○嶋崎譲君 私は、
日本社会党・
護憲共同を代表し、ただいま
議題となりました今回の日米首脳会談に関連し、総理並びに関係閣僚に若干の質問をいたします。
現代の国際社会において、首脳同士が胸襟を開いて語り合うこと自体、大きな意義があり、回を重ねることも大切であることは言うまでもありません。しかし、今回の訪米は、東京サミットへの地ならしの課題を持っていたとはいえ、むしろ外交的な必然性より、衆参ダブル選挙、総裁三選に向けての政局の動向をにらんだ演出ではなかったかという疑問は、私一人ではありますまい。(
拍手)首脳外交が単なる一つのショーであってはならないのであります。
ましてや、その際の発言が、
外国向けと国内向けとに使い分けることは断じて許されません。今回の訪米に関する私の質問に対しても、従来と同様、いや先方にそうは言わなかったなど、恐らく内外使い分けの答弁をなさるでしょう。恐らく中曽根総理として、
外国に出かけていっての首脳会談は今回が最後だと思いますが、その最後の舞台であなたの発言は、観客である
国民、特に零細な中小企業者や農民など勤労
国民にとって、
拍手をするどころか、将来における重いツケを背負わされ、不安を拡大させただけなのです。総理、あなたの責任は重大です。
総理、あなたのための私的諮問機関、国際協調のための経済構造調整
研究会が、四月七日、あなたに
報告書を提出されました。そのいわゆる前川リポートなるものは、行政組織上からいってどのような地位にある文章なのですか。単に総理が勉強するための私的文章と見てよいのか、それとも国の一つの政策として価値を持った文章であると見てよいのですか。もし国の政策の基調となる提言とすれば、
我が国は、大統領制でなく、議院
内閣制をとっている関係上、当然、党内、部内、閣内の連絡調整、
意見の一致のための努力を経て政策決定されるべきものであります。しかし、与党議員も知らないうちに、総理の私的
委員会から提言されたものが国の政策に変わっていったということなのでしょうか。これは、議院
内閣制度の根幹にかかわる問題でありますので、経構研
報告の地位について明確なお答えを願います。(
拍手)
総理、あなたは、経構研
報告をアメリカにおいて国際公約されたのですか。これまでの報道によると、総理は、日米首脳会談で、経構研
報告の実行は、百年ぶりの外科手術、党や官僚の抵抗を排して自分の責任でやり抜くと断言、文字どおり国際的公約あるいは確約をしてきたやに伝えられております。総理は、十六日の首相官邸における
政府・与党連絡
会議でレーガン大統領との首脳会談に触れ、経構研
報告は、
我が国の中長期的経済政策の方向として大統領に紹介したにすぎない、アメリカ側に約束したものではないとの見解を表明したと伝えられております。総理は、
日本に帰り、アメリカ大統領に語った経構研
報告の実行の確約の事の重大さに驚き、確約を隠すため、約束でなく中長期的と言ってごまかしているのではないですか。現に、四月八日、発表と同時にアメリカとECに
説明員を派遣しているではありませんか。だから、米国はもちろん、世界各国は、中曽根首相は対米公約をしたと受け取り、外電はすべてそのように報道されているではありませんか。国際公約問題について明確な答弁を求めます。(
拍手)
経構研
報告が米国から高い評価を得たとしても、この提言の
内容は果たして実現できるものなのですか。経構研
報告の問題意識は理解し得るとしても、それは抽象的なきれいごとを羅列しただけで、具体性が全く欠けております。これをどう実現するかの具体的対策がないではありませんか。また、関係省庁の対立一つとっても、実行の可能性のないことを実証していると言えるのではないですか。例えば、去る十三日の日米首脳会談で、日米間の貿易不均衡を是正するための構造調整協議会を設置することが合意されたことに対し、具体的にどのようなテーマで話し合うのか、日米間ではもちろん、
日本の
政府内部ですら十分に煮詰まらず、大蔵、通産は、新協議の場にさえ難色を示していました。関係省庁の対立をどのようにおさめるつもりなのか、この協議会についての大蔵、通産両大臣の御
意見を承りたい。
また、経構研
報告の実現のため日米協議会を設け、
日本経済の構造変革を米国が監視するということになると、
日本への内政干渉にならないのか。そのもとでは、米国の輸出攻勢で、
