飛行士とソ連の飛行士が宇宙飛行をして、そこから緑の立派な地球を見たときに、あれがふるさとになる、それぐらい気宇壮大であらねば、あなただめですよと言われまして、ちょっと発想の転換をしなければならぬのかな、こんな感じがしております。これは饒舌に過ぎたかもしれませんが……。  それと、この機会を通じまして、申しわけないことでございますが、六十一年度予算と六十一年度経済見通しの為替レートは、予算は二百九円で、十月と十一月の二カ月間の平均で決めます。それから経済見通しの二百四円は十一月一カ月間の平均値で決めて、いわば予算編成の技術的な決め方である、こういうことをつけ加えさせていただきます。
  247. 川崎寛治

    ○川崎委員 終わります。
  248. 小渕恵三

    小渕委員長 これにて川崎君の質疑は終了いたしました。  次に、池田克也君。
  249. 池田克也

    ○池田(克)委員 公明党の池田克也でございます。  私が最後だと思いますので、お疲れだと思いますが、よろしくお願いいたします。  前回も教育問題についてお伺いをしたのですが、前回に引き続いて、教育とお金と申しましょうか、その問題に触れてお伺いをしたいと思います。  大蔵大臣は、いろんな報道で家計における教育費が非常に高くなって子供たちを持つ父兄が苦しんでおられる、こういう事情を御存じであろうと思いますが、これは専門的な予算とか景気とか経済とかという考え方は抜きにして、政治家という観点から、子を持つ親の教育費はもう限度だ、何とかしてほしいという声を私はしばしば耳にしておりまして、ずっと大蔵大臣をお務めになっていらっしゃって、一番我が国の財政状況に明るいし、またいろいろな声をこの席で僕らも申し上げてまいりましたし、お聞きになっていらっしゃって、政治家としての大蔵大臣のお考えをお聞かせいただければと思うのです。     〔委員長退席原田(昇)委員長代理着席
  250. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これはなかなか難しい問題でございますが、私は、教育という問題が大事だということは、これはだれしも自覚しておるところだと思います。そして、教育というのは、元来は助成政策であって、税制にはなじまぬなということを、勉強すれば勉強するほど実は感じております。したがって、総体的に言えることは、ちょうど子育ての段階あるいは教育費の一番かかる層、その層にひずみ、ゆがみ、重圧感というものができるだけ除去されるような税制体系を、私の立場からいいますと構築してさしあげたいものだな、こう感じます。教育の問題を税制で考えたときには、本当に最後にはそこへ行き着くような気がしております。  と申しますのは、結局、課税最低限、仮に二百三十五万七千円としましても、それ以下の人には、減税の場合は何の恩典もなかったり、あるいは高校へ行かないで、中学を出て働いている人は、ささやかでも税金を納めているというような、いわばそういう不満感が出てくるから、結局助成政策で対応し、税制のあり方としては、個別のそういう事情をしんしゃくするのではなく、ちょうどそのころの世代の人に、ゆがみ、ひずみ、重圧感が少しでも取れるようにしてあげる、こんなことかな、こんな感じでございます。
  251. 池田克也

    ○池田(克)委員 税制改正が大きな議題になるわけですが、税制という問題も当然含まれるわけですが、大蔵省が財政改革をするために基本的な考え方を持っていらっしゃる。この委員会にも資料が配られまして、大臣もお気づきだと思いますが、これを拝見しますと、三つの柱がこれにうたわれているように私は思うのでございます。  この柱というのは、その文章によりますと、「国と地方の費用負担」それから「官民協力」、「受益者負担」、この三つの問題が具体的には活字になって私たちに示されておりまして、これは教育責あるいは学術研究費ということになっておりますが、大蔵省が財政改革という観点からお考えになっていらっしゃるこの三つの柱というのは、いかようなものであるか、ぜひこの際明らかにしていただきたいと思います。
  252. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 お話しのように三つ例示をしてお示しをしてございますが、申し上げるまでもなく、財政改革を進めてまいります場合に、もちろん文教だけではございませんで、すべての経費にわたりまして経費の効率化あるいは重点化あるいは合理化というものを進めてまいらなければならないわけでございますが、特にこの教育あるいは科学技術振興の関係の施策につきましては、お話しのように、一つは国と地方の費用負担の見直しをさらに進めていってはどうかということを、問題意識として持っております。例えば六十一年度予算におきましても一部お願いをしてございますけれども、義務教育国庫負担金につきまして、最近におきます、いわば基本的には国と地方との間で地方分権化というような傾向もございますので、そういった状況も踏まえながら、国と地方との間でどういうふうにこの義務教育に要する公経済負担を分かち合っていくかというようなことは、やはり一つの大きな勉強課題ではないか。  それからまた、いろいろ社会教育と申しますか、例えば公民館でございますとか、あるいはまた最近は特に体育館、プールというような体育関係の施設を地方で非常にたくさんつくっていらっしゃるわけでございます。それらに対しまして従来から国も助成をしているわけでございますが、これは臨調答申等にもございますが一そういったいわば身近な仕事、これはやはり基本的には身近な行政主体である地方公共団体が実施すべきものではないかというような御指摘もございますので、そういった指摘も踏まえながら今後見直していってはどうかということでございます。  それから第二点の官民協力ということでございます。これは主として科学技術関係が、これのみではございませんが、主としてその領域が念頭にあるわけでございますが、御承知のように、こういう時代でございますので、国立大学でいろいろ今高度の研究が進められておりますけれども、やはり大学の研究自体をより活性化するという意味からいいましても、官民の共同研究と申しますか、人材をお互いに交流し合ったり、あるいは情報を交換し合ったり、あるいはまた特別のテーマにつきましては研究者が共同して研究をしていくといったような、やはりこれは広い意味での経費の効率化というようなことにつながろうかと思いますので、そういった方向でさらに勉強を深めていく必要があるのではないか。  それから、第三番目が受益者負担のあり方の問題でございます。受益者負担という表現は、あるいは最も適切かどうかという問題はあろうかと思いますが、端的に申しますれば教育に要します負担、これを国も地方も持っているわけでございますが、同時に父兄の方々がいらっしゃるわけでございます。この国、地方、さらに御父兄の方々にどの程度までの負担をお願いすべきかという問題でございます。例えて申しますと、いわゆる義務教育の教科書、現在は無償になっておりますけれども、かねて来、いろいろな場で御議論がございます。臨調答申でも指摘をいただいておりますけれども、この義務教育教科書の無償の措置の問題をどう考えていくか。あるいはまた学校給食というのがございます。この学校給食に要します経費を国、地方あるいは御父兄の方々との間でどういった負担の仕方をしていったらいいかというような問題が問題意識としてあるわけでございます。国、地方の負担と申しますと、結局はこれは一般の納税者の負担でございますから、その児童なり生徒をお持ちになっていらっしゃる直接の御父兄に負担をしていただくのがいいか、あるいはまた直接関係のない一般の納税者の租税負担という形で賄っていくのがいいのかといったような問題であろうかと思うのですが、そういった問題意識を持ってこの文章を書かしていただいているわけでございます。
  253. 池田克也

    ○池田(克)委員 私は、先ほど来問題意識として、家庭における教育費の負担という問題を一番強く持っているわけですから、今のお話の中では、受益者負担という教科書の問題あるいは給食の問題、これはそうした話が大蔵省から問題意識として出たというだけでもみんな非常に驚く。いつもいつも議論している話ではありますけれども、私ども一生懸命お願いをして無償の継続が今日まで続いてまいりました。この問題はちょっと後から触れますが、最初に国と地方の分担の問題で、昨年とことし、具体的には国が今まで持っておったものが地方に移管をされているように伺っております。旅費の問題とか教材費の問題、あるいはことしは共済費とかあるいは恩給費というふうになっておりますが、主計局長、お話しの順序で恐縮ですが、去年とことしだけで結構でございますが、国から地方に渡していった分というのはどんな項目でどのくらいの額になっておりますでしょうか。
  254. 西崎清久

    ○西崎政府委員 六十一年度予算の内容といたしまして、補助率、負担率の関係が主として大きいわけでございます。一番大きいのは、義務教育費国庫負担金に関しまして、共済の追加費用及び恩給費等につきまして八百四十二億が負担金から交付税化されておる、これが一番大きいわけでございます。それ以外に公立文教施設とかあるいは高度僻地学校の児童生徒パン・ミルクの補助とか、二分の一を超える高率の補助がございまして、これにつきまして十分の一カット等を昨年からやってきておりますが、これを一年延長してまたやっておりますので、この関係が約百億近くあるわけでございます。以上合わせまして大体九百三十億ぐらいが全体としてはカットというふうになっておるかと思います。  以上でございます。
  255. 池田克也

