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1986-02-07 第104回国会 衆議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年二月七日(金曜日)     午前十時一分開議  出席委員   委員長 小渕 恵三君   理事 中島源太郎君  理事 浜田 幸一君   理事 林  義郎君  理事 原田昇左右君   理事 渡辺 秀央君  理事 稲葉 誠一君   理事 岡田 利春君  理事 二見 伸明君   理事 吉田 之久君      相沢 英之君     伊藤宗一郎君      石原健太郎君     石原慎太郎君      上村千一郎君    小此木彦三郎君      大西 正男君     大村 襄治君      奥野 誠亮君     倉成  正君      砂田 重民君     住  栄作君      田中 龍夫君     葉梨 信行君      橋本龍太郎君     原田  憲君      平沼 赳夫君     三原 朝雄君      武藤 嘉文君     村山 達雄君      山下 元利君     井上 一成君      井上 普方君     上田  哲君      大出  俊君     川崎 寛治君      川俣健二郎君     佐藤 観樹君      多賀谷眞稔君     松浦 利尚君      横江 金夫君     池田 克也君      近江巳記夫君     神崎 武法君      正木 良明君     大内 啓伍君      木下敬之助君     小平  忠君      瀬崎 博義君     中川利三郎君      野間 友一君     松本 善明君  出席国務大臣        内閣総理大臣  中曽根康弘君        法 務 大 臣 鈴木 省吾君        外 務 大 臣 安倍晋太郎君        大 蔵 大 臣 竹下  登君        文 部 大 臣 海部 俊樹君        厚 生 大 臣 今井  勇君        農林水産大臣  羽田  孜君        通商産業大臣  渡辺美智雄君        運 輸 大 臣 三塚  博君        郵 政 大 臣 佐藤 文生君        労 働 大 臣 林  ゆう君        建 設 大 臣 江藤 隆美君        自 治 大 臣         国家公安委員会 小沢 一郎君        委員長             国 務 大 臣        (内閣官房長官後藤田正晴君        国 務 大 臣        (総務庁長官) 江崎 真澄君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (沖縄開発庁長        官)      古賀雷四郎君        国 務 大 臣        (防衛庁長官) 加藤 紘一君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)      平泉  渉君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)      河野 洋平君        国 務 大 臣        (環境庁長官) 森  美秀君        国 務 大 臣        (国土庁長官) 山崎平八郎君  出席政府委員        内閣官房長官 唐沢俊二郎君         内閣法制局長官 茂串  俊君        内閣法制局第一        部長      工藤 敦夫君        警察庁刑事局長 仁平 圀雄君        総務庁長官官房         審議官             兼内閣審議官  本多 秀司君        総務庁長官官房        審議官     百崎  英君        総務庁人事局長 手塚 康夫君        防衛庁参事官  瀬木 博基君        防衛庁参事官  古川 武温君        防衛庁参事官  千秋  健君        防衛庁参事官  筒井 良三君        防衛庁長官官房        長       宍倉 宗夫君        防衛庁防衛局長 西廣 整輝君        防衛庁教育訓練        局長      大高 時男君        防衛庁経理局長 池田 久克君        防衛庁装備局長 山田 勝久君        防衛施設庁長官 佐々 淳行君        防衛施設庁総務        部長      平   晃君        防衛施設庁施設        部長      宇都 信義君        防衛施設庁建設        部長      大原 舜世君        防衛施設庁労務        部長      岩見 秀男君        経済企画庁調整        局長      赤羽 隆夫君        経済企画庁総合        計画局長    及川 昭伍君        科学技術庁研究        調整局長    内田 勇夫君        環境庁自然保護        局長      加藤 陸美君        国土庁長官官房        長       吉居 時哉君        国土庁長官官房        会計課長    斎藤  衛君        国土庁地方振興        局長      田中  暁君        外務省アジア局        長       後藤 利雄君        外務省北米局長 藤井 宏昭君        外務省欧亜局長 西山 健彦君        外務省条約局長 小和田 恒君        外務省国際連合        局長      中平  立君        外務省情報調査        局長      渡辺 幸治君        大蔵省主計局長 吉野 良彦君        大蔵省主税局長 水野  勝君        大蔵省理財局長 窪田  弘君        大蔵省理財局次        長       中田 一男君        文部省初等中等        教育局長    高石 邦男君        文部省教育助成        局長      阿部 充夫君        文部省学術国際        局長      植木  浩君        厚生大臣官房審        議官      木戸  脩君        厚生省保健医療        局長      仲村 英一君        厚生省保健医療        局老人保健部長 黒木 武弘君        厚生省保険局長 幸田 正孝君        社会保険庁医療        保険部長    花輪 隆昭君        社会保険庁年金        保険部長            兼内閣審議官  長尾 立子君        農林水産大臣官        房長      田中 宏尚君        農林水産大臣官        房予算課長   鶴岡 俊彦君        農林水産省経済        局長      後藤 康夫君        農林水産省構造        改善局長    佐竹 五六君        農林水産省農蚕        園芸局長    関谷 俊作君        食糧庁長官   石川  弘君        林野庁長官   田中 恒寿君        通商産業大臣官        房審議官    松尾 邦彦君        通商産業省貿易        局長      村岡 茂生君        通商産業省産業        政策局長    福川 伸次君        通商産業省立地        公害局長    黒田 明雄君        通商産業省機械        情報産業局長  杉山  弘君        通商産業省生活        産業局長    浜岡 平一君        資源エネルギー        庁長官     野々内 隆君        中小企業庁長官 木下 博生君        運輸大臣官房国        有鉄道再建総括        審議官     棚橋  泰君        気象庁長官   内田 英治君        労働大臣官房長 岡部 晃三君        労働省職業安定        局長      白井晋太郎君        建設大臣官房長 高橋  進君        建設大臣官房会        計課長     望月 薫雄君        建設省建設経済        局長      清水 達雄君        建設省道路局長 萩原  浩君        建設省住宅局長 渡辺  尚君        自治大臣官房審        議官      小林  実君        自治省行政局長 大林 勝臣君        自治省行政局選        挙部長     小笠原臣也君        自治省財政局長 花岡 圭三君  委員外出席者        最高裁判所事務        総局総務局長  山口  繁君        予算委員会調査        室長      大内  宏君     ————————————— 委員の異動 二月七日  辞任        補欠選任   石原慎太郎君    平沼 赳夫君   山口 敏夫君    石原健太郎君   井上 普方君    横江 金夫君   岡崎万寿秀君    中川利三郎君 同日  辞任        補欠選任   平沼 赳夫君    石原慎太郎君   横江 金夫君    井上 普方君   中川利三郎君    野間 友一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和六十一年度一般会計予算  昭和六十一年度特別会計予算  昭和六十一年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 小渕恵三

    小渕委員長 これより会議を開きます。  昭和六十一年度一般会計予算昭和六十一年度特別会計予算昭和六十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上田哲君。
  3. 上田哲

    上田(哲)委員 総理大統領的首相になりたいという願望を示されたそうでありますが、これは何らかの権限あるいは行政機能あるいはある種のイメージ、どういうことをおっしゃられたのか、真意を承りたいと思います。
  4. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私が正式に大統領的首相になりたいと言ったことはないのです。ただ、私が申し上げましたのは、座談のときに、政治の運営のやり方において議院内閣制的やり方といわゆる大統領制的やり方とあるが、今のようなこういう時代には大衆の要望、動向、そういうものに細心の注意を払って、そしてどっちかといえばトップダウンで、大事な点は上の方で決めて、迅速、果敢に物事をやっていかぬと民衆の要望に沿えないし、時代のテンポに追いつけない、そしてフラストレーションがますますたまっていく、そういう意味において行政の一番上にある総理大臣みずからがよく目を配って、そして国民の末端、隅々に至るまで要望を取り上げ、くみ上げ、そして大事な点は自分決めて、そして皆さんと一緒にそれを実行していく、そういう責任内閣制と申しますか、そういうやり方に移っていかなければだめだし、そういうことをやりたい。私が首相公選論というのを唱えたものはそういう考えが背後にあってやったものですと、そういうふうに申し上げておるわけでございます。
  5. 上田哲

    上田(哲)委員 この際お伺いしたいのですが、日本国憲法は、憲法学界の中でも有力な意見として、例えば議院内閣制違憲立法審査権等々とらえて必ずしも三権分立憲法ではないという意見もございます。総理日本国憲法三権分立観点からどういうふうにお考えでありますか。
  6. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いわゆる三権分立憲法であると思っております。
  7. 上田哲

    上田(哲)委員 三権分立というのは、総理三権調整を図るということをたびたび言われるのですが、三権分立原理調整ではなくて、権力抑制を図るということだろうと思うのです。したがって、日本国憲法はモンテスキューが提唱した十九世紀的な原理は必ずしも踏襲していない、あるいはできない。一七九一年のフランス憲法のようなそういう三権分立論の生誕時の原形ではなくて、つまり原理の問題ではなくて制度の問題としては、例えば大統領制においてもあるいは議院内閣制においてもそれらを超える上位置念としては十分に存在している。そういう意味日本国憲法三権分立制度を負うている憲法である、こういうふうに理解したいのですが、よろしいでしょうか。
  8. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は三権調整を図ると言ったこともありません。私が申し上げたのは、立法立法行政行政司法司法おのおのが十分に機能して、しかも調和を図っていく、調和を図る、そう申し上げたので、調整ということは申しておらぬのです。三権おのおの独立てございますから、調整するという、それ以上の人というのはないわけであります。おのおの機能しつつ調和を図っていく、そういう意味で申し上げました。  それで、アメリカ大統領制とかフランス大統領制あるいは英国日本がやっておるような議院内閣制、それらはシステムはいろいろな形がありますが、現実としてはやはり三権調和を保ちつつ行われている、そう私は思います。どちらがいいかということは、その国、その国の事情がございまして、一概には言い切れません。しかし、いわゆる現在ある憲法制度というものをいかにうまく運用して生かしていくか、これが政治であります。憲法の条文とは、憲法法典というものは既につくられたものであります。しかし、このつくられたものをどういうふうに運用していくかというのは生きている仕事でありまして、憲法というのは大体大ざっぱに原則を書いているわけでございますから、その原則範囲内でいかにこれを生かして運用していくかということが政治であります。そういう意味において、政治において三権がうまく調和していくように努力するということが行政ないし立法に関係する者の仕事であろう、そう思っております。
  9. 上田哲

    上田(哲)委員 三権調和ではなくて権力抑制ということだと私は思いますけれども、これが原形原理というよりも、制度として現在の日本国憲法は成り立っているという観点は、私は恐らく総理と同じ立場に立てると思います。  そうなりますが、今おっしゃったように、それぞれの国々に応じてその三権の統括といいますか、その形を知恵を絞っているわけでありまして、イギリスの場合、あるいはアメリカの場合は大統領府にそうした機能が与えられております。日本国憲法の場合は、四十一条によって国会が単なる立法機関ではなくて最高機関であるという立場が明記されております。こういう立場からいうと、日本大統領制ではないわけですから、大統領的首相というのはアメリカには当てはまる概念であるが、日本ではイメージとしてもとられるべきでない概念である。大統領的首相というのは、そういう意味では日本にはなじまないのだというふうに私は考えますが、いかがでしょうか。
  10. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私が申し上げているのは、さっきも申し上げましたように、議院内閣制で大体日本システムはあると思います。しかし、英国内閣制度とは大分変わって、米国の大統領制に近い要素も新しい憲法ではあるわけであります。そういう意味において日本総理大臣権限というものはかなり強い権限を持っておるものであります。だからといって、その権限を乱用していいというわけじゃありません。しかし、そういう中にあってもちゃんと三権おのおのチェック・アンド・バランスをとって、そしてお互いを侵さないように、機能するように配慮されておるのです。  国会が国権の最高機関であるという言葉については、いろいろ憲法上の解釈がございます。ただ言葉だけじゃないかという説もあります。なぜなれば、国会立法したことについて裁判所法令審査権憲法上明記してあるわけであります。したがって、国会がつくった法律についても違憲であると最高裁が決定する権限状況によっては持っているわけでございます。そういうわけですから、やはり三権調和がとれつつ行われている。ただ、国会というものは国民が直接選んだ議員から構成される、そういう意味において、主権在民国家においては民意を代表する直接機関であるという意味において、政治的に非常に重要な地位にある、そう思うわけです。総理大臣国会の指名に基づいて任命されるわけでございますから、そういう意味においては、やはり国会というものは行政権のある意味における母体でもあるわけであります。そういういろんな面を考えてみて、最高機関という言葉が使われておると思うのですが、実定法上の権限の分配という面を見ると、三権バランスはとれているような形に行われておる、そう考えております。
  11. 上田哲

    上田(哲)委員 違憲立法審査権はまさに裁判所に与えた国会立法権に対する権限である。したがって、司法権については司法消極主義もあるし積極主義もあるわけで、今日の多数の意見司法積極主義に立つべし、つまり国民の利益にならないような立法あるいは疑いのあるものについてはどんどん裁判所は物を言うべしということが多数意見だと思います。そういう点では積極主義をとるべきだと思いますが、それは裁判所立法機関としての国会の上に立つといいましょうか、物を言えるということができるとしても、四十一条を侵すものではない、これは私は当然な見解だと思います。したがって、裁判所国会に対して、例えば選挙法等について積極的に物を言うべきでありまして、これはオーバーランではない。こういう場合には、もし文句を言うとすれば国会が言うべきでありまして、物を言うのは総理大臣ではない、行政ではない、こう私は理解するのが正しい理解だと思いますが、いかがでしょうか。
  12. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 裁判所違憲立法違憲法令審査権というものは個別的事項について、そして例えば被害を受けた者が訴訟を起こして個別的事項について判定を求める、そういうような性格を持ってきておるのが日本の例であると思います。そういう意味において、包括的に立法を支配するというような地位にはないわけでございます。それもやはり憲法上そういうふうに配慮して運用が行われているのであろうと思います。オーバーランという言葉について、もし御疑念があるとするならば、あなたがおっしゃったような抑制というお言葉考えてもいいのですけれども、しかし機能の充実ということもまた大事なんですね。自分の分野については機能を充実していく、しかし不脅威不侵略というようなのがやはりいいところなんですね。
  13. 上田哲

    上田(哲)委員 そこで、重ねて、日本日本国憲法のあり方の中では、言葉としても大統領的首相というのはない、こう思いますが、いかがですか。
  14. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは法律的にはないと思うのですが、政治的には十分あり得る、それはそのとき総理大臣になった人の政治手法はどういう手法でやるかというやり方でありまして、これはアラカルトである、そういうふうに思っておるわけです。
  15. 上田哲

    上田(哲)委員 それは大変後に引けない発言になってまいりました。総理は、違ったと言われればそれまでですが、旧制高校の同窓会で話したとされる心情はわからぬではないのです。しかし、伝えられておるところでは、その意味は今や社長が自分でシナリオを書く、主演する、振りつけをする、PRも自分でやる、そういう姿だ、こう言っているのです。まあ比喩としてはともかく、私はやはり行政最高責任者、そして今の憲法制度の精神を負うている立場からすると、大統領的首相というのは政治手法であるということにはあってはならぬと思うのです。これはまさに権力抑制原理を捨て去った発言だと思うので、御訂正になるべきだと思いますが。
  16. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 別に訂正する必要はありません。あなたがもし総理大臣になったら、今までのような議院内閣的と申しますか、そういうようなやり方でおやりになればいいんで、憲法の許す範囲内において、時の仕事が何であるか、どういう重要な問題があるか、国民の志向や国際関係がどういう状況にあるか、そういうことを踏まえて必要と思うやり方憲法の許す範囲内においてやる、これが生きた政治であろう、そう思っておるわけであります。
  17. 上田哲

    上田(哲)委員 それは憲法範囲内ではないという私の見解とはどうやら全く相反するようでありまして、私が総理になりましたら、大統領的首相などというものではない首相になりたいということを表明して、国民の判断にゆだねましょう。  今国会冒頭に、総理が、恐らくそういう発想からでしょうが、地方議会の役割というのは身の回りのものである、外交防衛などというものは地方議会のやるべきことではないと言われたのは、やはりそうした意味議会民主主義あるいは民主主義社会に対する原理の誤りだと思います。私は、これは訂正さるべきだと思いますが。
  18. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは都市の非核宣言の問題で質問がありましたときにお答え申し上げたのでありますが、地方自治の本旨に基づいて地方公共団体が独自にいろいろ決議なさることは、これは御自由であり、我々は参考にはいたします、しかし、本来、外交防衛、通貨、こういうようなことは国政の最も重要なところであって、それこそまさに国会議員やあるいは内閣が取り組まなければならぬ重大問題である、それが一番大事な仕事として与えられている仕事である。地方公共団体は、どちらかといえば、「地方自治」と書かれてあるように、自分たち身の回りのことは自分たちで片づける、そういう趣旨で行われて、どちらかといえば身の回りの身近なことをどんどん精力的に処理していく、そういう性格を持っておる。だから、そういう意味において我々は参考にはするけれども、例えば非核の問題については、非核原則というものを国会も決議し内閣もそれを堅持していくと言っているのですから、そう御心配には及びません、それも結構ではございますけれども、どうぞ自分たちのお仕事も大事ですから、両方しっかりやってください、そういう意味で申し上げておるわけなのであります。
  19. 上田哲

    上田(哲)委員 これは私は、やはり憲法の枠内で保障されていることであって、行政責任者がそうしたことは適当でないという発言は慎まれるべきであるということを強く申し上げておきます。  さて、私はこれから先を日米軍事同盟関係について御質問をしていきたいと思います。  その冒頭にやはりはっきり申し上げておかなければならないのは、私どもは、軍事費のいわゆるGNP一%枠をあくまでも守るべきである、このことに強く執着するということであります。  少なくともそれは、第一に、今日でも日本防衛力軍事力世界有数のものであって、あえて言うならば、今日でも軍事大国であるという見方が成り立つのだ。これを例えば国民一人当たりの負担の金額で表示されることは、一つの試算ではありますけれども、軍事費というのは当然その総額において第一義的には議論さるべきであります。国民の多い少ないによって割り算をすれば、当然人口の多い国の比率は下がってくるのでありまして、それがさらに負担増を可能にするかどうかという議論には役立つとしても、その国の軍事力防衛力をあらわす指標ではありません。もしそういう指標をとるならば、例えば雨の多い日本の一人頭の降雨量は、砂漠の国のサウジアラビアよりも少ないことになってしまうのであります。こういう比喩の使い方は間違いでありまして、私たちは、今日においても一%の軍事費というのは膨大なものであるということを申し上げておきたいのが一つ。  もう一つは、一%とはまさに政府自身がお決めになったことでありまして、私たちは一%ならいいと言っているのではないのであります。その一%をお決めになった政府がそれをみずからお破りになるということは、それ自身間違いではないかということを我々は言っているのであります。  第三に、そもそも歯どめというのは、それを超えるかどうかというときにその意味合いについて十分な論議をすべきものでありまして、その一%の歯どめに到達したときには直ちにこれを捨てよというのであっては、もともとこれは歯どめではなかったわけであります。中間達成目標とでも言うべきものでありまして、実はその奥にもっと大きな目標があったということを裏書きすることになる。これはやはり基本的な歯どめ論の放棄だと言わざるを得ません。  第四に、政府自身がよく言われるのでありますが、一%を超えたら軍事大国か、私どもはそんなことを議論しているのではないのでありまして、一%を一円ところか大きく超えようとされているのが政府自身であります。それを一円超えれば軍事大国か的な表現というのは、最も低次な詭弁であるということを強く申し上げて、私どもは一%問題にはしっかり国民とともに執着をしていくということを、後の議論に付したいと思います。理事会扱いになっていることでありますから、私はその数字の議論をここですることを後に送って、なぜ一%を超えなければならないような体制になっているかという中身の問題を、本日は展開をさしていただきたいと思うのであります。  そこで、おととい八七年度版アメリカ国防報告が発表になりました。この国防報告は日本に関して、日米同盟関係は「東アジアにおける米国の防衛政策のかなめ石」である、こういう表現を使っております。前にも似たような文章はありましたけれども、日米同盟関係は「東アジアにおける米国の防衛政策のかなめ石」、これは非常に幅の広い、大きく踏み出した表現であると私は思っております。  全般を眺めて、軍事力増強の強い姿勢というのが非常に強くにじみ出ておりまして、その中で日本の戦略的価値についての評価が非常に高まってきております。そして日本軍事力アメリカの前進展開に不可欠な戦力である、また周辺海域だけではなくて、地球規模の抑止力になるのだと、非常に拡大された位置づけがなされております。  こうした問題は軍事技術での一体化の強い要求にもあらわれているわけでありますけれども、この際立った調子を見せる国防報告について、総理はどのような印象をお持ちでございますか。
  20. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 レーガン大統領の個性がかなり強く出ておるものであると思います。  やはり一つは、アメリカの財政事情というものを考えつつアメリカ防衛力というものを非常に高度化していこう、そういう考えで、ソ連に追いつこう、ICBMその他戦略兵器については非常におくれておるから追いつこう、そういう努力をいまだに継続しておる。それから、ソ連の軍事力の増強というものを甘く見ていない。特に極東部面におけるソ連の軍事力増強、目をみはるばかりのものがある、そういうものを黙視できない。そういうような立場がそこに貫かれていると思っております。  それから、SDIというものを非常に重要視しておるというものは、やはり二十一世紀まで見通しつつ、ICBMのような大量破壊兵器というものから、それをチェックできる防御兵器、高度防御兵器という体系に、攻撃、防御の体系を転換していこう、やはりそういう強い意思が見えてきている、そういうふうに私は拝見いたしました。
  21. 上田哲

    上田(哲)委員 もう少し絞りますが、アメリカの非常に強い調子の対ソ戦略、世界戦略はそれとして、日本の戦略的地位が非常に高まっているという立場、そして今までのように二人の首相の名前を挙げてぜひ軍事力を増強せよというような拍車をかける形ではなくて、大変これを評価して位置づけを広げている。こうした側面についてはどのようにお考えですか。
  22. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本の軍事的、戦略的地位が非常に重要であると評価しているというのは、私は正当であると思うのです。今まで、ややもすればアメリカ国内においてそういう日本の位置というものが過小評価されておる。初めはかなり評価が高かったと思いますが、最近、デタント以来非常に評価が落ちてきつつあるのではないかと思ったのですけれども、実際は私自体が見ても、世界戦略上平和を維持していくために日本の位置あるいは日本機能というものは非常に潜在的に重要性をはらんでいると私は思っております。それだけ日本の役目や行動というものは、非常に慎重にも考え、また我々自体がそれをいかに生かしていくかということも平和のために考えていかなければならぬ要素があると思っておるのです。そういう意味において、日本の存在というものを非常に高く評価してきているということは、私はそれは妥当である、そう考えております。
  23. 上田哲

    上田(哲)委員 どうもいつも向こうから軍事力増強要請があった、今やそういうものではなくて、平たく言えば、総理は納得ということですか。
  24. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 要するに、日本の位置というものが非常に重大であるということをアメリカが強く認識してきたということは、私は正当である、そういうふうに申し上げておるのです。
  25. 上田哲

    上田(哲)委員 そこで私が気になることは、昨年の十一月十九、二十日のジュネーブのレーガン・ゴルバチョフ会談、これは野方図な楽観論は戒むべきでありましょうけれども、総理もここで再三御答弁なされているように、少なくとも第二デタント、新デタント、緊張緩和に向かっての兆しが見えだてはないか、私はぜひ共通の立場に立ちたいと思っているのですが、少なくとも我々の現在はその第二デタントなり世界の緊張緩和に向かって具体化をしていかなければならない段階にある、こういうふうにあのジュネーブ会談を評価したいのですが、これは共通の認識に立ち得るのでしょうか。
  26. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その点は、あなたと考えが一致いたします。
  27. 上田哲

    上田(哲)委員 そこをひとつ共通の土台としてぜひ議論を発展させたいのですが、とすると、ジュネーブが、これから問題はあるにしても、レーガン・ゴルバチョフ会談によってデタントヘ向かって努力をしていく入り口になった。ところが今度のアメリカの国防報告は、どうもそれとは逆な、例えば新聞の見出しを一つとっても「米ソ対話の微笑消えて」というようなのもあるのですね。私はその感覚はよくわかります。ジュネーブ会談では大変そういう入り口に立ったにもかかわらず、それと逆行とでも言いたいようなアメリカ国防報告が出された。これはいかがでしょう。
  28. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 アメリカはおくれを取り戻そうということでここ数年来非常に努力をしておるので、おくれを取り戻すまではその努力をしていくのだろうと私は思います。しかし無限にやるというものではない、そう思っております。
  29. 上田哲

    上田(哲)委員 話を戻しますが、ジュネーブ会談の後、総理のところにはレーガン大統領から何らかの連絡、報告等々がございましたか。
  30. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ゴルバチョフ書記長から先般三段階の核軍縮等の提案がありまして、それに対するアメリカの態度を決めて、今度はアメリカ考えを出していく、それに際しては日本意見も聞きたい、またアメリカ考えもいろいろ説明もしたい、そういうことで、けさあたりたしか軍縮顧問が日本に来る、そういう情報を聞いております。いずれ専門家同士でいろいろ話があるだろうと思います。
  31. 上田哲

    上田(哲)委員 レーガン大統領からは今のところはないわけですか。
  32. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは外交当局を通じて向こうからそういう話がありまして、こちらはお会いしましょうという形で、協議が行われることになったのです。
  33. 上田哲

    上田(哲)委員 今のところ総理のところには直接ないようでありますが、この会談が終わった後、レーガン大統領はまずNATO諸国にこの報告をいたしました。ゴルバチョフ書記長はワルシャワ機構諸国に報告をいたしました。同盟国の非常に強いきずなの日本総理にないというのは、これはどういうことでしょう。
  34. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 米ソ首脳会談が終わった直後、米ソ首脳会談で同行いたしましたウォルフォウィッツ国務次官補が日本にやってまいりまして、米ソ首脳会談についての詳細な説明を政府として受けたわけであります。これは大統領の指示によって参ったわけであります。
  35. 上田哲

    上田(哲)委員 大統領が来たか、代理が来たかということの意味の違いというのを議論するつもりはないのですが、別に私は特に日本が軽んぜられたであろうなんということを言おうとしているのではないのです。これは基本的に今度のジュネーブ会談というものがデタントに向かって非常に大きな希望を与えてくれたと私たちは評価するのだけれども、よく見てみると、これはヨーロッパ軍縮であった。今度の十三項目の合意と言われるものを見てみますと、宇宙軍拡をやめようというようなグローバルなものは当然として、実効的なものを眺めると、例の五〇%核兵器の削減ということをベースにしながら、ヨーロッパのINF、中距離核戦力の削減のための暫定協定構想の早期進展を目指そうとか、ウィーンの欧州相互兵力削減、MBFR、この交渉の顕著な成果の達成を図ろうとか、CDE、欧州の信頼醸成と軍縮に関するストックホルム会議の作業が早期かつ成功裏に終了するよう支援する、そして武力不行使の原則を具体的に表現する文書をつくろう。これはそれぞれ大変具体的で結構なんですが、これはみんなヨーロッパなんですね。だから、まさにジュネーブ会談の前進、あえて前進という言葉を声を大にして言いたいのだが、それはヨーロッパ軍縮であって、そのことは結構なんだけれども、実はアジアは置いてきぼりになっているのではないか。ヨーロッパではINFの暫定協定をぐっと打ち出していながら、アジア・太平洋地域はINFの議題にもならなかった。つまり、ヨーロッパ配備の地上発射型巡航ミサイルは削減への早期進展ということが一方にありながら、太平洋配備の海上発射型巡航ミサイル・トマホークなどは日本周辺でますます増強中である。これはSS20もそうだからという言い方はいいです。そのことの議論をするつもりはないのですが、私が言いたいことは、先ほど総理とジュネーブ会談というものの前向きの意味ということを確認して、我々の努力があるべきだということになった。ところが、それはヨーロッパにおいては顕著であるが、まるで裏返すようにアジア・太平洋地域ではかえって強化されている。こういう状況があるというのは、残念ながら事実の認識ではないかと思うのです。この認識はいかがでしょうか。
  36. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これは米ソ首脳会談において今お話しのような具体的内容を持った協議が行われたわけでございますし、その中にあってINF交渉は、これはジュネーブ交渉でも行われるわけでありますが、その後行われたゴルバチョフ提案におきましても、実はシェワルナゼ外相からその提案をお聞きしましたときに、私はとっさに気づき、話したわけでありますが、INFについてはヨーロッパ主力の考え方でソ連が提示しておる、アジアについて触れられてないということについて日本としてはまことに遺憾である、やはりあくまでもINFについてはグローバルな形で、アジアを犠牲にしない形でこの交渉が進められるべきである、そういう観点から対応してもらわなければならないということを日本立場として主張した次第です。
  37. 上田哲

    上田(哲)委員 総理、全くの現実の問題としてジュネーブ交渉はヨーロッパ軍縮、しかしアジアでは情勢はさらに厳しい、これが私たちが今大まかにといいますか、大づかみにつかんでおかなければならない認識であるということでいいわけでしょうね。
  38. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そうです。ヨーロッパだけに目をとらわれていると、アジアのこの非常な厳しさというものを忘れがちであります。アジアを忘れさせないように、ヨーロッパと並行して軍縮へ持っていくように私たちは全力を注ぐつもりでおります。
  39. 上田哲

