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1986-02-18 第104回国会 衆議院 予算委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年二月十八日(火曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 小渕 恵三君    理事 中島源太郎君 理事 浜田 幸一君    理事 林  義郎君 理事 原田昇左右君    理事 渡辺 秀央君 理事 稲葉 誠一君    理事 岡田 利春君 理事 二見 伸明君    理事 吉田 之久君       相沢 英之君    伊藤宗一郎君       石原健太郎君    石原慎太郎君       上村千一郎君   小此木彦三郎君       大西 正男君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    倉成  正君       砂田 重民君    住  栄作君       田中 龍夫君    葉梨 信行君       橋本龍太郎君    原田  憲君       三原 朝雄君    武藤 嘉文君       村山 達雄君    山下 元利君       井上 一成君    井上 普方君       上田  哲君    大出  俊君       川崎 寛治君    川俣健二郎君       佐藤 観樹君    多賀谷眞稔君       松浦 利尚君    池田 克也君       近江巳記夫君    神崎 武法君       正木 良明君    木下敬之助君       浦井  洋君    瀬崎 博義君       中林 佳子君    松本 善明君 出席国務大臣        内閣総理大臣  中曽根康弘君        法 務 大 臣 鈴木 省吾君        外 務 大 臣 安倍晋太郎君        大 蔵 大 臣 竹下  登君        文 部 大 臣 海部 俊樹君        厚 生 大 臣 今井  勇君        農林水産大臣  羽田  孜君        通商産業大臣  渡辺美智雄君        運 輸 大 臣 三塚  博君        郵 政 大 臣 佐藤 文生君        労 働 大 臣 林  ゆう君        建 設 大 臣 江藤 隆美君        自 治 大 臣        国家公安委員会        委員長     小沢 一郎君        国 務 大 臣       (内閣官房長官) 後藤田正晴君        国 務 大 臣        (総務庁長官) 江崎 真澄君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)            (沖縄開発庁長        官)      古賀雷四郎君        国 務 大 臣        (防衛庁長官) 加藤 紘一君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)      平泉  渉君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)      河野 洋平君        国 務 大 臣        (環境庁長官) 森  美秀君        国 務 大 臣        (国土庁長官) 山崎平八郎出席政府委員        内閣官房長官        内閣官房内閣審        議室長     唐沢俊二郎君        兼内閣総理大臣        官房審議室長  的場 順三君        内閣審議官   海野 恒男君        内閣法制局長官 茂串  俊君        内閣法制局第一        部長      工藤 敦夫君        警察庁刑事局長 仁平 圀雄君        宮内庁次長   山本  悟君        総務庁長官官房        審議官            兼内閣審議官  本多 秀司君        総務庁長官官房        審議官     百崎  英君        総務庁行政官理        局長      古橋源六郎君        総務庁行政監察        局長      竹村  晟君        総務庁統計局長 北山 直樹君        北方対策本部審        議官      稲橋 一正君        防衛庁参事官  瀬木 博基君        防衛庁参事官  筒井 良三君        防衛庁長官官房        長       宍倉 宗夫君        防衛庁防衛局長 西廣 整輝君        防衛庁経理局長 池田 久克君        防衛庁装備局長 山田 勝久君        防衛施設庁施設        部長      宇都 信義君        防衛施設庁建設        部長      大原 舜世君        防衛施設庁労務        部長      岩見 秀男君        経済企画庁調整        局長      赤羽 隆夫君        経済企画庁総合        計画局審議官  勝村 坦郎君        科学技術庁長官        官房長     矢橋 有彦君        科学技術庁研究        調整局長    内田 勇夫君        科学技術庁原子        力局長     中村 守孝君        科学技術庁原子        力安全局長   辻  栄一君        国土庁長官官房        長       吉居 時哉君        国土庁長官官房        会計課長    斎藤  衛君        法務省刑事局長 岡村 泰孝君        外務省アジア局        長       後藤 利雄君        外務省北米局長 藤井 宏昭君        外務省欧亜局長 西山 健彦君        外務省中近東ア        フリカ局長   三宅 和助君        外務省経済局長 国広 道彦君        外務省経済協力        局長      藤田 公郎君        外務省条約局長 小和田 恒君        外務省情報調査        局長      渡辺 幸治君        大蔵省主計局長 吉野 良彦君        大蔵省主税局長 水野  勝君        大蔵省関税局長 佐藤 光夫君        大蔵省理財局次        長       中田 一男君        大蔵省銀行局長 吉田 正輝君        大蔵省国際金融        局長      行天 豊雄君        文部大臣官房長 西崎 清久君        文部大臣官房会        計課長     坂元 弘直君        文部省教育助成        局長      阿部 充夫君        文部省高等教育        局長      大崎  仁君        厚生大臣官房総        務審議官    北郷 勲夫君        厚生大臣官房審        議官      木戸  脩君        厚生省保健医療        局長      仲村 英一君        厚生省社会局長 小島 弘仲君        厚生省児童家庭        局長      坂本 龍彦君        社会保険庁長官        官房審議官   朝本 信明君        社会保険庁医療        保険部長    花輪 隆昭君        社会保険庁年金        保険部長    長尾 立子君        兼内閣審議官          農林水産大臣官        房長      田中 宏尚君        農林水産大臣官        房予算課長   鶴岡 俊彦君        農林水産省経済        局長      後藤 康夫君        林野庁長官   田中 恒寿君        水産庁長官   佐野 宏哉君        通商産業省通商        政策局長    黒田  真君        通商産業省貿易        局長      村岡 茂生君        通商産業省機械        情報産業局長  杉山  弘君        中小企業庁長官 木下 博生君        運輸大臣官房国        有鉄道再建総括        審議官     棚橋  泰君        運輸省海上技術        安全局長    間野  忠君        郵政大臣官房長 中村 泰三君        郵政省貯金局長 塩谷  稔君        労働省労働基準        局長      小粥 義朗君        労働省職業安定        局長      白井晋太郎君        建設大臣官房総        務審議官    佐藤 和男君        建設大臣官房会        計課長     望月 薫雄君        建設省道路局長 萩原  浩君        建設省住宅局長 渡辺  尚君        自治大臣官房審        議官      石山  努君        自治省行政局選        挙部長     小笠原臣也君        自治省財政局長 花岡 圭三君        消防庁長官   関根 則之君 委員外出席者        予算委員会調査        室長      大内  宏君     ――――――――――――― 委員の異動 二月十八日  辞任         補欠選任   藤木 洋子君     中林 佳子君 同日  辞任         補欠選任   中林 佳子君     浦井  洋君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和六十一年度一般会計予算  昭和六十一年度特別会計予算  昭和六十一年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 小渕恵三

    小渕委員長 これより会議を開きますで  昭和六十一年度一般会計予算昭和六十一年度特別会計予算昭和六十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡田利春君。
  3. 岡田利春

    岡田(利)委員 昨年の臨時国会において、予算委員会の席上、総理国連四十周年記念に出席をして演説をされたその内容について私は質問したわけであります。今回の総理施政方針演説を承って、特に相当スペースを割いて、いわば国連演説に引き続いて東洋文明東洋哲学の真髄に触れて述べられた。私は、この演説を聞いておりまして、国連演説に引き続いての施政方針演説は、いわば総理のこの哲学に関する完結編ではないか、こんな感じが率直にいたしたのであります。そして私は、昨年の予算委員会においてしばしば総理が言明をされている、総理の言う健全なナショナリズム、また日本人アイデンティティーの問題について触れた点についても、総理見解をただしたことがあるのであります。そうしますと、総理の言われていた日本人アイデンティティーというものは、いわばその根幹をなす思想体系というものは、この施政方針演説の中に示されたいわゆる東洋哲学思想にあるのではないか、こう私は率直に実は感じたのであります。この点について、総理から御説明を願いたいと思います。
  4. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、かねてから平和共存ということが今人類に一番大事なことであると思っておりますが、西欧人には西欧人哲学思想から来る平和共存考え方があると思いますが、日本人には日本人思想哲学や生活からにじみ出る平和共存というものがあり得る。その両方基礎的な根拠というものは、あるいは共通している面が両方ともある、オーバーラップしている面があるとは思いますが、しかし、文化や歴史や伝統の差から来て当然我々には我々のもって立つべき基礎原理基礎観念というものが独自にあると思っておりまして、そして、科学技術文明がこれだけ広く伝播した今日においては、科学技術文明というものは西欧原理から出てきたものでありますが、この所産が原爆というところまで来て非常に苦悩しているところを見ると、やはり片っ方の東洋文明基礎にあるものに非常に大きな価値が再発見されるときが来つつある。日本にはそれがある。そういう気持ちがいたしまして、自分がかねてから考え、信じてきていることを申し上げたところでございます。
  5. 岡田利春

    岡田(利)委員 ただ、歴代の総理と違ってこのような哲学について、思想についてとうとうとして述べられる、そのことは、権力者の場合にはやはり大変大きな影響を与えるものだと私は思うわけであります。今総理の言われる考え方については一応理解ができるのでありますけれども、しかし、総理の言う東洋哲学思想、そういう一つの流れとか、それを訴える、説く学者、それを説きながらも、かつては大東亜共栄圏というアジア共栄圏を目指す一つ理論体系をつくって、いわば侵略戦争旗振りをしたという傾向も過去にはあったと言わざるを得ないと私は思うのであります。いわば総理はそういう一つ見解を述べられたのでありますが、これをもし一つの内分の思想体系として国民に押しつけていこうとするならば、私は、やはりひとりよがりだ、こう申し上げなければならないのではないかと思うのであります。私は、そういう意味でこの総理演説総理東洋哲学思想を説くその姿勢については理解ができても、非常に警戒感を高めざるを得ないのであります。少なくとも総理は、この自分考え方を押しつけるなどという思い上がった気持ちはみじんもないものだ、こう思いますけれども、老婆心ながら承っておきたいと思います。
  6. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 両方ともお読みいただけば、押しつけるなんという意図は毛頭ない、そのようにお考え願いたいと思うのであります。
  7. 岡田利春

    岡田(利)委員 しかし、国連演説の中でも、今度の施政方針の中でも、特に我が国憲法については大変な評価をされておるのであります。この国連演説において、我が国の戦後の復興がいわば憲法に示す理念に基づいて今田の日本を築いてきたというくだり、あるいは今度の施政方針演説の前段における憲法理念に対する評価、この点は、私はどうも、総理改憲論者であるということと総理のこの演説内容を聞くと、非常に落差を感ずるのですね。ですから私は、総理演説を聞いて、総理改憲主義者ではなくして憲法擁護者に変わったのではないか、こう思わざるを得ないのであります。  少なくとも主権在民民主主義、そして平和主義基本的人権尊重主義というこの三つの柱が我が国憲法の柱とするならば、これを高く評価をする総理は、この三つの原則については少なくとも憲法は改正する必要がない、こういうお考えだと思うのですが、この点はいかがでしょう。
  8. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それはそのとおりでありまして、自由民主党の改定された綱領においても、同じようにそういう基本的に価値はあくまで守るべきである、そう言っておるのであります。私は、一面においてそういうところを高く評価すると同時に、また一面において絶えず見直す必要がある、それは進歩と発展のために不可欠の要素である、そういうことも申し上げておるのであります。
  9. 岡田利春

    岡田(利)委員 抽象的に逃げられた感じでありますけれども、次に進みたいと思います。  私は、官房長官にこの機会にお尋ねをいたしたいのでありますけれども、去る九日の日曜日のNHKの「国会討論会」において、官房長官は、我が党の田邊書記長意見等をも受けとめながら、いわば国会審議実り多いものにするためには政府も積極的に資料提出するという姿勢がなければいかぬのではないか。しかし、これに対して後藤田官房長官は、アメリカの議会のように秘密委員会が持たれる、そういう体制ができれば政府としても相当な資料提出できるという趣旨の発言がなされたと私はテレビで承知をいたしておるのであります。ここで官房長官にお聞きいたしたいのでありますが、この発言の真意は、秘密委員会が設けられた場合には、それを前提にすると、政府はどの程度資料提出できるというお考えのもとに発言されたか承っておきたいと思います。
  10. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 先日のNHK政治討論会防衛問題が論議せられましたときに、私は、従来のこの論議が、防衛問題といえば一%の問題があたかも防衛問題であるかのような議論だけではおかしいのではないか、やはり中身について十分論議すべきではないのか、こういうことを申し上げた際に、田邊さんの方から、そうは言ってもなかなか資料を出さぬじゃないか、そうなればベールの中に包まれたような議論にならざるを得ないんだが、こう申されたわけです。それに対して司会者の方から、秘密会云々ならば云々、どうなんですかという発言があった。私は秘密会という発言一つも言っておりません。あのときは言葉を選んでお答えをしたつもりでございます。  従来から、政府としては防衛問題の御論議にはできる限り誠意を持って対応し、いろいろな資料誠意を持って出し得るものは出しておるつもりでございます。ただその際の私は、およそこういったいわば軍事の問題については各国それなり対応をやっておるのじゃありませんか、この問題は国会御自身の問題で、私の立場からいろいろ言うべきではない、こういう前提のもとでそれなり対応国会の方でお決めになっていただければ資料等も出し得ることになるかもしれませんな、こう申しているわけでございます。そのときの司会者が言う従来の秘密会、それになれば資料は全部出せるというようには私は考えておりません。これは国会十分秘密会のあり方について御検討をいただきたい、かように思います。
  11. 岡田利春

    岡田(利)委員 今の後藤田長官の答弁に対して、総理自民党総裁として、国会実りの多い議論をする、特に防衛問題等について相当突っ込んだ議論ができる体制、そういうためには秘密委員会委員会秘密にして議論をする、その場合には政府も積極的に資料を出す、こういう考え方についてはどうお思いになりますか。
  12. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは国会のことでございますから、国会各党各派が集まってお決め願うことが第一義でございます。政府国会でお決め願ったことについてできるだけ協力申し上げるというのが筋であろうと思いますが、やはり政府も機密の保持については責任をしょっている部分もございますから、それがどの程度までということは、そのときの国会各党各派との合意の結果と政府側意見と、両方で話し合って調整すべき具体的な問題である、そう思います。
  13. 岡田利春

    岡田(利)委員 現在防衛の担当である長官にちょっとこの機会にお伺いいたしたいと思うのですが、例えば国会合意成立をして、安保でもいいですよ、どこの委員会でもいいですが、秘密委員会がつくられた、そうした場合に、次のような資料については提出できるものがありますかという設問であります。  一つには日米共同作戦計画、シーレーンの共同研究有事立法案、自衛隊の一〇七条関連の資料、統合長期防衛見積もり、統長、統合中期防衛見積もり、統中、年度の防衛見積もり、年防、これらの資料の中で、もし国会合意成立をして秘密委員会が構成されたとすれば、提出できる資料がありますか。いかがでしょう。
  14. 加藤紘一

    加藤国務大臣 済みませんが、もう一度お願い申し上げたいのですが……。
  15. 岡田利春

  16. 加藤紘一

    加藤国務大臣 ちょっと無理でございます。
  17. 岡田利春

    岡田(利)委員 出せるものがあるかないか。
  18. 加藤紘一

    加藤国務大臣 有事立法についての研究をやっておりますけれども、これにつきましては国会等研究状況報告をいたしておりますので、これは当然既に出しておるものでございます。(「概要だけだな」と呼ぶ者あり)概要でございますね。  それから日米共同作戦計画は、これはちょっとお許しいただきたいと思います。  それから統中、統長年防、これもそれぞれ我が方の手のうちを示しているようなものでございますので、この辺につきましては、防衛庁としては、かなりお出し申し上げることができない資料の中に入ると思います。
  19. 岡田利春

    岡田(利)委員 結局は出してほしいという、資料請求をしている資料は、秘密委員会を設けても出せないということになりますね。そういう意味で、秘密委員会秘密委員会とこう言いますけれども、政府の方も与党と相談をして、与党としてどう一体資料提出の問題、そしてより実りの多い審議ができるかということについて責任のある検討を願いたいものだということを注文いたしておきたい、かように思います。  次に、しばしば今度の予算委員会でも定数是正の問題についていろいろ意見が交わされておるわけです。私はこの機会にちょっとお聞きいたしておきたいと思うのですが、後藤田官房長官はこの定数問題について、もう既に国勢調査の速報値が出されている、その速報値基礎にすると前国会の六増・六減案などというものはこれを再提出をする、再度審議をするというのではなくして、十増・十減案、ある人は九増・九減案と言う人もおりますけれども、十増・十減案、これを中心にして議論することが極めて常識的である、こういう発言をなされておるわけですが、その考え方は変わりありませんか。
  20. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 御承知のとおり、現在違憲状態が続いているわけでございます。そこで議長見解も出まして、そして二段階といいますかとりあえずの措置抜本措置について各党云々とこう出ているわけですね。そこで、私は一対三ということが前提にあるならば、これはやはり中間速報値の結果十増・十減ということにならざるを得ないのではないか、こういう意味で申したわけです。
  21. 岡田利春

    岡田(利)委員 今の後藤田長官認識総裁である総理認識は同じであると、こう受けとめてよろしいでしょうか。
  22. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、自民党が突出することはできるだけ避けた方がいい。この前、議長の御所見も出ており、また各党各派議長のところへ呼ばれまして、党首は議長のお示しになったものを承知しているということもあり、それから国会決議がございます、これらがスタートラインの基礎でありまして、その基礎からどういうふうにして出発すべきかという点について今国対委員長、副委員長の間で話し合いがきょうあたりも始まるようでございますから、そこで精力的に各党考えをよく述べ合って、そしていいものをつくり上げていく、合作する、そういうことがグラウンドルールでありますから望ましいと思うので、自民党が突出して案を先に示すということはできるだけ避けた方が賢明である、そう思っていますから、今の十増・十減につきましても、そういういろいろ個人がお考えになることはもちろん自由でもあり、そういうことがうんと出てくる方がまた充実した案になるだろうと思いますが、党としてはできるだけ謙虚にしていた方がよろしい、そう思っております。
  23. 岡田利春

    岡田(利)委員 謙虚も行き過ぎるとサボタージュになるのでしてね。謙虚に謙虚に、できるだけ避けた方がいい、避けた方がいいでは、時間切れになりますよ。時間切れをねらっての発言じゃないかなという勘ぐりもせざるを得ないのであります。しかし、やはり三対一の関係から言えば、今九ないし十と言われている十増・十減案基礎でなければならぬ、土台でなければいかぬ、私はこう思うのです。  十増・十減案になれば分区が生まれますね。札幌の北海道一区ですね。これは一名ふえると六になるわけですから、分区が行われるわけですね。ですから、そういう意味で、十増・十減の場合と六増・六減の場合には、分区が含まれているという点で特徴的ではないかと私は思うのであります。これも時間がございませんからあれなんですが、余り謙虚よりも、違憲状態を解消するためにむしろ積極的でなければならぬわけですよ。そういう意味で、私は、総裁である中曽根総理のリーダーシップが、ある程度自民党党内のやはり意見がまとまって素直に出せるような状態をつくる、こういう意味で発揮されなければならない、こう思うのでありますけれども、いかがでしょうか。
  24. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ただいまの岡田委員のような積極的な御発言を歓迎いたしますが、我が党はあくまでも謙虚に立ち振る舞うべきであると思っております。
  25. 岡田利春

    岡田(利)委員 中曽根総理長官時代から、また総理になっても、行革三昧という言葉を口にするほど行政改革について熱意を込められてきた、こう承知をいたしておるわけでありますけれども、ただ、今度のこの予算委員会の中で資料として出された法律案の改正ですね、この中に、臨時行政改革推進審議会、この設置法をどう扱うかということは提出されていないのであります。この法律は六月末で切れるのでありますから、この臨時行政調査会で出された答申の実施状況の点検をするという目的でつくられたこの審議会というものは一体残されるのか、あるいはまたさらに新しいものにしていくのか、あるいはやめられるのか。私はもう必要ないと思うのですけれどもね。そういう点について政府はどういうお考えでありましょうか。これはだれに聞いたらいいんでしょうかね。長官ですか。
  26. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これはしばしばこの席でもお答えを申し上げましたように、行革審、精力的に、既に御提案をいただいておるまだその作業半ばであるということ、五合目という話もこの間申し上げましたが、これも激励の意味を含めての評価でありましょう。特に国鉄の民営・分割というような大問題を控えて、今一体すぐどうするのか、特に行革審においては今最終的な結論の集大成をつくり上げておられるところであります。また、臨時教育審議会等の答申も四月には出そう、こう言っておられるやさきでございますので、まだ日もありますし、それから大体行政改革そのものというのは、この期限が来ようと来まいと、そういうことのいかんにかかわらず、どうかすると行政というものはマンネリ化したり肥大化しがちなものでありますから、絶えず見直しをしていく、こういう心構えが必要だと認識をいたしております。特に、その期限の問題についてはまだその議に付しておりません。
  27. 岡田利春

    岡田(利)委員 ちょっと長い答弁なんですけれども、まあいいでしょう。  時間の関係で、私は、次に日ソ関係、外交問題についてお伺いいたしたいと思うのであります。  この問題はしばしば本委員会でも議論になっておるのでありますけれども、私は、今度の外相協議のコミュニケを拝見いたしまして、大変外交努力の成果が実を結んだ、こういう評価をいたしておるのであります。これはお世辞でも何でもありません。率直に私はそう思っておるのであります。  そこで、このコミュニケに基づいて、私もシェワルナゼ外相と会ったときに、安倍外相の方から、歯舞、色丹、国後、択捉のいわゆる北方領土に関する墓参問題については、具体的な提案を受けているんだ、したがって、人道問題としてこれは帰って検討し、次期のモスクワにおける外相協議でこの問題については御返答いたしたいと思っています、こうシェワルナゼ外相も述べていました。ですから、相当具体的な墓参に関する提案をなされたんでしょう。その内容が発表できるかどうかというのが一つです。  したがって、随分これに対する期待も多いのであります。したがって、外相協議というものがモスクワで行われる場合に、できればその以前が望ましいのではないか。解決できれば八月、お盆にこの墓参ができるという期待も実はあるわけです、率直に申し上げて。したがって、外相協議について、モスクワをいつごろ訪問するという外相自身は希望を持っているのか。この点も含めて御答弁願いたいと思うのです。
  28. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 北方領土墓参問題につきまして、私から、一万数千人の家族の方々がぜひとも昭和五十年まで続いておりました身分証明書方式によって先祖の墓に参れるようなそういう道を開いてもらいたい、これまでもソ連は五十年まではそれでやってきたわけですから、せっかくこういういい状況になった、対話が進む、関係も改善するという状況になったんだから、ぜひともこの道を開いてもらいたい、これはまさに人道的な問題であって、国民ひとしくこれを念願しておる、特に帰ってこられた家族の方々の思いは痛切なものがある、ぜひとも考慮してもらいたいということを申したわけでありますが、これに対してシェワルナゼさんから、お互い国民感情を大事にするとというのはそれぞれの国で当然のことである、あなたの話はよくわかりましたので検討をいたします、ついてはあなたもおいでになるので、そのときひとつ話し合いましょう、こういうことでございました。私の感じでは、非常に好意的な回答、返答であったような気がいたします。  したがって、党大会もあるわけですかる、これが終わり次第ソ連側との間でさらにひとつ具体的に折衝を進めてまいりたいと思いますし、また私が来たときに話し合いましょうということになっておりますので、時期を見て参りまして、そして一日も早くこの問題がいわゆる身分証明書方式で気軽に墓参できるような形で解決されるように全力を尽くしてまいりたい、こういうふうに思っております。
  29. 岡田利春

    岡田(利)委員 私、いわゆる外交には順序というものがあると思うのですね。今まで冷たい関係にあったものが一つのテーブルに着く、話し合いができる環境が整う、そして国民の要望である墓参の問題を解決をしていく、領土問題を含む平和条約の交渉が積み重ねられて継続折衝されていく。物事にはやはり順序があると思うのです。そういう意味でひとつぜひこの問題についても、私どもも側面的に努力してきた問題でありますけれども、この解決に努力を願いたいと思います。  そこで、いわゆる領土問題を含む平和条約の締結交渉を考える場合に、どういう形式の交渉になるかということが一つ問題になってくるわけです。今度安倍さんが行かれて、また日ソ外相協議が行われる。来年はシェワルナゼ外相が来る。こういうことが毎年繰り返されることに定期協議がなるわけですが、定期協議を通じていわばそういう環境づくりを進め、また実質そういう平和条約締結への交渉も定期協議を通じて行うというお考えなのか。ある一定の時期になったら、その環境ができれば直接平和条約締結の交渉を申し入れるということになるのか。非常に外交タイミングとしては難しい問題だと思うのですね。この点についてはいかがお考えでしょうか。
  30. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 平和条約締結交渉については、今回のコミュニケでもはっきりしておりますように、今回の定期外相会談で行ったわけでございます。そしてこれは引き続き継続して行うという合意ができたわけでありますし、その際の話し合いでは、今度私が参りますときに行おうということも確認されておるわけでありますから、今度私が参りまして行うところの定期外相会談においてはもちろん平和条約交渉が継続して行われるという形になるわけでございますし、その際に、日本としても、コミュニケに基づきまして北方領土問題を俎上にのせてソ連側と議論をしたい、こういうふうに思っておりますが、今のところは御承知のようにソ連側の態度は非常にかたいわけでございまして、これまでと変わらないという姿勢をとっておるわけでございます。  しかし、これからの交渉においてソ連側の考え方というものに変化が見えるかもしれもせんし、また変化をどうしても求めなければならぬわけでございます。そういう段階になれば、これは条約交渉というものが急進展する可能性もあるのではないだろうか、こういうふうに思っておりますが、これは我々の期待でありまして、現在のところはソ連側は非常にかたいわけでございますから、まず私が参りまして、そしてさらに条約交渉の中で領土問題を取り上げて議論をいたしまして、そういう中でソ連側の考え方もただしてまいりたい、こういうふうに思っておるわけでございます。これはいずれにしましても相当時間をかけて、腰を据えてやらなければならない交渉であろうというふうに覚悟いたしておるわけであります。
  31. 岡田利春

    岡田(利)委員 総理、きょう読売新聞でソ連共産党中央委員会ザグラジン国際部第一副部長が会見をした内安が報道されておりまして、この内容によりますと、総理の訪ソについて触れられて、いわば総理が訪ソされれば当然それなり実りをもたらすものであろう、こういう一つの期待を込めた会見記事が載っておるのであります。  総理は日ソの関係は首脳同士が包括的に問題をとらまえて話し合うということ、これ自体が一つの日ソ関係の前進で、大きな意義を持つ、こういう趣旨の意見を前には述べられていた。最近ずんずんずんずん、日ソ関係の質問になりますと、総理一つの手法でしょうか、手ごわいものに対しては弱みを見せちゃいかぬということで、ぐっと硬直になっちゃって、領土問題が前進しなければ私は訪ソする必要がないごとき発言もあるのであります。領土問題ということになると非常に硬直化するわけですね、日本側の態度も。四島一括返還、これを前面に出していくと非常に硬直化してしまうのであります。これではやはりなかなか日ソ関係の懸案事項の解決は前進しないと思うのですね。やはり包括的な中でいろいろな問題、国際問題もあるでしょう、両国間の問題もあるでしょう、また経済、文化、あらゆる問題があるでしょう、そういうものについて首脳同士が話し合う、そういう雰囲気がいわば日ソの交渉を進展させる、大いに役立つと私は認識をいたしておるのであります。したがって、一連の総理の答弁を検討してみますと、そういう気持ちを持ちながら、今当面は領土問題についていろいろな意見が出ているから、非常に構えた答弁になっておるのではないか、こう私は思わざるを得ないのでありますけれども、いかがでしょうか。
  32. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 領土問題は非常に重要な全国民的な問題であって、避けて通れない、これは前から申し上げているとおりであります。  最近いろいろ領土問題等に関しても質問がありましたから、我々が領土問題を主張する法律的、国際的原点を示して、松本・グロムイコ交換公文であるとか、あるいは吉田さんのサンフランシスコ平和会議における演説であるとか、そういう基礎資料もお示しして、我が方の根拠をお示ししている、そういうことであります。  しかし、そういう基本をわきまえつつ日ソ間が善隣友好状況に前進することはもとより好ましいことでありますから、やはり何といっても、しかし領土問題というものを何らかの形で解決しなきゃならぬ、これは日本総理大臣、だれがなっても大きな責任である、そう私は考えておるのであります。私は答弁で、国民が喜び、そして私が行って意味がある、そういうことがあれば考えるにやぶさかでないと申しておりますが、これは一貫して同じ考えております。
  33. 岡田利春

    岡田(利)委員 総理は領土問題というものを考えられる場合、例えば共同宣言では、平和条約を結べば歯舞、色丹は引き渡す、こうなっておるのであります。いずれにしても、これも北方領土であり、四島一括返還、これも北方領土でありますが、この返還を求める姿勢に当たって、今我が国は日米安保条約を締結をいたしておるのでありますから、返還されれば、された領土には法的に日米安保条約が適用される範囲になっておるのであります。しかし、そういう環境の中で領土問題の交渉が、いわばお互いにスムーズに話し合いができるという環境ではないと私は思うのですね。少なくとも、日米安保条約があってもその地域には日米安保条約の適用はしないというぐらいの態度をもって話し合いに臨むという姿勢がなきゃ話にならぬと思うのですね。私のこの意見について総理はいかがお考えですか。
  34. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本の領土、領空、領海、いわゆる領域は日本の主権の及ぶ範囲内でありますから、これは我が国が主権を行使してしかるべきである、外国から拘束されるべきことではない、そう思います。
  35. 岡田利春

    岡田(利)委員 福田内閣のときに同じ質問をしたことがあるのですよ。福田総理は次のように答えましたね。岡田委員のただいまの質問は十分参考にして今後対処してまいりたいと思います、こういう答弁をいたしました。今総理の答弁は非常にあっけらかんとした答弁のように聞こえるのですけれども、福田さんの答弁については総理はどう思いますか。
  36. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 前の尊敬すべき総理大臣の御答弁を論評する立場にはございません。やはり日本の主権の通用する範囲というものは、そのとおり真っ当に考えておくべきであると思います。
  37. 岡田利春

    岡田(利)委員 総理姿勢は非常に硬直的な姿勢だなと私は思いますね。やはりまだ第二次世界大戦が終わって国境線が変わったことがないわけでありますから、そういう中でこの問題を取り上げるのでありますから。  そこで一つお聞きいたしておきたいと思うのですけれども、アメリカがいわば国後、択捉は我が国の歴史的な固有の領土である、このように認められたのはいつでありますか。
  38. 小和田恒

    ○小和田政府委員 アメリカが我が国との関係におきましてそういう態度を正式に表明をいたしましたのは、一九五六年に我が国に対して通告をいたしまして、日ソ交渉に対する米国覚書というもので、一九五六年の九月七日付でございます。
  39. 岡田利春

    岡田(利)委員 そうしますと、サンフランシスコ平和条約締結に当たって当時のダレス長官演説をされておるのであります。そのときの演説の中でも明確に述べられておるように、いわゆる放棄をした千島列島に、歯舞、色丹は北海道の島嶼の一部であって、これは含まれていないということを明確に言及されておるわけでありますが、千島列島の認識については、その当時は国後、択捉はやはりサンフランシスコ条約二条同項で言う千島列島に含まれていたという認識であったということは間違いないですね。
  40. 小和田恒

    ○小和田政府委員 お答え申し上げます。  桑港条約のときには、御承知のとおり国後、択捉がどういうふうに法的に認識されるべきであるかということについての公式の発言はございません。しかしながら、この千島列島の国際法的な意味合いにつきましては、あるいは歴史的な経緯につきましては当時吉田全権が会議発言をされたとおりでございますし、私どもといたしましては、米国が一九五六年に我が方の照会に対して明確にいたしました立場というものを保持してきておるというふうに考えております。
  41. 岡田利春

    岡田(利)委員 米国代表が国連演説をした内容に次の項があるのであります。「第二章第二条に包含されている放棄は、厳格に且つ慎重にその降伏条項を確認しています。第二条(C)に記載された千島列島という地理的名称が歯舞諸島を含むかどうかについて若干の質問がありました。歯舞を含まないというのが合衆国の見解であります。」という意味なんですよ。含まれてないのは歯舞、色丹だ、こう言っているのですから。若干の質問に対してこう答えた。あとは若干の質問はなかったんですよ、この演説内容は。だから、そのときには放棄した千島列島には国後、択捉が含まれていたという認識だった、アメリカは。こう思うのが当たり前じゃないですか。それ以外に何か根拠がありますか、条約交渉で。
  42. 小和田恒

    ○小和田政府委員 先ほどもお答えいたしましたように、国後、択捉ないしは千島列島の法的な地位につきまして、サンフランシスコ講和条約において、公式な発言がなされておるということはございません。それは先ほど申し上げたとおりでございます。  他方、今回田委員が御指摘になりました発言が、歯舞諸島に関して存在しておるということは事実でございます。ただ、先ほど岡田委員がお読みになりましたように、これは歯舞諸島を含むかどうかについて質問があった。それについては、歯舞は含まないというのが、合衆国の見解であるということを申したにとどまっているわけでございまして、このことから国後、択捉がどうだこうだということについてのアメリカ政府の立場というものが推測される、あるいはこのことが、国後、択捉についてのアメリカ政府の立場をあらわしておるというふうには私ども考えておりません。
  43. 岡田利春

