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1986-02-10 第104回国会 衆議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年二月十日(月曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 小渕 恵三君    理事 中島源太郎君 理事 浜田 幸一君    理事 林  義郎君 理事 原田昇左右君    理事 渡辺 秀央君 理事 稲葉 誠一君    理事 岡田 利春君 理事 二見 伸明君    理事 吉田 之久君       相沢 英之君    伊藤宗一郎君       石原健太郎君    石原慎太郎君       上村千一郎君   小此木彦三郎君       大西 正男君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    片岡 清一君       砂田 重民君    住  栄作君       田中 龍夫君    葉梨 信行君       橋本龍太郎君    林  大幹君       原田  憲君    三原 朝雄君       武藤 嘉文君    村山 達雄君       山下 元利君    井上 一成君       井上 普方君    上田  哲君       大出  俊君    川崎 寛治君       川俣健二郎君    佐藤 観樹君       多賀谷眞稔君    松浦 利尚君       池田 克也君    近江巳記夫君       神崎 武法君    正木 良明君       大内 啓伍君    木下敬之助君       小平  忠君    工藤  晃君       瀬崎 博義君    東中 光雄君       松本 善明君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         法 務 大 臣 鈴木 省吾君         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 海部 俊樹君         厚 生 大 臣 今井  勇君         農林水産大臣  羽田  孜君         通商産業大臣  渡辺美智雄君         運 輸 大 臣 三塚  博君         郵 政 大 臣 佐藤 文生君         労 働 大 臣 林  ゆう君         建 設 大 臣 江藤 隆美君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     小沢 一郎君         国 務 大 臣         (内閣官房長官後藤田正晴君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 江崎 真澄君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)          (沖縄開発庁長         官)      古賀雷四郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 加藤 紘一君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      平泉  渉君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      河野 洋平君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 森  美秀君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 山崎平八郎君  出席政府委員         内閣官房長官 唐沢俊二郎君         内閣参事官   荘司 晄夫君         内閣官房内閣審         議室長              兼内閣総理大臣         官房審議室長  的場 順三君         内閣審議官   海野 恒男君         内閣法制局長官 茂串  俊君         内閣法制局第一         部長      工藤 敦夫君         国防会議事務局         長       塩田  章君         内閣総理大臣官         房審議官    田中 宏樹君         日本国有鉄道再         建監理委員会事         務局次長    吉田 耕三君         公正取引委員会         委員長     高橋  元君         公正取引委員会         事務局取引部長 利部 脩二君         警察庁警務局長 大堀太千男君         警察庁刑事局保         安部長     新田  勇君         総務庁長官官房         長       藤江 弘一君         総務庁長官官房         審議官              兼内閣審議官  本多 秀司君         総務庁長官官房         審議官     百崎  英君         総務庁人事局長 手塚 康夫君         総務庁人事局次         長                兼内閣審議官  吉田 忠明君         総務庁行政監察         局長      竹村  晟君         総務庁統計局長 北山 直樹君         北方対策本部審         議官      稲橋 一正君         北海道開発庁総         務監理官    西原  巧君         防衛庁参事官  瀬木 博基君         防衛庁参事官  筒井 良三君         防衛庁長官官房         長       宍倉 宗夫君         防衛庁防衛局長 西廣 整輝君         防衛庁人事局長 友藤 一隆君         防衛庁装備局長 山田 勝久君         防衛施設庁施設         部長      宇都 信義君         防衛施設庁建設         部長      大原 舜世君         経済企画庁調整         局長      赤羽 隆夫君         経済企画庁国民         生活局長    横溝 雅夫君         経済企画庁物価         局長      斎藤 成雄君         経済企画庁総合         計画局長    及川 昭伍君         経済企画庁調査         局長      丸茂 明則君         科学技術庁長官         官房長     矢橋 有彦君         科学技術庁計画         局長      長柄喜一郎君         科学技術庁研究         調整局長    内田 勇夫君         環境庁長官官房         長       古賀 章介君         沖縄開発庁総務         局長      小谷 宏三君         国土庁長官官房         長       吉居 時哉君         国土庁長官官房         会計課長    斎藤  衛君         国土庁計画・調         整局長     星野 進保君         法務大臣官房長 根來 泰周君         法務省刑事局長 岡村 泰孝君         外務大臣官房審         議官      松田 慶文君         外務省アジア局         長       後藤 利雄君         外務省北米局長 藤井 宏昭君         外務省欧亜局長 西山 健彦君         外務省中近東ア         フリカ局長   三宅 和助君         外務省経済局長 国広 道彦君         外務省経済協力         局長      藤田 公郎君         外務省条約局長 小和田 恒君         外務省国際連合         局長      中平  立君         外務省情報調査         局長      渡辺 幸治君         大蔵大臣官房総         務審議官    北村 恭二君         大蔵大臣官房審         議官               兼内閣審議官  門田  實君         大蔵省主計局長 吉野 良彦君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省銀行局長 吉田 正輝君         大蔵省国際金融         局長      行天 豊雄君         国税庁次長            国税庁税部長         事務取扱    塚越 則男君         国税庁調査査察         部長      日向  隆君         文部大臣官房長 西崎 清久君         文部省初等中等         教育局長    高石 邦男君         文部省高等教育         局長      大崎  仁君         文化庁次長   加戸 守行君         厚生大臣官房審         議官               兼内閣審議官  山内 豊徳君         厚生省健康政策         局長      竹中 浩治君         厚生省保健医療         局老人保健部長 黒木 武弘君         厚生省生活衛生         局長      北川 定謙君         厚生省生活衛生         局水道環境部長 森下 忠幸君         厚生省薬務局長 小林 功典君         厚生省保険局長 幸田 正孝君         厚生省援護局長 水田  努君         農林水産大臣官         房長      田中 宏尚君         農林水産大臣官         房予算課長   鶴岡 俊彦君         農林水産省農蚕         園芸局長    関谷 俊作君         食糧庁次長   山田 岸雄君         通商産業大臣官          房総務審議官  鎌田 吉郎君         通商産業大臣官         房審議官    松尾 邦彦君         通商産業省通商         政策局長    黒田  真君         通商産業省貿易         局長      村岡 茂生君         通商産業省産業         政策局長    福川 伸次君         通商産業省基礎         産業局長    岩崎 八男君         通商産業省機械         情報産業局長  杉山  弘君         通商産業省機械         情報産業局次長 棚橋 祐治君         通商産業省生活         産業局長    浜岡 平一君         資源エネルギー         庁長官     野々内 隆君         中小企業庁長官 木下 博生君         運輸大臣官房長 永光 洋一君         運輸大臣官房国         有鉄道再建総括         審議官     棚橋  泰君         運輸省港湾局長 藤野 愼吾君         運輸省航空局長 山田 隆英君         郵政大臣官房人         事部長     櫻井 國臣君         労働大臣官房長 岡部 晃三君         労働大臣官房審         議官      中村  正君         労働省労政局長 加藤  孝君         労働省労働基準         局長      小粥 義朗君         労働省婦人局長 佐藤ギン子君         労働省職業安定         局長      白井晋太郎君         建設大臣官房長 高橋  進君         建設大臣官房会         計課長     望月 薫雄君         建設省住宅局長 渡辺  尚君         自治大臣官房長 津田  正君         自治省行政局長 大林 勝臣君         自治省行政局公          務員部長    柳  克樹君         自治省行政局選          挙部長     小笠原臣也君         自治省税務局長 矢野浩一郎君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       杉浦 喬也君         予算委員会調査         室長      大内  宏君     ————————————— 委員の異動 二月十日  辞任        補欠選任  小此木彦三郎君    片岡 清一君   倉成  正君    林  大幹君   佐藤 祐弘君    東中 光雄君   松本 善明君    工藤  晃君 同日  辞任        補欠選任   片岡 清一君   小此木彦三郎君   林  大幹君    倉成  正君   工藤  晃君    松本 善明君   東中 光雄君    小沢 和秋君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和六十一年度一般会計予算  昭和六十一年度特別会計予算  昭和六十一年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 小渕恵三

    小渕委員長 これより会議を開きます。  昭和六十一年度一般会計予算昭和六十一年度特別会計予算昭和六十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松浦利尚君。
  3. 松浦利尚

    松浦委員 まず、質問に入る最初に、御承知のようにフィリピン大統領選挙投票を終わりまして、御案内のとおりきょう国会が召集されて、国会次期大統領が決定されるという報道がなされておるわけですが、国際監視団等声明を発表いたしまして、フィリピン大統領選挙に不正ありというような声明を出しておられるわけであります。  我が国とフィリピン関係は、御承知のように、昨年をとりましても、四月、十二月と援助等を行っておる国でありまして、民主主義基本というのは、少なくとも選挙という制度が公平に、かつ民主的に行われて初めて成り立つと思うのでかりますが、こうしたフィリピンの状況について総理大臣見解を冒頭承っておきたいと思います。
  4. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 フィリピンアジアにおいても非常に重要な隣邦でございまして、フィリピンの新しい政府の形成については非常に大きな関心を持って見守っておるところでございます。しかし、内政不干渉というのは国際間の原則でございますから、フィリピン内政に干渉する、そういうおそれのあることは一切避けて、政府は静かにこれを見守っておる、こういう態度でまいりたいと思っております。
  5. 松浦利尚

    松浦委員 きょうの報道等を見ますと、どちらが勝っても混乱が残るだろう、こう言われておるわけでありまして、こうした重要な問題についてただ傍観、確かに内政不干渉という総理の御発言でしたが、やはり傍観はできないのじゃないかという気がしてなりません。この問題については、改めて井上委員の方で詳しく対フィリピン関係についての質問をされるそうでありますから、ぜひそれまでに確たる御答弁用意をしておっていただきたい。午後からでございますので、ぜひひとつ用意をした上で御答弁をいただきたいというふうに思っております。  それでは、通告いたしておきました順序に従って、まず六十一年度の経済運営等について御質問さしていただきたいと思うのでありますが、その前に、これは総務庁統計局が発表しました昭和五十九年度の「家計調査年報」でありますが、膨大でありますから、二十二ページだけをコピーをしてまいりました。総理、これ見ておられますでしょうかね。こんな細かいところは恐らく総理見ておられぬと思うのですが、私の方から申し上げますけれども、これを見てまいりますと、実は世帯主収入というものは低下をしてまいりまして、むしろ妻の収入というのが実収入に占めるパーセントがどんどん上がってきておるわけであります。そしてまた、二十二ページには、実収入に占める可処分所得というものが年々低下をしてきておるという、そういう資料が五十九年度のデータとして出されておるわけですね。ですから、非常に今家計というのは衰弱してしまっておる。  そこで総理にお尋ねをしたいのでありますが、総理が御就任なさいましてから、五十七年でございましたから、昭和六十一年度でちょうど四年になるわけですけれども、実は国民負担率租税負担社会保険等との負担を合算した国民負担率で見ますと、総理が御就任なさいました昭和五十七年は三四・三%だったわけです。昭和六十一年度の国民負担率大蔵省で発表いたしました資料で拝見をいたしますと三六・一%になるわけでありますが、大蔵大臣、この数字間違いありませんか。
  6. 竹下登

    竹下国務大臣 三六・一、間違いございません。
  7. 松浦利尚

    松浦委員 そうしますと、国民負担率の三六・一%から総理が御就任になりました三四・三%を差し引きますと、一・八%国民負担率が上昇したという計算になります。そうしますと、この「昭和六十一年度の経済見通し経済運営基本的態度」の最終ページ昭和六十一年度の国民所得見通しが書いてあります。雇用者所得財産所得、企業所得含めてでありますが、二百六十四兆二千億、こうなっておるわけであります。これに今の国民負担率の差であります一・八を掛けますと約五兆円。この六十一年度を含めた中曽根総理の四年間の間に、五兆円国民負担がふえた。こういう数字がこの資料から出てくるわけですよね。これは政府資料から出た数字ですから間違いない。これについて総理どのようにお考えになりますか。
  8. 竹下登

    竹下国務大臣 あるいは企画庁からお答えするが適当かと思いますが、特に負担率の問題でございますので、私からお答えいたします。  国民所得に対します租税負担率昭和五十七年度と昭和六十一年度で比較してみますと、六十一年度は見込みであるにいたしましても、おっしゃるとおり一・八%ということに相なります。そのうち国税の増加分がちょうど半分の〇・九、こういうことになるわけであります。これは何で増加したかといいますと、主として法人税率の問題がございます。それといわゆる所得税自然増収、この二つによってもたらされたものであろうというふうに考えます。  そこで、所得税につきましては五十九年度において大幅な減税を行ったところでありますが、この問題から来る問題というのは、私はいつも考えますが、やっぱり税のあるべき姿をどうするか、こういうことで、今御案内のように、重圧感、ゆがみ、ひずみということから抜本見直しをお願いしておる。したがって、抜本の出るまでの間はと申しましょうか、いわば摩擦的な問題とでも申しましょうか、若干のことはいたしましたが、いわゆる抜本的な減税というようなものを取り上げる段階にないというので、ことしは予算書を含め御審議をお願いしておるという段階でございます。  ただ、払いつも思いますのは、臨調の答申にもございましたように、やっぱり国民負担率というのは上がっていかざるを得ないということになろうかと思います、後世代を見通した場合の安定したいろいろな施策が実行されていくためには。しかし、そこのところの限界が、ヨーロッパのそれよりははるかに下、かなり下回るところにそれを設定しなければいかぬ。それが何ぼかということを、結局長い時間かけてこういう問答をしながら、国民のコンセンサスが那辺にあるかを見定めながら、お互いが苦悩をしておるということではなかろうかと思います。  それから、今先生おっしゃいました国民負担率計算しても、あるいは租税負担率計算しましても、おっしゃるように五兆円、あるいは四兆八千億という計算も出ますが、おっしゃっている数字に間違いはございません。
  9. 松浦利尚

    松浦委員 総理も恐らくそう思っておられるのだと思うのですが、ただ総理総理が「増税なき財政再建」というようなことを言われましたが、昨年の本委員会で「一九八〇年代経済社会の展望と指針」、このバックデータを出してくれ、いや出さぬで御迷惑をおかけいたしましたけれども、そのときに大体もうこの国民負担率、これははっきり数字に出ておるわけですよね。ですから、増税しなければやれないというデータが既にもう出されておったわけです。去年出ましたからそれを見させていただいたわけですが、いずれにしても、数字的に言わしていただくなら、国民中曽根内閣になって五兆円余計お国に納めたということだけは間違いない事実だと思うのであります。そしてその中で、実はこの「税制改正の要綱 租税及び印紙収入予算説明」で、これも大蔵大臣に御答弁いただきたいのでございますが、だれが一番負担率が高くなっておるかといいますと、この六ページの「各税の見積り方法」、この中で「給与所得に対する源泉所得税」というのを見ますと、六十一年度は給与総額が一人当たり三百九十五万円であります。六十年度は三百九十四万円でありまして、昭和六十一年度は一万円上がるという計算になっておるわけでございます。そして、いろいろ控除を差し引いた課税所得見込み額は一人当たり百六十九万円、昭和六十年度も百六十九万円、全く同じであります。ところが、どういうわけか本年度分課税見込み額計算によりますと、昨年は二十五万三千円であったにかかわらず二十六万九千円と、一万六千円源泉所得者税金を高く納めるという計算になっておるわけです。  次のページ申告所得関係が響いてあるわけでありますが、その他事業、お医者さんとかその他の自由業皆さん方でありますが、一人当たり所得が五百三十万から五百四万に下がるというふうに計算をいたしまして、昨年一人当たりの税額は百四十八万一千円だったものが百三十九万四千円、こう下がる計算になっておるのですね。そうすると、申告所得の場合は確かに営業人数が減るとかという数字も出されておりますから一概には言えないにしても、その他事業申告所得者税金金額にして下がるという計算になっておる。ところが「標準課税所得額が昨年とことし全く同じであるにかかわらず、源泉所得者は一万六千円上がるという、こういう計算になっていますね。もうこれは明らかにだれが過分、余計に税を負担をしておるのかというあらわれだと私は思いますね。明らかにこれは不公平税制の端的なあらわれだと思うのであります。  ですから、もう今ここで予算を出されたばかりですから、今すぐ修正をするとかなんとかということはできないにしても、もう家計がこういう状態で衰弱してきておるわけですから、内需拡大といっても、GNPの六割を占める個人消費というものが最大の決め手になるわけですから、これに活力を与えるという意味ではもう限界に来ておる。総理のお話によると、この四月になったら減税を発表して、秋になったら増税を発表して、できれば六十二年度から。こういうことではもう間に合わぬのじゃないか。私は思い切って減税をする段階に来ていると思う。しかも、どこに問題があるかということもこの政府資料ではっきりしておるわけでありますから。そういう問題について、大蔵大臣総理大臣からはっきりした御見解を示していただきたいというふうに思います。
  10. 竹下登

    竹下国務大臣 今のおっしゃいます御意見を交えての御質問は、「昭和六十一年度 租税及び印紙収入予算説明」、この中で給与所得者年間所得税負担額が、今御指摘なさいましたように前年に比較して増加しておる、これに対してお医者さんなど、その他事業所得者は、前年に比較して逆に減少しておる、これは不公平じゃないか、こういう御指摘であろうと思います。  青色申告者の方々の多くは、その他事業所得者は、記帳等に基づきまして適正な申告をしておられるものと考えております。また課税実績を見ましても、その他事業所得者の一人当たり所得金額が前年度に比べて減少しておる。お医者さんなんかがそのいい例でございます。だから、直ちに両者のアンバランスがあるということには私はならないではなかろうかというふうに考えております。  しかし、今の一つの側面から見られたような問題、あるいは不公平感とかあるいは重圧感とかあるいはこれこそゆがみ、ひずみではないかというような御指摘は、正確にとらまえて、抜本策の中で議論の対象になるべきものであるというふうに私も理解をいたしておるところであります。
  11. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大蔵大臣が御答弁申し上げたとおりでございまして、何しろ財政的に非常に厳しい中にありまして、臨調路線あるいは行革審路線を貫いて「増税なき財政再建」というものを実現するために、非常に厳しい措置をお願いせざるを得なくなったのは甚だ遺憾でございますが、減税問題については、今思い切った大規模の抜本的な案を研究していただいている最中でございますので、中途でやる余裕はない、そういう考えに立っております。
  12. 松浦利尚

    松浦委員 経済企画庁長官、今我が国の最大の経済運営の目標といったら何ですか。やはりいかにして我が国の黒字を減らすか、経常収支を減らすか、経済摩擦をなくすかということがポイントでしょう。そのことが私は最大の柱だと思うのですよ。  そうすると、十一月には御承知のようにアメリカの中間選挙がありますね。五月のサミットは、恐らく今度は政治サミットじゃなくて経済サミットになりますよ。外務大臣がドイツに行かれまして、日独機関車論というものについてはお互いに否定しようじゃないかということで約束はしてこられた。しかし、必ずこの黒字問題というのが大きな問題になるのですよ。  今の総理の御答弁を聞いておりますと、何が大切かというポイントがないのですね。確かにアクションプログラム等をやられた。しかしそれは、アメリカが言うように数字あらわれないのですね。ただこうやります、こうやります、こうやりますという羅列なんです。それでは、それが一体金額にして幾ら黒字が減るのかということを質問したら、絶対どの閣僚も答えるということはできない。しかし、この経済摩擦を解決しなければならぬということが最大命題であるということは、中曽根内閣の皆さん全部一致しておられる。そのことに主眼を置くとすれば、今総理が言っておられたように、いや財政再建が中心でございまして、「増税なき財政再建」でございましてと言っておったのでは、解決をしない。やはり具体的にやるためには何としてももっと国内の景気を浮揚させて内需を活発にさせる、そのためには思い切って、今言ったような状況で家計が疲弊しておるわけですから、この家計に活を与える、消費に活を与える、それは私は中曽根内閣の最大の急務だと思いますよ。これはもう一遍総理大臣、ぜひ国民にわかりやすく教えていただけないでしょうか。いや減税して増税するから大丈夫ですよ、消費もふえますよ、これじゃ国民は、中曽根さんの言葉は信頼をしても、やはり首をかしげるんじゃないでしょうか。また取られるんじゃないか、取られるという言葉は変ですが、また余計納めることになるんじゃないか、こう思うのじゃないでしょうか。もう一遍お答えいただきたいと思います。
  13. 竹下登

    竹下国務大臣 松浦さんのお話を聞いておりますと、ある意味における機関車論的な背景が若干あるのじゃないかという、これは私の勝手な推測でございますけれども、そんな感じがしないわけでもない。機関車論というのが偉大なる罪悪であったと言われておりますのは、確かに日本が機関車の役目を果たすべきだということで果たしてまいった時期がありました。ところが、それは日本にとどまらず、比較的国民の勤勉さ等で同じ西ドイツはもとよりでありますが、かつての宗主国であるイギリスとかフランスとか、そういうところも、今度はかつての仏領何々とか英領何々とかいうところから、また、日本すらあれだけやっているんだからやるべきだ、こういうことで、先進国全体がある種の機関車的役割を結果として果たした。そこで何が残ったかといいますと、結局はいわゆる高金利というものがそこで残ってきて、したがって、開発途上国としてもその高金利に耐えられなくなって、財政赤字から来る高金利でありますが、そこで機関車論はお互い反省しようやというのが共通した今日の、我々大蔵大臣だからそうだと言われればそれまででございますが、共通的な認識ではなかろうか、こういうふうに私どもは見ております。  そこで、消費を刺激するための減税、これは総理から絶えずお答えがありますように、抜本審議のさなかである。これが今度はさようしからば、いわば貿易黒字、経常収支の黒字をどれだけ左右するかといいますと、これは本当の一仮定計算にすぎませんが、一番低い資料で見ますと、今、所得税が十五兆円、その三分の一の五兆円を減税すると七億ドルぐらいは輸入がふえるじゃないか、こんな資料がございます。あるいは公共事業を五兆とはいわないで三兆やつたらどれぐらいふえるかというと、これは大体十三億ドルと言う人もおりますし、幅の広いところでは二十億ドル、こういうことを言う。したがって、そういう問題というものが、もちろん効果が大小は別としてあることはあるわけでございますが、やっぱりこの貿易摩擦の問題というのは総合的な施策でやっていかなきゃならぬ。  そこで昨年の十二月、いささかお答えが長くなって恐縮ですが、最初にやった景気対策、それから予算の際にやった景気対策、それにかてて加えて公定歩合の引き下げ、そういうようなもの、また、御審議いただいております補正予算にございますところの債務負担行為で実質六千億円程度の公共事業の契約をやっていく、そういう総合的な中にやっぱり私はこの貿易摩擦問題というのはとらえていくべき課題ではないかというふうに考えます。  それは、こうした議論をしながらも、お互い新聞を見ると、また原油価格が下がるのじゃないか、そうするとそれだけまたその貿易黒字を減すための反対の要素が働いてくるじゃないか、かれこれ心配しながら中曽根内閣一体となって取り組んでおるというのが現状でございます。
  14. 松浦利尚

    松浦委員 総理、そこで一つだけお聞かせいただきたいと思うのですが、不公平感というのが申告所得者よりも源泉所得者の方に非常に強いということだけはわかっておられますか。減税をされる、されると言っておられるけれども、私はどういう減税をされるかわからないけれども、また後で御質問させていただきますが、総理の頭の中にそういった問題は入っておられるでしょうかね。
  15. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 問題点としてはございます。いわゆるトーゴーサンとかクロヨンとか前からいろいろ言われておりますが、ともかく租税の把握率といいますか、そういう面から見まして、源泉の場合は全面的に全額が把握されておる、しかし、それ以外の場合にはややもするとその把握が必ずしも源泉ほど十分にいっていない、そういうようないろいろな批判をお聞きいたしております。
  16. 松浦利尚

    松浦委員 総理にお尋ねしますけれども、六十年の十二月に「八〇年代経済社会の展望と指針」のリボルビング報告が出されました。これは総理の諮問機関でありますから、この報告どおりお認めになられるわけでございますね。
  17. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 あのリボルビングの報告は妥当である、そう考えました。
  18. 松浦利尚

    松浦委員 この経済審議会のリボルビングの内容を見ますと、七、六、五抜けの、四、三、二、一、この「展望と指針」の中でたったこれだけの数字しかない。名目成長七ないし六%程度、それから実質成長四%、それから消費者物価が三%、失業が二%、卸が一%、この数字だけしかないんですね。その数字は変更する必要はありません、こう書いてある。ところが、この四十八ページあるいは四十三ページ、こういったところには、こういう政策をしなければこの目標値には達しませんよと。ですから、ここにわざわざ表題として「拡大均衡の下での新しい成長」、こううたっているのですよ。  そこでお尋ねをさせていただきますが、これは大蔵省になると思うのですけれども、昭和六十年度で終了して、新たに六十一年度から始まる八本の公共事業の長期計画、これがどうなっておるのか。この八本の達成率というのは総体で八割弱に終わった、こう言っておるのですね。しかも、この長期計画というのは御承知のように閣議決定であります。その閣議決定が、八割しかなかった。しかし、この期限の到来する八本の公共事業計画についても新たに五カ年計画等を策定する必要があるということを指摘しておるのですね。そうしなければ達成できない。  それじゃその総額は幾らになりますか。この八本の政府が策定しようとする六十一年度からの五カ年計画、この公共事業の総体的な枠、幾らになるのか。そのうち国が負担をする分は幾らになるのか。その点を教えていただきたいと思います。
  19. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 お話がございました、六十一年度からスタートを予定いたしております新しい八本の公共事業関係の五カ年計画の総額でございますが、総額は二十五兆八千九百億円を予定をいたしております。そのうち国の補助金あるいは貸付金等が関与いたしておりますいわゆる一般公共事業等の金額でございますが、これは十四兆六千億ということを予定いたしております。
  20. 松浦利尚

    松浦委員 今お話がありましたように、相当膨大な資金調達をしなければならぬのですね。  今、総理が先ほどから言っておられたように、機関車論はとらないということも大蔵大臣言われましたけれども、実際にこの報告書像が正しいものであるとするなら、これの資金調達についても考えなきゃいかぬ。ですから、政府は頭に増税がない、増税がない、こう言ってはおられるけれども、いずれにしても、前の委員質問がありましたけれども、減税額と増税額がイコールであったのではこれは資金調達にならないのですね、百引いて百足したらゼロですから。ですから、当然こういう計画を実施をするということになれば、その資金調達としては、建設国債を発行するか、増税するか、それ以外にないのですよ。  ですから、逆に言うと中曽根内閣の発想というのは、予算編成に行き詰まって、しかも何らかの形で内需を拡大せざるを得ない状況に来ておる。ですから、減税を打ち出して後から増税。そうじゃなくて増税ありきなんですよ。あるいは建設国債を発行するか、増税するか。そうすると、率直に言って、現状これだけの赤字を抱えておる国債ですから、できれば増税に頼りたい。ですから、増税ありきというのが本音じゃないですか。そういうことがなければ、このリボルビングによる七、六という名目成長は達成できない、そう思うのですよね。大蔵大臣どうでしょうか。大蔵大臣が御答弁いただいた後、総理見解も承っておきたいと思うのです。
  21. 竹下登

    竹下国務大臣 この公共事業につきまして、今御指摘がありましたとおり、一般公共事業等の金額は十四兆六千億円、六十一年度の予算額が約二兆五千六百億円、進捗率は約一八%、まあまあ五分の一に近い、こういうことになるわけであります。しかし、それをいずれにせよ伸ばしていかないことには、この公共事業関係五カ年計画が達成することは難しいじゃないか、そのおっしゃる御指摘の意味は私も十分わかります。  さて、いわば税収には、それはそのときどきの景気の変動によって相違はあるといえども、自然増収というものも見込まれます。それから、仮定計算等におきましては、やっぱり建設国債は今と一緒ぐらいはという、これは仮定計算でございますけれども、そういうことでお示ししておるわけであります。発行額が大体横ばいというような程度で仮定計算には書いてあります。これもできるだけ低めたがいいには決まっておりますが。  そこで、所得税に対する問題については先ほど来お答えありましたが、大体我が国の所得税負担の状況、個人所得に対する所得税の割合は五十九年度は四・九%でありました。これはアメリカは倍です、一〇・一。イギリスは三倍、一二・一。西ドイツが約倍弱でございますね、八・七。そういう意味において、そういう水準は日本は本当は低いのでございます。これを余り主張しますと、じゃおまえのところもっと増税すればいいじゃないか、こういう議論になりますが、それは断じてならぬというのが中曽根総理の姿勢であるわけであります。したがって、どういう財源を求めていくか、こういうことになりますと、これはいろいろな議論があることでございましょうけれども、今日も特定財源というものも道路等においてはあるわけであります。  それと、御指摘になりましたように、いわゆる拡大のリボルビングの中にも書かれてありますように、それこそ「「拡大均衡の下での新しい成長」とは、」「新しい技術革新・情報化に牽引された成長であり、内需中心の持続的成長であること」、それから、国際経済との調和と行財政改革の推進等を図りながら、「拡大均衡が達成される成長であること」、こういうふうに書かれてありますように、そういう総合的な施策の中に経済が拡大するのであって、財政規模そのものが拡大均衡されるという意味ではないというふうに御理解をいただきたいところであります。  ただ、私どもといたしましては、今のような説があることも十分承知しておりますので、今後もこの五カ年計画の達成、まあ背みたいに、三カ年したらもう大体達成見込みがついたから、三カ年したらすぐ新しい五カ年計画にしろ、そういう高度経済成長は望めないにいたしましても、それは松浦さんもう御案内のように、GNPから比較した我が国の公共投資の率というのは、これまた世界の先進国の倍以上の大体五%以上の比率を占めておるわけでございますから、それこそ、かつて経済社会発展七カ年計画でしたか、あのとき二百四十兆を途中で百九十兆にし、なお持続的安定成長の中で苦心して実現可能の数値として出したのが、今回の八本の五カ年計画であるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  22. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大蔵大臣が御答弁のとおりでございますが、何しろ財政改革をやっておる最中であり、しかも、来年三月には国債残高が百四十二兆と想定されるような情勢でございまして、六十五年でも百七十兆近くの累積になる。そうなると公債の利払いだけでも膨大な額に上っております。ことしですら、たしか十兆九千億円でございましたか、それぐらいになっているわけでございますから、十何兆というお金がそちらの方へ回るということになると財政は動きにくい、したがって公共事業費の方も詰まってくるという、そういう情勢のもとに、できるだけ公共事業費の枠を確保する、それは財投とかあらゆるものを通じてもやる。また、地方にもいろいろ御協力もお願いする、そういうさまざまな手法でやらざるを得ない。  その中で、政府が一番重視している一つは民活でございまして、いわゆるデレギュレーションというものをさらに思い切って都市計画やらそのほかについて実行する、あるいは東京湾横断架橋や明石の架橋もそのうちに仕事が緒についてくる、国鉄の土地の売却による都市の再開発やあるいは民需というものも出てくる、そういうものの総合力によりまして、この期間における仕事の量をふやしこそすれ減らさないように努力していきたい、そう思っておるわけです。
  23. 松浦利尚

    松浦委員 なかなか政府とかみ合ってきませんが、言っておられることは一応理解はできるのですけれども、ただ、大蔵大臣、四十一ページにはこう書いてあるのですよ。「新しい成長の促進」の中に、「こうした我が国経済社会の新たな展開に対応して、従来の政策対応とは異なる」、「異なる」ですよ、「新たな対応が求められており、また、それらを通じて徐々に成長の成果配分をこれまでとは変えていくことが必要である。」こう言っておるのですね。  ここにOECDの、昨年九月経済企画庁からもらったのですが、「日本経済」の仮釈が出ておるのですね。これの六十ページを見ますと、「財政の不均衡是正のため中期的に一貫した政策を追及することの必要性に十分な注意が払われるべきであるが、一方で、どのような財政バランスが望ましいかは、経済全体の背景にある貯蓄・投資バランスやその時の経済状況にも照らして評価されるべきである。」こういう書き方がしてありまして、注六十九と響いてあるのですよ。その注六十九を見ますと、こんなふうに書いてある。「日本の政策当局はこのような見解を完全には支持していない。」こう言っているのです。  OECDでこう言ったって、日本の政策当局はこういう見解を支持してくれないのだ、こう指摘しておる。「特に、財政当局」、これは大蔵大臣ですよ、ニューリーダーと言われるあなたですよ。「前回のOECD閣僚理で合意された「経済政策の一貫性、継続性」及びボン経済サミットの「節度ある」金融・財政政策の重要性を強調した。過去には、これらの厳格な原則の枠組みの中で、日本の政策担当者は柔軟に中期計画を遂行して」きたというのです、今までは。ところが、最近は完全に支持してくれないというのですよ。総理大臣、これどう思われますか。これは経済企画庁が出された報告です。  そして、もう時間がありませんから申し上げておきますが、昨年予算を編成したときに、OECDの「エコノミック・アウトルック三八」というのが出されたですね。これで日本の予算等を見て実質経済成長予測というのを出しておる。当初は一九八六年、四・二五だったけれども、前半では三・七五に日本の実質経済成長はダウンするだろう、一九八六年の二月は四%という見込みであったけれども、二%にダウンするであろう、こういう報告が出ておるのですよ。OECDですら日本の現状の政策当局のやり方では四%は難しい、こう言っておるのです。総理大臣、これをどう思われますか。
  24. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 OECDの見方は私は厳し過ぎると思っております。六十一年度の各国の予測等にいたしましても少し厳しく見過ぎている、そう私は思います。
  25. 松浦利尚

    松浦委員 経済企画庁長官、あなたの担当ですが、どうですか。
  26. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 お答え申し上げます。  今のOECDのリポートですが、この問題については、私の承知しているところではかなり激論がございまして、我が国の政府代表側とOECDのエコノミストの間で我が国の財政経済政策の全般にわたって広範な討議が行われた、そういうことで両論併記のような形になっておるというのが現状でございますが、最近の情報では、やはり日本の財政経済当局の言っていることもかなりわかるというふうな状況であるというふうに報告を受けておるわけでございます。  それから、アウトルックの方でございますが、これは昨年の年末ぐらいにOECDでつくるわけでございますが、OECDの事務局としてこれができ上がるのは大体十一月ごろでございますので、我が方が昨年の年末二回にわたって財政計画の中で、公共投資、住宅投資、そういったものについては各般の措置をとっておる、それからさらには金利の低下また為替レートの変更というようなこともございますので、ちょっとタイムラグがあるのではあるまいか。我々としては四%の成長は必ずできるというふうに確信をいたしておるわけでございます。
  27. 松浦利尚

    松浦委員 OECDの議論ですから、私は長官の言われることを信用します。しかし、実際にこれがOECDが指摘したようなことになったら、孤立するわけですよ。恐らく東京サミットでこうした問題がまた激論になるでしょう。フランスの大統領あたりからやはり相当出ますよ。あるいはイギリスのサッチャーさんからも出るかもしれない。ですから、そういった意味では、言葉のやりとりだけではだめなんですね。ですから、そういった意味では、経済の総合的な役割を果たしておる経済企画庁がよくタクトを振らないと、財政当局の方は嫌だ嫌だと言うしね。  それで、その前に総理にちょっと感謝しておきます。それは、私の宮崎県第一区というのは大臣がでたことがなかったのですよ、お恥ずかしい話ですが。やっと中曽根内閣に江藤大臣が誕生しまして、大変私たちも喜んでおるのです。  そこで、大臣、先ほど言ったように大変厳しい状況の中ですけれども、あの三全総に書いてある例の高規格道、七千六百キロ。そうすると、宮崎—大分—福岡の東九州縦貫道は枠外になっているのですね、七千六百キロのほかと例示されているのですけれども。今度のこれ、今年度は金はなかなか厳しいようですけれども、全体で道路、この計画でいつでも多くは言えないのですけれども、頑張ってくれますね。どうでしょうか。
  28. 江藤隆美

    ○江藤国務大臣 松浦さんからお励ましをいただきまして、特に同じ選挙区でありますだけに大変ありがたく思っております。  道路整備五カ年計画、今第九次が進んでおりまして、昭和六十二年で終わるということになっております。その第九次道路整備五カ年計画の中で、七千六百キロプラスアルファ一万キロ構想にする、いわゆる二千四百キロなるものが出てくるわけでございますが、今、実は希望をとってみますと、全国でやはり一万キロ近くのものが希望がございます。それだけやはり高速自動車、高規格道路に対する要望が強い、こう判断すべきであろうと思いますし、地域開発にかける皆さんの御熱意というのもうかがわれるわけであります。  したがいまして、昭和六十一年度中にはこれらの調査を全部終わりまして、第九次五カ年計画が終わります昭和六十二年には高規格幹線自動車道路の指定ができるように万般の準備をいたしたい。その中で、東九州高速道路をどうするということをここでまだ言うわけにはまいりませんでしょうけれども、極めて念頭にございまして、ただ、我田引水と言われますと、政治の公平の原則を損なうことになりますからここではひとつ御勘弁をいただきたいと思います。松浦さんと同じ気持ちでありまして……。
  29. 松浦利尚

