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1986-05-07 第104回国会 衆議院 農林水産委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十一年五月七日(水曜日)     午前十時六分開議 出席委員   委員長 大石 千八君    理事 衛藤征士郎君 理事 近藤 元次君    理事 島村 宜伸君 理事 串原 義直君    理事 田中 恒利君 理事 武田 一夫君    理事 神田  厚君       上草 義輝君    太田 誠一君       加藤 卓二君    片岡 清一君       菊池福治郎君    佐藤  隆君       鈴木 宗男君    田邉 國男君       二階 俊博君    野呂田芳成君       林  大幹君    松田 九郎君       山岡 謙蔵君    上西 和郎君       佐藤  誼君    島田 琢郎君       新村 源雄君    竹内  猛君       日野 市朗君    岡本 富夫君       菅原喜重郎君    津川 武一君       中林 佳子君  出席国務大臣         農林水産大臣  羽田  孜君  出席政府委員         農林水産政務次         官       保利 耕輔君         農林水産大臣官         房長      田中 宏尚君         農林水産大臣官         房審議官    吉國  隆君         農林水産省経済         局長      後藤 康夫君         農林水産省構造         改善局長    佐竹 五六君         農林水産省農蚕         園芸局長    関谷 俊作君         農林水産省畜産         局長      大坪 敏男君         食糧庁長官   石川  弘君         水産庁長官   佐野 宏哉君  委員外出席者         参  考  人         (農林中央金庫         理事長)    森本  修君         農林水産委員会         調査室長    羽多  實君     ————————————— 委員の異動 五月七日  辞任        補欠選任   鍵田忠三郎君    二階 俊博君   月原 茂皓君    加藤 卓二君   細谷 昭雄君    佐藤  誼君   駒谷  明君    岡本 富夫君 同日  辞任        補欠選任   加藤 卓二君    月原 茂皓君   二階 俊博君    鍵田忠三郎君   佐藤  誼君    細谷 昭雄君   岡本 富夫君    駒谷  明君     ————————————— 五月二日  昭和六十二年度からの新水田利用再編対策に関  する請願天野光晴紹介)(第三七〇七号)  森林・林業の活性化国有林野事業再建に関す  る請願天野光晴紹介)(第三七〇八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する  法律案内閣提出第七六号)  農林中央金庫法の一部を改正する法律案内閣  提出第七七号)  主要農作物種子法及び種苗法の一部を改正する  法律案内閣提出第五〇号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 大石千八

    大石委員長 これより会議を開きます。  まず、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  農林中央金庫法の一部を改正する法律案審査のため、本日、農林中央金庫理事長森本修君に参考人として出席を願い、意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大石千八

    大石委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 大石千八

    大石委員長 内閣提出農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する法律案及び農林中央金庫法の一部を改正する法律案の両案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上西和郎君。
  5. 上西和郎

    上西委員 私は、まず質問冒頭羽田農林水産大臣お尋ねをしたいのであります。  この二つの法案について、我が党は基本的に賛成の立場を堅持しつつ、かつ若干の問題点をただしていきたい。  冒頭お尋ねしたいのは、やはり押し寄せてくる金融自由化の影響の問題であります。  私も、当選以来本委員会に籍を置いておりますから、努めて農協総会等出席をするように努力をしております。どの農協総会に行きましても、議案書を一読してぴたっとわかるのは、収益の大部分を信用事業でカバーしているという実態であります。これはもう既に大臣以下それぞれの方々がよく御承知のことと思います。信用事業で支えられている単位農協事業実情、こうしたことを見ていくと、片一方、大変な勢いで各金融機関預金獲得のために競争を激化させている、そういうところで、必ずしも農協貯金の伸びというのも、言うならば一時期ほどでなくて鈍化をしておる、そういう悪条件の中に、さらにもろに金融自由化の波が押し寄せてくる。  こういう中で今の単位農協を見たときに、今の事業実情から見て果たしてこのままでいけるのだろうか、金融自由化の波がどんと押し寄せたときに対応し切れるのだろうか、こういうところについて大変な懸念を持っております。しかも、今さら申し上げるまでもありませんが、ロッチデール原則に基づく協同組合の本来の精神からいって、他の金融機関などと違い、やはり組合員に対する還元ということは大きな原則としてある。  こうしたもろもろのことを考えた場合、この金融自由化の波が押し寄せてくる現状の農協事業実情、そうしたことを踏まえてこの対応はどうなんだろうか、果たしてこのままでいいのだろうか、基本的な疑問というか問題があると思いますので、この点についてまず大臣から御所信を承りたい、こう考える次第です。
  6. 羽田孜

    羽田国務大臣 ただいま先生の御指摘がございました状況というのは、どうも他の事業、これの赤字になるものを信用事業共済事業、これの黒字で埋めておるという御指摘、今、数字でずっと迫ってみますと、まさにそのとおりであるというふうに思っております。  こういう中で、各農協系統組織、ここでもこれに対して大変憂慮をし、先生も今、御出席なさっておるとおっしゃったとおり、第十六回全国農協大会あるいは第十七回全国農協大会、こういったところでもそれぞれ対策を協議いたしまして、例えば事業のこれからの運営というものがどうあるべきか、そして、こういう事態を脱却するためにはどうすべきか、五つほどの対策を第十七回の大会でも決議しております。  これは、まず、系統全体として最大の機能発揮を図るため、段階別機能分担合理化と効率的な事業運営推進する。二番目として、農産物販売流通環境変化対応して、大消費地及び地方都市での販売力強化需給調整機能を発揮する。三番目として、農業資材等流通消費変化対応して、自主推進自主供給機能基本とすう需要の結集と購買力強化を図る。四番目として、施設運営改善効率化系統段階経営合理化推進する。五番目として、組織基盤変化等対応した弾力的な事業方式等の導入を進める。このような対策が講じられつつあることもございまして、総合農協の純益の信用あるいは共済部門への依存度は、数字で見るとと先ほど申し上げましたけれども、最近の五十七年度から見ておりますと少し低下しつつあるということであるというふうに思っております。  そういう意味におきまして、今の先生の御指摘というものを私どもも頭に置きながら、農協系統の今後の取り組み方というものを十分見詰めつつ、金融というものは本当に農業あるいは水産業といった関連のものを助長することが主になるように、体制をつくり上げていかなければいけないというふうに考えております。
  7. 上西和郎

    上西委員 大臣、よくわかりますが、重ねてお尋ねしておきたいのです。  先ほど最後の方でちょっと触れましたけれども、いわゆるロッチデール以来の協同組合原則からくる、内部留保率を高めなければならない、また、収益組合員利用者に還元しなければならない、これは他の金融機関と違った、農協だけじゃありませんけれども協同組合組織一つ特殊性でございますね。そういう条件が一つ片一方にある、片一方には金融自由化の波が押し寄せてくる。そういう中で、系統でお決めになった今の五つ方針はそれなりにわかりますが、では、それだけで農水省は事足れりとするのか。それは自主的な努力であって、農林水産省としてはということについて、あと一言、何といっても期待されている大臣として御見解をいただきたい、こう考えるのです。
  8. 羽田孜

    羽田国務大臣 今御指摘のあったのは、この金融機関がきちんとした機能を果たすためにということで、今までいろいろな規制がありましたけれども、そういった規制を緩和しながらこういった新しい事態対応できるような金融機関として成長していただかなければいかぬ、また、そのために我々農林水産省としても指導あるいは協力をしていかなければいけないというふうに思います、
  9. 上西和郎

    上西委員 では、順次お尋ねを続けていきたいと思うのであります。  貸し付けの問題ですけれども、私の地元の小さな単位農協あたりを見ておりましても、質疑の中で固定貸しが出てきます、どうなっているんだと。突っ込んでいろいろ聞いてみますと、純然たる農家の方、農協組合員、いわゆる正組合員ですね、そういった方々利用している以外に、員外利用とまでは言いませんけれども准組合員的な方が結構市中の金融機関的な利用もなさっている。こうなっていきますと、今の金融自由化その他で苦しくなればなるほど、果たして農協貸し付けというものが本当に農協組合員のために利用されていくのか。員外利用とまでは言いませんけれども准組合員、そういったところへ流れていく危険性はないのか。そういったところについての農水省としての指導方針といいますか、規制といいますか、監督といいますか、そういった点はどうなっているのでしょう。
  10. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 お答え申し上げます。  農協におきます五十九年度末の貸し付け状況を見ますと、貸付総額十一兆六千四百五十五億円のうち、員内貸し付けが十兆六千三百十五億円、員外貸し付けは三千七百八十五億円というふうになっております。このほかに、員外扱いになりません市町村等への貸し付けが六千三百五十五億円ございます。員外貸し付け比率は三%ということになっております。最近におきますこの比率の推移を見ますと、ほぼ横ばいの状態を続けております。  員内貸し付けにつきましては、需要の伸び悩みとか農産物価格の低迷といった農業なり農家経済をめぐります環境が依然として非常に厳しいということで、農業投資も、五十九年の豊作でちょっと盛り返してはおりますけれども伸び悩み傾向が続いておるわけでございます。しかし農協としては、貸し付け体制整備あるいは経営体質強化に努めながら、農業貸し付けのみならず、組合員のニーズにこたえますための住宅ローンでありますとかクローバーローンでありますとか教育ローン営農ローンカードローン等々開発をいたしまして、員内貸し付けの伸長にも努力をしてきているところでございます。今さっきお話がございましたように、昨年の十月の農協大会の決議に基づきまして、組織を挙げて経営刷新強化も図りながら、信用事業におきます審査基準標準化でありますとか貸出金利弾力化といったような迅速かつ弾力的な融資審査体制の確立、あるいは地域の農業振興計画との連携等によります貸し付け対応といったような具体方策についての取り組みが進められてきておるわけでございます。  員外貸し付けにつきましては、農協法上当然のことながら員外利用の制限が課せられておるわけでございます。ただいま、組合員の中でも正組合員ではなくて准組合員に対する貸し付けが、こういうお話がございましたが、員内貸し付けの一部でございますので、准組合員貸し付けというのを金額できっちり押さえているわけではございません。ただ、一時当委員会などでも御批判のございました無秩序に准組合員をふやしていくというようなことにつきましては、行政としても、もちろん組合施設利用なり事業量の確保という面はございますけれども准組合員制度運用につきまして適切な運用を図るようにという指導もいたしておるところでございますし、准組合員比率も近年ではほぼ横ばいになっております。  また、員外貸し付け予定者准組合員にして、そうして貸し付けをやるという迂回貸し付けというようなことも一時問題になったことはございますが、こういったことにつきましても、これを慎むように私どもといたしまして厳しい指導を行っておるところでございます。
  11. 上西和郎

    上西委員 局長、よくわかりました。  ただ、ちょっと気になったのは、ことし私が出席した鹿児島県の単位農協総会で、固定貸し整理の別組織をつくり、それに出資をするというのが議題に供せられているのが圧倒的だったのですよ。新しく固定貸し整理のための組織をつくろう、それに単位農協がそれぞれ分相応に出資をしよう、こういうふうに議題に供せられているのです。もちろん、それは不必要だ、おれのところは入らぬという単協もございましたけれども。そうしますと、私は何もそれが正組合員だ、准組合員だ、貝外貸し付けだ、そんなことを申し上げませんが、少なくとも鹿児島県で見る限り、相当程度固定貸しがあって整理に困っていて、一定程度の金を出し合いその固定貸し整理のための組織を新設しよう、こういう動きすらある、こういうのを見ているものですからお尋ねしたので、このことを突っ込もうというのはきょうの質問の趣旨じゃございませんけれども、そういう現実があることだけはやはり農水省当局も御理解の上、そうした点についてはさらに一段ときっちりとした指導なり助言なり規制をお願いしたい、こう申し上げておきます。  次は、漁協の問題です。  農協は、正直申し上げて、大臣お尋ねしたように信用事業部門でほとんどカバーできるくらい大変な収益を上げています。しかし一転して漁協を見ますと、それが正しいのかどうかということは別として、漁協収益状況を見ますと、漁業本来の方がうんとウエートが高くなり信用事業は今比率的にずっと下回ってくる、悪く言えば信用事業部門は大変脆弱ではないか、こう考えるのです。これについて、この法律をお出しになっておりますけれども、一体どういう対応策をお考えなのか。農協に比べて漁協は余りにも差があり過ぎる、こう考えるのですが、ひとつその辺についての御見解をいただきたいと思います。
  12. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  元来漁協信用事業は、貯金残高とか信用事業実施体制とかいろいろな指標で見ましても零細であるという問題がございました。その上、近年漁業経営の不振が長期化、慢性化しておりまして、これらの漁業者信用供与をしております漁協につきましても、貸し倒れとか固定化債権増加ということがございまして、繰越欠損を抱える漁協が遺憾ながら増加傾向にございます。  こういう漁協信用事業の抱えている問題点というのは私どもも気にしておるところでございまして、何と申しましても漁協自助努力基本ではございますが、国なり都道府県あるいは上部機関信漁連等がいろいろお手伝いをしまして、漁協信用事業の健全かつ安定的な事業遂行ができるような体制整備するということを目的として、六十年度から漁協信用事業整備強化事業というのを実施をいたしておるわけであります。  これは、推進事業を通ずる漁協信用事業実施体制整備あるいは規模零細性を克服するために共同事務処理推進とか、今申し上げました欠損金等見合いの借入金がふえておるという事態に対処してこれの利子負担の軽減とか、そういうことを内容にしておるわけでありますが、そういう事業を六十年度から実施をしておるところでございます。  さらに進んでは、合併をもっと促進をすればいいのではないかということが考えられるわけですが、従来から合併促進ということは言われておりながら、残念ながら漁協については必ずしも見るべき成果を上げていないというようなことがございます。これは現在系統内部でも合併推進方策について検討を進めておられるところでございまして、私どももその検討結果をにらみながら工夫をしてまいりたいと思っているところでございます。
  13. 上西和郎

    上西委員 では長官、重ねてお尋ねします。  今合併のことについておっしゃいましたが、信用部門だけの独走という危険性はないのかというのが一つ。  それから、今長官のお答えでは、いわゆる審議会その他の答申を待って、こういうことでありますが、今度の法律の中にある知事の書面によるあっせんということが強制力を持つ、そういう危険性はないのか、強制にならないのか。私の選挙区でも同一自治体の中に漁協が複数あるところがあるわけです。その一カ所だけじゃなくて、何カ所かあります。そういうのを実際見ているので、何か知事から何とか出たら、特に我が鹿児島県のごときはお上最優先でありますから、知事は昔の殿様的感覚で受けとめられておりますので、そういった意味合いでちょっと不安があります。  その辺、信用事業部門独走はないのか、知事のいわゆる合併あっせんというのが極めて強制力を持つものになる危険性はないのか、この点について少し明らかにしていただきたいと思います。
  14. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  信用事業だけ切り離して合併するというアイデアは、漁協合併一つの難しさが漁業権関連する問題にございますので、恐らくそういうことを念頭に置いた一つアイデアであろうというふうに思っておりますが、私どもとしては、先ほど申し上げましたように系統内部合併推進方策の問題についていろいろ御議論がございますので、その御議論の帰趨を見ながら考えてまいりたいと思っております。  それから、知事あっせんの問題でございますが、この点につきましては、あくまでも漁協合併というのは関係組合員の合意が基本でございますから、強制にわたるような筋合いのものではあるべき道理ではございませんので、その点は知事も十分御認識の上処理をしてくださるものというふうに御信頼を申し上げております。
  15. 上西和郎

    上西委員 わかりました。  では次に移らしていただきますが、今度のこの法律、見れば見るほど預金保険法との関連が濃厚に出てくるのです。しかし、農協漁協を含めて他の金融機関等を見た場合、全国的な組織機構図から見て差があると思うのですよ、農協漁協の場合は。こういったやっぱり現実機構上の差を、法律だけは、しゃにむにとは言いませんけれども何かきちっと合わせようとする、ここにぎくしゃくしたものを感ずるのですが、その辺についてはどうお考えなんですか。
  16. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 今回の貯金保険法改正につきましては、お尋ねの中にございましたように、一般の金融機関基本的な方向考え方においては共通したものがございます。これは昨年の六月に出ました金融制度調査会答申で、「金融自由化進展とその環境整備」ということで預金保険制度拡充改善提言をされました際に、農水産業貯金保険機構についても、農水産業系統金融特殊性等に配慮しながら同様の方向でやはり検討すべきじゃないか、こういう御提言をいただいたわけでございまして、その答申から出発しているという点におきまして、同じような今後の金融自由化進展に伴って生じ得るであろう信用不安の可能性の増大というものに対して、体制的な整備をしておくという意味では共通している問題があるわけでございます。  ただ、御指摘ございましたように、三段階制をとり、また協同組合という特質を持っているということで銀行とは相違をしている点があるわけでございまして、その点を私ども踏まえまして、この改正基本的な方向としては同じでございますけれども農漁協特殊性等を今回御提案申し上げておりますこの法律案の中で考慮をしているつもりでございます。  大きな点としては二点ございまして、一点は、預金保険の方はいわば弱小金融機関の、言葉は適切でないかもしれませんが淘汰というような考え方がかなり強く入っておりまして、営業の譲渡でございますとか合併でございますとか株式の取得でございますとか、そういう形に対して資金援助機構が行うということにいたしておるわけでございますが、我が方の農水産業貯金保険機構におきましては、資金援助について相互援助制度援助対象としまして、合併のほかに、信用事業再建措置ということで単独再建を図る場合も相援制度を通ずる資金援助対象にするというところが一つ特徴としてあるわけでございます。  御案内のとおり、農漁協につきましては経済事業等を兼営をしておりますので、実際上は隣接組合としか合併ができないということがあるわけでございまして、さらに制度的にほかの業態との、金融機関との合併の道がないということから、相対的にどうしてもこの単独再建必要性が高い。それからまた、銀行とか信用金庫等に比べますと、系統の中では相互援助制度が充実をしているということを考慮しましてこのような差異を設けたわけでございます。  それから第二点は、合併等適格性認定を行う者を主務大臣ではなくて我が方は都道府県知事というふうにいたしておるところでございます。これは、信用秩序の維持というのは全国普遍的な面がございますけれども地区制協同組合としての農漁協の性格なり、あるいはまた資金規模銀行等に比べて小さいということで、経営実態等の把握は知事が行うことが最も適当である、協同組合法制からまいりましても、単位組合の検査とか指導というのは都道府県知事に任されておるというふうなこともございまして、知事認定を行うというふうな点が違うところでございます。
  17. 上西和郎

    上西委員 御説明よくわかりました。やはり何といっても機構組織あるいは事業基盤も違うのですから、そういった点の特徴はしっかりとらえて、そうして適切な指導助言あるいは法の運用、このことをお願いしておきたいと思うのです。  次は、やや小さいような問題でありますが、仮払い制度の二十万円は果たして妥当なのかという素朴な疑問を抱かざるを得ないのです。一般的なサラリーマンですと、よほどのことがないと年間の生活費には大きな上下といいますか高低はないと思うのです。農家というのは集中的に金が要りますね、そのシーズンシーズンで。だから、果たして二十万円で足りるんだろうか。片一方貯金を預けていた組合がアウトになっているわけですから、そうしたときに、他のところに行ってなかなか借りられない、仮払いはわずか二十万円だ、こうなるので、その辺、この二十万円は妥当であるという科学的根拠をお示しいただきたい。
  18. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 科学的根拠というのもなかなかぴたり数字ではお答えしにくいわけでございますが、仮払金につきましては、今お尋ねの中にございましたように、政令事項としまして、一貯金者当たり二十万円程度ということを考えておるわけでございます。これは、実は、主として給与振り込みをしている方を念頭に置きまして、その当座の生活資金に充てる目的に限っての支払いということで、いわゆる本格的な保険金支払いまで生活的に待っておれないという事態が——特にこのごろ給与振り込みというものが非常に一般化してまいりまして、農協などでも非常にふえてきておりますので、そういう点を配慮をいたしたわけでございます。  それからまた、二十万円程度ということにつきましては、総理府の家計調査などを見ますと、一世帯当たり消費支出が一カ月大体二十六万円ぐらい、それから一級地の四人世帯の一カ月当たり生活保護費というのが十六万円ぐらい、また、農漁協普通貯金の一口座当たり残高というのを調べてみますと、これも県によってかなり差がございますが、おおむね十七万円から二十万円ぐらい、こんなふうな数字念頭に置いて、二十万円程度ということを考えているわけでございます。  もちろん、組合員たる農漁家の方々は自然を相手にする事業を営んでおりますので、また、生活と事業が密着した生活形態であるということを考えた場合に、事業資金なども含めるとこれでは足りないではないかということも考えられるわけでございますけれども、今申し上げましたように、仮払いがあくまでも臨時、特例的なもの、そして保険金のいわば内払いという性格を持つということでございますので、やはり事業資金等にまで拡大して支払うということになりますと、個々の貯金者の生活とか事業の内容に立ち入って限度を決めなければいけないということもなかなか難しい。お尋ねのような場合で、事業資金に困るというような場合には、また別途、信連なりなんなりの融資というようなことを考えるとか、そういった面での手当てをせざるを得ないのではないか、こういうふうに考えているわけでございます。
  19. 上西和郎

    上西委員 それはそれなりにわかりました。  ではさらに、預金保険法との関連で保険料率を同一にすることはちょっと合点がいかぬのですよ。先ほどあなたもお認めになったように、違うわけですね。組織機構図事業基盤も違う。それなのに保険料率だけはずっと合わせていこう、これは悪い表現をとれば、何か弱小の単協に負担を強制する、経営を圧迫するのではないか、そこまで考えざるを得ないのですが、どうしてもこれは料率を同一にしなければならないのですか。その点をお尋ねしたいのです。
  20. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 貯金保険の保険料率と申しますものは、普通の生命保険とか損保のような意味合いにおきましての危険率とか確率的な計算というのは、なかながしにくいものであるというふうに私どもも思っております。ただ、一般金融機関対象といたします預金保険農水産業協同組合貯金保険の二つの保険制度、確かに金融機関としての性格は違うわけでございますけれども、いずれもほぼ同種の金融商品を取り扱っている金融機関でございますし、両々相まって我が国の信用秩序の維持の役割を果たす、また、保険の限度額についても足並みをそろえる、これは法律事項でございませんけれども、今までの限度額の三百万を一千万に上げようということを考えているわけでございまして、資金援助業務の内容につきましても、先ほど申し上げましたような農漁協の特性に基づく差異はございますけれども基本的には同様なものということからいたしますと、料率につきましてもやはり基本的には一致させるべきものではないかと考えておりますけれども、実際にどう保険料率を決めるかということに当たりましては、基金の基盤の充実の必要性程度とか対象金融機関経営に及ぼす影響、あるいはまた激変緩和の必要性等を総合勘案する必要があるだろうというふうに思っております。  従来、一般金融機関農水産業協同組合貯金保険との間では十万分の二だけ差があったわけでございます。先ほど申し上げましたような考え方で、ただ、やはり激変緩和していかなければいけないというふうなことから、関係団体におきましては、今後三回程度に分けて段階的に変更をしながら、六十三年ごろに十万分の十二ぐらいの水準まで持っていくということが検討されているやに私ども承っているわけでございます。
  21. 上西和郎

