○赤羽
政府委員 ただいま御
指摘のように、昨日史上最高値をつけました円は、きょうの寄りつきでは百七十円十銭、こういうことでさらに値上がりをしております。これにつきましては西ドイツが今回の公定歩合の引き下げに追随しない、こういうふうに観測をされておりまして、その関係もありましてドイツ・マルクがさらに高くなるだろう、それとの関係で
日本の円が割安感が出た、ここで投機が出た、こういう見方もあるわけでございます。
過去の経験から申しますと為替レートが急激に動く場合には、ある地点まで行ってまだかなり反落をするという経験もございます。そういったようなこともまた起こってもらえれば、こういう期待もあるわけでありますが、当面はなお円の上げ趨勢と申しますか、上げ機運が強いというのが状況だと思います。
こういう事態に対しましてどういうことにするのかということでありますけれ
ども、四月八日に総合対策というのを打ち出しましたけれ
ども、これなどできるだけ早くかつ着実に実行していくということが私
どもといたしましてはなすべきことだろう、こう思います。
御質問にございました購買力平価でありますけれ
ども、これはいつの時点を基準にして計算をするのか、あるいは購買力平価と申します購買力を消費者物価で
考えるのかあるいは貿易に関係があるということで工業製品の卸売物価で見るのか、こういうことでいろいろ違うと思います。中にはGNPデフレーターというので計算をするというのもございます。
日本の経常収支それから
アメリカの経常収支がほほ均衡しておりました一九八〇年ごろを基準にいたしまして購買力平価を計算すると大体百八十円あるいは百九十円、二百円近い計算ができるわけであります。それに対しまして例えば変動相場制に移行した昭和四十八年の春くらいを基準にしてしかも貿易に関係があるということで卸売物価の工業製品、これで計算をしますとやはり百六十円とか、あるいは今で言いますと百五十円よりも上になるということは百四十円台、こういう計算にもなるわけであります。そういうことで購買力平価というのは余り決め手にならない、こういうふうに
考えておりますけれ
ども、いずれにしても円の先
行きがさらに上がるのではないかという不安感がある、こういう状況のもとで
企業心理、特に輸出関連の中小
企業に対する困難な状況、これが大変に憂慮されるところである、こういうことだと思います。
協調利下げがこういった事態を招いたのではないか、こういうことが一部心配されておりますけれ
ども、本来はこうした円がまた高くなるという事態を避けるという
意味で協調利下げをした。向こうが利下げの必要があると言うものですから
日本側も協調して利下げをした。したがいまして、
アメリカと
日本との相対関係は変わらないはずだったんですけれ
ども、こういうことになった。日銀当局も昨日かなり大規模な介入をされましたけれ
ども、それにもかかわらずきょうまた寄りつきで高くなっている。こういうことから、やはり投機の流れが円を高くする方向に向かっている限り、相当な
努力といってもなかなかすぐには効き目がないのかな、こういう状態ではないかと思います。
いろいろ申し上げましたけれ
ども、結局内需拡大のための総合対策を着実にかつできるだけ早く実行していくということと、
あとは金融当局のそれぞれの御
努力を待つほかないというのが状況かと思います。