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1986-05-14 第104回国会 衆議院 農林水産委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年五月十四日(水曜日)     午前十時二分開議 出席委員   委員長 大石 千八君    理事 衛藤征士郎君 理事 近藤 元次君    理事 島村 宜伸君 理事 玉沢徳一郎君    理事 串原 義直君 理事 田中 恒利君    理事 武田 一夫君 理事 神田  厚君       太田 誠一君    鍵田忠三郎君       片岡 清一君    菊池福治郎君       佐藤  隆君    鈴木 宗男君       田邉 國男君    月原 茂皓君       野呂田芳成君    藤木 孝雄君       堀之内久男君    松田 九郎君       山岡 謙蔵君    上西 和郎君       竹内  猛君    辻  一彦君       菅原喜重郎君    津川 武一君       中林 佳子君  出席国務大臣         農林水産大臣  羽田  孜君  出席政府委員         農林水産省農蚕         園芸局長    関谷 俊作君         農林水産技術会         議事務局長   櫛渕 欽也君         食糧庁次長   山田 岸雄君  委員外出席者         農林水産省農蚕         園芸局次長   畑中 孝晴君         農林水産委員会         調査室長    羽多  實君     ――――――――――――― 五月九日  外国人漁業規制に関する法律の一部を改正す  る法律案農林水産委員長提出参法第八号)  (予) 同日  外国人漁業規制に関する法律の一部を改正す  る法律案参議院提出参法第八号) 同月八日  土地改良事業等に関する請願浦井洋紹介)  (第三九九二号) 同月九日  農用地開発公団存続に関する請願串原義直  君紹介)(第四一九二号)  森林林業活性化に関する請願串原義直君  紹介)(第四一九三号) 同月十二日  農用地開発公団存続に関する請願小沢貞孝  君紹介)(第四五五二号)  森林林業活性化に関する請願小沢貞孝君  紹介)(第四五五三号)  農家負債対策の確立に関する請願外一件(津川  武一紹介)(第四八一〇号)  同(中川利三郎紹介)(第四八一一号)  同(中林佳子紹介)(第四八一二号)  土地改良事業等に関する請願中林佳子紹介  )(第四八一三号)  国営八戸平原総合開発計画対象地域からの除外  に関する請願関晴正紹介)(第四八一四号  ) 同月十三日  合板・製材等木材産業振興策等に関する請願  (安田修三紹介)(第五〇〇一号)  同(和田貞夫紹介)(第五〇〇二号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 五月十二日  農林水産物市場開放阻止に関する陳情書外二  十一件  (第二一四号)  水田利用再編次期対策に関する陳情書外十八件  (  第二一五号)  農林水産業における各種普及事業制度の堅持に  関する陳情書(第  二一六号)  バイオテクノロジー農業の推進に関する陳情書  (第二一七号)  養豚経営の安定に関する陳情書  (第二一八号)  地域林業活性化国有林野事業再建等に関  する陳情書外二件  (第二一九号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  主要農作物種子法及び種苗法の一部を改正する  法律案内閣提出第五〇号)(参議院送付)      ――――◇―――――
  2. 大石千八

    大石委員長 これより会議を開きます。  内閣提出参議院送付主要農作物種子法及び種苗法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中恒利君。
  3. 田中恒利

    田中(恒)委員 農作物種子法種苗法の一部改正案について質疑をさせていただきます。  従来の種子生産流通上の仕組みの中に新たに民間事業者参加していく道を開くというのが本法改正の主要な内容のようでありますが、今の時点で民間事業者参入を認める措置を講ぜなければならない理由について、まず最初にお尋ねをしておきたいと思います。
  4. 関谷俊作

    関谷政府委員 民間参入を認める趣旨でございますが、御承知のように種苗さらにそのもとになります品種育成ということも含めまして、こういう関係技術開発が大変活発化しております。国内的にも従来とは違って民間のそういう意味での品種開発あるいは種苗生産に関するいわば競争が活発化しているわけでございますが、同時に国際的にも種子産業動向というのは大変このごろ進んでおるわけでございます。  そういう中で考えますと、従来の主要農作物種子生産については、言ってみれば制度上全くと言っていいほど民間参入の道が開かれておりませんので、この際こういう技術開発状況を見ますと、むしろこういう民間のいわば活力をうまく使いながら、これからの農業にとって大事な主要農作物品種育成なり種苗生産技術高度化という面でのメリットと申しますか効果期待されるのではないか、こういうような考え方に立ちまして、主要農作物種子法及び種苗法改正を行うべき時期が来ているのではないか、こういうふうに判断した次第でございます。
  5. 田中恒利

    田中(恒)委員 民間事業者参加をすることによって具体的にどういう効果種子生産流通段階で出てくるのか、あるいは逆にどういう問題というか心配が起きてくるのか、こういう点についての農水省当局のお考えもあわせてお聞きしておきたいと思います。
  6. 関谷俊作

    関谷政府委員 民間参入を認めることにする場打一種期待されると申しますか予想される効果の方でございますが、これはただいま申し上げましたように、民間という立場考えますと、品種をつくる、その新しい有効な品種種苗生産して販売する、こういう面から考えますと、一つ民間参入の道が開かれることによってそれだけ種子生産の方に民間がいわば積極的に参加してくる、そこに従来の国、県の育種なり種子生産という面だけではなくて、民間の方からもまた一つの新しい開発成果も出てくるのじゃないか、これが結局日本農業にとってプラスになるのではないか、こういうような効果期待されるわけでございます。  一方反面、これに伴います御質問の懸念と申しますか、何か心配はないのかという点でございますが、やはり農業の面から見ますと、こういう種子生産、特に大事な主要農作物の場合にはこれを全くチェックしない状況でそういう道を開きますと、いい品種、優良な種子生産という面に不安が出てくるわけでございますので、やはりこういう面については従来の種子法にもありますような国や県のいわばチェックと申しますか枠取りと申しますか、こういうことを置いておきながら、そういう民間参入に伴います不安、懸念のないような方策を講じなければいけない、かように考えております。
  7. 田中恒利

    田中(恒)委員 今のお話を聞く範囲では、技術開発が非常に進んで、つまりバイオなど新しい分野が開けてきつつあるわけでありますが、そういう中で民間のこの種の問題に対する研究相当進んできておるので、日本全体の種子開発の上に大きな役割を果たすだろう、こういう前提に立ってこの法案改正がなされた、こういうふうにお聞きをするわけです。  同時にそのことは、日本の現在の機構、主として主要農作物については国なり県なりが責任を持って進めていくという体制になっているわけでありますが、逆に言えばこれでは不十分な面があるのかどうか。あるいはバイオという新しい技術分野で過般生物の機構改革法ができたわけでありますけれども、官だけの力では及びつかない、そういう関係もこれあり、産学官三位一体の強固な体制づくりをしていくという意味もあったと思いますが、そういう意味も含めて今回のこの法案が出されてきたのかどうか、この点をひとつはっきりさせていただきたいと思うのです。  同時に、民間参入ということをめぐってやはり一番心配をされておりますことは、いろいろ申し上げましても民間業界なり業種というものは利潤というか、もうけるというか、そういうものがやはり最大の眼目であることは間違いないわけでありまして、そういったようなものと農作物種子という生産原点に関する問題との間にいろいろ問題が起きるのではないか。特にバイオなどについては、国際競争という状態が発生しておる今日の事態の中で、米の種子などをめぐっての激しい国際間の綱引きが行われるということも想定しなければいけない。そういう場合を想定していく場合に、民間参入というものがこれからの目木の種子業界の中に与える影響は非常に大きい、こういう心配を私どもも持っておるわけでありますが、これらの点につきまして重ねて当局のお考えをお示しをいただきたいと思うわけであります。
  8. 関谷俊作

    関谷政府委員 育種なり種子生産をめぐります国、県という公的機関民間との関係の問題でございます。  率直に申しまして、従来の国や県の試験研究機関だけでやっていたのでは不十分なのか、あるいは国や県、農業団体種子生産では不十分なのか、こういうふうな観点から見ますと、私ども、決して不十分というふうに考えているわけではございません。ただ、そこに民間の力というものが出てまいりますと、国や県とまた違った意味での一つ研究なり技術開発の進展というものはそこにも出てくるのではないか。これは主要農作物分野ではございませんけれども、ほかの品種農作物で申しますと、例えば細胞培養とかこういうような面では、かなりある意味では民間が先鞭をつけるというか、こんなような傾向も若干見られておりますので、やはり不十分なものを補うというよりは一つの道を開くことによってそこにさらにプラス期待される、こういうようなことなのではなかろうかというふうに思っている次第でございます。  ただ、民間にこういう主要農作物を完全に任せる、こういう考え方には私ども立っておらないわけでございまして、やはりお尋ねのような利潤追求と申しますか、民間企業としての採算とか、そういう面だけからこの主要農作物種子生産を行うということに専ら頼っていたのではいけない、日本農業の持っております非常に地域的に多様であり、非常に品種改良の面でも期待の多いものを民間利潤追求だけに専ら頼るのはいけない、こういうふうに考えておりますので、一口に申しますならば、国や県の公的機関民間との間である意味では連携が行われ、またある意味では一種競争と申しますか、相互に技術開発にしのぎを削るとか、こういう両面があっていいのではないか、このような考え方を持っておる次第でございます。
  9. 田中恒利

    田中(恒)委員 もう少し具体的に聞きますが、民間が入ってくる可能性のある業界というか法人というかあるいは個人事業者、そういったものはどういうものがこの法律改正に伴って種子生産流通段階参加をしていくと想定せられていらっしゃいますか。
  10. 関谷俊作

    関谷政府委員 これは現在、技術開発面で国との共同研究を仕組んだりあるいは一種民間助成の形で研究に取り組んでおられる状況、それから、今度のいわゆる民間研究支援業務に対応して出てくる民間のあり方、この辺を考えますと、やはり二つあると思うわけでございまして、一つは、従来のいわゆる種苗菜界という業界の中で主要農作物種子についても一つ関心を持っておられる、こういう状況一つございます。従来の種苗業界は、御承知のように花卉とか野菜とかそういうものにかなり再門化しておったわけでございますが、いろいろ聞いてみますと主要農作物分野についても関心があるというようなことがございます。それからもう一つは、やはり種苗業界というものではない、例えば化学とか食品とか、そういう関係分野民間企業がこれまた品種開発にかなり関心を持って相当取り組んでおります。  現段階ではこの二つの業態が想定されるわけでございますが、ただ、主要農作物ということになりますと、すぐにこういう民間業界が稲、麦、大豆相当分野についてかなり成果を上げて参入をしてくるかということになりますと、やはりそれは少し先のことになるかもしれない。具体的には、現在でもありますビール用の麦、こういうものについては御承知のように既に民間事業者育成した品種がございますが、こういう既にできている、ある程度の蓄積のある分野からだんだん出てくるけれども、稲とかこういうことになりますと、関心は持っているが、種苗業界なり新しい化学食品等業界にしましても、ある程度の研究蓄積を経た上で参入がされてくる、こういうような見込みではなかろうかと思っております。
  11. 田中恒利

    田中(恒)委員 私は全国的な状況のデータを持っておりませんが、この法案改正の機運が高まるに伴って、私ども地域なり県段階ではどういうところが想定されるだろうかということで調査ども若干やっております。そうすると、確かに今局長が言われたように、一つはやはり現在の種苗業界というものが非常に大きな期待を持っておる、これは当然だと思います。いま一つ食品化学、そして農業生産資材業界、これが関心を持っておる、そういうアンケートの調査結果でありますけれども動向としては出てきております。  そこで問題は、こういう化学食品生産資材業界、こういうものは本来が種苗以外のものが目的なので、これに関連する種子に対する関心でありますが、しかし、今の企業というものは非常に多角化をしてまいっておりますから、組み合わせてそういうものが市場へ進出をしていく可能性は非常に強いと思うのですね。  こういう意味考えてみると、将来種子生産流通をめぐって、極端に言うと非常に大きな業界、特にセット販売的なものが種子機構の中に位置づけられはしないか、こういう心配を持っわけてあります。国内の一つの小さな地域でもそういう状況でありますが、日本の国の経済全体、国際的な立場からいうともっと大きな動きが出てくる。現にアメリカなどの米の問題、ハイブリッドの問題などと絡んでそういう国際資本動向というものが内外から注目をされておるわけですね。そういうものに対して一体どういう歯どめがかけられていくのか、この点がこの法案改正の中では一番きちんとしておかなければいかぬ問題だ、こういうふうに私は思います。  私どもは、大分古くなったかもしれませんが、昔から種というものは農家農業界にとっては原点でありますから、昔の時代には食べ物はなくても種だけは残していく、これが農の一つの基本というか哲学というか、物の考え方中心であったと思うのですね。そういうものが新しい経済体制の中でやはり大きく変わっていかざるを得ない、そういう状況になるのじゃないか、こういう心配もあるわけでありますので、この際、この法案の審議の前提というか中心点として、やはり種子、特に主要農作物種子については公的機関中心になって仕組んでいく、この原則が崩れると、これは種が日本の食糧、農業を支配をしていく状況がつくられる可能性があると思うのですね。こういう点についての大臣の明確な態度と考え方をこの際お尋ねをしておく必要があると思いますので、お聞きをしておきたいと思うわけです。
  12. 羽田孜

    羽田国務大臣 確かに今の時代要請の中で民間種子生産あるいは流通、こういったところに積極的に参加してくるでしょうし、また、こういった産業というものはこれから大きく伸びていく、また、各国、競争の中でそういったものも進んでくるというふうに私どもも理解をしております。しかし、今、先生からお話がありましたように、種苗というのは農業生産資材の中で最も基礎的なものであって、優良な種苗の安定的な生産あるいは供給、これを図ることは農業振興を図る上で最重要な点であろうというふうに認識をいたします。  今般の主要農作物種子法及び種苗法の一部を改正する法律案、これによりまして、民間事業者主要農作物種子生産分野参入する道を開くこととしておりますが、この法律改正案につきましては、奨励品種制度指定種子生産圃場指定制度及び審査制度、これを維持することとしまして、優良な種苗供給を確保するための国及び都道府県の主導的な役割、これは堅持することといたしておるところであります。さらに、農家によります適正な種苗の選択に万全を期するために、種苗法指定種苗制度対象主要農作物種苗を含めるとともに、これらの種苗制度の拡充をさらに図ることといたしております。以上の措置によりまして、主要農作物種子生産流通分野参入する民間事業者は、優良な主要農作物品種開発して、また、それらを厳正な管理のもとに生産流通することが必要になるというふうに考えております。  私どもといたしましては、優良な種苗の安定的な生産及び供給を今後とも確保し得るように、本制度の適切な運用及び指導を図って、これが新しい時代要請の中で農業生産というものをさらに助長するような環境づくりというものをこういう中でもしていかなければいけない、そのことを今改めて思う次第であります。
  13. 田中恒利

    田中(恒)委員 現在の採種事業状況を少し御説明していただきたいと思います。全体いろいろ品目別にすると大変ですから、中心の稲ぐらいに絞って、時間が余りありませんから、大体どういう現状になっておるのか、どういうところに問題があるのか、この点をちょっと御報告をしていただきたい。
  14. 関谷俊作

    関谷政府委員 採種状況でございます。稲、麦、大豆とあるわけでございますが、全体的に申しますと、生産量全国で稲四万四千五百トン、麦が一万五千五百トン、大豆が千三百八十四トンでございますが、面積の方で見ますと、稲が九千七百二十四ヘクタール、麦が五千七百七十一ヘクタール、大豆九百九ヘクタールでございます。全体の規模だけでは、問題点と申しますか実態がややわかりにくい面もございますが、我々として一つの問題として見ますならば、やはり一戸当たり採種圃面積がどんな状況であるか、こういうところでございまして、これが規模零細性あるいは今後の生産性向上の上での一つの問題になる、こういうふうに考えております。  現状では、稲をとってみますと、昭和四十五年当時で全国で一戸当たり採種圃面積が五十三アール、五年後の五十年が六十六アール、五十七年七十二アールということで、確かにこの数字を見ますと、規模拡大と言えるほどではございませんけれども、若干の規模のいわば拡大が見られるわけでございます。ただ、やはりこういうものから見ますと、日本種子生産というのはまだかなり零細であるということで、相当の問題もありますので、私ども一つの政策としては、能率の高い種子生産団地育成するということで採種地を集約化していく、またそれに必要な機械施設類も整備をする必要がある、この辺のところが日本の、特に主要農作物種子生産上の今後の問題ではなかろうか、かように考えております。
  15. 田中恒利

    田中(恒)委員 今お話しのあった種子農家経営規模は非常に小さい。全国平均七十二アールのようでありますが、私どもの県でも五十アール、六十アールに達しない、こういう状況であります。その上に、種子農家というのはほとんど固定しておって、しかも、高齢化をしてきておるというところへもってきて、機械化一貫体系などの指導もなされておる。農水省の方でも種子団地パイロット事業といったようなものが行政的にも仕組まれておるわけですが、一体、これはうまく機能しておるのか。稲については三十ヘクタールですか麦が二十ですか、そういう規模に適応するということについては現状はどうもなかなか難しい、こういう現状をどう直していくかということも、種の対策というものを、今、大臣もおっしゃったように公的機関が軸になって進めていくという上には見逃してはならない問題だと思うのですけれども、こういうものなどについての方策、方針を示していただきたいと思うわけです。
  16. 関谷俊作

    関谷政府委員 種子生産の問題についてはやはりお尋ねのような状況でございまして、本当の広域種子生産団地というものの形成は、実際的にはこれからもまだまだやるべきことが多いわけでございます。予算的に見ますと、大体二億円を少し下るぐらいのところで予算を準備しておりますが、一つ団地としての基準に適合する本当に能率のいいものを育てていく、こういうことが一番肝心でございまして、これは主要農作物の場合でございますが、ほかの野菜等種子などの実態を見ましても、これからの種子競争等考えますと、外国相当規模の大きい能率の高い種子生産にどうも日本種子生産がコストの面でなかなか太刀打ちできない、こういう問題なんかも実際に出ているわけでございますので、特に主要農作物については、国内的に見ますと、広域集約化して大規模能率の高い団地育成については、これからも種子産地対策のいわば一つの基幹としてこの事業を進めていかなければいけない、かように考えております。
  17. 田中恒利

    田中(恒)委員 地域的に、今の団地規模が大き過ぎるという声は非常に強いのですね。確かに、私なども現場をちょっとこの間見て回って、一体日本のこれからの新しい種子生産圃場といったものはこういう形でいいのかな、一方ではアメリカのカリフォルニアの米がどうだこうだといううわさがあるのだが、見ながら実はこういう心配を感じます。感じますが、現実にはやはり零細な規模で進めておるということも事実でありますから、そういう前提に立つと、それに合ったような形で徐々に近代化合理化をしていく、こういう方法をとらざるを得ないと思うので、もう少しこういうものについても、高齢化をし始めてきておりますから、採種農家の皆さんは一様にやはり機械化考えておりますが、しかし、機械化の条件に現実に合わない、こういう問題も出ておるわけですね。こういう点はひとつ今後の運営の中で十分配慮していただくべきではないか、こんなふうに考えておるわけです。  御意見がありましたらお聞かせをいただきたいと思いますが、こういう現状採種状況の中で、今度の法律改正で新しく生産圃場民間業者にも認めるということで許可がなされていくのだと思いますが、そうしたらそういう場合の基準になるもの、認定基準というのはどういう点を参考にして許可をしていくのか。これは原原種原種についても民間が入ってくるわけでありますから、これも含めてどういう認定基準の中で民間業者参入というものを認めていくのか、この点も示しておいていただきたいと思うのです。
  18. 関谷俊作