    上西委員 わかりましたが、やはり組織機構事業基盤が歴然と違うのでありますから、しゃにむに合わせるのではなくて、それが認められるならば、負担は軽減させる方向農水省当局としても御努力をいただきたい。  本法に関して最後に、今度の法改定の目玉は何といっても資金援助だと思うのですよ。資金援助制度の導入。ところが、現在ある相互援助制度に入ってないところは対象にしない、こうなっております。私の調査では、農協漁協あるいは水産加工組合等入れて、ざっと六百程度未加入のところがある。未加入のところはそれぞれ欠陥といいますか、ずばり言って脆弱だから向こうも入れるのを認めていない。そういうところはこの法の適用対象外になるのではないか。それでは仏つくって魂入れずだ、こう指摘せざるを得ないのですが、その辺はどう対処されるのですか。
  22. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 相援制度未加入の組合につきましては、相援制度を経由する方式による機構からの資金援助は行われないということになりますけれども、他方、相援加入組合につきましては相援制度に係る資金負担があるということがございますので、未加入組合が一方的に不利な扱いになるということでは必ずしもないわけでございます。  ただ、では今後こういう法律改正、保険機構の業務の拡充も行われた後、その適用を受けられないのではないかというお尋ねの点でございますが、この点は、やはり未加入組合は現行の相援制度に加入していただくことが最も望ましいというふうに考えているわけでございます。諸般の事情によりましてこれが困難な組合につきましては、現行の相援制度に準ずる制度を設けてもらえば同様の扱いになり得るというふうに考えておりますし、相援制度未加入の組合でございましても、合併によります場合は、相互援助制度を通じた資金援助よりも幅広い機構資金援助を受けることができるという仕組みにはなっているわけでございます。
  23. 上西和郎

    上西委員 それらの対策がとられているのはわかりましたが、せっかく法改正をおやりになるのですから、そうした六百近いところも対象になるようにきめ細かな御配慮をお願いしたい、このように私の方から要望を申し上げておきます。  では引き続き、今度は農林中央金庫法改正問題について、せっかくお見えですから森本理事長さんに若干お尋ねをしたいと思うのです。  私も今度の法改正をめぐってちょっと法律をひっくり返してみますと、農林中央金庫法の役割というのが法律その他の中で定義づけられてないのじゃないか。これは私の見落としだったらおしかりをいただきたいのですが、何か定義づけとか目的とかというのが大変お好きな皆さん方がおつくりになっている法律にしては、農林中央金庫法の定義というのがややあいまいになっているのではないか、この辺については具体的にどうなのかということをお尋ねしたいのです。これは局長でもいいですけれども……。
  24. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 お尋ねの趣旨が法律目的規定とかいうことに関係をしておるのではないかと思いますので、私からお答えをさせていただきたいと思います。  もう御案内のとおり、農林中央金庫は農林漁業の団体を主たる構成員にいたします全国金融機関でございまして、所属団体への金融上の便宜供与を第一義的な使命にするものでございますけれども金融機関としての国民経済の健全な発展に寄与すべき責務も有しております。資金量としては、国内で調達をしている資金ということからいうと、もうトップクラスの、まさにトップの資金量を持っておるわけでございますし、また、最終的な資金調整の観点から、所属団体を通じて集積をされました資金を外部経済との接点に立って運用する必要があるといったような点も含めまして公共的な役割、専門的な機能を持っていることから、所属団体への金融上の便宜を供与する業務のほかに、中金の基本的な性格を逸脱しない範囲で必要な業務を営んでいるものでございます。  こういったことを通じまして、農林漁業者の経済的、社会的な地位の向上を図り、あわせて国民経済の発展を図ることを目的としているものというふうに考えられるわけでございまして、この目的は、農林中央金庫法の内容全体として、業務規定の規定の仕方等を通じまして、あるいはまた農林中央金庫組織に関する規定等を通じまして極めて明確になっているというふうに考えておるところでございます。  したがいまして、今回の法改正農林中央金庫基本的な性格に変更を加えるものではございませんので特に目的規定を加えるというようなことはいたしておりませんけれども法律全体から、農林中央金庫の持っております使命とかその業務がいかなる目的、態様で行われるべきかということはおのずから明らかになっておるものというふうに考えておるわけでございます。
  25. 上西和郎

    上西委員 お答えはわかります。ただ、今おっしゃったこと、全体的次規定づけといいますか、その内容からは今度の法改正は超えてはいないのですね、その範囲内にとどまっているのか、その点をちょっとお尋ねしたいのです。
  26. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 結論から申し上げますと、私ども基本的にただいま申し上げましたような農林中央金庫目的なり基本的な性格の範囲内での改正を御提案申し上げているというふうに考えております。  今回の改正におきましては、所属団体等の金融ニーズが非常に多様化しているということで、中央金庫としてもこのようなニーズに対応しなければなかなか取引先との円滑な取引関係が維持できないということから業務規定の整備を図ることにしておりますが、今回の法改正によりまして拡大される業務あるいは付加される業務機能につきましても、いずれも原則として貸出先等に取引先を限定いたしておりまして、農林中央金庫基本的な性格にかなう範囲内で行い得ることにするものでございます。また、法改正後のいろいろな指導におきましても、私ども農林中央金庫基本的な性格というものを念頭に置いた指導をいたしてまいるつもりでございます。
  27. 上西和郎

    上西委員 それでは、ちょっと突っ込んだお尋ねをしたいのです。  前回の委員会でもそれぞれの方々から御質問があったのですが、役員の任期が違う、これはどうも合点がいかぬのですよ。私も生え抜きの民間育ちで、高校を出てそのまま民間企業ですからもう三十六年になりますので、随分社長以下重役陣の変動をこの目で見てきました。しかし、取締役と常務取締役と代表権のある取締役は、少なくとも僕がそれこそ実社会で体験した限り、みんな任期は一緒なんですね。そして、形の上では取締役会の互選で常務なり代表取締役社長なり会長なりが決まっている。どの企業でもそうではないか。今度も何か民活というかいわゆる民間法人化するんだということで、役員の任期が違ってみたり、さっきの貯金保険機構の方でも何か理事と監事が違ってみたり、私なんか素朴になぜこんなことをおやりになるのかと思うのですが、これを明快にお答えいただきたい。
  28. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 まず一つは、例えば商法に基づきます株式会社あるいは農協法に基づきます農業協同組合、一定のそういう準則に従いまして複数あるいは多数設立されるような性格の法人と、それから農林中央金庫もそうでございますが、特別の法律に基づきまして単一の法人として設立される、そしてそういうものについては、必ずそれ特有の専門的な性格なり公共的な性格をそういう法人は備えているわけでございます。そういうものとの違いということを一つ念頭に置いていただきたいという点が一点でございます。  それから第二に、おっしゃいますように、確かに役員の任期につきまして絶対的な基準はないと私は思います。結局、役員の任期と申しますのは、経営の安定という観点からは、業務への専念を考慮しましてできるだけ一方では任期が長いことが望ましい、経営安定あるいはまた経営に対する習熟という点もあるかもしれません。そういう長期のものが望ましいという要請と、もう一つは、経営活性化という観点からは、業績の評価を行う機会をできるだけ多くする、そういうことによりまして、できるだけ任期は短くして、業績評価の機会を多くして組織なり執行体制活性化を図る、この二つの要請のバランスをどうやってとっていくか、これはその法人の性格なり業務内容に応じて定められるべきものだと考えております。  本件農林中央金庫の役員の任期につきましては、御案内のとおり、従来一律四年ということでございましたけれども、臨調答申におきまして、特殊法人等の経営活性化方策の一環として、総裁、副総裁等以外の役員の任期は二年とすべきだという提言がなされたことは御案内のとおりでございます。それからまた、今回農林中央金庫とともに民間法人化されます法人が十一ございますが、この十一法人につきましては、経営のかなめの地位にある者を除いて、理事等につきましての任期はすべて二年ということになったと聞いております。そういう情勢の中で、農林中央金庫の役員の任期につきましても、今回の法改正当たりまして、率直に申しまして関係省庁、政府部内で種々検討を行い議論を行ったところでございます。結論といたしましては、理事長なり副理事長は業務運営のかなめの地位にある者として業務全般にわたって高度の責任を持つ、それから、これから金融環境の変動も非常に激しいという中で中長期的に経営の安定を確保していくという観点で、任期は変更しないで今までどおり四年にする。一方、理事は実務をそれぞれ分担する人でございまして、その実績を定期的に評価をして経営活性化に資する、その任期は、ほかの民間法人化します十一法人は二年ということになったわけでございますが、農林中央金庫理事につきましては、他の農業団体の役員、特に農協の役員はほとんど三年でございますので、この任期を考慮しまして、二年ではなくて三年ということに、一年短縮にとどめるということにしたものでございます。  なお、任期が縮まりましても再任を妨げるものではございませんので、それによりまして実態的に安定的な業務執行を妨げるというようなことはないものというふうに考えておるわけでございます。
  29. 上西和郎

    上西委員 根っこに臨調があるということはよくわかっているのです。ただ、臨調がどう言おうと、農林中央金庫経営がどうあるかということが優先しないとやはりおかしくなるんじゃないか。理事長は四年だ、理事は三年だ、責任はうんと違うんだぞ、悪いけれども理事は手抜きでも構わぬ、座っておるだけで、たまに出てくればいい、そんな形で運営されたらたまらないと思うのです。人間ですから、おれも理事長と一心同体だ、農林中金に骨を埋めるぞ、こういう気迫と情熱に燃えた方が役員にならなければ、どんな法律をつくったって農林中央金庫は生きていかないと僕は思うのです。どんなに資金量が大きかろうと、事業は人ですよ。事業は人なり。だとするならば、臨調が何と言おうと頑としてはねつける。農林水産省ここにあり、羽田孜よく農林水産大臣になっていた、こういう形で、任期くらいは同一にする、そうして理事長から理事まできちっと責任を持って経営に当たる、こういうことが僕はやはり望ましいと思いますので、これは強くこの場でお願いをし、特に大臣にも御要望申し上げておきたい。  あとは簡潔にお尋ねします。  今後金融の自由化が進んだ場合に、これ以上の法改正の必要ありや否や、この点についてすぱっとお答えいただきたいと思います。
  30. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 私どもは、現時点におきまして予測されます金融自由化の進行を念頭に置きまして、他業態との調整にもいろいろ苦労いたしましたけれども、今回の改正を行ったものでございます。したがいまして、私どもはこれで現在の金融環境のもとにおける中金の業務の規定のあり方という点では対応できているものというふうに考えております。  ただ、今後いかなる金融事情の激変が生ずるかということになりますと、これはだれしも予測がつかないわけでございまして、未来永劫、中金の業務規定なり性格なりについて不変であり得るというところまでは断言はしかねると思います。
  31. 上西和郎

    上西委員 わかりました。  最後にお尋ねしたいのは、ずばり言って、今度電力、ガスなどの公益法人の料金払い込みができるように——私も電力出身ですから、職場でいわゆる銀行振り込みがどう取り組まれているかはよく知っております。そういう観点から、農林中央金庫としてこれを法改正の中に取り入れることになった理由といいますか、あるいは今後どの程度のシェアまで望んで積極果敢にお取り組みになるのか、その辺のことをお尋ねしたいのです。
  32. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 最近、料金振り込みというようなことが一般化をしてまいってきておりますが、農林中央金庫におきましても、全国連等の所属団体あるいは協同会社、関連産業法人等の取引先からこういった業務が欲しいという要望が具体的にございましたので、他の金融機関と同様にこのような業務を行えるようにいたしたものでございます。こういうことによりまして取引先に対する総合的なサービスができる。それから、今後金融自由化ということで、これはアメリカなどでもだんだん利ざやから手数料に金融機関の収入のウエートが移っているというようなことも言われておりますけれども、取扱手数料の収入も得られるというものでございます。  電力会社等の料金収納業務は、農林中央金庫金融機関としての性格によるものでございますけれども、この業務の具体的な運用当たりましては、農林中央金庫の立場といいますか、所属団体なり関連産業を対象にして業務を行っているという立場を踏まえまして、その性格に即した、また節度のある業務運営がなされるように希望し、また指導もしてまいるつもりでございます。
  33. 上西和郎

    上西委員 大変結構なお答えで、私もその点を心配しておったのです。取扱金融機関がふえることは、電力、ガスの需要家にとっては大変いいことなんですね。ただし、金融機関同士で今つばぜり合いをやっていますから、その中で知性と教養、品位ある農林中央金庫らしく、泥まみれの新聞の拡大販売、あんなことにならないように、そして今局長のおっしゃったように節度ある姿勢でこの問題にはぜひお取り組みをいただきたい。これは強い私の方からのお願いでもありますし、電力の一員でありますからこのことに関心を持っておりますので、今後見守っていきたいと思います。  最後に、これは私のお願いであります。何といっても合点がいかぬのは役員の任期なんですよ。理事長、副理事長だけ外して、理事以下云々、こんなことをやっていて、本当に僕は事業は人なりとずっと思い込んでおりますので、農林中央金庫を営々として築き上げてこられた、そして法律も変わった、業務その他も拡大される、よくなった、しかしなぜ役員だけが木に竹を接ぐようになっているのか、臨調という国会すら無視するような強大な権力のもとに農林中央金庫は振り回されてはいかぬ、私はこれを声を大にして訴えたいのです。大臣以下がそのことを篤と腹に据え、理事長もお見えでありますが、極端な言い方をすると、こうした臨調の理不尽な横やりで役員の選任のことを法改正の中に織り込まれる、こういうことが今後あってはならないと思うのです。  したがいまして、先ほど局長からお答えがありましたが、ぜひ大臣以下関係の皆さん方が、このことについては、臨調は臨調、農水省農水省、農林中金は農林中央金庫として、きちっとした腹を据えたお取り組みで今後の事業経営に当たっていただきたい。このことを重ねて強く訴え、終わらせていただきます。ありがとうございました。
  34. 大石千八

  35. 田中恒利

    田中(恒)委員 農林中央金庫法改正を中心にいろいろ議論がありましたが、これからの農林漁業金融をめぐる非常に厳しい情勢の中で、中金なり農林漁業金融全体が向かうべき方向といったようなところに焦点を当てて質問をしてみたいと思います。  最初に、最近の農林漁業金融の現状と問題点というか課題というか、どういうところが問題になっておるのか、この辺の状況をまず御報告をしていただきたいと思います。
  36. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 農業金融の最近の動向でございますが、農家所得は農外所得等の増加によって安定して伸びてはおりますけれども農業所得の方は、農産物の需給の緩和なり五十五年からの四年連続した不作というようなこともありまして伸び悩みを示しております。このために、貯蓄の方は農家所得の安定した動きを反映して一〇%前後の伸びを示しておりますが、借入金につきましては、農業所得の低迷、さらには設備投資の一巡というようなこともございまして、伸びが鈍化をしてきているということでございます。農協貯金なり貸出金につきましても、こういった農家経済の動向を反映いたしまして、貯金の安定的な動きに対しまして貸出金が低迷をしている。さらに、農林公庫資金でありますとか近代化資金等の制度資金につきましても、貸付実績は伸び悩みないし停滞基調にございます。  五十九年度は稲作の作況が良好でありましたためにかなり回復をいたしまして、近年停滞傾向にございました農業投資も、更新需要というものも加わりましてやや活発化してまいりまして、近代化資金の貸付実績は、五十九年度は前年度を上回ったというような状況でございます。  それから、林業金融につきましても、林業、木材産業が深刻な不況にあるという状況から、貸付実績が総じて伸び悩むという傾向が見られるわけでございます。  漁業金融につきましては、国際規制強化あるいは水産物需要の伸び悩みといった漁業を取り巻く厳しい情勢下から、漁業所得が低迷をいたしまして、投資もやはり停滞を示しております。このため、漁家の貯蓄、借入金とも伸び悩んでおりまして、漁協貯金、借入金につきましても、近年その伸び率が鈍化をし、制度金融も貸付実績が停滞しているというような状況でございます。  それから、金融自由化進展なり金融機関の間の競争の激化というようなことがございまして、農家の貯蓄なり借入金に占めます農協のシェアが若干低下をする兆しを見せているというようなところも近年における特徴がというふうに見ております。
  37. 田中恒利

    田中(恒)委員 いずれにせよ、農林漁業をめぐる大変厳しい情勢の中で、貯金は多少伸びておるわけですけれども、それに比べると貸し出しが非常におくれておるという特徴がそれぞれの分野で共通して出てきておるようでありますが、こういう情勢の中で、農林中央金庫事業をめぐってどういう問題が現在出てきておるのか、中金の現状とあわせて、これも前提としてお尋ねしておきたいと思うのです。
  38. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 一言で申しますと、貸し出しが低迷をいたしておりますので、農協から信濃連への系統預け金が増加をいたしてまいってきております。そして、信濃連段階では金融の緩和基調の中で貸し出しが低迷をいたしまして、五十六年度以来四年連続して残高がむしろ減少しているというような状況がございまして、余裕金が増大をいたし、それが農林中央金庫への系統預け金の増加なり有価証券運用増加という形になっておるわけでございます。農林中央金庫段階においては、預金が、その大宗を占めます信濃連からの預金の大幅な増加によりまして非常に増加をいたしております。  貸し出しのうち、所属団体向けの貸し出しにつきましては、そういった信連段階以下の資金の需給が非常に緩和しておることがございまして、農業団体及び水産団体貸し出しの減少によりまして、五十九年度末の残高は前年度に比べて若干減少をいたしております。一方、関連産業等に対します貸し出しは増加をいたしておりますものの、企業等の資金需要の減退あるいは調達手段の多様化等を反映いたしまして伸びがかなり鈍化をしてきているということでございまして、農林中央金庫におきましても、こういった貸し出しの低迷によりまして、資金運用の中で有価証券なり金融機関貸し出しというものへの依存が増加をいたしてまいってきておる、こういうのが現実の姿でございます。
  39. 田中恒利

    田中(恒)委員 中金は組合金融の中央の代表機関のような性格を持っておるわけでありまして、今の冷えた農林漁業の中で吸い上げた貯金を中心とした預かり金の運用などについて、いろいろな分野で幅を広げないといけないということが一番大きな特徴のようでありますが、この前提は、地域金融が農林漁業全体を通してどうも思うように機能していないというか動いていないところが問題だと私は思うわけであります。  そこへもってきて、自由化自由化という言葉が非常に言われておりますが、しかし、この自由化という言葉が言われる大分前から、農林漁業団体の金融部面における競争力というのはどうも低下をしておるのじゃないか。農家経済調査などを見てみましても、この十年来の間に、農家経済における組合金融の占める比重は非常に低下しております。こういうことをどういうふうに直していくかというか、どういうふうに活力を入れていくかということが農政上は大きな問題だと私は思うのです。  つまり、自由化を背景にして競争もこれからますます激しくなってくるが、自由化以前から、系統金融と称する一連の農林漁業金融の末端段階においては、銀行なり信用組合あるいは郵便局、いろいろな金融機関との競争の中で、その分野のシェアがだんだん低下をしておる傾向がありますけれども、これは大きな問題だと私は思うのです。これに対して、農林省としては今後どういう方向でこの問題を上向きにさせていくというお考えで臨まれておるのか、この辺もお聞きしておきたいと思うのです。
  40. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 大変広範な問題を含むお尋ねでございます。  まず貸し出しの問題につきましては、政府といたしましても、近代化資金等の利子補給とか信用保証制度等を通じて、系統資金の貸し出しの促進についてその推進努力してまいってきておるわけでございますが、系統といたしましても、農協、信連、中金の各段階を通じて独自の要綱融資というような形での低利融資制度を設けて、系統貸し出しの伸長にも努めてきておるところでございます。  最近における、今おっしゃいました厳しい農業情勢に対処いたしますために、貸し出し機能強化のための検討系統内部でもいろいろ行われておるやに聞いております。要綱融資の充実でございますとか、専門家による総合的、実践的な経営診断を含めて農家指導を行う農協を支援するための機構を設置したらどうかというようなアイデアでございますとか、また、この機構等の活動と関連いたしまして、経営再建のための補完的な負債整理資金の創設というような問題、あるいは農家経営改善なり資金管理のための手法の開発というようなことも含めました農家指導体制の確立といった問題を、系統で今いろいろ御検討いただいておるように聞いておりまして、こういった問題につきましては、私どもとしても御相談に乗り、また十分指導もしてまいりたいと考えておるわけでございます。  それから、シェアが低下しているという問題につきましては、これは農村社会が非常に混住化してきておる、そしてまた自由化の中で競争が激しくなってきておるということがございます。いろいろな調査を見ましても、信用事業の若い世代の利用率が落ちているというようなデータも出ております。やはり若い方々も含めた地域の農家の方方全体をしっかりとつかまえていくための事業活動のあり方、そのためには、農業協同組合、そして総合農協ということが言われますけれども、やはり原点としては、総合ということ、それから農業または農村ということ、それから協同組合ということ、この三つを原点にして、そのみずからの特質を踏まえた力の発揮の仕方を考えていくことが必要であろうと思います。  それからもう一つは、これはむしろ農協自身の問題でございますけれども農家が昔ほど均質のものではなくなってきております。そういう意味で、そういった農家の分化というものに対応した事業運営のあり方ということもまた考えていく必要があるのではないかと思っておるところでございます。
  41. 田中恒利

    田中(恒)委員 一つ一つもう少し具体的に話をしていきたいのですけれども、もう少し大きな問題をとらえさせてもらいたいと思います。  今度中金法の改正で、今局長さんおっしゃられたような最近の金融状況対応して、一つ農林中央金庫の政府出資をなくするということを通して民間法人らしい執行体制整備を図るし、いま一つ機能事業面を拡大して金融機関として外部接触の分野をいろいろな角度で広めていくということになって、一応体制がとれたわけでありましょうが、同時に、系統金融全体として、例えば県段階、これは農協の場合信連、漁連も信連というのがありますが、こういう県段階、特に単位の町村段階組合金融機関がこれからの新しい金融情勢に対応するために、金融機能の中でやはりいろいろ問題があるわけですね。  私は前回の公庫法を中心とした三法の質疑のときにも申し上げましたが、特に今局長は混合化という言葉を使われたが、確かに農民が非常に異質化をしてきておりますから、特に都市近郊などの組合員は、もう農業というよりも純粋の金融機関のような目で農協を見ておる。これがいいか悪いかという基本論はありますけれども金融の業務を進めていく場合に、この種の人々は准組合員という規定の中に位置づけられておる。この准組合員に対する金融業務については一定の制限なり制約といったようなものがあるわけですね。  こういう問題も含めて、今日の新しい金融情勢の展開の中で、農林中央金庫機能を拡大していくだけでなくて、組合金融全体が何か考えなければいかぬというか、あるいは行政的には行政指導の面で緩和をしなければいけない面とか、あるいは場合によれば、農協法なりいろいろな法律があるわけですけれども、そういう法律改正も必要な状況になっておるのではなかろうかと私などは実は前々から考えておるわけでありますが、こういう点についてどういうふうにお役所の方はお考えになっていらっしゃいますか。
  42. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 私どもといたしましても、金融自由化進展対応しまして系統信用事業経営効率化を図りますために、もちろん組合員から預かった貯金でございますので、その健全性なり安全性にも十分配慮しながら、逐次規制緩和というようなこともやってまいってきております。  例えば、これまでも、農協貸し付け面での活性化を図りますために員外貸し付け対象範囲を若干拡大いたしまして、地域住民とか小規模事業者に対する貸し付けを行えるようにする、あるいはまた員外者への手形割引が行えるようにしたというようなこともございますし、農協の内国為替取引に係る員外利用の制限を五十七年の法改正で撤廃をいたしまして、これによりまして全国銀行内国為替システムへの加入が可能になった。またさらに、農協の余裕金運用効率化を図るための措置といたしまして、外貨建て預金によります資金運用を認めるといったような規制緩和も行っておるところでございます。  信連につきましても、私ども段階的に、経営の健全性とか安全性にも配慮しながら、逐次規制緩和というような措置も講じてまいってきておるところでございます。
  43. 田中恒利

