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1986-02-12 第104回国会 衆議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年二月十二日(水曜日)     午前十時開議  出席委員   委員長 小渕 恵三君    理事 中島源太郎君 理事 浜田 幸一君    理事 林  義郎君 理事 原田昇左右君    理事 渡辺 秀央君 理事 稲葉 誠一君    理事 岡田 利春君 理事 二見 伸明君    理事 吉田 之久君       相沢 英之君    甘利  明君       伊藤宗一郎君    石原健太郎君       石原慎太郎君    上村千一郎君      小此木彦三郎君    大島 理森君       大西 正男君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    倉成  正君       砂田 重民君    住  栄作君       田中 龍夫君    葉梨 信行君       橋本龍太郎君    原田  憲君       三原 朝雄君    武藤 嘉文君       村山 達雄君    山下 元利君       井上 一成君    井上 普方君       上田  哲君    大出  俊君       川崎 寛治君    川俣健二郎君       小林 恒人君    佐藤 観樹君       多賀谷眞稔君    松浦 利尚君       松前  仰君    近江巳記夫君       神崎 武法君    坂口  力君       正木 良明君    矢追 秀彦君       木下敬之助君    小平  忠君       小沢 和秋君    瀬崎 博義君       田中美智子君    松本 善明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         法 務 大 臣 鈴木 省吾君         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 海部 俊樹君         厚 生 大 臣 今井  勇君         農林水産大臣  羽田  孜君         通商産業大臣  渡辺美智雄君         運 輸 大 臣 三塚  博君         郵 政 大 臣 佐藤 文生君         労 働 大 臣 林  ゆう君         建 設 大 臣 江藤 隆美君         自 治 大 臣          国家公安委員会         委員長     小沢 一郎君         国 務 大 臣         (内閣官房長官後藤田正晴君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 江崎 真澄君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      古賀雷四郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 加藤 紘一君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      平泉  渉君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      河野 洋平君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 森  美秀君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 山崎平八郎君  出席政府委員         内閣審議官   中島 眞二君         内閣法制局長官 茂串  俊君         内閣法制局第一         部長      工藤 敦夫君         日本国有鉄道再         建監理委員会事         務局次長    吉田 耕三君         総務庁長官官房         審議官              兼内閣審議官  本多 秀司君         総務庁長官官房         審議官     百崎  英君         総務庁人事局長 手塚 康夫君         防衛庁参事官  瀬木 博基君         防衛庁参事官  千秋  健君         防衛庁教育訓練         局長      大高 時男君         防衛施設庁施設         部長      宇都 信義君         防衛施設庁建設         部長      大原 舜世君         防衛施設庁労務         部長      岩見 秀男君         経済企画庁調整         局長      赤羽 隆夫君         経済企画庁総合         計画局長    及川 昭伍君         科学技術庁研究         調整局長    内田 勇夫君         国土庁長官官房         長       吉居 時哉君         国土庁長官官房         会計課長    斎藤  衛君         国土庁計画・調         整局長     星野 進保君         国土庁土地局長 末吉 興一君         国土庁大都市圏         整備局長    山本 重三君         法務省保護局長 俵谷 利幸君         外務大臣官房領         事移往部長   妹尾 正毅君         外務省アジア局         長       後藤 利雄君         外務省北米局長 藤井 宏昭君         外務省経済局長 国広 道彦君         外務省経済協力         局長      藤田 公郎君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      山平  立君         大蔵大臣官房総         務審議官    北村 恭二君         大蔵省主計局長 吉野 良彦君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省理財局長 窪田  弘君         大蔵省証券局長 岸田 俊輔君         大蔵省銀行局長 吉田 正輝君         大蔵省国際金融         局長      行天 豊雄君         文部大臣官房長 西崎 清久君         文部省初等中等         教育局長    高石 邦男君         文部省高等教育         局長      大崎  仁君         文部省学術国際         局長      植木  浩君         文部省社会教育         局長      齋藤 尚夫君         文部省体育局長 古村 澄一君         厚生大臣官房総         務審議官    北郷 勲夫君         厚生大臣官房審         議官      木戸  脩君         厚生省健康政策         局長      竹中 浩治君         厚生省保健医療         局長      仲村 英一君         厚生省薬務局長 小林 功典君         厚生省児童家庭         局長      坂本 龍彦君         厚生省保険局長 幸田 正孝君         厚生省年金局長 吉原 健二君         農林水産大臣官         房長      田中 宏尚君         農林水産大臣官         房予算課長   鶴岡 俊彦君         農林水産省食品         流通局長    鴻巣 健治君         水産庁長官   佐野 宏哉君         通商産業省通商         政策局長    黒田  真君         通商産業省産業         政策局長    福川 伸次君         通商産業省機械         情報産業局長  杉山  弘君         資源エネルギー         庁長官     野々内 隆君         運輸大臣官房国         有鉄道再建総括         審議官     棚橋  泰君         運輸省国際運         輸・観光局長  仲田豊一郎君         運輸省航空局長 山田 隆英君         郵政省貯金局長 塩谷  稔君         労働省労働基準         局長      小粥 義朗君         労働省職業安定         局長      白井晋太郎君         建設大臣官房長 高橋  進君         建設大臣官房総         務審議官    佐藤 和男君         建設大臣官房会         計課長     望月 薫雄君         建設省建設経済         局長      清水 達雄君         建設省道路局長 萩原  浩君         建設省住宅局長 渡辺  尚君         自治省行政局公         務員部長    柳  克樹君         自治省行政局選         挙部長     小笠原臣也君         消防庁長官   関根 則之君         消防庁次長   井上 孝男君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       杉浦 喬也君         日本国有鉄道常         務理事     須田  寛君         日本国有鉄道常         務理事     長谷川 忍君         日本国有鉄道常         務理事     前田喜代治君         参  考  人         (日本国有鉄道         再建監理委員会         委員長)    亀井 正夫君         予算委員会調査         室長      大内  宏君     ————————————— 委員の異動 二月十二日  辞任        補欠選任   伊藤宗一郎君    大島 理森君   石原健太郎君    甘利  明君   井上 一成君    小林 恒人君   井上 普方君    松前  仰君   正木 良明君    矢追 秀彦君   矢野 絢也君    坂口  力君   小沢 和秋君    田中美智子君 同日  辞任        補欠選任   甘利  明君    石原健太郎君   大島 理森君    伊藤宗一郎君   小林 恒人君    井上 一成君   松前  仰君    井上 普方君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和六十年度一般会計補正予算(第1号)  昭和六十年度特別会計補正予算(特第1号)      ————◇—————
  2. 小渕恵三

    小渕委員長 これより会議を開きます。  昭和六十年度一般会計補正予算(第1号)及び昭和六十年度特別会計補正予算(特第1号)の両案を一括して議題とし、質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤観樹君。
  3. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 きょうから六十年度補正予算の質問に入るわけでございますが、それに先立ちまして、昨日、東伊豆町の熱川温泉大東館で二十四名の死亡、行方不明を出すという大変痛ましい事故があったわけでございますので、この問題について、総理にお伺いする前にちょっと担当の自治大臣、それから運輸大臣に若干お伺いしていきたいと思うわけでございます。  今わかっている範囲内での状況、とりわけ木造の三階建てという、しかも昭和十四年につくられたという大変古い建物のようでございますし、恐らく全国にこういった旅館というのはまだ随分あるんだと思うのです。今わかっている範囲におきます事故原因、それからやはりそういった同類のものに対して改めて消防上、防災上の調査と申しますか、それも必要でありましょうし、また、マル通マークの問題が浮上してきているわけでございますので、それにつきまして、運輸大臣に今後の対応の仕方についてお伺いをしておきたいと思います。
  4. 小沢一郎

    小沢国務大臣 昨日の大東館火災につきましては、二十四名の死者、行方不明、そのうちただいままでに遺体を収容できましたのが二十一名、まだ三名行方不明でございます。本当に痛ましい事故でありまして、亡くなられた方に対しましては心から哀悼の意を表するわけであります。  きょうから本格的にその出火原因消防法上の問題点と、それからいろいろ巷間言われておりますので、刑事上の観点からも今原因究明をやっておるところでございまして、現在におきましては、その出火原因とかそのときの状況等については的確にまだつかめておりません。いずれにしても、全力を挙げてその原因究明に当たりたいと思っております。  また、マル適マークのお話がございました。これは、三十名以上の宿泊能力とそれから三階建て以上、このホテル旅館等に対して行われるものでありまして、それ以下のいわゆる小規模のものに対しましてはこの適用がございません。先生はもう既に詳しく御承知と思いますが、この小規模な、特に古い従来からのそういった旅館等につきまして、いわゆる消防法上の防火設備とかそういったものを法によって義務づけるということは、必要であると同時に過大な設備投資を伴うものでありまして、それに小さいところはとても耐え切れないということが現状としてはあるわけです。ですからその兼ね合いを考えながら、消防法適用については十分注意していかなきゃならないと思います。  いずれにいたしましても、一番大切なことは、やはりそういう貴重な生命を預かっている、経営している皆さんに対しまして、消防関係と協力してふだんの避難訓練とか消防防火上の設備の点検とか、そういったものを十分にしていかなければ、この種の事故はただ法律を厳しくするだけではなかなか防げない、そのように思っております。したがいまして、そういった意味維持管理避難訓練、そういうものを通じて未然に防げるように今後とも指導してまいりたい、そのように考えております。
  5. 三塚博

    三塚国務大臣 今回の事故大変同情にたえませんし、私どもも、指導官庁としてその責任の重大なことを痛感いたしております。  同時に、登録ホテル旅館で三階以上の木造ホテルというのは百八十五軒ございます。至急この実態を調査しつつ、再びかような事故の起きませんように、万全の対策を講じるよう指示をいたしたところであります。
  6. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 きょうも後で、第三次産業の話あるいは日本人の生活の態様の変化の問題について少しお伺いしたいと思っておりますので、そういった意味では、せっかく楽しい旅行に行っても人生が狂ってしまうようなこういう痛ましい事故が起きない体制をお互いにつくっていく必要があるのではないかということで、なおいろいろなことがわかり次第、今後ともいろいろな対処をお願いしたいと思うのであります。  総理総理もお忙しいし、お疲れの体でございますが、きのう夜の九時二分から「脳死をこえて」という、藤村志保さんの原作によります大原麗子さんが主演のテレビがあったのをごらんになりましたですか。——ごらんになってないようでございます。ごらんになっていたら、脳死というものについて、当委員会でも随分議論になっておりますので、ちょっと御意見をお伺いしようかと思ったのでございますが、結構でございます。  それでは、本論に入らせていただきたいと思うのでございますが、私が本国会に出てきたのが一九六九年の十二月二十七日でございます。その当時が佐藤内閣。したがいまして、私たちから見ますと、ここにいます川俣さん、それから松浦さん、これは同期でございますけれども、大体、内閣二年ずつずっとおつき合いをさせていただいたわけでございます。中曽根内閣になってこれで四年目になるわけでございますが、総理、どうなんでしょう。藤尾さんの言葉ではございませんが、あと八カ月半ということになっておるのですが、今度の六十一年度予算あるいは六十年度の補正予算あるいは今通常国会に臨む気持ちというのは、やはり政権四年目で、しかもずっと振り返ってみますと、佐藤内閣以来今申しましたように二年、二年で来たのが、中曽根内閣で四年目を迎えるというのは一段と感慨深いものがあると思うと同時に、総理としては、これだけはひとつ最後に仕上げていきたいという特別何か覚悟と申しましょうか、心境の変化というのはあったのでございましょうか。
  7. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 平常心でやっております。
  8. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そこで、まずお伺いしたいのは、総理の俗に言うオーバーラン発言というものでございますけれども、これも我が党の石橋委員長も本会議で質問しましたが、どうもなかなか総理も答弁がお上手ですからそれ以上深まってないのであります。どうも私も総理の言われている意味がよくわからないのでありますが、十八世紀半ばのロックあるいはモンテスキューの話をまつまでもなく、三権分立というのは一人の権力者権力が集中しないように、そうしないと市民社会の自由というのは保てない、そういう発想から出たのが司法行政立法というものの三権分立考え方だと思うのであります。若干形態はアメリカとも違うところがございますけれども、私は、これは民主主義のあり方として大変いい制度ではないかと思っているわけでございます。  それでその際に、総理司法違憲立法審査権について言われているのではないかと私は思うのでありますが、お互い国会司法との関係は、弾劾裁判所があって不適格な裁判官については罷免をさせることもできる権利を持っていれば、国会がつくった法律について憲法違反審査権司法が持っている、あるいは行政についても、その命令やその他のことについて憲法違反をしていればこれはチェックできるというのがいわば司法権限だと思うのであります。総理が言うお互いの三権というものがいわば適度な調和を保っているかどうか、均衡を保っているかどうかというときには、例えば司法のことについていえばどこがオーバーランをするのか。つまり、根本的に違憲立法審査権を持っているということがどうもこれがオーバーランということなのか、その根本まで総理は頭の中にあってああいう御発言になったのか、どうもその辺がよくわからないのであります。いわばお互い国会行政府とは、これはまあ議院内閣制ですからかなりアメリカと違う意味でのチェックやり方でありますが、お互いに三者三様、チェック機関を持っている。そういう中において司法との関係でいえば、これはいわば違憲立法審査権という大変強い権限を持っている。このことをオーバーランと言う限りは、何か否定をなさったのではないかというふうに受け取られてもしようがないのではないかと思うのでありますが、それはどういうお考えでございましょうか。
  9. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、戦後四十年たちまして、立法司法行政という国家統治権をなす大事な機能が、いわゆる均衡調和のもとにうまく機能しているかどうか常によく見直し合い、そして均衡調和がとれているように努力していくべきである、そういう考えを持っておりまして、そういう意味おのおのおのおの分野についてよく反省し合い、また行き過ぎがないように抑制し合い、そしてよく機能するように努力し合う、それが大切なときに来ている。二十一世紀を迎えて、四十年もたったからこの辺でよく見直し合うということが大事である、そういう意味一般論を申し上げたのであります。
  10. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そうすると総理、今のお言葉をそのまま使えば、例えば司法との関係において、何件か戦後憲法違反であるという判決が下っているわけでありますが、司法関係でいえば、行政府の長としての総理でもいいんですが、行政司法との関係で今総理の言う言葉をそのまま使えば、私も一般論として、制度というものは絶えず見直しが必要だと思うのです。それはもう否定しないし、絶えず人間の気持ちも変わってきますからそれは非常に必要だと思いますが、総理のお言葉を今そのまま使わしていただけば、一体それじゃ行政司法との間、立法司法との間に均衡調和がとれてない、あるいは行き過ぎているところがある、あるいはよく機能をしていないというようなことが具体的にあるということが頭にあられてそういう御発言になるのでしょうか。
  11. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 公務に携わる者は、そのおのおのの系統、それに従いまして、それらの法律あるいは憲法に適合してうまく行われているか、おのおのおのおの分野においてチェックし合い、また勉強し合う、また見直す、そういう努力が必要である、そういうふうに申し上げているので、一つの部分に焦点を当てて申し上げた話ではありません。
  12. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そうしますと、憲法の中にございます司法に与えられた行政なり立法へのチェック機能としての違憲立法審査権、このことは決して否定なさるものではない、こう理解していいですか。
  13. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そのとおりです。そのことは国会でも申し上げているとおりです。
  14. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そこで、それがどうしてじゃオーバーランというああいう発言になるのかがどうもよくわからないのであります。  それで、五十九年の十一月に——東京高等裁判所で例の定数是正について違憲判決が出たわけであります。違憲立法審査権というものが最高裁だけが持っている権限ではないということは、いわば法曹界では常識になっているわけでございますが、そのとき総理記者会見の中で、解散権内閣にとって憲法上の最大と言っていい機能である、解散権を縛るような——解散権というのは生きた政治の最も重要な一種の統治行為である、これを定数という側面だけから見て違憲という判決を下すことはいかがなものかというような御発言を、古い話でございます、二年前でございますが、記者会見されているわけでございますけれども、これは今もそういうお考えでございますか。定数の面からだけで解散権というものを練るべきではないというお考えは、今も一緒でございますか。
  15. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 解散権というものは、憲法第七条において認められております内閣の最も重要な機能でありまして、政治の運用において重大な局面に民意を問う、そういう必要がある場合に政府が与えられている独自の機能でございます。ほかに別にこれを制約するような条項が憲法には見当たらない、そういうところを見ますれば、やはり政府の判断で憲法に従ってこれは行わるべきものである、そう考えておる次第でございます。  しかし、違憲法令審査権というものは、たしか憲法の条文でも法律、政令等々に至るまで違憲の場合云々と、そう書いてありますですね。でありまするから、これは当然認められておることであって、私はそれまで否定しておるわけではないのであります。  しかし、事解散権に関しましては、これは行政権が持っておる最も重要な機能で、それが法律等によって制約されるということは本末転倒である、法律憲法を縛るということはあり得ないのでありますから。憲法法律を縛るということはあり得るのです。その点ははっきりさせておきたい、そう申し上げておるのであります。
  16. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 この議論をすると非常に長くなるので、余り私もしたくないのでありますけれども、大体公選法の別表が、公選法がと言うべき性格かもしれませんが、憲法違反だと言われているときに、法律論として、例えば不信任案が成立をしたときに内閣総辞職するかあるいは解散をするか、どちらかが可能性があるわけでありますけれども、そのときに、解散になったときに選挙をする選挙やり方というのは公職選挙法に基づいているわけで、その選挙法自体憲法違反だというのに、解散権とそれから公選法憲法違反の問題とはこれは別の問題であるというのは、恐らくきょうお集まりの皆さん方も全部そうだと思うのでありますが、私には理解できないのです。だって選挙をやるというなら公選法に基づいて選挙をやるので、そういう意味で、私たちは内閣法制局の見解というのは極めて不可解であるというふうに思っておるわけでございまして、これは私は事実上縛られるんだというふうに思っているわけであります。  この議論をずっとやっておりますときょうそれで終わっちゃうので、その点は残念ながら触れませんけれども、そこで本題である定数是正の問題についてお伺いしたいのでございますが、きょう後ろに山口国対委員長が見えていらっしゃいますが、きょう国対委員長会談でひとつこの打開の道を設けようということでございます。  私も足かけ三年この定数是正問題をやってきたわけでございます。今防衛庁長官になっていらっしゃる加藤さんが[民党の総務会長のときからずっとおつき合いをさせていただいて……(「総務局長」と呼ぶ者あり)総務局長の方ですか。勝手に一格上げてはいかぬですな。失礼いたしました。加藤総務局長時代からこの定数是正の問題をやっておるわけでございますが、これは率直に言って、二名区問題というのは妥協点がなかなかない。加藤総務局長と、これは冗談でございますけれども、言ったのですが、どうにもならないので、一人とにかくどこでもいいから十万票とっていらっしゃい。どこの選挙区でもいいから十万票とってきたら衆議院議員にするというふうにしようかと。選挙区というのはそうしないととても調整できないということを、これは冗談で言ったのでございますが、それほどなかなかできない。  総理、どうなんでしょう。総理はとにかくどうも早く解散したい、解散したいというのが専らのようでございますが、解散する前には、法律論の前に何といってもこの定数是正をしなければ国民に対して相済まぬと私は思うのであります。本当にそんなに早く解散したければ、ひとつ総理・総裁としての指導性でもってこの二名区問題というのは解決をしなければならぬと私は思うのであります。その際に、この前の臨時国会で、私たちも一日も早く、憲法を守る政党としては一日も早くこの違憲状態というものを脱しなければいかぬというふうに思って、各党の皆さんとも協議をしながらやってきたわけでございますが、あれだけの国民の世論の大きな声援がありながら臨時国会ではこの定数是正がどうして実現をしなかったのか、どこに原因があると総理、お思いでございますか。
  17. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 与野党の合意がなかなかできなかった、そういうことでございます。
  18. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 いや、その合意ができなかったポイントは総理はどこだと御理解なさっていらっしゃいますか。
  19. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 自民党が出しておる六・六案、それから野党の皆さんがお出しの案、やはりポイントは二人区という問題があったように思います。
  20. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 どうなんでしょう、野党の方も、これもいわば生命をかけて二名区はだめですと全部これは言っていらっしゃるわけですね。その思いはいろいろなことが臨時国会のときには出ましたし、あるいはそのときには六十年の国勢調査という問題もありましたが、その六十年国勢調査の問題はクリアしたわけでございますので、このままやればまた二名区問題で同じような暗礁に乗り上げるのじゃないのでしょうか。野党全部こぞってこれは二名区にはとにかく反対だ、こういうことであれば、幾らか野党より少し大きい自民党さんの方が譲って二名区のない中選挙区制、つまり今の問題は定数是正の問題でありまして、選挙制度の改正の問題ではないわけでございますので、ひとつ総理・総裁としての指導性をもって二名区はつくらないということになれば、私は具体的に提案をするわけでございますけれども、議長のもとで、例えば最高裁の長官を経験なさった方とか中央の選管委員長を経験なさった方とか、あるいは日弁連の会長をなさった方とかあるいは法曹界あるいは憲法学者、こういった方々の、本当に中立的だと思われる方々に、これは法的に言いますと私的な諮問機関で結構でございますから、こういった方々に境界線の変更をやっていただくということで、いわば議長の権威のもとにこの公選法の改正をしていくということ以外に私はこれは抜け出る道はない。挙げて総理解散をお急ぎになるのだったらば、ひとつ総理の指導性のもとに二名区はやめにして、そして野党案を全部のめということではこれはなかなか自民党さんの方もいかがでありましょうから、その境界線変更につきましては、ちゃんとした第三者機関で議長のもとでやるということが一番とり得る最大の道ではないか、こう思いますが、いかがでございますか。
  21. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは社会党としての正式のお考えですか、社会党を代表して今あなたは質問なすっているのですが。それとも佐藤君個人の御意見ですか、まずそれから承りたいと思います。
  22. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私も選挙法をずっと党内でやっておりますので、もし総理が本当にそれで乗っていただけるのなら党の意見にいたします。どうですか。
  23. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今はまだ佐藤私案という段階ですね。そういうお考えがあることは自民党の方にもお伝えをいたします。  やはりこれは自民党だけが突出してはなかなかできない。前にも臨時国会でも極めて痛感したところでございまして、きょうは国対委員長会談もございますからよくお話し合い願いたい。自民党が突出するというとみんな野党が反対されます。やはり我々謙虚な立場に立ちまして、両方の話をよく話し合って進めるようにいたしたい、そう思っております。
  24. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 繰り返すようですが、結局この問題は二名区問題なんですよ。私はもう前からNHKのテレビのあれでも言っております。結局は二名区問題なんです。そうなると、これはどこをどうやって吹き抜けるかということになれば、いわば与党最高の指導者である総裁の決断以外に私はないと思っております。したがいまして、国対委員長会談、これからいろいろやっていただくわけでございますが、この問題が結局吹き抜けなければ話は前に行かない。その意味では、総理が本当に解散をお急ぎになるのだったら、ひとつ総理・総裁のもとの指導性において二名区の問題を引っ込めていただきたい。そのかわり、境界線を、我々も案を持っておりますけれども、それを自民党さんに押しつけるということは、これは失礼でございますから、第三者機関で議長のもとでひとつやろうじゃありませんかということでございますので、総理の崇高なる指導性について期待をしたいと思いますが、いかがでございますか。
  25. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は解散考えてないと申し上げているので、別に解散なんか急いでいることもございません。  ただ、この選挙法の問題は、違憲状態という判決もございますから、国会全体の責任で速やかに解決しなければならぬ、そういうことで先般の議会で、各党の合意もあり、また各党首は議長さんにお呼び出しをいただいて、その前で承知してきた議長見解というものも既にあるわけでありますから、これらを中心にして議会としてできるだけ早く合意を成立させるように努力して、あの議長見解にもありましたように、速やかに今議会において成立させるように努力したいと思っております。
  26. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 今総理も言われましたように、速やかにということでございますから、我々もそれなりに努力をしたいということは間違いないわけでございまして、あわせて、総理が標榜していらっしゃいますように、大統領的総理を目指している総理としては、ひとつこの際大いに指導性を発揮をしていただきたいと思うのであります。  それから、もう一つ政治姿勢でお伺いしておきたいのは、天皇在位六十周年の記念式典を四月二十九日にやられるという問題でございます。これについては、私もこの問題自体で本当は少し質問したいのでありますが、実は私の専門の方の担当は経済の問題になっておりますから、これを触れておりますとまたとうとうと総理が述べられるから、ちょっと私は時間がないものですから、それに敷衍をしまして、何か新聞等では、天皇在位六十年の記念に恩赦をやるんだという話が出ているわけでございます。特に選挙違反と贈収賄の件だ、こういう話が新聞に出ているわけでございます。公選法違反になった方々が、今服役していらっしゃる方が十四人、贈収賄が六百六十一人、これは昭和五十九年末の数字でございますけれども、特に公選法では公民権停止になっている方がざっと五千五十二人ということで、これは略式命令請求が出た方とほぼ一緒だと見ていいと思うのであります。特に汚職の問題につきましては、昨年の犯罪白書にも出ておりますように、特に地方公務員等の汚職が多いということが特筆をされている中でこの天皇在位六十年の記念に恩赦をするということは、私はこれは大変間違った政治だと思っているわけであります。  昭和四十七年、沖縄の復帰の恩赦以来、恩赦というものは、大赦であれ特赦であれ減刑であれ刑の執行停止であれ、やっていないわけでありますね。やっていないにはやっていないなりの理由があるのだと私は思うのでありますが、法務大臣、これはどうして昭和四十七年以来恩赦というのは—それ以来大臣であるわけではありませんけれども、内閣の一員として、やはり恩赦というのは、刑事政策上と申しましょうか矯正政策上と申しましょうか、好ましいことではない、恐らく法務省もそう考えていらっしゃるんじゃないかというふうに私は思いますが、沖縄恩赦以来、理由をつければ恩赦の理由はあったんじゃないかと思うのであります。やってこなかったということは、これはどういうことでしょうか。私はそれなりに理由があるんじゃないかと思うのですが、どういうお考えでございましょうか。
  27. 小渕恵三