    岡田(利)委員 条約局長が今考えるかどうかは勝手な話でしょうけれども、今アメリカ全権の演説、こう読み上げたように、千島列島については、放棄した千島列島には疑義がないということなんですよ。これははっきりしているんです。しかも、これは各国の質問があり、ソ連の代表の批判の演説があって、これを受けて述べているわけですね。だから、そういう認識があったから、西村条約局長は、この委員会で、放棄した千島列島には国後、択捉を含むかどうか、北海道第五区選出の高倉議員が質問したときに、これは含むという解釈ですと答えたのですよ。アメリカもそういう認識だったからそうなんです。この事実を曲げちゃいかぬのですね。いつでもそういう答弁するんですけれども、私は、やはり歴史的な事実は事実として、素直に認識をしなければ対ソ交渉はできないと思うのであります。  私はそういう意味で、どのように検討しても、アメリカのいわゆる見解というものは、松本全権がロンドン交渉をやるに当たって照会をした。これに対するアメリカ国務省のメモランダムが、初めてこのことの見解を正式に示した。しかもその後、注意深く、歴史的な検討の結果とここに至言っておるのでありますから、だから当時の認識はどういう認識であったかということについては、これは私の見解の方が正しいと思うのであります。  そこで、一つ伺っておきたいと思うのは、サンフランシスコ平和条約には、四十六カ国の署各国があるのであります。もちろん、アメリカはアメリカで、既に北方領土に対する見解が表明された。中国も公式に見解を表明されております。そうしますと、国際世論に訴える訴える、こう言いますけれども、もう二十一年前からこういう質問しているんですよ。そうであるならば、まずサンフランシスコ平和条約の署各国に対して理解を求める、こういう積極的な努力が継続的に続けられなければいかぬじゃないか、何回も何回も指摘をしているんですよ。昭和三十六年のときにも本委員会でこの問題が大変な議論になっておるのであります。その後もたびたび問題になっておるのでありますけれども、そういう努力が余り我々には見えないのであります。  そういう努力をしておるのか、努力をする気がないのか、国連でも主張したとかいろいろ言われますけれども、そういう焦点を合わした個別的な努力というものが行われているのかどうか、承っておきたいと思います。
  44. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 努力はいたしております。  これは、今お話しのように国連総会におきまする歴代外務大臣、特に私の演説等におきましても、北方四島問題に触れて、これを発言をいたしておりますし、同時にまた、アメリカとの話し合い、あるいはまた中国との話し合い、その他サミット参加国の外相会議等におきましても、私は北方四島問題につきまして、その正当性を訴えて、彼らの理解、協力を求めておるわけでございます。  幸いにいたしまして、米国は、これはもうサンフランシスコ会議のいわば主宰国であったわけですが、米国は覚書もありますし、その後の、最近のシュルツ国務長官等は、アメリカの立場としてはっきり北方四島の返還をソ連外務大臣に対して申し入れておるわけであります。また、中国の外務大臣も、ソ連に対して正式の会談におきまして、北方四島は日本に帰属するのが当然であるということを主張をしておるわけであります。  その他、実は地図で、諸外国の地図が依然としてやはり北方四島について明快でない、あるいはまた、ソ連領に編入された形になっておる、そういう国もあるわけでございますから、これらの国々に対しまして地図等についての訂正を求めて、我が国の主張を明らかにいたしておるわけであります。  だんだん各国におきましても理解は深まってきておると思いますし、この努力はさらに続けていかなければならないと思うわけでございますが、ただ領土問題についての交渉はあくまでも二国間の交渉でございますから、そうした国際関係の協力、国際的な協力を求めると同時に、あくまでも主体は日ソ間の問題として、我々が腰を据えて取り組んでいかなければならない課題であることは申すまでもないわけであります。
  45. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、やはりサンフランシスコ平和条約署各国に対する努力というものは、より重点的に行われるべきではないのか、こういう見解を持っておりますので、指摘をいたしたのであります。  そこで、今回のコミュニケを出して、シェワルナゼ外相がソ連に帰られても、北方領土問題については従来のソ連の態度で変わりはないと述べられておるわけです。外相も、日本が領土問題について主張されるということは、日本の主権に基づいて主張されることですね、ソ連はこれを拒否するとかそういうことはできるものではないという趣旨のことを、私どもにもしばしば述べておるわけであります。  ただそこで、変わるものではないということは、いわゆる国際法的に解決済みであるというソ連の従来の主張、これは何も変わってない、こういう意味だと思うのですね。そういたしますと、国際法的に解決済みだというソ連の見解を、日本政府は公式、非公式を問わず、きちっと中身について聞いたことがありますか、いかがでしょうか。
  46. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これは、今回の議論の中でいろいろと話をいたしました。詳細にわたりましては申し上げることは控えなければならぬ点もあるわけでございますが、ソ連外相の説明は、これまでのソ連の立場と変わらない、それにはソ連の立場には国際法的な根拠があるということを主張をいたしたわけでございます。  我々、国際法的な根拠があるということになるとどういうことか、これは恐らくソ連が言うのは、カイロ宣言であるとか、あるいはポツダム宣言、あるいはまたサンフランシスコ平和条約、そういうことを指しておるのではないかと思いますが、我々の立場からすれば、このソ連の国際法的な根拠というものに対しては、まさに根拠がないということを、実は私の立場から北方四島の歴史的な過程を踏まえてるる申して、ソ連側の再考を実は求めたわけでございます。  しかし、依然としてソ連外相は、最終的な段階に至ってもソ連の立場は変わらない、こういうことで終わっておるわけであります。
  47. 岡田利春

    岡田(利)委員 私も、ソ連の主張が一番端的にあらわれているのはサンフランシスコ平和条約締結に関するソ連代表の演説ですね、この中にあるわけです。一九四三年のカイロ宣言、一九四五年のポツダム宣言、一九四五年のヤルタ協定などの有名な国際文書により、対日平和条約に関し一定の義務を負ったのである、こういう演説をしているわけですね。これがソ連の国際法的な根拠だと思うのです。そしてそれを受けて、いわば放棄された千島列島云々、歯舞、色丹については、ダレス長官がグロムイコ外相に対して地図を突きつけて、これは北海道の一部である、こうやったわけでしょう。その部面は共同宣言の中で、平和条約が締結された場合には引き渡す、こうなったわけですね。そういう認識はやはり私は正しいと思うんですね、認める認めないは別でありますよ。そういう事実認識の上に立ってこれからの対ソ関係というものを領土問題を含めて考えてまいらなければならない、こう私は思うのであります。  私は特に今、おとついですか、十四日、日ソ漁業交渉が――交渉というのか漁業委員会の協議が調わずして日本の代表団が帰ってこられたという状況にあることを非常に残念に思うのであります。私はかねがね、日ソ漁業問題というものを考える場合に、漁業問題だけでは、新海洋法時代に入っていく、エコノミックゾーンとして管轄権が承認をされていく時代、時間が進んでいけば管轄権というものはより強まってくる、これは必然だと思うんですね、もう地球の回転と同じ軸の方向にあると思うのです。だがしかし、日ソの関係は歴史的な伝統もありますから、そういうものを尊重しながら、もう少し経済的、いわば漁業問題だって経済問題ですよ、日ソ間の包括的な経済問題の一つとしてとらまえていく、そういう中から、日ソ漁業関係の問題についても一つの長期的な安定の方向を我々は確立をしなければならぬのではないかという意見を述べてまいりました。  しかし、向こうの方は漁業省ですよね、こちらの方は外交権は外務省だという組み合わせになっておるのであります。だから、外務省と外務省の関係になりますと、それは漁業省の方に伝えておきます、こうなるのであります。いわば外務省と外務省が日ソの間でかみ合っていないというのが今日の体系になっていることも注目しなければならぬと思うのです。私のそういう意見についてどういう感想をお持ちになるのかという問題と、今回の日ソ漁業交渉が協議がまとまらず帰国をした、この交渉再開の見通しは一体どう考えておるのか。場合によっては、いわば上級クラスの派遣もこれからの検討に含まれるかどうかという点について御答弁願いたいと思います。
  48. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 今行われておる日ソ漁業交渉については、後で農水大臣からお答えがあると思いますが、私は、日ソ漁業交渉というのは、これまでずっと、日ソ間が非常に冷たい関係にあったときも引き続いて行われておりまして、まさに実務的に処理されてきたのじゃないかと思っておりますし、これはやはり今日の状況からも実務的に処理されるべきではないか、こういうふうに思っております。そして、この過程におきまして、いわゆる新海洋法ができた後のいわゆる日ソ地先沖合協定が結ばれたわけでありますが、その際におきましても、いわゆる北方四島をめぐる領海の問題あるいはまた二百海里の問題等につきましても、日ソ間で交渉の結果合意された協定の内容というものは、両国の立場というものを十分踏まえた形で処理されてきている、こういうふうに考えておるわけでありまして、今漁業交渉が中断したことは非常に残念に思っておりますが、何としてもこれは、今後引き続いて交渉が再開されて、そして解決されることを期待もしておりますし、特に最近の日ソの対話が進んでおる状況でございますから、そういう点については、ソ連側もその日ソ間の状況というものを踏まえて対応されるように、実は我々からも外交ルートを通じまして、ソ連外相等に対しても申し入れをいたしておるところであります。
  49. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 先ほど来、岡田先生また外務大臣からお話がありましたように、ともかく日ソ間の新しい話し合いというものが今始まろうとしておる、実際に始まっております。そういう中で今日まで、いろいろな難しい中でも漁業問題についてはお互いに話し合ってきた。これがまた一つの大きなパイプになっておったのじゃないかと思います。これがこのときに、今また中断せざるを得なかったということ、私自身としても大変残念に思っております。  この問題につきましては、もう既にいろいろと御案内のとおり、我が国の漁獲量、それとソ連側の漁獲量、これに大きな差があるということ、これが一番大きな原因であります。そしてまた、ソ連側はみずからの水域についての資源問題、この問題を打ち出しながら、実は相当厳しい規制というものを私どもに要請してきておること、これはもう御案内のとおりであります。そして、新たな枠組みといたしまして、いわゆる漁獲量に対して金銭を支払うようにという新しい提案があることも御案内のとおりであります。そういうことで非常に難航しておる、これが一番の原因であると思っております。  そういうことで、我が方としては今のままの条件を受けますと、日本の零細漁民、この人たちはもう壊滅的な状態になるであろうということで、何とかひとつ譲歩してくれるように今要求をいたしておるところであります。今中断をいたしておりますけれども、これからも外交ルートを通じながら呼びかけをして、一日も早く妥結するための会議を再開するようにこれから努めていきたい、かように考えております。
  50. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、交渉再開を要望することもさることながら、もちろん今回の場合、実務的に話をしているのでありますけれども、ここまでくると、内情を検討しますと、本協定はもう締結されておるわけですから、要するに漁業の規制とか規制の内容ですね、それが問題なのでありますから、しかし、これが北洋漁業の死命を制するわけですよ。やはり歴代農林水産大臣はこの問題で苦労しているんですね。渡辺さんなんかもモスクワへ行ったことがあるし、中川さんも行ったことがあるし、また先般カメンツェフ漁業大臣が佐藤農林水産大臣の招きで日本を訪問しているということもあるのでありますから、上級クラス、場合によっては農林水産大臣が、交渉とは別ですわね、我が国の政治的な立場で率直に話し合いをする、こういう積極的な姿勢が必要ではないかという点が一点。これは時間がたちますわね、もう二カ月になるわけですから大変ですよ。北海道、東北の基地は。根室なんかもう大変なものですね。こういう状況に対して、やはり政府は積極的な対応を具体的に示すべきだと思うのであります。この点の対応の仕方について承っておきたいと思います。この二点。
  51. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 ただいまお話しの二点の問題でありますけれども、まず第一点の、私自身が訪ソしたらというお話がございます。  この点につきましては、私が出かけることによって本当に打開の道が開ける、その辺が明らかになってくれば、私としても出かけていく、またあるいは、そういったことをあれするためにおまえも出かけるという御意見もあると思いますけれども、これはまさに今先生から御指摘がありましたように、非常に実務的な話し合いがあるということ、そして今度の場合には、特にその点について今まで以上に厳しい状況にあるということがありますので、ソ連邦の真意というものを私ども十分検討しながら対応していきたいというふうに考えております。  また、第二段の問題につきましては、交渉中断に伴いまして影響を受けておる関係漁業者に対しまして、当面のつなぎ融資、これにつきまして関係の地方公共団体あるいは金融機関とも話し合っていきたいと思います。それと同時に、加工関係の皆さん方も今大変な窮状にあるという状態でございますので、こちらの方の問題についても、今現状を把握しながら適切に対応していきたい、かように考えます。
  52. 岡田利春

    岡田(利)委員 今、北海道道庁あたりでも緊急融資対策を講じるような動きがありますけれども、この点の万全な体制を強く期待を申し上げておきたいと思います。  ここで、ちょっと順序が逆になりますけれども、私は磁気カードの問題を取り上げたい、こう思うのであります。  最近、磁気カードを使用した犯罪というものが目立ちつつあるわけであります。前にも大阪の近畿相互銀行の職員とか北海道の電電公社の職員とか、仙台、八戸、苫小牧、これなんかまだ犯人がつかまってないという事件があるわけであります。殻近もいろいろな事件が起きているようでありますが、この最近の犯罪の動向は一体どういう状況にあるか、まず御説明をお願いいたしたいと思うのです。
  53. 仁平圀雄

    ○仁平政府委員 磁気カードを使用した犯罪のほとんどは、いわば窃取したり拾得したりしたキャッシュカードを使用しましてCDつまり現金支払い機から現金を窃取するという事件でございますが、これが最近大変ふえておるわけでございまして、昨年中における認知件数は九百二十九件、検挙件数は八百二十八件でございます。  なお、最近の特異な事例といたしましては、窃取したキャッシュカードの暗証番号を被害者の住民票をとってその生年月日から推測して、CDを操作の上現金十一万円を引き出したという事件とか、サラ金会社の女子事務員が勤め先の端末機を使って拾得したキャッシュカードの暗証番号を解読し、ATMすなわち現金自動預金支払い機から現金四十七万円を引き出したというような事件がございます。そういったところでございます。
  54. 岡田利春

    岡田(利)委員 最近、磁気カードの読み取り機械、これなんか市中に出回っておるようであります。現在大体六社程度で生産をされて、しかも簡単なものは十万円、ちょっと高いものは三十万円くらいで販売をされておる、自由市販されておるのが実態であります。何に使うのかと言えば、会社やあるいはバーなんかでも顧客の管理に使うとかタイムレコーダーに使うとか、いろいろな面に今ずんずん利用が広まっておるようであります。また簡単なのは磁気カード・リーダーライター九万八千円、プリンターつき磁気カード・リーダーライター、これが十九万三千百円、こういう値段で売られておるわけであります。そして六社、メーカーがございます。  そうしますと、一体だれが何のために買っていったのか非常に興味のある話でありますけれども、伝えられるところによれば、趣味で買っているのが二〇%、あとはなかなかわからないようであります。客層はどうかと言えば、二〇%近くはもう全然業種が不明であるというようなデータもあるのであります。このような磁気読み取り機がこのような磁気カードの犯罪がふえている中で自由市販をされておるという実態、動向について、政府は一体どう把握されておるのか、承っておきたいと思います。
  55. 杉山弘

    ○杉山(弘)政府委員 ただいまお尋ねの磁気カードの読み取り装置につきましては私どもの方で生産を所管いたしております。この問題につきましては、先生御指摘のようにいろいろ悪用される危険も多いわけでございますが、一方では事務の合理化その他省力化、OA化にも役立つものでございますので、今のところ、先生御指摘のような、販売について直接政府として規制するという考えは私どもとしては持っておらないところでございます。
  56. 岡田利春

    岡田(利)委員 先般本件がテレビで放映されておるわけです。この放映では、番組の中でコピーしたカードによって実際に銀行の預金が自動支払い機によって現金が支払われている、こういう場面が放映されておるのであります。極めて簡単にできるようになっておるのであります。  そこで、専門家の話を聞きますと、今のカードではまるで、どうぞ読んでくださいというような簡単なものである、いわば印鑑と通帳とを一緒に持ち歩いているものであって、極めて簡単なものである、こう論評いたしておるわけです。これは日本独自の方式らしいですね。しかし最近はこの分野の技術の進歩は日進月歩、大変な目覚ましいものがあるわけであります。ですから、簡単に日本の銀行の支払い機にカードを入れると現金が支払いされるということはゆゆしき問題だと私は思います。  これより方法がないのかと言えば、米国ではロッキード方式という、暗証番号をカードに入れなくてもよい方法がある。あるいはまた暗証番号のゼロ化の方式もある。またはICカードの導入の方法もある。そういう幾つかの方法はあるわけであります。しかし、この改善は別に積極的にやろうとはしていません。ある銀行では、こういう暗証番号が記入されていないカードを使用するシステムになっている銀行もあるのであります。この問題は、このまま放置しておけない問題だと私は思うのであります。政府は、こういう事態にどう一体対策を立てられるのか。銀行なんかは、お客の預金防衛上重大な責任があると思いますよ。  大蔵大臣はこういう事実を御承知でしょうか。この対策はいかがでしょうか。
  57. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今回田さんも御指摘になりましたように、大変こういう犯罪件数がふえておるというのは警察白書を見ても明らかでございます。本来は、磁気カードを現金と同じつもりでそれぞれの人が管理していただく、そして盗まれたり落としたりしましたら直ちにもって金融機関等に連絡していくということにきちんとなれてしまえば、それなりにほとんど犯罪は防げるものではないか、こういう感じが私もしないわけでもございません。  が、安全対策ということになると、第一義的には各金融機関の経営判断に基づいて講じられるべき問題でございますが、ここまで技術も進歩してまいりますと、これは金融機関共通の問題としてやはり対応する側面が多いと思われますので、何とか、指導の範囲に入るか入らぬかという問題は別といたしまして、適切な場を通じて金融機関に対して検討を進めるように促します。そういう措置をとってみたいというふうに考えたわけであります。一部の金融機関では既に安全対策で模索されておったり、一部実行されておったりしておるようでございますから、これを機会にそのような注意を促したいと思います。
  58. 岡田利春

    岡田(利)委員 一部の、ほんの一部ですね、今そういうシステムを導入しているのは。もちろんこれはソフトウエアの部面がありますから、非常に難しい面もあると思うのです。しかし少なくとも銀行ですから、お客さんの預金の安全を図る、こういう面からいっても、思い切って、先ほど指摘をしたような高度なシステムを採用すべきではないのか、こう思うのであります。多少金がかかっても、大蔵大臣、いいじゃないですか、内需拡大になりますよ、これは全銀行がやるのですから相当な内需拡大に資すると私は思いますね。またそのくらいやらなければならない問題だと私は思うのであります。ぜひこれは、テレビでこういう実験が放映されるとなりますと、より非常に危険性が増している、こういう認識をしなければならないと思いますね。  いわばこれからはカード社会にずんずん進んでいくのであります。したがって、現行法でもプラスチックカードでキャッシュカードをつくっても文書偽造には問われないのでしょう。そういう意味では早急に法の改正をする必要があるのではないか、私はこう思うのでありますけれども、この法的な対応策について検討されておるのかどうか、これは法務省ですか、お伺いいたしたいと思います。
  59. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 ただいま御質問のございました磁気カードに関するいろいろな不正使用等含めまして、コンピューター関連の犯罪につきまして現行刑法その他の現行法で十分に対応できるかということにつきましてはいろいろ議論も問題もあるところでございます。こういう犯罪に対しまして適切に対応するためにはやはり新たな立法措置が必要である、法務省といたしましてはこういうふうに考えておるところでございます。したがいまして、目下外国の立法例その他をいろいろ検討して立法化のために努力をしておる、こういうところでございます。
  60. 岡田利春

    岡田(利)委員 ここでちょっと、防衛庁長官に中期防衛計画についてお伺いをいたしておきたいと思うのであります。  九月十八日に五九中業見積もりが、政府の閣議決定で今度は中期防衛力整備計画に格上げされたのであります。そして六十一年から六十五年の間十八兆四千億程度で、この資金を投入することによっていわば「防衛計画の大綱」の水準を達成をするということに相なっておるわけであります。私は、今年度の予算、初年度の予算を検討してみますと、ちょうどデフレーターで計算をしていきますと、十八兆四千億の初年度分、一年間ぴたっと合うような感じがするのですね。十八兆四千億の初年度の予算として、まさしく私の指摘したとおりの予算である、こう言い切れますか。
  61. 加藤紘一

    加藤国務大臣 昨年度、中期防衛力整備計画がつくられ、そして一年目になります昭和六十一年度の、今度の提出している予算は、一年目としてそれにふさわしいスタートができる予算であろうと思っております。それは達成率だとか実質伸び率だとか、その他含めまして、初年度としてはまずいいスタートを切れる計画どおりの予算だと思っております。
  62. 岡田利春

    岡田(利)委員 そうしますと、この計画の閣議決定に当たって、もちろん中業見積もりをやらないということを決めたのでありますけれども、手法はかつての似かよった中業見積もりのような手法、このことはやはり閣議決定の中に含まれておると思うわけであります。いわゆる三年後には計画を見直すという問題があるわけであります。  従来の中業で言えば、六十二年につくるのですから六二中業になるわけです。五九中業から今度は六二中業。そうすると、二年間延びているのですね。結局七年までですね。ちょうど六十五年から六十七年という二年間の先を目標にして整備計画を組むということになるわけでしょう。そうすると、六十二年に検討される従来の手法で言えば六二中業、中業とは言わないのでありますから、六十二年度中に策定するものは今度はどうりつものになるのですか。
  63. 加藤紘一

    加藤国務大臣 中期防衛力整備計画を決定いたしましたときに、その決定の中に入っておるのでございますが、これは今後三年後に見直すことを検討するという言葉が入っております。ですから、三年後にローリングするとは決まっておりませんけれども、する必要があるかどうかを三年後に考えてみましょう、その可能性を残しておるわけであります。  そうしますと、多分そのときの検討によりますけれども、そこからまた五年間新たな中期防衛力整備計画というものが考えられていくということになるだろうと思います。ですから、委員おっしゃるように、まあ六十一、二、三で四、五、六、七、八ですか、そういうことになるだろうと思います。
  64. 岡田利春

    岡田(利)委員 なるのであろうということじゃいかがなものですか。六十二年にそういうものを決めるということは、もう六十一年から作業をスタートさせなければできないわけでしょう。しかもこの中期防衛力整備計画を決める場合には、従来の一次防、二次防、三次防、四次防と同じょうに五年間、予算は十八兆四千億であるということを決めて、それで目標を定めてあるわけです。六十五年に防衛大綱の水準を達成するということになりますから、今度検討して五年間決められた昭和六十七年の目標は、一体何を目標にするのか。その場合には防衛大綱の見直しをするということになるのでしょうか。この点、何かはっきりしないですね。中業を格上げしていわば閣議決定をした。そして従来の中業の手法については検討すると起こしてある。今の答弁のような状態ではあやふやな答弁なわけですね。これはもう少し確たる認識を示さなければいかぬ問題だと思うのですが、いかがですか。
  65. 加藤紘一

    加藤国務大臣 岡田委員の御指摘は、今二つの問題があろうかと思っております。  一つは、ローリングするということは何か対象期間をあいまいにしたり目標があいまいになるのではないかということでございますが、その方式といいますのは、私たち防衛力の特性、それから諸外国の動向も見なければなりませんし、国際情勢も考えなければなりませんので、三年後に考えていくというのはこの変化の激しい中では当然のことであって、その可能性をやはり残しておかなければいかぬのじゃないかな、こう思います。  それから二番目に、金額の方がおかしくなってしまうのではないか、十八兆四千億ということを五年分として上限として決めたけれども、途中でそれが三年目になし崩しになってしまうのじゃないかという御指摘があろうかと思いますが、この十八兆四千億は六十年度の実質ベースの金額でございますが、これは今後の五年間を拘束するものだと思っております。したがって、ローリング方式をいたしましても、昭和六十四年、六十五年を含めた五年間の金額につきましては、十八兆四千億が上限でございます。
  66. 岡田利春

    岡田(利)委員 去年策定をして決めた計画、五年間策定されて十八兆四千億、そして三年目というから二年画ぐらいから作業に入らなければならぬ。そして三年目にはこの計画を示さなければいかぬわけでしょう。大変なんです。連続作業をしなければならぬという関係になるわけですよ。そして十八兆四千億を変えないとあなたは言、われる。そうすると六十七年という二年間、今いろいろなことを言っておりますけれども、これを同じ手法でやるとすれば、防衛大綱の水準を達成するということで十八兆四千億を組んだのですから、インフレ率も全部見て組んだわけですから、そうすると六十七年については一体何を目標にしてこれから作業をするのか。もう作業にかからなければいかぬでしょう。来年ぽぽっとやってできるのですか、これは。そこだけ聞きたいのですよ。だから、どうもおかしいと思うのですね。
  67. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私たちの防衛力の整備の状況というのは、常に考えて見直しし、効率化を考えていなければいけないことだと思っております。現在、自主業務監査委員会というものを庁内につくっておりますが、これも今後の防衛力整備のあり方を効率的にするにはどうしたらいいかという議論を今現在でもいたしております。そして、仮に三年後見直すということになれば、そこで検討されたような内容も含めて、より財政的に厳しい中でいただいた財源をどう効率的に使うかを含めて新しい案の中に導入していくのだと思います。  そこで、よく「防衛計画の大綱」の水準の達成を目指すというけれども、五年後にそれが達成されるではないか、その後一体何を目標にやるのだということを聞かれます。その後はまたどでかい大きなものになっちゃうのではないかということを聞かれますけれども、防衛関係費のかなりの多くの部分は人件費でございまして、そしてまた、訓練教育費、泊費でございまして、したがって、仮に防衛大綱の水準を達成しましても、その現在の状況を維持するのにかなりの金額がかかっている。つまり、現在いただいている防衛関係費のかなりの部分は現状維持のためにかかるのだということはまず御理解いただいて、ですから、五年目に水準を達成したら、その後予算がゼロでいいなどというものではないのであることをぜひ御理解いただきたいと思います。
  68. 岡田利春

    岡田(利)委員 ここは幼稚園じゃないからそんな心配は要らないわけですよ。だから初年度の問題についても聞いているわけでしょう。問題は、閣議決定してあるからそんなに――三年ということになると、一年たったらすぐ検討に入らなければならぬのですよ。間に合わないですよ、それはだれが考えたって。そして、その後二年を超過する五カ年の計画を出さなきゃいかぬわけでしょう。これは惰性じゃないのかと、こう言っているのですよ、私はね。でなければ、やはり今度は、六十七年の目標は、防衛大綱を見直してその計画を組むということにならざるを得ないのではないか、こういう率直な疑問をあなたに申し上げておるのであります。これは答弁要りませんよ。問題を指摘しておきます、時間がありませんから。これは素朴に感ずる質問なんですよ。だから、それに的確に答えるべきなんです。防衛庁でもこの点どうされるのか、十分ひとつ検討してもらいたいということを申し上げておきたいと思います、残念ながら時間がありませんから。  次に、私はYXWのプロジェクトの問題についてお聞きいたしたいと思います。  YS11の後、日本とアメリカとイタリー、日本は一五%でありますが、このYX767の民間輸送機の開発を進めてまいりました。非常に順調にこれが開発をされて、もう既に、今度はYXXの開発が五カ国の共同で、やはり相手はボーイング社で進められておるのであります。  そこで、このYX附のプロジェクトの開発について、一体日本側がどれだけの負担をしておるのか。そして、政府はこれに対してどういう金額の補助を出したのか、まず承っておきたいと思います。
  69. 杉山弘

    ○杉山(弘)政府委員 お尋ねのございましたYX計画によります767の開発でございますが、五十三年度から五十七年度にかけまして本格的な開発に着手をいたしました。この間、約三百億円近い日本側の費用分担をいたしておりますが、その半分に相当いたします約百四十七億円を政府からの補助金として交付をいたしております。
  70. 岡田利春

    岡田(利)委員 既にこの飛行機は完成をされておるわけですね。今、どうなんですか、確定受注というのはどういうことになっていますか。
  71. 杉山弘

    ○杉山(弘)政府委員 受注の状況でございますが、これまでに世界の二十一の航空会社から百九十三機の受注を得ております。そのうち、既に百二十九機につきましては引き渡しを終了いたしております。
  72. 岡田利春

    岡田(利)委員 これは防衛庁でも結構ですし、通産省でも結構ですけれども、現在米陸軍が研究を進めているものにAOA計画、弾道ミサイル弾道空中捕捉システム、こういう計画を米陸軍が研究を進めておるということについて政府の方は御存じでしょうか。
  73. 杉山弘

    ○杉山(弘)政府委員 ただいま御質問のございましたAOA計画につきましては、ボーイング社が一昨年の八月に米国政府との間で研究開発を実施するという契約を締結した旨の発表をいたしておるというふうには承知いたしております。
  74. 岡田利春

    岡田(利)委員 このAOA計画というのはSDIの基本構想の第四段階に組み込まれるものであるということについては承知をいたしていますか。
  75. 杉山弘

    ○杉山(弘)政府委員 御指摘のように、この研究計画につきましては、SDI計画の一環であるというふうには承知はいたしております。
  76. 岡田利春

    岡田(利)委員 そうしますと、このAOA計画に対してボーイング社は、米陸軍と、一九八四年、昭和五十九年ですね、七月に二億八千九百四十万ドルでこのAOA計画に対してボーイング社は契約を結んだ。その内容は、ミサイル核弾頭を検知するセンサーの開発を進めるためのものである。いわば高周波赤外線センサーの技術実験のものですね。こういう事実については政府は御存じでしょうか。
  77. 杉山弘

    ○杉山(弘)政府委員 AOA計画の内容につきましては、御指摘のように、赤外線センサーないしは光学センサーを用いましてミサイルの追尾をすることができるかどうかの研究をするという内容であるということも承知はいたしております。
  78. 岡田利春

    岡田(利)委員 ボーイング社がAOA計画の問題について、SDIの――これはボーイング社が発表した文書なんですけれども、AOA計画とはSDIのキーエレメントになるものである、そういうかぎになる要素を持っておるものである、AOA計画ではボーイング767を使用する、こういう文書をアメリカ陸軍省に提出をしておることについても御承知でしょうか。
  79. 杉山弘

    ○杉山(弘)政府委員 ボーイング社が御指摘のような文書を提出したかどうかにつきましては、私ども確認はいたしておりませんが、ボーイング社の発表によりまして、先生御指摘のAOA計画にボーイング社保有のボーイング術を改造して使用するということは承知をいたしております。
  80. 岡田利春

    岡田(利)委員 そうしますと、767は改造されてこの計画に使われるということは御承知だという意味ですね。
  81. 杉山弘

    ○杉山(弘)政府委員 御指摘のとおりでございます。
  82. 岡田利春

    岡田(利)委員 もちろん、AOA計画、とにかく飛行機にこのシステムを積むわけでありますから、飛行機は改造されなければならないわけであります。そういう意味で767が改造されて、それにボーイング社と陸軍省が契約を結んでいるこの探知装置、このシステムを搭載をして、そして最終段階のSDIの、発射された核ミサイルICBMが再度大気圏に突入をする、その前にこの飛行機の探知と、そして追跡レーダーを出して、地上から発射された迎撃ミサイルがこれを撃ち落とす、最終段階に。こういう機能を果たす役割でありますから、この改造された飛行機はSDIに組み込まれているということ、間違いないですね。
  83. 杉山弘

    ○杉山(弘)政府委員 ボーイング社が保有をいたしております767を改造してAOA計画に使用するということは承知をいたしております。
  84. 岡田利春

    岡田(利)委員 結局、現在契約を結んでおるのはいわばAOA計画の実験研究だ、こう言うけれども、SDIそのものもこれは実験研究なんですよね。だから、日本政府はこの実験研究にいわゆる理解を示す、こう述べておるわけです。別にシステムを開発するという段階じゃない、研究している段階なんですね。  そのロッキード社のセンサーシステムの搭載用の飛行機として、我が国とボーイング社、アメリカとイタリア、この三者で開発した飛行機が既にそのセンサーを装置をする対象の飛行機として決められて、そういう搭載可能なセンサーシステムというものをロッキード社では開発している。ということになりますと、これは飛行機に載せる装置でありますから、そういう意味では一体のものであるということが理解できるではないか、こう私は思うのであります。販売した飛行機であろうと何であろうと、とにもかくにも三国で開発をした767、飛行機そのものが既にSDIのいわば実験研究のそういうものに組み込まれている。しかも発表によれば再来年、これは八八年、八九年の二年の間には実際に載せて飛ばすんだということになって契約が結ばれているわけですね。  そういう意味でいうと、間接的に日本が共同開発した民間飛行機がSDIの実験に組み込まれているということになると思うのですね。この点はだれが答弁しますか。いかがですか。
  85. 杉山弘

    ○杉山(弘)政府委員 先生も御指摘ございましたように、ボーイング欄は三国で民間輸送機として開発を進めたものでございまして、この開発は五十三年度から五十七年度にかけて行ったものでございます。  ボーイング社の米陸軍との契約はその後の問題でございますし、しかもボーイング社が保有をしております一機を改造して使用するということでございますので、計画自身が米国のSDI計画の一環というふうにはなっておりますけれども、これはあくまで米国内でのボーイング社と米国政府の問題でございまして、私どもの民間航空機の開発とは直接関係のないものというふうに理解をいたしております。
  86. 岡田利春

    岡田(利)委員 それはちょっと詭弁じゃないですか。とにかく売った飛行機の価格の一五%は日本に入るわけでしょう。そしてそのうちの一部は国庫に納付されているわけでしょう。そういうことになっているわけでしょう。ですから、売られた飛行機がセンサーシステムを積んでSDIの実験研究の一翼に組み込まれておるということは、日本と共同開発した飛行機が使われておるということは、これは間違いないでしょう。しかも、売ればその一五%は日本に入ってくるでしょう。その一部は国庫にも入れているわけでしょう。そういうシステムになっておるわけでしょう。  だから、ここまで来ると、やはりSDIに対して、政府はいわば理解を示す、こう言っておるけれども、一歩踏み込んでいると言わざるを得ないのですね。今度は第三次のSDIの調査団が、民間企業も含めて近く行くんじゃないですか。そうしますと、単に理解を示すんだというのではなくして、ここでSDIに対しての、この種の問題を契機にして政府の統一見解を示すべきだと思うのです。いかがですか。
  87. 小和田恒

    ○小和田政府委員 ただいま通産省の政府委員が御説明をいたしましたように、このボーイング767に関する我が国の関与と申しますのは、ボーイング767という民間航空機の胴体等の生産を担当するということで、民間航空機の生産ということに関して我が国は関与をしているわけでございます。  他方、政府が従来から申し上げておりますSDIの研究への参加問題と申しますのは、SDIの研究そのものに対して我が国が主体的に参加をするという問題でございまして、米国企業であるボーイング社が日本と一緒に協力をしてつくりました民間航空機というものを、独自に改造をしてSDI関連の実験機器を搭載するかどうかという問題は、これは我が国がこの民間航空機を生産することに関与するかどうかということとは法的には全く別な問題であるというふうに考えておりますので、SDI研究参加問題とは関連のない問題であるというふうに御理解いただきたいと思います。
  88. 岡田利春

