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1986-02-20 第104回国会 衆議院 予算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年二月二十日(木曜日)     午前十時二分開議 出席委員   委員長 小渕 恵三君    理事 中島源太郎君 理事 浜田 幸一君    理事 林  義郎君 理事 原田昇左右君    理事 渡辺 秀央君 理事 稲葉 誠一君    理事 岡田 利春君 理事 二見 伸明君    理事 吉田 之久君       相沢 英之君    伊藤宗一郎君       石原健太郎君    石原慎太郎君       上村千一郎君   小此木彦三郎君       大西 正男君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    倉成  正君       砂田 重民君    住  栄作君       田中 龍夫君    葉梨 信行君       橋本龍太郎君    原田  憲君       三原 朝雄君    武藤 嘉文君       村山 達雄君    山下 元利君       井上 一成君    井上 普方君       上田  哲君    大出  俊君       川崎 寛治君    川俣健二郎君       佐藤 観樹君    多賀谷眞稔君       戸田 菊雄君    浜西 鉄雄君       松浦 利尚君    池田 克也君       近江巳記夫君    神崎 武法君       木下敬之助君    小平  忠君       瀬崎 博義君    藤田 スミ君       松本 善明君    三浦  久君 出席国務大臣        外 務 大 臣 安倍晋太郎君        大 蔵 大 臣 竹下  登君        文 部 大 臣 海部 俊樹君        厚 生 大 臣 今井  勇君        農林水産大臣  羽田  孜君        通商産業大臣  渡辺美智雄君        運 輸 大 臣 三塚  博君        郵 政 大 臣 佐藤 文生君        労 働 大 臣 林  ゆう君        建 設 大 臣 江藤 隆美君        自 治 大 臣        国家公安委員会        委員長     小沢 一郎君        国 務 大 臣        (内閣官房長官        )       後藤田正晴君        国 務 大 臣        (総務庁長官) 江崎 真澄君        国 務 大 臣        (防衛庁長官) 加藤 紘一君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)      平泉  渉君 出席政府委員        内閣審議官   中島 眞二君        日本国有鉄道再        延監理委員会事        務局次長    吉田 耕三君        公正取引委員会        事務局取引部長 利部 脩二君        総務庁長官官房        審議官     百崎  英君        総務庁人事局長 手塚 康夫君        防衛庁参事官  瀬木 博基君        防衛庁参事官  筒井 良三君        防衛庁長官官房        長       宍倉 宗夫君        防衛庁防衛局長 西廣 整輝君        防衛庁経理局長 池田 久克君        防衛施設庁建設        部長      大原 舜世君        経済企画庁調整        局長      赤羽 隆夫君        外務大臣官房審        議官      福田  博君        外務省アジア局        長       後藤 利雄君        外務省北米局長 藤井 宏昭君        外務省中南米局        長       山口 達男君        外務省欧亜局長 西山 健彦君        外務省中近東ア        フリカ局長   三宅 和助君        外務省経済協力        局長      藤田 公郎君        外務省条約局長 小和田 恒君        大蔵大臣官房審        議官        兼内閣審議官  門田  實君        大蔵大臣官房審        議官      入江 敏行君        大蔵省主計局長 吉野 良彦君        大蔵省主税局長 水野  勝君        大蔵省銀行局長 吉田 正輝君        大蔵省国際金融        局長      行天 豊雄君        国税庁次長        国税庁税部長        事務取扱    塚越 則男君        文部省初等中等        教育局長    高石 邦男君        文部省高等教育        局長      大崎  仁君        文化庁次長   加戸 守行君        厚生省生活衛生        局水道環境部長 森下 忠幸君        農林水産大臣官        房長      田中 宏尚君        農林水産大臣官        房予算課長   鶴岡 俊彦君        農林水産省畜産        局長      大坪 敏男君        農林水産省食品        流通局長    鴻巣 健治君        食糧庁長官   石川  弘君        通商産業省機械        情報産業局長  杉山  弘君        資源エネルギー        庁長官     野々内 隆君        中小企業庁長官 木下 博生君        運輸大臣官房国        有鉄道再建総括        審議官     棚橋  泰君        運輸大臣官房国        有鉄道部長   丹羽  晟君        海上保安庁次表 岡田 専治君        郵政省貯金局長 塩谷  稔君        労働省労政局長 加藤  孝君        労働省婦人局長 佐藤ギン子君        労働省職業安定        局長      白井晋太郎君        建設大臣官房会        計課長     望月 薫雄君        建設省河川局長 廣瀬 利雄君        建設省住宅局長 渡辺  尚君        自治省財政局長 花岡 圭三君        自治省税務局長 矢野浩一郎委員外出席者        日本国有鉄道総        裁       杉浦 喬也君        日本国有鉄道常        務理事     岡田  宏君        日本国有鉄道常        務理事     澄田 信義君        日本国有鉄道常        務理事     前田喜代治君        参  考  人        (日本銀行総裁        )       澄田  智君        参  考  人        (日本国有鉄道        再建監理委員会        委員長)    亀井 正夫君        予算委員会調査        室長      大内  宏君     ————————————— 委員の異動 二月二十日  辞任         補欠選任   井上 普方君     戸田 菊雄君   大出  俊君     浜西 鉄雄君   中川利三郎君     三浦  久君 同日  辞任         補欠選任   戸田 菊雄君     井上 普方君   浜西 鉄雄君     大出  俊君   三浦  久君     藤田 スミ君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和六十一年度一般会計予算  昭和六十一年度特別会計予算  昭和六十一年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 小渕恵三

    小渕委員長 これより会議を開きます。  昭和六十一年度一般会計予算昭和六十一年度特別会計予算昭和六十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上一成君。
  3. 井上一成

    井上(一)委員 まだ外務大臣がお見えでありませんので、若干、円高不況による問題点について質問をいたしたいと思います。  昨日、円相場は百七十七円、円高による不況産業、とりわけ非鉄金属業界は、この円高でまさに存亡危機に立たされている、こういう現状であります。こういう現状にかんがみ、不況産業に対して、とりわけ非鉄金属業界に対して、政府はどういう対応をとられようとしているのか、また、とられたのか、その点について、まず聞いておきたいと思います。
  4. 野々内隆

    野々内政府委員 非鉄金属関係は、二つの点から現在非常に困難な状態になっておりますが、一つは、国際的な需給のインバランスから市況が低迷しているということと、もう一つは、急速な円高によりまして、国内相場がそのまま低落するという二つ状況で非常に苦しい状態に落ち込んでおります。  そこで、政府といたしましては、特に五十三年度の円高のときにつくりました経営安定化融資、これの利子補給につきまして、昨年末に急選予算編成をいたしまして、今回の予算でお願いいたしておりますが、経営安定化融資、それから探鉱促進のための国の補助金、これの確保、それから期限が参っております減耗控除税制につきましての期限の延長、このあたりを中心といたしまして対応いたしております。
  5. 井上一成

    井上(一)委員 低利融資制度、さらには優良鉱床探査予算大蔵大臣にお伺いをいたしますが、通産省が今お答えになりました。それらについて、六十一年度予算、どういうふうに予算が動いているのか。端的に申し上げれば、六十年度予算よりも、すべて減額の状況にあるわけなんですね。この円高は六十年度後半から六十一年度にかけての問題だ。じゃ今後、補正をもってでも、今通産対策を講じているその線に沿って、大蔵対応に踏み切っていただけるのかどうか、そういうこともあわせて聞いておきたい。
  6. 竹下登

    竹下国務大臣 後から主計局長の方から正確に補足させますが、きのう後藤田官房長官通産省大蔵省をお呼びになりまして、この間法律が通ったじゃないか、それから大蔵省の方で見れば、先日、補正予算を上げてもらったじゃないか、この二つで、一つ補正予算の方は恐らく公共事業の契約を急げという意味だと思います。  それから通産省法律が通りましたことは、昨年の十二月行いました対策をフォローする意味で万遺漏なきを期せ、こういうお話でありまして、私どもの方としても、中小企業対策予算全体は御指摘の点も確かにございますが、そういう補給金とかそういう点においては、きちんと対応しておるということでありますが、正確には主計局長からお答えをいたさせます。
  7. 吉野良彦

    吉野政府委員 お話しございました、まず金属鉱業の経営安定化問題でございますが、六十一年度予算におきましても、融資規模百二十五億円を確保いたしまして、必要な利子補給措置予算で予定をさしていただいております。  それからまた、いわゆる探鉱関係予算でございますが、お話しのように六十年度に比べますと、金額といたしましては若干減少をいたしております。  お話しございましたが、今後、通商産業省の方から種々御相談がございますれば、私ども十分一緒検討をさしていただきたいと思っております。
  8. 井上一成

    井上(一)委員 通産から相談があれば検討したい、当然、通産の方から要求があると思います。  さらには、今若干、六十年度から六十一年度が減額されている。若干であろうとも、私は減額されているという、こういう実態は、まさに円高不況による大変危機存亡状況にある非鉄金属に対する思いやりのない予算だ。例えば、それじゃ地金関税相当分は、一般財源にどれほど入っているのですか。
  9. 吉野良彦

    吉野政府委員 大変申しわけありませんが、ただいま担当政府委員が参っておりませんのでお答えできませんことを御了承いただきたいと存じます。     〔委員長退席中島(源)委員長代理着席
  10. 井上一成

    井上(一)委員 金額は私の認識では約六十億だと思っているのです。それじゃ金額は後から聞きましょう。  それで私は、地金関税相当分、やっぱりこういう折だから、いわゆる非鉄金属円高不況におけるしわ寄せ分をそこへ充てていくべきではないだろうか、そういうことが、不況対策に充てていくことが、この際必要であるということを強く求めるわけであります。  さらに、先ほど六十年度より六十一年が減額されている、そのことについては通産要求に、ぜひ相談話し合いに乗りたいということだと受けとめるわけでありますが、大蔵省はそれでよろしいんですね。
  11. 吉野良彦

    吉野政府委員 まず、関税との関係でございますが、御指摘のお気持ちは私どももよく理解できるわけでございますが、しかし、その関税収入をいわば特定財源的に考え、また運用していくということは、これはいかがなものであろうか、やはり必要な予算予算として、中身の問題として十分検討をしていくべき問題ではないかというふうに存じます。  それから探鉱予算の問題でございますが、これも当然のことでございますが、予算編成に当たりましては、所管省であります通産省と十分御相談をして、これで対応ができるという考え方のもとに組んでいるわけでございますので、現在のところ私どもは、今御審議をいただいております予算でできるだけ対応をしてまいりたい、こういうふうに考えます。
  12. 井上一成

    井上(一)委員 関税の問題については、制度上で私はそれを不況対策の目的税的な使途に使え、そういうことじゃないわけであって、精神からいって不況産業にそういうものはぜひ充てていくべきである。なお、今審議をしている予算の中で通産要求を即座に受け入れよという意味ではない。円高がこれだけ不況産業というか、国内非鉄金属中心とする不況産業にしわを寄せている現実に立って、やはり補正等、あるいは今後の対応として当然そこに何らかの手だてが必要である、こういうことを私は申し上げているのです。そのことが理解できるならばいいのですけれども、それもなおかつあかんということであれば、これは話が違うわけなのです、大蔵大臣
  13. 竹下登

    竹下国務大臣 井上さんおっしゃいますのは、今度の予算前提は、一応二百九円の予算ですよね、それが現状は違う、したがって、今までいろいろな措置をとったものが、当面不足するというわけではないにしても、ある種の必要が出る場合があるではなかろうか、こういう前提の上に立った御発言であるとすれば、それはその際対応をすればいい問題ではないかな、あるいは予備費でございますとか、補正とかいろいろございましょうが、その問題はその際対応すればいいのであって、当面、今の金そのもので直ちに底がついてしまうという問題ではなかろうというふうに思っております。  それから、関税見合いのことは、ほかの施策におきましても若干、私どももいつも矛盾を感じながら、関税特定財源という考え方は本当はおかしいのでございますから、がしかしながら、そういう対応を現実しておりましたね、アルミとかいろいろな問題。そういうことが存在しておるということは十分理解を私もしております。
  14. 井上一成

    井上(一)委員 重ねてお聞きしますが、大蔵大臣、もう既に一割から百七十七円というきのうの相場ですから、予算編成時から想定して相当落ち込んでいるわけなのです。だから当然、その分については何らかの措置が考えられなければおかしいわけですね、何らかの措置が、いつどのような状態でということは別にして。だから、そういうことを考えていかなければいけないということを指摘しているわけなのです。それは当然考えてくれるでしょうね、こういうことなのです。
  15. 竹下登

    竹下国務大臣 先ほどもお話ししますように、百八十円六十五銭できょう寄りついておりますが、率直に言って、二百九円の予算ですから、そういう変化が生ずるということは、私ども踏まえております。ただ、為替レートというものは動くものでございますから、今直ちに、これではこの程度の不足がありますから、ある時点でこうしますということは言えないにしても、井上さんがおっしゃる意味は、私ども十分理解できます。
  16. 井上一成

    井上(一)委員 それでは、次に外務大臣にお聞きします。  アメリカ国防総省が八七年度版「国防に関する研究開発報告」を発表されたわけです。この報告書内容、とりわけ我が国との研究開発の推進、武器共同研究開発の項目に触れた報告書内容をここでひとつお答えというか報告というか知らせていただきたい、こういうふうに思います。
  17. 小和田恒

    小和田政府委員 ただいま所管北米局長がおりませんので、かわって私からお答えいたします。  十八日、米議会におきまして、米国防総省ヒックス研究技術担当国防次官が一九八七会計年度における米国国防省研究開発計画というものについての報告を行いました。  それで、報告内容はかなり多岐にわたっておりまして、米国におきます防衛分野における研究開発のプログラムにつきまして一般的な検討を行っているわけでございますが、その中に、各国との協力に関する部分がございます。その部分、つまり国際的な軍備に関する協力と申しますか武器に関する協力と申しますか、原文で申しますとインターナショナル・アーマメンツ・コオペレーションという部分がございます。そこでNATO諸国との協力関係等に触れました後で日本との協力に触れております。  日本との協力部分につきましては、日本との両面通行技術に関する協力、ツー・ウエー・テクノロジー・コオペレーション・ウィズ・ジャパン、こういうことがございまして、その中で、アメリカ日本との協力で考えておること、あるいは希望しておることについての記述がございます。内容的に一言で申しますと、従来からアメリカが関心を示しておりました日本との防衛分野における技術協力についての期待ないしは希望の表明ということでございますが、従来と比べまして新しい記述といたしましては、国防省関係の各三軍サービスにおきまして、シニア・ナショナル・レプレゼンタティブ、上級代表と申しますか、そういうものを任命したという点が従来に比べて新しい点であろうかと思います。
  18. 井上一成

    井上(一)委員 合すべてを聞くということは時間的にも無理ですが、端的に言えば三軍上級国家代表というものが決められた。NATOの後にという、少しそういうお答えがあったわけですが、NATO並みに位置づけられたというように理解ができるのでしょうか。
  19. 小和田恒

    小和田政府委員 この報告内容に即して、報告がどういう構成になっているかということで私は申し上げたわけでございますが、その点から申しますと、NATO諸国との協力という節がございまして、その後にNATOメンバーでない、ノンNATOの国々との協力ということがございます。その中で韓国、中国等に関する記述がありまして、その後に日本に関する記述がある。さらにその後、東南アジアとの関係等に関する記述があるということで、構成といたしましては、NATO諸国との協力とそれ以外との協力というふうに分けた形で書いてございます。
  20. 井上一成

    井上(一)委員 外務省はどういうふうにそれを受けとめているのですか。
  21. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 日本NATOとは内容的には全く別の扱いというふうに了解しております。
  22. 井上一成

    井上(一)委員 これは念のために聞いておきたいのですが、向こうのいわゆる高級国家代表に対する我が国窓口はどこなんですか。
  23. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 この国家代表でございますけれども、SNRと呼んでおりますが、これはアメリカ政府内部においての責任体制を明らかにするために指名したというふうに了解しております。したがいまして、この代表そのもの日本とどういうかかわりを持つかということについては明確でございませんけれども、いずれにいたしましても、武器技術関係でございますれば、その技術的内容については防衛庁いろいろ話をしておるということでございます。
  24. 井上一成

    井上(一)委員 武器技術供与関係でいけば、今防衛庁と話をしているということは、窓口防衛庁一本ではないということですね。
  25. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 武器技術取り決めに基づきまして、一般的な武器技術についての話し合い外交チャネルを通じて行います。ただそれが非常に具体的な話になりました場合には防衛庁と話し合うということでございます。
  26. 井上一成

    井上(一)委員 防衛庁一本ではないのですね。
  27. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 ただいま御答弁申しましたとおり、一般的な武器技術供与に関する話し合い外交チャネルを通じて行うこともございます。
  28. 井上一成

    井上(一)委員 武器技術供与に関連しては外交チャンネル防衛庁一本ではない。今回の報告書あるいはアメリカ認識からいって、それはNATOの後に列記されたとはいうものの、共同研究開発要求してきたという受けとめ方を持っていいのか、そこまで踏み込んだ問題ではない、それはでき得ないということなのか、外務省としての認識を聞かせてください。
  29. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 今回の報告の中で日本との双方通行武器技術協力ということは述べておりますけれども、いわゆる共同開発ということは明示的には述べておりません。
  30. 井上一成

    井上(一)委員 念を押して恐縮ですが、共同研究開発我が国はできないということを、ここで外務大臣、ひとつ再確認をしておきたいと思うのです。武器技術供与という問題じゃなく、共同研究開発
  31. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 この点につきましては既に累次国会で政府側から御答弁申し上げているところでございますが、一般的に武器に関する共同開発というものを禁止は政府はしていないということでございまして、それが一般的に武器輸出になるような場合には、それに関しましては武器輸出原則等がかかってくるということでございます。  アメリカとの関係につきましては、さらにそれに加えまして武器技術に関する交換公文枠組みがございまして、武器技術についてはこれをアメリカに供与し得るということでございます。
  32. 井上一成

    井上(一)委員 武器技術供与取り決めについては既に何回か議論がされているわけです。今回の報告書で一応私が懸念をするのは、アメリカ側からの要求としてというか、共同研究開発に踏み込みたいという、そういうアメリカの意思がこの報告書の中に含まれているのではないだろうかという危惧を持ったわけで、あえて共同開発は、武器技術供与の問題、協定は別、それはあるわけでありますが、大前提である武器輸出原則は遵守すべきであり、その精神は私たちは守らなければいけない。そういう意味武器共同開発はできない。今まで研究者同士のすり合わせの段階ではいわゆる試作品まででとまっているわけなんですね。試作品一つの歯どめであった。この歯どめを外してはいけませんよということなんです。それは絶対ありませんな。
  33. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 武器技術の対米輸出につきましては、武器技術交換公文枠組みの中で許されるわけでございまして、と申しますことは、技術輸出に伴う必然的な物体、物、これが技術輸出ということの関連でどうしても必要な場合にはこれは許されるということでございまして、武器そのもの輸出は許されていないというふうに了解しております。
  34. 井上一成

    井上(一)委員 必要な物、武器技術供与段階で必要な物、その中で私は今あえて試作品ということを歯どめにしたわけですよ。しかし、それから進んでさらに共同開発、そういうことが許されるのですか。それは大変なことになるわけです。
  35. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 共同開発武器技術輸出というものとは二つの別のことでございまして、先ほど御答弁申し述べましたように、共同開発そのもの、これは一般的に禁止されていない、問題は武器及び武器技術輸出、これについては我が国の政策でございますところの武器輸出原則等が適用される。ただしアメリカにつきましては武器技術供与に関する取り決め、これによりまして武器技術に関する限りは輸出が認められる。そこで先生の先ほどの御質問試作品云々という御質問は、武器技術とは何か。それは完全にソフトだけのものか、あるいはソフトを輸出する上にどうしても必要な物体、これも必要かという問題であるかと思います。その辺につきましては、先ほど御答弁申しましたように、武器技術輸出アメリカに認められるけれども武器輸出は認められないという原則の中で武器技術輸出する場合に全くソフトだけではなくて試作品等のものは、武器技術輸出する上でどうしても必要な物体の輪田は認められるであろうということが一つでございます。さらに、先ほど来御答弁申しておりますように、それと共同開発というものとは別の問題でございます。
  36. 井上一成

    井上(一)委員 私が言っているような共同開発は当然武器共同開発なんです。だから武器技術供与の協定と、それが延長して武器共同開発まで踏み込むことはあり得ませんなと。さっきのお答えでは、武器輸出原則の遵守を答えていらっしゃるのですけれども、念のために私はもう一度必要性、技術供与の中での必要性というのも、せいぜいいって、試作品ですよということを僕の方から申し上げたわけです。だからそれが取っ払われてしまう、歯どめが取っ払われてしまうというようなことはあり得ないでしょうね。あくまでも武器共同開発は、これは禁止されている、そういうことで確認をしておきたいと思います。
  37. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 繰り返しの答弁で恐縮でございますけれどもアメリカとの関係だけについて再度明確に述べさせていただきますが、アメリカとの関係につきまして武器共同開発ということは、研究開発につきましては一般的にアメリカとの関係において禁止されていないということでございます。累次御答弁申し上げているとおり、共回生産は行わないということは御答弁申し上げております。さらにその果実、結果の武器技術アメリカ輸出するということは武器技術取り決めに基づきまして、交換公文に基づきましてそれが可能になっている、こういうことでございます。
  38. 井上一成

    井上(一)委員 ちょっと、私はここはしっかりと確認をしておきたいと思うのです。  それで、非常にややこしいようですけれども、従来からこの問題については、武器技術の供与という問題と共同開発という問題とは切り離していたと私は思うのです。だから、そういう意味で、技術供与の協定の中でアメリカとの技術供与は許されているわけなんですね。それもすり合わせの中では、せいぜい試作品までだという認識なんですね。それを一つの歯どめにしてきたわけなんです。今のこの国防総省の報告書の中では共同開発があたかも可能なように受けとめられるので、念のために外務省に、共同開発は——当然武器ですよ、いわゆる日米の武器共同開発はできないということをしっかりと御認識でしょうねということをただ確認をしておきたかったわけです。ややこしいことは要らないのです。
  39. 小和田恒

    小和田政府委員 ただいま北米局長お答えしておりましたことをもう一度協定に則して整理して申し上げますが、米国との関係におきましては、武器技術の供与に関する取り決めができたことによりまして、武器輸出原則の例外として武器技術の供与が許される、こういうことになったわけでございます。その場合に、その武器技術の供与といたしまして、この取り決めの中におきまして、「武器技術」というのは「附属書に定義する技術」であるけれども、この「武器技術の供与を実効あらしめるため必要な物品であって」「「武器」に該当するものを含む。」こういうことになっているわけでございます。他方、アメリカとの関係におきましては、武器そのもの輸出は依然として武器輸出原則によって律せられる、こういうことになっておりますので、今申し上げました例外的に認められておる「武雄技術の供与を実効あらしめるため必要な物品であって」「「武器」に該当するもの」まではよろしい、こういうことになるわけでございます。  他方、先ほど来お尋ねの共同研究開発という問題につきましては、従来からお答えしておりますのは、それに伴って武器または武器技術の外国に対する供与が行われることになる場合には、その部分について武器輸出原則の適用がある、こういうことでございます。  そこで、今度の取り決め武器共同研究開発自体について規定をしているわけではございませんけれども、今後日米間で仮に武器共同研究開発が行われるということになって、それに伴って武器技術の供与が行われるということがある場合には、その取り決めのもとで米国に対して武器技術を供与する道が開かれる、こういうことになるわけでございますので、試作品云々の議論は、武器技術供与取り決め関係におきまして試作品を供与することが許されるということが取り決めで定まっておるということでございまして、共同研究開発それ山体は、武器技術供与そのものの問題として米国との間において今度の取り決めのもとで可能性はあり得る、こういうことでございます。  ただ、これも従来からお答えしていることでございますけれども、日米間で現実にそういう武器共同研究開発を進めるとか、あるいは進めないとかいうようなことについて具体的な検討が行われているということではない、これは従来から申し上げているとおりでございます。
  40. 井上一成

    井上(一)委員 これは大変なことだと思うのです。従来の答弁からは一歩踏み込んだ答弁をなさっていらっしゃる。具体的に共同研究開発に入っているわけではない、そして従来の武器技術供与の協定の範疇の中で考えているのだ。しかし、共同研究開発もその範疇の中にあたかも含まれることの可能性を認めていることになるわけなんです。そうでしょう。だから、私はこれは大変なことだと思う。共同研究開発が今までの武器技術供与の協定の中の範疇に含まれる可能性がある、こういうふうに今お答えになられたと思うのです。それは大変なことだ。しかし、現実の問題として具体的には、そこまでの実践段階ではない、今現実。私のそういう受けとめ方、お答えはそうであったと聞くのですが、間違いないでしょうか。
  41. 小和田恒

    小和田政府委員 もう一度、誤解が生ずるといけませんので整理して申し上げますが、武器技術の供与の問題と武器輸出の問題は別な問題で、アメリカとの関係におきましては技術の供与は認められることになる、こういうことでございます。  他方、技術供与の中身としてどういうものがあるかということになりますと、技術供与を伴うような共同研究、開発のための共同研究というようなものは、理論的に申しますと、これは技術供与を伴うという限りにおいて供与取り決めの対象になる事柄である、こういうことになります。  そこで他方、武器の共回生産ということになりますと、これは従来から政府としてそれをやる意思はないということを申し上げているわけでございます。したがいまして、今問題になっております武器の共同研究、武器技術の供与に伴って行われる共同研究というものは、この供与取り決めの対象として供与取り決めに従って処理をされるということになるわけでございまして、その関連において、試作品の問題につきましては、既に数年前の予算委員会の議論におきまして、日米共同研究開発がなされまして、その開発された成果、つまりアイデアでありますとか技術資料でありますとか、あるいは試供品でありますとか、そういうものについて、それを米国に移転することは可能であるか、こういう質問がございまして、それについて「それを可能ならしめるのが今回の政府方針であります。」という通産大臣の御答弁がございますが、今私が申し上げたようなラインで既に従来から答弁がなされておるというふうに理解しております。
  42. 井上一成

    井上(一)委員 これは大変なことだと思うのです。まあ開き直ったという言葉がいいかどうかわかりませんけれども共同研究開発も対米武器技術供与の枠内にあるという答弁は従来はなかったという私は認識です。だから、この問題についてはきょうすべてをここでというわけにはまいりませんが、やはり大変大きな問題である。決して共同研究開発はできないという認識に立って私はこれは詰めていきたい。何か農水大臣が十時半から次の予定が、委員会があるから農水の質問をということですから、この問題は後でもっと詰めたいわけです。この問題は大変な問題だと私は思っております。しかし、質問を若干留して、時間の関係上農水大臣に先に質問をいたします。  アメリカにしてもソ連にしても、漁業交渉が大変難航している。対米、対ソ漁業交渉がすっかり難航して膠着状態が続いている。このアメリカもソ連も強硬姿勢が続く限り、今後の漁業交渉というのはどういうふうになっていくのか、どういう見通しを持っているのか、まずそこから聞いていきたいと思います。
  43. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 まずアメリカについてでありますけれどもアメリカにつきましては、例のサケ・マス問題、この問題に絡みまして二百海里内の漁業、この交渉について非常に厳しいものがあることはもう御案内のとおりであります。ただ、この問題につきまして、非常にお互いの主張というものがかみ合わない、そういう中で実は漁期に入ったということでございます。私ども就任早々、マンスフィールド大使を農林水産省の方へ招請しましたり、また新年になりましてからもおいでをいただく、そういう中でとりあえずとるものについては一万トン、三万八千数百トン、そしてまた一万一千トンと、およそ六万トン、これを確保しておるところでございます。いずれにしましても、先ごろも話し合いを進めておりましたけれども、今のところこの問題について合意に達していないというのが現状でございまして、これも一日も早くまた話し合いにこぎつけたいというふうに考えております。  それからソ連邦につきましては、つい先ごろまでこの話し合いをしておりましたけれども、いずれにしましても、一月の六日から日ソ両方ともそれぞれの水域における漁業というものが中断されておるというのが現状であります。こちらの方につきまして、我が方としても最大の譲歩をしておるわけでありますけれども、水域について、あるいは着底漁具、そういったものを使うことについて、また何というのですか、その差額の量についての支払い、こういったものを要求してくるという新しい要求というものが実はございます。そういう中で今日なかなか難しい状況にあるというのが現状でありますけれども、これは双方ともやはり話し合いは続けなければいけないという認識は持っておりますので、これから我々も外交ルート等を通じながら話し合いを進めていきたいというふうに考えております。
  44. 井上一成

    井上(一)委員 どうも対米、対ソともども妥結への道のりは険しいという認識なんです。  これはどういう背景なのかということを、やはり御承知だと思いますが、海のものには所有権はないという日本の歴史的な物の考え方もあるわけなんですけれどもアメリカやソ連は新しい海の秩序を定めたという国連海洋法条約、それで述べているサケ・マスの母川国管轄主簿、これをどうも主張して、二百海里以内の魚類などにはその国の管轄権が及ぶんだ、他国には漁獲可能量の自国余剰分を認めよう、その条項を前面に打ち立ててくる、こういうことが一つの大きな、アメリカ、ソ連の主張なんですね。私は、そういうことを考えると海洋法条約が我が国の漁業のピンチを招いている、こういうことを言っても過言ではないというふうな認識も成り立つのではないだろうか。このことについての農水大臣の御認識、これをひとつ聞かしておいてもらいたい、こう思います。
  45. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 今委員が御認識のとおり、やはり海洋法条約、これに基づいてそれぞれの国がみずからの水域についての主権というものを主張するようになってきた、これが基本であろうというふうに思っております。  ただ、サケ・マスにつきましては、確かに国際的な認識としては各国とも母川国主義というものについて主張しておりますけれども我が国の場合にはもう相当長い期間の歴史の中で沖合におけるサケ・マスというものの漁獲をしてきたということで、これも実はそれぞれの委員会等におきましては今日までの日本の実績というものは認めてくれておるということでありますけれども、しかし、こういった問題に対してだんだん厳しくなっておるということを私たちも認識しなければいけないというふうに思っております。
  46. 井上一成

    井上(一)委員 国連海洋法条約が世界的に定着していく、そういうことになると他国の二百海里以内での操業というのは大変難しくなっていくわけなんですね。私は、言いかえれば国連海洋法条約によって日本の水産業というものは曲がり角に来て、現実的には大変なピンチだという言葉なんですね。要は海洋法のこの条約がその背景にある。水産行政を考え直さなければならないということは、この海洋法条約が定着することにおいて水産業界の考え方を変えないと、我が国の水産業というものは成り立っていかないのではないだろうか。そういうことをやはり念頭に入れて水産行政をやらなければ、どれほど粘り強くやりますとか、いやお金をどうしますとか、そういう問題ではないと思うのです。金で解決する問題でもなければ、時間をかけて解決する問題でもない。まさに今、国連の海洋法条約が定着することにおける今後の日本の水産行政を考えていくというのが、発想の転換も含めて当面の課題ではないか。そういうことに何ら目を向けずに、ただ単に時を稼ぐというのは私は全く無責任な水産行政だ、こう言わざるを得ない。  そういう意味で、先ほども農水委員会があるから早く早くということですけれども、さっきも私は、いわゆる国連海洋法条約が我が国の水産業界を今日のピンチに至らしめているのだという一つ認識の中に立つならば、今私が指摘したような考え方に立って水産業界をリードしてもらわなければいけない、そういう行政をやってもらわなければいけないということを言っているわけです。きっちりした話をしてもらわないと、これは大臣、私は早う農水にと思って外務のさっきの大事な話もとめているのですよ。これはしっかりと答えてください。
  47. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 ただいま御指摘の点、この点について何もしていないというよりは、我が方としましても、そういう時代認識というものをきちんととらまえながら、まず日本のみずからの水域の中における漁業というものを盛んにしていかなければいけない。ちょうど私が政務次官のときに二百海里問題が起こってまいりまして、今日までの間、いわゆる「つくり育てる漁業」、これは言葉だけではなくて、そういったものをきちんと確立していかなければいけないということはしております。  ただ、私どもとしても、長い歴史があるものですから、その中ででき得る限りとれるものについて何とかしていきたい。また、そういった漁業というものは一応ずっと長い歴史の中で確立されておるものですから、私どもは交渉によってとり得るもの、これはこれからもやっていかなければいかぬと思っておりますが、しかし今御指摘のとおり、私どもとしても今の時代認識というものをきちんと持ちながら今日の時代に対応できるようにやっていきたい、そういう中でマリノフォーラム21というようなことも今進めようといたしておるところであります。
  48. 井上一成

    井上(一)委員 もう少し待ってください。  それではここで、国連海洋法条約は現在どのくらいの批准国があって、いつごろ発効する見通しなのか、外務省に尋ねておきましょう。
  49. 小和田恒

    小和田政府委員 私どもが入手しております一番最近の数字、これは二月の三日付の数字でございますが、批准国が二十六でございます。これは国と申しますけれども、実は国に似たような実態も含んでおりますので、正確に申しますと二十六のものが批准をしておる。署名をした因が百五十九でございます。  条約の発効のためには六十の批准書または加入書が寄託されて一年ということになりますので、まだその半分には達していないわけでございます。  見通しにつきましては、現在の段階では立てるのが非常に難しゅうございますが、若干御説明いたしますと、主要海洋同がなかなか入っていないという状況がございます。他方、発展途上国はかなり入っておりますので、数としてはこれからかなりふえていく可能性というものは排除できないと思います。
  50. 井上一成

    井上(一)委員 農水大臣、今外務省お答えになったように半分近い国が既に批准をしている。それで、速いテンポでという見通しを持っているわけです。そうすると、このように考えてくると、我が国の二百海里以内を改めて見直し、発想を転換していかなければならないと私は思うのですが、いかがでございましょうか。
  51. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 今日のこういう事態につきまして、これは総理みずからも、今日の事態というのは非常に難しい、そういったものについて、何というのですか、先の見通しというものをきちんと立てなければいけないのじゃないか、そういった問題について水産庁としても存分にひとつ検討してもらいたいという実は御下問もございます。私どもも、漁業者の皆さん方とも十分話し合いしながら、本当にこれからの二百海里内における漁業というものについて本格的に検討していきたいというふうに考えております。
  52. 井上一成

    井上(一)委員 そこで、もう一つ聞いておきたいのは、我が国の二百海里は太平洋側は設定されていますが、日本海側が設定されてない。今漁業の問題は、やはりどうしても日本海側に固まっているわけなんです。なぜ日本海側に二百海里が設定されていないのか、農水大臣はどう御認識ですか。
  53. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 ちょっと申しわけないのですが、その後の推移をあれしておらないのですけれども、相互主義ということでこれはお互いに主張をすることになっておりまして、たしか日本海側の方は先方の方が主張されておらなかったというふうに記憶しております。
  54. 井上一成

    井上(一)委員 相互主義ということもありますが、何か障害があるのでしょうか。
  55. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 今申し上げましたように、韓国、こちらが二百海里を引いておりません。
  56. 井上一成

    井上(一)委員 おっしゃるとおり韓国との問題があると思うのです。ここでやはり日本海側に二百海里を設定できない最大の理由は、竹島があるからだ、こういうことなんです。今韓国という、竹島という領土の問題があるから二百海里がなかなか話し合いができない、僕はそう認識している。大臣いかがですか。その認識に私と共通であれば共通でありますと、ほかに理由があればほかの理由を挙げてください。——外務省は後で聞くからいいです。
  57. 小和田恒

    小和田政府委員 法律的な関係がございますので御説明いたしますが、御承知のとおり日本と韓国との間、それから日本と中国との間におきましては漁業協定ができておりまして、それによって規制されております。これが非常にうまく円滑に機能しておりますので、日本海側についてはそういう特別の取り決めによって処理をする、こういうことになっておるわけでございます。
  58. 井上一成

    井上(一)委員 竹島は日本の領土であるということは、私は強く信じているんです。外務省に、これを一々どうなんだこうなんだと——きょうは水産問題からと思って、しかし外務省も答弁をしたいということですから、それでは、竹島は日本の領土であるということを外務省はきっちりとそういうことを韓国にも事あるごとに申し入れをし、水産業界をフォローアップしていくという、そういう認識に立って外務布は取り組みをしているんですか。何らかのそういう具体的な事例をここで出してください、おっしゃってください、水産業界の問題点について外務省がフォローしたという。——私は条約局長にどうのこうの言いたくないのですけれども、今は問題を真剣に農水大臣と討議している中だから。外務省にはまた後でゆっくり聞きますから。  農水大臣、何か時間ということですから結構です。  運輸大臣お待ちをいただいておりますので、海上保安庁の巡視船は年に何度ぐらい竹島周辺に行っているのか、まずそれから聞きたいと思います。
  59. 岡田專治

    岡田政府委員 最近におきましては、年に一回ぐらいのペースで行っております。
  60. 井上一成

    井上(一)委員 竹島周辺に行くと、韓国側から機関銃の発砲があったり、韓国本土からF15が飛来してスクランブルをかけてくる、そういうことを聞いているのですけれども、そういう事実はあるのでしょうか。
  61. 岡田專治

    岡田政府委員 二十年代の末尾におきましてはそういう事例もあったようでございますが、その後はそういう事例はございません。
  62. 井上一成

    井上(一)委員 運輸大臣、水産業界における問題点は竹島の領土問題であるという深い御認識をいただいて、馬力のあるところでぜひ応援をしてあげてほしいと強く要望して、お引き取りをいただいて結構でございます。  では、外務省にお聞きをしましょう。  竹島にいる韓国軍人退去について、何らかの正式抗議、正式な申し入れをした日時、場所、相手をおっしゃってください。
  63. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 お答えいたします。  ただいま海上保安庁から御報告がありましたように、海上保安庁から大体年一回巡視しますけれども、その巡視の結果を踏まえまして私どもは口上書、または私が例えばここの公使を呼ぶとか、あるいは在外公館のソウルにおいてこれについての事実を申し入れまして、我が方の立場を常に毎年鮮明にしております。
  64. 井上一成