    小渕委員長 後藤田官房長官。(佐藤(観)委員「法務大臣じゃないの、違うの」と呼ぶ)
  28. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 委員長の御指名でございますから、私からお答えをいたします。  恩赦というのは、申し上げるまでもなく国の刑罰権、これを全部または一部放棄をするという極めて特異な、しかも重要な行政作用だと思います。それで、御案内のように戦前は、これはどちらかというと私は恩恵的な考え方を重視をして行われておったと思うのです。ところが戦後は、これはやはり刑事政策的な観点からこれを重視をするといったようなやり方で今日に至っていると思います。戦後、私の記憶では十回前後行われておるわけでございまして、そして特に刑事政策的な観点で相当積極的に行われているんじゃないかな、私はこう思います。しかし、事柄の重要性にかんがみまして、これはやはり遵法精神その他についての疑惑を生むといったようなことがあっては大変なことでございますから、恩赦はあくまでも私は慎重に取り扱わなければならぬ、これが基本的な考え方であろう、これは現在内閣が行うということになっておりますから。  そこで、今回の御質問の点について申し上げますと、これはやはり慎重に検討すべき課題であると私は思いますけれども、しかし今日恩赦を行うといったようなことは、新聞等では拝見しておりますが、考えておりません。
  29. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 今言われた今日の時点ではというお話で、そちら様では四月の二十九日に式典をやられるということのようでございますが、これは今官房長官からお話があったように、私も決して好ましいことではないという、あるいは大赦の場合には公訴権もなくすということでございますから、大変これは好ましいことではないと私は思っているわけで、総理、そういうことで天皇在位六十年の記念恩赦というのはない、こう見ておいてよろしいですね。
  30. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ただいま官房長官がお答えしたとおりです。
  31. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 次に、外交問題についてちょっとお伺いしたいと思いますが、昨年十一月に米ソ首脳会談が行われ、また一月にはシェワルナゼ・ソ連外務大臣が訪日するということで少し暖かい風が吹いてきたという感じがしておるわけでありますが、ただ、中身についてはそう物は簡単ではないと私も思っております。しかし、幾らかでもこういう暖かい外交状況というものができてくることは大変好ましいことだと私も思っておるわけであります。  そして、日本の外交の中でいわば欠落をしている問題というのは、昨年も私取り上げましたけれども、朝鮮半島の問題が日本として対応が大変おくれているのではないかと思うわけであります。それはそれなりに皆さん方から見ればいろいろな状況があるということだと思うのでありますが、今御承知のようにチームスピリットの問題で南北の対話がとまっておりますが、しかし六月にまたスポーツ会談とはいえやろうということでありますから、そういった意味では、南北とも決して私はこれによって対話をとぎるということではないんだと思っておるのであります。  そこで、本来なら少し米ソ首脳会談後の全体的な問題についてお伺いをしたいのでありますが、時間もございませんので、ひとつ朝鮮半島問題に限ってお伺いをしたいと思うのでございますけれども、どうなんでしょう、総理、日本の残された課題として、日本政府の場合には大韓民国政府との関係がございますから、朝鮮民主主義人民共和国との交流拡大というのはなかなかやりにくいということのようでございますが、しかし、そのことなくして本当に日本の周りの外交的な良好な状況をつくっていくことはあり得ないのではないかというふうに私は考えているわけでございます。その意味で、こういった米ソの首脳会談後の状況、あるいは日ソの定期外相会議もこれから持たれる、順次行われるというような状況の中で、残された課題であるところの朝鮮民主主義人民共和国との状況について、我が日本としても交流をいろいろな意味で拡大をしていくという御意思はないのかどうなのか、その全体的な状況について総理のお考えをお伺いしたいと思います。
  32. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まず日ソ関係については、先般シェワルナゼ外務大臣が御来日になりまして、非常に良好な雰囲気が醸成されたと思います。今度は安倍外務大臣に行ってもらいまして、その良好な雰囲気を増大するように努力してもらいたいと思っております。今までは一般的な雰囲気も冷たく、現実の実務問題も厳しい、そういうことでありましたが、日本政府としては一般的な雰囲気を良好ならしめる、そして現実問題も着実に一歩ずつ解決する、着実に解決していく、そういう考えに立って今努力しておるところでございます。  しかし、相手側のその後のいろいろな動きを見ますと、現実問題については極めて厳しい態度をとってきておる。これは漁業問題等を見ても明らかであります。それだけに甘い観測は禁物である、現実問題、実務問題になりますと、そういう考えを持たざるを得ません。しかし我々は、ともかくなかなか難しい相手に対してはそれだけに粘り強く対話を続け、解決していく努力を払う、そういう立場をとっておりますから、今後も一般的な両国関係をいい雰囲気の方へ持っていくように努力しつつ解決していきたい、そう思っております。  朝鮮半島の問題につきましては、半島の平和の維持について、緊張の緩和については重大な関心を持っておるわけでございます。北との関係におきましては、これは従来、民間関係あるいは一部の経済問題、文化、スポーツの問題に限定しておりまして、南北関係の対話がどういうふうに進むか、それを非常に重大な関心を持ってみ守っておるところでございます。我が国は伝統的に、かつ条約的にも韓国との間で非常に緊密な関係を持ち、友好関係を維持しておる次第でございます。したがって、韓国の動向というものを無視して我々が朝鮮半島の問題についてコミットするということは厳に避けなければならぬし、また避けてきておるところであり、将来もそうであります。  したがいまして、北との関係におきましては、今までの線は持続していくけれども、これ以上の進展という問題については、南北関係がどういうふうに推移していくか、そういう動向を子細に点検しつつ、我々は我々の考えをまとめていきたい。両国の間には、経済会談あるいは国会議員間の会談あるいはスポーツ会談、赤十字会談あるいは首脳会談、さまざまなチャネルをつくろうと努力しつつありますが、私はそれらの努力を非常に評価しておるものであり、それが実っていくことを願ってやまない次第であります。
  33. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 これは総理に聞くのもどうかと思うのでございますが、この前総理も会われたワシントン・ポストのキャサリン・グラハム会長が全斗煥大統領と会われて、その際に新聞の報ずるところでは、どうも南北対話というのは北側が力によって南北を合併するということの手段に使っているのではないかと、全斗煥大統領が極めて悲観的な、そして武力衝突もあり得るのではないかということを述べられているというのが報道されているわけでございますが、総理の知り得る限り、南北対話というのは今はそういうことで中断をしておりますけれども、これから良好な方向にもう一度南北対話が進んでいく、特に全斗煥大統領がいわば最高首脳と会おうじゃないか——これは北の方からもそういう話があるわけでして、そういう意味ではそのことが実現をすること、いわばトップ会談で、米ソのトップ会談も、それ自体の中身としては軍縮に直接結びついていかないにしても、やはり大きな意味で一歩前進、相互訪問というのはそれなりに大きな前進だと私は思うのであります。そういう意味では、南北がトップ会談をしていくということは、本当に、中身そのもののいろいろな具体的な問題はさておいても、あの状態の中で南北トップ会談というのは緊張緩和にとって大変なプラスじゃないかと私は思っておるのでありますが、片方ではそういった悲観的なことも報じられているものですから、その辺わかりませんが、総理としてはこの南北会談というのは、総理という立場でなかなか言いにくい話かもしれませんが、どういう方向に行くだろうというふうに見られておるのでございましょうか。  あわせて、その中で一体、いろいろな意味関係のある日本の外交としてどう対応すると申しましょうか、何らかのやはり手助けができるところがあれば私はやるべきではないかと思いますが、その点はいかがでございましょうか。
  34. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 南北の首脳会談は、むしろ全斗煥大統領の方から提起して、積極的にその努力もしておるというふうに私たちは理解しております。これができるだけ早期に実ることが朝鮮半島の平和と安定のために望ましいと思います。米ソ間におきましても、レーガン大統領とゴルバチョフ書記長の会談が行われまして、それでやはり世界はやや明るさを取り戻しつつある。そういうことで、同じような性格もあると思うので、ともかくいろいろな前提があると思いますが、それらをうまく解決し、調和させて、南北当事者が、首脳がお会いになるということは好ましいことであり、我々は歓迎する次第でございます。  また、韓国側といたしましても、オリンピックを控えまして、八八年のオリンピックのときにはできるだけ多くの参加国をソウルにお呼びしたいという気持ちを持っておられると思うのであります。そういう意味からいたしましても、単に自由世界のみならず共産圏の諸国の参加も強く期待しておると思うのです。  モスクワ・オリンピックはだめであり、ロサンゼルスは今度はソ連側が参加しなかった。変則が続いておるので、ぜひソウルにおいてはオリンピックらしいオリンピックをしたいと韓国の皆さんも念願し、世界の諸国も念願をしておるので、そういう場所をつくり上げていくためにも、この南北が融和して緊張が緩和されていくということが望ましいことであり、我々はそういう意味において、韓国側について力になることがあれば国際的にもいろいろ努力をしてみたい、そう思っておる次第であります。
  35. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それでちょっと確認をしておきたいのでありますが、日朝議連の皆さん方の御努力で、幾らかでも朝鮮民主主義人民共和国どの交流について拡大をしていこうという考え方、その他残っております債務の問題等もございまして、許政治局員が九月ぐらいに来日という話がいろいろあるわけでございますが、これについてはまあ政府政府としてのお立場があるのでございましょうけれども、いろいろな形での妨害はしないということは確認しておいてよろしいですね。
  36. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 日朝関係につきましては、御承知のように外交関係ありませんから、民間レベル、経済、文化、これまでも一定の交流があったわけでありまして、これを積み重ねていくというのが基本的な姿勢であります。  そういう中で、日朝議連の皆さんがいろいろと努力していただいておるわけでありますが、日朝関係の民間レベルの交流を積み重ねるといっても、日朝議連のお話等を聞いてみましても、例えば債務問題なんかは今大変なネックになっておりまして、こうした問題がやっぱり解決の方向に進まないと、北朝鮮側が債務をきちっと払うという方向に進まないと、民間レベルといってもこれ以上の展開は私はなかなか難しいのじゃないか、こういうふうに思っておるわけでございます。そういう意味で、債務問題が解決することを期待しております。  そういう中で北朝鮮の要人の訪日等も話題になっておるわけでありますが、まだそういう問題について具体的に政府として承ってないわけでありまして、これまでの経緯もありますし、そういう点も踏まえて具体的に要請があったときに慎重に対応してまいりたい、こういうふうに思います。
  37. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 政治用語で「慎重に」というのはやらないということにふだんとられるのでありますけれども、今外務大臣が言われたように、幾らか前に障害があることは私もわかっておるわけでございますが、総理が言われているように全体的に少しでも前に進むようにということになれば、外務省のお立場はそれなりに細かいことやいろいろなことがあるのでしょうけれども、それは抜きにして、抜きにできないという部分はあるかもしれませんが、ひとつそういった良好な関係づくりのためには、幾らかでも前進することは努力をしてみたい、こういうふうに理解してよろしいですか。
  38. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 具体的にそういう要請とか話し合いが進んでおるという点について、政府としてはまだ十分承っておりません。しかし、南北対話が進んでおる、朝鮮半島の平和、緊張緩和、そういう状況がいろいろと今後進んでいくんじゃないかと期待もしておりますし、そういうことも踏まえて総合的、全体的に判断をその際はしなきゃならぬと思います。
  39. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 今の段階ではそういう御返事しかないかと思いますが、そういう意味で、日本外交の中で残された問題でございますので、エアポケット、空白をつくらないようにひとつ進めていただきたいと思います。まあニューリーダーの一人である安倍外務大臣でございますから、これは将来にわたっても、日本の安全にとりましても大変重要な課題でございますから、ひとつ積極的、前向きに取り組みをしていただきたいと思うわけであります。  その次に、韓国に関係をする問題で、サハリン、旧樺太でございますけれども、残された韓国人の方々の帰還の問題について少しお伺いをしたいと思います。  ただ、ここで韓国人と私は簡単に言いましたけれども、実は当時は日本の国籍であったわけであります。そこに問題が発生しているわけでございまして、戦前、戦中、国内からあるいは朝鮮半島から、いわば強制連行のような格好で南樺太へ行った方々が八十万人とも百五十万人とも言われるわけであります。鉄道敷設とかあるいは鉱山とか、そういった中で働かされてきたわけでございますが、一九四五年敗戦、そしてそのときに日本国籍を持っていた方が三十五万人いらっしゃったと言われているわけであります。  それで、一九四六年の十二月十九日に締結をされましたソ連地区日本人引き揚げに関する米ソ協定というのがございまして引き揚げが始まったわけでございますけれども、このときには日本人俘虜及び一般日本人ということで、いわば内地の日本人しか帰還が許されなかったということで、当時、今で言えば韓国、南朝鮮地区から来られた約四万三千人と言われております朝鮮人の方々というのは、大変強い帰還の希望を持っていらっしゃったわけでございますけれども、今の米ソ協定によりまして帰還ができなかった。  これは、国際法上まだサンフランシスコ条約を結ぶ前でありますから、本来なら日本国籍というのが形式上あったのではないか、内容的にも日本政府が本来なら原状復帰をさせる義務があったのではないかという議論があるわけでありますが、ここでは法律論ちょっとおきまして、これをやっておりますと大変長くなりますし、今、樺太裁判もあることでございますからこの問題ちょっとおきまして、その後の問題でございますけれども、一九五六年、日ソ共同宣言の中で、五七年から五九年にかけて日本人女性と結婚をした韓国、南朝鮮の人々というのはこのときに帰ってくることができたわけですね。しかし、その夫の御両親というのはそういう関係にないということで、そこでいわば配偶者の両親の帰還は許されずということで、奥さんが日本国籍、そしてその御主人、そこまで、その子供は帰れましたけれども、その御主人の御両親等は帰れなかったということもございまして、今なおサハリン、旧樺太地区には韓国へ帰りたいという方が七千人とも、あるいはもう四十年余たっておりますから、意思はあっても年をとってしまったということで、もうその意思も——ソ連籍にはしてあるけれども帰りたいという方々が大変残っているようであります。  この話は、いろいろな民間の方々がいろいろ御努力をなさっているわけでございますけれども、考えてみれば、日本の戦前に犯したいわば戦争の罪というのが、こういった方々にまだ大変色濃く影を残しているというふうに私は感じております。帰れないと思えばますます故郷が恋しいと感ずるのは、私は人間としての心情だと思うのです。会えないと思えば、やはりもう一回会って死にたいと思うのが私は人間の普通の考え方ではないかというふうに思うわけであります。まして、いわば生木を裂くように朝鮮半島から極寒の旧樺太に連れていかれて、そしてそのまま、いわば外交の落とし子のような格好になってしまって今なおある。特に韓国の中には、帰らぬ夫を待ちわびている、お父さんを待ちわびている、お母さんを待ちわびているという方々が会をつくっていらっしゃいまして、そしてぜひ一日も早く帰還できるようにということで、申・蘇離散家族会というのが毎年八月十五日に大都市で総会を開いているわけであります。こういったことを思いますと、既に四十数年の歳月がたっていることでございますし、もう既にこの世を去った方もいらっしゃるわけでございます。しかも、御存じのようにソ連と韓国には国交がございませんから、どういうふうな生活になっているかという情報もなかなか入らぬということもございまして、どうも聞くところによると生活が苦しいというわけではない。現地の共産党の幹部になられている方もかなりいらっしゃるようでございますが、しかしやはり故郷に帰りたいという気持ち、望郷の念というのは、私は耐えがたいものがあると思うわけでございます。そういった意味で、ひとつ日本国政府においても、こういった日本の戦前に犯した、戦争の原罪と申しましょうか、こういったことにやはりこたえていく必要があるのではないか。  先ほど私申しましたように、これは国際法上の問題とかいろいろなことを申しますと大変難しいし、しかも韓国とソ連という国交関係、外交関係がない状態の中での話でございますからますます問題は難しいけれども、幸い日本の場合にはソ連にも韓国にも外交関係があるわけでございますから、日本政府として当然これはやるべきことではないかというふうに思うわけでございまして、ひとつ具体的に提案をさせていただきたいと思いますので、外務大臣のお骨折りをいただきたいと思うわけでございます。  一つは、実は最近でも一年に一人、二人と日本に帰られている方々——帰られているというか日本を訪れて、そして韓国からも日本に来られて、そして日本で再会をされている方々が三月に一回、例えば六十年で言えば五人いらっしゃるわけでございます。このときの最大の問題というのは、何といっても費用の問題でございます。サハリン地区から出てくる、そして片方は韓国から出てきて日本で会うということでございますから、しかもそういったように一家の柱を戦前樺太へ連れていかれたわけでございますので、残された方々というのは、率直に言って大変家庭的にも恵まれていないわけであります。  こういったことを考えてみますと、今、中国残留孤児の方々に、日本での親を捜すということで大変骨を折っていただいている。あるいは、日本で被爆をされた韓国の方々のこういった治療についても面倒を見ようではないか。あるいは、台湾の国籍の方々の兵役その他の問題につきましても、ひとつこれも調査をしようではないか。こういうようになっている中で、このサハリン地区に取り残された旧日本人と申しましょうか、韓国に帰りたいという方々の旅費やらあるいは日本に滞在をするときの費用やら、こういったものを日本政府で見てもらうことは、中国残留孤児の問題との比較におきましてもその他の比較においても、これは私は日本政府としてできることではないかというふうに思うのであります。あるいは韓国の方々がサハリン地区を訪れるということも、一つの方法ではないかと私は思うのであります。ひとつこの間のパイプを日本の外務省にぜひつけていただきたい。  そして私は、一番いいのは、ソ連籍でありあるいは無国籍になっていらっしゃる方々が故国へ帰れる、故郷に帰れるということがベストではないかと思います。そのときの費用その他の問題もございますけれども、シェワルナゼ外相との間に安倍大臣も骨を折っていただいて若干の進展があったやに聞いておりますので、その辺はどういうふうになっていたのか、そして今後ともひとつ皆さん方に御努力をお願いしたいと思いますが、いかがでございますか。
  40. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 政府としましては、今お話しの問題につきましてはあくまでも人道問題の解決である、こういう立場に立ちまして、従来より機会あるごとにソ連側に好意的な配慮を申し入れてきておるわけですが、先般の日ソ定期外相協議におきましてもこの問題を提起した次第です。すなわち我が方より、この問題が日ソ間の協議の対象とはならないとするソ連側の立場は承知しているが、人道的見地から配慮を求めたい、例えば親族にサハリンを訪問させるとか、あるいはこの問題を関係国の赤十字間の協議にゆだねるとかが考えられるのではないかと述べたわけでございます。これに対しましてシェワルナゼ外相は、この問題は基本的にはソ朝間の問題である、しかし例外があり得るや否や検討してみたい、こういうふうなお答えでございました。いずれにしても、私もまた訪ソする計画を持っておりますから、その際も引き続きましてソ連側に、検討しようということですから、検討結果をただすことも含めまして、さらに働きかけを進めてまいりたいと思っております。  今、佐藤委員のお話しのように、このサハリン在留の韓国人、かつては日本人であったわけでございますし、そういう意味では、国際法上の問題、法律的な問題は別として、日本においてもそれなりの、一半の責任といいますか道義的な責任というものはあると私は思っております。それなりに日本政府としてもこれに協力、努力をすることは、日本のやらなければならぬ責任の一つであろう。ただ、法律的に、国際法的にはソ朝間の問題ということでソ連も言っておりますし、側面的な働きかけということで今鋭意努力を重ねておりますし、まさにこれは人道的な問題として、日本も責任の一半を負って努力は重ねてまいる決意でございます。  なお、このサハリン在留の韓国人が帰ってこられる場合あるいは親族等の面会、そういう際に日本政府として何かできないかというお話でございます。この点についてはソ連との話し合い等も踏まえる必要があるわけでございますが、今後の問題として、日本政府として何ができるかということについてはひとつ検討してまいりたい、こういうふうに思っておりますが、いずれにしても、情報の交換とか提供とかあるいは入国面での便宜供与等できるだけのことはしなければならない、こういうふうに思っておりまして、これはまさに人道的な問題、そして日本も関係のある問題として私は取り扱っていきたい、こういうふうな気持ちでございまして、今度の日ソ定期外相会談では積極的にソ連に対しても働きかけてまいりたい、こういうふうに存じております。
  41. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 安倍外務大臣は本当に長いことこの問題でもいろいろと前向きに進めていただいておることを改めて感謝を申し上げ、ひとつ今申しましたように人道問題として、五百億ドルの貿易黒字がある、日本はすごい国になったというだけではなくて、やはりアジアの国民の皆さんからも大変信頼をされる、尊敬をされる日本人、日本ということになっていかなければ意味がないと私は思っておりますので、ぜひそういった意味でなお一層のお骨折りをいただきたいと思います。  あわせて、ひとつ大蔵大臣、まだ具体的に外務省から、いろいろ外交問題もございますので、そういった旅費の問題その他滞在費の問題等、具体的に請求が出ているわけではないと思いますけれども、しかし韓国から来られる旅費やらあるいは宿泊料、それからサハリン地区から来られる旅費その他宿泊料ということになりますと、民間ボランティアとしましては結構大変な額になるわけでございます。国家予算の中では、こういう時期でありますけれども、そのくらいは十分賄える状況だと私は思っております。具体的に外務省の方からこれは上がってきている話ではないと思いますけれども、六十年度の予備費あるいは六十一年度の中でも、ひとつこういった人道的なものについては配慮があってしかるべきであるというふうに思いますが、その点はよろしゅうございますか。
  42. 竹下登

    ○竹下国務大臣 基本的には今、安倍外務大臣からお答え申し上げたとおりでございますが、閣議で一度この問題について、「御指摘の問題については、日本政府としても人道問題として真に同情を禁じ得ない。政府としてもこの問題に深い関心を有するものであり、これら樺太残留朝鮮人の帰国実現につき、できる限りのことはしたいと考えている。」こういう一応質問主意書に対して閣議を通して答弁を決めたことがございますので、具体的にはいずれ外務省との折衝になろうかと思いますが、十分心して対応すべき課題だと思っております。
  43. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 ありがとうございます。  総理、実はまた中国残留孤児の皆さん方が日本に来られますが、ちょうどあのお子さん——お子さんというのはどうも抵抗があるのですが、あの方々というのは私たちと同じ世代なんですね。ここにいらっしゃいます小沢自治大臣、加藤さんはちょっと上ですけれども、大体一緒ぐらいの世代、私は昭和十七年生まれでありますが、大体同じ世代の方々でございますから、大変私たちとしても関心が深いわけであります。私は政治に身を置く者として、歴史にイフはないと言われますけれども、石橋内閣昭和三十一年にできたときに日中国交回復という話があったわけですね。あのときもし石橋総理が風邪を引かなかったら、私は日中国交回復というのはもっと早くできていたんじゃないか、もしあのときに国交回復ができていたら残留孤児の皆さん方はほとんど親に会えたのではないかということを考えますと、私は政治にある者としての責任というのは大変大きいのではないかと思うのであります。  特に私は、余分なことでありますけれども思いますのは、これは我々としても何かやりたいと思っておりますが、あの中国の養父母の皆さん方ですね。日本人だったら、いわば戦争でさんざん痛めつけていった方のお子さんをもらって育てるということをやっただろうかということを考えますと、私は中国の養父母の方々というのは、これは何らかの形でやはり日本人として感謝をする、何らかのことをする必要があるのではないかと思っておりますが、ちょっと今これは本論じゃございませんけれども、そういうようなことで、いわば政治といいましょうか外交といいましょうか、それが人間の運命に与えた影響、これははかり知れないものがあるということを、私はつくづくこういった問題を通じて感ずるわけでございます。  そういった意味で、中国残留孤児の皆さん方につきましては、厚生省を中心にして一生懸命やっていただいておるわけでございますが、この樺太に残された、私はあえて旧日本人と申し上げたいのでありますけれども、問題につきましても、今外務大臣、大蔵大臣から御答弁をいただきましたようなことで、何分とも年代がたてばたつほど亡くなる方、そしてそのことを大変恨みに思っていらっしゃる韓国の方々がいらっしゃるわけでありますから、それを一日も早く取り除くためにも、より一層積極的な取り組みをお願いをしたい。私たちもできる限りのことを、ソ連との関係に大変強い方々も社会党の中にいらっしゃるわけでございますので、そういったチャンネルを通じまして努力をしたいと思いますが、総理のお考えをお伺いをしたいと思います。
  44. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 あなたの御意見を体して、政府としても一生懸命努力いたしたいと思います。
  45. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それで、朝鮮半島の問題で最後にお伺いしておきたいのは、なかなか南北の状況というのは大変難しいわけでございますが、外務大臣、新聞が何度か報じているのでございますけれども、皇太子御夫婦の韓国御訪問ということが新聞には出ているわけでありまして、まあアメリカから帰られた後の十月ぐらいではないかというようなことが新聞には出ているわけでございますが、南北が非清にいろんな意味で難しいという中に、まあ皇室外交と申しましょうか、こういったもののあり方としてどうなのかな、いろいろ難しい感情があるのではないかというふうに私は懸念をしているのでございますが、この皇太子御夫妻の訪韓問題というのは外務省の方で具体的に進んでいらっしゃるのでございますか。
  46. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 皇太子御夫妻の御訪韓につきましては、韓国側からは御要請も承っております。これは皇太子御夫妻のお考えもあるわけでございますし、宮中の問題でもあるわけでございますが、日本政府としましてもそうした御要請を踏まえまして十分検討をさしていただいておるという状況でございます。
  47. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私は皇室外交一般を否定をしているんじゃなくて、なかなか政治的に難しいところだけに、その辺のことを頭に入れてということを申し上げたわけでございます。  次に、国際経済の問題に移らしていただきたいと思います。  五月の三日、四日、五日——四日、五日、六日ですか、東京サミットがあるわけでございますが、どうなんでしょう、総理、まあ一年も前から東京サミットは決まっているわけでございますけれども、その東京サミットでどんなことが具体的にテーマに上がってくるんだろうか、また日本としてはそれにどういう形で今から備えていかなきゃならぬのだろうかということは、総理の頭の中では整理なされておられるんでしょうか。
  48. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 東京サミットにおきましては、あれはいわゆる経済サミットというのが本質でございますから、やはり世界経済の動向をよく分析もし、特に昨年の九月の通貨調整以後の世界経済の動向あるいは最近における石油価格の低落の傾向、こういうようなものが大きな関心事であり、そういう本年、来年にかけての世界経済を持続的にインフレなく繁栄さしていくのにどうしたらいいか、そういう話し合いがまず基本で、そういう点では明るいサミットにぜひしていきたい、そう思っております。  それから現在大きな問題は、発展途上国一次産品の問題あるいはさらに債務国の債務累積の問題がございます。こういう問題について国際的にどういうふうに協力して解決の方向へ持っていくか、これも第二の大きな問題点でございます。  それから、先ほど石油の問題を申し上げましたが、石油の低落が世界経済に及ぼす影響それから今後の対策の問題がございますと同時に、やはり通貨の安定の問題、各国通貨の安定をどういうふうにやっていくか。昨年のG5の蔵相会議というものはかなり成功だったと思います。そういう意味におきまして、世界的な通貨安定という問題をやはり我々としていろいろ相談し、研究するということがあると思います。  それからもう一つは、アジアで行われる第二回目のサミットでございますから、やはりアジアと西欧の協力、言いかえれば太平洋と大西洋の協力関係をどういうふうに今後展開していくか、そして平和と繁栄に貢献していくか、そういうような事々が今私の頭に乗っかっておる題材である、そう思っております。
  49. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 こういうことはどうなんでしょう。米ソ首脳会談後の世界情勢、とりわけいわば西側として対ソ戦略と申しましょうか、今戦略という言葉がいいかどうかは別といたしまして、東側に対する何かそういうことは改めてテーマとして話されるのかどうなのか。  それともう一つ、大蔵大臣、日本は公定歩合〇・五下げたわけでございます。本当はこれはアメリカも私は下げてくれるといいと思うんですが、アメリカアメリカなりの事情があるということだと思うのでありますが、こういった、今総理も若干触れられましたけれども、通貨問題というときにひとつ一緒に協調して公定歩合と申しましょうか金利を下げようじゃないか。なかなか下げられない情勢の国もあるものだからなかなかそうもいかないかと思うのでありますが、それはそのサミットの前の何かG7というんでしょうか、でという話がございますけれども、そういったところで金利の協調下げというのは大体話をつけるということなんでございましょうか、その二点お伺いします。
  50. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 平和と軍縮の問題も恐らく議題になると思いますが、サミットは始まりが経済問題のサミットということでスタートしておりますので、特にフランスのミッテラン大統領は政治問題に余り深入りすることを歓迎しておらないという、そういう点もあるわけでございます。そういう意味で私は、今第一回の発言では辛さなかったのであります。しかし、レーガン・ゴルバチョフ会談があり、また第二回目もあるという状態でございますから、一般的に世界の平和や軍縮の問題について話し合いがなされることは当然あり得る、そういう場合には我が国の国策に沿って、平和と軍縮に貢献するように積極的に努力していきたい、そのように考えております。  経済問題については、関係大臣から答弁いたします。
  51. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今総理からお答えがありましたように、経済、財政全般の国際的な議論、それから当然のこととして、そうなれば債務国問題それから石油問題、あるいは大きく言えばエネルギー問題、そして通貨問題というものがあろうかと思われます。  その通貨問題につきましては、ウィリアムズバーグ・サミットのときに、この通貨問題に対する勉強会を行うべきだというので、一応これはG10でやりまして、それで今それをIMFの暫定委員会へ持ち込んでおる、その中間報告を私がしまして、それに基づいていろいろな議論がなされるだろうというふうに思います。  そして具体的な問題としましては、今いわゆる協調利下げという言葉をお使いになりましたが、私どもが先般ロンドンのG5のときに合意しておりますのは、インフレも比較的鎮静しておるから金利下げの環境は整ったということで合意に達した。ところが、各国それぞれの事情、例えばドイツはもう日本より先に下げておりますし、それからイギリスは、石油価格の下落の問題から容易にそれに直ちには対応できないだろう。アメリカにおいても、その後、例えば日本が公定歩合を下げましても依然として円高基調が続いておる。いろいろな要件がございますので、したがって、それに加えて、今後は各国の中央銀行の総裁同士がよく協調してこれを行うことを期待するということにとどめておいたわけであります。したがって、言ってみれば政策協調の一環としての金利引き下げ、こういうような大筋の合意はできておるというふうに思っております。  ただ、この問題は、日本の場合はしょっちゅう日銀と大蔵省と話しする環境にもありますが、国によっては、政権が交代をいたしますと、中央銀行のいわゆる中立性というのを物すごく念頭に置いて対応される国もございますので、したがって、一、二、三、ドンとかいうのは非常に難しい課題ではなかろうか。しかし、十分環境が整ったというところは合意をしておるということが現実であります。
  52. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 次に、今総理も挙げられました累積債務問題についてお伺いしたいのでありますが、特に原油の値下がり、かつては日本は大変これはありがたいというふうに簡単に言えたのでありますが、今の日本の地位からいうと、私は簡単にそうも言えないような気がしてならぬわけであります。    〔委員長退席、林(義)委員長代理着席〕 特に、大体今平均一バレル二十ドルぐらい、本来なら公式価格は二十八ドルになっておるのでありますけれども、OPECも日量千八百五十万バレル、大体三百万バレルぐらい多いんじゃないかと言われている中なものですから、どんどん値下がりする。石油アナリストに言わせると、十二ドルぐらいまでになるのじゃないかという分析をなさる方もいらっしゃいますが、これもなかなかわからぬ。ただ、サウジのヤマニ石油相とイギリスのウォーカー・エネルギー相とが会って、減産についてやろうじゃないかということがうまく合意をすれば少しとまるんじゃないかというような話もあるようでございますけれども、なかなかどうも協調ができないようでありまして、果たして二月下旬と言われておりますOPECの臨時総会でうまく話がつくのかつかないのかということにかかっているんじゃないかという気もするのでありますけれども、なかなかこれは日本にとりましても複雑な、うれしいような、あわせてそれが八千億ドルと言われるような累積債務を持っております累積債務国に対しましては大変な痛手になるわけでございますので、その方の世界的な金融不安ということを考えますと、またこれも喜んでばかりはいられないということが日本の状況じゃないかと思うのであります。またしかも、貿易収支の中で見れば、これが黒字を拡大をするという効果になりますので、そういった意味では——さりとて方法としては、じゃひとつ日本は今備蓄が九十日くらいで若干減っておるときでありますから、この際買っていくというのも、何か安いうちにまた日本がやりやがったというふうにとられるのもこれもマイナスだろうということを考えますと、この累積債務問題との絡みでなかなか複雑な難しい問題を含んでいると思うのであります。一体この原油価格の値下がり問題というのはどう対応していくのか、通産大臣だけではないようでございますが、どうとらえていこうとなさっているのか、その辺についてのお考えをお伺いしておきたいと思います。
  53. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 佐藤委員のおっしゃったとおりで、本当に複雑な心境であります。私は値下がりが、自然とある程度下がるものは下がるというのならいいのですが、急激に下がる、しかしそれもまたいつ上がるかわからないというようなことならば、むしろ安定しておる方がいいということも言えると思います。これは自由になる問題ではありませんから、もう少し全体の流れを注意深く見守って、それに適切な対応を政府全体として取り組んでいきたい、そう思っております。
  54. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 国際経済の特命相という立場で一言補足をいたしておきます。  この値崩れは、御承知のようにノルウェーの安売り、それから北海油田の安売り、これから始まったわけですね。したがって、サウジアラビア等は本来増産をしてこの不当な値下げに対抗をしよう、場合によれば十五ドルを割ってもいたし方がない、それくらいの意気込みでかかった話が、むしろ誘い合った格好で暴落に持ち込まれてしまった、特にスポット物ですね、そういう傾向があります。しかし結局は、今お示しのように、イギリスと話し合う、ノルウェーとも話し合う、そういった格好で何とか値段をせいぜい二十ドル以上のところで、今の二十八ドルは維持できないまでも、何とかとめたい、こういう思惑で一生懸命OPECとしても模索をしておるわけですね。ところが一方では、イラン・イラク戦争などでそれぞれの増産もあるというようなことが障害になって、必ずしもOPECの足並みがそろわない、この辺もあります。しかし、もともとOPECとしては、何とかしてこの北海油田からノルウェーから網羅して、そしてその値段をとめたいというのが真意でありますから、もう少し成り行きを慎重に見守りながらこの場面に対処していくことが妥当だ、私はこう考えております。
  55. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それで、累積債務問題との兼ね合いなんでございますけれども、昨年十月ベーカー財務長官が、ひとつ民間も、あるいは国と申しましょうか政府側も二百億ドルずつ出し合ってさらに補助をしないとこれは世界的な不安定状況を、金融不安を起こすのではないかということでベーカー発言があったわけでありますけれども、累積債務問題というのは、これは民間も含んでいる話なものですから、ある意味ではなかなかわからない部分があるわけですね。ベーカー発言があるということは、それぐらいある程度来ているのかどうなのかという認識の問題、あわせて、ことしの二月だったと思いますけれども、「ラテン・アメリカの今後十年」というセミナーが行われて、まあまあとにかくどこかの国の民間金融機関がつぶれて玉突きを起こして、金融インフレを起こすということはなくなったのではないか。しかし問題は、確かにそうなったけれども、それは債務国の方の緊縮財政で、そのために中南米では一〇%も毎年GNPがダウンをするというようなそういう状況をつくり出したから、確かに先進国の金融機関は困らぬでしょう。しかし、そのために成長がとまってしまったじゃないかというようなことが随分出ているわけですね。あるいは先進国の方でもかなり、資料もございますけれども、IMFの調べでも、八四年の上半期は融資残高が十七億ドルふえておりますけれども、八五年の上期では八億ドル減っている。あるいはイギリスのイングランド銀行の総裁によれば、八一年から八四年の間に民間金融機関は約八百億ドル引き揚げたのではないかという数字も言っているわけですね。こういうことを思いますと、一体今のような状況で累積債務問題というのは切り抜けられるのかどうなのか。  例えば逆にスイス銀行等は、ベーカー提案というのは、いわば石油がこんなに値下がりしないときの話だった。ですから、新たな状況なので、ベーカー提案自体も大変危ないのではないかという話が出ているわけでありまして、一体日本国政府として、このサミットでもさらに問題になっていくと思いますけれども、累積債務問題というのは、ベーカー提案も含め、また新たな原油価格の値下がりという状況も踏まえて、どう対応なさろうとしていらっしゃるのか、その点についてお伺いいたしたいと思います。     〔林(義)委員長代理退席、渡辺(秀)委員長代理着席〕
  56. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは私があるところで整理して申し述べた演説の一こまでございますが、先進国間の経済摩擦が厳しさを加えたため、先進各国はみずからの摩擦の方に目を奪われて、ともすれば南北問題の意識が希薄になっているのではないか、こういうことを私、申し上げたことがあります。やはり今度のサミットで、南北問題というのは重要な位置づけをされる問題である。  そこで、昨年の十月六日でございましたか、ソウルでベーカー提案というものがなされた。確かに、おっしゃるように今ほどに原油の値崩れの状態ではないときでございますが、これのいわば主導権をとってそういうことをやろうということに対しては、私は評価をし、これの支持表明をしたわけでありますが、さらに、これの問題は、今おっしゃいますとおり、二百億ドルというものの増大は、民間銀行というようなことで位置づけをされておりますので、その後の民間銀行の動きかどうか。幸い国際機関も各国の民間銀行も、一応の評価をしております。ただ、それじゃどういうスキームで金を集めて渡すか、こういうことになると、具体的には今後の問題だ、こういうことになっておるわけであります。  私、いつも思いますのは、まだ八千五百万ドルぐらい世界銀行に日本は借金が残っております。だから、むしろかつておれたちの仲間だった、というとちょっと表現が適切でないかもしれませんが、かつて債務国として苦労した日本国であったから、それだけに日本国のようなある意味において自分の経済自身にコンディショナリティーをつけながら先進国の仲間入りをしてきたわけでありますから、債務国におかれても、やはり今おっしゃいましたとおり、いわゆる調整疲れというのがございます。余り締めた経済運営をやったので、調整疲れしてしまった、こういう点がございますけれども、私はやはりIMFなりがつけるいわゆる条件、そういうコンディショナリティーというものを守る姿勢を持った国からどうしてもケース・バイ・ケースで対応していかなければならぬようになるんじゃないかというふうにも思っておるところであります。  そこで、幸いにして我が国の場合は、国際機関に対する出資等については、本当に与野党賛成していただいてこれを続けておりますので、そういう面においても民間銀行はもとよりでございますけれども、さらに国際機関の立場等においては、そういう我が国の持っておる姿勢を他の先進国にもできるだけ評価し、協調してもらうような努力を続けていかなければならぬというように考えております。
  57. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 今の御発言を聞くと、言語明快、意味不明のところがあるのですが、日本としては新たな追加的な措置というのをやはりしなければならぬのではないか、こういうふうに考えているというように理解をしてよろしいのですか。
  58. 竹下登

    ○竹下国務大臣 国際機関に対しては、いつでもそういう交渉に対しては積極的に対応するというのは、国会でもそういう激励を受けておりますから、その姿勢を持ち続けております。  民間銀行の場合はケース・バイ・ケースによって、例えば金利分がそのままその債務の上乗せになるというケースもございましょうし、あるいはニューマネーということもございましょうが、これはやっぱりまさにケース・バイ・ケースという感じがいたしております。
  59. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そこで、今大蔵大臣が言われた民間銀行の話でございますけれども、これは先月の中央公論に服部正也元世界銀行の総裁が、「国際連帯銀行というのをつくったらどうかという提案をなさっているのです。大蔵大臣もお忙しいからその全部は読まれてないと思いますが、簡単に言えば、今大蔵大臣が言われたように、もう民間の金融機関でこれ以上このままの状態で追加の融資をしようというのは無理ではないか。しかし片方では、発展途上国の方では、なかなか条件がきつい、したがってこれをもう少し緩和をしてもらわなければいかぬという要望がありながら、さりとて今申しましたように、先進国の方はどんどん危ない危ないというのでお金を引き揚げていく、これでは解決にならないので、ひとつ民間金融機関が持っているものを、しかも民間金融機関もいわば銀行の資産という観点からいっても、かなりぎりぎりのところまで来ているのではないか。そこで、ひとつ途上国に出しておりますこの民間の金融機関の債務というものを国で肩がわりをしたらどうか、そういう機関を先進国でつくったらどうか、それはいわばその間に優良な国の保証、あるいは国自身が債権を持つということにして、そしてその間に少し条件を緩和をするということにして民間金融機関の負担を軽くしていけば、もう少しこの累積債務問題というのは各途上国に軽い形で負担になってくるし、あわせで追加もできて成長にも寄与するのではないかという提案を、国際連帯銀行という名前で提案をされているわけでございます。  これは恐らく若干財政措置が必要なのではないか、ちょっとそこまで私の理解ではしているのでありますけれども、そのことがございますので、今その指摘だけにしておいていただいて、ひとつ大蔵大臣におきましても、今の現状の中で国際的な金融不安を起こさない前提でございますから、そういう意味で、服部正也元世銀総裁のこの国際連帯銀行構想というのは改めて考えてみていただきたいということだけ申し上げておきたいと思うのであります。  次に、軍縮と地域経済開発の問題についてお伺いをしておきたいのであります。  これは三年前でございますか、総理と私はGIF構想という、世界公共事業基金というのをつくる、つまり軍縮の成果というものを具体的に世界の人々が見れる、そういった公共事業をやったらどうだろうか、そしてそれは西側だけではなくて、ソ連を初め東側も一緒にやって軍縮の成果を目に見える形でやっていく、そして各国の停滞をしております地域経済開発につなげていこうというGIF構想というのを私は総理に提案をしたことがございまして、総理一般論としては賛成いただいたのでございますけれども、あのころは、まだ三年前でございますから大変世界的に厳しい状況でございます。でございましたので、なかなか実現は前へ行かないのでございますけれども、何か聞くところによりますと、国連でもことし七月十五日から八月二日までパリで軍縮と開発というテーマで、どうも外務省にお伺いした限りは、またこれはテーマを話をする程度のことのようでございまして、具体的な中身はどうも一歩進まないようでございますけれども、一体こういった軍縮と地域開発、いわばGIF構想の変形のような格好で私は実現できる道筋をつけていることだと思うのでありますが、こういったことについての日本の対応はどうなっているのか、その点についてお伺いをしたいと思います。
  60. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 軍縮と開発に関する国際会議は、今お話のありましたように、本年の七月十五日より八月二日までパリで開催される予定になっておりまして、実はこれまでの間に第一回準備委員会会合が既に開かれまして、四月にさらに第二回の準備委員会会合が開かれる予定になっております。  そうした中で我が国としてどういう対応をとるかということですが、我が国としては、世界各国が自国の安全保障及びその所在する地域、ひいては世界の平和と安定を損なうことのないような形で軍縮に取り組み、これによって生じた余力を諸国民の民生の向上、世界経済の調和のとれた拡大発展のために振り向けることができれば、それは人類の福祉と発展に寄与するものである、こういう基本的な考え方に立っておりまして、こうした観点からこの問題に対処してまいりたい、こういうふうに思っております。実質的な討議につきましては、我が国の具体的な対応等については、四月の準備委員会等で今の基本的な姿勢を踏まえて私たちも積極的に取り組んでいきたい、対応していきたい、こういうふうに思っております。
  61. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そこで、かねてから私が言っているGIF構想の一環として、ちょうどメコン川支流のナムツン川の開発の問題が国連のメコン暫定委員会で話が出てきたという話が報ぜられました。残念ながらあそこの国際情勢もございまして、必ずしもうまくいっていないようでございますけれども、タイとラオスの間のナムツン川に百二十万キロワットの水力発電をする、そういった開発をしようという構想のようでございまして、これは単なる西側だけではなくて、ラオスという社会主義建設十一年目を迎えている国とタイとの間につくるということでありますから、そういった意味で、私は世界の平和のシンボルとして大変おもしろい構想ではないかと思うわけであります。特に、ソ連がどうも聞いたところによりますとまだ入っていないようでありますけれども、西側だけではなくてソ連にも出資をしてもらって、ひとつ東西陣営の間にダムをつくって、そして水力発電をして、ラオスの方の社会主義建設にもプラスになればタイの方の工業化にもメリットになる、こういった構想に日本も大いに積極的に参加をしていただきたいと思うわけでございますが、今どんな状況になっているかだけちょっと御報告をいただきたいと思います。
  62. 後藤利雄