    松浦委員 ぜひひとつ、総理大蔵大臣もしかと今の建設大臣の答弁を聞いておっていただきたいと思うのです。  そこで、この経済報告のリボルビングの中で、それ以外にもう一つ重要な指摘をしておるのですね。「消費需要の拡大は、所得の増加を鍵に、自由時間の増加や居住・行動可能空間の拡大ここういったことをやりなさいというようなことが書いてありまして、その中で、経済発展の成果を賃金と休日増・労働時間短縮へ適当に配分しなさい、こう書いてあるのですね。  それで、これは非常に残念なことですけれども、これも総理御存じなかったと思いますから、お渡しをしますけれども、経済企画庁の調査局が昭和六十年度の「世界経済レポート」を出されまして、その中でアメリカと主要国との間の製造コストの比較を実はしておるのです。我が国とアメリカの場合を見ますと、エネルギーコストというのは、アメリカを一〇〇とした場合に我が国は昭和八十四年で一七八。それから資本コストは、アメリカ一〇〇に対して日本は九六。労働コストがアメリカ一〇〇に対して六〇なんですよね。それで、このエネルギーコストを労働コストが低いことによってカバーをいたしまして、製造コストがアメリカ一〇〇に対して日本は昭和八十四年で七一という数字が出ておるのですよ。それでこのときに、これはG5前ですけれども、円は二百四十二円だったのですね。ですから、この為替レートのときに、このリボルビングが指摘をしておるように経済成長の成果が賃金に適当に配分されておったら、場合によってはG5等の人為的な操作をしなくて円高という方向には進んだはずなんです。あるいはそうでなかったとしても、今のように急激に、百九十二円台あるいは百九十円を割り込むかというようなそういう円高というものは急激に出なかったはずなんですね。ところが、そのときにこれを私が指摘をしたら、後ろにおられる今の官房長官が総務長官のとき、にこにこ笑いながら、それはなかなか、いろいろ問題がございましてと言って逃げられたし、前の経済企画庁長官も、それは労使の問題でございまして、あるいは確かに生産性の問題もありますよ。しかし、その生産性に見合った賃金というものが仮に配分されておったとすれば、今日のような問題は起こらなかった。二百円ぐらいでとまったかもしれぬ、あるいは百九十円でとまったかもしれぬ。で、そういう状況下に今日なってしまっておるわけですが、これは労働大臣の管轄になると思うのですが、このリボルビングというのは中曽根内閣に対して答申をした内容なんですね。しかも、そういうふうに公平に配分をされない。公平に配分されないとこの数字が目標が達成できない。ということになれば、何らかの対応があってしかるべきだ、こう思うんですよね。もしこれがまた仮にこういう状況になったとすれば、私はまた同じような轍を踏むのじゃないか、そう思うんです。確かにこれは労使の問題であるかもしれない。しかし、少なくともこのリボルビングに書いてあるのだから。  それで、もう一つお尋ねしておきますが、そのことと、労働大臣がわざわざ日経連の会長さんのところに行かれて、何か呼びつけられたか行かれたか知りませんが、何らかのお話し合いをやった。どういう内容の話があったのでしょうか。  それと、もう一つ労働大臣にお尋ねしておきますが、労働問題研究委員会という日経連の報告書があるんですね。これとこのリボルビングは真っ向から対立するのですよ、これとは全く対立する。なぜかというと、労働時間の短縮なんかについては、これは我が国の労働時間短縮論議が、いわゆる欧米先進型の比較においてのみされて、韓国、台湾、中国、香港、近隣のアジア諸国との比較が無視されていることは奇異に感ずる、こう言っているのですね。世界で二番目の資本主義国における経済大国。しかもまだ、支払い能力も従来どおり生産性基準原理に見合った賃上げをやる、こうなっておる。これ真っ向から対立する。労働大臣、御所見を承りたいと思いますし、同時に経済企画庁長官からもお話しいただきたいと思う。
  30. 林ゆう

    ○林国務大臣 お答えいたします。  私は日経連に呼びつけられたというようなことはございませんで、私、就任後労働団体あるいは経済団体との懇談をしよう、そして今どこにどういうような問題があるかということの理解も深めたい、こういった意味で私がお目にかかったということでございます。  賃金の問題でございますけれども、賃金の問題は、これはあくまでも労使が相談の上でもって決めるということが基本でございます。そういう問題に対しまして、労働省が何かの口を差し挟むということは差し控えながら、今日まで労働行政が続いているというふうに私は理解をいたしております。  それから、先ほどのリボルビングと、それからまた経済報告ですか、それ、労働問題の報告とは全く相反するものではないかというようなお話でございますけれども、それは、それぞれの労使の立場において報告はなされているわけでございますから、ある程度対立する部面も出てくるということはいたし方ないものだと私は理解いたしておりまして、そういったようなことを踏まえて、労使が今後とも話し合いの上で協調して日本の経済発展のためにお互いに努力をしていただきたいということでございます。
  31. 松浦利尚

    松浦委員 ちょっと委員長経済企画庁長官にお答えいただく前に。  この「六十年経済の回顧と課題」これは六十年十二月調査局から出した、これの七十一ページ、「第二次石油危機以降の実質賃金ギャップの動きをみると、実質賃金上昇率は中期的な労働生産性上昇率を下回って推移しており、むしろマイナスのギャップが拡大している。これは近年において家計所得の伸びが極めて緩やかなのに対して、企業収益が堅調に推移していることに対応している。マイナスのギャップの存在は、我が国経済がマクロ的にみると、生産性との関連で経済パフォーマンスを悪化させない範囲内で実質賃金の改善を図る余地のあることを示唆するものである。」六十年でもあなたはこう言っているんだよね。五十九年でも同じことを言っている。確かにこれは労使問題。私も労使問題に介入せよとは言いません。しかし、そのことが今日の我が国における経済状況というものをこういう状況につくり出しておるわけですから、しかもこういうふうな報告を尊重すると総理大臣は言っておられるんですから。この中には労働時間年二千時間ということまで明示してあるんですよ。だから、そういった意味では、ぜひ経済企画庁長官お答えいただいて、その後また総理大臣から御見解を承りたいというふうに思います。
  32. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 賃金の問題というのはやはり基本的に生産性の問題でございますから、その意味で、先ほどアメリカの労賃、賃金水準というのは日本の賃金水準と比べると相当違うじゃないか。この問題は、やはり生産性の問題が基本であろうと思いますので、我々としては一層生産性の向上に努めるということがやはり基本ではないかと思います。まあ、この生産性と遊離した賃金決定がありますと、それは結局はインフレになりますから、先ほどの為替レートの関係で言えば、むしろ我が国の為替は円安に推移するという方にむしろ動くわけでございます。そういう意味からいいましても、またインフレができれば、消費者物価上昇率が上がれば家計の実質所得が減少するという問題もございます。それから、今おっしゃった問題でございますが、これは長い間の労働分配率という問題を、第一次オイルショック以後の経緯を眺めてみますと、生産性よりも労働分配率が高くなった時期というのがかなり長期に続いておる、そういう点も考慮に入れまして、企業体質が十分に改善されるという中で安定して賃金が高目に推移するということが最も望ましい姿でございます。我々はそういうふうに経済情勢を十分に分析をいたしまして、長い間で経営側も十分にこれは払えるという賃金が高目にしかも順次労働生活水準が高まるように、実質賃金の所得が上がるように、そういう政策が行われるということを期待しておるわけでございます。
  33. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 労使関係で大体決めるべき問題で、政府が介入すべき点ではないと思います。基本的にはそういうことでございますが、昨年の秋のリボルビングの報者等を見ましても、消費需要を喚起するという点から見ても、また生産性と分配率との関係が適切な関係を保つという意味においても、その辺について若干の指摘がなされているように私拝見いたしました。それとの絡みでいわゆる時短の問題にも触れておったように思います。そういう点は私も注目しているところでございまして、今後一般論として我々が念頭に置いて施策をしてまいりたいと思いますが、あくまでしかし賃金問題というものは労使間の交渉によって決めるべき問題である、そのように思います。
  34. 松浦利尚

    松浦委員 言われたように賃金は労使関係で決めるべきものですが、この報告書を念頭に置いてという総理の間接的な表現がありましたから、この問題については終わりにさしていただきますが、率直に言って、もう少し詰めなけりゃならぬと思うのですよ、六十一年の経済運営については。しかし、時間がございませんので、また集中審議等を通じて、もし設定されるならそういう場を通じて、政府のもっと具体的な詳細な議論を展開していただきたいと思うのです。  次に、実は悪徳商法の問題についてお尋ねをさしていただきたいと思うのですが、これは今度は渡辺通産大臣のところが多くなるのですが、余り御存じない点も多いと思いますから、政府委員の方の答弁でも結構ですが、ただ私が、この悪徳商法という、要するにマルチまがい商法とかあるいは金融まがい商法とか、そういった問題について十一月の二十九日に質問主意書を出しました。ところが、それに対する答弁書が政府から十二月の十七日に渡されたのでありますが、これを見ますと、行政指導というのは「相手方の任意の協力を得て行うもの」だ、ですから「個別に法律の根拠を必要とするものではなく、」——法律があれば取り締まることができるわけですが、その法律をうまく逃げ回っておる。  きょうもNHKが朝報道しておりましたけれども、金融先物取引で六百二十九件被害があって、総額が十二億から二十億、そしてみんなお年寄りの人たちがやられておるというような報告があったのですけれども、いずれにしても、この答弁書の内容というのは、そういうまがい商法について法律の網をうまく抜けていっておる、そういうものについてはもう行政指導は働かないのでしょうか。どんなものでしょう。
  35. 福川伸次

    ○福川政府委員 今御指摘のように、一般的に行政指導を行います場合には相手方と理解と協力の上に、その上に立って社会的な公正を実現するように相手方に説得をして、そしてそれの効果を期待をする、こういうことでやっておるわけでございます。今御指摘のように、この豊田商事にかかわりますこの商法の問題に関しましてはいろいろ関係の法令がございます。出資法あるいは刑法等いろいろございまして、したがいまして政府部内におきましても関係六省庁においてその対応を考え、今後の再発防止の施策について検討を行っているところでございます。
  36. 松浦利尚

    松浦委員 総理もぜひ御記憶いただきたいと思うのですが、そういう文書を出しておられたのですが、実は豊田商事事件に対しましては六月の十九日に内容証明郵便物で代表取締役社長あてに、石川洋という人ですが、要するに事態をさらに深刻化させないため、新規の勧誘及び契約締結を停止されたいという文書を出しておられるのですね、六月の十九日に。  ところが、これは物価問題特別委員会会議録でございますが、山下説明員によりますと、「私どもから豊田商事に対しまして」「六月十九日付でございました。」要するに、「ペーパー商法をやめるようにという申し入れを実際にやりました」、しかし、「その時点で豊田商事は既にやめておったというふうに理解しております。」こう言うのです。やめておるものにこういうようなものをどういう意味で出すのか。こういうことが仮にできるとすれば、もっと早く出しておれば、もっと早くこういう通知をしておれば、お年寄りの皆さん方の被害は救済されたかもしれない、結果論だけれども。  通産大臣、どう思いますか。こういう答弁書を出しておきながら、現実にこうやっておるのです。何で早く出さないのですか。しかも向こう、相手側が中止しておるのに出したって何の意味も持たない紙切れです、相手にとっては。被害は大きくなるばかりで……。これはもう、いいです、これは一つの例ですから。通産大臣、元気のいい通産大臣、どうでしょうか。
  37. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 事実やめておったところに出しても意味のないことですから、もっと早く出せばよかった、本当にそう思います。
  38. 松浦利尚

    松浦委員 ですから総理、今通産大臣が言われて、それでみんな笑われた。しかし、この被害者のお年寄りの人たちは笑えないのですよね。明らかに行政の怠慢じゃないですか。笑い事で済まされませんよ。そういう意味で、被害者がおるにかかわらず政府の手で救済できない。方法は、今渡辺通産大臣が言われたように、早くこういうものについてはキャッチをして指導してもらう、やめさせる、そういうことをしないと被害者は次々に出てくると思うのです。  そこで、私がきょうなぜこの悪徳商法を取り上げたかといいますと、悪徳商法といわれたら必ず政治家の名前が付随するのですよ。これは我々国会議員として恥ずべきことです。西田健康産業問題にしてもあるいは中江グループ事件にいたしましても政治家の名前がちらほら出る。これはもう明らかに国民から見れば、国会議員というのは何しているのだと。国会議員の名前がそういうところで出てきた、そういうのを一番具体的にあらわすのが、私は今問題になっておるジャパンライフだと思うのです。  商工委員会、商工委員会の流通問題小委員会あるいは物価問題特別委員会、こういったところでこの問題は取り上げられました。私も物価問題特別委員会で、この元会長であります山口隆祥、この人がジェッカーをやったときに国会に参考人として来ていただきまして厳しく指摘をいたしましたが、この人がこのジャパンライフはつくり上げたのであります。  それで、もう時間がわずかしかありませんから私から申し上げておきますが、この山口さんという人は五十九年の八月三日に脱税で判決を受けておられるのです、このジャパンライフを始めてから。  それで、科学技術庁にお尋ねをさしていただきますが、ライフサイエンス振興財団というものに対して認可を与えられました、科学技術庁は。提出されたのが十二月の十六日であります。そして認可されたのが二十一日、その間わずか五日であります。しかもそのうち一日は日曜日であります。しかもこのライフサイエンス振興財団の謄本をとってみますと、これは明らかにジャパンライフの山口隆祥氏たちが関与しておる。こんなに簡単に財団法人の認可が科学技術庁では行われるのでしょうか。しかも、河野長官はなられたばかりで恐縮ですが、ここにはちゃんと理事のところには脱税で判決を受けた山口隆祥という名前が記載されておる、振興財団に。日曜日を除けばたった四日、何でこんな簡単におりたのか、教えてください。
  39. 内田勇夫

    ○内田(勇)政府委員 お答え申し上げます。  ライフサイエンス振興財団の設立許可申請は、先生御指摘のとおり昭和五十八年十二月十六日に内閣総理大臣あて行われておりまして、科学技術庁において申請内容を審査し、申請より五日後の十二月二十一日付をもって民法三十四条の規定に基づきまして許可を与えたということでございます。  審査に当たりましては、民法の規定は当然でございますが、さらに公益法人監督事務連絡協議会の定めました「公益法人設立許可審査基準等に関する申し合せ」に従いまして厳重に審査いたしまして、これを許可いたしたということでございます。  なお、設立許可申請から五日ではないかという先生の御指摘でございますが、公益法人の設立に当たりましては、通常、事前にその内容の検討を行うということといたしておりまして、本財団につきましては、設立のための事務を担当しておりました辻会計事務所というところから十月七日に非公式の書類の提出を受けまして、その内容を徴した上で十分検討を行い、正式の許可申請を受理したということでございます。
  40. 松浦利尚

    松浦委員 これは総理、先ほどは江藤大臣を就任さしていただきまして、本当、お礼申し上げるのですが、これから申し上げることは少し耳が痛いと思うのですよ。  それで、私は総理がそのことを知っておられたかどうか知りません。恐らく総理大臣は御存じなかったと思うのですが、実は十二月の三日に選挙が公示されたのですよ。そうして十二月十八日が投票日です。そうすると、十二月八日の日に健康産業政治連盟というところから、中曽根総理が関与しておられるか、どういう形かわかりませんが、五つの政治団体に二百万ずつ、一千万円献金が出されておるわけです。十二月七日に書類が出されておるのですよ。今言ったのだ、十二月七日。言わなければまだよかった。七日に書類が出されて、八日に献金があった。しかも、山口隆祥という人が入っておる。そして、総務庁の行政監察局「公益法人設立許可審査基準等に関する申し合せ」四十七年三月の二十三日。次のようなものは設立を許可してはならぬ。「後援会等特定個人の精神的、経済的支援を目的とするもの。」はいかぬのだという、こういう申し合わせがあるのですよ。よく精査をしたのだったら、今のような事態にはならぬはずだと思うのですが、総理大臣、こういうことは恐らく御記憶ないと思うのですが、そういうことが現実としてあるのです。どう思われますか。
  41. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その件については、後で報告を受けまして、知っております。たしか新聞にそのことも出まして、秘書からいろいろ報告を聞いたわけでございます。それは全く、政治資金として届け出も行われており、かつ、そういう善意の政治資金として受け付けたということでございまして、その財団云々と全く関係ありません。私はそういう申請があることももちろん知らず、そういうことに関与したことも一切ございません。しかし、そういうような方が入っておるというところから多少なりともそういうことがあったということは甚だ遺憾でございます。ただ、政治連盟というもの、それとはまるきり別の存在ではないか、そう思うのでございます。
  42. 松浦利尚

    松浦委員 ここに私は健政連関係書類を持ってきておるのです。これはジャパンライフがつくった健康政治連盟のファイルです。それで、この山口さんという人はこのジャパンライフというものを常に会合の中で何と言っておったか。あのジェッカーで私がやられたのは政治家と結びつきがなかったからだ、だから健康政治連盟をつくって金を出せ、十万、五万、三万ずつ出しなさい、こう言って、演説を打って歩いた人なんですよ。それで、この健康産業政治連盟の届け出、これは自治省に出ておると思うのでありますが、この中にジャパンライフの関係者が専任理事として五名出ておる。会長は山口隆祥であります。ですから、健康政治連盟と関係ないと、こう言われるけれども、この健康政治連盟というのはまさしくジャパンライフの政治団体、しかもこのライフサイエンス振興財団というのも、これも自分の商売を、人狩りを有利にするためにつくり出した振興財団なんです。総理大臣は御存じないと言われたけれども、実質的にはそうなんですね。  安倍外務大臣、これは書いてあるからしようがないですね。ここに五十九年度の事業報告がたっと書いてあるのです、五十九年一月一日から十二月三十一日まで。その中に前山口労働大臣、それから安倍外務大臣、それと山口隆祥会長とともにニューヨークを九月の二十二日に表敬訪問をしておると書いてある。これは事実ですか。そういうこと御記憶ですか、外務大臣。
  43. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 それは山口代議士がたくさんの人と一緒に、ちょうど私が国連に行っておったときに紹介といいますか表敬に連れてきたことは、確かにその中に今の山口隆祥氏ですか、おられたことは事実です。
  44. 松浦利尚

    松浦委員 ちょうど外務大臣が国連総会に御出席、滞米中だと思うのですね。利用されたのか、それはわかりませんけれども、このジャパンライフというのは、実は健康政治連盟あるいは財団法人のライフサイエンス振興財団、こういったところをうまくミックスさせて人狩りというのですか、要するに品物を売るんではなくて、人を組織的に集めてマルチ的にずっと資金を吸収していくという仕組みなんですね。  そしてもう一つあるんです。それはヘルスカウンセラー協会という任意団体を実はつくっておるのです。これは実は強制的に加入をさせられまして、日本ヘルスカウンセラー協会互助会というものに全部入るんです、会員が全部これに。そうすると、ここで使っておりますバッジですね、常任理事の人たちが使うバッジというのは国会議員と全く同じバッジなんですね。幸いなことに衆議院じゃなくて参議院なんですよ。(「幸いか」と呼ぶ者あり)いや幸いは幸いですよ。いや青い、紫色のバッジなんです。参議院の色と似ておるのです。それで、私の秘書が三回この総会に入ったわけです。そうしたらあなた、わからないな、参議院議員の顔を見たことがないがなと思って、私はここへ持ってきたのですが、どこか途中でなくしてしまったのですけれども、それは余り問題ではありませんが、ここはそういうふうに政治家を利用する、何か千葉県では——浜田先生には済みませんが、千葉県では県会議員のバッジが担保に入った、何か最近はそんなふうに要するに政治家というものに対する信用の度合いというのは非常に高いんですね。ですから盛んに政治家を利用する。  そこで、ここでこれが実は売り歩いておるジャパンライフの冊子なんですね。これを今一々政治家の皆さん方の名前を申し上げると大変恐縮ですが、これを見ていただいたらだれが載っておるかすぐわかる。通産省の役人も載っていますよ。通産省の役人の方は、事前に私は通産当局には注意をしておきました。ここに政治家が記載されておる。大臣が書いてある。寄稿している、大臣が。私は、恐らく大臣の寄稿とかなんとかというのは、これは頼まれたから書いたということだと思うんです。しかし、その大臣のこういう寄稿が、あるいは国会議員の発言というものが全部こういうふうに使われるんですね。通産の役人も載っていますよ。余り見せると本人には悪いでしょうから。ここにも参議院議員の人が載っていますよ。あるいは「経営者月報」というのがありますね。これにはいろいろな大物の政治家がずらっと出ていますよ。大変失礼ですけれども、委員長さんも利用されましたですね。委員長さんの写真が載っているんだ。  ですから、このジャパンライフというのをずっと見てまいりますと、極めて巧妙に国民の心理をうまくついて、そして巻き上げていく。今、大変に苦しんでおります、みんな。私は政治家というもののモラルが今問われておるんじゃないか。頼まれたから書く。しかも、中曽根さんには大変申しわけないけれども、中曽根さんが科学技術庁長官だったときの事務次官がこの振興財団の理事長にさせられておるのですね。私はそういった意味で、政治家というものがもっともっと、こうしたことを安易にすることがどれほどまじめな国民に影響を与えるか真剣に考えなければいかぬと思うのです。一人一人の名前を指摘してもいいのだけれども、そういう時間がないから私はやめたんです。総理大臣見解を承りたいと思います。
  45. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政治倫理を我々は厳しく追求しなければならぬというときに、かりそめにもそういう誤解を受けるようなことは厳に慎まなければならないと思います。
  46. 松浦利尚

    松浦委員 私は、せっかく政倫協というものもできた、何かロッキード問題が空白になったらもういいんじゃないか、私はやはり襟を正すところは正さなければいかぬ、こう思うのです。  そして、これまた自民党総裁としての総理にお尋ねをさしていただいて、警鐘を鳴らしておきたいと思うのですが、実はこの日本ヘルスカウンセラー協会互助会の加入申し込みというのが出るんです、各人に。そうすると、それが登録をされるんですね。ところが、こういう通達がくるんです。自由国民会議。皆さんのところですよ。そして、「党友の方は、さまざまな特典がご利用いただけます。」こうして百貨店で五%割引とか、私はびっくりしましたね。自由国民会議の党友になったら、百貨店で五%割引してくれるとか、結婚式場、レストラン等の割引、レンタカーの割引、ホテル一〇%割引、日本交通公社のパック旅行割引、ゴルフ場二〇%割引、こういうのが書いてありますね。ところが、残念なことは、この党友名簿が、このカウンセラー協会の互助会名簿が自民党の皆さん方のところに、これは自民党全体か特定か、それはわかりません、こういうのを送ってきておるのですから、みんな。あなたは自民党の党友になりました。それでこういうのが出てくるんですね。これ、会員券でしょう、党友の。これですよね、会員券。ところが、皆様には御負担をおかけしませんと言っている。だから、党友費一万円、この人は取られておらないのにこれを送ってきたんです。だれが立てかえたんでしょうか。「日本ヘルスカウンセラー協会互助会の皆様へ」「ジャパンライフ株式会社代表取締役」と書いてあります。皆さん方は、「日頃より何かとご指導をいただいております参議院議員〇〇先生を応援するため、弊社といたしましても党員・党友の拡大に協力いたしたいと考えております。」「貴方様を自由国民会議の党友に推薦し、併せて入会していただきましたので、ご了解いただきますようお願い申し上げます。」これは明らかに、このジャパンライフという組織、それが全体的に自由民主党と一緒になって、自由民主党という与党の力をかりて伸びてきておるんじゃないでしょうか。そして、山口がいみじくも言ったそうです、助けてはくれなかったと。山口隆祥はさっさとジャパンライフをやめて、新しい株式会社流通経済研究所というものを設立してしまった。この人はもうおらないのです、ジャパンライフには。後に残された人たちは素人の人ばっかり。その素人の人たちが一生懸命残務処理みたいなことをしておるのですよ、今。  こんなことをここで言うことは非常に申しわけないと思うけれども、余りにもひどい。被害に遭った国民は救われない。私は飛行機の中で新聞を読みました。週刊誌でしたか、書いてあった。こういうことがあるから法律なんかはつくらぬよ、幾ら取り締まる法律をつくってくれと言ってもつくるはずがない、こう書いてある、週刊誌に。よく眠るのは政治家だけだ。これはやはり私は、自由民主党という組織が利用されたのかどうか、それはわかりません。自由民主党が利用しようとしたのか、自民党が利用されたのか、あるいは特定のここに書いてある個人がこの組織を利用したのか、それはわからない。しかし、私は、お互いに政治家のモラルというのはもう一遍真剣に考えるときじゃないか。私は、自由民主党の総裁である中曽根さん、中曽根総理に御見解を承り、そして——それから先にお伺いいたしたいと思います。
  47. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 行き過ぎた組織活動がもしあるとすれば、それは大いに戒めなければならぬと思っております。それから、そのようないわゆる大衆を相手にして悪徳まがいの仕事をやるという者については十分注意を払って、そういうようなことが行われないように今後深く戒めていきたいと思います。
  48. 松浦利尚

    松浦委員 今、総理が言われたとおりだと思う。そして、総理に私は忠告を申し上げておきますが、私のようなチンピラが総理大臣に忠告するのはおかしいと思いますが、今度の政治連盟の届け出であります。総理、さっきしておられると言われましたね。この健康産業政治連盟が報告をしておる。報告しておるけれども、その主催者がわからない。ただし住所だけわかる。その住所は砂防会館二階となっていますよ。砂防会館二階は総理大臣のところです。しかも、そこにパーティー巻が売られておるのです、二回。金額は大きいです、四百七十四万と五百万。ところが、そういうパーティーがあった形跡がないのですね。私は、総理大臣が知らない間に、総理大臣が砂防会館の二階におるということを利用したのかもしれぬ、これは。ですから、私は、総理大臣を利用する方が、もし利用したとすれば、よほど大胆で頭のいい男だと思うのですが。
  49. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私の事務所は四階にあるんで、二階には政策科学研究所がありまして、そこがパーティーをやった、それではないかと思うのであります。
  50. 松浦利尚

    松浦委員 いや、二つそういうのがありますから、それは私の方で、全く届け出が住所だけになっておりましたので、私の誤解があれば訂正をさしていただきたいと思います。  そこで、通産大臣、もうあと時間がありませんから余り詳しくお聞きできませんけれども、この山口隆祥という人が新しいこういう流通経済研究所をつくって、そしてジャパンライフの組織をそのまま持っていっておるのですね。そして通産大臣、何て言っているかといいますと、どういうことを研究しておるかというと、恐らく通産省は、新聞に発表されたんだから取り締まりを強化するような法律をつくるだろう、しかし、その法律はこういう法律になるだろう、ですから、その法律の先を勉強しろですね、その先を。ですから、こういう人たちは、もう通産なり何なりがやろうとしたときは後手に回って、できたときには先のことを考えておるのですね、頭がよ過ぎて悪知恵が働くというのか。ですから、こういう取り締まりにかかわっては、御承知のようにアメリカにはぴしっとした法律がありますね。そうすると、条例としては石川県に条例があります。ですから、石川県では豊田商事事件とかなんとかいうのは起こらなかった、条例があるから。地方自治体でもその条例をつくることで防ぐことができる。アメリカではそういう法律が一括してある。消費者が守られておる。国民が守られておる。そういう問題について、こういった取り締まりの法律というものについて現在作業中だと聞いておりますが、どういう方向で作業しておられるのか、今国会に間に合うのか、そういう点についてお聞かせいただきたい。(発言する者あり)今ちょっと不規則発言がありまして、余り詳しく言うとまたその先を考えるからということですから、余り条文にわたって詳しくは結構ですから、どういう状況か教えてください。
  51. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私も詳しくは知らないのでありますが、今産業構造審議会の消費経済部会ですか、ある一部の部会で研究をいたしております。今国会に間に合うかどうか、私も今すぐに言われてもわかりませんが、極力勉強を進めていきたいと思っております。
  52. 松浦利尚

    松浦委員 総理、きょうのNHKのテレビにもありましたように、いろいろな意味でのまがい商法、法律の網を抜ける、しかも警察が逮捕しても起訴が非常に難しい、公判維持ができない、そういう状況も現実にあちらこちらであるのですね。ですから、今通産大臣が言われましたけれども、こうした問題に対する総理の法作成上の問題等について御見解を承っておきたいと思います。
  53. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 アメリカにおける立法等もよく参考にいたしまして、今産構審の小委員会で立法の是非及びその内容について検討中でございますから、その成案、報告を得次第、我々は適切な措置をとりたいと思います。
  54. 松浦利尚

    松浦委員 今度は具体的にジャパンライフの商法について、ちょっと皆さんに御説明をしておきたいと思うのです。  実は、ジャパンライフというのは人狩りでありまして、要するに人を集めてくればバックマージンでずっと自分の実入りがふえてくるという対応をしておるわけですけれども、その中で、これは大蔵省の方にはお見せをしたわけですが、小切手を——余り資料が多くてちょっとあちらこちらに入って、時間がないからわからなくなってきておるのですが、小切手の写し、コピーを、三百万なら三百万と書いたコピーを本人に、こういう小切手ですね。これは小切手じゃありません。これは小切手のコピーなんですね。それでこのコピーした小切手を本人に見せます。そうすると、本人はこれに対して領収証を書くのですね。だから私は不思議に思って本人たちに、何で現金でもないのに領収証を書くのだ、現金でもない紙切れのこんなコピーした小切手に。ところがそうしなければならない規則になっておる、こう言う。そしてこれに見合うものが、金額は変わりますよ、これは百売ったときにあなたの組織のバックマージンはこれだけですよ、こういう数字なんです。だから売れてみなければわからぬ。ところが実際に売れたら、バックマージンがまた今度は銀行口座に振り込まれてくるのですね。それに対してまた領収証を出すのだ。ですから、ここの領収証を調べてみますと、もうめちゃくちゃですよね。あなたのバックマージンの領収証は十二万七千六百円でしたけれども、四百六十二万二千六百四十円が正しいから訂正してくれ。ですから、前の領収証を出して、この領収証がまた出されるわけでしょう。あなたそんな金額をもらったのかと聞いたら、いやもらっておらぬ、それでおかしいからこの人はやめたというのですね。どうもおかしいからやめた。こういう操作がされておるのですが、これがもし経理士許されるとすれば、脱税みたいなことをやろうと思えば可能だ。領収証を集めておるわけですから。  だから、その点については、ジャパンライフの会計というのは一遍精査をしてみる必要がある。私はそのものずばりそうだというふうに断定はいたしません。そういう疑いが持たれる。一遍ぜひチェックしてもらいたい。しかし、もう会長おらぬわけですからね。残されておる人たちがそこまで知っておるかどうかわからないですね。  そしてまた、これもおかしな話ですが、記念品贈呈者名簿というのがありまして、健康政治連盟に加盟しておる人たちですよ。ここに本当の高島屋の領収証があります。これは高島屋の領収証です。これが金の延べ棒四百六万のものが会長に渡されておるのですね、記念品として。消費者、国民を苦しめ、苦しめ、そして金の延べ棒をもらう、こういう問題についても私はチェックをしてもらいたい。こういう点については今突然申し上げておりますが、この点についての大蔵省見解をちょっと承っておきたいと思います。
  55. 日向隆

    ○日向政府委員 私どもといたしましては日ごろからあらゆる機会を通じて有効な資料、情報の収集に努めまして、こうして集めました情報等、申告書等を総合的に判断いたしまして、課税上問題があると思われる場合には実地調査を行いまして適正に処理しているところでございます。ただいま委員が御指摘になりました事柄につきましても、貴重な資料、情報として私ども受けとめまして、今後とも適正な処理に努力してまいる所存でございます。
  56. 松浦利尚

    松浦委員 あと一つお願いをいたしますが、実はこれには商社が入っておるのです。通産大臣、商社が。どういう形で商社が入っておるかというと、このジャパンライフの羽毛、それから布団の地、布切れですね、これを商社が扱う。そのかわりにアメリカから輸入した調理用の器具、さっきはヘルスカウンセラーでしたけれども、今度は料理カウンセラーというのをつくりまして、高いものを必要でないのに買わして回る。品物を売ることが目的じゃないですから、要するにバックマージンによる人狩りですから何でもいい。  そして現実にこの商社を調べてみましたら、やはりこういう会社ですから結果的に商社がだまかされまして、結局商社自身がある程度欠損をしてでも撤収せざるを得ないという状況に来ておるということでした。商社の全体だとは言いませんけれども、商社全部と思われたらいけませんので、この際名前だけ申し上げておきますが、三菱商事、アメリカンシェフェット、それから伊藤忠、伊藤忠は毛皮、こういったものをジャパンライフの組織を通じて売りまくる。値段はどうでもいい。ジャパンライフが羽毛布団でも四十万とつけるのですから。どんないい羽毛布団でも二十万、その倍。  ですからそういった意味では、こういった悪徳商法と商社の結びつき、こういったものについても、一時狂乱物価のときに私も商社の代表を呼んで商社のモラルというものについて大分議論をしました。私はこの際、通産大臣から、こうした商社等についても、国民が犠牲になるようなことについては事前に調査をして、応援をしないように、こういったことについてはぜひ調査をして的確な指導をしていただきたい、こう思います。
  57. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 御趣旨はよくわかりますので、そういうような疑いの非常に濃厚な、マルチ式な商法をやるというようなことが非常に疑いの濃厚なようなものについては十分慎重におつき合いを願いたいというようなことは申し伝えたいと思います。
  58. 松浦利尚

    松浦委員 今私が申し上げましたように、この悪徳商法というのは取り締まっても取り締まってもできてくる。現実に、先ほど言いました山口隆祥という人はさっさと撤収して新たなものをつくる、その下部組織におった人たちは今度は違う品物をつくって自分たちでまたそういう組織をつくる。ですから、対応を誤るとさらにさらにこういったものが広がるということをぜひ御理解いただいて、これは通産大臣には恐縮でしたけれどもぜひ御協力をいただきたいというふうに申し上げておきたいと思います。  最後に、きょうは宮内庁からおいでをいただかなかったのですが、実は三笠宮寛仁親王殿下ですね。皇室もこういうふうに利用されているのです。ですから、ヘルスカウンセラーという言葉に関する限りこれは決して悪くないのですね。やろうとすること、この書いてある目的を見る限り問題でないかもしれない。しかし実際には、このようにして悪徳商法に利用される。私は、殿下自身も決してこんなものに利用されるとは思わずに第一回の日本ヘルスカウンセラー協会理事全国大会でお話しになったと思うのですね。こういう点についてもやはり宮内庁あたりを通じて御注意を申し上げていただけないだろうか。最近、天皇在位六十周年の問題をめぐりまして商魂たくましい皆さん方がこれを利用してどんどん商売を始めようとしておる、皇室を利用しようとする、そういったものについて総理の御見解を承っておきたいと思います。
  59. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いやしくも公の地位にある者がそのような一部の人たちの利益のために利用されるようなことは厳に慎むべきであると思います。今いろいろお話を承りまして、実に巧妙に非常に知能的に物が進められつつあるものだということを聞いて実は驚いた次第でございますが、我々も大いに慎んでまいりたいと思います。
  60. 松浦利尚