    井上(一)委員 委員長、大変時間も限られていますので、私は、外務省が公式にこの竹島問題でいつ、だれと、どこでどのような口上書を手渡したとかどうしたとか、そしてそれに対する返事があったのかなかったのか、そういうことを改めて書面で私あてに報告をしていただきたい。よろしいでしょうか。
  65. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 例えば、先ほど私触れました最近の口上書は十二月の二十日に出ております。こういう日付、あるいは外務大臣がいつ申し入れた等は、別途先生の方に御報告します。
  66. 井上一成

    井上(一)委員 それでは今度は文部大臣、大変お待たせをしましたが、この竹島領土の問題について、少なくとも責務教育課程で竹島が我が国の領土であるということを教えているというか、教科書に一私の調べた教科書、今使っている我が国の小学校の社会の五年生あるいは六年生、中学の社会、さらには「新しい社会」あるいは「中学社会公民的分野」、そういう教科書があるわけなんですね。この教科書のいずれにも竹島についての記述がないんです。そんなことで本当によいんだろうか。文部省は竹島を日本の領土と認めていないのか、あるいは小学校や中学校で教える必要がないとお考えなのか、このことについて、いや漏れ落ちしておったんだということなのか。念のために、地図については若干島根県に記載のされている部分があります。今申し上げた教科書には記述がないわけなんですが、どういう理由なのか。
  67. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 御指摘の点について、竹島が日本の領土であるということを小学校の生徒も中学校の生徒もできれば理解するのが望ましいことですから、私どもの調査では、地図は全部、日本国島根県の範囲に入っている、領海は明らかにされておると私は理解しております。  教科書においては、御指摘のように、中学校の社会科の教科書で一つ、韓国と紛争があるけれども日本の領土であるということが明確に書かれておりますが、小学校の教科書には、調べましたところ具体的に島名を挙げて記してあるものはございません。これは、記述をどうするかということは、我が国の教科書の検定制度というものからいきますと、著者がそれを書き込むか書き込まないかということにまずスタートがかかるわけでございます。竹島の問題というのは極めて国際的な重要な問題でもありますので、この国会の御論議等を通じて教科書会社の方にもこの実情を伝えて、でき得るなれば改善の方向がとられるようにいたしたい、こう考えております。
  68. 井上一成

    井上(一)委員 念のために私の調べた範囲内では、小学校の教科書では言及したものは一つもないわけなんです。小学校の地図には島根県の一部として表示がある。確かに地図にはそういう表示があります。中学校の教科書は、今一種類を言われましたが、八種類のうち二種類にしか記述がないわけなんです。高校の教科書は十二種類あるのですが、竹島の記述は一種類しかないのですね。関連の図書、いわゆる指導書、先生が指導するための一つの指導用図書の中に、関連図書の中学社会科の地図で「竹島の領有については問題が発生、未解決」、こういう記述があるのが現状であります。先生がそれをどう教えるのか、どういう未解決の問題あるいはどんな問題があって、どのように未解決なのか、正しく教えてないというところに、やはり日本人としての義務教育の段階ですらこれを落ちこぼしているということは大変遺憾であると私は思います。今、さらに教科書の作製会社——会社の問題じゃないと思うのです、印刷あるいはそういう。文部省としてこれはすべて列記する、明記すべきであると私は思うのです。改めて文部大臣、いかがですか。
  69. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 御質問の御趣旨は私よくわかるわけでありますし、ですから、小学校の、中学校の、高等学校のそれぞれの段階において、発達段階に応じて児童生徒が正しく理解してくれることが極めて重要なことはもう御指摘のとおりです。  ただ、現在の教科書は検定制度という制度の枠の中にありますので、先ほども申し上げましたように、文部省の権限でこれを書けとストレートに著者に指示をしたり要請することは、仕組み上できないことになっております。そこで、出てきたものの検定をして、好ましくないものはいろいろと指導もし、改善もさせますけれども、ここをつけ加えるとか、こうしろとかいうこと健はなりませんので、児童生徒の発達段階に応じて、大変まどろこしい話ですけれども、執筆者が書き込んでくれるかどうかということがスタートになるわけです。ところが、国会の御議論も大変重要な御議論ですし、私もそれは必要なことと思いますから、出版社の方を指導して、児童生徒の発達段階に応じて正確に理解できるように指導すべきであると思っておりますから、この御議論はそのまま出版社に伝えて善処をしたいと思っております。
  70. 井上一成

    井上(一)委員 私は別に強制、いわゆる検定制度を否定しているわけでも何でもない。事実というのは、日本の領土というのはこれは思想、信条そんなものとは関係ないわけでなんですから、私は当然、正しく記述をするということは指導すべきだと思うのですよ。どうそれをとらえるかというのはまた別な問題。だから、それは文部省がちゃんと指導するのが当然と違いますか。そんなことができぬようでは何の文部省、仕事なくなるんじゃないですか。余計なことには、余計なことというのはちょっとなんですけれども、いろいろなことにいろいろな意見を差し挟むわけです。これは、領土の問題は私はだれが口を挟もうとも事実は事実なんだから、そういう意味で申し上げているので、やはり記述をしてほしい。教え方の問題だとか表示の問題だとか言いあらわし方については、発達段階、成長段階に応じたものがより好ましいと思います。
  71. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 先ほどお答え申し上げておりますとおり、正確に理解してほしいと思いますから、地図には全部日本の島根県となっておると私も調査の上理解しましたし、なお出版社に対しては、この御議論をも踏まえて、そのようになっていくように我が方から指導したいと思います。
  72. 井上一成

    井上(一)委員 では次に、文部大臣、よく総理も、文化の創造あるいは文化と教育、最重点的に教育問題も論議をされているわけです。それでひとつここで、文化というものについて若干の大臣の認識を聞かしていただきながら、私なりの意見も申し上げていきたい。  文化というのは、私は暮らしの中に生まれ、育っていくと思うのです。大衆文化というのは大衆の暮らしの中から生まれてくる。豊かな文化というのは豊かな暮らしかつくり出すものであり、豊かな社会が育てていくものだ、そういう認識に立っているわけなんです。そういうことから、日本人というのは昔から大変自然の中で文化をつくり、育ててきたと思うのです。  私は、暮らしといえば生活、生活の中での文化といえば、大臣、何をまず連想というか、何が頭に浮かぶでしょうか、毎日の本当に忙しい暮らしの中での文化といえば、一体何でしょうか、いろいろな発想があるでしょうけれども、文部大臣は何をまず頭に発想されるでしょうか、こういうことから聞いていきたい、こう思うのです。
  73. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 大変境界線の難しい御質問で、私も直観でお答えするのですけれども、毎日毎日の生活の中の文化といいますと、例えば生け花とかお系とか、そういうようなものを含めて、心豊かに、楽しく生活していけるような家庭の雰囲気をつくっていくということがやはり生活文化ということにダブってくるんじゃないだろうか、こう思います。
  74. 井上一成

    井上(一)委員 私は、さすが文部大臣はニューリーダー、まさに将来日本を支えてくれる、あるいは日本の政治を指導してくれる人にふさわしいお答えだ、こういうふうに思うのです。私も、やはり自然と人間をつなぐ何かのものが文化として残ってほしい、こう思うのです。  それは、今生け花というお話が出ました。日本人としての生活文化の中で生け花というのは、私は特にそれは強く強調しておきたいのは、優しい心だとか、美しい心だとか、思いやりのある心だとか、いろいろなことを求めるわけなんですけれども、それは暮らしの中で、生活の中から培っていくものであって、百貨店へ行ってこれは買えるものでもなければ、人から言われたからといって身につけられるものでは吹く、みずからがそういう生活の中で身につけていくものである。その一番手始めとして、やはり生け花ということがいわば大きな一つの生活文化ではないだろうか。世界共通の文化といえば私はあえて音楽だとこういうふうに申し上げています。どんなに貧しい国であろうが、富める国であろうが、音楽を抜きにしての暮らしというのはない。しかし、花、生け花というものは日本人特有の歴史と伝統というか、そういう意味では、日本の生活文化といえば生け花ではないだろうか。  しかし、その生け花が、じゃ、実際社会的にどういうふうに評価をされているんでしょうか、どういうふうに位置づけられているんでしょうか。そういうことについて、教育上の問題からも、人づくりの問題からも——いじめだとかいろいろな非行の問題があります。そういうときに必ずいろいろな具体的な現象面の対症療法は皆さん申し上げられる。しかし、私は、やはり根本的な対策というものがぜひ必要であり、そのことが文化、暮らし、生活、そういう中ではぐくまれていくことが根本的な一つ対策ではないだろうか。生け花ということに限って申し上げているわけでは決してないんですが、具体的に生け花が今我が国の社会で、あるいは教育の分野でどのように評価をし、どのように今後これを生かそうとされているのか、この点についても聞いておきたい、こう思います。
  75. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 おっしゃるように、日本の伝統文化の中で諸外国からも評価され、そして関心を持たれておるのが生け花であり、お茶であり、この間私もボン・サミットの周辺をずっと見て歩いておりますときに、日本の文化会館でちょうどお茶のセレモニー、花のデモンストレーションをやっておりました現場へ行って、あそこにやはり日本間がつくってあって、そこでお花を生けたりしますのをドイツの人たちが非常に評価をして、関心を持って見に来ていらっしゃったというような現場等も見ております。  学校教育の中で、しからばそれをどう扱っておるかという御質問でありますが、特別活動の分野というのがありまして、そこで生徒の方の選択によって、週に一回、体育の分野とかあるいは日常生活文化の分野とかで選択をして習うことができるようになっておる。特別の一部の学校ですが、学校によってはそのための畳を敷いた教室までつくって、特に女生徒の情操教育のために大変役に立っておるとも聞いております。そういったものを取り込んでいくことが、人間教育の基本である心とかしつけとか優しさとか、美しいものに対する感激とか、そういったものにもつながっていくだろうという先生の御指摘は私も全くそうだと思いますので、この方面についてはおろそかにしないで関心を持って指導していきたい、こういうテーマの一つでございます。
  76. 井上一成

    井上(一)委員 私は物事を強制的にこうしなさい、ああしなさいと言う論者ではありませんし、本当の正しい自由というものをお互いが味わっていくというか、そういう意味そば、希望する子供たち、生徒たちに選択科目として、どの流儀がどうだとかそういうことはすべて超越して、自然に触れるあるいはその自然とともに自分が生きていく、そういうことが花を通してみずからの心に喜びを持てる、安らぎを持てる、そういうことがあれば、今やかましく言う社会問題になる非行の問題も少しは緩和されていくんではないだろうか。まさに二十一世紀というものは、そういう日本古来の日本が誇るべき生活文化、この点についてもう少し入り込んで、もう少し私は教育の課程にもあるいは社会教育の課程にもあらゆるチャネルの中に取り入れていただきたい、こういうふうに考えるわけであります。  今のお答えをお聞きして大臣のお考えがよくわかるわけでありますが、さらに念を押して大変恐縮でございますが、たしか五十五年度ぐらいをめどに文部省でも何か一度生け花の担当教師の実現というようなことに御努力を、目標を持たれたように私は文部省のある方から聞いているんですけれども、今後そういうことも含めてひとつ御検討いただけるでしょうかということをお尋ねをし、むしろお願いをしておきたいと思うんですが、いかがでございましょうか。
  77. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 学校教育の分野で児童生徒の希望による選択の幅を広げ、それをさらに徹底させていきたいという方向はお答え申し上げておるとおりでございますが、具体的に児童生徒が教わりたいというときは やっぱりそれを指導する教師の側にも、その適性な人材が指導力を持って、技能を身につけて控えておってもらわなければうまく交流ができないのはこれは当然のことでありますので、文部省がそういう選択の幅の対象の中にいろいろなものの一つとして生け花等も取り込み、それからさらに聞くところによりますと、短期大学へ行きますと、ごくわずかではありますが、それを一つの講座として取り入れていきたいという面等もある。しかし、学校を終えてしまった社会の御婦人方は、文化センターというところへ行ってお花を一生懸命今身につけようと学習の態度に出ていらっしゃる。こういったことなども考えますと、いろいろな資質を持った指導者の養成もまた必要なわけでありますので、それらの社会や学校の要請には当然こたえていくような方向で我々も検討を引き続き加えていかなきゃならぬことは当然のことだと考えております。
  78. 井上一成

    井上(一)委員 今短大等で、単位として、情操教育の一つの課程として認定をしてほしいという強い要望もありますので、このこともあわせて御検討いただくように特にお願いをしておきたいと思います。  さらに、さっきボン・サミットでの御感想というか強い印象を披瀝されたわけであります。これは外国だけでなく、逆に、日本でいろいろな国際会議も含めて何らかの催しがあるときには、ぜひ大いにその日本の生活文化をひとつ多くの外国の人たちに知ってもらうということに私は努力をしていただきたい。  直接の所管ではないかもわかりませんけれども、例えば昭和六十五年に大阪で花と緑の万国博覧会が開催されるわけなんです。まさに私は、花と緑の万国博覧会という、そういう非常に時を得た催しがあるので、すべての流派、すべてのそういう生け花の粋を、芸術を、生活文化を、そこに私はぜひ参加をできるような機会をつくってもらいたいし、つくるべきではないか。ひとつ文部大臣として御尽力をいただきたいと思うのでございますが、このことについてはいかがなものでございましょうか。
  79. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 御指摘の花と緑といいますと、まさに生け花の花とも素材の面でも非常に深いつながりがありますし、そういったものをより広く、より多くの国民の皆さんに見てもらい、心の中にとどめてもらうには大変すばらしいチャンスの一つであると私も受けとめます。また、今皆様に御審議をお願いしておる予算の中にも、文化庁は今年度から、広く生活文化をみんな糾合して、ちょっと先生の御趣旨の生け花だけのお祭りではありませんが、国民文化祭というようなものも計画し、お願いをしておるのですが、これがもしお認めいただけることになると、その会場の中にやっぱり生け花をきちっと飾るとか生活文化の上でティーセレモニーをやってみるとか、いろいろなことを今後の課題として考えていって、より深く生活文化が伝統文化として根づいていくように、広く認識されていくように我々も心がけるのは当然と思いますので、ただいまの御指摘をきょうはよく承りまして、今後の我々の政策努力に反映させたい、こう思います。
  80. 井上一成

    井上(一)委員 文部大臣、いろいろとお答えをいただいたわけです。  最後に私は、生活文化を大切にしていこうというそういう一つの運動が高まってほしいという願いもあるわけですが、ややもすると生け花というのは、私は文化、芸術だ、こういう認識に立っているのですけれども、何か趣味的な、芸能的なチャネルで皆から認識をされているわけなんです。私はこれは大きな間違いである。むしろすべての人に優しい心、美しい心、思いやりのある心、自然と人間を結びつける一つの媒体として、国民の、日本人の古い歴史ある伝統芸術としての位置づけをしているわけなんです。この国民の伝統ある生活文化、芸術を定着さしてほしい、こういうことを強くお願いをしたいと思うのです。
  81. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 芸術というのは、やはり独特の表現方法によって美を創作したり表現したりするその過程であり、またその結果の作品である、私はこう理解しておりますが、それがそんな難しい大上段に構えたことを言わなくても毎日の生活の中にも生け花というものはしみ込んできて、それを最初に先生が、家庭の生活文化、生きる文化、豊かな心とおっしゃったときに、やはり一軒の家を単位に考えても、そこに深く根づいてきておる伝統的な価値のある芸術だと私は受けとめておりますということをお答え申し上げておりますけれども、そのような考え方でこれは大切にしていきたい問題だと心得ております。
  82. 井上一成

    井上(一)委員 それでは文部大臣、ありがとうございました、お引き取りいただいて結構でございます。  自治大臣、大変お待たせをしたわけですけれども、端的に、負担金と補助金の性格、違いをお答えいただけぬでしょうか。
  83. 小沢一郎

    ○小沢国務大臣 補助金は、いわゆる国の政策的観点に立ちまして、奨励的に、あるいは財政援助という目的によっていわゆる同の判断で地方に出すものであると思います。  負担金は、地方財政法の九条、十条に、原則と例外として岡の負担を求めておる規定があるわけでございますが、その意味におきまして法律に、これだけは、これこれの事項については国が負担しなければいけませんよというふうに決めてありまして、そしてその実際負担の割合については、国会で定める法律に従ってやらなければいけない、そういう手続までも定めておりますので、その意味において国の責任を、補助金とは違いまして、強く求められておる性格のものであると考えます。
  84. 井上一成

    井上(一)委員 それでは、地方交付税について、その性格と概念をここで聞かせてください。
  85. 小沢一郎

    ○小沢国務大臣 地方交付税につきましては、いわゆる国税の三二%、これは当然地方に交付すべきものというふうに法律で定められておりまして、いわゆる地方の固有の財源であると考えております。
  86. 井上一成

    井上(一)委員 固有の財源である。これは地方団体、地方自治体の独立した固有財源あるいは一般財源、調整財源、いろいろそういうものが寄ったいわゆる固有の財源であるということは確かなわけです。  それでは、今回の大蔵が示した国庫補助金の一括一律カットということは、財源補てんとか、交付税で云々ということをすぐに大蔵省は言うわけなんですね。補てんをしますとか交付税でこれは算入しますとか、そういうことを言われるわけですけれども、今回のとられた措置は地方財政法の第二条第二項を空文化したものである、私はそう思っているわけです。自治大臣は私の認識に同意をされるのか、そういう認識に立たれるのか、いやそうじゃないとおっしゃるのか。大蔵省のとった措置は、地方自治体にとっては地方財政法第二条第二項を空文化したものである、こういう認識なんです。
  87. 小沢一郎

    ○小沢国務大臣 いわゆる第二条第二項に、空文化したもの、違反したものではないか、そういう御趣旨でございますが、今度のいわゆる御審議をお願いしております補助金、補助の負担率の問題につきましては、この法案の四十九条においても、地方公共団体に対し、その事務または事業の執行及び財政運営に支障を生ずることのないよう財政金融上の措置を講じなければならない、そのような条文を特に設けております。そしてまた、先生もちょっと触れられましたが、臨時、異例の補てん措置も講ぜられて財政運営に支障のないようになっておる。そういう意味におきまして、必ずしも第二条第二項に違反する、抵触するものとは考えておりません。
  88. 井上一成

    井上(一)委員 だから自治大臣、それは内閣の一員として言わざるを得ない答弁なのか、本当にあなたがそう理解をしているのか、私は非常に疑問なんです。自治大臣がそういうお考えをしておりたら、これは私は、えらい失礼だけれども自治大臣として本当に自分の職責、職務というのは、自治省の役割というのは御認識なのかどうか疑いますよ。臨時行政調査会の最終答申、それもよく読まれたら、何を答申し、どう指摘をしているかということもここで時間がないから申し上げませんけれども、私は大蔵省に再考を促すのがやはり自治大臣であると思うのです。それにもかかわらず、こんなことをうのみにしてはいけませんよ。  補助金については、さっき地財法の十六条の趣旨を言われたわけです、そのとおりなんですね。これはどちらかというと財政需要額に算入するんだという保証はないわけなんです。しかし、負担金についてはそれはちゃんと保証があるわけなんです。だから、負担金と補助金というものを広義で、広い意味大蔵は一括で予算にこうしているのですと。まあ確かにその論理も成り立つでしょう、大きな意味では。しかし中身は、負担金と補助金というのは明確に性格を異にしているし、そういうことをきっちり認識をするならば、今回の予算編成に当たって自治大臣が、後からなられたんだから、当初からではないので私はこれはやむを得ないとは思いますけれども、今後の取り組みとして大蔵省に対してむしろ正しい認識を持ってもらうために大いに頑張ってもらわなければいけない、私はこういうふうに思うのです。その決意をやはり聞いておかないと頼りなくてしようがない。
  89. 小沢一郎

    ○小沢国務大臣 補助金というふうに一括して言われますけれども、御指摘のように負担金が大きな部分を占めております。その負担金の負担割合等につきましては、国の財政が厳しいからということでただ単に一括カットしたり、そしてその結果を地方にツケ回ししたりというようなことではいけない、やはり本当に地方と国の事務の分担のあり方とか財政負担、費用負担、そういうもののあり方の論議の中で初めてこの問題が出てくるものである、そういう認識に立っておるわけでございます。現実、今先生から御激励をいただきましたが、私といたしましては、地方の本当に豊かな地域社会をつくるために、地域の実情を踏んまえて政府部内でも最大の努力をしていかなければならない、その点については深く認識をいたしております。  ただ、御激励いただいたような成果を上げられるかどうか。何しろ相手は、直接の担当は大蔵大臣、最終的には総理大臣でございまして、両方とも知恵と権力を兼ね備えた方でありますのでなかなか難しいのでありますが、若さと体力だけはお二人よりまさっておりますので、精いっぱい頑張ってまいりたい、そのように考えております。
  90. 井上一成

    井上(一)委員 大いに期待をしたい。私たちも微力でありますけれども、一緒になって地方自治体を守るために頑張ることを私からも申し上げて、自治大臣に対する私の質問はこれで終えます。ありがとうございました。  最後に労働大臣、大変お待たせをして申しわけないのですが、実はパートタイマーの人たちの労働条件あるいは雇用不安を何とか解消さしていきたいと常々労働省が御熱心に取り組んでいらっしゃることについても私は高く評価をしているわけなんです。しかし、一地方自治体だとかあるいは一区域だけの問題でなく、全国的にほとんどの地域にわたって、いわゆるパートタイマーの労働者がぜひ不安のない、安心して常に働ける。さらにはそういう方々がわずかの所得を得た場合に、これは労働省の所管ではありませんけれども大蔵省にも強く要望しておくわけでありますけれども、パート減税九十万、これは野党側が統一して百万、さらにはそれ以上に要求をするはずでありますけれども、そういうことに対しても、税の課税の問題にしても、もっともっとそういう低額の収入を得て一生懸命に働いている人たちには温かい目を注いでほしい、そういうことも大蔵省にはお願いをし、パート労働者に対する労働条件の十分な保障に労働省が今後とも一生懸命取り組んでほしいということを私はお願いをしたいわけでありまして、いろいろな今の既存の制度で間に合うんだという議論もありますけれども、既存の制度でパート労働者が救われる、あるいはパート労働者が安心できるというようなものは、退職金一つをとらえてもあるいはその他の条件をとらえても何ら満たされていない、こういう認識に私は立っているわけです。そういうことも労働大臣は十分御認識だと思いますけれども、ぜひその辺も含めてひとつ労働省の今後の取り組みを聞かしていただいて、私の質問を終えたいと思います。
  91. 林ゆう

    ○林国務大臣 お答えいたします。  現在の社会経済の中でパートタイム労働者の占める位置というものはだんだんに大きくなってまいりました。一番近い統計によりますと、四百七十一万名の方々が働いておるというような数字も出ております。また、特にその中で御婦人のパートタイマーの方は三百三十三万人という数字もございまして、こういったことにいろいろ思いをはせていきますと、今のままでの対応の仕方がこれでいいかということになりますと、先生御指摘のようないろいろな問題がそこにあるわけでございます。そこで、労働省といたしましては、研究会を設けまして、学識経験者その他のいろいろな御意見をいただきながらただいま検討をしているような状態でございます。  また、パート労働者の退職金の問題につきましては、摂津市において条例が施行されたということも私どもは承知をいたしております。そこで、これは一つの大変貴重な試みであろうというふうに私どもは受けとめておりまして、このことにつきましてもいろいろ研究会などによりまして審議をいたしておりますところでございますので、こういったものを踏まえてパートタイム労働者のこれからの向上のために意を尽くしてまいりたい、このように考えているような次第でございます。
  92. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ、既存の制度では十分でないという御認識である、それで研究会をつくってこれから一生懸命取り組むんだ、こういうことに私は理解をし、ひとつさらなる前向きな御検討をお願いをして、私の質問を終えたいと思います。ありがとうございました。
  93. 中島源太郎

    中島(源)委員長代理 これにて井上君の質疑は終了いたしました。  次に、神崎武法君。
  94. 神崎武法

    ○神崎委員 私は、初めに同鉄改革問題についてお尋ねをいたします。  国鉄改革の必要性と分割・民営化につきましては、私は基本的に賛成であります。ただし、余剰人員対策が果たして十分であるかどうか、長期債務の処理の仕方をどうするのか、また三島問題、三島の切り捨てにつながらないかどうか、こういった点につきましては、あらゆる角度から禍根を残さないように慎重に検討をしなければならないと考えるわけであります。  特に、私は、本日はこの三島問題、これを九州を例にとってお尋ねをいたしたいと思いますけれども、議論をするというよりもこの問題点指摘をいたしまして、それに対する当局の考え方を整理していただく、こういう形で質問をいたしますので、簡単明瞭にお答えをいただきたいと思います。  この三島の新会社には一兆円の基金が設定されることになっております。ところが三島の方では、一兆円の手切れ金で切り捨てられるんじゃないか、こういう不安の気持ちもあるわけでございます。また、特に九州におきましては、昭和三十年代の国のエネルギー政策の転換によりまして大量の炭鉱離職者が生じて、今なおその後遺症に悩んでいるところでございますから、再びまた国の政策の転換によって犠牲を強いられるのじゃないか、こういう不安の念のあることも事実でございます。私は、今回の国鉄改革に当たって、当局はこういう三島の方々の不安を除去して、新しい出発が希望を持ってできるんだ、こういうことをこの国鉄改革の論議の中で明らかにしていただきたいと思うわけでございます。  その意味におきまして、運輸大臣と国鉄総裁のこの国鉄改革に当たる心構え、御決意を伺いたいわけでありますが、特に国鉄総裁に申し上げたいのであります。  昨年三月に九州総局ができたわけでありますが、その初代総局長になられた武藤氏は半年後の九月に退職されているわけであります。この方はその一年前から門鉄の局長という立場にあった、そういう事情もありますけれども、ともかく新しい九州総局が出発して半年後にトップがやめられた。さらに、それから五カ月後のことしの二月に次の田村氏も退職をされたわけであります。この国鉄改革という大変な大改革を目の前にして、最前線の指揮官が短期間で次々とやめられている。私はそこに、国鉄側の事情もありましょうし、御本人の個人的な事情もあろうかとは思いますけれども、どうも釈然としない点があるわけであります。国鉄本社の国鉄改革に対する意気込みというものが、前線の全指揮官にそれが伝わっているのかどうか、そういう点も含めまして、運輸大臣と国鉄総裁の御決意のほどをお尋ねいたします。
  95. 三塚博

    ○三塚国務大臣 国鉄改革の重要性につきましては神崎委員も既に御研究、御理解を得ていると存じます。今日のこのままでは到底鉄道としての特性もまた再生も期しがたいという土壇場のところでございまして、さような意味で分割・民営ということに、監理委員会もそうでありますが、政府もこの道しかなかろうということで、鋭意今その作業に入っておるわけであります。  特に、御指摘の九州、四国、北海道、それぞれ島別分割の中における九州、この九州鉄道会社を、将来ともに九州の地域の足として、また地域開発の担い手として、また経済の発展の動脈としてどのように機能せしめるかは、今回の改革の重要なポイントでありますので、政府としても全力を尽くして、その収支計算がきっちりといき得ますように今取り進めておりますし、監理委員会は、十二分に黒字としてスタートでき得るものという算定をお出しをいただいておるところでございます。  要すれば、今の国鉄の延長でまいりますならば到底再生を期することは至難でありますけれども、新しい民間会社としてスタートをいたしますれば、行為能力も付与されるわけでありますし、経営戦略も地についた九州独自の地域鉄道としての戦略が立てられていくのではないだろうか、そういうところに大きな期待がありますことも当然であります。政府として、この鉄道会社が九州地域に裨益をし、貢献をしていけるような鉄道でありますように配慮をしつつ取り組んでいかなければならぬ、このように思っておるところであります。  また、ただいま、人事の面については総裁から御答弁をいただくのが筋であろうと思います。本来こういう時期でございますから、九州その地に骨を埋める決意で御赴任をいただき、その中で全力を傾倒されますことが正解であるな、この点だけ申し上げさせていただいて、答弁にかえます。
  96. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 ただいま運輸大臣から申し上げましたとおり、これからの改革の大きなねらいは、やはり徹底した効率的な経営、活性ある経営というものはどうしたらいいかという点に絞られると思います。特に三島の問題につきましては、そういう面で今まで非常に赤字の多いそういう地域でございましたので、そうした面で十分な配慮をしながら、新しい民間経営として活力のある運営ができるように十分配慮をしたいというふうに思っておるところでございます。  ただいま先生から人事の面でのおしかりをいただいたわけでございまして、まことにごもっともな点でございます。その当該地域におきましては、相当な年月をもってトップに立つ者は努力しなければならぬということはもう当然でございまして、今回の人事は私どもの全く本意ではございませんでした。本人の一身上の都合という点でやむを得ず人事をしたわけでございますが、これは私どもの本旨ではありません。直ちにそれまで首都圏の仕事を預かっておった常務理事を九州に派遣いたしました。九州に骨を埋めるというような気持ちで一生懸命やれというふうに言ったところでございまして、これから九州に対しまして、全身、全力を挙げまして頑張るつもりでおるわけでございます。よろしく御理解をいただきたいと思います。
  97. 神崎武法

    ○神崎委員 私がまず最初にお聞きしたいのは、九州の新会社の経営見通しが本当に黒字基調になるのかどうか、こういう点であります。  再建監理委員会の試案によりますと、九州の新会社は発足当初の昭和六十二年度から経営は黒字で出発して五年後には黒字基調になるというようにしているのであります。ところが、九州・山口経済連合会の試案によりますと、私鉄並みの経営努力をしても自力で単年度黒字に転換するには十七年かかるとしているのであります。明らかに、ここに食い違いが生じております。しかも、この九州・山口経済連合会の案によりますと、この職員の数も再建監理委員会の案よりも三千四百人少なくする、営業形態も特定地方交通線のうち三次予定線を切り離して幹線など十九線区のみで営業する、こういった一段とスリムな経営を求めてもなお黒字転換に十七年かかるとしているのであります。本当に、この再建監理委員会の試案にありますように五年後に黒字基調になるのかどうか、この点についてお尋ねをいたします。     〔中島(源)委員長代理退席、原田(昇)委員長代理着席
  98. 吉田耕三

    吉田(耕)政府委員 監理委員会の事務局でございます。  監理委員会といたしましては、九州を初め三島につきましては、本州に比べて相対的に大変厳しい環境にあるということを十分認識いたしまして、各種の特段の配慮をしてスタートさせるということにしております。  監理委員会の試算におきましては、人件費とか物件費につきまして私鉄並みの生産性を基本といたしておりますが、なおそれでも営業赤字が出る。したがいまして、一つは長期債務の免除を行う。しかし、それでもなお営業赤字が出ますので、運用益でその赤字を補てんし得るように、逆な発想でございますが、補てんし得るような金額の基金を設定するということにしております。これによりまして、六十二年度にはその基金額で必ず黒字になり、それ以降も、先生今おっしゃいましたように五年間の長期見通しを出しておりますが、黒字基調がずっと続いていくということになっております。  それで、お話の九経連の試算でございますが、私どもも拝見させていただきました。九経連の試算におきましては、今先生おっしゃいましたように収入見込みとか経費の見込みというような点について、監理委員会の試算と前提条件とかあるいは推計方法とかいろいろ違った面がございまして、基金を積む前の裸の営業損益におきまして我が方の試算より約百億円だけ赤字幅が九経連の方が大きくなっております。  今先生御指摘の、九経連の試算においては十七年後にようやく黒字になるとされているという点でございますが、これは基金による運用収入を計上しない場合の裸の営業損益がそういう姿になるということでございます。九経連の試算におきましても、それに必要な基金は設定するということでございますから、初年度から黒字になるような基金を設定するということでございますから、九経連の計算でも基金を設定すれば黒字になるということでございます。  ただ、我が方の試算との違いは、九経連では基金の設定額を二千三百八億円といたしております。そして十七年後には基金なしでもやっていけるということでありますので、十七年後までに基金の運用益だけではなくて基金の元本までも全部取り崩してしまうという計算をしております。  当方といたしましては約三千六百億円の基金を設定しておりますが、これにつきましては未来永劫元本は一切、特別の場合を除いては取り崩さないで、その運用益だけで赤字補てんに充てるということにいたしておりまして、このような意味において、九経連の試算の場合に比べて当方の試算の方が手厚い収益確保のための措置を講じていると私どもは思っております。
  99. 神崎武法

    ○神崎委員 心配ないということでありますけれども、新会社が真剣に努力をしてもなおかつ経営が困難になった、こういう事態が生じたときに、運輸大臣、その面倒はこれは九州の方で見ろ、こういうことでしょうか。
  100. 三塚博

    ○三塚国務大臣 これは今回の最大のポイントになるところだと思います。スタートを切るに当たりまして、収支計算が今次長が言われましたようなこと、また運輸省として、また政府として、これをさらにフォローアップをいたして法案提出までに明示をし、御審議をいただくことに相なるわけでありますが、ベストを尽くすということの中で確実に黒字が計上されるであろう、こういう大前提で、またそういう仕組みでスタートをいたしますものでありますから、せっかくの神崎先生の御質問でございますが、実はその点を想定をしない、まさにそういう意味では背水の陣でこれに取り臨む、こういうことで御理解をいただけますればと存じます。
  101. 神崎武法

    ○神崎委員 九州の新会社の経営形態につきまして、運輸大臣は記者会見で、国鉄、地方経済界のほか地方自治体も参加した第三セクター方式を導入する考えであるということを明らかにされているようですけれども、これはどういう考えによるものでしょうか。また、この第三セクター構想というのは他の五つの新会社についても同じく導入するお考えなのかどうか、この点をお尋ねをします。
  102. 三塚博

    ○三塚国務大臣 先般、国会再開直前に九州を訪問させていただき、九州知事会会長奥田福岡県知事さんに御面接をいただきまして、改革に対する御理解、余剰人員に対する御理解、御協力をお願いをいたした際に、いろいろ御質疑どもございまして申し上げた件でございますが、九州鉄道会社も全額国鉄出資の会社として他の五社と一緒にスタートを切るわけであります。そして経営の状況を見つつ、逐次株を放出しながら純民間会社に移らさしていただくというのが基本方針でございますが、同時に、九州地域鉄道としての使命を果たしていく、九州の鉄道としてこれを守り育てていくということでありますならば、放出される民間の会社の株というものを県及び地方自治団体あるいは九州経済界、九州の方々がこれをお受けいただきまして取り進めるというのも一つかな。そういうことがあってもよろしいのではないだろうか。さらに、放出する際に、地方団体として、九州全体として、経済界として、これに明確な意思表明をすることによってそれをお受けいただく。上場をしてそれを一般市場で処分をしていくのも一つの方法ではありますが、その前に、地域鉄道という重要な問題点を考えるということでありますれば、そういう形でこれに取り組むということであれば、九州人の九州鉄道である、こういう意識の中でより一層このものが育てられ、発展をしていくのではないだろうか、こういう私の個人的な見解を実は御質問を受けた中で申し上げさせていただいたわけでございまして、政府としてその方針を取り決めておるというものではございませんで、原則は、スタート後、状況に応じ株を逐次放出をしていく、こういうことであります。
  103. 神崎武法

    ○神崎委員 今回の国鉄改革によりまして九州が抱えます一番大きな問題は、これまでにも論議になっております余剰人員の問題であります。  九州の新会社発足時の余剰人員は一万一千人で、現在の職員数は二万七千人でありますから、九州の国鉄職員の二人に一人近くが国鉄を離れるということになるのであります。我が党の近江議員の試算によりますと、九州内で転職できない国鉄職員は三千八百人にも上るということが明らかになっているわけでございますけれども、実際に求人の有効倍率を見てみますと〇・三六倍と、これは全国平均の半分であります。赤字ローカル線の切り捨て問題も抱えておりまして、九州地域内受け入れについてはこの数字よりももっと厳しいのじゃないか、こういうように私は思うわけであります。  他方、九州の国鉄職員のアンケート調査によりますと、回答数の九〇%以上が現在住んでいる九州地域内での勤務を希望しているのであります。九州のこの余剰人員の再就職につきまして基本的にどのように考えておられるのか。いわゆる九州域内での転職を考えておられるのか。他地域での転職を考えておられるのか。これはこの間の国鉄総裁の答弁からいたしますと、他地域での再就職をお考えになっているようにも受けとめたわけでございます。ところが運輸大臣は、原則として九州域内で採用するよう求めているということも伺っております。そこで、この点についての基本的な考え方につきまして、運輸大臣並びに国鉄総裁からお伺いをいたしたいと思います。
  104. 三塚博

    ○三塚国務大臣 今回の改革の最重要課題はこの人員の問題であります。いかにそれぞれの希望するパートで働くことのでき得る状況をつくり出すか、一人といえども路頭に迷うようなことをさせてはならないというのが大原則で、全力を尽くしておるところでありますが、ただいま御指摘のように九州地内における再就職を望むというのが大半であろうと思います。よって私も、今申し上げましたように、それぞれ知事さん初め首長さん方にも、御採用方について運輸省としてもお願いを申し上げてまいったところでございます。  しかし、近江先生の先般の委員会における御指摘の資料も傾向を明示いたしておるという意味で非常に貴重な資料であろうと思いますし、そういう中で三千八百はなかなか吸収でき得ないのではないかというようなこと、また、有効求人倍率の問題等の関係もこれあり、いかにこれを吸収せしめ進められるかということでありますが、大前提はやはり望まれるその場所に就職でき得ますようにベストを続けてまいりますけれども、どうしてもそのことで予定された三年以内において転職、再就職が難しいということに相なりますれば、広域的な観点からこの配置を考えなければならない、これもやむを得ないことかな、こんなふうに思います。しかし、大前提はあくまでも地内における再就職が確保でき得ますように、政府間におきましても協議を進めながら取り進めてまいりたいということであります。
  105. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 余剰人員の問題は大変重要な問題でございまして、特に九州におきましては先生の数字のとおり一万一千人の余剰人員の予想が出るわけでございます。しかしながら、九州内の経済事情、求人倍率等を考えますと、現段階で、各職員の地域志向性は非常に強いわけでございますが、これを全部九州の中で賄うということは大変な努力が要る。しかし、できるだけ九州内で雇用していただくように最善の努力をしたい、この点はもう運輸大臣と全く同意見でございます。  ただ、そうもいかないであろうということも予想されますのだ、今から現国鉄内におきましていわば広域配転というようなことも考慮しつつ、将来にわたりまして、全国的な配慮の中で雇用の場の確保をしてまいりたいと思いますし、その場合には、住宅問題、教育問題、いろいろな問題が出ることと思いますが、そうした点も十分配慮しながら、万遺漏のないようにしていきたいと思います。
  106. 神崎武法