    ○後藤(利)政府委員 お答えいたします。  今先生の御指摘のメコン川支流のナムツン川の現状でございますが、昨年開催されましたメコン暫定委員会の総会におきまして、このメコン川支流のナムツン川のダム建設、内容は今先生御指摘のとおりでございますが、ひとつフィージビリティースタデノー、経済的にこれが可能かどうかということについて今後とも研究していこうじゃないかということで合意がなされたことは御指摘のとおりでございます。  この問題につきましては、メコン川流域の開発というのはいろいろな意味で非常に重要な国際的な意味を持つという点についても、今御指摘のとおりでございます。他方また御指摘がございましたけれども、この加盟国の三カ国でございますが、特にラオス、タイ、ベトナム、御案内のようにカンボジア問題等をめぐりまして非常に政治的な立場があります。そこで政治的な対立もありますが、こういう政治的な立場の違いを余り固執しないで、何か開発していこうという空気があることも事実でございます。  ところで、具体的にこの御質問のプロジェクトにつきましては国際的な今後の協力ということも期待されねばなりませんが、やはり第一には関係国、ラオス、タイ等が本件について今後の開発を協力をしていこうという合意がまずなされることが第一かと思います。もしなされましたら、具体的な協力要請が日本等にもございましたら、私どもとしましても同地域の経済開発あるいは民生の向上に資するという観点から、いろいろと事情を勘案しつつ今後の対応を考えてまいりたい、かように考えております。
  63. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 これはちょうど国家体制が違うところだけに非常に意義があることじゃないかと私は思いますので、そういった意味では、状況が許せばひとつ積極的に前に出てやっていただきたいと思うのであります。  次に、四番目といたしまして、貿易摩擦と内需拡大の問題を少し本格的にやろうと思ったのでありますが、時間が大変なくなってしまいましたのでショートショートになってしまいますけれども、私はこの貿易摩擦の問題というのは、アメリカの言う五百億ドルの問題ばかりに目がくらんではいかぬのではないかというふうに思っております。それ自体は、統計上の百億ドルに上る差の問題もございますし、あるいは逆に日米の経済関係自体が大変緊密化をしてくるということの一つのあらわれがこうなっている部分もございますし、そういった意味では五百億ドルだけに日がくらんではいけないと思います。  ただ一方では、日本の政治や社会を見てまいりますと、外から言われないとやらないというのが、どうも日本人の悪いところがございまして、そういった意味では私はこの貿易摩擦問題でアメリカもかなり言いたいほうだい言っているという感じがありまして、半導体摩擦の問題その他も聞こうと思ったのでありますが、時間がありませんので、その言いたいほうだいのことは別といたしましても、この外からのそういった意味での外圧というものをいわば奇貨として——カの字は貨幣の貨の方ですね、禍いではなくて貨幣の貨ですが、まさに禍い転じて福となすといいましょうか、こういった対応を、二十一世紀産業構造のあり方としてむしろ変えていくようにすべきではないかというふうに私は思っているわけであります。ちょうど四十八年の第一次オイルショック以来、日本がこれだけ省エネルギー、省資源の生産をできるようになったのもやはりああいうことが逆にあったからで、私はそういう意味では、日本人の対応力というものは大変すばらしいものだと思っているわけであります。     〔渡辺(秀)委員長代理退席、委員長着席〕 そういった意味では、二十一世紀に向けて内需拡大型の、また国際協調型の産業に変えていくということが非常に重要なことだと思いまして、そのあたりのことを本当はきょうは少し議論をしたかったのでありますけれども、残念ながら時間がありませんので、ちょっと通産大臣に一点だけお伺いしておきたいのであります。  そうはいっても、中長期の話はいろいろあるのでありますけれども、短期的なことになりますとそうは効果が出る話じゃないと私は思います。ですから総理が、半年から一年たてば少し結果が変わりますよと言われておりますけれども、そんな簡単に、またそのくらい短くて済むのかなという気もするのでありますが、そこで私は、少し輸出の問題で影響が出てくる問題というのは自動車だと思うんですね。これは輸出の割合からいっても、金額のウエートからいっても大変大きいわけでざいますが、例の自動車の自主規制問題というのは、通産大臣、これはどういう状況になっているのでしょうか。またどのくらいまでにこれはひとつ結論を出そうというふうに考えていらしゃるのでしょうか、その点だけちょっとお答えをいただきたいと思います。
  64. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 まあ理屈からいえば、これは自主規制をするという理屈はないんですよ。しかし、貿易全体の問題からすればいろいろ大きな問題があるというようなこともありまして、今アメリカの市場の問題とか貿易全体の流れとかそういうものを見ながら、時間がまだございますから、慎重に今考えておるところであります。しかし、去年は三月の末に結論を出したのですが、ことしは三月と言わないで、もっと早めた方がいいかなあというようなことを今模索をしておるというところであります。
  65. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それは常識的に言うと、いろいろな自主規制をした場合のメリット、デメリットが両方あると思うのですが、ともかくやはり具体的に数字にこう表に出てくるということになると、自主規制を続けざるを得ないのかな、こういうふうに思っていらっしゃる。その「慎重に」はいいけれども、勘のいい通産大臣でありますから、恐らく全くニュートラルではないと思うのです。どちらの方向に向かうのですか。
  66. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 どっちにしたらいいかなと思って、実際まだ決まってないのですよ。
  67. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 次に移りますが、俗に言う円高差益還元の問題でございます。  円レートが上がったことと原油価格が下がったことによって幾らくらい差益が出てくるだろうかということはいろいろはじけると思うのでありますが、これは一体六十一年度はいつまで円高が続いて、幾らぐらいになるかということは不確定なところがありますけれども、八五年、つまり六十年度というのはまだ電力その他も会計年度が終わっているわけじゃございませんので、そういった意味では少し急がなければいかぬところがあると思うのであります。  これは東京電力の企画室の数字でありますけれども、円レートで十円上がりますと千二百億円程度差益が出てくる、原油価格が一バレル当たり一ドル下がりますと九百五十億円程度差益が出てくるという計算をいたしますと、八六年度で、今が、円が二百四十二円で八〇年のときにははじいておりますし、バレル当たり三十二ドルでありますから、これを百九十五円とバレル当たり二十二ドルではじいてみますと一兆五千百四十億円というものの差益が出てくるわけであります。八四年ベース、円が二百四十四円、バレル二十九ドルということではじいてみますと一兆二千六百九十七億円というのが出てくるわけでありますけれども、恐らく半額は為替変動準備金に入れるのだろうと思うのであります。したがいまして、この差益の国民への還元方法は、家庭用にしろあるいは企業向けにしろ電気料金を引き下げる。それを直接返すか電気料金自体を下げるかということは別といたしまして、電気料金を下げるというやり方、あるいは設備投資を上積みするというやり方、あるいはオイルショック以来新設された工場の方には高い料金、特別料金になっておりますので、それを見直すというようなやり方があろうかと思うのでございますけれども、一体政府はこれをどういうふうになさろうとしているのか、ちょっとまず答えていただいてから、その次のペーパーに行きたいと思うのです。
  68. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 円高が幾らで安定するのか、百八十九円とかあるいは二百円なのか、かなりこれはまだ流動的です。それから石油の価格そのものも、スポットが非常に安いのがぽつぽつ出たりしていますが、去年の十一月、十二月の平均輸入原価は約二十八ドル弱ですから、これがどこらのところで安定するのか非常に不安定要素を持っている。したがって、そこらのところをもう少し見てから考えたい。いずれにしても、石油が下がって円高が安定するということになれば差益が出るということは当たり前のことですから、その場合は皆さんの意見を聞いて、当面一番何に役立つかというようなことを中心に考えていくのがいいのだろうなという程度のことを思っております。
  69. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 きょうの渡辺通産大臣の答弁は私でもできるような答弁です。例えばこれを電気料金を下げる格好で戻した方がいいか、あるいはアクションプログラムの中に言われております設備投資を追加するというようなやり方にした場合に、一体国民経済にどういう影響があるかというようなことは試算はなさったことはあるのですか。
  70. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 いろいろな試算はあるでしょうが、まだ決めてはないのです。独善的にやる気は私はありませんから、皆さんの意見を聞いて、それで国民経済に一番役立つようなことという方向はそんな方向だろう、私はそう思っております。
  71. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 今皆さん方のお手元にちょっと資料をお渡しさせていただきましたが、これは名前は申しませんけれども、大変権威のある研究所で試算をしていただいたわけであります。しれは見ていただければおわかりかと思いますが、が一兆円といたしまして還元をした場合でございますけれども、電力料金で還元をした場合と電線の地下埋設で還元をした場合というのが書いてございまして、電力の需要量が八四年度実績が五千九万キロワットアワーでございますので、毎年三%成長しておりますから、八六年度が五千三百三十三万キロワットアワー、キロワットアワー当たりにいたしますと二十三円四十七銭ということになるわけであります。一兆円上がったといたしますと、一兆円を五千三百三十三万キロワットアワーで割り、それを二十三円四十七銭で割りますので、八%全く延べにしますと電力料金は下げられる、こういうことになるわけであります。これはそう難しいことじゃない。  それから二番目に、電線の地下埋設にいたしますと、大体一キロメートル埋設するのに三億円から五億円ぐらいかかるということのようでございます。平均四億円といたしますと二千五百キロメートル地下埋設ができます。今まで八四年度中に地下埋設した総延長が一万四千二百十三キロあるわけでございますけれども、大体七五年から八四年までの間に平均して五・七%ぐらいずつ地下埋設を伸ばしておりますので、毎年八百十キロメートル地下埋設をしているということでございますから、二千五百キロメートルしたということになりますと、いわば三年分地下埋設ができるということになるわけであります。  これを、電力料金を八%引き下げた場合と地下埋設をした場合との国民経済に与える影響を、ここが非常に難しい、いろいろなモデルを使ってシミュレーターをやらなければいかぬので、ここが難しいので、これは本当にそういった最高の研究所でやってもらった数字がそこにあるわけでありますが、消費者物価指数に与える影響が〇・二、それから卸売物価指数に与える影響が〇・二三。これが完全に浸透したといたしますと、消費者物価には〇・三六、卸売物価には〇・七四という数字が出ているわけであります。  これを地下埋設をしたときに一体景気浮揚効果がどれくらいあるかということで、今申しましたように一兆円全部やったといたしまして、来年度四月から一兆円全部やったといたしますと、ケースAでございますが、実質GNPに与える影響というのは〇・二五でございますから、いわば四%実質成長しようというときの十六分の一上がってくるということでございます。しかも貿易収支では十億ドル減りますよという数字が出てくるわけであります。それが来年の九月から実施した場合、つまり五千億円程度やった場合ということでございますけれども、そのときには実質〇・一三成長率を押し上げるという計算が出ているわけでございます。  ひとつそういった意味で、いろいろな議論があろうかと思いますし、この後井上委員も別の角度から、ニュー社会党はいろいろ提案をする政党でございますので、これは今申しましたように名前は申し上げませんが、大変権威のあるところがコンピューターではじいていただいた数字でございますし、まあ皆さん方も行かれて、これだけの国で、あの都市の真ん真ん中に電線があれだけ出ている都市というのは余りありませんので、そういったこともお考えいただき、これは電線だけでなくて、NTTも含めてやはりやっていただくということがいいのじゃないかと私は思っておりますが、今大臣からございましたようにいろいろな角度の御議論があろうと思います。ただ、電力会社の決算が三月なんですね。三月でございますから、G5以降上がった分というのは、大蔵大臣の税金で取られては、それは今議論しております補正予算には幾らかプラスになるかと思いますが、需要を喚起するという面からはどうかなというふうに思いますので、そうすると通産大臣、のんびりもしていられないという問題があるのですね。そのこともお含みおきをいただきまして、ひとつ早急な結論をいただいて、今言われております内需拡大にしていただきたいというふうに思うのでございます。(江崎国務大臣「ちょっと答弁しよう」と呼ぶ)いえ、いいです、時間がないものですから。ありがとうございます。  それからもう一つ。どうしても時間内に提案をしておきたいのは、松浦委員が経済審議会の報告をおととい取り上げておられましたけれども、特に週休二日制と時短の問題でございます。これは皆さん方も経済審議会の報告、特に六十年度のリボルビング報告を読まれたと思うのでありますけれども、三カ所にわたってかなう時間短縮と週休二日制の問題を取り上げて、ぜひ必要だということを言っておるわけであります。もう時間がないから一々読み上げませんけれども、御承知のとおりだと思うのです。  またこれは中間取りまとめでございますけれども、先ほど触れたかった「二十一世紀産業社会の基本構想」いわゆる産構審からの中間報告でございますけれども、出ている中でも、簡単に言えば、これから日本人の生活のあり方自体が変えられる時代じゃないか。私がこの貿易摩擦を奇貨としてと言ったのは、いわばそういった意味での働き過ぎと言われているような今の状況というのを、日本人の生活のあり方として今後高齢化社会、長寿化社会の中で考えていく必要があるのじゃないかという観点から申し上げたわけでございまして、この賃上げの問題につきましてはおととい松浦委員からお話がございました。  特に、労働分配率が最近下がってきているということについては、やはり政府皆さん方にも十分知っていただかなきゃならぬと思いますし、その結果が実質所得が六年ぶりにマイナスになっている。これじゃ内需拡大といったって、六割占めます個人消費がふえるわけがないわけでありまして、賃上げの問題につきましては、言うまでもなく労使の基本的な問題だということで私は理解をしております。しかし、労働時間、週休二日制、時短の問題というのは十分政府が関与できるところがあるわけですね。私も大蔵委員会理事をやっていたときに銀行の週休二日制の問題を随分やってきて、そして幾らかずつ進んできたわけであります。そういったことから申しますと、一九七五年と八四年を比べてみましたけれども、労働時間はフランスは百八十一時間減っているのですね。そう言うと恐らく皆さん方はたからヨーロッパ病だ、こう言われるかと思いますけれども、西ドイツは二十六時間減っているのでありますが、西ドイツは経済はうまくいっております。それからイギリスが八時間ふえ、アメリカが五十時間ふえておりますが、日本は何と百三十七時間、一九七五年からふえているのですね。これでは世界から働き過ぎだ、貿易摩擦をわんわん言われるのは当然ではないか、私もこう思うわけでございます。あわせて内需拡大の観点からいいましても、これは通産省がはじいておりますけれども、これはもう真っ当な、しかも所得階層別にやっている数字でございますから、それは極めて説得力がある数字が出ているわけであります。その内容についても細かくは申し上げませんけれども、間接的な内需拡大も含めてざっと三兆円になるのではないか。三兆円という数字は、昨年皆さん方がお決めになった「内需拡大に関する対策」の事業規模と効果というのがざっと三兆円ですね。効果が出てくるのはこれは一回きりですよね。しかし、週休二日制なり時短という問題はこれからずっと影響が出てくる話でございますので、そういった意味からいいますと週休二日制、時短の問題というのはこれだけ世界から批判を浴びている問題でございますから、この際本格的に中曽根内閣が取り組んでいい問題ではないか。特にサミットの前に労働サミットというのが四月の二十一日からあるという中で、日本は袋だたきになることは私は火を見るより明らかではないかと思います。  労働四団体なり全民労協が労働基準法の改正の問題で今着々と詰めているようでございまして、例えば一日に労働時間八時間、一週四十時間、週休日数が百四時間、有給休暇が十五日間、これはILOの百三十二号条約によるものでありますが、それから残業時間を年間百五十時間といたしまして、合計千八百六十三時間。一挙に西ドイツ並みとはいかないまでも、アメリカ並みくらいにまずいこうじゃないか。この問題は労働基準法の改正等の問題がございますから、政府がこれは労使間に任せるというだけでは済まない問題だと思うのです。特に労働組合法の中に、その地域の四分の三の労働組合が締結をしなければ他に波及をしないということがございまして、そういった意味では労働行政というのは極めておくれているのではないかと私は思うのであります。  時間がないから全部いろいろと申し上げましたけれども、ひとつ労働大臣、本格的に労働大臣の時代に週休二日、時短の問題、これは賃金とちょっと違いまして、労働行政ということで十分やっていける可能性があるテーマでございますから、ひとつ取り組んでいただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  72. 林ゆう

    ○林国務大臣 労働時間の短縮につきましては、先生先ほど冒頭に申されましたように、経済計画の見直し報告において強調されているところでございます。労働省では、従来から労働時間短縮につきましては積極的に取り組んでまいってきたわけでございます。昨年六月に中央労働基準審議会の了承を得まして、「労働時間短縮の展望と指針」に基づきまして、社会的、国民的合意の形成の促進あるいは労使の自主的な努力に対する援助促進などによりまして私どもは労働時間短縮を推進してまいりたい、このように考えている次第でございます。  また労働時間の法制化につきましては、労働基準法研究会の報告が出されたわけでございますので、この報告を受けまして、今後中央労働基準審議会における審議結果などを踏まえまして検討してまいりたい、このように考える次第でございます。
  73. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 今の報告というのは、私から見れば世界に向かって逆行だと私は思っておるわけであります。  それで総理、さっき私も幾つかのいろいろな角度から週休二日と時短の問題を申し上げました。中小企業の問題、それから商業等のサービス業等々難しい問題があることは事実でございます。しかし今世界の中で日本がこれだけ袋たたきに遭っているときに、特におくれている労働時間、週休二日制の問題、しかも内需拡大という面からいっても非常にプラスになる、まさに私は日本人の意識の改革の問題につながっていく問題だと思うのです。労働サミットもあることは今申し上げたとおりでございますので、中曽根内閣の中でこの端緒を、特に今申しましたように、労働者側は全部こぞって今申し上げたような数字をひっ提げて前進をしていこうということになりつつあるわけでございますので、中曽根総理がこの時短あるいは週休二日制に本格的に取り組む姿勢をひとつお示しをいただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  74. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 賃金とかあるいは労働時間の問題は労使間で話し合う問題で、政府が干渉すべき問題ではないと思いますが、しかし経済審議会のリボルビングも出て、その中に盛られている要素もございまして、政府に関する部分については政府としてもよく検討してみたいと思います。
  75. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 賃金の問題は私もわからぬわけではありませんけれども、労働時間、時短の問題は労働基準法等の問題があり、労働省がそのためにあるのでございますから。しかもそれが世界の大勢と逆だという話なら別だけれども、世界の皆さんと比べてみて、ぼんぼん袋たたきに遭っているときに、このことをそのためじゃなくて本来やるべき問題だと私は思っておりますので、どうもこういう問題になりますと後ろ向きになるのは極めて残念でございますが、これはまた引き続き質問させていただくことにいたしまして、最後に平和相互銀行の問題についてちょっとお伺いをしておきたいのであります。  私も大蔵委員会に長いこといて、ずっと銀行行政の問題をやってまいりました。国民の皆さん方が一番不思議に思うのは、大蔵大臣、例えばこの十年間をとりましても、日銀と大蔵省銀行局検査部で毎年毎年平和相互銀行というのは検査に入っているんですね。検査に毎年入っているのです。この十年間だけとりましても検査に入っておりますけれども、一兆二千億と言われる預金のうちどうしても償却をしなければいかぬという数字が千八百億円。これは公式的には大蔵大臣からなかなか出ないと思いますけれども、何らかの形で手当てを見なければいかぬのが五千億円ではないかというような数字が出ているわけであります。一兆二千億円の預金のうちざっと半分が危ない、手当てをしなければいかぬ、問題ありとするような融資残高だと言われているわけであります。この数字自体は大蔵大臣、肯定なさらないと思いますが、言われているわけでありますけれども、大蔵省銀行局検査部の調査が二年ごと、その間、間に日銀の考査が入って、いわば毎年毎年入っていながら一体どうしてこういう瀕死の状態になるような状態まで来たのか。何か突然異変があってこの一年間平和相互銀行がおかしくなったわけじゃないわけです。こうなってまいりますと、一体大蔵省銀行局の検査とは何だ。今あちこちやっているわけでありますが、あんな検査されていていいのか。日銀の考査自体も国民の皆さん方は大変不信を持たれると私は思うのですね。そうなってまいりますと、検査のあり方自体が一体どうなっていくのかということをつくづく思うわけでありますけれども、その辺の問題についてひとつお伺いしたいのと、十月一日に住友銀行との合併の話が既に報道されております。私は、金融自由化という中で合併一般論を否定をするつもりはないわけでありますけれども、そのときに何か日銀特融という話が出ております。これは話が新聞に出ておるだけでありまして、これが従来の都銀なり相互銀行の日銀からの貸し出しの枠の中という話なのか、それを外れた枠の外の話なのかよくわかりませんが、三和銀行の専務は、そんなことはおかしいのではないかというようなことも出てきております。そういう意味で、一体そのあたりのそういった条件というのは何か特別なものがついての合併なのかどうか。  あわせて、最近私思いますのは、一体銀行の方々の責任というのはどういうふうになるんだろうか。一兆二千億の預金のうちの千八百億円は、だれかの言葉をかりれば全くいわばどぶに捨てたようなお金。これはみんな大衆の預金なんですね。例えばこの前の三光汽船の償却につきましても、有価証券報告書を見ましても、大和銀行が九百四十億円貸して七百十二億円を償却するというのですね。これは七五・七%。貸し出しの四分の三は償却、どぶに捨てた。日本長期信用銀行が七百二十七億円貸し付けて五百二十億円償却する。七一・五%。それから東海銀行が五百十三億円貸して四百二十六億円償却。八三%償却。それは、貸したものが全部戻ってくれば銀行も楽なことでありましょうけれども、そんな貸したものが全部返ってこないというために貸倒引当金等が積まれているということは私もわからぬわけではありませんけれども、いわばこれだけ高い率の貸付金に対して償却をしなければならぬという金融機関のいろいろなあり方あるいは検査のあり方、これは一体いかがなるものでございましょうか。  私は、もう少し具体的にこれから平和相互銀行問題というのは質問をしてまいりますけれども、とりあえず第一弾として、大蔵大臣に今の三点をお伺いをしておきたいと思います。
  76. 竹下登

    ○竹下国務大臣 平和相互銀行の問題、今佐藤さんの御意見にもありましたように、大蔵省といたしましては二年に一遍、日銀の考査は別として、いろいろ改善を求めてきたところでありますが、対応は遺憾ながら不十分であったと言わざるを得ません。(佐藤(観)委員「どっちの対応ですか、その対応というのは」と呼ぶ)平和相互銀行の我々の指導に基づく対応の仕方が不十分であったと言わざるを得ない。金融検査は、金融機関から正確な資料が提出されるという信頼関係のもとで実施しておりますが、平和相互銀行の場合、この点が必ずしも十分に満たされていなかった、こういうことが言えると思っております。したがって、今顧問さんの指導のもとに、再建計画の策定に向けて鋭意努力を払っておられるという状態であろうと思っております。こちらは強制して仲人役を買って出る立場にも必ずしもなかろうかと思いますので、自主的につくられる再建計画というものが早い機会にできてくることを今や期待をしておる、こういうことであります。  それからもう一つは金融機関全体の問題でございますが、日本の場合相互銀行以上で百五十六、アメリカの場合は一万四千五百ぐらいありますから、確かに健全性というものが日本の貯蓄率の高い一つの理由にもなるでございましょう。しかし、いずれにせよ金融の国際化、自由化の中でいろいろな荒波にもまれてまいりますので、その点は十分指導してまいらなければならぬというふうに思っております。  それから三光汽船問題等で例示して出されました、いわば給与をカットすれはそれで責任が済んでしまうではないか、こういう感じからの御質問だと思いますが、庶民的なそうした感じは私どもにもわからないわけではありませんが、これそのものはその銀行自身の問題として対応されることでございますので、私どもはそのように承知をしておるということであります。
  77. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 終わります。
  78. 小渕恵三

    小渕委員長 これにて佐藤君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時七分休憩      ————◇—————     午後一時一分開議
  79. 小渕恵三

    小渕委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。井上普方君。
  80. 井上普方

    井上(普)委員 国鉄問題につきまして質問いたしたいと思います。  国鉄問題につきまして再建監理委員会の案が出まして、政府も準備をなさっておるようでございますが、しかし、もう既にこの国鉄問題につきましては、あたかも国鉄はこの法律が通ったんだというような態度に終始しておるように思われてなりません。この例を一、二申し上げてみたいと思うのであります。  大体こういうポスターを——もう一つ大きいのと二つですが、こういうポスターを駅の各所に張ってあるのですな。こういうのを張ってある。これはいただいてくると何か官有物を盗んだようなことにもなりますので、ちょっと拝借してきたのです。こういうことを書いてある。「国鉄です。会社になります。」法律はまだ提出せられておらず、審議もまだ行われていない段階で、各地にこのような——ここにもあります。こういう縦書きのと横書きのポスターを張りめぐらしておる。一体国会を何と考えているのですか。どういうようにお考えになっているのですか、この点をお伺いしたい。
  81. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 国鉄改革の問題は、大変重要なことでございますし、我々としましても、政府の方針に従いまして今準備を進めているという段階でございます。国民にもなるべく早目によく我々の気持ちをお伝えしたいということでございまして、「国会のご承認を得てこということをつけながらPRをいたしているところでございます。
  82. 井上普方

    井上(普)委員 それは書いてある。だれも目につかぬ。これだけ見られて目につく方がおりますか。おられないでしょう。  こういうことを、既に分割・民営が既定の事実としてやられておることは、一体国会を何と考えられておるか。ひとつこの点は、どうですか総理、こういうようなのをやっているわけです。どうお考えになりますか。
  83. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 官房長官に答弁させます。
  84. 三塚博

    三塚国務大臣 それでは官房長官お答えになる前に、私から申し上げます。  既に監理委員会の答申を昨年お出しいただきましたのは御案内のとおりです。監理委員会は、法律に基づきまして、いわゆる国鉄再建監理委員会法、俗称でありますけれども、こういうことで御制定を御承認をいただき、このラインに沿いまして日本国有鉄道の改革、再建はどうあるべきか、こういうことで御審議をいただいた。井上先生も御案内のとおり、政府はこれを尊重するという尊重規定も法律の中に明記をいたしたところであります。でありますから、政府として、この答申を受け、基本方針をどうするかという閣議決定、引き続き余剰人員対策の基本的な取り決めを行わさしていただく。さらに今国会開会後、予算委員会直前に長期債務の処理方針についてこれまた閣議決定をいたし、国民の皆さまに知らしめると同時に、国会の論議にこの基本的な政府の方針を御理解をいただくべく、さように取り進めてきたところであります。  同時に国鉄に対しましても、運輸大臣として、こういう改革の路線の中にございますものでありますから、諸準備万端怠りないように、こういうことで御指示申し上げておるのも当然であります。特に、かねがね申し上げておりますとおり、余剰人員一人といえども路頭に迷わせるわけにまいりません。そういう点で、総裁には各会社、ありとあらゆるところに出向いて誠心誠意お願いをしてほしい、こういうことで御奮闘をいただいておる、こういう事情でありますので、よろしく御理解を得たいと思います。
  85. 井上普方

    井上(普)委員 運輸大臣、私が聞いていることと違うことを答弁してもらったら困る。こういうのをあさってみたいな答弁をすると言うんだ。  そこで、具体的に一つもっと国鉄がオーバーランをいたしております事例を申し上げます。  これは、「かぎりない夢とロマンを乗せて」といって、四国におきまして四国の国鉄を考える会というのをつくりまして、これは後ほど申しますが、四国におきましてはもう耐用年数を過ぎたような客車しかない。でございますが、ひとつ国鉄に言って新幹線の古い車を四国で走らせてみようでないか。そして、四国の国鉄を考える会というのを募集いたしたのであります。もちろんそれにつきましては、国鉄当局と四国総局との間におきまして相談をいたし、その計画はよろしい。取り扱いをする業者は国鉄から出向せられたサービス会社と近鉄旅行社とがこれを扱うことになりまして、一月九日、国鉄四国総局がこれを承認いたしたのであります。そこで主催者といたしましては、新聞記者に対してこれを発表した。  ところが、これに対しまして国鉄当局が、国鉄の考え方と違うからその契約は解除するという一方的な通知が行われてまいったのであります。百人募集いたしますと、募集したその日のうちに九十一名応募してきた。徳島でやったのでありますが、松山からも香川からも高知からも応募が出てきた。ところが、一月十五日になりまして四国総局から、あれはぐあい悪い、国鉄の方針と違うことを論議する旅行の会であるから、これはだめだといって断ってまいったのであります。国鉄の方針というのはまだここで審議が行われている最中にもかかわらず、こういうことをやめろ。ちょうど国鉄から出向しておる旅行社の諸君は涙を流しておったということを聞いておるのであります。開発センターというのを新しくつくって、ここに十三名出向させておる。その諸君がこの企画をつくり、そしてお客さんの募集をし、できておるのであります。断ってきた。おかしいじゃないかといって何遍もいたしますと、これは国鉄本社と相談の上で断った、こう申すのであります。  こんなことがあっていいのですか。これでありましたならば、国鉄の当局の意に反する列車というものは、これは走らさぬということに相なる。例えて言うならば、原水爆の禁止の列車を走らそうといたしましても、国鉄当局の考え方と違うということで、思想によって変えてくることもあり得る。公共輸送の本旨はここに崩れてくると私は思う。これに対してどういうふうにお考えになるのか、ひとつお伺いしたい。
  86. 須田寛

    ○須田説明員 お答え申し上げます。  今先生の御指摘のございました列車は、当初四国総局におきまして単なる団体列車としてお引き受けをした経緯が確かにございます。その後、いろいろ今御指摘がございましたけれども、国鉄の経営改革に何か反対するキャンペーン列車のような性格を帯びているというふうに四国の支社が判断をいたしまして、私どもの方といろいろ相談をいたしました結果、御指摘もございましたように、やはり国鉄の経営方針と余りにも違うキャンペーンをしていただくのは私どもとしては大変つらいということで、何とかそういったキャンペーン列車はお断りできないかということで、申し込みをなされました方々にお断りのお願いを申し上げた次第でございます。  ただ、今の時期は比較的お客様の少ない時期でございますので、一般の列車の増結手配その他でも十分にその需要を満たし得ますものですから、なるべくそういった特別な列車でなしに一般の列車の御利用の形でお願いできないかということで、御辞退申し上げた経緯があるわけでございます。
  87. 井上普方

    井上(普)委員 これはまさに思想、信条によって車を動かす動かさぬということに相なる。まさに公共輸送機関の本質を忘れたものじゃありませんか。どう考えるのです。これは先日多賀谷先生がこの問題について触れられたときに、総裁は全然御存じなかったというお話だが、公共輸送機関としての使命は一体どこにあるのです。思想、信条によってそういうような左右されるべき性格のものでない。これが私は公共輸送機関の本旨でなければならないと考えます。どういうように考えるのです。総裁、あなたはそのとき聞いておらぬと言ったが、どう考えます。
  88. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 後から私、中身を聞いております。今先生おっしゃいましたように、輸送機関というものはお客さんによって差別待遇をしてはならぬというのは基本原則でございまして、そうした面での若干の配慮が足らなかったかなというふうに私は今反省をしているところでございまして、今後ともよく現場に目を光らせまして対応してまいりたいというふうに思います。
  89. 井上普方

    井上(普)委員 それでありましたならば、総裁、あなたの責任だ。公共輸送機関として、この一月九日の四国総局が承認したことを再度実行いたしますか。どうです。
  90. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 よく現地と相談いたしまして、問題が起こらぬように対処したいと思います。
  91. 井上普方