    田中(恒)委員 今までも少しずつ問題ごとに行政的に緩和すべきものは緩和していらっしゃるということは一、二承知しておりますけれども、これは一遍洗ってみる必要があるのじゃないですか。これは確かに基本的な問題がありますからね。いわゆる専門金融機関として、特に農業水産業、林業、こういうところに視点を置いた性格があるから、何もかもぱっと広げてしまうというわけにはいかぬと思うのです。しかし現実問題として、そのことによって金融界を覆ってくる自由化の波の中でどうにもならないというようなことになったのでは、農林漁業金融機関全体が冷えてくるわけなんですよ。  だから私は、今言われたことは承知しておりますが、私もたくさん問題を持っております。幾らでもありますよ。一つ一つ言ったら時間をとるばかりですから言いませんけれども、それはあなたのところの専門家がよく知っておるはずだし、既に中金の皆さんなどとの間では、相互の連絡をとりながらいろいろな研究会などもやっていらっしゃうと思うんだが、今日の新しい情勢に対応するために、農協を中心とした組合金融の今の情勢に合わないものを一遍出してみて、そういうものは直せるものは直していく、行政指導でやれるものは直していくし、場合によれば法律改正をやらなければならぬ問題だってあると私は思うのです。そういうものを含めて一遍総洗いをしてみるということをしてはどうでしょうか。
  44. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 金融自由化の問題につきましては、これが系統信用事業に及ぼす影響、あるいはまた系統信用事業としてどう対処していくかということにつきまして、関係の団体に私どもが入りまして、研究会のようなものを持ちながら検討もいたしております。また、先ほど来お話のございますようないろいろな資金運用のやり方、それについての規制緩和の問題等につきまして、日常中金なり信連、協会とも私ども十分お話し合いをしておるつもりでございます。  そういう中で、今お尋ねございましたように、広い視点からこれからも問題を総合的に検討をし私どもなりに考えていくということについては、これまでもそういう努力はいたしてまいったつもりでございますけれども、今後とも、状況進展が急テンポであるだけに必要なことであろうと考えております。
  45. 田中恒利

    田中(恒)委員 中金の理事長さんに、これまた少し概括的な問題になりましょうが、今も局長さんの方から現状と問題点のようなもののお話があったようなことで、農林中央金庫、二十一兆円を上回る資金量を持って、今日本の金融市場の中ではある面では一番大きな役割を果たしておると私は思うのです。  今度また新しい機能が付加されることに伴ってその行動分野というのが広がってくるのだろうと思うわけですが、従来から、やはり農業、林業、漁業で集まった資金は農林漁業へ還元をしていく、これは上部団体の県信連にしても中金にしても非常に大きな趣旨である、こういうことであったわけですが、最近の状況からいくと、集まったお金がだんだん、農協で言えば単協で集まった金が信連に集まる度合いがどんどん大きくなっている。信連がまた中金に預ける。こういう預かり金を中金は、特に最近のいろいろな種別を見てみると、証券投資を中心にした方向がぐっと大きくなって、農民なりあるいは会員組織への貸し付け、あるいは従来関連産業といったようなものも相当な分野を占めておったが、関連産業も含めて、そんなに全体の資金量の中では多くもなくなって、今私が持っている資料では七兆一千億くらい、その他の金融機関の証券投資を中心にしたものは、国債などが出てきたものだからなおそうでしょうが十四、五兆円、こうありますね。そういう形で、これはまた今後ますますそういう傾向になっていく、その中から出た利益というか利潤はまた返していく、こういう形をとらざるを得ないという状況になっておるわけです。  その現状はわかりますけれども、やはり私どものように農村とか農業とかいうものに足を置く者からすれば、中金の膨大な資金が何とか農村へ直接還元するような方策はないのか、こういう期待が非常に強いわけです。今のお話では、要綱融資ですか、そういう形のものでたしか六百七、八十億ですね、既にやっていらっしゃると思いますけれども、しかしそんな程度のものじゃなくて、何か集まっておるお金を有効に農村に返さしていくようなことについて、思い切った新しい方策などをお考えになっていらっしゃらないかどうか、また、考えなければいけないのじゃないか。  このままいけば、それは金ですから、金は共通性が一番高いのだから、国際的な金融市場まで持っていってやれば、高いところへどんどん持っていけば、それは効率は上がると思いますけれども、それが果たしてそのままストレートに日本農業の振興になっていくかというと、必ずしもそうもならないように思う。だから、私は、何とかこの辺で農林漁業の今日行き詰まったこの事態をはね返していくために、今系統が持っているお金を何か有効にそういうものにぶつける方策を考えてもらわなければいけないと思うのですが、その点について、理事長でありますからこれは政策決定者でありますが、理事長さんの方で日ごろの業務を通してお考えがありましたら、この際御意見をお聞かせ願いたいと思うのです。
  46. 森本修

    森本参考人 先生の言われることは私もよくわかりますし、まことに同感であります。この数年来、系統全体として、農林漁業金融、特に農業金融に対して、あるいは農村の生活金融に対してできるだけ資金需要にこたえるような体制をつくり、あるいは融資の手続、条件その地やってみようということで、数年間、融資基盤確立運動というのを農林中金、信連、単協一体となってやってまいりました。その結果は、ある程度体制は整ったというふうに私は思っております。  しかし、何せ金融環境あるいは農林漁業環境、必ずしもよくはないわけでございまして、そういう関係から融資の伸びという点では他の資金量の増加に比較しますと相対的には伸びが少なかった、そこで、先生がおっしゃるように、全体の系統金融へ集まってくる資金量あるいは運用の中で、農林漁業に対する貸し付けの割合というのが低下してきておる、こういう実情であります。私どもも、農林中金あるいは系統金融は農村、農業を基盤として立っておる、またそれを専門にする金融機関でありますから、できるだけ農村のために、あるいは農家農業のために使えるようにしてもらえれば、これは一番ありがたいのだ、また、我々の体制の整わないことによってせっかくある資金需要にこたえられないということでは申しわけない、こういう気持ちがしております。  したがって、また六十一年度から組合金融推進中期方策というものを立ててやることになっております。その中で一つの目玉は、農業金融活性化運動というのを全国的に展開しようということになっております。  時間がありませんから簡単に要約して申しますと、農協にすれば、各事業がありますが、そういった事業に関係する人が一体となって、連携をとってきめの細かい融資の対応体制をつくる。それから、せっかくの制度資金がありますから、これが一番農村にとっては有利でありますから、特に近代化資金は系統資金を原資にしておりますから、また、一、二年前せっかく制度改正もやっていただいたわけでありますから、その近代化資金等の制度資金をできるだけ活用するような運動をひとつしよう。また、そういった政府の政策金融だけじゃなしに、系統としても独自の三段階一体となった要綱融資を拡充整備してやっていこう。仮称でありますが、農業であれば農業振興資金といったようなものをつくっていく。また、負債対策等も最近いろいろ問題になっておりますから、できるだけ農協の貸付管理といったようなものを十分整備をして、農家の固定負債が余り出ないような貸し付けあるいは営農指導というものができないかどうか、そういう営農指導体制もひとつ融資と一体となって備えていく。それから、負債整理資金といったようなものも系統独自で要綱融資としてやっていこう。  そういったいわば各種のメニューを総合いたしました農業金融活性化運動を六十一年度からやっていきたいということで、これは私どもだけではあれでありますから、信連協会なり全中なり関係の農業団体が寄り寄り相談して、一本になって各段階やっていこう、こういうふうな考えを今持って、せっかく詳細を詰めておるという段階でございます。
  47. 田中恒利

    田中(恒)委員 それで、私はきょうも聞こうと思ったけれどもあれですが、この間の金融の三法のときに、大臣佐藤農林大臣でしたけれども一つは負債対策ですね。負債対策をどうするかということが、当面活性化の前提に必要だ。そこで、その負債対策については正直言って資料がない、私も的確な資料を持っていない。大体負債とは何かという定義についてもいろいろさまざまである。だから、一遍お役所の方でそういうものを把握をしてみてはいかがですかと申し上げた。大臣は、いいことだ、やりましょう、こう答えてくれたのだが、それはどうなっているのか。  その後経過もよく聞いておりませんけれども、最近は、系統では、全中などは畜産の負債調査を全国的にどうもやっているようですが、そんなものをひとつ中心にして、そして系統金融だから、これはもう私が申すまでもない、理事長さんは十分御承知だろうが、これは三位一体になって、そこに農協の強さがあるわけですから、指導販売金融とこんなものがうまく組み合わせられて、再建計画なり、あるいは近代的な新しい営農群をつくっていくために、このグループに対してはこれだけの金を貸してやればやれる、そこへ指導陣営というのが食いついていく、そういう組み合わせが組合金融というか系統金融の場合はやれる条件を持っているのだから、それで進めれば私は今の危機を乗り切れると思うのです。  ところが、制度金融もそうですけれども、あなたのところの要綱融資なんかもそういう面が非常に強いのだが、やれ保証人である、やれ担保である、やれ負債が幾らあるか、そういう貸し付けの条件をめぐって、正直言って隘路があって思うようにならない。頭の中では、理屈ではみんなそう言うのだけれども、実際にはそういうものでペケになってしまうのですよ。だから、この際、理事長さん今言われた、三位一体になって活性化一つ体制をつくっていきつつあるということでありますが、そういう場合に、系統金融というか、特に農協とか漁協とかという協同組合組織は、信用貸しというか何か信頼をして、そして単位の地域の組合側に責任を持たせた形で思い切ったものを出さないと、余りごちゃごちゃした条件をつけられると実態に合わなくて効果が出てこぬという面があるのですよ。こういう点はぜひそういう運動の中で生かしていただきたいと私は思いますので、これは要望でありますから、私の注文として申し上げておきたいと思うのです。  それから、今近代化資金の問題が出ましたが、これは制度金融の中で特に系統資金を使って有効に活用させるということでいろいろ効果もあると思うのですけれども、しかしこの近代化資金も含めて、問題は、貸し付けが伸びないということは金利水準の問題なんですよ、いろいろ言っても。これからの競争激化の中で、やはり問題になるのは貸付金利だと私は思うのです。現実に今銀行とかいろいろなその他の信用機関が、農家経済の中で、農家の借り入れ比重がずっと強くなっておりますね。この十年ほどぐっと強くなってきております。これはやはり金利が安いですよ。特に短期は安いです。農協貸出金利というのはやはり高いです。数字としては高いですね。それは、長期であるし、非常に零細な資金を取り扱っておるわけですからコストも高くなるということもあるし、貯金と貸し出している金利との関係もありますね。だから全体的には高くないということになるわけですけれども、貸し出しそのものを見た場合には、最近は銀行などが農業投資をやり始めてきておりますが、非常に金利が安いですよ。  だから、金利水準の問題というのがやはり金融全体では一番大きな重要な問題で、我々素人にはわからぬ問題がたくさんありますけれども一つの大きなポイントですね。それを制度金融でもって利子補給で支えていくということは、この近代化資金を初め公庫資金などの特徴だと思うのですけれども、この金利補給制度というものがどうもどんどん後退をしてきておるように私は思えてならないわけですね。今度の近代化資金の金利はどういうふうになりましたか。この基準金利と末端金利をそれぞれちょっと説明してください。
  48. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 御案内のとおり、現在かつてない低金利時代に入ってきております。公定歩合も引き下げられるという中で、農業近代化資金につきまして、本年二回にわたりまして、公定歩合及び預貯金の金利の引き下げがございまして、基準金利を単協について申しますと七・五%まで五月一日から引き下げを行いました。それから末端貸出金利につきましては、一般が五・〇、特利が四・八五という水準に五月一日から引き下げたわけでございます。
  49. 田中恒利

    田中(恒)委員 それで一つ二つ聞きたいんだが、一つは、末端金利が五・〇、基準金利が七・五ですから二・五%の利子補給率ですね。これが半々で分けられるわけですけれども、この利子補給率は五月一日から新しくなった。それまでは二・九であったのが利子補給は〇・四%下げたわけですね。その分だけ利子補給金が少なくて済むということでしょう。末端金利は五・一%であったものが五・〇%になったのですから、〇・一%しか下がらぬということなんですね。  だから、自由化自由化といって非常に激しくなって系統金融が大分しぼみかけてきておるのですから、やはり制度資金で支えていくということをやらないと、農業金融の場合は、農政というのは基本的に同じなんで、政策、制度が必要だ。中金のことで、役員や何かでいろいろなことを議論してきたけれども、あなた方は基本的には公共性があるんだと言うわけだ。公共性があるということは、こういう意味も含まれておるのです。利子補給を〇・四も少なくして末端金利は〇・一しか下げぬ、こういうやり方で本当に農林金融活性化という方向に向かうのかどうかということについては疑問を私は感ずるのです。  特利の四・八五%というのは何で四・八五になったのですか。この根拠は何かあるのですか。
  50. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 利子補給の幅と申しますのは、基準金利と末端の貸付金利の差を補給するわけでございます。近代化資金の基準金利の方は、農協等の資金コストだとかプロパー資金の金利水準とか市中貸出金利の実勢等を総合勘案して決めるということでございますが、末端貸付金利は、政策金利体系の中での一つの均衡をとって定めてまいってきておるわけでございます。それで、政策金融の金利といたしましては、近代化資金のように利子補給をいたしまして金利を安くしておるものと、公庫資金のように財政資金を原資にしまして低利融資をしておるものと両方あるわけでございますが、この両方を通じまして一つの政策金融の金利の体系というものができているわけでございます。  それで、今回の金利の引き下げの中におきまして、例えば住宅金融公庫の金利、これは今内需拡大の一番の目玉になっておるわけでございますが、最近時点での引き下げで申しますと、その中で例えば中高層住宅の金利の六・四五というものは六・一五に〇・三%下がっておりますけれども、最も低い個人住宅の中の百二十平米までの個人住宅の貸し付けが五・四%から五・二五%ということで〇・一五%の引き下げになっておる。  五%の貸付金利、例えば開銀でございますとか中小企業金融公庫の代替エネルギーの促進のための五%の資金がございますが、こういうものにつきましては金利が高いときも金利を上げない、下げるときも下げないという固定運用の姿になっておるわけでございます。しかしながら、この農林漁業金融公庫の五%の資金、それからまた農業近代化資金の貸付金利につきましては、従来固定的な運用を高金利時代もやってまいってきておるわけでございますけれども、こういった金利の全般的な低下の中にありまして、少なくとも住宅金融公庫の先ほど申し上げました五%を超える資金の中の一番低いものの金利の引き下げ幅だけはどうしても下げるべきであるということで、これは財政当局とかなり長い時間の折衝を要したわけでございますが、そういう折衝をいたしまして、特利につきまして四・八五、一般は五というところまで、五%の壁を何とかして破るということで先ほど申し上げましたような金利の改定を行ったわけでございます。  もちろん、利子補給率というのは基準金利と末端貸出金利との差でございますので、また将来金利が反騰してまいるとい、ような場合には、政策金融としての趣旨を踏まえまして基準金利の改定を行いますとともに、適正な利子補給の確保に努める努力はやってまいるつもりでございます。
  51. 田中恒利

    田中(恒)委員 これは公庫の一般金利が四・八五になっておるわけですね。だから近代化資金の四・八五というのも公庫に合わせたんだろうと思うし、五・〇というのが末端金利として、いろいろ交渉はあったのでしょうがこの辺で落ちついたんでしょうが、確かに金利というのは私どもよく理解しにくい難しい問題がありますが、しかし、いずれにせよこの近代化資金の金利を下げていかないと、つまり利子補給の制度というものを後退させては、これはなかなか——それでも農協貸出金利というのは高い。制度金融でも、これからこういう自由な競争の中に入っていくと民間金融に勝てないというような状況が、短期的、部分的には現実に非常に出ておるのです。そういう分野は、畜産のえさの購入資金なんかをめぐってもどんどん動いておるわけですよ。  それをよく見きわめていただいて、それに対応するだけの制度金融としての機能を果たしてもらわないと、これはあなた方と私ども理解が違うかもしれぬが、農政は補助金はぶち切られてだんだん少なくなっていく、だから融資の方面では力を入れようじゃないかということであなた方も知恵を出されたんだろうが、この国会でも競馬の法案で改良資金の枠をふやしていくとかいろいろな努力をせられておりますけれども、しかし、それをやられても実際の金融機関間の競争の中では、制度金融自体もそんなにありがたがらない。まして本体の農家経済なり漁村の実態というのがもうどうにもならぬという形で追い込められておるというわけですから、意欲も少なくなっておるということですから、そういう中で活性化方向を出すということになれば並み並みのものではないと思うのですよ。  それが、今度の近代化資金の利子補給を見る限りにおいては、ともかく財政資金だけ圧縮していく、こういう努力が際立って出ておるので、〇・五だけ金利を下げるんだったら、半分半分くらいに末端と利子補給の間をしてくれるくらいの良心があって、優しさがあっていいんじゃないかと思うのです。全部末端金利下げてくれと言いたいけれどもそんなわけにもいかぬでしょうからね。その辺がどうも私は、制度金融というものについても果たして大丈夫なのかという不安を持たざるを得ぬのですよ。  前回の金融三法のときにもこれは私はあなたと大分議論をしたと思うんだ。今の公庫資金を中心とした制度金融の金利補給金というのは、大体何年後に何千億になるか、そういう計画があるでしょうが、そういうものを後退させてはいけませんよ、こう言ったのですけれども、この公定歩合の引き下げを契機にして出てくるものは、どうもやはり財政資金を圧縮していくという方向がだんだん強くなっていく、一方ではどんどん自由化が進んでいくということになっていくと、これは農林金融といったようなものの将来はどうなるのかということで実は私は不安でならないのですよ。そういう面がありますから、特にこの近代化資金が系統資金を原資としておるだけにここでちょっと申し上げておきたいと思うのです。  それから実は近代化資金の中で、これは短期でやらなければいけぬと思いますが、運転資金を何とかならないのかという声は非常に強いのです。私どもは余り上の方のことはよくわからぬけれども、地方を回って、個々の借入農家やあるいは単位組合の担当の諸君とよく話をする機会がある。そうすると、やはり運転資金で一番困っておる、設備資金はいろいろな形で最大限借金して一定の償還のもくろみも持ってやっておるけれども、運転資金が、特に大型の近代農業というか、あなた方が目指す農業経営体というものをつくろうとする場合に、毎日毎日の運転資金、畜産の場合えさ代ですけれども、そんなものが農協プロパーの一割なり、あるいは一割近い、あるいは一割を超すような高いので借りなければいけぬものだから、焦げついて、だんだん大きくなってもうどうにもならないでつぶれる、こういう傾向が多いので、運転資金についてこの近代化資金の種類の中に入れられないのかという声は非常に強いのです。  これはどうですか、何かいい知恵が浮かばないか。あなたの方も一遍十分調査してもらいたいと思うが、ひとつ近代化資金の種類の中に運転資金というものを、部分的には何かあるという話も聞いておるのだけれども、特に負債整理といったような問題は、これから金融政策の中では好むと好まざるとにかかわらず本格的に取り組まなければいけない状況になっておると思うので、そういうような政策目標と照らしてみて、この運転資金などについて思い切って対象にしていくというようなことを考えてみてはどうだ、こう思うのですが、提案でありますけれども、いかがですか。
  52. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 お答え申し上げます。  農業近代化資金制度は、農業者等の資本装備の高度化を図るということを目的にいたしておりまして、投資された資金の回収に長期を要する固定資本的な生産手段、構築物とか農機具とか家畜、こういうものを対象にしているわけでございます。  一般的に申しますと、経営のための運転資金と申しますのは、短期間に投下された資本が更新、回収されるというものでございますので、これはまさに原則として系統金融機関のプロパーの融資分野に属するものというふうに考えているわけでございます。  ただ、今御指摘ございましたように、運転資金でも比較的長期に寝かせなければいけない、あるいはまた規模拡大に伴ってかなり大量のものが要るというような点につきまして、現在、農業近代化資金の制度におきまして、果樹等の永年性作物の植栽育成資金、それから肥育牛の購入育成資金等につきまして、多額に及んで回収も比較的長くかかるというものについては近代化資金で融資の対象にいたしているわけでございます。特に経営の安定が求められている、また固定化負債が多いというふうな御議論も当委員会でもございました肥育牛につきましては、昨年の制度改正におきまして購入育成資金の償還期限と据置期間の延長を図ったということでございまして、経営資金の中でもそういった制度資金的な対応施設資金と一体となってやる必要があるようなものにつきましては、対象にいたしておるところでございます。  それからもう一つ、特に規模の大きな優良な農家の運転資金というようなことについて申しますと、先ほどもちょっと申し上げましたけれども農協組合員と申しますのも、かつてはかなりホモジニアスといいますか等質的でございましたけれども、今は随分分化をしてきております。貸出金利というようなものも全組合員平等ということで、かつては組合員が質が同じでございますから形式的な平等が実質的な平等にもなっておったという面があるわけですが、今のように分化をしてきますと、経営の内容あるいは組合事業利用度というようなものを勘案をして、そういった本当にこれから伸びていくような農家、そして組合利用度も高いというような農家に対して、ある程度本当に組合員としての地位に着目をした金利の設定をしていくというようなことも、農協信用事業を他の金融機関との競争から守る意味においても必要になってきているのではないか。  私どもも制度金融の面でもいろいろ努力、工夫を今後全くしないというわけではございませんけれども、運転資金につきましては、まさに系統のプロパー資金としてのいろいろな創意工夫がもう少しなされ得る余地があるのではないかという感想を率直に言って持っておるところでございます。
  53. 田中恒利

