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1986-02-17 第104回国会 衆議院 予算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年二月十七日(月曜日)    午前十時開議  出席委員   委員長 小渕 恵三君    理事 中島源太郎君 理事 浜田 幸一君    理事 林  義郎君 理事 原田昇左右君    理事 渡辺 秀央君 理事 稲葉 誠一君    理事 岡田 利春君 理事 二見 伸明君    理事 吉田 之久君       相沢 英之君    伊藤宗一郎君       石原健太郎君    石原慎太郎君       上村千一郎君    臼井日出男君      小此木彦三郎君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    片岡 清一君       倉成  正君    砂田 重民君       住  栄作君    田中 龍夫君       辻  英雄君    橋本龍太郎君       林  大幹君    原田  憲君       三原 朝雄君    武藤 嘉文君       村山 達雄君    山下 元利君       井上 一成君    井上 普方君       上田  哲君    大出  俊君       大原  亨君    川崎 寛治君       川俣健二郎君    佐藤 観樹君       多賀谷眞稔君    細谷 治嘉君       松浦 利尚君    池田 克也君       神崎 武法君    正木 良明君       大内 啓伍君    木下敬之助君       小平  忠君    西田 八郎君       工藤  晃君    瀬崎 博義君       藤木 洋子君    松本 善明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         法 務 大 臣 鈴木 省吾君         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 海部 俊樹君         厚 生 大 臣 今井  勇君         農林水産大 臣 羽田  孜君         通商産業大 臣 渡辺美智雄君         運 輸 大 臣 三塚  博君         郵 政 大 臣 佐藤 文生君         労 働 大 臣 林  ゆう君         建 設 大 臣 江藤 隆美君         自 治 大 臣          国家公安委員会         委員長     小沢 一郎君         国 務 大 臣         (内閣官房長官後藤田正晴君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 江崎 真澄君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      古賀雷四郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 加藤 紘一君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      平泉  渉君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      河野 洋平君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 森  美秀君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 山崎平八郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 茂串  俊君         内閣法制局第一         部長      工藤 敦夫君         国防会議事務局         長       塩田  章君         臨時教育審議会         事務局次長   齋藤 諦淳君         警察庁刑事局保         安部長     新田  勇君         総務庁長官官房         審議官内閣審         議官      本多 秀司君         総務庁長官官房         審議官     百崎  英君         総務庁人事局長 手塚 康夫君         総務庁行政管理         局長      古橋源六郎君         総務庁行政監察         局長      竹村  晟君         北方対策本部審         議官      稲橋 一正君         防衛庁参事官  瀬木 博基君         防衛庁参事官  古川 武温君         防衛庁参事官  千秋  健君         防衛庁長官官房         長       宍倉 宗夫君         防衛庁防衛局長 西廣 整輝君         防衛庁教育訓練         局長      大高 時男君         防衛庁人事局長 友藤 一隆君         防衛庁経理局長 池田 久克君         防衛庁装備局長 山田 勝久君         防衛施設庁長官 佐々 淳行君         防衛施設庁施設         部長      宇都 信義君         防衛施設庁建設         部長      大原 舜世君         防衛施設庁労務         部長      岩見 秀男君         経済企画庁調整         局長      赤羽 隆夫君         科学技術庁計画         局長      長柄喜一郎君         国土庁長官官房         長       吉居 時哉君         国土庁長官官房         会計課長    斎藤  衛君         国土庁大都市圏         整備局長    山本 重三君         法務省民事局長 枇杷田泰助君         法務省刑事局長 岡村 泰孝君         法務省人権擁護         局長      野崎 幸雄君         外務大臣官房外         務報道官    波多野敬雄君         外務大臣官房領         事移住部長   妹尾 正毅君         外務省アジア局         長       後藤 利雄君         外務省北米局長 藤井 宏昭君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省経済局長 国広 道彦君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      中平  立君         外務省情報調査         局長      渡辺 幸治君         大蔵大臣官房総         務審議官    北村 恭二君         大蔵省主計局長 吉野 良彦君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省理財局長 窪田  弘君         大蔵省理財局次         長       足立 和基君         文部大臣官房長 西崎 清久君         文部大臣官房総         務審議官    五十嵐耕一君         文部大臣官房会         計課長     坂元 弘直君         文部省初等中等         教育局長    高石 邦男君         文部省教育助成         局長      阿部 充夫君         文部省高等教育         局長      大崎  仁君         文部省高等教育          局私学部長   國分 正明君         文部省学術国際         局長      植木  浩君         文部省社会教育         局長      齊藤 尚夫君         文部省体育局長 古村 澄一君         文化庁次長   加戸 守行君         厚生大臣官房総         務審議官    北郷 勲夫君         厚生省社会局長 小島 弘仲君         厚生省保険局長 幸田 正孝君         厚生省援護局長 水田  努君         農林水産大臣官         房長      田中 宏尚君         農林水産大臣官         房予算課長   鶴岡 俊彦君         農林水産省経済         局長      後藤 康夫君         農林水産省構造         改善局長    佐竹 五六君         農林水産省農蚕         園芸局長    関谷 俊作君         農林水産省畜産         局長      大坪 敏男君         通商産業省生活         産業局長    浜岡 平一君         中小企業庁長官 木下 博生君         中小企業庁次長 見学 信敬君         郵政省放送行政         局長      森島 展一君         労働大臣官房審         議官      中村  正君         労働省婦人局長 佐藤ギン子君         労働省職業安定         局長      白井晋太郎君         建設大臣官房長 高橋  進君         建設大臣官房会         計課長     望月 薫雄君         建設省都市局長 牧野  徹君         建設省道路局長 萩原  浩君         建設省住宅局長 渡辺  尚君         自治省行政局長 大林 勝臣君         自治省行政局選         挙部長     小笠原臣也君         自治省財政局長 花岡 圭三君         消防庁長官   関根 則之君  委員外出席者         会計検査院長  大久保 孟君         予算委員会調査         室長      大内  宏君     ――――――――――――― 委員の異動 二月十七日  辞任       補欠選任   大西 正男君   辻  英雄君   葉梨 信行君   片岡 清一君   原田  憲君   林  大幹君   井上 一成君   大原  亨君   井上 普方君   細谷 治嘉君   小平  忠君   西田 八郎君   梅田  勝君   工藤  晃君 同日  辞任       補欠選任   片岡 清一君   葉梨 信行君   辻  英雄君   臼井日出男君   林  大幹君   原田  憲君   大原  亨君   井上 一成君   細谷 治嘉君   井上 普方君   西田 八郎君   小平  忠君   工藤  晃君   藤木 洋子君 同日  辞任       補欠選任   臼井日出男君   大西 正男君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和六十一年度一般会計予算  昭和六十一年度特別会計予算  昭和六十一年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 小渕恵三

    小渕委員長 これより会議を開きます。  昭和六十一年度一般会計予算昭和六十一年度特別会計予算昭和六十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉田之久君。
  3. 吉田之久

    吉田委員 おはようございます。いよいよ総括もきょうとあすだけになりましたので、ひとつ総理も各大臣も頑張っていただきたいと思います。  まず初めに、ちょっと予定外質問でありますが、その前に、質問要旨の中で「大学受験機会複雑化」と書いてありますが、これは「複数化」の間違いでございますので、訂正させていただきます。  予定外質問でありますが、けさ、今聞きましたところでは、円が一ドル百七十九円になった。非常に急激過ぎる感じがいたします。また、この段階で百七十円台に入るとは、およそ多くの国民は予見していなかったのではないかというふうな気がしてならないわけでございますが、このことに対しまして大蔵大臣、何か対策を講じるお気持ちはございませんでしょうか。
  4. 竹下登

    竹下国務大臣 きょうの寄りつきが百八十円三十五銭、その後若干動いておるわけであります。金曜日も寄りつきがそうありまして、途中で一時百七十九円台になったが、また返りまして終わり値が百八十二円、こういう状態でありました。確かにG5以降、ドル高是正が進展して、各国のファンダメンタルズをよりよく反映するようになって、かつてのような不当なドル高は解消されたという問題意識は持っております。  そこで、現状を見ますと、基本的には実需を背景とした市場の自律的な動きを反映しておるというのが現状でございます。したがって、相場先行き不透明感があります中で、小動きとでも申しましょうか、そういう状態が続いておりますので、専門家言葉で言えば相場を模索する動きと、こういうことのようでございます。  現在の相場についての評価あるいは今後の見通し、相場水準等について申し述べますことは、市場関係者の憶測、思惑等を呼びまして、為替市場への影響もございますので、その点は差し控えさしていただきたいと思いますが、今後とも為替市場の動向については十分注視をしてまいりたい、このように考えております。
  5. 吉田之久

    吉田委員 次に、総理にお伺いを申し上げます。  フィリピン大統領選挙の結果についてでございます。  このことに関しましては、まさに世界注視の中で今度の大統領選挙が行われた。そして結果的には、日本時間できのう、十六日の午前零時四十四分、フィリピン国民議会マルコス大統領候補を新大統領とするという当選宣言を行っております。しかし、御承知のとおり野党側はゼネストを含む広範な反マルコス運動を展開すると伝えておりますし、そのような状況にあることも確実と察せられます。米国は、ハビブ米特使をマニラに派遣しております。  総理は、この委員会におきまして、今までは他国の選挙に関して内政干渉にわたるようなコメントはしないという態度で、そういう答弁を重ねておられますけれども、隣国のこの現状を見て、なお何らのコメントもなさらないお気持ちでございましょうか。新聞等によりますと、安倍外務大臣はきょう一つ見解を御発表になったようでございますが、米国が深い関心を示し、フィリピン与野党指導者話し合いを図ろうとしている状況にあります中で、大変深いかかわりを持ちます我が国が、ただ傍観しているだけでよいのでありましょうか。内政干渉にわならない範囲日本側の希望を申し述べられるとか、あるいは特使を送るとか、その辺の何らかのお考え方がおありではないかと思うわけでございますが、いかがでございますか。
  6. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 内政干渉の誤解を受けるような言動は避けるという方針は、一貫して変わっておりません。  ただ、アジアの隣邦といたしまして、フィリピンの政局の安定については非常に大きな関心を持って見守っておるところであります、フィリピンの内部におきまして諸般の改革が断行され、推進されて、そして国民的合意が形成されて、社会的安定が一日も早く達成されるように期待をいたしております。
  7. 吉田之久

    吉田委員 安倍外務大臣にお聞きいたしますが、きょうの新聞の報ずるところによりますと、フィリピン情勢に重大な関心を持ち、外相は三月にも特使派遣を考慮しているというような談話を発表なさっておりますが、いかがでございますか。
  8. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 フィリピン情勢には非常に注目し、重大な関心を持っておりますし、フィリピン内政の問題はフィリピン人が最終的には決めるわけでありますが、日本としての選挙に対する公正、自由に行われるべきであるという日本考え方は既にもう発表いたしておりますし、今度の選挙の経緯そして国会でのマルコス大統領当選等つきましての日本側見解も、私の談話として発表した次第でございます。  いずれにしても、今総理が述べましたように、これから社会的にも政治的にも安定して、フィリピンの苦しい経済を何とか回復できる道が新しい政権によって進められることを心から念願をしております。日本友邦国でありますし重大な関心を持っておりますが、今はこの問題に関して特使を送るというふうな考え方、構想は持っておりません。  ただ、これからサミットも行われるわけでございますし、そういう点に関連してフィリピン政府から日本に対するいろいろと御要請等、あるいはサミットに対する注文等についてはお聞きをしたい、そのための特使派遣をしたい、こういうふうに思っております。
  9. 吉田之久

    吉田委員 次に、定数是正問題と解散とのかかわり、関連等つきまして若干御質問をしたいと考えておりますが、その前に後藤田長官、きょうの新聞をごらんになったと思いますが、「ウソをついていいのは公定歩合解散可能性」だというような見出しが出ております。この種のことは私どももかねて聞いてはおる話でありますけれども、しかし官房長官でおありになる後藤田長官が、いかに政治家でも、いろいろ各地で御演説をなさるのは自由でありますけれども、ここまでおっしゃっていいのかどうか。むしろこの種のことはなるべくお避けになる方がいいのではないかと私は思うわけなんでございますが、御心境はいかがでございますか。
  10. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 実は昨晩、同僚の後援会の三千人ばかりの集会がございまして、私、あいさつをさせられたわけでございますが、いろんな二とを話しました。その中で、解散の問題で、後援会皆さん方大変関心を持っておられることは当然でしょう、ただ解散というのは総理大臣専権事項である、したがってその総理自身解散を考えていないと言っておるんだから、それは額面どおりに受け取っていただきたい、間違ってくれちゃ困りますよ、ただ、今国会議員の任期はもう半ばを過ぎておるし、それから昔から政治家というのはうそをついちゃいかぬということになっておるのです、しかしそうは言いながらも、公定歩合の変更と解散といったような問題についてはうそを言っていいと世間で言われておりますよ、後援会皆さん方はそういうことを考えて、いついかなる事態になろうともこの同君をひとつ国会に帰していただくようにどんどんひとつ支援をお願いを申し上げたい、こういうことを言ったので、特別他意があるわけではございません。
  11. 吉田之久

    吉田委員 恐らくそういう意味の御発言だろうと思いますが、しかし解散公定歩合はまさに秘中の秘であるべきだと思いますが、こういう記事になりますと、政治家うそを言っていいんだ、そういう錯覚が走るおそれがありますし、さなきだに政治の信頼を回復しなければならないときに、やはり特別政府の要路におられます官房長官などは特にいろいろと慎重に物を申していただく方がいいのではないか、これは要望いたしておきます。  さて、定数是正の問題でありますが、これはまさに我々国会それ自身が早急に処理しなければならない、答えを出さなければならない重大な責任がある課題であると思います。しかし、実際この定数是正をやるにしても、一週間や十日でなかなか結論が出るわけではございません。今予算委員会審議の真っ最中でありますし、参議院審議も続きます。ですから、よほど与野党が順調に基本的な問題で話し合いを煮詰め、そして一つ改正案結論を導くにいたしましても、常識的に考えましてどんなに早くとも大体四月の来ないしは五月に入ってくるのではないか、このように想定されます。よしんばその時点で定数是正が、私はこれは暫定是正だと思いますけれども、なされたとして、それが直ちに早急にその定数のもとに選挙が行えるものかどうかという常識論でありますが、大学の入試にいたしましても、制度を変えれば当然翌年から実施するわけであります。  そういうことで、巷間うわさされております参議院との同時選挙、これは定数是正が仮に行われたとしてもなかなかに実施できない、そういう状況に置かれるのではないか。よしんばいろいろ話し合いが進んで、なお今国会中に完全に定数是正の解決を見るには至らなかった、しかしもはや時間をかければすぐ近い時期にそれが成立するであろう、こういう状況の中で、よしんばいろいろな事態が起こったとしても、衆議院解散するということも大変常識的に見て至難のことだと私は考えます。  それから、我が国衆議院参議院両院制度を持っておるということ、それは、緊急事態が生じた場合でも一院が完全に機能するという願いを込めた制度であると私は考えるわけでございますが、それにもかかわらず、たまたま参議院選挙のときに、衆議院解散、総選挙が行われるということは大変異例なことでありますし、また好まざることであると思います。例は一回だけ、昭和五十五年にあるわけでございますが、このときは内閣不信任案が可決された、そういう状況のもとにおいてなされた解散であります。内閣不信任案が可決されないような状況の中で、しかも衆議院参議院両院を擁しておる我が国議会制度の中で、そして定数是正がこのような状況にある審議中の中で、三重苦に悩むような同時選挙というものは、私は常識的には考えられないと思うわけでございます。  総理は、常に解散のことは考えていないと言明なさってはおりますけれども、いろいろと巷間このことが重大な関心事になりつつあるわけでございます。見識を誇られる総理としては、そのような異例な、そして困難の多い、問題の多いそういう解散などは全く念頭に置かれないと思うのでございますけれども、いかがでございましょうか。
  12. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 解散は考えていないと前から申し上げておるので、私は今も同じお答えで一貫しておるわけでございます。したがって、いろいろ仮定的な問題については、考えてないんですから御質問にお答えすることは差し控えたいと思っております。  なお、同時選挙については、これは憲法上も可能である、そういうふうに前から申し上げておるとおりでございます。
  13. 吉田之久

    吉田委員 同時選挙憲法上可能であると、これは総理のお説のようでございますけれども、しかしあのたった一つの例を残しております同時選挙、それも内閣不信任案が可決されたという状況においてなされただけのことでありまして、したがってそれは、一般的に同時選挙は絶えず可能であるということにはならないと思うわけなんでございます。その辺のところは総理も十分お考えいただいていることと思いますが、とりわけ念頭にしっかりと置いておいていただきたいと思います。  それから、この機会にこの定数是正の問題につきましてちょっと意見を申し上げたいわけでございますが、この前の国会でも速報値定数是正はできるはずだ、それは確定値とほとんど変わらないということをこの場で私は申し上げたわけでございますが、そういうことの結果と申しましょうか、要するに今この速報値を基礎にしていろいろ定数是正が検討されつつある段階にあると思います。これは、言うならば暫定是正と呼んでいいと思うわけでございます。  さて、ことしの十一月に確定値が出ます。この確定値を受けて行うべき是正、将来の是正をまあ本格的是正と呼ぶのでありましょうか。ところが、抜本是正という言葉が随分出てきております。しかし、この抜本是正ということの考え方がいろいろさまざま、各種各様に用いられておるような気がするわけでございます。確定値が出て改めて行うのが抜本是正であるという考え方もあれば、いやいやそうではなしに、一選挙区対選挙区のアンバランスだけを問題にするのではなしに、本来は都道府県間のアンバランスそのものが問われなければならないのではないか、そういう都道府県というところに尺度を当ててきちんと定数をもう一度是正すること、それが抜本是正ではないか。あるいは一対三の許容範囲ではなしに本来一対一に限りなく近づける、そういう是正抜本是正と言うのではないか。あるいは二名区を今後我が国において採用するかあるいは絶対に採用しないか、その辺の基本をきちんと決めることが抜本是正なのではないか。いろいろな考え方のもとに論議が走っているような気がするわけでございますが、総理は、この抜本是正という概念を総理としてあるいは自民党の総裁としてどのようにお考えになっておりますか、お伺いいたします。
  14. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 抜本是正というお言葉は、人々によってまた各党によっていろいろニュアンスがあるように思います。今の、先般の十二月の暫定値を基礎に改革する、これは中間的な暫定的な案であるというのに対して、十二月に確定値が出たら、それをもとにして思い切って最も理想的に近い案を作ろう、あるいはそれを持ってくるための公式をつくろうじゃないか、そういうような案も抜本是正とも言われております。  これは、党により人によっておのおのニュアンスが違いますが、抜本是正と言われる場合に少なくとも一致しているのは、十二月の確定値を待って、長期的な時間にたえ得る、しかも最も合理的な理想的に近い案を根本的につくり直してみようというのが、いわゆる抜本是正と言われるものの内容ではないかと思っております。
  15. 吉田之久

    吉田委員 総理のお考え方、私もそうあるべきだと考えておるわけでございます。  特に、この定数問題、これはやはり本来各都道府県単位にまずアンバランスをなくする。そして、その都道府県内において最もしかるべき歴史的あるいは社会的に妥当な選挙区を設定していく、こういう考え方が物の基本にあっていいのではないかと思うわけでございますが、今後、各党ともその辺に焦点を合わせながら、将来のあるべき定数是正のあり方、あるいは当面なすべき是正の仕方、いろいろと鋭意検討しなければならない問題であると思うわけでございます。  さて問題は、行革の件についてでございますけれども、まず、ポスト行革審ということにつきまして御質問を申し上げます。  臨時行政改革推進審議会、行革審と呼んでおりますけれども、これは、この六月二十七日をもって期限切れを迎えます。政府は、六十一年度の行革大綱の閣議決定に際しまして、行革審の存続の有無を決定なさっておりません。その理由は何でありますか。
  16. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 御承知のように、行革審は臨調答申に基づいて七つの問題に取り組んでまいりまして、極めて少数精鋭、よく精力的に任務を果たしていただいております。御承知のように、この四月には教育臨調からの答申も出ることになっております。  それから、六月に任期が切れるということでございますが、今、総まとめをしておられる最中でありますし、また実行面からいいますならば、国鉄改革とも足並をそろえて問題の解決に当たっておる、努力中ということでもあり、今、総まとめの段階で、さて後をどうするかということにつきましては、まだ全く相談をいたしておりません。これは結論を十分拝見したいということで、今、結論待ちというわけでございます。
  17. 吉田之久

    吉田委員 そういうお気持ちはわかりました。  さて政府は、行政改革は今日どの程度達成されたと判断なさっておりますか。既に目標の半ばを達したと見ていらっしゃるのか、あるいはようやく緒についたばかりだというふうに考えておられるのか、総合的に今日の時点において我が国の行革はどの辺まで進んだという認識と判断をなさっているのか、これはかなり重要な問題になってくると思うわけでございます。  ちなみに、一般サラリーマンの採点はやっと二十点あたりだろうというようなことも、これは昨年あたりの調査で出ております。それから行革国民会議というのがございますけれども、この方の評価は、答申そのものが大体四十六点ぐらいの評価だ、その答申の中身についての実施状況は四五%にすぎない、両者を掛け合わせれば二十一点になるではないか、こういう評価もいたしております。  私は、すべてこの種の問題を点数ではじき出し、評価するということは余り好きではないわけでございますけれども、しかしそういう判断が国民の中でいろいろと区々に走っております中で、政府自身は一体自己採点をどのようになさっておるのでありますか。
  18. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 見方はいろいろあると思います。今おっしゃったような数字を私もよく聞いております。ただ、まあ大体五〇%程度はいっておるのではないかというのが評価でございます。特に、行革審のメンバーの皆さん方からもそういった評価を受けておるわけでございますが、しかし今一番問題のある、大きな欠損を抱え余剰人員を抱えておる国鉄をどう民営・分割化するかというような問題と現に取り組んでおる最中であり、教育臨調の問題も控えております。  したがって、これらのことを考えますと、これはなかなか何十%というような数字であらわす問題ではなくて、やはり今まで行革審が掲げてまいりました簡素にして能率的な、極めて時流に合った政府を常に厳しく見直していく、これはエンドレスな問題であるというふうに認識をいたしまして、今後とも真剣に取り組んでいくべきだというふうに評価いたしております。
  19. 吉田之久

    吉田委員 大体の御決意はわかりましたけれども、さて、その評価の点につきましては、いろいろ論議の分かれるところだろうと思います。  ちなみに臨調答申の中に限ってみましても、国土庁と沖縄、北海道開発庁との統合という課題、これは現時点で全くめどが立っておりません。それから総合企画会議、これもいつの間にか消滅しているような感じがいたします。地方出先機関の八ブロック化、この問題も決定の先延ばしをなさっている感じを受けます。また、公務員制度の改革、これはほとんど手つかずの状況にあると思います。徴税機構の一元化あるいは地方分権の推進、これも全く問題はこれからというような感じがするわけでございます。  したがって、こういう状況の中で、しかし行革それ自身は、断じて国民の合意を得ながら政府がかたい決意を持って迫っていかれなければならない問題でございます。したがって、今後も国民的立場から政府に迫る権威ある機関の設置というものは、何らかの形で必要ではないかというふうに私は考えるわけでございますが、先ほど総務長官の御答弁によりましても、まあ行革審それ自身を廃止しようとする考え方も持っていない、もちろん存続するともお決めになっていないということのようでございますけれども、今後この辺のことにつきましては、さらに真剣な検討を図られ、またそういうものを存続させるとするならば、直ちに法的措置をとられなければならないということを申し添えておきます。  次に、地方行革についてでありますけれども、まず地方公共団体における地方行革の推進状況はどうなっておるか。地方行革大綱をつくれということで、いろいろと昨年の一月二十二日に自治省は指示なさっておりますけれども、その後の経過をお伺いいたしたいと思います。特に、積極的にこれに反対する自治体はあるのかないのか、この辺もお聞かせいただきたいと思います。
  20. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 地方行革は、全く私必要だと思います。特に、お互いの市町村を見てみましても、町役場が市役所と紛らわしいほど立派なものをつくっておる、そして国民は貧弱な家に住んでおる、これは決して地方行革が達成されておる本来の姿とは思えないですね。  したがって、やはり地方行政の簡素化、能率化、こういった面について私どもは絶えず厳しく監察をし、また地方公共団体、自治体との関連を深めながら現実的に努力をしてまいりたい。仰せのとおり、これは絶えざる努力によって粘り強く任務を果たしていく必要があるというふうに考えます。
  21. 吉田之久

    吉田委員 この地方行革大綱に基づく行政改革の進捗状況についてでありますが、地方行革大綱の策定状況は、私どもの存じ上げております数値では、都道府県におきましては昨年の十月十四日現在策定済みのところは四六・八%と、まだ半ばに達しておりません。指定都市に至っては一〇%しかできていない。あるいは市町村は、昨年の九月二十日現在の調べのようでございますけれども一五・三%、このようなお寒い状況のようであります。その後今日現在、この地方行革大綱の策定状況はどうなっているか、お答えをいただきたいと思います。
  22. 小沢一郎

    ○小沢国務大臣 お答えいたします。  地方行革大綱につきましては、都道府県、指定都市でほとんどの、指定都市においては一〇〇%達しております。――ちょっとお待ちください。済みません、数字の問題ですので、政府委員から……。
  23. 大林勝臣

    ○大林政府委員 地方公共団体におきます行革大綱の推進状況でございますが、組織につきましては、ほとんどの団体がこれを完成いたしております。大綱の策定状況自体につきましては、都道府県におきまして一団体を除き四十六団体、指定都市が全団体これを策定いたしております。それから市町村におきましても、現在なお数字は固めておりますが、現在の段階で、約三分の二の市町村がこれを策定済みという状況になっております。
  24. 吉田之久

    吉田委員 委員会の設置状況は大変いいようでありますが、そして今初めて聞きますと、大綱それ自身もかなり出そろってきたという感じのようでございますが、まだ市町村が三分の二の状況であるということでは、完全だとは言えないと思うわけでございます。この辺を督励指導していただきますと同時に、私がお聞きしたいことは、地方公共団体が策定した行革大綱の実行を、今度は自治省が今後どのように指導し、あるいはそれに対して協力、保障をしていくかという問題、これが大変心配なところだと思いますが、いかがでございますか。
  25. 小沢一郎

    ○小沢国務大臣 実施の状況についてはただいま申し上げたとごおりでございますけれども、自治省といたしましては、問題の点を地方行革大綱としてまとめまして、いわゆるモデルケースというような形で地方にお願いをいたしたわけであります。あとこれをどのように実行していくか、どうしていくかということは、それは地方自治体自体で考えて、本来的には自主的に実行していく問題であろうと思っております。したがいまして、その地域の状況に応じまして、自治省としては、もちろん地方行革を積極的に進めていかなければならない地方の状況にあると思いますので、できるだけの協力、指導、助言を行っていきたい、そのように考えております。
  26. 吉田之久

    吉田委員 問題は、その指導、助言が具体的でなければならないと思うわけでございまして、そうでなければ、せっかく大綱ができましても、それは作文に終わってしまうというような気がいたします。  そこで、私がお尋ねいたしますことは、地方の行政改革を積極的に推進するためには、行政改革の成果がそのまま住民に還元できる、そういう何らかの方策を講じてやらなければならないのではないか。行政改革に一生懸命努力はしたけれども、結局は、しょせん住民には何のメリットもないむなしいものに終わったということでは、今後地方行革は進まないと思うわけでございます。例えば非常に積極的に地方行革を達成した自治体、それに対しては地方税の軽減の自由を与えてやるとか、あるいは使用料、手数料等の引き下げ等はその能力の範囲において自主的に行ってよろしいとか、何かそういうものがついて回らないと本当の励みにならないと思うわけでございますが、この点、自治省はいかがお考えでございますか。
  27. 小沢一郎

    ○小沢国務大臣 お答えいたします。  地方におきまして行革を進めていくということは、いわゆる地方の自主的に行うものでございまして、その行政改革を行うことによって、その結果の果実はいわゆる住民へのサービス還元という形になってあらわれるわけでありますから、基本的には、事柄の本質はそういうことであろうと思っております。  先生が今おっしゃいましたように、一生懸命やって成果を上げた自治体については、税負担の問題等で軽減してやったりしたらいいじゃないかという先生の御趣旨は十分理解はいたしております。ただ今日、地方財政も大変厳しい状況にありますので、御指摘のような問題につきましては、今後慎重に検討してまいりたいと思っております。
  28. 吉田之久

    吉田委員 問題は、地方自治体が厳しい情勢の中で精いっぱい努力して行革を推進しても、その成果が全部国に吸い上げられてしまうのではないかという懸念でございます。しかも、一方におきまして補助金の一律カットなどが強制されております。地方行革はいかに努力しても、その果実は全部国に吸い取られるのではないかという考え方が、次第に地方自治体の中に広がってきておるような感じがいたします。  一方、国は地方に対して、行革の進まぬ悪い自治体だけを公表なさる、そういう傾向があるわけでございますけれども、私は逆に、むしろいいところを大いにひとつ公表し、そしてそういうところには起債の自主権を与えるとかあるいはひもなし補助金を与えるとか、何か励みを持たすようなそういうものがないと、本当に自発的に地方自治体が行革に乗り出すきっかけが生じてこないのではないかというふうな気がするわけでございます。  特に問題は、地方行革を行うに当たっては、その大前提が必要であります。その大前提は、政府みずからが本当に姿勢を正し、みずからが血みどろの行革をやっておる、そしてその模範を示しながら地方自治体もこれに倣ってほしい、こういう気持ちが絶えずにじみ出ていなければならないと思うわけなのでございます。  しかし、事実は逆でありまして、去年一年限りの暫定措置として補助率の一律カットをなさいました。地方自治体はまじめでありますから、一年間我慢すればいいのだと考えておりましたら、今度は三年間の暫定措置として同じことをやる、こういうことになったわけでございます。要するに、うそばかりつくのが政府なのか、もはや信用できない、子供にツケを回す親があるだろうか、こういう不信感がこれから高まってくると思うわけであります。政府は、この行革につきましては、今日依然として長期見通しも持たない。ただ毎年の収支合わせに憂き身をやつしている現状であります。例えば後年度に負担を先送りする、地方へ負担を転嫁する、財投へのツケ回しをやるとか、あるいは国債整理基金への定率繰り入れを停止するとか、まさに空財源でつじつま合わせをしているのが実態ではないか、そういう感じが一般に浸透いたしております。その中にありまして、大蔵大臣が絶えずおっしゃっておりますけれども、六十五年度の赤字国債脱却の旗はおろさない、こうおっしゃっているわけでありますが、だんだん政府の言うことを信用しない現状になって、それもまたうそではないか、結局は、事実上は旗をおろさざるを得ないではないか、こういうことになりますと、地方行革というのは本気で進まないと私は思うわけなんでございます。だれも信用しないところに行革への血みどろの協力などは生まれようはずはないと思うわけでございますが、この点、総理、いかがお考えでございましょうか。
  29. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 仰せの点は、私極めて重要だと思います。地方行革を模範的に進めておるところには、ある程度の優遇措置がとれるものならば、それは大蔵大臣としてもとっていただきたいですね。またかつて、退職金など非常に不当に高額なものを支給しておるところを起債などを削減した、こういうようなこともあったわけでございまして、やはり社会情勢の推移とともに絶えず見直していく、粘り強くやっていく、これは先ほどお答えしたとおりでございますが、現在のところはよくそのあたりを見ておるわけでありますし、また大蔵省としてもその補助金措置等については対策をとったところであります。しかしいいところを、模範的なところをおっしゃるように優遇したらどうだという点については、十分御意見として承っておきます。
  30. 竹下登

    竹下国務大臣 まず、地方行革を行うに当たって、国の財政不如意の折から、地方へ転嫁しあるいはツケ回しというようなことをすることは、中央政府に対する不信感が起きて、行革の推進に当たっての協力姿勢を欠く大きな要因となっておるではないか、こういう前提を置いての御質問であります。  確かに六十年度において、高率補助率の引き下げは一年間の暫定措置であります、それ以降はどうするかということにつきましては、一年間かかって結論を出します。そこで、閣僚会議並びに検討委員会等を設けて、その結論を尊重して、今度三年間ということでまた補助金問題を国会で御審議をお願いしておる、こういうことに相なっておることは事実であります。  そこで、地方と国とのまさに車の両輪たるものが、いわば事務事業の見直しを行いながらの補助率の総合的見地であるならばそれなりの理解は得られるであろう。だから、極力そういうものを前提に置いて行ったわけであります。  それからいま一つは、いわゆる出口ベースにおける地方財政計画に対する対応策だけは信頼をつないでおかなければならぬということから、地方財政にこの出口ベースにおける、大蔵省としてはマクロの立場からではありますが、これが措置を行った、こういうことになるわけであります。引き続きこれらの信頼関係は保ちながら理解を得ていかなければならない課題であるということが一番大事な問題であろうと思っております。  いま一つは六十五年度脱却、この問題につきましては、いつも申し上げておりますように、確かに年々厳しい概算要求基準を設定しながら今日に至っておるわけでありますが、今この旗をおろしたならば、言ってみれば過去四年間一般歳出前年度以下、こういう歳出削減への気構えが失われて、努力が水泡に帰す危険性があるではないか。そしてことし初めて中期展望ないしは仮定計算の中に盛り込みまして、御審議の資料としていただいておりますところの電電株の売却、これは仮置きの形ではございますが、そうしたものを置かせていただき、そして補助率問題も、単年度ではなく、三年という期間において、これを前提に中期展望、仮定計算等をさせていただく、そういうふうに逐次逐次国民皆さん方に明らかにしていくことが現実的な対応策ではなかろうかというふうに考えておるところであります。
  31. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 江崎国務大臣及び竹下大蔵大臣が申し上げたとおりでございますが、中央、地方は車の両輪のごときものであり、特に地方においては最近行革にも非常に熱心に取り組んでいただいておりまして、非常に敬意を表しておるところでございます。中央の方が負債の額が非常に大きい、そういうことで地方にもいろいろ御負担を願ったり、しわ寄せらしいものが出てきて恐縮に存じておりますが、しかし地方財政に迷惑をかけないような後始末の措置はやはりしておるつもりでございます。しかし、何といっても地方の各団体の皆さんの十分な御理解と御協力をいただくことが大事であると思いますので、一昨年に比べて昨年はかなりそういう話し合いも進んで、御理解をいただき、努力をしたつもりでございます。今後とも両方とも協力し合って、そして両方がおのおのの存在意義を発揮するように努力してまいりたいと思っておるところでございます。
  32. 吉田之久

    吉田委員 特に総理にこの機会に申し上げたいのでございますが、総理はかって行政管理庁長官もやられましたし、国民は、この中曽根内閣時代に行革は本当に実を結ぶだろう、あるいは完全に軌道に乗るだろう、こういう期待を率直に持っておると思うわけなんでございます。しかし、現状は遅々として進んでおりません。にもかかわらず、まず行革はこれで軌道に乗ったというような感じをもしも政府が国民に与えられるとするならば、私は、この行革は結局意味を失って、極めて中途半端なものに終わってしまうおそれを感ずるわけであります。したがって、絶えずむちを当てながら行革は厳しく厳しく進めていかれなければならない。  そういう中で問題は、六十五年度の赤字国債体質を脱却するという旗でありますが、私は、あえて旗をおろせと申すわけではありません。特に政府が旗をかざして頑張りたいという御決意は、それなりに評価いたします。しかし実際問題としては、例えば新幹線で東京から大阪に走るときに、途中で停電があった、あるいは積雪があった、現に徐行しておる。そのときはやはり当然アナウンスが流れまして、今何分おくれております、結局これからいろいろと回復はいたしますけれども、到達時間は何時何分になる予定でございますと、この辺の説明があるから乗客も納得するわけなんです。みんな、おくれているじゃないかと言いながら、何のアナウンスもしない、これはやはり国民は不満を持つと思いますね。したがって、急に時速三百キロや四百キロで突っ走れるわけはないのですから、それならば、なるほどおくれてはおるけれども、次なる目標をここに立て、それに対してどのように着実にアプローチしようとしているか、そういう政府の姿勢が正直ににじみ出るところに私は国民の合意と協力は得られるのではないかという気がしてならないわけでございます。どうかその点は、賢明な総理初め関係大臣はさらにひとつ意欲を燃やし、正直な実情を説明して国民に協力を求める、こういう基本をお忘れにならないようにしていただきたいと思う次第でございます。  次に、税制改革について御質問を申し上げます。  我が国の財政の硬直化傾向は一段と深刻さを増してきております。また税の不公平論議は過熱した状況にあります。したがって、税制改革論議が極めて今活発な時期にあります。政府は一刻も早く今後の税制改革に関する提言を行い、その趣旨、内容を広く公開し、国民の理解を得るとともに、その選択をゆだねるべきだと考えます。その中で、今も申し上げましたように、行革というものは国、地方を通じてなお一層推進すべきであります。  他方、現行税制の是正、見直しを抜きにした歳入増加のための手段、方策としてとらえられがちないわゆる大型間接税導入等を含む税制改正の方向には国民は結局大反発をするでありましょうし、全くコンセンサスを得ることが困難である。したがって、そういう安易な増税志向の税制改革というものは、将来にわたって重大な禍根を残すのではないかというのが私どもの考え方であります。  今、こういう時期に納税者の立場に立って真剣に税制の合理化や平明化、簡素化を提言している諸団体があります。その中の一つ日本税理士会連合会あるいは日本税理士政治連盟などであると思うわけなんでございます。いろいろな要望をなさっておりますが、極めて具体的な問題に触れているわけでございまして、その一、二を紹介しながら御質問をいたしたいと思う次第でございます。  まず、郵送による税務関係書類の提出時期は、原則として我が国ではいわゆる到達主義ということになっておりまして、何月の何日までにその書類は税務署に着かなければならない、こういう規定になっておるわけでございます。しかし、一部分、何日の日付であればよろしいという発信主義もとっております。しかし、この際、納税者から郵送するすべての税務関係書類はことごとく発信主義に統一できないものであろうか。これも行政の簡素化にもつながることであると思いますし、税務の簡素化あるいは国民に対する合理化の一助になるのではないかというふうに考えるわけであります。いろいろいわく因縁はあると思うのでございますけれども、そういうことを政府はお考えにならないかどうか、まずお伺い申し上げます。
  33. 竹下登