    井上(普)委員 それじゃ、今の御答弁は、もう一度計画を再検討するというよりは当局が再検討して走らせるものと私は理解いたしまして、この質問はこの程度にいたします。  しかし、いずれにいたしましても、このようにすべてもう分割・民営が既定の事実として国鉄当局は走っておることは御存じのとおり。このポスターにいたしましても、ただいまのこの四国の国鉄を考える会、徳島から出て高知へ行き、宇和島を通り、松山へ行って、高松へ行って、徳島へ来る、この一貫をした汽車を走らすことによって、四国のよさを見直すと同時に、国鉄がいかに公共輸送として立派な働きをしておるかということを認識するための列車であります。ですから、このパンフレットの中に書いてあるのも、出向した諸君の手記が書いてあります。「頑張ってます」ということも書いてある。徳島新聞の読者の欄からはもう続々とそれに賛成するという者も出てきた。にもかかわらず、思想、信条によって、国鉄の気に入らぬことをやるからということでやめるというのは公共輸送の本質を逸脱したものだと言わざるを得ない。この点ひとつもう一度御再考願って、実現されることを強く望んでおく次第であります。  私は、国鉄再建問題につきまして一応勉強したわけでございます。一番国鉄の、この六十二年からやる新会社が果たしていけるのかどうか、四国のことを考えますならばどうも不安になってならない。で、一応私はそれなりにこれから質問をいたします。これは単に四国の問題としてじゃなくて、全体の中の一部であります。これで一部をもって全体を類推することは間違いかもしれませんが、しかし四国の置かれておる現状を申し上げまして、お伺いしてまいりたいと存ずるのであります。  いろいろと調べてまいりました。そうすると、昭和五十九年には二百三十一億円の収入があった。ところが六十二年には二百四十五億の営業収入がある。再建監理委員会の計画は、こういう計画であります。しかし、監理委員会の答申を見てみますと、考え方というものを見てみますと、昭和六十五年までに人キロから貨物、人員の輸送は三%減るということになっておる。でございますので、人キロの——まあこれは言うまでもなく、人キロというのは数量であり、運賃というのは単価であると私は理解しているんだが、五十九年には十六億七千万人キロあった、これが六十二年には十五億二千万人キロになる。減ってくるんです。大体これで一億五千万ぐらい人キロが減ってくる。そうなっている。おたくの資料で全部これ調べ上げたんです。そうしますにもかかわらず、営業の収益はふえてくる。二百三十一億が二百四十五億になる。一体どうしてこういうような数字が出てくるのかわからないのです。お伺いいたしたい。
  92. 吉田耕三

    吉田(耕)政府委員 監理委員会の事務局の者でございます。  輸送量につきましては、四国に限らず三島におきましては、一般的に過去の経緯から見まして、少しづつ減少いたしております。そういう傾向からしますと、今後四国におきましても先生おっしゃいましたように、輸送需要は少しずつ減っていくというように我々は予測いたしております。
  93. 井上普方

    井上(普)委員 聞いたことにまともに答弁してもらいたい。なぜ営業収入がこういうようにふえてくるのかということを聞いている。
  94. 吉田耕三

    吉田(耕)政府委員 そういうように輸送需要が減ってくるということを前提にいたしまして、今後三島につきましても運賃の値上げを想定しております。その運賃の値上げは、一般的に私鉄における運賃水準と輸送密度との関係を調べまして、徐々に私鉄並みに近づいていくという前提でやっております。したがいまして、輸送需要が減っても営業収入は少しずつ上がっていくということになっております。
  95. 井上普方

    井上(普)委員 これは徐々に上げていくといいますが、六十年は四・四%の値上げでしょう。六十一年は四・三%の値上げですな。そうすると、こういうような二百四十五億、これで十四億の営業収入の増加があるということになると、四国の会社をつくったんで御祝儀にうんと値上げじようかという以外にない。六十二年にここで十四億円の増収になっているのですよ。なにの数量はうんと下がっている。一億五千万人キロ減ってくる、五十九年と六十二年とを比べると。なぜこういうような数字が出てくるのです。大体六十二年には幾ら運賃値上げを計画しておるのです。数字は出ているのですよ、数字は。
  96. 吉田耕三

    吉田(耕)政府委員 我が方の数字によりますと、これは運輸委員会等にも提出したものでございますが、五十九年度の国鉄の収入の実績、これは旅客関係だけでございますが、その営業収入は二百九十五億でございます。これを六十二年度新会社が発足いたしましたときには三百八億、差し引き十三億の営業収入が増加するというように見ております。これにつきましては、四国につきましては先ほど申し上げましたような、基本的に私鉄並みを目指していくという前提で計算いたしますと、大体現在の六十年度から六十六年度にかけて平均四%ずつ値上げしていくという計算を我々は試算の前提といたしております。
  97. 井上普方

    井上(普)委員 私が聞いているのは違う。六十二年に二百四十五億営業収入があるのは何だと聞いているんだ。
  98. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 直接運賃改定をやっておりますのは運輸省の方でございますので、見通しについて御説明を申し上げます。  先生の御質問は、六十二年で監理委員会が推定したような運賃水準にまで昨年度、今年度という改定でそのとおりになるか、かような御質問だというふうに理解をいたします。  六十一年度におきましては、運賃改定を先生おっしゃるように四・五%想定いたしております。今年度も改定をいたしましたので、その結果運賃水準は全国的に見ますと、一人キロ当たり十五・四円という形になります。それに対しまして、監理委員会が六十二年度で推計されておりますのは十五・五円でございまして、ほぼ本年の九月に予定をいたしております運賃改定を実施いたしますと、監理委員会が推定されておる六十年収支の基礎となる程度の運賃、賃率にはなるというふうに判断をいたしております。
  99. 井上普方

    井上(普)委員 これは六十二年の運賃の上昇率は書いてない。しかし、一割以上もともかく人キロは減ってくる。六十年では四・四%、六十一年では四・三%しか運賃の値上がりはやらぬことになっている。それにもかかわらず、営業収入は二百三十一億から二百四十五億とふえておる。どうも私には理解できないのであります。こういうような今の御答弁で私は納得できるものじゃない。このことを申し上げて、この算出の根拠を明確に後ほどでいいから出していただきたい。時間の関係で出していただきたいと思います。  五十四年から五十八年までの間に運賃は、三二・三%の運賃値上げを行っておる。ところが、人キロの減少によって収入はずっと減っておる。二百三十六億から、五十八年でございますというと二百二十五億に下がっておる。十一億下がっておる。にもかかわらず六十二年がえらいふえてくるのは、私ら納得できない。これは数字のインチキだと言わざるを得ないのであります。六十二年には一体どれくらい運賃を値上げしようというのか。新会社をつくったんで御祝儀で、運賃値上げを一〇%以上やられたらたまったものじゃないから、この点ひとつ明確にしていただきたいと思います。  それから、六十二年から六十六年までの間に人キロはこれまた減ってくる、再建監理委員会の計画では。ところが、営業収益は五十億増加することになっている。先ほども過去の例を言いましたように、過去五年間で三二・三%運賃値上げをしたけれども、収益というものは今までより減っておる。十一億減っている。今度四%ずつ上げると、先ほどどなたかおっしゃった。これでいきますというと、五年ですから二〇%値上げする、二五%値上げするんでしょう。それで五十億営業収入が上がるということは、過去の例からいって、過去の類推からして考えられない数字である。こういうようなまことにずさんな計画で四国の国鉄を再建しようといたしておるのが実情であります。先ほど申しました点につきまして、後ほどでいいから、また一般質問のときに詳しく聞きたいと思いますので、ひとつお示し願いたいと思います。  次は、経費だ。これは物件費が五十八年度決算では三十六億要っておった。監理委並みに私はずっと計算してみますというと、これは今度は動力費におきまして二十億要るということになっている。しかし、実際には二十三億かかることになる。ここにも三億円、経費の方においてどうも私らの数字とは違ってくる。特にひどいのは修繕費であります。修繕費は、五十八年度の実績、これは国鉄の決算でいくと百五十九億かかっておった。これが六十二年度には二十八億になっている。五十八年百五十九億かかった修繕費が六十二年には二十八億円になっておる。一体どこからこんな数字が出てくるのです。もちろん、おっしゃるでしょう。貨物、荷物にかかわるものは除く、修繕費に占めておる人件費は除くということをおっしゃるでしょう。それでも数字が合わない。一体どうなっているんです。
  100. 吉田耕三

    吉田(耕)政府委員 国鉄の計算における実績値の場合には、修繕費等の中にはその修繕に携わる人の人件費も含まれております。我々は私鉄並みの会計制度のもとで私鉄並みのそういう経費等いろいろ比較をいたしておりますので、修繕費の中から人件費のたぐいは抜き出して、本来の人件費の方に入れて計算しておるというようなことが大きな差でございます。  なお、それから先ほどの四国の運賃値上げでございますが、五%であります。訂正さしていただきたいと思います。
  101. 井上普方

    井上(普)委員 人件費の方に今度除くのが百五十九億のうちの七十八億のはずだ。五十八年に百五十九億要ったものが、七十八億引いたところで二十八億にはならないんです。どうなっているんです、これは。
  102. 吉田耕三

    吉田(耕)政府委員 ただいま申し上げましたように、そういう物件費の中から人件費部分は抜いて私鉄にベースを合わせるということのほかに、物件費につきましては、私鉄の実態を調べまして、私鉄の物件費と輸送密度との関係、これを調べまして国鉄の将来の輸送密度をそれに入れて私鉄並みの物件費を算定するということにしております。なおかつその上に、国鉄におきましてはいろいろ特殊性がございますから、そういうぐあいにして計算して出した純粋の私鉄並みの物件費に対しまして二割増しの物件費を積み上げております。
  103. 井上普方

    井上(普)委員 それなら人件費は一体幾らのけるんだと聞いているのです。これは国鉄の四国鉄道局の中から私は聞いてきたんだ。とても二十八億ではできません、どんなことがあっても五十八億要りますというのが現場の声なんです、この計画でいくならば。ここでもまた数字のインチキがある。今の私が聞いておることに対してまともな答弁じゃない。この計画は全部下から積み上げてきた数字でなければならない。そんなアバウトな私鉄並みとかなんとか言うのは亀井さんだけで結構。事務当局は、これは全部下から積み上げた数字でなければならない。運輸大臣、どうです。
  104. 三塚博

    三塚国務大臣 今次長からお答えしておりますのが、計算の一つの方式を申し上げておるわけですね。よって、今井上先生前段、収入の見積もりの違いについての御質問がありました。それも、どうしてそうなりますのか、これも資料として当然、積み上げでございますから、精査した上でお出しをいただき、御審議をいただく。大体基本的に収入の違いは、一千七百億円の三島基金、いわゆる四国分の分を利子運用でプラスをいたしますと、七にするか八にするか八・二にするかで百十から百二、三十億ぐらいの収入も入る。それでいわゆる人キロの問題もきちっと資料をお出しをすることにいたしておりますし、今の修繕費の積算の根拠、どういうことなのか、先生がお聞きになって、五十八でなくちゃだめだ、こういうこと。しかし、これはなぜ二十八に相なったのか、その辺のところもデータ、積み上げの資料、これで御審議をいただく、こういうことで進めたい、こう思います。
  105. 井上普方

    井上(普)委員 何言ってるんだ。もう出ているんですよ。あなた方のはここに出ているんだ。政府の資料によって、再建監理委員会の資料によって私は質問しているんです。私は架空の数字でやっているんじゃない。そして、五十八年度の決算でやっているんです。間違ってもらっては困る。数字が違うんだ。こんなのは積み上げてつくったものだ、今も運輸大臣言われたとおり。それが事務当局に答弁できないというのはどういうことなんだ。
  106. 三塚博

    三塚国務大臣 井上委員が申されましたのは、監理委員会の参考資料というものの積算の資料であります。これは、今事務局次長が言われましたのは、二十八というこの修繕費、これが民鉄並みの修繕態様でまいりますならばさように相なります、こういうことなんですね。で、井上先生のものは、四国の担当者、現在の担当者が、五十八なければなりません、こう言っておると。ですから、それは五十八なのか、監理委員会が積算をし二十八にどうして相なったのか。それで十二分に運行ができるという、こういう資料に相なっているわけですね。ですから、私申し上げておりますのは、二十八億円の修繕費の内容をお知らせを申し上げる、こういうことでありますと御理解がいただける、こういうことであります。
  107. 井上普方

    井上(普)委員 そのとおり。下から積み上げてもらった数字のはずなんです、これは。もう民鉄並みだなんというのは亀井さんの答弁だけでいいんだ。事務当局は、これは積み上げた数字で見通しをつくっておるはずなんです。これが違うから聞いているんです。修繕費が、これは百五十九億だ。人件費はその中で七十八億なんだ。あなた方の資料でやっているのですよ、これは。間違えぬようにしてくださいよ。
  108. 吉田耕三

    吉田(耕)政府委員 私どもは、新会社の物件費を算定するに当たりまして、現在国鉄がどのくらいの物件費を使っているかというところから推計したのではなくて、私鉄における実態を調べて、私鉄並みの努力をすればこの程度まで物件費が下げられ得るという数字を挙げておるわけでございます。その私鉄並みの純粋の数字に対しまして国鉄の特殊性として二割を上乗せしているということでございます。  なお、我々が計算したところによりますと、四国において国鉄における実績値で五十七年から五十八年の一年間にかけて物件費の節約率が約六・九%でございました。今後、我々が予定しております私鉄並みの六十二年度の物件費に近づいていくためには、毎年三・八%ずつ物件費を節約していけば我々の想定している数字になるというように結果的になっておりまして、必ずしも無理な合理化努力ではないと考えております。
  109. 井上普方

    井上(普)委員 資料が違う、資料が。おたくの方の見通しと決算とで私は言っているのです。一番現実的な問題じゃありませんか。五十八年度の決算が出ている。その決算によると、百五十九億、修繕費に要ったんだ。ところが今度は二十八億で済む、こう言っているんだから、一体どうなっているんだと聞いている。人件費がこの中に含まれていたのでそれは除きました、それは幾らだといっておたくの資料で精査すると七十八億円。それを引いた。それから、何ですか、荷物等の回避可能経費というのを十五億見ている。こういうのを皆おたくの言うとおり私は計算してきている。それで二十八億だと言う数字が出てこない。五十八億要るじゃありませんか。こんな数字はあなたはやらずに、すべて私鉄並みにやればいい、こんな頼りない計画、見通しなんですか。一体どうなんです、これは。
  110. 吉田耕三

    吉田(耕)政府委員 私、ただいま先生がおっしゃった五十八年度の国鉄の物件費の実績、人件費を抜いたものというものを手元に持っておりませんが、先生おっしゃいました百五十数億という数字は、多分動力費だけではなくて、物件費全体の数字ではないかと思います。物件費全体の数字といたしましては、監理委員会といたしましては、六十二年度四国において百十五億というように推計しております。これは五十九年度の実績から見ますと百三十億でございまして、約十五億の物件費の節約という姿になっております。
  111. 井上普方

    井上(普)委員 いずれにしましても、このあなたの数字と決算とで大いに違う。私はともかく大きな数字の水増しがあると言わざるを得ない。  続いては、もう時間の関係がございますので、車両費についてお伺いしたいと思うのです。  車両費は六億組んでおるのですね、六十二年には。しかし、国鉄当局は車両費について、六十一年度には急行用として新車を三十八両、ローカル線用として三十三両、七十一両予算に組んでおると聞いておりますが、これは本当ですか。五十億組んでおるといいますが、本当ですか。
  112. 前田喜代治

    ○前田説明員 お答えいたします。  六十一年度、これはただいま予算の審議をしていただいておりますが、約、先生のおっしゃるような数字を見込んでおります。
  113. 井上普方

    井上(普)委員 五十億組んでおる。駆け込みの投資ですわな。六十二年からは六億で済む、こう書いてある。駆け込みで七十一両。四国は反対が強いし、この間、住田さんがえらいおかしげなことを言ったので、ちっと銭を出してやろうかということで出したのでしょう。七十一両分、五十億円を六十一年度の予算に組んでおる。しかし、四国の国鉄というのは、耐用年数を過ぎた車が非常に多いのですよ。年限経過車、二十年のものが二百四両ある。五年後に、この年限経過車すなわちスクラップにする車両が百十三両ある。合計三百十七車両ある、五年後には、すなわち六十四年にはですか。  こういうのはこれに一切書いてない。それで、どうするのです、こういうのは。三百十七のうちで七十一は新しい車になる。しかし、二百四十の車両は、年限経過の車をずっと走らすことになる。六億、五億、三億、六億、六億ですから、車両費は。こんなので車両費は勤まるのですか。どうなんです。
  114. 前田喜代治

    ○前田説明員 車両につきましては、お話がございますように、法定耐用年数といいますか、会計上の耐用年数というのはございますが、実態は大変手を入れて修繕をいたしておりまして、事実上、確かに多少古い車が多うございますから、現在、取りかえるように進めておりますけれども、決して会計上の耐用年数が過ぎだから、じゃ車は使えないか、こういうことではございませんので、そういう意味では、実態的に必要な車を入れまして、サービス上あるいは安全上支障ないようにさせていただきたいと思います。
  115. 井上普方

    井上(普)委員 実態的に差し支えない。一両当たり、今の価格で大体七千万円だ。五億で一体幾ら新しく車が買えるのだ。七両でしょうが。三百からスクラップ寸前の車があるにもかかわらず、六十二年からは七両だ。六十一年だけは先ほども申したようにたくさん入れる。七十一両。こんなので、あなた、六十二年以降車両費が済むと思っているんですか。ひどいじゃないですか。これは駆け込みの投資だ。こんなので経営が成り立つとお考えですか。どうです、亀井さん。ここらあたりで出ていただきましょうや。
  116. 亀井正夫

    ○亀井参考人 亀井でございます。  井上先生、四国で、実は私も国鉄監理委員会に入りまして四国の方にも何遍もお目にかかりまして、四国の鉄道の状況がなぜああいう状態になるのかに実は私も愕然とした次第でございます。電化率はゼロ、複線率が三%、そして車両は大体が本州で使ったようなお古をもらっておられる。これは四国の有力な方々から者お話を聞きまして、私は、四国で井上先生を初め非常に有力な政治家が出ておられるのに、なぜ四国の状態がこんなにおくれたのかということに愕然としたわけでございます。しかし、四国だけをというわけにはいかぬ。やはり全般を立て直しをしなければいかぬ。  現在の四国の状況は、これはまことにアバウトなことしか私は申し上げられませんが、五十八年度で言えば運賃収入が約三百億、コストが八百四十億かかっておる。赤字が五百四十億、こういう状態でございますが、このまま放置すれば四国の鉄道は本当はつぶれてしまうのじゃないかという心配から、でき得るだけ四国の鉄道が再建をして、そして四国の方々に本当に鉄道を愛する気持ちが出るような格好に持っていったらどうかというつもりで私どもの案をつくった次第でございまして、いろいろの項目についての御疑問がありましたら、精査をいたしましてまた詳細に御説明をさしていただきたい、そういうふうに思う次第でございます。
  117. 井上普方

    井上(普)委員 亀井さん、あなたはこの間も土地問題でおっしゃったときには、十分に精査いたしましてこの数字は出しました、こうおっしゃった。すべて精査した上で計画が出されておるものだと我々は理解している。そんなざっとしたものですか、この計画というのは。
  118. 亀井正夫

    ○亀井参考人 図らずも今、井上先生、土地の問題がずさんだ。この間田邊書記長からいろいろ御質問ございまして、あのときには私お答えする機会を与えられませんでした。しかし、例えば汐留、あれは六万坪、それを二兆四千億ということは、全部ならして坪四千万円という計算です。ところがあれはまた、計画をいろいろお聞きいただいたら、東京都は道路を取るとか、開発をすれば大体三割から四割は道路とか緑地とかということで取り上げられてしまうわけなんです。そうすると、刺身一切れ千円だから、二百匁のタイは二万円に相当するというようなことはあり得ないわけですね。号とか頭とか取られてしまう、こういうことでございます。  それから大井工場でしたか、大井とそれから池袋、あれも土地について誤認がございまして、あれの中の貸し付け地ということですから、極めて狭い部分、それを計算をしておるので、これは後ほどまた資料を出します。  それから精査というのは、そのときも申し上げましたように、我々が、土地でも五十八年度の公示価格、階何等からして六十二年への推算をしたということで、絶対に正確ということは、来年の先までのことでありますから、ありませんが、その当時においてはできるだけの努力をした、こういうことでございます。
  119. 井上普方

    井上(普)委員 あなた方はそういうようなことばかりおっしゃる。しかし、あの数字の中に旭川の操車場ですか、それから盛岡の操車場、高砂の工場跡地、それに新小岩の操車場、合計千八ヘクタール、これが千百億円の評価になっている。一ヘクタール一億だ。あの数字から言うと。一ヘクタール一億ということは坪に直せば三万三千円ということになるのです。旭川にいたしましても、あるいは盛岡にしましても、高砂にしましても、それから新小岩は言うまでもない。市街化区域の中で坪三万三千円というのがありますか。もちろん用途地域の差がございまして、工場地域であるとかなんとかの差がある。しかし、これは売るときには必ずその用途地域というものは変更になってくる。市街化区域で一坪三万三千円余の土地がおよそありますか。それがあの数字じゃありませんか。田邊書記長に出してきた数字じゃありませんか。それはともかくとして、えらいざっとした数字だと私は言わざるを得ないのです。これも同じだ。  今亀井さんが、四国というのはいかにもおくれておる、これを直さねばいかぬとあなたはおっしゃる。しかし、あなたの監理委員会の一員である住田正二君は何と言っています。愛媛県におきまして講演をやった。講演をやって何と言ったか。四国には高速道路と鉄道と二つとも要るということはぜいたくだ、こういうことを言った。十一月に言って、これを取り消せ、抗議の県会の決議が愛媛県、徳島県。知事が抗議の電報を言ってきたのは香川、愛媛、徳島。いずれもあなたのところに抗議の電報なり抗議文が来ているはずです。四国は何と言っています。四国を一体外地並みに扱っておるじゃないですか。四国には戦後三人の総理大臣もおるぞ、歴代内閣には二人や三人の閣僚はいつでも出ておるぞ、この四国を一体何と心得ておるんだ、外地並みに心得ておるのか、四国をべっ視するなというのが愛媛県知事白石春樹君の発言じゃありませんか。これに対して住田君は、いや間違っておらぬと頑張った。まだ公式に私は、この住田君がどういうような発言をしているか、なんですが、陳謝を稻葉修さんにしたとかしないとかいうような話を聞いていますが、一体どうなんです。こういうような考え方を持っている人が、四国には高速道路と鉄道というものは、こんなぜいたくなものは要らぬ、一つで十分じゃ、こういうことを言って島民の願いを、亀井さんと全く逆のことをおっしゃっているのですよ。その監理委員会の結論だから、これはいかにもな、計画はこのとおりだが実行できない案を平気で出すのも無理ないなという感じがしておるのです。あなたの仲間のこの住田さんの発言に対してあなたも抗議文を手に入れておるでしょう。どういうようにお考えになっておるのです。
  120. 亀井正夫

    ○亀井参考人 どうも私どもは四国というのも、のもと言うと、またこれは語弊があるのですが、それは日本の国土の非常に重要な部分であり、決してべっ視とか何かをしておりません。私も青年時代は岡山で過ごしましたから四国のこともよく存じております。そういうことで、道路か鉄道かというふうなことは監理委員会では一度も議論したことはございませんし、それから、我々の答申にも書いてあると思いますが、道路整備の五カ年計画もやはりその中の勘定に入れて、そしてそれぞれの経営計画を立てておるので、その両方の選択を迫るというような考え方は毛頭ございません。  ただ、住田委員がどう言ったかというふうなことは私も新聞を通じて知っただけで、住田氏に聞きますと、四国の交通事情からいって、今までは高速道路も一つもなかったところですね。実際お気の毒な状態にあるわけです。それでこの両方を活用してもっと四国の繁栄を期せられたらどうかという趣旨が、どうも誤って伝えられたように私どもはとるわけです。したがいまして我々は、ここで私どもの監理委員会が持っておる真意というものがいろいろなプロセスを経て増幅をされて誤ってとられたんではないか、こういうふうに存じておる次第でございます。
  121. 井上普方

    井上(普)委員 誤るも何も、住田君の発言というのは、これは単に愛媛新聞だけじゃないんですよ。朝日新聞、大新聞も全部書いた事柄なんだ。「二者択一論」、こういうように書いてあるんだ、四国では。あなた、今になっておっしゃるけれども、一月の十三日には頑張ったんだ。私の言っていることは間違ってない、四国については同じような意見を持っておる者も監理委員会の中におると言っているじゃないですか。事実テレビでそう言った。まあ住田君と言えば、運輸次官をやったけれどもどこかの会社へ行ってとうとうほうり出されたやつだ。これがのこのこと監理委員会でともかくこういうような発言をする。一体どうなんだ。陳謝文をあなた方出すんですか、出さぬのですか。どうなんですか、運輸さん。
  122. 三塚博

    三塚国務大臣 井上先生、自後の稻葉委員会における住田発言の取り扱いも、先生のところには四国特別委員会からお聞きであろうと思います。(井上(普)委員「いや、聞いてない」と呼ぶ)ああ、そうですか。  それで私もお聞きをいたしました。住田委員は、決してずばりマスコミが取り上げましたような形で物を申し上げたわけではございません、四国の置かれておる実情は私もよく存知をいたしております、ですから、さようにとられたということでありますれば陳謝をいたします。先般、御案内のように私、高知県の知事に会いに参りました。三県の知事もおいでいただきまして、四県の知事さんと実は本件について三十分ほどお話を申し上げました。その際に住田さんに出発前に、当然この話が出るでありましょうということで真意をお聞きをさせていただきました。そういうことで、自分の意の足らぬところで誤解を与え、また紛糾を与え、地域民に御不信を与えたといたしましたならば三塚大臣からおわびをしていただいてほしい、こういうことでありますから、率直に四県の知事さんにはさように申し上げたわけでございまして、発言がどう飛び出たかという経過を申し上げますと時間が長くなりますからやめますけれども、講師として呼ばれて以下ずっと会談、こういうことになられるようでありまして、結論としては、言葉足らずで御迷惑をかけました、こういうことでありますものですから、どうぞ御理解を賜りますならばと存じます。
  123. 井上普方

    井上(普)委員 住田君が言葉足らずにということがあり得ますか。あり過ぎているんでしょうが。あれが言葉足らずやということがありますか、あの人が。そして、それは単にその研修会で言っただけじゃない。二次発言、三次発言というのがある。しかも、あなたは稻葉修さんに言ったからと言いますが、稻葉さんという人は自民党の四国開発委員長だけなんです。公の場で言ったことはないのです、陳謝は。  どうです、亀井さん。あなたかわって陳謝したらどうです。四国の島民に四国をべっ視いたしまして申しわけございませんと言ったらどうです。
  124. 亀井正夫

    ○亀井参考人 先ほども申し上げましたように、監理委員会は決して住田発言としてマスコミに通じたようなことを考えにも毛頭持っておりませんし、そういう趣旨もやった覚えがないことに陳謝をしろと言われてもまことに困るわけで、むしろ委員長の私としては、四国の開発、四国の輸送、交通がもっと発展のできるように努力を続けていきたい、こういうふうに存じております。
  125. 井上普方

    井上(普)委員 ともかく次の機会にはこの場に住田君に出ていただいて、ここできっちりとひとつやっていただきたい。やらしていただく機会を委員長、お願いいたしたいと思います。  そこで、話が脱線してしまって時間が……。その車両費、先ほど言いましたようにもう年限を経過しておる車が三百十七あるのです。これは全部がえるとすると二百億かかるのですよ。そんなのは一切書いてない。毎年六億、六億、五億、これが五年間の修繕費なんです。いけるんですか。本州の使い古しをともかく四国に持ってきて、耐用年数を過ぎた、二十年経過した車、これでほとんど動かしておるのが実態なんです。修繕費が六億で済むわけがない。現に六十一年にはともかく五十億も駆け込み投資しておるのが実情じゃありませんか。これでこの計画が正確でございますとは私は承れない。この四国の新会社の計画というものは全くずさんきわまりないものだと言わざるを得ない。こんなもので分割・民営をやられたら四国は——これは住田君はこの四国鉄道会社というものは四国の優良企業だ、こう言って大きなことを言っている。何が優良企業だ。政府から百二、三十億も毎年金をもらって、それでもまだ三十億から四十億の赤字が出る、あなたの計画でいくと、この計画でいくと。このようなずさんな再建計画案というものは我々は認めるわけにいかぬし、もう一度やり直してください。この点、どうですか。
  126. 亀井正夫

    ○亀井参考人 まず、その車両の問題でございますが、六億が少ないじゃないか、それから駆け込みのあれをするじゃないか。これは四国の方と何遍もお会いして、先ほども申し上げたように、とにかくお古をもって一番末っ子のような扱いを受けておる、これを直さなければいかぬ。そこで、発足までに苦しい国鉄予算の中からでもそういうところは、手当てのできるところ、これはやってあげたらどうかということを私どもも国鉄当局に申し上げまして、数十両の車両の更新ができる。あとにつきましてはそれぞれの力に応じて、とにかくミニマム六億を計上したわけで、これでもとにかく脱線をしたりあれをすることはない、立派にいける車だという話でございますからそれを認めたわけでございます。  やり直せとおっしゃいますけれども、先ほど申し上げたように、とにかく三百億の売り上げで八百四十億のコストということ、これを国民負担で続けるということは長続きするはずないわけで、そういうことでこういう計画を立てたのでございますが、とにかく四国は優良会社というのは、今までは売り上げの何倍もの赤字が出ておるような状況を黒字が出るという形態になる、しかもそれは約一千億の資産を引き受けまして、借金は全部棒引きでゼロにする。それから、八百数十キロに対して千六百億ですか、これの基金をつけよう。これは一キロ当たり約二億円の転換交付金を出すのと同じであります。三陸鉄道とか樽見鉄道の場合はキロ当たり三千万円だ。六倍以上のそういう持参金をつけようということで、できる限り四国は鉄道が栄え、四国の方々が栄えるようにということで我々は許された範囲内で可能な限りの案をつくった、こういうつもりでございます。
  127. 井上普方

    井上(普)委員 四国では分割してやっていくことはできない。だから、先ほども住田君が言うように四国ではこの鉄道を引き継ぐ新会社はやっていけない。このほかにもありますよ。四国は御存じのように台風常襲地帯で、地すべり地区の大きい地帯だ。五十二年の集中豪雨のときには大杉付近、土讃線で二カ月もストップした。それを直すのにもう六十億要っている。その金は一体どこから出るのだろうか。我々だって同じように税金を納めているんだ。東京の人と我々四国の人とは同じように税金を納めている。にもかかわらずこんな差別を受けるのは一体何だ。この会社は必ず赤字が出る。もう計画自体から赤字なんです。この四国の国鉄は一つの例にすぎません。恐らく九州もあるいは北海道も赤字で困るでございましょう。これは後ほど他の委員から申されると思いますので私はこの程度にいたしますが、いかに監理委員会の案というものが急速にといいますかずさんにつくられたかということを申し上げて、もう一度御再考を願うことをお願いいたしておきたいと存じます。
  128. 三塚博

    三塚国務大臣 いろいろな観点から御指摘をいただきましたが、政府といたしましても監理委員会の答申を受けてこれを精査を申し上げ、いかにしたならば民活会社として再生、新生できるであろうかということでただいまやっておるわけでありまして、ほぼそのめどがつきかかっております。そういう意味で三月中旬まで関係法案を提出をさせていただき、本格的な御議論を賜る、こういうことに相なるわけであります。  四国をべっ視しておるということでありますが、決してさようではございませんで、関東から東北、北海道に行きますと、本四架橋を三本四国にかけて、一体東北、関東それから北海道の政治家は何をしているのだというのが東北の圧倒的な声なんですね。そういう意味で、それは政治のバランスの問題で、見方の問題であります。今度架橋ができて、それで四国に入るわけでありますから、四国は大変有利な条件の中に鉄道会社が運行される。言うなれば、過去の国有鉄道の惰性の中で再建の方式を考えますと赤字であります。新しい民間会社という発想の中でこの地域鉄道を島民、官民一体となってやり抜くということでありますとこれがやれるというきちっとした法案と一緒にデータを提出をいたしますから、ぜひ立派な御審議を賜り、御結論を得たい、こう思っておるところであります。
  129. 井上普方

    井上(普)委員 データは既に出ているんだ。あなた、ここで演説してもだめ。まともな答弁できないのだから。  そこで、時間の関係がございますので、私はこれから雇用問題についてお伺いいたしたい。  国鉄は四十四年から五十八年までに十万八千八百人の人員整理を行って減員をやってきています。ところが、十万八千八百人のなにはやりましたけれども、そのうちの四万二千六百人の分は外注に回しているんです。下請に回しているんです。十万八千八百人の人員整理を五十八年までに四十四年からやりましたけれども、十万八千八百人のうちの四万二千六百人分は、すなわち大体四割はその仕事を外注に回しているんです。そこで、一体どんな会社に外注したのかといって私は調べようと思って、国鉄当局に外注会社を出してくれと言いました。そうしますと出さない。会社の信用にかかわりますからと言って出さない。これは内閣参事宵の前で私は要求したのだから公式な要求だ。それで、こういうように会社要覧というのが運転局あるいは交通局というのに全部できている。出せと言っても出さない。そしてきのう出てきたのがこれだけの半ペラ。そして出てきました。そして国鉄出資会社一覧表といってこんなざっとしたのが出てきた。ほほうと思ってこう見ておると、会社の役員数が二人、一人、四人、二人。一人というような会社があるのですな。私は商法の二百五十五条というのをさっきも見たのですが、会社という以上は、役員は、取締役は三人以上なければいかぬ。監査役は二人なければいかぬ。にもかかわらず、役員の数が二人、一人。おたくから正式に出てきたのですよ。一体どうなっているのです。国鉄が出資した会社は役員一人でも株式会社として認められるようになっておるのですか。どうなんです。
  130. 長谷川忍

    ○長谷川説明員 お答えいたします。  昨日先生に御提出いたしました資料につきましては、出資会社の関係の資料でございまして、これは全体で百二十一社、そのうち、たしか先生に御提出いたしました資料は常勤職員だけの数字でございまして、その数は四百九十三人なのでございます。そのうち国鉄出身の役員が何名と、たしかそういう資料を提出したのでございます。
  131. 井上普方

    井上(普)委員 だから私は出せと言った。これは会社の秘密で信用にかかわりますからと言って出さない。そして出してきたのは役員数がこのとおり。これでまともな会社と言えますか。そんなところに仕事をさせているじゃないですか。役員一人というような会社に下請をさせておるじゃありませんか。一体どうなっているのですか、これは。少なくともこの外注会社を調べるためには、運転局あるいは各局に関係会社の要覧というのを備えてある。出してもらいたい。委員長、お取り計らいをお願いいたしたい。
  132. 小渕恵三

