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1986-05-21 第104回国会 衆議院 農林水産委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年五月二十一日(水曜日)     午前十時十一分開議 出席委員   委員長 大石 千八君    理事 衛藤征士郎君 理事 近藤 元次君    理事 島村 宜伸君 理事 玉沢徳一郎君    理事 串原 義直君 理事 田中 恒利君    理事 武田 一夫君 理事 神田  厚君       太田 誠一君    鍵田忠三郎君       片岡 清一君    菊池福治郎君       佐藤  隆君    鈴木 宗男君       田邉 國男君    月原 茂皓君       野呂田芳成君    堀之内久男君       松田 九郎君    三池  信君       山岡 謙蔵君    上西 和郎君       島田 琢郎君    新村 源雄君       竹内  猛君    辻  一彦君       日野 市朗君    細谷 昭雄君       駒谷  明君    水谷  弘君       吉浦 忠治君    津川 武一君       中林 桂子君  出席国務大臣         農林水産大臣  羽田  孜君  出席政府委員         農林水産政務次         官       保利 耕輔君         農林水産大臣官         房長      田中 宏尚君         農林水産省経済         局長      後藤 康夫君         農林水産省構造         改善局長    佐竹 五六君         農林水産省農蚕         園芸局長    関谷 俊作君         農林水産省畜産         局長      大坪 敏男君         農林水産省食品         流通局長    鴻巣 健治君         食糧庁長官   石川  弘君         水産庁長官   佐野 宏哉君  委員外出席者         防衛施設庁施設         部施設対策第三         課長      片淵 康夫君        防衛施設庁施設        部施設補償課長 佐々木不二男君         防衛施設庁施設         部連絡調整官  芥川 哲士君         外務省経済局漁         業室長     秋山  進君         大蔵大臣官房調         査企画課長   畠山  蕃君         資源エネルギー         庁公益事業部業         務課長     川田 洋輝君         農林水産委員会         調査室長    羽多  實君     ――――――――――――― 五月十五日  農用地開発公団存続に関する請願清水勇君  紹介)(第五一七八号)  同(中村茂紹介)(第五一七九号)  森林林業活性化に関する請願清水勇君紹  介)(第五一八〇号)  同(中村茂紹介)(第五一八一号)  土地改良事業等に関する請願中島武敏紹介  )(第五三一五号) 同月十六日  森林整備並びに林業振興に関する請願(林百郎  君紹介)(第五七四四号)  農用地開発公団存続に関する請願(林百郎君  紹介)(第五七四五号)  水田利用再編次期対策等に関する請願五十嵐  広三紹介)(第五九二五号)  同(上草義輝紹介)(第五九二六号)  同(村上茂利紹介)(第五九二七号)  土地改良事業等に関する請願瀬崎博義紹介  )(第五九二八号)  同(松本善明紹介)(第五九二九号)  合板製材等木材産業振興策等に関する請願  (島田琢郎紹介)(第五九三〇号)  同(辻一彦紹介)(第五九三一号)  同(不破哲三紹介)(第五九三二号) は本委員会付託された。     ――――――――――――― 五月十六日  農林水産物市場開放阻止に関する陳情書外一  件  (第二六四号)  水田利用再編次期対策に関する陳情書外一件  (第二六五号)  林業活性化国有林野事業経営改善等に関  する陳情書  (第二六六号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  閉会審査に関する件  農林水産業振興に関する件  請 願  一 普及事業等交付金一般財源化反対に    関する請願工藤晃紹介)(第一六五    号)  二 同(高沢寅男紹介)(第四一八号)  三 土地改良事業等に関する請願山原健    二郎君紹介)(第一四七八号)  四 同(津川武一紹介)(第一六四三号)  五 同(辻第一君紹介)(第一六四四号)  六 同(林百郎君紹介)(第一六四五号)  七 同(藤木洋子紹介)(第一六四六号)  八 同(三浦久紹介)(第一六四七号)  九 同(網岡雄紹介)(第一七五六号) 一〇 同(駒谷明紹介)(第一七五七号) 一一 同(児玉末男紹介)(第一八四四号) 一二 同(佐藤祐弘紹介)(第一八四五号) 一三 同(佐藤誼紹介)(第一八四六号) 一四 同(鈴木強紹介)(第一八四七号) 一五 同(中川利三郎紹介)(第一八四八号) 一六 同(不破哲三紹介)(第一八四九号) 一七 同(藤田スミ紹介)(第一八五〇号) 一八 同(松前仰君紹介)(第一八五一号) 一九 同(山原健二郎紹介)(第一八五二号) 二〇 同(渡辺嘉藏紹介)(第一八五三号) 二一 同(小川国彦紹介)(第二〇〇六号) 二二 同(角屋堅次郎紹介)(第二〇〇七号) 二三 同(田中美智子紹介)(第二〇〇八号) 二四 同(武郎文紹介)(第二〇〇九号) 二五 国営八戸平原総合開発計画対象地域か    らの除外に関する請願関晴正紹介)    (第二〇〇五号) 二六 土地改良事業等に関する請願梅田勝    君紹介)(第二〇七六号) 二七 同(瀬長亀次郎紹介)(第二〇七七号) 二八 同(柴田睦夫紹介)(第二一五〇号) 二九 同(瀬崎博義紹介)(第二一五一号) 三〇 同(東中光雄紹介)(第二一五二号) 三一 同(蓑輪幸代紹介)(第二一五三号) 三二 同(上田哲紹介)(第二二三〇号) 三三 同(岡崎万寿秀紹介)(第二二三一号) 三四 国営八戸平原総合開発計画対象地域か    らの除外に関する請願関晴正紹介)    (第二三六八号)   三五 昭和六十一年度畜産物政策価格等に関      する請願赤城宗徳紹介)(第二四      二八号)   三六 土地改良事業等に関する請願野間友      一君紹介)(第二四二九号)   三七 同(経塚幸夫紹介)(第二六〇九号      )   三八 同(中林佳子紹介)(第二九二二号      )   三九 固(浦井洋紹介)(第三〇一九号)   四〇 同(工藤晃紹介)(第三四七〇号)   四一 同(小沢和秋紹介)(第三六〇四号      )   四二 同(正森成二君紹介)(第三六〇五号      )   四三 同(上西和郎紹介)(第三六七九号      )   四四 同(関山信之紹介)(第三六八〇号      )   四五 昭和六十二年度からの新水田利用再編      対策に関する請願天野光晴紹介)      (第三七〇七号)   四六 森林林業活性化国有林野事業再      建に関する請願天野光晴紹介)(      第三七〇八号)   四七 土地改良事業等に関する請願浦井洋      君紹介)(第三九九二号)   四八 農用地開発公団存続に関する請願      (串原義直紹介)(第四一九二号)   四九 森林林業活性化に関する請願(串      原義直紹介)(第四一九三号)   五〇 農用地開発公団存続に関する請願      (小沢貞孝紹介)(第四五五二号)   五一 森林林業活性化に関する請願(小      沢貞孝紹介)(第四五五三号)   五二 農家負債対策の確立に関する請願外一      件(津川武一紹介)(第四八一〇号      )   五三 同(中川利三郎紹介)(第四八一一      号)   五四 同(中林佳子紹介)(第四八一二号      )   五五 土地改良事業等に関する請願中林佳      子君紹介)(第四八一三号)   五六 国営八戸平原総合開発計画対象地域か      らの除外に関する請願関晴正紹介      )(第四八一四号)   五七 合板製材等木材産業振興策等に関      する請願安田修三紹介)(第五〇      〇一号)   五八 同(和田貞夫紹介)(第五〇〇二号      )   五九 農用地開発公団存続に関する請願      (井出一太郎紹介)(第五〇五八号      )   六〇 同(田中秀征紹介)(第五〇五九号      )   六一 同(中島衛紹介)(第五〇六〇号)   六二 同(宮下創平紹介)(第五〇六一号      )   六三 同(若林正俊紹介)(第五〇六二号      )   六四 森林林業活性化に関する請願(井      出一太郎紹介)(第五〇六三号)   六五 同(田中秀征紹介)(第五〇六四号      )   六六 同(中島衛紹介)(第五〇六五号)   六七 同(宮下創平紹介)(第五〇六六号      )   六八 同(若林正俊紹介)(第五〇六七号      )   六九 農用地開発公団存続に関する請願      (清水勇紹介)(第五一七八号)   七〇 同(中村茂紹介)(第五一七九号)   七一 森林林業活性化に関する請願(清      水勇紹介)(第五一八〇号)   七二 同(中村茂紹介)(第五一八一号)   七三 土地改良事業等に関する請願中島武      敏君紹介)(第五三一五号)   七四 森林整備並びに林業振興に関する請願      (林吾郎紹介)(第五七四四号)   七五 農用地開発公団存続に関する請願      (林吾郎紹介)(第五七四五号)   七六 水田利用再編次期対策等に関する請願      (五十嵐広三紹介)(第五九二五号      )   七七 同(上草義輝紹介)(第五九二六号      )   七八 同(村上茂利紹介)(第五九二七号      )   七九 土地改良事業等に関する請願瀬崎博      義君紹介)(第五九二八号)   八〇 同(松本善明紹介)(第五九二九号      )   八一 合板製材等木材産業振興策等に関      する請願島田琢郎紹介)(第五九      三〇号)   八二 同(辻一彦紹介)(第五九三一号)   八三 同(不破哲三紹介)(第五九三二号      )      ――――◇―――――
  2. 大石千八

    大石委員長 これより会議を開きます。  請願審査に入ります。  今国会において、本委員会付託になりました請願は全部で八十三件であります。  本日の請願日程第一から第八三までを一括して議題といたします。  まず、審査の方法についてお諮りいたします。  各請願内容につきましては、請願文書表等によりまして既に御承知のことと存じますし、また、理事会におきましても慎重に御検討願いましたので、この際、各請願についての紹介議員からの説明は省略し、直ちに採決いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大石千八

    大石委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  これより採決いたします。  本日の請願日程中、第三ないし第二四、第二六ないし第三三、第三六ないし第四四、第四七ないし第五一、第五五、第五九ないし第七五、第七九、第八〇の各請願は、いずれも採択の上、内閣に送付すべきものと決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 大石千八

    大石委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  ただいま議決いたしました各請願委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 大石千八

    大石委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  6. 大石千八

    大石委員長 なお、今国会中に本委員会に参考送付されました陳情書は、お手元に配付いたしてありますとおり、総数二十六件であります。この際、御報告申し上げます。      ————◇—————
  7. 大石千八

    大石委員長 閉会審査に関する件についてお諮りいたします。  第百二回国会宮崎茂一君外一名提出流通食品への毒物の混入等防止等に関する特別措置法案につきまして、議長に対し、閉会審査申し出をするに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立
  8. 大石千八

    大石委員長 起立多数。よって、さよう決しました。  次に  第百一回国会安井吉典君外七名提出農産物の自給の促進及び備蓄の確保のための農業生産振興に関する法律案  第百一回国会安井吉典君外七名提出総合食糧管理法案  第百一回国会安井吉典君外七名提出農民組合法案  第百二回国会島田琢郎君外七名提出地域林業振興法案  第百二回国会島田琢郎君外四名提出、鶏卵の需給の安定に関する法律案  第百二回。国会津川武一君外一名提出採卵養鶏業への農外企業者等の進出の規制等に関する法律案  農林水産業振興に関する件  農林水産物に関する件  農林水産業団体に関する件  農林水産金融に関する件  農林漁業災害補償制度に関する件 以上の各案件につきまして、議長に対し、閉会審査申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 大石千八

    大石委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、閉会審査におきまして、委員会参考人出席を求め、意見を聴取する必要が生じました場合には、参考人出席を求めることとし、その人選及び出席日時等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 大石千八

    大石委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、閉会中の委員派遣に関する件についてお諮りいたします。  閉会審査案件付託になり、その調査のため要員を派遣する必要が生じました場合には、議長に対し、承認の申請を行うこととし、派遣の目的、派遣委員派遣期間派遣地、その他所要の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 大石千八

    大石委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  12. 大石千八

    大石委員長 農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。島田琢郎君。
  13. 島田琢郎

    島田委員 羽田農相が実現をいたしまして初めての国会が事実上きょう、あすで終わりますので、きょうの農林水産委員会質問がこの国会の最後、こういうことになります。  私は冒頭で余り羽田農相を持ち上げ過ぎたものですから、新聞記者席から大変不評を買っておりまして、何でおまえあんなに羽田さんを持ち上げるのじゃ、これは新聞にも大々的に書かれました。私はそのとき肝心のことを申し上げたわけでありますが、そこのところは新聞には書かれておりません。あなたに対する期待が非常に大きい、久しぶりに農政通の、場合によってはエース登場なんという言葉も飛び出しました。しかし私は、その期待が大きいだけに裏切ったときは怖い、こういうことをきつく言ったつもりであります。半年の大臣の実績でございますから、私はまだこの段階で採点をすることはできないのでありますけれども、しかし、大変厳しいかつてない農林漁業の直面する今日の状況でございますから、これはどなたがなっても大変だ、私は一面では大変深い同情を持っておるのであります。しかしそれだけに、どうか半年の大臣経験をこの先、生かして、大いに我が国農林水産苦境打開のために御奮聞いただきたい気持ちをきょうは披瀝しておきたいと思います。  そういう意味で当面の幾つかの問題をここに提起いたしまして、大臣のこれからおやりになろうとする決意のほどを伺いたい、こう思っております。  何といっても大きな問題は、農産物市場開放問題であります。これは日程的にもほぼこの秋までの日程が立てられて確定されているというふうに見ていいと思うのでありますが、先般東京サミット宣言をいたしました経済宣言、これについていろいろ各界各層の受けとめ方がありますけれども、私どもは大変厳しくこれを受けとめているわけであります。特に農業問題、これについて大変集中した議論が行われたということでございますので、我が国農業立場での市場開放問題というのは一層厳しさが要求されてくるということが容易に想像されるわけであります。  まず、この経済宣言についての大臣の受けとめ方をお尋ねしておきたいと思います。
  14. 羽田孜

    羽田国務大臣 まず、私が農政を担当するようになりまして、いろいろな皆さんから激励をいただきましたことに対しては感謝すると同時に、それだけに皆様方も、現状農林水産業を取り巻く環境というものが非常に厳しいということと、また一つの大きな転換点にあるというふうに御認識の上で御指摘があったと思います。私自身も十年間ぐらいこの問題とずっと取り組んできておりますけれども、私が今ここでこういう席に着いた、それによって急激に新しいものをしていくということではなくて、この十年間でいろいろと経験したり学んだこと、そういう中で、この転換期に立ってどのように農政を進めていくのか、今いろいろな面で考えさせられているところであります。しかし、皆様方からいろいろ御指摘あったこと、御示唆あったこと等につきましては、大切にしながら、これからの農政の中に生かしていきたい、かように考えます。  さて、今お話がございました今度の東京サミットにおける議論の中で農業部門についても触れられ、特に経済宣言の中でそのことが触れられているということについての御質問でございますけれども、今度のコミュニケに盛られましたその背景としては、国際的な農産物の豊作による過剰ということがあると思います。それから、輸出競争が非常に激化しておるということ。そして、そういう中で農産物価格が国際的に全般に低迷状態であるということがあると思います。そして、当面の問題の焦点は輸出補助のあり方にある、このように理解をいたしておるところであります。こんな背景から見まして、今回の経済宣言に盛られました内容につきましては、まず第一には各種の保護的な措置によって国内生産を増大し、余剰分輸出補助金などによって輸出しておる、世界的な過剰を生み出しておる輸出国の問題であろうというふうに認識をいたしております。  しかしながら、輸入国であります我が国といたしましても、農業構造改善ですとか市場アクセス改善などとも関連する問題と率直に受けとめざるを得ないというふうに思います。そういう観点に立ちまして、私どもといたしましては、これからも生産性の向上を通じて我が国農業体質強化を図っていくことが重要であろうというふうに思います。  いずれにいたしましても、今回の宣言では、OECDの作業というものを通じながらこの問題についての話し合いを進めていきましょうという一つの方向づけはされたことでございますので、我が国といたしましてもこの検討に積極的に参加いたしまして、我が国農業の実情というものを十分反映させるように努めていかなければいけない、このように考えております。
  15. 島田琢郎

    島田委員 そもそも東京サミット経済宣言農業問題が盛り込まれるというような予想は持っていたのですか。
  16. 羽田孜

    羽田国務大臣 私どもが得ておりました情報では、各国の担当の皆さん方話し合いの中では、特別に農業問題について話し合うあるいは宣言に盛り込むということはなかったと仄聞をいたしております。
  17. 島田琢郎

    島田委員 東京サミットは、開催前に予測され、また観測されていたこととは非常に違った内容になったというのが一般国民の受けとめ方であります。  幾つかございますが、きょうは農業問題を申し上げますと、政府側農業問題が経済宣言にああいう形で入るという予測は持っていなかったという点は、外交上の問題としても、今まで取り組んできた経過、それから今後取り組もうとする姿勢の原点になる、そういう側面を持っていると私は思うのです。ですから、東京サミットで明らかにこういう問題が提起され、経済宣言という名前になるかどうかは別として、宣言の中に明確にこの問題は入るという予測を立てながら、戦略、戦術を練っておかなくてはいけない。ですから、やられっ放しになってしまうという状態で、今大臣が言われたように大変厳しい、これからの対処の仕方にかかってくるけれども国際環境も生易しいものではない、こういうことになるわけでありますから、明らかに外交上の手段としてもこの辺を予測しながら大事なサミットに対応すべきではなかったかという点で、私は反省を求めておきたいと思うのです。いかがでしょうか。
  18. 羽田孜

    羽田国務大臣 私どもといたしましても、今日の状況等については総理自身もよく勉強されております。そして、昨年のサミットを振り返りながら、特にフランスのミッテラン大統領等からも、ともかく官僚の皆さん方がつくられた作文だけではいかぬ、時々刻々変わる国際情勢あるいは現象といったものをとらえながら率直に話し合うサミットにしなければ、私としては参加することについても余り意義はないのだという話であります。そういう意味で、当然我が方といたしましても、正式に議題に上るものは大体こういうものであろうということでありますけれども、もちろん農林水産省からも会議の別室の方に人が待機しながら資料等を提供しておりますし、その以前にも、大体日本の現状がどうであるかということについては総理にも話してあるということであります。  ただ問題は、先ほどもちょっと触れましたように、今度の場合には、あくまでも輸出国としてどうもEC補助金によるところの輸出というものが一つ問題があるのではないかということがあるし、また、EC加盟国の中にありましても補助金の負担が非常に大きくなってきてしまっているという問題があるということ、あるいはそういった補助金を出すことによって各国が少し増産に刺激を与えてしまっておるということが今日の過剰をもたらし、各国経済あるいは財政に対して大きな影響を及ぼしてしまっておるというところからこの議論が始まったように私どもは受けとめております。  ただし、そういう議論というものをだんだん詰めていきますと、またそれぞれの貿易がもっと活発に行われるようにというところに進んでいくであろう、そのことを考えたときに、我が国としても市場開放の要求はさらに強まるなということを、これはまさにサミットの後として私たちとしては受けとめながらそれに対して対応していかなければいけないということでありまして、今度の宣言そのものは、むしろ輸出国立場、また補助金等によって輸出している国の立場といったものの中から議論が深まったものである、このように私は認識をいたしております。  いずれにいたしましても、いろいろな事態というものを私ども予測しながらサミットに対応する、これはただ農林水産大臣という立場ではなくて、国務大臣という立場からもこれからも十分検討していかなければいけない問題である、御指摘はよく承っておきたいと思います。
  19. 島田琢郎

    島田委員 ところで、我が国農政にどのように影響してくるか、これがこれからの大事な点である、もちろん、新ラウンドに向けての一応のこちら側の対策があるわけでありましょうが、その見通しなども含めてこの際御決意を伺っておきたいのでありますが、まずは我が国農政にどういう影響をもたらすのか、この辺のところをお聞かせいただきたいと思っています。
  20. 羽田孜

    羽田国務大臣 先ほど申し上げましたように、この問題は、直ちに我が国に対してどういう影響を及ぼすということはないと思います。  ただ、先ほどもちょっとお答えをいたしましたように、輸入国である我が国としても、当然補助金はなしとしても、やはり市場のアクセスは改善すべきであるという議論にいろいろな形で発展していく可能性というものはあります。そういうことを考えたときに、我が国としても我が国立場というものを先方に十分申し上げながら、OECDなんかの場でいろいろ議論する場もございますし、またガットの場で議論する場もございます。そういうことで、私たちの国の実情また輸入国立場というもの、そして、日本は純輸入国としては世界最大のものであるということをきちんと理解をしていただくということを申し上げると同時に、一方では、そういった国際化が進んでくる中にあって、我が国農業というものがそういったものに対してきちんと対応できるような生産性の向上を図りながら、農業そのものの体質を強化していくということが非常に重要であろうというふうに考えております。
  21. 島田琢郎

    島田委員 そこで、今のままの農政でいいのかどうかということも問われると私は思うのですね。特に、アメリカあたりが、はっきりと言う場合もありますが、言外ににおわせて我が国農政批判を行う場合に、我が国農薬は過保護であるという過保護論がよく持ち出されるわけであります。この過保護論に対してはどういう見解をお持ちですか。
  22. 羽田孜

    羽田国務大臣 まずその前に、今お話がありましたアメリカ等が日本に対していろいろな議論を仕掛けてまいります。そのときに私どもは、国土面積が狭いから、そして耕地面積が狭いからという説明を実はしております。ただ最近では、向こうの連中が言うのは、国土面積が狭いあるいは耕地面積が狭いと言うけれども、しかし我が国より農業人口は多いんですよというような言い方をされるので、そういう言い方だけでは説明することが非常に難しいと思っております。問題は、アメリカのように非常に広大な、しかも平らな農地というのではなくて、日本は山間地というものを多く持っている、これは日本の国の特質だと思います。そういう意味で、構造政策等進めましても、アメリカのようなああいう広大な、機械をずっと一面に使えるような農業というのはなかなか難しい、そういう事情については私どももやはり説明していかなければいけないと思っております。  それから、今お話のありましたように、このままでいいのかというと、やはりこのままではなくて、本当に農業をやる人たち、こういった人たちに対して政策の一つの焦点というものを向けていく、これを基本にしていかないと全体的に弱まってしまうし、また日本の食糧というものを安定して確保することもなかなか難しいであろうということを考えたときに、何といっても中核農家というものに一つの焦点を当てながらこれからの政策を進めていかなければいけないのじゃないかなと思っております。  なお、過保護論というものについてどういう言い方をしているか、それぞれのときによって言い方は実は違うわけであります。ただ、何か狭い農業を日本が守っておるんだという言い方を向こうの人たちがよくすることがありますが、これは先ほど申し上げたように、要するに非常に山間地が多く、残念ですけれどもそんな効率のいい農業をやるということはなかなかできない、しかし、この農業というものを捨ててしまったら、食糧の供給だけではなくて、例えば国土の保全もできないということを考えたときに、ある程度の保護はやむを得ぬであろう。例えばスイスなどの場合には、高地の農業というものに対してはそれこそ特別な保護措置を与えておるという実情もあります。こういうものを見たときに、適宜必要な保護というものは与えていかなければいけないと思っております。しかし、いろいろな補助金ですとかそういった保護措置だけに甘えていることはまた許されないであろうということを考える次第であります。
  23. 島田琢郎

    島田委員 ところで、九月から始まる新ラウンド、この見通しと御決意をこの際承りたいと思います。
  24. 羽田孜

    羽田国務大臣 今お話がありましたように、新ラウンドにつきまして、昨年十一月に第四十一回の総会が開かれまして、ここで決定されたことに基づいて九月に閣僚会議が開催されるということになっております。農産物につきましては、残存輸入制限のほか、アメリカなどのウェーバーによる輸入数量制限というものもございます。また、輸入課徴金等がございましたり、各国それぞれ実情に応じましてさまざまな国境保護措置といったものが講じられておるところであります。  そういう中におきまして、我が国としてこういったものにどう対応していくのかということになるわけでございますけれども我が国としては、今申し上げたような各国が保護措置をとっているんだということ、こういったものを全部洗いざらい出す中で、我が国立場、世界で最大の純輸入国であるという立場を申し上げると同時に、地域農業というものが地域経済に果たしている役割、こんなものについても各国皆さん方の理解を得られるように十分に発言していかなければいけないのじゃないかと考えております。
  25. 島田琢郎

    島田委員 市場開放問題は、後ほどまた同僚議員が詰めたお話をすることになっておりますので私はこの程度にいたしますが、先ほど、こうした市場開放問題、貿易の問題は我が国農政にも少なからざる影響を与えるのではないか、大臣はそれほどの影響はないと思う、こういうお話でありますが、農政審でかつて六十五年見通しが立てられておりまして、その見通しに沿って我が国農業が展開されておるわけであります。しかし、今の農政審での議論の方向は、六十五年の全面改定とも思えるような議論であり、そしてまた七十年の見通しに立っての作業が進められているというふうに私どもは見ているわけであります。六十五年見通し、これはまだ三年半、四年近くあるわけでありますね。それなのに、早くも七十年の見通しというふうに全面改定を余儀なくされておること自体、大臣農政に影響なしというふうに片づけられる問題なのかどうか、それはむしろ作業に当たっている現場の方が深刻に受けとめているのではないでしょうか。  この辺のところを、農政審の動き、あるいは政府自身が仮に七十年見通しを立てようとお考えになっているとすればその基本的な姿勢はどこに置いておられるのか、そのスタンダードをまず聞きたいと思います。
  26. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 ただいまお話がありましたように、六十五年見通しを含めまして現行の農政の長期ビジョン、これは策定後五年たっておりまして、この間に我が国農業を取り巻く内外の諸条件がいろいろと変わってきたということで、農政審議会で去年の暮れから、今までの長期ビジョンの成果なりを分析して、いわゆるフォローアップ作業というものをしてきたわけでございます。  この分析、検討の過程で、一つは、長期見通しにつきましては大宗においてはそう間違ってはいないけれども、例えばミカンとか生糸、こういうものにつきましては残念ながら生産と需要の間のギャップが当初の予定以上に拡大をしている、それから、現実的な問題といたしまして、水田利用再編対策のポスト三期というものをことしじゅうに構築しなければならない、さらに、ハイテクとかニューメディアとか、五年前に想像しなかった新しい技術が農村に相当入りかかってきている、もう一つは、農村社会の現状を見ますと、高齢化が進行します一方で、都市と農村の交流であるとか結びつきというものも予想以上に活発化してきている、こういうようなことで、農産物の需給なり農村環境についていろいろと変化がうかがわれるので、むしろここで二十一世紀を見越しての長期的なビジョンの策定に打って出ることが将来の農業のための布石になるのじゃないかというような検討結果を踏まえまして、先月農政審に二十一世紀に向けての長期ビジョンの策定方をお願いし、現在その検討に着手したところでございます。
  27. 島田琢郎