日本農業は壊滅してしまうのではありませんか。中小企業も、次々と倒産の憂き目にさらされるのではありませんか。総理の御答弁を伺いたいのであります。(
拍手)
報告は、対外不均衡の現状が経常黒字GNP比三%台という危機的状況にあるという認識から出発している。ところで、根本的な問題点は、
日本の大幅な経常黒字の原因は
日本側にあり、この黒字を圧縮するのは
日本経済の責任である、
日本側の行動によってこれを解消しなければならないという認識を、当然の基本的な前提としているように思われます。エコノミストや米国の中には、輸出超過が発生するのは、
日本の貯蓄超過の結果であると論ずる者が少なくありません。この議論を
承認するかのごとく、
報告でも、貯蓄優遇税制の抜本的見直しの項だけが具体的に特記されております。しかし、この議論は全くの誤りであります。今日の
日本の輸出超過は、決して貯蓄超過のため起こったものではありません。もしそういう状況であれば、
日本経済は大変な不況になり、所得は減少し、失業が
増大し、設備過剰が生ずるはずであります。
日本の輸出超過が急激にふえたのは、ここ三年間のことにすぎません。その間、設備投資はふえ、
雇用も実質賃金も少しずつ改善してきたのです。経常収支の大幅黒字を生み出したのは、
日本の貯蓄過剰によるものではなくて、
日本の投資
不足と米国経済の運営の誤りによるものであります。米国のドル高、高金利、その背後にある米国財政の大幅赤字による国債増発が元凶であります。米国の経済運営の誤り、それに基づく米国の異常な輸入超過を不問にして、
日本側だけの行動で事態を正常化しようとするのは無理であります、なぜ米国の財政運営について注文をつけなかったのか。財政赤字の削減について確約もとらずに、国内対策としての経構研
報告を米国側に示せば、一方的に
日本が譲歩したことになるのです。この提言は、
日本の輸出削減、輸入増だけで黒字を減らそうという極めて一方的な、
日本に不利なものと言わざるを得ないのであります。総理の対米発言は重大な過失と言わざるを得ないと思うが、総理の明確な答弁を求めます。(
拍手)
経構研
報告は、財政再建との関係がぼかされています。内需拡大を強調しているが、財政との関係はどうなるのですか。同
報告書は、内需拡大のため、民活を呼び水に財政上のインセンティブが必要としているが、
建設国債の活用には言及を避けています。
政府の言う財政再建と
報告の言う対外不均衡の是正、内需拡大とは両立しがたい課題ではないですか。
報告は、きれいな目標を掲げたのに比べ、これを実現する政策手段には何も触れておりません。全く絵にかいたもちに等しいと思うが、大蔵大臣の答弁を求めます。
次に、新しい市場分野別、MOSS協議をどうするかについてお聞きします。自動車部品、背高コンテナ、ワイン等々、米国は
日本市場への進出に熱心です。このようにして次々と
日本市場の開放へ政治的圧力をかけられたら、
日本産業、特に中小企業は参ってしまうのじゃありませんか。大変なことです。通産大臣の答弁を求めます。
また、
報告を受けて、
政府は、当面の総合経済対策を決定しましたが、この内需拡大効果をどのように判断されているのか、お尋ねします。日米首脳会談で総理は、八日に
政府が決定した総合経済対策で内需を十一兆円、GNP比〇・七%拡大させる効果があるとレーガン大統領に伝えたと言われています。一けた間違っていませんか。ところが、総合経済対策を策定した当の経済企画庁は、驚いてこれを否定したという。一体どれだけ拡大効果があるのですか、総理の答弁を求めます。
次いで、当面する円高の進行についてお尋ねします。
為替相場の安定と今後の円相場をどのように考えておられるのですか。米国からさらに円高を求める外圧がかかっているのではありませんかとさえ考えられます。四月八日、竹下蔵相とベーカー財務長官の会談の後、竹下蔵相が為替相場安定の重要性で認識が一致したと述べたことに対し、ベーカー長官が不快の念を抱き、ローソン英国蔵相がベーカー長官との合意に基づき、もう一段の円高を求める発言を行ったと外電は報じております。米国は、
日本の円をさらに上げようと外圧をかけているのではないですか。円相場の安定のため、もっと積極的な手段をとるべきではありませんか。全く市場に任せて放任するつもりですか。それでは、