    松浦委員 最後に、これは通産大臣に申し上げるべきかあるいは官房長官にお願いをすべきかわかりませんけれども、実はこの悪徳商法につきましては、東京都の知事が五十七年に政府に対して「訪問販売等に関する法律及び関係法令の改正について」という文書を公式に出しておられるのです。それから関東地方知事会議、ここも五十七年の十一月四日に、余りにも消費者紛争が激しい、消費者が困っておる、そういう意味で訪問販売法の規制対象を拡大してくれという陳情なんか出されたのですね。  ところが、こういった陳情が来たにかかわらず対応が遅いのですよね。一番末端の知事というのは、自治体というのはすぐわかるのですね、自分のところの県民がこうなったという状況は。だから東京都の知事も関東の地方知事会議もお願いしたわけです。ところが、これがそのままこっちに置いてあるものだから、一部やれるところは若干なさったところも、クーリングオフの強化とか、クレジット契約との抱き合わせ販売とか、いろいろなことについては規制が加わったようですけれども、だがこれにしたってクレジットの契約で六%程度キックバックがあるのですよ、ジャパンライフには。ジャパンライフと契約しておるクレジット会社はキックバックが四%ないし六%渡されておる。そういった点についても知事会議が指摘をしておる。きのうですかおとといでしたか、地方自治に対して総理が少し言葉を滑らされましたけれども、こういう問題は決して行き過ぎじゃないのですね。そういう問題について、官房長官になるのでしょうか、ちょっと退屈しておられるようですから、官房長答弁してください。
  61. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 各地方団体から国に対していろいろな御要望、そのときどき我々承っておるわけでございますが、政府としましては、その都度関係省庁でそれなりの対応は当然やっていただいておるわけでございます。ただ、今御質問のマルチまがいの悪徳商法、これは最近相当はびこりつつありますから、これらについては先ほど総理から御答弁ございましたように産構審の答申等を受けて現在検討中でございまするので、御了解願いたいと思います。
  62. 松浦利尚

    松浦委員 私の時間があと六分程度あるわけですが、最後に質問時間を若干残して、通産大臣を含めた総理以下皆さん、関係の閣僚にお願いをいたします。  私が申し上げたことは冷厳な事実であります。私が空想で申し上げておるのじゃないのです。ここに資料がこれだけあります。これに中曽根内閣としてどう対応するのか、その点を本予算委員会中にお話し合いをいただきまして御報告をいただきたい、そのことを委員長に御要望申し上げて私の質問を終わりたいと思いますが、よろしいでしょうか。
  63. 小渕恵三

    小渕委員長 質問者の趣旨を理事会にて話し合います。  これにて松浦君の質疑は終了いたしました。  午後零時五十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時四十八分休憩      ————◇—————     午後零時五十一分開議
  64. 小渕恵三

    小渕委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。近江巳記夫君。
  65. 近江巳記夫

    ○近江委員 きょうは一時間五十分の時間をいただいておるわけでございまして、いろいろな問題点をお聞きしたいと思っておりますが、まず初めに国鉄問題についてお伺いしたいと思います。  御承知のように、国鉄問題につきましては非常に多くの重要な問題があるわけでございます。長期債務の問題、またそれに絡むいわゆる用地売却の問題、あるいはまた余剰人員の扱い等、重要な問題があるわけでございます。     〔委員長退席、原田(昇)委員長代理着席〕  そこで、私は、まず初めにこの余剰人員の問題についてお伺いしたいと思うわけでございます。先ほど委員長にもお断りいたしまして、お手元に私が試算させていただきました表をお配りさせていただいております。まず、この表につきまして少し御説明させていただきたいと思います。  この表は、総務庁事業所統計調査報告の従業者数の構成比から推定をしたものでございます。御承知のように、一番上の右端の欄を見ていただきますと、「全国計」と書いてあるところですが、職員数二十七万六千、一番左と一番右、そのように交互にいきます。新事業体に移籍する要員数二十一万五千、余剰人員数AマイナスBすなわち六万一千ということでございます。それから、公務員、地方公務員、民間とございまして、右を見ていただきますと二万、一方、三万一千となっております。公務員、地方公務員合わせて三万ということでございます。合計六万一千。  今度は下の表をごらんになっていただきたいと思うのですが、まず一番右側の表、全国で五千八十二万九千名、従業者数の合計でございます。ここでわかりやすい例として北海道を例にとってみたいと思います。北海道のいわゆる公務員は全国の八・四%、十四万一千名、地方公務員が全国の五・七%、二十万三千、民間が四・三%、百九十四万四千、こうなっております。右の方は、いわゆる公務員の一〇〇%、地方公務員一〇〇%、民間一〇〇%、これからのパーセントで出したものでございます。  こういう点からいきますと、まず北海道を例にとりますと、公務員二万名の中で、北海道は八・四%ですから、これで見ますと千六百八十とこうなるわけでございます。それから地方公務員、これが五・七%ですから、一万の五・七で五百七十、民間が四・三%、三万一千の四・三で千三百三十、合計三千五百八十とこうなるわけです。これは機械的に、偏在しております。そのパーセントに大体まくばってきたものでございます。そうしますと、北海道の余剰人員というのは一万三千名あるわけでございますから、そうするとどれだけ受け入れができるかと、全国ならした場合三千五百八十名ですから、これを引きますと九千四百二十名、これは北海道では就職できないということになるわけです。東日本では逆に七千二十名受け入れができる、東海では三千六百十名受け入れができる、西日本では千五百四十名できる、四国で千百十名ができる、九州では三千八百六十名、約四千名が受け入れができない、こういう推定値でございます。  この余剰人員が問題になりまして、どういう形で——北海道や九州がはみ出るとかいろいろなことを言われておりまして、何かいい方法がないかといろいろ考えておりましてこういう数値をつくったわけでございますが、この数値に関しまして、総務庁の統計をお借りしておりますので、大体どういう感想を持っていただいたか、総務庁長官にお伺いしたいと思います。
  66. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 御指摘のように、この職場の移動といいますか地域移動の問題、本人の希望にもかかわらず移動させなければならぬということは非常に重要な問題だというふうに認識をいたしております。  それで、御指摘のこの三万人はどうしても公共団体で引き受けよう、こういうことで、我々全責任を負っておるわけです。これはもう総理初め私ども不退転の決意で達成しなければならぬ。  ただ、この表を御指摘いただいてさらに考えますことは、北海道など大変重要だなということを一層認識を深めるわけでございまして、雇用対策本部と十分連絡をとりながら、これはきめ細かく、特に自分の希望でもないのに移動をしなければならないという人たちに対して、温かい思いやりの心でよく相談をしながら対処をしていく、こういう決意でございます。
  67. 近江巳記夫

    ○近江委員 総務庁長官も、大体私が推定で山さしていただきましたものを、ほぼ妥当という感じで受け取っていただいておるようでございます。  国鉄の方も大体こういう感じでよろしいですか、総裁。
  68. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 余剰人員の発生する場所と雇用の場の関係でございまして、こうした関係につきまして一定の前提を置いた上で試算をされたものであるというふうに思うわけでございますが、両者の間に地域によりまして著しいアンバランスがあるということをマクロ的につかんでいただいたというふうに思うわけでございます。  特にこの数表に見られますように、北海道、九州におきましては大変その間の問題が大きいというふうに思うわけでございますが、私どもとしましてもそうした問題を十分認識をいたしまして、できるならば前広に地域間の職員の広域配転を今から実施をいたしまして、地域間におきまして不公平、不平等というようなことのないように雇用の問題につきまして対処していきたい、こう考えておるところでございます。
  69. 近江巳記夫

    ○近江委員 総理もこの表を見ていただきましてお感じのように、非常に地域によって偏在しておるわけですね。特に北海道につきましては約一方、九州については約四千名、こういう人たちが、恐らく北海道なり九州もそれぞれ努力していただいていると思いますけれども、やはりなかなか今日の状況で厳しいんじゃないか、こういう非常につらい感じがするわけでございます。今日、失業率も、これは昨年十一月のデータですが、百五十九万人、二・九%というような非常に高い数値も出しておりますし、今日のこういう経済情勢におきまして、非常に民間も厳しいという情勢に入ってきておるわけでございます。  そういう点で政府としては対策本部をおつくりになっていらっしゃるわけでございますが、今日までどのくらい国家公務員また公社公団、地方公務員等で努力していただいているか、各省でまとめておられるなら、どなたか代表でお答えいただきたいと思います。
  70. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 既に前向きに本年度も国家公務員等としては約千六百程度は消化しようということで集めております。地方公務員については、続々と雇用の申し出が来ておりますが、まだ詳細の取りまとめはいたしておりません。
  71. 近江巳記夫

    ○近江委員 きょうは各大臣御出席でございますが、皆さんの省で、これは全部お聞きしますと大分これだけで時間がかかるものですから、自信のある方は、これだけ自分でやっておるという方はちょっと答弁してください、どのくらいやっているかということ。
  72. 佐藤文生

    佐藤国務大臣 昨日も、郵政省としては昨年の十二月十三日の閣議決定の方針を尊重しましてできるだけ協力をさせていただきたいということで、一応六十一年度は五百七十名の国鉄の方を受け入れたい、こういうことで準備を進めて、他の省また国鉄あたりと話し合いを事務的に進めております。それから、六十二年度以降はやはり閣議の方針に従って一定の割り当ての数をこなす、こういうふうな考え方でできるだけ温くお迎えしたい、こういうことの事務的なことを今進めでございます。
  73. 林ゆう

    ○林国務大臣 労働省といたしましては、閣議決定に従いまして積極的に国鉄の余剰人員を受け入れる方針でございます。六十一年度におきましては五十七名以上採用することと決定いたしております。受け入れる者が一日も早く職場になれますよう、二月の下旬から事前研修を行うことといたしておりまして、現在採用手続を急いでいるところでございます。  また、関係特殊法人におきましても受け入れに全力を挙げるということでございまして、雇用促進事業団におきましては六十一年度以降六十五年までの間に二百名、労働福祉事業団におきましては五十人をそれぞれ受け入れる計画を決定をいたしておるところでございます。  以上でございます。
  74. 古賀雷四郎

    古賀国務大臣 お答えいたします。  北海道は、お話がありましたとおり一番余剰人員の域外転出が数が多いわけでございまして、これらの問題は非常に北海道内でも深刻な問題でございます。また、失業率も四%程度ありまして、この点につきまして受け入れ可能かどうか非常に心配をいたしているところでございますが、全力を挙げてやってまいりたい。  ただいまの国鉄余剰人員の対策としまして国で受け持つ分は、私の方はわずか開発庁としては十一名でございますけれども、これは三月一日採用予定でただいま国鉄側と協議をしております。  それから道では、知事から既にお話が、新聞等でごらんになるとおりでございますが、五カ年間で三百八十名をひとつやっていこうということでお話があっております。その他の市町村についてはまだこれが決められておりませんので、具体的数字の積み上げはただいまのところやっておりません。  ただ北海道は、私の方は北海道の開発を所管する立場でございますが、先ほどお話ししましたとおりに非常に活性化が進んでおりません。したがいまして雇用の受け入れ場が非常に少ないということで心配をしたわけですが、これからはひとつ各省庁並びに北海道庁並びに市町村とも緊密な連携の上に、既存産業の活性化あるいは新しい産業の育成、導入等も考えまして、道内により多く職のあるようにしてまいりたいというように考えておりますことをひとつ御理解願いたいと思います。
  75. 近江巳記夫

    ○近江委員 あと何名かの大臣、答弁いただけるんじゃないかと思いますが、ちょっと時間の関係で代表の方に御報告いただいたわけでございます。  いずれにいたしましても、これは六十二年四月から新体制で発足、もう既にこの雇用の問題は、六十一年度も全力を挙げてもらわなければいけない、こういうことでございますので、各閣僚の皆さんに一層の取り組みを強く要望する次第でございます。  それで、私が出しましたこのデータでございますが、国鉄総裁、国鉄当局としてはやはり私が出した北海道で一方、九州で四千程度、こういう大体の感じですか。当局はそういうものは別にはじいてないのですか。国鉄もそういう感じですか。
  76. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 余剰人員の地域別の推定は大体そのとおりだと思いますが、どの程度の受け入れがあるか等につきましては今精査中でございまして、例えば北海道につきまして、先生の方の資料では一般の産業界千三百というような数字だと思いますが、当方の関連企業の受け入れ先につきまして、北海道で約千名というような数字も上がっておりますので、御指摘の数表と大変似通っているということは言えるかと思います。これから精査をいたしたいと思います。
  77. 近江巳記夫

    ○近江委員 国鉄当局も大体私と似た数値の感触の御答弁があったわけでございますが、そうしますと、これははるばるふるさとを離れて北海道、九州の人がまた本州へ移動するということも起きるわけでございます。  私、これで非常にショックでありましたのは、国鉄の九州総局長辞任された。これは宗教上のことだということではございますが、今日非常に単身赴任の状況が広がっておる、こういう中でこの問題は非常に大きな衝撃を与えておるわけでございます。この点について総理はどういう御感想をお持ちですか。
  78. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 新聞で拝見いたしましたが、自分の宗教あるいは自分の信念というものに殉じて子供を大事にするという、そういうお気持ちは非常にとうといものである、そういうふうに感じました。  ただ、そういう職場の問題について、うまく調整できなかったものかなという感じもいたしました。
  79. 近江巳記夫

    ○近江委員 私もこれはマスコミで伝えられておることしか知らないわけですが、これは宗教上のことが一番大きいわけですけれども、結局、長男が都内の私立高校に入学したばかりで、転校を非常に努力したけれども全然だめだ、こういうことで家族と一緒にという道を選ばれたわけでございます。  全国で非常に多くの単身赴任の人がいらっしゃるわけですが、今回この国鉄の分割・民営化に伴いまして北海道だけで一万名、九州で四千名、家族を含めれば大変な数になるわけですね。国鉄として今まで進路の希望アンケートをとっておられるのを見ておるわけでございますが、民営化しても鉄道でという人が七三%、あとは一八%が公務員、国鉄関連のところが二%、一般は一%、こういうデータですね。特に北海道の場合は、新しく分割になる旅客会社を第一志望に挙げた方が一万三千人おるわけですが、そのうちの九九%、公務員志望四千人の九六%が道内を希望しておる。九州も同じなんですね。みんな北海道、九州に残りたい。だれだってふるさとを離れたくないのですよ。しかし、就職するところがなければ行かなければならない。  そうすると、九州総局長のこういう、これも本当に私は胸えぐられる一つのケースでございますが、本州へ就職したとしても単身になるか、あるいはまた家族を連れていったとしてもこれと同じように学校が転校できない、特に高校生の場合になるとほとんどできませんですよ。私は大阪でございますけれども、各通産局なり大蔵省出先のものがいろいろございますが、トップの人はほとんど単身赴任で来られています。その理由だって、ほとんどが高校が転校できない、教育問題ということが大きいのですね。まあ宿舎はあるわけですけれども。そういう点で転校の問題。  そしてまた住居の問題ですね。住居だって一体どうするのかということです。住居の問題につきましても問い合わせをちょっといたしまして、これは北海道における職員の場合ですが、職員全体で現在三万一千五百、自宅の居住者が八千九百名、二八%、宿舎居住者が一万六千九百名、五四%、借家居住者三千三百名、一〇%、その他二千四百名、八%、こうなっているのですね。そうすると自分の家も離れなければならない。もうさまざまな問題があるのです。その中でまた給与の問題もあるのですね。  主な点を聞いていきたいと思いますが、まず学校の問題ですね。今回の国鉄離職者を初めとしまして、単身赴任の傾向が非常に最近民間会社にもふえてきているわけですね。これが非常に大きなネックになってきている。これは文部行政としても重大な問題だと私は思うのです。これについて文部大臣はどういう——文部大臣いてないのですか。それでは建設大臣に、住居、これは労働省でもいいですね、これは国鉄と労働省がいろいろな連携をとっておられると思いますが、この問題については労働省としてはどういう配慮を今しておられるのですか。労働大臣、それから後、建設大臣にもお聞きします。
  80. 林ゆう

    ○林国務大臣 住居の問題は人間基本の生活のもとでございますので、単身その他家族と別れ別れに生活をしないようにというようなことで、今関係の機関と鋭意検討中でございます。
  81. 江藤隆美

    ○江藤国務大臣 先ほど先生の資料を見せていただきまして、これは容易ならざることだなということを実は感じたわけでございますが、第一次的に言いますと、受け入れた国または地方公共団体あるいは民間会社の雇用者が住宅問題については責任を負うべきものであると思います。しかしながら、こういう国家的な一つの大きな課題でございますが、それならば今まで公営住宅その他を待っていた人を全部押しのけて、国鉄から移ってきた人を最優先的にできるかどうかということについては、かなり私は問題があると思っております。  しかしながら、事はもう待ったを許さない状態でございますから、今後発生し得ることを十分予測しながら、誠心誠意この問題には取り組んでいきたい、こういうふうに考えます。
  82. 近江巳記夫

    ○近江委員 文部大臣、聞いてくれましたか。今、私、いわゆる国鉄の離職者で離れる方々が、教育問題、住居を含めて賃金の問題も、これはまた国鉄のそういう職員だけではなくして、最近単身赴任が非常にふえてきておるわけなんです。それに対して転校がほとんどできないというのが現状でございます。これについて文部省としてどういうように今対処なさろうとしておるか。特に国鉄職員、北海道の一方、九州の四千名ですね、データでお示ししたとおりでございますし、これは今すぐの問題なんです。どうされますか。
  83. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 御指摘のように、単身赴任の数が非常にふえており、調査をいたしますと、子弟の教育に関する問題から志に反して単身で赴任するという答えがかなりございまして、これは大変大切な問題だと心得、文部省といたしましては、特に義務教育段階の一段上の高等学校のところにまず問題があるという認識もいたしまして、今までは途中の転入学は定員の枠内でやれという規定がございましたが、教育上支障のない限りと、定員の枠を広げまして必要に応じて随時入学ができるように、また、試験の時期も一回だけでは、会社の転勤その他の事情によって、児童生徒の入学の時期に必ず転勤が重なればいいのですが、そうでないときは困るわけですから、時期等も三回ぐらいに分けて弾力的にするようにという通達をいたしておりますけれども、御指摘のようにいろいろな問題等もあり、特に今度の近江委員御指摘の問題等につきましては、さらに念を入れてこの方針を徹底するように柔軟な対応をしていかなければならない、こう思っております。
  84. 近江巳記夫

    ○近江委員 ぜひ通達が本当に実行できるようにフォローをよくやっていただきたい、このように思うわけです。  それから次に、旧国鉄に属して転職先を選んでいる間、これは政府は三年と見ているわけですが、この方たちの給与の問題ですが、余剰人員対策費、監理委員会では大体九千億ということを見ておるわけでございますが、職員の給与は現行の六〇%を積算しておると聞いておるわけでございます。これはそのとおりですか。
  85. 棚橋泰

    棚橋(泰)政府委員 お答え申し上げます。  いわゆる清算機関でございます旧国鉄に所属をいたしまして職業訓練その他を行って再就職を探す、こういう人員の労働条件、給与条件、こういうお尋ねだと存じます。この点につきましては、大変重要な問題でございますので、ただいま検討申の法案の中に職員の引き継ぎという条項を挿入いたしまして、そのあたりの点について明確な考えを出したいということで現在政府部内で調整申のところでございます。
  86. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうすると、調整中ということは、職員の生活確保の最低基準といいますか、それは六割とかそういうようなことではなくして、十分成り立つものを目指しての調整なんですか、それはどうなんですか。
  87. 棚橋泰

    棚橋(泰)政府委員 先ほど申し上げましたように、清算機関でございます旧国鉄に所属する間は、再教育、職業訓練等を行うわけでございますが、特別そのほかに業務というものに従事するわけではございません。そういうような諸点を勘案いたしまして、その水準をどうするかということについて検討中、こういうことと御理解いただきたいと思います。
  88. 近江巳記夫

    ○近江委員 それからまた、国鉄の関連会社に行く人が二万一千人ぐらいと言われているのですが、給与ベースが非常に落ちるだろう、こういうように言われておるわけです。国鉄関連事業というのは、平均賃金が年額でボーナスも全部入れると三百万円、そうしますと約百万ぐらいダウンするのですね。そうしますと、先ほど私が指摘しておりますように、住居の問題あるいは学校の問題あるいはまたこういう一番大事な生活費の問題等々、これは非常にゆゆしい問題だと思うのです。  この辺の給与のそういう点につきまして、ただその転職先を政府としては雇用対策でどんどんどんどんとやるということでありますけれども、やはり先の先までそうした本当に温かい配慮が私は絶対必要だと思うのです。ただ何とか就職先を面倒を見ればいいじゃないか、こういうことであってはならぬと思うのです。その点、政府としてはどのように考えておられますか。
  89. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 先ほども申し上げましたように、特に政府機関また地方公共団体等に就職をさせる問題は非常に重要に考えております。今御指摘の関連企業についても同じように考えております。したがって、きめ細かに雇用対策本部とよく調整を図りながら、御指摘の点については万全を期したいというふうに考えます。
  90. 近江巳記夫

    ○近江委員 私が特に申し上げたいのは、いわゆる政府として、公務員あるいは地方公務員、民間、それぞれ精力的に今転職先をやっていただいているわけですが、今いろいろと指摘いたしましたこういう問題の対策といいますか、そういうことを含めた本当に温かい、常にそこでフォローしていく、そういうものをつくってもらいたいと思うのです。今はただ人員の割り当てだけでしょう、政府でやっているのは。違いますか。ですから、そこまでの国鉄当局と一体となった、そういうバックアップの体制、これはもう労働省から何からみんな関係するわけですから、文部省も。だから政府挙げて一丸となった受け皿が必要だと私は思うのです。それを設置されるかどうかお聞きしたいと思います。
  91. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 既に国鉄再建監理委員会の意見を受けて国鉄余剰人員雇用対策本部ができております。この本部長中曽根総理でございます。したがいまして、もうこれは政府を挙げて責任を持つ。これはきめ細かに必ず御期待にこたえるように熱情を傾けて結論を得るようにいたします。
  92. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、今これだけの余剰人員の方の行き先を探すということで力を入れていただいているわけですが、非常に優秀な国鉄職員であるという意識を持ってもらいたいのですよ。ただ職だけを世話すればいいんだというのじゃなくして、例えば日本の国鉄技術というのは世界最高なんです。ですからそういう点で、人材の活用という視点に立ってやってもらいたいということです。ですから、国際的にもいろんなそういう引き合いもあるはずでございますから、そういういわゆる人材の派遣という点、こういうことも国際的に、日本のそういう立場というものはまた国際友好という点において非常に大きく寄与すると私は思うのです。そういう人材の活用という点についてどのように考えておられるか、お伺いしたいと思います。
  93. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 もとより、私は本会議などでも答弁をいたしましたが、世界水準にまさるとも劣らないこの国鉄であります。例外の人もこれは数多くおりますが、やはりほとんどは優秀ないい人が多い。これはやはり相互扶助の精神で温情を持ってその就職に責任を持つ、これがやはり私、国鉄再建のまず第一の基本だというふうに考えております。
  94. 近江巳記夫

    ○近江委員 そういうように総合的な、生活、家族というものを本当に踏まえたそういう温かいフォローをしながら今後の問題に対処していただく、そういうことを強く要望いたしておきます。  それから、用地の払い下げにつきましては本委員会でも指摘されたわけでございますが、私からもこの点は特に申し上げておきたいと思います。  具体的な点が私一つあるのですが、これはもっとよく調査しなければわからぬものですから企業名までは私は挙げませんけれども、昨年の三月、長崎駅構内で払い下げをやっているわけですね。駅の中ですから一等地も一等地ですよ。応募しておるのは二社なんですね。そしてそこで払い下げが行われておる。価格もそういう一等地からして非常に安いじゃないかというような額なんです。これはいろいろ理由があったことと思うのですが、一応新聞広告もしてそれだけの手続を踏んでいるわけですが、もっとそこに何らかのそういう払い下げのやり方がなかったのかどうか、こういう点、国鉄総裁、どうなんですか。時間の関係で簡潔に答えてください。
  95. 杉浦喬也

    ○杉浦説明員 今お話しの土地の問題でございますが、長崎の駅前の未利用地につきまして昭和六十年三月に公開競争入札を行っております。この手続は、正規の手続に従いまして新聞広告を行い、あるいは予定価格につきましても部外の鑑定機関二社からの鑑定書を参考にいたしまして、妥当な予定価格といたしまして応札させたわけでございますが、予定価格を上回る入札によりましてこれが落札されたという経緯がございます。参加したものが二社であるわけでございますが、二社につきましてはいずれも正規の手続を踏んだ形での入札者であるわけでございまして、この二社に問題はないと思います。  しかしながら、諸地域におきまする用地売却につきまして今後いろんな問題が出てくると思います。国民にいささかも疑念のわく余地のないように、今後とも用地の処分に当たりましては厳正に対処をしていきたいというふうに思う次第でございます。
  96. 近江巳記夫

    ○近江委員 今そういうお話があったわけでございますが、これは五兆八千億、実際はもっと十兆だとかいろいろなことが言われておるわけでございますが、そういう別途機関をつくって公平にするという答弁がありましたものですから、その機関もただ形だけではなくして本当に国民の信頼に足るそういう機関をひとつ設置して、少なくともそういう疑惑を招かないようなやり方をやっていただきたいと思うのです。  今、長崎の件については一応の手続を踏んでおるということでございます。しかし、もっと工夫して一なぜ二社なのかということですね。もっと本当にできなかったのかということです。しかし、これは一応手続を踏んでいることですからこれで終わりますけれども、今後ひとつそういうことで公平な、国民の納得する売却を進めていただきたい、これを強く要望しておきます。  次に、時間の関係で経済問題はちょっと後にいたしまして、外交問題に入りたいと思います。  まず、フィリピン大統領選挙でございますが、非常に今世界じゅうの関心を集めておるわけでざいます。何かきょうはフィリピン国会が召集されるとかいろいろなことが言われておるわけでございますが、とにかく公平な選挙であってもらいたい。これはフィリピン国民だけではなく、全世界の人が注目しておるわけでございます。総理としては、現在のこの選挙の状況につきまして、どういう感想をお持ちでございますか。
  97. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 本日国会が召集されまして、最終的には国会において結論を出すという由でございますから、国会における審議や公表を冷静に慎重に見守ってまいりたいと思っております。
  98. 近江巳記夫

    ○近江委員 この結果によりましては、フィリピンの政情が非常に動揺を深めるのじゃないか、こういう心配もいろいろ行われておるわけでございます。また周辺の東南アジア諸国に対する影響等も無視できないんじゃないかと思うのです。今後の推移でございますが、影響について非常に我々も心配しているのですが、総理としては、その点どのように見ておられますか。
  99. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本としては、だれが勝ったからといって、どちらに重点を置くというような対策はとりません。フィリピンの全国民を相手にして、国民を代表する政府と我々は話をしてきておるのでございまして、この政策、この考え方は変わるものではございません。他国に内政干渉しないということは、日本として非常に重要なポイントでありますし、また日本のそういう態度アジアの国々は見諦めていると私は思うのでございます。そういう点から、冷静に、国会がどういう発表をなさるか、それを注目いたしまして、その結果を見て我々は判断を固めてまいりたいと思う次第でございます。
  100. 近江巳記夫

    ○近江委員 昨年、米ソ首脳会談が行われました。核の廃絶、軍縮、こういう方向に、今まで断絶状況であったのが一応話し合いに入ったということで、非常にこれは一つの明るいニュースでございまして、非常に皆今後の成り行きについて期待をするわけでございます。ことしはまたサミットも行われますし、そしてまた一月十五日、ソ連外相も来日しておりますし、そういう点で我が国が非常にまた世界の注目も浴びていくのじゃないかと思うわけでございます。特に我が国としましては、国連加盟、ことしは満三十年でございます。そういう非常に意義ある年でもございますし、そういう点で国民がひとしく願うのは、世界の平和であり、日本のまた安泰であります。そういう点で、特に我が国は被爆国でもございますし、被爆四十一年を迎えるわけでございます。そういう点で、地方におきましても、例えば大阪では、国連大学が国連事務総長の要請を受けまして、十月の軍縮週間に各国の平和問題専門家を招きまして、平和に生きる世界づくりの世界会議を開くわけです。これを受けまして、大阪府として府主催の世界平和を考える大阪会議等も開く、こういう一連の平和行動が行われる予定になっておるわけでございます。  そこで、私は総理にお伺いしたいのですが、そういうやはりことしは意義ある年でもあるわけでございます。総理が国連演説におきましても、非常に格調高い、平和をうたいとげられたこの演説は非常に大きな評価を得ておるわけでございます。そういう点で、この意義ある年にかんがみて、政府として、そうした平和への取り組み、またアピール、二十一世紀を展望して、そういう何か具体的なことをお考えになっておられるかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  101. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 近江さんおっしゃいますように、国連も誕生四十周年を迎えまして基礎が強固になりつつあります。しかしいろいろ問題点がないわけでもございません。そういう意味において、国連がますます世界の信頼を高めて、国際政治の大事な一つの中心センターになるように私たちも協力してまいりたいと思います。  特に、平和確保の問題につきましては、私も、国連でも我々の考えを申し上げましたし、日本国民最大の関心事でございますから、レーガン・ゴルバチョフ第二回会談が成功して、引き続いて世界人類の期待にこたえていくように協力してまいりたいと思う次第でございます。
  102. 近江巳記夫

    ○近江委員 先般、ワインバーガー国防長官が議会に提出をいたしました八七年度の国防報告についてお伺いしたいと思います。  これを見ますと、基本的な認識としまして、米国がソ連の脅威に対抗するため、引き続き軍備増強、国防支出の増額が必要である、このようにいたしまして、国防費の突出、対ソ軍事的なそういう対決といいますか、ここ数年来のそういう米国の軍拡政策に余り変わりがないように私は思うわけでございます。米ソ首脳会談におきまして、核不戦、軍備管理、軍縮への努力というものをうたったわけでございますが、それとは非常に遠いんじゃないかという印象があるわけでございます。この点につきまして、総理と外務大臣から、どのようにお考えになっていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
  103. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 今回発表されました八七米会計年度国防報告におきましては、ソ連の東アジア・太平洋における軍事力増強と影響力拡張のための努力が抑制されることなく続けられておるという点を指摘した上で、同地域における平和と安定の維持が米国にとって極めて重要な関心事であることを改めて強調いたしております。  また、我が国については、昨年同様、日米安保条約に基づく日米防衛関係を東アジアにおける米国防政策のかなめ石、コーナーストーンと名づけており、また中期防衛力整備計画が完全実施されれば、領土の防衛、防空及び千海里までのシーレーン防衛という日本の防衛目標を満たすための必要最小限の能力が達成されることとなる旨記述をされております。  こうした記述は、米国防政策における我が国の重要性を改めて強調したものと理解をしておりまして、全体として、日米防衛関係の緊密化、定着化を踏まえ、我が国の防衛努力に対する評価及び一層の努力に対する期待感が表明されておる、こういう印象を有しておる次第であります。
  104. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 米国防報告は、拝見いたしまして、引き続いてソ連の軍事力増強及びアメリカ側の劣位を回復していきたい、そういう引き続いての努力が継続されている、そう思います。  しかし、日本に関する部分につきましては、今外務大臣が御報告したとおりの考えを表明しております。我々は日米安保条約を有効に機能し得るように大事にしつつ、しかも世界的な軍縮がそういうものを基礎にしつつ着実に前進するように努力してまいりたいと思っております。  矛盾するではないかということをときどき聞かれますけれども、日本の防衛力にいたしましても、現在の極東における周辺諸国の軍事力の増強状態等を見ますというと、我々が引き続いて努力していかなければ非常に日本の防衛についても心配される将来が出てくると考えざるを得ないのであります。またアメリカにいたしましても、いわゆるデタント時代、ソ連から大幅におくれてきておる。それをとりあえず取り返そうという努力をレーガン大統領は懸命にやっておるのでございまして、何もソ連に対して、あるいは諸般の国々に対して軍事的優位を著しく確立する、そういうような考えに立ってやっているものではない。抑止と均衡、そういう考えに立ちまして、平和を維持するために努力を継続していく、そういうことであると考えます。
  105. 近江巳記夫

    ○近江委員 こういう特に対ソ認識、これはサミットでも、やはり国防報告のそうした認識というものがベースになるんじゃないかと思うのですけれども、これについてはサミットに臨まれる総理としてどのようにお考えでございますか。
  106. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 サミットはいわゆる経済サミットでございますから、世界経済の問題、特にことし以後の景気の動向や発展途上国や債務負担国等に関する諸問題が熱心に論議されるものであろうと思います。しかし、レーガン・ゴルバチョフ第二回会談もございますし、世界的な緊張緩和、軍縮推進ということも共通の関心事でございますから、そういう問題に関する話し合いも行われるかもしれない、そう考えて諸般の準備もしているところでございます。
  107. 近江巳記夫

    ○近江委員 今回のこの国防報告の特徴として、SDIを抑止力の柱に据えることを明確にしておるわけでございますが、予算面におきましても、四十八億ドルを投入する、このように述べております。このSDIの問題は、米ソ間の核軍縮交渉の最大の懸案の問題でありまして、日本にもかねて参加の要請が米国から来ておるということでございます。昨年総理が訪米されましたときに理解を示された、そのことを表明されまして、調査団も一次、二次と派遣されて、第三次調査団も派遣されるということを聞いておるわけですが、このSDIにつきまして、調査団の今日までのそういう調査結果といいますか、時間の関係がございますので、簡単簡潔にポイントを御報告をいただきたいと思います。
  108. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 我が国よりは昨年十月及び本年一月と二度調査団が訪米をしております。本年一月の調査におきましては、米側より技術的側面に関する説明、スケジュール、予算及び同盟国との協力に関する考え方を聴取したほか、SDI研究関連施設を訪問いたしまして、より具体的な技術内容につきまして説明を受けた、こういうふうに承知をいたしております。  調査団の報告によりますると、中距離ミサイルもSDI研究の対象になっている旨確認をするなどの同盟国全体の安全保障に対する配慮が感じられる。また研究は相当程度進展している、こういう印象を受けたということでございます。  なお、SDI研究参加につきましては、現在我が国としての対応を慎重に検討中でございます。
  109. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう一度安倍大臣にお伺いしたいと思いますが、十二月六日にイギリスが十八の分野で協力を行う、こういう覚書を調印したわけであります。西ドイツも研究に参加する、そういう方針を明確にしたということが伝えられておるわけですが、大臣は先般ヨーロッパ諸国を訪問されまして、その間のSDIに対する各国の対応についても話し合われたと思うのですが、そのときの膜様につきましてポイントをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  110. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 SDIにつきましては、各国を訪問しました際に意見の交換をいたしました。その中で我が国の立場は先ほど申し上げたとおり表明をいたした次第でございますが、アメリカとの関係でイギリス、西ドイツさらにフランス等とそれぞれ対応が進んでおります。既に英国はSDI研究を支持するという形で政府間の合意ができ上がったということでありますし、西ドイツにおきましては、経済相が担当しておりまして、第一回の会談を終えたようでございますが、これからさらに引き続いて第二回会談を行って、SDI参加を含めた広範な技術協力関係を進めたい、こういうことでございます。形としては政府で協力するということでなくて、民間が協力をすることについて国と国との間の協定を結ぶ、こういう姿勢でございます。フランスにおきましては、政府は関知しない、しかし民間は既に研究には参加を表明し、また参加をすることに対してフランス政府としてはこれを妨げない、こういう考え方でございます。
  111. 近江巳記夫

    ○近江委員 このSDIの問題につきまして、総理が三月ごろに訪米されるとかしないとかということも取りざたされておるわけですが、もし行かれたとした場合、その参加について要請を受けるのではないか、あるいはまた五月のサミットに総理がそういうことを表明されるんじゃないかというようなことが今言われておるわけでございますが、日本の参加問題について、総理はどのように今お考えでございますか。
  112. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私が三月ごろアメリカを訪問するということは決まっておりません。国会のいろいろな事情も日本側にもございますし、また先方の都合等もございましょうし、そう簡単に決められる問題でもありません。そういう意味で、この問題はまだ白紙の状態になっております。  それから、SDIの問題に関しましては、外務大臣が御答弁申し上げましたように、今慎重に諸般の情勢を検討して調査と研究を続けておるということで、まだ我々が判断をすべき段階にまでは至っておりません。レーガン大統領と私がいつ会うかわかりませんが、その折に向こうからそういう話が出るということも可能性がどの程度あるか、私は今のところは判定できない、そう思っております。
  113. 近江巳記夫

    ○近江委員 今、外務大臣からも御報告がございましたように、民間企業が参加をする。米国のパール国防次官補が去る十二月十日の米下院外交委員会の公聴会におきまして、SDIの研究参加を希望する外国企業は、政府間の機密保護に関する取り決めを遵守する必要がある、このように述べておるわけですね。これは最高度の機密保持のそういう策をとりたい、こういうことを明らかにしておるわけでございますが、今、白紙であると言われたわけでございますが、ヨーロッパはそういうように民間は参加する、日本は全く白紙である。もし参加をするというようなことになれば、そういう機密保護法の制定とか、そういうようなことにまでこれは発展するわけですか。外務大臣に聞きます。
  114. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 SDI研究に対する参加問題につきましては、いろいろと今情報を集めまして慎重に研究しておるという段階であります。ですから、まだ参加という方針を決めておるわけではありませんし、いろいろの対応を専門家の間で検討していただいておるということでございますから、結論を出すのは、まだまだ先のことになるという段階でありますし、先走って今ここでそうした問題について私の方から申し上げるという段階には今ない、こういうように承知しております。
  115. 近江巳記夫