    島田委員 私が非常に問題にいたしますのは、こうした長期見通し、つまりこれはビジョンでありますが、ビジョンというのは、一面では努力と励ましを与え、そしてロマンがなくてはいけないと思うのです。ところが、下方修正をされていっちゃうのですね。今のように、ミカンは現状はこうだから、見通してはこう立てたけれどもとてもそれには到達できないからこの線に下げていく。牛乳なんかでもそうだ、あるいは豆をつくってもそうだ、てん菜をつくってもそうだ、第一米がそうでありますが、そういうように下方修正をしていく。農家自身が大変努力して生産性を高めた、それは即政策吸収されてしまって努力に対する分配がないということになってしまう。  それだけではありません。価格を抑えられているということは、それなりにその時代時代に沿って我慢しなければならぬときもあります。でも、大事な、生きる手段であるところのつくる、耕作するということまで奪い去ってしまうような長期見通し、長期ビジョンであってはいかぬと私は思うのであります。ところがおやりになっていることは下方修正で、農家の努力を抹殺してしまう、政策的な名目のもとに吸収して取り上げてしまう、こういうものになりかねないという点に私は今度の作業に大変強い不満を覚えるわけであります。  この点については、ひとつ私どもの考えでいるような方向で改定がなされる、やむを得ない場合には改定がなされるということであっても、そこのいわゆるスタンダードを外してほしくない、こう私は思っております。  ところで、ポスト三期、これがもう一つ重要ないわゆる今日的な政策課題で、早くも政府筋からは十万ヘクタール上乗せを示唆するがごとき情報が流されています。ところで私は、この十万ヘクタール上乗せするというこのこと自体、米の問題、いわゆる米作、米政策そのものにとどまらない、大変大きく農政を基本から変えていく、そういうことになりかねないという点で、ポスト三期問題は大変重要な農政課題として位置づけておかなければならぬと思うのです。ですから、不用意に、米が余ったから十万ヘクタール上乗せしての減反だというだけで済む話ではない。  ところで、ぼつぼつ米価のシーズンがやってまいりました。この問題についてもいろいろ意見が出されてまいっている段階であります。ポスト三期とことしの六十一年の米価というのは、これは大変大事な関連性を持つわけであります。この点についてひとつお考えを、当面の作業の進みぐあいとか、六十一年の米価の決定に当たっての基本的な物の考え方とか、それが即ポスト三期になるかどうかは別といたしましても、その要因になりかねない問題でございますから、この際政府のお考えを聞かしておいてもらいたい、こう思います。
  28. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 ポスト三期の問題でございますが、先生お尋ねのような十万ヘクタール上乗せという問題は、これは別に決まったわけではございませんけれども、当面の米の需給の推移とか在庫の水準を見ますと、我々転作担当部局としては、そういう厳しい目標まで考えながら今度のポスト三期を考えなければいけない、こういう意味で真剣に受けとめているわけでございます。  それだけにいろいろ、転作先の作物でありますとか奨励金というような奨励施策の仕組みでありますとか、あるいは地域別の配分とか、大変難しい問題がございますので、今、農政審議会で長期ビジョンなり長期見通しの策定、こういうことが進められております中でこのポスト三期の基本的な考え方についてもあわせて御審議されることでございますが、同時に、農業者団体それから各自治体、そういう方面の幅広い御意見を聞きながら、この秋までに骨格を固めるべく検討を進めている状況でございまして、現在の段階では、私ども一つの案と言えるような段階まではまだ達してない状況でございます。
  29. 島田琢郎

    島田委員 食糧庁長官にも尋ねておりました。
  30. 石川弘

    ○石川政府委員 米価でございますが、御承知のように、例年でございますと七月の初旬から中旬にかけて、五十九年はちょっと事情がございまして七月下旬に決めているわけでございますが、私どもは法令の規定に基づきますいろいろな数字を集めるわけでございますが、御承知のような生産費に関するものだとかあるいは経済事情としてのいろいろな諸要素、こういうものを今集めている最中でございまして、いろいろと憶測的な記事が出たりしますが、私どもとすれば、慎重にそういう数字を目下収集しながら勉強している最中でございます。  考え方とすれば、やはり法令に定める考え方に従うわけでございまして、今後特にやはり稲作を担っていただく方、これはやはり今後とも中核的な担い手というようなものを中心にしまして稲作が健全に発達しなければいかぬわけでございますので、そういう人たちが稲作経営を続けられるということが大事な要因でございます。そこが法令に書いてあります再生産確保ということだと思います。そういうことも頭に入れながら、例年どおりきちっとした数字をつくりまして、それで米審にかけて御審議をいただいて決めていく、そういう例年の考え方どおりで進めていきたいと思っております。
  31. 島田琢郎

    島田委員 米価やポスト三期の問題もまた後ほど同僚議員が詰めたお話をすると思いますが、私はポスト三期について一言だけ申し上げておきたい。  関谷農蚕園芸局長がお答えになっておりますから私は特に申し上げておくのでありますが、第一期、第二期、第三期と、それぞれの手法に若干の相違はありますものの、当時はまだ作付転換、ほかの作物に切りかえることのできるアローアンスがありました。しかし今日では、例に挙げるまでもなく、米をやめて一体何がつくれるんだと言われたら、ほとんどその選択の余地がない。ここが、私が冒頭申し上げましたように、厳しく言えば、つくる権利さえ奪われているという、こういう状況の中でさらに十万ヘクタール、それはまだ決まっているわけではないと言うけれども、それが強行されるようなことになったときに一体どうなるんだろうかというのは余りにも自明だからであります。  ここに策がなければ、日本農政はつぶれていく以外に行き着く道はない。単純休耕でもやるというならまた別ですよ。てん菜つくってもだめ、豆つくってもだめ、大豆をいかぬ、麦ももういっぱいだ、ミカンもこのとおりだ、畜産だって目いっぱいだ、そうでなくても、私は前にこの農水の委員会でも強調いたしましたけれども、酪農だって、二十年前に三十七万戸あったのが今七万数千戸であります。毎年毎年五千戸ペースで今だって酪農を廃業しています。廃業されたその土地の六割は飼料作物で残るけれども、あとの四割は畑作に向かわざるを得ない。しかし、何がつくれるのか、何もつくれない。  こういう状況を考えるときに、大臣、幾らあなたが御否定なさっても、農政は転換せざるを得ないという状況に今追い込まれているのではないでしょうか。そこのところの御認識は私は大変不満であります。しかし、時間の関係で次に進まざるを得ません。問題の提起だけをしておきたいと思います。  ところで、北洋漁業の問題であります。  昨政府は、この補償措置について基本的な方針をお決めになったようであります。具体的な中身はこれからのようでありますけれども、私は、例えば減船問題にいたしましても、前にも触れておきましたが、五十二年当時の状況とは違って、漁民の置かれている今日の状況は大変厳しくなっている。あの当時は共補償という手法に対しても一定の協力できる余力がありました。しかし、今は全くない。  それから、農家の負債整理あるいは経営再建また経営維持、こういうものについて、六十一年度から一千三百億に上る融資措置のいわゆる金額的なキャパシティーはあります。しかし、現実に借りられるかといったら借りられない。もう目いっぱいだ。これ以上借りたって払いようがないのです。  こういうふうな現場の事情を、どのようにこの政府がお決めになった基本政策の中ではフォローしようとしておられるのか、その辺、まずお聞きをしておきたいと思います。
  32. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えをいたします。  北洋漁業の関係の閣僚会議で今後の緊急対策の取り進めがについて御相談をいただいたところでございますが、その中で、今先生が言及をされましたのは、減船漁業者に対する救済措置の問題でございます。  この問題につきましては、いろいろな機会に申し上げておりますように、底刺し網にいたしましても沖合底びきにいたしましても、関係の漁業者御自身の今後の身の振り方についての御決断ということがまずベースでございますから、具体的にいかなる救済措置を講ずるかということについて最終決定を見るまでには、若干御猶予をいただかなければいけないと存じますが、私ども、今先生御指摘のように、五十二年当時の救済措置の場合とは全く、全くと申しますか、環境が著しく異なっておるということは十分認識をしておるつもりでございます。  先ほど先生がお触れになりました共補償問題についての新しい状況ということにつきましても、私どももそれなりの認識はいたしておるわけでございまして、その点は昨年のカニ、ツブ、エビの場合の減船救済措置についてのやり方も、先生、今言及なさいましたような事情を反映したものになっておるということは御理解いただけるところだろうと思っております。
  33. 島田琢郎

    島田委員 大変緊急を要する問題でございますので、ひとつ大臣しっかりお取り組みいただきたいと思います。今の佐野長官のお話で私はおおよそ政府が考えておることについてはわかったわけでありますが、非常に期待を大きく持っておりますし、何とか新しい海洋秩序を取り戻して、今の漁業者の皆さんに勇気を持ってまた漁業に取り組んでもらうことが大変大事だと思っております。あわせて、関連する中小企業とか、あるいは一番大事なのは離職者の対策でありますし、それから地域対策としては、自治体の大変これによります財政の困難性が高い、こういういろいろな課題がございますので、早期に積極的にお取り組みいただくことをぜひこの機会にお願いを申し上げておきたい、こう思います。  ところで、日ソのサケ・マス交渉が大変難航しておるようでありますが、見通しはいかがですか。
  34. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 日ソ漁業委員会は十二日から始まっておるわけでございますが、現在までのところソ連側は、ソ連側なりの我が国サケ・マス漁業に対する評価をベースにいたしまして、今後三年間でサケ・マスの沖取りを禁止しかねまじき声明をするなど、大変厳しい姿勢をとっております。  現在の段階でどういう仕上がりになるかということを申し上げるのは尚早なのでございますが、少なくとも今までのソ連側の言動から見まして大変厳しい交渉になっていることは争いがたい事実でございまして、私どもとしては精いっぱい努力をするつもりではおりますが、そして早期妥結のために全力を傾けたいと存じますが、交渉の厳しいことは御認識を賜っておきたいと思う次第でございます。
  35. 島田琢郎

    島田委員 最後に、私はカネミの問題で私の考え方を述べさせていただいて質問を終わりたいと思います。  毎日新聞の三月二十六日の朝刊でございますが、十七歳の少女がこう訴えておる記事がございました。私を生んだ母が憎い。私は、黒い赤ちゃん、こう呼ばれて十七歳まで本当に人生真っ暗やみの中で灰色の生活を余儀なくされて、今も苦しみ抜いている。私のこの苦しみは死ぬまで続くだろう。そして、世の中にはいじめがはやっているけれども、そのために自殺する少年、少女も多いが、それよりももっと苦しく生きることに耐えている、そういう私の身を本当に皆さんかどう考えていてくれるのだろうかという悲痛なる訴えがありました。そして彼女は、自殺する人、そんな自殺するようなあれがあるならば、私に健康な体を下さい。この訴えは本当に我々の肺腑をえぐる悲痛なる叫びであると私は思うのです。  先ごろ第二陣の控訴審の判決が出ました。残念なというか、政府側の勝訴という判決に終わりました。私は再三大臣にも申し上げてまいりましたが、これはもちろん政争の具にすべきものではない。そしてまた、法律論議でエンドレスを繰り返すべきものでもない。勝った負けたなどという論争に明け暮れるべきものでもない。今、本当にこの十七歳の少女の叫びを、我々が政治の場で、そして行政の場でどうやって解決してあげるのか、そこにこの問題の焦点があると私は思う。  大臣は非常に人道主義的な立場に立ってお考えを願っておると聞いておりますけれども、ぜひ私は、この少女の叫びばかりではありません、十八年間を超えるこの苦しみを救ってあげるというのは、これはまさに何物にも優先する大事ないわゆる政治課題だと私は思うのです。ぜひそういう立場に立って、この問題に羽田農相らしい解決の方途を見出していただくようにお願いをしておきたいと思います。これは答弁を求めません。  以上、私の申し上げましたことをひとつじっくりとかみしめていただきまして、この問題の早期解決に当たってもらいたいということを私からも強く要求をし、要請を申し上げて、きょうの質問を終わりたいと思います。
  36. 大石千八

  37. 串原義直

    ○串原委員 農産物の日米十二品目交渉についてでありますが、時間が余りございませんから端的に伺います。  これは去る四月二十二日に二年間の期限が切れているわけでありますけれども、その後、現在までどのような交渉をなさってきたか、また今後の見通しにつきましてどうお考えでございますか、伺います。
  38. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のとおり、五十九年四月にこの問題について決着を見まして、二年間の期限が四月二十二日ということになっておりますために、昨年の暮れ以来、日米間でその後の取り扱いについて協議を行ってまいってきておるところでございます。四月の末には私もワシントンに参りまして、松永大使にも御出馬をいただいてヤイター代表とお話をするということもやってまいったわけでございますが、これまでの協議等を通じましてアメリカ側は、十二品目はガット違反で、完全自由化すべきであるという基本的な立場を繰り返し主張をいたしております。我が方はそういう完全自由化というようなことをコミットできる立場には到底ないということで、我が国農業の厳しい実情なり十二品目の地域農業に占めます重要性等、完全自由化ができない事情を詳細に説明をいたしまして、前回の決着のような日米双方が受け入れ可能な現実的な解決策を見出すべく努力をすべきではないかということで、アメリカ側の理解を求めてきたところでございます。  既に四月二十二日という期限は経過をいたしておりますけれども、そういったことで従来よりも接触のレベルを上げて話し合ってまいってきておりますが、日米の基本的なスタンスにはなお相当隔たりがございまして、まだ日米間の溝を埋めるには至っておりません。私ども今後とも、今申し上げましたような我が方の基本的な立場に立ちまして、とにかく粘り強く米側と話し合いを続けてまいりたいと考えておるところでございます。
  39. 串原義直

    ○串原委員 今御答弁のように、なかなかにアメリカ側の姿勢は強いようであるし、それから、アメリカは自由化の時期を明示すべきだというので迫っていると聞いているわけでございます。話せばわかるというふうに私は考えているのでございますが、我が国に対してアメリカがこれだけ強い姿勢をとるという理由、それからその背景はどこにあるのでしょうか。
  40. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 お尋ねの点につきまして私どもおりの見方を申し上げますと、背景といたしまして、アメリカ政府の貿易政策に対する基本的な姿勢ということで、アメリカの大幅な国際収支赤字のもとで米議会に御案内のとおり非常に多数の保護主義法案が提出をされ、現在下院でもかなり詰めた議論が貿易法案について行われているわけでございまして、そういった強い保護主義傾向に対処するために、外国に対しまして、輸入制限など自由貿易の原則に反する貿易慣行についてその是正を求める、仮にアメリカにとって直接的にそれほど大きな貿易利益がなくても、とにかく相手に完全な市場の力に農産物貿易をゆだねるということを非常に強く求めていくというアメリカ政府の基本姿勢がございます。  それから第二には、これだけの円高になってまいったわけでございますけれども、まだアメリカの対日貿易赤字というものは減る傾向を見せていない。私がワシントンに四月の末におりましたときに、三月の対日貿易赤字がアメリカの商務省から発表になりましたが、二月に四十数億ドルだったものが五十五億ドルで、またふえたということで、日本に対しまして特に厳しい姿勢で臨まなければいけないというふうな空気がまた強まってきたということが一つございます。  それからもう一つ大きな問題といたしまして、今アメリカはECとの間の農産物貿易摩擦、非常に大きな問題を抱えております。特にことしからスペイン、ポルトガルがECに加入をする、そういうことによりまして、この二つの国がECの一〇〇%を超えるような輸入課徴金の壁の中に入る、そしてポルトガルが大豆について、これは経過措置として五年間ということに一応なっておりますけれども、輸入割り当てをやるというようなことに対しまして、アメリカが非常に強い非難を加え、ガット上の代償を求め、また、特に大豆につきましてポルトガルが行います輸入割り当てについては対抗措置をとるというふうなことで、非常に厳しい姿勢で臨んでおるということがございます。  そういった状況の中で、日本に対しても、先ほど申し上げましたような原則論に基づいて、特に輸入割り当てがECとの間で大きな争点になっているというようなこともございますものですから、厳しく当たらざるを得ない、また当たる必要がある、こういったようなことがアメリカの非常に強い姿勢の背後にあるのではないかというふうに見ておるところでございます。
  41. 串原義直

    ○串原委員 そこで大臣に伺いたいのでございますが、今局長から御答弁をいただいた中にも触れておりましたけれども、スペイン、ポルトガルのEC加盟に伴いますところのアメリカ、EC間の農産物貿易紛争というのは、双方ともとても激しくやりとりをやっているようでございます。それはやはりアメリカはアメリカの立場に立って強く主張をしているというふうに私は受けとめておりますし、その意味でも今局長からも御答弁がございました。  それを比較するということはいかがかとは思いまするけれども、今のアメリカと日本の情勢を見ます場合に、何かしら感じといたしましてアメリカは攻勢に出ている、日本は守勢、守るというような立場に立っているという感じが何となしにするわけですね。これは今局長も答弁されたけれども、円高というような余りよろしくない条件もあるにはあるけれども、しかし日本の農業の将来を考えます場合に、きちっとして強い態度でこの際臨みませんと、将来大変なことになると私は憂慮するわけであります。先ほど島田委員から、東京サミットの際における経済宣言の中に農業問題が取り入れられたことに対する所感も加えながらの質問もございました。私は、大臣にさらにざらに決意を新たにしてもらって、日米十二品目交渉に対しては強い姿勢で臨んでもらわなければならぬ、こう考えているわけでございます。この際、大臣決意を伺いたいのでございます。
  42. 羽田孜

    羽田国務大臣 背景等につきましては、今局長の方からお答えをいたしたとおりであります。  向こうが攻勢でこちらの方が守勢、というのは、向こうの方は日本に売り込みたいということですから当然攻勢になってくるということだと思います。しかし、日本の実情というものを理解させるためには、ただ守るだけではいけない、そういうことで、ガットの場でもあるいはOECDの場でも。引っ込みじゃなくて、むしろこっちの方から積極的に日本の立場というものもきちんと訴えると同時に、あなた方のところもこういう国境保護措置をしているのですよということをやはり国際場裏に出していく必要があるであろうということで、私どもとしては実はむしろ積極的に出ておるということであります。  そうして、この十二品目問題につきましても、十三品目として今から二年前ですかに議論があったわけですけれども、その前にもガットに提訴されたにもかかわらず、私どもは現実的な対応をしようじゃないかという中で二年間実は休戦をしてきたということでありまして、向こうの連中が大変あきれるくらい粘り強い闘いをして。きておるし、今日まで厳しい事情の中にあってもよく日本の実情というものを向こうに訴え続けてきたというふうに思っております。  そういう意味で、彼らはガットに提訴したものであるから、これは当然もう完全自由化であることが当たり前なんだ、ガット違反なんであるということを言っておるわけでありますし、また、今お話がありましたように、こういったものの一つの自由化のスケジュールも示しなさい、それもだめですということを実はお話をしておるわけでございますけれども、大分スタンスがアメリカ側と日本とは基本的に、残念ですけれどもまだ詰まっておらないという事情でございますけれども、私どもはこれからも粘り強く、日本の地域経済にこういった作物というのはどういうふうに影響しているのだということについてもよくまた説明を続けていきたいというふうに考えております。そんなつもりでこれからも粘り強い対応をしていくということを申し上げておきたいと思います。
  43. 串原義直

    ○串原委員 より一層農林省の決意を求め、今答弁をいただいたのでございますが、日本の国益のために腹を据えてもらうことを強く要請しておきたいと思います。  そこで、ソ連が、不幸なことでございましたが、ウクライナにおける原子力発電所事故を起こしてしまった。これは実は困ったことだというふうに思うのでございますが、この地方は、聞くところによりますと、大変な穀倉地帯であるということであります。したがって、この原発事故は世界の穀物市場に大きな影響を与えるのじゃないかというふうに伝えられ、具体的にはシカゴ穀物相場が乱高下を繰り返しておる、こういうふうに聞くわけでございますが、農林省としては、この事故によって世界の穀物市場がどんなぐあいに動くであろうと想定しておりますか。
  44. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 お答えを申し上げます。  チュルノブイル原子力発電所の事故が農産物に与えます影響につきましては、まだ十分詳細、確実な情報が得られておりませんので、必ずしも明らかでない点が非常に多いわけでございます。  確かに事故のありましたキエフ市の北方地帯、これは沼沢地が多くて酪農を主体とする地域でございますし、その南方のウクライナ地方はソ連の主要な穀作地帯でございまして、ちょうど四月二十九日にこの事故の報道が伝えられましたときに、アメリカの新聞などは、ソ連のブレッドバスケット、パンかごがこれで大変な汚染をされるのじゃないかというふうなことで、相当大きな報道で、また、私が農務省なんかに行っておりまして待合室のようなところで待っておりますと、そこに外から非常に問い合わせの電話がかかるというようなことで、一時は非常に大きな関心を呼び、また、シカゴ穀物相場も相当高騰なり下落が激しく乱高下が見られるということでございましたけれども、ここ数日の相場の動きを見ますと、二十九日から五月九日まではかなり乱高下を続けておりましたが、五月九日に当月限でブッシェル当たり三ドル五十セントという値をつけましてから後、十六日までずっと価格が低下または横ばいということで、シカゴの市場の価格もこのところ落ちつきを見せるようになってまいってきております。いずれにいたしましても、今後の推移を慎重に見守ってまいりたいというふうに考えております。  我が国にとりましては、御案内のとおり穀物はアメリカ、カナダ、豪州等から輸入をいたしておりますので、直接にはこの原発の事故が——風向きによりましてスカンジナビアの方に風が流れてまいりましたり、あるいは風が南西の方に向きますとオーストリアからスイスの方に流れていく、こういうことでございますが、米国、カナダ、豪州等についてはそれほど大きな被害があるというふうには考えられませんし、また、現在世界の穀物の需給というのは非常な供給過剰の状態にございますので、輸入量の確保につきましては問題はないと考えておりますし、現在の世界全体の穀物需給から見ますと、これが需給上の不安をもたらすというふうなことには恐らくならないであろうというふうに見ておるところでございます。
  45. 串原義直

    ○串原委員 次の問題でありますが、報じられるところによりますと、韓国から絹糸の輸入を行う、こういうことだそうでございますが、これはどの程度輸入しようとお考えになっておるのか、輸入するとするならば時期はどんなことをお考えになっておるのですか。
  46. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 お尋ねの韓国の絹撚糸輸入は、この前、一部新聞報道にございました。五千俵という見出してございましたが、生糸からの振りかえという件についてのお尋ねであろうと存ずるわけでございます。  韓国からの絹撚糸そのものについては、これは通産省所管でいわゆる二国間協議の一つの品目として、絹織物、絹撚糸、それから生糸の三つを二国間協議の対象にしておるわけでございます。この絹撚糸そのものについては大体年間六千俵ぐらいの枠で協議をし、実行しておるわけでございますが、生糸の方につきまして、これは韓国につきまして二国間協議で設定した枠がございまして、先般、この絹撚糸に振りかえたというものは、生糸の輸入枠として五十六年度から五十八年度分まで一万六千四百俵という合意をしておりましたところ、その中で、結局生糸では輸入できない、こういうものが一部ございまして、これが合計しますと一万四千四百俵になるわけでございます。これを韓国としては、生糸で合意したのだけれどもなかなか生糸では入れられないから実質的に加工度が低い絹撚糸の方で輸入してくれないかということで振りかえを要請してまいったわけでございます。  これは、韓国の要求は全額振りかえということでございましたが、協議の結果としまして、一万四千四百俵に当たるものとしましては合計八千三百五十俵に振りかえるということで、実質的にかなり圧縮した状態で絹撚糸に振りかえて絹撚糸として輸入をするということで、生糸輸入の代替措置としてされたわけでございますが、実質的に見ますと、日本にとっては生糸で入るか絹撚糸で入るかは、輸入の経路はもちろん違うわけでございますが、影響度は、数量が圧縮されました分だけむしろ少ないということでございます。  時期的には、今私の申し上げました八千三百五十俵も含めまして絹撚糸の輸入、これから大体一年間以上ぐらいかかると思いますが、毎月適当なテンポで、余り急激ではなく、日本の国内市場への影響も考えながら輸入が実行されるように通産省から指導してもらう、こういうことにいたしておるわけでございます。
  47. 串原義直

    ○串原委員 今のようなことになりますと、国内の養蚕農家、製糸業界に与える影響が大きいのではないかということでとても心配している向きがある、その辺についてはどうですか。
  48. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 物量的に申し上げますと、当初の生糸で合意しました分、これはやはり国と国の間の約束で、実行しなければならないものでございますが、数量的に絹撚糸で大分圧縮をして入れましたので、数量関係としては日本の養蚕なり製糸に与える影響というものはむしろ生糸の場合よりもその分だけより少ない、こういうことでございます。  ただ、私も先ほど申し上げましたように、非常に今問題になっておりますのは、日本でもよく言われます集中豪雨的輸出というような形で、余り集中して絹撚糸が入ってまいりますと日本の生糸相場に大変影響をいたしますので、そういう意味で、通産省にお願いをして、できるだけ平均的なテンポで輸入が実行されるように指導するということをやっていただいているわけでございます。
  49. 串原義直

    ○串原委員 終わりますで
  50. 大石千八

  51. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員 本日は、食糧の安全保障はいかにあるべきかという点に的を絞って論議を進めてみたいと思うわけであります。  去る四月二十九日の報道によるソ連のチェルノブイル原子力発電所の事故は、世界の人々に大きな衝撃を与えましたが、これがいかに大きな事故であったかを物語るものとしまして、事故のあったチュルノブイルから八千から九千キロメーター離れた我が国のほぼ全域に、一週間後の五月三日から数日間放射能が検出されたことによってもよくわかるわけであります。日本に対する放射能の影響はほとんどゼロであるということでありますが、最近におきましては母乳の中からも放射能が検出される。また、事故のあったソ連におきましては、今後相当の損害並びに死傷者が出ることが報ぜられております。広島型の原爆の何十個分かの放射能が空中に拡散されたと言われておるわけであります。  このような事故を起こしたソ連の政治社会体制、管理体制のずさんさというものが厳しく問われなければならぬと思うわけでありますが、その問題はまた改めて論ずることとしまして、この事故と食糧問題とのかかわり合いを見ていきたいと思うわけでありますが、この事故は大変多くの問題を提起しておると思うのです。  一つは、世界の食糧需給に与える影響。今、串原委員からも質問があったわけでありますけれども、つまりチェルノブイルが位置しておるところはウクライナ、これはソ連の穀倉地帯と言われておるわけでありますが、この穀倉地帯におきましては年間四千三百万トンの穀物を生産しており、全ロシアの二一%を占めておる。また、隣の白ロシア、バルト三国におきましては千百万トン、五・五%生産をしておる、こう言われております。  そこで空中に大量の放射能がばらまかれる。これがさらに雨とともに地上に降ってくるわけであります。既に、牧草を食べておる乳牛から出る牛乳は、とにかく飲用牛乳は飲めない、こういうことであるわけでありますが、飲用年乳が飲めないということは、当然バター、チーズ、脱線粉乳等乳製品に対しましても今後大きな影響が出てくると見なければならぬわけですね。それから、これから刈り取りその他をする穀物の生産に大きな影響を与える。  だから、現在新聞等で報じられておるような事態は大したことはないというような認識もあるようでありますが、中長期にわたっていきますと、その損害というものは相当のものが出てくるのではないか。既にEC諸国はポーランドや東欧諸国からの生鮮食料品の輸入を禁止しておるようでありますし、また、このチェルノブイルの原子力発電所の冷却水が流れ込んでおるドニエプル川の汚染は、ひいては黒海の汚染へとつながっていくわけです。そうしますと食糧全体に大きな影響を与える、こういうことでありますが、この問題はやはり相当よく注視して、世界の食糧の需給事情に与える影響を見ておく必要があるのではないか、この点につきまして、まずもって政府がどのような認識で当たっておるかという点を質問したいと思います。
  52. 後藤康夫