    竹下国務大臣 まず、私から。実はけさ、確定申告の初日でもございますので、私も麻布税務署へ参りました。その際、税理士会の皆さん方が一室に、手伝いしてもらっているとでも申しましょうか、実質上の確定申告の協力者と申しましょうか、見ようによっては税務署の人と一緒になって、こんな感じすら受けて、私も大変感激をいたしたわけであります。従来ともこの税理士の皆さん方の協力というものが何よりも大きいという意味において綿密な連絡を行っておるところでありますが、今おっしゃいましたいわゆる具体的な発信主義あるいは到達主義等々の問題につきましては、正確を期しますために主税局長からお答えをさすのが適当かと思います。
  34. 水野勝

    ○水野政府委員 委員御承知のように、現在の税制におきましても、納税申告書や不服申し立て書など納税者からお出しいただくもので基本的に重要なものは、国税通則法で原則としては、そちらはむしろ発信主義になっておるとも言えるわけでございます。  ただ、税務の処分と申しますか、手続は段階を追っていろいろ逐次進めていく、そういった手続、処分もあるわけでございますので、そうしたものの中での納税者からいただく書類の扱いになりますと、一定の段階を追ってまいりますという場合には、その手続を円滑に進めていくためには、期日までにお出しいただくという到達主義という方式はやはりとらざるを得ない場合もあるわけでございますので、すべてのものについてこれを発信主義にするという点につきましては、やはりおのずと限界があるのではないかということで御理解を賜ればと思うわけでございます。
  35. 吉田之久

    吉田委員 理解しにくいと思います。  いろいろそれなりの理由はあると思いますが、今日郵便物は極めてスムーズに、ほとんど一日、二日の間に日本国内に届くはずでございます。したがって、やはり単純明快にいつ何日の消印があればそれでよろしいということにできる時代に来ていると思います。とは申せ、何らかの事情で、出すには出したけれども途中で行方不明になっておったとか、あるいは本当にしかるべき責任者の手元に着いたであろうか、引き出しにしまわれるというようなことはないと思いますが、そういう不安に駆られながら納税者はいろいろと気を使い、早目早目に書類を出さなければならない、非常に不安定な状況にあると思います。したがって、やる気になれば、この際すべて発信主義に統一できると私は考えるわけでございまして、その辺のところはなお鋭意検討をいただきたいと思います。  次に、更正請求をすることができる期間は現行一年以内でありますが、これを三年以内に延ばしてもらえないだろうか。後発的理由による更正請求期間の特例については現行二カ月、余りにもわずか過ぎると思います。これを一年以内にできないかというような要望がございますが、いかがでございますか。
  36. 水野勝

    ○水野政府委員 更正の請求期間は、四十年代までは御承知のとおり全体として二月だったわけでございますが、いろいろと税制調査会にも御検討をいただき、簡素化答申という特別の答申もまとめてもらいまして、それに従いまして一般的には一年間というふうにさしていただいているわけでございます。一年間と申しますれば、所得税の場合につきましては次の年の申告の事務も始まるわけで、そのときに御自分のいろいろな誤りにお気づきになるかということでございます。  それから御指摘の後発的理由の点につきましては、後発的理由が生じたということはそのときに御本人が御承知になるわけでございますので、一般的な場合には、一年間気がつかなかったということがあるという点とは若干どうも違う点もあるのではないか。後発的な理由がまさに発生し、納税者がそれを御存じになるということが前提になっているわけでございますので、この点は二月で措置できるのではないかという気がするわけでございます。ただ、いろいろ特別な場合にはそれぞれ特別の期間は定めておりますが、一般的には、この後発的理由につきましては二月で原則としては御理解をいただければと思うわけでございます。
  37. 吉田之久

    吉田委員 納得しかねるわけでございます。  例えば更正請求の場合、一年後に次の請求を出す場合に、次の申告をする場合に、あっ去年数字が一けた間違っているとかいうことはあり得るわけであります。そのときに気がついても、もはや一年以内を過ぎておるわけでございまして、やはりそういう単純ミスがあり得ますから、これは一年以内と余りに圧縮、限定することはいかがなものかと思います。  それから申告する時点では、土地の所有などで係争中のことがあります。判決や和解がその後出ることがあります。それが二カ月以内に出るとは決まっておりません。そういういろいろな状況が想定されますので、この辺のところはもう少し期間の余裕を持たせることが納税者にとっても大変親切であるし、国のためにもいいことではないかというふうに考えます。  次に、中小法人に対する延納制度を復活できないか。これは五十九年の改正でなくなっておりますが、なぜなくしたのか。あるいは個人の場合にはそういう延納制度があるのに法人はなぜ認められないのかという基本的な疑問が提示されております。いかがでありますか。
  38. 水野勝

    ○水野政府委員 御承知のように、この法人の延納制度昭和二十六年に創設されたものでございますが、当時の状況を見ますと、法人の期限内の収納率が五〇%を切るとか、そういったような非常に資金繰りの悪かった時代、こうした事情を反映して昭和二十六年に創設されたものと言われておるわけでございます。翻りまして最近を見ますと、期限内の納付をされないものは大体二、三%程度になっておるわけでございます。この制度は、昭和五十九年度の税制改正におきまして廃止されたところでございまして、五十九年度におきましては八千億円の所得税減税を行いつつ、厳しい財政事情のもとで財政運用を行うという観点から廃止さしていただいたものでございます。ただ、法人がいろいろな事情から資金繰りが非常に苦しいという場合には、もちろん納付委託の制度でございますとかあるいは納税の猶予でございますとか、そういった制度は配慮されておるわけでございますので、御利用いただければと思うわけでございます。この延納制度の方は、そうした資金繰りと申しますか、納付の困難な事情があるなしにかかわりませず延納を利用できるという制度でございますので、現在のような財政事情のもとにおきましては、お許しを願いたい、こう思うわけでございます。
  39. 吉田之久

    吉田委員 国の財政事情もわかりますけれども、個々の法人、中小法人の事情も考えてやらなければならないわけであります。特に法人税の申告をするときに、申告時に二分の一を納める、そして残りの二分の一については三カ月で分割して納めなさい、納めでもよろしい、こういうことでありますけれども、実際世の中だんだん不況が続いておりまして、とても一挙には納められない。しかし、いろいろな特例があるとは申されますけれども、一たん制度というものが原則として確立されますと、なかなか特例は採用されないのが実情でございます。したがって、結局小さな企業は銀行から先に金を借りて納めなければならない。それができなければ滞納になる。滞納はまた加算される、こういう悪循環が出ておるわけでございまして、さらに特段の考慮がなされていい時期に来ていると思うわけでございます。御検討をお願いいたします。  さらに相続税についてでありますが、小規模面積の居住用の宅地の評価についてであります。これはわずかに二百平米、約七十坪でありましょうか、それ以下の小規模な住宅地については評価をゼロにしてもいいんじゃないか。相続はされますけれども、売り払えるわけでもなし、現に人が居住しておるわけでありまして、そういうものにまで相続税を付するということは、これは現実にそぐわない余りにも非情なやり方だ。すべてを評価をゼロにしろと言うわけではありませんけれども、人間が最低生活できる範囲の例えば二百平米以内の土地、そういうものにまで税金を過酷にかけるということはいかがなものかと考えるわけでございますが、いかがでございますか。
  40. 水野勝

    ○水野政府委員 御指摘の点につきましては、まさに昭和五十八年の税制改正におきまして、特別に税制調査会に部会を設けまして検討をいたした点でございます。これによりまして、御指摘のように二百平米までの部分につきましては三〇%を減額するという制度が初めて導入されたわけでございます。現在その適用状況等を見ておる段階でございまして、五十八年分だけについて見ますと、東京都内と申しますか東京国税局管内で申しますと、平均して六百万円程度は減額になっておるということで、効果が発揮されておるわけでございます。ただ、この点はなおよく検討はずべき点ではあろうかと思われます。いずれにいたしましても、税制調査会におきまして今抜本改正が検討されております。相続税の問題もその一環にあるものと思われます。十分税制調査会にも御報告をし、御審議を願いたいと思うわけでございます。
  41. 吉田之久

    吉田委員 お聞きのとおり大蔵大臣、税理士会は極めて具体的に問題の箇所をとらえながら多くの提言を行っております。また、先ほど大臣みずからが御体験になりましたように、税理士の人たちは税務当局と納税者の真ん中に立ちながら、本当に国家の財政のためにも献身的な寄与をなさっていると思います。今後税制改革等につきましていろいろな団体の御意見が出されると思うわけでございますが、特に税務の専門家集団である税理士会の意見等につきましては謙虚に、率直に耳を傾け、また採用すべきは採用されるべきであると思いますが、いかがでございますか。
  42. 竹下登

    竹下国務大臣 私もけさ実感を持って体験したわけでありますが、それのみでなく、従来からも税制論議が行われる場合は、参考人等で必ず税理士の先生を本委員会あるいは大蔵委員会等にお迎えするというある種の習慣も確立しておるような感じすらいたしております。したがって、税のプロ集団である税理士の方々の意見は、これは恐らく特別部会とかいろいろなところでもそういう御議論はあろうかと思いますが、十分参考にされて税制調査会が進められていくであろうことを、期待と確信、両方を持って、重要な意見としてまたお伝えすべき課題だと思っております。
  43. 吉田之久

    吉田委員 次に、法務大臣にお伺いいたしますが、第三次商法改正問題に対していろいろな要望が出ております。この中で資本金五億円以上あるいは負債総額二百億円以上の会社に対しては会計士の監査を必要とする、それ以下の会社については限定監査といいますか調査といいますか、そういうものを専門家にやらせる。この専門家の規定がまだ結論は得ていないようでありますが、私どもの考えでは、この税理士集団というものは立派な該当専門家であると思うわけでございます。この辺の件につきましてお考えがあれば申し述べていただきたいと思います。
  44. 枇杷田泰助

    ○枇杷田政府委員 ただいま商法の改正問題につきまして法制審議会の商法部会で検討を進めておりますけれども、ただいま御指摘のような問題を含めましていろいろ各界からの御意見が出されておりますので、税理士会から出されております御意見も十分に検討させていただいて、近く試案を取りまとめるという方向で審議を進めてまいりたい、かように考えております。
  45. 吉田之久

    吉田委員 次に、教育問題についてお伺いを申し上げます。少し時間がありませんので、簡潔に申し上げます。  最近、国公立離れが大学において一つの現象になってきていると言われております。その原因は授業料、入学金、入学試験料等が毎年値上げされておることにも大きくかかわっておると思うわけでございます。この点が一つ。  それから次に、来年から国立大学を二校受験できるようにしよう。これは多くのチャンスを与えるということで大いに賛成であります。しかし、受験生の立場から申しますと、その前期、後期の二つのグループ分けを発表されるのがいつなんだろうか。これは早ければ早い方がいいと思います。次に、国立大学九十五校のうちの後期に回る学校数はどの程度なのか。私はほぼ半数あっていいと思うのでございますが、その辺の見通し等についてお伺いを申し上げます。  なお、その後期校にどの種の学校を入れるか。私はこの際、総理もいろいろとテレビ等で発言なさっておるようでございますが、東大や京大など旧帝大系の学校が後ろに回ってもいいではないかとおっしゃっておるようでございまして、賛成であります。在来の一期校、二期校のようないわゆる弊害を招かないためにいかにバランスをとるか、かつローテーションを絶えずどのように入れかえていくか、あるいは場合によれば抽せん方式でもとってもいいのではないかというふうに思うわけでございますが、この辺につきまして文部大臣のお考え方を伺います。
  46. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 御指摘の国公立離れというのは、最近の受験者の数がやや減少したということと、それから入学を辞退する者の数がやや出てきたということ等の原因の御指摘だろうと思います。  先生おっしゃるように、入学検定料はことしちょっと高くなりました。けれども、それが原因だとは思いませんし、授業料はことしは値上げはいたしておりません、来年からになると思うのですが。そうなりますと、どうして国公立を離れるのだろうか。これはたった一つの例ですから必ずしも全体をカバーできないかもしれませんが、例えば名古屋大学経済学部に受かって辞退をした人が二けたありました。どこへ行ったろうと思って追跡調査された結果を調べましたら、実は東京の私立大学へ来ておった。そうしますと、名古屋大学より東京の私立大学の方が入学金も授業料も高いわけでありますから、国公立離れが必ずしも授業料の値上げたけに影響されない。受験生が資質や個性や能力に合った教育環境や建学の精神にあこがれて大学を選んだのではなかろうか、こう判断されるところもあるように受けとめております。  なお、学校の受験機会複数化はどうだという角度の御質問ですが、確かに前回共通一次試験の制度をスタートさせるときに、それまでありました一期校、二期校という制度のあり方は大学をそこで差別をするような悪い制度である、だからこれを改めるという各党の御意向等も十分尊重をして同じ日に同じ共通の問題試験に変えたのですが、このごろそれが当初の趣旨、精神と離れまして、二次試験の受験校の変更とかあるいは受験産業による大学の系列化とか輪切りとかいろいろな弊害も出てまいりましたし、何よりもそういったことが偏差値的に点数だけで利用されますと、教育基本法の言う人格の完成という大目的にも反することになるし、また受験生からは、格差がなくなったことはいいけれども受験機会が一回では困る、もっとチャレンジする機会を与えてほしいという要望等も確かにございまして、臨時教育審議会でもそのようなことが議論されたことはよく承っております。ただいま国立大学協会において、これらの要望を全部踏まえながら、御指摘のように前期と後期と二つのグループに分けて受験機会をふやすとか、あるいは学校によっては一次募集と二次募集と同じ学校で二つのチャンスを設定すればなお受験機会はふえるのではなかろうか、受験生の立場に立ってチャレンジする機会をふやしたらどうか、これに大学協会が二たえて今検討をしていただいておるさなかでありますので、御質問の詳細にわたっては、どの学校をどこへ入れるとか、どこは何枚になるかということはもう少し大学協会の自主的な御努力を見守っていきたい、こう思っております。
  47. 吉田之久

    吉田委員 国大協の意見を見守られることは極めて重要でありますが、同時にこの種の問題は、文部大臣みずからの指導力やサゼスチョンもかなり必要だと思います。なかなかに内部では決めにくい問題とか判断しにくい事情も当然あると思います。かつ、そういうことで一番心配いたしますのは受験生でありますから、その辺はあうんの呼吸と申しますか、ひとつしかるべく早い時期に発表していただきたい、あるいはバランスもとっていただきたい。今お話しのとおり、いろいろと格差を生じないように最大の配慮をしていただきたいということを強く申し添えておきます。  次に、総理と文部大臣にお伺いいたしますが、この委員会でもいろいろと論議が出ましたいわゆる最近のパソコン、テレビゲームの問題であります。それはそれなりに時代の変遷を物語っていると思いますが、あるスポーツウェアを販売なさっている方に聞きましたら、最近小中学生の中でスポーツウェアが明確に一割売れ行きがダウンしたという結果が出ているようでございます。結局今後このようなゲームで、あるいはその他の理由もありますけれども、屋外で遊ばない子供たちがますますふえてくるのではないだろうか。これは子供社会の大きな一つの変化が起こってきていると思います。果たしてそういう子供社会が健全と言えるかどうか。しかも子供社会は将来大人社会になるわけでありまして、将来体質的にあるいは精神的にまるで変わった人間社会というものがこの国に生じないだろうかというような懸念がするわけでございます。  それから中野富士見中学の今度の葬式ごっこに端を発する余りにも痛々しい、また残念な事故が生じております。その後の対応の仕方も極めて問題があります。教師は寄せ書きしたことも口どめして回ったとか、あるいは事件後も問題児童たちに反省の色は全くないとか、あるいはなお暴力事件が続いてついに警察が捜査をしたとか、あるいはこれは本当かうそか知りませんけれども、この事件の取材などでマスコミの一部が生徒に金を渡したとか渡さなかったとか、ここまで来ると我が国もまさに教育あるいはそういう倫理観念、地に落ちた感がするわけでございます。また、熊本県のある中学の女教諭は、勤続二十三年のベテランであるべき人が暴力団とぐるになって保険金詐欺を働いていたとか、かなりゆゆしい問題がいっぱい出てきておると思うわけなんでございます。文部大臣としては本当に怒らなければならない事態に来ているのではないか。  同時に、この問題の原因、いろいろあると思いますが、あるいは対応策もいろいろあると思うのでございますが、最近いわゆる教師になる人たち、これが一言うならばエリート中のエリートコースをたどってきた人たちによって構成されておる。言うならば、今教師である人たちは子供の時代もよく勉強なさった方のようであります。子供は勉強するものだと信じ込んでおる。勉強しない子供に対しては全く理解もできないし対応する能力を持たない、こういうところにも一つの問題があるのではないかというふうな気がいたします。今文部大臣がお話しになりました偏差値、輪切りで人のすべてを決定しようとすること、このことに対する問題も極めて深刻に出てきておると思うわけなんでございます。特に問題は、共通一次試験の後、自己採点させた点数の結果を集約いたしまして、高等学校の教師が一括してそれを受験産業に送っておる。それを集めて、受験産業はどの点数はどの大学に受かりますとかという資料を流す。ここまで来れば私は、本当の教育者の姿勢、立場というものはこれでいいのだろうか、教育者と受験産業にかかわっている人たちとの区分がどこについているのだろうか。いじめや校内暴力の問題もこの種のこととかかわりなしとは言い切れないと思うわけでございます。この辺につきまして総括的に文部大臣総理の御見解をただしたいと思います。
  48. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 先生最初に御指摘のまずパソコンの普及の問題でありますが、調査によると六百五十万台ほど普及しておると言います。けれども、私はこれは一概に悪であるというとらえ方をしないで、児童生徒がコンピューターというものの持っておる無限の可能性とか新しく開けていく未来社会に対して何らかの心の対応ができるということは、それは効用として認めなければならぬと思います。ただ、機械だけと対面して、スリルと興奮の時間だけを楽しんで、人間として身につけなければならぬいろいろな多様な生活体験がおろそかになるのでは、徳育、知育、体育のバランスのとれた教育から見るとやはり好ましくないわけですから、そういった流れが社会の変化として起こってきておるならば、それに対応するように、例えば学校教育の中において自然教室とか野外活動を一生懸命やるとか、あるいは民間社会教育団体で行われておるボーイスカウトとかガールスカウトとか、から歩き運動とか修養団の海の家とかいろいろございます。そういったものにみんなが参加をして、自然や山野に溶け込んで伸び伸びと生きていく、そういった環境も一生懸命育てていくというようなバランスのとれた指導が大切なのではないだろうか、私はこう考えておるわけです。  二つ目に御指摘の問題は、共通一次試験の結果を受験産業に送ってという話であります。私はあれも実情をちょっと見せてもらいましたけれども、ある人が、私はこの大学を受けたいと希望を書いて出しますと、コンピューターの文字で志望校変更の要あり、こう書いて返ってくるというのです。この大学はア印だ、この大学はジ印だと出ておるのだそうです。ア印というのは、あこがれにすぎないから変更しろ、ジ印は実力相応だから大丈夫だ。ひどいのはス印で、滑りどめぐらいに考えておけという分け方だそうですから、そういうことではどうも主体的な進路指導ではないではないか。だからもっと学校自体の主体的な進路指導の中で、児童生徒そのものの希望とか、言葉は悪いかもしれませんが、ひとつ高いところを目指して一発主義でやってみたい、挑戦してみたいという生徒の希望があったら、これを受けさせてあげるということもいいのではないだろうか。私も中学を挑戦して失敗した経験を持っていますけれども、まあうぬぼれの鼻を折られるが、悔しいけれども、そこから何物かを得てまたやっていこうという気持ちになるわけですから、いろいろな多様な進路指導を直接心の通い路を持ってすべきだと思うのです。  そして、最後に先生がおっしゃった、教師として今のいじめとかいろいろなものに対応するためにどうしたらいいのだろうか、どうやって指導していったらいいか。この間の日米中学校の教師の意識調査を見ましても、私は日本の現場の教師の大多数の皆さんは、そういったことにも心を砕いて努力をしておってくださる結果があれにもあらわれておったと思います。先生もごらんになったと思いますけれども、物事を当てるときに平均以下のややおくれておると思われる層の子供になるべく答えを当てるようにする、指名をするようにするということなんかも、やはりそれを見捨てないで、みんななるべく向上させたいという教師の使命感、教師の実践力、そういったもののあらわれだろうと私は思っておりますから、学校教育の場の中における教師と児童生徒の心の通い路がしっかりしておれば、最後に御指摘になった富士見中学校のようなああいった悲しい事件も事前に救済できるんではないだろうか。もう少し心の通い路を大切にして、悩み事には手を差し伸べてやってもらうような、そんな教師像を私は心から期待をしておるわけでございます。
  49. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 文部大臣が申したとおりでございますが、私はいじめの問題をじっと見ておりまして、何といっても学校の先生がまずしつかりしてください。富士見中学の問題等を見ましても、何となしに釈然としないような経過でありました。  そういう面から見ると、学校管理あるいは学校の内部における教員室の一体感、校長、教頭以下の責任感、そういうものがややもすれば父兄や皆さんの間に透明感を失っておるような感じを持つんです。そういう方向に教育委員会あるいは文部省が一致して強力に指導していただくということがまず当面大事である。そのほか、これを援護するためのいろいろな政策については、政府も真剣に努力してまいるつもりでおります。
  50. 吉田之久

    吉田委員 いろいろ他に教育問題とか防衛問題とか質問したい点もあるのでございますが、それは後日に回すことにいたしまして、私の質問はここで終わらせていただきまして、あと西田八郎氏から残余の質問、関連質問をしていただきます。ありがとうございました。
  51. 小渕恵三

    小渕委員長 この際、西田八郎君より関連質疑の申し出があります。吉田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。西田八郎君。
  52. 西田八郎

    西田(八)委員 せっかくの時間を与えていただきましたので、二、三関連といいますか、最近問題になっております主要なことにつきまして質問をいたしたいと存じます。  まず最初に、私は今日の日本農業がこのままでいいのかどうか。総理は本会議における代表質問に答えて、農は国のもとである、こういうふうにおっしゃったわけでありますが、今日農家は後継者問題あるいは嫁の問題、それから価格の問題、農業外に働きに出る出稼ぎの問題、多くの問題を抱えておるわけであります。しかし私は、本当に日本農業が自立し、国際競争力にたえ得る農業とするためには、今日までの農業の踏襲という形では日本農業は自立てきないと思うのです。したがって、ここでやはり抜本的に農政の改革をやらなければならぬのじゃないか。  それは、総理の演説の中にもありますように生産性を向上させるということでありますが、今日、日本の農地は化学薬品、農薬の使用過多によりましてかなり疲弊しておると思うのであります。したがって、減反政策を進められまして実感として受けられることは、減反のために農地を使わなければ、三年もすれば後は米はおろか、ほかの穀物さえほとんどとれないというようなことが言われておるわけであります。加えて兼業農家が相当ふえておるわけでありまして、専業農家は全体のわずか十数%しかいない。こういうような状況の中で果たして食糧自給が可能なのかどうか。産業の国際化というような問題も言われております。したがって、とれないものなら外国から買えばいいというような安易な考え方では、国民生活の安定は期せないと思うのです。  特に、食糧の供給安定ということは、国の安全保障にとっても極めて重要な問題だというふうに考えるわけであります。したがって、九十一国会におきましては、食糧自給力強化に関する決議をいたしまして、そして政府にそのことを求めてきたわけでありますが、全体の穀物の自給率はわずか三〇%を切っております。米だけが一〇〇%。肉類は八〇%と言われておるのですが、飼料はほとんど外国から入ってきておるわけですから、外国の肉を食っているのと大して変わらぬということになるわけですね。そういう点から考えますと、先行き非常に暗たんたるものを感ずるわけでありますが、こうした状況に対して農水省としてまず一体どのように取り組まれていくのか。いろいろと方策が出されておるわけでありますが、それらの方策はほとんど今日の農民の感情から考えてマッチしないものがあるのじゃないか。もっと近代化の方向、確かに日本農業は機械化はされた。しかし、機械化はされたけれども近代化されていない。こういうような状況の中で一体どういう方策を持って日本農業の安定を図っていかれるのか。抜本的な農業構造の改善ということも考えていかなければなりません。また土地に執着する農民の意識革命ということも必要ではないかというふうに考えるわけでありますが、まず農水大臣からお答えをいただきたいと思います。
  53. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 御指摘のとおり、現在の日本農業というものを見ましたときに、穀物の自給率三三%前後ということでございまして、確かに非常に厳しいものを感じます。ただ問題は、もう先生も御案内のとおり、やはり食生活というものが非常に急激に変わってきたということ、そういう中で乳製品ですとかあるいは肉ですとか、こういうものを摂取する。これに対する飼料というものを国内でつくるとなると、膨大な農地が必要であることももう御案内のとおりであります。そういうことで、そういった飼料穀物を中心にして輸入しておる。それが穀物の自給率というものを相当落としてしまっておるということではなかろうかと思います。  それからもう一点は、今お話がございましたように、確かに専業農家といいますか実際に農業で食べていく、あるいは農業という産業の中で生きていく、こういう人の数というのは非常に少なくなってきておる。これがやはり一つの大きな問題だと思います。これの一番の基本の問題というのは、国土が狭いということもありますでしょう。しかし国土が狭いというだけでなくて、日本というのはやはり山国であるということで、山間に農地が非常に分散しておるというようなこともあります。そういうことで、本当に農業でやろうという中核農家に土地がなかなか集まらない、こういった問題もあるのじゃないかなというふうに考えます。そのほか、先祖伝来の農地というものに執着するということもありますでしょう。こういったことでなかなか規模が拡大できなかったという要因というものはあると思います。  ただ、近年ずっと私ども見ておりますと、農地三法というものを国会で通していただきました。それ以来町あるいは農業団体、こういったところが非常に活動をしていただきまして、いわゆる土地をお貸しする。昔はなかなか土地が返ってこないから、隣の家であればなおさら返ってこないからということで、隣で本当に農業をやっていこうという青年がおりましても、その方に委託することができなかった。しかし、農地三法が成立して以来各地でそういうものがだんだん進められて、規模の拡大というのは、大変遅うございますけれども、しかし着実に伸びてきているのじゃないかなと私は思っておりますから、そういう面でこれをより助長しなければいけない。それからもう一つは、ちょうど農業者が高齢化してきたということでありますので、そんなことで、そういった農用地利用増進法等を活用してひとつやっていただこうという機運が出てきておるということはあり得ると思います。  いずれにいたしましても、何といってもその基本になるのは、土地利用型農業の場合には基盤整備というものか欠かすことのできないことでありまして、本年度も全体の予算、国費は削らざるを得なかった、しかし財投等を活用することによって基盤整備の事業も少しでも伸ばした。そういったことを進めながら、日本農業というものを本当に力強いものにしていきたい、こんなふうに考えております。
  54. 西田八郎

    西田(八)委員 大臣のおっしゃることはわかるわけでありますが、しかし実態としてはなかなか取り組みにくいと私は思うのです。ですから土地は、要するに所有するものにあらず、利用するということをやはり認識した上に立って規模拡大というものを図っていかなければ、一生産単位の規模が現状のような形では、私は、幾ら農業者が頑張ってみたところで国際価格に追いつける状態にはならないと思う。土地の生産性等につきましては、これはもう拡大するわけにはいきません。まして、土地を生産するということは極めて難しいことでありますから、ある土地をどう利用するかということが重要であると思うのですね。  近年、農村の若者の間でもかなりそういう意識は普及してまいりまして、そして各地域におきましても集落的な協業化の方向というものが進められておると思うのです。したがって、そういうものに対しては、私はもっと思い切った助成、指導をしていくべきである。とかく農業は過保護だというふうに言われておるわけでありますが、土地改良工事等の費用は、私は――先ほども大臣も言われたように山国なんですね。山国で、すぐに海に流れ込む。それを我々の先人は水田という方法でこの土地を守ってきた。言うならば、土地改良というのは日本の国土保全の仕事の一つだというふうに理解していいんじゃないか。それを補助金だというふうに言われたのでは、私はかえって迷惑ではないだろうかというふうに思うわけでありまして、そういう点についても十分の配慮をする必要があると思うのです。  そこで総理、農が国のもとだとおっしゃったのですが、今大臣の言われたようなこと、また私の質問の要点についてどういうふうにして対処していかれるのか、総理の所信を伺いたいと思います。
  55. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 農が国のもと、あるいは農業は生産、生命産業である、そういうふうに申し上げてきた考えは一貫して私は持っておるわけでございます。農業は、工業製品、工場でつくられるようなそういうものと違いまして、生きているものを相手にしておるし、天候とか土壌とか、あるいはこれに丹精をする人間の精神というものは非常に大きく作用する。特に家畜の世話というような問題は、人間の愛情の問題にも関係してくるような大事なところがあるわけでございます。そういう意味において、農業というものは人間の精神生活にも大きな影響を目に見えないけれども及ぼしつつあるし、それから農業自体が、環境とか自然の保護、縁の提供、そういう面においても、あるいは地域社会の共同体化という連帯性という面においても、目に見えないけれども大きな力をまだ残しております。都会地やその他の混住地帯は多少変わってきていますが、日本の、地方の農村というものには、やはりそういうものが厳然として残ってあるわけです。そういう面は今非常に大事な面であるとも考えております。そういう面も忘れてはいけないと思うのであります。一面においては、生産性というようなそういう面も大いに考え、そのために大いに努力もしなければならぬと思いますが、国家の長い生命力を考えてみますと、そういう面も等閑に付してはいけない、そういうことも考えつつ、いろいろな面で施策を充実さしていきたいと考えております。
  56. 西田八郎

    西田(八)委員 農業は、そういう総理の言われるように、単にもう百姓ではないと私は思うのですね。したがって、食糧生産産業、同時に国土保全、こういう重要な役割を果たしておるということの認識に立って、私は、日本農業の近代化への方向というものを一層進められることをお願いしておきたいと思います。求めておきたいと思います。  次に、大蔵大臣にお伺いしますが、ことしの予算の中で、国家公務員の給与改善費というのは一銭も計上されていない。これは一体どういう理由なのか、お伺いをいたしたい。  ということは、国家公務員というのは憲法二十八条に定められておる団体行動権を制約されておる。そして、それにかわるものとして人事院勧告制度というものがとられておるわけですね。ところが、この人事院勧告も過去完全に実施されたのはもう数年前のことでありまして、五十四年以降ですか、ずっと減額あるいは補正をされてきておるわけです。そういう点から考えますと、私は余りにも制度を形骸化し過ぎているんじゃないかというふうにも考えるわけです。もちろん、財政再建、極めて厳しい状況にあることはわかりますけれども、しかし、貿易摩擦等によって内需の拡大ということが言われておるわけであります。内需拡大をしようと思えば、勤労者、サラリーマンもちろん国家公務員を含めまして可処分所得を大幅にふやすという必要があるんじゃないか。そのために我々、減税も言っておるわけでありますが、減税もさることながら、給与を上げるということは重要な問題の一つであろうと思います。民間におきましては、内需拡大のために可処分所得をふやそうということで七ないし八%の賃上げ要求が出されようとしておる、既に出されておるところもあるわけでありますが、そういう時期に一銭も計上しなかったということは、私どうも納得ができないのですが、その理由をひとつ聞かしていただきたいことと、仮に、これは仮にですから、仮説には答えられないと言われると困るのですが、民間の賃上げなりあるいは物価の値上がり率が予測を外れた場合、人事院が勧告を出したとする場合、本年度は完全に実施する意思があるかどうか、これをひとつ大蔵大臣並びに総理に伺っておきたいと思います。
  57. 竹下登

    竹下国務大臣 まず、人事院勧告に対する物の考え方は、あるいは総務庁長官からもお答えがあろうかと思いますが、六十年の十一月八日に、「人事院勧告の完全実施に向けてより一層の前進を図るため、過去二年の例とは異なり、政府において俸給表を作成することなく、本年七月一日から人事院勧告どおりの改定を行うこととしたものであります。」こういうくだりと、「財政事情等公務員の給与を取り巻く情勢は今後も引き続き厳しいものと見込まれますが、政府としては、給与が勤務条件の基本にかかわる重要な事項であることにかんがみ、来年度以降においては、人事院勧告の完全実施に向けて誠意を持って対処する所存であります。」こういう声明がございます。  私も、この決定がなされるときに感じましたのは、二つのことを感じました。元来、完全実施、最大限尊重すべきものである、この精神に立つ場合、予算編成上の問題として、一つは今年度の補正予算、既に議了していただきました。また、その中身に伴う法改正の問題として、いわゆる五十九年度の剰余金を全額これに充てるということをお許しいただかなければならぬだろうということを感じました。この法律案も既に衆議院を通していただいた問題でございます。  それからもう一つ感じましたのが、いわゆる今御指摘をいただいておる、まさにこの給与改善費を計上する、しないの問題でございます。これは昭和四十四年から、そのときどきの財政状態によりまして計上の率は違っておりますが、計上してきたことは事実でございます。したがって、具体的な計上額というのは結局毎年度の財政事情を勘案して決めたということになるならば、この問題も、今度計上をしないということにつきましても、いささかも人事院勧告制度の尊重姿勢を崩すものでないということを明言する限りにおいては許容されるではなかろうかという考え方に立って、その瞬間からお願いをして今日に至っておるということであります。
  58. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 今の大蔵大臣の答弁で尽きておると思いますが、私どもの方も、人事院勧告があれば、昨年の十一月八日官房長官談話のとおり、完全実施という方針は固めております。
  59. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大蔵大臣総務庁長官が申されたとおりでございます。  ことしの予算の編成におきまして昨年と違う給与の取り扱いをいたしましたが、これは人事院勧告を尊重しようとする政府の方針は微動だにもしないということを重ねて申し上げる次第でございます。
  60. 西田八郎

    西田(八)委員 大分質問事項を用意してきたわけでありますが、時間が来ましたので終わりますが、六十年度が完全実施だなんと思えば大きな間違いですね。人事院勧告は四月一日からの改善を求めておるのを七月にされた。それは政府としては、国会承認案件として承認を求めましたということで承認されたという形になるのか、途中で廃案にされて政府自身で決められたわけですけれども、少なくとも法律を守るということは、これは憲法にも定められた行為でありますから、ひとつ政府は責任を持って完全実施をされるように。  そしてついでに、三十秒ほどありますからもう一言だけ申し上げておきたいのですが、公企体の労働組合の賃上げ要求に対して、今度は公社といえども国鉄だけが残るわけでありまして、その他現業関係、それらに団体交渉権を与えておきながら、団体交渉の過程で一銭も有額回答をしない、これは私はゆゆしき問題だと思うのです。政府がその省庁に対して交渉をゆだねるとするならば、せめて省庁の中における有額的な回答はなすべきではないか。有額回答がないと公労委自身も非常に扱いにくいということにもなるわけで、したがって、ことしの既に迫っております労働組合の賃上げ要求に対して、各公企体におきましても有額回答がなされるよう強く求めておいて、私の質問を終わります。
  61. 小渕恵三

    小渕委員長 これにて吉田君、西田君の質疑は終了いたしました。  午後零時四十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時四十二分休憩      ――――◇―――――     午後零時四十一分開議
  62. 小渕恵三

    小渕委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。川崎寛治君。
  63. 川崎寛治

    ○川崎委員 まず最初に総理にお尋ねをいたしたいと思いますのは、フィリピン大統領選挙は全世界から大変注目をされました。そしてアメリカも大変苦悩していると思います。このことは東南アジア全体にも響く問題でありますし、また日本との関係においても、総理なり外務大臣がお答えになっておりますように、隣国だ、こういうことで大変苦悩をしておるとは思うのでありますけれども、ただ、レーガン大統領がはっきりと不正と暴力があった、こう断定をした公式批判を、声明を出したということは、これは、私は与党の諸君にも申し上げたいのでありますが、アメリカの議会の人権や自由や民主主義や、そういうものに対する厳しさというものが大統領をして不正と暴力ということでの批判をせざるを得なかった、こう思うのであります。中曽根総理は記者団の質問に対しまして、国民議会で選任をされたので祝意を表する、こういうことを申しておるのでありますけれども、その点は私は大変遺憾だと思います。今度の問題につきましては日本国民の間といいますか、家庭の主婦の皆さん方にも、コラソン・アキノさんが亡き夫のしかばねを乗り越えて闘っております、しかもにこにこと笑みをたたえながら闘ってきたその姿に対して大変大きな関心を持っております。でありますから、私たちに対しましても、フィリピンはどうなるのだろうか、こういうことをこれまでもいろいろと率直なことを聞かれてきたわけであります。  でありますから、国家と国家という場合にはマルコス政権をいうのか、フィリピン国民をいうのかという点で、私、民主主義という面でまいりますならば、後ほど国連総会における総理の大変格調の高い演説についてもお尋ねをいたしますが、そういう立場からいたしまして、このフィリピン選挙にアキノ勝ち、選挙後マルコス勝った、こう批判をされているわけでありますが、そのことに対しての総理の御見解を伺いたいと思います。
  64. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 前から申し上げておりますように、我が国は外国の内政には一切干渉しない、その国の国民がその国の憲法に従って自由に選ぶその政治活動というものの結果を尊重する、それが我が国の立場でございます。特にアジアの隣邦であるフィリピン内政干渉がましい言動は一切慎まなければいけない。それは過去の太平洋戦争における日本が犯したさまざまな過失というものもこの際もう一回反省してみる必要があるので、それは、アメリカがフィリピンに対する立場、環境と、日本フィリピンに対する立場、環境とは違うものがあると私は認識しておるのでございます。  そういう意味において、今回のフィリピン選挙つきましては、隣国のことでございますから重大な関心は持っておりますけれども、すべてはフィリピン国民が自分でおやりになることであって、我々が外から、あれは正しかったとか、あれはますかったとか、そういう批判がましいことをフィリピン国民がおやりになっていることについて一つ一つ言う立場にはない。そういう立場をもしとるとすれば、ほかのASEANの国に対しても、そういう日本の過去の太平洋戦争時代のことから考えてみましてもいい影響を及ぼさない、そう私は考えておるのでございます。  また、人権問題については我々も重大な関心を持っております。おりますけれども、国々には国々のやはりしきたりとか考え方というものがございます。アメリカは建国の歴史から自由とか人権とかという形であの独立が達成されたといういきさつもございます。しかし、フランス、イギリスあるいはイタリア、ドイツあるいはアラブの諸国、みんなおのおの建国の事情を異にしております。したがって、国の生きざまというものもまた多少みんな変わっております。民主主義とか自由とか人権を尊重するという意味においては、これは同じ強い熱願をお互い持っておるわけで、日本も同様であり、日本国内に関する問題については我々は憲法のもとに厳格にそういう考えをけじめをつけていくべきであると思っておりますが、外国の問題については、おのおの国情があり、社会経済的なことや伝統もありますものでありますから、そういうものをそのままとして一応は受けとめていくという形が私は国と国との関係を仲よくしていくためにも末永く大事なことではないか、そう思って言動には非常に注意をしておるということであります。
  65. 川崎寛治