    小渕委員長 出せますか。
  133. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 要覧の全体につきましてはちょっと検討させていただきたいと思いますが、先生の今の御趣旨に沿ってできるだけ資料を提出いたします。
  134. 井上普方

    井上(普)委員 何で出したがらないのです。何か悪いことがあるのか、これは。  この十万人整理したうちで、四万二千六百人分は外注しているのですよ、あなた方は。四割は外注している。その外注の会社がどうなっているかということをお聞きしているのです。調べなければいかぬと思って調べた。出してこない。出してきたというのは、そこにあるように会社は役員が一人、二人というのがざら。商法の二百五十五条には、取締役は三人以上でなければならぬ、このように書いてあるが、そんなのを平気で出してくる。これほどずさんな国鉄当局だという証拠にもなろうかと思う。  さて、そこで四万二千人は一体どうなっているか。これはもう時間がございませんので端的に申し上げます。  私はこの間上野の駅へ行った。上野の駅へ行ったところが、さあ、片方においては脂汗を出しながらなれぬ仕事でコーヒーを売っている国鉄職員がおる。改札口へ行ったならば、洋服の違うのが改札している。あれは何だと言ったら、あれは外注にかけておる下請会社でございます。これは単に上野の駅だけじゃない。全国、そうなんだ。まだまだ聞くというと、保安局の連中は、保安局に勤めておる職員は駐車場の料金係になっている。線路に働いておるのはあれは何だと言ったら、下請会社。上野の国鉄の駅あるいは高崎もそうだ、切符を切っているのは下請会社の職員なんだ。そしてコーヒーを売ったり、うどんを売っておるのが正規の国鉄職員。まともな考え方じゃ私はならないと思う。総裁、この姿をあなたはどう考えるんだ。
  135. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 今までも合理化の一環といたしまして、何とかコストを下げようということでぎりぎりのところまで政策を講じている一環といたしまして外注問題があるわけでございます。  今先生御指摘のように、余剰人員という問題を今別途抱えております。したがいまして、監理委員会でも御指摘がありましたとおり、この余剰人員の活用という形で現在、今まで外注をしておりましたお仕事をもとへ戻しまして、これを直営化するという方向をやっております。かなりの数になっております。
  136. 井上普方

    井上(普)委員 何人やった。今私らが見たところ、私は三日ほど前に上野の駅に行ってきた。こういうことが行われている。これで九万人の首をとる、国鉄からやめさす、あるいは自治体に、国家公務員に三万人を振り分けをする。だれがこれ採ります。一体、外注の下請会社が大事なのか国鉄の職員がかわいいのか、国鉄当局はどう考えているのです。  皆さんも御存じのとおり、去年は国鉄職員は過剰、過員と称して草抜きをさせ、ガラスふきをさせた。下請の会社の諸君が改札をやっている。改札なんというのは鉄道会社固有の仕事じゃありませんか。そこにまで下請会社を入れておく。だから下請会社というものを見直そうと思ったら、出してこない。出せないんだろう、恥ずかしくて。こういうようなことをやっているじゃないか。常識で考えられぬことをやっている。一体どうなっているのです。保線区の職員は駐車場の料金係になっている。線路の上で働いているのは下請の職員。どうなっているのです。しかも、聞いてみればこういうことになっているのです。改札というのはなかなか難しいらしい。だから、国鉄職員の中では係職試験というのを今でもやっているのですよ。そして一ランク上にしてあの改札係は国鉄職員がやっている。高崎のごときは女の子が——女の子でこういうような試験に通ったとは思われない。こういうことをやっている。  もう一つ、あなた、年とっておるのにやっているなと言って大出君が聞いた例がある。いや、それはわしは国鉄を退職した。退職したけれども、年金を十七万円もらっている。十万円足してもらって私は今改札係をやっているという旧国鉄職員もおった。そうかいと。考えてみたら国鉄の共済年金は大赤字。御承知のとおり、NTTにしましても、全逓にしても、国家公務員にしても、地方公務員にしても、全部国鉄を助けてやろうということでやっておる。その金で国鉄経営が成り立っておる、これが実態じゃありませんか。どう考えますか、大蔵大臣。あなたは年金の係でしょう。
  137. 竹下登

    ○竹下国務大臣 国鉄の年金を救済するために国家公務員あるいは元電電、元専売等が労働者連帯でこれを支えようということは、私も涙が出るほどうれしかった。さらに今井上先生から地方公務員も、こういうお言葉がございましたが、地方公務員はまだ関係ない。
  138. 井上普方

    井上(普)委員 あなた、涙が出るほどまでしか聞いてない。どうする、どう考えるということを言っていないのですな。国鉄の年金財政で、国鉄が、例えば臨時職員というものがある、下請職員というものがある。十七万円は年金でやっている。そして十万円払ってもらって国鉄で働いている。国鉄事業をやっているわけです。じゃ、ほかのNTT、助けておる人はどう思うでしょう。あなた、こんなこと初めて知ったでしょう。どう考えます、主管大臣として。おかしいじゃありませんか。
  139. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私は実態をよく承知しておりませんが、間々厚生年金等を受給しながら第二の人生として退職時給与の六割とかでお働きになっておる例はあるというふうに承知しておりますが、この国鉄年金そのものと、その第二の人生との問題のかかわり合いにつきましては、私が答える範囲外ではなかろうかと思います。
  140. 井上普方

    井上(普)委員 いずれにしても、この国鉄年金を助けておる労働者の諸君は辛抱できぬだろうと私は思う。しかも、この下請会社というものを見てみると、どうなんだと言いたくなるほど国鉄のOBが全部入っている。国鉄OBすなわち管理職の諸君は、こういうようにたくさん会社をつくって、受注するところは国鉄だけ、そういう会社をじゃんじゃんと三百ぐらいつくっている。そして、のうのうと生活しながら国鉄の旧職員を採用して安い賃金で働かせておるのが実態じゃございませんか。  だから、ここでひとつお伺いする。監理委員長、ここであなたはこれから九万三千人のともかく人員整理をやられようとしておる。その九万三千人の中で外注に回す人数は一体どれぐらいあるのか、ひとつお知らせ願いたい。
  141. 亀井正夫

    ○亀井参考人 外注に今出しておるのを本来に戻すべき人数というようなことは私どもは計算をしておりません。外注というので、私どもはやはりそれで本来国鉄が、今井上先生がおっしゃったようにやるべきものは戻したらどうかということは答申の中に書いてございます。具体的には、改札の、特に新幹線の中の乗り継ぎラッチのところとかあるいは車両の点検修理あるいは保線ですね、こういうのはできるだけ内部に戻しなさい、こういうことで国鉄当局ともやりましたが、そのときにも話はございまして、これは笑い話みたいなことですが、国鉄本来の切符を切るのは、持たせ切りをしたりサービスが悪い、そしてベテランの人を置くと、そこで今の本来の職員の教育になる、そういうので置いておるのですとかいろんなそういう説明もあったわけでございまして、なかなか本来ここまでこうというところまでは我々は詰められなかった。しかし、精神は井上先生がおっしゃるように本来国鉄の職員がやるべきものは国鉄の職員がやるということが当然である、こういうふうに考えております。
  142. 井上普方

    井上(普)委員 したがって亀井さん、私はお伺いするんだが、あなたは民鉄並みの生産性を要求するんだとおっしゃる、おっしゃるけれども、実態としては九万三千人が職を失ったときに幾ら外注に回すのか、これの数字が出てこなければ私は話にならない。その国鉄当局を信用するわけにはまいらない。考えごらんなさいよ。駅の正規職員がコーヒーを売る、下請の職員が切符を切っている、この姿は一体何だ。だから、こういうようなことをやってきたのが今までの国鉄じゃありませんか。だから、今度九万三千人を整理するには外注に幾ら回すんだ、ひとつ数字を明確に出していただきたい。
  143. 亀井正夫

    ○亀井参考人 ただいま井上先生からお話がございまして、当然のことでさらに検討はさしていただきますけれども、しかし私どもが考えた基本は、委員会は、国鉄の職員はやはり民間人並みに働いてもらうということが基本前提でございます。私鉄と随分違うわけなんですね。でありまして、人数のことで、例えば運転時間、ハンドル時間がうんと違うあるいは私鉄の駅員の勤務態度、勤務時間と国鉄のは随分差がある、これはもう天下周知の事実でございます。それで、民間並みに働いて、そしてなおできないものは国民負担にしていただくとかそういうことを基本精神として案を出したものでございまして、ですから具体的に経営は、新しい企業は二十一万五千人体制でやってもらうということを基本に置きまして、あとの措置については国鉄当局が運輸省の指示、指導監督を受けながら実施計画をお立てになるということが筋である、こういうふうに思っております。
  144. 井上普方

    井上(普)委員 いずれにしましても、国鉄の改札というのは国鉄職員の本来の仕事、そこまで下請が入ってきている。これを民間と同じように、民鉄と同じようにと言えばどこまでいっていいのかわけがわからない。あるいは駅には一人おって、駅長一人おったらあと皆下請に任すかもしれない、こういうような実態でございますので、この点はひとつ明確にやっていただきたい、そしてこの下請業者に対する考え方は根本的に改めるように強く運輸大臣に私は要求いたしておきます。  先ほど来申しました資料につきましては、委員長、お出し願えるようにお願いいたします。
  145. 小渕恵三

    小渕委員長 理事会で十分検討いたします。  この際、小林恒人君より関連質疑の申し出があります。井上君の持ち時間の範囲内でこれを許します。小林恒人君。
  146. 小林恒人

    小林(恒)委員 先輩議員がもう既に国鉄問題各般にわたって議論をされているさなかでありますが、私もおよそ二十三年間鉄道で飯を食ってきた人間として、今までの議論を伺っておりますと、だんだんわからなくなっていく。一体何を考えてどの方向に行こうとしておるのか、先が見えなくなっていくというのが実感でございまして、少なくとも過去において政府はあるいは国鉄は再三にわたって再建計画を組み立てながら、何回も何回も失敗をしてきた。しかし、それは必ずしも全部失敗ではありませんで、一部には成果があったのでありましょう。しかし、欠陥だけが大きく露呈をいたしまして、既に五十九年度の決算報告書を見ますると二十一兆八千億になんなんとする長期債務を抱えている。私どもは、我が党としても責任を持ちつつ再建の方策を模索をしなければいけないという、こういう立場に立って議論をいたしてきた経過がありまするから、そういったことからすれば、少なくとも今日的な現状認識の中で、長期債務を中心とした経営の危機、あるいは随分ずうたいが大き過ぎるとかあるいは能力論などを含めて国鉄そのものの機能が麻痺をしているという、こういった問題点。加えて、大慌てで前倒し前倒しで合理化を推し進めてまいりました。昭和五十五年に成立をいたしました再建法で見ると少なくとも六十年度末までに三十五万人体制とうたったものがもう既に三十万を切ろうとしているという実態なんですから、余剰人員が出るのはごく当たり前でありましょう。これだけ前倒し合理化をやって余剰人員が出ないとすれば、これは世の中の七不思議でありまして、そういった三つの大きな要素を考え合わせつつ、これから正確な意味での再建改革、こういったものに取り組みを強化をしていかなくてはいけないのだと考えるわけです。  そこで、トータルな意味で、運輸大臣は大変国鉄問題にお詳しいわけですから、過去の成果と欠陥について、あなたの気づかれている点、何点がずつお示しをいただきたいと思うのであります。
  147. 三塚博

    三塚国務大臣 小林委員のお尋ねは、国鉄が今日がく相なりました原因は何と心得るか、おまえなりに答えろ、そういう意味がと思います。  国有鉄道は御案内のとおり、日本の文明開化を支えてきたことは事実であります。戦後三十年に入りまして高度経済成長時代へと突入をしてまいりますころから交通手段が多様化してまいりました。実は、鉄道としてこれに柔軟に対応すべき時期でありましたのに、親方日の丸という公企体という従前のパターンの殻の中に安住をいたしたというのがまず一つ挙げなければならぬ点であります。  それと同時に、先般も多賀谷先生からの御指摘、またほかの先生からもありましたが、不採算路線をつくり上げてその赤分を国鉄に転嫁をしたのではないか、こういうことであります。この点は、公共企業体の公共性という、地域の足を確保するという意味でAB線等の開発線をつくらざるを得なかった点は認めざるを得ない。同時に、新幹線の問題などの提起もございましたが、これはロングで見てまいりますならばそれなりの国益に沿うものであろうというふうに思いますが、いずれにしても、民鉄という立場でありましたならば収支の相償わない線区の建設はあり得ない、このことだけは明確に言えます。公企体という性格の中でつくらざるを得ない、こういう点が第二点かと思っております。  第三点からいたしますと、これは政治の介入、このこともそういう意味で率直に認めざるを得ない。そういう点、時間があればもっとずっと言いますが、御質疑もあることでございますから、小林先生も運輸委員会のメンバーとして大変本問題に詳しいわけでございますから、御指摘をいただきながらここで論議を詰めてまいる、このように思っております。
  148. 小林恒人

    小林(恒)委員 運輸大臣、もう一点具体的な点でお伺いしておきますが、昭和五十五年に成立をいたしました再建法の中では、一つは、要員は三十五万人体制、六十年度末まで、こういう議論がありました。これは先ほど申し上げたように、既に前倒しでもって三十五万人をはるかに割り込んでいるという現実があります。  それからもう一つ、大事な問題として地方交通線に対する割り増し運賃制度というのが当時大変大きな議論になりました。これは過去五年間の間にたった一回実施されただけですね。なぜできなかったのですか。法律で決まったことがなぜできなか一つたのか。
  149. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、地方交通線の割り増し運賃というのは、昨年度の運賃改定におきまして導入をいたしましたが、本年度の運賃改定では見送っております。さらに、明年度の運賃は九月ごろ改定ということでございますので、それに導入するかどうかは現在検討中でございます。  地方交通線に割り増しを入れますということにつきましては、監理委員会からも御指摘がございます。それはそれなりに私ども大変重要なことだということを考えておりますが、ただ地方交通線に割り増しを入れますと、やはり利用者の方等ないしは関係競争交通機関との関係等いろいろございまして、影響も非常に大きいわけでございますので、これにつきましては慎重に判断をしながら、その成果を見ながら導入する、こういう考えでございます。したがいまして、昨年度の運賃改定の成果がまだ出ないうちに本年度の運賃改定をいたしましたという経緯から本年度は見送ったわけでございまして、またその成果を見つつ来年度の運賃改定において考慮をいたしたい、かように思っております。
  150. 小林恒人

    小林(恒)委員 地域格差をなくしていくという意味ではまさに逆行する考え方で地方交通線に対する割り増し運賃制度を施行していく、こういった大きな問題点がありまして、随分議論になって、慎重に取り扱っているんだという認識であれば私どももそれなりの評価をしたいと思っているわけです。ただ、こういったことに象徴されるように、必ずしも掲げられた法律、掲げられた方針、こういったものがすべて順風満帆で進んでいるわけではないわけです。したがって、そういう難しさがあるから監理委員会法律までつくって設置をして新しい方策を求めよう、こういうことになったのでありましょう。  ところが、先ほど来議論がありますように、まだ法ができ上がっていない、国会に上程さえされていないという現実の中でも、国鉄はこうやりたいという宣伝が行われたり、先ほども広告の問題が随分取り上げられました。そればかりではありません。国鉄が出しております「Q&A」という小冊子を見ますると、「民営分割についてのQ&A—国鉄改革に皆さまのご理解を—日本国有鉄道」国鉄の広報部が発行したようでありますけれども、こういったものまで御丁寧に出される。解説は結構でありましょうけれども、「国鉄再建計画は今まで何回も実施されましたが思い通りの成果をあげていません。いったい国鉄の経営破綻の根本の原因は何なのですか?」というこういう設問があって、それにかれこれと答えている。一番最後の方に何の説明書きもないままに「国鉄のおもな労働組合(昭和六十一年一月一日現在)」組合名が記載をされて組合員数が記載をされている。これは何の関係があるのですか。こういったことを内外に明らかにすることによって国鉄内部には複数の労働組合があって大変なんですよということを言いたかったのかもしれない。そう解釈をするにしても、赤字だ赤字だと言ってこんな立派な冊子をつくるお金がよくもまああるものだな。ただの一回しゃありませんよ。再三再四にわたってこういったまさにむだ遣いがなされているのじゃありませんか。政府が方針をまだ確定をしていないという段階ですよ。この点について総裁はどうお考えですか。
  151. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 先ほどもお答え申し上げましたとおり、ポスターにしろこのパンフレットにしろ、私どもこれから改革を、政府の方針が決まったその方針に従った準備をしていかなければならないといった点が一つと、それから、これからやっていくにはやはり国会の御審議を経ながらなおかつ国民の御理解を得るということがぜひとも必要でございます。そういうようなことも踏まえまして、ちゃんと中に書いてございますが、国会の御審議を得てという前提のもとに、私どもはこういうことでやるのですということを国民にPRしたいという発露の結果であるわけでございます。
  152. 小林恒人

    小林(恒)委員 私に言わせれば余分なことばかりやっている、こう言わざるを得ないのです。それよりも先にこの予算委員会の段階で運輸省並びに国鉄当局に一つだけ明確にしていただきたいものがある。それは、どういう手順で改革を進めていこうとしているのか。昨年の七月二十六日付で監理委員会から答申が出たことについて私どもよく承知をしておりますし、その後閣議決定をされたことについてもよく承知をしております。しかし、具体的にどういう手法を用いて改革手順をつくられるのか。どんどんどんどん内容が表へ出ていってしまう、しかし具体的な手法が国会の中では示されない。先ほどから何回も国会軽視ではないかという議論が出ているのです。そこら辺についてまず明確にしていただきましょう。
  153. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 国鉄改革の手順につきましては既に閣議決定を行っておりますが、その閣議決定を受けて所要の法律案を提出するということになっております。今通常国会関係法をすべて提出をいたしまして御審議をいただき、ぜひ今国会内において成立をさせていただきたい、かように願っておるところでございます。法律が通りました場合にはこれに従いまして必要な改革のための基本計画というものを政府が策定いたしまして、これを国鉄に指示をいたしまして、国鉄がそれを受けまして実施計画というようなものを定めまして運輸大臣の認可を受ける、そのような手順で進めていきたい。  一方国鉄におきましては、必要な準備行為といたしまして、現在の持っております資産等その区分等につきまして詳細な調査を実施をいたします。また、職員全体の個々の職員の数とかその種別というようなものも明確にいたしまして引き継ぎに備えるということになろうと思います。そのようなことを受けまして、現在考えておりますところでは、本年の十一月に思い切ったダイヤ改正をいたしまして、それは六十二年四月を想定をいたしました新しい民営・分割の体制で運行すると同じような形を考慮に入れましたダイヤ改正をいたしまして、そのダイヤのぐあいを見て、できればそのまま六十二年四月、法律の規定によって新しい会社を設立する。新しい会社の設立と同時に、例えて言えば通信事業とか研究所とか所要のものを分離をいたしますが、これにつきましてもそれなりの準備をして六十二年四月一日から実施をいたしたい、このような手順を考えております。
  154. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 政府の方針の決定によってこれを法案という形にまとめ上げ、国会の御審議を仰ぐということが何よりも重要な事柄であるというふうに思います。ただ、その場合におきましても、諸先生の御議論のためのいろいろな検討、準備、こういうものが必要でございます。我々は当事者といたしましてそうした意味での準備は十分に検討を重ね、国会の御審議に十分にお答えをするというようなこともやはり我々の仕事であるというふうに思っておるわけでございまして、そういう意味でいろいろな角度から勉強しているところでございます。
  155. 小林恒人

    小林(恒)委員 正確な手順をたどっていただきたいことを特にお願いを申し上げておきたいと思います。  そこで、最初に分割・民営ありきという、こういった手法そのものに私は疑義を感ずるのでありますけれども、その議論はさておいたとして、既に私どもの要求に基づいてそれぞれ六分割をしたと想定をしつつ各社別の経営収支見通し、こういったものが出されてまいりました。鉄道の経営の主たるものは私は運賃だと思います。そこで、既に昭和六十一年度運賃改定を行いたいということについては明らかになっているわけですが、九月以降約四・五%程度七百五十億円くらいの増収を見込んで運賃改定をしたい、こういう考え方のようでありますが、この「運賃水準の変化と収支見通し」の一覧表の中では、年平均アップ率、北海道、東日本、東海、西日本、四国九州、それぞれありまして、先ほど四国は一%間違ったみたいでありますが、三%から五%の範囲内で年平均運賃アップを推し進めていきたい、そういうことで試算をされているようであります。これは年平均でありますから、毎年上げるという方法もありましょうし二年に一回という方法もあるのでありましょう。そこら辺はよしとしても、この一覧表の中には少なくとも営業収入は毎年四%ないし五%の運賃が上がったと想定をされる程度の営業収入が増になって五年間組み込まれた一覧表をいただきました。  ただ問題は、先般来各党の議員の皆さん方からも御質問が出ておりますように、運賃そのものは通算制にするのか併算制にするのかという問いに対しては、通算制でありますと一風してお答えをいただいております。通算制だとすれば、一社だけ運賃値上げをするということはあり得ないのではないかと思うのでありますけれども、この点についていかがですか。
  156. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 通算制か併算制かと申すことは、併算制の場合にはそれぞれのところで運賃を会社の区界で切りましてそれぞれの運賃を計算してこれを足し合わせる、これが併算制でございます。それに対しまして通算制は、その距離を通算してそれに賃率を掛けるということになります。そこで先生おっしゃるように、同じ賃率でございましたら単純に距離を足してそれに賃率を掛ければいいわけでございますけれども、もし民営・分割後各社の賃率が変わってくるというときはどうなるかということでございますが、これは実は先ほど先生御指摘になりました地方交通線の割り増しというのはまさにそれと同じような形になっておるわけでございまして、そういう形になっているからといって通算制ができないということではございません。それなりのやり方で立派に通算制はやっていける、こういうふうに考えております。
  157. 小林恒人

    小林(恒)委員 それでは棚橋さん、もう一つついでに伺っておきますけれども、六十一年九月に運賃値上げをして運賃改正をした後、六十二年四月の段階での運賃改定というのはあり得ないわけですね。
  158. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 六十一年九月に運賃を改定いたしまして、そのままの運賃で新しい民営・分割に移行したい、かように考えております。
  159. 小林恒人

    小林(恒)委員 だとすると、この一覧表はおかしくなるのではないかという気がするのです。少なくとも運賃を改定する場合、一社だけで運賃改定ができるのか、六社総体が一挙に国の指導に基づいて運賃改定をするのか、アップ率が三%から五%までそれぞれ違うわけですから、そういう意味では同一引き上げというのは大変難しいのだと思うのですよ。性格が異なってくるのだと思う。だとすれば、一社が値上げをした場合は一社対五社の間に合意を求めなければならないだろう、このように考えます。社内についてのみ自主性が尊重されるということになるのだろうと考えます。ということを念頭に置いて考えてみた場合、昭和六十二年四月から実績を求めるというあなたのおっしゃるような概念からすると、六十三年三月までの実績というのは六十三年六月以降にならなければ出てこないだろう。そうすると六十三年の運賃改定というのは、実績も出ないうちに実施をするということには相ならぬわけですね。だとすると、六十二年から六十二年へ移行する時期に賃改を基準にして営業収入が上がるなどというこういう数字のはじき方というのは、まさにでたらめだと言わなければいけないと思うのですけれども、いかがですか。
  160. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 六十二年の当初の運賃、これがまずどうなるかということにつきましては、今年の九月に運賃改定をいたします。その際にどのような賃率をとるかということについては現在まだ検討中でございます。申請までの段階に国鉄との間で十分に詰めたい、かように思っております。現在の賃率を四国とか九州とかそういうものと本州と比べますと、これは必ずしも同じではございません。と申しますのは、地方交通線の含まれている率が違いますので、それだけ切り離してみれば当然異賃率になっておるということになります。したがいまして、六十二年四月一日に今の国鉄のまま、そのままで移行するといっても、当然それぞれの各社の賃率は少しずつ違うわけでございます。それからさらに、ことしの九月の改定をどうするかということでまた違いが出てこようかと思います。  そこで先生御指摘の、六十三年度の運賃というものは六十二年度の実績が出ないとできないじゃないか、こういうことでございますけれども、運賃の改定は常に前々年度の運賃収入というものから当該年度の前年度の運賃というものを推計いたしまして、さらにそれを延ばすという形での賃率改定というものを見込むわけでございます。これは現在の国鉄でも、例えば今年度の運賃というのは、今回ごとしは九月に改定をいたしますから若干違いますけれども、四月から改定します場合は常にそういう形をとります。今回の場合も同じように四国は四国、九州は九州というそれぞれの区分の中での収入とかいうものがわかりますから、そういう形の中で推計をして六十二年度の運賃、これはいつ上げるかまだ決めておりません、それぞれの新しい会社の御判断でございます。
  161. 小林恒人

    小林(恒)委員 前々年度という言い回しで、ずっと六十三年も六十四年も営業収入が上がっていくんだという、こういう試算ができるとおっしゃるけれども、これは少なくとも自然増がこんなにあるわけがないのですよ。運賃改定をしなければ、こんなに上がっていきはせぬのです。だとすると、六十二年から六十三年にまたがる間、六十三年から六十四年にまたがる間でどうしてこうやって上げられるのですか。会社単位の、いわゆる現行の運賃法で言う経費を賄うという基本が私は崩れると思わないから言うんだけれども、そんな数字のマジックをどうやってつくるのですか。全国平均というわけにいかないのですよ。それぞれ会社ごとに計算をしなければいけないのです。会社の発足は六十二年四月一日なんです。だとすると、そんな数字出るわけないでしょう。そんなでたらめ言っちゃだめですよ。正確に答えてください。
  162. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 私がお答え申し上げましたのは、先生が前々年度の収入がわからないと出ないではないか、こういうことでございましたので、賃率を何%にするかというのは今のような手法で計算をするということを申し上げたわけでございまして、コストにつきましては、これは実績とか推計に基づいてどれだけのコストがかかるか、それを賄うに足る賃率は幾らであるか、こういう計算をしなければなりません。それにつきましてはいろいろな推計方法というのがございまして、たまさか現在の形ではずっと前から鉄道が続いてきておりますからそれなりに実績値をもとに計算をいたしますけれども、新たに鉄道を始めるような場合は一定の推定のもとにコストを計算して運賃を決めるわけでございますから、六十二年度のコストというものは六十二年度、例えば途中までの実績とかそういうものを用いてしかるべきコストというものを算定することは可能であろうというふうに考えております。
  163. 小林恒人

    小林(恒)委員 そうおっしゃるけれども、コストだって正確に出ていないのですよ。コストだって、実績なしにコストをはじき出せないのです。今度は会社ごとにコスト変わるのですよ、またすべて。そういうでたらめ言っちゃいけないですよ。しかし、この議論だけしているわけにまいりませんから、この数字のはじき方は非常にあいまいなものだなと言わざるを得ません、このことだけ申し上げておいて、以降法案が出てきた段階でさらに議論をすることにしたいと思っています。  それかう、国内の物流、二十兆産業と呼ばれておりますけれども、国鉄は、貨物は大変なお荷物だと言われてきたわけです。およそ五十億トンぐらいある国内物流総体のうち、今度の計画で見ますると、国鉄の貨物部門が担っていく部分というのはささやかに五千五百万トン体制、現行の七千七百万トンからはるかにまた後退をしていくという、こういった方向が示されているようであります。この中身を見ますると、四Sと呼ばれているセメントや石油、石炭、石灰石、こういったものがおよそ四千五百万トンあるわけですから、その他のパルプとかコンテナというのはせいぜい一千万トン程度しか国鉄は運ばないということになるわけですね。物流秩序が保たれていくと運輸大臣はお考えでしょうか。
  164. 棚橋泰

    ○棚橋(泰)政府委員 先生御承知のように、昨年の宋に運輸省が監理委員会の基本的考えに基づきまして貨物会社の構想というものの概要をまとめました。この概要につきましてはもう御承知と思いますので詳しい御説明は申し上げませんけれども、輸送の荷物の中身、貨物の中身というものは一応の積み上げでございます。基本的にヤードというものを廃止するということはございますけれども、全体として現在の荷主さんというものが新しい体制で効率化、合理化した形での貨物輸送でどれだけ荷主になっていただけるかというようなことを一応の積み上げ算定をしておるわけでございます。  その中で、先生おっしゃいます鉄道特性の非常に強い三七というような貨物がどれだけいくかというのは、荷主さんとの関係でどれだけこれを受けていただけるかという形でございます。そういう形の中で、先ほど申し上げましたように五千五百万トンという積み上げになっておるわけでございまして、その中にはかなり大量のいわゆる専貨というものが入っておることは御案内のとおりでございます。ただ、これはあくまでも一応の概要でございまして、その際にも申し上げておりましたように、この新しい体制に基づきまして、さらに具体的にどのような貨物というものを荷主さんが国鉄に渡していただけるかということについては、ダイヤとの関係で現在国鉄で鋭意詰めておるところでございまして、その結果に従ってもう少し正確なものを出したい、かように思っております。
  165. 小林恒人

    小林(恒)委員 時間がなくなりましたから、最後に総理にひとつ総括的にお伺いをしておきたいと思います。  国鉄そのものの問題点を取り上げる過程で総理自身も何回かおっしゃったことがありますが、現行の国鉄のありようの中では、国鉄総裁そのものが、投資あるいは運賃、賃金、いずれについても国鉄経営の基本事項であるにもかかわらず、これに主体的な能力を発揮することは非常に難しい実情にある。したがって分割化、民営化をしよう、こういう議論のようでありまするけれども、しかし、現実に監理委員会から出された答申を見まするというと、例えば今議論いたしましたように運賃体系一つをとってみても、六つに分割をしてしまう、六つの中の一つの会社だけが運賃値上げをしようとしても、そう簡単には通算制だという議論の中ではいかない仕組みというのがある。物流総体を眺めたって、五十億トンもある貨物輸送体制の中で鉄道が担っていくのはせいぜい五千五百万トン体制、こんな状況の中で、それぞれ幾つもできる会社の社長さんが、監理委員会の答申どおりに法律をつくり具体化をした場合に、生き生きとした企業体に生まれ変わるとお思いでしょうか。非常に難しいのではないかという気がいたしますけれども、この点についての御所見を賜って、終わりにしたいと思います。
  166. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国鉄は現在破産寸前あるいは破産したと言ってもいいぐらいの状態にあるので、目下の大事はいかにして生き残るか、生き残るかということが問題なのであります。その生き残るというために何が大事かという点で、監理委員会で長い間研究も願い、案も出されたわけです。  私は、今のような状態を考えてみますと、いろいろ原因はありますけれども、やっぱり内部に活力が生まれるような要素がなかった、今でもそういう状態だろうと思うのです。活力を生む原因というのはどこに出てくるかというと、やっぱり分割が一番いい、そう思っておるのです。これをやることによって、まずその地域と密着して、それと同時に、今までのいわゆる公社制度め規制から逃れて、思い切った自分の密着した地域との相関関係において発展性を見出す余地が十分出てくると私は思います。それと同時に、全国的に見ましても、お互いが競争をしてまいりますから、そういう点からも大きな活性化の原因が生まれてまいります。  投資とか新規事業という問題は、今の状態ではとても、借金払いすらできない状態なんですから、及ぶべくもない状態であると思うのです。とりあえずともかく生き残って、そして労働者の年金が払えるような状態、安全確実な状態にしてあげて、そして活性化を図っていく、それが私は今日大事な問題点ではないかと思っております。
  167. 小林恒人

    小林(恒)委員 終わります。
  168. 小渕恵三

    小渕委員長 これにて井上君、小林君の質疑は終了いたしました。  次に、坂口力君。     〔委員長退席、林(義)委員長代理着席〕
  169. 坂口力

    坂口委員 議論に先立ちまして、今回、伊豆熱川の火災事故でお亡くなりになりました皆さん方に心から御冥福をお祈り申し上げ、関係者の皆さん方に心からのお見舞いを申し上げたいと存じます。  政府におかれましても、ひとつ今回のような事故が再び繰り返されないように、今後十分な御配慮をお願いを申し上げたいと存じます。  最初に、大蔵省から出されました「財政改革を進めるに当たっての基本的考え方」これにつきまして一、二お聞きをしたいと思います。  この「財政改革を進めるに当たっての基本的考え方」の中に「財政の中期展望」なる表が載せてございます。これを見ますと、昭和六十年度から昭和六十四年度までございまして、昭和六十年及び六十一年度はこれは実績を踏まえた数字でございますが、六十二年度から六十四年までの数字につきましては特例公債につきましては毎年一兆三千百億円ずつ返還をしていく、そして現状のまま経過をするといたしましたときにどれだけ要調整額が出るかということがここに載せられているわけでありまして、これでいきますと、昭和六十二年におきましては三兆四千三百億円、それから六十三年度におきましては四兆三千八百億円、それから六十四年度におきましては六兆八百億円の赤字になるようにこの表はなっております。  そこで、大蔵大臣にまずお聞きをしたいわけでございますが、この表を見ます限り税制改革が必要であることは言うまでもありませんが、この税制改革を行いますときに、いわゆる増減税同額ではなくて増税中心の税改革でなければこの表は埋まらないことになります。もし特例公債を一兆三千百億円ずつ返していかない、これを返すのを全部先送りをしたといたしましても、なおかつ六十二年度におきましては二兆一千二百億円、六十三年度におきましては一兆七千六百億円、そして六十四年度におきましては二兆一千五百億円の赤字が出ることになります。  まず大蔵大臣に、この点につきまして大蔵大臣がお考えになっている税制改革というのは増税中心の税制改革であるというふうに考えてよろしいかどうか、ひとつお聞きをしたいと思います。
  170. 竹下登