    田中(恒)委員 これは、大臣ちょっと外へ出られておったのであれなんですが、大臣に要求しておいた方がいいと思うのです。  利子補給が、財政事情これあり、公定歩合の引き下げ、金利の低下を通して、近代化の話をしておりますが、近代化資金などの末端金利と基準金利の関係で、利子補給はぐっと圧縮していくが末端の方はそれほど下げない。こういう形が、公定歩合をまた下げるかというような話が出かかっておる時代ですから、私はまた出てくるのではないかと思うのです。  そういう場合に、利子補給はやはり末端にできるだけ恩恵を与えるような、末端金利を下げてやるような、それは金利体系全体の関係がありますからそんなにむちゃくちゃなことはできないということもわかっておりますけれども、やはり厚みを持たすように努力をしてもらいたいし、近代化資金だけじゃなくて、全体の制度金融を支えておるものは利子補給制度でありますから、この利子補給制度の総額というものだけはきちんと、これはまあ大蔵との関係がいろいろあるわけでありますけれども大臣としては確保するために全力を注いでもらいたい、これが一つ。  それからもう一つは、あなたと話した方がいいと思うが、農地取得資金というのが公庫資金の中にあるのですよ。この農地取得資金というのは案外需要が多いのです。ところが需要が満たされないという状況が毎年ある。私は今ここに実績を持ってきておりますけれども、これは九三・四%か何かになっております。しかし、この農地というのはいつ手放すかわからないものだから、事前の計画にのせてですから、急に手放されたら、土地があるけれども、買いたいけれども金がない、頼みに行ってももう間に合わないという形でほうられておるのがあるので、実態はこれよりもずっと高いと思うのです。各県ともこの農地取得資金は需要が非常に高いとも言われておるのです。  それともう一つは、これは大臣、農政の一つの大きな問題として農地の流動化という問題がありますね。そして現実に日本の農業は専業農家が今一番えらいので、兼業農家、第一種から第二種になればなるほど生活的には水準が高い。専業農家がどうにもならなくなって活力を失っておる。こういうやる気のある農家に土地を集めるという政策はあなたたちもとられておるわけなんだが、現実にもう私どもの農村地帯へ行くと、土地は、このままにしておれば荒廃して、草ぼうぼうにして放棄されるという可能性がだんだん強くなってきておるのです、山村から中山間、あるいは平たん部の一部まで。そういう状況に日本の農業はなっておると思うのですよ。しかも、この土地問題は、時期的にはもうこの四、五年の間が山だと思うのです。そういう意味では、土地の取得資金というものを農業をやる気の連中と結びつけていくという政策は、非常に重要な農政の当面の急務だと思うのです。  そういう面でもこの土地取得資金というものの十分な枠を設定してもらいたいし、この公庫の資金は、業種別にいろいろなのがあるわけですけれども、これは計画と実績と書いておるのだが、この計画と実績は細かいことを申し上げあとなかなか実態には合うてないのですが、それでもやはり非常に需要の高いものとそんなにないものとの差が非常に多いのです。ありますね、これ、ばらばらで見る限りにおいては。一〇〇%を超すものも、これは漁業基盤ですから漁港でしょうが、そんなものもあるが、大体九十数%から六〇%、八〇%、低いのは二五%とか五〇%とか、非常にアンバラがあるわけなんですよ。もう長い間の経験で大体需要の高いものはこれとこれとこれというふうにわかっておると思うから、私はそういうところに集中してやはり公庫資金の配分を考えるべきだと思うのです。私などの県では全然ゼロというようなものも、県の資料を持ってきておりますけれども、あるのですよ。  ですから、特にそういう意味で、土地取得資金と自作農維持資金は比較的需要が高い、いろいち条件などもいいということなんでしょうが、そういうものにぜひ力を入れてもらいたい。これは資金の出どころの問題がいろいろありますね。ありますから、そういう条件もあると思うが、できるだけこの土地の流動化促進という視点にタイアップする政策として、公庫の土地取得資金というものを強化をしていくということは大切だと私は前前から思っておるので、これはぜひ考えてもらいたいと思うのですが、これは大臣から直接お聞きした方が早いと思うのです。
  54. 羽田孜

    羽田国務大臣 まず第一点の利子補給の所要の資金について確保するようにというお話でございますけれども、厳しい財政事情でありますけれども、私どもといたしましても、所要の利子補給資金については今後ともやはり確保できるように努力をしていきたいというふうに考えております。  なお、二番目の土地取得資金につきまして、確かに今これからの農業をさらに規模を拡大していこうという政策、これは私ども基本でございます。そういう意味で、農用地利用増進法等を活用しながら例えば土地の流動化を図っていかなければいけませんけれども、それとあわせて、やはり取得されたところの農地、特に後継者の皆さん方が規模を拡大するときに土地を取得することが一番望ましいわけでございまして、そういったものを助長させるためにはやはりこの資金が大事であるというふうに思っております。  ただ、今これが非常に余ってしまって、枠が満たされてないという話がありましたけれども、五十七年、五十八年、五十九年と見ておりますと、特に五十九年について申し上げても、これは所要の資金が七百十億ですか、当初計画ではあったわけですが、実際には七百五十六億二千五百万ということで一〇六・五%を達成しておるというのが現状であります。ただ、六十年においては九三・四%ということで少し低目になっております。これは現状でありますけれども、それ以前は割合と高かったということもございますので、私どもとしましても、やはりこれに必要なものはできるだけ枠の確保等にも努めていかなければいけないと思っております。
  55. 田中恒利

    田中(恒)委員 土地取得資金というのは末端の実情をもっと調べてもらいたいけれども、最近ぼんぼん急に土地を投げ出すというのが出てきておるのですよ。あなたのところは、土地取得資金を借りるためには農業委員会が一年間に一回か二回、事前の計画を出さなければいけないのです。それにのせなければ借りられないのですよ。最近のように突発的な土地の放棄が出てき、田舎ではあそこに土地が出たから買いましょうかという連中がおっても、取得資金はないということでいつもごちゃごちゃするのですから、実際はまだたくさん需要があるということを頭に置いて考えてもらいたいと思うのです。  時間が参りましたので一括して、関谷さんに来てもらっておるのですが、改良資金を六十年度から見直しをされたのですがこの実績はまだできてないかもしれませんが、関谷さん御承知のように、果樹栽培合理化資金というものができましたけれども、これは果樹の改植とか転換とか、こういうものが条件になっておるわけです。私などのところは、正直言って三、四年前から始めてもう大体一通り終わったという状況ですから、必ずしもこういう条件に合わないところが出ておるので、こういうところは、やったんだから貸してくれるんだったら借りたいがなという要望もあるわけです。そういうふうなものはどうなのか。いずれにせよ、全国的にはまだあれですか、改植や高接ぎなどをそういうところは今からまだどんどんやっていかなければならない状況なのか。私のところは果樹については少し早い方だから早いのかもしれませんけれども、私のところの経験では、今ごろ出ても終わってしまっておるじゃないかという声が案外ありますよ。それから、野菜生産高度化資金などについては、いろいろな条件があって、特に雨よけの施設がどうだこうだということがあってなかなか実態に合わないという声が非常に強い。あるいは畜産の資金は非常に足らない。生活改善資金はやめたけれども、これは需要が非常にある、しかし、もうやめましたということでお断りしておる。こういうことであるし、経営規模拡大資金というのはなかなか需要が出てこぬ、これは指導も不十分なのかもしれませんけれども、そういう問題がある。昨年議会でどうだと聞いてみると大体共通してそういう声が出ておりましたから参考までに申し上げて、何かあなたの方で一年間やられてこの改良資金について今後改めるべきことがあれば改めてもらいたいと思っておるのですけれども、これは非常に有効な資金であるし、今度ああいう形で枠も相当大きくなるわけですから、最も効率的に使ってもらいたいと思うから、この点だけちょっとお尋ねしておきます。
  56. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 農業改良資金につきましては、昭和六十年度に従来三百五十億円くらいの貸付枠を四百六十億円に拡大しますと同時に、去年法律改正をお願いして資金の幅を広げたわけでございます。今、田中先生のお挙げになりましたような諸問題について、私どもも六十年度の実行については非常に関心を持って見ているわけでございますが、率直に申し上げますと、まだ六十年度一年度ではいろいろな改正の効果、特に新しく設けられた資金が十分に活用されていない、こういう事態があるようでございますので、六十一年度以降さらにこの辺の新資金の活用ということについて考えてまいりたいと思います。  具体的な資金では、果樹栽培合理化資金については、今お話がありましたようなことで既に大分転換は進めていただいておるわけでございますが、先般出しました果樹農業の新しい基本方針に照らしましても、さらにこれからの品種の多様化とかそういうことが必要でございますので、この資金の需要は強いということで十分活用を図ってまいりたいと思います。  野菜につきましては、昭和六十一年度に従来の雨よけ栽培等の資金のほかに若干資金の幅を拡大する、こういう改善を行うこととしております。  畜産については、御承知のように大変需要が強いわけで、消化状況も非常によろしいわけですが、さらに六十一年度については競馬の積立金からの繰り入れも活用しまして資金枠を約二倍に拡大する、こういうようなことをやっておりますが、いずれにしましても非常にいい資金なんでございますが、六十一年度以降もさらにこの辺の活用という面については努力すべきことがある、こういうふうに考えております。
  57. 田中恒利

    田中(恒)委員 時間が参りましたので、農林中央金庫改正点についていろいろありますけれども、全体として、金融事情は非常に激しい競争の中に置かれて、最近の系統金融の特に貸し出し機能が低下をせざるを得ない、こういう状況になっております。それに活を入れるためには、やはり制度金融というものが本格的に動かなければいけない。  そういう意味で、利子補給制度といったようなものを後退させないように特に役所としては努力をしてもらいたいと思うし、それから、中金は新しい分野で余裕金の運用については幅広い金融活動が可能な状況になってくるわけでありますけれども、ぜひやはり原点を押さえて、系統が本当に一体となった農林漁業者活性化を求めるような積極的な貸国政策というものを、系統独自の立場からも考えてもらう必要があるし、金融自由化という荒波の中で、全体としてこの組合金融の持つ問題、そして行政的に新しく展開をしなければいけない点については役所の方がさらに一層強く問題を煮詰めて、必要な法律改正も含めた改善、改革を進めていただきますように特に御要請をいたしまして、質問を終わらせていただきます。
  58. 大石千八

    大石委員長 武田一夫君。
  59. 武田一夫

    ○武田委員 私は、農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する法律案農林中央金庫法の一部を改正する法律案につきまして、これまでいろいろと論じられた問題をなるべく避けまして質問をしたい、こういうふうに思います。  まず最初に、貯金保険法改正法律案につきまして質問をいたします。  農水省は、昭和五十九年の七月、農水産系統金融問題調査検討会というものを設置し、金融の自由化等経営環境変化系統組織経営に与える影響と対応策を調査検討してきたわけであります。そして、その中間的検討結果としまして、金融の自由化が系統金融に及ぼす影響、問題点についていろいろな予測をしております。  その中で、預金金利の自由化について取り上げてみますと、一つには「系統金融機関の本来の分野である小口預金の金利の自由化については、他の中小金融機関、郵便貯金との競合が一層激しくなる。」それから二番目には「系統金融機関は、農水産業協同組合として、経済、営農等の総合的な事業活動を行なっており、他の金融機関と異なり総合的な事業体としての対応方策が要請される。」という報告をしております。  そこでまず第一点、お聞きいたしますが、系統金融が特にこの郵便貯金との競合でいろいろと苦労しておりまして、農協の皆さん方にお会いするとこの問題が必ず出てくるのであります。果たしてこの郵便貯金との競合に耐え得る状況であるのか、あるいはまた競合の激化に勝ち抜いていける、そういう方策はあるものかどうかということを我々現場を回りますと聞かれ、またそのことに関心を持っているということでございますので、この点についてまずひとつ大臣から御答弁をいただきたい、こういうふうに思います。
  60. 羽田孜

    羽田国務大臣 郵貯につきましては、その貯金量が農協を含めた民間金融機関の個人預金量の伸びを大変上回って増加していること、こういうことを背景にしまして、官業が民業を圧迫するという論議が一部にあること、これは私も承知いたしております。郵便貯金を含めた政府の直営事業につきまして、先般の臨調の答申におきまして「官業は民業を補完しつつ適切な役割を果たしていくことを基本とする」そういう旨の指摘がされたわけでございます。この趣旨が尊重されるべきもの、またしていかなければいけない、まずそのことを申し上げたいと思います。  なお、他方、各業態の金融機関にはその存在目的に応じて商品特性などに差異が設けられているものでございまして、これを比較する際には各業態の特殊性、こういったものを総合的に勘案する必要があるというふうに考えております。  農協につきましては、その協同組合としての特殊性に応じて商品の金利の〇・一%優遇利率や反面での員外利用規制などが設けられておりまして、またその所在地が主として農村部であることもございまして、従来他業態との間に一種のすみ分けというんですかが相当程度存在していたものと考えられます。しかしながら、最近における金融自由化進展や預金者の金利選好の高まりなどを背景にいたしまして、農村部におきましても郵便貯金を含めた他の業態との競争が非常に激しくなっておるというのが実態であろうというふうに思います。  このため、農林水産省としましては、農協信用事業が他業態に伍して競争力を保持できるように経営体質強化しなければならないというふうに考えております。そのために、特定の金銭信託、外貨預金等による農協及び信連の余裕金の運用方法の拡大、また二番目として都市部の所在の信連を中心とした指定信連制度の創設による貝外貸付枠の弾力的な拡大などの措置を講じてきたところでございます。また、予算面におきましても、六十年度から、金融の自由化が農協信用事業及び農協経営全体に与える影響の分析検討並びに農協信用事業における機械化、情報化を推進するに当たっての問題点などの調査検討、また各県を通じる個別農協信用事業に対する経営改善指導などを実施しておるところでございます。  農林水産省としましては、今後とも我が国の金融環境変化及び他の金融機関対応状況農協系統組織の取り組み状況などを勘案しまして、円滑な金融の自由化対応が図られるように、必要に応じてその対応を図っていかなければならない、このように考えておるところであります。
  61. 武田一夫

    ○武田委員 郵便貯金の場合は制度面でいろいろな恩典があって官業が民業を圧迫しているという、今の大臣お話、これは一番出てくる基本的な質問というよりも不満というか、そういうものが農協農家の人に多い。制度面で郵便貯金枠も四つ、五つくらいのそういう恩典があるわけであります。例えば税制上の問題、あるいはまた奨励手当制度、要するに歩合制によって奨励金、手当をもらって貯金増加を図っているとか、あるいはまた監督官庁が事業者を兼ねているという非常に便利な条件を持っている。また定額貯金なんというのは民間では提供不可能なもの、ユニークなものを持っている。いろいろあるのですが、特に農協農家の人たちが不満にしているのは、要するに郵便貯金の場合は諸税の免除がある、あるいはまた源泉徴収義務及び税務調査が導入されていない、こういうような問題が話題の中に出てくる一番の不満なんですね。例えばこういうことがあればどんなに努力しようとも相当痛めつけられるのはもう見え見えだ、こういう点でもう少し我々農協の立場も理解してほしいということでありまして、そういうことを法改正の中にあって検討していく一つの課題として取り上げてもらえないかと私は思うのであります。その点はいかがでしょうか。
  62. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 確かに御指摘のとおり郵便貯金の恩典としまして最長十年の定額貯金があるとか、あるいは官営事業でございますから当然のことながら法人税、事業税が免除されているというようなことがございます。  ただ、先ほど大臣からもお答え申し上げましたように、一方におきましてそれぞれの金融機関、それぞれの特質に応じた力なり特殊性というものも持っておるわけでございまして、系統信用事業につきましても協同組合ということでの法人税率の優遇でございますとか、貯金につきましても定期貯金で〇・一%の利率を上乗せでまるというようなこともございますし、また総合経営であるということも事業運営のやり方いかんによっては信用事業に大きな力を与えるものになるわけでございます。  私どもとしましては、そういった農協の力をフルに発揮できるように、そしてまた先ほど来お話が出ておりますようないろいろな資金運用面での規制緩和というものも含めまして、農協信用事業が他の業態の金融機関、そしてまた郵便貯金というようなものとの競争に十分伍していけるように、各般にわたってこれからも努力をしてまいりたいと考えております。
  63. 武田一夫

    ○武田委員 系統金融としてもいろいろと自主努力といいますか自助努力というものが必要であります。しかしながら、そういう中にあって今申し上げたような一つの問題を提起したわけでありますが、今後農協漁協経営基盤の強化あるいはまた機械化等の事業実施体制整備強化とか組合員との結びつきの強化、特に後継者の問題が大きな問題になってこよう、こういうことについては政府としても十分な指導監督をされながら特段の配慮をしてあげないと、相当押し込まれていく、こういうことになりかねない、そういう懸念をしておるわけでありますから、どうか十分なる体制を整えて他種金融機関との競合に耐え得る体質をこの際しかと検討して手だてをしてほしいな、こうお願い申し上げます。  二番目に質問いたしますが、貯金保険制度というのは従来銀行等対象とする預金保険制度と同内容のものとして設けられたわけでありますけれども、今回の改正当たりましてはどのような点で農漁協特殊性に配慮しているか、この点についてお尋ねをいたします。
  64. 羽田孜

    羽田国務大臣 今回の貯金保険制度に資金援助業務を設けるに当たりましては、金融制度調査会答申におきまして、預金保険制度の拡充整備に関し、農水産業協同組合貯金保険制度についても「その特殊性に配慮しつつ、基本的には同様の方向検討を行うことが望まれる。」とされていることなども勘案いたしまして、次の二点で預金保険制度と相違した制度といたしております。  まず保険機構相互援助制度を経由しての資金援助を行う場合の対象として、合併のほかに信用事業再建措置を加えております。これは農漁協につきまして、経済事業などを兼営している、一緒にやっているというようなことから、現実には隣接組合以外との合併は見込めないということがございます。また制度的に異業態の金融機関との合併の道がない、こういう特別な理由からい単独再建必要性が高く、また銀行などに比べても相互援助制度が充実しておるということのために設けたものでございます。  また、資金援助を受けるための手続でございます適格性認定を行う者を、主務大臣ということではなくて都道府県知事といたしております。このことも農漁協地区制協同組合であること、またその資金の規模銀行なんかに比べましても小さいということもございます。そういうことから、都道府県知事経営実態などの把握を行うことが最も適当であるというふうに考えてこのような措置をすることになったわけでございます。
  65. 武田一夫

    ○武田委員 この制度というのは、貯金者等の生活保護ということと同時に小規模農業漁業経営者の経営の安定保護という大きな役割も持っているわけでありますから、そういう面から十分な配慮をしなければならない。特に今農村、漁村を取り巻く環境が非常に厳しいという状況の中にあっては、一段と、保護と言うと誤解を受けますが、やはり大変なそういう状況を生き抜くための温かい擁護が必要だろう、こういうふうに私は思うわけであります。  そういう意味で、保険料率の算定とかあるいはまた保険金支払いなどというような制度の運営に当たっては、やはりそういう農業漁業特殊性に十分配慮した取り組みが必要だと私は思うのですが、この点についてはいかがでしょうか。
  66. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 基本的には制度の枠組みはこの法律によってできるわけでございますけれども、その運用当たりましても、当然これはやはり系統組織、そしてまた、その中で取り結ばれております相互援助制度というものを通じて行うわけでございますので、そういった実行の上におきましても、農水産業実情にも十分配慮してやってまいりたいというふうに思っております。
  67. 武田一夫

    ○武田委員 次に移ります。  これまで実際に経営困難が生じた農協につきましては自主的な相互援助制度によりその救済が図られてきたところでありますが、今後ともその役割の重要性は変わらないと思います。そこで、国としても相互援助制度の充実について何らかの施策を講すべきではないかと思うのですが、この件についてお尋ねいたします。
  68. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 相互援助制度は、従来、行政として直接関与してまいってきた制度ではございませんで、系統組織の自主的な財源負担による相互援助の制度として設けられておるものでございます。しかし、現に経営困難状態に陥りました組合の救済を通じまして信用秩序維持の観点から非常に重要な役割を果たしておりまして、今後ともその位置づけが維持されていくものと考えております。このため、今回の貯金保険法改正当たりましても、この相互援助制度を経由した資金援助の方式を設けるというふうにしたわけでございます。  私ども農林水産省といたしましては、こういった相接制度の位置づけから、金融自由化進展によりまして経営環境が厳しくなることに応じて、その内容が一層充実したものになっていくことを期待しているわけでございまして、いわば今回のこの法改正の内容そのものが現在の相援制度の一つのまた新しい位置づけ、強化策にもなるのではないかというふうに考えておるところでございます。
  69. 武田一夫

    ○武田委員 特に全国漁協信用事業相互援助制度を見ますと、加入率は七八・四%、ということは、二一・六%のものはここに加入していないというよりも、経営が非常に悪化しているということで加入させられないのじゃないか。こういう制度の恩恵を受けられない方々への取り組みというのも、やはりこれは放置しておくわけにはいかない、こう思うのでありますが、こういう方々に対する対応というものについてはどういうふうにお考えになっているのか、この点についての御答弁をいただきたいと思うのです。
  70. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 確かに相互援助制度に未加入の組合がまだ相当数保あるわけでございますが、やはりこういった組合につきましては、できるだけ相互援助制度に入っていただくようにしていただくということがまず一番いいわけでございますが、どうしてもそれが困難な場合に、相互援助制度に準ずるような仕組みをつくっていただくことによりまして、今度の貯金保険法改正によります資金援助対象になり得るような方途を講じていただければということも考えるわけでございます。  それから、相援制度に入っておりませんでも、合併によりまして経営の困難を解消をするという場合には、貯金保険機構からの資金援助の道があり得るということも、一言つけ加えさせていただきたいと思います。
  71. 武田一夫

    ○武田委員 四番目にお尋ねいたしますが、農業または地域の状況次第では、貯金保険機椎の対応能力を超えるような全面的経営困難の事態考えられるわけでありますけれども、この場合の対応をどのようになさるつもりか、この点について御答弁をいただきたいと思います。
  72. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 貯払い停止あるいはそれに至るおそれがあるような事態ということを考えました場合、確かに当該組合経営の内容なり事業規模という点からいたしますと、最近、協同組合の中でもかなり大型のものも出てきておりますので、規模としては非常に大きなものが出てくる可能性ということも考えられないわけではございません。ただ、どういう対応をするかということにつきましては、資金援助にもいろいろな対応の仕方がございますし、それからまた、合併単独再建かというような選択もございます。ケース・バイ・ケースに判断をしていかなければならない問題でございますが、お尋ねの趣旨の一つは、現在の保険機構の資金基盤というようなもので十分対応ができるかどうか、こういったことにもあろうかと思います。  この点につきましては、今回、いわば保険事故の発生予防措置というようなところまで業務を広げる、そのための資金援助の中に利子補給というような手段も私ども考えているわけでございます。一%の利子補給であれば、十億の資金を年々使ってまいりますれば一千億の資金量での対応ができるということになるわけでございまして、そういった利子補給による緊急融資といったものも含めて考えますれば、貯金保険機構の持っております財源というものも、利子補給という形でそれの何十倍もの資金規模を動員できるといってとにもなるわけでございます。
  73. 武田一夫

    ○武田委員 この法案については以上で質問を終わらせていただきますけれども、政府としましては、農協漁協等の貯金者の保護と農漁業者経営の安定のために、この法案の改正一つの契機にしまして、万全の対応をしていただきたいということを要望して、次に移らしていただきます。  次に、農林中央金庫法の一部を改正する法律案についてお尋ねいたします。  現在、金融の自由化が急速に進展しており、小口預金金利の自由化、貸出金利の低下等により、特に中小金融機関たる農林漁業系統金融機関は、調達コストの増高、運用利回りの低下などによる利ざやの縮小など、大きな影響を受けると考えられております。さらに、最近においては、若い世代を中心にいわゆる農協離れが進み、農協利用率が低下しているという事態もあります。こうした状況のもとで、系統全体として金融自由化への対応のあり方が問題になってくるわけであります。  そこで、きょうは中金の理事長さんにもおいでいただいておりますので、農林省当局と同時に御答弁をいただきたいのでありますが、この系統金融金融自由化についての対応というものはどうあるべきかということについての御所見を、まず最初にお尋ねをしておきたいと思います。
  74. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 金融の自由化の進展によります系統信用事業への影響につきましては、金融自由化の中身として金利の自由化と業務の自由化というふうに大ざっぱに申して二つに分けられようかと思いますが、金利、特に預金金利の自由化は金融機関の調達コストのアップ、そしてひいては金融利ざやの縮小を招くおそれがあるということが一つございます。それから業務の自由化というのは、最近全体的に資金需給が非常に緩和しているというようなことも加えますと、競争が非常に厳しくなり、そしてまた系統金融のシェアの低下という影響が出てくるおそれがあるということでございます。特に総合農協の場合、収益構造が信用共済事業部門にかなり依存しているというようなことがございますので、農漁協経営基盤にも影響を及ぼす可能性考えられるところでございます。  こういった金融自由化にどう対応していくかということにつきましては、一つ経営体質強化しまして事業運営効率化していくこと、それから、資金運用力なり収益力の強化を図っていく、この二つを通じまして利ざやの縮小というようなものに対しての対応を図りながら、組合員との紐帯を強化し、また、事業体制機能整備を図って、組合の地区の中にございます組合員を生活、営農の両面におきましてしっかり把握をしていくということが基本ではなかろうかというふうに思っております。  系統の中におかれましても、昨年十月の第十七回全国農協大会でそういった方向でのいろいろな議論が行われたところでございますし、また若年層を中心とする農協離れにつきましても、各種の事業活動を通じてこの結びつきを強化していくというような方向も打ち出されております。私ども行政の側としましても、こういった系統におきます問題提起なりあるいはそれへの取り組みというものを、行政としてできる範囲におきまして支援をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  75. 森本修