    上田(哲)委員 そういう認識が正しいのだろうと思うのです。これは残念ながら冷厳な事実ですから。  そこで、これを非常に雄弁に物語っているのは「ソビエト・ミリタリー・パワー」、これはワインバーガーが署名している、アメリカ国防総省から公刊されているものであります。これは、アメリカ側から見てソビエトが米本土向けの戦略核を配備している地図であります。これは御承知と思いますが、特に青く強く塗ってあるところが七カ所ありまして、これが米本土をソビエト側から攻撃し得る地域である、配備されているところである。これは七カ所あるわけですね。この七カ所のうち何と四カ所がアジアなんですね。特に三カ所が日本近海なんです。世界で七カ所、アメリカ本土が撃たれるぞ、そしてそのうち四カ所がアジアで、三カ所は日本近海である。これがアメリカ側が見ている、公刊されているワインバーガーが署名している地図なんです。こういうものであります。これはもちろんアメリカのことは書いてないわけですが、こういう認識。  こういう認識をアメリカが持っている、総理の方から言わせれば持たざるを得ないということなんでありましょうが、こういう状況が、少なくともアメリカ側だけ言えばアメリカ側の認識になっている。これは認めるも認めないもないわけですけれども、これに基づいた戦略配備が行われている。総理、これは事実の問題ですから十分御認識があると思うのですが、総理の言われるアジアの厳しさというのはこういう認識であるということですね。
  40. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは、INFにすればSS20の極東部における展開、増強ぶり、百七十とも言われております。それから極東におけるソ連の海上兵力、航空兵力の増強ぶり、これも海上兵力等においても第七艦隊を凌駕するぐらいの膨大な潜水艦群やあるいは航空母艇というものが増強されてきておる。あるいは、我が北方領土においてミグ23あるいはそのほかの一個師団クラスの兵力が展開していると言われている。あの小さな島にそんな大きな力がどうして要るのだろうかと思われる。あるいは戦略的に見ますと、ソ連は大きな内海を持っていないのです。あるのは黒海とオホーツク海だけてあります。オホーツク海というのは外国の領土に取り囲まれない唯一の大きな内海であると言われておる。そういう意味において原子力潜水艦が一番安全な場所である、そうとも前から言われておった。そういう点から見てもオホーツク海の重要性というものが今や次第に浮上しつつありますね。そういう点をアメリカは注目しているのではないかと私は見ておるのです。
  41. 上田哲

    上田(哲)委員 ソビエトの増強ばかりを議論していたのではしようがないので、アメリカの問題も一緒に取り上げなければならないのが軍事情勢の議論でありますが、私どもは、ヨーロッパの軍縮と裏腹にというほどにアジア・太平洋地域の軍拡が進んでいくという状況に対して、その削減をどう努力するか、ここに日本の努力がなければならぬということを申し上げているわけであります。  そうした意味ではアメリカも、一昨日の下院軍事委員会でレーマン海軍長官が、第七艦隊を最大の戦力として充実するという強い方針を打ち出しております。その考え方の中に、かつてのスイング戦略、有事に太平洋の米軍戦力を欧州方面に振り向けるということはもうできなくなった、やらないのだ、こういう意味で第七艦隊強化ということを中心に置くアジア・太平洋地域への戦力配備ということが公式に打ち出されているわけであります。こういう中で日本はどうあるべきか、こういう中でアジア・太平洋地域の軍拡をどのように低減させていくか、こういうことを私たちは最大の関心に今しなければならないと思うわけであります。  今度の国防報告の中では、日本の戦略的な重要性が高まっているということを再三強調しております。戦略的価値というのは大変物騒なことなのでありまして、この中では、ソ連が自国沿岸要塞に潜水艦を配備したことにより、それらの日本海、オホーツク海への出入り口を支配する諸島の戦略的な重要性が増して、このことが日本に対するソ連の脅威を明確にしておる。そこで、日本がここで十分な軍事力を持つことは地域的に、また間接的に全世界的な抑止に役立つ。日本軍事力が世界的な役割をここで与えられる、アジア軍拡ということの中で、日本の自衛隊の役割が世界的な役割を与えられる。これは大変なところへ引き上げられてしまった、こうあってはならないのだというところに日本の平和政策、軍縮政策のポイントが置かれるべきだと思いますが……。
  42. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本としては「防衛計画の大綱」の水準にできるだけ早く達する、これはもう数年前から政府が決定したところで、その努力をしておるところでございます。今回の中期防衛力の整備計画も、その最終段階としての自覚に立ってつくられているものでありまして、それによりまして必要最小限の防衛力を整備していきたいと考えております。
  43. 上田哲

    上田(哲)委員 そこで、その中期防が、前回にも討議いたしましたが、総理の言われるように、日本防衛を完成するものである。日本防衛の完成ということは日本列島守備隊論の完成だというふうに我々は理解したいのですが、どうもこれは世界的な戦略の一環となることの完成である。これは大変重大な乖離であって、私たちはそのところをひとつしっかりとらえて議論しなければならないのだということを申し上げておるのであります。  したがって、もう少し具体的に議論したいのは、この国防報告の中で日本に向かってアメリカがはっきり言っておりますのは、日本は西側防衛力を高める上で「新たな任務分担に依拠している。」、「新たな任務分担」という言葉が出ているのであります。一体、今中期防を中心にして五カ年計画で概成されると言われる日本防衛力なるものが、「新たな任務分担」というものにどういうふうにかかわってきたのか、これをぜひ議論をしていかなければなりません。  そこで、具体的にはこの一月十五日から三日間行われましたハワイの会談、この会談で、加藤防衛庁長官は、模索から定着の時代に入ったとコメントをされております。マンスフィールド大使は、七八年以来、最高によかった会議である、こういうコメントをされております。私たちにとっては、どうもこれは、するするっと今申し上げた世界戦略の中に組み込まれていく、安定的に組み込まれていくなんというふうに受け取らなければならないのであるとすれば、大変危険なことであるというふうに思うわけです。  そこで、この会談でアメリカ側が「防衛計画の大綱」の改定は望まぬ、このままでいいぞということを言ったというふうに巷間伝えられていて、その辺の真意がわからないのであります。しかし、私どもがいろいろ調べたりしておりまして、こういうふうに理解すべきだと思うのですが、いかがか。つまり、アメリカ側の発言と理解は、中期防なりその初年度に当たる六十一年度予算の内容を評価して、その評価の内容というのは、八一年五月八日の日米共同声明以来のいわゆる任務分担、機能分担ですね、この機能分担を達成していくためにこの大綱は十分な役割を果たす、こういう積極的な評価が与えられたのだ、こんなふうに理解をすべきだとするのが正しいのではないか。正しいという意味は、正確なのではないか。私たちはもちろん意見は違うのですが、これはぜひひとつこの会議に出席された担当者からでも、その辺の認識をお聞きしたいと思います。
  44. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 お答え申し上げます。  去る一月の第十六回SSCでございますが、その際にケリー国防次官補代理から大綱についての言及があったわけでございます。その際にケリー国防次官補が申しましたことは、大綱の基本的考え方は両国の防衛関係の基盤である安保条約と両立しているということ、それから限定的かつ専守防衛に徹した自衛的役割のために防衛力整備を進めるという日本の基本的政策を理解するということを述べております。さらに大綱の大幅な再構成は防衛面での日米の基本的な関係に抜本的な変化をもたらし得るということを述べております。ということは、大綱の考え方について一定の理解と評価を示したというふうに我々は承知しているわけでございます。
  45. 上田哲

    上田(哲)委員 何を言っているんだかよくわからないですね。  わかりやすく言いますと、新しい任務分担とアメリカが言っていることは何だ、これは当然ハワイ会談で出ていた内容ではないか、それをどういうふうに説明してくれるかと言っているのであります。  もう少し言いますと、これは、今まで大綱の議論をしていたのは、アメリカは別表のことなんですね。例えば兵員、例えば航空機、作戦航空機が四百三十機であるとか艦船が六十隻であるとか、こういうものじゃだめだ、時代おくれだと言っていたはずなんです。ところが、量的な問題ではなくて質的に十分やっていけるよという説明がなされた。こういう立場で、言うなれば機能分担、つまり八一年共同声明以来のアメリカが求めてきたものをこの大綱によって十分できる、こういうことを明らかにした。その中で、今回の国防報告でも明らかになったように、日本軍事力整備というのはまさに地球的規模におけるアメリカ戦略の一部として十分に機能し得るものになる、こういうことだ。これが文脈として正しいことだと思うのですが、これは総理なり防衛庁長官なりからお答えいただければいいです。今のような話はもういいです。
  46. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 委員御指摘の、ハワイ会談において何が語られたか、どういうことであるかという事実関係でございますので簡単に説明させていただきます。要するに……(上田(哲)委員「もういいです、あなたの説明は要らない、求めてない答弁は横暴だよ、だめだよ、下がりなさい」と呼ぶ)ケリー国防次官補は特に別表について泣言及しておりません。
  47. 上田哲

    上田(哲)委員 何を言っているんだ、あなた。委員長、指揮してください。(「委員長発言を許可した」と呼ぶ者あり)だから、委員長に求めているのです。要らないという答弁を無理して言わないでくださいよ。
  48. 加藤紘一

    加藤国務大臣 今度のハワイ会談には防衛庁からは矢崎事務次官以下が出席いたしました。  そこで、大綱に対してのケリー氏の評価というものは、従来からアメリカが言っておりますことを改めて大綱との関係、「防衛計画の大綱」の実現という観点から敷衍したものでありまして、そういう意味では新しいと思いますけれども、先ほど北米局長が申しましたように、大綱の基本的な考え方は日米安保に合致するとか、それから大きな変更を望むものではないとか、それから日本が核をも含めたリージョナルな軍事パワーになってほしいとは思わないとかという点につきましては、従来と基本的には同じと考えていいと思います。  ではなぜ、かつていっとき、時代おくれだとかというような発言があったとか言われている中で今の大綱を評価するような発言になったかといいますと、私は、これは、ここ数年来我が国が防衛力整備につきまして、自分の国の防衛のために自分で設定した目標の達成をしっかりやってきたことに対するアメリカ側の評価と信頼感のあらわれだろうと考えております。
  49. 上田哲

    上田(哲)委員 そうすると、アメリカ国防報告が言っている「新たな任務分担」というのは何ですか。
  50. 西廣整輝

    西廣政府委員 お答えいたします。  国防報告に「新たな任務」というような書き方がしてございますが、括弧書きで千マイルのシーレーンの防衛というようなことが書いてございますので、そういう点であれば我が方はかねがね航路帯を設ける場合千マイル、周辺数百海里の防衛をやるということは我が防衛力整備の方針にいたしておりますし、その点については米側も古くから知っておるということでございます。その点につきましてはたまたま過去の、今から十数年前でございますが、国会でも御議論になりまして、ちょうどこの委員会にも御出席になっております大出先生等も御質問があって米側に確認をいたしたこともございます。  そういうことで、決して新しい任務として千マイルが入ったのではないということは御理解いただけると思いますが、ただ国防報告にそういう記述がしてあるということは、あるいは国防報告というのは米側の議会なりあるいは国民に対してある程度説明をするためのものでございますので、そういう点で日本の最近における防衛努力というものを十分政府は評価しているのだ、国防省は評価しているのだということを強調する意味でそういう表現をしたのではないかというように考えております。
  51. 上田哲

    上田(哲)委員 はっきりしたお答えが出ないというのは残念ですけれども、端的に言えば、アメリカが前から言っている日本をNATO並みの同盟関係として見るという段階を抽象的に言えば明らかにしているのだと私は思います。つまり、大綱評価ということはアメリカ戦略の中での日本の役割の評価、それができるという評価であります。  そこで、そうだとしますと、まさに日米同盟関係、しきりにこのことが言われているわけですから、日米軍事同盟関係というものを完全な密接なものにするということがテーマなのでありまして、そういうことではこの同盟体制をより緊密にする段階にいよいよ入る。もっと具体的に言えば、一昨年の暮れに日米共同作戦計画がティシエ、渡部両将軍の手で協定をされました。ことしの秋にはシーレーンの研究が完了いたします。また、今月中には初めての統合幕僚会議レベルの統合指揮所演習が行われる。まさに日米軍事関係が完全な緊密な関係をこれからつくり上げていく段階に入るということになるわけであります。この時期に今当たっているということは言うまでもなくお認めになりますね。
  52. 加藤紘一

    加藤国務大臣 我が国と米国との間には日米安保条約という条約があって、この条約は防衛面、軍事的な、お互いに協力し合うという体制が明記してあることは事実でございます。そしてこの安保条約の存在があったればこそ、私たちは現在、国の安全を自衛隊の存在とともに確保できておりますし、また非常に低い防衛費で私たちの国の安全が確保されているというのは歴史的な事実であろうと思います。その信頼性を確保していくということは非常に重要なことでありまして、またインターオペラビリティーなどの側面も強化していかなければならないことは事実でございます。現在の、御指摘になったような共同研究とか共同の指揮所演習というものは、そういう観点から行っていることでございます。
  53. 上田哲

    上田(哲)委員 まさにそういう形でこれから中期防で日本防衛を概成するとおっしゃる。それにまさに日米軍事同盟関係がどのようにあるべきかという検討がなされていく段階に入っている。それが今からの課題であるというのが視点であると思うのです。  そうすると、私は中期防だけの議論では足りない。中期防というのは結局買い物計画でありますから、どれだけ飛行機を買うか、軍艦を買うかということではなくて、それをどう使っていくかという計画、これが当然あるわけでありまして、これは統中とか統長とかいろいろあるわけでありますが、毎年ここに年防というのがあります。年度の防衛、警備等に関する計画、こういうものができ上がっているわけで、これも従来全く我々には示していただけないものでありましたけれども、この年防を軸にして、つまり年防というのは何かというと、日本列島守備隊計画でありますから、日本列島を守るというはずのそのものと、日米共同作戦計画やシーレーン計画や指揮所訓練や、こういうものが全部入ってきて一緒になるわけでありますから、こういう時期に当たって、一体日本は何をこれから防衛計画として、具体的にそのタンクや飛行機や軍艦を動かすのかということが明らかにならなければ、買い物計画だけで走っていってもらっても困るのであります。この時期に当たって、この年防等をそうした面で我々が議論できることがシビリアンコントロールでありまして、ここのところをどういうふうに保障していただけるのかということをお答えいただきたいと思います。
  54. 西廣整輝

    西廣政府委員 今御質問の年防と申しますのは、恐らく年度の防衛計画、私どもでは、これは統合幕僚会議でつくるものにつきましては年度の統合防衛計画と申しておりますし、陸海空の各自衛隊でつくるものにつきましては各自衛隊の年度防衛及び警備計画と称しておりますが、これは言うなればその年度内に持っておる防衛力、これを前提にして、その年度中に何か不測の事態が起きればどう対応するかといういわば作戦計画の基本とも言うべきものでございまして、これは当然のことながら自衛隊の任務から非常に重要な問題でありますので、毎年つくっておりますが、今申したようにそういった作戦計画の基本になるようなものでございますので、この内容を公表することは御勘弁いただきたいと思います。
  55. 上田哲

    上田(哲)委員 年防の説明なんか要らないんですよ。これは統合幕僚会議がまず統年防をつくって、これから陸海空三幕僚監部、方面隊、師団、連隊などが次々につくるわけですから、全部で三百七、八十と言われているのです。この膨大なものが我々の口に触れない、しかも、日米共同作戦計画とかシーレーン計画とかそうした問題が全部入って、統合指揮所訓練まで行われる、そういう形で進んでいくところが我々は、買い物計画の金額だけ知らされて、それがどう使われてどんな役目を果たすのかということを全く国会で議論できない、これはおかしいじゃないですか。年防をそのまま全部三百七、八十出せとは言わないが、それを議論させる場というものはぜひ保障してくれるのでなかったら、全く我々のわからないところでどんな軍事大国になろうが何だろうがチェックする機能国会が持てないということになる。これは委員長、当然私たちの要求でなければならない。出してください。出せないならどうしてくれるんですか。
  56. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほどお答え申し上げたように、年度防衛計画というのは我が国をいかにして守るかという計画でございまして、統幕でつくるもの、各幕僚監部でつくるもの、さらにそれを受けて陸上自衛隊であれば方面隊、さらに師団までつくっております。海であれば各地方隊あるいは自衛艦隊ということで、年統防、統幕の防衛計画を受けてそれぞれの計画を次々につくっていくわけでありますが、先ほど申したように、これはその年に起きるかもしれない事態というものを想定しながら現に持っておる防衛力でいかに日本防衛するかという計画そのものでございますので、この内容をあらわにして御論議いただくということは御容赦いただきたい。その点は御理解いただきたいと思います。
  57. 上田哲

    上田(哲)委員 国会が議論できないんですよ。たくさん、十八兆四千億円の買い物をするから国会で予算を通せ。さあその後でどこをどう使うのか。しかもアメリカと共同作戦をやる、シーレーン防衛をやる、どこまでいくかわからぬ。合同指揮所訓練は防衛庁の中でやる。どんどんそれが進んでいくのに、何がシビリアンコントロールですか。全然我々にこれ以上の資料を出さないということじゃ議論できないのですよ。これは同じこと、出せません、出せませんと言われたんじゃ、国会はなくてよろしいということと同じですな。これはどうするのですか。
  58. 加藤紘一

    加藤国務大臣 シビリアンコントロールの観点からは、最後の保障措置であります国会に、例えばどのような防衛力を整備するか、それにつきましては、その機数等明確に私たちは出すべきであろうと思いますし、出しておるわけでございます。  今御議論ございました年防でございますけれども、一言で言ってしまえば我が自衛隊の作戦計画であります。本年度どういうことが起こり得る、そういうような想定を幾つかいたしまして、その中で我々はどう対処するかというものを書いてあるものでありまして、それを、いわゆるテレビでも御議論いただいておりまして、また当然諸外国にも伝わるような場でお示しすることはお許し願いたいということは、ぜひ御理解いただきたいと思います。
  59. 上田哲

    上田(哲)委員 全部出せとかそんなことは言いませんよ。我々がシビリアンコントロールを遂行するために、今共同作戦計画とかシーレーン防衛に関する共同対処とか、そうした問題との関連で年防はどういくのかということを議論できるような範囲で出すように努力をする、こういうことなら私は納得しますよ。
  60. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほど来御説明して御了解いただけないのは残念でございますが、年度防衛計画と申しますのは、何度も申し上げるようですが、私どものつくっておる各種計画のうちでも最も機密度の高い計画、計画そのものが秘区分でいえば機密になっております。そして、それは長官の承認のもとに最終的に決定をされておるものであり、必要に応じて総理大臣にも御報告をするというものでございますが、これ自身、何度も申し上げますように我が国の守り方そのものを書いておるものでございますので、これを概略といえども外に出すということは、我が方の守り方の手のうちそのものをさらけ出すということになるので、その点は御理解をいただきたいと思います。(発言する者あり)
  61. 小渕恵三

    小渕委員長 本件については理事会で協議をいたします。  質疑者は質疑続行をお願いいたします。
  62. 上田哲

    上田(哲)委員 それで、私が言いたいことは、我々の知らないところで日米共同作戦計画というものがこれから進んでいくわけです。  そこで、それでは具体的に質問いたす件は、日米の合同時勢の指揮権がどうなっていくか、これが非常に重大な問題であります。そこに絞っていくのですが、今回アメリカ国務省から発表された一九五一年から五四年の外交文書によりますと、大変なことが明記されているのであります。つまり、日本の自衛隊の指揮権はアメリカの司令部の中にゆだねる、こういう口頭了解があったことが明白になっています。一回目は、一九五一年の二月三日に、ダレス特使が集団安保条約案を提示したときの第八章に、「統一司令部」を提起した、とれは日本側が合意しませんでした。二回目は、一九五二年の一月十六日、ラスク国務次官補が行政協定の最終草案を示しました。その二十二条、「有事の際には日米の統一司令部を設置し、米軍司令官が指揮権を持つ」という内容でありました。これもうまくいきませんでした。三回目に、一九五二年の二月八日に、ラスク・岡崎会談で、「有事の際には日本が米軍の指揮下に置かれることは明白である、ただしこれは明文化しないでもらいたい」という口頭了解がなされました。この後七月二十三日には、クラーク極東軍司令官とマーフィー駐日大使が、吉田、岡崎両大臣に再度口頭了解を得ています。また、一九五四年の二月八日に、アリソン駐日大使が同様の了解を得たことを本国にメッセージしまして、これが二月十七日の下院外交委員会の聴聞会で証言され、既にこれは公刊されています。  私が申し上げたいのは、日米行政協定が締結された直前の、つまり締結は二月二十八日でありますから、その直前の二月八日のラスク・岡崎会談、それ以降のたび重なる口頭了解として日本自衛隊の指揮権はアメリカ軍の司令官にゆだねる、このことが明白であるというふうに確認をされています。公式に発表された公文書でありますから、疑いない事実であると思いますが、お認めになりますか。
  63. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 この指揮権の経緯につきましては、アメリカから一定の書類が出ておりますけれども、我が方として検討いたしておるところ、必ずしも完全なる記録はございませんけれども、前後の関係からいたしまして、明確に吉田総理が個人的にそういうお考えをお持ちであったということは明らかのようでございますけれども、アメリカ日本の間にそういう合意が成立しておったということは存在しないというふうに考えております。
  64. 上田哲

    上田(哲)委員 これは重大な発言ですよ。アメリカの公文書の中にはっきりそのことが出ているのです。もっとはっき言えば、二月八日にシーボルト政治顧問から国務省へ電報が打たれておる。この電報の中で、今申し上げたように日本が米軍の指揮下に置かれることは明白である、ただし明文化しないでもらいたい、はっきりこの口頭了解が証拠として、文書として残っていますよ。はっきり文書が残っているのに、吉田首相はそういう気持ちだったらしいけれども確認できないなんていうばかなことがありますか。
  65. 西廣整輝

    西廣政府委員 ただいま御質問の日米両国の指揮権の件でございますが、この件につきましては、一九七八年日米防衛協力小委員会が作成した日米の防衛協力のためのガイドラインというのがございますが、これが正式に置かれておる日米安全保障協議委員会に報告し了承されたものの中に、明確に日米両国はそれぞれの指揮権に従って行動するというように書かれておりますので、現状において確実に両国の指揮関係というのは別個であるということが明確になっておりますので、その点御了解いただきたいと思います。
  66. 上田哲

    上田(哲)委員 とんでもない話なんだ。表向きはそういうことは幾らでもやるのですよ。表向きは幾らでもやるんだけれども、完全に明文化しない口頭了解というものが総理大臣、外務大臣と向こうの高官との間に交わされておるのです。これは占領下間もないころですからいろいろな事情があったでありましょうけれども、そういうことがあるのですよ。これをアメリカの公文書として完全に発表されているものを、そんな言い方ではこれは到底納得できません。しかも、日本側も昨年の夏に公文書、外交文書を発表しているのですが、なぜかこの行政協定締結の部分だけが除かれておるのです。どういうことですか。これはとんでもない話でしょう。当然これは外交国民に対する義務として——アメリカは全文発表している。日本は発表したが、この行政協定の部分については発表を除外したのです。これは実におかしいじゃないですか。少なくとも今ここでその文書を発表するというのは国民に対する義務として約束をしてください。出してください。
  67. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 行政協定関係の公文書の発表、これ自体はそれぞれの問題があると思います。公文書の発表につきましては、個人のプライバシーとかあるいは公の利益と申しますかそういうものを勘案してこれを判断するということでございますので、この際別な問題と思います。  ただいま先生御指摘の問題につきましては、先ほど申し上げましたように、この件について正確な書類が我々の方にございませんが、アメリカが公表しております件を見ましても、ここに明確に合意があったということは言えない。確かに、占旧総理の御本などを見ますと、吉田総理にそういう考え方があったのかもしれない、したがってその交渉の過程でそういうような意見を表明したことがあるかもしれない。それは岡崎外務大臣を通じても同様でございます。しかし、これは旧安保時代のことでございますが、いずれにしましてもそういう合意が存在したということは、明確に存在してないわけでございまして、その後も日米間でこの件についてアメリカの方から、それではこの合意についてこうしてくれとかそういうことは一切ございません。いずれにしましても、先ほど西廣防衛局長から御答弁申し上げましたように、昭和五十三年の日米防衛協力のための指針におきまして、明確に「自衛隊及び米軍は、緊密な協力の下に、それぞれの指揮系統に従って行動する。」ということを合意しておりますし、この合意の過程におきましてもアメリカ側から何らかの、自分たちの方に指揮権をくれとか、そういうような趣旨の要求は一切ございませんでした。
  68. 上田哲

    上田(哲)委員 これは納得できないでしょう。明らかにアメリカ外交文書が発表されて、書いてあるのです。例えば七月二十三日の段階で吉田首相は、この合意はわかったが日本国民に与える政治的衝撃を考えると当分の間秘密にしてほしい、そういう言葉がちゃんとついている。これはアメリカの国立公文書館所蔵文書の中にちゃんとあるのです。そういうことが全部あるのに、そういうことがはっきりしてないだのそうではなかったなどという勝手な解釈をしてくれるのは困る。しかも明らかに、個人のプライバシーだ何だとおっしゃるが、だから三十年たったら国民に対する外交の義務としてこれを公表するということがルールじゃありませんか。そこを、その部分だけを外して、発表してないということは国民に対する義務を怠っているのでしょう。おかしい、そうではないのだとおっしゃるのならば、少なくともそれを出してください。発表してください。その上で突き合わそうじゃありませんか。指揮権、一国の指揮権というのが外国の指揮権の中に入るということが口頭了解されているということがあるかないかわからぬということでは困るし、その経緯について発表していない、こんなばかなことをして議論は進められません。
  69. 小和田恒

    ○小和田政府委員 外交記録の公開の問題について御質問がございましたので、取りまとめて整理をして申し上げたいと思います。  まず、日米行政協定関連の文書が公開されていないことにつきましては、さきに外交文書を公表いたしました際にも御説明をいたしましたように、行政協定についてはまだ審査作業が終了していないわけでございます。種々の事情によりまして、作業をやっておりますけれどもそれがまだ間に合っておらないということで、前回の公開のときにはそれに含まれなかった、こういうことで御説明をしてあるとおりでございます。  他方、今委員から御質問のありました特定の件につきましては、先ほど北米局長からお答えをいたしましたように、アメリカ側が公表した文書の中にそれに類する記録があるということは私どもも承知しております。これに相当するような話し合いの記録というものがあるかどうかということにつきましては、米側から記録が公表された時点におきまして私どもとにかくその問題だけでも調べてみようということで作業をやってみたわけでございますけれども、先ほど北米局長がお答えをいたしましたように、それに関しての我が方の記録なるものはまだ見つかっておりません。  他方、これも御承知かと思いますが、吉田総理がお書きになりました「回想十年」という回想録がございますが、その中にこの当時の経緯についてかなり詳細な説明がございますが、基本的にアメリカ側がそういう立場から希望を表明し、そういう形で要望を出しておったということは事実のようでございます。しかしながら、吉田総理はこの回想録の中で、結局のところいろいろ交渉して我が方の事情を説明した結果として次のように述べております。ラスクが、当時国務長官でございますが、ラスクが一つの提案をいたしまして、その提案がやや漠然とはしているが、当然のことでもあるから、日本側は異議なく、問題は解決した、したがって第二十四条の背後に何か秘密の取り決めでもあるかのごとく言うのは、全く根も葉もない憶測にすぎないのである、こういうふうに吉田総理自身が回想録にお書きになっているわけでございます。  米側の記録につきましては、米側に記録があるわけでございますので、何らがその問題をめぐっての話し合いがあったということは想像されるところでございますけれども、しかしながら米側の記録が当時の会談というものを正確に記録しておるという証拠は全くないわけでございまして、私どもとしては、先ほども申し上げましたような経緯、それから吉田総理の回想録等々、それから条約自体の規定及びその運用ぶりというものから判断いたしまして、そういうような合意が日米間にあったということは考えられないことであるというふうに承知しているわけでございます。  さらにつけ加えますならば、先ほども申しましたように、これは旧安保条約の時代の話でございまして、新安保条約の問題としてはこの問題は極めて明確に処理されておりますことは、先ほど防衛庁防衛局長がお答えをいたしましたように、この点について極めて明確な合意というものがガイドラインの中に明記されておるということで御了解いただけるかと思います。
  70. 上田哲

    上田(哲)委員 大変不明確であります。明らかに向こう側が秘密でも何でもないオープンにしている文書の中に具体的にその表現が出ているのであります。しかも、それに対応する部分を我が国の外務省は発表の中から除外しているのです。これを出してくれなければ私たちは——今の説明などというのはどんな言い方だってできるのです。ガイドラインが七八年にでき上がるについてはこの口頭了解が下敷きになって行われたんだということは識者の指摘するところでもあるのですから、表面上の言葉でどう取り繕ったか、私はもう一遍要求します。  それほとおっしゃるのであれば、アメリカの文書に対応する、行政協定締結時の外務省が去年の六月に発表した中から除外した分をはっきり国民の前に明らかにしていただくことが一つ。それから、行政協定は変わったと言うが、地位協定にそのまま引き継がれていくのでありますから、こうした問題がノーだということになったのなら、ガイドライン上の交渉の問題ではなくて、あの口頭了解が消滅したということが明らかにアメリカ側から言われてなければならない、この事実がどうなっているか、この二点。これをぜひひとつ、今でなくて結構ですから、御検討いただいて御回答いただくように留保したいと思うのですが、いかがでしょうか。(発言する者あり)
  71. 小渕恵三

