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1986-02-19 第104回国会 衆議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年二月十九日(水曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 小渕 恵三君    理事 中島源太郎君 理事 浜田 幸一君    理事 林  義郎君 理事 原田昇左右君    理事 渡辺 秀央君 理事 稲葉 誠一君    理事 岡田 利春君 理事 二見 伸明君    理事 吉田 之久君       相沢 英之君    伊藤宗一郎君       石原健太郎君    石原慎太郎君       上村千一郎君   小此木彦三郎君       大西 正男君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    倉成  正君       自見庄三郎君    砂田 重民君       住  栄作君    田中 龍夫君       中馬 弘毅君    中川 昭一君       葉梨 信行君    橋本龍太郎君       原田  憲君    東   力君       三原 朝雄君    武藤 嘉文君       村山 達雄君    山下 元利君       井上 一成君    井上 普方君       上田  哲君    大出  俊君       川崎 寛治君    川俣健二郎君       佐藤 観樹君    多賀谷眞稔君       松浦 利尚君    池田 克也君       近江巳記夫君    神崎 武法君       古川 雅司君    正木 良明君       木下敬之助君    小平  忠君       中野 寛成君    柴田 睦夫君       瀬崎 博義君    中川利三郎君       松本 善明君 出席国務大臣        法 務 大 臣 鈴木 省吾君        外 務 大 臣 安倍晋太郎君        大 蔵 大 臣 竹下  登君        文 部 大 臣 海部 俊樹君        厚 生 大 臣 今井  勇君        農林水産大臣  羽田  孜君        通商産業大臣  渡辺美智雄君        運 輸 大 臣 三塚  博君        郵 政 大 臣 佐藤 文生君        労 働 大 臣 林  ゆう君        建 設 大 臣 江藤 隆美君        自 治 大 臣        国家公安委員会        委員長     小沢 一郎君        国 務 大 臣        (総務庁長官) 江崎 真澄君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (沖縄開発庁長        官)      古賀雷四郎君        国 務 大 臣        (防衛庁長官) 加藤 紘一君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)      平泉  渉君        国 務 大 臣        (国土庁長官) 山崎平八郎出席政府委員        内閣審議官   海野 恒男君        内閣審議官   中島 眞二君        国防会議事務局        長       塩田  章君        警察庁刑事局保        安部長     新田  勇君        警察庁交通局長 八島 幸彦君        総務庁長官官房        審議官        兼内閣審議官  本多 秀司君        総務庁人事局長 手塚 康夫君        総務庁行政監察        局長      竹村  晟君        青少年対策本部        次長      倉地 克次君        北海道開発庁計        画監理官    滝沢  浩君        防衛庁参事官  筒井 良三君        防衛庁長官官房        長       宍倉 宗夫君        防衛庁防衛局長 西廣 整輝君        防衛庁経理局長 池田 久克君        防衛庁装備局長 山田 勝久君        防衛施設庁労務        部長      岩見 秀男君        経済企画庁調整        局長      赤羽 隆夫君        経済企画庁物価        局長      斎藤 成雄君        経済企画庁総合        計画局長    及川 昭伍君        国土庁地方振興        局長      田中  暁君        国土庁防災局長 杉岡  浩君        法務省民事局長 枇杷田泰助君        法務省矯正局長 石山  陽君        法務省人権擁護        局長      野崎 幸雄君        法務省入国管理        局長      小林 俊二君        外務大臣官房外        務報道官    波多野敬雄君        外務大臣官房審        議官      福田  博君        外務省アジア局        長       後藤 利雄君        外務省経済局長 国広 道彦君        外務省条約局長 小和田 恒君        外務省国際連合        局長      中平  立君        大蔵大臣官房審        議官        兼内閣審議官  門田  實君        大蔵省主計局長 吉野 良彦君        大蔵省主税局長 水野  勝君        大蔵省理財局長 窪田  弘君        大蔵省銀行局長 吉田 正輝君        大蔵省国際金融        局長      行天 豊雄君        文部大臣官房長 西崎 清久君        文部大臣官房総        務審議官    五十嵐耕一君        文部省初等中等        教育局長    高石 邦男君        文部省教育助成        局長      阿部 充夫君        文部省高等教育        局長      大崎  仁君        文部省高等教育        局私学部    國分 正明君        文部省学術国際        局長      植木  浩君        文部省社会教育        局長      齊藤 尚夫君        文化庁次長   加戸 守行君        厚生省健康政策        局長      竹中 浩治君        厚生省保健医療        局長      仲村 英一君        厚生省保健医療        局老人保健部長 黒木 武弘君        厚生省生活衛生        局長      北川 定謙君        厚生省社会局長 小島 弘仲君        厚生省保険局長 幸田 正孝君        社会保険庁医療        保険部長    花輪 隆昭君        農林水産大臣官        房長      田中 宏尚君        農林水産大臣官        房予算課長   鶴岡 俊彦君        農林水産省農蚕        園芸局長    関谷 俊作君        農林水産省畜産        局長      大坪 敏男君        林野庁長官   田中 恒寿君        通商産業省産業        政策局長    福川 伸次君        通商産業省立地        公害局長    黒田 明雄君        通商産業省生活        産業局長    浜岡 平一君        資源エネルギー        庁長官     野々内 隆君        特許庁長官   宇賀 道郎君        中小企業庁長官 木下 博生君        運輸大臣官房国        有鉄道再建総括        審議官     棚橋  泰君        運輸省運輸政策        局長      栗林 貞一君        運輸省貨物流通        局長      武石  章君        運輸省海上技術        安全局長    間野  忠君        気象庁長官   内田 英治君        郵政省放送行政        局長      森島 展一君        労働省労働基本        局長      小粥 義朗君        労働省職業安定        局長      白井晋太郎君        建設大臣官房会        計課長     望月 薫雄君        建設省建設経済        局長      清水 達雄君        建設省都市局長 牧野  徹君        建設省河川局長 廣瀬 利雄君        建設省道路局長 萩原  浩君        建設省住宅局長 渡辺  尚君        自治大臣官房審        議官      石山  努君        自治省行政局選        挙部長     小笠原臣也君        自治省財政局長 花岡 圭三君 委員外出席者        日本国有鉄道総        裁       杉浦 喬也君        日本国有鉄道常        務理事     岡田 昌久君        参  考  人       (日本銀行総裁) 澄田  智君        予算委員会調査        室長      大内  宏君     ————————————— 委員の異動 二月十九日  辞任         補欠選任   相沢 英之君     中川 昭一君   石原健太郎君     中馬 弘毅君   上村千一郎君     東   力君   倉成  正君     自見庄三郎君   矢野 絢也君     古川 雅司君   小平  忠君     中野 寛成君   浦井  洋君     柴田 睦夫君 同日  辞任         補欠選任   自見庄三郎君     倉成  正君   中馬 弘毅君     石原健太郎君   中川 昭一君     相沢 英之君   東   力君     上村千一郎君   古川 雅司君     矢野 絢也君   中野 寛成君     小平  忠君   柴田 睦夫君     中川利三郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和六十一年度一般会計予算  昭和六十一年度特別会計予算  昭和六十一年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 小渕恵三

    小渕委員長 これより会議を開きます。  昭和六十一年度一般会計予算昭和六十一年度特別会計予算昭和六十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中島源太郎君。
  3. 中島源太郎

    中島(源)委員 いよいよきょうから一般質疑に入らしていただくわけでございます。そこで、ポイントを絞って伺いたいと思いますが、急速な円高基調の中で産業界対応も非常に迫られておるわけであります。その中で、特に中小企業苦悩というのは非常に色濃いものがありますので、現在の経済動向を特に中小企業の立場から見させていただき、質問を申し上げたい、こう思うわけであります。  わざわざ伺うまでもないかもしれませんが、我が国の経済に占めます中小企業ウエートということをもう一度見直すために、中小企業事業所数あるいは従業者数、またその全国比率を一応伺いたいと思います。
  4. 木下博生

    木下(博)政府委員 日本経済の中で中小企業の占めているウエートが高いことは先生も御承知のところかと思いますが、非一次産業の全事業所に占める中小事業所割合は五十六年の調査で六百二十三万ということで、全事業所の九九・四%を占めております。従業員につきましては、やはり非一次産業の全従業者に占める割合のうち八一・四%が中小企業従業者でございます。出荷額につきましては五〇・九%ということで、日本経済の中に非常に大きなウエートを占めておるわけでございます。
  5. 中島源太郎

    中島(源)委員 今伺ったように、中小企業事業所数において実に九九・四%を占めております。大企業は一%を下回っておるということでありますし、従業者数からいきましても八〇%を超えておる。また、この従業者数は三千七百万人を超えておると思いますので、もちろん独身者もいらっしゃるでしょうが、これを夫婦計算すれば七千万人、夫婦子一人で計算すれば日本人の人口の大多数は中小企業で家計を支えておられる、中小企業生活を立てておられるわけであります。  そこで、この中小企業基盤が揺るげば国の基盤が揺らぐわけであります。中小企業基盤の安定があって初めて国の基盤の安定があるわけであります。一時、中小企業専任大臣をという御希望が非常に多かったことも事実でありますし、私もそう考えたこともありますが、しかしもっとよく考えれば、これは、農業は国の基、同時に中小企業は国の基でありまして、総理総裁重要課題の最右翼にあるべきもの、また逆に言えば、この中小企業を把握できる人格と心とそれから政策を持ち得る資質の方が将来の総理の資格をお持ちである、こうも言えるわけでありまして、これは非常に重要な問題だと思います。いかがですか、通産大臣
  6. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 中小企業の問題は日本経済の大宗をなすものでございますから、まことに仰せのとおりでございます。
  7. 中島源太郎

    中島(源)委員 そこで、現在の経済動向中小企業に与える打撃というものは国全体に対する打撃、こう受け取るべきだと思います。  そこで、本題に入ります前に、労働大臣もいらっしゃいますので、一つだけ御確認をいたしたいことがあります。それは、先国会におきまして、五月三日と五月五日の中間にあります五月四日を国民の休日の日と制定をさせていただきました。その趣旨はもちろん、家族そろってゆとりある休みの日を持っていただこうということでありまして、当然学校もお休みにして、家族そろって楽しんでいただきたいということでありますが、衆議院の内閣委員会でこれを提案いたしますときに、当時の藤波官房長官の御発言議事録に残させていただいて、そしてこの法案を提案いたしたわけであります。その御発言に従いまして、労働省通産省から伝達方をいただいておるわけであります。もちろん行政は継続しておりますから、わざわざ御確認というのは失礼かもしれませんが、大臣もおかわりになったことでございますし、新大臣に、この藤波長官の御発言の御趣旨をどのように御理解いただいておるかを一応伺っておきたいわけであります。
  8. 林ゆう

    林国務大臣 お答え申し上げます。  さきの国会で五月四日の休日ということが制定されることになりました。そのことにつきましては、労働時間の短縮、その他の意味も含めまして、労働時間の短縮というのは家庭生活充実ということが主眼になっているわけでございますから、そういったことでのこの立法は妥当なものであろうと私どもも思っておりますし、それに伴いましてそれぞれの御家庭でこういったような休む機会が多くなって、家族的な交流がさらに深まるということは大変結構なことであると私どもは考えておりまして、労働省といたしましても、そういったような時間短縮の問題についても今真剣に取り組んでいるさなかでございます。
  9. 中島源太郎

    中島(源)委員 通産省さん、この点についていかがですか。
  10. 福川伸次

    福川政府委員 私どもも、今後の休日のあり方、特に諸外国からも日本人は働き過ぎという批判がございます。また最近も、労働時間が延びておる、こういう傾向がございます。この労働時間の短縮ということが持つ経済的な効果、これは消費の充実という面にも力があると存じますし、また今後、創造性を発揮して自己の能力の開発という点にも役に立つということでございまして、私どもとしても、労働省と連絡を取りながら労働時間の短縮環境づくり、本来これは労使で決めるべきことでございますが、そういう方面には重要な関心を持っている次第でございます。
  11. 中島源太郎

    中島(源)委員 今のお答えで結構でございますが、言うまでもなく、これは、家族そろって休める日を一日でもふやすことを念願に五月四日を国民の休日の日といたしました。しかし、休みがふえると逆にお忙しくなる業種があるわけでありまして、商業とかサービス業は逆に休めない。そういう方々をないがしろにするような感じで制定すべきではない。しかし、どうしてもお忙しくなるわけでありますから、そういう方々が別途家族そろって休みをとれるような何かの担保を考えてさしあげるべきだ。例えばということで、正月三が日などは大企業も率先して休まれたらどうか。商業関係者は暮れいっぱい働かれて、そして仕事の締めをして休まれるころは元旦の朝が白々明けになる、また二日から働かなければならない。休んで店を開けなければ中小企業はサボっておるんじゃないか、こうも言われます。大企業組織労働者方々にとりましても、正月三が日を家族そろって休みたいということは念願のことなんです。また大規模小売商の例えば百貨店などの経営者も、これはむしろこの趣旨に従って徹底をしていただきたい、こういう声もあるわけでございます。労使双方から望まれておるものでありますし、特に労働シフト制のとれない中小小売商方々は、せめてこのくらいは何とか一緒に休みを享受したい、こういうことがございます。  そこで、今確認を申し上げたのは、この伝達方を出していただいたのは、労働省さんが多分十二月の二十三日、通産省さんは十二月の二十五日、その辺だったと思います。こうなりますと、ことしの正月には、趣旨はわかっても徹底しないわけであります。やがて来年また、ことしの五月はみんな休みになりますが、来年の正月どうしてくれるかな、この継続の重要性がありますので、ただ伝達をお出ししたからということではなく、今後そういう方々のために温かい心を継続していただきたい、これを両大臣お願いを申し上げるために御確認をいたしたわけでございまして「よろしくお願いを申し上げます。
  12. 林ゆう

    林国務大臣 正月三が日の具体的な休業の設定につきましては、それぞれの地域の実情とかそういったものを配慮しながら、それぞれの関係企業が検討されてなされることだというふうに私どもは理解をいたしておりますが、昨年の十二月二十三日にこういったような指導の通達を出しまして、ことしのお正月には先生おっしゃるように時間的な余裕もなかったかと思いますけれども、こういったことの周知徹底をするようにこれからもきめの細かい配慮をしていきたい、このように考えておるわけでございます。
  13. 中島源太郎

    中島(源)委員 次に、現在の経済動向等見通しを伺いたいと思います。  これは一応経済企画庁から伺いたいと思いますが、経済企画庁の六十一年度見通し、四%成長と一応打ち出されておるわけであります。しかし、為替相場設定は、これは設定が決められておりますから、二百四円で計算基礎になさっておる。これはこの委員会でも御答弁をいただいておるわけでありますが、今や百八十円を突破しようという状況であります。その計算基礎がどうということを言っておるわけではありません。その後のこういう急速な円高の中で、今後経済見通しをどうお考えになるか。同時に、経済企画庁としては、一月の中旬に円高影響調査を各産地で行っておられます。これは発表されておりますから簡単で結構ですけれども、十七産地においては、生産額の前年比が二〇%から大きいところでは八〇%の減がある、こういう御発表をなさっておるわけでございまして、この辺の経済動向と現在与えられた現状、これについて御所見を伺いたいと思います。
  14. 赤羽隆夫

    赤羽政府委員 最近の大変急激な円高景気先行きに対する人々の懸念、不安というのを強めておることは事実でございます。また、先生ただいま御引用になりました経済企画庁調査局が実施をいたしました円高調査につきましても、特に成約が難しい、成約が不能である、あるいは新興工業国といいますけれども、NICS、特に韓国、台湾等の追い上げでドル建て価格を引き上げることもまた難しい、こういったようなことから、大変に輸出関連企業、特に中小企業、いわゆる輸出産地苦悩が深まっておる、こういう結果があらわれておりますし、これは経済先行きに対しまして大変な困った事態であるということは事実だろうと思います。景気に対して決していい話ではない、こういうふうに思っております。しかし、そうした経済先行きに対する懸念、不安というものが強まっており、かつまた、取引上におきましてもいろいろな混乱が起こっているこういうときであればあるほど、円高メリットデメリットというものを冷静に考えてみる必要があると私どもは考えております。  それで、円高につきましては、メリットデメリット両方あるわけでありますけれどもデメリットの方をよく言われますので、まずメリットの方をちょっと考えてみたいと思います。大体五つぐらい挙げられると思います。  一つは、内需主導成長パターンへの移行を促すということでございます。私ども経済見通しにおきましても、六十一年度四%成長というのを考えておりますけれども、これは専ら内需によって実現をする、外需は〇・二%のマイナスの寄与、こういうことになっております。先ほど先生御指摘のように、経済見通しの作業の前提となります為替レートを二百四円でやっております。それがきょうあたりは寄りつきで百七十九円ぐらいになっているそうでございますので、それだけ円高が強まっておるということでございますけれども、この円高が強まれば強まるだけ内需中心成長パターンへの移行を促す、こういうことが言えると思います。  第二番目のメリットは、対外インバランスの是正であります。  三番目は、金利引き下げの余地がさらに拡大する、こういうことではないかと思います。  四番目の点は、輸入支払い額が減少するということでありますけれども、これはいわば日本外国から製品あるいは原材料を輸入するに当たりまして、外国に対して支払う購買力の節約になるということで、国内購買力増加が期待できるということであります。それとともに、物価がより一層安定するだろう、こうしたメリットがございます。  しかしながら、物事にはやはり光には影が伴っておるわけでございまして、円高デフレ効果というのがございます。輸出数量の減退あるいは国産品と競合する輸入製品増加、こういうことでデフレ効果があるということでありますけれども、幸いなことにと申しますと、やや少し楽観的にすぎるかもしれませんけれども、石油の価格低下、こういうことで、そのプラスの効果によって一部分相殺される面があるだろう、こういうふうに考えます。やはり問題は、余りにも速い円高進行、これが成約等におきまして困難を与えておるというふうなことで、企業対応の時間的な余裕を与えていないということ、それからさらにどこまで円高になるのか、こういう不安な心理を醸成しているという点、こういう点が問題だろうと思います。これは円高経済というものに対する、移行する上で避けられないコストの面もございますけれども、ただそういうことを言っておったのではいけないということで、いわゆる緊急的な経営安定対策というのが従来からとられておる。これをできるだけ早く事務的な手続なども進めることによりまして、この効果を上げてまいるのが必要ではないかと考えております。
  15. 中島源太郎

    中島(源)委員 今、光の部分と影の部分を言われたわけであります。影の部分がまさに重要でありますが、光の部分の中で金利引き下げ機会を与えられておるというふうに解釈できるかと思うのです。その点にちょっと話題を移しまして、一月三十日に公定歩合が〇・五%引き下げられました。現在四・五%でございますが、金利を下げることによって為替相場を、だんだん調整されてきました円高基調をまた逆に引っ張る力が出てくるのではないか。しかし、〇・五%をやってみましたら全然痛痒を感じずに高騰し続けておる、高くなりっ放しである、こういうことでありまして、これは再引き下げには格好な舞台にはなっておる。通産大臣はきのうの閣議後、再引き下げを期待するというような御発言をされたと承っておりますし、かつては三・五%の公定歩合、金利があったではないか、こういう御趣旨のように承りますが、大臣、御真意はいかがでございますか。
  16. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 御期待申し上げます。
  17. 中島源太郎

    中島(源)委員 つまり、通産大臣としては再引き下げを期待をなさっておられる。また大蔵大臣も、中小企業では対策に困っているところが大分出てきているのではないだろうか、金利は日銀の専管事項であるけれども、全体的には低い方が好ましいというような御発言があったようでございますが、その真意をここで一応聞かしておいていただきたいと思います。
  18. 竹下登

    ○竹下国務大臣 昨日の閣議後の記者会見であったと思いますが、金利が下がるというのは、それを契機としましてやはり設備投資意欲も起こるでございましょうし、そしてまた全体の企業収益にプラスになる、こういう効果は私どももひとしく感じておるところであろう。今中島先生がいみじくもおっしゃいましたように、日米の金利差が、人によってそれぞれ違いますが、少なくとも三%以上ありますと、資本の証券投資等の流出によって円安基調に働くというようなことがよく言われておったわけでありますが、おっしゃるとおり、先般の公定歩合引き下げの宣言後は、既に織り込み済みであったとでも申しましょうか、そういう逆の働きはなかったということが実態でございます。ただ、かなり金利の自由化した商品等もございます。  したがって、いわば市中金利にマル公の引き下げが直ちにどれだけ連動するかということにつきますと、昔ほどの連動性はあるいはないかもしらぬ。しかし、郵政審議会等でも御理解をいただいて、結局二十四日からは預金金利等が下がるわけでございます。それでも感じますのは、公定歩合の発表から二十六日かかっている。まだ今日現在では下がっていないわけでございますね。それと、きょうの資金運用審議会でいわゆる資金運用部の預託金利がやっと決まる、こういう状態でございますので、そういう市中金利に本当にどれだけ連動するかというようなことも恐らく日本銀行等ではいろいろ考えられる要件ではあろうというふうに私も思いますが、日銀の専権事項とはいえ、環境が今御指摘のような環境にはあるということが一応は言えるのじゃなかろうか。問題は、それがどのようにいわゆる市中金利に連動していくかという点は、まあ大事なことではないかなというふうにも考えるわけでございます。
  19. 中島源太郎

    中島(源)委員 おっしゃるとおり、一月三十日に公定歩合は下げられました。長期資金金利その他、今月末それが実態として出てくるわけでございますね。しかし一方で、日銀総裁おいでいただいておりますが、日銀は日銀で、企業の短期経済の観測調査を今取りまとめ中でおられると思うのですね。もちろん、その他のいろいろな経済指標を取りまとめられながら御判断なさるのだと思いますが、今申し上げたように、少なくとも一月三十日の〇・五%は円相場には全く関係なかった。そういう点では再引き下げの格好の舞台にはなっておる。産業界取りまとめ中とはおっしゃるかもしれませんが、既にいろいろな諸情勢の圧迫要件が出ておるわけでございますので、この辺で再引き下げの御意思があるかどうか、またお考え方を伺っておきたいと思います。
  20. 澄田智

    ○澄田参考人 先般、一月三十日から公定歩合〇・五%引き下げを実施したわけでございますが、これは当面の為替相場景気、そうして内外の金融情勢等を総合的に勘案した上で適切と判断いたして実施したものでございます。現在はまだ、今も大蔵大臣からもお話がございましたように、預貯金の金利の引き下げは二十四日からでございます。それから、金融機関の短期プライムレートも二月の二十四日から引き下がる、こういうことでございまして、現実にそういった金利面での波及、影響の効果というのはこれからでございます。そういう情勢を当然見守っていかなければならない。私どもといたしましては、現在は一月三十日からの公定歩合引き下げの効果を見守っていくのが適当である、当面はそういう段階である、こういうふうに判断をいたしております。したがって、当面追加引き下げというようなことを考えている段階ではございません。  以上のことを念頭に置いていただいた上で一般論として申し上げますと、もちろん、公定歩合の引き下げは内需拡大に資するわけでございます。しかし一方、おっしゃいましたように、金利差を通じて対外債券投資をそれだけ刺激をする、余計対外債券投資が行われるようにする、内外金利差が拡大をいたしますものでありますから、そういう面を持つわけでございます。現在、対外債券投資は、やはり引き続き高水準を続けている状況でございます。したがいまして、そういう点等も勘案いたしまして、金融政策の運営に当たりましては、引き続き為替相場景気動向、これを含めまして、内外の情勢を総合的に判断し対応してまいりたい、かように存じている次第でございます。
  21. 中島源太郎

    中島(源)委員 いつどのくらいどうしようということは当然おっしゃれないと思いますが、今お話しの中でちょっと伺っておきたいのです。例えば公定歩合を〇・五%引き下げた、もしまた引き下げがあるとすれば内外の金利差は拡大をする、その金利差に向かって資本は流出をしてまいる、当然円が売られるわけでありますから円安の方向に向かう、円安になれば輸出を促進をいたすことになって貿易摩擦は一向に火が衰えないということでありますが、今おっしゃった中では、資本の流出は引き続き堅調と申しますか、これはそのまま続いておる、これの動向も見定めていきたい、こう話してございました。  一方、大蔵大臣、昨年の九月から対外証券投資の自粛指導と申すのですか、ちょっとブレーキをおかけになっておった、ここでそれを外そうではないか、こういうお考えのようであります。ここで、今金利差ができたらということも澄田総裁おっしゃったのですが、金利差をそのまま置いておいても海外に対する資本の流出はドライブをかけよう、大蔵大臣の方はこういうお考えのように受け取れますが、その意味を伺っておきたいと思うのです。
  22. 竹下登

    ○竹下国務大臣 元来、国際化、自由化したときは本当は流出規制なんというのは逆行することであると思っておりますから、本来国際化、自由化したらまさに市場に任せるべきものであるというふうに、本質的にはそう思っております。  ただ、去年七月、八月あるいは九月ちょっとにかけまして、大変に資本流出が多過ぎると申しますか、多いじゃないか。時にアメリカの国会議員さんなんかは、輸出で稼いだ上にそれでまた利稼ぎするかとか、こういういろいろな問題もございました。しかし、やはり規制をかける筋のものではない。ただ、一般論として言えることは、しかし為替リスクというものもありますから、むやみやたらと奨励することは、一般論としてでありますがお互い注意しましょうねという、これは、私はあの際悩みましたが、いわば抑制を呼びかけたわけでもない、一般論として為替リスクというものもありますよというふうなことを申し上げてみたわけであります。それもしかし後から考えてみますと、それから二十日ぐらいしてG5をやっているわけですから、為替リスクのことを承知しておって言ったわけでもございません、本当のところは。それだけの自信があったわけでもございませんし、したがって、通達で資産の何ぼにしなさいよとかいろいろ決まったものもございますが、その点は一般論として言ったのであって、今それはもう御心配要りませんよと言うわけにも本当はいかぬ課題でございますが、要するに、一般論としてそういうことを申し上げたが、円高基調そのものは当時と違ってもう定着したではないでしょうかというふうな、また一般論としての呼びかけというようなものがあり得るものかどうかということを記者会見で申しまして、事務当局でもひとつ勉強してくれと言っておるところでございます。  元来が本当は流出規制するべきでない国際化の中でございますから、非常に難しい表現になっておりますので、新聞のとり方も必ずしも一致した方向でもないという複雑な心境でございます。
  23. 中島源太郎

    中島(源)委員 お考えの心はわかるわけでありますけれども、そこで、いわゆる長期資本の流出でございます。これはいろいろな考え方があると思いますが、私は、国が生々発展する過程で自国の長期資本として流出をしてマイナスカウントを続けるということは、持論として必要だと思っておるのです。ただ、長期資本が流出して赤を蓄積していく、つまりマイナスカウントを続けていく、これは流出していった分がやがてそこに定着をいたして、また適正に還元をして自国の経済を下支えするような根っこに育っていただくべきものならば大いに歓迎すべきだ。ただ現在、そこで大蔵大臣の御趣旨をもう少し伺いたいのですが、長期資本が流出しておりますが、自粛要望をなさっても依然として続いておりますが、その大きな部分は証券投資だと思うのですね。まさに利ざやを目指して出ていく。だから、利ざや稼ぎと言って悪ければ、通常はマネーゲームとこう言われておるわけでございます。向こう側からすれば資金調達の一つの手段でありますから、喜ばれてしかるべき資金の流れとはいうものの、これは定着をいたすべきものではない。また非常に変わり身の早いものでございますし、したがって、定着をする長期資本の流出というのは一体何だろうと思いますと、それはやはり証券投資ではなくて直接投資に振り向けるべきではないだろうかと私は思います。  そこで大蔵大臣、今証券投資に非常に多く出ておって、それに多少のブレーキをおかけになった。本来自由だということは私もよくわかります。わかりますが、この証券投資を将来根っこに育つような直接投資に振り向けるという知恵はどこかにないものだろうか。これは民間の知恵だ、こうおっしゃればおっしゃるのですが、今大蔵大臣は言わず語らずの、非常に言葉では言いにくいし、新聞のとり方もそれぞれ違うんだけれども、G5の直前であったので、見通したわけではないけれども、そういうことが自然とブレーキになってくるという効果があるならば、やはり大蔵大臣が目指す方向、これは証券投資は少し抑えても直接投資に振り向けるべきだという言わず語らずの御指導もできないことではない、私はそう思うのですが、この辺のお考えはいかがでしょう。  ただ、その直接投資の中に、もちろん素人が言わずもがなですけれども、直接工場を建てて、経営者日本から行って、技術者も行って、多少の雇用機会を向こうで得るというのも一つでしょうし、その中には株式投資として、一〇%以上の株式でやはり経営参加する、そして向こうの企業を育てて、足腰を強くして、将来そこから適正な利潤、配当をいただく、これも含めた直接投資と申し上げていることはもちろんでございます。いかがでございましょう。
  24. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今おっしゃいましたように、あくまでも民間企業の責任と自主的な判断によるというのが建前でございますが、おっしゃる意味は大変好ましいことだと実際問題思います。それは今、分けておっしゃいましたが、直接投資をして、それで経営参加もして、あるいは幾ばくかとおっしゃいましたが、かなりの雇用の創出にもなったり、これは一番いいことだ。そこで、それにはやはりそういう環境をつくらなければいかぬ。今別に制限しておるわけでもありませんが、やはり自主的に判断しやすい環境をつくらなければならぬということは事実でございますので、それで私どもの方が、日本がと申しましょうか、日本政府が積極的に意思表示をして進めておりますのが国際投資保証機構、MIGAと申しておりますが、これが今手続が進められておるというのも一つの、投資保証機構ができますとリスクカバーができますから、そういうことは国際機関として大いに積極的に参加すべきだなということ。それから今度は、一例をすれば、中国なんかになりますと、まだそういう投資を受け入れるいわば勉強をしていらっしゃるとでも申しましょうか、そういうところへは人的交流をしまして、こういう環境をおつくりになったらどうですかとか、別に内政干渉じゃございませんけれども、向こうの質問に応じて、こちらが出かけましたり、それから向こうからいらっしゃいますと大変な、時には初歩的と思われるような質問もありますだけに、直接投資がしやすい環境をおつくりいただくことを前提に置きながら意見交換をしたりということで、原則的に今おっしゃいますような直接投資というものがやはり一番いい、何が一番か二番かは別といたしまして、私は好ましいことだというふうに思います。  それから一面、もう一つの議論としましては、最近やや定着した議論だと思いますが、日本はそれなりにいわば資本提供国としての、よしんば一時的な証券投資であろうと、資本提供国としての位置を得つつあるではないか、だからなおさら一層それが直接投資に回るのが好ましいという、いい意味における歓迎の空気もできつつあるじゃないかというふうに私は思っております。
  25. 中島源太郎

    中島(源)委員 大臣も同じ方向を考えておられる、大変心強く感じました。今のでよろしいのですけれども、少なくとも対外資産、負債の残高を見ましても、証券投資は日本はアメリカと肩を並べておるわけでありまして、例えば残高で見ると、八四年末ですけれども、証券投資は日本は八百八十億ドル、十五兆円ぐらいな残高があるわけです。アメリカも八百九十九億ドルですから、ほとんど肩を並べておる。直接投資は、日本の場合には三百八十億ドル、アメリカの直接投資残高は約六倍の二千三百三十億ドルぐらいある。つまり、証券投資では肩を並べちゃいましたけれども、後に根っこに残るような直接投資ではアメリカの六分の一程度の微々たる投資しかしておらぬ、こういうことでございます。  そこで、なぜ通産大臣においでいただきながらこういうことを伺っておるかというと、その直接投資の中には、さっき申し上げたような株式投資以外の直接出ていく、これは今の日本経営者の中には、やはりみずからペダルを踏むということにさわやかな勤労の汗というか、何か働かずにもうけるのはやましいわけではありませんけれども、むしろ働いてしまう。国内で生産をし、その生産がどのぐらいになったかというと、国土でいえば全世界の千分の三弱だと思いますが、つまり千分の三の国土の日本が千分の百の生産をしておるわけであります。したがって、どこへ出ようと、ペダルを踏み続けることに意味があるというよりは、これを何かに振り向けなければいかぬ。  その中で、通産大臣に伺いたいのは、国内でもペダルを踏んでおります。それから海外に直接投資をして、工場を建てる方の直接投資、経営者も行く、技術者も行く。これは今歓迎はされておりますけれども、二つの面で私はちょっと問題が出てきやせぬか。それは、これが今は歓迎されておっても、将来目ざわりになる可能性はある。それからまして中堅関連企業が一緒にくっついていくかどうかという問題であります。くっついていける人はそれだけの体力がありますが、そういうのがくっついていけばまた目ざわりが倍加するということもあります。一方、ついていけない中小企業、これは取り残された不安があるわけですね。これの問題は大きな問題だと思います。  それで、たまたま通産省では下請中小企業振興基準というものを見直されるということをけさの新聞で伺いました。これはいいんですけれども、心は。だから、親企業が下請に今の円高基調を安易にしわ寄せをするな、これは絶対避けていくべきだと思います。それは、この間も通産大臣はここの御答弁で、下請あっての親企業だから当然だ、こうおっしゃいました。それで結構なんですが、親企業と下請中小企業との間の問題だけでなくて、そういう押しつけられたデフレ効果というものは町の活性化まで消してしまう。中小企業が困れば町の商業、飲食業の灯まで一斉に消してしまう。その波及効果はよくも悪くも大きいわけでありますので、これはぜひ下請中小企業振興基準の見直しをしていただきたいのと、それから、海外進出に際して下請企業を無理やり従わせない、こういうことも織り込まれるように新聞ではありますが、この下請振興基準について伺いたいわけじゃありません。そういうこともやっておられますが、話を戻して、直接投資にドライブをかけた場合、外に対するあつれきと残された中小企業問題、この二つの問題を通産大臣、どういうふうにお受けとめになっていくか、これを伺いたいわけです。
  26. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 下請の基準の委細につきましては、中小企業庁長官から答弁をいたさせます。  海外投資の問題はもう中島委員の御指摘のとおりでありまして、海外に投資を盛んにすれば必ずその分国内の雇用に影響がある、当然のことですね、これは。だから、どういう選択をするかという問題だと思います。アメリカ側が赤字、赤字と騒いでおるが、貿易赤字の原因の一つは、世界じゅうに投資をして、安くていい物をどんどんアメリカに運び込んでいるというのも大きな原因の一つですから。日本などでもIBMを初めいっぱい企業がありまして、アメリカに製品や部品を売り込んでいるわけですから、それと同じ現象が日本に起きてくるということに当然これはなります。  しかし、当面、輸入と輸出にこれだけの大きな黒字が出たのでは、なかなか輸入をふやすといっても難しい条件がいろいろあるわけですよ。納期の問題を初め、自分の好きな部品であるかどうかの問題もある。したがって、投資をさして、それでその第三国から日本が輸入するという当面の問題、これはやらなければならぬ。しかし、これも余り過度にやるとアメリカと同じことになる。国内で雇用が減ったりなんかしますから、それはやはり労働時間の調整という問題で、週休二日制なんて言われる理由もそこに一つはあるわけです。それから、やはり将来に向かっては新しい産業を興して、よく新素材とかバイオとか、新しいエレクトロニクス、こう言われますが、そういうものを興して、付加価値の高いもので、労働時間が少なくともみんなが働ける職場もつくろうという基準を持ちまして、かなり中長期的に通産省としては取り組んでいきたい、そう思っております。
  27. 中島源太郎