    ○池田(克)委員 これから先も毎年地方へ少しずつ、少しずつではない、大変な額なんですね、かれこれ一千億近い額を渡していく、こういう方向になるのでしょうか。
  256. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 先生からお話がございました、六十年度に実施をいたしました旅費、教材費の問題でございますが、これはいわゆる一般財源化ということをいたしまして、義務教育費国庫負担の対象そのものから外させていただいたわけでございまして、これはいわばそういう意味で恒久的な措置でございます。  それから六十一年度にお願いをいたしております金額的に一番大きな問題は、ただいま文部省からお話がございました恩給費それから共済の追加費用の国庫負担の問題でございますが、これは法案でお願いをいたしておりますとおり三年間の暫定措置ということで、これは、三年間はこの仕組みで続けさせていただきたいと思っているわけでございます。  しからばその後、六十二年度以後どうするかということでございますが、先ほども御答弁申し上げましたけれども、義務教育費の国庫負担のあり方につきましては今後とも幅広く勉強を続けていきたいと思っておりまして、すべてこれで見直しが終わったというような認識にはまだなかなか立てないというのが偽らざる現在の状況でございます。
  257. 池田克也

    ○池田(克)委員 私が伺いましたところでは、文教予算というのから新しい経費を捻出するのに非常に苦労していらっしゃる、いろいろと研究してようやく財源を見つけた、こういうふうに私は伺っておりまして、私は今の主計局長答弁をそのまま受けとめますけれども、やはり臨時教育審議会がいろいろ研究をされておりまして、新しい経費というのは出てこざるを得ないと私は思うのです。いろいろな新しい案が、総理から諮問されてプランを立てるという機関でございますから出てくると思うのですね。したがって、どこかでこの教育改革経費というものについて財源というものを何らかの形で議論をし、そしてそれを確保すると申しましょうか、そうしていかなければ、プランを幾ら立ててみても信用しないし、またプランが答申として政府に渡されても、結局は大蔵省の査定ということで、それがある意味ではお金がないからという事情で、だれも望んではいないけれども、やむなくこれはこれしかできませんと……。国民が願っている教育の問題というものには、例えば四十人学級というものの早期実現であるとかあるいはまた選択の機会を拡大するとか、選択の機会拡大というのは臨教審の基本答申ですが、私は、言葉の上では大変いいと思うのです。しかしそれを用意するためには相当の経費がかかるのじゃないか。いろいろな子供たちが選択できるような科目というものを用意していくとすれば、それをりの先生も、あるいは教室も用意していかなければならない。  一つの例として文部大臣にお伺いしたいのですが、今一次答申、それから二次答申を前にしての審議経過の概要が出ましたが、一番金がかかりそうだなと踏んでいらっしゃる部分というのは何で、どのくらいというふうに踏んでいらっしゃるのでしょうか、お伺いをしたいのです。
  258. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 第一次答申をいただいて着手しておる問題につきましては、先回の委員会でも申し上げましたように、大学の新しいテストがどうなっていくのかということでございますけれども、これについてはただいまも入試センターに、たしか四十四億円だったと思いますが運営のお金を組んでおりますから、これは金目の問題ではなさそうだなという感じがいたします、まあ幾らかはあるでしょうけれども。一番お金のかかる問題は何であるかというと、例えば第一次答申の中では、六年制中学校の制度なんかも指摘を受けております。しかし、これも、全く新しく学校を設置するとすればという全くの仮定計算をしますと、二十四学級ぐもいのものになれば平均して六十億円ぐらいかかるという常識的な計算はありますが、しかし、学校の教育内容とか、それによって必要とする設備とか範囲とかいうことはまだ全然具体的に詰まって我々が政策努力をするところへ来ておりませんので、御検討結論を待たなければなりません。  それから二つ目の、この問審議経過の概要が出てまいりました、これにつきましては、第二次答申をいただきませんとどうなるか、それも今の段階で数字の面まで言及できませんが、先生の御質問の意図を察して考えますと、例えば目玉になっております初任者研修という制度も、やり方いかんによりますが、小中高全部を一年間資質をうんと高めてもらうためにどんな方法があるだろうか、やり方によってやはり何百億というお金がかかるのではないだろうか。  さらに、この間ここで夢として申し上げた高等教育の充実とか、あるいは大学院の整備充実とか、日本の科学技術や先端技術のすそ野のレベルを高めるということにもこれはお金がかなりかかりますし、留学生の問題、国際化時代に応じて例えば今出ておる十万人計画なんというのを留学生できちっとやっていこうとすれば、それに伴う理想的な夢を言うとまた大蔵大臣に後から御相談しなければならぬことばかりですけれども、あくまで夢で言っていると、そういったこともやればやるほどお金がかかるなどいう実感がいたしております。  残念ながら、今ここでこれは幾らだということは、まだ答申も出てきておりませんので、この程度でお許しをいただきたいと思います。
  259. 池田克也

    ○池田(克)委員 今のやり方次第でとおっしゃるこの初任者研修の経費ですけれども、一説によると一千億単位の金がかかるというふうに言われております。大臣もうなずいていらっしゃるので、ある程度の御認識はお持ちだろうと思うのです。  私は去年もこの問題を大蔵大臣にお話をいたしました。たしかそのときは、単年度主義の予算だから、必要な経費はそれぞれ文部省が要求をし、大蔵省が査定をして予算化していく、こういう御答弁でございまして、総理からも国民の合意が強くあれば予算というものはついていくんだ、こういうお話がございまして、大蔵大臣は中曽根内閣の閣僚であるからその趣旨は同じである、こういう御答弁をいただいたのを記憶しているわけであります。  私は、毎年毎年の経費ということは確かに制度としてわかります。しかし教育の改革という点からいきますと、それだけでいいんだろうかというふうな気がするわけでございまして、予算は確かにそういう趣旨でございますが、何か別途の会計を設けて、ロングレンジなものをそこに盛り込んで、具体的な、当然財源には限りがあると思いますが、場合によっては民活にもそれを委託し、この臨教審の答申などにも、教育に関するいろいろ寄附金の税制の問題などももっと活用すべきだ、あるいは科学技術についての民間の資金というものが余り入らないような仕掛けになっているという指摘があるわけでございまして、先般来総理からも、日本の高等教育の将来については科学技術の面が、科学技術とはあえておっしゃいませんでしたけれども、研究の面がおくれている、どちらかというと文科系の研究の面なんかがおくれているのではないか、こういうお話もございましたが、そういう点を考え合わせてみますと、やはり毎年、毎年という積み重ねも大事ですが、長い目で見た経費というものを考え、それをもとにしたプランというものが伸び伸びとできる必要があるのじゃなかろうか。  新聞の報道でございましたが、教育改革特別会計などというのが臨教審でも議論されたなどというお話が出まして、それには国立大学の余った土地を売ったものであるとか、あるいは民間からの寄附をもらうものだとか、さまざまなものをそこにプールして長期的な教育改革の財源に充てたい、このような報道がありまして、私はこれはいい発想ではないかなと、まだ十分に議論したわけではございませんが、報道を見てそう考えたわけでございます。  大蔵大臣のお立場で、この問題はなかなか難しかろうと思います。しかし、将来の日本の政治を御担当なさるというふうに私たちも承っておりますし、そういう観点も含めて教育経費というものの長期的な見通しを政治的にどう考えるか、思い切った御答弁がいただけないものかと思うわけでございます。
  260. 竹下登

    ○竹下国務大臣 元来、制度、施策というものを行うには、これはサービスを受けるものも国民でございますが、負担するのも国民である、そして国民のコンセンサスが那辺にあるかを見定めながら適正な資源配分を行うためには、本来は色のつかない金と申しましょうか、租税収入というものが大宗をなすものがあって、それをそのときどきの情勢によって資源配分を行って、ある意味においては富の再配分も行っていくというのが予算であろうと思います。したがって、一つの特別会計をつくって、仮にそれを特定財源をもって充てるということは、税制の基本的なあり方からすれば、必ずしも好ましいとは言えないということであろうかと思います。  しかし、さはさりながら、単年度主義とはいえ、例えば昭和五十五年に決意しましたのが四十人学級、これは十二年でやろうという、しかし、途中でまた財政困難になりまして、いろいろな工夫を行いながらもまだ十二年の旗をおろしたわけではない、これからもおろそうとは思っていないわけでありますが、そこへ単年度で非常に苦心しながら一つの中長期的な目標を達成していくという努力も、限られた財源の中ではやっていかなきゃならぬことであろうと思います。  私も、四十人学級は、ここで毎年洗脳されまして、もう本当にいいことだと思っております。最初は、本当は、横綱は大きな部屋から出るなんと皆言いますから、むしろたくさんおって切磋琢磨した方がいいんじゃないかと思っておりましたが、翻って、自分は四十人学級以下の小さい田舎の小学校を出たから、やはりそれで私には余りぴんと来なかったのかな、当時の海部さんは六十人学級だといいますから、それでおまえさん優秀だったのかなと言ったら、いや、六十人だからあの程度のものしかできなかったとあるところで言われたという話もしておりまして、毎年議論しているうちに私も四十人学級というのは苦心しながらこれからやっていかなきゃならぬな、そういう中長期なものに対しては苦心しながらもやっていかなきゃならぬ課題だという考えはございますが、にわかに特別会計をつくってやる場合に、さあ特定財源だ、こういう論理に結びついていきます場合は、これは負担するのも国民、受益者も国民と考えた場合、それが適切かどうかということについては、私も大変立派なことですからやりましょうというふうに決断するには、まだかなり遠い距離に自分を置いておるのじゃないかなと思います。
  261. 池田克也