    関谷政府委員 改正後の問題も含めまして指定種子生産圃場、それから原種固、原原種固、こういうものの指定でございますが、基本的な考え方としましては、種子生産に必要な技術知識等を有する者が経営している、しかも圃場としては種子生産に適している、こういうものを指定するというのが基本的な考え方でございます。  具体的には、一般的に責任者種子生産についての技術知識、経験、こういうものが十分であるかどうか。それから種子生産地としての適性の有無、これが第二点でございます。それから三番目に、病害虫発生可能性病害虫関係する事故、それについて発生のおそれ等がないかどうか、こういうような問題でございます。さらに、一種の最低限としての圃場規模、こういう点をチェックしまして、こういう圃場の中から指定を行うこととしております。なお、今回の改正の中にございましたのは、委託者という面での民間事業者については、種子生産について十分な技術知識を有する、それから受託者に対する指導を適切に行える、そういうものがあるかどうか、これが必要だろうと考えております。  原種圃原原種圃指定についてはこういう要件が一般的にございますが、さらに非常に厳密な審査を要するわけでございまして、その種子生産責任者が、増殖する品種の来歴とか形質とかそういう品種の特性、それから増殖する品種固定度、変異型の出現頻度、その種類、そういう一種の増殖上の特殊性について熟知をしている、それから、原種原原種段階でございますので、その圃場が一般種子生産よりもさらに問題になりますのは、ほかの花粉源等が入りまじるというような汚染の危険がない、こういう点はさらに厳密にチェックを要する、こういうようなことで、原種原原種圃指定についてはこれらの点をさらに厳しく審査をする必要があるというふうに考えております。
  19. 田中恒利

    田中(恒)委員 この審査には審査会のようなものがあるのだと思いますが、その審査会の構成などについてはどういうふうにお考えですか。
  20. 関谷俊作

    関谷政府委員 今申し上げました圃場関係指定については県では審査会というような形では特に審査をいたしておりませんが、審査会が必要になってまいりますのは奨励品種決定の面で、これはやはり審査会というような一つの場でもって、関係の学識経験者もみんな御参加いただいて、その県にどういう品種を奨励品種として決めるか、試験、調査もいろいろ含めまして審査会の決定を経て奨励品種を決定する、こういうことをいたしております。
  21. 田中恒利

    田中(恒)委員 奨励品種審査会の構成メンバーに、新たに例えば民間関係者を追加するとか、そういうものもお考えになっているわけですか。
  22. 関谷俊作

    関谷政府委員 奨励品種の方につきましては現在も、今申し上げましたように大変慎重な決定を要するということで、県の農業試験場の職員、県の種子対策関係の職員、農業委員それから生産指導農業団体代表者、ところにより麦、小麦等の需要者等もまじえている場合もございますが、そういうことも含めた学識経験者、こういう者で構成しております。  今回、法律改正に伴いまして、従来もやっておったわけでございますが、民間育成品種についても奨励品種対象にするということがさらに必要になってまいりますので、これからの育種技術高度化品種需要の多様化、そういうものを考えますと、構成メンバーの中に民間育種関係者、それから今まで以上に農産物の需要者、例えば小麦でいえばめんとかパンとか、そういう実際の加工需要者の参加ということで、やはり審査会の構成については一つの見直しと申しますか、これを指導する必要があろう。さらに、その審査会の機能についても、いわゆる奨励品種の決定時だけではなくて、その奨励品種の普及の状況、そういうことも含めました幅広い運用をしていくということも必要になるのではないかと考えております。
  23. 田中恒利

    田中(恒)委員 民間参入ということで、将来、種子生産流通面をめぐってどういうふうに変化していくのかということについて、十分心配をされる問題もあるわけでありますが、同時に、種子流通価格にどういう変化をもたらすのか、この点も一つの大きな問題であります。そこで、種の価格というものについてはこれからどういう考え方で臨まれていくのか、改めて種予価格のあり方というか、種予価格が形成されるに当たって行政的に指導していく考え方を、この際お示しをいただきたいと思うのです。
  24. 関谷俊作

    関谷政府委員 種予価格でございますが、一般的な考え方、あり方としましては、やはり一般の生産物の価格が一つの参考にはなるわけでございますが、種子生産の場合には、いい種をつくるということでかかり増し経費というのがございます。そういうものを考慮しました一つのベースになるそのもの自身の価格に、流通経費等も考慮した配布価格を決めていくということで、いずれも適正な見積もりが必要でございますが、その決定に当たりましては、やはり種をつくる側の農家一種の種の生産意欲というものを阻害してはなりませんし、一方、余りに高くては、農業者の方がその種の購買意欲と申しますか、農業経営上の支障もあるわけでございますので、その両面も勘案して決定をしていくということで、やはり一つの慎重な価格決定が必要になろう、こう考えております。  民間参入が起きてまいりますと、従来のような大体農業団体系統で採種をいわばつかさどっていたのと違いまして、民間事業者の方の生産する価格というものが出てまいるわけでございまして、やはりここは一つ競争的な関係になりますが、農家の目から見ますと、民間事業者だけが一方的に高価格で種子を販売しても、よほどいい種であれば別でございますが、一般的にはなかなか購入しないということで、そこに一つ競争が行われるのではないかと考えております。  ただ、こういう状態でありますと、やはり一つの種予価格の適正な安定ということも必要になってまいりますから、従来の各県にございます種子協会にも民間事業者参加を促しまして、その場で適正な価格形成のため十分な情報交換をして決めていく、そういう情報交換の場として協会の機能を活用していく、こういう面でも指導いたしたいと考えております。
  25. 田中恒利

    田中(恒)委員 今の種子の価格の形成で、これは奨励品種が各県ごとに設定をされておりますから、品種によって価格がそれぞれ違うと思うのですが、あるいは各県ごとに種の買い入れ価格というものも違っておるわけですが、これはどのくらい差がありますか、全国的に見た場合に。普通、米価ですね、政府の買い入れ価格、米価と種の価格との平均的な差はどの程度あるのか、それから高いのと低いのの間の差はどのくらいあるのですか。
  26. 関谷俊作

    関谷政府委員 これはちょっと、種子の価格でございますので、二十キロ当たりで決まっておりますので、なかなか普通の政府買い入れ価格と比較しにくいわけでございますが、全国的な動向としましては、水稲ウルチの場合、私どもの把握しておりますのでは、昭和五十九年で最低買い入れ価格七千七百円、二十キロ当たりであります。最高配布価格九千五百円、こういうような状況でございます。  この五十九年産について若干地域別に見ますと、やはり一つの開きがございまして、例えば北海道では、これも二十キロ当たりでございますが、八千八百三十四円から九千六十六円、これが最高で、最低買い入れ価格の方が六千九百四十五円、こういうような水準であります。一方、多少高目のところを探してみますと、近畿地方で例えば滋賀県、最低買い入れ価格が七千四百九十二円から八千三百十四円、最高配布価格の方が一万七百八十八円から一万一千七百五十二円、こういうようなことで、若干の開きが県によってございます。その辺の開きが地域別にございます。したがいまして、これはちょっと、一般の主食用米の政府買い入れ価格とはなかなか比較がしにくい、こういう状況ではなかろうかと思います。
  27. 田中恒利

    田中(恒)委員 今でも価格の差が県で、最高最低ですけれども全国的には私は相当なものがあると思うのですね。そして、政府が買い上げる価格は食管法で今ぴしっと一本になっているわけです、自流米の関係はありますが。そういうことを考えると、やはり種予価格というのは多少の差は今の仕組みの中では出ざるを得ないわけでしょうけれども、安定的に供給をしていくということは基本だと思うのです。そこへ持ってきて、今度民間の業者が入ってくる。そうすると、今、局長さんがおっしゃったように、競争が激しくなって、そのことは価格が多様化をしていき、どういうふうになっていくのか。  しかし、私ども想定するに、特に米などの問題については、日本公的機関、特に試験研究機関がこれほど整備をされて、稲作の技術水準などについては世界一、こう自負しておるわけであります、バイオの問題はさておいて。そして、今まで歴史的にも相当な金をぶち込んでいい品種開発をしてきた。そういうものの上に乗って、今、県なり市町村なりあるいは農業団体中心種子体制をつくっているわけですね。今度は民間が入っていくということになっていくと、民間はそのコストを全部それぞれの企業なり事業者が持つわけでありますから、私は、公的な機関がやってきたものに乗せられて、安くなるどころか高くなっていく、そういう可能性はあると思うのですね。あるから、そういう意味では、民間との競争、今まで主要種子の中に種子業者がなかなか入れなかったというのはコストの問題が原因としてはあったと思うのですね。  それが今度、いろいろな形で、だから私は非常に心配をしておるわけでありますけれども、種でもうからなくとも肥料なり農薬なり生産資材、その他いろいろな面でつながっていく、こういう形のものがやはり将来考えられるというところにこの問題についての一つの大きな問題があるから、この点は行政的にどういう歯どめができるのか、種子の価格形成の中でどういう措置がなされていくのか、これも考えてもらわなければいけないと思うのです。  同時に、種のこれから出てくる需要ですね。これは、米は減反減反で作付面積がぐっと減ってきておる。ポスト三期の問題だって、やはり減らしていくという方向で政府は検討しておる。しかし、種子の需要というものは、これまでの経過では逆にどんどんふえておりますね。これはいわゆるこういう種子採取したものを農家がどんどん使っていく、種苗センターなどができていく、あるいは昔のように一本一本田植えでやっておったのじゃなくて田植え機になっていく、田植え機になれば種もみがもっとたくさん要る、こんな状況の変化の中でふえておるわけでありますが、これからもまだどっとふえていくと私は思うのですね。どっとふえていくから、私は、民間の業者が高いから、勝負にならないから入らないのじゃないか、しばらくは大丈夫なんじゃないか、こういう考えも一部にあるようだけれども、決してそんなものじゃないのじゃないかと思うのですよ。これは相当伸びていくのじゃないか、こういうふうに思っております。  そういう意味も込めまして、やはり政府の価格に対する考え方はきちんとしていかないと、今まで種子協会が決めたものを知事が認定する、こういう形になっておりますね。この種子協会の構成の中に入っていただくということのようですが、入らないと言えば、これは民間民間の価格ができてくるわけでありますね。そういうものに対してもこれは何らかの考え方をとっておかなければいけぬのじゃないか、こんなふうに思うのですが、こういう点はこの法律改正の内部の議論の中でどういうふうに出ておりますか。
  28. 関谷俊作

    関谷政府委員 まさにその辺の問題があるわけでございます。特に、種子の価格という面でございますと、実は私が技術会議におりましたときから既に今先生のお尋ねのありましたような、民間で例えば稲の種をつくって売る場合に、なかなか従来の国や県の育成した品種の種が出回っているものとコストの面で非常に競争できない。特に、それはいわゆる品種改良開発投資の成果がなかなか回収できない。ですから、民間の意見をそのまま率直に申しますと、国や県が余り育種をしないでもらうかあるいは種の価格を引き上げてもらう、こういうような意見になってしまうわけでございます。  私ども考え方はそういうことではなくて、やはり稲等の主要農作物品種開発というのは国や県が責任を持ってやらなければいかぬ。それから、同時に種子流通価格の面でも、従来決めておりますような農業団体ベース、種子協会ベースでの価格水準というものを、幾ら民間参入してきたからといいまして直ちにそれを引き上げる、それに追随して上げていくというようなことは到底考えられないし、我々もそういうことを指導する気はないわけでございます。したがいまして、やはりそこに民間参入の場合には相当品質面の方でいいものが出てこないと、なかなか種子市場参入するということが難しいのじゃないかというふうに考えております。  それから、その場合にいわゆる資材との結びつけということも考えられるわけでございますが、資材というのが肥料とか農薬その他のかなり一般的な資材でございますので、なかなか特定の品種の種の販売とそういうものをリンクさせて、一つ事業、営業政策としてリンクしていくということは実際問題としては考えにくいと私どもも思っております。  そういうことでございますので、やはりそこに一つ民間参入があった場合の競争ということが起きる。そのためには、完全自由競争ということでございますけれども種子協会の場で情報交換をしながら、その辺の調整をその場でできる限りやってもらいたい、こういう気持ちを持っておるわけでございます。  なお、種子全体の需要につきましては、御質問のとおり、確かに全体として例えば稲の生産調整によります稲自体の作付面積は減るということがありましても、従来は種子の更新率が非常に上がっております。稲で見ましても、昔の二〇%台から今回〇%台に全国では来ていると承知しておりまして、これはお尋ねのあったような田植え機の導入とか、あるいは農家の方でもなかなか苗づくりまで手が回らないでそれは農協等にお願いをする、こういうような動向等がありまして上がっておりますので、全体の面積が伸び悩む状態でも種子の需要としては高まる、こういうことは現実に起きているわけでございます。これもやはり種子協会という場で需給の調整をやっていくわけでございますし、最終的には県が指定種子生産圃場指定する場合に、農林大臣が決めます県別の面積の範囲内で決めますので、そういうことで需要を見ながら数量調整をして種子生産を安定的に持っていく、こういうようなことをこれからもやらなければいけないと考えております。
  29. 田中恒利

    田中(恒)委員 種子の需要がどうなっていくかということがまた一つの価格形成の大きな要素だと思うのですけれども、今お話があったように更新率も高くなっておるし、いろいろな農法の変化によってふえておるわけですが、実情は各県の種子協会が種子の残量処理にむしろ頭を悩ましておるという面もあります。これは残量ができればできたなりの処理はしておるようでありますけれども、やはり的確な種の需要を把握する仕組み、つまり種子協会それから町村の種子の需給協議会か何か、種子協議会のようなものがあって、そこから吸い上がっていくということのようですが、なかなか実態がうまく動いていない。特に町村の種子の協議会という機能は十分に動いておるようには私は思わないわけですね。その辺のものもぴしっとして的確な需要を把握していくということができないと、全国的な面積の決定といったようなものにそごを来すという面もあるし、現実にはたくさんつくった種を別なところに出さなければいかぬ、こういうこともあるようでありますが、この辺の対策についてはどういうふうにお考えになりますか。
  30. 関谷俊作

    関谷政府委員 現在の種子の需給調整のシステムでございますが、現実には種子協会が一つの機能を営んでいるわけでございまして、種子協会という組織を通じましていわゆる品種別の需要量を把握して、それを生産の方に結びつけるということになっているわけでございますが、それを制度的に担保しているのが、農林水産大臣が県別に定める面積の中で指定種子生産圃場指定する、こういう法律上の規定であります。  今回の改正以後につきましても、やはり一種のこういう需給調整ということはますます必要になってくるわけでございまして、例えば残量処理の問題についても、こういう仕組みの中で種子協会が種予価格の中から積み立てた積立金を取り崩して残量処理の損失に充てる、こういうこともやっておったりするわけであります。したがいまして、民間参入の場合の民間関係の処理の仕方についても一つの問題でございますが、需給調整をしまして民間の分あるいは従来どおりの農業団体の系統の分、これも決まってまいるわけでございますので、そういうものについて従来の種子協会を中心にした調整は必要でございますし、その一つの機能として十分な需要の把握が必要でありますので、法律改正に伴いまして若干の、民間参入に対応するいわば一つ改正と申しますか、それは必要でございますが、基本的にはこういう種子協会を中心とする仕組みの存続と申しますか、機能発揮ということは今後とも必要であるし、そういう方向で指導してまいりたいと思っております。
  31. 田中恒利

    田中(恒)委員 時間がありませんが、細かいことを一、二聞きます。  種子協会を中心とした流通価格問題についての行政指導のようなものがなされてきておるわけでありますが、これは県別が主体になっておりますから、全国的に統一しなければいけないものなどについてはずさんになっておるような気もするし、最近の行革路線の中で、種に対する助成などもそうはいってもだんだんふえておるというより減っておる、こういう状況なので、そこへ民間業界参入していくということからいろいろな問題が出てくるような気がしてなりません。  ただ、今までやってきたものの中で、一つちょっとこれは何とかならないのかなと私が思うのは事故対策ですね。種というのは原原種原種それから圃場と来るので、一つのものが三年間はどうしても最低要るわけですね。三年ないし四年要ると思うのですが、そういう長期の間に種子の災害といったものがしばしば起きておる。そういう事故に対応する対策が残念ながらつくられていないというか、仕組まれていない。そこから実は地域によっては大事故などが起きる。種でのことでありますから、異物がどれだけ入っておるかとかいろいろ細かい検査もありますが、農業と自然の関係の中で多少のものはいつもあるわけであります。これはまことに素人の考えですけれども、こういう法律改正などの中で農災との関係ども絡ませて考えられないのかどうか。全国的には種子の事故というものはどういう状況になっておるのか、もし把握をせられておれば状況もお知らせいただきたいし、事故対策、特に原種原原種などが民間の中でやれるということになっていくと、民間対策としても国が関与していく内容の中に十分に考えられるべきことじゃなかろうか、こんなふうにも考えるわけでありますが、いかがでしょうか。
  32. 関谷俊作

    関谷政府委員 現在の種子の事故の状況につきましては、なかなか事柄の性質上実態が把握しにくい点もございまして、どのくらいの事故が起きているかということについては私どもわかっておらないわけでございますが、ただ対応的な仕組みとしまして、事後的な問題でございますが、事故が生じた後の問題については、種子協会の中で三十府県くらいの種子協会におきましては、あらかじめ配布した種子種子代の中から差し引いて積み立てを行いまして、事故処理について、善良な栽培管理を行っても防ぎ得なかった混種、発芽不良、そういう事故につきましては積立金から見舞い金を支出するということをやっておりますし、県でも、こういう種子協会の制度がない場合にも県が特別に見舞い金を支払うというような例がございます。これは種子というものの性格上、いわゆる農業災害補償制度のような一般的な制度ではなかなか対応し得ないので、どうしても種子に伴う事故の処理について一つの特別の対応を自主的に考えてもらわなければならないというような状況ではなかろうかと思います。  ただ、行政的には、できる限りこういう事故を防止するということで、やはり種子法の面では従来からやっております圃場審査生産審査、これが優良な種子生産を確保するための基本的な制度でございますので、この面について従来より以上に適正な審査を行う、こういう面についてこれからも力を入れてまいりたいと考えております。  なお、今回の改正で、種苗法の方で主要農作物についても従来と違って表示の義務を課する、こういうような種苗法の適用もあわせて指定種苗としてされることになりますので、こういう面でも事故の未然の防止についての効果期待される、こういうようなことを考えておりますが、いずれにしましても、この種子の事故防止については法律上の措置を十分に講じていくということで、審査面についてはこれからも力を入れてまいりたいと思っております。
  33. 田中恒利

    田中(恒)委員 この事故の問題は一遍ちょっと検討してみたらどうですか。実情がよくわかっていないようですが、農作物の種の生産流通段階で事故がある、その事故の原因が何であるかという点について、一遍実情を把握してみて、やはり作物災害のような形で処理できないものが多いのだろうと思いますけれども、しかし、中には関連性は非常にある、いろいろな検査をやるわけでありますけれども、単にその検査を十分やったからとまるというだけのものでないものがあって、ところによっては、私はきょうは具体的なものを出す用意はありませんけれども相当な影響が出てきて、結局だれが責任を持つのかということの責任の所在がわからなくなって、種子協会の会員が全部持っていく、こういう形で処理をしておるケースが非常に多いわけですね。これは一遍、種の対応の一つの課題として、実情を把握しなければ対応が出てまいりませんから、十分に個々のケース、どんなものがあるか実情を把握せられて、検討しておいていただきたい、こういう要望をいたしておきたいと思います。  それから最後になりましたが、種苗法品種の登録制と従来から問題になっております特許との関係は、バイオ技術開発に伴って将来ますますはっきり多くの問題が出てくるように思いますので、この際、品種登録制度と特許法上の関係について、はっきりとした見解をひとつ出していただいて、農作物の場合は品種登録制度中心にして運営すべき性格だ、こう私どもは思っておりますが、この法律改正の中で十分予想されるだけに、問題点として指摘をしておきたいと思います。  今の事故の問題も局長さんか大臣かどちらかでありますけれども、お考えをお示しいただきたいと思います。
  34. 関谷俊作

    関谷政府委員 事故処理問題については、先生の御指摘のような問題は確かにあると思っておりますので、これから私ども今まで不十分でございました実情把握を十分行いまして、またこの防止のための原因なり防止対策についても十分検討してまいりたいと思っております。  なお、品種登録につきましては、従来から植物の品種登録については、品種保護というか育成者の権利の保護については種苗法品種登録制度が一番適しているし、いわゆる特許というものにはなかなかなじまない、こういうことで進んでおるわけでございます。ただ、バイオテクノロジーが進みますと、若干そういう新しい技術なり素材を用いましてつくられました植物について特許上の権利の保護がそのできました植物体まで及ぶ、こういうようなことが出てくることが予想されるわけでありまして、そうなりますと現実に特許法の保護と品種登録制度が競合する面が出てまいりますので、今この問題については国内的にも特許庁なり外務省なり私どもとの間で協議もしておりますし、国際的にも関係機関で相当集中的な議論がされておりますので、それらの動向も見ながら植物の育成者の保護については適切な対応がされるという方向でこれから検討してまいりたいと思っております。
  35. 田中恒利