    ○近江委員 このSDIの問題につきましては、米ソ間も最大の問題としてとらえておるわけでございますし、我が国としましても、そういう点につきましては、しばしばこの委員会におきましても問題点を指摘しておるわけでございまして、これはひとつ特に慎重にやっていただきたいと思いますし、特に日ソ間におきまして、今領土問題を含めまして、そういう交渉も始まろうとしておるときでもございますし、そういう点十分よく慎重にやっていただきたいと思うわけでございます。  この日ソ間の展望につきまして、二、三の点についてお伺いしたいと思うわけでございますが、日ソ関係でソ連が交渉というか対話の席に着いたということは、これは非常に前進しておるわけでございますが、やはり私たちは領土問題について本当に前進したのかどうかという大きな疑念があるわけです。非常に厳しいという状況を今回の日ソ共同声明等を見ましても感じるわけでございます。この共同声明には、「両大臣は、一九七三年十月十日付けの日ソ共同声明において確定した合意に基づいて、日ソ平和条約の内容となり得べき諸問題を含め、」「交渉を打った。」このようにあるわけでございますが、この一九七三年の共同声明におきましては、戦後の「未解決の諸問題を解決して平和条約を締結する」として、この未解決問題に領土問題が含まれるとされておるわけでございますが、その経緯を外務大臣から詳しくひとつ御説明をいただきたいと思います。
  116. 西山健彦

    ○西山政府委員 お答え申し上げます。  一九七三年の共同声明は、ただいま先生御指摘のとおり、「双方は、第二次大戦の時からの未解決の諸問題を解決して平和条約を締結することが、両国間の真の善隣友好関係の確立に寄与することを認識し、平和条約の内容に関する諸問題について交渉した。」こういうふうに記載してございます。ところが何がこの「未解決の諸問題」であるかということが明確でなかったわけでございます。  そこで、この問題につきまして、両首脳間で、すなわち当時の田中総理と先方、ブレジネフ書記長の間で口頭でもって、この未解決の問題の中には四島の問題が含まれますねということを日本側から確認し、先方が、そのとおり了解されて結構です、そういうふうに答えられたわけでございます。そういう口頭了解がございますので、その日頭了解とあわせて全体を見ますと、この四島を含めて未解決の問題を解決するために交渉を行うということが読めるというわけでございます。
  117. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうしますと、口頭了解につきましては、ソ連側も現在これを認めているかどうか、これが第一点です。この口頭了解というものは、国際法的ないわゆる根拠というか拘束力というものを持つものかどうか、この二点についてお伺いしたいと思います。
  118. 西山健彦

    ○西山政府委員 その後、ソ連は態度を変えてまいりまして、特に七〇年代後半になりますと、例えば具体的に申し上げますれば、七九年の九月でございますけれども、当時のグロムイコ外相は、園田外務大臣に対しまして、日本の立場を受け入れることができず、また根拠のないものである、現在この議論をすることは、日ソ関係の進展に役立つものではない、例えばこういうことを言っておりますし、また八〇年の九月、同じくニューヨークで同じくグロムイコ外務大臣は、我々は島についての問題は審議されるべき問題とは考えない、こういう言い方をするわけでございます。八四年の九月に至っても、なおかつグロムイコ前外務大臣は、安倍大臣に対しまして、私が訪日すれば、日本側はいわゆる領土問題を持ち出すであろう、この問題を持ち出されれば、私としてはもう日本側と何の話し合いもできなくなる、こういう態度を示しておりまして、七三年の共同声明における了解を無視しようと、そういう態度に出てきていたわけでございます。  他方、先生の御質問の第二の点でございますけれども、一九五六年にできましたいわゆる共同宣言というものは、これは日ソ両国間の批准を経ました正式な政府間の約束でございまして、これを一方的に政策的な意図の表明をもって無効にするというようなことは、国際法上認められないところでございます。
  119. 近江巳記夫

    ○近江委員 一九五六年のこれは無効にできない、これはそのとおりだと思います。私が言っておるのは、口頭了解というものにつきまして、いわゆる国際法的な根拠とか拘束力を持っておるかどうかということを聞いておるわけです。答弁してください。
  120. 小和田恒

    ○小和田政府委員 近江委員の御質問の点につきましては、一般論として申し上げますれば、口頭の約束でありましても、国際法上拘束力を持つということはございます。ただ、先ほど欧亜局長から御説明をいたしましたように、この七三年の経緯につきましては、その後ソ連側がそういう了解そのものを無視しておるという状況がございまして、何分物が口頭了解でございますので、その点で日ソの主張は食い違っておる、こういう現況にございます。
  121. 近江巳記夫

    ○近江委員 先ほど御答弁ありましたように、この口頭了解は、明確に四島である、しかもまだ、一般論として国際法的にも拘束力を持つものである、ただし、ソ連の出方は非常に厳しいものがある、こういう御報告があったわけでございます。もう一遍確認しておきますが、四島ですね、口頭了解のときは。もう一遍答えてください。
  122. 西山健彦

    ○西山政府委員 そのとおりでございます。
  123. 近江巳記夫

    ○近江委員 いろいろお話聞きましても、この北方領土の問題は非常に厳しいということを感じるわけでございますが、いずれにいたしましても、この問題は国民の理解と支持を得て粘り強く展開しなければならない重要な問題であろうかと思います。そのために、政府もできるだけ情報を国民に提供していただく、そういう姿勢で終始していただきたい、このように思います。  総理は本会議答弁で、今度はゴルバチョフ書記長が来日する番である、ただし、国民が喜び、意義をもたらす結果が得られるならば、訪ソも考慮するという旨の答弁をされたわけでございます。この総理が言われる国民が喜び、意義をもたらす結果というのは、具体的に何を指すのか、なかなか難しい問題であろうかと思います。もちろん領土問題の前進はそれだと思いますが、そのことは、一九五六年の日ソ共同宣言が確認される、この線まで戻れるなら訪ソしてもよいというようなことも伝えられておるわけでございますが、この点につきましては、どのようにお考えでおられますか、見解をお伺いしたいと思います。
  124. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 一九五六年の日ソ共同宣言というものを頭に置いて言っておるのではありません。あれは共同宣言として正式に成立しておるもので、もう当たり前のことで、既成事実であります。今までの私の言動及び国民の大きな悲願から考えれば、領土問題において日本側の主張が入れられて、この問題が国民の目の前に明らかに大きく前進する、四島返還が大きく前進する、そういうようなことが示されれば、これは国民が大いに喜ぶ、そういう問題ではないかと私は考えております。  ここで念のために申し上げたいと思うのですが、五六年の共同宣言を発しましたときに、念のために領土問題、四島返還問題に関しては、松本・グロムイコ交換公文が実はあるわけであります。この松本・グロムイコの交換公文におきましては、そのことを確認しておるわけでございます。  これを読んでみますと、領土問題を含む平和条約の締結に関する往復書価として「日本国政府全権委員からソヴィエト連邦第一外務次官にあてた書簡」としてありまして、そして「書簡をもって啓上いたします。本全権は、千九百五十六年九月十一日付鳩山総理大臣の書簡と」云々というところから始まりまして、「この交渉の結果外交関係が再開せられた役といえども、日本国政府は、日ソ両国の関係が、領土問題をも含む正式の平和条約の基礎の下に、より確固たるものに発展することがきわめて望ましいものであると考える次第であります。これに関連して、日本国政府は、領土問題を含む平和条約締結に関する交渉は両国間の正常な外交関係の再開後に継続せられるものと了解するものであります。」云々、こう言っている。それが松木俊一全権の五六年九月二十九日のグロムイコ外務次官に対する手紙でございます。領土問題を含むということは明確に言っているわけです。  これに対して、グロムイコ第一外務次官から松本全椎に対して九月二十九日に返事が来ておる。これは、「これに関連して、日本国政府は、領土問題を含む平和条約締結に関する交渉は両国間の正常な外交関係の再開後に継続せられるものと了解するものであります。」というその松本全権の手紙を引用いたしまして、「これに関連して本次官は、ソヴィエト社会主義共和国連邦政府の委任により、次のとおり申し述べる光栄を有します。すなわち、ソヴィエト政府は、前記の日本国政府見解を了承し、両国間の正常な外交関係が再開された後、領土問題をも含む平和条約締結に関する交渉を継続することに同意することを言明します。」こういうふうに外務次官から正式の返事が来ておるわけであります。  この往復文書を見れば、外交関係が回復された後も、領土問題を含む平和条約締結交渉に向かって努力し合う、そういうことが確認されておるのでありまして、これは、前のこの外交関係が回復された、それは共同宣言によるわけです。国連加盟やらみんな認められたわけであります。そのとき向こう側が歯舞、色丹、そういうようなことを言ってきたけれども、こっちはそれを受け付けなかったわけであります。それでこっちは四島を主張してきた。そして外交関係が再開された。今や領土問題を両方で継続して解決するために努力するというその過程にあるのでありまして、現在の基礎ベースというのは松本・グロムイコ外務次官の往復書簡、これは正式の公文書でございますから、その上にあるということは明確であると考えておる次第です。
  125. 近江巳記夫

    ○近江委員 領土問題につきましては、総理も非常に強い決意を持って今日臨んでいらっしゃるわけでございますが、この領土問題で何らかの進展がなければ、もう訪ソしても仕方がないではないかと言われているわけですけれども、その点、総理はどのようにお考えですか。
  126. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは本会議でも委員会でも御答弁申し上げているように、外交慣例からすれば、日本の総川大臣は四人も既にモスコーに行っておる、向こうからは一人もいらっしゃらない。そういうことを考えると、向こうからいらっしゃるのが今度は筋であって、おいでになれば大歓迎いたしたいと思います。そういうことを私は申し上げておるので、その外交関係の筋を追ってこれは進められるのが普通である、そういうふうに考えております。
  127. 近江巳記夫

    ○近江委員 ことし外相は訪ソされるかどうか、この予定が第一点。それから、北方の墓参の実現の見通しについて、どういうように考えておられるか。これが二点です。それから第三点目に、年内にゴルバチョフ書記長の訪日要請を行うかどうか。これが三点です。  以上、三つの点につきまして御答弁をお願いしたいと思います。
  128. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私の訪ソにつきましては、共同声明にも明らかなように、日ソ両国で確認をいたしております。引き続き平和条約交渉を行う、こういう観点から、ソ連側も歓迎するということでありますから、時期を見て訪ソしたい、こういうふうに思っております。  なお、その際、今お話のありました北方領土の墓参問題につきましては、私も交渉の中で、ぜひとも近いうちに、人道的な立場から、北方領土に住んでおった日本人が墓参ができるような、そういう配慮をしてほしいということを強く要請をいたしまして、これに対しましてソ連外相から、領土問題というものを離れて人道的立場から、日本側の要請に対しては検討をいたしますということになっております。私としましては、ぜひともこの問題は早急に解決をしたい、こういう熱意を持っておりまして、そういう意味でも訪ソして決着をつけたいものだな、こういうふうに考えておるわけであります。  なお、ゴルバチョフ書記長の訪日要請につきましては、既に私からも申し上げておりますし、また、中曽根総理からもシェワルナゼ外相に対して要請をいたしております。
  129. 近江巳記夫

    ○近江委員 次に、経済問題についてお伺いしたいと思います。  まず、経済の見通しなり状況でございますが、一昨年の中小企業を中心とした企業の倒産は二万件、負債総額は三兆円、昨年は一万八千八百件、そして四兆三千億ですか、非常に大きな記録を示したわけでございます。昨年秋からの円高等によりまして、企業も非常に厳しい状況に立たされております。特に輸出に関係する中小企業等が、非常に厳しい状況に今なっております。もう総理も御承知のとおりでございます。  今、本年度予算審議しておるわけでございますが、政府見通しては実質四%ということでございまして、民間の調査機関、四%以上出したところはどこもないのですね。もう御承知のとおりです。政府だけが一番強気であるということでございまして、現実は、特にああいう地場産業のところに行きますと、一体このままでいけばどうなるかという非常な心配をするわけでございます。先般私も、新潟県の燕市、また岐阜の多治見市、これも見てまいりまして、つぶさに現地の状況も聞かしていただいたような状態でございます。そういう点で、今年度政府が計画されております実質四%の成長が本当にできるかどうか、これは非常に大きな疑問でございます。世界経済の牽引車であるアメリカの景気という問題につきましては、悲観的な見方、あるいは、原油の値下がり等もあり、案外いいんじゃないかというような見方もあるわけでございまして、まだ先行き明確な見方ということはできないと思いますけれども、そういう点でことしの景気というものがどうなるのか、政府の四%のこれが本当にできるのか、非常に心配しておるわけでございます。  そういう点で、まず今年度本当に政府の四%のこれが達成できるのかどうか、その点につきまして、本委員会でもしばしば問題が出ております。減税がない、公共事業も本当に横並びである、それじゃ実際に政府がプラスする要因はないじゃないか。個人消費だって、実際に減税もない中で一体喚起できるのか。また、春闘につきましても、財界を中心に非常に厳しい見方をしておりますし、こういうことで個人消費が伸びるかどうか。あるいはまた、そういう見通しが暗い中で、民間の設備投資等も本当に力が入るかどうか。住宅もそうでございます。そういうことから見ていきますと、決して明るい材料というのはないのですね。ただ原油が下がってきた、あるいはドル高是正で原材料の輸入が少し安くなるとか、そういうことでございまして、国民は非常に不安を持っておるのです。その点、今年度の景気、この見通しについてどのような見方をされているか、まずお伺いしたいと思います。
  130. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 おっしゃるとおり、政府見通しというのが民間の見通しに比べると強気ではないか、こういうお話でございますが、我が方といたしましては、現在の経済状況というものをずっと勘案してまいりまして、また殊に昨年の十二月の二十八日に政府でとりました内需喚起のための新しい施策、殊に住宅減税、また設備投資減税、そういったものも含め、さらに予算案の中において極力盛り込みました公共投資をふやすやり方、こういったものを全部含めまして、四%はいけるのじゃないか、この点につきましては政府部内が一致した意見でございます。この点は特にひとつ申し添えさせていただきたい。  それから、民間の予測が非常に低いことにつきましては、これは石油ショック以来の逐年の経済成長率を見てまいりましても、ちょっと悲観が過ぎるのではあるまいか、かように考えております。  さらに加えまして、御承知のとおり公定歩合の引き下げ、さらには原油価格の、最近は安含みになっておるということ、さらには円高傾向、こういったもののメリットの面、こういったもの全部を考えますと、年間を通して四%成長ができるように政府としては大いに努力をしてまいりたい、必ずできる、かように考えておるわけでございます。
  131. 近江巳記夫

    ○近江委員 政府は四%必ずできる、こういう御答弁でございますが、非常にその点、我々は不安を持つわけでございます。特に貿易摩擦等、これはアメリカ、またEC等を中心にしまして、特にアメリカは御承知のように中間選挙もございますし、今非常に火の手が上がってきております。  この五月、サミットがあるわけでございますが、今の政府が、ただこの予算案を通過させて、これでサミットをお迎えになられるのか。今経企庁長官は、四%絶対やるんだ、大丈夫ですという非常に自信のある御答弁でございましたが、政府のこういう予算の中身であり、海外からはこういうような、日本に対する非常な攻撃の火の手が上がることは必至でございますし、このサミットに備えて、それじゃ内需喚起についてもこのように日本は努力をしております——ただ円高の、そういう為替だけの是正でこんなものは解決できる問題じゃないわけですね。少なくとも先進国の首脳が集まるわけでございますし、日本としては、厳しい財政状況の中であるけれども、これだけの努力をやっていますよと、やはりそれは示さなければならないと思うのですね。  ただそういうポーズだけではなく、実際に私は四%、こんなものいくのかどうか、非常に大きな疑問を持っております。特に、今申し上げた地場産業とかはそういう状況ですし、ほとんど新規の成約なんかありませんですよ、値段が折り合いませんし。そうなってきたら、各地域において公共事業でもしてあげてそういうような仕事を出すとか、いろいろなやっぱり何らかのてこ入れをしなければならぬわけです。例えば、今年度予算編成ができましたら、公共事業の前倒し等をどういうように考えておられるのかとか、いろいろなそういうめり張りのきいた何らかの対策を打たないと、私はちょっと失速すると思うのですよ。この点についてはどのようにお考えですか。
  132. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは特命相としてお答えをするわけですが、かねてから総理からも、この民需の引き出し等については厳しいお指図があります。  国際経済摩擦については、これは総理も何遍も御答弁しておられるように、にわかの効果はあらわれませんが、私は、円高の一番厳しい場面、これは今だというふうに思っております。ですから、通産省等においても、中小企業庁が中心になってきめ細かな対策をしておりますし、これはやはり十分フォローしていかなければなりませんね。しかし、円高というのは、結論においては決して悪いことじゃない。特に内需に貢献する民間消費というものは、円高のときを見ておりますというと、下半期においては必ずいい結果になって、非常に消費が活発になっておるのが従来の例であります。そういう意味からも、私は、円高は今は苦しい、これはにわかの円高ですから、本当に苦しい、これはもう察するに余りあるものがあります。だから、この対策さえ誤らなければ、必ず将来は明るい見通し、特に国民消費というものは相当期待できるんではないか。  それからまた、内需をどう振興させるか、また、特に民間活力をどう引き出すかということについては、これは長くなりますから簡単にしておきますが、東京湾の横断道路、これも六十一年度から着手。これも八対二、いわゆる八〇%が民間、二〇%が公団ということですね。明石海峡は、御承知のようにもう二年間休んでおりましたから、予算が通ればいつからでも直ちに着工できる態勢です。これも八〇対二〇というパーセンテージで民間活力を引き出す。むしろ民間の応募が多過ぎる。関西国際空港しかりですね。こういうものが十六プロジェクトあるわけであります。こういったものが既に今の四%のうちの一・三%ぐらいは貢献するであろう、こういう積算を十月の段階で立てておるわけでございます。などなど、特に今、私本当にこの予算委員会の最中も各省庁の大臣と話し合いをいたしまして、何とかして規制緩和をして、本当に民間の活力をどう引き出していくのか。  特に、この間も行政監察局長会議が全国規模で、総務庁で開かれましたときに、政令都市において、その都市の中心部に工場を持っておる地域というものをよく地方通産局などと話し合って精査しろ、そして三月までにしかるべき回答を求める。これらは恐らく郊外に、より新鋭の工場をつくりたい、現在の土地がアップしておりますだけに、そういった希望が相当あるであろう。これは何も東京ばかりじゃない。だから政令都市を中心に通産局とよく打ち合わせて監察しろ、こういう指令を出した次第です。  それからまた、摩擦解消についても、これは、アクションプログラムというのはやはり総理大臣が本部長になって、もう待ったなしの形で世界に公約をした、思い切った措置であったというふうに思います。現段階の日本経済としては相当思い切ったことをやったわけで、特に皆さんの御協力で一月一日から関税の引き下げをやって、平均をすれば世界で一番関税の低い国になったということ。そしてまたOTOなどにつきましても、これをもっと権威づけたらどうだ。目下特命室及び経企長官とも相談をいたしまして、そして外国の苦情処理にも、また日本市場へのアクセスにも支障を来さないように速やかに対策をしていこうではないか。もうこれはすぐ手を打たなければならぬ。これはやはり議論ではなくて実行が第一ですから、私どもそういう気持ちで一日一日を本当にもどかしく考えながら、また一日を貴重に考えながら先手を打っていこう、こういうふうにしておるところであります。  このことによって、それじゃ一体どれだけこのインバランスが解消されるかとおっしゃられると、大変辛い面があります。それは、円高のために、特にまた石油の大変な安値といいますか、十ドルの声も聞こえるであろうなどという消息が外国から伝わってくるような状況であります。そういうことがインバランスを一層大きくいたしますが、しかしこういった問題については、ある程度話せばわかるわけです。  それから、もっと私は国際分業というものを——アメリカとの間でも、現在三分の一強がまさにアメリカの単独の製造製品、それからOEMと称する、アメリカのブランドを用いた合弁企業の輸出、それから部品、それからアメリカではほとんど生産していないが、アメリカの必需品の商品の輸出、こういったものが三〇%強なんですね。これはもうまさに、水平分業がアメリカとの間でもできておるわけでありまするので、今後の企業進出などと相まちながら、そういった面の話し合いを具体的につけていくことも、摩擦解消の上には大きく役立つであろうということで努力をしておるところであります。
  133. 近江巳記夫

    ○近江委員 国には金がない、民間には金がある、これをどのように活用していくか。私たちも、苦しい現場のそういう業者の人からもいろいろ話を聞きますけれども、これは政府の政策によってこれだけの非常に急激な円高に持っていかれるわけです。我々は犠牲者である、そういう非常に強い怒りの声が聞かれるわけであります。怒っておられるのですから。大蔵省にはもう金がない、経企庁には知恵がない、通産省や建設省にもビジョンがない、二十一世紀を目指して一体どうするんだとか、懇談会でいろいろなことが出てきますよ。今江崎さんが特命相としていろいろその辺に心を砕いておられるわけでございますが、政府にはやはりすばらしい方がいるんだから。いろいろな答弁を聞いていますけれども、なるほどと、ぱっと目の覚めるような答弁が余り聞けないんですよね、実際上。もっと真剣にひとつ取り組んでいただきたい、このように思います。  アクションプログラムも実際、これは非常にすごいことをやったんだとおっしゃっているわけですけれども、海の向こうから見ていますと、いろいろやっていたって、数字はこんな四百九十七億ドル、五百億ドルじゃないか、貿易摩擦にしたって、何にも減っていないじゃないか、結局結果論で来るわけでしょう、これは。ですからその点、これはサミットもあるわけでございますし、アクションプログラムにつきましては実施状況を総点検されるのですね。この点が一つと、それから予算成立と同時に公共事業の前倒しもされるかどうか、この二点をお伺いいたします。     〔原田(昇)委員長代理退席、委員長着席〕
  134. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 アクションプログラムにつきましては、新聞などにも報道されておりますが、一昨日、特命室、それから規格基準・認証を担当いたしました我が総務庁、一斉に再点検をすべし。それから、もう一度繰り返しますが、今のOTOをもっと権威づけて、そして相談のしやすい窓口にするためにどうするかということを、経企長官と目下協議中でございます。  前倒しについては別の大臣からお答えいたします。
  135. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる公共事業の前倒し執行の問題でございますが、通常、国会の衆参両院を通じた意見を参考にし、そして予算が通過した翌日、執行方針を決めるというのが慣例でございます。  私なりにいろいろ考えておりますと、事業費にして六千億を、今度御審議いただいております補正予算の中で債務負担行為を認めるということになりますと、それが一つの下支えになりまして、あるいは自然体でも相当なことになるかもしらぬ。そしてまた財政投融資、公社公団等につきましては五〇%までの弾力条項というものもあるわけでありますが、そうなるとまた、その消化能力も勘案しなければならぬと思っておりますが、きょうの近江さんの、特に五十二年、五十三年の円高対策でとった施策の一つに、公共事業の大幅追加がございました、そういうことを念頭に置いての御質問だと思いますので、この前倒し執行等の問題については、今の御意見等を十分に勘案いたしまして、最終的には予算通過翌日ぐらいに決めさせていただきたい。  こいねがわくは、それに当たりましては、その予算の執行ができるように、補助率に関する法律案も通していただくように、この際お願いを申し上げておきます。
  136. 近江巳記夫

    ○近江委員 この円高、為替の問題でございますが、メリットもあればデメリットもある。しかし、メリット自体がまだまだ還元されていないのですね。これはひとつ物価の問題としまして、製品輸入等をやはり実際に強力に展開してもらわなければいけないと思うのです。この点につきまして、ひとつ担当大臣、お答えいただきたいと思うのです。
  137. 平泉渉

    ○平泉国務大臣 先般本会議で申し上げました経済演説でも申しておりますけれども、円高のメリットが流通過程の中で変なことにならないように、着実に国民生活に還元されるように、特に最善の注意を払って努力をしてまいる。殊に産業の基礎物資であるようなものにつきましては、最終的にその利益が需要者、消費者に還元されるように、私ども経済政策当局としてはあらゆる努力を払ってまいる所存でございます。
  138. 近江巳記夫

    ○近江委員 その陰にあります特に地場産業等につきまして、政府としては、特に商工委員会に今回新法をお出しになる、こういうことで、我々も即それが実行できるように、委員会でも早急な取り組みをしなければならぬ、このように思っておるわけでございます。その他金融の問題とかいろいろ手を打っていらっしゃるわけでございますけれども、しかしなかなかそういうことで対処できないと私思うのですね。非常にまだまだ政府の対策というのがなまぬるい、このように思うわけでございます。  時間もなくなってきまして非常に残念なんですが、あとポイント、ポイントをお聞きしたいと思います。  中小企業の問題一つ見ましても、私が非常に残念なのは、一般会計の予算を見ますと、中小企業対策費はマイナス五・一%、あとやっといわゆる産投会計中小企業対策予算、それと石特会計中小企業対策予算、産投会計の方から百十億ですね、石特会計から一億引っ張ってきて、そして全体としてやっと昨年よりも一億だけふえた。問題はやはり一般会計の予算ですよ。これは連続してマイナスですよ。政府は、そのように苦しんでおる中小企業等に力を入れておりますと言っておりますけれども、実際はそういうことなんですね。いろいろな金融やなんと言ったって、これは借金なんですよ。ただでくれる金じゃないのですよね。今、確かに苦しいから金がかかるけれども、返す当てがないような状況でしょう、結局。だから、一般会計においてこういう中小企業対策というものはうんと組んでおくべきなんですね。こういう点が政府は、口と実行がちょっと違うんじゃないかと私は思うのです。陰で苦しんでいる中小企業者に対して、やはりもっと対策をとっていただきたい、このように思うのです。この予算編成について何か言うことありますか、通産大臣。
  139. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それは多ければ多い方がいいわけなんですが、大蔵省は全体を見まして、社会保障のこともあればいろいろあるわけですから、私もやったことはあって、その御苦労はよくわかっておるんです。そういう厳しい財政事情の中でもありますが、できるだけ知恵を絞って融資その他を組み合わして、それで今度の予算を編成をしたわけでありますから、私はこれが一番やむを得ない、最善のものである、そう思っております。
  140. 近江巳記夫

    ○近江委員 大蔵大臣を経験した渡辺さんとして、同情しながら結局大蔵大臣を振ったというのが今の答弁だと思うのですけれども、ひとつ今後いろんな形で、予算案はもうこうなってしまっておるわけですから、我々できれば何とか修正でもしてもっとつけてもらいたい、こう思うわけでございますが、まあ、いろんな形でバックアップができると思います。  例えば通産省のそういう実情調査にいたしましても、何か基準だけを設けてそこだけを調査するとか、あるいは下請の状況につきましても、親企業の方で調査資料を出して吸い上げる。実際に潜り込んで、下請が本当に単価を切られ、いろんな点で削減もされ、あるいは長期の手形で苦しんでおるとか、そういう生々しい調査の、本当に入っているという姿がないんですよ。上からの調査なんです。ですから、そういうことではだめなんですね。本当のものをつかんだ上での、例えば下請企業に対する対策なり、また親企業に対する注意、監督にしても、そういうにじみ出るものが要るんです。政府に欠けているのはそこなんですよ、今。  ですから、そういう形式的な調査とかそういうことはできるだけやめてもらいたいですね。本当にやはり何カ地点でも一斉に調査しなくてもいい。ポイント、ポイントにぱっと飛び込んで、本当の生の声をアップして、そして対策をとる、こういういろんな対策を、血の通ったものを今後していただきたい、こう思うんです。大臣、いかがですか。
  141. 木下博生

    木下(博)政府委員 円高によりまして影響を受けました中小企業の産地につきましては、昨年の十月、十一月、それから十二月から一月にかけて三回調査を実施いたしておりまして、その調査を実施するたびに新規契約の締結状況が悪いというような、それからまた、資金繰りが非常に悪くなっているというような状況が出ておるわけでございます。したがいまして、そのような状況を踏まえまして、今般、国会に提出させていただいております特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法をできるだけ早く通していただいて、金融面の対策、税制面の対策を中心に、対策の強化を図ってまいりたいというふうに考えております。  それから、円高によりまして、下請中小企業者に対しいろいろと下請代金のしわ寄せ等の影響が出ておるんではないかというような感じもいたしますので、昨年の十一月から十二月にかけて以来、たびたび親事業者だけではなく下請企業者を含めまして、調査を実施しております。  それと同時に、下請代金支払遅延等防止法という法律がございまして、それによりまして公正取引委員会と協力いたしまして、関係事業者の悉皆調査を毎年実施しておるわけでございますので、そういうものを中心にいたしまして、下請代金のしわ寄せ等の実態がありましたら、十分に法律に基づいて措置をやっていきたいというふうに考えておる次節でございます。
  142. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう時間が余りありませんので、この円高あるいは原油の値下がりによりまして非常に大きな差益分、あるいは原油の下落分に対しまして膨大な額が上がってきております。  これはいろんな計算方式があると思うのですけれども、私自身が算定した数値でございますが、仮に四十円の円高、一バレル七ドルの原油価格の下落で一年間推移した場合、単純に試算をいたしますると、石油業界で差益分が一兆二千億、それから原油の下がった分、これが二兆一千億、計三兆三千億。電力業界で差益分、これが四千八百億、下落分で五千六百億、計一兆四百億。ガス大手三社業界で差益分が五百六十億、原油の落ちた分が六百三十億、合計千百九十億、こういう数値が出るのですよ。これはもう大変なものでしょう。  この還元につきまして、これはやはり今いろいろな意見はあるのです。前回やったときは二百七十円しか返らなかった、どこへ消えたがわからないという、確かにそういう声もありました、そのかわり、またそれから上げるときはすぐにまた上げたというような。果たしてそれがよかったのかどうか、いろんな意見の分かれるところでございますが、少なくともこれだけの膨大な利というものがあることは間違いないわけですよ。国民注視の的なんです、今。  これに対して、どのように政府国民が納得する還元の仕方をするか、非常に大事な問題でございます。これにつきまして、政府としてはどれだけ今知恵を出しておりますか。どれだけ政府としては、今の見通しですね、差益分、原油の下がった分、どのぐらいのあれを見てどういう対策で国民にこたえようとしておりますか、それについてお答えいただきたいと思います。
  143. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 円高になったのは御承知のとおり去年の秋から、原油の方は去年の十一月、十二月の平均というのは約二十八ドル弱ですから、これは一月になってから急激に安い話が出てきたということで、現実に全体がどんと安く入っておるわけじゃありません。しかし将来はもっと安くなるんでないかということがうわさ、取りざたをされている、これも事実。  しからば幾らで安定するのか、幾らまで下がるのかということは、時間がたってみないと実際わからない、これも実情です。一カ月ぐらいじゃわからぬわけですからね。ですから、これは慎重に、よく注意深く動向を追跡的に監視をしていきたい、そう思っております。  幸いに円高の方は、一方において困ったという話がありますが、一方においては輸入物資が安くなってよかったという話があるわけです。これも幾らで落ちつくのか、本当に二百円で落ちつくのか、百九十円台になって落ちつくのか、ここらのところももう少し私は様子を見る必要がある。  そこで、国内にはそれは円高によってもうかった業種、もうかるであろうと思われている業種と、円高で注文もなくなってきたという業種が出てきておって、片っ方は恐らく減収になるような予想でしょう。片っ方は増益になるような予想だ。そういうことになりますと、これから幾らぐらいの数字がということはまだ把握できない、実際のところは。いろんな前提を条件にして考えると、いろんな数字が出ます、それは。しかしながら、確たる数字をまた申し上げられる段階にはない。  ただ、為替レートが十円変化すれば、電力会社九社で千二百億前後の影響があるだろうとか、ガス大手で百四十億程度の影響があるだろうとか、そういうことは一応仮定の問題として推測できます。ですから、もう少し様子を見まして、三月になれば決算期になりますし、五月には大体状況がわかる、世界の様子もわかるということになってまいりますので、現在野にもう手に入ったわけじゃないわけですから、これからどう還元し、どうしていくかということについては、まずこの景気問題というようなものも頭に一つ入れなければならぬでしょう。それから、皆さんのいろいろなこれからの御意見があろうかと思いますが、そういうような問題も頭の中に入れて、一番役立つようなやり方というものを考えていくことがいいだろうということで、御意見があればどんどんお教えをいただきたい、そう思っております。
  144. 近江巳記夫

    ○近江委員 もうそろそろ時間でございますので終わりたいと思いますが、いわゆる国民が納得する案というものを、国民の中からもいろいろな知恵、案も出るでありましょうし、しかし何といいましても、やはりそれをまとめておるのは政府でございますし、しっかりとそうした点、いい案を出していただいて、国民の納得できるそういう還元の仕方というものを十分ひとつ実行していただきたい、このことを強く要望いたしまして、終わりたいと思います。
  145. 小渕恵三

    小渕委員長 これにて近江君の質疑は終了いたしました。  次に、井上一成君。
  146. 井上一成

    井上(一)委員 「天上天下唯我独尊」と、総理が施政方針の中でお釈迦さんの言葉を引用された。私は仏教徒の一員として、大変意を強くいたした次第であります。かけがえのない人間性の尊厳を高らかにうたわれた。さらに、人類が長い時間をかけて到達し得た万民平等の宣言だと、私はこのように受けとめているわけであります。  この言葉を総理が引用された、それは差別をなくし、すべての人間のひとしく人間として尊重される社会の実現に向けての強い総理の決意だ、このように受けとめるわけでありますが、いかがでございましょうか、総理からその意をここで確認をしておきたいと思うのです。
  147. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 井上さん御発言の同じ趣旨で申し上げたのでございます。  最初の方の、「天上天下唯我独尊」と言うと、ひとりよがりの、自分だけ偉いんだというふうにややもすれば解釈されますが、お釈迦様がああいったことを言ったというのは、たしか阿含経に載っておるので、その趣旨は、人間の価値のとうとさ、尊厳性をまず生まれたときから宣下した、そういうふうに言われておる。「唯我独尊」という言葉をややもするとひとりよがりというふうにとられますが、東大の中村元名誉教授、宗教学の大家等は、そういうふうに人間性の尊厳性を喝破したと言われておるのであります。  それから、「山川草木悉皆成仏」というのは、正式の仏典にはない言葉であります。ですから私は、仏教思想によるとと、そう言ってあるのです。仏典にありそうな言葉は、涅槃経から由来している「国土」という言葉があるわけです。「草木国土悉皆成仏」、そういう言葉であります。それは私も知っておったのでございますが、しかし、「国土」というとテリトリーというふうに英語で翻訳される、そうするというと非常に概念が狭くなる。大自然ということを意味したかった。そういう意味において「山川草木」というふうに、これも言葉として読んだことがありますので、そっちの方を使わしていただいた。これは宇宙万有すべて兄弟である、そういうような天地の根源に基づいてみんな共生共存している、そういう兄弟であるということを申し上げました。片方では、人間の価値の尊厳、独立性ということを言い、片方では兄弟である、ちょっと矛盾するようでありますが、しかしこれを創造的に、行動的に矛盾しないで成立させる、そこに仏教の大きな偉大な真理がある、そういうふうに考えたわけであります。
  148. 井上一成