    ○神崎委員 この余剰人員の問題でもう一つ今出てきている重大な問題は、玉突き現象の問題であります。国鉄関連企業に対しても余剰人員の受け入れを求めているわけでありますけれども、関連企業の方では余剰人員を受け入れるために人員整理をしなければいけない、こういう玉突き現象が各地で出てきているわけであります。国鉄の方が力が強いため、無理やりに押し込もうと思えばできないことはないわけでありますけれども、関連企業の方は、余剰人員を抱えてやってはいけないわけでありますから、結局人員整理をせざるを得ないという悪循環が心配されるわけであります。この国鉄の余剰人員問題は、国鉄関連企業の余剰人員問題に発展するのではないか、私はその点を危惧をしているわけでありますけれども、この点についてどのような対策、そういうことが起こらないような対策をお考えになっておるのか、運輸大臣にお尋ねいたします。
  107. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 関連企業は国鉄と不即不離の関係にある大変仲のいい企業でございまして、我々の改革に当たりましても、関連企業も苦楽をともにしてくださいという呼びかけをいたしております。余剰人員の問題につきましても、関連企業の協力なしては、私どもの二万一千人という数字を出しておりますが、これがなかなか達成できないということでございますので、若干無理であるとは承知の上で、関連企業に個別にお願いをいたしておるところでございます、  問題は、今先生御指摘のように、玉突き現象を起こすのではないかということでありますが、国鉄の方の現在の定年、定年制はございませんが、定年のおおよその標準は五十五歳、それから関連企業の方は、定年の標準といいますか平均が六十二、三歳とかなり高年齢でございます。したがいまして、この際ひとつその定年の平均レベルを少し下げていただいて、少しすぎ間をつくっていただいて、国鉄の方の余剰人員を受け入れてくださいというお願いをいたしておるところでございますけれども、そうした点におきまして、関連企業の余剰人員の問題に波及、転嫁するというようなことのないように、スムーズに、よく各企業と話をしながらお願いをしてまいりたいというふうに思っております。
  108. 神崎武法

    ○神崎委員 新会社発足までに整備しなければならない基盤の問題でありますけれども、九州はこれまで車両は他地域で使われました老朽車両が回されておりました。百キロ以上の高速運転が可能な線区は全国平均の半分以下で、基盤整備がおくれているのが九州の国鉄の現実であります。新会社発足までにさまざまな基盤整備をやらなくては、スタート時点から大きなハンディを九州が背負って出発するということになるのであります。老朽車両の更新につきましては、九州総局の希望はほぼ認められたようでありますけれども、橋梁、トンネル、電化、複線化、こういった他の基盤の分野で積み残しが余りにも多いのであります。この程度で九州の新会社の基盤整備はもうできたんだ、あとはスタートを待つばかりである、このように当局はお考えになっておられるのかどうか。
  109. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 九州につきまして複線化、電化、老朽施設の更新等の問題があることは承知しておりますが、先生今御指摘のとおり、車両につきましてはかなり思い切って本年度、来年度の予算で手当てをしようというふうにしたわけでございますが、その他の複線化、電化、老朽施設等の問題につきまして今子細に点検をいたしておるところでございます。  全国的な数字と見比べてどうかという点があるわけでございますが、例えば複線化、電化の問題にいたしましても、若干の数字のおくれといいますか、そういうものはあるかとも思いますが、現状の輸送需要なり旅客の要望というようなものに対しまして、全国平均と比べましてまあまあの線ではないか、そういうふうに見ております。  それから、トンネルとか橋梁などの老朽施設の問題でございますが、これもわりかし古い施設が多いわけでございますけれども、全国にもやはり同様な施設が残っております。特に問題のあるような重点的な施設についてパーセンテージを見ますと、逆に九州の方は、その老朽度といいますか、そういうものが少しいいのじゃないかというような点もございまして、ある程度全国レベルだなという判断もあるわけでございます。いずれにいたしましても、残された期間、少ない時期に少ない金額でなるべく新会社がうまく立ち行きができますように、できるだけの配慮をしていきたいと思います。
  110. 神崎武法

    ○神崎委員 赤字ローカル線の問題もあるのですけれども、時間の関係で取り上げません。  また、もう一つ大きな問題は、貨物の廃止駅の問題でございます。間もなくこの貨物廃止駅が決まるということも言われておりますけれども、私ども九州は食糧基地九州、そういうコンセプトのもとに農産物の振興を図ってきているわけでございます。その面で、輸送面が縮小されますと私どものコンセプトそのものに大変な狂いが生じてくるわけでございます。     〔原田(昇)委員長代理退席、中島(源)委員長代理着席〕  ぜひともこの貨物の取り扱いについては十分な配慮をお願いいたしたいわけでございますけれども、近く発表予定の全国の貨物の廃止駅、大体どの程度の規模なのか。そして、その中で九州関係は大体どのぐらいなのか、おおよそで結構ですから、その点を明らかにしていただきたい。
  111. 丹羽晟

    ○丹羽(晟)政府委員 貨物会社の問題でございますが、個別の貨物駅あるいは個別の列車の問題につきましては、先生の御指摘のとおり、ただいま国鉄におきまして荷主とか関連の物流事業者の方方と御相談をして詰めている段階でございます。まだその結論が出るまでには若干の日時が必要なのかと思っております。いずれにいたしましても、貨物会社は民営の会社ということになりますから、基本的には採算を見きわめながら考えていくということになるかと思いますが、徹底した効率的な輸送を行う、あるいは徹底してコストを切り詰める、こういうことを考えて鉄道の貨物輸送の特性がある分野につきましてはできるだけ幅広く取り扱っていきたい、こういうことで私どもも考えております。
  112. 神崎武法

    ○神崎委員 もう少し具体的に、私がお尋ねをした点についてお答えいただきたいと思いますが。
  113. 丹羽晟

    ○丹羽(晟)政府委員 ただいまお答えしましたとおり、一応今私どもの出しておる段階は、昨年の十一月にフレームワークという形で基本的なフレームの考え方を出したというところでございますので、これからことしの十一月のダイヤ編成に向けまして具体的な訳なり列車の張りつけの作業ということをやっていくという段階でございますので、その点につきましてはもう少し時間がかかる、こういうことになるかと思います。
  114. 神崎武法

    ○神崎委員 最後に、整備新幹線の問題についてお尋ねをいたします。  特に九州新幹線につきましては、国土の背骨を形成するものでありまして、九州地域の一体的浮揚発展に画期的役割を果たすものであるという認識を私はいたしておりますし、地域住民の要望が極めて高いものでありますし、早期着工、早期完成が必要であると考えるわけでございます。この点について。  それから、この建設する場合の建設主体についても運輸大臣御構想があるようでございますし、運営主体、財源問題を含めてこの着工の決意と時期、お答えをいただきたいと思います。
  115. 三塚博

    ○三塚国務大臣 九州新幹線の問題につきましては、六十一年度予算編成に当たって政府、与党間で、各路線ごとの調査の進捗状況に応じ、引き続き着工準備作業所等における着工のための準備作業、環境影響評価等所要の作業または調査を進めることとし、このうち九州新幹線ルートについては、鹿児島ルートについてはその進捗状況に応じ、本年八月を目途に工事実施計画の認可申請を行うということで、政府、与党間において確認が行われ、予算が計上されましたことは御案内のとおりかと思います。運輸省といたしましてはこれを受けまして、特に昨年八月二十二日これまた政府、与党間における取り扱いを決めたわけでございます。その中で財源問題あるいは国鉄分割・民営化後における建設主体、これをどこが引き受けるのかという運営主体のあり方、並行在来線のあり方などの着工のための前提条件をクリアするために、党代表それから関係閣僚が入りました整備新幹線財源問題等検討委員会というのを設置をいたし、これで鋭意検討を進めておるところでございますが、早期に結論が得られますように、運輸大臣として今後も努力を重ねてまいるつもりであります。  さて、今先生御指摘の事業主体をどうするのかという問題であります。本件につきましては、自由民主党の整備新幹線建設特別委員会と政調におきましてどうあるべきかということの検討が続けられておるわけでございまして、私自身も、国鉄の技術陣というのは世界に冠たるグループである、青函を掘り抜いた、リニアモーターを開発した、また既に新幹線をつくり上げた集団でありますから、この技術は国益のためにもしっかりと保持することが正解かな、こんなふうに思い、この分割・民営の改革時に間に合えばよろしいのでありますが、横ににらみながら、この形態を真剣にやはり運輸省としても考えていかなければならない。鉄建公団が青函トンネル開業時まで他との統廃合を考えるという閣議決定もございますものでございますから、それとの関連もこれあり、これのあり方を真剣に検討していかなければなりませんし、同時に、この整備新幹線の建設主体としては六旅客会社はできないわけでございますから、そういう点で、この事業主体を中心としてどういう形でこれが取り進められますか、これも党の検討と相並行しながら、運輸省は運輸省として勉強を取り進めてまいらなければならない、こんなふうに思っておるところでありまして、検討委員会の目途が昭和六十一年度三月末までその結論を得るという一つの方向づけなどもありますものですから、それに向けて真剣に検討を進めてまいりたい、かように考えております。
  116. 神崎武法

    ○神崎委員 運輸大臣、国鉄総裁、ありがとうございました。  続きまして、地下ダム建設計画についてお尋ねをいたします。  水資源の逼迫ということが何年来も言われてきているわけでございますが、水資源としましては、地上ダム、湖沼、海水の淡水化等いろいろあるわけでございます。それぞれ経済性、環境問題、汚染問題等の問題を抱えておりまして、水資源としての展望は必ずしも明るくないと思うわけであります。我が国の年間の降雨量が大変多いにもかかわらず、山間部や離島は慢性的な水不足に悩んでおります。  そこで、この水資源対策といたしまして、降水量が多いけれども地下水として流れて利用されていない、ここに着目をいたしまして、地下水を利用した地下ダム構想、地下ダムをつくったらいいのじゃないか、こういう構想があるわけでございます。私は高くこれを評価するものであります。既に離島や半島の海岸近くの町や村では、地下水脈に海水が浸透するのを防ぐと同時に、地下水を地中にため、生活用水や農業用水に使用するために、沖縄県の宮古島、長崎県の野母崎町、福井県の三方町の三カ所に地下ダムが設置されております。  そこで、まず建設大臣にお尋ねいたしますけれども、建設省では慢性的な水不足に悩む山間部、離島の生活用水や農業用水を確保するために、中小河川の河床を利用した地下ダム建設計画の検討を始めだということが言われております。そして、具体的に候補地として岩手県の三陸町が挙げられておりますが、建設省のお考えになっているこの多目的地下ダム構想というのはどういうものか、それから、全国で候補地はどのくらいあるのか、着工調査はどこに決まっているのか、こういう点を含めて簡単に御答弁いただきたいと思います。
  117. 江藤隆美

    ○江藤国務大臣 岩手県の三陸町は綾里川ダムと言ってきておりまして、先生も御研究になっておると思いますが、上流の方でダムをつくって下流の方で地下ダムをつくる。上流の方は洪水調節それから多目的ダムをやる。それから下の方には伏流水あるいは河川水をためてそれを必要なときにくみ上げて飲料水等に使うという構想でございまして、この六十一年度の予算が国会を通過しましたならば、六十一年度から実は着工したい、こういうことで準備をしておるものでございまして、おおよそ総事業費は、わりかし小型でありまして、これは地域に密着したものですから、大体三十億程度になろうかと思います。  それから、おっしゃいましたように雨の多いところでやはり地下水を大事にするということは大事なことでありまして、農水省がやっておる宮古島を初めその他のところもありまして、実は各地で今調査をいたしておるところです。  そこで、私も、せっかくのお尋ねですから、調査箇所を建設省一回発表したらどうかなという話をしましたところが、近ごろはこういうことを発表しますと、すぐに土地の買い占めに走る不逞なやからが実はおりまして、大変こうした公共事業の執行が困る。実は来月初めに、この前申し上げましたように八ッ場ダムに行ってこようと思うのですが、八ッ場ダムが十何年かかってやっと地元の合意を得たと思ったら、不動産業者がそこに別荘を建ててそして補償金目当てにやる。そういうふうなことをやる者がたくさんおるものですから、なかなかやはり今の段階で公表するということは差し控えた方がいいんじゃないか。今回みたいに既に計画がもう具体的になりまして予算執行の段階になったときにやった方がこれからいいんじゃないかというような考え方で実は臨んでおる、こういうふうに御理解をいただきたいと思う。これは積極的にやりたいと思っております。
  118. 神崎武法

    ○神崎委員 ぜひともこの計画を大いに推進していただきたいと思います。  そこで、建設省がお考えになっているのは、生活用水だけしゃなくて工業用水や農業用水なども含めた多目的ダムだろうと思うわけでありますが、現実の山間部、離島で問題になっておりますのは、飲料水をどうやって確保するかという、そういう点であります。そこで、生活用水の確保という観点から、私は地下ダムというものを今後積極的に推進することが必要であると考えるわけであります。この点の所管は、これは水道用地を所管しているのは厚生当局ということになるわけでありますけれども、既に長崎の野母崎の方では厚生省補助のこういう地下ダムもできておりますし、その効用も含めまして、今後この地下ダム計画を積極的に推進すべきものと考えますけれども、その点についてのお考えを伺いたい。
  119. 今井勇

    ○今井国務大臣 お説のとおりでございまして、まず長崎県の野母崎の水道は極めて有効に動いております。四十九年にできまして、一日約三百立米の水の取水が可能になっておりますので、非常に喜ばれておるわけでございます。  そこで、今後離島だとかおっしゃいますように、半島部、非常に水に困るところ、その場合に地下水をためまして、そして地下ダムをつくったらどうだ。極めて有効な手段だと私は思っております。そこで、今後技術的あるいは経済的に可能な場合には、地下ダムの建設に対しまして指導とか助成というものを積極的に行っていきたいというふうに考えておるものでございます。
  120. 神崎武法

    ○神崎委員 現実に私は注目しておりますのは、福岡県の宇美町で水道用水確保を目的といたしました地下ダム建設を計画して、現にボーリング調査を初め各種の調査を行っているのであります。同町は福岡市のベッドタウンとして人口が年々増加し続けておりまして、福岡地区水道企業団からの水源手当てが将来なされても、近々水不足になることが目に見えているということで、江崎町長の英断で、既に各種調査に町として一億円を支出して、二カ所で調査を進めているわけでございます。この地下ダム計画というのはこれまでの地下ダムとは違いまして、内陸部で初めて地下ダムをつくるという点で大変私は注目に値すると思っておるのですが、こういう地下ダム工事の早期着工のために国の補助を早急につけてもらいたいと思うわけでございますけれども、これが住民の切なる願いでございますので、その点御配慮をよろしくお願いいたしたい。
  121. 今井勇

    ○今井国務大臣 厚生省でも、現在、宇美町でおっしゃるとおり町が基礎的な調査をしておりますことはよく存じております。  そこで、調査の結果、実現の可能性があると判断されまして、同町から補助の要望が出された段階でよく内容を見まして、これならば大丈夫だという見通しがあれば、水道水源の開発施設の整備費補助というふうな助成も検討してまいりたいな、こう考えております。
  122. 神崎武法

    ○神崎委員 それでは、建設大臣にお願いしたいのですけれども、地下ダム工事に対する国庫補助の問題なんですけれども、地下ダム工事に対する補助と実は同じだろうと思うのですが、その点をちょっと確認いたします。  それと、地下ダムを設置しようというところはいずれも財政的に厳しい山間部、離島ということになるわけでございますから、飲料水の供給確保のために町や村を挙げてこの地下ダムに取り組んでいる、そういう地域のためにも、今後この地下ダム構想というものを強力に推進していくためにも、国の補助率というものをもっと引き上げていただきたい、このように思うわけでありますけれども、その点いかがでしょうか。
  123. 江藤隆美

    ○江藤国務大臣 今直ちに引き上げますということをお答えすることは差し控えたいと思いますが、新しい分野でございまして、特に御意見のような山間地帯あるいはまた、沖縄はこれは補助率が違うわけでありますが、普通のところは河川法に基づく補助率、こうなっておりまして、それから沖縄あたりはいわゆる後進地域の補助率のかさ上げの法律が適用されて補助率が高いのですが、しかしそれにしても金のかかることでありますから、これから少しく検討させていただきたいと思います。特に、これは起債も絡む問題でございますので、関係省庁ともよく相談をして、これらのものが積極的に進められるような方策についての検討を進めさせていただきます。
  124. 神崎武法

    ○神崎委員 ありがとうございました。よろしくお願いします。建設大臣、厚生大臣結構でございます。  それでは、円の国際化、金融の自由化の問題について短時間お尋ねをいたします。  大蔵大臣にお尋ねをいたしたいわけでございますけれども、本日の十一時現在の為替相場百七十九円五十五銭ということでありますが、一ドル百七十円台に突入しているわけであります。それで、アメリカが為替相場についてどういう考えを持っているのかという点を、これは感想で結構ですからお伺いしたいわけでありますが、十八日のベーカー財務長官の発言によりますと、もう一段のドル下方修正を容認する見解を示したということが言われているわけであります。その他方、アメリカで大統領に次ぐ第二の実力者だ、こういうふうに言われておりますボルガIFRB、連邦準備理事会の議長の証言によりますと、これは自律的な相場形成によりドル相場の安定を目指す方針を明らかにしたということも言われておるわけでございまして、今後さらに円高の方向をアメリカが考えているのか、望んでいるのか、あるいはもう大体ここら辺で潮どきだというふうにお考えになっているのか、こういうアメリカ当局の考えというのを我が国としてはどういうふうにごらんになっているのか、その点についての、御感想で結構ですから、お伺いいたしたいと思います。     〔中島(源)委員長代理退席、委員長着席〕
  125. 竹下登

    竹下国務大臣 ベーカー財務長官が下院の予算委員会で、私もFEDも金利低下を望んでいる、そしてターゲットゾーンについては現状では適当でない、あるいはボルカーさんが下院の銀行委員会で、ドルの下落は十分と思う、というような発言がそれぞれあるわけでありますが、基本的には私は、この問題につきましては、アメリカは元来マーケット至上主義でございますから、自律的な安定というものを考えておって、今意図的により一層どうこうしようという考えはないではなかろうかと、まあ感想でございます。
  126. 神崎武法

    ○神崎委員 今国会に大蔵省は東京オフショアセンターの創立と預金者保護を強化する預金保険機構の整備の法改正を予定されているわけでございますが、私もこの点は高く評価するわけでございます。  オフショアセンターにつきましてちょっと一点お聞きしたいのは、今回創立されるこのオフショアセンターは、ニューヨーク型の銀行業務のみを取り扱うセンターだ、こういうことが言われているわけでございますが、ロンドン型のいわゆる銀行業務も証券業務も取り扱うあるいは内外一体となった金融市場にする、そういう将来の構想を持った上で、過渡的な位置づけとして今回のニューヨーク型のオフショア市場というものをおつくりになっているのかどうか、その点をお尋ねいたしたいと思います。
  127. 行天豊雄

    行天政府委員 御指摘のとおり、オフショア市場の創設につきましては、昨年来外為審議会等で早期に創設すべきという御意見を賜っておりまして、今国会でこの創設のための所要の法改正につきまして御審議をお願いしたいと思っておるわけでございます。  基本的に申しますと、そもそもこういったオフショア市場をつくるべきだという考え方の背景にございますのは、将来日本の円の国際化を一層推進させたい、あるいは東京市場というものをニュヨークとかロンドンと並んだ国際的な金融の中心地にしたいという考え方があるわけでございます。ただ、それぞれの市場、長い金融の歴史、制度、法制がございまして、日本の場合もやはりそういった現実を踏まえた措置をとる必要があるだろうとは思っておりまして、その意味で、私ども今お願いしようと思っております構想というのは、国内市場とは遮断をした、あくまで外——外の取引を自由に行える、そういう市場としてのオフショア市場を創設したいというふうに考えておるわけでございます。  もちろん、それでは国内の金融自由化はもう一切ストップかと申しますと、これは当然それなりに進めていく必要があるわけでございますけれども、少なくともこのオフショア市場の創設につきましては国内とは遮断をした形でのマーケットをつくりたいということでお願いをしようと思っておるわけでございます。
  128. 神崎武法

    ○神崎委員 預金金利自由化の問題の中で郵貯との関係ですね、これが大変大きな問題になってきているわけでございますが、一点だけ郵政大臣にお尋ねをいたします。  金融問題に詳しい学識経験者で構成する私的研究会であります金融調査研究会、館竜一郎東大名誉教授が座長でございますが、この研究会が昨年十一月二十一日にまとめた報告書によりますと、将来の郵貯のあるべき姿として、分割・民営化論とか、定額貯金見直し論とか、民間機関の金利に追随する原則、こういう三点の提案がなされているわけでありますけれども、この点についての郵政当局の評価、これについてお尋ねいたしたいと思います。  私は、最後の民間の決定した市場金利に郵貯が追随するルールの確立、これはやはりやむを得ないんじゃないかというふうに思っておるわけでありますけれども、郵政当局としてはこの三点についてどういうふうに評価されておるのか、いかがでしょうか。
  129. 佐藤文生

    佐藤国務大臣 お答えを申します。  あの調査報告書を読ましていただきまして、直観して感じたことは、財政投融資の全般あるいは金融メカニズムの全般を考えての御配慮がちょっと足らないのじゃないかな、こういう印象を私は受けました。そういう立場から、郵便貯金が御承知のとおりに百兆円という残高の額を示しましたが、かつての、五、六年前の純増額が年間六兆円だったとか五兆円だったとかという時代と大変変化しまして、二兆円台という非常に楽観を許さない厳しい状態になっております。  こういうことを考えたときに、金利の自由化の問題、郵貯の金利が民間に追随するという考え方はどうかという考え方を今言われましたけれども、実は郵貯の金利というものは郵政大臣の決めるべき大切な面でございまして、そしてそれを決める場合においても、先般の公定歩合、金利引き下げの件がございました。今までならば二カ月、三カ月となかなか話し合いがつきませんでしたけれども、私は、国際金融の情勢、それから民間市中銀行との整合性、それから内需の拡大、こういうような判断に基づきまして、それに連動して、貯金局長大蔵省とよく話し合ってそして決めようじゃないかということで、今月の二十四日からそれぞれ、出口も入り口も〇・五%の金利の引き下げをスピード的に的確に実施するということを見ていただいてもおわかりのように、やはり金利決定の多元性というか、自由化の波の中で金利というものは多元的にそれぞれの分野において決めていくことがいいのじゃないか、こう考えております。
  130. 神崎武法

    ○神崎委員 最後に大蔵大臣に、この預金金利自由化のシナリオの問題でお伺いいたしたいのでありますけれども、当初の「展望と指針」の中では段階的な預金金利自由化のシナリオが示されていたわけでありますが、昨年七月のアクションプログラムにおきましては並行的なシナリオ、そういうふうにシナリオが変わってきたわけであります。その後、大蔵省幹部の発言でも、アクションプログラムよりも自由化のスケジュールがさらに早まる可能性があるというような趣旨の御発言もあるようでございますけれども大蔵大臣としては、今後の預金金利の自由化全体のスケジュールについてどのようにお考えになっていますか。
  131. 竹下登

    竹下国務大臣 この預金金利の自由化については、これは前向きに主体的に推進することとしておりますが、信用秩序に大きな混乱をもたらしてはいけない、漸進的に進める必要があるということももとよりでありますし、環境整備のために最初おっしゃっておりました預金保険機構の法律改正等もお願いをしておるということでございます。いずれにせよ大口から小口へと、最終的には、やはりいつも問題意識としてお持ちになっておりますように、郵貯とのトータルバランスの問題というのが一番大きな問題であろう。この問題、どういう土俵で話し合っていくかというようなのがこれからの問題だ、そう安閑としておるわけにはいかぬと思っております。
  132. 神崎武法

    ○神崎委員 郵政大臣、どうもありがとうございました。  それでは、最後の有事シナリオの問題につきまして、防衛庁長官にお尋ねをいたします。昨年十月二十九日の予算委員会におきまして、我が党の市川議員が、有事シナリオとしてどういう形態のシナリオの可能性が強いかということを「防衛計画の大綱」との関係でお尋ねをしたわけでございます。防衛当局は、大綱は日米安保体制にすき間がない状況にするための防衛力整備のための考え方で、有事シナリオとは別なものだ、こういう御答弁をされているわけであります。ところが、制服のOBの方々は、大綱の想定しています奇襲的単独侵攻型のシナリオは誤りであって、重要な地域で重要な戦争があって、それがだんだん波及してきて日本が巻き込まれていく波及型のシナリオが現実的であるとして、有事シナリオが変わったんだ、波及型であることをもって大綱見直しの論拠としている、そういう点の指摘もあったわけでございます。  そこでお尋ねをしたいわけでございますが、防衛当局の言われるように、防衛力整備の考え方と有事シナリオを分けて考える論法でいきますと、仮に波及型のシナリオの蓋然性が高くても大綱見直しの論拠にはならない、こういうことになると思いますが、その点はいかがでしょうか。
  133. 加藤紘一

    加藤国務大臣 我が国の防衛力整備の前提というものと、それから複雑な国際情勢の中で起こり得る有事のいろいろな可能性というものは、それぞれ別個のものであろうと思っております。我が国の防衛力整備は、日米安保条約が有効に機能している段階において、そことのつなぎがしっかりしているということを達成させるために限定・小規模につき我々がしっかりと整備をする、そういう事態を防衛力整備の対象にするという方針でいくべきであろうと思っております。
  134. 神崎武法

    ○神崎委員 私が質問をした点、もう一度確認いたしますけれども、そうしますと、有事シナリオがどうであっても「防衛計画の大綱」の見直しの論拠にはならないということでよろしいですか。
  135. 加藤紘一

    加藤国務大臣 有事シナリオというものは幾つかの形態があります。それはもういろいろな、波及型から、それから我が国が単独に攻撃される型から幾つかあるわけでございますから、それとは別個に防衛力整備の方針は考えていくべきものだと思っております。
  136. 神崎武法

    ○神崎委員 それでは、私が指摘したように論拠にはならないということですね。よろしいですね。
  137. 加藤紘一

    加藤国務大臣 別個のものでございます。
  138. 神崎武法

    ○神崎委員 防衛の考え方といたしましては、蓋然性の高い有事シナリオは一体何なのか、やはりそこをまず議論して、その上に立って防衛力整備のあり方を決めるべきものであろうと私も常識的に思うわけでありますけれども、そういたしますと、防衛当局の理解によりますと大綱は特定の有事シナリオを持っていない、こういうことになるんでしょうか。
  139. 加藤紘一

    加藤国務大臣 いろいろな有事の想定につきまして研究いたしております。それにつきましては現在いろいろなケースで勉強はしておりますけれども、では我が国防衛当局がどういうケースを一番可能性のあるものと考えているのかという特定の設定したものをここで申し上げるべきことではないし、またそれが諸外国とも、そういう特定の設定を言うような防衛当局は余りいないんではないかなと思います。
  140. 神崎武法

    ○神崎委員 私は、特定の有事シナリオは何かということを今お尋ねしているのではありません。「防衛計画の大綱」というものは特定の有事シナリオを想定してそれに基づいてつくられているのではないということなのですかという点です。その一点をお答えください。
  141. 加藤紘一

    加藤国務大臣 特定の有事シナリオを想定して防衛力整備をしているのではなくて、我が国が日米安保と自衛隊でこの国を守るためには、すき間がないようにするにはどうしたらいいかという観点から決めているものでございます。
  142. 神崎武法

    ○神崎委員 市川議員は、波及型の議論、つまり米ソの衝突が中東か他の地域でありまして、それが波及してきて何らかの形で日本が戦争に巻き込まれる、こういう事態の方が現実的であるという議論が防衛庁の中にあるのかないのか、こういう点を再三予算委員会で質問をしているわけでありますけれども、防衛当局はその点について全くお答えになっていないのであります。防衛庁の中に、内局、制服を含めてこの波及型の考え方があるのかないのか、お答えください。
  143. 加藤紘一

    加藤国務大臣 当然のことながらいろいろな議論をいたしておりますし、その中でそれぞれの担当している部局、またはそれぞれのサービスといいますか、幕の考えを反映したりしていろいろな考え方があります。しかし、私たちが現在申し上げられるのは、特定の想定をここで防衛庁の見解として述べることは差し控えさせていただきたいということであります。
  144. 神崎武法

    ○神崎委員 この点も私がお尋ねしているのは、防衛庁の中に、これは制服組、内局を問わず、波及型のシナリオが一番蓋然性が高いんだ、こういう考え方があるのかないのか、この点をお尋ねしているのですよ。
  145. 加藤紘一

    加藤国務大臣 先ほどお答えしましたように、いろんな意見があります。それで自由に討議しておりますから、そういう意見を持っている人も当然いることはいるだろうと思います。
  146. 神崎武法

    ○神崎委員 そうしますと、どうして市川議員とのこの論戦の際には、防衛庁内にいるのかいないのか、この点を再三お尋ねしたのですけれども、全くお答えになってないのですね。どうしてあのときはお答えにならなかったのですか。
  147. 加藤紘一

    加藤国務大臣 防衛庁としてはどういうケースが一番あり得るのかという御質問に対して、我々は特定のケースをここで申し上げられませんと、こう言ったつもりでございます。
  148. 神崎武法

    ○神崎委員 そうではありませんよ。あの委員会の会議録を見ましても、「日本に、ある国が攻めてくるなんということはないんだ、もし日本が戦争に巻き込まれるとしたら、世界の重要な地域で重大な紛争があって、そしてだんだんにそれが波及してきて巻き込まれるんだ、こう言っておる。これを聞いたわけですよね、防衛庁に今あるのかと。そうしたら防衛庁は答えない」。防衛庁の中にあるいはOBの言う、大綱の想定を真っ向から否定しているOBのこの波及型の考え方、今の防衛庁の中にそういう制服のOBと同じような考えがあるのかないのか、こういう考え方があるのかないのかということで聞いているのですけれども、どうなんですか。
  149. 加藤紘一

    加藤国務大臣 そういう波及型のみしか考えられないから、それに基づいて考えると現在の防衛力整備の考え方は間違っているのだというような考え方というものはちょっと幾つかの点で論点がおかしいので、なぜならば、整備の方針というものとそれからいわゆるシナリオ、事態の想定というのは別の話でありますから、そういった意味でもその論議というのはちょっと粗っぽいのであって、そんなふうに考えておる者はいないと思いますと答えたのであります。
  150. 神崎武法

    ○神崎委員 先ほどそういう考え方もあり得るということ、あるということなんですけれども、そうしますと、防衛庁の中に波及型の議論、これもあるわけですね。あるとした場合に、やはり相当大きなそういう議論、単に一個人というよりも、大勢の中でそういう主張があるというふうに考えてよろしいでしょうか。
  151. 加藤紘一

    加藤国務大臣 日本の有事というのはどういうケースがあり得るのか、それは私たちがお答えしておりますように、日本が独自に攻められる単独型もありますし、それから波及型もあり得るでしょうと、これは私たち国会答弁いたしておるわけでございますし、たった今も乱そう申したわけでございます。したがって、我が方の中に波及型の方がより蓋然性が高いと思う人間もおれば、単独型の方が多いと思う人間もいるのは当然の論理的帰結であります。
  152. 神崎武法

    ○神崎委員 そうしますと、私がお尋ねしているのは、その防衛庁の中で単独侵攻型の意見を持つ人、それから波及型の意見を持つ人、両方いるということでありますけれども、どちらの議論を蓋然性の高いシナリオとして考えられている人が多いのか、その点はいかがですか。
  153. 加藤紘一

    加藤国務大臣 ということは、我が方の防衛庁の統一見解で日本はどういったシナリオが一番蓋然性が高いのかという問いにお答えするのと同じであります。その答弁は差し控えます。
  154. 神崎武法

    ○神崎委員 では具体的に伺いますけれども、三自衛隊の幕僚監部にそれぞれ防衛課長がいらっしゃいますが、どういう職務を行われる方ですか。
  155. 西廣整輝

    西廣政府委員 各幕に防衛部というのがございまして、防衛部に幾つかの課がありますが、防衛課というのは各幕のそれぞれの防衛力整備あるいは部隊の編成、そういったいわゆる企画部門並びに部隊の構成等をやっていまして、オペレーションの方はやらない課でございます。
  156. 神崎武法

    ○神崎委員 「ジスイズ」という雑誌の昨年の七月号に、この陸幕、海幕、空幕の防衛課長が「自衛隊は日本をこう守る」という座談会を行っております。これは御存じですね。  その中で、蓋然性の高い有事シナリオについてもそれぞれ見解を明らかにしているわけでございます。一体、どんな情勢下で、どんな形で日本が侵攻される心配が出てくるのか、こういう質問に対しまして、海幕の防衛課長は、「少なくともいきなりわが国だけに急に侵略してくるということは考えにくい。」安保体制が「機能している状況であれば、なんらかの他の地域における紛争というものが波及してくるという可能性が高いだろう」、こういう趣旨のことを述べております。  それから空幕の防衛課長は、日本に対する攻撃だけが独立して生起するという可能性は全く否定できないが、非常に考えにくい、中東で米ソが直接対峙するときに、ソ連が極東の兵力をスイングする場合、日本が非常に邪魔な存在になるときに、日本を攻撃することがあり得る、こういう趣旨のことを述べております。  それから陸幕の防衛課長は、「基本的には、極東地域で日本に脅威があるとすれば——日本列島の陸地と周辺の海空域がメーンになり、かつ、それは米ソの直接的な対決に至らない範囲で終わる戦い、すなわち日本列島及びその周辺での局地的、限定的な戦いになるだろう。」こういう意見を述べておられるわけであります。  私は素人ですから、この意見を読みますと、海幕、空幕は波及型の見解をお持ちなのかな、陸幕は単独侵攻型、これを想定しておられるのかな、こういうふうに感じるのでありますけれども防衛庁内にこの波及型の意見がある、しかも海空の方は波及型の理論の方が蓋然性の高い有事シナリオである、このように考えているんじゃないですか。
  157. 加藤紘一

    加藤国務大臣 先ほど申しましたように、内部では自由に議論をさせておりますので、したがって、それぞれいろんな意見があります。  で、その雑誌の座談会もそれぞれ個人的な意見を自由に述べているものだと思います。もちろん、防衛庁の人間でございますから、ある一定の限界はわきまえてしゃべっておりますけれども、そういう座談会に出席した人間が国会答弁と全く同じ、型にはまっただけのものであったら読者もつまらないでありましょうし、したがって、若干わきの甘い発言をしたりする場合もあろうかと思いますが、正式的には、私たちはその有事につきましては、波及型、それから単独型、それぞれ両方あるというのが私たちの立場でございます。
  158. 神崎武法

    ○神崎委員 ただいまの防衛庁長官の御発言は、それは国会答弁を、国会をおもしろくなくするために何か答弁されているように受け取るわけですけれども、それはやはり国会の場で本音の議論をしていただきたいし、それを防衛庁長官もしきりにいろいろな機会に発言されているわけなんですね。ところが国会ではなかなか本当のことは言えないような、そういうことじゃ困ると思うのですが、もう一度改めてその点御答弁ください。
  159. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私たちがこの国会で申し上げるのは、私たちの正式の省としての立場を申し上げなければならないわけで、それはすべてに責任を持って答えなければならないことでありますし、外国も当然のことながらその翻訳を、議事録を読んでいるわけでございます。したがって、私たちがここで申し上げるのは、そういった意味でかなり真剣に、そしてすべての反応を考えながら答弁していることでありますので、私たちがここで申し上げていることを防衛庁の正式の我々の考えとお聞きいただきたいと思います。
  160. 神崎武法

    ○神崎委員 それは先ほどの雑誌の中で、これはもうタイトルも、「自衛隊は日本をこう守る」という明確なタイトルがつけられているわけですよ。そして陸幕の防衛課長も、これは陸将補、ちゃんと肩書も入っています。それから海幕の防衛課長も、これは海将補です。それから、空幕の防衛課長も一等空佐。それから、司会は調査研究本部の研究員。これだけの役者がそろって、しかもこういうタイトルのもとに議論をしているわけですから、単に一個人の、一防衛庁内でこういう議論をしている、そういう発表ではないと私は思うのです。やはり、自衛隊は日本をこう守る、こう考えているんだ、これを国民の前に明らかにしたい、こういう姿勢をこの座談会で明らかにしていると私は思うのです。  ちょっとさっきの防衛庁長官の御答弁では納得しかねると思うのですが、もう一度御答弁ください。
  161. 加藤紘一

    加藤国務大臣 先ほど、この討議のかなり前の段階で申しましたけれども、それぞれいろいろな担当部署によって意見が異なって述べられていることもございます。その座談会でも述べておりますように、それぞれいろいろ言われるとなかなかわからないけれども、あえてそういうふうに言われれば、私個人としてはこんな感じかなというようなニュアンスで述べておりますでしょう。またそのときには、当然陸の方は、陸の自分たちの守る任務をより重大に考えたいという感じで述べるケースもその座談会ではお感じになられると思います。空も海も、それぞれ自分たちがやっていることが一番重要だと思いたいので、それにつながった観点のニュアンスがちらっと個人的に出ているように思いますけれども、それ全体をまとめるのが防衛庁の私たちの国会の答弁でございます。
  162. 神崎武法

    ○神崎委員 しかし、それぞれの三幕の防衛課長の肩書で議論をしているわけですよ。それで、海幕はどうするんだ、空幕はどうするんだ、それから陸幕はどうするんだ、要するに、それぞれの三自衛隊がどうやって日本を守るか、そういう前提のもとで議論をしているのですよ。個人的な一自衛官が、私はこう思います、こういう意見とは全然性質が違うと思うのですよ。どうでしょう。
  163. 加藤紘一