    田中(恒)委員 終わります。
  36. 大石千八

    大石委員長 武田一夫君。
  37. 武田一夫

    ○武田委員 主要農作物種子法及び種苗法の一部を改正する法律案についてお尋ねいたします。  アメリカのあみ会社の方が、種子を制する者は世界を制するという有名な言葉を吐いたそうであります。こういうことを考えますと、私もこれはそのとおりであると思うのでありますが、最初に日本を含めまして諸外国の新品種開発競争実態、これはどのように把握しているものか、その点をひとつ当局に御説明をいただきたい、こう思います。
  38. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 世界の各国の品種開発現状でございますけれども、実はいろいろと各国の研究状況の中で基礎的な研究、いわゆる学術的な研究等につきましては、それぞれ国際的な学会発表でありましたり論文でありましたり、そういうようなところである程度国際間の動向が把握されやすいわけでございますけれども、この品種開発につきましては、特に開発の手法とかあるいは取り組み体制、そういった状況につきましては、これがいろいろと同じ場で比較するような状況がなかなかないこととか、あるいはそれぞれの品種それ自体が、新品種といいますか国が取り組んでいる、特に重要視している作物自体がかなりその国によって違っているようなことが当然あるわけでして、そういう状況の中で的確な比較というのが大変やりにくいのが実情でございます。  そういう状況でありますけれども、大体最近の動向を大きく見ますところ、ヨーロッパの先進諸国の中では特に小麦の育種についての最近の成果が非常に高く評価されているように思われます。さらに、よく言われますけれども、トウモロコシを中心にした飼料作物に関しましてはアメリカが特段技術的にすぐれておりまして、かなり国際的なそういった品種種苗のシェアを占めております。  そういう中で一体我が国はどうかということでございますけれども、我が国の場合は中心的な作物である稲に関しては特に諸外国に比較して取り組んでおります研究勢力が非常に大きいということばかりでなくて、かなり研究の歴史も古い、そういうことがありまして研究水準も高いというふうに認識しております。ただ、先ほど申し上げましたように、我が国の稲の場合にはまさに温帯地域日本型の品種、これを中心育種は進んでおりますので、でき上がったものは韓国でありますとか中国の北部等におきましては非常に評価の高い品種があるわけでございますけれども、当然東南アジア等に適応するものではございません。ただ育種の手法、特にバイオテクノロジー等の最近の進展に伴う手法の進展等につきましてはかなり世界をリードしていると見ていいのじゃないかと考えております。  それから野菜でございますけれども、この分野では特に民間種苗企業中心ですが、世界に先駆けてかなりF1化の技術を取り入れた実績がございまして、そういう点で日本野菜品種開発国際的に相当に高い評価をしていいのじゃないかと考えております。
  39. 武田一夫

    ○武田委員 新生物をつくり出すためには豊富な遺伝資源が必要だということであります。しかしながら、種子保存点数など、日本はほかの国と比べて非常に少ないということが指摘されているわけでありますけれども、この状況はどのようになっているのか、そのことをお尋ねいたします。  種子というのは人類共通の財産だということも言われているわけでありますが、一粒の種子が持つ無限の可能性、これを未来にわたって確保していくということは非常に重要な問題である。ということになりますと、国際的な連携のもとに収集、保存して広く活用する体制ということも大事になってくるということでありますが、さしあたり日本のそういう状況と諸外国状況というものをまず御説明をいただきたい、こういうふうに思います。
  40. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 主として植物の遺伝資源についてですけれども、遺伝資源の我が国の保存の状況は、六十年度時点におきまして国の研究機関、農林水産省、農林水産ジーンバンクと言っておりますが、その中で保存しております総点数が十二万三千点でございます。これは例えば稲につきましては約二万点、麦につきましては約二万九千点、その他いろいろあるわけでございますけれども、例えばそういう遺伝資源の総数について諸外国と比較してみますと、米国の場合は三十四万点と言われておりますし、ソ連の場合は三十五万点と言われておりますし、中国は三十万点というふうに言われておりまして、こういったところに比べますと確かに我が国の現在の遺伝資源の保有点数は不十分であるというふうに見ております。
  41. 武田一夫

    ○武田委員 そういう状況を克服する、このための対応を考えなくてはいけない、こういうふうに思うのでありますが、その点についてはどのような取り組みをなさろうとするのか、この点についての御答弁をいただきたいと思います。
  42. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 そういう現状の中で、今後我が国としても早急な遺伝資源の確保が最も重要なことになっておるわけてございまして、これに対して実は六十年度から農林水産ジーンバンク事業というのを予算化をいたしまして、しかもこの事業全国の各地にございます試験研究機関あるいは原原種農場、あるいは種畜牧場等のこういった非常にたくさんの国の機関の機能あるいは立地条件、こういったものを活用して遺伝資源の保存あるいは特性の評価、こういうことを今後組織的に行っていこう、そういう事業でございます。  この事業の中で、先生御指摘の今後の遺伝資源の確保の計画でございますが、これについても年次的な事業の確保の実施計画、実施計画というか確保方策を講じておりまして、一口で申し上げますと、昭和六十七年度を目途にいたしまして、それまでに遺伝資源の総点数を二十三万点というのを確保目標といたしております。その内訳としては、種子関係が約二十万点、それから栄養系の関係が約三万点というふうにしてございます。こういったことを年次計画に従って精力的にその推進を図りたいと考えております。
  43. 武田一夫

    ○武田委員 遺伝資源の重要性について欧米では非常に戦略的なものとして随分前から取り組みをしてきたということであります。その点、日本は少しのんびりしていたのではないか。現実には日本開発したものがアメリカの方に行っている。聞くところによりますと、ニューヨークの植物園には日本では既に失われて、ないようなものもきちんと保存されているということになると、これは今後相当な追い込みをしながら対応していかぬと種子戦争からはじき出されるのではないかというような気がしてなりません。  今農林水産省の農業生物資源研究所に農林水産生物遺伝資源管理施設の建設が進められているということでもございますし、相当規模だろうと思うのでありますが、六十三年にこれができ上がるということを聞いております。これを見ると、この施設というのは植物種子が十万点、微生物が一万点の貯蔵能力を持つ施設ということで、将来これは遺伝資源の情報センターバンクとしての機能を果たすということでありますので非常に期待をしているのでありますが、それだけに各国との、あるいはまた日本の独自の努力によってこうした資源の確保というものに精力的に取り組んでほしいということを私は要望しておきたい、こう思います。  大臣が参議院の方に行かれるということでありますので、一つだけ大臣お尋ねして、あとお帰りになってからゆっくりとお尋ねしたいと思います。  ハイブリッド米の問題でありますが、これは非常にあちこちで研究が熱心でございます。日本においてもいろいろな企業あるいはまた国がこの開発研究に取り組んでいる。また農林水産省としては逆七五三計画というものを通して米の増収を図るということでございます。あるいはまたその開発の中では、食味のいいもの、あるいは耐病性あるいは耐寒性の強いものを開発する、いろいろと総合的に取り組むんだろうと思いますが、一つの例としまして、現在のこの生産調整の中で、その開発はそんな早くはいかないと思いますが、しかしながら、この間も筑波の方で研究開発が成功している例あるいはまた三菱化成とか三井東圧なんかも相当進んだ研究になっているということになると、今回の民間企業参入ということを兼ね合わせますと、あるいはひょっとすると相当な勢いでこういうものの開発が進んで実用化への道が案外早く来るんじゃないか、こういう考えもあるものですからお尋ねするのでありますが、過剰だというときにたくさんの米を開発してつくる、これはどういうことなんだと、正直言ってこれは一般の消費者の率直なる疑問なんでありまして、消費者の疑問にこたえて、また農家の皆さん方もこれはどうなんだということにこたえて、今後どういうふうな調整をしていかなくてはいけないのか。私は、これは今後の日本の一番の重要な農政のポイントになってくるんじゃないか、こう思うのですが、大臣の御所見や御意見をひとつ聞かしておいていただいて、時間が来ると思いますので、その続きはまた帰ってきてからお願いしたいと思います。
  44. 羽田孜

    羽田国務大臣 まさに今米は潜在的に過剰であるということで水田利用再編対策、転作をお願いしておるというとき、このときに超多収穫米を研究する、確かに矛盾と同時に本当にどんどんできてきたら一体どうなるんだろうか、これは心配されることは当然だというふうに思っております。ただ、やはり私ども日本の主食、これは米でございます。そういうことで、この米というものが生産性が高く生産されるということがやはり大事なことであって、常に生産性及び品質の向上ということについての研究というものは進めていかなければならないというふうに考えております。そういう観点の中から、私どもとしては当然ハイブリッドライスなどの超多収穫品種、こういうものの育成あるいは開発のための研究というものはそういう薄味で進めていかなければいけないと思います。  ただ、今先生からもお話がありましたように、この研究、確かに民間の活力が入ってきて非常にあるときにはスピーディーに物事が進む場合もある、こういうことも考えられますけれども、先ほどからお話がありましたように、風味もよくてしかも超多収穫であるというものをつくり出すのにはまだ相当な年月を要するであろうということであります。それをさらに一般に生産されるということになりますと、時間はさらにかかっていくのではないかというふうに思っております。  ただ、私どももう一つ考えられますことは、こういったものが開発されて実用化される、そして飛躍的な生産性の向上がされるということになりますと、今私どもとして他用途利用米といういわゆる主食以外の米もつくっていただいておりますし、そういったものなんかも、そのほかえさなんかについてもどうだということを皆様からもよく御議論のあるところでありますけれども、こういうものにも対応することができるということでございまして、私どもとしてはやはり地道な研究の中に少しでも早く多収穫品種のものを生み出していく必要はあるのではないかなというふうに考えております。
  45. 武田一夫

    ○武田委員 それでは大臣結構ですので、また後でお願いします。  この問題についてもう少しお尋ねしますが、世界の三大穀物の動向を見ますと、小麦は新品種の大半はヨーロッパの種子会社が握っていると言われている。トウモロコシはアメリカ種子会社が世界を制圧している、こういうことであります。残る米をめぐってアメリカ、フランスなどの企業品種改良に積極的に乗り出しておりまして、日本の国はもちろん、企業としても手をこまねいているわけにはいかないというのが現実だというように聞いております。そこで、日本のハイブリッド米に対する、いわゆる米の品種改良についての研究状況、それがどの程度のものであって、その成果がどうなっているのか、ひとつ具体的に説明をしていただきたい、こう思います。
  46. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 ハイブリッド米の研究状況でございますけれども昭和五十六年度から始めております農林水産省の超多収品種開発の中の逆七五三計画という計画に基づいてやっている研究がございますが、こういった、将来、現状よりも五割増収ということを一つのターゲットにしたこのプロジェクト研究、これの一環としましてハイブリッド米の研究に取りかかってきておるわけでございます。現在のところ、そのハイブリッド米の研究の中の主要な柱といいますか研究の課題は三つあるわけでございます。  その中の一つは、各地域におきまして雄性不稔の系統あるいはその稔性を回復する稔性回復系統、こういったものをつくり上げていかなければならない、こういった仕事がございます。それからもう一つは、北から南までそれぞれ各地域で収量的に特にすぐれた交配の組み合わせを見つけ出さなければならない。この場合には、従来の育種と違いましてもう世界各国の品種を相手にした非常に幅広い交配組み合わせを考えた上での仕事でございますので、これも大変な仕事になっております。さらにもう一つ、最も大変なのが、ハイブリッド米のときに一番問題になりますいわゆる採種の効率が非常に低いわけでございまして、この効率的な採種手法、これを開発しなければならない。この三つの課題がここのところずっと研究を深めている課題でありまして、それぞれの課題につきましてそれなりに相当成果を得ております。  今先生が具体的にというお話がございましたけれども、例えば収量の高い交雑組み合わせを各地域で探している、そういう状況の中では、事例的には現在栽培されている品種のレベルよりも五割ぐらい収量の高いような、こういう組み合わせも実験的な段階、試験的な段階ですけれども出ておるという状況もございます。それから、それぞれの雄性不稔の系統や稔性回復の系統の作出につきましては、これはいわゆる戻し交雑というふうな手法でやるわけでございますが、これについては各地でF5といいますか第五代、B5といいますか、いわゆる戻し交雑の五代といいますからかなり特性の固定に近くなってきたような、そういう状況の系統の作出にまで至っている。そういうことで材料的なものはかなり進んでいる状況にありまして、この中で既に、前に紹介しましたけれども成果としてはハイブリッドの第一号として北陸交一号というのを五十九年度に北陸農業試験場の育成ということで出しておりますが、こういった実際にでき上がった製品についても、北陸交一号はこの段階では中間的な作品でありましたけれども、その後さらに有望な系統が育成されつつある状況にございます。そういうようなことがありまして、実際に実用化の段階はまだまだ先になるように思いますけれども、今後こういった超多収稲開発一つの手法、そういった中での有力な手段、こういう考え方の中でF1稲、ハイブリッドライスの研究はより強力に進めてまいりたいと考えております。
  47. 武田一夫

    ○武田委員 これからどんどん研究開発が進んでいくわけでありますが、農林水産省としては、研究開発成果の実用化というのは大体いつごろになるというふうに予想しているものか、あるいはまた一般の研究者等々はこの問題についてどういうふうに見ているのか、その点はどういうふうにつかんでおりますか。
  48. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 先ほどの逆七五三計画というのがちょうど五十六年にスタートしまして、十五年間というのがその研究の設定年次でありまして、十五年間に五割増収、そういう一つの目標を掲げまして、そういう中で今のハイブリッドの手法も入れる、そういうような考え方で進んでおるわけでございます。  先生今御指摘のいつごろにできるかというお話でございますけれども、これも既に第一号は出したわけでございますが、さらにさらに、いわゆるねらっている五割アップに近いものを今後強力に出そうという努力を続けるわけでございます。どれだけの品物がいつまでにできるかという、その期間と製品の性能と、両方の予測はなかなか難しいと思いますけれども、精いっぱいこういった計画に従って出してまいりたいと考えております。  ただ、もう一つ、全然別なこれに関連する手法として、実は人工種子開発あるいはいわゆる不稔剤の開発とか、こういったものがありまして、民間関係では大変力を入れておりますし、私どもも非常に関心を持っておりますが、人工種子、特に稲の人工種子開発について、これがいつごろ一体実用化するであろうかといういわゆる専門家に対するアンケート調査の結果によりますと、一九九〇年代の後半にはそれができるというような予測は得ておる次第でございます。
  49. 武田一夫

    ○武田委員 この研究開発の促進というのは非常に重要だ。一つは、多収穫米で非常に食味のいいものが開発されれば、これは消費者にとっても非常に安いお米が食べられるのじゃないかという期待があるし、また、たとえ食味に合わなくてもそれがかなりの収量であれば、例えばえさ米、非常に安くそういうものでえさの国内自給率の向上につながるのじゃないかとか、いろいろとそういうことが考えられるわけでありますから、ひとつこの際、この部門についての研究投資あるいはまたスタッフなんかの充実、世界各国との協調も必要ではないか。お互いに競争といっても、食糧という問題では連携を深める必要がある分野もあるのじゃないかということを考えて、ひとつ今後とも懸命な対応をしてほしい、こういうふうに思います。  それでは、法案の中身についてこれから何点かお尋ねをいたします。  種苗というのは、農業生産にとっては最も基礎的な生産資材でありますし、農業生産の基盤として恒久的かつ安定的に供給確保されることが極めて重要でございます。  さて、我が国の基幹食糧あるいは基幹作物である稲、麦、大豆については、主要農作物種子法によって優良な種子生産及び普及が図られてきたところであります。しかし、この分野においては民間事業者参入が事実上行われにくいものとされてきたわけであります。それが今回、その参入を認める、こういうことになったわけであります。  そこで、まず第一番目にお尋ねしたいのは、これまで民間参入を認めなかったのはいかなる理由によるものか。国が認めなかったものか。あるいはまた二番目には、民間側に参入できない理由があったものか。三番目には、今回参入させなければならない理由が国の方にあったのか、それとも企業側にあったのか。四番目に、バイオテクノロジー等の先端技術の発展が目覚ましく、種苗分野においても技術水準の高度化というものがどんどん進められているということで、こうしたものをさらに積極的に活用するということからのこの分野参入というものが出てきたものか。ひとつまとめて御答弁をまず最初にいただきたいと思います。
  50. 関谷俊作

    関谷政府委員 まず最初に、主要農作物種子生産について民間参入を今まで認めていなかった理由という問題でございますが、これはやはり稲、麦、大豆の場合には、全体的に見ますとかなり全国に栽培されますものですから、全国的な育種の組織体制が必要であるということ、また、なかなか育種の年限が長く経費を要する、こういうこと、さらに種子生産の方にまいりますと、野菜等に比べて増殖率が低い、一方、かなり需要量が大きいので相当面積圃場が必要であるとか、また、いわゆる種子の退化が顕著にあらわれませんので、自家採種中心になされ、よほど優良で安い種子でないと普及が困難であるとか、こういうようないろいろな事情がございまして、やはり民間では実際上参入が採算面でも困難であるし、むしろ国、県それから農業団体、こういう実際の農業者を中心に仕組んでいくということが実態に即しておった、民間参入を認めていなくても、むしろ認めない状態が主要農作物の場合には種子生産実態に即していた、こういうことであろうと思います。  ただ、民間の方に参入しなかった理由があるのか、こういうことでございますが、現実には、ビール麦のような例に見られますように、ビール会社が優良な品種をつくりまして普及に熱心であった、できれば種子生産にも参加したい、こういうようなこともあったわけでございますので、民間側に参入しないという理由が特別あったわけではございません。全体として見ますと、従来制度でもって十分対応できるという状態で制度が仕組まれておった、こういうことであろうかと思います。  そこで、今回の改正についての踏み切りました理由は、やはり民間も含めまして、種子生産なり、またそのもとになります育種の面で技術開発が大変進みまして、こういう状況を見ますと、従来のような、同、県が育種から種子生産まで全部取り仕切ると申しますか、そういうことではなくて、民間にも何か期待している面があるんじゃないか。こちらの方が、国や県が不十分だというわけではございませんけれども、やはり民間の道を開けば、それなりの民間のいわば一つの活力というものもこれから出てまいる。そういう道を開くということが民間にとってももちろん関心のあることでございますが、同時に、国や県の立場あるいは日本農業立場から見ますと、そういう道も開くことが何らかの意味でのプラス期待されるだろう、こういうようなことが改正理由でございますので、国だけの理由でもございませんし、また民間だけの理由でもなくて、ひとつ日本農業の発展のために民間の力も発揮されるような、そういう道を開いていきたいということでございます。  なお、最後の第四点にお話のございましたのは、ハイテク等の活用による具体的な品種開発成果が出てきていることに対応するのかというようなお尋ねであろうかと思いますが、現在のところは、これは主要農作物に限らず、いわゆる育種という面では従来の組織培養とか胚培養とかそういう形でできました品種はいろいろございますけれども、本当の細胞融合なりDNA組みかえ、こういうような技術になりますと、植物の品種改良に使われるにはまだまだこれから相当な期間もかかりますので、この面の技術でもって具体的な成果が出てきたわけではございません。むしろ、従来方法の育種種子生産も含めまして、そういう面での民間関心の高まりと申しますか、研究開発意欲の高まり、こういうものが見られることに対応する改正であるというふうに私ども考えております。
  51. 武田一夫

    ○武田委員 採算の面ということでなかなか以前は参入も非常に難しい、やはり民間企業が入ってくると、先ほども質問の中にありましたが、常識的にもうけのない仕事には乗ってこないと思うのですね。研究したものが必ずもうけにつながるということを望むわけであります。今回のこの参入によってそういうもうけ、利潤というものが期待されるかどうか、その点はどういう点で期待されるか、ちょっと聞かせていただきたいと思います。
  52. 関谷俊作