    中島(源)委員 おっしゃるとおりであります。  そこで一つ、くどいようなんでございますが、直接投資といっても、どこかで形を変えても、ペダルを踏んでいる限りは日本の生産は上がっていくわけであります。それは国内的には非常に奨励すべきものだけれども、今国際環境はそこにない。しかし、金は動き得るだけの、差し引き十兆円の金が動いておるわけでありますから、それは将来根っこになるように、今すぐペダルを踏んで生産に結びつかなくとも、やはり直接投資の中の株式投資、経営参加投資として将来に残していくべきだ。例えばアメリカ、フランス、イギリスなどは、やはり百年単位の海外投資をして、それが貿易外収支として下支えをしておりますね。これは、それを言えば、いや当時とはやはり状況が違う、植民地政策その他があったときの投資と今は違うとおっしゃいますけれども、逆には今度サイクルも差があるわけで、百年単位のサイクルが今は十年単位のサイクルと考えてもいいわけですから、直接投資は十年単位で物を考えて、健全に還元されるようなことを、指導をそっちへ振り向けられるかどうかということを、また振り向けることを考えなければならぬ岐路に立たされておるときですから、これは賢明なる大臣方々にひとつ方向性をここでつけろというのではなくて、考える時期だと思うわけであります。  またそれによっては、これは話として言うだけで終わりますが、税制のあり方も違ってくるのじゃないかと思うのですよ。資本主義のあれですからいいのですけれども、例えば資本を流出してそれで健全な富が蓄えられる。ある時期、富が富を生んでいきますと、富の偏在に対して、これが自然に還元されるかどうかという一種のショックアブソーバーというか、その還元作用というのは、国家としては税がそれを行い得る点もあるわけだと思うのです。ですから、税制を考えるときに、国のこれからの長期資本の流出についてそういうこともしっかりした方向づけをやはりみんなで考える時期であろう、これだけ申し上げておきます。  そこで、中小企業から始まったものでございますから、中小企業に戻らせていただきます。  内需の拡大とこう言われるわけでありますが、今議論が外へ向かいましたので、ちょっと現実面で申し上げたいのですが、内需拡大と申しましても、中小企業の予算そのものはもう二千億ちょっとに限定されてまいりました。財投、産投入れてやっと一%超すかどうか。つまり前年対比で一般会計の支出は年々、かつての二千五百億円をピークにどんどん減ってまいった。それからまた、内需拡大に対しても適切なほど、あればあったで幾らあっても足らぬものでしょうけれども、そのときに厳しい財政の中であるならば、それを相乗効果を持たすように使うべきである。二重投資の愚は犯すべきではない。しかも、大蔵大臣は草の根民活とこうおっしゃっておるのですが、これはどういう意味か、改めて伺ってはおりませんが、民間活力の導入というと、えてして大規模プロジェクトだけに目が向きまして、そうすると地方都市は何していいのだろうか、こういうことであります。  例えば、一つの町づくりの活性化に大きな一翼を担っているのは商店街です。商店街の近代化というものには中小企業事業団から二・八%の高度化資金、あるいは無利子の特別高度化資金、これが用意されておりますが、それでもなかなか商店街は腰が上がらないのです。たとえ無利子でも、借りたお金を返していくのは大変だとおっしゃる気持ちもわからないではない。そこで、えてして商店街の近代化が行われるときには、その他のファクターと一緒に行われる。例えば道路拡幅と一緒に行われるということがあります。道路拡幅でもう商店は下がらざるを得ませんから、そのときに商店街を新しくする、二・八%の高度化資金を導入さしてもらう、こういうことですね。この点は、省庁が町づくりに対して、例えば通産省はコミュニティー・マート構想のモデル事業をやっておられるし、建設省さんはシェイプアップ・マイタウン計画、町づくりに複数の省庁が重なって日を当てるということは大変結構なことだ。町づくりというのは複合政策でございますから、いろいろな省庁がそこをやっていただいていい。  そこで、建設大臣おいでになりましたけれども、いわゆるケーブルボックスシステム、キャブシステム、これは電線の地中化でございます。大変積極的に取り組んでおられるわけでありますが、十年千キロというようなお考えもありますけれども、この円高基調の中では、これはむしろ上方修正していただいてもいいんじゃないか。  ただ、一つだけ伺いたいのは、そのキャブシステムの場合、これは大都市周辺に偏るという——偏らないと思いますが、間々そういう憶測があるわけです。そこで地方都市では、地方道その他拡幅場所が随分ありますよ。商店の近代化もそこまでは一緒にやっているわけです。ところが、皆さんそのときに一緒に電線の地中化もやりたいとおっしゃるのですが、なかなか電力会社、NTTさんと商店街の方々が相談をしているうちにタイムラグが起きちゃう。もしそれを一緒にやれば、同じ拡幅の中で側溝で、割に簡便な地下ケーブルボックスですからそれを同時にやっていくということで、せいぜい数百メーターのところですけれども、今のモデル地区だって数百メーターなんですから、これをやっていけば商業の近代化の二・八%が、店を明るくしただけじゃない、そこへ来る方が町じゅうがさっぱりした、何でこんなに住みよい町になったんだろうかと気がついてみたら、電線が地中化されたんだ、これは同じ資金を活性化させるための倍加した効果を生む。しかも二重投資の愚は犯さない。これはぜひ地方都市に対しても積極的に取り組んでいただきたい。建設省さんはもう積極論者でございますが、郵政、それからお呼びしていませんけれども電力、この辺のまさに総合の活力というものを考えていただきたい。せっかく御担当でございますから……。
  28. 江藤隆美

    ○江藤国務大臣 けさ大雪が降りまして、テレビを見ておりまして、これは除雪作業から通行、皆さん大変だな、こう思って実は今のお話を思い出しておったところです。  御承知のように十年間で一千キロ、十五のモデル地区、こういうことになっておりまして、地方都市の商店街の改造と一緒にやるという、そういう有機的なことは、いささかまだそこまで至っていないということが実情です。しかし、NTTの真藤社長も、私がやろうやと言ったら、いややりましょう。大体五千キロやりますというと、主要都市の表の、言うならば商店街のメーンストリートの電柱というのはなくなる、私はそう考えておるのです。それに対する総投資額が約二兆円、こう見ておるわけであります。  ちょうど、きのう、おとといからずっと予算委員会を通じて、円高差益が電力会社にもたらされて一兆円を超すだろうという話が出ますと、これはもうのどから手の出るほど欲しいもので、五十三年にやはり為替差益が出たときに、電力料金を一般に還元しろ、こういうととが国会で随分議論されたときに、結果的には一カ月一家庭二百七十円ですね。今度はもうちょっとあれかもしれませんが、しかし、公共の社会資本を充実するのか、家庭に何百円かずつ返すのがいいのか、これは私はやはり一つ企業の選択、政治の選択だろう、こう思っております。  したがいまして、渡辺通産大臣にも私は会うたびに、あれは流水占用料あたりからするともっともっと相談のしやすいものでして、あれをちょっとこっちへ寄こせ、寄こせ、こう言っているわけです。ですから、そういうものがキャブシステムの推進のために利用ができるということになれば、おっしゃるようなそういう商店街の再開発あるいはまた地方都市の地中化のためにこれは大いに役に立てる、こう思います。何か党内でも、自民党でも、藤尾政調会長のもとでいろいろ御検討が始まったと聞いておりますが、また中島さんは商工関係の専門家ですから、ひとつぜひそういう御意見が取りまとめられるように御協力をいただくとありがたい、こう思う次第でございます。
  29. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 ちょっと補足しましょう。  民活の積算値を見ておりますと、いわゆるケーブルの地下埋設、共同溝方式で事業を進めるというのが三年間で一兆円、そういう予算案が今出ているわけですね。ところが、通産大臣がいつも答弁しておりますように、御承知のようにサウジアラビアは、ディスカウントしてきたフィンランドとかイギリスの態度がけしからぬ、安値競争なら競争するよ、そして後に二十八ドルまでは行かなくてもしかるべく二十ドル以上の線に戻そうという作戦で、ようやくこの間イギリスのエネルギー大臣とテーブルに着いたわけですね。ですから、まだ不確定要素はありますが、しかし相当この油の値下がりというものが永続するとすれば——これは予算が成立してから後の話ですね、今まだ不確定要素ですから。例えば、三年間に一兆円という積算基準があるものならばせめてそれを早めることはできないのか、これは建設大臣などとも十分相談の余地があるし、それからまた、油が安定した段階において相当考慮の余地があるな、これは民活担当として先行きを慎重に眺めておるという状況であります。
  30. 中島源太郎

    中島(源)委員 あと二問ばかり申し上げて、同僚議員にお渡ししたいと思うのです。一緒に申します。全然別のことです。  法務省おられますか。——一つは、商法改正についてちょっと伺いたいわけであります。  現在行われておる商法改正は、大小会社の区分を中心に検討なさっておるというふうに伺っております。それから、最低資本金制度の導入あるいは登記所での公開義務とかあるいは専門家による調査の義務づけとか、こういろいろあるわけでございますが、どの程度現在作業が進捗しておるか伺いたいわけでございます。
  31. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 商法の改正につきましては、ただいま御指摘がございましたような問題点を中心として法制審議会の商法部会で審議が進められております、昭和五十九年の五月に問題点を公表いたしまして、その御意見を取りまとめた上、現在検討中でございますが、ことしの六月ごろに中間試案を取りまとめまして、さらにこれを公表して各界の御意見を伺った上で最終的な成案を得たいということで、法制審議会で現在慎重に検討中でございます。
  32. 中島源太郎

    中島(源)委員 現在検討中であろうと思います。ただ、その中で最低資本金、これは私も目にしておるのですけれども、株式会社は最低二千万円、有限会社は五百万円、これは一つのモデルだと思います。それを御検討中ですから、そういうふうに決まったわけじゃもちろんありません。私も、確かに中小の有限会社は十万円ぐらいの資本金でできる、株式会社は一人五万円で七人といえば三十五万円でできる、これは今の世の中で多少どうかな、こう思う点はあります。しかし、株式会社を二千万円ということにしますと、あながちこれは、ある意味で足腰が強くなる方に行けばいいですけれども、自己資本比率が結局ふえるかどうかという問題です。例えば二百万だけは自分で出すけれども、あとの千八百万は借りてくる。他人資本構成で別に余り足腰も強くならない、格好だけが二千万円の株式会社になったということもいかがであろうかな、こう思いますし、それからまた、これは御検討中ですから私、言いっ放しにしますけれども、少なくとも中小企業商業関係の線は一千万、五十人でありますから、この実態との整合性もあることだと思います。少なくとも今一千万、五十人で中小商業との、大と中小との差があるわけでありまして、これは株式会社二千万としたときに、それはそんなことはありませんけれども、とすれば商業サービス関係の中小企業はこの世になくなってしまうわけであります。つまり整合性を持たせるという点で、実態とよく合わせて御検討の中に組み込んでいただきたい、こういう御要望を申し上げておきます。  それから最後に、大企業は外へ投資をなさることができますね。残された中小企業の点をもう一つ私、最後に伺いたい。  中小企業といっても、私もある中小企業の息子さんの結婚式に立ち会ったのです。総勢六名、二十そこそこの花嫁さんは結婚してどこへ旅行に行かれるかと思っておったんですが、手に手をとって工場へ行ってしまう。その日から七人目の戦士として働いておられる。それでゆっくり話もできないから、ことしの正月の五日に訪ねていきましたら、家は空っぽで隣の吹きっさらしの工場でまた七人汗まみれになってやっているわけです。これは設備関係じゃないのですよ。で、親会社から暮れの二十八日に社員が来て仕事を置いていった、一月の六日までに上げてくれ。これは金型の補修、メンテナンスです。しかし金型というのは今コンピューターで削っているのですから、それのふぐあいを直すというのはもっと研ぎ澄まされた精緻なもので六人がやっているわけです。ですから、本当を言えば国民休日も何も関係ないところで下支えをしている。それは一次受注、二次受注、三次受注としてそこへ来るわけじゃないのです。あるとき突然一番の親元から社員が来て置いていく。それなくして食えないのです。また、それあるがために自分の技術力というものを売っておられるわけですから、さてその親工場が外へ出ていってしまったら一体何が残るのだろう。そういう方々の技術ストック、技術資産というものをどこで担保をしてさしあげられるのだろうか。これは一つはやはり特許、パテント、工業所有権あるいはロイヤリティー、こういうものを担保してさしあげる、一つの象徴ですけれどもね。何かないと、ストックがないとこれは大変なことです。それは技術ストックだと思います。  ところが、そういう方々も、次々に編み出されるのだけれども、なかなか特許庁へ書類を出すそんな暇はない、親会社が出すかもしれないし。そういう面で、私が言っておるのは特許申請に限って言っているわけじゃありません。親企業はどこかで担保される資本投資などもあるのだけれども、本当に根っこを支えている中小企業に対して、そこにストックを担保する何かやはり心がなければいかぬのじゃないかという意味でお尋ねをしておるわけでございます。  これをお尋ねをしまして、最後に総合的に、江崎長官にはほとんど黙って聞いていていただきまして大変恐縮でございますが、言うなればこれからの経済運用、それからそれに対する問題、特命相もなさっておられますし、対外的なこともなさっておられますが、国内では意外と小さいところで総合施策が行われる。すると、総合調整機能というものはやはりどこかで見ていて、置いておいていただかなければいかぬ。それはまさに江崎長官のところじゃないか、こう思うのです。今小さいところで、時間があれですから話を切りますが、最後に江崎長官の御所感等を伺う前に、まず簡単に答えてください。——じゃ、それはいいです。私は心を申し上げておるので、パテントがどうこうという問題じゃありません。一括して江崎長官に御所感をいただきまして、質問を終わらせていただきます。
  33. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 大変示唆に富んだ御質問で、私ども感銘深く承りました。  おっしゃるように、まずデレギュレーションの問題、これは規制緩和の問題、今取り上げられた問題一つとっても、私どものところが中心になって、既に建設省、通産省それから国土庁、こういったところともうちょっと話し合いをしてみようじゃないか。簡素にして能率的ないわゆる行革というなら、まさにオーバーラップしたところを簡素化し合理化する、こういうわけですから、私はおっしゃるとおりの考え方で進めるのが今後の行政改革、特に中央省庁の今後のあり方でなければならない、これはよく承りました。  それから、おっしゃるように商店街の近代化、これは本当に民活ですね。ただ残念なことに、改造中にどこで商売をするか、それの間にお得意をとられるから困るというので思うように進みませんが、そういうことの考え方、そういうことのリードをもっともっと進める必要がありますね。  それからもう一つ、第三セクターで全国的に大きな効果を上げておるのは、私は優良宅地をつくる土地区画整理だと思うのですね。あれは大規模ではありませんけれども、全国的な規模で行われておる。今お示しの商店の近代化、土地区画整理、こういったものが総合的に大きく推進されることが全国的に潤うことである。民活の根本は最も足元の近いところにあるな、さっきのお示しでしみじみ同感でございます。
  34. 中島源太郎

    中島(源)委員 終わります。ありがとうございました。
  35. 小渕恵三

    小渕委員長 この際、中馬弘毅君より関連質疑の申し出があります。中島君の持ち時間の範囲内でこれを許します。中馬弘毅君。     〔委員長退席、林(義)委員長代理着席〕
  36. 中馬弘毅

    中馬委員 限られた時間でございますので、二、三質問を通告いたしておりましたが、防衛問題に限って質問をさせていただきます。  まず、防衛行革についてでございますが、昨年の十月に防衛庁内に業務・運営自主監査委員会が設置されまして、ことしの一月、「業務運営に関する改善検討事項」の取りまとめが行われました。これまで防衛関係の行革というのは、行革から聖域という形になっておりました。しかし、これがこういう形で少し行革が進み始めた。防衛においても効率的、効果的な体制の確立が必要なことは申すまでもないわけでございまして、このことは防衛庁が自主的に取り組んだということで評価したいと思っております。  ところで、防衛庁長官にお尋ねしますが、この検討事項、この中にはもちろん統合運用の問題その他金目のものじゃないものもたくさんありますけれども、共通装備品、物品等の補給の一元化とかあるいは警備や厚生その他のこれまた一元化、あるいはいろいろなものの民間委託、民間宿舎の借り上げ、レンタルの拡大、こういったことが入っております。こういったことが実施されたとして、どの程度の費用節減効果があるのか、お教えいただきたいと思います。
  37. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 いわゆる臨調で防衛庁の内局等につきましてはいろいろ答申をいただきましたけれども、いわゆる自衛隊の運営そのものは、事の性格上、別途検討します、ある意味では、防衛庁、自衛隊で自分でしっかりやってください、こういう意味だろうと思います。  そこで、一月に検討項目を提示して、今作業をやっております。そのものの中には、うまくいけばかなり経費の節約になるものもあろうと思いますし、そんなに節約にならないものもあろうと思いますが、現在のところ作業を開始したばかりでございますので、どの程度の経費の結果になるのかということについては、まだ申し上げられる作業状況ではございません。
  38. 中馬弘毅

    中馬委員 こういうことを努力されるわけですから、ある程度の費用節減効果はもちろん出てくると思います。  ところで、中期防衛計画で規制されておりますのは、計画の内容それ自体なのか、あるいは十八兆四千億という金額総額なのか、この点をちょっと確かめておきます。中期防衛計画で決まっているかどうか。
  39. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 中期防衛力計画で決まっているのはとおっしゃいましたか。
  40. 中馬弘毅

    中馬委員 というのは、計画それ自体がございますね。計画の中で、例えば金額が変動したといったら十八兆四千億が減るのかという意味です。十八兆四千億という金額はそのまま固定して、それだけ費用節減効果で浮いたらほかのものも変わっていくかどうかということです。
  41. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 十八兆四千億という五カ年計画の金額は、これが上限のシーリングでございますので、毎年度の予算編成の際にいろいろ検討した結果この部分は倹約できるというものがあったならば、当然その部分は減ってまいりますし、またその辺は、財政当局は極めて有能、厳しい人たちですから、もうすぐ目をつけられると思います。
  42. 中馬弘毅

    中馬委員 最近、円高が急速に進んでいることは御承知のとおりでございます。石油価格が大幅に下落いたしております。こういうことで、中期防衛計画で決められた調達価格はかなり下がるもの、こう予想していいかと思います。それと先ほどの改善努力の積み重ね、こういったことで毎年の予算、これは総額ではGNPの一%を超えていると言われておりますけれども総理もそれを努力するとおっしゃっているわけですから、何とか一%の枠内におさまるように努力していただきたい、このことを要望いたしておきます。  ところで、大蔵大臣にお聞きいたしますけれども、防衛予算についてそれぞれ防衛庁に予算要求の枠を提示して、そして概算要求が出てきて、それで中身の査定をされます。どのような考え方、方針に基づいて査定されるのか。それこそ防衛庁のもちろん優先順位その他がありましょうけれども、それだけではなくて、何か中身を見ていますと、どういう基準でやられたのかがわからないようなこともあるわけでございまして、どういう方針に基づいて査定されているのか、その態度をお聞きしたいと思います。
  43. 竹下登

    ○竹下国務大臣 基本的には、現下の厳しい財政事情を勘案して、やはり国の他の施策との調和をどこに求めるかというのが私どもの念頭には実は絶えずあることであります。  手法といたしましては、御案内のように概算要求基準を設け、そしてその中の優先順位というような点につきましては、まさに防衛庁の中で、そして内局で積み上げていただいたものを今度は我が方のいわば財政当局とさらに濃密な協議を進めて、その上ででき上がっていく、こういうことになるわけであります。したがって、必要最小限の経費、こういう考え方に基づいて、優先度と効率的資金配分というところに気をつけながら財政当局としてはこれに対応をしておるということであろうと思います。
  44. 中馬弘毅

    中馬委員 先ほど申しましたように、この円高、石油価格の低落が出ております。この影響で調達価格が下がった場合に、これは言わずもがなの話かもしれませんが、もちろん予算枠の範囲でほかのものへの流用、こういったこととか、あるいは値段が安くなったから購入量をふやすといったようなことは、大蔵省はお認めになりますか。
  45. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 予算の執行上の問題でございますが、もちろん執行の過程で為替相場がどうなるか、あるいはまた油などにつきましては原油価格それ自体がどうなるかというようなことで大変左右をされるわけでございますが、私ども、お話がございました、いわば自動的に浮いた分をそのまま何かに使っていいというような態度をとるのはいかがなものか。いわば、言ってみればそういった他動的な要因によりまして浮いた財源でございますので、その使い方につきましては極めて慎重であるべきであるというふうに考えております。
  46. 中馬弘毅

    中馬委員 予算制度の根幹にかかわることですから、あえて念を押した次第でございます。私たちが防衛予算の対GNP比一%枠、この堅持にこだわり続けますのは、やはり防衛行革を推進ささんがためであり、また限られたこの予算の中で効率的、効果的な防衛体制をつくってもらいたい、こういう願いからこのことを主張しているわけでございまして、逆の見方をすれば、むしろ防衛充実論かもしらぬと私たちは思っております。  その観点からすれば、今回の改善検討項目、まだまだ不十分と思っておりますので、少し根幹的なところで御質問させていただきますが、中曽根総理は海空重視論、水際防衛論、それから先端技術による防衛論、こういったことを予算委員会やあるいは安全保障特別委員会その他でたびたび何度もおっしゃっております。しかもかなりはっきりとした形で、五九中業にもこれを指示する——その指示という言葉は少し訂正されましたけれども、いずれにしてもそのことを反映するんだ、こうおっしゃっておりましたが、しかし出てきたものを見ると、この予算にしましても中期防衛力計画にしましても、どうも反映された様子が余りないのですね。  防衛庁長官、もう聞く時間がないからそれではこちらで申し上げますけれども、六十一年度の海空陸の比率を申しますと、海二七・二%、空が二九・九%、陸が半分近くの四二・九%。では中期防衛計画でその比率が相当変わっているかというと、これは変わっていないのですね。海が二八・六%、空が三一・一%、そして陸が四〇・四%、まあ一、二%下がっております。それぞれが一%ずつぐらいふえている。これはフローですから、ストックのことまでをもう少し変えていこうとするならば、もう少しフローの面で変化があってこそ初めて総理の言われる海空重視ということの意に沿うんじゃないかと思うのですね。  ちなみに、全体を海に囲まれたところで先進国といいますとイギリスでございますけれども、イギリスの場合に、海は二五・九%、空が三八・二%、これはかなり大きいですね、そして陸は三〇・六%。この三〇・六%のものの大半の陸上分は欧州大陸に配備されています、海外に基地を持っておりますから。で、イギリス本土に配備されている陸上部隊の予算比率といいますと、これは二・一%にしかすぎません。  国防の最高責任者、最高指揮権者、この総理の意向がなぜ反映されないのか。国防の最高責任者の意向も酌まずに、「防衛計画の大綱」ということだけが何か唯一のお題目として、総額的に総花的に予算を膨らませていくということであれば、これはシビリアンコントロールとは余り言えないわけでございまして、この点について防衛庁長官、どうお感じになっていますか。
  47. 西廣整輝

    西廣政府委員 昨年の五カ年計画をつくります際に総理からもいろいろ御指示を受けておりますが、それは今先生の御質問にありましたように、日本の地理的な特性にマッチをした防衛力を整備するということでございますが、それは必ずしも陸を減らして海空をふやすということに我々受け取っておりませんし、また総理の御指示もそういうことではなくて、陸そのものの装備なり、あるいは防衛方法についてもできれば水際までで撃破するというようなことでありまして、例えば対艦ミサイルを陸に装備するとかより機動力を持つとかいうようなこともございますので、必ずしも陸の装備費が減って海空に回すということではないと思います。  それともう一つ申し上げておきたいのは、陸海空の特性でございますけれども、海空の場合は彼我の力というものが拮抗していなくちゃいけない。ともかく地形、地物等を利用できないという点がございますので、そういう点では相手の力が大きければそれなりに大きなものを持たなくちゃいけないという不利点があります。その点、陸について言えば、みずからの国土で戦うわけでございますからそれなりに地形、地物を利用できるということで、ある意味では一番経済的な守り方であることは間違いない。その点、全体の経費枠との関係でございますが、それぞれの特性に応じて最も効率的なものを陸海空合わせたところで考えたいということで五カ年計画をつくったつもりでございます。
  48. 中馬弘毅

    中馬委員 防衛庁自体としては「防衛計画の大綱」というものが厳然としてあるわけですから、どうしてもこういう形にならざるを得ないのも理解をいたします。しかし、それを超えた少し大きな立場で効率的な防衛をどう組み立てていくかといったものがないと、あるいはまた、防衛庁だけに国の防衛を任すのではなくて、民間的ないろんなコミュニティーの人たちが協力するだとか、あるいは建設省がどう対応していくか、あるいは国土庁がどう考えるか、消防や警察がどう対応するかといったようなことをもう少し大きなことで判断しなければ、日本の本当の意味での国の防衛というのは絵そらごとになってしまうような気がいたします。  そこで、設置が予定されています安全保障会議ではこういうことももちろんおやりになるでしょうけれども、議長たる総理から、先ほど言ったような海空重視(これを少し具体的な形で、まあ総理も鉄砲担いだ兵隊さんの時代じゃないという表現までとっておっしゃっているわけですから、そういうことの御提案があれば、国土防衛体制の全般のあり方の見直し、これを安全保障会議で議題とすることもあるべしと考えていいのですか。官房長官が本当は出てきていただきたかったのですけれども……。
  49. 塩田章

    ○塩田政府委員 お答えいたします。  今回の安全保障会議への改組そのものは、御承知と思いますが、重大緊急事態が発生した場合の対処について論議するということがねらいでございまして、国防会議の任務はそのまま継承していくという考え方でありますが、お尋ねの点は、したがいまして現在の国防会議自体においても御指摘になっている点ではないか、こういうように思います。それを引き継ぎます安全保障会議におきましても、当然今御指摘のような点も踏まえまして、私ども、国防会議のあり方向体を今いろいろ反省いたしておりまして、また臨調等からも国防会議の活性化というような御指摘もいただいております。そういう点を考えながら、また安全保障会議、もし御設置を認めていただければこれを一つの契機としまして、そういった方向にさらに努力してまいりたいというふうに考えております。
  50. 中馬弘毅

    中馬委員 防衛庁長官、今もお話ございましたように、安全保障会議ではそういったことももちろん検討議題としていくのだ、活性化を図っていくという御答弁でございますが、安全保障会議の方から、ひとつこういうことも防衛庁は考えなさい、従来の大綱別表にこだわらずに少し枠を外してでも効率的な日本の防衛のあり方を考えなさいと言われた場合には、もちろん防衛庁はその指示に従って検討を始められるわけですね。
  51. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 シビリアンコントロールの最大のかなめというのはいわゆる国防会議であり、閣議であり、そして最終的に同会であるわけですね。そこで御議論いただくことというものは、当然のことながら我が国の防衛政策及び防衛力整備方針に反映されていくべきでありますし、これまでもそうしてきたと思っております。で、防衛庁が出しますのは防衛庁としての案でございまして、それが国防会議で御議論いただいていろんな変更を加えられたりするということは体制として当然あるし、またそうあるべきだろうと思います。そこで、私たちも従来から国防会議でいろんな御議論をいただいておりまして、それを参考にして最終案を決定してきたわけでありますし、将来もそうなると思います。  ただ、その枠の問題でございますけれども、一、二回この衆参の委員会で私たち申しておりますように、まあ大綱というのはあるわけですけれども、その中の別表の中の陸海空の仕切りを時には外してみるぐらいの発想で今後は検討を続けてみたいというような感じでおります。それが先ほどの自主監査委員会の中でも検討されることになるだろうと思います。
  52. 中馬弘毅

    中馬委員 このことにも関連するわけでございますが、「防衛計画の大綱」と総理その他が御答弁なさっていることとの矛盾があちこちで出てきているような気がいたします。それがあるがために少し話が食い違うといったようなことがある。これはやはりひとつ国防会議あたりで、あるいは今度の安全保障会議でもう少し整合性を持たせて議論を詰めていただきたい、このように願うわけでございます。  それと同じような問題になるのですけれども、次期支援戦闘機FSXの問題なんですが、これにつきましては大内委員が詳細に指摘されましたからここで詳しく質問はいたしませんけれども、しかしこれでも少し矛盾があるような気がいたします。と申しますのは、御指摘がありましたように、F1は航続距離が短い、全天候型でない、あるいは耐用命数がもう尽きかけてきている、こういうことで支援戦闘機の役割を十分に果たせない、そのように答弁もなさっています。しかし、これを十年間今後使うということをここでまた決めたわけですね、国産機の開発の完成までということのようでございますけれども。それであれば、ソ連の脅威ということもおっしゃいます、あるいは大綱の早期達成ということもおっしゃっておられます、水際防衛の重視、上がってきてからじゃなくて水際で撃ち落とす、こういうことの重視ということもおっしゃっております。それから効率的な防衛の整備ということもおっしゃっているわけです。それとこのF1をずっと続けるということは、個々には言いませんが、大変矛盾が出てくるように思うのですね。やはりこれであれば国防のことを真剣に考えていないんじゃないか、こう言わざるを得ないようなことになってまいります。ですから、陸の費用を少々削ってもあるいは人員を削っても、この水際防衛のためにF1の後継機を早期に決めるんだ、そしてその場合には、場合によっては海外から買うこともあり得るんだ、それは費用対効果の問題でその方が得だということの判断も含めてやるべきだ、このように思うわけでございます。他の条件を、兵器だということを除いて考えるならば、今あれだけのまとまったものを外から買うということに対しては、江崎長官の方から、配慮としてそれだけのものを買うと貿易摩擦その他の影響が少しは緩和するといったようなことについての御見解はいかがでしょう。
  53. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 先ほど来のやりとりを私ども間いておりまして、まだ防衛庁側も果たして買うかどうするのか、機種をどうするのか、その検討に入ったばかりだという話でございますし、もともと私どもの所管外のことでございますから、防衛庁の専門的な検討にゆだねたい。むしろ我々としては、中島さんのときに御指摘のあったような全国的にわたる民活をどう引き出すかとか、アクションプログラムが本当に正しく守られておるのか、また規制緩和など規格基準・認証など、そういうものが本当に実行に移されておるのか、そういうことを今チェックしておる段階でございまして、まだやるべきこと、またなすべきことは我々としても多うございますので、これは担当外の官庁としては答弁を差し控えたい、かように考えます。
  54. 中馬弘毅

    中馬委員 最後に、防衛庁長官にお聞きしますが、FSXの問題につきましては、ただ防衛庁の中だけの判断ではなくて、もう少し幅広い対外経済的な問題その他も踏まえて、最終的にいつごろどう決定されるかだけ御答弁いただいて、質問を終わりたいと思います。
  55. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 このFSXの選定につきましては大変に御議論いただいておりますけれども、私たちとしては、国民の大変大切なお金をいただいて防衛力整備をしておるわけでございますので、防衛上の観点から費用対効果を考えて、極めて客観的に公正に判断してまいりたい、こう考えております。  時期につきましては、できるだけ早く結論を出したいと思いますけれども、また慎重な検討もしなければなりませんので、特に現在のところ、どういう日程でデッドラインを決めてやっているというわけでもございません。できるだけ早く、かつ慎重にやりたい、こう思っております。
  56. 中馬弘毅

    中馬委員 どうもありがとうございました。
  57. 林義郎

    ○林(義)委員長代理 これにて中島君、中馬君の質疑は終了いたしました。  次に、川俣健二郎君。
  58. 川俣健二郎

    ○川俣委員 一番先に豪雪対策を通告しておったら雪が降ってきちゃって、きょうはどうしても大蔵大臣に特別交付税の六%の残り、さらに足りない分は予備費を少し取り崩しを確認しておかないと家へ帰れないので、田中角榮さんのように力はないのだけれども、雪国は大変な状態であることだけは言っておきます。  この順序でやろうと思ったら、通産大臣はどうしても時間があれなので、円高不況対策というのを先にやってくれというものですから。  これはどういうわけか、円高の不況が、ひがむわけじゃないが、豪雪の方にばかり多いのじゃないだろうが、問題は中小企業対策だろうけれども円高対策というのはイコール中小企業、しわ寄せは中小企業に来るわけですから。それの一つの例として十条パルプというのを出したのですが、その前に、きのう閣議が終わった後、一斉に経済閣僚の皆さん方が記者会見をなされたんでございますが、これは我々は記事を読むしかない、報道によるしかないのですが、通産大臣、これからどうしようということなんですか。もう一遍きのうの記者会見を聞かしてもらえませんか。
  59. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 記者会見のときに記者から質問がありまして、そこで心境を聞かれたわけです。私としては、諸般の情勢から見て機動的に金融の運営をやるというのが政府の方針ですから、期待をいたしております、こういうふうに申し上げただけでございます。
  60. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、具体的にはどういうことをおっしゃっているんですか。心境だけじゃ、とてもじゃないが、やはりある程度、評論家じゃないんだし、政治家なんだから、その手を待っているわけですから。例えば金利引き下げとかいろいろとおっしゃっているようですが、どういうことをおっしゃられているんですか。
  61. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 言ったことはそういうことを言ったわけですよ。あと解説は新聞社が書いたわけです。いろいろ金利の問題というのは微妙な問題がございますから、それで手続もかかりますし、物価の状況とか金利格差の問題、レート、みんな絡んだ話でございますが、それはある時期が来ればあと一段金利が下げられてもいいんじゃないかというふうにとられてもやむを得ない発言であったということです。ですから、そういうことを期待をいたしておりますと。
  62. 川俣健二郎

    ○川俣委員 あなたはその程度の心境を言うただけでいいんでしょうけれども円高で苦しんでいる特に地方中小企業は大変なんです、結局親会社に突っ放されるという、こういう現象が方々に起きておるわけですから。  そこであなたは「急速な円高の進行によってデフレ効果懸念されていることについて「日銀は機動的に対応していない」」、これは報道ですからね。金利引き下げはその効果があって、かつては三・五%時代もあった。やはりこういうことが報道されると、待っている人がたくさんいるわけですから、だからきょう目録の総裁が何とかというのは、もう全部日銀にだあっと来ているわけですよ、今。それで何とか時間を後にしてくれないかと頼みに来たので、そういうことでしょうと、それほど緊迫しているわけですからね。ただ心境を吐露しているということだけでは通産大臣の役目を果たせないと思うのです。どうです、私が今言ったようなことはおっしゃったのですね。
  63. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 何%にするとか、そういうことを言ったわけじゃないのです。かつて三・五%ということもあったことがあるということは確かに言いました。それから政府の方針としては弾力的、機動的に対応するという方針を持っておるわけですから、そういうことも考えて、金利問題についてはいろいろ難しい条件がありますが、その時期がもうそう遠くないうちに来れば、機動的に速やかに、弾力的に対処してもらいたいということを言ったわけです。
  64. 川俣健二郎

    ○川俣委員 私も再引き下げは期待しておるし、必要だと思うのですが、大蔵大臣も閣議終了後になされたのですが、その辺を少し聞かせてもらいたいと思うのです。数日前に、金利引き下げと解散はうその範疇に入る、うそを言ってもいいということで、いろいろうそ談義をなされたようですが、その辺をちょっと少しさわってみてくれませんかね、期待しているものですから。     〔林(義)委員長代理退席、渡辺(秀)委員     長代理着席〕
  65. 竹下登

    ○竹下国務大臣 昭和五十五年でございましたか、国会開会中に衆議院で一回、参議院で一回公定歩合を上げたことがございます。そのときのたしか私の答弁で、幼少のころ聞かされたことがある、国会解散と公定歩合の操作は本当のことを言わなくてもいい、本当のことを言わないとは何ぞや、それは結果としてうそになってもその責任を問われない、こういうふうに言葉を選んで私お答えしたことを覚えております。あるいはデノミ宣言もその中に入るのじゃないか、こう言う人もございますが、その話は別といたしまして、確かに日本銀行の専権事項であって、昔は公定歩合の論議は閣議でもすべきじゃないという窮屈な議論があったということも、私は昔の話として聞かされております。  きのう私が申しましたのは、いわば公定歩合の操作は日本銀行の専権事項である。が、しかしG5のフォローアップのときにも、物価が落ちついているから利下げの環境は整っておるということは合意に達しておる、あとはひとつ中央銀行同士でよく相談、協議してくれ、こういうふうなところまでが限界だ。そこで先月に〇・五%下げられた。が、これが本当に預貯金金利の下げとして、あるいはきょう決まります預託金利の下げとしてこれが出てくるのは今月の二十四日だ。この前は七十五日くらいかかりましたが、今度でも二十六日かかっておる。したがって、その利下げの影響等も見る前に、G5で合意した環境が熟しておる、これ以上に踏み出すことは、これはなかなか難しい問題であろうが、元来金利が下がるというのは、これはいわば企業収益に利するところでもあるし、そしてそれが設備投資を刺激する一つの要件にもなるだろう、こういうふうに極めて抽象的にと申しますか、言葉を選んでそういうコメントをしたことは事実でございます。  そこできょう、今情報によりますと、十時から我が省の関係者、それから通産省の関係者が官房長官のところへ呼ばれて、我が省で申しますならば金融はどうなっているかということと、それからせっかく通してもらったあの補正予算の中の六千億のいわば債務負担行為を契約を急がすにはどうしたらいいかとかいうようなお話では恐らくなかろうか。それから通産省の方は、これまた国会で十一時過ぎまで議論して法律を通していただいた、それの適用のスピードとか政省令とかそういうものがどうなっておるか、こういうようなことで、いわば内閣の番頭さんがそういうことの事情聴取をされる。今聞きますと、経済企画庁の方でもそれを受けでいろいろなアクションを起こすことを考えていらっしゃる、まことに結構なことだ。特に、補正予算を早く通してもらったし、そしてこの間の特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法、これも通してもらったのですから、それの効果が出るような配意を直ちにしなければならぬという構えで取り組んでいらっしゃるな、それに我々もおさおさ怠りなくこたえなければいかぬな、こういう心境であるところでございます。
  66. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それじゃ、ついでですけれども、きょう一斉に四野党の共同修正案を発表して皆さんにお見せいたしたのでございますが、正式には明日でございますが、これは円高対策とか内需拡大、経済摩擦等いろいろと総合的に考えて、最小限度このぐらいだということで四野党と話し合ってまとめたものでございますが、これを大蔵大臣がごらんになって、いずれ御回答いただくことになるわけですが、どういうような感じをしたでしょうか。
  67. 竹下登

    ○竹下国務大臣 党対党と申しましょうか、そういう話の範疇には、今政府の立場におりますから、一応入ることを差し控えさせていただいて、きのうも四人エレベーターの中でちょうど会いまして、まさに密室の中で私を含んで五人おったのでございますが、汗かいてつくったろう、それは御苦労さんでした、こう申しておきましたが、政府としては——国会の問題は別ですよ、政府としては、政府・与党が苦心して、その前に与野党の政策関係者の会議等も開いたりして、現状においてはこれが最善のものなりとして今御審議いただいておるわけでございますから、すぐ飛びついて、修正案まことに結構でございますという立場にないというのは、これはやはり原則そうではなかろうかと思います。
  68. 川俣健二郎