    ○川崎委員 きょうは予定をいたしております問題もたくさんございますので、これはいずれ一般質問の方にも譲りますが、経済援助の問題等につきまして改めて国会のあり方、それらも含めましていたしてまいりたい。ただ、総理のいわゆる民主主義、そういうものに対する大変遺憾な答弁というものに対しては不満でありまして……(「レーガンと同じじゃない」と呼ぶ者あり)いや、それはレーガンと同じように言えないということは今るる述べられましたので、それはそれとして私は今後に問題を残しておきたい、そういうふうに思います。  次には三宅島の問題でございますが、自民党の藤尾政調会長以下九名の国会議員の諸君が参りまして、三宅島振興のためにはNLPの見返りに七百億であろうが八百億であろうが面倒を見る、そしてこれは各閣僚と了解済みだ、こういうふうなことを島民の皆さんに述べておられるわけであります。  私は、こういう形で、この夜間訓練場をレーガン大統領から要求されているからだ――あなたは今、レーガン大統領フィリピンの問題に対する発言に対しては大変、いや別だ、自主性だ、こう言われながら、さて三宅島の飛行場、訓練場の問題についてはレーガン大統領からやんやん言われているから五月のサミットまでには結論をつけなければいかぬのだ、こう言って藤尾さんが行ってやっておられるのでありますけれども、これは私は大変島民に対するけしからぬことだ、こういうふうに思います。でありますから、こういう形での説得の仕方ということはむしろ島民の皆さんの間に反発が強まっている。自分たちは、テレビを見ておりましても、太陽と野鳥の島を守りたい、これは私は幸せは何かということを考えますときに、ただレジャーセンターをつくってやったらいいとか、そういうものじゃないと思うのです。心を失ったようなそういう形で押しつけていくやり方に対しては断固反対をしたいと思うのでありますが、その各省の了解をとった上でのあれだということで、総裁としてこういう説得工作をさせたのかどうか伺いたいと思います。
  66. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まず第一に、藤尾政調会長がどういうふうに言ったか、私まだ報告を受けておりませんが、サミットあるいはレーガン大統領の来日とNLPの問題は関係はありません。これは私はここで何回も既に申し上げておるとおりでございます。サミットサミット、NLPはNLP、別個の問題でありますから、この点ははっきりここで申し上げておきます。  しかし、できるだけ早くNLPの仕事を成就させたい、そう熱願しております。と申しますのは、何しろ厚木の問題がもう随分長い間問題になっておりまして、あそこはもう人口密集地帯になってきておりまして、その影響する範囲というものが非常に大きいわけでございます。そして、厚木の皆さんからの御陳情、周辺市町村からの御陳情、あるいは神奈川県知事や神奈川県議会からの御要請等々も考えてみると、一日も猶予すべからざるという状況に来ていると私思うのであります。また、厚木の市長さんや神奈川県の皆さんにも、できるだけ政府は全力を尽くして早く善処いたします、そう約束をしておるわけです。そういう約束の実現のための一環としていろいろ方々じゅうを模索しました結果、まあまあ三宅島が一番適当ではないかというふうに判定を持ちまして、地元の皆様方に御理解、御協力をいただくために一生懸命努力しておるところでございます。  住民に対して、その意思に反して物事を強制するなんという気持ちは毛頭ございません。これは、住民の、三宅島のためになるという考えに立ちましてこれからの将来を考えてみますと、三宅島の発展のためには国としても、あそこへジェット機が飛ぶ大きな飛行場ができればこれは三宅島のためにもなる、そういうような考えに立ちまして、いろいろ、もしそういうことが実現可能ということになれば、国としてもこれだけの御協力を申し上げ、島の繁栄のために貢献したい、そういう衷情を申し上げておるのでありまして、意に反して物事を押しつけようなんという気持ちは毛頭ないのでございます。しかし、ともかく話を聞いていただかぬと話が始まらない。ですから、まあ一応お聞きくださいませ、ます話をお聞きになっていただいて御判断くださいませ、そういう意味で話を聞いていただくという努力を今やっておるのでございます。
  67. 川崎寛治

    ○川崎委員 話し合いじゃないのですね。七百億だ、いや足らぬければ八百億だ、一千億だ、札束でこうたたこうとしておる。これは島民の皆さんに対する侮辱でもあるわけでありますが、各省の了解済みだ、そうなんですか。
  68. 加藤紘一

    ○加藤国務大臣 藤尾政調会長は出発に先立たれていろいろ各省をお集めになり、そしていろんなアイデアにつき各省の意見を聞き、かなりの部分詰めて出発されております。御承知のように政党政治でございますので、予算の編成だとか将来の政策を立てるときには、ある部分ではかなり党主導になるということがあるのは自民党と政府との関係でございますが、今回の場合には、政調会長がかなりお詰めになって出発されたものでございます。  それで、その内容は、私たち党の方からお聞きしておりますと、できるだけ今後の島の生活に結びつくもの、そして若者が定着できるような生業の機会をふやすようなもの、そういうものに焦点を置いてお集めになっておる。例えばいろいろな、自動車教習場みたいなものをやってみてはどうかとか、それから第一次産業に結びつくものがどうであるとか、そういうものをお集めになり、また御計画を立てて御提示なさっていると了解いたしております。
  69. 川崎寛治

    ○川崎委員 この予算書のどこにあるのですか。この予算のどこにあるのです。私はきょうまだほかにいっぱい大事な問題を抱えておりますから、これはいずれ一般質問で上田哲委員が徹底的にやりますので後に残しますが、この予算書の説明のどこにあるのか、後ほどこれは明らかにしてほしい、(「資料を出せ」と呼ぶ者あり)こういうふうに思います。具体的な討議をする資料、これはもう要らぬです。お願いをしておきたいと思います。  次に、日本撚糸工業連合会の事件の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  これはもう本当に腹の立つ問題でありまして、大変今、各紙も徹底的に構造汚職として取り上げられておるわけでありますけれども、まさに通産省と事業団とそれから連合会とそして政治家諸君、こういうぐあいにそれぞれ絡み合っている問題だ、こういうふうに思います。後ほど政策融資、財政投融資そのものの議論もいたしますが、この日本撚糸工業連合会の事件というのは、ますます金融自由化の進む中で、こういう問題というのはこの際きちっとしておかなければいかぬ問題だ、こう思います。  法務省にお尋ねをいたしますが、今特捜部が捜査を行っておる、こういうことでございますが、捜査中だからといって御答弁もいつもあいまいになるわけでありますが、可能な限りの経過を御報告願いたいと思います。
  70. 岡村泰孝

    ○岡村政府委員 お尋ねの日本撚糸工業組合連合会の事件でございますが、去る十三日、東京地検におきまして小田理事長ほか四名を詐欺罪で逮捕いたしまして、現在、勾留の上捜査を継続しておる、こういう段階でございます。  詐欺罪の容疑事実でございますが、これは過剰になりました板より機設備を共同廃棄する、こういう事業を行っているわけでございますが、その事業の本来買い上げの対象となりません板より機十三台につきまして、これが対象になるかのように装いまして日本撚糸工連が買い上げまして、その融資金名下に約四億二千万円をだまし取った、こういうことでございます。
  71. 川崎寛治

    ○川崎委員 会計検査院長にお尋ねをいたしますが、この中小企業事業団並びに撚糸工連に対する不正の問題については会計検査院の方でも指摘をしてきておった、こう思うのです。でありますから、会計検査院がこの問題についてこれまでどういう対処をしてこられたか、伺いたいと思います。
  72. 大久保孟

    ○大久保会計検査院長 お答えいたします。  中小企業事業団の融資につきましては、従前から検査上の重要項目といたしまして検査を行い、事業団の協力を得まして、融資対象団体に対する対象事業の遂行状況や経営内容につきまして、徹底した検査を行ってまいっております。  その結果、融資が適切でないという事例を毎年度検査報告に掲載してございます。これらの不当事項について見ますと、五十三年度の六つの事例六千五百万円のうち二つの事例千三百万円、五十四年度の四つの事例八千九百万円の全部が撚糸連の行う設備共同廃止事業に対する融資が不当だったというものでありまして、その態様について御説明いたしますと、無登録設備など融資対象とならない設備を買い入れ対象としたり、大企業の子会社など事業の対象とならない業者を設備買い入れの対象としたりしている事例でございます。  以上、御報告いたします。
  73. 川崎寛治

    ○川崎委員 これは大変大事な御報告だと思うのです。御答弁だと思います。  そういたしますと、毎年こうやっている。毎年不正だ不正だとやっている。しかも同じ形で、今度特捜部が、東京地検がやっておるその捜査も同じ事例なんですね。そういたしますと、これは直接の監督機関であります、上部機関であります通産省は何をしておったか。通産大臣、いつもは前の方で威張っているのだけれども、きょうは後ろの方に引っ込んじゃっておりますが、毎年の会計検査院から指摘をされておる問題に対して通産省は何をしておったのだ、こう言いたいのです。通産大臣のお答えを伺いたいと思います。
  74. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 ただいま検査院長からお話がございましたように、五十三、四年度に不適正な処理がございましたところに、今回五十七年度事業に関連するわけでございますがまたこういう不祥事があったことにつきましては、本当に全身から汗が出る思いでございまして、大変監督責任を痛感いたしております。五十三、四年度につきましては一部ケアレスというようなファクターもあったかと思うのでございますが、今回は明らかに意図的というような様相があるわけでございまして、そういう意味では大変私どももショックを受けておりますし、監督体制につきましては改めて全面的な再点検をいたしたいというぐあいに思っております。いずれにいたしましても、繰り返しでございますが、監督責任は痛感をいたしております。
  75. 川崎寛治

    ○川崎委員 私は通産大臣の姿勢には大変不満です、ちゃんとこれは通告してあるんだから。中身の細かいことはいいですよ。中身の細かいところはいいけれども、あなたが年末に通産大臣になったにしても、この問題については通産大臣としての責任あり、通産省としての責任ありということを明確に国民の皆さんに答えなければいかぬ。何ですか。私はそういう姿勢は非常に国会の論議をなめておると思いますし、私はあらかじめ言ってあるだけに非常にあなたの今の姿勢には不満です。通産大臣としての責任のあるお答えを伺いたい。
  76. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 行政は継続しておりますから、まことに残念なことだ、まことに申しわけないと思っております。
  77. 川崎寛治

    ○川崎委員 この中小企業事業団の、これ、総理、後であなたに最後の財投の問題をお尋ねしますから、これは総理大蔵大臣にかかってくる問題ですので、よく聞いておいてほしいと思うのです。  この中小企業事業団は、五十七年の実績で二千八百九十九億の計画が五百二十五億円不使用、不用、でカットする、千二百八十五億円を繰り越し。いいですか。五十八年はさらに七百五十一億円不用、千三百六十六億円繰り越し。五十九年は千百二十九億円不用、千四百四億円六十年度に繰り越し。ずっとこれやってきておるのです。ここに今財投の問題があるのです。財投機関の問題があるのです。行革審はやっていないのです。臨調、やっておらぬのです、行革の中で。財投自体を検討しておらぬわけです。だからこういう問題が出てくるのです。これは要するに金融自由化の中で、つまり民間補完としてのこの機関の役割がもう終わっておるのです。そうしますと金が余りますから、借りてくれ借りてくれ、私はそういうなあなあ主義になってくると思うのです。専務が通産省出身である、こういうことになりますとこういう問題がずっと出てくるわけです。そうしますと、江崎総務庁長官、行管として行政監察という立場からいたしますと、毎年会計検査院が指摘をしておる、しかもその指摘をしておることは制度上の問題である、穴があるならどこにあるか、穴はわかっておるのです。そうしますと、この問題について行管としてどういう行政監察を行ってこられたか伺いたいと思います。
  78. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 こうした問題が政府の監督しておる団体で起こったということはもう極めて遺憾なことだと思います。そこで、従来の方法としては、この種の特殊法人に対する監督官庁、これは厳正な取り組みが必要なことはもとよりでありますが、とりあえず今担当相である通産大臣もお答えいたしましたように、まず通産省が厳正、公正に監察を続ける、これに基本があるわけでありまして、横断的にまだ今やるところまでは至っておりませんが、通産省の今後の対応をよく見守りまして、我が方が出べき場合には当然監察に出たいというふうに考えております。
  79. 川崎寛治

    ○川崎委員 そこで、少し財投に入りたいと思うのでありますけれども、この資金運用部資金関係の使い残しというのは、これはもうずっと指摘をされてきておるわけなんです。この説明書でまいりますと、要するに住宅金融公庫から中小企業事業団等々そういう資金運用部資金関係の五十八年度の使い残し、五十九年度の使い残しが幾らあるか、これ大蔵省でしょう、お答えいただきたいと思います。
  80. 木下博生

    木下(博)政府委員 中小企業事業団の高度化融資は主として一般会計の出資金によって行われております。先生御指摘のように過去において使い残しがあった部分はございます。ただ、この中小企業事業団の高度化融資は単に設備廃棄だけのためにやっているわけじゃございませんで、工場の集団化とか卸団地の造成とかそういう事業をやっておりますので、そういう事業は土地の取得がおくれたりということで計画どおり進まないことが多いわけでございまして、そのために、残念ながら毎年繰越金が出ているという状況でございます。
  81. 川崎寛治

    ○川崎委員 私が聞いているのは資金運用部資金ですよ。そんなことはもうわかっている。だから資金運用部資金が、住宅金融公庫、医療金融公庫、環境衛生金融公庫云々ときて農用地開発公団、中小企業事業団、これの使い残しが五十八年度何ぼですか、五十九年度何ぼですかと……。
  82. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 ただいま担当者がおりませんので、便宜私からお答えさせていただきます。  財政投融資計画全体でございますが、五十八年度から五十九年度に繰り越されましたものの金額は三兆三千九百四十二億円でございます。それから不用になりましたものが二千二百十七億円でございます。五十九年度でございますが、繰り越されましたものが三兆五千七百億円、それから不用額が一兆三千四百六十四億円ということになっております。申し上げるまでもございませんが、この不用になりましたものはそれぞれ当該翌年度の財投計画の原資に組み込まれていくということは御承知のとおりかと存じます。
  83. 川崎寛治

    ○川崎委員 そうしますと、不用、繰り越しが物すごいのですね。だから中小企業事業団の日本撚糸工業組合連合会のこの不正融資の問題につきましても、会計検査院から指摘がありながら続けられてきておった。そしてそういう甘い融資制度を維持存続させるために政治家が関与しておった、こういうふうに指摘をされておるわけです。でありますから、この点については私は法務省におきましてもこの際、構造汚職の原型といいますか、典型的な形がつまり財投を含めましてここで出ているわけですから、行革だ、行革だ、行革だと言って老人医療なり生活保護なり、そういうものを削ったり、あるいは後でやりますが、四十人学級の六億円や五億円を削ったりしながらここにはこういうことで大変なむだがある。そしてそのむだがすっぽり残っておる、こういうことでございますから、そうなりますとこれは財投全体の見直しという問題にしていかなければならない、こう思います。  そこで、今財投については、住宅金融公庫から輸出入銀行に至ります十一は、これは各目明細書が国会に出されますね。ところが住宅・都市整備公団とかこういうものについては大臣認可になっておりまして、各目明細書というのは出てこぬわけです。だからこれは国会にかけなさいということがこれまでも議論になってきた。これまでも議論になってきたわけでございますから、この際、行革をやっておる、厳しくやっておるさなかでもございますので、すべての問題について各目明細そのものをあるいは各目明細に準ずるものを国会に提出すべきだ、こう思います。これは大蔵大臣並びに総理大臣のお答えをいただきたいと思います。
  84. 竹下登

    竹下国務大臣 ただいまの議論、たびたびある議論でございますが、今行革審の方でいわゆる公社、公団、特殊法人のあり方というようなことについての御議論をいただいておるということを私どもも承知いたしております。  具体的な明細報告書の提出方法等については私どもも部内において検討をさせていただきます。
  85. 川崎寛治

    ○川崎委員 では、総理もひとつ……。
  86. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大蔵大臣御答弁のとおりであります。
  87. 川崎寛治

    ○川崎委員 では、そういうことで、具体的に実施されるというふうに受けとめます。  次に、政治資金規正法の問題についてお尋ねをしたいのですが、これは明らかに国から補助金、負担金、利子補給その他の給付金の交付を受けた会社その他の法人は、当該給付金の交付の決定の通知を受けた日から一年を経過する日までの間、政治活動に関する寄附をしてはならない、こういうことになっております。しかし、これは多額の政治献金がなされてきておりますので、明らかに政治資金規正法違反である、こういうふうに思いますが、自治大臣に伺いたいと思います。
  88. 小沢一郎

    ○小沢国務大臣 ただいま先生御指摘のように、政治資金法二十二条におきましては、国から直接補助金を受けた法人、団体というような規定になっておりますので、このケースはその違反にはならないと解釈しております。
  89. 川崎寛治

    ○川崎委員 中小企業事業団は国に準ずる機関であります。恐らく自治省の答弁は、中小企業事業団までだと、こういうあれだと思いますが、そうじゃなくて、国に準ずる機関、中小企業事業団、当然特殊法人ですから、国に準ずる機関ですから、これは私は今の答弁は納得できません。
  90. 小沢一郎

    ○小沢国務大臣 今私申し上げましたのは、撚糸工連が仮に政治献金を行っていたとすればそれは中小企業事業団から融資を受けているという関係ですね、したがいまして、その二十二条の違反にはならないと解釈するということを申し上げたわけであります。
  91. 川崎寛治

    ○川崎委員 中小企業事業団が国に準ずる機関であります。あなた方は、中小企業事業団が――国から来たときは、こういう言い方だと思います。そうじゃなくて、中小企業事業団そのものが国に準ずる機関である。だから、そこから出されたものに対しては当然これは政治資金規正法にかかる。
  92. 小笠原臣也

    ○小笠原政府委員 お答えを申し上げます。  先ほど自治大臣の方からお答えを申し上げましたように、政治資金規正法二十二条の三第一項は、国から補助金等の支出を受けている会社その他の法人が国会議員等に対して政治活動に関する寄附を行うことを禁止した規定でございまして、お尋ねの撚糸工連が中小企業事業団から融資を受けておりましても、中小企業事業団は国ではございません。直接国ではございません。それで法律の解釈といたしましては、厳密に文理に従いまして、国から直接補助金等の交付、支出を受けておる団体についての規制でございまして、受けていない以上、同法同条には違反することにならない、このように解釈いたしております。(発言する者あり)
  93. 川崎寛治

    ○川崎委員 これは、中小企業事業団は国に準ずる機関なんですよ。当然なんですよ。そうしますと、その国に準ずる機関から撚工連が受けているわけですから、これはそんなことやれば、もう要するに財投関係の各事業団からやったやつは全部いいということになる。これは私は残しておきます。きょうは、今の答弁は不満ですから、そして、このことだけをやっておりますと、きょうのいろんなテーマがやれません。ちょっと理事会諮ってくれ。(発言する者あり)
  94. 小渕恵三

    小渕委員長 川崎君。
  95. 川崎寛治

    ○川崎委員 理事の方で今話し合ったようでございますので、これは法律論だ、こういうことで、私はここでこれを詰めていますと、きょう肝心の問題、また……。でございますがら、これは保留しておきますから、そして改めてひとつ議論を進めてまいりたい、こういうふうに思います。  そこで、財投の問題ですね。財投の問題は、つまり今主計局長から御答弁のように、不用、繰り越し、四兆円程度あるのですね。そうしますと、六十一年度の政府経済見通しの四%――これは財投をことしは六・二%ふやします、公共事業、財投をふやします、こう言っておったのだが、財投、財政投融資そのものにはこんな大きな穴があいてくるわけです。毎年あいているわけです。だから、例えば、五十八年はマイナス一・六%、つまり公共投資並びに財投でマイナス一・六%と見た計画が実績はマイナス二・八%、五十九年はマイナス一・三%の見込みがマイナス一・九%、こうきている。ことしはより厳しい。これは五十八年、五十九年でさえそうですから。そうしますと、ことしは円高不況というのは明らかになっているわけですし、この中で四%の見通しはこの面からも崩れている。それから地方自治体も、国の方が何ぼお願いしましても、地方自治体自身も自粛していくわけですね。そうしますと、四%見通しというのが崩れるということについて指摘をせざるを得ない、こういうふうに思います。大蔵大臣見解を聞きたいと思います。
  96. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに財投計画というものは、これは御案内のように、弾力条項というものがありまして、五〇%の範囲内において措置することもできるわけでありますが、主として不用額、繰り越しができますのは、御案内のように、輸出入銀行関係あるいは海外経済協力基金関係、そして今の中小企業事業団関係、これらにつきましては、これは相手があることでございますから、そういう傾向がございます。したがって、それを年々少なくとも出資を滅していこうということで今日参っておりますので、あらゆる金融機関は全部ごとしは対前年度比三角を立てております。財投の公共事業分野へのものにつきましては、数字を正確に全部申すことは忘れましたが、二けた以上の伸びのものも含めて、これはいわゆる執行が可能であるということで道路公団、本四架橋公団等々を初めとして増額いたしましたから、これは消化能力もございますから、十分景気の下支えに役に立つであろうと思います。  それからもう一つ、地方財政の問題につきましては、間々、金利の動きによりまして一番状態のいいときに、場合によっては繰り越しした四月に借りて前の分を返すとかそういう措置が行われますので、これも習慣的にややそういう傾向はございますが、今年度の場合、地方財政の方からの要求がとてもそこまでないだろうという状態にはございません。十分ある、こういうふうに考えております。
  97. 川崎寛治

    ○川崎委員 これは、いずれ財政金融の問題で後ほどまたいたしたい、こういうふうに思います。  総理総理は今の撚糸工業組合連合会のこの問題について今議論をお聞きのように、これは政治資金規正法上の問題もあります。それから財投のすぽっと穴の抜けておる、会計検査院から指摘されておるこういう今の仕組みの問題もあります。そういう中での汚職、構造汚職として今検察当局がそれぞれ追及をいたしておるわけでありますが、この問題を含めまして、こうした政治家がかかわります、あるいは政界、官界一緒になったこうした汚職という問題について総理見解を伺いたいと思います。
  98. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政府といたしましては、長年にわたるこの問題にメスを入れるチャンスを逸しましてこのような不祥事件が惹起しましたこと、甚だ遺憾に存じ、監督責任を痛感して、今後このようなことを惹起させないように努力してまいりたいと思います。     〔委員長退席、林一義)委員長代理着席〕
  99. 川崎寛治

    ○川崎委員 では、次に北方領土の問題に入りますが、外務大臣大変な御努力になったと思います。御努力に対して私は歩といたします。  ただ、「戦後の未解決の諸問題」こういう田中・ブレジネフ会談の共同声明に返った、こういうことでございますが、私は去年、沖縄北方特別委員会でも既に指摘をいたしておるのでございますが、その前の年の七二年に、当時のブレジネフ書記長がソ連邦結成五十周年記念で日ソの問題については言及をいたしておるわけであります。総理はそのことを御存じなのかどうか。これは私自身クレムリンで、直接長い彼の演説を聞きましたし、外務省自身も五十八年の資料で、ブレジネフが、明年重要なソ日交渉が行われることになっている、その目的は第二次世界大戦のときから残された諸問題を調整し、我々両国間の関係に条約的基礎を置くことである、同じ文句ではないけれども、大体似たような文句で言っておるわけですね。でありますから、私は当然シェワルナゼ氏が来ました際にはそこに返る、こういうふうに見ておりました。そのとおりだろうと思うのです。まずその点を総理として、ブレジネフがもう既に前の年にそういう問題を田中・ブレジネフ会談の前に言っておるということを御存じですか。
  100. 西山健彦

    ○西山政府委員 ただいま手元にそのテキスト自身は持っておりませんけれども、そういうことがあったということは承知いたしております。
  101. 川崎寛治

    ○川崎委員 それでは次に、領土の問題はなかなか難しいと思います。そこで、一九五六年は松本全権か参りましてロンドンなりモスコーなりで集中的にやりました。条約交渉を領土を含めてやったわけです。今外務省にあの五六年当時のような集中的な、領土問題を含む平和条約交渉をやる計画があるのですか、ないのですか。
  102. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは今度やっとテーブルに着くということについてお互いに合意したわけで、それに基づいた共同声明も出したわけでありまして、これまでは残念ながら我々が領土問題を持ち出してもソ連側は一切話に乗らない、テーブルに着いて協議をするということを拒否してきたわけでございますから、今回からが私は出発点だと思っております。  今回に至る経緯、一九五六年以来の経緯については外務省はもちろん十分承知をしておりますし、それまでの歴史的な経緯はもちろん十分承知しておるわけでございます。そうしたいろいろの経緯を踏まえ、その間、日ソ間でやりとりした合意あるいは議論等も踏まえて、これからやはり腰を据えてやらなければならぬ課題だと思っています。
  103. 川崎寛治

    ○川崎委員 今度共同声明で、米ソ首脳会談の共同声明は、アメリカ大統領、ソビエト書記長、こうお互いにやっているのですね。お互いに、呼びましょう、参りましょう。今度の日ソの共同声明は、安倍さんが行きます、シェワルナゼさんが参ります。固有名詞ですね。来年も外務大臣やられる予定のようでございますが、外務大臣としてはことし行く、こういう予定ですね。シェワルナゼさんは来年来ます、こういうことになっている。ゴルバチョフさんは参ります。呼びましょう、参ります、こうなっている。ところが、総理大臣の方は固有名詞になってない。日本総理大臣、こうなっています。私は、これはいろいろ十月のことを考えてこういう共同声明になったのかな、こういうふうにも思うのですが、ただ、文脈からいきますと、やはりこれは中曽根総理を呼んでいるんだろうと思います。そうしますと、今ようやくテーブルに着いた、こういうお話ですから、領土問題をテーブルにのせるには大変これからいろいろあるわけですね。そのためには、つまりこの共同声明にあります総理大臣の訪ソ、ゴルバチョフ書記長の来日、このことが実現をしなければ領土問題、平和条約と、こういうふうに進まないのかどうか、その点を伺いたいと思います。
  104. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは共同声明で両大臣というふうになっていますから、私との間の話し合いですから行くことになるわけであります。ただ、これは私が安倍個人じゃなくて外務大臣として行くわけであります。ですから、また両国の最高首脳というのも最高首脳ということで交流ということに相なるわけであります。  それから、今お話しのような両首脳の話し合いがあって初めて領土問題が進むのかということですが、これは今回も領土問題について議論をしたわけですし、今度私が行くときも領土問題を協議しようということについては合意を見ておりますから、今度も行きまして領土問題について話をするわけですが、ただ、今ソ連は残念ながら非常にかたい態度でございます。どこからほどけてくるか、これからのこうした定期協議あるいはさらにその間のいろいろな両国の要人の交流等を通じましていろいろと話をする中にまた前進するということは可能性はあるんじゃないか、求めなければならぬのじゃないか、こういうふうに私は思っております。そういうことを踏まえた立場での両首脳の交流である、こういうふうに理解しております。
  105. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私とゴルバチョフ書記長の間には両方固有名詞を書いた書簡が交換されて相互に招待し合っておる、そういうことがあるわけでございます。  なお、領土問題を含む平和条約の締結につきましては、政治家のトップの話し合いのみならず、あらゆる機会、あらゆる可能性を通じて、我々は粘り強く努力していきたいと思います。かつて二年前にありましたか日ソ円卓会議であるとか、あるいは社会党の石橋書記長の訪ソであるとか……(川崎委員委員長」と呼ぶ)失礼いたしました。委員長の訪ソであるとか、今後そういうようなあらゆる機会を通じて官民を通じて努力すべきものである、そう考えております。
  106. 川崎寛治

    ○川崎委員 この北方領土の問題は、戦争処理それから戦後処理、そういう中のいろんな問題もあります。そしてアメリカの対ソ政策、そういう世界政策の全体の絡みの中でこれは動いてきたわけで、例えば中曽根総理が自由民主党を代表してこの共同声明に対する賛成演説をしたのですが全文削除ということになっておる演説も私は拝見しました。そういうものを拝見をしますと、これは経過がいろいろあるのですね。そうしますと、ヤルタ協定からサンフランシスコの扱いから全部一遍議論しなければいかぬと思うのです。しかし、これはここでやっておりますと時間がありませんで、そういう問題がある、そしてこれはいずれ議論をしなければならない、こういうふうに私は思っております。  ただ、大きな線で伺っておきたいのは、米ソ首脳会談がことしまたありますね。二度目があるわけでありますが、そういう米ソ首脳会談が動いていくその世界の動きの中と無関係に、日ソ独自で領土問題、平和条約交渉というのを進め得るのかどうか、その点についての見解を伺いたいと思います。
  107. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この領土問題については日ソ間の問題でございますから、これまでも日ソ間、特に日本としては努力を重ねてきましたし、どういう状況になろうとも領土問題を解決して平和条約を結ぶという日本の基本ラインで今後ともソ連と交渉を進めてまいりたい。ソ連側も、共同声明で国交が回復したわけでありますが、まだ平和条約が結ばれていない、こういう前提に立っておりますので、そしてまた同時に平和条約を結ぶことによって真の両国の安定した関係が確立てきるという考えでございますから、我々としては、いろいろな状況の変化はもちろん国際的にあるでしょうけれども、日ソ間においてはこの領土問題は基本路線として進めてまいりたい。しかし、今もおっしゃるように、米ソの今後の動きあるいは東西関係の動き、世界情勢動き等が日ソの交渉には一つの影響を持つことは、これは今日もそうでありますし、今後もそうじゃないだろうか、こういうふうに思います。
  108. 川崎寛治

    ○川崎委員 いずれそうした戦後処理、それからこれからの問題ということは改めてまた議論いたしたい、こういうふうに思います。  次に、私は中国残留孤児の問題について、これは質問ということよりも、ぜひ総理初め閣僚の皆さん並びに与党の皆さんにもお願いをしたいわけでありますが、これは大変深刻な問題だと思います。  きょう、ちょうど今ごろはもう成田に第十次が着くのじゃないだろうか、こういうふうに思うわけでありますけれども、この中国残留孤児の問題について非常に深刻に考えるわけでありますが、まず総理にお尋ねをします。また関係閣僚、厚生大臣や文部大臣や労働大臣や外務大臣大蔵大臣にもお尋ねをしたいのですが、一人一人聞いておると時間がありませんので、総理に代表して伺いたいのは、NHKがつい最近「雨ふりお月さん・私に日本語下さい」という中国孤児の番組をいたしました。また「二つの祖国」というのを、ついその前でもいたしました。あるいは民放もそれぞれやっておりますが、特に私自身が見て感銘を受けておりますのは、昨年の三月、TBSが「聞け養父母の嘆き…現地にみる中国孤児もう一つの悲劇」というもの。それからさらに、これは中曽根総理自身も、選挙区の問題でございますから十分関心を持っておられると思いますが、十月六日「満蒙開拓団四十年ぶりの現地巡礼」こういうのがございました。これらの特別番組をごらんになっておるかどうか伺いたいと思います。
  109. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 残念ながら見ておりません。
  110. 川崎寛治

    ○川崎委員 恐らく各大臣に伺いましても、いやニューリーダーは全国を走るのが忙しいとか何かで見ておらぬと思います。しかし、これは秘書官の諸君も、こういう問題について深刻な問題ですから見てもらうようにすべきだと私は思うのです。  特に私はその中で、今お手元に昭和七年八月三十日の本衆議院予算委員会における議事録を資料としてお配りいたしました。これは二十七万開拓団。きょう帰ってまいります、来日をいたします――帰ってくるというのですか、香というのですか、残留孤児の皆さん方のほとんど七割が、満州開拓団の、満蒙開拓団の孤児の方々なんですね。そういたしますと、昭和七年八月三十日の本院、当時は帝国議会でございますが、場所は大蔵省の前の今の通産省のあの辺にあったようでございますが、この議事録を私たちは静かに心して読むべきだ、こう思います。第一回の武装移民を出したわけです。TBSの「満蒙開拓団」の中の最後のところで、総理も御存じだったと思いますが、群馬県の旧駅馬開拓団の団長でありました清水圭太郎さんが、この番組の最後のところで述懐をされておるわけです。あなたや、あるいは小渕予算委員長や、私のところの山口国対委員長や、あるいは福田赳夫元総理などの選挙区だ、こういうふうに伺っておるのでありますけれども、そのところを私はこれちょうどビデオに撮ってありましたので、もう一遍見直してみました。それから、私はこの発言以来、実は第一号でどういう方を出していったかという国会の対応を見てきたわけです。清水圭太郎さんは昨年の暮れ亡くなったというふうに山口君から聞きましたけれども、この清水圭太郎さんがビデオでこう言っているんですよ。関東軍を悪く言うわけじゃないけれど、中国と戦争するなんて、時の内閣は全部軍部中心でしょう、海軍より陸軍の方がひどかった、お国のためだというので、うその大本営発表に拍手して喜んでいた愚かさを反省しなければならない、こう言っております。私はこれを深刻に受けとめました。  そこで、今お手元にお配りいたしましたこの予算は、昭和七年というのは、昭和六年満州事変、昭和七年五・一五事件、そして八月の三十日、帝国議会は一千名の武装移民を出しますために二十万八千円の追加予算を決めるわけです。そして、十月の中旬には第一回の移民が出てまいります。そのときには群馬県からも第四集団の第一小隊に四十数名の方々が参加をしておるわけですね。  この予算の議事録をごらんいただきますとわかりますように、荒木国務大臣の満州国に対する答弁など、今から見ますと、ああなるほど、こういうことだったのかということを深刻に反省させられます。荒木陸軍大臣ですね。そして、ここの中で坂東という委員質問をいたしておりますけれども、それに対して堤次官がこういうふうに言っているわけですね。四十四ページのところに参りますと、「余程是ハ慎重ニヤラナケレバ却テ将来悪イ結果ヲ来スノデアリマシテ、今尚ホ匪賊ノ討伐ガ十分二出来テ居リマセヌカラ、余程不安ナ状況デアリマス、ソコデ無秩序ニ移民が沢山参リマシテモ、旨クモ行キマセヌト云フト直グ帰ッテ来ル」というふうな状況でもありますし、そこで、「十分ナ訓練ヲサセテ、サウシテ満州へ送リタイ、耐シテ一ツハ産業ノ開発、一ツハ治安ノ維持、此両目的ヲ達シタイ、尚ホ満州国ノ希望ニ依ッテ、」まだ満州を日本は承認していないのです。承認をしていない満州に対しましても、「土地ヲ満州国カラ尚ホ続々ト提供セラレルコト・思ヒマス」、こう言って、二十万七千八百五十円の追加予算を決めて、第一回の移民が出ていくわけです。つまり国の責任。  それから、昭和十二年に今度は満州移民百万戸計画というのが立てられます。これは二・二六事件の直後なんですね。これをつくりまして、今度はどっと参ります。その人たちを、戦後関東軍が敗走しますときに放棄していくわけです。開拓団の皆さんは全部ほったらかされるわけです。しかも、ほったらかされるだけではなくて、ソ連軍、このソ連軍はヤルタ協定で入ってくるわけですから、北方領土もこの問題も全部絡んでくるわけでありますけれども、このソ連軍が追ってくるやつを断ち切るために橋を壊していくわけです。そこで開拓団の皆さん方は二十七万のうち八万亡くなります。関東軍は亡くなったのは四万です。関東軍の倍の人が、この戦後の混乱の中で亡くなったわけです。そして、その人たちは、これをずっと見ましてもみんな開拓団の人たちです。そういたしますと、私がここでぜひひとつこの問題を深刻に考えてほしいということは、今とられております労働省あるいは文部省あるいは厚生省、それぞれいたしております施策というのはこのままでいいんだろうかなということを痛感をいたします。  そこで総理にお尋ねをしたいのは、こうしてあなたの選挙区の清水圭太郎さんたちを初め、第一回は武装移民でありますけれども、二十七万の人たちが国の予算で、国から多くは移民として出ていって分村していくわけです。長野県なんかもそうですね、みんな分村していくわけです。私は、そういうことに対して国が大変大きな責任を負わなければいけない、こういうふうに思いますが、いかがでありますか。
  111. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国の責任を感ぜざるを得ないと思います。
  112. 川崎寛治