    関谷政府委員 全体的には種子の面でもうけと申しますか、利潤追求なり投資回収ということになりますと、やはり品種育成段階からのいわゆる研究開発投資全体を種で回収するというようなことになりますので、民間の場合には国や県の場合よりも開発投資がかなりかかりますし、その面では相当コストが高くなるので、一般的にはなかなかそう簡単には民間主要農作物の方でいわゆる利潤が上がるような品種改良種子生産というのは難しいのではないかというふうに感じております。ただ、そこへ、これからの技術開発の努力によってよほどすぐれて、多少高いコストのものでも販売できるというようなものが出てまいりますと、これはその面での一つのメリットが民間にとっても出てくるわけでございますが、この辺がいわば現状制度では一つのぐるぐる回りみたいになっておりまして、民間参入の道がないので民間品種改良に入らないということであります。そうなりますと、道を開いておいた上で、さてこれから民間の努力によってどのくらいの成果が上がるか、こういう問題になるのではないかと思います。  ただ部分的には、先ほども申し上げましたビール麦については既に民間育成した品種が奨励品種にもなり、現実相当栽培されておりますので、種子生産の面でも民間としての何らかのメリットがそこに出てくるということはこの部面については考えられるというふうに思っております。
  53. 武田一夫

    ○武田委員 民間参入を許すということは、反面からいうと、国の農業政策の中ではこれは非常に重要な方向性を示すことになるわけです。これによって農家があるいは農業が発展していくか、栄えていくか、あるいはまた、ひょっとするとこれによって企業のもとに農業農家というものが抑え込まれるか、極端に言えばそういう両面も考えられる。  私はこの問題でちょっと気にかかるのは、確かにいろいろな事例を見ていますと、例えば非常に熱心にやっている三菱化成とかあるいはまた住友化学それから三井東圧、こういうようなところがかなり研究成果を着々と上げてきております。そこで、三菱化成は農水省と手を結んで、国が保有する約一万六千点の米の種子資源を使える利点があって、稲の新品種開発に大きな武器として現在その存在が非常に注目されている。住友化学はそれに負けず劣らず自分たちの力で開発している。これは非常にいいことでありますが、そういう方向におんぶして、国が本来やるべき仕事、県がやるべき仕事の手抜きをするのではないか、こういう心配をしている人がいる。予算が少なくなっている、研究投資の資金が少ない、こういうことの埋め合わせをこういうところに持っていくのでないかという懸念をしておるわけでありますが、そういうことは絶対あり得ないと言えるかどうか、その点をひとつ御答弁いただきたい。
  54. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 先生の今の御懸念のことでございますが、現在ハイテク育種といいますか、こういうような分野で、先ほど先生のお話のありましたようなところを含めまして国の研究機関と民間企業とでは共同研究を三件やっております。一件は終了しましたけれども。いずれにしてもこういった共同研究の場合には国と民間の互いの研究上のノーハウを持ち寄りながら、双方独自でやるよりははるかに効率的な結果が期待されるような、いわばギブ・アンド・テークというのを大前提にした形で共同研究が始まるわけでございまして、ちょうどオレンジとカラタチで細胞融合に成功したオレタチというのがございます。これなどが最もそういう意味の事例になるかと考えておりますけれども、そういう点で国の研究は、こういった先端的な研究の周辺といいますか、ベースになる非常に膨大な育種全国体制を構えておりまして、そういう中でこういった共同研究等の成果が実際に生かされて実用的な品種ができる、そういうベースとの関係も含めて考えますと、国が今後そういう点で手を緩めたりということは絶対にないと申し上げておきたいと思います。
  55. 武田一夫

    ○武田委員 それは当然そうあってほしい、そうあるべきでありますが、そういう心配がありますので一応お尋ねをいたしておきました。  そこで、国がこれまでいろいろと投資され研究してきた成果といいますか、ここ数年の数字でちょっと示してもらえませんか。
  56. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 国のこれまでの成果ということでございますけれども、国が育種を組織的に始めましたのは大正十五年の小麦の育種指定試験事業、これから始まるわけでございます。そしてまた昭和四年からいわゆる農林番号という登録制度が発足しておりまして、その農林登録制度の発足以降でございますが、国の成果といたしましては、例えば水稲でありますれば農林百号に当たりますコシヒカリの育成でありますとか、あるいはリンゴでありますと農林一号に当たりますふじ、こういった大変現在でも農業に貢献しておりますような大きな品種、こういうものを含めましてこれまでに千九十四品種を農林登録として育成してございます。  その中で、例えば水稲でございますと、これまでに育成された品種は三百二十一品種ございまして、現在、昭和五十九年度現在でございますけれども全国の普及面積の約七割を占めておりますし、また小麦等につきましては、これは育成品種総数は百三十品種ございまして、我が国の全普及面積のすべてをこれで占めている、そういう状況でございます。
  57. 武田一夫

    ○武田委員 この品種開発研究に取り組んでいる、例えば大曲に種子研究所でしたか、ありますね。私はあそこに行ったとき気になることを聞いたのです。要するにいいものを開発してもそれを普及するのがなかなか難しい。それはわけがあるのですね。例えばササニシキ、コシヒカリの例を挙げますと、種が古くなれば、何年か来れば新しいものに切りかえていいときがあるんでしょう。耐用年数みたいなものがあるんでしょう。ところが、それを研究している研究者が、それ以上のいいものが出て、収量もよくて、病気にも強くておいしいと言っても、世に出てこないというのがある。研究しても実用にされないとなれば、これはいかがなものかということなんです。そういうことをもう少し農業団体とか関係者とよく相談して、研究成果が実用として、結局これは農家のためだけでなくて一般の消費者も踏まえて、研究というのは片っ方だけでなく全国民に有用に活用しなければならないわけでありますから、そういう点ももう少し突っ込んで御検討なされたらいかがかと思うのです。今、水稲などでは三百二十一品種ありますが、幾らそれを開発したとしても現実に消費者の方にメリットがいかないとなれば、これまた問題だと思うのですが、研究と同時にこういう点はどういうふうに考えておりますか。
  58. 関谷俊作

    関谷政府委員 今お尋ねのような研究育成されました品種の活用、そういう面で今の私どもの対応としては、主要農作物種子法にございます奨励品種決定調査、こういうことで対応しているわけでございます。  具体的には、稲、麦等につきまして国や県の試験場で特定の品種育成されて有望だということになりますと、ある時点からこの奨励品種決定調査の方もやや並行的にスタートいたしまして、実際にいいものは各県で最終的に品種ができた段階で奨励品種としてすぐにも使える、こういうことにしようということで、育種と奨励品種決定調査というものを同時に絡めているということでございます。そういう意味で、県が奨励品種といたしましたものを一般の農家の方が使うわけでございますが、その奨励品種審査のときには、県のいろいろな試験場だけではなくて、農家の方々とか、ときによっては小麦等でございますと需要者である製粉とか精麦、そういう関係の方も入っていただきまして、その地域で向いている品種はどれかということで、育成育種とその普及、こういう面のリンクを図っているような次第でございます。
  59. 武田一夫

    ○武田委員 ところで、民間事業者主要農作物種子生産の道を開くことによりまして、これが種苗分野活性化につながり、その成果農業振興に大いに役立つよう十分の配慮をしていると私は思うのでありますが、心配な点は、この運用いかんによっては農業者が心配するような事態が出てこないかということ、これがまず一つであります。また反面、民間事業者参入する際に、参入に当たっていろいろとそれを阻止するといいますか、障害になるようなものがないものか。その両面に対する対応は十分になされているものかどうか、この点をひとつ御答弁いただきたいと思います。
  60. 関谷俊作

    関谷政府委員 民間参入に伴いますいわばマイナス面と申しますか、心配される事態と申しますのは、民間立場育成した品種あるいはつくった種が配られる場合に、それが本当にその地域農業なり生産にとっていいものであるかどうか、優良な種子であるかどうか、これが一番問題になる点でございますので、やはり今回、この民間参入の道を開くに際しまして検討しました一番大きな点はその点でございます。  こういう点から考えますと、先ほど申し上げました奨励品種決定調査のような、県という立場でその地域状況考えて普及すべき品種はどれか、こういう行政上の奨励品種を明確にするという制度がございますが、これはやはりこれからも続けていって、民間のものも奨励品種になったものを普及を図っていく、こういうふうな仕組みをこれからも持っていく必要があるのじゃないか。  それから、優良性の確保という面では、種子生産圃場指定しまして、その生産審査圃場審査を行うこと、同様に原種原原種生産につきましても、民間が行う場合には同様なチェックをしていくということで、優良性の確保という点については従来の仕組みをそのままこれにも適用するという従来制度の枠の中でやっていきませんと、最初に申し上げましたようないろいろなマイナスの事態が出てくる、こういうことが予想されるわけでございます。  一方、民間参入にとって障害というか、それを阻止するような事態、要因は何がどういうふうにあるのかということでございます。これは私ども立場でなかなか考えにくいことでございますが、この問題に絡んで、参入する場合こういう点をというふうに言っておられる時間事業者の方の意見を御紹介いたしますと、さっきもちょっと問題が出ましたが、価格が引き合うかどうかというような点を心配しておられるわけで、これは研究開発投資をしておりますので、その回収ができるような価格で売れるものだろうか、こういうことになるわけでございます。  この点は、何と申しましても価格の問題や採算の問題になりますと経済原則で、本当にいいものならばそれぞれの価格で売れるわけでございますから、やはりそこには一つのリスクが伴うわけですが、こういう面で、従来の国や県の育成した品種中心にした種子生産種子流通にいわば対抗していくだけのいい種、いい品種をつくって参入してくる、そういう実力の問題ではなかろうかと私ども考えているわけでございます。  それからもう一つは、民間の方の意見を聞いておりますと、まさに第一点の方で、従来制度のいろいろな奨励品種の決定なり審査なり、こういういわば行政上の締めつけがまだこれからも強いとなかなか参入しにくいということも言われたりしております。ただこの点は、最初に申し上げましたような民間参入を認める場合の制度上の最低の必要枠というものはちゃんと確保しないといけないわけでございますので、その点についても特別これを障害要因という考え方は適当ではないのじゃないかと考えております。
  61. 武田一夫

    ○武田委員 これは後でもまた聞こうと思ったのですが、農家側にとりましては、民間参入によって不良な品種が出てくるというような心配がないか。これは先ほどもそういうことのないようにするということでありますが、種が過剰のときはいいのですが、不足の事態に当面したときあるいはそういうことが予想されるようなとき、民間業者による買い占めあるいはまた売り惜しみみたいなことによる市場操作が行われないという保証はないんじゃないか、こういうのはどういうふうにするんだという疑問があるのであります。こういう場合の対応は十分に考え参入を認めるということなのか、この点をひとつ明確に聞かしていただきたいと思います。
  62. 関谷俊作

    関谷政府委員 いわば種子の需給の問題で、非常に足りなくなるというような場合にその辺の需給の混乱が生じることは一つ懸念としてはあるわけでございます。したがいまして、現在の主要農作物種子法にもある程度そういう需給調整という考え方が出ているわけでございまして、指定種子生産圃場指定する場合に、農林水産大臣が定めた面積の範囲内でその指定をするということになっておりまして、そこで全体の種子の需給状況、これはさらに品種別まで含めた需要を把握して、それを生産段階におろしていくということでございます。その場合には、その前段階として県で種子生産計画というような需要に応じた生産計画を樹立して、それに応じてつくっていくということを考えなければいけないということで、従来やっております種子生産計画ということをこれからも実施いたしまして、それに従って需給の不安定が生じないように、こういうことにしたいと思います。  なお、民間事業者種子の取り扱いについてはもちろん流通段階指導いたすわけでございますので、特に稲の場合には種子取扱業者ということにも指定をしていかなければ種子の取り扱いができないわけでございますので、そういう面も含めまして、流通上の面でも御指摘のような混乱が生じないようにこれから十分指導してまいりたいと思っております。
  63. 武田一夫

    ○武田委員 県でつくる種子生産計画、これは聞くところによると三年前か二年前か、とにかくかなり前に決めるのですか。そういうことになると、それが当初の計画と狂うということも相当考えられるわけです。そうでしょう。こういう場合の心配というのを十分に考えた上でやらぬと、私が先ほど指摘したようなこともあり得るのじゃないかということが考えられるわけですが、そういう点はどうですか。
  64. 関谷俊作

    関谷政府委員 お尋ねのとおり種子生産計画は三年前の分からつくっておるわけでございまして、これは原種原原種というふうな段階から増殖をしてまいりますので、そういう意味で計画をつくっているわけでございます。むしろそうやって種をふやしていくという関係からどうしてもそういう一種のすだれ状態になるわけでございますが、こういう面については全体として需要の把握、特に品種別も含めました需要の把握を十分にいたしまして、需給にそこを来さないようにしてまいりたいと思っております。
  65. 武田一夫

    ○武田委員 都道府県が指定する種子生産圃場面積、これは農林水産大臣があらかじめ都道府県別、品種別に定める面積の範囲内とされている、そういうことでありますね。そこで、面積は今後今までのとおりの面積でいくのか、あるいはこれから参入によって変更も可能なものかどうか、この点とうなるものかひとつ聞かせてください。
  66. 関谷俊作

    関谷政府委員 種子生産全体としてはやはり過不足両面が問題でございますので、計画的な生産をするためには需給というものを十分調査するわけでございますが、その場合に、今回民間参入するからといって民間分を上乗せ的に加えていくということではなくて、これから改正後の状態としましては、民間分等も含めた全体の種子計画、種子の需給動向を見まして、その中で民間分がどのくらい需要があるかということを考えていくわけでございます。したがいまして、根っこになるもとにおいては民間種子品種なり種子に対する需要が全体の中でどのくらい出てくるかということでございまして、単純に上乗せするというよりは、稲なら稲の種子全体の中で民間分が今後どのくらい出てくるであろうか、こういうふうに考えてまいりたいということでございます。
  67. 武田一夫

    ○武田委員 面積は今のところ上乗せするということは考えない。そうしますと民間業者はどこに圃場を——例えば十ヘクタール必要だ、ところがある県ではもう入る余地がない。米でも麦でも大豆でもいいですが、希望しても入れなかったらどうしたらいいのですか。面積が一定に決めてあって、それが極端に言えばかなりの民間業者が希望してきたというときには、ある程度その民間業者を選別するわけですか。その点はどうなんですか。
  68. 関谷俊作

    関谷政府委員 これはどちらかと申しますと私どもの需給計画の考え方が、需要というものから出発するというようなことで対応してまいろうということでございまして、これは従来系統でも、例えば品種別にどのくらい種子生産を予定するかということになると、需要がどのくらいあるかが一つの予測として出てくるわけであります。したがいまして、民間がこれから自分の種を売りたい、こういうことになりました場合に、それに対してどのくらいの需要が出てくるであろうか、それが全体の稲の種子の需要の中でどのくらいの位置づけになるか、こういうふうなことでありますので、面積は別にある年の面積でずっと固定をするということではございませんで、各年の需要を三年前から見込んでやるわけであります。その中で民間種子の織り込み方については、これから出てきた具体的な品種状況に応じて考えていく。恐らくそこで民間の方ではもっと売りたいというような多少競争的な意向が出てくるかと思いますが、それを一つの需給計画の中にはめ込む、こういう調整をやるわけでございます。
  69. 武田一夫

    ○武田委員 そこで、種子生産圃場指定をめぐって民間業者と従来の委託者との間の混乱というのは生じないというふうに確信を持っておりますか。その点はどうですか。
  70. 関谷俊作

    関谷政府委員 需給計画、種子生産計画が決まります段階までには御指摘のような一種競争というか売り込みに対するそういう一つの調整が必要であると思いますが、最終的に生産計画が決まりました段階でそれに応じて制度を運用してまいりますので、そこに一つ県段階における調整ということでしっかりした生産計画を立てることがぜひとも必要になってくるわけでございます。
  71. 武田一夫

    ○武田委員 次に、都道府県の指定というのはどのような基準によって行おうとしているのか、この点についての御答弁をいただきたいと思います。
  72. 関谷俊作

    関谷政府委員 指定種子生産圃場でございますが、全体的な考え方としては、種子生産に必要な技術知識、経験、こういうものを有する人が経営しておるということ、それから圃場の要件として種子生産に適している、その二つが基本になるというふうに考えております。具体的には、生産責任者の今申し上げました技術知識、経験でありますとか、生産地として適性の有無、それから病害虫発生等の状況、こういう点を勘案し、またさらに圃場もある程度の規模を持つ、こういうような要件を定めて、それに従いまして指定をしてまいるという考え方で進みたいと思っております。
  73. 武田一夫

    ○武田委員 ここで技術知識、経験ということですが、流通面でも民間参入が可能になると先ほども言ったようにいろいろな問題が出てくると思うのです。例えばいろいろな機械とか何か農業関係の資材を売っているそういうブローカー的な存在の人間が、その機械を売るときに種子をサービスするとかなんとかやって商売に有利に図ろうとかいろいろする。要するに、今大体農協などのやっている形というのは、サービス事業的に非常に良心的に農家本位の流通をしているわけでしょう。そういうのを変な者によって混乱させられるというようなことのないようなしっかりしたチェックをしないといかぬというふうに思うのですね。だから、経験があって技術があって知識があるというだけではちょっといかがかという、そういう審査の、審査資格といいますか、厳正なものをもっとやはり考える必要があるのじゃないか。また、そういう違反的なものに対しては相当厳しい対応をしておかぬと、これが将来かなりいい商売の種にされてしまう。本来の趣旨から外れるようなことをする者が必ず出てくるという前提のもとにこの厳正なる資格審査をしておかぬといかぬと私は思うのです。この点についてもう一度ひとつお考えを聞かしてください。
  74. 関谷俊作

    関谷政府委員 確かに種というものは大変大事でありますだけに、御指摘のようなそういう悪用と申しますか、ということが懸念されるわけでございますので、今申し上げましたような指定種子生産圃場指定段階での人的な面なり圃場の面、施設の面でのチェックということをこれはしっかりやらなければいけないわけでございます。同時に、種の生産に入りました以後につきましては、従来もございますが、圃場審査というその栽培状態における圃場での審査と、それからできました種の生産審査、これを厳格に行うことによって、少なくともいい種をつくるということについては、この主要農作物種子法の従来の仕組みを十分しっかりと適用して審査、監督をしなければいけないと考えております。
  75. 武田一夫

    ○武田委員 次に、奨励品種の決定機関である奨励品種決定審査会、これは知事の諮問機関だということでありますが、その構成員というのはどういうふうになっているのか、大体そういう構成員は何人ぐらいが平均的な人数か、その点をまずひとつ御説明ください。
  76. 関谷俊作

    関谷政府委員 奨励品種決定審査会の構成でありますが、やはり事柄の性格上一番基本になりますのは、育種技術高度化品種需要の多様化に対応した的確な制度運用のかなめでございますので、学識経験者、民間育種関係者、それから農産物の需要者等を加える、こういう改正、今後改めようと思っておりますが、従来の審査会ではやはり農業試験場、それから県の生産関係担当者、それから農業団体等が構成員になっております。  県の内部組織でございますが、私ども指導で人数的には二十人というようなことで現在運営をいたしております。
  77. 武田一夫

    ○武田委員 これは、こういう方々の人選はあくまでも県の方にお任せしているということですか。
  78. 関谷俊作

    関谷政府委員 やはり県庁の方で、奨励品種という県に向く品種を決めるところでございますので、県の判断というものに任せております。
  79. 武田一夫

    ○武田委員 先ほど局長が、民間育種関係者も入れるという発言がございましたね。これは今後の民間業者参入のことに関係することで、ぜひ構成員としてその意見を反映させるようにしてあげなければいかぬと思いますので、その点はひとつ御配慮をいただきたい、こういうふうに思います。  そこで次に、種子協会というものがあるわけですね。この構成はどうなっているわけですか。
  80. 関谷俊作

    関谷政府委員 種子協会は、この主要農作物種子制度のいわば実際的な運営面の問題として、種子の効率的生産流通を図るための役割を果たそう、こういうことでつくられているものでございます。  構成員は、県農協中央会それから経済連、種子生産農協それから種子需要農協、またこれらの組織する種子更新協議会、この辺が構成員となっております。  なお、大体任意団体が多いのでございますが、一部法人格を持っているものもございます。
  81. 武田一夫