    ○後藤(康)政府委員 お答えを申し上げます。  ソ連の原発事故が農産物に与える影響につきましては、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、十分詳細な情報が得られないということでつまびらかになっていない点が多いわけでございますが、御指摘のとおり、今後の被害の態様といたしまして、農業地帯への放射能灰の降下による農作物なり農地の汚染の問題、それから、かんがい用水に使われるドニエプル川の汚染等の問題が考えられるわけでございます。特に酪農生産というようなことになりますと、いわば食物連鎖を通じてそういう放射能が濃縮された形で出てくるというような心配も一部に言われているわけでございます。  まず、食糧需給に及ぼす影響ということにつきましては、穀物については一時シカゴ相場で乱高下が見られましたけれども、このところ落ちつきを取り戻しております。アメリカの幾つかのソ連専門家あるいは研究所が、ソ連の穀物生産の一〇%ぐらいは減少ないしは廃棄処分をしなければいけないんじゃないかというような見通しを出した時期もございましたが、最近そういう見通しがむしろ否定されてきているという傾向でございますし、穀物全体が国際的に非常に過剰状態にございますので、当面、量の確保については問題はないというふうに考えております。  ただ、今お尋ねの中でございましたように、今まで国会でもたびたび食糧の安全保障というような御議論がございました。そういうときに、局地的な戦争とか非常に大きな異常気象、あるいはまた港湾ストというようないろいろなケースが想定されておったわけでございますが、こういう原発事故というような形で、それが大気を通じて世界的に拡散をされ、相当広範囲に影響を及ぼすというようなことは、食糧安全保障ということを考えます場合に、また一つの新しい問題を投げかけたものと私は受けとめておる次第でございます。
  53. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員 世界の需給には当面心配ないという認識を示されました。  しかしながら、この今回の事件でもう一つ我々に示唆している問題は、今局長が申されましたように、外国から食糧を輸入するという点におきましては、このような不測の事態が起きたならばその供給に不安が起きる、こういうことであるわけであります。よく貿易摩擦の解消の一環として、内外に、農産物の市場を自由化すべきではないかという議論があるわけであります。しかし、食糧を外国に依存する度合いが高くなればなるほど、このような不測の事態が起きた場合にはまさに国の命運を左右する重大な問題となるわけであります。  したがって、このような原発事故が起こり得る、これも不測の事態に数えられる、それから、今局長が挙げられたように港湾ストであるとか自然災害、また同時に、我が国は四面を海に囲まれておるわけでありますから、海上輸送路を遮断されるということになりますと、国の安全保障上重大な問題に発展してくる。したがって、食糧の問題につきましては、必要なものは外国から輸入しますけれども、やはり主要食糧は自分の国で生産の手段を確保する、これすなわち食糧の安全保障政策、我々が主張してきたことがこの今回の事件によって十分実証された、こう考えておるわけでございます。  そこで、この点に関しまして、食糧安全保障的な観点から食糧政策というものをとらえていかなければならぬと考えるわけでありますが、まずもって政務次官に、この点について御感想がありましたらお聞きしたいと思うわけであります。
  54. 保利耕輔

    ○保利政府委員 食糧の安全保障の問題について先生お触れをいただいたわけでございますけれども、今回のチェルノブイル発電所の事故は、大変不幸な事故でございまして、このような事故は二度とあってはならないことだと私は考えておりますし、また、日本の原子力政策は安全の上にも安全に力を入れているわけでございますので、このような事故はあり得ないと私は考えておるわけでございます。  先ほど先生からお話のございました食糧の安全保障という観点から今回の事故をどういうふうに考えておるか、そしてまた、食糧の安全保障そのものをどう考えるかということでございます。  今先生から御指摘のとおり、外国の食糧に依存をするという体制が国の中にでき上がってしまいますと、一たん世界で大がかりな不作でございますとか、あるいは小さい問題でございましょうけれども港湾ストでございますとか、あるいは河川凍結でございますとか、あるいは外交上の手段として輸出規制をしてくるというようなことでございますとか、あるいは国際紛争等にふって食糧が入ってこなくなったときには、安定的に国民に食糧を供給することができなくなってくるわけでございますので、この点は十分に我々が考慮をいたしまして、食糧安全保障の点を考えていかなければならないかと存ずる次第でございます。  私は、常日ごろ、いついかなるときにも国民に対して安定的に食糧を供給するのが農政の基本方針であると考えておりますので、今回の事故を契機にいたしまして、国民の中に食糧安全保障という考え方が十分出てまいりますことを期待をいたしておりますし、私どももそのために頑張らなければいけないかと存じます。  なお、つけ足しになりますが、今回の事故は大変大きな不安を世界各国に引き起こしておりますし、特に農産物に対する大きな影響あるいは不安というものを引き起こしていることにかんがみまして、ソ連はあらゆる情報をできるだけ公開をすべきであるというふうに私は考えております。
  55. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員 そこで、食糧の安全保障という観点から物を考える場合に、当委員会でも論議をされてまいりましたが、食糧の自給力と自給率の関係、これをもう少し明確にしておく必要があると思うのです。政務次官は去る委員会の答弁で、この食糧自給力と自給率の違いは率と力の違いである、こういうことを言われましたが、しかし、これはもう少し実態に踏み込んで議論しておかなければいかぬと思うのです。  そこで、食糧の自給率という点から考えていくと、我が国の食糧自給率は年々低下しているということが言われておる。カロリー計算でいきますと約五割、それから穀物の自給率は約三割ということで、非常に低くなっているということがよく問題にされます。しかも、こういう食糧自給率が低下しているのは政府・与党の農業政策の失敗であるというようなことがよく議論されるのでありますが、これは必ずしも実態を十分把握した上での議論ではないと私は思うのであります。  と申しますのは、日本の国土の成り立ち、それからまた戦後の日本の経済成長という線を考えてまいりますと、日本の食糧政策の中で最も発展をしてきたのが畜産、酪農部門である、私はそういうふうに考えます。非常に食卓が豊富になってまいりましたのは、この畜産、酪農が飛躍的に発展をしてきたためである。具体的に数字を挙げてみますと、戦後の食糧難のとき非常に貴重な食品でありました鶏の卵でありますが、今日、採卵鶏だけでも一億二千万羽を数える。雌の鶏だけでは卵を産めないわけでありますから、雄の鶏もいる、含めますと一億七千万羽飼養しているわけですね。それから、ブロイラーにおきましては約一億五千万羽飼養しておる。それから、豚におきましては約千二百万頭。それから牛は、乳牛が二百十万頭、肉牛が一一百五十万頭。こういう膨大な畜産、酪農というものが発展してきたのは何に起因するか、この点をやはり考えてみなければいかぬ。  そうしますと、畜産を養っていくためには広大な牧野が必要なんでありますが、我が国は三十七万平方キロ、三千七百万町歩しかないわけであります。そのうちで七〇%が山岳地帯で、二千五百万町歩が緑の山である。千二百万町歩の中で五百四十万町歩が農地であれば、残りは全部人が住んでおる地域、あるいは道路であるとか河川であるとかそういうところに占められておるわけでありますから、結局新しく農地をつくるだけの余裕はない。そうなってまいりますと、大平原、大牧野がないわけでありますから、結局、畜産、酪農というものを養ってまいりますもとであります飼料穀物、これは外国から輸入せざるを得ない。これはやはりアメリカを中心として約千七百万トン輸入しておる。加えて小麦の輸入、これが大体五百八十万トン、合わせて二千三百万トン輸入する。米は千百万トンでありますから、結局穀物の自給率は三二、三%、こういうことになる。  そこで、それじゃ自給率だけを問題にすれば、穀物の自給率を高めて、外国からの飼料穀物の輸入をとめれば率そのものは上がるということになるのですね。しかしながら、率が上がっただけで食糧が豊富になるかというと、食糧は豊富にならない。つまり、非常に緊迫するという逆の現象があるわけなんですね。したがいまして、平和時におきましては、やはり国民の食糧に対する満足度といいますか、これは単に自給率を論議するだけでは十分じゃないと私は思うのです。ですから、畜産、酪農を盛んにしまして食卓を豊富な食糧によって確保するということが大事でありますから、私は、自給率だけで議論するのではなくして、やはり必要なものは外国から安定的に輸入する、これも食糧政策の中に組み込んでいかなければならぬじゃないか。  しかして食糧の自給力でありますが、これは主として、もし外国から食糧が入ってこないという時点になった場合、これを想定した場合にどれだけ国内で生産力があるのか、この点にむしろウエートを置いて論議すべき概念ではないか、こう思うわけでございます。つまり、国家的な危機に遭遇した場合におきましては、ぜいたくな食糧を食べるというよりは、生き延びる、こういうことが大事でありますから、とにかく飢餓状態に陥らないで、国民が何カ月でも何年でも危機の状態を乗り切るためにお互いに助け合って生き延びていかなければいかぬ、こういうことになると思うのですね。だから、食糧の安全保障という問題は、つまり日本の国土の中で一億一一千万の国民を危機、危急存亡のときにどれだけ養っていけるか、この点に食糧自給力はウエートを置いて考えるべきじゃないか、こういうふうに私は考えるのです。  そこで、食糧の自給力という点におきまして、もし外国から一切食糧が供給されない、こういうことを想定した場合、国内の農林水産業でどれだけのカロリーを確保することができるか。例えば今米も減反を六十万町歩いたしておるわけでありますが、そういうものもすべて米の生産にする。それから、必要であればゴルフ場とかそういう平地も全部食糧生産に切りかえる、そして、例えばジャガイモとかそういうものを植える。それから、沿岸、沖合の水産業で約九百万トンぐらい漁獲を上げておるわけでありますが、こういうものも、ハマチにイワシを食わしてハマチを食っているというようなぜいたくなことではなく、イワシを目刺しにして食べる。一汁一菜でとにかく頑張り抜くんだ、こういう姿勢が大事だと思うのです。だから、やはりそういう危急存亡の際に、農水省でもあるいは試算していると思いますが、どれだけのカロリーを今日国民の皆さんに保障できるか、この点について、試算の結果がありましたらお答えをいただきたいと思います。
  56. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 海外からの食糧輸入が途絶した場合にどの程度の供給力があるかということにつきましては、過去試算した例がございまして、現状の農地規模五百五十万ヘクタールを前提にして計算しております。その場合には、今先生から詳しく御指摘がありましたように、畜産部門とか果樹あるいは野菜というようなものの生産は大幅に縮小いたしまして、カロリー効率の高い米とかカンショ、バレイショ、こういう作貝の生産を大幅にふやすということで最大限の供給カロリーというものを試算してみますと二千八十カロリー、現在が約二千六百カロリーでございますので現在より五百カロリーほど減りますけれども、これはちょうど昭和二十年代の最後の、食糧難から若干脱し始めたころのカロリーに相当しようかと思います。  ただ、先生からもお話がありましたように、こういうカロリー供給体制になりますと、例えば卵について見ますと、現在十四・八カロリー供給しておりますけれども、これは〇・四しか食べられなくなる、あるいは肉につきましても、・豚肉で九・七カロリー消費しておりますけれども、この試算では〇・一というようなことで、食生活の中身が大幅に変わろうかと思いますけれども、人間として生存可能なカロリーというものは供給は確保できると思っております。
  57. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員 今二千八十カロリーという試算があるという話がありましたが、私はこれは大事だと思うのですね。ぜいたくな食事をしなくても、臥薪嘗胆で、」人間の生存が可能であるぎりぎりの線をもし自給することができるならば、これは食糧の安全保障体制からも極めて大事な問題であると思うのです。したがいまして、この食糧の自給力がこれ以上低下しないように政策を進めていくということが私は最も大事なしとであると思うのです。  世界の食糧の需給関係というものを考えてみますと、今までもいろいろな団体とか審議会とかローマ・クラブとかいろいろなところで試算しておるわけでありますが、想定される将来の情勢といいますのは、人口はどんどんふえていく、しかしながら農地はなかなか伸びない、こういうことです。例えば、今日五十億の人口がありますが、紀元二〇〇〇年には六十億になる、二〇%の増加でありますが、農地はわずか四%ぐらいしか伸びないという認識が示されておる。  そこで、昨年の十一月東京で開かれましたFAOの総会におきましては、こういう中長期的な観点から考えて、不足する食糧に対して世界の国々は今こそ世界食糧安全保障協約を結ぼうということで、これはコンパクトとも言うし、申し合わせですかが必要であるということで、世界の国々の政府は、まずもって自国の国民に対して食糧の安定供給というものに最大限の責任を持たなければならぬ、それからまた、それぞれの国の社会並びに個人もそういう方向に向かって努力すべきである、こういうことを取り決めました。これに対してアメリカ、カナダ、オーストラリアが署名を留保した。これは非常に象徴的なことだと思うのです。つまり、これらの国々は先進農業国家でありますから、常に農産物も貿易の自由化の対象にしてどんどんやるべきである、世界の市場を自分たちは独占したいという考えだと思うのです。しかしながら世界の大多数の国々は、食糧は今後非常に危機的な状態に直面をするから、まずもって自給力というものを確保しなければいかぬ、そして責任を持たなければいかぬ、こういうコンセンサスが得られたことは非常に大事なことであります。  この申し合わせの中には、途上国の立場を考えて先進国も食糧の輸入をしようというようなことも書いてありますけれども、絶対的に食糧が不足するわけでありますから、そういう観点から考えてまいりますと、貿易の自由化というものがいつも論議をされるわけでありますが、食糧というものはガットの中におきましても一定の枠の中に位置づけられておる、したがって、今後我が国が世界の国々に対して農産物の貿易の戦略があるとしますならば、農産物というものは一定のルールの中で、これは徹底した自由化を進めるのではなくして、それぞれの国々が自給力を確保した上で、なおかつ余剰なものは貿易に回すというような方向に世界の国々を説得していく必要があるのではないか、こういうように考えるわけでございます。この点に関して政務次官、何かコメントがありましたら……。
  58. 保利耕輔

    ○保利政府委員 食糧の自給力を確保せよというお話でございます。当然だろうと思っておりますし、また私が先ほど御答弁の中で申し上げましたように、いついかなることがあっても国民に安定的に食糧を供給するというのが農政の基本であらなければいけないという考え方を持っておるわけでございます。このいついかなるときにもという意味は、まさに先生が御指摘のような緊急時において国民に十分な食糧を供給できる体制、力を日本がつけておるのかどうかということでございますので、その点につきましては、先生の御指摘も十分に念頭に入れてこれからの農政に対処していかなければならないところだろう、このように考えておるわけでございます。  自給力というものは当然その国の自然条件によって左右されるものでございますし、また、日本は歴史的に見ましても百数十年前までは外国の食糧に依存するということが一切なかった国であるというようなこともございます。本来そういった自然条件を日本は備えているのかなと思っておりますので、いかなる事態が起きようとも国民に対して安定的に食糧を供給していくということが政治に課せられた義務であろうと思っております。
  59. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員 そこで、先般サミット経済宣言農業問題が取り上げられました。これは日本とのかかわり合いをいろいろ論じられておりますが、私は、むしろこの問題は、昨年の十二月二十六日にOECDから出された報告書の中に指摘されておりますように、アメリカとECの過剰なまでの農業に対する保護政策、これは自分の国の農産物補助金をつけて海外の市場を荒らし回る、こういうものに対する大変大きな警告であると思うのです。ですから、この問題に対しましては、我が国はむしろ農業生産性を求め、合理性を求めて、補助金についてもできるだけ切り詰めながら頑張っておる、価格につきましても非常に厳しい選択をいたしておるわけでありますから、日本はサミット経済宣言においては模範生である、むしろ我々の方からアメリカ、ECの方に教えてやるというぐらいの気迫を持ってやらなければいかぬと思うのです。  アメリカは、この前新農業法が制定されましたけれども、例えば乳製品につきましても、市場に出回って余ったものを政府が買い上げる、一〇%から一二%、それだけでもとにかく一年間に二十億ドルも政府は支出しているわけです。日本の加工原料乳の制度ですと四百六十億円でしょう。向こうは三千億円から四千億円ぐらいとにかく使っているのですから、そういう点からいいましても、日本の保護政策はアメリカと比べても保護率というものははるかに少ないのだ、私はそう思うのです。生産性の問題あるいは合理性の問題についてはまだまだ解決しなければならぬ問題があるわけでありますが……。だから、そういうアメリカの日本に対する十二品目を即時自由化しろというような要求は受け入れてはならぬと思うのです。先ほどからの説明ですと、アメリカとEC農業戦争というのがあって、そのとばっちりでメンツ上も日本に対して自由化を要求しなければアメリカの立場がないというような経済局長の説明でありましたが、そういうものは理不尽であるというふうに申し上げなければいかぬと思うのです。  ですから、我々は食糧の安全保障の立場に立ち、また世界の国々のFAOにおける申し合わせ、また今後の中長期的な面における世界の食糧の需給関係というものを見ましたときに、日本の食糧安全保障政策をまさにしっかり確立し、食糧の自給力を確保し、そして海外からの農産物の自由化要求に対しましてはこれをはっきり断る、そして世界の国々の十分なるコンセンサスを得ながらやっていく、これが大事であると考えるわけでございますので、今後ともこの線に向かってしっかりと頑張ってもらいたい、このことを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  60. 大石千八

    大石委員長 武田一夫君。
  61. 武田一夫

    ○武田委員 大臣がおりませんけれども、時間が空白になるのも非情にむだでございます。それに皆さん方大変忙しいということで、後ろの方に時間が繰り下がらないようにという配慮をいたしまして、五十分ほど大臣抜きで質問をさせていただきますので、次官、よろしくお願い申し上げます。  最初に、円高の問題で大蔵省にお尋ねいたします。  大蔵省は、この問題でどのように状況を把握し、それがどのようなところにどういう影響を与えているか、今後こういう問題に対する対応はどうすべきかという問題を、まとめてひとつ総括的な答弁をお願いしたいと思います。
  62. 畠山蕃

    ○畠山説明員 お答えいたします。  御承知のとおり、現在円レートが急激に百六十円台ということになっておりまして、これはどのレベルが適切かということは申し上げにくい立場でございますけれども、確かに急激に円高の方向に行ったという認識を持っております。ごく最近では多少戻している感じはございますが、いずれにいたしましても、この円高への移行は急激であった。したがいまして、これが我が国経済に対してかなり深刻な影響を与えているという認識もまた持っておりまして、特に輸出関連の中小企業に対します影響というものはかなりのものであると思っております。  そこで、政府といたしましても、四月八日にまとめました総合対策の中で、中小企業対策につきまして、その事業転換資金を五・五%から五・三%に引き下げるといったようなもろもろの措置を講じているところでございまして、現在もさらに、総理からの指示もございまして、緊急にさらなる中小企業対策が必要かどうか、どういったものをまとめることができるかということを所管の中小企業庁と大蔵省主計局の担当係の間で鋭意詰めているところでございます。
  63. 武田一夫

    ○武田委員 これは四月二十日ごろですか、大蔵省が聞き取り調査をなさいましたね。関東、甲信越の一都九県を対象に調査した。この地域は輸出型地場産業の多いところだということで調査の対象になったのだと思います。  そこで、その状況をちょっと見てみますと、これは大企業でも、六十年度上期に比べ下期の輸出金額、ドルベースが減る、こういう予想をした企業が六〇%もある。それから、数量ベースでもこの円高による減少予想が半分以上あった。それから、輸出価格は七五%が引き上げたけれども、引き上げ幅は五%上げが四五%、一〇%上げを含めると八割ということですが、これは円の上昇幅に比べるとかなり控え目であるというようなデータです。  問題なのは、特に地場産業の輸出を見ると、輸出を引き受ける商社からの値下げ要求が相当出されているということで、七五%の企業が採算ラインを下回る受注を抱えている、そういう回答をしている。それから、操業率は非情に低調である、受注残も、円高前に四カ月分あったのが一カ月分に減ったというケースも出ている。  こういうのが大蔵省のある地域の調査によって出ているわけでありますが、特に下請企業や地場産業での受注減少、コスト割れ受注など、相当な影響を抱えているだけに、こういうところへの対応を早急にしなければこれはえらいことになる。私たちはもう十二日ごろからこの問題については早く手を打つべきだと再三要求しているけれども、さっぱりやらぬ。なぜそれが適切にできないのか、大蔵省の立場からひとつ考えを聞かせてもらいたい。これは後、農林省にもすぐ飛び火しますので、その点まず大蔵省から御答弁を聞きたいと思うのです。
  64. 畠山蕃

    ○畠山説明員 御指摘の中にありました調査は、財務局長会議に関連しまして、各地域について調査し、特に御指摘の地域については詳細に調査した結果でございます。  それで、御質問の中にもございましたように、かなり深刻な影響が中小企業を中心に出ておるということは事実でございます。したがいまして、最初に私が申し上げましたとおり、現在、総理の指示をも踏まえまして鋭意検討をしている最中でございます。特段にこれをおくらせているということではございませんで、御理解いただけると思いますけれども、大蔵省主計局は受け身の立場、一応検討させていただくという立場でございまして、中小企業庁の方からの具体的な措置の要求がございまして、それを両省庁で相まって検討を進めている、現在まさにそういう状況にございます。早急にまとめたいという意向でございます。
  65. 武田一夫

    ○武田委員 そこで、農林省に尋ねます。  農林省関係で、円高問題の影響が相当波及している部門はどのようなものか具体的に御説明いただき、その対策としてどういうことをしてきたか、またこれからされようとしているか、その面をひとつ御説明いただきたい。
  66. 鴻巣健治

    ○鴻巣政府委員 農林水産関係の企業につきましても、輸出額が減るとか輸出契約の成約額が減るといった現象、そういう状況が見られますし、さらに、工場が休むといったような厳しい状況が見られるわけであります。  具体的に言いますと、円高の影響を受けております中で一番目につきますのは、ことしの一月と三月を昨年の一月と三月に比較してその輸出金額を見てみますと、国産材の合板関係が二四%減っております。干しシイタケの選別、加工が五二%になっております。それから、ミカンの缶詰が六一%、水産缶詰、瓶詰が七二%、冷凍水産物が八二%というように減っておりまして、また、成約額も落ち込んでいるという状況でございます。  それから、休業とか倒産の業種というのはまだ少ないのですが、ミカンの缶詰で倒産が三企業、休業が大企業などの影響が出ております。また、競合する輸入品がふえてきまして、国内の関連企業に影響が生じるというのが少しずつ出ているところが気になるところでございます。  それで、今までどういうことをやってきたのだというお尋ねでございますが、こういった急激な円高による影響にかんがみまして、この国会で成立させていただいた特定中小企業者事業転換対策等臨時措置法に基づきまして、一つは、中小企業者が内外の構造変化に対応するために行う事業転換の円滑化を図ると同時に、円高によりまして事業活動に支障を生じている中小企業者の経営の安定を図るための、税制あるいは信用補完といった面での助成措置を講じております。  また、この事業転換法に基づきまして業種の指定それから知事の認定を受けた業種につきましては、中小企業国際経済調整対策等特別貸付制度というのをつくりまして金融面でも具体的に助成をしておりますが、現在のところ、つまり三月四日付で業種指定をこの法律に基づいてやりましたものは、水産缶詰あるいは瓶詰、冷凍水産物など全国の業種で六業種、それから、パイナップルなど特定の地域で生産が集中して行われている地域業種六業種を業種指定をいたしておりまして、融資などをやっておるところでございます。  その後またさらに円高が進んでおりますので、その影響を受けている業種が御指摘のようにございますので、現在その実態を調査中でございまして、その結果を見て追加指定をするとかその他いろいろな対策をやろうということで、今中小企業庁と相談をいたしているところでございます。
  67. 武田一夫

    ○武田委員 それでは今の問題で、それはいつごろまでにきちっとした結論が出るのか。余り遅くやると、病人でも初期の段階で手当てしないと大変なんでして、薬も効かない、注射も効かないではしようがありません。ですから、その点の適切な対応というのを、これは何でも同じでありますが、いつごろまでにそういうきちっとしたものがやれるのか。それはどうですか。
  68. 鴻巣健治

    ○鴻巣政府委員 今申し上げましたように、かなり影響は深刻に出ておりますし、休業や倒産もわずかながら出ておるという状況でございまして、漫然と日を過ごしているわけにはまいらないというように深刻に受けとめておりますので、できるだけ早い機会に、業種の追加指定なり、もし新たに手を打つことができるならば、そういう手も打たなければならないと思って検討しているところでございます。
  69. 武田一夫