    ○川崎委員 そこで、今行われておりますこの中国残留孤児に対する施策というのは、基本は何かといいますと、昭和二十年の外地引き揚げに対する援護政策、その枠内で来ておるわけです。ですから、これは予算措置で終わっております。今、大変言葉の問題が深刻ですね。「雨ふりお月さん・私に日本語下さい」、これは閣僚の皆さん方、ぜひひとつNHKからでも取り寄せてみんなで見てほしいのですよ、言葉にどんなに悩んでいるか。これは下手しますと、この人たちが日本の国内で受け入れられない、満たされないというときには、やはり生まれ故郷に帰っていきますよ。この孤児の子女が生まれ故郷に帰っていったときは、そのときには私は日中友好ではなくて、日本は見せかけの高度成長の国だ、自分たちを本当に受け入れてくれなかった、こういうことになりかねないと思うのです。だから私は、筆頭理事の林さんたちが御苦労いただいております日中議連の皆さん方にも、伊東正義会長などにもぜひこれは検討してほしい。これは野党だ、与党だということでなくて、ひとつぜひ今の制度を考え直そうじゃないかということで今提起をしているわけです。  ところが今、日本語学級は特別につくれないのです、定員がないのですから。いろいろ文部省が努力をしておることは聞いておりますよ。しかし私は、文部省がどんなことをしているとか、この間報告を出した、これはどうですなんという細かい技術的なことは聞きません。そうじゃなくて、実際に例えば東京は今葛西中学校だけですね、日本語学級という特設学級がありますのは江戸川区の葛西中学校だけなんでございますけれども、そういたしますと大阪にもあるいは福岡にも、そしてできれば各県に日本語学級を特設するということぐらいなされていいと思うのです。しかし、今の制度ではそれができないのです。加配の研究協力校というのが少しずつぽつぽつとありますけれども、そういうことではこれはだめなんですね。今の学校教育法の上でいく特殊学級というのは、心身障害の方々に対する特殊学級というのは十二名で一人の定員がつくわけでありますけれども。だから就職の問題、言葉の問題、そういう問題についても抜本的に見直さなければいかぬのじゃないか。  それから、厚生省の中にあります孤児問題の懇談会にいたしましても、心理学者は入っていないのです。ところが、中国でその親自身が自分の父母がだれであるか、自分の名前が何であるかということがわからない。その子供でしょう。その人たちが今ここであれしますと、そういう孤児の人たちもだし、そういう皆さん方というのはもう大変不安なんです。真っ暗やみで手探りしているようなものですね。そうしますと、やはりこれは孤児問題懇談会に心理学者が入ってそういう、例えば移民の場合ですと非常に深刻な問題がありますが、それをどう受け入れるか。日本は国際化をしていく国際国家だ、中曽根さんが国際国家ということを言われるのですが、こういう問題をきちんと処理できなければ本当の国際国家にはならない、こう思います。  でありますから、そういう問題を考えていきますと、厚生省、労働省、文部省という今の縦割りの戦後の引き揚げ援護政策の中だけで来ておりますこのシステムというものはやはり変えなければいかぬ。そして、私は各省にまたがる一つの統合する機関をつくってもらう。そして教育やあるいは職業や、今は厚生省は帰国まで、そしてしばらく定着センターに入れるだけ、あとはもう各自治体任せ、こうなっておりますが、そういう問題等についてもぜひひとつ抜本的な対策を立てる、そうしなければいけないときに来ているのじゃないか。ですから、この満州事変後の第一回の武装移民以来の今日の経過を考えますときに、ぜひそういう方向で検討してもらいたい、こう思います。でありますから、総理のそのことについての御見解を伺いたいと思います。
  113. 今井勇

    ○今井国務大臣 先生の切々とした思いのこもった御質疑、私どもも聞いておりまして極めて感動するものでございます。先生御案内のように、この残留孤児の問題は、人道上の問題からも、政府だけじゃなくて地方公共団体あるいはまた国民が一体となってこれを考えていかなければならぬ大きな問題だと思います。そこで、先生のおっしゃるように残留孤児の問題の懇談会もいたしましてその御提言もいただいておりますので、私どもはそういうものを踏まえまして、残留孤児の各省の連絡会議、そういうものと連絡をとりながら総合的な施策を進めようというわけでございます。  そこで、先生御案内のとおりでございますが、厚生省におきましても、帰国しました中国孤児、それの家族のとりあえずの落ちつき先として中国帰国孤児定着促進センター、これを五十九年二月に開設いたしました。六十一年度、今度の新しい年度では倍増して人間をふやそうじゃないかというようなことも考えておりますし、また国の委託事業として、センター修了後の生活指導員によります生活指導だとか、あるいは日本語指導などを積極的に進めているところでございます。  何はともあれ、温かい真心でこたえていく、迎え入れるということが私は最も大事なことだと思っておりまして、そういう意味で引き続き関係各省と密接な連絡をとりながらやってまいりたい、そういうふうに思いますので、せっかくの御提言でございますけれども、私ども一生懸命まだやります。私も少年のころ両親を失いましたので、よくお気持ちはわかります。そんなことで、特別な立法の措置を講じなくても十分に対応できるのじゃなかろうか、こう思って一生懸命やりますので、しばらく御猶予願いたい、こう思うものでございます。
  114. 川崎寛治

    ○川崎委員 日本というのは制度はやかましいんですよ、役所というところは。だから動かせないのです。そういうときに大統領的な手法をやらなければいかぬ、そういうときに大統領的な政治をやらなければいかぬのですね。  では、外務大臣にお尋ねしますが、今北京大使館には、この中国孤児関係は厚生省から一人しか行っていない。そうしますと、東北地方にいっぱいおるわけですよ。その東北地方のそういう領事館ですか、瀋陽の領事館か総領事館が、どっちですか。総領事館ですね、落陽の。そこにやはり専属の人がおるのですか、それが一つ。  もう一つは、これは文部大臣にもかかわるかわかりませんが、帰ってくる前にやはり日本語を勉強する、帰ってくる前に現地で勉強する、それくらいは日本が出して、先進国ではみんなやっているでしょう、文部省は。バリだとかロンドンだとかワシントンだとかというところでは、商社の子供たちのための日本語学校というのをやっているわけです。ところが、こうした言葉を失っているのではなくて言葉を知らないで育っている人たちが帰りたい、言葉がわからない、そういう人たちになぜできないのですか。  外務大臣と文部大臣にお尋ねしますが、まず向こう側の体制をもっと強化してほしい。これは集中的に短期間に帰ってもらわねばいかぬ。それから残留婦人の問題もありますから、そうなりますと、いろいろな身元の問題等で悩んでいるのです。わざわざ北京まで出かけていかなければいかぬのです。まあ高度成長して世界一の債権大国になっているのですから、これはやはり中国とよく話をして、その点はふやしてもらうこと、日本語学校をつくること、いかがですか。
  115. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは瀋陽に今度総領事館ができまして、四人行っておるわけですが、主として今、残留孤児のお世話、養父母等に対する接触、そういうものをこれから相当積極的にやっていけるし、そういう状況になってくると思います。北京は確かに人は少ないのですが、北京から残留孤児が日本に帰ってこられるとか、あるいはまた向こうでいろいろな世話をすることに大使館全体としてお世話をいたしておるわけであります。  確かに今おっしゃるようないろいろな問題について、まだまだこれから日本政府として対外的に努力をしていかなければならない点は随分あると思います。これは日本政府だけではなくて、やはり国民のいろいろの協力も得まして、こういう問題に対してこれからひとつきめ細かい配慮、それからこれからのお世話をするようにやっていかなければならぬ課題だ、こういうふうに思っています。
  116. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 突然の御質問でしたので手元に資料がありませんから、間違っておったら御勘弁いただきたいのですが、ヨーロッパやアメリカにありますような日本人学校は、在留日本人の子供の日本語教育ですから、そういったものは中国にもございますけれども、それは今おっしゃる帰国する孤児の対象にはなっておりません。それから、日本言葉を中国で教える、中国から日本へ留学を希望する留学生の人に言葉を教えるという機関は、現在、長春等にも我が方から人材を派遣してやっております。したがいまして、帰ってこられてからの受け入れにどうしてもなっておるわけでして、数が少ないとおしかりを受けるかもしれませんが、現在十三の学校が研究指定校ですが、六十一年度予算でそれを十八校にふやしまして、予算措置等も増加し、教員の配置とか、それからその他、それではとても行き届きませんから、日本語教育の教材や補助資料等もつくってできるだけ配付をしながら、文部省としてはできるだけの努力をしておるところでございますけれども、御質問の趣旨にこたえて、関係の省庁ともよく前向きに研究をさせていただきたい、こう思います。(「それは認識すべきだ」と呼ぶ者あり)
  117. 川崎寛治

    ○川崎委員 今、認識のずれということを佐藤君が言っておりますが、佐藤君は文教委員会でこれは随分文部省相手にやっているのですよ。ところがやっぱり役人の答弁なんです。だからそこをやはり一歩――これは文化摩擦でもあるのですよ。今、悲劇のキャッチボールと、向こうから帰ってきた、残された養父母、いろいろ問題が出てくるわけです。これは年がたてばたつほど非常に深刻なひずみが広がっていく、こういうふうに思いますから、この点については特別援護措置をやるべきだ。このことについて厚生大臣は、一生懸命お答えしようとしておるが、役人の今の官僚制度の中で、それを破り切れないでおるわけです。だからそれを破るためには、大統領的な中曽根総理に、ひとつその点をどう前進させるか、総理見解を伺いたいと思います。
  118. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 各省の力を統合結集して、できるだけ御期待に沿うように努力したいと思います。
  119. 川崎寛治

    ○川崎委員 まあその程度しかお答えないだろう、こういうふうに思っておりましたが、大変残念です。いずれはこれは議員立法なりその他も、いろいろと各党に相談もしたい、こういうふうに思います。  そこで、大変時間があれしておりますが、やはり避けるわけにいかないと思いますので政治姿勢の問題について伺いたい、こういうふうに思います。  私は、昨年十月二十二日の総理の国連における演説を高く評価いたします。特に「我々日本人は、超国家主義と軍国主義の跳梁を許し、世界の諸国民にもまた自国民にも多大の惨害をもたらしたこの戦争を厳しく反省しました。」それから「平和と自由、民主主義と人道主義を至高の価値とする国是を定め、そのための憲法を制定しました。」こうなっております。  そこで、太平洋戦争というものに対して厳しく、太平洋戦争は間違っていたということを総理はここで批判をされた、こういうふうに理解をしてよろしいですか。
  120. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 結構です。
  121. 川崎寛治

    ○川崎委員 そういたしますと「憲法改正の歌」、いやその前に、去年あなたがドイツのボンのサミットに行かれましたときに、その後、安倍外務大臣とNHK討論会をしましたときにも、私は、当時のコール首相の冒頭のあいさつにはナチス・ドイツというものが犯した罪について静かに触れておるわけですね、やはり違うな、厳しく反省しているなということを感じたわけです。日本の場合にはそのことがないということを安倍さんとやりましたときに指摘をいたしておいたわけでありますが、このドイツのワイツゼッカー大統領は、第二次世界大戦というのを厳しく自己批判をし、ドイツの五月八日を――あなたはこの国連総会の演説では、「一九四五年六月二十六日、国連憲章がサン・フランシスコで署名されたとき、日本は、ただ一国」こういうふうになっておりますが、その前に、五月八日西ドイツがギブアップしておるわけでありますけれども、このワイツゼッカー大統領の演説は、「五月八日は解放の日だったのです。この日は、国家社会主義の暴力支配という人間を侮辱した体制から、私たちすべてを解放してくれたのです。」こういうふうにはっきり五月八日というものを受けとめられている。  きょうは、随分たくさん資料を用意してきましたけれども、時間の関係でごく幾つかしか言えないのですが、この「憲法改正の歌」は、あなたは間違いだった――あなたが昭和三十一年に作詞をされた。   鳴呼戦に打ち破れ   敵の軍隊進駐す   平和民主の名の下に   占領憲法強制し   祖国の解体計りたり   時は終戦六カ月   占領軍は命令す こう長々とありますね。この「憲法改正の歌」は間違いであったというふうに、あなたは今、この国連で演説をされたときには静かにこのことをお考えになりながら演説をされた、こういうふうに理解してよろしいのですか。
  122. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その三番を読んでいただくとわかると思うのです。
  123. 川崎寛治

    ○川崎委員 三番は、   十年の時は永くして   自由は今や還りたり   我が憲法を打ち立てて   国の礎築くべき   歴史の責を果さんと   決意は 云々と、これはいいのですよね。しかし、五番目には、   この憲法のある限り   無条件降伏つづくなり   マック憲法守れるは   マ元帥の下僕なり   祖国の運命拓く者   興国の意気挙げなばや 三番をけなして否定をしておるわけですね。いかがですか。
  124. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それに   国を愛する真心を   自ら立てて守るべき   自由と民主平和をば   我が憲法に刻むべき   原子時代におくれざる   国の礎築かばや そういうのがあります。(川崎委員「国の理想を」と呼ぶ)   国の理想を刻まばや ちゃんとうまくバランスはとれております。
  125. 川崎寛治

    ○川崎委員 しかしそれは、つまり八月十五日をどう迎えるかということについては、バランスをとって適当にやる風見鶏じゃ困るのです。あなたのは国連に行ったら国連にちゃんとなるんだ、ちゃんと国連の場所になる。これがあなたの大変特技だと思いますけれども。  では、これはどうなんですか。昭和四十二年九月十三日の拓殖大学総長就任演説。私がさっき五・一五事件を言いました。二・二六事件を言いました。これと合わせたいのです。「有色人種のチャンピオンとなった日本は、白人の間に取り囲まれて決意をした。負けてはならぬと、この貧乏な小さな日本が白人に対抗する最後の保障は何か、軍備である。」「そしてそれが昭和初期の農業恐慌その他を端緒として、軍部の革新運動が官僚と結合し、五・一五事件、二・二六事件になり、そして明治維新以来たくわえられた大きな日本民族のエネルギー、アジアの火薬庫が大東亜戦争となって暴発したのであります。」  先ほど私は、昭和七年八月三十日の本院の予算委員会における議事録をお手元に配りました。中身をずっとお読みいただけばわかるわけでありますけれども、この拓殖大学の総長就任演説のこれは、今言われた超国家主義、軍国主義というものに対する反省はない、こう言わざるを得ないと思うのです。
  126. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 もう少しゆっくり、静かに読んでいただくとよくわかると思うのです。私はこれは拓殖大学の総長として、民間人としてやった演説でありますけれども、ともかく軍国主義が跳梁して、そしてそのために、道路は悪い、社会福祉は及ばない、にもかかわらず軍事費は増大して民衆を圧迫した、そういう趣旨の文章がございます。  その初めに書いてある一つの思想は、明治維新というものによって黒船の脅威を見て、時にあのころの維新の志士といえども、既に香港が侵略された、インドも侵略されたことを高杉晋作も恐らく吉田松陰も知っておった、そこで何としても国防しなければ日本は植民地にされてしまう、そういう必死の願いで、彼らは明治維新をやって徳川幕府を倒して国民国家を形成して、そして富国強兵、殖産興業という名のもとに、国を強くして外国に対抗しようと思って懸命に努力を払った、そして明治維新以後懸命な努力をしたが、しかしバランスを失してしまった。日露戦争に至るころまではこれは防衛的な考えが非常に強くして、しかも日露戦争に至るころようやく資本主義が爛熟してきて、そして日本は一流のいわゆる世界の五大国になった。五大国になったけれども、あの当時の中国が分割されるという状態のもとにおいて、この弱い四つの大人洲にしか住まぬ日本民族が白人に伍して闘っていくためには、それは何かで対抗する力を持たなければならぬ。そういうふうに異常に緊張した。そして、日露戦争以後はややもすれば日本は傲慢になってくる。同時に、ただ一つの方それは軍事力である、そういう方向に走ってしまって国防国家ということが出てきた。それをやったのは軍部と革新官僚である。それが行き過ぎてとうとう日本をこんなことにしてしまった。しかし、明治維新以来、日本人が営々と西洋文化をまねして資本主義を爛熟させて、そして食う物も食わず、道路は悪い、社会福祉は外国に劣る、自由は治安維持法のもとに弾圧されている、そういう形で蓄積された一つのエネルギーは、太平洋戦争という形になってそして暴発して、火薬庫が爆発したように日本は打ち倒れてしまったのだ。そういうことを言っておるのです。
  127. 川崎寛治

    ○川崎委員 それはあなたが今そういうふうに解釈をうまいぐあいにしているわけですね。拓殖大学ではそういうつもりで言っているのじゃない。  それじゃ、去年の軽井沢の自民党のセミナーで言っておるのは、「勝っても国家である。負けても国家である。栄光と汚辱を一緒に浴びるのが国民。汚辱を捨て、栄光を求めて、進むのが国家であり、国民の姿。」そして「日本のアイデンティティ」、こういう強調になるわけであります。これは、ワイツゼッカー大統領が引用いたしておりますのは、「ヒトラーは常々広言していました。「もし、ドイツ国民がこの戦争に勝つ力を持たなくなったら、いっそ滅亡してしまうがいい」」こうヒトラーが言っているわけです。私は、総理が軽井沢で言われておるそのこととこのヒトラーの言葉というのはまさに一致するものだ、こういうふうに思います。  そこで、私たちの先輩、元総理大臣の石橋湛山さんの昭和二十年八月二十五日、戦争が終わって十日後の東洋経済新報ですから恐らく敗戦直後の文章だと思うのですけれども、「更生日本の針路  更生日本の門出 前途は実に洋々たり」ということで、敗戦と同時に石橋さんが書かれておるのです。あなたがまあ、「勝っても国家」「負けても国家」と言って、「栄光と汚辱を一緒に浴びるのが国民。」祭るところがなければだれが国のために死ぬか、こう力んでおられたときに、石橋さんは、「昭和二十年八月十四日は実に日本国民の永遠に記念すべき新日本門出の日である。」違うのですよ、「マック憲法」云々というのとは違う。「世の中には、けだしこの事態を予想せざりし者多数なるべく、その余りに突如として到来せる急変に茫然自失せる者もあろう。悲憤の泪に狂う者もあろう。また中には前途をはなはだ悲観する者もあろう。しかし今は勿論茫然自失し、手を狭いておるべき折でなく、またいたずらに悲憤憾慨時を費やす場合でない。もしそれ我が日本の前途を悲観する如きは、従来国民に与えられた教養の不足のいたす所で、一面無理もない次第ながら、その無知はなはだ隣むべしといわなければならぬ。」元自民党総理ですね。私は、石橋湛山元総理のこの言葉というのは大変深く心にしみわたるものがあります。  そういうことを論争しておりますとこれは時間が何ぼあっても足りません。  そこで……(中曽根内閣総理大臣「いや、もうちょっとやりましょう」と呼ぶ)やりましょうか。――やりましょう。やりたいのですが、私はまだきょうあとの問題が控えておりますので、入り口の撚糸工業連合会で大分ひっかかっちゃったものですからね。(中曽根内閣総理大臣「ちょっと一言、言わせてください」と呼ぶ)じゃ、どうぞ。
  128. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 あなたはヒトラーの「マイン・カンプ」と私の思想を並べていますが、私のものを全然読んでいませんよ、「マイン・カンプ」は読んでいるかもしれませんが。ああいう「マイン・カンプ」に書いてあるような残虐な、そしてドイツ民族至上主義に立ったようなそういう考えは、私の考えには毛頭ないです。  私の今から十二年ぐらい前に書いた「新しい保守の論理」という本がございますが、あの中にある思想は山川草木悉皆成仏という思想で、つまりすべては兄弟である、植物といえども動物といえども人間といえども大きな大自然から生まれた兄弟である、そういう思想が書いてあるのであって、ドイツ民族だけが栄光を持っておる唯一の覇者で支配者であるというような、日本民族や日本人がそうであったというようなことは一言も書いていない。みんな兄弟である、そういうことを言っておる。しかも、あの本の中をごらんになれば、私は民族非武装、人類武装が理想である、そういうこともはっきり言っておる。そこへ至るには時間がかかる。かかるけれども、今原爆を抱えておるこういう時代を見ると次の理想はそこへ行くべきだ。民族非武装、人類武装ということを言っておるのであります。そういうことを言っておる私の信条をもう少しよくお読み願いたいと思うのです。
  129. 川崎寛治

    ○川崎委員 保守の論理を言われましたので「新しい保守の論理」の中から少し引っ張ってきたいと思うのですが、「私が不思議に思うのは、日本人はあの戦争を大東亜戦争と自称していたはずなのに、戦に敗れて、戦勝国が太平洋戦争と呼ぶと、そのように呼び方を変えていることである。私は日本人がつけた名前は、勝っても負けても変える必要はないと思う」、こういいうふうに言われておるわけでありまして、大東亜戦争の呼称の仕方の問題は、石橋委員長ともかつて、石橋さんが書記長のころ、私は当時国会を離れておりましたが、ここでも何かそういうことをやられたことを読んでおります。しかし、いずれにしましても、私は、あなたの大変起伏の大きいいろんなものについては警戒を要する、こういうふうに思います。  そこで、最後に締めくくりの問題としてお尋ねをしたいのは、キッシンジャー氏が  私これは大変見過ごせないなと思うのです。キッシンジャーさんというのは日本についてはよく知っておる、日本を裏も表も知り尽くしている一人だろう、こう思います。私は彼の考えについて賛成をしているというあれじゃありませんけれども、二月十三日の読売でこう言っているのです。サンフランシスコで講演をやっているのですが、「日本は十五―二十年以内に再び、太平洋地域における政治的役割を主張するだろう。また、中国はソ連にとり、大きな脅威となるほど強力になるだろう」「日本は、米国防総省ではなく日本独自のやり方で、軍隊を再建するだろう」、こういうふうに言っておるわけです。  これは私は、やはり中曽根さんの政治が続く限りそういうふうになるという危険性を持っての発言だと思うのです。それは、あなたが国際国家ということを大変強調しておられます。この国際国家論というのは――大体国際国家というのは何て訳すのですか。
  130. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 外務省の権威者がいますから、どうぞ政府委員からお聞き願います。
  131. 川崎寛治

    ○川崎委員 時間があれですから私から言いますと、ジャパンタイムズはこれをインターナショナル・ステート、こう訳しているのです。インターナショナルというのとステートというのは、これは対立概念なんですよ。対立概念をもし克服しようとしたら、ドイツのユーバーアレスですよ。まあそれはいい。しかし、いずれにしましても、あなたの国際国家論というのは、大体ニューリーダーの竹下さんや安倍さんは演説の中で一言も言わないのです。中曽根政治継承のあれがないのですよ、国際国家ということについては。  ですから、キッシンジヤーのこの発言に対しての総理見解を伺いたいと思います。
  132. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 キッシンジャー氏はキッシンジャー氏の独特のお考えで申されたので、一評論家の言葉を私が論評することは適当でないと思います。
  133. 川崎寛治

    ○川崎委員 続けたいのですが、大変時間の制約がございますので、残念ですが、次に移らざるを得ません。  そこで、教育に大変熱心な総理でございますので、次に教育の問題に入りたいと思うのです。  昨年の十月、この今申しました国連総会に行かれたそのときに、ニューヨークのブロンクスヒル小学校の見学をされましたね。そして、この見学をされた感想というのを伺いたいのです。
  134. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国連総会に出席しました合間を縫って、ぜひ学校を見たいと思いましてブロンクスヒルの小学校を見にまいりました。あそこはニューヨーク市ではありませんが、郊外で非常に裕福な地帯でございます。日本人の商社の子供たちもおりましたが、ユダヤ人が多いところなんです。施設が非常にゆったりしてそしてかなり余裕があり、日本から考えるとぜいたくだと思うくらいの施設がありました。しかし非常にうらやましいなと思いました。
  135. 川崎寛治

    ○川崎委員 大変大事な点が欠けていると思うのです。こういうあれであったらいじめはないだろうなと言われた、肝心のことを今は落としている。  これは本岡参議院議員が参議院の本会議でも尋ねておるところでありますが、じゃ、なぜ――お手元に文部省が出してくれた資料を一まとめにしましてお配りしてありますので、この一番右の下の方をごらんください。アメリカは二十人というところもあるのです。さっきのニューヨークのそれは非常にいいところです。イギリスは四十人以下あるいは三十人以下。それからフランスは二十五人くらいですね。西ドイツもこういうふうになっている。世界一の債権大国になっておるのですけれども、なぜ日本でできないのでしょうか。そして総理は、大統領的手法で政治をやるのだ、こう言われるのですが、あなたが予算にかかわってまいりましたのは五十八年、五十九年、六十年、六十一年と、四回総理大臣として予算を決定されたわけであります。じゃ、なぜ日本でできないのかを伺いたいと思います。
  136. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 しかし、私のこの三年有半を通じましても、四十人学級を実現するという旗は引っ込めておらぬ。やります、そういうことを言って、六十六年までに実行するという計画で進めておるのであります。  しかし、国によって事情がいろいろ違います。日本のような国は人口が一億二千万もあって非常に人口が多い、そういう場所でありまして、そして今財政改革をやっている最中でございます。私たち、行政改革のためにできた内閣ですら言っておる。行政改革の一つの大きな要素は財政改革。三K退治をやって、今度は国鉄の分割・民営までやろうとして御迷惑をおかけしようとしておるところであります。しかしそれもやらなきゃならぬということでやっておる。そういう中でありますから、財政的余裕がないので、教育にはできるだけの努力はしておりますが、そう十分というほどお金を回す余裕がない。ともかく財政の対応力が回復するまでどの省も我慢してくださいと言って我慢をしていただいておる。しかし、最小限の必要なことは教育については実行しております。
  137. 川崎寛治

    ○川崎委員 稲葉誠一議員が去年本会議質問しましたときには、戦後体制の見直しの中に、ひずみの問題としていじめの問題も言っておられるのですね。いじめの問題言われましたね。何か唐突な感じだったのですが、しかし、随分総理の頭の中にはいじめの問題があるのだなというので私は感心しました。  ところが、今言われて、一生懸命やっておるとこう言われておるのですが、そこの数字をごらんください。五十八年、あなたが総理大臣になって六億を削っているのですよ。この六億を削りましたときに、大蔵省が一生懸命抑えたい抑えたいと言って、竹下大蔵大臣の方が低く抑えて出しますと、閣議決定は三百五十七億防衛予算をふやすのですよ。三百五十七億このときふやしているのです。五十九年は七億削っているのです。それに対して、そのときは三百八十五億防衛予算をふやしているのです。六十年度は、十二億削っているときには五百十三億防衛予算をふやしておるのです。六十一年度は今度は八十五億と大変大きいのですが、そのときには防衛予算は四百六十億ふやしているのです。大蔵省の要求に対して閣議決定はふやしているのです。ところが文部省の四十人学級、定数改善、これは、今いじめの問題というのは教師の問題、学校の問題、たくさんありますよ。しかし、と同時に、今政治が心しなければならぬのは、やはりそういう教育環境をつくることだと思うのです。そうしましたときに、私はこれは大蔵大臣に対して不満があるわけでありますが、六億、七億、十二億というふうに削ってきている。これは戦車一台とかあるいはヘリコプター一台とかいうので削って、四十人学級に足踏みをかけているわけです。だから六十六年までにすればよろしいという問題じゃないのです、自然減がありますから。そうなりますならば、私は六十六年までのものを三年縮める、大統領的な手法でいじめの問題を解決しようというなら、せめて、よしおれのときには三年短縮しよう、これがあって二十一世紀に向かっての教育改革ということになるのです。ところがあなたのやつは、二十一世紀に向かっての教育改革、教育改革と言うのだけれども、肝心かなめの、これだけ深刻ないじめの問題が広がっておりますときに、あなたの三年間は戦車一台、ヘリコプター一台というので削ってきたわけなんです。だから、総理としては、この点は文部省が出したものは丸々やるというぐらいの英断があってしかるべきだ。あなたは各省庁全部我慢してもらっているんだ、こう言っているのだけれども、防衛予算についてはこれだけの大盤振る舞いをやっているわけです。理由を伺いたいと思います。
  138. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いじめの問題と学校の教室の子供の数と必ずしも直接に関係しているとは私は思いません。やはり一番大事なのは学校の先生の責任感です。子供を本当にかわいがって、子供に命がけで教育を与えようという学校の先生の熱意と責任感がまず第一だ。この間の富士見中学校の情勢をテレビや新聞でつぶさに読んでみましてしみじみ感じたことは、先生が無責任であいまいだなということを禁じ得なかった。したがって、何としても教室内を先生が自分で責任を持って、子供たちが和気あいあいといくようにやってもらいたい。それはほかが手を出せないところです、教室の中というものは。学校の中は校長先生、教頭以下みんながやるんで、外から手が出せない場所なんです。ですから、学校の先生がまずやってもらう以外にはないのです。国とかあるいは教育委員会というものは、先生がやりやすいようにいろいろ環境をつくって指導助言するという形になるのです。したがいまして、何といったって学校の先生がしっかりしてもらわなければだめだ。私は富士見中学を見ましてしみじみ感じまして、ああいう状況なら四十人を三十人にしたって二十人にしたって起こりますよ。問題は、中心はそこにあるということを私は感じまして、やはり教員というものをどういうふうにして立派な教員にしたらいいか、どういう立派な人を採用したらいいのか、採用後どういうふうにして研修させたらいいのか、そういう点が私の頭にある問題であります。
  139. 川崎寛治

    ○川崎委員 私も教師の問題、学校のあり方、それは大きな問題だと思うのです。今アメリカと日本を比較し、アメリカも非行の問題もありますよ、いじめの問題もある。しかし日本の場合のような陰湿なあれではないわけです。そういたしますと、この日本におけるいじめの問題を政治としてどうするかという場合に、教師の問題や学校の運営の仕方や、そういう問題については当然、いかにして生き生きとした、つまりみんなが手を携えてやれるようにどうしていくかということが大事だと思うのです。  しかし、どうですか。義務教育費国庫負担の問題ではこの制度を変えていく。そして補助金一括法案のときには、教壇に立つ先生も事務職員も栄養職員も、みんなが調和がとれてこそ学校運営はできるんだ、こう言いながらも、大蔵省はそれを削ろう、そして分断をしようとするから、そこにやはり騒ぎが出てくるわけですよ。あるいは主任手当の問題もそうじゃないですか。あるいは勤評もそうです。そういう戦後すべての今までの文教行政という、文部省の行政のあり方というものもずっと洗ってみるということが必要だろう、私はこう思います。  しかし、そのことを議論する時間がもうございませんので、文部大臣にお尋ねをしたいと思いますが、定数自然減の見方は、五十八年度は三万四百五十六、ことしの見方は六万四千、こういうふうに定数減を非常に多く見ておりますわ。そういたしますと、これは今日のような状況の中では、あと六年の計画でございますが、それを三年に縮めるということについてはどうですか、文部省として考えませんか。
  140. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 総理が御答弁になったとおりだと思いますけれども、私どもは四十人学級の計画の柱は立てております。できるだけ教室の環境をよくしていこう、現場の皆さんの希望も、我々の政策の整合性の中でできるだけ努力していこうというので、文部省としては最善の努力をして立てた計画でございます。  ただ、今のままのとおりでも、例えば町田の忠生中学校のように、教師全部が前向きに取り組んでいただいたがために、この間うち世間をあれだけ騒がせた暴力事件も簡単に今日ではおさまっておるというようなこと等もありますから、この問題といじめの問題との関連は直接認めませんけれども、しかし、最初申し上げたように、六十六年までには何とか完了しようというので、ことしも定数改善で五千四十四名教師をふやしました。そのうち三千三百名が四十人学級の改善で、四十人学級だけやればいいわけじゃなくて、ほかにもいろいろな改善がありますから、そちらに千三百人回して、今のところは、皆さんにお約束しておるこの四十人学級の制度を何とか六十六年までに確実にきちっと達成していきたい、この努力目標のもとに取り組んでおるところでございますから、御理解ください。
  141. 川崎寛治

    ○川崎委員 もう一つ、これは時間をかけなければいかぬのですが主任手当、これは教員の対立を減らしたい、こういうことで臨教審でも御検討のようでございますけれども、総理、右側に数字がございます。そして、先ほどの行革で削ったという六億、七億、十二億。ところが、今北海道で受け取り拒否をいたしておりますのが、十七億あるのですね。十七億、法務局その他に積み立てられているのです。そうしますと、今の行革の厳しいときにこれはもうやめるべきだ、こう私は思います。文部大臣、ひとついかがですか、主任手当。
  142. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 主任手当は、国会でもいろいろと御議論をいただいて、全体の教員の人材確保のためにできるだけ処遇を高めようということで、指導、連絡、助言、調整という役に当たる人のその職務と責任に対ずみ報酬として考えられた制度だったことは、先生御承知のとおりと思います。なるべくこの制度設立の趣旨に沿って学校運営が円滑に行われますように、我々は期待をしておるところであります。
  143. 川崎寛治

    ○川崎委員 これは、いずれ臨教審の方にも検討してもらわなければいかぬなと思っておりますが、いつまでもこういうことで対立をつくっていくことはやめた方がよろしいということを申し上げておきたい、こう思います。  あと財政金融、それからたばこ消費税、それから農産物の、私鹿児島ですから大変問題があるので、いろいろと予定をいたしておりましたが、時間がございません。たばこ消費税は、後ほど細谷委員からありますのでその方に回したい、こう思います。  農産物について基本的な姿勢を伺いたい、こう思います。  まず第一に、総理のところは、今小渕君が委員長席に着いておりませんが、小渕委員長やあるいは社会党の山口鶴男国対委員長など、大変熱心にコンニャクの自由化には反対をしておるのであります。総理も、これは中国との関係でございますが、農産物の問題、これはなかなか深刻なそれぞれの問題があります。ですからいかがなのか、それが一つ。  そして、羽田農林大臣に伺いたいのは、例えば私のところの鹿児島と千葉県を比較しますと、鹿児島の農家人口は三一・五%、千葉県は三%です、そして高齢化人口は一五%と千葉県は七%、こういうぐあいに大変こうなっていますね。千葉県の鉄や自動車や電気製品がどんどん行って、自由化、自由化、自由化、こういうふうに広げられますと、牛肉の枠拡大、オレンジの枠拡大、そして今、四月の二十二日に決着を迫られておる芋でん粉など十三品目の完全自由化というアメリカの要求、こういうふうにくるわけです。そういたしますと、私は外圧で日本の農業のあり方を変えるというやり方はいけない、こう思います。長期の展望がなければならない、こう思うのです。アメリカ自身が牛肉や砂糖を輸入しておりますし、あるいはオーストラリアから牛肉を輸入して今度は日本に牛肉を輸出する、こういうことでもあるわけです。そうなりますと、農業の問題は大変深刻なそれぞれの地域の問題があろうか、こういうふうに思います。  でありますから、まずコンニャクについて総理見解を伺いたい、それから後、羽田農林大臣から、今日の厳しい情勢の中でいよいよ四月二十二日までに決着をつけなければいけませんので、地域農業の柱である、そして国際収支の改善に全部やったって七千万程度ですか、そういうものをシンボルとして自由化、こういうことではいけない、こう思いますから、このことをお二人に伺いたいと思います。
  144. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 農産物の自由化の問題は、非常に慎重にやっておるところでございます。前から本会議やこの席でも申し上げているように、日本の農村を大事にする、特に生命産業であり、農は国のもとと私は申し上げているとおりなのであります。しかし一面において、生産性を高め、農家基盤、農業生産基盤を強化しつつ、国際的調和も図っていくようにしなければならない時代です。そういう点でも努力してきました。そういうことで努力しておるわけでございます。  そういう対外交渉においては、外国から要求のある問題をまず第一義的に取り上げて、そしていろいろ樽俎折衝しておるので、要求のない品物までこちらからどうこうと言うことは、第二義、第三義の問題になっております。コンニャクの問題は、外国から、特にアメリカやECから要求はないのです、実際は。そういう要求のない問題について、農家をいたずらに不安に陥れるというようなことは政治としては下策である。我々は一戸の農家といえども、その生活については心配していかなければならぬのでありまして、社会党といえども私と同じ考えに立っておられるのではないかと思います。
  145. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 御指摘がございましたように、五十九年四月に、肉、オレンジと一緒に一応休戦という形をとってまいったわけでありますけれども、今御指摘のとおり、四月二十二日にその休戦の日が切れるということでございまして、昨年の暮れにも、日本側がこんな措置をしようじゃないか、先方と話し合った問題につきましてレビューをした、そしてその中の話し合いをあれしますと、やはり向こうの方は原則的自由化ということを言ってきております。しかし私どもは、これからの話し合いを通じながら、やはり現実的な解決というものを進めるために話し合っていきたい。今総理からもお話がありましたように、国際的な環境はございますけれども、我が国の農業め実態というものあるいは需給の事情というもの、こういうものを踏まえながら進めていきたいと思っております。  なお、小さな問題でも、一村一品運動というようにして、ともかく、これはこの地域でぜひともひとつ生み出そうじゃないかというものもあります。ですから、小さいからいいだろうというものでもないということも私どもわきまえながら対応していきたい、そのように考えております。
  146. 川崎寛治

    ○川崎委員 羽田農林大臣は、農家の期待も大変大きいと思います。ただ、専門家であるだけに理解が早過ぎるという点ではいけない、こういう心配もあります。その点については、大事な時期でありますからどうか御検討願いたい、こう思います。  終わります。
  147. 林義郎

    ○林(義)委員長代理 これにて川崎君の質疑は終了いたしました。  次に、池田克也君。
  148. 池田克也

    池田(克)委員 公明党の池田克也でございます。よろしくお願いいたします。  私は、教育問題に絞って幾つかお伺いをしたいと思います。  最初に、いじめの問題でございます。今もいじめの問題が出ておりますが、毎日テレビあるいは新聞等で、東京の富士見中学で起きた事件、本当に見るだけで心の痛む問題であります。  この問題は、臨教審が設置されて一次答申が既に出て、教育改革がもう既に始まっている状況下において発生した。忠生中学の事件のときは、確かに学校の非行、暴行の問題は話題にはなっておりましたけれども、あれが一つのきっかけになって国民の中にこのままではいけないという、そうした大きな意思の合成ができてきたと私は思います。こういう状況が二度とあってはならない。しかも、鹿川君のあの事件に続いて今度は逮捕者を出してしまった。こういう事態を招いだというのは、私は国会で何ができるだろうか、大変難しい問題ではありますけれども、これに私たち党派を超えて何らかの合意を求め、手を打っていかなければならないと、こう常々思っております。  今総理のお話を伺っておりまして、教員に重大な責任がある、こういう御指摘でございました。私も、教員に責任があると思いますけれども、しからば教員、教員、教員と言って、教員しっかりしろとさまざまな体制でこれに何らかの手を打っていきますと、やれ管理の強化であるとか、さまざまな形でまた現場の先生からもそうした反発が予想されます。今日までの戦後の教育を見ておりますと、この教員に対するあるいは教育に対するいわば国からのさまざまな力、それに対する反発する動き、こうした二つの言うならば右と左と申しましょうか、そうした激しい動きというものがぶつかり合って、その中に先生もやる気を失った面もあるでしょうし、ある意味では本来の使命感を失ってしまった、こうした面もあるだろうと思うのです。  私はそういう意味では、さっき総理の御答弁を聞いておりまして、教師というものにライトを当てることは大事でありますが、それ以外の広範な社会現象、例えば住宅における問題であるとかあるいは子弟を置いての転勤であるとか、あるいは経済事情が厳しいために母親がパートで働かなければならないというような問題であるとか、非常に複雑に絡み合った大きな問題がこの背後にあると思うわけでございまして、教員問題はわかりましたが、それ以外の問題についてのいじめと関連した総理の御見解を伺いたいと思うわけです。
  149. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 公明党が教育問題について非常に御熱心に調査もし、研究されておられることに敬意を表します。  先般も、竹入委員長からお申し入れの書類をいただきまして拝見いたしましたが、三万数千人にですか、アンケート調査もおやりになって、いじめの実態やら教室の内情等について足でいろいろ具体的に調査をなすっているというお話を承りまして、非常に敬意を表する次第であります。その結果がわかりましたらぜひ教えてくださいとお願いしてありますが、よろしくお知らせ願いたいと思うわけです。  いじめの問題につきましては、先ほど申し上げましたように、私は、第一義的には教室内のことであり学校のことでありますから、先生方がしっかりしてもらわなければとても何ともできない。その先生方を激励して、やる気を起こさせるのは我々の仕事である。しかし、何といったって焦眉の急で迫っている問題でありますから、先生方がやってもらいたい。忠生中学の例を見ても、立派にやった例もあるじゃありませんか、そういうふうに申し上げますが、長い制度の問題としては、やはり教育学というようなものに基づく現代の社会に適応した一つのシステムエンジニアリングからする長期的な体系というものが必要である、これはもちろんわかっております。それらにつきましては、臨教審においても今研究していただいておりますから、報告をいただいて検討してまいりたいと思うわけでございます。  しかし、一般的に申し上げまして、今ほど教育に対して国民の異常な注目が集まっているときはないと思いますし、全国民の皆さんが心配していらっしゃる問題はないと思います。恐らくどの会合へ出ても、いじめの問題や中学生の自殺の話が出ないことはないと思うのです。それぐらい大きな関心を持っておることでございますから、政府はもとより、国会全体を挙げてこの問題を速やかに解決するように努力してまいりたいと思いますが、その点につきましても、野党の皆様方の貴重な御意見をいろいろ聞かしていただければありがたいと思う次第でございます。
  150. 池田克也