    加藤国務大臣 先ほど申しましたように、それぞれ個人的な見解でありますけれども、そういった防衛課長という重要なポジションですから、それなりに、その討論全体を見ましても、分をわきまえて、そして、防衛庁の大きな流れの中に沿っておるわけでございます。しかし、その中でいろいろな若干のニュアンスの差はそれぞれの担当部署であるかと思います。  それでは、陸の防衛課長が言いましたように、では、陸の防衛課長が単独型の方が多いと言っているんだから、それが防衛庁の見解かと言われれば、それは違うわけで、海の方が波及型が多いと個人的に言ったから、これが防衛庁の見解かといったら、それはわからないわけで、私たちのここで申し上げているのが全体を統括した考え方でございます。
  164. 神崎武法

    ○神崎委員 私は、やはり防衛論議は、建前としてこうだから、こういうことを政府が言っているんだから、これに押しつけるというのはおかしいと思うのですね。やはり、実際、危険な日本に対する侵攻のどういうシナリオが考えられるのか、そこを本当に国民が理解をして、その上で、それに合わせた防衛力整備が本当になされているか、それが基本的な考え方だろうと思うわけですね。その意味において、もちろん大綱との関係でいろいろ問題がありますから、防衛庁のお考え、御答弁の趣旨はわかるのですけれども、やはり三幕の中で、二つの海空の方が波及型のシナリオを蓋然性の高いシナリオとしてお考えになっているんじゃないかという、そういう発言がある。そして、陸幕はどうも単独侵攻型を考えているようだ。  そういうことになりますと、国民は、一体本当のところはどうなのか、そこを非常に心配をするわけなんですね。本当に今のままでいいのか、防衛庁長官のおっしゃるように、防衛政策は私がつくっているんだから、私のところでやっているんだからもう任せておけと言っても、本当にそれでいいのか、制服組の方は別のシナリオを考えながら、それに沿ってどんどん準備を進めているんじゃないか、その場合に、防衛庁長官、内局と制服との間で本当にそのシビリアンコントロールというのはうまくいっているのか、そしてまた意思の疎通というのは大丈夫なのか、そういう点も心配をするわけですけれども、その点はいかがですか。
  165. 加藤紘一

    加藤国務大臣 いろいろな意見が中にございます。そしてそれを、統幕議長を中心にまとめ、また内局と討議いたしておるわけでございまして、そういう意味では、シビリアンコントロールは完全に守られておりますし、私は、日本の防衛政策ほどシビリアンコントロールがしっかりと守られている国はないと自負いたしております。その点につきましての御心配は必要ないのではないかと思っております。  ただ、そういう際に、どういった有事というのがより蓋然性があるかということにつきましては、それはそのときどきの国際情勢によっても違いますし、それから、それぞれの他の要因でも違ってくるわけでございます。したがって私たちは、それにもかかわりませず、やはり我が国としては、日米安保と自衛隊の存在でもってすき間のない体制をつくっていくということでやっていくという方針は国民に十分に理解されるものであろうと思っております。
  166. 神崎武法

    ○神崎委員 制服のOBの方々は、有事シナリオとして蓋然性の高いのは波及型の有事シナリオである、これを、先ほども申し上げましたように、大綱見直しの論拠にしているわけでありますけれども先ほど防衛庁長官は、防衛庁内にも波及型の議論はあるんだということはお認めになったわけですが、そうしますと、制服の中にあります波及型の有事シナリオを想定する考え方、これは大綱の見直しを必要とする、そういう考え方の方というふうに理解してよろしいですか。
  167. 加藤紘一

    加藤国務大臣 有事の想定とそれに基づく防衛力整備の考え方というのは別の話でございますので、それがすぐ直に結びつくのであるならば、それは乱暴な議論と言わざるを得ません。
  168. 神崎武法

    ○神崎委員 そこが非常にわかりにくいわけですね。防衛庁は国会では、大綱と有事シナリオとは別だ、大綱は日米安保のすき間を埋めるものだ、有事シナリオとは別の対象論だ、こういうふうに分けてお考えになる。ところが、OBになられると皆さん、有事シナリオが変わったのだから、波及型の有事シナリオなんだから大綱は見直さなければならない、これは、防衛庁にいた制服の方が、皆さんそういうふうにOBになると言われているのですよ。ということは、何か防衛庁をやめた途端に、同じ波及型の考え方を持っていながら、物の考え方が、大綱見直しは必要ないという考え方から、急に大綱見直しは必要という考え方に変わってしまうのですか。どうなんですか。
  169. 加藤紘一

    加藤国務大臣 御質問の趣旨を理解していないところがあるのかもしれませんけれども、例えば私たちは、日米安保体制がしっかりしているという前提で、その中で、我が国の担当分野としては限定・小規模に対処し得る防衛力の整備をしようというわけであります。  だから、私たちの国がそういう整備をしているからといって、それに合わせて国際情勢が動いてくれるとは限らないわけであります。非常に大きな混乱が世界全体に仮にあって、そしてその波及の中で、我々の小規模・限定対処能力ではできないような有事が日本に降りかかってくる場合だってあるのかもしれません。しかし、それと私たちが整備する方針というものは別個のことであって、そして、我が国で対処し得ないような大きなものとなったらば、日米安保条約に基づいて米軍の来援を求めるというのが日本防衛の仕組みでございます。
  170. 神崎武法

    ○神崎委員 私がお尋ねしたことにお答えになっていないわけですけれども、要するに、防衛庁の中にいるときには波及型のシナリオをお考えになっている人は、防衛庁長官のお考えによると、そうすると、大綱の見直しは必要がない、そういうふうに考えている。ところが、防衛庁からOBになった途端に、波及型なんだからこれは大綱の見直しが必要だ、そういう論拠にその点が使われているわけですね。そこが非常にわかりにくいというのですよ。それはむしろ常識的に考えれば、防衛当局は国会では有事シナリオと大綱とは別だと答弁されているけれども、本音のところでは間違いなくこれは一緒だ、有事シナリオが変わったんだから、だからこれは大綱も見直すべきだ、これが本音の議論だ、そういうふうに私は考えるのですけれども、その点どうなんですか。
  171. 西廣整輝

    西廣政府委員 有事のシナリオについていろいろ御質問があるわけですが、我々の中でシナリオを考える場合は、これは防衛力整備の前提というよりも実際のオペレーションプランの前提として何を考えるかというときに有事シナリオを考えるわけであります。したがいまして、その場合のシナリオというのは、防衛庁長官お答え申し上げたように、いろいろなシナリオがある、それぞれについてやはり対応する措置を考えておかなくちゃいけない、そういうものだろうと思います。  しかしながら、それぞれの蓋然性というもの、若干の差異はあるかもしれませんけれども、有意差があるほどの差はない、特段に一つのものが高いということはございませんので、それに基づいた防衛力整備ということが直に結びつくものではないというふうに私どもは考えているわけです。したがって、我々の防衛力整備の基本というのは、そういったこと以前にまず日米安保というものをすき間のない形でしっかりと維持するために何が必要なのか、そういう状況の中でも何が起きるのかといったようなことを防衛力整備のまず基本に置いておるわけです。  それでありませんと、先ほど来各防衛課長がいろいろな想定をしておりますけれども、これはいずれもオペレーションプランの前提として言っておりますから、前提がいろいろついているわけです。例えば、日米安保というものが有効に機能していればこういうシナリオがあるだろうというような言い方をしておるわけです。ところが、防衛政策そのものになりますと、日米安保を有効に機能させるためにどうしなくちゃいけないかというところから出発しなくちゃいけませんので、機能しているという前提にもう頭から立ってしまって、そのとき起き得べきシナリオだけに備えた防衛力整備をするというようなことではこれは大変危ないというように我々考えておりますので、その点、いわゆるオペレーションプランの前提としていろいろ考えられていることと、大綱のように我が国の防衛政策の基本としてどういう防衛力を持つべきかということとは直結してない話だというように御理解いただきたいと思います。
  172. 神崎武法

    ○神崎委員 それは防衛当局の国会での答弁からすると一貫しているわけなんですね。それはわかるのですよ。わかるのですけれども、ただ、なぜそうすると制服の方がOBになると途端に——本来ならば波及型の有事シナリオの方が蓋然性が高いといったって大綱見直しの論拠にはならないということですね、防衛庁考え方からすれば。現に制服として中にいたときは波及型の有事シナリオの方が蓋然性が高いと思っている。ただし、それは大綱の見直しにはつながらないんだというように防衛庁の方は考えている。ところが一たん外に出たら、いや、それは大綱の見直しの必要性の論拠になるんだ、これがシナリオが変わったんだから大綱を変えなければいけないという、そこがよくわからないわけですよ。それでお尋ねをしたわけでありますけれども、どうも適切な回答がなかったわけです。  そこで、ちょっともう一つお尋ねをいたしたいのは、先ほどの三幕の考え方でありますけれども、自衛隊には年度防衛計画があって、統合幕僚会議によって侵略のシナリオを想定して、これに対して総合戦略を定めて、これに基づいて陸海空三幕監部が各自衛隊の対処計画というものを作成することになっているわけですね。ところが、先ほどの三幕の防衛課長考え方を見ますと、ちょっと、陸は北、海空は南というようにばらばらだという印象を私は受けるわけですね。もともとは統合幕僚会議で侵略のシナリオが決まって、それを下におろしてきているはずなんですね。ところが、それぞれの三幕の防衛課長段階で、一方は北を考え、一方は、二つは南を考える、ここがどうも、どうなっているのか。三幕での統合幕僚会議において本当に侵略のシナリオというものをそこで議論をして、そして最終のものをきちんとお決めになっているのかどうか、その点をお聞きいたします。
  173. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほど申しましたように、オペレーションのプランといいますか、防衛計画、いわゆる作戦計画に近いものですが、そういうものをつくるために統幕でいろいろ討議をしております。その際に幾つかのシナリオというか、状況を想定するわけですが、それについて捨てがたいものが必ず幾つか残るわけであります。北中心のものもありますし、波及型のものもある、いろいろございますが、その中で状態によって陸海空の出番の多さ少なさというものが当然ございますから、それぞれについて私どもは用意をしておるということでありますし、陸海空が自分について説明をする際に、自分の出番の多いシナリオといいますか、場面について強調して話をするということは往々にしてあろうかと思っております。
  174. 神崎武法

    ○神崎委員 納得いたしませんけれども、時間が参りましたので、終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。
  175. 小渕恵三

    小渕委員長 これにて神崎君の質疑は終了いたしました。  この際、暫時休憩いたします。     午後一時六分休憩      ————◇—————     午後二時三十九分開議
  176. 小渕恵三

    小渕委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。松浦利尚君。
  177. 松浦利尚

    ○松浦委員 農林大臣がお仕事の関係でお忙しいそうですから、農林大臣の方から先にさせていただきますので、建設大臣、しばらくお許しください。     〔委員長退席中島(源)委員長代理着席〕  農林大臣にお尋ねをいたしますが、御案内のとおりに、食管法という法律、いろいろ解釈の違いは我々と政府の間にもあるのですが、簡単に言えば、生産者から高く買って消費者に安く供給するという建前が一つあるのですが、しかし内容的に言うと、今回の米価の引き上げによりまして、逆ざやは〇・四というふうに縮小した。実質的にはもう逆ざやがなくなったというふうに考えてもいいと思うのですね。それからもう一つの問題は、米については主食だから政府がコントロールする、そういう意味だ、こう思うのですね。  ところが、実はその二番目の米の問題でありますが、ここに私がやみ米と称するものが売られておるところからお米を買いまして、これは十キロ入っておる米の袋なんですが、これを十七日の日に事前に農林大臣、食糧庁の方にお渡しをして、この中身を検査をしていただいたわけなんです。これはササニシキ、これはコシヒカリ、このアルミパックに入っておるのはコシヒカリの上等、これの検査結果が大臣の手元に来ておると思うのですが、御報告いただきたいと思います。
  178. 石川弘

    ○石川政府委員 先生から御提示をいただきました材料を検査をいたしました結果を御報告いたします。  表示をされておりますササニシキというのとそれからコシヒカリが二つございました。  まず、品種でございますが、ササニシキかコシヒカリかということでございますが、これは玄米の段階でございますと、粒形とかその溝、縦に溝がございますが、その位置だとか胚の大きさとかというので判定しやすいのでございますが、お渡しいただきましたものは精米でございますので、確実に判定することは実はなかなか困難でございましたが、少なくともササニシキと表示されておりますものは、粒形が大変大きゅうございまして、ササニシキはもう少し小粒の米でございますので、これはササニシキでない可能性がかなり大きいのではないかと思っております。  それから、その次に品質でございますが、品質につきましては、私ども精米につきましても、形質とか水分とかあるいは被害粒とかあるいは砂粒、それから異物の混入といったようなことで実は判定をするわけでございますが、形質とか水分につきましては合格をいたしておりましたけれども、被害粒の混入量が私どもが決めております基準をはるかに超えております。着色粒でございますが、これが非常に多いということで、全体とすれば、御承知のような我々の言っております品質基準には不適なものが二つ、アルミパックに入っておりますものだけが適合をいたしておりました。  それからもう一つ、新古の判定をいたしましたが、これはいずれも新米という判定が出ております。  いずれにしましても、三つのサンプルのうち二つは、私どもの言う精米基準に合格してないものでございました。
  179. 松浦利尚

    ○松浦委員 今、大阪を基点にして至るところにこういうものが、実は政府の許可しておらないディスカウントショップあたりでどんどん売られておるわけです。先ほど言いましたように、食管制度の存続の基本は、やはり正規のルートを確保しておくというところにあると思うのですね。ですから、自主流通米そのものも政府の手は通りませんが、食糧庁、農林省の把握下に、枠の中に入っておる、そういう状況なんです。消費者にしてみますと、何かあたかもこれがササニシキでありコシヒカリであるがごとく宣伝されておりますし、これが表示をされておりまして、ここに値段表も来ておるのですが、例えば中身がどうもおかしいと言われた、規格外であると言われたこのササニシキは、店頭表示価格が五千五百八十円という形で書いてあるのですね。しかも、それを消して、これは四千五百八十円ですと表示しておるのですね。ですから消費者は非常に安いものだと思って買っていく。そうすると、消費者が確実に——政府米であればここに表示の義務がありますね。どこでとれたものであるか、それから搗精された工場、検査に合格しているかどうかという、そういったものが書かれておらないということを知ればやみ米だということがわかるのですけれども、消費者はそれがわからない。このことはせっかく政府が認可しておる小売店の経営を圧迫するのみならず、消費者に対しては悪いお米があたかも安くてよいお米が買えるんだというふうに認識を与えてしまう。そういった意味で、こういう事例に対してどのように対処されようとするのか、その点をお聞かせいただきたいというふうに思うのです。
  180. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 お答え申し上げます。  今、松浦委員の方からお話がありましたように、食管法の果たしてきた役割、これは生産の確保といいますか再生産の確保を図ること、あるいは消費者に安定して供給すること、この二点と同時に、流通についてやはりきちんとしておらなければならないということでございます。しかし、昨年あるいは一昨年ですか、なかなか豊作でもあったという事情もありまして、そこへ売買逆ざやが解消されてきたということがあって、確かに流通を乱しておるという現況があること、私どもも承知をいたしております。ただ、このところ例の流通改善措置等をすることによって大分そういったものについて抑えることができてきたということ、しかし実際に、今御提示いただきましたように、そういったのが店頭にあるということもまたこれ事実でございまして、都道府県、そういったものを通じながら今指導をいたしておるということでございます。大体指導をしてまいりまして、およそほとんどの者、九十数%の者、この人たちはもうこれをやめますということでやめているはずでありますけれども、まだ今、先生がつい最近お買いになったということでありますから、実際にそういうものがあるようでございますので、私たちもこれはきちんと監督をすると同時に、もしそういったものが何回かの忠告にもかかわらずなくならないということになったら所要の措置をとらざるを得ないというふうに考えております。
  181. 松浦利尚

    ○松浦委員 ある新聞によりますと、自由市場の米の値段が出ているのですよ。ウイークリー情報としてやみ米のササニシキ幾ら、コシヒカリ幾らというのが経済紙にはいつも出るのですよ。ということは、逆に言うと、この流通がもう大っぴらに行われておるという証拠だと思うのですよね、新聞に出ておるのですから。ですから、私はよく新聞等で、大潟村ですか、農家の方がやみ米で出すところを農家のところで押さえようというので張り込んでおるという報道等よく聞くんですけれども、しかし、そのことよりも現実に末端でこういうものが売られておる。需要があるから供給されていくわけで、よくよくこれを買っていく人を調べてみましたら、実はユーザーの声は、必要とする米がない。例えば学生の寮とか工場の寮とかといいますと、大量に使うからなるたけ安くておいしい米が必要なんですわ。ところが制度の中に、そういうのがだんだん上品になって上の方に打っちゃって、首あった徳用米なんというのがなくなったんですね。ですから、どこかで安い米をというのでこういうものに飛びついていくのです。しかし結果的には余り安くないのですよ。しかしこれに飛びついていく。ですから、そういった意味では、こうした問題を解決しない限り、需要があるところに供給があるわけですから、私はどうしても今の農林省、食糧庁の取り締まり体制というのが緩やか過ぎると言うと言葉は悪いのですが、大目に見ておるんじゃないか。経済紙に市況が載るぐらいですから。そういう点について大臣の確固たる御意見を聞かせていただきたい。これが一つ。  それからもう一つは、こういうのが大っぴらになりますと、もう売買逆ざやもなくなった、お米も正規のルートで買わなくたってやみ米がどんどん安く手に入るということになれば、食管法というものは必要なくなったのと同じ状態になるのですね。ですから、これからも農林省は食管法というものを守っていかれるのかどうか、この二点についてお答えいただきたいと思います。
  182. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 今お話ありましたように、確かに最近いわゆる需要側の需要というもの、実需者の需要というものあるいは消費者の需要傾向といいますが嗜好というもの、こういったものが非常に多様化してきておるということは事実であります。そういうことで、そういったものに対応できるようにということで、この前、例の食管法の改正をお願いし、そして昨年流通改善をしたということであります。しかし、私ども今考えてみますと、こういうものが横行するということは残念ですけれども、まだそういったものにこたえる体制というものが十分じゃないんじゃないかという感じがいたします。そういう意味で、もっと活発にお互いが競争するような環境というものについて指導していく必要があるのじゃないかな、これがまず第一点であります。  そして第二点には、先ほど申し上げましたように、都道府県その他を通じながら、今そういったところに対して注意というものを、勧告をいたしております。しかし、その中で、先ほども申し上げましたように、九十数%の者はきちんとしてきたのですけれども、まだ実際にそういうものがあるということ。ということだとすると、これはやはり私どもとしてしかるべき措置をしていかなければいけないということで、これからもきちんと正規流通が行われるように指導してまいりたいし、またどうしてもそういう者がおかしなあれをする場合には所要の措置をしていく、これを申し上げておきたいと思います。
  183. 松浦利尚

    ○松浦委員 食管法はどうですか。
  184. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 食管法はそういうことでいろんな批判がありますけれども、しかし、今不正規にあれしているというものも、そんなに特別に量が多いというものじゃないわけなんであって、やはり過剰なときにもあるいは不足のときにも今日までちゃんとした役割を果たしてきております。そういう意味で、私どもはこの根幹というものは守っていきたいということであります。
  185. 松浦利尚

    ○松浦委員 ぜひひとつこういうやみルートを根絶していただいて、正規の小売商の人たちが生活に困らないように、そしてまた消費者が安心して本当にいいお米を買えるように、ぜひ御努力いただきたいということを申し上げて、どうぞ。  それでは次に、日銀総裁、お忙しい中おいでいただいたのですが、実はお忙しいそうですから、前もってお尋ねをさせていただきたいのですが、この一月末に公定歩合を〇・五お下げになりましたときに、これは恐らくこんなことを聞いてもお答えにはならぬと思うのですが、日本が公定歩合を下げればアメリカも追随して下げてくれるんではないかというような、そういう期待感のようなものがおありになったかどうか、そのことと、それからもう一つは、今急激な円高になってきておるわけですが、きのうも百七十七円八十銭というあれがあったわけですけれども、この急激な円高というものについてどのような感想を持っておられるのか、この二つを前もってお聞きしたいと思います。
  186. 澄田智

    澄田参考人 お答えを申し上げます。  一月の末に公定歩合〇・五%引き下げをいたしましたが、その前にもございましたが、あるいは日本が引き下げるとアメリカの公定歩合が下がるのではないかというような観測が一部にあったことは事実でございます。私ども中央銀行同士の立場といたしまして、他国の中央銀行の金融政策について見通しを述べたりあるいはコメントをしたりすることは、これは避けなければならないことだと思っておりますが、十二月ごろにありましたアメリカの公定歩合の引き下げの予想というようなものは、一月末の時点におきましては大分変わってきておりまして、十二月ごろには、アメリカの経済に対するいろんな諸指標が先行き弱いというような指標が多くて、それで公定歩合を下げることになるのではないかというふうな観測が内外の関係者の間に持たれておったわけであります。一月時点におきましては、その後アメリカ経済の地合いについて持ち直しを示唆するような数字もいろいろあらわれておりましたし、またドルの相場等から見まして、あの時点においては、アメリカの公定歩合引き下げというものは近い将来そうあり得ることではないんではないか、むしろ遠のいたのではないか、そういう予想の方が市場筋には多かったように私は承知をいたしております。
  187. 松浦利尚

    ○松浦委員 急激な円高はどうですか。
  188. 澄田智

    澄田参考人 最近の、殊に二月に入りましてからの急激な円高の基調でございますが、私どもは貿易収支あるいは経常収支の大幅な不均衡というものを是正する、そういうような立場から申しましては、円高基調というものは基本的に方向としては望ましいことである、かように思っておりますが、しかし、日本の産業界の円高に対する対応をとりつつあるというような状態等から見まして、殊に二月以降の為替相場の動向につきましては、やや早い、そうして基本的には望ましい方向、円高基調そのものが望ましい方向でありますが、しかし当面においては、円高の基調においてこれが安定することの方がより望ましいところである、こういうふうに考えております。  そうしてまた今後の動向等についてでございますが、これは当事者であります私の立場からそういうことについて意見を申し述べることは、これは市場に無用の憶測を与えることにもなりますので、差し控えたいことと思っております。
  189. 松浦利尚

    ○松浦委員 御承知のようにG5ですよ。この前ワシントンで行われましたG5のときに、アメリカの方で協調利下げについてボルカー議長の方から、ドルの信頼を傷つける、暴落させるということについてはどうも反対だ、そういった意味で協調利下げができなかったという話を聞いておるわけですけれども、御承知のように、ボルガー議長の頭の中には、レーガン大統領が既に国会に提出をいたしました例のグラム・ラドマン法、財政赤字均衡法、この法案が赤字削減の決め手になるということで、この法案が通ったらということが実はボルカー議長の念頭にあったのではないかというのがあるわけですけれども、これは民間の調査機関の資料として書いてあるわけですけれども、御承知のようにこの削減法は、二月七日、ワシントン地裁で憲法違反であるという判決が出たわけですね。ですから、アメリカが最大の赤字削減の決め手にしたこれが憲法違反であるという判決が出たということになると、アメリカとしてはまずます公定歩合が下げにくい状態になってきておる。現にもう市場金利は上がっておるという民間の情報もあるんですね。ですから、日銀の総裁として言いにくい面もあるかとは思うのですが、これからこういった問題を踏まえてみてアメリカ自身が公定歩合を下げるというような方向が出てくるのかどうか。私は恐らく、また金利を引き上げる、こういった状況の方が強くなるのじゃないかという気がするのですね。ですから、そういった問題についてもしお聞かせいただけるなら、簡単で結構ですからお聞かせいただきたいと思うのです。
  190. 澄田智

    澄田参考人 先ほども申し上げましたように、他国の金融政策につきまして具体的な意見や見通し等を申し上げることは差し控えさせていただきたいと存じます。  一般論で申し上げますと、アメリカの通貨当局としても景気や物価あるいはマネーサプライの状況あるいは為替相場等々の経済指標を注視しつつ経済運営を行っているものと思いますが、昨日ボルカー議長が議会で証言をいたしておりますが、その証言において見られますように、最近ではドル安の物価面への悪影響に対する懸念というものを持っている、こういうような感じがいたします。  御指摘のグラム・ラドマン法につきましては、違憲の判決が第一審で出たわけでありますが、しかし、議会筋の関係者を含めて、財政赤字の削減に向けて努力を続けていくということ自体についではかなり幅広い合意ができ上がっているということは、その違憲の判決があったにかかわらずその点には変わりはない。こうした点は市場においてもそれなりに認識されているように思われるわけであります。その一つのあらわれといたしまして現にアメリカの長期の国債の利回り等はこのところ低下をしておるというような状態でございます。  いずれにいたしましてもそういうような状況で、具体的な見通し等は述べることは差し控えますが、しかし、金利引き上げの方向というものが予想されるというような事態ではないと思っております。
  191. 松浦利尚

    ○松浦委員 きのう中島委員の御質問大蔵大臣お答えになりまして、先般の公定歩合下げが円安方向に動くのではないかという質問に対して、質問があったのかどうかわかりません、これ記事ですが、「先般の公定歩合下げでは織り込み済みだったということか、影響はなかった」、こういうふうに言っておられるのですね。先ほど念を押しましたように、これは間違いないですね。
  192. 竹下登

    竹下国務大臣 きのう申しましたのは、為替相場については、これは市場の意思で織り込み済みだったのかな、こういうような評価をお互いその時点時点でよくする評価でございます。したがって、先般の公定歩合下げで、実際はこの二十四日から金利が下がるわけでございますけれども、そのことが為替相場の円安方向に働くというような懸念はだれしも一応はしてみるわけでございますけれども、結果として動かなかったといえば市場そのものが織り込み済みで対応しておったのかな、こういう評価をいつも我々がし合うというような意味で申し上げたわけでございます。
  193. 松浦利尚

    ○松浦委員 今言われたことでわかったわけですが、やはり中島委員の御質問に対して、金利がどの程度連動するかが問題だが再利下げの環境に一応ある、こういう発言もきのうしておられるのですね。これは間違いないですね。
  194. 竹下登

    竹下国務大臣 いや再利下げの環境とは申しませんでした。要するにG5で決まっておりますのは、今インフレが落ちついているから利下げの環境にはあるなという合意はできておる、それまでがやはり私がお答えする一応の限界だと心得ておりますので、今後再利下げの環境が整っておるというようなことはやはり私としては言ってはならない言葉の一つでございますから、やはりG5で合意して、少なくともインフレは鎮静しておるから利下げの環境はあるな、しかし具体的にはこれは中央銀行の総裁同士でいろいろ協議してもらうべき課題だなというところまでが、あくまでも合意であるという意味において、非常に注意して発言したつもりでしたが、ちょっときょうの記事は何だか短絡的過ぎて、そういうふうにとられたとすればやはり私の答弁技術の下手さかなという気もしております。
  195. 松浦利尚

    ○松浦委員 今の答弁で総裁に質問することがありませんので、どうぞお帰りくださいませ。ありがとうございました。  それで、円安方向について先般の公定歩合下げで織り込み済みだったということかなと、そして新聞で一斉に〇・五から〇・七五の公定歩合の再引き下げということがきょう報道されたわけですけれども、再利下げの環境になったのかなと、直接ではないが、表現はまずいですが、ということは、逆に言うと大蔵大臣の腹の中に百七十円台の円高は少し行き過ぎたのかなと、大蔵大臣自身がターゲットゾーンはないとこの前私のところの岡田委員質問に答えておられましたが、やはり大蔵大臣ですから胸の中にはターゲットゾーンがある。それでこの前円安にいくのかな、こう思ったけれども、そのことは織り込み済みだったけれども結果的にはなかった。すると環境が整備された、再利下げの環境が整備されたということは、逆に言うと自分の腹の中にあったターゲットゾーンよりも円が強くなり過ぎだから、再利下げをすることによってあなたの腹の中にあるターゲットゾーンに、さらに円安に持っていきたい、そういう気持ちもこの中に含まれておると理解をしてよろしいですか。
  196. 竹下登

    竹下国務大臣 金利政策というのは、もちろん為替相場も念頭に置く一つの要素ではございますけれども、私は本来は、きのうの議論というのは、金利を下げればいわば企業の収益の方へもいい方へいくしあるいはまた設備投資意欲も起こるしという前提の上に立って金利を考えてみますと、それは安い方がいいということになる。しかしながら、我々は為替相場を意識してではなく、我々が五人で相談しております結論というものは、とにかくインフレが、それは私から見ればまだほかの国は日本ほど優等生じゃないと思いますけれども日本とドイツが一番優等生としましょう、が、ほかの国もやはりかなり鎮静したという認識なんです。だから、鎮静したから金利下げてもいいな、その環境は整っておるなという合意まではできているのですよ。しかし、為替相場そのものだけをねらった利下げじゃないわけですね、今の場合は。したがって、私の心の中に為替相場と金利と連動させた考えは必ずしもきのうの中島さんに対するお答えには含まれていない。やはり大事なことは、今比較的——語学が達者でないという点もありますが、私が五カ国の大蔵大臣のうちでは一番しゃべらない。しかし日本の円というものは相当な力がある。だから日本大蔵大臣がどう発言するかというのが市場心理に一番影響を与える。だから、おまえ黙っておれ、こういうのが世界的な空気と言うとちょっと大げさでございますが、各国の通貨当局者は私によくそういうことを言うぐらいでございますから、いつも申し上げておりますように、やはり私にはターゲットゾーンがない。じゃだれが決めるか、だれが知っているかというと、いつもお答えしておりますのは、国際会議でもそうでありますが、それは神様だけだろう、こう申しておるわけでございます。
  197. 松浦利尚

    ○松浦委員 率直に言って、景気浮揚のために今言われたように再利下げすることによって、中小企業等でも相当潤いますね。それはもう間違いありません。設備投資等もそのことによって動くでしょう。しかし、率直に言って、余りにも高くなり過ぎたことが影響を与えたことも事実ですよね。百七十円台というのは行き過ぎですね、百七十七円というのは。その点については行き過ぎだと思いますか、どうですか。
  198. 竹下登

    竹下国務大臣 これは介入したとかいうことがあれば別でございますが、介入というのは元来やるかやらぬか、どんなときに使うかわからないところに効果があるわけですが、現実、今自律的な動きの中で動いておるわけですから、したがって、市場が自律的な動きの中で決めたものが急速過ぎるとか、あるいはけしからぬとか言うべき性格のものじゃないだろうと思っております。
  199. 松浦利尚

    ○松浦委員 私は、それは言われることはよくわかるのです。しかし、ロンドンのG5のときに、もうもとには戻さないぞという約束がありますね。ですから、政策運用のいかんによってはまた逆に戻るわけですね。アメリカの公定歩合がこれで下がってくれればいいですけれども、条件としては先ほど言いましたように、下がる条件というのはないのですね。そうすると、我が方だけが下げますと、金利差が出る。当然のように、資本はアメリカへ流出する、その繰り返しですよね。ですから、そういった意味では政策を誤ったときには取り返しのつかないことになるのですね。円高基調であることは正しい。ですから、そういった意味では、私はここに言っておられるこの言葉が、やはりちょっと行き過ぎだから円安に誘導しよう、円安の方に少しターゲットゾーンを戻そうというようなお気持ちがあって発言をしておられるんだろうな、こう思って今くどいように質問をしたのですけれども、その点は−いや、あなたが思っておられるかどうかわかりませんが、そういうことはおわかりになるでしょう、政策的な判断を誤るとまたもとに戻る。どうでしょうか。
  200. 竹下登

    竹下国務大臣 後戻りはすまい、こういう約束をしたわけですね。ニューヨークのG5はよかった、だからお互いのあの合意を後戻りさせることはやめようや、そうなっているわけです。したがって、それを踏まえて対応をしておるわけですね。ただ、いわゆる公定歩合を下げると、よく円安にふれる、こう言います。が、結果としてこっちが織り込んでおったわけじゃないのですよ。市場がははあ大体もう下がるのじゃないかなという織り込み済みで、市場がそういうふうな動きをすることがあるわけですから、織り込み済みというのは政策的な織り込み済みではなく、事後の評価として、ははあ市場が織り込んでおったのだな、こういう評価をよくするわけであります。  したがって、今松浦さんおっしゃるように、ここで金利差が物すごく開いて、そして逆にぶれるようなことをすることを考えてはいけないと私も思っております。したがって、公定歩合というものになりますとまさに日銀の専権事項ですが、最近いろいろな議論が出ますけれども、私も慎重に言葉を選んでおりますのは、要するに三十日に決めたことがこの二十四日に初めて現実には金利が下がるわけですよね。それによってどうなるかという動きもまだ見なければならぬ。したがって、事実行為が行われる前から再利下げというような議論は本当は慎重であらなければならぬかな、こんなこともきのう以来お話ししておったところでございます。
  201. 松浦利尚

    ○松浦委員 こんなことは過去のことですからもういろいろ申し上げませんが、大臣が百九十円というようなことを発言されて、そしてだっと動き出したわけですね。ですから、そういった意味ではぜひ慎重であっていただきたいというふうに思います。しかし、同時に、政策の対応を誤るとまた混乱をするということが起こり得るのですから、そういったこともぜひ御理解をいただいておきたいという意味で、実はきのう中島先生の質問でもこれが夕刊に出たものですから、追加をしてちょっと質問をさせていただいたわけです。  それでは、次に減税の問題等についてお尋ねをしたいのですが、その前に、通産大臣も何かお忙しいそうですからちょっとお尋ねしておきますが、実は、経済見通しと基本的態度、一月の閣議で決まりましたこの中に、毎年同じことが書いてあるのです。この二ページに、「自由貿易体制の維持・強化、調和ある対外経済関係の形成及び世界経済活性化への積極的貢献」云々といつのあれにも書いてあるのですね。  そうすると、これを見ますと、この委員会でも再三議論されましたけれども、六十一年度は五百十億ドルの経常収支ということで見通しされておる。五百十億ドルの経常収支、六十年と六十一年は全く同じですね。外需については六十年に比べてマイナス二%だ。その分だけ内需を活発にさせようという経済運営をしても、なおかつ五百十億ドル黒字になるのですね。ですから、五百十億ドル全部をなくそう、どうしよう、こうしようという議論では解決しないのですね。この五百十億ドル全体で把握をするのじゃなくて、一体この黒字はどこから出ておるのだ、何が一番大きな原因かということになると、通産大臣が所管をしておる自動車、こういうことになるのですね。  ですからこの自動車について、これは報道されておる内容ですが、今年度は二百三十万台で自主規制して昨年並みということで一応移ったのですが、ニューヨーク・タイムズとワシントン・ポストでは、アメリカの消費者がえらい高いものを買わされておる、日本車が入らないために。そして、これは毎日新聞の現地の方の調査ですけれども米国のディーラーの間では「リッチマンヘの近道」、金持ちになる近道は「ジャパン車の代理店になること」だ、こういうことを堂々と二月十四日の毎日新聞に書いてあるのですね。そしてまた日経新聞等で報道されておるのを見ますと、同じ車種ですね、GMと日本の千二百CCですか、それを比較をしてみると、購買力平価は昨年の四月で一ドルに対して百六十一円ということになるのですね。円の購買力平価は一ドルが百六十一円。ですから、一二、三%ぐらい輸出価格に上乗せしてみても結構もうかる。ですから、アメリカではディーラーがプレミアムを二千ドル、三千ドルあると言うのですよ、日本の自動車を売れば。ですから、本来なら自主規制などすべきでなく、我が国から出す自動車の価格が上がれば自主規制などする必要はないのだけれども、実質的にはここに報道されておるようにアメリカに対して非常に強い、価格が安いから。しかもプレミアムもついておる。  そういったものについて調査をしておられますかという質問をいたしましたら、CIF価格は企業秘密、プレミアム、これまた実態把握困難。毎日新聞等が調査できて、黒字の元凶とまで言いませんが、日本の経済を引っ張ってきたと申し上げましょう、そして黒字を大きく稼いだ自動車を担当しておる通産省が、CIF価格とかプレミアムなど等について全く調査不能だ。それでは私は自動車政策というのはなかなかできないのじゃないかというふうに思うのですが、やはり五百十億ドルという黒字をなくすための最大のものは自動車だと思うのですよ。そういう点について通産大臣からお答えをいただいた上で、どうぞお帰りいただいて結構ですから。
  202. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 プレミアムの関係局長から答弁させます。
  203. 松浦利尚

    ○松浦委員 大臣、どう思いますか。
  204. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは、責任ある通産省としては確たる証拠を握っていない。聞いてはいますよ、千ドル程度とかどうとかという話は私も聞いています。聞いていますが、やはり全部そういうわけでもないし、ディーラーによっても違うし、売り値の問題で高く売る人、安く売ってプレミアムをまた別に要求する人等、商売の仕方が違いますから、一律に全部同じものがついているというわけではないのです。だから、はっきりしたことを、正確なことをつかめないということをお答えしたのじゃないかと思いますが、念のために局長にちょっと答弁させますから。
  205. 松浦利尚