    ○竹下国務大臣 総理からもたびたび申されておりますように、今度の税制改革、シャウプ以来の税制の抜本対策について御意見、御答申をいただきたいという趣旨の諮問というのは、あらかじめ税収増を目的とするものではなく、シャウプ以来どこにまずゆがみが生じたか、ひずみが生じたか、あるいは重圧感があるか、そういうところから御審議をいただいて、およそ春ごろまでにその御審議が済んだら、今度は秋にかけていわゆる財政に対してはニュートラルという考え方で御答申を賜りたい、こういうお願いをしておるところでございます、その税制に限りましては。  それから、今もう一つ中期展望を基礎に置いた御意見を交えた御質問でございましたが、確かに毎年毎年要調整額と言われるものを今日まで縮めてきておるわけでございます。それにはもちろんいわゆる国債整理基金への繰り入れを停止するとかそういう問題も確かにございましたが、いずれにせよ今日まではとにかく前年度同額以下ということでやってきております。したがって今後も、いわば要調整額というものは増収措置だけでもってこれにねらいを定めるものではなく、まだやはり「増税なき財政再建」というのをてこにして、地方と国との役割分担でありますとか制度、施策の根源にさかのほってのあり方でございますとか、そういうものを総合的に勘案して進むべきものである。  ただ中期展望は、坂口さん御案内のように、言ってみればある仮定の前提の上に立ってつくったものでございますので、確度の問題ということになりますと必ずしも正確ではないではないかという点もあろうかと思いますが、予算審議の手がかりにお使いくださいという意味でお出しをしておる性格を持つ資料でございます。
  171. 坂口力

    坂口委員 総理はいつか増減税同額とも受け取れる御発言をなすったことがございますが、この「財政の中期展望」を拝見をいたします限り、大蔵省の考え方といたしましては、現在のこの情勢がこれからも続くと仮定をし、そして赤字国債を返していくという仮定の上に立っての試算ではございますけれども、増税をしないことにはやっていけないという数字になっているわけでございますが、現在の心境をひとつお聞きをしておきたいと思います。
  172. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 臨調答申あるいは行革審の答申を守っていくということを申し上げておりまして、六十五年赤字公債依存体質脱却あるいは「増税なき財政再建」、これを理念を守っていく、こういうことを申し上げておる次第でございます。
  173. 坂口力

    坂口委員 大蔵大臣、先ほどのお話をお伺いをいたしますと、そういたしますとここのこの「財政の中期展望」を、これをこのとおり実現していくとは思いませんけれども、しかしこれを拝見をいたしますと、そうするとこれだけの要調整額が出るわけでありますから、先ほどお触れになりましたように、行政改革をさらに進めていく、あるいはまたもっと今までの予算の見直しを行っていくということでこの要調整額は埋めていけるものなのかどうなのか。お気持ちとしては税制改革についてはニュートラルの立場だから、この要調整額はそういたしますと行政改革中心にしてこれはいく考えだ、こういうふうに言えますか。
  174. 竹下登

    ○竹下国務大臣 要調整額というものをどうして埋めるかということになりますと、一つの考え方として、先ほどお述べになりましたいわば六十五年赤字公債脱却年度を向こうへ延ばすということも一つございましょう。あるいはさらには歳出削減をどこまでやっていくかという努力の問題もございましょう。それから三番目はいわば国民の皆さん方に負担増を求める。三つぐらいの選択肢があるのかなという感じでもっておりますが、したがって、毎年毎年厳しい予算を組みながらこうして国会で問答を繰り返した中で、最終的には、負担するも国民、受益者も国民でございますから、その国民の合意が那辺にあるのかを見定めて毎年毎年の努力の中で実現していかなければならぬ課題ではなかろうか、行財政改革両方で進めていかなければならぬ問題ではなかろうかというふうに考えます。
  175. 坂口力

    坂口委員 大蔵大臣は、先日の私の方の正本質問に対しましても、政府税調の結果を待ってどのような税制を選択をするかを決定していきたい、こういうふうに御答弁になっているわけでありますが、私は、やはり大蔵大臣であります以上、大蔵大臣としての税制に対するやはり哲学、理念というものがあってしかるべきだというふうに思うわけでございます。総理は基本理念として公正、公平、簡素、選択でございましたか、ということをおっしゃいましたが、大蔵大臣はこの税制に臨まれてどういう基本理念をお持ちになるか、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  176. 竹下登

    ○竹下国務大臣 税というものは、いわば国家財政の中の歳入面の大宗を占めるべきものであるという考え方にまず基本がございます。しこうして、その税制は国民の理解が最も得られやすいような、総理からのお言葉のとおりである公平、公正、簡素、選択、活力というようなものであらなければならぬというのが基本理念として存在をしておるわけであります。  さらに今度は、税制改革に対する基本理念ということになりますと、これは一、二申し上げるといたしましたならば、すべては具体的方向については税制調査会の結論待ちというのが私が今日まで申し述べたことでございますけれども、所得が当時から見れば大変平準化した、したがっていわゆる中堅層の税に対するさまざまな声をどういうふうにくみ取っていくか、あるいは課税ベースや税率等において税制が経済活動をゆがめていないかどうか、そういう観点からの検討も必要であろう、そういう考え方が一、二私の頭の中にもないわけじゃございませんが、この際はやはり虚心坦懐にあらゆる角度から税制を点検していただく時期にあるであろうという考え方であります。
  177. 坂口力

    坂口委員 税調の意見を待つ、こうおっしゃるわけですが、もし仮に税制調査会の結論というものと大蔵大臣がお考えになっております税制改革とが違った場合に、大蔵大臣はどうされますか。
  178. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これはやはり政策選択の問題でございましょうが、税制調査会はいわば専門家の方のお集まりでございますので、大きく世の中の指摘しておる方向を踏み出したような答申はなさらないだろうというふうに考えております。したがって、私に固定的な考えというものは今の場合ないという形でこの答申を受けようという考え方の上に立っておるわけでございますが、私どもの常識を逸脱する答申が出るということは考えられないというふうに考えております。
  179. 坂口力

    坂口委員 その税制調査会の意見というものをお聞きになることはよくわかりますが、しかし、大蔵大臣のお考えというものがあって、そしてその基本的な物の考え方のもとに、税制調査会においては、私はこう思うけれどもどうかひとついろいろと議論をしてほしいということがあっても私はいいのではないか。初めから、基本理念から全部税制調査会でやってくださいというのでは、それならば大蔵大臣とは一体何かというそういう疑問が実は起こるわけであります。ですから、私はある程度その辺のところは大蔵大臣としての基本姿勢というものは明確にされる必要があるのではないだろうかと思います。  一応大蔵大臣と大蔵省との物の考え方は一体だというふうに考えて、これは大蔵大臣よろしゅうございますね。——それで、大蔵省が税制調査会がありますごとにいつもいろいろのデータを出しておみえになりますね。そのときに、そのデータにつけましていわゆるメモ書き、メモなるものを出しておるのであります。ここにございます。私どももその税調に出されますデータをちょうだいをいたしております。そこにはメモがあるわけです。例えば累進構造でございましたら「累進構造(メモ)」としたのがございまして、そしてその累進構造に対する物の考え方が幾つか書いてあるわけです。こういう考え方があります、こういう考え方がありますということが細かく書いてある。あるいは法人税なら法人税、所得税についてはどうだという全部まとめたメモがございます。これを拝見をいたしますと、例えば「最低税率について」というのがございまして、そしてこれにはこういう物の考え方がございますと、二つ書いてある。一つは、「わが国の課税最低限はかなり高い水準にあることから、最低税率は現行よりも引き上げる余地があるとする考え方」、こう後に「考え方」というのがついておるわけです。それからもう一つは、「課税最低限の近くにある所得階層について、立ち上がりの負担の累進度をなめらかにするという観点から、現行の最低税率は据え置いてよいとする考え方」、この二つが実は挙げてあるわけです。課税最低限につきましては、引き上げをする考え方と、それから現行をそのまま維持する考え方と二つありまして、もう一つ物の考え方としては引き下げる考え方もあると思うのですけれども、引き下げる考え方はここには書いてない。  このメモ書きをずっと私読ませていただきますと、そうしますと、大蔵省の物の考え方が、税調の皆さん方に失礼にならないように十分気を配りながら、うまいぐあいにおわかりをいただけるようになっていると私は思うのです、このメモは。それで、これをずっと拝見をいたしますと、そういうふうにメモ書きになっていて、そういたしますと、大蔵大臣は先ほどこの税調からの意見が出ましたらその中から選択をするというふうにおっしゃいますけれども、むしろ大蔵省の物の考え方を幾つか羅列をしながらそれを税調の皆さん方に選択をしていただくという形をとっている、そういう物の考え方の中でこの税制改革の議論が進んでいるとしか思えないわけであります。  そこで、先ほど私がなぜお聞きしたかと申しますと、大蔵大臣と大蔵省との物の考え方は一緒でございますかと言うたのはそのためでありまして、そういたしますと、大蔵大臣の物の考え方、お考えになっていることは、これは税制調査会にはそれとなくわかるように提出されているのではないだろうか。しかし、その大蔵大臣が、国会におきましては税調の結論を待たないことには言えませんと言って口をつぐんで何もおっしゃらない。これはやはり私は国会軽視ではないだろうか。やはり大蔵大臣たるもの、その点はもう少し基本は明確に示されてしかるべきではないかと思いますが、いかがですか。
  180. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは、総理大臣から公正、公平、簡素、選択、活力という一つの哲理は示されておるわけであります。しこうして、今度は我が省といたしましては、その総理大臣の諮問機関たる税制調査会の、特に国税部門の事務局、お世話やきをしなければならぬ。そこでたびたびいろんな資料の提出の要求がございます。そしてその態様は、今まで毎年毎年やってもらったりあるいは五十八年のように中期答申を出してもらったり、その中で議論をされたようなものが中心になって、選別して資料としてお出しする、こういう姿勢をとっておるわけであります。
  181. 坂口力

    坂口委員 こうしたメモがございまして、そしていろいろの資料がついております。大型間接税につきましては一番たくさん資料がついているわけですね。ところが、私のところにいただきました大型間接税のところにはこのメモが入っていない。私は素直な人間でありますから、別に特別にこれを落とされたとは思いませんけれども、しかし何か大蔵省が意図的に今進めようとしていることをひた隠しにしておみえになる印象をぬぐい切れない。だから、私は大蔵大臣に、もう少し国会の場において大蔵大臣としてどのようにひとつ私は税制改革をしていきたいんだ、例えば直間比率は一体どうするんだ、その辺のところぐらいまでは明確にされる必要があるのではないだろうか。総理がおっしゃったように、公平、公正、簡素、選択、活力、ただそれだけでは大蔵大臣としては済まないのではないだろうか、そう思いますが、再度御答弁をいただいて、次に進みたいと思います。
  182. 竹下登

    ○竹下国務大臣 事実、私に税の専門家としての知識があるとはみずからも思っておりません。しかし、よくやはりリーダーシップとはみずからの考え方をある程度具体的に出して、それを議論の俎上に上すべきであるという忠告をする人も間々ございます。しかし、やはり今日までの我が国の税制調査会の歩みを翻ってみますと、いろいろな議論がなされておる。したがって、今まで議論をされた範囲が私自身の知識の範囲だというような自己理解をしながら、私はこれから専門家の皆さん方のいろいろな意見のまとまったところでみずからの判断を示し、国会の御了解を得るのが筋ではなかろうか。なかんずく、国権の最高機関たる国会で税制の議論がなされたのは五十四年からむちゃくちゃに時間が多くなっておりますが、これは税制調査会等に正確にお伝えするのが私の役目であろうというふうに考えております。
  183. 坂口力

    坂口委員 どうも延々と続きまして、あとの時間がなくなってまいりますので、これだけにいたしますが、もう一つ、この基本的な考え方の中に、「今後の財政改革の進め方」のところがございますが、その中の「歳出」の項の中に社会保障に触れられたところがございます。  ここを拝見いたしますと、「社会保障について、今後の高齢化社会においても制度を安定的に維持していくため、中長期的視点から適正な給付水準と負担の在り方を検討し、その合理化を強力に推進する。」と、こう書いてあります。その下に、「このため、医療については、引き続き医療費適正化対策を充実・強化するとともに、医療供給体制の見直し及び医療保険制度の公平化、合理化を推進する。」医療問題につきまして、大蔵省の書き物にいたしましてはかなり突っ込んだ書き方が実はしてあるわけでありますが、とりわけ「医療供給体制の見直し」ということにつきまして、これはもう少し具体的に言えばどういうことを念頭に置いてこれを書かれたものであるのか、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  184. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 考え方は今委員がお読みいただいたとおりでございますが、もう少し具体的にということでございますが、この医療供給体制につきましては、もちろん厚生省の所管するところでございますが、私ども厚生省とも種々意見を交換し議論をして相談をいたしているわけでございますが、例えば病院あるいは病床数の配置の適正化をもう少し進めていってはどうかというような問題、あるいはまた先般来当委員会でも種々御議論がございましたが、国立病院あるいは国立療養所の役割をもう少し明確にしつつその再編成あるいは合理化をもう少し進めていってはどうかというような問題、あるいはまたお医者さん、これは歯医者さんも含めてでございますが、お医者さんの養成のあり方につきましてもう一遍見直しを進めてみてはどうかといったような問題意識を持ちながら、こういうふうに書かしていただいているわけでございます。
  185. 坂口力

    坂口委員 厚生大臣、それでよろしゅうございますか。
  186. 今井勇

    ○今井国務大臣 厚生省といたしましても、人口の高齢化が進展する中におきまして、国民に必要な医療を確保していくためにはやはり効率的な医療の供給体制を確立することが極めて大事だと考えておるわけでございます。したがいまして、いろいろ検討をいたしましたが、大蔵省の提出いたしました中期展望におきます医療に関する記述というものも、このような厚生省の考え方に沿ったものだというふうに考えております。
  187. 坂口力

    坂口委員 なぜ私がこの問題をここに取り上げさしていただくかといいますと、内需拡大が進まない原因には、いろいろあろうかと思いますが、その中の一つに将来への不安があります。ここにありますように、節減合理化、総額の抑制、こういう言葉が前面に非常に押し出されてまいりますと、これに対する影響というのは非常に大きいわけでございまして、その中で医療と教育の問題がとりわけここに大きくクローズアップしてこの中に書かれているわけでございますので、これを取り上げたわけでございます。  それで、厚生省にお聞きをしたいと思いますが、先ほど大蔵省の方からもお話が出ましたように、今厚生省の方は国立病院及び療養所の廃統合の問題を掲げておみえになるわけです。厚生省から「国立病院・療養所の再編成・合理化の基本指針」というのが昭和六十年の三月二十八日に出ておりますから、これを拝見いたしますと厚生省のお考え方は大体わかるわけでございます。これを読ませていただきますと、国立病院がどんなところを担当するかというのは、それは高度化、特殊化そして巨大な病院。巨大な病院で緊急性のあるものを入れてもいいと思いますが、高度、特殊、緊急、こうしたものが「国立病院・療養所の再編成・合理化の基本指針」の中に書かれております主なものでございます。  そこで、医療供給体制の見直しというのはどういう物の考え方でいくかということでありますが、恐らく大蔵省の物の考え方には、医療供給体制をもう少し見直して、そしてここで医療費がもう少し削減できぬだろうか、こういう考え方もあるだろうと思うわけです。厚生省の方は厚生省の方で、そうした物の考え方のほかに、本来の医療としてあるべき姿、それはどうであろうかということもそこには加味されていると思うわけであります。特殊なものあるいは緊急性のあるもの、これはよくわかるわけでありますが、厚生省が考えております高度化というのは一体どんなものなんでしょうか。お答えいただきます。
  188. 木戸脩

    ○木戸政府委員 お答えを申し上げます。  基本指針の中にいわゆる政策医療ということで触れでございますが、高度のがん診療あるいは母性小児医療というようないわゆる高度医療、それから難病等の専門医療、それから他の公的医療機関等が行います救急医療を補完して行います高度の、三次の救命救急、それに関連をいたしまして、これらに必要な直接の臨床研究、教育研修、そういったようなものを考えているわけでございます。
  189. 坂口力

    坂口委員 今おっしゃったことが高度医療でないと私も決して申しません。最新近代技術を駆使いたしましたところの医療器具、そうしたものを使用いたしまして診断をする、そしてまた治療をする、そうしたものも確かに高度医療の一つではあろうかと思いますが、それだけが決して高度医療ではないと私は思う。医療というのはそうしたハードなものではなくてもっとソフトなものではないだろうか。今厚生省が片や一方におきまして家庭医の問題を一生懸命に進めておみえになります。これはそうした今までの行き方ではなくて、やはり健康を増進し疾病を少なくし医療費を抑えていくためにはもう一度家庭医というものを見直さなければならない、その家庭医の役目というものが非常に重要である、むしろそこに高度医療があるのではないかというお考えがあればこそ家庭医というものを今一生懸命審議をしておみえになるのだろうと思う。ところが、片や国立病院の話になりますと、国立病院はいわゆる今までの、最新式の機械器具を使っての、あの冷ややかな機械器具の中での医療をもって高度医療というふうにお考えになっている節がある。私はそこに一つの間違いがあるのではないだろうかと思う。  私は、文部省の方にもひとつお聞きをしたいと思います。家庭医問題というのが厚生省の中で一生懸命に詰められておりますが、文部省のいわゆる医学教育の中でもこの家庭医の問題が取り上げられているのかどうか、もしそういうことが取り上げられているといたしましたら、どのようにお考えになっているのかもひとつお聞きしておきたいと思います。
  190. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 ただいまお尋ねの家庭医の問題は、御議論のように厚生省で御検討願っておる問題でありますから、文部省としては、直ちに家庭医を対象としてとかあるいは家庭医がどんなものであるか、そういうことを具体的に想定しての問題は検討しておりませんけれども、将来制度がどうなるにかかわらず、臨床医というものは包括的に初期治療に対応するあらゆる能力を身につけることが大切な能力である、こう考えておりますし、地域医療の住民に対するいろいろな健康相談等も臨床医としては当然持っておらなければならない、こういうことを目指して教育カリキュラムは組んで指導するように通達をしております。なお、現在、全国の国立病院長会議とか医学部長会議とか、そういったところではそのようなこと等も指導方針として要請をしておるところであります。
  191. 坂口力

    坂口委員 それでは、厚生大臣にひとつ先ほどの質問に対しましてお答えをいただきたいと思います。
  192. 今井勇

    ○今井国務大臣 私は、従来の開業医というのは地域の中で、先生御存じのように家庭医として活躍されてこられたと思っております。しかし、年齢がだんだん高齢化をしてまいりまして、それを継ぐ若い医師がほとんど病院に勤務をするという傾向にありますので、地域の中で在来からの家庭医としての役割を継承する医者というものが極めて困難になってきた、これは先生も御存じだと思います。  そこで、私は、開業医の復権を図りまして、それも単純なる在来の延長線ではなくて、これからは健康増進だとか疾病予防、それから早期発見、治療、リハビリテーションに至るような広い守備範囲の包括的かつ継続的なプライマリーケアというものの担い手であります家庭医を養成していくことが極めて必要ではないかと考えておるわけでございます。なお、その具体的なあり方につきましては、現在学識経験者らによります懇談会を設けて検討を願っておりますが、やはり現在の自由開業医制を前提としてその位置づけが行われるものと私は考えておるものでございます。
  193. 坂口力

    坂口委員 大蔵省が示されましたところの今後の「財政改革を進めるに当たっての基本的考え方」の中で、「医療供給体制の見直し」ということをここで言われました。この「医療供給体制の見直し」というのが、現在の体制の中で高齢化によりまして医療費がだんだんかさんでくる、それをただ削りに削っていく、そしてこれをできる限り自己負担をふやして国の出し分を少なくしていくという形の中での供給体制の見直しであってはならないということを私は申し上げたかったわけでございます。そうではなくて、でき得る限り疾病の中で医療費がかさまないような方法は何か、そういう医療供給体制とは一体何か、もう少し疾病予防あるいは健康増進に対する配慮をする体制というのはどのようにしてつくっていったらいいのか、その辺の物の考え方の中から医療供給体制の見直しが行われるならば私は賛成でございますけれども、そうではなくて、ただ切るというだけの考え方の中での医療供給体制の見直しであってはならないことを私は申し上げたかったわけでございます。  そうした中で、先ほど申しましたように、厚生省の中でも片や家庭医の問題が検討されて、そして医療というのはソフトなものなんだ、もっともっとやはり初期治療というもの、あるいは初期に至るまでの健康をさらに増進するためにはどうしたらいいか、それは現在の高度医療よりももっと難しいものであるけれども、しかしそこにこそ医療の真髄があるというので家庭医の研究が始まっていると私は思うわけであります。が、それが片方にあります半面において、国立病院のあり方はということになりますと、今までのこの考え方そのままが今日まで継続してきている。これは厚生省の中にも大きな矛盾があるのではないだろうか。その点をもう少しよく検討をして、やはり厚生省の中の意見を統一をして、そして国立病院の改革を進めなければならないんではないだろうか。先ほど見せていただきました「国立病院・療養所の再編成・合理化の基本指針」の中には、そうした物の考え方は全然出てこない。私はそのことに大変残念な思いがするわけでありまして、もう少し国立病院というのはどういうことを今やるべきなのか、医師のなすべき仕事、そして患者への接し方はこれでいいのか、看護婦の接し方はこれでいいのか、もっと地域の医師会との結びつきの中でどのようなことをしていったらいいのか、私は、ソフトの面でもっともっと国立病院は見直してもらうことが多いのではないかと思うわけでございます。これはひとつ私の意見として申し上げておきますので、もう大臣から御答弁はいただきませんが、ひとつその辺を十分に検討をしていただいて、そして新しい体制づくりに取り組んでいただきたいと思います。  それでは次の課題に入らせていただきますが、次は財政投融資の問題でございます。この財政投融資の問題も、実はもう数回にわたりましてこの予算委員会それから大蔵委員会で取り上げさせていただきました。大蔵大臣はまたかと思われるでありましょうし、私はまた言わねばならないか、こう思うわけでございますが、あえてもう一度これをサマライズしながら取り上げさせていただきたいと思います。  総理大臣、時間が少し短くなってまいりましたので、ひとつ今までの予算委員会や大蔵委員会におきます討論を整理をしまして、それを先に申し上げさせていただきますので、後でひとつ御意見をいただきたいと思います。  財政投融資につきましては、これをどうしていくかということでいろいろの研究会や懇談会がございます。一つは総理府の中に資金運用審議会というのがございます。それから大蔵省の理財局長さんの私的諮問機関といたしまして、財政投融資研究会とそれからもう一つ年金資金懇談会というのもございます。それから厚生省の中には年金資金運用研究会というのがございます。それから郵政省の中には郵便貯金資金に関する研究会というのがございます。いずれもこれは財政投融資あるいは資金運用部資金についてのことを検討する委員会でございますが、それぞれ自分たちの中でいろいろの検討をなすっていることはもう言うまでもありません。ただ、その内容を拝見をいたしますと、それぞれ厚生省は厚生省、郵政省は郵政省としての中でお話しになる。大蔵省はその参りました資金をいかに使うかということを議論をなすっている。あるいは資金運用審議会の方は、その資金運用審議会の中で使い道をどうするかという、ことを議論になっている。ただし、たくさんございますけれども、このどれを見ましても財政投融資そのものをいかにすべきかということについてのお話をするところはないわけでございます。  それから、現在起こっております問題点といたしましては、郵貯の純増額というのは六十年に四千九百十億円、これは前には五兆円も六兆円もありましたが、非常に少なくなってまいっております。それから厚生年金の積立金はどうかといいますと、あと数年で頭打ちになります。それから民間金融機関の貸し出し競争が非常に激しくなっておりまして、長期プライムレートよりかなり低くなっている、財投金利六・八よりも低くなっている、こういうケースもございます。中小企業金融公庫がアンケート調査をいたしましたら、五〇%弱の企業が公庫の金利の方が民間より高いと答えているわけであります。こういう実態もございます。  それから今後さらに金利の自由化が進んでいきまして、預貯金金利がだんだんと低いところで、少ないところで自由化が行われるようになってくる。それから政府系金融機関が二年連続で大幅に財投の使い残しをすることが確実になってきた、こういう問題点がずらっとこうあるわけでございます。  それで、総理大臣にお答えをいただきます前に郵政大臣にひとつ、公定歩合が下がりまして、郵便貯金の金利もこれまた下げざるを得ないことになるだろうと思うのですが、これで郵便貯金の方はやっていけるのかどうかも含めて、少しこの現状を簡単にお答えをいただきたいと思います。
  194. 佐藤文生

    佐藤国務大臣 お答えを申し上げます。  金融の特に金利の自由化というのが郵便貯金の小口の面に必ずやってくる、こういうことでその準備体制をいたしております。そういうようなことで、金利の自由化というのが郵貯にかかる前提として私どもが考えねばならぬことは、自由競争の中に郵貯が入っていくということ、それから二番目は、郵政省として自己責任、郵貯をどのように守って郵便貯金を利用される方々の立場を守っていくかという、その経営というものを十分に考えていくという、そういう前提が必要だと思います。  そこで、公定歩合〇・五%下がりましたその直後におきまして貯金局長は積極的に大蔵省と接触をいたしまして、そして国際金融の情勢、それから先進国の金利の値下がりの方向、それから民間金融機関との連動性あるいは協調性といいますか整合性といいますか、さらに内需の拡大というような面で、大体〇・五%連動してやりたいということで、現在所定の手続をとりつつあるわけでございます。
  195. 坂口力

    坂口委員 じゃ続きまして厚生大臣、これは預託金利、またどうしても連動して引き下がらなければならないと思いますが、この場合に年金の保険料の引き上げということにこれが結びついてくるものなのかどうか、その点だけひとつお答えください。
  196. 吉原健二

    ○吉原政府委員 現在、公定歩合の引き下げに伴う資金運用部の預託金利を下げたいということで大蔵省からお申し出があるわけでございますけれども、将来の年金給付の財源として年金資金の積立金が大変重要な役割を果たすということになっておりますので、公定歩合の引き下げに伴う資金運用部の預託金利の引き下げにつきましては、年金財政に対する影響が非常に大きいことを心配をしているわけでございますが、今御質問の、直ちにそれが保険料の引き上げに結びっくかといいますと、直ちには結びつかないということでございます。
  197. 坂口力

    坂口委員 建設大臣、ここでひとつお話を伺っておきたいと思いますが、ことしから例の東京湾の横断道路、こうしたことに財投からの融資がされることになっております。財投資金でありますから、これは返還をしていただかなければならないわけでございますが、そういうプロジェクトでこういう資金を使用するということになって、それがうまいぐあいに返還をしていただける形になるのかどうか、一部では心配をしている向きもあるわけでございます。その辺のところはこういうことで大丈夫なんだというお話がありましたら、ぜひひとつ聞かせていただきたいと思います。
  198. 江藤隆美

    ○江藤国務大臣 東京湾横断道路につきましては、かねて申し上げておりますように約一兆一千五百億最終的にはかかる、こういうふうに考えておりまして、六百億の出資金をもとにして、そして諸般の優遇措置を講じまして民間資金を活用していく、こういうことになっておるわけでありまして、政府の割引債あるいは民間借り入れ、あるいはまた道路建設資金等を活用しよう、こういうことになっておりまして、昭和五十七年ベースで一応計画を立てておりまして、昭和五十七年ベース通行料三千円にいたしましたときに一日の通行量約三万台、そして三十年したならば大体償還ができる、こういうふうに計算をいたしております。ちなみに、現在見てみますと、川崎—木更津間がカーフェリーで大体七十分ほどかかりまして、カーフェリーで草を運ぶ料金が六千七百円であります。六千七百円かけて、そして約七十分かかる。この横断道路ができますと、約十五分でこれを通行できるということでありますから、十年先になりましたら、ただいま計算の基礎になっております三千円の通行料はしかるべく調整をするということになろうかと思いますので、この採算は十分にやっていける、こういうふうに考えておるところでございます。
  199. 坂口力

    坂口委員 総理大臣、いろいろお聞きをいただきましたように、各省庁それぞれの思惑があるわけでございます。大蔵大臣にはあえてお聞きをいたしませんでしたけれども、大蔵大臣には今まで何度がお聞きをいたしておりまして、大蔵省の財投に対する御意見のかたいことも十分にもう存じ上げておりますので、あえて今回はお聞きをいたしません。  そこで、総理、先ほども申しましたように、そうしたいろいろの考え方がございますが、しかし、先ほど問題になっております点幾つか挙げましたが、これからだんだんそうした問題が重要になってくるだろうと思います。金利の自由化もさらに進んでまいります。そうした中で、財政投融資のあり方そのものをどうしたらいいかということを真剣に考える場というものがぜひ必要になってくるのではないか。各省庁がそれぞればらばらに、自分たちのエリアだけで議論をしているというのでは済まされないようになってきている。二年連続で政府系の金融機関が大きな使い残しを出すというのもその一つでございます。でありますから、ひとつそうした再検討をする研究会を関係各省庁間にまたがって、あるいはまた一般の有識者を含めてでもそれは結構でございますけれども、そうした話し合いの場がぜひ必要ではないかと私は思います。そのことにつきまして総理の御意見をひとつお伺いをしたいと思います。
  200. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 財投に関する坂口さんの御関心と分析は私も非常に興味深く拝聴いたしました。言わんとするところは、今までの歴史は、これを国家財政上の重要な手元資金として確保しておきたいという大蔵省と、独立財源として自分たちの自由な創意に基づいて使いたいという各省との抗争の歴史である、あるいはネゴシエーションの歴史である、そういうふうに考えていいと思うのです。しかし、実は臨調におきまして、坂口さんがおっしゃるような観点から総合的にこの問題を検討しまして、臨調答申の中に盛られております。それに基づいて各省でも話もあり、それから、特に大蔵省と郵政省の間で論争がありまして、官房長官が間に入って一応の決着をつけたという経緯がございます。臨調の場合は、総合的に実は検討を加えたのでございます。それで現状は推移している。  私は、やはり国家の背景、公的背景のもとに集められたお金であって、非常に大事な、全国民の皆さんのお宝をお預かりしている、そういう面から見まして、公的背景というような面を特に考えてみて、国の財政資金としてこれを一元的に運用していきたいというそういう気持ちはよくわかるし、ある程度は必要であるだろうと思っております。しかし実際問題として、今おっしゃるように金利の自由化の問題とか、あるいは国際的ないろいろの、国内のいろいろな塀、垣根を取り除けという強い要請が今出てきておりまして、そういうものの中でこの郵便貯金の将来というものがどういうふうになっていくか。一般の銀行そのほかの民間金融機関との関係もございますし、また一面においては大蔵省との関係もございます。そういうような面におきまして、状況の推移、自由化、国際化の将来を見据えながら、やはり研究してみる必要はある、そう私は思っております。そういう意味においては、おっしゃる点を新しい観点から取り上げてみるという御主張であると思いまして、私も研究してみたい、そう思います。
  201. 坂口力

    坂口委員 研究をしてみたいという御答弁をいただいておりますので、ではこれ以上申し上げないことにいたします。ひとつ早急に研究を進めていただきまして、先ほど指摘をいたしましたような方向でさらに前進ができますようにお願いをしたいと思います。  それでは次に、海外に少し目を転じまして、海外に対する医療協力の問題をひとつ取り上げさせていただきたいと思います。  自由貿易をさらに前進をさせますためには、海外で活躍いたします日本人は増加の一途をたどるであろうと思います。また、開発途上国からの保健、医療に対します協力要請というものも、質、量、期間ともに高まってきているわけでございます。開発途上国の人々のためにも、あるいはまたそこで働きます日本人のためにも協力が必要であると思いますが、とりわけアジアの国々からの要請は大変多くなっておりますし、隣国に対しまして日本がより積極的な援助をしなければならないのもまた事実でございます。  外務大臣、少し席を外しておみえになりましたときにこの問題に入らせていただきましたが、アウトラインを少し申し上げたところでございまして、特に東南アジアからの日本に対する保健、医療に対する要請についてもし御意見がございましたら、まとめたものがあれば少しお話をいただきたいと思います。
  202. 藤田公郎

    ○藤田(公)政府委員 ただいま委員御指摘のとおり、医療、保健、家族計画等含めます部門は、最近の援助活動の面で一番重視されております基礎生活援助、基本的な人間の需要を満たすという面で教育とともに一番重要視されている面でございます。  我が国におきましても、技術協力及び無償資金協力を含みます贈与部分につきましては、大体二割が医療及び保健、家族計画等の部門に向けられておりますけれども、特に東南アジアは我が国の援助の半分、二国間援助の五〇%が向けられている地域でございまして、同地域における需要、要請も非常に多うございますし、我が国も非常に力点を置いてこの分野での協力を進めているというのが現状であると考えます。
  203. 坂口力

    坂口委員 アジアにおきます。そうした保健あるいは医療に対する要請に対しまして日本がどうこたえるべきかということを、私ちょうど十年ほど前に研究したことがございまして、かって昭和四十一、二年ごろ、自民党の政調会の中で対外経済協力特別委員会、そのときは一萬田氏が委員長でございましたけれども、この問題を取り上げられて、非常に御努力をされたという経緯をそのときに知ったわけでございます。それからまた十年経過をいたしておりますが、今回、東南アジア等から日本に対する保健あるいは医療に対する援助の関心が非常に高まっているというお話をお聞きいたしました。また、外国に出られる日本の方々からの医療に関する問題、あるいはまた東南アジアの国々からそうした知識を日本の国で得たいという人たちの要請、そうしたことを聞くにつけまして、もう一度この問題を振り返ってみたわけでございます。そういたしますと、以前にございました計画はいわゆるAMCO、エイシア・メディカル・コーポレーション・オーガニゼーション、略しましてAMCOという計画でございました。それは昭和四十一年に先ほど言いました一萬田さんのところで検討されまして、昭和四十二年にその案を採決なすっております。そして昭和四十四年に東南アジア開発閣僚会議に日本がこのことを提案をしておみえになります。そして昭和四十五年に愛知外務大臣から第五回の東南アジア開発閣僚会議において正式の発表になっております。そこでいろいろ議論が続いてきたわけでございますが、昭和四十九年に至りまして一部の国の反対がございまして、第九回の閣僚会議で審議が中断をいたしまして、そのまま流産となった経緯になっておるわけでございます。ただ、その経緯の中で財団法人の日本国際医療団というのが設立をされまして、それが現在もなお活躍をしておみえになる。そういう意味ではAMCOの落とし子と申しますか、日本国際医療団は一生懸命に活躍をしておみえになりますが、本体の方は残念ながら中断をしてしまったということになったわけでございますが、これからそうした医療協力等を進めるに当たりまして、なぜこれが中断をしたのかということの背景を少し知りながら進めていかなければならないと思いますので、その点につきまして外務大臣からひとつ御意見をいただきたいと思います。
  204. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 局長が答弁する前に私から簡単に申し上げさせていただきます。  今お話しのような経緯で東南アジア医療保健機構というのを日本から持ち出したわけですが、中断になったということであります。これは一九七〇年の第五回東南アジア開発閣僚会議で条約案の検討まで進んだというふうに承っておりますが、既存の地域プロジェクトとの調整であるとかWHOの事業との重複等の問題が整理をされないまま、結局、インドシナ情勢の急変、ベトナム問題等によりまして、第九回を最後に東南アジア開発閣僚会議が開催されなかったために本件構想に関する審議も中断になったわけでございまして、これは日本から出した案だけに残念なことでございますが、今医療とか保健についての協力関係というのは日本の経済協力の中では相当重い分野になっておることは事実でございます。いろいろな問題がありますからまたこれを蒸し返すというのはなかなか困難ではないかと思っておりますが、東南アジア諸国の医療、保健等に対する要請にはこたえて、これからもできるだけ協力は進めていきたい、こういうふうに思っております。
  205. 坂口力