    森本参考人 今、経済局長からお答えがありましたことにほぼ尽きておるのでありますが、私ども金融自由化でどういう影響が来るだろうかということは、三つに分けてというか、三つの態様の影響があるだろう、こう思っております。一つは、競争が激しくなって事業量が伸び悩む心配。二つ目は、先ほど御指摘がございましたように利ざやが縮小して、金融業務の収益性といいますか、そういうものが低下するのではないかという心配。三つ目は、金利なり資金の変動が非常に激しくなるあるいはリスクが増加する、こういった影響。三つほどの影響があるのではないかというふうに思っております。  基本的に系統金融として対応していきますところの考え方は、私どもは他の金融機関とは異なった組合金融という特色を持っております。したがいまして、その組合金融の特色をもう一回よく振り返って、特色としては人的総合ということでありますから、組合員なりあるいは地域の住民との人的な紐帯をできるだけ強めるように努力をしようということ。それから、人的な結合ばかりでは今の利用を確保するわけにはまいりませんので、利用者のニーズにできるだけ応じるような機能を備えてサービスを強化していく、これが非常に大事なことではないかと思っております。  それから二番目に、経営効率化に努めなければならぬ。やはり資金コストも自由化によって上がってくる心配はありますけれども、フローの資金などをできるだけ多く集めて全体としては資金コストの上昇をできるだけ抑える、あるいは人員なり店舗なり、そういうものについてもできるだけ経費の上昇を抑えて効率化をしていく。逆に運用面についてはできるだけ運用力を高めまして効率的な運用ができるようにしていって、先ほどの利ざやの縮小に対応をしていくということ。  それから、何といいましてもやはりリスクが増大してまいりますから経営の基盤を強めなければいかぬ。そこで先般御配慮をいただきました合併促進法等を活用いたしまして農協合併を進めてまいる、あるいは自己資本なり内部留保を充実して強い財務体質をつくっていく。また執行体制、人的な養成等につきましても、今後の金融を専門的に運営していくにはどうしても人を養成しなければいかぬ。そこで私どもは人づくり三カ年計画というのをつくりましてできるだけ専門家の養成に努力するというようなことを総合的に考えまして、今後の厳しい自由化の情勢に対応してまいりたい、そういうふうに思っております。
  76. 武田一夫

    ○武田委員 いろいろときめ細かい対応を今後なさるわけでありますが、金融の自由化というのは一面で言えばこれは選別の時代ということですから、やはり利用者から選別される体制をつくるということが必要である。その中に局長あるいは理事長が話された内容を一つ一つしかと定着させていく努力をしていく必要があると思います。  そういう意味で、今後非常に重要な問題は、やはり一つは知恵の時代だと私は思うのです。だから新商品の開発などの努力、そのためのアドバイスを国としてもしてほしい。また機器の増強というのは今後また必要です。相当金もかかりますから、こういう面での相談にもしっかり乗ってやらなくてはいけない。それから総合力強化というのはやはり必要だと思います。そういう点では業務提携、合併、これは今も話があったように一日も早くしっかりしなくてはいけない。さらにもう一つ、これからは個性化というものが必要ではないか。やはりそういうところのきめ細かな対応というのが農協を取り巻く周辺に要求されると思いますね。そういう努力農協サイドあるいはまた農協信用事業の課題として必要だと私は思いますので、こういう面のアドバイスあるいはまた手当てを国としてこの際十分にしてほしいというふうにお願いをしておきたいと思います。さらにまた、今理事長から話のあった人材の確保、これは特に必要になってくる課題だろう、こう思いますので、優秀な人材がそこに集まり、その体制が一層整備されるように心を砕いてほしいということもひとつお願いをしておきたい、こう思います。  そこで二番目に質問をいたしますが、農林中央金庫というのは単協あるいは信連の頂点に立って系統金融の全国機関としての役割を果たしているわけでありまして、零細な農林漁業者の経済的、社会的地位の向上を図ることを目的とする政策性の非常に強い組織だと私は思っております。そのために、昭和四十八年の改正においても、その存立を担保する見地から政府出資規定を存続させるなど特殊法人として位置づけしてきたわけであります。こういうような経過にもかかわらず、今回政府出資規定を削除して民間法人とすることの意義というものをどのようにお考えなのか、大臣から御答弁をいただきたいと思うのでございます。
  77. 羽田孜

    羽田国務大臣 今回の法改正におきまして、臨調答申を踏まえまして農林中央金庫の民間法人化を図るために、出資資格者から政府を削除するとともに、金融情勢の変化に応じまして公共的な役割を果たし得るよう業務運営に対する規制整理合理化などを図るための措置をともに講ずることにしたことであります。  しかしながら、このような民間法人化をいたしましても、農林中央金庫が農林漁業系統金融の最終的な資金調整のための全国唯一の機関としての地位と公共的役割を有しておるなどの基本的な性格は変更するものではございません。したがって。今後農林中央金庫は、金融情勢が厳しい中でも、系統資金と外部経済との接点としての役割を的確に果たすことが期待される、このように考えるところであります。
  78. 武田一夫

    ○武田委員 民間法人としてスタートするに当たりまして大事な点は、現下の経済、金融構造の急激な変化の中で、農林漁業協同組合の全国金融機関としてその使命を全うするに足る業務機能というのが整備されているのかどうかというところが私は大きな問題、また重要な問題だと思うのでありますが、この点についてどのようになっているのかお聞かせいただきたいと思います。
  79. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 今回民間法人化のための改正をいたしますと同時に、最近の金融情勢の変化、そしてまたそれに伴います所属団体のニーズあるいはまた国民経済的なニーズというものにこたえますために業務規定の整備充実を図る、また、この際、不要と思われるような規制についてはこれを見直し、また廃止をしていくということで、業務規定関係の改正もあわせて行うことにいたしているわけでございます。  ただいま大臣からもお話ございましたように、農林中央金庫は所属団体への金融上の便益の供与を第一義的な使命としているということにつきましては変わらないわけでございまして、今回の改正におきまして拡大をされる業務あるいは新しく付加をされます機能というものにつきましても、いずれも原則として貸し出し先等に取引先を限定するなど、農林中央金庫基本的な性格にかなう範囲内で行い得ることとするように考えておるところでございます。     〔委員長退席、衛藤委員長代理着席〕
  80. 武田一夫

    ○武田委員 今後いろんな中金のあり方の中で、経営の健全性を維持するという問題、やはり十分な配慮をしていかなければいかぬ。そのために中金としましても組織強化とか事業拡大あるいは経営体質の刷新、あるいはまた農林漁業者の期待にこたえる系統独自の低利融資の強化ども検討の中に入れまして、農林漁業の融資の活性化のために十分効果が上がるような取り組みを私は要望しておきたいと思います。  三番目に質問いたしますが、最近の農林中央金庫の所属団体貸し付け状況約一兆三千億円を見ますと、所属団体外の者への貸し付け約七兆七千億に比べてこれは著しく少なく、また近年において減少の傾向にあるということであります。この原因はどこにあるのかという問題。それから、こういう状況というのは農林中央金庫の本来の使命にかんがみて問題ではないかという指摘があるのですが、この点についていかがお考えか、理事長農水省にお聞きしたいと思うのであります。
  81. 森本修

    森本参考人 私ども内部でいろいろ貸し付けの分類をいたします際に、今お話がございました所属団体貸し付けというのがございます。これは農林中金に出資をしている団体に対する貸し付け。農林漁業に直接携わっております団体はまだほかにもございまして、出資の資格はあるけれども現に出資をしていない、あるいは農林漁業団体でつくっております共同の会社といったようなもの、また直接私どもは農林漁業者に対して貸し付けをするというような道も認められておりますから、農林漁業者に対する貸し付け、こういった農業あるいは林業、水産の関係の貸し付けにもいろいろな態様がございます。それを総括して、私ども所属団体貸し付けを中心にした系統関係貸し出しというふうに実は呼んでおるわけでございます。  それの状況を見ますと、絶対額は減っておりません。むしろふえております。しかし、先ほど御指摘がございましたようなことで農林中央金庫の資金量が全体として非常にふえてきておますから、貸し出しもそれに対応して努力をしてふやさなければならぬということで貸し出しは全体としてかなりふえる。しかし、系統関係貸し出しは絶対額はふえておるけれども全体の貸し出しにつれてはふえない、したがって、その割合が減ってくる、実はこういう実態になっておるわけでございます。  なぜそういうことになってきておるかということでございますが、何といっても農林漁業系統金融の資金量が充実してまいりまして、私どもの方へ預けていただいておる金が非常にふえてきておる。それに比べて、私ども系統に対して資金の調整として貸し付けをする、あるいは信連、単協の補完をして貸し付けをするというようなものが相対的に減ってきておるというようなことによるわけでありますが、またその背後には農林漁業の最近の情勢といったようなものも伏在しておると私どもは思っております。  そういうことで、相対的に減ってきますのは、周囲の環境といいますかそういうものに左右されておることが根本的にはその原因ではないかと思っておりますが、私どもとしては農林漁業の団体の中央金融機関として、あるいは農林漁業の専門の金融機関という立場からいたしまして、資金需要のある者に対して私ども体制が整わないことによって十分応じ切れないというようなことがあっては申しわけないわけでありますから、先ほど来申し上げておりますように、系統全体としてここ数年、農林漁業融資あるいは生活資金融資について融資基盤確立運動というのを展開してまいりまして、そういった資金需要に対してできるだけ対応できるような体制を整えながらやってまいりました。しかし、御指摘がありますように、なお努力をしなければならぬ段階だと私は思っております。  したがいまして、先ほど御質問にお答え申し上げましたようなことで農業金融活性化運動というのを今後系統全体として展開をいたしまして、系統全体の貸し出し、また金庫の系統貸し出しが資金需要に応じて十分対応できるように努力をしてまいりたい、こういうふうに思っております。
  82. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 森本理事長からお答えがございましたように、確かに所属団体貸し出しが伸び悩んでいるということがあるわけでございますけれども、これは末端の農林漁業者の資金需要が停滞をしております反面、総じて信濃連、農協等の所属団体の資金が充実をしておるということで、農林中央金庫への借り入れ依存度が低下をしてまいってきているということが大きな要因になっているというふうに考えております。  農林中央金庫としては、所属団体に対して貸し付け等の金融の便宜を図るということを第一義的な使命として業務運営をなされているわけでございますが、近年におきましては、今申し上げましたような状況から、系統組織を通じまして集積された資金を外部経済との接点に立って運用する、そしてまた、その収益系統の中に還元するというような機能も持つに至っているということでございますけれども、低利の資金を所属団体あるいはそれを通じて農林漁家に供給をしていくという農林中央金庫の第一義的な使命につきましては、これまでも要綱融資等の形でやられてきているわけでございます。今後とも、今理事長がお答えになられましたようないろいろな対応を含めまして、所属団体のニーズに的確に対応していくよう、私どもとしても十分指導なり支援をいたしたいというふうに考えております。
  83. 武田一夫

    ○武田委員 原因の一つに周囲の環境の厳しさがありますね。これは私も認めますが、そのほかに、やはり資金運用効率化のみを追求し過ぎている一つの姿ではないか、こういう業務運営の姿勢というものを指摘する人もいるわけであります。私はここでそういう指摘というのも素直に受け取ってもらいたいと思うのですが、もっとお金の運用、活用の面で、農林漁業活性化、地域経済の発展のために、もっともっと反面で活用させるべきものがあるというふうな気がしてならないのです。  例えば今四全総というものが出てきますね。地方の農村を中心とした定住圏構想というものを考えると、どうしてもそこに出てくるのは一次産業です。農山村の活性化というのはどうしても必要なんです。若い連中をそこに定住させるということになりますと、いろいろな仕事をするにしても非常に予算的に厳しい。こういうときにもっともっと活用する方法をひとつみんなで研究していったらいいんじゃないか。私は北東公庫の連中にもよく言うのです。北東公庫の場合は大口、三億とか四億とか規模は大きいわけです。これなどもかなり活用しまして、企業あるいはまた観光、いろいろな地域に結びついた仕事もやっております。ですから、こういうものとあわせて、農林中金もそういう関係機関ともう少し話し合いをしながら、どういうところに北東公庫の金が——この面には金融公庫というものをひとつ考えてほしいと思うのです。  例えば非所属団体の中に農林水産業者という項目がありますが、これは五十九年度で八百億貸し出している。それから、施設法人、特別貸出法人、農山漁村整備法人、関連産業法人、そのほか締めて七兆六千八百四十八億、先ほど七兆七千億と言ったのはこの数字になりますが、これは五十八年度と比べると約七千百億ぐらい伸びておりますが、これは非常にいいことだと思うのですよ。  ところで、私がたまたまこういうものはどういう中身かというのを聞いたとき、農山漁村整備法人、これは地方公共団体、都道府県なんかにお貸しして、道路公社などが入っていろいろな公共的な仕事をする場合にお貸しするんだ。では大学はどうなんだと言ったら、大学はだめだと言うのです。特に私立大学はどうなんだと言ったら、だめだ。今の中央志向型の学校を地方に分散させて、大学を地方に誘致しようとする運動が非常に盛んです。特に私学は地方に大学を進出させたい、これは東北なんかでも結構あるわけですが、こういうようなときにこういう方々に便宜を図る。そこにまた水産学部とか畜産学部とか、何かそういう学部等々が併設されるようになって、地域の農業漁業、林業の振興と同時に地域経済の非常に大きな支えになっていくというようなものには使えないものか、使わせたらいいんじゃないか。あるいはまた、温泉とかがある山村地域があれば、そういうところにそういう資金をどんどん活用してもらって、その周辺のお土産屋とかというようなものも含めて雇用の拡大にもなる、そして地域経済の活性化にもなる。  今、一、二の例を挙げましたが、それからもう一つ、大きく言いますと、例えば高速時代と言っても東北などはまだまだ横の線が、交通が非常に不便ですわね。縦の線は高速化で非常に近づく。釜石とかから仙台に来るという場合に、今道路がなくて困っている。秋田から仙台にストレートの道路があれば、今特急でも三時間くらい盛岡からかかる、秋田からですから五時間ぐらいかかるが、それが一時間か一時間半、二時間くらいになるためにはそういうものが必要だとなったら、これは結局そういうことによってその地域、農林水産業の非常な活性化に結びつき、そこに定住化の一つの芽が生まれてくると私は思うのです。そういうところに思い切って投資をして、いずれその金は公共投資として追っかけてくるときに、そちらで利子補給などするとかいうような、例えばそういう一つの大胆な取り組みでもってこの金を生かしていくなんということを考えられないものかということをつらつら考えているのですが、こういうことについて大臣はいかが思いますか、御所見をひとつ聞かせていただきたい。御所見だけにとどめておきたいと思うのでありますが……。
  84. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 大変いろいろ御示唆に富むお尋ねとして拝聴いたしたところでございますけれども、例えば農山漁村整備法人の対象事業なり貸出対象者というようなものにつきましても、これは私ども共管の大蔵省との間で、また関係省庁とも協議をいたしまして、農林中央金庫の性格論、それからまた既存のいろいろな金融制度との間の調整というようなものも含めまして、一定の基準を設けて運用をいたしておるところでございます。  現在農林中央金庫が置かれておりますような資金の事情、そしてまた農林中央金庫の持っております基本性格、それからまた農村社会、農村地域そのものが大きく変わってきているということなどを踏まえまして、今のお尋ねの御指摘念頭に置きながら、制度間の調整の問題はいろいろ難しい問題がございますけれども、私どもも私どもなりに運用の上で今後努力をしてまいりたいと思います。
  85. 武田一夫

    ○武田委員 今、ただ一例を申し上げたのですが、これは関連産業法人などを見ても、例えば農村地域工業導入の地域に来る企業にはお貸しするとか、非常に有効に動いているわけですから、もう少しそういうものを農林漁業活性化と地域の経済の活性化、それでこれから出てくる四全総などに見られる定住圏構想の一つの大きな分野としての効率的な使い方として検討しながら進めていけば、こういう厳しい環境を打開する一つの糸口がこの法の運用によっては可能じゃなかろうかと私は思うので御提言申し上げたわけであります。  最後に、農林中央金庫は今回の民間法人化によってその目的、性格は変えないとするならば、そのことを明確にするためにも、この際、目的規定を置くべきではないかと私は考えているわけでございますが、この点についていかがお考えでございましょうか。
  86. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 農林中央金庫法は過去何回か改正の経緯を持っておるわけでございますが、その中で目的規定というようなことの御議論もかってもあったことがあるように伺っておりますけれども、先ほど来当委員会質疑議論されておりますような農林中央金庫目的、使命、基本的な性格といったようなものは、農林中央金庫法の内容全体として極めて明確になっていると私ども考えておるところでございます。今回の法改正は、農林中央金庫基本的な性格に変更を加えるものではございませんので、この際、特に目的規定を加える必要はこれまでの改正の際と同様にないのではないかと考えて、今回のような法案を提出申し上げているわけでございます。
  87. 武田一夫

    ○武田委員 時間が来ましたので終わりますけれども、本法施行に当たりましては、農林中央金庫の果たす役割が非常に重要度を増しておるわけでございますから、政府としましても本来の使命が十分に果たせるような対応に万全を期していただきたい、このことを要望いたしまして質問を終わります。     〔衛藤委員長代理退席、委員長着席〕
  88. 大石千八

    大石委員長 神田厚君。
  89. 神田厚

    ○神田委員 まず最初に、農林中央金庫法の問題につきまして二、三御質問をいたします。  金融自由化に伴って系統金融をめぐる環境には非常に厳しいものがあるわけであります。現在の系統金融の資金概況を見ますと、農協が受け入れた約三十六兆円の貯金のうち約十六兆円を農林中金が運用しておりまして、農林中金の責任は系統金融にとりましてまことに重大であります。農林中金は、金融自由化の厳しさを真剣に受けとめまして、系統のために責任ある業務執行を行わなければならないと考えております。農林漁業のための金融機関であるとの基本を踏まえつつ、今回の改正による業務内容の拡大をフルに活用し、また、自由化の進展によっては再度の制度改善もあろうかと思っておりますが、この点につきまして、中金に対する指導方針、政府の考え方がどのようになっておるのか、お伺いしたいと思います。
  90. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 金融自由化ということで、金利の自由化と金融業務の自由化の両面で自由化が進行いたしておるわけでございますが、今後も、預金金利なり貸出金利の自由化、また金融機関と証券会社等、他の業種との業務の相互乗り入れあるいは業務提携といったことがずっと進んでまいるものと考えております。  こういった状況を背景にいたしました非常に厳しい金融環境に対処いたしまして、自己責任に基づいて農林中央金庫がその役割を果たし得ることにも配慮しながら、今回の法律改正において農林中央金庫の業務機能整備を図るよう御提案を申し上げておるところでございます。それで、金融環境変化には金融機関がみずからの経営努力によって対処することが重要であると考えておりますけれども、そういった経営努力をやります上での必要な業務の範囲あるいは業務機能整備するということで今回の改正考えたわけでございます。  将来の問題につきましては、金融の自由化の進展あるいは金融制度全体が今後どういうふうになるかという点はなかなか予測できない問題もございますが、私ども当面、現在予測可能な今後の進展に対しては、種々検討の結果、今回の改正の中に対応を盛り込んだつもりでございますけれども、長期的に今後またどうするかというようなことについては、金融制度調査会検討状況等を踏まえて適切に対処する必要があるというふうに考えているところでございます。
  91. 神田厚

    ○神田委員 自由化の進展いかんによりましては系統段階についてコストの面からまた見直す時期もあろうかと思うわけでありますが、これは今から検討しておかなければならない問題でありますが、政府の見解をお伺いしたいと思います。
  92. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 金融自由化進展に伴いまして、競争の激化、それから金利の、資金調達コストのアップというようなことを通じまして、特に系統信用事業にありましては利ざやの縮小とか経営への圧迫等が懸念されていることは御指摘のとおりでございます。  私ども農林水産省といたしましては、単協経済事業等各種事業をあわせ営む総合経営体としてのメリットを発揮することを初めといたしまして、系統が一層の努力を傾けてこれらに対応することができるように必要な指導なり支援を行っていきたいというふうに考えております。特にコスト面におきましては、現在、系統組織を挙げて各段階ごとに経営の刷新強化に努めているところでございますし、機械化の一層の推進農協合併促進等を通ずる経営合理化によりまして、一層のコストの低減が図られることが重要であるというふうに考えておるところでございます。
  93. 神田厚

    ○神田委員 次に、貯金保険関係について御質問申し上げます。  先ほども指摘がありましたように、金融自由化進展金融機関相互の競争の激化によりまして、銀行等の他種金融機関が農村、漁村へ進出しており、その結果、農協漁協貯金や貸し出しが伸び悩み、収益率が低下傾向にあるわけであります。農協の場合、信用事業の黒字で経済事業の赤字を埋めている、こういう現状がありまして、金融環境変化農協経営そのものに大きな影響を及ぼすと考えております。  そこで、このような信用事業依存体質からの脱却が必要であると言われておりますが、一方の経済事業は、農産物価格は低迷し、農業補助金はカットされ、環境は悪く、不振であります。このようなことを考えますと、信用事業依存体質からの脱却は言うべくしてなかなか困難ではなかろうかと考えますが、政府としてどのように考えておられますか。また、どのように対処し、今後指導をしていかれるのか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  94. 羽田孜

    羽田国務大臣 農協は、信用、共済、販売、購買、こういった事業関連させながら運営しておることはもう御案内のとおりであります。部門別の収支を見ますと、今御指摘がございましたように、平均的には販売、購買、加工あるいは倉庫、こういった経済事業は赤字である部門があります。こういったものを信用事業あるいは共済事業で埋めておるという現状があることは事実であろうというふうに思っております。  このため、農協系統組織におきましても問題意識を持ちまして、第十六回の全国大会ですとか第十七回の全国大会におきまして、こういった事情というものを何とか打破しなければいけないということで一つ方向づけをしております。  この中で申しておりますのは、系統全体としての最大の機能発揮を図るため、段階別機能分担合理化と効率的な事業運営推進すること。また二番目として、農産物販売流通環境変化対応して、大消費地及び地方都市での販売力強化需給調整機能を発揮すること。また三番目として、農業資材等流通消費変化に、対応して、自主推進自主供給機能基本とする需要の結集と購買力強化を図る。四番目として、施設運営改善効率化系統段階経営合理化推進する。五番目として、組織基盤変化等対応した弾力的な事業方式等の導入を進める。このような対策が講じられつつございます。そういう中で、五十七年度以降、これに頼る傾向というのは減ってきておるということを申し上げることができると思います。  農林水産省としましても、農協系統の今後の取り組み方を十分見守りつつ、やはり必要に応じた適切な指導はしていかなければならない、このように考えておるところであります。
  95. 神田厚