    ○武田委員 ここに民間事業者というものを入れるという考えはあるわけですか。あるいはまたそういう方々が入らないとすればどうするのか、この点はどうなんですか。
  82. 関谷俊作

    関谷政府委員 これはやはり改正法によりまして民間参入ということも出てまいりますので、これだけ重要な役割を果たしております種子協会については、むしろ私ども指導として民間事業者あるいはその代表者、こういう人たちにぜひ入ってもらうように指導したいと思っております。
  83. 武田一夫

    ○武田委員 やはりこの点がもしうまくいかぬで、従来の農業団体中心としたものと民間事業者中心としたものによっていわゆる主要農作物種子生産流通というのが行われるということになると、都道府県というのは種子の需要把握を含めて今後の全体の必要生産量をどのように把握するかという問題に非常に混乱を来すのじゃないか、こういう心配があるわけですね。この点は十分に対応していける、そういう内容のもので今回改正をしているものかどうか、その点はどうでしょう。
  84. 関谷俊作

    関谷政府委員 種子協会につきましては、法律上の表面には出ておりませんけれども、実際の機能から申しますと、やはり先生の御指摘のように民間事業者がそこに入ってそこで情報交換をし、実際上のいろいろな需給面も含めました調整上の場として活用するということでございますので、これは内々農業団体方面にも、民間事業者がこの機会に参加ということについてむしろそういう方向でいきたいという意向もあるようでございますし、私ども指導としてそういうふうに持ってまいりたいと思っております。
  85. 武田一夫

    ○武田委員 これは今後の重要な問題だと思うのです。ですから、この点については大臣、やはりこういう重要な問題に改正によって混乱が生じないようなしっかりした方向を指導しながらその対応をしていただきたい、こういうふうに思うのですが、大臣の御意見をひとつ聞かしてください。
  86. 羽田孜

    羽田国務大臣 主要作物でございます麦、稲、大豆、これは我が国の農業においての基幹的な作物でございます。その優良な種子の安定的な生産及び流通が基本的に重要であろうというふうに考えます。  このために、今回の法改正案では、このような基本的な考え方に立って、民間事業者がその種子生産参入した場合にも種子生産流通に混乱の生じないよう、農業者に対する優良な種子供給を確保するための国及び都道府県の主導的な役割を堅持しつつ、都道府県の適切な指導のもとで種子生産が行われるようにしたところでございます。  種子の需給につきましては、まず都道府県は適正な生産が行われるよう種子生産圃場指定を行うとともに、二番目として各都道府県に設けられた種子協会の体制、運営を改善して民間事業者参加を促しまして、計画的な生産並びに適正な流通のための情報交換が積極的に行われるように措置をいたして、混乱のないようにしていかなければいけないというふうに考えております。
  87. 武田一夫

    ○武田委員 どうか民間参入によりまして、需給操作をされるというようなことで全体のバランスが崩れたりすることのないような適切な対応をお願いしたいと私は思うのであります。  そこで、現行制度下での種予価格の決定の仕組みはどうなっているのか、この点についてお聞かせいただきたいと思います。
  88. 関谷俊作

    関谷政府委員 種予価格につきましては、その価格の性格としまして、適正な種子としての生産に必要なある程度のコストを見込み、また関係流通経費も見込んだ価格とするという考え方でございまして、これについては直接法律的にコントロールするというような筋合いのものではございませんけれども現実として大変大事な問題でございますので、種子協会におきましてこの辺の価格決定をし、それを知事が承認をする、こういうようなことで価格形成をしております。今後の民間参入に伴いましてこの辺の問題をどうするかについては、これからの問題として検討する必要があると考えております。
  89. 武田一夫

    ○武田委員 種予価格の決定の際には、種子生産農家の所得の確保という問題が大事であろうと思います。また一方には、一般栽培農家種子更新意欲を損なうことのない価格で決めることも必要であろうと思うわけでございます。しかし、今後、民間事業者供給する種子につきまして民間事業者による独自の価格形成が可能となりはしないか、そのことによって価格体系の複数化が生じまして農家に混乱を生じさせる心配がないものかどうか、この点についてどのようにお考えでございますか。そして、政府としましては今後の種予価格のあり方についてどのような方針で臨もうとしているのか、この点もあわせてお聞かせいただきたいと思います。
  90. 羽田孜

    羽田国務大臣 今先生からお話がございましたように、こういう中で、生産する者あるいは種子を活用しながら農業生産にいそしむ人たち、この両者の立場というものをきちんとしていかなければならないということでございます。その意味で、今、関谷局長の方からもお話がありましたように、種子協会の機能というものを十分に活用して、この中に民間業者の方の参加も促しながら適正な価格形成のために十分な情報交換を積極的にやっていただく、そういう中で適正な価格というものをつくり上げていかなければいけない、かように考えます。
  91. 武田一夫

    ○武田委員 そこで、ちょっと保管料についてお尋ねしたいのです。  運輸省は一般の営業者については九・四%程度の値上げを認めている、しかし、食糧庁は農協関係の政府米の保管料についてはいつごろ値段を決めてくれるんだという話が出てまいりました。いつも一般流通業者よりもかなり値切られて保管料が決められることは非常に残念であるということもあわせて聞いているわけであります。これは種子の場合も関係してくるわけでありますので、この点ひとつ実情をお聞かせいただきたいと思うのです。
  92. 山田岸雄

    ○山田(岸)政府委員 お答え申し上げます。  先生が今御指摘のように、営業倉庫の保管料につきましては倉庫業法に基づきまして倉庫業者が運輸省に届け出をして改定するということになっておりますし、先般そのような届け出がなされまして、四月一日から保管料が改定される、こういうふうなことに一応なっておりますが、この届け出がなされた後におきまして倉庫業者と荷主の間で具体的な適用等について話し合いが行われる、こういう段取りで価格改定がなされるような次第でございます。  政府米につきましても、今回の営業倉庫の改定料金の適用をどのようにするかということにつきましては、現下の厳しい財政事情に置かれております関係にも配慮し、また他物資についての保管料の適用状況がどのようになっておるかということにも留意しながら現在検討しておるような次第でございます。特に、今回の保管料率の改定に当たりましては、先ほど申し上げました九・四%が基準ではございますが、それに上下に三%幅を設けてもいい、こういうようなこともございまして、私ども、どのような改定率を適用するかということで慎重に検討しているような次第でございます。  また、農業倉庫の問題につきましては、従来から、農業倉庫の政府貨物に対しますところの保管料につきましては、倉庫業法ではなくて農業倉庫業法に基づいて一応決定される、こういうことでございます。細かくなりますが、その農業倉庫業法に基づきますところの業務規程におきまして、政府の貨物の場合にあっては農業倉庫業者と政府との間で寄託契約をする、その契約に基づいて保管料を決めればいい、一般物資とは違った取り扱いがなされているような次第でございます。したがいまして、従来から農業倉庫におきますところの保管料につきましては、営業倉庫の保管料との均衡という問題にも配慮して定めておりますし、これまでの経緯もございますので、そうした点にも配慮しながら今後の取り扱いについて早急に結論を出したい、このように考えておる次第でございます。
  93. 武田一夫

    ○武田委員 四月一日からもう二カ月になろうとするから心配しているわけです。ですから、そういう不安や心配を解消するために、もう少し積極的な話し合いの中で適正な対応をしてください。これはお願い申し上げます。  最後に、新品種の取り扱いをめぐりまして、今後、種苗法と特許法とに調整を必要とする事態が想定されるわけであります。現在UPOV等の国際機関においても保護のあり方が検討されておるようでありますが、この問題につきまして農林水産省としてはどういうふうな対応をなさるつもりか、この点についての御所見をお聞かせいただきたいと思います。
  94. 関谷俊作

    関谷政府委員 新品種保護につきましては、従来の考え方としまして、植物の場合には、その育成方法がどうであるかを問わず、育成された新品種についてはすべて種苗法品種登録で対処する、こういうことでやってきておりますし、また現実の問題としても、植物新品種の場合に特許法の特許制度で対応するようなものはまずない、特許制度に非常になじみにくい、こういうことで処理されてきているわけでございます。ただ若干、育種の仕方においてバイオテクノロジー等が進展してまいりますと、そこで開発されてまいりました技術なりあるいは素材なり、そういうものを使いまして新品種がつくられますと、その特許請求の範囲がそういう技術なり素材を用いてつくられました植物体にまで及んでくる、こういうことが現在も既に問題になりつつあるわけです。そうなりますと、植物体というところまで特許の保護が及ぶことになりますと、これが種苗法上の品種登録の関係と競合してまいるわけでございますので、これが実は国内的にも検討すべき問題でございますが、国際的にも、いわゆる工業所有権の制度で対応するか、植物の品種保護の制度で対応するかということが議論されているところでございます。  私どもとしましては、従来の植物の新品種は、育成方法のいかんを問わず新品種保護制度でやるという基本的な考え方は変わらないわけでございますが、やはりこれは関係の諸制度がございますし、また条約もございますので、国内的に関係機関との協議をし、同時に国際的な場での今進められております検討の状況、これを見ながら適切な対応を必要とする、こういう段階に来ておるというふうに思っております。まだ現段階ではその辺の議論の落ちつきぐあいというのははっきり見通せないわけでございますが、やはり趣旨は、いわゆる二重行政の問題が生じないような適切な育成者の権利保護、こういうことが基本でございますので、そういう方向で慎重に対応してまいりたいと思っております。
  95. 武田一夫

    ○武田委員 この件につきましては以前通産省とのもめごとがあったわけです。国内でもめごとなんかあるとみっともない。そういうわけですから、国際的に、この間の、五十七年でしたか種商法の改正のときにも、種苗国際交流というものを推進するというようなこともございますから、これは世界的な中での日本ですね、やはり国内の統一をしっかりしながら国際的な協調もしっかりとやってほしい、これは大事なことだ、こう思うのです。  大臣、この点につきましては特に国内の問題がいろいろと出てくる心配がある。こういうことについて十分な対応をしてほしいと思うのですが、いかがでしょうか。
  96. 羽田孜

    羽田国務大臣 御趣旨の点はよく踏まえながら私どももこれから進めてまいりたい、かように考えます。
  97. 武田一夫

    ○武田委員 以上で質問は終わりますけれども、政府としましては、今後、優秀な新品種育成と優良な種苗生産流通を確保することが農林水産業振興の基本であるということをしっかと踏まえまして、本法の施行に当たりましては、国及び都道府県の優良種苗供給確保機能がいささかも低下しないような特段の配慮をひとつお願い申し上げまして、私の質問を以上で終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  98. 大石千八

    大石委員長 午後二時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十三分休憩      ————◇—————     午後二時二分開議
  99. 大石千八

    大石委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。菅原喜重郎君。
  100. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 私からも、今回の種子法及び種苗法改正の背景及び提案の理由についてお伺いしたいと思います。
  101. 関谷俊作

    関谷政府委員 種苗は非常に基礎的な生産資材でございますので、優良な種苗を安定的に生産しまして、適正な流通を確保するということが、農業生産生産性の向上、それから生産物の品質の向上の上で大変大事なことはもちろんでございます。  最近の種苗関係状況を見ますと、バイオテクノロジーその他の新しい技術開発が進展しましたので、画期的な新品種やあるいは種苗の実用化を目指しまして、技術開発競争国際的に非常に活発化しておるわけでございます。また、日本の国内におきまして見ますと、国、都道府県のような公的機関だけではなくて、民間事業者も含めまして積極的な技術開発品種の改良が進められておりますので、こういう技術開発等の成果を、今の厳しい環境にある我が国農業の発展に活用したい、こういうような観点から今回の改正考えたわけでございます。  そういう意味では、全体として見ますと、これからの種苗行政を考えますと、従来、昭和二十七年に制定されました主要農作物種子法前提といたします体系、その基本的な体系をやはりそのまま存置しまして、国や都道府県あるいは農業団体役割というものをしっかりと確保しながら、その中で民間参入の道を開く。また、それとあわせまして種苗流通の面におきましても、表示の適正化を中心にしまして優良な種苗流通を確保していく必要がある、こういうような背景から今回の改正考えた次第でございます。
  102. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 主要農作物種子に対するこれまでの国、県の役割と、この法改正後、民間が入ってきた場合の国、県の関与はどのようになると考えているのか、お伺いいたします。
  103. 関谷俊作

    関谷政府委員 主要農作物、稲それから三麦、大豆でございますが、基幹的な食糧である、また基幹的な作物でございますので、その種子につきましては、従来からの主要農作物種子法に基づく国や県の役割がしっかりと定められておるわけでございます。  これを内容的に見ますと、県につきましては、国、都道府県等の試験場で育成されました品種について試験を行いまして、地域に適する優良な品種と認めたものを奨励品種として決定する、いわゆる奨励品種決定調査というのを行っております。また、みずから原原種及び原種生産を行う。それから、一般種子生産については、適地の圃場指定しまして、その圃場審査生産審査によって適正な生産管理を確保する、こういうことでございまして、国はこういう全体の仕組みにつきまして、例えば指定種子生産圃場指定の場合の面積を定めるとか、それから一部、県の事務処理に必要な経費を補助するというようなことで、全体の仕組みの適正な運営を確保しておるわけでございます。  こういうようなことでございますので、今回改正をした場合にも、私どもは、今申し上げましたような基本的な国、県の役割はそのまま存置しようということで、先ほど申し上げました奨励品種決定調査、また原種原原種生産は県が原則として行う、それから生産圃場指定なり圃場審査生産審査を行うという法律上の三つの点は従来どおり存置をするということで、やはり全体としましては、国と都道府県の主導的な役割を堅持しながら、民間参入も含めて、農業者に対しまして優良な種苗供給を確保する、こういうことで対処してまいりたいと考えておる次第でございます。
  104. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 主要農作物種子分野におきましては、今まで国と都道府県が主導的にこれに関与していたわけでございますので、民間関係は余りこの分野での取り組み状況が活発ではなかったのではないか、こう思うわけでございます。しかし、今後ほどのように見通しを立てているか。また、現状民間の取り組み状況とあわせて御質問をいたします。
  105. 関谷俊作

    関谷政府委員 主要農作物の場合は、これは先生よく御承知のように、地域的に非常に広い範囲内でつくられております関係から、そのそれぞれの地域に向いた品種をつくる必要がございますし、また、農家は自家採種を行う方がむしろ大部分でございますので、その種子生産を販売としてやりますとなかなか採算がとりにくい、いろいろな面から、民間事業者がこの分野に本格的に参入し取り組むということは、現状はもちろん、今後も含めてそう簡単ではないというふうに今考えております。  特に育種という面からさらに考えてまいりますと、国や都道府県が、試験研究機関の非常に大事な仕事として品種改良という、育種ということをやっておりますので、そういう面からも、民間の力というものは従来もそう十分に出ておるわけではございませんし、これからもそう簡単に民間でつくった品種が種になって生産流通されるということが急にふえてまいるという状況ではないと思います。  ただ、現在、最近の状況を見ますと、バイオテクノロジーその他技術開発がかなり進んでまいりました関係から、従来種苗業界とされておりました関係業者の方はもちろんでございますけれども化学とか食品とか、そういうほかの産業の面の企業でも大変関心を持っておるわけでございますので、そういう意味では、これから相当の基本的な研究蓄積の後の問題であるかと思いますけれども、将来的な時期においてはある程度の成果が出てまいることも予想されるといえば予想されるわけでございます。  現状に即して見ますと、そういうことで、これまでの主要農作物の全体の中では種子生産というのは民間ではまずほとんどないし、早急に見込みがたいわけでございます。その唯一の例外はビール麦でございまして、これはこういう加工用途のものでございますので、会社がビール麦の育種、これはかなり専門的な研究施設を持ちまして育種をやっております。この育成されましたものが優良な品種として既に普及もされておりますので、こちらの面では法改正を契機としまして種子生産に取り組んでくる、こういうことは十分予想されるところでございます。
  106. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 アメリカあたりでは大企業種子流通面にも進出しているわけでございます。しかし日本の場合、今の段階では流通に及ぼす効果がどの程度になるのか未知ではございますが、法改正がされました以上は国はある程度の見通しを立てているのじゃないかと思うわけでございますので、今後この民間参入がいつごろにどのように効果を及ぼしてくるのか、この辺の見通しがありますならばお伺いいたしたいと思うわけでございます。
  107. 関谷俊作

    関谷政府委員 主要農作物の場合には非常に品種地域的な適性の問題等がございますので、そういう面も含めて、民間主要農作物種子で自分の開発した品種について自分の方でつくった種を出してくる時期というのは、実は非常に難しいわけでございまして、その前提としてはかなりの基本的な蓄積と申しますか、あるいは関係の施設、人員も含めた開発投資をやりませんと成果が上がってまいらないわけでございます。先ほど申し上げましたようなビール麦のような場合はその例外でございますが、それ以外の全体として考えますと、種子流通面ではまだ相当先であろう。  ただ、現状で見ますと、主要農作物種子民間参入ということが制度上予定されていないので、およそ何か取り組もうと思っても取り組みようがない、そういう関係もありますので、ここで制度上の参入の道を開くことによって、それを契機にして民間の方でも主要農作物種子生産に向かって研究なり技術開発を進めてもらって、そこに一つ民間活力が発揮される、それがいつというふうに具体的には特定できないにしても、いい種の生産流通の面で一つ効果をあらわしてくる、こういうことを期待をしているのが現状ではなかろうかと思います。
  108. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 民間参入した場合、民間農業団体との間にシェアの競争が起こってくることが予想されるわけですが、種子生産圃場の割り当てをどのように調整するつもりなのか。民間参入効果をあらわす基礎にもなる問題でございますので、このことをお伺いしたいと思います。
  109. 関谷俊作

    関谷政府委員 種の生産は、非常に過不足を生じますと、種を生産する側にとっても種を使いまして農業をやる需要者の側にとっても、双方に大変に打撃を与えますし、そういう生産上の混乱というものの影響というのは非常に大きいわけでございますので、計画的な生産ということが何よりも基本でございます。  お尋ねのような民間農業団体との関係というかシェアという問題につきましても、これは従来もやっているわけでございますが、まず、従来どおり県の段階種子購入の予約その他の需要量の把握ということを十分にやっていく必要がございます。その場合に、単なる総体の量ということじゃなくて、今度民間から品種が出てまいりますれば、民間品種に対してどのくらいの需要があるか、こういうことで品種別の需要量を十分に把握して、それに応じて生産をしていくということであります。  したがいまして、民間が本当に自分の種を持って出てまいりました場合に、その民間農業団体との間の関係ということが問題になるわけでございますが、今申し上げましたような需要の把握と、それを生産に結びつける計画生産と申しますか、その段階で、十分県段階で調整を行って、その調整の結果に即して種子生産圃場の割り当て面積を配分していく、こういうことにいたす必要があるということを考えております。そういたしませんと、実需に基づかない単なるシェア争いというものになってしまいまして大変混乱いたしますので、事前の段階の計画生産に結びつきます需要量の把握と調整をしっかりとやっていく方向で指導いたしたいと思っております。
  110. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 この調整の問題は、あらゆる研究開発を促進させる前提から見ますと、調整そのものは自由競争を阻害してはいかぬ、そういう難しい問題を抱えているわけでございますので、ひとつこの調整には今後とも前向きの、民間が本当に法改正によって効果が出るように指導をお願いしたいと思うわけてす。  このことに関連しまして、種子の価格の問題もございます。この価格の決定は今後どのようにするのか、またその対策をどう考えているのか、この点についてもお伺いいたします。
  111. 関谷俊作