    ○松浦委員 局長とは——いろいろ専門家の課長さんと部屋で話しましたので大体理解はできておるのですが、いずれにしましても、この自主規制というのはことしいっぱいですか、来年いっぱいですか。それからもう一つは、こういうニューヨーク・タイムズとかあるいはワシントン・ポスト等でアメリカの消費者から抗議が出ておりますね。こういった問題についての所見をちょっとお聞かせください。
  206. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは、自主規制問題は一長一短なんです。アメリカ政府も別に日本に自主規制を求めるわけではありません。しかし、諸般の情勢を総合的に勘案をいたしまして、六十一年度一年限りの措置として自主規制の延長をしたわけでございます。貿易の理屈、自由主義経済の理屈だけからいえば、これは自主規制の必要は全くないと言って差し支えないと私は思います。  しかし、それならば自主規制を取り払った場合はどうなんだ。日米のインバランスというのは今非常に大問題になっておって、過度集中豪雨的に特定な国に特定な業種のものがどっと入ってくるということがトラブルを起こしておるわけでありますから、これを取り払った場合は一体どうなんだということはいろいろ勉強してみました。ところが、今も言ったようにプレミアムがつくというふうな状態ですから、非常に売れ行きがよくてアメリカにおける日本車の在庫がない。したがって、人によって見方は多少違いますが、取り払えば五十万台程度あるいはもう少し多く一挙に輸出が伸びる可能性があるという想定も専門家の間で言われているわけですよ。ということになれば、こちらは輸入拡大、輸入拡大と言っても、それはもう数十億ドルのものを、言うべくして輸入輸入と言ったってそんなに一遍に輸入がどかんとふえてバランスがとれるというようなことにはならない。  議会の方は、日本政府に対しても連判状を持ってきて、有力議員などは輸出自主規制は延長してほしい、それで、日本のこの貿易赤字の最大のところは自動車がどんとふえることであるということで、それに対するいろいろな法案を次々と準備し、その保護立法がどんどんできつつあるという状態にある。ここで取っ払って、本当にそういうような事態になりかねないような事態は目に見えているわけですから、理屈だけでどっと野放しにしてしまうということの方のデメリットと自主規制をした場合のデメリット、両方を比較をしてみて総合判断をした結果、これはことし一年限りは、さらに自動車が加速度的にふえるということは日米貿易全体の流れから見てむしろ保護立法を促進するということになりかねないと判断をして、経済的側面、政治的側面両方をにらんだ結果、理屈を言えばこれはいろいろな御批判がありますが、自主規制を一年延長したというのが真相でございます。
  207. 松浦利尚

    ○松浦委員 どうぞ結構です。あとは局長さんとお話しします。  それで経済企画庁長官、この基本的態度についてのお話をちょっとさせていただきたいと思うのですが、今度の東京サミットでもやはりこの五百十億ドルをどうするのだというのが最大のポイントだと私は思うのですね。ところが、四%成長していくためにはこの約十兆、これがなければ四%成長はしないわけです。それはもう単純にそうですね。そういう計算になると私は思うのですが、笑っておられますが、そうでしょう。一そうですね。しかし、この経済見通しては常に「調和ある対外経済環境の形成」というのを言っておるのですね。ですから外需に依存することをやめました、ですから外需は六十年度に比べてマイナス二%です、にもかかわらずなおかつ五百十億ドルというのがここにでんと座っておるのですね。これを消す方法を議会と政府とでお互いに考えようじゃないですか。そうでしょう。それをやらなければ、東京サミットで本当にまた袋たたきに遭いますよ。ですから、中曽根さんは財源も見つからぬのに減税すると四月に減税だけ打ち上げて、東京サミットでこれだけ減税するのです、だから恐らく五百十億ドルは減るでしょうと言って逃げ道であの人はアドバルーンを上げておるのだと思うのです。  そこで、この数字でお話をしたいと思うのですが、大蔵大臣にちょっとお尋ねしますけれども、この九ページに、総合卸売物価指数がぐっと落ち込んでいますね。六十一年度の見通しは対前年度でマイナス一・八なんです。そうすると、経済企画庁で発表された一月前年同月比は卸売物価マイナス四・六、その点については経済企画庁、間違いありませんね。
  208. 赤羽隆夫

    ○赤羽政府委員 一月の総合卸売物価指数、前年同月比は四・六のマイナスでございます。
  209. 松浦利尚

    ○松浦委員 この卸売物価というのは設備投資と直接連動す令のです。確かに公定歩合は下がってきますけれども、金利は下がるけれども、金利をつけた金を借りてマイナスになるようなところに設備投資というのは本当は余り働かないのです、常識的に言うと。ですから現状としては、この民間企業設備投資の対前年度七・一というのは実質的にはブレーキがかかるのじゃないかというふうに思うのです。大蔵大臣、その点についてどうでしょう、大丈夫ですか、確保できますか。
  210. 赤羽隆夫

    ○赤羽政府委員 統計のことでありますので、事前に私からちょっと補足といいますか、事前説明をしたいと思いますのでお許し願いたいと思います。  卸売物価が前年同月比で見てマイナスになっている主たる要因は、輸入物価が下がっているということでございます。卸売物価の下がる要因を二つに分けて考えますと、それぞれ経済的な影響が違うと思います。不景気で物が余っておって卸売物価が下がる、これは主として国内品の物価が下がる。こういったようなときには企業の利益も当然減っておるわけでございますから、これは設備投資が出てくるはずがない、こういうことになります。ところが、外国から輸入する品物の値段が下がってそれで卸売物価が下がっているとき、こういうときにはむしろ企業の利益がふえる、こういうことでございまして、設備投資にはむしろ好条件であるということだと思います。五十二年から三年にかけまして今回にまさる大幅な円高進行が見られましたけれども、そのときの卸売物価の低落は今よりも大きかったと記憶しておりますけれども、このとき企業の利益がまたふえておる、こういうことだと思います。  したがいまして、卸売物価が下がっているということだけで設備投資に対してマイナスの環境である、こういうふうには一概に言えないのではないかと考えます。
  211. 松浦利尚

    ○松浦委員 今御説明いただいたわけですが、この八ページの国民総生産、これの内訳がずっと羅列されておるのですが、いずれにしましても、今言われたように、七・一%については確保できる、七・一%については間違いないという御返事ですね。ですから、それはそれで一応理解をいたしましょう。  そうすると、民間住宅の六・三%ですね、この六・三%の成長というのは経済企画庁としては具体的に可能だというふうに見ていますか。
  212. 赤羽隆夫

    ○赤羽政府委員 住宅投資の六・三%の成長を見込みましたのは、一つは所得がふえるという効果でございます。二つ目は、このたびの住宅減税ということで新機軸を出しておりますけれども、その住宅減税の効果も織り込んでおる。こういうことで六・三%、六十年度の実績見込み四・一%を若干上回る伸びが可能である、こう考えたわけでございます。
  213. 松浦利尚

    ○松浦委員 経済企画庁長官、今事務局からお話がありました。この六・三、七・一%が確保される、大丈夫だ、こういうお話でしたが、具体的に言うと、五百十億ドルを減らすためにこの部分をふやす条件というのは、この設備投資を七・一よりもさらにふやすということは現状としては不安定な要素があってなかなか難しいが、最低ここまではいく。そうすると民間住宅の六・三%の寄与率に対して、建設大臣、これは建設省が大蔵省予算要求で出された住宅税制の拡充内容なんですよ。これでいきますと、仮に減税をこのとおりやりますと、住宅建設戸数が一年間に八万戸ふえる、GNPは一年間に四兆円ふえる、二年間で八兆円、税収は一年分五千億、二年で一兆円ふえる、ここにこういうふうに資料が出されておるのです。今言ったようにささやかな減税をやっただけで七・一%は伸びると先ほど言われたのです。この方法をとったらさらに住宅は促進されるはずなんですよね。そうするとその分だけカバーできるということになると思うのですが、大蔵大臣、何で五百十億ドル減らすために建設省のこういう要求を拒否したのですか。
  214. 竹下登

    竹下国務大臣 これは五百十億ドルと直接どれだけの連動があるがということになりますと、それは赤羽局長でないとちょっと説明ができませんが、非常に大ざっぱに言いまして、我々がいつも主張しておるのは、所得税が大体十五兆あるとしまして、その三分の一の五兆円を減税すると何ぼ輸入がふえるかというと、いろいろな計算がございますけれども、まあ七億ドルだろう。公共事業、あるいは公共事業的とでも申しましょうか、そうしたものをやれば何ぼふえるかというと、三兆やって大体十三億ドルかな、こんな計算もあるわけでございます。したがって、公共事業あるいは住宅そのものが五百十億ドルにどう響くかというのは本当はなかなか難しい問題であろうと思います。  そこで、五百十億ドルというものは、これはもう既に、まあ世界にも説明しておるというと表現がオーバーですが、既に発表しておるいわゆる経済の見通してございますから、したがってこの問題、五百十億ドル、すなわち貿易黒字が多いという議論は、日本、西ドイツ、それから人口割にすれば今度はカナダでございますね。そういう議論はいつもある議論でございますが、五百十億ドルという数字そのものがけしからぬと言われる対象になるものでは必ずしもないというふうに私は考えております。これはいろいろ積み上げて一つの見通しとして立てられたわけですから、しかも今度は、ドルベースではとんとんでございますけれども、円ベースでやると減ってきておりますね。私は、その辺の説明のつく問題であろう。  それから、我々の会議をやりますと、やはり為替、これのデメリット、メリットということになりますと、いわゆる産地というようなものを持っておりますところには直ちにデメリットの面が出ますが、輸入の原材料は皆安くなるわけでございますから、そういうメリットが出るのは大分、三・四半期くらいかかるのではないか、あるいは私はよく十五カ月かかるというようなことを言っておりますが。そういうことで、やはりマクロの議論をするような方向になるのではなかろうかなというふうに考えております。
  215. 松浦利尚

    ○松浦委員 建設大臣、いろいろな見方はあるでしょうが、内需を拡大をする政策としてせっかくこういういい住宅減税を出しておられるわけですね。野党も統一要求を出した。思い切ってこういう減税措置を建設大臣として大蔵省にぶつけるお考えを今持っておられますか。
  216. 江藤隆美

    ○江藤国務大臣 私も予算要求のときの原案と今のと比べて、要求は大分いいな、でき上がったのはちょっと悪いかな、こう思っております。しかし、それを余り言っておりますと予算組み替えて持ってこいということになりますものですから、きょうはひとつ御勘弁いただきたいと思います。  ただ、私ずっと見ていまして、住宅が一番できたのが昭和四十八年なんですね。あのときは百九十万戸できているのですね。翌年はもう六十万戸へこんで百三十万戸。どかんと減っておるわけです。こういう一つの変化があって、そして五十五年は百二十七万戸、その後百十万戸台で推移し、去年は百二十四万戸になっている。その間に土地税制の改革とか住宅減税とかあるいは贈与制度とかいろいろなことをやってみたけれども、なかなかうまいこといかない。  それからもう一つ変化は、昭和五十五年百二十七万戸できた家が、自分の持ち家というのが大体七三%なんですね。去年になりますと、それがもう五六%、減っているのですよ。  だから、減税だけでうまいこといくのか、減税だけではなくてやはり土地税制、土地政策、それからもう一つは全体の景気ですね。多分に不動産は、一億不動産と言われたときはばっと家をつくっているところから見ると、こういうことは先行き不安がないという安心感が住宅を建てさすのかな、こういうふうなことを考えまして、この減税、せっかく今度やってもらうわけでありまして、しかも法案が通って一月にさかのぼって実施させてもらうわけですから、この状況等を見てまたひとつ、きょうも本会議で申し上げましたが、六百七十万戸今度五カ年計画で建てぬのだったら、私は政府の信を問われると思うのです。あれはだめだったで済むことではないのです、今度はこれほど内需拡大の柱だと言われているのですから。ですから、この一年間をよく見せていただいて、減税の問題を含めて十分また大蔵省とも折衝してまいりたい、こういうふうに思います。
  217. 松浦利尚

    ○松浦委員 大蔵大臣にも、野党も住宅減税の要求を出しておりますから、景気浮揚のために、内需拡大のためにぜひ再検討しておっていただきたいというふうに思うのです。  そこで、この五百十億ドルが、仮定の問題ですよ、仮にゼロであった場合には十兆円減るわけですね。そうすると、十兆円減るということは、国民総生産額は三百三十六兆七千億ですから、十兆円が丸々ゼロになりますとマイナス三%になるのですね。三%ダウンするのです。しかし、それを仮にゼロでやった場合に、それじゃその部分をどこでカバーするかというと、結局民間最終消費支出の再九十八兆、個人消費をふやすことによってその十兆をカバーする以外にないのですね。ですから、今内需を拡大をする、しかし現実には、五百十億ドル程度というのは世界で公認されたものだ、先ほどこう言われましたけれども、公認をしても、アメリカは中間選挙がありますから、恐らくいろいろな意味日本に圧力がかかってくると思いますよ。そのときに内需拡大はこういうふうにするのですと言っただけでは私は済まないような気がいたしますね。ECでもまた同じだと思います。  ですから、そうなってくると、この五百十億ドルというのを減らすために内需をどうしても拡大をする、その分だけカバーするということになれば、民間最終消費支出の百九十八兆を一%ふやしますと二兆でしょう。ですから、そういった意味では民間の最終消費支出をふやすために、この前もいろいろ議論しまして、総理大臣は賃上げを、リボルビングに書いてあるように、ある程度生産性の成果を適正に配分するように念頭にあります、こういうふうに発言をされたのですが、それと同時に私は、今もう減税をするというのは急務だと思うのですよ、この部分をふやすためにも。一%ふえただけで二兆円動くわけですから。ですから、そういう具体的な意味からすれば、私は減税というのは避けて通れない、早急にすべき内容じゃないか。  御承知のように、昭和四十六年、四十七年、経済摩擦が起こりました。四十八年には第一次石油ショックによって経済摩擦は解消した。五十二年、五十三年にまた経済摩擦があったが、五十四年に第二次の石油ショックがあってこれも解消した。ところが今度のこの経済摩擦は、一方で円高でしょう。オイルの値段が下がっていますね。逆風が吹いているわけですよね。ですから、そういった意味では従来のような神風が吹かないのですね。ですから、やはりどうしても政策手段によってこの経済摩擦を解消する以外にないのですね、神風が吹かぬのですから。  だから、そういうことを考えると、この指標の中で、百九十八兆というこの民間最終消費支出をふやすための賃上げと減税、所得を上げることと減税、そのことはもう避けて通れない、どうしてもしなければならぬことだと思うのです。これを先送りにすればするほどかえって問題が起こってくる。だからそういった意味では、今予算審議しておるさなかですから言いにくい面もあるでしょうけれども、思い切った減税措置というものがとられなければ経済摩擦というのは解消しない、むしろ構造的に黒字というのはずっと持ち越されていくというような気が私はしてならないのです。  きょうは幸い中曽根総理もおられないですね。ここに出席されないことになっている、一般質問ですから。だから、ニューリーダーであるあなたがそこに座っておられる。あなたが総理大臣ならどうしますか。私は少なくとも減税はやる環境に来ておるのだ、そう思うのですが、どうでしょう。
  218. 竹下登

    竹下国務大臣 昭和五十四年、第二次石油ショック、いろいろなことがありまして、とにかく税制に対する議論がそのときから急速に高まって、物価の議論がずっとなくなってきて、それでやはり五十四、五、六、七、八、九と六年間税の議論をいろいろして、五十九年にはいわゆる所得減税をしたわけでありますが、そこで、武蔵は考えた、ではなく、みんなが考えて、この辺で抜本的な改正をやろうというので、税調に持ち込む環境が完全にそろった。それで税調に去年の夏から持ち込んできた。  そういうことになりますと、今度はまさに抜本審議ですから、それは六十一年度税制には間に合わない、こういう結論の上に立って、抜本の根幹にさわるようなものはやめようという考え方でもってこの国会に臨んで、予算案、法律案等をお願いしておるわけであります。したがって、問題につきましてはやはり抜本の際にお願いをする、すなわち六十二年度税制以降の問題である、こう言わざるを得ない。  そこでまたもう一つ、これはいろいろ議論をしまして、財源問題ということに、そうなれば当然なってくる。そうすると、まさに赤字公債、すなわち後世代ヘツケを回すことによってきょうの減税財源に充てるという、財政を預かる者としては一番避けなければならない手法に結果としてよらざるを得ないようになったらそれこそ大変だ、こういうことで今抜本審議をお願いをしておるというのが現実そのものでございます。  それから、五百十億ドルの問題と減税の問題を仮にやってみますと、いろいろな計算ございますが、ある種の計算では、五兆円減税やって輸入増につながるのは大体まず七億ドルぐらいだ、こういう議論もあるわけですから、したがって、やはりその角度からの問題意識も絶えず持っていなければならぬというふうに心には言い聞かしておるわけでありますから、六十二年が本格といたしますならば、今日の時点で減税の、まあ先取りをするとでも申しましょうか、そういう環境にはないということを、修正案も見さしていただいておるわけでありますが、これからねちねちと御理解をいただく努力をしなければならぬなと思っております。
  219. 松浦利尚

    ○松浦委員 レーガンの減税を、一九八五年、一九八六年、これを我が国のGNPに当てはめてみますと、一九八五年が二・七五%、八六年が三・一三%、それを単純に名目GNPに掛けてみますと、六十年度が我が国の八兆八千百十億円に当たるのですね。六十一年度が十兆五千三百八十七億円。確かにそのことで財政赤字というようなツケが今出てきておる。苦しんでおられることは事実ですが、しかし、いずれにしてもレーガンはこの減税によってアメリカの景気をリードしたわけですよね。非常に思い切った施策だったと思うのです。  だから、そういった意味では、我が国の、財政再建という面からだけ見ますと、確かに六十五年赤字国債依存脱却、「増税なき財政再建」、そういうスローガンはあるけれども、それは現実的にはもう色あせたスローガンなんですね。端的に言って色あせたスローガン。ですから、今まさに必要なのはこういった思い切った政策が私は必要だと思うのです。  今度の六十一年度の予算というのはもうつじつまを合わせて、ほころびを隠して隠して、辛うじて編成された内容で、それはいろいろ御苦労もあったと思うのですが、そういった意味では減税という問題は避けて通れなかったはずなのに避けて通った。そういう意味では非常に不満な予算だったと私は思うのですね。しかも、内需を拡大すると言いながら、やはり五百十億ドルというものは残っていく。結果的にそのことは世界に公認されたことだからそう問題にはならぬでしょう、こう言われましたけれども、これだけ、一バレル当たり何ドルですか、一バレル当たり五ドル下がりますと百億ドル黒字がふえるということになるわけでしょう。そうすると、五百十億ドルじゃなくて、逆に言うと、OECDのアウトルックに記載されているように、六百億近くの黒字が出る可能性もあるのですよ、六十一年度は。そうなってきたときに、さあまた大変だと騒いだときには国民にツケが回るだけのことでして、僕は政策の大切さというのは今だと思うのです。  こんなことを言っては大変恐縮ですが、亡くなられた大平総理が大蔵大臣のときに特例債を発行された。そのときに私は社会党を代表して夜の十一時ごろまで三時間延々として、後代にツケを回すからやめなさい、後代にツケを回すからやめなさいと、こう言った。そうしたら、いや今回限りです、こう言われてあのときに通ったんですよ。大蔵委員会で、必死になって十一時半ごろまで大平さんとやりましたよ、三時間か四時間も時間をオーバーしたけれども。結果的に私が主張したとおりなんですよね、今。ですから、そういった意味なら、私は政策判断を誤らないためには今対応しなければいかぬのだ。そういう意味で、ねちねちで結構ですから、野党から出された修正案についてねちねちと時間をかけて議論をしていただきたい。いや、これはだめですよじゃなくて、我々野党の意見も十分聞いてもらいたい。そのことのお約束をいただいて、この問題については終わりたいと思います。
  220. 竹下登

    竹下国務大臣 ねちねちと申しましたのは、今のようにねちねちとお話しするという意味で申し上げたわけでありますが、この修正問題というのは、これはまあやはり委員会の問題であって、私は今これが現状においては最善なりとして御審議いただいておりますから、これに対して修正案に耳を傾けましょうというようなことを言う立場にはない、こういうことであろうと思います。  それから、政策選択の誤りで今大平さんのことをおっしゃいましたが、本当に私もあの当時は覚えておりますが、自分として、大平さんが言われた言葉で私に残っておりますのは、財政家として、いわば税金の先取りをした、後世代の税金の先取りをしたということは非常に、あの人はそのことを時々言っておられました。あるいはそれが五十四年のときのいわゆる一般消費税(仮称)につながったのかなという印象が実は私も残っておりました。五十四年以後が私が大蔵大臣でございましたから。  それからもう一つ言えることは、レーガノミックスの話は、あのとき思い切ってやったが、松浦さんもおっしゃった、それを今はツケに困っている。だから、あれを思い切った政策と見るのは当然でありますが、あるいは前車のわだちとしても見るべきじゃないかな、こんな感じがしております。
  221. 松浦利尚

    ○松浦委員 こういう状況になったからこそ、今思い切って減税が必要なんですよ。こうでなければよかったですけれどもね。こういうふうになってしまったからこそ、今減税が必要なんだ。赤字国債とか建設国債などを発行して景気を刺激するというようなことが必要なんだ。ぜひひとつ与野党間で話し合いをしたことは、大蔵大臣も御意見を求められたときには御意見をぜひ聞かしていただきたいというふうに思います。  最後に、大変長い間恐縮でしたが、実は最近通産省の御指導でフランチャイズチェーンというのが非常に多くなりまして、これはFCシステムといいますが、これが家電業界の方にも持ち込まれまして、そしていろんな意味でトラブルがあちらこちらで起こっておるわけですが、ここに契約書もいろいろありますし、倒産あるいは廃業せざるを得なかった人たちの御意見も聞かしていただきました。ところが、この内容を見まして、前もって公取の方ももう既に御調査になっておられるやに聞いておるのですが、公取の方では、この量販店のFCシステムについて既に調査等を行っておられるか、準備しておられるか、その点についてまず第一点お聞かせいただきたいというふうに思います。
  222. 利部脩二

    ○利部政府委員 ただいま御質問の家電業界におけるFCシステムの問題につきましては、大分前から関心を持って見ておりまして、現在も家電の業界の系列化の問題等を中心として調査を実施しておりますが、その一環として量販店のFC問題も調査の対象に入れております。
  223. 松浦利尚

    ○松浦委員 さらに公取の方にお尋ねをいたしますが、この契約の中で一価主義というのが非常に多いのですよね。倒産をした人たちもこう言っておられるのですが、要するにFC本部からこの値段で売りなさい、こう言われたものについては安く売ることができない、もちろん高く売ることもできない、要するに一価主義なんですね。これが契約書の中で強制をされる。  これはあるFCの契約の内容ですが、「販売価格については、乙の自己判断」、乙というのはFCの本部に対して下の方が乙ですね。FC店が乙、それからFC本部が甲。「販売価格については、乙の自己判断による価格の設定や、これら類似の行為は認めない。」だから、例えばスーパーやらデパートで安く売り出しても、与えられた価格で売らざるを得ない、下げることができない、下げたら契約違反で問題になる、こういうようなシステムになっておるのが多いのですが、これはやはりちょっと問題があるんじゃないか。しかし、今調査中だ、こういうことですから、仮定の問題として、仮にこういう状態が存在をするとすれば、これは再販違反、再販問題に触れるんじゃないかという気がいたしますが、どうでしょうか。
  224. 利部脩二

    ○利部政府委員 FCの制度のもとで本部と、この場合は量販店でございますけれども、FC店でございますか小売店との関係でございますが、それがFCであるからということで量販店から小売店への価格の指示あるいは価格の拘束が正当化される理由はなかろうと思います。そうであれば独禁法上問題だろうと思いますが、価格指示という意味内容がもうひとつはっきりいたしませんのと、本部である量販店と小売店との関係、小売店が本部に対して全体的にどういう取引関係にあるかということにもよりますので一概には申せませんが、FCであるから価格の指示が正当化されるということはございません。そういうふうに考えます。
  225. 松浦利尚

    ○松浦委員 ですから、そのことは逆に言うと、平たく言えば、違反の疑いが強いということですね。
  226. 利部脩二

    ○利部政府委員 独禁法上問題があると考えます。
  227. 松浦利尚

    ○松浦委員 経企庁長官先ほどのこの関係でいろいろ御質問しようと思ったのですけれども、事務局の方で御答弁いただきましたから、退席させていただきたいということですから、結構です。どうぞ。  通産の方、おられますかね。——それで、このFCの関係ですが、御案内のとおりに、通産省は中小企業の近代化という意味でこのFCシステムというのを実は奨励をしてこられたわけですね。それで、奨励をずっとしてきて、だんだんこう巨大化してまいりまして、全国的に、もう時間がありませんから私の方からお話をさせていただきますが、このFCが全体で六百十二軒、RC、レギュラーチェーンが七百二十九、合わせて千三百四十一軒FC店が分布されてますます広がりつつあるということについては、通産側は把握しておられますか。
  228. 杉山弘

    ○杉山(弘)政府委員 お尋ねのフランチャイズチェーン店舗数でございますけれども、これが六十年の十二月現在で約六百十社、それからレギュラーチェーンの店舗数が約九百九十社、合計で約千六百近いものがあるということを承知をいたしております。
  229. 松浦利尚

    ○松浦委員 この現状については公取側は今調査開始とありますが、通産としては全国的にチェックしてみられたことがありますか。
  230. 杉山弘

    ○杉山(弘)政府委員 ただいまのお尋ねは家電についてということであろうかと思いますが、そういう観点からは私どもまだ遺憾ながら調査をいたしたことはございません。
  231. 松浦利尚

    ○松浦委員 そうすると、この量販店のFCシステムの展開が、もちろん近代化の意味では奨励をしてこられたと思うのですが、だんだんだんだん巨大化して新しい流通ルートをつくり出しますと、以前の、従来ある電器店、地域電器店、こういったところで摩擦が起こってくるわけですけれども、こうした摩擦問題等について御報告を受けたことはありますか。
  232. 杉山弘

    ○杉山(弘)政府委員 御指摘のように、フランチャイズチェーンシステムにつきましては、独立をいたしました小規模の小売商業の横のいわば一種の組織化を図るという意味におきまして、中小企業庁を中心としてこれについては推進をいたしてきております。ただ、これに加盟をいたします小売商業者の方が契約内容等を十分に把握しないまま加盟するということがあってはならないということで、小売商業振興法におきましては、親事業者、本部の方から、加盟する小売事業者につきましては一定の事項を書面にして交付するというようなことも義務づけたりいたしております。  お尋ねの家電関係につきましても、チェーン化が進みますと、地域のチェーンに加盟してない小売業者との間で幾つかのトラブルが生じているということも具体的ケースに即しまして報告を受けておりまして、把握をいたしております。
  233. 松浦利尚

    ○松浦委員 この問題について家電そのものについては調査しておられないということですから無理がないとは思うのですが、最近この問題についてあちらこちらでトラブルが起こっておるのですね。ですから、メーカー側で解決しなければならない問題、あるいは古い家電小売店の皆さん方で解決しなければならぬ問題等があるのですけれども、実はこの中で一番問題なのが異業種ですね。要するに全く家電と無関係の業種、例えば農協なら農協、そういったところにFCが出店をするという問題、あるいは交通会社の営業所にFCのお店ができるという問題、そういった異業種にFC店が出店するということで地域的に非常にトラブルが起こっておる点があるのですね。  それからもう一つは、要するに量販店ですから、メーカー側から大量にFC本部が買いますから、当然メーカーの政策上価格は下がりますね。そうすると、片一方の小売店の方にはそういう恩典がありませんから、おのずからメーカーからの仕入れ価格そのものに格差が生まれるのですね。量販店と小さいお店の違いですね。そのことによって、例えばFC店に加盟をした途端に、私なら私がFC店にはっと加盟しますと、今まで百円だったものが六十円になるわけですね。そういうふうな状況で、地域における価格競争、そういった面でトラブルが起こってきておる。  それからまた、このFC唐が卸売みたいになってしまっておるのですね。小売を持っておったのですけれども、実際はもうこのFC本部そのものが卸になりまして、そして全国的にネットを張って、FC加盟店に配送すればいいんだけれども、配送するところもありますけれども、メーカー側に連絡をしてメーカーが配達をする。そういうものに対してトラブルが起こっておるのですね。  ですから、こうしたFC店を奨励するということについて私は決して反対はしませんが、こういう行き過ぎた状況に対して何らかの方法で対応をしなければ、私はFC店が広がれば広がるほどトラブルが起こってくるというふうに思うのです。この点についてどのように対応しようとなさるのか、お聞かせをいただきたいと思うのです。
  234. 杉山弘

    ○杉山(弘)政府委員 ただいま三点お尋ねがあったと存じます。  まず第一点は、農協その他、従来家電関係の小売業をやってなかったものをフランチャイズの加盟者として加盟させるということについてどう考えるか。この点につきましては、私どもの立場でお答えするというよりは、むしろフランチャイズ問題をやっております担当部局、例えば中小企業庁からお答えするのが適当かと存じますが、私限りの判断といたしましては、こういった異業種を加盟させることで問題が生ずることは事実かと思いますけれども、だからといって直ちにそういうことを禁止するというようなことが適当かどうか、この点についてはにわかには規制という方向でお答えをすることはできないのじゃないかと考えます。  また、価格問題につきましては、確かにフランチャイズチェーンの本部は大量販売をいたしますのでそういう意味でメーカーからディスカウントを受ける、また決済も現金決済でございますからそういう面でのディスカウントも受けるということで、加盟者に対しては通常の地域の一般小売店よりは安い価格で商品が供給されるということは多分そういうことであろうかと思います。ただ、この連鎖化をむしろ奨励いたしております理由の一つにそういう点があるわけでございますので、この点も、価格差があるからということで一概にそれを否定するということはいかがなものかと考えるわけでございます。  また、その配送の問題につきましても、直接ではなくてメーカーが加盟の店舗に配送するということでございますが、この点につきましても、やはり大量ディスカウントのあるいは一つの形態ということでのサービスということも考えられるわけでございます。すべてのケースについてこれを否定するということはいかがなものかと思いますが、ただ、やはり独禁法との関係で申しますと、不公正な取引方法に該当するということになりますとこれは問題でございますので、こういう点につきましては、価格の問題、配送の問題等につきまして公正取引委員会と十分連絡しながら今後とも対処してまいりたい、かように考えております。
  235. 松浦利尚

    ○松浦委員 これは「会社四季報」の中からとったのですが、あるFC本部ですけれども、五十八年には頭打ちだったのですね。ところがFCに転換をしていって急激に伸びてきた。そして年商一千億売り上げるところも出てきておる、一部上場会社になる。そういった非常に速いスピードでFCが進んでいくんですね。  確かに、中小企業の近代化、そういう意味で奨励してこられたことも事実だと思うのですが、しかしもうここまで来ますと何らかの意味で従来ある既存のものとのトラブルですね、従来の小売店というものもやはり中小企業庁なり通産は育成をしておるわけですから、育成しておるもの同士が対立関係に入ってきておるわけですから、だからこっちだけ栄えてこっちがつぶれてもいい、あるいはこっちが栄えてこっちがつぶれてもいいということには行政上ならぬと思うのですね。ということになれば両者が共存をしていく道というものを考えなければいかぬ。一そういう意味では、ここまで来たら通産が公取と十分連絡をされて、公取はFCの内部については独禁の疑いのあるものについてと先ほどお話がありましたが、そういう疑いのあるものについては恐らくこれから調査が進むでしょう。しかし同時に、通産行政の中でもメーカー、それからFC本部、それから既存の小売店ですか、そういったもの等に対して調整機能を通産はぜひ持ってもらいたい、中小企業庁が調整してもらいたい。そうしなければ恐らくあらゆるところでトラブルが起こると思うのです。そういったトラブルが個々のケースでいろいろなケースが出てくると思うのですが、ぜひそういった行政機能というものを働かすようにしていただきたい。そのことをぜひお願いしたいと思うのですが、どうでしょう。
  236. 杉山弘

    ○杉山(弘)政府委員 ただいま先生御指摘のように、家電の国内市場はこのところ順調に拡大いたしておりますので、そういう中にございますフランチャイズチェーンの本部というものが相当急速な進展を遂げているというのは事実でございますし、またそれに伴いましていろいろ問題が生じているということも事実でございますので、メーカー、量販店、地域小売店、それから加盟のフランチャイズの本部といったような関係者の意見を十分聞きながら、また省内では中小企業庁その他関係部局とも相談し、また省外では公正取引委員会とも密接な連絡をとりまして、御指摘を踏まえて今後どうしたらいいか十分検討いたしたいと思います。
  237. 松浦利尚

    ○松浦委員 終わります。
  238. 中島源太郎

    中島(源)委員長代理 これにて松浦君の質疑は終了いたしました。  次に、三浦久君。
  239. 三浦久

    三浦(久)委員 まず運輸大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  私は、国鉄は国民の共有財産であるというふうに思っておりますけれども、大臣はどういうようにお考えですか。
  240. 三塚博

    ○三塚国務大臣 全くそのとおりです。
  241. 三浦久

    三浦(久)委員 分割・民営会社の株式ですね、これを一定の割合で国が保有し続けることがありますか。
  242. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 発足の当初は一〇〇%、国鉄の清算事業体であります旧国鉄が保有いたします。その後、その株式はできる限り早く放出をして極力民営の方へ持っていくということになっておりますが、いつの時点にどうというようなことは考えておりません。
  243. 三浦久

    三浦(久)委員 そうすると、国民の共有財産である国鉄というのが新しい事業体の所有になってしまって国民の共有財産ではなくなる、そういうことですね。大臣、どうですか。
  244. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 旧国鉄は国の特殊法人でございまして、先生おっしゃるような新しい経営体とは別のものと考えております。したがいまして、その株式を保有するということは、特段、会社が相互に持ち合うというような関係ではないというふうに考えております。
  245. 三浦久

    三浦(久)委員 結局平たく言うと、国民は国鉄に関する借金、そのために国鉄を手放したということになるわけですよ。そして手放しただけじゃなくて、普通手放せば金が入ってくるんだけれども、逆に今度は十六・七兆円の金までまだ負担をしなければならない、そういうことになるわけですね。これはもう明らかであります。これはもう国民一人当たり十四万円の負担であります。  ところが、国鉄の資産というのは時価に換算すると八十兆円とかまた百兆円とか、こういうふうに言われているわけですね。それなのに、国鉄を手放した、その上に十六・七兆円も追い銭を打たれる、こういうことでは国民は納得できない、理解ができないというふうに私は思うのです。  それで、この国鉄の資産を大体幾らで手放そうとしたのか、今手放そうとしているのか、大臣、御答弁いただきたい。
  246. 三塚博

    ○三塚国務大臣 手放そうとしておるか、こういうことでありますが、もう既に公式発表をいたしておりますとおり、二千六百ヘクタール、五兆八千億円以上で売買処分をいたしたい、そういうことで旧債の処置に向けたい、この原則が決まっておるわけですね。  問題は、今委員が発言されておる、七十兆とも百兆ともよく言われるわけでありますが、この評価の問題でありますね。事業用資産、非事業用資産。事業用資産は事業を遂行するために必要であるわけでありまして、この評価は評価の仕方でいかようにも出るわけでありますけれども、同時に線路という、鉄道という特殊な交通部門を担当し、日本列島、野を越え山を越え、トンネルに入り、それで行っているわけでありますね。膨大な面積はそれも全部ひっくるめましての琵琶湖に相当する面積であります、こういうことでありまして、一点集中で東京駅を見てまいりますならば、公開入札の結果どれだけになるのか、私自身、今想像がつきません。  それぞれの評価は評価として試算はされるでありましょうけれども、同時に、これと我が東北あるいは下北あるいは北海道、こういうところの土地の問題、線路敷という問題も、これまたそれなりの評価、なかなか値段もつかないところもある、そういう問題もマクロに全部集計をされて、一つ一つ、一筆ごとに評価をしてまいるならばそれなりの評価が出てまいるでありましょうし、そういう点で、一点集中で一つ前提に立って判断をされますと、さようないろいろな展開の議論ができるのがこの種の問題であろう。  ただ、ここで明確に運輸大臣として、また政府として言い得ますことは、国民共有の財産でございますから、いやしくも一点の疑念を持たれますような方式はとらない、公開入札においてこれが行われてまいる、そして処分をされて、収益として計上され、旧債の原資に充てられてまいる、こういうことだけは明言できるわけでありまして、巷間伝えられるようないろいろな、我が国は自由評論の国家でありますから、それは批判として私どもも受けとめ、それを心の塩としながら、なおかつさようなことはどの角度から見てもございませんよ、こういう制度なり仕組みなり方式をとってまいる、こういうことになるわけです。
  247. 三浦久

    三浦(久)委員 全然私の問いに答えておりませんね。土地問題について言えば、もう既に疑惑は発生しているのです。これはもう社会の常識ですね。  それでは、ちょっと運輸省の方に聞きましょう。  例えば旅客会社の事業用資産、また関連事業用資産、これが六兆円という評価でしょう。売却予定地が五兆八千億円ですね。そして新幹線の再調達価額が八・五兆円、それに貨物会社がありますけれども、これは幾らかわからない。ですから、これをトータルすると二十・三兆円、そういうことになりますね。どうですか。
  248. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 ちょっと先生の御計算がよくわからないわけでございますが、新幹線保有主体は、おっしゃるように八・五兆円でございます。それから旅客会社等が五兆七千億でございます。ただ、二十兆というのはちょっと数字的にはよくわからないのでございますけれども、一応そんな感じでございます。
  249. 三浦久

    三浦(久)委員 いやいや、それは、あとは売却予定地の金があるでしょう。それを足せばそうなるじゃないですか。わからないって、わからないことはないでしょう。  そうすると、例えば総額百兆とか八十兆とか言われているものが、何でそういう二十兆円ぐらいの評価になって新しい事業体に譲渡されてしまうのかということですね。これはどうしてこんな数字の開きが出てくるのですか。
  250. 吉田耕三

    吉田(耕)政府委員 旅客会社等に渡す資産の中には二種類ございまして、事業用資産については簿価、それから関連事業用資産につきましては、これは本来譲渡可能性がありますので時価で評価して渡しております。そういうことで今のような差が出てくるということであろうと思っております。
  251. 三浦久

    三浦(久)委員 そうすると、鉄道用事業用地につきましては時価評価はしていないということですか。
  252. 吉田耕三

    吉田(耕)政府委員 監理委員会といたしましては、事業用資産につきましては時価評価を行っておりません。次に述べますような理由で、そのことは適当でないと考えております。  まず、国鉄用地の資産の大部分は事業用用地でございまして、これはあくまでも保有して事業を継続していくというものであるわけでございますから、これをもし売却したら幾らになるかというような時価で計算をするということは、当然鉄道事業をやめるということが前提になるということで、これは適当ではない。そもそも鉄道の事業用用地の場合に、そこに鉄道があるからこそ時価が高くなっているというような関係にありまして、鉄道があることによって形成されている時価というようなものは、売却を前提にするということでは見積もることができないというような観点から、時価では見積もっておりません。  仮に何らかの方法で事業用資産について時価評価をしたといたしましても、膨大な長期債務の解決ということについては何ら解決策にならないわけでございまして、苦しい資金繰りというような状況も変わらない。そればかりか、時価に再評価いたしますとかえって減価償却費が大きくなる、あるいは諸税が多くなるというようなことで、そのための借金がまたふえて、そのまた利払い増になるということで、かえって経営を圧迫することになるというような観点から、監理委員会といたしましては、そのような事業用資産を時価で評価するという方法を採用することは適当でないと思っております。
  253. 三浦久