    ○池田(克)委員 この教育のお金の問題、いつまでも議論したいのですが、先ほど主計局長からお話がありました教科書の無償を見直そうというお話、これと給食費に今ライトが当たっている。給食はちょっと後から触れたいと思いますが、最初に教科書の無償の問題、文部大臣のお立場からはいかがでしょうか。
  262. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 御承知のように、我々の先輩が教科書無償制度を法律をつくっておやりになった。このときの趣旨というのは、憲法の二十六条が保障しております義務教育は無償とするというあの精神に少しでも現実のいろいろな政策を近づける努力をしたい、こういうことで、制度がスタートして以来ずっと今日まで定着しておると私は思っております。したがいまして、文部大臣としてどう思うかとお尋ねがあれば、この無償の制度は維持してまいりたい、こう思っております。
  263. 池田克也

    ○池田(克)委員 これは、ことしの文部大臣の所信にも教科書の無償は維持するとうたわれておりました。しかし、大蔵省がそういう意図を依然として持ち続けていらっしゃる。これは重大な問題として、義務教育というものは無償であるという国の根幹の精神をどう貫いていくかという問題として、これから議論をしていきたいと思いますが、ちょっと時間の関係でほかの問題に移りたいと思うのです。  総務庁長官は後からおいでということで、先に文部大臣からお伺いした方がいいかと思っておりますが、総務庁が指摘しております国立大学の共同利用機関の行政監察の結果、私も細かくこれを拝見したわけでございますが、先ほど主計局長からもありましたように、非常に苦しい財政の中からいろいろと削ったりして、地方にもお願いしたりして、そして財源をつくり新しい施策をやっている。行政監察ですからいろいろと指摘がございますが、むだがある。  例えば「林学に関する学科が設置されていない大学の演習林」つまり演習林というのは、林学を勉強するために演習林があるわけなんですが、どういうわけだかこの資料に例示されておりまして、「B大学農学部附属演習林」「当大学には林学に関する学科が置かれていないことから、演習林に関する学生実習計画はない。」「同演習林は農学部キャンパスと至近(約一キロメートル)の位置にあり周辺は住宅化されているが里山として、あるいは大学キャンパスの環境林としての位置付けが濃いものとなっている。」こういう指摘がございましておやと思ったわけでございますが、これは指摘を待つまでもなく、文部省としてその内容については十分に検討されるべきものでありまして、国立大学の会計は学問の自治独立からいけば余り手をつける筋のものではないと思います。しかしながらこういう指摘があって、こういうことがあるとすれば、国民はやはり黙ってないのじゃないかな。これはその後どんなふうな処置がなされているかお答えいただきたいと思います。
  264. 大崎仁

    ○大崎政府委員 先生御指摘のように、昭和五十七年の行政監察におきまして、林学科を置いていない大学における演習林の問題の改善についての御指摘をいただいているわけでございます。これらの大学につきましても、演習林自体の活用というものは農学部あるいは他学部の実習その他である程度の利用、活用はいたしておったわけでございますが、ただ、御指摘の趣旨のとおり演習林という形でそれを位置づけるということがやはり妥当を欠いておるという点はそのとおりでございますので、昭和六十年三月限り省令上の組織としては廃止をいたしておりまして、より総合的な観点から大学全体の教育研究のために役立てるという方向で、それぞれの大学で検討を進めておるという状況にございます。
  265. 池田克也

    ○池田(克)委員 私が申し上げたいのは、そうやって指摘をされてから変わるという——それぞれ事情があろうと思います。どの大学もそれぞれいろんな施設や校地を潤沢に持っていた方がいいという、そういう御判断はあると思います。たしか去年も、私、この問題でお話をしたと思います、学問の自治というものと国が所管している財産の管理という問題。自治であるからすべて一切合財手をつけられないか、国有地のたしか民活の話で申し上げたと思います。これからもぜひ部内でいろいろ研究をして、合理的に進めていただきたいと思うのですが、それに関連してこういう指摘があるんですね。  「共適役務業務の民間委託等の促進」、国立大学等におきまして、清掃、ボイラー運転、庁舎構内の保安警備、電話交換、自動車運転等共適役務業務の民間委託の実施状況調査した。なかなか民間委託が、清掃、ボイラー運転、電話交換業務等は実施されているが、「大学においては、清掃、ボイラー運転業務の一部を民間委託しているものもみられるが、庁舎構内の保安警備、電話交換、自動車運転業務等は、現配置職員の高齢化等から配置転換が困難であること、経費の確保に問題があることなどから民間委託の実施がいまだ十分進められていない実情にある。」こういう指摘がございます。これは、それぞれの大学の事情があると思いますが、私は経費、大変細かいかもしれませんが、一つ一つ経費というものについて節減をしながら進んでいかなければならない事態ではないか。この問題について、どの程度進捗状況があるのかお答えいただきたいと思います。
  266. 西崎清久

    ○西崎政府委員 御指摘の共適役務業務の民間委託等の進捗状況でございますが、国立大学が九十五大学ございますが、まず、警備業務、ガードマン関係につきましては、実施大学が八十四大学に五十九年度達しておりまして八八%になっております。清掃業務につきましては、九十一大学、九六%、ボイラー運転業務につきましては、七十二大学、七六%、電話交換業務につきましては、四十七大学、四九%、自動車運転につきましてはなかなか難しさがありまして、これはまだ一大学、一%、こういう状況でございます。  なお、この点につきましては、今後努力をいたしてまいりたいというふうに思っております。
  267. 池田克也

    ○池田(克)委員 この問題、非常にたくさんの例示が挙げられておりまして、一つ一つお伺いしたいところでございます。  ある博物館におきましては、他の研究所と共通した資料の収集や分析作業が行われている。特に名前は挙げませんが、こういう指摘もあるわけでございまして、確かに、多岐にわたる分野ですからタプるところもたくさんあると思います。あっていけないとは私あえて申しませんが、なるべく合理的なやり方というものをぜひ研究をしていただきたい。強く要望をしたいと思います。  それから、学校給食の問題について少しお伺いをしたいと思うのでございますが、その前に少し高等教育の話が出たりしておりましたので、先般共通テストの問題について私総理にお伺いをいたしまして、総理からは、私大の参加を、非常に否定的に発言ございましたし、あるいはまたマークシート方式について、総理御自身の御意向としては、こういうことで人を選べるとは思わないと。大変私ども、マークシートについてはいろいろな御苦心の米こうなってきていると認識しておりますが、びっくりいたしました。臨教審の答申を受ける政府の側で、臨教審がはっきりと共通テスト、そして、それを六十四年実施と具体的な方向性や年次が決められて進んでいる状況の中で、総理発言はいろんな意味でこれからの臨教審の審議について心配を抱かせるものでございました。  その後、どんなふうなお話し合いがあったのか。本来は、きょうもう一遍、この問題、総理と詰めてお話をしたかったのですが、こういう場ですので、文部大臣から聞かせていただければと思います。
  268. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 御指摘いただきましたとおり、第一次答申の中に盛り込まれておりました大学の入学者選抜制度の改革につきましては、答申を受けた文部省は、大学入学者の選考の制度をどのように変えていくかという改革協議会を昨年の七月にスタートさせまして、今年七月に報告をいただくという予定で、それぞれの関係者がその中にお集まり願って、御努力を願っておることは先生も御理解をいただいておると思います。  前回のこの場所におけるいろいろなやりとりの中で、今度のテストの性格をめぐってのいろいろな角度からの御議論があったと思います。それは、今まで国公立だけで行われてきた共通一次試験、そして共通一次試験のあり方や利用のされ方がいろいろな弊害を世の中に出してきた。それが偏差値による輪切り教育であるとか、大学の序列化が進んでしまったとか、いろいろな批判が出ましたので、そういったことを何とか改善していただきたいと思って今鋭意努力をしていただいておる最中でありまして、御指摘のように臨教審の答申の中には、国公私立を含めて、ただそれをどのように利用するか、全体を利用するのか、一部を利用するのか、どうするかということは個々の大学の自主的な判断で自由に決めていただいて結構ですが、どうするかという改革はひとつやってほしい、弊害は全部取り除いて何とかいい案をつくってほしいという御指摘だと思いまして、今年七月に、いずれにしても協議会から報告がいただけるわけでありますから、その報告を見て、臨教審の答申の精神を尊重しながら新しいテストのあり方というものを前進させていきたい、こう思っておるわけでありまして、まだ政府としてどう対応するのか、そこをどんなふうにしていくのかということ等については前回の委員会以来対応しておりませんし、それを言うならば、七月の報告を今は見守っておる、どんな答申がいただけるのか、協議会の皆さんのあらゆる角度からの御審議に期待をして待っていると、こういうところでございます。
  269. 池田克也