    ○神田委員 金融自由化に対処しまして農協の体質強化、これは大変必要であることでありますが、そのためには内部留保率の引き上げ、このことが言われております。しかし一方では、農協には利益の利用者還元という基本原則があるわけでありますが、今後利用者還元という点につきましてどういうふうにお考えになっておられますか。
  96. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 今後金融自由化進展経営環境が厳しくなるということが見込まれるわけでございますが、そういった中にありまして、本来協同組合としての農協組合員のために援大限の奉仕をする、そしてその収益組合員に還元されるべきものだという基本的なあり方は今後とも変わるものではないと思っておりますけれども、他方、やはり環境が厳しくなってまいります中で、事業体としての経営の健全化とか効率化を図っていくというために必要な程度で自己資本の充実を図ることは不可欠でございます。この趣旨を逸脱しない範囲内で内部留保を高めていくことにつきましては、最近におきます厳しい状況のもとにおきましては組合員の理解も得られるのではないかというふうに考えております。  系統団体におきましては、昨年の十月の農協大会で決議をされました経営刷新方策の一環としまして、系統信用事業の「金融業務機能を確保し金利変動リスクの増大に対応しうるよう、内部留保の計画的な増強を進める。」ということを全国的な討議を経た決議として採択をいたしておるところでございます。  私ども農林水産省といたしましては、農協収益基本的に組合員に還元されるべきものであるという原則は踏まえながら、組合員の理解を前提として行われる財務健全化等のための内部留保努力については、これを見守りますと同時に、必要に応じて適切な指導を行っていきたいと思っておるところでございます。
  97. 神田厚

    ○神田委員 次に、ほかの金融機関との競争が激しくなりまして、農協収益性だけを重視をしますれば、他産業とか優良農家への貸し出しを優先をし、小口で零細な小規模農家への貸し出しを避けるという傾向が出てくるおそれがあります。このようなことは大変好ましくないというふうに考えますが、どういうふうな現状で、どのように指導していかれるおつもりなんですか。
  98. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 金融自由化進展の中で、また金融緩和基調にもございますので、厳しい貸し出し競争が生じておりまして、これは小口農家向けも含めました貸し出し全般につきまして強まっておるところでございます。  御指摘のような御懸念は、農協協同組合として組合員に対するサービスを第一義とするという協同組合の出発点に立って考えます限り起きないはずのものでございますが、御懸念の一つは、農家向けの融資よりも員外とか准組合員向けの融資をふやしていくのじゃないかという点にあるのではないかと思っております。この員外貸し付け比率につきましては、細かい数字は申し上げませんけれども単協レベルで大体三%程度という数字で、ほぼ横ばいの状態を続けております。それから、准組合員増加というものも一時非常に多かったわけでございますが、近年はその増勢も落ちついてきているという実態でございますし、農協といたしましては、先ほど来理事長からもお答えがあっておりますように、貸し付け体制整備ということを経営体質強化とあわせまして努力をしているところでございまして、農業貸し付けのほかに、いろいろな組合員のニーズにこたえるためのローンの開発というようなこともやってまいってきているところでございます。  私どもといたしましては、員外貸し付けに傾斜をして小口零細農家への貸し出しが抑えられるというようなことが生じませんように、指導の上でも十分気をつけてまいりたいと思っております。
  99. 神田厚

    ○神田委員 さらに、都市農協の場合、そのほとんどを信用事業に依存している組合もあるようでありますが、都市部にむやみに進出をしまして他の金融機関と市場争いをしているという傾向は、農協本来の使命から見て余り好ましいことではないわけであります。また、他の業態と摩擦を起こすということは農協系統全体から見て得策ではないというふうに考えておりますが、この点は信用事業だけではなくて共済事業、購買事業等についても言えることでありますが、農林省としてどのように考えておられますか。また、指導をどういうふうになさいますか。
  100. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 この問題はいわゆる都市農協問題ということで時に触れて御議論が出る問題でございますが、もともと農村部に所在をしておりましたものが、その後都市化の進展によりまして地区内の農家数が減少する、准組合員増加をする、そして、立地上どうしても信用、共済あるいは生活購買事業に傾斜をした経営が行われるというようなことで、農家の自主的な協同組織としての農協のあり方という点から一つの論議を呼んでいるということは、私どももかねて承知をいたしておるところでございます。  しかし、都市化地帯における農協と申しますものも、これは軟弱野菜等、都市地域の実情に即した営農が行われている地域が多いわけでございまして、都市住民に新鮮な農産物を供給するという役割も持っておりますし、農業者の保有する農地の宅地化等についても、秩序ある転換とか、農業者の所得なり生活の向上に資するというような方向づけにも都市農協というのは重要な役割を果たしている面がございます。農協組織といたしまして、都市化の地帯の農協に対して正組合員中心の農協運営をできるだけ徹底をする、それから共同活動への参加を前提とした准組合員の加入というものを基本的な考え方として内部指導を行っているところでございますけれども農林水産省といたしましても、他業態との間で無用の摩擦等が生ずるような事業活動が行われるのは決して好ましいことではないというふうに思っておりますので、今後農協組織対応を見守りながら必要に応じて適切な指導をしてまいりたいというふうに考えております。  また、購買事業お話が出ましたけれども農協購買店舗の出店につきましては、地元の中小商業者との調整等、その適正化について厳しい指導をいたしておりますので、最近において問題化した事例はほとんどないというふうに承知いたしております。
  101. 神田厚

    ○神田委員 次に、漁協の問題でありますが、漁協信用事業を見ますと、貯金規模信用事業体制など他の金融機関と格段の差があるわけでありまして、自由化に伴う競争にとても太刀打ちができる状況ではないというふうに考えております。しかしながら、漁協はなければならないことでありますし、漁協信用事業がなくなるということになりますと漁業経営が成り立たないというところもたくさんあるわけでありますが、漁村における漁協の役割をどのように考えているのか、今後漁協信用事業をいかに維持していくのか、この点について御説明いただきたいと思います。
  102. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  御承知のように、漁協販売、購買、信用等の各種の事業を通じて組合員たる漁業者事業及び生活を支えている組織でございまして、地域漁業のかなめとして機能しておるわけであります。信用事業につきましても、漁業者漁業活動及び生活に必要な資金の融通、貯金、これらの業務を通じて漁村地域における中核的な金融機関として役割を果たしているところであります。先生指摘のように、漁協信用事業規模体制とも他の金融機関に比べて零細で見劣りのすることは事実でございますし、その中で近年、漁業経常の不振によって貸し倒れの発生あるいは固定化債権の増大等が見られて、漁協経営を圧迫しているということも事実でございます。  私どもといたしましては、このような事態に対処するために、都道府県を通じて漁協経営基盤の強化事業運営合理化、適正化等につき一層指導強化するとともに、昭和六十年から漁協系統の自主的な努力を前提として不振漁協経営再建、信用事業実施体制整備信用事業運営面の改善合理化等を内容とする漁協信用事業整備強化対策事業実施しているところでございまして、こういう仕事を通じまして漁村の中核的な金融機関としての漁協信用事業体制整備を図ってまいりたいと考えておるところでございます。
  103. 神田厚

    ○神田委員 次に、農協漁協合併問題であります。貯金保険法案の中にも合併がありますが、金融自由化へ対処する方策として合併促進が必要であることはよくわかります。しかしながら、合併が困難な状況もそれぞれそれなりの理由を持ってあるわけでありまして、これらの合併問題については関係農民、漁民の意向を十分に尊重すべきであると考えますが、この点につきましてどういうふうにお考えでありますか。
  104. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 今回の法改正では、資金援助機構によって行われるためには知事による適格性認定を受けることが原則でございますけれども、当事者組合間における合併の話し合いだけではなかなかその実現について十分な見通しが得られない、あるいはまた時期を失するというような場合で、かつその合併適格性認定の要件に該当する、また組合行政上からも望ましいと判断されるような場合もあり得るという考え方から、知事あっせんということを規定をいたしておるところでございます。もちろん、この合併あっせんというのは従来から組合行政の一環として行われておりまして、今回のあっせん基本的にはこれにかわるものではございませんので、強制力があるものではございません。御指摘のとおり、農協なり漁協は一人一票の議決権によって運営をされます民主的な協同組織でございますので、合併はあくまでも組合員の相当数の賛同が得られるという自主的な決定に基づいて行われることが必要だというふうに考えております。
  105. 神田厚

    ○神田委員 貯金保険法預金保険法とほぼ同様な内容のものでありますが、これまで本法発動の例がないために問題にならなかったのでありますけれども、新たに資金援助制度が設けられまして発動の頻度が高まりますと、木制度が農業漁業実態に合っているかどうかということもやはり問題としなければならないと思うわけであります。  例えば保険料率でありますが、系統は三段階制運用され、単協経営が悪くなりますと信連、中金が経営を支援するというのが実態であります。これらのことを考えますと、単協は零細ではあるといいましても危険率は低く、したがって料率は低く設定されてもよかろうという、そういう考え方もあります。  また、仮払金の二十万円についても、季節性のものである農業漁業実態に合わない面もあるようでありまして、いざというときには信漁連等から借り入れればよいのではないかという見方もあるようでありますが、貯金が凍結されているときに他の金融機関が円滑に融通してくれるかどうかも疑問であります。これらの点につきましてどういうふうに考えているのか。  あわせて、将来はこの制度を小規模農業漁業の保護のための制度とすべきであるとの意見もありますが、この点につきましてもどのように考えているか、御答弁いただきます。
  106. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 三点のお尋ねでございますけれども、確かに第一点の、農漁協は三段階制で信連、中金の支援が受けられるということは御指摘のとおりでございます。しかし、他方農漁協銀行等に比べまして金融機関としての規模が小さい、あるいはまた経済事業等収益的には不採算部門となっているという現状もございます。それからまた、信連、中金が経営不振に陥った単協を支援をいたします場合にも、業務の健全性の観点から一定のおのずからの制約があることも事実でございます。こういうことを考えますと、一概に両者の危険率の差を云々するということはなかなか難しい面が多いと考えておるわけでございます。  また、一般の預金の保険制度と農水産業協同組合貯金保険制度とが、大体ほぼ同種の金融商品を取り扱っている金融機関といたしまして両々相まって我が国の信用秩序維持の役割を果たしているものでございますし、保険限度額についても足並みをそろえている、また今回設けられる資金援助業務の内容も基本的な方向としては同様のものになっているということでございますので、やはり基本的にはこの料率は一致させるべきものというふうに考えておりますけれども、実際に料率を決めるに当たりましては、経営基盤の充実の必要性程度でありますとか、対象金融機関経営に及ぼす影響、農協に比べますと漁協の方が負担能力が少し弱いというような実態もございます、また、激変緩和の必要性等々を総合勘案することが適当であるというふうに考えております。  実際、過去の保険料率の経緯から見ましても、一般金融機関につきましては、四十六年に発足したときの十万分の六から十万分の八に五十七年以降引き上げられまして、六十一年四月からは十万分の十二へ引き上げられておりますけれども農水産業貯金保険につきましては十万分の十に当面引き上げる、そして今後三回ほどに分けまして段階的に変更を行っていこうということが団体のサイドで検討されているように伺っております。  それから、仮払い限度額の二十万円が必ずしも農漁協実態に即さないのではないかという点でございますが、実はこれはあくまでも保険金の内払い、仮払いということでございます。今回こういう制度を導入をいたしましたのは、最近給与振り込みが非常に一般化してきておるということがございまして、当座の生活資金に充てる目的に限っての支払いということで考えておるわけでございます。事業資金等の規模まで考えてまいりますと、一人一人の方々事業規模というようなことも含めて考えなければいけないことになりまして、なかなか一律的な運用になじまないという問題があろうかと思うわけでございます。  それから第三点といたしまして、小規模の農漁業の保護のための制度とすべきではないかというお尋ねでございますけれども、この制度は貯金者の保護を図る、もって信用秩序の維持に資するということを目的といたしておるわけでございます。農漁協組合員は生活、経営ほとんどを組合に依存している場合が多うございますので、貯金には生活資金だけでなく事業資金も含まれているのが通例であろうというふうに考えております。今回の制度改正の一環として保険金支払い限度額を一千万円に引き上げるということを、これは法律事項ではございませんが予定をいたしておりますので、そういたしますと事業資金の保護にも十分資することができるのではないかというふうに考えているところでございます。
  107. 神田厚

    ○神田委員 最後に、相互援助制度についてお伺いします。  現在、この制度に加入していない組合が約六百組合あります。これらの組合は新しい資金援助制度の恩恵に浴さないということになりますが、この点につきましてはどのように対処をなさいますか。
  108. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 御指摘のとおり、一部の漁協及び農協相互援助制度に未加盟のものがございます。この未加入の組合につきましては、相援制度を経由する方式による機構からの資金援助が行われないことになりますけれども、他方、相援加入組合につきましては相援制度についての資金負担があるわけでございまして、未加入組合が一方的に不利な扱いになるということではないというふうに考えております。  ただ、私どもとしましても、この制度改正でできるだけ多くの組合にその効果が及んでほしいというふうに思っているわけでございまして、できるだけ現行の相援制度に未加入組合は加盟をしていただきたい、それが望ましいというふうに思っておりますが、諸般の事情でこれが困難な組合につきましては、現行の相援制度に準ずる制度を設けてもらえば同様の取り扱いがなし得る、またそのように規定も配慮して御提案申し上げておるところでございます。
  109. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  110. 大石千八

    大石委員長 午後二時四十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時三十六分休憩      ————◇—————     午後二時四十五分開議
  111. 大石千八

    大石委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。津川武一君。
  112. 津川武一

    ○津川委員 農林中金法改正についてでございます。  まず最初に、農林中金の民間法人化だ関連して、農林中金の位置づけ、あり方、政府のかかわり合いなどについて尋ねてみます。  民間法人化の具体的措置の一つとして、農林中金の出資資格者から政府を削除する。これは昭和三十四年以来政府の出資がなくなっているという実態に合わせて法制上も整理したにすぎないとされています。そして、そのことによって臨調の最終答申指摘にこたえたものとされております。しかし、このことは実態上何の意味も持たないのか。これまで政府出資規定を残してきたのは政府の怠慢であったからなのか。実際の出資はなくても、制度上出資の道が残されている方が、いざという場合に国がバックアップするという意味信用力をつけてきたのではないのか。確かに今日の資金量からいえば政府出資が当面必要とは思われないが、国のバックアップを考え方の上ででも否定するような措置をあえて行った理由はどこにあるのですか、お答え願います。
  113. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 お答え申し上げます。  農林中央金庫は、お尋ねの中にございましたように、昭和三十四年以来、もう間もなく三十年近くということになりますが、政府出資がない状態で民間出資のみによって運営が行われてきておりまして、近年その資金の充実も非常に進んでいるところでございます。臨調の最終答申におきましては、特殊法人等は極力自立化することとするということで、自立化できる法人は民間法人化することによって活性化を図るという方針が出されまして、農林中央金庫につきましては、このような過去の三十年近く民間出資のみで運営をされ、しかも資金も充実をしてきているという状況から、民間法人化をすることにされたわけでございます。  政府といたしましては、この答申に従いまして民間法人の要件を満たしますために、政府出資規定の削除を行いますと同時に、いわゆる特殊法人としての監督の対象から除外をするということにいたしまして、そのことを通じまして農林中金の活性化を図るということにいたしたものでございます。
  114. 津川武一

    ○津川委員 臨調行革の方針にのっとったということであって、私たちはこのことに強く強く抗議して、質問を続けていきます。  農林中央金庫及び農漁協系統信用事業は、その対象が農林水産業という低生産性部門で、ほとんどが零細経営であるというところの協同組合金融機関なのです。そうした性格からいって、その本来的機能を円滑に発揮させるためには、国や行政機関からの財政面も含めたさまざまな援助が不可欠だと思うのですが、この点はいかがですか。
  115. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 今回民間法人化を図ったわけでございますけれども、これは、先ほど申し上げましたように中金の長年にわたります経営実態ということに着目をし、またそういった実態から見て、いわば特殊法人といいます段ある意味では、俗な言葉で申せば行政の別働隊というような意味合いから総務庁のいろいろな特殊法人としての規制を受けているわけでございますが、それを外すということにいたしたわけでございますけれどもお尋ねのございましたように、生産性もなかなか急には上がらない、そしてまた零細だというような農林漁業を相手とする系統金融でございます。したがいまして、そういう面におきましては、従来からもやっておりましたし今後もそういうふうに考えているわけでございます。  農業近代化資金等系統原資の農家への還元を図るという意味合いでの利子補給でございますとか信用保証制度等の信用補完措置ということをやってまいってきておりますし、また、法人税でございますとか事業税等の税制上の軽減措置、これも租税特別措置の見直しということで非常に厳しい風が吹いておりますけれども、その中でそういった軽減措置も続けてやっております。また、組合員なり会員からの預金の利子につきましては、臨時金利調整法上の特例措置ということで、一年定期につきまして〇・一%の金利の上乗せを認めるといったような措置が講じられております。  こういった面におきます農林漁業金融の特性を踏まえたいろいろな支援と申しますものにつきましては、中金が民間法人化なされました後におきましても、系統信用事業全体に対する支援という意味合いで当然私どもも続けてまいる努力をしなければいけないと思っております。
  116. 津川武一

    ○津川委員 局長の話を聞いてみると、もう少し現地の実態に即してもらわなければなりません。今言われた近代化資金の助成法、いろいろなものがあると言う。だがそれはいろいろな条件があって、経営が苦しい、生産性が低い、経営規模の小さい人は借りられていないのです。そのことはあなたたちは百も承知なんだ。その上で今のような答弁になってくるわけですね。政府として特に肩を入れなければならぬのは、この苦しい低生産性の零細の人たちに一肌も二肌も脱ぐ、ここに農政の一つのかなめがあるわけです。  したがって、こういう点から、そういう資金を出さなくてもいいということによって政府は中金から後退するのか、その人たちを見捨てるのか、国が金融で援助する道から後退していくのか、この点が心配なのでございます。この点はいかがでございますか。
  117. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 私どもいろいろ系統原資の制度金融、財政資金原資の制度金融の制度を運用いたしておりますけれども、こういった制度金融の今後の運営につきまして、これを後退させるというふうな考え方は持っておりません。  ただ、今お尋ねがございました中で、規模が非常に小さい、生産性が低いというようなところの農家で資金の借りられないところがあるというお話がございました。金融は、どんなに低利、長期でございましても、少なくとも元金は返していただくというのが前提でございます。それから、金利につきましても、改良資金のような無利子というものもございますけれども、無利子でないものにつきましては一応三分五厘というのが制度金融の最低限になっております。そういったものでどうしてもペイをしないものに融資という形でお金を援助するということは、また後で固定化負債というような問題を起こす心配もございますし、そこにはおのずから補助で分担すべき部分と融資で分担すべき部分、そしてまた、いずれの支援の形をとるにいたしましても、対象とします事業が、その事業に着手して実を結べる事業かどうかという判断がどうしても入ってまいらざるを得ないだろうというふうに思っております。
  118. 津川武一

    ○津川委員 何か零細農家が捨てられるような寂しい答弁をいただいたわけです。金融だからペイしなければ、返せなければ貸せないということは私も承知しております。しかし、実際に借りられない状況になっている人たちをどうするかということを、後刻またもう一回別な角度からお尋ねしてみます。  今農林水産業は深刻な危機の中にあり、農地は荒れほうだいになっており、後継者もいなくなっているところがあります。意欲を持って農業につき、規模拡大した農民も農家も、巨大な負債に悩まされておりあす。何をつくってもよくいかない、もうからない、農業解体の波が押し寄せてきているというのが農村での正直な実感でございます。今こそ農業を国の基幹的な生産部門として位置づけ、思い切った農業政策を展開しなければ取り返しのつかない事態になるのではないかと心配されております。そのためには、軍事費や大企業補助金はどんどんふやす一方で農林予算を四年連続して削減するという今の臨調路線を抜本的に転換し、農林水産業への投資を飛躍的に増加させることが必要でございます。農林漁業金融に対する援助も抜本的に拡充することが当然求められてまいります。  今日、農林漁業金融といっても、農林漁業金融公庫、農林中金を初めとする系統信用事業農業改良資金制度などが複雑に絡まり合い、役割分担がなされております。それだけに、今後の農政の積極的な展開の中でそれぞれがどういう役割を果たすべきか検討を要するが、この中で農林中金や系統信用事業が大きな位置を占めることは間違いないと思います。現在行われている近代化資金に対する利子補給という援助にとどまらず、農林中金に対する政府出資という形態も可能性として検討しなければならない。そういう検討をしたのかどうか、この問題が一つ。  将来の問題かもしれないが、そうした可能性を一切排除することはどんなものでしょうか。それとも、政府出資規定を残すことが、積極的な農政推進上不都合でもあって削ったのか、この点お答え願います。
  119. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 政府出資規定そのものは、昭和三十四年以来、条文は残っておりますけれども現実に政府出資がないという状態で推移をしてまいってきておりましたことと、最近の資金事情から見まして、農林中央金庫の資金事情も極めて充実をしてまいったということから、これまで恐らく、今先生おっしゃいましたように、将来またそういう必要もあるかもしれないからあえて削らないで残しておくというふうな考えであったろうと思いますけれども、少なくとも現在予見し得る状況のもとにおいて政府出資の必要が生ずるようなことが予想されませんので、この際むしろ政府出資規定を削除いたしまして、あわせて特殊法人としての監督からも外すことに加えまして、所要の規制の緩和ということを通じまして農林中央金庫の業務の活性化を図った方がベターであろう、そういう判断で今回の改正を御提案申し上げているわけでございます。
  120. 津川武一

    ○津川委員 農民の金融の大きな柱である中金から、政府が出資をやめた、後退したという事態は、後ほどゆっくりまた機会があればともに考えていきたいと思います。それがどんな結果を意味するかということなんかが出てくる場面も相当私は心配していますが、ここではその評論はやめて進めます。  そこで、この中金などの特殊法人はしばしば高級官僚の天下り先の機関となっている、これが世間の評判です。よく聞きます。農林中金も歴代理事長はすべて農林事務次官経験者だった。農水省の高級官僚の最も条件のいい天下り先であります。そして副理事長理事理事長の任命であったということから、ともすると理事長のワンマン体制になりがちであったとも聞いております。今回の改正で民間法人化するということで農水省なり大蔵省なりからの天下りはなくなると見てよろしいのですか。理事長出席の前で恐縮ですが、何か聞くところによると中の方が必ずしも明るくない、自殺者まで出ていると聞いている。こういうこととこの理事長の任命、こういうところに何かワンマン体制がありはしないか。この理事長の状態についてお答え願います。
  121. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 今回、民間法人化ということで特殊法人の監督、規制から外すことになったわけでございますが、農林中央金庫につきましては、今までそういうことで特殊法人の範疇には入れられておりましたけれども、役員の選出につきましては、昭和三十六年に中金法を改正をいたしまして政府任命制を廃止をいたしまして、それまでは役員は政府任命であったわけでございますが、農林中央金庫の行う金融業務につきまして識見と経験を有する者の中から自主的に選任が行われるようになってきておるものでございまして、役員の中には国家公務員等を退職した者も選任されてはおりますけれども、これはその方の有する農林漁業なりあるいは金融に関する高度な専門知識なり経験に着目されて、適材適所という観点から農林中央金庫法によりまして選任されているものというふうに考えておるところでございます。今申し上げましたように、これまでも理事長につきましては、昭和三十六年以降、農林中央金庫の総代会におきましていわば選挙という形で選任をされているということでございますので、特殊法人のような、政府が理事長とか理事を任命する形は長らくとってないところでございます。  それから第二点でございますが、私ども農林中央金庫におきましては、現在も理事長、副理事長理事一体となった業務運営が行われているというふうに考えておるところでございますし、これだけの大きな金融機関でございますから執行の任にあられる方はなかなか御苦労が多いと思いますけれども、一体となった取り組みがなされているものというふうに承知をいたしております。  また、今回の改正におきましては、今まで副理事長理事は総代会の同意を得て、形として理事長任命ということでございましたが、これも総代会において直接選任をするということで、選任方法もすべて総代会の選任ということにいたしておるところでございます。
  122. 津川武一