    小渕委員長 ちょっと答弁させてください。藤井北米局長
  72. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 行政協定の関連文書につきましては現在精査中でございます。それの公開がどの程度できますか、その段階でその過程を通じて検討していきたいと思います。  ただ、先ほど申し上げましたように、本件の特定の問題につきましては、我々が調べましたのですが、現在までのところわからない。わからないものにつきましては、昭和二十七年のことにつきましてアメリカ側の方の一方的なあれを信用するというわけにもいきませんし、我々の方で調べておるわけでございますが、存在しないものにつきましては、当然のことでございますけれども、御提出はできないと思います。
  73. 上田哲

    上田(哲)委員 ではひとつお取り計らいいただいて、私はこの分を留保しておきます。  もう一つ、とにかくフリーテックスが行われるとぜひそれに参加したいという、これは米ソ戦の演習ですから。リムパックが行われると日本の小西海将補はアメリカ軍の中で副司令になる、そういう実態が今あるのです。だから、現実に指揮権というのが日本にないじゃないか、合同態勢になれば指揮権が一元化するのは軍隊の常識なんですから。このことが分離されるなんという話をされたのでは、どうしても私たちは危険を感ずる。しかし、それが三十年前の文書で明らかになったのだから、その点をはっきりしてくれということを言っているわけであります。  そこでもう一つ、急いで質問するので簡単に答えていただきたい。  昨日来議論が出ておるので、軍事情報の問題というのが非常に危険を感ずるのであります。私、具体例で言いますから、たくさん言いません、三点言いますから簡単に答えてください。  第一に、我が国の偵察機がある国の上空に情報をとりに行くということは、一般情報、軍事情報の区別にかかわらず、その情報をとりに行くこと自体集団自衛権の行使にかかわる、こういう見解でいいですか。早く答えてください。
  74. 西廣整輝

    西廣政府委員 ただいま御質問の件は、情報交換ということにかかわりなく、偵察機であろうと、我が方の部隊が他国の領域に入るということそのものが行動でございますので、我が国の防衛のための自衛の範囲を超えるものであればそれは場合によっては集団的自衛権に当たる、あるいは我が方の侵略とは言いませんけれども、領空侵犯に当たるということになろうかと思います。
  75. 上田哲

    上田(哲)委員 二番目に、我が国のP3Cが領海または公海においてある国の軍事情報を得て、これを他国に提供することはどうなんですか。
  76. 西廣整輝

    西廣政府委員 具体的な前提条件についていろいろ問題があろうと思いますが、今お聞きした範囲ですと、我が方のP3Cが通常の哨戒活動なり監視活動をしておる、そこでたまたまある情報が得られたという場合であろうというように理解しましたが、その種の情報をどう扱うかということは、これは我が国の国益なりに照らしてそれをそのまま情報として温存しておくなり、場合によってはそれを提供するというか、交換するなりということは我が国自身の判断によるものではないかというように考えております。
  77. 上田哲

    上田(哲)委員 個別自衛権ですか、集団自衛権ですか。
  78. 西廣整輝

    西廣政府委員 交換することそのものが個別的な自衛権でも集団的自衛権でもない、いわゆる自衛権の行使には当たらないのではないかというように考えております。
  79. 上田哲

    上田(哲)委員 わかりました。最後の一つですから。そうすると、我が国のP3Cが今のような同じ条件で得た軍事情報を他国の軍事行動を直接支持するような形で提供された場合はいかがですか。
  80. 西廣整輝

    西廣政府委員 他国の軍事行動を直接支援するという意味がはっきり具体的につかめませんが、仮に他国から頼まれて特定のところに出かけていき情報をとる、情報をとるとらないにかかわらず、頼まれて行動するということは仮にそれが武力の行使に当たるようなものであれば集団的自衛権に抵触するのではないかというふうに考えております。
  81. 上田哲

    上田(哲)委員 わかりました。そこで伺いたいのだが、OTHです。OTHがアメリカのOTHと同盟関係にある。それは常時依頼されている、委託されているという意味を持ちましょう。そういう形でその与えた情報が直接武力行動につながるという場合には集団自衛権に当たりませんか。
  82. 西廣整輝

    西廣政府委員 私、まだOTHの十分その使用法なりあるいは性能というものを理解しておりませんけれども、仮にOTHというものが通常のレーダーサイトのレーダー、それの非常に遠くまで届くものであって、それが常日ごろからレーダー波といいますか、を出してサーチをしておるということでそれでいろいろな情報が得られると思います。その情報を状況に応じて我が国の判断で国益に応じてそれをいろんな形で利用する、あるいはよそに提供したりする、あるいは情報交換をするということ、それそのものが自衛権の行使には当たらないというように考えております。
  83. 上田哲

    上田(哲)委員 つまり、今の場合P3Cならば集団自衛権に当たる、そうですね。OTHだったら集団自衛権の行使には該当しないということですか。
  84. 西廣整輝

    西廣政府委員 私、先ほどP3Cについてお答え申し上げましたが、それは特定の前提におけるP3Cの使い方についてお答え申し上げたつもりであります。P3Cそのものが仮にといいますか、平素から日本の周辺の監視活動をしておるということは当然行われると思いますが、そういった通常の、平素からの監視活動においてある情報を得られた、そういった得られた情報というものを他国に提供したりあるいはその情報をよその情報と交換したりということは私は何ら自衛権の行使ということには当たらないのじゃないかと思っておりますので、P3CだからだめでOTHならよろしいというふうに申し上げたつもりではございません。
  85. 上田哲

    上田(哲)委員 いや、そうじゃないのです。P3Cなら集団自衛権に当たる行為、つまりどういう形か私にも予想つかないのだけれども、頼まれたり直接武力行使に当たるようなための情報提供だということになれば集団自衛権に当たるわけですね。ところがそれを、同じことを同じ情報をOTHが与えたとしても、OTHの場合は集団自衛権の行使に当たらない、こういうことですねと聞いているのです。
  86. 西廣整輝

    西廣政府委員 私、先ほどから申し上げておりますのは、情報の内容について申し上げているのじゃなくて、情報のとり方について、例えばP3Cが我が国の防衛のためあるいは平素の監視活動、そういった自衛隊の任務のためでなくて、他国から頼まれて運航するということはいかがなものであろうかということを申し上げております。  一方、OTHレーダーについて言えば、これは平時、有事を問わず、一定の電波というものを出して情報収集をしておるものでありますので、他国に頼まれて特に電波を出すとかそういうものではございませんので、その点、そういう我が方の部隊行動なりあるいは情報収集のやり方について申し上げているので、提供する情報の内容がどうかこうかというようなことを申し上げているのじゃないので、その点御理解いただきたいと思います。
  87. 上田哲

    上田(哲)委員 これは非常に大変なことになったんですよ。つまり、ほかだったら議論があるけれども、OTHだったら何やっても集団自衛権の行使にならない、軍事情報であろうが何だろうがこれを提供することは日本側の国益にかかわるかどうかだけの判断であって、相手方がその情報を受けて戦闘行為を開始しようとどうしようと、これは全く集団自衛権の行使にはならない、こういうことですね。
  88. 加藤紘一

    加藤国務大臣 先ほど委員の問題の設定の前提についてちょっと防衛局長が聞き落としたかと思いますけれども、OTHを日米の間で相互に運用し、そしてアメリカに頼まれてOTHを運用した場合とおっしゃいましたけれども、今防衛局長が言いましたように、一般的に我が国が自国の防衛のために情報収集し、そしてそれを評価し、それを他国と交換する、そしてそのとき、あくまでも私たちの国益に合致するか自主的に判断するわけですけれども、そういう判断のもとに我が方がとった情報を相手に与えるということは、これは集団的な自衛権の行使には当たらないという判断でございます。  そして一方、今問題になりましたのは、特定国からどういうような情報を特に戦術的にとってほしいと頼まれてやるような場合は問題があるのではなかろうかというわけで、情報のとり方の問題として分けてお考えいただければいいと思います。P3C、OTHの問題ではなくて、すべてにわたって情報のとり方の問題として御整理いただきたいと思います。
  89. 上田哲

    上田(哲)委員 だから整理しているんです。もうP3Cの話はしていないのです。OTHに限って言いますから、この一問できちっと答えてくださいね。OTHを使う場合には依頼された場合であるかないかとおっしゃったけれども、私は、日本のOTHはアメリカのOTHとリンクしているのだから、日常的にも依頼されているのが日常性だと思っているのです。そうであるかないかはそちらで判断していただけばいいのだが、さてその上で、OTHがという主語でいきますよ、OTHが日本の国益のためだとしてとる情報は、一般情報であろうと軍事情報であろうとこれを相手方に提供して、この相手方がそれによって戦闘行動に入ったとしても集団自衛権には当たらない、こういうことですね。日本のOTHが自国の国益だと考えてとった情報を他国に与えた、その他国がそのことによって戦闘行動に入っても集団自衛権には当たらない、こういうことですねと言っているわけです。イエスかノーかで答えてください。
  90. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほど来御説明を申し上げておりますように、例えばOTHのようなレーダーのたぐいであれば四六時中、三百六十五日情報収集をしておるということで、どこのためということではなくて、これは我が国の防衛のために必要なものなら、まだ整備をすることを決めておるわけではございませんが、必要なものならそういうものを整備してそういう運用をするということであろうと思います。  一方、今の御質問はそれで得られた情報の内容だと思いますが、仮に、OTHに限りませんが、何らかの形である一つの国が他国を奇襲しようというような情報が我が方で得られたというように考えますが、それを知らせることは奇襲を受ける方の国に加担をすることではないか、それは集団的自衛権に触れるのではないかというような御質問のように受け取るわけでありますが、そういうような情報の移転を集団的自衛権の行使というようにお考えになりますと、仮に今申したような例でAという国がBという国を奇襲しようとしている、それを知らせることがBに対する集団的自衛権の行使であれば、仮に知らせないで握りつぶしておくということは奇襲をかけようとする国に対する加担といいますか、ということになりかねないということでありまして、そういう我が国独自の知識といいますか情報というものの移転が、それが集団的自衛権に当たるというような考え方になりますと、情報を持ったときに途端に、教えるにしろ教えないにしろ集団的自衛権の行使に当たってしまうという妙な状況になりますので、そういったことではないのではないかというように考えておるわけでございます。
  91. 上田哲

    上田(哲)委員 つまり私の質問、もう一遍繰り返しますが、我が国のOTHが得た情報を相手国に、ある国に提供する、その情報に、よって戦闘行動が起こってもそれは集団自衛権にならないのだなと、OTHの軍事情報は提供することによっては集団自衛権の対象にならないのだなということを聞いているのだから、それをはっきり、そのことをイエスかノーかを言ってください。今の論理はよくわかりました。
  92. 加藤紘一

    加藤国務大臣 我が国は、防衛力という意味では節度のある、極めて専守防衛に徹した整備を行っておるわけで、一切の攻撃兵器を持ちません。我が国はそういう意味では非常に情報というのは逆に大切にしなければならぬ国だろうと思います。そして我が国は、我が国の技術水準からいって極めてハイテクを利用した情報収集を今後やり得る可能性のある国であろうと思いますし、そういう、つめは長くない、飛び道具は持たないけれどもウサギのように耳を大きくしておくということは我が国の今後の防衛上大切なことだろうと思います。そして、そこで得た貴重な情報を私たちがそれを評価し、そして国益で判断し、そしてそれを自主的な判断に基づいて情報を交換するということは、私たちは当然あってしかるべきことであろうと思っております。そして、集団的自衛権の行使として禁じております憲法の解釈は、それは武力の行使でありまして、情報の交換にはそれは一般的には当たらないものだということをかつて法制局長官が答弁いたしておりますけれども、その原則に従えば、御指摘の場合の情報交換はやり得るものだと思っております。
  93. 上田哲

    上田(哲)委員 わかりました。  総理、一言。まさに、軍事情報は武力行使ではない、したがって日本のOTHが与える情報によって戦闘行動になろうとなるまいと、それは集団自衛権でないという御解釈、そういうことですね。
  94. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今のようなケースでも、例えば日本アメリカは同盟国ですけれども、それによってアメリカの力が著しく減衰する、日本防衛が心配になってくる、次に日本に来る危険性もある、そういうようなことも考えれば、当然その場合には情報をやって日本防衛を全うするということは私は成り立つのだろうと思っております。  要するに、日本防衛というものを中心にして、そして、それを逸脱しないかどうかということが一番大事な、個別的自衛権というものの中心概念にある概念なんで、そういう意味で、情報の交換にいたしましても、具体的ケース、ケースの場合にやはり頭に置いてやらなければならぬことですと。しかし一般情報というような問題については、これは今長官やあるいは前に法制局が答弁したようなことなんです。今あなたが具体的問題を設定しておっしゃいましたから、私もそういう場合に関する私の考えを申し上げたところであります。
  95. 上田哲

    上田(哲)委員 これは大変なことになりまして、軍事情報は武力行使ではないんだ、したがって、日本が平時であって同盟国が戦闘状態にある、そこへその相手国の軍事情報を提供した場合でもこれは集団自衛権の行使にならないという解釈は、これは大変危険なことでありまして、私たちは納得できません。総理防衛庁長官の御見解の中にも若干の食い違いもあるし、これは私はさらに私どもの集中審議等々の場をかりてもっと詰めなければならない課題であるということを申し上げて、後に譲ります。非常に重大です。  最後に、三宅島の問題についてぜひ御見解を承りたいのであります。  新聞報道によりますと、三宅島は今大変な混乱に直面をしております。この新聞報道によりますと、「東京から送り込まれた自民党の宣伝カーが、島の道路を一日中、走り回っている。」「ボリュームいっぱいの声が響く。」「島内の動きは、年明けから再び慌ただしくなった。防衛施設庁の職員が交代で来島、民宿を根城に、誘致派の間を歩いている。防衛庁払いで島民の質問に答えるコレクトコールが一週間前からはじまった。」あるいは自民党の大物が近く来島して「漁港の大規模な整備、魚の養殖施設、総合娯楽センター、老人福祉会館、農作物の出荷所など、五十項目とも八十項目ともいわれる。落ちる金は数千億円」の見返りを示すと言われる。これは大変なことであります。小さな、四千三百人の島が今、米軍空母ミッドウェーの夜間離着陸訓練基地の設置という問題で本当に激しい混乱の中にある。  私は総理に伺っておきたいのですが、こんなに特に急激にさまざまな働きかけが行われるということには、これまでの日米首脳会談ないし防衛首脳会談にも大変高いウエートで、あるいは第一項目としてとまで伝えられていますが、議題となっている。これは伝えられているところでありますが、ワインバーガー長官が近く来日されるまでとか、あるいは東京サミットまでにとか、何らかのめどをつけなければならないような日米間の期限についてのお約束などがあるのでしょうか。
  96. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 別に日米会談の第一項目でもなければ、いつまでにしなければならぬという、そんな約束はもちろんないことなんです。ただ、三宅島の皆様方に事情をよく知っていただいて——ミスリードや誤解があるようであります。そこで、共存共栄、そういう意味から、こういう方が三宅島の福祉と発展になるんじゃないでしょうか、そういう意味でいろいろ説明を申し上げて、誤解があれば誤解を解こう。三百六十五日のうち、たしか四十日かそれぐらいの使用ということで、あと三百何十日というものは民間航空が発着して、お客さんも随分来れるようにもなる。それも夜間だけの話ですわね。そういうようなところも考えてみて、そういう防衛施設が来ることによって相当の補助金やら、あるいは発展策が講ぜられる。そういう意味において、周辺整備法というのがあるわけですから、基地に対するいろいろな配慮がなされる。そういう場合に、どちらが村のためになりましょうか、皆さん方の生活あるいは水準が高くなりましょうか、そういうお話し合いをよくして御判断を願う、御判断の資料を、公平な資料を用意してお聞き願う、そういう努力をしておるのでございます。
  97. 上田哲

    上田(哲)委員 スピーカーの中では、中曽根総理大臣が大変心配しておられますなんという声も出るものですから、どこかでやはり土地収用法というような大だんびらが抜かれるのではないかみたいな話が大変飛び交ってまでいるわけです。私はもっと平静な議論にしたいと思うので、今総理が日米間の期限の約束などはないと言われたことは大変結構だと思いますが、島としては観光で生きてきました。また、大変豊かな緑、海、空、この自然を大事にしたいという気持ち、さらに先般の噴火でありましたように地震観測などにも非常に大事な島でもありますから、そうした問題がこうした軍事基地によって乱されるのではないかということを大変心配をしている。非常に素朴な心配だと思うのであります。  これまでの経過と、最近非常に荒立ってきたからはっきりしていただきたいのでありますけれども、これまでは、五十九年の四月二十六日に塩田施設庁長官が山本村長、前の村長と会われたときに、村当局と村民が反対するんなら強行などはしない、ここから始まっているわけであります。いろいろな経緯の中で、昨年の三月七日の当委員会においても、私の質問に対して加藤防衛庁長官や佐々施設庁長官が強制執行などはあり得ないということも述べておられる。私は、民主主義の立場からして、あくまでも政府が住民——絶海の孤島といいましょうか、本当に、台風が来れば船も、飛行機も飛ばなくなるという、そういうところで、情報も十分でない中で苦吟している村民、この人たちの島を愛する気持ちというのは、これは我々のうかがい知れない深いものもあるわけでありますから、そうした意味では村民の意向を何より尊重し、穏やかに話をする、決してこの村民の意思を真っ向から踏みにじるようなことはしないのだという点を総理からひとつぜひ、あるいは関係大臣からぜひお約束をいただきたいと思うのであります。
  98. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私も今申し上げたように、御判断を仰ぐ、そう申し上げておるので、一方的に村民の御意思を無視してこれをじゅうりんする、そんなような考えは全くございません。  ただ、いろいろ誤解があるようですから、いろいろ、こうなればこういうふうになります、この場合にはこうなります、どうぞお考えください、そういう意味におきまして島の発展及び繁栄のために我々は役立つ。そっちの方が、村民が真相をお知りになれば喜ぶんじゃないか、そういう考えを持っておりますから、その真相をお伝えするために努力してみたい、そう思っておるわけです。
  99. 上田哲

    上田(哲)委員 これは、今のお言葉は私は結構だと思います。どうしてもやはりこれは住んでいる人たちが第一義的でありますから、その人たちの理解を前提として進めていただくという民主主義をしっかり守っていただける、これが総理のお約束でございましたから、きょうは村民の代表も見えておると思うのですけれども、これは私はしっかり承っておきます。  そこで村民の意見でありますが、五十九年一月に一遍誘致を決定した村議会に対して臨時村議会を求めるその署名は七五%でありました。これが島がそういう問題について声を出した初めてなんですが、昨年の五月七日には七八%になりました。昨年の十一月二十五日には実に八五%になりました。私はやはり、村民の意思は非常に反対の意見が強まっている、こう思います。  またこれは風説ですから、報道で私は申し上げておるのですが、五十項目、八十項目、数千億円という見返りの事業が提示されるというのは、どう考えてもやはりそれほどの無理をさせるということになるだけではないか。これはどうも話としてだれでもやはり嫌がるんじゃないか、こう思うのですね。こういう膨大なばらまき、見返りを見せてやっていくということとこの村民の反対の意向が高まっていることとをどのように理解していただけるでしょうか。
  100. 加藤紘一

    加藤国務大臣 確かに三宅島におきましては、いろいろなアンケートによりますと八五%の反対というアンケートが出る場合もあります。確かに島としては、できるならば来てほしくないという気持ちが強くなるのは私は当然のことだろうと思います。確かに厚木の問題は大変でしょう、しかしなぜ私たちの島に来るのだ、ほかの島に行っていただきたいという気持ちが素朴な声として出てくるのは私は当然だろうと思います。また、完全に騒音がないわけでもありません。ですからそういう声になるのだろうと思います。  しかし、まあ考えてみますならば、日米安保条約の重要性を認識したり、国益の観点から非常にこれは理論的に考えて、当然受けなければならないと考えていただける人が、実は大抵の場合そんなに多くないんじゃないか。したがって、確かに御迷惑をおかけしますけれども、私たちとしてはこういうことをその償いとして地道にやっていきたいと思いますということを誠心誠意話していって御理解いただくというのがこれからの道筋ではないか。  その際には、総理もおっしゃったような幾つかの誤解もございます。軍事基地となってカービン銃を持った人が常時駐留するのじゃないか、そんなイメージのものでは絶対ございません。したがいまして、私たちとしてはばらまきみたいなことではなくて、将来島の生活にどういってつながるかという観点を十分に考えながら施策を立てていきたいので、それをぜひ聞いてもらいたい。そういう意味のチャンスをぜひ島の方々につくっていただければと思っておる次第であります。
  101. 上田哲

    上田(哲)委員 実はここに私は三宅村長から公文書を預かってまいりました。これは村長の公印が押してある文書であります。  三総発第二〇七号の三宅村長寺澤晴男さんの公文書なんでありまして、「米軍艦載機による夜間発着陸訓練基地を三宅島に建設する計画に関し、標記委員会に於いて、中曽根内閣総理大臣殿に、次の事項のご確認賜わりますよう、お願い申し上げます。」こういう文書でありますから、率直に読みますのでお聞き取りをいただきたい。  昭和五十八年十月三日の大噴火発生から、丸二年余。東京都三宅島は国及び東京都のご高配とご援助を賜わりながら、平和で静かな、そして豊かなふるさとを築くため、官民一体となって、がんばっております。ここに改めて謝意を表する次第であります。  燃し、昭和五十八年十二月、突如起こった「米軍艦載機による夜間発着陸訓練基地」を三宅島に建設する計画に対し、本村の大多数の住民及び議会、行政は、反対の意志を明確にし、関係省庁に陳情して参りました。  ところで、最近、連日スピーカーの車が走り回ったり、様々な風説が乱れ飛んだり、膨大な見返えり事業が提示されるとの計画も伝えられ、小さな島は大きな混乱に直面しています。  海の孤島にある自治体の責任者からは、日米交渉の先頭にある総理大臣は、余りに大きく、余りに遠く、直接声をお届けすることができません。ここに上田哲代議士を通じて、私の提案に対し、中曽根総理大臣の正確なご見解を伺わせて戴きたく思います。提案があるのです。読みます。  島を平静な状態に戻し、一定の冷却期間ののち、三宅村は、新条例を制定し、米軍基地導入の賛否について、全村民投票を実施する決意があります。総理はこの投票の結果を正確に尊重することをお約束戴けるでしょうか。これが村長が公文書で、直接総理大臣に届かないのでぜひこの場所で総理見解を承っていただきたいということであります。ぜひひとつ御見解をいただきたいと思います。
  102. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 三宅島の皆さんが非常にこの問題で御心痛しておることは私もよく聞いております。できるだけ三宅島の皆さんのお気持ちに沿うようにスムーズにこの問題が解決していくように我々も努力してまいりたいと思っております。  ただいま私が申し上げましたように、共存共栄ということを申し上げたので、このNLP、夜間着陸訓練について、非常に誇大な宣伝とかあるいは間違った誤解が中にはあるのではないかという節が随分ございます。したがって、こういうふうになればこうなるのですと、そういうような実相をまずよくお聞き願う、村民の皆さんや村会議員の皆さんが自分で公平に自主的に判断をなさる資料をまずお読みください、あるいは話を聞いてください、そういう判断の正しい条件あるいは資料、こういうものをまずお聞きくださるというその前提をまずやらしていただきたい。騒がしいことや御迷惑になるような騒々しいことでやろうなんということは毛頭考えておりません。ですからまずゆっくり御判断くださる資料をよくお聞きください。我々も誠心誠意こういう場合にはこうなりますと言って、国としても相当考えて御協力申し上げたい、村の発展あるいは将来の繁栄のために。これはもう永続して、将来永遠の村のことも考えなければならぬと思っておるわけであります。新しい時代にジェット機が飛ぶということは、観光のお客さんもふえるでしょうし、今までない新しい産業も起きてくるでしょうし、さまざまなことが予想されると私は思うのです。しかし、それでもこういう問題が起こるじゃないか、そういうような御議論も出たら、その場合にはこういうふうなこともあり得る、そういうようにともかく公平に判断をなさる資料をまずお考えください、そういう場をつくってください、それがまず前提で、それ以降のことは、今度は村会あるいは村民の皆さんがいろいろお考えいただいて、その状況のもとに御判断なすったことを我々はよく検討してみたいと思うのです。  今日の時点で村長さんからこういうあれをいただいて、すぐ村民投票をやるからそれを尊重せよ、そう直接言われても、村会議員の皆さんはどういうふうにお考えになっておるのか、全村民が今どういう動向にあるのか、そういう点もよく子細に調べてみないと、こういう公の場所で私が即答することは不適当であると思います。
  103. 上田哲

    上田(哲)委員 これは村長の意向だということでありますが、おっしゃるように、村会議員がどうお考えになるかと言われるが、村条例は村議会が承認しなければ成り立たないのであります。村長はこの新条例をつくる決意を精いっぱい村長の権限において今総理大臣に申し上げた。したがって、村長がこれを提起する、村議会がこれを受ける、成立をする、村民の最大の意思として住民投票を行う、これを尊重して最終判断をしてくれないかということを言っているのであります。民主主義のルールとして、一番小さい島の村長が一番上にいる総理大臣に今その声を届けたのですから、その原理はしっかり受け取るということは総理大臣からお答えいただくのでなければ民主主義は通らないと私は思います。もう一言。
  104. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ともかく我々も、日本国民同士でありますから、村のためにならぬことはやりたくありませんし、やりません。村のためになることを我々はやりたいと思っております。  それから、今申し上げましたように、どちらがいいか公平に、冷静に判断をなさる資料、説明の機会等も与えていただきたい、その上に立って今度は、村会の皆さんがどういうふうにお考えなさるか、そういうときにどういうお考えを村長さんが言ってくださるか、そういう点もひとつ考えてみたいと思うのです。しかし、今こういう文書をあなたを経由して村長さんにいただきましたから、これはこれなりによく調査してみたい、現地の情勢等も調査してみたい、そう思います。
  105. 上田哲

    上田(哲)委員 直ちに返事はできないが、村を代表する村会の決議を得るならば十分に検討してみようというふうに、私は前向きに、民主主義のお立場としての総理意見を受けとめたいと思います。  そうでなくても、例えば先ほどのレーマン海軍長官発言のように太平洋第七艦隊の空母増強という問題もありまして、この三宅島の基地の軍事上の問題もいろいろと取りざたされております。どうかひとつ村民の意向を第一に考えるという立場で、土地収用法の強制執行などということがないということを私は確認できたように思いますから、ぜひその線を守っていただくことをお願いをし、さまざまな危険な状態が今日米同盟関係の中に深まっているということについて強く、今後の問題の保留を含めて指摘を申し上げて、質問を終わります。
  106. 小渕恵三

    小渕委員長 これにて上田君の質疑は終了いたしました。  午後零時五十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ————◇—————     午後一時四分開議
  107. 小渕恵三

    小渕委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。正木良明君。
  108. 正木良明

    ○正木委員 昭和六十一年度以降の財政経済運営関連の質問の前に、二、三お尋ねをいたします。  まず第一に、運輸大臣にお願いしたいのですが、国鉄再建問題については法案が提案されてから本格的な論議が行われるでありましょうし、私たちもそうしたいと思っておりますが、とりあえず、この前閣議決定が行われた問題で、二、三お尋ねをしてみたいと思います。  一つは国鉄の長期債務の問題でございますが、この処理方策についての考え方が決定をされたようでございます。国鉄が新事業体に移行する時点における債務は三十七兆三千億円だというふうに監理委員会の案があるわけでございますが、この三十七兆三千億円の債務の中身につきましては後で改めて申し上げますけれども、その返済について、このうち新事業体が引き継ぐ分が十四兆二千億円、用地売却収入が五兆八千億円、株の売却収入が六千億円、このあとの十六兆七千億円を国が処理をする、いわば国民負担をするということになっているようでございます。できれば、この用地をできるだけ高く売るように努力をしたいとか、債務を有利な資金に借りかえる、要するに低利に借りかえるというのでしょう、そういうことをやって、最終的に残る債務については国で処理をするということになっているわけでございます。  これは、閣議決定の言葉で申しますと「本格的な処理のために必要な「新たな財源・措置」については、雇用対策、用地売却等の見通しのおおよそつくと考えられる段階で、歳入・歳出の全般的見直しとあわせ、検討、決定する。」こういう場合、私たち非常に神経質になっておりまして、国の財政が非常に困難な状況の中で一応考えられることは、新しい税金を導入してそれを財源にするのではないかということなんですが、このことについてまずお尋ねをしたいと思います。
  109. 三塚博