    岡田(利)委員 これは、政府が五〇%の補助金を出して民間の飛行機を開発する、それが軍用にどんどん転用されていく、あるいはまた、今のようにその飛行機がセンサーシステムを積んでSDI研究の中に組み込まれていく。こういうものを全部見過ごしておくと、我が国の汎用製品や汎用技術が流れていきますと、これは全部組み込まれていくわけですよ。  向こうが欲しいのは別に軍事技術じゃないですからね、普通一般の先端技術の汎用技術を欲しいのでありますから。これはほとんどが民間が保有しているのであります。だから日本は慎重なんでしょう。日本の先端技術が、アメリカに協力していくことによって全部とられるのではないかという心配がある。ヨーロッパの方はおくれているから、入ることによってプラスがあるのじゃないかといって態度を表明しているという傾向も私はあるんだと思うのですね。  ですから、この問題は何を教えているのか。やはりそういう点について、もうこの段階で政府はぴりっとした指針といいますか考え方を示すべきではないのか、私はそう思うのですよ。今、条約局長は条約上の一つの解釈として答弁されましたけれども、政治論としてこういう問題が出てくると我々はどう一体これに対応するのか、私はそうであらねばならないと思うのですね。これはどうですか。外務大臣の分野ですか、通産大臣ですか、総理大臣ですか。
  89. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これは、今条約局長が答弁いたしましたように、SDIの研究に参加するかどうかということとは別問題だと私も考えております。民間航空機の開発について日米で協力するということと、今のSDIの研究について直接参加するかどうかということとは、これは別問題で、研究に対しては日本があくまでも自主的に判断をして決めていかなければならない問題であるわけで、この点については今我々としては理解ということにとどめておるわけでございます。  同時にまた、一方ではSDIそのものについての検討を進めて調査を今続けておるということで、SDIに理解は示しておりますが、参加するかどうかということについては今まさに検討中であるということであります。
  90. 岡田利春

    岡田(利)委員 外務大臣、今あなたの答弁がありましたけれども、あなたも政治家なわけですから、こういう問題が、私から指摘されたような問題が出てくると、国民の側から言うと非常にすっきりしないわけですよ。結局、そういうような関係でずるずる組み込まれていく、次にもそういうようなケースが出るのではないのか、またそれを一歩進んだようなケースが出てくるのじゃないのか、こういう心配が当然つきまとうのは当たり前だと思うのですね。  ですから、理解を示す理解を示すと言うだけではなくして、こういう問題を契機にして、理解を示すという、その理解を示す前提に立った一つ政府見解をもう少し具体性を持ったものとして示す必要が私はあると思うのですね。そういう必要性はありませんか。
  91. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 日本がSDI研究に対して理解を示すということをはっきりいたしましたのは、昨年の一月のロサンゼルスにおける日米の首脳会談におきまして、レーガン大統領から、このSDIが非核兵器である、同時にまた防御構想である、同時にこのSDIによって弾道ミサイルを無力化し、最終的にはこれが核廃絶につながっていく、こういう構想である、そういうことを総理大臣が大統領から直接お聞きになって、そうして、SDIがそういう構想であるならば、核廃絶につながるという非常に高適な理想に燃えた、あくまでも防御体制であるから、日本としては理解を示すということを申し上げたわけです。  ただ、これに対して、研究に参加するかどうかという問題は、これはまた別問題として、アメリカからの要請もあるわけですから、それを踏まえながら今実は研究研究を重ねておるということで、何分にもSDIというのは我々もわからないほど非常に複雑な膨大な構想でありますし、また、非常に長期の構想でありますし、やはり日本として決断をするにはもっともっと慎重に研究を重ねた上でなければ、調査を重ねた上でなければ結論は出せないということで、今この努力を続けておるわけであります。
  92. 岡田利春

    岡田(利)委員 近く第三次調査団を出される、従来と違ってメンバーも民間を含めて構成されるというお話もありますが、この点についてどうか。
  93. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 お答えいたします。  第二次の調査団が一月に行ってきたわけでございますけれども、この次、調査団を出すかどうか、その点については現在検討中でございまして、現在のところ具体的な計画はございません。
  94. 岡田利春

    岡田(利)委員 そこで、私はここで総理にちょっとお尋ねいたしたいのでありますけれども、総理はSDIに対して、これは例えば東京サミット前に解決するなどという問題ではない、相当時間をかけて検討しなければならないとしばしば本委員会で答弁をしておられます。いわば、ある意味では、通貨の問題だとか、あるいはまた内需拡大とか、あるいはまた所得税減税とか、サミット前に随分急がれているような感じがするのでありますけれども、この問題については非常におおような答弁をされておるようであります。このことは、私は非常に政治的な意味を持っておるんではないかなという感じがするのであります。いわば、SDI協力というものは我が国にとって極めて重大な意味を持つ、その認識がやはり総理にあるんだと思うのですね。  実際に共同研究研究に参加するとなりますと、憲法上の問題もあるんじゃないですか。やはり軍事の問題でありますから、相手は国防省でありますから、当然日本側との関係の問題を考えると、非常に大きな基本的な問題だということもあるわけでしょう。同時にまた、先ほど言ったように、SDIそのものが内容的に非常に深いものであって、十分慎重に検討しなければならない。また、我が国の先端技術の立場を守る、利益を守るという立場でも慎重を期さなければならない。いろいろあるんだと思うのですね。  総理の言われている、SDIに対する慎重な態度を持ち続けている、サミットについても、別にサミットを意識してないということも変わりないだろうと思うし、今、私の指摘した問題について、一体総理は、一歩突っ込んでSDIについてどういうお考えなんですか。
  95. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 SDIに関する私の考えは前からここで申し上げておるとおりで、変わっておりません。一言で言えば、慎重に対応しているということであります。  この問題は、将来の兵器体系の変革の問題、世界戦略に関する問題という長期的な問題も含みますし、また、やや短期的には、日本の科学技術やハイテクの問題も含んできておると思います。しかし、問題は、SDIとは何ぞやということをきわめることがまず第一で、そのために二度も調査団を出して、アメリカ側が今どの程度研究し、どういうことを目指してやっているか、どういう点に中心点があるか、また、我が国憲法との関係やそのほかとの関係はどうなるか、そういう点を慎重に今調査研究している、そういうことであります。  しかし、去年、もう一年ぐらい前にアメリカ側から手紙を受けた問題でありますから、ある程度我々の方で見きわめがついたら結論を出さなければいかぬだろう。いつまでも無責任にほうっておくべき問題ではない。国民の皆さんも関心を持って見ていらっしゃいますから、政府もその結論については国民の皆さんによく御説明すべき責任がある、そう考えております。
  96. 岡田利春

    岡田(利)委員 それに関連して、先般参議院の補正予算の審議の中で、サミット問題に触れて、その中の通貨制度の改革問題について、総理は衆議院の場合の質問よりも一歩踏み込んだ答弁をされているわけですね。言うなれば、現在のフロート、変動相場制、このことを改革するということになれば、これを一歩踏み出さなければいかぬでしょうという積極的な姿勢を示したわけですね。  そうしますと、一歩踏み出すと、いわば一つの目標圏、ターゲットゾーンを決める、そういう一つの制度改革への踏み出し、もちろんその間にも若干ニュアンスの差があるでしょう。いずれにしても、そういう方向に踏み出す以外に一歩踏み出す前提はないのではないかと思うのです。さらに大きく二歩も踏み出せば固定相場制の方に行くのでしょうけれども。その真意についてこの機会に承っておきたいと思うのです。
  97. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国際通貨制度の問題は長い間の懸案でございまして、たしかウィリアムズバーグ・サミットにおきまして、この問題を検討する、そういうことで関係各国の間でいろいろ議論もし、研究もしてきておるところであります。IMFの暫定委員会が大体今までそれをやってまいったと思います。報告も受けたと思います。あるいはG5とかG10とか、さまざまな場所においても検討してきておるところでございます。  私は、昨年の九月のG5の決定というものは、やはりある意味において非常に効果的に成功したと思っておるのであります。そういうようなことも踏まえて、今後の世界の通貨体制というものをどういうふうにすべきか真剣に検討すべき段階であり、今までの全く野方図なフローティングシステムというものから、この間の成功を踏まえまして、まず世界の主要国の経済政策の調整、そういう問題が基本的に浮かび上がり、それからその政策調整の上に立って、どういう部分的な通貨調整的な仕事ができるか。今までも、中央銀行が大蔵省等と相談して介入は各国ともしてきたわけでございます。やはり激変を避けるということは非常に大事なことで、通貨制度自体はある水準で長期安定しているということが望ましい。そういう意味から、そういう方法がどういうふうにしてあり得るかという点について、ひとつ研究を進めていきたい。今研究も我々はしております。そこで、サミットの場におきましても――アメリカ自体も最近非常に変わってまいりまして、レーガン大統領がベーカー長官に世界国際通貨制度の会議をひとつ検討しなさいと言うぐらいに変わってきており、アメリカ議会の内部においてもケンプ議員以下いろいろまた議論も出てきており、恐らく秋の中間選挙においてもこういう問題は一つのアイテムになるのではないかと思っております。そういうような面から見ましても、幅広く我々はこれを検討して、サミットの場におきましても恐らくそういうものが議題になってくると思いますが、我々もこれを研究していきたいと思っております。  ただ、いわゆる固定相場制とかあるいはターゲットゾーンというものはやや無理ではないか。ヨーロッパ共同体のような、非常に地域的にも密接に密着し合い、また社会制度的にも文化的にも一体性を持ち、それからヨーロッパ統合という大きな政治意思を持っておる場所においては、ああいうトンネルの蛇のような、いわゆるターゲットゾーン的なものが成り立ちますけれども、それ以外の国の場合にはかなりそれは無理がある。しからばそれにかわるべきものは何があるか、そういう意味において今検討をしていきつつある次第でございます。
  98. 岡田利春

    岡田(利)委員 今のフロートというのがファンダメンタルズをそれぞれ素直に反映しなくなってきたという事実は現実なんですね。そういう意味で、やはり通貨問題が今大きな問題になっておるわけです。  ただ私は、こういう質問をすると失礼ですけれども、どうも総理は対米配慮ということを考えられて、産業構造の問題あるいはまたこの通貨問題、今前川さんの委員会に諮問しておりますけれども、そういうお考えがあるのではないかなという感じがしてならないわけであります。そう言うと、そういうことはないよ、とこう言うでしょう。ぜひこれは国際経済という立場に立って基本的に問題を受けとめてほしいな、こういう希望を老婆心ながら申し上げておきたい、かように思います。  最後になってまいりましたけれども、ここで河野科学技術庁長官に伺っておきたいと思うのですが、いわゆる貯蔵工学センター立地の問題であります。  先般、強行突破をされて調査をされた。昨年の十一月二十三日ですね、全くこそ泥的な調査をやられたわけであります、動燃事業団が。その後、北海道新聞が世論調査をしたのでありますけれども、この横路知事の姿勢についてそれぞれの世論調査の結果が出ております。道民の世論調査は、六七・八%、これは「非常によい」「まあよい」という支持の意向を表明いたしておるのであります。自民党支持者でも五二・二%、これは横路知事の姿勢を支持をしている。社会党は八六・一%、公明党は七二・七%、民社党は六四・七%、共産党が八〇・九%。新自由クラブはここに出ておりませんけれども、新自由クラブの場合にも自民党よりは高い率であるということは間違いがないのであります。  そこで、今度科学技術庁長官になられて、特にこの問題点についてはもう十分勉強されておるわけですから、今、原発のように来年、再来年の問題じゃないわけですから、それをなぜ一体強行しなければならぬのか、私は非常に非科学的じゃないかなというような感じがしてならないのであります。そういう意味で、今までの経過を踏んまえて、河野大臣としてはこの貯蔵工学センター立地問題についてどういう基本的な姿勢をとられるのか、まず承っておきたいと思います。
  99. 河野洋平

    ○河野国務大臣 岡田委員、この貯蔵工学センターについてはいろいろと御研究をいただいておりますことを承知をいたしております。今、委員からお話がございましたように、新聞の調査についても拝見をいたしております。  私どもといたしましては、新聞の調査あるいは道議会の決議、知事の意向あるいは幌延町の人たちの意見あるいはその周辺の方々のお考え、こういったものをよく考え合わせて進めていかなければならないと思うわけでございますが、今、委員御指摘の調査につきましては、十分御承知のことでございますけれども、関係者の中にも不安に感じている人もいる、あるいは疑問を持っていらっしゃる方も中にはある。伺いますと、地層の問題について、地盤が軟弱ではないか、あるいは近くに活断層があるのではないか、こういった御指摘あるいはそうした意見に対する不安、そういったものを地元の方が持っていらっしゃる。さらには、地下水を通って牛乳が汚染されるのではないか、そういうような説があって酪農家の方々が非常に不安を感じられた、こういったこともあったようでございます。  したがいまして、そうした地盤に対する不安とか、あるいは牛乳が汚染されるのではないかという、まあこれは私どもから申しますと余りに反対のためのそうした説、しかし、そうした説があれば不安に思われる方もあるわけですから、そうした不安や疑問を解明していく。そのために、私たちとしては、一つ一つそうした不安や疑問を解いていくための努力をしなければいけない。そのために、直接御関係のある方で御理解をいただける方にお願いをして調査をさせていただいて、見ていただく必要がある。これはなかなか説明だけで納得をいただけない部分もあるものですから、何とか直接見ていただく、あるいは皆さんの目の前でそうしたことを一つずつ解明をするということが、問題を円満に進めるためにもいいのではないか、こう考えておるわけでございますが、残念ながら、先般の調査につきましては地元の方々にまだまだ十分な理解がいただけていないという部分もございまして、なお一層努力をいたしまして、さらに理解をちょうだいする努力をいたしたい、こう考えておるところでございます。
  100. 岡田利春

    岡田(利)委員 原子力安全白書の中でも、いわゆる廃棄物については行政責任において基準の設定を急ぐべきだと、アメリカなんか皆基準があるのでありますから、日本はないのでありますから、そう指摘をされておるわけです。また、放射性廃棄物の規制専門部会、放射性物質安全輸送専門部会、この両専門部会においても検討作業が進んでいる。こういうものを得て、やはり基準をつくることを急ぐべきだと思うのですよ。そういう基準をつくらぬでこの環境調査をするというから問題が起きるのであります。そういう責任ある行政の立場というものを明確にすべきだと私は思うのです。この点についてどうお考えになっておるかという点が第一点。  同時に、第二点として、ここの幌延の貯蔵工学センターというものは廃棄物の最終廃棄処理の場所ではないんだという説明を何回もいたしておるわけでございます。私はこれが不思議なんですね。じゃ、もしそうでないとすれば、またこれは最終処理地まで持っていかなきゃならぬでしょう。一千キロ、津軽海峡を渡って北海道の北まで来て、そして港で揚げて陸送して、工学センターで研究した、今度はこれをどこかへ持っていって最終処理をする、こんなばかげたことを、非科学的なことをやっておるから問題が起きるんだと思うのです。研究というのはまだその程度の初歩的なものなんですから、だから、そういう廃棄物の出る、いわば再処理する地点で、同時にその近い地点でやることが望ましいわけでしょう。そんなものを移動させるなんて、あなた、本当に人をばかにしているような感じがするのですね。本当に最終処分地でないとするならば、これはやはり近いところに設けるというのが行政としては筋ではないですか。率直にお伺いしたいと思うのです。こんなこと、政治的に立地を決められたら困りますよ。
  101. 中村守孝

    中村(守)政府委員 お答えいたします。  先生の御指摘の第一点、廃棄物の貯蔵等に関する基準を整備してからかかるべきではないか、こういうお話でございますが、現在、廃棄物の問題につきましては、昨年十月に原子力委員会及び原子力安全委員会におきまして、廃棄物の処理処分方策、安全確保のあり方等について報告書を取りまとめたところでございまして、これを受けまして、現在、放射性廃棄物の処理処分の安全規制を充実強化するための原子炉等規制法の一部改正等についての検討を進めておるところでございます。  具体的に、こういう貯蔵工学センターの技術基準的なものにつきましては、従来から原子力安全委員会において定められております、核燃料施設全般を対象といたしました核燃料施設安全審査基本指針、あるいは近く再処理施設を対象として定めることになるわけでございますが、再処理施設の安全審査指針、こういうものがございますので、こういったものでこの貯蔵工学センター等の立地等に必要な基本的な考え方等は既に定められておるわけでございます。  先生御指摘のいわゆる最終処分地をどうするかという基準についてはいまだ持っておりませんが、貯蔵工学センターをそういう最終処分地にするということではございませんので、その基準がないから立地調査ができない、そういう段階ではないわけでございます。  それから一方、そのガラス固化体をわざわざ遠く北海道まで持っていくことはないではないか、こういう御指摘がございましたが、この高レベルの廃棄物につきましては、ガラス固化いたしましていわゆる最終処分にいたしますまでの間、これは技術的に申しますと熱が出るものですから、三十年ないし五十年というかなりな期間を、ちゃんと陸上、半地下でございますが、そういったところで人間が監視しながら管理をしていくという時期が必要でございます。これは短期間でございませんで、先ほど申しましたように三十年ないし五十年という時期でございます。  それで、ガラス固化体自身は輸送は十分可能でございまして……(「時間がないから」と呼ぶ者あり)はい。  それから、東海村の再処理工場の近くに置いたらいいということにつきましては、何分にも敷地が狭隘でございまして、もろもろの今後研究開発を進めるべきものとの関連におきまして用地がないという状況にございますので、新しい地点を選定しておるという状況にございます。
  102. 岡田利春

    岡田(利)委員 時間がありませんが、いずれ科技特で同僚委員も質問を詰めていくと思うのです。  私は、最後に、大臣にお聞きいたしたいのでありますけれども、少なくとも昨年の十一月二十二日のようなああいうぶざまな調査をやるということはないのだろうと思うのですね。そういう意味で、私は動燃事業団を厳しく指導してほしい、こう思うのであります。  ボーリングの調査に入るというような場合、もちろん時間を置いて事前に関係方面に連絡をするというのは当然のことでしょう。抜き打ちにやるなんというのは大変なことだと思うのですよ。流血の惨事が起きますよ。あの北海道の原野に、白い牛乳の生産地に赤い血が流れるという事態を私は想像せざるを得ないのです。そしてまた、関係機関についてもやはり了解を得るという基本的な姿勢でなければいかぬのであります。そういう理解と協力のために、大臣としては最大限の努力をするのだということを私は約束してほしいと思うのです。
  103. 河野洋平

    ○河野国務大臣 前回の調査が委員おっしゃるように抜き打ち的ではなかったか、こういう御指摘でございますが、当時、恐らく責任者の方々は混乱をできるだけ避けたいという意味でああしたやり方になったのではないか、こう私は考えております。当然、事前に通告をして混乱なく調査ができるということが一番望ましいわけでございます。ただ、間々事前の通告によって混乱が大きくなってしまうということを恐れる、心配をするということもまたあったのではないかと思うわけでございます。  私といたしましては、できるだけ混乱を少なくする努力を最大限いたしたい、こう考えております。
  104. 岡田利春

    岡田(利)委員 今、大臣からも御答弁いただきましたけれども、私はやはり地元の了解なしにやるべき問題でないと思うのですよ。そして、そんな一年おくれたからどうのこうのなんという問題じゃないのですから、そういう意味で、今答弁された点については、十分了解を得てこういう調査が実行されるという点について、ひとつ今後十分配慮願いたいということを申し上げておきたいと思います。  北海道道民の感情からいえば、産炭地でございまして、石炭火力が長く活動して、今度、泊にまだ原発建設中ですよ、これができるのは、動くのはまだ二、三年先なんですから、北海道では核の廃棄物なんというのは何も生産してないのですから、そこに無理やり持ってきてやらなければならぬというものではないと思うのですね。しかも遠隔の地。船が沈んだらどうですか。空飛ぶ飛行機は落ちるんですよ。海に浮かんでいる船は沈むという危険性があるんですよ。なぜ一千キロ通んでいかなければいかぬのですか。そういうことを考えると、どうも理屈に合わないですね。  だから、道理が引っ込まないように、道理が通るようにきつく申し入れをいたしまして、終わります。
  105. 小渕恵三

    小渕委員長 これにて岡田君の質疑は終了いたしました。  午後零時五十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五分休憩      ――――◇―――――     午後零時五十四分開議
  106. 小渕恵三

    小渕委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。神崎武法君。
  107. 神崎武法

    ○神崎委員 初めに私は、SDI研究の参加問題からお尋ねをいたします。  本日、お昼のNHKニュースによりますと、シュナイダー米国務次官が、日本はことしの夏までにSDI研究に参加する見通しである、こういう発言をしたということが伝えられております。まずこの点をお尋ねいたしますけれども、我が国としてことしの夏までにSDI研究に参加をするという意向を持っているかどうか、こういう点と、その旨をアメリカの方に伝えているかどうか、この点についてお尋ねをいたします。
  108. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私もシュナイダー氏の発言は報道で聞きましたけれども、日本としては全くその点については関知しておらないわけであります。  我が国としてSDI研究についてどうするかという問題については、目下慎重に検討中でございまして、時期を明示するという段階には至っておりません。
  109. 神崎武法

    ○神崎委員 しかし、我が国の意向が何らかの形でアメリカ側に伝わっていなければ、シュナイダー国務次官がそのような見通しを述べるということは考えられない、このように思うのですが、いかがですか。
  110. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これは、全く我が国の意向はそういう形で伝わっているわけではありませんで、あくまでも我が国としては、SDIについては、研究については理解はいたしており、しかし、参加するかどうかというのは目下慎重に検討中だということを米国政府に対して至言っておるわけでありますから、時期についての今の発言については我々として承知しておらないところであります。    〔委員長退席、林(義)委員長代理着席〕
  111. 神崎武法

    ○神崎委員 ことしの二月の十四日に自民党の藤尾政調会長が、外務省の藤井北米局長に、SDI研究開発計画に日本の企業が自主的に自由に参加できる道を開くよう検討を指示したということが伝えられておりますけれども、総理もこの点は御承知されておるわけでしょうか。
  112. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 全く知りません。関知いたしておりません。
  113. 神崎武法

    ○神崎委員 そういたしますと、藤尾政調会長がこういう指示をしたということが報道されているわけでありますけれども、総理としてはどのようにお考えになっていらっしゃるわけですか。
  114. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私、全く関知しない。今SDIについては目下研究中でありますから、研究を終わりもしないうちにそういうことはあり得ないし、民間に対してどうこうという、そういう筋の段階ではないと思っております。
  115. 神崎武法

    ○神崎委員 それでは段階を追って質問をいたしたいと思います。  昨年の十二月十日にアメリカの下院の外交委員会の公聴会におきまして、パール国防次官補がSDI研究参加を求めている同盟諸国の対応について分類して報告をいたしております。  それによりますと、政府参加は拒否するが、企業の参加は自由とする国がカナダ、フランス、デンマーク、オランダ、ノルウェー、政府の参加を拒否し、企業の参加についての態度が不明な国がオーストラリアとギリシャ、近く結論を出す見通しの国が西ドイツとイタリア、研究理解を示しているが結論を出していない国が日本、こういうこと直言われているわけであります。既にイギリスがSDI研究参加の第一号として協定を結んだということも、また、西ドイツが民間参加ではありますけれども、SDI研究参加ということで閣議決定をした、こういうことも伝えられているところでございます。  そこで、我が国として、このSDI研究参加を求められた同盟諸国の対応につきましてどのように情報を収集し、現在分類されておられるのかどうか、その点をお尋ねいたします。
  116. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 お答えいたします。  SDIに参加を要請された各国につきましては、それぞれの首都におきます大使館等の外交チャネル、それから状況によりましては外務大臣その他の御訪問の際等に随時種々の意見交換等を行って情報を収集しております。
  117. 神崎武法

    ○神崎委員 私がお尋ねをいたしたのは、どのように分類しているのか、現在SDJの参加を求められた国の参加、不参加の対応、それをどのように外務省として現段階での分類したものを持っておるか、こういう質問であります。
  118. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 イギリスにつきましては、政府間協定を昨年十二月に結んだわけでございまして、さらに西独につきましては、昨年十二月にアメリカと一般的な技術の交流についての、これはSDIも含めまして、話し合いをアメリカとするということにつきまして政策の宣明を行ったということでございます。それから、イタリアは現在態度を検討中ということでございます。それから、政府としては参加は特にしないけれども、企業、民間の参加は自由であるという趣旨の意図表明を行いました国が、フランス、それからカナダ、ノルウェー、デンマーク、オランダ等であるというふうに存じております。それからオーストラリアにつきましては、特に政府として参加をするということは言っておりません。参加の意図はないということを言っておりますが、民間についての言及は特にございません。  以上でございます。
  119. 神崎武法

    ○神崎委員 二月五日に発表されましたアメリカの国防予算によりますと、レーガン政権はこのSDIの軍事的重要性について大変強調をしておるわけであります。この点についての総理の御感想と、これはレーガン大統領のSDI、このように言われますようにレーガン大統領が特に熱を入れられている構想であります。アメリカの世論を見てみましても、賛否両論に分かれている点もうかがえるのでありまして、果たしてポスト・レーガンにおきましてこのSDI計画というものを現在のように維持していくのか、あるいは縮小した形になるのではないか、そういうことも予測として言われているわけでございます。さらにはMAD、相互確証破壊戦略に戻るのではないか、こういうことを言われておるわけでありますけれども、ポスト・レーガン政権においていかなる位置を占めるのか、こういう点も含めまして、総理に御感想をお伺いしたいと思います。
  120. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 SDIについては、レーガン大統領は非常に情熱を持っておるように私伺っております。と申しますのは、核兵器を廃止しよう、そういう意味で、新しい兵器体系へ移行することによって人類の運命をさらに平和と安全の方向へ持っていこう、そういう非常な決意を持っておるやに伺っております。  我々も昨年の一月にロサンゼルスでレーガン大統領から直接話を聞きましたけれども、ともかく非核兵器で、そして核兵器を廃絶することを目的とする防御兵器体系で、しかもABM条約に違反しない、そういう範囲内でやりたいという話を聞いて、その心情等については非常に評価もし、理解もしたところであります。  その後、様子を見ておりますと、アメリカ国内におきましてもいろいろ賛否両論もあるようでありますが、議会の空気は賛成の方がかなり多くなってきておると思います。予算も、初めはたしか二十七億ドルとか昨年あたり言っておりましたが、今度の教書、予算の折衝等を見ますと、大体四十億ドル台の予算が確保されそうであります。そういう様子を見ますと、アメリカ議会におきましてもSDIに対する理解と推進力というものが今まで以上に普遍的に広がりつつある、そういうように観測いたしております。
  121. 神崎武法

    ○神崎委員 私は、このSDI研究参加問題につきましては、最終的に我が国の国益に基づきまして判断しなければならないと思うわけでございます。さまざまな問題がありますし、慎重な対応が望まれるわけでありますけれども、あえて客観的に今の状況でどうなのかということについて、踏み込んで私なりの感想を申し上げますと、先ほど外務省の方から御答弁がありましたように、SDI研究参加の対応を求められた、参加を求められた同盟諸国の中で、大半が何らかの形で研究参加を決定している、イタリアだけがどうも残っているようでございますけれども。それから、先ほどの国防予算におきましても、レーガン大統領は大変このSDI研究に、その軍事的重要性というものを強調している。これは、アメリカの参加を求める熱意というものは相当強いだろう、こういうこともあるでしょう。また我が国とアメリカとの間には日米安全保障条約もある。対米武器技術供与の取り決めもなされて、日米軍事技術に関する共同研究の道も開かれている、こういうことも客観的な事実としては間違いないだろうと思うわけであります。  そういう点からいたしますと、今後我が国として、このSDI研究参加問題に全く何らかの形でも参加しない、こういう対応をとるのは、そういう選択というのは大変難しくなりつつあるのかな、こういう印象を受けるわけでございますけれども、総理の率直な客観情勢の認識というものをお尋ねいたしたいと思います。
  122. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ここで繰り返し申し上げておりますように、目下、政府は極めて冷静に、そしてSDIの中身、将来性等について二度にわたり調査団を出して検討し、研究を続けているところでございまして、その結果を見た上で判断をいたしたい、そう思って目下のところは理解を示している以外は白紙でおります。
  123. 神崎武法

    ○神崎委員 ところで、総理は、日ソ関係の改善に大変な熱意を示しておられるわけでございます。私も大変結構なことだと思っているわけでございますけれども、ソ連がこのSDIに対して反対の立場をとっている。しかも、これは、何が何でもSDIは阻止したい、そういう動きをするであろうということも、これも事実だろうと思うわけでございます。我が国は現在このSDI研究参加を決定していないわけでございますけれども、今後の日ソ関係の改善を飛躍的なものにするために、このSDI研究参加問題というものを対ソ交渉の切り札にする、カードとして使う、こういうお考えがあるのかないのか、その点についてお尋ねをいたします。
  124. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そういう考えはありません。
  125. 神崎武法

    ○神崎委員 ないということでございますけれども、いずれにせよ、ある時期で、我が国はこのSDI研究参加問題に、参加するなり参加しないなり結論を出さざるを得ないわけでございます。そのときに一番大きな反応が予想されるのがソ連の対応であろうと思うわけであります。我が国が仮に参加という決定をした場合に、ソ連がどういう反応を示すのか、逆の場合もあろうかと思いますが、仮にそういう我が国対応があった場合に、今後の日ソ交渉に支障にならないのかどうか。このSDI参加問題というのは、どういう位置づけでこの日ソ交渉の中でお考えになっていらっしゃるのか、お尋ねをいたします。
  126. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 SDIについてまだどういうものであるか、中身及び将来の展望について検討している最中でございますから、それと日ソ交渉というものを絡めて考えるという考え方はありません。
  127. 神崎武法

    ○神崎委員 総理は大変長く、研究理解を示されてから一年を経過してもなおいろいろ検討をされている、こういうことでございますけれども、我が国がこのSDI研究に、総理理解を示されてから一年を経過してなおかつこの問題に今日まで結論を出し得ないでいるわけであります。そこにはいろいろな隆路があろうかと思うわけでございますけれども、どういう点が問題点として残っているのか、あるいは今まで我が国にアメリカからのこのSDIの責任者も参っております。また我が国からも二度にわたって調査団が派遣されております。そういう中で一体SDIというものにつきましてどういう点がわかって、どういう点が今後の検討課題として残されているのか、こういう点を国民の前に中間報告という形でも結構ですから報告をされるべきである、私はこのように思うわけですが、いかがでしょうか。
  128. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 目下、今検討中、研究中でございますから、そういうことを表明する段階にはないわけであります。いずれ研究検討が済んで結論を出すという段階には政府としても国民の皆様方にしかるべく御報告するということは当然あり得ると思います。
  129. 神崎武法

    ○神崎委員 そうしますと、結論を出す段階で当然国会にも報告がなされる、このように伺ってよろしいでしょうか。
  130. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国会にも結論は御報告申し上げたいと思います。
  131. 神崎武法

    ○神崎委員 そこで、さらにまたお伺いいたしたいわけですけれども、大変国民がこのSDI研究参加問題につきましてわからないことは、一体アメリカがこの研究参加で我が国にどの分野の研究参加を求めているのか、我が国としても一体どの分野の研究参加というものを考えているのか、また、その分野というものが専ら軍事技術なのか、汎用技術にわたるものなのか、そういう点がわからないわけなんですね。したがいまして、国民からいたしましても、このSDI研究多加問題、一体我が国の国是あるいはこれまでの政策から参加できるのかどうか、参加できるにしてもどこまで参加できるのか、こういうところがわからないわけでございます。今私が申し上げた点についてこれまでの調査結果でおわかりになっているのであれば明らかにしていただきたい。
  132. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その辺を今いろいろ見きわめようと思って努力をしておるところで、固まっておるのではない、今流動的なものです。SDI自体がもうセットしてこういうものだというふうに決まったものではなくして、模索しつつ研究しつつある体系で、動きつつあるものでございます。そういう点からも日本としては、どっちに重点が移行するのか、どこに中心線が出てくるのか、そういういろいろな面を研究、見きわめつつ検討しておるところであります。
  133. 神崎武法

    ○神崎委員 特にことしの一月に派遣されました第二次調査団、この調査団員の方の感想として、我が国としてSDI研究に参加しないのであれば先端技術の分野で大変なおくれが生ずるのじゃないか、こういう感想を述べたということが伝えられているのであります。この調査結果につきましては報告書という形で総理のもとにも提出されたということを伺っておりますけれども、この調査結果は、基本的にSDI研究参加やむなし、こういう方向でまとめられているのでしょうか、いかがでしょうか。
  134. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 結論は出ておりません。いろいろな分野について向こうと話をしあるいはまた研究所も見た、その報告が載っているだけで、結論は全然出ておりません。
  135. 神崎武法

    ○神崎委員 近く第三次調査団が米国に派遣される、こういうことも言われております。そしてこの調査団は官民合同の調査団になるのじゃないかということで民間の企業参加というものも当然予想されるということが言われておりますけれども、第三次調査団を派遣する用意があるのかないのか、あるとすればいつごろどういう規模で行うのか、官民合同という形なのか、そういう点を含めましてお尋ねをいたします。
  136. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 まだ、第三次調査団を派遣するかどうかあるいは民間をその中に含めるかどうか、いずれも決まっておりませんで、今後そういう点については日米間でも話し合いをしながらそういうことになるかどうかは決めてまいりたい、こういうふうに思っております。
  137. 神崎武法

    ○神崎委員 それから、一月二十七日付の日本経済新聞によりますと、政府はSDIに日本企業が参加することを前提に対象となる技術分野や契約方式などについての事前調査に乗り出したということが伝えられております。契約方式といたしましても政府間協定を結ばずに、アメリカの政府が直接に日本企業と契約する方式を含めまして四案が浮上してきている、そういう具体的な報道になっておりますけれども、その点はいかがでしょうか。
  138. 杉山弘

    ○杉山(弘)政府委員 私どもも調査団には参加をいたしております。民間企業の方から照会がありました場合には、米側との話し合いの結果で差し支えない範囲内において、照会のありました事項に対し民間企業に対して回答をいたしているという事実はございます。
  139. 神崎武法

    ○神崎委員 私がお尋ねしたことにお答えになっていないわけでありますけれども、そういう参加の方式として、契約の方式として四案がある、しかもその中に、政府が関与しないで、政府間協定を結ばずに直接日本の企業が米国政府と契約する、そういう方式があるのかないのか、こういう点を明確にしていただきたい。
  140. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 仮に参加するとすればその態様は一体どういうふうになるであろうかということにつきましては、そもそも参加を前提としてのアメリカ側との話し合いが行われておりませんわけでございまして、したがいましてどういう方式があるかということにつきましては全く白紙でございます。
  141. 神崎武法