    井上(一)委員 さらに、今総理からもお話がありましたけれども、確かに「山川草木悉皆成仏」とあなたは言われたわけでありますけれども、これは「草木国土悉皆成仏」、そしてさらに「一仏成道鶴見法界」、この言葉がついて「草木国土悉皆成仏」、こういうことになるわけです。肝心なところを総理は抜かされているわけなのです。私は、慈しみの慈悲の心を持って政治をうまくやれば、宇宙、大自然の中で生あるものはすべて生かされていく、そういうことがやはりお釈迦様の説かれた言葉だと理解をするわけです。私は、特に十分御理解をいただきながらこの言葉を引用されたということなので、日本国憲法の前文そのものが世界人権宣言の精神にほかならないと思いますし、この世の中でなくすべきは核と差別だ、守るべきは平和と人権であるという私の政治理念にもまさしく合致している。そういう意味では、あえて今回の施政方針に総理がお釈迦さんの言葉を引用されたということには、私は、期するところがあるというふうに理解をしています。  いつか私は、フランスのミッテラン大統領と奈良を御一緒に訪ねたことがあります。そうして聖徳太子の十七条の憲法の第一条「和をもってとうとしとなす」、こういうことを申し上げて、大統領は日本へ国賓で来られたときに日本の国会で日本語でそれを演説をなさったわけであります。私は、まさしく世界平和、人類皆兄弟だ、その理念に立つならば、千三百年前、聖徳太子が説かれたその中の十条の言葉を総理自身かみしめてほしい、こういうふうに思うわけであります。  詳しくは私から申し上げませんけれども、それぞれいろいろな意見があり、考えの違いがあったとしても、平和を求めての行動は常に慎重であってほしいし、独断専行してはいけない、常にみずからを戒めながら多くの力をそこに集めていく、強いリーダーシップが必要ではないだろうか、私はこういうふうにも思うわけであります。あえてこのことを、特に仏教思想という、東洋の精神だと私は思っているわけなのです。お釈迦さんの教え、家族主義思想だと私は時には言いかえます。そのことが今政治に求められているものであり、そのことを抜きにして私たちは生きていくことはできない、こういうふうに思うわけです。  宗教、仏教といえば京都、京都といえば古都税、さらには拝観停止、いろいろな社会問題が起こっています。私は、今ここで地方自治体がお決めになられたことに言及をするつもりは毛頭ありません。今日、有名社寺が拝観停止の状況に置かれているということに心を痛めているわけであります。一部報道によれば、清水寺の貫主様、その方自身も宗教者として大変心を痛めている。私は一日も早く拝観停止というこの状態を正常な状態に戻してほしいと願っているわけでありますが、総理、この問題について、ぜひ総理も何らかの形での御努力を私はお願いしたいのでありますが、いかがでございましょうか。
  149. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 地方自治体の紛争について中央政府として介入する意思は毛頭ございません。地方自治の本旨をあくまで尊重してまいりたいと思っておりますが、しかし、京都にあるお寺の庭や文化財というものは結局は国民全体の大事な宝である、しかも文化公開、そういうことが文化財に対する基本的考え方でなければならぬと思っております。一寺院が所有して一寺院のみのものという狭い考えに立つべきものではない、全国民の財産であり、文化は公開せらるべきである、そういう原則を我々は考えていかなければならぬと思うのであります。  また門前の商店街や環境観光関係の産業の御苦労を考えてみますと、この今のような梗塞された状態はできるだけ早期に解決されることが望ましい。関係者の皆さんのお話し合いによりまして、そうして合理的に解決されることが望ましい。いろいろ観光シーズンを迎え、あるいは学生たちの修学旅行等で京都のあの大事なお寺の宝や庭を拝観することは民族文化というものを確かめる上においても非常に大きな、大事な仕事になってきていると思うのであります。それが、門が閉ざされたままというのは余りにも悲しい事実でございまして、これが余りにも長く続くということは、私は、これは関係者皆さんでお考え願わなければならぬことである、そう思っておるのであります。  そこで、具体的にどういうふうに出たらいいかわかりませんが、もしそういう関係者の側におきまして文部大臣なりあるいは自治大臣なり我々でお役に立てて話し合いがうまくいくというような情勢があるならば、我々もそれぞれの者に研究させてみたい、そう思っておる次第でございます。
  150. 井上一成

    井上(一)委員 総理から前向きに問題解決に御努力をいただけるというお答えがあったわけでありますが、せっかくでございますので、海部文部大臣、ひとつ文部大臣としての御所見、お考えをこの機会に承っておきたい、こう思うのでございます。ひとつ文部大臣も御努力をいただければ大変ありがたいと私は思うのでございます。
  151. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 基本的な方向は総理大臣が詳細お答えになったとおりでございますけれども、文部省の立場からいいますと、やはり仏教文化、歴史を知る上においても非常に大切な民族文化は多くの方々に見ていただきたい。国民の間には、これを見ることを心の楽しみにしている方もたくさんあるし、修学旅行もございます。またこのごろでは、外国からの観光客も日本の文化に触れるために多く訪れられるわけでありますから、これが多くの人々に一日も早く公開されることは大変望ましいことであると判断をいたしております。  ただ、御指摘のように、地方自治体をめぐってのいろいろな背景がございまして今日こうなっております。それに私は今ここで直接どうのこうのと介入することはできませんけれども、でき得る限りこれが公開されますように、多くの方々の目に触れることができるように、私としてできることがありますならば大いに努力をして、そのような拝観停止の状態が早く解消されるようにしていきたいと考えております。
  152. 井上一成

    井上(一)委員 ひとつぜひ拝観停止、門が開かれますように格段の御努力を願いたいと思うのであります。  私はかつて靖国神社に参拝をいたしました。今日、A級戦犯が合祀されているということは国民には余り知られていないのが現状であります。総理もごく最近お知りになったとお答えがあったわけです。それで、総理が施政方針演説で胡耀邦総書記の四つの意見を評価するというふうに述べられているわけです。後藤田官房長官に私はお聞きをしたいのです。私の記憶では、たしか総務長官時代お一人で参拝をなされたように記憶しております。私は、公式で団体参拝というものはどのように官房長官お受けとめになり、お考えになっていらっしゃるのか、まず官房長官からそのお考えを聞いておきたいと思うのです。
  153. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 私は昨年の八月十五日重要な政務がございまして、総理のお供をして参拝はいたしませんでした。これは大勢が連れ立って行かれようと個々に行こうと、それぞれの国務大臣の御判断の問題であろう、私自身はさように考えておるわけでございます。
  154. 井上一成

    井上(一)委員 それでは官房長官、団体参拝は、いわゆる公式ですね、問題がないとお考えなんでしょうか。
  155. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 いわゆる公式参拝というのは、国務大臣の資格で参拝をするかどうか、こういうことでございまして、そういった方々が一緒に行かれるとかあるいは個々に行くとかといったこととはおのずから別の問題であろう、私はかような理解でございます。
  156. 井上一成

    井上(一)委員 私はきょう、内政的な視点でこの問題を議論するつもりはありません。外交的な視点に立って靖国問題を論じていきたい。  念のために、大変申しわけないのでございますが、四つの意見を総理おっしゃっていただけないでしょうか。
  157. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 四点意見の中で私が一番重要視しておりまして頭の中に残っているのは、やはり日中友好平和条約及び共同声明、あの原点が基礎であるということ、それからもう一つは、両国がお互いに国民感情を傷つけ合わないように尊重し合うということ、この二つが重要であると考えております。
  158. 井上一成

    井上(一)委員 両国の国民感情を傷つけないように、公式参拝は中国の国民感情を傷つける、つけない、どのようにお受けとめになっていらっしゃるでしょうか。
  159. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 八月十五日に私が参拝いたしまして、その後若干時間がたちまして中国側から反応が起きてきたわけでございますが、その反応の中の一つは、いわゆる戦犯、特にA級戦犯の方々が合祀されている、それは日支事変や太平洋戦争の指導者であったではないか、中国にも随分迷惑をかけた元凶ではないか、そういう方々が合祀されているところにお参りするということはいかがであるか、それは国民感情を傷つけるものではないか、そういう議論が中国内に強く出てまいりまして、それは日中友好というものを考えていく上で我々は考えるべき一つのポイントである、そう考えた次第でございます。
  160. 井上一成

    井上(一)委員 外務大臣にお聞きをします。  もし、総理がことし八月十五日ですね、四月には行かないということでございますから、公式参拝することがあったとすれば、外交的に中国との関係はどのようになるとお考えですか。
  161. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 去年の総理大臣以下我々の公式参拝の後、中国からいろいろと反応が出てまいりました。私も心配でございまして、日中外相会談が開かれた際に、中国の外相初め要人の皆様方に、当時の官房長官談話を踏まえて日本政府の公式参拝に対する意のあるところを極力説明をいたしまして、この基本的な考えは決して日中共同宣言を傷つけるとか、あるいはまた四つの原則をじゅうりんするとか、そういうものではなくて、あくまでも戦没者に対する慰霊、そしてまた平和を祈願する、そういう立場に立ったものであって、そういう日本の政府の意のあるところは十分ひとつ理解をしてほしいということを説明をいたしました。     〔委員長退席、中島(源)委員長代理着席〕  これに対しまして、中国側は中国側の国民の感情を傷つけないようにしてほしいというふうな意見が述べられたわけでございます。同時にまた、戦犯の問題、特にA級戦犯の問題についても、これが合祀されておる靖国神社に参拝をすることは、中国の国民の感情を非常に傷つけるものであるという強い姿勢の反発があったわけでございます。  そうした議論を踏まえて、日中関係の外相会談で合意したことは、両国関係がこれまで親密ないい関係にあるので、これを傷つけないように今後とも日中間でこれらの問題を含めて十分ひとつ意見の交換を続けていきましょうということで帰ってきたわけでございます。  中国側は、依然として公式参拝に対しては今も国民感情を傷つけるものであるというふうな基本的な考えを持っておるようでございますが、我々としてはさらに中国とも接触をして、そして日本政府の公式参拝に対する説明をさらに深めて中国側の理解を得るようにひとつこれからも努力をしてまいりたい、こういうふうに思っております。  公式参拝については、総理も言っておりますが、制度として存在をしておることではなく、制度として決まっておるわけではなく、その状況に応じて総理大臣以下が判断をすることである、こういうふうに言っておるわけであります。
  162. 井上一成

    井上(一)委員 大臣、私はやはりいろいろ外交的な分析を聞いているわけで、中国の国民感情に十分気を配らなければいけない。四つの意見というのを評価したことは、そのことだと思うのですよ。それで話し合い云々と言われるけれども、この四つの意見を尊重するということで評価することにおいてこの問題は鎮静化したわけです。だから、八月にもし総理が行かれたら、日中関係は外交的に大変なトラブルが起こるんだ、厄介なことになりますよ、いや何でもないんだ、どちらなんですかと聞いているのですよ。
  163. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これは今後のことでありまして、我々は日中関係、せっかくの関係は傷つけたくない、日本の立場は日本の立場として存在しておるわけでございますから、日本の立場を今後とも中国側に理解せしめるような努力は重ねていかなければならない、こういうふうに思っております。
  164. 井上一成

    井上(一)委員 私は、A級戦犯が合祀されているというところに問題があると思うのです、中国側についても。それで、そういうことが何らかの形できっちりとされなければ、総理がことし公式参拝に踏み切られるということは、外交的立場から考えると大変なことになりますよ、こういう理解をしているのです。外務大臣は、私の持っている理解と同じなのか、相反するものか。
  165. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 この点については、政府としても方針を決めたわけでございます。今後具体的に参拝をされるかどうかというのは今後の問題ですが、我々としては、とにかく日中間で今後とも十分話し合って日本の立場というものも十分理解をしていただかなければならぬ、こういう努力を外交努力として続けていかなければならない、そういうふうに思っておるわけです。
  166. 井上一成

    井上(一)委員 じゃ外務大臣は公式参拝をされますか、しませんか。
  167. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 今後の問題として、政府としての立場を昨年決めたわけでございますから、これは全体的な状況も踏まえてそれぞれ判断をすればいいことじゃないか、こういうふうに思います。
  168. 井上一成

    井上(一)委員 総理が四つの意見を評価するということを明言されたわけなんです。私は、今議論をいたしておりますように、中国側の、特に両国の国民国民感情を傷つけないように、このことに総理も気を配っていらっしゃるわけなんです。A級戦犯の合祀を取りやめない限り公式参拝は見合わさざるを得ないという理解を私はしているのですが、そのような理解で総理、よろしいでしょうか。
  169. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 四点意見の中でも、中国は日中友好あるいは四原則の堅持ということを非常に強く念願されており、特に日中友好が二十一世紀にわたって強く進められるということはアジア並びに世界平和の基礎である、非常に強く強調されており、これは私、全く同感とするところでございます。しかし、過去の歴史に学べという考えもあり、先ほど申し上げましたような両国の国民感情を傷つけないようにいたわり合うということ至言われておる。両国ということでありまして、それは日本側の国民感情もまた先方側には考えていただきたい、そういう立場も我々にはあるわけであります。  私はやはり、例えば今おっしゃった八月十五日の問題につきましては、その前に至るまでの諸般の情勢を総合的によく検討して、その上に立って最終的に判断をしていきたい、そのように考えております。
  170. 井上一成

    井上(一)委員 官房長官、再度大変恐縮ですが、今の議論の中で、内閣のかなめというのでしょうか、官房長官として、やはりA級戦犯が合祀されている限りという前段がつく、条件がつくわけでありますけれども、私が理解をしているその限り、公式参拝は取りやめざるを得ない、それが両国の国民感情を傷つけないことだ、私自身はそう思っておるわけです。いかがでございましょうか。私のこの理解に納得をいただけるでしょうか。あるいはそういう理解を官房長官も持っていただけるでしょうか。
  171. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 靖国神社参拝問題というのは、本来的にこれは内政問題でございます。しかしながら同時に、やはり過去の大戦であれだけの惨害を中国初め東南アジア各国に及ぼしたという以上は、それに対する我が国としての反省もなければならない。そういった立場に立って、中国初め各国から公式参拝についていろいろな御意見がある以上は、それを踏まえながらこれらの国の立場、我が国の立場、これは今後話し合いを十分しながら我が国の真意というものを御理解をしていただかなければならぬと思います。  なお、A級戦犯云々の問題は、これは靖国神社御自身が判断なさる問題であって、これがいいとか悪いとかということを政府の立場においては言うわけにはまいらない。これを言ったら、これはまたそのこと自身がいろんな問題になりますから、その点は差し控えさしていただきたい、かように思います。
  172. 井上一成

    井上(一)委員 私が申し上げているのは、別に宗教法人の人格の中に入ってそれをどうこうせいと言うんじゃないわけなんです。A級戦犯が合祀されている限りは、私が理解しているようなそういう考えに同意されますかという、そのことだけなんです。だから、それを切り離すとか離さないとか、そんな議論をしているんじゃないわけです。そして、内政問題であるということも十分私は理解をしています。しかし、外交的な視点に立って四つの意見を評価されたから、この問題はきっちりしなければ、これはやはり外交上、我が国の外交という基本的な問題として大きな過ちを繰り返すことになる。私は、あえて靖国神社に参拝をいたしましたということも申し上げているわけです。きっちりとしなきゃいけない。官房長官、いかがですか。
  173. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 昨年八月十五日に、政府として従来の政府見解の一部を変更したのですが、いわゆる公式参拝をいたしました。それは個々の靖国神社にお祭りになられている方に参拝というのではなくて、これは私どもとしては、戦没者全体、戦没者を追悼する場として靖国神社がふさわしい中心的な施設である、こういう観点のもとに、そしてまた、遺族の方々がそれを望んでおるという背景を受けて私どもは参拝をいたしたものでございますから、その点はぜひひとつ御理解をしていただきたい。  したがって、A級戦犯云々の問題というようなことは、これは個々の祭神の問題でございますから、私どもとしては、戦没者を奉祀しておる靖国神社が戦没者追悼の場としてふさわしい中心的な施設である、こういう国民的な感情を背景にして参拝したものである、かように御理解をしていただきたい。
  174. 井上一成

    井上(一)委員 河野長官、あなたは公式参拝を団体でされるおつもりですか。
  175. 河野洋平

    ○河野国務大臣 靖国神社に参拝するかしないかはすぐれて個人の心の問題であって、行かなきゃいかぬという、人に強制されて行くものでもないし、行ってはいかぬと言われてやめるべきものでもないと思います。一人一人が自分の心に聞いて行くべきもの、それから形式に余りとらわれる必要はないのではないか、自分自身の心に聞いて、靖国に祭られている方々に頭を下げようという気持ちになれば、静かに下げたらいいというふうに私は考えております。  また、先般の内閣での公式参拝についての見解は、公式に参拝をせいという判断ではなくて、一人一人こういう形式でもいいよという判断であったのではないかというふうに理解をいたしております。
  176. 井上一成

    井上(一)委員 外務大臣に私は重ねて申し上げておきます。  団体で公式参拝することは日中関係を大変な状況に追い込めることになるから、その危惧の念でこの質問はいたしたわけであります。  次に、SDIの問題で少し尋ねておきたいと思うのですが、サミットまでが期限、タイムリミットだとかいろんなことを今まで議論をしてきたわけでありますけれども、レーガンさんとサミットでは会われるわけなのです。総理、サミットを終えてからでもこの決定は十分間に合うんだと、そういうふうに今までの質疑から受けとめてよろしいでしょうか。
  177. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 別にサミットにこだわっているわけではありません。今調査研究を熱心にやっておるところでございまして、調査研究が終わった後で判断をして、我々の方の態度を決めていきたいと思っておるばかりであります。
  178. 井上一成

    井上(一)委員 大体物事というのは、一定のめどを持って取り組まなければいけないと思うのですよ。そういう意味で私は、じゃ一体いつごろをめどにこの問題を決めていきたい、それはどう一無期限でいいというわけにいかぬでしょうし、その点についてはどうなんですか。
  179. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 第一次調査団を出し、また第二次調査団を出しまして、第二次調査団の報告を聞きましたら、かなり詳細にわたって向こうからの説明やら当方からの質問に対する資料とか、あるいは実験上の勉強とか、そういうようなものがかなり進められてきておるようです。いろいろこれに協力、参加という場合に、一体その結果どういう結果が起こるか。例えば権利の問題はどうなるか。ドイツあたりもその点先方と今いろいろ話をしておるようでありますが、そういう諸般の問題等がまだよくわからぬ点も多少あるようであります。しかし、大体大方のいろいろな考え方やあるいは今後の発展性あるいは現在の進歩状況と申しますか、向こう側の考え方、そういうものについては大方、大体調査は今済みつつある、そういう状況に来ていると私は判断しております。
  180. 井上一成

    井上(一)委員 いろいろな、例えば対米武器技術供与の現在の協定の粋の中で可能なのかどうか、あるいは新しいものをつくっていかなきゃいけないのか。それもまた聞きますけれども、東京サミットまでにこの問題について一定の判断をしなければ東京サミットに影響をするのか。いわゆるSDIの参加決定、その態度決定はサミットと関連を持っているのか。全く関連しないんだ、そのような御認識なのか。私は関連するという認識に立っているわけなんです。どちらなんでしょうかと言うんです。
  181. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 関連しないと私は思っています。しかし、調査が済んで判断を下していいというときには判断を下そう、そう思っています。
  182. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃ、参加することは今度は国際政治にはどう影響すると判断されておりますか。参加すること、あるいはしないこと、不参加の場合、あるいは慎重な態度を持続すること、この三通りがありますね。その三通りは国際政治にどう作用していくか、どういう影響があるかという御判断を持っていらっしゃるのですか。
  183. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 当然、国際政治に対する影響というものは出てくるだろうと思います。それは、ソ連は非常に反対をしておるわけであり、あるいは共産圏の他の国々もそれぞれソ連に同調している向きもあり、中国は中国固有の考えを持ってもおります。そのほか第三勢力の国々の考えもあります。そういう意味において国際政治に影響なしとは思わない。  しかし今度は、それに参加するということをもし決定した場合に、それによるまた非常な利益なり便益もあるわけです。科学技術の進歩であるとか、特に非常に大事なハイテクの分野に対する将来的展開あるいは留保であるとか、そういう面もなきにしもあらずであります。そういうあらゆる面をよく考量した上で判断をすべき材料でもあると思っております。
  184. 井上一成

    井上(一)委員 確かに、サミットまでに決定するということは国際政治に波及効果はあると思うのですね。私は、ユーレカ計画——総理はソルボンヌで、日米欧三極親密協調時代をつくりたいという話があったわけです。エアバスも購入を、これは政府の機関じゃありませんけれども、購入を取りやめた。あるいはこのSDIの問題についても、共産主義諸国という枠だけでなく、やはりユーレカ計画を持っている欧州の一つの思惑というのでしょうか、そういうこともあるわけなんです。  私は、SDI参加を決めなくてサミットが成功するなんて、私自身は判断しない。しかし、慎重であってほしい。だから、ロン・ヤスだという親友であるレーガンさんがお見えになって、参加要請を受けている唯一のまだ回答を出していないのが我が国でありますから、そういう意味ではやはりアメリカは我が国に対して期待をしているだろう。片面、フランスはこのことについては非常に日本の対応を見守っている。そういう中での判断だから、技術的な問題もさることながら、大変政治的に苦慮なさっていらっしゃるのではないだろうか、僕はそう思っているわけなんです。そういうことがサミットと関連していく、だから、サミットの成功のためにより慎重であってほしいという私の考えです。総理、いかがでございましょうか。
  185. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 サミットとは私は関係ないと思っております。アメリカのレーガンさんもそう思っているだろう、そう思います。要するに、日本側としては日本の利益になるのかならないのか、あるいは世界の平和や軍縮の前途に向かってどういう影響が出てくるであろうか、そういうようなさまざまな要件を考えて判断をすべきものである、そう思っております。  マイナスの面もあればプラスの面もあるので、必ずしもマイナスの面だけではないと思うのです。特にハイテクやら新技術という面に向かって、ヨーロッパは非常に不安や心配を持ってこのSDI参加というものを考えてやっておるわけでございます。日本のハイテクは、かなりヨーロッパよりは進んでいる面もあり、アメリカに追いついて、あるいは追い越している面もありますけれども、そういう将来性というものも考えてみることも一つのファクターであります。そういうさまざまな面を比較考量しながらプラス・マイナスを考えて判断をしていきたい、そう思っております。
  186. 井上一成

    井上(一)委員 安倍外務大臣に、このサミットの問題とSDIの問題は総理は全く無関係だ、私はこれは非常にかかわりが深いという認識を持っているわけです。外務大臣はどう認識を持っていらっしゃいますか。
  187. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これはもう総理答弁されたように、サミットはサミットであるしSDIはSDI、これは日本が自主的に決めていかなければならない課題であります。ここで期限をつけてどうだこうだという筋合いのものではないし、アメリカからも期限をつけてどうしろ、回答してほしい、そういうこともありません。ですから、この問題については調査団も送りまして今検討を進めております。いろいろな面でわかってきた面もありますが、まだわかってない面もありますから、もっとさらに時間をかけなければならない点もある、こういうふうに思います。
  188. 井上一成

    井上(一)委員 外務大臣、ニューリーダーだと言われている外務大臣、それはもっと政治的、世界的な国際的な政治状況というか情勢というものを把握された方がいいのじゃないだろうか、外務大臣だし外交的な面からいっても。私は参加とか不参加だとか慎重であるとかいう、そのことの選択を今問いただしているのではなく、むしろSDIにかかわっていくことは国際的に大変な影響がありますよ、だからより慎重であってほしいどいうことを申し上げているわけです。特にサミットについての成功あるいは不成功というのは、SDIの参加、不参加あるいは慎重も含めて私は岐路に立たされる、あるいはそういうことが大きく影響する、こういうふうに思っているのです。  さらに、僕は渡辺通産大臣、ニューリーダーですからね。どうも安倍さんの御回答では、お答えでは頼りなくてしようがない。本当にそんなことで我が国の外交がきっちりやっていけるのか。大変申しわけないのですけれども、期待をしているのですよ。期待をしているだけに私はより強く要望しておきたいのです。  念のために渡辺大臣にも、今対米武器技術供与の取り決めがあるわけなんです。しかし、その枠の今の取り決めの中でSDIというものは包括されていけるものなのか。あるいはSDIに参加するとするならば別枠でそのような協定というものがぜひ必要である、今日の調査の段階であったとしても、そういうことは私はきっちり整理されていると思うのであえてお聞きをし、そしてSDIについてのお考えがあればひとつ……。  私は、何度も繰り返すように、これは東京サミットと非常に政治的には関連をした問題である、こういう見地から質問をしているわけでありますから、その点も踏まえてお答えをいただきたい。
  189. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 SDIの問題は、参加するしないということは政府としても決まっていないと私は思うのですが、今のところは専ら情報をとっているという程度でございます。
  190. 井上一成

    井上(一)委員 私が質問をしているのは、今の技術供与の協定の枠内でSDIは処理されるのかどうか、あるいは新たにそういう協定を必要とするのかどうか、このことも聞いているわけなんです。
  191. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それは、協定の中で今のままでできるのかどうかは私にはよくわかりませんが、参加するしないという問題のときのことになるのではなかろうか、そう思っております。どういうような参加の仕方なのか、そこまでまだわかっておりませんので、実は残念ながら何ともお答えできなくて申しわけありません。
  192. 井上一成

    井上(一)委員 大臣になられて非常に間がないということでありますけれども、やはり政治の中でのSDIの認識あるいはそういうことに対する日米間の協定、さらにはそういうことをどうするかという、これは事務レベルでもいいですから、今まだそれすらも検討の対象になっていないというなら、本当に何を仕事をしているのですかということを私は申し上げたいのですよ。
  193. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 お答え申し上げます。  一般的な現行の制度といたしまして、汎用品につきましては自由でございますし、それから武器技術供与の交換公文の別表にございます品目に関連するものにつきましては、これは武器技術供与の交換公文の枠内で取り扱われるということが現在の建前でございます。  それで、SDIにつきましては、先ほどから御答弁ございますように、これにつきましても現行制度ではそれが当てはまるということでございますが、SDIについての参加の態様等につきましてどういうようになりますか、現在は検討中ということで明確ではございません。
  194. 井上一成

    井上(一)委員 それでは、私は今回の日ソ外相会議、大変御苦労があったわけでありますけれども、シェワルナゼ外相は記者会見でも、領土問題は解決済みだ、こういうことを繰り返し言われているわけであります。解決済み、このことは我が党の田邊書記長からも質問があったわけでありますけれども、十分な回答がなかったわけであります。あえて、解決済みとなっていることについて、ソ連側にその中身を今回の会談で正式に確認をしたのかどうか。これは同席をしていた欧亜局長にむしろ私は正確にここでお答えをいただきたい。確認をしたのかしなかったのか、回りくどいことは要らない。
  195. 西山健彦

    ○西山政府委員 お答え申し上げます。  論理的に考えますと、ただいま先生が御指摘になりましたような御疑問をお持ちになるのもまことにもっともと思いますけれども、私どもはそういう形でこれを確認するあるいは確認しない、そういうことはいたしませんでした。
  196. 井上一成

    井上(一)委員 確認をしなかったということですね。念を押します。
  197. 西山健彦

    ○西山政府委員 ただ、その確認というやり方はしなかったということでございます。
  198. 井上一成

    井上(一)委員 やはりそこから始めるべきであった。これはさっきから外務大臣にも大変強い御意見を申し上げているのですけれども、外交というのはそこから始まらなければいけないわけです。お互いがまあまあと言いながら、我が方は何か我が方に有利な方に解釈をしている。そんなことでは本当に外交というものは成り立っていかない。いろいろな意味で今日まで外交問題については物議が、あるいは問題点があるわけです。この点については、外交官としてむしろ大臣よりも事務レベルでそういうことをきっちり整備をして押さえていって一つ一つ積み上げていくのが私は外交だと思っているし、そのことが一番基本であるというふうに思うわけです。  今回、共同声明の中でも、例えばこれからの問題としてきっちりしておかなければいけないのは、コミュニケの日本文について「日ソ平和条約の内容となり得べき諸問題を含め、同条約締結に関する交渉を打った。」と表現したわけですね。モスクワ放送、片っ方の日本語でのラジオ・プレスは「なり得る諸問題」と放送している。これは語源が、ロシア語では、英語のマイト、なるかもしれないんだとかに相当するマグリブイというそうです、と表現して、英語のテキストは、外人向けの英文は日本文を積極的に曲げて英訳しているようなマイト、なるかもしれない、このような表現の微妙な違いは今後の外交交渉に当たっては大変大きな問題点となってくる場合があるから、これはいつか私は空域のアルトラブの問題で、あなた方の訳されたことが、国会に出したことが誤訳であったということは二年前に指摘をしたわけなんです。そういう意味では、もっともっと慎重かつ丁寧に外交問題には取り組まなければ、何かふんわりと、十三年前に戻ったとか、あるいは一歩前進だとか、そういうような雰囲気が国民の中に漂っている。私は、むしろ結論としては何ら前進はなかった、御苦労はあった、そしてまた今後のその交渉というか話し合いを継続する、そういうことにも期待はつなげたということは認めても、実際それがどうなるかわからない、こういうふうに思うわけです。  そこで、私はあえて、次の五六年の共同宣言を一方的に、いわゆる覚書ですか、覚書でいわば破棄してきた。一般論として、国際条約を破棄する場合にはどんな場合があるのか。これはひとつ条約局長、どういう場合には国際条約を破棄できるんだ。
  199. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 条約局長答弁する前に、二点あなたの今のお話の中で私が関心を持っていることをお答えいたします。  第一は、今回の話し合いの声明の文章の正文は日本語とロシア語だろうと思うのです。英語は正文ではない。したがって、日本語かロシア語が正文である。日本語に書いてあることが正文であって、向こうはその日本語を了承している。向こうが書いたロシア語が正文であって、そのロシア語を日本は了承している。そういう形でできているということをまず申し上げたい。英語というものは正文の中には入らない。  それから第二点、確認したかしないかという問題ですが、これは安倍外務大臣が相当長時間にわたって歴史的因縁から我が方の主張というものを言って、そうして領土問題は存在する、これこれこれこれのとおりである、かなり長い時間それを主張して、そうして確認を求めたわけです、事実上において我が方の主張を述べて賛成を求めているわけですから。それに対して先方は先方の立場をまた述べて、そうして結局、最終的には今あなたが言ったコミュニケになって、一九七三年十月十日の云々、今平和条約の交渉の対象となり得べき云々と、そういうあの文章に落ちついた。そうしてあの文章の中身というものは、それは領土問題というものが交渉の対象にはなっている。これはもう認めたわけであります。既に、そうして領土問題が交渉の対象になって交渉が行われたわけです。外務大臣とシェワルナゼ氏の間であれだけ長い時間談判、論判があって、それを彼らが認めているわけなんでありますから、そして、引き続いてまたモスコーでやろうということも確認しているわけなのであります。  そういうことを、一連のことを全部考えてみますればこれは明らかでありまして、それは領土問題が存在しない、それはマイト、向こうの考え方はそういう考えを持っていらっしゃる。それはそうかもしれませんが、我が方の主張については我が方の主張をあくまで言って、その結果、今のように継続的に話し合うということになっておるのであって、その対象には領土問題が入っているという事実は厳然と残っていることから見れば、我々の考え方は確認という意味でも事実上見られる、そう思っておるのであります。
  200. 井上一成

    井上(一)委員 背景あるいは歴史的な流れをるる説明してきっちりとそれは向こうには十分意が通じているのだ、こういうことをあえて総理がお答えになりましたけれども、私はやはり最初にそれを確認してから、そういう背景も踏まえた中で交渉を進めていかなければいけない、こう思うのです。訳文等については、いろいろと過去にもそういうことがあるし、今後もやはり十分気をつけていかなければいけない。確かに英文は正文じゃありません。正文じゃないけれども、外人プレスに対してはやはり英文を出しているのだから、できるだけ忠実な英訳をした方がよいということです。  私は、条約局長に、いわゆる条約の消滅というものは大体当事国の合意がまずある、必要だあるいは一般国際法によるものとの二つに分かれているのではないか。ソ連が覚書をもって共同宣言を否定してきたというかそれを帳消しにしてきたということは、私はこの消滅のどの項目にも当てはまらない、こういう理解をしているわけなんです。いかがですか。
  201. 小和田恒

    ○小和田政府委員 ただいま井上委員が御指摘になりましたように、条約は一般に当事者間の合意がない限りにおいてはそれを廃棄したり終了せしめたりすることができない、これは国際法の基本的な原則でございます。  それに対する例外として、例えば重大な条約の違反があったとかあるいは条約の目的物が消滅したために履行が不能になったとかあるいは事情の根本的な変更があったために条約の内容が意味をなさなくなったというようなケースについては、一方の当事国がそれを理由として援用して終了を主張することができる、こういう考え方はございますけれども、それは一方的に自分だけの主張でそれを廃棄してよろしいということではないのでございまして、例えば最近の条約法条約におきましては、その場合には必ず第三者機関によってこれを解決しなければならない、こういうことが決まっているわけでございます。したがいまして、一九五六年の日ソ共同宣言につきましては、前々から御説明しておりますとおり、これは日ソ両国が批准をして締結をした大変重要な国際条約でございますので、それをソ連が一方的に廃棄をするあるいはそれに拘束されないというような立場をとることは、我が国としては今申し上げた一般国際法の立場からいって認めることができない、こういう立場でございますし、今度の交渉におきましても、安倍大臣からそういう立場というものはきちっと踏まえて先方に対して主張したわけでございます。
  202. 井上一成

    井上(一)委員 いわゆる通常の形での消滅でないということで、いわば一方的なソ連側の勝手な言い分というか解釈の中から流れが動いている、私はこういうふうに理解をしているのです。だから、大変言葉が、表現が難しいのですけれども、正常な形で交渉するといったってこれはなかなか大変なことになる。国際条約を常識的に消滅でき得る状況でないのにそういうことを一方的にやってきた。だからこそやはり確認も大事であるということであり、いわば紛争だとか戦争だとかそういう状態の中では、過去の歴史において一方的に破棄する、消滅させるということはあり得たわけなんです。そうなんでしょう。だから、そういう意味では私は、ソ連側から日本を見た場合に、ソ連側は正常と位置づけているのかいないのか、むしろソ連側は我が国を正常なポジションに位置づけていないのではないだろうか、ここが問題だ、私はそう思うのです。それはひとつ外務省としての認識をここで聞いておきたい。
  203. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いや、正常であるとかないとか、その辺のところはわかりませんが、確かにソ連の六〇年の覚書というのは、岸内閣時代に出ておりますね。これは日米安保条約で新しい安保条約ができた。そこで、外国軍隊が日本に駐留している。この外国軍隊が撤収しない限りは領土問題については考えざるを得ない、こういう覚書ですが、これは既にそれまで、新安保条約ができましたけれども、旧安保条約からずっと外国軍隊、アメリカ軍隊はあるわけですから、それはソ連の全く理にかなわない反駁であるということを主張し、日本の覚書として反駁を加えておるわけです。  日ソ間にそうした、日ソ間で批准された日ソ共同宣言が、これは厳粛な合意でありますし、国家間の約束事でございますから、これは儼乎として今日も存在しているということは一点の疑う余地もない、私はそういうふうに思っております。
  204. 井上一成

    井上(一)委員 非常にその辺はやはり楽観しているのではないか、甘い見通しじゃないか、私はそう思っているわけなんです。これは外務省の首脳が、ソ連側を共同宣言の線まで譲歩させられるかどうか楽観できない、こういうふうに述べたと報道されているのですよ。私はそうだ、そうだろうと思う。むしろ七三年の共同声明まで戻らせたのではない。  私は、十二月に安倍大臣には、少なくとも七三年の共同声明まで戻すことができたら前進だと受けとめてよい、こういうことを委員会で、国会の中で言っているのです。しかし本来は、今度の会談でむしろ実際は五六年、いわゆる三十年前の約束した時点以前に領土問題は引き返っているのではないだろうかという危惧を私はしているわけなんですね。だから、ソ連というのは手ごわいんですよ、逆に言うと。そういうことを十分認識した中であなた方は交渉しなければ、平和友好条約なんというのはとても大変な、難儀な仕事ですよ。だから、今後引き続き外相会談を継続したんだ、一定の前進だと手放しで私は喜べない、そういうことをやはり強く指摘をしているわけなんです。  外務省はそんなに甘い考え方を持っているのですか。今日、三十年前まで引き下げられているわけです。今まで何をしてきたか。鳩山さんがあれだけ御苦労を、体の不自由を押して御苦労をなさったわけじゃないですか。我々は四島どころか全千島を返せと言っているのですよ。外務省の甘さというものを私は指摘をしたい。だから、ふんわりと何かムード的に前進だというのは強く戒めておきたいということがあるし、ぜひ頑張ってほしい、御苦労だけれども、大変ですよと、それこそ気合いを入れてしっかりと交渉に着かなければ、これは大変な相手ですよということを言っているのです。そういう認識が持てるのか持てないのかというところでやはり議論を展開していかなければいけない。  だから、私の持っている認識と外務省の持っている認識が乖離している、離れている。それならやはりこれはまた改めて、時間が余りありませんから、この問題はやはり集中的に議論を重ねなければいけない。私は、大変な相手だから、御苦労だけれどもやはりしっかりと原点から、原則、このことをしっかりやりなさい。僕は総理、そう思うのです。やはり最初の原点から確かめながらしっかりとこれはやらなければ、総理が行ったって解決しませんよ。解決しない見通しの中であなたは行かないでしょう。来る順番だなんて言っているけれども、順番の問題じゃないのですよ、これは。やはりお互いの意見が同じ方向を向くかどうかですよ。だから私は、行ったり来たり戻ったり、そんな議論をしたくないのです。ソ連に対する認識あるいは会談に対する心構え、今後の問題についての取り組みの心づもりをしっかりとここで持たなければ日ソ交渉というものは前進をしない。いかがですか。
  205. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 ソ連が大変な相手だ、手ごわい、これは全く認識は同じですよ。ですから今日まで日ソ関係で日本も苦労をしているわけであります。  私は、先ほど外交のあり方についていろいろと御批判があったわけですが、このソ連をやはりテーブルに着ける、領土問題について交渉をするというテーブルに着けるということがこれまで最大の課題であったわけです。ソ連は、私はグロムイコさんに二回も三回も会ったときに、領土問題は存在しない、そういう領土問題を持ち出すようなら日本に行かない、こういう姿勢で今日まで終始来ていた。ですから、全く平和条約交渉には入らない、領土問題を持ち出すなら入らないというのがソ連の姿勢であったわけです、最近の。それが今回の交渉におきまして、少なくとも領土問題を含めて平和条約交渉を行ったというのは今度の共同コミュニケにも明らかであります。これを継続するということもはっきりしておるわけですから、とにかくテーブルに着けるということになったわけです。ですから私は、領土問題について前進があったとは二言も言っていないのです。領土問題について出発点に立ったということを言っているわけですね。よほどこれは腰を据えてこれからやっていかなければならぬ、ようやくソ連がテーブルに着いたわけですから、これからが一番大事なやはり正念場だ、こういうふうに考えております。
  206. 井上一成