    ○武田委員 ちまたに行きますと、さっぱり効果が出ていないじゃないか——この間、牛、豚、バターなどについては引き下げを決めて、四月からこれは実施しているわけですね。だけれども、もっと下げてもいいのじゃないかという声があるのですが、この実態はどうなっているのですか。どのくらい今まで下げて、どういうふうな状態で今消費者に届いているのか、この点少し具体的に聞かせてもらえませんか。
  70. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 輸入牛肉に係ります円高差益の還元の問題でございますが、私ども、この円高差益を消費者により直結した形で還元したいということでいろいろな対策をやっているわけでございまして、その内容につきましては、既に、四月八日に決定されました政府の総合経済対策の中に織り込まれているわけでございます。  内容的には、一つには、本年度の牛乳、牛肉の安定価格を引き下げるという措置を講じたわけでございますし、また輸入牛肉につきまして値引き販売を行おうということでございまして、具体的には、畜産振興事業団の指定輸入牛肉販売店及び肉の日におきます小売目安価格を、従来は市価の一、二割安ということに置いておったわけでございますが、これを二、三割安と引き下げていくというふうなことをやっておるわけでございますし、かつまた、肉の日は月に一回ということで実施してまいったわけでございますが、これにつきましては各月二回にする、回数をふやすというふうなことにいたしたわけでございます。  さらにまた、ことしのゴールデンウイークの期間を利用いたしましてビーフウィークというものを設定いたしまして、全国土地域におきましてこの期間中牛肉の特別販売、これは先ほど申しました市価の二、三割安ということで輸入牛肉の販売をやったわけでございます。さらにまた、国産牛肉につきましても、小売業界の御協力を得まして、同じ場所におきまして、こちらの方は市価よりも一、二割安ということでの廉価販売を行った次第でございます。  さらにまた、先生御案内のように、現在の畜産物価格安定法のもとにおきましては、発生しました輸入差益は、指定助成事業として牛肉の生産、加工、流通、消費等の各般の面について実施をするというふうになっているわけでございまして、そういった面で、今回につきましては、特に流通、消費対策の拡充強化という点からいろいろな事業を考えまして実施をするというふうにいたしておる次第でございます。
  71. 武田一夫

    ○武田委員 それはわかるのですが、ただ、この販売数量が少ないとか、また、指定店が少ないじゃないか、そういう批判というか声はあるわけです。だから、この際もっと数量をふやす。指定店が今までは何軒なんですか。全国三千店ですか。全国三千店の指定輸入牛肉販売店等全国一万店で云々とありますが、全国にどのくらいあるのかわからぬけれども、ほんの一部分じゃないか。私の地元を見たって、こういう店を探すのに苦労するわけですから、たった七十万都市でね。  だからこういう点を考えると、この際、そういう指定店の枠をはみ出したところでもやるようにすれば、それは効果が出てくるし、また手ごたえがあるというふうになると私は思うのです。これは奥さんや、奥さんでない、要するに、日ごろは余りそういうことに関係していない男性も、この円高問題は特に関心を持っているだけに、家庭の話題になったり職場の話題になるときに出てくる話なんです。  だから、そういうことを考えると、これはもう少し効果のあるような——農林水産省としてもこのとおり一生懸命なんだというのが手ごたえがないようでは、これは本当にお気の毒でございまして、私は、その点をひとつもっと効果あらしめるようにすべきだ、こう思うのですが、いかがですか。
  72. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 先生に御理解賜りたいと思いますことは、現在の牛肉の価格制度につきましては、畜産振興審議会の審議を経まして決めました安定価格帯の中に牛肉の価格をおさめるというふうな基本的な命題を抱えているわけでございまして、したがいまして、輸入牛肉の価格が下がったから途端にストレートに下がるという仕組みではないという基本的な問題があるわけでございます。  そこで私どもは、あくまでもこの価格安定制度との調和を損なわないような範囲内で行うというふうな配慮が必要でございますし、また、肉自体につきましてはそれなりの流通経路があるわけでございますので、既存の流通秩序を乱すようなことがあってはこれはまたまずいわけでございますので、そういったことを総合勘案しながら、どちらかと申しますと、私どもなりにぎりぎりいっぱいの線で今回の措置は決めたというふうに考えているわけでございます。  ただ、先ほども申しました今回の措置自体につきましては、まだ取りかかったばかりのことでもございますので、今回についての効果なり評価なり、そういったものも十分見きわめながら今後さらに続けていくわけでございますし、秋にはまた再びビーフウイークを開催する予定でもおりますので、そういった点につきましては十分検討しながらいろいろ工夫をしていきたい、かように考えております。
  73. 武田一夫

    ○武田委員 ひとつそういうことで消費者対策をまずお願いしたい。  特に、生産者に対する差益還元というのもあるわけですね。これは現状ではどういうふうになっておるわけですか。また、今後どういうふうなところで還元というのが具体化されるのか、この点ひとつ御説明いただけますか。
  74. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 事業団が取得いたします輸入牛肉によります差益の使途につきましては、畜産物価格安定法上、指定助成事業として列挙されました事業に対して出すわけでございまして、その内容につきましては、先ほどもちょっと触れましたように生産面、価格面、流通面、消費面、多岐にわたっておりまして、今回のこういった価格の値下げということと同時に、そういった中長期的に生産の増強、ひいては消費者の利益につながるようなそういった形の事業に充当し、そういった事業を拡充していきたい、かように考えているわけでございます。
  75. 武田一夫

    ○武田委員 支持価格制度というのは、一つは生産者の保護のためにつくられている、これは私たちも承知しております。それだけに、生産者にも差益が行くような運用というのは当然必要だし、生産者の方も期待しておるわけですから、片方だけにしないで、していくとまた皆さん方が御苦労するんじゃないかと思うのです。だから、その点はやはり今後の検討の中で十分に納得のいくような対応をしてほしいな、こういうふうに思います。答弁は要りません。  時間がないから、その次に小麦の問題でありますが、小麦の方は円高の影響はどうですか。
  76. 石川弘

    ○石川政府委員 小麦につきましては、御承知のように食管法の中で国内産麦、これは比較的買い入れの値段が高くコストが高くなっておるわけでございますが、これと輸入をいたしております麦のコストをプールをいたしましてここ数年管理をいたしておりますが、法律的には、そういう状況のほかに消費者米価との関連も考えて決定するようにということになっておるわけでございます。  六十年の動きを見ておりますと、これは御承知のように国内産麦が大変豊作でございました。したがいまして、財政的にはマイナス要因が多うございましたので、昨年の十二月の消費者麦価決定の際に、実は財政当局からは消費者麦価を上げてほしいというようなお話もあったわけでございますが、私どもは、円高の推移等を考えますと特に上げる必要はなかろうということで、御承知のように昨年十二月には据え置きをいたしました。これで五十八年以来連続ずっと据え置いてきているわけでございます。  その後の状況を見ますと、御指摘のように円高が当初私どもが考えました以上に推移をいたしてきておりますので、いわば当時想定したものに比べまして、将来、これからの穀物価格というようなこともそのままだと推定をいたしますと、二百億を超えるくらいの差益があろうかと思います。  ただ、これは先生もよく御承知のように、食管の場合は上がったときそれでは丸々上げたかと申しますと、ちょっと古い話で恐縮でございますが、四十八年、四十九年、五十年の三年間は穀物価格が暴騰いたしまして、そのまま価格を上げますと消費者に大変な影響があるということで、三年間で約二千五百億円の国費を投入して上げないできた。その後なだらかに上げてはまいりましたけれども、そういう形で、上がるときにも素直には上げないけれども、下がるときにもただ円高だけで下げないという手法が食管の運用でございます。  ことしの場合、今申しました二百億円というようなものを商品価格にまで還元するといたしますと、食パンで申しますと、四百グラム、一斤というのは今百六十円くらいの価格でございますが、これが一円数十銭、二円までいかないと思いますが、それくらいのコスト。それから、うどんで申しますと、ゆでめんというのは今二百五十グラムで大体六十五円前後だと思いますが、これに対しては八十銭程度の影響力でございます。  私ども常々こういう場合に選択に迷うわけでございますが、御承知のように政府が売りますところはいわば政策価格でございますが、それから先の製粉を通じて加工へ行きますところはすべて自由価格でございますので、今申し上げましたような水準で見た場合に、最終の例えばお菓子屋さんとかうどん屋さんとかいうところへ行くと、実は小売店舗の数でも百万軒を超えるわけでございまして、こういうところから間違いなくその差益がいわば消費者に還元できるということは至難のわざでございまして、私どもの今の考え方で申しますと、これについては食管の中で留保をいたしております。逆に言うと、上がるような要因が出てきても上げないで済ませていきたい、なるべく安定的な価格を長く続けたいと思っておるわけでございます。  御承知のように、例のチェルノブイルの原発事故が起こりました直後でございますが、小麦は、一時だけでございますがストップ高をしたというようなこともございまして、私どもは小麦の海外相場、それと円、それと国内における農産物価格をにらみながら、安定性ということを重視をして考えてまいりたいと思っております。
  77. 武田一夫

    ○武田委員 長官の御趣旨は私もわかります。ただ、そういうほんの少しの還元でも、いろいろなものが総合的に集まってくれば家計に与える恩恵はかなりの波及効果があるのです。例えば、消費者米価が上がりますと、関連しなくても物価が上がるということはいつも四月、五月、六月というときにある。その反対に、こういうものが一つ下がることによって、ほかに同調するものが出てくるということも消費者は期待しているわけです。私も、そういう一つの方向性というものを生み出す大きなかぎを握っているのが小麦とか牛肉等ではないかと思うわけです。十円の変動で六十五億の差益があるということですから、例えば今百六十円台が百八十円台となっても百三十億くらいの利益が出てくるわけですから、こういう点は、今後の経済動向、消費者のことをひとつ主眼として取り組みをしてもらいたい、このことを要望をしておきたいと思います。  次に海の方に移りますと、カツオが大分苦労しているようですね。この点で輸出不振をかこって非常に大変だということでありますが、これはどういう状況でありますか。
  78. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  大体ならしてカツオの漁獲量が三十数万トンというところでございましょうか。そのうち十万トン見当のものが輸出に振り向けられるということで元来はカツオの需給関係というのが成り立っておったわけでございますが、御高承のような円高になりまして、カツオの輸出がほとんどうまくいかないような状態になっております。現在カツオの窮状の基本はそこにあるように思っております。  そのほか、マグロの赤身が値下がりをしておって、それがカツオに対しても有害な影響を与えている側面も無視しがたいことであろうと思っております。そこで、私ども昨年の終わりごろからマグロの赤身の対策として、マグロの赤身をできるだけいろいろなキャンペーンを通じて販売の促進に努めてくると同時に、できるだけ内地の港への水揚げをずらしてきてもらっておったわけでありますが、そのずらしてきたものがちょうどまたあの円高がきつくなってきているところにやってくるということで、余計事態が混迷しておるように思っております。  こういう事態でありますので、私どももなかなかいい手がないわけでございますが、一つは、日鰹連などに御相談をいたしましてできるだけ外地水揚げを推進してもらいまして、国内のマーケットに影響を及ぼさないように漁獲物の処理をしていただく。それから、これは余り大きな声で話をして聞こえるとまずいところがあるのかもしれませんが、そういう外地水揚げをすることによって生ずる損失を、言うなれば中でプールして処理するというようなことによりまして、できるだけ国内のマーケットに響かせないようにする。もう一つは、中積み船の規制でございます。そのほかに役所側として今考えておりますことは、外務省とも御相談をいたしまして、開発途上国向けの食糧援助の中にできるだけ押し込んでいく、そういうことを通じて何とか漁業者に対する被害を緩和するように努力してまいりたいということで努めておるところでございます。
  79. 武田一夫

    ○武田委員 関係業界からは、長官あてに六項目にわたる緊急対策の要望をしております。「南方漁場に出漁する大中型まき網漁船による漁獲物の外地陸揚げ等輸出仕向けの促進」以下六項目を緊急対策として要望されているということでありますから、こうしたものを十分検討して、魚価暴落に遭遇して業界が大変な窮地に陥っている状況を一日も早く救済してほしい、こういうふうに思うし、また、これによって輸入に拍車がかかるということの影響も考えなければいけない現実にあるということでありますから、この点もしっかりとお願いしたいのですが、長官どうですか。
  80. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  未曾有の難局に直面しているわけでございまして、そういう意味で、私ども行政の側と業界の皆さん方との間で十分意思疎通を図って難局に対処してまいりたいと思っておりますので、先生がただいま言及なさいました業界側の御要望につきましても十分検討をさせていただいて、協調して対応してまいりたいというふうに考えております。  輸入問題につきましては、現在カツオの市況の対外関係につきましては主として輸出不振という形で問題が顕在化しておるように認識をしておりますが、当然見逃していい問題であるとは思っておりませんので、その問題につきましても十分心してまいりたいと考えております。
  81. 武田一夫

    ○武田委員 きょうは外務省も来ているのですが、農業問題以上に大変な大波の中で苦労しているというのが日本の水産漁業界の実態でございます。  外務省の皆さん方農林水産省、特に水産庁の皆さん方をバックアップして、いろいろ御苦労なさっていると思うのですが、アメリカやソ連などの日本に対するいろいろな意地悪というか厳しい対応を我々としては何とかして阻止しながら、日本の漁業を守るために一生懸命頑張らなくてはいけないということで、自民党の皆さん方も懸命に頑張る、野党の我々も頑張る、水産庁も頑張る、漁業関係団体も一生懸命頑張る、そういう挙国一致体制のところに外務省さんの格段のお力添えが必要だと私は思うのであります。こういう点、日本の漁業を守るために今後どういうふうにやっていったらいいかということについての外務省さんとしての高適なる御意見をひとつ拝聴したい、こう思うのでございます。
  82. 秋山進

    ○秋山説明員 お答えいたします。  先生御指摘のように、我が国の遠洋漁業を取り巻く国際環境は、二百海里体制のもとで沿岸国の主張が著しく強まっており、また、漁業資源の保存強化を求める国際的な世論が高まっていることに伴いまして、ますます厳しくなっております。  外務省といたしましては、今後とも水産庁と協力しつつ、遠洋漁業を含む我が国漁業の安定的操業確保のため、最大限の努力を傾注してまいりたいと考えております。
  83. 武田一夫

    ○武田委員 きょうの読売の「視界」に、「日本の漁業に不当な規制をかけている外国からの水産物の輸入には、輸入数量規制や関税引き上げなどの断固たる対抗措置をとろうという法案が、自民党内で準備されている。」云々、「これに驚いたのが外務省。」なんて書いてありますね。  いわゆる漁業報復案というものは、日本の水産業を守らなければならないという関係者たちの命をかけた最後の対応措置だったと私は思うのですね。この話を聞いたとき、関係団体の方々に、本当にどういう事態になってもこれをやるのかと言ったら、やります、こういうかたい決意のもとで出てきた案です。私たちも、途中でぐらぐらしなければ、日本の漁業、水産業を守るためにはこれは必要なものだと思って話をして、自民党さんも随分苦労していろいろやったけれども、それをどうも外務省さんはあちこちに働きかけて、どうかそんなものはやらぬようにということを言って熱心に動いているという。私はちょっと気に食わぬですな。今の答弁だとそんなことはないということですが、こういうようなことになれば、これは外務省が足を引っ張っていると言わざるを得ない。だれも言わないようだから一言だけ言っておかぬといかぬと思ったわけです。  こういう記事も出まして、一生懸命になって、いろいろ理由はあるのでしょうが、こういうことは出さないようにとか言っているわけですが、それならば外務省として、こういうことをさせないで別に何か日本の水産業、海を守るいい手だてがあるのかということを聞かしてもらいたい、こういうふうに言いたくなるのですが、この点はどうなんですか。この新聞にあるようなことはなかったということですか。
  84. 大石千八

    大石委員長 秋山漁業室長、なるべく具体的に答えてください。
  85. 秋山進

    ○秋山説明員 お答えいたします。  委員長からのなるべく具体的にという御指示でございましたが、まさに先生御指摘のような難しい局面に我が国の漁業が立たされているという認識は、外務省として十分持っております。具体的にどのような手段でこの問題を解決すべきかということに関しましては、水産庁とも話し合いながらやっておるわけでございますけれども、今先生おっしゃいましたいわゆる対抗立法の問題に関しましては、私たちも各党の議員先生方からお話を聞いておりますし相談も受けております。  これは、漁業問題の窮状を打開するために何かやるべしということでございますが、そういった法案が持つインプリケーションと申しますか、そういうことをいろいろな方面から総合的に考える必要があろうかというのが外務省の立場でございまして、そういう観点から種々要請に応じてコメントを申し上げているということでございます。
  86. 武田一夫

    ○武田委員 今回は政調会長預かりということで、国会への上程は見送られた。我々としては、この次は必ずやらぬといかぬというので、次の国会とかでも冒頭でぜひやりたいと思うのです。そのときは協力してくださいよ。もう今からちゃんと……。でないと、外務省は国賊になってしまいますよ。やはり、こんな重要なことに、あちこちに工作をしてこういうものを出させまいとするということは、業界をつぶしちゃえ、もう日本の漁業というのは要らぬということになるわけでありますから、私は、その点は心に銘記しておいてほしい。このことだけで、あと余り深追いしません。いずれまたそのときにお話をしたいと思います。  次に、第四次農村工業導入の問題についてお尋ねします。  四月二十一日に、農林水産省、通産省それから労働省の三省が、農村地域工業導入促進協議会の初会合を開いたということであります。これまで第一次、第二次、第三次と、こうやってきたわけでありますが、要するに第四次の基本的な方向性というのは何なのか。  それで、これまで第一、第二、第三とやってきて、私はこれは正直言いましていろいろと問題が多過ぎると思う。特に私はいつも、三全総、あるいは今度四全総になりますが、国土庁にも注文しているのでありますが、現実からいいますと、農業と工業の調和ある発展の立場からこの制度を生かしていくというのでありますが、分譲された分譲面積あるいは造成した面積、たくさんあるのですが、かなり遊んでいる。これは、結局は立地条件の悪いところを造成して買い手がつかなかったところとかいうのがかなりあるわけです。そういうものを処理せずにまた新しいものをやるなどとなれば、これはだれが困るかというと、やはり市町村、農村の首長さんや関係者がうんと苦労するのです。  だから、そういう実態をよく踏まえて、大体そういうところから処理するような努力をしてあげてほしいし、第四次の基本方針策定に当たっては、やはり農村地帯に活力と経済効果を与えるような、そういう企業の誘致、地場産業の振興、こういうものを真剣にやってもらわぬと、最後はどこに一番とばっちりがくるかというと農林水産省にくるのです。これは、本当言うと労働省だって通産省だってもうナシのつぶてですよ。全部皆さん方にくるのですから、この点でリーダーシップを発揮しまして——これは国土庁も悪いと私は思うのです、毎年指摘しているのですが。  そういうことをよく踏まえて対応をしてもらいたいことを私は要望しながら、この基本方針の策定の課題としてこれからやっていく問題を、ひとつまた聞かしてもらいたいと思うのです。
  87. 佐竹五六

    ○佐竹政府委員 農村地域への工業導入につきましては、四十六年に農村地域工業導入促進制度発足以来、現在で十六年を迎えておるわけでございますが、その間、導入企業数で三千五百七十社、雇用従業員数二十二万四千人、農家世帯からの雇用者八万八千人ということでございまして、出稼ぎ、日雇い等不安定就業状態改善と、それから農家所得の向上にいささか寄与しているのではないかというふうに考えるわけでございますが、反面、ただいま先生から御指摘のございましたような造成工場団地が遊休化していること等がございまして、行政管理庁等から指摘も受けているわけでございます。  そのような状況の中で私ども今後第四次計画を策定するわけでございますが、この第四次計画策定に当たって私どもが基本的な問題というふうに認識しておりますのは、第一点といたしましては、やはり地域の資源に結びついた工業導入を図っていくことの必要性ということでございます。私ども、この制度発足当時考えておりましたのは、ややそのような点に配慮が欠けたところがあるのではないか。単に安い労働力なり土地なり水だけを求めて来る、景気が悪くなるとすぐ引き揚げるということでは、これは地域の活性化につながらないことは先生御指摘のとおりでございますので、やはりできるだけ地域の資源に結びついた業種の導入を促進するような工夫をいたすということが肝要ではなかろうか。ちょうど一・五次産業というようなことも言われておりまして、そのような動きが現実に農村内部にもあることも御承知のとおりでございます。     〔委員長退席、島村委員長代理着席〕  それから第二点といたしましては、一町村一工場というようなことも言っておったわけでございますけれども、最近、交通事情の緩和、改善等に伴いまして通勤距離がかなり延びているわけでございまして、このような状況の中でやはり計画の単位を広域化することも工夫する必要があるだろう。各町村にそれなりにプラスになるような恩恵を与えるように工夫することも肝要でございますけれども経済の実態がそのような動向にあるなら、それに配慮した計画のあり方というものを工夫すべきではないか。  それから第三点といたしましては、やはり私ども農業に対する諸施策、特に農地流動化諸施策との結びつき、これにつきましては私どもそれなりに工夫してきたつもりでございますが、それを一層緊密にするようさらに配慮する必要があるのではなかろうか。一般的に申せば、安定した兼業機会のあるところの方が農地の流動化は進みやすいわけでございますが、反面、農村工業導入地区につきましても、アンケート調査等をいたしますと、現状では農業と両立するからむしろ自分でやっていくというアンケートもかなりあるわけでございまして、これは、農家の実際の実態を無視して一方的に政策を推し進めるわけにはまいりませんけれども、企業におきましても、近時、労働力に求める勤務条件等、なかなか厳しく要請が出てきているわけでございます。そういうものと私どもの農地流動化施策との結びつきを一層配慮していく、かような点に心がけてまいりたい、かように考えている次第でございます。
  88. 武田一夫

    ○武田委員 結構です。その地域資源の活用、これは結構です。ハイテクノロジー、いわゆる先端技術産業などの広域的工業導入の方向も検討されている、これも結構。  ただ、見ていますと、今まではどうも女型なんですわ。男性型の、いわゆる定住圏構想という一つの流れの中で考える、若者が定住をしてそこで働けるというようなものがなかなか出てこないのです。ですから女性が農村でますます強くなります。これは結構なんですが、やはり男性主体型のそういう企業の導入というものを省庁との話し合いの中でやっておかないと、それは今後の農村の構造政策の中で非常に困ると思うのです。そこにおれば、そこで仕事をすれば、兼業農家も非常に必要だということでありますし、そういう方々がまた農作業の一つの大きな力ともなってくるということで、やはり男社会のそういう工業導入というものをもう少し真剣に考えてくださいよ。これは農林水産省にだけ言ってもしようがない問題ですが、三省庁での打ち合わせの中でそこが一番の課題である。  それから、ハイテク、ハイテクと言うけれども、これはそんな簡単にできる問題でもないのですよ。各地域を調査してごらんなさい。それはある一部分、特定の部分しかないわけですから、どちらかというとやはり先ほど局長が言った地場産業というものの重要性をもう少し再認識して、その中から生きる道を、この第四次計画策定の中ではこれは十分に検討すべきものとして私はお願いをしておきたい。  それに、先ほど申し上げました、この用地が投げ捨てられているというものは、やはり早急に手当てをする、このことは非常に重要な課題として、今後新しくまた造成するなどというようなことでそういうのが無視されていくということのないように十分心していただきたい、私はこう思います。時間がございませんから、これは答弁を求めません。  午前中これだけやっておかぬと午後からが大変ですかう、最後に一問。グリーントピア構想というのがありますね。なかなかいい名前ですね、グリーントピアなんて。だれが考えたのか、非常にいい名前でございます。この構想というものの意義、どういうものを目途としてこういうものが考えられているのか、その現状、このことをひとつ御説明をいただきたい。
  89. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 ここのところの情報化社会の進展というものに対応いたしまして、農業の場面でも、生産性の向上なりあるいは地域社会の活性化、こういう面でニューメディアというものをいろいろ活用し得る分野というものがあるんじゃないかということで、こういうニューメディアを活用した情報システム化構想という形で、グリーントピア構想というものを今年度から調査という形で打ち出したわけでございます。  この構想の具体的中身につきましては、それぞれの地域でいわば知恵出し合戦といいますか、それぞれの地域での創意工夫というものにまつ点が多いわけでございますけれども、ここで考えております情報システムの大宗といたしましては、コンピューターでございますとかあるいはCATV、こういうものを活用いたしまして、営農技術あるいは経営管理情報、こういうものの処理なり提供するシステムというものがそれぞれの地域で計画されているようでございます。それで、こういう構想の推進を通じまして、技術情報あるいは経営管理情報、こういうものを的確に活用するなり、あるいは市場情報というものを迅速に末端に提供する、それからさらには、コミュニティー活動というものを活発化するというような面で、ニューメディアというものが相当広範に活用されることを我々としても期待しているわけでございます。  今年度、昭和六十一年度におきましては、四月に、全国二十地域というところで末端の情報ニーズの調査でございますとかそれから基本的なシステムの設計、こういうことに取り組んでいただくということで、二十地域の指定を終えたところでございます。
  90. 武田一夫

    ○武田委員 市町村の振興という問題ではこれは一つの大きな力になろう。こういうふうに思います。過疎化の進む農山漁村というのは、これまでも高度情報化社会の進展から取り残された気配もありますし、これからもそういう懸念もあるところですから、こういうものが十分に生かされることによって地域振興が進むということは非常に結構だ。これはいずれ郵政省が考えておるテレトピア構想などとのドッキングもあり得るのじゃないかということで、その効用を私は非常に期待しているわけであります。  今、二十地域指定ということでございますが、これは私の地元の宮城県の仙南地方、白石、角田という市ほか七つの町にまたがる地域等情報システム化構想、いわゆるグリーントピア構想の指定をお願いしているわけでありますが、これは今後、二十地域が今回指定されて、この次また来年何ぼというような一つの計画というのはあるわけですか。例えば何カ年計画で何ぼするとか、例えば地域の要望があれば、その中から、来るたびごとに何かの条件によって指定をしていくとか、その点はどういうふうになっているわけですか。
  91. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 この予算は、農林省の今年度の予算の中では、ざっくばらんに申し上げまして、一番人気のあった予算でございまして、去年の夏の概算要求段階では土地域ということで大蔵に概算要求したわけでございますけれども、概算要求の中身が一般に流布するに従いまして各地からの要望が高くなりまして、予算編成段階では、こういう厳しい中では珍しく増査定ということで、十五地域というものがついたわけでございます。しかし今年度、それぞれ熱意ある地域が多うございまして、十五地域の全体予算の範囲内で二十地域を、今先生から御指摘ありました仙南地域を含めまして指定させていただいたわけでございます。  それで、この指定の過程を振り返ってみまして、さらに地域によりましては、熟度はまだ固まっていないけれども、来年以降やりたいという地域も相当散見されるようでございますので、これからの夏の予算要求段階にかけまして、そういう各地の要望をもう少し検証いたしまして予算要求に当たりたいと思っております。
  92. 武田一夫

    ○武田委員 こういう熱心な地域というのは、角田にしろ白石にしろ大体農村都市ですね。それから観光地なども近くにある。あと、御承知のとおり、この地域には今後発展すべきいろいろな要素があるだけに熱心にお願いしているのです。こういう地域がたくさん出てくると思うのです。それが結局は、先ほど申しましたように、地域産業あるいはまた地域農村の経済的な活性化等々に貢献していくものと私は思うわけです。これは大きな人気のあるものだということでございますから、今後ひとつ十分に相談に乗ってあげて、適切な指導をしていただきたい、こういうことをお願いいたしておきたいと思います。  時間が来たようでありますので、どうも次官には申しわけありませんけれども、私の質問はこれで終わらしていただきます。どうもありがとうございました。
  93. 島村宜伸