    ○川俣委員 経企庁の長官にも来てもらっていますが、やはりきのう記者会見なされたのですが、私の報道のあれを拾ってみますと、長官のおっしゃるのは「投機的な動きがある。市場が自律的に反転し、長期的にみてある種の産業に極端な打撃を与えないような妥当な水準で安定するよう期待している」こういうように何となく評論家的なような発言なんですが、やはり政治家ですから、政府ですから、さっきから申し上げているように、この問題に非常に期待しているのですから、その辺も含めて少しお聞かせ願えませんか。
  69. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 先ほどから、段々大蔵大臣からも答弁がございますが、この為替レートあるいは金利というような問題は直接経済企画庁の所管ではございません。ただしかし、この問題は経済の根幹を揺るがす大きな問題であることも事実でございますし、また現実に今中小企業を中心として、先生がおっしゃっておられますとおり非常に大きな影響が起こってきておるということを私ども認知をいたしておりますので、現地の声を聞きましても、為替レートというものはできる限り、やはり何よりも安定をしてもらいたい、こういう声を私ども聞いております。そういう意味におきまして、私ども直接の所管の官庁ではございませんが、為替市場が安定することが望ましいということを申したつもりでございます。  それからもう一つ、やはり為替がこういう状況になりますと、必ず投機的な要素というものが起こってくる。これは我々としては、投機は投機であって、市場の本当の安定したレートというものの形成にはならないんだということで私ども申していくことが、また市場の雰囲気を鎮静化させるという役割もあるのではあるまいか、かように考えまして、発言をした次第でございます。
  70. 川俣健二郎

    ○川俣委員 論議している暇がないのですが、それでは具体的にどういうように対策を考えてくれているのか、通産省に伺います。  この前もちょっとお話を出しましたが、木材資源に立脚して地域産業を担ってきた十条製紙、今名前は十条パルプという別会社にして、一〇〇%になっておるのですが、これが突然「四月末に会社解散 円高響く 関係業界に影響必至」。工場閉鎖、全員解雇、約五百人。それからこれは、DP、溶解パルプですが、全面撤退。こういうように地元のあらゆる報道機関なりに出ておりまして、関連が二十社もあるのですね。チップ工場とか運搬とか、やがて木材やそして川上の山林まで響くわけですね。したがって「関連企業は大打撃」、地域商店街も影響大。これは一紙ではなくてあらゆる新聞に出ておるので見出しだけ読み上げるわけですが、営林局もいよいよ流通確保に動いておる。県内チップ業界に大打撃。県も、抜き打ち解散とは何だ、抜き打ち解散と反発。「倒産回避と会社側」。そこで親会社にも働きかける、行政側も動いておる。そして地元の秋田市も本社を訪れております。  こういうように、地元ではこれによって来るところの波紋を大きく起こしておるのです。それでは通産省は、これを前から手がけておるようですが、どういうように対策を考えておるのか、まず事務当局でもいいからちょっと聞かせてくれませんか。
  71. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 私ども大変憂慮いたしておりますが、十条パルプの製品の主たる用途でございます綿スフ業界、大変需要が減退をいたしておりまして、今後とも立ち直るめどはほとんどないわけでございます。加えまして、最近の円高という情勢のもとで、南アから入ってまいりますパルプに対する競争力を失ったというような状況でございまして、現在の生産状況あるいは操業状況のもとでは変動費も稼げない、生産すればするほど赤字が出るというような状況になっておるわけでございまして、操業を続けることが難しいという実態認識は持たざるを得ないのではないか、現在の状況はやむを得ざるものと思わざるを得ないのではないかと思っております。  なお、十条パルプ自体の従業員は私どもは三百四人と聞いておりますが、御指摘のようにそのほかに関連部門がいろいろあるわけでございます。現在、十条パルプは、今後の対応ぶりにつきまして労働組合あるいは地元と真剣な話し合いを開始いたしておるという状況だと承知いたしております。
  72. 川俣健二郎

    ○川俣委員 承知しているだけじゃだめなんだ。十条製紙から十条パルプに分離、独立した際に協定を労使で結んでいるわけですね、別会社になってもつぶさないと。これが昭和五十五年なんだ。そういう経緯もある。通産省が知らないわけはない。だからこれは、通産省としては存続について強く行政指導で当たるべきだと考えるのは当然じゃないのか。やむを得ないのだという言い方だったら、通産省という官庁は要らないのかなと思うのですよ、そうでしょう。
  73. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 御指摘のとおり、十条パルプという企業が設立されました際に、十条製紙と労働組合の間で、十条パルプが長期に存続できるように物心両面にわたり全面的にバックアップするというような確認が行われておることは私どもも承知いたしております。  そういうような経緯もございますだけに、私どもといたしましても、今回の状況の背景につきましてはかなり詳細にわたりまして実態のヒアリングをし、また関連状況をいろいろとチェックしてみたわけでございます。しかし、現在の状況ですと、先ほど申し上げましたような認識を持たざるを得ないわけでございますが、影響が大変大きいということは私どもも重々承知いたしております。特に雇用問題につきましては、企業自身も誠心誠意事に当たりたいというぐあいに申しておりますけれども、私どもといたしましても今後さらに企業サイドの対応ぶりを十分チェックし、またその成り行きを真剣に注視し、見守っていかなければならないというぐあいに思っておる次第でございます。
  74. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それじゃ大臣、伺いますが、これから円高差益の還元等も含めて後で伺いますが、これは皆さん御承知のように親会社というのは十条製紙、解体前のかつての王子製紙ですね。業界第三位、六・六%のシェア、こういうように四季報に書いてある。特に四季報には特記として、土地所有で有名である、五億八千万平米。事業内容は新聞紙三二%、一般洋紙四六%、情報関連が一〇%、パルプほか一二%、こういう事業内容。特に今帳票用紙、伝票とか帳面等の需要が順調であるという特記事項もある。資本金は二百億以上、売上高が千七百二十億、この間の純益が四十億。こういうことを考えますと、ただ理解できるとかなんとかというのじゃなくて、手をこまねいていないで、例えば両社の社長を呼ぶなりして対策を考えないといかぬのじゃないだろうか、むしろそれを地元は望んでいるんじゃないか、こう思うのですが、その辺を少し聞かしてください。
  75. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私企業でありますから、政府がいろいろなお手伝いをしてもおのずから限界があることも仕方のないところでございます。しかし問題は、雇用の問題をどうするか、それから地元対策として跡地会社の新設というものを何か考えられないか、既存の会社とか他の十条グループ企業への雇用のあっせん、こういうようなものをやってもらう、それから希望退職者に対しては特別退職金の支給、こういうようなことなど全部考えられることをできるだけやってもらいたいということで、近日中に今おっしゃった御趣旨を踏まえて十条パルプと十条製紙の両社長を呼んで、今言ったようなことに最大限配慮をしてやってもらいたいということを担当局長から直接要請をさせます。
  76. 川俣健二郎

    ○川俣委員 やはりこれは四月解散という発表だから、そういうところは急いでいただかなければならぬので、両社の責任者を呼んでやるというところまで大臣が考えておられるのでしたらこれ以上はあれなんですが……。  特に労働省の方でもこれをつかんでいると思いますが、十条パルプの方は三百八人のうち八十二名だけ残して清算とかその他ですね、そしてほかは全部五十五歳から五十六歳の間はやめてくれ、五十六歳が定年だから。こういうふうにして大体具体的に出しておるが、しかし運輸関係を持っている共栄運輸は百二十三人いるんですね。この百二十三人は十条製紙から十条パルプに移る段階で一切、退職金清算をしていないのですよ。それなのに何らこの百二十三名の処置については発表していない、こういうこともあるし、労働省大臣でも局長でもいいのですが、これに取り組むという姿勢を示してください。
  77. 白井晋太郎

    ○白井政府委員 お答えいたします。  数字につきましては、今先生がお話しになりましたことは情報としてつかまえておりますが、労働省としましても、一般的に申しまして会社の解散等に伴い多くの雇用者が離職を余儀なくされること自体につきましては、当該会社のみならず、地域の雇用安定を図る立場からも非常に遺憾な問題であると考えております。御指摘の十条パルプにつきましては、会社側と労働組合の話し合いが何回か行われて現在も交渉中であるというふうに聞いております。これまで労働省として同社の休業等の雇用維持対策について三カ月で約一千五百万の雇用調整助成金の支給等を通じまして側面的に援助を行ってきたところでございますが、今後とも県当局等を通じながら情報を十分把握いたしまして、交渉のチェックをしてまいりたいというふうに思っております。今後労使が十分話し合いを尽くしまして、雇用の安定が損なわれない方向で解決されることを期待しております。
  78. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これはこの場ですぐに即効的な対策はできないと思います、長引くと思いますが、問答無用に三月末で終わるんだということでは、その辺がやはり行政指導を差し挟むところでございまして、ぜひそのように話をしておきたいと思うのです。  そこで一つだけ通産大臣、時間がないと思いますが、円高差益、特に石油問題できのうも業界が一斉に要求しておるようですが、為替レート一ドル十円動けば年百二十億、原油価格が一バレルが今までは三十二ドルですか、二十ドルぐらいになると九百億円になる、こういったような影響を勘案すると約一兆五千億ある。これはどなたもやはり注目するものだと思うのです。ただ、これを直ちにそれでは還元ということでは、五十三年のようなことで大した効果もなかった。各人に還元するのもどうだったかといろいろ論議があるが、いろいろな差益問題の発言集というのがあるくらい多くございます。通産大臣もおっしゃっていますし、あるいは自民党の政調会長の藤尾さんもおっしゃっていますし、あるいは総理大臣の諮問機関である経構研ですか、国際協調のための経済構造調整研究会、この人方は円高差益は国際的公共事業に投資するなど世界に還元すると、いろいろなことを言っておりますが、担当である一番の元締めの通産大臣は、ちょっと端的にわかりやすく発言していただいてお帰りになっていただきたいのですが……。
  79. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 円高差益問題ということになると、通産省所管ではすぐに考えられるのが電力、ガス、石油ということになります。ところが石油の方は、御承知のとおり石油会社は今合計で一千億も赤字を出しておる。これは乱売競争みたいなことが尾を引いて、世間から見れば一体どういうことになっているんだと言われるような話になっているわけです。認可料金であるガス、電力の問題は黒字がだんだん出つつある。しかし問題は、石油の値段がどこまで下がってくるのか、それによって黒字幅が変わってくるわけです。まだ非常に流動的である。しかしながら円高部分が定着すればそれは読めるということになっておりますので、皆さんからいろいろな御意見が出ておりますが、内需対策、景気対策にうんと力を入れろというような声が多いわけでございますので、そういうようなことには役立たせたい、そう思っております。なお、今までの料金のでこぼこ是正についても、これは直していきたい。そういうようなことで、皆さんからの御意見を、さらにそのうち専門家を選んで極めて専門的な立場から検討を始めたい、してもらうように検討を始めたいと思っております。
  80. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、大体いつごろ結論が出ると見ていいですか。
  81. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 最終幅がはっきりわからぬと、どれくらいのことができるかということがわからぬわけですから。石油が安くなったといっても、今入ってきたものは、特に去年の暮れまでは二十八ドル近い金額ですからね。十一月も十二月も二十七・何ドルというのが平均価格。一月に入ってからの話なんですね。したがって、全体の見通しがもう少し立たないと、レートの方だけは大体推定するが、値下がりの方が金額が落ちつかないわけですね。ですからひとつ三月決算を見なければならぬ。三月決算がまとまるのが五月ごろになりますから、そこらを見ながら、一方国際の石油の状況等も本当に安定的に下がるのか、スポットだけ下がってまた上がっちゃうのか。向こうも販売競争をやっておるわけですから、サウジとかそういう大きなところの出方を見ないと極めて不安定な話なんですよ。したがって、そこらのところも見てということですから、五月末ぐらいをめどにきちっとした対策を立てたい、そう思っております。
  82. 川俣健二郎

    ○川俣委員 いろいろなファクターが入ってきますから当然だとは思います。  ただ、さっきの話に戻るようですが、今急に円高でこれは大変だというので会社解散だという会社もあるものだから、やはりその辺が急いで行政指導の入るところだと思うのですよ。四月に解散しちゃって何もなくなっているところへ対策を考えられても何もならない。ぜひ両社の責任者を呼んでその辺の話もしてやる必要があるんだと思いますので、この点を特にお願いしておいて、あとは結構でございますから。  豪雪の問題ですが、この前、長期予報というか気象庁の長官においで願って、いろいろ話をみんなで聞いたのです。残念ながら余り当たって東京も大騒ぎなんですが、これはこんなものじゃない、東北、雪国の豪雪というのは。これは雪化粧というか、雪見酒というようなことを思い出す程度の雪なんですが、これが二メーター、三メーター、そして半年近く埋まっているわけですから。したがって、各人は別にありませんよ、もう長年やって雑損控除ですから。所得控除にはならない、まだ大蔵省は。それから雪おろしのための休暇、あるいは公務員には寒冷地手当があるが民間にはない。いろいろな問題がある。個人の問題を今やろうとしておるんじゃなくて、市町村、自治体、これは大変なんです。したがって、六%ある交付税、五千六百八十九億でしたかな、これは早急に出すように今準備されているようですが、まず自治省の方からその辺の方を大臣、ひとつ聞かせてくれませんかね、この辺の豪雪対策をどのように考えているか。
  83. 小沢一郎

    ○小沢国務大臣 ただいま御指摘の豪雪の問題でございますが、私も川俣先生の隣の北国の出身でございまして、私の地域におきましても先生の地域と同様に大変豪雪で困っておるところかあります。したがいまして、私もその雪のもたらすいろいろな費用そして災害等につきましても含めまして、大変身近なまた実感を持って感じ取られておるものでございます。今いろいろ実態を集計中でございますが、交付税の交付に十分その点を配慮しながら可能な限りの処置をとってまいりたい、そのように考えております。
  84. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そこで建設大臣にこれだけ伺っておきたいと思いますが、問題は、特別交付税だけじゃ到底足りないということは皆さんわかっていると思います。国土庁も自治省もそう思うのですが、そうすると建設大臣の方のところへ集めて、これは予備費取り崩しを大蔵省とかけ合おうということになると思います。その辺のことを少し聞かせてくれませんか。
  85. 江藤隆美

    ○江藤国務大臣 私ども南の者からしますと、雪は大変珍しくてきれいなものだな、こう思っておるのですが、この前から実は青森市の雪の対策を私はずっとテレビで終始見ておりました。いやしかしこれはもう聞きしにまさる容易なものじゃないなというのをつくづく考えておったら今度は東京が大雪になった、こういうことでありまして、よく調べてみましたら、青森県で同じ時期比べると八五%ぐらい雪の量が多いようですね。それから先生の秋田県は四一%、過去四年平均してみますと平均よりか四一%余計雪が降っている。それだけに雪寒地帯としてはこの除雪作業その他に要する経費がたくさん要る。これはえらいことだな、こう思っております。  実は雪寒対策に要する経費として建設省は二百三十三億持っておったわけでありますが、二月八日に残りの六十億七千万ぐらいだったと思いますが、それを支出しましたからもうほとんどなくなってきました。したがいまして、先ほど、吉野主計局長がおりますから、いよいよ足らぬごとなったら予備費の相談をするからな、こう言っておいたのですが、ちょうど大蔵大臣もおられますから。ことしは例年になく大雪の年ですから、それは積極的にやらなければいかぬ。それから市町村道が大変ですから、これは自治大臣も申し上げましたように、今までは交付税でやっておりましたが、しかし年によっては五十一、五十五、五十八、五十九というのは、交付税だけではなくて予備費を支出したこともあるようであります。したがいまして、ことしのこうした豪雪対策については万遺憾ないように国土庁とも今相談をしながら集計を急いでおりますから、出てまいりましたら大蔵省その他と御相談を申し上げていきたい、こう思っております。
  86. 川俣健二郎

    ○川俣委員 もう一つだけ。こういうときキングメーカーみたいな人が出てほしいなというふうに思うのです、それぐらい思っておるのだ、大蔵大臣にも聞いてもらいたいのだが。十八センチでしたかな、これだけ降っただけでも夜中から夜通しのニュースだ。だからこれは大変なあれだということを、青森へ調査で衆議院の方で行ってこられたようですが、大変にその辺は今建設大臣がおっしゃったようにもう予備費を取り崩す豪雪だと思います、四八豪雪を上回る豪雪になっているわけですから。したがって、そういうのを今集計しているというから、やはり先立つものなんで、せっかく主計局長の名前が出ておるのですから、あなたそういうのに少し認識を新たにして、あなた雪国ではないものだから非常に言いにくいのだけれども、篤と柔軟に対処するように一言言ってください。
  87. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 例年にない豪雪であるということを私どもも伺っておりますし、先ほど特に建設大臣からはお話がございました。先生御承知のとおりかと思いますが、国県道につきましては従来からできるだけ既定予算の枠内でいろいろ工夫をしていただきまして、なお足りない場合にはそれなりの必要な措置をとっているわけでございます。せっかく今関係省庁で御調査をなさっていらっしゃいますので、その結果御相談がございますれば、私ども十分検討させていただきたいと存じております。
  88. 川俣健二郎

    ○川俣委員 ぜひひとつ、これも春になったらもう要らなくなるのですから、ここ二十日かそんなものです。苦しみは二十日程度です。ぜひお願いしたいと思います。建設大臣、結構です。  それから、総務庁長官に来ていただいていますが、定年制の問題に入る前に、同じ労働問題で、きょう一斉に週休二日制が報道されましたね。これは大出俊委員が、ここにおられますが、中心になりまして、長年、やはり金融機関だ、こういうことで足を棒にして大出さんがあちこち歩いて、ようやくそれが八月の第三週から土曜日一斉に休む。金融ですから一斉に休まないと。したがって、それにちなんで官民、農協から労働金庫から全部それに右へ倣えという形が、足並みがそろったわけですが、これは労働条件の引き上げという要求だけではなくて、働き過ぎというか、先進諸国から指摘されておる貿易摩擦対策の観点からもぜひ我々は見守っていかなければならないという意味は、今度四週六休になるわけですからね。公務員の場合はどうなるか知らないけれども、金融の場合はそうですね。そうなると公務員と銀行の窓が閉まっておると中小企業が当然それに波及されるわけです。江崎さん、いろいろ長年この問題に造詣の深い方だということは伺っておりますが、やはりこの辺で公務員の問題をどうこれに波及するか、その辺を聞かせてもらいたくてあえて呼んだのですけれども……。
  89. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 週休二日制の問題は勤労者の福祉の問題そして今内需拡大、消費の拡大、私、その方を担当しておるわけですが、そういう面からいっても大変望ましいことだと思います。しかし、きょうたまたま中島委員の御質問で私も改めて数字をもう一遍見直したわけですが、中小企業が九九・四%、これは製造業が一億で三百人、卸売が三千万円で百人、サービス業は一千万円の資本金で五十人、こういうわけですね、これは釈迦に説法ですが。というわけで、現在四週での二休がようやく五七%程度、これは週休二日制の半分ですね。そういう傾向にあるわけです。したがって、それをにらみ合わせて、さて公務員の週休二日制をどう取り上げるか、これが四週五休制であり、昨年の人事院の勧告に伴って四分の二というから二分の一と言ってもいいわけですが、半舷休ませてそうしていわゆる四週六休制に持っていく試みを今やっておる最中である。したがって中小企業、幸い銀行の御提案もありましたが、やはりその動向などもにらみ合わせながら官の方は追随しませんと、なかなか国民の了解を得ることが難しいのではないか、そのあたりの状況判断も十分しながら労働基準審議会の審議の経過も踏まえて対策をしてまいりたい、かように考えております。
  90. 川俣健二郎

    ○川俣委員 せっかくそこまでお話し願えるんでしたら、じゃもう一つ。ここにおられる皆さん方がそれを期待をしておられるわけだが、いつごろになったら、これは八月になってからです、決まっているわけです、金融機関は。公務員の場合はいつごろと見ていいのだろうか。
  91. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは四週五休制を六休制にすることの試みを今やっておるわけですから、中小企業の動向、それから五七%というそのパーセンテージ、それらの社会情勢を眺めながら、世の中の理解を得て、そして簡素にして能率的な役所づくりをしようというのが行革ですから、その精神も踏まえながら、こういうわけですからなるべく早くやりたいと思いますが、今時期を特定することは差し控えたいと思います。
  92. 川俣健二郎

    ○川俣委員 中小企業の方はどうなんです。労働省、どうです。
  93. 小粥義朗

    ○小粥(義)政府委員 中小企業の週休二日制の普及状況は大企業に比べてやはり差がございまして、完全週休二日制となりますとまだ微々たるものであるという状況でございますが、お話のございました金融機関の週休二日制の一日拡大というのが八月から実施されますと、これは中小企業に対しても相当に週休二日制拡大のきっかけになるのではないかというふうに思っております。  私どもとしては、かねがね週休二日制の普及を重点に労働時間の短縮を進めるということで昨年六月以降対応を進めております。今後も、特に中小企業の場合は一企業だけでどうこうというのはなかなか難しい状況にございますので、できるだけ中小企業の集団といったようなものを対象に、今後積極的にそうした指導に当たっていきたいというふうに考えております。     〔渡辺(秀)委員長代理退席、委員長着席〕
  94. 川俣健二郎

    ○川俣委員 自治大臣に国保の問題、今国保税で大変なんですが、それを聞いてもらいたかったのですけれども、どうしても時間があれだということですから、ちょっとスポット的に、一般質問に入りましたので法案審議が始まっただろうと思いますので、一つだけ聞いておきたいのです。スポット的です。  選挙公報にうその学歴掲載、これがきのう既に最高裁で上告棄却という。これは当然我々選挙をやられる者は関心を持っていたわけですが、埼玉県の市長選挙での無効を訴えた報道が一斉になされておったわけです。それは、候補者の学歴がうそであっても選管としては選挙公報に掲載を拒否し修正させる権限も義務もない。私もそう思います。しかし、今後何らかの措置が必要ではないだろうかと思うのですが、例えば国会レベルの選挙、今は立会演説会もない、街頭といっても日数が非常に削減されて限度がある。選挙民の声は立ち会いがあった方がいいなとか、もう少し日数が必要だなというのがあるのです。あなたの方も人の割合にだだっ広いというところだから耳に入ると思うのです。そうなると、勢いこの選挙公報に判断をするよりどころが非常に大事なんですね。そうなると、政治家は公約とか方便、うそ八百を言う人力も多いのですが、しかしそれはうそなのか本当なのかというのはその時点ではわからないが、経歴、学歴というのは絶対なものだから絶対なんです。学歴は二つない。学校に二つ入れば学歴は二つあるだけ。とにかく二様はない。そういうところを何らか措置する必要があるのじゃないでしょうか。これはどうでしょうか。
  95. 小沢一郎

    ○小沢国務大臣 最高裁の判決等の趣旨についてはもう先生御承知で、そのようなものであろうというお話でございますが、選挙公報は公職選挙法に基づきまして、そして各市町村の選挙なんかの場合は各条例で選挙公報のいろいろな具体的な対応を決めておるわけでありまして、この立法の趣旨は、やはり法文上は原文のまま掲載しろ、選挙管理委員会が直したりいろいろ作為する権利も義務もないんだ、そういう法律の建前になっておるわけでありますが、法律自体の立法趣旨は、やはり選挙というものを候補者とそしてそれを全人格的に判断する主権者の、最終有権者の判断に任せるべきである、そこに選挙管理委員会がその中まで立ち入っていろいろやるのはよくない、そういう立法趣旨なのであろうと思います。  ただ先生御指摘のように、判例上は何か甚しく公序良俗に違反するものでない限りというような文言もあったように聞いておりますけれども、その点につきましてそういう本来の選挙というもの、それと今先生御指摘された明らかにわかるもの、これはおかしいじゃないか、何かないかという、その調和をどこでとるかでございますけれども、なかなか具体的にどういう方法を、今私考えを持っておるわけではありませんけれども、今回の判例を参考にいたしまして検討の課題にさせていただきたいと思っております。
  96. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それはぜひ何かやる必要があるような気がするのです。例えば選挙公報で、私はこうやりたい、私が代議士に当選したらこうやりたい、いろいろと書くわね。これはとがめようもないし、その人のあれなんですよ。だけど経歴、学歴というのは絶対でしょう。だから何書いてもいいんだ、選挙には無効にならないんだ、よろしいんだということの考え方に伝わると、これは、きょうは法務省呼んでいないのですが、時期を改めて詰めなければならない問題だと思いますが、何らかの措置をとらないと、この人の場合でも旧制中学中退の方のようですが、それが中学を出て大学まで入っている、こういうように書いていますね。ちょっとそういうような感じがしますので、これは大臣が検討するという事項であれば私もあれなんですが、これでいいんだということであれば私ももう少し言いたいので、ぜひ検討願いたいと思います。  それから、時間がなくなりましたが、今、定年制の延長というのが法案出されてきたようですが、どうしても五十四年度の予算の修正問題を思い出してしようがないのです。これは、法案は中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案、こういう法案ですが、この修正をめぐる問題は随分すったもんだやりまして、早期警戒機でしたか、あれは米国の証券取引委員会の海外不正支払いに関する調査報告が我が国に報道されて、グラマン、ダグラス問題で非常に紛糾したときであります。それで、やはり今ごろ要求して、二十七日、八日、一週間ぐらい中断して、その中に、労働・雇用問題、十万人の雇用創出ということで社会党が出して定年延長というのが出されたと私は思うのでございますが、ついでに申し上げますと、早期警戒機E2Cは議長預かりで予算凍結したというものでしたね、たしか五十四年だったと思いますが。この際に出たのがようやく今七、八年ぶりで定年延長制というのが法案できたよと言って胸張って持ってきたのですが、提案したようですが、大体内容をかいつまんで言うと、どういうことですかね。
  97. 白井晋太郎

    ○白井政府委員 お答えいたします。  この定年制の問題につきましては、今先生御指摘のとおり、昭和五十四年に予算審議の際の与野党間の経緯を踏まえまして労働大臣より雇用審議会に諮問したもので、それ以来の懸案でございます。労使鋭く意見の対立したところでございますが、高齢者問題が進む中で、国民的課題としてこのたび、一応定年を努力義務として認めるということで法制化を進めるようにという答申を全会一致でいただいたところでございます。  法案の中身につきましては、定年制を設ける場合に六十歳定年に努めなければならないという六十歳定年を一つの柱といたしまして、それから今後六十歳代前半層、六十歳から六十五歳に対して大きな高齢者の波が移ってまいりますので、六十五歳程度までの高齢者につきましての雇用の継続を含めました雇用機会の確保を図っていくということ、それから長い職業生活の中で定年後引退していくわけでございますが、その後も社会参加、いわゆる短期的な就業をしていきたいというような人々もおられるわけでございまして、これらに対する措置を進めていくという三つの柱を中身とします高齢者の総合的な立法を図っていきたいということでございます。
  98. 川俣健二郎

    ○川俣委員 問題は、どうせ七、八年お待たせしたのですから、主体は歯どめというか、六十歳まで定年制を施行しなければならない、労使双方で話し合って。それが法律だと思うのだが、これは雇用審議会、中央職業安定審議会等で論議されて、これが今のところは最善だということなんだろうとは私も理解するが、何か歯どめが必要なんじゃないかと思うのは、なぜこういうことをあえて私が言うかというと、きょうの新聞で、六十歳定年に東京商工会議所の賛意を五島会頭が述べられた。これは全民労協との懇談の際ですが、「東商としても六十歳定年に賛成だ」、こう言っておる。「大幅なコストアップになることは事実だが、高学歴化によって就業期間が短くなったのを考えると、定年延長は必要だ」と述べた上、その実施の方法については工夫していくしかないね、こういうことをおっしゃっておるから、これは義務じゃないんだ、こういう考え方なんですね。だからこの法案のあれを読むと、定年を引き上げるように要請することができる、労働省が定年を引き上げてくれないかということを企業に言うことができる。二番目は、定年引き上げに関する計画の作成を命ずることができる、また計画の変更もしくはその適正な実施を勧告することができる。三番目は、この計画を作成しないときまたは勧告に従わないときはその旨を公表することができる。みんなできる体ですね。これは身障者の雇用促進法をつくるときを思い出すのですが、使わない会社は公表するというところで対立したことがあるのです。今回は公表することができると。何となくできる、できるというようにうたわれるとしなくてもいい、こういうようになるのですが、その辺がどうなんですかね、これ。少し追い込むようですが。
  99. 白井晋太郎

    ○白井政府委員 定年に関する法律の中身は、今先生おっしゃったとおりでございまして、一定の行政措置を講ずることができるようになっております。  定年制の問題につきましては、先ほど先生も御指摘になりましたが、いろいろ議論があったところでございまして、今回大局的な見地からこういう解決を見たわけでございますが、先ほどの新聞の中身につきましても、賛成の立場に立っておられまして、その実施の方法については工夫していくということは、一番企業側が問題としましたのは、定年をアップすることによりまして賃金その他のコストアップにつながるということが問題でございまして、その辺についての労務管理、それから、定年を例えば五十五歳から六十歳に持っていきますについて段階的に進めていかなければならない、そういうような点についての工夫が要るというふうにおっしゃっているのではないかというふうに我々は受け取ったわけでございます。そういうことを基本にいたしまして、今回の定年の問題は、基本的には労使間の問題でございますけれども、この結論は現段階では社会的コンセンサスが得られた妥当なものではないかというふうに考えているわけでございます。それを法律上明確にしたということが非常に意義のあるところではないかというふうに思います。  先ほど御指摘になりました行政措置につきましては、労働省としましては、この法制化を踏まえまして定年延長のための指導、援助に全力を尽くして、その取り組みが十分でない企業に対しましては適切にその促進を図っていくための行政措置を講じていきたい、そういうふうに思っております。
  100. 川俣健二郎

    ○川俣委員 局長、棒読みでなく、結局七、八年かかりて法案ができ上がってきたんだから、しかも、これは予算修正という大変な大騒動の中から出た定年延長という法律なんです。七、八年かかってできた。この法律がなかったらこういうことを労働省はしないだろうから、定年延長というのは前から奨励しておったわけですから、奨励金をくれてやったり、呼んで、そういう世の中なんだよということを説得したりしておったんだが、この法律があるのとないのとどこが違うんだろうかな、こう思うんです。
  101. 白井晋太郎

    ○白井政府委員 お答えいたします。  先ほどからも先生がおっしゃいましたように、この法律をつくるまでには確かに長い過程がございました。そして、審議会で問題になったときから、労働省としましては昭和六十年、六十歳定年の一般化ということで行政指導を進めてまいりまして、その結果が、現在、五十一年には三五・九%しかなかった六十歳以上定年が六十年には五五・四%、計画その他を入れますと六八・七%まで進んでまいったわけでございます。しかし、この段階に参りますと、今後進めてまいりますについては、一般的にここまで進んでまいりまして、あと残った企業につきましては、それぞれいろいろ事情はあると思いますけれども、法律をつくることによって全体の水準を上げていくことができるというふうに思いますし、この定年延長についての全体の審議会でのコンセンサスを得て、この法律に明記するということによって企業に対してもそれなりの圧力が加わっていくんじゃないかというふうに思っております。
  102. 川俣健二郎

    ○川俣委員 二つの審議会のコンセンサスを得ての法律化というところに価値があると思うんで、ないよりはいいと思うのですが、特に公表できるんだ、今まではできなかったんだけれども。問題は、この法律の権威というものを行政指導で示していって初めてこの法律が生きるんだと思うので、ぜひそれは強く当たらなければならないと思います。  さらに、これは職業安定の職員方がやるのですか。東京都でも何人ぐらいいるのかな、百人ぐらいですか。これだけの大きな東京都の中小企業、零細のあれを足で回るのか書類を取らせるのか会議をしょっちゅうやるのかわかりませんが、何年かかってもこれはしつこく対処していかないといけないと思いますので、要求しておきたいと思います。  そこで、今市町村、自治体は国保税を引き上げるというので非常に大揺れです。これは自治大臣よく御存じだと思うのです。三千二百七十市町村あるそうですが、昨年秋の臨時議会で、市町村の議会で、平均三〇%、高いのだと四五%も値上げをしたというのが五百七市町村、三〇%以上で百市町村、一人当たり四万二千九百円、こういうのが資料として出ておるのですが、これはとりもなおさず、あれだけやっさもっさやって、どこまでもつくるというので退職者医療制度というのをつくった。ところが、四百十万人いると見込んだのが二百八十七万人しかいなかったために国保が大赤字になった。というのは見込み違いということをとがめているんじゃないのです。見込み違いはしようがないと思います。しかし、見込み違いも随分ひどいですね、四百十万人が二百八十七万人ですから。それをとがめるのではなくて、この制度が発足して一年ぐらい見て国庫負担の四五%を三八・五%に落とすのならいいけれども、この見込みであるから、四百十万人の人が勤めた会社の方から持参金のように持ってくるような制度をつくれば国庫負担は減るんだから、最初からばっさりやったというところから、そもそもボタンのかけ違いで金がなくなったというところから始まった。これは時間がないのですよ。したがって、これはどんなに検討しても、根本的に社会保障論という上に立脚して論議したのではないのです。これはいつでしたか、自民党の政調会長の藤尾さんが物と金で老人を見るのは失礼だよと胸を張って放送討論会に出ておったのですが、物と金がないのに社会保障ができるんだろうかなと思ってみたり、その辺が非常恒不可思議だ。  何のことはない。皆さんにお配りしたのをちょっと見てもらいますと、この長いのを、大きいのをちょっと皆さんに見てもらいたいのですが、結局こういうことなんでしょう。国保が赤字だ、国庫補助を減らしたのが原因だとは書いてない。国保が赤字だ、だからみんなで親孝行しようじゃないか、こういう哲学論を厚生省は振り回した。これは厚生大臣のような人格者が今ぽっとこの法案の上に座らされたと思うのですが、気の毒なんですよ。そうじゃないんだ。これは、この表でよくわかる。国保が千人当たり本当は百二十五人しかいないのです、七十歳以上は。ところが、一番下の組合健保の場合は二十九人しかいない。それを一応はやっさもっさやったんだが、国保は百人いたことにして、そのかわり組合健保は四十七人いたことにしなさい、ここまでは了解を得た。ところが、今度は再来年から一〇〇%という加入者按分率、これだと全部千人につき六十九人いたことにして拠出金を出そうではないか、こういうことなんです。まず、この表はいいですか、信憑性を確認しなければなりませんから。厚生省、どうです。
  103. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 お答えいたします。  ただいまお配りいただきました資料につきましては、一定の前提のもとに試算すればこういうわかりやすい表になるということでございまして、その一定の前提というのは、一人当たり五十万というふうに全部イコールの数字にする。それから、六十一年度につきましては九カ月分の予算上のセットになっておりますけれども、これも満年度で見るとか、そういういろいろな前提のもとに、わかりやすい資料ということではそのような数字になると思います。
  104. 川俣健二郎

    ○川俣委員 余りわかりやすくて困るんだろうと思うのですが、結局満年度になるわけだから、六十二年からずっと先は。そうすると、こういう姿になる。  そうなると、わかりやすくついでにもう半ベラのやつをつくってみたんですが、結局こういうことなんだ。国保は国庫負担と自分たちの負担。組合健保の場合は、おまえば潤沢なんだから国庫負担は要らないということになる。そのかわり自分たちの保険料で負担しろ。そうすると、この(B)欄にあるように今四四一七%という、実態から修正した、一回は修正した分ですら八千三百七十億国庫負担を出さなきゃならない。そのかわり保険料は六千八百五十億円。組合健保の場合は、国庫負担がゼロ、四千八百七十億保険料負担。それを、あなた方が考えた法案は、来々年度から国保は国庫負担は五千七百八十億で事足りる。保険料は四千七百三十億だ。そのかわり組合健保の場合は七千百三十億出しなさい。そうなると、右の方に書いておるように、差し引きすると国庫負担は二千五百九十億減って、保険料は二千百二十億減って、そのかわり組合健保がせっせとためた、経営努力でやった二千二百六十億は出さなきゃならない、こういうことになるわけだ。だから、これだけで私らは撤回要求しているんじゃない。  時間がないから資料だけ要求しておきますと、第一、差額ベッドと例のお世話料、お世話料とよく言いますね、こういうのを本当につかんでいるんだろうかどうかということをちょっと聞きたいのです。
  105. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 差額ベッドの状況についてはつかんでおりますけれども、お世話料の状況については現在調査中でございます。
  106. 川俣健二郎