    三浦(久)委員 鉄道事業用資産について時価は見積もることができない、これは評価することができないという意味でしょうけれども、それは間違いし神ないですか。昭和三十年にはちゃんと国鉄の全資産の再評価をやっているじゃないですか。じゃ、あのときはでたらめをやったというのですか。そんなことは理屈にならない。ですから、あなたの言うことは、簿価でもって簿価相当額の長期債務を承継させるのだから、だから一々鉄道事業用用地について時価を評価したって余り意味がない、必要性がない、こういうことなんでしょう。それはちょっと言い過ぎだと私は思うのです。あなたたちは必要がなくたって、国民は必要があるのですよ。  大体、自分の財産が幾らの値打ちがあって、そして幾らでもって売り飛ばされようとしているのか、他人の手に渡ろうとしているのか、そのことを知りたいというのは当然なことじゃありませんか。なぜならば、十六・七兆円も債務をしょわなければいけないのですから、国民一人当たり十四万円も背負わなければいけないのですから。ですから、どのくらいの財産価値があるのか、それを幾らで売ろうとしているのか、もっとほかに方法がないのか、いろいろ国民だって知りたいでしょう。私はそう思いますよ。  それで、私は何も鉄道用事業資産を時価で評価して、その時価評価でもって債務を承継させろというようなことを言っているんじゃないのです。時価評価をするということと債務を承継させるということとは、また別の次元の話でしょう。しかし、一応全部時価評価をした上で、そしてこれは鉄道事業用の資産だからどのぐらいの値段でもって承継させようかということを別途考えるのが必要でしょう。時価が適当でないからといって簿価が適当だという根拠はどこにあるのですか。どこにありますか。何にもないのですよ、そんなこと。あなたたちが勝手に簿価が適当だと何の根拠もなく決めているだけの話であって、何で一律にそんなことを簿価でやらなければいけないのですか。簿価と時価との中間のある時点の値段で承継させるということだって十分に考えられることじゃありませんか。それをあなたたちの論法は、時価で承継させるのは適当でない、だから簿価だ、こういうことでしょう。簿価というのはどういうことですか。例えば三十年前に取得した国鉄の土地であれば三十年前の値段ということなんですよね。これは大変な問題です。  私、資料をお出しいたしておりますので、あとそれで説明しますけれども、例えば国鉄本社の跡地、これは簿価が幾らだと思いますか。一万二千平米ありますよ。帳簿上の価格は二千三百万円ですよ。これが今幾らになるのですか。いろいろ言われておりますけれども、三千六百億円になるのですよ。だから簿価で承継するということは、三千六百億円の値打ちのものを二千三百万円で取得できるということなんですよ。これは一万五千六百五十二倍です。時価と簿価というのはこんなに大きな開きがあるのです。ですから、時価が適当じゃないから簿価だ簿価だ、そんなことを簡単に言われたら困るわけですね。  それで、あなたたちが、そういういわゆる鉄道事業用資産だ、だからそれは簿価が適当なんだ、そういう考え方をとっているというのは、一たん新しい会社に渡した鉄道事業用資産、これは永久に鉄道事業用資産だという前提に立っている。ところが、そんなことはないでしょう、あなたたちだって今までの論議の中で、鉄道事業用資産が関連事業用資産に転化するという場合だってあるということを認めているじゃありませんか。幾らでも認めているでしょう。そうすれば関連事業用資産に転化をするということは時価で活用するということです。簿価でもって得たものを、うんと安くただみたいな値段でもって得たものを今度は時価で運用する、活用するということじゃありませんか。その分だけ国民の負担がふえているということでしょう。ですから、そういう言い方は私はおかしいと思う。  例えば、鉄道事業用資産だ、こう言う。それでは山手線はどうなのか。山手線は五百五十七億円の簿価ですよ。ところが、あれを一年間動かすことによって営業収益は五十九年度で五百億円上がっているのですよ。我々がそういう指摘をする。簿価で売るのはおかしいじゃないか、たった一年でもって元を取ってしまうじゃないか、こういうことを言いますと、あなたたちは、いや東日本の会社は赤字のローカル線も引き受けるのです、だからトータルで計算するからそれでいいのです、こういうことを言うのでしょう。そうしたら、では赤字ローカル線というのは絶対に廃止にならないのでしょうか。廃止させないという保証があるのでしょうか。どうなんですか。それをお答えいただきたい。
  254. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 先生の御意見によりますと、新しい会社というのが不当に利益を上げて国民に対して損害を与える、こういうような観点に立っておられますけれども、監理委員会の意見に基づきます新会社の採算というのは、ぎりぎりな経営努力をしてそして健全な経営が行えるという程度の範囲になっておるわけでございまして、その根拠といたしましては、持っていきます財産といたしましては、ぎりぎり事業用に必要最小限度のものを持っていく。もちろん関連事業等への展開ということは考えられますけれども、それは関連事業に既に出資しているものについては、御承知のように時価に評価して持ってまいりますし、さらに新しい関連事業等を行います場合には空中権を利用するとか、そういうぎりぎり持っていった事業用財産の範囲の中でうまく運用して行えるのではないかということを申し上げておるわけでございまして、余分に売却できるような用地をふんだんに持っていかせる、それも簿価で持っていかせるというようなことは考えていないわけでございます。  さらに、それを将来地方交通線等について、これを廃止してというお話でございますけれども、現在の考え方といたしましては、健全な経営の会社主いうものをつくることによって、鉄道事業として将来これ以上地方交通線等の廃止を行えなくてもやっていけるというような会社をつくりたいと考えております。もちろん新しい経営形態になりましたら、経営形態の判断でございますからそれぞれいろいろな判断が出てくると思いますけれども、そういうことを前提にしてどんどん路線を廃止して、例えばそれを売り払うだろうというようなことを前提にしてこの会社を考えておるとか、そういうことではございません。あくまでも健全な鉄道として、国民の足になり得るような立派な鉄道というものになっていくということを前提に考えておるわけでございまして、会社がすぐにそういう資産を売り払うだろうというような前提の上に立って物を考えるということはいたしておりません。     〔中島(源)委員長代理退席、原田(昇)委員長代理着席
  255. 三浦久

    三浦(久)委員 そんなことを前提にしていないと言うけれども、そんなことにあなたたちはくちばしが入れられなくなるでしょう、今度。民間の会社でもって、国、政府はくちばしを入れない。そのために民間会社にするわけでしょう。そうすれば、この路線はもう赤字でしょうがない、こんなものは切ったらもっともうかるのに、そういう発想というのは資本家はいつもするじゃありませんか。だから、現に大手私鉄でもどんどんあなたたちは認可して廃線になっているじゃありませんか、後で具体的に言いますけれども。  そうすると、赤字ローカル線、それは廃止を前提にしては考えておりませんなんと言うけれども前提にしてあなたが考えるか考えないか、そんなことは関係ないのです。新しい会社の首脳陣が考えるかどうかということなんです。だから、我々はそういう可能性だってあるじゃないかと言うのです。路線廃止の申請を出す、認可になる、そうしたら遊休地になりますよ。それを売り飛ばす。そうすると、もう簿価という非常に安い値段でもって買ったものを、どんどん何の制限もなく時価で売り飛ばすことができる、ぼろもうけできるじゃないですか。  それなら、あなたが赤字ローカル線の廃止を前提にしては考えておりませんと言うなら、では、そういう赤字ローカル線の廃止という問題について、それは廃止させないという法律的な担保があるのですか、今度の再建法の中に。そういうことを考えていらっしゃるのですか、どうなんですか。考えていらっしゃるのかどうか。
  256. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 先生おっしゃいますように、新しい経営形態になりましたら、それは経営者の判断においてなされるべきというのはおっしゃるとおりでございます。ただ、そういうような事態におきましても、私どもが言っておりますのは、当然すぐに新会社になったらどんどん資産を売り払うために線を廃止していくというような、そういう経営を行うというような会社を設立するというつもりはございません。  またさらに、その株式というのは当初全額国が持つわけでございますから、もし仮にそういう含みの資産とか利益が上がるというようなことがあれば、当然それは株価に反映するわけでございまして、その株主である政府というものは、すなわち最初は国民が株主でございますから、そういう意味で国民に損をかけるというようなことはない。  なおちなみに、赤字線を廃止いたしました路線敷というのは、従来の経験によりますと、余り価値がないということで、赤字線廃止によって用地を売却して大きな利益を上げるというようなことは当面予想していないところでございます。
  257. 三浦久

    三浦(久)委員 それはあなたうそですよ。例えばローカル線だって、私の住んでいるところ、小倉ですが、小倉からずっと日田彦山線が通っています。これが廃止になったとしますよ。そうすると、市街地をずっと線路が通っているわけですから、駅がなくなろうと線路がなくなろうと、その値段というのは変わりがないですよ。そんなに下がるものじゃありませんよ。あなたは、田舎の何にもほとんど家がないようなところにぽつんと駅があるようなことを考えて、そう言っておられるのかもしれませんけれどもね。  だから、あなたがそういうことを前提としてないと言うのなら、国民の財産なんだから、国民の財産をちゃんと国民の利益に還元をする、十六・七兆円というのをもっともっと少なくする、そういう観点からいったって、ローカル線の廃止、そういうものはさせないという法律的な保証というものをすべきじゃないですか、簿価でやっているんだから。それじゃなかったら、ローカル線の廃止をした場合には、例えば事業用資産でなくなったというような場合には、旧国鉄が存在しているんだから、それを旧国鉄に簿価で引き渡すというようなことは考えておられるのですか。いろいろ国民の財産を守る手法というのはあるはずだ。そういうことは考えておりますか。
  258. 三塚博

    ○三塚国務大臣 三浦さんの話を聞いて御質問をお伺いをいたしておりますと、何か全部売り払いまして……(三浦(久)委員「全部売り払うなんて言ってないよ。そんなことは言ってないよ。赤字ローカル線を廃止した場合に……」と呼ぶ)そうそう、それも含めて、東京駅の問題も、売っ払いまして、それは全部不当に売られ、売る側は安く売り、安く買ってまたもうけるやからが、ハゲタカのような集団がおるぞと、もうそれが大前提で論を進められておるように実は今率直に私お聞きするわけです。  そこで、大事な点は、今審議官が言いましたとおり、分割会社すべて国が株主としてスタートするわけです。それも経営がきちっとめどが立って相なってきたなというときに初めて、そのうちの何%株を放出するか、これは政府でいろいろと協議をしなければなりません。また、その売り方は、黒字でございませんければ上場できないわけでございますから、上場して公式のところで売るということでありますれば、棚橋君が今言いましたとおり、正当な資産評価がされ、正当な業績が評価をされて正当な株価というものが形成をされてまいりまして、決して損はしない、有利にこれが売ることができるであろう、こういうことになるわけですね。  ですから、なかなかもって、今国民の中に、野党の皆さんの中にも、六会社が果たして黒字経営が相なるのであろうかという懸念がございます。ですから、ファンドをつける、あるいは旧債を免除をして、三島についてはこれならばいけるのではありませんかということでおやりをいただくことにしておるわけですね。ですから、三浦さんが言われるように、会社ができたわ、直ちに財産を売るわということも……(三浦(久)委員「私は直ちにと言ってないよ」と呼ぶ)早急に、何となくそんな、あなた御質問が迫力あるものですから、そういうふうにこっちが思うわけですね。ですから、それではございません、じっくりと腰を据えて経営の全体展望の中で次の方式を考えることであります。  もう一つ大事な点は、資本家を全部集めて会社をやらせるなどということではないわけです。これはまさに任命権は内閣、政府にあるわけでして、最初のスタート。それと同時に、国鉄総裁と協議をし、だれが一番この鉄道を運営し、見事に再生することができるだろうかというのは、今おる国鉄の諸君なんですね。実務者なんですね。これが中心となることだけは間違いないのだと思うのです。それに経営的な手腕を持った方に御参加をいただく、あるいは地方公共団体の長に御参加をいただく、こういうだれが見てもなるほどすばらしい経営陣だなということでこれは進むわけでありますし、そういうことで、三浦さんが大変御心配をいただいておられるわけですけれども、そういう御心配がスタート台において万々一ございませんように、なるほどこれならば立派なものだ、もう心配したことが杞憂であったと言われますように、この論議を通じまして、これからの審議を通じて明確にさせていかなければならぬというのが政府の決意なんです。  先生、「日本共産党・革新共同 三浦久」とお名前を記名の上でお出しをいただいておるこれなんか、東京駅二千三百万、三千六百億円というのは、三浦議員が試算をされて、あなたが記入をされたわけでして、これがどうなるか、この前後なのか、下なのか上なのか、これは公開入札ですからわかりませんね。だから、余りこういうことは、いいんですけれども、これは……(「独善だよ」と呼ぶ者あり)今言った意見もあるわけですね。そういう意味で、やはり御慎重にこういうのを進める方が、国民の共有財産をきっちりと進めるという意味で、お互いが政治家として考える一つのけじめかなというふうにも、実は御論議を承らさしていただいて考えるわけであります。
  259. 三浦久

    三浦(久)委員 あなたたちの話を聞いていると、いいですか、含み資産があると何か株が上がる、株が上がれば高く売れる、それは旧国鉄のものになるんだから国民の利益に還元しているのだ、こういう話だね。あなたたちみたいになったら、株で損する人はいないわね。株というのは上がると思ったら上がるの。そんなことはないでしょう。上がると思ったら下がった、それで大損しているじゃないですか。そういうものでしょう、株というのは。だから、そんな上がるか下がるかわからないような株の値段を当てにしてそんなことをやるというのは、私はおかしいと思う。  それだったら、結局私鉄になっちゃうわけですから、民鉄になるわけだから、赤字ローカル線を廃止をする場合には、それは廃止をさせないという法律的な保証をするとか、事業用用地じゃなくなった場合には、さっき言ったように簿価で国に返還するとか、そういうような措置をきちっととった方が確実に国民の利益を守れるじゃありませんか。それを、上がるか上がらないか、株に国民の利益を託するなんて、そんなことは不見識な議論だというふうに言わざるを得ないと私は思うのですよね。  それで、私、大手私鉄、この廃止状況、どうなっているか、一つ二つ挙げてみましょう。  私の選挙区は北九州ですが、ここでは去年西鉄電車が廃止になりましたよ。全部じゃありませんけれども、半分ぐらい。門司港から砂津まで、それからまた大門から中央町まで。これは路面電車ですけれども、廃止になりましたよ。その電車が必要かどうか、だれが決めるのですか。国民ですよ、市民ですよ。ところが、市民はわんわんわんわんもう本当に反対したけれども、とうとう廃止が決定されたじゃありませんか。じゃ、西鉄は赤字ですか。赤字じゃないですよ、黒字ですよ。ただその路線が赤字というだけですよ。廃止していますよ。それから東武電車、ここでも五十八年の六月一日に熊谷から妻沼というところ、十・一キロが廃止になっているでしょう。名古屋鉄道、名鉄、これだって黒字ですよ。四十八年の二月二十二日に上挙母というところから大樹寺、十一キロが廃止になっていますよ。それはそうでしょう。どうですか。
  260. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 私鉄を担当しておりませんけれども、先生のただいま読み上げられたような線の廃止があったということは事実であろうと思います。     〔原田(昇)委員長代理退席、中島(源)委員長代理着席
  261. 三浦久

    三浦(久)委員 ですから、民鉄になれば、会社全体が黒字であっても、ある部分的な路線が赤字であれば廃止になる可能性があるのです。そうしないという法律的な保証も何もない。そういうまま国民の財産というものを簿価でもって、非常に安い値段でもって新しい事業体に移してしまうということ、これは、私はやはり再考しなければならないと思うのですね。  例えば、どのくらい簿価と時価が違うかといいますと、このお手元に御配付申し上げました資料は、これは私が専門家に依頼して調査をしてもらったものであります。ただし、この土地名の簿価、これはおのおのの土地についての簿価、これは「原簿価額」と書いてありますが、これは国鉄当局からいただいた資料でございます。この簿価は間違いございませんね。
  262. 岡田宏

    岡田説明員 先生が今お示しになりました資料の原簿価額につきましては、間違いございません。
  263. 三浦久

    三浦(久)委員 そうしますと、例えば北新宿アパート、これは簿価が一千百万円、これが時価では八十四億何がしですね。これは確かに私が専門家に依頼して調査していただいたものですから、それは鑑定士によって若干の違いはあるかもしれないけれども、しかし、おおよそこういうものです。七百七十倍ですよ。大久保寮、これは簿価が三百万円、これが十二億円、四百八倍ですね。それから七号宿舎、これは簿価が二百万円、これが六百十二倍の十二億円。それから高田馬場の宿舎、これは簿価が六百万円、それが三十四億円ですよね。五百八十倍。都心の土地というのは大体こんなものです、簿価と時価との開きというのは。ですから大変な問題なんです。これは新宿の土地のほんの一部分であります、まだ私の方で何百という資料を持っておりますけれども。  ですから、こういうものを、幾ら事業用資産といえ、簿価でもって売り渡してしまうというのはひどいじゃないか。特に宿舎というのは、これは事業用資産として承継させる場合だってあるわけですね、事業上必要だと思えば。そうでしょう。そうすれば今度、それは簿価で得ておいて、今度は時価で売り飛ばして別の安い土地を買って、そこに宿舎をつくるということだって可能なんですね。ですから、これは事業主体のやりようによってどうにでももうけることができるという、そういうことになっているわけなんですね。  それで、監理委員会にお尋ねしますが、この上から四つ、皆さん方に土地を指定しておきましたけれども、この土地は事業用資産なのか関連事業用資産なのか、それとも売却予定地なのか、お伺いいたしたいと思います。
  264. 吉田耕三

    吉田(耕)政府委員 監理委員会といたしましては、国鉄の用地につきまして、これを事業用用地と非事業用用地に分けて、非事業用用地につきましては原則として売却するということで種々の算定を行っております。  御指摘の宿舎用地につきましても、これはそういう意味での振り分けの作業の対象になっておるわけでございますが、監理委員会が事業用用地か非事業用用地かと振り分けたのは、あくまでも監理委員会での候補地としての段階でございます。これは政府、国鉄において最終的に確定するものでございますので、現段階では申し上げることは差し控えさせていただきたいと思っております。
  265. 三浦久

    三浦(久)委員 結局、そういう答弁でしょう。言わない。  それじゃ大臣、お尋ねしますが、あなた、売却予定地の閣議決定で、あの問題について第三者機関をつくると言いましたね。それで公正を担保したいんだと。この第三者機関というのはどういうことをやるのですか。
  266. 三塚博

    ○三塚国務大臣 三浦議員にこの件にお答えする前に、ただで、簿価でどうだといろいろ言われますけれども、四国も九州も北海道も、鉄道として何としても再生をいただきたいということですから、旧債を免除をして、それでファンドを与えてぎりぎりの事業用資産をつけてあげまして、頑張ってくれ、こういうことでいっておるわけですね。本州の三つの会社もまさにそういうこと。新幹線リース方式なんという非常に考え抜いた案で、公平にしながらさらにやるというのも、この鉄道が大事だから、鉄道は国民の足だから、この再生を期していただきたい、こういうことでやっておるわけでありまして、土地を売ってもうけようなどと、そういうことでありませんことだけは御理解をいただきたいと思います。  そういう意味で、第三者機関は具体的には何をやるのか、こういうことであります。これはまさに今私がお答えをしてまいりましたように、国民の財産の土地を、非事業用用地といえども、売却をするわけですね。それでさらに国民負担を軽くしよう。十六兆七千というきちっとした計算になっておりますが、それをさらに軽くできぬかということは、予定された五兆八千億円に上積みならぬかな、上積みできるような売り方は何かもっといい方法があるのではないだろうか、また、それに付加価値をつけてやるという方式もあるのではないだろうか、いろいろとにかく正当な、適正な、きちっとしたお値段でお買いをいただく、いささかもそこに不正があってはならない、そういう意味で、法律が御決定をいただきますならば、まさに公正無私、第三者機関をつくらさしていただきまして、運輸省においてこの人選を行い、第三者機関は諮問機関としてこれに当たらさしていただく。そして、それからお出しをいただいた基準あるいは方式というものをそのとおりひとつ実行させていただくというのが基本方針なんです。同時に国鉄にも、これは今度旧法人に、清算法人になります旧国鉄が今度は実際資産売却に当たるわけでございますから、この旧国鉄の中にもしかるべき機関を一つおつくりをいただきまして、これも堂々と国民の目の前で、ガラス張りの中でこちらの第三者機関と同じようにこの執行をしてまいる、こういうことで、いささかも懸念が持たれませんような立派な仕事をしていくための機関であります。
  267. 三浦久

    三浦(久)委員 そうすると、その第三者機関というのは、何を国民に対して公表しますか。例えば今あなたが方式とか基準とかと言われましたね。そうすると、その方式とか基準を国民の前に明らかにするんですか。またはそれだけですか。それとも個々の財産、それについてのいわゆる事業用資産なのか関連事業用資産なのか非事業用資産なのか、その区分とか、または個々の資産についての簿価とか時価とか土地の面積であるとか、そういうものまで公表するんですか、どうなっておるのですか。
  268. 三塚博

    ○三塚国務大臣 正式にそれじゃこの閣議決定のときに決めました方式をお読みをいたします。  去る一月二十八日の閣議決定において示されておりますように、用地の生み出し等に関し第三者機関の意見を聞き、これを公正かつ適切に行うこととする。  この第三者機関には二つの目的がある。第一は、五・八兆円にできる限り上乗せを図るための用地の生み出しについての意見を求めるものであり、これについては国鉄改革法の成立後、運輸省に何らかの形での諮問機関を臨時に置くこととする。第二は、旧国鉄において……(三浦(久)委員「私、持ってますから、それは」と呼ぶ)お聞きいただいておりますから申し上げておるわけですから。資産を売却する際に公正に行われるようその意見を求めるものであり——持ってないものですよ、これ。これについては旧国鉄にしかるべき機関を設けることといたしたい。
  269. 三浦久

    三浦(久)委員 結局、個々の資産については、幾らの時価がどういう区分なのか、国民自身は何にも判断できない。要するに政府を信用しなさい、それだけの話じゃないですか。国鉄に関して今まで政府はどれだけうそを言ってきましたか。政府の言明したことがどれだけ実現しなかったんですか。私は、また後で時間があればその問題を具体的に少しやらしてもらいますけれども、そんな政府だから国鉄の問題に関しては信用できない、我々、ここ何十年。  それで……
  270. 三塚博

    ○三塚国務大臣 三浦委員さん、やっぱり国会の論議というのは、お互いの立場はありますけれども、共通のところは共通の認識でスタートをし、論議を深めてまいりませんと、国民の信頼にこたえることも相ならぬわけですね。三浦委員の話は、全く政府はインチキで悪の権化みたいで何をしてかすかわからぬ、こういう大前提でしか論議が進めていただいておりませんものですから、なかなか、こちらも誠心誠意お答えをしておるわけでありますけれども、かみ合わない。かみ合わない議論というのは、この大変大事な国鉄改革の物事を進めようという、国民の皆さんが注視の中でこれはやっておるわけですから、そういう意味で決してあなたが言っているとおりのことではございませんで、我々も国民の御支持をいただき、総選挙の結果こういうことで内閣をつくらさしていただき、国民に責任を負うておるわけでありますから、そこできちっとした方向の中で、社会党もおり、公明党、民社党、そして御見以下こう政党があられるわけですね。そういう中でこういう形で政治を進めておるわけですから、そこのところをきちっとお取り進めをいただきたい。
  271. 三浦久

    三浦(久)委員 この国鉄の分割・民営というのは……。  今のあなたの意見にちょっと反論しておこうかな。  結局、私に言わせると、やみからやみに処分されちゃうということ。国民が全然その正当性について判断できない。十六・七兆円の債務の負担が本当に正当なのかどうか、そのことについて何ら判断もできないということになる。ですから、本当に国民にもっと親切な政治をやってほしい、私はそのことをまず要求をしておきます。  そうして、この国鉄の分割・民営によっては、国民が国鉄に対して持っているさまざまな要求、これは何にも実現していない。例えば赤字をなくしてほしいという要求がある。運賃を安くしてほしいという要求がある。もっと安全をしっかりしてほしい、サービスもよくしてほしい、労働者は雇用を確保してほしい、いろいろな要求を持っていますよ。しかし、それじゃ運賃はどうなるのですか、これ。分割して下がるのですか。営業係数があんなに少ない新幹線、東海道新幹線、あれだって上がるのでしょう。どのくらい上げる予定なんですか、この五年間、六十二年度から六十六年度までに。会社ごとに答弁してください。
  272. 吉田耕三

    吉田(耕)政府委員 交通機関の運賃というのは、一般的にコストが上がりますので適切な運賃値上げが行われていくものでございますが、今先生御指摘の各分割会社ごとに六十二年度から六十六年度にかけての五カ年間でどのぐらい運賃が上がるかということでございますが、会社別に申し上げますと、その五カ年間の年平均アップ率で申し上げまして、北海道が五・七%、東日本が二・九%、東海が二・八%、西日本が三・六%、四国が六%、九州が五%という数字でございます。  こういう数字でございますが、ちなみに最近の大手私鉄における運賃値上げ、一番最近が五十九年の一月でございますが、過去五年間の大手私鉄における運賃値上げ、これの年平均アップ率、大体二年とか二年半ローテーションでやっておりますが、それを年平均いたしますとちょうど六%になります。したがいまして、今申し上げましたような数字、我々といたしましては決して高いものではないと思っております。
  273. 三浦久

    三浦(久)委員 年平均をあなた出しましたね。そうすると、六十六年度には北海道では二二・八%上がるのです。東日本では一一・六%、東海では一一・二%、西日本では一四・四%、四国では二四%、九州では二〇%上がるのですよ。ですから、これはもうますます運賃の地域格差が拡大するということ。そしてまた、分割・民営、分割・民営、それでもう国鉄は立ち直ると言うから、さあ運賃ぐらいは安くなるのかなとみんな期待をしている。しかし、そういう期待も真っ向から裏切られているわけですね。  そのほかに安全、サービス面、もっと私、言いたいんだけれども、もう時間がないから次に移りますが、非常にこの国鉄の再建という問題にとって重要な問題は、貨物の問題であります。貨物会社の問題ですね。ところが、この貨物会社、今度の新しい独立した貨物会社ぐらい経営の見通しが不透明なものはないというふうに言えるんですね。  例えば昨年の十二月に運輸省が発表しましたね、貨物会社の問題について。ここではいろいろと前提を置いた上で、まあ十六億円黒字を算出してみせているわけです。ところが、この十一月の運輸省案は、十六億円の黒字を出すに当たってこういうことを言っていますね。その作成の時点では「不確定要素も多く、さらに安定的な収支採算の確保を図る方向で具体的な検討を進め、最終的な収支計画を策定すること」と言っているのです。要するにこれは、十六億円の利益を一応計算して出してみせたけれども、その十六億円が本当に上がるかどうか、収入とか経費とか要員規模、こういうものを具体的に積み上げて、そしてこの十六億円を検証するということを言っているしこの十一月の運輸省の貨物会社の案、これに基づく具体的な積み上げによる検証、こういうものは行われていたのかどうか。行われているのであればその結果をお示しいただきたいというふうに思います。
  274. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 昨年の暮れに出しました貨物の考え方について先生のお読み上げになりましたことは、そのとおりでございます。なぜもう少し細かい積算というのは後にしたかということでございますけれども、一応昨年の試算もそれなりに積み上げ、徹底的な合理化とか往復列車販売等による列車の運賃の収入とか、それなりに運輸省と国鉄におきまして作業いたして積み上げたものではございますけれども、その結論をお読みいただくとおわかりになりますように、新しい貨物会社というのは、荷主との関係において一応採算が取れるというものを極力列車単位で買っていただいて、それをもとにして経営を成立させていこうをいうことでございますから、具体的にそういうことが売れるかどうかとか、そういう問題については荷主さんとか通運会社とか地元と一本一本の列車について当たらなければいけない。そこまで十分やる余地が当時まだなかったので、それを、当時は二月までに積算をするということで予定をいたしておりました。二月と申しますのは、十一月に列車ダイヤ改正を行いますので、それに間に合うために二月ごろをめどにということでございますが、現在のところ若干おくれております。いずれにいたしましても、十一月のダイヤ改正に間に合う時期までに今先生のおっしゃったような積算などを行って、その上で結論を出したい、もう少し時間をいただきたいと思っております。
  275. 三浦久

    三浦(久)委員 そうすると、一応昨年の暮れに出した運輸省案は六十二年度の収支計算ですね。六十三年度以降の収支計算はいつ出されるのですか。
  276. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 六十三年度以降につきましても一応積算を行いたいと思っております。それは、この貨物会社等を内容といたします法案を国会に御提出申し上げますので、その御審議の材料とできるように一応の見通しをしたい、かように思っております。
  277. 三浦久

    三浦(久)委員 それは順序が逆じゃないですか。今も国鉄の再建というものを論議しているわけだよね。そして、あなたたち自身がこれなら国鉄が再建できるというので分割・民営という方向を決定しているわけでしょう。ところが、国鉄の客貨別損益を見てごらんなさい。赤字の半分以上は貨物の赤字じゃないですか。どうですか。
  278. 前田喜代治

    ○前田説明員 五十九年度におきまして、先生おっしゃいますように、全体の赤字でございますと約六千億かと思いますが、個別的に見ますと、特に貨物にかかわりましたような経費とその収入というような感じでいきますと、約千七百億の赤字を出しております。
  279. 三浦久

    三浦(久)委員 膨大な貨物の赤字が発生しているのですよ。国鉄の再建というのはこの貨物の問題を抜きにしては考えられないというのはもう常識でしょう。それなのに独立した貨物の会社が、六十二年度といったら来年の話だ、六十二年度の収支計算もまだはっきりできていない、六十三年度以降のはこれもまだ全然できていない、法案を出したら、法案の中でその審議の材料にするために出します、一体こんなばかな話がありますか。国鉄の分割・民営というものを決定するときに、そのことはもう既に決められていなければならないことでしょう。そんなことは当たり前のことじゃありませんか。こういうふうにやれば貨物の赤字もなくなります、旅客の方もこういうように運営できます、よし、それなら分割・民営でやろう、これなら話はわかりますよ。あなたたちのは先に分割・民営という手法があって、後からそれに何とかつじつまをつけるように収支計算をしていこうという、こんなばかな話がありますか。こんなやり方で国民の財産を売り飛ばすなんということは私は許されないと思う。これでは、国鉄の分割・民営という問題が本当に可能なのかどうかという審議すらできないじゃありませんか。貨物の赤字というのは国鉄の赤字の半分以上を占めるのですよ。こんな再建がありますか。だから国鉄の分割・民営、そういう基本方針というのはやはり撤回すべきだと私は思いますよ。撤回すべきですよ。これは審議できないですよ。国民の膨大な財産を譲渡するのに当たってそんなことをやる、そんないいかげんなことではいかぬと私は思います。  それから、大蔵大臣お見えになっておられますので、質問のチャンスがないと困りますから最初に御質問をしておきますけれども、新幹線ですね。東北新幹線、上越新幹線をつくったときに、政府が基本計画というものをつくっております。ここでは政府出資が五〇%というのが前提になっておるわけなんです、東北新幹線も上越新幹線も。ところが、その後出資はほとんど行われていないと言ってもいいと思うのですね。それで、東北新幹線、上越新幹線をつくるに当たって、大蔵省としては運輸省に建設費の五〇%の出資はしますよ、そういう約束をされたのかどうか、これをお尋ねしたいと思います。
  280. 竹下登

    竹下国務大臣 この問題はやはり運輸大臣からお答えになるのが適当だと思います。  それで、私の場合は、気を使っていただいておるようでございますが、予算委員会は私の所管委員会でございますから、質問があろうとなかろうとお座り申し上げるというのが議会ルールの哲学でございますので、どうぞその点は御心配なさらなくて結構でございます。
  281. 三浦久

    三浦(久)委員 それじゃ、そういうお言葉ですから運輸大臣、あなたにひとつ。
  282. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 東北・上越新幹線の建設を決定いたしますときには鉄道建設審議会の議を経ておるわけでございますが、その鉄道審議会の御議論の中で、五〇%程度の出資があれば黒字として健全にやってしけるというような御議論があったということは、大分昔のことでございますけれども、そういう御議論があったということは承っております。しかし、運輸省と大蔵省との間で、五〇%の政府出資を行ってこの新幹線を建設するというような合意をしたとか、大蔵省がそういうことを運輸省の申し入れに対して同意をしたとか、そういう事実はなかったというふうに思っております。
  283. 三浦久

    三浦(久)委員 そうすると、なぜ新幹線建設の基本計画に政府出資五〇%というふうに書いて鉄建審の審議を受けているのですか。これはおかしいんだね。私らに言わせると、当時昭和四十五年、大蔵大臣は福田さんですが、この方が四十五年の四月二十七日、衆議院の運輸委員会で、新幹線建設について大半を税財源でやっていくのは難しい、そういうふうに答弁しているのですよ。そしてまた大蔵大臣政府部内でも、五〇%の出資をするというような約束も何にもない、話もない。そういう中で皆さん方が基本計画に、政府出資は建設費の五〇%出資です、そうすればうまくいきます、単年度で、償却前には、その年でもう黒字になりますというような試算をしてオーケーをとって実行しているのですね。これははなから大蔵大臣が無理だと言っているのです。ですから、最初から国は金は出さないよ、しかしまあ基本計画では出すことにしておこう、こういうことで基本計画をつくる、そして今度実行する段になったらそれは御破算にしてしまう、こういうのを何と言うのですかね。こういうのはだましたやり方と言うんじゃないですか。そのことによってたくさんの赤字が出ているわけです。ですから、こういう無責任な新幹線の建設、こういうやり方は、本当にこういうやり方こそが私は国鉄の赤字をつくり出した最大の原因だということを指摘して、次に移りたいというふうに思います。  今度は国鉄総裁にお尋ねいたしますが、今国鉄の職場では、国鉄当局による労働者いじめというのが非常に激しく行われております。私も何回も何回も国鉄の職場に調査に行っておりますが、そのひどさに本当にあきれているのです。私は、今月の十三日ですか、職場の労働者に会いました。そうしたらこういう話です。この前、その人は運転手ですが、運転手さんかいきなり、きょうは乗らなくていい、日勤にする、こう言われた。何だと思って行ったら、その前の日に添乗指導した職制二人に呼ばれた。そして、おまえのL字喚呼はしの縦の棒が短過ぎる、そういう注意を受けたというのです。こんな労働者をばかにしたことがありますか。L字喚呼というのはどういうのかといいますと、運転手が声を上げるのです。喚呼というのは声を上げるということです。例えば汽車が、電車が出るとき「出発進行」と合図して出ますね。汽車がとまるときには、駅の名前がずっと書いてあるのが前に張ってありますから、それをずっとたどって、今度次の駅停車だったらこうやって「停車」とかこうやるわけですね。通過だったらこうやってこの駅は「通過」とこういうふうにやるのです。これをL字喚呼と言っておるそうです。このL字のLの棒が短い、こうだといって注意された。それもわざわざ日勤勤務に変更させられてやった。そんなことぐらい、私に言わせれば、添乗指導して一緒に乗っているんだから、ちょっと暇を見て言えばいいじゃないかと私は思うのです。こんなことがやられている。  それから、今点呼の問題が職場でいろいろ問題になっておるのです。この点呼でも、これはやはり私が直接駅長と交渉した問題ですが、田川後藤寺駅の営業開発センター、これは過員センターとも言いますが、営業開発センターがある。昼間はいろいろ準備活動をさせて、午後からは切符を地域に売りに歩かせるのです。そういうところです。ここで九月に急に朝の点呼のやり方を変えたのです。今まで過員センターでやっておったものを廊下一つ隔てた助役室でやるようになりました。助役室で、助役の席の前に二本線を引いてここに並べということなんですね。反発する人もおりますよ、何も子供じゃあるまいし、二本線を引いてこの上に並べなんて。それで三十センチぐらい離れて立っていた人がいたらしい。そうしたらその人に対しては点呼をしない。それで、点呼時間の五分間だけを勤務否認にしたのですね。そして賃金カットまでしているのです。そして、後で我々が抗議したらその非を認めて、賃金を後で払う追給をしているのですね。こういう事実はありましたか。
  284. 澄田信義

    澄田説明員 私ども国鉄では点呼というものは非常に重要視しておりまして、仕事の始まりということでまず最初に呼名点呼を行うことにしております。A君、B君、C君というぐあいに呼名をいたしまして、それに対して「はい」と返事をしてもらうというのを仕事のスタートというぐあいに考えまして、非常に重要視しております。  今御指摘の田川後藤寺の営業開発センターの出来事でございますけれども、営業開発センターの点呼は、従来各人の机の位置、机がございますが、その場所で起立して行っておりました。六十年の九月から、これをきちんと立って二列に並んで整列して点呼を行うようにしたいということにいたしまして、そういったことでやろうということで管理者が決めたわけでございます。ところがそれに対しまして職員の間から、一体どこへ並んだらいいかわからぬじゃないかという意見もございましたので、二列に並ぶ位置を白いテープで示したわけでございます。しかし、その後も決められたその位置に整列するように再三にわたって指示いたしたわけでございますけれども、中になかなかそれに従ってくれない人がおるということでございます。したがいまして、私どもといたしまして、現場の管理者は業務を放棄したものとみなしまして、点呼時間を否認扱いといたしまして賃金カットをしたわけでございます。しかし、点呼の場に本人がいたこと、また就労の意思が確認されましたので、その後一月ぐらいおくれまして給料で追給したということでございます。
  285. 三浦久