    ○津川委員 理事長理事の決定について大きく民主主義の後退が心配されてきて、何か起きなければいいがという心配がさらに強くなってくるわけです。何かの事件というのは後にちょっと触れることもあると思います。  私は、政府出資規定を外すことについて本当に反対ですが、農林中金が協同組合原則に基づく全国金融機関という性格を一層強め、役員選出に当たっては系統団体の意見がより強く反映されるように改善することは当然だと思います。この点で、今回の改正は不徹底さを感ぜざるを得ません。協同組合原則で言うならば、農協、生協はすべて総会、総代会において理事を選び、理事長組合長は理事会で互選するというやり方になっております。これは理事長への権力集中を防ぎ、理事会全体が責任を持つという意味ですぐれていると思います。このやり方の方が所属団体の意見を運営全体に反映しやすいと思いますが、政府はどう思いますか。理事長理事の互選で選ぶ方式をなぜとらなかったのかでございます。  私の現在関係しておる病院が、生活協同組合法で組合員が二万五千、理事をどんなふうに選んでいるかというと、総代会で理事を選ぶ。このときには理事が今まで何をしてきたか徹底的にみんなで検討します、これがまた組合を民主化してくれるから。理事が選ばれた後に、今度は組合長をだれにするか、現在私が組合長ですが、この理事会で選ばれるときの選考委員会なんかに私は出ません。私の洗いざらいがそこで検討されます。こういう形なものだから私たちは皆さんとともにやっていく。  それで、そういう選任するだけの体制がないかというと、今の県の信連あたりにはすばらしい達人ばかりおって、この点は、そういう形で下から積み上げてくる理事理事長選任でいけば中金が一層農民のものになると思いますが、せめて理事長理事の互選ぐらいにできませんか。
  123. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 農林中央金庫の業務執行体制につきましては、その性格なり業務内容に応じた適切なものにする必要があるというふうに考えておりまして、農林水産関係の協同組織金融面での全国専門機関でございます農林中金ではございますけれども、これは農林水の各組合のほか、土地改良区でございますとか農業共済団体でございますとか、さまざまな団体によって構成されております。いわゆる農協ないし農協の連合会と同一にすることは必ずしも適当ではないというふうに私ども考えているわけでございます。特に、さまざまな所属団体に対しまして公正中立な業務運営を行う必要がございますし、それから、系統金融の最終的な資金調整のための全国唯一の機関として大きな公共的な役割、そしてまた、業務運営にも高度の専門的知識と機動的な対応が求められるということでございますので、理事長、副理事長を直接出資総会で選任をするということにいたしておるところでございます。  なお、農協法の世界の中でも、例えば全国農業協同組合中央会、これは各種の農協の唯一の中央機関として協同組合の連合会とは異なる公共的な性格を持っておりますし、指導的な立場も持っております。それからまた専門農協、酪農でございますとか園芸でございますとか、そういうものと総合農協と、農協法全体をひっくるんだ中央機関であるということもございまして、この全国農協中央会の会長等もその理事の互選ではございませんで、直接総会で選任をして、広くその地位にふさわしい人材を選ぶ、そしてまた、そのメンバーの方々のいわば直接民主主義でじかに会長を選ぶというシステムをとっているわけでございまして、農協法の中でもこういう中央会方式と農協方式と二通りあるということも御理解をいただけたらと思うわけでございます。
  124. 津川武一

    ○津川委員 まだなかなか納得いきません。農協中央会長は農民ですよ。  そこで、もう一回繰り返しますけれども、農林中金の理事長に農林次官でない人がなる、こういうことが考えられますか。そういうことのために政府は何らか意図的に考え、動く、そういう形での民主化をやってみませんか。この点はどうです。
  125. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 この点は先ほどのお答えの繰り返しになるかもしれませんけれども、特に今度、改正後におきましては、理事長のみならず副理事長理事も含めまして、農林中央金庫の中の所定の手続に従いまして総代会で自主的に選任をされるということになっておりますので、どのような方、どのような経歴を持った方が理事長に選任をされるかということは、農林中央金庫の自主的な判断にゆだねられておるところでございます。
  126. 津川武一

    ○津川委員 重ねて言うようですが、各県の信連にはすばらしい先輩、達人がいる、漁連の会長にもいる、森連の会長にもいる、こういう人たちが農林中金の理事長になることに政府は反対ではないでしょうね。この点はいかがです。
  127. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 農林中央金庫理事長というポストは大変な重責であると私ども思っておりますが、そういう重責を担われる方について、所管の官庁といたしまして、どういう経歴を持った人でなければならないというふうな特定の観念を持っておることはございません。
  128. 津川武一

    ○津川委員 農林中金の理事長にどこかの県の信連の会長がなる日を強く強く期待をしながら、質問を進めていきます。  次に、最近の金融情勢の変化対応した業務の整備についてお伺いします。  改正内容に入る前に、今日の農林中金の業務の実態について少し尋ねてみます。  一つは預金量の問題です。農水省からいただいた資料を見ると、この十年間で預金量は約四・五倍にふえています。これが農林水産業の生産発展の結果ならば喜ばしいのですが、実態を見ると必ずしもそうでなくて、むしろ逆じゃないかと思います。農林中金がやった全国四百九十一の農協のアンケート調査によれば、農協貯金増加額の財源別残高構成を見てみますと、過去五年間、農外収入が五〇%余り、土地代金が二〇%前後、農業収入はわずか二五%前後でしかありません。見ればわかるように、農協段階貯金がふえたのは、農地を売るとか農外に出て収入を得る、つまりこれは農業の縮小と結びついております。その結果がこういう数字になったのであります。こうして集まった農協貯金が、これまた政府の農業切り捨て政策のもとで農業に還元されていない。そのために信連に集まる、そして農林中金に集中してくるという構造ができています。いわば農林中金の資金量の増加は、農業の荒廃に支えられてきた結果ではないでしょうか。資金の集まりに対して、この点どう評価しますか。
  129. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 ただいま御指摘のありました農協貯金の所得源泉種類別の内訳と申しますか、これは確かに農林中央金庫実施いたしましたアンケート調査で、農協がどういうふうに見ているかということの調査の結果でございますが、御指摘のとおりでございます。  これは、一つは、農協組合員の中で全般的に兼業化が進んでおりますので農外収入がふえている、それからまた非常に農村社会が混住化になってくる、そういう中で土地代金というようなものが、これは地域によってかなり偏っているわけでございますけれども、金額としてはあるところにはかなり大きな金額で入ってくるというようなことが影響をいたしておるものだというふうに考えております。そういったいわば農村をめぐります状況変化というものがこういう貯金の伸びにも反映をいたしてきている、そういうふうに理解をいたしておるところでございます。
  130. 津川武一

    ○津川委員 確かに農業情勢が変化したから預ける人の率も変化したわけです。  そこで、土地を売ったお金、これは農地を狭めたことになる。農業の後退、農業だけでは生活できないから農外収入に走っている。これも農業の後退なんだ。この農業の後退の上に農林中金の預金がふえているというこの認識はやはりしていただいて、そこから必要な対策が出なければならないと思いますが、この私の認識に対して政府はどう考えておりますか。
  131. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 農業の後退ということで申されたわけでございますが、そこに一つの価値づけを持ってお尋ねになっておられるのだと思いますけれども、やはり、特に日本が置かれておりますような、こういう国土が非常に狭く平地も狭いというところの中で経済、社会が発展してまいりますと、どうしても混住化とかそういった問題は起きてまいると思うわけでございまして、私ども農業に全く問題がないというふうに申し上げることはさらさらございませんけれども農協が見ております農協貯金の源泉別の内訳の変化が、即全部これは農業が非常に後退し破滅に向かっているせいである、それによって信用事業が成り立っているんだというところまで決めつける判断は、ちょっといかがかなというふうに迷いを持つところでございます。
  132. 津川武一

    ○津川委員 大分議論がかみ合ってきたようですが、農地を売ったことによって預金が集まった、農業外収入によって預金が集まった、これは困ったという認識があれば、農地を取得する方にお金が出ていくのです。この状態は困ったということになるというと、兼業農家に落ちていかないような格好に使い方が出てくるから、この認識が大事なんです。この点での認識を絶対に忘れてはいけないと私は思うのです。  そこで、それではお金がどんなふうに使われているかに移っていきましょう。こうして集まったお金をどう運用しているかという問題です。  最近十年間で農林中金の資金量は約四倍にふえていますが、所属団体貸し付け、その他の貸し付け、有価証券運用は、それぞれ十年前と比べて何倍ぐらいになっておるか、金額と倍数でお答え願います。
  133. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 お答え申し上げます。  農林中央金庫の五十九年度の資金運用を四十八年改正直前の状況と比較をいたしてみますと、運用資金の総額は六・一倍の二十一兆六千七百六十六億円ということでございますが、その内訳は、貸出金が四・九倍の九兆四百十八億円、そのうち、所属団体貸し出しは二・二倍の一兆三千五百七十億円、非所属団体貸し出しは六・三倍の七兆六千八百四十八億円でございます。有価証券による運用は七・七倍の八兆一千八百八十六億円となっております。五十九年度の資金運用構造ということで見ますと、貸出金が四一・七%、有価証券が三七・八%、買い入れ手形、コールローンが一〇・四%という構成でございます。
  134. 津川武一

    ○津川委員 もう一つ。五十九年度における全体の運用に占める所属団体貸し出し、その他の貸し出し、有価証券運用、このシェアはどうなっております。
  135. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 五十九年度で申しますと、二十一兆の調達、すなわち、それがまた運用の金額になりますが、そのうちで貸出金が四一・七%でございますが、所属団体貸し出しが六・三%、非所属団体が三五・四%という割合でございます。有価証券が三七・八%、買い入れ手形、コールローンが一〇・四%、その他運用が一〇・一%、こういう割合でございます。
  136. 津川武一

    ○津川委員 私はこれを見て唖然としているわけであります。所属団体の貸し出しは十年前に比べて約二倍、そういうふうに停滞状態なのに、その他の貸し出しては六・三倍、株式の運用は七・七倍。貸し出しのシェアは所属団体が六・三%、その他には三五%、有価証券の運用のシェアは三七%。一体どこに貸すために農民からお金を集めたんですか。農林中金としてこの状態はいいんでしょうか。農林という名前がついているものをこのような形で運営することに対する政府の見解を伺わせていただきます。
  137. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 所属団体貸し出しが伸び悩んでおりますことの基本的な理由でございますけれども農林中央金庫は、中央金庫法の規定にも書いてございますし、また、通常の業務運営においてもそうでございますが、所属団体に対する金融上の便宜、特に貸し出しというものを最優先をするということで業務運営を行っておるわけでございますが、末端の農家等の資金需要なり投資意欲というものが近年全般的に停滞をしておりまして、加えて、総じて農協なり信濃連等の所属団体の資金が近年非常に充実をしてきているということかう、農林中央金庫への借り入れ依存度が低下をしているということが主な要因となっているものと考えております。  かつては、率直に申しまして外部経済との接点に立って、むしろ農林水産業の方に資金を入れる窓口という機能を資金バランスの上で果たしておりましたときもあったわけでございますが、現在は、資金の需給事情から申しますと、むしろ系統信用事業の中で集積をされた資金、そしてそれを系統の中で使う必要を満たした残りの資金につきまして、外部経済との接点に立ってこれを効率的に運用をいたしまして、その利益を系統に還元をするというふうな機能も事実上果たすようになってきているということでございます。  しかし、いずれにいたしましても、中金は所属団体に対する貸し付けを第一義的な使命としておりますので、中金におきましても、これまでも要綱融資的な姿で安定的に低利の資金を供給する努力をしてまいりましたけれども、今後におきましても、所属団体貸し出しの強化策について現在具体的に検討中であるというふうに承知をいたしておるところでございます。
  138. 津川武一

    ○津川委員 どうしてもやはり所属団体に出してあげなければならぬ。農家は働いたお金を貯金する、その貯金が安全でいい利息で返ってくる、これが一つ。もう一つは、協同組合をつくったのは、自分たちのお金を自分たちの仲間が使うということに根本義があって、これが中金のあれなんですね。  皆さんはこれから所属団体に対する率を高めるために何か案を立てると言っていましたけれども、その案の具体的な内容の一つ二つでも伺わせていただけませんか。そうでないと農民が納得しないのです、こんなにほかにばかり使っていていいのかと言って。一つ二つ、どうぞ。——では、もう少し答えやすいように質問を展開してみます。  こうした実態の中で今回の改正であるが、業務機能の拡充がいろいろやられておるようです。実にいろいろやられている。その中で、本来の業務である所属団体貸し出しの増加、これに実際に結びつくような内容の改正項目はあるのかないのか。それをまず伺わせていただきましょう。
  139. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 今回の法改正におきましては、所属団体に対する金融の円滑化を図りますために、今まで農林中央金庫が産業組合中央金庫というような形で大正末年に発足をいたしましたとき以来、貸付期間の制限でありますとか貸付区分あるいは年賦償還貸し付けの限度額の規制といったいろいろな規制がございまして、こういうものが現在の金融実情に合わないということもございまして、撤廃をすることにいたしております。このことによりまして、制度的には所属団体の求める金融サービスに弾力的に対応し得ることになるという点におきまして、所属団体に対する金融の円滑化を図るための改正事項も含まれておるというふうに私ども理解をいたしております。  なお、そのほかに、いろいろ金融機能の拡充とか業務範囲の拡充をこの改正の中に盛り込んでおりますが、これらも農林中央金庫の本来の使命に沿ったような形で運用をされるように、制度上あるいはまた指導上配慮をいたしておるところでございます。
  140. 津川武一

    ○津川委員 そうですか。そうであるといいのですが。  今回の改正内容を見ると、債務保証の範囲の拡大にしても、出資もしくは株式の払込金の受け入れ先の範囲の拡大にしても、金銭債権の運用にしても、今日の金融取引の多様化、複雑化の中で一般金融機関が既に自由にやっているものを取り込んだにすぎないと思います。しかし、そのことによって金融機関として強化されるのは、本来の業務以外の分野ばかりではありませんか。  もちろん、金融環境変化する中で、金融機関として業務拡充を図ることをすべて否定するわけではありませんが、農林漁業協同組合金融という専門性と離れて、他の金融機関との同質化を図っていくということで、農林中金の展望があるのかどうか。金融機関としての競争に打ちかつという発想からは、低生産性部門でコストもかかる農林水産業への貸し出しを厳しくし、優良企業や高利回り運用を求めてますます走り出す結果になることは目に見えておると思います。時間がかかるし、低生産性のところはコストもかかるから、そんなところをやめて高利益になるところに走った、これは否めない事実だと私は思うのです。  そういうことは端的に言うとどうなるかというと、昨年、我が党の中川議員が予算委員会で問題にした協同住宅ローンの問題です。担保もとらないで都市企画設計といういかがわしい地上げ屋に五十四億円も融資し、焦げつかせてしまった。これは簡単に貸せる、楽なんです。しかし、低生産性の農民に貸すにはいろいろな面倒があるからこういうことに走ったのではないでしょうか。この点はいかがでございますか。そして、この地上げ屋の問題はその後どうなったか。二つ答えていただきます。
  141. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 まず、今回の改正でございますが、業務の範囲の拡充あるいはまた新しい業務機能をつけ加えるということをやっておりますが、これはその多くが所属団体あるいは取引先からの要望を受けて行っているものでございまして、新しい業務が行われ、また機能が付加されるにいたしましても、その相手先につきましては、従来どおりの農林中央金庫法の規定によります例えば貸付先あるいは貸し付けをなし得る者との間のそういう業務であり機能であるという限定がついておるわけでございますので、今度の業務規定の見直しによって農林中金の性格が変わるということでは決してないわけでございます。
  142. 津川武一

    ○津川委員 四十八年のとき私たちが指摘したとおりになっておりますが、今回の改正を含めて農林中金が進もうとしておる道は、あなたたちが進もうとしておる道は、みずからの存立基盤である農林漁業から一段と離れ、専門金融機関としては著しいゆがみをもたらすものと言わざるを得ないわけであります。私たちはこれを指摘して、今後十分に監視していきたいと思っております。  質問を続けていきます。  農協農家の負債問題ですが、先日、私のところに岩手県の農協で働いておる職員の代表の皆さんが見えまして、農家及び農協の負債の深刻な実態を説明し、対策について訴えられました。その場には農水省の担当者の皆さんも参加してもらっているので、大体の概要は皆さん方も知っていると思います。その中で出された岩手県北の山間地帯で厳しい農協経営を続けている安代町農協の例を出してみます。  ここの農協組合員戸数九百戸、出資金一億五千万円の農協です。ここに七戸で約六億円の負債を抱えた農家がいます。そのうち最高は一戸だけで一億八千万円にも達しております。一日の金利だけでも三万円かかります。農協の担当者は元金回収はおろか利息分の返済も難しいと言っております。七戸の資産を処分しても五億円近い金が借金として残ってしまいます。一人が五口以上の借金、一口二人の保証人を抱えている現状では、数十人の連鎖倒産、そして農協そのものがつぶれてしまう状況で、やめるにやめられないという状況のまま、ずるずる金利がかさんでいくという悪循環に陥っております。  七人の農家は、いずれもかつて水田複合経営で着実にやっていたのが、農政の大規模化路線に乗って一挙に多頭化し、そのツケが今日巨額負債農家という形で回ってきているのです。しかし、今日でもこの農家たちは感心にも営農意欲は失っておりません。何とか農業を続けたいと言っております。保証人も短期証書の借りかえという場当たり的な融資ではなり手がいなくなっておりますが、かなり長期で超低利の抜本的な負債対策ならば保証人を引き受けてもよいと言っております。そして、当面、利子棚上げ措置、元本優先返済措置などがどうしても必要だと言っております。しかし、それは安代町農協のような規模単協だけの力ではとても無理な話でございます。  そこでお尋ねします。政府は、肉用牛経営合理化資金、これは特認で三・五%の利息ですが、これを六十年度から発足させたが、この資金はこのような巨大な負債にも適用になりますかどうか、これが一点。  二点目は、また、この資金を一層拡充して、当面、農家段階で金利ゼロ、すなわち利子棚上げ措置をとる用意はないかどうか。  三点目は、この安代の七戸の肉用牛農家の事例はNHK岩手で数回にわたってかなりリアルに紹介された例であり、県民ほとんどが知っておる事実であります。それだけに、これらの農家に対して、政府、農水省の出先機関、県なども入って、農家経営を極力再建、維持する方向での具体的な指導をすべきと思いますが、この三点、答えていただきます。
  143. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 ただいまお話がございました岩手県の安代農協の特に七戸に上ります畜産農家の負債問題についてでございますが、先生御案内のように、岩手県におきましては詳細な農家の負債状況を調査した上で、現在、農家経済更生対策を進めておるわけでございまして、この中で県、市町村、農業団体等が一体となった特別の指導チームをつくって、濃密な相談指導を行っているというふうに承知しているわけでございます。この指導チームは、ただいま御指摘ございました安代農協の中の特に負債が大きい七戸の畜産農家に対しても経営再建のための個別の指導をしておるという状況にございまして、その再建の手だてといたしまして、ただいま先生も御指摘ございました、私ども前年度から発足させました肉用牛経営合理化資金の活用も検討されているようでございます。実は昨日も岩手県の担当者を呼びましていろいろ状況を聴取したわけでございますが、私どもといたしましては岩手県とも十分相談しながら肉用牛経営合理化資金の活用につきまして検討を進めてまいりたい、かように考えております。  次に、金利の問題でございますが、金利につきましては、先生御案内のように、この肉用牛経営合理化資金につきましては、国だけではございませんで、県なり市町村、農協等の融資機関も利子補給を行うということでございます。したがいまして、末端金利水準につきましては、一般五・〇%、特認三・五%といたしているわけでございます。この特認の三・五%と申します金利水準は他の制度資金と比べましても極めて有利な条件となっているわけでございまして、これをさらに低くするということは極めて困難ではないか、私どもかように考えている次第でございます。  次に、私ども農林水産省と申しましょうか、畜産局としての対応の問題でございますが、実はこの肉用牛経営合理化資金の融通に当たりましては、単に負債整理だけをやるのではなくて、農家経営はもとより家計まで立ち至った再建をやろうということで進めているわけでございますので、中央と県段階に協議会をつくりまして、それを中心として経営再建の指導もやっているわけでございます。したがいまして、現在岩手県下におきましては、先ほど申し上げましたように岩手県当局も県、市町村、農業団体一体となったチームをつくって指導に当たっているわけでございますので、私ども、県とよく連携をとりながら、私どもとして可能な限りでの適切な助言なり指導なり支援をやってまいりたいと考えております。
  144. 津川武一

    ○津川委員 特別指導チームをつくった、これは非常に結構です。そこで、この指導チームが肉用牛経営合理化資金を適用するようだと言っておりますが、政府としてはこれは適用させますか。
  145. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 岩手県の方で関係の金融機関等とも協議の上、この肉用牛経営合理化資金の融通を行いたいという申し出があれば、前向きに対応いたしたいと考えております。
  146. 津川武一

    ○津川委員 その次に金利ですが、生活費にも事欠いてくるので、金利負担はどうしても背負い切れない負担になるわけです。そこで、特認で三・五%、これは結構ですが、もう少し、実際の農家に無利息という状態はつくってあげられませんか。自治体が幾らか負担するなどということはどうでございます。これには出先機関として東北農政局なんかが直接入って一緒に指導して、そういう点では考えてくれているかどうか、この点を答えていただきます。
  147. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 先ほどお答えいたしましたように、金利については三・五%という水準でございますので、これは他の制度金融と比較いたしまして極めて低い水準でございます。かつまた、この肉用牛経営合理化資金の利子補給は、国だけではございませんで、県、市町村、農協等も利子補給を行うという体制でございますので、お尋ねでございますけれども、私どもといたしましては、今日ただいまの段階でさらに三・五%以上に下げることはなかなか困難ではないか、かように考えております。
  148. 津川武一

    ○津川委員 そこで、問題の深刻さは安代町農協の特殊的な事例ではないということです。岩手県の農協労働組合が県内の巨額負債農家実態を詳しく調査しております。  例えばA農協組合員四千人を超す県内指折りの大型農協組合員への貸付残高約九十億円、うち期限経過一年以上の固定負債が約八億円、八%、そのうちほぼ回収不能が半分以上になると見ております。ここでは、三億円の負債を抱えた大型倒産が発生し、保証人十四人に一人二千万ずつ負担させたとか、肉牛農家倒産で家族は行方がわからず、六人の保証人に五百万から六百万ずつ負担させたという事例になって、そのうちの一人は全資産を処分しております。  B農協農業青年クラブのリーダー、麦作団地などで頑張っていたが、数千万の負債で行方不明になり、老夫婦だけ取り残されてサラ金におびえております。  C農協、安代の農協などはまだいい方だ、うちでは二月で八億円を抱えた畜産農家がある、億単位の負債農家は二けたあると言っております。  D農協、ことしの正月、二名の農民が相次いで自殺しております。一人は地域でも有数な大規模野菜農民、もう一人は懸命に野菜づくりに取り組んでいた中堅農民、何もかも嫌になったと言って、正月、突然農薬をあおってしまったのでございます。  以上のような例は、農家倒産、夜逃げ、自殺など、枚挙にいとまがなくなってきました。決して一地域の特殊的な事例だけということではありません。畜産農家が確かに多いが、県の調査によっても固定化負債の三二%が耕種、野菜となっておるように、畜産部門に限られているというわけでもありません。  そして、何千万円、何億円という巨額な負債を抱える農家に共通していることは、政府の政策に従って大規模化、大型化路線に乗って、ある時点で一挙に規模拡大していることでございます。農家負債一般の中には、生活の乱れとか住宅、教育資金などさまざまな原因がありますが、今、地域や農協を揺るがすような巨額な負債形成過程には、決定的な要因として農政がございます。自民党政府は一貫して、大きいことはいいことだと言って、農民に画一的な規模拡大を押しつけ、岩手県においても、畜産五百億運動などと称して大規模畜産を進めてまいりました。NHKの岩手六・三〇で放映された負債問題の特集の中で、知事は、過去において試行錯誤があったと率直に誤りを認めております。  政府は一体、このような巨額負債農家があることを存じておりますか、このような巨額負債農家を生み出した責任をどう感じておりますか、これの救済に対する根本的対策をどうしようとしていますか、この三つを答えていただきます。
  149. 後藤康夫