    ○三塚国務大臣 正木先生おっしゃるとおりの閣議了解に基づいて、今これに取り組む準備をいたしております。  その財源措置、新税と言われております国鉄再建税、そういうものが登場するのではないだろうかということであろうと思います。再建監理委員会の論議の中でも出ましたことは聞いております。また、それぞれの有識者の段階の意見あるいは自由民主党の党内の意見、そういう中にもそういう意見がございます。  しかし、「増税なき財政再建」という極めて厳しい財政運営をいたしております内閣のもとにおいて、このことは考える段階ではない、こういうことであります。
  110. 正木良明

    ○正木委員 そういうことは、新税による則源措置は考えていないというふうに受け取っていいですか。
  111. 三塚博

    ○三塚国務大臣 はい、そうです。
  112. 正木良明

    ○正木委員 しかし非常に膨大な債務でありまして、これはこれからの推移を見てみなければわかりません、この間非常に問題になった用地売却代金というものもどの程度になるかわかりませんから、金額としてはまだ正確にはおっしゃれない時期だろうと思いますが、しかし、この十六兆七千億円だとして、仮にこれを二十五年で償還するということになると年に一兆四千億円、三十年で一兆二千億円が必要だということになるのですが、これはしかし新税じゃなくて他で段取りをつけるという御確信がおありになっているわけですね。
  113. 三塚博

    ○三塚国務大臣 新税によらない方式でどのように十六兆七千を措置するのか、こういうことだと思います。  一点は、先生が御指摘になりましたとおり、二千六百ヘクタール余の土地の売却は、五兆八千億をできるだけ超えますように全力を尽くしてまいる、そのためには付加価値などもつけることもしなければなりませんでしょうし、土地区画整理事業というようなことも考えなければならぬだろうというふうに思います。  それが一点であるわけでございますが、御指摘のように、二十五年でやるとすれば一兆四千億円の一般歳出に相なります。この点フランクに申し上げさせていただきますと、今国鉄にどれだけの助成金が出ておりますかといいますと、平均七千億円前後がここ出てまいってきております。そういたしますと、新たに七千億円余の財源が一般歳出の中で工夫をされて捻出をされる、このことが一番望ましいのだと思うのであります。行政改革の時代でございますから、そういう形の中で再建に着実に一歩を踏み込むということでありますが、なかなかこれもぎりぎりいっぱいのところでありまして、財政当局、大蔵大臣を主として、さようなことに相なるかならないのか、またどれだけそれが前に進められることができるのかという御検討を見た上でなければならぬと思いますし、当然、今回法律が提出をされますと、本格的な本件についての議論がなされるわけでございますから、そのときまでに十二分に御審議をいただけるような問題の検討に入らなければなりません。しかし、基本的に閣議了解にございますように、この財源措置の決定ということにつきましては、雇用対策、さらに用地売却等の見通しのおおよそつくと考えられる時期に、一般歳出の、歳入歳出の全体の見通しの上に立って考えていく、こういうことが現段階において申し上げられるぎりぎりいっぱいかな、こんなふうに思います。
  114. 正木良明

    ○正木委員 総理、今運輸大臣がおっしゃったことは、総理のお考えと同じだというふうにお考えになりますか。
  115. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 同じでございます。
  116. 正木良明

    ○正木委員 さて、この間、田邊書記長の御質問でいろいろと問題になった用地売却の問題です。  私は、いろいろとあの質問を聞き、事後処理の問題等を耳にいたしまして、田邊書記長と直接お話ししたわけではありませんから、その真意が那辺にあるかということは明確ではございませんが、私なりに察したところでは、国会だけがつんぼ桟敷に置かれるような状況では困るということと、余りにも用地売却代金が過小評価ではないかという、この辺が問題の焦点だったのじゃないかと思うのです。  しかし、考え方によりますと、こういう資産が過大評価だと大問題で、過小評価だったらそれより高く収入があるのだから、過大評価より過小評価の方がまだましかなという気持ちもしないわけではありません。  もう一つは、やはり国会にはなかなか資料は出てこないけれども、大手の不動産業者の中にはその情報が筒抜けになっているという、その情報がまたこっちの方へ返ってきているのですが、このことも国会だけがつんぼ桟敷にされたのではないかという御心配だったのではないだろうかというふうに私は推測をいたしております。もし仮にその推測が当たって、これらの大型の用地売却ということになってくると、いろいろ利権の対象にもなりましょうし、その辺心配いたしておりますが、まず一つは、これは運輸大臣に聞いていいんですかな、恐らく入札に付せられるであろうと思うのですが、入札に付せられるであろうという前提のもとに——入札にもいろいろあるわけですよね、いわゆる一般競争入札と指名競争入札、そのほかに入札と言えるかどうかわかりませんが、随意契約という、大別三つの方法があるわけなのですが、私は、やはり全公開ということになってくると、これは一般競争入札に付すべきものであろうと思われるわけでありますが、この点いかがでしょうか。
  117. 三塚博

    ○三塚国務大臣 監理委員会の答申にもさような趣旨が明記されております。政府としてこれを尊重するという立場をとっておるわけでございますから、基本的に一般公開入札を原則とすべきものである、かように考えております。
  118. 正木良明

    ○正木委員 同時に、これは表向きにはあり得ないことになっておりますが、いわゆる談合というのが行われることが非常に多いと耳にいたしておりますが、相当な資金を要する売却になるわけでありますから、その点、だれでも入札はできますよと言ったって、限定された人たちに結果的にはなってしまうのではないかというふうに思います。そうすると、そこで談合が行われやすいような人数になってくるということも考えられるわけでありますので、この辺の未然防止のためには何か方法をお考えになっていらっしゃいますか。
  119. 三塚博

    ○三塚国務大臣 法律が御承認をいただきますれば、第三者機関を設けましてこれに対処する。第三者機関は利害に中立な有識専門家をもって構成をさせていただく。公開入札の基本、これをどのようにいたしますことが正しいのか。また、御心配をいただいております談合、こういう問題が未然に防がれていく、国民の前にガラス張りでこのことが淡々と進められ行われていく、こういう条件をつくってまいりますことが、貴重な財産を処分をいたし、前に進むわけでございますから、国鉄再建の基本であろうというふうに思います。  先ほど先生御指摘のもう一つは、情報が頻々として流れておるのではないだろうかということでありますが、私は、さようなことがないと確信をいたしておりますし、今回の質疑を通じましていろいろと調査をさせていただきました。思惑によるいろいろな計算方式もあります。さらに、その他の手法を用いる計算方式もあります。そういうことで書類を作成しようと思うといかようにもできるわけでございまして、さような意味で、それらは防ぎようがございませんが、少なくとも運輸省、国鉄、監理委員会、さような責任ある立場の中からさようなことで漏れるということはないと確信をいたしておりますし、今後もそのようなことでしかとさせていただくつもりであります。
  120. 正木良明

    ○正木委員 やがて来る国鉄再建の本格的な論議の御参考として承りましたので、次の問題に移ります。  これは所管の大臣はどなたになるのか、厚生大臣と科学技術庁長官になるのじゃないかと思いますが、ライフサイエンスの問題をちょっと間いてみたいと思います。  御承知のとおり平均寿命がどんどん延びてまいります。片方では出生率が低下するということで非常に高齢化が進んでまいりました。これは先刻御承知だと思いますけれども、総人口に占める六十五歳以上の人口比率というものが高齢化率というわけでございますが、昭和五十八年、一九八三年には九・九%が、昭和七十五年、二〇〇〇年には、現在の西欧水準の一五・六%、また二〇二〇年、昭和九十五年には、これまで世界で経験したことのないような二一・八%という高齢化率になっていると推定されているわけでありますが、当然この中で寝たきり老人であるとか痴呆性老人であるとか心身の機能が非常に低下した高齢者が増加すると予想されております。  そこで、この高齢化が進むと同時に、科学技術が高度になってまいりまして、それに対応できないということも考えられるわけであります。だから、高齢化社会に対する科学技術的な視点から、課題として、高齢者が心身ともに健全であるということが非常に重要な政策になってくると考えるわけでございます。  そこで、お尋ねです。人生八十年時代を迎えた今日、老化機構の解明、老年病の成因解明、予防等の老化研究は国を挙げて取り組まなければならぬわけでございますが、これはやはり国の施策としてやらなければならぬ部分が相当あるだろうと思うわけです。外国の例からいいますと、アメリカでは国立老化研究所が一九七四年に設立されて、研究者が約四百三十名、そして研究が進められているわけでありますが、これに対して我が国では、財団法人東京都老人総合研究所が一九七二年に設立されて、研究者が約七十名、こういう状況であります。そのほか、各国の例を見ましても、時間がかかりますから申し上げませんけれども、ソ連でもフランスでも西ドイツでもカナダでも、これらに対する老化医学研究のための施設が設置されて研究が行われているわけです。こういう国立の研究機関、例えば老人研究総合機構と名づけるべきでありましょうか、こういう国立の総合研究機関を設けるというお気持ちはありませんか。
  121. 今井勇

    ○今井国務大臣 お答え申し上げます。  我が国におきましても、これから痴呆性の老人やあるいはまた老人病につきましての研究を進めていく上では、老化いたしますメカニズム自体の研究というものが必要でございまして、そのために自然科学や社会科学を統合した研究体制をつくっていかなければならぬと私も思っております。  このために、天皇陛下の御在位六十年の慶祝事業の一環といたしまして、国レベルでの長寿科学研究組織をつくりたい、こう思います。それで、そのための調査検討費を六十一年度にも、一千万円でございますが、もらいまして、それでひとつ進めまして、行く行くは必ずその研究所をつくってまいりたいな、こう考えております。
  122. 河野洋平

    ○河野国務大臣 委員御指摘のとおり、高齢化社会が到来をしているわけでございますが、それに伴ってと申しますか、近年遺伝子組みかえなどの技術が極めて急速に進んでまいりまして、老化プロセスが解明をされ始めた。つまり科学技術の分野から老化に伴ういろいろな問題を解明して、それに対する対策をつくる、そういうアプローチが考えられてきたわけでございます。  したがいまして、そうした研究を鋭意科学技術庁として進めておりますが、委員御指摘のとおり、そのためには一つの機構と申しますか、研究のための機構を整備する、こういうことがやはり必要ではないか、こんなふうに考えているわけでございます。  科学技術庁といたしましては、もちろん厚生省を初め関係の省庁とも十分御相談をしながら、そういった整備をしていこうと考えておりますが、科学技術会議の中でもそうした議論が非常に詰まってまいりまして、ことしの春もしくは夏ぐらいには提言がいただける、こう考えておりますので、それに沿って進めてみたい、こう考えております。
  123. 正木良明

    ○正木委員 これはぜひお願いしたいのですが、総理、どうですか。
  124. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 長寿社会、高齢化時代を迎えまして、総合的に研究をしていくということは非常に大事であると思います。一つの御提言として承って、検討していきたいと思います。
  125. 正木良明

    ○正木委員 中曽根内閣が発足して、がん制圧を目的として対がん十カ年総合戦略をお始めになりました。これは非常に結構なことだと私は思うのです。重要課題として六つを指定したと承知をいたしております。人間のがん遺伝子の研究であるとか、ウイルスによる発がん機構の解明であるとか、発がん機構と発がん抑制のメカニズムであるとか、早期診断技術の開発であるとか、新しい理論による治療法の開発であるとか、免疫機構を利用したがんの研究であるとかというようなことであります。この十カ年総合戦略を発表されてからことしで三年目でございますが、どういうふうな進め方をいたしておりますか。
  126. 河野洋平

    ○河野国務大臣 対がん十カ年総合戦略というのが昭和五十九年に始まっておるわけでございまして、各省庁それぞれの分野でいろいろと研究もしくは研究のための対策が進んでおります。科学技術庁では、がん研究を支える共通基盤技術の開発、遺伝子組みかえ技術を用いた先端的がん研究及び放射線治療のための研究の分野について担当し、その推進を図っているところでございますが、現在までの進捗状況は、共通基盤技術の開発として、科学技術振興調整費によりましてがんの本態解明に資する遺伝子の解析技術の開発などを行っております。また、科学技術庁は幾つかの研究所を持っておりますが、理化学研究所におきましては、がん研究を支援するための施設、これは共通の施設でございますが、この施設を六十二年度を完成目途として目下建設中でございます。細胞、遺伝子の収集、保存、提供を行うジーンバンク棟と申しますが、その建設を進めております。これができ上がりますと、がん対策に一つの共通の基盤というものができるであろうと考えます。  また、先端的がん研究といたしまして、同研究所、理化学研究所におきまして遺伝子組みかえ技術を用いたヒトがん遺伝子の研究を進めておりまして、このような研究を総合的に推進するために、これまた昭和六十一年度完成をめどに遺伝子組みかえ研究棟も建設を進めております。  その他、新技術開発事業団では、新しいがんの診断薬の開発、さらには放射線医学総合研究所においては、新しい放射線治療の研究として重粒子線によるがん治療研究を進めておるわけでございます。
  127. 正木良明

    ○正木委員 すべてお金で評価をするものではありませんけれども、アメリカでは円換算で二千六百億円ぐらい対がん政策に使っているわけなんですが、日本の場合は大体年間三百億円ぐらいですから、十分の一くらいであります。これはやはり鋭意充実をしてもらわなければならぬと思います。  それともう一つは、この計画が発表されてからやはり仕事は進んでいるわけなのでありまして、私が先ほど申し上げた老人のためのライフサイエンスの研究機構というようなものをつくってもらうということについては検討するというお話ですから、これはまあこれで検討していただきたいと思いますが、これの十カ年計画なんというのをつくる考え方は、総理、ありませんか。
  128. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 がんの場合は非常に焦点がはっきりしておりまして、それで年間予算、がん全体で四百六十億円ぐらいことしの予算で計上しております。大体それぐらいを持っているわけです。その中で対がん十カ年総合戦略用として充てているのは約六十億円でございます。大体五十億から六十億くらいのお金をこの十カ年計画専門に充てておるわけでございます。がんの場合は割合にそういうふうに焦点が明らかになっていまして、最近の一つの例としては、その十カ年計画の研究によりまして、胃がんの新しい遺伝子が発見された。hstという名前をつけた。そういうような成果も上がってきております。これらは、ここにおる林君が大臣で、いろいろ基礎工事をやっていただいたのであります。  老人病については非常に総合的な研究を要する。がんももちろんそうでありますが、老人病については、頭の大脳とかあるいは心臓とか循環系とか、いろんな面で総合的な面を要するので、がんみたいに焦点を当てられるかどうか検討を要しますが、ひとつこれも課題として研究さしていただきたいと思います。
  129. 正木良明

    ○正木委員 それじゃ、よろしくお願いをいたします。  次に、デノミネーションのことでちょっとお聞きしたいのです。  なぜ突然こんな予算委員会にデノミネーションの問題を持ち出したかというふうにお考えになるかもわかりませんが、実は案外関心が高こうございまして、私が自分の後援会の会合なんかに出ると、質問の出ないときはない。必ず一人か二人はそういうふうに聞く。私のところは中小企業の多い地域でございまして、今大変な不況で非常に困っておることもあるのでしょう。何か一発がんとデノミでもやって、景気持ち直してもらえまへんかという話がしょっちゅうあるということ。それともう一つは、資産を持っている人も中にはいるわけなんで、そういう人たちはデノミネーションよりも、デノミネーションと同時に行われるかもしれない財産税の問題であるとか資産再評価の問題というものに強い関心がある。こういうことで、デノミネーションという問題が提起をされては下火になり、提起をされては下火になりという戦後の繰り返しがございましたが、絶対火は消えていないわけなんですね。くすぶり続けると見なければなりません。そういうことでお尋ねするのですが、この間も参議院でそういうことがございまして、どうも竹下大蔵大臣は、やる方の御関心が非常に強いような印象が行き渡ってしまいまして、それを総理は否定をなさっているということらしゅうございますけれども……。  一つは、一番新しいデノミの問題が政府筋から出ましたのは、昭和五十三年の一月でございまして、福田総理が新年の伊勢参宮をなさった後の記者会見でこのことをおっしゃいました。そのときに福田総理は、デノミをやるについては三つの条件が必要だという意味のことをおっしゃっている。一つは、物価が安定した状態でなければならぬ。それから、国際収支が安定した状態でなければならぬ、いわゆるデノミをやったために直ちに赤字に転落するというようなことがあってはならぬ。それから、経済情勢が比較的安定したような状況。この三つはどうしても必要だということをおっしゃって、しかもなお、極めて前向きにデノミネーションについて言及をされた。これが一番新しいんじゃないかと思います。  しかし、それからもう八年もたってしまいましたから新しくもないのかもわかりませんけれども、そういう点から考えると、福田総理の条件からいうと、今は物価は超安定と言われるくらい安定をしておる。国際収支は、ちっとは赤字の時代が懐かしいというくらい黒字がたまり込んでしまいました。そして景気の状況は、円高デフレというようなこともあって、決して先行き明るいものではありませんけれども、安定的に推移しているということは言えるだろうと思うわけなので、いわば条件はそろったというような感じで、デノミをやるのではないかという関心が強くなったのかと思います。  これは総理と大蔵大臣にお答えいただかなければいかぬと思いますが、どうなんでしょう。積極派からひとつ……。
  130. 竹下登

    ○竹下国務大臣 積極派という御発言でございますが、最終的には経済的環境の適否、国民の受けとめ方、実施に伴う技術的諸問題等を総合的に判断して行うべきであって、現在実施する考えはございませんということをお答えしたわけでございますが、今正木さんの御指摘になりました五十三年を加えまして、戦後何回これが少しかまびすしく議論をされたときがあるかといいますと、十六回あるわけであります。最初の昭和二十四年は、一ドルが三百六十円のレートが設定された際に、何ぼ何でも、国威を失墜したような感じもあったでございましょう。しかしながら、占領下でございましたし、もちろん今おっしゃった三原則のうちの、経済の安定なんというものはまだ極めて不十分というときでありましたので、時期尚早、こういうことでございます。吉田首相池田蔵相のときでございます。  それからたびたび議論がなされてきておるところでございますが、今正木さんの指摘されましたこの三条件の段階においては、いわば環境は整っておるではないかという評価をなさる人もございます。ただ、三番目の景気問題については、また別の見方もあろうかと思いますけれども、少なくとも当時議論されておった時代よりは、安定した状態にあるというふうに思われます。  それで、よく言われます議論を紹介しますと、積極論としては、自国通貨の基本単位に対する国民の信頼の回復。二番目は、円の実力にふさわしい為替レート表示。それから三番目には、よく景気対策ということを言われますが、本来は呼称の変更でございますから、景気に対しては中立的なものであるという考え方でこれは理論づけをすべきものであると思いますが、このメリット論の中にはそういうものも出ております。  それから、悪い方では、やっぱり四捨五入でなく零捨一入ぐらいになって、物価の便乗値上げがあるのではないか。それから企業が、特に今機械化しておりますと、それらの組みかえ等の費用負担が増大するではないか。それから、何だか消費者が心理不安を起こすではないか、こんな考え方がデメリットとして議論をされておるということでございます。  したがって、そういういろいろな社会的、経済的な点に留意しなければなりませんので、今実施する考えはない、こういうことになろうかと思われます。  ただ、最近毎年出ますのは、デノミネーションがその一年の間にもし宣言でもあったとしたら、経済部の記者としてはそれを見逃すということは大変な失態になる、だから正月会見ではまず必ず聞いておこうというような習慣もあるように聞いております。
  131. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 前から申し上げておりますように、デノミは考えておりません。
  132. 正木良明

    ○正木委員 問題はその意味なんですよ。こんなところで突然やるなんて、まさか言うまいと思っていますから、質問する方でもそういう答えを予想しておりますけれども、問題は、やらないということについて、条件が整っていないからやらないのか、本来デノミなんというのは聞く耳持たぬというような形でやらないのか、どっちです。
  133. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やる必要がないからやらないという考えです。
  134. 正木良明

    ○正木委員 その理由をさらに聞きたいわけでございますが、ちょっと大蔵大臣もお触れになりましたけれども、デノミメリット論というか積極論には幾つか理由を挙げている人があるわけでありまして、デノミによって貨幣単位の価値を適切な大きさにするんだというのが一つの理由ですね。  日本は円です。円の基本単位というのは一円です。総理、一円で何買えます。私たちの年代からいうと非常にもったいない話だが、道端に一円玉が落ちておっても、拾う人はありませんよ。これが円の基本単位なんです。一円の価値というものは、もう本当に顧みられなくなるような状況まで落ち込んでしまっているということです。  逆に、一ドル二百円としましょう、計算しやすいですから。一ドル二百円、この言い方は、二百円ですから何となくいいですけれども、それでは一円はドルで言えば幾らだと言われたら〇・五セントですよ。そうすると、デノミによって貨幣単位の価値を適切な大きさにすることは必要——僕らの子供の時分は、二円とか二円四十銭とかとよく耳にしたことがあります。生意気な子やったんやな。だから、昭和一けたの時代には、一ドルは二円だとか二円四十銭だとかという時代があったのです。ところが、今落ち過ぎているという感じなんですね。戦後四十年のインフレで非常に膨張してそうなってしまったわけでありますが、これは年寄りが多いわけだけれども、対外的威信を回復せにゃいかぬ、こう言うわけです。そんなの、三けたのところなんて日本だけやぞ、こう言いますよ。そうすると、これを百分の一にするということになってくると二円になるわけですからね。  それと、こういうことを言う人があるのです。ちょっとこれ大蔵省、局長でいいですから、現在流通中の日銀券は幾らであり、かつ、一万円札は幾らほど出てますか。
  135. 窪田弘

    ○窪田政府委員 流通の日銀券全体で二十兆でございまして、そのうち一万円札は、昨年の十二月末現在で八五%でございます。
  136. 正木良明

    ○正木委員 お聞きのとおりなんです。大体最高の単位の紙幣、今一万円札ですね、八〇%程度になると新しい札、それよりも高額の札が出るということが何となく定説みたいになっているのです。そうすると、次は五万円札か十万円札です。そういう高額紙幣を発行することになると、大変なインフレ心理を呼び起こすかもしれませんよ。したがって、そんな高額紙幣が出るような状況ならば、それを是正するためにデノミネーションをやるべきだ、こういう議論があるのです。デノミネーションをやったら、計算や記帳が非常に簡素化されてしまう、こういう意見もあるわけです。そのほか、日本経済に対する影響というものがある。  一面、大蔵大臣のようなことが言えるのです。GNPに対しても中立である。要するに、景気に対しても中立である。確かに印刷会社であるとかインキだとか、そのほかデノミ関連と言われる産業というのがありまして、これはうんと景気はよくなるでしょうけれども、しかし、帳簿をかえたり株券を刷りかえたりすることから始まって、いろいろなことをやると、それだけ経費ががばっと片方でかかりますから、GNPに対してはプラス・マイナス・ゼロという判断があるわけなんです。私はそんなことないと思うけどなあと言っているのですけれども、経済学者に言わせるとそういうことを言うわけです。  しかし、私はある程度個人消費も伸びるだろうというふうにも思っているわけなんですけれども、そう言うとまた、いや、個人消費は絶対に伸びません、百分の一になったから、ああ、安くなったのだから買おうという人もあれば、百分の一になったのだから、節約をして買わぬでおこうという人もおるから、大体半々で、それは余り大したことはないぞと言う人もありますから、いろいろあるわけなんです。しかし、これだけデノミネーションをやれという方の側にはいろいろの理由があるのだけれども、デノミに反対する方の理由というのは余りないわけですよ。  一つは、今大蔵大臣がおっしゃったように、便乗値上げによるところの物価上昇。もう一つは、実施に伴って混乱が起こるであろうということ。もう一つは、それより先にやる政策があるだろう、例えば不況対策なら不況対策という政策があるだろうというような反対理由しかないわけです。いずれにせよ、条件が整わないからやらないのではなくて、必要がないからやらない、こういう総理のお答えなんですが、このメリット論というか必要論というか、これに対してはどうお考えになりますか。
  137. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 余り食指を動かすほどの説得力がない、また不安定である、そういうふうに感じます。
  138. 正木良明

    ○正木委員 私は必ずしも積極論者でもなければ、消極論者でも反対論者でもありませんから、これ以上はやめましょう。これ以上やると、何か僕は積極論者みたいになってしまいますから。  本当を言えば、もしやるとすれば、これとこれはもうやらないようにします、例えば財産税はやりませんとか資産再評価はやりませんとかというところまで答えが欲しかったのだけれども、これ以上続きませんわ、必要ないと言われたのだから。ただいまはそういうふうに承っておくということにいたしましょう。  さて、財政再建の問題ですが、委員長、これを配っていいですか。
  139. 小渕恵三

    小渕委員長 どうぞ。
  140. 正木良明

    ○正木委員 中曽根内閣が発足いたしましてから、財政再建の公約を掲げて四回予算編成をなさったわけです。これは中曽根内閣だけではありません、歴代内閣が全部そうでありますが、財政再建はできておりません。  それは一つは、この間大内書記長もおっしゃいましたけれども、我々が前々から拡大均衡予算を組みなさい、政策は拡大均衡へいきなさい、要するに、循環的な赤字と構造的な赤字を分けて物事を考えなさい、何でも削ればいいというものじゃありません。したがって、行政改革と景気対策というものは両立できるものであるからそれをやりなさい、こう言ってきたのですけれども、それは全然おやりにならなかった。それは中曽根さんの前の前からもそうです。ずっと言い続けてきたがそうならなかった、非常に残念なことであります。  そこで、数字で言うよりも皆さん方に見ていただいた方がいいと思うのでこういう図をつくってみたわけです。これは昭和五十年からずっと特例債、赤字国債の発行の実績です。ここに斜めに線が入っているのは、そのたびに出している収支計算だとか仮定計算だとかと言われるものです。  一番最初、昭和五十一年二月には三木内閣が財政収支試算というのを出しました。これが、昭和五十五年にはゼロになりますよという試算です。これはずっと斜線です。いや、五十五年、これは福田内閣です。三木内閣が提案をして福田内閣が実行をしたと、こう言うべきでありましょう。次は昭和五十三年の二月でございますが、財政収支試算というのは福田内閣がお出しになって、五十七年までにゼロにします、こういう状況です。そして、大平内閣は五十四年の二月、五十五年の一月にお出しになって、鈴木内閣は五十六年の一月にお出しになった。これはちょっと線がややこしくなるので書いておりません。しかし、鈴木さんの方も出しておられます。そして、昭和五十八年二月は、いわゆる昭和六十五年度赤字国債依存体質からの脱却というのが中曽根内閣の公約であったわけでありますが、公約という言葉を使うと、公約じゃありません、見通しだけですとおっしゃるかもわかりませんが、これがこの斜線です。斜線を横に延長したところだけ飛び出しているということです、全部。  何回もお出しになっておりますから、そのたびに試算は前年度の発射台からまた発射しておりますからあれですけれども、歴代自民党内閣は、財政再建、赤字国債ゼロにいたします、何年にはゼロにいたしますと言いながら全部だめだったのです。例えて言えば、昭和六十一年度は、当初予算ではございますけれども、本来なら赤字国債発行額が四兆円まででなければならぬのに五兆二千億、ぴょこっと飛び出しているでしょう。急角度で六十二年、六十三年、六十四年、六十五年といかなければいかぬのですが、大蔵大臣、これ自信はあるのかね。
  141. 竹下登

    ○竹下国務大臣 この特例公債発行実績の比較は正確にできております。私もこれを見ながら、一例としまして六十年を見ますと、今度、今御審議いただいておる補正予算でまた赤字公債を、財源不足分をお願いする、こういうことにしております。が、五十八、五十九年で見ますと、あの際は当初予定よりは決算ベースでは発行しなくて済んだとでも申しましょうか、決算ベースでは減して、そして三年間見ると結局差し引きゼロみたいな感じだなというふうにも思います。しかしながら、確かに大変なことでございますが、これを鋭意努力していかなければならぬから、いわば一兆ずつ減して六十五年にゼロになるというのが一兆三千百億ということに平均すればふえてくるわけであります。  そこで、そうなると、それをどういうふうな手法でやっていくか、今までよりも若干違ったといたしますと、今までは要調整額というものを出して、何か負担増をお願いするのが適当でございましょうか、あるいはもっと削ったが適当でございましょうか、あるいはあきらめて国債をさらに発行する手法もありましょうやらということを国民の選択をその限りにおいて求めよう、それで国会の問答をしながらその方向をつかもう、こう言っておったわけですが、ことしになって少し透かしのようなものでできてきたのが、やはりNTTの株の売却というようなものが新しい事実になって出ているのではなかろうか。ただ、これも、今それじゃ値決めをどうするかというような問題がございますから、予算でもお願いはしておりますが、これはいわば決算も一遍も行われておりませんから、理論的に積み上げられる株価をもってお願いをしておる。これらの変化はあるいは期待できるかもしらぬというようなものが新しい要素として出ておるわけであります。さらに、御議論をいただく一つの時期としては、税制改正の抜本改革案というものが出ればさらにもう一度論議が深まっていくべきものであろうかな。かれこれ勘案しながら、この斜線からでこになっておりますのは、それだけがいわば当初の努力目標に達しなかった一つの金額でありますので、それらを眺めながら、なお国会等における濃密な議論を深めていかなければならぬではなかろうか。  ただ、まさにここで仮にもう旗をおろしましたということを言う環境にはないではなかろうか。いずれにせよ、要調整額というようなものを過去四年間振り返ってみますと、いろいろな批判を受けながら、ツケ回しであるとか帳じり合わせであるとかいろいろな批判も受けながら、一般歳出で前年度同額以下というのをぎりぎり苦労してきたわけでありますから、その苦労の土台の上に立って、一度緩めてしまうとそれらの努力が水泡に帰してしまうではなかろうかという懸念を持ちながら、難しいことではあるがかたくななまでにもこの旗を掲げて進んでみようというのが今日の心境であります。
  142. 正木良明