    ○神崎委員 大変納得いかないところでございますけれども、そういうふうにおっしゃるのであればそれを前提として議論を進めます。  アメリカの国防総省が昨年の四月十八日に提出いたしました「戦略防衛構想の研究開発の個別テーマと方向に関する報告書」というものがあります。これを見てまいりますと、このSDI構想の具体的な中身というものが明確になっているわけでございます。議会に提出したものでありますが、計画としては六つの計画で進んでおる。監視、捕捉、追跡、破壊評価、それから指向性エネルギー兵器技術、それから運動エネルギー兵器関連技術、システム・アンド・バトルマネジメント、それから残存性、致死力及び中枢技術、それから全般的管理支援、こういう六つの計画で進んでいるということが明確になっております。  監視、捕捉、追跡、破壊評価、この中身といたしましては、ICBM等の発射を探知する、そして味方の方に警報を発する、それからICBMを破壊したかどうか、そういうものの評価とか追跡とか、そういうことについてここでは研究をする、その計画については十一のプロジェクトと二十の任務でやっているのだということで、具体的に十一のプロジェクトの中身まで、このプロジェクトではこういうことをやっているのだということが明らかになっているわけです。  それから指向性エネルギー兵器技術、これはミサイルのブースト段階、ブーストとポストブースト、発射直後ですね、その段階を破壊するための兵器、具体的にはレーザー兵器とかビーム兵器でございますけれども、この兵器の技術開発、これについて四プロジェクトと二十八の任務ということが明らかになっております。  運動エネルギー兵器関連技術、これはミサイルが宇宙から再び大気圏内に入ってきた、それを迎撃して破壊する、この兵器、これについては十一プロジェクト、これも詳細に一つのプロジェクトごとに中身が明らかにされているわけであります。  それからシステム・アンド・バトルマネジメント、これはC3Iいわゆる指揮、管制、通信等のシステムでございますけれども、この計画で二つのプロジェクトということが明らかになっております。  そしてまた残存性、致死力及び中枢技術、これはミサイルを破壊する兵器が効率のよいそういう破壊活動ができるかどうか、長期にわたって生き残って、そして使用にたえ得るかどうか、そういう点とか、宇宙空間におきます発電とか補給とか、そういう点を含めまして研究をする、これが四つのプロジェクトと十六の任務ということで明らかになっています。  さらに全般的管理支援、これは民間の研究者等の給料の問題とかあるいは旅費の問題、そういう契約の問題等も含めてここで一つのプロジェクトを組んで研究を進めているということで、このSDI研究計画というものは六分野の計画で、具体的には三十三のプロジェクトで現在進んでいるんだ、こういうことが明らかにされているわけでありますけれども、もう昨年の四月の段階でこういうことが明らかにされているわけであります。  そうしますと、もうSDI計画というものの中身というものは相当に詳しく我が国政府としても知り得る、そういう立場にあると私は思うわけでありますけれども、このどの計画、さらに具体的にどのプロジェクトに我が国としては研究参加ができるのかどうか、そういう検討というものが当然できていておかしくはないと思うのですが、その点いかがでしょうか。
  142. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 先生御指摘の昨年の四月十八日の国防総省の報告でございますが、非常に詳細なものが出ておりまして、これを日本政府関係者がもちろん資料一つとして検討いたしまして、その後九月末から十月初めにかけて第一次の調査団が参りまして、さらに一月には第二次が参ったわけでございます。さらにこの各分野等について詳しい説明などを徴しておるわけでございます。その間の、また昨年の九月末、十月初めの調査団、第一次調査団と第二次調査団の間でも相当な進展が見られているということでございますし、SDI全体といたしまして、さらに、一つの構想としてはあるわけでございますけれども、現実の研究はいろんな分野で進んでおるということでございます。その中で、日本とのかかわり合いで一体日本が、どういう面が日本として要求されるかとかあるいは基本的に、潜在的に日本が貢献し得るかとか、そういう点につきましてはいまだ必ずしも明確になっていないところが多いわけでございます。
  143. 神崎武法

    ○神崎委員 そうしますと、確認をいたしますけれども、今SDI研究に参加するかどうか、こういう我が国対応が求められているわけでありますけれども、そのことは、ただいま私が挙げました国防総省報告書によりますところの六つの研究計画、さらに三十三のプロジェクトがあるわけでありますが、これに我が国として我が国政府職員あるいは民間の企業の関係者が入って研究することを意味するのかどうか、あるいはこの国防総省報告書に言うところの計画、プロジェクト、これとは別のところで我が国関係者が参加する形態というものがあるのか、その点を明らかにしていただきたい。
  144. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 このSDIに対する参加ということはいろいろな形があるということは、先ほども申し述べましたとおり各国ともそれぞれいろんな形で参加を表明しておるわけでございますが、アメリカ政府も累次申し述べておりますのは、各国それぞれの事情があるので、したがってその参加については、フレキシブルにその形態については考えたいということでございます。  さらに、先ほど申し述べましたことを繰り返すことで恐縮でございますけれども、日本がどういう形で参加するかというような、参加を前提としての話し合いは米国とまだいたしておりませんので、したがいましてそれが一体どういった形になるのかということについてお話し申すことは困難かと存じます。
  145. 神崎武法

    ○神崎委員 もう一度確認いたしますけれども、フレキシブルな対応ということをアメリカとしても考えておるということは、この私が指摘した国防総省の計画、プロジェクト、これ以外の参加形態もあり得る、こういうふうに受け取ってよろしいでしょうか。
  146. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 どのような参加形態があるかということにつきましては、現段階では何とも申し上げられないということを申し上げているわけでございます。
  147. 神崎武法

    ○神崎委員 もう一点確認をしておきたいわけでありますけれども、先ほどの国防総省報告書の中に、指向性エネルギー兵器技術について四つのプロジェクトと二十八の任務があるということを指摘したわけでございますが、そのプロジェクトの中にプロジェクト四として、核駆動の指向性エネルギー構想、いわゆる核爆発によってビーム兵器、レーザー兵器をつくり出す、そういう構想が挙がっているわけでございます。そして、この核駆動型指向性エネルギー方式において、これはエネルギー省の計画を補うもので、独立した形での捕捉、追跡、指向技術開発、構想及び開発策定、そして革新的手法の追求を行う、こういうことが挙げられているわけでございます。  確かにこの計画、報告書全体を見ますと防御に非核兵器を用いることに主眼があるんだということを再三強調をしておりますけれども、この核、まあ私の理解によりますと核兵器、これをエネルギー源に用いる。その計画が現にこの指向性エネルギー兵器技術の計画の中で進んでいる。そういう点を受けて我が国としてはこういうプロジェクトへの参加も可能なのかどうか、この点はいかがでしょうか。
  148. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 御指摘の計画はエックス線レーザーかと存じますけれども、エックス線レーザーは小規模の核爆発をもとといたしまして、それにより発生するレーザー、これを使うということでございます。これは累次国会でも御表明しておるわけでございますが、米国からの累次の説明によりまして、まず第一にこのSDI全体は非核であるということでございます。それから第二に、このエックス線レーザーと申しますのは一つの極めて小さな分野で、限られた分野であるということでございまして、第三に、これを研究している主な理由は、ソ連がこのエックス線レーザー兵器を研究しておるということで、その対抗上であるということを申しております。  さらに申し述べますれば、これが核兵器であるかどうかということは過去において当委員会におきましても議論があったところかと存じます。核兵器の定義に照らしまして、一体これが核兵器であるかどうかということにつきましては、この兵器自体が現存しない兵器でございます。構想があるだけでございますので、これについては何とも申しかねるということかと存じます。  そのような状況におきまして、そういうものが一部に存在するということ、これによりましてSDI計画全体に対する協力が不可能であるということにはならないというふうに、これも既に政府側から御答弁申し上げているとおりでございます。
  149. 神崎武法

    ○神崎委員 そういたしますと、その当該核駆動のエネルギー兵器関連のプロジェクトあるいはそれを含んだ指向性エネルギー兵器技術に関する計画、これについての参加もあり得るということですか。その点はどうですか。
  150. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 ただいま申し述べましたことと、特定のエックス線レーザー兵器に対する参加ということとは全く別の問題であるというふうに考えます。
  151. 神崎武法

    ○神崎委員 よくわからない、わかりにくい御答弁でございましたけれども、同じくこれ問題になりますSDI研究参加と機密保護の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  昨年十二月十日の米国のパール国防次官補の証言によりますと、このSDIへの研究参加を希望する外国企業は、政府間の機密保護に関する取り決めを遵守する必要がある、こういう内容になっているということであります。さらに、我が国の在米の外交筋が述べた話ということで伝わってきているわけでありますけれども、SDIの共同研究内容が他の国に漏れるのを防ぐために、SDI研究我が国が参加する場合には軍事機密保護の新立法の必要が生ずる、こういうことが言われているわけであります。そこで、この問題について議論をいたす前に、我が国の機密保護法制、現行の法制についてお尋ねをいたしたいと思います。  御承知のとおり、我が国の現行の機密保護法制といたしましては、機密探知、いわゆるスパイ行為を直接規制する法律はありません。また、産業スパイ罪を規定している法律もありません。あるのは、国家公務員法あるいは地方公務員法、自衛隊法等、いずれも自然犯としてではなくて、公務員が秘密を漏らす行為を服務規律違反として処罰をしている規定があるわけでございます。さらに、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法というのがございます。これは、アメリカから我が国に主要な装備あるいは主要な情報、防衛秘密と言われるものについて提供されたその防衛秘密を漏らす、あるいは探知する、あるいは防衛産業として守秘義務を持ってそういう秘密を扱っている者に対してこれを漏らす行為等を処罰する、こういう規定になっているわけでございます。  そこで、秘密保護法につきましてお尋ねをしたいわけでありますけれども、この秘密保護法というのは、米国から我が国に提供された、供与された情報あるいは装備のうちの主なもので防衛秘密として規定されたもの、これについての問題であるわけでございます。そういたしますと、国内ではなくて国外でこの防衛秘密を漏らす行為があった場合に、秘密保護法で処罰ができるのかどうか。法制局長官、いかがでしょうか。
  152. 茂串俊

    ○茂串政府委員 お答え申し上げます。  御承知のとおり、刑法総則の規定は、他の法令に特別な規定があれば別でございますが、刑法以外の法令に定める犯罪についても適用されるわけでございますが、御指摘の秘密保護法におきましては国外犯処罰の規定を設けておりませんし、また刑法そのものは、限定列挙された犯罪についてだけ国外犯を処罰する旨を定めておるわけでございまして、結論といたしましては、ただいま御指摘のような事案につきましては、国外で行われた行為に対しては秘密保護法の処罰規定の適用はないというふうに解しております。
  153. 神崎武法

    ○神崎委員 そういたしますと、我が国の民間企業の者が米国に行きまして、米国の軍事技術につきまして共同研究をした、その結果を漏らしたという場合に、この秘密保護法では処罰できない、こういうことになりますか。
  154. 茂串俊

    ○茂串政府委員 ただいま申し上げましたように、国外においてそのような行為があった場合には、御指摘の秘密保護法の規定の適用はないということでございます。そのように御承知を願います。
  155. 神崎武法

    ○神崎委員 そうしますと、私が提起したそういうケースについては処罰されない、こういうことでよろしいですね。
  156. 茂串俊

    ○茂串政府委員 国外でそのような秘密を漏らしたという事案であれば、それは適用がないということでございます。
  157. 神崎武法

    ○神崎委員 今は国外であるという前提でお話をしたわけでありますけれども、仮に我が国の民間会社の従業員がアメリカに行って、軍事技術について共同研究をした、そして日本国内に戻ってきてこれを漏えいした、漏らしたという場合に、同じく私は処罰ができないのではないか、こういうふうに思うわけでありますけれども、その点いかがでしょうか。
  158. 茂串俊

    ○茂串政府委員 その点につきましては、海外で合御指摘のように一定の業務に携わりまして、そうしてその業務によって知得した、そしてそれを日本に持ち帰った後で他人に漏らしたというような場合に、罰則の適用があるかどうかということは非常に微妙な問題でございまして、この点につきましては、この犯罪の成否を担当する法務省当局の方に御質問をお願いしたいと思います。というのは、これは非常に執行の問題にも絡む問題でございますから、単なる法規範の解釈の問題だけではございませんので、法務省当局の方から御答弁をするようにいたしたいと思います。
  159. 神崎武法

    ○神崎委員 これは解釈の問題ですよ。秘密保護法の解釈の問題ですよ。  要するに、秘密保護法が想定しているのは、米国から我が国国内で装備や情報が提供された、そしてそのうち主要なものについて防衛秘密として扱う、それを漏らした場合に処罰するということでありますから、私が議論前提として申し上げているのは、米国から我が国で提供された技術、情報、そのことを言っているわけではありません。要するに、日本から米国に行って、米国の共同研究の結果米国で知り得た、その情報を日本で漏らしたという場合に、秘密保護法の適用があるかないか、こういう点でありますから、これは秘密保護法の解釈の問題です。法制局長官、答えてください。
  160. 茂串俊

    ○茂串政府委員 まず、前提になる実態があるわけでございまして、いわゆるMSA協定等に伴う秘密保護法なるものは防衛秘密の定義をしておりまして、この防衛秘密の定義は先ほど申し上げましたように、MSA協定に基づいてアメリカ合衆国政府から供与された装備品等についての一定の事項、あるいはそういった装備品等に関する情報等でございます。したがいまして、今お話のございました、日本人が向こうへ行って得られた情報というものが、このMSA協定に基づくものであるかどうかという点がまず問題でございまして、その点が前提がはっきりしない限りは、この規定が働くかどうかという点についての結論は出ないわけでございます。
  161. 神崎武法

    ○神崎委員 そういたしますと、MSA協定に基づかないで我が国の民間の者が米国に行き、軍事技術について共同研究をした、そして得た情報を我が国内に帰国して漏らしたという場合は適用されない、このように理解してよろしいでしょうか。
  162. 茂串俊

    ○茂串政府委員 MSA協定に基づかない形で日本人が一定の秘密を知得した、それを漏らしたという場合であれば、この法律の規定に基づく罰則は適用にならないというふうに解せられます。
  163. 神崎武法

    ○神崎委員 付随して、公務員法についてもお尋ねしたいのですけれども、公務員法は秘密漏えいを服務規律違反として処罰しているわけでありますけれども、同じくこれは国外犯処罰規定を設けていなかったと思うわけです。これは外務公務員と併任辞令が出て、外務公務員という身分を有するのであれば外務公務員法上の処罰が可能かと思いますけれども、そうでない場合に、公務員がアメリカに行った、そして軍事技術の共同研究をした、そしてアメリカで知り得た秘密をアメリカで漏らしたという場合に、これは処罰ができるのでしょうかどうか、その点いかがでしょう。
  164. 茂串俊

    ○茂串政府委員 御指摘のとおり、国家公務員法にかかわる守秘義務違反の罰則につきましては、国外犯処罰の規定がございません。したがいまして、ただいまお示しのような、公務員が向こうに参りまして、外国で秘密を知得し、それを外国で漏らしたということであれば、これは国家公務員法の罰則の適用はないものと解しております。
  165. 神崎武法

    ○神崎委員 そうしますと、今までの私と法制局長官との議論の結果わかりましたてとは、SDIということの前の段階で議論したわけでありますけれども、結局SDIも同じだろうと思うのですけれども、こういう軍事技術の共同研究をするといった場合に、その機密保護の規定が我が国にはない。したがって、SDI研究参加ということは必然的に機密保護の法制が必要になってくる、こういうふうに私は理解するわけでありますけれども、その点はいかがでしょうか。
  166. 茂串俊

    ○茂串政府委員 その点につきましては、先ほどから政府側から答弁いたしておりますように、SDIに参加するかどうかということがまだ全く未定でございまして、現在検討中というふうに私も伺っております。したがいまして、その検討の間に間にそういった問題につきましても検討を進めるべき問題である、かように考えております。
  167. 神崎武法

    ○神崎委員 結論が出ていないのはわかっておりますけれども、SDIに研究参加をするということは、必然的にこの機密保護法制の立法の必要が生じてくる、こういうふうになるんじゃないでしょうか。
  168. 茂串俊

    ○茂串政府委員 その点につきましては、ただいま申し上げましたように、どのような態様で、どのような枠組みのもとで参加するかという点がまだ未確定でございますので、全体の問題の一環としてこれから検討すべき問題である、かように考えております。
  169. 神崎武法

    ○神崎委員 自民党の方では、いわゆるスパイ防止法を提出することを予定しているということが言われております。私は、お尋ねしたいわけでありますけれども、この自民党の方で予定されておりますスパイ防止法によって、SDIのような武器技術の共同研究に伴ういろいろな秘密漏えいとか機密探知とか、そういう問題につきましてもこれを保護することができる、そういうものになっているのかどうか、その点をお尋ねいたします。
  170. 茂串俊

    ○茂串政府委員 自民党の方でどのようなスパイ防止法案なるものを検討されているかということは、私、内閣の一員でございまして、全く承知しておりませんので、ただいまの御質問につきましては御答弁をしかねます。
  171. 神崎武法

    ○神崎委員 それでは、自民党総裁であります総理、お願いします。
  172. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 スパイ防止法は、今党で一生懸命よりよきものに検討しております。SDIはSDIで、また別個のものであると考えております。
  173. 神崎武法

    ○神崎委員 私がお尋ねしたのは、今まで法制局長官とやりとりしまして、SDIじゃなくてもいいです、米国と武器技術の共同研究をする、我が国政府職員あるいは民間の技術者が入って、米国に行って共同研究をするといった場合に、その者が持ち帰った情報を漏らしても、現在の法制の中ではこれを処罰する規定がないじゃないか、ということは、SDI研究に参加するということは必然的に機密保護の立法の必要性が生ずるじゃないか、こういう議論をしてきたわけです。そうすると、自民党の方で今お考えになっているいわゆるスパイ防止法というものは、そういうような場合、これはSDIでなくても何でもいいわけですよ、そういう日米間の軍事技術の共同研究があった、そういう場合でも対応できるんだ、そういう法制になっているのかどうかということをお尋ねしているわけでございます。
  174. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ですから、スパイ防止法の内容を今党の方ではどういうふうにしようかと思って一生懸命努力している最中で、内容がまだ固まっているわけではありませんので、まだお答えを差し控えた方がいいと思っております。
  175. 神崎武法

    ○神崎委員 総理は、このSDI研究参加のメリットとして、先端技術の進展ということを指摘されているわけでございます。ところが、この点につきましては反対の考え方というものもあるわけでありまして、我が国のすぐれた民間技術が米国に行って、SDI関連技術ということで軍事機密の網をかぶせられてしまうということで、この共同研究の成果というものも果たしてこれを製品に転化できるのかどうか。転化できない、そういう可能性があるんじゃないかという指摘があります。また、我が国の民間技術がアメリカに行って、アメリカの民間の方で製品化されるんじゃないか、そういう危険性があるんじゃないかという指摘も現にあるわけでございます。  その点についてちょっとお伺いしたいわけでありますが、初めに先端技術を所管されています通産大臣、いかがでしょう。先端技術についても、機密保護との関係でどういうものがあるべき姿なのか、その点についてお考えを伺いたいと思います。
  176. 杉山弘

    ○杉山(弘)政府委員 ただいま御指摘のような問題点の指摘もあるやに承知をいたしておりますが、そういう点の解明は、今後我が国としてSDIにどう対応するかということを検討する際に、あわせて検討されるべき問題かと存じます。
  177. 神崎武法

    ○神崎委員 SDIだけじゃなくて、これは日米の武器技術供与の取り決めができて、日米間の武器技術に関する共同研究というものが可能になった、その場合に必然的にこういう問題が生ずるだろうと私は思うわけであります。特に民間企業が参加するという場合に、果たして我が国の先端技術の開発という点から見まして、そういう軍事技術の枠がはまった形、そういうことによって得た方がさらに技術が伸びるというふうに考えるのか。あるいは今のまま、民間技術のまま伸ばした方がはるかにこの技術とい力ものが伸びるのじゃないか、こういういろいろな意見があるわけですが、そこについての基本的な通産省のお考えを伺いたいということです。
  178. 杉山弘

    ○杉山(弘)政府委員 ただいまの御質問、一般論としてお尋ねでございましたが、現在の米国に対します武器技術供与の問題につきましては一応枠組みができているわけでございます。その中におきまして、武器技術を日本企業が提供しようといたします場合には、日本企業と提供を受けるアメリカ側との間の契約が先行することになります。その過程におきまして、日本企業が、先生御指摘のような観点から出すのは得策でないと考えました場合には、提供自身が行われないということになるわけでございますし、そういう点も考慮した上でも提供することが望ましいという判断になりましたら、そこで初めて提供が行われるということでございます。  また、汎用技術につきましては、今は一般的には自由にできるわけでございますから、その過程におきましても、企業としては同様の判断をして、提供に応ずるかどうかということを検討することになるのではないかと考えます。
  179. 神崎武法

    ○神崎委員 そうしますと、通産省として、いわゆる先端技術、民間技術と武器技術との関係をどういうふうに考えていくのかという基本的なお考えというのはないのでしょうか。それは民間技術の方に任せてしまう、民間の判断でどっちがプラスになるか、それは判断するであろう、こういうお考えでしょうか。
  180. 杉山弘

    ○杉山(弘)政府委員 武器技術供与の過程におきましても問題になったかと承知をいたしております。その際、民間企業が保有します技術の提供の問題につきましては、あくまで民間の判断が先行するということでございまして、政府といたしましては、それを督促するとかどうとかということはいたしませんということを、たしかこの委員会でも御答弁をした記憶がございます。
  181. 神崎武法

    ○神崎委員 参考までに科学技術庁長官に、この問題に基本的にどういうふうに――個人的な御意見で結構ですから、お答えいただきたいと思います。
  182. 河野洋平

    ○河野国務大臣 一般論としてお聞き取りをいただきたいと思いますが、もちろん武器技術の開発というのは、相当圧倒的な財政的なバックアップがあってなされるというふうに、一般的には考えられると思います。そういう国の考え方はそういう国の考え方としてあるのであって、我が国考え方は必ずしもそういうやり方をとっていない。汎用品について、私どもの立場からいえば、もっと社会的な立場に立った技術開発ということをやっていくべきではないかというふうに考えております。アメリカにはアメリカの考え方がありましょうし、我が国には我が国考え方があっていいというふうに考えております。
  183. 神崎武法

    ○神崎委員 同じく、今度は別の角度からちょっと議論をしたいと思いますが、軍事技術の共同研究開発につきましては、我が国の武器輸出三原則からいたしまして、日米間につきましては日米間の武器技術の共同研究開発の道が開かれたわけでありますけれども、日米以外の第三国が入った共同研究開発はできないということでありますが、この点は外務省、よろしいでしょうか。
  184. 小和田恒

    ○小和田政府委員 お尋ねは武器技術供与一般との関連での御質問だと思いますが、従来から説明しておりますように、武器技術供与は、武器輸出三原則に対する例外としてアメリカとの間で取り決めを結んで、そういうことが可能になるようにしたという経緯がございます。したがいまして、そういう取り決めのない他の第三国との間におきましては、武器輸出三原則、その中には技術の輸出も含みますが、武器輸出三原則に従って処理をする、こういうことになるわけでございます。  したがって、御質問が武器技術の供与ということが第三国に対して行われ得るかということとの関連におきましての共同研究開発の御質問であるとすれば、それは武器技術供与が第三国に行い得ないという意味において、その限りにおいてそれは不可能である、こういうことになろうと思います。
  185. 神崎武法

    ○神崎委員 大変詳細な御答弁をいただいたわけですけれども、要するに日米以外の第三国が入っての共同研究開発はできない、こういう結論でよろしいですね。
  186. 小和田恒

    ○小和田政府委員 事が大変技術的な問題でございますので詳細に申し上げたわけでございますが、先ほどの私の答弁が正確な答弁であるというふうに御理解いただきたいと思います。
  187. 神崎武法

    ○神崎委員 大変わからないのですけれども、これまでの議論を整理してみますと、日米以外の第三国を加えた武器技術の共同研究開発はできない。ただし、外務省の方の答弁というのは、きょうの答弁ではありませんけれども、大きな計画の中の一部について日米間で武器技術の共同研究開発をやった場合に、それが日米間に限るのであれば、他の分野で米国とNATOとの間で共同研究開発がなされようとも、それは可能である、こういうニュアンスで受け取っているわけでありますが、難しい話よりも、私が今申し上げたこの二つの点はこういう理解でよろしいのかどうか、その点を……。     〔林(義)委員長代理退席、委員長着席〕
  188. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 結局、第三国が入った場合は、日本とアメリカとの場合とは異なってまいります。要するに、武器技術が第三国に供与される場合は、これは武器輸出三原則というのがありますから、それが適用されるということであって、日本とアメリカだけの場合とは異なる、こうお考えくだされば結構です。
  189. 神崎武法

    ○神崎委員 そうしますと、どうも意味がよくわからないのですけれども、今私が申し上げた、ともかく日米と三国を加えた共同研究開発はできない。いいですか、それが第一点。  それから第二点は、ただし、大きなシステムの中の一部について日米間で共同研究開発をする限りにおいては、それがあくまでも日米間の共同研究開発にとどまる限りは、その大きなシステムの中の他の部分でアメリカとNATOとの間の共同研究開発があっても、それは可能なんだ、これが従来の政府の答弁でしょうかという、その二点の確認でございます。
  190. 小和田恒

    ○小和田政府委員 ただいま通産大臣が御答弁になりました内容と、私が先ほど申し上げました内容とは、基本的に同じことを申し上げているつもりでございますが、それは昨年の国会におきまして、神崎委員からの御質問に対して私が御答弁を申し上げたこととの関連で申し上げているわけでございます。  つまり、あのときにも申し上げましたように、事はあくまでも武器輸出三原則との関連における武器技術の輸出という観点からとらえる。そういう武器技術の輸出という観点からとらえましたときに、特定の武器技術が米国に行く場合と、米国以外の第三国に行く場合とでは、おのずから我が国の立場が異なってくる。つまり、米国の場合におきましては、武器技術の供与に関する取り決めがございますので、その取り決めに従って処理をすることになる。それ以外の第三国につきましては、そういう取り決めがございませんので、武器輸出三原則に立ち戻って、その原則に従って行うこととなる結果、武器技術の輸出を伴うような形での協力ということは原則としてあり得ない、こういうことを申し上げたわけでございます。
  191. 神崎武法

    ○神崎委員 どうもそこがわかりにくい。ですから、私が整理をして、こういうことでどうなんでしょうかと聞いているわけですから、その点について、違うなら違う、そうならそうということを言ってください、それでいいわけですから。
  192. 小和田恒

    ○小和田政府委員 神崎委員の御質問は、共同研究開発についてどうか、こういう御質問でございますので、私が申し上げておりますのは、共同研究開発一般という形ではなくて、武器技術供与という見地から整理してお考えいただきたい、こういうことを申し上げているわけでございます。
  193. 神崎武法

    ○神崎委員 そちらの方で整理されるのはいいのですけれども、私が聞いているところに、私の方に近寄って答えてもらわないと、それは答えにならないわけですよ。  それでは、私は二つ聞きましたけれども、順序立てて聞きます。  まず、武器輸出三原則があります。それから、日米間には対米武器技術の供与の道が開かれました。これは日米間の軍事技術の共同研究開発が可能になったということがこれで言われております。そうしますと、日米以外の第三国が入った形の武器技術の共同研究開発はできない、こういうふうに伺ってよろしいですか。その点が第一点。
  194. 小和田恒

    ○小和田政府委員 前提としてはっきり申し上げておいた方がいいかと思いますが、先ほど来御答弁しておりますように、我が国が米国のSDI研究に参加するかどうかということについてはまだ決定しておりませんので、神崎委員の御質問に対する私の答弁は、あくまでも抽象的、一般的な問題として、現在の立場を法律的に説明すればどうなるかということでお答えしているわけでございます。そういう前提考えましたときに、共同研究開発というものは御承知のとおりいろいろな形態があるわけでございまして、種々多様な態様がある中で、一般的に共同研究開発についての参加ということがどうであるかということを申し上げるのは、実は非常に困難なわけでございます。具体的な事例に応じて判断する必要がある、こういうことがお答えの第一点だと思います。  第二点として、全く一般論として申し上げれば、そういう中で武器技術供与を伴うような共同研究開発、こういうことになってまいりますと、先ほど来私が申し上げておりますように、米国との関係においては武器技術供与の取り決めに従った処理が行われることになるであろうし、それ以外の第三国との間ではそういう取り決めが存在していない、こういうことを申し上げているわけでございます。
  195. 神崎武法

    ○神崎委員 そうしますと、私は非常に簡単なことを聞いているわけですけれども、大変難しい答弁になって返ってきているわけでございますが、武器技術供与を伴うか伴わないか、それで二つに分けてこの共同研究開発というものは議論しなければいかぬということですか。まず武器技術供与を伴わない共同研究開発、これは日、米、第三国、この場合はどうですか。では、伴った場合はどうですか。二つに分けて――ともかく私が聞いているのは、日米以外の第三国を含んだ武器技術の共同研究開発は、この武器輸出三原則の趣旨に従ってできない、こういうふうに理解していいかどうか、この一点だけなんです。
  196. 小和田恒

    ○小和田政府委員 私が今神崎委員の御発言を正しく理解したとしますれば、今おっしゃったような御理解でいいのではないかと思いますが、要するに共同研究開発に関する規制というのは我が国にはないわけでございます。我が国に存在しておりますのは武器輸出三原則という見地からの規制でございますので、そういう規制がかかるような共同研究開発と、それからそういう規制がかからないような共同研究開発というものが、一般論、抽象論として言えばそれはあるだろう。その場合に、そういう規制が働くかどうかは、それが武器技術の輸出を伴うようなものであるかどうかという見地から判断すべきであるということを申し上げているわけでございます。
  197. 神崎武法

    ○神崎委員 どうもわかりにくいのですけれども、要するに我が国から政府職員あるいは民間の企業の者が参加するということは、我が国の方も技術を持って参加するわけですね。全く技術のない人が参加する形態を言っているわけじゃない、技術を持って参加する、そういう場合は、技術のある者が一緒に技術を集めて開発するという場合は、これは武器技術供与を伴う共同研究開発ということになるんでしょう。
  198. 小和田恒

    ○小和田政府委員 先ほど来申し上げておりますように、一般論として共同研究開発ということについて申し上げるのは極めて困難でございまして、具体的な事例で判断しなければいけないと思いますが、個人が、その個人たる資格において外国に出かけて共同研究開発に従事するというような問題は、一般的、抽象的に申し上げますと武器輸出三原則と直接かかわりのない問題であろうというふうな立場であるといってとは、先年来、昨年の国会でも申し上げたことだと思います。
  199. 神崎武法

    ○神崎委員 そうしますと、武器技術輸出を伴う共同研究開発というのは、メルクマールとしてどういうものが挙げられるわけですか。
  200. 小和田恒

    ○小和田政府委員 これは実体論の分野にわたるところでございますので、私から御答弁するのは必ずしも適切ではないかと思いますが、例えば現在の武器技術供与取り決めのもとにおきまして、日本の企業とアメリカの企業との間に、あるいはアメリカの関係省庁との間で武器技術に関する供与の取り決めが行われる、そういう武器技術供与に関連して、日本からその供与に従事している要員が米国に行って、そこでこの共同開発あるいは武器の技術の研究開発に従事するというようなケースが一つ考えられるであろうかと思います。
  201. 神崎武法

    ○神崎委員 非常にわかりにくいわけですけれども、そうすると、もうSDIというものが具体的にあるわけですから、では一般論ですよ、別に我が国はまだ参加を決定しているわけではないわけですけれども、こういうものに我が国政府職員あるいは民間の者が参加をするということ、これは武器技術供与を伴う共同研究開発に参加することになるのか、武器技術供与を伴わない共同研究開発になるのか、その点を明らかにしていただきたい。
  202. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 この議論は幾らやっていても私は同じだと思うんですね。問題は、あなたの方はSDIに参加するという前提で物を言っておりますし……(神崎委員「そうじゃない、一般論で聞いている」と呼ぶ)ですから、SDIに参加するかしないかはまだ決めていないわけですから、武器技術の輸出をどうするかという問題は、この一つ一つのケースによってこれは武器技術であるかどうかというものを決めていくわけですから、一般論しか今のところは申し上げられない。ですから、向こうは一般論を言っている、そこの食い違いだと私は思うのですが……。
  203. 神崎武法

    ○神崎委員 ですから一般論として、武器技術供与を伴わない共同研究開発については規制がないのだ、こういうことをおっしゃっているわけですね。そして武器技術供与を伴う共同研究については、この武器禁輸三原則からいって日米以外の第三国が入った共同研究開発はできない、整理していくとこういうことになるわけですね。その点はよろしいでしょうか。
  204. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは先ほども申し上げたわけですが、一般論からいいますと、第三国が参加した軍事技術の共同研究開発におきましては、武器技術が第三国に供与されるという場合には、それは武器輸出三原則に基づいて対応することになりますということなのです。
  205. 神崎武法

    ○神崎委員 その前の共同研究開発のところを外しておりますが……。  それでは、要するにもうSDIという具体的なものがあるわけですから、これは先ほどから申し上げておりますように、我が国がこれに研究参加をするという前提でどうなのかというよりも、現にSDIというものがあるわけですから、それを踏まえて――要するにメルクマールがわからないわけです丈。武器技術供与を伴うものか、伴わない研究開発なのか、ここが先ほどの御説明でわからないものですから、それならば具体的にあるSDIというようなものに参加するようなものは、それは武器技術供与を伴わない共同研究開発になるのか、あるいは武器技術供与を伴う共同研究開発になるのか、これは参加問題とは別にその点だけをお答えいただきたい。
  206. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 ただいま通産大臣がお答えしたとおりでございますけれども、SDIという具体的なものがあるという御指摘でございますけれども、SDIというものが、仮に日本が参加するといたしました場合に、一体どのような技術がどのような形で要請され、さらにこたえていくのか、そこに共同研究というものがあるのか、ないのか、共同研究があるとすれば、それは武器技術輸出を伴うものであるのか、ないのか、これはもう全くケース・バイ・ケース、千差万別の事態を考えるわけでございまして、したがいまして、これを一般化して、単純化していろいろなケースでお答えするのは困難かと存じます。
  207. 神崎武法