    ○島村委員長代理 日野市朗君。
  94. 日野市朗

    ○日野委員 午前中も島田委員からも話が出たようでありますが、いわゆるポスト三期の減反、米の生産調整、これについて若干の質疑をいたしたいというふうに思います。  この生産調整は三期までを終わりまして九年間たったわけでございます。これまでの生産調整というのは昭和五十三年の一月二十日の閣議了解に基づいて行われてきたというふうに我々は理解しているわけでございますが、さて、これから生産調整をどのようにしていくのか。まず生産調整をやるのかやらないのか。やるとすればどういう根拠に基づいてといいますか、つまり五十三年一月二十日の閣議了解、これに基づく生産調整はもう九年で終わったと考えるのか、それともこれはまだ終わらないというふうに考えるのか、そこらはいかがでございましょう。
  95. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 水田利用再編対策の経過でございますが、今御質問の中で出ました閣議了解によりまして、おおむね十年間の事業ということでスタートしまして、一期、二期、三期、それぞれ三年、合計九年。こうなりますと、六十一年度をもってこのおおむね十年間の水田利用再編対策は終了したということでございますので、六十二年度以降については、これは閣議了解というような形式になりますかどうかはこれからの検討でございますけれども、いずれにしましても、新しい対策について新たな決定を要する、こういうふうなことでございます。  続けるのかどうかというお尋ねでございますが、米の需給の構造的な過剰状態、こういうことからいたしますと、やはり形はともかく何らかの意味での米の生産調整を目的とした対策は六十二年度以降も実施をしなければならないと我々は考えております。
  96. 日野市朗

    ○日野委員 そうすると、今までやってきた生産調整とは全く違った観点からこれからの生産調整は行われるということになりましょうか。
  97. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 まさに六十二年度以降の対策のあり方についてはこれからの検討の課題でございますけれども、やはり米の需給関係からこういう生産を調整することが必要になるということは一番直接の契機になるわけでございますが、同時に水田利用再編成のようないわゆる生産調整を通じまして非常にしっかりした水田農業を確立していく、こういうこと、あるいは農業生産を需要の動向に応じて再編成していく、そういうことも大事でございまして、そういうこと全体を含めました新しい対策を仕組むというのが当面の課題でございます。そういう意味で、その対策の名称も含めた基本的なねらいについてはこれからの検討課題でございますが、単に米の需給均衡化ということだけがこういう対策のねらいではないというふうに我々は考えております。
  98. 日野市朗

    ○日野委員 形はどのようになるかということのお話がありましたね。どのような形をとっていくのか。つまり前の閣議了解とは違ったものが今度は予定されるように聞こえるわけでありますが、前の閣議了解によりますと、これは期間はおおむね十年ということから始まって、自給力向上のために必要な作目というようなものに転作をしていくというようなこととか、いろいろ幾つかの大事な点が前回の閣議了解には書いてあったわけであります。この基本的な思想といいますか、つまり米からほかの作物に転換をさせるという大きな目標、これはどのようになっているのでしょうか。
  99. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 自給力の向上と申しますか、米の需給状況に応じて生産を調整する過程におきまして、需要というものの動向に応じて、しかも日本の水田を有効に使って、日本の水田でできるものは需要の動向に応じてつくっていく、こういういわば米の生産を減らすと同時にほかの作物の生産を誘導するというねらいが入っているわけでございますので、そういう意味でとらえれば、国内生産を維持する、あるいは水田の生産力を維持するということになるわけでございまして、自給力の向上的なことも一つの含まれている要素でございますが、さらに、生産性の高い水田農業の実現とか、そういうコストの低下というか、そういう面も当然含まれなければいけませんし、そういう各種のねらいというものをいわば総合的な対策としてどうやって実現するか、そういう観点から六十二年度以降の対策も仕組むことになろう、こう考えております。
  100. 日野市朗

    ○日野委員 やはり関心は、米の需給をどのように調整していくかというところに非常に強いウエートがあるように私は今答弁を伺いながら感じているところです。  ところで、米の需給を調整していくという観点から新たな生産調整を見た場合、どの程度の調整が必要なのか、これを数字をもってちょっと明らかにしていただきたいと思います。
  101. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 現在の日本の水田において、我々の言葉で潜在生産力等と称しておりますが、そのまま米をつくるというふうに考えますとどのくらいの生産量が予定されるか、これが大体千三百万トン台になるというのはどうしても見通しとしてはあるわけでございます。今後もちろん、水田面積が若干の壊廃等によりまして減少するわけでございますが、反面、単収の向上というものもまだ続くということを考えますと、生産量というか生産力の、持っているものの方は、米という面で見ますとそのぐらいの水準にどうしてもなっていく。一方需要の方は、これからの人口増なり一人当たりの需要の動向から見通すわけでございますが、やはり一千万トン台ぐらいなのではなかろうか。  こういうような全体の仕組みから申しますと、米という面だけから見ますと、やはりそこに三百万トンぐらい、面積にして七十万ヘクタールとか、あるいはそれ以上というような規模での調整が必要になってくるわけでございまして、この辺は、今私は非常に概数の、大台というふうな数字で申し上げましたけれども、これから六十二年度以降について、ことしの米の作柄とかそれから在庫の推移その他、そういうもっと具体的な近間の数字をそこに入れ込みまして、そういう前提で六十二年度以降どれくらいの期間について、需給均衡化という意味ではどのくらいのことをやらなければいけないかということが具体化していくということで、今はそういうような見通し、大ざっぱな構造的過剰という見通しはできるにしましても、具体的に対策の中でどのくらいの面積を見込むかというようなことについては、これから秋にかけての検討の中で具体化していくことになろうと考えております。
  102. 日野市朗

    ○日野委員 潜在的な生産力を見て消費の状況を見てまいりますと、確かに構造的に米は過剰だと言われる現象は数字上からいえばありそうに見える。しかし現在まで在庫の積み増しというものを四十五万トンずつやってまいりました。これは言うまでもなく、不作が続いたということで一気に米の在庫量は底をついてしまったということを意味したわけでございます。そして在庫積み増しということをやらざるを得なかったという状況がございました。つまり数字面ばかりからは米の生産というものを読み取ることはできないのではないか。つまり不作というような状況はいつやってくるかわからぬというようなことも常に考えておかなければならないことではないかというふうに思うのです。そうしますと、今関谷さんは構造的に米は余るだろう、こういう予測を立てているわけでありますが、韓国米を持ってくるということでみんな大騒ぎをするとか、そんな状況をまた再現したくはないというふうに思います。  それから、日本の米の生産力というのは確かに高いものがありますが、しかし一方で非常な脆弱さといいますかもろさといいますか、そういったものを持っていたということも、あの韓国米輸入騒動なんというものは如実に示したのではないかというふうに私は思うのです。こういった点に対する配慮というものは十分やっておかなければならない。現在まで在庫積み増しはやっておりますから大丈夫ですというふうにおっしゃるかもしれませんけれども、しかしわずか三年か四年の不作ということであのような状況になり得るわけであります。こういう要素を日本のこれからの稲作はどのように読み込んでいったらいいのか。いかがでしょう、これはかなり高度の政治的な問題でもございますので、これからの考え方、構想を練るに当たって十分に考えておかなければならない、ひとつ教えていただきたいというふうに思います。
  103. 石川弘

    ○石川政府委員 確かに御指摘のように米の生産、流通、消費の中で、過去におきまして二回過剰という形での大変な心配をいたしました反面、五十九年の端境期におきましては非常に需給逼迫という状況もあったわけでございます。したがいまして、私ども将来の米需給を考えます際には、生産力は相当向上しておりますけれども、自然の条件に対応して生産をするという農業の特殊性から見ますと、ある程度のゆとりを持たなければいかぬ。そのゆとりの大きさと、それからもう一つ、過剰によりますところの問題との両方にどの程度バランスをさせながらやっていけるか。単にゆとりの方の安心さを見ました場合には備蓄の在庫もかなり大きい水準の論議もあり得るのですが、しかし今度は、やはり日本の今の消費の状態から見ますと、余り高い率の古米を混入したような米操作では、これはまた消費者の方に喜んでいただけないということで、五十九、六十、六十一と、この三年の米の管理につきましては、やはりゆとりある需給操作という言葉と、三たび過剰をつくらないように、この二つを常に念頭に置いたわけでございます。  需給操作のことから申しますと、今まで備蓄だけを頼りにして操作をしたわけでございますが、五十九年の経験等によりますと、一つは、実は転作自身が、計画をしまして実行していく段階での計画の、いわば転作の調整という手法が一つございますし、さらにもう一つは、端境期における早食いという手法も一つあるわけでございます。それと備蓄、この三つを巧みに操作をしますことによって、過剰のおそれもない、それから不足ということにも逼迫感もないというのを考えまして、例の食管法で定めます基本計画における需給見通しというものをつくってきたわけでございます。  御指摘のように、六十年の十月末で、端境期、政府は二十万トンの米を持って年度を越えたわけでございますが、御承知の五十九年と六十年の豊作、二年豊作ということがございまして、六十年の十月末から六十一年度の米穀年度を通じて申しますと、ことしの十月末、いわゆる六十一米穀年度末で申しますと、在庫数量としましては九十五万トンから百五万トン、この水準はまず今の需給状況からいえば間違いなく政府は持てると思っております。ことしの計画では、さらに六十二米穀年度末、六十二年の十月末も想定をいたしておりますが、これが百二十から百四十という水準に行くこと、これはことしの作にかかわるものでございますから、この計算はあくまで転作計画どおり、作況一〇〇という計算でございますが、こういう水準に至りますことはまず間違いがなかろうかと思います。今申し上げましたのはいわば主食とか酒米とかモチ米の世界でございまして、この外側に約三十万トン近い他用途米があるわけでございます。  これからポスト三期問題になります際にも、私ども過去約三年間経験しました操作なりなんなりということを頭に置きまして、決してかつてのぎりぎりということではございませんで、ゆとりは持ちますけれども、今までの私どもの経験からいいますと、備蓄水準そのものも大事でございますけれども、やはり備蓄にする米がふえていくプロセス、それから逆に減っていくプロセス、そういうプロセスも大事でございまして、過去二年間はどちらかというと計画よりもふえる可能性を持ったプロセスを経たわけでございますが、ことしの状況その他を見まして、やはりそういう傾向がどう変わっていくかということも頭に置きます。幸いなことに、かつて想定しましたより米の消費の水準自身は下がり方は小さくなってきております。そういうことも頭に置きながら、私どもとしても納得のできる米の需給の見通しを立てまして、それを農蚕園芸局の転作部局との間で十分調整しました上で案をつくっていくつもりでございます。
  104. 日野市朗

    ○日野委員 ここで余り水かけ論みたいな議論になっては困ると思うのでありますが、前回の閣議了解事項の中にちゃんと米の新規用途の普及開発が、酒米のことや学校給食のことが書いてあります。この中でちゃんと「新途用途の開発。普及こというようなことも書いてありまして、たしかここらに使われた予算は三億かそこらあったんじゃないかという私の記憶ですがね。これは、いかにも米減らしの方には一生懸命だったけれども、その周辺の部分、もっと言うと米の需要開発をしていくというような方向に向けては努力が少な過ぎたのではないかというような感じを私持っているのですが、いかがなものでございましょうか。     〔島村委員長代理退席、委員長着席〕 この点は、米を減らしていくということは心痛むことでございますよ、我々にとっても生産農家にとっても。そういう心痛む思いをしながらもこういう生産調整をやってきた。そしてそこには、こういう米の新規用途の普及とか開発、こういうこともちゃんとやっていくんですよという裏づけがなければならなかったと思うのですね。その点について、今までの経過を振り返ってどのように考えておられますか。
  105. 石川弘

    ○石川政府委員 米の消費拡大、予算的に申しますと最大のものは学校給食でございまして、二百億近いものを実は使っておるわけでございます。私ども、そういう学校給食という形だけではなくて、地域における米消費拡大のために数億を使っておりますが、先生御指摘の三億と申しますのは、新規用途に向けます際に、そういういわば企業化試験というようなことをやります場合に、政府の米を無償で渡しまして、そして新しい製品をつくる、そういうときの金でございます。実はそういうものの中からも例えば、パフトライスと申しますけれども、米を膨張させまして、それを粉末にしてやるとか、そういう用途も出てきております。  ただ、今の場合一番大きいのは、新商品よりも実は既存の米利用の中で、例えば御承知のみそだとかしょうちゅうとかいろいろあるわけでございますけれども、そういうものの中で、他用途米が比較的品質が安定しているということから、そういうもので使いたいという手が挙がってきております。これは今の二十七万トンの世界が少し広がっていくということでございますが、そのほかに、転換をしてでも使いたいという方では、御承知のワキシーコーンなんというものを使っておったのを、原料価格さえ安ければモチ米を使いたいということだとか、それから酒造用アルコールの世界で、これも価格が若干問題があるのですが、これも米を使ったアルコールを使ってもいいとかという話がございます。したがいまして、私どもは決して減らす方に熱心だということじゃございませんで、むしろそういう新たな用途で使えるものがあればぜひやりたい。  ただ、この場合に、加工の立場からいたしますと、従来の原料より価格が割高になってまいりますので、そういう価格水準の問題で折れ合うことができるかという話がございます。私どもは、米加工品の場合に品質向上というようなことの要素も踏まえて考えていただくということで、現在いろいろな角度でこの要請にこたえようとしておりますけれども、そのためにはやはり米を極力コストを下げてつくっていくという努力も相またなければ、使う側からいうとどうしても安い原料へと行きますものですから、その双方について、生産サイドにもあるいは加工サイドにもそういう努力をお願いをし、極端に言うと一トンでも余計使ってもらえるような体制づくりはしていくつもりでございます。
  106. 日野市朗

    ○日野委員 生産調整というのは単に米を減らすだけではいけないと思うのですね。やはり他の作物にちゃんと転換できるような、そういう基盤をきちんと整えていかなければならないと思う。それで、今までも転作を奨励して、奨励金もつけてやってきたわけですが、麦とか大豆とか飼料作物とか、そういったものに転作をしなさいということで特定作物を決めて、そして奨励金を与えてきた、こういう手法は今後とも引き継いでいくのかどうか。  それから、奨励金というのは、今までは各期ごとに決めるというような形で奨励金を決めてまいりました。奨励金の出し方についても随分大きな転換があったわけですが、これからはどういうふうな見通しになるのか、そこらをちょっと少しまとめて話してみてください。
  107. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 第一段の御質問は、いわゆる特定作物というような、ああいう重点的な作物の扱いを今後どうするのかというお尋ねであると考えますが、麦、大豆、飼料作物を特定作物としまして、一般作物よりも少し奨励金の厚みを重くしておるわけでございます。こういう仕組みを今後もとるかどうかについては、これはまさに私どもの検討課題としてこれからの問題でございますけれども、ただ、従来の経験で申しますならば、やはり麦、大豆、飼料作物そのものであるかあるいはさらに拡大するか、もう少し絞るか、いろいろな問題も含めまして、作目ごとの厚みというのは何らかの意味で考える必要があるというふうにも思っております。  というのは、厚くする方もございますし、それから野菜が具体的に該当するかどうか。需給関係等から見て、作目として見た場合に余り転作で伸びるというようなことはどうか。こういうような作目になりますと少し奨励金を薄くするとか場合によっては奨励金はゼロにしてカウントだけにするとか、こういういろいろな手法が考えられるわけでございますので、これはやはりポスト三期対策と我々の言っておりますものを決める場合に、全体の転作先としてどんなものをどのくらい見込むかといういわば重点の置き方、それからこういうものはもう余り転作で考えると問題であるというようなもの、そういう作目別の施策のあり方というものと関連づけて奨励金の体系も考えるというようなことでございますので、今この段階でいわゆる特定作物的な扱いをどういうふうにするかというようなこと、我々の案もなかなか固まってない状況でございますが、作目ごとの需給状況や生産状況に応じた奨励金の体系というのは、やはりそういう観点から対策を仕組むかどうかについてはかなり重要な問題であるということで、これから検討してまいりたいと思っております。  それから二番目に、奨励金は、水田利用再編対策では三年ごとの一期、二期、三期ごとに単価を固定しておったわけでございます。今後の問題としましてこういうあり方をどうするかということについて、これもまことに恐縮でございますが、今この段階で具体的にどういう方法がいいということがございませんで、一般的には単年度ごとじゃなくて、ある期間奨励金的なものの単価と申しますか、仕組みは変えないでおいた方が転作側からすればやりやすい、こういうことがありますので、そういう面から考えますと、どういう形式で決めるかどうかですが、単年度ごとに毎年変わっていって来年はどうなるかわからないというようなことにするのが果たしていいかどうかという問題もございます。  ただ、これは反面、予算なり財政の面から申しますと、非常に財政規模が窮屈になってまいりますので、転作額の、奨励金的な施策に振り向ける予算の全体額のいわば頭打ちとか総額固定というような考え方も一方にあるわけでございますので、こういう点も含めて考えながら、転作の効率的な推進の上で一番いい方法を考え出していかなければいけないと思っております。
  108. 日野市朗

    ○日野委員 転作奨励金というのは非常に大事だと私は思っているのでございます。臨調の答申には転作奨励全体質からの早期脱却というようなことが確かにうたわれているわけであります。しかし、早期脱却と言いながら、実は脱却できていないというふうに私は思うのですよ。それは、脱却しないにはしないだけの理由があってできていないのだと思うのですね。これはいろいろな理由がございます。転作をして転作作物をつくりましても、やはり非常に生産性が悪い。それから価格面で若干の損失補償みたいなものがあったにしても、価格全体が低いというようなことから、この転作奨励金があって初めて何とかやれる、価格補てんがあって何とかやれるというのが現状ではないかというふうに私、見ているのですが、農水省側の見方はどのようなものでございますか。
  109. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 「奨励金依存からの脱却」ということが第二臨調の答申でも言われておりますし、「「八〇年代の農政の基本方向」の推進について」という農林水産省のいわば施策方向についても、そういう脱却の方向に向かうべきであるということはうたわれておるわけでございます。  その基本的な意味は、やはり先生のお尋ねの中にございましたように、毎年所得の差を補てんするというような考え方が出発点にあったわけでございますけれども、同時に「依存からの脱却」ということを言われますもとには、十年以上もやっているのに、毎年というか、いつまでたっても同じような単価というか考え方での奨励金を交付しているというのは、どうも財政のあり方なり奨励政策のあり方としても疑問ではないか。そこに一つの定着という効果もあるでしょうし、そういうような考え方からやはり脱却という考え方がそこに出てくるわけであります。  したがいまして、私ども今までも脱却というより、完全になくなるという意味ではもちろんなくなってはおりませんけれども、これまでも御承知のように全体としての単価をできるだけ圧縮していくとか、それから奨励金の内容にしましても、いわゆる基本額というような形で全体に平等に行く面も必要でありますけれども、同時に、集団的に転作をするとか、非常に定着性の高い転作であるとか、地域ぐるみで非常に努力して特定の作物をつくるとか、そういう非常にいい形での転作の態様に着目した加算の方を充実していく、こういうこともやったりしまして、内容的には従来の、スタートになったような奨励金からだんだん抜けていくというか、生産を誘導していく方向に向かって内容改善をしていくということをやってきたわけであります。  ポスト三期ということになりますと、さらにこういう考え方をもっと強めるような方法を講じませんと、いつもいつも同じような考え方で転作の奨励金を交付するというようなことでは、やはりせっかくの政策効果というものはどうか、あるいは政策のあり方としてもいかがか、こういう批判にも耐えられませんし、日本農業の生産を需要の方向に向かって誘導して再編成していくということからしますと、できるだけひとり立ちできるような形での作目の生産が行われるような方向に奨励施策の内容改善をしていかなければいけないと考えております。
  110. 日野市朗

    ○日野委員 今、関谷さんが言われたことは私もよくわかるのです。ただ、こんな例があるのですね。  私の選挙区であった例でございますが、紹介だけしておきたいのですが、転作でみんなで麦をやった。ところが麦のできが非常に悪くて、それを見た人たちが、見た人たちなのか一人なのか知りませんが、こんな麦づくりをやっていて補助金などをもらうというのはけしからぬ話だ、こういうことを言ったというのが県の方に聞こえて、県の方から麦づくりをやっていた人たちがおしかりを受けたなんという、ちょっと県もそこまで行き過ぎていいのかなと思うのですが、そんな例があったのですがね。  これは、何でそんなにことし麦が悪かったのかということを考えてみますと、ちゃんとした輪作の体系なんかができていないのでございますね。やはりこれは連作障害であるというふうに見るのが正しいのではないかというふうにも私は思うのでございますが、こういう転作をやらしていろいろなものをつくらせるということにしても、さあここの土地があきましたよ、ここで何かつくりなさいだけではだめだと思うのです。麦にしても大豆にしても、決して当初計画したように思うとおりそこから収入が上がっていないということは、そういったきちんとした農業の技術の基本というものが踏まえられていないところに問題があるのではないかというふうに私は思うのです。  それで、こうやって生産調整をやる、水田をあける、そしてそこに転作で別の作物をつくっていく、そういうときにそれを計画的にやれるような状況が日本には余りにも少ないのではないかと私は思うのです。転作をやるにしてもばら転が非常に多い。そして麦をつくるにしても大豆をつくるにしても、実際上は機械化体系から外れたものはっくれない、そういう問題もございます。いろいろ小さいところといいますか、そういったところにも注意を払っていかなければならないのではないか。そういうところにまでちゃんと留意をした転作の指導ということが必要なのではなかろうか。いかがでございましょう。
  111. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 御質問の点については全くそのとおりであると思います。やはり転作のスタート時点では非常に緊急避難という考え方が強くて、恐らく水田の立地としましても条件的にも比較的よくないし、隅っこの方で、米も余りよくとれないところでやるとか、ばらばらと分散しておるとか、そういうようなことでとにかく面積をこなすという形でスタートしたような面がかなり多いと思いますし、今なお、挙げられました事例のように余りよくない転作というのが部分的に残っていることも事実であると思います。  そこで、そういうことではいけないということで、先ほどもちょっとお答え申し上げましたが、例えば加算制度というようなものにあらわれますように集団的に転作をする、それからブロックローテーション、田畑輪換、そういうような要素を入れまして団地としてまとまってやっていく、その中へ生産組織的な地域ぐるみの活動を組み込みまして、そういう地域の一つのまとまった土地であり、またまとまった体制で転作をこなしていくというような方向を打ち出しておるわけでございます。それに、いわゆる農業改良普及事業のような技術指導体制としましても、その地域での転作をこなして農業生産の再編成をしていくというのが大変重要な課題でありますので、普及指導、そういう面でも地域ぐるみの転作に非常に重点的な指導を行ってもらうということで、技術的な面はもちろんのこと、経営的な面なり地域の体制の面でも、いわゆる緊急避難的な嫌なことを片隅でやるというようなことではなくて、やはりこれは一つの避けられない水田農業のいわば課題として、できるだけ生産性の高い安定した転作をやっていく、こういうことをこれからももっとやっていかなければいけない、こういうふうに考えております。
  112. 日野市朗

    ○日野委員 やっていかなければならない精神はまことに結構なことでございますけれども、現実に日本の農村で今まで進めてきたような団地加算であるとか計画加算だとか、そういうことで奨励金に厚みをつけてやってきた。しかし、それが必ずしも実を組んではいないのではないか、これが私の非常な心配でございます。今まで転作はやってきた。しかし、先ほど麦の例をちょっとお話ししましたが、その麦作ばかりにのめり込んでしまう。じゃ、麦と大豆と水田というようなことで輪作が組めるか、そういったローテーションが組めるかというと、狭い農地それから部落間でいろいろなそういうことをやっていくに足るだけのコミュニケーションの成熟度、そういったものは必ずしもできていないと思うのですが、ここいらはどのようにお考えになりますか。もしこれができなければ、新しく転作をやろうということになっても転作をやろうという意欲が農民の間に出てこないのではないか。奨励金をつければ、そしていろいろな圧力をかければ渋々はやっていくだろう、しかし、それだけではこの政策目標というのは到底達成できない、こんなふうに私は思えてしようがないのですがね。
  113. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 まさに御質問のとおりでございまして、私どもの方でいわゆる転作の優良事例ということで、転作の定着化という意味でも転作作物の生産性が高いという意味でもほかの地域でも大いに参考にしてもらいたい優良事例というのは、大体、ブロックローテーションと言われますような、水田の団地ごとに、これは米をつくる方も転作作物をつくる方も団地化して、しかもローテーションという名前どおりにそれを回していく、こういうようなことが行われておりまして、それを支えるという意味では、集落その他の団体あるいは生産組織の活動というものがどうしても前提になるわけであります。  そういうところで、ある地域内の水田というものを全体として水稲の方と転作作物の方とまとめてどうやってつくっていくかということになりますと、やはり地域農家の方々が参加されたそういう一つの組織的な取り組みをしていただかなければなりませんし、その中で、土地利用の調整とか、場合によっては一部共補償的な収入上の調整を行うというようなことまで含めまして、やはりこういうような地域の取り組み方というものが一番効率的な転作、と同時に水稲作の方も合理化される、こういうことでありますので、加算制度はそういうことをねらいにしたものでございますが、ともすると、ただ加算という形での奨励金をたくさんもらうという形で使われがちでありますけれども、本当にねらいとするそういう地域的な組織的な対応がなされるような転作の指導というのはこれからも大事でありますし、ポスト三期を仕組む際にも、ある意味ではその辺のところが一番力を入れて対策の仕組みを考えるべきポイントじゃないかと考えております。
  114. 日野市朗