    ○正木委員 どうもこの辺皆、総理や大蔵大臣に誤解があるみたいなんです。思い違いがある。財政再建の旗をおろせなんてだれも言っていませんよ。財政再建は徹底的にやるべきです。できもせぬ六十五年をおろしなさいと言っているのですよ。これがなぜ歳出膨張につながりますか。むしろ現実的にこれを二年延ばすか五年延ばすか、それはいろいろ計算してみなければわかりませんけれども、赤字国債依存体質からの脱却というものが昭和六十五年にできないということがありありとわかりながら、旗をおろせば気が緩む、それは財政再建と言えば、旗をおろせばあなたら気が緩むでしょう。しかし、現実的になし遂げることのできるような計画に変えるということであるならば、私は何もこの問題について旗をおろして気が緩むということにならないと思うのですが、どうですか。
  143. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは、おっしゃる意味は私にもわかります。すなわち、財政再建の第一義の目標というものは赤字公債依存体質からの脱却、それを六十五年に定めておる。しかし今のままでいけば、これはおまえも、困難なことでありながらもこういう前提をつけるように、難しいということは明らかではないか、さようしからば、それを七十年に延ばせという主張もこの間ありましたが、いま少し柔軟に対応したらどうだ、こういうことであろうかと思っております。しかし、私ども今日まで、いずれにせよこのいわゆる厳しい歳出削減というものをしながら今日に至ってまいりました。そしてこれが今後のいろいろな推移の中で、先ほどは一例として電電株のお話をいたしましたが、不可能であると今断ずる状態にはなかろうではなかろうか、これは、この旗をおろしたら心理的にもやはり歳出圧力というものは噴き出してくる。噴き出してくるほどあるいはかたくなに防波堤をつくっておったかもしらぬという自己反省をも含め、やはりこの旗を今おろす時期ではないというふうに私は考えております。
  144. 正木良明

    ○正木委員 いやそれは、口を開けば電電、電電とおっしゃいますが、あれだって、それは確かに評価は低く評価しているのかもわからないけれども、この予算の中にはもう既に四千億円入っているじゃありませんか。電電株の売却代四千億円を入れてなおかつ国債が予定どおりに減らせられないぐらいの歳入しかなかったということなんですからね。そうすると、大蔵大臣あれですか、この四千億円というものが、本当に売り出したときには何倍ぐらいになるのですか。そんなに赤字を消すぐらいのごつい歳入になるのですか。それは言えませんと言うだろうけれども、株価誘導で言えませんと言うだろうけれども……。
  145. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは、四千億円というのはぎりぎりの説明のつく評価であろう。四千億円というものがいわば仕切り値でないということは、これは御案内のとおりでございますが、さあこれで一応予算を通していただいて、授権をしていただいて、さてそれからそれの売り方、値決めというものも国会の問答等を聞きながら決めてかからなければならぬ問題でございますので、これはいわば歳入の見積もりでございますから、どういう値段になるかというのは、正木さん、初めから私の答弁も加えて御質問いただいたように、今のところわかりません。期待はできる、こういうことではなかろうかと思います。
  146. 正木良明

    ○正木委員 それはちょっとこの席では言えないと思いますからいいですけれども、しかし、相当差益というか、相当高い値段で仕切れるという感じは感触としてわかりました。  そこで、歳出を切れ、歳出を切れというので一生懸命努力をなさった。これは見事に歳出をお切りになってこられたわけでありますけれども、ところが、歳出をお切りになりましたけれども、それは予算の面にあらわれている歳出はお切りになったけれども、結局は別な形の借金で残っているものが随分あるわけです。これは一回どれくらいあるかというのをちょっと参考のために洗い出してみましたら、とりあえず気がついたものだけでこれだけあるのです。これが下の欄にあるものです。例えば、行革関連法案で、三年後には必ず利子をつけて返済いたします、こういっていたこの厚生年金等への繰り入れ減額措置、これは六十年度の補助金等の一括削減法で継続きしてこのままずっと続くのです。六十一年度から三年間も延ばされてしまった。大きいところでは五十八年度から始まった国民年金特会平準化措置。これは大蔵省は小計の下の二つについては異論がある程度出てくるかもわかりませんが、これもひっくるめて歳出削減に伴う後年度への負担の繰り延べ額というのは十兆六千億円ある。これは防衛費の中の装備費の後年度負担は全然入っていませんよ、この中には。これは性質が違いますから入れませんでしたけれども、要するに向こうからちょい借り、あっちからちょい借り、利子つけて返しますがなとかなんとかうまいことを言って持ってきては、結局予算の面にあらわれないという形で後年度へずっと繰り延べているのがこれだけあるわけです。これは認めますか。
  147. 竹下登

    ○竹下国務大臣 ちょっと詳しくは事務当局の答えをかりなければなりませんが、私もこの問題が、今正木さんの御指摘のように後年度への負担の繰り延べであるから、ある意味において債務として赤字公債と同じようなものじゃないか、こういう議論があることは承知しておりますが、赤字公債と違うのは、一つは、いわゆる市中の金融市場に影響を与えるものではない、それからもう一つは、政府間の会計のいわば貸し借りとでも申しますか、政府間の会計内の操作である、それからいま一つは、中身はいわば将来は減ることを見越した平準化措置というようなものがあるというふうに区分できるではなかろうか。しかし、いつも申しておりますように、可能な限り財政再建をやって、できるだけ早うお返ししますということを言っておることは御指摘のとおりであります。
  148. 正木良明

    ○正木委員 要するに見せかけだ、厳しい言い方かもわかりませんが、見せかけだということを私は言いたいわけなんです。要するに予算面にあらわれたものだけ何とかつじつまを合わそうという形で随分、これだってそんなに平気でやられているわけじゃないと思うから、随分苦労なさっていると思いますけれども、よくまあこんなに悪知恵がと思うぐらいの知恵を働かされておやりになっている。さらに、こういう繰り延べのほかに、これだけの借金を抱えながら——これは通産大臣が大蔵大臣のときに僕は行革の特別委員会で大分やりましたね。六十一年度、五十六年度からずっと今まで見込んできた給与改定費の一%も今度は入れなかったでしょう。一般会計に入れる国鉄の長期債務の肩がわりの金利、これは今まで一般歳出の国鉄助成費の中に含まれておりましたが、そして国鉄が資金運用部に払っておりましたが、来年度から大蔵省が国債費の名目で金利を払うようになった。これらは結果的に一般歳出を圧縮するために役立っている。六十年度予算でも揮発油税から一般会計を通さないバイパスルートで道路整備特会へ直接繰り入れて、一般歳出での道路予算がふえないような仕組みにしたり、まあ考えつく知恵を絞り出して、ようやるわという感じです。しかし、こういうふうな手法を続けていって国民の信頼がだんだん薄れてくるというような状況の中で本当の意味の財政再建というものができるのかどうかと、私、非常に心配するのですがね。だから、同じ会計内、同じ国の会計の中でのあっちの会計とこっちの会計の融通のし合いだから大したことはないわというふうにお考えになっているかもわかりませんけれども、決して大したことではなくはないわけであります。それは財政の節度ということから言えば大変な不信感を招くようなことをおやりになっているということであります。何か言いたいですか。    〔委員長退席、渡辺(秀)委員長代理着席〕
  149. 竹下登

    ○竹下国務大臣 だから正木さん、ここで二人で三十回ぐらいやっておりますですよね、その議論の延長であって、だからそういう議論の延長の中で積み上げてきたものが、政策としておしかりを受けた大きな問題は特例債の借りかえを政策転換だから認めてくれ、それはその翌年は、正木さんは借りかえしなきゃもうしようがないじゃないか、それを逆手にとったという意味じゃございませんが、ああいう政策転換もやってきた。それから、電電株の問題もそうでございます。本当は民営にした限りにおいてはできるだけ早く売るべきだ、しかしまだ決算も一回もしないものをなかなか値決めも難しい、したがって、ぎりぎりのものとして今度組んできた。  最終的には、いつもおっしゃるように、要調整額を埋めるための具体的方策を織り込んだ展望ということになりますと非常に明らかになってくるわけでありますが、その具体的展望というものの前に、国民の皆さん方になお削減に耐えていただくのか、あるいは負担増に甘んずべきだというコンセンサスに達するのかということをこういう問答の中で年々詰めていっておるわけでありますから、その集積が電電株でありあるいは税制の抜本改正、その後の政策選択というようなものにもつながっていくのかな。結局、単年度主義の予算の中では、今御指摘なすったありとあらゆる、悪知恵ではなく、善意の知恵を出しながら予算編成をし、御審議をいただいておる毎年毎年の努力の積み重ねの中に今日がある、こういうことであろうかと思います。
  150. 正木良明

    ○正木委員 そうすると、財政再建計画というものを現実的なものに直すということについて考えを改めるという、そういう御意思はないわけですね。もう六十五年までとことんこのままで、できぬときにはできぬときで手を上げたらええわという形でいくわけですな。
  151. 竹下登

    ○竹下国務大臣 かねがね御主張の、言ってみれば要調整額を埋めるための具体的方策を織り込んだ展望というようなものがお示しできるというのは、私は、本当にぎりぎりそれが出ていく前年ということになるのじゃなかろうか、それまでは、その間の要調整額等を過去このような努力によって縮めてきた、そしてその予算の編成の過程の中に、逐次それらの問題が距離が縮まっていくというような経過をたどるのではなかろうかというふうに思います。やはり元来、自由経済であることも事実でありますが、あらかじめ負担増で何ほどか削減で何ほどか、そういうものが提示できるというのは、私は今日の段階においては、まだ国民がこの辺ならというコンセンサスを見定める過程における問答ではないか、こんな感じでございます。
  152. 正木良明

    ○正木委員 今非常に意味深長なことをおっしゃいましたが、私は、お役人の方々が知恵をおつけになったのか、もともとお持ちになっていた竹下大蔵大臣のお知恵なのかよくわかりませんけれども、相当なものですよ。もうこれだけ財政が逼迫したんだから歳入の確保のためにやむを得ませんとかなんとか言って税制調査会長か何かを口説いて、それで法人税を上げる、一年きりです、延ばす。減税、それは都会議員の選挙の前にやります、全然やらぬ。そうでしょう。  図らずも今要調整額の問題をお出しになりましたが、要調整額をなくするために、大臣がおねらいになっているのか大蔵官僚がねらっているのかわからぬが、どうしても大型間接税の導入ですよ。そのために大型間接税絶対反対という層をシラミつぶしにつぶしていったわな、それも賛成しろというようなことを言わぬと。もうこれ以上かなわぬという状態へ追い込んで大型間接税賛成論に変えていったのですよ。偉いなとわしは思うわ。あの名立たる財界がそれでやられてしまった。これだけ法人税がどんどんどんどん値上げされるのなら、これはとてもたまらぬ、これは何か別な税源を見つけてもらわなければならぬ、大型間接税どうですか、それに乗ったということにきっとなっていくと僕は思う、所得税だったって中にはそんな声が出かけているところがあるのですから。  私たちは一生懸命「増税なき財政再建」で減税だということをお願いしているけれども、もうそれはあきまへんで、減税と引きかえの増税やったらしゃあないなと言い出している層もいるわけです。これは悪らつなやり方ですよ、私に言わせれば。大型間接税を導入することに追い込むために、これは私は考え過ぎかもわかりませんよ、考え過ぎかもわかりませんが、着々とそのコースに乗せてきている。だから、何遍でもわかっているようでわけのわからぬ収支見通しみたいなものを毎年大蔵省が出してきて、要調整額だけびしゃっと一番先に目に入るように書いてある、これはもう税金をよそから持ってこなければしゃあないなという感じに。違いますか。
  153. 竹下登

    ○竹下国務大臣 要調整額の具体的な埋め方等に対してきちんとした財政再建計画を出すべきじゃないか、こういう議論が長らく続きまして、しかし、それは出せる性格のものでない。さようしからば、予算審議の際に、あるいは我々がその前提を出しでもいいから、ひとつそういう試算というようなものを予算審議の参考にすべきだと思うから出せというような、これも長年の議論の中でその結論が出て、それをお出ししておる。  その中におきましても、私どももより正確なものにするために考えました。それは確かに、八〇年代後半の財政指数と言えば、まさに七、六、五抜きの四、三、二、一、その七、六ないし六%の中間値をとった名目成長率の六・五に弾性値の一・一をかけたものを税収にするというのが平均的にいいものか悪いものか、経済企画庁の経済審議会に聞いてみたら、やはり平均としては今その数字は変えなくてもいいだろうなということで、さようしからばというのでことしもその数字を使わしていただくというようなことで、少しでも精度の高いものにしたいと思って努力して、御参考に供しておるわけであります。  要調整額というのは、しかし毎年毎年の努力によって減っておるということも、やはり過去の分と比べていただきますと、ははあこれだけのものが努力して減ったのだな、こういうこともわかっていただけるのではなかろうか。  ことし、いわゆる仮定計算を含めて提出しました翌日の新聞論調を見ますと、大蔵省は増税しかないということを認識してもらうために出した資料だ、こう書いてありましたが、そういうことでなく、毎年毎年出して、そしてなおのこと念査しながら出していったわけでございますから、それは政策意図を持って出す資料じゃなくして、単なる機械的な計算に基づく資料にすぎない、こういうふうに、それはそれなりに理解をいただきたい。  ただ、こういう議論を続けておりましたから、環境が熟して、総理が公正、公平、簡素、選択、活力という点から正々堂々と税調へ諮問されるその環境づくりのためにも、結局、私は、七年間の歳月がかかったのじゃないか、そういうふうな感じすらいたしておるわけでありますが、根気の要るものだなと思っております。
  154. 正木良明

    ○正木委員 これ、見てみ。太い枠で囲ってあるでしょう。あけたら、さっと目に入るようになっている、要調整額。  そこで、これ、順序どおりやっているとちょっと時間があれで、聞きたいことを先に聞いてしまいますわ。  去年、大型間接税の問題でごたごたしまして、それで最終的には統一見解が出ました。これも、僕はこの直後にある人から、ああ竹下さんにはめられましたな、こう言われたんですよ。総理がこう言っているのです。「私はかねてから、多段階、包括的、網羅的、普遍的で大規模な消費税を投網をかけるようなやり方でやるとはしないと申し上げていることは御指摘のとおりであります。したがって、矢野委員が例示された課税ベースの広い間接税の五類型のうち、EC型付加価値税と取引高税は、私のかねての答弁から見ますと多段階のものでありますので、その意味では否定されることになるのではないかとの御指摘は、多段階という点においてはそのとおりであります。」あのときにだまされたな、これ。「しかしながら、EC型付加価値税といってもいろいろの態様が考えられることも御理解願いたいと思います。」こうおっしゃっていますね。  これは何でこんなたくさん、多段階、包括的、網羅的、普遍的というような、なおその上に投網というようなことを言うたかといえば、これはだてや酔狂で言っているのと違いますよ、これが全部当てはまるやつはやりませんが一つだけ外したやつならやれるということを言っているんですよ、これは全く竹下さんにはめられましたな、こう私は言われましたけれども、どうですか。やりませんか。
  155. 竹下登

    ○竹下国務大臣 多段階、網羅的、普遍的、投網といろいろな表現がございましたが、総理のおっゃるのは、観念的に日本人に非常にわかりやすい表現として用いられたわけでありまして、むしろ窮屈であったのは、五十四年の国会決議の際に「いわゆる一般消費税(仮称)」として括弧を入れていただいた。これは私は、消費一般にかかる税制そのものが学問的に存在するのを国会決議で否定してしまうのはいかがかというので、文章をおつくりになりますときに参画させていただいてそれを残したわけでありますから、ある意味において学問に対する良心がその言葉をお願いしたような気がしておりますが、昨年の総理の統一してお述べになったのは、そうした感じを自己の政治体験からして、かつて取引高税の時代、そしてまたいわゆる一般消費税(仮称)の問題が取り上げられたときというようなことから、非常に国民にわかりやすく言葉を使われたものである。その中のどこかの分を引っこ抜いてというほど、悪巧みを考えるほどの知能指数は私は持ち合わせておりません。
  156. 正木良明

    ○正木委員 いや実は、その要調整額の問題そのほかのいろいろな問題がありまして、どうしても大型間接税だとか非課税貯蓄制度の問題に手をつけるというような形で、相当の額の税収増というものを期待しなければどうにもならないというふうに考えているのじゃないだろうか。同時にまた、六十五年赤字国債脱却、旗はおろしませんというのは、逆に言えば確信がある。その確信は、別の財源が用意されて入ってくるから赤字国債脱却は六十五年にできるんだ、そういう思惑があるのじゃないだろうか。総理が予算委員会であのように言明はされたけれども、それを信用していていいのだろうか。一つだけぽこっと外したら、例えば包括的というやつだけを外したら、多段階も生きてくる、普遍的も生きてくる、全部生きてくるんやから。現にそう総理がおっしゃっている、いろいろなやり方がありますんやからとこう言っておる、こう言うのですよ。私の選挙区に頭のいい人がおりましてね、それは政審会長だまされていまっせ、こう言うのですよ。  それで、こんな頭のいい人と勝負したってどうしようもないんやけど、どう考えても大型間接税というのは来年度導入されるおそれがある。それはこの間からの論議を聞いておりましても、春に税調の中間答申を受けて減税をする。その手当ては本格答申の秋に、そして六十二年度に増税をやる。増税といったって、私たちが言っているような不公平税制の是正をするというような形のものではなくて、まさに大型の税収が確保できるような形にしたい。これは大蔵省のお役人の皆さん方はもう宿願とも言うべきものでありますからね。  要するに、直接税というのは景況に左右される、好況不況に左右されてしまう、予算をつくるときにこんな頼りない税金はない、不況のときに困る、好況不況に比較的影響を受けないような間接税で大幅な税収があるようなものをしたい。これは何十年前からもう代々ずっと受け継がれてきた宿願ですよ。そういうものが根っこにあって、しかも銭は足らぬ、どっかで持ってこにゃいかぬ、ここへ来る。僕は考え過ぎかわからぬけれども、夜も眠れぬぐらい心配というほどのことはありませんけれども、しかしやはりこれは六十二年度というのは危ないぞという気がしてしようがないのですが、大型間接税は導入しませんと言ってくれますか。
  157. 竹下登

    ○竹下国務大臣 総理のお答えのとおり、いわゆる政策選択の際にそういうものは自分はとらない、こうおっしゃっているわけであります。今私どもは税制には一つの足かせ手かせをかけた諮問はいたしておりませんが、従来からの税制調査会におかれましても、いわゆる課税ベースの広い税というものがいわば検討の対象になっていくであろう、あるいは先ほどおっしゃいましたいわゆる利子配当の問題等も一度は税調で結論を出されたこともある課題でございますから、やはり審議の過程において議論される可能性のあるものではなかろうかという問題意識は持っていないといかぬと思っております。しかし、いずれにせよ、どういう税制というものを実際問題としてとるかということになりますと、それはやはり税調の抜本改正の答申をいただいた後、いわば政策選択の判断をすべきものであろうというふうに考えております。
  158. 正木良明

    ○正木委員 じゃ、これはこれぐらいにしておきましょう。  租税負担率の問題。大蔵省の資料によりますと、租税負担率は五十七年度が二三・三%、五十八年度が二三・七、五十九年度二四・三、六十年度、これは補正後が二四・八、六十一年度、これは当初予算で二五・一、こうなってますわな。いいですね、それで。これ、四回の予算編成で一・八ポイント租税負担率は上がっているのです。  あの当時、まだ臨調でありますが、臨調の瀬島さんが参考人で来られて、瀬島さんのおっしゃったことを金科玉条のように考えているわけのものではありませんが、大体極めて常識的なことをおっしゃいました。まあ西欧先進国並みみたいなあんな高い国民病と言われるような状況に持っていきたくない。そのためには租税負担率というものはできるだけ上げない方がいい。それで「増税なき財政再建」ということを主張なさったわけです。そのときに数字をおっしゃっているのです。昭和五十八年だったと思います。このときに瀬島参考人はこう言っているのです。その当時三五です。社会保険の負担も入れて三五です。二四と一一です。二四が租税負担率、税の方の負担。社会保険料の負担が一一。できるだけこの二四というものは維持してもらいたいと思っているんだ、こうおっしゃいましたよ。もし上げられなきゃならぬということがあるならば、むしろこの社会保険料の負担の一一の方、これは受益者負担に属するものであるから、上げるならこっちの方が先です。租税負担率は二四をできるだけ維持してもらいたい。最高四五ぐらいもいくかもわかりませんがということでの、大体これは趣意でありますが、そのとおりの言葉でありませんが、趣意でそういうことをおっしゃっておる。これはもう完全に超えておるのですよ、その説からいえば。どういうふうな御認識ですか。
  159. 竹下登

    ○竹下国務大臣 そもそも租税負担率というものは、究極的には政府部門と民間部門に資源をどう配分するか、どれが適当かということで、最終的には国民の選択の問題と裏腹になるということであろうと思います。確かにあのときの議論の中心というのは、「増税なき財政再建」とは何ぞや、新たなる税目を求めて大きく租税負担率が変わるというようなことは、いわゆる「増税なき」の「増税」に当たる、こういう定義でございました。それからいきますと、当然のこととして、その委員長代理をしておった瀬島さんはあのときの二四という租税負担率というのは可能な限りこのままであってほしいという願望を申されるのは私は当然のことではないか。ただ、経済成長をいたしまして、そしていわばこのたくさんな刻みの、上へこうだんだん上がってまいりますから、大きな減税を五十九年にはやりましたけれども、所得税について。が、上がってまいりますから、いわゆる現行の制度をそのままに置いた場合における成長率との見合いで税が上がっていって、それが時に所得税の場合、租税負担率を若干上げていく方向になるではないかということは、私もそれは認めております。  したがって、やっぱり我々が一番考えなきゃいかぬのは、今いみじくも二つに分けておっしゃいました社会保障負担と合わした国民負担率というのをどこに置くのが一番妥当かということであろうと思います。     〔渡辺(秀)委員長代理退席、林(義)委員長代理着席〕 答申にもああして、ヨーロッパのそれよりはかなり下のと、こう書かれてありますが、そのかなりとは何ぞやという議論もたびたびした議論ではございますが、ことしのところで国民負担率が三六・一としまして、恐らくヨーロッパのそれは五五ぐらいなところも国によってはできておると思いますので、ヨーロッパよりもかなり下でもそれがその後また急速に上がっておりますから、それを余り意識しないであの当時の大体の基準を意識しながら勉強していかなきゃならぬなと思っておるところでございます。  が、これとて究極はやっぱリ政府の支出が公的支出をどれだけやるか、それにはどれだけ負担するかという裏腹で決まる問題でございますので、やはり問答を続けていきながら国民の合意が那辺に行われるかということを見定めていくというのが政治というものではなかろうかなというふうに考えておるところであります。
  160. 正木良明

    ○正木委員 こんなことは釈迦に説法みたいなものでありますけれども、これは国民所得との関連でこの税の負担率というのは出てくるわけですね。大体国民所得というのは名目GNPの八〇%か八二、三%までいく場合があるかもわかりません。要するに、税金が上がっても国民所得がふえたら負担率は上がらぬ、こうなるわけですね。ところが非常に特異な累進税率というものを日本がとっているために、その割合ではふえていかないで、上の段階になったときにはさらに負担率が高くなってくるから、この税の租税負担率が当然上がってくるということになるというわけなんですよね。それはわかる。それはわかるけれども、それをある程度調整せにゃいかぬですよ。その調整することが減税ということですわ、私に言わせれば。  特に所得税の負担率のふえている内訳を見ますと、一人当たりの給与額が二八・二%の伸びにとどまっているにもかかわらず、一人当たりの課税額は二六・九%と一・七倍もふえているのです。五十九年に減税があったにもかかわらずですね。さらに六十一年度に限ってみても、減税が見送られたために年収四百万円の夫婦子供二人の典型的なサラリーマン世帯の場合は、五%のベースアップがあって年収二十万円がふえると所得税は十一万五千円から十三万一千二百円と一三・三%も上昇するということになる。この辺がやっぱり一つは問題なんですよ。その点、法人税の場合はそんな累進税率じゃありませんから問題はないのですが……。したがって、租税負担率というのは景気の動向に左右されるということよりも、そういう形の税制の仕組みの中にもともと大きな問題があると言わなければならないわけであります。したがって、減税をしていただきたいのであります。  私は思うのですけれども、政府はお嫌かわかりませんけれども、来年抜本改正をすると言うけれども、どんな形になるかよくわかりませんが、減税なんというものは、これは野党、またこの予算委員会が終わりに近づいてくると修正要求をやるわけですよ。しかし実際問題としてこの修正要求というのはでき上がったものを変えろというものですから、これは建前から言えば変えるのは当然であるというようなものやけれども、そうはいきませんわ。あれ恐らく、防衛費が突出した突出した、こう言っているけれども、防衛費もあの突出分を予算修正でやれと言ったらできませんぜ、きっと。なぜ突出した防衛費が予算の中にあるかといったら、先に取ったからなんです。先取りしたのです。これだけの防衛費はもらうぞ、そうじゃないとアメリカにぐあいが悪いぞということで先に取ってしもうたからです。これはやっぱり減税も先に取ってもらわなければいけませんわ。  それだから私は前から主張しているのは、要するに予算編成のときに予算委員会を開いてほしい、で野党の要望を聞いてほしい。それは、いろいろ政調会長が野党の政審会長を呼んで予算の要望を聞いたり、また党首会談でいろいろ予算の要望を聞いてくれていますけれども、事予算に関して数字が変わったというのは余り聞いたことないわ。まあ、言ってこいよ、聞いたるがなてなもんです。聞くだけ聞いて、後知らぬという感じですからね。本当言えば、予算編成の時期に予算委員会を開いてもらって、そのときに野党の要望を聞く。そのときにうんと言うかどうかわかりませんけれども、そのときに先に減税分をがばっと取ってしまう。これだけしか税収はないぞということで予算編成を始めてもらわぬ限り、これは減税できぬわ。正直に僕は申し上げているのですよ。しかし、私は断固としてやりますよ、予算修正。旗はおろしませんよ、私は。旗を掲げて最後までやりますけどね。  だから、そういうことも同時に考えないと、これはやはり与党は与党なりのメンツというものがあって、私は最高のものですと思った予算を修正するなんということはとんでもない、僕が与党でも言いますよ、それは。その誇りがなくなったら終わりでしょう、政治家として。しかし、何とか——そうすると、これもはっきり申し上げますけれども、予算を人質にとるよりほかに言うことを聞かすわけにいかぬわけですよ。恐らくそうなるよ。覚悟しておいてください。暫定予算かどうかというような形になって初めて話し合いが生まれてくるのですよ。米ソの軍縮みたいなものですわ。  ですから、そういうこともありまして、例年減税のことを申し上げておりますが、これはテクニックの関係からいえばそういうことになるかもわかりませんけれども、しかし、やはり減税をしなければならない理由は何かと言えば、どうしてもこれは外国に対しても内需拡大という、これをこれだけやっているんだということを立証しなければいかぬでしょう。恐らくサミットでもそれを要求されるんじゃないかと思いますけれどもね。それほど低級な話じゃないと思います、この話は。どうせ、それは偉い人だって言ってること、考えていることというのは我々と一緒なんですから、どうなっているのや、おまえのところはてなことになるよ、それは。何もやっとらへんやないか、減税もやらな、公共事業もやらぬし、予算を圧縮するばかりで、集中豪雨的な輸出をして迷惑を受けているのはこっちばかりやないか、どないなっとるねんというようなときに、やはり総理、言わないかぬわ、それ。それは大阪弁では言わぬとは思いますけどね。そういう話ですよ、結局の話が。  そうすると、やはり個人消費を、六二%もあるわけですから、いわゆる寄与率が。寄与率というか、シェアというか、この六二%の個人消費を伸ばす、そんなに妙案なんかありませんよ。これは賃上げと減税しかないのですから。使いでのある金をふやしてやるというよりほかに道がないわけですからね。そのための減税ですよ。だから、私たちが拡大均衡、拡大均衡ということを数年前からやかましく言ってきておるのもそこにあるわけであって、それは財政再建というのは成長を高めて、税の自然増収をふやす、そのことで赤字を消していくというのは一番理想的な形ですね。鶏でいえば、卵をどんどん産まさないかぬわけですが、全然えさを食わさぬと卵を産めと言っているのです。そういうことでしょう、結局。えさはないぞ、産め、六十五年まで産むのを待つと言っているんだから、どうなっているんだろうと思いますよ。ですから、そのためにはやはり減税というものを、それは苦しいでしょう、苦しいのはわかっているけれども、減税をやらなきゃいかぬのですよ。公共事業をふやせる話じゃないんですよ。政策手段なんてそんなにたくさん財政的にはあり得るはずがないわけです。  だから、それをやらぬというのだから、相変わらずえさを食わさぬと卵産みよるのを待っているというだけで、結局、年度末赤字になってえさを食わさないかぬのですから、ちゃんと卵を産めるようなえさを食わしてもらいたいと思いますな。どうですか。     〔林(義)委員長代理退席、委員長着席〕
  161. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いわゆる内需拡大を本格的にやるためには、そして外国からもいろいろ要請があるであろう、それにこたえるためには消費を拡大するための減税と公共事業をふやすこと、この二つしか財政における政策手段としてはないではないか、こういう御質問です。  卵を産ますにしても、えさは食わせなければいかぬ。しかし、今日の日本経済を見ますと、財政は別として日本は、金利のつく金は、何ぼでもあるという表現は悪いですが、世界で一番多くある、金利のつかない金は非常に厳しい、こういう状態であります。したがって、その金利のつかない金を、租税等でいただく金を産み出すためにいろいろな施策を行わなければならぬが、今日まで世界の先進国全体も反省してみなければいかぬのは、本当に卵を産むだけのえさでなく、それ以上のえさをあるいは政策手段として与えたかもしらぬ。それによって糖尿病ができ、あるいは下痢を起こした嫌いもあったではないか。それを先進国全体が感じて、いわば空腹時血糖値百以下ぐらいなところでみんながそれぞれ対応していけばいいではないか、こういうようなことが今の卵・鶏論からいえば言えるんではないかなと思うわけであります。  私どもがやはり感じますのは、減税ということになれば財源はどうですか。それは共産党の方のように、いや、防衛費半分にすればいい、こういう単純な論理は別といたしましょう。そうすると、まず議論として出てくるのは不公平税制の是正だ。ところが不公平税制とは、税制そのものは国会というところでオーソライズされたものですから、不公正であるとは思わぬ。いわば不公平感が徴取手続等々いろいろな点に生じておることは、私どもも否定するものではない。しかし、実徴率をふやすとか、それだけでその財源というものが実際問題出てくるであろうかということになると、とどのつまり、やはり赤字公債を発行するという議論になってくる。しかし、いつか大蔵委員会でつくられました、各党のベテランの方のお集まりのいわゆる小委員会においても、結局財源問題というものについては、赤字公債だけはやめようということで一致した。赤字公債というのはどう考えましても、これを六十年間にわたって子、孫、ひ孫にまで負担を負わせておいて、きょうの減税、消費を刺激するということは、生きとし生けるものとしてやはり慎まなければならないことではなかろうかというふうにも考えます。  さて、公共事業ということになりますと、これは確かに三年間ずれば、三年間で一兆円なら四千億程度の税収のはね返りがあることも事実であります。そして、議論にありましたように、ただ消耗されていくのではなくして、そこには資産も残るでありましょう。しかし、それとておのずから節度のある問題ではなかろうか。いわばいっときのサトビスを維持するために、後世代のツケという性格そのものにおいては変わりはない。日本と西ドイツの場合は赤字公債と建設公債と仕分けをした物の考え方をいたしますが、他の国はことごとくが、財政赤字とすればどちらにしても同じことではないかという議論になっておりますだけに、お互い財政赤字をふやしていくということは開発途上国を含め影響するところが多いから、財政赤字をふやすことなくして内需振興に役立つための施策を模索しなければならないというところでいろいろできまして、地方にも御迷惑をかけながら、昨年度よりもはるかに多い公共事業費を全体としては確保し、財投等を利用しながら、さらに民活、その民活の最たるものは関西空港、正木先生の選挙区であろうかと思うのでありますが、そういうことをもつけ加え、さらには草の根民活等々において総体的な内需拡大というものへの寄与度を高めていこうという政策を総合的にやることではなかろうか。今後とも知恵をかして賜りたいと心からお願いをいたします。
  162. 正木良明