    関谷政府委員 価格の問題でございますが、これは基本的な資材でありますので、価格安定ということが大変大事でございます。種をつくる生産者も一種農家でございますから、種子生産者の生産意欲を損なうような安い価格であってもならないし、反面、種を使う側の耕作者の種子購買意欲、生産意欲を損なってはなりませんので、この両面に配慮しながら適正な価格決定をする必要があるわけでございます。  一般的な考え方としましては、稲でございますと、一般的な意味での普通の米の価格をベースにいたしまして、それに、種子生産の場合にはやはり特別の注意を要しますし、いわゆるかかり増しというような経費がございますので、これを従来の動向も見ながら見込んで買い入れ価格を定め、それに適正な流通経費を考慮して配布価格を決めるというような実態でございます。  こういう基本的な考え方でまいるわけでございますが、今回民間事業者参入ということになりました場合に、この辺の仕組み方というのが問題になるわけであります。一般的には、民間事業者の場合にはいわゆる投資回収ということが入りますので、従来よりはやや高い価格を希望するような傾向が出てくると思いますけれども、そこは従来の農業団体ベースでの種とのいわば競合、競争関係がありますので、おのずからそれは適正な価格に落ちつくのではないか、かように考えております。  しかし、その調整の仕組みというのが先ほど申し上げました需給調整と同じように大事でございますので、私どもとしましては、現在各県に種子協会というのがございまして、ここで価格安定、需給調整の重要な機能を果たしておりますが、現在の種子協会は、種子生産を担当をしております農業者団体中心に構成されておるわけですので、今回、改正により民間事業者参入の道が開かれたことに対応しまして、民間事業者参加を促しまして、そこで適正な価格形成、もちろん先ほど申し上げました需給調整も含めて情報交換を行い、そこで実質的な調整が行われて適正な価格が形成されていく、こういうような方向に持っていくのがいいのではないかと考えておりまして、法律改正後、こういう方向でひとつ関係機関を指導してまいりたいと考えております。
  112. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 さらにお伺いしますが、民間生産する種苗について、その優良性はどのような基準で判断するのか、まずお伺いしたいと思います。
  113. 関谷俊作

    関谷政府委員 種苗の優良性という場合に二つの問題がそこにあるわけでございまして、一つ品種としての優良性、それからその品種の中で具体的な個々の種苗が優良であるかどうか、こういう問題があるわけでございます。  前者の問題について、品種につきましては今回の改正の際に大分議論をしたわけでございますが、いわゆる優良性の判定というものについては、現行制度でございます奨励品種決定調査、県が行いますこの調査を今後も存置をして、これでもって各県の地域的な条件に応じました優良品種を決めていく。それに必要な奨励品種決定試験という一種の試験を実施し、審査会で関係者が慎重な審査を行った上で決めるという品種の判定によって、優良な品種、特にその地域に向いた優良な品種というものを判定をする。その奨励品種となりました品種について普及を図っていく、こういうことで、品種面の優良性については従来どおりの考え方で対応してまいりたいと思っております。  それから二番目の種苗そのものの優良性につきましては、これは法律制度の中で圃場指定をすることによりまして、ちゃんとした立派な管理者を持ち、またその種苗生産に向いた圃場を持つ、こういうことで指定をし、その圃場について圃場審査生産審査を行うことによって優良性を確保する。この二つの面の措置を、主要農作物種子法に基づきまして改正後も従来よりさらに適正に実施をしてまいりたいと考えております。
  114. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 さらに、この育種振興を図るためには、その基盤としての遺伝資源の収集、保存が重要と考えるわけでございます。このことは前回も質問しているわけでございますが、遺伝資源は人類共通の財産として対応すべきだということを私は申しているわけでございますので、この遺伝資源の状況日本における状況がどうなっているのか、また、今後国際的に我が国はどのように貢献していこうとしているのか、この点についてお伺いをいたします。
  115. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 まず、遺伝資源の我が国における現在の状況でございますけれども、農林水産省として現在保存をしております遺伝資源の総点数は約十二万三千点でございます。  その概略を申し上げますと、二万点以上の保存をしておりますのは、稲、それから大小麦・麦類、それから牧草・飼料作物、これらはそれぞれ現在二万点以上の保存点数がございます。そのほか、例えば豆類等は約一万点、野菜等も約一万点でございます。  さらに、遺伝資源の確保につきまして現在の状況一つの事例として具体的に申し上げますと、例えば五十九年度の遺伝資源の収集の実績でございますけれども、この年度で七千七百点の収集実績がございまして、このうち国外から収集した遺伝資源が四千八百点ございます。もちろん種子繁殖性のものと栄養系のものと合計でございます。  さらに、遺伝資源の保存の現状でございますけれども、遺伝資源の保存はなかなか大変な仕事でございまして、先ほど申し上げましたような非常に莫大な点数について、種子繁殖性の植物の種子の保存は主として筑波にあります農業生物資源研究所の種子貯蔵施設を中心に保存をしてございますが、例えば芋類だとかコンニャクのたぐいといった栄養系の作物あるいはその野生種、木本性の果樹でありますとかお茶あるいは桑、こういったたぐいのものは貯蔵施設で貯蔵するわけにまいりませんので、これは全国にあります国の試験研究機関、それから原原種農場、種畜牧場といったところの組織あるいはそういった立地条件を十分に活用しまして、全国のネットワークの中でその保存を図っておる次第でございます。  さらに、遺伝資源につきましては、有効に活用するための方策として、極力その特性情報、持っている遺伝資源の特性情報の評価が非常に重要でありますが、大変な手間がかかる仕事でございまして、先ほどのネットワークの中で情報の調査、評価とそのデータベース化を鋭意進めておる次第でございます。  なお、後段のお尋ねの作でございますけれども国際的な研究協力といいますか遺伝資源に関する協力の実態について申し上げますと、まず第一点としては、国際的な探索、収集の活動がございまして、これに我が国としては専門家を積極的に派遣をして協力を進めております。その国際的な機関と申しますのは国際植物遺伝資源理事会と申しまして、略称IBPGRと呼んでおりますけれども、この国際機関で計画的に遺伝賢源の探索、収集の活動を毎年進めておりまして、この中に我が国の専門家を派遣して協力を進めております。その具体的な成果としては、六十年度にネパールを中心に約三千点の稲、麦、雑穀、果樹、野菜、こういったものの遺伝資源の収集について成果をおさめております。  第二点としましては、国際的な遺伝資源の保存体制があるわけでございますが、これについて我が国も積極的に協力をしておりまして、これは具体的には稲、大小麦、大豆、カンショその他幾つかの作物につきまして、先ほども申しましたIBPGRに協力をしまして我が国は一定の保存の分担をやっておりまして、そういう意味では、筑波の種子貯蔵施設が国際的なある一つの保存機関の役割を果たしておるわけでございます。  第三点としましては、国際的な遺伝資源に関する共同研究の実施でございますが、これにつきましては、現在中国の雲南省におきまして、遺伝資源の利用という観点から水稲の育種に関する日中共同研究を進めてまいっております。  第四点としましては、遺伝資源の宝庫と言われる熱帯、亜熱帯の諸国の遺伝資源の保存施設あるいは保存技術、こういったものに対して我が国は資金面あるいは技術面での協力を、これはJICAの関係でありますけれどもやっております。  第五点としましては、そういった途上国の遺伝資源に関係する研究者を我が国に毎年迎えまして、我が国でその遺伝資源関係の研修を実施してまいっております。これは数年間続けておりまして、毎年十カ国以上の国からそういった若い研究者が日本に参っております。  こういうようないろいろと総合的な国際的協力の中で、今まで我が国は遺伝資源の研究あるいは収集、保存、こういった面に関して貢献しておりますけれども、今後一層この点に力を入れたいと考えております。
  116. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 育種を実施している民間企業への遺伝資源の開放の状況がどうなっているのか、また、今後の見通しについてどのように考えているのか、お伺いします。
  117. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 農林水産省で保存をしております遺伝資源の民間等に対する提供でございますけれども、昨今非常に民間等の要請が強うございまして、これを受けまして、今年の一月二十五日からジーンバンクで保存しております遺伝資源の配布を始めたところでございます。  現在までのところ、まだ日も浅い関係もありまして、民間企業要請にこたえてまいった遺伝資源の点数は、水稲、野菜、バレイショ等六件物、品種で七十五品種という状況でございますけれども、今後はこの利用が一層増加するというふうに見通しております。
  118. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 遺伝資源の収集、保存の強化策としての農林水産ジーンバンク事業の今後の計画及び見通しはどうなっているのか。さらに、このジーンバンク事業の一層の強化策として法制度の制定は考えていないのかどうか、お伺いいたします。
  119. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 遺伝資源の収集、保存等に関しまする強化策でございますけれども、六十年度に農林水産省としての農林水産ジーンバンク事業というものを始めております。この中で、遺伝資源の収集の構想につきましては、六十七年度末までに、植物の遺伝資源に関して例を挙げますと二十三万点の確保を目標として、具体的に国際協力等をベースにしながらその収集の年次計画を立てているところでございます。  なお、保存等につきましては、先ほど申し上げましたように、農林水産省関係全国に存在をしておりますいろいろな機関、こういったところをベースにしまして保存の事業を充実してまいりたいというふうに考えております。  なお、そのジーンバンクの事業を強化する中で法制度の制定というお話がございますけれども、実際この事業は、国内的に見ても、都道府県あるいは大学あるいは民間、こういった間でもいろいろと遺伝資源に関心を持ち、部分的にそういったいろいろな遺伝資源を所有しているような状況もございますので、それらの遺伝資源や情報については今後相互に十分交流を図り、協力をして、国全体としてそういった事業が効率的にその役を果たすような方向をとるべく努力をしておるわけでございますが、現在のこういった体制事業を円滑に実施してまいり得ると考えておりまして、現在のところはその法律等の制定までは考えていない次第でございます。
  120. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 次に、ハイブリッドの分野について質問したいのですが、かつて日本の新城教授が中国にハイブリッドライスの種子を提供したという記事を読んだことがありますが、どのような経過でこれが提供されたのか、一応知っているところをお知らせいただきたいと思うわけでございます。
  121. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 新城教授からハイブリッド稲の種子が中国に渡った経緯についてでございますけれども、新城教授は、昭和四十一年にシンシュガ・ボロというインディカから細胞質雄性不稔の系統を開発しておるわけでございます。それで、昭和四十三年に新城教授御自身が学会におき。まして、そのハイブリッド稲の基礎理論となります細胞質雄性不稔の遺伝的機構という理論を発表しておるわけでございます。  ちょうどその直後でございますけれども、中国では、昭和四十五年から四十七年にかけまして中国独自で海南島における野生稲の中から細胞質雄性不稔を発見をしていると聞いておりまして、そういう意味で中国としても大変ハイブリッド稲に対する関心が高まっておったという状況にありました。そういう状況の中で、昭和四十七年に中国は、ハイブリッド稲の開発というものを中国の国家としての重要課題に据えるという方針を決めたと聞いておりまして、そのころといいますか、昭和四十七年に中国から農業視察団が我が国に参りまして、東京で新城教授を招きまして、そこで教授からハイブリッド稲に関しまする研究の講義を受けたと聞いております。そのときに新城教授が開発した雄性不稔系統の種子を中国側が譲り受けた、そういうふうに聞いております。
  122. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 さらに、提供した種子が中国のハイブリッドライスの開発にどのような効果を与えたか、またアメリカにどのような関連があったのか、この点について知っているところをお聞きしたいと思います。
  123. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 確かにハイブリッドライスは昨今非常に関係国で話題にはされておりますけれども、実際に稲作の中でこれが実用に供されておりますのは中国だけのようでございまして、中国は現在約八百二十万ヘクタールこのハイブリッドライスが普及している、そういうふうに言っております。  その中国で現在これほどたくさん普及しておりますハイブリッドライスでございますが、その大半が中国南部を中心にしたインド型の品種の地帯でございます。それで、そのインド型品種のハイブリッドライスにつきましては、そのもととなります雄性不稔の系統は、先ほどちょっと申しましたけれども、中国が独自に開発をした、海南島で野生稲から発見をした細胞質雄性不稔をもとにして開発をしたものということになっておりまして、新城教授の提供した材料で開発をされた日本品種のハイブリッド、これは中国では大体北の方で栽培をされることになるわけですけれども、これについては普及面積はさほど多くないというふうに聞いております。  そういうようなことから、新城教授の提供した雄性不稔の素材が、中国の現在非常にたくさんつくられているハイブリッド稲に直接的な役割を果たしたとは考えられないわけでございますけれども、ハイブリッド稲の育種理論がございまして、この理論的な基礎についての紹介を中国になされたわけでございまして、そういう観点からは、中国で現在非常に普及しているハイブリッド稲の実用化には貢献したのではないかというふうに考えております。  さらに、アメリカではこの関連でどうなっているかという話でございますが、現在私どもが得ている情報では、アメリカ民間の特定の企業が中国のハイブリッド稲を入手しまして、それに若干さらに改良を加えたりなんかしているということを聞いておりますが、中国から渡ったのが一九七九年ということでありまして、その後アメリカでのハイブリッド稲の評価、これをアメリカの州立の大学とか農業試験場、こういったところの育種の専門家から伺ったところでは、全体としてアメリカで現在話題にされているハイブリッド稲は大変品質が悪い。これはどういうことかといいますと、精米をするときに砕米が非常に多発して、どうにも商品にならないというくらいの評価をしているようであります。さらに採種の問題もそれに加わるわけで、アメリカの稲の育種研究陣は、これは主体が州立農試や大学でありますけれども、現在でも従来の交雑育種法による短評、多収というような育種の方法をとっている、そういう情報を聞いております。
  124. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 我が国のハイブリッドライスの研究現状は、どのような課題を抱えていると見ているのか。また、国はハイブリッドライスの開発を行うためにどのようなプロジェクトを実施しているか、また、していこうとしているのか、お聞きいたします。
  125. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 ハイブリッドライスの研究で抱えている現状の課題でございますけれども、やはり何といっても一番大きな課題は、採種効率をいかにして高めるかということが第一でございます。このための研究はいろいろやっておりますけれども、直接的にこの問題を解決する方法としては、稲の花の構造を突然変異等の手法で変えていく、そういう手法が考えられておりまして、現に最近の成果としては、例えば稲は花が開いた後、間もなくすぐに外穎が閉じてしまうのですけれども、これがいつまでも閉じないで相当長時間開きっ放しでいるというような、そういう変わった材料を開発をしたり、それから、稲は雌しべが非常に短くて花の外に余り出ませんけれども、野生の稲などですと非常に雌しべが大きくて、外に非常に大きく露呈をして、花が閉じても雌しべが外に出っ放しになっているような、そういう他殖型の形態をなしておりまして、そういうような形態のものを放射線突然変異等から現在見つけ出している、そういう状況もございます。  また、全然別な採種効率についての攻め方としては、そういう雄性不稔遺伝子によらないで、除雄剤、いわゆる化学的な剤、ケミカルな方法で花粉を不稔にする、そういうような攻め方もございます。いろいろな研究が進んでおります。  第二の問題で、これも大変難しいのですが、我が国のハイブリッドライスという限定、我が国として限定して考えてみますと、やはりハイブリッドライスの基本というのは、異なる品種同士をかけて、それで第一代の雑種強勢を利用するわけでございますが、この雑種強勢というのは、非常に品種同士の縁が遠い場合に非常に大きく出る。だから遠縁の雑種、遠縁の交雑ほど非常に効果が高いのですが、大変困ったことに、縁が遠くなりますと、雑種不稔といいましていわゆる不親和性がありますので、その間で不稔がたくさん出てしまう。ですから縁の遠いものの間でかけたときに出てくる不稔が出ないような、そういう研究も進めてやらなければならない。  そういう二つの矛盾した問題を何とか両立させるための研究として、現在非常におもしろい成果が出ておりまして、私どもは橋渡し品種と呼んでおりますけれども、インド型品種日本品種、これを直接交配をするのは難しいのですが、その間に入って両方とも交雑親和性を持つような、そういうものをつくり得る中間的な材料がつくられております。そんなようなことが中心で、そのほかには、北海道から九州、沖縄まで、それぞれの地域で非常に収量性の高い優良な組み合わせをとにかく発見をしなければならないというような問題とか、それから、それらに雄性不稔あるいは回復遺伝子、こういうものをどんどん入れていく、そういった研究が現在急がれているところでございます。  それから、そういうような問題を抱え、国としては、昭和五十七年から国の超多収作物の開発という大きなプロジェクト研究の中で、ハイブリッドライスの研究もそのプロジェクトの超多収の有力な手法開発、そういう位置づけでプロジェクト研究を進めておる次第でございます。
  126. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 国は逆七五三計画などをもって超多収稲の育成を進めていると聞きますが、現在どのような成果を上げているか、また将来の見通しはどうなのか、お伺いします。
  127. 櫛渕欽也

    櫛渕政府委員 逆七五三計画ということで進めております超多収稲の育成のプロジェクト研究状況でございますけれども、これは第一期、第二期、第三期と、逆七五三で、第一期は三年、二期は五年、三期が最後に七年、そういうことで、第一期には収量を現状の一割高める、第二期の終わりに三割、第三期が終わるときというのは始めてから十五年たつのですが、そこで五割収量の水準を上げる、そういう計画で進めておるわけでございます。  第一期は既に終わったわけですが、そこの成果として、昭和五十九年度に我が国の温暖地域で非常に収量のレベルの高いアケノホシという新品種育成をいたしております。さらに今度、寒冷地帯としては、東北、北陸地域に非常に適応性の高い超多収系統として北陸百二十五号というのがございますが、これが今年新品種候補として、命名登録品種候補として現在取り上げられている次第でございます。  なお、第二期の三割の増収をもくろんでおる計画の中では、主体が日本型の稲とインド型の稲あるいはまたイタリーのようなまた別な系列の稲、こういう外国の稲と日本の稲の交配、これを前提にして超多収を獲得する、そういう攻め方でやっている育種でございますが、この中から各地におきまして有望な系統が現在育成されつつございます。さらに、ハイブリッドライスにつきましてはこの超多収の一環の中でやっておりますが、既に五十九年度に、中間的な成果ということでありますけれども、北陸交一号というのを北陸農業試験場で育成をしておりまして、これに続きまして現在さらに有望なF1の系統が育成されつつございます。  そういうようなことで、今後とも当初の計画に基づきながら一層超多収の成果を上げてまいりたいと考えております。
  128. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 私は、前に輸出農作物振興を図るべきだという観点から質問もいたしまして、野菜種子の輸出が日本でももう四十億を超えでなされている点を指摘したりしておりました。しかし、この主要農作物種子の輸出ということについては、実績はどのようになっているのか、また今回の法改正はこのような輸出関連産業育成という背景も持っているのかどうか、お伺いいたします。
  129. 関谷俊作

    関谷政府委員 種の輸出でございますが、これは今先生お尋ねの中にございましたように、野菜、花につきましては大変活発な輸出が行われておりまして、種のトータルでは、六十年では価格で八十七億円余り、うち野菜と花で五十九億円、六十億円近いくらい、こういうような内訳になっております。  こういうふうに野菜、花関係は大変多いわけでございますが、主要農作物、稲、麦等についてはどうか、こういうことでございます。これは、実績として見ますと非常にわずかでございまして、私ども承知しておりますのでは、水稲の種もみについては、韓国、中国などの近隣各国を中心としまして試験栽培用等に要請を受けて種もみを輸出した例がございます。これは毎年一、二件程度、しかもごく少量ある、相手方は大体試験用のものである、こういうような状況でございます。それから麦についても、試験用の栽培として、これは稲よりも件数ははるかに少のうございますが、ビール大麦について、これもビルマとか中国というような国でございますが、やはり栽培適応性試験用種子ということで、極めてわずかの量が輸出されたという実績がございます。
  130. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 最後に、大臣にお伺いいたします。  今後、輸出競争力を持った種苗産業育成することが極めて重要と考えておりますが、農林水産省の今後の種苗産業振興に対する基本的対応をお聞きいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  131. 羽田孜

    羽田国務大臣 お答え申し上げます。  我が国の種苗産業、ただいま関谷局長の方からもお話し申し上げましたように、このところアジアあるいはヨーロッパなどに花ですとかあるいは野菜類、こういったものの種子が輸出される傾向にございます。そういうことも含めまして、私ども農林水産省としましては、我が国の種苗産業品種開発など種苗に関する技術開発を促進することは、輸出もそうでありますし、また我が国の農業を発展させることにもなるということで、さらに検討を進めるようにしなければいけないと思っております。  このために、国等の公的機関及び我が国種苗産業技術開発を一層推進するとともに、育種の基礎となる遺伝資源の民間部門への配布ですとか、あるいは先日ここの委員会の方で御審議をいただきました生物系特定産業技術研究推進機構、こういうものによるところの民間技術開発への支援などをいたしまして、民間も含めて我が国全体の育種体制を充実強化する、このことが非常に大切なことじゃなかろうかというふうに思っております。  いずれにしましても、これから種苗の貿易といいますか交易というのはさらに盛んになってくるだろう、また競争も非常に激化してくるであろうと考えまして、我が国としてもそういうもののきちんとした基盤をつくり上げる必要があろうと考えております。
  132. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 以上で終わります。
  133. 大石千八