    ○川俣委員 実態がわからないでこういうような一部負担とかなんとかということをやっちゃいけないよ、これ。やはり実態の資料をつかんで、この程度なら各人に負担してもらってもいいな、こういうのが当然でありまして、一応私の方で調査したところによると、お世話料は四万二千五百円、こういうように出ておるので、これは専門委員会の社労委員会でどうせ検討される、法案審議しなきゃならぬと思うが、それまでにこのお世話料と差額ベッドを、今調査中と言うから、出せるかどうか、ちょっと聞きたいのです。
  107. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 法案審議までに資料を整えて用意しろということでございます。努力をいたしまして、要求にこたえるべく、出すことを約束いたします。
  108. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それからさらに、老人保健審議会なるものは、ずっと前からのいきさつ、時間ないから読み上げませんが中間施設、これを大きく盛り込んだ法案でしょう。中間施設などを審議する機能がないんだ、審議会には。そうでしょう、今までのいきさつから言うと。あなた方にそれをよく説明したいんだけれども、時間がなくなっちゃって申しわけないのですが、どうです、審議会の機能にはないのです、これは。ないですよ、これ。老人保健法の第七条の二項に「保険者の拠出金等に関する」と、こういうふうに書いてあるんであって、この審議会にはこういうことをやる機能はないのです。そうでしょう。認めますか。
  109. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 老人保健審議会の権限事項として、拠出金等重要事項と書いてあるわけでございます。確かに法制定当時にはこのような施設を重要事項にするかどうかについては予想してなかったわけでございますけれども、他に適当な諮問機関がないということ、それから中間施設の財源が拠出金に専ら仰ぐということで、非常に密接な関連があるということで、私どもは老人保健審議会に諮問し御答申をいただいたところでありますけれども、拠出金等重要事項の中で権限内であるというふうに考える次第でございます。
  110. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それは何となく「等」だから「等」の中に入れるべきじゃないかと思うでしょうけれども、そうじゃないのだ。逆なんだ。こういうのをやってはいけないという経過がある。   老人保健制度の創設にあたり、老人保健審議会を設けるのかどうか、設けるとすればどんな権限と役割を附与するのかは立法上のポイントの一つでもあり、国会に提案された政府原案では「老人保健に関する重要事項」について審議するという立場から、老人の診療報酬支払方式、拠出金、一部負担、保健事業の進め方など総合的、包括的な権限を持たせることになっていた。このために国会審議の過程でも与野党最大の争点の一つとなり現在の規定となったものである。  こういうことなんだ。  それじゃ、対立して片づいたかといったら片づいていない。これを読み上げたいのだが、時間がなくなっちゃった。こういうものを入れてはならない——入れるか入れないかという対立点がそのまま、対立したままで政府提案どおりにやっていくというんなら別だけれども、それは除いているんです、この法律をつくったとき。そこまで細かく言う時間はないのですが、したがって、やはりこういう問題、いわゆる按分率の問題、せっかくためたものをごそっと。結局何のことはないでしょう、半ペラのあれは。国庫負担の分をサラリーマンの積み立てから持ってこいということでしょう。クロヨンとかトーゴーサンの話も出るが、結局そういうことなんですよ。サラリーマンがためたものの中から国庫負担に見合う金額を出しなさいということなんです。余りわかりやすく書き過ぎだから御迷惑をかけた。これでは賛成せいと言ったって無理。やはり撤回を要求するのは当然でございましょう。だから、私たちはどう考えても、長年、ここに多賀谷先生、大先輩もおられますが、やはり単なる財政調整ではなくて、医療問題、抜本的にメスを入れなければいかぬのだ。この中でも随分出たじゃないですか。北九州の病院の不正問題、それから冨士見病院の問題、女の臓器を抜き出す、何でもかんでもとるやつだ、あれもここで大騒ぎしたでしょう。ある大臣なんかはひな壇に上がらないうちにやめてしまったでしょう、あのとき。何大臣でしたかね、そういうこともあったわけですよ。だから、必ずこういう問題に、言っては悪いが政治家みたいなのがくっついて出てくる。医療問題というものは根本的に抜本改正しなければだめなんだ。  それからもう一つ言いたいが、やはり社会保障論議でやらなければいかないと思いますよ。こっちの方はたまっているからこっちへ出せ、これでは社会保障じゃないですよ。そうでしょう。せめて国保の人力が出さないで済む分だけでも健康保険組合の方から出させるというなら話はわかる。そういう親孝行論はわかる。国が出す分を健保連が出せということはないでしょう。そうでしょう。サラリーマン方が出せということはないでしょう。どう違ったっておかしい。それから、黒字だから金を出せ、こういうこともおかしい。この延長論をずっと追っていくと、このままでいくと、最後はみんなでこれは国にかわって出さなければならないということになりかねない、私はそう思えてしようがないのですよ。  だから、これは大蔵大臣、結局社会保障費の当然増が一兆五千億欲しいと年末に叫んだでしょう。これはもう厚生省挙げてやったでしょう。我我も応援したでしょう。そうしたら、それは別枠は認めない、軍事費の別枠は七%近く認めて。この一兆五千億は当然増だ。当然増というのはわかるでしょう。当然増だ。それに対してわずか四千億しか出さなかったために、苦肉の策として民間が、サラリーマン方がどこかで納めているものを探そうということの法案ですよ。そうでしょう。これは、建設行政に詳しい今井さんがこの厚生行政にお力を入れていただくというのは本当に申しわけないけれども、それ以外に考えられないでしょう。どうですか。あなたを追及するのじゃなくて、申しわけないが、どこかが答弁してもらいたい。
  111. 今井勇

    ○今井国務大臣 いろいろ言及がございましたが、私も厚生大臣になりましたからには一生懸命この問題について最大限の努力をいたしますので、ひとつまだお見捨てないようにお願いをいたしたいと思います。  まあいろいろ御意見はございますが、今回の老人保健法の保険制度の改正というのは、老人の医療費につきまして保険者の間あるいはまた世代の間、その間で一体どうすれば公平に負担ができるのかというようなことを解決するといいましょうか図ると同時に、御言及もありましたが、老人の保健施設をつくるなど、要介護老人に対しまして保健だとか医療だとか福祉という面の総合的な施策を講じまして、次の世代においても安心して老後を託せるような制度をぜひつくりたいというもので、私は単なる財源対策ではないというふうに確信を持っておるものでございます。
  112. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それはお見捨てなきようにと言われたって、これは私だけではないのだ、社会党だけではないもの。四党が全部一緒にこの統一要求に、大きく活字に出ている。老人保健はだめだ、引っ込めい、こういうのが出ていますので、これは専門委員会でも十分論議されると思いますが、私はそう思いますので、あえて言っておきます。  それからもう一つ日銀総裁に、先ほど渡辺通産大臣などは今でも再引き下げというようなことをぱっと出したものだから、これは悪いと言うのじゃないですが、関係業者が日銀に押し寄せるというのは当然だろうと思いますので、前の中島さんも聞いたようですが、せっかくお出まし願ったので、私もちょっと伺います。  渡辺通産大臣は、日銀は何しているのだと言わんばかりの切り込み方ですね、あの記者会見の仕方は。それに対して、これは本当のことを言わぬでもいい範疇に公定歩合の引き下げは入るようですが、それにしても不況に苦しんでおる多くの業者、産業があるものですから、それだけに非常に期待しておると思いますので、やるとは言えないだろうが、その辺が何となく聞きたくてちょっとお呼びしたのですけれども
  113. 澄田智

    ○澄田参考人 先ほども申し上げましたところでございますが、一月三十日実施になりました公定歩合の引き下げ、これはその時点におきまして当面の為替相場景気、それから内外の金融情勢等を総合的に勘案した上でやるべきであると判断をいたして、実施をしたものでございます。公定歩合そのものの引き下げは一月三十一日でございますが、これに伴いまして預貯金金利の引き下げ、これはこの二月の二十四日から実施されることになっておりまして、まだそこまで至っておりません。そうしてまた、金融機関の貸し出しの短期プライムレート、これも同日に引き下げられる、二月の二十四日でございます。いずれも同日に公定歩合と同幅の〇・五%引き下げがこれから行われようと、こういう段階でございます。さらに政府金融機関の諸金利もやはり同日から引き下げられる、こういうふうに承知をいたしておるわけでございます。  したがいまして、先般の公定歩合引き下げの効果、諸金利に対する波及等もこれから行われるところでございまして、私どもといたしましては、現時点におきましては、これから行われるそういった公定歩合の引き下げに伴う諸金利への波及、その影響等をこれから見守ってまいる、こういう段階である、その効果をよく見きわめた上でまた判断をしなければならないことである、こういうふうに考えている次第でございます。したがって、現時点におきましては、その再引き下げたつきましては何ら考えておらない次第でございます。
  114. 川俣健二郎

    ○川俣委員 どうもありがとうございました。さすがと思いますが、政治家はいろいろなことを言い出すものだから、ぜひひとつ目録総裁だけはがっちりしてもらわないと、預貯金の方々もいるわけですから、だから非常にもろ刃の剣になっていますから、ああいう強いように批判的に、しかも三・五%まで下げたこともあるというようなことをばっと時の大臣が言うと、やはりあなたのところに押し寄せてくるのは当然なんで、迷惑したのだと思うけれども、ぜひひとつその辺はよろしくお願いしたいと思います。ありがとうございました。
  115. 小渕恵三

    小渕委員長 これにて川俣君の質疑は終了いたしました。  午後二時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時八分休憩      ————◇—————     午後二時開議
  116. 小渕恵三

    小渕委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。古川雅司君。
  117. 古川雅司

    古川委員 私は、当面の課題から数点にわたりまして関係各大臣に順次質問をいたしたいと思います。  最初に、外務大臣にお尋ねをするわけでございますが、さきの米ソ首脳会談につきまして中国がこれをどう評価しているか、あるいはまた、今後の展開についてどういう認識を持っているとお考えになっているか、その点からまずお伺いをいたしたいと思います。
  118. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 中国は、いろいろと公式な発表その他情報によりますと、米ソ首脳会談を評価をしておるということでありますし、同時に、米ソ首脳会談が今後とも継続されるわけですが、それによって世界の平和そして軍縮が進んでいくことを期待をしている。というのは、中国自身が今経済の再建といいますか発展のために精魂傾けておりますが、それはやはりアジアあるいは国際情勢が平和であるということが中国にとっては一つの大きな大前提になるわけでございますから、そういう意味におきましての米ソの会談を評価している、期待をかけておる。しかし同時にまた、中国自身の国際的なアジアにおける利害というものもやはり今後の米ソ会談において十分踏まえて行われることも期待をしておるのではないか。これは、特にソ連の極東部におけるINF、SS20の配備等の問題がどうなるかということは、中国にとっては重大な関心事項だと思っております。
  119. 古川雅司

    古川委員 そこで、このジュネーブにおける米ソ首脳会談におきまして核兵器の削減の論議が行われたわけでございますが、これは交渉再開に先立ってゴルバチョフ書記長から提案のございましたいわゆる三段階にわたる核兵器の削減、廃絶の方向を見ましても、いわゆるアジア太平洋の安全保障、核軍縮については触れていない、そういう印象が強いわけでございまして、この点について日本の外務大臣として米ソに対し、あるいは今お伺いをした中国に対して何らかの意思の表明をなさったかどうか、その点をお尋ねしたいと思います。
  120. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 まず、ゴルバチョフ提案につきましては、提案される二十四時間前に実は日ソの外相会談でシェワルナゼ外相から説明がありました。私はその説明を聞いて、とにかく二十一世紀に向かって核を廃絶するということは大変結構なことであるし、そのためには三段階方式というものはそれなりに我々として注目しなければならぬと思うけれども、問題はやはりその中でINFの問題で、ヨーロッパ中心になっているんじゃないか、ヨーロッパ主力でINF削減、廃絶というものが考えられておるんじゃないか。アジアの核というものに全然触れられてない、特にアジアのINFについて触れられてないということはやはり問題がある。日本はグローバルにこのINF問題というのは解決すべきだと思うし、特にSS20にしても、これは非常に機動性があるわけですから、ただヨーロッパでなくしてもアジアにあればいつでもヨーロッパに移っていけるわけだし、その辺についてヨーロッパ主力ということはどうも問題があるんじゃないかということを私は指摘をいたした次第であります。  同時にまた、ゴルバチョフ提案に対しまして、先般アメリカから特使が見えまして、アメリカのレーガン大統領の回答を行う場合に同盟国の意見を聞きたい、日本の意見も聞きたいということで我々と意見の交換をしたわけでございますが、その際にもロウニー特使に対して日本の立場を説明をしまして、ゴルバチョフも触れてない、これに対してまたアメリカもただゴルバチョフの提案に対して欧州の核問題、INF問題だけに絞ってやられるということは、日本としては今までグローバルということを主張してアメリカもこれを支持しておるということであるので納得がいかないので、日本のそういう立場、アジアを犠牲にしないという立場をアメリカも十分ひとつ配慮して、そして大統領提案というものを行ってもらいたいということを強く日本の見解として述べたわけでございます。これは日本だけの立場じゃなくて、アジア、特に中国等もそうした面については基本的には同じ立場をとっておる、こういうふうに思っております。
  121. 古川雅司

    古川委員 これは同時に先般シェワルナゼ外相が訪日をされた際に当然お話し合いをなさったと思うのでございますが、このときの日ソ共同声明を拝見をいたしましても、その最後の方に、両外相は八五年十一月のジュネーブでの米ソ首脳会談の際の共同声明を高く評価するという表現で終わっているわけでございまして、こうしたアジア・太平洋の安全保障についてこの米ソ首脳会談で外されたということに対する日本の強い意思が盛り込まれなかったんじゃないかという懸念一つ残しておるわけでございますが、この点について再度御答弁をいただきたいと思います。  さらに中国につきましては、今大臣が中国もこれに非常に大きな関心を持っているという御認識をお示しになったわけでございますが、核兵器の削減、廃絶につきましては、日本の政治姿勢そのものが決して問題なしとはしない、日本にもかなり問題がある、もっと厳正な姿勢を堅持しなければならないという考えを私は持っておりますけれども、世界唯一の被爆国である立場もあり、また世界に比類のない平和憲法を持ち、非核三原則を持ち、また武器輸出禁止の三原則を持っている、そうした大きな資産、財産を持っている日本の立場、そういう立場ではむしろ中国に対して、米ソの首脳会談のこの交渉の結果また今後の展開について、今後働きかけをしていくアクションを起こす絶好の機会ではないか、このように思うのでございますが、その点いかがでございましょうか。
  122. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 第一回の米ソ首脳会談については、これは共同声明その他会談の内容等から見まして、核戦争に勝者もなく敗者もない、お互いに核を廃絶していくためにこれから努力をしよう、こういう米ソ首脳の間の話し合い、そしてその結果というものは、具体的な成果へ直接つながったわけではありませんけれども、我々としては評価したいということで、その点については一致したわけでございますが、アジアの核の問題につきましては、これは日ソ間でも意見を闘わせましたけれども、残念ながら意見の一致を見るに至らなかった。したがって、意見の一致した点のこの米ソ首脳会談に対する評価を共同声明でまとめたわけでございますが、議論の中では大いに議論をしたわけであります。  同時にまた中国との関係につきましては、日本としましても中国との間の協力関係、友好関係から見て、アジアの平和の問題については我々も中国の外務大臣その他要人との間に何度も会談もしておりまして、お互いにやはりアジアの平和を維持するために努力する点は努力していこう、協力できる面は協力していこうということで合意も見ております。特にアジアのSS20の展開については、これは中国、日本とも、百七十基以上と言われるSS20が撤去されることを強くソ連に求めようという点については基本的に意見の合意を見ておるわけでございます。そしてまた、SS20、INF問題はグローバルな問題としてとらえなければならぬということでも大体意見の一致を見ておるわけであります。  日本としまして、合せっかく芽が出てきましたいわゆる核軍縮がこれから米ソ核軍縮協議の中で具体的に一歩一歩確実に進んで、最終的には日本が理想として求めておる核廃絶に向かって進んでいくことを期待いたしております。日本はあくまでも平和国家、そして非核三原則その他の基本原則を持っておるわけで、こうした基本原則を踏まえながらこれからも外交を展開してまいりたい、こういうふうに思います。
  123. 古川雅司

    古川委員 中国とともに対米ソ交渉を持つアクションを起こすべきではないかと私は申し上げたわけでございますが、中国自体の核兵器に取り組む姿勢、中国も核兵器を持っているわけでございますし、その開発を進めている、なおかつその運搬手段については開発を非常に急いでいるわけでございます。しかし、中国が経済建設を進める上に核兵器を持つということがどれだけマイナス要素になるかということもよく知っているはずであります。これは、既に戦後四十年になって日本がこれだけ驚異的な経済復興をなし遂げた、いろいろな要素は当然あったわけでございますが、その中の一つとして核兵器を持たなかった、つくろうとしなかった、核兵器を持つことを拒否し続けてきたということも大きな力になっていることは明らかでございまして、そういう経験を持つ日本が、これから核を持ち、またそれを強化することに迷いを持っている中国に対して強く働きかけていくことは、今後の日中間の外交の大きなかなめになるのではないかと思うのであります。総理はどうも国際国家日本の課題と責任というような表現をしたり、そうかと思うと、米ソに対しましても首脳間の相互理解というところに期待を寄せたり、あるいは平和と軍縮促進へ期待をするという言葉のみに流れている感じがするわけでございますが、既に数年間外務大臣をお続けになりまして安倍外交の異名をとるくらい一つの定着した外交姿勢を持っていらっしゃる大臣でございます。今後の重要なこれは一つの大きなかぎになると思いますが、中国との関係もひとつ明確に御答弁をしておいていただきたいと思います。
  124. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 中国との間で世界の平和、アジアの平和と繁栄のためにお互いに何をなすべきであるかということについて意見の交換を実はこれまでずっと続けておるわけであります。そういう中で、非核三原則を初めとするところの日本の基本原則も中国側は十分理解をしてきておるわけであります。また、中国側も我々に対しましては、これ以上核兵器を増幅はさせたくないのだ、米ソの核軍縮が進み、さらにまた諸外国、核を保有している国々との間で話し合いを進めて核が廃絶されるという状況になることを中国としても念願しておるし、そのためには中国はその労をいとわないということもはっきり言っておるわけでございます。しかし、現実問題として中国が核を持っておるし、現在も核を開発していることは事実でございます。我々としても、今後中国との間にも接触を強化しながら、ともに核廃絶へ向かっての努力を進めていくことに協力できる点は協力していかなければならぬ、こういうふうに思っておりますし、私は今中国に対して求めておるのは、核不拡散条約にぜひとも早く入ってもらいたいというふうなことも実は中国側に求めておるわけでございますが、残念ながら今は中国からいい返事が返ってないわけでございます。今後ともこうした問題を率直に話し合うということが大事だろう、こういうふうに考えております。
  125. 古川雅司

    古川委員 さて、ことしは国連の国際平和年を迎えたわけでございますが、どうも平和年に対する政府の取り組みが少し手ぬるいというかあいまいじゃないかという印象を持っておるわけでございます。いわゆる国連中心の外交の姿勢について日本は最近変更をしつつあるのかという感じを持つわけでございます。アメリカが国連に対して最近非常に冷たい姿勢をとり続けておりまして、むしろ国連に対しては、これは単なる社交機関であるとか、あるいはもう既に時代に不相応であるとか、はたまた一定の役割は終わった、こういう考え方がしばしば示されてくるわけでございますが、我が国についてはこの点いかがでございましょうか。  国連平和年に対しましては、昨年の十月二十四日に決定をして政府に呼びかけがございました。非常におくれることこの二月に至りまして、やっと国連加盟三十周年を記念する行事とそれから国際平和年を記念する行事、これを兼ね合わせて連絡の事務局を設置という運びになったわけでございますが、この予算案を見ましても、どうもこれは真剣に、なおかつはっきり言えば大がかりに国際平和年に取り組むという様子がうかがえないのでございますが、その点いかがでございましょうか。
  126. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 我が国は国連を中心とする外交をこれまでも展開してまいりましたし、今後ともこれは進めていかなければならない、こういうふうに基本的に考えております。  国連についてはいろいろと批判もありますけれども、今日まで世界の平和と繁栄のために国連なりの努力が続けられ、その成果も幾多あったことは歴史の中で明らかになっておるわけでございます。ただ最近では、平和維持についての国連の取り組みがどうも手ぬるい、あるいはまた国連が膨大な資金を相当むだに使っておる、あるいは国連の機関の政治的な偏向があるといったような批判等も出ておるわけであります。しかし私は、こういう問題は、国連がスタートを切ってちょうど四十周年になった今日ですから、ちょうどいい機会ですから、そうした世界の批判にもこたえて改革するべき点は改革する必要があるのじゃないかということで、実は昨年の国連総会でいわゆる賢人会議を主張いたしました。やっとその枠組みができまして、今その改革について、十八人の我が国の代表を初めとする各国の委員がその改組案を練っておるわけでございます。日本は今国連で拠出分担はアメリカに次いで二番目でありますし、国連の改革に対して日本がそれだけの発言をすることは当然のことだと思いますし、国連をよりよくするために我々としてもこの努力はしていかなければならぬ、こういうように思います。しかし私は、そういう努力はしなければならぬし、改革をすべき点はしなければならぬと思いますが、国連の枠組みというものは非常に大事な世界的な枠組みであって、これを維持強化をすること、発展をさせることが非常に必要であるし、大事なことであろうと思っております。  ですから、例えばユネスコなんかでも、アメリカが脱退をする、あるいはイギリスも脱退をするというふうな事態が起こりましたけれども、私は、ユネスコ等のそうした国連機関にはいろいろ問題はあったとしても日本はあくまでもとどまってこれを内から改革していく、そしてイギリスやアメリカを呼び戻していく、こういう努力の方がむしろ必要ではないか、こういうふうに思います。  日本も国連に加盟しましてちょうど三十年たっておりますしいちょうどことしは国際平和年でありますから、この機会に国連のあり方と国連の重要性というものをさらに国民の皆さんにも知ってもらう必要があるし、さらにまた平和の大事さというものを訴えなければならぬ、こういうことで今事務局を設けていろいろと行事を検討しておるということであります。
  127. 古川雅司

    古川委員 大臣の所信を今伺ったわけでございますが、この国際平和年というのは、これまでいろんな国連の何々年、何々年という取り組みがございました、しかし平和に関してはやはり、活動に三つの柱を掲げておりますとおり、平和と軍縮、平和と開発、平和な生活の準備というその柱に示されておりますとおり、国連挙げて平和に大きく取り組んでいくチャンスとしてねらっている。これを受けとめるにはちょっと弱腰ではないかという印象をあくまでもぬぐえないわけでございます。国連加盟三十周年を期し、また平和年を期してこれから行事を行っていくということでありますけれども、今私が聞いておりますのは、例えば記念切手を発行するとか、あるいは記念式典を行ってそこへ外相が出席をなさるとか、歴史学者を招いて平和講演をするとか、東山先生の版画を残すとか、あるいは映画をつくるとか、その程度にとどまっているわけでございまして、この平和、もっとはっきり言えば核廃絶、軍縮への大きなアクションとなる姿勢が見られない。その辺を非常に残念に思うわけでございます。  この点について重ねて御所感を伺いたいと思いますし、なおかつ、これは既に参議院の方でもお話が出たそうでございますが、そうした平和年という意義ある年でありますだけに、この五月に開催を予定されております東京サミットに、参加首脳がただ単に東京にとどまるのではなくて、広島とかあるいは長崎といった被爆地も見てもらう、そういうことはできないものであろうか。これはスケジュールが難しいということで一蹴されたようでありますけれども、この年はもう既に前々からわかっているわけでございまして、果たして各国の外相にそういう呼びかけ、お誘いをした上でスケジュールがないという結論に達してしまったことなのかどうか。あるいは、来るべき第三回の国連軍縮特別総会の開催について、日本の核環境、核をめぐる状況から、ぜひともこの特別会場を東京あるいは広島、長崎、そういったところに設置をする考えといったもの、そうした大きな一つの足跡を残していくことが国際平和年に取り組む政府としての当然の姿勢じゃないか、私はこのように考えるわけでございますが、その点いかがでございましょうか。
  128. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 国際平和年に当たってのいろいろな行事、これは今連絡事務局で中心になってやっております。これは私はやはりそれなりの意義はあると思います。記念切手の発行とかいろいろなセミナー、そういうものもやはり地道にやる必要があると思います。同時に、お話のような基本的な平和と軍縮に向かっての日本の取り組みというのも極めて大事なことで、日本がやらなければならない大きな課題であることはもう当然でありますし、我々もよく承知しております。わかっておることでありまして、これは国際連合あるいはまた軍縮会議、そういう場においても日本日本なりに具体的な提案をいたしながら軍縮努力を続けております。また、今回サミットはもちろん経済サミットですから経済が中心ですけれども、当然第二回目の米ソ首脳会談を控えまして七カ国の首脳が集まるわけですから、どうしてもこれは米ソ会談を中心とする軍縮問題というのが一つの議題、課題になることは予想されるわけでございます。その中で大いに議論が行われ、そして日本の考え方も主張いたしまして、こうしたサミットが契機になってさらに第二回目の米ソ首脳会談が進んでいくということを我々は期待もいたしておりますし、それなりの努力はしなければならぬと思っております。  なお、サミット等各国から集まる首脳の日程の関係ですが、ほとんどもう日程はでき上がっておりまして、おいでになる外国の首脳の日程はまさに寸暇もないような状況であります。そういう状況ですから、広島とかあるいは長崎に行ってもらうにこしたことはないのですけれども、今のところはそういう予定は到底立たないということであります。残念ながらそういう予定を立てる状況にないということは御理解をいただきたいと思います。なお、外国の首脳がお見えになるとき、広島とか長崎においでになりたいという強い希望があるときは、そうした希望を踏まえながら日本もいろいろと便宜をお図りをしておるわけでございまして、多くの首脳が広島や長崎に行かれたことは既にこれまで何度もありますし、御承知のとおりでもあるわけであります。     〔委員長退席、中島(源)委員長代理着席〕  また国際会議等の開催、これも一つのあり方だと思いますが、しかし今国連なんかは大変財政も行き詰まっておりまして、今日本で大がかりの国際会議等をやる、特に広島、長崎でやるということは、今の状況ではなかなか困難な面もあるわけでございますが、今後の、将来の中ではそういうこともあり得ないわけではない、私はこういうふうに思います。
  129. 古川雅司

    古川委員 外務大臣にはもっとたくさんお伺いしたいことがあったわけでございますが、時間の関係でこの程度にさせていただきます。大臣には最後に、これは厚生大臣にお伺いすることでございますが、原爆被爆者の援護法の早期制定について外務大臣としてはどういうお考えを持っていらっしゃるか、お伺いをいたしておきたいと思います。  核の廃絶、核兵器の削減という今後の大きな方向をたどっていくならば、当然四十年になりますこの核体験、そしてまた被爆者の方々が次第に高齢化をしていく、しかも全体の福祉水準についても大きく憂慮されているときでございます。被爆国の立場を外国に対して説明をする場合に、我が国が被爆者に対していわゆる国家補償の精神に基づいた援護法を持っているということと持っていないということでは大きな違いがあると思うのですが、最初に外務大臣の御見解をお伺いして、次に厚生大臣にお伺いいたします。
  130. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これは私の領分ではないわけでありますけれども、今お話しのように核廃絶というのは、ああした原爆の体験を持っておるだけに、日本のこれから求めていく大きな理想でございます。そのための外交努力はこれから続けていくわけでございますが、同時に国内におけるそうした被爆者の皆さんに対する対策というものは、今日まで政府は政府なりにそれぞれ努力は続けてきておる、私はこういうふうに思っております。そういう中でこれからこの援護法を制定するかどうかといったことは、これまでの努力、そうして実態、そういうものも踏まえながら所管の役所の方で考えられることじゃないだろうか、こういうふうに思っております。
  131. 古川雅司

    古川委員 外務大臣、ありがとうございました。御退席いただいて結構でございます。  この同じ問題につきまして厚生大臣にお伺いをいたしておきます。  昭和五十五年に発表された原爆被爆者対策基本問題懇談会、七人委員会でございますが、この意見によってその後いわゆる被爆者対策について、諸手当の認定の問題であるとか、全体として後退を招いているのじゃないかという非常に大きな不安もございます。被爆者の不安を一段と深めているという実態があるわけでございますが、これまでも野党の共同提案で援護法が国会に提出をされてまいりました。被爆四十年という大きな節目を過ぎたわけでございますが、こうした野党の努力もさることながら、これで御不足であるというのであれば与党である自民党が自民党案を御提出になるということも必要になってくるのじゃないか、被爆者も当然それを求める、そういう事態になってまいりました。その辺の状況を踏まえてひとつ厚生大臣に御見解をお伺いしておきたいと思います。
  132. 今井勇

    ○今井国務大臣 この問題は、もう数年前になりますが私が社労の理事をいたしましたときに何遍も問題になりまして、そして野党の皆さん方からの今のお話の被爆者援護法についての御提案なり、また御質疑がありまして、私がそれに対してお答えをしたことがあります。  おっしゃるとおり、この被爆者の問題につきましては、被爆者の受けた放射線によります健康障害という他の戦争犠牲者に見られない特別の犠牲というものに着目して、広い意味の国家補償の見地に立ちまして、私どもは被害の実態に即した施策を講ずべきであるとかねがね考えておるものであります。したがって、こういった特別の事情にない原爆死没者の遺族等に関しまして先生おっしゃいます補償を行うこと、こういったものを内容とします原爆被爆者援護法を制定することは、一般の戦災者との均衡上問題があるというふうに考えておりまして、政府といたしましては今後とも現行の原爆二法によって対処してまいりたい、このように思っているものでございます。
  133. 古川雅司

    古川委員 従来の御見解を一歩も出ない御答弁でございまして大変残念でありますが、これはまた社会労働委員会等の場を通じまして御意見を申し上げ、推進をさせていただきたいと思います。  厚生大臣、あと二、三十分ほどお時間ございますので、御休憩をなさっておいてください。  次の問題に移らせていただきます。  造船の不況の厳しさが大変増大をしてまいりまして、新運輸大臣も陸海空にわたりまして難題を抱えて大変御苦労をしていらっしゃいますし、また精力的に行動していらっしゃいますが、この造船業界の問題でございますけれども、これは目下海運造船合理化審議会が御検討を進めてくださっている。大体六月をめどに答申が得られるということでございますが、業界はそれをもう待ち切れない。もちろん、みずからの努力も大事なことでございますのでそれを否定するわけではございませんが、例えば日立造船は全従業員の三割に当たる約五千人の合理化。これは私のところの広島県の因島工場、ここは新造船部門の廃止を決めまして、今大変深刻な事態に陥っているわけでございます。  そういうことを申し上げまして、運輸省としてこの問題にこれからどう取り組んでいくお考えなのか、ひとつそれを明快にお示しをいただきたいと思うのでございますが、当然これは、常識でございますけれども、いわゆる必要船腹量とそれから船腹供給量との間の膨大なギャップでございますね、それを抱えておりますので、それをどう解決していくかということにきわまるのでありましょうけれども、どうもこの審議会の検討が主体になりまして政府の対応が後手後手になっているのじゃないかということが一番心配であります。  殊に、一例を挙げますと、三光汽船の倒産以来いわゆる金融機関の融資の姿勢が一変をいたしまして、海運向けの貸し出しが非常に厳しくなったわけでございます。そういったことも含めてこの造船不況にさらに輪をかけている。大変意地の悪い見方をすれば、政府は、運輸省当局はいわゆる淘汰を待っているのじゃないかという感じすら受けるわけでございます。その辺の造船業に関する基本的な方針、これが早期にできないものか、その辺の姿勢についてひとつ明確にお示しをいただきたいと思うのでございます。
  134. 三塚博

    ○三塚国務大臣 問題指摘のとおり、大変深刻な状況にございます。海造審の答申を待ってというこのことだけで現在の深刻な事態の対応が十分でない、こういう御指摘もそのとおりであろうと思います。よって運輸省として、また政府としてということになるわけですが、今御指摘のように三光汽船に見られるような金融界が後ろ向きに相なりましてどうだということであってはならないと思いますし、決して運輸省は自然淘汰を待つなどということは毫末も実は考えておりません。我が日本は海運国家であり造船世界一という輝かしい歴史を誇って今日の経済国家をつくり上げてまいりました経過からいたしましても、この状況は何としても乗り越えなければなりません。そして、先人が築き上げ、また今働いておる皆さんが御苦労いただいて到達をいたしました造船のノーハウというものは温存しつつ展開を図っていかなければならぬ、このことは政治の要諦であろうというふうに思っております。  しからばどうするのか、こういうことであります。まさにそういう点で解撤の問題を果敢に取り進めるということも一つでありましょうし、過剰船腹の調整、これをどうするのかという点で過剰設備と言われる部分の調整にも取り組んでまいらなければならないという時点にあるでしょうし、さらには、これに対応して業者間の調整、法律の許す範囲の中においてどう進めることができるのだろうかという問題も真剣に考えなければなりませんでしょうし、最終的にはカルテルの問題も考えながら対応していかなければならないほど実は深刻な問題である、こういう受けとめ方をいたしておるわけでございます。  因島の日立造船所の撤退、現地に深刻な雇用不安、またこういう経済状況の中でありますから、地元産業企業にこれまた深刻な状況を与えておりますことも報告をいただいておるわけでございます。これらの問題に対応し、運輸省でやり得る問題は問題として全力を尽くしてまいるわけでございますが、やはり全体の問題としてこれも取り組まなければならぬ問題がな、こんなふうに思っておるところであります。
  135. 古川雅司

    古川委員 そこで、この一例として因島の自立造船のことを申し上げたわけでございますが、実際に想像を絶する深刻な事態であります。これはいわゆる企業城下町としての宿命的な様相であるというふうにも考えられるわけでございますが、実際にその関連の下請企業、特に中小や小規模が多いわけでございますけれども、そういったところの倒産であるとかあるいは地域自治体におきましてもいろいろな問題が起こってきているわけでございまして、これは質問の通告書にも明記をいたしましたけれども、下請であるとか商店街、これが約八割が造船に結びついているわけでございますし、市税収入の二割がこの日立造船から上がっているわけでございます。工業出荷額に至っては八割であります。そうしたところでこうした大もとの日立造船がこういう事態に追い込まれますと、いろいろな不安、いろいろなパニック状態が起こってくるわけでございまして、ここでまた政治に対する対応がいろいろな形で求められてくるわけでございます。さしあたって、脱造船といいましても決め手があるわけでもございません。少なくとも各省でその対策について取り組んでいただいていると思いますので、この席でひとつ、中小企業庁あるいは建設省あるいは労働省、運輸省でも、ございましたら具体的に順次お示しをいただきたいと思います。
  136. 木下博生

    木下(博)政府委員 日立造船の因島工場の事業縮小に関連いたしまして、下請中小企業あるいは地元の商店等に対する影響が非常に深刻になってきておるということは私ども十分伺っております。それがために、中小企業庁といたしましてもいろいろな手段を使ってお手伝いしたいというふうに考えておるわけでございますが、今国会に御提案申し上げ、先週、異例の深夜審議で通過をしていただきました特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法、これに基づきまして、その対象となり得るかどうかという点を現在私どもは検討させていただいておるわけでございます。  いずれにいたしましても、法律で、「近年における貿易構造その他の経済事情の著しい変化にかんがみ、特定中小企業者に対し、その事業の転換を円滑にするための措置を講じこということでございますので、そういう地元の中小企業方々で事業転換をしたいというようなことがあれば、この法律の要件に該当するのであれば、私どもはそれによって十分お手伝いを申し上げていきたいというふうに考えておるわけでございます。その場合には、計画を各事業者がつくっていただく、あるいはその事業者が所属しております組合において、その組合として全体として円滑化計画をつくっていくというようなことをした上で、それに対しまして融資等によってお手伝いをするという道は開かれておるわけでございます。
  137. 白井晋太郎

    ○白井政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のように、日立造船その他で、因島と尾道の職業安定所管内が非常に雇用失業情勢が悪化しているということは御指摘のとおりでございます。現在、雇用保険受給者が三千九百五十三名、個別延長措置を受けるということで安定所にあらわれております。今後、現在離職した人を含めまして、造船関係でもこの両管内で千四十四名の解雇が予定されているというふうに把握いたしております。  労働省といたしましては、船舶製造・修理業を特定不況業種として指定するとともに、この管内が非常に雇用情勢が悪化しているということで、この管内を特定不況地域として指定いたしております。それによりまして雇用調整助成金の制度の活用、それから離職者が発生した場合の失業保険給付の延長給付その他の措置を講じまして、離職者の生活の安定と再就職の促進を図ることに努力いたしている次第でございます。
  138. 江藤隆美

    ○江藤国務大臣 この前、因島の市長さんがお見えになりまして、尾道−今治ルートの生口橋の早期着工をお願いしたい、先生おっしゃるように、日立造船の不況で全く惨たんたるものですと、こういうことでございました。六十年度から建設の準備をいたしておりまして、六十一年度には早期に着工したいということで、いよいよ予算が通りましたならば本格的にこの準備にかかるわけでありますが、漁業補償さえ片づけば、これはもういつでも着工します。道路局長に、五月ぐらいにできないのか、夏だの秋だの言わずに、もう一刻も早く着工して皆さんにせめて安心のできるように、建設省もやはりそういう温かい配慮をすべきだ、こう申しておるのですが、要は漁業補償次第だ、こういうことであります。  私、大鳴門橋へ行ってみて非常に思いましたのは、ああいうことをやりますと、大きな建設会社だけかと思っておりましたら、大きいのから小さいのまで七百社参加していますね。九カ年間に百六十六万人の人があそこで働いておる。そういうことからいいますと、大鳴門橋ほどの規模ではありませんけれども、やはり四百五十億からかけるこれほどの橋梁ですから、先生先ほどおっしゃった下請とか商店街に及ぼす影響というのはこれはもう期して待つべきものがある。したがいまして、予算が通りましたならば、全精力を漁業補償に傾けて、片づき次第、私はもう五月と言っているのですが五月にいきますかどうか、それをめどに一生懸命努力したいと思いますので、また漁業補償等につきましてもよろしくひとつ御指導やら賜りたい。
  139. 古川雅司