    ○正木委員 不公正というのは税制の中で、また課税段階であるとか徴収段階でもあるのですよ。それは言ったら長くなるからきょうはやりませんけれども、それと私たちが不公平税制の是正と言っていることとは違うのであって、不公平税制の是正というのは、言い直せば不当に優遇された税制というものを是正してくれ、こういう意味です。  それは確かに租税特別措置法を初めといたしまして優遇税制はあるのです。現にある。また、それが必要だった時期があると思うのです。特に終戦直後、国際競争力を日本の産業がつけなければならぬ、資本の蓄積をしなければならぬ、とてもじゃないけれども日本は世界に伍していくような状況ではないからというので、税制上で恩典を与えてそれをした。これは私は正しい政策だったと思いますよ。しかし、いまだにまだ続いているというのはおかしいじゃないかと私は言っているわけですよ。そうでしょう。このような世界で恐れられるような国になって、なおかつ優遇税制というものが存在しているのはおかしいじゃありませんか、それは不公平ではありませんかというので、我々は不公平税制と名づけてこれを是正してもらいたいということを言って、是正するに当たってはそれを減税の財源にしてもらいたいということを毎回申し上げているわけなんで、これは内容を言っていると時間がありませんから言いませんけれども、ちゃんと理由のあるものを書いているわけですよ。そこらで見ているんでしょうな。毎回見てくれていますか。毎回同じようなのが出てくるのはなぜかというと、これをなかなか実行せぬから次の年、次の年となっているだけの話なんですからね。  それから、公共事業の問題は建設大臣にもお尋ねしたいと思っておったのですが、要するに公共事業は一番手っ取り早い経済的な波及効果のある内需拡大の方策です。これはぜひやってもらいたい。ふやしてもらいたい。せめて私は名目成長率くらいは伸ばしてもらいたいと思うのですね、公共事業費は。おっしゃったとおり税のはね返りも大きいわけでありますから、この辺はどうかひとつ十分に考えてもらいたいと思うのです。  そこで民活ということになってきます。政府は金がないんだから民活てやろうか、こうなるわけです。これは要するに政府は鶏に食わすえさが買えぬから買えるところで鶏を太らそう、私に言わせればこういう考え方が民活ですよ。それも結構です。  ところが、この間もある大資本の企業家が言っておりましたが、政府は民活、民活とおっしゃって我々に金は出させるけれども、金以外のことについては余りお呼びがない、これは本当の民間活力を活用したことにならないと思いますがどうでしょうかと言っていた。そのとおりだなと思う節もあります。そこで、知恵もバイタリティーも資金も全部民間へ任してしまうという形で、例えば有料の高速道路なんかを民間でやらせるというような考え方はありませんか、建設大臣。
  163. 江藤隆美

    ○江藤国務大臣 総理が民活元年の年と名づけまして大いにやろうということで号令をかけられまして、実を言いますと私もいろいろな考え方がありましたから、事業官庁である建設省がしっかり腰を据えてかからないと民活は進んでいかない。政府に対する信頼と安心感の問題だと私思いまして、省内に今まで事務次官を委員長として民活の委員会をつくりまして、二度ほど提言もなされておるわけですが、今度は建設大臣を議長にしまして民活プロジェクト推進会議を設置して、どうしたならば民活が進んでいくか、こういうことを総力を挙げて検討しようということに準備をいたしたわけであります。  その中で、今御意向の、例えば横断道路がほとんど政府資金を使わずにやれるわけですから、有料道路でそういうことをやれないかということも既にこれは検討いたしました。全国で今約五百キロほどあるようでございますが、関係しておる会社が五十五社のようです。用地代が高くなった、建設費が四車線にするとキロ四十億かかる、それから災害が起こったときにこれは災害復旧になかなか国の資金を出しにくい。長野県の去年雪崩が起こりましたところを有料道路が通っておったのですが、長野県の企業局がやっておりまして災害復…は助かったわけでありまして、それやこれやありまして最近はこの四、五年間有料道路の申し出がないということでございます。  しかし、ないからほっておいていいということではありませんで、せっかく民活と言われるわけですから、御提言のようなことが実際これから全く不可能なことかどうか、可能性があるとするならばどういう手だてを講じたらいいか、これから十分検討させていただきたい、こう思っております。
  164. 正木良明

    ○正木委員 フランスにはあるらしいですね、高速道路を民営でやっているところが。そんなに大したものじゃありませんけれども。私の資料によりますと、フランスでは高速道路が五千七百十五キロメートルあるんだそうですが、この二二%、千二百六十八キロを民間企業が建設しまして経営をしている。そこにはレストランからガソリンスタンドから全部そこが経営するということで、採算がとれるような形を考えてやっているというのです。これは総理より特命大臣に。
  165. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 さっきから大変卓見をわかりやすくお話しになるから傾聴しておりました。  民活というのは、もともと民間だけの活力をどう引き出すか。とにかく財政再建というなら、赤字は先進国の中では日本が一番多いんです、アメリカよりも。GNP比四三%くらいでしょう。アメリカは四〇%くらいでしょう。ただ、違っているのは、貯蓄率だけはアメリカの三倍以上です。そういうことから考えますと、私いろいろあると思うのです。そこで、建設大臣はもちろんですが、運輸大臣にもお願いしたり国土庁長官にもお願いしまして、何とか、これは規制緩和の問題じゃないか、規制を緩和すれば、おっしゃるようないろいろなアイデアが出てくるのですよ。  そこで、総理からの命令もありまして、これは今後四者でしきりに会議をしていこう。例えば今おっしゃるような有料道路のリース制なんてのは不可能じゃないと私は思うのですね。日本では最も手近なところじゃ鎌倉の江の島がありますね。夜になると金を取りませんね。だから夜は非常に通行が多くなるというのですが、しかしそういうこともあるのですから。何かありますな、モノレールの下に。ですから、知恵の出し方はあると思います。それから東京湾にしても、例えばポートアイランドにしても、あれは民活ですね。ですから、そういう自治体を広く網羅していろいろな知恵をかりて、特に総理が私に注意をされたのは、また東京かという、東京ばかりじゃなくて、関西はもとよりですが、博多も、あるいは中部圏も北海道も、広くひとつ民活を引き出す方途を考えてみろ。これは鋭意関係各省庁協力して知恵を出し合おう。これはひとつ正木さんからもいいアイデア出してくださいよ。これはぜひ大まじめで取り組んでいきたいのです。これが一番大事なポイントでございます。よろしく。
  166. 正木良明

    ○正木委員 知恵があれば一生懸命出します。  そこで、非常に難しいんですよ、この民活というのは。要するに、それに民間企業が乗り出すためには採算がとれなければいかぬ、できたら利潤が生まれなければいかぬ。むしろ公共性というよりも採算性の方を重視するというのは、これは商売人としては当たり前の話かもわかりませんが、これだけにやはりなかなか手が出ていかないというところがあるんじゃないかと思います。  私もまあ一生懸命、例えば私の地元の関西新空港も民活でありますけれども、国から金を出し、また株式を募ってやっていますけれどもね。今度東京湾の横断道路の問題、明石大橋の問題、大型プロジェクトがいろいろ考えられて、民活でやろうという象徴的な事業をお考えになっているのはいいんですけれども、民間の知恵というのは、本当にあの関西新空港なんか働いてくるのだろうかと考えるときがありますね。あれは民活と言ってやったけれども、お役人の天下り先一つふやしただけと違うんかいなという感じになることがあるんですよ。これは感じですから。まだこれからの問題でありますから、その内容、ああ、あれは民活でやってよかったという結果が出てくるかもしれませんし、やはりだめだったかということになるかもわかりませんし、その辺が非常に難しいわけであります。  だから私は、先ほど申し上げた高速有料道路の問題、いろいろ問題はあるかもわかりませんけれども、丸々やらしてみるというのも一つの手だ。それこそまさに民間活力である。だから、丸々やらせるために何が今隘路になっているかというと、いろいろな規制だから、その規制をできるだけ緩和するようにしよう、僕はこの着眼点は非常に結構だと思いますよ。それはぜひやってもらいたいと思いますよ。  ただ、よく考えてやってもらいませんと、それを利用する者がおりまして、今底地買いというのがはやっておりますね。借家人のところに行きまして、私はもうこの土地は地主との契約で買いました、出ていけ。借地・借家法の問題があるから出ていかぬでもいいんですけれども、暴力団が来て追い出しにかかる。隣で、もう夜中夜通しがんがんがんがんやかましくて、ここではもう生活できぬというような状態にしている。借地・借家法があってそれなのです。借地・借家法というものがなくなったり改正されて緩和されたりしたときには、もう弱い借家人であるとか借地人であるとかという者は、とてもじゃないけれども大資本にやられてしまう、そういう問題もある。  ですから、規制を緩和してもらうことは大もとにおいてぜひ必要だし、そのことが必要だと思いますけれども、同時に、それから生まれてくるマイナス面というものについて、力のない者を結果的にはいじめてしまうようなことにならないだろうかということだけは、一応配慮の中に入れておいていただきたいと思うのです。そんなものはどっちでもいいわというわけにはいきません。  私は、池田内閣がおやりになった高度経済成長政策というものは、時宜にかなった立派な政策だと思う。これはお世辞を言っているわけではない。ただ問題は、高度経済成長政策というものが手段であったにもかかわらず、それが目的化したところに問題があった。そのために公害の垂れ流しなんというのが起こってきた。  それはそうでしょう。生産性を向上するために資本を入れるならばどんどん入れるけれども、生産性向上につながらない公害を防いだり除いたりするような施設や機械に金を入れるばかはないですから。できるだけそれを避けたいというのが事業家の考え方だ。それはやはり国がその企業の社会的責任というものを追及して、そして、国民の財産や生命、健康というもののために公害を絶対出さないようにということで指導すればよかったのが、成長すればいいわ、この方に目的化してしまったから、私は結果的には批判されるようなことになったと思いますけれども、考え方としては、あの高度経済成長政策というものは決して間違った政策ではないと思う。  ですから、政策選択は、もちろん価値の高いものを選択しなければならぬけれども、それを実際に運営していくときに、どれだけマイナス面というものを小さくしていくかということを常に考えていかなければ、私は、結果的にはあれはだめだった、あれはマイナスだったと言われるのじゃないだろうかという気がしますね。  だから、これからこの新しい規制緩和で民間活力を活用するという問題は、極めて重要な問題でありますけれども、それに目を奪われてしまうだけでいろいろの手をお打ちになる、それが結果的にはマイナスになる。マイナスのないものというものはありませんから、全部一〇〇%プラスのものを採用する、そんなことは——世の中にはプラスとマイナスがあるのだから。しかし、できるだけマイナスの小さいものを選んでもらわなければならぬが、実際の運営でマイナスをできるだけ小さくしていくという配慮というものをしてもらわなければならぬと私は思うのです。えらい生意気なことを申し上げて申しわけありませんけれども、民間活力という問題について、私はこれを推進してもらいたいと思うの余り、それがやはり実りある成果の民間活力の活用にしてもらいたいと思って、そう申し上げたわけであります。ありがとうございました。
  167. 小渕恵三

    小渕委員長 これにて正木君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  168. 小渕恵三

    小渕委員長 この際、お諮りいたします。  川俣健二郎君の質疑に際し、最高裁判所山口総務局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  169. 小渕恵三

    小渕委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  170. 小渕恵三

    小渕委員長 川俣君の質疑を許します。川俣健二郎君。
  171. 川俣健二郎

    ○川俣委員 通告はいたしておりませんが、毎日のように我々の胸を痛める問題、いわゆるいじめの問題ですが、これは私は教育問題を取り上げる予定ではありませんが、自殺、ついには葬式ごっこなんという大変な、まさしく病膏肓に至ったというか、大変な問題だろうと思います。  ところが、これは後で文部大臣に伺いますが、その前に総理、これをどうお考えでございますか。対策等については文部大臣から伺おうと思うのですが、総理の率直な受けとめ方というか、どうこれから対処するのか、その辺を聞かせてください。
  172. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いじめの問題には非常に私も心を砕いて、また心痛をしておりますし、それの犠牲になった子供たちやあるいは父兄の皆様方には、心から哀悼の意を表する次第でございます。  各学校に我々の目に見えないところで、こういう一種の空気がびまんしている、教室にそういうものがあるということが如実にわかってきておりまして、そういう教室にある一種のガスのようないじめの空気を速やかに一掃して、明るい教室にしなければいけない、そう思っております。  何といっても、いろいろなケースを見ましても、学校の先生、担任の先生がまずしっかりしていただかなければこれはだめだ、そして全校一体となってお互いに協力し合ってやらなければこれはだめだ、そして、家庭の父兄が先生とよく連絡をとってやるし、地域社会もこれに協力していく、そういうやり方で一生懸命進めてまいりたいと思う次第でございます。
  173. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これは非常に根が深いと思うので、だれが悪い、どちら側が悪いとかなんとかという論議は、結論は出すのは早計だと思うが、文部大臣、あなたは、非常に返り咲きのそっちの方のベテランでもあるし期待されておるのですが、一体文部省はどういう対策を講じようとしているのか、その辺をちょっと聞かしてもらいたいのです。
  174. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 御指摘のいじめの問題は、今総理がおっしゃったように、その原因をここでいろいろ並べますと、例えば御家庭で兄弟の数が少なくなって、兄弟げんかとか切磋琢磨とかいろいろなものがなくなったとか、あるいは小学校、中学校で心の優しい思いやりのある子供、逆境に歯を食いしばって耐えて生きていく子供、そういった心の持ち方の徳育教育が足りないのではないかという御指摘や、あるいは学歴社会とか入学試験とか、点数中心になり過ぎておるのではなかろうかとか、いろいろな御指摘はありますけれども、私は、それよりももっと以前に、もっと緊急に、国には平和がなければ教育も文化の振興もないように、学校には平静な静かな環境がなければ、児童生徒が個性を伸ばして勉強することができませんから、あのいじめのような、しかもそれが自殺につながっておるというようなことだけは、とりあえず緊急になくしていかなければならぬことだと思うのです。  文部省としましては、昨年来、いろいろな立場の識者の方に集まっていただいて、このいじめをなくするための文部大臣談話とか、臨教審の緊急討議とか、いろいろしていただいて全国に通達を出しましたが、去年九名の犠牲者があり、ことしに入ってこの一カ月でもう既に三名です。私は、非常にむなしいものを感じると同時に、これが現場でどう受け取られたのか、どのように処置されたのか、いま一度改めてみずからのこととして受けとめて、再点検をしていただきたいと全国にお願いをしておるところなんです。  先生御指摘の富士見中学に起こりましたごく最近のあの例、最近数日の新聞報道だけを眺めて判断いたしましても、私は就任のときから、現場を無視して、現場の協力のない教育改革はないと言い続けてきましたが、どうか現場の皆さんが本当にみんな大人の気持ちで、すべての教育関係者や御家庭の皆さんが自分の子供のこととして、自分の学校で起こったこととして心を痛めて取り組んで、児童生徒が何か訴えたときには必ず受けとめて、心の通い路だけは大切に持って、大人として励まし、生きる希望を与えるように、みんなで御協力を願いたい、このことを心から考えておるわけであります。  教師が特に行動してくださること、教師が特に立ち上がって手を差し伸べてくださること、児童生徒に直接触れる方でありますから、その影響は極めて大きいわけです。生徒が悩みを訴えたら、どうか心を切り開いて、自分の命を自分で失ってしまうような行動に走らせないように、どうか生きる喜びと生きる勇気というものを与えるように、世のすべての大人の皆さんが目も心も寄せてくださるようにお願いすると同時に、文部省といたしましては、今生田にこのことをもう一回、我が事として再点検してほしい、考え直してほしい、協力をしてほしい、このことを強く要請をし、こういったことが二度と再び教室で起こらないように最善の努力をしていきたい、このように考えております。
  175. 川俣健二郎

    ○川俣委員 この問題は、専門の同僚議員が後ほど教育問題として取り上げるだろうと思うのですが、ついでに私は、どうせ後で取り上げるのですから、木材の問題です。  私の目に木製のかばんがずっと並んでいるのがちょっと口につきまして、これは教育問題という、こういう大上段にかぶって申し上げるわけではないが、やはり木造校舎というものをもう一遍考え直すべきじゃないか。何が危険校舎だ。あの長野の地震の際にも、あるいはこの間のあれでも、みんな木造の方がむしろ人畜に無害で、コンクリートの方がみんなやられてしまったということがあるわけですから、したがって総理、僕は後で取り上げるので、この名刺をちょっと見てください。——これは秋田杉を宣伝するわけではございませんので、にんべんに木と書いて、休むと書いて私は配っておるのです。  この間、静岡県でしたか、安西小学校ですか、内装を木造にして、したがって味も、帰り際に先生さようならと言う際にふき掃除して帰るという、こういうちょうど皆さんが教わったあれをやっておるというので、合わんさと全国から見学に来ておるというのを私は読んだのですが、その辺のあれも、私は去年この場で取り上げまして、文部省がいち早く、今回の予算を見ると、これはかなり文部省の目玉でないかなと思うくらい木造校舎の予算が出ておるのですが、文部省、その辺どうですか。これで終わりますが。
  176. 海部俊樹

    ○海部国務大臣 お尋ねのように、木材という素材の持っております感触のやわらかさとか温かさ、そういったものは、人間の心を和ませるものでありまして、この部屋の内装もかなり木材が使ってありますし、ただいま御指摘のように、私も農林大臣から木のかばんをもらって使っておりますけれども、やはり木材によって潤いと心の和らぎを与えるように。教育施設にできるだけ木材を使えという先生の御指摘は、文部省もかねてから大切に受けとめてまいりまして、昭和五十九年からですが、床張りとか天井とかいろいろなところに木材を使うときは、補助単価を特別にがさ上げをして木材使用の推進をいたし、私の記憶ではたしか昭和六十年度に、約五百の学校で既にそれを行いました。昭和六十一年度はさらにもう一歩進めて、もちろん建築基準法の許す範囲内でありますが、教育施設を木造でつくることを考えたらどうか、木造の建物で教育をすることができるようにしたらどうか、このことも既に予算措置を講じて進めておるところでございますが、これからも積極的に教育施設に木材を使えという先生の御指摘は、文部省もこれは前向きに受けとめて、既にいろいろな施策を続けておりますので、どうぞお見守りをいただきたいと思います。
  177. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それじゃ、それほどまでの抱負と決意を持っていながら、この予算に林業というものにどのぐらい力を入れておるか。口では総理はいろいろ言いますよ。しかし、やはり数字でどのぐらいのあれがあらわれておるかということを後で申し上げます。  そこで、通告した質問を順次していきたいと思うのですが、実は私の質問は予定はあしたなんですよ。ところが、この時間帯に私の方の委員が国鉄問題を、二時間国鉄問題だけでさらに専門的に田邊書記長の質疑応答を受けて詰めていくという、社会党も国鉄問題に非常に真剣に対処しようとしておったのですが、参考人の関係で、一番至近距離にある川俣が一日繰り上げてやってくれぬか。人のいい川俣なもんだから、何とか一時間五十分を十分足してやるから、そのうち一杯飲ましてやるからというような話もあったのですが、あの手この手とついに口説かれまして、実は私も資料をうんと集めて、浜幸先生に負けないようなパネルもつくろうとしたのですが、ついに秋田からの資料も間に合わないで、非常に残念なんです。  ただ、私はここで、官房長官にちょっと聞いておきたいと思うのですが、この国鉄問題、国鉄国会というのは、与党も野党も関係なく、政府も取り組もうとしているときに、十日前から理事会に党で通告しており、バッターが決まっておったわけですから、それは国会が延びたんだから、延びたといったって、皆さん御承知のように、延びた理由はその参考人の関係で延びた、そうでしょう。だとすれば、私は、株式会社の用事があるからきょうは行けないという言い方は、国会で合意を得た人事でしょう、特別の国家公務員でしょう、しかも辞令をもらっているのでしょう、受けたし、やったでしょう。そうすると、国鉄に取り組むという監理委員会の態度がどうしても私らは理解できないので、その辺はやはりちょっと私も不思議に思ったのだけれども、官房長官、これはどう我々は理解したらいいのでしょうか。それとも、この程度でいいのだろうか、国鉄問題は。
  178. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 本日のこの予算委員会の審議に亀井委員長が出席ができなかったということにつきましては、御寛恕くださいまするように私からもお願いを申し上げたいと思います。  亀井委員長は、御案内のように、大変忙しい本業がおありになるわけでございますけれども、国鉄改革という大変重要な仕事に今日まで熱情を傾けてきておられる方でございます。したがいまして、そういう立場から国会の審議等には、従来からもできる限りの差し繰りをして出席していただいていることも事実なんでございます。ただ今回は、作業の関係でどうしてもきょう出席できないということで、審議の順序までこうして変更したといったようなことでございますから、亀井さん御自身も、大変その点は心苦しく思っていらっしゃるわけでございます。しかし、そういう事情をひとつ御理解をしていただきたい。亀井さん御自身は、この国会が国鉄審議の非常に重要な国会であるということは、百も御承知でございますし、私の方からも、従来にも増してこの国会が大変重要だということで、ぜひひとつ今後とも一層お差し繰りを願って、国会の審議にお呼び出しがあれば参考人として出てくださるようにお願いを申し上げたいと思います。本日のことはひとつぜひ御寛恕を願いたい、かように思うわけでございます。
  179. 川俣健二郎

    ○川俣委員 御寛恕願いたいと言われると、私もまた仏心が出ないわけじゃないのだが、ただ、国鉄国会というのに国鉄に取り組む姿勢はこの程度なのか、監理委員会というのはこの程度なのか、また、それをなるべく出ていただくようにお願いしますという程度の合意人事だったんだろうかなと思ったわけであります。しかも、この国鉄法案は将来どのように与野党が話し合って決まるかどうかわからないが、やはり一々外に向かって、ああいう場面で中断したのだから、党利党略で野党がとめたとかなんとかいうことをテレビに向かって言うということ自体が、国鉄の法案を本当に真剣に考えている亀井委員長だろうかと思って、あえて言いましたので、その辺も、非常に徳のある官房長官ですから、篤とその辺をお話し願えれば、今後非常にありがたいと思うわけです。  先に進みたいと思います。  そこで、円高問題です。円高、これはつくられた円高ですが、まず、一応この円高で苦しんでいる国民から言わせれば、これは国際で、我々我慢しなければならぬな、安倍外務大臣が交渉しやすいんだろうからねと、こういうこともあるだろうが、外務大臣、このぐらい急激に円が上がって、やはり交渉には非常にぐあいはいいですかな、どうですか。
  180. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 円高によって、効果はやはりこれからちょっと先になると思いますが、それはそれなりに貿易摩擦の解消には一つの大きな要素になる。これはアメリカもこれを認めておりますし、日本の場合もそうです。国内的にはいろいろと反響、影響はありますけれども、対外的には円高というのは、やはりそうした貿易摩擦とか、それを鎮静化する一つの大きな要因だろうと私は思っております。
  181. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それで、資料が一日違いで、雪の秋田とうまく連絡がつかないで、一日おくれの新聞を見るしかないのですが、「四月末に会社解散十条パルプ」、これは関連会社その他を入れると千人ぐらい、秋田県で。会社解散という通告を受けて「円高響く」という、これは秋田の魁新聞の見出しの大きなあれなんで、ぜひ理解してもらいたいのです。そうして、動揺しておる地元、しかも地元の高田市長さんというのですが、この方が早速、十条の本社、十条製紙に来て、何とかならないかというようなこともあって、この辺の労働問題も含めて、これからいろいろとあろうと思うのですが、さっき話をしたように、一般質問等でまたこの問題を取り上げさせてもらいたいと思います。一応あれしておきます。  そこで、もう一つの例を出して申し上げますが、この急激にやってきた円高で全国的に苦しんでいる産業に非鉄金属鉱業、メタルマインですね、これがあるわけでございます。私の方もきのう、おととい、明延という兵庫県にある金属鉱山を調査に行った際に、やはり鉱山というのは一企業だけではなくて、運命共同体というか、学校も役場も警察も消防もと言いたいのですが、そういうものは全部だめになるのです、これが火が消えてしまうと。そういうことで、非常に手を差し伸べてもらいたい、こういうことです。  しかし背に腹はかえられない。例えば大蔵大臣の島根の都茂という鉱山も、閉山を労働組合に通告した。秋田の古遠部を初めとして、例の有名な岐阜の神岡、それから北海道の上国、鹿児島の串木野と、十七の合理化案がばっと一遍に出た。それはやはり背に腹はかえられないという経営のあれはわかるにしても、こういうようなことはどうしてこう出るのだろうかということで、エネルギー庁の方でいろいろと対策は考え、大蔵省にも当たっておるし、業界ともその対策に苦慮しておるわけです。  今皆さんにお配りした、一ドル一円上がると金属鉱山全体でどういう結果になるかという影響の数字をもって、今エネルギー庁にちょっと説明してもらおうと思うのですけれども、説明してくれませんか。
  182. 野々内隆

    ○野々内政府委員 この表の数字一つ一つをまだ突き合わせいたしておりませんが、考え方といたしまして、大体一ドル一円変動いたしますと国内鉱山及び製錬業に十億円の影響が出るというのが私どもの感触でございまして、多分この数字とほぼ近いのではないかと思います。これは、国内鉱並びに製錬の加工賃が海外のドル建て相場と写真相場になっておりまして、したがいまして海外の相場が動き、あるいは為替レートが動きますとそのまま換算されて国内の価格に響くということで、為替レートの動きに連動して動くということでございます。
  183. 川俣健二郎