    ○神崎委員 この問題については、私も大変納得がいかないわけでありますけれども、SDI問題がもう少し具体化した段階で、また議論をさせていただきたいと思います。  続きまして、日米貿易摩擦の問題につきまして、私の方で何点か提案をいたしたいと思います。  この貿易摩擦に象徴されます欧米諸国、アジアその他の諸国との間の貿易不均衡の問題、これは大変大きな問題となっているわけでございます。総理が言われておりますように、我が国が世界の中の日本として孤立せずに生きていくためには、理屈以前の問題といたしまして、国内市場の開放のために、政府も国民も本腰を入れて取り組まねばならないと思うわけでございます。  戦後、我が国はゼロからスタートしたため、ともしますと輸入は、第一義的には輸出するための原料としての輸入、第二義的には日本に量的に不足しているものの輸入、第三義的には日本国内で調達できないものの輸入を考えてきたわけでございます。しかし、今や我が国は先進国の一員として、戦後のゼロからのスタートという観念を捨てて、各国との経済面の共存共栄という観点から、バランス感覚を持ってクールに情勢を判断して対処していかなければならないと思うわけでございます。その意味におきましても、私は何点か御提案を申し上げたいわけでありますけれども、輸入を促進するための抜本的な措置、これは欧米諸国が、日本は輸入促進のために本当に頑張っているな、こういうことが明確にシンボル的にわかるようなそういう措置を講じなければならないと思うわけでございます。  我が国の対外輸出の手助け機関としてはジェトロがあります。これは現在、通産省の方でも、ジェトロの性格をむしろ輸入の方に変えつつあるというお話も伺っておりますけれども、私どもも、また諸外国も、やはりジェトロといえばこれは輸出促進のための機関だ、こういう認識が強いわけでございます。  輸入のための手助け機関といたしましては、市場開放問題苦情処理推進本部、OTOのような苦情処理機関とか、いろいろ小さな機関はありましても、実際に輸入をするためのオフィシャルな大きな機関というものは存在しないわけでございます。  そこで、ユーザーが直接輸入できるような輸入代行業務や、輸入業務をやったことのない人々のために調査業務、為替取り扱い等の金融業務を行い、かつ各国のミッションを招いてエキシビションの開催等を行う機関として、例えば輸入振興公団というようなものを設立してはいかがかと思うわけでございます。ジェトロ等はありますけれども、これはもうシンボル的な、日本が本格的に輸入促進のために今やっているのだ、こういう姿勢を世界に示す意味においてそういうものをつくってはどうか、こういう提案を申し上げたいのでありますが、いかがでしょうか。
  208. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 結論から申し上げますと、その公団をつくるという考えは今のところ持っておりません。おりませんが、今まで先生が御指摘になったように、ジェトロは輸出を促進するためにつくられたという歴史がございます。しかしながら、今や全く性格が変わりまして、例えば昭和六十年度の予算を見ましても、ジェトロの中での全事業に占める輸出関連の経費というのは三%しかないのです。そして、輸入関連の経費は二六%というようなことになっておりますから、今後ともこのジェトロの輸入の部門を非常に強化をいたしまして対応させるのがいいのじゃないか。したがって、今でも大規模のインポートバザールを開催したり輸入ミッションを出したりいろいろやっておりますが、さらにきめ細かく御趣旨に沿うように、ジェトロをそういう意味で強化していきたいというふうに考えております。
  209. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 国際経済の特命相として。  この問題は、もう既に輸入の専門機関、そういうふうに位置づけられておると思っていただいてちっとも差し支えございません。そしてまた、OTOの窓口機関でもあるわけです、これは各国にございますから。そして買い付けミッションを派遣したり、また先方から輸入促進のためのミッションを招待する、その案内をする、苦情処理にも応ずるなどなど、それからまたインポートフェアなどを全国で昨年も千カ所程度、自発的なものを加えて開いておる。これはもう申し上げましたように公団にしなくても十分輸入機構としての役割専門で果たしておる。しかもまだ、アクションプログラムそのほか、日本対応しておりまする輸入促進のための宣伝機関でもある。相当なパンフを諸外国に、特にアメリカに向かっては行き届いてまいておるわけでございます。
  210. 神崎武法

    ○神崎委員 私も御説明を伺いましでその点はよくわかるのですけれども、ただ諸外国が本当に、ジェトロにしても、その下部機構であるミブロですかにしても、実際は輸入促進のためにいろいろ御尽力はされている、しかし諸外国は果たしてそれを理解してくれているかどうか。やはりシンボル的なもの、ともかくこの機関は輸入だけをやっているのだ、そういう象徴的なものが必要じゃないかという点と、なるほどいろいろ現実にはやられておりますけれども、輸入代行業務とか輸入に伴う融資等、これはやっていなかったと思うのですね。(江崎国務大臣「やっている」と呼ぶ)やっているのですか、代行業務も今やっていますか。
  211. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 輸入代行業務もやっておりまして、それがOTOの役割、こういう意味ですから、国内の各省庁に連絡をしてその回答までする、それからまた、こういうものを売りたいというならばその売り先も懇切丁寧に案内をする、その点では十分機能しておるつもりで我々対応しております。
  212. 村岡茂生

    ○村岡政府委員 ジェトロは輸入面において大変活躍している、累次御説明のとおりでございますが、先生お尋ねの具体的な輸入実務をだれかに代行してやっているかということ、あるいは輸入金融業務をみずから実施しているかということになりますと、そこまでは手が出ておりません。中小企業者からの依頼を受けて情報を収集するとか、取引のあっせんをするとか、クレームの処理をするとか、そういう総括して申しますと仲介的な仕事、これはやっておりますが、真の意味の代行はやっていないということでございます。
  213. 神崎武法

    ○神崎委員 したがいまして、私申し上げたいのは、確かに輸入促進のためにいろいろジェトロは頑張っておられる、下部機構が頑張っておられる、これはもう十分承知しているのですけれども、ただいまお話がありましたように、輸入代行業務等は実際にはやっていないのですね。それから、ミッションにはかかわっているわけでありますけれどもオペレーションにはかかわっていない、こういうようなところがございまして、全面的に輸入促進のための機構としての位置づけができていないわけなんです。そういう意味において、やはり明確な位置づけのある機構というものをおつくりになってはいかがでしょうか、こういう提案でございます。
  214. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 日本は自由主義経済、自由主義貿易で民間中心でやっておりますから、政府の機関がそこまでやったのでは、民間の商社その他みんなあるわけですから、その業務の代行みたいなことまでやることは私は行き過ぎではないか、しかし、あなたの方の別な何か国際見本市をもっとつくれとかもっと大きなものにしろとか、そういうようなことはそれは考えております。
  215. 神崎武法

    ○神崎委員 ともかく諸外国に象徴的なものになるような、いわゆる本当にやっているのだ、そういうようなものに変えていかなければいけないだろうと私は思うわけでございます。その点は実質面におきましても十二分に御検討をいただきたいと思います。  同じく提案でございますけれども、私どもは外国企業に対しまして、日本のマーケットというのはフリーだ、こういうふうに主張してきているわけでありますけれども、国内の複雑な流通機構、それに組合、協会といった横の連なりは外国企業の単独進出を困難にさせているのが実情でございます。世界の七〇%はコンベンションビジネス、つまり見本市をやって顧客に直接訴える、こういうビジネスの形態をとっているわけでございます。今アメリカでは、コンベンションセンターのない都市は滅びる、こういうことが言われますように、コンベンション産業が大変隆盛でございます。ですから私は、日本国内での欧米人のビジネスのやり方につきましても、これは日本のビジネスの方法でやれ、こういうことを言うわけでありますけれども、ここはやはり日本の国を知ってもらうという観点から努力が必要なのじゃないかと思うわけでございます。世界の七〇%の形態のビジネスが我が国においても展開できるような、そういう器、コンベンションセンターというものをつくっていくことが、これから必要になってくるだろうと思うわけでございます。  全国の主要都市にコンベンションセンターをつくって常時どこかの国々の見本市が開催され世界各地の協会や組合のエキシビションが行われる、そしてその中心部に各国の商務省、代表部が集まるトレードセンターとか、先ほど私が申し上げました輸入促進公団、これがジェトロ、ミブロでもそれは結構でございますけれども、そういうものが集まっているような、欧米人からいたしまして我が国に来ても自分たちのビジネスのやり方ができるのだ、そういうところでこれから考えていかなければいけないだろうと思うわけですが、その点いかがでしょうか。
  216. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これはいい答弁ができると思います。  御承知のとおり、既存の国際展示場、東京、大阪、名古屋にありますが、こういうものはスペースが不十分であるとか開催日数が削減されるとか展示面積が少ないとかいう不満がいっぱい出ておる、これは事実でございます。そういうような点から国際経済の交流の基盤施設をつくっていこう、俗に国際ビジネス交流ゾーンというようなものをこしらえまして、見本市と国際会議場を一緒につくるとかそういうようなことをやっていこう、しかも民間活力を活用いたしましてそういうものをつくっていこうということで、これにつきましては現在、建設、運輸、郵政省を含む、通産省もちろんですが、共同でそのための法案を目下準備中でございますから、大体側趣旨に沿ったようなものをやってまいりたいと思っております。
  217. 神崎武法

    ○神崎委員 よろしくお願いをいたします。  それから、消防庁いらっしゃってますか。――お尋ねをしたいのですが、このコンベンションセンターがこれからできてくる、そういう場合に、オペレーションのいろいろな問題があるわけでございます。動力源についても日本のビジネスの形態でなくて世界の七〇%のビジネスの形態に合わせるような、そういうきめ細やかな配慮というものもこれから必要になってくるだろうと思うわけであります。フレキシブルな電圧装置、油圧、空圧、ガス等、これが展示機械その他のオペレーションに必要でありますけれども、現在の日本の国際見本市の会場は給湯も満足ではない状況でございます。そして、いろいろな各地での見本市を通じて不満が寄せられているのは、これは消防法に基づきまして各地方自治体が消防に関する条例あるいは基準、指導要領、内規等を作成しておりまして、その内容が一定でないことなのであります。したがいまして、その見本市を計画した場合、動力源等に関しての全国の自治体や消防署の対応がまちまちなので、そういうところからも大変苦情が出るという点があるわけでございます。  今後こういうコンベンションセンターもふえてくるでしょうし、国内での見本市というものもふえてくるだろうと思いますので、消防庁として全国的にこの指導というものを統一していただきたい、こういうお願いを申し上げたいわけでありますが、いかがでしょうか。
  218. 関根則之

    ○関根政府委員 お話のございましたコンベンションセンター等の、いわば見本市会場の中におきます火気使用施設あるいは設備、そういったものにつきましては、所在地の市町村の条例がございまして、火災予防条例と通常呼んでおりますが、その条例で規定をすることになっておるわけでございます。しかし御指摘のように、地域によりまして余りばらばらになるということはよろしくございませんので、私どもの方で条例準則を示しまして、できるだけ統一的な処理ができるような形に指導をしているところでございます。御指摘のありましたような問題が起こらないように、不必要な事務処理の煩瑣になるというような状態が出てこないように、十分指導してまいりたいと考えております。
  219. 神崎武法

    ○神崎委員 その点は御配慮をよろしくお願いしたいと思います。  それからもう一つ提案でございますけれども、日本人はこれまで欧米を大変よく勉強して経済進出を行ってきたわけでございます。しかしながら、異文化の諸外国にとりまして日本の国というものをよく知らないまま進出したり、進出しようとして、ここに来て余りの我が国の壁の厚さと習慣の違いに面食らっておりまして、ようやく最近欧米諸国は白国の大学に日本向けの講座や学科を設置し始めているわけでございます。特にアメリカでは中途半端な日本の知識に気づき始めまして、今教官と指導者の育成が大変急務になっているということが言われております。  そこで私は、特に日米関係というものが大変大事でございますから、日米間の相互理解を深めるという観点からもお願いをしたいわけでございますけれども、アメリカの大学の日本向け講座の教師と指導者の育成のためと日本という国の理解のために、日本の国内にアメリカンユニバーシティーというようなものをつくったらどうか、こういう私の友人の構想がありまして、御提案申し上げるわけでございます。  もう少し中身を申し上げますと、例えばアメリカの東北部、特にアイビーリーグを中心といたします幾つかの大学の日本における共同分校のような形の学校をつくる。そして、そこでの単位はアメリカの大学の単位として認める。教官は知日派のアメリカ側指導者と知米派の日本側から構成する。建設及び設立費用については対米輸出企業出資による財団または学校法人として、運営資金の一部は参加各社の支援のもとに賄う。また在米日本企業団によってスカラシップを設立いたしまして留学生の支援を行う。対象は、大学院生あるいはアドミニストレーションに学ぶ人々とかビジネススクール生徒、その他それぞれの大学の卒業生で先方の大学の方で適当と判断する人々にする。期間は一年間、主に企業研修とか工場見学、研修その他いろいろなカリキュラムを盛り込んで、春や夏には日本の中学生や高校生を近所に設置しました研修センターに合宿させて短期の英語教育や社会教育を学生にやってもらう。そういうことでより日米間のスキンシップを図る、こういう構想であります。  私が大変この構想をおもしろいなと思いましたのは、日本人が一生懸命考えても、相手が、アメリカ側が、これはおもしろいと飛び乗ってくるようなそういう構想でなければつまらぬわけでありますけれども、実は私の友人がアメリカで有力な方々にお話をしたら、これはおもしろい、おもしろいですな、こういう飛びつくような感想が返ってきた。だから、アメリカ人から見てもこれはおもしろい構想だという点があるということであります。それから、日本の企業はアメリカに輸出して利益を上げておりますけれども、ちゃんと利益もアメリカのために還元しているのだ、こういう主張ができるという点が、このアイデアの中にあるわけであります。  アイビーリーグに声をかけるというアイデアも大変おもしろいと思うのですが、それがだめならアメリカで大々的に学生を募集すればこれはまた大きなPRの機会になる。それから、先ほど申し上げましたように春夏に日本の中学生や高校生にアメリカの社会の教育を教えることによって、日米両国の青年のスキンシップというものも深まるであろう。  それから、実はこういう話を私の友人がある方にいたしましたら、これはおもしろい、大事なことだ、ぜひこれは土地を寄附いたしましょうということで、十万坪以上の土地を無償で寄附しよう、そういうような方もあらわれているわけでございます。私はこういう構想、これを今後考えていかなければいけないと思うわけです。  この私の提案のほかにも、スタンフォード大学からの発案で、日本と米国の大学、企業が手を組んで日本に新しい人材育成センターを開設する、こういうものがことしの一月十八日付の日本経済新聞にも載っておりましたし、今後こういう要請というものが米国からも出てくるだろうし、我が国としても真っ正面から真剣にやはり一従来の文部省の文部行政の考え方からすると、これはできる、これはできないのですとかいろいろなお答えが出てくるかもしれませんけれども、ここは日本も二十一世紀には国際化が必然だという認識に立っているわけでありますし、こういう日米貿易摩擦を抱えていながら大事な日米関係をどうやってより進展させていくか、そういう観点からこういう構想に対しても真剣に前向きに私は取り組んでいただきたいと思うわけであります。いかがでしょうか。総理にお尋ねをいたしたいと思います。
  220. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 真剣に前向きに取り組んでまいりたいと思います。先ほど来、いろいろジェトロそのほかOTOあるいは諮問委員会、さまざまな力を動員してやると申しておりますが、本当に真剣に取り組んでまいります。
  221. 神崎武法

    ○神崎委員 文部大臣。
  222. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 お示しいただいた構想は、私も大変結構な構想だと思います。御承知のようにアメリカの大学とは既に協定を結びまして、研究者や留学生の交流によって両国の相互理解を深める行いが既に三百五十の大学で行われておりますが、先生の御構想はそれをさらに一歩進めて生活環境とか工場研究とか文化や社会生活の面についてまで触れる交流をした方がいいということでありますから、大変いい案だと思いますし、また教育内容その他につきましても、それは一年間という限定をされますと、ちょっとお話に出ましたように文部省の大学設置基準ということからいきますといろいろ問題はありますけれども、しかし学校法人の受け入れは文部省も今たくさん幅を広げて持っておりますから、それは可能な構想の一つでございますし、特に先生の御提案で、土地を寄附していただいたりあるいは関係企業による財団ができる。特に最後に書いてあります、政府はお金を出さなくても便宜を図って協力すればできるからよいというこの御構想は、大蔵大臣の顔色を見なくても答弁のできるいい御提案でありますので、文部省といたしましては国際化時代の重要性にかんがみて前向きに御協力をし検討させていただきたいと思います。
  223. 神崎武法

    ○神崎委員 大変ありがとうございました。ただいまの御答弁に従ってぜひとも推進をしていただきたいと思います。  時間がなくなりましたので、簡単にフィリピン問題につきましてお尋ねをいたします。  一、二点だけ伺いますが、一つは、フィリピンというところ、これは今まで政情とか経済面からいろいろ御議論がありましたけれども、防衛面という点から一点お伺いいたしたいわけでありますが、我が国防衛面から、フィリピンというものは中東のオイルルートに当たるわけでございます。今政府が推進しているシーレーン防衛という点からすると、バシー海峡以北がシーレーンだというふうなお話もございまして、フィリピンというのがシーレーン防衛上もどういうかかわり、位置づけになっているのかというのが大変関心が持たれるわけでございます。  まず、我が国防衛面から見ましてフィリピンというのをどういう位置づけをされているのか、現在のフィリピンの政局不安が今後我が国防衛に及ぼす影響はどういうものか、こういう点について簡単に御答弁いただきたいと思います。
  224. 加藤紘一

    加藤国務大臣 御承知のように、我が国防衛の際に考えておりますシーレーンというのは、航路帯を設ける場合には一千海里ということになっておりますけれども、そういう意味で言えば、バシー海峡より先のいわゆるフィリピンの地域が一千海里を超えていることは、地理的な事実でございます。その一千海里を超えるところは、私たちは日米安全保障体制の中にある米軍の支援を待つという体制をとっておるわけでございます。我が国防衛力整備は、あくまでもそのシーレーン数百マイルないし一千海里ということになっております。したがって、フィリピンの情勢は、我が国の主要な輸送路に当たっているところでもあり、また我が国防衛にそういう意味で支援してくれる米軍のいろいろな意味のプレゼンスがあるところでありますので関心を持っている、こういうふうに私たち防衛面から位置づけしておるところでございます。
  225. 神崎武法

    ○神崎委員 最後に一点お尋ねいたしますけれども、アメリカが米ソ戦略上の大変重要な位置づけをフィリピンについてしているわけでございます。二つの海外における最大の基地、空軍基地と海軍基地を持っておりますし、大変重要視しているわけでございますけれども、最近の政情から言われるところでは、アメリカの統合参謀本部は、万一の事態に備えて、フィリピンの両基地にかわってグアム島とマリアナ諸島のテニアン島での基地建設に取りかかっている、あるいはパラオ島での基地建設を検討しているとか、その他香港だとかいろいろなことが言われているわけでございます。さらに、フィリピンに不測の事態があった場合に、同国駐留の米国海空軍をグアム、沖縄、サイパンだけでなくて、日本本土や韓国内の米軍基地にも分散させるという案も米太平洋軍司令部で作成されたということも言われているわけでございます。他方、フィリピンの持つ戦略重要性から見て、米軍が基地を移転するということは考えられない、こういう見方も強いわけでございますけれども、我が国としてはこの問題についてどういうふうに見ておられるのか、その点をお伺いいたします。
  226. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 現在のフィリピンの情勢、やはり相当複雑といいますか、混乱の予想される状況であるわけですが、そういう関連で在比米軍基地の代替の問題につきまして米国内外で議論があることは、私もよく承知をいたしております。  アメリカ政府は、今月十一日に行われた記者会見においてレーガン大統領が在比米軍基地の重要性を強調しているのを初めとして、昨年来、累次の議会証言において、米政府として現在在比米軍基地の移転は考えていない旨明らかにいたしておるところであります。また、先般提出された八七年度米会計年度軍事建設予算要求においても、在比米軍基地の存続を前提としたスビック基地やあるいはクラーク基地等における施設整備を予定しておると承知しておりまして、政府としましては、例えば沖縄における施設、区域による在北米軍基地の機能、役割の代替云々という可能性は、全く考えておらない次第でございます。
  227. 神崎武法

    ○神崎委員 ありがとうございました。  以上で終わります。
  228. 小渕恵三

    小渕委員長 これにて神崎君の質疑は終了いたしました。  次に、木下敬之助君。
  229. 木下敬之助

    木下委員 総理にまずお伺いいたしたいと思います。  衆議院の定数是正という問題は、この国会のまことに重大な課題でございます。そして、これが今第三者機関を設置してそこにゆだねようという動きもあり、またそれも現実味を帯びてきた、このように考えます。しかし、仮に第三者機関にゆだねるとしましても、それ以前に当然与野党で合意しておかなければならないことというのは幾つかあると思います。そのうちの一つが、二名区は、当然これは制度の根幹に触れるものであるからつくらないとか、こういった問題があると思いますが、ほかにも幾つか大事な問題があると思います。  そういう意味総理のお考えをお伺いいたしますが、今回、衆議院の定数是正は六十年度の国勢調査の速報値に基づいて、議長見解にありますように、選挙区間議員一人当たりの人口の格差は一対三以内とする、こういうことで違憲にならないように緊急是正をしようということだと思いますが、この合憲、違憲のめどの三倍というものを、厳密な意味でどうとらえておられますでしょうか。  具体的な問題で申し上げますと、大分二区の議員一人当たりの人口は十四万二百三十六人、そして一名増員された後の千葉四区、これを四名区として見たときに、一人当たり四十二万七百八十人でございます。その比率は一対三・〇〇〇五であります。これは、千葉四区の人口がわずか二百八十八人減るか、大分二区の人口がたった七十二人ふえるかすれば、一対三の中にぴったりおさまる。これは是正の対象から外れてしまうことになるわけですが、このわずかの違いをどのようにお考えになられますか。合憲、違憲の区切りというのはそれほど厳密なものなのでしょうか、総理のお考えをお伺いいたします。
  230. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そういうことも各党間でお話し合いをして、そして合意成立せしむべきポイントで、今のようなことについては議員の皆さんは非常に弾力性があるでしょうから、常識的に解決するんじゃないかと思います。
  231. 木下敬之助

    木下委員 一点お伺いしたいと思います。確認でございますが、総理は司法のオーバーランとか三権の調和というようなことを言われましたので、このぎりぎりのことを判断するのは、その三権で言うとどこの権限と思われておられますか。
  232. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは、三権がおのおのしりを追っかけてチェック・アンド・バランスをやっておりますからどこということはないので、最終的には国民が決着をつける、そういうことだと思います。
  233. 木下敬之助

    木下委員 もう一点お伺いしたいと思います。  この衆議院の定数是正の問題は、自分が直接関係した選挙区になりますとかなり深いところまで考えますが、そうじゃない方というのはかなりあっさりと考えておられます。そういう意味で、これから第三者機関等にいきましたときに、国会論議というのを踏まえて第三者にも考えていただきたいので、ちょっと厳密な話になりますけれども、ひとつお話ししたいと思います。  それは、今後二名区をつくらないということになりまして三名区までということになりますと、必ず分区とか合区とか線引きが必要になります。そのようになりましたときに、考え方が二通りございまして、一つは、この間の速報値によりまして議員一人当たりの多い方から少ない方までずっと並べまして、そして一増・一減、二増・二減、こんなふうにしていって定数是正しようという考え、それで十増・十減にしろ九増・九城までこうしますが、その中で二名区ができそうだというところを三に残すように線引きを変えますね。そうするときに、その二名区が、三から二に減らなければならないということを、例えばその県なりに最初からかぶせてしまうのか、それともそういうことを考えて分区、合区した上で、全部もう一度並べ直して一番ひどいところから順々に訂正していくのか。このルールを間違えますと、例えば一つの県で一つが三名から二名にならなければならない県があるときに、じゃ隣の選挙区は四だから、二つ割って半分で三、三にすればいいじゃないか、こういう簡単な考えてやりますと、分区した後に並べてしまいますと、それよりももっと早く是正対象になるべき減員区が残って、十何番も後の方のが先に減員されるというようなことが起こる。こういうことはやはりちゃんと事前にルールをはっきりしておかなければならないので、できましたら、各党の皆さんもお聞きと思いますので、一度事前にこの点も御相談いただきたい、このように思います。  大変失礼かと思いますが、話題もちょうどあります選挙区の大臣もおられますので、佐藤郵政大臣、どうですか。ただいまのように、厳密な意味では決まってしまえば従わざるを得ないのはだれでも当たり前でございますけれども、どうぞ御感想があったら聞かせてください。
  234. 佐藤文生

    佐藤国務大臣 木下さんも大分県の、同じ県選出でございまして、ただいまの意見を聞いておりまして、私もいろいろなるほどなと思うこともございます。したがって、どうぞそういう意見を十分与野党で出していただいて、そして、違憲状態にあるわけですから、なるべく今国会で結論を出すように私はお願い申し上げたい、こう思っております。
  235. 木下敬之助

    木下委員 定数是正に関してもう一点お伺いをいたします。  これはどのような形の是正にいたしましても、新しく定数が変わることが決定した後にどのくらい周知徹底の期間を見ておけばよいとお考えになっておられますか、総理、お伺いいたします。
  236. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは常識的に考うべき問題ですが、法的に見ればそう時間をかける必要はない、そういう形になるでしょう。まあしかし、ある程度の常識的な問題である。大体その選挙区にみんななじんでいるところですから、小さな部分的な変更というような場合には、ほとんどテレビ、ラジオの時代ですからみんな知っているのじゃないか、そういうふうに思います。
  237. 木下敬之助

    木下委員 自治大臣はどうでしょうか、何かめどがございますか。
  238. 小沢一郎

    ○小沢国務大臣 格別の周知徹底の期間というものはないと思います。ただいま総理御答弁のとおりと思います。
  239. 木下敬之助

    木下委員 しかし、現在の選挙権は、住居を移してから三カ月たたないと選挙する権限がないわけでございます。我々は、当然のことながら、だれに投票するかというのは、自分の選挙区のだれかじゃなくて、日本じゅうの立候補している人のだれに投票するかも国民に与えられた権利だと思います。そういう意味で、最低の三カ月これは必要なんじゃなかろうかと考えますが、総理、これはお考えどうですか。
  240. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この居住性の三カ月という問題と今の選挙法が変わって周知徹底を要するという、まるきり関係のない話であって、それは心配する必要はないと思っております。
  241. 木下敬之助

    木下委員 周知徹底という言葉で言えば、知っているかどうかという意味で言えば常識的なものでございましょう。その点は今言ったまるきり関係ないで結構です。しかし、私はその二つをつなげて質問したわけではありません。後の問題は独立した問題として、もし選挙法がこういう形で分区、合区されたならば、それが決定してから自分はあああの人のところに入れたいと思っても、そこに選挙権がない、それを見た上で選挙権のある区に行きたいというこの国民の権利はどのようにお考えになりますか。
  242. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そういう自由意思をお持ちの方は、自由意思として尊重されると思いますが、そのことと周知徹底ということとはまるきり別な話ですね。私は木下さんに入れたい、だから自分は三カ月前に移動する、そういう自発的意思でおやりになる、そういう民主主義的熱心さと、それから、知っているか知らないかという問題とはまるきり別の問題ですね。
  243. 木下敬之助

    木下委員 総理、知っているか知っていないかとは分けて私、質問しているのです。知っているか知っていないかの問題は、もう常識的で結構です。  選挙法で変わった場合、今までてっきり自分の住んでいるところでこの人に入れられると思っていたのに、突如変わってすぐ選挙になったら、その変わった方についていきたくても三カ月たたなければできないから、三カ月以内に選挙があったら変われる間がないじゃないですか、このことを申し上げておるのでございます。
  244. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それはやむを得ないと思うのですね、その場合は。残念だけれどやむを得ない、この次からまた変える、そういう形になるのじゃないでしょうか。
  245. 木下敬之助

    木下委員 それでは、次に防衛に関する問題を幾つか質問いたします。  先ほどSDIについてかなり詳しい論議もございましたが、私なりの角度からお聞きいたしたいと思います。  まず、総理大臣、総理はSDIについて、かなりの部分調査が進んでいることをお認めになりながらも、今後さまざまな変化や発展も考えられるので慎重に検討中である、このように言われていると思いますが、総理は一体どのような発展とか変化が考えられると想定なさって言っておられるのかをお伺いいたしたいと思います。     〔委員長退席、原田(昇)委員長代理着席〕
  246. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは科学の進歩ですから、はっきり見定めることは難しいと思うのです。先ほども申し上げましたように、SDIの中心線というものがどういうラインで進むのであろうか、漠然とした輪郭があって、そこへ今やいろいろなアイデアを出し合っている最中なんですね。ちょうど小説をみんなが書くように、みんなでアイデアを出し合っているという最中で、それによって中心線がどういうふうに最終的に移動していくかということも決まるわけでございます。そういう意味で、我々はもっと勉強をする必要がある、そう思っておるわけです。
  247. 木下敬之助

    木下委員 これはどういう方向に変化、発展するかわからない、このように言われるのかとも思いますが、そうすると、総理はこのSDIを理解するに当たって当初から、非核であり、防御的な兵器体系であり、核兵器の廃絶を目指すもの、このように言っておられますが、この三点の枠からはみ出たものに変化、発展する可能性もある、このようにお考えなのですか。
  248. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まだわかりません。わかりませんが、さっき申し上げた非核であり、防御兵器であり、そして核廃絶を目指すものである、そういうものであるように願っておるわけであります。
  249. 木下敬之助

    木下委員 今三つ言われたのは、願っておる、こういうふうに言われました。そういういろいろな変化に対して慎重に検討中であるということもわかるのですが、SDI参加の要請を受けた西側各国は皆態度を決めていまして、主要国で態度を決めていないのは日本だけとなり、我が国も何らかの意思表示をすべきときが来ておる、このように思います。  そういう意味で、総理はただいまそういうふうに願っておると三つの点を申されましたが、ほかにも日米首脳会談でレーガン大統領と同意された五条件とか、昨年五月にサミットにおける日独首脳会談でコール首相と確認されたこととか、ほかにもサッチャー英首相と話されたこととか、幾つかSDIに関する前提とか、願っているとか、原則とか、条件とか、こういったものをお出しになっておられるようでございます。それらは一体どういう性格のものと考えればよいのか、わかりやすく整理して国民にお示しいただけませんか。
  250. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、たしかボンでレーガン大統領にこの前会いましたときに、SDIについていろいろただしまして、我々の方から申し上げた五原則というのがあります。それは一つは、ソ連に対する一方的優位を追求するものではない、それから、西側全体の抑止力の一部としてその維持強化に資する、攻撃核兵器の大幅削減を目指す、ABM条約には違反しない、開発、配備については同盟国との協議、ソ連との交渉が先行すべきである、この五つのことを私は言いまして、レーガン大統領は賛成した次第であります。
  251. 木下敬之助

    木下委員 ほかにも、西ドイツの首相やそれからサッチャー首相等とお話しになられたことも、今の五条件ということですか。
  252. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 我々はこういう話をレーガンさんとしたという話と、あとはドイツとの話におきましては、お互いに知っている限りの情報を話し合おう、必要あらば専門家同士で情報交換の話し合いもさせよう、そういう意味の話をいたしました。
  253. 木下敬之助

    木下委員 総理は、いろいろと研究しているが、まだどういう方向にいくのかわからないところがあるから参加、不参加の決定をしていない、そして、今レーガンさんに言われましたという五条件、それから三つ願っているという表現を先ほど言われましたそういったものがございまして、その中で参加、不参加の決定の判断基準として総理がお持ちなものはどれどれですか。
  254. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 一番のポイントは、初め聞いたときのやはり防御兵器であり、そして核廃絶を目指すものであり、非核兵器である、それを究極的に達成する目的の新しい兵器体系、そういう点をやはり非常に重要視しておるわけであります。
  255. 木下敬之助

    木下委員 じゃ確認しますが、これは非核であるということが確認されるまで、参加は決定しないんですか。非核でないということがわかったら、参加はしないということですか。
  256. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この核というものがどういうふうに使われるのか、もし使われる場合に。その場合にはいろいろ専門的な検討を要すると思うのです。日本の場合に核兵器、非核という場合には、それが直接殺傷力に使われるということを今まで意味していたように思うのです。例えば原子力推進の場合は、これは認めておりますですね、潜水艦にしても。そういう意味で、その直接性、間接性というようなもの、あるいは全兵器防御体系の中における部分的な役割を果たしているものまで核兵器と言えるかどうか、そういう問題もあるわけですね。そういうようなポイントをよく見定めて検討しなければいけない、そう思っておるわけです。  今のような部分的な機能というものがどういうふうに解釈されるかということは、条約局長から答弁させます。
  257. 小和田恒

    ○小和田政府委員 先ほど来北米局長が御答弁しておりますように、現在、エックス線レーザーの兵器についてのアメリカの態度、研究というものが、必ずしも詳細わかっていないという状況でございます。先ほども申し上げましたように、この兵器自体が、既に現実のものになっている兵器ではないわけです。したがって、一般的な形で今ここでそれが核兵器であるのかどうかというようなことについて議論をする立場に私どもございませんけれども、他方、非核三原則における核というものは核兵器を指すものであるということ、それから核兵器というのは、先ほど総理大臣の御答弁もありましたように、原子核の分裂または核融合反応により生ずる放射エネルギーを破壊力または殺傷力として使用する兵器というのが政府の統一的な考え方としてお示ししてございますので、そういう基準に照らして判断するということになろうと思います。
  258. 木下敬之助

    木下委員 今の話はおいておきまして、総理が、非核であるということが参加の条件である、しかもSDI全体がそうというのはわかりますが、一部分に含んでいてそれはどうなるのかということは、はっきりおっしゃっておりませんので、もうちょっと教えてください。  一カ所でも核が、核兵器と言われるものが入っておれば参加しないのか、それとも全体がそうでなければよいのか、お伺いします。
  259. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ですから今条約局長に言わしたのであって、日本で非核三原則の場合における核兵器というのは今条約局長述べたとおりであって、それに該当しないという場合には許容される範囲内にあるわけです。まあしかし、それがどういう態様のものであるか、そういう点をまたよく見定める必要もある。いろいろな面で冷静に注意深く検討を加えているところであります。
  260. 木下敬之助

    木下委員 日本の非核三原則の対象となる核兵器が入っていることがわかれば、総理は、参加しないというわけですね。もしくは、それが入っていないというのがわかるまで参加を決定しないんですか。
  261. 小和田恒

    ○小和田政府委員 非核三原則に言うところの核兵器というものがどういうものであるかということについては先ほど御答弁したとおりでございますけれども、他方、先ほど来御答弁しておりますように、SDIのこの計画と申しますのは、非常に多岐にわたるいろいろなプロジェクトを合わせて全体としての弾道ミサイルに対する防衛システムをつくる、こういうことでございます。したがって、その中にはいろいろなものが含まれているわけでございますので、そういういろいろなものが含まれている非常に包括的な考え方という枠の中で、個々の具体的なプロジェクトというものをどういうふうに考えていくかという形で対処をしていくことになるだろうと思います。
  262. 木下敬之助

    木下委員 それはもう幾ら論議してもしようがないので先に行きますけれども、総理、もう一つ確認させてください。  総理は、この参加、不参加をやはり核であるか非核であるとかということで判断すると、これはおっしゃっておるわけです。それは、日本の今既にある非核三原則に反するからそう判断するのか、それと離れて、SDIを核か非核かで、非核でなければ判断しないと総理がおっしゃられるのか、どちらなんです。
  263. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 我々はやはり非核三原則というものを頭の中に置いてレーガン大統領と応答してきている。今申し上げたのも、非核三原則を頭に置いて言っているわけです。
  264. 木下敬之助