    ○池田(克)委員 それでは、この間の総理答弁は、全く総理のつぶやきですか。七月の方は前からわかっておるのです。七月にいろいろ協議があって、そこから議論が出発するという話は一つあるのです。しかし、それじゃいかぬと総理はおっしゃっておる。ですから、我々はだれの話を信用して見通しを立てればいいのかわからない。  我々は、日本の行政の最高の責任者として総理答弁というものを大事にする  大事にするというか、重要視して、そしてこうなっていくんだろうと思う。国民もそうだと思います。ですからそこのところは、国鉄改革なんかを見ていますと、総理総理の意向というものを反映させて、そのように合った方を更迭していらっしゃるようなこともある。  私は、臨教審があり、臨教審が一つの答えを出してきた。しかし、総理は、それじゃ気に入らぬという御意向のようです。これは総理の話、大臣がお聞きになっていて、違いますか、あれを気に入るというようにお感じになりますか。
  270. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 あのやりとりは、私も確かに聞かせていただきましたけれども、気に入らないとか、否定するとかいうお考えではなくて、制度の基本に関する重大な問題ですから、ですからきちっとした審議会をつくって、そこの委員の皆さんに答申をいただいて、答申を受けて、また、各界の代表の方が具体化するための議論を進めておっていただくわけですから、それはそれできちっと尊重をしていらっしゃると私は思っておりますし、また、内容についても、全く新しい踏み出しですから、きょうまでの一期校、二期校のあり方がなくなったことをいいと見る御意見もあれば、それはよくないからさらに複数機会を与えるという御意見もありましょうし、ですから、やはり個人的にはそれは幅広く、奥深く、いろいろな御意見があろうと思います。だから総理は自分の意見をここで述べられたと思いますけれども、しかし、それは今、手続に従って臨教審の答申、文部省の設置しておる協議会、それの作業のさなかという状況でありますから、御質問に個人のお考え等を含ませてお答えになったと思いますけれども、それは今の進んでおる作業や手続を全く無視していらっしゃるわけではありませんし、ここでもそういう作業の進んでいることは認めてその結果を見守る、こういうことをお答え申し上げておるわけですから、どうぞそれは御理解をいただきたい。いずれにしましても、七月に答申、報告が来ました段階で、我々としては対応し、前進をさせるものはやっていかなければならぬ、こう思っております。
  271. 池田克也

    ○池田(克)委員 七月の答申はわかっておるのです。七月は国会がないのです。そして法案が出るかもしれませんし、概算要求もあると聞いています。なせ私が今国会この場で共通テストの行方について総理に聞いたか。私は総理総理の個人的見解は聞いていません。総理日本の行政の長として教育改革を総理の重要な施策の課題として掲げていらっしゃる。そしてそれが法律もでき、一次の答申もでき、今日まで進んできたことは、総理の個人的な意向でなったのではないんです。私はここで総理の、総理という日本の最高の権力の立場にある方が自分の考えている教育改革の進め方として受けとめたのです。  文部大臣は今、これは総理の個人的見解だ、これは全然納得できない。そんなのならここでこんな審議をする必要はないです。何のために時間を費やして、僕らも勉強して日本のこれからについて総理に聞いているのです。一切合財文部大臣で教育がおさまるのならば、臨教審も要らないはずです。文部省だけではどうにもならない隘路に来て、私たちも臨教審というものが必要だ、文部省を超えたいろいろなところの協力や予算の処置も必要だし、それが教育改革を進めるものだと思って、我々は臨教審の設置には条件つきで賛成をしました。そして答えが出ました。決してそれが一〇〇%いいものではありませんが、少しでもよくなるならということで、一生懸命これを勉強し見守ってきました。今の文部大臣のお考えを聞いていますと、全然総理の意向というものはしんしゃくされない。あれはあれです、我が方は七月の答申を待って予定どおりのコースで行くんだ、こんなばかな話はないと思います。納得できません。委員長、これさばいてください。本当にこの話は私、関心を持っているだけに納得できない。
  272. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 御指摘のように、臨時教育審議会の法案を国会に提案しますときは、私も党の立場で、文教の先生にも御理解と御協力をいただいたことを大変ありがたい思い出として感謝いたしておりますが、そのときも、政党が予断と憶測を持って余り介入しないで、そして専門の委員の方に国会できちっと委員会をつくってそこで御議論をいただこうということでスタートしておるわけでありますから、私どもは、臨時教育審議会における審議、その答申というものは、政府としてはこれを最大に尊重してやっていかなければならぬという基本路線の中におるわけであります。  第一次答申の中でやはり一つの柱として出てきたのが、大学の入学者の選抜の制度を是正しろ、これはいろいろな御承知のとおりの弊害も出てきておるし、将来に向かってはこうした方がよりよいという角度の答申をいただいたわけです。その答申に従って、それはどう具体的にしていくかという改革協議会が今まさにスタートして議論を願っておるさなかでして、そこには国立大学協会の方も私学の代表の方も現場の先生の代表も教育長さんもみんな入って御議論を願っておるさなかで、その御報告が七月に出るわけでありますから、その報告が出る前に、今から予断と憶測を持ってこうだああだということを文部大臣立場で申し上げることは、いささかこれこそ間違った態度になると思いますし、我々もきょうまでやってきました経緯を振り返って、その反省の中から輪切り教育はやめなければならぬ、大学の序列化、系列化みたいな問題は何とかここで脱却させなければならぬ。といって、今世の中がこのままでいいとおっしゃっておるかというとそうではない。改革をしなさい、臨教審の答申を受けてよりよい改革をしなさいとなっておるのですから、その報告をいただいて、その結果を受けて、文部省としてやるべきことを、国会へまた法律としてお願いしなければならぬことがあるなればそれは何だということをきちっと仕分けしてお願いを申し上げるわけでありますから、どうか、改革作業の途中であるということもどうぞ御理解いただきまして、違うとか違わないとか言っておるわけではございません。考えの中で、現在はよくないからここを変えたい、こうしたいという大きな願いのもとで作業をしておるわけでありますから、どうぞそれは御理解とお認めをいただきたいと思います。
  273. 池田克也