  134. 中林佳子

    中林委員 法案の審議に入る前に、現在球根の植物検疫の簡素化の動きがございますので、まずこの点についてお伺いしたいと思います。  チューリップなどの球根の植物検疫の簡素化をめぐって、オランダは、これまでも球根類の隔離検査が輸出障壁となっているということで、日本に対する簡素化を求めておりました。サミット前に日本とオランダとの貿易摩擦が問題になって、四月二十二、二十三、二十四の三日間、日蘭植物検疫専門家協議会が開かれましたが、この協議の内容と、今後どうなるのかについて説明いただきたいと思います。
  135. 畑中孝晴

    ○畑中説明員 お尋ねのように、以前から日本でやっておりますチューリップの隔離検疫を廃止しまして、直接オランダの球根が日本で売れないかということをオランダ側は主張していたわけでございますが、さる四月二十二日から二十四日まで、向こうから三名の専門家が参りまして、私どもも植物防疫課長以下専門家で会議をやったわけでございます。  主たる内容は、向こう側がかねてから提案しておりました隔離検疫にかわり得る方法、オランダの国内で隔離にかわる、きれいな球根を日本に輸出してくるような方法について具体的に技術的検討をやったわけでございます。例えば、ウイルスにつきましても、一口にウィルスと申しましても種類が非常に多うございますので、どのウィルスはどういう検定方法をとるのだとか、どのウイルスはどうやって除外をしていくのかという細かい問題がいろいろございますので、そういう問題をこの三日間で詰めたわけでございます。  結論といたしましては、なかなか簡単に方法が出てくるわけではございませんので、今月の末から私どものウイルスの専門家を向こうに派遣いたしまして、向こうの専門家とともにさらに細部を詰めていくという段取りになっております。
  136. 中林佳子

    中林委員 球根の輸入は植物防疫法で隔離栽培が義務づけられているわけですけれども、そういう現状のもとでも、サビダニなど輸入球根と一緒に侵入する病害虫も多いわけです。  今回の検疫簡素化の動きに対して、生産者とか研究機関とか業界などで、病害虫の多い昨今、隔離栽培を外されるのは不安だ、隔離栽培は病害虫の国内持ち込みを防ぐ大きなとりでである、こういうことで、今の隔離栽培存続を求める声が上がっております。もし植物検疫簡素化が許されるならば新たな方法がある、オランダ側はこのように提示はしているものの、病害虫の国内持ち込みのおそれもありますし、それだけじゃなくて、チューリップの場合はオランダの方が品種開発力だとか生産価格、規模の上でも日本を圧倒している、このように言われております。  現在オランダから日本原原種あるいは原種を輸入して増殖を進めている、こういう実態ですから、一年間の隔離栽培の期間があればこそオランダと並ぶことができる、こういう仕組みにもなっていると思います。この隔離栽培の期間がなくなれば、オランダからの球根輸入の増大で、今でも過剰段階にありますチューリップ球根の国内市場が混乱して、価格の低迷を招き、国内生産者は大打撃を受ける、こういう声が上がっております。  農水省としては、もしオランダの言われる方法をとれば日本のチューリップの生産農家一体どういう影響が出るとお考えになっているのか、あるいは日本の国内生産を守っていくために対策は何かお考えになっているのか、この二点についてお伺いします。
  137. 畑中孝晴

    ○畑中説明員 今の前段のお尋ねの、いろいろな病害虫がございますけれども、サビダニとか、球根の表面に付着するなり球根を見ればわかるようなものにつきましては、従来も隔離検疫の対象ではございませんで、港でこちらの植物検疫官が見て、みつかったものについては薫蒸なりなんなりの処置をとることになっております。ウイルスについては、球根の内部におるものでございまして目に見えませんので、今のような隔離検疫措置をとっているというところを御理解いただきたいと思います。  今のお尋ねでございますけれども、オランダと日本の場合ですと、嗜好品でございますので、花の色の好みだとか、そういう好みが違います。そういったことはございますけれども、オランダが世界で有数の球根の生産国といいますか、開発力も非常に持っておりますので、そういう意味からいいますと比較的球も大きな立派なものが出てくるということもございます。そういうことから見ますと、日本での球根の販売というのは、そういうものが解禁されますとなかなか厳しい状況になるということは確かでございます。  ただ、好みの問題もございますし、日本で何とか球根栽培を続けて将来発展させていくという観点に立って、従来からも例えば掘り取りの機械化ですとか球根を貯蔵する貯蔵庫の補助というようなこともやってまいりましたけれども、そういった国内的な対策あるいは日本の球根の特性を生かした市場開発というようなことを通じて、そういう事態になりましても日本の球根生産が続けられるように私どもとしては考えたいと思いますが、当面は、ともかく病気のあるものを持ち込まれては困りますので、そこは向こう側と技術的に十分詰めて、ウイルスの心配がないというようなことになるまでは、現在の隔離検疫を続けながら技術的な観点から詰めていきたいと思っておるわけでございます。
  138. 中林佳子

    中林委員 影響については厳しいものがある、一応見通しはこういうふうにお立てになっていると思うのですが、生産者はかなり厳しい面を危惧しております。  私の地元の島根県はチューリップ産地の南限に当たるわけです。富山、新潟県に次ぐ産地で、主に出雲市、斐川町で転作作物、水稲の裏作として栽培されて六百万球生産しております。私は斐川町の生産組合の方からお話を伺ったわけですが、新しい品種を導入し、生産を始めるために、反当たり百万円の資本がかかる。その新品種の寿命も五年から十年であり、検疫が簡素化され、オランダから大量に輸入されたらとてもやっていけないと言っているわけです。  大臣も御承知だと思いますけれども、花は生活水準のバロメーターと言われております。チューリップの花が一面に咲く模様というのは本当に美しいものだと思いますし、自国で栽培できるものを守っていくというのは当たり前ですし、今、農家の人たちは転作作物としても国内で安定的に売れていけばということで大変期待もしておるし、県内でも新たな転作作物として取り組んでいる町も出てきているやさきでもあるわけです。  ただ、大変危惧されておりますのは、昨年四月にオランダの首相が来日したときに、中曽根首相との会談で植物検疫が話題に上って、切り花輸入のための現地検疫が急ピッチで決まったという経緯もあるわけなのです。ですから、今回、オランダに行ってみてというお話ではございますけれども、ぜひ大臣に、こういう国内の生産者の立場でオランダとの協議に当たっていただきたいと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  139. 羽田孜

    羽田国務大臣 植物防疫、検疫の問題は純技術的な問題でして、これによって輸入の障壁という言い方はどうかと思いますけれども、国内の生産を守るということには実はこれは使えないものでございまして、ただ向こうの首相から要請があったから、強い圧力があったから、強い要望があるからということで、もし菌が入るということになったら大変なことでございます。そういう意味で、今度、五月の末でございますか派遣いたします者にいたしましても、ともかく技術的に本当に大丈夫なのかということの検査に行くのだということを御理解いただきたいと思います。
  140. 中林佳子

    中林委員 技術的な問題であるということは私も説明を受けてよくわかっているつもりですけれども生産者の方の立場も、転作として取り組んでいるというようなこともあるということを、農林水産大臣でございますので、ぜひその点もお考えいただきたいというふうに一言申し添えておきます。  それでは次に、主要農作物種子法についてお伺いしたいと思います。  これまで主要農作物種子については農業者への優良種子の安定供給を基本として、種子法に基づいて国や県が中心になって品種育成種子生産、普及を担ってまいりました。  そこで大臣にお伺いしますけれども種子政策の基本的な考え方種子法のこれまで果たしてきた役割についてはどのような御見解をお持ちでしょうか。
  141. 羽田孜

    羽田国務大臣 この種子法につきましては、昭和二十七年、ちょうど食糧増産が国政の一つの重要な課題でありましたころに、優良な種子を安定的に確保するために制定をされております。この法律の制定によりまして、都道府県が主体となって奨励品種の決定あるいは原原種原種生産種子生産圃場指定及び種子生産に対する審査などが行われ、稲、麦、大豆の優良な種子生産、普及が図られてきたところでございます。  この結果、奨励品種の普及が割合と高いレベルで行われるとともに、品種の更新が積極的に行われて、我が国の主要農産物の生産性及び品質の向上が飛躍的に促進されてきたというふうに認識をいたしております。
  142. 中林佳子

    中林委員 私も大臣と同じように、これまで果たしてきた役割というのは非常に大きいと思いますし、今後も農業生産における種子の重要性は不変であるというふうに思います。生産性を向上させる上で優秀な種子農家に提供していくこと、これはますます重要になってきております。  この間、主要農作物種子法に基づいて種子政策が進められ、主要農作物の収量性が飛躍的にふえたというお話もありましたが、一九五〇年、昭和二十五年から現在まで、稲、麦、大豆がどの程度向上したか、お答えいただきたいと思います。
  143. 関谷俊作

    関谷政府委員 種子法に基づく種子生産によって単収がどのくらい上がったかという観点から考えました場合に、ただ、単収というものにはいろいろ栽培技術の改善あるいは土地条件の整備、こういう要素もございますので、全部を品種あるいは種子生産の面だけに帰属させるわけにはいかないわけでございますが、我々としましては、やはり主要農作物種子法によります優良な種子生産ということが単収向上に非常に影響があった、それをもたらす主要な要因の一つになっていると考えております。  お尋ねの米について見ますと、二十五年当時は十アール当たり単収が三百三十キログラム程度でございましたが、現在四百八十キログラム程度、約一・五倍の水準となっております。また小麦については、同じく二十五年ごろ十アール当たり百八十キログラム程度であったものが現在三百二十キログラム程度、これも約一・八倍。さらに大豆につきましては、二十五年ごろが百十キロ程度が、現在百七十キロ程度で一・五倍、こういうような水準になりまして、全体としては非常に単収向上が見られた、こういうことでございます。
  144. 中林佳子

    中林委員 今数字をお示しいただいて、種子法に基づくものだけじゃなくて、いろいろな農家の努力、あるいは土地改良だとかいろいろなことで収量が上がったということは私もわかりますけれども、この数字はやはり国や県を中心に優良品種、優良な種子の普及が基礎になっていることは間違いないことであると思います。今後も品種の優良性、種子の遺伝的純度、品質、安定需給を確保していく上で国や県の役割は不可欠であると思います。  国民に対して主食を安定的に供給する上で、安くて優良な種子農家供給することは根本的な、ことだと思います。ましてや稲は国民の主食でありますし、この主要農作物種子の持つ公共性というものは非常に大きいものがあると思うのですけれども、この主要農作物種子の持つ公共性についてはどのようにお考えでしょうか。
  145. 関谷俊作

    関谷政府委員 主要農作物の場合に、種子の性格というか、お尋ねの公共性という問題でございますが、農業生産のいわば基本的な資材でございますし、いろいろな作物の生産の安定あるいは生産性の向上、こういう因子が種子の品質向上によって非常に図られるわけでございます。  これはどのくらいが種子に負う部面であるかということは、なかなか数字的には確定しがたいわけでございますが、例えば収量なり、あるいは品質なり、さらに病害虫抵抗性とか、こういういろいろな面も含めまして、種子の改良というか品種の改良、両方含めまして非常にそれによって農業生産の向上ということが図られるわけでございまして、これがつくります農家の個別の経営上の安定、向上だけではなくて、国民、消費者の面から見ましても、いいものが、しかもコストが安く買えるということになりますので、全体として見ますと、公共性というもの、そう表現していいかどうかわかりませんけれども、そういう生産者、消費者全体を含めて、生産の改善における種子役割というか機能というものは非常に高い、大変大事なものである、こういうふうに考えております。
  146. 中林佳子

    中林委員 現行の種子法で定められております米と麦と大豆、これは大豆は別といたしましても、米、麦は基本食糧でありますし、そのために食管制度において国の責任生産流通を管理してまいりまして、民間の自由な競争にはこれまではゆだねていない、というのは、まさにそういう先ほどおっしゃった公共性があるからだろうと私は理解しております。  それで、主要農作物種子生産供給は、最終的には生産物を上回る公共性を持っております。したがって、現行法で、優良種子の安定的生産と普及を最大の目標に置いて、奨励品種の決定や原原種原種生産を県が担い、種子生産についても県が指定した圃場で市町村や農協が行うことが定められていると言えると思うのです。  政府が民間企業のハイテクに対する活力を積極的に活用しようとされて、主要農作物種子原原種原種生産まで民間企業参入を認めることは、こうした種子の公共性そのものを後退させるものになりはしないかと私は思いますけれども、そういう懸念はお持ちではございませんか。
  147. 関谷俊作

    関谷政府委員 今回の民間参入の道を開くことの考え方でございますが、私どもは、言葉で言いますと、あくまでも道を開くというような意味合いで考えているわけでございまして、従来の、国や県のような公共機関が育種を主体的に担当し、また種子生産の面では農業者団体が中心になって生産をする、こういうような機能については後退をするという考え方は全くございません。ただ、現状で見ますと、やはり民間の方もこういう部面について自分たちの開発の努力の成果をひとつ発揮したいという意欲もあるようですので、これはとれとして一つの道を開いて、そこに何かが出てくるかという一つ期待をするわけでございます。  その場合に、あくまでも全体の制度の枠組みとしては、今先生のお尋ねの中に出てまいりました奨励品種決定調査とか原原種原種生産、それから指定種子生産圃場のいわば指定なり審査、こういう制度の基本、枠組みはしっかりと維持いたしまして、その中で民間の道を開いたときに、民間としてどのくらいの役割がそこに発揮されるだろうかという可能性を付与した、こういう考え方で今回の改正を立案した次第でございます。
  148. 中林佳子

    中林委員 民間に対する道を開いたとか、それで公共性というものが後退するものとは考えていないとおっしゃいますけれども、しかし、稲や麦の種子開発参入しようとしているのは、住友化学だとか三菱化成、麒麟麦酒などいずれも日本の大企業であるわけですね。主要農作物種子生産流通民間企業参入を認めるということは、中小企業だとかいうものじゃなくて独占的な化学食品メーカーですから、かなり生産だとか流通そのものを支配していって、国の責任あるいは公的機関のこれまで果たしてきた役割が後退することは目に見えていると言わざるを得ないと私は思うのです。  今回の改正案を大企業は大変歓迎しているコメントをいろいろな新聞にも明らかにされておりますが、種子を実際に生産する農家にとって、今回の生産流通民間企業参入させることが果たしてどういうメリットがあるのか、この辺はよくわからないわけですけれども農家にとっていかなるメリットがあるのか、説明いただきたいと思います。
  149. 関谷俊作

    関谷政府委員 これは全体として、育種なり種子生産は作物により違いますので、主要農作物の場合には、全く公的機関育種を実施し、種子生産に対応してきたわけでございます。そういう状態で見ますと、やはりこれからのことを考えますと、主要農作物の場合に民間育種なり種子生産に全く依存をする、つまり主要農作物種子生産を専ら民間に依存することにする考えは我々は全くないわけでございまして、それは、やはりこういう作物の性格上、専ら民間考え方なり運営の仕方でもって種子生産が左右されるということになっては農業政策として困るわけでございます。  そういうことで、あくまでも公的機関役割は従来どおり後退させないという建前を堅持しまして、ただ、民間でもできることがあればやってみたらどうか、こういうことにしたわけでございますので、そういう意味では、これからの民間のいわばこの面での努力というか、開発成果がどういうふうになるか、これは道の開かれた状況における民間企業の努力の問題であると考えております。  具体的には、ほかの作物でございますと、野菜とか花等で見ますと、御承知のように、かなり先端的な技術開発がむしろ民間の力で相当行われておりますので、こういうことがもし主要農作物の面でも本当に発揮されることになりますれば、日本農業全体にとってみてもそれだけ民間の力が農業の改良の上に発揮された、こういう意味で評価し得るようなことになるのじゃないかと思います。現段階で具体的にどういう形で主要農作物の面でメリットが出てくるかという点については、まだこれからの民間企業の非常な研究蓄積なりなんなりの努力にまつところが大きいと考えております。
  150. 中林佳子

    中林委員 メリットについては、あるであろうということの予測でしかなくて、私は、現実にいろいろ民間企業参入によって農家にとってマイナスの部分の方が多いのではないかということが懸念されますので、後に具体的な質問はさせていただきたいと思います。  今回の法改正は、生産者の立場からのものではなくて、その背景は、はっきり言ってやはり資本力のある大企業からの要望によってこういう法案が出てきたのではないかと思われる節がはっきり見えるわけです。  ことしの二月に出されました日本化学工業協会の報告で既に明らかになっておりますように、「私企業自らが原種原原種生産できるようにする必要がある。」あるいは「私企業開発した品種種子生産を行う場合も指定種子生産は場に指定されるよう制度改正する必要がある。」こういう報告を出しているわけですけれども、この報告を念頭に置いてといいますか、それを受けて今回の改正案がつくられたのではないですか。
  151. 関谷俊作

    関谷政府委員 今、日本化学工業協会の意見をお挙げになりましたが、私ども率直に申しますと、この意見の出た時点というのは、実は農林水産省の内部で既に法案の骨格ができておった時期でございますので、言ってみれば、やや後追い的に出てきたという感じを私ども持っておるわけでございます。  こういう問題が、実はしばらく前、もう相当前から、現在の主要農作物種子法では民間種子生産可能性は全くない、制度的に、独占というか公的機関関係の系統のみの種子生産がなされるようになっておるということが、一つ制度の問題という意味では提起されておったわけでございます。政府の機関としましては、臨時行政改革審議会の規制緩和という観点から検討されました委員会の答申が出まして、この答申の中で民間参入の問題が提案された、これが政府の中では正式にこの問題が出てきたきっかけでございますので、化学工業協会の意見は、私ども見ますと、大体法案のできたところで、むしろその法案では不満であるという感じの方が目立っているように思っております。  そういう意味で、きっかけはこの工業協会の提案、意見ではないということは重ねて申し上げておきたいと思います。
  152. 中林佳子

    中林委員 確かにこの日本化学工業協会の中間報告はことしの二月に出ております。しかし、これはむしろこういう法案にすることの非常に応援部隊になったのではないかと思えます。  さかのぼれば、一九八四年九月に経済同友会が同じようなことを提言しているわけです。主要農作物種子法自体を見直し、すべての品種開発への競争原理を導入せよ、こういう提言、さらにこれを受けて先ほどおっしゃった行革審から、民間事業者参入が可能となる体制の整備、こういう援護射撃の答申を得て、今回の改正案に盛り込まれた。つまり、経済同友会がこういう提言をし、行革審が出し、そして日本化学工業協会がそれをさらに応援していくような中間報告を出しているわけですから、まさに経済同友会もあるいは日本化学工業協会も大企業の集まりのものですから、それらが母体になっているということは明らかです。しかも、今回の種子法改正について、今回の法改正で商売ができる、種子ビジネスのチャンスが主要穀類でも開けてきたと、三菱化成と三菱商事が共同出資して設立した植物工学研究所の開発部長が大歓迎をしている記事が、四月三日付の日経産業新聞で明らかになっております。  このように、大企業がこうまでして主要農作物種子生産流通への参入、これに大変期待しているということは、稲と麦と大豆ですけれども、そのうちどこにねらいを持ってそういうように非常に歓迎しているとお考えなのでしょうか。
  153. 関谷俊作