    池田(克)委員 私たちがアンケート調査をしておりました。二月の十五日を一応締め切りとして今集計中でございまして、総理からそれについての御発言がございましたので、ぜひまた必要なデータが出ましたらばお見せして、施策の参考にしていただきたいと思っております。  文部大臣にお伺いしたいのですが、今総理から、国民関心は最も今教育に高いという御発言がございましたが、特にいじめの問題についてどのような施策を具体的に講じていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
  151. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 いじめの問題が御指摘のように大変大きな問題になって、昨年だけで九名の中学生がこれが原因で自殺をし、文部省といたしましては、これに対して総理が今おっしゃったように、現場の教師を中心にしてみんなが力を合わせて防いでもらいたいという通達を出したり、有識者の会議をしたり、指導徹底を図ってきたつもりでおりますけれども、悲しいことに、事実はことしに入ってから既に三人の新たな犠牲者が出た。  私は、ここで改めて強調したいことは、どうか、これを本当に我が事として全教師、全教育関係者、そしてすべての子を持つお父さん、お母さんが、自分のことと思ってもう一回しっかり考え直していただきたい。例に引かれました富士見中学校の鹿川君の話にしても、自分が死んでもほかのやつが犠牲になったら意味ないじゃないか、どうか君たちもこういうばかなことはもうやめてくれ、これが最後の願いだという遺書を書いておるわけです。これをみんなが、自分の学校で起こったらどうするだろうかということを、まず全学校で一遍取り組んで、そして社会も家庭もお友達同士もみんなが力を合わせること。  同時にまた児童生徒の皆さんにも、きょうまでややもすると、自分自身を大切にしなさい、人に迷惑をかけないようにしなさいということをさんざん教えてきました。けれども、人に迷惑をかけないだけじゃなくて、人が困っておるときには、進んでどうしたら手を差し伸べて助けてあげることができるだろうか。いじめをやめさせようと思っていろいろ追求しておる、いろいろ調査をしておる富士見中学校で、また起こったいじめを見て見ぬふりをしておったということは、私にとっては大変心痛む驚くべき問題点でありますから、文部省といたしましては、この問題については、十八日に中野区の教育委員会の関係者を呼びまして直接に指導をするとともに、今全国にお願いして、いじめの実態調査や文部省の指示に従ってどこまで通達を実施してもらったか、総点検などをして、さらにその結果を見ながら対策を講じていきたいと思っておるところでございます。
  152. 池田克也

    池田(克)委員 先ほどちょっと触れましたが、逮捕者が出たということでございます。これは中学生のことでもあり、よほどのことでなければ、こうした警察が入って逮捕して調べなければならない――私は、今までこの教育のいろいろ事件があったと思いますが、中学生レベルでこういう例はそうなかったのじゃないかと思うわけでございます。この問題を解決していくために、徹底的に調べるという御趣旨であろうと思いますけれども、国家公安委員長のお立場からこの逮捕という問題について、今後の問題も含めてお答えいただければと思います。
  153. 小沢一郎

    ○小沢国務大臣 中野富士見中学校の問題で逮捕者が出たわけでございますけれども、これは学校なりあるいは家庭なりいろいろな問題があったようでございますが、いずれにいたしましても、警察がこういう問題に介入するというのは、要するに学校教育あるいは家庭教育のもう限界を超えた、そう判断されるときのみに限っておるわけでございまして、今回もそのような判断に基づいて、これはもう身柄拘束してする以外にないということで行ったものであると考えております。  いじめは、先ほどから総理初め文部大臣、皆様から御答弁ありましたけれども、これはもう学校教育、家庭教育、社会教育、国全般の中から取り上げていく問題であろうと思います。警察が直接その行政の範囲内で関与すべきことではないと考えておりますが、警察行政の範囲内でできることにつきましては、今も少年直接あるいは父兄から直接、いろいろな相談を少年相談として受ける機構をつくっておりまして、昨年も数千件の相談があったと聞いております。  それから、学校と警察の連絡会議もかなり多くの学校が加入していただいておりまして、こういうことを通じながら、少年の非行の問題にも絡んできますので、警察行政の範囲内で精いっぱい努力いたしたいと考えております。
  154. 池田克也

    池田(克)委員 二度とこういう問題を起こしてはいけないという私ども決意を持っておりますが、関連してこの問題は、ほかの大臣の方々にも御意見を伺いたいわけでございます。  例えば住宅事情、これは、住宅事情といじめというと結びつけが大変きついと言われるかもわかりませんが、やはり先ほども触れましたが、住宅のローンが大変だということから働いていらっしゃるお母さんもいらっしゃる、あるいはまた、遊ぶところがなく、子供たちのエネルギーを本当にもてあましてしまっている、あるいはそうした都市におきまして、過密な状態の中で、近所隣で違う年齢の子供たちがいわゆる子供同士のつき合いというものができない、十分に表現できないということ、いろいろと私どもの時代にもあったわけでありますが、やはり近所の子供たち同士でさまざまな秩序が保たれていたように思うわけでございます。  こうした点や、あるいはまた、テレビ等によるところのヒントを得て葬式ごっこが行われたというふうにも伝えられているわけでございまして、建設大臣あるいは労働大臣、郵政大臣等から、それぞれの所管におけるこのいじめの問題について、御関心のほどをお聞かせいただきたいと思います。
  155. 江藤隆美

    ○江藤国務大臣 いじめの問題で、建設省所管にかかわることで私もいろいろ実は考えてみるわけでありますが、欧米の映画を見ておりましても、あの広い住宅事情あるいは広い公園等があっても、その中でやはり子供は子供をいじめておるというのがよくあって、どこでもいじめというのはあるのかなあと私は思うのです。そういうものが、やはり人間の一つのさがなんだろうかなということを考えます。しかし、この日本の今日のような住宅事情が、全く関係がないと私も思いません。  したがいまして、いつか申し上げましたが、今空き家が三百三十万戸ございまして、そのうちの大部分はスクラップにして、そして戦後建ったやつですから、これをもっと快適な住宅に建てかえようということを含めて、これから、六百七十万戸の住宅を建設しようという五カ年計画を実はことしからスタートさせるために、いろいろな融資制度あるいは税制面の優遇策を講じよう、こういうことにしたわけでございます。  それから特に都会では、例えば西戸山の再開発をやるわけでありますが、こういう再開発をやるときには必ず緑地公園をとるということを、これは住宅政策と並行して行いまして、今大体日本人一人頭四・九平米と言われておりますが、東京都はうんと少なくて二・一平米です、これをひとつ、こうした土地の再開発等を進めながら、やはり少なくとも先進国並みに追いついていく努力を私どもはして、そして子供たちの遊び場あるいは遊園地、みんながそこで楽しく遊んで、そして友情を深め合うような場所をつくるという、そういう努力を私どもは続けるべきであろう、こう考えまして、都市公園整備五カ年計画、三兆一千億を準備をして、これからひとつそういう方面でも努力をしてみようといういわゆる初年度に当たるわけでございまして、これからも、ただ住宅政策を進めればいい、道路をつくればいいということではなくて、国内に起こる、先生の言われるようなそういう教育の問題、社会の問題とも深いかかわり合いがあるという考え方を持って、私どもは建設行政を進めていくように努力をいたしたいと思います。
  156. 林ゆう

    ○林国務大臣 いじめの問題は、学校教育のみならず、今日の社会やあるいはまた家庭が、核家族化あるいはまた兄弟の数が大変少なくなっている、こういったような社会全体のあり方も一つの大きなかかわりを持っているのではないか、このように考えるわけでございます。次代を担う子供の健全な育成というものは大変重要な課題でございまして、個々の家庭あるいはまた学校の教育、社会全体が密接な連携をとりながらこういった問題に対処していかなければならない、こんなふうに私は思うわけでございます。  労働省といたしましては、女性の職業につかれる方が最近大変多くなっておりますから、こういったようなことから、家庭生活の面でその周辺の条件を整備して、こういったような問題はいっときも早く少なく、なくなっていくというようなことに意を尽くしてまいりたい、このように思うわけでございます。
  157. 佐藤文生

    佐藤国務大臣 ちょうど一週間前私は選挙区に帰りまして、朝食の後に隣組の方と四、五人で話しているときに、ローカルの放送で教育問題が出まして、その中で、ママポリスという青少年の担当の若いお巡りさんがテレビに出まして、どうもこのごろ「別に病」というのがはやっている、これをみんなの力で治しましょうという話が出たのです。実は私、「別に病」というのは余り知りませんで、何だろうかと次の話を聞いてみましたら、ちょうど小学校の一年ぐらいの子供にママポリスが指導する立場で、そんな悪いことをしたらお父さんにしかられるんじゃないのと言ったら「別に」と答える、そんな悪いことをしたら先生にしかられるんじゃないでしょうかといったら「別に」と言う、そういう物事の判断がつかない事実を知って驚いたという話を聞きました。  私は、放送というのはそういう意味で問題を提起する、大きな社会的な影響なり、教育効果に大変大きな仕事を果たすんだなあということを実感として受けまして、そして私は、今度は郵政大臣として、放送法というものは一体どういう内容かと小うことを私なりに調べてみましたら、結局、各事業所ごとに、放送会社の事業所ごとに、編成の自由は守ります、守らねばならぬ、がしかし義務がありますよと。その裏でやる義務というのは一体何だろうかというと、各事業所ごとに、放送事業所ごとに放送基準を制定してくださいよ、そしてなお事業所内で徹底させる意味で、国民の声をよく聞く意味で、番組審議会が活性化して活力を持たなければいけませんよ、こういう内容の放送法になっているわけでございます。  そこで、現在どのようなものを青少年に対して各事業所がつくっているかという例だけをちょっと申し上げますが、児童及び青少年に対する配慮ということで、各事業所ごとあるいは民放連がこれ自体を決めておるわけでございます。そこで、児童、青少年に対しては、よい習慣、それから責任感、正しい勇気などの番組というものを十分に考えていかねばなりません。それから第二は、児童向けの番組は、児童の品性を損なうような言葉や行動をしてはならないというような考え方で放送しなければなりませんとか、それからまた児童向けの番組で、悪徳、残忍、陰湿、そういうような児童の心理を阻害するようなことについては配慮すべきであるといったようなことが、七項目に書かれて自主的に決まっておるわけです。したがって、郵政大臣としては、国民の期待に沿うようなそういう放送内容がどんどん出されて、そして番組の向上に向かっていくように私は期待していきたい、こういうぐあいに思っております。
  158. 池田克也

    池田(克)委員 郵政大臣に御答弁いただいたのですが、三塚運輸大臣、以前この席で雑誌の問題を取り上げられました。非常にショッキングな雑誌でして、国会決議しようかというぐらいの議論までいったのですけれども、結果はしませんでした。所管は違いますが、教育問題に御関心のある大臣として御意見があったら聞かしていただきたいのです。
  159. 三塚博

    ○三塚国務大臣 今郵政大臣言われましたが、そういう基準がテレビ会社においてしっかりと現実の姿として実行されておりますならば、私はいじめの問題も多少変わった形に相なっているのではないだろうかと思います。  いじめの問題は、社会の複雑な要素が絡み合っておるところに深刻な問題があるわけですね。子は親の背を見て育つというのでありますが、まさに大人社会の姿を子供が見てそれを行っておる。それは現実の親だけではなく、テレビに醸し出される雰囲気、あるいは雑誌に醸し出される雰囲気、あるいは目の前で行われている大人のそういう醜い姿、こういうものが子供心にそういうものを植えつけておるという意味で、まさに大人の心すべき姿、政治の心すべき姿であろう、こんなふうに思います。  もっと大事な点は、やはりそういうことでありますから、総理の言われる「山川草木悉皆成仏」という生命のとうとさ、「敬神崇祖」、神という問題、あえて言えば宗教心。私学にこういういじめ、意地悪の陰湿なやつがない。これは建学の精神そのままでやり得るところにその示唆がある。公立の学校は余りにも縛られている中にそういう問題があかというのも我々大人が心していかなければならぬ一つの問題がな、こんなふうに思っております。
  160. 池田克也

    池田(克)委員 実は先ほどのアンケートの問題になるのですが、総理にも聞いていただきたいのです。アンケートの結果は後刻まとめて皆さん方に発表したいと思うのですが、いろいろと全国の小学校、中学校に我が党の議員が三千六百人、雪の深いところも小さな離島もみんな訪れまして、いろいろお伺いをしたわけでございます。ところが、電話して何月何日にお伺いする、こういうお約束をして、快くいらっしゃい。ところが行ってみますと、実はきのう校長会があった、そして校長会で公明党さんからのこういうアンケート調査があってどうしようかという話があった、いろいろ議論してとうとうお答えしないことにしました、校長会の決定です、こういうことも随分あったわけです。そればかりではございません。喜んで私どもの調査に応じてくださった、もちろん匿名でございます、アンケート用紙に印をつけていただいて封をして返していただく、こういうようなやり方でございました。私どもは決して党利党略にこれを使うなんということは毛頭考えませんで、一生懸命勉強するけれども、どこに問題があるのか、校長先生は、あるいは先生は、父母は何を考えていらっしゃるのか、一生懸命調べようと思いまして、統計上はもっと少ない数でよかったのですが、ともかく全国津々浦々学校に行こうということでやりました。  私、思いますことには、やはり管理。要するに、どういう答えが出たらどういうふうに言われるのだろうか。上部からの管理監督。そしてお互いが、とにかく自分の発言が何かトラブルが起きるとまずいから自分を守っていかなければならない。片方では教員組織を持っていらっしゃる組合の方からもさまざまな抗議、反発がございました。一つ政治的な中立を侵すものである。私どもは決して特定の答えを用意したものではございませんでした。率直に政策を検討し、臨教審からのこうした提案に対して物を言っていく上にも資料が欲しいと思って調査したわけでございまして、私は、いわゆる教育行政をずっと流していくそうした管理の機関、さらには組合組織、その両方の間で一人一人が自由に物が言えない、何かちょっと動くといろいろと憶測を呼び、政治的に利用されるのではないかといったような、さらにはまた自分がこれからの教員あるいは幹部になっていくであろうそうした状況の中で、一つの政党と何らかの形で協力をすれば自分にマイナスが降りかかるのではないか、さまざまな形の、一言では言い切れません、管理のような、縛りつけのような、そして日本人独特の周りを気にしながら進んでいくというやり方、これが思い切った先生のやる気というものを、そして独創的な教育現場というものをなくしていく、その谷間で子供たちが本当にかわいそうな目に遭っている、こういう感を深くしたわけであります。  したがって、従来いろいろなことをやってきて今日行き詰まっているわけでありますから、やはり思い切った発想の転換をして、先生方にやる気、そして自由な雰囲気というものを保障していかなければ、この問題は解決しないのじゃないか、こう思っておりますので、今まで非常に苦労してうちの議員の人たちが動きました、私自身もある地域を担当してやってみての感想でありますが、この部分だけ総理に申し上げて、感想を例えればと思います。
  161. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 善意で一生懸命教育を直そう、探究しようと努力している行為に私は全く敬意を表すのでございますが、どこか私が聞いた情報では、教員組合の方か何かでそういう管理統制が行われて、アンケートに答えるな、そういうのがあったとか、情報で私、聞いておりますが、甚だ遺憾だと思います。やはりこれだけ国民関心を持っておる大きな問題についてはみんなが協力しようと思って善意でやっておるのでありますから、そういう問題については虚心坦懐に先生方の方も組織の方も協力していただく、ともかく垣根を破ってみんなで、国民全体で手をつないで直さなければ直りっこないのですから、そういう点については度量の大きい態度で協力していただいたらいい、そう思っております。
  162. 池田克也

    池田(克)委員 私、今一つの具体的な例を申し上げたのですが、文部大臣、管理という問題です。やはり校長先生あるいは現場の教頭先生、何か調べ物が来て、うちの教員はどう答えるだろうか、もしそれが何か問題になったらという気持ちを教育現場が持っていないだろうか。これは、いないと言えば私はうそになると思いますし、戦後のいろいろ教育行政を進めてきた中にそういう気持ちを現場に持たしちゃつたという反省は全くないだろうか、この辺率直にお伺いしたいのですけれども。
  163. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 今の具体的な例を通じての管理に対するお話でございますけれども、私たちは、戦後の教育の大きな流れの中で、画一的、形式的な平等主義は間違いであるということ、今の臨時教育審議会でも、個性を尊重しよう、個性主義の原則のもとに今審議も行われておると承りますし、また、私も現場の皆さんの声を聞かなければ教育改革はあり得ないということを申してまいりましたけれども、我々が気がついていない問題や新聞に報道されないような隅っこで行われておる問題について、現場の教師の皆さんは日々の教育実践を通じて知っていらっしゃるかもしれぬ。この間の教員組合の教研集会の記事を読んでみても、生徒との心の回復をどうやって取り戻したか、取り戻したという教師の報告にみんなが質問されたというようなことも出ておりますと、読んでおって我々にもなるほどと思うことが随分あるわけであります。私は、今の具体的な御提案のテーマのようなときは堂々と皆さんが答えてくださったらいいだろう、こう思います。  また、一般論として、戦後の教育の中でそういう誤った雰囲気がてきたのではないか、こういう御指摘でありますけれども、私はむしろそれよりも、前回の学習指導要領改訂のときも、一週間三十三時間全部規定の教育課程で縛ってしまうより四時間ぐらいはゆとりの時間をつくる、その時間は現場のそれぞれの先生に創意工夫の幅を与えることがいい教育になるのだ、自分のクラスはどうしてこういうふうなんだろうか、この問題はどうやったら片づくだろうか、創意工夫に基づいて自由に導いていただく時間も現場には必要だと思って、なるべく自由闊達の雰囲気が教室、学校、そういったものに行き届くように配慮してきたつもりでおりますので、これからも御質問の趣旨を踏まえてずっと見守りながら検討を続けていきたい、こう思います。
  164. 池田克也

    池田(克)委員 もう時間がございませんのでいじめ問題についてはこれだけにいたしますけれども、何とかこのいじめ問題が深刻な状況を繰り返さないようにそれぞれのお立場で努力をしていただきたいと要望します。  総理は、物と物との時代から心の時代、先ほどもちょっと出ましたけれども、そうした東洋哲学の問題に触れていらっしゃるわけでございますが、実は前回我が党の矢野書記長がこの席で、イギリスで非常に評価の高いバレリーナの、労働条件といいましょうか、そうしたことからどうしてもイギリスを去らなければならない非常に残念なケースを質問いたしました。私は、これからの日本の教育を考えるときに、やはりテレビも大事ですけれども、生のそうした芸術というものを見せる、文教委員会でも生演奏の機会をふやしてほしいということを強く要望しまして、今でもわずかな予算でありましょうけれども、辺地、離島などへ大きなオーケストラに行ってもらって生の音楽を聞かせ、じかに楽器をさわらせて、そして情操教育を深めてほしいということを前から提唱してまいりました。やはりこうした、外国の優秀な方にも来てもらう、日本からも行く。そして、それがいわゆる外国人の労働ということになりますと、それぞれの国にそれぞれの制度があってこれはなかなか難しい状況でございます。もう既に御承知と思いますけれども、結婚して、そうすればイギリスに残れるだろうなどというお声までかかっている、みんなが非常に残念がっている人のイギリス滞在の問題でございまして、先日総理からも御答弁いただきましたが、矢野書記長からは、サッチャー首相がいらっしゃる折にこうした問題も話題にしていただいて、それぞれの国で事情はあろうけれども、これからいわゆるサミット各国、みんなそれぞれ文化交流が重要になってくるわけですから、こうした問題も含めて何とか従来の線を超えた新しい、この人たちがいい芸術をそれぞれの国で展開できるような道はないか、こういう質問をした、もう一度その点について総理の御答弁を確認させていただきたいと思うわけでございます。
  165. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 清水洋子さんの問題であると思いますが、外務省をしてひとつ検討させますと申し上げましたが、外務省もいろいろ苦労もし、また先方の劇団も苦労もしていただいて、今月末まで一応また延期にしていただいたわけでございます。しかし、相手の国には労働組合がございまして、そういう問題についてはなかなか厳しいところがあるようなのであります。私は、一回出国されて、そしてまたお帰りになったらどうだろうか、そういうようなことは可能かどうか研究してみたらどうか、日本におる外人について私がそういうことを計らったこともございましたので、そういうことも外務省に研究したらどうか、そう言っております。ともかく相手の国情というものもありまして余りこちらから押しつけがましいこともできない。既に三回今度延期になっておるわけでございますから、いい解決策を今後とも模索させるようにいたします。サミットの際に首脳で文化問題なんかも話しますから、もしチャンスがあればそういう問題も話しますけれども、特定の個人のケースを話すということは適当ではない、そう思うのであります。
  166. 池田克也

    池田(克)委員 いろいろとお計らいをいただいたと思いますけれども、私は、非常に大事な問題であろう、そしてこの文化問題は、日本はいろいろな意味で諸外国からの文化を受け入れてまいりましたし、これから日本からも出していく、そういう時代ではないかという気もいたしますので、お互い相互主義であろうと思いますが、ぜひこの問題を話題にしていただいて何とか解決をしていただきたいと強くお願いをしたいと思います。  それでは、共通テストの問題に移りたいと思います。  共通テストの問題は、臨教審の一次答申に具体的に答申が出ております。文部大臣にお伺いしたいのですが、この一次答申の線で共通テストが準備されている、こう受けとめておりますが、そのタイムスケジュールはどんなふうになっているか、お聞かせいただきたいと思います。
  167. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 御指摘のように共通一次試験をやめて新テストに変える、こういう大きな目標が一次答申で出ました。それを受けて文部省では既に昨年七月に省内に協議会を設置して、あらゆる立場の方々で検討していただいており、今年の七月にはその報告をいただくめどになっております。そして、報告を受けましたら、国立大学協会その他あるいは私学の方にもお話を申し上げ、どのようなものになっていくのか、皆様にもまたいろいろと御議論を賜りたい、こう思っておりますが、予定どおりのスケジュールで進んでおり、できれば六十四年から行いたいということをめどにして準備を進めております。
  168. 池田克也

    池田(克)委員 七月に具体的な検討をまとめるということでございますが、私が文部省からちょうだいした資料には、八月には新センター関係の概算要求、十二月には法案の提出、そして六十二年の四月に新センターの発足、七月に六十四年春の入試要項の決定あるいは発表、六十三年には試行テスト、こういうスケジュールを私ちょうだいしておりますが、これに間違いないでしょうか。
  169. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 そのような心づもりでやっておりますけれども、御承知のように大変大きな制度の基本に関する改革でありますし、また、七月にどのような報告がいただけるのかもまだ未定でございますから、申し上げましたように、最終の昭和六十四年からそれを行いたいという終着駅を目標にそれらのことを組んでやっております。間違いないものでございます。
  170. 池田克也

    池田(克)委員 私が申し上げておるのは、この六十四年に実施ということですが、いわゆる六十四年実施といっても、今の共通一次テストも一月にやっているわけでございます。しかも、私大が参加するとなると、私大は推薦入学制度を持っておりますし、恐らくはもうちょっと繰り上げということが具体的に要求されてくると思うのです。そうすると、六十三年の暮れあたりにはもう既に具体的な試験をしていかなければならぬだろう。これはもうだれが考えてもそうなっていくだろう。そうしますと、六十二年の暮れには具体的な試験をするとなると、六十二年の七月に要項を発表すると、もうぎりぎりでございます。受験生の立場から見ると、こういう新しい変化というのは、このくらいの期間の余裕では対応し切れないのじゃないかというのが私の心配なんです。したがって、法律の改正もあるやに聞いておりますが、法律の改正ということを念頭に置いていらっしゃるのであれば、法律が通過するかどうかはこれは国会情勢でございますので、六十四年ということを具体的に念頭に固定したものとして置いてしまうとさまざまな難しい状況に追い込まれていく、本当にいいものができないで、ともかく法律を通して何とか形を取り繕うというようなことがあったのでは、悔いを残すことになるのじゃないか。この六十四年実施というのはもう既定の事実としてこれは動かせない目標なのでしょうか。
  171. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 先ほど来、制度の根幹に触れる大改革でありますから途中のことを一々月日を挙げて御説明しなかったのは、まだ報告が来ていないということと同時に、ただいま国立大学協会や私学の学長の集まりの方で一生懸命鋭意これに向かって検討、研究をしておっていただくところでありまして、せっかく新テストをスタートさせるなれば、それは成功させなければならないということは我々の強い願いでありますし、また、先生御指摘のように受験生の立場に立ってみると、幾らかの準備期間、助走路が必要なわけでありますから、そうなると、六十二年にはそのプログラムを示して、六十四年にやるときには、六十二年にはそれが言えるように持っていかなければ、その余裕は十分とは言えないわけであります。したがいまして、私も、めどと申しておりますけれども、必ずどんなことがあってもと言うのは、国会の法律の御審議もいろいろございます。けれども、ある程度終点を決めて努力しませんと、何か議論だけしていればいつまででもいいやということになりますと、ただいま指摘されておりますいろいろな弊害や改革をしなさいという御要求や臨教審の第一次答申の御趣旨にも背くことになりますから、その辺のところは十分討議しながら改善案を練りながらやっていく時間があるという判断で一応のめどとしてやはり置いておるところであります。
  172. 池田克也

    池田(克)委員 結論がそういうふうに六十四年の一つのめどがあるわけですが、この共通一次テストをやめて新しい共通テストにするということはもう既に方針として決まっておるんでしょうか。
  173. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 それは方針として決まっておりますし、答申にもその改革がきちっと言われてまいりました。  それで、共通一次試験というのも、御承知のように皆さんに国会審議の御協力をいただいて、入試センターをつくるときの法律は各党全会一致で成功さしていただいた。あのときに目指しましたもの、例えば一期校、二期校の格差があるような問題を解決しよう、あるいは出題問題が、当時難問奇問という言葉がはやりましたように、問題が複雑怪異ではないかというような大学の入学試験が持っておったそれまでの御批判、あるいはまた、一回だけのペーパーテストのほんの一点、二点の知識によって人生が大きく左右されるようなそんなことでいいんだろうかということで共通一次テストを始めたんですけれども、結果として、その運用によって大学の序列化とか輪切りとか極めて楽しくない言葉が定着してきた。何とかこれを変えなきゃならぬ、もっと個性的な、幅広い、奥深い選択の方法はないだろうかということで、それでは新テストでこれをやって、輪切りや序列化のようなよくない結果が出てきたのを払拭しようというところに大きなねらいがありますので、新テストで行こうということは既定の方針でございます。
  174. 池田克也

    池田(克)委員 私、法律改正ということが具体的なスケジュールに上がってくるのであれば大変だというふうに申し上げたんですが、この国立学校設置法の、いわゆる入試センターをつくったときに、第九条の三の二、これに「大学入試センターは、国立大学以外の大学の要請に応じて、当該大学の入学者の選抜に関する業務の実施に協力することができる。」こうなっているわけです。したがって入試センターというのは、あのときもいろいろ議論しましたが、私大の参加をどうしても必要だという議論をしました。したがって、新しい共通テストをつくって私大を参加させるについて、今のこの入試センターに関する国立学校設置法を変えなくてもやっていけるという考えはないんでしょうか。
  175. 大崎仁

    ○大崎政府委員 お答え申し上げます。  現在の大学入試センターは、国立学校設置法第九条の三で「国立大学の入学者の選抜に関し、共通第一次学力試験の問題の作成及び採点その他一括して処理することが適当な業務を行う」ということを主たる目的といたしておりまして、副次的に国立大学以外の大学の要請にも応じてよろしいということになっておるわけでございます。ただ、臨時教育審議会の御提言に係る新テストは、国公私を通じての大学の、いわば共通に利用し得るテストというものを実施をするというのが本旨でございますので、やはりこの場合、大学入試センターの目的あるいは性格というものが変更するのではなかろうかというふうに考えておる次第でございます。
  176. 池田克也

    池田(克)委員 そうしますと、法律を改正して私大の参加への道を開くということになるわけですけれども、この私大の参加ということなんですが、いろいろ調べてみますと私大は非常にこれについて消極的なんですね。具体的には、七月までにいろいろと御議論をされて、そして八月の概算要求なんという話もあるくらいで、つまり六十四年に実施ということ、つまりもう六十三年の暮れには具体的には実施ができる状況になっていなきゃならないということを考えますと、非常にこれは時間的に追い詰められている。ことしの七月に結論が出るようではもう間に合わないんで、できれば今国会ぐらいに何らかの形で次の試験はこうなるんだということを――私大も入るわけですから、私大はもう八割ぐらい学生を抱えているわけですから、非常に量の多い学生を受け入れる試験になるわけでして、これは国民関心事としては重大なことであります。したがって、教育改革の一環として出てきたことで、総理の御意見にもいろいろとありますように、大学の改革というのは教育改革の一番根幹だという認識に立ては、ことしの国会ぐらいに案をある程度示して議論をしなければ、もう来年は具体的にその法律を出して、議論の余地がないその法律を詰めて、できるかできないかということになっていくわけで、国民の合意を得て改革を進めるという観点から見るならば非常に時間的に追い詰められた作業ではないかな。私大の参加がどの程度見込めるか、どんな目算を持ってらっしゃいますか。
  177. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 この問題につきましては、御指摘のように、我が国の高等教育で約八割の人材養成を担当しておっていただく私大もそれは参加されることが望ましいという方向は私たちもかわがね前回の共通一次試験のときから抱いておったのでありますけれども、特に今回は既に日本私立大学団体連合会の方でも、この問題については協議、検討を願っております。私大の参加できるような方法ということもいろいろ具体的に私大側でもお考えをいただいておるようであります。私どもはこの新テストを利用していただくときには、大学の序列化とかあるいは輪切り状態を解消しながらも必要なものを利用していただく、あるいは点数の傾斜配分も結構ですし、必要な教科だけ利用していただく。きょうまで国立と私大の試験の相違は、従来から科目数の多い少ないにあったという特徴等もありますし、私大はやっぱり個性、特質、能力をはかるのに一科目とか二科目とか三教科とかいろいろ選択の自由もございますよ、参加の方法については、各大学の創意や自由というものも十分な幅をもって、そして御利用いただくように協力を要請し、私大側も受けて今真剣に御努力願っておるさなかでございますから、我々はその御努力を見守ってうまくスタートできるようにしていきたいと思っております。決して時間切れだからと言って、急げ急げと言ってやみくもに走っておるわけではないのでありますので、御理解をいただきたいと思います。
  178. 池田克也

    池田(克)委員 重ねて私この問題についてお伺いするのですが、調査があるんですね。アンケート調査がございまして、共通テストあるいは共通一次試験についての昭和六十年の五月に行われたある調査会社のアンケートがあるんですが、多くの私立大学が参加するという見通しは大学関係者でもわずか一二・五%しかない。私立大学の参加は少ないであろうという悲観的な見通しが四分の三の七四・七%に上っている。つまり私大は一二・五%しか関心を持っていない。非常に新しい共通テストについては冷ややかなんですね。この理由はいろいろあろうと思うのですけれども、今日までの共通試験、こうしたテストについても大学関係者は随分と厳しい評価をしているわけです。つまり、入試というものは大学の自主独立の根幹であって、自分たちが学生を自分たちの手で選ぶんだというものが基本にあるわけでして、いろいろ苦労してきた割には余り評判がよくないわけですね。しかし、その成果もある程度ある。私は全面的に今の共通一次試験を否定するものではありません。ちなみにある雑誌社が調べた調査ですけれども、日大などは全面的にこれはだめ、全く無関心、もう本当に歯牙にもかけないような状態ですね、あるいはまた名古屋の南山大、これも私大の理念というものはこういうものでは達成できない、あるいは名城大、私学になじみにくい、西南学院大、独自で行く、あるいは法政大、必要ない、専修大は資格試験程度なら受け入れてもいい、上智大学は部分的に利用してもいい。非常にこの共通テストについては今の段階でも私大参加というのは厳しいのです。  しかしながら、臨教審の一次答申は私大の参加ということが大きな前提になっているように私は思います。しかも複数、何回も受けられるような状況をつくり上げていきなさい、あるいはまた総合配点式で輪切りができないようにしなさい、いろんな指摘をしているわけでございまして、私はしかもその中で特に大事なのは、私大の参加ということがなければ今度の改革は前の共通一次試験と似たようなものになる、法律まで改正してつくるに当たらないんじゃないか、こういう心配を持つわけでございますが、この点いかがでしょうか。     〔林(義一委員長代理退席、渡辺一秀)委員長代理着席〕
  179. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 正直に申し上げまして、私大の中には今先生御指摘になったようなお考えで、これに参加をしないで独自の入試を続けていこうとおっしゃっておるところもございます。中には自分の学校でも既に点数中心にこだわらないで、六種類のいろいろな方法に分けて、点数だけで入れる学生の数はもう六割以下になったとおっしゃっておるところもあります。そういう独創的なことをおやりになっておる私学が、我々は自分のこの方針を貫いていくのだとおっしゃるのを強制してまで無理に入っていただくことは、これは趣旨、方法に反すると思います。ただ、高等学校の授業というものをなるべく正常に行って、今まで言われた難問奇問というような問題から解放。したり、あるいは今行っておる共通一次のよくない点を改めていくためには、参加してやろうというお気持ちの私立大学もまたあることは事実であります。ですから、日本私立大学団体連合会の方でもこの問題には前向きに取り組んでおってもらうわけですから、制度の趣旨や、児童生徒が受けることによって、自分の目指す学校を何回かチャレンジできる、一回、一発のペーパーテストだけで変わらないんだ、大学が二次試験の方で個性や適性を見抜くためのしっかりした試験をやっていただく、これが本筋だという御指摘はそのとおりだと思いますが、その前に、大勢の、三十何万人という受験生を、まずここの高等学校を終えた、そして大学教育に入ることができるという学業到達度はどの辺だろうかというのを見きわめる一つのラインとして利用していただければ、私学にとっても国立にとってもこれはプラスになるものであり、その上に立ってさらに幅の広い選抜をしていただければ、点数中心主義、詰め込み主義という入学試験が今もたらしておりますいろいろなほかに対する影響等も結果として消えていくのではなかろうかというので、これの改革に期待をし参加をぜひお願いしたい、こう思っておるところであります。
  180. 池田克也

    池田(克)委員 重ねて文部大臣に伺いますが、今文部大臣の頭の中にあるのは、高校の到達度というものの一つの、まじめにやってきたか、そしてそれが共通テストでクリアできるかどうか、そういう試験を共通テストとしてお考えになっていらっしゃいますか。
  181. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 これは従来各大学が、専門的な自分の教科の中に入れていく前に、一応高校生活を終わった学業の到達度というものを調査して、ここまで終えておれば大学教育を受ける資格は十分であるというふうに判断する一つの予定ラインとして理解をし利用をしていただければ、各大学の二次試験は非常にやりやすくなるのではないだろうか、あるいは専門的な少ない教科だけで十分その人の特性を持ったものを発揮していただけるではないだろうか、新テストの方でその他のことは見てもらったらいいのではないか、私はそんなふうに考えておりますが、御利用なさる大学の方で、そうではないのだ、しかし利用するのだというお方もあろうと思いますから、それは固定的な概念ではございません。
  182. 池田克也