    ○池田(克)委員 文部大臣の話は同じ話の繰り返しなんです。要するに、総理はこうおっしゃっているのですね。学生と大学が一対一でぶつかるべきだ、そうして負けたら負けたて、確かにそうですね、負けたら負けたて自分の一つの力の限界がわかるでしょう。これは一つの見識だと思うのです。しかし、かつてのように受けて落ちて、そして何年かたってまた受ける、こういう先ほどからの、経済的な家計の問題もあるでしょう、社会的な現象もあるでしょう。戦前の旧制高等学校の時代、新聞の論調などそういうこともございましたけれども、違ってきている。むしろ今は、何らかの形でどこかにみんながそれぞれ入れるようにしていこう、大学間の格差も国公私の格差もなるべく是正するようにしていこうということで来ておりまして、総理認識とは違う点があると思うのです。総理ははっきりと、そういう大学と学生が一対一でぶつかるべきところに、国などが第三者として入って、そこに何らかのテストみたいなものが介在するのは教育上望ましくないというような趣旨のことをおっしゃっているのですよ。  これは完全に、今までずっと進めてきたところの共通一次テスト、私はあの席でも申し上げましたけれども、要するに大量の学生を採点をする。私どもにも参議院に大学の先生をしていらした方がいらっしゃいまして聞きました。三千五百人ぐらいの答案を見るときには、一分一枚と見ても、ともかく一日五時間の作業をして、そうして十日間かかる、筆記試験というものを見ると。そうすると、最初のときに自分の頭の中にあった採点基準というものが、十日もたつと、一生懸命そろえようと思っても少し違ってくる、こうおっしゃっていました。ついきのうですね、臨教審との懇談会でそういう話が出ました。ですから、数の面から見ますと、やはり記述式というものについては公平の問題からいけば限界がある。マークシートというものは、弊害もありますけれども、マークシートというもののよって来るものもあるのです。  私は、こういう場で総理がはっきりと、こういう国などが介入するような共通のテスト、中間介在物は好ましいことではない、それによっていろいろとまた、どこが受かる受からないというふうな予測が行われていくということも余り好ましいことではない。これは総理が今のどういう時期であるか十分御存じでおっしゃっている。何でもない時期に個人としてインタビューに答えたものではありません。私はここでもって教育改革というテーマのもとに伺っているわけです。それであるならば、中曽根内閣、一致団結して、仕事師と言われでいろいろな改革を進めようとされている。文部大臣は七月まで七月までとおっしゃる。私は七月まで待てないから、その問題についてどういう方向なのかを伺っているわけで、当然七月に出されるレポートも総理の意向というものはある程度私は影響を受けると思いますよ。ですから、その問題については、あれ以後文部大臣総理大臣の間ではお話し合いがあったのかどうか聞かせてください。
  274. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 少しその前に補足させていただきますけれども、私も、大学と受験生が一対一でぶつかり合って合否を決めるべきだという、そうして国が介在して国がそれを決めてしまうということはよくないということは、そのとおりだと思っております。そして、共通一次試験が行われる前に、我々が一つのモデルというような感じで見ましたアビツールとかバカロレアとか、フランスやドイツで行われて、あの制度だけで入学が決まるようなことは、これはいろいろ弊害も出ていろいろよくないこともあって、やはり大学当局との、入学試験の選考、一対一のという言葉はそこで当てはまるわけでありまして、それをするために今の共通一次試験の持っております弊害は、何かずっと偏差値の計算みたいになっちゃって、大学が輪切りにされちゃって、それではよくないのではないかという総理の御指摘はそのとおりだと思うし、そういったことは臨教審で議論された「審議経過の概要」を読んでもよく出ておると思いますから、その方向へ持っていかれることはこれは間違いございません。ただ、第一次試験というものの制度を全く変えて新しいテストにする、それは一対一の、第二次のほかり合いのときに基礎資料というものを……(池田(克)委員総理と話し合ったかということを聞いているのです」と呼ぶ一それは最初申し上げましたように、まだそういった調整、話し合いなしておりません。
  275. 池田克也

    ○池田(克)委員 重大な関心を持たれた問題だと思います。なぜ総理とこの問題についてお話し合いにならなかったのか、私は疑問です。そんな遠いところにいらっしゃるわけではございません。閣議もあったはずです。私はこの意見の食い違いは、それぞれが素知らぬ顔をして済む問題ではないと思います。いかがでしょうか。
  276. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 この問題につきましては長い間の経緯もありますし、それから総理のお考えも、私も今度のことで聞いたわけではありませんけれども、党におりましたころから長い間の経緯で何回も聞いておりまして、審議の中で問題視されておる問題と総理のお気持ちとの間の方向性もわかっております。  それから、全体の改革は、共通一次試験で輪切りにしたり順列にしたり、これで採用するというのではありませんから、今臨教審で議論された中身も、これは使うか使わないかは自由、任意にしておくけれども、それは五教科五科目全部使って平均点でざっと並べると、いい子、悪い子、普通の子という輪切りになって極めてよくないが、使うのを一科目とか二科目とかに限定するとか、採点方法を変えればどうなるか一あるいはこの科目にはこれが必要だという点の配点に計算の傾斜をするとかいろいろな使い方で、その人の資質や個性や能力をいよいよ一対一で、本当に自分の学科でこれは使えるあるいは使えない、向くか向かないかということを大学が判断するときの基礎資料としてそれを利用したら結構です、新しいテストというのはそういう利用の仕方をされる任意なテストですということを総理はおっしゃっているわけで、臨教審の中でもそう言っておるわけです。だから、大きく目指しておる方向というのは私は間違っておらないと思いますし、それぞれの立場の皆さんの御意見等も聞きながら、やはり相交わるところを重ねるようにしてそこを抜き出して一歩前進していかなければならぬことは当然でありますけれども、それぞれの御意見がまだ協議会では集約されておりませんので、またおしかりを受けるかもしれませんが、その協議会の報告を待ってそういったところへ行きたいと思いますが、議論されておる方向は、今問題点を二、三指摘しましたように、今行われておる共通一次の、まさに総理や先生が御指摘されたような問題点を踏み越えてよりよい方向へ持っていき、一対一の二次試験のぶつかり合いの場に基礎資料として判断されるように大学が自由に利用されたらよろしいということにあると思いますから、そういうような方向の報告が来るものと私は期待をして見守っておるわけであります。
  277. 池田克也

    ○池田(克)委員 全然話がかみ合わないのです。  要するに、総理がああいう発言をされて、その一番所管大臣である文部大臣総理とこの話を詰めなかったというのは私は不思議でならないのです。しかも、今ちょうど子供たちは試験を受けている時期です。何年後から自分たちも試験を受ける。どうなるんだろうか。記述式になるんだろうか。みんな国民は、父兄も関係者の先生方もそういう思いを持っていらっしゃる。  確かに記述式で今までずっと来た日本の試験の歴史です。マークシートが始まったのは、この共通一次試験からのことで、八年の歴史です。共通一次試験だけでもいろいろと問題がございます。今申し上げたように採点の問題もありますし、いろいろあります。けれども、総理がそうおっしゃった。どっちになるんだろうか、みんなそういう関心を持って見詰めているような問題です。さらに、この間の文部大臣答弁でも、私大もなるべく参加されるようにいろいろと努力をしますとおっしゃっている。総理は私大の参加は必要ないとおっしゃる。これはみんな迷います。私大の中にも、どうしようか、なるべくならばみんなが、国公私ということで試験がそれぞれ一つのレベルをテストしていくのならば参加してもいいという大学もあった。総理がそれは必要ない。そうすると、それに沿ったような対応を文部省としてはするだろうし。  私は、この問題については、やはり総理考えていらっしゃることについて、文部省としては何がしかの説明をし、総理もこの部分はそれでは自分の趣旨を生かして何らかの、一つの妥協と申しましょうか、話し合いの結果のお答えがあるだろうと思っておりましたが、今もって総理と文部大臣の間に何もないということは、この間の話が全く——言うならば真剣に教育改革や入試改革について文部省も総理もお考えになっていないのかな。総理が文部大臣を呼ばれて、こういうことなんだ、どうなのか、できるできないという問題はどうなんだとお聞きになったかなと思っていました。中曽根内閣の教育改革に対する御熱意を私は疑う気持ちです、今の御答弁を伺っておりまして。いかがでしょうか。
  278. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 総理の共通一次試験に対する基本的なお考え方は、私きょうまで何回もお伺いしてよく理解しておりますし、そういった私の理解の背景に立って言うと、ここで御答弁なさったことも、総理の御意見としてはそれはそうだなというわかるところもございます。しかし、政府は、今臨時教育審議会の答申を尊重して改革に向かっていきますという基本的な態度でやっておるわけでありまして、党にも長い間文教改革のためにいろいろやってきました政策がございます。その政策と七月に出てくる報告とがどうなるかということも一つの問題点としてありますし、総理からは直接まだ、こういう短時間なことですから時間の問題等もあって、私はわかっておりますから、私を呼ばれてその打ち合わせをするとか——私と総理とで今打ち合わせをするということは、では改革協議会というものが流れておってそれの報告にどういう影響を与えるかという問題等もありますので、これは党の方にお願いをして、党のいろいろな立場の方と、それから党のきょうまでの流れの中で総理のこの問題に対する御見解等もわかっておるわけです。ですから、それに従うような改革を文部省もやるときには、しかし答申を尊重してやっていく以上、それから総理の指摘されておる弊害と我々の理解しております弊害とが同じレベルに立った弊害である以上、これはそのときになってきちっとお話し合いをすればきっと妥協できるものである、こう思っております。お言葉を返すようで恐縮ですが、マークシート方式に関しましても、その出題のあり方、答えの流れによっていろいろな角度の資質や適性を見ることができるのだということにもなっておりますし、それはそういった専門家が集まって今いろいろ調査研究しておるところでありますので、どうぞ御理解をいただきたいと思います。
  279. 池田克也