    井上(一)委員 この問題は一般質問でもまだ続けてやりますが、テーブルに着いたからといって、すぐにでも何か歩み寄れるような認識で外交をやっておったらいかぬ。大変、それは過去一つの八年間というブランクもあったわけなんですよ。あるいはそれ以前に、三十年前にも、いろんな形でソ連がとった対応というものも十分に踏まえた中で会談に臨まなければいけない。私はそういう意味では外務省に、ひとつ強い哲学を持ってあるいは正しい外交を進めていただかないと我が国の国益にはそぐわないと、強く申し上げておきます。  次に、私は南アの問題について触れておきたいのですが、今日まで南アフリカのアパルトヘイトには強く反対をし、総理も国連でその意思を強く表明されてきたわけであります。そして、ただ単に、我が国としてはアパルトヘイトに反対をして制裁措置をとるんだ、そういう取り組みだけではなく、むしろ私はアフリカ民族会議、いわゆるANCの代表に外務省が直接会って今後十分な話し合いを持ち続ける、そういうことも一つの我が国の南アに対する政策ではないだろうか、こういうふうに思うわけであります。この点について、お聞きをすれば何かんNCとは接触を持たれたというふうに聞いておるのですが、きょうここで確かなことを確認をしておきたい、こう思います。
  207. 三宅和助

    ○三宅政府委員 アフリカ民族会議、すなわちANCにつきましては、井上委員の方から再三、接触を持ちまして面接願望その他について話し合ったらどうかという御指摘がありましたが、我々といたしましても、南ア問題の解決にはやはりこのANCの態度を十分理解して、それを踏まえた上で対応すべきであるという認識から、ことしの一月二十日でございますか、ルサカにおきまして、ちょうど担当課長、天木アフリカニ課長が参りましたので、ザンビアにおきまして先方の情報調査局長その他と十分に会談の機会を持ったわけでございます。当方からは、日本の現在とっておりますアパルトヘイト反対の政策を十分に述べまして、同時に先方に対しましては、平和的解決を強く要望したわけでございます。それに対しまして先方からは、日本の厳しい態度に対しては一応の評価がありましたし、また、引き続き南ア等に対しましては制裁措置を強化してもらいたいということでございます。  また、今後の平和的解決につきましては、確かにその余地はないわけではないけれども、この何十年にわたるフラストレーション、非常に南ア政府が聞く耳を持たないという態度、それでようやく現在のような態度をとらざるを得なかったという経緯をるる説明されたわけでございますが、基本的には、南ア政府態度いかんによっては話し合わないわけではないということでございました。
  208. 井上一成

    井上(一)委員 引き続いてアフリカ民族会議との話し合い等は継続をしていただきたい、こういうことを申し上げておきます。  さらに、ことし八月にヨハネスブルグの百年祭が行われるわけなんですけれども、在南ア日本人会にこの百年祭について外務省が何か通達を出されたのかどうか、この点が一点。  それと、これは非常に社会問題なんですけれども、南アのとる政策の中から生まれてきたいわゆる南アフリカの黒人ミニ国シスカイ、この記念切手というか、そういうものが日英郵便協会から発売をされるわけなんです。このことは私は大変問題があると思うのです。こういうことをどのように、外務省は南アのアパルトヘイトに対しての啓蒙を国民にどういうふうに今までしてこられたのか、そういう中から、実際問題として通信販売をされていくという、こういうことは大変ゆゆしき問題だと私は受けとめるのですけれども、どのように受けとめているのか。決して法的な権限というか、制裁を加える権限は外務省にもなければ郵政省にもないと思うのですけれども、そういう点について、どのように今後国民への啓蒙をなさろうとしているのか、この点についても聞いておきたいと思います。
  209. 三宅和助

    ○三宅政府委員 二点続けてお答えします。  まず、ことしの八月に予定されております南アのヨハネスブルグ市の市制百年祭につきましては、日本人会の方からいろいろな計画が一部あったようでございますが、それについての見解を求められました。それで、外務省といたしましては、現在の南アに対する政策から見て、参加は望ましくないということを正式に政府の意見として申し上げたわけでございまして、その結果、昨年の十二月初めに日本人会としては参加を取りやめることにしたという正式な通報を得ております。  それから第二点の、いわゆるホームランドの一つでありますシスカイの発行したハレーすい星の記念切手でございますが、これは確かに予約注文を昨年の十二月末までに受け付けるということを新聞記事で私も読んでおりますが、政府といたしましては、シスカイというのはアパルトヘイト政策の一環でございまして、四つのいわゆるホームランド、これは到底、南アは独立国と言っておりますけれども、日本政府、諸外国もそうでございますが、独立国として全く容認してないことでございます。そういう観点からいきまして、このシスカイの切手が売られているということは、アパルトヘイト反対という立場から我々としては望ましくないとはっきり考えておりますが、何分民間企業の商売にかかわる問題でございますので、政府が介入するのには限度がありますが、今後ともアパルトヘイト反対という政府の立場を十分いろいろな方面で周知徹底していきたい、こう思っております。
  210. 井上一成

    井上(一)委員 その当事者をできるだけ啓蒙する、そういう取り組みをするつもりはありませんか。
  211. 三宅和助

    ○三宅政府委員 関係当事者に対しましては、この委員会での模様その他につきまして十分お伝えしてまいりたいと思います。
  212. 井上一成

    井上(一)委員 さらに、私は内政の問題について二点お聞きをしておきます。  一点は、今回の国の代執行制度についてでございますが、今回の答申は、いわば憲法九十二条で保障された地方自治の本旨を侵害するものだ、その地方自治の基本原理にも反している、地方自治体独自の持っている法令の解釈権も奪うものだ、こういう認識を私は持っているわけです。中央集権化を強めようとする意思がある、ない、その問題でなく、我々から見れば、中央集権化を強めようとしているのではないだろうかと受けとめるわけでありますが、今申し上げましたように、地方自治の基本原理に反する、そういう理念の中で受けとめているのですが、どのように自治省はこの問題を受けとめていらっしゃるか、まず自治大臣に聞いておきたいと思います。
  213. 小沢一郎

    小沢国務大臣 ただいま先生の御指摘は、地方自治の本旨に反する考え方ではないかということでありますけれども、私どもとしては、現行の、いわゆる総理の最終的に首長の罷免権まで認めておる現行制度からすれば、今回の地方制度調査会の答申をまとめるに当たりましても、いわゆる地方の意見を十分に尊重しながら、しかも、ここの制度を適切に執行していく、そういう考え方のもとに答申されたものと考えております。したがいまして、地方自治の本旨に反する行き方であるとは考えておりません。
  214. 井上一成

    井上(一)委員 大臣になられて早々のことでもあり、私は、大変勉強なさっていらっしゃると思うのだけれども、今のお答えでは満足はいかない。そして、地方自治にかかわる問題であるだけに、特に一部の有識者だけで事を済ましていくというか、処していくという、当事者である地方自治体自身のより幅広い意見を聞くことが大事だ、そういうことにやはり力点を置いていかなければ、手続上の問題としてもよろしくない、私はこう思うのですよ、どうなんですか、そういう立場に自治省は立たなければいけないわけなんですよ。
  215. 小沢一郎

    小沢国務大臣 ただいま申し上げましたけれども、現在のいわゆる代行制度のあり方というのは、これは占領下における、いろいろ先輩の御苦労もそれはあったと思いますけれども、二回の裁判制度あるいは慎重な手続、これを定めておるわけですけれども、最終的に、いわゆる地方自治体において地方住民の直接の意思によって選出した首長の罷免権を、たとえそれが慎重な手続を要するとはいえ、総理大臣が持つということは、これは憲法の保障する地方自治の本旨にかえって反するものである、私はそのように考えております。
  216. 井上一成

    井上(一)委員 これは今回のこの制度改正、法案審議段階でいろいろな議論があって大変なことになりますよ。そんなに簡単にこの問題が処理されるというようなことは、絶対ないと思います。大変な問題です。だから、多くを問いただすことは時間的に無理ですけれども、現行の制度でどこに問題があったのか、具体的にどういう支障があるのか、なぜ調査会が採決をしてまで異例の、こんなことは今までかつてなかったわけなんですよ。なぜ結論をそこまで急がなければならなかったのか。いろいろと疑問点があり過ぎるわけなんです。こんなことでいいのだろうか、非常に地方自治がつぶされていく、地方の住民の声が大事にされない。冒頭に申し上げた、すべての人の意見を吸い上げていく、そういう仏教思想を私は特にここでも総理に申し上げておきたいわけなんですよ。すべてのフィールドで、すべての問題にみずからの哲学は生かされていかないといけないと思うのですよ。ここだけ、ここだけということはないんだから。そういう意味で再度、具体的にどんな支障があったんだとひとつ聞かせてほしい。
  217. 小沢一郎

    小沢国務大臣 今回の答申におきましても、いわゆる新しい答申に基づく代行制度は、重要な国益に反するような、いわゆる代執行の中身となるような問題につきましても非常に限定的に解釈いたしているわけであります。そしてまた、いわゆる手続につきましても、従来は先生おっしゃるように地方議会とかあるいは監査員とか、それらが正式にその問題について発言する、意見を述べる、そういう機会もなかったわけでありますが、今回の答申による制度によりますと、そういった議会も発言もできますし、また監査員の権限も明記されております。そしてまた、いわゆる総理大臣に対する不服の申し立てとかあるいは裁判の制度、これも取り入れられておるわけであります。  したがいまして、先生も最初私が申し上げました、総理大臣がいわゆる首長の罷免権を持つというような現行制度について必ずしも賛成しておられるとは私は思っておりません。そういう意味におきまして、先生申されましたように、正式に制度の枠内で地方の皆さんの意見を、議会の意見あるいは監査員という形をとってですが、酌み取ることができる、そういう答申、制度になっておるわけでありまして、私は、これは先生の御趣旨のようではなくて、一層、地方自治のかえって意見を尊重し、自治体、住民の意見を尊重する制度になるものと考えております。
  218. 井上一成

    井上(一)委員 さっきも言ったように、何か支障があったのか、具体的に。どこが都合が悪くてそんなに急いで、採決に持ち込んでまで急がなければならなかったのか、そういうものがやはり具体的に示されなければいけないし、今裁判権があるというようなことも言われたけれども、裁判権があっても、今までなら裁判の結果を待って事が処せられたわけです。今度は裁判の結果を待たないのですよ。どんどん勝手にいくのですよ。裁判権があるとは言われるけれども実態はそうじゃない。そんなことがあなた許されるのですか。地方自治所管の自治大臣なんていうのは、それこそ内閣と対決してでもやはり地方自治を守るというぐらいのひとつ馬力を持ってもらわないと私はよろしくないと思う。  さらに私は、行革という言葉にもいろいろな受けとめ方があるわけなんです。むだをなくしていくということは当然であります。そういう意味から、今回の答申が行革の基本的な流れからも逆ではないだろうか。あるいは、地方に権限を移譲していこうといういわゆる行革の一つの精神から考えても、私は今回のこの制度改正は大変危険な思いっきである、こういうふうに思うわけです。国と地方はトータル的にはやはりバランスよく調和をとりながら、協調しながら行政を、市民を、国民を幸せに、その暮らしを豊かにする、そういうことを目標に努力をしなければいけないわけでありますけれども、これでは全く地方自治体の存在というものを、オーバーな表現だけれども、根底から否定していくのではないだろうか。これは大変な大きな問題を抱えた制度改正である。自治大臣にもう一度、私の認識を強く訴えたわけでありますけれども、あなたの考えあるいはまた今後の取り組みについて再度聞いておきたい、こう思うのです。
  219. 小沢一郎

    小沢国務大臣 先生の御指摘のように、いわゆる事務事業等の見直し等につきましても、また地方自治の本旨に基づきましても、地方自治体の意見をもっともっと反映できるようにしていかなければならない、それは同感でございます。  ただ、この代行制度につきましては、私先ほど来申し上げましたように、現行の制度、そして今答申によって出されている新しい制度となるべきもの、そういうものとを比較した場合におきましては、先生おっしゃるようないわゆる地方の声が反映できないとかあるいは地方自治の本旨に反する方向にいくとか、そういうふうには考えていないわけでございます。
  220. 井上一成

    井上(一)委員 まあこの問題については、また改めて法案審議等で議論を重ねていきます。  私は、次にパート労働者の問題について一、二問題を提起しておきたい。  今日、パート労働者の数は、総理府の調査でも四百六十四万人、五百万人になるわけであります。実数はもっと上回っていると思うわけでありますが、労働省はこれらのパート労働者に対しては、おくればせではありますけれども対策要綱をつくってパート労働者の雇用の安定や労働条件の保護に取り組んでこられた、取り組んでいらっしゃる、私はそのことは評価をいたします。しかし、要綱はあくまでも行政指導の基準となるべきものであって、十分それが徹底しているであろうか、あるいはそれだけでパート労働者が十分に労働条件あるいは雇用の不安等もあわせて解消できるであろうか。御承知のように、グリコ・森永事件でも明らかなように、パート労働者は常に雇用不安な状況の中に置かれている。そういうパート労働者に対する保護政策というのでしょうか、安定対策というのでしょうか、そういうものが必要ではないだろうか、こういうふうに私は思っているわけです。  ついては、パート労働者のいろいろな面における実態把握は当然でありますけれども、何らかの形で新しく法制度にまで持ち込めるような、そういう御努力がいただけないであろうか、こういうふうに思うのですが、労働大臣いかがでございましょうか。
  221. 林ゆう

    ○林国務大臣 女子のパート労働者と申しますのは、最近は先生御指摘のように大変に数がふえておりまして、その人たちは大半の方々が家庭と両立をさせながらのお仕事をされているわけでございます。私どもといたしましては、こういった特殊ないろいろな関係もございますので、このパート労働者が本当に安心して仕事ができると申しますか、御指摘のような森永事件その他のようなことも過去にございました、そういったようなことも踏まえまして、我が国の経済、社会を支える大事な重要な労働力の一つという認識のもとに鋭意これに対する措置を検討いたしておるところでございます。     〔中島(源)委員長代理退席、委員長着席〕
  222. 井上一成

    井上(一)委員 今、非常に底辺を支える、産業のあらゆるすそ野を支える役割を果たしていただいている、こういう評価がありました。  私はさらに、今常用労働者とパート労働者の労働条件あるいは待遇も含めていろいろな面で違いがあるわけでありますけれども、大きくは例えば退職金制度等も含めてこれは今後検討を加えるべきである。中小企業退職金共済制度というのはあるわけですけれども、実際はパートタイマーの人たちはこの制度の中からは除外される部分が多いわけでありまして、実態としては一%にも満たない部分である。そういうことを考えると、やっぱり労働省は今後、パートタイムで働く労働者のために十分な施策を講じていくべきである、こういうふうに思うのですが、さらにやっぱり前進した取り組みをひとつぜひとってほしい、こういうことを申し上げておきたいのですが、大臣、いかがでございましょうか。
  223. 林ゆう

    ○林国務大臣 お答えいたします。  労働省におきましては、このようなパートタイム労働者につきましてその雇用の安定、労働条件の改善を図る必要があると考えまして、昭和五十九年末にパートタイム労働対策要綱というものを策定いたしました。現在、これに従いまして労使に対し啓発、指導を進めているところでございます。  パートタイム労働者の退職金の問題につきましては、例えば摂津市において、雇い主側の協力を得て六十年の四月からパートタイマー等退職金共済条例が施行されている例も承知をいたしておるわけでございます。このような方式も一つの貴重な試みとして私どもは注目をいたしているところでございます。  いずれにいたしましても、パートタイム労働者の退職金の問題につきましてはいろいろ難しい点もありますので、労働省におきましては、パートタイム労働者に関する研究会を設けて学識経験者による調査研究を進めているところでございまして、今後とも退職金に関する問題も含め、パートタイム労働者の雇用管理のあり方についてさらに検討を進めてまいりたい、このように考えております。
  224. 井上一成

    井上(一)委員 どうか労働省においても十分対策を御検討いただけるように、私からもお願いをしておきたいと思います。さて外務大臣——外務大臣はいらっしゃらない。それじゃ外務大臣にお尋ねをすることの前に、これはちょっと私は総理に聞いておきたいなあと思うのですが、各政党にはそれぞれやっぱり政党のキャラクターが、性格があって、それぞれの運動方針を持ち、それぞれの行動を、政治活動をやっていくわけなんです。実は私は、長い友人でもあり大変親しい自民党の国民運動本部長、中山正暉さんですが、その自民党の部内資料ではありますが、国民運動本部が、よい核と悪い核、こういう表現があるわけなんです。核によい核と悪い核が総理、あるのかどうか。これはちょっと外務大臣がいらっしゃらないので総理に、よい核とは——ここにはアメリカの核はよい核だ、ソ連の核は悪い核だ、こういうふうに選別しているわけなんです。こんなことがやっぱり日ソのテーブルについても波及を、いろいろな意味で感情を——これはひとつ総裁としてよい核と悪い核とどういう基準で、私は、総理は業の核ということをよく言われるのでそうだと思っておったのですが、そういうふうに書かれているので、自民党の総裁としてひとつ聞かしていただきたい。
  225. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その文章の前後をよく読まないと真意はよくわからないと思いますが、私はよい核、悪い核というようなものはないと思うのです。核は核である、そう思うのです。  三十年代、四十年代には、ソ連の核がいい核でアメリカの核は悪い核だ、そういうのがわあっとベトナム戦争のころからずっと言われたことがあります。その後今度は逆転したのかなという気がしまして、今度はアメリカの核がいい核でソ連の核は悪い核だというのですか。ともかく核は核であって核以外の何物でもない、そう思います。
  226. 井上一成

    井上(一)委員 まあこれは私が自民党のその運動方針にクレームをつけるわけでもありませんし、ただやはり、よい核と悪い核と書かれて、総裁ですから、僕は正暉さんが本部長だし、じゃソ連の核が悪い核でアメリカがよい核だとするならば、フランスの核はどうなんでしょうかと私は聞きたいわけなんです。中国の核はどうなんでしょうかと総理に。今の総理のお答えで、すべては私は、業の核だとよく言われていますし、これはあなたが総裁をなさっている自民党のそういう中に、よい核と悪い核とあるのでひとつ聞いておきたいと思ってお尋ねをしたわけです。外務大臣がいらっしゃらないからこの話をしたわけです。時間が限られて、もったいないから。  私は外務大臣、いろいろけさほどからもフィリピンの政治情勢、大統領選挙について総理に聞かれている。総理は、内政干渉だ、いわゆる総理としてはね。僕は、総理のお答えはそれはそれの域を出ないだろう。外務大臣として、今回の大統領選挙をどう受けとめ——いろいろと我が党も、監視団という言葉がいいかどうかは別として、国際的な調査団の一員に入って現地を訪れたわけであります。正常でない、常識的に考えて。正常でない。裏側がじゃ異常なのかというと、それは受けとめ方で、私はあえて正常でないという認識を持っているんですがね。あなたは、大臣は正常だと受けとめますか。いや正常とはなかなか思いにくいと。アメリカの調査団もレーガンさんに報告するのに、正常でないんだということを言われているわけなんです。きょうフィリピンを立ったわけなんですね。私はそのことをまず最初に、政情一般論として常識論、今回のフィリピン大統領選挙は正常な状態ではない、こう……。
  227. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これはフィリピン、他国の選挙のことですから、これに関して我が国がとやかく言う筋合いでないと思いますが、少なくとも現在選挙が終わって、今集計されて票が発表されているという状況ですけれども、どうも我々の選挙をやってまいりましたそういう観点からいけば、非常に混乱していると言うほかないんじゃないか。ですから、早くこれが整理をされまして、国民議会で決着がついて、そして安定した政権が生まれることを我々とすれば期待するのみであります。まだ状況がはっきり把握されておりませんし、その辺についてはまだ混迷中だとしか言いようがない、こういうふうに思うわけです。
  228. 井上一成

    井上(一)委員 いや、混乱をしているということは私が言う正常でないことで、私はフィリピンの制度だとかあるいはきょう現地時間五時から開かれる国会のそういう問題について大臣に聞いているわけじゃなく、今回の選挙は我々は、混乱を起こしたことそれ自体が正常でない。  我が国はフィリピンに対して多額な経済援助をしているわけなんです。その経済援助についての効果、いわゆる評価ですね、それは確認をしていますか。
  229. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 我々は、これまでずっと続けておりますこのフィリピンに対する経済協力については、それなりにフィリピンの民生の安定あるいはまた国民の福祉の向上には貢献をしている、こういうふうに判断をしております。
  230. 井上一成

    井上(一)委員 私はやはり大臣が云々じゃなく、具体的に外務省としては経済協力を、私も開発途上国に対する経済援助は推進すべきであるという立場に立っているんです。しかしそれがどのように使われているか、相手国の国民の生活向上、民生安定のために十分それが役立っているのかどうか。むしろ、混乱を引き起こす。あるいは正常でないような形にそれが注ぎ込まれているとしたら大変なことであるので、特にフィリピンについてそういう確認をきっちりとなされていますか。昨年の年末の分も含めて大臣からひとつ。
  231. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 フィリピンに対する経済協力につきましては、実はいろいろと国会でも議論がありました。日本の援助ですから、これは的確にやはり援助する国の民生の安定に寄与するものでなければならぬ、そういうふうな判断から、特にフィリピンの援助に関しましては十分な調査とかフォローアップとかそういうものはきちっとやっております。その結果として、多少商品借款等が消化がおくれたという面はあるわけですが、それだけ日本政府としては慎重に援助の実施に当たってきた、こういうことであります。
  232. 井上一成

    井上(一)委員 私は、今後フィリピンに限らず紛争国周辺に対する援助、そういうものも含めて、やはり何かチェック機能というか、そういうプロジェクトが必要になるのではないだろうか、ひとつそういう組織というのでしょうか、そういうものをぜひつくるべきである、こういうふうに思うのです。そのことが経済援助を生かした、すべて生かした一つの方法ではないだろうか、こう思うのですが、これは大臣、どう受けとめられますか。
  233. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 おっしゃるように、経済援助は生かした使い方でなければならないと思いますし、それが紛争を助長するようなことになってはいけない。これは外務委員会でもそういう決議もありますし、そうした観点に立って援助が実施されるということは必要であろうと思います。  そういう立場から、アジア、特にASEAN諸国に対する援助等につきましても、これまでのあり方等も基本的に反省するところはしながら、より生かされた形でこれが実行されるようにいろいろと検討も実は進めておりますし、民間の有識者の意見も聞いておるわけであります。
  234. 井上一成

    井上(一)委員 重ねてもう一点。在フィリピンの日本大使館があるわけでありますけれども、今度の大統領選挙の状況等について大臣にどのように報告があり、どのように大臣は受けとめているか。さっきは正常でないというか、混乱が起こっているということをお認め——まあそういう認識を持っていらっしゃるわけですが、そのことが今後の対フィリピンの外交に大きく作用する、これもまた大変なことになるのではないか。大臣、いかがですか。
  235. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 フィリピンの日本大使館からは時々刻々情報が入ってきております。選挙の結果につきましても入ってきておりますし、フィリピンの政情が今後どういうふうに移っていくであろうかという点につきましても、大使館なりの見解を我々のところへ報告してきておるわけでありますが、今何分にも票が集計されて発表されつつあるという状況でありますし、きょう国民議会が開かれるということでもありますし、この辺が今後どうなっていくか、そういう中でアメリカの視察団のルーガー団長なんかの批判も、発言も出ておるわけでありますし、これに対するマルコス大統領の反発等も出ておるわけであります。一方におきましては、アキノ候補が勝利宣言したというようなこともあるし、各地におきましていろいろと選挙に伴う相当な混乱も起こっておるということでございます。  とにかくはっきりした見通しはついてない。今はとにかく票が出ておるという段階で、国民議会の動きがどうなるかということに実は我々としても注目をしておりますし、とにかくフィリピン選挙の結果、一日も早く新しい大統領が確定をして、そのもとでフィリピンの政情が安定することを日本としては心から念願をしておるわけであります。今後とも、情報については収集に努めたいと思っております。
  236. 井上一成

    井上(一)委員 最後に、総理にまとめとしてお尋ねをしておきます。  総理、施政方針演説で、「戦後政治の総決算」を唱えて、戦後四十年の成果を積極的に評価する。戦後四十年間は、現行憲法のもとでかつてない繁栄と発展を実現してきた時代であり、この間我が国土には平和が続いた、施政方針演説の中でこう述べられているわけです。  私は、この四十年間我が国が戦争や国際紛争に直接的に巻き込まれず、平和と繁栄を維持することができたその最大の理由は、我が国に戦争放棄を宣言したその前文と、これを具体的に規定した第九条を含む平和憲法があったからだと思うのです。総理は、「現行憲法のもとでこという言い方をしていらっしゃるわけなんです。改憲論者だとか、総理に対してのいろいろな見方があるわけなんですけれども、私はこの施政方針をまともに受けとめて、総理が「現行憲法のもとでこという言い方をしていることは、つまり戦後四十年の成果は、平和憲法の果たした役割は評価すべきだということだ、それによって我が国の平和と繁栄が維持されてきたんだと理解をしたいわけであります。そういう理解をしてよろしゅうございますか。  さらに、最後に、私自身は仏教思想という中で投身餓虎、とら年で、千里を行き千里を帰る、通常はそういうことにトラは使われるわけです。仏教思想の中では、飢えるトラに身を投げてその飢える虎を救っていくという話があるわけなんですよ。今まさに私は、その仏教思想を総理が広く世界のすべてに政治の中で示していただきたい、こういうふうに思うのです。  平和憲法、この平和憲法があるからこそ我が国の今日が築かれたんだ、私もその意味では今後平和憲法を守るために、微力でありますが全力を傾けてまいりたい、こういう決意もあえて申し上げて、私の質問を終えます。総理からの御決意、御所見をいただいて、委員長、終えたいと思います。
  237. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私の施政方針演説をよくお読みいただきまして、感謝にたえません。  今の平和憲法のもとに、平和憲法とは書いてありませんが、現行憲法のもとにこれだけの繁栄をしたというところは、私は自分で書いた部分でございます。それは私の奥意であり、また類似の文章は十二、三年前に書いた「新しい保守の論理」という自分の著者にも書いてあるところで、それは一貫しているところなのでございます。  戦後の四十年間を顧みますと、現在の憲法が果たした役割は非常に大きなものがあると私は認識しております。したがって、この中の基本原理である重要な民主主義、平和主義以下云々のこの基本原理というものは変えるべきではない、あくまで護持すべきである、その基本原理の上に次の新しい発展を我々は創造的に模索すべきである、そう考えております。そういう意味におきましては、井上議員とやや似た点もあるのではないかと思っております。
  238. 小渕恵三

    小渕委員長 これにて井上君の質疑は終了いたしました。  次に、工藤晃君。
  239. 工藤晃

    工藤(晃)委員 私は、まず円高と国民生活について伺います。  その一つは、電気料金の問題であります。  我が党は、昨年来、円高の情勢のもとで電気、ガス料金、石油製品価格の値下げを行いまして円高差益を国民に還元すべきである、こういう主張を行い、特にことし一月十三日、改めて政府に文書によりまして、また業界団体に対しても申し入れを行ったわけであります。これは総理府の物価の上昇感に関する世論調査の各年版を見ましても、何が一番値上がりしたと感じるかという生活費目では、真っ先に光熱費が出てくる。年によりますと三番目、四番目ということもありますが、非常に重く感じられているわけであります。家計調査によりますと、これは政府が行ったものでありますが、七九年—八四年の五年間に、東京区部では消費支出二三・三%に対して電気、ガスは八三・八%もふえている。大阪市は消費支出一八・一%に電気、ガスは六一・九%であります。  したがいまして、電力九社について一兆円を下らない差益が出るということはもう議論の余地のない今日、国民の暮らしを守る見地から、内需拡大の見地から値下げによって円高差益を還元していただきたい、これは国民のこの国会に寄せる大きな関心であり要望であります。仮に円高がこれほどあって値下げしないとすると、これは政府が事実上の値上げを認めていることになると思いますが、いかがでしょうか、通産大臣。
  240. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私は還元しないなどと言ったことはございません。それは十分いろいろな点を考えまして、価格や何かもまだ変動しますから、もう既にたまっちゃったわけではないですよ、これからたまるだろう、こう見られているわけですから、決算を見たり、もう少し為替の安定度、それから石油が幾らで落ちつくのか、本当に一バレル二十ドルなのか、もっと下がるのか、これはまだわからぬわけですね、スポットのものが少しくらいぼつぼつあっただけでは。しかし、そういうものを見きわめた上で一番いい方法を考えてまいります、皆さんからいろいろ意見を聞いて、その上で考えてまいりますから、もうしばらく時間をかしてくださいということを申し上げているわけです。
  241. 工藤晃

    工藤(晃)委員 還元しないとは言わないということでございますが、電気料金というのは公共料金の中でも非常に公共性が強い。したがいまして、電気事業法によりましても値上げの際には通産大臣が認可をする、また不適当な料金になったときには下げる、その命令を出すこともできる。電気事業審議会の料金制度部会の報告によりましても、例えばこれは家庭生活にとって必需品である、しかも地域独占を電力会社は与えられ、同時にまた供給規程の義務ですか、これも命じられる極めて公共的性格の強いものであって、料金は福祉社会を実現するとか省エネルギーを実現するとか、そういう要請に沿わなければいけないんだということでありますから、したがって、政府は実際に電力のコストが今どうなっているのか厳格に調べていかなければならない、こういう立場から、実は私は昨年、商工委員会におきましても、今の電力会社が例えば有価証券報告書などで計上している燃料の単価が、一方では政府が発表しているCIF価格と比べて余りにも高過ぎる理由は一体どうだ。大体キロリッター当たり原油、重油でも八千円とか、あるいはもっとそれ以上、計上したものが高い、その原因を明らかにしてくれと述べたところが、幾つか返答はされました。関税や石油税がかかる、その他の諸経費がかかるということであります。その他諸経費とは何であるかと言いますと、防災費、備蓄費、内航費、タンクチャージ、こういうものが挙げられますが、じゃそれぞれが一体幾らかと言うと、これは企業秘密で言えないということであります。  しかし、そういうことでほっておくわけにはいかないので、私は一つの調査を行いました。これは皆さんのお手元にある表の1と表の2であります。表の2から先に言いますと、インドネシア産、ブルネイ産、中国産というのは、これは東京電力が使っている油種であります。約六割はインドネシア産ということです。通産省は関税、石油税、その他経費、それは購入価格の一割ということで計算しますと、このインドネシア産で計算しましても、キロリッター計五万三千八百三十三円で、東電の購入価格五万四千六百九十五円よりも八百六十二円も安い。こういう結果が出ます。しかし、私は業界紙その他調査機関から直接伺いまして、その他経費を形成するところの内航費、基地経費、備蓄・防災費を伺いましたところが、キロリッター当たりそれぞれ八百円、三百円、九百円、そしてユーザンス金利というのはこれはエネ庁から伺った一三%、これで計算したものでありますが、これによりますと、五万四千六百九十五円に対しましてインドネシア産で五万二千四百円、ブルネイ産でも差が出ますが、ともかく二千円以上も大きな差が出る、こういうことになるわけであります。  これは過大な計上が行われているという疑いが極めて大きくなってきたわけでありますが、こういう過大な計上が仮にあるとして、政府がそれをほっておけばこれは政府の責任になると考えます。したがいまして、私のこの計算がもし違うというのであるならば、具体的な数字でこのユーザンス金利がこうで内航費がこうでというふうに示して東京電力の計上が正しいということを示していただきたい。それをぜひやっていただきたいと思いますが、どうでしょうか。
  242. 野々内隆

    ○野々内政府委員 この有価証券報告書に載っております原油購入価格、これが過大であるかどうかという問題でございますが、これは各社それぞれ買います油種も違いますし、あるいはそれぞれの取引におきまして経費をどうするかということを石油会社との間で念を押して決められるものでございますので、実際に支払われた金額が書かれているものと思います。したがいまして、ここに実際に払われていない以上の金額を書くことによって何か電力会社が不当な利益を得たかどうかということでありますと、実際に払われたものであると思いますので、そこで何か電力会社が不当な利益を得たということではないんじゃないかと思います。  また、私どもは特に現在、電力会社が買っておりますものを一つ一つチェックをいたしまして、それが真実であるかどうかということはいたしておりません。むしろ石油会社の方は電力会社に値切られるというようなことも聞いております。  いずれにしましても、CIFというものは平均的なものが出てまいりますので、それぞれの会社が購入いたします油種、例えばサルファ分というようなものが違うことによって、それぞれ実際に支払う価格が変わってくるであろうというふうに考えております。したがいまして、この一つ一つにつきまして、実際にどういう形で取引が行われ、また実際にそういうふうに行われたかどうかということを私どもとしてはチェックする立場にはないということでございます。
  243. 工藤晃

    工藤(晃)委員 これは、電力料金という公共料金の性格からいっても、国民生活を守るということからいっても、通産省がこの燃料費という——燃料費というのは電力のコストの中で最大の費目ですよ。この最大の費目において、その価格、コストが適正になっているかどうかということを調べないとしたら、これは重大な問題だと思います。各社がいろいろな油種を使っているから、私は東京電力に限定して、東京電力がどういう油種を使っているか見まして、そしてこれは資源エネルギー庁から、東京電力が購入している原油のCIF価格は幾らですかという資料もいただいて、通産省の計算でそのままやって出したわけであります。私が実際に調べだというのは、この中にある内航費とか備蓄費、防災費、タンクチャージ、これは業界紙から調べましたけれども、その他はみんな通産省の計算どおりやったことであります。  しかし、よく考えていただきたい。この東京電力一社で原油、重油年間千五十五万キロリッター購入している。これは百円高く計上するとたちまち十億円というお金が出てくる。千円高過ぎても百五億円というお金が出てくる。このように二千円高くなるとその倍になって二百億円以上ということが出てくる。極めてこれは重大な問題でありますので、通産省はこういうことを調べないことにしているというのではなしに、この点をぜひ調査する必要があるということを重ねて申します。  それとともに、実は一九八〇年の値上げ申請のときに電力会社や電事連が政府に対してこのCIF価格から消費に至るところの価格がどう高くなっていくかということを説明をした文書を実は私も手に入れておりますが、極めて過大なことが書いてある。常識でいって考えられない。したがって、電力会社から言ってきたそういう申し出を政府が十分、これはおかしいよということをやらなかったとしか判断せざるを得ないわけでありますが、もう少しこの問題を進めるために、私は次の表の3を見ていただきたいと思います。  これは八〇年に電力料金の値上げを行いましたときに通産省が査定をしました。ところが、燃料費を見ていただきたいのですが、東京電力の場合も値上げしたその年に実際の燃料費というのが、査定でこれだけコストがかさむというものに対して七六%にすぎなかった、関西電力については七一%にすぎなかった、これは明らかにこの査定が甘かったという何よりの証拠であります。しかも、どんどんどんどん年を経るごとに実績とその査定との間の差が出てきまして、八四年度に至っては、東京電力では実績の方が査定の四七・七%、関西電力は三九・八%であります。余りにも大きな違いが出てきた。したがいまして、当然あのときの査定が甘過ぎたからその後適正なものに変える必要があった、これが一つ。  それからもう一つ、電気事業法の立場からいいましても、当然これは料金が不適当になった、不適正になってきているということから、通産大臣としてこれを改めさせる、そういう仕事をやらなければならない、こう考えるわけでありますが、いかがでしょうか。
  244. 野々内隆