    古川委員 今それぞれ各省から、全体の一部分でありましょうけれども、いろいろ方策をお示しいただきました。ただ、生活基盤を根底から崩されている市民といたしましては、果たしてそうした方策が該当するのかあるいは救済の効果を上げるのかどうかということにはまだ大きな不安を残しているわけでございまして、今後とも折に触れましてまた各省にお願いに上がろうと思いますけれども、この深刻な造船不況、今後ともひとつ運輸大臣を中心にいたしまして鋭意お取り組みいただくように御要望いたしまして、次の質問に移らしていただきます。  こうした造船業界の不況と並びまして、これは瀬戸内海沿岸一帯に限らず、全国至るところにすべて共通することでありますけれども、鉄鋼業界もあるいは繊維も木工も、すべてが今経済的には非常に沈滞をいたしております。何とかこの活性化を図らなければいけない、それぞれの自治体でいわゆる県政の活性化ということを大きな目標にして具体的な対策に取り組んでいるわけでございます。なかなかこれも財政事情やあるいは国際的な環境も含めて難しい問題である。そこで、いわ疑る工業整備特別地域の指定がございまして、昭和三十九年以来地域指定をし、いわゆる産業施設を中心に開発を進めてまいりました。これには財政上の大きな特別措置が行われてきたわけでございますが、御承知のとおり、昭和五十六年から産業中心に偏っていたということを修正いたしまして、いわゆる生活関連施設といったものに重点を移してまいりました。くどくど申し上げるまでもないのでありますが、こうした構造的に沈滞をしている地域に今こそこうした施策が継続強化されて当然であって、この成り行きが、どうも既に役割を終わったんじゃないかとか経済的な効果がないんじゃないかというような議論はおかしいというふうに私は思うわけでございます。  先ほど造船の問題で因島を取り上げましたが、いわゆる備後地域におきましても、備後工特というものでこれまで大きな開発が進んできたわけでございます。今後これをどうしていくのかということについて、まず最初に国土庁長官から御見解をお伺いしておきたいと思います。
  140. 山崎平八郎

    ○山崎国務大臣 お答えいたします。  ただいまのお話に出ました備後工特地域、これを初めといたしまして新産・工特地区、こういうものにつきましては、地方の開発、発展の中核といたしまして今後ともその建設整備を推進していくことが必要だと存じます。  そこで、具体的なお話でございますが、昭和六十一年度を初年度といたします第四次建設整備基本計画におきまして、基礎素材産業の活性化、ハイテク産業の誘致、今お話に出ました魅力ある都市づくり等、地区の活性化のための新たな開発の方向を明確にすることによりましてその建設整備を積極的に推進いたします所存でございます。したがいまして、この秋を目途に策定を予定しております四全総につきまして、現在は個々の検討課題について順次検討を進めている段階でございますけれども、地方の開発の推進ということは、お話のとおり今後の国土政策において重要な課題と考えておりますので、このような認識のもとに、新産・工特地域の振興につきましても十分配慮をいたす所存でございます。
  141. 古川雅司

    古川委員 こうした工特事業につきまして、これをいわゆる四全総の中に吸収をしてそこで対応していくというふうに、これは過去から、ずっと前から伺ってきているわけでございますが、果たしてそこにどれだけ期待が持てるのかという問題点が多々あると思うのであります。  建設大臣、これは通告はいたしておりませんが、この四全総と関連をいたしまして、いわゆる日本の社会資本の整備というものがこの高度成長期からずっと進んでまいりました。ほとんどこの高度成長期に九〇%が整備されたと普通に言われております。しかし、これも非常に年月がたちまして、補修をしなければならない。それにまた大変な費用をこれは要するわけでございまして、いわゆる新規事業の採用がその辺で非常に阻害をされてくるんじゃないかということが心配をされているわけでございますが、当然四全総が目指す欧米並みの社会資本のレベル、それに到達するためには新規の事業だけでもこれは膨大な財政負担がかかるわけでございます。これまで開発を進めてきた、整備を進めてきた部分と、新規にこの四全総で求めていくそうした部分と、その辺の整合をどうお考えになっていますでしょうか、建設大臣としての御見解を伺いたいと思います。
  142. 江藤隆美

    ○江藤国務大臣 大変高度な質問で、どういうふうにお答えしていいかちょっと迷うわけでありますが、一つの例を下水道にとってみますと、日本で下水道の整備というのが本当に議論されるようになったのは昭和四十五、六年の公害国会のころからですね。それからやっと本格的に下水道というものが議論されるようになってきたわけです。フランスでは、もう御承知のようにルイ十四世、フランス革命の前ですね、三百年も前にあの管状の、いわゆる地下の石でつくったあの下水道が完成したということは、これは有名な話でありまして、そういうものから見ると、やはり日本の社会資本というものはある面には進んだ、例えば高速道路、立体交差となると随分進んだな、こう思われる反面に、まだまだ道路整備五カ年計画一つとってみましても、六十一年度が終わってやっと七三%にしかすぎない。下水道も、防衛が五カ年計画で十八兆四千億ですから、下水道は十二兆二千億、相当の分頑張ると思うけれども、やはり五年かかってやっても三六%が四六%しかならない。こういうことから考えると、日本の社会資本というものは進んでおるようで進んでいないということが私は言えるのじゃないかと思うのです。  私はもう一つの持論としまして、いつかここで申し上げたこともありますが、あれほどアメリカが豊かな国でありながらつまずいてきた。アメリカを代表するものは私は自動車産業であり高速自動車道路だったと思うのです。ところが、その高速自動車道路の約四分の一が非常に危ない。五分の一の橋が重量制限をしないと通れない。そういうところにアメリカ経済の陰りがあったのじゃないかと私は思うのです。ですから、日本も非常に高度化された産業形態を持っておりますけれども、そういう意味では一つ日本の近代産業を支えるそうした外部の道路交通網を初めとする社会資本の充実あるいは補修ですね、決してこの補修を怠ってはならぬわけでして、アメリカは補修を怠ったんですね。これは非常に大事なことだ、こう思います。  それからもう一つは、同時に、そういうことがあるわけですから、建設省がことしからお願いしようとする五カ年計画がいろいろございます。それと同時に、やはり何といってもこの高速自動車道路のできたところとできないところの明暗というのはひどいですね。ですから、高速道路ができたところとできないところというのは、指定のないところというのはやはり半世紀の違いがあると私は思っているのです。ですから、この六十一年度じゅうに準備をして、六十二年には一万キロ構想に基づく高規格幹線自動車道路の指定をして、そしてこれが整備を進めながら全国の均等な開発を図っていくという体制を整える必要がある、そういうふうなことをいろいろ考えておるところでございます。
  143. 古川雅司

    古川委員 国土庁長官に重ねてお伺いをいたしますけれども、三全総はこれは破綻をしたんだという一つの見方がございます、お認めになりたくないお気持ちはよくわかりますけれども。その寸分な反省の上に乗ってこの四全総を展開していきませんとこれは同じ轍を踏むわけでございまして、備後工特を例に挙げましたけれども、四全総に繰り入れることによっていわゆる従来の財政上の特別措置にいたしましても、そのレベルが大幅にダウンするんじゃないかという懸念もあるわけでございまして、この点細かく申し上げれば数々ございますけれども、その点をひとつ確認をさしていただきたいと思います。  今建設大臣から社会資本の整備についていろいろ御見解を伺ったわけでございますが、最後には高速道路についてのお話もございました。これも一部では、学者の方々の議論でもありますけれども経済成長が鈍化した現在においてはその経済効果にどれだけ期待を持てるのかという疑問も投げかけられております。しかし、既にやりかけている事業についてまだその経済効果を発揮していないようなところが多々あるわけでございます。私のところでも山陽自動車道というのがございます。まだ計画に入っておりません陰陽自動車道というのもございます。これもいわゆるぶつ切りになっていて、部分的に完成している。なかなか供用にまで至らないという、そうした事業のおくれ等もありまして、せっかくの投資がむだになっているという、そういう事態も多々あるわけでございます。そういう点は今後重点的にやはり精力をつぎ込んでいただきたい。これは要望も含めて、建設大臣から御見解があれば重ねて御所信を伺っておきたいと思います。  また、自治大臣もおいでいただいているわけでございますが、先ほどの造船不況にも関連がございますけれども、こうした地場産業を初め地元の基幹産業の停滞によりまして、それぞれの自治体の税収入の大幅な落ち込みというような事態も起こってきております。そういったことに対する手当て、自治省としてどうお考えになっていくのか。そしてまた、これまでこうして行われてきた今、工業整備特別地域について申し上げたわけでございますが、今後の財政的な手当て、この二つについて今後の方向をきちんとお示しおきをいただきたいと思っております。  せっかく大蔵大臣が御出席でございますので、この問題の締めくくりといたしまして、この四全総の推進に当たっても財務当局が非常に厳しい、そう簡単に財布のひもは緩めないということが最初から言われておりまして、既にその点で四全総は挫折した、出発前から挫折しているということが大蔵省の責任において言われておりますので、この点についての御見解、順次お示しをいただきたいと思います。
  144. 山崎平八郎

    ○山崎国務大臣 お答えいたします。  ただいまの御調まことにごもっともでございます。御承知のように全総、新全総、三全総、そして今度秋の策定を目標に四全総が進んでおります。これを一々申し上げる必要はございませんが、特に四全総、まず社会経済の環境条件の変化、これをよく考えながら、申し上げると、国際化あるいは高度情報化、技術革新、高齢化(価値の多様化といろいろ変化がございます、これを十分心得た上で、その推進の仕方は各界の御意見を尊重もいたしますけれども、県、市町村、経済界、農林水産業、商工業、この各界の御意見を十分に伺って、ただいま策定に向かって進んでいるところでございます。計画の内容を申し上げますと、具体的には今後国土の均衡のある発展、安全で安心な国土、特に交通条件、通信等に気を配りながら、さらに国民の期待にこたえる実効性のある計画を推進する、結局は国民に夢と希望を与えるような方向に進んで、今秋ひとつ策定、こういうふうな考え方でございまして、具体的なお答えにはなりませんけれども、考え方としてはそういう考え方で進んでおる次第でございます。(古川委員「工特から四全総に入ったときの落ち込みは」と呼ぶ)だからそのときは、申し上げるとおり二次にわたる石油ショック、それで一応方針を変えましたけれども、また最近のお話に出ておるようないろいろ不況業況もございますが、これらをもっと前向きにとらえて積極的に進む、こういう考え方が基本でございます。
  145. 小沢一郎

    ○小沢国務大臣 先生御指摘の第一点の因島市の問題でございますけれども、今度の新造船部門の廃止によりまして、いわゆる税収の面から見ますと一億三、四千万ぐらいの減に上ると見込まれておりまして、市税収の五・二%を占めるということでございます。もちろん御案内のとおり、交付税の算定におきまして、その税収減については十分配慮して見ていかなければならない、そのように思っておりますが、それと同時に、本当にこの企業城下町といいますか因島市に与える影響は非常に大きいと私どもも見ておりますので、いわゆる地域経済活性化対策というような観点からもこれは進めていかなければならない、そのように考えておりまして、今後関係省庁とも連絡をとりながら対処しようと思っております。また、これからの市の財政運営については、県当局とも十分相談しながらやっていきたい、そのように考えております。  それから、新産工特の問題でございますが、既に建設大臣国土庁長官からもいろいろお話ございます。私どもももちろんこれから建設計画を進めていかなければならない、その必要がある、そのように考えておりますが、いずれにいたしましても、自治省としては財政面からの問題、フォローしていかなければならないと思います。今国会で御審議をお願いしておりますが、若干内容の手直しをいたしましたけれども、そういうことを継続して今後とも対処してまいりたい、そのように考えております。
  146. 江藤隆美

    ○江藤国務大臣 山陽自動車道についての意見を聞かれたわけでありますが、神戸から山口に至る四百三十四キロ、総工事費一応二兆円を予定しておりまして、これは産業の大動脈として一日も早く完成させたい。特にやはり本四架橋が進んできますから、そこいらの倉敷、福山、姫路、それから広島、そういう一番交通の混雑するところはせめて早急に完成をするようにしたいということで今やっておるわけですけれども、なかなか用地買収がうまくいきませんで、用地買収さえいけばこれはすぐにかかれるんです。姫路、福山、このあたりで今大変用地買収が難航をしておるわけであります。何とかしてこれはかかりたいということで、今一生懸命努力をいたしておるところであります。  それから、陰陽自動車道、これは尾道今治線からずっと松江につなぐ一直線の道路になってきますから、私は非常におもしろい道路だ、こう思っておりますが、事務当局の話を聞きますと、なかなかこれは金を食う道路でございまして余り採算のよくない道路になりますと言いますけれども、まあ公共投資というのは、ある程度採算を抜きにして、そしてやはり引っ張り上げていってやる、道路ができるということは、私は一つの可能性がそこに生まれてくるものだと思っておるのです。ですから、さっき申し上げました高規格幹線自動車道路の整備のときに十分検討さしていただきたいと思っております。  なお、山陽自動車道路は、この一月の二十一日の国開審におきまして三木−姫路間が整備路線に入りましたから、もう四百三十四キロ全部整備路線に入ったのです。後はこれをいかに進めるかということでございますから、御意向をよく体して努力をしてまいります。
  147. 竹下登

    ○竹下国務大臣 確かに全国総合開発計画、新全総、三全総、やはりこれがおくれた一番大きな要因は第一次石油ショック、第二次石油ショックというものであったかと思うのであります。」しかし今度四全総、今山崎国土庁長官のお話を聞いておりましても、新たに情報とか通信とか、そういう新しい面も入ってくる、そうしてそれは国民に夢と希望を与えるものであらなければならぬ、私もそのとおりだと思うわけであります。  で、それが財源ということになりますと、それは御案内のように一時二百四十兆円の公共投資を百九十兆円に減して、またなおそれが実行ができなかったというような過去もございます。したがって、これからはさらに、今山崎長官の言葉にもありましたように、実現性のあるということで、歳入歳出両面から私どももお手伝いしなければならぬ課題だというふうに問題意識だけは十分持っております。  なお、陰陽の道路の問題、私と古川さんのところの方をつなぐ話でございまして、将来にわたっての私どもの夢だなと、私も思っております。
  148. 古川雅司

    古川委員 いろいろ問題とさせていただきたい御答弁が続いたわけでございますが、また別の機会に譲りまして、次の問題に移らせていただきます。  労働大臣、大変失礼をいたしました。先ほど造船の問題の中で雇用の問題について御答弁をお願いしたわけでございますが、局長の方から御答弁がございましたので、せっかくおいでいただいたのに恐縮でございますが、お引き取りください。  次に、農林水産大臣と厚生大臣にお伺いをしてまいります。  羽田新農林水産大臣大臣就任の抱負を農業新聞で拝見をいたしました。久々に農政通の羽田農林水産大臣の登場ということで、特に「農業は国の基本だ」そしてまた「農業者がやる気の起きる農政をすすめたい」という大きな抱負を示しておられます。これもまたいろいろと難題を抱えて御苦労が多いと思いますし、この対談の中でもそれぞれの問題点をお示してございますが、その中から、きょう私は、食糧の安全性につきまして厚生省と両方の御見解をあわせながら伺っていきたいと思うのでございます。  今、農業者の方は、いわゆる消費者たる国民のための農業ということについても真剣に模索をしている、お考えになっている、これなくしては二十一世紀の農業はあり得ないという認識に立っているわけでございますが、実際問題としてはいろいろな問題が出てきているわけでございます。一つは食糧の安全性につきまして、輸入農産物の安全性の問題、もう一つは食糧の生産過程における有毒農薬の使用等に絡んだ安全性の問題、こういう大きな問題があると思うのでございます。食糧の対外依存度が増加をしてまいりまして、輸入農産物が量的にも激増してまいりましたし、質的にもいろいろな変化を来しております。これは農業団体からいただいている資料がございますが、時間の関係で細々とは申し上げません。最近では、いわゆる発がん性が残るグレープフルーツ等に使用している殺虫剤の耳OBの問題、この問題にいたしましても非常に日本対応がなまぬるいと申しますか、不安を残しているわけでございます。この一例を挙げましても、米国では使用を禁止している、しかし、これを輸入する日本の方が認めているがために八九年までは輸出に使用をするという、こういうギャップが生じているわけでございまして、この辺の大きな矛盾をどうお考えになるのか。これはどちらの大臣でございますか。
  149. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 今御指摘がございました果実に対しますEDB薫蒸、これはミバエ類の殺虫目的、このために輸出国において行われているということであります。我が国におきましては、食品衛生上の見地から果実中のEDBの残留規制値〇・一三ppm、これが定められております。果実の輸入に当たりましては、食品衛生当局の検査によりましてこの基準に沿ったものが輸入されておるというふうに考えております。  ただ、昨年一月、厚生省から要請がございまして、このEDBを使用しておる関係国に対しましてEDBにかわる消毒方法、こういったものの開発を要請するようにという御指摘もございまして、私どもといたしましても各国に対してその旨を伝えておるところであります。
  150. 古川雅司

    古川委員 この輸入食糧品の安全性については、この国会でも随分これまで議論をされてまいりましたが、最後は非常にあいまいな不安を残して終わってきているわけでございます。これはいわゆる食糧の輸入に対する外圧に屈しているのかという議論もあるわけでございまして、果たしてこのまま許されていいのかどうか、この問題を一つここでは残しておきます。これは決して安全が保証されたわけではございません。  さらに、今度はいわゆる有毒な化学農薬でございますけれども、これは例の自動販売機の事件でパラコートが今まで知らない人にも知れ渡るほど非常に一般的になりました。一番驚いたのは、その猛毒性にあるわけでございます。これはこのパラコートに限らないわけでございまして、どれだけたくさん使われているかということ。これは一つには生産者である農民が日常的に使用している。当然安全のための身体的な防護も完全にした上でやっているわけでございますけれども、完全を期してもこれは長年の間にその影響が人体に残っていく、あるいはその安全防護自体にも手落ちがあって現に事故が続出をしている。  さらに心配なのは、その農薬を使用することによってできる農産物そのものであります。これは、農林水産省としては一体どれだけチェックができるのか。口に入る段階で全く有害ではないというはっきりした結論を残しているのかどうか。その辺が厚生省からは農林水産省に踏み込めない、農林水産省から厚生省に対して物が言えない、そうした一面があるんじゃないかという不安がございます。  非常に卑近な例でありますが、一例を挙げさせていただきます。先日、テレビを見ておりました。リンゴの栽培農家でございますけれども、立派なリンゴができておりましたが、その生産者がおっしゃるのに、私は恐ろしくてこのリンゴは食べられませんと。それは、そのリンゴが育つ過程でどれだけ有毒な化学農薬を使っているかということをよく知っているからであります。そしておまけに、そのおうちで食べるリンゴは別の畑で栽培をしてそれを食べているということが言われておりました。同じように養殖魚類につきましても、これは好きだとか嫌いだとが食べ飽きたとかという問題ではなくて、恐ろしくて食べられない、どれだけ大量の抗生物質であるとかそうした薬品を使っているかはかり知れない、そうしたものは一切食べないということをテレビの画面で訴えておりました。  こうしたテレビの番組そのものがけしからぬ番組なのか、あるいはそういうことを訴えている生産者の方々が神経質過ぎることなのか、あるいはそこに見逃せない大きな問題が隠されているのか、消費者はその辺については非常に不安が残るわけでございます。不安はない、そんな一々神経質になっていたら食うものはないじゃないかと言われるかもしれない。しかし、現に自然食品であるとか健康食品であるとか、こうしたものが一大産業に伸びてきたのもその背景にはあるわけであります。また、そういう業界に最近いろいろな問題が起こっている、事件が起こっているというのも事実であります。消費者は何を食べたら安全なのか、何を食べたら危険なのかということは知らされていない、この点に一つ大きな問題があると思うのでございます。  先ほどの輸入農産物の安全性の問題といい、またこうした農産物あるいは養殖魚類あるいはブロイラー、そうした家畜類も含めてこうした毒性の取り扱い、そしてまたそれが今後健康上に残る影響、こういったものについて生産者側である農林水産省もあるいは消費者の側である厚生省もどれだけ真剣に取り組んでいらっしゃるのか、その点を明確にお示しをいただきたい。
  151. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 まさに私どもは消費者の皆様方に安全な食糧を提供しなければならない、この務めがあります。また生産する人にも農薬を使うことによって人体に影響を及ぼす、こういうことはあってはならないということで、薬剤の開発につきましては相当長年月をかけながら進めておりますし、またその薬剤の登録につきましても非常に厳しい検査をした上で登録されておるというのが現状であります。  ただ、具体的なチェックとかそういった問題につきまして、これは大事な問題でございますし、少し細かい具体的な問題でございますので、局長からちょっと御答弁させていただきます。
  152. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 農薬の食品残留に伴います安全性の問題でございますが、これは今大臣からお答え申し上げましたように、農薬取締法に基づく登録がございまして、その際各種の毒性試験成績を用いましてその安全性確認の上でこれを登録するということを行っております。  さらに、その使用面の問題につきましては、食品衛生法と農薬取締法と両方の法律で農薬の食品の残留に関する基準を設定しておりまして、さらに農薬取締法の方でその基準を超えないような使用基準を農薬別に設定をしておるような次第でございます。したがいまして、こういう使用基準の遵守が励行されるならば、お尋ねのような食品の残留毒性、こういう問題はもう防止し得るようなことでございますが、何分にもたくさんの農家の方が広い農地で使用することでございますので、これは十分そういう使用基準の徹底が必要でございますので、例えば毎年六月に厚生省と一緒に農薬の危害防止運動を展開しまして、これらのことの徹底を図るとか、それから私ども都道府県段階の病害虫防除所、こういう農薬関係の指導機関につきまして安全使用の濃密指導を行っているような次第でございます。  なお魚に使います薬につきましては、これは別の薬事法の関係の問題になるわけでございまして、これは負あるいは家畜の面でも、薬事法を先般改正しましたときに安全維持使用基準を設定するというようなことで食品の残留上の限界を超えないような安全使用面の励行を図っている次第でございます。
  153. 古川雅司

    古川委員 厚生大臣に御答弁をいただきます前に、時間がなくなりましたので、あわせてまとめて御答弁をいただきたいと思います。  大変神経質に申し上げているようでありますけれども、厚生省でもこのたびいわゆる食品に使用される添加物の表示のあり方について検討を進められてまいりました。食品添加物表示検討会でございますね。その中間報告がまとまって生活衛生局長のところに提出されたという報道を見たわけでございますが、この辺もいわゆる表示の厳密化ということでは評価できるわけでございますけれども、添加物の使用自体の制限であるとかあるいは個々の食品、例えばしょうゆであるとかみそであるとか、個々については安全が示されても、私たちの食生活全体に占めるそうした添加物、その総量についての影響というものはどこまで考えられているのかということも大きな疑問として残るわけでございますし、ある消費者団体の調査を見ましても、いわゆる食品添加物、重大な影響を残すものも考えられるわけでございますが、総じて我々大体一日平均して十グラムないし多ければ二十グラムぐらい摂取しているんじゃないか、それが短期的には全くわからないわけでありますけれども、むしろこれは十年とか二十年とか三十年とか五十年とか、そういう長期間を経て、もっとはっきり申し上げれば、一億二千万人の壮大な人体実験を今展開しているんだ、その結果はわからないんだというふうに表現をしているわけでございます。こういうことが盛んに活字の上にも出てまいりますし、テレビの映像にも出てまいりますし、消費者としては非常に大きな不安になるわけでございます。  これは直接関係ありませんけれども、飽食の時代と言われて、飽食が問題になっております。成人病の低年齢化であるとか、いろいろな現象が出てきているわけでございますが、この添加物に絞って考えてみても、これは果たして野放していいのか、今の事態で推移しても全く心配ないのかということは大きな不安として残るわけでございまして、この点明確にひとつ大臣の見解をお聞きしておきたいと思います。  なお、輸入食品につきましては、これも厚生省の管轄でございますが、いわゆる検疫所の陣容が非常に弱い、人数も少ないし、それからまた、最初に申し上げましたとおりに、輸入量もその質的な内容も変わってきております。チェックをしなければならないものが十分にチェックができない。しかも問題の摘発は続いているわけでございまして、この辺の体制の弱さにも一抹の不安を覚えるわけでございます。そうした点を含めまして、あと四分しか残っておりませんが、時間内で両大臣から御答弁がいただければ幸いでございます。
  154. 今井勇

    ○今井国務大臣 幾つかの問題をまとめてお尋ねがございましたが、まず最後の食品添加物の問題、これはお話しのとおり、添加物の表示につきましては学識経験者などの検討がずっと行われまして、先般中間報告がまとめられたことはお説のとおりでございます。その中で、国民の皆さんが理解しやすく、しかも正確な情報をより多く提供するということが大切だとありますのは、私は全く同感でございまして、これに対しまして、私どもはこれから各方面の御意見も聞きながらさらに具体的に検討して、なるべく早く、できれば六十二年度にも実施をいたしたいな、こう考えておるものでございます。それから先生おっしゃいましたように、やはり食品添加物につきましては、正しい知識を含めて今回の中間報告の考え方を国民の皆さんによく知っていただくということが極めて大事だろうと思っておるわけでございます。  それから先ほどのリンゴの問題でありますが、多分これはダミノザイトの話だと思いますが、これにつきましては早急にいろいろ諸外国の状況などを調べまして、それで残留農薬の基準の整備につきましては、厚生省としても非常に大事な問題だと思っておりますので、六十年度から計画的にこの残留農薬の実態の調査を進めておりまして、必要な基準の整備を進めてまいりたい、こう考えております。  それからEDBの問題で農林大臣が御答弁になりましたが、御存じのようにこの薬は今暫定基準を決めておりますが、極めて揮発性の強いものでございますから、今の暫定基準がきちっと守られてさえおれば、これは消費者に渡る段階では、EDBの検出は限界以下になるものだ、私はこう考えております。しかしながら、この問題は非常に大事な問題でございますから、続けて検討を進めてまいりたいと思います。時たま店頭でよくEDBの問題が出ますが、あれは輸入しますときの暫定の残留基準が守られていなかったものだと、私どもそのような感じもいたしますので、以後、輸入したときの検査を強化をするということで、そういうことのないようにひとつ進めてまいりたい、こう考えておるものでございます。  以上でございます。
  155. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 輸入農産物につきましての、まあ特に果物なんかでございますけれども、これにつきましては、今厚生大臣からお話がございましたように、私どもとしても代替のものをお願いするようにこれからも努めていきたいと思っておりますし、また基準はきちんと守るように進めていきたいと思っております。  今お話を聞いておりますと、一部スチーム薫蒸ですか、そういったものなんかによって殺虫が行われる、もう技術も完成し、施設も完成したように聞いております。これは何かハワイの地区のようでございますけれども、蒸熱薫蒸というのですか、これがやられておるということで、こういうものを設備するようにひとつお願いをしていきたいと思っております。  それから国内のあれにつきましては、やはり生産する人も消費者の人も両方の問題でございますので、先ほど申し上げましたように、生産の場所、また流通、加工、各段階におきまして、品質と安全性、これが十分確保されるようにこれからも努めてまいりたい、かように考えております。
  156. 古川雅司

    古川委員 終わります。
  157. 中島源太郎

    中島(源)委員長代理 これにて古川君の質疑は終了いたしました。  次に、多賀谷眞稔君。
  158. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 今国鉄の職場では、自分の身の振り方をどうするかという大変動揺が起こっておる。それに加えて、今度国鉄共済年金がこの六十一年の四月一日から改正になります。一般の公務員の場合は、職域加算があるだけでなくて、もし新制度になる、すなわち六十一年の四月一日から引き続き勤める、そうした場合に、ある時期に退職をする、そういたしますと、あれは六十一年の三月末でやめておった方が得であった、こういう場合には有利な方をとるということになっております。ところが国鉄にはそういうことがないのでありまして、六十一年の三月末でやめればこれは今までの旧方式、それから四月一日を越えると新方式でがたっと金額が落ちるわけですね。その落ち方が相当金額としては高いわけであります。  時間もありませんから多くを申し上げませんが、五十五歳で三十七年の人で三十万円の人は、五十六歳からもらうとしたら二百三十万円もらえる。ところが四月一日以降に退職をすると二百七万ないし二百十三万。二十三万円ないし十七万円減少になるわけですね。  そこで、一体どうしたらいいだろうかというのでいろいろ考えておるわけですが、肝心かなめの、過去五年間の本給を見て、それを平均報酬月額と算定する、その算定基準がいまだに決まらないのです。問題は、三月一日からやめなければならぬ、それがいまだに本給の何%にするのかというのが決まらない。ですから、枠組みはわかるのだけれども、肝心な金額が決まらないという状態です。一体これは、主管大臣は大蔵大臣ですけれども、なぜこんなにおくれたのですか、法律が通過をして。早く決めてやらないと、本人がどういうように、四月一日まで残って、そして特別の退職金の給付をもらった方がいいのか、いや今やめた方がいいのか、これの判断ができない。一体いつ決めるのですか。——質問は言ってあるだろう。だれか答弁できる人。
  159. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 ただいま担当者が参っておりませんので詳細はわかりませんけれども、事務的に今鋭意詰めている段階というふうに私は承知をいたしております。
  160. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 三月一日で国鉄はもう判断するというのですよ。ですから、三月一日現在の給与でいくわけですから、金額は差が大きいですからね、いまだに決めてやりていないというのは、これは国鉄よりも大蔵省の責任ですよ。こんなことはないでしょう。後から、これは担当者が来てからひとつ御答弁を願いたい。それからもう一つ問題は、今盛んに公務員あるいは地方公共団体あるいは一般民間の就職のお願いをしているわけですけれども、一体この退職手当とか共済年金がどうなるんだろうかということ。それで閣議決定では、十二月十三日の閣議決定でこれは、「地方公共団体の国鉄等職員の採用に伴う国鉄等の在職期間に係る退職手当及び共済年金については、地方公共団体及び地方公務員等共済組合に負担をもたらすことのないよう対処するものとする。」こういう閣議決定があるのですが、これは間違いありませんか、このとおり実行されますか。
  161. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いろいろ議論をいたしましたが、給付が発生したときに移すかとかあるいは直ちに移すかとかいう問題についての結論が出ないままに、いずれにしても今閣議決定のとおりにしよう、こういう方針で今日に至っております。  ただ、先ほどの質問と同じように、あるいは作業しておるかもしれませんので、その作業の経緯がもしわかれば、専門家が来てからお答えをいたします。
  162. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これは政治判断の問題ですから、地方公共団体とか共済組合に負担のかからないようにやるということですから、それに間違いありませんか。
  163. 竹下登

    ○竹下国務大臣 その点は間違いございません。
  164. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私はきょうは、この前の質問の残りました部分のうちで、貨物輸送の問題を主として取り上げてみたいと思います。  今日、日本の貨物輸送の地盤沈下は最も激しいですね。これは社会主義国というのは非常に列車を利用しているわけですけれども、旅客は、日本の場合はイギリス、西ドイツ、フランスに比べてまさに最高ですね。これは、イギリスの国鉄が旅客、これは人キロでありますが六%、西ドイツが六%、フランスが一一%に比べて日本の国鉄は二三%も乗っておる。ですからお客さんは非常に乗っておるわけですよ。ところが問題は貨物でして、イギリスの国鉄は、これはトンキロでありますが一〇%、西ドイツは二三%、フランスは三五%に比べて日本は六%、五十九年度は五二一%という状態になっておるのです。一体なぜこんなに日本は落ち込みが激しかったか、どういうふうにお考えであるか、お聞かせ願いたい。これは運輸大臣
  165. 三塚博

    ○三塚国務大臣 貨物は、鉄道がかつてその主流でありましたことは御案内のとおりであります。これが経済社会状態の大きな転換の中で、他との競争になかなか対応でき得ない、そういうことがおくれをとったということに尽きるのではないだろうかというふうに思うのです。  要すれば、大量定型と言われる分野を除いて、戸口から戸口へというような貨物形態は、今クロネコヤマトじゃありませんが、急便ということで行われておる物流体系というものが主流を占めるように相なりました。さらに、迅速かつ正確にという意味で、これまたトラック輸送の方が鉄道輸送より優位に立つ、こういうような問題、そういう点。それを、ヤード輸送からコンテナ輸送へ、それから直送体系へといろいろ試みてきておったわけでございますが、いずれも他との、競争相手との対応の後塵を拝する、その後を追いかけるというところに貨物の深刻な問題があったというふうに実は理解をせざるを得ない、こういうことであります。
  166. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 各国ともやはり貨物輸送の占める割合は下がっておるのです。しかし日本のように極端に下がっているところはない。各国ともモータリゼーションが来るということに対して非常にその対応措置を考えているのですね。イギリスでもフランスでも西ドイツでも随分考えておる。第二次世界大戦前から既に軌道、すなわち鉄道といわば道路、トラックの調整をしている法律もあるわけです。殊に一番典型的におやりになっているのが西ドイツでありまして、西ドイツは長距離営業トラックのこれは台数制限という形で、いろいろ経過はあるのですが、来ておる。あるいはまた自家用長距離トラックの場合はこれは距離制限、まあこれはレーバープランでちょっとおやりになりましたけれども、やはり反対も多くてすぐにおやめになったわけですけれども、しかし自家用のトラックについては鉄道及び長距離営業トラックが代替できる場合は建前としては認可しない、こういう制度もできておるわけですね。あるいはまた日曜日であるとか祭日は通行を禁止する、アウトバーンには入れないとかいろいろ皆工夫しているのですね、非常に努力しているのですよ。それでもやはりモータリゼーションの中で抗し切れぬ面もありますよ。しかし日本の場合は何でも野方図ですね。本当に私は、日本という国は、確かに高度成長をしておるけれども、非常に部分的に犠牲を強いながらやってきておる。これは後から申し上げますけれども、大変なそこに犠牲が起こっておるわけですね。でありますから、そういう点をどういうように考えられておるのか。監理委員会は、規制等については失敗したというような意味のことを一行でこれを片づけておられるが、そういうものではないのです。皆非常な歴史を持っておる。でありますから、私は鉄道の特性についても後から申し上げますけれども、一体どういうようにお考えであるか、ちょっと運輸大臣の御所見を承りたい。     〔中島(源)委員長代理退席、林(義)委員長代理着席〕
  167. 三塚博