    ○日野委員 従来行われてきた転作というのは、農家に対する建前はお願いだと言いながら、事実上、これは強制してきたわけですよ。これはだれが何と言おうとも、私はそうだと思います。これからの転作それから生産調整、これもやはり同じような手法を用いて強制をしていくことはいかがなものかと私は思います。生産者と農水省、それから農業団体も今度は生産調整に一肌脱いでもらいますよというようなことのようでございますがね。そういったところも含めたコンセンサスの形成というのは今までの生産調整には余りにも少な過ぎたというふうに私、思います。これからの生産調整を進めるに当たってそのコンセンサスづくりは非常に大事だと私は思っているのですが、そういうコンセンサスづくりに努力をするつもりがおありですか。  そしてもう一つ。米が若干過剰基調であることはよくわかります。しかし、そのことだけに日を奪われてコンセンサスづくりができないままに強制的にこれを行っていくというようなことがありますと、コミュニティーとしての農村に非常に大きな禍根を残すような気がしてならないのであります。でありますから、そういうコンセンサスづくりに時間がかかるとするならば、一年や二年生産調整を休んでコンセンサスづくりに励むということも十分に考えていいのではないかと私は思っているのですが、これはいかがでしょう。そして、そのコンセンサスづくりはどのように進めるのか、その必要性については大臣も十分考えておられるでしょうから、まさか眠ってもいないでしょうから答えていただきたいと思います。
  115. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 先ほどお答え申し上げました効率的な転作なり水田農業を確立する上でも、地域の対応ということは、地域社会、農村としてのみんなの理解、コンセンサスが基礎にありませんと到底不可能なことであります。これまでも、中央段階、県段階、市町村段階でこういう関係機関が集まった協議会等を持っておりますけれども、転作ということが日本の農業にとって何か困ったことが振りかかってきたということではなくて、これを効率的に進めることによって、非常に優れた資産、生産力を持ち、農家の資産としての大事な水田の生産力を保持するということ、同時に、非常に大事な農産物である米の需給を安定させる、こういう面で自分たち自身の問題であるという理解を、自治体のような行政機関はもちろんのこと、関係農家、関係組織、農協、生産者団体皆さんが持っていただいて、そういうコンセンサスの上に進めていただくということで、コンセンサスづくりはこれからもこの対策を進めていく上で大事なことだと思います。  ただ、一、二年休んでそういうことから始めてはどうかということでございますが、なかなか休んではおられないという、需給問題等も含めました大変な情勢でございますので、これまでに引き続いてそういうみんなの合意、気持ちが合った上で、地域農業、水田農業のあり方としてむしろこういうことをどうしてもやっていかなければならない、それが自分たちの農業なり農家にとって非常にいいことなんだ、こういう御理解を得ながらやっていくような体制づくりということについては、ポスト三期にかけましても引き続き努力してまいりたいと思っております。
  116. 羽田孜

    羽田国務大臣 先ほど来御論議をお聞きしておったわけでありますけれども、ちょうど、私自身政務次官のときにこの水田利用再編対策を計画せざるを得なくなり、そしてこの配分の少し前に退官したのですけれども、そういうことでこの水田利用再編対策の進捗に対してはそれなりに関心を持って見詰めてまいったところであります。  そういう中で、定着化が図られていると考えられる転作ですとか米に匹敵する収益を上げる転作ですとか、さらには転作を契機に地域農業の再編成が図られるといういい面も見えてきておりますけれども、先ほどからお話がありましたように、実際に述作の障害が出ているのじゃないかという問題あるいはばら転というような批判ですとか、そういったものがあるというのが現状であります。  そういう中でこれから後どうするのだという、私どもとして考えなければいけないことは、今局長の方からも御答弁申し上げましたように、そして先生からの御指摘の中にもあるのですけれども、今まではどちらかというとお願い、そしていろいろな規制をあれしながら強制してきたのじゃないかということなんですが、私ども考えますのは、この水田利用再編対策一つとってもそうですし、その以前にやった転作にしましても、ともかく莫大な金を使っておるというのが現状なのであって、過剰な生産をすると結局ツケがみんなに回ってきてしまうのだということで、生産する立場皆さんあるいはその皆さん方の組織である農業団体、この皆さん方も自分たちのことなんだというふうに受けとめていただかないと、ただお願いだとか、またそれを強制していくということではいけないと思います。そういう意味で、今お話しのとおりコンセンサスづくり、これは非常に重要なことで、これは本当に自分たちのことなんだという中で、それでは一体どうするのだということを話し合っていくことが大事だろうと思っております。  そんな意味で、今農政審議会の中でもこれを御議論いただくと同時に、役所の中でも検討してもらっております。そのときにも、できる限り各地域の生産者あるいは団体の皆さん方の理解も得られるように、そういった方々の意見も十分吸収してほしいということをお願いしておるところであります。  いずれにしましても、この間に、生産調整だけでなくて需要拡大という問題についても相当予算を使いながらやってきておっても、またいろいろな団体の皆さん方に御協力いただいてやってきておりましても、残念ですがまだ需要が減っておるというような現状でありますので、このポスト三期、さらにどんなふうに進めて本当に理解されるものにしていくのか、頭を使わなければいけないと思っております。  いずれにいたしましても、このかんがい農業を基本的な体質としております日本農業、何といっても一番の基本でございますので、我々としても最も重要な課題として受けとめながら対策を進めていきたい、かように考えます。
  117. 日野市朗

    ○日野委員 時間が参りましたので、終わります。
  118. 大石千八

    大石委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後一時三十六分休憩      ————◇—————     午後三時五分開議
  119. 大石千八

    大石委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。新村源雄君。
  120. 新村源雄

    ○新村(源)委員 私は、まず市場開放について御質問をいたしますが、去る五月初旬に東京サミットが行われました。そこで東京経済宣言の十七項目にわたる宣言があるわけですが、この十三項に農業に関する項目がございます。これを読んでいきますと、今日の世界的農業の現況をもたらしたのは、先進各国の国内の補助金及び農業保護政策などから発生した世界的構造的余剰状態が存在している、こういうように言っているわけです。  こういう東京サミット宣言から見ますと、まさに日本の農業はこれとは全く逆な立場に置かれている。ある程度の補助金あるいは保護政策があったかもしれないけれども、余剰状態をつくってはいない。むしろ自給率がどんどん下がっていって外国の農畜産物の受け入れの環境を進めでいっている、こういうように考えるわけです。  これと前後しまして、いわゆる経構研の中で言っているのは、市場開放、すなわち農畜産物も徐々に市場開放をして、そして一層の輸入を促進するんだ、こういう矛盾したことを言っておるわけですね。全く逆なことを言っておるわけです。これは農林水産大臣として一体どういうような理解で受けとめられておりますか。
  121. 羽田孜

    羽田国務大臣 東京サミット経済宣言につきましては、先ほど島田琢郎委員にもお答えを申し上げたところでありますけれども、今度の議論になったその背景といいますか、これはまさに生産国、輸出国、この中にありまして輸出補助金をつけながら輸出することは、これは歴史的な伝統的な市場というものを荒らすものであるという一つ議論。それから一方では生産補助金、こういった補助金を出して生産を過剰にしてしまっておる、これが自分たちとしての負担にもう耐え切れなくなってきているという、こういう両方からの議論がありまして、こういった状況を打破するためにということで今度の経済宣言が東京宣言として発表されたと私は理解をいたしております。そういう意味で、いわゆる過度な補助金等をつくりながら生産を助長することあるいは補助金をつけて輸出すること、こういったことはお互いに慎もうではないかという話であろうと実は思っております。  ただ問題は、各国からも市場開放というものを要求されている我が国としても、結局、そういったものがだんだん議論されていくと、最終的には買えるところにもっと門戸を開いてもらいたいというような声になってくるわけなんで、その意味で、私どもとしてはこの宣言を非常に重要な宣言であるということで受けとめると同時に、いろいろな攻勢に対して私たちもよく実情を説明すると同時に、特にこの場合にはOECDでこれをフォローアップするようになっておりますから、OECDの場できちんと我が国の事情を説明していく必要があろうと思います。反面、我が国としても、やはりそういう時代に対応するために農業構造政策というものを進めながら、本当に足腰の強いものにしていかなければいけないということを改めて感ずるわけであります。  そういう中で、経構研の前川レポートというのが出されておったわけでありますけれども、このレポートで指摘されておりますのも、全体的には非常に厳しいトーンであり、しかも国際化社会の中で、輸入といいますか、そういったものについてもこれを拡大していくことをある程度示唆するような文章が確かにレポートそのものにはあったというふうに受けとめております。私どもといたしましては、これは一つの御意見として承ることでございます。ただ、その中で指摘されているように、こういう時代に対応するために中核農家、そういったものを本当に育成しなさい、これはやはり真理だというふうに受けとめております。  いずれにいたしましても、私どもといたしましては、外に向かっては我が国の実情というものをよく説明すると同時に、内にあってはやはりそういう新しい時代の中で足腰の強い農業というものをつくり上げるためにこれからも懸命に構造政策を進めていかなければいけない、かように考えるところであります。
  122. 新村源雄

    ○新村(源)委員 先進各国が日本にいわゆる市場開放を迫ってくるということは、農業の内部からの問題ではなくて、いわゆる貿易摩擦、日本の工業製品の異常な輸出、そして貿易黒字、こういうことから一億二千万人の食糧市場、こういうものに特に無理に押し込んできている、僕はこういう感じがしてならないわけです。  今まで日本のずっとたどってきた経済の路線を振り返って考えてみますと、これは昭和三十年後半から、経済自立五カ年計画あるいは新長期経済計画、所得倍増計画、経済社会発展計画、新経済社会発展計画、さらに新全総、こういうように、一連の経済発展の方向は、ひたすらに重化学工業部門、そして独占的な大企業に資源を集中する、あるいは税制、金融をこういう産業に焦点を当てて、ひたすら産業優先、輸出振興に明け暮れてきた結果が今日の状態になっている、こういうように指摘せざるを得ないわけです。そういうことによって今日では、国内においては地域間格差あるいは産業間格差、さらには極端な過疎過密、こういう状態が出てきでおるわけです。  したがって、これは昔から言われる言葉ですが、臭いにおいをなくしようと思えば、その根本をなくしない限り臭いにおいというのは消せない、こう言っているわけですね。そういうことからいえば、今の日本の産業構造あるいは国土の状況からいって、農業に視点を当てるのではなくて全体の日本の社会構造というものを見直す時期に来ている、そういう重大な時期に来ている、こういうように思うのですが、こういう点についてはどうですか。     〔委員長退席、近藤(元)委員長代理着席〕
  123. 羽田孜

    羽田国務大臣 私は、今先生からお話がございました議論というのは、これは見方がいろいろな角度によって違うと思うのですけれども、日本の国というのは確かに大きい、強いところもある、また弱い面がある、過疎過密がある、これもあながち間違っている見方じゃない、やはり現実にそういうものはあるというふうに私は思っております。しかし、そういう議論を進めていく中で、今日日本の経済の発展というものがあった、そういうことで、例えば農村の地域にも工場が進出することができた、あるいは誘致することができた、そういう中で、日本の社会構造というものが全体的にレベルアップされたということ。それから、これは道路とかあるいは社会資本の充実ということになると思いますけれども、いずれにしましても、日本の経済が大きくなってきた中で、地方におってもやはり社会資本というものが確実に充足されてきたというふうに思っております。またそれと同時に、そういう中で農村あるいは農家の所得も上がると同時に、生活のレベルもいろいろな面で上がってきたんじゃないかと思っております。  ただ問題は、余りにも急激な経済の発展という中にあって、それに農業も構造政策を進める、あるいは基盤整備を進めていく、そういうことを進めながらも、残念ですけれども国、経済の全体の非常にスピードの速いものと一緒になって追っつくことができなかった、比較的効率が悪いものになっておるということはまだ言えるんじゃないかなというふうに私どもは思っております。そういう点について、これから私どもといたしましても、本当に国民の食糧を安定して供給できるような、しかもそういったところで生活する人たちがより農業によって生活をするんだという中核農家の人たち、こういった人たちに力をつけていく、こういう分野がまだあるんだというふうに私は理解をいたしておるところであります。
  124. 新村源雄

    ○新村(源)委員 確かに、今農林水産大臣のおっしゃったように、全体的に見ればそういうようにうなずける面もあると思うのです。ところが、山村あるいは北海道、九州、こういうように第二次産業の進出が非常に困難あるいは遠隔の地、こういうところでは、特にこの専業農業、こういうところが毎年毎年、ことしよりも来年、来年よりも再来年、形は一応はでき上がってきたけれども内容は非常に困難な状況に追い込まれてきている、こういう点については認めますか。
  125. 羽田孜

    羽田国務大臣 私は、その一面は認めざるを得ないと思います。というのは、特に北海道なんかの場合にも、例えば豆をつくる、この豆がやはり過剰になってくるとか、あるいは酪農なんかの面におきましてもそういった面がやはり出てきておる。また、米についても相当大きな転作をしていただかなければいけない。また、漁業についても、この間の国際的な規制によってどうしても減船、廃船、離業しなければならない人たち、こういった人たちが出てきておるという現実の中で、やはり各地域経済というものが、直接市長さん、町村長さんたちにお会いしてお話ししておりましても、相当に疲弊してきておるという現実があることは私は事実であるというふうに思います。
  126. 新村源雄

    ○新村(源)委員 どうも今までの農政の論議をしておりますと、今大臣がおっしゃったような主要農産物、専業農家、こういうものまで巻き込んで、今の日本の市場開放なりあるいは貿易黒字、こういうものを一緒くたにしてやられてきたという感じがするわけです。ですから、今こそ例えば農業専業地帯あるいは各作目ごとにその地域でどうやったら経済が安定していくかという、個々の問題についてあるいは地域別について真剣に考えていかなかったならば、日本の農業というのはまさに片手間の農業になってしまって、ますます自給率が低下をしていく。  これは日米諮問委員会でも言っておりますように、日本は耕地が狭いんだ、だから、穀類だとか大動物を飼うのにはふさわしくない、野菜とか果樹とか花卉あるいは小家畜、こういうものに転換せよということを日米諮問委員会で言っておるわけですね。そして、中曽根総理も、これは非常に重要な提言である、こう言っておるわけです。ですから、この考え方を根本的に改めなければ日本の健全な農業の発展はできない、こういうことで、私はこういう面から一大農政転換というものを求める、こういうように考えているのですが、どうでしょうか。
  127. 羽田孜

    羽田国務大臣 日米諮問委員会の答申といいますか、そこからの報告というものの中には私たちも実は議論のあるところがあります。これはやはりそこの会議に参加されている方が自由にディスカッションをされる場でございますから、私はいろいろな考え方があってもいいのじゃないかと思います。ですから、そういった方々の意見というものも私どもは率直にお聞きいたします。ただ、その中で我々が選択するものは一体何なのか。これは、私ども農政担当者、そして農業関係をいろいろと考える議員の皆さん方によってまた御指導いただくべきものであろうというふうに私は思っております。  そういうことで、私どもがいつも申し上げておりますことは、きょうも何回か申し上げてまいりましたけれども、日本のこれからの農業というものを考えたときに、食糧を安定して確保するということがやはり一番大事なことであります。そういうことを考えたときに、生産性の高い、足腰の強い農家というものをつくり上げていかなげればいけない。ということになると、私ども、ただ漫然とやるのじゃなくて、焦点をきちんと当てながら、中核農家、こういったものをやはり育成していく必要があろうというふうに思っております。  ただ、構造政策を進めていきますと、どうしても離農する人たちなんかも出てくる。こういった場合に、その人たちが安定して勤労ができる場も提供していかなければいけない。そういう意味で、例えば他の産業、でき得れば地場産業と言われる地域の特産とかそういったものを加工する産業をまず重要視すると同時に、他の産業におきましてもそういった安定した職業の場というものを、勤労の場というものをつくり上げていく。中核農家を育成すると同時に、あわせてそういった面も考えていかなければいけないというふうに私は思っております。
  128. 新村源雄

    ○新村(源)委員 言葉の上ではそういうふうにおっしゃるのですが、では具体的に一つ申し上げたいのですが、北海道は御案内のように酪農主要地帯です。残念ながらことしは二・八%の乳価の値下げがされた。そして、三%の全乳哺育、いわゆる生産調整をされた。非常に暗いムードが広がっている。そして、確実に毎年酪農家から脱落をしていっている。こういう中で今問題になっているのは、去年のいわゆる余乳というのが二万四千トンあったわけですよ。そして、それは農家の委託加工ということで、受託機関のホクレンが一千トンのバターを抱えたわけです。それは抱えておるけれども、売れないから、今度は第一次分として三百トンを生産農家に返すわけですよ。その三百トンが農家にとってどういう形になるかというと、酪農家二月当たり、二百二十五グラムのあの市場で売っているものが百個ですよ。酪農家の手元へ百個どんとバターが返ってくるわけですよ。こういうことをやられたら、自分の搾っている牛乳は三%は出せない、食紅を入れて全乳哺育に回さなければならない。前年度のバターが自分のところの冷蔵庫や何かで処分し切れないくらい。これは一戸平均百個ですから、大きいところになると二百個、三百個になるところもあると思うのですよ。そんなのがどんと返ってきたら、今大臣のおっしゃったように、こういう状態をつくっておいて、一体中核農家というものは育成できますか、こういう現況をつくっておいて。どういうようにお考えになりますか。
  129. 羽田孜

    羽田国務大臣 今私が先生から御質問を受けてお答え申し上げたのは、これからやはり大きく転換していかなければいけないんじゃないかというお話の中で、私は実はきょうもお話ししましたように、一つの政策というものを、そういうことのないようにやはり中核農家を、本当に産業として自分でやっていくんだという農家を育て上げなければいけないのです、そういう方向に大きな力を注いでいかなければいけないんじゃないですかということを実は申し上げたわけでございまして、これからまさにそういった問題について私どもとしても広く考えていかなければいけない問題であろうというふうに思っております。  具体的な問題について、今お答えさせます。
  130. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 ただいま先生が仰せの、北海道におきまして農家の方の手元にバターがいわゆる還元という形で送られているということは事実でございます。このゆえんのものは、昨年度の生乳計画生産をするに当たりまして、中央酪農会議を中心といたしまして各県の指定生乳生産者団体が集まりまして各県別の生乳の生産目標数を決めたわけでございます。その際の取り決めといたしまして、各県はそれぞれ努力して生乳生産をその目標の範囲内におさめようじゃないか、そこで、仮にその範囲を超えるような場合には、各県がいわゆる特別会乳として責任を持って一般市場から隔離するというふうな方針を決めた次第でございます。  そこで、北海道の指定生乳生産者団体といえば、先生御案内のようにホクレンでございますが、ホクレンにおきましては結果的に特別会乳が発生したがためにこの一部をバターとして委託加工したわけでございまして、この処置につきましては、先ほど申しました中央酪農会議での決定事項の一般の市場から隔離するというふうな趣旨を踏まえまして、ホクレンの生乳受託販売委員会で十分討議した上で、組合員に還元をするという方針を立てまして、それを実行しておるということでございます。したがいまして、この委託加工したバターの組合員への還元自体は、六十年度の生乳生産に関しまして中央酪農会議を中心として取り決めた方針に即したホクレンの対応であるというふうに考えております。
  131. 新村源雄

    ○新村(源)委員 ですから、私が先ほどから申し上げておりますように、こういう状態をつくっておいて——例えば午前中玉沢委員の方から質問がありましたが、外国はそういう余ったバターとかチーズとかの乳製品は国が補助をつけて、そうして海外へ輸出しておるわけでしょう。そうして農家を守っているわけでしょう。ところが、日本の場合はそうではなくて、余ったものは生産者のところへ押し戻してくる。それは、そういう環境の中で、生産者内部ではやむを得ずそういうふうにしてきたと思うのです。そういう環境でいいのですかということを言っているのです。  例えば、今も北海道ではてん菜の生産調整をやっていますね。あるいはバレイショもこれ以上つくるなということでやっています。さらに豆類は、外国から十二万トンもしくは五千五百万ドルを輸入することによって、去年生産された小豆を今十九万俵も倉庫の中に眠らしておかなければならない、こういう状態が続いているのです。こういうことは初めてなんですよ。そして、こういう牛乳の方式からいけば、これから、今の円高・ドル安によってでん粉の処理ができなくなってきた、だからでん粉を引き取りなさい、委託加工だから引き取りなさい、そういう現象が出かねないわけですね、こういう状態が出てくると。こういうことで中核農家の育成というのはできるかどうか。
  132. 羽田孜

    羽田国務大臣 今、EC輸出補助金等についてのお話もありましたのですけれども、我が方は加工乳に対する保証金というものを払い、向こうに比べましても相当レベルの高い保証価格になっておるということです。そして結局あの国なんかはそういった補助金なんかつけて輸出せざるを得ないようなことになってしまって、しかもそういったことの措置をやったために財政的にどうにもならなくなって今どうしようか、あんな宣言にまで実はなってしまったというのが現状ではなかろうかと思っております。私どもといたしましても一つの方向づけをしながら、そして先行きというものを見きわめながら奨励といいますか、それをやってきましたけれども、どちらかというと消費よりも生産が先に伸びていってしまったという中で今の余剰問題というのを実は起こしてしまっているというのが現状でございます。ですから私どもといたしましては、今度の対策といたしましても、ただ生産だけではなくてそういったものを加工していく、特にいわゆる需要の開発、こんなものを真剣に考えなければいけないんじゃないか、そういうことでナチュラルチーズなんかをつくることについてもいろいろな角度からお手伝いをいたしましょう、またお互いにそういったものについても努力をいたしましょうということを実はやっておるわけでございまして、確かに今の一時的な過剰、こういったものの中で大変苦労されておることは私どももよく承知しておりますけれども、しかし、そういったものは一面、生産の方が少し強くなり過ぎてしまったかなという面もあるのじゃないかというふうに考えます。
  133. 新村源雄

    ○新村(源)委員 だけれども大臣昭和四十五年に輸入乳製品がわずか百二十二万トンであったものが、去年は実に二百七十万トンの輸入乳製品が入っておるわけでしょう。それだけ入っておりながら、国内でわずか三万トンや四万トン、それだけのものがもう対策し切れないということで今生産の原点に返してきておるわけでしょう。そういう点についての矛盾というものを考えませんか。生産の方が先に伸びた、こうおっしゃるけれども、そうではなくて生産よりも輸入が伸びてきている。輸入が伸びてきていることによってそういう現象が出る。確かに自由化品目ということになってしまっておるナチュラルチーズですね、こういうものについては大変だと思いますけれども、それを調整をしていくのが政治じゃないんですか。もうなってしまっているから仕方がないのであるということではなくて、あるいは輸入業者に対する対策なりそれらの広範な対策を結びつけて、こういうような現象が起きないように努力をするのが政治じゃないんですか。国の最高の行政じゃないんですか。
  134. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 ただいま乳製品の輸入に関するお尋ねがあったわけでございますが、まず乳製品の輸入に関します制度と申しましょうか、その仕組みにつきまして御理解賜りたいと思いますのは、バター、脱脂粉乳等基幹的なものにつきましては先生御案内のように畜産振興事業団によりまして一元輸入化しているわけでございますし、その他プロセスチーズ等につきましては輸入割り当て制限品目にしておるということでございまして、これらの品目につきましては十分国内の需給を見ながら対応しておるという状況にあるわけでございます。また、ただいま先生御指摘のナチュラルチーズの問題でございますが、ナチュラルチーズの中でもプロセスチーズの原料として使われるものにつきましては、関税割り当て制を設けまして、極力国産チーズの生産振興に配慮した輸入制度の運用をしているということでございます。  そこで問題は、ただいま先生がおっしゃいましたように、六十年度の乳製品の輸入につきましては生乳換算で申しますと約二百五十六万トンという数字になっているわけでございます。対前年比ではやや減ということでございますが、いずれにいたしましても、二百五十六万トンの生乳換算での乳製品が輸入されておる実績があるということでございます。ただこの中で御理解賜りたいのは、農家の需要に応じまして輸入しておりますえさ用の脱脂粉乳がございます。さらにまた学校給食用に使われておる脱脂粉乳の輸入も入っておりますし、また沖縄に対しまして、これは復帰の際の特例措置として輸入しておりますバターの問題がございます。これらが全体の四分の一を占めているわけでございます。したがいまして、残りのものは生乳換算で大体二千万トンの乳製品が輸入されておるというふうになっておるわけでございます。  そこで問題は、この中の過半がナチュラルチーズであるということでございまして、最近のチーズの消費につきましてはプロセスチーズの消費が停滞ぎみでございまして、ナチュラルチーズの消費がふえておるという傾向があるわけでございます。そこで、生産者団体等を中心にいたしまして、今後の酪農のあり方としてもっとナチュラルチーズの国産化に取り組むべきじゃないかという御意見があるわけでございまして、私どもといたしましても、この際日本人の嗜好に合ったナチュラルチーズをつくるということをやってみようじゃないかということで、ことし二億七千万円の予算を計上いたしまして日本人の嗜好に合った国産ナチュラルチーズの生産、流通等につきまして実験的な事業をやってみようと思うわけでございます。そういうことで今準備をしているところでございます。  今後とも私どもといたしましても、生産者団体が取り組みます国産ナチュラルチーズの生産振興に関しましては私どもなりに支援をしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  135. 新村源雄

    ○新村(源)委員 いや、私の言いたいのは、大臣、こういう現況が出ているのを何か対策を施すような方法がないのか、温かい政治の配慮ができないのか、こういうように言っているわけですよ。  それは学給用の脱粉とか飼料用とか入っておるでしょう。ですから、それらのものを調整をしてこういう生産者にとっては大変な事態を回避する方法がないのか、こういうように言っているのですよ。どうなんですか。もうこれはしようがないのですか。大体、三百トンで百個、これを千トン全部配られたらことし一年その酪農家にとってはもうバターでどうにもこうにも動きがつかぬという格好になるでしょう。こういうのに対策ができないのですか。
  136. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 先ほど申し上げました中でちょっと数字を訂正させていただきますが、えさ用脱粉、学校給食用脱粉、バター等を除いたものが二千万トンと申し上げましたが、これは二百万トンの誤りでございますので、恐縮でございますが訂正させていただきます。  ただ、この飼料用脱粉なり学校給食用脱紛が入っておりますということは、基本的には国内価格価格差が大き過ぎるということでございまして、そこで飼料用脱粉につきましては、特に最近需要が多いのは子豚用のえさとしての需要が多いために輸入がふえておるということでございまして、いずれにいたしましても、これは国産を使うにしては余りにも価格差が大き過ぎるということからこういった特殊用途につきましては需要が強うございますので、私どもとしてもこの輸入を認めておるということでございます。
  137. 新村源雄

    ○新村(源)委員 ですから、そういう既往のことはわかっている。わかっているけれども大臣、こういう現象が出ているのを何とか方法がないのですか、こんな状態
  138. 羽田孜

    羽田国務大臣 今先生から御指摘があることは、こういう現実というものは、今までのあれは別として、ともかく一千トンのバターというものが各農家に返される、こういったものが何とかならないのかということの御質問だったというふうに受け取るのですけれども、いずれにしましても、今日のバターというものは異常に余計抱え込んでしまっておるという現状の中で、農家に少しお引き取りをいただこうということであります。ですから、そういう意味で、こういった過剰を出さないために日本で新たな需要というものを開拓しなければいけないだろうということで、今、国の方でもいろいろと考えながらナチュラルチーズをつくるような対策というものを進めておるわけです。ただ、農家の方に引き取っていただくこのバターについては、これを今どうこうということについては、私どもとしてもこれを何とかするということじゃなくて、いろいろな角度からお話し合いした結果そういう措置がとられたというふうに理解をいたしております。
  139. 新村源雄