    ○川俣委員 結局、このように一円で年間約十億違う。これが始まったのは十月末だったのですが、二百四十何円、やがて今二百円切って百九十七、八円。そうすると、十億ですから四十円にして四百億、このままいくと四百億が減収になる。  そうすると、長官もう一遍、国内の金属鉱山と製錬と、両方合わせると年間どのくらいの収益になっていますか。
  184. 野々内隆

    ○野々内政府委員 先生のおつくりになりました資料の十億円というのがそれに該当するかと思われますので、二百円ということであれば二千億円になると思います。ただ、これは輸入鉱石の値段は入っておりません。
  185. 川俣健二郎

    ○川俣委員 長官、もう少し説明してください。私の質問は、国内の鉱山と製錬所でどのくらいの減収になるか。そうすると去年の利益がどのくらいだったかということもあわせてやらないと、こんなのは説明にならない。
  186. 野々内隆

    ○野々内政府委員 国内鉱山の売り上げが、ここへいただきました資料で約三億五千万ドルあるわけでございますから、これが一円動きますと三億円の動きになります。それから輸入鉱を製錬いたしますのが、お配りいただきました資料の六億ドルに見合うわけでございます。  それで、ちょっとまだ六十年度は決算が出ておりませんが、五十九年度の決算で非鉄の大手八社が四百億のプラス、これは実は鉱山、製錬よりもむしろそれを加工した部分で利益を得ておりますが、中小鉱山では既に四億の赤字が出ております。したがいまして、この四億の赤字に今計算をいたしましたもし四十円なら四百億、五十円なら五百億の収入減がオンされる、こういうことになろうかと思います。
  187. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうなると通産大臣、まず金属鉱山のあれが全部パア、四百億全部飛んじゃう。もちろん法人税はゼロになる。納めようがない。さらに、さっき話したように、地域経済で労働問題も出てくる。そうなると通産大臣、これからどうこれに対処するという考え方ですか。
  188. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 ただいま御指摘がありましたように、非常に国際相場に敏感でございますから、今言ったような減収になるということは避けられない事実だと思います。しかしながら、この国内鉱山は国民経済的には非常に安定的な供給源でもありますし、技術の蓄積の場である。その地域の経済の核にもなっているというようなこともございまして、これらにつきましては、政府といたしましても融資その他でできるだけのことはやっていきたい、そのように考えております。しかし、しょせんはこれは私企業でございますから、一層の経営努力というものも払っていただきたい、かように思っております。
  189. 川俣健二郎

    ○川俣委員 経営の努力はもうないよ。これ以上合理化したら所長一人になってしまう、鉱山で言えば。さりとて、それじゃ資源小国だから国内資源はないだろう。ところが、探鉱によっては出てくるわけでしょう。皆さん御承知の九州鹿児島ですか、菱刈金山、それから近くは温州というのですか、秋田と青森の間に出てくる。さらに深海資源、今通産省でやっているのですが、引き揚げようと思ったら熱水鉱床が発見されたでしょう。それからきょうの新聞にいみじくもNHKのキャスターが、希少金属の輸出問題で、とめられたら日本が大変だということで、かなり地元では波紋を起こしているようですが、この問題は別として、レアメタルというものを今どしどし開発しているわけでしょう。さらに加えて休廃止鉱山をやったところで、今度は坑水処理というのは永久に続くわけでしょう、法律は。それから、じん肺の賠償問題があるわけでしょう。  こうなると、これからどうやって考えるかということになると、大蔵大臣、何か抜本的に考えていかなければいかぬと私は思うのですが、どうでしょうかね。
  190. 野々内隆

    ○野々内政府委員 確かに国内鉱山は大変重要な鉱物資源の提供場所であると同時に、また技術を温存し、あるいは地域経済に対して大変大きな効果を持っております。  現在、この鉱山につきましては三つの施策を中心に展開いたしておりまして、一つは経営安定化のための低利融資でございまして、特に昨年の円高に際しまして急遽年末に予算の支出をお願いして、現在六十一年度の利子補給財源の確保を図っておるところでございます。また三段階の探鉱予算、これをお願いいたしまして、何とか新たな鉱脈を見つけるという形で鉱山の発展を図りたい。もう一つは、減耗控除制度というものの期限が切れておりますのを、六十一年度より三年間延長をお願いいたしまして鉱山の存続を図りたい、かように考えておりますが、今後情勢の推移を見ながら適切な対応を図ってまいりたい、かように考えております。
  191. 川俣健二郎

    ○川俣委員 エネ庁の長官が対策を考えたって限度はあるんだ、これ以上できないんだから。  大体大蔵大臣、今回の円高というのは、正直に言って、G5で人為的につくられたものなんでしょう。人為的なものなんでしょう。そうすると、この円高を政府が誘導して定着させることになれば、先ほど述べたような大変な、国内資源の供給母体であり、地域経済、雇用の中核である鉱山は直接の打撃をこうむることは当然でしょう。そうなると、例えばさっき話したように高品位で埋蔵量が多い鉱山を維持するためには、今回のような異常な、急激な、ある程度の価格が低落したときだけに限ってコストをカバーできるような何らかの補給金制度とかあるわけですから、過去もあったわけですから、そういうものを考えるとか、あるいは休廃止鉱山の坑水処理を何らか考えていこうじゃないか、そういうものを財政当局から提案があっていいんじゃないでしょうか。  あるいはまた、通産大臣に言ってもいいが、鉱山の製錬というのは、亜鉛というのは七〇%が電力代ですね。電気の缶詰だと言われる。亜鉛というのは七〇%が電気代なんです。  何となく円高でまだ兆候があらわれないと外務大臣が言うけれども、これはよかれと思ってやったことだし、またよかったと思うのです、皆さん方のアイデアは。だけれども、その陰に隠れて苦しんでいる産業というか人々に対する対策を全然考えないで、いつまで、どのぐらいまで上がるだろうかなと言って高みの見物じゃ、ちょっと問題だと思いますよ。  これは金属鉱山だけじゃない。僕はこの目で見てきたけれども、大阪、皆さん大阪を御存じでしょう。あそこの大阪というのは中小企業の都というか、魔法瓶、ジャーなんか八割が大阪だという。バックミラーが七割。それから水中ポンプが八割。こういうところの人力にしてみれば、自分たちがつくったこの円高に対する政府の手だてが一切ない、これでは私は、円高になったから摩擦もちょっと、あるいは外交交渉もやりやすくなったというだけではこれはおさまらないと思うのですよ、国民としては。その辺どうですか、財政当局。大蔵大臣、何かあるでしょう。
  192. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今の円高基調の定着というのは、人為的なものであるかどうかということになりますと、いろいろな見方はあろうかと思います。いかにせよ、市場の自主性において結果的には、最終的には決まるものでございます。しかし、私どもが集まりまして、いわば経済のファンダメンタルズを正確に反映していないという認識の上に立って将来共同して行動をとることがあり得る、こういう申し合わせがきっかけになりまして今の円高定着ということになっております。だから、人為的であるかどうかという議論はいろいろあろうかと思うのでございます。  しかしながら、急速な円高というものが国内産業、なかんずく中小企業、輸出関連事業に影響を与える。しかし一方また、原材料がいずれ安くなるでありましょう。そういう円高メリットというものもございますので、やはり急場の際行う施策とされましては、先般通産省がおとりになりました十二月二日からの特別融資、あるいはその後の金利下げ、あるいは今国会に提案されておる法律案、こういうようなものが対策としてあり得ることではなかろうかと思います。  ただ、私自身も現業官庁として対応しておるわけではございませんが、絶えず本当に詳細な目配りと申しますか、それはしていなきゃならぬ課題だというふうに考えておるところであります。したがって、私の分野でいいますならば、金融面等についての指導は十分心得ていなければならない課題だというふうに考えております。
  193. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それは人為的かどうか、そんな論争なんかしたって——しかし、国民はみんな日本の竹下さんが上げたんだと思っていますよ。次の総理大臣になるかどうかは別として、竹下さんにやられたと思っています。やってくれた人はそれは人為的かどうか知らぬけれども、それじゃ、これだけ上がってよかったと思っているのか、それとも御自分はびっくりして火の消しようがないと思っているのか、その辺を聞きたくなる。時間がないけれども、どうですか。そんな言い方ないだろう。
  194. 竹下登

    ○竹下国務大臣 確かに通貨に対する影響力というのは、アメリカ日本が、そして西ドイツ、フランス、イギリス、こういうような国があろうかと思うのでございます。  今の心境ということを問われますならば、いわゆるマーケットメカニズム至上主義でございますから、私自身の物の考え方は、正しいファンダメンタルズが反映されておるものであるというふうに私は今の状態は見ております。
  195. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これは、円高法案で私の方の対案も出していますからいずれ詰められると思うが、総理以下全部並んでいるのはこの総括予算委員会しかないので、もう一つこの場で聞いておきたいのです。  さっき話したように、例えば亜鉛をつくるのに亜鉛製錬費の七割が電気代だ、電気の缶詰だとよく言われるわけだが、通産大臣は、円高によるむしろ収入増の産業のあれをどうするかということは、いろいろなところでいろいろなことを言うようですが、この金属製錬の問題に対してはどう思っていますか。認識ありますかね。この電力代ということについて何ぼか考えますか。
  196. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 かねて答弁をしていますように、現在のところどういうようにするかということは白紙であります。しかし、円高が定着し、それから為替レートがどの辺に落ちつくか、こういうのを見た上で、いろいろな御意見が今国会等でも皆さんから出ると思います。そういうような御意見を踏まえまして、ある時点で、どういうようにするのが一番いいかということを結論を出していきたい、そう思っております。
  197. 川俣健二郎

    ○川俣委員 いずれこの予算委員会が終わればすぐ法案審議に入るとは思いますが、さっきお話ししたように、もう十七の閉山あるいは合理化案が出ているわけだが、つぶしちゃったら終わりよ、鉱山なんというのは物の本に書いてない技術だから。だから海外でも日本の鉱山技術を欲しがるわけでしょう。深海だって、あれは技術があればこそ二千メーターも下の熱水鉱床が発見されているわけですからね。だからその辺も、政治家なんですから、その時期が来たらということじゃなくて、時期が待てない産業もあるんだということを篤とこの際申し上げておきます。お願いしますよ。  それから、さっき話をした林業というか、木材問題、ちょっと飛ぶようでございますが、これに入らせてもらいたいと思います。  この問題は何回となくこの場で私も取り上げさせてもらいましたが、もう一遍この辺で復習する意味で読んでみますけれども、消え行く森林、緑を守り育てる運動が地球的規模で展開されてまいりました。どのくらいか。日本の山林の面積は二千五百万ヘクタール。これの四分の三、二千万ヘクタールが毎年のように消失していっています。我が国の森林・林業も、民有林における里山薪炭林の放置、間伐や保育の大幅な手おくれ、そして国有林では年々強まる借入金、それから利払い、これが増加して、その圧迫によって、この森林力の後退などかつてない深刻な危機的な状況を迎えている。これは私はそう思っていますけれども、そのうち農林大臣、あなたの意見も聞きます。言うまでもなく森林は、林野庁がいつか発表したように、緑の効用二十五兆円に明らかなように、社会資本の性格を強く持っております。日本国民の生存に欠かせないものである以上、これは総理大臣が何回も緑、緑とこの予算委員会でおっしゃった。私が取り上げた途端に、緑を大事にしましょうと言い出した。森林の林業、緑の再建、活性化を図ることは、緊急の国民的課題だと私も思うのであります。とりわけ林政審も言うように、この緑の問題は一担当省だけではなくて、国挙げて、政府挙げて取り組むべきだ、こういうことも林政審で言われたこともこの前申し上げたのであります。  ところが、この国有林事業の問題は、皆さん先輩の人力、御存じだと思うのですが、かつては黒黒と山林の利益が出ておったころは一般会計であった。酒やたばこに次ぐ税の稼ぎ頭であった。ところが、戦前戦後の乱伐、過伐、手だてのおくれ等から見て、だんだんに危なくなって収支じりがとんとんになりつつある際に特別会計にされた。自分で木を切って売って暮らせという特別会計制度に持っていかれた。この辺を考える場合、私は諸外国の特別会計というあれを見てまいりました、国有林というものを。ところが、皆さん方がよく口で言うように、山林というのは水の涵養、緑の供給、国土の保全、こういうように切って売って暮らせという以外の公益的機能というのがあるのじゃないのか。これも確認された。ところが、これが、この問題が非常におくれているというところに私は問題があるのだろうと思います。  そこで、皆さん方に今、半ペラをまた見ていただきたいのでございますが、国有林と民有林と比較して民有林が多過ぎるではないかというのではなくて、公益的機能を果たしておる国有林の政府の財政の措置というものはどうなっておるのだろうか、こういうので私は私なりにつくってみました。これは違っておったら専門官庁が言ってくださいよ。  例えば、今この審議しておる予算を見ますと、一般会計からの助成、これを見ます。民有林の場合は来年度は一般会計からの助成が三千百三十五億です。ところが、国有林の場合は三百五十八億です。約一割ちょっとです。それからさらに、今まで借りできたものの残高が、六十年度末債務残高が、予算ベースですが一兆三千三百五十億です。片っ方は七千五百三十二億。これはなぜこのくらいの半分もあるのかと思うのでしょうが、次の償還の期限と利子が違うわけですよ。例えば、この貸付条件のところを見てください。国有林の場合は六・八、民有林の場合は三・五%、財政投融資からの貸付利子が。それから償還期限が、二十五年以内が国有林、民有林は三十五年以内。据え置きは、国有林は五年以内。五年しか据え置きしない。ところが、民有林は二十年据え置きしている。これはそうでしょう。これは間違いないかしら。私はそういうようにしてワープロでつくってきたんだけれども、どうですか。間違いありますか。
  198. 田中恒寿

    田中(恒)政府委員 ただいまいただきました資料にございます条件は、このとおりでございます。
  199. 川俣健二郎

    ○川俣委員 もう余りくどくど、時間がありませんからあれですが、結局こういうことですよ。くどいようですが、民有林の三千百三十五億に対して三百五十八億、利子が民有林の三・五%に対して六・八%、据置期間が二十年に対して国有林は五年以内だ。ところが、民有林の方は公益的機能を果たすということの義務がないのです。民有林の方はない。国有林の場合は、さっき話ししたように、それ、水が大変だ、山が崩れる、それ、酸素の供給だ、こういうように言われるわけでしょう。  したがって、私は、いつからこういうような制度が——制度というか方針が崩れたんだろうかと思うのですが、結局保続生産体制というのですか、専門用語でしょうが、よく保続生産体制、いわゆる切った分だけ片っ方で育つという体制でなければ山林というのはいかないですよ、これは切った分だけ次に育つということでなければ。ところが今はどんどん切って何とか自分たちでやっていけ。ところが水の涵養、国土保全、緑の供給、これは全部切ったものの中で出しなさいといったって無理なんだろうと思うのですが、この辺はどうですか、大蔵大臣、無理だと思いますか。財政当局としてどうです。もっと工夫すればいいですか。
  200. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは私がお答えする性格ではないかもしれませんが、今おっしゃる論理の中で、例えば七十年輪伐計画を立てていけば永遠に成り立つとかいうようなことを幼少のころに教わったことがございます。
  201. 川俣健二郎

    ○川俣委員 あなたはこの前のこの委員会で森林の持つ意義は緑のダムだ、私もああこれはいいことを言うなと思いました。森林の持つ意義は緑のダムだ。ところが、例えば昭和六十年度末の借入金残高は一兆三千三百五十億、六十一年の元利償還は、総予算は五千六百億ですから、その二八・九%、約三〇%弱の千六百二十八億円が借金の返済に充てられる。大蔵大臣の言われる緑のダム費というのは、これはわずか九十四億円なんです。だから、私の試算では六百億円以上の繰り入れがあってしかるべきなんです。これがわずか九十四億円なんです。だから私は、これは今早急に大蔵大臣に、農林大臣が一言も言わないのに積極的におれからというわけにいかないと言うのですが、しかし今までのことを、ずっと毎年毎年六百億円の公益的費用を負担してきたんだということだけは私の試算でできる。試算してみたんだ。ところが、特別会計制度発足以来三十八年ですから、これざっと足すと二兆二千八百億円も負担をしてきたのではないか、こういうように大まかな計算ができる。  したがって、今大蔵大臣がおっしゃった昭和七十二年の財政再建と、こう言うのですが、借入金の償還と利子負担は余りにも重荷なんです、余りにも重荷。しかも、臨調路線で営林署の一割統廃合ということで、中川一郎元大臣、亡くなったんですが、ずっとやってきて、労使挙げてその廃止の問題で、労使がもうそれにつきっきりというか振り回されるというか、まだ十も残っている。だけれども、閣議決定だと言うから。しかし、あなたのおっしゃる七十二年になれば何でもないじゃないかと言うけれども、それまでに手だてをしてないからだめですよ。これは、大蔵大臣の財政再建、いわゆる公債費の償還の財政再建は虚構だときのう論議があったんだけれども、よく似ている。これは無理だよ。このままでは無理だと思います。民有林が三千億円、片方は三百億の一般会計からの補給だけで、山を守りなさい、緑を守りなさい、国土を保全しなさい、水を多く出しなさいということでやっていくというのは無理だと思います。  農林大臣にちょっと聞きますけれども、一体このままで七十二年からよくなりますと自信を持っていますか、あなた。どうです、農林大臣。
  202. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 お答え申し上げます。  川俣委員は、もうこの面について毎年それこそ御議論をなさって、よく御案内のとおりであります。  確かに、国有林の持つ公益的な機能、これを十分果たすために国有林というものが健全でなければならないということであります。そういう意味で、国有林が今抱える大変累積された借り入れ、こういったものを少しでも少なくしていかなければいけない、そして何とか私どもが計画いたしますように七十二年までに改善していきたいということで、保安林の造林、幹線道路、こういったものの開設については民有林の補助に準拠してやっておりますし、また国有林野の治山事業、こういったものについてはすべて一般会計の負担による、こういったことを進めながら、何とか七十二年までにひとつ改善をしていきたいということで新改善計画、こういったものを今進めておるところであります。そういう中で、今御指摘がありましたように、厳しい合理化等も進めていかなければならない、かように考えております。
  203. 川俣健二郎

    ○川俣委員 合理化、これ以上合理化すると水かれちゃうんだよね。水の方は待ってないんだ、かれるのが。だから大蔵大臣がよく御存じの七十二年再建を軌道に乗せるためにも、やはり造林費の償還方法について、民有林並みとか——外国のまねせいと言っているんじゃないんだから、片方の山林、民有林と同じぐらいの扱いをするというぐらいの積極政策があったっていいんじゃないだろうか、大蔵大臣、そう思うのですけれども、それは無理ですかね。私はむちゃだろうか。
  204. 竹下登

    ○竹下国務大臣 たまたま私が林業関係に従来携わっておりましたので、幾ばくかの知識を持っておりましたが、やはりお答えする立場には今なかろうかと思います。  ただ、私があえて緑のダムとか言っておりました昨年、川俣さんの御質疑にお答えいたしましたのは、私が昔、建設大臣をしておりますときに、日本はなぜ下水道がおくれておるかということを調査したら、倍雨が降って、そしてみんな急流である。したがって、汚物が日本海と太平洋に巧みに流された。だからその必要の度合いが昔薄かった。それにもかかわらずフランスは百年前からジャン・バルジャンが下水道へ逃げたのは、あれは緩やかだったから必要に応じてできておったんだ、こんな説明を聞いたことがあります。それを逆にとって考えれば、雨が面積当たり他の国の倍降って、そして川が急流であるということは災害を起こす要因になる。したがって、森というものはいわば緑のダムであるという意識転換をすべきであるということをお答えをしたことがございます。  ただ、国有林の改善計画につきましては、今農林水産省、林野庁等においていろいろな知恵をお出しになっておるように承っておりますので、現段階において、かなり実際からいいますと、臨調答申にも少し延ばしたらどうだかというようなことが指摘がありました、それに基づいての施策が行われておるわけでございますので、今の場合私はかなり期間等は優遇されたとでも申しましょうか、かなり考慮された配慮になっておるものではなかろうかというふうに理解をいたしております。
  205. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それはこっちが理解できないんだな。いいですか。それは確かに林政審の答申で少しは延ばしたけれども、償還期限を三十五年の民有林に近づかせて二十五年になった。据え置きが二十年が民有林で国有林が五年なんだよ。だからもう少し財政当局は手をかさないと、せっかく新進気鋭の農政通の羽田大臣がこれから——これにやはり財政当局が若干手をかさないと、この表が一目瞭然だと思うのですがね。十分の一の一般会計からの補助、それから利子が半分、逆に言うと民有林の倍です。それから償還期限が何と四分の一だ。こういう表を見せられて、財政当局がもう少し手をかさなければいかぬと思うのですがね。どうです大蔵大臣、これは。これはきょうじゅうに決めようというのじゃないのだけれども、まだ一カ月か四十日予算が成立する——成立というか、衆議院通過するまで四十日ぐらいあるとは思うが、ひとつその辺どうです。
  206. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 川俣委員の気持ちはよく私ども理解いたしますし、実は昨年暮れも、御案内のとおり例の水源税構想なんというものを打ち出しまして、水源地のあれを涵養するために特別に何か財源を考えなければいけないんじゃないか、いろいろなことを実は考えたところであります。  ただ、今民有林と国有林との比較をなされながらお話があったわけでありますけれども、国有林野、御案内のとおり国土面積の二〇%も擁しておるということもあるし、また森林面積の中でも非常に大きな部分を国有林が持っておるということでありますから、非常に零細な民有林とはやはり差をつけて考えていかなければいけないんじゃないかな。私どもみずからに対してもやはり厳しくしていかなければならない。そういう中で、守らなければならない機能というものを私たちは何とかひとつ守っていきたいというふうに思っております。
  207. 川俣健二郎

    ○川俣委員 何かもう少ししゃべりたいようですがね。これでいいとは言えないだろう、あなた、新進気鋭な農政通の大臣が。だれが考えたってわかるよ。民有林と国有林、片っ方は公益的機能を持っているのが十分の一で。そうでしょう。それは確かにこれでいいとは思ってないだろうけれども、比較してみると随分違うなという感想は持っていますか。どうですか。
  208. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 もう何回もあれしておりますけれども、私どもとしてもこれは十分なものだというふうには理解しておりません。より大きいものが必要であるというふうに思っております。ただ、今も申し上げましたように、民有林と規模が全然違うものでありますから、その辺で我々も効率のいい施業をしていかなければいけないんだというふうにも理解しておることを申し上げたいと思います。
  209. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それじゃこの次の一般質問の際には、この面積比較の単価を申し上げますから、そのときにはひとつまだ四十日くらい成立までにあるわけだから、ぜひそれに乗っていただきたいと思います。いずれにしても、今のままでは水がかれます。多くの人、みんな御存じでしょう、山のないところの選挙区はほとんどないんだから。だから、みんなわかると思うので、その辺、やはりもう少し積極的にともに検討を加えていこうという考え方なんです。それに対して財政当局が、それは農林と川俣だけでやれということじゃだめなんです。そうでしょう。少し知恵をかしてくださいよ。
  210. 竹下登

    ○竹下国務大臣 かすだけの知恵はありませんが、川俣さん、また羽田さんとじっくり相談させていただく姿勢は十分持っております。
  211. 川俣健二郎

    ○川俣委員 どうもあなたは言葉だけ考えて、次のリーダーにはちょっと寂しいものがあるんじゃないかな。もう少し、どんと来い、知恵はかしてやる、ないけれども、そのぐらいは言ってみたらどうですかね。さらにこれは続けてまいりますから。  それから、羽田さんにさらにお伺いしますが、今言われる第三期減反、これは今から何年前ですかね、それこそ中川さんとここで丁々発止やりまして、法律事項か協力を得たいのか、こういうことでございました、福田さんが総理で。いや、これはやはり法律で縛るというわけにはいかない、協力だ。協力だとすれば罰則を加えるのは間違いだよ、ペナルティーの通達が出ているよ、こういう論議にまで発展して、そのペナルティー通達は撤回した。ところがそれだけでは事は済まないんだね。例えば秋田の大潟村のように、協力というのは一つの役場を中心にする、農協を中心にする人脈、しがらみその他を入れて、全部でみんなでやろうとするんですな。ところが、法律的にはこれは協力しなくたっていいんですな。だからいろいろと悶着が起きているわけですよ。逆に、これを抑えようったって抑える法律がない。それは認識していますか、どうです。さらに、これからどうしようというのですか、第三期対策が終わったらこれをこれからどうしようというのか、その辺も聞かしてください。     〔委員長退席、中島(源)委員長代理着席〕
  212. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 ただいま御指摘のありました水田利用再編対策、たしか五十三年の四月から始まっております。そして御指摘のとおり、これを法律でという御議論がありましたけれども、やはり自主的にこのことについてやっていこう、そのために例えば米をほかのものに転作をする、その乖離のあるものについてできるだけ穴を埋めていきましょうということで今日まで進めてきております。ただ、法律に基づいてやっておりません。自主的な運営によってやってきております。しかし結果としては、各農業者の皆さん方もこのまま過剰でいってはいかぬということで、ずっと今日まで、一〇〇%を超える達成率をもって来ておるということを私は承知しております。  そういうものを顧みたときに、やはりその中に非常に苦労があることを私どももよく承知しております。その中で特に大潟村が、残念ながら今協力をされておらない農家がある程度の数あるということで、これについては大変残念に思います。しかし、ほとんどのほかの農家はみんな賛成して協力してくださっておるというものを考えたときに、法律による必要はないというふうに思っております。大潟村については、今県当局も、村当局、こういったところと協力しながらこれを進めておりますので、私どもも支援態勢をとってまいりたい、かように考えております。  なお、この第三期の水田利用再編対策がちょうどことしで、六十一年度で実は終わるわけでございまして、その後どうしたらいいのかという今御質問だったと思いますけれども、この十年間にともかくまず米の消費拡大をしようということで、学校に対しても弁当箱あるいはパン屋さんに学校給食用の米の炊飯器、こんなものまで補助をしたり、あるいは農業団体なんかも協力して進めてまいりました。しかし、残念ながらいまだに消費というものは拡大されず、減退しておるというのが現状であるわけでございます。そういったときに、私どもとして水田利用再編対策というものを今後どうしたらいいのか、今ことしの秋に向けて、秋までに固めようということで省内で鋭意検討中でございます。そして、この十年間といいますか、この実績というものを振り返ってみますと、永年作物等に定着したものなんかも見きわめてみますと、まだ実は全部が全部そうでないということを申し上げざるを得ない。今の水田利用再編対策をやめてしまったらまた米に復してしまうというものがあるんじゃなかろうかと思っております。いずれにいたしましても、この十年間の経緯というもの、そして各地のいろいろな実績、実情というもの、こういうものを見きわめ、また地域の関係者の皆様方と話し合いをしながら、私どもとしてポスト第三期というものについて考えざるを得ないというふうに考えております。
  213. 川俣健二郎

    ○川俣委員 一般には米がだぶついているというか、多過ぎるではないかと言われておるのですけれども、数字を追ってみると、去年の十月末、いわゆる端境期というか米穀年度末、私の調べた数字だと二十一万トンしかなかった。一千万トンの生産、食って二十一万トンしかなかった。あんなに豊作が続いて非常に心配したように見えるが、二十一万トンしかなかったという私の計算なんですけれども、これはどうですか。
  214. 石川弘

    ○石川政府委員 御承知のように、四年間続けて不作が続いてまいりましてぎりぎりの操作をいたしましたので、五十九年は豊作ではございますが、在庫その他が大変減っておりましたので、政府が管理して持っておりました米は端境期に二十万トンでございます。しかし、六十年産がさらに豊作でございまして、順調に在庫積み増しは可能な状態となっております。
  215. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それはまだ時期が来ないから数字は出てないが、一番近い端境期は去年の十月末なんだけれども、二十一万トンで間違いないと言われて私もほっとしましたが、その程度だ。一千万トンつくって食って二十一万トンしか残らなかった。ここ何年間不作だった、こう言うのですけれども、じゃ、ことしはどうなるかというのはまた論議になろうと思いますが、このように皆さんが心配するほど消費が減ってないという数字、でなければこうならないのです。これは言ってもいいのですけれども、こうなっております。  それからもう一つ言いたいのは、私はちょっと国会の中で秘書さん方のアンケートをとってみた。あなたは米をどのぐらいで買っていますか、十キロ五千五百円から六千二百円。そうすると六十キロ三万前後、歩どまりがありますからね。そうなると、消費者の方から見ると、一体食管制度というのはあるんだろうか。まあ米穀通帳はなくなった。ところがこの間、例の農協ですね、食管法を云々するというタブーの歴史が続いた、ところが、前の大臣のときですから去年、財界は食管法廃止を主張した、こっちはそれに対して論陣を張った記事が出てきた。しかし、今度は農協内部で、農協組合長のAは、米が余っているのに食管制度を外したら生産者価格が暴落するのではないか。もう一人の農協組合長は、食管制度で一体何が守られると言うのだろうか、減反も強いられ、弊害のみ目立っている、価格、過剰対策は別に考えられます、こうも言い出してきた。いろいろとあるのですが、結局、食管制度そのものに対する疑問が内部から非常に出てきたということは、これはやはり、はあそうかなというように感じられるのです。  その辺を当然把握というか認識されているだろうが、羽田農林大臣にさらに伺いたいのですが、その辺を外さない程度緩めながら柔軟にという考え方で農政通の羽田さんが持っていくつもりなのか。これは絶対にだめだ。ある人から言えば、やみ米なんかもう自由だよ、今自由米の方がおいしいよ、こういう声も出てくる。それに対して政府が、今度は贈答米なら百キロまでいい、こういう法律もつくってくれる、それならトラックで団地へ持っていけば幾らでも売れる、こういう声も出てきた。ところがその辺が、食管制度を守りながら、さりとて外せばえらいことになる。昭和の食糧恐慌ですか、私らわからぬけれども、ああいうことが出てくるから食管制度をある程度守っていかなければならぬ。しかし、こういうような世の中だから、六千円か五千五百円の米を国会の秘書さん方が買う時代だから余りぎっちりやることもできない。その辺を少し聞かせてくれませんか、ひとつ農政の抱負を。
  216. 羽田孜