    木下委員 しかし、かつてそういった御質問を申し上げましたときに、非核三原則は国内の問題であって、国外のことでは、日本自身の国内の非核三原則は国外のことには適用されないような御答弁をいただいたこともございますが、このSDIは日本以外のところでいろんなことも起こるわけですね。それを、参加するかしないかというのを国内の非核三原則で判断なさるということですか。どういうことですか。
  265. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 我々は拘束を受けており、またみずから規制しているというのが非核三原則でありますから、ですから、発想の起点には非核三原則というものがあるので、それがSDI全体の体系の中でどういうような位置を占めるのか、どういうふうになるのか、それはまたそういう体系を見たときに個々的に判断をすべき問題である、そう思います。
  266. 木下敬之助

    木下委員 今これ以上論議しても仕方がないかもしれません。また時が来れば詰めさせていただきたい点もあると思います。  一つだけ申し上げておきたいと思います。  核兵器か非核兵器かということでいろいろなことが言われております。しかし日本は、総理も言われておりますように、核廃絶というのは日本人の悲願だ、このように言われております。日本人が廃絶したいと思っておる核兵器というもの、その日本人の悲願の対象というものを、ただ単に技術的なものとかそんなもので一線を引くというのは、政府が一方的にやるべきことじゃないんではないか。やはり心を澄まして、日本人全体がどういったものを廃絶したいと思っているかということを考えて判断していただきたい、このように思います。  それでは、先へ進みます。  参加、不参加を決定するには、そういう原則的なもの、こういったものも十分重要で、当然考えなければならない当たり前のことですが、研究参加のもたらすメリット、デメリットということも考えなければならないと思います。総理は先日の当予算委員会におきまして、参加した場合のメリットについてはお触れになられました。その裏返しの不参加決定をした場合のデメリットをどのように考えておられるのか、お伺いいたしたいと思います。
  267. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まだ参加、不参加は決めたわけじゃないので、ですからメリット、デメリットというものを正確に秤量すべき段階ではありませんが、まあ一般的、常識的に言われますのは、西欧がなぜ参加するかという大きな理論の一つに、ハイテク時代におくれをとってしまう、あのスペースシャトルとかあるいはアポロ計画とかというもので相当アメリカの技術はハイテク化が進んでおった、そういう意味においても、今度のSDIというものはもっと壮大な体系で、そういう意味で、西欧がおくれている上にまたおくれてしまうじゃないか、そういう点からも入っていった方が将来のためになる、そういう議論がドイツやあるいはイギリスやそのほかでも、フランスあたりでも随分強いわけですね。だから、そういうこともあるのかなという気もしておりますですね。しかし一面において、ソ連を刺激するというマイナスも片っ方ではありますですね。しかし、また一面において、それで大量の攻撃殺りく兵器であるICBMが無効になるということになれば、これは革命的兵器体系であって、防御体系によって平和が維持されるというのは、攻撃体系によって平和が維持されるよりさらに人知が進んだ証拠でありますね。そういう意味において、防御体系へ前進するという歴史的意味を持つかなと、さまざまなことが考えられるわけです。
  268. 木下敬之助

    木下委員 まだ参加、不参加は決定していない、このようにお話は承っておりますが、しかし、その決定は全くいつまでもいつまでも決めなくても済む、こういう問題とは思わないのですが、これは一体タイムリミットとしていつごろまでに答えなければならないとお考えになっておりますでしょうか、お伺いいたします。
  269. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 別にタイムリミットは考えておりませんし、特に、東京サミットまでに決めなければいかぬとかなんとかというそういう拘束は一切受けておりません。しかし、今まで二回調査団をやりまして、ある程度の様子もわかってきております。しかし、詰めるところが幾つかまだあるのだろうと思うのです。さっき質問にありましたように、国防ということでカバレージされた場合に、こっちにどういう影響が来るか、参加した日本企業の方向、そういう問題とか、あるいは特許権の問題であるとか、あるいはリターンの問題であるとか、さまざまなそういう問題もいよいよ現実化するとあるわけですね。そういう問題についてもいろいろ研究もし、詰めるところは詰めなければならぬ、そういう点もあるのではないかと思います。  それ以外に、今申し上げた兵器体系全般の点検、あるいは構想の確実性、あるいは日本がもし参加すれば、どういう場合、どの部分でどういうことが必要なのか、そういうさまざまな点について勉強する必要があると思います。
  270. 木下敬之助

    木下委員 総理は、タイムリミットはない、このようにおっしゃいますが、外務大臣にお伺いいたしたいと思います。  もともとこのSDIのことのお誘いみたいなものをアメリカからいただいたときに、たしか六十日ぐらいの期限のようなものがあった。あのときに、参加してくれないかと言ったあげくに返事に期限がついているなんというのはおかしなことだ、こういう認識を当時私どもは持ったのですが、どうもだんだん聞いてみると、参加してくれないかというリクエスト的なものじゃなくて、よかったらどうぞというお誘いのような感じのものであったのかな、このようにも思います。それであれば、誕生パーティーだろうと何だろうと、いつまでに返事をくださいというのは当たり前のことでございますから、仮にそういったインビテーション的なものだった場合に、その返事をいつまでもしないなんということが国際的に許されるのでしょうか。外務大臣のお考えをお伺いします。
  271. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これは、ワインバーガーさんのいわゆる期限六十日というのはとうの昔に過ぎているわけですが、日本だけじゃなくて、アメリカの各同盟国に発出された書簡でありまして、これはやはりSDIに対して関心があるなら協力する用意がある、こういうことで一応六十日以内に回答してほしいということでありました。招待といいますか、希望の表明といいますか、そういうことになるんじゃないかと思いますが、同時にまた、ワインバーガーさんは後で、これは別に期限にとらわれるものじゃないということも言っておりますし、また日本としても独自の立場で自主的に決めるわけでありますし、各国ともそうでありますから、六十日と言われても、そういう方向ではもちろん決めることは困難でありますし、それはワインバーガーさんも十分承知しておったところであります。各国とも別に六十日の期限にはとらわれないで最近それぞれの国が方針を決めた、こういう状況であります。
  272. 木下敬之助

    木下委員 その短いサミットとかを前提にすれば、いつまでとは思っていないという言葉もあれでしょうが、本当に二年でも三年でも五年でも十年でもとお考えになっておられるのですか、それともやはりおのずと常識的な返事の期限はあるとお考えですか、外務大臣。
  273. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 ヨーロッパの各国もそれぞれ方向を決めておりますし、もちろんまだイタリー等決めていないところもありますし、それからドイツなんかも最終的な合意もまだできていないというふうに承っておりますし、そういう中で日本は今、理解ということでいろいろと検討を進めておるわけですが、今すぐ時日をはっきりして、それまでに方針を決めなきゃならぬということでもないんじゃないか。調査団も二回派遣したわけで、いろいろな資料も集まっておりますから、我が政府として、やはり日本の重大な決定でございますから、十分検討して、そして納得のいく形で最終的な決断はしなきゃならぬ、私はこういうふうに思います。
  274. 木下敬之助

    木下委員 しつこいようですが、では、先ほど申しましたように、本当に三年も返事しないこともあり得るのですか、三年も。
  275. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いや、三年も、二年もと言われても、ちょっと私も返答はできかねますが、いずれにしても、これは今研究中ですから、検討中ですから、その検討を踏まえて、結論が出れば、それはその段階で判断をし、決断をしなきゃならぬ、こういうふうに思いますね。その結論が出るのが、あしたに出るのか、一年後に出るのか、半年先に出るのか、それはこれからの、もっと勉強しなきゃならぬ点がありますから、そういう勉強を踏まえて決めなきゃならぬ、こういうふうに思います。やはりそれほど重大な、重要な問題だと私は思いますね。
  276. 木下敬之助

    木下委員 できることなら、半年もの次に三年もと言っていただくとかなり私もわかったのですが、例えの中の三年というのが入っていないので、もうちょっと詰めたいところですが、余りしつこくなるのでやめます。  それでは、政府が参加するということに慎重だということはわかりますが、民間の参加、こういう目で見ますと、これは企業の自由な活動をSDIということで制限するということにはかなり無理が起こってくる部分もあろうかと思います。既に先日テレビのニュースでも報道されまして、本日も岡田委員もお取り上げになったようでございますが、日本がかつて研究開発したボーイング767型機が改造されて、SDIシステムの一部に組み込まれるような契約が、米陸軍のBMDシステム・コマンドとボーイング社との間で交わされています。このように、民間ではどんどん事実が先行していく可能性がある今日、早急に民間参加のルールをつくらなければならないのではないか、このように思いますが、どうでしょうか。
  277. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 SDIに対する参加のあり方については、各国でそれぞれ対応が違うわけですね。例えばフランスなんかは、SDIを研究する者には、政府としては参加しないけれども、民間は自由だということで、民間は既に参加を決めておる会社もあるように聞いておりますし、イギリスはイギリスで政府間でやっているわけで、その他ドイツ、いろいろな国が、その国の自主性に基づいた立場で、この対応を決めておるわけですから、日本としてどういう対応にするか、まあ参加するかしないかというのもこれから決めていくわけですから、そういう対応も含めて、これは今後とも研究しなきゃならぬ課題だろう、こういうふうに思います。
  278. 木下敬之助

    木下委員 このSDIの論議には政府資料みたいなものを、今どこを検討しているとかそういったことも、結論が出るまでというようなことでなかなか出していただけません。我々は国民の代表として、同じ基盤に立って論ずべきである、このように思います。  そういった意味で、先ほどの神崎委員の質問に対する総理の答弁で一つ気になるのでちょっと確認いたしたいのですが、先ほどいろいろな資料要求、どの点を検討しているのか出してくれというときに、出されないと、そして、それでは結論を出すときに国会に報告するかと聞かれたと思います、細かい部分は別にしまして。そのとき総理は、結論が出たら報告するようなことを言われた。この点が少し気になるのですが、この結論が出て報告するともう間に合わないわけですが、その結論が出たときに、アメリカにその結論を伝える前に国会資料とともにその結論を伝えていただいて、我々は審議する時間があるということでございますか。
  279. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これはその結論の模様にもよります。しかし一般的に、これは政府がアメリカ政府と話し合いをし、また日本の民間関係とも相談をしてやることで、行政権の仕事でございますから、ですから、政府は結論が出たら、その結論に従って処理をする、また国会にもできるだけ速やかに、こういうふうにいたしました、そういうふうに報告をする、そういうことだろうと思うのです。
  280. 木下敬之助

    木下委員 その辺は考え直していただきたいと思います。行政の権限で何をなさるか、それは行政の方のすることで、それをまたどのように批判するかは国民の権限でございます。しかし事は、全地球的な規模でこの宇宙を皆利用してそういう兵器体系にするかもしれない、こういったかなり、全人類が十分知って判断しなければならないし、日本国民も、その結果をアメリカに二度伝えた後に、またああでもない、こうでもないと言って覆せるような問題じゃないと思うのですね。総理御自身の判断じゃなくて、その後どんな形の方が、どなたが後の政権を継ごうとも、仮に連立政権になろうとも、もっと言うと連立以外に逆転をしようとも、かなり日本として責任を持っていかなければならない内容になろうかと思います。こういったものはぜひともちゃんと国民の声を聞いて判断されるという、総理御自身が国民の気持ちをくみ上げるという気持ちを持っていただきたい、その機会を決して失わないようにしていただきたいと思いますが、どうでしょうか。最後に御答弁いただきたい。
  281. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これはやはり行政権の責任に帰することは行政が責任を持ってやる、そして国会に対しては、こういうふうにいたしましたといって御報告をする、やはりそういうけじめはちゃんとつけておいた方がいいと思うのであります。これが正式の条約ということになれば、これは締結後批准を求める、締結はするわけですから、その批准を求める、それに対して国会がいろいろ批判をし賛否を決める、そういうけじめがちゃんとあるわけですから、それは守っていきたいと思うのです。
  282. 木下敬之助

    木下委員 そういう形の決定をSDIを進めておるアメリカの方も望まれるかどうかは私は疑問であろう、もっと国民全部の合意のある形で参加されることを望んでおるのではなかろうか、この点を申しまして、この点はそこまでにいたします。  時間がございませんが、次に防衛庁長官、そちらの質問の前に総理にもお伺いいたしますけれども、中期防についてお伺いをいたしたいと思います。  まず、確認いたしたいのですが、防衛費に対する歯どめというものは、GNP比一%だけでなく、憲法平和主義やシビリアンコントロール、また専守防衛の原則などの定性的な歯どめと、中期防の五カ年で十八兆四千億円という総額、このような定量的な歯どめとを総合的に合わせて存在しているものと考えますが、総理はどう認識されておられますか。
  283. 加藤紘一

    加藤国務大臣 中期防には、我々の守らなければならない防衛の基本政策を改めて言っておりますし、それに基づいた整備計画の内容を示しておるわけでございます。その意味で、この計画全体が定性的な歯どめになっているということが言えると思います。一方、中期防には、同時に五カ年で六十年価格十八兆四千億という数字が出ております。これは定量的な歯どめであろうと思っております。その二つを含んでおると思います。
  284. 木下敬之助

    木下委員 総理も御確認いただけますか。
  285. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 防衛庁長官の御回答のとおりです。
  286. 木下敬之助

    木下委員 そのような中期防の総額を歯どめとして本当に意味のあるものにするためには、中期防のローリングのやり方を明確にする必要があろうかと思います。防衛庁長官は、昨年十月二十九日の本委員会におきまして、「三年後に見直しをし、新しい計画につくり直すということを検討する」、このように言われておりますが、これは中業と同じような方式で三年ごとに別の計画をつくっていく、このようにすることもあり得るということでございましょうか、お伺いいたします。
  287. 加藤紘一

    加藤国務大臣 そのとおりでございます。中業計画は三年ローリングの仕組みをしておりましたが、今度の中期防の中にもその可能性を正式に書いてあります。三年後、ローリングするかどうかは別にして、そのするかどうかを検討するということを書いてございます。
  288. 木下敬之助

    木下委員 五年の計画を立てて、三年たったらまた新しい計画にするという、こういうローリングのやり方のときに、加藤長官、一方においては、先ほども言いましたように、いろいろな経緯があっても五年間で十八兆四千億を超えることはない、このように答弁されております。すると、三年たって新しい計画にしたときに、新しい計画はその十八兆四千億の残りの部分、ダブった二年間、この二年間は前の十八兆四千億の制限を受けた枠の中でしなければならない。そういう形でその上に三年積み上げたような新しい計画、これは防衛計画としては私はナンセンスじゃないか、数字合わせだけじゃないかと思うのですが、どうでしょうか、この点は。
  289. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私たちはナンセンスだとは思っておりません。諸外国とも防衛力整備計画を立てておりますけれども、こういう三年ごとに見直しとか期間の中で見直すという仕組みはかなりの国でとっておると思います。これは防衛力整備というものの特性によりますし、また諸外国の技術的な動向、それから国際情勢の変化が激しいということにもよります。  そこで、仮に万が一ローリングするようなことになれば、六十四年から新たな五カ年ということになろうと思いますが、しかし、その一年目、二年目、つまり六十四年、六十五年、この二年間の予算も含めまして、今後五年間のものは十八兆四千億の上限をシーリングとする、もちろん特別に大きな世の中の変化があれば別ですけれども、現在の状況ではそう考えております。
  290. 木下敬之助

    木下委員 私は、五カ年計画というのを立てたら、五カ年やって、その間ちゃんと、それは見直しみたいなものは、その五カ年の中で見直していって、その五カ年が済んだら、また五カ年の第二次五カ年計画、こういったものをつくっていくのが当然だと思いますけれども、長官はそうじゃなくて、ローリングをして三年後にまた新しいものにつくっていく可能性もある、このように言われるのなら、このローリングのやり方の原則というものをあらかじめ明確にしておいていただきたいと思います。そうじゃないと歯どめにならないと思いますし、先ほど外国の例を言われましたので、そういったことも踏まえまして、一体、この当初の五カ年計画の大枠が生かされているということがどういう形で確認できるようにするのか、ローリングの際の見直しとか修正とかいったもののやり方の基準、原則を出していただきたいと思います。
  291. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほど防衛庁長官から御答弁申し上げたように、この三年後の見直しというのはまだ決まっておるわけじゃない、そういったことを検討するということでございますので、この見直しのルールそのものは政府レベルでそれを見直すかどうかということも含めて検討し、ルールも決めなくちゃいけないと思いますので今直ちにお答えできないわけでございますが、防衛庁長官お答え申し上げたように、防衛力整備というのは非常に長年月を要します。例えば今回の五カ年計画でも、五年後に着手するものは、それが八年先、九年先に整備されるということで、実際に使うのは十年ぐらい先になるということで、今回の五カ年計画でも後半部分についてはなお検討の余地のあるものもあろうかと思います。そういったものも含めて五年計画は組んでありますが、仮に三年後に見直しがされるということになりますと、この五カ年間に、五年計画で計上してあり、かつまた実施されていない二年分といいますか、そのものが当初の、現在の五カ年計画を見積もった際の見積もりと余り大差がないものであれば、それが優先的に当然事業としては取り上げられるであろうし、同時に、経費の枠である十八兆四千億の使い残し分といいますか、それについては、その枠を引き続き、情勢に大幅な変化のない限り、当初二年間はその枠の中で泳いでいくということもまた尊重されなくちゃならないのではないかというふうに考えております。
  292. 木下敬之助

    木下委員 総理、ただいまお聞きになったように、ローリングの問題はまだ検討中、このように言われております。私は、この五カ年計画というのが定量的に本当に歯どめになるためには、そのルールがまだ検討中と言われるのなら、中期防の五カ年の総額が結局幾らになったのか、十八兆四千億円以内におさまったのかどうか、そしてこの中期防の達成率はどうだったのか、こういった点について中期防が終了した時点で防衛庁長官が閣議の了承を経た上で国会に報告すべきではないか、このように思いますが、総理の御見解をお伺いいたします。
  293. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 新五カ年計画は国会にも報告いたしましたから、終わりましたら、国会にこういうふうになりましたと報告するのがやはり筋であろうと思います。
  294. 木下敬之助

    木下委員 それでは次の問題に移ります。  一月十五日から三日間開かれましたハワイでの第十六回日米安保事務レベル協議でケリー国防次官補代理が日本防衛大綱の大幅な改定は望まない、このように発言したと伝えられておりますことに対し、日本の主要各紙は一斉に米国の対日姿勢が大きく変化し、日本防衛力増強に否定的な態度をとったかのように報じられました。しかしその後、日本課長ジェームズ・アワー氏は、このケリー発言に関しては日本側のスポークスマンがミスリードしたものだ、このように述べており、ケリー発言の真意として米側の姿勢に変化はないことを強調されております。事実がまさにこのアワー氏の言われるとおりであるなら、ハワイ事務レベル協議に参加した日本防衛庁高官の重大なミスリードであると考えます。防衛庁責任は重大であると考えますが、どうでしょう。
  295. 西廣整輝

    西廣政府委員 ブリーフィングいたしましたのは私でございますので、お答えしますが、実はケリー次宵補代理の発言は、新聞にもかなり正確に報ぜられたものもありますが、五カ年の防衛力整備計画について米側が評価する、そういった発言に引き続きまして、この五カ年計画というのは大綱というものを基本に、これを目標、その枠内でつくられておる。そしてこの大綱というのは、現在の日米関係というものにマッチをしておるのであるというようなことが述べられまして、さらに、現在のこの大綱に基づく日米関係、あるいは相互補完的な日本の専守防衛、限定的事態に対応する防衛力を整備するという考え方は、日本防衛、あるいは極東の安全というものに大変寄与をしておるというような評価がありまして、さらに引き続いて、この大綱というものを大幅に変更して、例えば通常兵力であり、あるいは核攻撃に対して単独で日本対応するほどの変化をするということになれば、これは現在の日米関係を変えてしまうものであるからということで、それは望ましくないんだということがケリーの発言としてあったわけです。そして、その点について私もそのとおりブリーフをいたしましたし、さらにつけ加えて、これは何も大きな変化ではないということも私は言っております。したがって、その後アワーの発言というのも聞いてみましたけれども、一部の新聞の見出しがセンセーショナルなものであって、国民をミスリードするものであるということは聞きましたけれども、私のブリーフィングがミスリードしたというふうには考えておりません。
  296. 木下敬之助

    木下委員 防衛庁長官、どうですか。今あのように言われたのですが、こういう混乱が、これは日本のみならず米国民も誤解がある、このようにも聞いておりますが、そういう大変なミスリードが起こって混乱を生じたとは、事実もお認めになりませんか。
  297. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私はそんなに大きなミスリードになって混乱が起きているとは思いません。今防衛局長が申しましたように、現在の我が国防衛力整備の基本的な枠組みというものは、非常にアメリカ側としても自分たちの関係、日米関係にマッチするものだと言って、そしてなおかつ最近日本防衛力についての努力が非常に自主的にしっかりやっているので、それに伴ってなかなかいい状況じゃないですかといった感じだと思います。もちろんその中で米側はいろいろな日本側がもっと防衛力整備の努力をしてもらいたいという期待は当然のことながら持っておるわけですけれども、最近アメリカ側は特に要求がましくいろいろ強いことを言わないようになりました、過去特に四、五年でございますけれども。それは日本が自主的に努力しているから最近言わなくなってきておるのだと思いますし、そういう日米防衛関係というのは望ましいことだと思っております。したがって、全般的に言えば、米側の日本防衛力整備に対する希望は非常にまだあるし、期待もあるけれども、それを日本の自主的な判断にしっかりと任せ、信頼していてもいいという良好な関係を今回ほどはっきり出したことはないという意味で新しかったのではないかと思います。
  298. 木下敬之助

    木下委員 それは、自分はミスリードした覚えはないけれども、新聞の方がミスリードしたのだ、そういうことも起こるかもしれませんが、防衛庁長官、しかし現実に大きな混乱を招いておるという認識は持っていただきたいと思いますよ。混乱は起こる、それでどうかしなければならぬという、もっとこれからもちゃんとわかるように整理していかなければならない問題であると私は思います。  この混乱の原因みたいなものが少しわかるような気がするし、その後まだはっきりとしていない、やはり混乱した部分があると私は思うのですが、確認させていただきたいと思います。  それでは、このケリー発言の真意というものは防衛大綱の基本的な考え方評価したもの、このように考えておるのか、それとも別表に示された装備の量も含めた全体を評価したものと考えておられるのか、これをお伺いいたしたいと思うのです。
  299. 西廣整輝

    西廣政府委員 ケリー発言の、私が先ほど申し上げた点は、冒頭発言であったわけですが、それは限定的かつ専守防衛といったような大綱の基本的な考え方について述べたものだと思います。そしてなお、別表の具体的な兵力量については、これまた私、記者会見のときに補足して申しておきましたけれども、別途、別表について過ぐる臨時国会防衛庁長官なり私が答弁したことについて、ケリーから改めて真意の質問がございましたので、別表についての我々の考え方を述べました。したがって、別表そのものの数字が一つも動かしてはいけないとか、そういった意味ではないということは明らかだと思います。
  300. 木下敬之助

    木下委員 長官、今言われたそこのところに混乱の原因があると思うのですよ。我々も大変混乱しておりますよ。大綱というものと別表というものがあって、大綱の水準というのは別表のことである。大綱の水準は何を意味するかといったら別表であり、また別表の水準という言葉もございます。大綱と別表というのは同じものなのか、大綱と別表の水準というのは同じものなのかとか、この辺の関係、昔はかなりぴしっと一体だったのがいろいろ少しずつずれてきておるところに何度やっても混乱の原因が起こると思います。そういう意味で、長官自身にもきょうひとつ、時間ありませんけれども、よく聞いていただきたいと思います。  防衛庁は、昨年二月二十一日の本委員会の答弁や昨年十一月六日の参議院予算委員会の答弁などにおいて、大綱の別表については、もし必要があれば柔軟に見直すことも可能である、こういう趣旨の答弁をしておられます。本来、大綱の本文と別表というのは表裏一体、不可分のものではないのかと考えるのですが、この点を明確にしてください。
  301. 加藤紘一

    加藤国務大臣 「防衛計画の大綱」と通常言っております言葉では、私たちの整理では三つのレベルがあると思います。一つは、本文にあります防衛についての基本的な考え方でございます。これには、例えば日本防衛日本の自衛隊と日米安保でやります、それから基盤的な防衛力の発想に立ちます、こういう哲学部分であり、また総論部分であります。それからもう一つは別表がございます。それからもう一つは、いわゆる別表の中の陸海空の間仕切りの問題があろうかと思っております。  私たちが最近申しております、別表について弾力的に考えたいと申しますのは、我々の国の防衛力整備を効率的に考えていった場合に、間仕切りまで全然動かしてはいかぬという考えでいったならば効率化ができないところが出てくるのじゃないか。例えば、例示いたしましたのは、いわゆるナイキ、ホークの区別というのはそれぞれ陸海空で変えてあるわけですけれども、最近の装備体系からいったら新しいパトリオットというのは高いところも低いところも両方見られるわけですから、これを統合的に運用するといったならば間仕切りの問題がその一つの障害になってくるわけですね。合理性を考えて追求していったらその辺はもう少し白紙的に考えた方がいいのじゃないか、そういうような第三番目レベルの弾力性について言っておるわけであります。  そして、大綱自体、全体的に言うならば、数はかなりしっかりと書いてありますけれども、質的な向上というものは弾力性を持たして書いてありますし、それから別表の片隅に書いてありますが、装備体系も現在入手し得るものの装備体系考えるとこうなんですよと言っていますから、その二つで弾力性というものはもともと考えておったのではないかな、こんなふうに整理しております。
  302. 木下敬之助

    木下委員 長官、私は大綱を見直すことがいい、悪いという論議はしてないのです。今長官は大綱を見直すということもあっていいのじゃないかと言っておるように聞こえるので、そういったことも大綱を見直すことの中の一部なんだと言われればそんな混乱は起こらないのですね。ところが、大綱と別表というものを置いて、別表を見直してもこれは大綱を見直したことにならない、このように言われてくる。まして、今は別表とそれから線引きのような区分けを言われました。今の論議でいうと、区分けを見直しても別表を見直したことにならないという言葉がまた存在してくるかもしれません。こんなことをしていれば混乱するのは当たり前ですよ。ぜひ諸外国にも通用するような混乱をしない使い方をしてください。  お伺いいたします。これもごく普通の言葉として聞くのです。そちらの考えを聞いておるのじゃないのです。普通の人がどうとるかを聞いておる。混乱しないためには普通の人がどうとるかというのが大事です。別表を見直しても大綱の中身を見直したことにはならないというのですか。――いや、あなたは混乱を招いておる。混乱を招いている人の話を聞いているのじゃないのだ、この混乱を招いた人の。混乱はないと言っているから。どこが混乱かは私と防衛庁長官と話さなければわからないですよ。それはだめです。こういう大事なところだ。こんな大事なところでは出てくることはないですよ。
  303. 西廣整輝

    西廣政府委員 私、大綱をつくったとき関係しておったものですから御説明させていただきたいのですが、別表であろうと大綱を変えることには間違いございませんが、この点を御理解いただきたいと思いますが、大綱には、先ほど長官が申し上げたように、大綱本文と別表がございます。考え方は本文の中に書かれておりまして、別表はそれを具体的数量にあらわすとどういうものかということでありまして、それについては装備体系等が変われば当然変わるということで、大綱そのものが別表の数量が変わることも予定して書いてあるということであって、大綱を変更するものであることは間違いございませんが、別表については大綱そのものが、これが変わっていくことも予想をしておったという点が違うということでございます。
  304. 木下敬之助

    木下委員 そのように言われますので、これは国際的な問題ですからそういう意識でもって確認してください。  大綱を見直さないということは別表も区分けもさわらないということを意味しますか、大綱を見直さないということは別表も区分けもさわらないということを宣言したことになりますか、長官
  305. 加藤紘一

    加藤国務大臣 私たちは、いわゆる大綱の見直し初めにありきというような態度はとりません。ただ、我が国防衛力整備についてその合理性と、それから大変貴重な財源をいただいておるわけですから、それのより効率的な追求を考えたならば、こういう部分は、当然直さなきゃならぬことは国民の皆さんからの御議論もいただきながら直さなきゃならぬときがあるのじゃないか。それで、その一つとして、例えばまず今回の中期防衛力整備計画のときには中間仕切りも動かさないようにしてやったけれども、今度、今後三年後か五年後に見直すときにはその部分は白紙で柔軟に考えていくということも必要なのではないか、そういうことでスタートいたしておるわけでございます。  言葉の定義につきましては、ただいま防衛局長が言ったとおりでございます。
  306. 木下敬之助

    木下委員 ただいま防衛局長の言ったとおりではだめなんですよ、あの人は混乱の原因の人だから。私は、まだ混乱を招いていないのでできれば混乱をとめたいと思っている人だから。私の方のでいいのかどうかを話してくださいよ。大綱を見直さないということは、別表も線引きもさわらないということですか。これは、例えばアメリカに対してじゃなくて諸外国に対しても、我が国はこの大綱は見直しません、こう言っておきながら別表をいじったり枠組みをいじったりすれば、向こうからは文句が出るでしょう。これは国際的にそういうものじゃないですか。大綱をさわらない、見直さないということの意味するものをもっとはっきりとおっしゃってください、こう言っておるのですから、答えは、それがそのとおりかどうか、長官、言ってくださいよ。大綱を見直さないということは、別表もその枠組みも変えない、中身はさわらないということを意味するのですか。
  307. 西廣整輝

    西廣政府委員 私どもは混乱を招いておるとは思わないのですが、米側の言ったことについては、先ほど申し上げたように、米側の申した大幅な改定というのは防衛計画の物の考え方を言っておるのだということをまずお答えしておきたいと思います。  それから、大綱の見直しについては、政府としてはまだ見直しということを言ったことはございませんので、それについて混乱を招くおそれは全くないというふうに考えておりますが、先ほど来申し上げておるように、別表であろうと本文であろうとあるいは情勢判断であろうと、直せばそれは見直してあります。ただ、その場合、それが大綱そのものの基本的な改定であるのかあるいは大綱の物の考え方に従った改定であるのかという二つがあろうかと思います。
  308. 木下敬之助

    木下委員 だから、そういうことをいろいろくっつけるとわからなくなるので、もっとこの辺は――何も大綱を見直すなと言っておるわけじゃない、大綱のままでできるのですか、シーレーンはできるのですかと前に言い、今回は洋上防空がそれでできるのですかという話、もうきょうはそこまで入る時間があるかどうかわかりませんけれども、そういう話を我々がしておるときに今のようなことを言っておられる。大綱の見直しは言ったことがない、大綱の別表については必要があれば柔軟に見直すことも可能である、大綱の見直しは言ったことはないけれども別表の見直しは可能であると言っておる。これはどう解釈するのですか。これは混乱を招くなど言う方が不思議だと思いますよ。総理、どうですか。
  309. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは大綱の中に科学技術の変化その他によって装備の見直しはあり得ると書いてあるのですから、だから、別表の中の装備の見直しあるいは間仕切りの変化、それは大綱自体がもう認めておるわけなのです。ですから、それをやるということは大綱を見直したことにはならないのです。大綱に従っておるということなのであります。  ただ、間仕切りをどの程度やるかという点は、これは規模やその他考える必要がありますよ、それは。しかし、大綱自体に間仕切りを変えたりあるいは別表の一部の内容を装備の変化として変えられる余地は認めておるのですから、別表を少しそういうふうにいじったからといって大綱を見直したことにはならない、私はそういうふうに考えております。
  310. 木下敬之助

    木下委員 では総理、お伺いします。これももうこれぐらい深くやればやったつもりなんです。大綱は見直さない、大綱の中身は見直しません、このように日本が諸外国に言って、そして別表をああ変えこう変えしていろいろなものを入れていろいろな能力がついてくるが、諸外国に対して日本は大綱を見直してない、こう言い切っていくわけですか。我が国はそういう方針で日本語というものを使っていくのですか。
  311. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大綱にそう決めてあるのですから、ですから、大綱に従っているということなのです。
  312. 木下敬之助

    木下委員 まさしく納得がいきませんし、それは、そのような考えなら混乱を招いていないとお思いになるのも無理はないかもしれません。しかし、これはまさに混乱でありますし、現に私もきょうこれだけ聞きましたけれども、そんなややこしいことを言わなくて、ただ、中身をちょっとでもさわったら、それはほんの一部で基本的な大綱の考え方は変わっていないけれども、基本的には変わっていないけれども大綱は見直したのだ、こんなように整理していったらいいじゃないですか。加藤長官のようなこれからの方には、大いにそのように国民が堂々と同じ基盤で議論のできるところで話し合っていただきたい、こう私は思います。――お答えになりますか。
  313. 加藤紘一

    加藤国務大臣 諸外国で混乱があるという御指摘でございましたけれども、私たちはそういう大きな混乱があるとは思っておりません。  それで、SSCの場で、最近私とか防衛局長国会で答弁していることはどういうことなのか。中間仕切りの話がありまして、こちらが整理しまして、防衛局長や次官が説明した。「ああ、そういうことですか。わかりました。」とケリーさんがおっしゃったという報告を受けております。  したがって、累次私たちが答弁しておりますように、大綱の見直しは現在考えておりません。ただ、弾力性がある範囲内で行っているということで国民にも御説明申し上げてきましたし、外国にも混乱がないものと思っております。
  314. 木下敬之助

    木下委員 やはりそれは納得がいきません。この問題は納得がいきません。しかし、そのような形で言い張るとおっしゃるのなら、ちょっと最後に確認しておきたいんですが、確認の前に、またもう一つだけ確認させていただきます。  防衛庁長官、昨年六月の日米防衛首脳会談において、長官がアメリカに対し、日本は洋上防空のために努力すると表明しておられましたが、これはいわゆる国際公約と、このように受けとあてよろしいですか。
  315. 加藤紘一

    加藤国務大臣 あのとき私たちは、最近、海上交通路の安全確保、シーレーン防衛とかいろいろ考えてみても、空からの経空脅威というのがふえています。そして、かなり技術的な進歩が諸外国に見られます。したがって、これからいろいろ洋上防空の体制考えていきたいと思うんだが、その際にOTHレーダーも有用かもしれません。したがって、その情報の提供をお願いできませんか、こう申し上げました。したがって、私たちの考えておる政策をこちらから説明して、そして情報提供をお願いしたのであって、いわゆる公約というものではございません。
  316. 木下敬之助