    ○新村(源)委員 いや、大臣、いろいろな角度とおっしゃるけれども、みんな自分の立場だけ守って逃げるわけですね。自分の立場だけを守っていく、その結果が生産の原点に押し返されてくる、こういう現況でしょう。ですからこんなことでいいのですかと言うのですよ。ですから、こういう状態であれば、さっき大臣のおっしゃったようにこれからの中核農家を育成していくといっても、こういうことではやはり農業の将来に展望を持てないでしょう、希望を持てないでしょう。これからだって、このような円高の状態では、果たしてでん粉がどうなるのかあるいはナチュラルチーズがどうなっていくかということをみんなそれぞれの立場で心配しているわけです。ですから、そういうものを取り除いてやらなければ、そういうものの防波堤になってやらなかったら、農家というのは一番弱い立場ですから、まさにこのバターの問題なんというのはみんながそれぞれの立場で一番最後の生産点に戻してくる、こんな残酷なことはないと私は思うのですよ。これは何とかしてもらいたい。
  140. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 バターの北海道におきます農家還元への問題は、先ほども申し上げましたように、昨年の計画生産を決める際に、中央酪農会議を中心として各県の指定団体が集まりまして県別の数量を決めた、その際には、生産数量を守ろうじゃないか、もしも違背するようなことがあった場合は、それは各県が責任を持って一般市場へ出さないようにしようということを取り決めたわけでございまして、その線に従ってホクレンが委員会を開きまして十分練った上に講じた措置だと思うわけでございまして、私どもとしてもこういうことがあることは望ましくないわけでございまして、望むところは、やはり決められた計画生産数量が守られることが望ましいわけでございます。そこで、本年度に関しましてはまた別途ことしの二月に県別の生産数量が決められておりますので、これにつきましては、北海道に限らず各都道府県におきましては確実に励行されますよう私どもなりに指導し、かつまた必要な援助をしてまいりたい、かように考えているわけでございます。
  141. 新村源雄

    ○新村(源)委員 酪農生産というのはそんな簡単に機械や原料を入れて生産をしていくなどというものではないのでしょう。長い間の積み上げによって乳牛の改良から設備から全部やってきて、そうして出てくるものをそんな簡単に、水道の水をコックで緩めたり締めたりできるものじゃないのですよ。ですから、そんな簡単な考え方でこの農政というものを見ていってもらったらみんな行き詰まりになってきますよ。都合のいいときは生産の原点で減産をしなさい、足りないときはもっと増産をしなさい、いわゆる国の要請というのはいつでもそうでしょう、今でもそうです。だって、今までの酪農近代化計画なんかでも第一次から第四次までやったでしょう。その都度、国が必要なときにはこのくらい増産しなさいという目標を与えるでしょう。その目標に向かって進んでいくと、ちょっと過剰の現象ができてくると今のような状態にぶつかってくる、こんな無責任なことはないですよ。こういうことについてはやはり政府が中心になって対策を施していかなければならない。大臣、どうですか。
  142. 羽田孜

    羽田国務大臣 確かに先生のおっしゃる今現実のあれというのはわからないことはないのですけれども、ただ、先ほど局長の方からお話ししましたように今度の六十一年度、六十年度についてはどうする、きちんとした一つの計画を立ててやる。ところが、今までもそういう経験があったのですけれども、飼料穀物なんか安いと相当これを多量に投下する、そういう中で生産過剰を来してしまう、そういう中でとられた実は委託加工という措置であったのじゃないかというふうに私ども見ております。ですから、その辺のところに、いろいろな計画生産をしていかなければならぬとき、こういったときはお互いにルールを守りながらやっていかなければならない、そういう一面があるのではないかなと私は思います。     〔近藤(元)委員長代理退席、委員長着席〕
  143. 新村源雄

    ○新村(源)委員 この問題はこれからの問題として、こういうときにこそ政治の力が適切にどう働くかということにならなかったら、生産の原点で一生懸命働いている農民が本当に安心して将来に展望というものは持てないですよ。ただ口では中核農家の育成とかいろいろなことをおっしゃるけれども農業現状は決してそういうようにはなっていない。  そういうことで、次の問題に移っていきたいと思いますが、次に負債整理の問題です。  これは前の佐藤農林水産大臣の時分に私ども何回も質問をして、調査をして、その調査結果に基づいて対処しよう、こういう約束をいただいておるわけです。それで、もう時間がございませんので内容等については申し上げませんが、今、都道府県で、都は入らぬかもしれませんが、実態調査をしている、近くその調査の結果が出てくる、こういうことになっているのですが、この調査結果が出てきた場合に、今までの負債整理というのはそれはそれなりの、成果はなかったとは言いません、成果はあったと思います、しかし、今日の農家負債の実態というのは、数字で申し上げませんが、非常に深刻になっている。したがって、償還年限なりあるいは金利というものは、その負債の実態に合わせて、十分それに対応できる、それに合致する、負債整理の目的が達成できる、こういうようにしてもらわなければならぬと思うのですが、この点についてはどうですか。
  144. 羽田孜

    羽田国務大臣 酪農、畜産、こういった皆様方というのは投資が大きいということもございますので、今までもこういった問題に対して負債整理資金等をつくりながら対応してきたのですけれども、先生のおっしゃるのは、そういったところから漏れたところ、このことを御指摘になっているのではなかろうかと思っております。  いずれにしましても、今、先生からお話がありましたように、北海道庁において六十年度、六十一年度両年度にわたりまして総合的な調査というものが行われております。これを私どもも踏まえまして、負債の内容等を十分研究、検討、こういうことを少し私どももしていきたいというふうに考えております。
  145. 新村源雄

    ○新村(源)委員 これはぜひひとつ先ほど申し上げたようにお願いしたいと思います。  次に、先般円高差益の還元ということで電力あるいはガス会社が約一兆八百億円ぐらい還元する、こういうことで発表されたわけです。その内容について今、質問している時間がございませんので、特に電力料金の用途別料金という点でちょっと質問したいのですが、今、私の町の酪農家の使っている一カ月の電気料は大体幾らぐらいかということを、これは百トン、二百トン、三百トンという単位で調べてみました。大体平均して一年間に約五十五万円の、これは純然たる牛舎の中で使う動力費だけなんですよ。ところが、電気料の用途別の料金では、小口電力の低圧電力、これが三十六円四十七銭ということになっております。これ以外に、これはかなり早く設定されたのですが、農事用電力が十一円九十九銭、大体三倍なんですね、同じ農業用に使われていて。農事用電力というのは、かんがい、それから脱穀調製、こういうものに使われておる電力がそうです。これについて、通産省からも来てもらっておるのですが、ちょっと現況を。
  146. 川田洋輝

    ○川田説明員 お答え申し上げます。  電気の料金につきましては、原価主義あるいは需要家間の公平という原則に基づいて料金設定がなされておるものでございます。今先生御指摘の農事用電力という契約種別がございますが、これにつきましては、電源構成が水力発電が主体でありました時代に、豊水期に生じます余剰電力を活用するという見地から、今先生御指摘のかんがいなどにつきまして割安な料金として設定されておるものでございます。  ところが、この契約種別について見ますと、昨今の電源構成は水力のウエートが大幅に低下をいたしておりまして、また電力の需要面におきましても夏場の需要が非常に急速に伸びてまいっております関係から、農事用電力につきまして先ほど申し上げましたような原価的な説明がかなり難しくなってきておるという事実がございます。このために、私ども現在までの運用では、ここ十年以上にわたりますが、新規の対象拡大は行わずに、ただ、それだと既存の需要家への影響が非常に大きくなるだろうということで、考え方として既存需要家の適用に限るというようなことで運用をしてまいっておるというのがこの制度の実情でございます。
  147. 新村源雄

    ○新村(源)委員 聞くところによりますと、この低圧電力というのは季節的に使われる電力が主だ、こういうように聞いております。ところが、酪農家の使う電力、特に牛舎の中で使うのは、大体朝六時、晩はこれまた午後六時ごろ、こういうことで、ちょうど一般電力が使われる時間帯から外れたところで使われるわけですね。そうすれば、酪農に使われている電力というのは新たな用途別料金というものを設定すべきじゃないか、使われておる時間帯から見て、そして使われておる量から見てもそういうように考えなければいかぬのじゃないか、こういうように思うのですが、これは大臣、もう時間がございませんので、この点について説明をしていただいて、今後対策をしてもらいたい。ちょっと一言お願いいたします。
  148. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 酪農経営に対します現行の電力料金の優遇措置の適用についてでございますが、この優遇措置にはそれなりの基準等があると思いますので、私どもなりに先生がおっしゃったような意味での酪農経営における電力使用の実態をよく調べた上で、関係の酪農団体等の意見も聞いた上で、関係方面と御相談してみたい、かように考えます。
  149. 新村源雄

    ○新村(源)委員 では、終わります。
  150. 大石千八

    大石委員長 武田一夫君。
  151. 武田一夫

    ○武田委員 午前中大臣がおりませんでしたので、大臣質問をさせていただきます。  まず最初に、午前中にもいろいろと問題にしたのですが、円高に対する対策、特に農林水産省関係の直ちにでき得るもの、これについては十分なる対応をしていただきたいというふうに思います。また、今後ちょっと時間はかかるけれども、早急にまたこれもやらなければならない、そういうものもあるということでありますので、そういうものに対しても時期を失しないようにひとつお願いをしたい、このことをひとつ要望しておきますので、大臣からこの点についての御決意をまずお聞きをしたい、こういうふうに思います。
  152. 羽田孜

    羽田国務大臣 円高であれされるものにつきましては、例えば飼料穀物等につきましては、この前も値下げをしていただいたところでありますけれども、こういったものも酪農家、畜産家にとっては非常に大きなものでございますから、こういった対応なんかも直ちにやっていかなければならぬと思っております。  なお、農業生産によって産出されたものを、例えばシイタケですとかその他も輸出しているものもございます。これは逆に、円高になったためになかなか輸出しにくいという状況にございます。こういったものについても私どももよくその辺を、実態を調査しながら対応してまいりたい、かように考えております。
  153. 武田一夫

    ○武田委員 ぜひよろしくお願いを申し上げます。  そこで、水田利用再編対策のポスト三期をめぐる問題についてお尋ねをしたいのでありますが、このことにつきましては、これは関係者一同、大変注目をしているわけでございます。  そこで、ポスト三期をめぐる議論としまして、一つは、我が国農業の生産構造の再編成というものがどうなるのか、あるいはどうあるべきか。それから二番目には、それを主体的に担い得る経営体の育成についてはどうしなければならないか。三番目には、米価、食管制度のあり方についてどういうふうになっていくものか、しなければならないか。大きく分ければそういう問題が議論の中心になるのではなかろうか、こういうふうに思うわけでありますけれども大臣のお考えとして、この三つについてどのように取り組んでいくか、どうあるべきかというような所信も交えまして、ひとつ最初にお尋ねをしておきたいと思うのです。
  154. 羽田孜

    羽田国務大臣 このポスト三期をめぐりまして、農業生産構造の再編成ということで、私どもとしましても、やはり過剰な米というものから不足する産物、そういったものに再編成していく、これはきょう午前中もいろいろ議論があって、非常に難しい問題でありますし、かんがい農業といいますか水田農業からの脱却というのは非常に難しいわけでありますけれども、構造改善なんかも進めながらもやはり汎用化できるような体制をつくりながら、いわゆる農業再編成というものを図っていかなければならない、私どもはこれをやはり重要な問題として取り組んでいきたいと思っております。  担い手につきましては、先ほどもお話をしておりましたけれども、今まだいろいろな問題があります。これは事実でありましょうけれども、やはり本当に新しい時代の、また地域に合った農業、そういったものを創造できる担い手というものをつくる、これが相当力を入れていかなければいけない問題であろうというふうに私どもは考えております。  米価につきましては、これはことしどうするのだということは、もう今この背景について農林省の中でも鋭意検討を続けていただいておるところでございますけれども、ともかく生産性を上げながら、ただ価格にだけ頼らなくて済むような体制だけはつくっていかなければいけないと思いますけれども、いずれにいたしましても、生産費所得補償方式という方式がございます。これに基づいて生産費を調査した上で対応していかなければいけない。これは長期的な答弁にはならぬわけでありますけれども、いずれにしましても今生産費調査等を十分進めていただきながら、この問題については適正なものにするために対応していきたいと思っております。  食管制度については、これは従来から何回かお話し申し上げてまいったあれでございますけれども、やはり米というものを国がきちんと管理をしておる、そこに主食を米とする日本国民の安定というものがあるのであろうというふうに思っております。そして私どもは、やはり時代の流れの中で需要に見合った米の取引というものが行われるようにということで、適宜その都度改正あるいは政令等の改正等も行いながら対応してきているところでありまして、これからもまだこの食管法というものによって、これの根幹を守りながら米の安定供給を図っていかなければいけない、かように考えております。
  155. 武田一夫

    ○武田委員 そこで、ポスト三期対策、いろいろと御検討中だと思うのでありますが、いつごろまでにその全容が公表されるということになっているのか、この点をお聞かせいただければ、こう思います。
  156. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 ポスト三期の問題につきましては、現在、農政審議会でも農政の長期ビジョンなり六十五年の需要と生産の長期見通し、その改定問題なり、それとの関連におきまして今後検討が進められることになっておりまして、そういう農政審議会の検討、それから関係諸団体あるいは自治体、そういう方面の意見も聞きながら、時期としましては、今年秋までには骨格を固めまして、また実施について関係自治体及び農業団体にお願いをするという運びで進めたい、かように考えております。
  157. 武田一夫

    ○武田委員 そういう関係者とのお話し合いという問題もあります。これは重要なことであります。だけれども、現在の農業状態を見ますと、ポスト三期というのは、今後の日本の農政を本当にいい方向に持っていくか、あるいはまたますます大変な方向に持っていくかという一つのかけをするときに来ているのじゃないかと思うのです。このときに羽田大臣がまだこの職にあって農林水産業の頂点に立っていてもらいたいという気持ちはあるのでありますが、何かきょう定数是正も通ったところを見ると、解散、総選挙間違いない。となりますと、果たしてまた羽田大臣の登場があるのかと思うと、私も心配なのであります。  実は農業を取り巻く環境の中で私はいつも心配するのですが、農林予算は毎年削減される一方である、しかも農産物の貿易問題を含めた外圧が非常に強くなる、担い手の高齢化がだんだん進んでいく、これは非常な速さで極端に高齢化が進んでくる、農地の遊休化、荒廃も非常に激しい、こういうことを見ますと、どれ一つをとっても多事多難な問題を抱えているわけであります。ですから、一日も早くそうした内容を世に公表しながら具体的な農政の方向を打ち出し、その中でいろいろな提案や批判があればそれに十分にこたえるような、完璧など言いますと非常に無理な注文かもわかりませんが、今後のポスト三期以降の農政というものに対する農民、関係者の本当に心からの希望と明るい日差しがうかがわれるようなものを提示していく必要があり、そのための対応は急がなければならない、こういうように思っているのです。  これは本当はできるならば米価が論議される前あたりに出てきて当然ではなかろうか、私はこういうふうに思っていたのであります。今秋ごろということでありますが、こうしたいろいろな問題を抱えているだけに、秋に出てきてまたそれが来年の二月、三月というときにいろいろと論議になる時間的な短さを思うときに、もう少し早く作業を進めて、せめて次の臨時国会等々あるいは何かそういう機会があるときに本当にやらなければならない。大臣は今後の政局をどうお考えになっているのかわかりませんが、最近新聞にはいろいろと貴重な御意見が出ているようでありますが、この農政の空白というのは——本当に今なんです、正直言いますと。この五、六、七、このあたりにきちっとしたものを打ち出しておかぬと、秋収穫そしてまた来年の農作業というところへの連動というものが非常に難しいし心配だ、こういうふうに思うのでありますが、その点を大臣はいかがお考えでございますか、ひとつ御所見を聞かしていただきたいと思うのであります。
  158. 羽田孜

    羽田国務大臣 まさに今先生がお述べになった一連のことは全くそのとおりであると思います。その意味でなるべく早く一つの方向というものを示すことができればいいわけでありますけれども、やはりこの水田利用再編対策、ポスト三期というものは、まさに日本の農業の基本にかかわってくる問題であろうと思います。その意味で、現在農政審議会でもいろいろな意見を踏まえながら、二十一世紀の農業とはかくあるべきじゃないか、あるいは農産物の需要の動向といったものも踏まえながら二十一世紀の方向というもの、ビジョンというものをつくってもらおう、そのときにやはりこの水田利用再編対策もその基礎になってくる問題であろうと考えております。そんな意味で、確かになるべく早く示すことがいい、また麦の播種ですとかいろいろなことを考えたときに、そのためにはやはり少しでも早くという地方からの声があることを私どもも承知いたしておりますけれども、将来展望を示すものであるだけに余り拙速でやるということも慎まなければいけないであろうと思っております。  いずれにしましても、できるだけ地方の声なんかも反映されるように、そういったことも含めてでき得る限り早く一つの方向が示せるように、これからもそれぞれの担当の皆さん方に鋭意努力してもらいたいと思っております。
  159. 武田一夫

    ○武田委員 今、農政審を中心とした作業が行われている。そこで私また大臣にお尋ねしたいのですが、要するにこれからの日本の農業というものはこういうような姿でいくのがいいのじゃないかと大臣がお考えになっている二十一世紀へ向かうビジョン、あるいはまたその青写真を描いていたらこの際ひとつ聞かしていただきたいな、また後々の参考にしたい、こう思っておりますので、ひとつ御見解を聞かせていただきたいな、こう思います。
  160. 羽田孜

    羽田国務大臣 今申し上げましたように、二十一世紀の農業のあるべき姿、ビジョンを実は農政審の方で御議論をいただくということで、私どもはそういういろいろな角度から議論されたものをもとにして一つの方向を打ち出していこうということでありますから、私が余り個人的な見解なんかを述べてしまうということは大変危険なことでございます。  ただ、申し上げることができますことは、やはり農業というものは、基本は国民の食糧を安定供給するために国内の生産はどうあるべきか、そして基本的なものとしてえさなんかについても安定して他から確保できるものはどのようにしていくべきなのかというようなことが重要なことであろうと思います。そして本当に安定して確保するためには、私どもよく足腰の強いという言葉で申しておりますけれども、ただ言葉だけではなくて、そのための例えば基盤整備という基本的な問題ですとか、あるいは先日来ずっと皆様に御審議をいただきました先端技術、バイオテクノロジーですとか、そういったものをどんなふうに研究開発するのか、そしてそういったものをちゃんとこなしながら営農に当たる担い手の人たちをどのように育成していくのか、こういうことなんかについて私どもとしてきちんとした方向を申し上げることが必要じゃないかなというふうに考えております。
  161. 武田一夫

    ○武田委員 いろいろ議論されているところに大臣個人の見解を述べることは、そういう方々の考えを少し誘導するとかあるいはまたその方向にいくんじゃないかという、非常に心温まる御心配をしているようでありますが、私は、いろんな議論も大事だけれども、やはり大臣としての見解というのはこうなんだということは言った方がかえっていいと思うのです。後から出てきたのを通してああだこうだと言うと、いろいろ議論された方も、また何かけちをつけられるような、また言いがかりをつけられるようなことに思われたんじゃかえってマイナスじゃないか。  これからはやはりそういうことでなくて、この間も農林省の若手の皆さん方が二十一世紀の農業についていろいろディスカッションか何かやったんでしょう。あのときにも言いたいことを十分言わせたようでございまして、非常に結構なことで、あの報告書を見ますと伸び伸びと非常にすばらしい意見を述べまして、ああいう中堅の、若手の方が伸びてくるということは、これは日本の農政にとりまして、日本の国政の上においても非常に重要でしかも貴重なものだなと思って、今あの分厚いのを少しずつ読ましてもらっています。その中で、いろんな周りのことを気にしたり、何だこうだと言われることに遠慮がちで物を言うということはいけないのではないか、そういう傾向が今まであったと率直に言っているわけであります。我々はそんなこと関係なしに、やはり思うことをきちっと述べていくんだ、非常にいい傾向であります。  そういうことで、今までの大臣とまた違って羽田大臣も非常にまだお若うございますから、昭和の新生の御代に生まれた方でございますから、そういう意味で今までのそういう行き方を一つ脱皮した、そういう一緒になって考え、一緒になって事を進める、何か出てきたことに意見を言うというよりも、その方がまた農業関係者は喜ぶのではないか。ですから今大臣が一日農林水産省とかというのをやっているでしょう。あれは非常に受けていると思うのですよ。どうです、できれば全国各県ずっと図られて、各県違うんですから、同じ米をつくっている県にしましても、地域によっても違う。そのときにああいうふうにしてゆっくりといろんな御意見を聞いていただく、あるいはまたそれに対していろいろと言うことを言ってくる、これが結局は本当に心から農業というものを一緒になって心配していく、一緒になって農業をよくしようという、そういう一つの大きな力になっていく。これが私は正直言いまして今までの農政の中に欠けていた一つではないか。  それから、今までも農林水産省からは県やそういう方に若手の方を出していましたね。出していたけれども、これだって見ていると途中で何かしり切れトンボのような感じです。一年しっかりと勉強して帰ってきた人が、よかった、地元のいろいろな実際の話を見聞きする、経験してくる、これがやはりこちらへ来ると勉強になった、そういうことをそういう方々に会うと聞くわけ。ところが上にいる人が理解があればいいんですが、どうもそれがなかなか現地で我々が勉強してきたのが上に行くと通らない、結局は通らないものが出てくるという不満もちょこっと聞くわけでありますが、そのちょっと聞く不満というのがまた私は心配であります。  ですから、今後の農政の推進に当たっては、特にポスト三期に当たりましては、そういう今までのいろいろな欠点あるいはまた足りないものを十分に補う、そういう農政を推進する、そういうふうな方向を私はお願いしたい。そのためにもやはり大臣の長い逗留を私は期待する。大体一年や半年で何ができるか。米だって一年は丸々かかるわけでありますから。桃クリ三年カキ八年というのですから、一つのものがきちっとできるためにはやはりそれなりの、最初から最後まで責任を持って物事を見きわめるという姿勢もこれから、農林水産省だけでなくて各省庁、特に農業というものが連続性のものですから、非常に低迷しているだけにそういう一つの転換も期待したい、私はこう思うのです。  こういう私の意見に対して何か御意見があったら聞かしていただいて、私もそれをもとにして、また選挙があればそれで走ろう、こう思っているわけであります。
  162. 羽田孜

    羽田国務大臣 御意見、私も全く実は同感です。何というのですか、日本人というのは、言論というのは割合と自由に物を言う。物を言って、そしてそれをそしゃくしながらそれをきちんと判断する力がある。私は日本の国民あるいは日本の農業者というのはみんなそれだけの資質というのを持っていると思います。ただ、残念ですけれども、今までの場合にも、特に国会の審議なんかもそうなんですけれども、余り何かあれしてしまいますと途端にこれが大きな問題になってしまって、残念ですけれども本当に真っ当に伝わっていかないという面もあるということがあります。そういうことで、これからも自由に論議する中で本当にどうあるべきなのかという姿というものを、それこそ国会の中でもいろいろと御議論をいただきながら、私たちはそういった御示唆というものをまたかみ砕いて、そしてそれをどうしていくのかという方向というものを打ち出していきたいというふうに思っております。  そんな意味で、割合と自由にいろいろと発言さしていただいたり、またそういったことをお許しをいただいているということは大変ありがたいと思っておりますし、ですから、ただ、要するに基本だけを曲げないようにそれぞれの審議会の委員の皆さん方にもこれからもお願いしていきたいと思っておりますけれども、いずれにしましても、審議会の中でもいろいろな角度から自由闊達にやはり議論して、そして本当に日本の国土というものを保全する農業、また安定して食糧というものを供給できる農業、そして国がいろいろと助成したりいろいろなことをしたことに対してちゃんとこたえられる農業、そしてそこで生産する生産者の人たちもそこで生々と生きていけるような農業、こんなものをつくり出すために私どもも努力していかなければいけないんじゃないかなというふうに思っております。そんな意味でこれからも、ただ自由に議論するというだけじゃなくて、本当にそういった幅広いものを見きわめながらやっていかなければいけないというふうに思っております。  それと同時に、先ほどからお話をしておりますけれども、先生先ほども議論がありました例えば米の過剰の問題なんかについても、ただ国が押しつけるんだとかあるいは国からお願いするんだということじゃなくて、本当に過剰になってしまってそれに大変な金を使うとしたら、これはやはりマイナスになるんだ、こういったことをちゃんと理解していただくような話し合いというものも存分にしていかなければいけないんじゃないかな。  それから負債なんかにしても、これもやはり物を生み出すために投資をしていくわけなんですから、この中からきちんと物が生み出していけるような、要するに自分でちゃんと理解しながら借り入れをする、そしてそれに対してきちんとした返済をする、そういう中でもし難しくなったときにどう対応するのかとか、そんなことについての幅広い勉強なんかもできる機会というものも、私は農政上の中でやはりやっていかなければいけないのかなというふうに考えております。  ちょっと時間のことがおありでございましょうから余り細かいことを申し上げませんけれども、ともかくいろいろな広い角度からもう一度日本の農政というものを見詰めて、その中で、本当に生産者あるいはそれぞれの関係者の人たちが、そして国民が、農業というのは日本の中で生々と発展することがいいんだということを理解していただけるようなものを、こういった方向をひとつともどもにつくり出していきたい、かように思っております。
  163. 武田一夫