    ○羽田国務大臣 お答え申し上げます。  今ございました食管制度の存廃の問題でありますけれども、過去についても御指摘がありましたからくどくは申し上げませんけれども、例のオイルショックがございました。あのときにはいろいろな物価がどんどん高騰したわけでありますけれども、案外国民が平静であった。これはやはり食管法によって米の価格、主食の価格というものが安定しておった、そんなことを実は私は感じたものでございます。そういう意味で、食管法の今果たしている役割の中には、生産者の立場あるいは消費者の立場、双方あれするわけでありますけれども、いずれにしても、米の流通の量というものをやはり的確に把握できておるということ、それからいかなるときにも価格というものは安定している、私はこれは消費者にとっても生産者にとってもいいんじゃないかなというふうに思っております。ですから、前に流通改善、こういったものを昨年の秋でございますがやりまして、集荷から販売、この両方に対して競争原理あるいは消費者のニーズ、こういったものを反映できるようにという改善はいたしたわけでありますけれども、根底そのもの、基幹そのものはやはり私は持っておる方がよろしいというふうに認識をいたしております。
  217. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それで羽田さん、代議士の中にはいろいろな意見は持っておると思います、歴史的にあったんだから。三十年ごろもあったんだ。自由販売論者もいたんだ。これは自民党とか社会党じゃなくて、同じ農政通でありながらいろいろとあったんで、その辺はやはり耳を傾けるというか、ディスカッションの場を置くとか、そういうシンポジウムのあれをやるとかしないと、やはり国民の主食だから、かずのこは高ければ買わなくたって済むのだけれども、この辺が非常にあるので、あなたに今のような決意があれば、なるほどこれは羽田農政というものは大物になるなと思いましたので、ぜひひとつその辺を、督励するわけじゃないが、私は結論的には、いろいろな先輩方の文書を読んでみましたけれども、結局は朝から晩までいつかは世話にならなければならないおまんまというか、総理大臣は何を食べているかわかりませんが、やはり一回か二回は必ず食べる、その証拠が、消費が減って困ったと言う割には千百万トンというのがなくなっているというこの現実をぜひ踏まえていく、私も持っているものだから。しかし意見はいろいろあるよ、財界だって国民なんですから。それから財界と同じ意見を持つ代議士もいるだろうと思います。だから、農村票だけの代議士がどうかという問題じゃないと思うのです。かつては河野一郎さんとか根本先生とか大変その辺の大家もおられましたので、いろいろな意見があるので、ぜひこの点はお願いしておきたいと存じます。  それから一つ、医療というか社会保障に入る前に、こういう論議をしているときに私は非常に心配で心配でかなわぬのは豪雪なんですね。どうやら四十八年、いわゆる四八豪雪に匹敵するぐらいの雪だというのでじゃんじゃん電話が来るのです。国元に奥さん方を置いている先生もいるだろうが、私の家も古い家なものだからつぶれるのじゃないかと思っていつも心配なんで、気象庁を呼んでいると思うのですが、ひとつ、今回のある程度の長期予報というか三カ月のやつが出ていると思うのですけれども、どうなんですか、これは。対策を考えなければいかぬので。
  218. 内田英治

    内田(英)政府委員 お答え申し上げます。  三カ月予報あるいは一カ月予報は出ておりますけれども、今非常に豪雪で問題になっている日本海側の問題を取り上げたいと思います。東北の日本海側、例えば秋田地方あたりから北陸地方に至るところの問題でございますが、現在非常に寒気が日本の相当広い範囲を支配しておりますけれども、この寒波は今後少なくとも一週間は続くだろうと見ております。それで、きょうは七日でございますが、九日以後は雪の降り方がさらに強まるんじゃなかろうか、そういうおそれがある。それから、その後寒さは緩みますけれども、二月下旬にはまた雪が降りやすくなる、こういう予想でございます。それで三月は、寒くなったり暖かくなったりする寒暖の変動が非常に大きい、強い寒の戻りがあるであろう、しかし三月の降雪の量は平年並みであろう、こう予測しております。それでございますので、今後積雪の多い地方では雪雪崩とか融雪、出水などのことがあるかもしれませんので十分な注意が必要であろう、こういうわけでございます。
  219. 川俣健二郎

    ○川俣委員 まあ、権威ある気象庁から篤と聞かせられたのですが、余り心配ない人は居眠りしている大臣もおられるのですが、私らはとてもじゃないけれどもこれが気が気でないのです。豪雪対策というのは各官庁にまたがるのですね。ところが豪雪というのは災害でない、こういうようにくくられている。国土庁が窓口だけれども、国土庁は今のような長期予報、三カ月予報、本当に得がたいお話を聞いたのですが、これはよほど注意せねばいかぬぞという、簡単に言えば。その辺の対策は考えていますか、練っていますか。国土庁どうですか。
  220. 山崎平八郎

    ○山崎国務大臣 ただいまの川俣先生のお話でございますが、特に今回の豪雪に関しまして、政府といたしましては、総理の御命令をいただきまして、災害の起きたのは一月の二十六日でございましたが、翌二十七日には現場に係官を派遣し、二十八日には私が団長となりまして現地視察に向かいました。  特に総理からは、きめ細かい視察をし、対策を誤らないようにというお言葉も賜り、さらに現地、能生町という新潟県下の町でございますが、町長に対してもお見舞いをお言づかりしてお心を休めたわけでございますが、その中で、何と申しましても、十三名の亡くなられた方々の遺霊に対しまして私どもも深く敬弔の意を表してまいりました。なお、おけがされた方々に対しましてもおお見舞いを申し上げました。  そこで、国土庁といたしまして特に、簡単に申し上げますが、今冬は新潟県など豪雪地帯におきましてかなりの大雪がございました。十二月にも断続的に降り、一月も断続的に降り、さらに、先ほど気象庁の御報告のとおり、九日あたりに向けてまた豪雪の襲うおそれがございます。それらのことにつきまして、特に新潟県下能生町におきますところの雪崩災害、これは御承知のように十二月に降って、先ほど申し上げたようにさらに一月に降って、一応それが解けかかっていわゆる氷の層となったところに、また一月の下旬にその上に雪が降りました。そこが滑り面になってアイスバーンという上層部だけの滑り面、これであのような大被害が発生したわけでございます。  政府といたしましては、まず道路交通、それから鉄道運行、これの確保、迅速な災害救助の実施、こういったような応急対策に今努めておるところでございます。今後とも、特に人命の保護を第一義といたしましてさらに防災体制に万全を期し、関係機関と緊密な連携をとりながら、降雪、積雪の状況の推移に即応いたしますことで的確に、対応いたしていきたい、かように考えておる次第でございます。     〔中島(源)委員長代理退席、委員長着席〕
  221. 川俣健二郎

    ○川俣委員 皆さんで長期予報の話も伺ったので、やはり各官庁にまたがる問題ですから、これは想像以上です。九日あたりからもっとひどくなるという予報でもありますので、ぜひこの点は対処するべきだと強く要求しておきます。  それから社会保障というか、医療というか、そういったものを時間の許されるだけ質問してみたいのですが、今のこの政府の予算を見ますと、結局いつか非常に論議された国庫負担の繰り延べ、厚生年金、政管健保の繰り延べ。大騒ぎをした。いつかは返す、返し方を明示しなければだめだ、いや一年たったら考える、こういうことだった。ところが今回も、今回の予算を見ると、厚生年金からは三千四十億、それから政管健保から千三百億出ておる。ところが、この政管健保と厚生年金、これは五十七年から始まった。あれほどやっさもっさやったんだ、国会で法案審議の際に。そんなのは当てにもならないところへ貸せるかということになったのだけれども、いや必ず返すのだ。しかもこれは労使で積み立てた金だからね、幾らか国も出しているけれども。今までの五十七年、これは一々言いませんが、時間ないのでまた読み上げますが、このトータルが一兆五千二百億出た。これは元金だけですよ。  そうなると、この辺で大蔵大臣に聞きたくなるわね。これはどうやって返すんだろう。ある程度めどをつけて、この衆議院の予算委員会中にでも、これは返し方というか、返す期限ぐらいは示してもらってもいいんじゃないかしら。どうだろう。当局でもいいですよ。
  222. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 お話がございました厚生年金の国庫負担調整の問題でございますが、六十一年度予算におきましても一部調整をお願いしているわけでございますが、既に国会に御提案を申し上げております法案にも書いてございますように、この減額分の繰り戻しにつきましては、将来にわたる厚生年金保険事業の財政の安定が損なわれることのないように、この特例期間経過後におきまして、国の財政状況を勘案しつつ必要な措置を講ずるというふうにお願いをしているわけでございまして、私どもの考え方といたしましては、特例公債に依存する財政から一刻も早く脱却をしたいと思っているわけでございますので、この特例公債依存体質を脱却した後にできるだけ速やかに繰り戻しに着手をしたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  223. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、きのう、おとといあたりから論議されておりますが、特例公債から脱却しないうちは返さないということですか。そういう約束だったかな。
  224. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 従来からこの特例措置の期間経過後できるだけ速やかに繰り戻しを始めるように心がけたいというふうに御答弁を申し上げてきたと存じます。私ただいま申し上げました御答弁も、そういった従来の考え方に沿ったものというふうに考えているわけでございます。
  225. 川俣健二郎

    ○川俣委員 答え方をとがめているんじゃないんだよ、局長。答え方をとがめているんじゃなくて、あのころはまだ特例公債から脱却できるというのはもっと——大分今ごろ脱却しつつある方向だったんです。だけれども、今回はもう脱却どころか見込みないのでしょう、はっきり言って。そうすると、じゃいつごろになりますか、めどは。めどぐらい教えてくださいよ。我々生きている間ですか。
  226. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 私ども政府全体といたしましては、六十五年度に特例公債依存体質から脱却をしたいという努力目標を掲げて懸命の努力をしているわけでございますので、現在お尋ねにお答えをするといたしますれば、それは努力目標として六十五年度特例公債依存体質を脱却をする、その後にできるだけ速やかに繰り戻しを始めたい、こういうことになろうかと存じます。
  227. 川俣健二郎

    ○川俣委員 随分あなたも、人から金を借りておいて、そのうちそのうちと言ってもう、これはとてもじゃないけれども、それでは六十五年でもいい、返済期間とか方法ぐらいは出してください。六十五年でもいいよ。
  228. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 先ほど来指答え申し上げておりますとおり、現在提案を申し上げております法律でお願いをしておりますように、特例期間経過後、厚年の財政状況あるいは国の財政状況を勘案をして必要な措置を講ずるということでございますので、現在具体的に、いつからどのようなスケジュールでこの繰り戻しをするというような具体的な返済計画は持ち合わせておりませんので、御提出は差し控えさせていただきたいと存じます。
  229. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これは荒立てたらえらいことになるのですよ。人から金を借りておいて、そのうち何とかなるでしょうというようなことはないでしょう。せめて空メモでもいいよ、こういう気持ちですぐらい出したっていいでしょう。そうでしょう。そのうち何とかなるでしょう、これでは——こういう約束ではなかったんだよ。この法案をつくるときは、こういう議事録ではなかった。今時間がないからそれだけ言っておく、この次やるから。  それから、今回一斉に国立病院の統廃合の話が出たので、この問題を、ちょっとこれだけ聞いておきたいのですが、二百五十三施設のうち四十を統合で減らす、三十四は経営移譲。どこへ経営移譲するかということはまだ計画にはなっていないようだが、希望したって、受け取り手がなければ、あるいは値段が折り合わなければできないわけですから、結局七十四が統廃合。これだけはシンプルに覚えておこうと思う。これは大蔵当局から示唆されたのですか、それとも自分たちでこうやろうという、臨調路線で積極的に出したのですか。
  230. 今井勇

    ○今井国務大臣 お答え申し上げます。  この国立病院・療養所の再編成は、先生御案内のように、行政改革の一環としまして、政府全体として閣議決定のもとに推進をするものでございます。
  231. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そうすると、行政改革なら何をやったっていいわけですか。やはり厚生省として、ここは要らない、ここは統廃合でいい、これは移譲してよろしい、ばっさりやってよろしい、こういうようなものの計画があって、なるべく行政改革の線に沿うように努力するとかというなら折り合いがあるが、いきなり七十四ぽっと出されたからびっくりして、私はびっくりした地元を代表して具体的に言うけれども。
  232. 今井勇

    ○今井国務大臣 大変どうも失礼を申しました。  当然その中には、国立病院・療養所が国立医療機関健ふさわしい、より広域な地域を対象とする高度の専門医療機関、これを担っていくような役割を果たすことができるように、その内容について随分分類をし、研究をいたしましてこの結果をつくったものでございまして、その間には随分私どもも考えましたものでございます。
  233. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それじゃ、やはり具体的に聞いた方がいいわ。  私のところにも国立施設が二つある。二つあるうち一つばっさりやるわけだ。これはどこが違うのだろうかなと思うと、どうも、これだけぐらいの数を統廃合するというのがありきで、後でこう理屈をつけていくのかなと思った。この施設ならよろしい、この施設は残しておかなきゃならないというような理由があって……。  じゃ具体的に、秋田県にちょうど同じようなのが二つあるから、片っ方だけばさっり、片っ方は残す、これはどういうわけですか。一緒にするんじゃないんだよ。片っ方はだれかに移譲したいから欲しい人はいないかという気持ちらしい、片っ方はそのままにしておく、これは理解できないでしょう。
  234. 木戸脩

    ○木戸政府委員 お答えを申します。  国立療養所秋田病院と国立療養所道川病院というのが先生おっしゃるとおりあるわけでございます。国立療養所秋田病院は、現在、重症心身障害者の医療、それから結核、小児慢性疾患等の医療機能を有する病院でございます。一方道川病院は、筋ジストロフィー等の患者、それから結核、脳血管障害等の患者さんが入っているわけでございますが、機能がかなり類似をしてございます。それから道川病院の方は非常に規模が小そうございます。それから距離が約二十キロちょっと、こういうことでございます。それで、現在の国立病院の現状からいたしまして、両病院をそのまま残して機能を強化するというのは極めて困難だというふうに私どもは判断をしたわけでございます。  そこで、先生から今移譲というお話がございましたが、一詳しく申しますと、これは、秋田病院が持っております重症心身障害者の百六十床のベッドと、結核の合併症で非常に長い入院をしておられる方々のベッドを道川病院の方に統合する。だから、秋田の一部の機能と道川を統合する。それから秋田の残余の機能、これは非常に医療機能の連携が図られております小児慢性疾患あるいは脳血管障害、とういったようなものでございますが、こういうものは他の経営主体へ移譲する、こういう意味でございます。
  235. 川俣健二郎

    ○川俣委員 まあ言わんとするのは半分わかったような感じだが、難病、奇病、その他国がやるようなところの方の病院は残す、しかしこちらは違うと。だけれどもそうかな。しかも、残す方が小さい、譲ろうとする方は大きいのです。ちょっと理解できないでしょう。これは逆じゃないかな。その辺はどうです。
  236. 木戸脩

    ○木戸政府委員 道川病院は今百十床でございます。それから秋田の重症心身障害者のベッドは百六十床でございます。結核の方は大体五十ベッドあるわけでございまして、このうち、合併症を持った長期入院の方というのがどのぐらいいわゆる道川の方に統合するかということでございますが、統合後の新しい病院というのは、秋田病院よりは規模が少なくとも同等あるいは大きくなるというふうに見込んでおるわけでございます。
  237. 川俣健二郎

    ○川俣委員 まあ皆さんはわかったかどうかわかりませんが……。  それから問題は、自治体、県とどういうような申し入れというか交渉をしておるかということと、それから今大きな立派な病院、秋田病院という国立病院、これは皆さん、戦争中の昭和十四年ごろですか、やはり陸軍の、不治の病の結核病院という大変なものを、非常にきれいにして近代建築にして、白砂青松というか、土地もまずちょっとない大病院である。あれはだれしも欲しいね。土地は。だれも欲しい。そうすると、これはどうも厚生連、いわゆる農協病院に経営移譲するといううわさが専らなんだが、結果的にうわさどおりになるにしても、厚生連という農協に譲るというのがあったわけですか、最初に。その辺はっきりしておきたいな。
  238. 木戸脩

    ○木戸政府委員 いわゆる移譲先については。現在県当局といろいろ相談をしております。確かに厚生連という話もございます。厚生連からは、移譲の条件が整えば受け入れを考えてもよいという基本的態度だというのは聞いております。しかしながら、やはりその移譲の際の条件がどうなるかという点を県当局あるいは関係者も考えているよ)でございまして、県当局と十分相談をして最終的に決定をしたいと考えておる次第でございます。
  239. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それならうわさどおりとは言えないが、経営移譲が先にあって条件はどうあれ譲るということになると、国鉄の土地問題じゃないけれども大変な問題を含んでいるような気がするので、あえてこれを念を押しました。  それから、あそこは本荘市というところですが、やはり診療圏というか、おのずからお世話になる範囲というのはあると思うのです。この辺の了解というのは得ているんだろうかということと、今働いている人力が一体どうなるんだろうかという、その辺を問いてこの問題はやめます。
  240. 木戸脩

    ○木戸政府委員 再編成計画につきましては、県を通じまして、あるいは最近は直接に本荘市に対して、再編成全体の説明、それから具体的な説明というものをしております。本荘市からは本年一月二十九日、直接市長さんがお見えになりまして、地域医療確保の見地から存続を要望するという御要望が書面をもってございました。その際本荘の市長さんは、職員がどうなるだろうかという心配を大変しているというようなお話がございました。  私どもといたしましては、これは再編成全体の問題でございますが、いわゆる職員が強制的にやめなければならないという事態は避けるという前提に立ちまして、具体的には新しい経営移譲先に行くのか、あるいは道川病院に行くのか、あるいは他の県外の国立病院・療養所に行くのか、いずれも本人の御意思、あるいは新しい医療体制になってからの管理者側というものと十分相談をいたしまして、その辺の御心配のないようにしてまいりたいと考えております。
  241. 川俣健二郎

    ○川俣委員 それでは大臣、最後にこれでこの問題は終わりたいのですが、そうするとこういうことですか。  一応積み重ねて七十四統廃合、四十と三十四ですね。そうして片っ方は、だれか、どなたかにやるあれがあったら移譲したい、片っ方は統合する。できれば難病、奇病なんかを主体に残す。国がやるべき難病、奇病は利益追求ではだめなんだから、そういうものを主体にして残していくということを言っておるようですが、したがって、経営移譲の先もまだ決めているわけではない。労働問題も今言ったとおりだ。そうしますと、一応整備計画という青写真を厚生省が自主的に発表して、これに乗っていろいろと今後十年かかってやっていきたい、こういう考え方でいいですか。
  242. 今井勇

    ○今井国務大臣 お説のように、この計画の実施に当たりましては十分地元の人たちと話し合いまして、そうしてその御了解の中でやってまいりたいというふうに考えておりまして、全体の事業は、お説のとおり十年でやりたい、こう思っております。
  243. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これも専門委員会で論議されることだろうと思いますが、大体アウトラインだけつかんで先に進みたいと思います。  それから、もう二つですが、この政府予算の歳入を見ると、やはり厚生施設関係なものですから聞いておきたいのですが、政府資産の整理収入に千二百九十三億円というのが見込まれておる。これ何だろうかなと思ったら、その中の国有地の売り払い代金が千二百二十三億円、約九五%ですね。いわゆる土地の売り代金です。そうすると、六十一年度にて売却予定の国有地のリストというか、これ千二百二十三億円という、ラウンド数字ではなくきれいに出たのだけれども、これは積み重ねて積算して出た答えですか。だとすれば、時間がありませんから、国会の方に少し見せてもらってもいいのではないか。見せられないものなんですか、予算の内容なものだから。その辺がどうしてもだめだ、見せられない、こういうことであればまた別の考え方があるのだが、一千億とか三千億とか、あるいは何平米売るとか、こういうことではなくて、千二百二十三億円を収入に立てているということは、きのうの国鉄ではないけれども、これはやはり積み重ねて計算したものと思わざるを得ないので、その辺は、今でなくてもいいですけれども、まだ四十日ぐらい予算がかかるとして、その間に見せてもらえるものなのか。どうですか。
  244. 中田一男

    ○中田政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のとおり、六十一年度の一般会計の政府資産整理収入の中で、国有地の売り払い代千二百二十三億円というふうに計上してございますが、これらは年間にしますと大体二万件近い件数の売り払いでございまして、小規模なものが多うございます。したがいまして、一件ごとに積み上げて計算しているというわけではございません。むしろこれまでの国有財産の売り払い収入の実績を見ながら各財務局に仕事の進捗状況をヒアリングいたしまして、それらを踏まえて、新しい年度にまず大体どの程度契約が可能であろうか、契約されたものがすぐ即金で入ってくるわけじゃございませんので、その中で年度内に入ってくるもの、延納になるものはどれくらいの割合であろうかというふうなことを過去の経験から区分けいたしまして計算しておりますので、端数が出てまいりますけれども、決してその内容は一件ごとの国有地の売り払い予定を積み上げたものではないということでございますので、その一件別資料というのはお出しするのは難しいかと存じます。
  245. 川俣健二郎

    ○川俣委員 大蔵大臣、過去の経験で計算してみたと言うけれども、収入を千二百二十三億立てておいて、過去の経験だからメモできないという言い方なんですね。これはオーケーはしませんから、この次にやります。  それから、せっかくきょう委員長のお計らいで最高裁の総務局長山口さんにお出まし願って、今までお待たせして申しわけありませんでしたが、一つだけ、今非常に切迫した問題なものですから、皆さんから見ればささいかもしれないけれども当事者から見ると大変な大きな問題なものですから、あえて障害者の問題で伺っておきたいと思います。  時は一月二十一日、最高裁第三小法廷で開かれた裁判は、全盲の大原隆さん、なぜ全盲になったかというと、四十八年八月に、当時四十四歳、ただしこの方は昨年の夏亡くなられました。そして、国鉄当局に損害賠償をしたという訴訟であります。散大原さんは、国鉄大阪環状線福島駅ホームから転落し、折から進入してきた電車に両足を切断された。大阪地裁、大阪高裁ともに、被告、いわゆる国鉄有罪、特に高裁判決においては、プラットホームにブロックを設けていなかった国鉄側の責任をはっきり具体的に指摘して、有罪判決。  さて、このような訴訟の性格上傍聴希望者がどうしても障害者に多い。これはわかると思います。そこで、一月二十一日初めての法廷。ところが、法廷には車いすは二台に限る、聴覚障害者は四人に限る。そこで、マスコミにも載っておりましたが、当然傍聴者としては大変な憤りを持って、戻ろうかどうしようか、そこですったもんだやって、それでは一応車いすは十台、その他の障害者は全員結構です、このように傍聴券を渡していたおいた。ところが、エレベーターの電源が切れた。これは故意かどうか私はわかりません。傍聴は結局だめになった。それから全盲の方が入っていったら、盲人用の白いステッキを預けろとか聴覚障害者には手話通訳をさせないと言った。こうなるとちょっと、司法オーバーランという話もあるが、この辺をせっかくおいでくだされましたので、私たちの今後の審議の参考に伺っておきたいと思います。少しその辺をいろいろとお話しいただけませんか。
  246. 山口繁

    山口最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  最初に、事実関係の御認識に若干のそごがあるようでございますので、事実関係からまず御説明させていただきます。  当日は、一時前ごろから傍聴券交付所に約六十人の傍聴希望者が集まられたわけでございます。傍聴券につきましては、身体障害者が十三名、車いすを利用しておられました。それから四名の方々が視力障害の方でございまして、白いつえをお持ちになって来ておられたわけでございます。それらの方々を含めまして傍聴希望者が六十名いたわけでございます。私どもの方といたしましては、身体障害者の方々のために傍聴券は十六枚、当日の傍聴席が四十五席でございますので、約三分の一を身体障害者の方々のために用意したわけでございます。それで、二十九枚を一般の傍聴希望者の方々にお配りする、こういう予定を立てました。  それで、十六名の内訳でございますけれども、車いすのまま入廷される方は二名でございます。車いすが非常に重うございまして、小法廷がかなり建物の上の方にございまして、急傾斜の階段を抱えて上がらなければならないものでございますから、車いす一台につき四名の介護の方をおつけしなければならない。そこで、車いすのまま二名がお入りになりますと、八人の方にやはり傍聴券を交付しなければならない、こういうことになるわけでございます。それから聴覚障害者の方々は四名ございまして、そのほかに手話通訳の介護の方がいらっしゃいますので、その方の分として二枚、合計で十六枚になったわけでございます。  車いすを利用されました方々は十三名でございましたので、先着順に二名の方にお配りしたわけでございますが、残りの十一台に乗っておられる方々が、どうして自分たちも車いすのまま入廷させないのかというふうに激しく抗議をなされたわけでございます。そこで、その十一名の方々につきましては、介護者の助けを得られて、あるいは抱えていくとかおぶさって一般傍聴人と同じように傍聴していただきたいということで、一般傍聴人用の傍聴券もお配りしたわけでございます。ところが、車いすのまま入廷される方に引き続いて、ほかの十一台の方々も、おれたちもこのまま入ると言いまして、車いすの方々が入る入構エレベーターの前に殺到されました。そこで、車いすのまま入られる傍聴券をお持ちの方とそうでない方の区別ができないようになりまして、非常に混乱状態になったわけでございますので、エレベーターのスイッチを切らせていただいた、こういう次第でございます。  一般傍聴人と同じように入られた方もいらっしゃるわけでございますが、聴覚障害者の方々は手話通訳の方と同じように法廷に入られたわけでございます。そのときに、視力障害者の方も傍聴席にお座りになったので、白いつえは預からせていただくというふうに申し上げたのですが、これは体の一部だからというふうなお申し出もございましたので、そのままお預けしていたわけでございます。  そのように、車いすの利用者をそのまま入廷させる場合に二名というふうにいたしましたのは、実はその範囲をどう決めるかはそれぞれの裁判長の法廷警察権にゆだねられております。裁判長といたしましては、法廷のスペース、傍聴席の数、それから緊急災害時でございますね、地震、火災等が起こりました場合抱えて避難誘導しなければならないものでございますから、そういう傍聴人の安全保護等を勘案いたしまして、従来から車いすのままお入りになるのは二名に限るというような取り扱いをされていたわけでございます。先ほども申しましたように、それ以外の方は介護人に抱えて入っていただいてお座りいただくことはできるわけでございます。  そういう次第でございまして、建物の構造あるいは一般傍聴人の数との兼ね合い、傍聴席の数との兼ね合い、先ほど申しました傍聴人の安全保護、確保、こういう観点からいたしますと、車いす利用者を二台にとどめるということは必要やむを得ざる措置ではないかというように考えております。恐らく今後もこのような取り扱いをさせていただかざるを得ないのではないかと考えておりますので、ひとつ御理解いただきたいと思います。
  247. 川俣健二郎

    ○川俣委員 大変詳しく話していただきましたが、私の方ももう少し事実関係を調べて後日また承りたいと思います。  あとの問題はまた後日にします。ありがとうございました。
  248. 小渕恵三

    小渕委員長 これにて川俣君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  249. 小渕恵三

    小渕委員長 この際、公聴会の件について御報告申し上げます。  公述人の人選等につきましては、さきに委員長に御一任願っておりましたが、本日の理事会において協議いたしました結果、お手元に配付いたしました名簿のとおり決定いたしましたので、御報告いたします。     —————————————   予算委員会公述人名簿一、意見を聞く問題 昭和六十一年度総予算について ○二月十四日(金)     玉川大学講師       楠山三香男君    法政大学経営学部教授   広岡 治哉君    三菱地所株式会社取締    役会長          中田 乙一君    名古屋市立大学経済学    部教授          松永 嘉夫君    東京海上火災保険株式    会社取締役会長      渡辺 文夫君    福岡県田川市長      滝井 義高君 ○二月十五日(土)     東京大学教養学部教授   佐藤誠三郎君    TKC全国会会長     飯塚  毅君    株式会社東京銀行取締    役頭取          井上  貴君    明治大学商学部教授    山口  孝君    一橋大学経済学部教授   石  弘光君    横浜国立大学経済学部    教授           岸本 重陳君     —————————————
  250. 小渕恵三

    小渕委員長 昨日の松本君の発言中、不適当と思われる言辞がありましたので、速記録を取り調べの上、適当に措置いたします。  次回は、明八日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時九分散会