    木下委員 前に鈴木総理がシーレーンを約束して帰ったときは、公約というふうに考えて進んだと思っております。その点もまた納得いきませんけれども、最後に質問いたします。  防衛庁は、先ほど論議しましたように、別表に関しては大綱とは別に必要に応じて弾力的に見直せる、このように考えておられるのならば、今申し上げましたような洋上防空体制を確立するためとかそういったような理由で、三年後の中期防のローリングの際にあわせて別表を見直すということもあり得るわけですね。お伺いいたします。
  317. 加藤紘一

    加藤国務大臣 現在私たちは中期防を去年の九月に仕上げて、そしてそれに基づいて六十一年の予算を要求し、そして今御審議を願っている段階でございます。したがって、現在のところ三年後にどのようなローリング、また見直しをするかということは全く決まっておりません。白紙でございます。  で、先ほど言いましたように、常に私たちは防衛力のあり方にむだがないか、効率を追求してまいりますから、これから三年後どういう結論になるかわかりませんが、そういう段階に改めて考えてみたいと思っております。
  318. 木下敬之助

    木下委員 時間がなくなりましたので、残りそうな諸問題を飛び飛びに質問させていただきたいと思います。  まず、建設大臣にお伺いいたしたいんですが、今国会でも円高差益還元ということでいろいろと論議がなされております。その中で特に電線類の地中化という問題が言われておりますが、これは本当に結構なことで、ぜひこの機会に真剣に取り組んでいただきたい、このように思います。通産大臣は前にお答えになっておられますので、建設大臣のお考えをお伺いいたします。
  319. 江藤隆美

    ○江藤国務大臣 先進国の中で空港からおりた途端に電線が、電柱がいっぱい立っておるというのは先進国の恥だと言う人がよくおります。建設省では五十八年からこの問題を取り上げまして、東京都内では馬喰町がやっておるわけでありますが、六十年から全国の十五の地域をモデル地区に指定しまして、これから十年間で一千キロ地下埋没をしたい。電線、電話線、キャブシステムと申しておりますが、おおよそ四千億をかけてやりたい、こういうことですが、本当から言いますと、やっぱり五千キロやりたい。五千キロやりますと、大部分の主要都市のメーンストリートからは電柱がなくなる。しかし、金がないものですから、何かいい知恵がありましたらひとつ応援をしていただきたいと思います。
  320. 木下敬之助

    木下委員 次に、同和対策問題でお伺いいたします。  部落問題の解決にはほど遠い現状と考えますが、地域改善対策特別措置法の有効期間もあと残り一年二カ月であります。この期間中に残事業を消化できる見通しはあるのか。また、法の有効期限後における施策の方向等について政府はどのようにお考えになっておられるのか。また、最近差別事件の多発化、悪質化が言われていますが、啓発面にも重点を置くべきものと考えますが、政府のお考えをお伺いいたします。
  321. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これはきのうも大原さんと随分長時間議論したところですが、地対法失効後の措置のあり方については、その成果を踏まえまして取り決めをしてまいりたいというふうに思います。そして、事業量については七千億円、これは来年度を含めて消化の予定で進んでおります。なお、同和問題を解決するための基本的な問題を幅広く議論するために、ちょうど本年の一月、地対協議会に基本問題検討部会、こういうものを設置いたしました。この答申を踏まえて真剣に対応します。
  322. 木下敬之助

    木下委員 時間がございませんので、次に農水大臣にお伺いいたします。  森林は国土保全、水資源涵養上極めて重要な資源でありますが、世界的にも酸性雨や発展途上国の乱伐等により地球の砂漠化が進行しています。我が国においても資金不足等によって多くの造林地が放置され、将来の森林資源確保は極めて困難な状況にあります。同時に、木材需要の減退と価格低迷の長期化によって林業、林産業は深刻な不況を克服できない状況であります。政府は合板等林産物関税の引き下げ、林業、林産業の衰退の歯どめ策として森林・林業、木材産業活力回復五カ年計画を策定して昭和六十年から実施しておられますが、具体的な施策としている項目とそのねらいの効果を明らかにしてください。
  323. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 お答えいたします。  今御指摘がございましたとおり、このところ山林が大変荒廃しておる、特に水源地が荒廃しておるという問題がございまして、これは治山治水等あるいは間伐促進をする、こういったことによって対応していこうという今姿勢を持っております。また、今御指摘がございました森林の活力回復五カ年計画、これについてでございますけれども、まず木材需要の拡大、これをやっぱりぜひともやることが必要であろうということで、例えば多くの人に目につくような建物、こういったものに対して特別な助成をしながらこういった建築を進め、木材というものはいいものなんだということを理解していただこうということが一つあります。  それから、木材産業の体質強化ということで、これは製材場あるいは合板産業、こういったところが非常に疲弊しているところがございます。あるいは過剰設備というものもありましょう。こういったものをスクラップしていただくということ、あるいはほかの業に転業していただく、こういったことのための融資等を進めようとしております。  それからもう一点は、先ほどもちょっと述べましたように、間伐というものがどうしても今必要なときが来ております。この間伐をきちんといたしませんと、やっぱり山そのものが弱くなってきて災害を起こすというもとにもなります。また、二十一世紀の時代にはどうしても必要な木材というものを確保するためにも今間伐を緊急にしなければいけない。そのための作業道、こういったものなんかもつくるようにこの五カ年計画の中で進めていきたい、かように考えております。
  324. 木下敬之助

    木下委員 最後に、造船産業対策についてお伺いいたします。これは総理にもお伺いいたしたいと思います。  今日造船産業は、世界的な船腹過剰により長期的に見ても相当の建造設備過剰が存在しており、かつ西欧造船諸国との摩擦や韓国を初めとする第三造船諸国の台頭などによりオイルショック以来の未曾有の長期不況にあります。まさに大変な状況であり、政府みずからが抜本案を打ち出し、将来の展望を示すことが行政の責任であり、焦眉の急を要する問題であると考えます。この造船産業対策は、幅広い需要の創出や業種転換等、通産省や他の省庁と深くかかわり合った対策が望まれるわけでございますが、現在、造船産業は運輸省の管轄下にございます。私は、運輸省の行政下にある造船業と車両産業を見るときに、このような産業が運輸省だけのもとにあるということに疑問を抱くものでございますが、総理並びに運輸大臣はどのような認識を持っておられるのでしょうか。また運輸大臣には、どのような展望を持ち、造船産業を発展させていこうとしておられるのかお伺いいたします。
  325. 三塚博

    ○三塚国務大臣 今日ただいまの海運、造船の不況は大変深刻なものがございます。さような意味におきまして、関係閣僚の協議を相進めてまいりますことも当然でありますが、主管省として本件を重大な政策の問題としてとらえながら、今海造審に、その対策はどうあるべきか、真剣な御討議をお願いを申し上げておりまして、それが出次第、具体的な方策、政策を進めてまいりたいと同時に、運輸省から今回解撤法を提出をさせていただきまして、船腹の調整を図りつつ、海運界、造船界の不況脱出の一つの突破口にしたい、こういうことで全力を尽くしておるというのが現状であります。
  326. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 運輸大臣が申し上げたとおりであります。
  327. 木下敬之助

    木下委員 運輸大臣、国鉄も大変でございますけれども、どうぞこちらもよろしくお願いいたします。
  328. 三塚博

    ○三塚国務大臣 わかりました、一生懸命やりますから。
  329. 木下敬之助

    木下委員 労働大臣にお伺いいたします。  造船産業の不況のしわ寄せを最も受けているのは、そこで働く労働者の皆さんでございます。昭和五十四年に全体の四〇%に及ぶ人員合理化を行い、あれから七年、造船産業は再び三〇%から四〇%に及ぶ労働者が雇用不安にさらされております。労働条件も悪化を続けており、これは六十歳定年制を五十八歳に引き下げるところが出たり、四十五歳以上の中高年層を対象に希望退職を募ったり、中小企業等では年間百五十時間前後の労働時間を延長しないとやっていけない、このような状況でございまして、一般的な時代の流れと逆行しておると思います。それほどひどいわけでございます。中でも生活費が一番必要な年配者に対して労働省として、特定不況業種・特定不況地域関係労働者の雇用の安定に関する特別措置法などによる退職後の手当て期間について特別配慮が加算できないか、政府のお考えをお伺いします。  また、雇用確保の観点からも重要なことでありますが、事業転換、再雇用、職業訓練等のための措置は実行できないものか、あわせてお伺いいたします。
  330. 林ゆう

    ○林国務大臣 お答えいたします。  造船業界は、ただいま先生おっしゃるとおり、大変な不況のさなかにございまして、特定不況業種及び特定不況地域の指定を受けておりまして、その中で離職をされる方がたくさんあるわけでございます。そういうことで、労働省といたしましては、雇用保険の失業給付を特別に最大限九十日分まで延長することになっておりまして、例えば五十五歳以上の離職される方に対しましては、個別の延長給付を含めると最大三百九十日の給付が行われるとか、また離職者に対しましては特に行き届いたきめの細かい対策をしたいということでございます。また、新たに就職をされようという方には、公共職業訓練施設の入校の時期を多様化をして、いつでも受けられるような方策をとりたいとか、あるいはまた専修学校とか各種学校への入学の、委託訓練の機動的なことに努めているわけでございます。  そういったようなことで、労働省といたしましては、これらの特別措置に加えまして、不況業種または不況地域からの離職者を雇い入れた事業主に対しても助成金の支給とかあるいはまた雇用調整助成金を出すとか、そういったようなことを合いたしておりまして、こういった措置を有効に活用させていただきたい、こういうことでございます。
  331. 木下敬之助

    木下委員 このような造船産業は、地域経済ということで考えてみますと、かなり労働集約的な産業でございまして、その地域におきましては企業城下町的な様相を呈しております。この中心企業が不況であるということは、その地方自治体にとっても大変なことでございます。  そこで、こういうところの経済の安定と発展という観点から、企業誘致を図る等の総合的な対策を講じることが可能となるよう政府内に運輸省、通産省、大蔵省、自治省、労働省等を含めた政府連絡会議を設置して対応に当たるべきだと考えますが、どうでしょうか。御関係の大臣の御答弁をいただきたいと思います。――通産大臣、おられません。では、運輸大臣と自治大臣くらいおっしゃっていただけませんか。
  332. 三塚博

    ○三塚国務大臣 たびたびのこの造船界の不況に対しまして、運輸省を中心に各省間の協議は進めてきたところでありますが、深刻化する今日の事態に対応し、関係閣僚とも相談を申し上げる、そういう意味官房長官の調整などもお願いしつつ、御意見の存するところに全力を尽くして進んでまいらなければならぬ、こんなふうに考えております。
  333. 木下敬之助

    木下委員 最後に、自治大臣。
  334. 小沢一郎

    ○小沢国務大臣 造船業の不況がいわゆる地域に非常に大きな影響を持ってくる、そういう地域におきましては、いわゆる地域経済対策という観点からも考えていかなければならぬと私どもも思っております。今後関係省庁と十分協力いたしまして対処していきたいと思います。
  335. 木下敬之助

    木下委員 時間が参りましたので、これで質問を終わります。ありがとうございました。
  336. 原田昇左右

    原田(昇)委員長代理 これにて木下君の質疑は終了いたしました。  次に、瀬崎博義君。
  337. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 まず、総理に伺うのですが、内需拡大の必要性、緊急性については、党派を超えてこれは一致しているのですね。では、内需拡大のために何をやるべきか。我々共産党は、大幅減税、賃金の大幅引き上げ、時間短縮それから社会保障の充実を柱として、内需の六割を占める消費支出の増大を図るべきだ、こう考えているわけなんですね。自民党の方は昨年七月十六日、宇野宗佑氏が会長をされている公共事業への民間活力導入に関する特別調査会が発表した民間活力導入についての第二次報告で、内需拡大のためには「減税と公共投資を拡大することが最も効果的である」と減税の有効性は認めているんだけれども、「が、その財源は極めて乏しく、財政再建の途上、財政支出に依存しない民間活力の積極的な活用による内需喚起こそ、現在取るべき最善の政策である。」として、結局民活が最善の政策、こういう主張になっているわけです。  我々は、この民活活用については大いに疑問を持っております。そこで、この民活について順次質問をいたしますが、最善の政策であるということが納得できるような御答弁をいただきたいと思うのです。  まず、自民党総裁でもある中曽根首相にお尋ねしますが、中曽根内閣の民間活力活用方針は、この民間活力導入についての第二次報告、これに沿って展開されていると考えてよろしいでしょうか。
  338. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今行政改革、財政改革を遂行中でございまして、財政が出動する余地がなかなかございませんので、やはりデレギュレーションを中心にする民活あるいは民間の知恵、民間の資金力をできるだけ動員して内需を喚起する方向に誘導していく、そういう仕事が進行中でございます。
  339. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 いや、私が聞いているのは、こういう考えに沿ってやっているのかということなんですが、大体今のお話はそうですね。  この中で、特に「不要の国公有地の民間への払下げによる新事業の創設、並びに民間活力を活用した大規模公共事業の推進が、財政再建と民間活力の活用という双方の目的を同時に遂げる最も有力な手段である。」こういう結論があるわけですね。この国公有地の民間への払い下げとそれから民活による大規模公共事業の推進、これが財政再建と民活活用の双方に役立つ最も有力な手段だ、こう言われているんですが、最も有力な手段だとする根拠を簡単に御説明いただきたいのです。
  340. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これはもう今率直に簡明に総理から御答弁のあったとおりです。デレギュレーション、これは規制緩和ですね、まずこれを、見直しを各省庁にわたってやってまいりましたし、今もやり続けておるところであります。そして横断道路も、これは民間の出資が八〇%、政府系の投資は二〇%、八対二というような形で民間活力を引き出そう。明石海峡、同様であります。そして国有地等の有効活用の推進、これも具体的に相当な成果を挙げて今日に至っておるわけであります。したがって、これなども既に新宿の西戸山住宅なども先ごろ売却に供されましたし、これらも事業化されていくのは目に見えております。  御承知のように、財政百姓の上からいって、アメリカの財政よりも日本の方が悪いことは御存じです。時間がかかりますから簡単にしますが、もし違うところがあるとすれば、それは貯蓄率が我が国は一八%あるということ、アメリカは五%であるということ。そうならば、相当な優遇策、相当ないわゆる税制措置によって民間活力を引き出すことは大いに可能である、こういう現実的な構想に立って語を進めておるわけであります。
  341. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私は、西戸山の問題だって厳しい批判を持っておりますが、きょうはそのことを論じようとは思いませんが、特に絞って国公有地の民間への払い下げ、これが財政再建と民間活力の両方に役立つんだ、こう言われておるわけですね。これは去年の参議院の予算委員会を見ますと、随所で中曽根首相が答えていらっしゃるんですよ。例えば、「国家が持っておる国有地等につきましてできるだけこれを民間側に提供して、一方においては税外収入をふやす、それと同時に、一方においてはこれによって民間が企業活動等活発にして、そして景気の高揚に役立たせよう、そういう目的を持ちまして、今積極的に洗い出しを行い、部分的にはもう既に実行している、そういう進行状況」。ところが今江崎国務大臣が言われたのはただ一つ、西戸山の国有地の払い下げですね。一年前に「もう既に実行している、」一年たったら随分進行しているように思うのですが、ただあれ一つですか、言える実績は。
  342. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 なるべく時間を節約してと思って代表的なものを申し上げたのですが、六十年の十一月末までに五十八件、十五・三ヘクタール、それからもう既に六十年度全体で三十八・九ヘクタール処分が予定されております。
  343. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そこで、大蔵省にちょっと伺いたいのですが、実は民間への国有地の積極的な払い下げのために、五十八年三月三十一日付で大蔵省は、「当面の国有地の管理処分について」という理財局通達、よく言われる当面通達を出しているわけですね。この中で、市街化区域内にある国有地については二千平米以上、それから市街化調整区域にある国有地については五千平米以上、それから都市計画以外、つまり白地地域にある国有地については一万平米以上の場合は、契約締結の日から五年間、国の承認を得ないで転売することを禁止する、こういう条件つきにしなさい、こういうように言っているわけですね。  しかも、運用通達、国有財産第二課長の通達をみますと、留意事項として、国から買ったままの状態での転売、それから解体容易な地上物件の撤去を含む軽微な整備を施しただけでの転売、さらには仮設建築物をつくっただけでの転売、これは承認しない、つまり転売禁止だ、こう言っているわけですが、こういう制約をつけて入札に付し、売却をしている理由、簡潔にお答えいただきたいと思います。
  344. 中田一男

    ○中田政府委員 国有地を処分いたします通常の原則は一般競争入札ということでございますが、競争入札の場合は通常、条件を付さないで行ってきたというのがこれまでの行き方でございましたけれども、当面通達のころになりまして、国有地の処分をいたしました後に、単に転売で投機的な利益を目的として買うというふうなことは必ずしも好ましくない、やはりみずからが使う意思を持って買っていただくことが好ましい、このように考えて、先ほど御指摘のありましたような規模の大きい財産については、転売を禁止する条項を契約の中に設けまして売ることにしたわけでございます。
  345. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 今まさに大蔵省が答えたように、結局下手をすると、せっかく国有地を払い下げても、この転売で投機的な利益に利用される、これを防ぐ必要があるというので、そういう制限をつけた、こういうことなんでしょう。  委員長資料を、第一回目のものを配付をしていただきたいのですが……。
  346. 原田昇左右

    原田(昇)委員長代理 資料というのは、どの資料ですか。
  347. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 先ほどの土地の転売を示している資料
  348. 原田昇左右

    原田(昇)委員長代理 資料ナンバー幾つですか。
  349. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 資料1です。
  350. 原田昇左右

    原田(昇)委員長代理 資料1については、理事会で……。
  351. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 どこがいかぬのか、はっきり理由を言ってくださいよ。(発言する者あり)
  352. 原田昇左右

    原田(昇)委員長代理 それじゃ資料1については、後刻理事会において協議させます。
  353. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 質問に使いたい資料として出しているわけですから、ぜひこれは配るようにしていただきたいのです。
  354. 原田昇左右

    原田(昇)委員長代理 瀬崎委員の御提案でございますが、理事会において後刻協議をしていただきます。(発言する者あり)瀬崎君、続けてください。
  355. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 こういう資料を問題だと言って抑えること自身……(「抑えてないよ、そんなものは」と呼ぶ者あり)抑えているじゃないか。ということは、やっぱり結局、こういう資料が非常にこたえるということを意味するわけなんですね。  今江崎大臣が答えられたように、確かに民活対象財産として国有財産を処分していることは事実ですね。そこで、五十九年度末まで民活対象財産を処分をしたこのリストが大蔵省から出ているわけです。ですから、このリスト、これは四十六件、十二万四千七百三十九平米なんです。これについて、この大蔵省の資料には、省庁名、口座名、所在地、数量、契約方法、相手方、処分年月しか書いてないのです。しかもその相手方というのは、法人、個人と書いてあるだけなんです。     〔原田(昇)委員長代理退席、委員長着席〕  聞きましたけれども、あの旧司法研修所跡地については、入札時点でこの結果を公表するという条件つきだから発表しているが、他は発表できないということで知らされなかった。それで私の方で調査をすることとなった結果を今資料としてお配りしようとしたけれども、とめられたということなんですね。ですから、ごく簡単にここで説明します、長々やる時間なんかありませんから。  まず第一に、九州郵政局警固特号宿舎、これは千三十平米で、郵政省から六十年の回月三十日にハロー殖産に入札で売却された。ところが、これは何と即日、公建という会社に転売をされ、さらに七カ月半後アクト企画に転売をされて、現在なお未利用状況です。  それから林野庁が入札で五十九年二月八日に緑川林業に売った熊本営林署上熊本三丁目宿舎二千六百八十六平米、これは十三日後転売で、約半分がエイピーシー商事、半分が肥後相互銀行に行っているわけですね。エイピーシー商事はスーパーです。  それから林野庁の福山事業区福山貯木場四千五百五十一平米、これは林野庁から入札で六十年四月八日アトラスほかに入札売却されて、これが複雑な転売になるのですが、要は、福山電子センターとか日本合繊に転売をされて、大部分が未利用。  次に、林野庁が五十九年三月九日に四国大丸不動産に入札売却した高知営林局宮脇北宿舎、これは千二百九十一平米、これはそのうちの約半分が七カ月後に永禄建設に転売されて、これも未利用。  それから大蔵省所管の、これは特待会計ですが、陸上自衛隊広島地方連絡部宇品分駐所千八百四平米、これは五十九年七月十八日山田木材に払い下げられ、島崎産業などに転売を経て、一年後に防府土地建物に転売、半分は山田木材がなお持っているのですが、これは末利用。  それから厚生省の大阪船員保険病院松之浜宿舎、これは泉大津で千六十三平米、これは一たん個人に六十年二月一日入札、売り払われるのですが、六日後転売で倉商という会社に売り渡され、未利用。  それから、国立療養所近畿中央病院、堺市の二千七百八十八平米、これは厚生省から六十年五月二十七日、大阪府土地開発公社に随意契約で二千七百八十八平米が払い下げられた。ところが十四日後、これが三晃自動車に転売をされております。  それから北海道財務局月寒第一宿舎、札幌市千百二十四平米、これは大蔵省から六十年の四月十七日入札で秀高に売却される。その二カ月半後、興隆衛士商に再転売されて、現在未利用。  それから札幌開発建設部山の手宿舎、これは札幌市千四西九平米、これは北海道開発局から五十九年十二月三日、秀高に随意契約で売却、これが天富商事を通じて二カ月半後にアルファ・ホームに転売、こういった状況なんですね。まだありますけれども、時間の関係で省略します。  まず、二、三今私が申し上げた事実関係の確認だけしておきたいのですね。まず郵政省、昨年四月三十日、ハロー殖産に売却した、これが先ほど言ったように即日転売になっている。いかがですか。
  356. 中村泰三

    中村(泰)政府委員 お答えをいたします。  昭和六十年の四月三十日に一般競争入札によりまして、警固特号宿舎を処分しているのは事実でございます。転売の事実については承知をいたしておりません。
  357. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 林野庁が三件ありましたね。熊本営林署上熊本三丁目宿舎、福山事業区福山貯木場、高知営林局宮脇北宿舎、これはどうですか。
  358. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 お話のございました物件につきましては、公入札によりまして処分したものと思われますが、その後の転売の事実につきましては承知をいたしておりません。
  359. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 結局、先ほど民活のために払い下げていると言われているけれども、売ったという行為だけは皆さん報告できるのだけれども、そこの後どうなっているかわからないというわけでしょう。私が今調査してこういうことをここで報告したのは、民活に果たして役に立っているかどうか、ここが問題だからなんですね。もちろん、私の調べた範囲内で宅地分譲等、業者がみずから開発行為を行った部分は除外しているのですよ。要は、払い下げを受けた土地を土地転がし的に転売したと見られるものが十件に達します。しかもその多くが今申し上げましたように未利用状態になっている。  これは、この有効利用推進の元締めになっている大蔵大臣に伺いたいことなんですが、民活対象財産処分リスト、五十九年分に出ている四十六件がこういうことなんですね。国有地を払い下げ、即日転売とか六日後、十日後転売、こういう事態を国民感情が許すとお考えになりますかどうか。また、これだけの土地転がしが出てきますと、転がしでもうけるだけの余地を残して払い下げているのではないか、あるいは敷札が適切かどうか、談合があるんではないか、官業癒着があるんじゃないか、こういった疑問も持たれてくるんではないか。こういう国有地の払い下げでもなお、これで民活活用と言えるのかどうか、内需拡大に結びついていると言えるのかどうか、この点を伺いたいのです。
  360. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 この問題は、公開入札でやっておるということがまず第一ですね。それから、中には転売を禁じたものもありますが、今御指摘のようなことが、それは五十九年の資料のようですから、そういうことがあれば、私ども総務庁には行政監察の任務も責任もありますので、それをいただけば、各省庁と協力して、その結果が妥当であるかどうか、その点は調査をいたします。
  361. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 だから、この資料を我々は正々堂々と見ていただいて論戦をしたかったわけなんですね。  委員長、この資料の配付がとめられているので口頭でやっているのですが、理事とかそれから政府関係者にだけでも、これを配っていただいたらどうかと思うのですがね。(発言する者あり)
  362. 小渕恵三

    小渕委員長 瀬崎君。
  363. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 確かに読み上げただけでわかりにくいことは事実なんですよ。見れば一目瞭然わかるわけですから。委員会が終了すれば直ちに皆さんには見ていただこうと思います。(発言する者あり)
  364. 小渕恵三

    小渕委員長 質疑者は質疑を続けてください。御静粛に願います。
  365. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 先ほど読み上げた中で、例えば林野庁の熊本営林署上熊本三丁目宿舎、これは面積が二千六百八十六平米あって、もちろん市街化区域内にあるわけですね。それから福山事業区の福山貯木場、これも四千五百五十一平米あって、市街化区域内にあるわけなんですね。  大蔵省にもう一遍伺いますが、もしこれが大蔵省所管の一般会計の国有財産であれば当然、転売制限がついてくるんじゃないですか。
  366. 中田一男

    ○中田政府委員 先ほど申し上げました通達は、大蔵省の理財局長から大蔵省の出先であります財務局長、財務事務所長にあてて、我々が処分するときはこういうルールでやりましょうということで縛っておるものでございます。
  367. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 だから、私が聞いているのは、これは確かに林野庁の特別会計の国有財産なんだけれども、普通財産なんだけれども、もしも一般会計所管の普通財産の国有地だったら、当然この転売禁止の制限を受けるでしょうと、こう聞いているわけなんです。
  368. 中田一男

    ○中田政府委員 そのとおりだと思います。
  369. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 これは熊本の方は、その上に老朽木造平家建てが六戸あっただけ、福山の方は、老朽木造の平家、現場作業所が一棟あっただけなんですね。だから、解体は極めて容易だし、だからこそ六日後転売てなことができるわけなんですよね。これがなぜ転売されていったのか。それは、林野庁長官の通達が五十八年三月三十一日付で出ているのですが、そこではわざわざ「「五年間の転売禁止」の特約は、地価が鎮静化している間は付さないこととしこと、この転売禁止条件を外しちゃっているわけなんですよ。せっかく転売されないように、投機的利益を防ぐためにといって大蔵省の通達でつけたものを、林野庁は外す、だから土地転がしにこれが利用されていくわけですね。  それで、農水大臣に伺いたいのですが、こういう国有財産を売却する場合に、土地転がしで不動産業者の投機的利殖に利用される、こういう事態はやっぱり防がなくちゃいけないんじゃないか。こういう都市地域にあるのですからね。それから、国民の側から見たら、これが一般会計の国有財産か、特別会計の国有財産か、そんなことはわかりませんよ。同じ市街化区域という条件のもとにあるのに、片方を買えば転売禁止の条件がつく、片方にはそういう条件がない、これは極めて行政上不公平ですね、不統一ですね。そういう点から見て、これはやっぱり農水省としても、少なくとも、十分と私は思いませんが、大蔵省の出した通達レベルのことは行政上やっておかなければならないんじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  370. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 林野庁におきましては、昨今のこの大変な林業関係の景況不況から、国有林野事業の経営が非常に難渋をきわめております。いわゆる赤字が出ておるわけでございます。必要な資金の調達等に、いろいろ自分で所有しておる土地を見直しまして、そういうものを生み出しまして処分をする、その収入をもって全体の事業運営をしなければならない。でございますので、相当数の、恐らく各般の国有財産の処分の大部分が国有林野事業であろうかと思われます。  それらの経験の中から、私どもは、土地を売り払いいたします際に公用、公共用が優先をいたしております。(瀬崎委員「長い答弁は要らない」と呼ぶ)そういう用途がないときには一般競争によりまして販売をするわけでございますが、数多くの一般販売競争をしてきた結果、土地の価格が鎮静化いたしておりまして、直ちにそういう地価上昇が見込まれないようなところにつきましては、極力条件をつけない売り方の方が我々としては非常に有利に売れる、売りやすい。そういう条件をつけますと、不落が随分と出る場合があるわけでございます。したがいまして、そういう客観情勢のあるところにつきましては、なるべく条件をつけないフリーの入札で売り払う方針で下部を指導しておるところでございます。
  371. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そういう答えをするだろうと思って、ちゃんと現場の写真も撮ってあるんですよ。これが福山の貯木場なんですね。ここにちゃんと、まだ現在福山貯木場の門柱も看板も残っているんですよね。福山市の、まさに都会のど真ん中なんです。山の中の土地ではないんです。これで、政府の中に二つの方針のあることがわかりましたね。  首相に伺いたいと思うのですが、大蔵省の方は、これは民活、有効利用されなくちゃいけないというので転売は禁止。片方は、とにもかくにも金になったらいいんだで売りやすい方法をとって、そんな条件はつけないと言っているのですね。しかし、そのどっちもが民活対象財産としてここに処理されているわけですね。一体どっちの売り方が今の中曽根内閣の方針なんでしょうか。これは総理に伺いたいと思います。
  372. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 もとより民間活力を引き出そうというわけですから、大蔵省の方法が私どもは妥当である。今のやり方については、しかしその場所を私が特定してよくわかるわけじゃありませんから、その場所をやっぱり確かめてみなければ、それが条件に合うのか合わないのか、今答弁があったようにその方が売りやすい、そうでないとむしろ損をする。やはりそれなり責任を持ってその衝にある者がやるわけですから、私はその売買をした当事者のあり方というものを是認したいと思います。
  373. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 方針は大蔵省の方がいいようだけれども、この処分は是認する……(江崎国務大臣「それは調べればわかる」と呼ぶ)調べるとおっしゃるのですね。じゃ、それは調べていただきましょう。  今は土地転がしの方を申し上げたのですけれども、次に、大手不動産会社が保有をして、しかも未利用状態で放置されておるものもあるのですよ。  例えば青森営林局仙台事業区、これは仙台市に二万七千三百十一平米なんですね。五十九年十二月二十五日入札、売却されているんです。買ったのは土地興業株式会社、あの熊谷組の不動産部門でしょう。もちろん未利用ですね。それから横浜地検西柴宿舎、これは横浜市にあって、千二百九十四平米で、六十年三月二十六日に入札、売却ですね。藤和不動産です。これも未利用です。それから最高裁事務総局金沢宿舎、これは横浜市、九百五十三平米、六十年三月二十七日入札、売却で、これはブドウ土地建物が落札しているのですが、これも未利用であります。それから、これは皆によく知られている旧司法研修所、六千七百八十六平米、昨年の九月五日入札、売却、大京観光ですね。このほかにも、未利用状態にあるものがなお五件、五千七百三十三平米あるのですが、これは個人や中小業者が保有され、転売もされているわけではありませんから、一々名前は挙げません。  それで、この大手不動産会社が所有する四件のうちで、売買契約に当たって転売禁止の条件とか二年以内着工五年以内完成という縛りのあるのは、あの紀尾井町の旧司法研修所跡地だけなんです。あとはないんです。私の調べたところでは、この四件の中には相当長期の未利用状態になる可能性のあるものがあります。それから、計画いかんでは、建てようと思っても付近の住民から反対が出てきて難航すると予想されるものもあるのですね。  実は、こういうことは政府の方からも事前に心配の声は出ておったのです。百二国会の参議院の予算委員会で、前の河本民活担当特命大臣がこう言っているのですね。「現在までは、小さな規模のものは大体競争入札で全部払い下げてきた。大きなものも原則として競争入札で払い下げたのですけれども、中には払い下げを受けたけれども、じっと暖めておって仕事をさっぱりしない。五年も十年も暖めて、その上で土地の値段が上がってきてから何か仕事を始める、そういうケースも相当数多いんです。それでは何のために払い下げたかわかりません。」つまり、中曽根内閣が今進めているようなこういう払い下げのやり方だと、結局じっと暖めておって仕事をさっぱりしない、五年も十年も暖めて、値段が上がるのを待ってから仕事を始める、こういう懸念もあると、これは最初から予想されておったことなんですね。それが大変残念だけれども、もう事実になってあらわれてきている。私が調査したのは四十六件の中の残念ながら八割程度なんです。それでこういう結果が出てくる。約半分ですね、問題があるのは。  先ほどの大蔵省の当面通達も二千平米以上が転売禁止ですから、それを少し下回るような形で分割していけばこれもひっかからぬという面もあるのですね。そういう点では、ざるとは言わないけれども、そういう危険も持っている。林野庁の方は、そもそももう転売禁止規定を外してしまっている、市街地にある土地であっても。こういう状態で今後どんどんどんどん売り払っていくとすれば、こういうことがまかり通るんだなということになれば、これは国有地が結局はやっぱり投機の対象にされる率をふやすだけだ、こう思うのですね。改めて江崎大臣に、このまま放置しておかれるのか、手を打っていかれるのか、伺いたいと思います。
  374. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 もとより公開入札ですし、高値で売ろう、これはやっぱり国のために役に立つ、国民の財産である、こういう前提がありますから、もしそれが不当、不正のものがあれば我々の方で厳しく監察する、これはもうさっき申し上げたとおりです。
  375. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 さらに、地方自治体との関係なんですがね。昨年も私はこの予算委員会で国有地処分問題を取り上げたのです。政府は、地方自治体に対しては高価格、支払い期間の短縮などいろいろ厳しい条件をつけまして買いにくくして、民間への払い下げを進めようとしているのではないか。こういった点について竹下大蔵大臣は、地方公共団体の意見を踏みにじるとか、あるいはその意思をできるだけ働かなくするようなことは考えていない、いささか一方的な見方じゃないかと反論されているんですね。  さて、この五十九年度の四十六件のうち、自治体への払い下げは二件しかないのですね。二件のうち一件は大阪府土地開発公社に売却されたが、結局三晃自動車に転売されている。つまり、民間への払い下げと同じことになっている。自治体へは一件だけなんですね。  果たしてこの四十六件について、地方自治体からの買い受け申し入れは一件しかなかったのだろうか、この点を伺っておきたいのです。
  376. 中田一男