    ○三塚国務大臣 貨物鉄道の特性と申し上げますと、大量定型ということになるわけです。セメントでありますとか穀類でありますとかというふうによく言われるところでございまして、これが、万般にわたりまして輸送手段として活用された時代はともかくとして、高度経済成長の到来などもございまして、その後の日本経済の複雑な発展などもございまして、後塵を拝さざるを得ない、こういうことになってきたことは残念なことであります。  今多賀谷先生言われますドイツの例も引かれたわけでございますが、適時適切に運輸政策としてその方向をとり得なかったのであろうかということを、御質問をいただきながら私なりに考えたわけでございますが、しかしながら、やはり我が国の自由主義体制、営業の自由体制というこういう中で、このことはなかなかとり得ない。特に鉄道の持つ特性というのは、かつて貨物からスタートをいたした歴史などもあることをかんがみますれば、特に鉄道本体が、貨物は特に、絶対に他の業種に、他の物流業者に引けはとらないというようなプライドもあったでありましょうし、過信もあったと思うのです。まさにそういう意味で過信であったというふうに思うのでありまして、その辺のところが、気がついたときには既に鉄道貨物にかわる他のトラック業者等々が完全な包囲網をしくに至り、まさに鉄道は他の業者、トラック業者が運搬しない分野だけ、収益性の低いといいますか、国益のためといいますか、経済安全保障というのでしょうか、そういう点でその分野を担当せざるを得ないという、こういうところにまで追い込まれたということではないだろうか、こんなふうに思います。
  168. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これらの問題はまた後ほど質問いたしますが、私は、今度の貨物の新会社、これは御存じのようにアボイダブルコストという、要するに回避可能経費という、こういう計算方式をとっておるのですね。貨物鉄道会社が負担すべき経費は貨物輸送がなければその発生が回避されると認められる経費、すなわち回避可能経費、こう言うのでありますが、これとすると、こう書いてあるのです。これはなかなか卓見のようだけれども、これはすなわち企業内の計算の場合に使うのです。同じ企業内で計算する場合に使うのです。そうすると、貨物輸送をしなかったら、しなくても経費は余り変わらない、こういうところで、同一企業内に使う計算方式なんです、これは本来。それを今から別会社にするわけでしょう。別会社にして、この費用は、ひとつレールも旅客会社が見ます、機関士も旅客会社が見ます、若干のいわば委託料は払いますけれども、ほとんど皆旅客会社に持たすわけですね。今度は旅客会社と貨物会社は別会社ですよ、これは。こういう方式をとっている。そして結局、じゃその経費の負担はどうするか、それは協議して法律で決める、そして最終的にはやはり国が、政府が介入せざるを得ないのです、これは。そうすると、監理委員長いらっしゃらないけれども、分割・民営と口で言っておるけれども、これはやはり同じ会社の中でどうも分権をやっておるんじゃないか。分割・民営で貨物会社と旅客会社、旅客会社は六社になるのですが、こういうようにやっておる。しかし、やり方を見ると旅客会社に負担を全部負わすわけでしょう。それで貨物会社は軽くなって出るでしょう。会社は今度は別会社ですよ。国鉄という持ち株会社があって、それが中で整理するなら別ですよ。そうでなくて、今度は別会社になるわけですから。これは別会社も、旅客会社はこれは採算がとれるかどうかわからぬというのに、本来共通費を見てくれぬわけですから、貨物会社は。一体そういう経営方式があるだろうか。スタートの場合はいくだろうが、次からはいきませんよ。ダイヤも、六十一年のダイヤ改正で今の国鉄がやっておるダイヤ改正というのは、次に改正するときはできませんよ、全然できない。利害関係が対立するのですから。  ですから、どうも頭の中に——なかなか今度のはいろいろ工夫していますよ、職人芸のように工夫しているのですね、細かく。しかし、やはり木を見て森を見ずです。そのところだけを何とかつじつまを合わすから、結局全体を見るとつじつまが合わぬようになっているのです、今度の機構というものは。  公社制度の一番悪いところは政治の介入だというでしょう。今度ほど政治の、ポイントに介入する制度はないのです。すなわち、新幹線は新保有会社が持つというのでしょう。新保有会社のリースはこの三つの会社。これを決めるのは新保有会社。これはまさに政治が決めるのですよ。生殺与奪の権は全部政府が握るのですよ、これは。今度また、この貨物会社と旅客会社の経費の案分についても、政府が結局握るのですよ。ですから、民間活力と言うけれども、幹部はどこへ頭がいくかというと政府からいかにして自分の方が有利な案分をしてもらうかという方向に頭がいきますよ。これは円高ではありませんけれども、今円安、円高でもう一喜一憂しているでしょう。つめのあかほど節約しても円高になったら輸出産業は追いつかぬ、こうなるでしょう。これですよ、まさに。  一体あれだけ政治に介入するななんて書いてあっても、やっている制度そのものを見ると物すごく政治に介入する。政府の介入の仕方によってその会社は生きるか死ぬか。こういう制度がありますか。ですからこれは民営・分割なんというのじゃないのですよ。これはまさに分権思想が入ってきておるのですね。どうなんですか。
  169. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 ただいま先生の貨物のアボイダブルコストに関する御意見、大変的を射ておるというか、非常に問題の核心だと私ども思っております。ただ、私ども考えます際に、このアボイダブルコストだけでいくというふうには申し上げておりませんで、やはり旅客会社も将来的にはそういう単にあいているレールを使わせるということではなくて、それにインセンティブというものを与えなければいけないということは十分理解をいたしております。ただ、御承知のように貨物会社、非常にスタート時点では苦しいというふうに考えられております。しかし、この性格から見て、三島の会社のように基金とかそういうもので支えるべき性格ではないということを考えまして、それから従来貨物と旅客が同じレールを使っておったというようなことを勘案いたしまして、基本的には当面アボイダブルコストで支払い、そしてそれに何らかのインセンティブというものを上乗せして、旅客会社にもそれなりの考え方というものができるようにというふうに考えておるわけでございます。  それから、アボイダブルでやるということは一つ企業体の中の仕分けというような考えではないか、そういうお考えもあると思いますけれども、世界の例を見ましても、御承知のようにアメリカが、これは日本の場合と逆でございまして、旅客会社の方が貨物会社の線路を使うわけでございますが、アムトラックと貨物鉄道会社と分けまして、互いの現在やっております案分というのも、基本的にはこのアボイダブルコストというものを基礎にしてやっております。それからカナダでも御承知のように旅客会社をVIA、ビアという会社に分離をいたしておりますが、これも基本的な考え方はやはりアボイダブルコストという考え方でプラスアルファというような考え方で分けておるわけでございまして、そういうような観点から考えますと、一つの鉄道から出てきたというもので分ける際に、主たる旅客というものの線路の上を貨物が使う場合には、基本的にはアボイダブル、そしてそれに何らかのインセンティブを与えていく。将来双方の営業体制も整ってまいりました場合には、さらにそのインセンティブを幾らにするかというような形で考えていくというのが至当ではないかというふうな考え方で、監理委員会の線に沿って一応の案を立てた、こういうことでございます。
  170. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 我々がもらっております資料、すなわちこれは監理委員会の方から運輸省が具体的に案を出せということでこの「新しい貨物鉄道会社のあり方について」というのを出しておるわけです。そこで六十二年度の収支試算表を出しておるわけです。これは五十九年度をやはりアボイダブルコストでやっておると思うのですけれども、これを今までどおり共通経費−六十二年度ですよ、共通経費と固有経費、これで試算をしたらどうなるか、これをお聞かせ願いたい。
  171. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 若干分け方の区分等について細かい点で差異はあるかもしれませんが、先生おっしゃるような総原価で分けますと、この五十九年度の二千億に対応するものが約六千十八億の赤字というふうに考えております。
  172. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 それはわかっておりますよ、五十九年度の決算報告書に書いておるのだから。それを聞いておるのではない。六十二年度はどうなりますかと聞いておるのだよ。
  173. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 六十二年度の試算は御承知のように経営体系その他を全部変えました上での試算でございますので、それに対応する現在のような体系の試算ということはいたしてございません。
  174. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 六十二年度の新しい計算方式で五十九年度を計算されたわけでしょう。ですから六十二年度も五十九年度のような方式でしたらどうですか、こう聞いているのですよ。
  175. 岡田昌久

    岡田説明員 お答えいたします。  五十九年度の決算をもとに分析いたしまして数字をつくらせていただいておりまして、そのときの数字はただいま申しましたように約六千億の赤字でございました。それを諸元を全部変えまして積算いたしましたものですから、その諸元を変える前提が今お出しいたしました二千億の赤字の諸元に基づいて計算した次第でございますので、六千億の赤字の諸元からは計算いたしておりません。
  176. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これは計算が出るでしょう。これは後から計算を出してください。そうしないと比較ができない。共通費がどれだけ旅客会社に行くのかわからぬでしょう、旅客会社に持たすのですから。ですから、人員なんかはいいですよ。人員なんかは削減されておる、それで結構ですから、新六十二年度には今までの共通費と固有費とを合わせた計算方式を出してもらいたい。これはひとつ大臣、要望しておきます。
  177. 三塚博

    ○三塚国務大臣 御審議のポイントでありますので、それはそのとおりにさせていただきます。
  178. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 これは非常に大きな問題を抱えておるわけでありまして、一体ダイヤの調整が果たしてできるのかどうか。どういうようにやるのか。皆いい時間帯のダイヤが欲しい、しかも三つの会社を貨物会社は飛び歩くわけですから、どういうようにしたらいいのか、こういう問題が果たして調整がうまくいくのかどうか。しかも通運会社が八百億ということでいわば補償せい、こう言っておるわけでしょう。その通運会社の方からはダイヤを現状よりも改善してくれ、こう言っている。今度は会社は別なんですよ。果たして調整ができるのかどうか。それから荷主のニーズに合ったような新しい改定をしてもらいたい。これが果たしてダイヤができるのかどうかという幾多の問題がある。それからトラックとの競争は一体どうなんでしょうかという問題もある。それからいわば往復列車単位で卸売をやるという。卸売をやって、行くときはなるほど荷物があるけれども、帰るときは空車という場合に、一体通運業界はそれをどうして引き受けて、どういうように荷物を積んで帰るのだろうか、こういう問題もある。それから駅を今度は三百にする。南九州は鹿児島も宮崎も駅がないのですよ、貨物駅は。そうすると大分まで持ってこなければならないですね。そうでしょう。大分までトラックで持ってくるならば、もう列車なんかに積みませんよ。大分まで来たらもう突っ走りますよ、そのまま本土へ。一体何を考えておるのだろうかと思う。そういう問題もある。     〔林(義)委員長代理退席、原田(昇)委員長代理着席〕  もう時間がないからきょうは問題点だけを指摘しておきますけれども、それからトラックの場合、今のトラックをそのまま野方図にしておいていいのだろうかということ、これは大臣お聞き及びでしょうけれども、この前、運輸労連の執行委員長がエコノミストに書いておりましたね。凄惨なトラック輸送労働者、要するに労働力が非常に高齢化してきたのですよ、大きい問題は。かつて四十七年ごろは三十歳未満が五三・七%いた。そうして四十一歳以上は五・七%である。ところが今や三十歳未満が三一・八、そして四十歳以上が二六・七、こういうようにだんだん比重が四十歳以上になってきておるというのですよ。これはゆゆしき問題なんですよ。今までのように若い、安い労働力が使えないような状態になっておる。今までの年配者からいうと、今の若い者は我慢が足らぬ、努力が足らぬじゃないか、こう言っておる。けれども、現実には若い者の職場から中高年齢者の職場にトラックがなりつつある。その大きな原因は、何といっても労働時間が長い。とにかく拘束十六時間以上が三七%いるというのです、一日拘束十六時間以上が。さらに驚いておりますのは、拘束二十時間以上が三二%おるというのです。  それから、この前、ごく最近でありますけれども、トラック協会が調査をしたのによりますと、五月から七月までの間、それを一年に延ばしますと、路線大型の運転手の労働時間は三千百五十六ですよ。また、区域は二千九百四十時間。二千時間とか千九百時間じゃないのですよ。労働大臣、こういう状態なんですよ。そこで、三人に一人は高速道路を居眠りして歩いておるというか、居眠りと言っては大変失礼ですが、睡眠不足で走っておるという状態です、これは。こういう状態の中でそのILOの百五十三号の条約も批准されていないし、二七通達も十分徹底していない。それに過積みがあるでしょう。荷物を二十五トントラックに六十二トンも積んで、そして荷がばらばらになって列車がとまって事故が起こったなんというのはいっぱいあるのですね。  総務長官もいらっしゃいますが、岡崎国道一号線というのがある。これは大変な公害らしいですね。とにかく運転手が東名の高速道路を通るのを節約して、二千八百円節約になるそうです。大体二十二時から翌朝の六時までの間に七千台市内を通る。そして、運輸労連が調査をするのに、陸橋で調査をしていたら、一時間もおるともうマスクが真っ黒になるというのでしょう。こういう状態の中で競争をせよと言ったって、本来これはなかなか無理な話なんです。ですから、やはり公正競争という考え方があるのですよ。ですから、私は国鉄のために労働時間を規制せいという意味じゃないのですが、やはりこんなことをしておいて一体いいだろうか。労働大臣、具体的に聞きたいと思いますが、どうお考えであるか、ひとつお聞かせ願いたい。
  179. 林ゆう

    林国務大臣 お答えいたします。  トラック運送業、ハイヤー、タクシー業などで働く労働者の労働条件の改善を図るために、あわせてまた交通事故防止のために昭和五十四年十二月に自動車運転者の労働時間等の改善基準、いわゆる二七通達が策定をされましたことは先生が御指摘のとおりでございます。その遵守のために関係事業所に対する監督指導あるいはまた業界団体に対する指導などを強力に推進をしてまいったわけでございます。しかしながら、これまでの監督指導の結果を見ますと、その遵守状況はまだまだ満足すべきものがございません。労務管理の面でも多くの問題が認められます。そこで、引き続き厳正な監督指導を行うとともに、相互通報制度の活用等、関係行政機関と連携を一層密にいたしまして自動車運転者の労働条件の確保に努めてまいりたい、このように考えておるわけでございます。  また、ILOの百五十三号の条約には我が国の労働基準法にちょっと合致しない点がございまして、その中で、賃金のために雇用される者、すなわち労働者に限っているのに対しまして、条約は、一人親方とかあるいはまた賃金労働者でないその家族、こういった者も対象の中に入っておりますので、我が国独特のいわゆる労働条件、労働態様でございます隔日勤務といったようなものが条約上どのように解釈をされるかということがつまびらかになっていないわけでございまして、したがって、直ちにこれを批准するということは困難ではなかろうか、このように考えておるような次第でございます。
  180. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そう難しくないですよね。これは隗より始めよという問題もあるし、日本だって商店法なんていうものが基準法前にあったのです。もう基準法なんかなかなか難しいから、商店を閉めるのです。時間を規制した方が早いじゃないかという議論ももとからあるのですよ。それは別として、ひとつこれは合わすように早くやってもらいたい。  そこで、門田審議官が見えておりますので、共済問題を一言お聞かせ願いたい。簡単でよろしいです。
  181. 門田實

    ○門田政府委員 大変失礼いたしました。  先生御指摘ございましたように、実は今回の共済改正で年金額の算定基礎が変わりまして、従来最終一年の本俸で計算しておりましたのが、これからは平均標準報酬、こういうものをとることになったわけでございます。そこで、この四月一日の法施行日以後に退職する人の年金額の算定につきましては、施行日前の期間に係ります標準報酬月額につきまして、施行日前五年間の平均本俸をとりましてこれに一定の補正率を乗ずる、こういう仕組みになったわけでございます。それで、この補正率でございますが、これは政令で定めるということになっておりまして、私ども鋭意作業を急ぎまして実は今国共審にこれをお諮りしているところでございます。もう近日中にはお示しすることができる、かように考えております。  それからもう一点、お尋ねがございました国鉄職員が地方自治体等に採用になりました場合の積立金の移しがえの問題でございますが、これはその職員の異動時があるいは年金の給付発生時かという点につきましてなお関係省で詰めておりますが、まあ方向といたしましてはやはり年金の給付発生時の移しがえという方向で処理することになるのではなかろうか、かように考えております。
  182. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 閣議決定を確実に履行してもらいたい、かように思います。  それから、一般公務員の場合はまだ従前みなしがありますから後におやめになっても損をすることはないのですけれども、国鉄はそうはいかないのですから、早くやってやらなきゃ職場は大変なんですよ、計算できないのですから。ですから、それは早く決めてもらいたい。今まで、法律が通過してここまで来ておるのですからどうしてこんな計算ができないか、こういうように思っておるのですけれども、怠慢ですよ、これは。  国鉄問題はまだ法案も出まずし、十分審議があると思いますので、次に、私は石炭問題に移らせていただきたいと思います。  御存じのように、今有沢広巳先生が会長になられまして調査会が一次、二次、三次とずっとやってきまして、今日、七次の答申が出、そうしていよいよ八次の今諮問をされておるわけであります。情勢は極めて厳しいと聞いておるわけでありますけれども通産大臣は一体どういう御所見であるか。率直に言いますと国内炭無用論すら出ておる、こういう情勢の中で、私どもは非常に残念に思いますけれども、ひとつ通産大臣の御所見を承りたいと思います。
  183. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 国内炭の問題につきましては、国内で生産していますから非常に安定性があるということと、さらに、国内炭を残しておくことによって海外炭の開発技術、そういうようなものが温存をされる。日本はかなり深いところで掘ったりなんかする技術がありますから、そういうようなメリットがございます。しかしながら、メリットが幾らあっても、値段がべらぼうに高いということになりますとなかなかお客がつかない。今やエネルギーの中に占める国内炭の割合は三%になってしまいました。それから石炭需要の中に占める国内炭が一六%というようなことで、非常に先細りになってきているというのは事実でございます。  今後どうするかという問題でございますが、これはなかなか難しい問題、地域の問題、雇用の問題、いろいろあるのでございますが、そこらの調整をどういうふうにしていくか。今後、今第八次の審議会を開いていただいて、その石炭鉱業審議会の結論を見た上でどう取り組んでいくかというように決めたい、そう思っておるところであります。
  184. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 日本は第一次エネルギーに占める国内炭の割合がわずかに三・三%。これはイギリスの三一・九、西ドイツの三〇・九、フランスの七・一、アメリカの二一・一に対して非常に少ない。しかし、海外炭との値段の格差をおっしゃいますけれども、これは各国同じなんですよ。日本だけ特別に海外炭と国内炭の値差があるわけじゃない。というのは、日本の場合は、能率からいうと少なくとも西ドイツ、フランス、イギリスに比べて最高なんですね。一年間の一人のトン当たりを見ると、日本は七百三十一トン、西ドイツが五百五十八トン、フランスが五百十二トン、イギリスが五百三十一トンですから、日本が最高なんですよ。ですから、日本の石炭と海外炭の値差があって、非常に高いように宣伝されておる、確かに高いのです。高いけれども、これはどこの国も同じなんですよ。  例えばドイツでいいますと、ドイツは陸地まで持ってきてですから海外炭の方が、これは実際は日本のような計算をするとまだ差があるのですけれども、それでもドイツ国内炭が二百六十ドイツ・マルクですね。輸入が百五十六。差が百四です。八千円ぐらいですね。八千円ぐらい内陸に持っていって海外炭の方が安い。日本は海岸線で大体一般炭は一万円、原料炭が一万四千円、こう言うのですけれども、海外から比べると決して日本だけが差が大きいのではない。それはそうでしょう。よその国から皆来るのですからね、同じような条件で。しかも、北海道の電力会社が使っている内陸の発電所は、差が千七百円くらいですね。それは国内炭が今は高い。かつては石油よりも国内炭がずっと有利であった。しかし今は大体千七百円ぐらいですね。やはりこれを一つ前提に置いていただきたい。日本の炭鉱だけが値段の差があるんだということが盛んに言われておるけれども、決してそうでない、こういうようにまず大臣に認識してもらいたいのです。どこでも同じ。しかし、どこも政策をとっておるわけですよ。ドイツだって自由経済であるけれども、市場理論であるけれども、エネルギーというものはやはり特別な地位を占めておるんじゃないかというのは、どこの国も同じような考え方ですね。運輸大臣は帰られたけれども日本の炭鉱の場合、私企業企業政策はできたけれども産業政策ができなかったというのですね。  かつて全国一社に炭鉱をすべきだと主張をされた。これは経団連の会長の植村さんなんですよ。石炭の全国一社案を出されたのです。そこで、私が政審会長になったときでしたけれども、根本政調会長や、公明党は浅井政審会長、民社党は竹本さんでしたけれども、みんなで話し合って、じゃ、ひとつ炭田別に三つにつくろうということを決めた。北海道、常磐、当時はまだ常磐もかなり元気がありましたね、九州と。それが実を結ばなかったというのは、結局、率直に言いますと財閥発祥の会社なんですよ、炭鉱は。  ドイツと日本と違いますのは、ドイツは鉄鋼会社が石炭を経営しているのですよ。石炭会社が鉄鋼を経営しているのです。そして石炭会社が四割みずから発電をしておるのです。ですから、いわばコンツェルンのような、非常に資本家としては強靱な組織になっている。日本の場合は、御存じのように国有鉄道は別でしょう。それから電力は別会社でしょう。製鉄は別会社でしょう。かつて炭鉱会社は皆製鉄を持ち電力を持ち鉄道を持っておったのですよ。それが全部分断をされたわけですよ。ですから、需要業界と全然つながっていないというところに問題があった。ですから、一社の方がいいだろうということでありましたが、それができなかった。ところがドイツはやったのです。ドイツは昭和四十三年に既にルール炭田を一社にしたのです。ルール炭田を全部一社にした。私と岡田利春君が一緒に調査に行ったのですけれども、向こうはやるですね。もうこれはどうしても一社でなければもてぬというので一社にした。そしてドイツ方式というのは、自由経済だとか市場理論だとかいうけれども、このルール炭田株式会社に入る入らぬは勝手です、しかし、入らない者は補助金は全部打ち切ります、こう言うのです。もうそれは皆入りますよ。そういう政策をやって、今ドイツはルールの炭鉱株式会社、ザールの炭鉱株式会社、炭田別に二つ。あとは小さな炭鉱があります。ところが、日本の場合はそれができなかった。今から考えれば、ここが日本の炭鉱のまさに分岐点であったと思うのです。非常に残念です。しかし、今はもうそういう話をしてもとてもだめですよね、歯が抜けたようになっているのですから。今統合せよなんていったって今はメリットがない。残念ながらいいチャンスを失ったと思うのです。  そこで、一番問題は、やはり地域経済に与える影響が非常に大きいということです。これは、炭鉱がつぶれまして、筑豊炭田で二十年になりますが、まだ膨大な石炭の後遺症の費用が要るのですよ。もうこんなはずはなかったと我々も思いますが、物すごく要るですよ。石炭予算の生産部門と後処理の分では、後処理がずっと多いでしょう。ですから、今北海道の炭鉱をどうするかとか高島炭鉱をどうするかというのは、町がなくなるわけですからね。地域経済をどういうように考えられておるのかというのが一つ。  時間も余りありませんから、もう一つ、一番問題はやはり北電です。北電は国内炭を多く使ってもらっている。ところが北電は伸びがないでしょう。ですから北海道電力が料金が一番高いのです。伸びはないし配電コストは物すごく要るでしょう。それは当たり前ですよ。ですからこの北電も何とかしてやらなければならぬわけです。ところが、北電は自衛措置としてはどう考えるかといえば、海外族を入れるでしょう。海外炭を入れれば北海道の内陸の炭鉱はつぶれるんですよ。こういう形になるわけです。ですからこれは一体、需要業界がどう協力をするか、どういうようにお考えであるのか、ひとつお聞かせ願いたい。エネルギー全体としての政策が欠けておるんじゃないかというように思うのです。どうでしょうか。
  185. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 先ほどもお答えをいたしましたが、現実の問題として、石炭のエネルギーに占める割合というのが三・三%という小さな数字になってしまったんですよ。ですから、エネルギーの問題よりも、今や地域の対策をどうするかという問題の方がむしろ頭の痛い話ではないか。  今北海道の話が出ましたが、北海道は、電力が北海道炭を使っておる。電力が高い。今度工場誘致といいましても、土地はあるかもしらぬが、寒いところで電気料がうんと高ければ、電気を多く使う工場は実際はなかなか行きませんわね。そういうようなことがありまして、実際どうするのがいいか。北海道でも、太平洋ですか、何か岡田さんの方のあれはいいらしいんですよ。夕張地区などはこの間も非常に大変な災害がありまして、これも頭の痛い話。ときどき、何年に一遍か、何十人という事故死があるというでかい事故がありまして、本当に気の毒というか何というか、悲惨なことですよ。ここで、そういうような炭鉱の鉱夫さんが働くのも、確かにこれは能率、世界一なんです。それは多賀谷先生のおっしゃるとおりなんですよ。しかし、地層その他から見て非常に劣悪ということになりますと、事故を起こさないことを最大の眼目にやらなきゃならぬけれども、残念ながら何年かに一遍事故が起きている。そういうことも考えまして、やはり地域対策というのをどういうふうに転換していくか、そういうことは皆、石炭というものだけでなくて、もっと広い視野から、地域の、県とか、まあ北海道でいえば道庁ですね、そういうものと日本政府が一緒になって今後どうあるべきかということは検討していきたい、そう思っております。地域問題も、非常に大事な問題ですから念頭におかなければならぬと思います。
  186. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 国内炭はわずか三・三%ですけれども、石炭の伸びは、一般炭、すなわち今まで製鉄業を中心とする原料炭は非常に多く入っておる、しかし一般炭は余り入っていなかったのですが、今二千万トンぐらい全体としては使っているのですが、やがて今後これが三千万トンになる、こういう形ですから、やはり石炭はある程度持っておかないと炭価の交渉だってなかなか難しい、こういうように思うわけです。ですから、ある今の炭鉱を何とかして生かしていくという方が、まだ地域経済に一番寄与するのではないか。もちろん、もう石炭がなくなってしまっているのに掘れなんということは無理ですが。  ただ、石炭の場合は、メタルマイン、鉱山と違いまして、一回やめたらもう二度と回復できないんです。鉱山の場合は、岩盤がしっかりしていますから一回中止してもまた再開発できる。今度は金が高くなったとか、今まで捨てておったのですが、希少鉱物が金になったとかなんとかいえばできるんです。ところが、炭鉱の場合は、水が入りますから、大体石炭というのは御存じのとおり木材ですから、一回水を入れてしまうともうどうにもならない。ですから、やはり温存をしていかなければならないんじゃないか、こういうふうに思うわけです。  そこで、やはり需要業界がどう協力するかということになると思うのですね。ですから、需要業界の協力ができないだろうかどうか。それから、殊に北電について、簡単に言うと、北電はひとつ国内炭を使いなさい、私どものほかの会社は海外炭を使いますということで、北電が国内炭を使うために価格の高くなる分はほかがひとつ見てやろう。電力会社というのは、御存じのように九分割されてから水火力調整金が常に調整をしてきたという歴史があるわけですから、そういうものが考えられないだろうかどうかですね。ちょっとお聞かせ願いたいと思うのです。
  187. 野々内隆

    ○野々内政府委員 現在の第七次石炭政策におきましても、やはり需要業界の理解と協力というのが必須の条件でございまして、その上に現在の石炭政策が成り立っているわけでございますので、今後、検討されております第八次政策におきましても当然需要家の理解と協力を得るということが必要だろうかと思っております。  現在、電力用炭につきましては、北炭と電発が大半を受け持っておりまして、これはそれぞれ地域的な、歴史的な理由、あるいは電発が国策会社であるというような理由等もあると思いますが、それ以外の会社がそれを引き受けるかどうかにつきましてはいろいろ問題もございます。今後石炭鉱業審議会におきましていろいろな形で、いかにして需要家の理解と協力を得るかという議論が当然行われると考えておりますので、その中での議論ということにしてみたいと思っております。
  188. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 英国、フランスは殊に国有公社、炭鉱も国有公社でありますが、電力も国有公社ですから割合政策的にうまく調整がつくのですね。ところがドイツの場合は、私企業ですからそれだけに非常に苦労をしておるのですね。そこでコールペニヒといういわばある納付金を取って、それを炭鉱に渡しておる。それは電力会社から拠出してもらっている。もともとが炭鉱と電力と鉄鋼というのは非常に密接な関係にあるものですからやりよかったと思いますが、ヨーロッパの状態はどうなっておるのか、日本ではそういうものが適用できないのかどうか、物の考え方としてひとつお示し願いたい。これは役所の方。
  189. 野々内隆

    ○野々内政府委員 申すまでもなく、それぞれの産業政策には歴史的あるいは国民的な裏づけというものが必要でございまして、ヨーロッパの政策、それがそのまま日本に適用できるかどうか、これは疑問があろうかと思います。ただ、私どもとしましても、そういうヨーロッパの政策というものを十分勉強をし、可能な範囲で参考にさせていただきたいというように考えております。
  190. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 最後に、北海道開発庁長官、北海道では大変なゆゆしき問題が起こりつつある。一つは鉄道でしょう。鉄道は今度は分割されるといいますよ。そうすると、北海道の料金が一番高くなる。これはもう明らかですね。今の案でいくと、人員は、職員の半分は整理されなければならぬ。それから、今話があっているように、電力は一番高い。それから今度は、もし円高差益問題で還元をするなんということになると、北海道はできないでしょう。それは、海外炭も石油も使っていないのですから円高の恩恵を受けていないでしょう。ですから、ますます北電とその他の電力会社の差が大きくなる。一体長官としてはどういうようにお考えですか、これは。それで鉄道だって、北海道は要するに開拓使が行って、そして明治時代は大変開発したのですけれども、それも日本が大陸に進出するようになってもう北海道は余り見向きもされなかったのです。終戦後、領土が狭くなったというので、また北海道だというのでしょう。それで、経済が太平洋ベルト地帯にずっと延びてきたから、また北海道は、おまえのところは石油備蓄基地でもやっておけと、こう言うのでしょう。もう踏んだりけったり。私は北海道に住んでいるわけじゃないけれども、本当に同じ税金を納めてこんなにひどいことはないだろう、こう思うのですよ。ですから、北海道開発庁というのが特別にできたんでしょうけれども、どのようにお考えでしょうかね。
  191. 古賀雷四郎

    ○古賀国務大臣 お答え申し上げます。  ただいま国鉄改革の問題、あるいは電力の問題、北海道にとっては非常に重要な課題であります。北海道は、我が国全体の面積の二二%ございまして、したがいまして、そういった地理的な条件、あるいは地形的な条件等もございますが、広大な平野を有し、また広い山林を持っておりまして、開発の可能性が非常に強いところでございます。北海道開発が進められるように決まりましたのは、そういった点で着目されて、今日、北海道振興開発計画が立てられ、北海道開発庁ができたゆえんのものだと考えております。  第一点の国鉄問題につきましては、そういうような広い土地でございますので、したがいまして、この問題につきましては、道民の交通の確保とかあるいは物資の流通の問題とか、いろんな問題で非常に重要な位置を占めていたことは確かでございます。しかし、国鉄の再建は、政府が一体となりまして取り組むべき重要な課題でありまして、当庁としましては、国鉄再建監理委員会の意見を最大限に尊重する立場をとってその改革に協力してまいりたいと考えております。しかし、残る鉄道につきましても、この鉄道が果たす役割も非常に重要であると考えておりますので、これらの経営、いろんな問題につきましても重大な関心を持っておるところでございます。  分割・民営化については、現在、政府部内で具体的な検討を進めているところでありますが、新しい北海道の旅客会社については、特に安定した経営基盤の確保と将来にわたる健全な運営の維持に万全が図られるように、所管行政の立場からひとつ努力してまいりたいという決意でございます。  なお、民営化に伴って退職される人々の再就職問題につきましても、関係機関とも緊密な連絡をとりながら進めてまいりたいと思っております。  お話しの北海道の電力の問題につきましては、他電力に比較しまして高くなっております。企業電力につきましては若干の配慮がなされておりますが、電力料金の高いということは、企業立地の促進あるいは地域経済の活性化にも大きな障害になるということは想像されます。当庁としましても、北海道開発を促進する観点から、できるだけ安い電力料金であることが大変望ましいことと考えておりますが、地域の広域性、電源構成に占める石炭火力のウエートが高いなど地域の実情を踏まえ、電力料金の改善に向けて関係機関とひとつ協議してまいりたいというふうに考えております。  お答えにならないかと思いますが、我々としては、全力を挙げて北海道の振興開発に努力してまいる決意であることを表明しまして、私のお答えとさせていただきます。
  192. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 石炭については、また石炭鉱業審議会も審議されておりますから、我々の意見もぜひ反映したいと思います。  そこで、きょうは若干の御意見を承ったわけですが、続いて問題を次に移したい、かように思います。  先般、大原議員から部落差別の問題、それから人権擁護の問題がございました。総理大臣から、この大原議員の質問の趣旨を体して努力したいと思いますという積極的な答弁をいただいたわけです。そこで、もう少し私は私なりに詰めてみたいと思います。  それはやっぱり寝た子を起こすなという議論は依然としてあるのですけれども、これは私の経験ですけれども、ある中学校で、親御さんはその話を全然しなかったのですね、子供に。子供も被差別部落の出身であることを全然知らなかった。ところが、クラスの三分の二は知っておったわけです、生徒は。知らないのは本人だけ。こういう問題がありまして、私も偶然としたわけですけれども。結局、もし水平社結成以来、そういういわば抵抗あるいはまた啓発運動がなかったら、やっぱり今学校で一番いじめられっ子の対象になっておるんじゃないかという感じがするわけであります。  そこで、同対審の我々が二十年前にいただいたその答申の中身を見ますると、人権擁護という点について、かなり具体的に提起がなされておるわけですね。私は、これをまた見直してみましたけれども、ここにはまさに今日的問題が提起をされておる。  すなわち、「審議会による調査の結果は、地区住民の多くが、「就職に際して」「職業上のつきあい、待遇に関して」「結婚に際して」あるいは、「近所づきあい、または、学校を通じてのつきあいに関して」差別をうけた経験をもっていることが明らかにされた。しかも、このような差別をうけた場合に、司法的もしくは行政的擁護をうけようとしても、その道は十分に保障されていない。」今日そうなんですよ、やっぱり。それは個人的に差別を受けた場合には、何ら保障がないのですよ、現在は。  そこで、今まで特別措置法ができて十年、さらに三年組長していただいて地域改善対策特別措置法ができたのですけれども、この面については、残念ながら改善の足跡が見えないというのは、やっぱり非常に根の深いことを我々はしみじみ感ずるわけです。  そこで、ここで提起をしておりますのは、「人権擁護活動の積極性」ということについて言っております。それは具体的に「差別事件の実態をまず把握し、差別がゆるしがたい社会悪であることを明らかにすること。」「差別に対する法的規制、差別から保護するための必要な立法措置を講じ、司法的に救済する道を拡大すること。」こういう答申が二十年前に出されておるわけです。  そこで私は、これに対してどういうように対処をされるか。大原さんは、ハードからソフトへということを言われましたけれども、我々は、この結婚、就職、それが職場にはいたたまれないようになったというようなことですね。これはやっぱり啓発、その啓発効果は、何が啓発効果のきっかけになるかというのを考えてみなければならぬ、こういうように思うのです。  そこで、江崎総務長官は、先般、東京のように混在をしてしまえば見えないじゃないかというお話をなさったわけですが、ところが、「地名総鑑」を買った会社は、東京が一番多いのです。一番には東京が多いのです。二百二十のうち五十七買っておる。外見上わからないんです、東京は。しかし、会社の方は何か知りたい。それが就職に影響するのですね。ですから、この点を十分認識をしてもらいたい。  そこで、昨日、大原議員の方から「いのち 愛 人権」というのを出されております。ここにいろいろございます。ございます中に、韓国人と同和地区の人は採用しないというサンエス就職差別事件というのがある。このサンエスという会社は東京が本社ですね。そして、本社から大阪の営業所に向かって指令を出しておるわけです。ですから、やっぱり東京というのはそういうことに非常に関心を持っておるのじゃないかというふうに思います。  それからもう一つ、結婚が破談になって、そしてそれが職場にばあっとうわさが散って、職場にいたたまれなくなってやめたという人がありますね。これは皆さんにお上げした資料の中で、二ページから書いてあるわけです。  こういう事件が起こっておる。これをどうして我々は防いでいくか、ひとつ同和対策の責任者であります総務長官から御答弁を願いたいと思います。
  193. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 同和対策の特措法からもう既に十七年、それから今の地対協が発足して、来年期限を迎えるわけですが、とにかく環境条件の整備という点では相当成果が上がったことは、これはお認め願えますね。それから高等学校への進学、それから職能教育、就職のあっせん、こういった面は、これはもう二十年の成果は確かにあったというふうに思います。  ソフト面と、こうおっしゃる精神面をどのように解決していくのか、これはやはり同和対策というこの名称を嫌って、あえて地域対策に名称を変えたという経緯などにかんがみても、何か法制化をして縛り上げることが本当に効果があるのか、むしろ法律ではなくて、粘り強く一体化していく、啓蒙運動をしていくことが正しいのか、そのあたりは今後の地対協の基本問題研究会の成果にもゆだね、私どもも絶えず努力をして、その先行きを見守りながら皆さんとも御相談、お知恵を拝借してこの解消に努めたい、かように考えます。
  194. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 同和対策事業特別措置法が地域改善対策特別措置法になったというのは、ちょっと違うんですね。それは自民党の考え方はそうだったかもしれませんが、部落だけじゃなくて、その地域だという考えがあるんですよ。ところが、人権についてはそれがないんですよ。  大阪の府条例の紹介がございましたでしょう、部落差別身元調査等規制等条例、これが大変啓発効果を生んでおるんですよ。それは、校長先生はよく仲人を頼まれるわけですね。ある校長先生の話ですけれども、仲人を頼まれたときに、念のために部落出身であるかどうか調べてもらいたいと言うそうですよ、必ずじゃありませんが、言われるそうですよ。そのときに、説得するのが容易でないというんですよ、そういうことは調べたらいけませんよという説得をするのが容易でない。ところが、この条例ができましてから、仲人を頼みに来る人が、もう時代も変わりましてそういうことは調べてはいけないそうですね、こう言う。それだけ意識の改革になるんですよ。ですから我我、処罰をせいというのが目的ではないんですよ。そういうのはやっぱり社会悪なんだということを知らすことが、私は大変に重要じゃないか。それを処罰をして取り締まるんだというのは、余りそういうことを表に強く出しますと、それは反発もありますし、そうでなくて、やっぱりこのことはいけないんだというこういう御念を与えることが非常に必要ではないかということを感ずるわけですね。  ですから、ここにもお手元に出しましたが、「地名総鑑」なんかが後を絶たないのですけれども、ところが、興信所の会長ですか、大阪府調査業協会の廣嶋会長という方ですが、これはティタンという、帝国秘密探偵社というところの社長さんです。この人が財団法人大阪府調査業協会の会長になっておる。この人の話を聞きますと、やはり部落民であるかどうかを調査してくれという依頼があるというのです。その場合に断ると、あの会社はだめだ、こう言うのです。そこで、いや、こういう条例があって、もうそれは調査できないんですよと言うと断りやすいし、また商売にも影響がない、こういう話なんですけれどもね。私は何かきっかけをつくってあげたい。そこで、この廣嶋会長自身は、大阪のような条例が大阪のみでなくて全国にモデルとして普及すればいい、できれば国の法律が必要である、こういうことを言っておられました。ですから、「地名総鑑」を最初発行した人も、今考えれば、もうおれはそういうことは一切手を引いた、だから何か取り締まってくれる人があればいいがという気持ちはあるんですよ。ここがなかなか重要な判断のところですけれどもね。私は、そういうことをやはり何かのきっかけをつくってやる必要があるのじゃないか、こういうように考えるわけですが、ひとつ御答弁願いたい。
  195. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 多賀谷さんのおっしゃる御趣旨もわかりますし、先ごろの大原さんの資料を示しての熱心な御趣旨もよくわかります。私も同和問題に相当真剣に取り組んだ経験者の一人のつもりでございます。おっしゃるようなことを、本当に心なきわざを一体どうしてやるものかとやるせない感じがしますね。本当に残念に思います。  しかし、昨年の十月に条例を出したというところですから、その成果については、今おっしゃるように私どももよくわからぬわけではございません。しかし、そういうものを法制化することが本当に将来の同和問題の解決に役立っていくだろうか、法律になじむものであろうか、そういう面のメリットもあるが、この前も大原さんにお答えしたわけですが、精神的に別なリアクションが起こりはしないか。そういう点の幅広い意味から今度の地対協の基本問題調査会などの討議も踏まえて、これは共通の問題ですから、私どももひとつ熱心に検討をしてみたい、かように考えます。
  196. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 やはり一世紀も続いた問題ですから、今までハードをやられた、そうすると、ここで空白ができるというと、せっかくやられたものが灰じんに帰すのじゃないか、また逆戻りするのじゃないか、私はこういう心配があるわけです。ですから、そういう点はやはりあらゆる手法をもって解決してやらなければならない問題じゃないか、こういうように考えるわけです。  建設大臣もいていただいたのですけれども、実は大蔵住宅というのがありますね。テレビでよく宣伝をしておりますけれども、この大蔵住宅について、実は被差別部落の地域に住宅ができた。自分は知らないでそれを買った。ところが、その後、被差別部落であるということを知った。だからといって非難をするビラをどんどんどんどん五万枚もまいたんですね。そういう事件が起こって、また合弁護士のところへ手紙をよこして、自分は地名は書かなかった、しかし、名誉棄損で訴えるなら、今度は地名を書いてまたビラをまくぞという手紙がこの担当弁護士のところに最近来たんですよね。こういう問題がある。  それから、答弁をしていただいておりますと時間がありませんが、識字学級というのが非常に効果を上げています。僕は涙ぐましいと思うのですよ。四十過ぎて五十ぐらいの人が夜行っては小学校の一年や二年のやることをやっておるのです、書いておるのですよ。僕はそういう涙ぐましい感じを受ける。こういう点は、教育ですからひとつ推進していただきたい。  そこでもう一つ労働大臣、せっかく条約はあるのです、勧告もあるのです。雇用及び職業についての差別待遇に関する条約というのが百十一号条約にある、勧告もある。ところが、なぜ日本はこれを批准しないのか、先般は人種差別撤廃条約について質問がありましたが。これは、日本の基準法というのは雇い入れてから後の差別は禁止しておりますよ、基準法によって。しかし雇用については禁止してないのです。一番大きな問題になりました性別、すなわち男女雇用均等法ができた、ですから女性差別撤廃条約も批准した。ですから、これを放置する手はないと思うのですよ。ですから、これはひとつぜひ労働大臣に積極的に批准するように準備をしてもらいたい。これは外務大臣もそうです、当然外務省の担当ですから。これはもう百十何カ国では批准しているのですから、日本だけなぜおくれておるのか。いや、そういう事案がありませんから批准する必要はないというわけにはやはりいかないでしょう、こういう事件が起こっていますから。ですからそれをやっていただきたい。  以上ですけれども、ごく簡単に各大臣から御答弁を願いたい、時間がなくて大変失礼ですが。
  197. 林ゆう