日本経済は不安定化するばかりです。この点について総理は首脳会談で何らかの発言をなさいましたか、総理並びに大蔵大臣の見解を求めます。
政府の総合経済対策では、円高不況の克服も内需拡大も実現できないのではないですか。
政府は、秋には景気が円高差益頼みで上向くと楽観的です。しかし、産業界は円高不況におびえています。
民間の銀行や調査機関は、いずれも経済成長率の見通しを下方に
修正し、
政府の言うような実質四%成長を言うものはいません。二%台後半から三%の見通しが大部分です。一方、
日本経済の経常収支は、八六年度八百億ドルも黒字を出すであろうとOECDは推定しています。このような状況の中で
政府は、六十一年度緊縮予算を組み、さらに六十二年度も同じ方針で緊縮予算を編成するつもりであると伝えられていますが、内需拡大の対米公約をどうして実現するのですか、総理並びに大蔵大臣の答弁を求めます。
経構研
報告の中でただ一つ積極的な面、個人消費の拡大、そのための賃上げと所得減税を具体化するために、
昭和六十一年度予算野党
修正要求に盛られた積極財政や二兆円減税、
住宅、社会資本の計画的充実などを直ちに実行に移すべきであると思いますが、総理並びに大蔵大臣の答弁を求めます。
次に、
SDIについてお尋ねします。
最近行われた米国の物理学者に対するアンケートでは、その三分の二が、
SDIは米
国民を守る有効な手段とはならず、軍拡競争をエスカレートさせるだけであると考えていることが明らかになっております。さらに、アメリカの上院歳出
委員会の三人の議員は、
研究は見るべき進展を遂げておらず、
研究が進むにつれて、かえって幾つもの困難に直面しつつあると悲観的な見通しを述べたリポートを公表して、
SDI研究に対する批判は、アメリカ国内でも一層強まっているのが現状であります。
このような中で、総理は、従来の
研究と理解の立場から一歩踏み出す姿勢を示したとの報道がなされておりますが、一体レーガン大統領にどのような発言をなされたのですか。恐らく米国向けの発言は、
日本の
研究参加が近いと期待を抱かせるような発言だったのではなかろうかと推察できるのでありますが、いかがですか。
SDI参加について関係閣僚
会議を設置することを決めたようだが、
SDI参加は、宇宙の利用は
平和目的に限るとする
日本の宇宙
開発の基本政策、非核三
原則の国是とも相入れないことは明白であります。関係閣僚
会議で問題を煮詰めた後に最終態度を決めるそうでありますが、協議した結果、
SDI参加拒否という選択も当然あり得ると思うがどうか、この点明確な答弁を願いたい。(
拍手)
最後に、米国によるリビア爆撃についてお尋ねします。
総理、あなたは日ごろ、ロン・ヤス関係の親密度を誇示しておられますから、当然、レーガン大統領から事前にリビア爆撃の
内容を聞いていたと思っていました。しかし総理、あなたは、十五日には何も聞いていないとしておきながら、十六日には
一般的
説明を受けたというふうに変わりました。十七日になると、ホワイトハウスのスピークス副報道官によって、リビア爆撃を
日本が支持したことが明らかになったのであります。総理がいかに打ち消そうとも、スピークス副報道官によって、
日本は英国に次いで支持したことになってており、そのニュースは全世界を駆けずり回っています。本当にアメリカの行為を支持していないのであれば、スピークス発言に抗議と訂正を申し入れるべきでありませんか。恐らく、あなたはそのようなことはできないと思います。結局、ここでも総理の発言は、客観的に見て、米国向けと国内向けの発言を使い分けているとしか言いようがないではありませんか、御答弁を願います。
私は、国際テロ行為を憎むものであり、撲滅すべきものであると思っております。しかし、戦争行為に等しい爆撃といった報復行為によって、テロ活動が撲滅できるとは到底思えません。アメリカの行為は、
外国の領土を攻撃し、主権を侵害する行為であり、これは国際法等諸
原則に違反するもので、国際的に非難さるべきであると思うが、いかがでしょう。
さらに、もし国際社会からリビアを孤立させるための協力をアメリカから求められた場合、
我が国はいかに対処なさるのか、総理並びに外務大臣の御所見をあわせて伺い、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣中曽根康弘君
登壇〕