    三浦(久)委員 労働者が要求したなんて、そんなことうそですよ。労働者はわざわざ、今度こっちでやるから並べと言われたから、どこに並ぶんだ、こういう反発というか、そういうことを言っているのであって、どこに並ぶのですか、線引いてください、そんなことは言っていないのですよ。あなた全然職場の実態を知らないのです。  それから、これはちょっと古いが、五十八年の十月十七日に長崎の道ノ尾駅、ここでは点呼のときに二人が「はい」と言わないで「出勤」というふうに返事したらしい。そうしたらこれに対して、一日じゅう仕事せぬでいいといって仕事から外して賃金カットをした。そして抗議をされて、これもまた賃金カットを取り消してお金を返した。こういう事実ありますか。
  286. 澄田信義

    澄田説明員 今御指摘の事実でございますが、昭和五十八年十月の二十五日でございますが、長崎本線の今御指摘の道ノ尾駅の小荷物室におきまして点呼を実施の際に、管理者が先ほど申しましたようなやり方で呼名を行ったわけでございます。しかしながら、そのうちの職員二名が「出勤」ということでそっぽを向いた、木で鼻をくくるような態度で返事をしたという事実がございます。これに対しまして、管理者が「はい」と返事をしなさいと再三にわたって指示をいたしましたけれども、当該の職員二名は指示に従いませんので「管理者が指示に従わないのなら勤務につかなくてよろしいということで、九時過ぎでございますけれども、勤務認証は否認とする旨通知をいたしまして、そのかわり助役さんがかわりに仕事を遂行したということでございます。ただし、当該の職員の二名は終業時刻まで駅の草取り等をしておりました。これに対しまして門司の鉄道管理局といたしましては、その職員二名に対しまして賃金カットを行ったということがございます。しかしながら、これも、その後一日じゅう終業時刻までおったわけでございまして、就労の意思が確認されましたのでカットした賃金は返還することといたしまして、五十九年三月に全額を返還しております。
  287. 三浦久

    三浦(久)委員 そういう不当なことが行われている。今あなた答弁の中で、「出勤」と言ってそっぽを向いたなんてゼスチャーまじりでやって、まるで見てきたようなことを言っておるけれども、そんなもの、ただ「出勤」と言ったっていいじゃないですか、存在が確認できるのだから。その人間が仕事をしなかったわけでもない、仕事をしないという意思表示をしたわけでもない。そのぐらいのことを言うのは当たり前ですよ。  職場の中では職制が労働者にどういうことをやっていますか。国労のバッジをつけていると、もうまつわりついて無理やり外したりいろいろなことをしているわけです。そういうふうに非常に対立関係が激しくなってきている。またワッペンでも、国鉄の分割・民営のワッペン、わずか三センチか四センチ、そんなものをつけているだけでも集団的に職制が寄ってたかって取ってしまうとか、ノイローゼになるまで外すまでやってやるとかと言ってくっついてやるとか、いろいろなことがある。今まで会議室を組合活動のために貸しておったものを今度は急に貸さないとか、そういういろいろなことが行われているので「はい」と返事をするのがしゃくだから、まあ抗議の意味で「出勤」とこう言っているわけだ。「出勤」と言ったっていいじゃないですか、何が悪いんですか。そんなことは本人の自由だ。こういうことが全国的に行われている。ちょっとしたことでもって賃金カットとくる。これはもう本当に職場の労働運動を認めない、職場をただ職制の命令そして服従、そういう関係だけで規律しようという、近代的な労使関係にはあるまじきことです。そういうことを私はやはり強く指摘しておきたいと思うのです。いいですか。  じゃ、聞きますが、労働者というのは賃金で飯を食っているんだ。その賃金を一日分カットする。これは重大問題ですよ。そうすると、そういうことをやって労働者に屈辱を与えておきながら、じゃその現場の職場長、いわゆる現場長といいますか、そういう人たちは謝りましたか、また当局はその現場長に対してどういう処置をとりましたか、教えてください。
  288. 澄田信義

    澄田説明員 職場の規律を厳正に守るということは私どもの国鉄の最も重大視しておるところでございまして、もちろん非のある場合には謝りますけれども、私の仄聞するところ、今までの御指摘の中において特に間違ったことをしておるということではございませんので、現場長は測っておりません。
  289. 三浦久

    三浦(久)委員 悪いことをしてないって、あなた、賃金カットをしておってまた後で追給しているんじゃないですか、賃金カットを取り消して返しているんじゃないですか。それは誤ったことをやっているからじゃないんですか。あなたたちというのはそういう答弁しかできないのか。違法なことをやったというふうに認識をしたからこそ、あなたたちは賃金カットを取り消してその分だけ返しているんじゃないですか。その行為が正しいとは何事ですか、あなた。正しいならもう一回言ってごらんなさい。
  290. 澄田信義

    澄田説明員 今の追給をしておるといいますのは、決して間違いを犯したというわけではございませんで、そこまでには至らなかったということでございます。
  291. 三浦久

    三浦(久)委員 この問題は、一回参議院の運輸委員会でも質問されているのです。これは五十九年の四月七日、そのときに当時の職員局長の太田さん、この方がこう言っていますよ。「一たん賃金カットをいたしましたけれども、行われた事実と当局側の措置との間にアンバランスがある」アンバランスがある、行き過ぎた「ということを門鉄当局も後に認めまして、カットした相当額に法定利子をつけましてこれは本人に支給をいたしております。」アンバランスがあったということは正しくないということじゃないですか。そんなことまで正しい正しいと言い張るのですか、あなた。そういう態度じゃだめですよ。総裁、どうですか。
  292. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 国鉄の現場はお客さんを毎日大変多数運んでおります。現場におきましては規律厳正にやる必要がある、これがまた安全につながる重要な使命でございます。そういう意味におきまして、残念ながら今まで職場規律の問題が非常に大きく出ております。したがって、かなり前から職場総点検をやりましてかなり成績は上がっておりますが、残念ながらいまだに改善を見ないところがございます。私どもは、徹底的に職場規律の確立を図りたいということで、今後も厳正な態度で臨みたいと思っております。
  293. 三浦久

    三浦(久)委員 そんな一般論を言ったって困るんだ。具体的な事実を挙げてその問題についての見解を聞いているのに、職場規律の一般論を言われたって答弁になってないじゃないですか。そんな一般論を言うのなら、職場規律を言うのなら、今は職制の職場規律をもっと厳正にすべきですよ。いいですか。悪いことをしておっても処分もされない、謝りもしない、そんなことで近代的な労使関係が国鉄の職場に芽生えると思っていますか。そんなことは全く勝手なことをやっているということだ。  それじゃ次に、私、こういう例がある。例えば、懲罰的な教育というのが行われている。懲戒処分をやり、かつ教育と称して一カ月も二カ月も一室に閉じ込めておいて、それで就業規則をお経を書くみたいに毎日毎日書かせる、こんなことまでやっているのですよ。  具体的に申し上げますと、例えば直方の車掌区、六十年の一月三十一日、桃坂鉄也さんという専務車掌さん、この方が十分遅刻をしました。遅刻は悪いことですね。しかし、人間だからそれは遅刻をすることだってあるでしょう。勤務が翌日にまたがった仕事でした。ですからその日と次の日は不参扱いになりました。今までは予備勤務にされておったのですが、不参扱いになった。それはともかくとして、ところがこれを勤務から外した。そしてその労働者は、一月三十一日にそういうことがあったわけですが、二月の三日にはもう既にスキーに行くというので年休を取った。ところが教育だ、こういうことで一週間一室に缶詰にされて、そしてスキーに行くための休暇も取り消させられて、そして今言ったような就業規則を毎日毎日書かされた。一週間続いているのです。こういう事実はありましたか。
  294. 澄田信義

    澄田説明員 今の御指摘のケースでございますが、直方車掌区の車掌が指定された行路を勘違いいたしまして、出務時間になっても出務せず欠乗したために不参扱いといたしました。当該職員につきましては、二日間予備勤務といたしました。職場内に教育基準規程というものがございまして、こういった職員個々に対する教育訓練の必要性を明確に把握いたしまして、有効適切な教育訓練を実施しなければならぬということで私ども指導しておりますけれども、それに基づきまして、当該車掌に執務の厳正あるいは職員としての自覚はどうか、また国鉄の現状はどうなっているかということにつきまして指導し、あるいは教育をいたしまして、二度とこういった欠乗をすることのないように反省を促したところでございます。二日間教育をいたしまして、六月の十六日から通常の業務につかせております。  なお、年休を取り消したというようなお話がございましたが、年休を取り消すというようなことはございません。本人が恐らく了承の上そういうことになったのだと思います。  以上でございます。
  295. 三浦久

    三浦(久)委員 本人に取り下げさせたのでしょう。これは全国的に起きているのですね。もう一月、二月、ひどいのは三月間もこういう懲罰的な教育を行っているわけなんですね。ですから、人権侵害でどんどんどんどん救済の申し立てが出されているのです。福岡県の弁護士会にも人権侵害救済申し立てが出されておりますね。  もう時間がないから一つ一つ聞きませんけれども一つだけ聞いておきましょう。例えば香椎駅の野口という——その前に例えば、これはやはり直方の車掌区の梶原、内田さん、この方が氏名札の着用、胸につける名前の書いた札がありますね、あれをつけてなかった。それを拒否したというので、これは教育しなければならぬというので約一カ月以上勤務をおろして、そしてさっき言ったように一室に閉じ込めて、そしてどんどんどんどん就業規則とか労働協約とかそういうものを書かしたという事件があるんですね。これは事実ですか。
  296. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 今の事実関係は常務にお答えさせますが、私、総裁になって非常に驚きましたのは、そうした現場の職場規律が非常に乱れているということでございました。やはり世の中の常識的な組織の中の指揮命令系統、これはやはりしっかり守っていただきませんと現場が成り立ちません。そういう意味におきまして、私は就任以来口を酸っぱくいたしまして職場規律の厳正な確立を叫んでおるところでございます。今後ともそうした形で現場の管理者にはしっかりやれというふうに指導するつもりでございます。
  297. 三浦久

    三浦(久)委員 まあ事実を認めたんでしょう、反論しないからね。  香椎駅では、野口という踏切の看守さんがいるんですね。この方は五十年十一月からずっと交通保安係をやっているベテランでありますが、この人が安全帽をつけない、ネクタイを締めない、氏名札をつけない。そういうことで注意しても言うことを聞かぬというので、六十年、去年の九月三日から担務を外して、それでこの懲罰的な教育を行い、そしてまた教育の合間に除草という作業に従事をさせた。そしてこの方は分会の副分会長なんですが、十月十二日に申し立てをいたしました。これは人権侵害救済の申し立てですね。福岡県弁護士会です。そうしまして、十月十七日にまたもとの職場に戻しておるわけですが、そういう事実がありましたか。
  298. 澄田信義

    澄田説明員 今御指摘の香椎駅の件でございますが、当該職員は交通保安係として勤務しており、以前から私どもが着用を義務づけております安全帽、氏名札、ネクタイ等々、そういった決められたものを着用しておらず、また執務態度をとってみましても、列車が通過する直前に執務につくということなど、基本動作も守っておりませんでした。これに対しまして、駅長などを初めとする管理者が注意したり指導したりいたします、それに対して非常に反抗的な態度あるいは反発を重ねまして、指導を受け入れる態度が全く見られませんでした。そこで、六十年の九月でございますけれども、担務を外しまして、交通保安係の業務の重要性あるいは職員としての自覚、そういったことを認識させるための教育を実施したところでございます。その後の状況を見た結果、十月にはまた交通保安係の職務に復帰させております。
  299. 三浦久

    三浦(久)委員 交通保安係というのは踏切の看守さんですよ。安全帽が何で必要なんですか。いいですか、安全帽の問題については……(発言する者あり)ちょっと黙ってなさい。これは労働組合との協議、その協議によりまして、確認事項として安全帽は強制しない、いいですか、これは昭和四十三年十月、時刻改正等に伴う勤務条件に関する了解事項第九項というのがある。ここで安全帽は強制しない、着用は勧めるが感情的に強制はしない、こういう了解事項があるのです。こういうものを勝手に踏みにじって、つけろつけろと強制するというのはどういうことですか。それから、踏切の看守さんがネクタイがどうして必要なんですか、こんなもの。これは交通保安係にネクタイの着用は義務づけられていないのです。門司駅なんかでも、私見ていますけれどもネクタイをしていませんよ。していなくたって何ともないのです。ですから、あなたたちはそういうお互いに決めたことを一方的に破棄して、そして労働者に義務のないことを行わしめる、そういうことによって職場のトラブルが起きているのですよ。  それで、総裁にお尋ねしますけれども、総裁、さっきの太田さんが言ったことなんですが、発生した行動とそれに対抗して当局がとる措置、そういうものは社会的な妥当性を持つバランスのとれたものじゃないといけないと私は思うのですが、どうですか。
  300. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 職場の命令系統というものは社会的にバランスのとれたものでなきゃならぬというふうに思います。そういうものに従わない場合あるいはルールに従わない場合、それなりの処分といいますか仕組みというものが必要だろうというふうに思います。
  301. 三浦久

    三浦(久)委員 ネクタイを踏切の看守が締めていなかったというだけで一カ月も草取りをやらせる、そんな教育がどこにありますか。それは教育に名をかりた懲罰なんです。そういうことをしておったのじゃいかぬと私は思う。やはり私だって国鉄の職場がスムーズに運営されることを期待しておるのですよ。しかし、それをぶち壊しているのは今だれなのかということですよね。私も弁護士で、法律家で労働法はずっとやってきた者ですけれども、今の憲法とか労働基本法、それに基づく近代的な労使関係、こういうものとは全くかけ離れたものですよ、皆さんのやり方というのは。やはり労働者だっていろいろ人間だからある行為を起こすかもしらぬ。その行為に対してはやはり社会的に妥当性を持つ、バランスのとれた対抗措置をやらなきゃいけないのです。いいですか、国鉄の労働者というのはストライキ権を剥奪されておるのです。そうすると、それに対して不法な度を過ぎた攻撃をどんどん加えるということは、手足をぐるぐる縛って暴行、脅迫を行うのと変わらないと私は思うのです。ですから私は、やはりバランスのとれた労使関係の運営、それを十分に心がけるように強く要求をしておきたいというふうに思います。  それからもう一つ、こういう事例がある。これは不当労働行為ですね。私、手紙を持ってきました。労働者からもらったのです。この手紙は結局、折尾の信号通信区の区長さんから自分に所属する職員の家庭に、家族の名前です、文書を送っているのです。その文書はどういう文書かといいますと、要するに、新鉄道会社に残りたいのであれば、その一で述べた実績を上げることのほかに、二年ないし三年間の派遣制度を活用するほかありません。新会社に雇われたかったら派遣に応じなさい、出向しなさい、こういうことを言っているのですね。そうして、これははがきを出しているだけじゃない、戸別訪問までしているのです。こういうことは不当労働行為だとは思いませんか、どうですか。
  302. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 ちょっと事実関係を調べなければわかりませんが、私どもはそうした意味での不当労働行為は絶対にないというふうに確信をしております。
  303. 三浦久

    三浦(久)委員 じゃ、お尋ねしますが、労働組合が組合の方針として国鉄の分割・民営に反対する、そういう方針を決めることは違法ですか。
  304. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 各種の組織あるいはその組合員等等におきましていろいろな意見があるということは、これはもうやむを得ないことである。私どもは、そうした意見に対しましてなるべく理解を求めるように説得はしておりますけれども、しかし、そうした個人個人の御意見に対しまして、それは絶対いかぬとかいうような形で口を封ずることはいかぬ、できませんというふうに思っております。
  305. 三浦久

    三浦(久)委員 労働組合が組織として分割・民営に反対する方針を決めた、そうすると、国鉄当局としては使用者として、労働組合に対して分割・民営に賛成するようにという働きかけをすることは許されているでしょう。それは言論の自由の問題です。ところが、そういう国鉄の分割・民営反対という立場で結束している労働者個々の人々に対して、こういうようにあなたたちが新会社に行きたければ派遣に応じなさいとかそういうことを言う、一人一人に対して働きかける、特にそれも利益誘導をしながら働きかけるというようなことは、これは典型的な団結破壊の労組法七条に言ういわゆる支配介入なんです、労働組合の運営に対する支配介入なんです。そんなことはもう労働法のイロハのイの字です。そういうことまでやって分割・民営を強行しようとしているわけであります。  私は、職場でも分割・民営に反対をする、そういう労働者に法律に違反をしてまでいろいろないじめ行為を行っていくということ、ここにやはり分割・民営の反労働者的な、反国民的な本質というものがあらわれているというふうに思います。今後もこの問題は引き続いて追及していく、このことを申し上げて、私は質問を終わりたいと思います。
  306. 中島源太郎

    中島(源)委員長代理 これにて三浦君の質疑は終了いたしました。  次に、岡田利春君。
  307. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、初めに外交関係の問題について二、三外務大臣に見解をただしたい、こう思います。  伝えられるところによりますと、安倍外務大臣は、最近のアジア諸国の情勢、このような分析の中から外務大臣の諮問機関としてアジア諸国との経済関係を考える会というものを発足させたい、こういう意向が伝えられておるのです。私は、今までOECD関係、すなわち先進諸国家の関係に大変な努力をされてまいったわけでありますが、この辺でアジア外交を大げさに言えば再構築するといいますかより充実をする、こういう視点が当を得ているもの、かように判断をいたすわけであります。そこで、この研究会を発足させるに至ったいわば今日的なアジア外交に対する姿勢は施政方針演説の中でも明らかでありますけれども、施政方針演説で説明のできない今日の動き、情勢というものについてどのように判断をされておるのか、基本的なお考えなどを聞きたいと思うのです。
  308. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私も外務大臣になりまして三年以上やりまして、いろいろと日本外交の幅を広げるという立場で努力も続けてきたわけでありますが、今いろいろと振り返ってみまして、やはり大事なことは、日本がアジアの一国であるというこの一点を踏み外してはならないのじゃないか。特に戦後四十年たった日本とアジアとの関係は、今お話しのようにいろいろと再構築してみる可能性といいますか、そういう必要が出てきたのじゃないか。政治、経済、文化、そういうあらゆる面においてここでいみいろと考え直して、アジアに重心を置いた外交を展開していくことがこの際やはり必要じゃないか。これは日本と韓国の関係日本と中国の関係においても言えるわけですし、特にASEAN諸国はなかなか流動的でもあるわけですから、そういうことを踏まえますとやはりもっとアジアとの関係を深める。そして、経済関係につきましても、ただ単に経済協力という面だけではなくて、経済協力のあり方についてももっといろいろとアジア、特にASEANの国々から喜ばれるような、国民に直結するような協力というものに持っていかなければならぬと思いますし、それからもっとアジアの人々と日本との心のつながりといいますか触れ合いといいますか、そういうものに結びつく外交というものを進めなければならぬなという感じを持ったわけであります。  そういう意味で、実は外務省でもいろいろと、アジアの経済問題を考える会というものを発足させましたし、また経済界にも呼びかけまして、もっとアジアを重視した、今までは経済界も日米経済摩擦とか日欧とか、そういうところに焦点を置いて努力をされてきているわけですが、アジアに対する投資とか経済の協力関係とか、そういうところを日本の経済界、経団連も同友会も日本商工会議所もひとつ大きく踏まえてこれから活動を展開してもらいたい、これを忘れたら日本の基盤を失うということを強く要請をいたしまして、ひとつともにアジアというものに対して積極的にやっていこうじゃないかどいうことを訴えておるようなわけであります。
  309. 岡田利春

    岡田(利)委員 今度フィリピンの選挙で表面化したように、フィリピンの政治情勢も非常に不安定な状態でございますし、あおいはまたASEAN諸国の中でも、国内要因による政治の変動というものが最近表面化しつつあるのではないか、こんな感じが、例えばインドネシアやおるいはマレーシアのあたりでも見られると私は思うのであります。同時にまた、最近の朝鮮半島の問題あるいはインドシナ半島の情勢、特にカンボジアの問題を中心にして、あるいはベトナムとアメリカのいわば戦争で行方不明になったアメリカ兵の捜査についての協定、こういう関係を見ると、インドシナ半島の情勢も動きつつある。そして今またアフガンの問題についても政治的な解決の機運がどんどん高まっておるんだと思います。いわば朝鮮半島、インドシナ情勢、そしてまたアフガンの問題というのは、三地点が一つの連関性を持ちながら、リンケージしながら動いておる、このことは極めて重要であると私は思うのであります。この動きは特に、昭和六十一年度、今年度のアジアにおける最大な外交の重要課題になるのではないか、こういう認識を私は持つのでありますけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  310. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 基本的には、私もおっしゃるとおりじゃないかと思いますね。やはり朝鮮半島の南北対話というのも、表に出ている面と、またいろいろと底で動いている流れもあるわけですし、私が見るところでは、これはことし場合によっては相当進む可能性があるのじゃないだろうか、こういうふうに思っておりますし、ソ連もこの対話には関心を持ってきている、アメリカも非常に重視している。中国もそうでありますし、そういう中で我々としても期待しておりますし、日本としても何らか貢献できる面がこれから生まれてくる、こういうふうに思っております。  また、カンボジア問題につきましても、先般もインドネシアのモフタル外相が見えまして、いわゆるカンボジア問題の解決のためにいろいろとインドネシア自体の案も出しておりますし、モフタルさんも三月にはベトナムを訪問するということでありまして、シアヌーク提案とかいろいろと動きが出ておる。またベトナムとアメリカとの関係も、政治面までは今進んでおりませんが、ベトナムで行方不明になったアメリカ兵の問題であるとか、あるいはまた戦死したアメリカ兵の遺骨の引き取りの問題であるとかいろいろな問題が、人道的な問題で今接触が始まっておるというような一つ状況が出ておりますし、そういうことを考えますと、確かにカンボジアでも何か動きが始まる可能性はあり得る。そしてソ連外相の発言によりましても、ベトナムがカンボジアから撤退を真剣に考えておるということであります。しかし、どういう形になるかというのはこれからなかなか難しい問題もあると思いますが、確かに一つの動きが出ようとしておる。アフガニスタンもなかなか容易なことではありませんけれども、これは米ソの第一回首脳会談でも話し合われたようなことを私も聞いておりますし、これも何か発展する可能性は持っておると私は見ております。  楽観はできませんけれども、確かに新しい動きがアジアにおいて、特にアジアの紛争地帯において出てくる可能性は十分今客観的にも出つつある、こういうふうに私も見ておるわけでございます。そういう中で、日本がどのような役割を果たし得るかということについて我々としてもやはり真剣に取り組んでいかなければならぬ、こういうふうに思います。
  311. 岡田利春

    岡田(利)委員 東京サミットの日程で、レーガン大統領が東京サミットで日本に訪れる途中、五月一日にインドネシアのバリ島に寄られる、ここでインドネシア政府関係者といろいろ懇談をする機会を設けたり、またASEANの外相の方々に集まりを願っていわば意見の交換をする機会も持たれるようだという日程が既に伝えられておるのでありますけれども、この点は日本政府として確認しておるかどうかという問題が一点であります。  同時にまた、既に外務省ではサミットの準備のために大使級の人々を選任して、それぞれアジア地域を分けながら、サミットに向けてそれぞれの国々の意向等も十分サミットに反映をさせる、こういう準備が始動し始めていることも承知をいたしておるわけです。  ただ、ASEANの拡大外相会議が六月に開かれる、サミット後翌月に開かれるという面から考えますと、何か最近のアジア情勢の動きというものはアメリカを軸にして動いている、経済問題でも市場開放がアメリカの方へ向いている、こういう印象を我々非常に強くするのであります。その中における日本のアジア外交の役割、先ほどるる答弁がありましたことは極めて当を得ていると私自身も思うのでありますが、そういう点で、アメリカとアジア、そして日本のこれからのアジア外交という面について、レーガンさんのバリ島寄港の問題を含めて御答弁願えれば幸いだと思います。
  312. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 レーガン大統領が東京サミットに来られる前にインドネシアを訪問される、そしてバリ島でスハルト大統領とも会談をする、同時にまたASEANの外相との間の懇談もされるということは、大体我々としても情報は得ておりますし、モフタル・インドネシア外相も最近アメリカに行って、帰りに日本を訪問したわけでありますが、その発言から見ましても、そういうことで日程が組まれておる、こういうふうに私も見ております。  アメリカもやはりアジアに対して非常に大きな関心を持っておる。レーガン大統領のやはり一つの基本的な姿勢だろうと思いますが、そうした関心を表明するということで今回の訪問にもつながっていったのじゃないかと思うわけでございます。しかし、同時にまたアメリカは、実はアジアの問題については、やはり主として日本一つアジアに貢献する大きな役割を果たしてもらいたいという気持ちも持っておることは事実であろうと思っておりますし、我々はアメリカがそうしたアジアにおける、特に東南アジアにおけるプレゼンスというものを維持していきたいという気持ちは当然わかっておるわけでありますが、同時に日本日本なりのやはり役割というものを積極的に進めていかなければならぬと思っております。  バリ島で東京サミットも議題になると思いますが、日本はやはりアジアの一国ですし、そして日本が主催するサミットでありますから、やはり日本自身のイニシアチブでASEAN諸国の意向を聞いて、それを踏まえたサミットでの発言でなければならない、こういう観点から特派大使をASEAN諸国に送りまして、十分ASEANの意見も聞いて、そしてこれをひとつ東京サミットに反映をしなければならぬ、こういうふうに思っております。
  313. 岡田利春

    岡田(利)委員 ゴルバチョフ書記長がさきに三段階の核廃絶提案をアメリカ側に行ったわけでありますが、最近レーガン大統領もこれに対する返書を送る、いわゆるアメリカの提案を行うとしばしば報道されておるわけであります。特にアジアの核問題について、譲歩案についても十分説明をして了解を得る、いわばアジアにおける核削減については、当初五〇%と半減を求めるという案が強力だとも言われておるわけです。そういう具体的な説明が今日日本政府に行われて、そしてまた日本政府がこれにコメントして、いわばアメリカの提案がまとまりつつある、こういう状況なのか、この点を伺いたいと思います。
  314. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 アジアのいわゆる核の問題について、ゴルバチョフ提案に対するレーガン大統領の回答といいますか新しい提案というのが恐らく近いうちに発出されると思うわけでございますが、それを踏まえてやはり同盟国の意見を聞きたいということで、先般ロウニー大使を日本に派遣をいたしました。日本の意見を率直に述べたわけでございますが、この内容につきましては、日米間でこれは表に出さないという約束をしておりますので御容赦をいただきたいと思いますけれども、しかし、日本の立場は明確にアメリカには述べたわけであります。これは、やはりアジアのSS20の廃絶あるいはまた削減の問題についてはあくまでもグローバルな形で考えてもらいたい。ゴルバチョフ提案もやはりヨーロッパが主力になっておる。ですから、アメリカもそれに応じた形でヨーロッパ主力でやってもらっちゃ困るので、アジアを犠牲にしない、そして、やはりINFの問題はグローバルな形で処理していくということで日米間でも合意しておりますから、そういう基本路線を踏まえてレーガン大統領の新しい提案をしてもらいたいという日本の立場は、明確にレーガン大統領に特使を通じてお伝えをいたしておるわけであります。
  315. 岡田利春

    岡田(利)委員 もう一問伺って終わりたいと思うのですが、これは恐らく事務当局になるんでしょうか、日ソの関係において、北方領土のいわゆる十二海里内と十二海里から二百海里の百八十八海里、この見解について伺っておきたいと思うのです。  私の承知しておるところでは、日ソの地先沖合漁業協定では、十二海里から二百海里の百八十八海里においてのみこれは協定している、したがって、北方領土も我が国の領土であるという場合には、領海である十二海里については、これは別に拘束をされないのであって、危険水域ではあるけれども日本の漁船がここに行って操業することはできるのだ、自由にできるのだ、こういう見解をとっていたと思うのであります。この見解は変わりがないのかどうか。変わりがないとすれば、当然日本の漁業権を持っておる者がそこに行って同じ漁業を営むということについては何ら処罰されるものではないということになるんだろうと思うのですね。この点についてはいかがですか。
  316. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 今岡田委員のおっしゃるとおりであります。やはり地先沖合協定においては領海問題には触れておりませんし、同時に二百海里の問題につきましては、いわば北方四島を中心にして二百海里がダブったという形になっておるわけでありますが、しかし実効的には北方四島はソ連が支配をしておるということでもありますし、ですから領海に入っていった場合は日本の漁船は拿捕されるという実際の状況ですが、その際、そのたびごとに日本としてはソ連に対して抗議をいたしておるわけでございます。それはあくまでも北方四島の領海というものについては日本が固有の領土であるということを主張している以上は、そうした根拠に基づいて我々としては抗議を申し入れておる、こういうことであります。
  317. 岡田利春

    岡田(利)委員 私が確認を求めたのは、しばしばそういう問題が起きておるわけなんです。もう中間線から入っていくのですね。しかし、それはAという漁業海域があるとかないとか、そこで処罰をするとかどうかという問題が起きているものですから、念のため聞いたわけです。そういう問題があるということをぜひ認識しておいていただきたい、かように思います。——結構です。  次に、酪農関係の問題について私は質問いたしたいと思うのですが、時間が足らなくなっておりますので、ごく集約的にお伺いをいたしたいと思います。  一つは、今年度の酪農の乳量の生産は順調に伸びておるわけです。しかし、飲用乳の処理量が前年に比べてマイナス〇・四%、昨年はマイナス一・二%。したがって、結果的に加工乳の方に処理が向けられていくという点で需給のギャップが今日起きておるわけです。既にきょうあたりも牛酪では会議をやって、この六十一年度の対策を今練っておるようでありますけれども政府としては、六十一年度の需給環境は一体どう見ておるのか。このことが今後の政策に重大な影響があるし、中略がここまで具体的な議論をするということは政府が知らないはずがございませんから、その見通しをお聞かせ願いたいということが第一点。  同時にまた、乳製品在庫というものがどんどん増加をいたしておるわけです。この在庫は、政府の方は一体どういう把握をしているのか、この点を明確にしてもらいたい。なお、適正在庫というものは一体どうなのか、この点について伺いたいと思います。
  318. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 まず、本年度の生乳需給についてでございますが、ただいまも先生おっしゃいましたように、甚だ不均衡な事態が生じておるわけでございます。その理由といたしましては、本年度の飲用牛乳の消費が、通常でございますとふえます夏場においても前年度を下回る、そういう事態が起こりまして、どうも年度を通して見ましても前年度を下回るであろうというのが大方の推計でございます。  一方、生乳生産は極めて順調でございまして、その結果、乳製品加工向けの乳量がふえておるということでございまして、その結果といたしましては、バターの累増ということになっておるわけでございます。これにつきましても、一般に言われておりますのは、どうも本年度末はバターの在庫は五カ月前後になるのではなかろうかというふうなことが一般に言われておるわけでございます。  そこで、私どもの需給推算でございますが、やがて三月には保証価格等の決定の時期を控えているわけでございまして、目下いろいろな要素を取り入れながら需給推算の作業を行っておる最中でございますが、私どもなりに考えますと、先生が御指摘になりました中央酪農会議がつくりました需給推算、これよりもう少し厳しくなるのではなかろうかという感じがいたしております。なお、私どもなりの需給推算につきましては、三月下旬にはつくり上げたいと思っておるわけでございます。  次に、バターの在庫についてでございますが、実は私ども、毎年一月末と二月末現在で悉皆調査で調査をしておるわけでございます。現時点におきます乳製品在庫は、私どもの推計ではございますが、十二月末現在でバターは二万四千トン、月数で申しまして三・八カ月分に達しております。  なお、適正在庫につきましては、一応二カ月と言われるのが一般の見方のようでございます。     〔中島(源)委員長代理退席、渡辺(秀)委員長代理着席
  319. 岡田利春

    岡田(利)委員 今お話がありましたけれども、供給見込みが中略では大体七百二十六万七千トン、そして六十一年度出荷目標として七百五万四千六百トン、そのうち指定団体向けが六百七十一万三千七百トン、こういう数字に大体なるのではないかということが言われておるのであります。いずれにしても、二十万トン強のいわば生産制限をしなければならない、生産の抑制をする、大問題だと思うわけです。特に、市乳の関係が落ち込んでおるというのは十一年ぶりですし、北海道のごときは、三十七年ぶりで前年度対比マイナスになったという状況です。そうすると、北海道の場合には六万トンと七万五千トン、十三万五千トンを今度は一年間のうちに生産制限をしなければならない。こういう状況はちょっと異常な状況だと思うのです。  そして、今協議をされているのは、指定団体でもって申告とかあるいはまた削減率予測調査、こういうものにウエートを決めて厳格に数量を割り当てをする。目標超過の場合には、これはもう数量のペナルティーだけではなくして金銭のペナルティーもかける、復活させるということも大体決まりつつありますし、あるいはまた、指定団体の用途別の数量あるいは自県内の消費拡大の問題、きめ細やかに積み重ねておるというのが今の討議の現状だと思うのです。これは、農林水産省として横目で見てなんというものではないと私は思うのですね。  そうしますと、この今進めておる牛酪の作業を見た場合に、相当異常な状況にあるという認識については、農林省の場合にも深刻に持たれておるのだと私は思うのです。いわばそういう意味で、この計画生産、生産抑制をするということに対してどう対応するかという基本的な姿勢をお聞きいたしたいと思うのです。
  320. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 本年におきます牛乳、乳製品の需給事情を見ますと、率直に申しまして容易ならざる事態ではなかろうかと思うわけでございます。そこで、私、個人的には、今日の事態は、我が国の酪農、乳業が縮小過程をたどっていくのか、はたまた拡大の基調をたどっていくのかの岐路に立っているのではないかというふうに考えておるわけでございます。  そこで、私ども、昨年の暮れから、生産者代表、乳業者代表、学識経験者代表、さらに販売面のエキスパート等々の方に御参集いただきまして、牛乳、乳製品の消費拡大のための懇談会を開催しております。何とかこの時期、飲用牛乳さらにはバターにつきまして、もっと効果的なそういった消費拡大方策はないだろうか、また、消費拡大を図るための環境条件とは何だろうかという点につきまして検討をいたしておるわけでございまして、これにつきまして検討結果が出次第、私どもといたしましては、関係者力を合わせまして、官民一体として消費拡大に取り組んでいきたい、かよう怪考えているわけでございます。  また、中央酪農会議という生産者団体が前年度の生産数量を下回る計画量を打ち出したということは、事態の深刻さをあらわしておると同時に、皆さん方の大変な御苦労に対しましては、私どもも敬意を表している次第でございます。
  321. 岡田利春

    岡田(利)委員 今消費拡大の面で言えば、乳製品は貿易管理を厳格にやってきているわけですね。その中で代替できるものと言えば、いわばチーズの部門、特にナチュラルチーズ、これは代替できるということが言えるわけであります。したがって、こういう状況の中では、輸入製品の代替を目指すという意味では、この面は注目されてしかるべきではないのか、こう思うのであります。他の問題は、もちろんその財源の関係もあるでしょうし、その場合の乳価を一体どう扱うのかという問題は竹かにあると思うのです。しかし、牛酪あたりでも、共補償とかいろいろな制度を今検討を積み重ねておるわけでありますから、こういう努力についてはやはり国も報いるという姿勢が必要ではないかというのが第一点であります。  そして第二点は、発酵乳の関係では、どうも二十万トンというのを昭和六十年度は消化するんだ、こう言っているけれども、ほとんど伸びていないわけですね。これを二十万トンにできれば、その北海道の六万トンぐらいの問題はほぼ解決に近くなるのではないかという問題もあるのであります。  この二点について伺っておきたいと思います。
  322. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 まず、輸入がふえておりますナチュラルチーズの国産化の問題についてでございます。  先生御案内のように、最近におきましては、食生活の多様化等の中で〔かつて消費のウエートが高かったプロセスチーズが減りまして、逆にナチュラルチーズの消費がふえるという状態になっているわけでございまして、これに伴いましてナチュラルチーズの輸入がふえております。そこで、酪農、乳業関係者の中には、今後の酪農、乳業の生きる道として、何とかこの輸入ナチュラルチーズを国産に置きかえられないだろうかということが問題点として浮かび上がってきておりまして、この点、中央酪農会議、さらに北海道の農業団体等々におきまして、真剣な御議論が行われておるわけでございます。  その議論の経緯等につきましては私どもも承知しているわけでございますが、仰せこの問題は国際関係にもかかわる問題でございますので、慎重を要すると考えておりますが、私どもなりに、このチーズ問題は問題点も多々あるわけでございますけれども、重大な関心を持って今行われている議論を見守っているというところでございます。     〔渡辺(秀)委員長代理退席、委員長着席〕
  323. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、生乳の需給調整というものが、そういう厳しい状況の中で生産者も今一生懸命対策を講じつつある、いわば生乳のクォータ制度を厳格に守る。そうしますと、やはりコストアップするのですね。今までの拡大生産を抑えるわけでありますから、減らすわけでありますから、コストアップの要因が起きる。これは、やはり生産者としても努力をしてもらわなければならないということになるだろうと思うのです。しかしながら、一方において乳業界の関係についても、できるだけ取引条件とか一緒になって消費を拡大するとか、乳業界のやはり理解協力も非常に重要だ、こう思うわけであります。そしてまた、政府としても従来の支援、援助というものについて的確にやはり出動させるという三位一体の関係、逆に裏返せば三万一両損といいますか、そういう体制がどうしても必要だ、こう私は思うのであります。  そういう点について考えますと、政府の責務も非常に大きいと思います。特に、今の新酪農村なんというものは物すごい金を投じて軌道に乗せようとしておるのでありますけれども、二度にわたって生産抑制に入りますと、借金も返せないということになるわけです。これは深刻な問題なんです。そうすると、これは一体どういう対策を立てるかということですね。新酪農村、これは大変な問題です。これまでにも脱落がある。必ず次々と出ますね、もう三戸脱落しておるのですから。そういう点では九十七戸しかないわけでありますから、ぜひそういう点の視点を考えてほしいということであります。  そういう意味で考えますと、今酪農家の負債整理のために五年間で四百九十六億円の金が投入された。そして、六十年度もその対策を進められたわけでありますけれども、今後もやはりこの対策は進めなければならぬのではないかと私は思うのであります。いわば個人ですからね、格差はあるのですよ。しかし、北海道のようにECを超えた、日本の酪農がどう安定するかという時期を迎えたということになりますと、一定の安定帯というものがあると思うのだな。そして最高と最低がある。いわば最低ぎりぎり安定帯にかかれば、これはまず将来に見込みがあるということになるわけです。そうすると、そういうところを重点的にある程度の対策を立てれば安定帯に乗ってくる。もう初めから乗らないものはどうしようもないということになるのでしょう。そういうところがあるし、特に今度のような生産制限段階に入ると、そういう点がある程度際立ってくる面があると思うのですね。この対策を私はぜひ継続してほしいと思うのですが、この二点についてはいかがでしょうか。
  324. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 ただいまお尋ねございました酪農経営の負債整理資金でございますが、お話がございましたように、五十六年度から五十九年度までの間に四百九十六億円の融通が行われておるわけでございまして、私どもの見るところ、木資金の効果は顕著にあらわれておりまして、対策の戸数も逐年減少をしている状況にございます。  そこで、最終年でございます六十年度においての措置でございますが、当然のことながら六十年の償還分の中で不能なものについて融通することになるわけでございますが、このほかに六十一年以降償還不能が見込まれるものにつきましても、六十五年までに償還期限が達する残高については、内容を調査した上で、経営安定上必要なものは一括して借りかえるという特例措置を講じたいと考えております。  確かに、先生御指摘のように、来年度厳しくなるであろうと考えられております生産抑制策がどのように展開されるかによりましては、酪農経営に影響が出ることも当然予想されるわけでございますが、現在のところしかとした見通しは困難であると考えておるわけでございまして、そこで私ども当面の対応として考えておりますのは、先生御案内のように、農林漁業金融公庫資金の中の自作農維持資金中の再建整備資金というものがございます。これを個別の経常農家に対する対応として融通していってみてはどうか。さらに、事態の推移いかんによりまして何らかの追加的な措置を必要とする段階に至れば、さらにそのときには必要な措置について検討するというふうなことではどうかというふうに考えているわけでございます。
  325. 岡田利春