    林国務大臣 先生御指摘のように、ILO百十一号の条約は、職業訓練を受けること、雇用されること、個々の職業に従事すること及び雇用条件について、人種、皮膚の色、性、宗教、政治的見解、国民的出身または社会的出身を理由とする差別、除外または優先的待遇を除去するために国家のとるべき方針等について規定したものでございますので、このような本条約は雇用及び職業に関する広範な差別が対象となっておりまして、この条約の批准につきましては国内法の整備の要否というものが必要であろうかということで、ただいま検討させているところでございます。  それから二言、私ごとで大変恐縮でございますが、私もこの差別の問題につきましては大変大きな関心を持っております。実は、私の祖父のいとこになります大江天也というのが明治の半ばころから水平社運動にその生涯をかけてまいったわけでございますので、そういったことも私の身辺にございますので、殊さらにこの問題につきましては私も深い関心を持って、こういうことがいっときも早く除去されるというようなことをこいねがっておるわけでございますから、このことを一言申し上げて私の御答弁にかえさせていただきました。
  198. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 建設大臣も文部大臣も皆御列席なんですけれども、残念ながらまだ質問したい問題が一点ありますのでお許し願いたい、こういうように思います。  最後に、カネミ油症事件の問題であります。  この事件というのはもう十八年たっております。要するに、この被害者というのは一万三千四百二十人、届け出があった者、認定した者が千八百人。そして、これはPCBですね。これはダーク油という事件として二百万羽の鶏が病気になって四十万羽が死んだ。そこで、厚生省の国立予防衛生研究所の俣野という技官が農水省の畜産局にダークオイルが残っておったらくれ、欲しいと言いましたら、いや、それはない。彼は、アメリカに鶏に奇病があった、それで研究して、これはおかしいぞと思ったのですけれども、オイルはもうない。それから厚生省の食品衛生課に行って、課長補佐でありますが、これは大変なことになるんじゃないかと言ったら、人体被害の報告がないからもう手がつけられない、こう一蹴したんですね。そこで、彼はその後ある大学の教授になっていったものですから、カネミ油症事件の証人としてこの事実を証言した。こういう事件なんです。そうして、御存じのように第一陣の訴訟の福岡高裁の判決では国にも責任がある、こう言っている。それから次に、第三陣の原告団の訴訟は小倉地裁支部で国にも責任があると判決が出た。そこで、第二陣の原告の判決が福岡高裁でこの三月にある。そうして、裁判長は法務省の訟務局長であった人です。これは蓑田さん。蓑田さんは、これは大変な問題であるからというので、和解しませんかと勧めた。それは、自分がかつてそういう地位にあったわけですからわかるわけです。しかしこれは、黒白をはっきりするといろいろ問題が起こると思ったのでしょう、政治的判断でやるべきだ、そこで和解を言ったけれども、農水省も厚生省も法務省も一緒に協議した結果、これは拒否しますということで和解を拒否した。その判決がこの三月に出るのです。  そこで、私は蓑田さんを言うわけではないけれども、かってそういう立場にあった人、自分が要するに原告側に立っておった人が今裁判長になっておるわけです。ですから、相当考慮しての判断であったと思うのですけれども、今度判決が出ると、どういうふうになるかわかりませんが、上訴するか、あるいはのむか、あるいはさらに和解に入るか、これは判断であります。何にしても、被害者はもう十八年になるのですよ。これは本当の被害者はもう死んでしまうのです。ですから、これはひとつ御考慮を願いたい。  続いて、もう一つお聞かせ願いたいと思うのですけれども、治療費と療養費、今までカネミ倉庫から一億数千万円、毎年出ておった。しかし社長も老齢ですし、経済情勢もいろいろあるでしょうから、この際基金を出したらどうか。患者はずっと残っておるわけですから、何らか政府で基金をつくるようなひとつ指導をして、基金を一つくって、それで、これはカネミ倉庫だけではなくて鐘化、製造したのはカネクロール、ですから鐘化にも話をして、ひとつ基金の設立に努力されるべきではないか、こういうように思うのですが、ひとつ二点、法務大臣並びに農水、さらに厚生大臣からお聞かせ願いたい。
  199. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 御質問のございましたこの事件、確かにもう十八年を経過しておるということ、そして福岡の裁判所でかつてそういう和解のお話があったということ、これをお聞きしております。ただ、今三月というお話でございましたけれども、まだ判決の時期が定かでないということと、またその結果というものがどんなふうに出るかということがまだ判明しておりません。そういうことで、私どもといたしましても、判決が出た段階で、判決内容を検討して関係各省と十分ひとつ検討をしたいというふうに考えております。
  200. 鈴木省吾

    ○鈴木国務大臣 お答えいたします。  内容的には、今農林大臣御答弁のとおり農林省に最も関係があり、また厚生省の関係でございます。ただ、訴訟という立場で法務省は国を代表してやっておりますので、そういう経過もこれあり、よく関係各省と相談をして善処してまいりたい、かように考えております。
  201. 今井勇

    ○今井国務大臣 まず、先生お話しのように、被害者の方々の長年の御苦労に対しましては、本当に御同情申し上げる次第でございます。御案内のように、係争中の裁判は、今ほかの大臣からありましたが、国家賠償責任が問われている裁判でもございますので、判決後の対応につきましては関係各省ともよく相談をして決めたいと思っております。  また、厚生省は、先生御案内のようにこの油症治療に関する問題につきましてはその調査研究だとか、それから生活困窮者につきましての世帯の更生資金というものの特別措置なども実施しておりまして、今後とも裁判上の問題とは別個にこの問題は継続してまいりたいと思っておるわけでございます。  それから、今の御指摘の基金の問題でございますが、これは幾つか困難な問題があるものと思われますが、油症患者の治療費が将来にわたって安定的に支払われるということは非常に肝心なことだと思っておりますので、今後の動きをもうちょっと見守ってまいりたいと思っておるわけでございます。     〔原田(昇)委員長代理退席、中島(源)委員長代理着席〕
  202. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ではひとつ、派遣労働について、労働大臣。例の十四業種を決めよう、ところが、会社の一番基本である設計について、これは派遣でよろしいということを今意見として述べられておるやに聞いておる。設計というのは工場の基幹ですよ。これを派遣労働者というのは、もうそういうことになれば、工場のいい、悪いは設計で決まるのですから、それを派遣でいいなんという、心臓部を派遣でやるということになれば、我々がその工場の判断をするのに価値が失われる。これはひとつ、時間もありませんから、十分考えていただきたい。我々がつくったときはそういう趣旨ではなかったでしょう。設計の技術者をどう養成するかは、その会社の価値を決めるのですから、これを要望して、質問を終わりたいと思います。
  203. 中島源太郎

    中島(源)委員長代理 これにて多賀谷君の質疑は終了いたしました。  次に、中野寛成君。
  204. 中野寛成

    中野委員 私は、教育、文化の問題を中心にお尋ねをしたいと思います。ちょっと順序が入れかわりますが、外務大臣の御日程の都合がおありだということでございますので、外務大臣に関係をする部分から先にお尋ねをいたしたいと思います。  まず最初に外国人の指紋押捺の問題でありますが、昨年は大変に。大騒ぎをいたしましたけれども、しかし問題が解決されたわけではないわけであります。一部といいますか、かなり多くの方々が、これに対する抵抗の運動もございましたし、言うならば実力行使もございました。しかしながら当初予想をされました心配に比べますと比較的穏やかにその収束が図られたかのように見えるわけであります。しかし、それには当然彼らの理性が働いた、日本政府を信頼しようという意識がその中に働いたからであると思うわけであります。逆に言えば、こちらはそれにこたえなければいけない、こういう気持ちも強くいたします。  そこで、今日まで外務大臣が韓国を初めとする諸外国との折衝の窓口になり、また総理及び法務大臣等からもこのことについては前向きにその改善策を検討する旨繰り返して御答弁がなされているわけであります。具体的にはどういう検討が今なされているのか、どういう状態にあるのかについて外務大臣、そして法務大臣からお尋ねをいたしたいと思います。
  205. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 指紋押捺制度につきましては外国、特に韓国が非常に重大な関心を持っております。  実は昨年、日韓定期外相会議を行った際も韓国外相からこの制度の改善を強く求められたわけであります。我が国としては既に改善措置はとっておるわけですが、韓国側からするともっと根本的な改革をしてほしいということであったわけです。これに対して私どもとしては、この制度については長期的に、自主的に内外の情勢を踏まえながら誠意を持って検討をするという基本方針のもとで政府部内で研究を続けてまいる所存であるということをお答えいたしまして、検討課題としてこの御回答をいたしておるわけです。  しかし幸いにして、去年の指紋の実施の状況は、大変混乱をするのじゃないかと一時は大変心配もいたしたわけですが、非常に静かな形で全体的には行われたのじゃないかというふうに思っております。しかし、この指紋制度につきましては今政府部内で検討しておりますし、制度の検討ということになりますと外務省の所管でなくて、所管官庁、特に法務省を中心として行われるものであろうというふうに考えております。目下法務省、あるいはまたその他関係各省等で検討が進められておる、こういうふうに理解しております。     〔中島(源)委員長代理退席、渡辺(秀)委     員長代理着席〕
  206. 鈴木省吾

    ○鈴木国務大臣 お答え申し上げます。  今外務大臣から総括的な御答弁がございましたけれども、法務省といたしましてもそういう方針に従いまして鋭意いろいろ検討いたしております。  例えば、指紋を押捺する場合に、今まで黒いインクで回伝してやるとか非常に感じも悪いわけでございますから、そういうものはもう透明な液で余り感じを悪くしないような、こんなことしないでちょっとすればいいというようなことを実はやっておりますが、その他いろいろこれからまた改善すべきことがあれば、さらに長期的に、自主的に改善しなければならないなということで今事務当局で検討させているところでございます。
  207. 中野寛成

    中野委員 去年七月からやっていることを改めて法務大臣におっしゃっていただかなくても我々は十分わかっているわけでございます。  これからむしろ期待されているのは、もっと抜本的に、ある意味ではその指紋押捺制の廃止も含めて積極的な検討がなされているものと期待をされているわけであります。それこそ指紋だからといって小手先のことでは困るわけでありまして、そういう積極的な検討が果たして法務省で前向きになされているのかどうか。それとも小手先のことで何とか工夫はないものかと知恵を絞っているのか。そのニュアンスは一体どちらにあるのですか。
  208. 鈴木省吾

    ○鈴木国務大臣 小手先だけのことは考えておりません。実は、指紋以外に本当にその人を確認できるいい方法がないのかなというような検討、それから二、三年前の国会で実は法を改正したばかりでございます。そのときの内容は、御案内のように指紋を含め、あるいはいつもあれを携帯しておる、こういう内容も含めて実は御検討いただいたばかりでございますので、そういう点も考慮しながら、しかし、もっといい方法はないのかなということで、実は検討はさせておるわけでございます。
  209. 中野寛成

    中野委員 去年、一番大幅な書きかえがあったわけです。切りかえがあったわけです。法改正をして、この大幅な切りかえの時代にその法の適用をしないままにまた再改正というのは何とも格好が悪いということで、とりあえず去年一年間は辛抱してくれということもニュアンスの中にあったわけですね。その山場を越えたわけです。しかし、ことしも引き続いてその指紋押捺の問題は継続しているわけです。今だって外人登録証の切りかえは、ことしもまたずっとあるわけであります。そして、一日も早い改定が望まれているわけであります。そういう意味で、言うならば、前回の法改正後、去年ワンサイクルを越えたわけですから、今さら建前論は別にいたしまして、もうそろそろいいではありませんかというふうに言いたいわけであります。そういう意味で、今小手先のことで済まそうとは思っておりませんという力強い法務大臣の御答弁でございますから期待をしたいと思いますけれども、ひとつ、その前の法改正からそう年数もたってないからなどという去年の答弁の繰り返しはことしはいいじゃないですか。むしろ、もっと前向きに実際に検討されているわけですから、そしてまた、期待を持たせるようなことを言ってますます運動をエスカレートさせたらいけないなんという心配ももうないのですから、ですから、ひとつ法務大臣にはっきりと、いつごろまでにはめどをつけたい、抜本的な改正に向かって努力しているというふうな御答弁はいただけませんか。この一回だけで終わりますから。もう後延ばしませんから。ひとつ明確にお答えいただきたい。
  210. 鈴木省吾

    ○鈴木国務大臣 先生御案内のとおり、昨年は大変な数の切りかえがあったわけでございます。最初、大変保留者、拒否者等がありましたが、逐次話し合いをしまして、今はもう本当に少なくなってまいりました。そういうことで、今法務当局としてもそういう方々に対する説得等もいたしておりましたものですから、先生今御指摘のように、何月何日までだというところまでまだいってないので、本当に残念でございますけれども、なるべく急いでやるように努力をいたしたいと思います。
  211. 中野寛成

    中野委員 これ以上聞きましても、ちょっと法務大臣も立場上答えにくいでしょう。今の御答弁でひとつ積極的にやってくださるものと期待をして、今後十分また我々も拝見をして見守ってまいりたいと思います。  次に、同じ在日韓国人のことになりますが、外務大臣にお尋ねをいたします。  たしか昨年からこの在日韓国人の法的地位協定の見直しについての協議が始まっていると思うのであります。法的地位協定は最初、一九六五年六月二十二日に結ばれているわけでありますが、第三世以降の人々のことについては二十五年以内に韓国側の申し入れに基づいて協議をするということになっているわけであります。その事前協議というのか、本協議というのか、既に始まっていると思うのであります。  この在日韓国人の問題は、他の外国人とは違ってその沿革が違うわけでありますから、特別の措置が必要です。指紋押捺問題だってそういう意味でお聞きをしているわけでありますが、そのために私も随分、行政差別の問題というのは九年間余りずっとここでやり続けてまいりましたが、随分改善はされました。改善はされましたが、前に法務省の方々によく聞かれたことがあるのです。どこまで行ったらいいのですか、どこまでやったらいいのですかと前に聞かれたことがありましたけれども、確かに行き着くところは、言うならばそういう特別在留許可の方々には、最終的には日本国籍を取得するのか、韓国籍でいくのか、いわゆる帰化制度というのではなくて、国籍取得の選択の期限を切って、どちらかをお選びくださいというふうに申し上げる機会が来るのではないか。また、そうしなければ最終的解決はつかないだろう。言うならば、今は在日韓国人でありますが、韓国系日本人という時代が来るのかどうか。これが一つの最終的な結論になっていくのではないかと私は思うわけであります。また、そのことを主張する二世の方々も今やたくさんふえておられます。しかし、一世の方々がそれさえも拒否をされるという心理的な作用があることもよく承知のことであります。  しかし、この法的地位協定の見直し等々につきましては、やはり特別な配慮というものが必要ですし、将来のそういうことも見越した配慮がなされなければいけないのではないかと思うのでありますが、現在どういう状況にありますか、外務大臣にお尋ねをいたします。
  212. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 御指摘の協定改定交渉なるものにつきましては、昨年十二月に行われた事務レベル会合のことを念頭に置かれてお話しになったものと思いますが、この会合は協定の改定交渉というようなものではございませんで、昨年の外相会談の合意に基づきまして、同協定の直接対象となっていない、いわゆる三世以下の在日韓国人子孫について、その生活実態等につき客観的に話し合うために開催をされたものでありまして、いわば協議の前の準備段階的な性格のものである、こういうふうに考えております。ことしも引き続いてこの会合は再開したい、そして、十分客観的にお互いに話し合うことが大事だろう、こういうふうに考えておるわけです。
  213. 中野寛成

    中野委員 法務大臣にお聞きしたいと思いますが、これについて、実際は外務省が折衝の窓口になりますが、その受け皿は法務省で結論を下さなければいけないことになるのだろうと思いますが、どういうお考えをお持ちでしょうか。     〔渡辺(秀)委員長代理退席、中島(源)委     員長代理着席〕
  214. 小林俊二

    ○小林(俊)政府委員 先ほど外務大臣から答弁されましたように、この会合は、まず実態について相互に実情を突き合わせて今後の検討の基礎にしていくという趣旨で開かれておるものでございます。こういう観点から、私どもといたしましても、国内における在留外国人、特に韓国人を中心とする在留外国人の実態についてこの春から調査を開始する予定にいたしております。それによって得られました資料をもとにして、改めて先方の考えと突き合わせていくという観点から、徐々に双方の見解の合意し得る部分を詰めていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  215. 中野寛成

    中野委員 この問題については、とりわけ協定永住者の皆さんについては、まさに日本人と同じ生活をし、同じように税金を納め、同じように教育を受けてやっている人たち、三世、四世ともなると韓国語さえも話すことができない、全く日本人と変わらない状態、そういう中で、しかし、いざとなるといろいろな差別を受けるという実態もあるわけでありますから、どうか、このことについては大いに前向きの御検討を期待をしておきたいと思います。  もう一つ外務大臣にお尋ねをしておきたいと思いますが、これは文部大臣にお聞きすべきことなのかもしれませんが、国際文化交流について、二つのことをまとめて御提言を申し上げます。  一つは、例えばハワイにありますウニスト・イースト・センターですか、のような東西文化センターというふうなものを日本におつくりになってはいかがであろうか。これは、言うならば東西文化のかけ橋みたいな存在に日本の国はあると思うわけであります。そういう中で東西のいろんな、世界じゅうの学者、文化人の皆さんにお集まりをいただいて、お互いの国々の文化も紹介し合う、研究もし合う、そういう拠点を日本につくることができないか。これは日本のこれからの国際社会における文化的また国際的な役割を果たしていくためにせめてそのくらいのことは必要ではないかな、こういう感じがするわけであります。日本にそういう文化のシンボルとなるようなものがないわけです。  そこで、私としては例えば今からでは手おくれかもしれませんが筑波の科学博の跡地とか、例えば隣接したところに総合大学があって、そしてそういう土地がある、そういうところにこういう文化センターをつくって宿泊、会議、セミナー、いろいろなことができる、交流が図れる、こういうことを行うことができるとすれば、日本に対する文化的評価というものもまた高まるし、日本のことを理解してもらうことにもつながっていくのではないだろうかということ。  それからもう一つは、あわせてそれに先立ってこの五月にはサミットが行われますが、私は、この中曽根総理の演説もそしてまた各大臣のいろいろな所信表明等もお聞きしておりますと、文化、文化という言葉がやたらと出てくるのであります。二十一世紀を展望してという言葉と同時に、これからは文化の時代である、そしてまたハードよりソフトの時代である、やたらとその言葉が出てくるわけでありますが、文化予算はだんだん削られてくるし、そしてまた具体的な文化政策というのは余り見当たりませんし、何か非文化的なことばかり行われているような気がしてならぬわけでありますが、そういう状態の中でもうちょっとそのおっしゃっている演説の内容に政策を合わせるとするならばこのくらいのことはしてもいいのではないか。そして、あわせて文化サミットぐらいもひとつ日本でお開きになってはいかがでございますかという二つのことを御提言申し上げてみたいと思いますが、いかがでしょうか。
  216. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 国際的ないわゆる文化交流というのは、やはり国際的な親善関係、友好関係を深め、あるいはまた相互理解を深めていく上においては非常に重要な分野であろうと私は思います。政治、経済、外交は政治、経済だけではない、こうした文化交流等が活発に行われることによって真の意味の国際的な理解というものが深まってくる、そういう意味では日本外交においても非常に重要な位置づけをいたしております。各国との間でも文化協定等も随分結んでおります。今ソ連との間でも交渉もしておるわけでございますが、こうした文化協定に基づく文化協議等もこれから積極的に行って交流の場を拡大をしていくということもやっておるわけでありますし、あるいはまた、いろいろの首脳の会談等、我々の会談等におきましても、文化問題を議題に上げまして、お互いの文化的な遺産の交流とかあるいはそうした催し物等の交流等についてもいろいろと具体的にこれも進めておるということは事実であります。  サミットにおきましても、経済は主体ですけれども、同時に政治の問題も論議されるでしょうし、私もこれまで四回ばかりサミットに参加いたしましたけれども、文化、教育の問題等もやはり首脳の間では相当幅広く話し合われておるということは事実でありますし、ことしは特に教育問題あるいは文化問題というのが恐らく議論の中で出てくるんじゃないだろうか。これはサミットの場において大変いい方向だろう、こういうふうに考えております。  なお、東西文化センターというようなお話がございましたが、こうしたことができれば大変結構だと思うのですけれども、今の例えば外務省だけの予算とかそういうことから考えますと、そうした思い切ったことは今の財政状況でなかなか困難な点があるわけでありますが、将来の課題としてこれは考えていかなければならない。日仏文化会館とか、これはパリに今度フランス政府の土地が提供されまして建設されるという予定になっております。日本でもこのような日仏文化会館をこれから建設していこうという計画もありますし、各国との間にそういういろいろなプロジェクトといいますか交流のための計画が今芽生えておりますから、こうした問題はこれから徐々に進めていかなければならぬ、文化交流というのはそういう意味では非常に重要であろうと思っております。国際交流基金等もありまして、外務省としてもそうした基金等を通じまして文化交流には力を尽くしておるということであります。
  217. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 今の御意見の中で文部省が今直接タッチしております問題を御報告しますと、これは昨年中野先生から御指摘があって私の前任の松永大臣がお答えをし、取り組んだその思想も幾らか受け継がれておると思いますが、日本文化研究センターの予算、調査費が今年度予算で措置されることになりまして、今検討会議をつくって検討してもらっております。その中では、ただ単に日本文化の研究だけではなくて、違った国々の文化との接触、学者との交流、それからその摩擦、相互関係等についても幅広く比較研究し、東西文化の交流ができるようにしようということが今検討会議の大きな検討課題にもなっております。  何時に、大学の近くという具体的な御提言もあったわけですけれども日本にたくさんあります大学の共同利用機関として、どこの大学もスムーズに連絡をしてここに入り込むことができるようにしたらどうか、こういったことを今有識者にお集まりをいただいて検討をしておるさなかでございますから、その方針を生かして我々もこの日本文化研究センターについては進めていきたい、こう考えております。
  218. 中野寛成

    中野委員 その日本文化センターが果たしてどういうものになりますか、せっかくつくるということになれば、ひとつ私が申し上げたことの趣旨も、今御答弁にありましたが、去年から言い続けておりますので十分織り込んでいただければというふうに思う次第であります。ほかの質問についての時間もございますので、外務大臣、どうもありがとうございました。  それでは、通告の順序に従って質問を続けたいと思います。  まずいじめ対策と責任の所在についてお尋ねをいたしますが、文部大臣そして公安委員長及び法務大臣にお尋ねをいたします。  まさに今やきれいごとでは解決できないというのがいじめの問題であると思います。私もそうでありますが、ややもするとこの国会論議の中でも、いじめの問題、非行の問題、そういう問題を論議いたしますときに、最後に結論として、御答弁やその他の話の締めくくりとして出てくるのが、家庭と社会と学校が一体となってこの問題に取り組んでいかなければなりませんで終わりになる。個々具体的には、そのときの起こった問題についての責任者がいるはずだと思うのであります。  私はいつも申し上げるのですが、非行もいじめも家庭か社会か学校が、そのうちのどれか一つがしっかりしていれば起こらないと言い続けておりますが、どれも三つともだめだから起こるのだ、こう言いたいと思うわけであります。しかしながら、少なくともいじめの問題は、そのルーツが家庭にあろうとも、学校で起こる限りはやはり学校が責任を持ってやっていくということが教育のプロとしての教師の務めでもあると思うわけであります。そういう意味で、私は今や責任の所在をあらゆる問題が起こったときに明確にしていただきたい。今まで自殺が起こった、いじめが起こった、非行が起こった、そのときに首になった校長先生が果たしているのか。いじめられっ子を転校させようとした、そんなことをするような先生先生の方をむしろやめさせるか転任させた方がはるかにいい。一体だれが責任者なのか。現場の先生なのか校長先生なのか、教育委員会の管理が悪かったのか、文部省の指導が悪かったのか、それを明確にさせない限りこういう問題の解決はできないと思います。そういう意味で、私たちはあらゆる問題が起こらないように注意をしなければなりませんが、同時に、起こった場合には、一体だれが責任をとったのか明確にしていただきたい、そのことが質問の中心であります。  今回の例えば中野区の問題も、私の名前と一緒で嫌なんですが、この問題もまさに何かうやむやにされている。報道等ではいろいろな人たちの問題が出てくる。文部省も事情聴取をされたようでございますけれども、これは明らかに学校の先生にも問題があるし、校長先生にも問題がある。果たしてどういう後始末をするんだろうか、そういうことについてまずお聞きをしたいと思います。
  219. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 御指摘のような悲しい事件が起こりまして、特に御質問の趣旨に沿うように、問題を中野区の富士見中学校の例にまず絞って、一般論じゃなくて具体的にお答えをさせていただきたいと思います。  いろいろ複雑な要因は絡み合っておっても、起こった場所というのと、それから、日常常に児童生徒に接触していただく教師の皆さんの指導力とか、愛情とか、心の通い路を持つとか、手を差し伸べるとか、いろいろな行動がなされることが極めて望ましいことは言うまでもございません。文部省がいじめ問題について、今度現場の中野区の教育委員会に来てもらって事情聴取しましたのは、実は、これは町田の忠生中学校の事件以来初めてのことであります。  そこで、具体的な事実を十分詰めてまいりますが、きのうも、報道等で御承知のように通告は出してある、協議はやれと言ってある、けれども現場でそれが厳しく受けとめられなかったようだということを中野区の教育委員会の責任者が公表されておりますし、幾人かの先生には問題行動があったようだ。例えば報道されました葬式ごっこの問題とか、終わってから後の暴力事件とか、見て見ぬふりをなさったとか、きょうまで注意をしなかったとか、最後には先生が試されるというようなことになってきますと、これはもう、それが果たして服務規程に忠実であったのかどうか、あるいはまた職務上の怠慢があったのではないだろうか、文部省としてはいろいろ事情を聞いて指導をするんですが、任免権者である教育委員会もそれらの点を厳しく反省をして、いろいろ複雑な要因は絡み合っても、直接児童生徒に触れていたたく教育者の態度としてここに適正なものを欠くというならば、適正な納得のいく処置をまずしてもらわなければならない、我々はこう思っております。この間き取りや調査やそれぞれの立場の方の意見、特に任免権者の教育委員会の意見等を聞いておりましても、ここにまず責任の所在があるというような自覚をされておるわけでありますから、私は教育委員会が任免権者として適正な措置をとられることが本間の場合には肝要である、それが教育への信頼を取り戻すことにもつながっていく、こう思っております。
  220. 中野寛成

    中野委員 そこで、もう一つお尋ねをしたいと思いますが、子供は本来未完成なものであると思うわけであります。だから教育をするわけであります。  そういう状態のときに、非行やいじめや、そしてそのほか、例えば運動がうまくできない、ほかの科目がうまくできない、いろいろなことが起こってくる。それはむしろ当たり前なことなのではないのか。だから、それをひっくり返して言えば、いじめや非行対策ができなくて何の教師の資格があるかとむしろ私たちは言いたいと思います。それができて初めて教育のプロとしての教師ではないのか。それができないのならば教師の資格がない。精いっぱい責任を持ってやって、学校で対応できない。しかもそれは隠ぺいするのではなくて、一生懸命努力をしてやった、やったけれども、学校ではもう手に負えないというときには、むしろ早目に警察や一般社会の有識者や、またはボランティアの方々、いろいろな方々に御協力を求めてその解決を図っていく、その積極的な姿勢が必要だと思うわけであります。  同時にまた、時に万一事件となり警察の御厄介になる、そして最悪の場合、少年院ということもあるでしょう。その場合に少年院での矯正教育の問題がある。この少年院での矯正教育は大変立派に行われている、実際には。しかし、学校の現場の先生が行って教えるわけではありません。法務省の職員の方が、教員としての資格を持っていらっしゃる方が実は教えておられるけれども、時にやはりそこに間違いがある。そこでは卒業資格さえ与えられるわけであります。ですから、その少年院の教育部門における、学習部門におけることについては、文部省としてもっと積極的に取り組んでいいのではないか。  また、聞きますと、その子のもともとの学校の担任であった先生が、自分の教え子が今少年院に入っているというので訪ねていったケースというのはまずないということであります。そういう先生方こそ少年院なら少年院に行って、どういう生活をしているのか、どういう教育を受けているのか、むしろ私は、先生になる前にそういうところに行って実際に見てくる、学んでくる、その体験を学校現場で生かすということもあっていいのではないか。そういうことを法務省と文部省でもっともっと詰めて御論議、また御協議をいただく。そしてまた、矯正教育を受けてもとの学校へ戻そうったって、これまたそれこそいじめの対象になりかねません。実際不可能です。むしろほかの学校へ入れてあげるとか、もちろんもとの学校に戻ってそれで強くたくましく生き延びていければいいです。それは理想です。しかし、そうはいかないのが実情ではないでしょうか。それも事務的に扱われているということが実態だと思うのです。  これらのことにつきまして、矯正教育ももっとしっかりと行われる、その事後処理、アフターケアもちゃんと行われる、進学、就職、差し支えがないように行われていくという背景があって初めて、本当は警察を嫌わないで警察にもお世話になろうかという気持ちが起こってくるし、そういう社会的雰囲気が出てくるのではないかと思うのでありますが、いかがお考えですか。
  221. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 御指摘のことは私も同感でございます。文字どおり子供はいろいろな発達段階を通じて、教育基本法が書いておりますように人格の完成を目指して、平和な国家、社会の形成者として育てられていかなければならぬわけですから、本来ならば学校教育の現場でそれに従った教育をすべきであり、そういった資質や能力が教師に求められるのが大前提だとおっしゃる先生の意見は全く同感であります。  けれども、不幸にして、大変残念なことですが、他の多くの生徒との関係でどうしても矯正に送らなければならない、隔離した教育をした方が他の善良な生徒のためや学校の雰囲気を守るために専門家がその方がいいのだとした矯正教育の場合にも、行き届いた配慮が行われなければならぬことは、これは当然のことでございますから、ただいまの御指摘を受けとめて、そのような方向に努力をしてまいりたいと思います。
  222. 中野寛成

    中野委員 法務省の矯正教育についての対応はお聞きしたいと思いますが、同時に警察の立場で、なかなか学校側が隠して警察に相談をしないとかということをしょっちゅう聞くわけですね。それは学校現場のメンツもあるかもしれませんし、または警察権力を導入することは云々と言ってまたこぶしを振り上げる向きもないではない。しかし、私は、現在の警察の皆さんにもまたそういう誤解も払拭していただけるようにして、大いに全部が協力をしてこれらの問題に取り組んでいく必要があると思うのでありまして、法務省の矯正教育の問題と同時に、警察としての現在のお立場、取り組みをもあわせてお聞かせをいただきたいと思います。
  223. 小沢一郎

    ○小沢国務大臣 いじめの問題の対策につきまして、本質につきましては先生御意見の中でいろいろお話しのとおり、単に警察が取り締まりをするというだけで解決する問題でないことは当然のことであります。もちろん、先般の中野の富士見中のような、いわゆる学校や家庭の限界を超えたという場合に、警察がそれを拘束してやるということは、その限界を超えた場合にのみ原則的には限られるべきだと思います。  ただ、警察行政の中におきましても、先生御案内と思いますが、その範囲内でできるだけ今この問題を中心にいたしまして努力をいたしております。例えば少年相談所がございます。これは直接少年あるいは父兄からいろいろな問題の相談を受けるというものでありますが、昨年で九万三千件、そのうちいじめのことに関連しましては四千七百件相談を受けていまして、これらのことを通じまして非行を未然に防いだとか、いじめの問題をなくすことができたという事例がかなりあると聞いております。それからあと、学校と警察の連絡協議会を設けておりまして、九四%ぐらいの学校が加入いたしております。そういうような事柄を通じまして、警察として、その行政の範囲内で精いっぱい今後も対処してまいりたい、そのように考えております。
  224. 鈴木省吾

    ○鈴木国務大臣 少年院における矯正教育でございますが、実は私も先般少年院を視察してまいりました。立派な資格を持ち、また情熱を持っている指導員がその指導に当たっておりまして、本当に非行でどうにもならなかった子供が立派に更生した事例等も私は拝見し、拝聴してまいりまして、本当に感激をいたしておるわけでございますが、今お話しのように、不幸にして少年院に来なきゃならないような子供があった場合には、十分文部省とも連絡しながら立派に更生できるようにしてまいりたいと思います。  なお、今矯正教育の内容については政府委員から答弁させますけれども、法務省でやっておりますいじめに対する基本的態度でございますけれども、これは人権擁護局で、御案内のように、人権を尊重するという立場で啓蒙、啓発というものを主体にやっておるわけでございます。ただ、事件があれば、今国家公安委員長からもお話ございましたけれども調査をいたしまして、学校なりそれぞれの機関に連絡をいたす、こういう基本的な態度で実はいじめに対しては対応している次第でございます。
  225. 石山陽