    ○池田(克)委員 何度伺ってもさっぱりわからないのです。  改革協議会のメンバーから私聞きました。いろいろ資料を集めている、資料は集めているけれども、それはあくまでも資料であって、一つの決断を下すときには、いろいろな影響力を持った人がどう考えているかを知りたい、率直に申しまして、私はこの改革協議会のメンバーの何人がからそういう御意見を伺いました。総理が何を考えているか。いろいろなところの総理発言がある。私大の参加についても、あるいは任意性についても、何回か——あのときもおっしゃっていました。何回か繰り返して、しかも滑りどめを用意するということもおっしゃっていました。今度の問題からも、共通テストをやるとすればせいぜい二回が限度じゃないか。私大の参加を入れますと、十二月ごろ試験をしなければならない。今は一月に共通一次をやっていますけれども、繰り上げていかなくてはならない。推薦制もあります。そういう点から考えると、何回かと言っても限度がありますし、この試験をクリアすれば次の二次試験があるとすれば、春の短い期間にたくさんの大学がやり、しかも任意性を持つとすれば、学生にとっては、一つ受かった、もう一つ行かなければならない、早く発表してあげなければ困る、こういう問題を考えますと、やはり一つの流れというものがあろうかと思います。  総理発言は率直なお気持ちを述べられたものだと私は思いますが、それをある程度具体的な線として整理し直してこの議論の場にお出しいただくのが文部大臣の仕事ではないか。改革協議会、私たちは直接関係ありません。文部省内にできている協議会です。国会の場で議論の話題になったものについてはなるべく早い時期にその問題のお答えをつくられるのが私は筋だろうと思いますし、これはいつまでやっても切りがないことですけれども、どうでしょうか、この予算の最終までの間に協議されて、これからの入試改善についての何らかの、総理、文部大臣、あるいはその他の諸先生方の意見の統一的な見解というものをつくっていただくわけにはいかないでしょうか。
  280. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 先生、これは制度の根幹に関する大問題でありますから、それで私も発言を極めて慎まなければなりませんけれども、改革協議会の委員の皆さんのどなたが先生にそういうことをおっしゃったかはよくわかりませんが、この国会の場における議論とかきょうまで出てきた弊害が何であったかということは協議会の先生もそれは十分踏まえて、そういったことも御判断の上でいろいろ御議論をまさに願っておる最中だと私は思うのです。それで、いきなり国会の場でそれをまた私が調べ上げてきてどうのこうのというのも、文部大臣立場としてはこれはもっと慎重であらねばならぬと思っておりますので、一度その作業の流れ等も十分に私の方も見ておりますし、それから、まさに協議会の中にはこれから担当してくださる国立大学協会や私学総連合の皆さんや児童生徒を担当しておる高等学校の立場の人や、みんなが入っての意見がそこで行われておるわけですから、お願いしてせっかくやっておるわけでありますので、どうか済みませんけれども、その報告をいただくまではお待ち願うわけにいかぬでしょうか。
  281. 池田克也

    ○池田(克)委員 せっかくの文部大臣の御答弁ですが、私は常識的な改革について総理に申し上げたのです。そうしたら、せっかくの池田さんの話だけれどもそれは私はのめないのだ、これは私の一つの持論であって、これは譲れないのだとはっきり総理はおっしゃった。私は、決して、今まで入試制度について勉強してきて、めちゃくちゃな話をここで提案したのじゃないのです。それで、私はめちゃくちゃな話じゃなくて、ある程度多数の受験者がいる中で、その受験者の、割と機械的に見れるところと個性を見るところとあるだろう、ですから共通試験があって二次試験があって、それはわかる、それについて私大も参加できるようにいろいろと変わってきた、こう申し上げたら、いや、それはだめなんですよとはっきりおっしゃった。大蔵大臣総務庁長官もそばにいらっしゃってあの話は御記憶だったかなと思いますけれども、私は、その点については大きな関心事ですからはっきりしていただきたいのです。
  282. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 せっかくの先生の御議論でございますから、私の立場でできるだけの努力をするのは当然と思いますから、協議会の方にも七月までよりも前に何らかの点でおまとめいただけることができるかできないか、それから、そうである場合にはその中間でどうするかということ等についても御報告をいたしますし、それから総理大臣とも一回改めて、こういう御議論があったということ等も踏まえて御相談をさしていただきます。
  283. 池田克也

    ○池田(克)委員 私、申し上げているのは、今国の予算を審議しております。この予算の中には、一番最初私が問題提起いたしましたように、苦しい家計の中から税金を納めている方々の税金の使い道について議論していると思います。しかも、大蔵大臣もおっしゃっていましたように、子供の大学進学、ここにもちょっとしたデータがありますけれども、家計の一割あるいは一割何分という統計ですが、実感としてはもっとだろうと思います。入学すれば百万単位の金がすぐかかる。しかも、相次いで兄弟が大学へ行くというような状況がある。しかも、大学をしくじれはまた予備校へ通わなければならない。しかも、地方から東京に行って大学生活じゃなしに予備校生活をしている家計もある。そういうところから、もしかしたら増税をしなきゃならないかという議論が今出て、この国会の重大な議論になってきている。我々は減税を要求していますが、増税を税調にお願いしているという話を繰り返し大蔵大臣もしていらっしゃいます。  この予算審議というのは、私は教育改革と全く無関係ではないと思います。その教育改革の一番の中心的問題点は入試改善だと私は思います。と同時に、大学の入学料であり検定料であり、どういう大学に行くか、家から遠いところか近いところか考えますと、家計の出費に重大な影響を持つ大学の改革です。その問題についての総理のお話と文部大臣の今のお話とが決着つかなければ一この予算について、私は予算委員として賛成か反対かの態度表明すらできない気持ちです。ぜひこの予算の最終までの段階に何らかの詰めをしていただいて、納得のできる進行状況にしていただかなければ、私としては問題提起した意味が全くないじゃないかと思います。  委員長、ぜひこれは御協議いただきたいと思います。
  284. 原田昇左右

    原田(昇)委員長代理 池田さん、今文部大臣が誠意のある答弁をされたと思いますが、さらに質問続行されますか、今の件について。——じゃ、続けてください。池田君。
  285. 池田克也

    ○池田(克)委員 今の問題、文部大臣からも御答弁があったのですが、私は今の率直な気持ちを申し上げました。予算と教育という問題についての気持ちでございまして、委員長のお計らいが今理事間であったそうですので、理事会で協議をしていただくのであれば、この問題、少し残っておりますが保留して、次へ進みたいと思いますが、委員長から御発言いただければと思います。
  286. 原田昇左右

    原田(昇)委員長代理 今の問題については、さらに理事会で協議をいたします。
  287. 池田克也

    ○池田(克)委員 給食の問題について実はお伺いをしたかったのですが、時間がなくなってしまいまして、せっかく農林大臣いらっしゃっておりますので、ぜひ一問だけお伺いをしたいと思います。申しわけありません、私はちょっとゆるがせにできないこの問題の意識を持っておりましたので。  行管庁からもこの学校給食についていろいろな指摘があるわけでございます。率直に申しまして、総務庁行監からの給食に関する答申と申しましょうか勧告を見ますと、指定品目とされております四種類、あるいは承認品目とされております十七種類、例えばお米であるとか麦であるとかこうしたものでございますし、中にはスパゲティとかございますが、こういう指定はもう必要ない、こういう勧告が一つあるわけでございます。  これは、教育の場に適切なものを食べさせていくという、戦後からの一つの農林政策の一環であろうと思っておりますが、私は、この問題、総務庁長官もおいでいただきましたのでお伺いし、どういうことになっていくのか、また文部大臣からは、そういう農林省の指定や承認品目がなくなれば、それはそのまま父兄の食材費負担にはね返ってくるのかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  288. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 給食の問題は、もう既に御承知のように、これは一兆円を超える大きな問題でございますね。そこで、行政監察に付しまして、そして文部省に勧告をし、各都道府県の教育委員会に対して体育局長名で六十年の一月二十一日、通知を出したわけですね。そして、民間に委託をしたらどうだ、共同炊事をやったらどうだ、パートの職員を導入したらどうだ、こういうことでこの勧告をしておるわけでございます。したがって、その成り行きを今見守っておる。この成果が上がるようにぜひ協力を願わしいというところで、一生懸命見守っておるわけです。
  289. 古村澄一