    坂口委員 当時のAMCOの事業計画は、国際協力医科大学及び大学院の設置、それから国際協力病院の設置、それから卒後医療研修センターと医療技術研修センター、それから四番目として医学関係情報センター、この四つが事業計画であったわけでございますが、この四番目につきましては日本国際医療団ができ、そして東南アジア医療情報センター、いわゆるSEAMICが現在活躍をいたしておりまして、この四番目は現在受け継がれているということになっておるわけでございます。  今外務大臣が御指摘になりましたように、蒸し返すということは甚だ難しいのだろうと思います。しかし、外国から、主に東南アジアから参りまして医療技術を身につけたいという申し入れ、これはいろいろ外務省からの資料を見せていただきますと、かなりふえているわけでございます。それからまた、外国へ派遣される日本の医師やスタッフ、これの研修。あるいはまた、外国に一度出ました医師が日本に帰ってまいりましたときに、もう前のポジションがなくなっているとかいろいろの問題がございまして、なかなかいい医師が外国に行ってくれにくいというようなこともありますので、外国から帰ってくる医師やスタッフの受け入れる場所をどうするか。それから外国に出る日本人の医療相談を一体どうするか。例えば、薬一つにつきましても、体重の差が違うものですから、向こうの人のつくられました薬が日本人に合わないとかいろいろのことがございますが、そうした問題をどうするかというようなこと。これらを含めまして、国際協力病院なるものはどうしても日本も必要なのではないか。とりわけ外務省の指示のもとに海外に出られました医師の皆さん方からぜひひとつ国際協力病院というものはつくってもらわないとこれはうまくいかない、それは外務省病院でも名前は別にいいわけでございますが、今申し上げましたような内容のことを、ひとつでき得るところがないことにはこれからやっていけないのじゃないだろうか。例えば、海外に出張を命ぜられましたときにお子さんを連れていかねばならない、じゃそのお子さんの予防注射をいつするかというときにすぐできないというようなことがあったりというので、大変そうした問題もたくさん出ているわけでございますので、国際協力病院の必要性というものが強力に叫ばれております。それに対しまして、ひとつ外務大臣からお答えをいただきまして、後、総理からコメントをいただけたらと思います。
  206. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 医療団、医療協力につきましては、今お話しのように、各国からの医学を勉強したいという人たちの受け入れ、あるいは日本から医師の派遣、これはやはりこれからの国際協力、特にアジアとの関係において協力関係を進める上においては非常に必要な分野じゃないかと思っております。今までも行ってきておりますが、なかなか難しい面があるわけで、例えば日本で勉強して資格を取っても、今度は帰った国で、自分の国でその資格が生かされないという問題もありますし、また今お話しのように、アジア諸国で医療に献身をしてお役に立っておった方々、医師の人が日本へ帰ってもなかなかポジションが得られない、いろいろ問題があるわけでございます。そういう点では医療協力を十分拡充できないわけであります。そういう点で、今お話しのような具体的にこれからもっと医療協力というものを促進するための具体策というものを積極的に考えていかなければならぬ時期にも来ておると、私も同じような考えを持っております。  このような中で国際協力病院という構想が示されたわけでございますが、これは委員のかねがねからの御構想であるように聞いておりますし、この構想自体が示されてからも相当時間がたっておりますから、そしてその可能性につきましては検討もされておるわけでございますが、実現に至らない、なかなか問題も多いということでございますけれども、しかし、今日の状況から見れば、医療協力をさらに進めていくという点から、これは依然として一つの検討に値する構想であろうと私は思いますし、そういう点で関係省庁、特に厚生省等とも相談もいたして検討を進めてまいりたい、こういうふうに思います。
  207. 坂口力

    坂口委員 厚生省も国立病院の基本指針のところに海外におけるところの医療協力の問題も書いておみえになりますので、厚生省もその点どういうお考えをお持ちになっておるかをひとつ聞いておきたいと思います。
  208. 今井勇

    ○今井国務大臣 お答え申します。  その前に、日ごろから大変医療協力について御関心をお持ちで、御協力賜っておりますことについて、まず感謝を申し上げたいと思います。  厚生省といたしましては、今お話しの海外医療協力に積極的に取り組んでまいりたい、こう考えておりますので、その推進のために将来の体制を整えるように指示をいたしましたことをまず御報告申し上げたいと思います。  それから、今後ますます国際医療協力がふえてまいります。そこで、厚生省といたしましては、昭和六十一年度におきまして、国立病院の医療センター、そこに国際医療協力部というものを新設することにいたしております。  また、国際医療協力につきましては、やはり国立病院が担うべき政策医療の一つとして位置づけまして、国際医療協力を専門に行う病院を設置することにつきましては今後前向きで十分検討してまいりたい、このように考えております。よろしくお願いいたします。
  209. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 外務大臣及び厚生大臣がお答えしたとおりでございますが、特に医療協力というものを発展途上国を中心にして考えるということは、日本の今後の国策として非常に大事な点であると考えております。
  210. 坂口力

    坂口委員 では、ぜひひとつ関係をしておみえになる皆さん方の御主張をお取り入れをいただきまして、近隣諸国との関係がよりスムーズにいくように、そしてまた日本から出かけられました外国で生活をされる皆さん方の健康のためにも、ぜひ真剣に、早急にお取り組みをいただきたいと思います。  それでは、最後に血液事業につきましてお伺いをしたいと思います。  最近、エイズの問題に端を発しまして、もう一度血液事業の問題が再検討をされているわけでございます。このエイズという新しい病気は、御承知のように、今までに例を見なかった病気でございまして、人間の免疫をつかさどりますところの中心であります白血球、その中のリンパ球、その中のまた特殊なリンパ球、その免疫をつかさどりますところをビールスが直撃をすることによって人間の中の免疫がすべて崩壊をし、そうしてあらゆる病原体によって人間の体が襲われる、そういう新しい病気でございますが、残念ながら日本におきましてもこの患者さんが概に十四名出ております。これからもまだ増加をしていく可能性というのはあるわけでございますが、各地域におきまして診断、そして治療の体制をぜひ整えてほしい。各都道府県とまではいかないでしょうけれども、重立った都市にはそうした拠点となるところをひとつ示してもらいたい、そういう要請が専門に研究をしておみえになります先生方からされているわけでございますが、その点につきましてひとつ現状を御報告をいただきたいと思います。
  211. 仲村英一

    ○仲村政府委員 エイズの検査の関係でございますけれども、現在、大学等におきまして、九カ所で確定診断のできるような施設がございますが、今後、今おっしゃいましたように、エイズもふえ続けると私ども予想しておりますので、その検査の需要に対応いたしますように、間もなく八カ所、県の衛生研究所にその検査能力を本年度内に与えるように今準備をしておるところでございます。それから、その後研究を進めまして検査方法の改良ができた暁には、全県、六十八カ所に六十一年度にできれば検査の機関を配置いたしたいと考えておるところでございます。  それから、治療に関してでございますけれども、治療は現在約六百の協力医療機関からいろいろ情報をいただいたりしておるところでございますけれども、そこで現に十分にやられておりますので、中核的な機関ということでは私どもとしては余り必要ないのではないか、このように考えております。
  212. 坂口力

    坂口委員 それと、このエイズに罹患をされました人、これは日本ではまだ少のうございますが、しかし、その可能性のある人たちに対する世間の冷たい目というのは我々が想像する以上のものがございます。したがいまして、この患者さん並びにその周囲の人たちに対して細心の配慮が必要であると思いますと同時に、この人たちが少しでもこの治療を受けていただける場を提供できるようにしてもらいたいと思うわけであります。ただし、現在のところ確たる治療方法が確立をしていないということでございます。  そこで、この疾病に対する感染経路でございますとか、あるいはまたその病原体でございますとか、あるいはまたその致死率が非常に高いというようなことも明確になってきたわけでございますが、これからこの患者数がふえていくということになりましたときに、この病気をこのままにしておいていいのであろうか。例えば届け出をさせる必要がありはしないか、あるいはまた今までの結核のように、あるいはまた性病のときのように特別立法みたいなものが必要なのかどうか、その辺も検討をしなければならない時期に来ていると思うわけでございます。ただし、先ほども申しましたとおり、この患者さん方に対してどうしてもやはり冷たい目が向くわけでありますので、その患者さんに対してはできる限り細心の注意をし、この人たちにその世間の厳しい目が向かないように最大の配慮をしながら、なおかつそうした法的なことも検討されるときに来ているのではないかと思いますが、そのことに対する御意見をひとつ伺いたいと思います。
  213. 仲村英一

    ○仲村政府委員 エイズの法的措置についてのお尋ねでございますけれども、ただいまおっしゃいましたように、患者さんのプライバシーの問題は非常に大きな問題でございます。私ども五十九年の九月から、先ほど申し上げました約六百の医療機関からサーべーランスということで調査表を配付して、統一的な調査項目に基づいてAIDS調査検討委員会で十四人の患者さんを認定したわけでございますが、この際も個人の情報が他に漏れないように非常に慎重な取り扱いをしておるところでございます。そういうことから考えまして、現在、私どもがその伝染病予防法でございますとか、先ほどおっしゃいましたような特別の法的な規制をしなくても、私どもとしては現在情報は既に十分集まるような体制になっておりますし、十分御承知だと思いますけれども、二次感染の予防にも気をつけるようにしておりますし、患者を隔離するというような方法はございませんので、現在のところ法的規制については考えておらないところでございます。
  214. 坂口力

    坂口委員 ちょっと最後のところ、済みません、もう一度言っていただけませんか。
  215. 仲村英一

    ○仲村政府委員 伝染病予防法等にエイズを入れるとか、そういうことは直接現在のところ考えておりませんで、届け出につきましては、先ほど申し上げましたようなサーべーランスの網をかけておりますし、患者さんについては、まだ数も少のうございますので個々の病院で十分に対応していただいておりますし……(坂口委員「ふえていったら」と呼ぶ)これからふえると思いますけれども、現在の体制でもうしばらく様子を見させていただきたい、このように考えておるところでございます。
  216. 坂口力

    坂口委員 そうしたエイズの問題から、献血の体制が果たしてこれでいいかということになってきたわけでございます。現在のところ、年間に延べ八百万人の献血者がございます。しかし、この血友病の患者さん等に使いますところの血漿分画製剤といわれます製品は八五%まで外国に依存をいたしておりまして、一五%しか国内でこれを達成をいたしておりません。そういうことから、これらの血漿分画製剤も日本の献血で全部賄おうということになりますと、現在の八百万人の献血者を倍にする、少なくとも千六百万人にする必要があるわけでございます。これは、昭和四十年から二十年をかけましてようやく八百万人に到達したわけでございますから、これを倍にするというのは大変な事業であろうかと思います。厚生省の方は倍にいたしますために、二百cc採血を四百cc採血でというふうに主張しておみえになります。二百ccがようやく定着をしたところでございますから、これを一度に四百と申しましてもこれはなかなか急にはいかないだろう。四百が定着しますのには、また十年ないし二十年が必要ではないかと思います。  そういたしますと、各都道府県におきましてこの献血の推進にさらに真剣に取り組まれなければならないわけでございますが、現在、御承知のとおり献血は法律事項ではございませんで、昭和三十九年、池田内閣のときに閣議決定として決定されたものでございます。この閣議決定で今日までまいっておりますので、この献血者を倍増せしめるためにはよほどの努力がなければでき得ない。そして、血友病等の患者さんに対しまして、今回のようなそういう危険なことが二度と再びないように、我が国で十分に配慮をしなければならないと思いますし、また、今のようなことをいたしておりますと、アフリカあたりで非常に安く血液が売買されまして、その血液がアメリカを通じて日本にやってくるというようなことから、諸外国から日本は非常に開発途上国から血液を買い集めているという非難も起こっているわけでございます。  これらの点を乗り越えていきますためには、どういたしましても国及び都道府県あるいは各職場におきましてこの献血推進に一層努力をしなければならないと思いますが、現在のところ、先ほど申しました閣議決定があるだけでございます。諸外国の例を見ますと、ルクセンブルク等におきましてはこの献血に対しますところの法律等もでき上がっておりますし、そうした法律が今後もできる国もあるやに聞いておるわけでございます。しかし、ボランティア中心の仕事でございますから、法律でそれを云々ということよりも、むしろこの思想を普及することがより大事でありますので、そのことにこれは国を挙げてひとつお取り組みをいただきたいと思います。  厚生省がこのことに熱心に取り組んでいただいているのは当然でありますが、厚生省だけでこのことはなかなか達成できるものではございません。労働省の皆さん方にもあるいはまた自治省の皆さん方にも、これは各省庁それぞれにわたりまして努力をしていただかなければならないと思います。と申しますのは、四百cc採血ということになりますと、やはり一定時間休暇をとらなければならない。あるいはまた、血漿だけをとりまして赤血球や白血球はお返しをするというような血漿フェレーシスという制度がございますが、こういうふうなことをこれからやろうとされておりますが、これをやろうと思いますと一人一時間ぐらいかかる。そういたしますと、やはりお休みをいただく時間やそれからそこに来ていただく時間、帰っていただく時間を計算をいたしますと、半日がかりのことになるわけであります。それでは、私は行ってやろうとおっしゃっていただきましても、その人がお勤めの場合に、会社で、それでは献血だから行ってこいよと言ってもらえるのかどうかというような問題もあるわけでありますので、これは各省庁、ひとつ協力をお願いをしなければならないと思います。  厚生省の方からこれをどのように進めていくかということをお聞きをして、そして、最後にこのことに対する総理からのコメントをいただいて、終わりにしたいと思います。
  217. 今井勇

    ○今井国務大臣 献血事業につきましては、今お話しのとおり、我が国におきましては国民の理解と協力のもとでその実績もだんだんと着実に向上をしておるわけであります。したがいまして、厚生省といたしましては、献血は国民の善意と自発的な意思に基づいて進めるのが適当であろう、こう考えております。したがいまして、現在、献血事業に関します新たな法律というものの制定は考えておりませんけれども、先生お話しのように、必要に応じまして関係機関あるいは関係各省と十分連絡調整をいたしまして協力体制を強化してまいりたい、このように考えておるものでございます。
  218. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 エイズのような新しい病気については、政府としても最大の関心を持って、そして国民の皆様方が安心できるような諸般の体制、診療あるいは管理、あるいは血液の問題、そういうあらゆる問題について綿密周到な手配をして対策を講じていかなければならない、そう思っております。
  219. 坂口力

    坂口委員 ありがとうございました。  総理、それでさらにもう一言だけつけ加えてお願いをいたしますのは、今申しましたように、厚生省だけではなかなか決着のつかない問題もございます。半日休んでいただいて献血場においでをいただかなげればならないというような問題もございます。だから、労働省でございますとかあるいは地方自治体も一生懸命やっていただかなければならない。ところが、都道府県にも献血担当者というのがおりまして一生懸命やってはいただいておりますが、しかしその人はほとんど全部が兼務でございまして、献血担当係というその専門の係の人はどの県も実はおりません。ほかの仕事の片手間におやりをいただいているということでございます。そして、その皆さん方は非常に、我々は一生懸命やるけれども、やりづらいのは、法律事項でないためにどうしても法律事項が優先をしてやられる、だから我々としてはどうしても献血のことが後になってしまって申しわけないのだけれども、そうならざるを得ないのだというようなこの献血担当者の声も実はあるわけでございます。  そうしたところを乗り越えてこの献血推進を図っていこうと思いますと、やはり厚生省だけがやるのではなくて、何か関係の省庁でひとつそれらのところを十分話し合っていただく場が必要であり、そしてその中でひとつ献血担当者なるものの、もう少し財政的な位置づけでありますとか一献血に対します費用というのは、今までほとんど交付税の中に入ってしまう。そうしますと、交付税の中でそれがどこかに消えていってなかなか献血のところに回ってこないというような実情も今まではあったわけであります。ことしになりまして、初めて直接の献血推進に対するお金をつけてもらいました。これは大変大きな進歩であると思いますが、そうした積み重ねをひとつぜひしていただいて、そしてこの献血の推進がさらに前進をしますように、ひとつ御配慮をいただきたいと思います。ありがとうございました。
  220. 林義郎

    ○林(義)委員長代理 この際、矢追秀彦君より関連質疑の申し出があります。坂口君の持ち時間の範囲内でこれを許します。矢追秀彦君。
  221. 矢追秀彦

    矢追委員 冒頭に、今坂口委員の最後の質問のエイズ問題に関連をいたしまして、要望だけを申し上げておきたいと思います。  いろいろ大変深刻な問題であり、公明党といたしましても、総理御承知のように、昨年末の党首会談でも竹入委員長から強い要請をしていただきまして、ある程度の予算がついたことは評価をいたしております。  私が今申し上げたいのは、血友病の患者さんが今大変な不安に陥っておられます。これをやはり的確にやっていかないと大変なことになる。具体的な例といたしましては、例えば血友病のお子さんが幼稚園の入園を断られた、あるいは学校の入学もできない、また就職にも差し支えがある、あるいは恋人に振られるとか、そういう血友病であるだけで、エイズであるかどうかわからないのにそういうふうなことが出てきております。これは大変な社会問題になると非常にまずいので、私は、マスコミの報道もきちんと的確にやっていただきたいし、また政府としてもこういったことについては非常に神経質なぐらい留意をしていただきたい、こう思いますので、これを冒頭に要望いたしておきます。  それでは、補正予算の審議でございますので、六十年度補正予算につきまして二、三質問をさせていただきたいと思います。  まず最初に、歳入欠陥を生じた理由、これについて大蔵大臣、御説明ください。
  222. 竹下登

    ○竹下国務大臣 確かに歳入欠陥が、歳入の見積もりについて疑念が生じましたので、補正予算で四千五十億円の税収の減額修正をお願いをしておる、こういうことでございますが、この理由につきましては、これはいろいろございましょう。が、やはり私は、この補正を計上することとした理由を税目ごとにそれぞれ申し上げるとすれば、源泉所得税は給与に係る源泉所得税の伸び悩みである、法人税は企業収益の低迷である、相続税は、これはプラスになった方でございますが、課税財産価額の増加である、それから石油税は円高、原油価格の低下等による伸び悩み、有価証券取引税は株式市場等の好況、それから関税はこれは円高とアクションプログラムの関連によるところの減少、中身で申し上げるならばそういうことになるのではなかろうかというふうに考えます。     〔林(義)委員長代理退席、中島(源)委員長代理着席〕
  223. 矢追秀彦

    矢追委員 経企庁長官、成長率も補正をされたわけですけれども、この見通しはどうして誤られたのですか。
  224. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 お答えいたします。  これは、ちょうど国民経済生庫の計算方法の基準のベースが変わる年でございまして、昭和五十年基準と五十五年基準とがちょうど昭和六十年で変わる年になるわけです、五年ごとに変えておりますもので。  そこで、初めの見通しの段階では四・六、こう言っておりましたのは昭和五十年基準の計算でございます。今度の五十五年基準にそれを換算いたしますと、大体当初の見通しと大差ないと見ております。これは技術上の問題でございます。
  225. 矢追秀彦

    矢追委員 だけれども、実質は補正で四・二と〇・四、名目の場合であれば〇・四でございますが、これだけ下方修正されたわけですよね。私が言いたいのは、今の税収の見込み違いは、やはり最初考えていたほど税は伸びなかった、経済の成長も最初の見通しどおりいかなかった、ただ計算の修正だけではないと言えるのではないですか。その点はいかがですか。
  226. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 詳しくは政府委員から御答弁させますが、これは純粋に技術的でして、五十年基準と五十五年基準、こういうことで、どうしても五年ごとの境目にちょうど昭和六十年がぶつかるものですから、初めの見通しのときは古い基準の計算になるし、それから最後の実績の方は新しい五十五年基準でやるものですから、実際の数値は大差ございませんです。
  227. 赤羽隆夫

    ○赤羽政府委員 ただいま大臣がお答えになりましたように、五十年基準から五十五年基準への基準時点の変更に伴う統計技術上の違いというのが大きいと思います。  ただ、内容的に見ますと、当初の見通しに比べまして、六十年度の実績見込みにおきましては外需に対する依存度が高いということがございます。それから民間部門、特に設備投資などは当初の見通しどおりの動きをしておりましたけれども、家計部門において伸び率が若干低いといったようなことがございました。しかし、外需のプラスアルファということに基づきまして、実質成長率で申しますと基準の違いによるところの若干の数字の変更はありますけれども、実態的には変わっておりません。ただ名目成長率につきましては、これもまた新基準と旧基準で年々その動きがまちまちでございまして、厳密に比較はできませんけれども、〇・二、三、当初の見通しを下回ったというのは事実でございます。
  228. 矢追秀彦

    矢追委員 長官は大した差はないと言われましたが、今やはり〇・二でも大きな差だと私は思うのです。というのは、後でだんだん触れていきますけれども、今日本は財政が非常に厳しいわけですからやはり少しの税収見込みも誤っちゃならぬ。もちろん経済は生き物ですから予想どおりいかない点は私も認めますけれども、今基準の変わり目も私は承知をしておりますが、そういうことを別にしても少しは狂ってきておるわけでございます。そういった面でこの四千五十億円という税収がダウンをしてきた、こう私は指摘をしたいわけです。  歳入面は今言ったように四千五十億の穴、その穴埋めを大蔵大臣は特例公債で補われましたですね。歳出面についての見込み違いというのはいろいろあると思うのですが、大体通年の補正予算を見た場合、この六十年度補正で新たなものが顔を出しておりますね。この原因は何ですか。
  229. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いろいろな問題がございますが、やはり健保の問題が一番大きいというふうに理解しております。
  230. 矢追秀彦

    矢追委員 災害対策費というのは、これはやむを得ないことでございまして三千五百三十五億円になっております。あと、給与改善費、義務的経費の追加、住宅・都市公団補給金等、国際分担金・拠出金等、これは毎年補正である程度計上されております。  ところが、今大蔵大臣が言われたように、国民健康保険特別交付金という千三百六十七億円というのが初めて顔を出したわけでございまして、これを出さなければならなくなった理由、これは厚生大臣、大蔵大臣、両方からお答えをいただきたいと思います。
  231. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私の方からまずお答えいたします。  千三百六十七億円の国民健康保険特別交付金、これを特別に計上しておるわけでありますが、これはまさに退職者医療制度の実施に伴って生じました市町村国民健康保険への財政影響に対処するために、厳しい国の財政事情下においても特別に措置するものであるという判断をしたからでございます。
  232. 幸田正孝

    ○幸田政府委員 国民健康保険特別交付金でございますが、昭和五十九年十月から実施をいたしました退職者医療制度につきましてできる限り正確を期したのでありますけれども、統計上の制約などから対象者数の把握等に当初見込みと実績とに乖離が生じまして、このために市町村国民健康保険に財政圧迫の要因となったわけであります。こうしたことから、退職者医療制度の創設に伴う国民健康保険財政への影響を勘案いたしまして千三百六十七億二千五百万円を計上いたしておるわけでございます。
  233. 矢追秀彦

    矢追委員 実際の影響額は千三百六十七億ではなくて、二千八十億円ですよね。六十一年度にも二百三十億円また計上されておりまして、そういう意味では、補正では千三百六十七億円の負担増といいますか歳出増でございますけれども、実際は二千八十億という穴があいたわけでして、これは私は大変問題にしたいわけです。  といいますのは、今も言われたように、せっかく鳴り物入りで退職者医療制度というのができました。その前に、昭和五十八年度には老人保健法制度が制定をされて、一部負担になりました。さらに、この退職者医療制度ができる前には、五十九年度には健康保険法が改正されて本人の一割負担増、さらにこの退職者医療制度、本当にいい制度だということでできたら、今お話しのように間違いといいますか、統計のとり間違いと言っておられますが、これは完全な見込み違いです。結局退職者医療制度に入らなかった。大体の人は、健康保険のいわゆる息子さんの家族になってしまったり、そういうのが多いわけですけれども、とにかく入らなくて穴があいてしまった。こういうことは私は大変な政策の誤りであると思うのです。だから、補正予算というのは、本来は万やむを得ざる、災害であるとかそういったもの、あるいはまたベースアップ、これは人事院勧告は後で出てきますから、そういう場合はある程度やむを得ないと思いますが、政策の誤りによる補正予算、しかも特例公債を追加発行しなければならなくなった、こういう六十年度補正予算予算編成そのものに、私は大変政府に問題がある、こう思うわけです。  そこで、厚生大臣にお伺いしたいのですが、今統計がうまくできませんでしたとおっしゃっておりますが、明らかにこれは、退職者医療制度を創設したものの実際に入らなかった、完全なる見込み違いであり、政策の失敗である、私はこう言いたいのですが、いかがですか。
  234. 今井勇

    ○今井国務大臣 確かに当初見込みと実績との乖離がありましたことは事実でございますが、これはひとつ心して今後頑張ってまいりたい、こう考えております。
  235. 矢追秀彦

    矢追委員 あっさり謝られましたので、これ以上余り追及するのも何か、大臣になられて間なしですからやめておきますけれども。  そこで、今の退職者医療制度に絡めまして、こういった見込み違いが出てきた。さらに六十一年度は老人保健法、四百円が本人千円に上がるわけですね。入院は一日三百円から五百円、負担率は一・六から三・七と一挙に急増するわけです。確かに老人医療費というのはぐんぐん急上昇していることも事実でありますし、何らかの対策を講じなければならない。そのためにも老人保健法が今まで改正をされてきて、我が党としても老人保健法の改正については修正賛成という態度をとってきたわけで、我々は積極的にやろうとしておるわけでございますけれども、こういうような事態が来ると非常に残念であります。  そこで私は、老人保健法の一部負担増、大変遺憾だと思っております。けれども、今後、特に国保財政が今厳しいわけでございますから、この国保財政をどうやっていくのか。今まで、先ほど私が申し上げたように昭和五十八年からずっとされてきましたけれども、じゃ今度の六十一年度の老人保健法で千円負担にしたら解決していくのかどうか、この辺は非常に私は疑問を感ずるわけです。先ほど坂口委員の将来の医療制度についての質問もございましたように、この保険というものをどう取り上げ、どうやっていくのか。  総理、「戦後政治の総決算」とずっと言ってこられまして、いろいろおやりになってこられました。電電改革もやられました。今度は国鉄改革という大きな命題を抱えておられる。また、年金の一元化ということはようやくこの四月一日から軌道に乗ろうとしておるわけです。ところが、健康保険については依然としてはらばらのまま。私はやはり一元化をしていかなければならないと思います。これは非常に抵抗の強い問題もあろうかと思いますが、いわゆる健康保険の一元化、これについては余り総理の口から聞いたことがない。これはいかがですか。
  236. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やはり年金の一元化と同じように、健康保険の一元化も我々は心してやるべきであると思っております。たしか専門家の間におきましては、六十年代の後半までにこれを実現したい、そういう考えに立っていると記憶しております。
  237. 今井勇

    ○今井国務大臣 ただいま総理からも御答弁がございましたが、これからの医療保険制度の課題というのは、先生御案内のように、全部の制度を通じまして給付と負担の公平化を実現するということであろうと考えております。  こういう観点から、先生お話しのように今回老人保健法の見直しを行うことにしているわけでございます。そしてこの改革は、将来の医療保険制度の一元化を目指す橋渡し、こういうふうに考えておりまして、老人保健法の見直しの後におきましては国民健康保険の財政基盤の強化策を講じまして、厚生省としましては昭和六十年代の後半のできるだけ早い時期に医療保険制度の一元化をやりたい、このように考えておるものでございます。
  238. 矢追秀彦

    矢追委員 私は、細かい議論はきょうはやりませんけれども、今厚生大臣言われたように、老人保健の四百円を千円に負担増する、こういうことで一元化がスタートできるという、そういう今の答弁ではちょっとこれは私は不満足です。  というのは、今、医療費を、給付と負担を適正にすると確かに言われました。医療費は確かに急増しております。私も余りふえることはいいとは思いませんが、じゃ日本は世界の中で医療費は多いのか少ないのかというと、厚生大臣も御承知のように、日本は先進国の中では、国民所得にいたしますと医療費は最低です。フランスが最高の一〇・三八、アメリカが一〇・一五、西独が九・九五、イギリスが七・一九、日本は六・三八、年度はやや違いがありますけれども。まだ日本人は国民所得の割合にはお医者さんにそれほどかからなくて済んでおる、これは医療の発達とかいろいろな面があると思いますが。  そういうふうなデータも考えますと、ただ負担増をして、どんどんやっていって抑えればいい、抑えればいいじゃなくて、もうちょっと本気になって、前から言われていたことですから、三K赤字を言われて久しいわけです、そのうちの一つの柱です。あとの二つは何とか動きかけておる、これだけまだ全然動いていないわけですから、そういう意味で、ひとつ適正なこれからの運営をやっていただきたい。これは要望でございます。  次に、予備費のことについてちょっと伺っておきますが、五十九年度では千八百億を減らされましたが、六十年度補正では千五百億しか減らしておりませんが、この理由は何ですか。
  239. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 昨年度の補正予算との比較においての御質問でございますが、六十年度予算の執行過程におきましては、御承知のように、前年度に比べまして災害の発生がかなり多うございました。それからまた、いわゆる東京サミットの開催の準備のための経費も約百五十億円を要するというような状況でございまして、この補正予算を編成する時点におきまして既に予備費の使用済み額が四百億円を上回っているという状況であったわけでございます。したがいまして、当初予算に計上してございました予備費は三千五百億でございますが、補正予算を編成する時点におきまして実質的に残っております予備費は三千億を既に下回っておったという事実がございます。五十九年度におきましては当初予算に組んでございました予備費は六十年度と同じ三千五百億でございましたけれども、災害が割合少なくて済んだというようなこともございまして、十二月末現在での使用済み額は二百億に満たなかったということでございます。したがいまして、五十九年度の場合には補正予算を編成する時点での実質的な使用残額、これは三千三百億ほどあったわけでございます。     〔中島(源)委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、昨年度はなお一月以降不測の事態に備えるために千五百億円を保留いたしまして千八百億円を補正予算で減額をしたわけでございますが、六十年度は先ほど申しましたように十二月末におきます実質的な残額が三千億程度でございましたので、昨年度と同じように一月以降の事態に備えるために千五百億を保留をいたしまして、補正予算で千五百億円を減額をしたということでございます。そういった十二月末までの使用実績と申しますか使用済み額の大小が、主としてこの補正予算における減額の金額に影響しているというふうに御理解をいただければありがたいと存じます。
  240. 矢追秀彦

    矢追委員 今予備費で百五十億円の東京サミットの費用と言われましたが、東京サミットで要る費用というのは六十一年度予算には計上されておるのですか。それは六十年度補正予算の今の百五十億でやられるのか。もちろんなかなか幅の広いあれですから、大体アバウトで東京サミットの予算というのはどのくらいなんですか。
  241. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 いわゆる東京サミットの準備、それから会議そのものに要しまする経費でございますが、この準備に要します経費は事柄の性質上、現在御審議いただいております六十年度の補正予算でお願いをしてはなかなか間に合わないということでございまして、大体六十年度は予備費で、先ほど申しましたように約百五十二億円程度予備費支出をいたしてございます。それとは別に六十一年度の当初予算に、会議に要します種々の経費がございます、概略十四億弱程度、六十一年度予算のそれぞれの必要な所管省庁に予算を計上さしていただいております。
  242. 矢追秀彦

    矢追委員 総理、相当の金額を使ってやるサミットでございますし、非常に財政難の中でやられるわけですから、ただショーに終わって、国民がテレビを見て、外国の偉いさんが来て総理がいろいろやっているという外交ショーだけに終わってもらっちゃ困るわけです。それが必ずこれからの日本の経済あるいは国民生活にプラスになる、あるいは世界の平和にプラスになる、そういうサミットにぜひしていただきたいわけでございます。  と申しますのは、ボン・サミットの後やはり七%成長ということで、いわゆる機関車論が出た結果やらざるを得なくなって、その明くる年の予算というのはかなりいわゆる国債発行をふやしてしまって、それが大きな足かぜに今なってきておる面も否めないと私は思います。そういう意味でひとつ後世に悔いを残さないような、かつ効果のあるサミットにしていただきたい。総理の決意をお伺いしたいと思います。
  243. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国民の貴重な税金を使ってやらしていただくわけでありますから、御趣旨を体して着実に、しかも効果が上がるサミットにいたしたいと思います。  本年度予備費で便わしていただきました百五十億円というのは、大体外国の公賓を運ぶためのヘリコプター空二台買いまして、それからあとは警備上の諸般の対策をやりました、そういうような関係の費用が非常に多かったわけでございます。しかし、いずれにせよ御趣旨を体しまして一生懸命努力いたしたいと思っております。
  244. 矢追秀彦