    ○武田委員 これは農業者あるいは農業団体の皆さん方もいろいろとそれなりの考えを持って、自分たちのこれまでの至らないところは一生懸命努力をして、国が対応するものにもう十分にこたえるような努力もしている最中であります。例えば米なんかの場合でも、生産性の向上のために頑張る、コストを下げるというようなことで真剣に取り組んでいる。いろいろとそうした問題を含めまして、農協あるいはまた農業委員会等々の機関が中心になって農業者の意識の改革もしているというわけであります。それが本当に実って、また国の農業に対する対応も十分であれば、両輪相まって日本の農業というのがこうした大変な状況を脱却するということは可能だと私は思うし、それは間違いなくできると思っております。  ただ、できるかできないかということのかぎは、現状を見ると、どうしてもやはり国にかかわる問題の比重が多いのじゃないか。そういう点で、国の真剣な取り組みが農業者の勇気とその実行力をさらに強めていく、そういう支えになるのじゃないか、こういうふうに私は思いますので、今いろいろと申し上げたわけでございます。  いずれ米価の季節も来る。今回、非常に厳しい状況の中で、農協中央会も全中もいろいろと試行錯誤しながら大変な努力をしているということでありますが、肝心なのは、やはり農業を支える生産農家が、どんな方向が打ち出される中にあっても、それによって農業意欲が一層いや増して強まる、そして、それが結局は所得の面あるいは農家経済に十分に反映する、こういうものでなければならない。特に米の場合を見ておりますと、専業農家あるいはまた一種兼業農家ほど苦労しているというような現今の農業というものは、脱皮させてやらぬと大変ではないか、私はそういうふうにいろいろなところを歩いて心配しているわけであります。  今、大潟村なども、私はこの間行ってきました。正直言いまして、本当に批判たらたら。いろいろなことがありますよ、それは。しかしながら、話を聞けば聞くほど、もう大変矛盾を抱えて、十五ヘクタールの農地を抱えて、我々は本当に日本のモデル農村として頑張るんだと言ったその意欲が、それが今、批判や不満に向けられているということが、私は悲しいというより残念でしょうがない。私は、昭和四十一年に、新聞記者時代にあの地の変わりざまを取材してきた男としまして、あそこは立派になった、その立派になったところの農業者の心の中にはそういういろいろな批判や不満が渦巻いているということは、非常に残念でならない。あの問題については、今後私はまだこの委員会で取り上げたいと思うのでありますが、そういう模範的になるべき方々でさえも、今の農政に対する批判と不満でいっぱいだということを考えると、こういう点も、それは言い分は農林省にも食糧庁にもあるいは構造改善局にもあるでしょう、しかしながら、それはそれとして反省をしながら、しっかりした対応を私はお願いしたいと思うのであります。  これが今国会の最後の質問と要望になるかもわかりませんが、いずれにしましても選挙があるということは間違いない。特に、農政をしっかり守る大臣として、みんなから——この大臣がいるから日本の農業は大丈夫だと私は言ってきたのです。それが出てこないとすれば、これはえらいことになるなと思いつつ、そういう私の意見も何かの参考にしていただき、農政の一層の前進のために頑張っていただきたいし、我々も頑張りたいという決意と願いを申し上げまして、時間が来たそうでありますから、終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  164. 大石千八

  165. 津川武一

    津川委員 最初は、三沢の米軍基地天ケ森射爆場での事件でございます。  その射爆場の下の平沼地域というところは、六ケ所でございますが、冷害が非常に強いところで、田植えの時期を失ってはいけない大事なところでございます。  そこで、昭和三十九年、日米合同委員会で、射爆場の使用は田植えどきと稲刈りどきは一週間やらない、どうぞ自由に出入りしてくださいという意味の合意ができております。そして毎年、田植えどきと稲刈りどきは演習が中止されております。ところが最近、F16が来てから、田植え最中にこの射爆練習をやっているわけです。急降下爆撃で来る、急上昇で来る。この地域は、私も見ましたけれども、戦闘機が墜落して民家を破り、田んぼを荒らしたこともございます。誤爆で模擬弾が田んぼの中に落ちてきたこともあって、その点で、農民が演習がないうちに田を植えるということでございます。このF16の演習に対して、地域の議長や水利組合が抗議をして、演習を中止してくれるように申し入れたのですが、きょう届いた新聞を見ますと「田植え時射撃中止せず米軍、住民の要請ける」こういうふうになっております。  そこで問題は、防衛施設庁がこのことをやめるように交渉したと言っている。交渉したときに何と答えたのか、どんな交渉をしたのか。田植え最中にもかかわらず、今までやらない訓練をやるのには特別な事情があるんだろうが、そこいらあたりを聞いてくれたかどうか、この点をひとつ明らかにしていただきたいと思います。  第二番目は、この三十九年の日米合同委員会の取り決めをアメリカ軍は知らないと言っている。したがって、防衛庁としてもう一回これを明示して、この取り決めどおり演習を中止するよう、もう一回申し入れるべきだと思います。これが二点。これは防衛庁に。  そこで、事が農業であり、農家と営農を守る立場からすれば、農水省も黙っているわけにはいくまいと思います。この点で申し入れなどしなければならないと思いますが、この三点、答えていただきます。
  166. 芥川哲士

    ○芥川説明員 お答えいたします。  まず、今回の田植えのための立ち入りに際しまして、米側とどういう交渉をしたかというお尋ねでございます。  先生も先ほどお話しくださいましたように、三沢対地射爆場の使用条件によりますと、地元民が農耕のために施設内に立ち入ることができるというのは、週末、すなわち土曜日、日曜日、それから春秋二回おのおの一週間というふうになっております。それから、使用条件のもう一つ重要な点では、米軍は農民が当該区域に立ち入る期間も訓練を中止しないということになっております。もちろん米軍は、その訓練を行います場合に、農民に危険を及ぼさないような方法で訓練を実施するということは当然のことでございまして、そのとおり使用条件で決まっておるわけでございます。  さて、今回の田植えの立ち入りというものは五月十七日から五月二十五日までの九日間というごとでございまして、米軍はこの田植え期間中も訓練を実施する予定であるということでございます。もっとも、五月十七日より昨日、五月二十日までの間について見ますと、訓練は実際に行われていないというふうに承知しております。  私どもといたしましては、先ほど先生も御指摘になり私も御説明申し上げました使用条件によりますと、田植えの時期、春には一週間の立ち入りを認め、かつその間においては米軍も訓練をやるということにはなっておりますけれども、従来、この田植え期間の立ち入りにつきましては一応十日間というものが守られてきておると思いますが、十日間ということで実施されてきておりますし、しかもこの間米軍の訓練も中止されておるという実情がございましたので、今回米軍と交渉をいたします際にはこの点を強く申し入れました。  ところが、米側の回答といたしましては、現在の使用状況から見ると訓練の日程変更を行うことは極めて困難である、しかしながら田植え期間中の訓練というものは必要最小限度の範囲内にとどめる、それから、もちろん農民に不安や被害を与えないよう十分配慮の上実施する計画であるという回答を得ておるわけでございます。多分この米側の回答にあらわれておりますところの米側の態度からでありましょうか、先ほど申しましたように、昨日までのところでは訓練は実施されていないわけでございます。  なお、米軍が従来地元民の要望を受けまして十日間の立ち入りを認め、その間訓練を中止したということでございますが、これは私ども米側に確かめそのとおりだと思っておりますことは、当該施設の使用頻度が従来は少なかった、したがって訓練日程の変更が容易であった、したがってそういう慣習がいわばでき上がったというふうに理解しておるわけでございます。
  167. 津川武一

    津川委員 そこではしなくも出たように、従来は守ってきた、ところがF16が来てから守れなくなった。私たちは、F16は世界を核戦争に巻き込むし、日本を核戦争の基地にする大変な代物なので、これの三沢の配備の撤回を今まで求め続けてきましたが、今度なぜ田植えどきに今までやらないのをやるようになったのか、この点どう申し入れたのか。彼らはこの合同委員会の決めを知らないと言っている。そこで、もう一回この点をただして再申し入れをすべきだと思うのですが、もう一回答えていただきます。
  168. 芥川哲士

    ○芥川説明員 お答えいたします。  申しわけございません。先ほど第二点の御要望についての答弁を申し上げるところを失念いたしました。  私ども、この合同委員会の合意というものを、私どもはもちろんのこと米側も十分承知しておるという前提のもとにこれまで交渉をしてきたわけでございますので、少なくとも私どもの交渉相手というものはこの合同委員会の合意議事録、それからそれに基づいておりますところの使用条件というのは十分承知しているというふうに私どもは承知しておりますけれども、先生のそのような御指摘がございますので、これはもう一度アメリカ側へ強く申し入れたいと思います。
  169. 津川武一

    津川委員 そのことを強く要求して、米軍関係のもう一つ質問に入っていきます。  先日、私は三沢の農民に呼ばれて現地に行ってみましたが、戦闘機が頭の上を飛んできて話もできないような状況なんです。そのうちの農家の一人、高橋和男さんは、昨年十一月、乳牛が飛行機の爆音にびっくりして飛び上がってお乳の乳頭を傷つけてしまって、その後乳量が低下してとうとうことし廃牛にしてしまいました。七十五万円前後する牛がわずか十五万円で処理されてしまったのです。高橋さんは、このほかに昨年十月、子牛が爆音のショックで飛びはねて腰を痛めて死んでしまいましたなど、この十年間で、乳頭をつぶしたり腰を折られるなどで十頭だめにしてしまいました。  もう一人の人、河村さん、一昨年は自衛隊の演習時に八十万円の牛の乳頭二本をつぶし、昨年は四歳の牛の乳頭を傷つけ、つい最近、これもことしの五月、一頭廃牛に追い込まれ、そして河村さんはこの十年間で二十頭ほどの牛をだめにしてしまっております。  そこで、このような状態を農水省は知っておるかどうか、知らないとすれば調査して対策を講ずべきだと思いますが、いかがでございます。
  170. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 御指摘の三沢基地周辺の酪農家の乳牛の被害の発生状況につきまして、昨日青森県当局に対しまして照会したわけでございますが、青森県当局からの報告では、基地周辺の一部の酪農家から苦情が寄せられておるようでございまして、苦情の内容といたしましては、牛が騒ぐことによりまして乳頭の損傷が生じておるとか乳量が低下している等々の苦情が挙げられているようでございます。何分草々の間の調査でございますので、私どもその程度しか現在のところ掌握しておりませんが、なお詳細な事実関係等につきましては、さらに青森県当局に対しまして調査をお願いしておるところでございます。
  171. 津川武一

    津川委員 私からの質問通告があって初めて調べている、こういうことなんです。しかも、その青森県からの答弁も必ずしも、私が現地に行って調べたところと違う。そこで、高橋和男さん、河村さんお二人について具体的に調べて返事をいただきたいと思うのです。いかがです。
  172. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 ただいまの点につきましては、青森県当局を通しまして調査してみたいと思います。
  173. 津川武一

    津川委員 次に、これは今度防衛庁に聞きますが、高橋さんたちは、これは私も一緒に行って防衛庁の現地の支部、支所というのですか、補償を求めた。それで、病気で死んだならあきらめがつくけれども、高等登録されておる牛が何頭もやられてしまったのでどうしても補償が欲しいと言っている。そうしたら、防衛庁の方は因果関係が必ずしもはっきりしないからと逃げているわけなんです。だが、F16が配備されてからこの事故が目立って多くなってきている。現につい最近も起きている。情況証拠は明らかである。そこで、自衛隊や米軍が農家の経営にこんな被害を与えておいて知らぬふりで過ごすつもりなのか、農家はこう言っている。防衛庁というのは、自衛隊というのは何を防衛して、守ってくれているんだろう、おれたちのこの損害を、この牛を守ってくれなかったら何のためにあるのだ、こういうことなんです。そこで、防衛庁としても誠意を持って被害補償の話し合いに応じて補償しなければならないと思いますが、この点いかがです。
  174. 佐々木不二男

    ○佐々木説明員 ただいま先生から御指摘のありました各事案につきましては、地元にございます三沢防衛施設事務所から逐一報告を受けております。そういう事態が起きました場合、酪農の方々から当該事務所に申し出がございますと、直ちに現場に赴きましてその被害の状況を確認いたしますが、そういった事態を招きました原因が航空機の飛行音——騒音でございますね、それに起因してそういう状態が惹起されたかということの確認が非常に難しゅうございます。私ども補償いたします際には、国の責任においてそういう事態を招いたという因果関係を掌握いたしませんと補償という問題につながらないのは通論でございます。  ただ、いろいろと基地の運営に当たりまして周辺に御迷惑をおかけすることにつきましては、直ちに現場を確認するなど、原因が究明されたものについては補償をするという態度には変わりございません。
  175. 津川武一

    津川委員 事態はよく覚えているが、因果関係が必ずしも明らかでない、因果関係がはっきりすれば補償する、こういうことでございますが、あなたたちは畜産に対して素人なんですよ。一番の専門家に現地に家畜保健所があります。この家畜保健所とよく協議して決めたならばわかるが、覚えておいて黙っていて、家畜保健所に相談にも行っていない、こういう態度が防衛庁。だから、被害農家も入れて家畜保健所と速やかに相談してこの補償に応じる、こういう体制をつくる必要がある、これが一つ。  第二番目には、F16が来てから多くなっている。したがって、F16が来る前と来た後の事故というものを調べる、その結果を私にも報告してほしい。  この二点、いかがでございます。
  176. 佐々木不二男

    ○佐々木説明員 その前に、乳頭を牛が自分で踏みつけて乳頭炎、乳房炎を起こすという事態につきましては、F16以外に、飛行場とは別に、例えば十和田など飛行機の騒音の関係のないところでも間々起きているというふうにお聞きしております。また、この種の産乳減とか乳房炎とか早流産ということにつきましては、F16配備の前からも時々お話を承っておりますが、今先生のお話のありました実績の調査については、早速調査いたして御報告申し上げたいと思います。
  177. 津川武一

    津川委員 一番の専門家である家畜保健所と協議してみる、この点はいかがでございます。
  178. 佐々木不二男

    ○佐々木説明員 その点も早速御相談させていただきたいと思います。
  179. 津川武一

    津川委員 この補償に対しては、昭和五十二年、北海道の別海町で、自衛隊のヘリコプター騒音が乳牛に重傷を負わせたときには二百万の損害賠償を支払っております。原因の究明などというのは簡単なんですよ。こういう前例もありますので、必ず補償するように要求して、さらに質問を進めていきます。  平畑に行ってみましたら、ちょうど滑走路の下なんです。そこはひどい騒音で、皆さんはこの騒音でストレスがたまり、健康も害されて、眠れない、下痢もするんだ、消化もよくないんだ、牛ではないですよ、人間が。もはや限界を超えている、できるなら移転したい、早急に移転対象地域に指定してください、皆さんはこう言っている。  こういう要求を聞いたので、この人たちと一緒に私も現地の施設庁を訪ねていろいろ懇談もし、お願いもしてみました。そうすると役所の方は、わかりました、移転できるように上と相談してみます、施設庁としても代替地があるから、その代替地もちょうどいいところに代替地があって、売る人もお金を急いでいるので早く決めてくれ、そのことはわかっている、そういうふうにしたいと思っている、こういうことなんですが、移転対象地域の指定、これはどうなっております。
  180. 片淵康夫

    ○片淵説明員 お答えいたします。  三沢飛行場周辺におきます移転対象区域につきましては、防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律第五条の規定に基づきまして、昭和五十四年九月五日に指定告示を行っておりまして、先生御指摘の三沢市平畑地区の一部も当該指定区域に入っているところでございます。  今般のF16一飛行隊の配備に伴いますところの第二種区域、すなわち移転対象区域の見直し及び指定告示の時期につきましては、昭和六十一年度に騒音度調査を実施する計画にしておりますので、その調査結果を踏まえまして決定してまいりたいというふうに考えております。
  181. 津川武一

    津川委員 六十一年というのはことし。しかも、売る方にちょうどいい代替地がありますので、この人とも相談して速やかに実施するように要求して、防衛施設庁に対する質問は終わります。御苦労さまでした。  そこで、農業の問題でもう少し今度は農水省並びに大臣に尋ねますが、私たちの青森県に地方紙として全県下を配布網としておる東奥日報という新聞がございますが、この東奥日報は、押し寄せる農業解体の波をとめなければならないと社説を書いております。社説の関係部分だけ読んでみます。  「「西暦二〇〇〇年の農業就業者数は一九八五年の六百三十六万人から四百十六万人に減少する」「同じく六十五歳以上の占める比率は二九・一%から五四%になる」国土庁がこのほどまとめた試算である。農業経済の大宗を担っている本県」、青森県です。「本県にとっては衝撃的ともいえる数値だ。」「二〇〇〇年までには全農地の二〇%、百万ヘクタールが離農などで放出されるという。」「先細り農業の中で弱小農家がフルイにかけられ、自然消滅するのを待つでいるともいえよう。」  「それほどに農業は未来の展望に欠け、農民は希望を失っている。農村は疲弊しきっている。」「国家が存続していくための要件は「食べる」「守る」「栄える」の三つだという。」「輸入をベースにした飽食時代ではある。しかし、穀物の自給率は三二%にすぎない。国家の生き残り戦略として食糧の自給率を高めることが国の命題ではないだろうか。」次の言葉がすごい。「時代のすう勢に歯止めをかけても」解体の波を抑える。これは読みようによっては、軍事費を削ってでも農業を守れ、行革をとどめても農業を守れというふうにも読み取れる。この社説、農業県の青森県にどうこたえるか。  もう一つ、津軽を中心にして読者網をつくっておるむつ新報という新聞がございますが、これも社説。  「歴史上、長い間国民の胃袋を支えてきた零細農家を切り捨てようという、非情のだんびらが、今まさに振り下ろされようとしている。」「今年度で終わる水田利用第三期対策に続く新しい減反政策、」であります。  「大部分の農村の大多数の零細農民がネコの額ほどの農地にしがみついてるのは、勤め一本で生活できないためである。いや、安定した働き口があればまだまし。本県の例をみても分かる通り、農閑期に日雇い労働をしたり、出稼ぎによってかろうじて生計をたてているのが大半である。大都市の勤労者のように、経済大国らしい生活が享受できるなら、だれが非人間的な出稼ぎなどするものか。「ポスト三期」の前提条件は、農村に安定した職場を与えることである。」こう言っている。最後に、「農水省当局が、いかに農村の実態を知らないかを露呈したものだ。」中央で机上のプランを立てている、現実を知らないという状態をはしなくもこんな形で批判しているわけでございます。  そこで、二つばかり質問があるわけであります。  農業県のこの農業解体の波をどうして押しとどめていくか。先ほどの委員に、日本の農業が伸びていく、発展するようにやると大臣は答えているから、そこをもう少し具体的に答えていただきたい、これが一点。  第二点は、この零細農家を切るのか、こういうことなのです。行革審の小委員会の報告を見ても、生産者米価は抑制する、米作減反は強化する、転作奨励金はカットする、その上に基幹農産物以外は輸入を拡大する、これでは中核農家だけでなく、零細農家はがたがたとつぶれていきます。この零細農家がやっておる農業というものをどう評価して、どのように守っていくのか、この二点、答えていただきます。
  182. 羽田孜

    羽田国務大臣 今新聞の論説ということをお聞きしたのですけれども、いろいろな見方あるいはとらまえ方があるのだというふうに思いますし、また青森県は、確かに全国でも出稼ぎの最も多いところである、確かに雇用の場というのは実際ないという一面があるのじゃないかというふうに思います。  そういう中におきまして一体どういうあれなのかということなんですが、まず前段としましては、国土庁が一つの、将来を展望してこんなふうになるのじゃないかという中での御質問だと思うのですけれども、そういう中にあって、私どもといたしましては、こういう厳しい情勢を克服しながら、国民の理解を得て、やはり我が国農業の健全な発展を図っていかなければいけないというふうに思います。  そういう中で、やはり規模の拡大ということは基本でありますし、また財政的には非常に厳しい中でありますけれども、基本的にはやはり基盤整備というものをしていかなければいけない。また、それと同時に、新しいバイオテクノロジー等の技術、これは特に大きな国というよりは、むしろこういう比較的耕地面積が狭い、そういう中でこそこういったものも活用できるということで、こういうものの検討というものを進めてもらわなければいけないというふうに思っております。  それと同時に、そういうものを進めましてもそれを受け入れる体制というものができなければいけないわけでありますから、本当にそういう時代の新しい農業に対応できるような担い手という者を育成する努力というものを続けなければいけないのじゃないかなというふうに思います。ただ生産性だけを求めるということではありませんけれども、やはり国民に食糧を安定して供給するということを考えたときに、生産性の高い中核農家をつくり上げていくということはやはり一つの時代の要請であろうというふうに私は考えます。  それから、そういう中で今先生からの御指摘があったわけでありますけれども、中核農家をあれしていくということになると、結局零細農家を締め出していってしまうのじゃないかという御指摘がありました。これは今から何年前でしたか、たしか三十四、五年ごろだったと思うのですけれども、構造改善政策を進めていこう、そして土地改良を進めましょう、基盤整備を進めましょうという動きが実は大きく出てきたときがあります。そのときに、私はサラリーマンであったのですけれども、地方に行く機会がよくありまして出かけていきますと、方々に、零細農家切り捨ての基盤整備、土地改良は絶対反対、構造政策は反対という看板が実は多く掲げられておったものです。しかし私が国会に議席を得て、特にこの数年間は、むしろ基盤整備の予算が一体なぜこんなにおくれているのか、これは党派を問わず、農業に関係するどなたからも実は指摘のあるところでございます。私はそういう意味で申し上げるのですけれども、構造政策を進めるときにはいろいろな批判がありますけれども、しかし時がたってみたら、やはりあのときにやっておかなかったらいけなかった、そしてそのときにあれしたのが、いつまでも零細農家なら零細農家をただ守っていればいいのかという議論も実はあったわけでございます。  それではおまえは零細農家を切り捨ててしまうのかということでありますけれども、決して零細農家を切り捨てるということではなくて、零細な特にお年寄りの人たちなんかがやっている農業というものをどんなふうに位置づけていくのかということは、私どもとしてもこれからまじめに考えていかなければいけないし、また農業の組織なんかも、こういった人たちの生産するものについていろいろな配慮というものもしていく必要があるのではないかなというふうに考えております。  いずれにいたしましても、中核的な農家をつくる、そのために規模の拡大をしていくということになると、何か強引に取り上げられてしまうように受け取られるわけでありますけれども、そうではなくて、そういった皆さん方もやはりきちんと組合の組織に入っている、そして、例えば集団でやる人たちにそれを委託するとか、きちんとしたみずからの一つの権利を持っているということは、これからもできるんじゃないかな。そして今、いろいろな請負制ですとかあるいは委託なんか進んでいるのを見ておりますと、例えば五反歩くらい持っておりますと、三反歩はそういったところにお預けします、そして二反歩くらいは自分の仕事の合間にもできるから、自分の食べるものはぜひつくりたいのだという農家も実はたくさんあるわけでございます。  そういうことで、強引にあれするのではなくて、要するに自主的に判断されながら、私としてはこの農地をだれかに預けたい、あるいは耕作を委託したい、そういうものの中で中核的な農家というものを育成して、その中核農家を中心にしながら、また兼業の人たちも生きていけるような体制、要するに生々とみんなで生活できるような体制というものをつくる必要があろうかというふうに思います。  ただそう言っても、実際には農業から離れる人がではどこへ行くのだという話があります。ですから、そういうものがなければいかぬわけでありまして、例の農村地域工業導入促進法なんという法律をたしか四十五年か四十六年につくったことがありますけれども、こういったものなんかを活用しながら安定して就業ができるような機会というものを私どもとしても考え、そしてそういった環境というものも整備していかなければいけないのじゃないかな、そうでなければ、本当に零細な農家の人が農地を人に委託することもあり得ないというふうに考えております。
  183. 津川武一

    津川委員 零細農家をどうするという点になってくると、私は大臣は何にも答えてないと思います。実際上、中核農家をつくることは私たちは文句ありません。どこから土地を得るか。一方に、ほかの用に農地が転用されて狭まってきておる。中核農家に行くのはどこからとる、零細農家からだ。中核農家をつくるのだったらまだ土地はたくさんありますよ。開拓すればいい。開拓しようとすると採算がとれないから皆が反対してくる。そこで、零細農家をきちんと位置づける。あの人たちの戸数からいって、農村生活におけるもので彼らの生産しているものは、日本の食糧に、生活に大きな役割を果たしているということをもう一回やっていかなければならぬ。  そこで、農業を育てる意味において、転作が農家の生産意欲を落としている。米が余るときに、余る分つくっていいかというと、私は転作調整は必要だと思う。だが、今度永年転作してクリ、クルミを植えた。田地分かたず何カ所も植えている。死んでしまった。永年転作だから次に田はつくれない。何をつくってもだめだからほったらかし、荒れ地。青刈りをやらないと転作奨励金をくれないから、刈ってぶん投げておく、こういう状態なんだ。それから牧草。豚も牛もいないところに牧草を植えて種をまいただけ。だから問題があるのだ。したがって、私はこういう条件のもとでは水田利用再編対策で減反面積をふやすことは犯罪的行為だと思うのだけれども、この点はいかがでございますか。
  184. 羽田孜

    羽田国務大臣 先生は前段でもお話がありましたからくどくは申し上げませんけれども、ともかく私どもとしても、何といっても需要がなければいけないということなんであって、需要を拡大するということが一番ですけれども、残念ですがまだそれにとまりが、下げどまっておらないというのが現状であるわけでございます。そういう中でいろんな地域の実情というものあるいは九年間やっておる今日までの水田利用再編対策の歴史、こういうものを振り返りながら、どうしてもやらなければならないとするならば、そういったものに対応できるようなてとをみんなでやはり苦労して考えていかなければいけないと思うのです。生産というものを抑制しながら生産性の高い、効率のいい農業をやりなさいと言ったって、畜産やりなさい、酪農やりなさい、米づくりやりなさい、畑づくりやりなさいと言ったって実際にできるものじゃない。だからでき得る限り需要を拡大しながらなるべくそういった生産というものを助長するようにしなければならない、これが基本的な考えてあります。しかし残念ですけれども実際に需要がないというときにはやはりいろんな苦労をする。だから、難しい中でも定着し、そして自分たちもそういったものだったら協力しようというような体制づくりというものをお互いにやはり考えていかなければいけないんじゃないかというふうに思います。
  185. 津川武一

    津川委員 需要を拡大するというのは私も本当にそのとおりだと思います。だが今度の経構研の報告では、基幹作物以外は輸入拡大をするという、そうするとどうして需要が拡大されますか、こういうことなんです。口で言うことは簡単だけれども、腹を決めなければいかぬ、生産者米価をどうするのか、この間の私の答弁には、生産刺激的な決め方はやらないと言った。きょうも米価だけに頼るのはどうかという答弁なんです。しかし農民が米をつくる根本の理由は、米価が上がっていくということです。米価で利益を得られなければやらない。それに対して先ほど来価審議会に諮って云々と言っているけれども、少なくとも米価は引き下げない、物価が上がった分だけは上げるという、この言明が今日本農業を守っていく第一の根幹だと思いますが、この点いかがでございますか。
  186. 羽田孜

    羽田国務大臣 この米価につきましては、まさに私が先ほど申し上げた米価だけに頼るなということは、米価がもし上がらないとしても利益が上がるような効率のいいものにしなければいけないということを実は申し上げたわけでありますけれども、いずれにいたしましても、この問題、米価につきましては米審の方でこれから御検討いただかなければならぬ、その資料というものを今収集している中でございます。ですから私どもは本当に、今生産費所得補償方式という方式がありますから、そういう中で適正なものをつくり上げていくということを申し上げたいと思います。  以上であります。
  187. 津川武一

    津川委員 これで終わりますが、先ほど別な委員は羽田農政にかなり期待したようですが、私は羽田さんの農政になって戦後初めて生産者米価が下がったという恐ろしい歴史が開かれるのじゃないかと心配していますので、こんなことのないように頑張ってくださることをお願いいたします。  終わります。
  188. 大石千八

    大石委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後五時四分散会