    ○野々内政府委員 二点について御説明申し上げたいと思います。  まず一点は、私どもは料金改定をいたしますときに、一年その他特定の原価計算期間というものを設定をいたしまして、それを査定をいたします。その後の動きにつきましては、毎年毎年チェックをするということはいたしておりません。むしろコストというものは、燃料だけでなしに、例えば資本費が上がり人件費が上がればコストが当然変動するわけでございますので、したがって全体としてのコストがどの程度大きく変動するかというのを決算を見ておりまして、余りにそれが過大になれば改定の指導をするという形であろうかと思います。したがいまして、毎年毎年電力会社が幾らで燃料を買っているかというところのチェックまではする必要がないというふうに考えております。  それからもう一点は、ただいまおっしゃいました値上げをした直後に燃料代が下がっているではないかということでございますが、あのときの状態をぜひ思い返していただきたいと思いますが、あのときは第二次石油ショックの直後でございまして、一体原油価格がどこまで上がるのかだれも見通しがつかない状態でございました。したがいまして、私どもとしてはむしろあのときに判断をするのは無理ではないかというふうに思ったぐらいでございます。したがいまして、一年間だけの判断をいたしまして、それから先のものは参考資料として見たものでございます。あのときはむしろ非常に伸びる、青天井で石油価格が上がるのではないかというのが世論一般ではないでしょうか。  ここで燃料費が下がりました理由は、一つは、円レートが高くなったということでございます。原油代につきましては、むしろ査定よりも高くなっているというのが実情でございます。
  245. 工藤晃

    工藤(晃)委員 資源エネルギー庁の「供給規程料金算定要領」、これは七六年六月ですが、原価計算期間は将来三年間というふうに定めてあるのです。  それから、なぜ五年間の見積もりが出てくるかといいますと、これは電気事業法施行規則第十九条第四号に基づきまして山さされているわけです、五年間大体どうなるのか。ですから、一年しかやらないというのは全くそれは理由にならない。  しかも、仮に予想に反して下がった下がったというのであれば、なぜこの料金改定という問題を提起しなかったのか、そういうことであります。それで、やれ人件費がどうだ何だと言いますが、これを見てもわかりますように、人件費も少ない、いわゆる査定よりも下がっている。それから、支払い利息も下がっている、六九・三%、東京電力。  ただ、減価償却費と言いたいのでしょうが、これは経営を見ている人なら、もうけが出ると減価償却のやり方、加速するのですよ。ふえるに相違ない。これはもうけている証拠なんで、こんなこと理由になりません。  ということでありますから、私は再度この電気料金に対して、政府はコストを厳格に調べて、そして国民の暮らしを守る立場から直ちに下げる、円高差益はもちろん下げる、こういうことをやっていかなければならないと申して次の問題に移りますが、通産大臣、この点についてお答えください。
  246. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 見通しの問題ですから、円レートにいたしましても的確な見通しができればいいんですよ。なかなかしかしできないという現実があるので、多少の振れは私はやむを得ないと思いますが、できるだけ実態と見通しについて合うように勉強していきたい、そう思っております。
  247. 工藤晃

    工藤(晃)委員 それでは、大企業の下請いじめという問題でありますが、今円高を口実にして下請に対する単価の切り下げを一律にやらせる。二〇%の円高で三〇%、四〇%というのも珍しくありません。ある大手の自動車会社が月額千五百万円で契約している部品製造、十二月に三割に当たる四百五十万円を献上金として取ったという事実も聞いております。半導体で四割のコストダウンという例も聞いております。これは当然下代法の違反になるということでありますし、中小企業庁の昨年十二月の輸出関連千社のサンプル調査、これによりましても、既に単価切り下げがあったという回答がありますし、今後の見通しとしては、二百円前後になると下請に悪い影響が出るという回答が七割。その内容のほとんどはコストダウン要請であるということになっているわけです。  昨年十一月十九日、下請取引適正化の通達を出されながら、こういう事態が広がっている。これは公取委員長に伺いたいわけでありますが、こういう通達が出されながらこういうことが広がっているのは、まだやり方が甘いのではないか、もっと対策を強めなければいけないと思いますが、いかがでしょうか。
  248. 高橋元

    高橋(元)政府委員 昨年の十一月の十九日に、下請代金の事後の値引きでございますとか不当な買いただき、こういった禁止条項に触れる親事業者を散見いたしましたので、そのようなことのないように通商産業省と共同で親事業者と親事業者の団体、合わせて六千二、三百のあて先に対して要請をしたわけでございます。  その後、その実施状況を調べる必要がございますので、ことしの一月に親事業者の半数、四千四百ばかりございますが、それに対して調査票を出しまして、今回収中であります。それから、その相手先になります下請事業者約三万、これにつきましても今年度中に照会をして、その実施状況をつぶさに承知したいというふうに考えておりますし、六十一年度に入りまして早速また残りの親事業者と残りの下請事業者について調査をいたしたい、こういうふうに考えております。  と申しますのは、昨年の十一月十九日の要望事項がどのように行われておるか、まだ違反が見られるかどうかということを承知いたしたいというふうに思っておるからでございますが、あわせて、事前に下請法の遵守について事業者団体また各事業者に周知徹底を図ることが大変肝要であるというふうに思っておりますので、下請法の遵守のためのマニュアルというのを業界につくってもらっております。例えば輸出の割合の非常に高い電子工業会とか自動車工業会というところで真剣に下請法の勉強をしてもらう、それについて私ども指導をしていくという体制をとっておるわけでございます。  仰せのような円高に関連して下請法違反の行為が仮にあるとすれば、十分実情を調べまして、下請事業者が不利益を受けることのないように指導を強化するとともに、具体的な法違反行為について、法の規定に従って対処していくという所存であります。
  249. 工藤晃

    工藤(晃)委員 通達を出しながら、実際は次々とコストダウンの圧力がかけられまして、しかもそれに応じないともう仕事を取り上げるというような、こういうことでありますから、それこそ相談とか契約とか、そういうものにさえならない、これが実情。  しかも、これまでの調査のやり方というのは、親事業者の方に調査票を配って、問題があるなと思うところに関してやるということでありますから、近ごろは親事業者の方が、そういう調査が来ると下請に対して、うまく調査されないようにやってくれということもやっておりますから、よほど直接乗り込んでいっていただかなければならない、そういうことで、そのことを、これは通産大臣にも強く要望し、その点で大臣の決意を表明していただきたいと思います。
  250. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 円高で輸出企業が非常に利益が少なくなった。それをみんな下請に押しつけるというようなことは困ることですから、苦しいときはみんなでそれは分かち合わなければならぬことなので、その趣旨は一層徹底をさせていきたいと思っております。
  251. 工藤晃

    工藤(晃)委員 それでは、経済摩擦への対応という問題で、まず総理に伺いますが、日米の経済摩擦を繰り返しているというだけでなしに、いわゆる不均衡の額というのは非常に大きい。我が党も、これは第一にアメリカに大きな原因がある。軍事優先でそれが財政の赤字をつくる、あるいは産業の民生部門での競争力を弱める。また、よく知られているように多国籍企業が産業を空洞化する、こういうアメリカ側の原因があるというふうに指摘されております。  しかしきょうは、このアメリカ側にどういう原因があるかというだけでなしに、日本側としてどうも黒字が多くなる、どういう原因があるか。総理、やはり東京サミットを前にして、何とかこの経済摩擦を解決しなければならないということを言われておりますから、どこが一番ポイントかとお考えでしょうか、それを総理、述べていただきたいと思います。
  252. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 一つの大きなポイントは、やはり従来のドル高であります。このドル高が是正されまして、今おっしゃるように下請や何かの停滞というものも出てきて、輸出というものが非常に厳しくなりつつある。これで非常に変わってくる。ただ、今まで契約した分は出ておりますから、新規契約がなかなか難しくなりつつある。そういうような情勢で、半年からそれぐらいの時間はかかります。かかりますが、傾向ははっきり出てくるであろう、そう思います。もっとも金額から見ますと、これはJカーブの影響がありまして、ドル収入、ドル手取りというのは非常に高く入ってきますから、金額においてはあるいはふえるという危険性もなきにしもあらずですが、量あるいは円貨価値という面で見ますと、これは減ってくるだろう、そういうふうに思っております。  そのほか、言われておりますようにやはり日本の市場アクセスの問題とか、そのほか問題点もやはりあるだろうと思っております。
  253. 工藤晃

    工藤(晃)委員 その他問題点ということで、具体的にはお答えにならなかったと思うのですが、日米で自動車コスト、日本が安いということは言われていますが、どこが原因でそんなに日本の方が安いとお考えかというので、これは野村総研の調査、「財界観測」八四年六月号、これはよく使われる調査でありますが、小型車の日米コスト比較で「日本車の方が米国に比べ三〇%、一台当り二千ドル程度安いと見られる。」  そこで、読んでいきます。  コスト差で最も大きいのは、人件費である。小型車一台生産するのに必要なマンアワーを八〇年の時点で米国のアナリストが推定した結果を見ると、日本は米国より三・二倍も効率が良いことが分る。賃金の較差が二対一で日本の方が安いので、人件費は米国が六倍も高くなる。生産性、賃金の較差は、自動車部品の生産工程でも大きいため、購入部品のコスト差にもつながる。と指摘されております。  さて、これが野村総研の指摘した日本の大企業の輸出ラッシュ、その根源になりますが、この次の、表の4をぜひ見ていただきたいわけであります。  これは「自動車、同附属品製造業における従業者規模別賃金格差」であります。工業統計表からつくったものです。これを見ますと、千人以上の事業所の賃金に比べて零細な規模になると三〇%台になる。八三年はそうですね。それから、三十人から四十九人でも五〇%台になる。これほど大きな隔たりで低く抑えられてきている。しかも、七四年から横をずっと見ていただきたい。こうしますと、年々下げられていくということがよくわかります。例えば二十人から二十九人が、六八・八から五三・九になっている。そして、特に七八年ごろのいわゆる前回の円高でこの傾向が一層強まってくることがわかるわけであります。  しかも、この計算当たりましては、特に零細企業になりますと、事業主がいわゆる賃金という形で収入を得ておりませんので、この統計の比較を公正にするために九人以下の規模では私が修正してこういう計算をしましたが、一層念を入れるために、表の5として、一人当たり付加価値額の格差をやはり千人以上の事業所に比べてみました。これをしますと、一人から三人は、何と一人当たりの付加価値が一九・三、二十人から二十九人でも三五・八、しかも九人以下は組付加価値額になっておりますから、これは減価償却など入っているので、より過大に出る計算でありますが、これを見でぜひ総理、これは考えていただきたいし、答えていただきたい問題であります。  第一の問題として、円高が起きるたびに大企業が下請にどんどんどんどんコストダウンをさせるということになると、二百円とか百九十円とか百八十円でもまた輸出が伸びてしまう、そして対外インバランスだと言ってまたさらに円高をやらなければいけない、そうするとまた、大企業が下請にこういうコストダウンを押しつけていくということになると、犠牲を受けるのは労働者や中小企業ばかりである、大企業は何とか輸出を伸ばしていく、こういうことになる。これは総理、悪循環ではありませんか。したがいまして、この円高問題を考えるときに、まず大企業がこういう下請に対して単価を次々と切り下げるようなこと、そこから始まる悪循環を抑えるという対策をとるべきだと考えますが、総理、いかがでしょうか。
  254. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それは、下請企業があって大企業があるのですから、下請企業がだめになってしまえば大企業もだめになってしまう。したがって、これはやはり共存共栄の関係にありますので、そういうようなことのないように指導をいたしてまいります。
  255. 工藤晃

    工藤(晃)委員 じゃ、次の問題は通産大臣は結構です、総理に伺いますから。  トヨタとか日産、その他日本の大企業の国際競争力が強い強いというのは、まさにこういうピラミッド型の下請支配で単価を次々と下げさせる、円高になったらさらに下げさせる、こういう上に成り立ってきているわけですね。さっき野村総研の調査で、一時間当たりの賃金ということからいうと、アメリカが日本の二倍だ、日本は二分の一だと言ったのですが、それは大企業の賃金について比較しているわけでありまして、うんと下に行くと、さらにその二分の一がまた五〇%、三〇%というふうになっているのが、この調査からはっきり出てくるわけであります。  私も、アメリカやECが日本に対して、ご非常にアンフェアだということを言うのを知っておりますし、そのアンフェアだという理由をいろいろ挙げているものを見ますが、その多くは私は当たっていないと思います。関税率はもう日本が一番低い。非関税障壁ということでも、多くの基準・認証、これは何も輸入制限するために設けたものではない。あるいは、日本の国民の生活を守る立場から産地の中小企業を守るとか農業を守る、独自の政策に対して、それをアンフェアだと言う。これも当たっていない、こう思います。しかし、こういう調査を行ってみるならば、この大企業でも二分の一、それがさらに下に行けばその三割になるようなこういう低賃金というのは、長時間労働だけでなしに、これは明らかにアンフェアである、私はこういうふうに考えます。  ここを是正するために、それこそ下請制度の抜本的見直しとか、最低賃金制も全国一律、もっと徹底したものにするとか、そういうことをして下支えしていかなければ、これがなくならないし、またもやいろいろな貿易摩擦を起こすと考えざるを得ないわけでありますが、総理、いかがでしょうか。
  256. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 通産大臣をして答弁させます。
  257. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 日本の自動車会社の賃金がアメリカの自動車会社の賃金の半分だ、私は決してそう思いません。やはり日本の自動車会社の生産性が高いから、同じ賃金でも仕事の能率が非常に上がっておる。それが裏返しに言えば、一つの物をつくるのについて賃金の比率が少なくなっているということはあろうかと思います。
  258. 工藤晃

    工藤(晃)委員 認識はぜひ正していただきたいのですが、これは日経連も前に調査をやったとき、アメリカの大体半分だというのは出しているのです。日経連というのは、日本の労働者の賃金が高い高いというのを宣伝するのが使命みたいなところなんですが、そこでもそういうことなんです。能率はたしか三倍高いということになっているのですよ。賃金が二分の一で、能率が三倍高いから、人件費は六分の一になる、これは野村総研の調査として出ているわけでありますから、ぜひそれを読んで考えていただきたいということであります。  実は私は、あと実際にトヨタとか日産でどういう労働条件が今広がっているか、ここで述べようと思ったわけでありますが、これは我が党の同僚議員の方から後ほどこの問題を追及しますけれども、しかし総理、やはり総理が日本が国際国家だと言うならば、国際的に見て日本の産業とか経済力が非常に進んでいると言うならば、働く人の生活条件とか福祉が、産業が一流ならそれも一流だ、こういうことにしなければならないし、ならなければならない。そういう点で、こういう驚くべき低賃金があったり、過密労働があったり、長時間労働がある、これはサミットを前にして本当に貿易摩擦を解消する、日本が国際国家であるというならば本当に労働条件を世界に比べて恥ずかしくないものにするという、そういう決意を持たなければならないし、その点についての総理の決意を伺って、次の質問に移ります。
  259. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 労働条件の改善という考えは賛成でございます。生産性に見合った線に合うように、できるだけ労働条件を改善していきたいと思っております。  もっとも、さっきお話しになったアメリカのUAWの賃金は、一時は抑制されたのですけれども、最近は自動車の景気がいいものですから、べらぼうに高くなっております。ですから、アメリカの自動車工業のUAWの賃金を一つの基準にするというのは、余り適当でない数字に最近はなっているように思います。
  260. 工藤晃

    工藤(晃)委員 アメリカの賃金が適当でないということは、余り日本の首相としては言われない方がいいことだと思いますし、日本の賃金がもっと高くあれということを言わなければならないと思いますが、次に、国鉄の問題について伺います。  総理は、国鉄問題というのは行革の当面の最大緊急課題である、それで国鉄の改革を何が何でもやるということであります。それで、それは監理委員会の七月二十六日の「意見」を最大限尊重する立場だということであります。しかし、再建監理委員会は、どういう審議をしたか国民に明らかにしない、どういう資料や調査に基づいてこれで立派に国鉄が再建していけるか、そういうことも明らかにしない、これは極めて重大な問題だと思います。  一例だけ申し上げます。私が国鉄に、例の監理委員会の「意見」として、鉄建公団のいろいろな建設施設にかかわる負債を旧国鉄に押しつけるということです。その「意見」に基づいて、例えば工事を凍結している鉄道施設、これはどういうものがあって、その資産が幾らで、負債が幾らかというこの内訳を示してくれと言ったら、これは私の部屋に呼んだときの例でありますが、それは示すことができません、これは考えだけ示せばいいのだ、こういうことなんですね。それで、大変驚くべきことを言ったのは、こういう事業用施設の資産と負債と資本費は同額ですと言うのです。これは皆さんわかりますか、わからないでしょう。資本費というのは、言ってみれば、損益計算に出てくる減価償却とか利息のことでしょう。どうしてその資本費と負債あるいはまた資産が同額になるのか。こういうことを平気で言うので、私もさすがあきれて、じゃ、紙で持ってきてくださいと言ったら紙で持ってきましたが、例えば「工事を凍結している鉄道施設」、ただ括弧して「(京葉線(品川埠頭—新砂町)等)」と書いてあって、あとは何も持ってこない。幾らになるか書いてこない。これじゃ、幾らこの問題を検討しろと言ったって検討のしようがないこういうひどい状態にあるわけです。  さらにまた亀井さんは、昨年も私、この予算委員会にぜひ出てきてくれと言ったら出てこなかった。それでことしも、今度の私のこの質問に対して出てこられない。これは重大な問題でありますので、私はこの問題を指摘すると同時に、亀井さんへの質問は留保いたします。委員長、どうかよろしくお願いします。  ということで、まず具体的な質問について幾つか伺いたいと思います。  監理委員会は、再建の方式を会社更生法方式でやるということを言っております。これは亀井氏も言っております。加藤寛氏も言っております。私は何も会社更生法方式でやれという立場からこの質問をするわけじゃありませんが、こういう方々がそういうことを言っている以上、あえて聞くわけであります。  更生手続の開始後の手続は、まず財産の価額の評定である、こういうことになっております。会社に属する一切の財産につき手続開始時の価額評定をしなければならない。そして管財入は、評定完了後、直ちに手続開始時の財産目録、貸借対照表をつくらなければならないとなっておりますが、これはやったのでしょうか、やらないのでしょうか、そのイエスかノーだけ答えていただきたいと思います。
  261. 吉田耕三

    吉田(耕)政府委員 国鉄再建監理委員会といたしましては、今後の鉄道事業を再生して国民の足を守らなくてはいけないという観点から、新しい会社の経営基盤につきましては、将来にわたって健全な経営ができるという基盤を確立するということを目指しております。そういう観点から、資産、債務につきましても検討いたしまして、そういう最大限の効率化を図って負える限度での資産、債務を引き継いでいくという形にしておりまして、先生おっしゃいました貸借対照表につきましても、一応内部的には作成しております。
  262. 工藤晃

    工藤(晃)委員 これは第一、私の質問に答えておりません。会社更生法方式でやるからというので私は聞いたのです。一つ一つの財産について評価しなければいけない。しかも、これはただ簿価でいいとかそんなことじゃありません。これはもう決まっているわけであります。ゴーイング・コンサーン・バリューというふうに言われて、事業を継続し得るような評価をしなければならぬ。特に不動産については一つ一つやらなければならない、こういうことになっているのを、やってないのであります。しかも、そういう個々の財産評価をやってないだけでなしに、大きな国鉄を幾つかに分ける。分ける中で、例えば貨物会社はどういう資産になっていますか、どういう負債になるのでしょうか、資本金幾らになるのでしょうか、旧国鉄本社に行く資産あるいは負債、これは一体どうなるのか、こういうことがさっぱり明らかになってない。まして、それぞれの貸借対照表も明らかになっていない。内部的に明らかになっているというなら、当然これは出すべきでありますが、もしやっているというならその資料を出してください。
  263. 吉田耕三

    吉田(耕)政府委員 従来からある程度の資料をお出ししておりますが、バランスシートにつきまして、その概要を御提出したいと思っております。
  264. 工藤晃

    工藤(晃)委員 じゃ、私が言った質問で、貨物会社について、資産が幾らで、資本金とか負債あるいは退職給与引当金、こういうものが幾らになっているか。これは全然出てないけれども、それは今出せますか。
  265. 吉田耕三

    吉田(耕)政府委員 貨物会社の問題につきましては、「意見」にも明記してございますが、いろいろ専門的な事項にわたることがございますので、具体的な会社案づくりにつきましては、政府において検討するようにと言っております。したがいまして、私どもといたしましては、貨物会社の貸借対照表につきましては持ち合わせておりません。
  266. 工藤晃

    工藤(晃)委員 要するに、非常に問題のある貨物会社は、監理委員会としてやらなくて、運輸省に征して、運輸省が十一月に何か出したけれども、それを見ても、そんなこと書いてないですね。したがいまして、これは非常に重大な問題なんです。これは「運輸と経済」の昨年の九月号に、林淳司監理委員会務局次長、どういうわけかこの人は監理委員会からもういなくなってしまったわけでありますが、彼はいろいろ書いていますよ。最初は収益還元方式で一つ一つ財産を評価しようとしたけれども、もう面倒くさいからぶん投げちゃったというようなことが書いてありますよ、これを見ますと。明らかにもうやめてしまったのですよ。ですから、個々の財産の評価もしない。しかも、全体として貨物会社とか、じゃ、本社の資産がどうなるかとか、そういうことを一切しない。  私は最初、会社更生法方式と言いました。民間会社の再建のときでも、いろいろ利害関係者がいるから、裁判所の監督のもとで厳格にこの評価をして公正を期するという、こういう立場でしょう。まして、国民の財産を民間資本に移す、こういう今度の民営化をやるということについて、どれだけ国鉄が財産があるのか、どう評価をして渡すのか、そういうことが全く明らかにされない、まじめな検討もしない、これが重大な問題なのであります。ここに一つ、今度の大きな問題があると思います。しかも、事業用資産は簿価で渡す、会社によってはただで渡すわけです。どうですか、北海道、九州、四国分の資産は七千億円と言っておりますが、これはただで渡すわけですか、答えてください。イエス・ノーだけで答えてください。
  267. 吉田耕三

    吉田(耕)政府委員 北海道等の三島につきましては、経営基盤が非常に弱いということで、今後は長期債務につきましては背負わせないことにしております。
  268. 工藤晃

    工藤(晃)委員 資産はどうだか答えてください。
  269. 吉田耕三

    吉田(耕)政府委員 資産につきましては、事業用資産については現在の簿価をそのまま引き継ぐということにしております。
  270. 工藤晃

    工藤(晃)委員 この七千億円の中には、関連事業用資産は入っていませんか。
  271. 吉田耕三

    吉田(耕)政府委員 事業用資産が大宗を占めますけれども、そのほかに駅ビル等の関連事業用資産、それから株式の売却、そのほかの余剰宿舎等の資産も時価で入っております。
  272. 工藤晃

    工藤(晃)委員 それならば、これは昨年の十二月六日運輸委員会で、毎日新聞の六十年十月十二日付に載せられたことが問題になったんですが、往田監理委員が、本州の三会社は駅ビル、ホテルの関連事業用地を時価で買い取ってもらうけれども、九州は時価百六十七億円と見積もられる用地を無償供与するのだと言うのですが、こういう関連事業用資産は住田氏のこの話で言うと、無償供与というふうに受け取られるようになっているし、そのとき林政府委員は否定されておりませんが、この点はどうなんですか、はっきりさせてください。
  273. 吉田耕三

    吉田(耕)政府委員 今お話のございました九州もそうでございますが、三島につきましても、関連事業用資産を時価で評価して資産を引き継ぎますが、それに見合った債務につきましては、三島の経営が非常に苦しゅうございますので、債務については引き継がせないということにしております。
  274. 工藤晃

    工藤(晃)委員 これではっきりしたと思います。そういう三島に対しては、事業用資産だけじゃなしに、いろいろな出資の株式だとかホテルだとか駅ビルだとか関連事業用資産まで、資産に書くときには、ここは時価だとかここは簿価だとかするけれども、事実上ただでくれてやるという、こういうことになるわけであります。これは重大な問題だ。  そこで伺いますけれども、今度はこの会社が民営化される。当然いろいろな事態にぶつかって経営が悪くなるということになるでありましょう。そういうときに、こういう事業用資産であり、あるいはまた関連資産であり、ただでもらったものを、今度は売却して、あるいは他に転用して大きな利益を上げるということが起きるわけでありますが、そういうことが起こり得るということを前提でこういうことをあえてやると受け取りますが、それでよろしいですか。これは総理にも伺いますから、よろしくお願いします。
  275. 吉田耕三

    吉田(耕)政府委員 三島につきまして、現在、その経営基盤が非常に弱いということを考慮いたしまして、赤字を埋めることができるだけの基金を設定することにいたしております。監理委員会の長期見通しによりますと、その基金を設定して、今後とも健全経営ができるという前提に立っております。  それで、そういう引き継いだ資産について、今後、鉄道事業を縮小していって売却するようなことがあるのではないかというお話でございますが、鉄道事業は、現在の私鉄と同様に公益事業でありまして、事業法により、また別途の観点から規制がかかりますので、勝手に事業をやめて財産を処分するというようなことはないと思っております。
  276. 工藤晃

    工藤(晃)委員 いや、私鉄だって、やはり経営が悪くてどんどん廃線していきますし、結局は民間企業だという建前から、それはある一定の何か届け出をするとかいうようなことがあるにせよ、いよいよ経営が苦しいですと言ったら、そういうことになってしまうじゃないですか。それが民間企業じゃないですか。それを民間活力と言っているわけでしょう。まして、これを私鉄式にほかの事業に転換するということが当然起きる。すごいじゃないですか。ただで引き継いだいろいろな大きな駅前の用地や何か、これを今度レジャーに使うとかなんとかする、これは物すごい利権ですよ。これは国民の財産なんですね。国民の財産を民間資本に渡すというとき、そういう何だかんだと理屈をつけてただで渡す、ただ簿価で渡す、その後これが売りに出される、あるいはまた他に転用される、大きな利益が出てくる、こういう問題でしょう。中曽根首相、こういうやり方を認めますか、あるいはこれに何か待ったをかけますか、かけられますか。
  277. 三塚博

    ○三塚国務大臣 工藤さんの御議論を聞いておりますと、鉄道は余りよくならぬでもいいし、もうだめになった方がいいみたいな、どうも冷静にお聞きしていて、そんな錯覚に取り込まれるわけです。  今回の改革は、まさにこのままではいかぬのでありますから、何としても北海道鉄道は北海道民の足の確保のために、基本的なものはそうさせてあげたい。よって、本州三会社は、しかるべき債務を引き継いでまいるのでありますが、北海道については債務は棒引きであります。さらに、持参金と申し上げては、まあわかりいい言葉でそういうことに相なるわけでありますが、三島基金という形の中で四千九百億円、これを積み上げまして、その果実でもってさらに経営が地域住民のために相なりますようにという、国民的悲願を込めてこういうことに相なっておるわけでありますね。  今日、保留四線の問題もあります。工藤さんの御議論をそのまま類推をいたしますと、この線はさっさとやめてしまえ、三次線もやめてしまえ、全部やめてしまえという議論の延長線上にもなりかねません。(工藤(晃)委員「そんなことは言っていない」と呼ぶ)なりかねませんと言っているわけです。だから、私ども政府・与党、政府という立場は、いかに国民のニーズにこたえ、公共性を持つ国民の足をどのようにしたならばこれを維持し発展せしめることができるか。国の財政の厳しい中で、国民負担を最小限にしつつ、これを守り抜くためにはどうするかという、衆知を集めた形の中で監理委員会にお願いを申し上げ、監理委員会の御答申をいただいた。しかし、御答申だけではいかぬわけでございますから、政府政府として、また国鉄には国鉄としてのしっかりとした御勉強をいただき、やがて法律を御提案申し上げ、さらに専門的な御議論をちょうだいしつつ、そこで結論を得てまいりたい、このように考えておるわけであります。
  278. 工藤晃

    工藤(晃)委員 通産大臣が、我が党が何か地方線をもっと外せとか、そういうことを言っているかのように言うのは、これは全く驚くべきで、いつそんなことを言ったことがありますか。それは取り消していただきたい。(発言する者あり)いや通産大臣じゃない、運輸大臣、運輸大臣がそう言うのは取り消していただきたい。  同時にこの問題は、後で私、三塚運輸大臣といろいろお話したいと思います。その本も持ってきておりますから、それは後におきますけれども、しかし、今度民間鉄道になると、いろいろな資本費だとかそういう負担を取り除かなければ経営できないのだ。なぜ国鉄のときにそういう考え方にならないんだろうね。国鉄のときに、あんなむだな、過大な投資、しかも借金でやらせる。ヨーロッパでやっているような赤字の補てんを単年度でやっていくというようなこともやらない。特定人件費も負担しない。こういうことで国鉄をどんどん追い詰めていって、それで財政破綻ということが起きている。だから、今運輸大臣が言うように、鉄道を動かすにはいろいろな超過負担を取り除かなければいけないという、そういう立論が正しいとするならば、なぜ国鉄に対してやらなかったのか。その政府の重大な責任をみずから認めたことにならざるを得ないと私は考えるわけであります。  そうしておいて、今度は民間鉄道になると、これもただ、あれも簿価というふうに渡して、後は自由にもうけてください。これは国民の財産ですよ。そんな簡単にやられてはたまったものではない。しかし私は、時間の都合もございますので、次の問題として長期債務の問題に移りたいと思います。  国鉄財政の再建に当たって、いわゆる債務というものは、どうして生まれた債務であるか、どういう性格の債務であるか。したがって再建に当たって、この部分については当然、国鉄に負わしてはいけないものであったから別途これは措置するとか、あるいはこの債務についてはもっと減額しよう、返済条件を緩めよう、こういうことをやるべきでありますし、例の民間会社の会社更生のときでも、わざわざ債務を重くしようなんということをやった例は一度も聞いたことないし、特に大口の債権者に対しては、少し小さくしてくれとか、少し返済を緩めてくれということで落ちついていくわけでありますが、今度のやり方がそういうことを一切やらないということだけではなしに、突然、今まで二十数兆円というふうに考えていたのが、三十七兆三千億円になってしまう。請求書が二十四兆円来ると国鉄は思っていたんだけれども、来た請求書は三十七兆円だ、これは一体どういうことなんでしょうか。  しかし、それにしても、この問題を明らかにするために、最初の二十兆円余りの債務についても、どうして生じたかということを私は取り上げないわけにはいかないので、実は三塚博著「国鉄を再建する方法はこれしかない」というのを持ってきたわけであります。  この中で、四十七ページのところに、「当時は、高度経済成長の真ただ中であったから、将来、日本経済は途方もない規模に膨張し、」「輸送量は、結局、鉄道に回帰するしかないと真面目に信じられていた。」「このような判断に立ては、かりに一時的には借金経営でつないでも、将来においては必ず収入が増加し、返済は十分可能であるとみることも故なしとしなかった。」「国鉄運営についていえば、この昭和四十八、四十九年の時点で、将来の収入をあてにした借金による後送り政策は完全に論拠を失ったはずである。」「ところが、赤字が増加するにもかかわらず、国の景気刺激策とあいまって設備投資を拡大し、将来の返済メドがたたない財政投融資などの借入金が増大していった。」つまり、昭和四十八、四十九年、明らかに見込み違いがあった。きっと交通需要量がふえるという判断に立ったために、どんどん借金で設備投資をしてしまった。誤っていた。しかし、四十八年、四十九年ごろ明らかにこの論拠を失っていたんだから、そこで改めればこういうことが起きなかったということが、ここにはっきり出てくると思うわけであります。  八十七ページのところに、「国鉄の設備投資は、東海道新幹線の建設のように、国鉄自らが、鉄道の未来を指向して主体的に行なった部分もあるが、大部分は、戦後の経済復興、急増する大都市通勤」等々、「いわば国策への協力として行なわれた。問題は、設備投資に要した資金のほとんどが、戦後全期間を通じて借入金であったということである。」これが大きな問題をつくった。これも運輸大臣はっきり指摘されております。     〔委員長退席、林(義)委員長代理着席〕  九十八ページから九十九ページ、「欧州先進国の国鉄も日本と同様、赤字に悩んでおり、各国とも大幅な国家援助をしている。」「これら欧州諸国と日本の決定的な違いは、日本では、単年度の赤字分を国鉄の借り入れ金でまかなうことにしているが、欧州では欠損の単年度処理を原則とし、赤字の後送りはしていない。しかも、ローカル線など非採算輸送、あるいは社会政策からくる運賃などの負担については、一種の契約概念にもとづき、国庫などから補填するルールになっている制度は、参考に値するだろう。」ヨーロッパと違って、単年度で赤字の補てんということをやらないで借金させる、これが雪だるまになった、これは監査委員会報告も常に指摘してきたところであります。  余り私が読み上げますとこの本の宣伝を工藤がやっているのじゃないかと誤解されますからこれだけにしますが、ここまで読んだところからいっても、国鉄の長期債務が二十数兆円だというけれども、これは実は避けることのできた長期債務であるということを物語っているわけであります。なぜ借金でやってしまったのだろう、なぜヨーロッパのように補てんしなかったのだろう、これさえやっておれば二十数兆円にならなかったじゃないかということを認めておられます。  ついでに申しておきますと、我が党は六九年、七三年、国鉄に対して抜本的な改善策を提案しました。これはまさにさっき言った四十七、八年のことでありますが、十兆円も設備投資をやるな、三兆円台に戻しなさい、そしてヨーロッパがやっているように基礎施設の建設は国が持ちなさい、公共サービスの負担をやりなさいと。こういうやり方をやれば、この二十数兆円は防げたのではないかと思います。財政の破綻は防げたのではないかと思いますが、その点についてはいかがでしょうか、大臣の答弁を求めます。
  279. 三塚博

    ○三塚国務大臣 私の本をお買いいただきまして、御精読賜りましたことを大変感謝申し上げます。一人の政治家として、国有鉄道を何とか再生をしたい、そのためには原因を冷静に分析をしていく、その中で識者の妥当だと言われる意見もそのまま検証さしていただき、自分が理解いたしますればそのとおり自分の政策の一つの柱としてこれを推進するというのは、政治の常であろうというふうに思います。  御指摘にありました点を総括的に申し上げますならば、国有鉄道は、公共企業体という独立採算制を目指す、そして公共性にこたえてまいるという、二つの役目を持つわけであります。そういう中で、独占企業に近い形の国有鉄道であり得ました時代は、まさに借入金オンリーでこれをやりましても十二分に消化できました。大体長い距離数は九九、鉄道による以外ありませんでした。もっと言いますと、戦後の一時期、ほとんど自動車がないわけでございますから全部が鉄道、こういうことに相なるわけでございます。  高度経済成長に突入するに従いまして、輸送構造がおおきく変革をいたした。そういう中で、鉄道がそれに十二分に企業体としてこたえることができ得なかった。ある意味で政府、政治も国会もこのことに対する提言、そういうものが的確になされておらなかったのではないかという点も認めざるを得ないわけでございます。また、そういう中における不幸な労使の問題なども出てまいります。そういう中で、得べかりし利益がロスをしてまいるという問題。さらに、過剰に抱えました労働者の給与の支払い。これはある一定時期、社会保障政策という形で外地から復員をされました方を抱えていくという社会的必要、政治的必要性もありましたことはそのとおり、特定人件費と言われるゆえんであります。そういう観点の中で、これらの問題が総合的に機能をしてまいりますならば、建設をいたしましても営業施設、このことが償却できていったのではないだろうかという収支計算のもとで建設が行われていたことも御案内かと思うのであります。  さようなことで、今御指摘のありました我が国の助成制度とヨーロッパの助成制度が違う、これは先般も議論に出ました。多賀谷先生から御指摘をいただいた。もちろんそのときの政治の選択としてそういう手法もあったろうと思いますが、公共企業体という形の中でそのことが今日の我が国の方式として定着をした。しかしながら、やはりこの公共企業体としての役割の鉄道をさらに健全に進めるためにはということで、助成措置も講じてまいるということになりました。特定人件費に対してもそれなりの措置が、十分ではございませんが講ぜられるということのあったことも御案内のとおりであります。さらに、三分五厘までの利子補給の道も工事費について講ぜられる等々行いましたけれども、こういう形に相なりましたものでございますから、この機会に、国民的な鉄道でありますから何としても再生をせしめるためにはどうやるのか、こういうことで今回の答申、これに対する法案の提出への準備、御論議を賜る、こういうことであります。  余り長くなりますと先生あれでありますから、この辺でとどめさせていただきます。
  280. 工藤晃