    池田(克)委員 そうすると、二次試験は各大学自由に課すということになりますか。つまり、入試には二つの要素がある。高校での授業、教育をまじめに受けてきた、そしてこれだけ力があるというのを見る見方と、今度は、大学側が自分の大学の目指している教育内容に十分ついていけるかどうか、要するに受け入れ側として選抜をしていく。これは二次試験の主な要因ですね。今までの議論では、要するに二次試験をなるべく軽くしなさい、この共通的なテストで非常に重要な要因であるけれども、共通一次テストでしっかり見て、二次試験はなるべく軽くするように、このことを繰り返し国大協にも通達をしておりますよね。今でも共通一次試験を見ておりますと、大学によって二次を非常に軽くしているところ、あるいは東大のように一対四、四が二次試験であるというふうに非常に重くしているところ、一橋も二百七十対七百三十なんというふうに二次を重くしておりますけれども、こういうふうな配点比率を見ておりますと、二次というものは非常に重い大学と軽い大学とがある。ここに大きな問題が今日まであったわけです。要するに学校の、高校の勉強ではとても入れない、何らかの形の特別の受験技術を身につけなければ入れない、こういう状況が今日まであったがゆえに、それを改善するためにこの共通一次試験ができてきたわけであります。あくまでもこれは高校の水準を見るという試験ではなしに全体の大学の入試として、こう受けとめていくべきだ、こういう議論があるわけです。  大臣の今のお話を聞いていますと、要するに高校レベルの到達度テストというそういうお考えを持っていらっしゃる。そうすると、各大学は一斉に、まあ受験料収入のこともあり、二次試験を昔のように課してくる。そうすると、私立大学の受験生は従来は私立大学の試験だけだったのですが、私大も入った新共通テストをやり、さらに各大学がやる二次試験もやる。父兄の負担は、二回受験料を払う。これは相当の重みを今度課してくるのじゃないか。ここにいろいろ議論していかなければならない大きな問題があるのです。いかがでしょうか。
  183. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 その御議論は、まさにこの前大学入試センターを設置しますときも随分議論した問題でございますけれども、入学試験というものを、あのころは大変厳しい難問奇問に取り巻かれた、時には受験地獄というような言葉まで出て、受験は極楽にはならないけれども、地獄の状態だけは何とか解消しようではないか。当時は五教科七科目ということでスタートしました。来年から五教科五科目になるのですけれども、それは難問奇問とか受験地獄じゃなくて、一生懸命高等学校の教育課程をまじめに勉強すれば取り組むことができる問題で、しかもその能力を試すようにして、そこを乗り越えた人は、大学が後は独自の判断で、自分のところで、教育学部なら教育学部、法学部なら法学部、工学部に受け入れて育てていくことができるかどうかという特性を二次試験で見る、それによって一回一回のペーパーテストの点数だけで選抜されるという弊害をなくしていこう、こういう大きなねらいがあってスタートしたものだと思うのです。  ですから、私は、第二次試験というものはそれぞれの大学がやはり心血を注いでやってもらわなければならぬわけで、この人は自分の学校のこの専門の科目に入ることによって、教育にたえ社会に役立つ人材として育つことができるかどうかということを、まさに入学試験の第二次試験で大学当局が、あるいは学部ごとに、それぞれ見ていただくのが理想だと思いますから、例えば小論文だけとか面接だけで済むところもありましょうし、あるいはおっしゃるように一次新テストだけでは不十分だから我が方は、今は二教科三科目が平均ですが、あるいは三教科やるところができてくるかもしれぬ、それはそれぞれの学校がこれだけのものを欲するんだということのテストのために第二次試験を課せられるのですから、私はそういうことは十分あり得るだろう、こう思っております。
  184. 池田克也

    池田(克)委員 これはいろいろ議論があるところですけれども、試験はこれによって改善され、学生たちの負担は軽くなるのでしょうか。この共通テストが新設されることによって学生たちの負担が軽くなり、同時にいい学生が、それぞれの大学が欲している人材が、それぞれいいところに落ちついて、いわゆる試験地獄というものがよくなるのでしょうか。私は今のお話を聞いていても、また同じところへ戻っていくんじゃないか。教育改革、特に入試改革というのはこれという決め手はなかなかございません。それだけに時間をかけていろいろな意見を聞いてやっていかざるを得ないんじゃないか。ちょっと拙速ぎみに六十四年というものを設定してやり過ぎているんじゃないかなという――私はこの改革について反対するんじゃないのです。やるならばもう、進適をやって失敗した、やめました、能研テストもやりました。今度の共通一次試験もまだ八年しかたっておりません。八年準備して八年、ちょうど十六年かかっているのですね、四十六年ごろから見ますと。本当にこの問題で高等教育は非常に苦労してきた。  私は、今の大臣のお話を伺っておりまして、やはり二次試験はある、そしてそれによって選ぶであろう。となってまいりますと、余り変化はない。そして、みんなが共通一次試験をまた勉強し、さらに二次試験も勉強し、費用もかかってくる。私はこれですぱっといくというふうになかなか得心がいかないのですけれども、非常に関心の高い問題なんです。  今大臣の御答弁では研究中だというのですけれども、研究中でいつわかるんだろうか。私大が参加をはっきりしないのは、どんな試験なのか、私大の費用分担はどうなのか、どういう試験になってくるのだろうかということがはっきりしないわけです。できればいつまでにこのプランを出して、国民が議論できるように、国会でも議論したいと思います、そういうスケジュールが今おっしゃったように七月ということで、しかもそれがあと本当にわずかな期間しか時間がない状況ですね。今議論するしかないと私は思うのですが、この時間の短さについての御意見と、余り変化がないんじゃないかという私の心配と、この両方にお答えいただければと思うのです。
  185. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 御指摘のとおり、きょうまでもいろいろと試行錯誤があったり、何回か制度の改革等もやってきたものでありますけれども、今始まっております現実の共通一次試験の中から、先ほど申し上げましたようないろいろな大学の序列化とか受験生にとっては負担だという問題も随分出てきました。けれども、地獄はなくなりますけれども、極楽にはならないわけですので、受験生の人にはやはりその負担を軽くすればいいかというと、そうばかりじゃなくて、それは自分が生涯ここに行こうという専門職に対する知識や能力や適性を試されるその負担は、私は大きくても仕方がなかろう。ただ、将来余り関係ないのに、高等学校の必須科目だからといって五教科五科目全部を二度も二次試験でやる必要はないわけですから、それぞれの大学が適性を見るための専門試験はなるべく少なく、きめ細かくやっていただきたい、こういうお願いをするのですけれども、その勉強をしなければならぬということは、やはり得意な科目、志したもの、やりたいと思う分野についてでありますから、本人はそのことについては二度試験があっても別に苦痛には感じてもらわないようにしたいと思うし、芸術の学部については演技だけで済むようになれば今までの二次試験とは変わってくるわけでありますし、理工科系と文科系、そういったものはやはり変わってくるわけでありますから、第一次試験の持っておる今までの問題を新テストが受け継いで、同時にまた、それは複数受験の機会を与えたりいろいろなこと等も配慮してまいりますから、やはり志した方に向かっての能力を調べてください、私は受けます、挑戦しますという気持ちで受験生の方も理解をしてくれたらありがたいと思っておるのです。  さらに、期間の問題につきましては、ただいま高等学校や国立大学や私学や各関係者の皆さんがせっかくお集まりになって、臨時教育審議会の第一次答申を受けでいろいろな研究、検討を積み重ねていただいておる最中でありますから、七月にその報告をいただくわけでありますから、その御努力を今からだめだろうとか言うようなわけにはまいりません。私は、一生懸命御努力願っておるその経過を見守りまして、報告をいただいて、それをどうしていくかということもまた一生懸命考えていきたい、こう思っております。
  186. 池田克也

    池田(克)委員 ですから、臨教審のメンバーも、あるいは文部省内に設置されたいろいろこれに関する研究委員会も協議しているわけですが、問題は、六十四年実施というのを初めから決めちゃっているところに問題があると思うのです。研究して、これがいい、例えば共通一次試験をもうちょっとこう改善すればこうなる。共通一次試験も変わってきているわけですね。例えば、傾斜配点を取り入れる大学はもう既に八十九大学になっているわけです。傾斜配点というのは、いろいろな試験をいたしますけれども、五教科七科目今やっておりますが、この中で、ある大学は英語に力を入れて、これについて普通百点満点のところを二百点と見よう、あるいは社会については、これはそう重要視しないから百点満点のところを五十点に見よう、さまざまな変化をつけて採点しておりますね、傾斜配点のやり方は。これが既に八十九大学にもなってきている。あるいは論文を課している大学が百数十大学になってきている。各大学とも共通一次試験の中で一番問題とされました総合配点、総合計の点で受け入れていきますので、全部その点でもって大学が輪切りになっている。共通一次試験の何点ぐらいの子供はこの大学に入れる、入った子の共通一次がこうだったということがずっとコンピューター化されまして、さっきお話があったように、もう大きな模擬試験の結果によって、君はこの大学に入れる、ここは入れないというはっきりした現象が出てきちゃっている、これが挑戦してやろうという若者の意欲をそぐ、こう言われて輪切りとして批判されてきた。これを何とか改善するために、共通一次試験を各大学は非常に苦労して今変化さしてきているところです。この変化させている状況というものがあるのに、今一生懸命、六十四年に変えます、共通一次試験はやめますという大きな一つの看板を掲げてしまって、結論をそこへつくっちゃって、ああ、こうと議論していらっしゃる。私は議論していらっしゃる先生方に聞いても、答えが出ちゃっている、それをどうつじつまを合わせていくか苦労しているのです、こういう率直な御意見もあると、私は、今みんな受験をやっている時期だけに、これはもっとオープンにして、六十四年実施というのもこれは必ずしも既定の事実としないで、もうちょっとしっかり議論した上で、よし、こうだというものが出てくるんじゃないかな、そこを実は申し上げているわけなんですね。自民党さんの「入試改善に関しての提言」という中には、私大の参加、これなんかについても、「大学の自治、学問の自由は侵してはならないが、一方で、大学関係者に任せておくだけでは、国民の悲壮な願いが叶えられるかどうか、極めて憂慮すべき事態だといえる。」私はもっともだと思います、この気持ちは。「それに対し大学側が応えないのであれば、大学の自治、学問の自由を侵さない範囲で、法的措置もとらざるをえない、」入試法の話が昔からあるのですけれども、これはよほどのことだろうと思うのですけれども、私は、この入試改善というものについて一つの根本的なタイムリミットをセットしてしまうとどうも無理がくるんじゃないかなという気持ちを持つのです。  総理、議論聞いていらっしゃって、総理は非常に入試改善というものに御熱心で、内外情勢調査会の御講演などでも、マークシート方式はだめだ、受験生と大学が一対一で勝負すべきだというふうな御意見を出していらっしゃる。たしか一次答申のときにももう六十三年からできないかということを指示されて、いや、いろいろ無理だというので六十四年に一年間だけ延ばした。確かに早く改善することは私もわかりますが、事情は今申し上げたような事情で、総理が六十四年というのをからっと決めていらっしゃるので、現実には文部大臣動きがとれないのじゃないかな、こんな気持ちがするのですが、いかがでしょうか。
  187. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 入試の問題は、やはりいじめやあるいは学校の先生の質、研修の問題と同時に、今の教育改革上の大きな問題であると思います。今、臨教審でせっかくいろいろ検討していただいておりますし、文部省も積極的に取り組みまして、国大協の先生方とも話を進めていただいておりますので、その勢いでぜひ国民が欲している方向に強く政策を進めていただきたいと念願しておりますが、要は、私が申し上げたいのは、今までの共通一次テストのようなマークシート方式で大量生産的な反射運動で人間の価値を決めていくという非人道的な、非人間的なやり方からできるだけ脱却して、むしろ生徒個人個人、一人一人が独立に各大学と体当りして自分の能力を試す。負ければ負けたであきらめもつきます。しかし、そういうようなシステムにできるだけ持っていって、何とかテストというようなもので中間介在物をできるだけ排除する。自分がどの大学を受けたらいいかということは学校の勉強を中心にして先生と相談すれば、君はこの程度じゃないかなという助言を受ける。戦争前、私たちはやはりそうでありました。あるいは自分で、昔で言えば何とか通信社とか何とか学館とか、そういうようなもので自分でみずからテストを受けて、自分で判断して、すべて自分でやりましたですね。社会の大きな流れで動かされてやるのではない。そういう自分で選択しながら生きていくというやり方の方が正しいと思いますね。ですから、できるだけ自分で体当たりして大学と勝負をする。しかし、大学の方も文部省と相談して、一回ぶち当たって敗れたらそれでおしまいというのではなくて敗者復活戦、二回も三回もやってできるだけ滑りどめのチャンスもまたつくってあげる。そういう形で、今のような、何と申しますか、大量生産方式の簡便なやり方から脱却してもらいたい、そう私は思うのであります。  それから、個性は大体高等学校になると出てきますから、自分はどういう方向へ進みたい、好きこそ物の上手なれて、そういうものを中心にテストをして、そっちの能力を伸ばしていく、そういう重点主義的な試験の方向、あるいは直接面接を中心にして人間の能力を見る方法、多少手間はかかるのですけれども、人間を選ぶというのにはそれぐらいの手間をかけるのは当たり前なんです、商品を買うのとは違うのですから。ですから、そういうために費用がかかるというなら国だって考えてもいいと思いますし、大学だって考えていい、そう私は思うのであります。
  188. 池田克也

    池田(克)委員 総理のその原点に返って大学と受験生、それは今までもずっと議論してきたのです。要するに、大量に受験生がある。その中で一番人格を見れるのは、作文なんかを詳細に採点していければ随分わかるわけです。あるいは英作文などでも長文を書かしていく。しかしながら、やはりそれではだんだんと受験技術が、いろいろと情報が発達して、受験の準備をする予備校などもいろいろ情報を集めて分析しますので、みんな互角の力になっていく。したがって、難問奇間が出る。これを解消していくために、なるべく大学が独自に選択するのは少ない部分にして、ある面では機械的にやってもそう大差ないという部分については統一試験をやって、そしてそれで各大学の負担を軽くしよう。受験生もそういう技術的なことは一つそこでもってクリアさせておいて、なるべく個性的なことが見れるようなそういう二次試験にしていこう、そういうことで共通一次試験ができ、二次試験はなるべく個性が見れるような、科目を少なくして実技とか論文とか面接とかでやってほしい、あるいは一次試験に課さなかったところを割と軽く見てほしい、こういうことでやってきたはずなんですけれども、それが逆に輪切り現象になっていってしまう。今のようなお話で一対一でやりますと恐らく相当な差がついてしまうと思うのです。予備校に行き、家庭教師について、優秀な者、資金的な余力のある者はいろんな力をつけるでしょう。そうでない者は本当に苦しい思いをさせられてしまうと思うのです。  受験生がこれだけになってきた状況というのは、戦後の中で大きな変化で、それをクリアするために苦心して共通一次試験ができ、また共通テストをやろうじゃないかと言っているところで、総理のおっしゃる一対一というのは考え方はそのとおりかもしれませんが、現状認識としてはちょっと違うんじゃないかな。総理が教育改革にリードをとっていらっしゃる、そしていろいろなことを具体的におっしゃっている、それはいろいろな人たちの今の準備段階というものをある程度固定概念で縛っているように私は思うのです。総理が、もうちょっと自由にやってくれ、もうこれは試験はとんでもないのだ、こういう反射神経でやるようなのは本当の試験じゃないんだということをはっきりおっしゃっているので非常に大きな影響を持つのですが、総理の率直なこの問題についての、自由な状況の中でゼロから議論して改革していこう、こういう姿勢をお示しいただいた方が結果はいいものができるのじゃないかな、こう思っているのですが、総理、六十四年実施というのもかなり総理の御意向を反映しているように伺いますが、この辺はやっぱりそういうことなんでしょうか。
  189. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 池田さんのお言葉ですが、私はやっぱり今のお考えには賛成できないです。今のマークシート方式でやるやり方というのは根本的に間違っていると私は思うのであります。教育というのはそんなものじゃないと思うのです。昔のことを言うと、それは受験生が少なかった、そう言われますけれども、自然淘汰で自分で大体見当がついできます。自分は大体どの程度の学校を受けたらいいのか、それは学校の先生とも相談して、親身になって学校というものが中心になってきますね。しかし、今のようなマークシート方式で言えば学校から外に行ったテクニックの勉強場に移ってしまう、そういう形にどうしたってなってしまうと思うのです。ですから、それを本来の学校の軌道に戻さなきゃいけない、私はそう思うのです。ですから、その点は譲れないのです。基本的に間違っているのです、そういう考え方は。なるほどそれは学校には便利ですよ。大量生産方式ではさっと片づけてしまって、これだけいらっしゃい、その中から個性的に見てあげますよ。しかし、やられた方の大群の中にノーベル賞が出るかもしれないのです。そういう大きな間違いを犯していると思うので、私は基本的に今の考え方は間違っているとそう思うので、できるだけ直してください。  ただ、私が余り一人で独断で独走するとこれはいけませんから、つつましやかに池田さんから質問があったから申し上げておりますけれども、臨教審の皆さんの結果を注目して見ておるところなのであります。ですから、共通一次テストをやめて今度は共通テストというような名前にしましたら、どうしても共通一次テストの印象が残る、そういう名前は。だから任意テストにしなさい。受けても受けなくてもいいのです、それは。いわんや私大にまでこれを拡大して領域をふやそうなんという考えは余り私は賛成しない。全く自由に、任意におやりなさい。そういうことで、それで入試センターが要らなくなったらやめたらいいのです。それは大学の共通の研究の資料を置くところとか使い道は幾らでもあります、あれだけコンピューターを使うというなら。それぐらいの思い切った考えでやっていただきたいと私は念願しておるのであります。
  190. 池田克也

    池田(克)委員 そうしますと、臨教審はこういう答申を出してきたわけです。法律には臨教審の答申を尊重することになっておるのです。総理としては、これじゃだめだからもう一遍臨教審検討し直してくれ、こういう姿勢ですか。臨教審が出てきちゃったからしようがないというふうに、総理、講演でおっしゃっているのですけれども、総理の意思と違ったこと、総理は教育の専門家じゃないかもしれません、しかし、やっぱりさまざまな国の行政をリードしていらっしゃる、大きな影響を持っていらっしゃると思うのですね。したがって、総理が任命されたそうした臨教審のメンバーが答えてきたものは共通、マークシート方式なんです、依然として。それの利用の仕方についてはいろいろと変化があるだろうと思うのです。今、マークシートについて議論して、七月にまとめて法律も直して新テストにやっていこうか、まあマークシートじゃないという案かきょうからまた研究が始まるかもわかりませんけれども、これは重大な方向を示唆しているわけでして、文部大臣いかがですか、総理のこういうはっきりした意向が出されたわけですが、これからマークシートやめちゃいますか。
  191. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 マークシート方式の問題の出し方に対して、これは関係者の間からも問題の出し方によって、単なる白か黒かではなくて、思考の連結性とかいろいろ方法があるんだということ等も含めて御検討願っておるようでございますし、また臨教審の議論の答申を受けて今文部省の審議会がいろいろな立場で考えていただいておる方向も、そういったこと等も全部含めての御議論でありますから、内容とがあり方とかを今ここでこれがどう変わるのだということは、申し上げることは報告が出るまで差し控えさせていただきたいと思います。
  192. 池田克也

    池田(克)委員 総理の頭の中に新しいテストを六十四年に実施する、一刻も早くというお考えがあるように私は認識しておりますが、今のマークシート方式はだめというお話はわかりましたが、六十四年実施ということについてはいかがでしょうか。
  193. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは準備の都合とか受験生の都合もまた考えてあげないといけないので、その辺は私は弾力性を持っていますけれども、なるたけ早くやっていただいた方がいい、そう思っています。
  194. 池田克也

    池田(克)委員 文部大臣、いかがですか。六十四年実施、総理は弾力的というふうにおっしゃっていますけれども、いろいろと議論があるわけですが、事は重大なことだと思います。したがって、今のマークシート方式が大変厳しい、これは確かに評価も余りいい評価じゃないのです、マークシート方式は。特に国語力などはマークシート方式ではほとんど見られない、ほとんどと言うと語弊がありますけれども、他の科目はともかくとして、国語についてはマークシート方式は十二分に力を反映できない、こう言われておりまして、これがまたいろいろ日本国民の表現力の問題につながり、非常に大きな影響力を持つと思うのでじっくり考えるとして、六十四年実施については弾力的な方向というふうには御判断なされないでしょうか。
  195. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 これは最初に申し上げましたように、制度の根幹に触れる大変大きな問題でありますが、しかし、国民の皆さんの世論調査なんか見ておりますと、今いずれの調査を見ましても、順位の入れかえは時々ありますが、ベストスリーを取り上げれば、いじめにまつわる問題、入学試験にまつわる問題、いい先生をどうかお願いしますという問題、この三つがいつも世論調査のトップスリーを行ったり来たりしておる状況でありますから、今のままの入学試験の制度というものがこのままでいいとはどうしても理解をいたしません。  だから、臨教審の御議論の中でも第一次答申であのような指摘がなされ、我々もきょうまでの共通一次試験の成果は、成果として大変認めておるのです。最初先生も御指摘になったように、私も申し上げましたが、一期校、二期校の格差がなくなるとか難問奇間がなくなるとか、塾へ行って忍術のような受験技術を身につけないとなかなか受からないとかいろいろなことを言われました。けれども、そういったことをやっておったのでは学校教育が正常化しない。だから、学校教育でまともに勉強しておればクラブ活動も部活動もいろいろできる。言うなれば調査書の中にそういうクラブ活動や部活動をやったことあるいはボランティアに精出したことといったようなことなんかも人間の評価として認められていくような、そういう幅の広い、奥の深い選抜をしたいというのが当初のスタートの原点でありますから、それに従った改革を、今これだけ改革をせよと言われておるときでありますし、臨教審の御指示もありましたから、いろいろな立場の方に集まってもらって御議論を願っておるさなかであります。  ですから、これが六十四年からというのはどうかとおっしゃれば、我々は一応めどとしてそこからスタートしたいという気持ちで、世論にこたえることもあり、取り組んでおりますけれども、総理の御表現と私の言うことと言葉は違うかもしれませんが、いいものがきっとできるなればやりたいということでは全く同じだと思いますので、どうぞ少し努力をお見守りいただきたいと思います。
  196. 池田克也

    池田(克)委員 私が申し上げたいのは、入試改革もそうですが、大学の方を改革しないと、結局、入試の方だけ変えても子供たちはみんな、序列化した大学、そしてそこからいい企業やいいお役所へ入っていく。やはり国民から見ますと、親から見ますと、そういう大学に序列現象がある、私は、ここにメスを入れない限りは入試だけをいじってもこれはいかんともしがたいんじゃないかと思うのです。私もいつもこれは友人とも議論したりして結論がつかないのですが、つまりこれからの日本を考えたときに大学はどうあるべきかという問題にもなるわけです。  確かに、資源のない日本が技術で生きていかなければならない。となれば、優秀な人材をしっかり磨いて新しい技術や学問を身につけさせることが国家としても大事だと思う。ところが反面、同じ世代の三五%からそれ以上の子供たちが大学を目指しております。そうするとその子供たちが、みんながみんな勉強が好きだとは限らないのです。ある意味ではみんなが行くからおれも行かなきゃならないな、高卒だけではちょっともうと言って、親も、勉強が好きだからということではなしに、ともかくどこでもいいから大学へ入れてくれ、こういう状況もあるわけです。そういう人たちがみんな大学というところを目指していっているわけです。私はそういう意味では、エリートという表現は適当かどうかわかりませんけれども、本当に力をつけ、その人たちが国を背負っていく、そうした技術者というものも養成をしていかなければならない。反面、非常に広範な数というものについても、それに応じた的確な勉強を教えていかなければならない。この二つの命題というものが今我々に問われているんじゃないかと思うのですね。  ここに大学理事長でいらっしゃるある方の小さなエッセーがあるのですけれども、「今日の大衆大学の機能は、大学院は別として、学部教育のレベルでは〝教育手法の巧拙が真剣に問われるべき〟だと思うのである。学生の出席が悪いとか、授業中が騒がしいとか、学習意欲が欠けるとかの責任の半ばは教員の資質に係わると極言したい。〝わかる授業の展開〟が大衆大学の教員の資質の第一に掲げられるべきである。」こう言っているわけです。今大学の先生を決める場合に、教育技術の巧拙というのは余り問題にされていないわけです。やはり学者として学問的実績というものが問われて、そして大学というところは、わかってもわからなくても研究成果、大学の先生が教えたものを自分たちの努力で身につけていきなさいという式のものです。ところが、大衆大学、こう言っているように、大勢の学生が入っているところではかなり技術的に面倒を見てあげなければ学生はついてこれない、こういう状況の中で、いわゆる大学というものが今のような状態でいいとは私は思わないのです。  そういうもので、これからの教育改革、いろいろな臨教審の答申もありますけれども、政治の一番の責任ある立場として、これからの大学という問題について総理はどんなお考えを持っていらっしゃるか聞かしていただきたいのですが。
  197. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大学には二つの性格がありまして、一つは教育の場でありますが、もう一つは研究の場という両方あると思うのです。この両方を両立させながら大学というものが形成されていってもらいたいと思うのです。  しかし、最近の情勢を見ると、研究の場というものがいわゆる大衆大学的な形からややもすると軽んぜられてきて、学問的水準というものが世界と比べて果たしてどうであろうか。割合に一部の科学技術については高い面もありますが、比較的文化科学においては非常に日本は弱い、世界的水準から見たらまだはるかに弱い、そういうふうに思いますし、科学技術の面においても、基礎科学において非常にまだ弱い面がある。そういう面からして、一面においては教育という面で大改革を要する面があると同時に、研究という面から見ても、学問的水準という面から見ても改革する余地がある。  それは結果どういうところに帰するかと見ると、やはり大学の先生の意識という問題でございますね。ですから、今までどうしても教授会というものがオールマイティーで、自分たちの身は安全であって、一たん大学へ入ったら、助教授から教授、それから名誉教授、もうコースが決まっていて、一番盛りのころの講義を、定年近くなっても同じものをやっていてもいいという疑いすらある状況があると思うのですね。したがって、やはりエバリュエーションというものは大事じゃないんでしょうか、五年とか十年とか置いて。それからほかの大学との切磋琢磨、交流、それから生徒の、学生の方にすればできたら横断的にある先生の講義を聞きたいといって行けるような、そういう姉妹大学的な垣根をとる部分もあってもいいんじゃないでしょうか。それから大学院につきましても、今の大学院はいわゆる昔の学問のうんのうをきわめるという意味の大学院と性格が違ってきておりますね。そういう意味において、水準の高い、本当の意味の研究者のエキスを集めるような高度の大学院というようなものが実際、各大学を横断して共同部にもつくられる必要があるんじゃないでしょうか。  そういういろいろな面において改革を要するし、それから国際性という面から見ましても、これは外国人の留学生の受け入れや帰国子女の問題もありますし、それから大学教授につきましても、外国の大学教授をどんどん受け入れられるようなシステム、あるいは日本大学教授が外国の大学教授として向こうへ客員教授で行ってまた帰ってこれてやれる、そういうような国際性、垣根の取り払い、そういうような問題も大きな課題ではないか、そう思っておる次第です。
  198. 池田克也

    池田(克)委員 今総理のお話を伺っていたのですけれども、大学というものの改革、大学のいろいろな方向づけというものと入試改革と両面にらんでいかなければならないんじゃないかと思うのですね。確かに焦眉の急で、いろいろと入試改善は望まれています。しかし、どこをどうめぐりめぐっても、やはり大学の位置づけあるいはあり方、大学の教員の資質と申しましょうか、意識というようなお話が出ましたが、変えていかなければ解決しない問題じゃないか。大学は時代にぴったり合っているだろうか、問題があると思うのです。  私、国務大臣というお立場で河野科学技術庁長官にお伺いしたいのですが、今度の大臣の中には教育問題にお詳しい方がたくさんいらっしゃるわけで、さっき三塚大臣にも伺ったのですが、科学技術というお立場を、私、質問として本当は伺いたいのです。科学技術の将来というものを考えた段階で伺いたいのですが、今までいろいろ文教問題を扱っておられたお立場から、これからの大学という問題について御答弁いただければと思います。
  199. 河野洋平

    ○河野国務大臣 文教行政に練達のとの海部文部大臣が担当しておられまして、私がとやかく言う必要がないほど細かい心配りがあるように思います。しかし新自由クラブとしての教育政策というものもございますので、お許しをいただければちょっとお話をさしていただきたいと思います。  今総理からもお話がございましたことにほとんど尽きてはおりますが、平たく言うと今の大学は、入ることに精力を使い果たして、出るときにはもう押し出されるようにして出ていってしまう、つまり大学における教育の成果というものが余り大事にされていないんじゃないかという感じがいたしております。私はもっと、非常に大胆に言えば、入りやすく出にくい教育の場にする方がいいんじゃないか。入ることの問題で国を挙げて今大騒ぎをするし、それから若者は人生のエネルギーのかなりの部分をそこに費やしてしまうということがありますけれども、実際は、大学という場は大学に行く青年からすれば青年期に最も充実した四年間もしくは五年間をそこに費やす、あるいはまた日本じゅうで最も優秀な学者がそこで教育に当たる、あるいは国はパーヘッドで言えば最も多くの予算をそこに使うという非常に重要な数年間でございますから、むしろ大学の場における教育というものをもっとうんと考える必要があるんじゃないかと思います。  これは池田先生もう御承知のとおり、小学校教育は世界的に見ても日本は相当レベルが青いと思いますが、大学教育のレベルは世界的に見て、今総理が御指摘になりましたように決して高くない。科学の分野でいきますと、大学でむしろ非常に他国におくれをとってしまっている部分が少なくないわけでございまして、私は、大学というこの数年間の教育の成果についてもっとみんなが考える必要があるのではないか。したがって、どうやって選抜するかということも非常に重要ですけれども、大学に進学をしたいと考える人と受け皿と、まあ受け入れる大学の定員との差はもうそんなにないわけですね。私はもっと大学に、その設置基準といいますか、大学の入学者受け入れの定員を例えば少し緩めてやる、思い切ってもう何割か余計とってやるということにして、それによって入試地獄はある程度緩和される。そして、むしろ入った学生を一年かかり二年かかり、つまり教養課程の二年間でよく教える側も教わる側も納得をして、そして三年目、四年目のこの最もレベルの高い教育の準備をしていく。今の大学でも、見ておりますと、入るときは一生懸命だけれども、入ってしまうと必ずしも授業に全部出席をしない部分もあるわけでございまして、まあ、だからいいということではありませんけれども、定員についても余り厳しく、運動場の広さとか図書館の本の数とかトイレの数とかで定員を余り抑え過ぎたりなんかし過ぎているんじゃないか。私は、少しデレギュレーションもそういった大学行政にもあっていいのではないかなどと考えております。
  200. 池田克也

    池田(克)委員 この大学の今後のあり方について国土庁長官にちょっとお伺いしたいのですけれども、この間ちょっと申し上げておいたのですが、大学を都市から郊外に持っていく、まあ国土庁にそういう施策がございまして、東京の場合でも随分と都区内から八王子の方に移りました。ところが、その後のいろいろ様子を見ておりますと必ずしも評判がよくないのです。というのは、先生方が、まあいい位置にお住まいがあるかどうかという問題もございますし、学生にしてみますと、アルバイトの場所が都心にある。ですから、まあ東京―八王子間、中間の調布とか府中とかに学生が下宿して、両方にらみ合わせて通学しているというようなケースもあるわけです。で、押しなべてこの過密した都市を改造するための施策だと思うのですが、これは、私は、大学というのはやっぱり都市の中にあって一つの意味を持つという重要な意味もあると思うのですね。  それから、六十七年から学生数がこう減ってくるという時期もありまして、大学にとってはあいたキャンパスを使って生涯教育をやる、会社を引けた人たちを集めてそこで教育をやるということもあるわけです。そういう点を考えますと、大学の設置基準を考え直したりして、まあ向こうに、八王子のようなところに本部があっても都心にビルの一部を借りてそこで生涯教育を教える、こういう弾力的な大学のあり方というものもあっていいんじゃないかと思うのですね。国土庁として、今日までその大学についていろいろとそうした一つの規制と申しましょうか、行政的な指導を持っていらっしゃったのですが、これを見直される御意向はないかどうかお伺いしたいのですが。
  201. 山崎平八郎

    ○山崎国務大臣 お答え申し上げます。  国土庁はただいま三全総を行っておりますけれども、この秋をめどに四全総を組み上げるわけでございます。それを考えますときに、その中で四全総の考え方は、三全総におきます定住圏構想、これはそのまま固めていきますが、さらにその各地域間の交流という問題もあわせて考える、こういうことでございまして、まあ向こう約十五年先の計画でございますけれども、ただその中で大学生にとりまして一番問題なのは、大学の適齢期といいますのは十八歳でございますけれども、たまたま十八歳の人口がその十五年の中ごろに、六十七年にピークになるわけです。そして、その後また二十一世紀に向けて減っていくわけでございますね。で問題は、このふえる間の収容といいましょうか、どのように学園を育てるか、これが一番問題でございますので、そのあたりの考え、それから今度減りかけてからの、ピークから下っていく将来の問題、これにつきましての考え方を申し上げます。  で、まあ大学などの高等教育、この機関が東京とか大阪とか大都市圏に集中しておることは、もう申し上げるまでもございません。数から申し上げますと、人口比で申し上げますと東京圏は、これは埼玉、千葉、神奈川を含みますけれども、大体人口の四分の一、二五%を占めております。しかし、その中の大学、短大の学生の数でございますが、去る四十八年に四六・八%で、昨年の六十年が四一・七%でございます。非常に多いわけでございます。大阪の方が四十八年は二一%、六十年が二〇・一%。そこで、問題なのは先ほど申し上げました十八歳人口でございますが、これが六十年度で申し上げますと大体百五十六万人でございます。それが先ほどのピークの六十七年には二百五万人までふえます。ところが、先ほどの二十一世紀、七十五年にはまた百五十一万に減るわけでございますね。まあそこら辺の対処が非常に難しいものでございますから、結局は、しかしながらやっぱり国土の均衡ある発展ということを考えますと大都市圏集中では問題なので、ある程度やっぱり地方に分散しなきゃならない、そういうふうな政策をとっております。そして、やっぱり地方の方に立地の促進を図るという面で、既に私ども国土庁には学園計画地ライブラリーというのを五十五年からつくっておりまして、全国の希望市町村もはっきりしております。まあここに学者の方々がおいでになって御相談くださると、この大都市圏から地方のどこにどういう条件で行きたいかということを伺って、もう既にお世話もしましたけれども、このお世話を続けているわけでございます。  ところが問題は、先ほど申し上げた六十七年から後がどうなるかという問題になってきますと、どっちにしましても非常に、まあ今度は逆に学園が余るということになりかねませんが、そのところはやっぱり将来を見通しまして、これは今の学術だけじゃなしに、若い方々の学術の研究の場だけじゃなしに、やっぱり社会人としての社会教育、そういったようなものに、また生涯教育、そういったような面で利用を、新しい道を開いていただきたい。そうすれば非常にむだなくそのピークを乗り越え、また激減した事態にも教育機関としての大学、高等教育がうまくいくだろう、こういう見通しでただいま進んでおるところでございます。御心配はごもっともでございますが、できる限り努力をいたしております。
  202. 池田克也

    池田(克)委員 文部大臣に最後の締めくくりなんですが、新しいこれからの大学の問題です。  先ほどちょっと触れましたけれども、六十七年に学生数がピークになってまた下がってくる、こういう問題もあり、また入試改革をいろいろやっても結局大学というものの、親から見た大学、子供から見た大学大学の中身がよくわからないんです。有名な大学、大きい大学、どこにどういう先生が、どういうことを教えてくれるんだろうか、子供の側から見るとわからない。有名な大学だと、おお、おまえ、いいところに入った。聞いたことないところだと、本当は、実はすごい大学の先生がここに移ってきてすごい講義があるんだけれども、聞いたことない大学だな、肩身の狭い思いをする。いろんなことがあるわけです。したがって、大学というものの中身というものをもっと国民に、どういうことを教えているのかPRする必要もあるだろうと思いますね。あるいはまた、その研究機関という要素とそれから教育という要素とある意味では分離して、さっき総理からもお話がありましたが、中教審答申には研究院ということが提示されておりましたですね。私、その中で専修学校の活用という問題をいつも考えるのです。専修学校あるいは各種学校、いろんな教育が多様に行われております。これと大学と連関させて、そして、まあある意味では空き教室を使った、そうしたものもあっていいと思うのですね。あるいはさっき申し上げたように大学が郊外に移っている状況にあるから、一部の学部や一部のそうした部分を都心部に開学を許して、そしてそこで生涯教育的なものを受け入れていく、こういう構想もあっていいと思うんです。私が申し上げたいのは、総括して言えば設置基準の緩和ということですが、そういうめどで、まあ単位の互換等も含めた考え方がないものかどうか、それを一言お伺いして終わりたいと思います。
  203. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 大変幅の広い御質問でございましたので、短絡的なお答えになるかもしれませんけれども、私どもの考えでおる夢を語らしていただくなれば、大学というものが、すぐれたいい大学があるときに歴史でもその国は発展しているわけでありますから、そこではすぐれた学問の研究や教育が行われていかなければならぬわけです。  それで、入りやすくて出ることの難しい大学をつくったらどうだという御指摘もありました。また、入った学生が本当に勉強するような大学にしたらどうかという御指摘、また具体的に、専修学校その他との交流、単位の交換というお話がありました。それらを踏まえて、私どもも、例えば放送大学によって講義を受けたならばその放送大学の講義の単位との互換を考えるとか、これから先を言うと大変おしかりを受ける面があるかもしれませんが、大学が今のような四年間、百二十六単位という制度でいいんだろうか。高等学校で十分勉強したら、大学へ入ったらもう教養科目のところはあるいは選択に回して、必修科目に初めからうんと取り組むようにできたらどうだろうかとか、あるいは専門科目をうんと勉強したら、何も四年間と言っておらないで、三年半であっても三年でも、努力をして全部科目の履修をしましたという人が出てきたら大学院へ上げてあげたり、あるいはよその学校へ留学したいと言ったら出してあげたり、そんな幅も考えたらいいのではないか。あるいは、専修学校のごく一部に三年間の専門学校制度がございますが、それは既に臨教審の御指摘の中で、大学の入学の幅を弾力的に見ろということで、大学に入学する資格をそこへ認めるとか、あるいは都心にある大学の設置基準については、既に今のところ、これもちょっとまだ少ないんですが、二分の一でよろしいよというように設置基準の緩和等もやってまいりました。一体、大学のキャンパスというものは、学校の学問、教育に必要欠くべからざるものとあるいはまたそうでない部門とがあるはずですから、大学の単位制というようなこと等も、これからの未来を目指して新しい研究課題の一つだなと、私は夢としてこう考えております。  もう一つは、大学院レベルというものをもっと充実することが我が国の将来のために大切でありまして、国際化時代の日本というものが相互依存関係の中で、日本の科学や技術や文化を相互交流で国際化時代に役立てようと思うと、その峰が高くならなきゃなりません。峰が高くなれば、外国からの交流はおのずと頻繁になっていって、日本の国際的地位も高まり、日本は貢献できると思います。それなれば、諸外国と比べて大学院レベルが非常にまだ少ないのではないか。それは、資金の面もあるいは人材の面も教育内容の面もございますが、最近はぼつぼつ、社会人がもう一回再勉強のために帰ってくる大学院も開設され、また希望されているところもあるようでありますから、そういったものを踏まえながら、さらにもう一歩進んだ夢を言えば、東京大学とか京都大学なんかはもっともっと大学院を中心にして、そしてすべての学部に門戸開放、機会均等、勉強する人はいらっしゃい、ここで研究しましょうというような学問、教育、研究のレベルの峰をうんと高くするような役割を大学院には期待したいな、こんなことを考えておりますが、しゃべっておると時間が参りますので、この程度で御理解をいただきたいと思います。
  204. 池田克也