    関谷政府委員 繰り返しになりますが、行革審の方は六十年七月に出ておりますので、行革審そのものが別に企業の意見をいわば反映しているというふうに見るわけにはまいりませんので、我々としても、現行の種子制度の持つ問題点がそこに提起された、具体的に言えば、実際に公的機関中心になってこういうことをやるのはいいけれども法律上全く民間の道がないというのは少し制度としてどうか、こういうような問題意識であったのではないかと思います。  そこで、一方、民間の方は民間の方で、まさに先生の御質問に繰り返しございましたように、経済同友会の意見なり、さらに言えばもっとその前から、主要農作物種子生産分野へ進出したい、こういうようなことがございました。それは、私が技術会議におりましたころから、その辺のいろいろな意見、いろいろな機会に接触しておりますと、稲、麦、大豆とございますけれども、具体的に形をこれというふうには意見は聞いておりませんけれども、やはり想像するに、一番の関心事は稲であろう、やはりそれだけ稲というものが、生産規模も多いわけでございますので、種子生産という目から見れば、民間の目で見て一つの魅力的な分野であるというふうに考えておるだろう、こういうことでございます。  ただ、反面、民間としては稲というのは逆に言うと非常に難しいという感じ、つまり、日本の稲の品種を自分でつくって種を農家に売れるというところまでそう急にいける自信がないという、その辺の難しさも内心では十分認識しておられるのじゃないか、こんな感じを持っております。
  154. 中林佳子

    中林委員 局長おっしゃったように、確かにこの三つの中で最大の——企業参入したいという以上は、それなりにやはり利潤を上げたいというのがその背景にあるわけですから、何をねらうかというと稲であるということは、その後の新聞論調などでも、ここに農業新聞の記事がありますけれども、三井物産の山野先端技術部長代理が、「各社が米を狙いたいと考えるのはしごく当然なことでしょう。米国ではトウモロコシ・ソルガムだけで四千八百億円の市場があり、米企業は米に魅力をあまりみせないが、わが国では米なら一品種五億〜二十億円を稼げる最大商品。少なくとも五百億円市場と推定され、野菜の一品種五千万〜一億円の比ではない。」こういうぐあいに、大変米に魅力を感じているということが述べられております。  国際的にも、種子戦争と言われて種子開発は一層激しさを増しているわけです。小麦の和子はヨーロッパに押さえられ、トウモロコシ、大豆種子アメリカが世界市場を押さえているという中で、唯一手がつかないで残っているのは、世界三大作物の一つで四億トンの市場規模を持つ米であるということははっきりしていると思います。日本市場をまず制覇、その余勢を駆って世界市場へ進出する、こういうのが三菱化成など日本の大企業の戦略であると言われております。また、最終的なターゲットは米の新品種開発にある。国内だけでなく、世界のマーケットをねらうなどと、いろいろな大企業からのコメントが伝えられております。  米にターゲットを絞ろうとするのは各企業に共通しているわけですが、企業利潤追求立場からいっても、そのねらいは毎年農家種子を売ることができるハィブリッドライスにあることは明らかです。ハイブリッドライスの新品種企業がもし手にしたときに、稲の種子生産流通に大きな混乱が起きてくるのではないか、こういうふうに私は思いますけれども、ハイブリッドライスがもし大企業の手に握られるようなことがあればどういう影響があるとお考えになっていますか。
  155. 関谷俊作

    関谷政府委員 これは、企業がハイブリッドライスを育成したとしてという一つの仮定の問題でございまして、そうしたらどうなるかというお尋ねでございますが、私どもとしてはその前提のところが、先ほどの技術会議の問題でもあったようでございますが、日本生産できる、つまり日本農業にとって奨励対象になり得るようなハイブリッド品種が、これは民間に限らずでございますが、開発される見通しというのは、率直に言って今ではなかなかちょっと予見しがたい。国の場合でもそうですから、いわんや民間企業ではなお難しい、こういうふうに思っております。  ただ、それがそうなったらどうなるかということになりますと、これは稲に限らず、御承知のように、親の品種を持っておれば、その種については毎年毎年更新をするということで農家は買わなければいけない、こういうことになりますので企業上のメリットも非常に大きいわけでございますし、もしそれが本当にいい品種であったりいたしますと、それは確かに影響するところは大きいわけでございます。そういうことがあってはならないということで、これは言ってみれば実力と申しますか、だれが日本に向くようなハイブリッド品種開発して、その種を生産して売るか、こういう問題でございますので、国の研究機関としては、企業がそういうことがないようにという意味も含めまして、超多収品種研究開発のいわば重点的な項目として、ハイブリッド品種日本に向くようなものの育成、それからその種子生産技術、これらを含めて今鋭意研究をしている、こういうふうに承知をいたしております。
  156. 中林佳子

    中林委員 まだまだ日本ではハイブリッドライスはということをおっしゃいましたけれども、私は、その見方は甘いのではないかと思います。  ここに、ハイブリッドライスの育成ということで、先ほど来審議の中でたびたび取りざたされております琉球大学の新城教授の話も載っているわけですけれども、五十九年の八月に行われました沖縄問題研究会で、ハイブリッドライスのめどについて新城教授は、実用化にはあと六、七年、そして試験段階が終わって増殖にかかるにはそのあと二、三年は必要ですというふうに述べているわけですから、十年以内にはハイブリッドライスも実用化が可能、こういうふうに予想しているわけですね。  さっきおっしゃいましたように、こういうものを企業が握ったら原原種原種まで生産できるわけですから、主食である米が種子から流通まですべてそういう企業の手にゆだねられるという可能性は、そんなに遠い将来じゃなくて、現在の研究から予想されるものでも近い将来にはあるかもわからない、こういうことを言っているわけですから、私は、もしそういう事態が近い将来行われるならば、非常に大きな問題を含んでいるということを指摘をせざるを得ません。  さらに、参議院の委員会でも明らかになったわけですけれども、海外企業主要農作物種子生産流通参入できるということにもなるわけですね。日本法人カーギル・ノースエイジア社、これをアメリカの巨大穀物メジャーでありますカーギル社が日本につくって、その方向をねらっていることも明らかになっております。この日本法人カーギル・ノースエイジア社の種子部長は、主要農作物種子法改正後もねらいの一つだということで、米のハイブリッドを日本に売り込むことを否定していないわけです。さらに、四月十六日付の読売新聞で、アメリカのリン農務長官が将来安い輸入米が自由に買えるような開放体制を要求した、こういうことも伝えられているわけです。財界のこれまでの動きも、種子もみの自由化を突破口に食管法の改悪をねらってきているという動きも出ております。  国内の米の種子市場は五百億円、さらに、農薬、肥料の国内市場は約一兆円というふうに推定されております。ハイテク技術を駆使すれば、農薬と種子のパッケージ販売も将来可能になる。例えば、世界最大の種子企業であるパイオニア・ハイブリッド・インターナショナル社と有力な化学品メーカーのアメリカン・サイアナミッド社とは、除草剤の開発とその除草剤に対する耐性を持つ遺伝子を組み込んだ種子開発を行っているということが雑誌などに出ているわけですけれども農水省はこういうことがやられていることを御存じですか。
  157. 関谷俊作

    関谷政府委員 お尋ねの問題はいろいろなものの記事にありまして、若干承知しておりますが、米国大手の種子会社であるパイオニア社と化学会社のサイアナミッド社がトウモロコシの除草剤耐性品種の共同開発に着手した、こういうことは承知しております。ただ、具体的に除草剤と耐性品種種子をセットして、組み合わせて販売するということまで始めたというふうにはまだ承知しておりません。恐らく特定の非常に有効な除草剤を開発しまして、それに耐性を持った品種もあわせて開発するということで、組み合わされる可能性はそのまま開発されればないわけではございませんけれども、セット販売に着手した、こういうようなことについては承知いたしておりません。
  158. 中林佳子

    中林委員 そういう方向での開発の仕事というものが既に進んでいることを考えれば、今回の民間参入ということで、稲、麦、大豆種子と、農薬だとか肥料だとか、それをセット販売で売ってくるということになれば、先ほども言いましたけれども、国内の米の五百億円市場、それから農薬や肥料の約一兆円の市場がいわばハイブリッドなどを開発した企業に一手に握られていく、そうなりますと、企業には利潤追求ということがあるわけですから、農民にとっては決していい状況にはならないのではないかということを指摘しておきたいと思います。  さらに、今度の法案で私が大変危惧している問題に価格の問題があるわけです。  「農業経済」の八三年五月号に当時の種苗課長が書かれた論文で、民間企業育種参加させることについてこういうことを言っておられるわけです。「民間セクターの欠点は、利潤動機に基因する。」「安定的供給や適正な価格形成が妨げられるという問題である。」「このような弊害の危険性は常に存在するのであるから、独占禁止法の確実な実施のほか、緊急時における国の介入など必要な施策を国として用意することが重要となろう。」「第二の問題点は、民間育種が力を増すに従って、国の研究機関の役割が減退させられるおそれがあることである。」  こういう弊害について、農水省としては対策を講ずるおつもりはあるわけですか。
  159. 関谷俊作

    関谷政府委員 この問題は、種子生産、種蒔生産の基礎にあります育種の問題であるというふうに私は考えます。  今御引用になりましたそういう物の考え方について、私ども種苗行政を担当する者として、そういう危惧というか懸念を常に頭に持ちながら対応していかなければいけないと思いますけれども、やはり基本にございます例えば稲の育種ということ、これはそのもとになります育種の素材の保存なり、それの交配法その他による新品種育成も含めまして、今後とも国及び都道府県の研究機関が主体的な役割を果たしていくということで考えたいと思っております。  この面でのことが後退いたしますと、先ほど来お尋ねのございましたようなハイブリッドライスに限らず、品種を通じてそういう分野がいわゆる利潤追求的な視点から左右されるということになるわけでございますので、民間の活力が出てくる可能性はもちろん持つ必要があると思いますけれども、稲のようなものの場合には、もとになります品種開発については従来どおりの公的機関役割中心にして行わなければいけないわけでございますし、ほかの作物についても、地域それぞれに向いたいい品種をつくるのは大体国や県の仕事であるというような前提が我が国にはあるというふうに私ども考えておりますし、それにこたえますような育種のしっかりした体制を維持していくということであろうかと思います。  ただ、作物によって、野菜とか花になりますと、どちらかというと国は基礎的な部門を担当して、現実に販売される品種については民間企業がつくって自分の商品名をつけて売る、こういうようなコマーシャルベースの形で行われておる面がほとんどであることは御承知のことだと思います。作物の性格により、比較的基幹的な部門については国、県の育種役割がこれからも大事であるし、後退するようなことがあってはならないと思っております。
  160. 中林佳子

    中林委員 私は、価格の面などでそういうおそれがあることはお認めになっていると思うのですね。  現在、種予価格を設定する場合、種子協会が最低買い入れ価格、最高配布価格を算出し、知事が承認する仕組みになっているわけです。民間企業参入してくると、当然種子開発コストを回収しようとするので種予価格を引き上げることになってしまいます。また、日本化学工業協会の報告で、現在の種予価格設定の仕組みについて、研究開発コストに見合った種予価格が設定できない、現在は安過ぎる、こういう不満を述べているわけです。  ですから、民間企業が入ることによって現行の価格設定の仕組みが揺らいでいくのではないか、自由価格というものが動いていくのではないか、結局コスト高になっていくのではないかという懸念がありますけれども、その点はいかがですか。
  161. 関谷俊作

    関谷政府委員 価格の問題については、現在は農業者団体が国、県の育成した品種の種をつくっておりますので、その中で価格形成が行われ、具体的には種子協会が価格を決めて知事の承認を得ているわけでございます。民間参入民間のつくりました種が本当に生産流通されることになった場合のことを考えますと、その状態ではどうしてもやはりその価格形成というのが二元的になってくることはやむを得ないのではないか。  そこで、民間の方の日本化学工業協会の報告にあらわれますような意見というのは何を言っているかと申しますと、民間の方では品種改良の投資を種代で全部回収しなければいけないので高くなってしまう、一方、従来の国、県の育成した品種農業者団体がつくる場合にはそこのところが安いので困った、こういうような意見であると思います。  民間参入が行われました場合は、そこの問題については、民間の方ではどうしても高くなるのであれば、それだけいいものをつくって実力で競争するというようなことでなければいかぬので、生産者団体のつくっている種をもっと高くしろとか、そういうようなことは非常に意見としては適当でない意見で、むしろ公的機関育成した品種の方は従来どおりの価格形成でいくのじゃないか。民間の方は、そこへ進出してきて、自分の力でもって多少高くても種を売る、こういうふうに流れが二つになるというような形になっていく、こういうふうに考えております。
  162. 中林佳子

    中林委員 結局、種子協会に入っていただくとかなんとか、先ほどからもお聞きしたらおっしゃっているけれども、今回の法の改正の中には、そういう入らなければいけないという規定も全くありませんし、そういう意味では、コスト回収ということをやりますから、民間参入によってこの価格がつり上がっていくのではないかという懸念はやはり払拭し切れません。  現在、主要農作物以外の種でも、私、農家の方々からお話を聞けば、野菜の種にいたしましても、非常に独占的に種子が扱われていて高くなっているという不満を聞いていますけれども、その会社しか種を買う方法がないので、高いものでも仕方なしに買っているという状況もある。それが米、麦、大豆にまで導入されれば、農家の人たちにとっては非常に痛手になると言わざるを得ないと私は思います。  次に、具体的な話で、島根県の例でちょっとお伺いしたいのです。コシヒカリ、チドリ、日本晴など十二品種を島根県の場合栽培をしていますが、六十一年まきの水稲種子の県内需給を表にしたものがここにあるわけですが、農家から需要農協が予約を聞いて農業振興協会、これが種子協会に対応するものです、この農業振興協会に申し込んでいるのですが、第一次、第二次の予約があって、そして当用という直前の申し込みが全体の一一%もあるわけですね。農業振興協会では、過不足などの問題もあって、需給調整を行うのが大変難しいというふうに言っております。  現状でもこういう需給調整が大変なのに、民間企業が広域的に種子を販売する、種子協会にも入らないということになれば、各県段階での種子の安定的供給に混乱を招くことが予想されるわけですけれども、それに対する対応はできているのでしょうか。
  163. 関谷俊作

    関谷政府委員 まず第一の種子協会の問題でございますが、これは現在は農業者団体系統でもって、関係の諾団体が参加しまして需給調整それから価格安定を図っているわけでございまして、この機能は私ども基本的に今後も存置をして、そこに民間事業者参加してもらって、その中でいわゆる需給調整をしてもらう、そういうものをベースにしまして、主要農作物種子法におきます指定種子生産圃場指定とかこういうことを実施していきたいというふうに思っております。  ただ、種子協会の中で、そういう組織になりましたときに、一つの情報交換ということを通じて需給安定を図っていくわけでございますが、今お尋ねのようなある品種、これは民間育成品種でも同じだと思いますが、ある品種に対して非常に需要が強い、けれども生産の方が間に合わないということは、これは改正後の民間品種が入った状態でも起きるわけですし、反面、現在のように国、県育成品種ばかりの状態でも、やはり奨励品種の中で多少移り変わりがございますので、今までよりも非常に特定品種に需要が伸びていった場合に、生産の方は元種からやってまいりますので追いつかないということで、需給の不均衡、要するに不足状態が特定品種については起きるわけでございます。  そこをまさに調整しているのが種子協会の役割でございますので、一遍に需要がふえました品種に対して生産が対応し得ないということはこれからも起こり得るわけでございますので、こういう面については我々としては種子協会の機能を十分発揮するように指導したいと思っておりますし、また民間も入りますので、県も従来以上に需給調整にも相当乗り出してもらわなければいかぬ、こういうふうな考え方をしております。
  164. 中林佳子

    中林委員 現状でも大変需給調整が難しいと言われている中に、民間参入でいつ自由にどこに売られるかもわからないということになると、協会に入られれば別でしょうけれども、必ずしも全企業が入るとは限らないわけですから、その辺は特に需給調整には混乱を来さないようにやっていただきたいというふうに思います。  主要農作物種子法に基づいて、奨励品種決定調査事業原原種圃原種圃設置費として国の補助が行われているわけですが、昭和五十一年の基準経費、それから昭和五十六年の基準経費、そして昭和六十一年がわかれば十アール当たり一体どのくらいになっているのか、その経緯をお答えいただきたいと思います。原原種圃の水稲だけで結構です。
  165. 関谷俊作

    関谷政府委員 奨励品種でございますが、これは数字が幾つかございますので、現地調査の方だけ申し上げますと、五十一年三万二千八百円、五十六年五万二千円、六十年四万五百円、六十一年三万六千四百円、いずれも十アール当たりでありますが、こういうような状況でございます。これは言いわけになりますが、やはり俗に言う予算の節約等によりまして十アール当たりで見まして落ちている、こういうような状況でございます。
  166. 中林佳子

    中林委員 私は本当に見てびっくりしたのですけれども、年々基準経費の補助が上がっているかと思いましたら、五十六年をピークにずっと後、下げられていて、六十年と六十一年の今のお話を聞いても、六十年が四万五百円に対して六十一年が三万六千四百円と、またまた今年度も低くされてしまっているのです。  島根県の出雲試験場で話を聞いたわけですけれども、奨励品種決定調査事業は補助率が二分の一ということになっておりますが、実際にかかる費用の三四%の補助にしかなっていない。原原種圃事業に至っては、実際にかかる費用が反当たり大体十二万八千五百円かかる、それが、国の補助は実際にかかる費用に対してわずか八%、一万五百円。基準経費は二万一千円ですけれども、二分の一補助ですから実際には一万五百円しか来ないということで、わずか八%にしかならないということで、補助率が二分の一というふうになっているのですけれども、実際はかかる費用の非常にわずかにしかならない。  ということですから、基準経費の引き上げを、今下る傾向にあるのですが、財政事情が大変だというお話をいつもなさいますけれども民間企業参入などによっても、大臣の御答弁では、国や県の今までやってきたことを後退させるようなことはしないし、その公的機関の果たす役割というのはますます重要だということですから、それからいっても、この基準経費の引き上げというのはどうしても要望にこたえていただかなければならないと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  167. 関谷俊作

    関谷政府委員 これは私ども原局と申しますか担当者としては大変つらい状態でございまして、こういうものの経費の予算の組み方が、私どもの言葉で節約と先ほど申しましたが、どうも年ごとに圧縮をされてきているというような、こういう状態でございます。  これは別にこの経費だけねらい撃ちにしているわけではなくて、全体的にこういう一種の行政的な経掛については実行上というか予算上圧縮されておりますので、これを逆の方向に戻すというのは実は非常に難しい状態でございますが、仰せこの奨励品種という大変大事な仕事でございますので、これは予算面の補助だけではなくて、別途実施しておりますいろいろな採種対策広域種子生産団地育成とか、こういう幅広い種子対策の中で充実を図りながら、この種子行政に遺憾のないように対応してまいりたいと考えております。
  168. 中林佳子

    中林委員 最後に大臣、今お話しいたしましたように、国や県のこれまでやってまいりました事業に対して特段の力を一層入れていただきたいとということにあわせて、実は島根県で種子生産をやっているところというのは、標高二百メートルから三百メートルの村なんですね。竹下大蔵大臣の生地の町の隣村、吉田村というところでたくさん種子生産をやっているのですけれども、非常に高地であるということもありまして、圃場面積狭いのですよ。そこに手をかけてやっているのですけれども、だんだん手間暇かけてこういう種子をつくる農家の数というものも確保しにくい状況になっているのです。その上に減反もやらなければならないということもありまして、この農家の人たちから、採種圃種子生産農家にとって一般の水稲と違う、減反面積カウントをポスト三期の中で検討していただけないか、こういう強い要望があるわけですけれども、いかがでしょうか。
  169. 羽田孜

    羽田国務大臣 お答え申し上げます。  先ほどもお話ししました都道府県が関与していく問題につきましては、やはり種子というのが農業生産にとって基礎的な資材であるということを私ども念頭に置いて、これからもそのつもりで行政を進めていきたいというふうに思っております。  なお、御指摘のございました種子生産圃場について転作カウント扱いすることについて、国側の全国ベースの目標面積を算出するに当たりまして、種子用米は米の需要量の中に織り込み済みであるということに加えまして、種子用米といえども通常の主食用米と全く変わらないということから、転作対策上特別の取り扱いを行うということは非常に難しいわけでございます。種子用米は主食用米を上回る価格で取引が行われております。たしか三割ぐらい高いということでありますけれども、転作カウントを行っていないことが種子用米の必要量の生産確保に影響を与えているとは考えにくいことから、これを行うことは非常に困難であるということが言えると思います。
  170. 中林佳子

    中林委員 不満ですけれども、時間が参りましたので終わります。
  171. 大石千八

    大石委員長 次回は、明十五日木曜日午前九時五十分理事会、午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五分散会