    ○中田政府委員 民活財産の選定に当たりましては、あらかじめ地方公共団体に我々が処分できる予定の土地を提示いたしまして、そして使う予定があるかどうかということを確かめてみまして、使う予定があるということがはっきりしておりますものは、大規模なものは別ですけれども、通常のものはすべて民活財産から外しておりますので、本来ならここに選定いたしましたのは全部民間に売却されてもしかるべき性格のものでございます。しかし、一回そういうふうに交通整理をいたしました後から、地方公共団体から、気が変わった、どうしてもここは欲しいというふうな話があった場合には、決してもう済んだことだからだめだというような取り扱いはしておりませんで、もう一度話を聞いて、なるほどそれは妥当な使い道であるということであれば、民活対象財産であっても地方公共団体に売却する、こういうことをやっております。その件数が今言う一件とか二件でございます。
  377. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 さて、実際どうかということなんですが、福山市の広島大学生物生産学部川口農場跡地は、その約半分の千九百六平米が地元の不動産会社に売却され、これは宅地分譲されております。この大蔵省の民活対象財産処分リストにこれは載っております。実は、この残り約半分ですね、千九百九十九平米があるのですよ。これについては、福山市が公園に活用する計画を持っていたのですが、文部省側は時価売却を主張して譲らなかった。結果は、現在未利用なんですね。まことにもったいない話なんです。もともとこの土地は、十五年前に福山市が広島大学の用地として時価の半額で国に譲っているのです。だから、それをいわば返してほしい、そういうことが実態なのに、返す段になったら国は時価を押しつけてきたわけですね。まあ、貧すれば銘するということわざもありますけれども、中曽根内閣のやり方は、国の役割、責任を棚上げしてしまって、国自身が不動産屋化している、こう言われても仕方のないような行為じゃないかと思います。  やはりこの件については、国民共同の財産である貴重な国有地を真に国民のために生かす、こういう点で文部大臣、考え直していただくべきじゃないでしょうか。
  378. 西崎清久

    ○西崎政府委員 ただいま先生御質疑の点につきましては、広島大学生物生産学部川口農場につきまして、五十九年度に千九百平米、株式会社の青果関係の会社に処分いたしております。  広島大学の土地処分につきましては、多岐にわたる土地がございまして、この点につきましては、広島県、福山市、広島市、関係方面といろいろ折衝を重ねており、まだ継続中のものが多々ございまして、その一環において今後いろいろ検討する予定でございます。
  379. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 これは大臣に伺っておきたいのですが、そのときに、これはやはり特殊な事情があるのですね。もともと福山市が割り引きして国に差し上げた土地を返してくれというのですから、こういう点では、確かに大蔵省のいろいろな新しい通達があって、地方自治体に余り割り引きするなということになっているのですが、少なくともこういうものは特別配慮が必要だと思いますね。文部大臣、いかがでしょう。これは文部大臣。
  380. 西崎清久

    ○西崎政府委員 国立大学の土地は特別会計に所属しておりまして、先生御承知のように、移転統合その他によりましては、移転統合に必要な経費をそれによって賄うというふうなシステムがございます。したがいまして、できるだけ収入を上げる形での処分ということが原則でございまして、多くは市街地等にございますので、公共用、公用というのが原則でございますが、公共用、公用以外のものについて、小さい面積のもの等については民間ということもあり得るわけでございます。そういう意味におきまして、広島大学は東広島市に移転統合がございますので、この関係は十分今後ともいろいろ検討してまいりたい、こういうふうに考えております。
  381. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 せっかく有効利用したいという公共団体に、やはりなかなか制約を厳しくしていることがこれでわかりますね。  経企庁長官にちょっと伺いたいのですが、六十年度のリボルビング報告「一九八〇年代経済社会の展望と指針」の中に「民間活力発揮のための環境整備」という項があって、実績として「国有地等の有効活用(六十年八月末現在の処分件数、国有地四十六件、国鉄用地二件)等も推進されてきた。」こう書いてあるのですが、四十六件の国有地とは、今まで論議したこの四十六件だと思うのですね。一体経企庁は経済審議会にどんな資料を出したのか。どんな資料に基づいてこういう状態にある国有地を、有効活用は推進されたと評価されてきたのか。また長官自身、国有地は売れさえすればそれでいいんだ、売却実績さえ上がればそれで民活が進んだということとお考えなのか、伺っておきたいのです。
  382. 勝村坦郎

    ○勝村政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のありました資料は、本年度の「展望と指針」リボルビング作業といたしまして「経済審議会報告」というものを作成いたしました。その中に参考資料といたしまして、これまでの民間活用の主な例といたしまして、規制緩和その他の事例を掲げてございます。その中に、これまで国有地等の有効活用のために、御指摘のような土地の払い下げその他が行われているという指摘をしているわけでございます。(瀬崎委員「中身は」と呼ぶ)中身につきましては、この国有地の払い下げのあり方でありますとか、あるいはその後の利用の状況等については、経済審議会自体では御審議をいただいておりません。
  383. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 国有地の払い下げは、結局売っただけなんですよ。民活用、民活用と言うけれども、民活に実際に役立っていると言えるような実態は、我々の調べたところでは見当たらなかった。じゃ、財政再建に役立っているか。六十一年度予算で、一般会計、特別会計合わせて、国有財産の売却というのはどれだけの税外収入が上がっているのでしょうか。見込んでいるのかということですね。
  384. 中田一男

    ○中田政府委員 六十一年度、一般会計の国有地の売却収入は千二百二十七億円と見込んでおります。
  385. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 一方で軍事費は三兆三千四百三十五億円、昨年度より二千六十四億円増大になっているわけですよ。結局これは、貴重な国民共同の財産を売り払って軍事費の増加分に消えてしまった。軍事費太って国やせる、こういうことではないかと思うのですね。今の大きな国の財政事情から考えて、焼け石に水もいいところだと思うのです。  民活、民活と、民活が内需拡大と財政再建の一挙両得の切り札のように言われて宣伝されてきたけれども、結局その一つの柱である国有地の払い下げの実態はこういう状況で、内需拡大にはもちろん、財政再建にも何も役立っていない。ただ、従来のペースよりもハイペースで国有地を売りに出した、国有地のバーゲンセール、こういうことになっているのではないだろうかと私には思えてならない。これが五十九年度です。だから、こういうことはそのままどんどん続けられる。私が指摘したようなこういう遺憾な傾向はますますひどくなるのではないかという心配がされます。  ですから、中曽根総理、国有地は国民共同の貴重な財産としてもっともっと大事にして、やはり公共利用優先を貫くべきだ。内需拡大は、最初に言いましたように、大幅減税とか大幅賃上げ、時間短縮、社会保障の充実、まさに消費拡大中心でやるべきだ、こう思いますが、いかがでしょうか。――総理です。
  386. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 林野庁は、これも非常に財政難にあえいでおる。それが林野庁のために役立つ、公開入札をした、それを何か歪曲したようなお話は困るので、一々速記録を調べまして、私の方でもよく調査をしたいと思っております。もちろん国民の財産を役立たせることにおいては、政府責任があります。責任を全うしたいと思います。
  387. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私は総理見解を伺っているのです。総理が財政再建にも内需拡大にも役立つんだと言って、どんどん払い下げられておるでしょう。本当にそうなんですか。そこを聞いておるわけですね。
  388. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 役立っているものもあるし、おいおい役立ってくるだろうと思います。
  389. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 次は、国庫補助負担金カット問題と財政問題について伺いたいと思うのですね。  これはもうぜひ自治大臣に答えてもらわなくちゃいけないのですが、昨年の百二国会に国の補助金の一律カット法案が出ましたね。そのとき参考人として出席した、例えば全国市長会会長代理の大武幸夫福井市長は、「私どもは、このような国庫補助負担率の一律引き下げについては断固反対」とした上で、「昭和六十年度限りとすることを厳守していただきますよう、」「今後このような国と地方の信頼関係を損なうようなことは二度と繰り返されてはならない」こう強調されておるわけですね。これは、そのとき相当な数の地方自治体代表の方が意見を述べられています。また、地方公聴会でも意見を述べられていますが、共通して、六十年度限りを厳守せよ、二度と繰り返すなど強調されておるわけですね。  この地方自治体の意向を最大限尊重すべき自治大臣として、わずか十カ月前のこの国会で述べられた各自治体の痛切な声をどう受けとめていらっしゃるのか。また、地方自治体がかくも強く、一年限り、繰り返すなど強調をされた理由をどう考えていらっしゃるか、伺いたいのです。
  390. 小沢一郎

    ○小沢国務大臣 いわゆる一年間の暫定措置であるというふうに六十年予算編成の際になされまして、六十一年以降につきましては、事務事業の見直しとかあるいは権限の移譲の問題とかそういうことの中で、我が省も、この補助金につきましては単に国の財政が厳しい、したがって地方で負担してください、そういうことではいけない、やはり今申し上げましたような考え方の中で、そういう論議の中でこの国と地方の費用の負担のあり方、そういったものを考えていくべきである、そのように主張してきたわけであります。  昨年一年間、関係閣僚会議あるいは検討会の報告等の議論がいろいろなされまして、六十一年度の御審議いただいています予算編成におきましては、いわゆる社会保障関係の一部でございますけれども、事務の見直し、権限の移譲等も行われまして、私どもが従来主張してきた、それはまた地方公共団体の主張でもあると思うのですが、そういう考え方のもとに立って予算編成がなされた、その一方におきましていわゆる臨時異例の補てん措置も行われまして、この点につきましては地方公共団体も納得していただいておるものと考えておるわけでございます。
  391. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 カットに対して、臨時異例の補てん措置を講じたので、自治体も納得したとおっしゃった。それはまた、おいおいいろいろ質問していきたいと思うのです。  このときやはり地方自治体の長が国庫補助負担金カットで一番心配をされたのは、これが社会保障、福祉、教育、公共事業の後退につながらないかということ、もう一つは、地方財政にしわ寄せされないかということだったわけですね。  それでその第一の点、つまり社会保障などの水準の後退につながらないかという点では、これは百二国会で中曽根首相が、「これは中央と地方との負担区分の調整ということでございまして、これを受けられる受給者については変化はない。したがって、後退とは考えておりません。」この法案によって後退するとは考えていない、また後退があってはならない、こういうふうなことを繰り返し繰り返し答えていらっしゃるのですね。これは、今度六十一年度から三年間やろうというこの国庫補助金カット特例の場合でもそのお考えにお変わりがないのかどうか、総理に伺いたい。――総理ですよ。
  392. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私も御答弁を申し上げた一人でございます。いわゆる受給者等々に対する受給そのものが後退するという状態にはないというふうに申し上げました。今後も、その精神で対応していくつもりであります。
  393. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 今度は中曽根首相に尋ねますから、そう指名してくださいね。  地方財政にしわ寄せされないかという点でも、中曽根首相は、「地方には迷惑をかけない、そういう原則でいろいろ処理しております。」これは我が党の簑輪議員に対するお答えなんですね。この点も、この六十一年から三年間の補助金カット特例の場合においても貫かれるのですか。
  394. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 御迷惑をかけないように、非常に苦しい手段をいろいろ使ってやっております。
  395. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 この方の資料の配付はいいようですから、配っていただきたいのです。  補助金カットの仕組みというのは、これは非常に複雑なんですね。ですから、できるだけ簡単明瞭かつ、わかりやすく話し合いをしていきたいと思うのです。こちらもそのつもりで話すので、政府もその点を子として答弁をされたいと思うのです。  今お配りしている資料2、ここには六十年度、六十一年度の国庫補助負担金カットによる地方の負担増とその財源対策の一覧を載せておきました。  まず、昨年、六十年度の国庫補助、負担金の一律カットの場合どうたったか。これによって地方自治体の財源不足は五千八百億円と試算をされました。一番上の左の端のところの数字です。この地方財源不足に対して国のとった対策というのは、経常経費での不足分二千六百億円については、地方交付税の特例加算を一千億円行った。これは従来の補助金を交付税交付金に置きかえたということで、性格の違いはあるにせよ明確に国が補てんした、こう言えるものですね。経常経費の残る不足額千六百億円と投資的経費の不足額三千二百億円の合わせて四千八百億円は、とりあえず建設地方債の増発で穴埋めをすることとされたわけですね。だから、確かに資金繰り上は六十年度地方自治体に財源不足は起こらなかった、これは言えるでしょう。  ところが、この地方債増発四千八百億円のうち経常経費の不交付団体分六百億円、投資的経費の補助金カットの二分の一の一千億円、同じく投資的経費の公共事業拡大分の一千二百億円、合わせて二千八百億円は全額、これは地方自治体の負担で償還していく。地方自治体が始末をする、こういうふうに言われた方もありますね。もっとも自治省としては、将来各年度ごとに地方財政計画を立てて、そこで財源不足が起こるならばそれなりの補てん措置を講ずるつもりだ、そういうお考え、これは自治省として当然ですね。だけれども、現時点では、通常の交付税にこういう借金の返済のお金を特別に加算するという約束は行われていないという点で、我々は地方負担に転嫁される危険大だ、こういうふうに考えてここには地方が負担するものと挙げました。  それから、地方債増発四千八百億円の残り二千億円については、まず一つは一昨年十二月二十二日の大蔵・自治両大臣覚書によって、経常経費の交付団体分一千億円は、六十六年度以降地方交付税に特別に加算する、覚書には確かにそうありますが、注釈がついているのですね。これは今後「両省間で調整する」と、一種のペンディング、しかし、一応国が補てんする意思は表明しているということにしましょう。  それから、投資的経費の補助金カットの残り二分の一に当たる一千億円は、その元利償還金をこれは特別に交付税に加算するとしておりますから、国が補てんするということをはっきり決めているわけですね。  そうしますと、要は、この表の一番右端を見ていただきたいわけなんです。今のことを整理し直すと、結局補助金カットによって生じた地方財源不足五千八百億円のうち国が負担すると言っているのは二千億円。国が補てんするという約束はあるけれども、今後協議するということになっているので、ちょっと危ない、これが一千億円。それから現時点では、地方自治体が負担するというふうになっているのが二千八百億円。  以上の私の説明、大筋で間違いないか、確認しておきたいと思います。
  396. 花岡圭三

    ○花岡政府委員 大体ただいまの御説明のとおりでございまして、この「地方負担」とありますけれども、先生も先ほどおっしゃいましたように、元利償還につきましては後年度措置をするというものでございます。
  397. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そこで、六十一年度なんですね。これは三年間の大幅広範囲カットになるわけでありますが、しかし、手法は六十年度の一律カットのときとほぼ同じですね、踏襲しております。ただ、新しい手口が二つ加わっているわけでしょう。一つは、中央と地方の役割分担、先ほど自治大臣が言われたことですね。そこで、これは伺いたいのですが、この役割分担の見直し、具体的に言いますと、保育、児童、老人、障害者の福祉施設の入所措置を機関委任事務から団体委任事務に移行させるわけでしょう。さて、このことと社会保障や福祉の水準との関係、つまりこれが福祉の後退につながらないかという点について、政府はどう考えているのか、これは総理大臣に伺いたいですね。
  398. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 あるいは厚生省の方からお答え申し上げる方が適当かと思いますが、とりあえず私からお答え申し上げます。御指摘のように、老人ホームでございますとかあるいは保育所の仕事でございますとか、基本的な考え方といたしましては、やはり仕事の性質からいいましてできるだけ身近な行政主体、つまり地方団体のイニシアチブのもとで仕事を取り進めていくことが適当であろうというような考え方のもとに、御指摘のように、従来の機関委任事務から団体委任事務へというふうな切りかえを予定をしているわけでございますが、そのことによってそれぞれの行政水準が低下をするというようなことは毛頭あり得ないというふうに考えております。
  399. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 毛頭あり得ないとおっしゃいましたね。それは確認した上で、もう一つの新しい手口」はたばこ消費税の引き上げを絡ましてきたことで、六十一年度の国庫補助負担金カットによって地方財政に生ずる財源不足は、これは普通会計だけですが、一兆一千七百億円と試算されていますね。資料2の二段目の左端のところがそれです。この一兆一千七百億円の地方財源不足のうち、経常経費系統の不足額六千百億円に対しては、まず地方たばこ消費税の引き上げによる増収分千二百億円を充当する。次いで、地方交付税の特例加算千二百億円を行う。これは国が特例加算をするわけですが、ただし、この額というのは国のたばこ消費税の引き上げによる増収額相当なんですね。つまり、この合わせて二千四百億円というのは、国と地方という別はあるにせよ、たばこ消費税の引き上げによる増収分を引き当てたということなんですね。残る三千七百億円の不足額は建設地方債の増発で穴埋め、こうなっているわけなんです。こうなりますと、補助金カットによって起こってくる地方財源不足を直接国民の負担で穴埋めした、こういうことになるのじゃないかと思うのです。  そこで、これは内閣総理大臣にぜひお答えいただきたいのですが、昨年のカット法案の審議のとき総理は、「国民の皆様方直接面接に対する影響力はいささかもないように、我々は十分措置してまいるつもりであります。」「今回の問題は国と地方との負担区分に関する問題で、国民の皆様方には直接影響を及ぼさないように、今後ともいろいろ、十分配慮してまいるつもりでおります。」こういうことを、私の見た限りでは三回か四回答弁なさっているのですね。今回はたばこの実質値上げで補てんしたわけでしょう。これは国民に直接影響を及ぼさないという方針の転換なんでしょうか。総理の答弁についてのことですから、総理からお答えいただきたいと思います。
  400. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これはやはり私が責任者でございますから、私からお答えをいたします。  細谷先生に対しても詳しくお答えを申し上げたところでございますが、率直なところ、ぎりぎり二千四百億というものをいわば何らかの負担増によってお願いをするか、あるいは赤字公債の増発にさらに増発、これをもって補うかというぎりぎりの選択に、十二月の二十日の日でございましたか、迫られたことは事実でございます。  したがいまして、これを最終的な判断といたしましてまさに臨時異例の措置として、税制調査会において税制の抜本策等が論議されておる今日でございますから、その抜本策にも触れないようにということで、事後に御了承をいただいてこの措置をとらしていただいたということでございます。その限りにおきましては、いわばこれが仮に財源として赤字公債であったといたしましても、これはいわばその金利にいたしましても、あるいは償還財源等につきましては後世代の負担に回すということになりますので、そのぎりぎりの選択をこれによって行ったということであります。
  401. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 結局、繰り返し総理が言った国民の皆様方直接直接に対する影響はないように配慮するというのは、一年限りという去年の補助金カット法を通すための気休め発言にすぎなかった、そういうことなんですね。(「言葉を慎め、気休めなんて」と呼ぶ者あり)事実はそうです。経常経費の不足穴埋めのための地方債増発三千七百億円と、投資的経費での不足穴埋めの地方債増発五千六百億円の計九千三百億円、これについては全く六十年度カットのときの手法がそのまま踏襲されております。したがって、もう説明は省略して、結論だけ確認しておきたいと思うのです。  六十一年度のこの補助金カット特例によって地方自治体に生ずる一兆一千七百億円の財源不足額は、まず国民の負担二千四百億円、国の負担二千五百億円、国が一応将来負担すると約束はしているが、今後大蔵、自治両大臣の相談にまつと一種のペンディング条件のついているやつが二千四百四十億円、そして地方自治体で始末をする、現時点でですよ、地方負担ということになっているのが四千三百七十億円、この点大筋において間違いないか、確認しておきたいと思います。     〔委員長退席、中島(源)委員長代理着席〕
  402. 花岡圭三

    ○花岡政府委員 数字はそのとおりでございます。
  403. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そこで、次に資料3を見ていただきたいんですね。今の六十年度、六十一年度の補助金カットでもわかりましたように、この中に地方の負担増に押しつけられているものが六十年度で二千八百億円、六十一年度で四千三百七十億円あるのですが、これは下の方に移ってきております、それだけでは決してないのですね。今回の暫定措置は三年間、だから六十二、六十三年度においても恐らく地方財源不足対策は講じられると思いますが、六十一年度よりは渋くなるのじゃないかと思います。しかし、まあ六十一年度並み対策がとられたといたしますと、地方自治体にはこの六十一年度の地方負担の二倍、八千七百四十億円、この負担増が上積みをされてくる、これは六十一年度並みの措置がされたとしてですよ。  その上に、昭和五十年から五十八年まで、毎年地方自治体財源不足対策として交付税特会が資金運用部から借り入れていたお金があるわけですね。」地方自治体が共同で借り入れたと言ってもいいでしょう。その返済に当たって、大蔵、自治両相間の約束に基づいて、当初は地方自治体側が元金の二分の一を負担、国側は元金の二分の一と利子の全額を負担、こうやってきましたね。ところが、五十八年度からは利子についても二分の一を地方自治体が負担するように約束が変更された。五十九年度からはこの制度そのものが取りやめになった。このために地方自治体の負担増が新たに生まれてきました。その額は四兆九千七百四十二億円、この表に書いてあるとおりですね。  そうしますと、六十年度のカントによる負担二千八百億円、六十一年度カットによるもの四千三百七十億円、六十二、六十二年度に六十一年度と同額の措置がとられたとしての負担八千七百四十億円、そして今の五十八年度から利子の負担を二分の一かぶった、これが四兆九千七百四十二億円、総額六兆五千六百五十二億円、これだけの金は現時点では既に地方自治体の負担増になってきている。この点、これも大筋確認しておきたいと思います。     〔中島(源)委員長代理退席、委員長着席〕
  404. 花岡圭三

    ○花岡政府委員 事業量が今後とも変わらないという一定の仮定を置いて計算いたしますれば、この項目についてはおおむねこのとおりでございます。
  405. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 総理、この辺をよく聞いておいてほしいのですよ。  地方自治体に迷惑をかけてないと言うけれども、現にこれだけかかっているわけです。政府も認めるわけです。その上、地方自治体が命非常に心配しているのは、国庫補助負担金カットの埋め合わせに増発された地方債のうち、償還財源については国が一定補てんしますと約束している部分についても、その約束は守られるかどうか、また約束の書きかえが行われたり無効になったりしやしないか、こういう心配があることなんですね。この点についても、我が党の簑輪議員の質問に、中曽根総理は二度にわたって「閣僚で相談したものは、内閣としても実行しなければいかぬと思います。」とか、あるいは「三大臣で話し合ったことは、政府としても責任を持って実行しなきゃなりません。」こうおっしゃっているのですね。改めて、こういう政府内における約束は必ず実行する、このことをここで明一言していただけますか。(竹下国務大臣「委員長」と呼ぶ)いや、これは総理大臣。
  406. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いや、まず私からです。  マクロ対策としての、これは十分御承知の上の御発言でございますが、毎年毎年基準財政需要額、基準財政収入額等々でマクロ対策としての地方財政計画というのをまず立てるのですよね。それに対して今後やはり迷惑をかけませんというのがまず基本にあるわけでございますので、一つ一つがいわば後世代へのツケ回したとか、あるいは国民の負担だとかそういう問題意識でとらまえるべきではないではないか、基本的にはやはりマクロベースの地財計画のところで相談をしていくというのがまず出発点じゃなかろうか。そこでよく出口ベースでお互いが議論する、こういうことになろうかと思いますが、それはそれといたしまして、総理からも、私もお答えいたしてまいりましたように、あるいは三大臣協議でございますとかあるいは自治大臣と大蔵大臣の協議でございますとか、それには政権政党の政策責任者たる政調会長の署名もございます、これらは閣議で十分了解した上の措置でございますので、これを守るというのは当然のことであると思います。
  407. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 今大蔵大臣言われたことは、だから私、質問の最初に断っておいたでしょう。将来、毎年度毎年度地方財政計画を立てる中で、もし地方財源に不足があるなら補てんするというのは政府の建前でしょうと。だけれども、地方財政計画の収入の部はいろんな収入が入るのですよ。税金もあれば手数料や使用料、いろんな公共料金もあるわけです。それを上げてごらんなさい、これは一見地方財政にゆとりのあるように見えるのですよ。逆にまた、住民へのサービスを、例えば現業部門を下請化して経費を削ったりしますと、支出は縮小するのですよ。そうすると地方財政にゆとりがあるような見がけも生まれるわけですね。  だから私たちは、そういう将来の非常に不安定な要素は抜きにして、現在きっちり政府が特別に交付税に加算してお金を返すときには、手当てしていますという約束のあるものとないものとにとりあえず分けての議論をずっとしているわけですね。その約束のないもの、つまり地方自治体で一応面倒を見てもらいますよと言ってあるのがこれだけあります、あるいは既にもう負担が確定したものもありますね、そう申し上げているわけです。これが六兆を超えているんだ。  その上に今度は、将来補てんしますよという約束がどうかというものですね、これが資料4なんです。国が地方自治体に対して六十六年度以降に繰り延べた項目や金額の一覧表です。別の言葉で言いますと、国が地方自治体に対して六十六年度以降において返済をすると約束した借金、国民にわかりやすく言えばそういうことになると思いますね。あるいは、国が本来この年度に現金で払うべきものを手形にして払った、こう言ってもいいかもしれませんね。そういう額がここにずらっと並んでいるのです。  もちろんこの計算のほとんどは政府側からなかなか提供されませんので、こちらでいろんな前提条件を置いて計算しました。ここでその時間は到底ありませんので、次の資料5に、こういう前提を置いてこういう計算方法をとったという資料の詳細なものをつけております。したがって、ここに出した資料4、この数字、これに大きな狂いがあればこれは政府の方から指摘をしていただきたいと思います。大筋においてこれはもう妥当であれば、その旨確認をいただきたいと思います。  まず、これはもう既にこれまで説明してまいりました中にあるのですが、一番上のAですね。これは六十年度の国庫補助一律カットに起因して六十六年度以降財政再建期間が終わった後、国が元金、利息を含めて補てんしますよと約束しているものが合計で三千三百五十七億円。B、これは六十一年度、これから政府がやろうという国庫補助カット特例に起因して六十六年度以降政府が補てんすると約束しているもの、これが七千六百五億円。それからC、実は五十九年度以前からもあるのですね。地方財源不足対策並びに行革一括法によって地域特例補助金六分の一カットが行われました。このときにやはり国が将来補てんしますと約束している。そのもののうち、六十六年度以降補てんすることになっている分が五百十八億円。D、これは今申し上げました五十九年度以前のいろいろな地方財政対策で、本来ならば去年六十年度と、ことし六十一年度に国が補てんを講ずると一たんは約束しているのだけれども、財政事情がということでまたまたこれを六十六年度以降に再繰り延べした額、これが二千四百十二億円なんですね。さらに、続いて次のE、これは今回の補助金カットが三年間の措置になりますね。そこで先ほどと同じようにカットによって地方財源が不足する。これを六十一年度と同じような対策で一応穴埋めをしたといたしますと、そこでまた六十六年度以降に補てんするという約束が二年間で一兆五千九百九十八億円生まれてくる。それからF、これは六十二、六十三年度におきましては、実はこれまで数々あった各種の地方財政対策で、六十二年、六十三年度に一たんは国が補てんしますよと約束してあったのだけれども、これもまた多分財政事情ということを口実に六十六年度以降に再繰り延べされるであろう、これは間違いなくそうなると思います、政府の今のやり方でいきますと。その額は二千五百十二億円ぐらいになる。  したがいまして、これらの地方自治体に対して政府が六十六年度以降にお返ししますよ、こう言っている、わかりやすく言えば借金の合計額は三兆二千四百三億円になる。大体私はこういうふうに計算したのですが、大筋間違いありませんか。
  408. 花岡圭三

    ○花岡政府委員 この資料によりますと、六十二年度、六十二年度の補助率カット分についての補てんの関係についてがはっきりいたしておりません。ただ、それを除きまして一定の仮定のもとに計算いたしますれば、六十六年度以降に送られておるものは減額分を除きましてほぼこのような数字になると思います。
  409. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 しかし、六十二、六十三年度が六十一年度と同じ処置をとるとすれば、今御確認をいただいたという点からいきますと、大体私の推定計算どおりになると思うのですね。  ここで中曽根総理にぜひ伺っておかなければいけないのです。ゆめゆめ中曽根総理もこの六十六年度以降の補てんの約束、つまり六十六年度以降に地方自治体に返しますよという金が三兆円を超えているという、こういう数字を抜きにして大臣間の約束を守りますとおっしゃっているのではないと思うのですが、改めて、こういう膨大な額になっているけれども、しかし必ず約束は守ります、こう言えるのかどうか、伺っておきたいのです。
  410. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 閣僚の間で交わした約束は、それを守るように努力いたしたいと思います。
  411. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 努力いたしたいということなんですが、しかし、これだけではないのです。実はここから以下は過去においても国会で、部分部分は議論されたことがあります。  一つは年金関係の国庫負担の繰り延べであります。時間が大分迫っておりますので、内容の説明は残念ながら省略いたします。この内容については、私どもの方でいろいろと計算した内容についてあらかじめ政府側に連絡をして、大きな狂いがあれば事前に言ってもらうように言ってあります。一応この点で合わしてある数字ですね。  厚生年金についても、これまで行革一括法とか補助金カット法とかで繰り延べ、繰り延べがされてきた。つまり当然国の負担金を入れるべきなんですが、その一部を保留して国が使ってしまって、そして六十六年度以降に返しますよと、こうなっている部分ですね。厚生年金だけで見ますと、元金部分が一兆八千五百九十億円、利率は五十七、五十八年度が七・三%、五十九、六十年度七・一%、六十一-六十三年度六・八%、複利計算でいきますと八千百六十二億円、合計で二兆六千七百五十二億円。一言、これは間違いないでしょうね。
  412. 長尾立子

    ○長尾政府委員 お答えを申し上げます。  厚生年金の国庫負担の繰り延べ額でございますが、先生の試算では六十二年度、六十三年度も六十一年度と同額のものが行われるという前提で御計算いただいておるようでございますが、ここにございます一兆九千六百十億に相当いたします部分のうち、社会保険庁が所管いたします厚生年金及び船員保険の部分について申し上げますと、一兆八千六百五十七億円、これは共済も入っての数字かと思いますが、でございます。その次の利息相当の部分でございますが、これは八千二百十二億円でございます。したがいまして、合計いたしますと二兆六千八百七十億円というふうに考えます。
  413. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 船員保険、それから共済を加えましてほぼこういう数字になるということは今のことでおわかりいただけますね。  それから、国民年金の国庫負担についても、いわゆる平準化法によってこれもまた繰り延べが行われているわけですね。これは六十五年から七十三年度への繰り延べになっているのですが、このうちの六十六年度以降の繰り延べを見ますと、ここにHの欄に書きましたように、元金、利息を合わせて一兆八千四百六十三億円程度、こういうふうになると思います。  それから、政府管掌健康保険についても国庫負担の六十六年度以降への繰り延べが行われております。これはいつ返すか全然決められていないという極めて不安定なものですね。これが二千六百五十四億円。  それから、そのほかに住宅金融公庫の利子補給金も繰り延べ措置を行っております。これも六十五年度まで各年度の繰り延べ額を六十一年度と同額と見た場合、六十六-七十五年度までに国が補てんしなければならない額、つまり国が借りているわけですね、九千百億円。こういうわけですから、地方自治体関係を除いた社会保障や住宅金融公庫関係だけで五兆八千億円。  ですから、先ほどの地方自治体に対して繰り延べている額、逆に言うたら地方自治体から国が借りている額、それから社会保険や住宅金融公庫関係の特別会計あるいは公庫から借りている、これは被保険者あるいは公庫利用者から借りているということになるわけですけれども、これらを全部合わして結局九兆円ですね、これが六十六年度以降国が返すことを約束して借りている、こういう数字になってくるのですよね。  自治大臣に伺いますけれども、強調しておきたいことは、先ほども申し上げましたように、既に六兆円を超す相当な額の負担が地方自治体に行った上で、なおもこういう大きな借金を国が地方自治体に負っておるわけですね。六十六年度以降返すことを地方自治体は当てにしているわけですが、その他のものと合計していくと、将来返さなくてはいけないものが大変多いわけですね。そういう中で本当に約束が守られるかという心配が起こってくるわけなんです。現に、ことし一月二十二日付のいわゆる内節という通達ですか、あれでは使用料、手数料の適正化を推進し、財政収入の財源確保に努めるとか、あるいは公立の高等学校とか幼稚園の保育料、この引き上げをせよというふうなそういう公共料金値上げの圧力を加えていますよ。結局こういうふうにして、先ほど言った将来の地方財政の収入を住民の負担でふやすというようなことを指示しているわけですよ。そうすれば、先ほどの地方財政計画を立てた場合に、住民の負担増で地方の財源が膨らむわけですから、国からの補てんは打ち切ってもいいというこれは下地になるんじゃないかな、こういうふうに住民側は受け取ってくるわけですね。より心配がふえるわけなんです。  そういう点でここで自治省の側として、地方自治体を代表するという意味で自治大臣に聞いておきたいのですけれども、この政府の約束はあくまで守られるようにどのようにやっていくのか、また覚書の書きかえ。取りかえするんじゃないだろうな、こういうこと。それから、このように将来を見越して地方自治体に公共料金の引き上げなどの圧力を加えて住民の負担で地方財政のゆとりをつくろう、こういうやり方はやめてもらいたい。それからさらに、特例措置の恒久化などは考えていないと思いますが、これらの点を伺っておきたいのです。
  414. 小沢一郎

    ○小沢国務大臣 ただいま閣僚間の約束等につきましての確認もございましたが、先ほど総理からも御答弁ありましたように、当然約束は守られるべきものと思います。  ただ、政府の政治も財政の運営も、その前提として国民のために、地域社会の豊かな発展のために我々はお互い苦労しているわけでございまして、そういう本来の使命を本当にお互い自覚し合いましてこれに対処していかなければならない。特に私ども自治省といたしましては、地域社会、地方公共団体、それらの実情を十分踏まえ、その財政の運営、そしてまた地方の行政が本当に地域住民のためになるよう、そういう立場に立ちまして今後とも最善を尽くしてまいりたいと考えております。
  415. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 最後に、総理に伺っておきます。  現在六十一年度末を見ますと、国債残高百四十三兆八千億円、借入金残高二十二兆七千億円、軍事費の後年度負担二兆四千億円、軍事費以外の国庫債務負担行為二兆五千億円、合計で百七十一兆四千億円に上るわけです。これは一応しかし予算書にちゃんと明示されております。だがしかし、先ほど私がるる説明し、政府も確認したこの約九兆円という国の実質債務は予算書のどこにも出てないわけなんですね。だから隠された借金、こういう名前を私は使ったわけですね。金融機関や兵器産業などの大企業に対して支払うべきものはちゃんと予算書に挙げて優先するけれども、国民に向けて、あるいは地方自治体に向けて払うべきものは非常にあいまいな形。こういうものも私は予算書に明記をすべきだということが一点と、それから、このままの財政方針を続けるならば、いずれは払うべきものを踏み倒すか、あるいは六十六年度に向けて社会保障制度の第三ラウンドの大改革をやるか、また大増税をやるか、それらの組み合わせになるか、こういう危険は大と思うのですね。我が党が予算組み替え要求を予算委員会理事会に出していますけれども、やはり軍事費を思い切って削る、大企業優遇をやめる、そしてそれを地方自治体や国民に回す、こういうことへの大転換が今なければ、地方自治体の財政まで国の財政破綻に巻き込んでしまう、こう私は思うわけです。そういう点についての総理見解を求めて、終わりたいと思います。
  416. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 あなたのいろいろなお言葉を聞いていましたが、ある基本観念において見解を異にしております。
  417. 小渕恵三

    小渕委員長 これにて瀬崎君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、総括質疑はすべて終了いたしました。  次回は、明十九日午前十時より開会し、一般質疑に入ります。  本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十六分散会