    池田(克)委員 終わります。
  205. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員長代理 これにて池田君の質疑は終了いたしました。  次に、細谷治嘉君。
  206. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 私の持ち時間は一時間でございますから端的に質問いたしますから、ひとつ簡単明瞭にお答えいただきたいと思います。  最初に、補助率、補助負担率の引き下げ措置を講ずるに当たりまして、昭和六十一年度の予算の編成に当たって大蔵大臣と自治大臣の申し合わせ事項がございます。いわゆる覚書というものが取り交わされております。その第一は「この措置は、今後三年間の暫定措置とする。」この「暫定措置」というのはどういう根拠なのか、これもただしたいわけでありますけれども、二番目に「暫定措置の期間内においては、国・地方間の財政関係を基本的に変更するような措置は講じないものとする。」これは一体どういう内容なのか。受け入れ側である自治大臣の方から具体的にひとつお答えいただきたいと思うのです。
  207. 小沢一郎

    ○小沢国務大臣 細谷先生は、地方行政のすべてを知り尽くしておる先生でございますから、ぼっとなりたての私が十分な答弁ができるかどうかわかりませんが、御指導をいただくつもりで申し上げます。  ただいまのお話でございますけれども、私どもは、いわゆる補助金等の問題につきましては、国と地方の事務の見直しとかあるいは権限の移譲とか、そういうものの検討の関連の中から出てくるべき問題である、そのように考えておったわけであります。  六十一年度の予算編成におきましては一部の事務の見直しも行われましたけれども、今後さらに検討をしていかなければならない。したがってこの六十一年度の補助率がこれからずっと恒久的なものであるべきではない、したがって暫定的なものと考え、そしてその期間としては三年間でいろいろ検討を加えていこう、そういうことであろうかと思います。  したがって、この第二の点の、いわゆる基本的に変更しないということは、この三年間は補助率の引き下げ等によって国と地方の負担を変えない、そういう意味であると解釈いたしております。
  208. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 第二の「国・地方間の財政関係を基本的に変更」しないというのは、補助率の引き下げをしないということだけですか。
  209. 小沢一郎

    ○小沢国務大臣 補助率の引き下げ等によりまして変更をしないということと同時に、私どもといたしましては、例えば交付税等につきましては、これは地方の固有の財源でございますから、もちろんこういう問題等について触れたものではない、そのように考えております。
  210. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 補助率の変更をしないというばかりでなく、交付税率の引き下げもしないのだ、こういう意味だということをおっしゃいましたが、大蔵大臣、そのとおりですか。
  211. 竹下登

    竹下国務大臣 その間は、例えば今回のような、国、地方間の財政関係を基本的に変更するような補助率の変更は行わないとしたものでございます。覚書において「国・地方間の財政関係を基本的に変更するような措置――としておりますのは、例えば今回のような補助率の重大な変更を念頭に置いたものではない、こういうことであります。
  212. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 例えばと言いますが、これは補助率の引き下げ措置を講ずるに当たっての申し合わせですから、補助率の引き下げはこの三年間は暫定期間としてもうやりませんよ、これを意味しております。しかし「国・地方間の財政関係を基本的に変更」しないと言うのですから、こういうものの変更ばかりじゃないでしょう。「財政関係を基本的に」と言うなら、例えば今大蔵大臣言いましたけれども、もちろん世間で言われておるような交付税率の引き下げとかあるいはその他の措置、こいうものについて基本的に変えないと言うのですから、それはあなたおっしゃったね、大蔵大臣、どうなんですか。補助率だけですか。
  213. 竹下登

    竹下国務大臣 今例示として地方交付税率の問題についての御意見がございましたが、地方交付税率の変更というのは国と地方の間の基本的財源配分に関する問題でありますので、地方税、地方譲与税、それから国と地方との機能分担、費用負担のあり方等、すべて総合的に検討して今決まっておるものであります。したがって、それこそ税制の抜本改革が、仮に答申が出る、そしてそれが今私が申し述べましたようないわゆる地方税、地方譲与税、機能分担、費用負担にかかわるような大改正であった場合、今からそのことについて、いわばそういう場合も想定して補助率の変更は行いませんという性格のものではなかろうと思っております。
  214. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 少しくどいようでありますけれども、国と地方間の財政関係に基本的な変更を加えないということは、自治大臣がおっしゃった交付税率に変更を加えないとか、譲与税の問題についても変更を加えないとか、あるいはそれに即応する行政の量等、こういうものについても基本的な変更を加えない、こういうふうに大蔵大臣はおっしゃいましたね。ですから、この三年間は大きな変更はしないよ、こういう約束でしょう、覚書でしょう。
  215. 竹下登

    竹下国務大臣 大筋そういうことでございますが、一方、税制の抜本改正というものの諮問に対する議論が今ずっと行われておるわけでありますので、それが仮に地方税、地方譲与税のあり方にまで踏み込んだ議論になった場合までは想定していない、こう申し上げておるわけであります。
  216. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 大型消費税等は想定していない、これはわかりました。  大蔵大臣にお尋ねします。  それでは、今度の一兆一千七百億円、この問題については後で詳しく数字的に議論しますけれども、これを削る際に、大蔵省がやったのか自治省が慌てたのか知りませんけれども、一兆一千七百億円も削ったら大変だろう。そこで、十二月十七日に税制調査会の答申が出たわけですが、その後慌てて税制調査会で議論も何もなかったたばこ消費税がぽっと出てきたんです。千二百億円、地方のたばこ消費税として取りましょう。そして、国の方でも同額取りましょう。その同額の、あるいは交付税の特例として加算する。これが税制調査会の答申が出た後に、十七日から三日たった二十日の日に出てきたんですよ。  ところが大蔵大臣、これは一年間ですよ。暫定措置は三年ですよ。たばこ消費税は一年間ですよ。地方に対する財源措置というのは一年で、そして二年目以降はどうなるんですか。それは減らしていいんだ、地方の財源措置はことし一年やっただけでいいんだ、こんなばかげた暫定措置はないでしょう。どうなんですか、これ。
  217. 竹下登

    竹下国務大臣 このたばこ消費税の扱いということになりますと、私は、仮にいろいろ議論されておる筋が期待どおりにいかない場合、事前に国会あるいは関係方面に連絡するを常としておりますが、今回はそれが事後になったというこのそしりは、いかに批判されても甘んじて受けなければならぬと私自身思っております。しかも、たばこということになりますと目下のところ一人株主でございますので、なおのことそういう批判を受けやすい立場にもある、このような自覚は十分に持っております。  しかしながら、この問題につきましては、税調答申を見ますと、やはり「基本的には現行税制の枠組みは動かさないとの態度で臨むべきである。」という税制改正に当たっての答申をいただいておりますので、したがって、骨格を変えるということはできぬ。そうなればやはりこれは一年間の臨時異例の措置としてお願いするしかないという結論に到達をいたしました。それを、今細谷さん御指摘のとおり、ぎりぎりの段階で地方財政対策で二千四、五百、当時は思っておりましたが、もっと砕いて言えば、五千億に近いところで赤字公債の削減をしたいという私には願望がありました、だんだん詰まってきた段階でありますから。そこで二千四百ということになりますと、これがなくなるとさらに半分くらいの赤字公債のいわば減額幅になってしまう。それで、いろいろ考えまして、よしこれならば、この際は臨時異例の措置としてやれるならばこれしかないという判断を下しました。  したがって、私みずからこの税制調査会へお願いをして、それじゃやむを得ざる措置として運営小委員会をやってやろう、そして翌日、やむを得ざる措置として税制調査会のお許しをいただいた。「本件につきましては、税制改正の手続としては異例なことであり、好ましくなく、また、その内容についても委員のうちには異論もあったところであるが、政府として真にやむを得ずとった措置であることは理解できる」というお答えをいただいた。  そして、それのみでなく、これはもとは専売公社でございますが、今や既に民間になっておるたばこ会社、これのいわば経営者、労働組合、そしてたばこ耕作者関係、また野党のたばこ関係の皆さん方に対しても、事後に一生懸命、今日もなお了解を得るべく走り回っておるというのが偽らざる現状であります。
  218. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 大蔵大臣が今引き続いて走り回っておる、それからこの一年間ということについては無理があった、しかしこれは大蔵大臣の責任だということでありますけれども、暫定措置三年間組んでおいて、そしてあなたがこれから走り回ってさらに二千四百億をふやそうという熱意があるにかかわらず、たった一年で、二年目以降は地方に対する財源措置は全くゼロということは、大蔵大臣としても頭の中で承知できない問題だと思うのですね。  そうすると、来年増税か何かを検討されておる。総理大臣は、減税やるんだ、その後で増税の検討をすると言っている。その辺を含めて暫定措置の中で描いているということになりますと、大臣、これは暫定措置になりませんよ。これはどうしてくれるんですか。そんな暫定措置は許せませんよ。そんな話はないでしょう。    〔渡辺(秀一委員長代理退席、委員長着席〕
  219. 竹下登

    竹下国務大臣 この点はそのときにも議論いたしましたが、今回の補助率の引き下げは、三年間の暫定措置とする、それで、六十二年度以降についても各年度の地方財政収支見通しに基づいて所要の財政対策を講じて地方行財政の運営に支障がないよう対処する、こういう考え方でございますので、このたばこ消費税の問題は、確かにこれは臨時異例の、一年限りの措置でございますが、この問題そのものに見合う二千四百億、あるいは一カ月ふえますからもう少しふえますか、その問題について、仮にそれと同じような地方財政計画に支障がありとすれば別途な措置を講じなければならぬというふうに思っております。
  220. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 先のことがわからぬのに二千四百億、財源の裏づけをしなければいかぬ、こうおっしゃっているわけですから、これがなくなるということは、これは六十二年度以降協議する、こういうことですけれども、そういう計画では困るわけですね。やはり私は、大蔵大臣がウルトラCのようなボタをかぶって地方に独立税源をやった、交付税の特例加算をやった。これについては一兆一千七百億円も削ったわけですから、これは量は少ないと思う、二千四百億円じゃ少ないと思うけれども、まあ大蔵大臣が苦労した措置だと思うけれども、大体、税調を無視したやり方が問題です。そして、どうしてたばこ消費税をねらったのか、民間にいったばかりの。この辺にもいろいろ問題がありますけれども、私は後半の方で、地方も苦しかろう、財源もやはり一応見てやらなければいかぬ、その一部として二千四百億円を考えたことについては評価するけれども、やり方については全く評価できませんね。そして整合性もないですよ。  しかし、これで議論しておってもしようがないから、自治大臣、今の答弁ではいわゆる補助金に手をつけることは、いわゆる国と地方との間の国庫支出金に手をつけることについてはもう三年間はやらぬ、これが一つ。それから、あなたがおっしゃった交付税率についても手をつけないということが含まれているのだ、地方譲与税の問題も手をつけない、こういうことが含まれているのだ、それは若干の手直しは別として基本的にはやらないのだ、こういうふうに大蔵大臣はおっしゃっておりますが、大蔵大臣、そのとおりもう一度確認できるか、自治大臣、それで承知しますとおっしゃるのか、お答えいただきたい。
  221. 竹下登

    竹下国務大臣 原則として補助率の問題はまさに三年間の暫定措置、たばこの問題は別、先ほど申し上げたとおりであります。細谷さんから、交付税率はいじられないか、まさかいじられないだろうな、こういう御質問に対しましては、私も言葉を選んで、これは今抜本改正が税制調査会で議論されておるさなかであります。その際、特別な地方税源とかあるいは譲与税とか、そういうものに仮に変化をもたらすような答申が出たといたしましょうか。その際は、これは慎重に対応しなければならぬ問題であろうから、したがって今この三年間すべていじりませんという中に、交付税率というものを、大きな変化がない限りにおいてはもとよりいじるべきものではございませんが、大きな変化が仮にあったとすれば、それまで含めていじりませんとお答えするのはやはり難しいではないかというふうに申し上げておるわけであります。
  222. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 結局、大臣は基本的に何を言っているかわからぬということですよ。  私は、大蔵省が出した中期展望、これはたばこ消費税で言いましたけれども、この大蔵省が出した中期展望を見ても、六十二年度は現行制度のままでいって常識的な一般歳出というものを考えていっても、要調整額、財源の不足額というのは、おたくの方の資料では三兆四千四百億円あるわけですよ。この金をどこからひねり出すか。六十一年度は一兆一千億円の地方の補助金をけ飛ばした。それで予算をつくっているわけでしょう。来年度はもう国債償還の積立金もしなければいかぬでしょう。そうなってくると、こんな不足が生じている厳しい段階において、これは間違いなく大蔵大臣は大変な大地震がいったので交付税にも手をつけなければいけませんでした、譲与税にも手をつけなければいかぬ。こうなりますと、自治大臣との覚書の第二の原則は吹っ飛んでしまうのですよ。何のためにここで議論するか、意味ないですよ。どうなんですか。今の大蔵大臣の答弁では何を答えてもらったか、全くないですよ。
  223. 竹下登

    竹下国務大臣 今税制調査会で国税、地方税全般についての抜本的な御審議をいただいておる前に、どういうような税源配分についての議論が行われるかというものも、まあ常識的にいってある種の範囲はわかったとしても、予測されないときに、大変革があった場合にもこれは交付税率等は議論の外に置く問題ですといって断言するのは、やはり税制調査会に諮問を申し上げておる限りにおいては、断言するところまでは差し控えるべきではないかなと思って申し上げておるわけであります。
  224. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 大蔵大臣は基本的には手をつけないと言いながら、どうなるかわかりませんということになりますと、やはり総理の御答弁をいただく以外にこれは先へ進めませんよ。総理、どうなんですか。自治大臣大蔵大臣の約束があって、それが前提で六十一年度の予算編成をされているわけですよ。総理大臣の決断いかんでは崩れちゃいますよ。覚書なんて、これはもう紙っぺらですよ、こういうことになりかねないのですが、今のやりとりを聞いて総理大臣としてどう対応いたしますか。
  225. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは党の三役も入りまして決めたもので、その約束どおり解釈して実行してまいります。解釈が違うということは私はないと思います。
  226. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 党の三役が入って決めたものですから総理大臣としても守るということになりますと、私が確認したけれども、大蔵大臣が逃げた、自治大臣の考えとほぼ同じ基本的なことを総理大臣は確認した、こうとってよろしいですね。党の三役まで入って、二人の大臣ばかりじゃなくて、党の政調会長まで約束したのですから、これは責任を持って守りますと、こういうことですね。
  227. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大蔵大臣と自治大臣の約束を党の三役も入ってやる、こういうことでいつもまとめておりますから、そのとおり実行いたします。
  228. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 確認どおりやるというのですから、これはもう私はきちんと確認をしておきたい。それで、総理がそう言ったので、私は総理に対する信頼感が今の答弁で非常に大きく膨れたと言っていいですよ。  と申しますのは、総理大臣は昨年の九月ですか、十月ですか、政府招集の全国知事会議でこのことについて、補助金カット、いわゆる六十年度に五千八百億円の補助、負担金をカットした、それに対して知事会から猛然たる意見が出た際に、総理大臣なかなかうまいことを言っているんですよ、これは。「昭和六十年度におきましては、暫定措置として生活保護費等の補助率の引下げを行い、地方公共団体にも多大な御協力をいただいた次第でありますが、申すまでもなく、国の財政と地方財政は車の両輪であり、両者の信頼と協力を軸として、国、地方を通ずる行財政の減量化、効率化を図って行く必要があります。そのため、政府といたしましては、両者の協議協調の上に立って国と地方との間の適切な財政秩序の維持確立に努め」たいと思います。  これをずっと読みますと、六十年度のやり方は国としても反省します、こんなむちゃくちゃなことはやりません、もっと民主的に皆さん方の意見を聞いてやりますとずっと述べている。鈴木知事会会長に対する答弁、あるいは長野岡山県知事に対する答弁、これは極めて明瞭なんですよ。それをいまだにそのまま実行するとおっしゃっているのですから、これは当然のことでしょう。そういうことは全文この議事録として残っておりますから、ひとつ忘れないように総理また読んでいただきたい。お願いしておきます。
  229. 竹下登

    竹下国務大臣 総理がそういうことをおっしゃったことは事実でありますし、私どももそのように考えなければならないと思っております。なかんずく、そのときに総理念頭に、我々も同じでございますが、六十年度の予算における補助率というのはいわば一律、こういうような印象を非常に強くお与えしたことは事実であります。制度、施策のあるべき姿、あるいは地方と国との本当に役割分担、一つ一つについての詰めた議論を欠いておったではないか。したがって、六十一年度の場合は、補助金問題に関する閣僚会議を持ち、なお検討委員会等を持って、念には念を入れて行ったということは、六十年度予算における国会等の御批判に対してこたえてとった措置である、こういうふうに理解をしております。
  230. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 私があえてこれを取り上げているのは、補助金、負担金、六十年度は一律一割、これはむちゃくちゃだ、こういう批判を受けたので、今度は関係閣僚会議で補助金問題検討会、こういうのができまして、十数回にわたる、去年の六月以降すっと検討を加えて、その検討会の答えが出たのは、まとまったのは十二月の二十日ですよ、大蔵原案の発表される二十三日の二、三日前ですよ。そして二、三日後の大蔵原案の中にはすっかりそのまま織り込まれております。しかも検討会のあれを読みますと、書いてないことまでちゃんと削っているのですよ。去年とやり方、一つも変わりません。ただ六十年度と違っておるのは、一年間、検討会というのができてその意見を聞いたかのごとくカムフラージュしている、こう言わざるを得ないのですが、そう思いませんか、大蔵大臣
  231. 竹下登

    竹下国務大臣 それはあれほど国会で、六十年度予算で一律は哲学がないとかいろいろ批判されれば、我々とてそれは、まさに検討会には専門家の関係者の皆さんにお願いをしたわけでございますけれども、我々関係閣僚としてもこれに対しては絶えず注意を払っておって、その検討の進みぐあい等につきましても逐次この報告を受けて、対応の遺漏なきを期していこうという心構えでやってきたことは事実であります。
  232. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 心構えはあったかどうか知りませんが、私も去年の予算委員会で生活保護、あれだけ臨調の中で問題になったのを、どうして百分の八十を百分の七十にしたのかということに対して質問をしたことがあります。今度の補助金問題検討会には、三分の二にすべきだ――大蔵省は三分の二に今度したかったわけでしょう、六十一年度。三分の二にすべきだという意見もあった、もとのとおり十分の八にすべきだという意見もあった。両論併記ですよ。ところが、両論併記の中にあった十分の七という六十年度のやつをそのまま持ってきた。これはやはり、いかにも検討会の意見を尊重したかのごとくに見えますけれども、問題がある、こう言わざるを得ません。言ってみますと隠れみのだ、こう思うのです。  そこでちょっと質問をいたしたいわけでありますけれども、この補助金問題に関連して自治大臣にお尋ねしますけれども、一体補助金と負担金というのはどこが違うのですか。お答えいただきたい。
  233. 小沢一郎

    ○小沢国務大臣 補助金というのは奨励的、政策的な目的によって国が出すものであり、負担金は国と地方で大事な事業につきまして共同して責任で負担を分け合っていくという性格のものであろうと思います。
  234. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 自治大臣、地方財政法という法律をごらんいただけば、補助金と負担金というのは明らかに違うのですよ。国と地方が共同責任でやる、これは地方財政法の十条、十条の二、十条の三、ぴしゃっと書いてあるのですよ。そして、地方がもっぱらやるべきものは地方財政法九条であるのです。国が全額持ってやるべきものというのは地方財政法の十一条か何かにぴしゃっと書いてあるのですよ。ですから、補助金と負担金というのは、その負担金というのは十条と十条の二と十条の三、これに基づくものなんですよ。それから三十四条、養護学校等。これが負担金というのですよ。その他のやつは地方財政法十六条ですか、国が奨励的なあるいは財政援助的な補助、これが補助金ですよ。そう思いませんか。財政法にそう書いてあるのですよ。お答えいただきたい。
  235. 小沢一郎

    ○小沢国務大臣 先生御指摘のとおり、九条においては基本的な原則の負担が書いてありまして、十条の一、二、三、その項目にはいわゆる共同の負担の事項が書いてあることはおっしゃるとおりであります。したがいまして、補助金というのは先生お話しのとおりいわゆる奨励的なものあるいは財政的な援助の見地からやるものでございまして、負担金と性格を異にいたしておると思います。したがって、負担金はその割合についても法令で定めなければならない、そのようになっておるものと思います。
  236. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 大蔵省にお尋ねいたしますけれども、大蔵省の「補助金総覧」、これを拝見いたしますと、生活保護費補助金という言葉はあるのですけれども、生活保護費負担金という言葉はないのですよ。言葉じりを私は申し上げているわけじゃないのですよ。補助金と負担金というのは厳密に法律上の根拠は違うんだということを申し上げているのであって、間違いなく、この予算書を見ても生活保護費補助金どこう書いてある。生活保護費負担金というのは一つもありません。おたくの方で出しました、今度の大蔵省主計局で出した「予算の補助金等の整理合理化について」という文書を見ても、老人保護費補助金、生活保護費補助金、みんな補助金ですよ。補助金になりませんよ、これ。  法令を例にとって申し上げますと、生活保護費については地方財政法十条の何号、それから児童福祉、老人については十条の何号とちゃんと限定列挙主義で書かれておるのですよ。にもかかわらず全部それが、補助金と負担金をごっちゃにして、そして一律削減、国の責任は補助金も負担金も変わりないんだということをやっているのですよ。これはある意味ではごまかしであり、厳密に言うと法律違反の字句ですよ。いかがですか。
  237. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 地方財政法では、御指摘のように第九条以下、国と地方との負担の割合をそれぞれ各条に法律で定めるべきものを列記をして書いてございます。ただ、その負担の割合をどう定めるかは御承知のようにそれぞれの実定法にゆだねられているわけでございます。  そこで、それぞれの実定法におきましては、あるいは補助するという文言でこの負担割合を決めている場合もありますし、補助することができるという形で決めている場合もございますし、もちろん負担するという文言を実定法で使っている場合もございます。それはそれぞれこの負担あるいは補助の趣旨、目的あるいは対応に即しまして最も適当な表現をそれぞれの実定法で定められているものというふうに理解をしているわけでございますが、今度予算上の科目の名称でございますが、私どもはそれぞれの実定法に定められております補助あるいは負担というものを念頭に置きまして予算の補助金の科目を原則として決定をいたしております。ただ、御承知のようにたしか生活保護につきましては生活保護法に、負担するというふうに書いてあったように記憶いたしておりますが、従来から沿革的な理由もございましてずっと「生活保護費補助金」という名称が、予算書の科目としてはそういう名称が使われておりますけれども、負担をするということで実定法上書いてございますから、その性質はやはり実定法に定められた負担をするというものの性格を持っているというふうに理解をいたしております。
  238. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 言葉でごまかしちゃいかぬわけです。実定法、実定法と言いますけれども、生活保護法第七十五条「国は、政令の定めるところにより、左に掲げる費用を負担しなければならない。」補助しなければならぬと書いてありませんよ、負担しなければならぬ、生活保護負担金ですよこれは。いいですか。それからさらに、実定法のことで言いますから。児童福祉法の第五十二条「国庫は、前条に規定するものの外、第五十条及び第五十一条に規定する地方公共団体の支弁する費用に対しては、政令の定めるところにより、その十分の八を負担する。」補助すると書いてない。負担だ、これは。さらに、実定法で言いますが、老人福祉法第二十六条、「国の負担及び補助」と書いておりまして、「国は、政令の定めるところにより、市町村又は都道府県が第二十一条又は第二十二条の規定に、より支弁する費用のうち、第十一条に規定する措置に要する費用についてはその十分の八を、養護老人ホーム及び特別養護老人ホームの設備に要する費用についてはその二分の一を負担する」、実定法はみんな負担ですよ。補助というのはないのですよ。  私は補助と負担ということにこだわっていませんけれども、大蔵省の方で予算書までごったにして、そうして一律にカットするに都合のいいような体制だけをつくっておる。予算書もそう、実定法もそう、地方財政法もそうだ、こういうことです。こんなことではどうにもならない。総理大臣がきちんとすべきだと思う。私はそのとおりだと思う。ですからこれを厳しく申し上げておるわけですよ。大蔵大臣、いかがですか、これ。
  239. 竹下登

    竹下国務大臣 これは昨年でございましたかも議論がございまして、結局議論の最終的なところは法制局のお答えでもってチョン――チョンじゃありません、これで議論が尽きた、こういうことになるわけであります。したがいまして、この問題につきましては、正確に申し上げるためには、昨年の議事録等からいたしましてもあるいは法制局長官にお願いすべきではなかろうかというふうに考えます。
  240. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 法制局長官という言葉が出ましたけれども、これは政府の責任において憲法に基づいて予算を出しているわけです。そして、それがすべてやはり基本法、実定法に基づいて名前がつけられて出ておるはずでありますけれども、奇妙に、補助金と負担金は紛らわしい、ごまかしちゃえということで、きちんとして出ておるにもかかわらずごまかしておるのですね。これはやはり総理、きちんとしておらなければ、何のための法律が。そして最後に実定法だということですが、実定法もそうなっているのになぜ守らないのですか。おかしい。私は了承できない
  241. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 予算書上の補助金の科目の名称でございますが、先ほど申し上げました、原則的には実定法上の、負担するあるいは補助するという文言を念頭に置きまして予算上の名称を決めているわけでございますが、御指摘のように、例えば生活保護費につきましては、実定法上負担をするという文言になっておりますが、従来の沿革上の理由もございまして予算書上は補助金という科目になっております。  それからまた、お話しございました老人福祉の関係でございますが、御承知かと思いますが、老人福祉法に基づきます補助規定も、一部は負担をするというものもありましたし、それからまた一部分は補助をするという部分もございます。予算書の方はそれらを一括いたしまして一本の「老人保護費補助金」という総括的な名称を使わしていただいているというような歴史的な事情がございまして、従来からこういった名称でお許しをいただいているわけでございます。
  242. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 この問題につきましては、自治大臣、お尋ねいたします。  これは国会でも随分議論がありまして、負担と補助というのはどこが違うのか、七十七回国会、五十一年の国会で議論されました。ちょうどそのとき地方財政法の改正が行われたわけです。そのとき大変な議論がありました。その議論の経過、詳細というのは、おたくの方で編集しておる「地方財政要覧」に「地方財政法の一部改正等について」というのがあります。大臣、お読みになってないでしょうけれども、その辺に来ている局長あたりは読んでいるでしょう。読んでいる。その文章にその経過をどういうふうにやっているかということについてきちんと書いてあります。私はこの文章も不完全だと思っています。不完全だと思っていますけれども、自治省としてはやはり補助金と負担金と法律に基づいて明確にすべきだ、そういう主張がここに出ております。  大臣、区別すべきだと思うのか、そして不十分な点があったら今後是正に努力すると、こうおっしゃるのか、お答えいただきたい。
  243. 小沢一郎

    ○小沢国務大臣 私は今先生の御指摘の文書をまだ不勉強で見ておりませんけれども、負担の問題につきましては、いわゆる九条で地方自治体の負担を原則として定めておりまして、その後の十条で、いわゆる各号に列記されておるような重要な事柄につきましては国の負担、共同責任でやるのだということをとりわけて十条に列記しておるわけでございますので、その意味におきまして国の負担の役割というものはそれだけ大きな、重要な意義を持たせられておるものであると考えております。
  244. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 これは、大臣就任間もないわけですけれども、おたくの書いた「地方財政詳解」というのに、三百十六ページにちゃんとありますよ。時間がありませんから読みませんけれども、これはやはりきちんとして、今後是正に努力するとしておるのですけれども、私の見る限りは、是正に努力するどころかいよいよ混乱の度を増しておる、それが今度の補助金カットの中に出てきている、こう指摘せざるを得ません。  そこで、自治大臣、御質問しますけれども、国会に出された「昭和六十一年度地方団体の歳入歳出総額の見込額」というのがあります。その末尾の方に、これは毎年、今度だけ出たわけじゃありませんけれども、末尾の方に「国庫支出金に基づく経費の総額」、こういうものがございます。そして、その補助負担金に基づく経費はどうなっているかといいますと、昭和六十一年度は全体として、いわゆる補助負担金というのは九兆五千二百八十三億だと書いてある。そして、九兆五千二百八十三億の内訳は地方財政法十条一号に基づくものはこれだけ、二号に基づくものはこれだけ、ぴしゃっと書いてあります。大臣御存じですか。こういうふうにぴしっと仕分けしてあるのですよ。国会に出した資料、いわゆる世間で地方財政計画と言われる中でびしゃっと仕分けしてあるのですよ。  時間がありませんから申し上げますと、私が調べたところでは、地方財政法十条関係の国の負担金が六十一年度は四兆五千八百十二億ですよ。地方財政法十条の二関係、これは公共投資関係ですよ。二兆八千七百五十億ですよ。それから十条の三、災害等です、これはずっと少ないですけれども。この十条と十条の二で圧倒的なシェアを占めているわけです。これが十四兆何がしかの国の補助金、その八割が大体地方公共団体向けなんですね。その地方公共団体向けのおおよそ七五%というのはみんなこれは負担金に入っているのですよ。それを全部補助金、負担金をごったにしているところに自治省の怠慢がある、問題がある。ぴしゃっと数字があります。  私のを手元に配っておりますか。お手元に地方財政法十条から十条の三及び三十四条に基づく補助負担額というのを一覧表にして私は示してあります。そうして、これは六十一年度ばかりではなくて、六十年度と五十九年度を比較しております。そして、読みにくいと思いますけれども、「国庫負担額」とその次に「負担率」と書いてあるのは、いわゆる負担額があって地方費が加わって事業費になるわけです。その事業費に対して国庫負担額が四九・八%であります、十条の一号の分が。十条の一の二、以下ずっと年度を追って書いてありますけれども、六十年度、五十九年度と比べております。  大臣、この数字を見てお気づきになることは、補助負担率の変更によって著しく国庫負担額のシェアが落ちてきている。例えば十条の一号については、五十九年度カットのないときには五〇%でありました。これは法定されたとおりです。ところが六十年度、六十一年度とずっと落ちてきておることが、この表を調べてみますと、よくわかります。これを見て大臣、地方財政計画を作成したのですけれども、どうお考えですか。ひどいものだと、地方財政の構造は補助金負担率で構造の変化が起こってきているということはおわかりになったと思うのですが、いかがですか。
  245. 小沢一郎

    ○小沢国務大臣 ただいま先生御指摘のように、補助率の負担割合の変更ですか、補助率の引き下げによりまして国庫の負担割合がずっと減ってきておることは御指摘のとおり事実であります。この国と地方の負担の分担のあり方、こういうものは国、地方の事務の見直しとかあるいは権限の移譲とか、そういう議論の中で果たしてどっちがどれだけ負担したらいいのか、それを考えていくのが筋道である、そのように私ども考えておりまして、六十一年の御審議いただいている予算の編成に当たりましては、その一部ではございますけれども、事務の見直し等も行われた、いわゆるそういう従来主張しておった考え方のもとに立って行われた、そして国と地方は車の両輪でありますし、国の財政状況厳しい折ながらやむを得ないもの、そのように考えたということであります。
  246. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 今総理はお忙しい御身分でありますからなんですが、ちょっと参考までにこの資料、私は地方財政法十条関係、これを拾ってみますと、これは国の負担を伴う地方の経常経費です。生活保護とかあるいは義務教育費国庫負担法、こういうものでありますが、五十九年度カットが行われないときには国の負担というのは六〇%でありました。去年、六十年度、六十一年度とカットが始まりましてから、実に六十一年度は従来からカットのシェアが七%落ちているのですよ。公共事業関係の十条の二でありますと、これも今までは六〇%でありましたけれども、六十一年度は五%落ちているのですよ。公共事業やりなさい、前倒しもやりますよ、こういうふうに言っておりますけれども、やる相当部分というのは地方であります。これだけ減ってきていることはかなり深刻な、思うとおり動かないような事態を引き起こしている、こう私は思っておりますけれども、総理の所感はいかがですか。
  247. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 地方にもいろいろ御迷惑をおかけして恐縮に存じております。  私も知事会で、できるだけ国としても努力をいたしますが、何しろ火の車で、こういうときにはぜひお助けも願いたい、しかしよく皆さん方と御相談申し上げて、昨年は割合に唐突の感がありましたけれども、この秋はよく皆さんと御相談申し上げて十分御理解を得るように努力いたします、そういうふうに申し上げた次第でございまして、今後もそういうふうにお互いてよく意思疎通をし合いながらお互いに助け合っていくようにしていきたいと思っております。
  248. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 もう私の持ち時間が余りありませんから、そこでお手元にもう一つ都道府県と市町村に分けて、交付税で計算される基準財政需要額を経常経費と投資的経費にここ数年の経過を分けた表をお配りいたしております。  これを見ていただきますと、六十一年度はこれからでありますけれども、六十年度には都道府県の場合は経常経費が七一・五であります。投資的経費が二一・三であります。五十九年度は経常経費が七四・六、投資的経費が一七・七、こういうことであります。ところが、ずっと右の方に、あるかどうかわかりませんけれども、五十年度くらいこういうことを探ってみ、あるいは五十九年度の都道府県の決算をちょっと比較してみますと、五十九年度には投資的経費の需要額というのは決算よりもシェアが一〇ポイントばかり落ちている。数字を申し上げますと、投資的経費と歳国会計との比率は二八・七になっておりますけれども、需要額は一七・七しか計算しておりません。交付税の配り方を、交付税総額が足らないためにどんどん省略していっている、こういう証拠です。そして、私が特に指摘したい点は、府県や市町村で借金しろ、そうして地方の財政の運営上は支障ないようにしてあげます、してあげますといっても借金ですよ。その借金は返さなければならぬ。返さなければならぬですけれども、国庫負担に基づく事業については法律できちんと、必要にして十分なだけの基準財政需要額を計算しなければならぬと書いてあります。そのとおり書いてありますけれども、これは経常経費でありまして、投資的経費についてはもう金がないからと言って省略しております。その借金を今返さなければならぬ時期に来ておりますから、この下の方の「その他の経費」というのを見ていただきますと、これは借金の返済です。災害の問題とかあるいは財源対策債とかいろいろありますけれども、それが六十年度は全体としては六・七%の需要額のシェアを持っておるわけですね。ところが、五十年度はどうかといいますと、この「その他の経費」というのは一・八%でありますから、激増しているわけですよ。借金返しのために地方交付税の総額が食われていっておる。その借金返しの原因というのは、国の財政不如意、地方の借金、こういうものから出てきておるわけです。こうなってまいりますと、何というか、タコの定食いみたいなものですね。交付税はそのままでありますけれども、その交付税総額をどんどん優先的に食っていくのが、地方財政法に基づいてカウントしなければならない事業に対するものだ、こう思っておるのです。ですから、私はここで言いますと、五%ぐらい需要額はふえていっているんですから、これをそのまま認めるとすれば、交付税率は三二%から三七、八%に上げなければならぬ、こういう勘定になる、こう言ってもよろしいかと思うのでありますが、自治大臣、いかがですか。
  249. 花岡圭三

    ○花岡政府委員 交付税の基準財政需要の中に投資的経費の算入が足らないではないかという御一点の質問がございました。これは御承知のように、交付税の総額が不足するものですから、この交付税の中の投資的経費に係る部分、これを地方債に振りかえたことによるものでございます。そのためにまたいわゆる公債費がどんどん伸びてきた。これが交付税の算定を圧迫しているのではないかという御指摘でございます。この点につきましては確かにそういった傾向が見られるわけでございますけれども、これまでの傾向ではどんどんと公債費に係る基準財政需要額の比率というものがふえてまいりました。しかし、ようやくこの五十年度に発行いたしましたいわゆる減収補てん債の償還も終わりましたし、今後は大体六十一年度程度の伸び率で推移するのではなかろうかというふうに見ております。そういった点から見まして、今後交付税のいわゆる確保ということは当然必要でございますけれども、いわゆる公債費に係る基準財政需要額の比率というものは、全体としては若干低下するのではなかろうかというふうに見ておるところでございます。  いずれにいたしましても、この投資的経費につきましては交付税に全額算入せよという法律の規定もございます。投資的経費と申しますか、負担金の裏については算入せよという規定がございます。投資的経費につきまして一応地方債に振りかえてはおりますけれども、この部分につきましても元利償還金は交付税に算入するということをいたしますので、交付税のいわゆる裏負担部分につきましては交付税によって将来において措置されるというふうに考えております。
  250. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 財政局長、私の手元に自治省の今事務次官をやっている財政通と言われる石原信雄氏の「地方交付税と投資的経費」という文が「地方自治三十周年記念自治論文集」という厚い本にあります。その中にこの論文を書かれておるのですよ。あなたもそのとおりカウントしていると言うけれども、カウントしているのは総額であって、動揺しているわけですよ。動揺している。これでは困りますから、きちんとやるための努力をしていただきたい。しかも、現在は残念ながら地方交付税法では三二%と書いてありますけれども、引き続いて著しく不均衡を生じた場合には交付税率なり地方制度を変えなければならぬというのが六条の三の二項の規定ですよ。それが今や緊急避難という名のもとに外されておるのですね。にもかかわらず、まあ知っているか知りませんか、意識的にか知りませんけれども、財界あたりでは、交付税が余計行き過ぎているじゃないか、十兆なんて行き過ぎているじゃないか、二%削って三二を三〇にすれば相当の金が出てくるぞ、そうすると、国の方の要調整額もそっくりそのまま入るじゃないかという議論をかましておるわけですよ。ですから、賢明な大蔵大臣はそんなことには乗らぬと思いますけれども、これはやはり大蔵大臣、自治大臣、私が言ったように、まあ過去には交付税が足らぬならば特例交付金というのをつけ加えておったのですよ。それがなくなりました。かてて加えて、今まで借金した利子は半分地方が持てと言うから、ことしの交付税総額というのは国税三税の三二%じゃないのですよ。計算すると三一・二%しかない。三二%を割っているのがここ三年間続いているのです。  こういう状態でありますから、地方の財政は裕福だという、裕福なところもあるでしょう。あるけれども、三千三百の自治体というのはやはり大変な局面に今立たされておる、こういうことを御承知いただいて、随分むちゃな補助金カットだぞ、こういうことを私は強く申し上げて、私の時間が来ましたから、総理の、最後にこの問題について、国と地方との境界というのは、お互いの信頼、車の両輪として立っていくためには必要なんだという認識を固めていただいて善処していただきたい、こう思いますが、いかがですか。
  251. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まさに細谷さんの御意見に同感でございまして、国と地方とがお互いに唇歯輔車の関係で共存両立できるように、よく話し合って御理解をいただきつつ進みたいと思います。
  252. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 最後に、時間がありませんから申しませんけれども、この全国知事会の発言で、知事は――今問題の裁判抜き代執行問題ということについて、せんだって地方制度調査会の答申が出ております。総理大臣は、地方制度調査会生言わぬで、そんなものは実在しないのですけれども地方財政審議会等なんと言って演説しているのですけれども、正確には地方制度調査会です。それに基づいて、何か官房長官が非常に執心であって、選挙にもそれを適用するなんということを、勇み足をやって取り消しているようでありますが、これは総理、慎重に対応する、こう言っているのですよ。ですから総理も、この代執行問題については慎重に対応し、また、この問題に対する新聞の論調等もお読みになったと思うのですけれども、知事会で言ったように慎重に対応していただきたい、こう思います。  予算は大蔵省が編成する、その場合は、法律でぴしゃっと書いてある補助金、負担金をわざと混同しているわけですけれども、きちんと法律に基づいて整理するように理事会等で検討していただきたい、これを要望いたしますが、委員長いかがですか。
  253. 小渕恵三