    石山(陽)政府委員 まず、少年院教育の実情の点で御報告する前にお断り申し上げておきたいのでありますが、委員御質問のいじめという問題を非行原因として、それだけで少年院に収容されるという例は、今少年院ではむしろ少のうございます。と申しますのは、それ以上の段階に発展しておる例えば各種の非行がございます。もちろんいじめも非行でございまするけれども、それにさらに一般刑法犯に触れまするような、窃盗でありまするとか傷害でありまするとか恐喝であるとか、立派な成人犯罪の域に達するような程度になった子供たちを私どもが預かっているというのが少年院の現状でございます。  しかし、問題をいじめの問題に限って考えてみますると、最近いろいろ会同等で院長等の話を聞いてまいりますると、いじめの問題で入ってきた子供たち、そういう要素を持っている子供たちの心理的な原因から申し上げますると、やはり一つには対人関係の調整の未熟性、それから二番目には、やはり欲求不満のはけ口として弱者に対する無差別発散、それから三番目には、例えば心理的な、弱者に対する心の痛みをわかってやろうとする理解性の不足、こういったような問題点がいろいろ報告されております。  そこで、少年院に入ってまいりました場合の教育の主眼は、そういった心理的にいろいろとまだ発達不足の段階の青少年でございまするから、その心理的な欠陥を除去するための教育を施さなければならぬと思います。例えば私どもでやっていますカリキュラムの一例を申し上げますると、そういう心理的な要素を持っている子供たちに対しましては、まず入院当初から個別のカウンセリングをやります。それから、問題群別指導といたしまして、特に交友関係に関する群別指導というものを集団でいたします。それから、連絡協調性というものを持たせなければいけませんので、集団行動等による訓練を通じまして連帯感を養成する。それから最後に、豊かな人間性、人の心に対する思いやりを持たせるというような意味での情操教育でございます。こういったようなものを中心とした少年院教育を実施しておるわけでございます。  先ほど委員の仰せの中に矯正教育を大変お褒めいただきまして恐縮でございまするが、これは学校教育と違いまして、私どもは、いざ社会から落ちこぼれた次代を担う青少年を、最後のとりでとして何とかしなければいかぬという気持ちを持っておりますので、しかも環境が二十四時間教育でございます。これは正直言って、文部省側の学校教育がなっていないという非難は必ずしも当たらぬではないかと思うのでありまして、八時間教育と二十四時間教育の差がございまするから、幸い全人格的な指導ができる環境を持っております。これを最大限に利用しながら私どもやらしていただいております。  それからまた、学校関係の連絡につきましては、大変文部省とも事務的には横の連絡をさせていただいておりまして、いろんな意味での連絡協議会がございます。例えば今中学校の二、三年に非行年齢がございまするが、これらの子供たちで一番困っておりますのは在学少年でございます。いわゆる籍のある少年でございます。ですから、先ほど委員の仰せでございまするが、すぐ、帰るときにほかの学校に転校すればいいという問題ではございません。大体そういう話を持っていきましたら最初に断られます。そこで、私どもといたしましては、できるだけ在籍中学校へ何とか理解を得て帰してやりたい。このために、院側とそれから学校側の連絡協議をいたします。そのためには、学校の先生方の参観あるいは連絡の機会を得まして、この子供がこれほどよくなったという更生の度合いでございますね、それを親しく面接あるいは通信等を通じまして肌に感じていただくための努力をしております。そして環境調整と申しまして、PTAや学校側のいろいろな方々にお目にかかりまして、何とかこの子供を無事中学へ戻して、卒業証書を出身学校から渡してやることはできぬかということでお願いを申し上げておる次第でございます。文部省もこの点につきましては、必ずしも転校すればいいというのではなくて、地域によりまして大変熱心に御協力をいただいておるところもございます。  それから、そういう先生に限って来ないという御指摘がございましたが、必ずしもそうではございません。私どもの場合のときに、余りにも弱くて問題のある先生という意味でおっしゃったろうと思いますが、多くの先生方はやはり送られました少年たちの身を案じまして、よく手紙をちょうだいしております。それから、お見えになって親しく激励していただいているケースもございます。そしてまた、異口同音にこんなに明るくなった、目が澄んできた子供たちの姿を見ると本当にうれしいとおっしゃっていただいている方もあります。  そういうようないろいろな例を通じまして、私どもとしては施設内教育の利点を生かした教育をやっておるわけでございますので、さらにその経験を生かしまして、一般非行少年問題につきましても、例えば施設側と、あるいは少年の資質鑑別をいたします少年鑑別所がありますが、こういったものといろいろ地域社会の連絡協議を行っておりますので、その機会等を通じましていろいろお互いの知識の交流あるいは経験の討論ということをやりながら、この問題の善処について努力をしておるというのが実情でございます。     〔中島(源)委員長代理退席、委員長着席〕
  226. 中野寛成

    中野委員 どうもありがとうございました。ぜひ文部大臣、一度少年院へ行って、そういう実態もまた見ていただければいいのではないか。  今矯正局長からお話をいただきましたが、私どもの聞いておりますのでは、なかなかもとの学校へ戻れない。また、今ちょっと御答弁の中で出ましたが、ほかの学校への転校を考えますと断られるのがほとんど。これは断られるという実態がまたおかしいと思うわけであります。なかなかにもって、私どもが聞いております実例では、きちっとした就職ができないで困っている子供たちがいることも事実であります。そういうことを踏まえてやっていただきたいと思います。  なお、一つだけこの中野区のことですが、あわせまして、「生活指導資料」というのをつくって、現在マル秘扱いで、これは小学校なんですが、恐らく中野区内の各学校にやっているようなんです。教育委員会からの多分指導ではないかと思いますが、「性格・身体などでいじめの対象となりやすい児童」の名前を挙げなさい、「学級集団の中で影響力の強い児童」の名前を挙げなさい、「学習・生活で極端に変化が見られるようになった児童」の名前を挙げなさい、「最近欠席や遅刻が多くなってきた児童」の名前を挙げなさい、「いわゆる”いじめ”の対象になっていると思われる児童」の名前を挙げなさい、二月四日までに報告をしなさい、こういうことなんです。ちょっと学校の名前を指で消しましたがね。これはちょっと行き過ぎではありませんか。対策を講じなければいけませんが、しかしこういうのは人権的に見て行き過ぎではないかと思うのでありますが、どうお考えですか。
  227. 高石邦男

    ○高石政府委員 ただいま御指摘の調査内容については詳細に承知しておりませんが、中野区といたしましては、小学校、中学校における実態をまず把握しなければ、いじめの対策ができないという観点を持っているのではないかと思います。したがいまして、そういう実態把握の一つのやり方としてそういうことをやったのではないかというふうに推測する次第でございます。
  228. 中野寛成

    中野委員 実態把握は必要です。必要ですが、このようなやり方は果たして正しいかどうか、私は問題だと思います。むしろ具体的にそれぞれの学校の中でお互いの先生方が情報を交換し協力をし合い、そして自分たちの学校の中でいじめや非行が起こらないように努力をしていく、その意味での校内での情報交換は結構です。しかしながら、全体としてこういうことを具体的な生徒の名前や児童の名前を挙げて情報を収集するというようなあり方は、果たしてどうであろうかというふうに思うわけでありまして、御調査お願いしたいと思います。  ちょっと先を急ぎますが、きょうも私の部屋にある教育者の方が訪れられまして、いじめ、非行その他いろいろあるけれども、とりわけいじめは子供たちのストレスが原因であるということをその先生がおっしゃっておられました。学校できゅうきゅう搾られ、塾へ行って搾られて、家に帰ってはまた搾られて、そうすると結局はけ場がない。それから、おもしろいことを言っておられました。目の先生なんですが、視力一・〇とか、そういう視力がそう高くない子供ではなくて、視力二・〇などという目がよく見え過ぎる——過ぎるといったらおかしいかもしれませんが、その中にそういう子が多いのだそうです。目から疲れが来るのだそうです。これはいわゆる一つのストレスですね。そのストレスを助長する一つのものがここにあります。  これは実は私の家庭の中に入った塾の案内の新聞折り込みです。これは私の家に入ったものです、しかも全部先週、これだけ塾の案内が入るのです。ごらんください、これを。そしてこれはうちの子供に来たダイレクトメールです。これは実はもっとたくさんあるのです。あるのですが、うちの子供がもういいかげんにしてよと言ってぷりぷり怒りながらごみ箱に全部入れていました。そのごみ箱から拾ってきたのです。これでは母親も子供もたまったものじゃない、実際いって。おまけにこれは、こういうたちの悪いのもあるのです。これはそのまま生でお見せしましょうね。私もお薦めしますといって、元文部大臣砂田先生のお名前が書いてある、写真入りで。これは大変なことだと思って、砂田先生にお尋ねをしたのです。そうしたら砂田先生が、実は去年もここにやられて私は困ったんだ、知りもしないし、そういう名前を使うことを了解したこともない。御本人もここにいらっしゃるのですが、内容証明つきで抗議をしている、去年から。しかし、ことしもこれはやっているのです。そういうたちの悪い人が果たして子供を教育する塾を経営していていいものだろうか。塾に対する実態調査さえも行われていないのが実際なんではないか。塾も一つの教育機関とするならば、そこには当然節度もあってしかるべきです。これらについて文部省が、何の権限も持たないからといって手をこまねいて野放し、これはやはり私はお粗末だと言わざるを得ないと思います。このことについてどうお考えですか。こういう実態があるわけです。——これは砂田先生にお渡ししたいと思います。
  229. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 御指摘のようにいろいろな、ダイレクトメールが来たり新聞広告のあることもよく存じておりますが、その背景になっておる私塾の存在、これは文部省は、実は昭和五十二年のときに、乱塾時代というような言葉が出まして、これは放置できないと思って調査をしたことはございます。そのとき、その結果、これを法律で規制をするとか、基本的には、私企業であるわけでございますので、この過熱状態をなくさなければならぬ、それにはどうするかという方法から、公教育が信頼を取り戻すこととか、あるいは学校の先生が塾の先生を兼ねないようにするとか、あるいはなぜ塾に行くかという調査をいろいろしてみますと、試験の制度の問題があるとか、授業がおもしろいとかおもしろくないとか、いろいろな子供の側からの意見や親の側からの希望も出てきましたので、それに沿うような努力をして、何とか塾の過熱状態をおさめるように努力をしてきたこと、これは事実でございます。  最近も、もう一回改めてこれらのことを調査しながら、塾というものが社会にやはり事実あって、そして小学校は無料で義務教育でやっておりますのに、なぜお金を出してそういうところへ行かなければならぬか、それが世の中の弊害になっておる部面もあるし、またそこへ行って本当に学力が身について、補習塾のような立場で喜ばれるとか、あるいは音楽とかそのほか芸術とか書道とか、それぞれの個性や資質や能力を伸ばすために喜ばれておるような塾の形態もあるわけでしょうから、そういったものをもう一回考え直して、必要以上な過熱状態を生んでおるような、よくない影響を与えておるような塾がなくなっていくためには、公教育がしっかりして、その必要がなくなっていくように導いていくのが一番基本だ、こういう受けとめ方をして対処をしていくつもりでございます。
  230. 中野寛成

    中野委員 模範答弁でございます。しかし実際は、それは大臣がおっしゃるようになるのは果たしていつのことでしょうか。そしてこういう塾が過熱しない状態、そして立派な塾だけがしっかりとした教育を補ってくださる、そういう時代が来るのは、大臣のおっしゃるようにやっておったのでは果たしていつのことだろうか、こう思うわけであります。  大臣、大変御答弁もお上手ですし、演説もお上手でございまして、しかしながら、その演説では問題は解決できない。この塾の問題だってやはりそこには、ベビーホテルと一緒ですよ、実態は非常にひどいものがあるわけです。せめてそれくらいなくす。全部なくすことはできないでしょうし、私も塾の存在価値は認めます。認めますが、ひどいものは、やはり子供のために大人がそれを淘汰していかなければいけないはずです。そういう具体的なやり方について大臣、お考えはいかがですか。
  231. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 難しい問題でございまして、前回の私の在任中にも、ちょうど塾の調査をやったときの私は文部大臣でしたから、一定の塾の基準を調べるとか、教室の衛生状態を調べるとか、電気の明るさを調べてみたらどうかとか、いろいろな角度の御質問をいただいたことを今思い出すのですけれども、そういう基準で塾というものを文教行政の中に取り入れること自体がいいのかどうかという基本的な問題も残っておりますし、それから、根本的にそういった教育は公教育が責任を持ってまずやるんだという大きな原則がありますから、それを放棄してしまって、塾をいい塾とか普通の塾とかよくない塾と分けるということも、今権力が入り込んでやるべき問題なのかなという大変深刻な疑問がございます。だから、努力をして世に喜ばれておる、何ら批判の起こっていない塾の例もあるわけで、これは先生も性質上お認めになると思うし、よくない、行き過ぎたもの等の報告もただいま御指摘のようにいろいろあるわけでございますから、それはやはり公の秩序、善良な風俗に反するようなことや法規に照らしてよくないようなことが行われるのは、別の面で規制を受け、排除されていかなければならぬのは当然だと思いますけれども、今学校教育との関連において直ちに塾に対してそういう排除とか仕分けとかいうようなことはなかなか難しいので、やはり公教育が信頼を取り戻して、なぜ塾がこんなに過熱状態になったかという一つの問題点に入学試験の制度等もあるわけですから、これはその改革に向かって今それぞれの分野で努力もしておりますし、ちょうど今先生に御理解と御協力を願ってスタートしております臨教審の中でもこれは大事な問題として指摘、議論をされておるわけでありますから、それらの状況等も踏まえて、やはりこれは真剣に取り組んで解決の努力を続けさしていただきたい、こう思います。
  232. 中野寛成

    中野委員 例えば保育行政も、公にやること、これが原則ですね。ところがベビーホテルでいろいろな問題が起こった。事件が起こった。あわてて厚生省は調査をしたのでしょう、公教育が本来責任を持つべきことですから、だからその方に力を入れますと。そして塾という、公教育が本来やるべきことなんだけれども塾が実際に存在している、これがまたいろいろ問題も起こしているというときに、文部省は公教育を立派にすることが仕事でございます、公教育でやるのが建前でございますからこちらを文部省が相手にするわけにはいきません、調査その他についてはできませんということでは、これは私は、実態を見ないで建前で論議をしていることになってしまいはしませんかということです。だから、塾は実際にあるのです。これをなくすことはできないと思います。しかし、なくすことができないならば、せめて悪質なものだけでも我々が大人の責任において監視するということだけでも取り組んではいかがでしょうか、こういうことでございます。
  233. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 塾の実態調査はいたしておりますし、また、その実態調査の結果我々から見て好ましくないと思うことで文部省の範囲でできますことは、それぞれ指導をしたり通達をしたりしておりましたが、昨年の十月から、もうちょっと幅広い角度から協力者会議を設けまして、塾の実態について、このようなときにはどのように対応していったらいいのか、塾通いというものが児童生徒に与える悪い影響があるなればそれは一体どんなことなんだろうか、調査研究して対応のあり方等についても審議を進めていただいておるところでありますから、我々もこの検討の結果を見守りながら、できることは解決をしていきたい、こう思います。
  234. 中野寛成

    中野委員 御期待を申し上げておきたいと思います。  教育の問題でいろいろあったのですが、時間が随分かかってしまいました。今の御答弁の中にもございましたが、臨教審、ここもひとつ具体的な問題を大いに論じていただきたい。いじめの問題について去年せっかく臨教審会長が談話を発表してくださいましたが、抽象的で何をどうしたらいいのかわからぬ。その方向づけは、だれもわかること、基本的なことを書いておられるけれども、具体的なことはさっぱり触れておられない。これは臨教審にも申し入れましたが二十一世紀を展望した抜本策を御検討いただくのも結構ですが、同時に、こういう日々起こっている具体的な問題についてもできる限りメスを入れて、具体的な対策に突っ込んで臨教審の御答申をいただけるようにこの際お願いを申し上げておきたいと思います。  次に、ちょっと財政の問題をやりたかったのですが、大蔵大臣に答弁をお願いするのはちょっと飛ばさせていただきまして、文化の問題に少し入りたいと思うのです。  私、これは毎年やっているような印象になりまして嫌なんですが、これは希望が強いものですからやります。最初やりましたのがポルノの雑誌自動販売機問題、去年がテレビ。ことしは実は郵政大臣、ちょっとテレビの問題、相変わらず——去年ここで私が御指摘を申し上げましてから、民放連盟ですか、当時の郵政大臣から早速御注意いただいたところでありますが、大分直ってきたと思ったら、また最近もとに戻りかけてまいりました。この辺のことを十分御注意いただきたいなと思います。これはそれなりの民間放送連盟の放送基準などというのがありまして、これを読みまして、そのとおりにやっていただいたら今のような放送にならぬはずなんですね。まして、やらせなどというものが起こったりして。結局、その放送局の経営者や指導者の皆さんの目が現場に行き届かないシステムになっているということ、このことがあると思うのであります。  さてそこで、実は先般警視庁の方でホテトル売春広告摘発というのがありました。そして各掲載六紙誌、新聞、雑誌にも警告をなさったようであります。同じその記事の横に、新宿の歌舞伎町で少女売春の特別補導をされたということも載っておりまして、これによりますと、去年一年間の性非行をした少女は一昨年に比べて二・六倍に急増しているということが報道されております。  そういう折も折、ある新聞の社説に「とめどもない性の商品化」という記事が載りました。そしてその中にも「とくに生活に困ったからではない。遊ぶお金やホテル代ほしさから」そういうことが行われている。「若い女性たちが自分の体をキャッシュカードがわりに使う風潮は、いま若者をむしばむ金銭万能主義の一端かもしれない。」ということに触れながら、「〃買春〃の体験ルポを載せて、この風潮をあおる一部マスコミも批判されてしかるべきだ。」「性風俗の浄化は、これといった決め手がない。モグラたたきのように、警察以外の行政機関や学校、家庭も含めて、多角的に根気よく対応するしかない。」という結びになっております。「警視庁がホテル売春の広告を載せていたスポーツ、夕刊紙や週刊誌九社と広告代理店五社を摘発した。」こういうことが書かれております。  何とも立派な社説が書いてあるものですから、こういう新聞社がどういう新聞を出しているのかと思って、実はきょうの朝の新聞を買ってまいりました。ただし、スポーツ新聞であります。新聞記者の方、申しわけないが、これがきょうの東京スポーツ、大変立派な記事でございます。それから日刊スポーツ、こうして表紙を開いてここを説もうといたしましたら、電車の中で向かい側の人に見られて、これは恥ずかしいでしょうね。ちょっと読みにくいね、これは。大蔵大臣、見えませんでしたらどうぞお手に取ってごらんください。これはサンケイスポーツですね。やはり同じことですな。そしてスポーツニッポン、こうです。  これを大人が買って隠して見ている分に私は文句言いません。性の自由化というか、性報道の自由化はもっと自由でいいとさえ思っています。私は、修正なしのハードコアの映画だって日本で上映されるべきだと思います。ただし、制限つきです、大人の目にしか触れない方法で。  それで、これは先ほどの社説の新聞の多分系列会社だと思いますが、そこではやはりこういうのですな。これを隠して読むのではなくて、電車の中で皆さんもう今平気ですよ、広げて。横から子供がのぞいていますよ。それが今そのまま報道されているんですね。テレビでまた同じような報道がなされるわけです。  そしておまけに、これはちょっと公安委員長に見ていただきましょうか、文部大臣でも結構ですが、これは新聞、多分先ほど摘発された、警告されたあれだと思います。これをちょっと渡してください。ここの下に広告が二段にわたって載っている。これは何の広告が、一回見ていただきたい。その下の広告、上から二段、その二段は何の広告かおわかりになりますか。わかりましたか。何の広告ですか。
  235. 小沢一郎

    ○小沢国務大臣 いわゆるなにですか、恋人紹介とかガールフレンド紹介とか、その会社と言ってはあれですが、その業の広告じゃないでしょうか。
  236. 中野寛成

    中野委員 残念ながら、そうですね、点数をつけると何点になるんでしょうね、多分落第点ですね。私と余り変わらないというより、私より若い大臣だから御存じだと思いましたが、これは明らかにいわゆるホテル売春の広告ですね。売春広告です、はっきりと。一時間二万円とかなんとか、中身は読めませんよ、ちょっとここでは。  こういう状態が今まで野放しだったわけでしょう。そして報道はこういう報道でしょう。大阪ではタイガース・ブームで、去年なんか子供たちがこれを見て読んでいるわけですよ。こういう状態の中で、私はこの質問が終わって帰りますと、また後でいろいろな方々から、おまえは男の敵だと怒られるに決まっている。この世の中を無味乾燥にしてくれるなというように言われるに決まっている。しかし、私はやっぱり言わざるを得ない。これが野放していいのでしょうか、こういう風潮が。青少年の目に触れるところで。このことを法律で取り締まるといっても、この売春の広告は取り締まることができるでしょうが、ほかの部分については難しいでしょう。  しかしながら、私は総務庁長官とそして公安委員長とにお尋ねをせざるを得ませんが、何か方法をお考えになりませんか。自粛を求める、その他の方法等が講じられて当然かと思います。一方でこんな立派な社説がある。その社説を載せられた会社の系列会社がこういう新聞を出している、これはおかしいな、矛盾しているなと思いながら。ここにいらっしゃる方々はそんな記事書かれないけれども。しかし、やっぱりこれはマスコミの皆さんも多分お困りになっているんじゃないか。これを載せないと売れない。さっきの塾と一緒で過当競争、売らんがためにあらゆることをやっていく。だから、だれかが言ってとめてくれ、自分のところだけが今さら自主的にとめるわけにはいかぬ、一斉にとめるのならば、それならば何とかなるのではないかという悲鳴が、実はあのあたりからも聞こえてくるような気がするわけであります。いかがですか。
  237. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これに対する対策としては、まず業界の自主規制、これは当然ですね。それから住民の地域活動の促進、これもやっぱり大事なことだと思います。条例等による規制もさまざまあります。  結局のところ、こういった問題は文化の問題と非常に深くかかわる問題で、このあり方というものはやはり先進国日本として相当深く考えなければならない問題だというふうに思います。したがって総務庁としては、非行防止対策推進連絡会議、こういう会議にかけたからといってすぐ成果が上がるわけではもちろんありませんが、当面の非行化防止対策、それから、こういう性風俗を含む文化の露骨な忌まわしい問題、こういったものを会議の重点として環境を浄化するような連動展開を粘り強くしていこうと。そこで、ここに一つの統計みたいなものがございます。これは分科会のテーマで「青少年とテレビ」、その他都道府県条例による規制で、興行、図書、広告物、そういうもので注意喚起をした、それは総数三万六千五百七十件、これは相当な数ですが、興行が一万七百八十四件、図書などが二万五千六百七十六件、広告物七十七件、玩具類三十三件。こういうふうになっておりますが、これはやはりほんの一部であって、もう全体を言えば毎日そういうふうですから、よく今後の対策を粘り強くとってまいりたいと考えます。
  238. 小沢一郎

    ○小沢国務大臣 この種の問題につきまして、警察におきましては、いわゆる広告代理店とか関係者とか、そういうものの捜査あるいは検挙等も行っております。したがいまして、そういう意味での警察の取り締まり活動は厳正に今後もやっていかなければならないと考えております。  それとは別にいたしまして、先生御指摘ありましたように、性の問題は、これはもう法律の限界を超える問題とかは別でございますけれども、まさにまだ判断もつかない青少年の問題、この点から本当に考えていかなければならないことであろうと思います。物事の判断がついて、自己責任で大人がそういう問題に関連してくるということは、これはみずからの判断と責任でございますから別でございますが、特に先生御指摘のような、青少年が殊さらにそういうようなマスコミを通じあるいは出版物を通じ、そういうようなことが目に触れるとかあるいは刺激しないでもいいような状況をするとか、そういうような問題を真剣に考えていかなければならない。  ただ、これは法律でもってそういった行動をただ取り締まれば、あるいは規制すれば、あるいは全面少年の行動を規制するとか、そういう面だけで解決できる問題ではないだろう。やはり社会全体が、いわゆる大人が本当に真剣に考えて、みんなで、社会全体で取り組んでいかないとなかなかその実効を上げることはできないのではないかと思います。  警察といたしましては、もちろん最初に申し上げましたような姿勢で、その取り締まりの面等につきましては厳正に対処してまいる所存であります。
  239. 中野寛成

    中野委員 郵政大臣は、その後のテレビ放送等をどういうふうにお考えになっておられるのか。実は、例えば実際の売春その他の、そのことの体験談その他が、言うならば裸の女性の映像とともにテレビで入ってくをわけですね。ひど過ぎるというので去年御注意をいただいた。しかし、今また復活傾向にある。むしろまたそのまま続いている部分だってあるわけですね。これは青少年に与える影響はきわめて大きいわけです。家庭の中へそのまま飛び込んでくるわけであります。  私は、特定の成人向けの映画館を設けて、その中で大いに、もっと自由におやりになるのは結構。しかし、去年も申し上げましたが、このたぐいのものは、言うならば見たい大人にはもっと自由に見せたらよろしい。しかし、子供及び青少年及び見たくない大人の目に触れないようにするということがこの問題の原則ですから、そういう意味で、今のテレビの実態も、郵政大臣、もう一度お聞かせいただければと思います。
  240. 佐藤文生

    佐藤国務大臣 中野先生が昨年の予算委員会でこの問題を取り上げられましたことを、前郵政大臣から私申し受け事項として聞いておりました。私も同感でございます。  そこで、前郵政大臣が、二月八日に先生発言されまして、二月二十日に各民放の事業者の社長あて、それから番組審議会の委員長あてに、放送行政を預かる郵政大臣として、この行き過ぎはひとつ是正してほしいという内容の通達をしたことは御承知のとおりでございます。ところが昨年の八月にやらせ事件が起こり、したがって前郵政大臣は、さらに昨年の十二月の終わりに再度通告をいたしました。  その後きょうに至るまで、ピンク的な深夜のものが皆無になっておりません現況でございます。私自身も非常に関心がありますので、先般民放の各社の事業者に対しまして懇談的な話を個別的にいたしましたその中で、どうしてこれが直らないのだろうか、番組基準というものを読むと、青少年に対しては暴力とかあるいは陰湿とか、そういったいろいろな面について非常な影響があるので注意しましょうということをあなた方自身が決めているじゃありませんか、それがなぜできないのですかと、こういうことを問いました。  いろいろ話す過程で私が発見したことは、番組審議会というのが本当に活性化してやっているのかどうか、そのメンバーというものは広い視野から採っておるのかどうか、それから番組審議会というものが、そういうものが放送された後フォローしてしっかりと把握しているのだろうか、把握しているならばそれを広く社内に、経営者伝達する能力はあっているのだろうか、そういうところまで実は私は先生趣旨を考えましてやりましたところが、ある一部そういう問題が出て、後から社長が知りまして、そして国民からいろいろな投書が来てこれはおかしいな、こう思って是正を自主的にしたことも一部ございました。したがって逐次、先生発言以来そういうことが自主的に放送会社で行われておる現況でございます。したがって、番組審議会の活性化に対するそういう具体的な示唆というか、そういうことを私としてはやっていきたい、こういうぐあいに思っております。  そういうことで、深夜家庭の中に入ってくる青少年への影響というものは大変大きいものでございますので、先生のお考えを大切にして、私は、指導と申しますか助言と申しますか、郵政大臣として経営者に対し、番組審議会のメンバーに対しまして事あるごとに話し合いをしていきたい、こういう問題が行き過ぎた場合は。そういうぐあいに考えております。
  241. 中野寛成

    中野委員 大変多くの質問を用意いたしまして、答弁を用意いただいたと思いますが、時間があと十分しかありません。御迷惑をおかけいたしましたが、あと一間、色覚異常対策についてお尋ねをいたしまして、他の関係につきましては分科会その他で改めてお尋ねをいたしたいと思いますので、関係省庁の皆様方に御迷惑をかけましたが、文部、労働、厚生、警察、四大臣に色覚異常対策についてお尋ねいたしますので、それ以外の方につきましては、どうぞお引き取りいただいて結構でございます。  色覚異常、すなわち色盲、色弱のことであります。これもまた私が国会で取り上げますのは三回目でございます。手元に教科書がございますが、ことし四月から使います教科書につきまして、その色を変えていただきましたことに感謝をいたします。私が見ましても、この古い教科書に比べまして鮮やかな色に変身をしたこの教科書、私でも見えます。色の区分けがつきます。大変うれしいことでございます。こういう努力が、やろうと思えばできるんだということを示していただいたことに感謝します。  さてそこで、ところが先般「色覚異常者を入学制限 国立大で目立つ」という記事が出てまいりました。前回から八年ほどの間に、色覚異常者の入学制限が公立大学は五〇%あったのがゼロ、私立が六九%から二三%に激減した。国立大学だけは六八%から六一%に減った程度で余り変わっていない。とりわけ教育学部、医学部、そして理工系。こういうことであります。  私はこの前文部省にお聞きしましたら、小学校の先生になることについて制度的な制限はない、こういうことでございましたが、実際は制限が行われている。色盲、色弱と書かれておれは採用されない。だから大学入学の段階で教育学部は既に色覚異常者を入れない。それが入学要項に書かれている。これが実態であります。  私は小学校に入ったとき色神検査をやりました。それまで私はお医者さんになろうと思っていました。色神検査で色盲、医者になれないよと担任の先生に注意をされ、偶然といたしました。ならば学校の先生になろうと思いました。次に、学校の先生にも君はなれないよと言われました。偶然といたしました。その後いろいろな経過を経て、目下ここに立っているわけであります。色盲のおかげで政治家になれたのかどうかわかりませんが、それをよかったとおっしゃる方はよほど色覚異常者に対する理解がない方です。そのときのショック、本人の気持ちは大変なものです。  先般私の手元に、このことが新聞記事に載りましたときに手紙が来ました。小学校四年生の子供を持っている父親です。この子供にいつ、おまえが色覚異常者であり、就職その他でハンディキャップを背負っているんだよということをどう教えたらいいか困っているのです、悩んでいるのですというお父さんからのお手紙がありました。  こういう状態に対して文部省のお考え方。そして色神検査は小学校一年と四年のときに学校でやっていただくきりで、ほかのときはなかなかできません。眼科医に行ってやっていただくわけですが、保険がききません。なぜならば、色神・色覚異常は身障者と認められていないからです。これは遺伝する先天的なものだからです。  労働省、今ますますこの就職差別か広がっているのです。実態調査をされたことがおありでしょうか。三年前にこの席で私はそのことをお願いしているのです。  厚生省、この色覚異常者のための具体的な措置はとられているでしょうか。研究はどれだけなさっているんでしょうか。色覚異常が治ると毎日のように広告しているグループさえある。本当にそうなんでしょうか。治るんでしょうか。  そして、警察にお尋ねをいたしますが、前も言いましたが、自動車の運転免許ぐらい取れるようにしていただけませんか。私は色盲です。赤と緑の区別がつきませんから運転免許が取れない。しかし、信号の上にマル、バツ、三角をつけてくださったら私でも運転できる。そうでしょう。運転免許を持っていないということは今就職にどれだけ差し支えるか、そのこともお考えいただきたい。国際条約があることは承知の上です。信号にそういう措置を講ずることはお金がかかるでしょう。しかし、例えば北海道から九州から徐々に始めていったらどうです。その地域に制限して運転免許を出すということも工夫できないことではないではありませんか。条約、外国のことは知りません。日本は島国です、幸いにも。ならば、日本だけに通用するものがあったっていいではありませんか。信号の上にマル、バツ、三角をつけたって条約に違反しないはずです。ほかの工夫だってあるかと思います。  時間の都合もございますが、以上のことについて御答弁をお願いをいたしまして、最後の質問にしたいと思います。
  242. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 御指摘のような事実が新聞にも大きく報道されまして、私も詳しくその経緯その他を改めて振り返って、言い分等も聞いてみました。  先生がかねがねこの問題をお取り上げ願っておることを前提としてお答え申し上げますと、どうしても一部の大学で、理工系では化学薬品の取り扱いとか実験とか標本試料を作成するとき等に障害があるとか、あるいはまた教員養成系の学校では図画とか工作とか美術とか家庭科とか、そういったことを指導するのに支障があるのではないかという判断に立ちますので、どうしてもそれらの者を養成する国立系の大学と私立の大学との、教科の構成も違いますから、国立大学が非常に多く目立っておるという結果が出ておるのは先生御指摘のとおりでございます。しかし文部省としましては、それらのことは好ましくないので、でき得る限り大学等においては色覚障害の方には色覚障害のことを理解された上での指導教育方針はないか、それを徹底的に履修すれば、それは今もちょっと例に、マルとペケと三角ですか、色と形で例を示されたように、いろいろあろうかというので指導してまいりました。四年前と比べて、まだ少ないとおっしゃるかもしれませんが、十四大学二十四学部でその制限を撤廃したという結果の報告も聞いております。  なお、小学校の生徒の皆さんの勉強のときに、色覚障害の方は全体の二%近くある……(中野委員「四%であります。男の子は四%」と呼ぶ)私は二%近くあると聞いておりましたので、もし数字が違っておったら報告させますが……(中野委員「男女平均すれば二%」と呼ぶ)二%と聞いておりましたが、それだけいらっしゃるということは、これは教育上配慮をしなきゃならぬ問題だと思って、特に赤と緑の関係が非常に色覚障害の方には壁になっておると聞きましたので、小学校の教科書においてもそれらの方にも見やすいように、今最初にお褒めをいただきましたので大変うれしかったのでありますけれども、努力をしてことしからそういう教科書が出回っておる。今後も、大学等についても文部省はでき得るだけそういったものは克服をして制限を取っ払っていくように、きょうまで少しはできたんですから、なお前向きに努力を続けていきたいと思っております。
  243. 今井勇

    ○今井国務大臣 先生お話しのように、色弱あるいは色盲等の色覚の異常でございますが、もうほとんどが遺伝によるものが多いものでございますので、その有効な治療法というものが現在のところまだないと承知いたしております。したがいまして、その治療法等の研究につきましてもなかなか難しいんじゃないかなという感じがいたすわけでございます。(中野委員「治療法を聞いたのではない」と呼ぶ)
  244. 小沢一郎

    ○小沢国務大臣 御指摘のように、もう運転免許はだれもが持っているのが当たり前だみたいな社会になっておりますから、そういう意味で、先生の御指摘のような場合につきましてもできるだけ行政対応していくのはまあ当然だろうと思っております。ただ、これは車でございますから、交通安全上の問題が第一義としてあると思います。今マル、バツ、三角方式につきましては、国際問題は別といたしまして、ちょっと技術的な点も何かあるようでございますので、その点につきましては、政府委員から答弁させていただきます。(中野委員「簡単にお願いします、時間がオーバーですから」と呼ぶ)
  245. 八島幸彦

    ○八島政府委員 お答えいたします。  先生御承知のように、現在色覚の検査は、予価的な検査は若干行っておりますけれども、最終的には信号機の識別が可能かどうかということで判別いたしております。そういう結果、最近ではほとんどこの色覚異常で不合格になる方はおりません。ただ、若干でもそういう方がいる場合に、そういう方のために御指摘のようにいろいろな、マル・バツ方式その他の信号機等を整備することによってそういう人たちにも免許を与えたらどうかという御提言でございますが、先生も御指摘のように国際条約上の制約等の問題もございますし、あるいは形状の識別あるいは光度の低下というような、なお検討を要する問題等もございますので、引き続き御趣旨を体して検討をさしていただきたいと、かように考えております。
  246. 林ゆう

    林国務大臣 お答えいたします。  色覚異常者の採用を制限している企業、業種、職種につきましては、その実態の把握がなかなか困難な面がございまして、先生御指摘のように、労働省といたしましては今的確な数字をまだつかんでおれないという状況でございます。そこで、こういった制限を設けております企業に対しましては、公共職業安定所の窓口などを通じまして大いに啓発の作業をしているわけでございます。  ちなみに、大阪の学生職業センターにおける求人についてこういう数字が出ているわけでございます。それは、約二千件の求人件数のうち十一件、〇・六%弱でございますが、そういう実態が見られておりますので、労働省といたしましては、こういったような障害をいっときも早く取り除くように事業主の方への啓蒙に大いに力を尽くしてまいりたいと、このように考えておる次第でございます。
  247. 中野寛成

    中野委員 時間がオーバーしました。終わりますが、文部大臣家庭科だとか美術だとかおっしゃいましたが、実際それは努力して補えるんですよ。欧米ではそういう制限はないんです、実際には。現実に美術の時間だって、または家庭科その他で色の識別が必要なこともあるでしょう。体育だって私たちは不便をするんです、確かに。バトンの色、旗の色が区別がつかなくてだれにバトンを渡していいかわからなかったこともありますから。しかし、そういう先生がいることの方が教育上むしろいいんではありませんか。そして、そういうときにそれを補う方法は、学校の中で協力し合えば幾らでもできるではありませんか。私自身小学校のとき音楽は別の先生、担任以外の先生に習ったことがありますよ。いろんな工夫の方法があるはずなんです。むしろそれをなくす努力をすることの方が教育的見地から必要なんではありませんでしょうか。  労働省につきましても、実態はもっとひどいです、実際言って。ますますひどくなっています。事務系でも、事務処理に色紙を使うから、色で処理をするからという理由だけで門前払いを食らうんです。履歴書その他に色覚異常、色盲、色弱の文字があったら、それだけで受験させてもらえないケースの方が多いんです。そういう実態がたくさんあるんです。私どものところにそういう事例が幾らでも集まってくる。そういうことをもっと本腰を入れて調べてください。  厚生省も、治らないという一言では——治らないのは当たり前です。先天的なものだから当たり前のことです。私が治るか治らないかさっきわざと聞いたのは、治ると言って広告をしているところがあるから、そういうことをそのまま野放しでいいんですかということを聞こうとしたのです。治らない。訓練してある程度到達することはできますが、その程度のものにとどまってしまう。むしろ治らないのだからその人たちを保護するために、またその人たちに対応するために何かの措置を厚生省で講ずるべきではありませんかと申し上げているわけであります。  時間がオーバーしましたので、お願いを申し上げて終わりたいと思います。ありがとうございました。
  248. 小渕恵三

    小渕委員長 これにて中野君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十九分散会