    後藤(康)政府委員 農家負債の問題につきましては、地域なり階層によってかなりさまざまでございますが、どちらかと申しますと日本の北の端の方それから南の端の方と申しますか、作目から申しますと畜産経営といったところに負債が大きい、あるいは固定化負債が生じているというような一般的な傾向があるように私ども承知いたしております。  今、経営規模拡大の話がございましたが、規模拡大をなさった方のその後の経営状況について見ますと、それが成功して安定した経営を行っている農家がある一方で、一部に負債の多い農家もあることを私ども承知いたしております。また、大きな負債を持ちました原因につきましても、ちょうど規模拡大後経営が軌道に乗る前の時期に、例えばオイルショックで資材が急に値上がりをした、あるいは畜産物価格がそのときの需給事情で非常に低落した、あるいは災害による不作の打撃を受けたといったようなケース、また過剰投資とか技術力の不足、経営努力の不足等によるもの、さらに消費生活面からも相当な負債の原因が生じているといったような、いろいろなケースがあろうかと思います。  私どもといたしましても、農業経営から生じた固定化負債につきましては、農家にとってもそうでございますし、それから融資機関がそれによって苦しむということで、農家実情に応じまして、災害を受けた農家等に対する既往債務の償還猶予等の貸付条件の緩和でございますとか、系統原資の貸し付けで固定化したようなものについて、財政資金でございます自作農維持資金の融通等の措置によって対応してまいってきております。今年度も、自作農維持資金の再建整備資金につきましては、資金需要が多いというようなことで枠の増大も図っておるところでございますし、また、特に経営環境の変動が大きい畜産経営につきましては、酪農経営、肉用牛について、それぞれ負債整理あるいは経営再建のための資金を創設するというような対策の充実にもこれまで努めてきたところでございます。  負債問題についてはそれともう一つ、できるだけ負債問題の発生を防止することも大事でございまして、昨年の七月、制度金融改正をやりました際に、的確な融資審査実施とか融資後の指導の充実、過剰投資を防止するための融資規模の適正化、それから農協貸し出し、一般貸し出しにつきましても貸し出しの適正化、とにかく数字の、事業量が伸びればいいという形でもってどんどんお金を貸していくということじゃなくて、借り手の営農なり生活のためにどういう貸し方が一番いいかということを考えて融資をしなさいというようなことを含めた通達を出しまして、そういった固定化負債の発生の未然防止の指導に努めているところでございます。
  150. 津川武一

    ○津川委員 局長の話を聞いていたけれども、言葉を悪く言えば農家にとってみればお経を聞いているようなものなんです。今現実にぶつかっておる問題に的確にこたえていかなければならないところに問題があるわけです。  そこで、中金の理事長もおいでですから一つ伺ってみます。農家農協貯金する、農協は貸し出して余ったものを信連に持っていく、信連はいろいろ使って余ったものを中金に持ってくる。したがって中金は、資金を集める、預金を集める点ではこれほど有利な、これほど低コストで預金を集めている金融機関はないのです。だから皆さんの集金コストはほかの都市銀行よりも〇・七%少ない。こうした農家の預金を集めておきながらあの岩手の農家みたいな人に黙っている手はないと思います。中金として何かをやってあげるべきだと思うのですが、今急に思いつかなければこれから検討してみるでも結構ですが、これがやはり中金に対する農民の最後の気持ちですが、いかがでございます。
  151. 森本修

    森本参考人 具体的なことでございますので今すぐ具体的にどうするということをお答えする用意はございませんが、先ほど来応答を聞いておりまして、私どもとしても、今後負債対策系統全体として全国、県あるいは市町村各段階が協力をして対処していこう、その詳細な詰めを今やっておる段階であります。そういった結果によりまして、今先生が御指摘のありましたような具体的な案件についても、我々の手が及ぶというようなことでありますれば、ひとつできるだけ系統の力を結集してやっていきたいというふうに思っております。
  152. 津川武一

    ○津川委員 安代のこの農家に代表されるような、こういう巨額な借財農家に対して国としても特別指導のチームなり体制検討してくれませんか、いかがでございます。
  153. 大坪敏男

    ○大坪(敏)政府委員 安代農協の問題につきましては、岩手県で、県、市町村、農業団体一体となったチームをつくってやっておるわけでございまして、私どもも頻繁に意見の交換をしているわけでございます。したがいまして、我が方の対応の仕方がどういう方法が一番いいかにつきましてはよく考えてみたいと思いますし、かつまた県とも相談してみたい、かように考えております。
  154. 津川武一

    ○津川委員 十分考えてください。ひとつお願いします。  そこで中金の理事長にもう一つ。この間、この法案をどうすればいいのか、私も教えてもらうために浪岡農協、それから県の信連、県の経済課を訪れてみましたが、浪岡農協で一人の農家が借金をして今競売にかかるばかり、そして系統資金の支払い期間も過ぎてしまっている。しかし、この人にもう少し土地を取得させると再建できる、農協組合長は私にこう訴える。この人にお金を貸せるような道をつくってください、何だと言ったら、十三年期限のものを二十五年に延ばしてくれればこの人は再建できると言う。こういう点で中金のお金を、そういう農家のことなので、理事長ひとつ二十五年賦、今の十年とか十五年で行き詰まっているものを二十五年に延ばしていただくということを中金から提案する処置を講じていただけませんか。
  155. 森本修

    森本参考人 実際の実情がよくわかりませんので的確なお答えになるかどうかちょっと自信がありませんが、先ほど経済局長からもお話がありましたように、私どもとしては金融を担当しておりますから、金融的手段でもってやっていくということになれば、どうしても融通したお金が返ってくるということが最低必要になります。今御指摘農家の状態が果たしてそういうものに該当するのかどうかということは私詳細承知しておりませんが、そういう前提の上で初めでいろいろな手続関係あるいは償還期限等が具体的に問題になってくると思っております。
  156. 津川武一

    ○津川委員 少し時間がかかってしまいましたので今度は簡単にはしょります。  最後に農政の基本問題です。臨時行政改革推進審議会推進状況調査小委員会が「行財政改革の進捗状況と今後の課題」ということを決定をいたしておりますが、その中で、生産者米価は生産抑制的に決定しなさい、今後育成すべき担い手がその生産シェアを拡大するように配慮しなさい、米の生産調整については転作奨励金からの脱却をするように現行の転作奨励施策を見直しなさい、こうしておりますが、この点で三点お伺いします。  生産者米価については生産抑制的に決めるとあるが、これは米価を引き下げるということでございますか、農水省の認識。もう一つ、生産調整に対して転作奨励金依存から脱却するよう転作奨励施策を見直すとあるが、これは奨励金をだんだん削って、いずれはなくするという意味ですか、政府の見解を。もう一つ、今農民が最も関心を持っている問題はポスト三期がどうなるかということですが、転作面積を大幅にふやすつもりなのかどうか。この三点、答えていただきたいと思います。
  157. 羽田孜

    羽田国務大臣 まず第一番目の米価の抑制ということでございますが、臨調の答申の中にありますけれども、五十七年におきましても、臨調の基本答申の中では実は生産抑制的な生産者米価を決定するようにという指摘がございました。しかし五十七年には一・一%、五十八年には一・七五%、五十九年には二・二%という状況であるし、また六十年にはこれは据え置かれたということであります。今これは過去の例を申し上げたわけで、ことしについてどうするのかということでありますけれども、いずれにしましても私どもの受けとめ方は、まだ米の需給が不均衡であるという現状の中で刺激的なものにしないようにという指摘であろうというふうに受けとめております。いずれにしましてもこれはそのときに、これからずっといろいろな状況を踏まえながら食管法に基づいて私どもは決定してまいりたい、かように考えております。  なお、水田利用再編対策についてでございますけれども、これはもともと米と転作作物との価格の乖離を埋めるというのが実は本来の目的で、構造政策等進める中で、本当はだんだん奨励金というのはなくなっていかなければいかぬというのが現状であります。しかし、今なおその乖離があるという現状も踏まえながら、これも今農政審の中で御議論いただいておりますので、私どもはそういった議論を踏まえて検討したいと思っております。なお、面積につきましても、残念ですけれども需給ギャップというものがいまだあるのが現状でございまして、この需給ギャップを一体どう埋められるのか、これも今私ども省内でも検討しておりますし、また農政審でも検討していただいております。  いずにしましても、私どもはこの問題、今農政上の最も重要な課題の一つであるというふうに受けとめながら秋に向かって決定をしてまいりたい、かように。考えております。
  158. 津川武一

    ○津川委員 最後になりましたが、二つばかりまとめて質問いたします。  一つは水産庁、中央漁業信用基金の再保険、余り豊かでないために県の基金が必要なお金を貸せない、その次は農家の方にも漁業家の方にも出せないで困っているので、中央漁業信用基金というものを思い切ってやらないと県の基金が代位弁済でつぶれるそうでございますので、この点の対策。  二つ目にはリンゴの自由化、これは絶対にしないこと。国内の需給事情により緊急輸入の場合も最小限度にとどめるようにということをぜひ委員会質問してくれとありましたので、この二点答えていただいて終わります。
  159. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  中央漁業信用基金に対する出資は六十一年度予算でも四十八億二千万計上し、六十年度は補正も合わせて五十二億ということで、ここ数年相当思い切って努力をしてまいったつもりでございますが、今後ともその点は適切に対処したいと思っております。
  160. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 リンゴ果汁でございますが、リンゴの生産、大変大事な問題でございますので、輸入がこれに与えます影響を十分慎重に判断しながら適切に対処してまいりたいと考えております。
  161. 津川武一

    ○津川委員 終わります。
  162. 大石千八

    大石委員長 これにて両案に対する質疑は終了いたしました。
  163. 大石千八

    大石委員長 ただいま議題となっております両案中、まず、内閣提出農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する法律案について議事を進めます。  これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、放ちに採決に入ります。  内閣提出農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  164. 大石千八

    大石委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
  165. 大石千八

    大石委員長 この際、本案に対し、衛藤征士郎君外四名から、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び日本共産党・革新共同の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を聴取いたします。日野市朗君。
  166. 日野市朗

    ○日野委員 私は、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び日本共産党・革新共同を代表して、農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     農水産業協同組合貯金保険法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   最近における金融自由化の急激な進展は、農協漁協等の信用事業運営に重大な影響を及ぼすことが懸念されている。   よって政府は、農協漁協等の貯金者の保護と農業漁業等の経営の安定に資するため、本法の施行に当たっては、左記事項の実現に万全を期すべきである。  記  一 農山漁村において農協漁協等が果たす役割の重要性とその信用事業の弱小性にかんがみ、経営基盤の強化及び信用事業実施体制整備拡充を図るとともに、今後においても系統信用事業が本来の使命に沿って適切に運営されるよう指導すること。  二 保険料率の算定、資金援助実施等本制度の運営に当たっては、預金保険制度との整合性の確保を基本としつつ、農業漁業等の特殊性に十分配慮すること。  三 組合合併及び本法に基づく資金援助業務の対象となる合併あっせんに当たっては、組合員の意向が十分尊重されるよう指導すること。  四 農漁協系統組織による相互援助制度の充実を図るとともに、本制度に現在未加入の農協漁協等に関しても資金援助業務の対象となるよう適切な方途を検討すること。   右決議する。  以上の附帯決議案の内容につきましては、質疑の過程等を通して委員各位の十分御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
  167. 大石千八

    大石委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  衛藤征士郎君外四名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  168. 大石千八

    大石委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして、農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。羽田農林水産大臣
  169. 羽田孜

    羽田国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上、善処するよう努力してまいりたいと存じます。
  170. 大石千八

    大石委員長 次に、内閣提出農林中央金庫法の一部を改正する法律案について議事を進めます。  これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。中林佳子君。
  171. 中林佳子

    ○中林委員 私は、日本共産党・革新共同を代表し、農林中央金庫法の一部を改正する法律案に対して反対の態度を表明し、以下その理由を述べます。  第一は、農林中央金庫の民間法人化の具体的措置である出資資格者から政府を削除する問題です。現実出資行為とは別に、政府出資規定が残されていることは、いざというときに政府がバックアップするという意味金融機関としての一定の信用力を付与していると考えます。また、今後農政の抜本的転換とそのもとでの農林漁業金融の思い切った拡充を展望したとき、農林中金に対する政府出資可能性検討対象として残しておくべきだと考えます。以上のことから見て、政府出資規定を外すことには賛成できません。  なお、そのことと農林中金が協同組合原則に基づく運営を一層徹底することとは矛盾するものでなく、役員選出規定を所属団体の意見がより反映される方向改善されることに賛成なのは当然であります。むしろ、その点で今回の改正は、理事会の互選で理事長を選ぶという協同組合一般の役員選出のやり方と比べて不徹底なものと言わざるを得ません。  第二は、業務の整備拡充が農林中金の農林漁業離れを一段と促進するという問題です。  今回の改正は、全体として農林漁業対象とする専門金融機関としては著しくゆがんでいる今日の農林中金の現状を是認した上で、農林中金の金融機関としての機能拡充のみを追求したものと言わざるを得ません。しかも、機能拡充の中身を見ても、農林中金の本来の業務としている所属団体貸し出し以外の分野における総合的貸し付け能力の強化とか余裕金運用の拡大であり、農林漁業分野を対象とするという専門性がますます後退することは明らかです。  また金融環境変化対応して、一般金融機関と同じレベルでの競争を追求する路線は、優良企業とか利回りの高い有価証券運用に一層傾斜し、低生産性部門でコストもかかる農林水産業貸し出しの縮小につながるものです。  日本共産党・革新共同は、農業を国の基幹的生産部門として位置づけ、競合農産物の輸入規制や価格保障の抜本的な充実、農家負担の増加を伴わない土地改良の大規模実施などによって日本農業の再建を図るべきだと考えます。  こうして、農民の投資意欲や農業への資金需要を引き出すこと、そのために農林中金や系統信用事業も積極的イニシアチブを発揮することこそ、今日農林中金が抱えている矛盾の抜本的解決の道であることを主張して、私の反対討論を終わります。
  172. 大石千八

    大石委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  173. 大石千八

    大石委員長 これより採決に入ります。  内閣提出農林中央金庫法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  174. 大石千八

    大石委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  175. 大石千八

    大石委員長 この際、本案に対し、衛藤征士郎君外三名から、自由民主党・新自由国民連合、自本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・国民連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を聴取いたします。田中恒利君。
  176. 田中恒利

    田中(恒)委員 私は、自由民主党・新自由国民連合、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・国民連合を代表して、農林中央金庫法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     農林中央金庫法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   我が国農林水産業をめぐる厳しい諸情勢に対処し、農林水産業の体質の強化、生産性の向上及び農山漁村の活性化を図ることが強く求められ、また、補助から融資への政策転換が図られる中で、系統金融機関の要としての農林中央金庫の果たす役割は益々重要性を増している。   よって政府は、本法施行に当たっては、同会庫が民間法人化され、今後、農林水産業者の組織する協同組合等の中央金融機関として自立することが求められていることに留意しつつ、その本来の使命が十分に果たされるよう左記事項について適切な措置を講ずべきである。      記  一 同金庫の今後の業務運営については、自らの経営についての自己責任の原則が一層徹底するよう十分配慮するとともに、組織強化事業拡大、経営体質の刷新につとめ、農林漁業者の期待にこたえる系統独自の低利融資の強化等で農林漁業融資の活性化を図ること。  二 同金庫の業務機能の拡充として新たに付与された業務については、法改正の趣旨にてらして、いやしくも農外部門への貸付等に特化することなく適正な実施が図られるよう十分指導すること。  三 同金庫が、系統金融機関の要としての役割を果たし、しかも金融情勢の変化、民間法人化にふさわしい自己責任の徹底等新たな事情に的確に対応するため、その性格や役割に即した適切な役員執行体制が確保できるよう努めること。  四 金融自由化の急速な進展等に対処し、系統金融機関においては、自己資本の充実等を通ずる経営基盤の強化及び資金コストの引下げ等による信用事業効率化に努めるとともに、系統資金が系統金融の各段階で有効に活用されるよう十分指導すること。    なお、他の金融機関との競争条件を確保する等系統金融機能の拡充強化を図るよう努めること。  五 金融自由化進展等に伴い金利変動が激しい時代を迎えており、近代化資金等の制度資金についても、その基準金利、末端金利のあり方などを検討し、円滑な資金融通を図ること。   右決議する。  以上の附帯決議案の内容につきましては、質疑の過程等を通して委員各位の十分御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
  177. 大石千八

    大石委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  衛藤征士郎君外三名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  178. 大石千八

    大石委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして、農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。羽田農林水産大臣
  179. 羽田孜

    羽田国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上、善処するよう努力してまいりたいと存じます。     —————————————
  180. 大石千八

    大石委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両法律案委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  181. 大石千八

    大石委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  182. 大石千八

    大石委員長 内閣提出参議院送付主要農作物種子法及び種苗法の一部を改正する法律案議題とし、趣旨の説明を聴取いたします。羽田農林水産大臣。     —————————————  主要農作物種子法及び種苗法の一部を改正する   法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  183. 羽田孜

    羽田国務大臣 主要農作物種子法及び種苗法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  種苗は最も基礎的な農業生産資材であり、優良な種苗の生産及び流通を確保することは農業の振興を図る上で極めて重要であります。  このため、我が国の基本食糧であり、かつ、基幹作物である稲、麦、大豆につきましては、主要農作物種子法に基づき、優良な種子の生産及び普及を図っております。また、広域にわたり流通が行われている一定の種苗につきましては、種苗法に基づき、品種その他の事項の表示を義務づける等により、その流通の適正化を図っているところであります。  しかしながら、近年、種苗の分野においては、バイオテクノロジー等新技術の開発の著しい進展に伴い、国、都道府県等の公的機関のみでなく、民間事業者を含め、積極的な技術開発及び品種の改良が進められており、これらの技術開発等の成果を活用して、優良な種苗の生産流通促進し、もって我が国農業の生産性の向上及び農産物の品質の改善を図ることが重要な課題となっております。  政府におきましては、このような情勢に対処して、主要農作物種子法について、農業者に対する優良な種子の供給を確保するための国及び都道府県の主導的な役割を堅持しつつ、優良な種子を生産し得る民間事業者も主要農作物の種子の生産の分野に参入し得る道を開くとともに、主要農作物の種苗を含めた種苗の流通の一層の適正化を図るため、種苗法の指定種苗制度の拡充等を行うこととし、この法律案提出した次第であります。  次に、との法律案の主要な内容につきまして、御説明申し上げます。  まず、主要農作物種子法改正であります。  第一に、主要農作物の種子は、都道府県が指定した圃場で生産を行うものとされておりますが、委託を受けて主要農作物の種子を生産する者の圃場は、一般に、この指定を受けることができることとしております。  第二に、都道府県は、現行どおり、必要な主要農作物の原種及び原原種の生産を行わなければならないこととするとともに、都道府県以外の者で適格性を有するものによる原種及び原原種の生産の道を開くこととしております。  次に、種苗法改正であります。  第一に、指定種苗の指定対象を拡大することとし、主要農作物たる稲、麦及び大豆の種苗を追加するとともに、種苗に関する技術開発により流通することとなる新たな態様の種苗も必要により含めることができることとしております。  第二に、指定種苗の表示内容を充実することとし、農林水産大臣は、その品種の栽培上または利用上の特徴を識別するための表示が必要であると認められる指定種苗について、その品種の特徴に関する表示の基準を定めて公表し、これを遵守しない種苗業者に対し、勧告及び命令を行うことができることとしております。  以上がこの法律案の提案の理由及び主要な内容であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
  184. 大石千八

    大石委員長 次に、補足説明を聴取いたします。関谷農蚕園芸局長
  185. 関谷俊作

    ○関谷政府委員 主要農作物種子法及び種苗法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を補足して御説明申し上げます。  本法律案を提案いたしました理由につきましては、既に提案理由において申し述べましたので、以下その内容を若干補足させていただきます。  まず、主要農作物種子法改正について御説明申し上げます。  第一に、指定種子生産圃場の指定対象の拡大であります。  都道府県が指定種子生産圃場として指定する圃場は、現在、譲渡の目的をもって種子を生産する者が経営する圃場のほか、市町村または農業者の組織する団体の委託を受けて種子を生産する者が経営する圃場に限られておりますが、これらのうち委託を受けて種子を生産する者が経営する圃場については、委託者を市町村等に限定しないこととし、市町村等以外の者も主要農作物種子の生産を委託する道を開くこととしております。  第二に、原種及び原原種の生産に関する規定の整備であります。  主要農作物の原種及び原原種の生産につきましては、その重要性にかんがみ、現行どおり、都道府県は、必要な原種及び原原種の確保が図られるようその生産を行わなければならないこととする一方、新たに、都道府県以外の者が原種または原原種を生産する道を開くこととしております。すなわち、都道府県以外の者が経営する圃場において主要農作物の原種または原原種が適正かつ確実に生産されると認められる場合には、当該圃場を指定原種圃または指定原原種圃として指定することができることとするとともに、指定種子生産圃場と同様に、圃場審査及び生産物審査を行うこととしております。  次に、種苗法改正について御説明申し上げます。  第一に、指定種苗の指定対象の拡大についてであります。  主要農作物の種子の流通は、今後多様化することが予想されることから、現在、指定種苗の指定対象から除外されている稲、大麦、裸麦、小麦及び大豆の種苗を指定種苗の指定対象に追加することとしております。  また、現在、指定種苗の指定対象は、従来販売されている種子、根、苗等に限られておりますが、バイオテクノロジー等の進展により流通することとなる新たな態様の種苗も必要により指定し得ることとしております。  第二に、指定種苗の表示内容の充実についてであります。  農林水産大臣は、指定種苗のうち、その需要者が自然的経済的条件に適合した品種の種苗を選択するため、その品種の栽培適地、用途その他の栽培上または利用上の特徴を識別するための表示が必要であると認められるものについて、その品種の栽培上または利用上の特徴に関する表示について種苗業者が遵守すべき基準を定め、これを公表することとしております。  また、その基準を遵守しない種苗業者があるときは、当該種苗業者に対し、その基準を遵守すべき旨の勧告及び命令を行うことができることとしております。  このほか、種苗法に基づく農林水産大臣の権限の一部を都道府県知事に委任する規定を設ける等、主要農作物種子法及び種苗法について所要の規定の整備を行うこととしております。  以上をもちまして、主要農作物種子法及び種苗法の一部を改正する法律案の提案理由の補足説明を終わります。
  186. 大石千八

    大石委員長 以上で法案の趣旨の説明は終わりました。  次回は、明八日木曜日午前十時二十分理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時二十三分散会      ————◇—————