    小渕委員長 ただいまのお申し出につきましては理事会で話し合いたいと思いますが、先ほど来委員の御質疑に対して政府側もそれぞれ誠意を持ってお答えしておったところだろうと思いますが、念のため理事会で勉強させていただきます。よろしいですか。
  254. 細谷治嘉

    細谷(治)委員 ええ、お願いします。  終わります。
  255. 小渕恵三

    小渕委員長 この際、大原亨君より関連質疑の申し出があります。細谷君の持ち時間の範囲内でこれを許します。大原亨君。
  256. 大原亨

    大原委員 私は、部落差別の問題につきまして所定の時間で質問をいたします。  せっかくの貴重な時間ですから、皆さん方のお手元にこの冊子を配付いたしまして、これを参考にしていただきながら質問をいたします。「いのち 愛 人権 部落差別は、いま。」という国民運動中央実行委員会の冊子であります。これはあらかじめ総理大臣以下関係各大臣に対しましては、先週既に配付をいたしまして、そして質問要項を示してあります。  この部落差別の問題は長い間の歴史のある問題でございまして、私は、国会でもいろいろな議論をしてきたわけでありますから、非常に重要な今の段階におきまして余り形式的な議論ではなしに中身のある議論をいたします。  今から二十年前、同和対策審議会答申が出まして、部落差別の問題は放置できない今の社会における最大の社会問題であり、人類普遍の原理に基づいて国の責任あるいは全国民国民的な課題、これは七十三ページにありますが、そういう観点に立ってこの際抜本的に改正すべきであるという、審議会設置法を設けましてそしてその答申が出されまして、いろいろな法律が出てきたわけであります。  当時、私が初めて出ましたのは竹下大蔵大臣、外務大臣などと同じでございまして昭和三十三年ですが、三十五年、六〇年安保のときですが、この議論の中でこういう議論があったわけです。当時は岸内閣でございましたが、安倍さんの岳父でありますが、日米安保条約が非常に激しかったときであります。そのときに、これは共産党の諸君の議論でありましたが、日米安保条約を憲法を踏みにじって強行するような、そういう内閣に対しまして部落差別の解消の国策樹立の要求をすることは、これはお門違いである、そういう議論がございました。つまり、その背景には民族民主統一戦線の考え方があった、政権構想があったと思うのです。日米安保条約を焦点に置きまして政権構想があったと思うのです。つまり、そのときには、そういう政府に要求してもだめだ、たとえ出たにしても融和的な、分裂的な政策である、そういう議論でありました。私もその議論の渦中におりましたからよく知っております。  しかし、亡くなりました松本治一郎先生を初め水平社以来の伝統を継いでいる指導者たちは、私は入ったばかりですが、一緒にやったわけですけれども、そうではない、たとえ安保条約が大きな政治課題になっておっても、この部落差別の問題は政党政派だけの問題ではない、国民的な課題であるから、どういう政府であっても新しい憲法のもとでこの差別を解消するということはやらなければならないし、やらさなければならない、国民的な課題としてやるのだ、こういうことで昭和三十五年、六〇年安保の当時議論をいたしまして、いろいろな議論を押し切って運動を推進いたしまして、二十年前に一定の同対審答申が出たわけです。山口県に関係深いのですが、佐藤総理大臣も非常に熱心にこのことをやられたわけであります。ですから、同対審の答申が出まして今二十年で、同和対策事業特別措置法が出ましてから十七年間を経過したわけであります。今、戦後四十年を迎えまして、私どもはこれらを一応整理、総括をいたしまして、成果と一緒に結果についても十分話し合って、これからどうするかということを考えなければならないというふうに思います。  そこで質問の第一は、総理大臣、あなたは施政方針演説におきましても非常に立派な演説をしておられるわけであります。「戦後の四十年間は、廃墟の中から立ち上がり、自由と平和、民主主義と基本的人権の尊重を基本理念とする現行憲法のもとで、かつてない繁栄と発展を実現してきた時代であり、」云々と書きまして、世界の歴史に類例のない、誇るべき時代、「自由と人権を基調とする市民社会の確固たる基盤が構築されたのであります。」と言って、四十年間を言っておられるわけであります。その演説の中には「地球倫理」という言葉も出ておりまして、地球倫理の確立、これは昨年の四十周年の国連総会における中曽根総理の演説にも出ております。私は事前に外務省に「地球倫理」というのは一体どういうことか、原典があるのか、こう言ってみましたところが、ないというわけですね。これは外務省の文書にはどこにもありませんし、国際文書にもありません。あなたの言われた言葉で、私は非常にいい言葉だと思うのですよ。しかし、言葉がよ過ぎるとまた悪いこともあるから。そのことは別にいたしまして、この文章は非常にいいです。同対審の答申の意思を受けたことです。私は、平和と人権は、あなたの演説のように非常に深いかかわりがあるというふうに思います。  そこで、この文書を、主な点については私が通告しておきましたからお読みいただき、あるいは検討されたと思いますが、平和と人権、そしてこれをごらんになりまして、あなたの、総理大臣といたしましてのこの問題に対処するこれからの決意、これを簡単にお答えをいただきたいと思います。
  257. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 率直に申しまして、まだこんなことが残っているのかという印象を持ちました。そして、こういうような状態我が国としては甚だ遺憾な状態であって、一日も早く理解を進め、そしてこれを解消するように努力しなければいけない、そう思いました。
  258. 大原亨

    大原委員 私もこれの評価につきましては独自の見解を持っているわけで、簡単にまた申し上げたいと思うのです。  第二は、順次各大臣質問いたします。  外務大臣、あなたの所管のところに人種差別撤廃条約がございます。これは普通には「人種差別」というタイトルがついておるのですが、この国連の条約は、世界人権宣言、これは宣言です。それから世界人権規約、これは条約です。これは留保条件をつけて日本は批准しておりますし、その中にも門地や身分等に対する差別問題がございます。  人種差別撤廃条約は、俗にあらゆる差別の撤廃を含む人種差別撤廃条約と言われておりますように、特定の条約のある男女の性的な差別あるいは宗教上の差別、こういう問題に対する条約を除きまして、あらゆる差別の問題につきまして国連憲章の精神の基本の条約といたしましてあるわけです。世界で百二十四カ国批准をしているにもかかわらず、日本は国際舞台においては批准するということを約束しながら、いまだに果たしていないわけです。多数国間の条約で一番たくさん批准しておるのは赤十字条約です。それに続きましては百二十四の人種差別撤廃条約であります。国会におきましても、私は議事録をずっとめくってみましたところが、政府の統一的な見解として繰り返して言われておることは、可能的速やかに批准をいたします、こういうことを繰り返して言っているわけでございまして、私の質問に対しましても、あるいは公明党、民社党の質問に対しましてもそのことは言っておるわけです。可能的速やかにとは大体いつなのか、国会においても批准するということを言っているけれども、いつなのか。昭和六十二年であるというふうに事務当局は私に、そういう意味の間接的な表現で答えたことがございます。外務大臣、この問題の重要性につきましては、順次私は無理のない範囲質問を続けますが、条約自体の批准について、この約束をいつ果たすのかという点についてお答えをいただきたい。
  259. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この条約につきましては、今お話しのように、条約成立の経緯を見ますと、第十七回国連総会、これは一九六二年、決議千七百八十号をもって経済社会理事会に対してあらゆる形態の人種差別の撤廃に関する宣言案及び条約案の作成を要請をされ、宣言案は第十八回総会、一九六三年において、条約案は第二十回総会、一九六五年においてそれぞれ採択をされました。同条約は、一九六六年、国連専門機関の加盟国及び国際司法裁判所規程当事国並びに国連総会により招請された国に対し、署名及び批准のため開放されるに至ったということでございます。  この条約は一九六九年一月四日に発効しております。締約国については、今お話しのように、英、仏、中国、ソ連等百二十四カ国が締約国となっておるわけでございます。  ちなみに、米国は署名を行ってはおりますが批准は行ってないと承知をしておるわけで、我が国に関して言えばまだ署名も批准も行ってないということでございますが、私は、この条約の趣旨にかんがみましてできる限り早期に締結をすべく努力をしなければならない、こういう見地に立って、今外務省を中心にいたしまして検討作業を行っておるわけでございます。ただ、この条約に規定されておる処罰義務に関して、表現の自由と基本的人権との関係をいかに処理するかなど、まだ解決しなければならない問題が残っておるということで、現在政府としてはこの点も含めて検討作業を鋭意進めておるところでございます。こうした国内調整が終わり次第締結をし、そして批准に持っていかなければならないと考えております。
  260. 大原亨

    大原委員 やや具体的な答弁ですが、外務大臣、私が人種差別撤廃条約の資料を要求しましたら英文の資料が出てきたわけです。日本文はないのか、こう言いましたら、日本文がまだできておりませんと言うのです。こういう重要な条約については日本文をちゃんとつけてそして情報を公開して国民の議論を聞くべきではないか、こういうことを指摘をいたしましたが、なかなか出してこない。これは労働省が仮訳を出しているわけです。仮の訳といって、これは外務省が有権解釈をするのでしょうから、労働省が出しているのでしょう、そういう点は外務省は非常に怠慢だと私は思うのですよ。何が障害になって翻訳ができないか、きちっといつ批准をする、国会に提案する、承認を求めるということをやらないのですか。簡単にひとつお答えください。
  261. 中平立

    ○中平政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、仮釈は差し上げておりません。これは、外務省は従来から、検討中の段階におきましては確定した日本語訳というものはできてないという建前になっておりまして、現在我々は、もちろん作業をする場合には我々内部の資料としてつくっておりますが、いわゆる最終的に確定した日本語訳というものはございませんので、従来はお出しすることを差し控えさせていただいたわけでございます。
  262. 大原亨

    大原委員 総理大臣、条約の第四条にディセントというのがあるんですよ。これは門地とか家柄とかいうことなんですよ。わかっておるんですよ。つまり、社会的な身分の問題を含めているのですよ。ですから、そういう翻訳をディセントについて出しますと、そうすると日本の国内では部落差別の問題が入ってくるわけですよ。ディセントという言葉をどういうふうに翻訳すべきかということについては、私の質問に対しましてはかって、公明党の方の質問に対してもそうですが、これはやはり門地だ、こういうふうに言っておるのですよ。であるのに翻訳文が出てこないわけなんです。そんなことはいかぬですよ。国会で何回議論したって前へ進まないじゃないですか。  そのことのために条約の批准もできないというようなことなどは、これがこれからずっと続きますと国際的に反映をいたしまして、人権問題に関する重要な条約を日本は非常におろそかに扱っているということになって、国際的な信用にかかわりますよ。あなたが昨年演説された文章は非常にいいですよ。立派な文章ですよ。今度の施政方針演説も、あちらこちらへ気を配って、最後の演説になろうと思うのですが、非常にいいでしょう。どこをやっても皆ちゃんとやってある。しかし、そういうことで日本の国際的な信用に関する議論がマイナスになるというようなことは、安倍内閣のことを考えたってよくないと私は思うのだよ。あなたが外務大臣を長くやっておられるから、かなり議事録がたまっておる、あなたの時代に局長などのがたまっておるのですよ。外務大臣はだれだろうかと思って見たら当時は皆安倍外務大臣。これは思い切って決断をして、暗に、間接的に条約批准は昭和六十二年というように言ってきたのですから、そういう点について私ははっきり御答弁をいただきたい。これはやはり国内法がどういうことになろうが、いろいろな議論をしなければいかぬのだから、私もそんな硬直した議論はしない。しかし、条約についてはあなたは主管大臣ですから、そのことを、今まで約束したことをずっと整理をして、前向きの答弁をしてもらいたい。
  263. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 人種差別撤廃条約については調印をして、締結をして、批准をしなければならないという我が国の態度は、これは一貫をしてきておるわけでありますが、しかし、条約というのは批准をすればこれを忠実に実行しなければならない国の責任があるわけでございますし、それだけの国内的措置をとらなければならない、そういうことでして、女子差別撤廃条約の際もそうですが、条約としてこれを批准する場合においては、国内的なそういう諸措置が完全にとれるという国際的にもきちっとした、責任が確保できるような形にしないとやはり条約は批准かできないのじゃないか、国際的な責任を果たすということにならないわけですから。ですから、そのためにやはり国内措置についての調整が必要でありますが、その国内的な調整そしてそれによるところの措置というのが、これは各省にまたがっておるわけですから、外務省として調整に努力はしておりますし検討は進めておりますが、まだそこまでに至っていないということであります。  翻訳の問題も、私も実は質問のお話がございましたからいろいろと聞いてみました。今局長が答弁したわけですが、翻訳をするためには政府の責任において正確な権威のある翻訳をしなければならぬわけでございますし、その際にやはり国内諸措置との関連も出てくるわけでございますし、その辺はやはり慎重に、やる以上はきちっとした国際責任を果たした条約というものを守っていかなければならぬわけですから、やはりその点は検討をする期間がどうしても必要になってくるわけであります。  六十二年ということについては、今検討中でございますから、今ここで私、なかなか明言するというところまではまいりませんけれども、しかし検討は急がせて、そして各省の調整等も速やかにお願いをして、これはできるだけ早く調印をして、締結をして、そして批准に持っていきたい、こういう熱意には変わりはありません。
  264. 大原亨

    大原委員 私は問題点を指摘をいたしまして、この問題は避けて通ることはできない、こういう考え方で御答弁いただきたい、こう思いましたが、あなた、外務省全体が問題だと私は思うのですが、国際化の時代で、やはりこういう懸案の人権問題についてははっきり整理をして決断をすべきであると思います。これは最後にまた質問をいたします。  この問題に関する限りは安倍さんと中曽根総理はどっちがいいかわからぬ。こういう問題は個人の政治信条ですよ。佐藤総理にいたしましても岸さんにいたしましても、非常に意欲的だという印象があるけれども、こういう問題については一生懸命やったのです。歴史に残っている。これなんかに書いてありますから、ごらんいただいたと思います。  さてその次の問題は、同対審答申が出まして、これは設置法をつくるまで非常な議論をいたしましてできて、答申が出るまでずっと続きまして、十七年前に特措法ができまして、十年間やりまして三年延長いたしまして、地対法をつくったわけです。私は率直に言って、その間非常に国民的な努力をした、国もやはりかなり努力をしたと思うのですよ。政府の一部の、計算の仕方、いろいろあるのですけれども、二兆円ぐらいは使っておるわけです。ハードな事業面を中心に使っておるわけです。非常に歴史的な事業であったと思うのです。しかし、私はこれは皆さん全部の閣僚に聞いてもらいたいが、なぜ悪質な差別というものがなくならないかということをもう一回虚心に考えなければいけない、原点に立って考えなければいけない。そうしないとなくすることができないのじゃないか。  そこで法務大臣にお聞きをするのですが、この冊子の中にもございますけれども、十年前に問題になりました「部落地名総鑑」がいまだに全国に出回っておるのですね。興信所や探偵社等を通じて出回っておるのです。これはなぜかというと、就職のとき使うわけです。この中に書いてある。「レナウン」と書いてある。韓国人と朝鮮人と同和地区の人はうちは採らないということを採用の申し出に行った高校の教師に答弁しているのです。そういうところがある。しかし、それを持って帰って子供たちにそういう説明ができますか。親に説明できますか。結婚だって、婚約しましたものをひっくり返すのではなしに、結婚したのをひっくり返すのですよ、身元調査いたしまして。部落出身ではないというのに、学校の先生が部落の問題についてそうだというふうに決めつけて破談にしているのです。夫婦の間を裂くのですよ。憲法では二十四条に「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。」こういうようにちゃんと書いてあるわけでしょう。それで親子の関係まで裂くのですよ。社会的な猛烈ないじめですね。そのために死ぬ人はたくさんおるのですよ。穢多とか新平民とか、関東では違う言葉ですけれども、税務署の職員が言ったというのだけれども、ここへ出ておる。そういう一言で、これはピストルやナイフで刺すより以上に人格を否定するのですよ、抹殺するのですよ。公務員でもたくさん例が出ておる。税務署の職員がやっておる。法務省の職員もやっておる。学校の職員もやっておる。十七年間かかって、同対審の答申があって二十年間たって、なぜこういう非人間的なことが横行するのか。  こういう問題について、法務大臣質問いたしますが、「地名総鑑」などというものが出回っておる、なおかつ出回っておる。今コピーをとりますから、「地名総鑑」は二万円から三万円、高い場合には五万円ぐらいで売れるのですよ。もう一つは、法務大臣の関係ですけれども、この中にあるが、戸籍謄本を持ってこいと言えばすぐ持ってくる者がおるわけです。住民票を持ってこいと言えば、そういうのがあるわけです。それで「部落地名総鑑」とあわせまして就職や結婚のときに金もうけをやるわけでしょう。戸籍謄本は法務省が管理しているのでしょう。住民票は、最近事務次官が通達を出したらしいが、自治省でしょう。これが大体一万円ぐらいで売れる。一定の地域だけで何百と売られている。調べてみると、にせの弁護士、にせの行政書士、にせの司法書士、こういう者がどんどん売っている。興信所や仲介業をやっている者に持っていく。そういうことを公然と放置をするということは一体どういうことなんだ。人権に関係するのは法務省ですけれども、しかしそれはすべての各省の大臣諸公に関係あることだけれども、私が挙げましたその実態、二つのジャンルに分けてやった実態についてどう把握をし、これに対してどういう対策をとっているか。長い間議論してきたことですが、私は法務大臣に、法務省の第一線の官僚の中にはけしからぬ者がおるけれども、はっきりとあなたの認識を答弁してください。
  265. 鈴木省吾

    ○鈴木国務大臣 御答弁申し上げます。  日本憲法ができましてもう四十年近く相なるわけでございます。その憲法の一番大きな眼目として基本的人権の尊重ということをうたい、さような趣旨に基づいて、先生先ほどおっしゃいました同和対策等についても特別措置法等を実施いたしておるわけでございます。しかし残念ながら、そういう努力にもかかわらず、今先生おっしゃいましたような事件が起きておる。あるいはまた先生から資料をいただきました、よく拝見をいたしました、そういう問題も起きておることは、私はまことに遺憾であるというふうに考えております。一日も早く国民全体に御理解を、願いまして、そういう差別のない、また心の中に少しでもそんな気持ちのないような状態をつくってまいらなければならない、かように考えておる次第でございます。  「部落総鑑」の問題等につきましても実は承知をいたしまして、法務省といたしましてもそういうのを調査あるいはまた利用者に対するそういったものがあった場合には注意をするなりいたしておりますけれども、詳細の事務的な問題は政府委員に答弁させていただく次第でございます。  私は、何としましてもこういう問題は一日も早くなくするような努力をしてまいりたい、かように考えております。
  266. 野崎幸雄

    ○野崎政府委員 「地名総鑑」の事件でございますが、昭和五十年から五十二年にかけまして八種類にわたる「地名総鑑」というものが広く発売されていることが判明いたしまして大問題となったことは御承知のとおりでございます。  以来、私どもはその真相の究明に努力するとともに、こういった文書を大企業ですら買って、なおこれでいろいろな差別に用いておるということに大きなショックを受けまして、部落差別解消のためにこれまで啓発を展開してきたわけでございます。  幸いその後新しい「地名総鑑」が作成されたということは把握しておりませんけれども、最近、このコピーを興信業者が用いましていろいろの身元調査に利用しておるということが発見されまして、私どもも非常に驚き、またこれまでの努力の足りなさを痛感した次第でございまして、こういった部落差別にまつわるいろいろなものが出てくるということは、とりもなおさず、我が国の精神的土壌の中に部落差別というものを許容するという土壌が、風土がなかなか根強く残っておるからでございます。私どもはこれを解消するためには、部落差別というものがいかに理由のないものであるか、そうして、それがいかに人の心を傷つけるものであるかということを根気強く訴えて、部落差別を温存している土壌を根本的に変えるほか根本的な対策はないという考えに立ちまして、これまでもその面での啓発活動を展開してまいったわけでございます。今後ともさらに一層の努力をしてまいりたい、かように考えております。  それから、先ほど御指摘になりました戸籍謄本の不正入手の事件でございます。実は、これは民事局の所管事項でございますが、きょう民事局長が参っておりませんので、私が承知している限りにおきまして御答弁を申し上げたいと思います。  御承知のように、戸籍謄本の請求に当たりましては、原則としてその請求の理由というものを明示しなければならないこととされております。請求が不当な目的によるということが明らかな場合にはこれを拒むことができるのであります。にもかかわらず戸籍謄本をあるいは人名を偽り、身分を偽って取得して、それがいろいろな不当な目的に使用されておるということでございましたので、民事局では、まず今後とも戸籍謄本の発行というものをより慎重にしてもらいたいということで市町村に指導をし、それによりまして対応しておるところでございます。  また、弁護士の資格をかたりあるいは弁護士に成りかわりまして請求をしたという事件が最近発覚いたしまして、非常に残念なことでございます。私ども人権局といたしましては、そういったものに対する啓発を鋭意展開しておるところでございますが、同時に民事局におきましても、違反者につきましては告発などによりまして刑事上の制裁、戸籍法上の過料の制裁を求めるよう関係市町村に指導をしておるようでございま示して、御指摘のような行為につきましては、今後とも断固たる方針で臨みたいということでございます。  なお、弁護士でない者が弁護士と偽って、つまり資格を詐称して請求をするというような請求が二度と起きないようにするために、現在民事局におきましては、弁護士会などの各会と交渉中でございまして、各会において統一した請求の方式を定めていただき、弁護士などの資格の確認のためには請求書に登録番号を記入していただくことなどを要請しておるところでございまして、こういった配慮をすることによって再び事故の起きないように努力してまいりたい、かように考えておられるようでございます。
  267. 大原亨

    大原委員 時間も限られておるわけですが、今度は総理、ちょっとあなた目をあけてひとつ聞いてください。  私はこういうふうに思っているのですよ。つまり、特別措置法ができて十七年ずっとやってきたわけです。そして住環境の面を中心にしましてかなりいっているわけです。全体的には六、七割、こういうふうに言われているわけです。これは残事業が、例えば江崎さんの愛知県等というのは着手がおくれましたからたくさん残っておる。それから北九州とか奈良とか大阪とか京都という広いところでは、広い地域でやはり手間がかかるから、時間がかかるし金がかかるから残っておる、そういうのはあります。小規模の地域が残っておるというところはあります。しかし、ハードの面がずっと進んでまいりますと、事業面が進んでまいりますと、一定の地域が立派になってくるわけですよ。そうするとこれは、差別問題というのは差別をされる側の問題と差別をする側の問題があるのですから、両方があるわけですから、差別をする者の側から見ると、私はずっと十何年間やって考えてみてそう思うのですが、あんなところへ、部落といえば劣悪な住宅環境であって、長い間、四百年にわたって下を見て暮らせと言って封建支配が続いてきた、その社会で考えておる常識と反するような立派なところができてくる。そこで、あれも税金だということでこれをあおるような人がおりまして、ねたみ差別といいますか、よく言われますが、隣の家に蔵が建ては腹が立つとだれか言った人があるけれども、よくなると差別をする方の側の意識というのがまたよみがえってくるという面があるわけです。しかし差別をされる方の側は、長い間の伝統があるわけですから自分の誇りや人間としての自覚を持っていながら泣き寝入りをしてきたわけですが、国もそういう政策をとっておるし、憲法もそうであるから、そうあってはならぬということで自覚をする、ある運動が前進をする、泣き寝入りはしない。そういうことが入り組んで、悪質な差別事件というものを商売に使う、商いに使ってもうけるやつが出てくるということがあるわけです。  ですから、今の部落対策の事業の段階を、言うなればこれはそういう問題点が出てきた、いよいよこれから腰を据えてやる、その据え方は、ハード、作業面が中心ではなしに、これは残事業があるからやりますけれども、ソフトの面、啓発の面、順次時間があるときに質問をいたしますが、啓発の面を中心といたしまして、教育の面を中心といたしまして全国民の課題であるということで、差別をする者もされる者も同じようにこの歴史と背景について認識を深めていくようなそういう努力、ソフトを中心とした、ハードを加えて総合的な努力をするような国の体制が各省ごとに、あるいは中心的な省ごとに出ていくことによって、今までかなりの投資をしてやってまいりました事業が完成するのではないか。今、途中でここで切ってはいけない。どういう内容のことをやるかということは議論しなければいけない。いけないけれども、この今の実態を十分理解をした上でやらなければいけない。  例えば結婚とか雇用で差別をされたら、今井さんのところの厚生省の生活保護だってふえるのですよ。何か言うたら、労働省関係ですけれども、藤尾さんは非常によくやったことがあるのですが、最近有名なことをやっているけれども、余計なこともやっているけれども、労働大臣のときに非常にやった、努力した。ここに彼が書いた文章が出ていますよ。雇用の問題にいたしましても、正規の職場から疎外をされる、大きな企業、官庁とかで疎外をされる、官庁は最近比較的少なくなっているのですが、企業等でずっと長い間の伝統で疎外されますと、そうすると臨時とかパートとかということになって、そこで地下経済へ潜る。地下経済、アヘンとかあるいはばくちとか暴力団とか、そういう世界にも生きるためにかなり潜っている人があるわけですようんと出世している人もあるし、立派にやっている人もあるが、しかしそういうこともあるわけです。生きる、これは民主主義の基本ですから、この歴史的な事業を同対審の答申に返って絶対に完成させなければならぬ。そういう意味で条約や国内法も考えていくべきである。  その一つの提案をここにしておりますけれども、これは、これを出したからといって、例えば公明党、民社党さんからは同和対策事業基本法で総合立法でやるべきだという議論がある、それはそのとおり、よろしい、こういう議論ですね。ですから、今まで投資をいたしまして、そして、これから各省を含めて全政府が一体となってこのことをやるということを明確にするようなことなしにこれを有効に処理をするということにはならないのではないかと私は思うのです。これは大体、地対室長は江崎さんのところですか、私が申し上げましたことについて、ひとつあなたの率直な御所見を聞かせてもらいたい。
  268. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 私もこの問題には相当深い関心を持っておるつもりでございます。大原さんと、自治大臣当時にいろいろ御意見を承り、意見交換をしたこともございます。そのほか、過去にもいろいろ熱心な方がおられました。  さっきの総理の話ではありませんが、いまだにこんな状況が続いておるということは残念でたまりません。それからまた、通産大臣をしておりますときには、同じ人種でありながら一体どうしてこういう問題があるのだという素朴な質問をマンスフィールド大使から受けまして、本当に答弁に窮したことがございます。私はドグマを述べてその場は過ぎたわけでありますが、しかし今おっしゃるように、環境の問題だとかあるいは産業基盤の問題であるとかあるいは高等学校への進学の問題であるとか職能教育であるとか、そういった面においては確かに私は十七年の成果があったと思います。しかし、今度地対法の時期がだんだん、もうこれも間近に期限が迫っておるわけでありますが、いわゆるソフトの面においての進歩が本当に見られておるかといえば、甚だ貧弱な現実だというふうに思います。  しかし、これはやはり粘り強く啓蒙していく。そして、これは同じ人種であり、本当に何ら差別すべき理由のない人が不当な扱いを受けておるということをもっともっと各省庁ともに口をきわめて、特に私ども責任の衝にあります者は十分話し合いをしていくこと。今までの御質問にあった点はことごとく、そのパンフレットも私よく全部拝見をいたしました。そのとおりだ、誇張されたところは全くありません。気の毒にたえぬと思っております。しかし、同情だけで問題は解決しませんから、御承知のように、ことし一月に幅広い意味で対策審議しようということで審議会が発足したことは御存じのとおりです。そこで基礎的な問題をもっと突っ込んで議論をしよう、こういう態度に出ておることもよく御承知だと思います。私も熱意を傾けてこの問題に取り組みたいと思います。
  269. 大原亨

    大原委員 この本の四十四ページと四十五ページをごらんいただきたいのですが、具体的な施策といたしまして、この問題に今まで取り組んできました大阪府ですね、岸知事のところですが、部落差別身元調査等規制等条例、つまりこの問題について法務大臣はいろいろやっておるのだ、やろうと思っているんだということで、なかなか、逆の効果も出ておるわけですけれども、その今まで長い間の議論の一つの問題点としまして条例を制定いたしました。これは啓発の段階を第三条、自主規制の段階を第五条、それから行政指導の段階を第九条、それから行政規制の段階で「知事は、興信所・探偵社業者が前項の指示に従わないときは、当該興信所・探偵社業者に対し、一月を超えない範囲内で期間を定めて、その営業の全部又は一部の停止を命ずることができる。」一部営業停止。それから行政罰の問題で第十三条では「第九条第二項の規定による命令に違反した者は、三月以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。」こういう条例をつくりました。そういたしますと、興信所とか探偵社という業者はこういうことを商売の材料にする、持ち込んで結婚や就職に関して身元調査をしたいという方がたくさんおるわけですが、それであっても、こういうことをやってはいけないんだということをぴしっとこういうふうにされると、お互いとの業者もやらないということになればこれは守ります、でき得べくんば、その次のページにありますが、国の法律で慎重な配慮、人権にかかわる問題はもろ刃の剣ですから、慎重な配慮をしてこういう懸案の問題については一定のめどをつけてもらいたい、こういう業者の声もあるということが出ておるわけです。  結論的なことはなかなかお答えいただけないと思いますが、江崎長官、私は、大阪の岸さんのところで非常に苦労して人権のことを考えながら――何でもかんでも人権を無視いたしましたら刑法じゃ、民法じゃというふうなことにはいかないです。これはもろ刃の剣ですから。啓発とか教育とかいうものが中心ですけれども、しかしいよいよ悪質な問題については、いまだに戸籍謄本やなんか、その裏側はにせ弁護士を名のらしてやってるんだから、そういうこと等も考えて、こういう問題については私は具体的に一つでも前向きに検討する必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょう。
  270. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これ私も詳しく拝見いたしました。大阪地域がいかにひどいかということも、過去の経験で私視察したこともございますし、よく知っておるつもりでございます。  ただ、いかがでしょう。こういう問題を、同和という名称すらどうであろうかということで地対法に変えた経緯などを考えますと、法律をつくってそうしてやることのメリットもありましょうし、その反面にデメリットもある、リアクションがありはしないか、そういう点を今度の地対協の基本問題懇話会といいますか調査会で十分ひとつ話し合ってもらう。法律で縛ることが本当にいいだろうか、同じ人種ですもの、そういうことを考えますと、これはやはり認識の問題ですから、そのソフトの面についてはもっとお互いに認識を新たにするように、例えば東京ではだれが一体本当に同和の人なのか何かよくわからないくらいにもう完全に、まあ完全とは言い切れないかもしれませんが、よほど緩和されていますわね。こういう形にならないものかというのが私は担当大臣としての理想であります。法律で縛ったから、法律で規定したから本当に速やかにいくかどうか、そのリアクションも考えなければならないというふうに思います。
  271. 大原亨

    大原委員 そういう問題は議論することが非常に必要です。これは短絡的にはっと結論を出さない方がいいと思うのです。ただ、もうだれが考えても人権を売買、金もうけの対象にすることは悪いことですから、探偵社とか興信所などというものがこういうことを扱ってはいけないのだ、もし扱えば届け出を取り消すとか、そういう方法があると思うのですけれどもね、そういう業者登録制にしておいて。だから、それは審査機関を設けて慎重にやる必要があると思うので、どこか一つぐらいないとどんどん拡大するという可能性があると思うのですよ。これは一つ考え方を言われたのであって、ひとつ検討をしてもらいたいと思います。大阪府の場合は非常に慎重な態度でやっております。そしてこれは非常に業者の心構えを書いておりますから、そのことが部落差別、同和問題に対する認識を関係者に深めるという理由にもなるわけですから、ぜひこのことを考えてもらいたい。  次に文部大臣。啓発に重点を置くということになりますと、社会教育、学校教育が非常に重要です。職員自体のやはり再教育も必要ですよ。教育するのですから、ちゃんとした人権に対する認識がなければいかぬわけですからね。あやふやなことだったら教育なんかになりませんよ。そうするとふわっとしたようなことで、何も前進しないということになります。  二十年前に反対意見もあって、今も別の角度で反対している人がありますけれども、結局は寝た子を起こすなということだったんだが、寝た子を起こしておいて、お互いに差別する者も、差別される者も、環境と意識との関係を、悪循環を考えながら総合的な政策をやろうということで一定のところまで来たわけですが、しかしこれからはソフト面で教育面には十分注意をしなければならない。そういうことで、文部大臣の今までの議論を踏まえてのお考えをお聞かせいただきたい。
  272. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 今までの御議論の方向は私も全くそのとおりだと思いますが、世の中でハード面で目につくものがよくなっても心理的な改革が行われなければいけないではないか、そこに教育における大きな大きな責任があろうと考えます。  残念ながらきょう現在、学校における差別問題が後を絶たずに起こっておるという現実等もあるわけでありますから、私どもとしましては、例えば学校教育の道徳の分野において、差別のない明るい世の中をつくるようにしていかなければならぬということや、あるいは基本的人権の尊重ということを徹底して教育の中でも行っていかなければならぬということで、きょうまでより一層心を引き締めて、同和教育の徹底と教師の研修やあるいは資料の配付等に力を入れていきたい、こう考えております。
  273. 大原亨

    大原委員 労働大臣、三十二ページと三十三ページをごらんいただきたいと思うのですが、その上には「韓国人、同和地区の人は採用しない」という、大きな企業ですけれども、サンエスの就職差別事件が起きております。その他にもレナウンその他があるわけですが、その下にあるのですが、藤尾労働大臣は、ちょっとこれは八一年の話ですけれども、労働大臣といたしまして、企業側に対しましてかなり徹底した自覚を促す文書を出しておられます。あの人は声が大きいだけでなしに、筋の通らぬことだと我々思うこともあるが、筋の通ると本人が思うことは断固としてやる人ですね。こういう文書をやりまして、私があるときに政府委員室に行きましたら、大きな声を上げてどなっておるわけですね。何をしているのかと思いましたら、ある火災保険の会社の社長が呼ばれまして、あなたのところはこういう差別をしたのか、こういって大きな声で言っていましたね。そしてその後、こういう文書を出しておられましたがね。  これは本当に、身分とか四百年続いた環境等の悪循環の中で起きた問題ですけれども、真剣に考えた場合にはイデオロギーとか党派ではないわけです。人間としての問題ですね。このことができなかったら民主主義というものは成立しませんよ。障害者に対する健常者の差別とか、女性に対する男性の差別とか、あらゆる社会の差別の根源は、これを許しておくとすべてを許すことになりますよ。これは平和に関係がありますよ。日本が平和国家としてやっていく上には関係がありますよ。そういう問題について、私は、もう一回想を新たにしてこのことについて取り組んでもらいたい、こういうことです。  国内法整備の問題も、外務大臣、今まで外務省は、公式、非公式、分科会その他でたくさん前向きの答弁をしているのですよ。あなたは国際外交をやれるのですから、そういうことがあなたの将来の政治生命を左右するのですから、こういう問題について断固としてやはり踏み切って――私は、法律で規定するものは、法三条で国や地方公共団体や国民の責任を明確にすればいいと思うのです。それで実態調査をしては毎年まじめにやっていけばいいと思うのですよ。そういう宣言的な規定、基本法という名前をつけて、私は窓口で法制局と話をしましたけれども、これは絶対にこだわっているのじゃないですよ。そして、どうしてもやらなければならぬという問題についてはやはり各論的にやるべきだ。そういうことで、全国民が新しい観点で、政府も挙げてこの問題に取り組むという姿勢が必要であろう。  各大臣ともほとんどうなずいて、寝ないで聞いておられますよ。皆さん非常によく聞いておられる。だから私は寝ている人があったら指名しようかと思ったのだが、時間も来ましたからやりませんけれども、総理大臣、条約の批准と国内法の整備とそれから行政のあり方について、この際、もう一回点検をして、そして新しい国民的な課題としての部落問題を解決できるようなそういう内閣全体の体制をとっていただきたいということを結論的に総理大臣見解をお聞きいたしまして、私の質問としたいと思いますが、いけなければもう一回ぐらいやるかもしらぬけれども。
  274. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今さらながら日本でこういう議論が行われなければならぬということは恥ずかしいことであると思います。大原さんの御趣旨を体しまして、内閣としても誠意を持って努力いたしたいと思います。
  275. 大原亨

    大原委員 これでいろいろな一般質問とか各分科会とかあるいは各常任委員会等でやりまして、そして法律、地対法が切れるのは本年ですから、昭和六十二年から国内法がないという状況になります。そうすると、条約を批准するときに、申し上げたような国内法の整備の問題が出てまいりますから、私は昭和六十二年をめどにして政府全体として結論を出してもらいたい。それまでは今のこの内閣の各閣僚は全部残っておってもらいたいという気持ちですが、まあそういうことになると総理大臣の任期等にも関係いたしますからそれ以上のことは申し上げませんが、私はぜひ中曽根内閣でこのことは、国鉄だけではなしに、それ以上の気持ちで取り組んでいただきたいと思います。そういう最後の要望をつけておきまして、私の質問を終わります。
  276. 小渕恵三

    小渕委員長 これにて細谷君、大原君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十八日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十六分散会