    工藤(晃)委員 結局、国鉄の二十数兆円の長期債務というのはつくらなくて済んだものをつくってしまったということになる、その点をはっきり答えられませんでしたけれども、さっき言った特定人件費でも、政府がやっていること、こんなことじゃだめだというふうに書いてありますし、そもそも昭和四十七、八年のころあの過大な借金政策でいったのは間違いであったと書いてあるわけでありますから、運輸大臣になったときにも自分のお書きになったことには筋を通していただきたいし、分析編と結論編が違うようでは困るわけであります。  その点を申し上げまして、さらに鉄建公団のことですね。  工事を凍結している鉄道施設まで国鉄がその負債を持たなければならない。これは、京葉線の東京貨物ターミナル、新砂町ですか、利子を含めて六百七十五億円、年間五十三億円の利子がかかる。これは八三年、八四年度、会計検査院からも鉄建公団に対しまして、国家的損失は大きいということで指摘をしているわけですね。こういう国家的損失をして国鉄も使えないようなものを、しかも国鉄財政が非常に苦しくてどうしようかというとき、なぜ押しつけるのでしょうかね。  成田線はどうですか。東京—成田空港、これは八三年度末ですが、建設費、利息八百八十億円。  こういう国鉄が利用できないもの、まさに鉄建公団のやったむだな投資の後始末をなぜ国鉄に押しつけなければいけないのか。ただでさえも苦しくて債務を減らさなければいけないという国鉄になぜ押しつけるのか。これはぜひ納得のいく説明を、長々でなくやっていただきたい。
  281. 棚橋泰

    棚橋(泰)政府委員 本件につきましては、臨時国会予算委員会等でも御論議のあったところでございますけれども、基本的に私ども、先生の方に若干誤解があるのではないかと思います。  今回の再建監理委員会から出ております「意見」で国鉄関係債務三十七兆三千億、国鉄の債務二十五兆に対して三十七兆三千億というのは、余分なものを押しつけたというふうな御理解でございますけれども、私、全然反対に解釈をいたしております。むしろこの際、従来鉄建公団というものでつくったものは国鉄のために建設したものでございますから、そういう関連のものを今回の改革の際に一切長期債務として将来に禍根を残さないようにきちんと整理をする、こういうことが必要だという意味で監理委員会はすべての債務を計上されたわけでございます。それを引き継ぎますのは清算機関である旧国鉄でございまして、新しい会社はそれらのものをすべてきれいにした上で健全な形に鉄道として再生できるように、こういう趣旨の御判断でございまして、私ども、そういうものを押しつけたというような考えは毛頭持っておりません。
  282. 工藤晃

    工藤(晃)委員 とんでもないですね。大体鉄建公団がどうしてできたか、当時のいろいろなあのときの国会での議論を見ればわかるじゃないですか。  国鉄というのは独算制である。設備投資も限界がある。これは特に、当時の田中角榮大蔵大臣なんか、巨大な設備投資をやるには鉄建公団をつくって全然国鉄と離してやっていくんだ、こういうことでしょう。鉄建公団のいろいろな工事の、あるいは事業計画というのは運輸大臣が決めるのであって、国鉄が決めているのじゃない、鉄建公団は国鉄の下請機関でも何でもない、そういう法律の体系になっているでしょう。何か国鉄が注文してやらした、こんなことを言うのですか。でたらめですよ。  それから、青函トンネルについても、これは一昨年三月の予算委員会で我が党の梅田議員の質問に対して、当時の仁杉国鉄総裁は、当初、交通需要見通しを当時の五倍ぐらいになるであろう、これは全く見込み違いであった、しかしこれは一種のナショナルプロジェクトだということから、国鉄の側からは絶えず、国鉄としては仮に使う段になってもその資本費は負担できませんよという意思表明をしてきたわけで、国鉄が必ず使います、費用を負担しますということでないことを、もう長く運輸行政をやっておられた方はみんなよく知っておることでしょう。それなのに、なぜこの段になって国鉄にこれを押しつけるのか、こういうことであります。  これは鉄建公団法によっても、ある地域の経済を守るとか、そういう必要な場合には無償で使わせることもできるわけです、鉄建公団法の中で。何も国鉄に押しつける必要もない。なぜこの青函トンネルを押しつけるのか、これも説明していただきたいと思います。
  283. 棚橋泰

    棚橋(泰)政府委員 まず、鉄道建設公団をつくってそこに建設をやらせましたという趣旨でございますけれども、これは、鉄道施設というものは非常に長期にわたってこれを償還償却しないと、いわゆる懐妊期間が非常に長いと申しておりますけれども、そういう種類の施設である。ところが、国鉄が自分でこれをつくりますとどうしてもその償還償却というものは前高になる、そういう意味で鉄道建設公団というものに貸し付けて借料でフラットに返済させる、そういう意味からできておるわけでございます。  なお、事業実施につきましては、国鉄と協議して事業計画を定めるということになっておりまして、決して国鉄が要らないというものを押しつけるという形にはなっておりません。  それから、青函トンネルにつきましても先生おっしゃるように、非常に資本費が高いものでございますから、これはしかし前提としては国鉄に有償で貸し付ける、こういう形で鉄道建設公団で建設されたものでございます。したがって、このままの形でまいりますと、新しい鉄道会社というものがこれに借料を払って使用しなければならない、こういう形になったのでは、先生おっしゃるようにこれは非常な負担になる。そこで、今回の再建監理委員会の御意見で、今回の改革の際にそれを無償で貸し付けられる形にするために、これを清算機関である旧国鉄の方に債務だけ移す、こういう形で事実上無償で新しい鉄道会社に使わせる。要するに、国鉄が生まれ変わりますものは新しい鉄道会社でございまして、旧国鉄はそういう意味でもろもろの債務を引き継いでこれを清算する機関でございまして、旧国鉄に移すということが新しい国鉄にしょわせるということではないということを御理解いただきたいと思います。
  284. 工藤晃

    工藤(晃)委員 鉄建公団というのは政官財癒着の固まりの具体的な例みたいなものでありまして、実に多くのむだな工事をやってきた。それこそこれを真っ先に行政改革の対象にしなければならないのに、それをうやむやにして、この際一挙に国鉄に押しつけてしまおうという魂胆がありありであります。青函トンネルは、別に国鉄がどうしても有償で使う、これだけ払う、ぜひつくってくれということでなしに、これはもう政府が進めてきたことだ。したがって、この際国鉄に移すということは全く成り立たたないし、ああいう説明というのはまさに納得のいかないだけでなしに、国民に対してもっと事実を明らかにしなければならないということを強く求めますが、もう一点、私はこの問題に関連してこういうことを聞きます。  臨調の基本答申、我が党はこの臨調の答申には反対しておりますが、しかしこの中で、八二年七月三十日、「新形態移行に際して解決すべき諸問題」は、「国鉄の長期債務は、昭和六十年度末には約二十四兆円に達する見込みである」、三十七兆円などと言っておりません。中曽根首相、よく聞いておいてくださいよ、大変大事なところでありますから。そうして、それとは別途、「進行中の大規模プロジェクト(青函トンネル、本州四国連絡鉄道)については、完成時点において、分割会社(国鉄)の経営を圧迫しないよう国は措置する。」、財政措置をするというふうに書いてあります。国鉄が措置するなんて書いてありません。国が措置すると書いてあります。そして、これを受けて五十七年八月十日の閣議決定は、行政改革に関する第三次答申を最大限に尊重するということをやって、そして出てきたのが監理委員会であります。     〔林(義)委員長代理退席、委員長着席〕  ところが、今度の監理委員会の「意見」というのはこの臨調の答申の枠を全く離れてしまって、三十七兆円、これが国鉄が処理しなければならない債務だということにして、これに対してまた閣議決定で、これは六十年七月三十日の閣議決定で、日本国有鉄道再建監理委員会の「国鉄改革に関する意見」を最大限尊重して国鉄改革の措置をやる、こういうことを言っております。  最初の閣議決定は二十四兆円と、そして大型プロジェクトについては国が別に措置をするといい、今度の閣議決定が最大限尊重するという監理委員会の方は三十七兆円で、全く違う内容を最大限尊重するという閣議決定が二つ出てきていると思いますけれども、どうしてこういうような違いが出てきたのか、どういう討議が行われたのか、その間のいきさつがどうなのか、これは納得のいくように説明していただきたいと思います。これは、総理にもぜひ説明していただきたいと思います。
  285. 三塚博

    ○三塚国務大臣 工藤委員も御勉強いただいて、内容についてはすべて熟知の上で御質問いただいておるというふうに思います。臨調の答申、そして再建監理委員会の答申であります。  今棚橋再建総括審議官からの説明にもありましたとおり、また先生御指摘のように二十五兆四千億円、長期横務であります。これは臨調が指摘いたしました額であり、アバウト、建設国債分が四〇%、六〇%が赤字国債分に匹敵する運営経営費の借入金分でございます。これにプラスして十二兆円、なぜなったのだろうかと。これは棚橋審議富が言われますように、この際新しい鉄道として再生をしてまいりますためには、過去の債務のしがらみから完全に遮断をいたしましてスタートをしていただく、それがいわゆる長期債務を免除し、さらに三島基金一兆円を付与いたしましたゆえんがそこにございます。それで約一兆円プラスになります。  さらに、年金負担でいつも御議論に相なってまいりました共済年金の追加費用四兆七千億円、国鉄共済年金それから恩給負担金二千億円等、合わせまして四兆九千億円がございます。それから今言った三島基金一兆円、さらに旧国鉄に所属いたします余剰人員対策で九千億円、これもこの中にカウントをいたしました。  それと、今工藤委員御指摘のように、鉄建公団施設にかかわる資本費負担、上越は鉄建がつくりまして、これを借り上げ料をいただきながらそして決済をするという方式に相なっておりまして、この分一兆九千億円、あるいは本四架橋分でありますとか青函の分でありますとか、以下ここに書いてありますように、先生おわかりのとおりに、これらを集計してまいりますと十二兆になりまして、十二プラス二十五、三十七兆と、こういうことに相なります。
  286. 工藤晃

    工藤(晃)委員 そんな足し算を聞いているのじゃなしに、臨調の基本答申の段階では、青函トンネルや何かは国鉄には押しつけないで国が措置するというのが、国鉄が措置するにすりかわってしまった。国と国鉄と同じですか。これが一つの問題。それから、新会社がいろいろな超過負担を外さないと経営できない、それはさっき私が言った問題に戻るのですよ。それはどういうことかというと、なぜ国鉄に対して今まで超過負担を負わしたのか。国鉄としてこれから超過負担を外せば立派に再建できるじゃありませんか。それをなぜやらないんだということに答えたことにならない。  そこで私は、もう時間の関係上、この国鉄問題で最後の問題に一つだけ入りますけれども、大蔵大臣に、例の国民負担する十六・七兆円が、それこそ年々一兆三千億円また一兆四千億円という支出を要することでありますけれども、「財政の中期展望」に入ってない理由は一体どこにあるのでしょうか。
  287. 竹下登

    竹下国務大臣 中期展望というのは、もう工藤さん百も御承知のように、いろいろなことを前提といたしまして、そして結論から申しますと、現行の施策、制度をそのままに前提に置いたものでございますので、したがってこの問題はその前提の中に入っていない、言ってみれば現行の制度、施策をそのままにして後年度負担推計、引き写していった資料でございますから、これはそれは入っていないということでございます。
  288. 工藤晃

    工藤(晃)委員 来年四月から分割・民営をやるというのに、中期展望というのは少なくとも一年じゃないですね、二年、三年、それに入ってないというのは、いかにこの十六兆七千億円どうするかという方策が決まらないまま今進めているかということを物語っていると思うわけであります。これが実は一番最大の問題。  そもそも、さっき言いましたように、国鉄の二十数兆円という長期債務も、これは避けることができたもの、しかも鉄建公団がさんざんむだな工事までやって太らした債務まで負わされて三十何兆円になる。それでいろいろ引き算して、残りが十六兆七千億円である。この計算自体、国民が非常に疑問を持っている。これをどうするのか。これはまだ「財政の中期展望」にも書けないように、全くわけのわからないものになっている。そういう状態で見切り発車的にこの国鉄の分割・民営化をするというのは、極めて大きな問題があると思います。  したがいまして、この問題で締めくくって私申し上げますと、第一、これほど重大な問題であるのに監理委員会がさっぱり基礎的な資料を我々に出さない、国民に示さないという問題がある。そして、これまで国鉄に対してはさんざん重い負担を負わせるけれども、今度は分割・民営化、民営化するということになると、それこそ今の財産内容もはっきり調べもせず、これもただ、あれも簿価というふうにしてどんどんどんどんやろうとして、国民の財産を勝手に処分しようとするやり方。そして一方、この国鉄の債務はどうかというと、臨調の最初の線からも外れて勝手にどんどんどんどん次々とつぎ込んでいって膨大なものにして、十六兆七千億円は国民に持ってもらうという、こういうやり方、これはどれを見ても国民は絶対納得できないと思います。したがいまして、我が党としてこの問題は今後もますます引き続き追及しますが、次の問題の税制、社会保障などで、一つの問題について聞いてみたいと思います。  これは大蔵省に聞きますが、有価証券譲渡益についての申告状況ですが、五十回以上かつ二十万株以上は各年何件ありますか。七九年から最近時まで答えてください。
  289. 塚越則男

    ○塚越政府委員 お答え申し上げます。  有価証券の譲渡益につきましては原則として非課税とされておりまして、有価証券の継続的取引による所得事業譲渡に類似する有価証券の譲渡による所得などに限り課税をされていくことになっております。  先生お尋ねの継続的取引に関する課税でございますが、件数でございますが、五十九年度……。
  290. 工藤晃

    工藤(晃)委員 五十四年。
  291. 塚越則男

    ○塚越政府委員 五十四年からでございますか。百二十五件。五十五年が九十四件。それから五十六年が七十七件。五十七年が四十九件。五十八年が八十二件。五十九年が五十九件でございます。いずれも六月三十日現在の数字でございます。
  292. 工藤晃

    工藤(晃)委員 この五十四年から上場株式の取引高はふえ続けております。それなのになぜ五十回以上かつ二十万株以上で申告のあったものが百二十五件から五十九件へ半分以下になったのか、大変不思議なことが起きますが、なぜか説明してください。
  293. 塚越則男

    ○塚越政府委員 お答え申し上げます。  先ほど申しましたように、有価証券の譲渡益の課税につきましては原則として非課税になっておりまして、その中から課税になるものをピックアップして取り出して課税が行われるということでございますが、私どもいろいろ把握に努めてはおりますけれども、いろいろな資料、情報等、いろいろなお尋ねなどで調査をいたしておりますけれども、その点の把握がなかなか困難があるということを御理解いただきたいと思います。
  294. 工藤晃

    工藤(晃)委員 五十四年に上場株式の取引高が約四十一兆円、昨年は九十五兆円、すごくふえていますね。それなのにこの統計では半分に減っていってしまった。これは理由があるわけであります。これは本当に国税庁がやる気があって証券会社に対して大口取引のお客さんの取引状況を報告することを義務づければ、この問題は解決できる。ところが、いまだに架空名義が物すごく多い。そしてまた、総括注文伝票ということで、この回数を幾らでもごまかすことができる。ひとつこういうことをやめさせようじゃありませんか。そうして、本当にシャウプ勧告以来の、なぜかというならば、シャウプ勧告で実施され、その後廃止になったキャピタルゲイン課税、キャピタルゲインも普通の所得と同じように課税をする、そこへ戻そうじゃありませんか。それについて大蔵大臣答弁を求めます。
  295. 竹下登

    竹下国務大臣 キャピタルゲイン課税の問題等、今までも税制調査会でそれぞれ御議論をいただいてきたことがございます。したがって、今回行われますシャウプ勧告以来のこの抜本改正の中で恐らく議論の対象になるものではなかろうかという感じでこれを見詰めておるわけでございます。
  296. 工藤晃

    工藤(晃)委員 じゃ、関連質問として東中議員が立ちますから。
  297. 小渕恵三

    小渕委員長 この際、東中光雄君より関連質疑の申し出があります。工藤君の持ち時間の範囲内で、これを許します。東中光雄君。
  298. 東中光雄

    東中委員 最初に、総理にお伺いしたいのですが、八七年度の米国の国防報告が出まして、日本は西側防衛力を高める上で目覚ましい役割を果たしている、こういう記述もありますし、日本はみずからの防衛とともに米国の前進展開能力に不可欠な支援を提供する能力を改善しつつある、こういう記述もありますし、日米の防衛パートナーシップは引き続き東アジアにおける我々の防衛政策上のコーナーストーンである、こういうふうな記述もございます。総じて言いまして、アメリカの対ソ戦略、世界戦略の中で日本が果たしていく役割を非常に高めてきた。アメリカの防衛政策のかなめにも東アジアにおいては日本が位置づけられてくるわけです。こういう評価をしているように私は読み取るのでありますが、これは正当な評価だというふうに総理はお考えになっておるのか、日本の防衛政策との関係からいって御所見を承りたいと思います。
  299. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 アメリカ側から見ればアメリカ流の見方があると思います。アメリカ人で税金を出している市民に対して、大統領府から議会に対して、自分たちの見方はこうであると言うことは自由であります。しかしまた我々から見ると、日本を中心に考えて、安保条約を結び、日本はアメリカを守る必要はないがアメリカは日本を守る責任がある、そういう条約にもなってきておるので、アメリカは日本の本土防衛に繰り込まれている、こういうふうに言えると思うのであります。
  300. 東中光雄

    東中委員 国防報告で、日本は西側防衛力を高める上で目覚ましい役割を果たしている。どういうことでそういうふうになるのかということについて、日本は地理的に枢要な位置にあること、対潜水艦作戦の能力と機雷敷設能力が向上したこと、それから自衛隊を近代化したこと。特に自衛隊が新しい複数の任務を引き受けた。例えば千海里までの海上兵たん線を守ることを引き受けたことによってそういう役割を果たしておるんだ、こういうふうに具体的に書いてあるわけであります。ただ、日本の対潜哨戒能力、P3C百機体制あるいはシーレーン防衛あるいは洋上防空ということでやろうとしていることについて、アメリカ側は、それはソ連の海軍の出てくるところを、出口をふさぐ、そういう戦力として対潜水艦作戦能力、あるいは機雷敷設能力が向上したこと、あるいは海上兵たん線を守ることを日本が引き受けたこと、これが役割を高めているんだ、こういう評価をしているわけですね。これについてどう思われますか。
  301. 加藤紘一

    加藤国務大臣 東中委員は大変専門でございますから、もう既におわかりで御質問になっていると思いますが、新しい任務を引き受けたという表現になっておりますけれども、そしてその中に括弧で、それはどういうことかといいますと、シーレーン防衛をしっかりやるよう、になった、シーレーン防衛のことだと、こう書いてありますね。やるようになったというのじゃなくて、シーレーンということが書いてあります。(東中委員「書いてないです」と呼ぶ)お読みいただければ括弧で書いてございますが、そのシーレーンの防衛というのは、御承知のように昭和四十七、八年ごろから私たち国会で明確に答弁していることでございまして、また当時、大出委員なんかの質疑政府委員なんかも答えているところでございまして、特に新しいミッションというものではございません。そこは十分お読みいただければわかると思います。  ただ、私たちが過去数年我が国の防衛のために、「防衛計画の大綱」の実現のために、しっかり防衛努力をやっているということはアメリカも最近評価を高めておると思います。
  302. 東中光雄

    東中委員 あなたが新しいものじゃないと言っておるだけであって、アメリカの国防報告には新しい任務複数を引き受けた、例えばと括弧して書いてあるのは、シーレーンと書かないで「シーラインズ・オブ・コミュニケーション」、こういうふうに書いてある。これは明らかに軍事用語ですから、だから兵たん線ということを言っているわけです。アメリカはそういうふうに見ておる。そしてそういう位置づけをしている。アメリカの防衛作戦の最先端でやっていくんだということを、そういうふうにアメリカは言っておる。アメリカの税金を納めておる国民に対して、アメリカ側はそういうふうに言うんだな。日本は違う立場でやっておるけれども、そういうふうに見られておってもそれでいいんだ、こういう姿勢をとっておられるように思うわけです。  それで、具体的な問題についてお聞きしますが、P3Cの百機体制、この間の中期防衛力整備計画で調達、P3C百機ということになりました。百機体制でP3Cを中心にしての哨戒作戦をやるということになっておるわけですが、そのうちの、これは大綱の計画ということですから、そのうちで固定翼対潜機が百機体制ということで、そのうちの八十機は周辺海域、いわゆる面としての海域の哨戒をやる、あと二十機が船舶の航路先を哨戒して護衛をするためのものとして計画をしておる、こういうことだと思うのですが、そういうふうに防衛庁は説明してきた。それで、P3C八十機ですね、P2JとP3Cじゃうんと哨戒の範囲が、能力が違うわけですから、P3C百機体制を中心にした八十機の周辺海域の面として哨戒する海域はどの地域なのかということをお伺いをしたい。
  303. 西廣整輝

    西廣政府委員 海域についてお答えする前に、P2JよりもP3Cが非常に哨戒海域が広いというお話だったのですが、御承知のように、P2Jを我が方が装備し運用しておった、現在も運用しておりますが、その当時は原子力潜水艦が余り多数でない、したがってシュノーケルなり、あるいは潜望鏡を出すということで、レーダー哨戒をするということで考えておったわけです。したがって、その当時P2Jが何機要るかというのは、レーダー哨戒でどの程度の範域の哨戒ができるかということであったわけですが、その後原子力潜水艦が非常にふえてまいりまして、水中にいる潜水艦を哨戒するためにはP3Cであるということで、P3Cの水中にいる潜水艦捜索範域とP2Jのレーダー哨戒範域というのは、P2Jの哨戒範域の方が若干広いということをまずお断りしておきます。  そこで、周辺海域といって我々が哨戒の対象にしている範域は、従来からお答えいたしておりますように、日本海側は約百マイルないし二百マイル、太平洋側は約三百マイルという範域であります。
  304. 東中光雄

    東中委員 日本の周辺海域というのは日本海と太平洋だけじゃないので、東シナ海とオホーツク海があることはもう地理的に明白です。そのオホーツク海と東シナ海はどうなんですか。
  305. 西廣整輝

    西廣政府委員 ただいまお答えしたうちの日本海側と申し上げた百ないし二百マイル、そちらの方に入るというふうにお考えいただければ結構でございます。(東中委員「オホーツク海は」と呼ぶ)オホーツク海も含めて、そういうふうにお考えいただきたいと思います。
  306. 東中光雄

    東中委員 東シナ海が日本海側というのはまだわかるのですけれども、オホーツク海も日本海側になる。要するに百海里ないし二百海里ということだと思うのですが、その場合に、日本海側は二百海里といったらもう外国の地上まで行ってしまうから、二百海里のところもあるし百海里のところもある、こういう意味なんだろうと思うのです。オホーツク海の場合は知床半島から稚内、あの二百、三十海里から先の方ということになると思うのですが、百海里ないし二百海里という意味はどういうことなんですか。
  307. 西廣整輝

    西廣政府委員 百海里から二百海里の間ということでございます。
  308. 東中光雄

    東中委員 現在、周辺海域の哨戒、対潜哨戒機による哨戒が実施をされていますね。日本海は一日一機、それから東シナ海、北海道周辺というのは結局オホーツク海だと思うのですが、二日に一機というふうに公表をされておるわけですけれども、その現実に哨戒をされておる海域はどういう海域なんでしょうか、明らかにしてほしい。
  309. 西廣整輝

    西廣政府委員 現在の監視の態様そのものについては、事柄の性質上細部はお答えを勘弁させていただきたいのですが、いずれにしましても、非常に広い海域を一日一機あるいは二日に一機ということでございますから、そのときの状況によりアトランダムに我々の考えておる周辺海域というものの中の一部を哨戒しておるということであります。
  310. 東中光雄

    東中委員 常に引き続いてという常続的に哨戒をする、一日一機あるいは二日に一機と。そしてその海域の範囲を広げてきた。防衛白書の経過を見ますとずっとそういうふうに書いてあるのですが、どの海域ということについては、これは哨戒監視でしょう。哨戒、警戒監視行動ですね。その範囲が全く言えない、それは秘密だということですか。軍事秘密だ、こういうことになるんですかね。どういう意味で言えないのですか。
  311. 西廣整輝

    西廣政府委員 平時やっております監視活動というのは、我々の所掌事務のために必要な調査あるいは研究のためにやるわけでございますが、先ほど申したように、周辺海域というのは日本海側百ないし二百マイル、あるいは太平洋側三百マイルといっても非常に広い海域になります。そういった広い海域について、例えば日本海側を一日一回ということになっても、それは全周辺海域をできるわけではございませんので、そのときどきの状況により、きょうはある南側の方をやったりあるいは北側の方をやったりということで選んでやるわけでございますが、そういった監視活動そのものについてこういう行動、こういうパターンでやっておりますと言うことは調査の意味をなくすあるいは監視の意味をなくしますので、それを公表することは差し控えたいということであります。
  312. 東中光雄

    東中委員 ことしの二月二日のサンケイ新聞によりますと、「防衛庁筋は一日、わが国の海上自衛隊のP3C対潜しょう戒機がソ連太平洋艦隊の根拠地であるウラジオストク及びその周辺をたびたび偵察飛行していたことを明らかにした。」「P3Cは」「わが国の防空識別圏ギリギリのところまで沿海州に接近、一万メートル以上の高度をADIZの境界線沿いに飛びながら赤外線探知装置のカメラを機外に吊り下げて偵察する。」いろいろ図面まで示して書いていますけれども、あなたの方の監視哨戒は、どこをやっている、どうしているということを明らかにするんでは調査の目的が達せられぬから秘密にしておくんだというふうに言っているかと思えば、今度はこういうふうに「防衛庁筋」ということで発表されているわけですが、これは一体どういう関係になるのですか。
  313. 西廣整輝

    西廣政府委員 新聞がどういう根拠で書かれたかわかりませんが、私どもはこの手の行動、日ごろの行動について発表したことはございませんし、私自身知る限りではそのような筋はないというように考えております。
  314. 東中光雄

    東中委員 このP3Cの一日一機ないし二日に一機、三カ所における哨戒行動で、水中における他国の艦船の警戒調査もやるのかどうか。要するに、ソノブイを使ってP3Cの本来の能力である対潜哨戒を現に今調査活動としてやっているのかやっていないのか、その点についてお伺いしたい。
  315. 西廣整輝

    西廣政府委員 監視の方法について細部を申し上げるのはいかがかと思いますが、先ほどちょっと申し上げたように、最近の潜水艦というのは原子力潜水艦が過半数を占めるという状況になっておりますので、かつてのようにレーダーだけの監視哨戒では余り効果がなくなっているということは事実であります。また、P3Cの対潜能力といいますか、今申されたソノブイを使ったオペレーションの中には幾つかのパターンがございます。例えば広域について、その種の例えば潜水艦等が入り込んでいるかどうかということを調べる非常に大まかなオペレーションもありますし、最終的に相手を撃沈するために逐次位置を局限していくというオペレーションもございますが、平時行いますいわゆる監視のためのオペレーションというのは、ソノブイを使う場合も、ある海域についてソノブイをまいてそこにその種の潜水艦等が潜在しているかどうかということを監視をするということになろうと思います。
  316. 東中光雄

    東中委員 これは、平時、有事にかかわらず対潜哨戒機による哨戒をやる。そして現に先ほど言ったようにやっている。その中に、平時における、平素における対潜哨戒でもソノブイをまいて、要するに要撃ミッションじゃないけれども、一般的な哨戒のソノブイをまいて哨戒をするということは、これは今もやっておるということでございますね。
  317. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、監視あるいは所掌事務にかかわる調査のための必要な範囲でそういう運用もいたしております。
  318. 東中光雄

    東中委員 そういうソノブイをまいて、そして対潜哨戒をやることもある、その地域はオホーツク海もあれば日本海もあれば東シナ海もある、こういう答弁になったわけでありますが、日米共同作戦の場合の共同対処のガイドラインによりますと、有事にならなくても、おそれがある場合には警戒監視の態勢を強化するということがガイドラインで取り決めをするようになっておる。だから、今やられているのはどの程度やられているのかわかりませんけれども、とにかくやるということは認めた。それが強化されていく、こういうことになることは明らかなんです。  そこで私お伺いしたいのですが、日本平時でいわゆる極東有事といいますか、アメリカ有事で、アメリカの「海洋戦略」というのにワトキンスがこの間発表しましたけれども、とにかく極東、日本海、オホーツク海は、戦争になると最初にアメリカの対ソ連海上戦の、対潜水艦戦の中心になるということを言っておるわけですけれども、そういう状況で、そういういわゆる極東有事、アメリカ有事で日本周辺が米ソの戦場になっているときに、日本が今やっているソノブイをまいて警戒をする、哨戒をやる、それは非常に危険な状態ですから、一層その強度を増すということがガイドラインからは出てくるわけですが、そういうことをやるということはあり得るわけですか。もしアメリカ側が、アメリカ有事になったら、もうそういうややこしいことはやらないと言って、日本が平時だからやめちゃうということになるのですか。そこらはどうなんですか、防衛庁長官。理論的に言って、どうなんでしょう。
  319. 加藤紘一

    加藤国務大臣 我が国はそれぞれの監視活動も我が国の自衛のために、我が国の防衛のためにやっているわけでございますから、その段階で我が国がどういった行動をとるか、その状況、状況によります。しかし、あくまでも私たちは、平時から我が国の周辺海域の監視活動は続けていかなければなりませんし、そういう活動をそういうときもやっているというだけでございます。
  320. 東中光雄

    東中委員 そうしますと、極東有事の段階で、アメリカ有事の段階で、日本は日本の周辺海域の、日本の防衛という観点から日本の周辺海域のソノブイをまいての対潜哨戒をやる、P3C百機体制でやる。そうして得た戦術情報、それを今度は交戦中のアメリカに情報の提供をするということは、この間の当委員会の論議では、頼まれてやっているんじゃないから、その場合は集団自衛権の行使にならないんだ、こういう話だったんですけれども、ソノブイをまいて対潜哨戒をやって、そしてそこで得た情報を戦い中のアメリカに送るということも、日本の防衛という観点からさえ判断しておれば構わぬ、こういうことになるのですか。
  321. 加藤紘一

    加藤国務大臣 東中委員の御質問の趣旨は、多分そういう極東有事、我が国平時のときに、米軍に頼まれて我が国が特殊な情報とりをソノブイ投下を含めてやるのではないかということであって、そしてそれを交換することがどういうことなのかという御質問だと思います。  で、先日の矢野委員に私がお答えいたしましたように、我が国が平時で極東有事のときに、我が国が米側より特に依頼を受けて情報をとるというようなことになったら、それはいかぬのでありましょう。ただ、平時から私たちがやっております哨戒監視態勢のもとで得られました情報を米軍に、米側に提供するかどうか、これはそのときどきの判断で私たちが自主的に決定いたします。しかし、日米安保条約体制の中でともに、我が国の共同対処をお互いにし合うという米側との関係でございます。先ほど総理が言いましたように、我が国有事のときには米側は義務的に我が国を来援する義務があって、そして米側有事のときには我が国は支援に行かないという体制をしっかりととってくれている。そういう体制の中で、我が国の義務来援を引き受けてくれるアメリカとの間で、我が国は我が国の防衛のために収集した情報を交換するということは当然あり得るだろうと思っております。  そして、それがいわゆる集団的自衛権の行使に当たるのではないかということでございますが、先日もお答えしましたし、また従来法制局長官もお答えしておりますけれども、いわゆる憲法の禁止しております集団的自衛権の行使は武力の行使を指すのであって、一般的には情報の交換というものはそれに当たらないのではないかと私たちは考えております。
  322. 東中光雄

    東中委員 そうしますと、現在平時でもやっておるソノブイをまいての対潜哨戒、そして相手方の水中にある原子力潜水艦を発見をするというそういう行為は調査活動としてやっておる。で、日本が、日本有事になるおそれがある、ガイドラインに言う「おそれのある」段階ですね。まだ七十七条の作戦準備行動待機命令は出るというに至っていない、そういう段階、極東有事で、そういう段階でも一層強化をしていく。だから、ソノブイをまいて対潜哨戒を実際にやっていくということがふえていく。これは今までやっておったものを我が国の立場でふやしていくということになるわけですから、しかし、そのやっている対潜哨戒活動というのは、これは米ソ戦の戦場になっておるオホーツク海なり日本海なりだという場合に、そういうソノブイをまいて哨戒するという行動をとるのは、これは今までからやっていることだから当たり前だというふうにあなたは認められるということを言われている。そして得た、潜水艦を発見したその情報も交換という名でアメリカに送ることもある。だから、対潜哨戒行動、本当を言えば対潜哨戒作戦なんですけれども、平時だから対潜哨戒行動をやっている。これは武力の行使ではない、それを、得た情報をアメリカに渡すのは情報交換であって、武力行使ではない。アメリカがその情報を得て見つかった、発見された潜水艦を攻撃するという、それはアメリカの判断でやるのだから、集団的自衛権ではなくて、日本は結構なんです、こういうことを言われてくるのですよ。それでいいのですか。
  323. 加藤紘一

    加藤国務大臣 東中委員のただいまの御議論を聞いていますと、次から次へと前提を設定されて、今オホーツク海が戦場になっているというところまでおっしゃいましたけれども、それは状況に応じて判断いたします。  その点の詳細につきましては、政府委員よりお答えをいたします。
  324. 西廣整輝

    西廣政府委員 今防衛庁長官お答えしましたように、極東有事の際、これは一に状況によるわけでございますが、従来どおりの平時と全く同じそういう監視なり活動を続ける場合もありましょうし、あるいは日本にとって非常に心配な状況だ、よりそういう監視の密度を高くする場合もあるでしょうし、逆に言えば、そういう戦場に近いようなところであれば、そういうところに進出して行動することそのものがいかがなものかというような場合には、その部分については従来やっておったものもやめるといったように、いろいろなパターンがあると思います。したがって、いずれにしましても、私どもが申し上げておるのは、情報交換そのことのみを切り離して——もう既に得られておる情報交換です。情報についての情報の移転それのみを切り離して、それが集団的自衛権に当たるか当たらないかというのは適当ではなかろう、それよりも、自衛隊としての部隊の行動が共同対処、集団的自衛権に当たるような行動、個別的自衛権の範囲を超える行動になるかどうかという点が問題ではなかろうかということを従来から申し上げておるわけでありまして、今、東中先生の申された、戦場のようなところへ自衛隊が出動していく、そういったことは、先ほど来申し上げておる監視活動というよりも、集団的自衛権の行使に紛らわしい行動でありますものですから、そういうことそのものを避けるべきではないかというように私どもは考えております。
  325. 東中光雄

    東中委員 質問を終わりますけれども、アメリカ有事になった場合、今度の国防報告にも出ておりますように、日本の地理的位置と対潜能力及び機雷敷設能力の向上は非常に日本の役割を強めているんだ、こう言っているぐらい、オホーツク海、日本海あるいはノルウェー、あそこから地中海、この三つの場所は、もう戦争になればそこが戦場になるんだということが大前提ですよ。アメリカ有事というのはそういうことで、その場合の日本周辺の海域の哨戒をやる、やって情報は交換する、これは非常に危険な戦争への道だ、こういうことはもう集団自衛権の行使になるということを申し上げて、絶対にやるべきではないということを強調しておきたいと思います。
  326. 小渕恵三

    小渕委員長 これにて工藤君、東中君の質疑は終了いたしました。  次回は、来る十二日午前十時より開会し、昭和六十年度補正予算の審査を行います。  本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十二分散会