    岡田(利)委員 今日の酪農情勢は、今議論しておりますように非常に厳しい中にも肉の価格、肉価がまあまあ堅調だ、中価格を維持しておるというのが一つのあれでしょう。もう一つは、えさの価格が下がっておる。これは確かに両方朗報なわけであります。大体七万七千三百円のものが六万二千五百円でありますから、一万四千八百円下がっておる。こういうのが今のデータであります。ただしかし、飼料の問題について最近は自家生産をするという傾向が非常に強くなっているのです。特に、本州方面と北海道では一万円以上も値差があるという実績が出ておりますし、そういう面から見ますと、これは加工、運賃、手数料、三原則によって価格が決められるという、三原則がどうも厳格に守られていないという気がするのであります。農協同士でも違いますし、説明を受けると、各種奨励金や農協ごとの割り戻し金も含んでいる、こういう説明があるのですけれども、この点はやはりすっきりさせる必要がある。そういう意味で考えたらどうかと思うのであります。  同時にまた、飼料安全法を改正して配合の種類は表示していますけれども、割合が表示されていないのです。もうここまで来れば、企業の秘密が何とかという段階ではないと思うのですよ。もうウエートも表示をするというところに踏み切ってはどうかというのが第一点であります。  そして第二点は、配合運動をどんどん進める中で、二種混合飼料というのがあるのですが、これは御承知のように今の制度では安定基金の制度の対象になっていないと私は承知をいたしておるわけであります。しかし、二種混合飼料の場合にはその主体がトウモロコシでありますから、そういう面で考えますと、原料が上がる場合に一番先に上がるわけですね。ですから、二種混合の場合にも配合飼料の価格安定基金制度の中に適用するということを踏み切られてはいかがなものか、こう思うのですが、この二点について伺いたいと思います。
  326. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 まず配合飼料の内容表示の問題でございますが、私ども農業資材審議会に御諮問申し上げまして、慎重に御検討していただいた上で答申を得、それに従って制定をしているわけでございまして、したがって表示の仕方といたしましては、栄養成分の量を表示するとか、原材料につきましても一定の種類別に配合割合を表示するとか、そういった措置を講じているわけでございまして、これ以上の細類化につきましては、またいろいろと問題が出てまいるわけでございますので、現行の表示内容は適当というふうに考えている次第でございます。  次の二和混合飼料を配合飼料価格安定基金の対象に加えてはどうかという御意見でございますが、二相混合飼料につきましては、配合飼料と違いまして価格設定ルールが全く異なる。例えて申しますれば、配合飼料の場合は原則として一−六月と七−十二月の年二回改定されるというルールでございますが、二種混合飼料の場合には国内の実勢によりまして変動するという形をとっているわけでございます。そういう事情がございますので、現在のところ二種混合飼料を配合飼料価格安定基金制度の対象に加えることにつきましては技術的に困難ではなかろうか、かように考えている次第でございます。
  327. 岡田利春

    岡田(利)委員 自家生産、飼料生産というものがやはりふえておるという実態を、これは政府としても放置してはならないと思うのですね。時間もありませんから、これは農林省としても調査をしてみる必要があると思うのですよ。ぜひ調査をしてもらいたいということを強く申し上げておきます。でなければ混乱が起きますよね、末端で。そういう点で要請をいたしておきます。  なお、私は昨年、牛乳の価値判断、価値評価の問題について質問をいたしております。ところがそのままでしょう、今。バター分あるいは脱粉分、どちらにウエートを高めるか。いよいよ脱粉の方にEC方式でウエートを高めなければならないわけでしょう。まだ昨年からそのままになっていると思うんですね。今度の生産制限のよって起きておる要因から考えれば、このことも的確にやってほしい。かつては脱粉の方がウエートが高かったのですから、ぜひこのことも的確にやってほしいということを強く要望しておきたいと思うのです。  時間がありませんから、そういう意味で私は一連の問題点について質問をしましたけれども、農林大臣から答弁をいただいて、質問を終わります。
  328. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 今、局長との間におきましてるる御論議があったわけでありますけれども、今の酪農の状況というのはやはり非常に厳しい状況だな。そして、新しいいろいろな飲み物が次から次に出てくるという問題もあるのでしょう。しかし、それにしましても、私どもも今日まで酪農というものを振興する、そしてこれからまだ伸びていく産業なんだというふうに認識をしながら進めてきておるわけでございますので、今お話のありました点をよく頭に置きたいと思っております。  いずれにしましても、チーズなんかも、ナチュナルチーズなんかはこれから伸びていくものでありましょう。そういう中で、今北海道の皆さん方を中心にしながら、自主的にこういったものも進めていこうということでありますので、我々としてもいろいろな角度から検討を続けていきたいというふうに思っております。
  329. 岡田利春

    岡田(利)委員 どうもありがとうございました。
  330. 小渕恵三

    小渕委員長 この際、戸田菊雄君より関地質疑の申し出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。戸田菊雄君。
  331. 戸田菊雄

    戸田委員 順序を変えまして、官房長官が所用があるようでありまするから、最初に官房長官に、国鉄の要員等の問題について若干お伺いをしておきたいと思います。  昨年の十二月十三日でありますが、政府は国鉄余剰人員対策の基本方針なるものを決定いたしました。それに対して中曽根総理は、「異常な決意で正直、着実、きめ細かに進めていかなければならない」、こう豪語をしておるわけであります。その内容というのはどういうのかというと、雇用の場を国は六十一年度から採用数の一〇%、六十二年度から六十五年度当初までは採用数の一〇%以上を提供する、特殊法人には国と同様に採用するよう指導する、地方公共団体には国の措置に準じて採用するよう要請をいたします。般産業界には主要経済団体、業界団体等々にも協力を要望いたします、関連企業には国鉄などが優先的に採用を要請するという内容を閣議決定したわけでありますね。私から見れば、内容は極めて抽象的で空疎なものだと思いますが、しかし一応基本決定をやっておる、こういう状況だと思います。  そこで、肝心の公的部門での三万人、これは全然具体的に明記はされておらないんですね。官房長官談話で、採用目標三万人として触れられているだけであります。こういった分野別の採用計画がいまだに明らかじゃありません。だから、そういった内容についてどういうお考えを持っておられるか、そのことが一つと、民営・分割については政府が責任を持ってやる、こういうことだと思いまするから、そういう問題に対する政府の見解をこの際お伺いをしておきたいと思います。
  332. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 申し上げるまでもなく、去年の七月に再建監理委員会から御案内のような答申が出まして、政府としては、これを最大限尊重をするという閣議決定をまずしたわけでございます。その中で、やはり一番肝心なことは、一つは長期債務の問題であるし、もう一つはやはり今御質問の雇用対策の問題、この二つだろうと思います。そういうことで、この二つについて昨年の暮れ決定をしたわけでございます。もちろん、この国鉄改革というのは、これは国民的な大きな政治課題でございますので、政府といたしましては全力を挙げてこの解決に向けて最大限の努力をいたしたい、こう思っております。  そこで、今の御質問、公的部門の数を示せ、こういうことでございますが、これは、一つはこの新事業体の要員計画がまず決まらなければいけません。それともう一つは、受け入れ側の役所側としますと、これは今御案内のような厳しい定員管理をしておるさなかでございますが、そこで受け入れ側の退職者の見通しがどうなるか、それと同時に採用の数がどうなるか、そういうことで、その中の一定割合を国鉄の職員をもって充てる、こういうことになっているわけでございますが、それらがそろうのがことしの秋ごろにならざるを得ないということでございます。しかし、政府としましては、その秋ごろにはきっちりしたものの数字を決めたいと思っておりますが、大枠は、私どもとしましては再建監理委員会がお示しになった大枠に従って、公的部門においては三万名を採用しよう、こういうことで、ただその三万名を採用するに当たりましては、六十二、三、四の大体三年間になりますね。そうしますと、一定割合を各省庁あるいは地方公共団体にお願いするとなったときに、三年間に割り当てますと、新規採用の枠に食い込みますから、各省大変厳しいわけでございます。  そこで、でき得べくんば六十一年度に前倒しもやっていこうではないかということで、前倒しの計画も決めまして、そこで現在、政府としては各省庁に御協力を願い、それから同時に地方公共団体にもお願いをし、特殊法人にもお願いをしまして、そして現時点、少なくとも現時点ですよ、前倒しですね、それらで一体どの程度の採用が可能なのか、今鋭意詰めておるということでございますが、現時点における数字につきましては、事務当局からお答えを申し上げたい、かように考えるわけでございます。  なお、取り組みについてどういうことだというのは、一番当初に申し上げましたように、これは最大の国民的課題でございますから、政府としてはこれはもう重大な責任でございますから、この解決に向けて全力を挙げていく決意でございますので御了解をいただきたい、かように思います。
  333. 戸田菊雄

    戸田委員 余剰人員対策その他要員算定全般について、具体的に後から触れるわけでありますが、官房長官、所用があるということでありますからどうぞ。  次に、労使問題について、国鉄当局、運輸大臣等に若干お伺いをしておきたいと思うのであります。  これは、国鉄当局が十二月十一日の労使トップ交渉のときに、公的部門及び分割・民営後の新会社などへの希望アンケート、これを実施しますとトップ会談で総裁から表明があった、こういうことですね。組合としても、強制、強要などをしないようにということで一たん了承をした。全国的な調査を実施をしたわけでありまするが、その調査の内容が極めて不穏当な内容がいっぱいある、こういう状況でございます。  私も秋田土崎工場に行ってまいりましたが、総裁、昨年の七月二十六日、国鉄再建監理委員会から分割・民営化の答申がなされて、要員その他の査定を行われて答申が行われたわけでありまするが、そのことによって職場の職員は大変な不安、動揺、そういうものを持った。何人ぐらい全国で自殺していると思いますか。
  334. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 昨年の一年間で約四十名程度の数が見受けられます。その原因が大変難しいのでございますが、我々一番心配しているのは、やはり職場の不安、雇用不安ということが原因であるとするとこれは大変だというふうに思って調査をしておりますが、そうした意味での原因というのは見当たらないというふうなことになっております。
  335. 戸田菊雄

    戸田委員 私が土崎工場に行ったときに、三十五歳の工作検査係、名前を伏せておきますが、この方は、もう国鉄の職場に希望を失ったという書き置きを置いて自殺をしているのです。等々、相似たものが全国的に、大阪にもあり各所に出ておって三十数名、そういう原因はやはり現地の取り扱いにも若干の影響があるのではないだろうか、私はこういうふうに考えますね。  私が行った土崎工場では、このアンケート調査に際して、一回全国指示でもって全部一緒にやったのですよ。やりました。六百九十二名の組合員の皆さんが全員これに応じて、一回調査をやりましたが、その調査結果を見たら九十何%白紙だった。いわゆる当局の調査の思惑に沿い得ないから、それでは今度、一人一人個別に呼び出して前後四回もやった。そのやり方がまた恫喝、強制、強要ですね。あらゆる手段を使って罵倒を浴びせて、そして一人を四人ぐらいの管理者が囲んで徹底してつるし上げ方式でやっているのですね。どういうことを言っているかというと、こういうことですよ。「人どご蹴落としても自分で助からねばいけねべ」「いまは自分だけ残ればいいんだから」「希望書いてないとどこにやられてもいいと受けとられるぞ」「工場長は本気で工場をつぶしてもいいと言っている、どうする」「俺をなめているのか」「これが最後だ、どういう意味がわかるべ」こういうことをとうとうと訴え、各人に、罵倒、強制、強要をやっている、そういう現場の状況なんですよ。  そしてなおかつ査定に当たって、これはさっき説明のときにお渡しをしておきましたから各大臣にお渡ししたと思いますが、「勤務態度等記録表心的特性」百二十三区分の心的特性の項目を列挙、設定して、これが査定基準だという。  どういうことがあるかというと、全部読み上げるわけにまいりません。例えば「意志が弱い、調子者、融通がきく、如才ない、機敏、ずる賢い、小利巧、うすのろ」あるいは「石頭、愚直、気がきかない」等々百二十三項目の査定基準をもって、これで調査に対応しているんですね。こんなばかなことがありますかね。これをごらんになって、神様といえどもこういうことの判定はできないだろうと私は思いますね。これでぎゅうぎゅうやっている。結果的には、これは不穏当であり、目標の活用価値がないということで反省しまして、撤回はしました。撤回はしましたけれども、こういう実情なんですね。まさに人権無視、組合干渉、強制、強要、恫喝、これに該当する内容がいっぱいある。こういうことを総裁、お知りですか。
  336. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 土崎工場の今先生おっしゃいました「勤務態度等記録表」というのを、これは後から私も承知いたしました。中身は心的特性の調査を含めたものではございますが、評価項目が不適当であるというふうに判断をいたしました。使用を中止いたしまして、全数回収してすべて処分をしてしまったものでございます。評価項目にそうした不適当のあったことは非常に遺憾であるというふうに私ども反省をしておるところでございます。  それから、最近やりましたアンケート調査は、決してそういうような項目なしに、将来の公的部門のための本人の希望を調査したものであるわけでございまして、これとは違うものでございます。
  337. 戸田菊雄

    戸田委員 それから、九州の佐賀の伊万里という保線区があります。それから武雄という電力区がございますが、同じようなケースがここにも浮かび上がっている。  例えば伊万里の場合は、組合員二名の方が八時半から出勤をしまして、保線区ですから現地に行って働いている。伊万里駅から東山代という駅の中間あたりですが、そこへ草刈りに行った。そして大体十時半ごろまで働いているのです。それは、ある機関士が列車が二本ほど通りましたから、その機関士も現認をしている。存在をちゃんと見ている。それに対して区長の方では、おまえは二十二分間職場放棄をしたということで、これは否認だと言って、三十分以上なら賃金カットの対象になりましょうが、そこまで持っていけないものだから、逆に重い処分で減俸という処分ですね。現に現認して本人はそこで働いているにもかかわらず、何かねらい撃ち的に一つの懲罰行為でもって、報復処分というのですか、そういう処分をやっている。それから武雄の電力区もそうでありまするが、今はどうなんですか、作業服しか支給していないのでしょう。その作業服に襟章が入っているのかどうかわかりませんが、襟章をつけていかなかった。そうしましたら、何かを持ってきて穴をあけて、二人がかりで当人を捕まえて襟章をつけさせた、こういうような横暴な対応をやっているという状況ですね。  だから、こういう事件を一つ一つ考えてみても、これはまさに人権侵害でありあるいは報復処分であり、まさに不当処分じゃないかと思うのですけれども、こういう問題について、総裁、一体どうお考えですか。
  338. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 現場の職場規律は、これは厳正に守っていかなければならぬという観点で現場の管理者は一生懸命やっておるわけでございます。そうした過程でいろいろな問題が提起をされているようでございますが、私ども、これはいわば社会的な意味での常識的な判断ということが一番重要であろうかと思います。そういう意味におきまして、職場で指揮命令系統がしっかりと守られるということを今後も期待し、そのように現場管理者には注意していきたいというふうに思います。
  339. 戸田菊雄

    戸田委員 運輸大臣の御見解を伺っておきたいと思います。
  340. 三塚博

    ○三塚国務大臣 労使関係は労使の信頼関係が基本でありまして、かつてマル生運動ということなどもございまして、不幸な一時期があったこともございました。そういうことの中で、今日再建という非常な命題を抱えた労使でありますから、労働組合であり経営者であるということも当然でありますが、私自身命労使の皆さんともお話しを申し上げている基本は、その前に国鉄マンであるというこの基本に立った信頼関係というものの中でコンセンサスを得るように御努力をいただけぬだろうか、こんなことで見詰めておるというところであります。ただいまのような御指摘の実態、今委員と総裁のやりとりをお聞きした段階でございますが、今後も大事なポイントでありますから、注視しつつ見守ってまいりたい、こう思っております。
  341. 戸田菊雄

    戸田委員 結論的には、いろいろと国鉄の内部には幾つかの組合があります。国鉄労働組合等との関係についても、まだ雇用安定協定も結んでおらない。それがためには当局が作成した共同宣言案なるものをのみなさい。しかしこれはそれぞれ立場の違うところもあるわけですから、しかし人間関係ですから、そこに信頼性を置いてよく話し合いをして、それで何とかこれらの問題について円満に解決するよう、そういう方向で努力をしていただきたいと私は思うのですが、総裁どうでしょう。
  342. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 雇用安定協約につきましても、国労との間では現在残念ながら締結されておりません。過去におきまして何とか国労との間で何遍もお話し合いをいたしまして、現下の国鉄の緊急事態あるいは余剰人員対策というような問題についてよく理解をし、ともにやろうという呼びかけをしておるわけでございますが、なかなか適時適切な対応がないということで、現在もなお雇用安定協約は無締結のままになっております。私どもは、何とかこういう状態を脱しまして、先般労使共同宣言というような中に盛られておるように、国民に対しまして労使が一体となって今後の経営をやっていくということの意気込みを示したいわけでございますが、そうしたことの理解を粘り強く説得しつつ雇用安定協約の締結へ向かってなお努力してまいりたいと思っております。
  343. 戸田菊雄

    戸田委員 総務長官、一点ですから、じゃ順序を変えて質問いたします。  国鉄の余剰人員対策といたしましてさっき官房長官にお伺いをしたら、基本閣議決定をやりまして、それでこれから逐一対処していきます、こういうことですね。そうすると、国家公務員等に対して、国の関係では、例えば教員のように特殊資格が必要だ、こういう者を除いて一〇%を採用することを努力をいたします、こういうことですね、ところが、今国家公務員は行革のさなかなんです。逆に一%毎年減らせということでしょう。そういう中において、片っ方は一%を減らせ、そして余剰人員が国鉄ができたからこれを今一〇%再度採用しなさい、これは内閣の一体性からいってまさに私は整合性がないと思うのですね。総務長官は、一%は徹底的にやりますよ、しかし一〇%は国鉄職員の採用だ、こう言う。私も大蔵省とか外務省とかいろいろ聞いてみました。しかし、国鉄になじんで十年も二十年もいた人が、今外務省大蔵省へ来たって使いものにならないんじゃないか、極めて冷淡ですね。地方自治体等では拒否をしておるところもあります。そういう状況です。これをどう一体整合を持たせて、所期の目的どおり、今官房長官から答弁あったようなことで具体的にその政策を実行するのか、この辺をひとつ総務長官の御意見として伺っておきたい。
  344. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 仰せの点は極めて重要だと思います。今、後藤田さんもちょっと触れましたが、やはり各省庁ともに既定の方針に従って人員整理をしていく、これは現実に行っておるところです。しかし国鉄の場合、やはり相互扶助の精神、それから政府としての三万人の消化、これは閣議の決定事項でもありますから、まさしく矛盾といえば矛盾かもしれませんが、その既定の整理合理化をしながら、その間に三万人を消化しよう。これは六十一年も前倒しで一〇%以上をやろう、そしてさっき後藤田官房長官が言っておりましたように、六十二、六十三、六十四とこういくわけですが、そうはいいましてもなかなかいろいろ各省庁ともにまだ六十一年度ですから十分とは言えませんが、既に約千四百人の申し入れがあります。それから特殊法人などが九百二十一人、ざっと九百人、合わせて二千三百人という数字が来ております。それから最近新聞で電電株式会社、これが約千名程度採用する、こういう報道がなされましたが、あれは確定数値ではありませんので、我が方からも、また雇用促進本部の方からも相談をかけておる。したがって、千名よりはもっと相当数を採用してくれるのではないか。これは期待数字ですが、そういうことで大体今の二千三百名に、仮に電電株式会社が一千名としても三千三百名ということになってまいりますと、六十一年の前倒しに対する数値というものはそんなにみじめなものではない。相互扶助精神というものが各省庁の間で相当徹底しておる。これはやはり国鉄そのものの今までの努力、それから事実モータリゼーションの犠牲でもあったり、いろいろな道路事情の犠牲でもあったりというようなことに対する各省庁の理解もありますから、非常に友情を示しての整理をしながらの採用、これは御安心を願いたいと思います。私どもも最善の努力を雇用本部と話し合いながら進めます。
  345. 戸田菊雄

    戸田委員 長官が具体的な内容まで触れましたから、私も持っている資料で若干、もう二点ほど質問しておきたいのであります。  そもそも三万人の根拠、これはどういうことですか。後でこれは全部整理をして監理委員長なり運輸大臣等にお伺いをしますけれども、大体六十一年度で二万人。九万三千人余剰人員ですよ、そのうち四・一万人は旧国鉄にやりますよ、これはしかし三年間です、レッテルを張って、まさに死刑囚に近いことをやっている。そして六鉄道旅客会社に三・二万人やりますよ、こうなっているわけです。そういうことで六万一千人程度の、鉄道旅客会社に行く者を除いてその程度になっていきます。そのうちのおおむね半分は三万人、これは公的部門にそれぞれ政府が責任を持ってやります。しかし、今まで大体整理できたのは、私がタッチしている範囲では、大分市役所がたった二人ですね。気象庁が四十三人。それからこれは後でいろいろとお伺いを立てていきますが、国鉄は関連企業に対してこれくらい行っていますよということになっているけれども、確かに自衛隊だけは年間二万人くらい募集をする。この中で六千人くらい行かないかということの考えもあるようですが、今まで国鉄職員で自衛隊に行っているのは私の知っている範囲では四名か五名です。だからそれはなかなか難しい。それで結局官房長官がおっしゃられたように、時期的には秋まで全部それをやります。三万人消化の対応ありますか。長官どうですか。
  346. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは閣議の決定事項ですし、それからこの三万人を雇用する、特に公的機関で雇用するということは公約事項ですから、やはり実現するかしないかということは、この民営・分割のまず基本になる重要な問題だという位置づけを私はしております。今細かい話がありましたが、細かい話は時間かかりますからよしますが、大体わかりますね。御存じですね。  全体の数字は申し上げたとおりで、ことしの一〇%余はともかく成就しておるわけですから、今後とも継続的に努力いたしますからどうぞ御安心を願いたい。これは御協力も願いたい。お願いをします。
  347. 戸田菊雄

    戸田委員 総務長官もぜひひとつ政府の責任において御努力を願いたいと要望しておきます。  大蔵大臣、疲れているところ申しわけありませんが、一点なんですよ。今ちょっと前に質問をして、それから質問をいたしますから。  監理委員長、これは資料をもらったのですよ。いわゆる国鉄の新会社その他含めまして、答申案に基づくところの要員査定についての積算基礎ということで、それによりますと結局最終的には十八万三千人体制ですよ。それで、資料をいただきましたが、これによると、六十二年度適正要員推計結果ということで十五万八千六百八十九人、こうなっていますね。これはどういう方式ではじき出したかというと、いわゆる回帰方式というものですね。私も回帰方式でそれぞれいろいろと積算をしてやってみたけれども、これとは全く違う。同じ方式でやってみても、結論に出てくる数字は違う。これは今発表できませんからあえて発表はしませんけれども、そういうことで、この積算基礎には若干私はまやかしがあるのではないか。まやかしと言っては失礼だけれども、そういう点が感じられるのですが、これはどうですか。
  348. 亀井正夫

    ○亀井参考人 余剰人員問題というのは非常に大変な一人一人の運命に関する問題でございまして、そういう意味におきまして私どもは非常に真剣に考えております。  それから、新しく発足する会社というのは私鉄並みといいますか、民間並みに働いていただくという場合に、やはり民間といってもいろいろ産業なり事業がございますから、私鉄六十一社のいろいろな体制ということを伺いましてそれから出してきた数字でございまして、基礎資料につきましては既に御要求によりましてお出しいたしましたし、また積算基礎の細部についての御要求がございますが、現在整理をしておりますので、それが整理でき次第、非常に大部なものになりますが御提出をしたい、こういうふうに考えております。
  349. 戸田菊雄

    戸田委員 そうしますと、監理委員長、との前年金のときには、私が説明したら、要員体制でいきますよ。さしあたって六十一年度二万人希望退職を募って二十七・六万人にいたします。そして四・一万人を旧国鉄に引き継ぎます、そして鉄道旅客三・二万人をやります。六十四年度まで二十一・五万人体制でいきますよ。今度の場合は六十二年の四月段階でそういうものを全部処理するわけですが、文字どおり六万一千人の余剰人員というものを二年程度で全部処理する、こういうことになりましょう。そうすると、年金の要員査定とそのあれが違ってくるのじゃないでしょうか。この辺はどうですか。
  350. 亀井正夫

    ○亀井参考人 どうも先生の御質問の要旨の数字のトレースが年金とごっちゃになりましてお答えにくいのですが、新しい体制は二十一万五千人というのを、一応余剰人員三万二千人を入れて計算をしておりますけれども、そのときには約四万人の——二万人は既に六十一年度中に希望退職で整理をするということでございますから、二十一万五千人プラス四万人というのは旧国鉄に従事している人間がいる。それが逐次、六十五年の春になりますか、三年間でございますか、そのときにはゼロになるという計画でございます。それによって人員はこう推移をいたします。これは年金の計算の基礎になる人員であります。しかし新事業は二十一万五千人でやる。そして旧国鉄で四万一千人を三年間で転嫁を図る、こういうことでございます。
  351. 戸田菊雄

    戸田委員 ですから、六十四年度まででしょう、年金の要員査定二十一・五万人というのは。いずれにしても九・三万人という余剰人員は旧国鉄三年間、これは時限ですよ。その後は職業訓練その他をやって、とにかくどこかへ転向、出向その他を考える、こういうことです。そして片や今度鉄道旅客部門には御存じのように三・二万人、こういうことでさしあたって置きますよ。しかしこれだって余剰人員としてレッテルを張っていくわけですよ。だから、いずれにしたってこれも整理をするということになりましょう。そういうことになったら、六十四年の年金の査定要員と違ってくるのじゃないですか。
  352. 亀井正夫

    ○亀井参考人 三万二千人は、旅客会社の適正人員が約十六万人、それに二割引き受けていただこうということで、しかしこれは今の輸送状態のままであれば余剰ということが言えると思います。しかしながら、新生会社がサービスをよくすることによって旅客なり貨物なりがふえていくということもある。それから新しい会社には、私どもの答申にも書いてありますように私鉄並みのいろいろ関地事業を、拡大をやらせよう。例えばマーケティングとかデベロビングとかそういう生きがいのある仕事を与えようということで一応三万二千人、計算上出たものはやはり活用していただくという建前で考えておるのでございまして、それがいずれ首になるんだというような冷たい案で私どもはやっておりません。もっと血の通った経営をやっていただくという前提で新会社を発足していただきたい、そういう願いを込めてつくってあるということを御了解いただきたいと思います。
  353. 戸田菊雄

    戸田委員 時間がありませんから先に進みますが、いずれにしても監理委員長が再々今日まで言明しておりますように、一人の首切りもやらない、路頭に迷うようなことはいたしません、こういうことは言っておりますね。その決意には変わりないんでしょう。
  354. 亀井正夫

    ○亀井参考人 私は一度も首切りという言葉を使ったことはございません。それは長年国民の足として奉仕していただいた方が、たまたま輸送需要の変化によってやる仕事がなくなった、そういう人々を国民全体の、国民的課題として取り上げていただきたいということを私どもの答申にも書いてございます。これは国民的課題として取り上げて、一人一人の方向転換とかそういういろいろな運命がここに出てきたわけでございますけれども、そういう人々に国民全部が温かい目でやっていただきたい。一人も路頭に迷わさない、あるいはもっと生きがいのある仕事についていただく。現在は既に草むしりをやったり待機しておる人もおるわけですね。これは先生よく御承知だと思うのです。給料をもらっても草むしりをしろというぐらいつらいことはないと私は思うのです。それよりは化事を一日やる。これは社会党の先生も、いつも額に汗するに値する生活をということを社会党のスローガンにしておられる。そこが本旨ではないかというふうに私は思うのですね。額に汗せずして太った豚になれというのは、日本国民はだれも承諾しないと思うのです。そういう精神でやっておるということを御理解いただきたいと思います。
  355. 戸田菊雄

    戸田委員 国鉄の方にお伺いいたしますが、六十一年の三月のダイヤ改正でどのくらい要員削減を考えていますか。それから六十一年の十一月、これは本格的な大改正でしょう、これはどのくらい考えておられますか。
  356. 澄田信義

    澄田説明員 六十一年三月のダイヤ改正では、特に今鋭意詰めておるところでございますけれども、六十年度全体で約三万人の合理化を予定しておりまして、年度中間ではそれを集計しておりませんけれども、大体今の時点で約半数程度の合理化ができているのじゃないかと思います。あと三月のダイヤ改正で、当初目標としております三万を何とか達成したいというぐあいに考えております。  あと十一月のダイヤ改正でございますが、これも概数で申し上げますと、約八万人強の合理化を今計画してございます。
  357. 戸田菊雄

    戸田委員 これは、詳細わかりましたら資料として提示をしていただきたいと思いますが、いいですか。
  358. 澄田信義

    澄田説明員 三月のダイヤ改正につきましては、いずれ年度末にはっきり明確になった段階でお示ししたいと思います。  なお、十一月の改正につきましては、これからの問題でございますので鋭意詰めておりますので、これも結果がわかりました段階でまた御報告したいと思います。
  359. 戸田菊雄

    戸田委員 そこで雇用対策問題ですが、これは運輸大臣にちょっと見解を聞かしていただきたいのです。  さっきちょっと私も触れましたけれども、国の関係では一〇%、しかし思うほど採用に熱意は余り持っていない。それから民間の事業形態、今既にマツダとか日産とか自動車関係を主体にいたしまして、北海道その他からおおむね一万名に近い出向ということ。しかしこの内容を聞いてみましても、まあ働いてはいただいて非常に優秀だけれども、本格採用となると首をひねっているのですね。採用するかどうかわからぬ。だから勢い三年なら三年過ぎたらもう帰される、こういう状況になりますね。  それから、御存じのように地方自治体の場合も、埼玉も州知事さんが三百人ぐらい応援してもいいですよ、宮城県の場合も県知事も二百人ならいいですよ、仙台市長もいいですよ、こう来ているのですね。仙台や宮城県は別にいたしまして、よそのところでは何か後うまみのある、そのかわり東日本鉄道旅客会社の本社を埼玉へ持ってきてくれなんというようなことで、約束事か何かでどんどんと運輸大臣に来ている。例えば神奈川県のある市長さんなんかも、新鶴見を欲しいんだけれども、しかしそのためには協力をしなければいけないだろう、こんなことですね。そしてその内容は、実行年限はいつだと聞いたら、大体五年計画だというのです。じゃ六十一年度どのくらい採用してくれるといったら、八名とか五名なんです。職種は何だ。じゃ、それに対する国鉄内部における企業内失業者と言っては失礼ですけれども、それはあなた方によって生み出された要員だけれども、そういう者が本当に希望したところに行けるのかどうか。さっきの土崎工場の心的査定じゃないけれども、ああいうことで寄り寄り当局や何かにぐあいの悪いものはもう一切はね飛ばしていくというようなことになりかねない。そんなことでは思うように進展はしないんじゃないだろうか。幾ら総務庁長官がさっき豪語しても、そんなに順調にいくような姿じゃないのじゃないか。  かつて炭鉱が不況業種になって、それでいろいろ人員整理をやられた。当時は一万名くらいですね。今国鉄が抱えているのは六万何名というのですから、総体九万三千名ですから、これは、少なくとも四人家族平均といったら三十二万の都市一つ吹っ飛ぶくらいですからね。あるいは新日鉄の六万人体制、これの一・半倍です。そのくらいの大量の要員を処理していくのですから、これは大変なことだと思うのですね。そういう点について、秋ごろまでといっても、私はもうとてもじゃないがそれは問題だ。  同時に、昨年の七月二十六日に答申はあった。それを受けて、直ちに実行しますという閣議決定をやった。そういうことはやっておりますけれども、国会ではまだそういうことについて本格的な論議はなされていない。審議もされていない。それで答申だけがひとり歩きしている状況。こういうことはまさに不法、不当、そういう部類に所属するものだと私は思うのですね。だから、そういう点を慎重にやはりしかるべく国会において十分な論議をして、そして妥当なる国鉄再建の道筋というものをつくり上げていかなければいけないのじゃないだろうか、こう思うのですが、運輸大臣の所見を聞かせていただきたい。
  360. 三塚博

    ○三塚国務大臣 大変雇用対策について各方面からの心配、不安、御指摘をいただいております。今亀井監理委員長が申されましたとおり、まさに改革の最大のポイントが雇用安定対策であります。一人といえども路頭に迷わせることがあってはならない。そのために政治、特に政府がこの衝に当たるわけでございますから、全力を尽くすことは当然でありまして、全力を尽くしてでき得なかったということであってはならぬわけでありまして、これを有効、実効あらしめる、こういうことで、具体的な採用計画についても、官房長官御指摘のように、また総務庁長官も言われましたとおり、秋ごろまでにその具体案を御提示を申し上げたい。  同時に、法案の提出の準備を合いたさせていただいておりますが、御審議をいただける段階に相なりますれば、さらに十二分に御審議がいただけるように、その作業は、最終確定を秋ごろといたしましても、前倒しで十二分に御論議いただける、なるほどそういうことかと言われるようなデータもお出しいただかなければならぬ。ただ、相手があるのじゃないか、君らそう言っても相手がそうはいかないよ。ただいま御指摘の二、三の市の御事例などもございました。そこは今御論議をいただいて審議中でありますから、私どもお互いが国会第一でありますのでこちらにおるわけでありますけれども、さらに閣僚も手分けをしつつ各地方団体、また関係会社、既に来週にやる段取りなども、早朝でありますけれどもさせていただいておるわけです。そういうことでぜひ御採用を賜りたい、こういうことで積み上げてまいりたい。  それと、国家公務員グループ、地方公務員グループ、その他の公社公団、こういう団体につきましても逐次積み上げておりまして、外務省あるいは大蔵省、極めて不熱心なところがありますよという御指摘、謙虚にこれはお聞きさせていただき、今大蔵大臣もお聞きをいたしておるわけでありますし、これは政府として決めた閣議決定でございますので、今鋭意事務方も努力をされておるという中間報告を聞いております。こういう点でこれも積み上げさせていただく、こういうことであります。  そこで、最後の御質問のポイントでありました、何もまだ法律決定に、国会決定にならぬのにどんどこどんどこ一体どういうことだ、こういうおしかりをいただきました。これはそのとおり法律が出ておらぬわけでありますけれども、一生懸命その前に、到達する前、特に雇用安定関係というのは事前に積み上げてまいりませんと、法律が成立を認められました、直ちにまたこれにということでは立ちおくれがあってはならぬ、こんなことで、このことは身分に関する、生活にかかわるものでありますので、ぜひ御理解をいただいて取り組んでおりますことにひとつ御容赦をいただき、願わくは御叱正なり御協力をちょうだいをいたしたい、こう思っております。
  361. 戸田菊雄

    戸田委員 時間がなくて内容に触れることができなかったわけですが、結局ダイヤ改正等を通じまして多くの合理化、要員削減というものが行われる。そういうことになると配転、免職あるいは降職等々の処置が出てきます。そういうものについては一切削転とか降職、免職、こういったものはやりませんね。同時に、雇用対策は運輸大臣、責任を持って政府がやります、こういうことですね。じゃ、その点の見解だけひとつ聞かせていただきまして、国鉄総裁も配転、降職、免職等についてお聞かせを願って、終わります。
  362. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 合理化の進展とともに余剰人員対策がだんだんと詰めを行っていく最中でございますが、地域によりましてなかなかその地域で充足しがたいというような事情も出てきております。したがって私どもとしましては、全国的な配慮で職場を考えていきたい、今からそれを考えていきたいということでございますし、また雇用の場というものをこれからも政府、民間の御協力をいただきまして、将来の職場を必ず確保するというふうに努力をしていきたいと思います。
  363. 戸田菊雄

    戸田委員 運輸大臣の見解を……。
  364. 三塚博

    ○三塚国務大臣 総裁言われた方針で進むわけでございますが、広域的配置も時によって必要に相なるであろう。よってその場合は宿舎、教育環境等々万全を期すなどいたしまして、大改革の今日でありますので、その辺のところは国鉄をよくするという大局的な観点の中で取り組まさせていただく以外にないのかな、こんなふうに思っております。
  365. 戸田菊雄

    戸田委員 ありがとうございました。  大蔵大臣、申しわけないですが、これで終わります。
  366. 小渕恵三

    小渕委員長 これにて岡田君、戸田君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十一日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時一三分散会