    ○古村政府委員 給食用物資のあっせん、いわゆる承認物資のお話でございますが、これは昭和四十八、九年のいわゆるオイルショックあるいは物資不足という時代からかなり、当時の日本学校給食会が一括購入をして学校給食を行う学校にあっせんしていたという経緯がございます。そういった経緯からできたわけでございますが、確かに総務庁からの御勧告で、少し承認物資を見直したらどうかという勧告もございますので、現在、昭和五十九年度には、承認物資を三物資廃止し、それから六十年度におきましても三物資をそれぞれ廃止いたしました。また六十一年度におきましてさらに三物資を廃止するということで、時代的に見て必要のない物資についてはそれぞれ廃止していくということにしまして進んでいるわけでございます。
  290. 池田克也

    ○池田(克)委員 農林省としてはあれですか、所期の目的を達したので、そういう方向で結構だということでしょうか。
  291. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 給食につきましては、実はここにこんなのがあるんですけれども、テレビによる子供の食生活の啓発というので、「心配です。食の乱れ」というのがございます。昨年の五月に何か放映されたようであります。こういうものを見ましたり、我々が日常の子供たちの食生活というものを見ましたときにも、どうもスナック食品ですとかあるいは軽飲料ですとか、そんなものに簡単に飛びついてしまう。しかも家庭の中にあっても、割合とそういった加工されたものが食べられやすい。そして何というんですか、イワシのようなカルシウムの非常に高いもの、こんなものは、骨のあるものは食べないというようなことで、非常に子供たちの食生活の乱れというものが今心配されております。このままいくと、私はこれは個人的なあれですけれども、高齢化社会というのは本当に大丈夫なのかなとさえ実は心配しておるところです。  そんなときに農林水産省としましても、米ですとかあるいは魚ですかとあるいはミルク、牛乳ですとか、ともかく日本型の食生活、また地域地域に根差した食生活、こういうものを一つの、やっぱりバランスを考えながら日本型食生活というものを少し普及する必要があるんじゃないか。そしてやっぱり子供のころに食生活になじんだものというのは大人になってもあらわれてくる、これは自分たちの経験からもそのことは言えるわけでありまして、そういう意味で私は、今改めて給食というものが非常に重要じゃないかなという認識を私自身持っておるということを申し上げます。
  292. 池田克也

    ○池田(克)委員 給食の問題、余り時間とらないですが、最後に一つだけ。  私立の中学における給食ですが、私は私立の中学もまた義務教育であって、私立の中学の給食の実情というのが大変件数も少なく、みんなお弁当を持ったりあるいは学校の食堂で食事をしたりしているのではないか。教科書は公立も私立も分け隔てなく無償支給されておりますが、義務教育という観点から見るならば、私立の学校における給食費、給食と申しましょうか食費ですね、これに何らかの配慮をすべきではないか。かなり父兄負担の中で学校の食堂の食券が売られたりあるいはお弁当を持ってきたりいろいろありますが、実際の経費としては父母の負担がある、こう考えておりますので、これについて実情と、御研究される意図はないか、お伺いしたいと思います。
  293. 古村澄一

    ○古村政府委員 御指摘のとおり、私立学校におきます学校給食の実施率といいますのは小学校で四四%、中学校で一三%ということで、公立に比べますと、公立が小学校で九八%、中学校で八九%の実施率に比べますと大変低いというのが現状でございます。  学校給食につきましては、国としては奨励をいたしておりますが、やるかやらないかというのは設置者の判断でございます。したがって、学校の設置者であります学校法人側において学校給食を実施するということになりますれば、学校給食用の施設設備に対する国の助成というのは公立と同じように行います。また、学校給食用に使います米とかあるいは牛乳についての国庫の助成といいますか、そういったものについても、私立の学校につきましても公立と同じように扱いますので、それは学校の設置者側に対してなお学校給食の実施について奨励、御指導申し上げたいというふうに考えているわけでございます。
  294. 池田克也

    ○池田(克)委員 今のお話ですと、私立ても学校給食をやればいろいろと手伝ってもらえる。売店があってそこでお弁当を買う、あるいは食堂があって子供がお金を払って御飯を食べる。子供の側、親の側からすれば同じ、何が食べるんですね。これはどうしてあれなんですか。学校給食じゃなければだめなんでしょうか。この総務庁のものによりますと、民間委託をしなさいという話がありまして、民間委託も学校でやるのも同じ保健所がきちっと調べて、衛生状態も何もちゃんとできるんじゃないかというふうに、民間委託についてはそういう話があるわけです。我々から見ますと、そういう点では、確かに食堂もあるいは売店もきれいにパックされていればお弁当はお弁当です。子供の食べる物というとらえ方をして、給食をきちっとして学校が実施すればお手伝いしてもらえる、そうでなければ何もないというのは不公平じゃないかと思うのですけれども、これはどんなものでしょうか。
  295. 古村澄一

    ○古村政府委員 学校給食というのは、御承知のとおり、学校給食法に基づいて一つの教育的な目的を持って行うものでございまして、食べるという事実行為はあるわけでございますが、それ以上に教育的な価値があるということで学校給食というのは位置づけをされている。したがいまして、今おっしゃいましたように、学校食堂で食券をもって買うというようなことは、これは弁当を食べるということであって、そういったいわゆる教育課程の、学校教育活動の一環として行っている学校給食とは若干意味が違う。そこで、学校給食を行うことについては食糧政策上も、いわゆるそういった米については割引米を出すというふうな政策がとられているわけでございまして、一般の食堂あるいは売店で買うといったことについてまでのことはやってないというのが現状だと思います。     〔原田(昇)委員長代理退席、委員長着席〕
  296. 池田克也

    ○池田(克)委員 私は、今申し上げたように、確かに学校給食は教育である、お弁当はお弁当だ。好き嫌いの問題もあるでしょうし、いろいろとお家の家計とか好みの問題もあると思うのですね。しかしそれは、確かにそういう観点は私は大事だと思うのです。反面、教育費の父兄負担という点から考えるならば、これにライトを当てて、例えば日がわりのメニューとか栄養価とか、学校は毎日子供たちにまとまった数を供給しているわけですから、やはりそれについて指導したり研修したりすることは可能だと思うのですね。そして、ある程度のそういうことができるならば、私は私立学校についても、給食と同じじゃなくても、何らかの差はつけてもそういう配慮をして、父兄の負担を軽くしていくということは考えられる道筋じゃないかなと思うのですけれども、この話聞いてらっしっていかがでしょうか。文部大臣はお立場がお立場ですけれども、総務庁長官いかがですか。
  297. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 やはりこういう問題は、私立になりますとそれぞれ建学の精神も違いましょうし、いろんな方針もありましょうから、にわかに私がそれについてとやこう言う立場にはないと思いますが、おっしゃる意味はよくわかります。奨励されることは結構だと思いますね。そして、清潔でカロリーもきちっとして、公立並みであるということが望ましいですね。それはよく承りました。ただ、私の立場として、確定的な返事は差し控えたいと思います。
  298. 池田克也

    ○池田(克)委員 文部大臣いかがですか。この問題、将来の検討課題として御研究いただけませんか。
  299. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 この問題は、やはり御指摘のように、給食というものは教育の要素も多くあるという判断で、設置者の方がおやりになるときは、施設設備費やその他について公立と全く同様にきょうまでも扱ってきておりますし、また私学の設置者に対しても、給食される方が、給食をやってくださった方が望ましいという態度で奨励、指導はきょうまでもしてきたつもりでありますから、これからもそのような方向で奨励指導をしてまいりたいと思います。
  300. 池田克也

    ○池田(克)委員 時間がございませんので、この問題はこれだけにしておきます。  運輸大臣お見えでございますので、大変時間が切迫して恐縮ですが、実は十八日の夕刊から、「私鉄複々線化の推進資金 運賃上げ先取りで 特別法案決定」ということが報ぜられました。いわゆる三大都市圏の問題だと思いますが、私鉄の輸送量増強をもくろんで、高架複々線化を推進する、こういう法律でございます。私が承知しているところでは、運賃を上げて、その上げた分を無税でためておいて、そして高架化を推進する、こういうことでございますが、いろいろ問題がある。  私も東京の過密なところを地域として活動しておりまして、ここに六つ案が挙がっております三線、やはり直接な関係があるものですから、この法律の概要、そして運賃としてはどのくらいが上乗せされる予定なのか、その部分お答えいただきたいと思います。
  301. 三塚博

    ○三塚国務大臣 本件は、大都市の通学通勤に対して公共交通機関として対応をしたいという私鉄側の強い要望、また運輸省として、さもありなん、だが投下資本が大変高いものでございますから、到底今日の私鉄の経営上からは難しい、こういうことの中で、今御指摘のような、運賃の一部を積み立てておいて、それを原資とする形の中で取り組む、こういうことであります。詳しくは政府委員から説明をさせますが、東京でいいますと、九百二十二キロありますうち複々線化は辛うじて十一キロという過密地区、密度の高いところのみでありまして、あのとおり大変もうはみ出て大変なものでありますから、何とか複々線化を進めるという運輸政策の観点から本制度を政府制度として今回御提案をする、こういうことであります。
  302. 池田克也