    矢追委員 次に、特例公債の追加発行についてお伺いしたいと思います。  公債発行が七千五百八十億円、さっきもちょっと触れましたけれども、私先ほど申し上げたように国民健康保険の特別交付金、これが見込み違いですから、見込み違いかなければこのお金は全然要らなかったわけですね。少々要ったとしてもこんな巨額なものにはならなかった。それから税収の見通しももう少し的確にやればこんな四千億の穴はあかなかったのではないか。といたしますと、七千五百八十億円という公債を追加発行せざるを得なくなって、その中で特に四千五十億円という特例公債を出すことになってしまいまして、これでちょうど税収の穴を埋めて、災害の方を建設公債。毎年政府は一兆円の特例公債を減額する、六十五年には特例公債依存の財政から脱却をするのだという方針を出されておられたにもかかわらず、昨年は五千二百五十億という削減を一応やられましたが、これは当初と補正の間のことであって、いわゆる決算ベースで見ますともうちょっと少ないわけです。三千五百五十だったかと思いますが、間違っていたらばまた修正をしてください。そういう意味でできるだけ公債を、特に特例公債を出さない、そういう強い強い決意を持ってやっていかなければならない時期に、一つは先ほど申し上げたように退職者医療制度の見誤り、それから税収見積もりの甘さ、そういうことから結局また特例公債を出さざるを得なくなった。私は建設公債、これは災害ですからある程度やむを得なかったと思うのです。この四千五十億、仮に千三百六十七億はこちらの方でいろいろされておりますけれども、いろいろ見合いでいきますと残りが二千七百億。これを税収の方が何とかなればそう出さなくともよかったのじゃないか、こう思うのですが、反省を含めまして大蔵大臣、いかがですか。
  245. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今お話がありましたように、国民健康保険の分を別においたといたしましても、税収そのものの見積もりが減額せざるを得なかったということは、これは厳然たる事実でございます。いつも申しますように、税収見積もりというのは見積もりでございますから、それは若干の誤差は出ます。これは別に権威づけられた議論じゃございませんけれども、一%は誤差のうちというようなことをよく言ったりいたしまして、それで五十八、五十九と大体その誤差のうちのプラスの方へいったなと思っておりましたが、今回は積み上げでまた再計算をしましたところ四千五十億は足らない、こういうことになりましたので、そうすると五十八、五十九、六十、三年足すと大体とんとんになるのかな、こんな感じがしておりますけれども、今度は一%よりちょっと多いわけでございますから、したがって、私もやはり見積もりというのは神様でない限りなかなか難しいものだということは痛感しておりますが、いろいろな経済の諸指標を参考にすることはもとよりでございますが、聞き取り調査などをやってできる限りいわゆる乖離が生じないようにこれからも努めていこうというふうに考えております。(矢追委員「特例公債発行について」と呼ぶ)  特例公債をそれだけ出したわけでございますから、したがって、それも三年で見ますと出さなくて済んだ年と今度のように出した年と比べますと、大体同じぐらいになるのかなと思いながらも、これから、やはりこういうことはあったにいたしましても、五十六年、五十七年度のようなことは別といたしまして、特例公債の依存体質というものを、今補正ベース、決算ベースと、これはプロの議論でございますけれども、やはり取っかかりは当初予算ベースで滅していくという努力はこれからも続けていかなければならぬというふうに思っております。
  246. 矢追秀彦

    矢追委員 特例公債の削減について申し上げますと、六十年度は補正どおりにいきますと五十九年度より三千二百億円、五十九年度決算でいくと二千三百六十億円しかならない。五十九年度は五十八年より、先ほどちょっと申し上げましたが五千二百五十億円。結局は三千五十億ということになったわけであります。今言われた決算と両方言っておりますけれども。こうなると、さっきの議論にちょっと戻りますが、五十九年から毎年一兆円ずつ特例公債を減らす、こういう政府の計画は初年度から狂ってきたと指摘せざるを得ないわけです。仮に五十九年度五千二百五十億、六十年度補正後として三千二百億円といたしましても、二年間で八千四百五十億円にしかならぬわけです。六十一年度当初は四千八百四十億円、これが実行されたとしても三年間で一兆三千二百九十億円。今大蔵大臣いみじくも三年、三年とおっしゃいましたので、この三年間とりますと、計画達成率は五〇%ですね、三兆円のところが一兆三千二百九十億円にしかならぬわけですから。しかも、国債残高というのは年々累積をしておるわけですね。特に、特例公債のこの表でよく総理おわかりのように、すごく上がってきているわけです。  さあこれをどうしてやっていくのかということになるわけでございますが、六十五年度の特例公債脱却というのは、もうこれは私はできないと思うのですね。それこそよっぽど物すごい、いわゆる手品でもなければ到底無理だと判断せざるを得ない。要するに、百兆円を国債残高が超えると、これは大変な事態になると前々から言われてきました。一つは金利の上昇、それからクラウディングアウト、それからインフレーション、そして財政の機能麻痺、これが言われてきたわけです。ところが幸いにも、総理は運が強い人かなと私は思うのですが、非常に今インフレはありませんし、それから金利も緩んでいますし、クラウディングアウトも今のところありそうにない。その点は非常に幸運に恵まれたと思うのです。百兆円ということは、そういうことばあしたにでも起こるというのが大体皆の予想でしたから。  ところが財政の機能麻痺の方は、これは私は起こってきていると指摘をせざるを得ないわけです。要するに、一般会計に占める利払い費というのは、百兆円を超えたときから、一三%であったのが五十八年度一五・七、それから五十九年度は一七・五、六十年度は一八・八、六十一年度は一九・六と、二割一般会計の中に占める利払い費が出てきております。それとともに、五十八年度からいわゆるゼロシーリング、一般歳出はゼロあるいはマイナスになってきています。それから、五十九年度からは公共事業費が二・〇%、二・三%、二・三%と伸び率はマイナス、に転じておる。これはまさしく財政の機能麻痺という最後の項目には当てはまるわけでありまして、こういうふうな状況の中において、私昨年もこの委員会の集中審議で総理に、これだけの国債残高、特に特例公債の分が非常におもしになっているわけですから、これをいいかげんに考えてもらっては困るとやかましく指摘をしたわけでございますが、残念ながら今大蔵大臣の答弁を聞いておりましても、大蔵大臣も言葉がやわらかいのでそう感ずるのかもわかりませんけれども、もう一つ深刻ではないのではないか。だから、今度の補正予算の編成でも、もうちょっと何とか、少なくも特例公債の発行だけでも減らすことはできなかったのか、四千五十億円にならない努力というものはできなかったものなのか、こう思うわけでございます。  それで、これからの問題として、じゃ、六十五年に特例公債脱却という目標というのはまず変更されるのかどうか、それから「増税なき財政再建」と言われたものを、国民には大変悪いですけれども、増税再建という形にされるのか、あるいは一般歳出の伸び率をマイナスというふうな形、三つしかないわけですよね。それ以外はなかなか方法はない。後の二つというのは大変な問題が起こるので、やはり第一の六十五年度脱却はこれはもうあきらめるしかない、こう私は思うのですが、じゃ、それ以外に何か妙手があればお答えいただきたいと思います。
  247. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは、昨年も矢追さんから財政危機あるいは機能麻痺に陥っておるという趣旨の御質疑はちょうだいをいたしました。一つの問題として、百兆円を超えた五十八年度以来大変私どもが心配しておりましたのは、それはいわゆる、今御指摘のありました、それによって金利がべらぼうに上がるとかあるいはクラウディングアウトとか、さらにはインフレとかということを一般論としては当然警戒すべきでございますが、その点は幸いにと申しますか、国民の貯蓄率が高いとかというようなことも大きく影響いたしまして、今日本がクラウディングアウトとか高金利とかインフレとかという状態にはないということはお互いいいことだと思っております。しかしながら、それにしても来年度末になりますと百四十二兆というような残高が見込まれるわけでありますから、これは容易なことじゃないなと思っておりますし、先ほど来御議論のありますように、これから平均して一兆三千百億ずつ赤字公債を滅していくということもこれは容易ならざる課題だという問題意識は十分に持っておるところであります。  最終的にはどういうふうにしてやっていくかというと、これは選択肢というのはおのずから限られておる。すなわち、六十五年の公債脱却の旗をおろしてしまうかというのが一つございましょう。しかし、これについては断じて、かたくななまでにもこの旗はおろしませんと申しておるわけであります。それはやはり、その旗をおろせないという手かせ足かせがかかって初めてお互いが、各省ごとに内なる改革に努力していって歳出の削減とかという大きなてこになっておると思っております。これを延ばした途端に歳出圧力に抗し切れなくなるのではないかという感じも私はいたすのであります。  それからいま一つは、編成の場合の歳入の公債依存度をどうして下げていくか、これは徐々にではございますが下がっておる。まずそれを下げていく。そうして今度は、基本的には第三番目にはやはり残高の対GNP比を減していかなければならぬ。ところが、GNPの伸び以上に公債の発行額があるわけでございますから、残高の対GNP比というのは、今日の時点ではこれは減らすという状態にはなっていない。だから、まずは特例公債の脱却を図り、そうしていわゆる公債依存度というものを引き下げ、その後が残高をどうして減らすか、ということが三段階の財政当局として考えていなければならぬ対応策ではなかろうかというふうに考えておるところであります。  その他、恐らく矢追さんは、新たな要素として電電株の売却の問題も出ておると。あるいは税制調査会の抜本策が出たら政策選択の場で若干のそれは余裕はできるかもしれませんが、今日はそれらのことを必ずしも念頭に置くことなく、やはり歳出歳入両面から厳しい対応を行っていくというのが今日のお答えできる限界ではなかろうかと思います。
  248. 矢追秀彦

    矢追委員 旗は絶対おろさないというお気持ちはわかるのですけれども、現実だれが見てもできないことはわかっているわけですよ。それを、旗をおろしたらじゃルーズになるのか。私は、それをしない節度ある予算編成なりあるいは各省のいわゆる歳出削減というものをやる、いろいろな目安というのはできるんじゃないかと思うのですよ。  今申し上げたように、例えば一般歳出の中における利払い費のパーセンテージだって、私これを見ていますと、大体一〇%ぐらいから警戒域に入ったんじゃないか。そういう意味では、これは仮定の話ですけれども、今百四十三兆と言われましたが、そのうち七十四兆がいわゆる四条債ですよね。あとの残り約七十兆が特例債。この分がきれいになかったら公共投資もできるし、運営が非常にうまくいくわけですね。大体一〇%じゃないかと思うのですね、利払い費。その後は、そこまで一遍に下げることは無理ですから、先ほどのちょうど百兆円というのは、私は一つの限界だったと思うのです。その前が一三%ですよね。百兆円になってから一五・七になったわけですから。だから、例えば一五・七あるいは一五%は超えちゃいけないのだというようなことも一つの目安にはできるんじゃないか。そして節度ある歳出をやっていくのだと。そういうことで、国民が見たって明らかにもうこの旗は破れているのですよ。風になびかない旗になっているのをただそれだけの理由でやったって、これは私は理解できないのですよ。もっと新たなそういう目安なり目標なり、こういうことでいくのだということをやっていけば、できないものはできない、だからもう五年延ばしますとか、それ以外に本当に、電電株に期待はされているといって、一応四千億計上されていますけれども、じゃこれが仮に三倍になって一兆二千億になったからといって、なかなか難しいんじゃないですかね。  私は、今話が出ましたので言いますけれども、いわゆる現金償還一つとりましても、昭和六十一年度は一兆六千五百億円、株式の方が四千億見ておりますが、六十二年が二兆一千七百億、六十三年が二兆九百億、六十四年が二兆三千九百億、六十五年が二兆六千七百億、六十六年に二兆二千五百億で、六十五年までが株式が四千億、それから六十六年が千三百億見込まれておりますよね。これは現金償還ですよね。これだってお金ないんですよね。ことしは定率繰り入れをとめて、それから予算繰り入れを四千百億やって急場しのぎをやられました。じゃ来年どうするか。定率繰り入れはもちろん停止、予算繰り入れがじゃ幾らできるのか。で、株がどれだけうまくいくのか、これはもうわからないですよね、結果は。そうすると、全然これも返せないわけですよ。現金償還ができないわけです。  じゃ今度はそれに対する対応策は何が出てくるか、こういうふうなことを考えますと、一つはぞっとしてくるし、そうすると今度は借りかえを、満額借りかえするということもまたやっていかなければならぬ、そういうようなことも最後としては出てこざるを得ないと思う。私は、これはいいとか悪いとかいう議論——これはよくないことですよ。しかしもう最後は、赤字国債だってそうでしょう、特例債は絶対借りかえしません、キャッシュで返しますと言っておいて、結局借りかえしなければならなくなった。その借換債も、現金償還がまた詰まってきたら全部借りかえた、こういうふうなことになってきたらそれこそ大変なので、私は、ただ、六十五年に脱却なんという旗は、おろしたからといって内閣総辞職しろなんて乱暴なことは言いません。やはり常識論として、できないことはできない、じゃ目標はここまで延ばして、そのかわりこういう歯どめで、いわゆる財政の節度は守る、それから国民には御理解ある負担をいただくなら負担をいただく、これをしないといつまでたってもつじつま合わせの綱渡り予算編成で、もう六十一年度予算編成は限界だと私は見ているのです。六十二年度予算編成なんて私は絶対できないと思います。その点いかがですか。これは大蔵大臣、総理、両方でお答えいただきたい。
  249. 竹下登

    ○竹下国務大臣 毎年毎年限界である限界であるという認識のもとに立ち向かいながら、とにかく今日までいわゆる概算要求基準どおりにと申しましょうか、一般歳出前年度同額以下ということで、あるいは地方の協力を得たり、いろいろな制度間のお金の、政府会計内における資金の融通とかいうような工夫をしてやってきたわけであります。  しかし、今矢追さんおっしゃいましたように、いわゆる定率繰り入れ、これだけ考えてみましても、これは来年は相当なことになるなという問題意識は私も持っておるところであります。したがって、この問題についてはどのように対応していくかということになりますと、今後歳入歳出全般を通じての工夫が必要だというふうに考えておるわけであります。したがって、確かに電電株式の売却収入という要素、これはひとつありましょう。が、しかしながらそれとて、今裏に透かしのようには見えましたけれども、これはまだ浮き彫りにはなっていない、こういうことでございます。税制改正においてはまして今後の問題でございます。したがって、今矢追さん、いわゆる現金償還のための財源を借りかえによって調達しているわけでございますから、それをあるいは六十年償還という償還計画そのものを一時変更するというような気持ちであるいは議論なすったことがあるかもしれませんし、我々むそんな議論をしたことは率直にございます。が、やはり減債制度というものの基本は維持しながら、これから六十二年度予算編成に当たって詰めていかなければならない一番重要なポイントの一つだという問題意識は持っております。
  250. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 矢追さんおっしゃいますように、非常に厳しい状況にあると私も思っております。しかしここが大事なところで、あきらめてはいけない。確かに困難なことは百も承知しておりますけれども、ここで緩めたら、あるいはほかの方向へ転換したらどうなるかと考えますと、かえって事態は悪化する、乱そう見ておるわけであります。  なかなか政治というものは願望の根強い、ニーズの強い世界の中に生きておるわけでありますから、今のようなこういう苦しい状況の中で頑張って頑張り続けるというところに、私、為政者としての責任がある、そういうふうに感じておる要素もあるわけであります。そういう意味におきまして、必ずしも絶望ではない。まだ心臓はかなり強いし、脳波もぴんぴんしております。機械を外すなんという段階じゃない。自活力がどんどん出てくる可能性もありますし、カンフルも効いてくる場合もあり得る。そういう意味において、ひとつ頑張っていきたいと思っております。
  251. 矢追秀彦

    矢追委員 心臓は動いている、脳死までいってないとおっしゃいますけれども、確かにそこまではそれはいってないと思いますよ。しかし、ただそれは今だから言えることであって、六十五年になったらどうなるのか、あるいは二十一世紀になったらどうなるのか、やはりその辺を考えないと、確かに旗をおろさない気持ちは私もわかりますし、だから私は何も旗をおろして緩めると言っているのじゃない。それはひとつ誤解のないようにお願いしたいと思うのです。それ以上に厳しいいろいろな歯どめはできるはずですし、やらなければならぬ。ただもうそればかりこうやって、実際できてないわけですから、将来を見てもまたできないわけですから、そういった意味で、カンフル注射があればカンフル注射も必要でしょうし、今言われたことをひとつ誤りなきようにお願いしたいと思います。  大蔵大臣、最後に一つだけ、補正予算編成にちょっと戻って恐縮ですけれども、もともとは総合予算主義なんという言葉が一時出まして、補正予算を組む場合はやはり万やむを得ざるもの、こういうことになるわけですね。ところがことしもこうやって税収の見誤り、それから、私しつこいようですが退職者医療制度の間違い、そういうことによって補正を組まざるを得なくなった。災害はこれはやむを得ないと思いますよ。  もう一つは、いわゆる特別会計の予算の総則第七条にあるいはいわゆる前倒しの一兆円ですね。これは六十一年度予算を見ますと、六十一年度予算で一つの大きな問題で、初めから補正が意識されているのは給与改善費、これは計上されておりませんね。それから、この前倒しも二兆円になっておりますね。これもやはり補正を組まなければいかぬものだと思うのですよね、実際のお金は動かないにしても。そういう意味で、補正予算に対するあり方といいますか、考え方、これいかがですか。
  252. 竹下登

    ○竹下国務大臣 総合予算主義、これは、予算というのは年度当初において予見し得るすべての財政需要を総合的に検討した上で、各経費間のバランスをとって編成を行っていくものであって、このような考え方のもとでまた執行も行っていくべきものでありますので、いわば財政運営の基本的な考え方はそうあるべきであるというふうに思っておるところであります。したがって、六十年度当初予算においても基本的にはそういう考え方のもとでやりましたが、今御指摘のありましたとおり、災害復旧の追加、それから給与改善費、国民健康保険特別交付金、義務的経費の追加、いずれも当初予算作成後に生じた事由に基づいて緊急となったやむを得ない事項について最小限の所要額を補正計上する、こういうことにいたしたわけであります。  そこで、六十一年についての御意見は、給与改善費が去年までは一%組んであった、ことしは組んでないではないか、こういうこともあらかじめ補正が予見できるじゃないかとおっしゃいますでしょうが、去年の一%の場合も別にこれは、要するにいわば財政上の措置として、諸般の状態を勘案しながら去年まではこれを組んでまいりました。四十三年以前は組んでいないわけでありますが、したがって、この問題は言ってみれば単なる財源措置であるというふうに理解をいただきたい。この際、大変厳しいところでありましたので、あかしとして申し上げておりますいわゆる一%の給与改善費は計上をしませんでした、こういうことでお願いしておるわけでございますから、人事院勧告が幾ら出るか、それはわかりません。が、しかしあくまでも人勧尊重の態度はこれからも貫いていかなければならぬということはもとよりでありますが、その財源が仮にもし、仮定のことを申し上げなければなりませんが、必要であったとしたならばいろいろなことを考えていかなければならぬというふうにも思います。義務的諸経費の不足だというふうになるならば、これもまたあるいは予備費の移流用等も考えなければならぬであろうということでございますので、これは補正をあらかじめ前提に置いたものではないというふうに御理解をいただきたいと思うわけであります。  それからもう一つは、やはり債務負担行為の公共事業の契約をやってよろしいということでございます。六千億でございますから、国費ベースでは四千億足らずであったと思うのでありますが、これは、確かに契約を行うわけでありますけれども、それそのものも補正、昨年も債務負担行為によっていわば契約してもいいということにしつつも、現ナマで補正に必要とするものでは必ずしもないということでございます。  例えて申しますならば、その前倒し執行というもので下期に事業費が消えるとかいう場合、それはあらかじめ予測できるものではございませんが、そういう場合でも、ことしの補正におきましても、いわゆる一般財源をもってこれに充てるということではなく、債務負担行為でさらに来年の契約の先食いをするというようなことをやっておりますので、いわば補正をあらかじめ予測したものであるとはいえないではなかろうかというふうに思っておるわけであります。何しろ厳しい中で、いろいろな工夫をした結果が今のような御指摘をいただいておることであるということは、十分私どもも承知いたしておるところであります。
  253. 矢追秀彦

    矢追委員 今私の言った前倒しは、誤解ないように、国債整理基金特会の前倒し一兆円と二兆円です。時間がありませんので、これはまた大蔵委員会議論して……。  次に、OA機器をめぐります、特に働く人たちの健康を中心とした問題を少し伺ってみたいと思います。  この問題は社会党の上田哲委員が昨年の分科会でかなり詳しくおやりになったようでございますが、最近OA症候群といいますかVDT症候群といいますか、そういう名前がいいかどうかわかりませんが、私もあえてVDT症候群と言いたいわけでございますが、かなり大きな問題となり、各企業においても対策を講じ、いろいろやっておられますが、やはり深刻な問題になりつつあるのではないか、こう思っておりますが、まず、政府としてはこの問題に対して今までどう取り組んでこられたか、お伺いしたいと思います。
  254. 小粥義朗

    ○小粥(義)政府委員 お答えいたします。  VDT作業に従事する労働者の健康状態を五十八年に調査したことがございます。その結果、一般の事務作業従事者に比べまして、目が疲れるとかあるいは肩が凝るといった異常を訴える労働者の割合が非常に高いという結果も出ております。したがいまして、そうした疲労の蓄積といったものが、適正な衛生管理を行われない場合には、これがさらに健康障害につながっていくといったおそれも考えられますので、一昨年VDT作業に従事する労働者の作業管理なりあるいは作業環境の管理といったことを内容とするガイドラインを決めました。ただ、これはあくまで企業に対しては参考資料といった性格のものでございますけれども、その後関係の研究機関での研究の結果を昨年の暮れにまとめまして、これは企業に対する指導指針として、VDT作業従事者に対する作業管理あるいは作業環境の管理、さらに健康管理といった内容の指針を出してその指導を図ることにしているところでございます。
  255. 矢追秀彦

    矢追委員 指針を出されたのはわかりますが、現実に健康上にどれだけの影響が出ておるか、特に目が疲れるとかあるいは肩が凝るとか、ストレス、ノイローゼ、いろいろあるわけですが、それに関するデータというのは労働省はお持ちですか。あるいは厚生省はいかがですか。
  256. 小粥義朗

    ○小粥(義)政府委員 お答えいたします。  先ほどお答えした中での五十八年のVDT作業従事者の健康の実態調査の結果を見ますと、例えば目が疲れるといった訴えをした人が、一般の労働者では三六・五%に対して五八・五%、それから肩が凝るといった異常を訴えた労働者の割合は、一般が三二・九に対して四二・七、また、率は低いのですが、腕がだるい、手指がしびれるといった異常を訴えた人が一般の労働者の二倍近い数字を示しているといった状況を把握いたしております。
  257. 矢追秀彦

    矢追委員 それは対象人数はどれくらいで、どんな調査ですか。
  258. 小粥義朗

    ○小粥(義)政府委員 六千企業の労働者数で約二万人を対象としたものでございます。
  259. 矢追秀彦

    矢追委員 私がいろいろな資料等を勉強いたしますと、この資料、今の結果とは随分違うようなデータもたくさんあるのが多いわけです。例えばソフト労働者なんかは、七七・五%が目が疲れる、あるいはストレスがたまるが六五・九、首や肩が凝るが六一・五、よく眠れないが二〇・五、これはいろいろとり方とか対象によっていろいろな違いがあると思いますが、どうもこの労働省の調査よりは私がいろいろ調べたものの方が大変高いように思うわけであります。そういった意味において、特に、やられていないとは言いませんけれども、OA機器が入ってもうかなり時間がたつわけですよね。それで去年の十二月ごろにようやく指針が出て、対象が二万人。それから後、今何かおやりになっているのですか。これを五十八年に調べて、その後この指針を出して、またその後やらないと意味ないでしょう。現在何か調査をやっておられるのか、あるいは今後どうされるのか。
  260. 小粥義朗

    ○小粥(義)政府委員 健康状態の調査拙今特に予定をいたしておりませんが、いわゆるこうしたVDT作業の疲労蓄積、それがさらに健康障害に結びつくおそれがある。特に外国、アメリカあたりではストレスの問題に結びつくおそれがあるといったことも証明されております。したがいまして、テクノストレスの問題を六十一年度において調査研究を開始しようということを考えております。
  261. 矢追秀彦

    矢追委員 厚生省は、これは労働者だけではなくて、いわゆるブラウン管、いわゆるディスプレー、ビデオ、そういったものがかなり家庭にも入り込んできているわけですが、これの健康に対する影響の調査等はやられておるのか、あるいはそういったデータをお持ちなのか、いかがですか。
  262. 仲村英一

    ○仲村政府委員 お答えいたします。  厚生省は、近視等につきましての対策は従来からやっておりますが、今お尋ねのビデオの関係につきましては、特に調査その他はやっておりません。
  263. 矢追秀彦

    矢追委員 最近パソコンは、もちろん会社、企業にも入っておりますが、家庭にもだんだん入ってきておりますし、また学校教育にもかなり使われるようになってきております。さらに、総理、ファミコン御存じですね。ちょっとこの雑誌をごらんになってください。ファミリーコンピューターが大体六百二十万台ぐらい、今子供たちの間でかなりはやっておるわけででざいまして、非常に爆発的なブームを呼んでおります。私も昨日、ちょうど休日だったものですから百貨店を見てきましたけれども、やはりおもちゃ売り場で一番集まっているのはこのファミコンのコーナーでして、ソフトもたくさんありますし、それからやっていてなかなかおもしろいなと私も思いました。これは率直に、きょう大臣も一遍お孫さんとでもおやりになったら、恐らく徹夜しますよ。それぐらい、やめられないぐらいのおもしろいものでして、私、今厚生省がこういったものに対する健康調査をしていない、これはちょっと問題だと思うのですね。  いろいろな大学でもまだこれから緒につくところでございますが、例えば帝京大学の眼科の先生などはある程度は調べておられまして、眼精疲労はある、しかし視力障害まではいかぬのじゃないかというふうなことは言っておられますし、そういった意味で、別にファミコンだけじゃなくて、職場の問題は労働省で解決できるかもしれませんが、今度は家庭あるいは我々の周りで本当にこれだけ始まったいろいろなこれからの情報機器、いわゆるコンピューター時代、厚生省、これは怠慢と言われてもしようがないのじゃないですか、いかがですか、大臣。
  264. 仲村英一

    ○仲村政府委員 ファミリーコンピューターその他の場合につきましての目の影響ということでお尋ねでございますが、先ほど申し上げましたのは調査をやっておらないということでございまして、文献その他については私どもも注意を払っておるところでございますが、今後なお御趣旨のようなことで文献等を集めたいと考えております。
  265. 矢追秀彦

    矢追委員 厚生大臣、ひとつしっかりお願いしますよ、目の悪い子供がふえちゃったら困るのですから。  それと、これは文部大臣、あと最後は総理にお答えをいただきたいのですが、一つは、これからのこういった情報化社会に対して我々は、特に政治はどうあるべきか。  これは私ちょっと、ある先生、具体的に言いますと、常磐大学の人間科学部の後藤先生という方の、これは厚生省の「厚生」という本ですけれども、この論文の中で、新しいメディア環境に対して、私たち大人は、どれだけの準備ができているだろうか。私たち大人は、新しい電卓を買ってきたときのように、機器には触れずに、もっぱら文字のレベルで新しいメディア環境を理解しようとしているのではないだろうか。  そうしたときに子どもたちは、さっさと手を伸ばし、機器に触れ、機器と遊ぶことによって自然に情報化に対する準備を身につけつつあるのではないだろうか。パソコンの前で夢中になって遊んでいる子どもたちの姿は、メディア史の転換期にある人類のフロンティアを預かる新しい人間の姿とみてもいいのではないだろうか。  もちろん、テクノロジーには必ずプラスとマイナスがある。マイナスについて大人が十分に配慮すべきことはいうまでもない。しかし、情報化に対して子どもたちが示している柔軟で自然な反応は、私たちに教えてくれるものを内に含んだものとして、しっかりとみつめておくべきことと思われる。こう言っておりますので、私は、ファミコン否定というよりむしろ、こういったファミコンのソフトにせよハードにせよ、日本のコンピューターの世界的最先端を行くのに非常に貢献もしておるわけですし、これは結構なことだと思います。また、子供たちにこれによってある面では非常にプラスの面がある。今ここで指摘されているマイナスの面、例えば家に帰ったらこれで二時間、三時間勉強しない、こっちばかり夢中になってしまっているのでも困ります。だから、そういったことも考えて、ある企業のパンフレットでは、「予習・復習・宿題、明日の準備がすんでからゲームを始めよう!!」、時間割りまでついている。そこまで企業は進んでやっておるわけですね。  そういう意味で、今厚生省は、こういった時代に対応した健康をどうするか、全然調査もしていないという状態ですね。文部省は果たしてこれからどうこういった時代に対応して、こういったものがはやっている、文部省として子供の教育。またある学校では、これはファミコンと違いますよ、パソコン教育、これもどう組み入れようか、いろいろやっておられるわけですよね。この点、いかがですか。
  266. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 御指摘のように、近代の科学技術が大変進歩しまして、本格的な情報化時代の入り口になっておるわけです。  文部省としましても、従来読み書き計算、読み書きそろばんと言いましたけれども、これからの情報化時代には読み書き情活でいかなきゃならぬじゃないか。情活というのは、残念ながらまだ公認された言葉じゃありませんが、情報活用能力ということであります。これを身につけませんと、本格的な情報化時代には、主体的に情報を選択したり、活用したり、自分の人生を開けていくときに、その活用する能力のある人とない人とでは社会的に大きな差が出るのじゃないだろうか。ですから、情活能力を身につけるための教育の機会均等も大切だな、これは大前提として大きなことで考えております。  しかし、問題は、発達段階に応じてそれぞれ身につけませんと、かえって害悪が及ぶことも非常に多いわけですから、今検討会議をつくって、小学校、中学校、高等学校、それぞれにふさわしい情報活用能力を身につける教育とは何であるかということは考えておるのです。  ただ、御指摘のように、余り長い間熱申しますと目が疲れるんじゃないか、こう思いまして、昨年文部省では、こういったことをやるときは余り熱中しないように、三十分以上やったら十分間ぐらい目を休めるとか、テレビを見るときは二、三メートル離れろとか、いろいろ細かいこと等も配慮して必要以上に疲れることをやめるような指導もしましたが、問題は、簡単にそう割り切れる問題じゃなくて、人間の心にも与える影響があるわけです。きょうもある精神科のお医者さんが、パソコンに熱中すると家族団らんの会話が生まれた、パソコンを通じて子供同士のお友達関係が生まれたというようないい面の報告もありますが、ゲームに熱中した後でむなしさが残った、何か意味のない情緒の流れる中に埋没しておったから、後から残ったのはむなしさだけであった、一体興奮とスリルだけで何が残ったろうというような暗い面の深刻な疑問の提供もありますから、教育現場では児童生徒の心にそれらが与える影響等も十分考えながら対応していかなければならぬと思って、今有識者にお集まりいただいて御検討も願っておるところであります。
  267. 今井勇

    ○今井国務大臣 お説のとおり、このテレビゲームをやり過ぎますと確かに目に悪いことはお説のとおりだと思います。  そんなことで、この問題につきましても、厚生省としましても大きな関心を持ってひとつ十分検討してまいりたい、こう思っております。
  268. 矢追秀彦

    矢追委員 総理御所見を。簡単で結構です。
  269. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は孫とパソコンの勝負をしたことがありますよ。もちろん私の方が弱い、それとまた将棋の勝負を時々やるのですけれども、両方比べてみると、やはりパソコンの勝負の場合には何か非常に抽象的な、媒体を通じてやっているものですから感じが出ない。後がむなしいですね。まあ負けたからむなしいというわけじゃないけれども、ともかくむなしいものが残る。時間の空費だったような感じがします。しかし、将棋で負けたときは相手の息吹が伝わって、指先で動かして待った待たないとかとやるものですから、非常に人間的なものがある。どっちを選ぶかといえば、やはり将棋でやる方が私は私の趣味に合う、そう思いました。  しかし、時代の趨勢とか文明の進路というものを見ると、矢追さんがおっしゃった方向にこれはとうとうと行くのでありまして、我々はどっちかというとセンチメンタルな部分があるのかもしれません。しかし、そこを人間性といかにコンバインしてうまくやっていくかということを検討していかなければならぬ、そう思っております。
  270. 矢追秀彦

    矢追委員 最後に運輸大臣、関西新空港問題で一言お伺いして終わりたいと思います。  漁業補償の交渉がなかなかうまくいっておらぬわけでして、非常に隔たりがございますね、三百七十二億と二百五億ですか。これは解決できるのかどうか。というのは運輸省——まあ会社ですね、最初百二十億、それから最後二百五億、四回出したわけでしょう。小出しにこう出してきて、ああいうやり方というのは何かばかにしているような、初めからなぜ二百億しかという交渉を持ってこないのだ。その前に私は原則が必要だと思うのです。原則論で話し合いが決まれば、後の金額はそう差が出てこない。だから、ちょっと私、今までの経過を見まして、非常にまずいんじゃないかと。これじゃ、やはり漁業組合の人だって怒りますよ。大臣、どこかで今年度中に解決すると言われたようですけれども、よろしくお願いします。
  271. 三塚博

    三塚国務大臣 これは御指摘のとおり百七十億の差があります。出し方が問題であるなど、私も率直に言ってそう思うのです。こういうものはバナナのたたき売りじゃありませんから、基準に、明確にこれが精いっぱいということできちっと提示をする。提示する以上、それだけの根回しを十分にしなければならぬだろう。しかし、行われておることでありますから、今地方自治団体、大阪府、督励を申し上げまして一生懸命やられておるようであります。推進会議もございます。  そこで、これが本年度内に解決をされませんことには、六十七年度開港ということは不可能に相なってまいります。よって、この解決は今月中に解決をされなければなりません。そのためには漁業者の理解を得なければなりませんし、そのためには大阪府知事の出番もぽつぽつ来たのかな、このように思いますし、そういう点で知事とよく協議をしたい。そのタイミングを今見ておるところであります。会社の社長は全力を尽くして今交渉に当たっておりますということでありますから、そのうち報告があると思います。それを受けて最大限の努力をする、こういうことで進めたいと考えております。
  272. 矢追秀彦

    矢追委員 関西のみならず日本全国、特に大阪の我々が期待している空港ですから、ひとつしこりのないような解決をやって、一日も早く一番機が飛べるように強く要望して、終わります。
  273. 小渕恵三

    小渕委員長 これにて坂口君、矢追君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十三日午前十時より開会し、本日に引き続き昭和六十年度補正予算の審査を行います。  本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十五分散会