    ○池田(克)委員 私も若干勉強しましたので、法律の趣旨はわかりましたけれども、つまり遠くへお客を大量に運ぶ。ところが、通過するところがあるわけです。従来は確かに踏切の渋滞等いろいろ問題があったものの、ともかく日の当たる家に住んで、目の前は電車が通っているということだったのだが、にわかに大城壁がそこにできてくるわけであります。したがって、例えば代々木上原というところがございますが、大変従来は静かな、坂道の多い町でございましたが、そこに大きな駅、高架ができまして、全部それが遮断されましたので、山から風が参りません。谷底は夏なんか蒸しぶろのようになるわけであります。しかも、そういってはなんですが、微生物、ゴキブリが発生する。全然環境ががらっと変わってしまいました。今その一つの実例がありますために、その沿線の人たちは非常に高架問題について過敏でございます。いろいろと私たちもお話を聞き、鉄道会社とも話し合いをいたしておりますけれども、非常に心配をしておるわけです。しかも、電波障害もある。テレビがほとんど映らなくなってくる。あるいはまた商店街からは、高架の下に商店が入ってくると、きっと高い家賃で、そして自分たちと同業者が来ればきっと有名なところが来るだろう、自分たちの商売はどうなるのだろう、こういう問題もあるわけです。  したがって、この法律が、従来の鉄道が努力してやるというところに加えて、運賃を余分に取って結構だ、それを十年の間でもって何とかやりなさいという法律ですから、住民はびっくりして跳び上がると思う。これは運んでもらう方は、電車が速くなって急行もたくさん出るだろう、あるいはまた踏切の渋滞も解消されるだろうというプラス面はあるだろうと思いますが、当然この問題で法律によって、しかも利用者からそのための推進の資金を取ってやるということになりますと、これは全く国の政策としてやる以上は、その住民たちの不安を取り除く対策というものをきちっとしていかなければならない。  環境庁長官お見えですので、環境行政からこの問題についてどうなふうにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
  303. 森美秀

    ○森国務大臣 お答えします。  私ども環境庁といたしますと、この沿線の騒音だとかあるいは振動等々、先生おっしゃるような環境問題が生じないように、例えば防音壁とかバラストマットを敷くとか、あるいはロングレールにするとか等の対策が講ぜられるべきものと考えております。  本法案の提出に当たりましては、沿線の環境保全ということに万全の重点を置きまして、そういったことについて運輸省に強く申し入れをするわけでございます。
  304. 池田克也

    ○池田(克)委員 自治大臣がお見えでございます。お忙しいところを恐縮でございました。やはり関連の地方自治体からはいろいろな話が私たちのところにも入ってきております。当然側道をつけていくことになるだろうと思いますし、また立体化に伴っていろいろと、この際ということで道路の拡幅もあるでしょう。これは建設省所管のこともあると思います。当然それに伴っていろいろと用途地域の問題もあろうと思いますし、地方自治体としてはかなりの町並みの変化という問題があるわけでございまして、自治大臣としてはこの問題についてどんなお考えを持っているか、お聞かせをいただきたいと思います。
  305. 小沢一郎

    ○小沢国務大臣 この法律案そのものは、直接的には地方自治体や自治省と関連するものではないと思いますが、今先生御指摘のように、地域住民の環境の問題とか、あるいは側道をつけるにいたしましても、踏切を立体交差にするにいたしましても、そうしますと地方自治体の負担の問題が生じるかもしれませんし、そういったもろもろの地域、地方公共団体に関連してくる点も多々あると思いますので、私どもといたしましても関心を持ってこの問題を見守りながら、また主管の省庁とも十分連絡をいたしながら、対処してまいりたいと思います。
  306. 池田克也

    ○池田(克)委員 要するに運賃に上乗せするわけでございまして、先ほど運輸大臣から幾らぐらいの運賃上乗せという額のお話はなかったかと思いますが、ちょっとあとまとめて御質問しますので、それに関連してお答えいただきたいと思うのです。  要するに、今利用している人たちが運賃の上乗せを払ってまいりますが、その人たちができ上がってからもそこにいるとは限らないわけです。例えば学生などがそうです。あるいはまた家を自分で持ってないアパートのようなところに住んでいる人たち。大都会の場合大多数そうでございます。そういう人たちから見ると、やがて自分がそこに住む、それについてそういうことを積み上げていくというのであるならば、これは一つの納得をするかもわかりませんが、そういう方々にとってはえらい迷惑な話だ。そうでなくても、これから工事が始まりますと、恐らくいろいろな構築物が周りにでき、できるまでの間にはかなりの迷惑というものがその住民にもかかってくるだろうと思うのです。  そういう点を考えますと、今の料金に何ほどか上乗せしていくということは、私は住民の納得を得ることはなかなか難しかろう、よほどみんなによく説明をし、時間をかけ、そしてなるほどこういうことかという合意が得られなければ、そう軽々にこの法律を動かす、動かすというか認めるわけにはいかないんじゃないかというように、まだこれから運輸委員会等で始まると思いますけれども、問題を申し上げておきたいと思うわけでございます。
  307. 服部経治

    ○服部政府委員 ただいまの先生のお尋ねは二点にわたったと思います。  まず第一点目の、本制度におきます所要の運賃の値上げ幅の問題でございますが、先生正しく御理解のように、この積立金の原資は鉄道事業者の運賃収入にその原資を仰ぐものでございますが、これにつきましては、まず本法の予定する政令の中におきまして、政令で定める一定の割合のものを運賃収入に乗ずる、そのものを積み立てるという格好になっておりまして、その積立率は、事業の規模に応じまして三ないし六%ということを私ども考えております。したがいまして、その上乗せ分をつくりますための改定率でございますが、今申し上げました三ないし六%というそれぞれの率に応じまして、ほぼそれに見合った率の改定を要することになろうかというふうに思っております。  それから、二点目のお尋ねでございますが、確かに先生のおっしゃるとおり、こういった大規模の工事につきましては特にその完成までの期間が長年月に及ぶわけでございまして、確かにその複々線化等の工事による利益を享受するグループと、それから前もって運賃を負担する利用者のグループというものとの間に、厳密な意味では一対一の対応関係というのが確保し得ないケースは当然に予想されるわけでございますが、私ども本制度の創設に当たりましては、この制度が非常に多くの鉄道利用者の極めて大きな利便につながる制度だということを踏まえまして、そういった運賃を負担する利用者のグループとそれから利益を享受する利用者のグループとの間には、今先生御指摘のような必ずしも一対一の完全な対応関係というのはないわけでございますけれども、これをグループ同士マクロ的に把握してとらえますと、その間にはなお確かな同一性といいますか対応性を認めることができるというふうな一つの割り切った考え方をとったところでございまして、私どもといたしましては、事の性質上こういった考え方は社会的に容認され得る考え方だというふうに考えておるところでございます。
  308. 池田克也

    ○池田(克)委員 時間がございませんので、この問題は問題点を指摘するにとどめたいと思います。  交通の問題は非常に利害の絡むことでございまして、高速鉄道が通る、そして急行で早く行けるということは、当然、遠隔地においては地価が上がり、鉄道会社もそれによって利益を得る。鉄道もまたそうした住宅地を造成したりして、それなりの事業を関連して持っているわけでございます。そうした点から、土地の開発というもの、これは高架になり複々線になれば本当に瞬時にしてと申しましょうか、発達によってそこへ到達できる。率直に申しまして、私の日々通勤しているような地域でも、新宿から経堂というところに到着する時間と、新宿から登戸あるいはもっと先へ行く時間がほぼ同じである、途中でいろいろと電車待ちなどもありますし、急行が出ている。ということになりますと、従来の都市の現象というものはいろいろ形を変えてくるであろうと思うのです。したがって、速くたくさん高架で送ればプラスになる人たちがいると思いますが、当然それまでの間にいろいろと合意を積み重ね、そのための旧市街地の整備という問題もまた絡んでくる。いろいろな要因があると思うのですね。したがって、ぜひその問題についてこれからも、運輸大臣が所管していらっしゃるので、注意深く各関係のお役所とも協議されて、私ども地元の意見というものも十分に聞いて、そして審議をしていただきたいと思うわけでございます。  きょうはほかにもいろいろとお尋ねをしたく、また御用意をいただいた方もいらっしゃるわけでございますが、また後日に譲らせていただきたいと思います。ありがとうございました。
  309. 小渕恵三

    小渕委員長 これにて池田君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十二日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五十三分散会